ニートが転生して警官になったらやばかった (連邦士官)
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始まりは突然に

男はいわゆる、前世‥‥現代日本の記憶、それこそ平成に生きた記憶をもつ男であった。

前世ではバイトしたり、学校に行ったり、サラリーマンをしながらスマホや携帯機に据え置き機にPCの様々なゲームや漫画などのサブカルチャーに漬っている人間だった。

一応、空手と柔道を習っていたり、部活で剣道に科学部に所属したりしていたが対して、社会に出た時には、役には立たなかった。

それが今の人生において、いかほどの利益になるかは誰も知らない。役に立たないほうが大きいだろう。

 

 彼は記憶力が並外れてよかった。

中学生までは家では、対して勉強せずとも学校の授業を聞いているだけなのだが、彼はTOP5には入っていた。

もちろん運動もできたし、ゲームでやった三国志で出てきたのが、気になって孫子を読んだりもしていた。

 

それにより前世で怠けと甘えが生まれた。

他の同級生より優れていて習った胡蝶の夢や山月記などを語って見せることが出来ていた。

 

 (俺はやはり、他人とは違うんだ!天才だな。)

そんな考えが、頭を蝕んでいた。さらに体育祭で100m一位を取った。

 

 小学生や中学生は天才であったが、徐々に年齢と共にその成績は下がっていった。

生活水準と評価は一度上を味わうと転落に耐えきれなかった。

 

 自己顕示欲と承認欲求の発露である。

 

一度、一流大学に二浪で入ったが周りの天才と呼ばれる人間の中で、自分が特別ではなく凡人として埋没していくのを味わい、自主退学をした。

 

 (ここは俺の居場所じゃない!俺にはまだ輝ける場所がある筈だ!)

 

親が金持ちだったのもいけなかったのかもしれない……いや、一番は男には他の才能は無かったが、金から好かれる才能人一倍であった。

 

世間では好景気と叫ばれた中で、金に好かれたのか空売りを行い見事に、大暴落を当てた。

「私は、右から左に金を流すだけで儲かるが、世間は忙しいらしい。」

そんな発言がネットニュースを騒がせ、ついには殺された。

 

死臭の大鷲と呼ばれた投資家、その実誰からも好かれなかった男の死。

 

その怠けと甘えを反面教師にし、警察のキャリアとして日々の暮らしを営んでいた。

 

 

しかし、勤務して10年やっときた配置転換の辞令を受けて資料を片付けていた所あるものを見て呆然としていた。

 

それは警察の中では一部で有名な資料だった。

解体屋と呼ばれる内臓を抜き取る事件に、怨み屋と呼ばれる存在、堂島の龍と呼ばれた男、XYZの噂、毛利小五郎、金田一ハジメ、などなどだ。

 

 

はっきり言って彼はこの世界で一番あぶない職種に就いたかもしれなかった。

 

(堂島の龍がこれから起こす事件も知ってるし、怨み屋についても知っている……この解体屋についてもだ。さらに言えば最近の日本人特派員誘拐事件のこの岡島緑郎についてもだ。)

資料を読み進めていくとまた違う名前が現れた。

 

彼は携帯でまさかと思い調べると

(ココ・ヘクマティアルと鷲巣厳……。それに帝愛と黒神財閥に南条財閥、桐条財閥……。)

 

彼は現実から逃げるために資料室から出てタバコをふかした。

 

タバコを吸っている彼を女性職員が見つけて

「廊下でタバコはいけませんよ!風守さん。」

注意されあわてて消すはめになった。

 

しかし、名前を呼ばれて気づいたことがあった。

 

(よくよく考えたら俺の名前の風守隼人って死ぬじゃねーか!!)

そこそこのワイルドな感じでうけていた顔も筋肉も窓に映る自分の姿を見て確信した。

 

(あれ?俺、真・流行り神のボンクラ見せ筋になってる!?このまま警察にいたら死ぬ!!)

彼は警察から逃げよう決意し定時になってから帰宅した。

 

(まてよ、大手だと就職先は帝愛と黒神財閥に南条財閥、桐条財閥系になるよな。)

 

家に帰りノートに企業や覚えてる彼らの内容を見ながら転職先を考えはじめた。

 

(まず、帝愛はブラックだから除外、桐条も党首が死んでゴタゴタするからNG、その余波を受けるから南条も却下。黒神財閥も黒神真黒が絶対人材を管理してるから転生してるとわかって実験されるかもしれないから却下。)

 

そして隼人は机を叩いた。

 

(どう考えても無理じゃん。どれも無理じゃん。というか俺の事が安心院なじみには、ばれてないよな。)

タバコをはさんでまた考えはじめた。

 

(帝愛の闇を知ってると気付かれたら多分消される。桐条は知ってても数年前にシャドウ暴走が起きたみたいだし大丈夫か?南条は私兵部隊みたいなの持ってるぽいからな……黒神財閥も私兵部隊がいるみたいだし。)

 

頭を隼人はかきむしった。

 

(おかしい……財閥で私兵部隊持ってないのいない。そもそも、いろんな作品が混じった世界な時点で生存率は下がってるし……いっそ安心院なじみにスキルや過不可を貰おうかな。でも大人は使えないみたいな感じだったかな?でも、安心院なじみてそうとう歳だったような?)

タバコが進み一箱を吸うとそう言えばブラインドマンは?と思い都市伝説を調べた。

 

(ブラインドマンはまだでてないな……しかし……。)

そんなブラインドマンより死活問題な都市伝説を見つけてしまったのである。

 

(地獄少女て……地獄少女て……。)

怨みどころか妬みを買われただけで死ぬ羽目になる都市伝説を見つけてしまったのである。

 

(よし。国内から脱出しよう。)

国からの脱出を決めたのだった。

 

(そうすると危ないのはあのヘクマティアルとロアナプラと。ヘクマティアルに関してはココ側に食い込めばいけるか?)

カタカタとPCをいじってると上司が正式な辞令の前に内定をメールで送ってきたのである。

判明した新たな事実に恐怖した。

 

(はい。3ヶ月後に毛利小五郎が来る。米花町でまだ噂はとどまってるけど確実に誰か死ぬ。それに配置転換先が神室町近辺を統括する署なんて無理無理……死んでしまう。それに東城会だけならまだしも、鷲峰組と香砂会が管轄に入ってるとか死ぬ。)

 

すぐさま、退職願をしたためると逃げるために行動を起こした。

 

翌朝、署長と課長に相談して残り一ヶ月働いたら退職することを決めたのだった。

 

(よし。お仕事お仕事。)

書類を片付けながら帰った後の逃げる用意整えるのだった。

 

 

ノートを警察署に忘れて……。

 




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2話

ノートを忘れたとは露知らず、明日が非番の隼人は一杯引っかけて〆にラーメンをすすった。

 

偶々入った閉店間近のデパートで、口直しの為に安く売っていた高級さくらんぼを買うと家に帰宅していた。

 

家に向かう途中、近道の為に路地に入ると黒いセーラ服の少女が此方からは後ろ向きで立っていた。

 

「そこの君。帰らないと危ない時間だぞ。」

警察の正義感を出し話しかけると少女は

 

「貴方、私が見えるの?」

と透き通った声で隼人に聞いた。

 

(なんか聞き覚えがある声だな。)

等と隼人は感じながらも隼人は近づいた。

 

すると少女が振り返った。

 

「閻魔あい……。」

少女の顔を見るとボソリと隼人驚きの表情で呟いた。

 

「貴方、私を知っているの?」

隼人の驚いた様子にあいは昔の契約者かな?と思いつつも聞いてみた。

 

「いや、知り合いに似てただけだ。気にするなよ。」

隼人は冷や汗を垂らしながらあいに答えた。

 

(そうだよ。女子高生か女子中学生みたいなセーラーを着ているのだったんだよ。契約が無ければ襲われないし、いきなり鈴原環やココ・ヘクマティアルや安心院なじみよりはマシだろ。正気を保て……冷静になれ冷静になるんだ。風守隼人。)

嫌な汗が首筋を伝う感覚に肌を粟立てさせながら隼人は

 

「そうだ!このさくらんぼ食うか?好きだろじゃあな。早く帰るんだぞ。」

と早口で言うとあいに近づき無理矢理さくらんぼのパックが入った袋を渡し走って帰宅したのだった。

 

その背中を見つめるあいは

「何で私の名前を知ってたの?それに私の好物まで。」

袋の中のパックからさくらんぼを出すと口にゆっくりと入れて味わい

 

「甘い……酸っぱい……美味しい。貴方は誰なの?」

と隼人が消えた方を見ていた。

 

 

 

 

一方、消えた方はというと酔っぱらってラーメンを食べていきなり走った為に酒が回り電柱に吐いていた。

 

それを巡回中の巡査に発見され交番に連れてかれて、警官の癖に何してるんだと言う内容を遠回し敬語で小一時間たっぷりと交番の巡査長に怒られていた。

 

大変でしたねと彼を発見した巡査に緑茶を出され

(優しさで泣きそう。)

と思いながら緑茶を啜っていた。

 

「俺が酔って走ったのが悪いから……。」

と隼人が言うと巡査は

 

「何で酔って走ったんです?」

と隼人に聞いた。

 

「自分の弱さと意志の無さ……情けない大人だからかな。怖くなったんだよ。」

遠い目をしながら語る隼人を巡査は

 

(刑事って一般人と違うのか?それともストレスで……。)

可哀想な人を見る目で見ていた。

「身元引き受け人はいるかな?」

隼人が聞くと

 

「まぁ、管内ですから気にせずに……。」

あぁ……と巡査は続けた。

 

「最近、カルトが出るとかいう話ですから気を付けてくださいね。」

今日も喧嘩になったみたいですからとお茶を注ぎながら続けた。

 

「カルト?何て言う組織だ?」

お茶をチビチビ飲みながら考えもなしに聞いてみるのだが

 

 「仏教から逸脱したガイア教とかいうのと例の指定されているメシア教にお目方教に、それ以外にもなんだかよく分からない悪魔を召喚するだか、異世界化だか言ってる連中ですよ。」

何故、知らないのだろうかと言う顔をしてから合点が行った顔に思わず隼人は「なんだ?」と漏らした。

 

「いや、風守さんは組織対策課じゃないですもんね。」

巡査は急須を片付けながら言ったのだが

 

「ソウダナ……。」

お茶の味がわからなくなっている隼人がいるだけだった。

 

 

 

交番から無事に帰路に着き、インターネットであるワードを検索する

 

【悪魔召喚プログラム】

これを持つために武器を持たねばならない。

それに最近発売されたハンドヘルドPC、そして暴走したら困るので防具も揃えなければいけない。

 

「便利だな……チャップスと防刃Tシャツに防刃チョッキ……何でも売っているな。」

着くのは明日らしく東京はこういうときに便利である。

 

「武器は……。」

工具箱を見てみるとバールやネイルハンマーぐらいしか入っていない。

 

(ネイルハンマーでアクマ達のアタマをカチ割る?そんな芸当出来たなら医者になれるな。)

とりあえず、一旦寝て頭を落ち着けようと横になった。

 

 

その頃、警察署では……

 

「なるほど……このノートは。」

 

また一つ話が動き始めていた。




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3話

もう既に13時過ぎだ。

寝過ぎたのか飲みすぎたのかはたまた、睡眠の質とやらが悪かったのか頭が痛かった。

 

「にしてもだ……。」

通帳を見ると預金額が650万円ある。

 

「裏から武器を調達するとなるとちょっとな。」

組織対策課でもなくともS(内通者)ぐらいはいるもので調達しようと思えば出来るかもしれないが

 

「警察のSを使うとなると足が……。」

あっ、まてよと頭が回る。

 

(たしか、昨日調べた時にロアナプラは存在した。つまり、米軍の密輸ラインは存在するわけだ。無理して九州からノリンコのトカレフやAKMを仕入れなくても良いわけだ。)

そこで顎をさすると

 

(銃はロアナプラで何とかするから良いとして、近接武器はどうする?リーチが長い武器の方が良いが。)

確かに日本ではメンテナンスフリーのボウガン等を買えるが刀剣は厳しい。

 

居合い用の刀等は実戦に向いていないだろう。

肉厚で叩ききるぐらいではないと難しいのだ。

 

「サバイバルナイフは捕まるか。」

カタカタとキーボードを打ち、画面に表示された結果を見てため息をついた。

 

「捕まらない刃物か、持ち運んでいても怪しくなくかつ肉厚。」

 

暗礁に乗り上げたかに思われたこの難問。

気分転換にテレビを点ける。

 

「あーコレ美味しそうですね。」

「流石はシェフ持ち物もご立派ですね。」

 

直ぐ様テレビを消して思わず口から出た。

「コレだ!」

 

(そうだよ、何故気付か無かった?職質をやってるだろ。)

刃物を持っていて不思議じゃないではなく、刃物を持っていて当然だに切り替えれば良かったんだ。

 

それは簡単だ。

包丁を包丁ケースに入れるだけで良い。

 

肉切りのチョッパーと中華包丁、包丁に見える鉈をそれに入れれば良いだけだ。

 

後は予備の武器に使えるかはわからないが、車の工具をいれた工具セットを車にセットすれば良い。

 

バールとネイルハンマー系は車上荒らしや車泥にカラスが使うから詳しく調べられて駄目。

 

(防護服だけでは怪しまれないから大丈夫だろう。)

ネット社会に感謝をして寝ることにした。

 

 

翌日、机にノートを忘れたのを思いだし朝早く行くと何も変わっていなかった。

(こんな大学ノートに書かれたオカルトチックな陰謀論みたいなもの誰も気にしないよな。)

 

すぐに鞄にしまうと

「昼休みの間、ちょっといいか?風守?」

先輩の刑事から呼び出された。

 

「はい。」

(珍しいな他所の先輩、笹塚先輩が来るなん……笹塚?フルネームは笹塚衛士……?)

 

顔の血が引いていく。

 

(まて、まだ表面化していないだけでX(サイ)がいる?トウキョウは狂ってないか?)

箱に入れられるのは、御免だとばかりに頭を降った。

 

「おい、何をしている。行くぞ。」

笹塚に呼ばれて喫茶店に着いた。

 

「どこまで知ってるんだ?」

笹塚が封筒を取り出し、中からノートを出した。

 

「なんの事やら……。」

ジトッと背中がしてきた。

 

「隠さなくて良い。コレがあるからお前は辞めるんだろ?」

ノートを手前に押し付けられより汗で、湿る。

 

「汗が出ている。すぐばれるな。」

笹塚はタバコを咥えるが

 

「お客様、こちら禁煙ですので。」

ウェイターに止められ少し不満げな顔を浮かべた。

 

「先輩は知らないんですか?マッチョは代謝が良いから汗かきなんですよ。」

コーヒーをすすり誤魔化すが

 

「いや、お前は今ノートが出てきてから変わった。」

まっすぐに見られ

 

(折れるしかないか……笹塚先輩に疑われた状態は不味い。)

「ご推察の通りです。知りすぎたので私はやめます。」

 

目を見られないようにノートを見つめた。

 

「で、信じられないようなオカルトチックな話があるが何処までが本当だ?」

腕を組ながら聞かれる、隼人の答えは

 

「少し準備させてください。一週間ぐらいは待っていただけると。」

付け加えるとしたらと続けて

 

「ガイアとメシアに気を付けてください。コレだけは言えます。」

胸から一瓶を出して渡した。

 

「これはなんだ?」

笹塚は手にとって聞いた。

 

「それは牛黄丹です。疲れたときにどうぞ。」

漢方薬はかなり効くと言うのがわかっていた。

 

「約束の一週間後に電話をする。それとだ、刑事を辞めて風守隼人として生きていくなら気を付けろよ。」

と言われて笹塚は帰り、話は終わった。

 

「全く、疲れるな。」

コーヒーを飲みながらなんとなしに時計を見た。

 

「ブッ!」

昼休みは終わっていて急いで署に戻ったが課長のお小言を2時間聞く羽目になった。

 

 




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4話

あれから5日、やっと全てが揃った軍用ヘルメットにボディーアーマー、ケブラーベストに防刃Tシャツ、ケブラーの股引、スチールと強化プラスチックの脛当て、防護ズボンにチャップス、絶縁のコンバットブーツと全部着たなら15kg以上となかなか重い。

 

しかし、筋肉ムキムキが役に立ち、見事難なく動けた。

 

(見せ筋、見せ筋言われていたがマシじゃないか?)

鏡に映る特殊部隊の様な格好。

 

「なかなか悪くないな。」

檜の木剣を構えて振ってみる。

 

「フッ!」

警察で鍛えた剣道の腕がとまでは、いかないもののなかなか様になっている。

 

「後はこれだ。」

スマホ型COMPとアームターミナル型COMPを装備し、いざ召喚へと……。

 

(いきなり高レベルのアクマが来ないよな。)

ドキドキしながらもスリルを楽しみつつあった。

 

本来は、生存策として彼がやっている事だが、端から見れば全てが厄を呼び込み、自ら死に急いでいると言われても仕方ないであろう。

 

「召喚!」

スマホの画面に触れると目の前に鮮やかな陣が、作られて光ながら煙をあげた。

 

「……オレヴァ……ウォォォォォォォォ!」

緑のゼリーが現れた。

 

(ヤバい……スライムだ。どう考えても木剣じゃ無理だ。何かないか。)

手元にあるのはライターと木剣。

 

明らかにライターだけでは、焼ききれない。

 

少しの思考中に、先に素早く動いたのはスライムの方だった。

 

「ヴォオオオオオオオオオオオオオオ!」

スライムが飛びかかってくる。

 

体当たりは腹に決まり、隼人はテーブルに思い切り当たり、辛うじて立てた位だった。

 

ドンドンと隣の住人が壁を叩くのが、耳に入ったが今はスライムで忙しい。

 

「やるな。」

立ち上がった足は、震えておりどうやっても体が痛い。

 

「グォオオオオオオン!」

またもや唸り声を上げて、体当たりをしてくるスライムを避けるが……。

 

「あっ……。」

たまたまテーブルの上にあった醤油が溢れており、滑り倒れた。

 

「まず……。」

体は体当たりのダメージとスリップの衝撃で、硬直をして一瞬、動かない。

 

それに乗じて、スライムが吸い付いて来ようと飛びかかってきた。

 

「クソ……死ぬのか……。」

木剣を探すために、手を伸ばし当たったのは、金属の冷たい感覚。

 

「……ッ!」

直ぐ様それを取ると「オォォォォォ!」と叫び、近付いてくるスライムにそれとライターを合わせて噴射した。

 

「食らえ!ゼリー野郎!」

殺虫剤スプレーが噴射され、ライターの火に引火しスライムが火だるまになり塵に成っていった。

 

残されたのは、860円の金と安っぽい金貨みたいなもの。

そして……。

 

「鉄?」

黒い塊だった。

 

 

(マグネタイトか?)

拾い上げるのと同時に扉が、叩かれる音がした。

 

(苦情だな。)

直ぐに出ようとして、自分の姿を思い出した。

 

「着替えないとな。」

 

着替え終わった後に、隣人からひどく叱られた。

 

(最近、怒られ過ぎじゃないか?)

醤油を拭きながら、考えていた。

 

「それにしてもスライムか。」

落ち着いて体を見ると、肌艶が良くなり無駄な筋肉が落ち必要な筋肉が付いた気がする。

 

(コレがレベルアップというやつか。魔法が使えるようになったりしててな。)

早速、試してみようと内心、胸を踊らせて、風呂に水を張ると魔法を唱えてみる。

 

「ザン……ジオ……アギ……ガル……ブフ……アクア……マグナ……グレイ……フレイ……。」

 

なにもでない。

 

「深遠なる炎の力よ……。」

左手を前に出し、肘を右手で押さえながら股を大きく開き腰を落とした。

 

「何をやっているんだ。」

タバコを咥えた不健康そうな男……笹塚がそこにはいた。

 

「何でもないです。何のようですか。」

直ぐ様、腕を解き身だしなみを整えたが

 

「深遠なる……とか何をやっていたんだ?」

笹塚には少しSの気があったのだ。

 

「まぁまぁ、落ち着いて今、お茶を出しますから。」

しかし、隼人のニート時代に培ったスルースキルを貫くほどの威力は無かった。

 

 

 

 

 

 

お茶を注ぐ、小気味のよい音とお歳暮で貰ったそこそこ高そうな茶葉から出る、甘く清々しい様な匂いが、辺りを包み込んだ。

 

「大分淹れるのが上手くなったな。」

しみじみと言うのを見て

 

「ウチの署は、課長を黙らせる為に、お茶を淹れるのは上手くないといけないっというルールがあるくらいですから。ところでご用は?」

主に怒らせるのは、隼人である。

 

「後、2日ぐらいで約束の日だからどんなものかとな。」

二本目のタバコに火を点けながら、気にしてないかの様に聞いてきた。

 

(こう言う時が、一番厄介だったりするんだよな。)

「今から説明します。着替えますから、待っていて下さい。」

 

まだまだ、厄日は続くようだ。

 





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5話

完全武装に着替え終えた隼人を見て、笹塚の反応は

 

「何だその格好は、趣味か?」

呆れた顔を見せた。

 

「良いから見ていて下さい。後、笹塚さんもこれを持っていて下さい。」

渡したのは、破魔矢にスマホ型COMP……新しく用意した方だ。

 

「スマホに矢?こんなを何に使うんだ?」

再び呆れた様子を見せている笹塚を尻目に

 

「身構えて下さい。笹塚先輩!行きますよ!」

召喚と勢いよく言うと辺りは、煙に包まれた。

 

「私を呼び出したのは、あなた達ですか?」

ローブに羽根、中性的な顔……そう

 

「天使……エンジェル。」

まだ世紀末ファッションをしてないが、天使エンジェルである。

そして、面倒くさい相手である。

 

「これはどういう手品だ?風守。」

羽根が生えた位では、動じないのが笹塚という男である。

 

近年、犯罪者の狂人化が激しい為、羽根位なら割りといるタイプであり、気にならないのだ。

 

「天使様。私の仲魔になってくださいませんか?」

恭しく交渉を進めるのだが……

 

「では神に忠誠を誓うのですね。」

「神の為に寄進をしなさい。」

とばかりで話が進まない。

 

(もしや、レベルが足りない?しかし、エンジェル位なら行けるな。)

「笹塚さん!その矢を!投げて!」

身構えた隼人が言うと笹塚は、咄嗟に矢を投げた。

 

羽根に、破魔矢は当たり、エンジェルの片羽根は弾けた。

 

「おら!」

隼人自体もエンジェルの胴体に、破魔矢を突き刺すエンジェルは光に包まれ……。

 

「メディア!」

みるみる傷が治っていく、羽根も腹部の傷もだ。

 

「有史以来、我々天使は愚かなる人間を見てきました。しかし、主に逆らうような愚かな人間は見守る価値もない!」

エンジェルは、服の袖から取り出した火を纏った槍の様な武器……ヒートグレイヴを構えるが……。

 

部屋の中で、長物を振るうと当然に壁に当たる。

テーブルに当たる、扉に天井に当たり上手く動けない。

 

「お前!誰が修繕費払うと思ってるんだ!」

 

「風守……とにかくこの矢を投げれば良いんだな。」

笹塚が破魔矢をドンドン投げ援護をし、隼人がグレイブの柄を踏むと木剣で殴りつけると天使一言……

 

「ザンマ!」

感じた事もない、先ほどのスライム以上の衝撃が体を襲う。

 

気付いた時には居間から、奥の寝室にまで飛ばされていた。

 

(痛……今、何していたんだっけ?)

朦朧とする意識に、体の軋みに数秒後、意識がはっきりとしてきた。

 

散乱している服や本に扉の破片、ベッドのマットレスに置かれた自分の体でようやく思い出した。

 

「笹塚先輩!大丈夫ですか!」

居間に戻り、見たものは

 

「どうした。」

いつも通り気だるそうな顔をした笹塚がいた。

 

床には、天使が持っていた槍に金貨の様なものに、円。

 

「倒したんですか。」

普通ならば、常人が勝利できる相手ではない。

 

サマナー(仮)の隼人で、スライムの初戦であんなにやられたのだ。

 

この不健康と気だるさを塊にした先輩が難なく勝てるとは、思えない。

 

「まてよ……。」

前世の作中の記憶を思い出してみる。

 

(笹塚先輩、この人は射撃の腕は一流。拳銃なのにライフル並の精度。格闘技は一流……。比べて、俺は?

 

風守隼人、通称見せ筋。理由は薬中のガリガリに殺されたり、酒蔵のおっさんにボコボコにされて銃を奪われる。……。もしかして、スペックが違う?)

もう一度笹塚を見てみる。

 

(笹塚先輩は細身、俺はガチガチのマッチョ。しかし、笹塚先輩に柔道や剣道で勝ったことはない。)

頭に手を置いて息を吐いた。

 

(コレが重要キャラとかませの差か?)

再度固まっている隼人を見て、少し早い口調で

 

「風守、怪我をしたのか?」

と笹塚は心配してきたので誤魔化すのに

 

「いえ、部屋の掃除が大変そうだなとヒートグレイブ(それ)……銃刀法違反になりそうですけどどうしましょうか?」

と苦笑いをしながら言った。

 

部屋は、また汚れた今度は醤油ではなく刀傷や壁紙の傷が生々しい。

 

「管理会社から追い出されるかもな。」

冷静な笹塚の発言に

 

「ホームセンターで、材料買ってくるんで修繕手伝ってくださいよ。直しながら教えますので。」

隼人は、それしか言えなかった。

 

 

 

 

「へぇ……。」

二人を見ている影があるとも知らずに……。




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6話

ヒートグレイブ……見た目は薙刀と槍の中間みたいな存在だ。

 

握ると火が灯り漏れる……コレが強さだろう。

しかし、「デカい。」

 

「笹塚さん、何か良い案ありますか、コレ?」

持っていると槍先からメラメラと火が出て、目立っている。

 

確かに木剣よりは、広い場所なら強いだろう。

保管には困る逸品だった。

 

「刀なら骨董品として、誤魔化せるがな。それが職質やガサ入れで出てきたら、風守はどうする?」

薙刀を車や家に持つ男……どう考えてもそれは。

 

「逮捕ですかね。しかも、あのノートが見つかったら完全に狂った過激派ですよ。どうにもできませんよ。」

脳裏に三面に、デカデカと隼人の写真が載った新聞が浮かんだ。

見出しは、こうだ。

 

【東京で警官逮捕。財閥やいろんな団体に陰謀論。過激化する警察犯罪者】

 

「で、笹塚さんはこれでわかりましたか?ノートの真偽は。」

無事だったコーヒーを淹れて渡すと壁の修理に戻った。

 

「全体を信じるわけには、まだ早いがな。」

フローリングをパテで器用に埋める笹塚を見て違和感を覚えた。

 

「笹塚さん……なぜそんなに、ノートについて気になるのですか?」

そう、明らかに原作の笹塚のロジックを越えた行動が違和感の元である。

 

「お前には、話しておくべきかも知れないな。俺の家族の話を。」

話されたのは、常軌を逸した犯行。

最初は、これを殺人鬼による犯行かと思っていたと。

 

しかし、あのノートに書かれていた話が本当だとすれば、話は変わってくる。

人間ではなく、アクマによる犯行だとすればだ。

今まで積み上げてきたものは、無駄になり、警察として反撃が出来ない事になる。

 

逆に、アクマの犯行だとすれば、人間相手には許されていない仇討ちも可能になる。

これこそが、目的だと。

 

(貴方の家族を殺したのは、シックスという武器商人ですよ。なんて言え無いよな。かといって、シックスが悪意や邪気を重ねてきて人類から変異したものと仮定する。

この仮定が合っているなら、シックスはアクマに入ってもおかしくはない。

 

娘のXは確実にミュータントよりのアクマ……かもしれない。)

答えが解っているからとしても、目の前にポンと丸々の答えを出しても人間は納得しないのである。

 

ある程度砕いて、本人が認識したいと思うような真実ではなければ価値はない。

 

(俺が……世捨て人になったのも、目を背けていたからだ。今まで気付かなかったのもだ。思えば色々と気付く部分があった。)

 

(なぜか、スポーツ部門に戦車が出たりする。テニスで人が吹き飛ぶ……大甲子園とか言う大会が始まる。猪狩カイザースというチームがあったりしたじゃないか。

麻雀もスポーツで全国大会がある、謎の怪現象が各地で報告されたりしているじゃないか。

 

ちょっと掲示板の裏ネットに入ればオカルトだって何だって拾える……ガスが爆発し続けている冬木という地名……自衛官名簿を調べれば出てくる後藤大佐にナチスの南米の亡霊どもに、イギリスのフリークスやバチカンの異教部隊に学園都市……。

 

目を閉じていたんじゃない……見たくなかったんだ。)

 

「気を悪くさせたみたいだな。」

笹塚の声に我に返ると

 

「いえ、考えていました。状況的にはミュータントかアクマ……もしくはアクマ憑き、マグネタイト欲しさの儀式なども考えられます。」

取り繕ってみせた。

 

(しかし、いい情報もあった聖堂と表の教会派、十字教派、メシア教派やその他21派に分裂しているお陰で、東京にI.C.B.M.を撃ち込めそうに無さそうだ。

 

少佐が居そうな南米もナチスの残党組織が多種多様にあるせいで、逆にゼーレーヴェは出来ないだろう。

問題は月にナチス第四帝国があるという話だ。

麻雀で政治を決めているという話もある……各地の残党が第四帝国の元で蜂起したら……いや、これはどうすることも出来ないか。)

 

「儀式について詳しく教えてくれ。」

タバコに火を点けながら聞いてきた。

 

(吸わなきゃ、やってられないだろうな。科学を信じてきた人は。)

「……この世には、魔術、魔法……大魔術に分類される魔法があります。魔法については世界の根源、神話で言うと世界樹に至る奇跡です。

基本、魔法を人間は使えません。次に魔術です。魔術には魔術と大魔術があります。これらの中に大魔術に分類される魔法があります。」

 

「解り辛いな。」

やはり、科学に使った人間に魔法のレッスンは辛いようだ。

 

「今から準備をしますので待っていて下さい。」

隼人は押入れに入った。

 

 




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7話

 

 

 

 「……この世には、魔術、大魔術……大魔術に分類される魔法があります。

魔術は人間が産み出した奇跡を可能にする術で、長い詠唱があります。大魔術は呪文が短い魔術です。」

小さなホワイトボードに書かれたのは魔術についてと言う題名。

 

「大魔術に分類される魔法は、アクマ達が使う魔法です。厳密には魔法ではない魔法に近い魔術です。

で、基本的に人間が使う魔術や大魔術は、軍隊の使う兵器の方が強かったりします。

しかし、それは雑魚についてで、アクマは本体に近ければ近いほどに、魔術や由来がある武器や防具の方が強くなります。

例をあげると雑魚はショットガンで、倒せますが本体に近い物だとショットガンより、室町時代の刀や神社とかの御神体になっている武器の方が効きます。」

とここまで説明したところで、笹塚は質問があるようだ。

 

「一つ、良いか?刀云々は、どうしてだ?」

やはり、ここが引っ掛かるようだ。

 

「祈りの力……生体マグネタイトや感情の力であるマガツヒと呼ばれるものが、関係しているらしいですが、わからないです。」

 

ただと続け

「確実にあのアクマが、このあとに大量に出てくるのは確実みたいですね。

メシア教とガイア教がデカい穴を現世に開けたとか……。」

 

「大分、詳しいようだが出所は信頼できるのか?」

そう言うと笹塚は、五本目のタバコに火を点け、深く紫煙を吐いた。

 

 

「簡単な話ですよ。これを知っています?」

隼人が段ボールから出したのは、月刊妖など怪しいオカルト誌の数々。

 

「それが情報源か?」

呆気に取られる笹塚に

 

「いや、ガイア教やメシア教にアクマついては、凄く正確ですよ。古代文明とかは、信用なりませんが。」

答えた隼人を見て、笹塚は一つ【大きなこと】を静かに呟いた。

 

「風守、何故お前はそんなに……わかっていながら、流されるように生きているんだ?」

目をまっすぐに見られ動けなくなる。

 

「そ、それは……。」

空気が止まる、呼吸が重くなる。

 

「……。わからないです。俺は何を目標にするべきなのか、何を目標に決めたらいいのでしょうか。

真面目に生きる事だけを目標にしました。それがです……今は、生きることを目標にしました。目標が大きすぎて、自由すぎて訳が分からなくて……取り敢えず出来そうなことをして。

 

違うとはわかっているのが、怖くて、今までは、はっきりとした未来予想図が有りました。今はそれがないのでどうすればいいのか。」

困った顔で早口で、それを口から吐くと笹塚は

 

「風守、お前は何か勘違いしていないか?誰もがはっきりとした目標があって、生きていると?そんなやつは少ない。」

タバコを灰皿に押し付け消した。ジュッと音がする。

 

煙が最後に上がり、紫煙が部屋に昇った。

 

「風守は、犯人や聞き込みの相手を思い出してみろ。全員が人生の確実な計画と目標があって行動していたか?そんな風に見えたか?」

 

どうだと聞かれて考える。

 

(今までの犯人か……どう考えてもおかしかった。魔が差したも今ならアクマに操られていたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。)

 

「考えては……いませんでしたね。今、思うとアクマに憑依されていたのかも知れませんが。」

短絡的……負の感情を抱いているとアクマに、近づかれやすいのだ。

天使も嫌である。

 

「そうだろう。考えすぎだ。元を単純に考えてみろ。」

笹塚の発言は刺さった。

 

元より勉強は出来るが頭は良い方ではないのである。

(足りない頭で考えるより、行動した方がいいか。)

 

顎に手を当てて考えると(もしかすると現状で一番、生存率が高いのは誰かの庇護に入ることかもしれない。)

 

目元をつまみ解す間にも考えは進む。

(人体改造メシアや不良より不良しているガイア……きな臭い十字教、分解されそうな学園都市によく分からない組織ばかりだ……アメリカはアメリカでアンブレラやロボスが居るようだしな。)

 

 (まともに庇護を求めるなら安心院なじみ辺りか?意外と陰陽師機関もいいかもしれない。結局ろくなことにならん。)

どれも転生という時点でその状況がわかったときには、役にたたない組織ばかりであり容易に裏切りそうな気がするのだ。

 

そして、彼は気付いていない。

転生という神秘行為により、彼の体にあるアザは聖痕と呼ばれるものであり、彼は聖人と呼ばれる肉体を持っていることを。

 

それを加味すればまともに何処に行っても危ないことを知らない。

聖人として生きるのか生きないのかを選択させられるのだ。

 

「で、答えは出たのか風守。」

と笹塚に

 

「アクマも人間もあまり変わらないということだけ、答えが出ました。」

真顔で飛躍した答えをいう風守を見て笹塚は一言

 

「お前、そう言うところがあるよな。」

頭を左右に降ってタバコをふかした。

 




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