提督と利根さん、とか。 (zero-45)
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今更感満載な登場人物紹介

【何故だか二十話も続いてしまった記念】

 

 このお話の登場人物あれこれ。

 

 登場人物が少ないので書くの楽だったとかは内緒の話。

 

 

【提督】

 

 本名不明、26歳、階級少佐

 元大本営麾下海軍特殊工作隊所属、例の舞鶴司令長官の元同僚

 人並み外れた戦闘力と、人並み外れた非常識の持ち主

 趣味は物作りとDVD鑑賞

 嘗ては南方戦線で不死身の化け物と言われていた

 

 

【利根さん】

 

 艦暦21年(歳)

 元大本営麾下第一艦隊所属、例の髭眼帯とはかなり顔馴染み

 多分ムッチャ強い、そして多分ムッチャ流され易い性格

 好きな物はデザートと豊胸体操

 第一艦隊の利根と言えば、軍部では何気に有名だった

 

 

【ピエトロ】

 

 鎮守府のバイト(工廠妖精)♀

 行き倒れた所を提督に拾われ、衣食住と引き換えに働く事になった

 物凄く謎技術に長け、多分有能だけど感性が提督と同質

 提督曰く(アレ、コレ)で全てを理解する不思議な存在

 

 

【イッポリート】

 

 鎮守府のバイト(施設妖精)♀

 提督がタウン誌に募集を出した際、応募してきた妖精

 ピエトロと同じレベルでデキる妖精、尚感性は(ry

 実は艦載機乗りだが、普通に物作りに従事している変わり者

 

 

【テリー】

 

 大坂鎮守府から異動してきた妖精さん♀

 一応夕張重工に籍を置いたままの出向という形になっている

 担当は主にロボ関係だが、他にも多種多様な技術を習得している

 妖精さんの中では新入りになるが、経験は一番上

 

 

【ゲンさん】

 

 五十台のおっさん、第八亀丸船長兼オーナー

 漁協の役員でもあり、町の魚市場にも店を持つ

 多分深海の人達より戦闘力がある、新しい物好き

 愛車はランチアラリー、実は元某メーカーのラリードライバー

 

 

【オトヨさん】

 

 ゲンさんのママン、村の町内会長

 若い頃は熊を素手で倒したとか、虎を素手で倒したとか色々な逸話を持つ

 最近は楽隠居をしており、余り目立った行動はしていない

 漁協の相談役で、何かと催し物を考えてるのは実はこの人

 

 

【シゲさん】

 

 村はずれの灯台守の人、七十台

 若いころは世界中を旅し、流れ着いた村で今のポジに収まった

 顔が広く軍部や他の省庁ともツーカーの知り合いが居るらしい

 風が友達で、他にもムー〇ン谷とかにも友達がいるっぽい

 

 

【お春ばーちゃん】

 

 村唯一のホットスポット、駄菓子屋の店主

 特に目立った話は聞かないが、普通に村民してる辺りそれなりの人と予想される

 噂では文明開化と共に商売を始めたらしいが、誰も詳細を話そうとはしない

 提督とはなんとなく仲良して茶飲み仲魔らしい

 

 

【ラッシー】

 

 お春ばーちゃんチの飼い犬兼提督の狩りパートナー

 ただのポメラニアンだが、何故か猟犬扱いされる不幸なポジ

 専用装備があるが、装備したら最後動けなくなる

 提督を見ると何故かプルプル震えて漏らしてしまう

 

 

是留舵(ぜるだ)&紗音瑠(しゃねる)

 

 村にリターンしてきた田中家の双子

 感性が村的な部分に染まってしまっている

 将来はセリエAで活躍したい兄と、玉の輿の妹のコンビ

 パパは村役場で働く大人しい人、ママは魚市場で働く剛の者

 

 



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本編 いちにちめ

「のぅ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「報告書はそれで(しま)いか?」

 

「ああ、後はこれをFAXで送れば取り敢えず今日の事務は終了だな」

 

「……のぅ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「その、いつも思うのじゃが報告書が日に二枚とか正直どうかと我輩は思うのじゃが」

 

「仕方ないだろう、天気と気温と所見でこれ以上のボリュームにするのは不可能だ」

 

「まだ我輩が大本営の第一艦隊から着任して二週間、その間毎日鎮守府の事務仕事が小学生の日記みたいな物と言うのは正直どうかと思うのだが大丈夫なのか?」

 

「そりゃお前、ウチみたいななんも無い鎮守府で事務つったってなぁ……」

 

「むしろ何でウチの鎮守府はこんな人里離れた山の上に建っておるんじゃ?」

 

「バッカお前、人里離れたつってもな、ここは一応住所は町内だから人里から離れたとかいう人外魔境じゃねーし!」

 

「確かにのぅ、有視界範囲には集落はあるし、直線距離で言えば2キロも離れない場所には海がある」

 

「だろ?」

 

「……しかしな提督よ、そもそも距離が2キロというだけで、高低差が数百mは近所とは言わんのではないか?」

 

「……」

 

「おい、提督我輩から目を逸らすでない」

 

「いやあのその」

 

「そもそも何でこんな山の上で海軍の防衛拠点があるのじゃ?」

 

「ああそれね、それにはちょっとした事情があってな」

 

「何じゃその事情とは」

 

「えっとほら、ここに鎮守府を設置する時に大本営の事務方でゴタゴタがあってだな、土地購入の手続きとか諸々する人員が居ないからって俺が契約してこいって言われたんだ」

 

「ふむ? そうか、しかし大本営の事務方ともあろう所が素人にそれを任すとは、一体何を考えておるんじゃ」

 

「何でもちょっと前に事務方の大淀がどこぞの鎮守府に移動したらしくてな、色々大騒ぎになったんだがその時期とここの設置時期が重なっちまって手が足りなくなったとか」

 

「あ~……」

 

「で、土地購入の手配やら諸々済ました後に現地を確認しに来たらお前、場所が山の中だったっつーか」

 

「電話だけで契約したのかお主は」

 

「いや住所だけ見たら街中と連番だったし、業者は海が見える場所だっつってたし!」

 

「で買った土地を確認したら山の中だったじゃと? 何で海軍の提督ともあろう者が原野商法に引っ掛かっとるんじゃぁ!」

 

「仕方ないだろぉぉぉ! こっちだって急な転任で引継ぎとか手ぇ離せなかったんだよ!」

 

「むしろこんな利用価値も無い土地に鎮守府をおっ建てる必要性は無かろ! 何でキャンセルして他の場所を確保せんかったんじゃ!」

 

「いや普通ならそうしたかも知れんけど、ほらちょっと前どこぞの鎮守府が深海棲艦と仲良くなって近海が安全って事になっただろ? それでここの利用価値が無くなったんだよ」

 

「あ~…… いやしかしそうなら何で今ここに鎮守府があるんじゃ? おかしいじゃろ?」

 

「それはな、一旦降りた予算を返納しちまうと、次年度はその分の予算削減されちまうからキャンセルは不可って事になってな」

 

「何と言うお役所仕事…… しかし幾ら飾りとはいえここは鎮守府じゃ、何かあった時に出撃はどうするんじゃ? まさか艤装担いで山道をえっちらほっちら歩いて海までいくのか?」

 

「いや、それは大丈夫だ」

 

「何がじゃ?」

 

「そこのほら、裏手に斜面があるだろ?」

 

「……何だか我輩嫌な予感がしてきたのだが」

 

「んでこの俺がその斜面を下る為のトロッコを作って……」

 

「トロッコ!? あの裏に転がっている子連れの刺客がガラガラ押してるみたいなアレがトロッコ!?」

 

「仕方ねーだろ! 資材はその辺に自生してる木とかしかねーんだからよ!」

 

「って言うかこの鎮守府が無茶苦茶歪なログハウスなのはもしや……」

 

「俺の自作」

 

「やっぱりか! 何か丸太のサイズが妙にちぐはぐだと思ったら自分で木こって建てたと言うのか!? 何をしとるのだお主は!」

 

「何をとか言うがな、俺がここを建ててなかったら鎮守府は未だにテント生活だったんだぞ!」

 

「大本営からどんな扱いを受けとるんじゃウチは! 何で軍の防衛活動ががサバイバル生活に変貌しとるんじゃ!」

 

「知らねーよそんな事! てかあんまりカリカリしてるとハゲるぞ、落ち着け、な、ほら昼飯でも食って落ち着け」

 

「オナゴに禿げるとか言うなバカモンが、むう……今日の昼食はヤマメの塩焼きにキノコ汁か、薄々おかしいと思っておったが食料まで自給自足なのはそんな訳が……」

 

「まぁ暫くは我慢してくれ、今裏に畑を作ってる最中だから、春には野菜とか食えると思うし」

 

「何気に提督は自活力が高いのぅ、しかしキノコとか素人では食える物とそうでない物の見分けが難しいと聞いておったが……どこぞで勉強でもしてきたのか?」

 

「いや、食って判断した」

 

「……何じゃと?」

 

「ん? 食って毒かどうか判断した、で、ヤバいブツだけ後で携帯で撮影してチェックする様にしている」

 

「待て、待て待て、食ったって……毒に当たった時はどうしてたのじゃ?」

 

「ん、それに付いては問題ない、大本営時代の先輩からエリクサーを譲って貰ってな」

 

「エリクサー?」

 

「これだ」

 

「……提督よ」

 

「何だ?」

 

「お主この黄色の箱に書いてある正露○って文字が読めんのか?」

 

「ん? 何かおかしいか? 先輩から譲ってもらったそのてエリクサーは解毒だけじゃなくて、打ち身に捻挫、風邪に歯痛と万病に効く軍が秘密裏に開発した薬らしくてな」

 

「待て、待て待てお主それを本気で信じておるのか?」

 

「いや実際ログハウス建ててる時に骨折っちまったけどそれ飲んだら3日で完治したし、この前お前が誤射して当たった傷もこれですっかり回復したし」

 

「あの傷がいつの間にか完治しておると思ったら、正○丸で直したとな!?」

 

「いやぁ持つべきものは人脈だな、こんな凄い薬回して貰えるなんてなぁ」

 

「お主その先輩とやらに騙されておるぞ? プラシーボと言う言葉を知っておるか?」

 

「なんだそりゃ? プ……プラうん?」

 

「ああもういい、提督がそれでいいなら我輩は何も言わん、して、その先輩というのは今も大本営に?」

 

「いや? ちょっと前拠点の司令長官として異動してったな、大阪に」

 

「サブロォォォォォォォォォォォ!!」



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ふつかめ

 

「のう提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主は一体何をしておるのじゃ?」

 

「何をって見て分かんねぇか?」

 

「いやその、お主の突拍子の無い行動に最近慣れたと思っておったのじゃが、朝の事務(絵日記)を済ました途端ドカチンみたいな格好でツルハシ担ぐ海軍士官を見て我輩に何を察しろというのじゃ?」

 

「あ? いや土木作業っつーか、ちょっと風呂作ってくる」

 

「何でいきなり風呂?」

 

「いや、色々事情があって作らないといけない状況になってな」

 

「事情?」

 

「ん、見てみっか? これだ」

 

「うーわ昨夜まで何も無かった断崖にドアがポツンと(はま)っておる」

 

「んで中は、こうだ」

 

「……提督よ」

 

「何だ」

 

「何で岩肌に張っ付いた不自然なドアを開けたらいきなり岩風呂なんじゃ?」

 

「いやだから事情があるっつったろ?」

 

「……その事情というヤツを聞かせてもらおうかの」

 

「ん、ほらウチってさ、資源関係ヤバいだろ?」

 

「ヤバいと言うか鉄、ボーキ、燃料、弾薬が普通の鎮守府で言う資源じゃが、ここではキノコ、山菜、川魚、木材じゃからの」

 

「で、この前何かあった時出撃はどうすんだってお前言ってただろ?」

 

「言うたの」

 

「んで良く考えたら流石に現状はまずいって俺も思った訳よ」

 

「今更じゃのぅ、それがどうして岩風呂に繋がるんじゃ」

 

「いや燃料とか弾薬関係は現状無理としても、鉄とかボーキ辺りはこう……採掘とか出来ねーかなって思ってな」

 

「……それで?」

 

「そんで石が露出した辺りを横に掘り進んで、後は2マスの直下掘りでy11辺りまで……」

 

「待て、待て待て、何でそこでマ○クラみたいな事しとるんじゃお主は、なんじゃy11て、お主の脳内には座標でも表示する機能が備わっておるのか?」

 

「あ? 知らんのか利根、y11辺りで横方向にブランチマイニングしたら効率良く採掘が出来るんだぞ?」

 

「だからマイ○ラから離れんか! アレはゲームの中の話でこんな山肌を掘り抜いても丸石程度しか資材は入手出来んぞ!」

 

「なん……だと、それじゃマグマダイヴしてもリスポン地点が近くになるようにって用意したベッドは無駄だったってーのか……」

 

「昨日いきなりベッド作ってたと思ったらそんな事考えておったのか! むしろ溶岩にドボーンなんぞしたら普通人生がゲームオーバーじゃからな! リスポンなんぞせんからな!」

 

「くそ……そうだったのか、何てこった、どうりで幾ら掘っても石とか土ばっかだと思ったぜ……」

 

「お主はもう少し現実と言う物を見つめ直す必要があると我輩は思うのだが」

 

「ああ……まぁ資源の入手はもう少し検討の余地があるってのは判ったが、なぁ利根よ」

 

「……何じゃ?」

 

「そのお陰で温泉を掘り当てたし、今日から天然温泉掛け流し放題が可能になったから無駄じゃなかっただろ?」

 

「手掘りで源泉を掘り当てるとか、人としておかしいという感覚はお主には無いのか?」

 

「いや前からお前ドラム缶風呂は嫌じゃー嫌じゃーとか言ってたじゃねーか、なら今回のコレは結果オーライなんじゃないか?」

 

「ああ……あの断崖の端っこに据えてあるアレか……何であんなトコに風呂なんじゃ? 足滑らしたら死ぬぞアレ」

 

「いや、折角外に風呂置くなら景色がいい場所で風呂に入りたいじゃねーか? 360°絶景パノラマを楽しみつつまったりと」

 

「360°見られ放題の我輩の気持ちを察しろと何度言えば……」

 

「普段からそんなハレンチな制服着といて今更羞恥心アピールすんのかお前」

 

「ぶっ飛ばされたいのかお主は、コレは軍から支給されたれっきとした制服なのじゃ、ちなみに下もちゃんと履いてるからな!」

 

「いやお前が履いてようが履いてまいが俺には関係ないんだが」

 

「変に話題を振っておいて投げっ放し状態で殺しに掛かるのは止めんか!」

 

「あーあー落ち着け、そんなカリカリしてたら更年期障害で生理が止まっちまうだろ、ほらデザートでも食って落ち着け、な」

 

「我輩はそんなに歳食ってはおらんわっ! ったく……ん、リンゴか、何かウチのデザートってアップルパイだのリンゴタルトだのやたらとリンゴ率が高いのは何でじゃ?」

 

「ああ、樫の木切ったら苗木とリンゴがドロップするだろ? それの有効活用だ」

 

「だからリアルでは樫を切っても苗木もリンゴもドロップなんぞせんのじゃ! リンゴはリンゴの樹からしか収穫は出来ん!」

 

「いやそんな事言われてもな、ドロップするモンはドロップしてるし」

 

「そこで何故思考を停止するのじゃ…… 普段からいつも言うておろ? 思い付きで行動するなと、お陰で最大傾斜40°の出撃トロッコとか、裸でログハウスから風呂まで行かねばならんハレンチロードとか、大抵我輩が被害を被っているではないか」

 

「まぁその辺のお悩みとかはこの岩風呂が完成すれば取り敢えず解決だろ? もちっと我慢しろよ」

 

「うむまぁ今回のコレは素直に喜ばしい結果と言えなくもないが…… と言うか見た目完成しとる様に見えるのじゃが、後は何を施工するつもりなのじゃ?」

 

「ん、照明が無い、今回は岩風呂っつーか洞窟風呂の形になってるからな、ドア閉めたら真っ暗で何も見えん」

 

「成る程の、しかし明かりならログハウスから電気を引いてくるか、面倒ならランタンでも置いておけばいいではないか、何故そんなドカチンスタイルで気合を入れる必要があるのじゃ?」

 

「あー、ランタンだと光量不足で暗いし、電気引く為の資格俺持ってねーし」

 

「ログハウスとか材料集めから始めて建築してしまう癖に変なとこで律儀じゃのぅ、それでどうするつもりなんじゃ?」

 

「ああ、今から黒曜石掘って来ようと思う」

 

「黒曜石?」

 

「ああ、ほらグロウストーンだとリソース不要だし1マスで納まって見た目スッキリするし」

 

「待て、待て待て、この世には別ディメンションなんて世界は存在せんからな! 黒曜石積み上げて着火してもゲートなんぞ出現せんからな! 一体どこまでマイク○ネタ引き摺れば気が済むんじゃお主は!」

 

「え……でも先輩この前ネザスケの頭集めて鎮守府の艦娘全員でウィザー討伐したって……」

 

「サブロオォォォォォォォォォ!」

 

 

 



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みっかめ

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主は一体何をしておるのじゃ?」

 

「ん? 見てわかんねーか? パーティの飾り付け」

 

「パーティ……パーティてこれが?」

 

「ああ、今日はほらクリスマスじゃねぇか、あんま豪勢な事はできないが気分だけでもと思ってな」

 

「いやお主、この何と言うか……色素が妙に目に優しいと言うかぶっちゃけ白一色なお遊戯会みたいなこの有様は……」

 

「いつも言ってんだろ、ウチは使えるブツが限られてるんだから、何かをしようとしたらその辺に生えてるモンとかリサイクルしたヤツで何とかするしかねーんだよ」

 

「うーわ、この紙の鎖とか垂れ下がった紙切れとか裏面に呪文とか書かれとるぞ!? 何じゃ悪魔召還か!? 儀式でもするのか!?」

 

「ばっかお前それは提出してダメ出し食らった報告書だ」

 

「一日一枚か二枚の絵日記如きでこんなに大量のダメ出し書類が貯まるとか、何をしとるのだお主は」

 

「ネタが弱いとか、話がオチてないとか色々注文が煩いんだよ! 毎回ネタを搾り出すこっちの身にもなれってんだ!」

 

「何じゃそのお笑いスター誕生みたいなシステムは? 一体大本営はウチに何を求めておるのじゃ?」

 

「知らねぇよ! そんなの吹雪に直接聞けよ、ホラこんな感じで毎回書類が返ってくんだよ!」

 

「うーわホントじゃ! 何じゃこの赤ペ○先生が返してきたプリントみたいなブツは、て言うか吹雪!? あやつはアホなのか? 元身内に無茶振りして何をしとるんじゃ!」

 

「いやお前あんまカリカリしてると小皺が増えるぞ、落ち着け、ほら今日は料理も豪華だからこれでも食って落ち着け、な」

 

「誰のせいで我輩がヒートアップしてると思ってるのじゃ、ったく……む? 何じゃこの妙な形の物体は」

 

「ああ、何か欧米じゃパーティにニシンのパイとか出すのがトレンドらしいからな、近所に作ってくれるお婆ちゃんなんか居ないし仕方なく俺が作ったって訳だ」

 

「お主がどこからそんな知識を仕入れたのが我輩分かってしまったぞ……むしろ提督のトレンドは何年前に遡った辺りを彷徨っとるんじゃ! あのアニメは古いからな! むっちゃ古いからな!」

 

「そうなのか? まぁ取り敢えず冷める前に食っちまおうぜ、ほら切り分けてやるからよ」

 

「う……うむまぁそうじゃの、っておいこの中身は何じゃ? えらく極彩色な惨状になっとるが」

 

「いやこの辺ってニシンなんて獲れねーだろ? だから麓の池で泳いでた鯉を代用にだな」

 

「鯉!? と言うかお主コレ良く見たら錦鯉ではないか!? 食えるのかコレ……て言うか何で野池に錦鯉が泳いでおるのじゃ」

 

「あー、あの池な、実は錦鯉の養殖業者が作った人工のため池らしいんだが、その業者てのは倒産しちまって設備とかそのままほっぽって夜逃げしちまったらしいんだよな」

 

「折角のクリスマスに我輩そんな世知辛い話は聞きとうなかったわ……」

 

「ああすまんすまん、じゃ気分を変える為にメインディッシュといこうか、ほれクリスマスと言えばチキン、今日は奮発して鳥の丸焼きを作ってみたんだ」

 

「デカッ!? 何じゃこの鳥、無茶苦茶デカくはないか!?」

 

「ああ、昨日裏山に罠を仕掛けてたらクジャクが掛かっててな」

 

「クジャク!? クジャクてあのわっさーと羽を広げる、動物園とかにおるあのクジャクか!?」

 

「おう、そのクジャクだ」

 

「何でそんな鳥がこんな田舎で生息しとるのじゃ!?」

 

「ばっかお前、クジャクってのは本州の山ん中じゃタヌキとかイタチ並みに居るんだぜ?」

 

「そうなのか、それは知らんかったぞ」

 

「んでコイツは結構凶暴でなぁ、山ん中でばったりエンカウントしたらクチバシでガスガス攻撃してきてそりゃお前……」

 

「折角のクリスマスに我輩そんな夢のない話は聞きとう無かったわ……」

 

「まぁそのお陰でチキンが準備出来たし、ツリーの飾り付けが出来たし」

 

「ツリー……もしやお主が言うておるのは、あの部屋の隅っこで植木鉢にぶっ刺さっとる珍妙なオブジェクトの事を言うておるのか?」

 

「珍妙とか言うな」

 

「どこぞの木から折ってきた枝を植木鉢にぶっ刺して、それに訳のわからん物をプラプラさせとる物が珍妙と言わずに何と言うのじゃ」

 

「いやだからあれでも精一杯ファンシーさを表現しようとだな……」

 

「クジャクからむしった羽をおっ立てて、先っちょにヒトデを串刺しにしたアレがファンシー!? どう見てもアレはクリスマスツリーなんぞじゃなくてモズの早贄現場じゃろうが!」

 

「仕方ねーだろ! ウチにゃ使える資源が殆どねーんだよぉ!」

 

「ほんにお主は器用なんだか不器用なんだか……まぁ今日の所はそのケーキに免じてこの辺にしておいてやるのじゃ」

 

「ケーキ?」

 

「うむ、そこのほれ、テーブルの端っこに鎮座しとるほら、そのケーキじゃ、それはブッシュ・ド・ノエルかの? お主にしては気の利いた物を作ったではないか」

 

「ブ……ブッシュ……ブッシュマン?」

 

「ブッシュ・ド・ノエル! 丸太の形を模したロールケーキじゃ! お主自分で作っておいてそんな事も知らんのか?」

 

「ああ……あーあー、アレってロールケーキだったのか? なーんかドラマとかのパーティなんかでやたらと珍妙な飾りが目に付くなと思って取り敢えず雰囲気で作ってみたんだか、ケーキなのかアレ」

 

「……のう提督よ」

 

「何だ利根」

 

「ケーキじゃないとしたら一体それはなんなのじゃ?」

 

「あ? これ? 薪に石膏塗ったくってそれっぽく作ってみたんだが」

 

「アホかお主は! 何でわざわざ薪に蝋燭なんぞおっ立てて食卓に飾る必要性があるというのじゃ!」

 

「いや欧米のなんか……ほら、宗教的なアレかなと思ったんだが……」

 

「だからいつも言うておろ? 何でも考え無しに作るでないと……お主の作る物はヘタに再現率が高いからタチが悪いのじゃ……」

 

「ああ何かすまん、何でそんなに落ち込んでるか知らんがほれ、今日の主役のプレゼントだ、これでカンベンしてくれ」

 

「プレゼントじゃと?」

 

「おう、クリスマスと言えばプレゼントだろ? ってそんな顔すんなよ、そいつだけは俺の手作りじゃなくて既製品だからな、ちゃんとした商品だから」

 

「お主……懐が厳しいと言うておったじゃろ、なのにこんな物を……」

 

「まぁお前にはいつも負担を掛けっ放しだったからな、こんな時ぐらいはって思ってだな、それにほら、何も用意してないのにプレゼントだけホレって渡すのもアレだと思って」

 

「何の脈絡も無くパーティが始まったと思ったらそういう事じゃったのか……うむ、そうか、その、アレじゃ……ありがとう」

 

「お……おう、まぁ色々これからも苦労を掛けると思うがヨロシク頼むぜ」

 

「うむ、しかと頼まれたぞ! で提督よ、このプレゼント開けても良いか?」

 

「おう、本当は俺がチョイスした物をとか思ったんだが、どうにもそっち系はとんと判らなねぇから知り合いに頼んで調達して貰ったんだ」

 

「ふむふむコレは服……かの? えらく真っ赤で派手な……」

 

「まぁ常用できる様な作りらしいから物自体はしっかりしたブツとか言ってだが」

 

「……のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「何で婦人用の服に髭がセットで入っておるのじゃ?」

 

「髭?」

 

「て言うかコレは例のサンタ衣装ではないか!? しかもスカートの後ろだけムチャムチャ布地が短いとかエロい魔改造されとるぞ!」

 

「うん? 良く分からんが先輩が言うにはソイツは明石セレクションクリスマス限定の利根用ふんどしメイド服とか言ってた気が」

 

「サブロオォォォォォォォォォ!」

 

 

 



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よっかめ

 

 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主はさっきから一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? 餅をチネってんだよ」

 

「は? 餅をチネるって……わざわざ餅米をこねくり回して作った餅を再び米粒に整形するとかお主は一体何がしたいのじゃ?」

 

「あー、これには色々理由があるんだよ」

 

「……お主の言う色々とか事情という物にまともな物が無かった記憶は置いておくとしてじゃ、その理由というのを聞かせてもらおうかの」

 

「ん、ほら今日の午前にだな、独居老人の安否を確認しつつ年末の挨拶周りをしていたんだけどよ」

 

「なんか書類(絵日記)を済ませた後フラっとどこぞへ出ておったと思っておったら、何でお主が役所の民生員染みた事をしとるのじゃ?」

 

「ばっかお前、このご時勢ご近所さんに睨まれた軍施設って無茶苦茶ヤベーんだぞ、苦情とか大本営にいっちまったら給料の査定に響くんだよ!」

 

「なんか妙に生々しい親切心でお主がご近所付き合いをしているのは分かったが、それがどうしてチネりに繋がるのじゃ?」

 

「いや色々町内を練り歩いてたらな、町内会でやってた餅つきに誘われちまってよ、ほらそれを断るのもアレだと思って手伝ったら土産に餅を貰っちまったんだ」

 

「……それで?」

 

「まぁそれでだな利根よ、今日は何日だ?」

 

「12月30日じゃの」

 

「何曜日?」

 

「金曜日じゃの」

 

「金曜日と言えば?」

 

「……何なのじゃ?」

 

「ばっかお前金曜日って言えば海軍じゃカレーの日って決まってるじゃねーか!」

 

「何じゃそれは! 何で今まで山菜だの川魚とかばかりでカレーのカの字も出なかったウチでいきなりカレーなんぞの話が出てくるのじゃ!」

 

「それだよそれ! ウチは海軍の鎮守府だってーのに今まで一度もカレー食ってねーんだよぉ! でも米がねぇしどうしようも無かっただろーが、しかし今日はコレがある……つきたてホカホカの柔らかい餅がな!」

 

「だから餅をチネっておったのか!? お主はバカか!? 何で海軍の防衛拠点で提督ともあろう者がどこぞのサバイバル芸人みたいな事をしとるのじゃ!」

 

「カレー食わない海兵は海兵とは言わねーんだよ! カレーも食わないヤツに海軍魂は宿らねーんだよぉぉ!」

 

「どんだけカレーに拘っとるんじゃ! むしろ餅を見てカレーに到達するお主のそれは海軍魂とは言わんからな! それはただのバカなだけじゃからな!」

 

「バカとか言うなバカとか、てかそんなカリカリしてたらお前チチがしぼむぞ? 落ち着け、まぁこれでも食って落ち着け、な」

 

「またこのパターンで食い物が出るのか、て言うかチチがしぼむとか訳の分からん風評被害を垂れ流すでないわ! ったく……、む? これは……ちゃんとライスカレーになっておる」

 

「ライスカレーって、お前はどこぞのご老人か」

 

「我輩らが軍艦だった頃はカレーはライスカレーと呼んでおったのじゃ、しかたなかろ」

 

「あーそっか、お前らって軍艦だったんだっけ?」

 

「今更か!? ほんにお主は妙に軍人臭く無いのぉ、しかしこれは……ウチにカレールーなんぞあったかのぅ? もしやコレは買ってきたのか?」

 

「いや、この前お前のエロサンタコスを買ってスカンピンになったから、仕方なくそれは俺がスパイスを調合して作った」

 

「あの衣装に有り金叩くとか気が狂っとるのかお主は、しかし調合って……肝心のスパイスはどうしたんじゃ?」

 

「薬箱に二日酔い用のウコンのアレがあっただろ? あれをベースに山で自生してる諸々をちょちょいとだな、んで具は池で泳いでた鯉とか、裏に生えてたキノコとか」

 

「それでこの完成度か!? むしろこれはあの錦鯉の肉なのか!? 錦鯉カレーとか何を目指しておるのじゃお主は!」

 

「ちなみに夜は餅をミョーンして麺を作ろうと思ってるからカレーうどんな」

 

「なんじゃそのアバウトかつ不安を煽る調理法は、どこまで餅でレパートリーを拡大するつもりなのじゃ……」

 

「とりあえず一人一升分の餅は確保してきた、暫くはこれで色々試して限界を極めてみようと思う」

 

「そんな無駄な労力を注がんでもふっつーに焼いて食えばいいではないか」

 

「それは餅が完全に硬化して加工が困難になった時だな」

 

「まぁ確かに毎日餅餅してたら流石に飽きるじゃろうがのぅ、ところで提督よ」

 

「何だ利根」

 

「あの部屋の隅で鎮座しているあの……妙な塊というか……」

 

「ああ、正月用に仕留めてきたイノシシな、すぐ食うとアレだから室内で熟成してんだよ」

 

「正月に猪肉か、正にサバイバルじゃのぅ、しかし提督よ」

 

「だから何だよ」

 

「アレが猪肉なのは分かったのじゃが、何故形状がギャー○ルズに出てきそうなマンガ肉ちっくになっとるのじゃ?」

 

「ああなんつーか肉って言えばこう、マンガ肉じゃね? だからチョチョイと加工して作ってみたんだが」

 

「何をどうしたらイノシシ肉がマンガ肉に変貌するんじゃ!? て言うか我輩お主の感性が全然理解できんぞ!」

 

「いやほら、諺にもあるじゃねーか、おせちもいいけどカレーもねって」

 

「意味が無茶苦茶な上に順番が前後しとる! 肉がおせちなのか!? そして新年早々またチネるつもりなのか!?」

 

「いや山菜はたっぷり備蓄したし、肉も確保したしちょっと今回は本格的なおせちに挑戦しようと思ってな、カレーはその後で」

 

「いやお主は海軍提督なんじゃから、そんな物に全力を注がずにお国の為に働らかんか!」

 

「ああその件なんだけど、年が明けたら鎮守府を拡張して軍備を整えるからな、お前にも多少は手伝って貰う事になると思うからその時は頼むぜ」

 

「うむ? そうなのか? やっと軍事拠点らしい活動を開始するのか……そうか、まぁそれなら我輩も協力は惜しまんがの」

 

「とりあえず杉の伐採と蔓系植物の加工、それと石材の採掘からかな」

 

「……今ちょっと軍事拠点にあるまじき資源の名称を聞いた気がするのじゃが……一体何を作るつもりなのじゃ?」

 

「ん? とりあえずは手狭になりつつある執務棟(ログハウス)の拡張して、そして対空兵装の設置だな」

 

「対空兵装? 木材とか石材で?」

 

「ああカタパルトを作ろうと思ってな、何かお前そっち系のエキスパートらしいって話だしとりあえずそれで」

 

「お主の言うカタパルトは投石器なのではないのか!? 我輩のカタパルトはそんな原始兵器ではないぞ! なんじゃどうしてそんな話になっておるのじゃ!?」

 

「え? 利根ってカタパルトフェチだから作ってやったら? って先輩が……」

 

「サブロオォォォォォォォォ!」



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いつかめ

 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「ちょっと聞きたいのじゃが、あの裏にある小屋は何なのじゃ? 我輩の記憶が確かなら、昨晩まであそこは子連れ刺客のガラガラがポツンと放置されとっただけの空き地じゃった気がするのじゃが」

 

「ああ、アレな、お前前からまともな出撃ドックが欲しいつってたろ?」

 

「言うたの」

 

「だから作った」

 

「……あれが出撃ドック? 何ぞ野外何とかと言うかぶっちゃけ公衆便所みたいなあの小屋が出撃ドック?」

 

「いやあの形状になったのには訳があってだな」

 

「何だか禄でもない理由がありそうじゃが、取り敢えずその訳というのを聞かせて貰おうかの」

 

「それなんだが、いつも木造だと芸が無いと思って一旦石造りで作ってみたんだ」

 

「……それで?」

 

「で、完成してヤレヤレって外から見たらどう見ても公衆便所にしか見えなくてな、んで木造で作り直してみたんだが」

 

「それは建材のせいでそう見えていた訳ではなく、山の中にある空き地にポツンと真四角の小っさい小屋が建っておったら誰がどう見ても便所にしか見えんわな」

 

「一応圧迫感が無い様に小窓を作ってみたり、暖が取れる様に小さい薪ストーブとかも置いて機能面もバッチリなんだがなぁ」

 

「その小窓と煙突が便所のイメージを助長してると何故気付かんのか……」

 

「まぁ見た目はアレだが中身は本格的なんだぜ、ほら見てみろよ」

 

「うん? 中は板張りの小屋にしか見えんのだが……」

 

「あー、見た目はアレだが、ここのレバーを降ろすとだな」

 

「その棒はレバーじゃったのか!? てかなんじゃ部屋が降下し始めたぞ!」

 

「滑車とか蔓のロープとか岩とか、諸々組み合わせてトラクション式エレベーターを作ってみた、巻き上げ機は麓で放置されてたトラックのバネサスを使ってるから電力も不要のエコ仕様だ」

 

「在り合わせの物からやけに完成度の高い物を作りおったのう…… んでこのエレベーターはどこに通じておるのじゃ」

 

「まぁそれは今から説明すっから、ほら着いたぞ」

 

「うむ? 何と言うかこれは……妙に四角く岩肌を削った小部屋じゃの、そこに通路が二本……」

 

「片側は漁協の野外トイレに偽装した出口に通じている」

 

「山の上の公衆便所から入って漁協の便所から出撃とはエスプリが利いておるのぅ、どれ提督よ、ちょっと頭をここに寄せよ、カチ割って中身が正常なのか確認してやるから」

 

「ばっかお前、軍施設の設置って大っぴらにやっちまうと色々苦情が出るご時勢なんだぞ、少しでも目立たずこう……世間の隅っこでひっそりとやんねーとだな」

 

「何で国防の要になる鎮守府の設備がそんな卑屈かつひっそりと建造する必要があるのじゃ……」

 

「それに漁協に直で行ける通路があったらバイトに行くのが楽だし」

 

「……バイト?」

 

「ああ、今はブリやらヒラメやらの漁で漁師は繁忙期なんだよ、んで朝一番水揚げとか仕分けとかのバイトが結構出ててな」

 

「何で鎮守府の提督ともあろう者が漁師の下でバイトなんぞしとるのじゃ! 特別国家公務員が副業とかバレたらクビじゃぞ!」

 

「ああそれは問題ない、確かに金品を報酬で受け取ったら副業扱いでクビになるが、現物で支給して貰ってるからこのバイトはただの『お手伝い』だ」

 

「何か最近川魚じゃのーて海の魚が食卓に上がっとると思ったらアレはバイト料じゃったのか!? お主は一体何をしておるのじゃ!」

 

「あーあー落ち着け、そんなカリカリしてたら抜け毛が酷くなって下以外もツルンツルンになっちまうぞ? 落ち着け、ほら飴でも食って落ち着け、な」

 

「ちゃ……ちゃんと下も生えとるわバカもんが! これは制服がコレだから毎日お手入れしとるだけじゃ! ったく……んむ、これは黒飴か、懐かしい味じゃのぅ」

 

「ああ、休憩の時におばちゃんがやたら飴とかせんべいとかくれるんだよなぁ」

 

「最近茶菓子が妙に豪華じゃのと思っておったらそこもバイトが絡んでおったのか……時に提督よ」

 

「何だ」

 

「この通路は漁協に通じておるのは理解したが、もう一本の通路はどこに通じておるのじゃ?」

 

「ああ、こっちは地下のブランチマイニング場に繋げてるんだが」

 

「だから唐突にマ○ンクラフトのネタをぶっ込むでないわ! 何ぞ室内が不自然に四角いと思ったらまたそのネタなのか!? って良く見たらカマドにチェストまで完備しておる!?」

 

「上まで採掘したモン持ってって精製すんのも面倒だしな、ここを採掘拠点にしてだな……」

 

「だからリアルでは幾ら地下を掘っても鉱石なんぞ殆ど出んからな! マグマも地下渓谷も存在せんからな!」

 

「なん……だと、じゃスケさんや匠対策に木の剣とか作ったのは無駄だったってーのか……」

 

「本気か!? 本気でやっておるのかお主は!?」

 

「いやこの前泉源周りを整備してたらよ、石炭がゴロゴロ出てきたからコレはイケるんじゃないかと……」

 

「と言うか人力で温泉掘り当てたり石炭採掘したり、なんじゃお主は一体何者なのじゃ」

 

「いやぁ、この勢いで工廠とかおっ建てて鎮守府機能を拡張しようと踏んでたんだがな…… その為に執務棟も増築したのに……」

 

「……待て、今何と?」

 

「あ? いや基地機能の拡張するのに色々執務棟(ログハウス)が手狭になるっつってただろ、その拡張の第一段階をな、ほらこっちだ」

 

「ん……なんぞログハウスが妙に……うーわ、歪なログハウスがいつの間にか二階建てになっておる!?」

 

「土地は有限だからな、無作為に横方向へ広げるより縦に拡張できる物は積み上げた方が効率はいいだろ?」

 

「むしろ一階が歪なせいで、二階が微妙に傾いとるのはヤバいとは思わんのか?」

 

「まぁあそこは宿舎だから多少は問題無いだろ」

 

「宿舎?」

 

「ああ、お前前から俺と雑魚寝は嫌じゃー嫌じゃーつってたろ?」

 

「言うたの」

 

「あれ、お前の部屋だから」

 

「我輩の個室とな!? マジか!」

 

「おう、まだ内装はベッド位しかねーけどその辺りは追々とな」

 

「おお……ついに我輩にもプライベート空間が、の、のう提督よ、早速中を覗いて見ても良いかの?」

 

「ああいいぜ」

 

「おお……中々広いではないか、そしてベッド、やっとムサい提督との同衾生活にピリオドが……ん? このベッド何だか妙に……」

 

「色々悩んでみたんだが、室内レイアウトとかベッドとかは海外のオシャレ建築を参考にさせて貰った」

 

「のう提督よ」

 

「何だ?」

 

「このベッドというか、藁にシーツをおっ被せてみました的なモノと、脇にある丸い窓というのは……」

 

「スイスの山頂にある閑静な山小屋のイメージをだな」

 

「そう言えばお主昨日ハ○ジのDVD見ておったな? これはあのア○プスの少女の部屋なのか!? 無駄に再現率が高いこのみすぼらしさはわざとなのか!?」

 

「窓からはアルプスは見えんが漁港を一望できるオーシャンビュー、そして脇にはア○ムのもみの木も完全再現してみた」

 

「うーわ! 何じゃこの巨木は!? 昨日はなんも無かった場所にクソでかい木が生えとるではないか!?」

 

「ああ、とりあえず雰囲気作りは大事だからな、植林してみた」

 

「してみたってお主、一晩でこんな巨木が生えてくるとかおかしいじゃろ!? 一体何をしたのじゃ!?」

 

「いやほら、ウチの建築って基本木造だろ?」

 

「……それで?」

 

「んで敷地内の木が枯渇しちまってなぁ、どうしようかって相談したら先輩からこれ、『明石園芸誰でも植林シリーズ』ってキットが送られて来てだな」

 

「サブロオォォォォォォォォォォ!」

 

 

 



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むいかめ

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「この……凄まじく豪華絢爛なおせち料理なのじゃが……」

 

「おう、材料費0円、ここ周辺で採取できるブツで仕上げた力作だが、それがどうかしたか?」

 

「ほ……ほう? 魚介系は漁協のバイトで賄ったとしてじゃ、このカズノコとかどうしたのじゃ? ニシンはこの辺りでは取れんと言っておったじゃろ?」

 

「ああそれ適当な魚卵を寄せて例のウコンで着色してみた、歯応えを再現するのには苦労したが、そのお陰で本物と遜色の無い出来の逸品に仕上がったぜ」

 

「……このハムとかは?」

 

「猪肉」

 

「この昆布巻きは……」

 

「海に潜って採ってきた、中に巻いてあんのは錦鯉」

 

「そこで錦鯉か!? 何でそこで妥協したのじゃ!? 他に幾らでも海の幸があったであろ!?」

 

「ああ、その辺りはついうっかり全部カマボコに化けたから仕方なくな」

 

「力作過ぎるじゃろ!? 我輩完璧な物を見てこんな突っ込み入れるのは初めてじゃぞ!」

 

「ついでに物々交換で大量に大豆も仕入れておいたからな、そこにある雑煮の味噌は自作だったりする」

 

「遂に発酵食品にまで手を出しおったか…… しかし味噌仕立ての雑煮か、提督は関西の出かの?」

 

「まぁな、本当は白味噌と行きたいところだったんだが材料が揃わなかった、その代わりこれからは納豆も食卓に上がるし醤油もあるしで色々捗る予定だぜ?」

 

「着々と食生活が充実していくのは良いのだが、提督よ」

 

「何だ利根」

 

「色々力を入れる部分が間違ってはおらんか? 肝心の鎮守府設備が増築したハ○ジの部屋で止まっているようじゃが……」

 

「ああそっちね、大丈夫だ、既に手は打ってある」

 

「何じゃと?」

 

「ほら年末に対空兵装を設置するっつってただろ?」

 

「……言うてたの」

 

「既にそれは竣工を終えている、後は試射して性能を確認するだけだ」

 

「待て、待て待て、対空兵装とな? あの時お主が言うておったのは確かカタパルトとかでは無かったか?」

 

「おう、まあそれなんだがほれ、そこにあるレバーを引いてみろ」

 

「この壁にぶっ刺さっておる不自然な棒はレバーじゃったのか!? て言うか我輩物凄く嫌な予感しかせんのじゃが……」

 

「まぁそう言わずに引いてみろって、カタパルト職人のお前を唸らす為に徹夜で仕上げたんだからよ」

 

「何じゃそのカタパルト職人て! ったくこれかの……ってうーわ! 何じゃアレは! 崖の斜面から色々原始兵器が生えてきおったぞ!」

 

「エレベーターの構造を色々研究してみたんだがな、麓に放置されてた2t車を利用すれば、その自重+積載限界の総重量5tまでのブツを利用してエレベーターの加重管理ができる事が判明した」

 

「ちょっと待てぇい! 5t懸架が可能なエレベータて、重量計算上可能かも知れんが木製エレベーターの強度が持たんではないか!? 色々おかしいぞ!?」

 

「海軍特殊工作部隊に居た時の経験を生かして工夫をしてみた、計算上10t位なら余裕の設計だから5t程度の兵装なら強度的には何も問題は無いぞ?」

 

「どうしてその経験をこんな無駄な物につぎ込んでおるのじゃお主は!? むしろカタパルト(投石器)とかバリスタ(大型弩砲)でどうやって深海棲艦の艦載機を落すと言うのじゃ!? アレは攻城兵器であって防空兵器ではないぞ! お主分かっておるのか!?」

 

「いやそこはほれ、カタパルト職人であるお前の手腕次第って事でだな」

 

「無茶振りにも程があるわっ! 第一我輩の使うカタパルトは石の塊とか先の尖った丸太を射出するアレとは違うからな! 理解しとるのかお主は!」

 

「そうなのか? てかそんなにカリカリしてるとストレスマッハで豊胸体操の効果が落ちるぞ、落ち着け、な、これでも食って落ち着け」

 

「どうしてお主が風呂でしておる我輩の日課を知っておるのじゃ!? 別に夢見る事は何も罪ではあるまい! ……ったく、む、これはモンブランではないか、これは……美味じゃの、流石にけーきを食うと気分が高揚するのじゃ」

 

「そうかそうか、ちなみにソレな、栗はおせちの栗きんとんに化けちまったから裏で拾ったドングリで代用してみた、好評だったならなによりだ」

 

「ドングリとな!? むしろ何故そんな物でけーきを作ろうとするのじゃ!?」

 

「仕方ねーだろ、いつもケーキケーキ煩いから生地は作っておいたんだけど、おせちに没頭しちまってソイツを忘れてたから仕方なくだな」

 

「……色々言いたい事はあるが、我輩のリクエストを聞く為の努力という事ならしかたあるまい、今回は素直に礼を言うておくぞ……」

 

「それとな利根」

 

「何じゃ?」

 

「風呂入ってる時何だその……おっぱい音頭ってのアレ? もっとボリューム下げて歌った方がいいぞ? こっちまで丸聞こえだからな」

 

「このタイミングでそれを言うか!? もっとこう、注意隆起するなら別なタイミングとかあるじゃろうが!」

 

「うるせーよ! 毎晩能天気なチチ音頭聞かされてどうしたモンかって悩まされるこっちの身にもなってみろってんだ!」

 

「チチ音頭言うな! て言うか悩んだ挙句にポロリとカミングアウトとかどんだけデリカシーが欠如しておるのじゃお主は……ったく、ああそれと提督よ」

 

「んだよ」

 

「色々スルーしておるがな、あの原始兵器群はどっちを向いておる?」

 

「あ? んなもん対深海棲艦兵器なんだから海に決まってるだろうが」

 

「そうかそうか、それであれの射程距離は如何ほどの物なのじゃ?」

 

「ん~? そうさな、一部車のスクラップを流用して強化済みだからざっと1000mってとこか」

 

「丸太を1kmも飛ばすとか色々ぶっ飛んでおるの…… では射出した丸太や岩は海まで届かんと?」

 

「まぁそうなるな、でも防空兵装だから敵艦載機への迎撃能力があればいいワケだし、別に海まで届かなくてもいいだろ?」

 

「そして射出した岩は集落に着弾し、丸太が民家に突き刺さると」

 

「……あ」

 

「あ、じゃ無いわ! いつも言うておろ……何でもかんでも考え無しに作るで無いと」

 

「何てこった……じゃあの対空兵装は全て作り直しだというのか」

 

「作り直さんでも良いわっ! 撤去じゃ撤去、何で防衛拠点が民間の家屋を倒壊させる危険性がある兵装を備える必要があるのじゃ!」

 

「くっそ……なら防空に関しては第二計画案を推し進めるしかないと言うのか……」

 

「……何じゃその第二計画案とは」

 

「いや、単純に航空機を何とか入手なり開発してお前に装備させるという案なんだがな」

 

「ふむ? いきなりまともな話になったの、そうじゃな……それも一つの解決策ではあるが、残念ながら我輩には水上機しか装備出来んし搭載数も少ないからの、どちらかと言うと砲の能力を上げるか三式弾を実装する方が現実的かも知れんの」

 

「あ? 水上機ぃ? 何言ってんだお前?」

 

「何って我輩は航空巡洋艦じゃぞ、空母の様に艦載機運用は出来んのは知っておろ?」

 

「え? ツルペタでフルフラットな艦娘ってそれ利用して艦載機を離発着できるんじゃねーのか? ほら、それ用の衣装もお前用に仕立て直ししてたんだが……」

 

「何じゃその狂った理論の航空機運用法は、しかもこれは……龍驤の制服ではないのか?」

 

「ああ、それ先輩が『お利根さん用にどうぞ』って」

 

「サブロオォォォォォォォォォ!」



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なのかめ

 

 

「なぁ利根よ、聞いてくれ」

 

「なんじゃ、どうしたのじゃ?」

 

「今日バイト行った時にな、選別より割がいいからバイト乗組員として沖に出たんだけどよ」

 

「待つのじゃ、今なんと?」

 

「いや選別のバイトだと三時間でブリ一本なんだけどよ、今ほら漁業業界も過疎化が激しくてな、高齢化が進んでるとかで漁に出るバイトが結構あってだな、そっちは何と四時間でブリ二本に雑魚が欲しいだけ持ってっていいって待遇でな」

 

「いやそうじゃなくて、何で海軍の提督ともあろう者が漁船の乗組員なんぞしとるのじゃ!? お主は艦隊指令長官じゃぞ!? それがバイト漁師とか何をしとるのじゃ!?」

 

「いやちゃんと提督の仕事もしてんだろ、何言ってんだお前」

 

「朝一絵日記書いて訳の分からんオーパーツを組み上げているだけではないか! で、そのバイトを変更した話を何故わざわざ我輩に報告するのじゃ」

 

「いや、今日沖に出た時にイ級と鉢合わせした」

 

「……は?」

 

「漁場から帰る途中でイ級の群れが出現してだな」

 

「ままま待つのじゃ、イ級の群れじゃと!?」

 

「おう、ゲンさんの話じゃ最近良く見掛けるらしいんだが、なーんかアイツら船に併走してパチャパチャしてたんだがアレだな、イルカウォッチみたいな感じで」

 

「待たんか! 深海棲艦が漁船と併走してなんも被害が無かったのか!?」

 

「おう、特にこれと言って敵対行動はして来なかったな、て言うかゲンさんが余った雑魚とかバラ撒いたらバシャーンって感じで嬉しそうに跳ねてたけど」

 

「餌付けか!? 深海棲艦を餌付けしとるのか!? そのゲンさんというのは何者なのじゃ!?」

 

「あ? 第八亀丸の船長」

 

「漁師が深海棲艦を飼い慣らすじゃと……」

 

「おお、俺もちょっと餌ポーイさせて貰ったんだけどよ、あいつらギョゲゲーとか言って餌をジャンプキャッチすんのな、いやぁオモシレーなアレ」

 

「なぁ提督よ」

 

「ん? 何だ?」

 

「なんとなーく思ったのじゃが、もしやこの鎮守府は不要なのでは無いのかの……」

 

「いや、たまに人型が出るつってたから警戒はしてた方がいいかも知れんな、まぁ漁協の連中はたまにちょっかい掛けてくるヤツらが居たら銛で突いて追っ払ってるらしいが」

 

「おいいーーー! 何じゃその漁師は!? 深海棲艦の人型を銛一本で撃退しとるじゃと!?」

 

「まぁ俺もリンガとかパラオ辺りでヤツらと散々やり合ったけど、流石に銛はないわと思ったぜ」

 

「それは何と言うか銛とかそんな問題じゃないと思うのじゃが……と言うかお主は前線が長かったんじゃったな、内地で色々噂は聞いておったぞ……懲罰部隊に人外がおると言うてな、お主は一体アッチで何をしておったのじゃ?」

 

「懲罰部隊言うな、そうさなぁ、俺は大抵音響機雷とかで相手をダウンさせて丸太でシバくコンボで前線を構築してたっけか」

 

「止めが丸太とか力技にも程があろ、幾ら駆逐級と言うても相手は装甲でガチガチの深海棲艦なんじゃぞ? ほんに無茶苦茶じゃな」

 

「あ? 駆逐なら機雷なんか使わずに丸太だけで充分だろ」

 

「……何じゃと?」

 

「流石にチ級とかリ級辺りからは硬てぇからダウンさせねーとヤバいけど」

 

「ふぁっ!? リ級ってお主重巡級とガチで殺り合っておったのか!?」

 

「お前最前線舐めてんのか? あの辺りは駆逐艦でも金ピカが最低で、ヘタしたらブルマ戦艦とか被りモン空母とか団体で押し寄せてくんだぞ、チーとかリーなんぞで驚いてたらキリがねぇよ」

 

「チーとかリーとかそんな麻雀用語みたく軽く言うでないわ! 何じゃお主は本気で人外ではないか」

 

「まぁ俺の昔話は置いておくとしてだな、いやこっからがマジな話なんだけどよ」

 

「何じゃ、イ級ウォッチングが本題では無かったのか」

 

「実は凄い発見をしてしまった」

 

「……我輩物凄く嫌な予感がしてきたのじゃが、一応話は聞いておこうかの」

 

「いやさっきお前が言った様にアイツら無茶苦茶固い装甲でガードしてるだろ?」

 

「そうじゃの」

 

「んで何でかゲンさんとこにはイとかの外殻とかがゴロゴロ山積みにされててだな」

 

「……それで?」

 

「んでそれ使って鎧とか作ったら最強なんじゃないかと」

 

「提督よ」

 

「何だよ」

 

「最強は良いのじゃが、その鎧は誰が装着するのじゃ?」

 

「心配すんな、ちゃんと俺とお前の分は既に作ってある、ほらそこに」

 

「そこにってこの不自然にシーツが被さったコレか? ってうーわ! プレートメイルか!? フルプレートメイルかこれ!?」

 

「おう、これを装着したらお前、レ級ともガチで殺り合うのも夢じゃねーぜ?」

 

「待て、待て待て、お主こんな重量物を着て我輩に戦えと?」

 

「追加装甲ってのはアレだ、戦艦とか戦車の基本だろ?」

 

「お主基準の基本を我輩に適用するでないわ! こんな重たいモン着てたら戦う前に海へ沈んでしまうじゃろうが!」

 

「あ? いや大丈夫だろ? さっき麓の池で装着して試したけど立ち泳ぎとか余裕だったし」

 

「お主が大丈夫でも我輩は大丈夫じゃ無いのじゃ! てかこんな物着けて入水とか普通死ぬぞ? 一般人は海の底にまっしぐらじゃからな!」

 

「あーあー落ち着け、そんなカリカリしてたら折角改善した便秘がぶり返すぞ? ほらこれでも食って落ち着け、な?」

 

「何でお主は我輩のお通じ事情を把握しとるのじゃ!? ったく……む、これはカリントウかの、お通じの話題の後にコレとか何の嫌がらせなのじゃ……で、コレはまた漁師のオバチャンに貰ったのか?」

 

「いや、小麦とサトウキビの量産をしようと思ってな、それが成功した時に作るブツの試作って事でちょっと気まぐれで作ってみた」

 

「小麦とサトウキビじゃと? 裏の農地を拡大でもするのか?」

 

「いや、農地は現状の広さで大丈夫だと思う、後は雑草を刈って小麦の種を入手して、川っぺり辺りを探してサトウギビを探したらほら、魚の骨で骨粉を量産してだな」

 

「だから何でいつも唐突にマインク○フトネタをぶっ込んで来るのじゃ! 良いか? リアルで雑草を刈っても小麦の種はドロップせんからな? サトウキビなんぞ普通自生しとらんからな? コップン撒いても植物が一瞬で育つなんぞあり得んからな!」

 

「なん……だと、じゃ夜なべして魚の骨をゴリゴリして作ったこの骨粉は全部無駄だったと言うのか……」

 

「何ぞ夜中にゴーリゴーリ謎の音がしておったと思ったらそんなを事しておったのか!? バカか? ほんにお主はバカなのか!?」

 

「くっそ仕方ねぇ、一応コイツもカルシュウムだし、建材の補強とか地盤改良に転用しちまうか」

 

「本気で我輩お主の事が心配になってきたぞ……で、提督よ、このクソ重たいプレートメイルはどうするのじゃ? 我輩はこんな物着けて抜錨なんぞ絶対せんからな」

 

「あー仕方ねぇな、一旦バラして仕立て直して……ゲンさんトコの予備として使って貰うか」

 

「……予備?」

 

「おう、何か色々好評だったみたいでな、人数分拵えてくれって頼まれたから一応作って渡してあんだけどよ、今度から船のオッサン達は全員それ着て漁に出るっつってたぞ」

 

「漁師がフルプレートを着て漁業に勤しむとか一体何の冗談なのじゃ!? 何じゃその漁師共は! そんな武装をして何を獲ると言うのじゃ!?」

 

「さぁ? ブリじゃね?」

 

「一体どこの世界にガシャガシャと黒騎士の一団がブリ漁をするなんぞと言うクレイジーな漁船が存在すると言うのじゃ……」

 

「第八亀丸」

 

「あーもういい、分かった分かった、あの漁協で騎士の一団が乗っとる船を見掛けたら挨拶でもしておくでの、はいはい」

 

「しっかしコレどーすっかなぁ、お前が鎧着ないんじゃ無駄になっちまうなぁ」

 

「何じゃそれは……ガムテープ?」

 

「ほらお前あんなゴツい装備したら色々とシモが、なぁ、保護しねーとよ」

 

「我輩は履いておると何度言えば分かるのじゃお主は! 確認するか!? 見せんと信用せんのかっ!」

 

「いや鎧の採寸に必要な道具を先輩に頼んだんだけど、その時利根に鎧装備させるならデリケートゾーンの保護は必要だろってコレが同梱されてたんだが……」

 

「サブロオォォォォォォォ!」

 

 

 



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ようかめ

「のお提督よ」

 

「何だ利根」

 

「裏の便所の周りにの、何ぞアニマルと言うかヤギがメーメーとしておるのじゃがお主心当たりが無いかの?」

 

「便所じゃねーよ出撃ドックだ、ってああヤギか、アレな、アレは新たな鎮守府の仲間だ」

 

「仲間って何じゃ仲間って、何で海軍の防衛拠点にヤギを着任させておるのじゃ」

 

「いやそれはちょっとした事情があってだな」

 

「またそのパターンか? 前から何度も言うておろ? 何かをする時は我輩に一言相談せよと」

 

「まぁ聞けって、今回はマジで色々と事情があんだよ」

 

「……何じゃ、言うてみよ」

 

「ほら村の町内会の会長してるオトヨさんって居るだろ?」

 

「村なのに町内会とか初っ端から色々おかしな話になっとるのはまぁいいとしてじゃ、その会長がどうしたのじゃ?」

 

「いやそのオトヨさんってよ、畑仕事しながらヤギとか鶏とか飼ってたんだけどよ、何か最近歳で中々仕事がままならんらしくて引退する事にしたらしいんだけどな」

 

「ああ、それで世話しきれんから処分に困ってたヤギを引き取ってきたと?」

 

「そそ、ほらヤギってよ、雑草とかムシャムシャしてくれるから土地の手入れが楽になるし、ミルクも絞れるし飼ってもいいかなぁって」

 

「あー、朝飯になんぞミルクが出てたと思ったらアレはヤギのチチじゃったのか」

 

「おう、お前の偽乳と違ってユキとシロはちゃんとその辺りは機能してるからな、フンとかも畑の肥料として使えるし飼ってて無駄にはならんだろ?」

 

「待てぃ! 今サラっと我輩の胸の事をディスらんかったか!? て言うか普通艦娘はチチがデカくてもミルクとか出んからな! ミルクとか絞れるのはヤギとか牛だけじゃからな!」

 

「あ? マジで? じゃあのパンパカ言ってるアイツとかナーグー言ってる顔色が悪いアイツとかってただチチがデカいだけなのか!?」

 

「……何じゃろうの、この、我輩の事を言われている訳でも無いのに胸の奥でモヤモヤするコレは」

 

「まぁその辺りのチチ事情はさて置きだな、ミルクが入手出来るって事はそれを発酵させてチーズとかも作れると思って引き取って来たんだけどよ」

 

「ヤギのチーズか、確かにアレも乳製品じゃからのぅ」

 

「んでよ、ほらヤギのチーズつったらよ、アルムおんじが暖炉で炙ってだな……とろけたアレをパンの上にトローリと……」

 

「おお……アレか、確かラクレットと言うたかの、アレは旨そうじゃのぅ」

 

「だろ? でその為に色々準備してたんだが肝心のパンが小麦の増産計画の頓挫で生産出来なくなっちまってなぁ……」

 

「あ~…… て言うかマイ○ラ農業で小麦の増産をしようとしてたのはそんな事情が」

 

「まぁな、それはさて置き取り敢えずはそんな事情でユキとシロとピッチーとかを飼う事にしたからな」

 

「ピッチー?」

 

「おう、鶏のピッチー」

 

「ニワトリ? はて? 裏には鶏なんぞ見掛けんかったがの」

 

「あー、ピッチーなら今巣で寝てんぞ、ほらアソコ」

 

「アソコ? ってうーわ! 我輩の部屋の窓に何ぞ巣が出来ておる!? 何であんなとこに鶏の巣が!?」

 

「ん? そりゃお前ピッチーと言えばハ○ジのお友達だし、巣は部屋の窓んトコって決まってるだろ」

 

「またアルプスの少女ネタか!? ヤギのユキとシロはまだいいとしても鶏をピッチーとか色々無理があるじゃろ!? なんで小鳥さんのピッチーがあんなトサカの付いたゴツイ鶏になっておるのじゃ!?」

 

「いや何となく」

 

「何となくで我輩の生活空間をアニメ環境に変貌させるでないわっ!」

 

「あーあー落ち着け、そんなカリカリしてたらほら……ストレスで毎晩胸をシュポシュポしてるアレが無駄になるかも知れねぇだろ? ほらこれでも食って落ち着け、な」

 

「何でお主が我輩のそんな秘密を知っておるのじゃ!? ったく、む!? こ……これは、ぷりんではないか!? これは一体どうしたと言うのじゃ!?」

 

「あー、ピッチーが卵産んでくれるんでな、それでちょっと作ってみた」

 

「待て、ピッチーが卵て……、あの鶏はオスではないのか?」

 

「ん? ああだからピッチー"とか"つっただろ? そこのピッチーの他にブランチマイニング基地にまだ二羽程ピッチーが居てな、そいつらが毎朝新鮮な卵を産んでくれるんだ」

 

「まだ他にもピッチーがおるのか!? て言うか名付けが適当過ぎるじゃろ! せめて違う名前を付けてやらんか!」

 

「ばっかお前、鶏ってのは卵割ったらピヨピヨ増殖しちまって、放っといたらマ○クラが落ちるくれーの勢いで増えちまうんだぞ、そんなのいちいち名前付けてたらキリがねーじゃねーか」

 

「いやリアルじゃそんな簡単に鳥の卵は孵化せんからの! お主の常識はマイ○クラフトに汚染でもされておるのか!? バカなのか!?」

 

「え? でもオトヨさんも鶏養殖する時は卵をぶん投げて孵化させてたって……」

 

「何じゃそれは!? そのご老人は一体何者なのじゃ!?」

 

「村の町内会長」

 

「くっ……もう我輩は何も突っ込まんぞ、突っ込まんからの……」

 

「ちなみにオトヨさんってのこの写真に写ってるバーサンな、ほらこれ」

 

「何じゃコレは……町内新聞?」

 

「おう、暖炉の焚き付け用に古新聞貰って来てるんだよ、んでこの町内会の集合写真に写ってる中央のバーサンがオトヨさん」

 

「……のぉ提督よ」

 

「何だ?」

 

「この写真にポツポツと写ってる騎士はもしや……」

 

「ああ第八亀丸の連中だな、ちなみにオトヨさんはゲンさんのカーチャンだ」

 

「いやそんな人間関係はどうでも良いわっ! 何でこの漁師共は陸でもフルプレートを装備しておるのじゃ!」

 

「趣味じゃね?」

 

「いや趣味ってお主……て言うか何でこやつら皆くっそ長い槍を装備しとるのじゃ!? これはランスか!? ランスなのか!?」

 

「おう、騎士って言えばランスだろ? 銛だとやっぱフルプレート着て振り回すにゃリーチが問題になってたみたいだったから、ちょっと量産をしてだな」

 

「どこの世界に漁船の上でランスを振り回す騎士団がおると言うのじゃ!? しかもこれ長さが身長の倍以上あるでは無いか!」

 

「そこはほら、リーとかチーが出たらチャージ掛けんのに長さが必要になるだろ?」

 

「いやランスチャージって馬上闘技じゃからな!? 漁船でする物ではないからな!?」

 

「そうなのか? まぁ本人達がそれでいいっつってんだから別にいいんじゃね?」

 

「その漁船は一体何を目指しておると言うのじゃ……」

 

「ああそれと利根よ」

 

「何じゃ?」

 

「ジャパネットアカシからこんなモンが送られてきたんだが」

 

「……何じゃこの箱は?」

 

「いやお前のシュポシュポって適合サイズより大きいんじゃねーかってちっさいのを送付してきた」

 

「何で宛先が我輩では無くてお主になっておるのじゃ! コレか!? コレが我輩の赤裸々なプライベート事情の漏洩元なのか!?」

 

「いやほら、前にクリスマスプレゼントの件でお前の採寸データあっちに送ってただろ? あのサイズとお前が注文したシュポシュポのサイズが合ってないんじゃないかって先輩が手を回したらしいんだが」

 

「サブロオォォォォォォォ!」

 

 

 



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ここのかめ

「のお提督よ」

 

「何だ利根」

 

「昨日まで何も無かった表の断崖に巨木がニョッキリと生えておるのじゃが、お主アレに何か心当たりはないかの?」

 

「あーアレか、あれはほら、防衛施設」

 

「……防衛施設とな?」

 

「おう、一見何の変哲も無いこの巨木、実は枝葉に偽装された奥には監視施設が設置されている」

 

「監視施設? ってうーわ! 何ぞ木の上に小屋が乗っかっとるぞ!? 何じゃアレは!」

 

「いや軍事拠点としてはアレだ、哨戒活動だけじゃ業務としてはナンだと思ってよ、定点監視の設備を建てようかと思った訳でだな」

 

「ああ、毎日絵日記(報告書)のネタを搾り出すのに難儀しておった様じゃからな、それ用の施設を作ったという事か」

 

「べべ別にネタ拾いの為に作ったんちゃうわ!」

 

「と言うかバイトで沖へ漁に出てるのを哨戒とか言ってみたり、監視塔とか言いつつツリーハウスを作ってみたりとお主は一体何をしたいのじゃ?」

 

「バッカお前、このご時勢監視塔みたいなモン堂々とおっ建てちまったらご近所さんから苦情が来ちまうじゃねーか!」

 

「だから何で軍の防衛拠点がそこまで卑屈に運営せねばならんのじゃ!? お主はいつも気を使う部分が病的におかしいぞ!」

 

「まあまあそれは横に置いといてだな、アレは見た目ただのツリーハウスだがな、機能的にはちゃーんとした防衛施設になってるんだぞ」

 

「コヤツ話を誤魔化しおった……てかお主昨日『南の島○フローネ』のDVD見とったな? まさかアレか? あのフ○ーネのお家に触発されてツリーハウスを作ったとかなんて事はあるまいな?」

 

「まぁ確かにあの髭親父の物作り魂に対抗意識を燃やしちまった感は否定出来んけどよ」

 

「と言うか何でお主が建造する施設はいつもハ○ス子供劇場のアニメが元になっておるのじゃ!? おかしかろ!」

 

「まぁそのお陰で色々施設が充実してきた訳だし、ほらこの監視塔も内部はちゃんとした作りになってるだろーが」

 

「ちゃんとしたって……何で窓にハンドルが生えたクロスボウが設置してあるのじゃ?」

 

「それを回せばボルトが連射出来る仕組みになっている、ついでに執務棟(ログハウス)に設置してあった対空兵装の起動レバーもこっちに移設しておいた」

 

「その意味あり気に壁から自己主張しておる棒はレバーじゃったのか!? て言うかこんな原始兵器でお主は一体何と戦うつもりなのじゃ? 麓のフルプレート漁師相手に戦争でも仕掛けるつもりなのか!?」

 

「あ? バッカお前そんなの深海棲艦相手に決まってるじゃねーか、ゲンさん達相手にこんな武器なんぞ通用する訳ねーし、もしやるとしたらお前最低でもエクスカリバー(丸太)くれー用意しねーと瞬殺されちまうぞ」

 

「深海棲艦よりも脅威度が高い漁師とか我輩らの存在意義が皆無ではないか!? リーとかチーを殴り飛ばす最終兵器(丸太)が必要な漁師騎士団って色々おかしいぞ!? 本当にあ奴らは一体何なのじゃ!?」

 

「あーあー落ち着け、な、ほらそんなカリカリしてっとほら、ストレスパーンでこっそり続けてる下半身ダイエットに支障が出るかも知れねーだろ? ほらこれでも食って落ち着け、な」

 

「何でお主が人目を忍んでやっておる我輩の秘密を知っておるのじゃ!? と言うかこんな制服を着とると脚のラインがキモになって来るのじゃからしょうがなかろ!……ったく、む、これはチーズスフレではないか!?」

 

「おう、ヤギミルクとピーコ達の卵量産が軌道に乗ったからな、砂糖や小麦粉は物々交換で入手可能になったしスイーツに関してはもうバッチリだぜ」

 

「そうか、うむそうか……それは何と言うか何よりじゃの!」

 

「あーそれから利根よ」

 

「何じゃ?」

 

「あの、なんつーかケツ振りダンスっての? 一生懸命やるのはいいんだけどよ、ブランチ基地でやるのは止めとけ、声とか反響しちまって漁協とか執務棟(ログハウス)に丸聞こえだからよ」

 

「ケツ振り言うな! て言うか我輩が下半身ダイエットに勤しんで既に一ヶ月は経過しておるのじゃが……もしや、ずっと?」

 

「おう、まぁその前にチチ揉み音頭を止めさせちまってたからなぁ、その上ケツ振りダンスまで止めさせるのはちょっとと思ってよぉ」

 

「だから一ヶ月も我輩の赤裸々な活動が聞こえておったのにそれをずっとスルーしておったと!? 何でお主は変なトコで気を回すのじゃ!?」

 

「いやほら、な、漁協のオバちゃん達も暖かく見守ってやれっつってたし、ほらシュガー○ット、おばちゃん達からの差し入れ」

 

「全然嬉しくないわっ! 何じゃその全周囲から生暖かくウォッチされとる状況は……我輩涙が止まらんぞ」

 

「まぁそんな落ち込むな、今度アレだ……銭湯とかであるあのベルトでプルプルするヤツ、あれ作ってやっから、な」

 

「ベルトでプルプル? ああアレか、何じゃお主そんな物作れるのか?」

 

「おう、確か在庫であれ作れそうなブツがあったと思うから多分大丈夫だと思うぜ?」

 

「……のう提督よ、その在庫とは何じゃ?」

 

「うん? ああそれな、んとその辺りは色々事情があってだな」

 

「やはり今日もその一言が出るのか……で? その事情とは何じゃ? 言うてみよ」

 

「ん、ほら今んトコ気温が低いから食材の備蓄に問題は無いんだが、これから先その辺りヤベーんじゃねーかって思ってよ、氷室(ひむろ)とか作れる場所探しにちくっと散策してたんだ」

 

「食材の備蓄から氷室(ひむろ)に直結とか、お主の感性は一体どうなっとるのじゃ」

 

「そんで散策ついでに新たな狩場も開拓しとくかって山の裏側まで足を伸ばしてみたんだが」

 

氷室(ひむろ)の設置場所探しのついでに狩場の探索とか、行動が海軍提督というよりマタギ染みてる気がするのは気のせいかの……」

 

「で、そこで宝の山を見付けてしまった」

 

「……宝の山ぁ?」

 

「おう、何だかあっちは人目が無い山間部が広がっててよ、どうもここの山向こうはどこぞの業者が産廃を不法投棄してるらしくてだな」

 

「待つのじゃ、お主の言う宝の山と言うか在庫というのは……」

 

「電化製品の山、凄くね?」

 

「お主はどこぞのリサイクル業者のオッサンか!? 我輩らは特別国家公務員じゃぞ!? その手の輩も取り締まらんといかん立場の者が不法投棄の現場を宝の山とか言うて、はしゃいでおったらダメダメではないか!?」

 

「いやしかし利根よ、お前の部屋にあるエアコンも、一階のシアターシステムもオール電化キッチンも、全てあそこから持ってきたヤツをリサイクルした物なんだが」

 

「最近やけに小屋が文明開化しつつあると思ったらそんな事をしておったのか!?」

 

「おう、基本ウチは電気ガス水道のライフライン関係と事務用品の支給以外は予算が組まれてないからな、その辺りは自前で何とかしねーとどうしようも無ぇだろ」

 

「防衛拠点の運営としてそれは一体どうなのじゃ……」

 

「知らねーよんなモンは、大本営の事務方にでも聞いてくれ」

 

「何じゃそれは……まったく、それで提督よ」

 

「あん? 何だよ?」

 

「そのリサイクルしてるブツで生活が潤っておるのは判ったのじゃが、その在庫という言い方はどうなのじゃ? まるで商売人の様な物言いではないか」

 

「あん? そりゃお前拠点って基本工廠で作ったブツとか余剰品を売っぱらって予算獲得してるって先輩から聞いたからよ、ウチでもホラ、その辺り何かビジネスをだな」

 

「サブロオオオォォォォォォォ!」

 

 

 



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とおかめ

「のぉ提督よ、ちょっと良いかの」

 

「なんだ利根」

 

「何か朝起きて窓を開けたらその……ログハウス周りの地面が石畳張りになっておったのじゃが」

 

「ああ、アレなぁ、ちょっとした事情で整備しねーといけなくなったから取り敢えず舗装してみた」

 

「いやその事情が何だかは知らんのじゃが、このクソだだっ広い範囲をたった一晩で舗装するとか、普通あり得んのと思うのは我輩だけじゃろうかの……」

 

「ん? そうか? 俺としちゃほら、やる事放置してたらすぐ忘れちまうから必要な事はすぐやろうってスタンスなだけなんだが」

 

「いやだからって毎回それをする規模とかペースが物理的におかしかろ? て言うか何故毎回それを夜中にやってしまうんじゃ」

 

「ん? まぁ寝る時布団に入ったらだな、フと思い出して、それに気付くとなんだか居ても立ってもいられなくなっちまうっつーか……」

 

「なんじゃその病的な思考は……で、提督よ」

 

「何だよ」

 

「今回の事情というのは何なのじゃ」

 

「あーそれな、いやほら、ココのちょい先に村から伸びてる道路あるだろ」

 

「うむ、確か裏の雑木林の先にあったの、それがどうしたのじゃ?」

 

「その雑木林ってウチの敷地なんだけどよ、木材の伐採も兼ねてこの前開墾したんだけど、折角整備したんなら道路に繋いで利便性を確保しようと思ってだな」

 

「あそこもウチの土地じゃったのか、土地だけは無駄に広いのここは、しかし提督よ」

 

「ん?」

 

「確かに道路に繋げるのは利便性が上がるとは言えなくも無いがの、我々は基本徒歩じゃから道路へのアプローチを確保しても結局回り道になるから無駄になるのでは無いのか?」

 

「あーそれなんだけどな、ほら村へ行くのにいつも出撃ドックからトボトボ歩いて行くのもアレだし、思い切ってウチも車を導入する事にした」

 

「車ぁ? 良くそんな物買う予算があったの……ってお主まさか」

 

「例の資源の山から部品を調達して作ってみた」

 

「またか!? また自作したのか!?」

 

「おう、これで買い物とか出撃とか色々捗るぜ、どうよ」

 

「いやどうよとか、どこに車なんぞ駐車してって……うーわ! また断崖に扉が張り付いとる!? しかも今度はやけに横幅が……」

 

「青空駐車ってのは余計な手入れが必要になっちまうからな、ちょっとガレージを作ってみた、んで中には車をだな、ほら」

 

「おい待て! コレはトラ○ドロンではないのか!? 何でいきなり仮面ライダード○イブしとるのじゃ!? ベースのNSXはどうしたのじゃ!?」

 

「あーそれな、ゲンさんもう乗らないからって放置してたから譲り受けた」

 

「NSXを乗り回す漁師とか色々突っ込みが追いつかんわ! て言うかそれ貰って魔改造する鎮守府司令長官ってどうなのじゃ……」

 

「そしてちゃんと内部ギミックも仕込んであるぞ、ほら」

 

『初めましてマイケル、私の名前はKnight Industries Two Thousand、愛称はK.I.T.T、キットと呼んで貰っても結構』

 

「マイケルって誰じゃ!? てか何でガワがト○イドロンなのに中身がナ○ト2000なのじゃ!? 色々とおかしかろ!?」

 

「いや流石に投棄されてる電化製品で再現するのはこれが限界だった」

 

「どうしていつもそんなどうでもいい所に力を入れるんじゃお主は!」

 

「いやほら、ドライブしてて暇になったら話し相手とか欲しくなんねーか? なぁ?」

 

『はいマイケル』

 

「だからマイケルって誰なんじゃ!? てかお主は寂しがり屋さんなのか? 音楽を聴くとかじゃダメなのか!?」

 

「そして必要物資をトランポしたり、対空兵装をキャリアする為に2t車を改造したブツがこれ」

 

「我輩の突っ込みをスルーするでないわっ、てか妙にゴテゴテしたダンプじゃが……待て、今対空兵装が何とか言うたか?」

 

「おう、コイツの荷台にはバリスタとかカタパルトが搭載可能な様に土台を仕込んである、これで民家や周りを気にせずに対空戦が可能だぜ」

 

「待て、待て待て、コレ運転はお主がするのじゃろ? ていう事はその兵装って……」

 

「あ? んなもんカタパルト職人って言われてるお前の仕事じゃねーか」

 

「だから我輩の使うカタパルトはあんな原始兵器では無いと何度も言うておろ! てかどこの世界に丸太とか岩石使かって深海棲艦とドンパチする海軍拠点があるというのじゃ!」

 

「仕方ねーだろ! あるモン有効活用しねーとウチじゃどうにもなんねーんだからよ!」

 

「だからってこんなモン深海棲艦相手に効く訳がなかろ!」

 

「いや、パラオとかブルネイ戦線辺りじゃこれで防衛してたが」

 

「……ああ、お主はそうじゃったな、懲罰部隊はそれがデフォじゃったか……」

 

「懲罰部隊言うな、ていうか利根よ」

 

「……何じゃ、もう我輩そろそろ突っ込み疲れてきたんじゃが」

 

「お前って確か運転免許持ってたよな?」

 

「うむ、ペーパードライバーじゃが一応MT免許は持っておるぞ」

 

「そうか、ならお前専用にって作ったコレは無駄にはなんねーな」

 

「我輩専用?」

 

「ほら、2tトラックの横にあるソレ」

 

「何じゃ? トラックの横にって……うーわ! 何ぞピンクに塗られた……これは何じゃ?」

 

「漁協で使わなくなってたオート三輪を再生してみた、ほらハンドルがカブ仕様のレアもんだぞ、喜べ」

 

「いやそれはレアというか凄まじく古い車と言うのではないか、て言うか何でピンクなんじゃ」

 

「あ? そりゃお前、なあ? 婦女子が使うアイテムってほら、何と言うかピンクじゃね?」

 

「……お主の偏った感性に最早突っ込みを入れる気は無いが、まぁ我輩の為に気遣ってくれた事には礼を言っておくぞ、して提督よ」

 

「何だ?」

 

「どうしてこのオート三輪の座席は不自然に丸っこくなっておるのじゃ?」

 

「ああ、ほら初期のオート三輪てカブの操作系がベースになってるから、跨いで座るタイプの座席になってるだろ?」

 

「うむそうじゃな」

 

「で、足りないパーツを先輩のとこに発注したら『お利根さんの専用機なら下半身ダイエットを兼ねたブツを装備してはどうだろうか』ってバランスボールが送られてきてな、ほら、それを組み込んでみたんだが」

 

「サブロオオォォォォォォォォ!」

 

 

 



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じゅういちにちめ

誤字修正OK!
坂下郁様ありがとナス!


 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主は一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? ゲームだよ」

 

「こんな真昼間から提督ともあろう者が鎮守府(ログハウス)でゲームとな、一体何をしておるのじゃ、て言うか何のゲームをしておるのじゃ」

 

「お前は小言を言いたいのかゲームを見たいのかどっちなんだよ、ほら、コレ」

 

「うわ……ファミコンじゃと、えらく懐かしいモンをプレイしておるの、で、刺さっておるカセットはスペラ○カーとはまた……」

 

「まぁ実際プレイしてんのはダーク○ウル3だけどな」

 

「待て、待つのじゃ今何と?」

 

「ダ○ソ3」

 

「いやお主コレファミコンじゃろ? 刺さっとるソフトはスペラ……うーわ、何で侵入プレイしとるのじゃ!? おかしかろ!?」

 

「いやお前これにはちょっとした訳が……ってクッソ!? ちっと目ぇ離してた隙に消えやがった!? 幻い○枝でも使いやがったか!?」

 

「いやうんそのプレイ中すまんの、むしろ満足したらで良いからその事情とやらを聞かせて貰えんかの」

 

「あーチキンとガチっても仕方ねーからもーいいわ、んでコレな? えっと例の宝の山から色々発掘してたんだけどよ」

 

「うむ」

 

「そこにガワが無傷で中身がオシャカのファミコンとな、ガワがバッキバキで中身が無事のPS4が出てきてだな」

 

「ちょっと待つのじゃ、幾らお主が謎技術の習得者であってもファミコンにPS4の中身をぶち込むとかスペース的に無理があろ!?」

 

「いやそこは創意工夫で何とかだな」

 

「一体どんな創意工夫をすれば物理的法則を凌駕するというのじゃ!?」

 

「何だよ一々うっせーな、出来たんだからしょーがねぇだろ」

 

「本当に何者なのじゃお主は!? ……いやしかし、ファミコン本体にPS4のコントローラーが接続されているのは中々シュールな絵面(えづら)じゃのぅ」

 

「まぁコレばっかりは仕方ねーな、なんせファミコンのコントローラーじゃ二つ足してもボタンが足りねーし、っとそろそろ時間だな」

 

「む、何がじゃ?」

 

「後5分で雨が降ってくるからお前も洗濯物取り込むの手伝え」

 

「うむ? お主何を言っておるのじゃ? 空はこんなに晴れておるというに」

 

「いやマジで降ってくるんだって、ほらグズグスすんな」

 

「一体お主は何を言って……ってうーわ!? 何じゃこれは、さっきまで燦々としてた空が雨雲だらけに!?」

 

「ほら言った通りだろ、さっさと手伝えって」

 

「う……うむ、了解じゃ、と言うか提督よ」

 

「何だよ」

 

「お主さっき雨が降るまでの時間を正確に言い当てておったの」

 

「おう、それがどうした」

 

「いやどうしたじゃなくて、何でそんな正確に天気を言い当てられたのじゃ?」

 

「あ? ああそれな、えっとここの向こうに灯台があるだろ」

 

「うむ」

 

「そこに灯台守のシゲさんっつージイさんが居てだな」

 

「……何だかこのパターンはまた人外なニューカマーが登場しそうで我輩嫌な予感がするのじゃが」

 

「そこのシゲさんってな、天気の変化とか潮の流れとか、後イーとかローとかの出現予報とか出来たりするんだが」

 

「待つのじゃ、今天気とか海の様子とかに混じってとんでもない単語が混じって無かったか?」

 

「何がだ?」

 

「何がだ? じゃないわっ!? 何で深海棲艦の出現が天気予報とかと同列で予報されとるんじゃ!? 一体どんな原理でそんな予報をしとると言うのじゃ!?」

 

「ん? 何でもシゲさんって風が友達とかつってな、その風が色々と教えてくれるらしいんだが」

 

「何じゃその限りなく胡散臭いファジーな情報源は!?」

 

「いやまぁ実際的中率100%だからな、ほら、町内新聞にもシゲさんの予報コーナーってあるだろ?」

 

「何じゃと? ってうーわ!? マジで天気予報と深海棲艦の予報が並んでおる!?」

 

「聞く所によると気象庁とか大本営辺りはシゲさん予報を頼りにしてるって話を小耳に挟んだんだけどよ」

 

「何で気象庁と大本営が同列で扱われておるのか……むしろここの集落の者達は色々おかしいじゃろ、何なのじゃマジで」

 

「まぁ色々便利だし、深く考えなくてもいいんじゃねぇの?」

 

「いやそこは考えよ!? 常識という物をちゃんと考えんか!」

 

「つーか海の上を不思議ギミックでスイスイするお前らが言うなって俺は思うんだけどな」

 

「海軍提督のお主が我輩らの存在意義を疑問視するとかどうなのじゃそれは!?」

 

「いやまぁ素直に疑問をぶつけただけなんだけどな」

 

「ほんにお主はどんな精神構造をしとるのじゃ、と言うか提督よ」

 

「何だ?」

 

「ちっと聞きたい事があるのじゃが、裏の道路なんじゃがアレはどこに通じておるんじゃ?」

 

「あ? あれか、確か片側は村で終端になってて、反対側は山四つ程向こうの町に繋がってたと思うが、何かあったのか?」

 

「ああうん……そうか、だからか……」

 

「ん? どうした、ゲップが途中で止まっちまってモヤモヤしてるみてーな微妙な顔してよ」

 

「凄く限定的かつ微妙な表現をするでないわ、いやそれよりもじゃな、今朝なのじゃがあの道路をコンテナトラックが通ってるのを目撃したのじゃが」

 

「おう、それで?」

 

「いや……その運転席と助手席にの、騎士が乗っておっての……」

 

「あーそれゲンさん達が町へ魚卸に行く最中だったんじゃね? あそこのトラックってキャビンがハイルーフだからプレートメイル着たまんまでも運転余裕だし」

 

「やはりか……て言うかプレートメイルを着たまま市場へ魚を配送しておるのかあやつらは……」

 

「まぁな」

 

「朝一番ブリを卸しに市場へトラックで乗り付ける黒騎士とか、異常を通り越してシュールなイメージしか沸いてこんぞ」

 

「いやまぁそんなハレンチな格好でのじゃのじゃ言ってるお前の方が色んな意味でシュールだと俺は思うんだけどな」

 

「妙な風評被害を垂れ流すでないわっ! そもそもこの制服は改二になった熟練の者しか着れん特別な物なのじゃぞ!」

 

「あ、改二で思い出したわ、お前に渡すモンがあったんだった、ほらこれ」

 

「ん? 何じゃコレは……っておいお主、これは飛行甲板ではないか」

 

「いやほらお前、ズイウンとかいうヒコーキ飛ばすのにそれ必要なんだろ? 前からずっと装備が調子悪いつってたし」

 

「はぁ? いや確かにカタパルトの調子が悪いとは言うておったが、これは航空戦艦が使う装備で航空巡洋艦である我輩が使う物ではないぞ?」

 

「マジで? いやほら先輩のトコに利根の改二用装備送ってくれっつったらそれが送られてきたんだが、後前張り用テープも」

 

「サブロオオォォォォォ!」

 

 

 



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じゅうににちめ

2019/02/28
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました雀怜様、有難う御座います、大変助かりました。


 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主は何をしとるのじゃ?」

 

「ん? 見て分かんねーか? チャリ作ってんだよ」

 

「自転車? 車もあるのに何で今更そんな物を作っておるのじゃ?」

 

「あ? いやお前、折角車作ってやったのに全然乗ってねーじゃねーか、だからチャリだったら乗るかなって思ってよ」

 

「……提督よ、我輩も車乗って買い物とか色々したいのは山々なのじゃがな」

 

「あん? 何かあんのか?」

 

「何かあんのかじゃないわっ! あんなポンヨポンヨする丸っこい椅子に座って運転なんぞしたら車がぶっ倒れるじゃろーが! それでのうても元からオート三輪は不安定なのにどーすんのじゃアレ!」

 

「いやその不安定さも含めた上でダイエット効果をだな」

 

「だから何で車を運転しつつダイエットをせんとならんのじゃ!?」

 

「あーあー分かった分かった、またその辺り直しておいてやっから、その間はこのチャリに乗っとけ、な?」

 

「……いや提督よ、ちとその自転車の事も聞きたいのじゃが」

 

「何だよ?」

 

「普通自転車という物はペダルを漕ぐと後ろのタイヤが回る物ではないのか?」

 

「まぁそうだな」

 

「では今お主がこさえておる自転車は何故チェーンが後ろのタイヤにでは無く、自転車の前に向かっておるのかの」

 

「あん? いやお前チェーン繋げねーとプロペラが回んねーじゃねーか」

 

「何で自転車を動かす動力がタイヤでは無くハンドルの前に付いておるでっかいプロペラなのじゃ?」

 

「いやそりゃお前、普通じゃ面白くねーだろ?」

 

「何で実用品の機構を面白いか面白く無いかで決定しとるのじゃ! そう言えばお主昨日魔女の宅○便のDVDを見ておったな? それはアレか? 例の自転車か? トンボの乗ってたアレなのか!?」

 

「おう、カッコいいだろ?」

 

「良くないわっ! 何で買い物とかへ行くのに全力でシャカシャカやって行かんとならんのじゃ! 他人から見られたら『あいつバカじゃね?』とか思われたらどうするつもりじゃ! むしろシャカシャカの時制服がヒラヒラして色々見せ放題になってしまうわっ!」

 

「いや何でそんなにカリカリしてんだよお前、て言うかその辺りはほら、ダクトテープで前張りをしてだな」

 

「何でいつもいつもお主は思い付きだけでそんな物をこさえるのじゃ! て言うか股間にあんなモノ張っ付けたら剥がす時全部抜けてしまうじゃろうが! それに良く見たらこれブレーキも付いておらんし危なかろ!」

 

「それは大丈夫だ、一定以上の速度に達するとプロペラがパージされて速度調整がされる仕組みになっている、だから安心しろ」

 

「安心できんわっ! 何じゃそのパージて! 変なトコで原作を再現せんでも良いわっ!」

 

「んだよわーわー言いやがって、んじゃちゃんとチェーンを後ろ向きに直して組み替えとくから、それでいいだろ?」

 

「……提督よ」

 

「あん?」

 

「まさかとは思うがそのプロペラを後方配置して、震電みたいなブツをこさえようなんて思ってはおらんじゃろうの……」

 

「……お前はエスパーか」

 

「やっぱりか! どうしてそこでプロペラに拘るんじゃお主は! バカか! バカなのか!? いい加減にせんか!」

 

「ちっ……勘のいい子供は嫌いだよ」

 

「誰が子供じゃ! ったく……ああそうじゃ提督よ、何ぞ大本営から伝達が来ておったぞ、ほら郵送で」

 

「大本営? 何だそりゃ、また無茶振りとかしてきやがったのか?」

 

「さぁ? 内容は中身を確かめたら分かるじゃろ、と言うか何で軍事伝達が普通郵便で郵送されて来るのじゃ、FAXや電話もあるじゃろうに」

 

「いやそれだと機密性を損なうからじゃねーの?」

 

「いやいやいや、普通郵便の方がよっぽど機密性が低いからな? 無茶苦茶ひっくいからな?」

 

「まぁ何だっていいけどよ……何々、ん? おい利根よ、朗報だぜ」

 

「ん? どうしたのじゃ?」

 

「いや前から出してた工廠の予算が通ったらしい、これでウチも装備や建造が解禁になるぞ!」

 

「何? それは真か? ついにウチも一角(ひとかど)の軍事拠点として活動が出来るようになるのか!」

 

「おお! じゃ早速工廠を建てねーとな!」

 

「いやいやいや、予算が降りるならちゃんと業者に言うて建築して貰わんか、いや? 工廠が出来るなら妖精さんも来るじゃろうからあやつらに任せれば手間は無いの」

 

「……は? 何言ってんのお前?」

 

「うん? 何がじゃ?」

 

「いや何だその……うん、お前が夢見るアリスちゃんみたいなめでたい感性をしてんのはまぁアレだとしとてだ、妖精さん?」

 

「何じゃ? 我輩何かおかしな事を言うたかの?」

 

「いやお前、妖精さんって……ふへっ、うんまぁ、いいんじゃねーの? うん、夢があって」

 

「いやちょっと待て、お主それ本気で言うておるのか? まさか妖精さんを知らんとか言うのでは無かろうな?」

 

「はぁ? 妖精さん? 例の毒リンゴ食ったら7人沸いてくるアレとか、寝てたら勝手に靴作ってくれるアイツらだろ?」

 

「いや確かにそれも妖精さんじゃが……マジか!? 提督ともあろう者が妖精さんを知らんのか!?」

 

「分かった分かった、その辺帰ってきたらちゃーんと話し相手になってやっから、な? 色々そっち系のDVDもあった筈だしそれも見せてやっから」

 

「ちょっと待て! マジで言っておるのか!? いやいやいやほら我輩の艤装にも妖精さんは乗っておるし! ほらコレを見てみるのじゃ……っておい、お主なんでいきなりニッカポッカに着替えてツルハシを担いでおるのじゃ……」

 

「あ? いやほら、工廠が出来るなら資材は必要だろ?」

 

「……うん? ま……まぁ、それは確かにそうじゃが」

 

「だから鉄取ってくる」

 

「どこで?」

 

「ブランチマイニングしてくる」

 

「だーかーらー、リアルじゃ幾ら掘っても鉱石なんぞ出んといつも言うておろーが!」

 

「え? いや掘る場所y11からy30辺りに変更したら結構掘れたんだが、ほら」

 

「だからお主は何を言って……ってうーわ! マジじゃ! これ鉄か? 鉄インゴットなのか!?」

 

「ああ、幾らか精錬はしたけどよ、ほら建造に使うにゃもうちと足りねぇから、その分掘ってくるわ」

 

「待て待て待て! 今何と言うた?」

 

「あ? 建造?」

 

「それじゃ! お主妖精さんも知らんのに一体どうやって建造なんぞするつもりなのじゃ?」

 

「あ? いやお前そりゃ先ず鉄インゴットを用意するだろ?」

 

「うむ」

 

「んでそれを九つクラフトして鉄ブロックにするだろ?」

 

「……うむ?」

 

「そんでそれを縦に三つ左右に一つづつくっ付けて、カボチャを乗せてだな」

 

「それはアイアンゴーレムじゃ! 最近やっとマ○クラネタも尽きたかと安心しておったらこれじゃ! 何で建造でアイアンゴーレムを作ろうとするのじゃ! リアルじゃインゴット九つ程度じゃ1m×1mのブロックにはならんからの! 雪ブロックの上にカボチャを置いてもスノーゴーレムにはならんからの!」

 

「え……じゃ村の人口が50人くれーだから、どこかに3体はゴーレム居る筈だし防犯はバッチリだと思ってたのは……」

 

「いやだからアイアンゴーレムなんぞリアルじゃ存在せんのじゃ! 村人が15人になったらアイアンゴーレムが沸いてくるとかいう現象は絶対起こらんからな! て言うかあの村は人が50人程しか居らんかったのか……」

 

「まぁ色々とな、過疎化が進んでてな」

 

「そうか……まさか少子化の弊害がこんな近くで起こっていたとは……」

 

「因みにこの周辺で一番若いのは俺らしい」

 

「は? お主何歳なのじゃ?」

 

「26歳」

 

「いや待て、我輩はまだ21じゃぞ?」

 

「……うそやん」

 

「何で嘘なんぞつかねばならんのじゃ、ほら免許証を見てみい、ちゃんと21歳じゃろうが」

 

「……マジだ、どうしよう、俺町内会名簿にお前の歳30って書いちまったわ」

 

「はぁ? 何でまたそんな事になっとるのじゃ?」

 

「いやほらその辺り分かんねーからさ、ちっと先輩とこに確認してみたら『確か大本営の吹雪と同じ歳だった筈』って返事が」

 

「サブロオオォォォォォォォ!」

 

 

 



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じゅうさんにちめ

 

 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主の足元でヒャンヒャン吠えておる犬はどうしたのじゃ? て言うかそのフザケタ格好は何じゃ?」

 

「あ? これはお前狩りをする時寒いからイノシシの毛皮で作った防寒着、そんでコイツは狩りのパートナー、ラッシーだ」

 

「何で海軍の提督がマタギスタイルなのかは後でじっくり聞くとしてじゃ、そのラッシーと言うのは足元の小型犬の事かの?」

 

「あ? お前はラッシー以外に何か見えんのか?」

 

「いやラッシーはいいのじゃが、何で狩猟のお供にポメラニアンなんじゃ、お座敷犬を連れて狩りとかお主何を考えておるんじゃ」

 

「バッカお前ポメラニアンってのはな、元々狩猟犬とか犬そり引いてた犬なんだぞ?」

 

「バカはお主じゃ! 元々そんな犬じゃったかも知れんがそれを愛玩動物として品種改良したのがポメラニアンじゃぞ! そんな小型犬イノシシとか相手にさせたら一瞬でお陀仏じゃろうがっ!」

 

「いや、それが中々コイツ根性があってな、獲物が突進してきても逃げずにじっと相手を睨んでんのな? スゲーと思ったわ」

 

「いやいやいや良く見てみよ! それは睨んどるんじゃなくてビビって動けなくなってるだけじゃろうが、ほれ!」

 

「いやお前これ武者震いじゃね?」

 

「ガチ奮えじゃバカモンが! 第一根性があったとしてもこんな小型犬ではイノシシ相手に攻撃を食らったら即昇天してしまうじゃろうが!」

 

「ああそれなら大丈夫」

 

「何がじゃ」

 

「ちゃんと備えはしてある」

 

「備えって何を……ってうーわ! それ例のイ級アーマーか!? 犬用の鎧か!?」

 

「それに相手はイノシシじゃないから速さでは負けんと思うぞ」

 

「いやそもそもこんな鎧装着させたら素早さを殺してしまうと思うのじゃが……して、今回は何を狩ってきたのじゃ」

 

「熊」

 

「……は?」

 

「いやゲンさん達が魚を市場に運ぶ途中ウチの敷地辺りで熊を目撃したらしくてな、そろそろ備蓄してる肉も心許なくなってきたし食料調達の為に……」

 

「いや、いやいやいやちょっと待て、熊? 球磨じゃのーて?」

 

「お前幾らなんでも陸で軽巡洋艦が野良でうろうろしてる訳ねーだろ、ほら既に色々処理して皮は剥いで干してるし」

 

「何じゃと? ってマジで熊の毛皮が物干し竿のトコでフワフワしとる!? なんで我輩のパンツに混じって熊の毛皮がフワフワしておるのじゃ!?」

 

「肝は薬になるし、肉は塩漬けにして保存、後はチプタプしてヒンナヒンナだぜ?」

 

「……そう言えばお主昨日ゴー○デンカムイを読んでおったな? あれか? また何も考えずにノリだけで行動しおったのか?」

 

「脳みそはお前にやろう、目玉も食っていいぞ」

 

「いらんわバカモンがっ! いつも言うおろ? 何でもかんでも思い付きで行動するなと……、第一ウチに熊を撃つ様な銃は無かった筈じゃがどうやってあんな大物を仕留めたのじゃ」

 

「ん? ああコレで」

 

「それ物見台に据えておったクロスボウではないか、そんな物で熊を良く仕留めたの」

 

「あーそれが結局殆ど効き目がなくてなぁ、最後は丸太でシバいてトドメを刺した」

 

「マタギスタイルの意味が無いじゃろ!? むしろポメラニアンどこで活躍したんじゃ!?」

 

「いやお前ソロで狩りとか寂しいじゃねーか」

 

「結局ラッシー愛玩ポジではないか!? て言うかそもそもどこからラッシー連れて来たんじゃ」

 

「駄菓子屋のお春ばーちゃんに散歩頼まれてな、そのついでに」

 

「我輩は散歩のついでに熊狩りに同行させられるお座敷犬に同情の念が堪えんぞ……」

 

「まぁそんな訳で今日は熊カレーな、お前のはオカシラ付きで」

 

「鯛の煮付けみたいな感じでサラっとおぞましい事を言うで無いわっ! どこの世界に熊の頭を添えるでんじゃらすなライスカレーがあると言うのじゃ!」

 

「好き嫌いしてると乳が育たんぞ」

 

「我輩の乳は熊の脳みそを食わんとサイズアップせんなどという特殊な事情は抱えておらんわっ!」

 

「まぁお前の色気部分は全部妹に吸われちまったよーなもんだしなぁ、仕方ねーか」

 

「我輩を筑摩のダシガラみたく言うでないわっ……ったく、ああそれと提督よ」

 

「何だ」

 

「この前完成した工廠建屋に見慣れんバスが入っておったのじゃが、アレは何なのじゃ?」

 

「ああアレな、村の老人会で所有してるバスなんだけどよ、もう古くて色々ガタがきちまってたから修理してくんねーかって頼まれたんだ」

 

「何で海軍の工廠で自動車整備工場染みた事を引き受けねばならんのじゃ」

 

「いやお前ウチは地域密着型の鎮守府を目指してるし、その辺り実績上げときゃ次年度の予算査定に色々と有利になるしな」

 

「て言うか既に新年度に入ってる訳じゃが、予算は去年と変わっておらんぞ」

 

「……マジ?」

 

「マジじゃ、て言うか光熱費以外は新卒のサラリーマンが貰う初任給辺りの額が年間予算って、マジでどうなっとるのじゃ」

 

「まぁ現金が無くても何とかなってるしその辺りは今まで通りやってくしかないな……で、利根よ」

 

「何じゃ」

 

「どうも村にリターン就職ってヤツで何組かの世帯が引っ越してくるらしいぜ」

 

「ほう? 漁業とか畜産とかしか産業が無いのに良く戻ってこようと思ったのう」

 

「何でも都会じゃ就職難らしくてな、家賃とか色々考えたら田舎に帰って家業継ぐ方が安定するからって理由らしい」

 

「なる程のう、しかしそうなると住民が増えるからウチも防衛に力を入れんといかんな」

 

「まぁな、でも先ずそれよりバスの修理と改修急がねーと間に合わねぇな」

 

「何がじゃ?」

 

「あのバスな、ほら村に学校とか幼稚園が無いだろ? その送迎用に使うからって修理する事にしたそうでな」

 

「ふむ、なる程のぉ、色々あの村は不便じゃからのぉ」

 

「んで子供が乗降し易いように踏み台付けたり、見た目をファンシーに改装したり、後は武装を装備させたり」

 

「ふむふむ……って待て、今何と?」

 

「いや送迎用の改修をだな」

 

「いやいや……今お主武装とか言わんかったか?」

 

「ああそれな、まぁほぼ完成して後はタイヤとか装備させるだけなんだが」

 

「うーわ!? 何じゃこの豹柄? の珍妙なバスは!?」

 

「最近の流行を取り入れてみた、因みに外装にはイ級アーマーを使っているから熊が衝突しようが百人乗ろうが大丈夫」

 

「いや確かに頑丈に越した事は無かろうが、イ級の装甲万能過ぎじゃろ……」

 

「天井のドアをパカンとすれば上から周りが見渡せるギミックがあったり」

 

「……ほう?」

 

「エンジンも古くて修理部品がもう欠品状態だったから電気自動車へ作り直した、ほらフロントのここからバッテリーをINしてだな……」

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ?」

 

「お主け○のフレンズというワードに何か心当たりは無いかの?」

 

「サーバルちゃんよりアルパカちゃんのが至高だと俺は思う」

 

「やっぱりか! このバスやっぱり例のジャパ○バスなのか!?」

 

「後は対熊用に対物バンパーを付けたり、もしもの時用にバルカンファランクスとか装備したり」

 

「まてまてまてまて! バルカンファランクスじゃと!? ってこの不自然にシッポに偽装してあるコレか!?」

 

「おう、ほら街中とかでもしテロリストとかの襲撃に遭遇したらよ、丸腰だとどうにもならんだろ?」

 

「お主は妄想癖持ちの夢見る中学生か!? 日本の片田舎で普通テロリストがバスジャックする事なんぞないからな!? むしろこんなの街中でぶっぱしたらテロリストだけじゃなく他の一般市民も命がデンジャーじゃからなっ!」

 

「いや弾頭ゴム弾だから大丈夫じゃね?」

 

「幾らゴム弾でも毎分4000発もビシビシと浴びたら死ぬわバカもんがっ!」

 

「そん時ゃエリクサー飲ませりゃなんとかなるだろ」

 

「○露丸で重症から高速修復するのはお主だけじゃ! 一般人とお主を一緒にするでないわっ!」

 

「大丈夫だ」

 

「……何がじゃ」

 

「ほらコレ、エリクサーを改良した新たなエリクサー、ネオエリクサーがある、これで何も心配いらんぞ」

 

「……お主この「正○丸糖衣A」という字は読めんのか?」

 

「え? それって軍用じゃなくて一般人用に調整されたエリクサーって先輩とこから送られてきたんだが……」

 

「サブロオオオオォォォォォォォ!!」

 

 

 



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じゅうよんにちめ

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「ちょっと聞いても良いかの?」

 

「ん? 何かあったか?」

 

「いや何かあったかじゃ無くてな、お主のその……肩に乗っかっとるヤツなんじゃが」

 

「バイトだ」

 

「……なんじゃと?」

 

「何かウチの前で行き倒れててよ、助けた後事情聞いたら行く宛てがねーって困ってたから追い出すのもアレだし、三食と寝る場所を提供するって条件で雇う事にした」

 

「いやいやいや行き倒れって、むしろそヤツは妖精さんじゃから雇うとかそんな感じの雇用形態はおかしくは無いかの」

 

「あ? 妖精さんん? まぁたお前はそんな夢見るアリスちゃんみたいな事言いやがって、いい加減現実ってヤツをちゃんと直視しろっての」

 

「現実を直視するのはお主の方じゃバカモンが! どこの世界にそんな手乗りサイズの三頭身な人間がおると言うのじゃ!」

 

「ここに居るじゃねーか」

 

「だーかーらぁぁ、居る居ないではのーて! その見た目的な部分にお主は何も感じんのかっ! と言うかそこの妖精も提督の言葉にコクコク頷くでないわっ」

 

「おい利根よ……」

 

「……何じゃ」

 

「人を見た目だけで判断すんなってお母ちゃんから言われた事無いのか? そんな狭量な心がイジメって負の連鎖を生み出すんだぞ」

 

「何でお主はこんな時だけやたらとズレた正論をぶちかますんじゃ! 大体お母ちゃんって何じゃ! 艦娘にそんなモンはおらんわっ!」

 

「あ? 何言ってんだお前、そんな事聞いたら鳳翔が泣くぞおい」

 

「あのオカンはママンとかじゃのーてあだ名じゃ! そんな事本人の前で言ったら逆にぶっ飛ばされるぞお主!」

 

「何だお前は遅れてきた反抗期か? まぁ取り敢えずだ、コイツは機械イジリが得意らしいからな、主に工廠でバイトさせる事にしたから」

 

「もぅ何でも良いわ…… 朝一番から我輩何か疲れたぞ」

 

「んじゃ顔合わせも済んだ事だしちょっくら仕事してくるわ」

 

「うむ、判った、で? その妖精さんと一緒にお主は何をするつもりなのじゃ」

 

「まぁだそんなファンタジーな事言ってんのかお前は、第一コイツにはピエトロってちゃんとした名前があんだぞ、何だその妖精さんて」

 

「随分とハイカラな名前しとるの、見た目工事現場のオッサンみたいな格好しとるのに」

 

「お前な……ほら、子供は親を選べないんだぞ、光宙(ぴかちゅう)とか龍飛伊(ルフィ)とかいう名前が横行してる世の中なんだから、ほら、な? それに比べたらまだマシのラインっつーかもうちょっと配慮した評価とか言動をだな」

 

「何でそこでキラキラネームの者に気遣う感じの微妙な触り方をしとるのじゃお主は、と言うかこんな所で油を売っとらんで早く仕事に取り掛からんか」

 

「あーそうだな、すっかり忘れてたわ、今日はちょっと色々と危険なブツを触るから準備が忙しいんだった」

 

「ちょっと待つのじゃ」

 

「何だよまだ何かあんのか?」

 

「今危険なブツと言ったか?」

 

「おう、それが?」

 

「今回は何を作るつもりなのじゃ」

 

「ん? いや火薬をちょっとな」

 

「火薬ぅ? 火薬をどうするのじゃ」

 

「ん、いやほら色々材料集まったし黒色火薬を調合して、それで対空兵装を改修するつもりなんだが」

 

「待て待て、黒色火薬を作るとな? 色々突っ込みたい所はあるが先ずそれは犯罪なのでは無いか?」

 

「あん? いや俺危険物取り扱いの一種持ってるし、火薬類製造保安責任者の甲種持ってるし」

 

「提督は妙に資格関係だけは揃えておるの…… しかし我輩も火器を扱う者じゃからのその辺りは素人では無いぞ、お主が今言った資格だけでは対空兵装の製造はできんからな、残念ながらそのプランは諦めるが良いぞ」

 

「ああそれな、それなら問題は無い」

 

「……何じゃと?」

 

「俺とピエトロが組んで設計した武装なら火薬と建材さえあれば対空火器は作れる」

 

「って既に妖精とタッグを組んでおったのか…… して、その妙に限定的と言うか偏った素材で一体何を作ると言うのじゃ……」

 

「先ずこうやってコンクリブロックを並べるだろ?」

 

「うむ」

 

「そして9マス目をちょこっと掘って柵を設置するだろ?」

 

「……うむ」

 

「んで一番奥に水ダバーすんだろ」

 

「……う、うむ?」

 

「後は脇にもう一段コンクリブロック積んで、赤石とリピータを置いてだな」

 

「何で深海棲艦相手にTNTキャノンで対抗しようとしておるのじゃお主は! て言うか普通TNTは並べてしまったら誘爆して大惨事じゃからな! 水に触れたら湿気ってダメになるからな! それ以前に何故リアルでレッドストーンリピーターなんぞ存在しとるのじゃ!」

 

「ん? いやその辺りはピエトロの担当だからな、何でと言われても」

 

「妖精までマイ○ラに汚染されとるのか!? て言うかサムズアップしてドヤ顔するでないわっ!」

 

「何お前カリカリしてんだ?」

 

「お主がゲームとリアルの区別も付けずに謎兵器とかこさえようとしてるからじゃろうが!」

 

「いや妖精妖精言ってるファンタジー娘にそんな事言われたくねーんだけど」

 

「じゃからお主がバイトで雇ったそのピエトロが妖精じゃと言うておろーが!」

 

「ハハハそんなバカな」

 

「あーもう分かった、お主にその辺り説明しても無駄な事は分かったからもう良いわ……ったく」

 

「まぁ納得したなら何よりだ、それよりも利根よ」

 

「何じゃ」

 

「お前の車な、座席ノーマルに戻しておいたからよ、いつでも乗ってける状態になってっから」

 

「ふむ? そうなのか? ようやっとこれで我輩も町へお買い物に出掛ける事が出来る様になったのか」

 

「まぁ色々と改修には苦労したが、何とか部品の合うヤツを見つけ出せたし、やっと肩の荷が降りた感じだぜ」

 

「……のぉ提督よ」

 

「あん? どした」

 

「車の椅子が元に戻っておるのは良いのじゃが、何で後輪が二つ共キャタピラにすげ替わっておるのかの……」

 

「いやお前車が不安定で横転したらどうすんだーつってたじゃねーか」

 

「……言うたの」

 

「でだ、ハンドル周りの構造的に前輪は一本なのはどうしようもないからな、後輪をキャタに変えて横転防止構造にした訳だ」

 

「アレは座席がポンヨポンヨしてその揺れで車が横転すると言ったのじゃ! 座席が元に戻ったならそれで問題は解決じゃろうが!」

 

「いや念には念を入れんとな、そういう事はキッチリしとかねーと」

 

「何でそこで変に気を回して余計な事をするのじゃ! これはアレか? 我輩は町へ買い物へ出る時こんなキャタピラマシンに乗ってガタガタとし○むらとかの駐車場へ入らんといかんのか!?」

 

「しま○らとかお前色気もクソもねーな、せめてユニ○ロとかにしとけよ」

 

「人の趣味に口を出すでないわっ! 大体何じゃこのピンクなのに微妙に都市迷彩柄のボディは……っておい、提督よ」

 

「んだよ、まだ何かあんのか?」

 

「この……荷台の何と言うか形容のし難いゲタの様な物は一体なんじゃ?」

 

「ああそれな、お前がカタパルトカタパルトうっさいから、ちゃんと専門家に聞いて現用兵器に対応したカタパルトを製作しておいた」

 

「……で? これはどう使用する物なのじゃ?」

 

「あ? そりゃ荷台にお前が乗っかってそのゲタに足を突っ込むだろ」

 

「……それで?」

 

「んでボタン押したらそれで射出……」

 

「ガン○ムか!? モビ○スーツ射出装置式のカタパルトかコレは!? 何でカタパルトの仕様が中世から宇宙世紀にぶっ飛んでおるのじゃ! どうして現代をすっ飛ばしおったのじゃお主はっ!」

 

「いや先輩のトコに連絡して最新式のカタパルトの資料送ってくれっつったらガ○ダムのDVDが送られてきたからよ」

 

「サブロオオオォォォォォォ!」

 

 

 



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じゅうごにちめ

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「ちょっと聞きたいのじゃが、前にドラム缶風呂があった辺りから麓までの斜面がコンクリで固められておって、途中までレールが敷かれて放置されておるのじゃが、お主アレに心当たりは無いかの?」

 

「あーあれな、ちょっとした事情があって整備する事にした」

 

「事情? またなんぞ突拍子も無い事を思いついたのか?」

 

「いやほら最近ブリ漁が暇になって早朝のバイトが無くなっただろ? だから空き時間にブランチマイニングしてんだけどさ」

 

「今の発言には突っ込み所以外の物が無い気がするがまぁ良い、で? そのブランチマイニングとあの斜面の有様がどう繋がるのか教えてくれんかの」

 

「んとな、最近鎮守府直下の鉱石は掘り尽くしちまったみたいだから、ちょっと新しい採掘場所を求めて範囲を広げてみたんだが」

 

「ちょっと待つのじゃ、幾ら地下深くの物を採掘するとは言え他人の土地を勝手に掘り返すのは不味く無いか?」

 

「ああそれだけど、一応この山と裏の山はウチの土地って事になってるからな、採掘はその範囲でやる事にしてる」

 

「マジか、ウチは何かやたらと土地だけは広いの……と思ったが、殆ど利用価値の無い斜面の状態じゃからありがたみが感じられんと言うのがまた……」

 

「でだな、そのブランチ中にちっさい廃坑にぶち当たってだな、ちょっと沸き潰ししてみたんだが……」

 

「廃坑ぅ? 廃坑ってアレか、既にここいらでは何かしらの鉱石が採掘されておったと言う事か」

 

「まぁ色々鉱石は剥き出しだし、レールも回収出来るし、チェストトロッコも発見したから収支はプラスと言えなくも無いがな」

 

「チェストトロッコぉ!? 待つのじゃお主! それは廃坑は廃坑でもマイ○ラの廃坑の事を言っておるのか!? なんじゃここら辺はマジでおかしいじゃろ!」

 

「いやそれが多分土地生成が上手くいかなかったんだろうな、廃坑もちょびっとだけで終わってて、続きは他のチャンクに飲み込まれてたわ」

 

「土地生成って何じゃ! リアルじゃフィールドが生成なんぞというプロセスは存在せんからな!? チャンクとかも無いからな!? 何じゃその飲み込まれてたって!?」

 

「しかもチェストトロッコの中身はスイカの種と骨だけっつー外れ状態」

 

「いやチェストトロッコて誰が置いたのじゃそれ……てか宝箱開けたら中にはスイカの種と骨だけがコロンと入っとるて良く考えればシュールな絵面(えづら)じゃの……」

 

「まぁそんな訳でレールもそこそこ回収出来たし、緊急出撃用のシステムを組もうと思って斜面にコンクリを吹き付けてな、そこにレールを敷設したんだが途中で問題が発生しちまってよ」

 

「いやいや何がそんな訳でじゃ、たった一晩で数百mもコンクリ処理してレールまで設置するとか、普通あり得んぞ?」

 

「ああそれな? 超早強セメントなら24hで1wの強度が出るから問題は無い」

 

「何かまた訳の分からん専門用語が飛び出しおったがそれに付き合うと頭が痛くなるからスルーするとして、そこに何の問題が発生したのじゃ」

 

「斜面から向こうは他人の土地だからレールが敷けねーのな、だから海まで届かねーって事が発覚した」

 

「いやその辺りは普通施工前に気付くじゃろ……だから斜面の途中でレールが途切れておるのか、何をやっておるのじゃお主は……」

 

「いや、実はその辺りの問題はクリアして既に竣工を終えている」

 

「……何じゃと? また"ました工法"なのか? 我輩そのパターンは物凄く嫌な予感しかしないのじゃが……今度は何をしたのじゃ」

 

「それなんだけどな、ほら、そこにあるレバーを引いてみろ」

 

「何じゃこの断崖に不自然な形でぶっ刺さっとる棒は……これはレバーじゃったのか? これを引けって……うーわ! 何じゃあれは斜面の下半分からレールがせり出してきおったぞ!? て言うかおい何じゃアレは! レールが上に向かっておる!?」

 

「レールが途中までしか敷けねーなら残りは空を飛ぶしかねーって思ってな、事前に運動エネルギーと物体速度の関係は計算済みだからちゃんとアレで海まではジャンプして届く筈だ」

 

「待たんか! 飛ぶって何じゃ! て言うかあのニョッキリ生えてるレールはジャンプする為の物じゃと言うのか!?」

 

「おう、一端麓に向って滑走し、その勢いで飛ぶ、無駄の無い設計だろ?」

 

「……そう言えばお主昨日銀河○道999のDVD見ておったな、コレはアレか、例の999が空にポッポーするアレを見て思いついたのか……」

 

「ロマンと実用を兼ねた美しい造りになってるだろ?」

 

「いやいやいや待つのじゃ! ロマンや見た目よりも先ずアレで何を海へ飛ばすと言うのじゃ! まさか我輩がアレで抜錨するなんて事は無いじゃろうな!?」

 

「あーお前の貧相な胸じゃ滑走時の運動エネルギーが稼げんから無理だぞ? これはお前用じゃなくて母艦運搬用のシステムな」

 

「何でフライハイするのに我輩の胸が関係すると言うのじゃ! って待つのじゃ……母艦じゃと?」

 

「おう、折角工廠もある事だしウチにも艦娘用の母艦を用意しようと思ってな、漁協で使わなくなったプレジャーボートを貰えたからそれを改修して作ってみた」

 

「また自作したのか……ってうーわ何か真っ黒の禍々しい船が工廠に……っておい提督よ」

 

「何だ?」

 

「この船の外装……これはまさか……」

 

「ああ、母艦として抜錨するならグラスファイバー製の外装じゃ強度に問題があるだろ? だからイ級アーマーを張っ付けて補強してみた」

 

「やはりか!? またイ級の装甲なのかこれは!? て言うかイ級の外殻万能過ぎじゃろ!? そもそもこれだけ大量のイ級アーマーは一体どこから持ってきたのじゃ!?」

 

「ん? ああそれなら夏になると村外れの砂浜に脱皮したイ級の外殻が良く流れ着くらしくてな、町内の美化活動の一環として海岸を清掃するから割とその時に回収されたブツが村に備蓄されてるっつーか」

 

「脱皮!? イ級て脱皮するのか!? むしろ処分に困る程海岸に流れ着くてどんな状況なのじゃ!?」

 

「さあ? 近くにイ級が回遊するエリアとかあんじゃね?」

 

「それはそれで問題があると思うのじゃが……しかしウチも母艦を持つまでに規模が拡大したか、なかなかコレはコレで感無量じゃのう」

 

「まぁ母艦つってもまだ武装は開発してねーからな、暫くはこれで海に出た時は小型戦闘艇を出して迎撃しなきゃなんねーだろうが」

 

「む? 小型戦闘艇とな? それには武装が装備されておるのか?」

 

「いやほら、エクスカリバー(丸太)じゃこの船で振り回しても海面まで届かねーだろ? だから小型戦闘艇で出て相手に届く距離でシバく為にだな」

 

「あくまでお主のメインウェポンは丸太なのじゃな……して、その小型戦闘艇とはどこにあるのじゃ?」

 

「ん? ああ母艦に積むには場所を取ると思ってな、普段はインベントリに入れてあって、使う時に出すよーにしてあんだけどよ」

 

「……インベントリぃ?」

 

「おう、常時4艇程は常備してある状況だけど、ほらボートってスタック出来ねーから一応作業台と材料も入れて対応してある」

 

「ってスタックって何じゃ!? そもそもインベントリって何を言っておるのじゃお主は!? リアルじゃそんな四○元ポケット的な収納は存在せんからな!? 物を重ねて収納なんて不可能じゃからな!?」

 

「○次元ポケットて何だよMODでも導入してんのか? 普通スロットの仕様は常用で9、収納が27の計36だろ? 何言ってんだお前は」

 

「何言ってるとかそれは我輩の台詞じゃバカモンが! 何でゲームの仕様がリアルに反映されておるのじゃ! ちょっと考えればそんなのはおかしいって気付くじゃろーが!?」

 

「まぁMODを導入するのは勝手だけどよ、ちゃんと管理だけはしとけよ? 変に何でもかんでも導入したらMOD同士で干渉しちまってマ○クラが落ちる可能性があるからな」

 

「だからリアルとゲームを混在させるでないわっ……ったく、して提督よ」

 

「何だよ」

 

「この母艦をイ級アーマーで補強したのは良いのじゃが、重量がクソ重たくなって航行スピードが出んのでは無いか?」

 

「ああそれな、確かに重量は増えたがそれに対応して機関の方もグレードアップしたから問題は無い」

 

「ほう? そうなのか」

 

「おう、ほら建造とかドロップでダブった時って艤装が余るだろ?」

 

「うむ? いきなり何を言っておるのじゃ……て言うかまぁ確かに艤装のダブりに関しては現状そんな感じじゃが……」

 

「んで駆逐艦とか軽巡って改装に使うのも微妙だしすぐ解体して資源に変えちまうじゃねーか」

 

「ふむ、あるあるじゃの」

 

「でもほら大型艦とか空母系の艤装って対空のステータス上げるのに重宝すっから常時幾らか備蓄してね?」

 

「ああそっち系は割りとそんな感じかも知れんのぅ」

 

「んでここで問題になって来るのは航巡の艤装な訳だ」

 

「……うん?」

 

「航巡の艤装って全てのステータスを上げる事は出来るが代わりに上昇数値は微妙だろ? でもその割にはなーんか資源にするのは勿体無いって感じでよ、微妙に使いどころに困るから、気付いたらいつの間にか母港枠を圧迫してるって状況になってたりするじゃねーか?」

 

「ま……まぁそうかも知れんの」

 

「で、その余ってる航巡の艤装を六台連結して母艦の機関として使ってみた」

 

「はぁ!? 航巡の艤装を船の機関に利用したじゃと!? そんな事が可能なのか!?」

 

「おう、前から考えてはいたんだがピエトロが色々と調整したお陰で何とか完成に漕ぎ付けたぜ、んで艤装は先輩とこで余ってた筑摩のヤツを利用してほらこの通り」

 

「うわぁぁぁーーー筑摩ぁぁぁぁぁぁぁ!? 筑摩ぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「まぁ利根型の艤装はオリョクルしてっと自然に溜まるモンだしな、解体するよか有効利用だと言う事で」

 

「くっ……確かに無下に潰されるよりはまだマシなリサイクルじゃとは思うが、何故よりにもよって筑摩なのじゃ」

 

「あ、それな? ほらちょっと船のそこ、アクリルの甲板の上に乗ってみ?」

 

「ん? アクリルてこの透明のとこか? こんなとこに乗って一体何が……ってうーわ! 何か筑摩の艤装がキラキラしだしたぞ!? 何じゃこれは一体どうしたのじゃ!?」

 

「いや、その艤装を送ってきた箱の中にな、筑摩の艤装は利根のスカートの中身を見せたら自己回復したりキラが付くから便利ですって説明書きが入ってて……」

 

「サブロオオオオォォォォォォ!!」

 

 

 



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じゅうろくにちめ

 

「のぉ提督よ、一つ聞いても良いかの?」

 

「ん? 何だ利根」

 

「お主は一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? 弓に弦張ってんだよ」

 

「いやそんな物は理解しておるわ! 我輩が聞きたいのは何で真昼間っからお主は工廠に引き篭もって弓なんぞを工作しとるのかと聞いておるのじゃ!」

 

「あん? んなモン狩りする為の道具が必要だからに決まってんじゃねーか、お前はアレか? これ見てえっと……クマノンだっけか? アイツが言いそうな感じでバイオリンを弾く為に弓作っているんですのよホホホみたいなボケた事を言い出したりすんのか?」

 

「それ本人に言ったらぶっ飛ばされるぞお主……て言うかじゃ、我輩が言いたいのは何で海軍の提督ともあろう者が、狩りだの何だのと言うて弓をこしらえておるのかって事なのじゃが」

 

「いやお前狩りしないとどうなるか分かってんの?」

 

「……どうなるのじゃ」

 

「食卓からお肉が消えて、野菜とお魚オンリーになっちまうじゃねーか、分かってんのか?」

 

「ああうん、お主はもうここに居る限り自給自足が当たり前という思考がデフォになっていると言うのは充分理解したぞ……」

 

「まぁそんな訳で豊かな食卓の為に俺は努力してるんだ」

 

「ああまぁお主の何と言うか間違った方向にひん曲がった努力は取り敢えず置いておくとしてじゃ、そんな物今更作らなくても既にここにはボウガンとか色々あるじゃろ? 何で今更弓なんぞ作っておるのじゃ」

 

「バッカお前ボウガンと弓一緒にするんじゃねーよ」

 

「……何が違うというのじゃ」

 

「基本的にこの弓とボウガンの弦は同じ張力で張っている」

 

「ふむ、それで?」

 

「でと、そうなった場合弦を張る本体の大きさは当然弓の方がデカくなる訳だ」

 

「ああまぁ確かにの」

 

「で、物理の法則に従うと、同じ張力で弦を張った場合、本体のデカい方がより威力が増し、また射程距離が伸びるって寸法だ」

 

「なんでお主はそう偏った部分で学術的なんじゃ、と言うかボウガンより飛距離とか威力が増したらどうじゃと言うんじゃ」

 

「お前俺の話聞いてた? 飛距離が伸びればそれだけ獲物を遠くから狙える、そうなったら安定してお肉の供給が出来る、な?」

 

「な? じゃないわっ! 何で海軍提督がそんな狩人染みた思考で食卓の改善を全力で行っておるのじゃ! おかしかろ立場的に!」

 

「まぁそうカリカリすんなよ、この弓は食卓のお肉を安定供給させるだけじゃなくてよ、ちゃんと軍事的利用も考えて作ってんだぞ」

 

「ほぉ? お肉と軍事的な利用目的を混ぜるとか、どうすればそんなおかしな思考になるのかはこの際どうでもいいとしてじゃ、その軍事利用とはどういった物なのじゃ?」

 

「お前ラ○ボーって知ってるか?」

 

「ああそう言えばお主昨日そんなDVD見ておったな……って言うかアレか? 弓矢の先にドリルっぽい何かを装着して、ヘリでも落すとか言わんじゃろうの?」

 

「既にその辺りはピエトロが解決済みだ」

 

「何でも妖精が絡めば解決するみたいな流れはどうなのじゃ! むしろ弓でヘリ落すとか普通の人間は真面目に考えんぞ!」

 

「妖精じゃねーよ、ピエトロだっつってんだろ!」

 

「どこの世界に身長10cm程の人間がおると言うのじゃ! 明らかに生物的な面でおかしかろ!」

 

「ここに居るじゃネーか!」

 

「あーもー分かった分かった、もうそこのは工廠のバイトでピエトロ君でいいわまったく! それでじゃ提督よ」

 

「何だよ?」

 

「何ぞお主宛に舞鶴鎮守府からお便りが届いておったぞ、ほら」

 

「舞鶴ぅ? 何で舞鶴からウチに便りが来んだよ」

 

「我輩に聞かれても分かる筈はなかろ」

 

「……あーなになに? ん? 何だこりゃ?」

 

「何が書いておったのじゃ?」

 

「あ? いや何か知んねーんだけど、舞鶴の提督が俺に果たし状送ってきやがった」

 

「は? 何じゃと? どういう事じゃ?」

 

「知らねーよ、何かいつかの決着を付けるとかなんとか書いてんな、なんだこりゃ?」

 

「えっと……輪島博隆とあるが、お主この人物に心当たりは?」

 

「うん? 誰だそれ? 知らねーけど」

 

「……本当に知らんのか?」

 

「ああ知らねー、どこかの誰かと俺の事間違えたんじゃねーの? 取り敢えずんなモン縁起悪いから捨てといてくれ」

 

「ふむ、まぁお主が知らんと言うなら仕方ない……っておい提督よ」

 

「ああ? 何だよこっちは忙しいんだって」

 

「あの壁に立て掛けておるクソでっかい物体は何なのじゃ?」

 

「ん? あああれか、ってお前あれ見て分かんねぇのか? ガン○ンスじゃねーか」

 

「ガ○ランスぅ? 何でモ○ハンの武器が工廠に転がっておるのじゃ?」

 

「いや弓だとイノシシとか鹿辺りは何とかなるけどよ、熊とかだとちょっと威力足んねーし、ドリルくっ付けたら爆発しちまってお肉台無しになるからよ」

 

「どんだけお肉に拘っとるのじゃお主は! むしろそんなモン使わんでもお主なら熊程度丸太で一撃ではないか!」

 

「はぁ? お前何言ってんの? エクスカリバー(丸太)は兵器であって、狩猟道具じゃねーからな?」

 

「その兵器だの狩猟道具だのお主の中の常識で話を進めるのはヤメんか! お主の常識は大概一般的な非常識じゃとそろそろ理解をせいっ!」

 

「あーもー何でそんなにヒートアップしてんのか分かんねーけどさ、結局お前肉食うの? 食わねーの?」

 

「どうして色々回って最後はお肉の話に軟着陸するのじゃ! 肉から離れんか!」

 

「お前こんなド田舎でお肉の存在無くなったら何を基準に生きてけばいいんだよっ!」

 

「じゃからここは海軍拠点であって、狩人小屋では無いと言うておろーが! 何で基準が肉に設定されておるのじゃ!」

 

「いやお前ウチが海軍だからって毎食魚って考えは安易じゃねーのか? 何だ誰かに洗脳でもされてんのか?」

 

「我輩今一お主の何と言うか考えの基準が理解出来んのじゃが…… て言うか、ここは海軍の拠点であってじゃな……」

 

「ああそうだな、だからちゃんと防衛用の色々も作ってあんだろ、ほらそこのとか」

 

「……そこ? どれじゃ?」

 

「ほらそこの地面に埋め込んである」

 

「ん? 何じゃこの不自然に地面に埋め込んでおる溝は」

 

「あーそこの横のレバー引いてみ?」

 

「レバー? この意味ありげに地面にぶっ刺さっておる棒はレバーじゃったのか? ってうーわ、何じゃこの地面から生えてきたデッカイ……のう提督よ?」

 

「ん? 何だよ?」

 

「これは……このカタパルトは……」

 

「ああお前MS用のカタパルトとか、岩射出するアレとかは違うっつってたろ?」

 

「……言うたの」

 

「んで二次大戦ん時のカタパルトがどうとか言ってたろ」

 

「……確かに言うたの」

 

「んであーそっちかって思ってな、資料読んで作ってみた、火薬式カタパルト、呉式2号5型だ」

 

「ああうん……確かにこれは我輩も見覚えのあるカタパルトじゃが、のう提督よ……」

 

「ん? 何だ?」

 

「このクソでっかいカタパルトの、これはどうやって使うのじゃ?」

 

「あ? んなモンお前が一番分かってんじゃねぇのか? ほらそこに乗ってだな、レバー引いてだな」

 

「待つのじゃ、もしかせんでもコレは我輩を射出するカタパルトという事かの?」

 

「え? それ以外にどう使うってんだよ」

 

「お主はバカか!? 確かにコレは我輩が知ってるカタパルトじゃが、我輩がいつも言うておるカタパルトはコレじゃなくて艤装についておる水上偵察機とかを射出する物じゃ!」

 

「ん? ああそれちゃんと水上偵察機も射出できるぞ?」

 

「そうじゃなくて! 我輩がカタパルトに乗って射出されるのではなくて! 我輩がカタパルトを装備して水上偵察機を射出するのじゃ!」

 

「え? いやお前それサイズ的に無理なんじゃねーの?」

 

「誰が1/1スケールのカタパルトを装備すると言うたのじゃ! そんなの考えんでも分かるじゃろ!」

 

「あーこれスケールダウンしろって事?」

 

「……当たり前じゃ、こんなデッカイのどうやって運用すると言うのじゃ」

 

「言われてみりゃ確かにこれデカ過ぎだよなぁ、んー……なぁ利根よ」

 

「何じゃ?」

 

「お前体重どんくらいあんだよ?」

 

「……何でそんな事聞くのじゃ」

 

「いや、ほら耐荷重量ちゃんと計算しねーと、どこまでスケールダウン出来るかって計算ができねーじゃねーか」

 

「だから我輩を射出するという考えから離れんか!」

 

「後コレは必須だから渡しとくわ、絆創膏」

 

「絆創膏? って……これは何に使用するのじゃ?」

 

「あ? そりゃ何も張ってねーとほら、飛んでる時ヒラヒラの中丸見えになっちまうだろ? 資材頼むのに先輩んとこに連絡したらよ、射出する時のバランスって大切らしいし、少しでも重量が軽い方がいいって事でよ、ついでに剥がす時もガムテより毛の被害が少ないだろうって事でそいつが鋼材と一緒に送られて来たんだが」

 

「サブロオオオォォォォォォォオオオオオ!!」

 

 



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じゅうななにちめ

 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主は何をしておるのじゃ?」

 

「あん? 何をって見て分かんねーか? インナー縫ってんだよ」

 

「インナー……とは、下着の事かの? 何でお主が下着なんぞを手縫いしておるのじゃ? それすら買えん程ウチは財政が逼迫(ひっぱく)しておるのか?」

 

「いや下着じゃなくてインナーだっつーの、ちょっと事情があってな、吸水性素材でコレ作らなきゃなんねーんだよ」

 

「また事情が出おった……と言うかインナーも下着も同じ物ではないのか? 吸水性素材……とは汗をこう、普通の布よりも多く吸収してくれる素材じゃったか」

 

「そそそ、今使ってるこの布は元々潜水服の内側に張り付いてるヤツで、むっちゃ水分を吸収してくれんだよ、ゲンさんに使わなくなった作業用のウエットスーツを分けて貰ってよ、そいつから引っぺがしたヤツで作ってんだ」

 

「ふむ? ウエットスーツの中張りじゃと? で? そんな物を継ぎ接ぎして何を作るつもりなんじゃ」

 

「だから言ってるじゃねーか、インナーだって、着ぐるみの」

 

「……のぉ提督よ」

 

「あんだよさっきから提督提督って提督の大安売りみてーによ」

 

「我輩は今着ぐるみという海軍とは物凄く剥離した名称を初めて聞いた気がするのじゃが、それは気のせいじゃったかの?」

 

「あん? 何がどう気のせいだって? いやこれ着ぐるみ着る時に着用するインナーだけど、それがどうした?」

 

「それがどうしたとかお主こそどうしたのじゃ!? 何で海軍の拠点で司令長官ともあろう者が着ぐるみのインナーという微妙に一般的じゃないブツな上に軍務とは掛け離れたモンなんぞをこさえておるのじゃ!? ぜんっぜん海軍との繋がりが見えてこんぞ!?」

 

「あーそれな、事情があるっつったろ?」

 

「……何じゃその事情って、言うてみよ」

 

「それな、この前村にリターン就職で二世帯程若い夫婦が越してきたっつったろ?」

 

「言うておったの」

 

「んでそこにはガキんちょがいるっつったろ?」

 

「うむ、言うておったの、あの対テロ用バルカンファランクス装備の狂ったジャパ○バスはその者達を送迎する為にこさえたんじゃったか」

 

「おう、んでな、そこのガキ共が通う幼稚園なんだけどよ、何か色々催しモンとかする時だけでもいいから、保護者に協力して貰えないかって通知が来たらしいんだよ」

 

「協力て、どういう事なのじゃそれは」

 

「んや、そこってここいらじゃ唯一の幼稚園らしいんだが、少子化の煽りを受けてて預かる子供が減ってきてるらしくてな、財政が結構厳しいらしいんだよな」

 

「ふむ、まぁあそこも町と言うにはギリギリの規模じゃしのう、その辺りは苦しいのかも知れんの」

 

「まぁな、んで一応村からは幾らか寄付って形で支援はするそうなんだが、ほらウチって現生(ゲンナマ)がねーだろ?、だからその寄付は捻出できねぇしよ」

 

「あー……何で海軍拠点のウチが幼稚園の支援をと言いたいが、まぁ地域密着型拠点を目指すってこの前お主は言うておったしの、それでゼニ以外の面で何か支援をしようと?」

 

「まぁそういう感じだ、んで何か現生(ゲンナマ)以外で欲しいモンあるかって聞いてみたんだがよ、お遊戯とか運動会で使うマスコット的な何かとか、そんな感じの物が欲しいってリクエストがあったモンでな」

 

「ああそこで着ぐるみに繋がるのじゃな、なる程のぅ」

 

「んであの手のヤツって着たまんま動くのって結構ハードでな、特に汗対策とかはちゃんとしとかねーとすぐ中がビショビショになるし、カビちまって長く使えねぇ」

 

「ふむふむ、だから吸水性のインナーなのじゃな、して、お主は着ぐるみの製作をしておるのじゃろう? 何の着ぐるみを作っておるのじゃ?」

 

「熊」

 

「……ほぉ熊か、まぁあの手のマスコットには定番のチョイスじゃの、してそこのインナーは複数枚あるようじゃがその着ぐるみは一つでは無いのじゃろ?」

 

「ああ、取り敢えず二体用意して、インナーは予備含めて5枚かなって考えてる」

 

「ほぉ二体か、それで? 熊の他は何の着ぐるみを作っておるのじゃ?」

 

「熊」

 

「……うん? それはさっき聞いたのじゃが、熊と何の着ぐるみなのじゃ?」

 

「だから熊つってんだろ、熊と熊の着ぐるみ、二体の熊だよ」

 

「あー……それはもしやその幼稚園が熊に因んだ名称であったり、一体はオスでもう一体はメスとかのセットとか、そんな風味の感じなのかの?」

 

「あ? いや幼稚園の名前はひよこ園っつー名前だし、熊は二匹ともオスだが?」

 

「はぁ? 何でそんな熊に熊を被せるよーな事をしておるのじゃ?」

 

「あ? んなモン材料の都合で仕方なしにだな、ほらそこにあるだろ?」

 

「材料の都合? ってうーわ怖っ!? 何じゃこれはまごうこと無きリアルな熊……て言うか提督よ」

 

「ん? 何だ?」

 

「これってもしやお主が仕留めた熊の毛皮を使(つこ)うて作っておるのではないのか?……」

 

「おう、狩った熊から剥いだ毛皮で着ぐるみを作ってみた、両方ともオスだったからダブっちまったがそこはまぁ仕方ねーって諦めてもらうしかねーな」

 

「待て待て待て待て、お主コレ幼稚園のマスコットとして使うのじゃろ?」

 

「おう」

 

「て言うか、いたいけな幼児の前に出すにはこの熊はリアルが過ぎるじゃろ!? こんなのが幼稚園で徘徊しとるの見たら子供がトラウマになってしまうわバカもんが!」

 

「何だよさっきからワーワーうっせぇな、ちゃんとその辺りは事前リサーチしてっから大丈夫だっつーの」

 

「……事前リサーチ?」

 

「おう、本格的に作る前にな、頭だけ作って是留舵(ぜるだ)紗音瑠(しゃねる)に見せてみたんだがよ」

 

「何じゃそのゼルダとシャネルて」

 

「あん? いやそりゃ村に越してきた田中家の長男長女の名前だけど?」

 

是留舵(ぜるだ)紗音瑠(しゃねる)って子供の名じゃったのか……何と言うか……うん、そうか……それはまた……うん」

 

「ん? 何だどうしたいやにびっみょーなツラして」

 

「ああいや何でもない……それで? その子供に熊の頭を見せてみたと?」

 

「おお、したらよ、紗音瑠(しゃねる)はカワイイって頭に抱き付いてスリスリしてたし」

 

「カ……カワイイじゃと? このモノホンを使用した熊の頭をか?」

 

「おお、んで是留舵(ぜるだ)なんかは「今からサッカーしようぜ、ボールはこの熊な」つって蹴り始めるしよ」

 

「大丈夫かその是留舵(ぜるだ)!? どんな幼稚園児なんじゃそれは暴力的にも程があるぞ!?」

 

「まぁあの辺りの年頃ってヤンチャなモンだからなぁ」

 

「ヤンチャで済ますには色々とおかしかろその幼稚園児!? て言うかあの修羅の村の血筋じゃからそんな感じじゃないのか!? どうなんじゃその辺り!?」

 

「あ? いやお前が何言ってるのか分かんねーけど、ゲンさんとかおトヨさんとかからのウケも良かったしよ、まぁ着ぐるみに関しては大丈夫なんじゃね?」

 

「やっぱ血筋じゃろそれ!?」

 

「んでよ、今度何匹か仕留めてくるから追加で作ってくれって言われたから、これの他にまだ何枚かインナー作っとかなきゃいけねーんだよなぁ」

 

「追加!? 仕留める!? 何を!?」

 

「ん? 熊だろ?」

 

「それで着ぐるみ使って何をするのじゃ!?」

 

「あん? いや漁協のマスコットとして地域活性化とかなんとか、ゲンさん達がやるっつってたな」

 

「リアル熊がマスコットの漁業協同組合てお魚要素が皆無ではないか!? 色々とおかしかろ!?」

 

「何か人を呼び込む為に産地直送の朝市とか計画してるらしいぞ、第八亀丸の連中が中心で」

 

「……黒騎士が売り子で、かつリアルの熊がマスコットとして練り歩く朝市とか我輩想像が追いつかんのじゃが……」

 

「バイト料は弾むって言われたから、朝市の時は業務が昼からになっちまいそうだよな」

 

「バイト? 何がじゃ?」

 

「あ? 熊の中身だよ、夏は養殖中心だから冬みたいな漁のバイトは少ないし、まぁ仕方ねーよな」

 

「バイトするのが当然みたいな前提で話をするのはやめんか! 何じゃ中身て!」

 

「あ? 熊の中身だよ」

 

「言わんでも分かるわそんなもん! 何で海軍の提督ともあろう者が黒騎士市場で熊の着ぐるみバイトなんぞせんとならんのじゃ!」

 

「うっせーな! お前バイトしねーとお魚が食卓から消えちまうんだぞ? それ理解してんのか?」

 

「お主この前肉肉言うておったじゃろ!? 今度は魚とか変わり身が早過ぎじゃろーが!」

 

「ばっかお前肉だけじゃ栄養バランス取れねーだろーが! 魚にはドコサヘキサエン酸が含まれてんだぞ! 魚食わねーとバカになるんだぞ!」

 

「……そう言えばお主昨日なんぞTVショッピングで怪しいサプリのCMをマジマジと見ておったの、またヘンな物に影響されおったか!」

 

「ドコサヘキサエン酸のどこが変だっつーんだよ」

 

「ヘンなのはDHAじゃのーてお主の頭の中身じゃ! いつもいつもTVとかDVDの影響モロに受けておるでは無いか!」

 

「ってお魚はな! DHA摂取だけじゃなくて物々交換の通貨としても使うんだぞ! ウチはお魚とかお肉が枯渇すると食卓が寂しくなるだけじゃなくて福利厚生とかも薄っぺらくなっちまうんだからな!」

 

「福利厚生って何じゃ! そんなもんウチには無かろーが!」

 

「いやDVDの購入費とか」

 

「それはお主の趣味じゃろうが」

 

「おやつのケーキの材料とか」

 

「それは大事じゃ、うん、それならお魚とかお肉の確保はせんといかんの」

 

「だろ?」

 

「て言うか提督よ、今作ってるインナーじゃがの、それ何ぞ他のと造詣が違っておるようじゃが……」

 

「あん? ああこれはお前用のヤツだ」

 

「……何で我輩用のブツが用意されとるのじゃ」

 

「うん? いや今度の幼稚園のバザー俺一人だけじゃ熊一匹だけになるだろ」

 

「待つのじゃ! 何で我輩も参加枠に計上されとるじゃ!?」

 

「子供に夢を与えるのも軍人の務めだぞ、利根」

 

「なんでいきなり正論をぶちかますんじゃお主は! むしろこんなリアルベアーは村民以外から見れば恐怖の対象にしかならんわっ!」

 

「あ、ついでに軍の広報がその触れ合い活動取材しに来るつってたから」

 

「は? 広報? 取材?」

 

「おう、先輩とこに肉送った時に世間話でこの事言ったらよ、折角だからって広報の青葉よこすってよ」

 

「サブロォォォォオオオオオォォォォ!」 

 

 

 



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じゅうはちにちめ

「のう提督よ、ちょっと良いかの?」

 

「あん? 何だ利根、今ちょっと取り込み中なんだが」

 

「いやいやちょっと待て、その現在取り込み中のお主の行動について聞きたいんじゃがの、お主は一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? んなもん見て分かんねーか? 釣りだよ釣り」

 

「……釣りぃ?、何ぞ地面に四角い穴掘ってミョーンと不自然に釣り糸伸ばしてるそれが釣りぃ?」

 

「あん? お前知んねーの? 例え1マスでも水張ってりゃ魚は釣れんだぞ? っと来た……何だよ、またネームタグかよ」

 

「待つのじゃ!? 何じゃ1マスでも釣りが可能て!? むしろ名札ってのっけからマ〇クラネタ垂れ流すで無いわっ! リアルじゃこんな水溜りに糸垂らしても何も釣れんからな!? 物理的に色々おかしかろ!?」

 

「そんな事言われてもなぁ、釣れるモンは釣れるんだから仕方ねぇだろ? っと今度はハリセンボンか、ちっ、秋刀魚はやっぱ無理かぁ」

 

「秋刀魚ぁ? 何で秋刀魚なんぞ釣ろうとしておるのじゃ?」

 

「ああ? いやお前大本営からのお達しでだなぁ、合計30匹秋刀魚釣れって指令書が回って来たんだよ、ほれ」

 

「なんじゃと? なになに……『どーんっ!揚げ揚げで大漁です!』、何じゃこれは?」

 

「なんつーか微妙に腹立つ作戦名だろ? 上層部はアレだ、バカしか居ねーのかって思っちまうわ」

 

「て言うかその命令書見て1マス釣りするお主も大概じゃと我輩は思うのじゃがな……」

 

「まぁいざとなったらゲンさんに頼んで船出して貰えばいいんだけどよ……ってまた来た、む……今度は……ちっと大物みたいだぜ?」

 

「おおう、物凄く竿がしなっておるの! 何が掛かっておるのじゃ!?」

 

「こりゃ結構な獲物っぽいな……んじゃちくっと本気だすぜ! うるぁっ!」

 

「しむっしゅしゅしゅー!」

 

「しむっ!? なんじゃ!? しむって!?」

 

「あぁ?……ちっ、なんだよ外道か、リリースだリリース」

 

「しむ……しむ……しゅしゅしゅ~……」

 

「待つのじゃ!? おまっ……いいい今の!? 今のぉっ!?」

 

「あ? 何だようっせーな」

 

「今の艦娘ではなかったか!? リリースって何じゃリリースって!?」

 

「食えねー獲物はリリースが釣りの基本だろーが、てかあんなちっこいの見た事ねーし、第一こんな1マス釣りで艦娘なんか釣れる訳ねーだろ?」

 

「いやいやいや! あれ確かに艦娘じゃったぞ!?」

 

「あーあーもーまた利根ちゃまのファンタジー理論炸裂し始めまちたー、はいはいわかりまちたー、わかりまちたからちょーっと黙ってまちょうねー」

 

「くっ……何か無性に腹立つ言い方をしよるの、まぁ良いわ、それよりもちょっと今良いかの?」

 

「あん? どした何かあったか?」

 

「何かあったかじゃのーてじゃの、その……お主の肩に乗っておるその……」

 

「ん? ピエトロがどうしたんだ?」

 

「いやそっちじゃのーてじゃな、反対側に乗っかってるもう一匹の妖精はどうしたのじゃ……」

 

「まーた妖精とか言ってる、こいつは妖精じゃなくてイッポリートっつーバイトだ」

 

「またぞろおかしな事をいい始めよった、何じゃバイトって、今度のはどこで行き倒れておったのじゃ」

 

「うん? いやほらウチもそろそろ人員の拡充とかその辺りやった方がいいかなって思ってよ、タウン情報誌に募集出したんだけどよ」

 

「タウン情報誌にバイトを募集する海軍拠点もどうかと思うが、それに応募してくる妖精もどうなのじゃ」

 

「だーかーらぁぁ、こいつはイッポリートっつってんだろ!」

 

「あーあーもういい、分かった分かった、それでそのイッポリートには何をさせるのじゃ」

 

「取り敢えず何ができるかって仕事させてみたんだが、コイツは建築関係が得意みたいでな、ちくっと執務棟の改装とか諸々を任せてみた」

 

「執務棟ってログハウスの事か? うむ? ……特に何も変ってないように見えるのじゃが」

 

「見た目はな、あー、そこのほら、入り口に近付いてみ」

 

「入り口て……うーわ!? 何じゃ触れてもせんのに勝手にドアがパタンと開きおったぞ!?」

 

「相変わらずウチは資材がカツカツだからな、大掛かりな拡張はできねーけどよ、それでも生活環境辺りからぼちぼちと改善してこうと思ってよ」

 

「だからって普通のドアが勝手に開くのはどうなのじゃ? これ反対側じゃと開いたドアで顔面殴打せんか?」

 

「そこは慣れるしかねぇな、後はほら、出撃ドックとかの利便性向上とかもしてみた」

 

「……出撃ドックじゃと? それはあの便所エレベーターの事を言っておるのか?」

 

「それだよ、お前前から便所便所うるさかっただろ?」

 

「……まぁ言うておったの」

 

「んでその辺り別なルートで漁協に行くシステムを構築しようと思ってな」

 

「ほぅ? 別ルートとな?」

 

「おう、そこのほら、執務棟脇に俺が設計してイッポリートが全自動出撃システムを施工したんだけどよ」

 

「全自動出撃システムぅ? ってあの掃除用具が入ってそうなロッカー染みた箱の事を言っておるのか?」

 

「ああそれだ、ちょっと脇のほら、そこのレバー引いてみ?」

 

「レバー? この意味あり気に地面から生えておる棒はレバーじゃったのか、ってうーわ!? ロッカーの床がパカンって抜けて下が縦穴になっておる!?」

 

「緊急時にエレベーターを利用してちんたら降りていくのもアレだと思ってよ、シュート式の抜錨システムを組んでみた」

 

「組んでみたって大丈夫なのかこれ!? 底がまったく見えんぞ!?」

 

「重力加速をそのまま利用して海に射出するのはこの前作った母艦の抜錨システムからヒントを得た技術なんだけどよ、そいつはその改良型だぜ?」

 

「あの銀河〇道染みたレールで射出するヤツか……で? これは何をどう改良したと言うのじゃ」

 

「おう、それは縦穴の途中に服と艤装がセットしてあってだな、飛び込んだら下へ滑ってる間に着替えから艤装の着装までスパーンとやってそのまま海へ飛び出すって仕組みだ」

 

「は? 服や艤装を着装って……」

 

「これだと寝てる時に深海棲艦から襲撃されても一々着替える手間もねぇし、レバー引いてから約10秒程で抜錨できるからな、ほら便利だろ?」

 

「いやいやいや待つのじゃ、ここをスポーンと落ちれば全て装着できるって、入る時にはどうするのじゃ?」

 

「あ? 入る時って……そのまま入ればいいじゃねーか、ちゃんと重力加速も計算してっから危険はねぇぞ?」

 

「そうじゃのーて、これ艤装だけじゃなく服もセットなのじゃろ? て事は入る時服とか着ておった場合はどうなるのじゃ?」

 

「あ? 何言ってんだお前、んなもん裸で入るに決まってんだろうが」

 

「はぁっ!? それってどういう事じゃ!? 我輩は抜錨の度に裸でいそいそ出て行ってこの玄関脇に設置しておるロッカーに入らねばならんのか!? 何で我輩が裸で外に出らんといかんというのじゃ!?」

 

「何でってそういう仕様なんだから仕方ねーだろ? もー艤装とか諸々セットしちまったしよ、少なくとも一度は使用しねーと予備の服も艤装もそのまんまだぞ」

 

「何をしておるのじゃお主は!? バカか!? バカなのか!?」

 

「結構便利だと思うんだけどなぁ、ほら、お前パンツとか履かねぇしよ、それなら着替えの仕組みも簡素化できるわって思って作ったんだけどよぉ」

 

「いつも言っておるが我輩はちゃんと履いておるからなっ! 何じゃ履いておらんて! そんな状態でスポーンと海に飛び出したら色々見え放題で大惨事では無いかっバカもんがっ!」

 

「あーあー分かった分かった、このシステムは改良の余地ありって事で改修しとくから、取り敢えず一度は使用してくれ、でねーとマジお前の服と艤装そのまんまになっちまうから」

 

「くっ……結局一度は裸で使用せねばならんのか、いやパンツをセットしておらんのなら下着姿で飛び込めばよいのか……」

 

「あ、それパンツ履いた状態を想定して計算してねーから、履いたまま飛び込んだらその……な、重力がその、股間辺りに集中するっつーか、食い込むと言うか色々とよ、大変な事に……」

 

「アホかっ!? 結局一度はノーパン抜錨せねばならんのかっ! 何で我輩がそんな恥を忍ばねばならんのじゃっ!?」

 

「いやだってお前寝る時いつもマッパじゃねーか、だからてっきり下着は着けない派だとばかり……」

 

「何でお主が我輩の睡眠事情を把握しとるのじゃ!? 別に寝る時くらい自由にしても良かろ!? 我輩も自由になりたい時もあるのじゃ!」

 

「まぁこの設備専用の装備もあるにはあるんだがよ、その辺りは安心していいぜ? ほれ」

 

「またダクトテープか!? それ貼っ付けたら事後に毛が色々とえらい事になるからヤメよと何度言えば理解するのじゃ!? それに何じゃこの絆創膏はっ!?」

 

「お前ブラも着けてないだろ? それじゃ服との摩擦でほら……な? なんなら上も下も絆創膏にしてみればどうよ?」

 

「どうよ? じゃないわっ!? ブラもちゃんと着けておるわっ! 一体お主は我輩を何じゃと思っておるのじゃ!?」

 

「いやその、特殊な性癖してんなぁとは思ってたけどよ……その辺り筑摩から色々事情聞いてたからな、察してやってくれってよ」

 

「それどこの筑摩が言っておるのじゃ!? 何じゃ我輩の何を察するというのじゃ!?」

 

「すまん、幾らお前にでもそれは言えない」

 

「筑摩ぁぁぁぁぁぁ! 一体こやつに何を吹き込んだのじゃ筑摩ぁぁぁぁ!」

 

「あ、それとこんなのを預かってたのを忘れてたわ、ほれ」

 

「……何じゃこれは、『航空戦隊フラット5特別会員優待券』じゃと? てかこれ龍驤って名札付いておるんじゃが……」

 

「いやそのアレだ、お前の色々をほら先輩んとこに相談したらよ、その……な? 胸部装甲に悩みを持つ艦娘の互助会が発足したから、常々悩んでるだろうお前も参加してみたらどうだと」

 

「サブロオオオオォォォォォォォォォォオオオオオ!!」

 

 



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じゅうくにちめ

 

 

「聞いてくれ利根よ! 俺はとうとうやったぞ!」

 

「藪から棒に何じゃ突然、て言うか今回はそっちからアプローチしてくるのじゃな……で? 一体何がどうしたと言うのじゃ」

 

「これを見てくれ! コ・レ!」

 

「何か微妙にウザキモイポーズで皿をこっちへ押し付けるでないわっ……て言うかこれは……厚揚げ?」

 

「そう、ア・ツ・ア・ゲ!」

 

「何で厚揚げ如きにお主はそう興奮しておるのじゃ?」

 

「ばっかお前厚揚げっつーのはな、大豆レシピのある意味究極点なんだぞ!」

 

「究極? 大豆の?」

 

「おう、豆を煮て絞って固めて整形して揚げてという行程を経て、漸く厚揚げは完成するんだ」

 

「ふうむ、そう聞くと中々手間が掛かっておるのとは思うのじゃが、そうまでして手間を掛けて食いたいもんかのぉ、厚揚げ」

 

「うむ、それがちょっとした裏技で七面倒臭い手間が簡略化される事に気が付いた」

 

「ほう?」

 

「先ず雑草を刈り取って種を採取する」

 

「……雑草とな?」

 

「次いで採取した種を植えて大豆を育成、そこから豆乳バケツをクラフトして、それを1ブロックマスに投入、暫く待つと絹ごし豆腐ブロックが出来上がるから……」

 

「待つのじゃ」

 

「……あん? 何だよ?」

 

「雑草から大豆とか、絹ごし豆腐ブロックとかちょっと聞き慣れん名称がお主の言葉に含まれておるみたいなのじゃが……」

 

「ん? 何お前豆腐C〇aft知らねぇの? マジで?」

 

「マジでと問い質したいのはこっちじゃバカもんが! 何じゃ豆腐Cra〇tて! のっけから思いっきりマ〇クラネタが炸裂しておるでは無いか! 良いか? リアルでは豆腐は豆乳を漉して作る物じゃ! 何じゃ1ブロックに入れたら完成て!」

 

「後この豆腐な、上から重石を乗せてたら水分が抜けて強度が増すんだぜ? それで出来た鋼豆腐使ったら鎧とかも作れるんだ」

 

「だーかーらぁぁ! 幾ら豆腐の強度が増しても豆腐は豆腐じゃ! 何じゃはがね豆腐って!」

 

「因みに剣もツルハシも作成可能だ」

 

「誰もそんな事聞いとらんわっ! 珍しくそっちが冒頭から会話を振ってきたと思ったらコレじゃ! 何をしておるのじゃまったく!」

 

「因みに豆腐ワールドって別ディメンションが存在してだな、そこにはダイヤ並みなレアの金剛豆腐鉱石ってのがあってだな……」

 

「何じゃそのいつもデースデースとか言ってそうなヤツをイメージする物体は……いい加減そんな非現実的な物から離れんか、と言うか提督よ」

 

「ん? 何だよ、今ちょっと豆腐ハンバーガーに挑戦してっから手が離せないんだよ」

 

「バーガーって何じゃ、豆腐万能過ぎじゃろ……まぁ良い、大本営からお主宛に手紙が来ておったぞ、ほれ」

 

「大本営から? 何だよまたクソ面倒な指令が来たんじゃねーだろうな?」

 

「まぁの、秋刀魚漁だの菱餅の回収だの定期的におかしな命令が発布されとるからお主がそう思っても不思議ではないの」

 

「えーっと何々? ああこの前の秋刀魚漁の報酬を送ったって書いてんな、何だこれ? 大漁旗?」

 

「ほんに上層部は何を考えておるのかのぅ……で? 大漁旗以外には何も貰えんのか?」

 

「いや、他にネジが四本配布されるらしい……」

 

「ネジぃ? ネジで何をどうすれば良いと言うのじゃ?」

 

「あー、まぁいいや、丁度お前の車を改装してる途中だったし、それにでも使うか」

 

「……ちょっと待つのじゃ」

 

「うん? 何だよ?」

 

「今何と?」

 

「え? ほら前からお前車のキャタピラは嫌じゃ嫌じゃつってたろ?」

 

「……言うておったの」

 

「繰り返し言うから仕方なくだな、その辺りを改良する事にしたんだよ、ほれ」

 

「む? 何じゃ一体ってうーわ! ガレージの中になんぞ……のう提督よ」

 

「ん? 何だ?」

 

「あれは一体何なのじゃ? オート三輪の下に何と言うか、凄まじく巨大なタイヤが三本セットされておると言うか、タイヤの上に車が乗っかってると言うか……」

 

「あーあれな、何かほら、ふっつーにタイヤくっ付けただけじゃ華がねぇだろ? だから車体の補強したついでにタイヤもメガサイズのを装備して、踏破性を向上してみた」

 

「踏破性て……気のせいじゃなければアレ、フロントに廃土板とか刺々しい何かがおっ立ってるみたいに見えるのじゃがの……」

 

「あースクラップ置き場に転がってたミニユンボをバラして使ってみた、これでアナーキーロードを疾走しても大丈夫だぜ? どうよ?」

 

「どうよってどうなのじゃそれ……そう言えばお主昨日マッド〇ックスのDVDを見ておったな!? これはアレか? 例の暴走族の車両の真似した物か!? どうせ作るなら何故V8インター〇プターじゃ無いのじゃ!?」

 

「突っ込み入れてる割には詳しいのなお前? てかそっちは既に作ってゲンさんとこに納入してあっから材料がねぇんだよ」

 

「何じゃと?」

 

「何かオトヨさんが街に出る足が無いとかってよ、何かねぇかって相談されたもんだから、んならって感じで作ってみた」

 

「待て、待て待て!」

 

「あん?……何だよ?」

 

「オトヨさんと言うのは、もしや……」

 

「あーほら、ゲンさんトコの母ぁちゃんで、村の町内会長の」

 

「何度聞いても村の町内会長というワードが耳についてしまうの……て言うかあのお年寄りが、マッドマック〇カーで街へお買い物じゃと?」

 

「ゲンさんも流石に心配だったんだろうな、暫くは船のヤツらと連れ立ってトラックで後を付けてたらしいぜ?」

 

「マッドマッ〇スカーで疾走する老人に、それを追走する黒騎士の一団って世紀末にも程があるじゃろう……」

 

「まーそんな訳でお前の車、モンスターカー(オート三輪)な」

 

「何じゃその微妙に噛み合わんちくはぐな車はっ! て言うか何じゃこれ、前後長が短いのに車高が高過ぎてヤバくは無いか? 主にバランス的な面において……」

 

「イメージはチョ〇Qだ」

 

「変な部分で遊び心を発揮するでないわっ! て言うか……くっ、運転席まで高くて手が届かん……」

 

「あーそれな? ほら、ボディの横にあるレバー引いてみ?」

 

「何じゃ意味あり気にぶっ刺さっておるこの鉄筋はレバーじゃったのか……っておお、座席がウィーンと下がってきおったぞ!?」

 

「福祉車両の技術を応用して、運転席をそのまま乗降装置として組み込んでみた」

 

「ほぉ、中々これは便利じゃの、たまにはお主もまともな物を作れるでは無いか」

 

「たまにはって、何か含んだ言い方しやがんなぁ」

 

「今までの事を思い返せば色々含みたくもなるわ……ん? 何じゃこれは……」

 

「あん? どしたよ?」

 

「……のう提督よ」

 

「何だよ?」

 

「この……座面前中央の何と言うか、カセット的な物体は何なのじゃ?」

 

「ああそれな、ほらその車って車高が高いだろ?」

 

「そうじゃな」

 

「で、お前が乗り降りする時は、周りから見ると当然下から見上げる形になる訳だ」

 

「ふむ、確かにそうじゃの」

 

「で、そうなった場合当然……な、色々見えたりする可能性もあるんじゃないかって思ってよ」

 

「……それで?」

 

「で、お前が乗り込んだ後キーを捻るとだな、ガションってカンジでカセットがせり上がって、股間にダクトt」

 

「待つのじゃ! 何で強制的にそんな機構を組み込んでおるのじゃ! 寧ろ我輩はいつもいつもいつもちゃんと履いておると言い続けておるじゃろうが! て言うかダクトテープはお肌と毛に優しくないと何度言えば理解するのじゃバカモンが!」

 

「いや、何かほら、その辺り利根って脇が甘いし忘れっぽいし、それ以上に滅多な物を一般市民へ見せちまったら処分案件だって、前に先輩とこで聞いた気が……」

 

「滅多な物って何じゃサブロオオォォォォォォォオオオオオ!」

 

 



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はつかめ

 

「のう提督よ、ちょっと聞きたい事があるのじゃが」

 

「なんだ利根? 今ちっと手が離せないんだけどよ」

 

「いやその有様を見てたら何となく忙しそうなのは理解出来るんじゃが、敢えて聞かせて貰おう、お主は何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? サンタ衣装を縫ってんだよ」

 

「やっぱりか……やたら真っ赤で目に優しくない布でなにやらチクチクやっておると思ったが、やはりサンタ衣装なのか……」

 

「おう、ちょっとした事情があってだな、どうしてもサンタ衣装を作らなきゃならなくなった」

 

「また事情が来おったか、先に言うておくが我輩はそんなの着んからな、絶対着んからな」

 

「あぁ? 誰がお前用だっつったんだよ、これは俺用の衣装だっつーんだ」

 

「……提督用とな? 何故お主がサンタ衣装を着らんといかんのじゃ?」

 

「うん? あーこの前よ、ひよこ園のバサーに参加しただろ?」

 

「あぁアレな……クソ熱い炎天下の下でリアル熊の着ぐるみ着せられて、我輩死ぬかと思ったぞ」

 

「あれが色々ウケたらしくてな、今度のクリスマス会もぜひサンタとして参加してくれないかってリクエストがあってな」

 

「なる程の、確かにそういう会ならガタイの良いお主がサンタとして参加するのは納得じゃ」

 

「あ? 何言ってんだ? お前も参加すんだよ」

 

「……なんじゃと?」

 

「だーかーらぁ、ひよこ園のクリスマス会、お前も参加するんだって」

 

「待つのじゃ、サンタは提督がするのじゃろ? なら我輩が参加せんでもメンツは足りとるではないか、もしやダブルサンタとかそういう企画を考えておるのか?」

 

「ばっかおめーサンタって言ったらジジイだろ? ババアがサンタなんて聞いた事もねぇよ」

 

「何じゃババアて! 我輩そんなに年は食っておらんわっ! てかサンタじゃなければ我輩はどういうポジで参加すると言うのじゃ!」

 

「あーそれな、お前の衣装は既に用意してある、ほらそこに」

 

「そこ? そこってこの不自然に白い布を被せたこれか……ってうーわ! 何じゃこの……やたらと可愛気の皆無な……鹿?」

 

「ああ、このヘンってトナカイなんぞ居ねぇからな、この前狩った鹿の毛皮をちょっと細工してだな、トナカイ的な着ぐるみを作ってみた」

 

「待つのじゃ! そこで何故リアル鹿を使ったのじゃ!? そこはもっとデフォルメしたファンシー的な何かとか、夢のある造詣の物を作れば良かろうが!」

 

「ばっかお前最近のガキは目が肥えてんだよ、ヘタに作り物臭いモン持ち込んだら場が興ざめになっちまうだろうが」

 

「こんなリアル鹿を持ち込む方がドン引きで興ざめになるじゃろうがっ! お主忘れたのか? この前のバザーで通報されて、警察と猟友会が幼稚園に出動してきた事を!」

 

「あれ結局誤解だったっつって、最後は笑い話で済んだじゃねーか」

 

「猟師のおっさん連中は皆微妙な顔してただけで、誰も笑っておらんかったわっ!」

 

「警察からもお咎めは無かっただろ?」

 

「海軍の提督だから多目に見られただけじゃバカモンがっ! 普通幼稚園に熊が出没したら警告無しで射殺されても文句は言えんのじゃぞ、ほんにその辺り考えてから行動せよといつも言うておろうが……」

 

「うん? あーたかが38口径なんぞ喰らっても屁でもないだろーが」

 

「艦娘の我輩ならいざ知らず、人間の提督が言うのはどうなのじゃそれは」

 

「実際本当の話なんだから仕方ねーだろ、てかそれよりそのトナカイの着ぐるみ、フィッティングはしとけよ? 後で寸法直ししないといけねーんだからよ」

 

「フィッティングってなんじゃフィッティングって……ていうか提督よ」

 

「ん? どした利根」

 

「これ……リアルなのは鹿皮使ってるからしょうがないのじゃが、何故に二足歩行タイプになっとるのじゃ」

 

「あ? お前足四本あんのか? ねーだろ? だったらそういう改造は必要じゃねーか」

 

「て言うかモノがリアルなだけにこの改造はキモいわっ! しかもリアル鹿頭の下から我輩の顔が出るタイプにしておるがの、これどう見ても悪魔崇拝のサバト的な参加者に見えてヤバいとは思わんのかっ!」

 

「一々うっせーなぁ、その辺りカワイイ的な細工はしてあっから安心しろ」

 

「……カワイイ的な細工とな?」

 

「おう、その鼻の部分ちょっと押してみ」

 

「む? 鼻の部分だけ妙に意味あり気に膨らんでおると思ったらこれはスイッチになっとったのか? ってうーわ! 何じゃこれ鼻が赤く光っておるぞ!」

 

「サンタのトナカイって言えば赤鼻だって昔から決まってるからな、その辺り再現する為鼻の部分にLEDを仕込んでおいた」

 

「仕込んでおいたじゃないわっ! お主コレを見て何も感じんのかっ!」

 

「あ? なにがだよ?」

 

「モノホンの鹿の鼻が赤く光るんじゃぞ…… 変にギミック仕込んだりしたら逆にホラーじゃろうが……」

 

「因みにもう一度鼻を押すと、レインボーに輝く仕様になっている」

 

「変なトコに気遣いせんでも良いわっ! 何でリアル鹿フェイスの鼻が七色に輝かねばならんのじゃ! 色々とおかしかろうがっ!」

 

「光量調節も出来るからな、部屋を暗くすると辺りをライト的に七色に照らす事も可能だ」

 

「鹿の鼻で三段オチにせんでも良いわっ!」

 

「本当はもっと手が込んだ仕掛けを仕込みたかったんだけどな、まだ作らにゃならんモンが多くて手間を掛けらんねーんだよ」

 

「これ以上変な仕掛けは仕込まんで良いわ…… てか他に作る物? まだ何か用意する物があるのか?」

 

「ああ、この前の熊の着ぐるみ、ゲンさんトコの朝市で好評だっただろ?」

 

「あれな…… 子供に蹴られるわ、やたらと写真強要されるわ散々じゃったぞ……」

 

「それでよ、今回はクリスマス衣装ってんで、サンタ衣装も売り子の分作らなきゃなんなくなったんだよ」

 

「魚市場の朝市でサンタがブリを売りさばくのか、想像したら何やらシュールな絵面(えづら)じゃのぅ、しかしまぁ黒騎士が売り子をするよりも幾分マシかも知れんな」

 

「あ? 何言ってんだお前、フルプレートは猟師衣装なだけで、サンタコスとは別じゃねーか」

 

「何じゃそれは、お主らの衣装とかコスに対する基準が今一我輩には理解ができんぞ」

 

「だーかーらぁ、フルプレートは仕事する時の制服、サンタ衣装はその上に着込む特別なコスチュームなんだよ」

 

「……提督、ちょっと確認させてくれんかの」

 

「あ? 何を?」

 

「先ずあの漆黒のフルプレートが漁師連中の仕事着じゃと」

 

「第八亀丸船員のユニホームな」

 

「ああもう亀とかその辺りはどうでも良いわ、で? サンタのコスチュームはそれ以外の特別な衣装と言うことで良いのかの?」

 

「そうだな」

 

「で? その漁師共は当日、どういう形でそのサンタ衣装を着るのじゃ?」

 

「は? どう着るってどういう意味だよ?」

 

「そのまんまじゃ、見た目がどうなっとるのかを聞いておる」

 

「あー、いつもの格好に、サンタコスを羽織って……」

 

「何で朝市であヤツらはフルプレート装備して、その上からサンタコス被ってブリを売る必要があるのじゃ……」

 

「ブリだけじゃねーぞ、正月前だから養殖のヒラメとかその辺りの高級魚も並ぶからな」

 

「誰が取り扱い魚類の話をしておると言うのじゃ! どこの世界に黒騎士がサンタになって魚をラッシャイセーするんじゃと聞いておるんじゃ! 色々と盛り過ぎじゃろうが!」

 

「まぁ最近あの手の朝市じゃインパクトが無いと人が集まらねぇって話だし、色々苦労はしてんだろうな」

 

「その苦労の方向性が迷子になっておると、何故お主らは気付かんのか……」

 

「てかサンタコスで思い出した、お前去年のプレゼント、一度も着なかったろ」

 

「当たり前じゃ、何じゃあのサンタ衣装は……前だけ長くて後ろがマイクロミニて……」

 

「それでな、既製品に手ぇ加えるのも気が退けたんだが、気に入らねぇなら仕方ねぇって事で仕立て直したから」

 

「……なんじゃと? 作り直したのか?」

 

「おう、その辺りどうすればいいかデザイン的なモンをセンパイとこに連絡して聞いてみたんだけどよ、いっそ前も後ろと丈を揃えてみたらどうかって事で、超マイクロミニにしておいたから、あ、それとそれ用の絆創膏はこれな、型紙と一緒に届いたから」

 

「サブロォォォォォォォォォォオオオオオ!」

 

 

 



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にじゅういちにちめ

 

「のう提督よ、ちょっといいかの?」

 

「あん? どうした利根」

 

「ちょっと買い物に行こうと思ってガレージに行ったのじゃが、我輩の車が消えておっての、もしやお主何かまたやっておるのか?」

 

「ああそれな、ちょっと事情があって色々整備してたんだけどよ」

 

「のう提督よ、いい加減その事情があってというワンパターンは我輩そろそろどうかと思うのじゃが……して? 何がどうなっとるのかの説明は聞かせて貰えるんじゃろうの?」

 

「おう、ほらこの前お前の車改装しただろ?」

 

「うむ、あの無駄にタイヤがくそデカイチョ〇Q的なアレじゃな」

 

「それそれ、実はあれタイヤはデカくしてたけど、エンジンはノーマルのオート三輪のままだったんだよ」

 

「ふむ、まぁあの車体のサイズじゃと積めるエンジンの大きさは限られてくるのは道理じゃの」

 

「でよ、動力に対して駆動軸やら動輪が大き過ぎてよ、エンジンがパーになっちまった」

 

「そりゃあんな単車に毛が生えたような古いエンジンを使こうて軍用車両染みたタイヤを転がそうとしたら、まぁそうなるのも当たり前じゃな」

 

「だから修理するよりいっそハイパワーのエンジンを積んだ方がいいって事で、色々作り直してた訳だ」

 

「作りなおしとか何をしとるのじゃそれは……して、車は今乗れる状態になっておるのか?」

 

「おう、もう完成はしたんだけどよ、ちっと忙しくて俺が作業してる暇が無かったから、今回はイッポリートがその辺り担当したから」

 

「ほぉ? 今回は妖精さんが整備したのか、それじゃお主がやるよりも安心できるの」

 

「……あのな、利根、そろそろお前も現実っつーもんを直視しろよ、妖精なんぞこの世には居ないし、しつこく妖精妖精言ってっとアイツらだってあんまいい顔しねーぞ?」

 

「その言葉はそっくりそのまま返すわバカモンがっ! いい加減お主もあ奴らの見た目とか異常性を認識してじゃな……」

 

「だーかーらぁぁ、な? どこの世界に納豆とかしめ鯖大好きな妖精なんぞ居るんだよ、ファンタジー要素皆無じゃねーか」

 

「随分渋い趣味しとるのイッポリート!? てかはいはいもういいわ、この事を言いだしたらいつまで経っても話が終わらん、して我輩の車はどこにあるんじゃ? 早く買い物に行きたいのじゃ」

 

「ああ車な、工廠の中にあるだろ、ほれ」

 

「うむ、それじゃ早速……ってのう提督よ」

 

「あん? どした?」

 

「ちょっと聞いてもいいかの、このボンネットからの……上半分はみ出しとるこの物体はなんなのじゃ?」

 

「あ? 何だってそりゃぁエンジンだろ?」

 

「我輩何と言うか、物凄くこの物体に見覚えがある気がするんじゃが……これはもしや」

 

「栄21型、OHV14気筒星型エンジンだな、因みに馬力は1150PSあっから、これでモンスタータイヤ履いてても走行は余裕だぜ?」

 

「余裕だぜ? じゃないわっ!? 何でオート三輪に零戦のエンジンが乗っかっとるのじゃ!? 何でこんな代物を車に積もうと思ったのじゃ!?」

 

「ん? ああそれイッポリートって何でか戦闘機のレシプロエンジンしか知らないらしくてな、まぁそれしか作れねぇんなら仕方ねぇなって事でそんな感じになった」

 

「って良く見たらイッポリートが着とるそれ飛行服ではないか!? こ奴もしや艦載機妖精か!? だから飛行機のエンジンの事しか知らんのじゃないか!?」

 

「だーかーらぁぁ、コイツは妖精じゃなくてイッポリートだっつってんだろ!」

 

「取り敢えずそんなのはどうでも良いわっ! それよりこの車の有様はどうするんじゃ! こんなのでまともに走るのか!?」

 

「えーっと、確か走る時はスロットルレバーがアクセルの代わりになってんのと、あとエナーシャでグルグルしねーとエンジン掛かんねぇんだったか」

 

「戦闘機の始動方法まんまではないか!? これ一人じゃエンジンは掛けられんぞ!? てか出先で再始動する時はどーするのじゃ!」

 

「あ? いやお前ここで始動したらよ、出先から帰ってくるまでエンジン掛けっぱでいいんじゃね?」

 

「色々不便過ぎるじゃろ……て言うかダッシュボードに照準器まで乗っておるし、イッポリートは一体何がしたいのじゃ……」

 

「ああそう言やお前、町に買い物行くんだよな」

 

「うむ、ちょっとシ〇ムラへ新作をチェックしにの」

 

「何か言ってる事はオシャレっぽいけど、目的地がシマ〇ラって色気もクソもねぇな」

 

「一々人の趣味に口を出すでないわっ! 〇マムラの何が悪いと言うのじゃ! ったく、それで? 何か用事でもあるのか?」

 

「ああそうそう、ついでに買ってきて欲しいモンがあんだけどよ、えっと……あったあった、ほらこれメモな」

 

「何々……何じゃこれは、バ〇クリンにバ〇にバス〇ルクに……何じゃこれは、全部入浴剤ではないか、こんなに大量のブツをどうするつもりなのじゃ?」

 

「あーそれな、ほら、ウチって一応温泉風呂だけどよ、泉質が今一つじゃねぇか」

 

「ふむ、確か前に検査したらギリ温泉って微妙な結果が出たんじゃったか」

 

「それよ、ほらこんな何もねぇとこでお前、楽しみつったらメシと風呂しかねぇじゃねーか」

 

「お主の場合DVD鑑賞やらオーパーツ作りやらと他に色々謳歌しとる様に見えるんじゃがな、それで? この入浴剤を風呂に入れて癒されようという事か」

 

「そそそ、日替わりで色々試してみようと思ってな」

 

「しかし提督よ、あの岩風呂は基本24時間源泉から引いた湯が張りっぱなしで、中身の入れ替えは出来んのじゃろ? 入浴剤を入れたら湯が循環して入れ替わるまで結構時間が掛からんかの」

 

「おう、だからちょっと風呂のシステムを構築してみた」

 

「……風呂のシステムぅ? 岩風呂にシステムってなんじゃそれは」

 

「いやほら今までたまに風呂掃除する時って、湯をかき出したり流れ変えたりして結構重労働だっただろ?」

 

「まぁいっぺんに7~8人入れる広さじゃからの、それは仕方あるまい」

 

「そりゃそうなんだけどよ、その辺りの不便さを放置するのは何かモヤモヤするっつーかよ」

 

「またお主の気になったら仕方が無い病が出おったか、それで? その岩風呂システムというヤツはどういう物なのじゃ」

 

「それな、ほらそこのドア開けてみ」

 

「そこのドアて……うーわ、また断崖に新たなドアがはまっておる!? ここにそのシムテムが……ってのう、提督よ」

 

「あん? どした?」

 

「この何と言うか、無駄に縦方向に高い空間と言うか、ハンドルがはっ付いた番台染みた台と言うか、紐が垂れ下がりまくっておる壁面というか……」

 

「おう、気分に応じてここに入浴剤を入れてだな、ハンドルをこうグリッとしたら風呂に薬湯がダバーっと……」

 

「そう言えばお主昨日千と千尋の〇隠しのDVDを見とったな!? これはもしや油屋の例の釜ジイが棲むあそこか!? てか何でウチの風呂は源泉直で湯が供給されとるのにボイラーなんぞが設置されとるんじゃ!?」

 

「ああそれな、そこに一旦源泉引き込んで温度調整をしつつ、入浴剤もそこで混合してダバーする仕組みになっている」

 

「攪拌タンクかこれ!? て言うか何じゃこの足元に転がっとる黒くて丸っこいモフモフは」

 

「あ? そりゃボイラー室なら癒しのマスコット、ス〇ワタリがセットなのは当然だろ?」

 

「〇スワタリってうーわ、良く見るとこれつぶらな瞳とか足とか付いとる!? こんなキモいのが床一面にゴロゴロしとったら癒されるどころか逆に落ち着かんじゃろうが……」

 

「薬湯を変更したい場合ここから札を差し出す」

 

「ここからって、お主……この部分、こっちから風呂が丸見えになっとるではないか」

 

「ん? 何か問題あっか? てかいつもお前が着てるハレンチ制服の方がマッパよりも色々アウトなんだからよ、今更そんなのは気にする事ねぇだろ」

 

「ぶっとばされたいのかお主はっ! ハレンチ制服てなんじゃハレンチ制服て! これは大本営指定のちゃんとした制服じゃといつもいつも言うておろーがっ!」

 

「そしてこの紐を引っ張ると湯船のお湯がダバーっと排出されるから、薬湯の入れ替えも可能となる」

 

「我輩のツッコミを無視するでないわっ! ……ってうーわ! 風呂の湯が一瞬で排出されおった! てか提督よ……」

 

「ん? 何だ?」

 

「一瞬で湯が無くなってしもうたんじゃが、これ……風呂に浸かっておる時に間違ってダバーされたらどうなるんじゃ?」

 

「ああそれな、ちゃんとその辺り安全対策はとってあっから心配すんな」

 

「……安全対策ぅ?」

 

「おう、湯は下水道へ流れていくが、人間は下の池にドボーンする仕組みになってるから怪我はしねぇ」

 

「下の池ってあの錦鯉の養殖池か!? 何でそこで排水溝に人が吸い込まれる作りになっとるんじゃ! もし排出されてしもうたらこの寒空の下池へ叩き込まれて大惨事じゃろーがっ! 安全以前に事後処理が壊滅的におかしいと何故気付かんのじゃ!」

 

「いや、薬湯が綺麗にダバーされて事後清掃が不要な環境を作り出す状態を成立させるなら、湯船の容積から排出される薬湯の量を逆算し、それに重力加速を乗算した結果、排水溝の位置と形状の理想形がこうなってしまったからそれは仕方ない」

 

「目的の為にそれ以外の結果全てを切り捨てるでないわっ! お主の物作り基準はいつもおかしいというのを何故気付かんのじゃ……て言うか提督よ」

 

「あ? まだ何かあんのか?」

 

「これ、もし池ポチャしてしもーたら後はどうするのじゃ」

 

「どうするとは?」

 

「戻ってくる時はどうするのじゃと聞いておる」

 

「あ? どうするもこうするも徒歩で戻ってくるに決まってんだろ? 何だお前空でも飛べんのかよ」

 

「何で風呂からダバーされて錦鯉の池に叩き込まれた挙句、その後裸でトボトボと山道を戻ってこんといかんのじゃ! 事後処理雑過ぎじゃろーがっ!」

 

「ああその辺りは一応手は打ってあっから心配すんな」

 

「……何をどう手を打っておると言うのじゃ……」

 

「この前先輩とこからお前宛にお歳暮が届いててな、その一部を池の脇に設置しておいたからよ、ほらこれと同じダクトテープ」

 

「サブロオオォォォォォォォォオオオオ!」

 

 



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にじゅうににちめ

2018/01/06
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました対艦ヘリ骸龍様、有難う御座います、大変助かりました。


 

「のう提督よ」

 

「なんだ利根」

 

「今年もそろそろ終わりじゃのう」

 

「ああまぁなぁ」

 

「ここに飛ばされて一年とちょい、割と色々あったのう」

 

「飛ばされたとか言うな、飛ばされたとか、でもそうさなぁ……執務棟作って、風呂作って、畑耕して、んで色々拠点整備して」

 

「何を言うておる、お主は訳判らん車とか武装とか作ったり、後は狩りしてただけじゃないか」

 

「ばっかお前働かざる者食うべからずだ、働らかねぇと餓死しちまうじゃねぇか」

 

「あの諺は労働しなければ食うていけんという事を比喩しとるだけで、物理的に食う物を採取せんと死ぬという直接行動の事を言うておる訳では無いわバカモンが」

 

「仕方ねぇだろ、食うもの買う予算がねぇんだからよ」

 

「ほんにここはどういう区分で運営されとるんじゃ、年次予算が20万ちょいとかバックパッカー以下の生活しか出来んぞ」

 

「の割には今かなり便利な生活環境になってるだろ?」

 

「……まぁの、何故かシアターシステムがデーンと鎮座しとるリビングとか」

 

「執務室だ執務室、んでこの機器は例の宝の山から再生したモンだから、掛かった資金はゼロだ」

 

「どこをどう見たらゲームだのシアターシステムだのが転がっとる執務室があると言うのじゃ」

 

「お前用の巨大クッションとか、スイーツ専用冷蔵庫とかもあるけどな」

 

「仕方なかろ、我輩の部屋は何故か藁製のベッド以外は照明はランプ、後はコンセントすら設置されとらんのじゃから」

 

「あったりめぇだろ、お前アルプスの頂上まで電気通ってると思うなよ? 何甘えた事言ってるんだ」

 

「何で我輩の部屋だけ頑なにハ〇ジの部屋のままにしとるのじゃ!? 無茶苦茶殺風景過ぎて逆に身の置き場が無いわっ!」

 

「お前あの部屋にテレビとか冷蔵庫とか入れたとこ想像してみ? ムッチャバランスがアレで折角の統一感がブチ壊しじゃねぇか」

 

「だーかーらぁ、何で部屋のイメージが貧乏前世紀の位置に固定されとるのじゃ!」

 

「わーったわーった、んじゃ近いうちにリフォームしてやっから、それでいいだろ?」

 

「リフォームぅ? 部屋のか?」

 

「おう」

 

「……それで? あの部屋をどういう形にリフォームするつもりなのじゃ」

 

「えーっとそうだな、基本ヨーロピアン的なデザインで、丸石も相当溜まってきてるし消費しねーとな」

 

「……丸石ぃ?」

 

「ああその内経験値トラップタワーでも拵えようと思ってよ、ブランチマイニングしつつ溜めてたんだよ」

 

「ブランチマイニングて何じゃ!? てか経験値TTてリアルじゃそんなモンないわバカモンがっ!」

 

「いやほらお前、ピッケルとかに幸運エンチャ付けようと思ったらそれが一番効率いいし、矢とか火薬も入手できて一石二鳥だろ?」

 

「現実にはそんなモン存在せんから一石も二鳥もないわっ! 今年も漸く終わろうかと言う時にそんなマイクラネタをぶっ込んで来るでないわっ!」

 

「まぁそんな訳で石材もあるし、今度はヨーロピアン調の建造物にも挑戦しようと思ってな、どうよ?」

 

「どうよって何じゃ、どうしてマイクラネタから我輩の私室に繋げるのじゃ……しかしヨーロピアンとな、まぁその辺りだけは興味を惹く話ではあるが、一階が歪なログハウスで、二階が小粋なヨーロピアンとか少々構造的に破綻してはおらんか」

 

「まぁその辺りは一階の躯体を補強するとかせんとダメだな、でとデザイン的な物は……ちょい待てえっと……そうそうこのDVDに……」

 

「何でそこで小〇女セーラのDVDが出てくるんじゃ!? どうしてハイ〇の簡素な部屋からセ〇ラの屋根裏部屋へリフォームするんじゃ!」

 

「いやお前、それ以外だとほら、フ〇ーネの家くれーしかねぇぞ?」

 

「それはツリーハウスじゃろうが! 何で我輩の私室はハ〇ス子供劇場基準でしか無いのじゃ! しかもその中でも指折りの質素な部類ばかり選択しとるのはどうしてなのじゃ!」

 

「あ? 何か不服か? んじゃハック〇ベリーの家とかもあっけど」

 

「それもツリーハウスじゃ! しかもどんどん質素化が進んでおるではないか!」

 

「わーったわーった、じゃ映像資料渡してやっから、そっから自分で選べ、ほら」

 

「ナ〇シカと未来少年コ〇ンのDVDからどう部屋のデザインを選択すると言うのじゃ! どっちも世界が崩壊しておる作品ないではないかっ!」

 

「あれいいよなぁ、特にコナン、銛一本で鮫から始まってお前、戦艦とか飛行艇とか相手にガチるんだぜ? 戦闘の参考になるわ」

 

「あのアニメに娯楽を求めるんじゃなく、戦闘資料としての価値を求めとるのはお主だけでは無いのか……」

 

「あ? いや前居た部隊じゃお前、コ〇ンとかその辺りは教練ビデオになってたが……」

 

「どんな教育しておったのじゃ懲罰部隊!? てかそれ実行しようとするお主らもお主らじゃ!」

 

「懲罰部隊言うな、てかもうすぐ年明けだからよ、初詣の準備しとけよお前」

 

「む、そう言えば今年は年が明けたら初詣に行くと言うておったな、我輩着物は持っておらんから、いつもの格好でも良いか?」

 

「別にいいんじゃねぇの? ただ神社へ行くにはそこそこ険しいルートを進むからよ、それなりの装備は必要だかなら?」

 

「……険しい? 装備?」

 

「ああ、ザイルとかピッケル、後はピトンに……」

 

「ちょっと待つのじゃ」

 

「ん? どうしたよ?」

 

「今お主は初詣の事を言うておるのじゃの?」

 

「おうそうだけど?」

 

「何で初詣に行くのにそんな登山装備が必要なのじゃ?」

 

「あ? 登山装備じゃないぞ、クライミング装備だ」

 

「何で初詣がクライミングに繋がるのじゃ! お主は一体どこに初詣へ行くつもりなのじゃ!」

 

「どこにってお前、初詣は神社へ行くに決まってるだろうが」

 

「だーかーらぁぁ! 何で神社へ行くのにクライミングが絡むのじゃと聞いておる!」

 

「え、お前知らないの? 村の神社て岬の向こうのほら、崖があるだろ?」

 

「……岬の向こう? あの50m程ある垂直の断崖の事か?」

 

「そそ、神社あの上だから」

 

「待つのじゃ、確かあそこって微妙に陸から切り離されて断崖の柱みたいになっておるのでは無かったか?」

 

「おお、昔の地震でああなっちまったらしくてな、神社に行くには崖登らねーと行けねーんだよ」

 

「行けねーんだよ、じゃないわっ! なんじゃそれはそんな場所に神社があっても誰が命懸けでクライムしてお参りなんぞすると言うのじゃ、おかしかろ? 第一誰がそこ管理しとるのじゃ」

 

「あ? そりゃ神主がやってるに決まってるだろ?」

 

「神主!? 標高50mの崖上に乗っとる神社に神主!? それどうやって生活しとるのじゃ!?」

 

「あ? いやそりゃ普通に生活してんじゃねぇの? 前に会った事あるけどよ、普通の70歳くれーののジーサンだったけどよ」

 

「70の老人が崖上の神社で神主をしとるじゃと!? それって崖を上り下りして移動しとると言うのか!?」

 

「別に普通じゃね? 初詣の時もジーサンバーサン崖登ってくし」

 

「村の老人が50mの崖をクライミングして初詣って何じゃそれは!? どんな体力しとるのじゃ!?」

 

「まぁ子供の頃からそういうのが当たり前だったら、ジーサンバーサンになってもそういうのは当たり前のままって感じになるんじゃねぇのか?」

 

「そんな事になる訳なかろ!? どういう理論じゃそれは!?」

 

「神社って言や成人式とかもあそこでやるらしくてな、毎年ロープ一本で体縛って崖から飛ばねーと、村じゃ成人として認めて貰えねーらしいぞ」

 

「成人式でバンジーてどこの部族の話なのじゃ!? どんな掟が蔓延っとるんじゃあの村!?」

 

「まぁそんな訳でザイルとか持ってかねーと、神社に行けねーからよ、持ってねぇなら俺の予備貸してやっけど」

 

「何でお主はそういう特殊な環境を当たり前に受け入れておるのじゃ!? 我輩は新年早々ロッククライミングなんぞしとーないわ!」

 

「あ? だってお前前からそういう節目の縁起事は海軍では特に大事だからってよ、初詣は行くべきだっつってたろ?」

 

「だからその初詣が凄まじくハードルが高い物になっておるから無理じゃと言うておる」

 

「あーそんでよ、神社の境内じゃ屋台とか出てるらしいぞ、たまにはそういう店で買い食いとかもいいかも知れんな」

 

「屋台!? 地上50mの断崖の上で屋台!? テキ屋はどうやってそんなとこに屋台とか材料を運んでおると言うのじゃ!?」

 

「え、普通に崖登って運んでんじゃねぇの?」

 

「テキ屋凄過ぎじゃろ!? 幾ら仕事じゃからと言うても命を懸け過ぎじゃろうが!?」

 

「お前が好きそうな甘酒とか綿菓子もあるだろうからよ、ほら帰りにどうよ」

 

「……わたがしとな? う……うむ、それはちょっと魅力的じゃの……そうか、わたがしか……」

 

「まぁそんな訳で先ずはクライムの用意だ、ほらこれ」

 

「……のう提督よ、これは一体何なのじゃ?」

 

「あ? それ布テープ、ダクトテープより強度は劣るけどよ、手で綺麗に千切れるし加工がし易いからよ、ちっちゃく千切れば乳首用にも使えるから、ほら」

 

「……もう下着の事で突っ込むのはこれで何度目になるのかのう、のう提督よ、我輩は履いておるとずっとずっと言っておろうが……」

 

「あー今回はちっと重量的にシビアにしねーといけねぇからよ、こっち使うか?」

 

「……油性マジック? これを我輩にどう使えというのじゃ」

 

「いやそのまんまだが? ほら張る訳じゃねぇから毛の被害はねぇし、黒く塗っときゃ目立たねぇって事で、履かない派のお前に取って公序良俗も守れて究極の軽量化になるんじゃねぇかって、この前先輩の所から送ってきたんだけどよ」

 

「サブロぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」



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にじゅうさんにちめ

 

 

 

「のぉ提督よ、ちょっと聞いて良いかの?」

 

「何だ利根?」

 

「お主は何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? 執務室(ログハウス)の大改装してんだよ」

 

「いやその何やら改装をしてるのは見れば分かるのじゃが、何故執務室(ログハウス)の一階ドアを開けたらすぐキッチンなのじゃ? これはアレか? 超大昔TVCMでやっとった玄関開けたら二分でごはんとかアレでも目指しておるのか?」

 

「何かクソ昔のCM持ち出してきたなおい、いやこれはちょっとした事情があってよ、改装しねーといけなくなったんだよ」

 

「……また事情とか言い出しよった、今までそのパターンから始まる話に我輩まともな物が無かった記憶しかないのじゃが……で? 今回の事情とやらはなんなのじゃ?」

 

「あー、ちょっと前大本営から連絡があってな、驚愕の事実が発覚した」

 

「大本営からじゃと? それで一体何があったのじゃ?」

 

「ウチってほら、鎮守府って事でここに居を据えてるだろ?」

 

「うむ、そうじゃな」

 

「んでよ、ちくっと物資関係の書類を大本営に提出したんだけどよ、事務方から内容間違ってるって書類が返って来たんだよ」

 

「物資関係の書類と言うと先週送ったヤツかの? おかいしの、我輩もあれチェックしたがおかしな部分は無かった筈なんじゃが……」

 

「これがその書類なんだがよ、ほれ」

 

「なになに……ってなんじゃこれは、いきなり一行目が赤ペンで修正されておるではないか……」

 

「それな、マジビックリしたぜ」

 

「……びっくりも何も、この修正されとる部分て拠点名称が書かれとる欄ではないか!? これはどういう事なのじゃ!?」

 

「あーそれな? 一応確認したらよ、軍で今鎮守府ってなってんのは横須賀に呉、舞鶴に佐世保、後は大坂だけって事になっててよ、ウチは鎮守府じゃねぇらしいんだよな」

 

「あーあーそういう、確かに鎮守府と言えば内地の要所じゃからの、こんなド田舎の僻地にある拠点が鎮守府と言うのはよう考えればありえんというのはまぁ納得じゃ」

 

「まぁ鎮守府って俺らが勝手に言ってただけだしな、まぁその辺りは仕方ねぇって感じなんだけどよ」

 

「して? ウチは結局どういう区分の拠点になるのじゃ? 規模的には泊地どころか基地も怪しい規模なのじゃが……」

 

「倉庫」

 

「……なんじゃと?」

 

「倉庫だっつってんだろ、海軍管轄備蓄倉庫、ウチはそういう区分になってんだとよ」

 

「まて、まてまて倉庫じゃと? 提督と艦娘が着任しておる拠点が倉庫ぉ? どういう事なのじゃそれぇ!?」

 

「どういうもこういうもそういう事らしい」

 

「お主はそれを聞いて何とも思わんのか!?」

 

「あー、だから年間予算少ないのかとは思ったけどよ」

 

「待つのじゃお主! よう考えてみい、ここが軍管轄の倉庫という事はじゃ、お主と我輩は倉庫番という事になるのじゃぞ? そんな一瞬一世を風靡したゲームタイトルみたいなポジに提督と艦娘がなっとるのはおかしいとお主は思わんのか!?」

 

「お前今回は古いネタばっか持ち出してくんな? まぁアレだ、取り敢えずはだ、今問題なのはウチがどういう区分の拠点なのかではなく、これからも予算が年間20万程度しか支給されねーって事で、それをどう有効活用してこの先生き延びるかという事になる訳だがよ」

 

「生き延びるってなんじゃ!? 軍務に就いてて仕事をするよりサバイバルを優先せんといかんってどういう状況なのじゃそれは!?」

 

「まぁこれまでも色々工夫してなんとかやってきたからな、要するに今まで通り活動しつつ、より利便性の高い生活環境を整えていくという方針は変わらねぇって考えりゃよ、な? 別にそれ程問題はねぇかなって」

 

「問題大ありじゃ! そもそも海軍の管轄の、しかもこんな山のテッペンの倉庫て一体軍ではどう活用されると言うのじゃ!?」

 

「まぁそこでこの改装になる訳だ」

 

「……のぉ提督よ、一体何をどうすればその話がその台所に繋がるのか我輩にも理解できるよう説明してくれんかの」

 

「あーそれな、先ずウチは光熱費は大本営持ち、予算は年間20万前後なのは決定事項な訳だ」

 

「年間20万て、月に換算すると1万6千円ちょいじゃぞ、幾ら光熱費の心配が無いからと言うてそれで一体何をせよと言うのじゃ……」

 

「それ! それそれ!」

 

「む、それって何じゃ?」

 

「ウチはゲンナマ支給が壊滅的な代わりによ、光熱費……つまり電気ガス水道は大本営持ち、つまりそっちは使い放題になってる訳だ」

 

「……まぁ確かにの」

 

「で、この状態で生き延びていこうとしたら、自活する分以外に自力で予算を獲得しないといけない訳だ」

 

「予算を獲得て……一応我々は特別国家公務員じゃからの、前も言うたようにバイトとかは禁止されておるぞ? それはどうするつもりなのじゃ」

 

「確かに個人としての労働は軍では禁止されている、だが拠点でという縛りの内なら例外的に公費に充てるという前提で多少の経済活動は容認されてんだよ」

 

「あーあー、軍の懐事情も厳しいらしいからの、確かに拠点運営に回すならばそういう事も許可されておるようじゃが……」

 

「そこでアレだ」

 

「アレってなんじゃ……ってうーわ!? 道路の脇に何ぞ小屋っぽい何かが建っておる!?」

 

「ウチで経済活動をしようと思えば、木材、山菜、山で獲れた獲物を使った何かか主力商品になる」

 

「……軍の拠点が活動して出した結果が、山間集落の特産品染みたブツとか笑えん状態じゃの……」

 

「で、それらを加工してあそこに並べて販売すりゃほら、現金収入が!」

 

「……のう提督よ」

 

「あ? 何だよ」

 

「……あれってもしかして世間一般で言う所の無人販売所というヤツではないのかの」

 

「おう、まぁ人里離れてっから売れるかどうか心配だったんだけどよ、日持ちのするスイーツとか猪肉の燻製とか並べてみたらよ、ボチボチとハケるのが分かったから、これはイケるって事で増産体制を整える事にしたんだよ」

 

「増産体制ぃ? ってもしやこの台所の拡張工事というのは……」

 

「商品を作るのに今までの規模じゃ追っつかねぇからよ、大型の調理機材を色々と設置してみた、んで電機やガスは使い放題だし、そこんとこは経費が0だから丁度いいなって思ってよ」

 

「何で海軍拠点が野山の幸を加工して無人販売所で売り出すという活動に勤しまねばならんのじゃ!? しかもそれをせっせと作っとるのは海軍提督とかもう訳がわからんぞ!?」

 

「バッカお前ほら、横須賀とか行ってみ? 海軍カレーとか売り出して商売してんじゃねーか」

 

「アレは日々の糧を得る為にカレーを売っとる訳じゃなくて、軍のイメージアップ効果を狙って活動しとるのじゃバカモンが!」

 

「何だよ文句ばかり言いやがってよ、結局お前予算獲得したいの? したくねーの?」

 

「何でお主はいつもいつも問題をそうミニマムな位置に設定するのじゃ!? 我輩が言っておるのは予算獲得の活動が問題と言うておるのではのうて、やり方がおかしいと言うておるのじゃ!」

 

「まあそうカリカリすんなって、ほらあそこで販売してんのは特産品だけじゃねぇぜ?」

 

「だから我輩が言うておるのは取り扱い品目がどうのというのではなくてじゃな……ってうーわ、提督よ……アレは一体何じゃ」

 

「ここは一応海軍拠点だからな、一応それっぽいモンも売ってた方がいいだろ?」

 

「……だから?」

 

「村で余りまくってるイ級の外殻を組み立てて、剥製として商品化してみた」

 

「こんな鬱蒼とした山奥にポツンと設置されとる無人販売所で、特産品に混じってリアルイ級が並んでおったとしたら不気味極まりない絵面(えづら)になるとお主は考えんかったのかの……」

 

「割と人気商品なんだぜこれ、ほらコイツなんて頭押したら泣き声が出るギミックが仕込んであるし」

 

「キモッ!? なんじゃこれゲギョゲキョ言うておるぞ!?」

 

「他にもよ、マスコットとしてお前のフィギュアなんかも作ってみた、ほらこれ」

 

「なんじゃと? お、おう……これは……随分とデフォルメされておるが確かに我輩っぽい造りをしとるの、しかし何故我輩の人形なんぞ作ろうとしたのじゃ?」

 

「それな? ほらやっぱこういうのってマスコット的な華が必要じゃねーか」

 

「華か……ふ、ふむ、確かにそう言われればそうかも知れんの」

 

「それに俺自身の人形作ってもネームバリューなんかねぇしよ、そう考えたらお前の人形ってなんだろ?」

 

「ま……まぁの、我輩という艦娘をモチーフとした商品を作るとなれば、確かにそれは目玉商品になる事は請け合いじゃの」

 

「色々特徴出すのには苦労したけどよ、ほら、こうしてスカートめくったら一発でお前って判る仕様にしたからその問題は解決できたぜ」

 

「待つのじゃ!? なんでこの人形下に何も履いてないのじゃ!? て言うか布でこさえた絆創膏を股間に装備させるでないわっ!?」

 

「いや、そこは忠実に再現しねーとよ? この人形がお前って分かんねーじゃねーか」

 

「我輩という認識がされる特徴がそこだけってどういう事じゃ!? むしろ我輩は履いておるといつも言っておるではないかっ!?」

 

「んでまぁこの人形もここに並べてっと」

 

「イ級とイ級の真ん中に我輩の人形をそっと並べるでないわっ! なんでお主はそういう悪意に満ちた陳列でそれらを売ろうとするのじゃ!?」

 

「あ? 悪意じゃなくてだな、ほら、こうしときゃ抱き合わせ販売かって思ったヤツがセットで買ってくかも知んねーじゃねぇか」

 

「我輩とイ級を抱き合わせにしようとするでないわっ!?」

 

「そんで人形のスカートをこう……勢いよくめくったらお前が歌ってた例の豊胸音頭が……」

 

「またんかっ!? お主あの歌を録音しとったのか!? 寧ろそんなギミックを仕込むとかやり過ぎじゃろうがっ!?」

 

「んでついでに余り気味のこいつも並べときゃ、もしかしたら売れるかもって事で」

 

「……何じゃコレは? 我輩の名前が書かれた箱?」

 

「あーそれな、先輩んとこからほら、履かないならせめてって気を使って定期的に送られて来るダクトテープ、折角お前用にって特別に配布してくれてんのにちっとも使わねーからよ、そのまんま放置してたらどんどん貯まっちまってて邪魔になってんだよな」

 

「サブロォォォォォォォォォォォオオオオオオ!!」

 

 



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にじゅうよんにちめ

 

 

「のぉ提督よ、ちょっと良いかの?」

 

「あ? 何だ利根」

 

「いやこの前の無人販売所の脇にの、見慣れん小屋がいきなり生えておるのじゃが、お主あれに心当たりは無いかの」

 

「あーあれな、あれは大本営施設要綱で設置するべしって書かれてる鎮守府施設の一つだ」

 

「施設要綱ぅ? なんじゃそれは」

 

「お前知んねーの? ほら、拠点っつーのは執務棟とか工廠とか軍務をしてくのに必要な施設があるだろうが」

 

「うむ、そうじゃの」

 

「んで、大本営では基地機能を維持するのには最低限どれだけの施設が必要で、どういった形で設置しろってテンプレが用意されてんだよ」

 

「ほぉ、なる程の、要するに拠点に必要な施設を規格化してそれを纏めておるのがその施設要綱という物になるのじゃな」

 

「まぁそういう事だ、んでその要綱に書いてんのを参考にすっと、拠点の最低単位として必要なのは、執務棟、工廠、入渠・出撃ドックって事になってんだよ」

 

「ふむふむ」

 

「んでウチに照らし合わせてみたんだけどよ、今ウチには執務棟(ログハウス)、工廠(自動車整備工場)、入渠施設(岩風呂)、出撃ドック(各種)と一応は揃っているように見える」

 

「と言うかそのカッコの中に書かれている単語は、誰がどう聞いても海軍施設とは関連性の欠片も無い物じゃと言われてもおかしくない状態になっておると思うのじゃが……」

 

「まぁその辺りはな、ほら、形から入って後々状況に合わせた改修をしてくって事でどうよって思ってんだがよ」

 

「一部改修しても軍の施設化が無理な有様になっとると思うのは我輩の気のせいなのかの……」

 

「何言ってんだ、一応この資料は基本的な部分は押さえてあっけど、現場じゃそこから色々と状況に合わせて色々改修してっから、割と拠点によって施設の配備状況はまちまちなんだぜ?」

 

「まぁそれは海域の状況次第じゃから、全部の拠点が同じというのは確かに効率的では無いのかも知れんの」

 

「だろ? ウチも状況に合わせて施設改修は都度やってきてっからな」

 

「……のう提督よ」

 

「あ? なんだよ」

 

「都度改修て、何の施設をどう改修しておると言うのじゃ」

 

「そりゃお前、先ず執務棟は利便性を増す為に二階建てにして、電化製品の充実、そして拠点の活動資金の中心となるキッチンの大型化をしただろ?」

 

「それは生活環境の整備を整えて、商売用の道具を用意しただけと言えなくもないの……」

 

「次に母艦やお前の出撃の効率化の施設も設置したし」

 

「スッポンポンで入らねばならん落とし穴とか、出撃してしまうと山道を牽引して戻さねばならん母艦射出用の斜面のレールか」

 

「入渠ドックの拡張と高速修復剤用の投入システムの配備も完了した」

 

「ブランチマイニングで湧いた温泉で岩風呂を拵えて、千と〇尋の神隠し的ギミックを仕込んだ結果、マッパで錦鯉のため池に落とされる危険性が生まれてしまったのじゃったの」

 

「そんで工廠」

 

「主に村のジャパ〇バスの整備工場と化しておる」

 

「まぁ大体の拡充は進んだって事で、今度はこの要綱に書いてある優先度がやや低い施設関係もそろそろ手を付けていこうって事にしたんだよ」

 

「お主我輩の言葉を聞いておったか? ここの施設は一応名称は付けられておるが何一つ軍務的に使用できる建物にはなっておらんではないか!」

 

「あ? 何言ってんだお前、さっき俺が言った事聞いてなかったのか?」

 

「は? 何がじゃ」

 

「要綱はあくまで基本的な部分しか押さえてなくて、実際の施設は環境に合わせて対応するモンだっつったろ?」

 

「その対応する環境を軍務ではなく生活に合わせておるのがそもそもおかしいと言うておるのじゃ!」

 

「しかたねーだろ! ウチじゃゲンナマはねーし食いモンも自給自足なんだからよ! 仕事する前に生きる為の色々整えねーと死んじまうだろーがっ!」

 

「その整え方の方向性が全て極端に突き抜けていると何故お主は気付かんのかの……」

 

「まぁそんな訳で我が鎮守府(倉庫)も食堂施設を作ってみた」

 

「食堂施設ぅ? ってもしやあの……」

 

「おう、無人販売所脇のアレ」

 

「はぁ? 何でごはんを食う場所が執務棟からこんな離れた場所に……ってのう提督よ」

 

「ん? なんだ」

 

「この食堂、何でシャッターが閉まっておるのじゃ?」

 

「何でって今営業時間外だからな、従業員は裏のドアから入るよーになってんだけど」

 

「営業時間ん? って良く見れば「提督食堂」って謎の看板が掛かっておるのじゃが……」

 

「おう、今からシャッター開けっからちっと待ってろ」

 

「いやいやちょっと待つのじゃ……ってうーわ! なんじゃこの駅そば染みた構えの室内は、てか何故我輩と提督しか利用せんのに椅子がこんなにも並んでおるのじゃ?」

 

「あ? 何でってお前、椅子が無きゃ客は立ち食いしなくちゃなんねーじゃねーか」

 

「客ってなんじゃ客って!? ここは食堂施設ではないのか!?」

 

「んだようっせーな、表に看板掛かってたろーが」

 

「看板? あの提督食堂……ってまさか」

 

「食堂施設を作る計画を実行に移すのはいいんだけどよ、利用者がお前と俺、んでピエトロとイッポリートだけだとほら、勿体ねーから時間限定して営業してみっかと思ってよ」

 

「普通食堂施設と言うのは着任しとる者が多いからそれに対応する施設を必要とするのじゃ! 施設を作ったら持て余してしまうからそれを客商売に転用するという流れは誰がどう考えても目的の間逆を進んでおるではないかっ!」

 

「んでこれがお前用の服な」

 

「服ぅ? 何で唐突にそんな物が出てくるのじゃ…… これは、黒のワンピに白い半袖シャツとエプロンに……うん? なんじゃコレは」

 

「あ、それ魔族コス用のツノな」

 

「そう言えばお主昨日異世〇食堂のDVDを見ておったな? コレはアレか、ドラゴンとかドワーフが扉を開けたら食堂でした的なアレを作ろうとしたのか!?」

 

「俺の事はシェフと呼べ」

 

「ガタイが良いからお主のみ無駄に再現度が高い状態になっとるの!? てか目指したのが洋食屋なのに何で店が駅そば状態になっておるのじゃ!?」

 

「隣の無人販売所との親和性を考慮したらこういう形になった」

 

「切っ掛けがファンタジーなのに落着点がやたらとリアルなのはどうなのじゃそれ……」

 

「ちゃんと賄いも出すからな、取り敢えず今日はクジャクカレーだ」

 

「食堂にごはんを食べに来るという軍事施設の存在意義が既に欠如しておるではないかっ!? て言うか〇世界食堂的賄いと言うならそこはチキンカレーではないのか!? クジャクカレーって何じゃクジャクカレーて!」

 

「ゆくゆくはピッチーを増産する計画もあるが、先ずは来店者数が掴めるまでどの程度素材を準備する必要があるか判らんからな、暫くは地産地消路線でいくことにした」

 

「ピッチー増産てあの卵をぶつけて孵化させるというマ〇クラ的なアレでか!? と言うか地産地消て要するに野山で狩って来たブツを材料にするという事では無いか!」

 

「その辺りが整うまでシーフードフライとかも仕入れ数が読めんからな、暫くは錦鯉に頼る事になると思う」

 

「錦鯉は淡水魚じゃからシーのフードではないわっ! 寧ろアレは観賞用で食用ですらないからなっ!」

 

「肉はまぁ……猪肉に熊もあるし、まぁ暫くは肉の日も乗り切れるだろう、後の問題は野菜だと思ってる」

 

「ここは異〇界食堂じゃのーて、狂ったジビエ食堂ではないのかの……」

 

「あ? 何言ってんだお前看板見て来いよ、ちゃんと提督食堂って書いてんだろーが」

 

「そこで狂ったオリジナル要素を前面に押し出してくるでないわっ! 寧ろ鎮守府の施設なのに何で利用者である我輩が給仕する側に回らんといかんのじゃ……ったく」

 

「あ? んなもん働く者食うべからずだ、お前労働も無しにメシが食えると思うなよ?」

 

「我輩は艦娘でお主は海軍提督じゃと何度言えば判るのじゃ!? 労働目的は防衛活動であって食堂経営では無いのじゃぞ!」

 

「お前なぁ、国を守る組織の基地が表向き飲食店に艤装してるってのはな、由緒正しき形態なんだぞ」

 

「何じゃそれは、我輩そんな訳判らん話は初耳じゃぞ」

 

「例えば戦隊シリーズ一作目のな、ゴ〇ンジャーのバックアップ組織であるイーグル日本ブロックの基地ってよ、一階がカレー屋で地下がゴレンジャーの基地になってたりするし」

 

「そんな昭和中期の特撮ネタを持ち出しても最近の若者には通じんじゃろうがっ! それにあの店はフルーツパーラーであってカレー屋ではないわっ! 黄レンジャーが毎度毎度カレー食ってただけであそこはカレー屋ではないならのっ!」

 

「なんかやたら詳しいのなお前、まぁそういう訳でここは軍事拠点を隠蔽する為に活動する提督食堂って事で」

 

「何で軍の防衛施設である鎮守府が食堂という体で隠蔽せねばならんのじゃ! 寧ろ既に村とかにはここが何かというのは周知されておるではないかっ!」

 

「鎮守府じゃなくて海軍倉庫な、てか村の連中ここが軍事拠点って理解してねーからよ」

 

「……何じゃと、ではどういう感じで村の者達は我輩らを見ておると言うのじゃ」

 

「あー、俺ん事は都会から越して来た何でも屋のニーチャンって言ってたなぁ」

 

「……概ねその部分は間違ってはいないのが反論し辛いのぅ」

 

「んでお前の事だけど……まぁそれはアレだ、その……」

 

「……何なのじゃ、何故そこで口篭る」

 

「あーその、な、ほら、お前自主的に近海の哨戒とか色々やってんだろ?」

 

「うむ? まぁそれ程危険は無いと言うてもやはりそれはゼロではなかろ? なら艦娘である我輩としては使命を全うする為できる限りの事はせんといかんというのは道理では無いか」

 

「まぁその一本気なお前の性格は大事な部分だってのは分かってんだけどよ、ほら、お前哨戒に出る時いつも漁協のオバチャン達とかに挨拶してんだろ?」

 

「まぁの、いつもかりんとうとか飴ちゃんくれたりと世話になっとるから挨拶くらいはせんとの」

 

「んでその時によ、いつも海の平和は任しとけ的な事を言ってたりしてるらしいじゃねーか」

 

「そんな大層な言い方はしとらんがの、まぁニュアンス的にはそういう事を言った事もあったかもしれんの、それがどうしたのじゃ?」

 

「あー……うん、なんつーかお前ってよ、山の上の便利屋んとこの妹で、ちょっと厨二が入った可哀想な娘的な……」

 

「どうしてそうなっとるのじゃ!? 我輩は海の上を航行したりたまに砲撃訓練したりしとるじゃろっ!? どこからどう見ても艦娘ではないかっ!?」

 

「村のモンの艦娘ってイメージってよ、長門とか大和って感じのこう……ゴッツイ感じみたいでよ、小型のヤツに対する認知度はゼロみたいなんだよなぁ」

 

「幾ら村民の属性が修羅じゃからって艦娘に対する認知度までが大艦巨砲主義のみって脳筋にも程があろっ!? 寧ろ我輩が厨二で可哀想な、しかも提督の妹ってどうなのじゃそれ!?」

 

「そう言や来年の成人式にな、お前も参加したらどうだって話来てたぞ」

 

「は? 成人式ぃ? なんじゃ突然話の流れが飛びおったが……と言うか我輩もう二十歳を超えておるぞ?」

 

「いやほらお前ってさ、そういう行事に参加した経験って無いだろ?」

 

「まぁ普通艦娘であるならそういう物に関わる機会は無いの」

 

「んで村のモンと世間話してた時によ、まぁ色々お前の話とかになったんだけどよ」

 

「……ふむ?」

 

「仮にも若い娘っ子がよ、一生にそう何度も無い晴れの行事に一度も参加してないって可哀想じゃねぇかって、だから思い出作りって事でどうよって話が出てんだけど」

 

「あ~……そうか、何やら色々村の者には気を使わせてしまったみたいで申し訳ないの……」

 

「まぁ折角の申し出だしよ、俺としてもお前にそういう思いで作りの時間も必要なんじゃねーかって気持ちもあったりするしよ……まぁそんな訳でどうよ?」

 

「その気遣いはまぁ……確かに嬉し……い、ってのう提督よ」

 

「あ? 何だよ」

 

「この村の成人式というのは確か……」

 

「ああ、例の神社からバンジーするヤツな、最近は村も古い慣習を見直して男女平等って考えを取り入れたらしくてな、男も女も全員バンジー参加って事になってっから」

 

「なってっから、じゃないわっ! どうして我輩が自然に参加する流れの話をしておるのじゃ! 何で古い慣習を見直したら修羅化が更に進む事になってしまっとるんじゃ!? 寧ろそこはバンジーという狂った行為を是正する所ではないのかっ!?」

 

「え、参加しねーの?」

 

「当たり前じゃ! 何で我輩があんな海上50mの断崖から飛ばねばならんのじゃ!? 前半のホロリとする話からどうしてオチがそんなハードな物へ変化するのじゃ!」

 

「あー……まいったな、成人式用の晴れ着とかもう発注しちまってんだけどよ、参加しねーってなるとキャンセルするしかねぇか」

 

「……成人式の晴れ着じゃと? お主そんな物を用意してたのか」

 

「おう、ほらこのカタログの48Pに載ってるコレなんだけどよ」

 

「なになに……明石セレクション通販カタログとな? えっと48ページ48ページ……って、のう……提督よ」

 

「ん? どした」

 

「どした? じゃないわっ! 何で成人式の晴れ着が振袖とかじゃのーて腰蓑一丁なのじゃ……」

 

「あ? んなもんバンジーすんだからそれに合わせた正装すんのは当たり前だろ、それに衣装は腰蓑だけじゃねーぞ」

 

「……腰蓑が果たして衣装というカテゴリに入るのかどうかという議論は取り敢えず横に置いておくとしてじゃ、他に何があると言うのじゃ」

 

「いやそれ発注した時によ、利根も女性なんだから気をつけてやれってほら、バンソーコ、先輩んとこのお勧めでセットにしてあっから安心しろ」

 

「サブロオオオォォォォォォォオオオオオオオ!!」



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にじゅうごにちめ

 

 

 

「のう提督よ、ちょっといいかの」

 

「あ? 何だ利根」

 

「ちょっとシマ〇ラに春の新作をチェックに行こうかと車を出そうとしたんじゃが、ガレージに我輩の車がなくての、もしやお主がまた何かやっておるのではなかろうかと思っておるのじゃが、何か知らんか?」

 

「何だよシ〇ムラ春の新作って、年から年中おばちゃんやガキの服しか売ってねーのにそんなのチェックしてどーすんだよ、あ、車は壊しちまった、すまん」

 

「何じゃと!? 〇マムラのどこがダメじゃと言うんじゃ!? って言うか物のついでみたいに今車を壊したとか言うたか!?」

 

「おう、ちっとした事情でな、ぶっ壊れちまった」

 

「……一体どんな事情があったら車が壊れるのかその辺りじっくり聞かせて貰おうではないか、さて理由を言うてみい」

 

「いやほら、お前の車って零戦のエンジン搭載してただろ?」

 

「ああ、あのクソでかくてクソ煩くて一人ではエンジンも始動できなくて動き出したら止めれない例のヤツじゃな」

 

「おうまぁアレだ、なんのかんのってアレ飛行機のエンジンだったろ? だからプロペラと羽付けたら飛ばねーかなって改造して、そこの斜面から飛ぼうとしたんだけどよ、上手くいかなくてそのままクラッシュしちまった」

 

「一体何をやっておるのじゃお主は!? 幾らエンジンと羽が航空機の物でも本体がオート三輪じゃ空力もへったくれも無いじゃろうが! って斜面から飛んだじゃと!? ……うーわ、崖の中腹にオート三輪がぶっ刺さっておる……」

 

「まぁそんな訳でお前の車ぶっ壊れちまったから、新しい車を調達して整備しておいた」

 

「また随分手回しが良いの、まさかまたとんでもなく古い車とかじゃあるまいな?」

 

「いや、今度は割りとまともってかシャレオツな車を用意したぜ、ほらそこに」

 

「む、工廠の中の……ほぉ、何と言うかちっさくはあるが中々これはカッコイイ車ではないか」

 

「そいつはスズキカプチーノっつってな、軽だがツーシータースポーツなんだぜ」

 

「ほうほう、これは中々……ってのう提督よ、何故またこの車はドピンクなのじゃ? 元々これはこういう色で発売されておるのか?」

 

「あ? いやそんな訳ねぇだろ、ほら、婦女子が乗る車はなんつーか……ピンクじゃね? だから全塗装しておいた」

 

「またしてもお主特有の偏った感性が炸裂しおったのか……はぁ、まあ良いわ、それで? これはちゃんと走るのじゃろうな?」

 

「おおそれは大丈夫だ、ちゃんと整備改修はしておいたから、いつでも乗り出しできるぜ?」

 

「……ちょっと待つのじゃ、今何と言った?」

 

「あ? いつでも乗り出しできるって言っただろ?」

 

「その前の言葉じゃ……整備は良いとして、改修じゃと? それは車の整備に於いては一般的に使う用語ではあるまい……今度は一体何をコレに仕込んだのじゃ……」

 

「ああそれな、んじゃ先ず車に乗って貰おうか」

 

「うむ? 乗るって……こうか?」

 

「んでキーを差して横のボタンを押す」

 

「これかの」

 

「そうそう、それで内蔵されてるAIが作動する」

 

『こんにちはマイケル』

 

「マイケルって誰じゃ!? って言うかコレは提督の車に搭載されとったあの胡散臭いこんぴゅーたーではないのか!?」

 

「いやいや、アレのデータを元に色々試行錯誤と小型化を施して、更に進化させたAIがそれだ」

 

『初めましてマイケル、私の名前はKnight Industries Two Kei Automatic Thousand、愛称はK.I.T.K.A.T、キットカットと呼んで貰っても結構』

 

「何で進化したらこんぴゅーたーがチョコ菓子になるんじゃ!? ってマジでマイケルって誰じゃ!?」

 

「いやそりゃお前人工知能搭載の車に乗ってるヤツっつったらよ、マイケルだろ? な?」

 

『はい、マイケル』

 

「だから何で我輩が乗る車にそんな余計なオプションを装備するのじゃ!? 突っ込み所が多過ぎて運転に集中できんではないかっ!」

 

「まぁまぁ、ほらヘタなカーステより音質はいいし、小粋なアメリカンジョークとか飛ばしてくれっからドライブしてる間は退屈しねーぜ?」

 

「何でカーステよりいい音質で小粋なアメリカンジョークを聞かされねばならんのじゃ……技術投入した結果が丸々無駄になっておるではないか……」

 

「んでまぁこれはデフォのカプチーノと同じなんだけどよ、ルーフのここをこうして……こうすると」

 

「おお、屋根が外れるのか」

 

「そそそ、これからの季節オープンにすっと風を肌で感じつつ走れてゴキゲンなドライブができるって寸法だ」

 

「おおー、これは中々オシャレではないか、我輩ちょっとワクワクしてきたぞ!」

 

「んで屋根を外した時に使える目玉機能ってのがあってよ」

 

「ふむふむ、それは一体どんな機能なのじゃ?」

 

「そこのボタンがあんだろ?」

 

「そこの? ああこれかの」

 

「そそそ、それポチっとするとな、座ったお前ごとシートがお空にシューーーーーーーッ!」

 

「何で我輩が空へぶっ飛ばねばならんのじゃ!? どうしてそんな危険な機能を搭載するのじゃ!? しかもこのボタンエアコンの真横に設置されとるから間違って押す危険があるじゃろうがっ!」

 

「いやまぁ電源取るのにそこが一番都合が良かったからな、んで屋根外してない時は気をつけろよ? 結構デンジャラスな事になるからよ」

 

「屋根がなくともシートごとぶっ飛んだら充分デンジャラスじゃ! この飛び上がるシートは一体何の為に装備したのじゃ!」

 

「ああそれな、ほらアレだ、町に買い物に行ったとするだろ」

 

「……買い物にか、ふむ、それで?」

 

「んでルンル気分でシマム〇へ行こうと出掛けた途中でよ、町中の信号で捕まって一旦停止したりするじゃね?」

 

「うむ? ま……まぁそういう事もあるかも知れんの」

 

「で、そこへ誰かに追われてきたマッチョガイとかヤベーカンジのヤツが拳銃片手に乗り込んできてだな、『おいお前! さっさと車を出せ!』ってカンジでトラブルに巻き込まれそうになったりした時によ」

 

「待つのじゃ! なんでひなびた駅前商店街がやっと維持できとるよーなちっさい町でそんなアクション映画ばりのトラブルが舞い込むと言うのじゃ!?」

 

「んでそういう事態に巻き込まれそうになった時はだ、緊急脱出の為にシートごとお空へシューーーーーーッ!」

 

「お主の脳みそがお空へしゅーーーーーしとるのではないか!? あんなちっさい町で筋肉マッチョが鉄砲片手に車へ乗り込んでくるなんて非常事態は普通発生せんからな! 絶対有り得んからな! お主は夢見る厨二病患者かなにかなのか!?」

 

「まぁ最悪逃げるのが失敗しても、筋肉マッチョとの交渉はキットカットに任せれば安心なんだけどな」

 

『はい、マイケル』

 

「人の事を頑なにマイケル扱いする怪しげなこんぴゅーたーに命を預けとうなんかないわっ!」

 

「まぁ取り敢えず今んトコ改修したのはこの辺りかな、でもまだまだ煮詰めないといけねぇとこが多いから、その辺りはまた使える部品を発掘してからだ」

 

「充分余計な物が装備されとるではないか……これ以上何をどう改修すると言うのじゃ」

 

「取り敢えずプロペラと羽かな」

 

「だから何で車で空を飛ぼうとするのじゃ!? もう改修以前に車の存在意義が真っ向から否定されておるではないか……」

 

「まぁその辺りは筑摩の改装が終わってからの話になるんだけどよ」

 

「……なんじゃと? 筑摩とな?」

 

「おう、筑摩」

 

「筑摩て……どういう事じゃ」

 

「あ? いやお前車の後ろにあるじゃねーか、ほらそれ」

 

「それってこれは前にこさえた母艦ではないか」

 

「おう、推進機関に筑摩の艤装六機積んであっから、名前も筑摩にした」

 

「いやその名称に至った理由はなんとなく察せん訳ではないが、まんま筑摩というのはいささか気持ちが微妙になってしまうの……」

 

「でと、とうとうこの筑摩にもちゃんとした武装を搭載する日がやってきたぜ」

 

「ほう? 武装とな? まさかまたカタパルトとかバリスタとは言うのではあるまいな?」

 

「いや、今度は新設計した酸素魚雷を積む事にしたからよ、これで艦の守りは万全になるぜ?」

 

「酸素魚雷じゃと? 見た感じ甲板や上部構造部に発射管は見えんようじゃが、もしや艦首埋め込み型になっておるのか?」

 

「いや、魚雷を使用する都度甲板に発射機構を固定して使う」

 

「使用する時に? それはまたえらく面倒な事をするのじゃの、あんな重量物を付けたり外したりするのか?」

 

「は? 重量物? 何言ってんだお前、発射機構は塩ビパイプを真っ二つにしたモンを並べるだけだから、全然重くなんてねぇぞ?」

 

「なんじゃと? 塩ビ管じゃと?」

 

「おう、これなこれ」

 

「のう提督よ……これってご家庭の下水や水周りに使用するパイプというヤツではないのかの……」

 

「おうそれそれ、んでそれを真っ二つにしたヤツをこう固定してだな、その上に発射体をこう据えて」

 

「待つのじゃ」

 

「あ? 何だよ」

 

「それは発射体と言うより、ペットボトルロケットという代物ではないのかの?」

 

「あーあー、まぁ似た様なモンだけどよ、これはそれとはちょっと違うんだよな」

 

「いやそんなペットボトルをまんま流用した何かなんぞ誰がどう見てもペットボトルロケットじゃろうが」

 

「コイツはな、先っちょに信管と爆薬が詰め込んであってな」

 

「……うむ、それで?」

 

「発射機構にセットした後はこれで空気を注入して……」

 

「のう提督よ、それはもしや自転車のタイヤに空気を入れるアレではないのか」

 

「そそそ、それな、んでコイツで空気をこう……シュコシュコ入れてだな」

 

「やっぱペットボトルロケットではないか!? 何が酸素魚雷じゃバカモンが!」

 

「なに言ってんのお前、コイツは注入された空気を排出して推進力を発生させんだぜ? 立派な酸素魚雷じゃねーか」

 

「酸素魚雷に充填されとるのは純粋な酸素であって、空気ではないわっ!」

 

「一応これにも酸素は含まれてるじゃねーか」

 

「なに屁理屈を垂れておるのじゃ! て言うかそんな物シュパーしたところで真っ直ぐ進まんじゃろうし、射程距離も知れておるじゃろうが」

 

「いやいや、コイツはちゃんと推進力学を応用した多段式発射体になっててな、射程距離はなんと驚きの1800m!」

 

「ペットボトル如きで1800mも射程距離があるのか!? 一体どうしたらそんな狂った性能を発揮すると言うのじゃ!?」

 

「後はこの対空用噴進砲も使えば艦の守りは万全だぜ?」

 

「のう……提督よ」

 

「ん? なんだよ」

 

「この……トタンの上に並んでおるロケット花火がどうしたと言うのじゃ……」

 

「あ? それはロケット花火じゃなくて試製一八式噴進砲だっつーの、確かに射出するにはライターか線香で着火する必要はあるけどよ、中身は砲弾用高性能爆薬になってっから、射程距離は1000m程あって、破壊力は重巡用三式弾並みのものになってんだぜ?」

 

「それは中身の火薬を砲弾の物に差し替えただけと言うのではないのかの……」

 

「問題は湿気っちまうと火が点かないから取り扱いには注意を要する事にある」

 

「やっぱロケット花火ではないか!? こんな小学生が縁日の後に撃ち合いしそうなセットを用意して対空兵装とか一体なんの冗談なのじゃ!?」

 

「まぁ対策品で細身の塩ビパイプを束ねてそこへ装填する試製一八式噴進砲改っつーのもあるにはあるんだけどな、クローズドタイプだから弾薬の装填に難があるんだよな」

 

「なんかホームセンターで揃ってしまいそうな材料で母艦の武装を整えるとか、幾らなんでも適当過ぎるじゃろ」

 

「ホームセンター? なに言ってんのお前? これ全部例の宝の山から発掘したリサイクル品だから材料費はタダなんだぜ?」

 

「余計にタチがわるいわっ! なんで海軍の防衛装備が産業廃棄物から掘り出した物で作られておるのじゃ!?」

 

「仕方ねーだろっ! ウチは現金での予算が殆ど計上されねーからそのヘンにあるモンで全てを賄わないといけねーんだよ!」

 

「だからって不法投棄されたゴミで小学生の夏休みに作る宿題染みた物で武装するのはどうなのじゃ!」

 

「まぁ他にはリサイクルじゃない新装備が搭載してあんだけどな」

 

「新装備?」

 

「そこの、ほらそれ」

 

「そこの? ……この……ゲタ的なブツはもしや」

 

「いやちょっと母艦の補強部材を先輩とこに発注したらよ、何か作ったけど利用する機会が少ないからやるわって艦娘射出用電磁カタパルトを送ってきたからよ、お前専用カタパルトとして甲板に設置してみた、これで300m程は一気に距離を稼げるぜ? あ、そんでこれいつものダクトテープな、前貼り用の」

 

「サブロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 

 



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にじゅうろくにちめ

2018/05/16
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました黒25様、CB様、坂下郁様、有難う御座います、大変助かりました。


「のう提督よ、ちょっと聞いても良いかの」

 

「あ? 何だ利根」

 

「いや工廠と言うか自動車整備工場のな、扉のとこに『夕張重工出張所』という謎の文字が書かれておったのじゃが、お主アレに何か心当たりはないかの?」

 

「ん? あああれな、いやなんか知らねー内にテリーが書いてたみたいなんだけどよ」

 

「……テリー? テリーって誰じゃ?」

 

「あ? そう言やお前に紹介してなかったな、ちっと前にほら、先輩がどこぞに飛ばされたじゃねーか」

 

「飛ばされたとか滅多な言い方するでないわ、あれは色々な事情があったと言うか、複雑な諸々が絡んでおると言うか、一応左遷じゃなくて異動じゃぞ」

 

「いやでも中将から少将になって、んで外地の拠点へ移ったんだろ? それって誰がどう見ても左遷じゃねーか」

 

「いやそれは……あぁもう良いわ、説明してもお主では理解できんじゃろうし、それで? それがどうしたらあの工廠に掛かっておるブレートに繋がるのじゃ」

 

「いやその先輩とこで働いてたヤツがどうしても内地に残りたいつってな、まぁ鎮守府には後任が来る事にはなってたらしいんだけどよ、ソイツの下じゃ働きたくないでゴザるって言い張ったらしくて、仕方なくこっちで面倒見てやってくれって送られて来たらしいんだよな」

 

「大坂からウチにか? その何と言うたか……えっと」

 

「テリーだテリー、ほら、お前の足元で敬礼してるだろ?」

 

「おぉこ奴か、ふむ、黄色のヘルメットに黒いツナギとな? 今まで見た事のないタイプの妖精さんじゃのう……って何じゃ提督、そんなジト目で睨んで」

 

「いや……もうお前のその妄想癖はどうらもなんねーなって思ったからよ、ピエトロとイッポリーと、それにテリーにも一応は言い含めてあっから」

 

「なんじゃその手遅れ感が漂うかわいそうな者を見る目はっ! 我輩は何も間違った事は言っておらんじゃろうがっ!」

 

「あーうん、まぁその妄想癖と露出狂さえ目を瞑ればお前は割りと普通なんだけどなぁ」

 

「露出狂ってなんじゃ露出狂って! 我輩はそんな特殊な性癖は持ち合わせておらんわっ! お主がいつもいつも余計な気を回して周りへおかしな事を吹聴するから生暖かい目で見られている事になっておると何故気付かんのじゃ!」

 

「あーあー分かった分かった、で? わざわざ修理工場のアレを聞きにきたのか?」

 

「こ奴……開き直って工廠の事を修理工場と言いおった、はぁ、まぁ良い、聞きたい事はそれだけじゃったのじゃが、ちと聞きたい事が今一つ増えた」

 

「あ? 何がだよ」

 

「いや、お主の前に鎮座している布を被せた面妖な何かと、その前に置いているやたらとゴツいバーベキューセットについてじゃ」

 

「これか? ああこれはちょっとした事情があってだな」

 

「今回もその台詞が出るのか……最早様式美を通り越してお約束になりつつあるの、それで? その事情とは何なのじゃ」

 

「いやほらこの前食堂を開店しただろ?」

 

「あーあの営業しているにも関わらず、毎日何故か賄い分しか食材を消費せん無駄なアレか」

 

「いやちゃんと客来ただろ?」

 

「道に迷ったハイカーが一組、携帯の電波も飛ばん言うて電話を借りに来て、それだけじゃアレじゃと気を使うてオニギリだけ注文してったアレか」

 

「結局よ、こんな人里離れた場所じゃ飲食店を経営するのは限り無く非効率だって気付いたからな、何とか集客効果のある目玉を用意しねーと詰むわって思ったからよ、それの解決策を模索してたんだ」

 

「原因をちゃんと把握しとるのに、そこから更に突っ込むとか最早パチンカスみたいな行動に陥っとるの」

 

「ばっかお前、商売ってのは人とは違う何かを武器にしなきゃ成功なんてできねーんだよっ!」

 

「それは何度も同じ過ちを繰り返す敗者の弁だと何故気付かんのじゃ……」

 

「そんな訳でロボを作ってみた」

 

「は? なんでそこでロボに繋がるのじゃ」

 

「テリーはどうやら大坂ではロボを作ってたらしくてな、軍事用ロボが作れるなら汎用型ロボ程度なら簡単に作れるだろうって事でな、作ってみた」

 

「いや作ってみたって……うーわ、布の下から……のう提督よ」

 

「何だ利根」

 

「これは一時期一部の者達の間で一世を風靡した先〇者というロボではないのかの……」

 

「あー、それはな、なるべくローコストでインパクトがあって、更には実用性を兼ねた設計をしたら偶然こんな形になった」

 

「偶然と言うかお主の感性と発想が、それを作った怪し気な輩達と同じだっただけではないのかの……」

 

「まぁ実用性もそうだが、インパクトを狙ったのも確かだしな」

 

「お主の感性から来たインパクト自体も随分埃が被る程古いと言うのは横に置いておくとしてじゃ、のぅ提督よ」

 

「あ? 何だ今忙しいんだよ」

 

「いやいや、お主一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 肉焼いてんだよ、見て分かんねーか?」

 

「一体何をどうしたらロボと言い張るその面妖な何かの股間からピカーっとしとる光を調整しとるのを見て、肉を焼く行為に繋がるのかの説明を我輩にもして欲しいのじゃが」

 

「あーもー面倒臭せぇな、ほら、先ずロボの各部位には集光ミラーがあるだろ?」

 

「ふむ、この金属の筒状の物か」

 

「おう、それで太陽光を光ファイバーで腰部レンズへ集光させ、特別製のバーベキューグリルへ照射する、すると」

 

「すると?」

 

「グリル内の反射板が収束した光を熱エネルギーに変換させ、肉が焼ける仕組みになってる」

 

「……ほぉ? それは中々エコな作りじゃの」

 

「そしてこの方式なら遠赤外線効果で肉が柔らかく焼き上がるという効果も発揮する」

 

「ふむふむ、それは中々良く出来た仕組みじゃがの、提督よ、肝心の肉が全然焼けておらんようじゃが、これはどうしたと言うのじゃ?」

 

「ああこれな、まぁ肉が焼けるまで30分程掛かるからそれまでは待機になるな」

 

「全然焼肉の醍醐味が無いではないか、すると何か? 客が焼肉を注文して出てきた肉を網の上に並べたら、後は30分間延々と珍妙なロボの股間からゴツいグリルへビーム(仮)が照射される微妙な絵面(えづら)を延々と見せ続けられる事になるのか!? そんなの気が狂うてしまうぞっ!」

 

「まぁ待て、実はコイツには隠された秘密の機能が隠されている」

 

「……隠された秘密を再び隠してしもうたら機能として作用はせんのではないのか」

 

「コイツは普段バーベキューの番人でもある訳だが」

 

「いや、ちっとも肉は焼けとらんが、あくまでその路線でいくのじゃな」

 

「このリモコンをここに接続して、こう」

 

「股間からビーム(仮)を照射したまま、リモコンのコードを尻にぶっ刺した姿はロボとしてどうなのじゃと言うてもよいのかの」

 

「んでお前の車を持って来て」

 

「……のう提督よ、我輩物凄く嫌な予感しかせんのじゃが、どうしてその珍妙なロボの隠された秘密に我輩の車が必要になるのかの」

 

「まぁ見てろって、一旦ビームを止めて、助手席にセットして……」

 

「のう提督よ」

 

「ちっと待てって、もうすぐセットが終わるから……良し」

 

「良しではないわっ! なんで我輩の車の助手席にこんな訳の判らん物をセットしとるのじゃ!」

 

「あ? それはな利根、コイツはロボコックの体をした軍用兵器だからだ」

 

「車のボンネット越しに見える先〇者がシュール過ぎる……と言うか、股間から太陽光をビーっとしとるだけでコックと言い張るのはやめんか、全国のコックさんに怒られるではないか……」

 

「因みにコイツはおしゃべり機能も搭載している」

 

『はい、マイケル』

 

「だからマイケルって一体誰なんじゃ!? て言うかこれは単に車に積んでる例のアレをロボのスピーカーで出力してるだけではないかっ!」

 

「因みに車に搭載した時は5.1chシステムで臨場感がバツグンになる」

 

『『『新機能が加わりました』』』

 

「ただやかましいだけじゃ!」

 

「んでコイツの最大のウリは、リモコン操作で離れた位置から敵を迎撃できる事にある」

 

「迎撃……深海棲艦にか?」

 

「いや、ほら街には危険が一杯だろ? 例えばほら、お前がシ〇ムラにビッミョ~な服を買いに行くとする」

 

「微妙とか言うでないわ微妙って! むしろ我輩これから先の展開が読めてしまったぞ……」

 

「んで途中で喉が渇いてドライブスルーに寄ったとする」

 

「む……新たなパターンの話になりおったの」

 

「んでオネーチャンがローラースケートでガーっと注文を取りに来る訳だ」

 

「のう、何故提督の話は微妙にアメリカナイズされた設定がいつも話の端々に散りばめられておるのじゃ? 日本の、しかもこんな片田舎でそんなドライブスルーなんぞある訳なかろうが」

 

「んでバーガーとタコスを注文したりするだろ」

 

「いや喉が渇いておったのではなかったのか? なんでそこで無理にタコスなんぞを頼む必要があるのじゃ」

 

「するとこう……そこへ誰かに追われてきたマッチョガイとかヤベーカンジのヤツが拳銃片手に乗り込んできてだな、『おいお前! さっさと車を出せ!』ってカンジでトラブルに巻き込まれそうになったりした時によ」

 

「結局いつものパターンになっとるではないかっ! なんでいつもいつも我輩はシマム〇へ行く度に謎のマッチョガイが原因で事件へ巻き込まれなければならんのじゃっ!?」

 

「そんな時このロボの出番だ、見てろ」

 

「……のう提督よ、一応聞いておくが謎のマッチョガイが襲ってきておる最中に、そんな暢気によっこらせとロボを降ろしてる暇なんぞあるのかの」

 

「バッカお前、カプチーノなんてクソ狭い車にロボを搭載しようとしたら部品バラさなきゃ無理だろうが」

 

「バカはお主じゃ! 目的より手段を優先しとるからそんな致命的な欠陥が出来上がってしまうのじゃっ!」

 

「んで武装を……こう、セットしてだな」

 

「のう提督よ、ちょっといいかの」

 

「あ? ちょっと待て、ここのボルトを締めれば完成だから」

 

「いやそのロボの武装て、股間のビーム(仮)しかないのか?」

 

「だな、歩行のバランスを考えたら重心はここに集中させた方が安定する」

 

「て言うことは、我輩は街で謎のマッチョガイに襲撃される度に一々ロボを車から降ろして、武装をセットする為にロボの股間を色々弄り回さねばならんと言う事かの?」

 

「心配するな、他にもドリルとかビーム〇ーベル(仮)とかオプションユニットも今テリーが製作中だ」

 

「誰がロボの股間に装備する武装の多様性について議論しとると言うのじゃ! むしろオプションの切り替えの度に我輩はまたロボの股間を弄らねばならんではないかっ! 公衆の面前でロボの股間を弄るっておるのを誰かに見られる我輩の世間体を考んかっ!」

 

「いやお前って大本営の第一艦隊じゃボッチだったからロボとか作れば喜ぶんじゃないかって、先輩とこからほら、大量に設計図が送られてきたんだが」

 

「サブロオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 

 



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~読み切り短編~ 提督と長門さんとニャンコ

 提督と利根さん方式の会話のみ特別編

 別に投稿しても良かったんですが、まぁ進行が会話のみなだし短いのでここにという事で、どうか何卒、何卒。



 (※)今回は例の提督も利根さんも出ません、ご注意下さい。


2018/07/17
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました坂下郁様、有難う御座います、大変助かりました。


「おい提督よ、ちょっといいか」

 

「どうした長門、こんな時間にアパートまできて」

 

「確認したいのだが、提督のアパートはペットOKだったよな?」

 

「……ああ、それがどうした?」

 

「実はネコを拾ってしまった」

 

「お……おう、そうか」

 

「実はネコを拾ってしまった」

 

「何故二回も同じ事を言うんだ長門」

 

「拾ってしまったんだ、ニャンコを」

 

「……無理だぞ、俺仕事忙しいし、動物なんて飼った事ないし」

 

「いやしかし提督よ、ニャンコがな、ほら、こんなに愛らしい」

 

「いやニャンコって何だよお前、確かにお前がそういうカワイイ系が好きなのは知ってたが、俺は面倒みれないからな」

 

「……どうしてもか?」

 

「どうしてもだ」

 

「ニャンコなのにか?」

 

「ニャンコなのにだ」

 

「くっ……まさか提督がこんなにも鬼畜な男だったとは、この長門は人を見る目がなかったという事か」

 

「なんでニャンコ一匹の事でそんな事言われにゃならんのだ! そんなにニャンコが好きならお前が世話をすればいいだろ!」

 

「……む、それもそうか」

 

「そうだよ、ほら俺動物飼った事なんてないから」

 

「そうか、分かった」

 

「そうか、分かってくれたか」

 

「それじゃニャンコの世話は私がしよう、では荷物を取ってくる」

 

「……え、荷物って何の荷物?」

 

 

 

【提督のアパートにニャンコと長門が着任しました】

 

 

 

「おい長門、俺のベッドにネコを寝かせるのはやめてくれ、抜け毛でえらい事になっちまってるじゃないか」

 

「うん? ではこのニャンコはどこで寝ればいいんだ?」

 

「いやどこでって聞かれてもな、ダンボールでも用意してそこで寝かせればいいんじゃないのか?」

 

「提督がベッドなのにニャンコはダンボールだとか、血も涙も無い事を言うな」

 

「なんでそうなるんだおい」

 

「着任当初の執務室にはダンボールしかなかったじゃないか、そういう経験のある提督はある意味ダンボールエキスパートなんだからにゃんこじゃなく提督がダンボールで寝ればいいじゃないか」

 

「一体どういう理屈で俺の寝床を決めようとしてるんだお前は、と言うかダンボールエキスパートなんて不名誉な称号を捏造して俺に余計な肩書きを増やすんじゃない」

 

「なら私のベッドをここに運び込んでそこでニャンコと一緒に寝る事にする」

 

「おい6畳1Kの部屋にベッドを二つも入れたら生活空間がほぼなくなるだろうが」

 

「くっ、なら全ての問題を解決する作戦をここに決行する、構わないな?」

 

「ああベッドの数も増えず、尚且つ俺の安眠ゾーンが保たれるならば許可しよう」

 

「という事だ、妖精さんカマン!」

 

「いつの間に妖精さんを召還してたんだお前」

 

「こんな事もあろうかと思ってな、うん流石だ、仕事が早い」

 

「……おい長門」

 

「なんだ提督よ」

 

「お前これ……ダブルベッド……」

 

「うむ、これなら提督の安眠ゾーンも確保したまま、かつ私とニャンコが並んでも安心で、更にはベッドの数も増えてない」

 

「力技にも程があるだろ、寧ろお前これだと寝る時って……」

 

「あぁ、これでニャンコをモフりつつ夢の中へという素晴らしい寝床になったな」

 

「……お前ってヤツは、何かをしたら毎回大事な部分が一本足りないなんて事をやらかすよな」

 

 

 

【提督のベッド(母港)枠が2つ拡張されました】

 

 

 

「なぁ提督よ、「ニャンコまっしぐら」というフレーズを知っているか?」

 

「あーどこかで聞いたような、いや一部名称がおかしいような……、いやまぁ確かペットフードのキャッチコピーでそういうのがあったな確か」

 

「そう、そのフードを使えば私にもニャンコがまっしぐらしてくれると思ったんだだけどな」

 

「え、なにその大量のネコ缶、しかも全部お高いやつじゃないか」

 

「うむ、ニャンコはちょっとグルメらしくて、オキニを見つけるまで結構苦労したんだ」

 

「お前何してるんだ……え、もしかしてそこに鎮座しているダンボールの中身って……」

 

「ニャンコまっしぐらの過程で生まれた余剰糧食だ」

 

「長門、それは余剰糧食とは言わない、決して、というかそのネコともそこそこ付き合いが長いんだから、ちゃんと名前くらい付けてやれよ」

 

「うん? ニャンコにか?」

 

「ああ、ニャンコにだ」

 

「……ニャンコはニャンコなんだが、それがどうかしたのか?」

 

「もしやそのネコの名前はニャンコだと言うのか……」

 

「ニャンコだと何か問題があるのか?」

 

「いやおまっ……それ長門にビッグセブンとかナガモンって名付けるのと同じと言うか、固有名詞としてはどうなんだと言うか……」

 

「提督はたまにおかしな事を言うな、まぁそれはいい、ところでチャーハンでも食べるか?」

 

「うん? また突然どうした、今まで料理なんて一度も作った事もないのに……まぁ折角だから頂くけどな」

 

「ところで提督よ、高級なニャンコまっしぐらはな、そこらのワゴンで山になってる缶詰よりも高級な素材が使われているんだ、知ってたか?」

 

「ほうなのか? ほれははつみみらな」

 

「美味いか? チャーハン」

 

「うまひぞ」

 

「でな、ニャンコには塩分や濃い味付けの調味料は厳禁でな、ニャンコまっしぐらはモノが高級素材の割りには味が淡白なんだ」

 

「ほうなのか……んぐっ」

 

「慌てて食うからそうなるんだ、落ち着け、ほらお茶を淹れてやろう」

 

「んっぐっぐっ……っぱぁ、すまん」

 

「ああいいんだ、ゆっくり食べてくれ、それで話の続きなんだが……高級なニャンコまっしぐらは淡白な味わい故に、実は料理の材料にも最適なんだ、なんせそこらのワゴンで山になってる缶詰よりも高級な素材が使われているからな」

 

「……おい長門、一つ聞いてもいいか?」

 

「例えばチャーハンとか、クリーム系のパスタソースに入れれば中々おつな物が……」

 

「お前、この話の流れで俺が何も気付かないなんて思ってないよな?」

 

「……いやだから、そこらのワゴンで山になってる缶詰よりも高級な素材が使われているから大丈夫なんだ」

 

「健康的に大丈夫でも俺の心情的には大丈夫じゃないんだが、寧ろお前も食ってるんだろうな? ニャンコまっしぐら」

 

「……」

 

「おいそこで何故目を逸らす、こっち見て話せ」

 

「大丈夫だ、お代わりは沢山用意してるからな」

 

「お前の大丈夫は何に対しての大丈夫なんだよ……」

 

 

 

【提督のアパートにニャンコまっしぐら特選コーナーから給糧艦長門が召還されました】

 

 

 

「……おい長門」

 

「どうした提督」

 

「いやどうしたもこうしたも、お前本当にニャンコしか目に入ってないんだな」

 

「うん? どういう事だ?」

 

「いやほら……何と言うか、アパートに帰ってもニャンコと寛いでるし、ごはんもニャンコと一緒だし」

 

「提督が私にニャンコの世話をしろと言ったんじゃないか」

 

「いやいつもお前は極端過ぎなんじゃないか? 俺が言った言葉まんまのドストレートな行動しかしないし」

 

「む、軍務とはそういうものじゃないか、命令を受けたならそれは完遂する、だが余計な事をすれば提督の意図しない事になるばかりか、それが原因で迷惑を掛ける事になるかも知れない」

 

「まぁ確かにそうなんだけどな、それにしてもお前は杓子定規が過ぎるんだ」

 

「……提督の命令は絶対だ、少なくとも私はそうあるべきだと思っている」

 

「お前は真っ直ぐ過ぎるんだよ、そんなお前を見てるとたまに眩しくてどう接したらいいか俺は分からなくなr……」

 

「ちょっと待て! 今ニャンコがゴメン寝の体制に入ったぞ!? ほらスマホ! スマホを取ってくれ!」

 

「ホント空気読まないなお前」

 

「……良し、中々いい絵が撮れた……これは胸が熱いな、で? 何の話だったか」

 

「ああもういい、いいからほら」

 

「……そうか?」

 

「て言うかだな、お前はここに居候してる身なんだから、たまには家事と言うか料理の一つでも作ろうとは思わないのか」

 

「……提督はそんなにニャンコまっしぐらチャーハンが気に入ったのか?」

 

「んな訳あるかっ!」

 

「……ならどういう料理を作ればいいんだ? 自慢じゃないが、私はそれ程料理のレパートリーが多い訳ではないからな」

 

「そう言えばお前って独身男性の手料理的な物しか作れなかったよな……」

 

「そうだな、その辺りは考慮して貰いたい」

 

「なんでそこで偉そうにするんだよ、はぁ……それじゃ俺がオカズを作るから、お前は味噌汁当番だ、いいな?」

 

「味噌汁をか」

 

「ああ、味噌汁を作ってくれ」

 

「もしかしてそれは毎日なのか?」

 

「そうだ毎日だ」

 

「……そうか、分かった、準備をしてくるから少し待っていて欲しい」

 

「うん? 準備っておいどこに行くんだ?」

 

 

 

【ケ・ッ・コ・ン・カ・ッ・コ・ガ・チ ~長門との間に強い絆を結びました~】

 

 

 

「おい……なんでこんな事になっているんだ」

 

「提督が毎日私の味噌汁を飲みたいと言ったからだ」

 

「待て、お前変なとこで空気読むよな……大体だな、お前に味噌汁を作れと言ったのは俺とカッコカリをしろという意味を含んだ……寧ろ命令でも、何でもなんでもないんだが……」

 

「命令ではないのか?」

 

「ああ、命令じゃない」

 

「なら聞くが、私が毎日提督に味噌汁を作りたいと言えばどうなんだ?」

 

「……毎日か?」

 

「毎日だ」

 

「……味噌汁をか?」

 

「そうだ味噌汁をだ」

 

「……その作戦に何か必要な装備はあるか? あるなら支給しよう」

 

「そうだな、その作戦にはこの指輪が必須だ、頼めるだろうか?」

 

「ああ分かった……許可しよう、これからも宜しく頼む、長門」

 

「大丈夫……私はあなたとニャンコと共にある」

 

「結局ニャンコも一緒になるのかよ……」

 

「そうだな……ふふっ、本当に……胸が熱いな」

 

 

 

-了-

 

 

 



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本編 にじゅうななにちめ

 本格復帰前のジャブ的な?

 なのでちょっと短め。


2019/02/20
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました水上 風月様、有難う御座います、大変助かりました。


 

「のお提督よ、ちょっと聞きたいことがあるのじゃが……」

 

「あ? なんだ利根」

 

「お主はその……何というか、このクソ寒い山の天辺でどうしてそんな下穿き一丁の寒々しい格好をしておるのじゃ」

 

「下穿き? ああ、このタイガーパンツな」

 

「タイガーて……確かに虎柄になっておるが」

 

「まぁこれにはちょっとした訳があってだな」

 

「久々に更新したと思うたらまたぞろいつものパターンか、それで? 今回はどんな珍妙な訳があると言うのじゃ」

 

「今日は何月何日だ?」

 

「む? 二月四日じゃが」

 

「昨日は?」

 

「二月三日じゃの……ってまさか」

 

「二月三日と言えばセッツブーン! セッツブーンと言えば豆まき! 豆まきと言えば鬼だろ!」

 

「いや既に節分は過ぎとるじゃろうが! 寧ろセッツブーンってなんじゃ! お主が言うと妙にイラッとくるイントネーションじゃの」

 

「いやそれはだな、ほら、例の幼稚園で豆まきイベントでもすりゃガキ共が喜ぶかと思って、ちょいと前から用意してたんだけどよ」

 

「いやいや、確かにそういう催しは幼児に対して良い情操教育になるとは思うがな、お主のようなムキムキマッチョが虎柄のブーメランパンツ一丁で鬼の面を被って公の場に出るのは聊か公序良俗に反すると言うか、ぶっちゃけそんなの見たら子供達のトラウマになると我輩は思うぞ?」

 

「それだけどよ、ほら、子供は風の子って例えがあるじゃねーか」

 

「……なんじゃ、いきなり話が妙な方向に向きおったな、まぁ確かに昔からそういう例えもあるにはあったが……」

 

「んでもよ、最近のガキって妙にモコモコとした厚着してたりよ、家に引きこもってゲームとかやったりよ」

 

「それも時代の流れじゃからの、仕方なかろ」

 

「そういう世情に流されるダメな大人が軟弱な子供を量産してるって何で気付かない!」

 

「……のう提督よ」

 

「あ? なんだよ」

 

「言ってる事は大層立派な大人の意見なのじゃがの、その言葉を具現化したのが虎柄ブーメランパンツのみ装備した海軍提督ってどうなのじゃ」

 

「いや、実は事前プランで虎柄全身タイツというブツも用意してみたんだがな、何と言うかコレジャナイ感がマッハでよ……」

 

「局部のみカバーするか、全身パッケージングするかの極端な二択しか用意せんというのがお主らしいの」

 

「で、取り敢えず準備ができたんでさぁ行くかって段になってだな、致命的な問題に気付いてしまった」

 

「……何に気付いたのじゃ、言うてみい」

 

「今日は何月何日だ?」

 

「いやだから今日は二月四日で節分は昨日じゃと言うたではないか」

 

「で、今日は何曜日だ?」

 

「む、今日は月曜日……あ!」

 

「そう、今年の二月三日、つまりセッツブーンは日曜で幼稚園は休みだったと当日になって気付いてしまった」

 

「待て、待て待て、当日になってって……お主と幼稚園側ではちゃんと豆まきについての話はしておらんかったのか?」

 

「いや、先方からは何のオファーもなかったが突発的なサプライズイベントとしてセッツブーンをだな……」

 

「待つのじゃ! そんな虎柄パンツに鬼仮面のムキムキマッチョが予告も無しに幼稚園に現れたら通報待ったなしじゃぞ! 一度冷静になって己の姿を姿見で確認してみるのじゃ!」

 

「まぁそんな訳で俺とお前用のセッツブーン特別装備が無駄になってしまった訳だが」

 

「……待つのじゃ」

 

「あ? なんだよ?」

 

「お主と我輩用じゃと?」

 

「おう、俺とお前用のセッツブーン装備」

 

「お主の装備とはその虎柄パンツと鬼の面だけのようじゃが……」

 

「お前用のはほら、コレだ」

 

「うーわ、何でブーメランパンツから我輩用の衣装がズルッと出てくるのじゃ! しかも妙に人肌に温まっておってキモいわっ! ……て言うか提督よ」

 

「何だ利根」

 

「我輩用と聞いて大体の想像はついておったが、何でこのクソ寒い冬空の下で我輩は虎柄のビキニを着用せねばならんのじゃ」

 

「良く見ろ、ビギニだけじゃなくて虎柄のブーツもセットになってんだろうが」

 

「幾ら履物がブーツになっても、他の着衣の布面積が少な過ぎて全然意味を成しておらんぞ……何で我輩がこんな物を着んといかんのじゃ」

 

「それは日本古来の文化を学びつつ情操教育を施し、かつ園児達が楽しめるゲリライベントを開催する為の特別装備だからだ」

 

「……サクっと言ってしまえば、それは予告も無しに幼稚園へ裸族二人が襲撃に向かうゲリライベントと理解すれば良いのかの、ん?」

 

「そしてそれを着た瞬間から語尾は「のじゃ」ではなく「だっちゃ」にしなければならない縛りが発生する」

 

「アウトー! それ色んな意味でアウトじゃぞ! 寧ろ今時の子供にそのネタは通じんからなっ!」

 

「まぁ確かに布面積は少ないかも知れんが、お前なら大丈夫なんじゃね?」

 

「……何でじゃ」

 

「前面も後部もストーンとした幼児体形だし、起伏が少ない分だけ風が当たる面積が少ないから物理的に感じる寒さは減少するんじゃないかと思う訳だ」

 

「ぶっ飛ばされたいのかお主は! 起伏が少のうても寒いものは寒いのじゃ! 寧ろ脂肪分が少ない分当たる風が余計骨身に染みるのじゃぞ!」

 

「お……おう、成る程な、それってアレだ……大鳳のハリケーンバウ(絶壁)と大和型のバルバスバウ(山脈)的な違いと一緒という事か」

 

「全方位の平たい方面へ喧嘩を売るのはやめるのじゃ! 寧ろそういうのは極一部では熱狂的な需要があるから何も問題はなかろ!」

 

「……お前さ、それ、言ってて悲しくなんねぇか?」

 

「くっ、うるさいわっ!」

 

「まぁそういう訳で主目的のセッツブーンには使えなくなっちまったが、そのビキニはお前の新しい装備として採用すっから、抜錨する時はそれ着て出撃な」

 

「待て、待つのじゃ……こんなハレンチな衣装を着て抜錨じゃと? お主は一体何を言っておるのじゃ」

 

「ハレンチて、なぁお前さ、一度冷静になっていつもの格好を姿見で確認してみた方がいいぞ?」

 

「これは軍が指定した正式な装備じゃから仕方なかろ!」

 

「でもお前、そのビキニはちゃんと上下セットになってるから大事な部分は隠してるだろ? な? ほらいつものノーパンより公序良俗的にアリだと思わねーか?」

 

「たーかーらぁ! いつもいつも我輩はちゃんとパンツは履いておると何度言えば理解するのじゃ! それにそんなヘソ出し衣装でどうやって敵からの攻撃を防ぐと言うのじゃ」

 

「あ? 何言ってんだお前、それはただの虎柄ビキニじゃなくて虎柄ビキニアーマーだぞ?」

 

「……なんじゃそれは」

 

「え、お前知らんの? ビキニアーマーってのは由緒正しい防具でよ、いつも着てるその布の服の何倍も防御力があんだぞ?」

 

「それはゲーム世界の架空設定じゃろうが! どうやったらこの布が無い部分の防御を賄うと言うのじゃ!」

 

「そこはほら、ドラゴニックオーラ的な? 寧ろ太ももだけは絶対に露出するぞという強い意志を感じるいつもの制服よりはよっぽど潔いと俺は思うんだけどな」

 

「なんじゃその強い意志て、病的な拘りみたいに言うでないわ」

 

「ついでに言うとちゃんとイ級アーマーでビキニタイプの有用性は検証してあっから、安心しろ」

 

「……なんじゃと?」

 

「だからよ、ゲンさんとこの連中ってほら、前に俺が作ったイ級のフルプレート装備してんだろ?」

 

「ああ、あの狂った漁船の連中か」

 

「第八亀丸な」

 

「いやそんな漁船の名前はどうでも良いわ、それで? あの漁師騎士団がどうしたというのじゃ」

 

「いやフルプレートだと陸での取り回しが悪いつったからよ、ビキニタイプのヤツ作って渡してみたんだけどな、どうも防御力はフルプレート並みにあるのが確認とれた」

 

「待つのじゃ、ビキニアーマーを渡したて……あの漁師共は今ビキニアーマーを着込んでブリ漁をしておるのか?」

 

「いや、主に漁協のおばちゃん連中」

 

「は!? おばちゃんていつも煎餅や飴ちゃんをくれるあのおばちゃん達か!?」

 

「おう、ゴムの前掛けより取り回しが楽だって評判はいいんだぜ?」

 

「て言うか騎士がブリを採ってきて、それをビキニアーマーを着たアマゾネスが選別するとかあの漁協はどこを目指しておるのじゃ……」

 

「まぁそういう訳でお前の装備それだから」

 

「だからどういう訳で我輩の装備がその虎柄ビキニになるのじゃ!」

 

「て言うか、素早さの半分が防御力になるから身軽にするのは防御面に於いては正しいって聞いたし」

 

「それはドラ○エの話じゃろうが、誰じゃそんなおかしな事をお主に吹き込んだのは」

 

「え、いやこの衣装作る時に生地を先輩のとこに発注した時によ、世間話的に小耳に挟んだんだけどよ」

 

「サブロォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 



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提督くんと押しかけ秘書艦ぬいぬい 邂逅(強制)

 稀に投下するかも知れないコンビ。

 利根さんの方はまた近日(多分)


 

 

 

「ぬいぬいです。ご指導ご鞭撻、よろしくです」

 

「あ、はい今日から研修でここの警備府にお世話になる事になりました、宜しくお願いします不知火さん」

 

「なんでしょうか。…………ぬいぬいに落ち度でも?」

 

「え!? 何いきなり!? てかぬいぬいってナニ?」

 

「今日から司令の秘書艦として共に往く者として、呼び名という物は重要かつ関係性を表す呼称だとぬいぬいは具申致します」

 

「ちょっと待って、僕任官前の研修に来てるだけで秘書艦なんかつかないから、寧ろ不知火さん初期艦属性じゃないでしょ?」

 

「ぬいぬいです。今日は取り敢えず司令の案内を仰せつかっていますが、研修が終了すれば司令は司令(仮性)から司令(真性)へとジョブチェンジを果たす筈ですので、今のうちにツバをもとい好印象を持って貰い、任官の際はぜひ秘書官としてこのぬいぬいをご指名頂こうかと」

 

「その司令の後に付くカッコの中身はどっちも男として許容できない表現なんだけど!? 寧ろ任官後のあれこれについてぶっちゃけ過ぎなんじゃないかな不知火さん!?」

 

「ぬいぬいです、それではこれより警備府施設をご案内致します。先ずここが最重要施設の一つである波止場。恐らくここが司令がこの研修中最も利用する機会が多い場所となる筈です」

 

「波止場ぁ? いや確かに海軍なら海に関係する場所は重要だと思うけど、警備府の重要施設筆頭が波止場って何で?」

 

「研修に就くという事は毎日毎日上司からの理不尽なシゴきは当然として、経験豊富なお局的艦娘からの叱咤激務を浴びせられるのは予定調和だと思います」

 

「待って、何で研修が理不尽なシゴきに限定されるの? むしろ経験豊富な艦娘さんからは叱咤激務ってそれどんな救いようのない無茶振りされる予定なの!?」

 

「そんな失意のズンドコの司令が心を癒す為に訪れるのは、誰も居ない寂れた波止場。夕日を眺めさめざめと見る海に向かって涙する司令に、このぬいぬいが優しく懇切丁寧に慰めるというシチュを経て、晴れて司令はぬいぬい推し属性へと至る未来が予想される感じと申しますか」

 

「失意のズンドコになっちゃう研修って嫌な表現ヤメテ! 寧ろぬいぬい推しってどんな属性なの!?」

 

「それでは次に案内するのは、当警備府の最重要施設である食堂です」

 

「いや話題転換と言うか唐突な案内場所の変更に僕ついてけないんだけど。っていうか最重要施設は波止場ってさっき言ってなかったっけ? 寧ろ重要って事なら普通執務棟とか工廠なんかじゃないの?」

 

「執務棟や工廠なんてただの飾りです、偉い人にはそれが分からんのです」

 

「分からんのは不知火さんの感性だと僕は思うなぁ……」

 

「我が警備府食堂では従事している人員が少ない為、敢えて定食的な物は廃し、予め用意している主食・主菜・副菜・汁物から其々一品づつ選ぶシステムを採用しています」

 

「あー……バイキング的な? 成る程、んじゃここのプレートに食べ物を盛っていく形でいいのかな」

 

「因みにぬいぬいのオススメは主食が本練り(羊羹)、主菜がモナカ、副菜がアイスで汁物は汁粉という頭脳労働スペシャルになりますね」

 

「どれも主食・主菜・副菜・汁物に該当しないよ? そんなに糖分摂取したら働くべき頭脳が強制睡眠に陥るから」

 

「……ぬいぬいに何か落ち度でも?」

 

「何か落ち度と言うか陥れられてる感がハンパないんだけど…… 取り敢えずここにある食べ物をお皿に盛ればいいよね……」

 

「……ぬいっ!」

 

「え、なに不知火さん、そこに立たれるとごはん取れないんだけど……」

 

「ぬいっ! ぬいっ!」

 

「えちょっ!? なんでそんなカバティばりに行く手を阻むの!?」

 

「料理を皿盛る際は、こう……上半身を90°折り曲げるようにして、視線は常に床へ。それが我が警備府に於ける食堂での掟になります」

 

「ナニその理不尽な掟!? え……そもそも掟ってナニ!?」

 

「そのまま進んでしまうと、厨房奥に潜む給糧艦達の邪悪な胸部装甲に精神が汚染される恐れがあり大変危険なのです」

 

「なにその邪悪な胸部装甲って!? あ、ごめんなさいごめんなさい、そんなつもりはないんです間宮さん、いや今のは不知火さんが言った事で僕がそう思ってる訳じゃないんです!」

 

「取り敢えずカツ丼とブタ汁をテイクアウトしましたので、波止場に戻りましょう」

 

「随分テイクアウトに適さない食べ物をチョイスしたね不知火さん……てかなんでテイクアウトしてまで波止場に拘るのかな」

 

「ぬいぬいです、普段はカレーなんかの無難な物を選んで一人寂しく便所飯しているのですが、ここは……さり気なくオシャレでデキるウーマン的な部分をアピールしようかと」

 

「カツ丼にブタ汁は多分オシャレじゃないしそんな秘密をぶっちゃけちゃうと全然さり気なくなってないから。寧ろ一人便所飯って悲しい日常も霞んじゃうトイレでカレーって組み合わせに僕ドン引きだよ……」

 

「ちなみに波止場に食べ物を持ち込む際は、獲物を狙う敵機による急降下爆撃に十分警戒して下さい」

 

「え、敵機って……わーっ! カツがトンビに持ってかれたぁっ!」

 

「だから事前に急降下爆撃に気をつけて下さいとあれほど……」

 

「アレ敵機じゃなくてトンビだから! って怖っ! ごはんの盆にわちゃわちゃ群がってるぅ!」

 

「沈め………沈め!」

 

「ちょおっ!? トンビ相手に10cm連装高角砲斉射しないでっ!」

 

「フフ………不知火を怒らせたわね……!」

 

「やめっ! 酸素魚雷投げるの禁止っ!」

 

「……作戦が終了しました」

 

「……僕のごはんが壊滅的な被害を受けてると言うか、あれだけ激しい攻撃を受けたトンビは無傷な上に、波止場の損傷も皆無って……」

 

「警備府の最重要施設ですので、頑丈さは折り紙つきです」

 

「変なとこに海軍の本気を見た気分だよ。それで不知火さん、今度はどこを案内してくれるの?」

 

「そうですね、次はこの警備府の最重要施設であるぬいぬいの私室にご案内しようかと」

 

「何で不知火さんの私室!? てかそこも最重要指定されてるの!?」

 

「このぬいぬいが一日の大半を過ごす空間がぞんざいな扱いな筈ないではないですか、そこはもう妖精さんに頼んで気合を入れた造りになっています」

 

「……一日の大半? え? いや不知火さん普段どんなスケジュールで軍務を回してるの?」

 

「ぬいぬいです。先ず〇九(マルキュウ):〇〇(マルマル)に起床、そして便所飯の後は自室に戻り待機、一二(ヒトフタ):〇〇(マルマル)に便所飯」

 

「午前中は便所飯と自室待機のみってどういう事!?」

 

「そこから引き続き一七(ヒトナナ):〇〇(マルマル)の便所飯まで自室待機になりまして……」

 

「便所と自室以外に時間の過ごし方はないの!? 寧ろごはん食堂で食べようよ!」

 

「じっとしてるのは性に合いませんね」

 

「いやそんな限定された空間で能動的に活動されても……てか、不知火さんってもしや引きこもり?」

 

「そそそそんな訳ぬいじゃありませんか、そそそうですねマイルームへご案内は最終マスに設定するとして、次のコマはお風呂にご案内という事にしたいと思います」

 

「警備府の案内を攻略海域に見立てた上に、ボスマスを不知火さんのルームに設定する辺り色んな意味で不穏な未来しか思い浮かばないのは気のせいなんだろうか……え、風呂?」

 

「はい、当警備府の最重要施設であるお風呂にご案内致します」

 

「いや風呂って、入渠施設じゃないの? て言うか不知火さん最重要って日本語ちゃんと理解してる?」

 

「え、ああ確かそういう利用もされるのでしたね。ぬいぬいは主にリフレッシュと美容の為に利用していますが」

 

「それって普通に入浴としてしか入渠施設を利用した事がないって事だよね? 寧ろ僕がそういう場所に足を踏み入れるのは不味いと思うんだけど、男だし」

 

「大丈夫です、この時間帯なら利用者が居ないのを確認済みですので、貸切状態なのは保障致します」

 

「どんだけぽっち活動に余念がないの、って貸切にしたって僕が利用する訳じゃないんだから」

 

「……お背中流しますよ? このぬいぬいが」

 

「なんでそうなるの」

 

「いえ、ここで色々と既成事実を作っておけば司令が真性になった後、ぬいぬいの色々は安泰するかなと思いまして」

 

「色々ぶっちゃけ過ぎでしょ不知火さん! ナニ既成事実って! そんなやばそうな事実は遠慮するからね!」

 

「ぬいぬいです。これでも薄い教本で培った知識がありますので、テクニックには自信があります」

 

「そんな物凄く胡散臭いテクニックをひけらかされても。寧ろ薄い教本って単語に不安要素しか感じない」

 

「オータムクラウド編纂、水雷センタン四級辺りまでは習得済みですがなにか?」

 

「余計不安要素が拡大しました……」

 

「むう、お風呂がダメなら次はトイレかマイルームしかご案内できる場所がないのですが」

 

「不知火さんの行動範囲って物凄く限定された場所しかないのはなんで? て言うか良く考えたら僕警備府の司令長官さんにも挨拶してないんだけど」

 

「いえ、その辺りは省略しても良いと思うのですが」

 

「いやいやそこは一番省略しちゃダメなところでしょ!?」

 

「司令長官なんてただの飾りです、偉い人にはそれが分からんのです」

 

「いやその偉い人が司令長官さんなんだけどね? だから飾りにしちゃダメなんじゃないかって僕は思います」

 

「いっそその何某(なにがし)を亡き者にして、司令が偉い人になればぬいぬいの未来設計までの時短が可能なのではと思い至りました」

 

「そんな欲望に塗れた危険思想に思い至らないで欲しいなぁ、ていうか何度も言うように僕は教育課程の途中で研修に来ただけだから、秘書艦なんて就かないんだけど」

 

「あ、その辺りは何某(なにがし)に話は通してありますので、司令が了承すればぬいぬいは嫁艦もとい秘書艦としてお側に就く事は確定的可能な事になっておりますが」

 

「司令長官さんを何某(なにがし)扱いするのはやめて差し上げて? 寧ろ不知火さんが秘書艦に就くって話が通っちゃってるってどういう事?」

 

「ダメ元で何某(なにがし)に具申致しましたところ、二つ返事で了承されましたがぬいぬいに何か落ち度でも?」

 

「どいつもこいつも落ち度まみれじゃないか! 一体どういう事なの!?」

 

「秘書艦になった場合、夜のお勤めさえちゃんとこなせば煩わしい人間関係に悩まされず三食昼寝付きというドリームなライフが保障されてますし、便所でぽっち飯を脱したばかりか、執務室でカツ丼が食べれるというカレーの呪いすら退けるという特典まで付随するのです」

 

「ぽっちを満喫したいのに脱ぽっち飯を所望って色々おかしな事言ってない? 寧ろ夜のお勤めってどういう事なのさ」

 

「水雷センタン、出撃します!(意訳)」

 

「そこの意訳は余計!」

 

「色々尽くす所存ですのでどうか末永く、よしなに」

 

「話聞いて? 取り敢えず何某(なにがし)さんのところに案内して?」

 

 

 



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ほんへ にじゅうはちにちめ

 ギリギリ時事ネタに間に合った話。

 ちょっと短め。


 

 

 

「のう提督よ、ちょっと良いかの」

 

「あ? なんだ利根」

 

「何だと言うかその台詞は我輩の方が言いたいのじゃがの、何でお主はこんな何もない山のテッペンでそんな戦国武将染みた鎧帷子(よろいかたびら)を装備してるのじゃ?」

 

「ん? ああこれか、こんな格好してんのはアレだ、ちょっとした事情があってだな」

 

「……一体どんな事情があったら人里離れた原野で海軍士官がそんな落ち武者染みた格好で佇む事になるかをじっくりと聞かせて貰おうではないか、ほれ言うてみい」

 

「なぁ利根よ、今日は何月何日だ?」

 

「む? 今日は令和元年五月五日じゃがそれがどうした……って言うか、我輩極最近似たようなやり取りをした記憶があるぞ?」

 

「あーそっか、今月から元号が変わったんだったな、ならこの鎧帷子(よろいかたびら)が我が鎮守府に於ける令和初の作品になるのか」

 

「いやいやいや我が鎮守府のって、その色からしてまたイ級アーマーを流用したブツになるのじゃろ? て言うかデザインが古風と言うか和風になってるとか、腰の二本差しとか、相変わらず気合が斜め上に突き抜けすぎじゃ、それで? それはまた例の漁師共の依頼でこさえた物なのか?」

 

「いやだから今日は五月五日で何の日だって話なんだがな」

 

「……最早答える事に何ら意味を成さぬゆぇスルーしようとした我輩に対し更に答えを求めるのはどうかと思うが……そうじゃの、五月五日は子供の日で、今日は日曜日で、ついでに言うとゴールデンウィークの終盤だと答えておこうかの」

 

「前にセッツブーンで煮え湯を飲まされたからな、ゴールデンウィークを利用して気合の入ったブツを拵えて、例の幼稚園にサプライズイベントをって思ったんだが、鎧が完成してから超重要な事に気がついてしまった」

 

「……のう提督よ、もしや今回も先方にはそのゲリラ何某の事は伝えておらんかったのか」

 

「ゲリライベントじゃねぇよ、ってかバッカお前、先に伝えちまったらサプライズになんねーだろうが」

 

「そんな怪しげな覇気を垂れ流す鎧武者が幼稚園へ突然現れたらサプライズどころか事案待ったなしじゃぞ!? お主はアレか? そこの園児達に恐怖を植え付ける事に何か使命感でも感じておるというのか!」

 

「子に過ぎたる宝なし、季節のイベントを仕掛けるなら全力かつ魂の篭った物をしてやんなきゃだろ?」

 

「だからその気合を入れる方向が間違っておると言うのじゃ! 寧ろそんなゴテゴテとした格好したままでは車にも乗れんじゃろ、どうやって幼稚園へ移動するつもりじゃったのじゃ」

 

「ああそれな、ほら村の外れに林野庁の出張所があるだろ?」

 

「……久々に狂ったニューフェイスが登場しそうな前置きがきたの、林野庁て確か国有林とかあの辺りの管理をしておる農林水産省関係の外局じゃったかの。して、そ奴らがどうしたと言うのじゃ」

 

「いや前から猪だの熊だの相手にしつつ仕事をするのは色々ヤバいってぼやいてたらしくてな」

 

「まぁこの辺りは人も獣も猛獣パラダイスになっておるからの、山に分け入るとなれば確かに危険が付きまとう事になるじゃろうな。それで?」

 

「んでヨシゾウってオッサンがその出張所のカシラをやってんだけどよ、このオッサンってゲンさんの飲み仲間らしくてよ」

 

「……あの黒騎士漁師が絡んだ時点で我輩話の方向性が見えた気がするが、その騎士の飲み仲間が一体どういう形で園児を襲撃する武者のイベントに繋がるのかの理由を聞こうではないか」

 

「いやさっき言っただろ? 仕事すんのに熊とかと殺り合う事があるって、今までは鉈とかサバイバルナイフで対抗してきたけどそれも中々面倒らしいんだよな、仕留めるまでに時間を食っちまうとかで仕事にならんっつーか」

 

「待つのじゃ! 役所の人間共が熊を相手に鉈やナイフで殺り合ってたじゃと!? 寧ろそんな物で熊を仕留めるとかどんな修羅じゃと言うのじゃそ奴らは!?」

 

「まぁ所属は林野庁って事になってっけどよ、元々そこの出張所の人間って代々役所から指名された村出身のヤツらばっかだし」

 

「役所から指名て……いや、まぁあの村の関係者でなければあんな還らずの森に分け入るのは無理じゃろうな」

 

「で、ゲンさんにヨシゾウさんがよ、その鎧みたいなの俺らも欲しいって飲みの席で頼んだらしくてな」

 

「……それでその鎧に繋がるのか」

 

「で、フルプレートじゃ山に入るには適さないって事で、和風の鎧帷子をイ級アーマーから作り出した訳だ」

 

「森林調査とか剪定をするヤツらが完全武装した鎧武者とか、色んな意味で間違ってはおらんかと我輩は思うのじゃが……」

 

「でよ、鎧を納入しに出張所に行ったらよ、出来に感動したヨシゾウさんらがな? 丁度子供の日が近いしお披露目も兼ねて幼稚園にサプライズイベントしねーかって言ってきてよ」

 

「それで良いのか林野庁!? 寧ろ諸悪の根源はそ奴らじゃったのか!?」

 

「まぁ例の幼稚園って村の子供も世話になってるし、そういう意味では恩返しになんのかな?」

 

「のう提督よ、余計なお世話と言うか、幾ら善意から出た行動であってもあの村の感性で何かをする時は今一度己の行動を鑑みた方が良いと思うのじゃがの……」

 

「いやまぁこんな田舎だからな、そういう奉仕っての? そういう物も一種の娯楽になってるっつーか、結局ゲンさんらも参加しようかって事になってだな、現地まではゲンさんトコのコンテナトラックで行こうって事になった訳だ」

 

「待つのじゃ、あの漁師共も参戦て……もし子供の日に幼稚園が開いておったら、コンテナトラックがそこに突入し、中から黒騎士だの鎧武者だのがわらわら出てくるという地獄が繰り広げられておったと言うのか……」

 

「んで色々準備してたのはいいんだけどよ、昨日の晩にゲンさんらが用意してる時に気付いちまったらしいんだよな、五月五日って休日じゃね? って」

 

「気付くも何も毎年五月五日は休日で、ゴールデンウイークにも絡んでおるじゃろうが!」

 

「しかも今年は日曜日だしな、それで皆「アッ」て思ったらしいぜ」

 

「という事は日曜が絡んでおらんかったら、提督らは意気揚々と無人の幼稚園へ地獄のゲリライベントを仕掛けておったという事か」

 

「まぁそんな訳で同時進行でやる筈だった漁協のオバチャン達主催のバザーも中止になっちまったからよ、そこで売る予定だったブツも折角だしって土産で貰ってきたぞ」

 

「バザーて……待つのじゃ、漁協のオバチャン達て、確かビキニアーマー着たあの?」

 

「まぁ当日はバタバタするだろうからって出発の時点でビキニアーマーを装着するっつってたな」

 

「黒騎士と鎧武者に加えビキニアーマーのアマゾネスも参戦とか、いたいけな園児に対し阿鼻叫喚にも程があろ!? なんじゃその地獄絵図は!」

 

「まぁそういう訳でこれ、おばちゃんから貰った土産な」

 

「……のう提督よ、これはなんじゃ?」

 

「あ? お前毛糸のパンツ知らねぇの?」

 

「いやそれは知っておるがの、この熊柄で何と言うか子供向けのやたらとモコッとしたブツを我輩に履けと?」

 

「いつも履いてねーんじゃ冷えるだろってオバチャンらも心配してたぜ?」

 

「だから我輩は履いておるといつも言っておろうが! しかもオバチャン達もそういう誤解をしておるとかどうなっておるのじゃ!?」

 

「て言うか良く考えたらいつものソレに毛糸のパンツとか、組み合わせ想像したら笑えてくんな」

 

「ぶっ飛ばされたいのかお主はッ! この制服は軍が定めた正式な装備じゃといつも言うておろ! ソレとかぞんざいな言い方をるでないわッ!」

 

「まぁその毛糸のパンツ履くならいつものダクトテープは必要ないだろうし、抜け毛の心配もしなくていいんじゃねぇの?」

 

「いつも我輩がダクトテープを張っつけておるような言い方は止めるのじゃ! 寧ろ心配するのは下の抜け毛か!? それ以外に心配する部分があるじゃろうが!」

 

「ああそれそれ、幾らなんでも毎回バリバリと剥がしてたらツルンツルンを通り越して毛根が死ぬだろって相談したらよ、サラダ油とか塗ってゆっくりと剥がすとかしたら被害が少なくて済むらしいぜ?」

 

「なんじゃその物凄く狭い層にしか利用価値の無い豆知識は……て言うかサラダ油じゃと? そんなもの股に塗ったらヌルヌルして気持ち悪いわ、誰がそんな手法を編み出したというのじゃ」

 

「ん? ああなんか毛虱(けじらみ)の治療に接着剤染みた軟膏を股間に塗りたくるらしいんだけどよ、その軟膏って時間が経つとバリバリに固まるらしくてな? 剥がす時毛が抜けるわ痛いわって事で軟膏を処方される時ってそういうテクニックを伝授されるらしいんだよな」

 

「我輩はダクトテープを常用しとる訳ではないからそんなテクニックを伝授されても使う事はないのじゃ、寧ろ毛虱(けじらみ)に対する用法を我輩に薦めるとか色々含みがあるのかと邪推してしまいそうじゃぞ……」

 

「いやだから、その制服でボリボリと股間を掻くのは見栄えっつーか、色々と見え放題でヤバくねーか?」

 

「なんで毛糸のパンツから我輩が毛虱(けじらみ)を煩っとるという事実無根の話になっておるのじゃ!? て言うか履いてるから見え放題になんぞならんわっ! なんじゃ今回はやたらと我輩の下の毛に対し執拗に絡んでくるのはどうしてなのじゃ!」

 

「いや、送ったダクトテープの総量からそろそろそういう処置も必要なんじゃないかって、センパイとこから注意隆起があってだな」

 

「サブロオオオオォォォォォォォォォォオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 



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