Solitude Art Online (自由気ままな人)
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設定集
登場人物


登場人物と設定、オリジナルスキル説明を綴って行きます。
展開により追記が入ります。
ネタバレにはしない予定ですが入ってしまった場合感想等で指摘をお願いします。
既存の人物でも作者の整理のためここに順次書き足していきます。
とは言っても原作と違う点を書き出すメモ書きに近い感じです。
原作にない設定を書き出すときには()でくくっています。
例としてキバオウやサチの年齢や本名等です。


名前の部分に関しては
SAO内の名前 出典 年齢 ビギナーorベータテスター 本名
です。


オリキャラ以外の見た目は基本原作と同じです。
小鷹だけ少し若く想像して読んで下さい。

2017年 4/12 SAO原作出身キャラ紹介を追記。本名とSAO内の名前を入れ替え。


 原作キャラ

 

 キリト SAO主人公 14歳 ベータテスター 桐ケ谷 和人

 

 SAO本編の主人公。

 原作と違う点はより攻略の鬼となっており、剣の腕も原作以上になっている。

 メンタル面に関しては原作とほぼ同じ。

 戦闘に集中しているせいで鈍感面が加速している。

 

 

 

 アスナ SAOメインヒロイン 15歳 ビギナー 結城 明日菜

 

 SAO本編を通じてのメインヒロイン。

 性格その他に変更点は無し。

 強さがキリトに引っ張られて上がるくらい。

 

 

 

 キバオウ SAOトラブルメーカー 年齢不詳(この作品では20代後半……28歳としている) ビギナー 本名不明

 

 SAOのトラブルメーカー(だと作者は思っている)。

 変更点は原作より丸くなる。

 

 

 

 

 サチ SAO控えめヒロイン 年齢不詳(16歳) ビギナー? 本名不明(幸野 詩織)

 

 変更点としてはきちんとキャラ付けをした。

 まず原作で高校のパソコン研究部に所属していることから高校に行っていることが確定。

 そうなるとキリトより年齢は確実に上であり、かつ11月に部活をやっていることからサチは高校3年生である可能性は低い。

 となると1年生か2年生ということになるが割と幼い気がするので高校1年生で閉じ込められた際に誕生日を迎えているものとして16歳とした。

 本名は名字をサチに関連する名前を変換で出し、名前は中の人の名前を拝借。

 

 

 

 リンド DDA団長 年齢不詳 ビギナー? 本名不明

 

 変更点として出番が大幅に増加し、25層ですでにDDA(聖竜連合)を完成させている。

 冷静であろうとしているが冷静になりきれない性格はそのまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロスキャラ・オリキャラ

 

 

 

 神崎 慎司 オリ主 20歳 ビギナー レンジ

 

 都内大学に通う2年生。

 友達は少なく1人で過ごすことを好む。

 見た目は前髪が長く、目を隠している。(P3主人公のイメージ)

 機動性と機能性に優れるジャケット系の服を好む(重くなく、ポケットが複数あるため)。

 顔つきはキリっとしている。

 それなりに喋れるが飲み会など複数人との会話は苦手としている。

 SAOを買った理由は1人でどこまで行けるかを試したかったからのと、新しい世界を見たかったから。

 ソロプレイの理由は時間や人に縛られたくなかったから。

 デスゲームに巻き込まれた後は流石にソロでは難しいと考え、少数精鋭を目指してsolitudeを設立しようと動いて行く。

 性格は冷静であるが、時によってそうでなくなる場合もある模様。

 武器は片手剣メインにサブに短剣。盾は装備していない。

 大量に文章を読んだため、洞察力に優れている。先読みもまあまあ。あまり喋らないため感情が表に出にくい。

 

 

 

比企谷 八幡 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている 17歳 ビギナー アハト

 

 千葉県総武高校に通う2年生。

 ぼっちを自称しており、コミュ能力は低い。Solitudeの6人の中で最下位。

 SAOを買った理由は修学旅行の嘘告白の気まずさから逃げたかったから。

 名前の由来はエイトだと安直すぎるからドイツ語の読みに。

 武器は短剣を使い、隠密と察知、聞き耳に優れている。

 武器や特性の理由としてはやはり彼の生活スタイルから。ただし高2になってから役に立たなくなった模様。

 

 

 

獅童 天音 ファイナルファンタジーⅧ 19歳 ベータテスター スコール

 

 九州の大学に通う1年生。

 転生者であり、スコール・レオンハートの前世の記憶やGF、魔法を引き継いでいるものの平和すぎるせいでろうそくや線香に火を付けるためのファイア、かき氷を作るためのブリザト、スマホを充電するためのサンダーくらいしか使い道がないのが現状。

 GFに至ってはもはや脳内会話相手。SAO内では魔法は使えずGFと会話はできるが召喚は不可。

 コミュ力はsolitude内トップだがそもそも喋る奴が少ない。(というか喋れない奴がわりと多い)

 SAOにダイブした理由は前世使ったガンブレードを現実での再現の参考になると思ったため。大学進学もガンブレード再現のための一環。

 ベータに参加した理由は早い方がいいからである。

 性格は原作と変わらず孤高を好むが、一遍生きるところまで生きたため何か悟っているところがある。

 リノアと一緒になっても孤高は治りきらなかったらしい……。

 ちなみに名前はライオンからそれっぽい名字を選び、スコール=雨として語感の良いあまね、と名付けた。さすがに日本人なのにスコール・レオンハートは変すぎるので。使用武器はガンブレードに似ているため両手剣を使用。

原作やディシディアの技も一部名前を変えてソードスキルに収録予定。

 

 

 

成瀬 真 ファイナルファンタジーⅦ 25歳 ビギナー セフィロス

 

 セフィロス・クレシェンドの転生者であり、記憶と魔法を引き継いでいるが被害や騒ぎが大きすぎて使うに使えない状況。SAO内での魔法の扱いはスコールと同じ。

 警備会社神羅の社長を務めている。理由は悪人限定とはいえ叩き斬れるからという物騒な理由。前世1stソルジャーだけあって頭は良く、利益はそれなりにあるようだ。

 刀は前世から使え、警備の都合上拳銃も使えるようになったが本人曰く斬った方が早いとも。

 コミュ力は会社を経営しているだけあって高い。が、たまに怖がられる模様。

 SAO購入、参加理由は打倒クラウドの一環である。(転生しているかどうかも分かってない) 

 そしてデスゲームに巻き込まれる。

 使用武器は刀。前世4M以上の刀を使ったが、この世界では再現が不可能なのでせめて2M以上のものを使いたいらしい。無論現実の刀の名前は正宗である。銃刀法違反になるので普段は木刀を持ち歩いている。

 ライフストリーム落下前と後の性格が混じっており、仲間思いな面もあるが邪魔する奴には容赦しない。

 名前の由来はかなり無理矢理でセフィロスのセでしか思いつかなかった。真は彼の愛刀の正宗から。読みが「ただし」だと古臭いため読みが似ている「まこと」とした。

 スコールと同じく原作etcの技を名前を変えてソードスキルに収録予定(変えない場合もあるかも)。

 

 

 

 

羽瀬川小鷹 僕は友達が少ない 14歳 ベータテスター ホーク

 

 中学2年生。顔つきが悪く、それをごまかせるSAOにダイブして友達を作ろうとしたところにデスゲームに巻き込まれる。

 コミュ力はそれなり。

 SAOの名前の由来はそのまま名前を英語読み。

 武器は火力にロマンがある両手斧。

 性格は原作通りだが作者が再現できるだろうか……。

 

 

 

山野 直樹 オリキャラ 13歳 ビギナー リーツ

 

 都内の中学1年生。

 コミュ力は低いが人見知りなだけ。

 ただ未来が不安である。

 顔立ちは小学4年生相当、つまり童顔。

 髪はわりと長めだがレンジほど長くない。

 名前の由来は木と葉の英訳、リーフとツリーを足して2で割った。

 武器は短剣または片手剣。左手には盾も装備している。

 性格は引っ込み思案。

 

 

 

 

 本名不明 オリキャラ 見た目から十代後半 シカ

 

 PoHのそばにいる少女。

 殺し合いを至上としているようだ。

 

 

 

 

 

以下FF勢2人の本当に本当にどうでもいい設定集。というか妄想に近い。(本編にはほぼ影響なし)

 2人は普通にプレイして手に入る能力相当をそのまま引き継いでいる。力は年相応になっている。知識はあるが、子供時代にはバカを演じなければならず、高校大学は前世でやってない内容だったためどっちみち勉強しないと理解できなかった模様。

 

 以下2人の事件簿。

 9歳の頃スコールが傘でブラスディングゾーン(原作ではガンブレードから闘気を出して敵に叩きつける技)をやろうとしたところ本当にできてしまい、謎の光柱ができたとニュースになったことがある。

 

 13歳の頃セフィロスがメテオを唱えたところ直径10Mくらいの隕石を呼び寄せてしまい、慌てて太平洋の真ん中あたりに軌道修正して落としたことがある。唱えた理由は試しにだそうで。スーパーノヴァを唱えればもれなく地球が危ない。

 

 




順次書き足して行きます。



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オリジナルスキル

 分量が多くなったため分離しました。
 未登場のスキルも書いてあるためネタバレが嫌な方はネタバレ注意の所でブラウザバック等をお願いします。
 順次追記もします。

 4/12 ネタバレに1つ追加


 オリジナルスキル設定

 

 スキル名 武器種別

 スキルの概要

 解説

 元ネタ

 由来やモチーフ(ない場合も)

 の順に記載しています。

 

 

 

 

 

 

 7話初登場

 

 スラント・アーク 片手剣

 

 ホリゾンタル・アークやバーチカル・アークと同時期に習得できる。斜めに斬り下し、返す刀で斜めに斬り上げる二連撃スキル。後隙や威力はホリゾンタル・アークと同程度。

 元ネタはホリゾンタル・アークとパーチカル・アークより。

 

 

 

 スピードエッジ 短剣

 

 最初期から使えるスキル。5mを0.8秒で突進して攻撃するスキル。遠距離からでも届く便利さがある反面、使用後の隙が少し大きい(最初期の状態で1秒)。ラビッドバイドの下位技。

 元ネタはラビッドバイドのラピッド「rapid」=迅速な・急なという意味なので似た意味を持つスピード「speed」とした。

 

 

 

9話初登場

 

 

 

 アッパーバイド 両手剣

 

 剣を下段に構えて走り、敵の懐に入ってから飛んで斬り上げる単発スキル。

 威力は高い(武器の攻撃力、力が同じ場合、スラントのおよそ4倍)しスキル硬直もないが、出すときには助走が必要なことと、スキルが出終わった時は敵の目の前で飛び上がっている状態なため、状況を考えないと危険なスキル。

 出典はFFⅧからラフディバイド

 

 

 地閃 (チセン) 刀

 

 飛び上がって相手の脳天に刀を突き刺すスキル。ジャンプ力が関わってくるため敏捷も威力に関係している。

 前提として敵の頭より高く飛ばないとそもそもスキルが発動することができない。

 高く飛ぶほど威力は高くなり、吹き飛ばしが発生しやすくなる。

 後隙はパーチカル・アークよりほんの少し多い(+0.05秒)程度。刀を抜く隙は気にしてはいけない、ゲームだから。

 出典はディシディア ファイナルファンタジー エアガイツから獄門

 

 

 

 12話初登場

 

 

 

 スラント・トライ 片手剣

 

 三角形の形に回り込みながら斜め下に斬り下し、斬り上げ、斬り下しを行うスキル。

 いわばバーチカル・スクエアを3連撃にして斬る方向を斜めに変えたもの。

 ちなみに斬り上げから開始することも可能。

 後隙やクールタイムはそれ相応に長くなっている。脳内設定では後隙3秒クールタイム1分としている(素の状態なので熟練度や装備で短縮可能)。

 元ネタはホリゾンタル・スクエアとバーチカル・スクエアより、スクエアあるんならトライアングルあるんじゃないか?と作者が考えた結果。

 

 

 

 ホリゾンタル・トライ 片手剣

 

 三角形の形に回り込みながら右→左→右と斬るスキル。

 ホリゾンタル・スクエアの下位スキルである。

 左→右→左と斬ることも可能。

 後隙クールタイム元ネタはスラント・トライと一緒。

 

 

 

 23話初登場

 

 ワールウインド 両手斧

 

 詳細が不明なため一応オリジナルスキル扱いに。

 両手で斧を持って旋風のように回転して敵を吹き飛ばす。

 回るスピードによってヒット数が変わる。

 最大4ヒットまで。

 

 グランドブレイク 両手斧

 

 地面を砕く勢いで斧を勢いよく振り下ろす。

 威力が単発スキルでは最強クラスであり、衝撃波によって地面にいる敵に追加で3秒のスタン効果を与えることがある。

 確率は距離と本人のレベルと力によって上下する。

 

 ラウンドスラッシュ 片手剣ないし両手剣

 

 回転斬りを繰り出して回りの敵を吹き飛ばす。

 両手剣の方が範囲が広く、ソードスキル倍率が高い。

 元ネタはFFⅧのフェイテッドサークルより。

 

 

 

 

 これ以降ネタバレ注意。

 嫌な方はブラウザバックをお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここからネタバレ開始です。

 

 

 

 

 第33話登場予定スキル

 

 雷光速 刀・細剣

 

 雷のごとき速さで駆け抜けるソードスキル。

 攻撃力はなく、単純に移動用。

 回避にも攻撃のための接近にも使える。

 

 

 

 第34話登場予定スキル

 

 残心 剣系武器全般

 

 恐ろしく早い速度で武器を振って鎌鼬で攻撃する技術。

 あくまで技術なのでソードスキルではない。

 よってダメージも通常攻撃の半分程度だがレベル差によっては一撃で倒すことも可能。

 

 

 

 

 

 

 

 登場話未定スキル

 

 

 

 クルエルウェーブ 片手剣 ホワイトアウト装備時限定。

 

 氷を纏った剣で衝撃波を2回飛ばすソードスキル。

 通常SAOに魔法は存在しないのだが、大昔にかつて魔法があったことから万年雪の下に埋まっていた剣が魔法の力を僅かに残しており、魔力と素早く剣を振ることにより斬撃を飛ばせるという設定。

 1撃目は左から右に薙ぎ払って三日月状の衝撃波を飛ばし、2撃目は突いてV字型の衝撃波を飛ばす。

 2撃目はキャンセル可能(振り終わったまま1秒ほど待つとキャンセル、突きの体勢に行くと2撃目が出る)。

 射程距離は30M。

 氷を纏うと言ってもエフェクトだけで攻撃力に関係がなく属性を持っている訳でもないが、当てた敵の攻撃力と防御力と移動速度を15秒間95%に下げる。

 ヒット時の氷が舞い散るエフェクトは幻想的とのこと。

 威力が中盤で手に入るとは思えないほど低い(1発目が通常攻撃より少し高い、2撃目がスラントと同じ)。

 実用性よりエフェクトの美しさを重視したスキル。

 斬撃を直接当てると威力が若干上がるが、それ以外の追加効果はないためそんなことをするくらいならスラントを繰り出した方が良い。

 クールタイムは1撃目だけで6分30秒、2撃目まで出すと10分と非常に長いが(大気中にほとんど無い魔力をチャージする関係上)硬直は1撃目でキャンセルすると1秒、2撃目まで出し切ると硬直はなく、どちらにしても素早く他の行動が可能である。

 元ネタはDFFAC(ディシディアファイナルファンタジーアーケード)からヴァンのHP攻撃のクルエルアズールより。

 よく使っているので出したかった。

 ちなみに原作でも発生が非常に早いHP攻撃であり、これを積まないヴァンはほぼいない。

 ここでは発生の速さやコンパクトに終わる特徴を後隙の少なさにして表現した。

 

 

 

 リミットブレイク 両手武器全般

 

 両手武器を装備しているなら斧だろうが剣だろうが発動できる。

 リミットブレイク状態となって力と防御と敏捷に1.3倍の補正がかかり、この時専用のソードスキルが使えるようになる。

 しかし発動条件としてHPがレッドゾーンに入っている必要がある。

 回復してイエロやグリーンになるとこのスキルは解除される。

 逃げるも立ち向かうも各々の自由なスキル。

 効果時間は90秒であり、クールタイムは20分。

 元ネタというか、そのままFFⅦのリミットブレイクを引用。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムーンライト・ミーティア 二刀流

 

 月光と流星のように美しい10連撃。

 威力は原作キリトの装備でザ・スカルリーバーのHPゲージの1/6ほど。

 動作中は剣が月のように静かな光を帯びる。

 1~4撃目は回転斬りを放ち、5撃目は左手で横斬りを放つ。

 6撃目も左手で右下から左上に斬り、7撃目と8撃目は右手でV字に斬撃を放つ。

 9撃目は体を捻りながら左手で斬り飛んで10撃目は急降下しながら右手で突きを入れる(10撃目が当たると敏捷1.05倍のバフが30秒かかる)。

 クールタイムは3分30秒

 元ネタはなし。

 技の由来は月と流星より。

 1~4撃目を月、10撃目を流星として表現した。

 技の威力は月<太陽<星となっているが動作時間や後隙はこの逆となる。

 使い分けがカギとなるだろう。

 

 

 

 サンチャージ・ブラスト

 

 陽光の力を溜めて最後に爆発させる一撃を放つ14連撃。

 動作中は剣が眩しく光るのが特徴。

 最初の13撃の威力が低くなっていて最後の1撃の威力が高くなっている特性を持つ。

 威力は原作キリトの装備でザ・スカルリーバーのHPゲージの1/4ほど。

 1撃目は右手で縦斬りを放ち2撃目は左手で横斬りを繰り出す。

 3撃目は右手で半円を描き、4撃目は左手でまた半円状に斬る。

 5撃目は内角が90°の扇型になるように両手で斬り裂き、6撃目は両手で横に斬撃、7撃目はX字に下から斬り裂き、8撃~9撃目は右手でレの字に斬る。

 10撃~11撃目は上から下にそれぞれ半円状に斬り、12~13撃目は斬り返す。

 14撃目は両手を空に掲げて真下に斬り下す。

 この1撃を当てると力1.1倍のバフが1分間付与される。

 クールタイムは8分。

 元ネタはなし。

 技の由来は太陽であり、半円×2を直円とし、それを斬撃に入れることで表現した。

 

 

 エクリプスオブ・ムーン 二刀流 

 赤い月のように恐ろしく、かつ静かに、そして素早く20連撃を叩き込むスキル。

威力は原作キリトの装備でザ・スカルリーバーのHPゲージの2/3ほど。

動作中は剣が赤黒く光る。

 1撃目は右手で横薙ぎ、2撃目は左手から横斬り、3撃目はクロスした腕を戻しながら斬り裂き、4撃目は右手で突き、5撃目は突いた剣で外側に薙ぎ払う。

6撃目は左手の剣で回転しながら斬撃を繰り出し、7撃目は続けて右手で攻撃、8撃目は左手で突きを放ち、9撃目も右手で突きを入れ、10撃目は飛び上りながら斬る。

 11撃目は相手の頭上で空中宙返りをした後、頭を左手の剣で串刺しにし(この攻撃のみ防御ダウン《防御×0.9倍 20秒》のデバフが付く)、12撃目は右手の剣で縦斬りを繰り出し(当てる場所は相手の肩あたり)、13撃目は両手の剣で背中を真っ二つに斬って地上に降り、14~16撃目は1~3撃目と同じ。

 17撃目は左手で突きを放って18撃目はその手で外側に斬り払う。

 19撃目は両手でX字に斬撃を放ってラスト20撃目は返す刀で再びX字に斬撃を放つ。

 実用性と美しさ共に最上級のスキルであり、デバフもつくため威力は高くなる。

 続いてジ・イクリプスやスターバースト・ストリームを繰り出せばフロアボスですら大ダメージは免れないだろう。

 二刀流スキルの宿命として動作時間が長いが、後隙は短い。

 クールタイムは5分。

 元ネタはなし。

技名の由来は日食の対になる月食である。

 つまりジ・イクリプスと対応している。

 威力は月食<日食(ジ・イクリプス)<新星の順だが後隙や動作時間は逆なのも月日星シリーズと同じ。

 

 

 ラスト・ノヴァ

 超新星爆発を起こす威力を持つとされる33連撃のソードスキル。

 総合威力では全ソードスキルの中でトップであり、ザ・スカルリーバーのHPゲージを余裕で1本刈り取るだけのスペックがある。

 エリュシデータとダークリパルサーを装備して綺麗に叩き込めば1本と1/3を削れるであろう。

 動作中最初は剣が青く光り、徐々に白→黄色→オレンジ→赤に変化していく。

 1撃目は前に18°ちょうどに突進突きを繰り出し(左右は選択可能であり、突く腕で選ぶ)、2~5撃目は後ろに振り返りながら角度がちょうど36°になるように突進突きを放つ。

 つまり1~5撃目は上から見れば星を描く。

 6撃目は突きに使わなかった腕で後ろに振り返りながら斬り、7撃目は1~5撃目に使った腕で突き。

 8撃目は突いていない腕で突きを放ち、9撃目は外側に切り裂く。

 10撃~14撃目は左右それぞれの手で乱舞を入れ、15撃目は飛び上って相手の脳天を斬る(この攻撃のみ防御ダウン《防御×0.95倍 30秒》のデバフが付く)。

 着地して16撃目は右手で横を薙ぎ、17撃~21撃目は左手で下から連続突きを放つ(角度は30°ずつ上がって行く。21撃目には浮かせ判定がある。使用者の力と被弾者の防御が確率に影響)。

 浮かせた22撃目は飛びながら右手で横薙ぎを放ち、23撃目はターンして左手でまた薙ぎ直す。

 24撃~26撃目は再び飛び上って回転斬りをして27撃目で頭を串刺しにして地面に叩き落とす(確率で5秒のスタンが入る。使用者の力と被弾者の防御が確率に影響)。

 28~32撃目は1撃目とは逆の手で星を描き、最後の33撃目は両手で縦に斬り下して吹き飛ばす。

 元ネタは17~21撃目以外はオリジナル。

 その5撃はテイルズシリーズの閃光裂破を元にしている。

 クールタイムは10分。

 技名の由来は新星から。




 これも考え次第、追記して行きます。
 
 二刀流スキルの説明が長いのは仕様です。
 原作で27連撃している時点で仕方ないですね……はい。


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登場ギルド

 ギルド名 リーダー名 略称 およその人数の順です。

 ネタバレもかなりあるので注意をお願いします。


 solitude レンジ SOL 25層時点7人

 

 自分が死なないために人を集めようと考えて立ち上げたギルド。

 元々は攻略組を目指すつもりではなかったのだが巻き込まれ、現在攻略組の先陣を切っている。

 血盟騎士団以上に少数精鋭のギルドであり、現在攻略組では最強・変態集団と言われている。

 フロアボスへは1パーティーしか送っていない(そもそも2パーティー以上送れない)がダメージ効率はDDAのアタッカー全部足してやっと=になる程度には高い。

 現在メンバーにはレンジ・アハト(八幡)・スコール・セフィロス・サチ・ホーク(小鷹)・アスナが所属。

 加入していないもののキリトもよく顔を出している。

 

 

 

 整竜連合 リンド DDA 25層時点101人

 

 こちらは攻略組最大のギルド。

 SOLが強すぎてついていけない上にメンバーが変態ばかりなので攻略組を目指す者は9割9分こちらに来るため最大になった。

 そのため合併時期が大幅に早まっている。

 25層まではほぼ毎回7パーティーを送っている。

 SOLがアタッカー気質のためタンクを中心にした防御重視のプレイヤーが多い。

 強引な手段を取ることもあるが、そもそも手段を取る相手があまりいないため稀にある程度になっている。

 SOLや軍とはそれなりに仲が良く、情報を交換し合っている。

 

 

 

 アインクラッド解放軍 ALF キバオウ 25層時点400人台

 

 アインクラッド最大のギルド。

 元々は攻略組に入ろうとしていたが断念し、中下層の治安維持を中心に動いている(例 詳しいマッピングやそれぞれの層の特徴解説を書いたパンフレット作成、1層で待っているプレイヤーへの物資配給)。

 オレンジプレイヤー・ギルドも軍が基本担当しているが手に負えないと判断した場合はDDAやSOLに回っている。

 

 

 

 月夜の黒猫団 MBC ケイタ 25層時点5人

 

 キリトが下層に素材を集めに行った時に出会ったギルド。

 攻略組入りを目指そうとしているが止められる。

 現在はレベリングやスキル上げをやっている。

 

 

 

 血盟騎士団 KoB ヒースクリフ 25層時点17人

 

 ヒースクリフという男が直々にスカウトして育て上げているギルド。

 少数精鋭を掲げているがSOLほど少数ではない。

 が、強い事に変わりはなくDDAもSOLも攻略組に入れるならここだと考えていたようだ。

 原作と異なる点はフロアボスが容易く突破されすぎており、より攻略組の様子を把握するために原作より早く攻略組に参加を決定した。

 アスナも25層時点ではスカウトされておらず副団長は別の人物が担当している。



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1層
第1話


 「……ここがアインクラットか。」

 俺はそう呟き、周りを見渡す。

 ヴァーチャルとは思えないほど綺麗であり、リアルだ。

 現実だと言われれば信じてしまいそうなほどに。

 森とかだともっと綺麗なのだろうか。

 楽しみになって来たな。

 前に目を向ければ固まって歩いている人もいれば1人で外に出る人もいるようだ。

 今も茶髪の青年が黒髪の少年に話しかけている様子。内容はおそらくレクチャーだろうな。

 俺は人と関わるのは面倒だから話しかけるなんてことはしないが。

 とにかく準備をしよう。

 武器と防具にいくらかの回復アイテムがあればいいだろうか。

 武器は……単純に片手剣にしよう。使いやすそうだし。盾は……いいか、重そうだ。

 今日の目標は3レベまで上げることとソードスキルのマスターと行こう。

 「さて、行きますか。」

 俺はそう呟いて駆け出した。

 

 準備を終え、圏外へ飛び出した俺は早速剣を抜いて敵を探すことにした。

 ……いたか。

 のそのそ歩いている敵mobフレンジーボアに斬撃を浴びせる。

 気が付いて攻撃をしてくるものの余裕で回避できる。

 練習台と言われてるモンスターだけあるな。

 「遅い。」

 そう囁いて回避しては斬り、最後に突いて倒すことができた。

 「よし、倒せたみたいだな。」

 ステータスを見る。

 変わった所は無いが何か感慨深いものを感じる。

 そうだな、次はソードスキルを発動させて倒してみるか。

 えーっと……スラントにホリゾンタルとかがあったな。

 何事も練習が大事。

 あと基本も。

 

 

 

 「 ふう……。」

 レベルが3に上がったところで俺は一息ついた。

 「レベルは達成できたがスキル発動がまだ甘いか。」

 高確率で発動できるようになったとはいえ、まれに失敗することがある。

 「肝心な時でも安定して発動できるようにしないとな。」

 3回ほど発動に失敗してダメージを喰らってしまったから。

 ゲージの割合は8割くらいあるがな。

 ボス戦で失敗しようものならどうなるかは火を見るより明らかだ。

 「火力が高い分発動が面倒という訳か。とにかく経験を積もう。」

 そう呟いてポーションを飲もうとしたところ、身体が光に包まれていることに気が付いた。

 どういうことだろうかと考え終わる頃には俺はどこかに転移していた。

 

 

 

 

 俺が転移した場所ははじまりの街の中央広場だった。

 俺だけでなく、他のプレイヤーも次々と転移してきたようだ。

 「……どういうことだ。」

 瞬く間に人で中央広場が埋まって行く。

 「全プレイヤーが転移しているのか?」

 俺の言葉は誰にも届くことはなかった。

 



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第2話

当分は3~5日ごとに投稿して行こうと思います。
投稿時間は零時に行います。



 俺が転移した場所ははじまりの街の中央広場だった。

 俺だけでなく、他のプレイヤーも次々と転移してきたようだ。

 「……どういうことだ。」

 瞬く間に中央広場が埋まって行く。

 「全プレイヤーが転移しているのか?」

 俺の言葉は誰にも届くことはなかった。

 そして確かめられることもないだろう。

 

 

 

 

 

 プレイヤーからは困惑の声が広がる。

 「キークエやってたのに。」「レベリングしてたんだがなぁ……。」「ログアウトが出来ない。」といった声が聞こえてくる。

 声の一つに俺は本当かどうか確かめるためメインメニュー中のログアウトボタンを探したが見つからなかった。

 「バグ……にしては何かが変だ。いったい何が起こるんだ?」

 そのとき、上空にWarningの文字が浮かび上がったかと思うとSystem Announcementの文字とともに空を埋め尽くし、血液を思わせる赤い液体がローブを着用した十メートルくらいの人形みたいなものを形成した。

 その人形もどきはこう言った。

 

 「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。

 私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる、唯一の存在だ。

 プレイヤー諸君の中には、ログアウトボタンがない事に気付いている者もいるだろう。

 これはバグではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である。

 よって諸君らによる自発的なログアウトは一切できない。

 また、外部によるナーヴギアの強制ログアウトも出来ない。

 もしも外部の人間の手によってナーヴギアが停止、あるいは取り外しが行われた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる。

 しかし、充分に留意してもらいたい。

 今後ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らの仮想体は永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。

 諸君らが解放される条件はただ一つ……このゲームをクリアすれば良い。 

 現在君達がいるのはアインクラッドの最下層、第一層である。

 各フロアの迷宮区を攻略してフロアボスを倒せば上の階へ進める。

 第百層にいる最終ボスを倒せばクリアだ。

 それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのささやかなプレゼントが用意してある。

 確認してくれたまえ。」

 

 「プレゼント……?」

ここにいる多くのプレイヤーがこう思っただろう。

 『嫌な予感がする。』と

アイテムストレージを見てオブジェクト化する。

 「これは鏡か。」

 そこに写っているのは現実の俺と似てはいるが違うこの世界での顔。

 ある程度似るように設定したから当然か。

 俺は恰好良くもないが不細工というわけでもない。

 しかし身体が突然発光したかと思うと同時に周りのプレイヤーにも同じ現象が起こった。

 「眩しい……!!」 

 光が収まり目を開けるとそこはさっきと同じはじまりの街の中央広場だ。どうやら転移ではないようだ。

 だが周りの様子がおかしい。全てのプレイヤーの見た目が変わっていたのだ。

 中には女子から男子に変わっているプレイヤーもいた。

 「可哀想に……。南無阿弥陀仏。」

 いい加減にお経を唱えたところではたと気が付いた。

 「姿が変わっているのか?」

 手鏡を見る。

 そこには現実の俺の顔が写っていた。

 「ふむ……。」

 別に困ることはない。異性を引っ掛ける気はないし、普通に会話できるならどうでも良い事だ。

 体型も現実の細い体型になっていた。

 それはそうと情報収集だ。聞き耳を立てよう。

 聞き耳を立てた結果、身体をペタペタ触ったのが原因という声が耳に入った。

 確かにそれっぽいが……。

 「現実であることを認識させるためか。まあどうでもいい。」

 そして茅場晶彦は

 

 「それではプレイヤー諸君、健闘を祈る。」

 

 この言葉を最後に消えた。

 どうやら茅場晶彦によるこの世界のチュートリアルが終わったようだ。

 周りが煩いが俺はいたって冷静だった。

 別に驚くほどのことでもない。

 ただやることが増えただけだ。

 「生き残る……か。」

 思いつくことはあれど生き残る確信を俺は持てなかった。

 



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第3話

 俺はまず情報収集をしていた。キークエストなるものがあると転移の時に知り、NPCに聞いたところホルンカの村にあると分かった。

 そこに向かいつつ考える。

 (デスゲームになった以上、油断はできないな。

 敵はモンスターだけではない、人間もだ。

 誰が襲い掛かって来るかわかったものじゃない。

 あからさまに襲い掛かってくるような人間はまずいないだろう……よほどのバカじゃない限り。

 他のMMOのサイトを見た記憶だと油断させてから狩ることが多いらしい。

 近づいて来る人間には警戒した方が良いな。

 しかし警戒しすぎるのも禁物。

 仲間が集まらない。

 そして仲間がいないと厳しいのも事実。

 いざという時に力が必要だ。

 レベルもそうだし仲間もそうだ。装備もだし経験もだ。

 とにかくギルドを作ろう。入るのではダメだ。自由が利かない。

 コンセプトは……少数精鋭。裏切り者が怖いから少なくしておいた方がリスクは低い。

 レベリングを目標とするが攻略はしない。

 最前線はおそらく殺伐とするだろうし俺に集団を説得できる適正は低い。

 となるとコンセプトは自衛、か。)

 そこまで考えたところで村に着いた。何人かのプレイヤーとすれ違う。

 クエスト受注者だろうか。

 俺は急ぐことにした。

 

 

 

 俺はひたすら剣を振っていた。日が落ちた後もひたすらリトルペネントを斬っていった。

 「花つきを倒せばいい、実つきは危険。」

 と言われていたのでその通りに俺は相手をしていった。

 レベルが高くなれば壊してレベリングもできるんだがな。

 

 腐食液を飛ばされることもあったがその解決方法は簡単。

 『懐に潜り込めばいい』

  そうすれば無防備なリトルネペントを斬れる。

 

 

 

 「あふ……。」

 欠伸が出てしまったらしい。

 時計を見ると日付が変わる頃と言ったところか。

 こんな所で寝たらもれなく死ぬことが分かっているため戻ろうとしたところ、右の方にリトルネペントの大群がいた。

 その中に人が……1人。

 さては実を割ったな。

 「……狩っていくか。」

 これを狩り終わったら寝よう。目の前で死なれるのは流石に寝覚めが悪くなりそうだ。

 

 「多いな……。」

 俺は大群の中で戦っている人に向かいながらリトルペネントの大群を切り捨てていた。

 今の攻撃力だと通常攻撃で3発、ソードスキルだと1発というところだ。

 ソードスキルの硬直は無視できないため周りを見ながら使っていく。

 「はっ、ふっ。」

 自分自身の息遣いが聞こえる。人が危ないと言うときに楽しんでいる俺がいる。

 (今は楽しんでる場合じゃないな。)

 そう切り替え、俺は斬る。蔦が伸びてくる。横っ飛びで避けて斬る。

 (見えれば避けられる、当たらないなら安い。)

 俺のHPゲージは95%と言ったところ。カス当たりまたはガードしてるから減らないのも当然。

 何があるか分からないからソードスキルは使わない。

 囲まれた人……黒髪の少年もまだ大丈夫そうだ。ゲージはイエローに近いみたいだがあの様子だともう少し耐えるだろう。

 短剣を使って回避しながら切り裂いているようだ。

 その少年がこっちに気付く。

「何の用だ?アイツの仲間か?」

 いや、レベリングに来ただけです。これが終わったら帰りたいです。

 「仲間はいない。とにかくこの場を切り抜けるのが先決だ。」

 「……分かった。」

 俺は少年と共に数が大分減ったリトルネペントの集団に斬り掛かった。

 



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第4話

戦闘シーンです。
上手く書けているか不安ですがよろしくお願いします。


 「俺が左をやる。君は右を頼む。」

 「……。」

 返事は無いが気にせず俺はさっきと同じように駆ける。

 襲い掛かって来たらその時また考えればいい。

 リトルネペントは前に2体、その後ろに7体前後。腐食液に注意しつつ各個撃破と行くか。

 俺はスラントとホリゾンタルを使って前の2体を倒したはいいものの腐食液が真っ直ぐ俺に向かってくる。

 「まあそう来るわな。」

 バックステップで避けるものの掠めたらしく少しゲージが減り、足に不快感が走る。

 「……今のは横が正解だったか。」

 回避行動を取ったまではいいが焦って方向を間違えたらしい。

 俺は足に走る不快感に目を顰め、再びリトルネペントらに肉薄する。

 左から右に斜め右下から左上に、最後に突いて1体仕留める。

 突いた隙を狙ってか右前から飛んで来る蔓を左に飛んで避ける。

 避けたところにぽつんと1体いたのでバーチカルで斬っておく。

 あと5体。少年の方を見るとまだ6体いた。 

 余所見をしている場合ではない、早く片付けなくては。

 救援に向かうことに越したことはないのだから。

 集まっているので横一閃に薙ぎ払い、斜めに2体ずつ斬れるようにV字に斬って2体同時にポリゴンに変え、左の1体に向かって飛翔して斬り掛かる。続けて横一閃を繰り出して青片と散らせた。

 残り2体……スラントとホリゾンタルは使えるがバーチカルはまだだな。

 俺はダメージ覚悟でスラントを使い、蔦を1発食らった後にホリゾンタルを喰らわせて戦闘終了。

 ……じゃなかった、向こうが残っ……あ、終わったか。

 右にいた敵がいなくなっている。

 助けがなくても生き残ってたな、この分だと。

 「あ……ありがほうございまひゅっ。」

 ありがとうございますか?

 どもって聞き取りにくいが完全に聞き取れないほどじゃない。

 そしてスルーしておこう。経験上スルーした方が円滑に進む。

 そして考える。

 悪い奴ではなさそうだ、すぐに感謝が言える訳だし。

 ギルドに勧誘してみるか。

 今は要らなくても後半はどうしても人が必要になるし。

 声を掛ける事自体に意味がある。

 フレンドになってくれるだけでもありがたい。

 「圏内に戻ろう。疲れた。」

 と言うと少年は首を縦に振った。

 

 

 

 宿屋に着き、金を払った俺ら2人は部屋で話を始めることにした。

 幾分か落ち着いたところで少年の外見を見る。

 髪型は前髪が目に若干かかっており、なにより特徴的なのがピンと立っているアホ毛だった。

 顔立ちは整っているものの目が濁っているというか光が無い。

 ハイライトが薄いという感じがして顔立ちの良さを打ち消している。

 少年はあの様子だと喋らないだろう。

 だから俺から口火を切る事にした。

 「俺はレンジ。君は?」

 「……アハトです。」

 「敬語は要らない、俺も使う気は無いし。」

 「……分かった。」

 迷いつつも了承してくれた。

 俺は出会った時から抱いていた疑問を投げかける。

 「……ひとつ聞いていいか?」

 「……?」

 アハトは首を傾げている。

 あまり喋らないタイプなのか……?

 「リトルネペントに囲まれた経緯を聞きたい。」

 「…………俺が1人でリトルネペントを倒していたら実を割ったらしい他プレイヤーに押し付けられた。そいつがどうなったかは知らない。俺はここ……………………。」

 最後に何かを呟いたようだが完全には聞き取れなかった。

 俺はここ……?これだけだと分からないな。

 「……そうか。さ、あいや、何でもない。」

 災難だったなと言おうとしたが何か言ってはならないような気がした。

 アハトの雰囲気がそうさせたのだろうか。

 「まあ、アンタから見れば災難だろうな。」

 『さ』の一文字で読まれた?鋭い。

 「気を悪くしたならすまない。かける言葉が思いつかなくてな……。」

 「……俺も同じだ。」

 「もしかしてアハト、人と話すのが苦手なのか?」

 「ああ、苦手なんてものじゃない。……妹としか最近まで話してなかった。」

 「妹か。アハトも顔立ちはいいから妹さんも可愛いんだろうな。」

 「当たり前だ。嫁に出さないまである。」

 どうやらシスコンらしい。愛せる家族がいるのは羨ましいな。

 「妹さんのこと、大事にしてるんだな。」

 「ああ……。」

 そう言って一息つくアハト。心なしか沈んで見える。

 「裏切られたことがショックだったのか?」

 「いや、そんなことは慣れている。」

 裏切りをそんなことで済ませるか……日常で裏切られる回数が多いのだろうか。

「アハト。」

 俺は静かに語りかける。

「……何でしょうか。」

 雰囲気を察したのか敬語になるアハト。

 畏まる程の話ではないんだがなぁ。

 「俺と組まないか?一緒に戦うのが嫌なら話し相手になってくれるだけでいい。独りだと厳しいんだ。」

  アハトが苦虫を噛み潰した表情をする。

 「すまん。」

 「……そうか。」

 「誘ってくれたことには感謝している……だけど組めない事情があるんだ。話し相手ならまあ、付き合ってやってもいい。」

 「ありがとう。…………俺の話を聞いてくれないか?」

 コイツには話していいと思った。

 

 

 

 デスゲームを生き残るための方法を。

 

 

 



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第5話

 ストックができたため少々早目に投下します。 
 また、オリジナルの防具が出現しています。パラメーターや名前はは違和感のないように設定しましたが、おかしいと感じた方は感想欄にお願いします。


 「……どういうことだ?」

 「ただ単純に話を聞いて欲しい。俺の考えていることを知って欲しいんだ。出来れば肯定して欲しいが否定しても構わない。」

 「分かった。………………………。」

 独り言が多いな。俺も人のことは言えないが。

 「俺はギルドを作りたいと思っている。」

 「……俺に入れと?」

 「作る目的をまずは聞いてくれ。俺がギルドを作る目的は死なないため、だ。」

 「死なないため?」

 「ああ、死んだらゲームオーバーだ。逆に考えると死ななきゃ安い。こう考えられないか?」

 「えーっと……?まあなんとなくは分かるような、分からないような。」

 「つまり、死にたくないからギルドを作るって訳だ。」

 「なるほどな。この時間まで狩っていたってことはフロアボスを攻略するのか?」

 「いや、攻略はしない。死なないようにするためだ。」

 「どこまでも一貫してるんだな。」

 ブレたらそれだけ説得力が無くなるし。

 「レベルが上がれば死ににくくなるだろ?人数が多くても同じだ。まあ多すぎれば油断を生むけど。」

 昼間の大学の食堂の騒がしさは異常だ、全く。便所飯するぼっちの気持ちがよく分かる。

 「それには完全に同意だ。リア充達は群れて五月蠅いからな。」

 あ、アハト俺と同じぼっちまたはそれに近い人種だ。オタク……かどうかの判別は難しい。

 「話が逸れたが簡単に言えばレベリングの協力とかレアイテムの収集補助、いざという時の戦力確保がギルドを作る目的だ。」

 「なるほど……目的は分かった。」

 

 俺は返事の時期を考える。

 「返事は今じゃなくていい。……そうだな、1週間あれば決められるか?」

 「いや、入る。」

  はい?

 「はい?」

 あ、思考と言動がシンクロした。ってそんなことを考えている場合ではない。

「いやその……決断が早すぎないか?」

 俺でも少しは考えるぞ。5分くらい。

 「囲まれた時、仲間がいれば楽だと思ったから。それだけだ。勘違いするなよ、アンタを信用した訳じゃない。」

 1日で信用されたら逆に怖い。とにかくこれで1人確保か、幸先良いな。

 「それでいい。俺もアハトを信用している訳じゃない、今は。俺は明日続きをするつもりだがどうする?一緒に来るか?」

 実付きがあの量だとするとレベリングに使えなくもないが1人だと事故る可能性もあるからできれば来て欲しい。実際アハトが対面させられた時はもっといただろう。よく生き残ったな。イエローって5割切るとだっけ。

 「……そうする。レンジがどういう人物なのか、信用できるに値するのかを知りたい。」

 「よし、じゃあ9時にここを出て戦闘しに行くぞ。それでいいか?」

 「大丈夫だ。また明日。」

 「ああ、よろしく頼む。」

こうして俺は眠りにつくことにした。

 

「ふう……。」

 水を飲んで一息つく。

 今日はいろいろあったな……。

 死んだら終わりのデスゲーム化にMPKの被害者に遭遇して共闘……はしてないな。

 お互いに好き勝手に斬ってただけだから助けたどころか共闘ですらないような気もする。

 無事だったからよしとしよう。それよりも気になることがある。

 「デスゲームにする目的……だな。」

 俺はベットに横たわりつつ考える。

 《ただ殺したいならあの場でアナウンスしてすぐに殺しているはず。なんならログインした瞬間に殺してもいい。

 そうなるとSAOの中に鍵があると結論付けていいだろう。鍵を見つけて欲しいから閉じ込め……デスゲーム化した。

 その鍵の内容……やはりゲームをクリアすることか。いやしかし、クリアさせるがためにこれはやりすぎだ。1万人を殺すなど大掛かりすぎる。

 ここまで殺すとなると……聖書の神や織田信長。1発で殺すという点では広島長崎の原爆も同じか。

 これを踏まえるとそんなレベルの罪を犯してまでSAOで見たいものがあるということ。

 だとするとゲームクリアは相当な難易度になると推測できる。

 いや、クリアだけに集中できていればまだいい。

 モンスターを押し付けられたりと人間も敵になり得る。現にアハトがそうだった。

 今後は直接殺される場合もあるのか……。殺人罪は適用されるのだろうか。正当防衛も成立するかどうかも怪しい。

 っと、考えが脇道に逸れた。茅場がSAOの中で見たいものを考えていたんだっけ。……情報としてはデスゲーム宣言の言葉だけ、か。》

 俺は目を閉じて言葉を思い返す。

 『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。

 私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる、唯一の存在だ。』

 《最初の言葉はこれだったな。そして

 『私の世界へようこそ。』この言葉がヒントになるか?

 『この世界をコントロールできる、唯一の存在だ。』とあることからこの世界は茅場1人で作ったのだろう。嘘を付いている可能性はあるがこの際切る。

 この2つの言葉を結びつけると……私の世界…………SAOで見つけて欲しいもの…………私の世界に隠したモノを見つけて欲しい、と言う事か?

 隠したモノと…………………は………zzz》

 俺の意識は考えている間に消えていた。

 

 

 

 

 

 (朝、か……。)

 朝の日差しが目に沁みる。眩しい。

 今は……7時57分か。ゆっくり朝ご飯が食べられそうだ。

食べなくても平気らしいが体調に影響が出るとかどこかで聞いたから食べておいた方がいいな。今日も戦闘するし。

 アハトは起きているのだろうか。俺は扉を開けて下に降りる。はたしてアハトがいた。

 「おはようアハト。」

 「……おはよう。」

 眠いのだろうか。俺は寝起きは良い方だがアハトは違うのだろうか。

 「眠いのか?」

 「いや、考え事をしてた。」

 「そうか。」

 深くは聞かずに食べ始める。

 結局食べている間は食器の音が響くだけだった。

 

 「この辺……だったか。」

 「そうだったはず……いたぞ。」

 アハトがリトルネペントを見つけたらしい。

 俺達は同時に駆け出した。

 

 

 

 「レンジ、どうだ?」

 「いや、出ない。」

 あれから2時間ほど経過して俺達はポーションを飲んで一息ついている。

 実を割った訳では無いから2人とも8割以上残っているが念のため飲んだというところ。

 「レベリングしてるのか剣が欲しいのかわからないな。」

 そういえば短剣使いじゃなかったっけ……。

 「アハトお前短剣使いじゃないのか?」

 「売ればいい金になるしレベル上げになるかと思って受けた。」

 「あ、なるほど。」

 確かに金は大事だ。命より金なんていうことにならないといいけど。

 「実付きがいるけどどうする?」

 アハトが気が付いて言う。察知能力高いな。

 「割ってレベリングだ。」

 「OK、やるぞ。」

 ちなみに割った結果はレベルが6だったのが10に上がった。お目当ての胚珠もゲット。ついでにレアっぽい防具も見つかった。名前はロウブレザー。制服のブレザーを思わせるデザインで防御が+10、敏捷+1という防具だ。

 今装備しているのがクロスレザーの防御+7だから着替えるか。

 コンソールを開いて付け替える。デザインいいなこれ。色も濃紺と俺の好みに近い。ポケットがあるのもよし。モノが入るかは分からないがポーションとか入れられたら便利そうだ。アハトに声をかける。

 「アハト、そっちはどうだ?俺は片付いた。」

 「こっちも終わった。胚珠はまだだが。」

 「俺は落ちた。手伝う。」

 「サンキュ。ところでレンジが着ている防具はどこで手に入れたんだ?」

 「これはリトルネペントを倒している最中に手に入った。おそらくレアドロップだろう。」

 「落としてくれたらいいけど。」

 「アハトはまず胚珠を狙えよ……。」

 「それもそうでした。」

 軽口を叩きながら胚珠集め兼レベリング再開。

 

 

 その様子はまあ、『リトネペント逃げて!!』とだけ言っておこう。

 

 

 4時間後にアハトが胚珠をドロップしたので仲良く2人でアニールブレードを貰った。

 攻撃力は今までのより30ほど上がったからこれからの道中は楽になりそうだ。

 実付きは発見したら進んで叩き割ったためレベルも12に上がった。

 俺達は戦果を話しながら宿に戻った。

 



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第6話

 俺達は宿に戻り、部屋に入った。

 「山分けしようか、アハト。」

 と俺は軽く言ってみる。

 「そう言うと銀行強盗を想像するのは俺だけか?」

 アハトがそんなことを返す。

 「どちらかというと悪事を働いた後のグループじゃないか?」

 「俺達は悪事を働いてないぞ。」

 悪事は茅場だけでお腹一杯だ。

 「働いてたまるか。さあ始めるぞ。」

 

 「とりあえずレベルからいくか、俺は12。」

 「レンジと同じだ。」

 「次行くぞ。ドロップは?俺は防具だ。後は換金かな。あ、短剣だけは持っておきたい。」

 攻撃力40~50 力-1 敏捷+2というモノだ。

 「俺もいい短剣があったら欲しいな、クエスト知らないか?」

 俺はビギナーなのだが……。

 「知らないな。あれば教えるし、よさげなものを手に入れたらやるよ。」

 メインは当分片手剣。

 「サンキュー。俺はアクセサリしか落ちなかった。力+1だけど装備した方がいいのか?」

 いかにも迷う数字だな。序盤だからなおさらだ。

 「換金額を見てからでも遅くは無いだろう。」

 「そうだな。ところで商人プレイヤーってもういるのか?」

 商人か……そういや鍛冶とか料理スキルとかもあったな。

 「はじまりの町に戻るか?」

 一番ありそうな可能性を提示する。

 「いや、いい。今はレベリングが先だ。」

 流石に戻るのが面倒だからかアハトがそう返す。

 「よし、じゃあ明日は進む、ということでいいか?」

 「分かった。ところでニュースや新聞みたいなものはないのか?」

 そういえばニュースを見ていないことを思い出した。現実でも朝はニュースを見てたから見ていないとしっくり来ない。考え事にニュースはいい。

 「えーっと……ウィンドウのメニユーから見れるみたいだ。とは言っても1つしかないみたいだ。現在の死者数しか。」

 「出れなくなったとはいえまだ2日だからそこまでの内容はないか……期待はしてなかったけど。」

  情報は大事だ。厄介なモンスターとかが分かればよかったが、先行した人達は幸か不幸か出会ってないらしい。

 「それでその死者数は?」

 「えーっと……約400人と書いてあるな。」

 「……死者数として順当と言えばそうだが、何故死ななきゃならないんだろうな。」

 こんな言葉しか言えない。所詮人間は死に対して無力だ。余りにも。

 「……分からない、俺には。今は安らかに眠ってくれとしか言えない。俺達は何も言えない、言ってはいけないと思う。」

 「その通りだ……アハト、続きを頼む。」

 「死因が外周部からの飛び降り自殺が一番多く、次点で敵モブによる死亡だな。」

 「飛び降りはまだ分かるが、敵モブということは適正レベルじゃなかったということか?」

 「いや、俺のようにMPKされた可能性もある。あとこれは確かめた限りだから実際とは異なる可能性もあるとも記してあるな。つまり鵜呑みにするなと。」

 同じ記事を見たところ、ビギナーの方が人数的に多く死んでいるらしい。

 お互いビギナーだから気を付けないと死ぬな。

 「明るく話しかけてくる奴には気を付けた方がよさそうだ。そういえばなんで俺と行動する気になったんだ?明るく話しかけてくる奴そのものだったと思うぞ。」

 「レンジは明るくない。完全に暗いという訳ではないが明るいか暗いかで言えば暗め寄りだと思う。とりあえず信じた理由は俺にきちんと説明をしてくれて、かつ筋が通っていたからだ。」

 最後は俯きながらそう言うアハト。

 しかし真っ直ぐ言われて俺はそのことに気が付かなかった。

 「そ、そうか……ありがとう。後気を付けるべきは……女か。」

 「親父に注意されたっけ、美人には気を付けろと。」

 「誘惑されて気が付いたら男に囲まれてましたとか夢にも見たくない……。」

 想像しただけで気持ち悪くなって来た。俺が女性だったら強姦コース確定だし男同士でも……やめよう。

 「うっぷ……レンジ、もうやめてくれ、気持ち悪い……。」

嫌な沈黙が場を包む。

 「ああ……今日はもう寝よう……。」

こうしてその日はお互いにメンタルダメージを負って終わったのだった。

 



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第7話

設定を編集したのでよかったら見て下さい。

ここからオリジナルのスキルが出て来ます。
描写はしていますが詳しいデータは設定集にて。
短剣のスキルが2つしかなくて驚きました。

展開が遅いですがあまり早くキャラを出しても不自然なので長い目で見て下さい。


 ……………朝、か。

 今日もいい天気だ。SAOの中の天気は一定なのだろうか。

 昨日は……やめよう、朝から憂鬱になることはない。

 生きてた中で憂鬱といえば……高校だな。

 

 あの時からか、周りの話についていけなくなったのは。

 教室ではイヤホン使えないから寝るか袖に忍ばせていた。

 そして毎日毎日本や携帯で文字を追っていたっけ……。

 携帯ではSSまとめサイトが便利だった。片っ端から読んでいった。

 見るに堪えない駄文があった。俺にも書けそうなストーリーがあった。一握りの天才にしか書けない良文があった。

 それらを読んでいくと次第に先の展開が読めるようになって来た。ヒロインが告白したら主人公が聞いていなかったりというのはお約束だ。

 

 主人公の体験を何度も何度も追体験して行ったらいつの間にか動じることが無くなっていた。

 記憶に新しいのは授業中に教科書に隠して携帯で小説読んでるのがバレで怒鳴られたことだっけな。

 「ああ、またか。五月蠅いなぁ。」

 感じた事がこれである。

 反論することはできた。

 「授業が退屈なんですよ。」

 と。

 

 これで論破できるかは別としてだが(多分出来ないしやらない)。

 だからだろう、デスゲームに動じなかったのは。

 死ぬのは怖い、と思う。だけどまだ俺は生き切っていない。

 病人ならまだしも俺は健常者だ。生き切ったと言うのは明日すら生きられるか分からない人への侮辱だ。

 SAOを買ったのは新しい世界をこの目で見たかったから。

 一人なら誰にも縛られる事はない。自分の好きな時に、好きな場所へ行ける。

 この世界は綺麗だ。デスゲームでも、そうでなくても……な。

 だから俺は独りで100層まで攻略して全ての層の景色を見に行こう、と思った。

 景色を見て感動した事が無いから。

 

 そういえば両親は心配をしているのだろうか。大学生になってから思い出す機会が減ったな。

 うちの家族はマイペースだけど息子が目覚めないってなったら……それでもいつも通りに生活してそうだ。

 元気にやってることを願うばかり。

 俺もこっちで元気にやってるよ。

 先の事は分からないけどね。

 

 

 物思いはこれくらいにしておこう。さて、今日は何をしようかな。

 

 

 

 

 

 「レンジ、剣も手に入れたしそろそろ先に進まないか?」

 アハトがそう提案してきた。

 「ああ、ちょうど俺もそう思っていたところだ。情報は更新されているのかな……と?」

 「えーっと……ないみたいだ。死者数の記事も変わってない。」

 辺りを見回すも雑誌や新聞の類はない。

 「残念だ。」

 俺はそう言って立ち上がる。さて、行きますか。

 

 

 

 俺達は道を歩いていた。見通しがいいのもあってか敵モブの数は1~2体ほどであり、安定して進むことができていた。

 その時俺はふと思った。武器を2つ持ったらどうなるのだろうか、と。

 確かドロップした短剣があったはず。装備は……できるな。右手に片手剣、左手に短剣がきちんと持てている。右手を斬りましたとならないように短剣は逆手に持った

 俺は念のため、

 「ちょっと二刀流を試してみる、ピンチの時はフォローを頼む。」

 「分かった。」

 俺はそう言って敵モブの出現を待つ。

 

 

 (……出て来たか。)

 5分ほどして俺の目の前に1体の敵モブが現れた。コボルドである。

 「アハト、イエローになったら助けてくれ。」

 俺はそう言ってコボルドに斬り掛かった。

 右手の剣を振り下ろして間を入れず左手を振るが虚しく宙を切る。

 片手剣と短剣でその長さはかなり違う。

 俺はそれを理解していなかったのだ。

 だが、怯んでくれたため反撃は来なかった。

 (やっぱり扱いが難しいか……次はスキルを試す。)

 コボルドが突っ込んでくるのをサイドステップで避け、バーチカルの構えを取る。

 しかしソードスキルが発動しない。

 (失敗したか?)

 稀にこういうことがあったため慣れていた俺はワンテンポ遅れて振り切った。威力はさっきと同じ。ソードスキルが発動していない証左だ。

 (もう一回。)

 体当たりして来たのを避けて構えを取るものもスキルは発動しない。

 (2つ武器を持っているとスキルが不発になる設定なのか?)

 結局スキル発動を諦め、短剣でコボルドの首を刺して倒した。

 

 「スキル失敗してたが大丈夫か?」

 「ああ、大丈夫だ。」

 俺はそう返し、歩き始めた。

 (とにかく実験だ。)

 俺はこう考え、左手に短剣を持ったり持たなかったりして先に進んだ。

 その結果、右手なら右手、左手なら左手の武器攻撃力に応じたダメージが出るという事と二刀流中はソードスキルを一切発動出来ない。

 この現象を俺は武器を2つ持っているためシステムが認証してくれないものと考えた。 

 片手剣だけの時は通常通り発動したためである。

 後単純に扱いが難しい。

 副産物としてはガードする時素手より武器で攻撃を受け止めるとダメージ減少率が高い。

 片手武器を両手で持って攻撃すると1.2倍ほど攻撃力が上がる。

 こうするくらいなら両手剣を使った方がいいのは明らかだが。

 殴ったり蹴ったりしても一応ダメージは通る(ダメージ量は通常攻撃の1/3程だった)といった情報が得られ、アハトと共有した。

 

 

 

 次の村が見え、空が何物にも染まらない色になりそうな頃に俺達は足止めをされていた。

 「あとちょっと……なんだが。」

 コボルドの親玉、コボルドリーダーが現れたのだ。

 「戦うしかない。行くぞ。」

 逃げたら真っ暗になってますます不利になる。

 「お供に2体コボルドがいるな。レンジ、気を付けろ。」

 多対多は……まず数を減らすのがセオリーだったな。

 武器の適正から見ると俺がリーダーを、アハトが取り巻きを相手にした方がよさそうだ。

 「分かった。アハトは取り巻き。俺はリーダー。」

 取り巻きと言った瞬間アハトは飛び出して取り巻きに一撃ずつ与え、リーダーと分断した。

 簡潔に指示を出してコボルドリーダーと向かい合う。

 リーダーと名乗るだけに体は大きく、棍棒を持っている。

 その大きさはお供が1mほどでリーダーが1.4mといったところか。

 そして棍棒を持っている以上攻撃力が高い。だから防御重視で立ち回る。

 考えていたらリーダーが棍棒を振り被って来た。

 (考え事はここまでと言う事か)

 横に振り被られるとこちらとしては厳しい。

 後ろにしか避けられないからだ。

 「くっ……。」

 俺は後ろに飛んで棍棒を避け、スラントを発動させて斜めに斬り下ろす。

 (よし、まずは一発。)

 当たったが、リーダーは怯まずに左手で殴って来た。

 ソードスキル後の硬直に差されたため全く動くことができず、俺はよろけてしまった。

 (クリーンヒットか……割と痛い。)

 自分のゲージを見ると回復していないのもあってイエローに近いグリーンと言ったところ。

 早目に回復し、ソードスキルは控えないとあっという間にやられてしまうな、これは。

 そもそも今は倒すことが目的ではない。アハトの方にリーダーが行かないようにすることだ。

 俺は追撃を避けるためバックステップを踏み、すかさず突撃する。

 リスクはあるが俺が相手をしているリーダーのヘイトがアハトに向かう可能性があるためだ。

 こんなところでアハトを死なせる訳にはいかない。

 攻撃させるだけでもダメだ。

 殴ったリーダーはまだ態勢を整え切れておらずチャンスだと思った俺はホリゾンタルを発動させてリーダーの胴を薙ぐ。

 体勢を立て直したリーダーは棍棒を俺にの頭に叩き込もうとしてくる。

 振り被る様を見て俺は棍棒を持っていない左腕の方向に飛んだ。

 側面に回り込めれば即座に反撃されることはないだろう。すかさずホリゾンタル・アークを発動し、左始動の斬撃と返しの斬撃がリーダーに当たる。

 リーダーが大きく怯んだ、チャンスだ。

 そう思った俺はスラント・アークの構えを取る。

 構えを取った俺の剣は右上から左下に一閃、左下から再び右上にまた一閃した。

 だがリーダーは倒れない。HPを見ると1割以下だったがまだ残っていた。

 「俺に任せろ!!」

 アハトがちょうど終わってこのタイミングで来たらしい。スピードエッジを発動させて3m程の距離を一瞬で詰め、リーダーを撃破することが出来た。

 「ありがとう。」

 俺はそう告げるとアハトは、

 「ど、どういたしししゅて……。」

 と2日ぶりに噛んでいた。感謝されるのに慣れていないのだろうか。

 「先に進むぞ、疲れた。」

 「………。」

 「どうした?」

 アハトが黙ったまま動かない。

 「……美味しいどこ取りをしたみたいでさ、どう言ったらいいか分からなかった。」

 「俺は気にしていない。だから今後気を付ければいい。」

 事実俺は助かった。トドメを譲るのはリスクがある。最後の方は安定していたが最初はダメージを貰ってしまったのもあったため俺はこう考えていたのだ。

 「……ありがとう。」

 声は小さかったが確かに聞こえた。だが俺は

 「止まってると置いてくぞ。」

 と聞こえていないように返すのだった。

 ……小さい声は聞いていないフリをした方がいい。これは俺の持論だ。

 



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第8話

UAが1000に到達しました。
読んで下さった全ての人への感謝をここに記します。



原作のセリフを入れたいが言動がご都合主義に……書き方が難しい。


 俺達が宿屋に入ったらラウンジに2人の先客がいた。武器の整備をしていたらしく、机の上には一振りの両手剣と刀が置いてある。

 1人は1m以上の長い刀を持った銀髪の……男、なのか?髪の毛は女性みたいに艶やかで長いが横顔は男性に近いような……。見ただけでは男性か女性かの区別はつかなかった。

 俺はもう1人の茶髪の男に目を向ける。全体的に整った印象を感じた。顔立ちもそうだが雰囲気が落ち着いていて冷たい。

 そしてアハトが落ち着きのない顔をしている。とりあえず俺は、

 「(落ち着け。)」

 「(わ、分かった……。)」

 こう言った後、2人組に話しかけた。

 「こんばんは。」

 「……こんばんは。」

 茶髪の男が一瞬遅れて挨拶を返した。銀髪の男は黙って刀を研いでいる。ここは見て分かる武器の話をするのが良さげだ。アハトはこの様子だがら口火を切るのは難しいだろう。

 「武器は両手剣を使っているんですか?」

 初対面だと敬語になるのは性だ。ネチケットとも言うが。直接会話しているからネかエかは議論が別れそうな気がしないでもない。

 「ああ、前使っていた武器が両手剣に近かったからな。……名前を聞いていなかったな。俺はスコール。後敬語は要らない。ネットだから年齢もあってないようなものだしな。」

 「分かりま……分かった。俺はレンジ。連れの名前はアハト。武器は片手剣がメイン。よろしく。」

 敬語を慌てて引っ込めた。

 「アハトです。武器は短剣です。よろしくお願いします。」

 「アハトは話すのが苦手みたいなんだ。だから、その、多目に見て欲しい。」

 本人もそう言っていたし。

 「そうか。……まあ俺も俺の連れもそういうことがたまにあるから気にしていない。」

 「ところで後ろで刀を研いでいる人はなんて名前なんですか?」

 アハトが気になったのかそう口を開く。俺も気になっていた。

 「ああ、彼はセフィロス。刀をメインに使っている。」

 スコールがそう言うと刀を研いでいる銀髪の人……セフィロスがこちらの顔を向け、口を開く。

 「私がセフィロスだ。共に誘おう。」

 誘おうなんて初めて聞いたぞ。声は低く、この時初めて男だと分かった。

 「俺はレンジ。こちらこそよろしく。」

 「俺はアハトです。よろしく。」

 俺達は名乗り直す。ここからが本番だ。俺は提案をする。

 「情報交換しませんか?」

 「情報交換……か。構わないが、何故だ?」

 スコールがそう返す。物分りいいなこの人。

 「俺達はビギナーなので情報が必要だと感じたから、ですかね。」

 「一人で行動してたら死にかけたもので……。」

 アハトが続けて口を開く。死にかけたというのは初対面の時のことだろう。

 「俺の方も情報が必要だ、よろしく頼む。」

 「では俺から。どうやらPK集団がいるみたいだ。」

 「それは俺達の方でも把握しているな。手口は俺達を10人くらいで囲んで、という戦法だった。殺した後に金とドロップアイテムを奪うつもりだったんだろう。」

 10人って……俺達だったらポリゴンの破片になってたぞ。

 「よく脱出できましたね……。」

 「敵が短剣メインだったからな。懐に潜り込ませなければ両手剣の方が強い。」

 短剣と両手剣が鍔迫り合い……ないな。短剣側の勝つビジョンが浮かばない。それより短剣が先に折れそうだ。

 「私が刀で一閃か二閃すれば殺せたからな、人を襲おうとする奴はまあこんなものだろう。3人も殺せば逃げて行った。」

 二閃すれば……殺せた?

 「……人を、殺したんですか?」

 アハトが怖そうに聞く。

 「ああ。私を殺そうとしているのに私は殺そうとしない、というのは公平ではない。少なくとも私はそう思っている。」

 「「……………。」」

 俺達は揃って考え込んでしまった。人を殺すという事は善か悪かで言えば間違いなく悪だ。しかし殺される状況においては決して悪とは言い切れない。無論殺さずに撃退するのが一番なのだが、自分の命が掛かっているという状況において意図せず殺してしまうこともあるが……。とにかく聞いてみよう。聞かなければならない。今はデスゲームなのだから。

 「意図して……わざと殺したんですか?」

 「いや、わざと殺すなんてことはしない。私に刃向う者だけだ。」

 「俺もそうだ。わざわざ殺すなんてオレンジになるからやらない方がいい。」

 スコールもそうフォロー?しているがすぐに納得できそうにない。……オレンジ?

 「オレンジってどういう意味だ?」

 俺がそう質問する。アハトも首を傾げている様子から分からないようだ。

 「そういえばビギナーだったな。オレンジというのは他プレイヤーを傷つけたりすると名前のカーソルが普通は緑だがその部分がオレンジになる。そうなると町に入れなくなったり層と層を繋ぐ転移装置が使えなくなったりする。ちなみにオレンジを攻撃してもオレンジにはならない。セフィロスの殺すのだから殺されても仕方ないと言う事と似たようなことだ。システム上は。」

 「でも殺したという事実は消えませんよね?」

 アハトはそう質問する。

 「そうだな。この罪は一生背負っていくことになるだろう。現実世界に戻ったら裁判を受けることになるかもしれない。それでもあの時、殺していなければ殺されていたのは俺達だった。今はこう自身を納得させている。もう取り返しがつく事は無いんだ。」

 ……殺すと言う事に折り合いをつけているというか、殺す事に礼節を持っているように感じる言い方だ。

 「『善い奴と悪い奴がいるわけじゃない。敵と、敵じゃない奴がいるだけだ。』もし殺す時が来たならこの言葉を思い出せ。俺達を襲う敵なら、殺すしかない。」

 スコールが付け足す。

 「その通りだ。スコールは1人だが私は3人殺した。……私の現実の話をしよう。」

 セフィロスが唐突にそんなことを言う。……現実で殺しを仕事にしているというと殺し屋しか思い浮かばない。

 「私は警備会社に勤めていてね。」

 「警備会社……?」

 「ボディーガードと言えば分かりやすいか。」

 「……まさか。」

 アハトが小さく呟く。

 「そう、私は殺した。此処に来る前から………………な。事情聴取は当然されたが正当防衛が認められて起訴はされなかった。」

 セフィロスが遠く呟く。

 守るために殺した……か。

 「殺したことに後悔はないのか!?」

 アハトが冷静さを少し失いながら問いかけている。

 「仕事上仕方ないと思っている。銃を向けて警告はしたのだが聞かずに突っ込んで来た。仕方なく撃ったのだが当たったのがナイフを持っていた手首ではなく、左胸だった。」

 セフィロスの声が遠い。理解できるような、できないような、そんな感じだ。

 「その……心臓に当たった時、どんな気分だったんだ?」

 俺は辛うじて口を開く。

 「いつかは起こる事だと思っていた。こんな若い時に殺すことになるとは流石に思っていなかったが。」

 本気だ。本気で殺すことに慣れている。それに比べて俺はどうだ。死なないように、とか考えていながら殺す覚悟なんて微塵も無い。そうだ、これはデスゲームだ。いつ死ぬか分からない。だからいつでも殺せるように、覚悟を決めないと……!!

 「俺は……、殺す覚悟なんて出来そうにないです……。だけど、俺は生きて帰らなきゃいけないんだ。妹やあいつらのためにも絶対に!!」

 アハトが最初は弱く、しかし最後は勢い良く吐き捨てた。俺と同じようにアハトも激しい葛藤があったのだろう。

 「俺も同じ、生きて帰るんだ。退屈だけど平和な日常に。」

 覚悟を……決められはしないが口に出す。ここで言わなければずっと覚悟は固まらないままだ。

 「殺してでも生き残るのなら覚悟しておけ。重いぞ。」

 スコールが言う。その言葉の意味は考えるまでもない。

 「私はそろそろレンジ達の話が聞きたいのだが。」

 確かに話が横道に逸れるどころか飛び上がっているレベルだ。

 「ああ、PKの手口の話だったな。俺は遭遇してないがアハトがMPKに遭遇したとのことだ。説明頼むぞ、アハト。」

 俺よりアハトの方が詳しく説明できると思い、振った。

 「俺がリトルネペントを狩っていたら、近くにいた2人組が実を割って逃げたんだ。幸いその2人組に半分以上のリトルネペントが追いかけて行ったのとレンジが加勢してくれたおかげで生き残ることができたんだ。」

 「2人組の生死は?」

 「目を向けている余裕がなかったから分からないが五分五分だと思う。」

 俺は死んでると思うがな。あの物量はレベルが低いと厳しい。PK集団がレベリングをやってる訳が無いと言う前提があるが。

 「……その様子だと集団で行動した方が良さそうか。レンジ、アハト、私が誘おう。」

 「頭が高いぞセフィロス……相方がこんなだが俺からも頼む。武器が全員違うから攻撃と速度とある程度バランスが良くなるはずだ。」

 願っても無い提案だ。考えるまでもない。

 「共に戦おう。」

 「よろしくお願いします。」

 俺達2人は当然それを受けた。4人となると現状かなりの戦力になる。裏切られさえしなければ、だが。

 「良い子だ。」

 「…………こいつには構ってるヒマはないな。俺は寝させてもらう。」

 スコールが部屋に入って行く。……俺も寝るか。

 「……俺も寝るわ。おやすみ。」

 アハトも席を立って部屋に消えた。どうやらセフィロスの言動はそっとしておく方針らしい。

 「……元気出して下さい。」

 何て言ったらいいか本気で分からなかったのでフォローをして俺も部屋に消えた。

 

 ……明日刀で真っ二つにされませんように。

 




やっと出て来ました3・4人目。
そして原作キャラが誰一人出て来ない……(ちゃんと出しますのでご安心下さい)。


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第9話

 「レンジ、朝だ、起きろ。」

 (………………あさ、か。何じだ、いま……。)

 俺は寝ぼけ眼でメニユーを開いて時間を確認する。そこには08:39と示されていた。

 「他2人は起きてる。早く来てくれ……気まずいんだ。」

 アハトが起こしに来てくれたらしい。しかし俺は人に起こされると頭が働きにくい体質なんだよな……SAOの中でも低血圧の人は大変そうだ。

 自分で起きるなら目覚ましが欲しいがSAOに目覚まし時計はあるのだろうか……。

 (っと、考えごとは後に……。)

 俺は身支度をして下に降りることにした。

 ねむい。

 

 

 幸い刀のサビになることもなく朝食を食べていたら、

 「今日は討伐系のクエストに行く。」

 スコールがこう切り出した。

 「ああ、あれか。……………………。」

 セフィロスが何かを呟いている。怖いから聞こえなくて良かった。

 「どんなクエストなんだ?」

 「畑がボスコボルドとそのお供に潰されて困ってるから倒して欲しい、というクエストだ。報酬は1万コルと刀、七星刀だが……。」

 スコールが言い淀む。報酬のことだろう。角を立てないように、かつ最も利益が得られるようにするには……。

 「俺達は2人合計5000コルだけ貰えればいい。それでいいよな、アハト。」

 「ああ、大丈夫だが……ドロップアイテムの扱いはどうするんだ?」

 「私が七星刀を貰う分、スコールと私の取り分は合計3000でいい。ドロップアイテムだが基本的に手に入れた人間の物だ。帰った後にこれを手に入れたと公表して、欲しければ物々交換でも勝手にすればいいだろう。」

 「ドロップアイテムの扱いは皆大丈夫か?モンスターの経験値と金は自動分配だからいいが報酬は違うぞ。」

 えーっと……ボスモンスターの金と経験値は等分。ドロップアイテムは手に入れた者勝ち。取り巻きは問題ないがボスのドロップは注意が必要だな。報酬は……納得したし大丈夫、と。

 「LA争いはやめてくれよ?」

 俺がそう言うと三人は

 「手に入ればいい程度の認識でやるさ。」

 「私は興味ない。」

 「どうでもいい。」

 ……争いが起こらなさそうで何よりである。

 

 

 

 

 

 「ここだ。俺がボスを引き付ける。セフィロスはボスを攻撃、アハト、レンジはお供の排除だ。終わり次第ボスに加勢してくれ。」

 「「「了解。」」」

 スコールが指示を出し、俺達3人がそれに同意を返す。

 指示を出すと同時にスコールはボスコボルドに向かって走り出し、上に斬り上げながら3mくらい飛び上がった。

 そしてボスコボルドの顔面に蹴りを入れて追撃して距離を離した。アッパーバイドという技だったか、飛び上がって華麗に蹴りを入れるのは凄い。

 「……お前の相手は俺だ。来い。」

 スコールの挑発を聞き流しながら俺は取り巻きを片付けに行った。

 

 

 取り巻きはボスの右にコボルドが2体、左にコボルドリーダー2体か。

 「リーダー頼む。」

 「了解。」

 アハトにリーダーの相手を頼んだのはボスコボルドの棍棒を警戒したためだ。短剣でガードは厳しい。

 攻撃力がある俺が固まっていたコボルドを纏めてスラント・アークでポリゴンに変える。斜めに2回斬るうえ1回目の斬撃で少し動けるから数が多い時には便利だな、これ。

 ボスにヘイトを向けられないように後ろを回って左に移動する。

 リーダーはアハトに注意が向いていてこっちにはまだ気が付いてないようだ。ならばやることは一つ。

 「バーチカル・アーク。」

 リーダーの背中にV字の斬跡を走らせた。と同時にアハトがもう1体のリーダーを三角形に突く三連続突きでポリゴンへと変える。ファッドエッジか、あれは。

 俺が斬ったリーダーが振り返るも動くのは俺の方が早い。左から振り返ったので俺は左に回り込みながら横に剣を振る。

 バーチカル・アークが効いたのかこの一撃で倒れてくれた。取り巻きを倒せたので俺はボスへと向き直る。

 

 向き直った俺が見たのは2m程の高さに飛び上がってボスの脳天を串刺しにしているセフィロスの姿があった。地閃か、大きく飛び上がればより映えそうだ。髪の流れ方が美しく、俺は戦闘中だと言うのに見惚れそうになった。

 ボスコボルドが吹き飛び、大きな隙が出来る。

 「片付け終えた。これより加勢する。」

 「同じく。」

 「ご苦労。」

 「側面から攻撃を仕掛けろ。挑発している訳ではないから攻撃は1発までだ。」

 「「「了解。」」」

 指示が的確である。ベータテスターは伊達じゃない、か。

 スコールが突撃して剣を振り下ろして攻撃。あれはアバランジュか。

 セフィロスは刀を左横に構えて絶空を繰り出し、ボスを横に一閃。

 俺はホリゾンタル・アークでセフィロスの刀跡に重ねる。

 アハトが首に斬撃を入れ、スコールが通常攻撃で追撃したところでボスコボルドが体勢を立て直した。

 一番軽装なアハトがボスコボルドの後ろに、次いで軽装のセフィロスが棍棒を持っていない左に、一応ガードができる俺が右に、囮役のスコールが正面という形になった。 

 ボスのHPは今のでレッドに近いイエローである。

 一番多く攻撃していたであろうスコールの頭上に棍棒が迫る。それをスコールは地面を転がって避け、俺を含めた3人が攻撃する。俺は通常攻撃だが2人はソードスキルで攻撃しているようだ。

 振り下ろした棍棒がこっちに向かって来た。それを俺はレイジスパイクで突いて弾き返す。

 お互い弾かれたため俺とボスコボルドに隙ができる。

 「壊してやろう。」

 そう言ってセフィロスが地閃を

 「終わりだ。」

 アハトがスピードエッジを

 「哀れだな。」

 スコールがアッパーバイドを繰り出すがまだ倒せない。ギリギリで耐えたようだ。

 「その身に刻め。」

 スラント・アークを繰り出してボスコボルドはポリゴンへと化した。

 よし、終わりだな。

 んでアイテムは……青い指輪、か。インベントリを開いて確認すると防御+2、敏捷+1のアクセサリだった。

 「LAボーナスだがアクセサリだ。防御+2の敏捷+1。欲しい人は?」

 俺がそう問いかけると3人は、

 「そこまでのものじゃないな。」

 「要らん。」

 「レンジが使え。」

 至極平和に終わった。

 …………肩透かしを貰った気分だよ、全く。

 

 

 

 報酬も仲良く出かける前に言った通りに分けられ、俺達はフレ登録をして別れた。

 あまり大勢で行動しても経験値効率が悪いと判断したからだ。

 全員集団行動が得意じゃないのもあるが。

 俺はアハトと一緒に行動し、レベリングに勤しんでいった。




集団戦闘の様子が上手く伝わっているといいのですが……。


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第10話

 手が勝手に走ったと思ったらセフィロスが暴走していた……。
 冷静そうだけど怒らせるともの凄く怖いイメージがあるのは私だけでしょうか?


 「それは本当か?」

 「ああ、ボス部屋が発見されて、そのための対策会議をトールバーナでやるとのことだ。」

 あれから1月。俺達2人は朝から朝までレベリングに励んでいた。眠くなったり疲れたりしたら宿屋で休み、それ以外はずっと敵を倒していた。

 やる事が他にないからな。

 「参加するだけならタダたし、万が一となれば消えればいいよな。」

 「俺のステルスは教室皆に気が付かれないレベルだぜ。」

 「実年齢が分かるようなことは控えようなアハト。」

 「見た目からある程度は分かるんじゃないか?」

 「それもそうだった。」

 独りも悪くないがこうやって話すのもまた悪くない。

 会議は五月蠅いだろうが情報を得られるのならば我慢しよう。

 アハトのコミュ障もある程度は改善したな。

 

 

 

 「40、41、42。42人いる。スコールとセフィロスもいるぞ。」

 アハトが周りを見渡して人数を数えている。

 「頼りになりそうだな。それとこの人数。多いか少ないかが問題だ。」

 始まるまで暇だったので人数を数えながら待っている俺達は議論をしていた。

 「ボス戦ならちょうど7PT作れるが生き残りの人数の割合からすればずっと少ないだろ。」

 確か1レイド6人でボス部屋には8PTまで入れるとSAOガイドブックに書いてあった。

 ベータテスターの有志が書いたものらしく、ビギナーの俺達は質の高い情報を逃すかとばかりに熟読していた。

 そして現在の生存者数は昨日付けで7938人、およそ2000人亡くなっているとのこと。

 死因はおよそ6割が自殺であり、残りの4割弱が敵モブ、ただしPKされた人間も僅かながらいるとも書いてあった、小さな文字で。

生存者の話だと犯人は慌てて逃げたため名前まで見れなかったが確かに殺されたと証言が書いてある。

 「(40/8000……)約0.5%の人間しか来てないのか。確かに少ない。」

 「ヘタレばかりってことか……それはそうと話が始まるみたいだ、聞こう。」

 青髪の男が前に立ち、喋り始める。

 「今日は俺の呼び掛けに応じてくれてありがとう!」

 「俺の名はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!!」

 ナイトって……防御の高いプレイヤーのことをそう言うのか?

 胸当てだけで鎧を装備していないのでそうは見えないのだが……。

 というか職業なかっただろSAOには。

 「実は、俺達のパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した!!」

 「まずは六人のパーティを組んでくれ!!」

 うげ、グループを組むの苦手なんだよな……。

 隣にいるアハトも苦い顔をしている。

 苦手なんだろうなこういうの。

 「スコール達を誘うぞ。」

 「それだと4人だから2人足りないよな……。」

 「………………。」

 現実から目を背け、俺はスコール達に話しかけに行く。向こうもこちらに気が付いていたらしく、こっちに向かって来た。

 「今回もよろしくな。」

 「スコールか、よろしく。」

 あと2人は……と。皆パーティで来たらしくほとんど組めているようだ。どこかにいないか?

 「2人いるぞ。」

 セフィロスが指を指した先には黒髪の少年とフードを被った怪しい人間がいた。

 フードの方の性別は分からないがおそらく男だろう。

 男の方がはるかに多いからな、SAOは。

 「俺はレンジ、メインは片手剣。よろしく。」

 「俺はキリト、同じく片手剣使いだ。こっちはアスナ。フェンサー使いだ。」

 「…………よろしく。」

 声が高いな。隣にいるキリトより高い気がする。

 ……少し身長の高い小学生か?

 「俺はスコール。両手剣使いだ。よろしくな。」

 「私はセフィロス。この刀の前にはフロアボスなど陽炎に過ぎぬ。」

 「俺はアハト。短剣をメインに使っている。」

 各々が自己紹介を済ませている。セフィロスは通常運転だな。

 「役割をかく……」

 「ちょう待ってんか!!」

 俺がそう提案しようとしたところ、いきなり後ろから大きな声が耳に飛び込んできた。

 一体何だ?全員組めたはずだろう?

 トゲトゲ頭は階段を4段跳びで落ち着きなく飛び降り、ディアベルの隣に立った。

 「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前に今まで死んでいった2000人にワビ入れなアカンヤツがおるはずや!!」

 こいつは何だ?と周りを見ていると早くもセフィロスの様子がおかしい。

 「ベータ上がり共は、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった!!」

 9000人のビギナーを1000人で面倒見ろって無理だろ。保育園じゃないんだから。

 「奴らはウマい狩り場やらボロいクエスト独り占めして自分らだけポンポン強なって、その後もずーと知らんぷりや!!」

 情報収集すればビギナーでも強くなれるぞ、というか他のビギナーは情報収集したんだろうか。

 ガイドブックが半月くらい前に配布されたはずだ、ビギナーは無料で。

 俺達のとこにも来たっけな、20日ほど前に情報屋を名乗るプレイヤーが。

 SAOで珍しい女性だったから覚えてる。

 「こん中にもおるはずやで!!ベータ上がりのヤツらが!! そいつらに土下座さして溜めこんだ金やらアイテム吐き出してもらわなPTメンバーとして命は預けられんし、預かれん!!」

 煩いな……調子乗ってるのか?

 金やアイテムを脅し取って後がどうなるのか分かっているのだろうか。

 そんなことになればここが血で血を洗う戦場になることは間違いない。

 仮に平和的に脅し取れた(平和的にと言うのも変だが)としても分配をどうするのだ。 

 「地に伏せるのはベータではなく、貴様だ。」

 気が付くとセフィロスが椅子から飛び上がり、キバオウの前に降り立った。右の背中だけ羽が生えている幻覚が見えたぞ。刀まで構えているし。

 それはそうと続きだ。

 金の場合は……俺の所持金が今3万ほどで今の生存者が8000人だったっけ。

 ビギナーとベータテスターの割合が同じだと仮定し、生きているベータテスターが800人として吐き出させた金が2万として1600万コル。

 これを生存者の7200人で割ると……暗算だと難しいから7000だな。

 7000で割ると…………2200……いや、2300弱か。

 2300コルでいったい何ができるのだ。

 武器防具を2つとポーションをいくつか買えば無くなるぞ。

 「なんやお前は!!さてはベータテスターだな!!」

 「違う。煩いから私が直々にその口を切り刻んでやろう。」

 セフィロスがまた物騒な物言いをする。

 煩いし会議が進まないから切り刻むのは賛成だが殺すのは止めといた方がいいと思うぞ。

 「俺はスコール。アンタ、それは正気で言っているのか?」

 スコールが立ち上がって言う。

 アンタじゃどっちに言っているのか分からんぞ、人名を入れろ人名を。

 おそらくキバオウのことだろうが。

 「なんやお前らは!!ワイの邪魔をするつもりなら容赦せんで!!」

 …………アイテムはもっと難しい。

 1人1つと言うほど数が無いのだから配りようがない。

 脅しても無いものは出て来ないのである。

 このキバオウに人脈はなさそうだから1人ないし仲間内で脅し取ったアイテムを独占するのだろう。

 「まずはお前らから土下座して金とアイテムを出してもらおうか!!!!」

 あーもう、煩い。

 考え事が出来ない。

 ディアベル、この場のリーダーなんだから止めろよ。

 「レンジだ。煩いから文句は個人の間でやってくれないか?」

 こう言って俺は一旦最下段まで飛び降りて2ステップでセフィロスの隣に降り立った。

 スコール、俺、セフィロスの3人が武器を持ってキバオウに向かい合う。

 「セフィロス、刀を仕舞ってくれ。こいつを切り刻むのは会議が終わってからにしよう。ボス部屋に1人で放り込んでもいいわけだし。」

 あえて物騒な言い方をしてキバオウの今の安全を確保させる。後の事は知らん。

 「それもそうだな。どう楽しもうか……。」

 「流石に殺すような真似は控えろ。(こんなトゲトゲ頭で息が臭そうな奴でも)一応は攻略する仲間なんだからな。」

 2人が一旦武器を仕舞ってくれた。

 あとスコール、聞こえてるぞ。

 「とりあえず反論させてもらう。「2000人に詫び入れろ。」についてだが、その中の6割は自殺している。ベータが止めろと言ったって無理だ。絶望してるんだから。そして死んだ2000人の中にもベータがいるんだぞ。死んだベータは許すのか。随分勝手な言い草だな、お前。そもそもこれがデスゲームになったのは茅場が原因だからそれは茅場に言え。」

 手に力が入る。あと死因にPKもあるが余計な火種になりそうというか火種にしかならないから黙っておく。

 言ってきたら反論するが、面倒だ。

 「ぐっ……。」

 「「ビギナーを見捨てて消えた。」とあるが全員そうした証拠はあるんだろうな?俺はベータだがビギナーを3人程見てたぞ。2人はいつまでも世話になるわけにはいかないと言って途中で別れたがな。残った1人が隣にいるセフィロスだ。」

 スコールが引き継いで反論する。

 剣を肩から降ろしたらどうなのだろうか……。

 「見捨てたベータもいるやないか!!」

 「お前がそう言っている時点で見捨てていないベータもいると言っているようなものだ。そして見捨てたベータだって好きで見捨てた訳じゃない。自分の命を守るのが精一杯なベータもいたんだ。それを覚えていろ。」

 「なんや……なんなんや……!!」

 キバオウさん、もう少し論理武装してから文句を言いに来ようよ……。

 「ちょっと発言いいか?」

後ろから声がしたので振り返ると浅黒い大男が立ち上がって発言の許可を求めてきた。

俺が首を縦に振って許可を出すと男は話し始めた。

「俺の名前はエギル。「ウマい狩り場やらボロいクエスト独り占め」とあるが、ガイドブックにそういうウマい狩り場やボロいクエストが載っているぞ。それに生き残るための戦術指南や敵の情報も載っている。このガイドブック、アンタももらっただろう。」

 俺も貰ったな。

 「もろたで……それがなんや!!」

 「このガイドブックはな、半月ほど前にベータテスターがはじまりの街の主街区の道具屋、中央広場、出口、宿屋などのありとあらゆる主要施設で配っていたものだ。最近だと他の町や村でも配られていたな。つまりこれがある時点でベータテスターが独り占め、なんてことにはならないはずだ。ガイドブックがある時点で情報はあったんだ!!それでも犠牲者は出てしまった。犠牲者を出さないためにどうするか話し合いに来たんだがな……。」

 「くそっ……!!」

 どんどん旗色が悪くなるキバオウ。

 撤退しようとしているが2人の眼光に怯んだのかその場で動けないでいる。

 あのー、なんで俺の左手を見ているんですかね……何も持ってないはずなのだが。

 「何故雑魚共に金や道具を恵んでやらねばならん。命をやり取りするフロアボスにおいて甘えは一切通用しない。道具を恵んでやっと立てる人間に命を預けようなど戯れが過ぎる。キバオウ、命が惜しければ迅速に立ち去り二度と面を見せるな。」

 その通り、俺達2人は参加しないけど他の40人は殺すか殺されるかのやり取りをするのだ。甘えで勝てるほど優しくないぞ、SAOは。

 だから刀を降ろそうか、キバオウが震えてる……可哀想に思えないけど。

 ってよく考えたら俺達レイド組んじゃったからほぼ参加前提じゃないか?

 消えようにも前に出て目立ってるし初対面のキリトとアスナに出会っているからそれも無理……。

 ……やってしまった。

 煩いからって俺まで飛び込むことはなかった……。

 「アンタの不満や不安……そんなこと聞かされても俺には何も言えないだろ?そんなことは壁にでも話してろよ。なんなら話させてやろうか?」

 おいスコール、剣と殺気を仕舞え。

 そしてセフィロスも無言で刀を首にあてるんじゃない。

 アハト、どうに……駄目だ、斜を向いて知らん振りをしている。近くにいるキリトとアスナも同じような様子。

 「とまあキバオウさんの文句は全て反論出来るという訳だ。話が進まないからこの辺にしとこう。スコール、セフィロス。トゲトゲ頭を血祭りに上げるのはこれが終わった後にしておけ。ディアベルさん、邪魔をしてすまない、続けよう。」

 そろそろ止めないと会議が進まないと考え、止めにかかる。

 物騒な事を言わないとスコールはともかくセフィロスは止まらないだろうからこう言うしかない。

 キバオウさん、生きてるといいが……。

 「了解。」

 「………。」

 「あ、ああ……。」

 「チッ……覚えとけよ。」

 あ、キバオウさん死んだな……南無

 全員一旦は矛を収めてくれ、元いた場所に飛び戻ってくれた。

 俺も左手のナイフを仕舞って飛び戻り、話を聞く態勢に移る。

 って俺はいつの間にナイフを抜いていたんだ?どうりで途中キバオウが左手を見ていたわけだ……気を付けよう。

 

 

 

 ディアベルが説明を再開する。

 「今回のボスは少し前に偵察に行った際に確認した。『イルファング・ザ・コボルドロード』、そして取り巻きは3体『ルイン・コボルド・センチネル』だ!!」

 反応は無い。原因は言うまでもなく俺達だ……ああ、憂鬱。

 「武器は斧とバックラー。ここからはまだ不確定だがHPバーの最後の1段が赤くなると、武器を持ち替えるらしい。ベータテスト時の情報によれば、曲刀カテゴリーのタルワールに持ち替えるようだ。」

 ふむふむ、斧だとすれば片手斧でも俺の剣でガードするのはキツイな。

 現状だと回避一択か。

 「だがあくまでベータテスト時のものだ。この通りではない可能性がある!!十分に気を付けてくれ!!」

 不測の事態に備えるのは基本だな。

 死者が出てパーティ崩壊には最も警戒すべきことだな。

 「これよりそれぞれのパーティの役割を決める!!重装備の……そうだな、君達は右からA~D隊としよう。ABCD隊はボスを攻撃!!盾持ちがいる……左をE隊、右をF隊としてEF隊はタンクとなってボスの攻撃をひきつけてくれ!!後ろの比較的軽装のパーティはG隊だ!!G隊は取り巻きの排除を担ってくれ!!一番気になる日時だが、パーティの連携も考えて明日の14時にしようと思う!!何か質問はあるか?」

 俺達は遊撃か。安全度が比較的高そうで良かった。ひとつ質問があるから手を挙げる。

 「レンジ君か、何かな?」

 さっきのやり取りで覚えられてしまったか……。

 「俺達G隊は取り巻きの排除を終えたらボス攻撃に回っていいのでしょうか?」

 騒ぎを起こすつもりはありませんよというアピールのために敬語を使う。

 「ああ、G隊は取り巻きの排除が終わったら遊撃に回ってもらう予定だ!!主力が不意打ちをされないように頼むよ!!」

 ベータテストの通りなら2人で1体のルイン・コボルド・センチネルにあたれるな。数がそう増えたり減ったりはしないだろう。

 「他に質問はあるか?……ないな、では解散!!」

 最初にやることはアハトに謝罪だな……迂闊だった。

 「アハト、すまなかった。ここまで人数が少ないとは予想外だった。」

 「大丈夫だ、俺もボスを一目見たいと思ってしまったからな。あの大立ち回りにはビックリした……俺はまだ無理だわ。」

 人が大勢いるところで喋るのは緊張するからな。

 「アレは止めなくていいの?」

 フード付きの男?の……アスナが指を指している。

 今思えば女っぽい名前だな、ネカマってものだろうか。

 アスナが指を指した先を見るとセフィロスがキバオウを片手で持ち上げていた。

 そしてどこかに引き摺られていった。

 「自業自得だ、そっとしておこう。」

 左手に刀を持っているため周りも見て見ぬ振りをしている。

 怒りのパワーって凄い。

 「煩いのに耐えらないヤツだから仕方ない。とにかくパーティを組む以上合わせが必須だ。よって今から迷宮区で合同戦闘を行う。」

 俺も煩いのには耐えられないタイプだからな……まあでもあの行動が正しいかと言われたら自信が無い。

 「分かったが……あのセフィロスって人には伝えなくていいのか?」

 キリトがもっともなことを言う。

 「俺がメールで伝えておくから問題ない。」

 スコールも慣れたものである。

 「俺がおかしいのかな……?」

 何もおかしくはないです。むしろキリトの反応が正しいです。

 「俺達5人で先に行くぞ。ついて来い。」

 「ま、待ってくれよ!!」

 これからパーティを組む以上慣れてもらわないとな、俺達に。




今回文字数が長くなったのは暴れまわった3人のせいですね、はい。
キバオウさんがDisられてますが私は嫌いではありません。
セフィロスが暴走した結果です。


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第11話

切り所がここしかなかったため短めです。
そのため今回のみ次の話を明日零時に投稿します。


 俺達5人は迷宮区に来ていた。

 「パーティ内の役割だが、俺がタンク役を務める。とりあえず組んでいたキリトとアスナ、アハトとレンジでスイッチしてくれ。あとキリトとレンジは片手剣で融通が利きやすいから一通りの指揮を今日で覚えてもらう。ボス戦での隊の指揮は2人のどちらかに任せるが、リーダーはきっちり決めておいてくれ。俺は装備武器の都合前線にいることが多いから指揮まで手が回らない。ここまではいいか?」

 スコールが率先して口を開く。

 「なんで隊の中にもリーダーが必要なんだ?はや……じゃなかった、ディアベルが指示を出すんじゃないか?」

 人名言いかけただろアハト。

 似たような性格の知り合いがいるのだろうか。

 「確かにそうだが、隊の細かい様子まで見て指示をより的確に出すのがリーダーの役割だ。采配を間違えれば最悪死なせることになる。……だからここで訓練をしておきたい。2人いれば万が一どちらかが死んでも崩れずに済むしな。」

 そうだ、考えたくはないがメンバーが死ぬことを考えなくてはならないのか。

 「分かった。」

 「行くぞ。」

 

 

 

 俺達は訓練を開始したのだが……訓練の成果は無かったと言わざるを得ない。

 というのも全員強すぎてスイッチする暇がなかったのだ。

 ちなみにレベルはキリト27、アスナ24、スコール23、アハトと俺が25で同じ。

 スコール曰くセフィロスは24らしい。

 というかキリトどんだけ戦ったんだよ。

 このレベルになってくるとほぼ2日戦っても1上がらないことの方が多いのに。

 「予想外だな。」

 「まさか敵が弱すぎるとは……。」

 「ボッチを見習えば強くなれるじゃないか?敵も。」

 「もうちょっと強い所に行かないと訓練にならないぜ。」

 「私も同じ意見ね。」

 迷宮区とはいえ入口近いから敵もそこまで強くなく、ソードスキル1発で倒れてしまったため、こんな意見が出ていた。

 下手すると通常攻撃がクリティカルしただけで倒れる敵もいた。

 「キリトの言う通り、少し潜ってみよう。これでは訓練にならない。」

 「待たせた。」

 「うわぁ!!」

 「きゃぁっ!!」

 2人が悲鳴をあげたがよく考えて欲しい。

 薄暗い場所で突然長い刀を持った長髪の男が現れる様を。

 だからこの2人が悲鳴をあげてしまうのは仕方のないことなのだ。

 「セフィロスか、キバオウはどうした?」

 あの後は当事者の一人として気になるところだ。

 「次私の目の前で騒いだり殺すと言った。後顔を見たくないからボス戦に来るな、来たら盾にしてやると言ったら土下座されて2万コル貰った。」

 「それは貰ったと言うんじゃなくて奪ったとか脅し取っ……何でもないです。」

 キリトが睨まれて黙らされた。

 「殺してはないんだな?」

 スコールが確認を取る。

 「当然だ。」

 「ならいい。」

 「この人達、いつもこんな会話してるの……?」

 「それは違うぞアスナ。この3人は煩いのに耐えられないだけでたまたまキバオウがキレさせただけだ。静かにしてれば優しいはず……だ。」

 アハトに反論したいが前まで飛んで行ってしまった以上反論できない。

 「「…………。」」

 そして2人は涼しい顔をしている。

 そんなことをは興味ないね、と言わんばかり。

 2人に弟子入りしようかな。

 

 

 

 合同戦闘は結局ボス部屋近くでやることになった。

 ショックだったのは6人の中で俺が二番目に遅かった事だな。

 それなりに敏捷に振ってるんだけどな……防御に多くしすぎたか?

 一番遅いのはスコールで早いのはアスナかキリトっぽい。

 同じくらいの速さなので判別がつかないが。

 それでそんなハイスピードで戦うものだから殲滅速度がアハト2人の時と比べ物にならない。

 この中で一番遅いスコールでさえ10メートルを1秒強で詰めるのだから遅くは無い。

 その結果……。

 「てやぁっ!!」

 キリトがバーチカルでワンパンしたり、

 「はあぁぁっ!!」

 アスナがリニアーで壁に吹き飛ばして虚空に投げ出されたところを、

 「せっ。」

 セフィロスが地閃で刺し落としてツーパン。

 「斬り伏せる!!」

 スコールがアッパーバイドで浮かせて落ちて来たところを、

 「せいっ!!」

 アハトがハーフムーンで敵mobの首を狩る。

 短剣の斬跡が半月の形を描く2連撃で美しい技だ。

 ちなみに敵mobには弱点部位というものがあり、そこを攻撃することによってダメージが増えたり、怯み・クリティカル・吹き飛ばし率に上方修正がかかる。

 ヒト型の敵mobなら基本的に首や頭に弱点があることが多い。

 だからアハトが首に向けて短剣を振るったのは正しい事なのだ。

 ガイドブック曰く、短剣自体の武器特性として弱点部位への攻撃時にクリティカル率上昇というものがあるからなおさら大切なのである。

 力が強ければそんなの関係ないがな。

 「せあぁぁっ!!」

 俺は無傷の敵をホリゾンタルで上と下を真っ二つにして倒す。

 こんな調子で狩りまくっていたため経験値が割ともらえた。

 全員レベルは上がらなかったが4時間とあまり長く戦ってなかったからしょうがない。

 この間に二刀流のことをキリトに教えたり、パリィングについて教わったりした。

 パリィングを覚えると弾いて攻撃ができるから効率が上がるらしい。

 「連携はとりあえず確認できたな。宿屋に戻ろう。風呂付きの宿屋を探しておいた。」

 風呂付きとはありがたい……体は汚れないとはいえ気分の問題がある。

 「この髪も洗わなくてはな……。」

 髪の毛こだわってたんですかセフィロスさん。

 「の、覗かないでよね!!」

 アスナが突拍子もないことを言う。

 少し驚いたが男であろうと裸を見られるのは恥ずかしいのだろう。

 中学生の時に筋肉がついてなくて恥ずかしそうに着替えている男子がいたっけ。

 「「えっ?」」

 「「了解だ。」した。」

 「……。」

 五者五様の返事。

 キリトとアハトは察してないな……。

 あと2人は察した模様。

 さあ、早くお風呂入って寝よ。

 明日は早い。

 それにウォーミングアップとして少し戦闘をしておきたいからな。

 ラジオ体操の代わりって訳だ。



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第12話

 次話は通常通り3日後になります。
 後書きにアンケートがあるので答えてもらえると幸いです。


 (………………まだ朝の5時か。朝ご飯食べて1時間ほど散歩に行こうかな……。)

 緊張のせいか5時に目覚めてしまったらしい。

 ボス戦は14時からだから9時くらいに起きて13時くらいに迷宮区に行く予定だったんだが。

 「……………。」

 「……………。」

 (話し声……?)

 1人はキリトっぽいがもう1人は……アスナか?

 早起きだな2人とも。

 とにかく俺は音源と考えられるラウンジに向かうことにした。

 

 

 

 「キー坊の剣を欲しがっている人がいるのヨ。」

 「俺の……とりあえずいくらでだ?」

 キリトと……20日前に会った情報屋か?

 喋り方がそれらしい。

 「おはようキリト。この人は?」

 一応確認を取る。

 名前が一致すれば同じと見ていいな。

 「おはようレンジ。この人は鼠のアルゴ。情報屋だ。」

 やっぱりか。

 「先日はありがとうございます。ガイドブック、役に立ちました。」

 初対面だから敬語は基本。

 礼儀を忘れてはいけない。

 これはネットゲームでもあり、対面で話しているのでもある。

 「そんナかしこまらなくてもいいサ。オネーサンは器が広いんダ。」

 フード被ってるから分かりにくいが俺と同じくらいの年齢に見える。

 「一応これはネットゲームですからネチケットを忘れないために、です。あとガイドブックの恩もありますしね。敬語は最初しか使わないし。あ、邪魔しちまってすまんな、キリト。」

 「大丈夫だ。んでアルゴ、買い取り人とその金額を教えてくれ。」

 「エーっと……17000コルだネ。買い取り人は教えられないんダ。」

 「そうか……、とにかく断っておいてくれ。さすがにアニールブレードなしでボスは無理だ。」

 「分かっタ。気を付けテ戦うんだヨ。」

 「ああ。」

 そう言ってアルゴは宿から出て行った。

 「……怪しいな。」

 「レンジもそう思うか?」

 怪しいというか真っ黒だと考えているが。

 「こんな階層でそんな提案をすることがまず考えられない。使ってない武器をたまたま手に入れているのを見たとかならまだ分かるが、そんなことじゃないだろう?」

 「ああ。俺が今使っている片手剣だからな。だけど誰が何の目的でこんなことを……?」

 そこだ、暗殺にしても攻略妨害にしても手口が礼儀正しすぎるし手ぬるい。

 暗殺なら武器を奪わなくても迷宮区やフィールドでHPが減ったところに奇襲をかければいいし、攻略妨害なら悪評を流す……いや、始まったばかりだし、そもそも特定プレイヤーの悪評と言うのをまだ聞いたことがない。

 その理由としてはネットワークがまだ発達していないからだ。

 主なネットワークとして現状ガイドブックしかない。

 となると依頼者がアルゴを使って現状精一杯の攻略妨害をしたということか?

 「誰か、までは分からないが攻略妨害の可能性が高いと俺は考える。」

 「なんでだ?」

 考えをそのまま話せばいいか。

 「暗殺にしてはやり方が丁寧すぎる。HPが減ったところを奇襲すればPKできるだろうし、まず高レベルプレイヤーを殺すこと自体リスクが高い。」

 「まあ、大人しく殺されるつもりはないからな。」

 「そうだ、俺らほど高レベルになると返り討ちの危険がある。だから攻略妨害かなと。やり方が丁寧なのに関してキリトはどう考える?」

 「……俺は何かに迷っているんじゃないかと思う。何に迷っているのかは分からないけど妨害をしなきゃいけないけどしたくない、みたいな。意味がわからなくなってきたな。」

 やり方が丁寧なのは俺も分からないしな……キリトの言っていることが正しいように見える。

 「この辺にしておこうか。ご飯にしよう」

 「わかった。」

 俺達はご飯を食べて肩慣らしに戦ってボス部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 14時5分前、俺達42人全員はボス部屋の扉の前にいた。

 「よし、行くぞ!!!!」

 「「「「「「「「おおーーーーー!!!!!!!!!」」」」」」」」」

 ディアベルが号令を出し、メンバーがそれに応える。

 威勢はいいがうるさい……でも絶望的でいられるよりかはマシか。

 

 「手筈通りにAB隊は攻撃、E隊はタンク、G隊は取り巻きの排除!!CDF隊はいつでも交代できるように警戒するんだ!!」

 ディアベルが指示を出す。

 ディアベルはA隊だが後ろに下がって指示を出す役割、いわゆる司令塔となっていた。

 さあ行くぞ。

 キリトとアスナが閃光のごとく駆け出してボスから遠い敵を相手にしている。

 スコールはボスに一番近い取り巻きを両手剣で吹き飛ばして距離を離し、セフィロスが追撃をかけている。

 俺はレイジスパイクを使って取り巻きの1体のヘイトを向けさせる。

 ランダムに狙われたら面倒だし、ボスに狙われるのは御免被る。

 こっちに来たか、それなら。

 「スラント・トライ。」

 熟練度が上がって昨日新しく覚えたソードスキルだ。

 三角形のように回り込みながら斜めに斬り下し、斬り上げ、斬り下しの3撃を与えるスキルだ。

 そして怯まなくてもアハトがハーフムーンで追撃してくれるから後隙の心配もない。

 2撃も与えればだいたい怯んでくれるからな。

 これはボスの取り巻きでも例外ではない。

 ルイン・コボルド・センチネルも反撃を仕掛けて来るが回避またはガード、そして攻撃してくる時にソードスキルを使ってパリィングという3択を状況によって使い分けている。

 力や武器の攻撃力によってはソードスキルを使わなくてもいけるとはキリトの談。

 ベータテスターは伊達じゃないと言う事だな。

 最後はバーチカルで武器を弾いてスラント・アークで止め。

 4人を見るともう倒したのか下がって体勢を整えているようだ。

 周りを見たら1回目のスイッチがあったらしくCD隊とF隊が前に出ていた。

 ゲージは1本目が残り2/3といったところか。

 「全員終わったか?」

 「ああ。」

 「回復は全員必要ないな?」

 「ええ。」

 「よし、次の指示に備えるぞ。」

 「G隊は取り巻きの排除が終わったなら次スイッチしてくれ!!アタッカーを休ませたい!!」

 取り巻きの排除が一旦終わったのが見えたからかディアベルから指示が飛んで来る。

 そしてその時は遠くない時にやってきた。

 「G隊、スイッチ!!」

 「ボスまで相手することになるとはな。」

 「心まで切り刻んでやろう。」

 「短剣でボスは流石にきついな……。」

 「叩き斬る。」

 「…………。」

 「行くぞ!!」

 六者六様の言葉を紡ぎながら俺達は攻撃を仕掛ける。

 しかしここに誤算があった。

 俺達の攻撃力が高すぎてG隊にヘイトが向いてしまったのだ。

 「スコール!!」

 「分かっている。」

 振り下ろされる斧をガキンと大きな音を生じさせて2人がかりで止める。

 くっ……重いが止められないほどじゃあない。

 それに俺が止めてくれている間にセフィロス達がソードスキルを使って削ってくれているしな。

 ただスコールが止めに入っているのがダメージソース的には少し痛い気がしないでもない。

 「はあっ!!」

 「吹き飛べ!!」

 斧を2人がかりで跳ね除けたが体勢が悪い。

 この時はソードスキルを使わずコボルドをX字に切り裂いた。

 「こっちだ!!こっちに来やがれコボルド!!」

 スレットフル・ロアーを使ってF隊が再び引き付けてくれたようだ。

 「G隊!!AB隊とスイッチ!!1本目がそろそろ削り終わるから処理を頼む!!」

 「了解!!」

 剣閃が五月蠅いから大声を出さざるを得ない。

 喉が枯れないといいけど。

 「スイッチだ!!下がるぞ!!」

 F隊が引き付けてくれたおかげで俺達は楽にスイッチをすることできた。

 「もうすぐ1本目が削り終わる!!警戒を厳かに!!G隊は取り巻きの処理を!!」

 さて、どこから出て来るか……ベータテストの時は2層へ続く階段の近くから出てきたということなのでその近くで警戒をする。

 「……取り巻きが柔らかくて助かるな。」

 アハトが呟く。

 「ああ、俺達の攻撃力が高いのもあるだろうけどな。しかしキリトとアスナのコンビは凄い。」

 「ああ、まるで音のごとき速さだな……来たぞ。」

 「G隊、取り巻きの処理を頼む!!」

 まあ取り巻きの処理なんて長くて2分もあれば終わるんですけどね。

 キリト達2人は1分で終わらせている。

 ちなみに火力の都合上俺達が一番遅い。

 安全を意識しているからというのもあるが、アハトが短剣で元々の火力が低く、俺も力に集中して振っているとは言えないからだ。

 スコールセフィロスの2人は力と敏捷の二極振りでキリトも割合はどうあれ似たようなものだろう。

 アスナは細剣だからほぼ敏捷と見て間違いない、力にもある程度は振っているだろうが。

 細剣に関して言えば敏捷もダメージに関係してくるので早ければ早いほど有利なのである。

 さて、取り巻きの排除が終わった訳だが……まずい状況だ。

 「もう持たない!!援護を頼む!!」

 どうやらF隊の1人が攻撃をまともに食らってしまってレッドゾーンに落ちてしまったらしい。

 さっき交代したばかりじゃなかったか……?

 「う、うわわああああぁぁぁ!!!!!!!」

 レッドゾーンに落ちたプレイヤーが敵に背を向けて逃げ出す。

 おい!!ボスに背を向けるのはまず……もう遅いか。

 「やめろおっ!!」

 「いやあぁぁ!!」

 「避けてくれえぇぇぇぇっ!!」

 キリトらが叫ぶも虚しく、斧が振り抜かれて蒼い欠片となってしまうプレイヤー。

 これが死ぬと言う事か……。

 それはあまりに軽いもののように見えた。

 だけど歩みを止める訳にはいかない。

 俺達は今立っている場所はしっかりとした場所ではなく、蜃気楼のように覚束ない場所なのだから。

 悲しむのは後で出来る。

 今やるべきことは敵を見据えて戦う事、それだけだ。

 だが直近の問題として壁役が欠けるのは痛い。

 「くそっ……F隊を援護してくれ!!」

 ディアベルっ……パニックになっているとはいえ援護する隊を言ってくれないと渋滞を起こすだろうが。

 しかし指示してくれるだけマシだ。

 最悪はここで総崩れになって10人くらい死者が出ることだからな。

 指示がこれでは不十分だ。

 だがら俺達という強力な駒を使わない訳にはいかない。

 アハト、スコール、セフィロス、キリト、アスナ、頼む。

 「G隊はF隊の撤退を支援する!!E隊はF隊を引き摺ってでも助けろ!!」

 「クッ……F隊!!俺がボスを引き付ける。動ける奴は前を見て落ち着いて撤退しろ!!」

 「ここは私が引き受けよう。」

 「「「…………。」」」

 俺が宣言をして、キリトが自力で動けるプレイヤーを鼓舞&補助、セフィロスは舞い降りて助けに入る。

 後3人の声がないがヘイトをこっちに向けられた以上周りを気にしている暇は無い。

 「レンジ!!復帰するまで手伝ってくれ!!」

 「言われなくてもやってやるさ。」

 上から斧が来た所をキリトがホリゾンタルで弾く。

 隙が出来たイルファング・ザ・コボルドロードに俺はパーチカル・アークを叩き込む。

 同時にセフィロスも胴薙ぎの一閃を叩き込んでいた。

 単発系スキルは攻撃を弾く時に使いたいから攻撃はアーク系、防御に単発系と使い分けが必要か。

 スキルを叩き込んだところで安心してはいられない。

 コイツは盾も攻撃に転用してくるのだ。

 俗に言う『シールドバッシュ』だ。

 ソードスキル扱いではないためダメージは低いものの吹き飛ばされやすく、追撃を貰いやすいので注意が必要だ。

 さっき死人が出たのもおそらくこれだろう。

 それを俺は右に転がって回避する。

 起き上がった俺は左から斧が来るのを見てパーチカルで弾きにかかる。

 ガキィン!!と大きな音を立てて鍔迫り合いになる。

 相手は片手なのにもかかわらず重い。

 少しでも気を抜けばこっちが吹き飛ばされるな。

 それを見たセフィロスが幻月で斧を掬い上げるように弾いた。

 その隙を逃さずAB隊とG隊の2人がソードスキルを叩き込む。

 人数が足りないと思ったらアスナが死を見たせいか戦意喪失してしまったらしく、アハトがフォローに行っているのが見える。

 スコールは傷ついたプレイヤーにポーションを飲ませているようだ。

 そして周りを良く見ると蹲っているプレイヤーや騒いでいるプレイヤーがちらほらと見える。

 ディアベルもパニックになっている後衛達の指示で忙しく、前まで指示が行き届いてない。

 俺は叫び出しそうになる。

 次に死ぬのは俺達かもしれないのに騒ぎ立てているんじゃねえよ。

 冷静に対処しろよ。

 これは、ゲームであっても遊びではない

 しかし俺はこみ上げてくるものを必死で抑える。

 (クッ……冷静になれ!!俺よ……っ。)

 後ろと前を繋げなくては……っ。

 「キリト、スコール、30秒支えてくれ。」

 「分かった。」

 「了解だ。」

 近くに来たスコールに指示を出す。

 やることは……スイッチだ。

 F隊は大丈夫だが……AB隊が不安だ。

 なら、

 「AB隊はC隊とスイッチ!!全隊生存を優先しろ!!」

 犠牲者が出る前に疲労があるAB隊を下げ、元気なC隊を前に出す。

 俺達と違って早さはないが攻守共に優れる重アタッカーだからそう簡単に落とされることはないはずだ。

 次は壁役だ。

 俺達6人が壁を務めているからなんとか持っているようなものでいつ崩壊してもおかしくない状況。

 「E隊!!救助は終わったか!?」

 「いつでも行けるぞ!!治療はD隊とディアベルがやっている!!」

 どうりでさっきから声が聞こえない訳だ。

 司令官が指示を出さなくてどうするよ。

 ゲージを見ると2本目のゲージが1割を切っていた。

 「E隊は前に出て壁に!!G隊はE隊とスイッチ!!取り巻きに備えろ!!」

 ここで取り巻きが来るか……厳しい。

 俺が行かないと捌き切れない。

 「これ以上死なせてたまるかよ……!!」

 「怖いが……やるしかないっ。」

 壁役が命だからな、今は。

 怖かろうがなんだろうがやってくれなければ文字通り俺達は全滅する。

 「ディアベル、治療は終わったのか?」

 「ああ、皆目の前で死人が出てショックだがなんとか戦闘に復帰できそうだ。」

 「お前は司令官なんだから周りを良く見ろよ。」

 「分かった……。」

 取り巻きがそろそろ出て来る以上その近くにいなければならない。

 アスナの様子は……アハトがフォローしてたな。

 「アハト、アスナは?」

 「ダメだ、上手くフォローできない。というかぼっちに慰めるなんて高度なことやらせないでくれ。」

 やはりコミュ障が慰めるのはまちがっているな。

 付き合いの長いキリトに頼むしかない。

 「キリト、アスナのフォローを頼む。」

 「分かった、ってアスナ!!大丈夫か!!」

 ただならない様子だが俺達はそれに構っていられない、取り巻きの出現だ。

 「私とスコールでそれぞれ引き受けよう。」

 「助かる。アハト、行くぞ。」

 「はいはい、働きたくないなぁ……。」

 働かないと死ぬぞアハトよ。

 俺は駆け出しながら右を見る。

 安定して攻撃や防御が出来ていることから体勢を立て直しつつあるようだ。

 ディアベルが指示を出し、手が空いている人間が重症者を回復させている。

 これならなんとかなりそうか。

 (迅速に仕留めて本隊のフォローに入らなくては。)

 「レンジ、合わせろ。」

 「了解。行くぞ。」

 アハトがハーフムーンを繰り出し、間を入れずに俺はホリゾンタル・トライで追撃をかける。

  怯みから復帰したルイン・コボルド・センチネルが攻撃をしてくるが、俺とてソードスキルの隙から解放された瞬間に。

 「遅い。」

 スラントで迎え斬り、アハトがファッドエッジでトドメ。

 素早く撃破できたな。

 スコールら2人はまだか。

 「アスナは?」

 キリトに聞く。

 すまないが悲しむ余裕はないんだ、今は。

 立ち止まってなくても死ぬんだ、ここは。

 だから立ってくれ、もう死者を見たくない。

 「もう大丈夫だ、心配ない。」

 キリトが力強く立ち上がる。

 「私は……ここで立ち止まるわけには……いかないのっ!!」

 アスナはそう言いながら、フードを投げ捨てた。

 栗色の長い髪の毛が舞う。

 それはまるで覚悟を決めた1人の人間の祝福のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ……行くわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 アンケートの内容は、ユニークスキルについてです。

 10個全部に設定を作ったのですが(作中にある2つはほぼ原作そのままです)ネタバレになる可能性があるため、設定集にて新しく話を作って公開するかどうかについてアンケートをメッセージで取りたいと思います。
 
 また、こんなスキルをあのキャラが使って欲しいとかあればそれもメッセージにてお願いしたいと思います。
 
 1通も来なかった場合は取得者が出て来るまで非公開という扱いにさせて頂きます。
 期限は2月9日までです。


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第13話

 ポーションの詳細設定は「ポーションで回復させた時は時間経過が必要。」とある原作からゲームバランスを考えて本作独自の設定をしています。
 原作はこうだ、とかバランスがおかしい、とかありましたら感想欄にお願いします。

 アンケート実施中です。
 詳しくは前話の後書きにて……。



 アスナが立ち直ったはいいが状況は良くない。

 というかアスナ、女性だったんだな。

 でも今はこんなことを考えている場合ではない、戦闘中だ。

 G隊のHPは全員8割以上あり、ポーションを適宜飲んでいるため安全だが他の隊のHPがよろしくない。

 取り巻きはスコールら2人がいるとはいえまだ処理できていないし、F隊はもちろんAB隊も相当消耗していてHPや集中力の回復に時間がかかる。

 HPはポーションを飲めば死にかけでも100秒経てば全回復するが集中力はそうはいかない。

  ちなみにポーションを飲んだ時の回復量は1秒につき最大HPの1%ずつ回復していくシステムになっている。

 例えばHPが500/1000でポーションを飲んだら1秒ごとに10ずつ回復し、50秒後に全回復すると言う訳だ。

 その間にダメージを受けたりしても回復量や回復時間は変わらない。

 回復量や回復時間が更新されるのは飲み直した時だけとなっている。

 そのため回復しきる前に攻撃を喰らうとそのまま死んでしまう場合があるので時間を置く必要がある。

 フロアボスの場合、スキルの硬直を補うのに加えて回復をするためにもスイッチをする必要があるのだ。

 今回の場合それに加えて初めてのフロアボスや死人ということで全体的に疲労が加速している。

 俺はアハトと徹夜で狩り続けたこともあるからまだ平気だが周りはそうもいかない。

 「アハトは救助を!!アスナとレンジは俺に続いてくれ!!」

 「分かったわ!!」

 「休む暇もないぜ……。」

 「全くだ。」

 キリトが指示を出し、俺はポーションの瓶を投げ捨てて2人について行く。

 アタッカーが少ない以上俺達がダメージソースにならないと長引いて逆に死人が出るな。

 E隊に攻撃が行っているので俺達は遠慮なくソードスキルをぶち込んでいる。

 今の攻撃で敵が転んだ、チャンスだな。

 「よし、CとG隊は敵が起き上がり次第下がれ!!D隊は前へ!!A隊はC隊とスイッチ!!E隊はまだいけるか?」

 「おう、まだ大丈夫だぜ!!」

 年長のプレイヤーが威勢良く返す。

 「よし!!F隊の人数が少なくなったからG隊から1人来てくれ!!」

 「俺が行く!!セフィロスは取り巻きを頼む。」

 「いいだろう。」

 取り巻きの排除が終わったスコールがF隊に移動するか、覚えておかないと危ないな。

 イルファング・ザ・コボルドロードが起き上がる動作をしたため俺達は下がってAD隊に任せる。

 その間俺達はポーションを飲んで一息つく。

 スコール以外の5人が集まるが少し疲労の色が見えているようだ。

 「ようやく半分ね……。」

 「あと一回取り巻きが出て来るからそれを片付ければ俺達の仕事は終わりだ。と思いたい……。」

 「嫌な予感がするのだが……。」

 「奇遇だな、俺も同じだよ。」

 「……畳み掛ける時は気を付けた方が良い。武器変更があるからな。」

 そうだ、それがあったか。

両手剣で薙ぎ払われでもしたらたら死人が出てもおかしくないから注意してもしすぎる事は無い。

 「何に持ち変えるかだけど……ベータの時は曲刀だったから射程が斧より短くなるけどソードスキルの頻度が上がってたな。」

 キリトがそう言う。

 「変わる前提で考えると、盾を捨てて両手剣が濃厚に見える。」

 推測だから盾を捨てて曲刀ともう片方の手で殴るとかの可能性もある。

 これは奇襲に近い分威力が高くなさそうなので確率は低いと俺は考えておいて思った。

 「変わらない可能性も考えた方がいいんじゃないかしら?警戒させて肩透かしということもあるんじゃない?」

 「それもそうか。とにかく油断はするなよ。」

 「今更だろ、それ。」

 キリトが当たり前のことを言い、アハトが呆れながら返す。

 HPは……3本目の1/4か。

 準備を始めよう。

 俺達が話している間に攻撃はBC隊、タンクはF隊に交代していたようだ。

 イルファング・ザ・コボルドロードの斧攻撃をカスケードで弾いているスコールの姿が見える。

 力強いなースコール、1人で弾けるものなのか……。

 もう少しかかりそうだし今の内に休んでおくとしよう。

 4本目になったら休む暇なんてないだろうし。

 「担当はどうする?」

 「私が一人で相手をしよう。キリトとレンジが組んで手早く倒し、アスナとアハトの援護に入れ。」

 「分かった。アハト、アスナを頼む。」

 「ちょっとキリト君?そんなに私が心配?」

 「いやそういうことじゃなくてだな……。」

 「……喧嘩は余所でやれ。」

 「俺は貝になりたい。」

 「…………。」

 3人が額に手をあてて呆れている。

 甘い空気は要らないって、今は。

 

 

 

 

 

 「3本目が1割を切ったからG隊は取り巻きの出現場所に!!そして全隊スイッチだ!!」

 戦闘も後半だと言うのにディアベルは最初と変わらない声で指示を出す。

「全隊って……いいのかそれは……。」

 キリトが走りながらそんなことを呟く。

 「まずいのか?」

 「ああ、スイッチする時は事故を防ぐために1隊ずつやるのが基本だ。一気に交代させると敵の動きの予測が難しくなるからな……。」

 「指示は出さなくていいのか?」

 「さっきのような緊急事態じゃない限り前のプレイヤーは口を出さない方がいい。前が混乱するからな。」

 「後ろが冷静じゃないと前が落ち着いて戦えないって訳か。」

 「ああ。……っと、お喋りはここまでだ。行くぞ!!」

 「そうだな。」

最後の仕事……にならない気がするのはなんでだろうね、本当。

 「合わせてくれ!!」

キリトがバーチカル・アークを繰り出し、右に回り込んだ俺も同じバーチカル・アークで追撃する。

この時キリトのスキルが終わってから出さないとお互いが干渉してキャンセルされてしまうのでタイミングが命だ。

俺に攻撃が来るが殲滅速度命だし取り巻き一発の攻撃で死ぬようなHPにはしてない。

死んだら終わりとはいえ死ななきゃ安いんだ、このゲームは。

1割も削れてないんだしな。

硬直から復帰したキリトがホリゾンタル・アークでトドメ。

 「アスナ達を援護するぞっ。」

 いちいち言わなくても……アスナがよほど心配なのだろうか。

 見るとルイン・コボルド・センチネルのHPは4割と言ったところか。

 キリトがパーチカルで削り、アハトが2撃ほど通常攻撃を当ててアスナがリニアーで吹き飛ばして排除完了。

 俺は後ろで見てただけである。

 ……援護2人も要らなかったな。

 とりあえずポーション飲んで備えるとしよう。

 イルファング・ザ・コボルドロードのHPは残り4割と言ったところだ。

 何事もなかったらしい。

 「よし、戻って備えるぞ。」

 「そうね。」

 「セフィロスは……大丈夫か。」

 浮舟で斬り上げて自分が飛び上がったところに壁を蹴ってさらに飛び上がり、クックックと言いながら地閃を繰り出してルイン・コボルド・センチネルに絶望を与えていた。

 「えげつねえなぁ……。」

 「楽しそうな顔してるからなおさら怖いわね……。」

 「攻略会議で一番怖かったのはあの人だろ……。」

 「そうか?少し変わった人だけどいい人だぞ。」

 強いしアイテムも譲ってくれたし、キバオウ黙らせてくれたし。

 警備会社の社長をやるくらいだからあんな性格なのだろう。

 「終焉を与えたか?」

 「ああ、しばらくは休めそうだ。」

 「…………風が、騒がしいな。」

 セフィロスも何か感じているようだな。

 嫌な予感が消えてくれない。

 

 

 

 「そろそろ武器交換ゾーンに入るぞ。」

 アハトが緊張した様子で言う。

 ベータの通り曲刀ならいいが両手剣だと厳しくなりそうだ。

 ……持ち替えたな……武器はなんだ、どう来る?

 「下がれ!!俺が出る!!」

 …………え?

 ちょっと待ってディアベルさん?

 武器が曲刀とは限らないんだぞ?

 「ダメだ!!全力で後ろに飛べ!!」

 キリトが察知したのか力の限り叫ぶ。

 しかしソードスキルを発動しようとしていたためディアベルの体は止まらない。

 いや、止まることができない。

 イルファング・ザ・コボルドロードもソードスキルを発動して2人が激突する。

 勝ったのは……イルファング・ザ・コボルドロードだった。

 ディアベルはソードスキルを喰らって大きくのけぞり、下がりきれていなかったアタッカー達も薙ぎ払われた。

 次にイルファング・ザ・コボルドロードがターゲットにしたのは……ディアベルだった。

 胴を一閃。それがディアベルへの止めとなり、蒼い破片となって散った。

 悲鳴すらもなく、茫然自失とするパーティー。

 しかしそんなことは関係ないと言わんばかりに硬直から復帰したボスが襲い掛かったのは先程薙ぎ払われたアタッカー達だ。

 彼らに三連撃のソードスキルが襲い掛かる。

 確かあれは緋扇……ということは刀か。

 「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 「やめてくれぇぇぇぇぇ!!!!」

 悲鳴が聞こえるもその距離からでは誰も間に合わない。

 キリトが助けに入るも遅かったようだ。

 何人かがまとめて斬られて数人がポリゴンへなって行く。

「チックショォォォォォ!!!!!!」

 落ち着けキリトっ!!

 お前まで死ぬぞ!!

 嫌な予感がしたのはこれかっ。

 「レンジ、俺はアタッカーの救助に行く!!俺じゃダメージソースにならないからな。」

 その分アハトはいくらかは冷静だ、やることが分かっている。

 「セフィロス、相手の刀を捌いてヘイトを向けてくれ。アスナはキリトのフォローだ。俺は全体の指揮を取る。」

 セフィロスに負担がかかるがこれしかない。

 刀となると使ってる本人が相手をするのがベストだろう

 というかパニックになりすぎだろう……ああ、また死人が……。

 「絶望を贈ろうか。」

 「分かったわ、キリト君を死なせはしない!!」

 セフィロスはいつも通りで安心する。

 アスナもさっきで覚悟をしたのか平気そうだ、まだ勝機はある。

 俺は後ろに下がって力の限り叫ぶ。

 「落ち着けぇぇぇぇぇ!!!!今ここでパニックになってる暇があったらアタッカーを助けたり、敵の攻撃を引き付ける準備をしろ!!」

 「レンジ、F隊は俺含めて3人しか戦闘に参加できない。E隊から協力者が欲しい。」

 スコールが俺に状況を報告して来た。

 参加出来るなら上々、戦力が一人でも欲しい所だ。

 「E隊リーダーのエギルだ。こっちは4人行動できる。スコールと言ったな、協力して敵の攻撃を止めよう。」

 もの凄く頼りになりそうだ、この2人。

 「了解だ。」

 「じゃあ仮にスコール隊とする。スコール隊はボスが倒れるまで攻撃を受け止めてくれ。死者をこれ以上出すな。」

 「おうよ!!」

 「フッ、言われなくてもそうするつもりだ。」

 そう言ってスコール達はボスに突撃して行った。

 セフィロスも少しは楽になるだろう。

 「アタッカーの方の損害はどうなっているんだ?」

 現状キリトとアスナしか攻撃していないため手数が足りていない状況だ。

 「A隊が1人、ディアベルだな。B隊が3人、C隊が2人死んでいる。隊を再編してもいいレベルだと思うが……。」

 D隊のリーダーが答える。

 「D隊は無傷なのか?」

 「ああ、外見は無傷だ。」

 ならば使わない手はない。

 見たところメンタルも大丈夫そうだ。

 「D隊、行けるか?」

 「行けます!!」

 これならなんとかできそうだ。

 「頼むぞ。絶対に死なないでくれ。」

 「俺達を舐めないでくれよ。ビギナーといえどレベルはかなり上げているんだ。」

 当座は凌げたが、スイッチ要因が欲しい。

 D隊やキリト達が崩れた時に援護できるプレイヤーがいないのだ。

 (アタッカーと壁どっちを再建すべきか……生存優先で壁だな。)

 俺は後ろにいる盾持ちプレイヤーに話しかけた。

 「大丈夫か!?」

 「駄目だ、怖くて立てない……。情けないがもう俺に壁は無理だ。あと俺はまだ喋れるが他の奴らは喋る事すらできない。すまない……。」

 5人が戦闘不能、か。

 ABC隊も似たようなものだろう。

 こうなったら説得するより倒した方が逆に安全なようだ。

 アハトがまだ回復させているのを見ると説得する以前の問題か。

 そしてキリトとアスナのHPが5割を切って注意域(イエロー )になっている。

 そしてボスのHPも1割以下だ。

 ……押し切ろう。

 そう決意して俺は前に出た。

 「キリト、大丈夫か?」

 「ああ。レンジ、アスナ、これで決めるぞ!!」

 「分かったわ!!」

 「分かった。」

 そして俺達はソードスキルを発動する。

 「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」」」

 攻撃はスコール隊が引き付けているため隙の心配は少ない。

 まず俺がホリゾンタル・アークを繰り出し、続けてアスナがオブリークで足を突く。

 最後にキリトがホリゾンタル・トライを発動。

 左からまず一撃。

 回り込んで右からまた一撃。

 最後に左下から斬り上げの一撃でイルファング・ザ・コボルドロードを真っ二つに斬り裂いた。

 斬り終わって数瞬したら斬られたモノが蒼片となって舞い降りてくれた。

 嗚呼、良かった、終わったんだ。

 「……終わった、か。」

 「……ああ、キリト、お前が終わらせたんだ。」

 実感がないようなので確かに終わらせたという事を伝える。

 「……勝った気が、しないんだが。」

 死人が出てるからな……できれば0にしたかった。

 「……そうね。」

 「……結局何人死んだんだろうな、レンジ。」

 A隊とF隊から1人、B隊が3人、C隊から2人だから……。

 「7人までは数えている。」

 「……1隊が全滅か。」

 7/42=1/6だから2割近く死んでいる計算。

 戦場なら記録的大損害か。

 何かの動画のコメント欄で見た記憶だと死亡率10%で記録的大損害、今後のの戦略に影響するレベルで、死亡率20~30%で全滅扱いだったはず。

 「キリト、とりあえず止めを刺したお前がこの場を纏めてくれ。」

 纏めなければ全員終わった気がしないだろう。

 「……分かった。」

 キリトが黒いコートを着て前に出る。

 おそらくボスの戦利品であり、勝ったという証明をするためだろう。

 「……今回の犠牲は大きかった。だが、なんとか俺達は勝利することができた。これはアイングラッド解放への大きな一歩だ。死んでしまったディアベルら7人への弔いも兼ねて、今日は静かに祝おう。」

 「祝う前にディアベルら7人の英霊に、黙祷を捧げたいと思うんだが、どうだろう。」

 俺はそう言って周りを見る。

 反対意見はないようだ。

 「「総員、黙祷!!」」

 生き残った俺達全員で静かに7人の冥福を祈った。

 

 

 

 

 

 1分ほどして後ろの方から手が上がった。

 「……どうした?」

 「……少し、喋らせてもらっても、いいか?俺はB隊の生き残り、だ。」

 泣いていたせいか、目が赤い。

 キリトが首を縦に振って場所を代わった。

 「俺はビギナーでさ、情報を持っている、ベータテスターが憎かったんだ。でも、7人も死んじまった。そのうち5人は一網打尽で、俺の目の前で死んでいったんだ。俺は端の方にいてたまたまソードスキルに当たらなかったからかろうじて生き残れたんだ。きっとあの刀の前には、ベータテスターもビギナーも関係なかったんだ。死んだ7人にベータテスターがいるのかは永遠に分からない。でも死んだプレイヤーの中に、ベータテスターがいたのかもしれないって思うと、憎んでいる場合じゃないって思うんだよ。ベータテスターだから無敵だ、ズルイ、チートだ、って思ってたけど、ベータテスターだって1人の人間でさ、斬られたら平等にダメージを受けて死ぬんだって思う、憎むのはなんか違うって、思えて。だからさ、俺は憎むのをやめて、お互いに協力して、100層まで攻略したいと思ったんだ。みんな、頼む…………。」

 「「「「「「「「…………。」」」」」」」」

 「……確かに無意味だ。私達が争うべきなのはモンスターであって人間ではない。」

 「銀髪の人の言う通りだ。だが7人も犠牲者が出てるとなるとベータテスターに非難が集中するんじゃないか?」

 浅黒い男……エギルが言う。

 「確かにそうだ。これはビギナーベータ関係なく俺達全員が7人を殺したようなもの……っ。だけど外野はそうは思わない可能性が高いと俺は思う。なんやかんやでベータのせいにされかねない。」

 「しかもディアベルさんが死んでいるからベータテスターは何しているんだ!!ってなりそうだよな。」

 集団の中からいろいろと聞こえてくる。

 「話を捏造してしまえばいい。問題となっているのは責任の所在がないことだ。死んだ原因をボスに押し付けてしまえばいいだろう。そうだな、ストーリーとしては武器変更されて5人の犠牲者が出てしまい、危うく攻撃隊が全滅するところを司令官であるディアベルが命を懸けて庇い、彼一人の犠牲で済んだ、と。」

 即席にしてはスコールがなかなか良さそうなストーリーを描く。

 「あとは英雄だな。こういう話にはヒーローがつきものだ。」

 俺が付け加える。

 「それならトドメを刺した人間だな。」

 「確か黒いコート着てる奴が最後に攻撃してた。」

 「さっき勝利宣言してたっけ?」

 どうやらキリトのことを指しているっぽい。

 「キリト、出番だ。」

 「え、俺?」

 「そうだ、アンタがいなかったら今頃俺達は死んでいたかもしれない。アンタは俺達の英雄だ。アンタが斬り込んでくれたおかげで俺達は死なないで済んだんだ。ありがとう」

 「ああ、その通りだ。二つ名をつけたいと思うんだがどうだろう。」

 「賛成だ。何かあるか?」

 冷静なスコールがこういうのに積極的なのは違和感があるな。

 「おい、ちょっと待てって!!」

 本人からしてみれば誤魔化す一環としてして考えてなさそうだけど。

 「黒の剣士、でいいんじゃないか?黒いコート着ているし。」

 アハトがそのまんまなことを言う、いいのかそれで?

 「いいわね!!それ。反対者はいるかしら?いないわね。じゃあ二つ名は黒の剣士に決定ね!!」

 「勝手に決めてるんじゃねえ!!」

 アスナが勝手に決定してしまった。

 なお本人に拒否権は無い模様。

 まあいいか、他人事だし。

 「それじゃあストーリーを言うぞ。武器変更されて5人の犠牲者が出てしまい、危うく攻撃隊が全滅するところを司令官であるディアベルが命を懸けて庇い、その仇を黒の剣士キリトが取った、と。そしてディアベルは死に際にビギナーとベータが争わないでくれ……と呟いて死んでいった、だな。こう言った理由はおそらくビギナーとベータが手を取り合って進んでいきたいとディアベルが思ったからとしておこう。これでいいか?」

 ……スコール凄い。

 とっさにここまで考えられるとは……。

 嘘が8割くらい混じっているけど。

 そして反対者もいないようだ。

 「大丈夫だ。2層目は犠牲者0で行こうぜ。」

 キリトが力強く言う。

 「そうね、死ぬ姿はもう見たいくないわ。」

 アスナが凛とした様子で呟く。

 「……………。」

 セフィロスはどうでも良さそうにしている。

 「死ななくて良かった……アイツらは心配してくれているのだろうか。」

 アハトは上を見て口を小さく開いている。

 (家に帰れる日が近づいた、な。)

 俺は声に出さずに言葉を紡いだ。

 「さて、みんなも疲れただろうからここらで解散にしよう。次のボスの時もよろしくな。第二層は黒の剣士たる俺がアクティベートしておくよ。」

 キリト最後にそう言って第1層のボス戦は終わりを告げた。




 出張に行って執筆時間が取れないため、次の投稿は申し訳ありませんが6日後になります。


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2~3層
第14話


 防具のステータスが出て来ますがおかしいとかありましたら感想欄にお願いします。
 ……バトルシーンが書きたい。

 そしてカタナがエクストラスキルであり、曲刀カテゴリの派生だという設定を見落としていました。
 この小説では普通のスキル扱いであり、1層でもカタナ系武器が店売りされているという設定でお願いします。

 また、ユニークスキルのアンケートにつきましては0件だったため、出て来るまで非公開という扱いにしようと思います。
 希望があれば設定集に投稿しようと思います。
 


 ボス戦の翌日、パーティを組んだ俺達6人は休養も兼ねて第2層の宿屋で新聞を読んでいた。

 「なかなか良く書けているな、この新聞。」

 「ええ、『黒の剣士、誕生!!』ってあるわ。写真まであるわよ、ほら。」

 「滅茶苦茶恥ずかしいんだが……。」

 「俺がこんな風に書かれていたらフロアボスにソロで特攻するまである。」

 「私も書かれてみたいものだな。」

 「アンタ、騒がしいのは好きじゃなかったのか?」

 「フッ、たまには騒がしいのも悪くない、ということだ。」

 スコールとセフィロスは通常運転。

 「ああ、平和だ……。」

 そして俺は久しぶりにゆっくりと過ごしていた。

 戦闘戦闘戦闘と、戦闘ばかりだったから銭湯に行きたくなるくらいには銭湯……じゃなかった、戦闘したな。

 ……広い風呂はないかな、露天風呂とか。

 「他にはディアベルさんの最期が書かれているわ。」

 読んでみない事には始まらないのでアスナから新聞を受け取って読み始める。

 号外扱いで昨日の今日だから表一面しか印刷されてないが、記事の組み方が立派に新聞の体裁を整えていた。

 やはり目立つのがキリトの記事だ。

 右上に黒の剣士、誕生!!と大きく書かれており、ボス戦での鬼のような活躍が書いてあった。

 えーっと……左上はディアベルの最期についてだな。スコールがでっち上げたストーリーを元に、書かれている。

 かなり美談になっているが実際はディアベルが陣形を崩して5人殺したようなものだからな……現実はこんなものだ、 誰も言及してなかったが。

 んで右下から左下にかけて戦闘開始から終了までの戦況が書いてある。

 2本目の削り途中に死者が出た事はもちろん、俺が見てない間にこんなことがあったのかというものまで書いてあった。

 一番分量が多かったのは当然ディアベル死亡後だ。

 刀に持ち替えたボスがタンクを崩した後、アタッカーに狙いを変えて多数の犠牲者が出てそれをディアベルが必死に支えて死亡、その後をキリトらが引き継いだと書かれている。

 んで下には本物の新聞っぽく情報屋なら鼠のアルゴにお任せとか、ネズハ鍛冶店オープン!!とか広告が書いてある。

 「しかし……捏造が笑えるな。」

 「ああ、実際はディアベルが死んで崩れたからな。我ながらよく考えついたものだ。」

 スコールが考え込みながら言う。

 「結局ディアベルはなんであの時前に出たんだろうな。」

 それが分からない。

 矢面に立って……何がしたかったのだろう。

 「多分だけど……LAボーナスを取りたかったんだと思う。」

 キリトが首を傾げつつ言う。

 「LAボーナス?倒した後に着た黒いコートがそれか?」

 確かボスを倒してキリトが喋る直前に着替えてたっけ。

 「ああ、コートオブミッドナイトという体防具で、防御+40に敏捷+10に力+3、さらにソードスキルのクールタイムを3/4にするという現時点では破格の防具だよ。」

 確かに、あれから俺もレアドロップで防具を引いたがそれでも防御+21に敏捷+5とかだからな。

 ちなみに現時点での店売りの鎧の最高防御が+33なのを踏まえるといかにこれが現時点での壊れ防具かが分かる。

 ちなみにコートとかの軽装防具は+17が最高だったっけ。

 「ってことは欲が出たってことか?」

 ありきたりではあるがそれであるが故に一番ありそうな可能性を提示する。

 「……目立ちたかったのだろう。」

 「セフィロス?どういうことだ?」

 キリトがセフィロスに尋ねた。

 「リーダーシップを取るのにLAボーナスが必須だったと考え、誰かに取られないようにしたかったのだろう。倒した後に掲げるなりすれば抜群の効果だ。受けも良い。」

 セフィロスが珍しく喋った。

 「くだらない。旗印があっても無能に付いて行かないさ、俺は。」

 スコールの言う通りディアベルの指揮には所々穴があった。

 「その通りだ。そんなのに付いて行くくらいならぼっちでいてやる。」

 「ディアベルさん……可哀想。」

 「アスナ、いわばこれは可能性だ。嫌な予感がして下げさせたのかもしれないし、現に死人が7人も出た。下げさせてなかったらもっと死んでたのかもしれない。だから絶対にあの判断が間違ってるとは誰にも言えないと思う。あの後指揮を取ったレンジも、抑えに回ったセフィロスやスコールも。そして救助しかできなかった俺も……。」

 アハト……?

 「救助を舐めるなアハト。死んだら終わりだが、死ななきゃなんとかなるのがこのゲームだ。デスゲームと呼ばれているが死ななきゃいいんだ。」

 「そうだアハト。お前のおかげで俺達は安心して壁になれたんだ。レッドゾーンになってもアハトが助けてくれると思ったから俺は耐えられたんだ。」

 スコールが遠回りに励ましている。

 「そうか……。すまない、ちょっと一人にしてくれ。」

 そう言ってアハトは部屋に戻った。

 「……心配だな。」

 「後で俺がフォローしておく。」

 俺はキリトにそう言い残して外に出た。

 

 

 

 

 

 時間は星が瞬く時、俺はアハトの部屋の扉の前に立っていた。

 「アハト、いるか?」

 声をかけるが反応がない。

 「アハト?」

 俺はノックをしながら再び声をかけるが反応はない。

 (どうしようか……部屋に入るべきか入らざるべきか。)

 俺は扉の前で悩んでいると、

 「…………レンジ?」

 部屋の中から声が聞こえて来た。

 「悩んでいるようだから、助けになればと思ってな。話したくなければそのまま帰るが。」

 ………………声が聞こえない。

 来るなと暗喩しているのかもしれないが本人がそう言った訳ではない。

 (少し待つか。)

 可能性として救助しかできず前線に出れなかったことを気にしているのだろう。

 でもこれだけのことでそこまで悩むかと言われれば少し足りない。

 これだけで済めばいいが、何か他の事が絡んでいると難しい。

 フォローする人間がそれを正確に理解するのがまず難しく、的確な答えを出すのにますます難易度が上がるからだ。

 「………………………………………………………………………………………………………………………………………………入ってくれ。」

 アハトが扉をゆっくり開けてくれ、俺は中に入った。

 

 

 「……俺に何か用か?」

 「悩んでいるようだったから話を聞きに来た。知り合いが死なれるのは流石に寝覚めが悪い。」

 知らない人間がどこで死のうがどうでもいいが知り合いが死ぬと少し堪える。

 「……そうか。……少し話を聞いてくれないか。」

 意外だ。

 溜め込むタイプだと思っていたのだが。

 「いいぞ。」

 「まず今回の悩みは前提があって長くなるんだが……いいか?」

 「ああ、構わない。時間はあるしな。」

 「ありがとう。修学旅行でさ、告白したい男子と告白させないでって女子がいたんだ。男子の方は絶対に失敗したくないと言っていてさ。」

 「ふむ。」

 告白したいというのは聞いたことがあるが、させないでというのは珍しいな。

 「それで俺はその女子にウソの告白をして、『今は誰とも付き合う気はない。』と言わせたんだ。」

 嘘とはいえ告白するとは相当勇気というか度胸があるな。

 「ああ、それで?」

 「確かに成功はしたんだ。俺が告白したから男子の方もそれを聞いて頑張ると言っていたんだ。男子の方も失敗はしなかったし、女子の方も告白させないようにはできたんだ。」

 「その様子だと当人以外に問題があるようだな。」

 「ああ、同じ部活の女子2人に拒絶されてしまったんだ。」

 部活?部活全体で恋愛相談とか聞いたことないぞ。

 まあ恋愛相談するにあたって部活仲間に相談するのは大いにあり得るが部活全体で取り組むとか聞いた事が無い。

 …………どういう事だ?

 「……その部活というのは恋愛相談部なのか?」

 いや絶対違うだろと思いつつ言ってみる。

 「いや、奉仕部という部活だ。名目は困っている生徒を助ける部活だ。」

 …………奉仕と聞いてメイド服の美少女2人が奉仕している姿を想像してしまった。

 というか今はこんなことを考えている場合ではない。

 「助ける範囲が広すぎないか?」

 「それは俺も思ったんだが女子の1人がノッてしまってもう1人がそれに流されて受けることになっちまったんだ。」

 これは断るべきだろう。

 恋愛とか責任取れないものの代表だろ。

 お前のせいで振られたとか言われても知らんとしか言えない。

 「んでアハトは仕方なく手伝ったと言った感じか。」

 「ああ。俺の取った手は最善ではなかっただろうが、時間が無くてそれしか思いつかなかった。」

 「女子たちはどんなサポートをしたんだ?」

 「えーっと……………………隣に座らせようとしたり………………自由行動の場所を探したり………………くらいか?」

 受けておいてその様か……何もしなかった方がまだ良かったのではないかと思うぞ。

 「……何やってんだ、女子達。」

 「……今思った、俺も。何もとまでは言わないがたいしたことしてない2人に拒絶されたのか俺は……。」

 アハトの目が澱んで行く。

 気が付いてしまったのか……何かに。

 その何かは俺には分からないが。

 「まあ拒絶されたなら離れればいいだろう。当分ここから出られそうにないし時間が忘れさせてくれる。どうしても忘れられないようなら復讐でもすればいいさ。」

 「いや、忘れるよ。俺のことなんてどうでもよかったんだ、アイツらは……と思う事にする。」

 「本人達はどう思ってそう言ったのか俺には分からないぞ。出た時に聞いてみるのもあると思う。」

 当人じゃないからどうしても無理が出る。

 「いいや、考えるのはもうやめる。SAOに閉じ込められたのは運命なのかもしれないな。」

 「残酷な運命だ。」 

 「言えてるな。」

 「それで前提は話し終わったか?」

 「ああ。俺が思ったのは、キリトのように斬り込めない自分が嫌になったんだ。」

 短剣でフロアボスに斬り込むとか頭を心配しなければならなくなるのだが。

 「短剣で斬り込むのは自殺行為だと思うのだが。」

 「その通りなんだが……キリトに犠牲を強いてしまったような気がしたんだ。」

 犠牲……というとさっきの話だな。

 「俺はあの時怖くなったんだ……ポリゴンの破片になるのが……。その直後安心したんだ。キリト達が突撃してくれたから死ぬ可能性は低くなったって。」

 俺は無言で頷いた。

 「自己犠牲って……何なんだろうなって思って。自己満足なのか?」

 ……自己満足な一面もあるだろう。

 だけど10割自己満足で自分を犠牲にする人間がいるとは思えない。

 何か他に利益があるから自分を犠牲にするはずだ。

 例えば凶刃から子を守る母のように。

 「確かにそういう一面もあると思う。だけど守りたいものを守るために結果的に自己犠牲と言う形になるんじゃないかと俺は思うんだ。」

 「……結果的に?」

 「ああ、俺はあの時キリトが自己犠牲をしたとは思ってない。ディアベルらの死にブチ切れたのと死んだ悲しみが7割。生きている人を死なせまいとしたのが3割だと思う。あ、割合は適当な。」

 「……これからはできるだけ自己犠牲をしないようにする。俺が良くてもきっと周りは嫌な思いをするんだ。アイツらもそうだったんだろうな。」

 「そうした方がいい。ただ拒絶するのはどうかと思ったが。」

 「……アイツらの気持ちも今なら分かるのかもしれない。」

 「もう遅い……な。」

 「多分な。あとキリトのことは整理がつかなかっただけだから、拒絶する気なんて最初からない。きちんと礼を言うさ。あの時矢面に立ってくれてありがとう、とな。」

 「ああ、言えるんならそれでいい。スッキリしたか?」

 「話に付き合ってくれてサンキューな。目の腐りが取れた気がする。」

 確かに澱みが薄くなった。

 「アハトの目は腐っているんじゃない、光を通さないだけだ。」

 「それもそれでどうなんだ?」

 「……確かに。キリト呼ぼうか?」

 「……頼む。」

 「後でアスナ達にも事情を説明しとけよ。」

 「分かってるさ。」

 

 

 

 

 

 その後の話は2人に任せ、俺は星空を見ていた。

 

 

 

 翌日、2人は雲一つない晴れやかな顔で出かけて行ったのを俺は見た。

 何を話したのか俺には分からない。

 だけど十分じゃないか、晴れやかな顔をしていたのだから。

 

 

 

 

 だからこの方が早いぞと言って家の壁を蹴って登って屋根の上を飛びながら狩りに行ったのはきっと俺の目の錯覚に違いない。




 心理描写は難しいけど書きがいがあります。



 
 艦これのイベントが始まりました。
 ですがペースは変えずに投稿して行きます。
 両舷一杯。

 今のところは良い調子です。


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第15話

 UA5000ありがとうございます。


 BGM作成について出来るかは原作で示されていませんが、演奏スキルがあることから作曲もできるだろうと考え、作曲スキルを設定しています。

 また、書き溜めが尽きかけており、遅れると思われる理由を後書きに書いてあります。(まだ尽きてはいません)


 カキン、カキンと小気味良い音が鳴り響く。

 「やってみれば意外にできるものだな。」

 前はほぼ弾けるようになった

 「やはり後ろから投げられたものを弾くのは難しいな……。」

 「フン。」

 「まだまだ行くぞー。」

 「楽しくなってきたな。」

 「そうね。」

 今やってるのは投げられたモノを弾く練習である。

 小さいピックを1層の店で3000本ほど買い(1本5コルだから割り勘で2500コル)交代で3人が移動しながらシングルシュートとかで投げて3人がその場から動かずに武器で弾いているという状況だ。

 圏内だからダメージも受けないしオレンジになることもない。

 

 この練習をすることになったのはPK者がいるという話が発端。

 暗殺と言えば飛び道具だとスコールが言い、ピックを3000本買ってきたのだ。

 そういう訳で男5人女1人が代わる代わる投げて弾いてという訳だ。

 「シングルシュートって意外に弾速早いんだな。」

 「気持ち早目に武器を構えたり振ったりしないと間に合わずに当たるぞー。」

 「当てようって思うと熱くなるわね。」

 和気藹々としながら修行をしていた。

 

 他にも斬撃を飛ばそうとセフィロスが試行錯誤をしていたり(セフィロス曰く現実でも出来るんだからVRMMOでも出来なければおかしいとのこと)。

 斬撃を飛ばすということは鎌鼬のようなものなのだろうか。

 あと自分のテーマソングを作るとか言っていたっけ。

 戦闘する時に流すとの事らしい。

 作れるのだろうか……。

 後はスコールが昨日のキリト達を見て壁を蹴って空中戦が出来ないかとかやっていたり(キリトと実際に家の壁を蹴りながら空中で剣を合わせていた)。

 キリトが何を考えたのか壁を蹴ればフロアボスをスルーできるのではないかと言って壁を蹴って登ったら見えない壁に頭をぶつけて墜落したり(6割ほど落下ダメージを喰らった模様)。

 俺は右手に片手剣、左手に短剣の二刀流の練習をしたり、4人に付き合ってレベリングしつつ修行をしたりしていた。

 短剣を上に投げて手から離せばソードスキルも使えることも判明したし。

 ちなみにキリトは1人でワンキルした方が効率が良いと言ってソロで出かけていることが多い。

 アハトは隠密と索敵の練習を始めた。

 本人曰く殺しとかしたくないが、自分や周りを守るためならやると言っている。

 殺す覚悟はあるのかは分からないが今は無いだろう。

 アスナは普通に新しく出来たらしい友人とレベリングをしている。

 「人間をやめようとしている人達には付き合えない。」

 と言われたがどこがおかしいのだろうか、解せぬ。

 ゲームなんだからスタイリッシュに戦うのはゲーマーの憧れだと思うのだが。

 現にキリトだって壁を蹴りながらスコールと斬り合ってるし、セフィロスだって刀で3M離れた敵をスキルを使わずに倒しているし。

 今はほぼ地上でだがそのうち上に落ちながら戦い始めそうな気がするぞあの三人。

 

 

 

 

 

 

 そしてその夜―――――

 俺はかねてから考えていたギルド結成を提案することにした。

 3層に行かないと結成できないとはいえ、あらかじめ結束しておくのも悪くは無いと考えていたためだ。

 「ギルドを結成したいと思う。理由としては死なないためだ。死なないようにお互い協力して強くなって行こうと思ってこの提案をした。3層にならないと本格的に結成はできないが、どうだろうか?」

 「……フロアボスは如何に?」

 セフィロスが冷たい目で質問してきた。

 「主目的ではないが参加したいなら好きにすればいい。というか強い奴なら基本的にOKだセフィロス。少数精鋭の方針にするし。」

 「なら私に異論は無い。喜んで所属しよう。」

 「リーダーじゃなくていいのか?」

 本人の性格からすると人の上に立たないと気が済まなさそうな気がしたのだが、

 「面倒だ。」

 無用な心配だったようだ。

 「鍛冶をやっていいか?」

 「スコールが?意外だな。」

 前線で戦うイメージがあるのだが。

 「ああ、後方支援も必要だろうし俺にも作りたい剣がある。」

 「わかった、よろしく頼む。3人はどうする?」

 「俺は入るよ。」

 「ソロでやりたいから……すまない。」

 「私は……どうしようかしら。」

 「アスナは入った方がいい。強いからきっと他のギルドに狙われると思う。とりあえずここに所属して他に入りたいギルドがあれば移動すればいい。気に入ったら居着けばいいしな。万が一の時は俺も助けに行くよ。」

 「それじゃあ私も入ることにするわ。キリト君、万が一の時は私を守ってね。」

 「任せとけ!!」

 息が合っているお二人さんだ。

 「それで名前は考えているのか?」

 「ああ、solitude『ソリチュード』だ。意味は孤独。俺達は孤独であっても独りではない。一人でフロアボスと戦えるのが最終目標だ。」

 「恰好いいな~!!」

 「……響きがいいな。」

 「私は孤高、それは私に並び立つものはいないという事……。」

 「孤独と孤高は違うぞセフィロス。」

 「孤独って……。」 

 アスナ以外からは好評な模様。

 変えるつもりはないけどな。

 

 

 

 

 

 こうしてギルド『solitude』が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 solitudeを仮結成し、レベリングや修行にクエストをこなして9日、ボス会議を開いた。

 キリトがボス部屋を一番先に見つけたのだが俺よりレンジの方がリーダーシップを取れると言われて俺が進行役だ。

 ちなみにギルドを結成したからと言って3人以上で戦うことはなく、むしろ経験値効率が下がると言って全員ソロまたはペアで戦っていた。

 そんなわけでレベルはキリトが29、アスナとセフィロスが26、スコール24、俺が28でアハトが27、だ。

 スコールが少し立ち遅れているのは鍛冶スキルを上げていた影響だ。

 俺達6人全員スコールに武器を強化してもらっている。

 アハトだけまだ怖いから今回は参加を見送りたい、ということなので5人で会議に参加することになった。

 全員に進行役に向いていると言われて仕方なくやることになったのだが……向いているのだろうか。

 分からなくなってきたな……。

 そして来ている人数は……50人ほどだな。

 第一層の死人の割には来たな。

 怖くないのだろうか。

 「黒の剣士のキリトだ。今日は第2層ボス部屋攻略会議に参加してくれてありがとう。俺に進行役は向いていないから前回最後に指揮を取ったレンジに任せたいと思う。」

 キリトの紹介を受けて前に出る。

「進行役のレンジだ。ギルドで来たと思うからまずはギルド名と出せる人数を言ってくれ。他ギルドの人数や戦力に応じて調整する。あと申し訳ないがレベルが21未満のプレイヤーは安全の都合ボス戦に参加させることはできない。次の層からよろしく頼む。」

 それを聞いて5人ほど肩を落として去って行くプレイヤーがいた。

 すまないが弱い奴を連れて行く訳にはいかないんだ。

 死なれて戦線が崩壊されると俺達まで死んでしまうからな。

 「ドラゴンナイツブリゲートのリンドだ。俺達は12人出せる。レベルの都合を無視すればもう少し増やせるが……。」

 確かA隊の生き残りだったな、見たことがある。

 そして後ろにいるプレイヤーにも顔見知りが多い。

 「アイングラッド解放隊のキバオウや!!俺達は18人出せるで!!」

 どうやら仮のギルドを結成したらしい。

 あと騒がしくしたらセフィロスが殺しに行くから自重してくれよ……。

 「フリーのエギルだ。5人いるができればもう一人重アタッカーが欲しい。」

 頼りにしてますエギルさん。

 「他はいないか?」

 隅の方から手が上がる。

 「そこのプレイヤー、ギルド持ちか?」

 くすんだ金髪のプレイヤーが言う。

 「えっと……俺はソロなので、エギルさんのパーティーに入れて欲しいんですけど……俺は両手斧使いなので条件に合ってると思います。」

 「レベルが大丈夫なら入って構わないが、死ぬかもしれないぞ。」

 「……覚悟してます。」

 目は口ほどに物を言う。

 目が生きていると言う事は、冗談や戯れで口にした訳ではないと言う事か。

 「……分かった。エギル、頼むぞ。」

 「おうよ、まかせとけ!!」

 「それで俺らだがギルド、solitudeを結成した。5人出せるから総勢41人でボスに挑むことになる。」

 「短剣使いはどうした?」

 リンドが問いかけてくる。

 AB隊の救助に回っていたから記憶に残っていたのだろう。

 「ああ、アイツは間近で死を見てまだ立ち直れてないから今回は辞退すると言っていた。次は枠があれば参加できると思う。」

 「そうか、機会があれば礼を言っておいてくれ。」

 「分かった。まずはボスだがガイドブックによるとバラン・ザ・ジェネラルトーラス。

 武器はハンマーでソードスキルでスタンや麻痺にしてくるようだから、対策のポーションは持てるだけ持っておいてくれ。

 それで担当だがまず俺らsolitudeはA隊。

 ドラゴンナイツブリゲートはBC隊。

 アイングラッド解放隊はDEF隊。

 エギル達のパーティはG隊としてくれ。

 まず俺達A隊は遊撃、ボスや取り巻きの攻撃やパリィングなど臨機応変に行動させる予定だ。

 ドラゴンナイツブリゲート、アイングラッド解放隊からそれぞれ1隊ずつ取り巻きに対抗できる部隊を出してくれ。

 ガイドブックによるとナト・ザ・カーネルトーラスという1体取り巻きがいて中ボスクラスらしい。

 だから前回のように少人数ではなく2部隊のスイッチで対応したいと思う。

 対応させる部隊だがCG隊を取り巻き担当にさせたいと思う。

 場合によってsolitudeから人を送る。

 それで残りは2部隊をアタッカー、1部隊をタンクとして運用したい。

 エギルの隊は元々タンク隊だからもう1部隊あれば十分だろう。

 タンクに関してはどちらかから出してくれないか?」

 意外に喋れるものだな、俺。

 「タンク部隊は俺達が出そう。B隊ということにしておいてくれ。取り巻きの部隊だが処理が終わったらボスに参加させていいか?」

 「構わない。が、状態異常にならないように後ろと前は距離を取ってくれ。全員麻痺したら終わるし、ベータと変わって1体増える可能性がある。」

 命がかかっている分用心深くなる。

 「その根拠は?」

 「根拠はないが、推測ならある。中ボスクラスとはいえ1体では俺達へのプレッシャーに欠けるからもう1体出て来る可能性を考えた。偵察をしたところ、ボスと取り巻きが1体ずつだったとの事。だから取り巻きに対応する隊は慎重に動かしてくれ。キバオウの部隊も同じだ。」

 「了解した。」

 「かまへんで。」

 「キバオウは何かあるか?」

 「あーLAボーナスはどうなるんや?」

 経験値や金は自動分配されるがこれだけはどうしようもない。

 「申し訳ないが前回と同じく取った者勝ちとする。それ目的に突っ込んでもいいが死んでも俺達は責任を負わないし、死んだら仲間がもっと厳しい目に遭うということと戦闘終了後冷たい目で見られるという事を考えてもぎ取ってくれ。ディアベルの悲劇を忘れてはならない。」

 俺は言葉を一旦切り、

 「どうしても欲しいんならソロでフロアボスと殴り合ってくれ。命の保証はしない。」

 正直そんな争いとか余所でやって欲しい。

 というか隠居したいんだが……そうも言ってられないんだよなこの状況。

 「そ、そこまでワイは言ってないやないか……。」

 LAボーナスで暴れたらセフィロスが多分殺しに行くんで覚悟しておいた方がいいと思うぞキバオウさん。

というか俺も殺しに行くかもしれないな。

 「他に意見はあるか?ないなら詳細を話し合うぞ。」

 キリトがボスの行動パターンを説明して実際の避け方や防御タイミングの考察。

 キリト曰く雑魚とパターンは変わらないらしい。

 隊から死者が出た場合の支援の仕方や、麻痺した時の救助の方法やそれで大丈夫かどうか実際に麻痺した者を助ける訓練。

 ボスと取り巻きの引き離し方や発狂時の予想(ソードスキルを使ってくる割合が高くなるとか1層でもあった武器の持ち替え、攻撃をガードしてくるとかの意見が出た)などを行い、俺達は念を入れて2日後に2層フロアボスの討伐に赴くことになった。




 まずいことに艦これのイベントで掘るのに忙しくて書き溜めが削られています。
 あ、仕事は真面目にやっております。
 ポケットの中で遠征出せるくらい真面目にやっております。
 また、掘り状況はU-511・401・瑞穂・春雨・時津風を手に入れました。
 春雨を引けたのは嬉しいです、任務が滞っているもので。
 後は雲龍と朝霜がいれば任務艦は全員ですかね。
 現在E-3Iマスギミック解除中です。


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第16話

 戦闘時のBGM変更はオリジナル設定です。
 あと1層に比べると短めに終わっています。


 2日後 ボス部屋前―――――

 

 

 

 「まずは陣形を整える。BD隊は前に。EH隊はフォローにいつでも回れるように準備。CG隊は取り巻きに。キリトはボスに、セフィロスは取り巻きを。アスナとスコールは万が一の時に待機。」

 「「「「「おおーーー!!!!!」」」」」

 伝えるべきことは簡潔に、速さが命だ。

 ボスの位置取りは真ん中にバラン・ザ・ジェネラルトーラスがいてその右斜め前にナト・ザ・カーネルトーラスがいる。

 真っ先にC隊が前に出てナト・ザ・カーネルトーラスに攻撃を始めてヘイトを向けさせる。

 そしてB隊がバラン・ザ・ジェネラルトーラスを挑発し、ナト・ザ・カーネルトーラスから引き離す。

 そうするのは不意打ちを防ぐのとスタン効果を30秒以内に2回連続で食らうと麻痺するため、そうならないようにという目的もあった。

 「あの技だが飛んでいればスタンはしない!!予備動作を見たら備えろ!!」

 キリトがそう言って飛び回って斬り掛かっている。

 相変わらずソードスキルの火力が1人だけおかしい。

 1人でもう1/5ほど削っている。

 ちなみにアタッカー全員で1/8削っていると考えるとキリト本人のセンスが優れているのもありそうだ。

 ちなみにナト・ザ・カーネルトーラスは2本あるHPバーのうち1本目の1/4ほど削れている。

 セフィロスがいるもののキリト達ほどトータルの攻撃力が高くないらしい。

 まあ攻撃寄りの隊ではないし安全を優先させているため仕方が無いといえばそうか。

 死亡者が出なければいいし。

 俺は卓越した能力を持つ4人に指示を出すと共にスタンしたプレイヤーがいないか目を凝らしている。

 指揮官を任されている以上前に出ず冷静に戦況を分析し、戦況に合わせた指示を出す必要があるのだ。

 他パーティのHPゲージも目を合わせれば確認することができる。

 「アルト、そろそろイエローに落ちるからアタッカーはスイッチを。」

 こうやって指示を出すことが可能なのだ。

 ……キリトは相変わらず攻撃力がおかしいな、戦闘が始まって3分くらいしか経過していないのにもう1本目を割るぞ。

 取り巻きはやっと半分削ったかどうかなのに。

 少し調節させるか。

 「キリトは下がってくれ、取り巻きを先に撃破したい。セフィロスも下がって一旦回復。スコールは取り巻き、アスナはボスに。」

 「「「了解。」」」

 「分かったわ。」

 ヘイトはタンクに向いているため比較的安全に下がることができた。

 火力お化け2人が戻ってくると同時に素早くもう2人が前に出る。

 火力の高いスコールに取り巻きの相手をさせる。

 これはボスの発狂時に取り巻きがいると危険だからその前に撃破したいためだ。

 キリトを取り巻きに回したいが誰かが麻痺した場合に出る人間がsolitudeからも欲しいから待機させざるを得ない。

 現在バラン・ザ・ジェネラルトーラスは1本目の8割を削っている。

 スタン者はいるものの麻痺したプレイヤーはまだいない。

 スタン者を追撃しようとしているところをエギル隊に新しく入った金髪のプレイヤーが斧でハンマーを弾いてるのが見える。

 ナト・ザ・カーネルトーラスも1本目が残り3割と言ったところだ。

 こちらもスタン者はいるが麻痺したプレイヤーはいないようだ。

 取り巻きを相手にしている隊も随時スイッチをしてスタンの復帰やHPの回復をしているため心配は少ない。

 っと、アスナのHPが危ないな、下げるか。

 タンクの近くにいたのと後隙を狙われてしまって結構減らされたらしい。

 「アスナは下がって回復。セフィロス、攻撃を控えめにして前に出てくれ。まだ取り巻きの倒せる目途が立ってない。アタッカーはそのままのペースで攻撃。」

 「はいよ!!」

 「分かったわ。」

 「心得た。」

 三者三様の返事が返って来る。

 スコールはまだ大丈夫な模様。

 壁を蹴ってナト・ザ・カーネルトーラスを蹴って斬ってと1人だけ何か違うゲームをやっている。

 空中でソードスキルって使えたのか……浮きながらカタラクトを発動して斬っている。

 後で聞こう。

 「キリト、どうだ?」

 「ああ、行動パターンはやはり雑魚と変わらない。今のところは、だが。そして麻痺しなければ死者が出る可能性はほぼ0だ。防御の低いアタッカーで綺麗にソードスキルが当たってもイエローで済むくらいだから追撃させなければ大丈夫だろう。」

 「分かった。麻痺しないように、だな。後、全力で取り巻きを攻撃して欲しい。ボスが発狂した時にはお前の火力が頼りだ。」

 キリトは頷いて取り巻きの方を見始めた。

 HPは……全員まだ大丈夫か。

 というかスコールのHPが全く減っていないのだが、全て回避しているのか?

 掠っても割と減るんだがな、フロアボスだと。

 そういえばセフィロスも1発掠めただけだからあの2人は何かがおかしい。

 下がった時に念のためなのかポーション飲んでたけど。

 そして考え事をしていたら状況が動く訳で。

 現在バラン・ザ・ジェネラルトーラスは2本目の5割、全体で言うと丁度半分を削り、ナト・ザ・カーネルトーラスが2本目の残り4割か。

 これなら3本目に入る前にナト・ザ・カーネルトーラスを倒せそうだ。

 ここまで危険がないと1層に比べれば拍子抜けしそうだが油断はできない。

 7人の死者を出した事を忘れてはならないし、麻痺で総崩れと言う事もあり得るのだ。

 セフィロスも相変わらずおかしい。

 天躯を発動して空中に飛び上がったと思ったら地閃を発動して地上にいる。

 スキルのクールタイムの間でも通常攻撃でハンマーを持っている手や頭を狙ったりするから攻撃をキャンセルさせることもあり、一斉攻撃をかける回数が多い。

 これは味方の保護にも繋がっている。

 当たらなければ死ぬことはないのだ。

 「リンド、キバオウ、大丈夫か?」

 ちょうど2人が下がって来たので尋ねる。

 「こっちは大丈夫だ。麻痺したプレイヤーは俺のとこには一人もいない。キバオウの方にはいたみたいだがうちのプレイヤーが上手くフォローしてくれたみたいだ。」

 「それは恩に着るで。こっちも大丈夫や。6割を切ったら下げているから火力はあんさん達のパーティには負ける。でも安全第一や。1層でまさか7人も死ぬとは思わなんや……ディアベルはん……ワイはアンタの最期の意思を継ぐで。」

 どうやら新聞に書いてあったことを見てビギナーとベータの融和に納得しているみたいだ。

 「お、ナト大佐が倒れたみたいだ。止めはアンタのパーティーだ。」

 ナト大佐……ああ、ナト・ザ・カーネルトーラスのことか。

 「これで挟まれることはないんやな?よし、G隊を休ませてボスに備えさせるで。」

 「ああ、そうしてくれ。2隊体勢は最後まで変えない。発狂した時に備えたい。」

 「分かった。うちのC隊も回復させて備えさせよう。LAボーナスは無理に欲しがるものじゃないし後でアイテムでも要求させてもらうことにするよ。」

 なかなか強かだな、まあそうじゃなきゃ生き残れないか。

 「生きていたら、の話だぞ。今は集中してくれ。」

 さて、状況は……ナト・ザ・カーネルトーラスが倒れ、バラン・ザ・ジェネラルトーラスは2本目の9割が削れている。

 スコールも戻ってきて体力を……回復させていない。

 そもそも回復させる必要がないとも言うが。

 「そろそろ3本目か……スコール、どう来ると思う?」

 「会議の予想であったもう一体増えるというのは控えが多いからまだ対応は可能だろう。素手にならず武器の持ち替えがあったりすると危険かもしれないが。」

 それならば……キリトとスコールをボスに当てて削り切ってもらい、早いセフィロスとアスナで救助を担当。

 場合によっては俺も救助だな。

 「キリトとスコールはボスに行ってくれ。アスナとセフィロスはそのスピードを生かして補助に回って欲しい。セフィロスには申し訳ないが何が起こるかが分からないから頼む。」

 「よし、やってやるぜ!!」

 「了解だ。」

 「キリト君が心配だけど……。」

 「ククク…………この刀が騒がしい。まだ斬れる相手がいるようだ…………。」

 すまんアスナ、火力が足りないから希望に添えないんだ……。

 あとセフィロス、少しは緊張しろ。

 そして厨二病か、大人なのに。

 とか考えている暇はなくなったようだ。

 2本目が削り終わってバラン・ザ・ジェネラルトーラスがハンマーを折って投げ捨てたのだ。

 ここまではガイドブック……ベータ通りなのだがここからが違った。

 もう1体巨大な敵が出て来たのだ。

 名前は……アステリオス・ザ・トーラスキング。

 王の名が示す通り目を引くのがその巨体と6本のHPバーだ。

 予測していた通りの展開だがここまでHPが多いと本隊へ危険が及ぶ。

 そして本隊の方にも動揺が伝わっている。

 ならば、

 「落ち着けっ!!本隊は予定通りボスを。新手を相手するのはCGと俺達だ。キリトは本体の指揮を。Cは新手の前に!!GはCの危険に備えて後ろに!!セフィロス、アスナ、俺と共に来てくれ。新手を引き付けるぞ。」

 キリトに本隊を任せて俺達はアステリオス・ザ・トーラスキングと向かい合った。

 そして近づいてきたアステリオス・ザ・トーラスキングは大きく息を吸い込み始めた。

 おそらくはブレス攻撃。

 きっと麻痺効果を持つのだろう。

 幸いにも全員それなりに距離があるから回避可能だ。

 「下がった方がいいな、あれは。」

 「ブレスって衝撃波と似てるよな。」

 他の隊も危機を察知して下がっているようだ。

 「跪け。頭が高い。」

 しかしセフィロスは前に飛び出して天躯で高度を稼ぎ、頭の王冠に刀を突き刺した。

 アステリオス・ザ・トーラスキングが絶叫をあげ、前のめりに倒れた。

 両手でなんとか体を支えている。

 (……?)

 セフィロスを見るとアステリオス・ザ・トーラスキングの頭の上でメニユーを操作し始めた。

 セフィロスがメニユーを閉じると勇猛なBGMが何か恐怖を感じさせるBGMに変わったのだ。

 「絶望を贈ろうか、無様な王よ。」

 倒れ込んでいるアステリオス・ザ・トーラスキングの頭に滅多突きを放つセフィロス。

 そして倒れ込んでいるのをいいことにCG隊とアスナと俺が一斉にソードスキルを叩き込む。

 消し飛ぶHPバー。

「無様に倒れろってんだ!!」

「人間様のお通りだーヒャッハー!!!!」

 巨体なせいか復帰までに時間がかかり、全員が2回ほどソードスキルを叩き込んだおかげで6本あったHPバーがもう2本消えていた。

 体力バカって事か。

 「頭が弱点だ。セフィロス、頼むぞ。」

 「フッ。」

 「よし、セフィロスさんを援護して全体攻撃だ!!」

 「「「「「おおうっ!!!!」」」」」

 CG隊が攻撃を引き付けてセフィロスが自由に動けるようにしようとしている。

 が、その努力は実らない。

 ヘイトの差が、縮まらない。

 本人は拳を刀でいなしていてほぼ無傷だがこれでは頭を攻撃できない。

 天躯で飛ぶにしても壁を使って飛ぶにしても予備動作が必要なのだ。

 「後ろの尻尾に気を付けろ!!横から攻撃するんだ!!」

 C隊の誰かが攻撃を喰らったようだが無事なようだ。

 「大丈夫か!?」

 「ああ、防御したから大丈夫だ。」

 「念のため回復しておけ。」

 「分かってるって。」

 ようやくセフィロスからヘイトが逸れ、その瞬間銀の天使が天を駆ける。

 そして天使は王を地に堕とす。

 「よし、G隊も行け!!」

 「「「うわああぁぁ!!」」」

 何か分からない掛け声とともに怒涛の攻撃が地に伏せた王に襲い掛かる。

 「フロアボスを倒した!!後はコイツだけか、何をすればいい!!」

 キリト達がバラン・ザ・ジェネラルトーラスを倒したらしく、こちらに加勢してきた。

 「一斉攻撃だ!!王を殺せ!!」

 誰かが勝手に指揮を出す。

 勝手に出さないでくれませんかね。

 「「「「「「「「「「○○○○○○○!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 もはや声にならない声を上げて全員突撃して行く。

 俺の声は無残にもかき消された。

 レイドのほぼ全員で全身を斬られ、殴られているためなかなか起き上がれない。

 起き上がったとしても即座にセフィロスが頭を串刺しにするためすぐに倒れて何もできない王。

 俺は何か変な動きがないか観察しながら攻撃をしていたが、その必要はなかった。

 そしてそんな怒涛の攻撃に長く耐えられる訳でもなく王はほとんど何もせずに散って行った。

 

 

 

 2層のフロアボスが撃破されて盛り上がるのを見ながら俺とキリトは話していた。

 「キリト、発狂時の犠牲者はいたか?」

 「麻痺者は2人出ちまったけど死人はいない。あの金髪のプレイヤーがフォローしてくれて助かった。」

 「良かった……それじゃあまとめるか。」

 「ああ。」

 俺は前に出て声を張った。

 「全員、聞いてくれ。」

 俺の言葉を聞いて場が静まる。

 「今回の戦い、犠牲者が出ずに終えることができた。これは全員の働きがあってこそだと思う。しかし、今回犠牲者が出なかったからと言って次も出ないとは限らない。だから準備を怠らず、慢心せずにこれからも行こう。」

 「ちょっとええか?」

 「キバオウか、なんだ?」

 「ワイさ、1層のフロアボス戦に参加できてないんよ。それでディアベルはんに黙祷をしていないんや。だからその機会が欲しいんや。」

 「分かった。そうだな、1層の悲劇を忘れないようにフロアボス攻略後には毎回黙祷を捧げよう。いいか?」

 「そうだな、慢心してはダメとどこかの正規空母も言っていたよな。」

 「ミッドウェーの悲劇ならぬ、第1層の悲劇か。」

 「慢心した者から死んでいくと言う訳か、今回の最期の総攻撃も危なかったかもな。」

 「近くで見てたから分かるけどレンジがよく見てたからその心配はないだろ。」

 「それを慢心と言うんだよ。」

 「そうだったな。」

 「話している所悪いが黙祷を捧げたいと思う。総員、黙祷!!」

 俺達は1分の黙祷を捧げた後、アイテムの分配をしてこの場は解散となった。

 ちなみにLAボーナスはキリトが獲得したらしい。

 ランスオブスリットと言う二股に別れた両手剣でキリトには使えないのでスコールと交換するとか言っていた。

 その時のスコールは少し驚いた顔をしていたのが印象に残った。




 セフィロスが流したBGMはもちろんアレです。

 そしてLAボーナスもオリジナルです(長くなるので最初に簡単なステだけ書いておきます)。


 攻撃力110~130 重さ200 要求値15 耐久値1000 追加効果 防御+10 敏捷-3
 斬る瞬間に持ち手にあるスイッチを押すと刃が振動して攻撃力が1.25倍になる。






 詳細
 重さが200 (1=10gで計算。これはちょうど現実世界の重さで2kgを表す。鍔迫り合いなどに影響。重いほど有利になりやすい)。
 斬撃タイプ (部位の切断が可能。ちなみに打撃タイプは頭に一定回数攻撃を加えるとスタンするという扱い)。
 要求値 15 (レベルがこれ以上であれば装備できるという扱いとします)。
 耐久値 1000 (基本3回斬るごとに1消費。壁に突き刺してぶら下がったりと手荒な扱いをすると武器により1~30秒に1ずつ消費。砥石で応急な回復が可能であるが本格的に回復させるには鍛冶をする必要がある。)。

 
 
 現在艦これはE-3の戦力ゲージを削っています。
 なのでまだ書く時間が取れません。


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第17話

 艦これで忙しいためもの凄く短くなっております。
 申し訳ありません。



 照月、初風、天津風、高波を手に入れたので後は26だけです。


 ボス戦の翌日、俺達は3層の宿屋にいた。

 「昨日も言ったけどみんなボス討伐してくれてサンキューな。なんとか次からは参加できそうだ。」

 「無理は禁物だぞアハト。幸い死者は出なかったけど麻痺者が出て危うく死人が出るところだったからな。」

 「もう大丈夫だ。」

 「アハト君、無理はしないでね。……最後はむしろボスが可哀想だったわ。」

 「何があったんだ?」

 「ほぼ全員で増援のボスを取り囲んで切り刻んでいたのよ……。」

 「ああ、セフィロスのおかげで楽に勝てたってみんな言ってた。飛び回る姿から片翼の天使なんて二つ名がつけられたくらいだ。」

 「ああ、ボスの頭を串刺しにする姿を見てるとどっちがボスかわかったものじゃない。」

 スコールよ、言い過ぎではないか?

 「頭に刀を突き刺して不気味に笑う銀髪の男……確かにボスっぽいな。」

 アハト、お前もか。

 「おいおい……ボス扱いは本人が気を悪くするだろ……セフィロスさん、すみません。」

 本人の顔を見るが、

 「クックック……一向に構わない。私を崇め奉るが良い。」

 「いいのか……それで。」

 本人が何を考えているのかがわからない。

 もしかして何も考えていないのかもしれない。

 楽しくて死ななければいいか、本人も楽しそうだし。

 「片翼の天使……まさに私にふさわしい。」

 「大丈夫なのこの人……PKしたりしない?」

 「俺も不安になってきた。」

 「俺もだ。」

 「塵に誰も目を向けない。風に自然と吹き飛ばされて行く。」

 えーっと……どういうことだ?

 「つまり、セフィロスが言いたいのは雑魚を殺すのはつまらないと言うことだ。強いヤツと戦いたいのだろう。」

 スコールが補足する。

 「キリトとは一回戦ってみたいものだ。今は私が勝つだろうがあの剣には期待ができる。」

 「フン、そうやって威張るのも今のうちだぜ。俺が勝ってやるよ、表に出ろよセフィロス。」

 二人の間でスパークが散っている。

 「いいだろう。私が直々に誘い、その口を斬り落としてやろう。」

 「負けたら笑いものだぜ。セフィロス。」

 「クックック……虚勢を張るのはやめろ。」

 良い感じにヒートしてきたな。

 ここでくれぐれも暴れるなよ?

 

 

 

 5分後―――――

 

 宿屋のそばの広場でセフィロスが七星刀を、キリトがアニールブレードを構える。

 その周りには攻略組のギャラリーがいて賭けをやっている。

 レートは6:4でセフィロスが少し優勢だがどちらも勝つ可能性があるだろう。

 「初撃決着モードでいいよな?」

 「長々とやるのは趣味ではない。だが少し待て。」

 「なんだ?」

 「こういう戦いには音楽が大事であろう。」

 そう言ってセフィロスはメニユーを開き、いくつか操作をした。

 するとタッタッタッ タラララララと音楽が流れ始めた。

 「いい曲だろう。」

 「そうだな、よし、戦うぞ!!みたいな気分にさせてくれる。」

 「来い、キリト。」

 「行くぜぇっ!!」

 なんか魔王に挑む勇者みたいな構図になっているな。

 そう思った瞬間、2人は激突した。




 作中で流れるBGMはFFⅦから闘う者達です。
 次回はそれを聞きながら読むとより臨場感が増すと思います。
 そして24日には次話の他に本編とは関係がないMETAストーリーというただただ2人が闘うだけのストーリーを投稿します。
 


 イベントが終わりません。
 ラスダンが終わりません。
 空母BBAが本当につらいです。


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第18話

 すみません。
 燃料が尽きて書く時間が取れません。
 伊13が欲しいです。
 よって文字数がギリギリです。
 本当に申し訳ございません。
 次話から文字数は3000以上になると思います……。


 まず先手を取ったのはセフィロス、突進して横薙ぎを繰り出す。

 キィィィン!!

 と鳴り響いて鍔迫り合いになる。

 「随分と早いんだな。」

 「こう完璧に反応されるとはな。」

 お互いに飛び退いて一旦仕切り直しか。

 と思いきやキリトがレイジスパイクを発動させて突っ込んだ。

 「はあぁぁぁ!!」

 「!!」

 レイジスパイクをかろうじて弾くセフィロス。

 しかし今ので体勢を崩したのと後隙のためお互いに差し込むのは不可能。

 距離も5Mほどなため突進系でないと届かないといったところか。

 「今のを弾くか……普通……。」

 「……。」

 外野はヒートアップしていると思いきや、静かだ。

 そして動いたのはセフィロス、

 普通に刀を前に構えて突進し、斬り掛かる。

 「はあっ。」

 「やあっ!!」

 「せいっ。」

 「てりゃあぁっ!!」

 掛け声と剣閃が響く。

 浮舟とバーチカルが衝突し、緋扇とスラント・トライが交錯する。

 「後隙を狙わせてくれないな……。」

 「そう簡単には狙わせないさ。」

 後隙のカバーがお互いに上手く、差し込めない状況が続く。

 しばらくは斬り合いの応酬が続く。

 横、縦、斜め、と弾かれるたびに方向を変える剣跡はまるでダンスをしているかのようだ。

 そしてとうとう均衡が崩れた。

 「そこだぁっ!!」

 「たっ。」

 両者同時に突きを繰り出す。

 DRAWの文字が表示される。

 結果は両者同時の有効打による引き分けだった。

 「この勝負、私の勝ちだったな。」

 「……悔しいけど、その通りだ。」

 セフィロスの刀はキリトの胸に、キリトの剣はセフィロスの右腕に突き刺さっていたからだ。

 「だが次は、負けない。」

 「フッ、殺り合うのは面白いが見るのもまた趣がある。」

 「それもそうだな、レンジとアハトって最初組んでたし、戦ってみたらどうだ。」

 俺に話が飛ぶか、まあいいけど。

 「とのことだけど、アハトはどうする?」

 「……大丈夫だ。人前で戦うのは緊張するからお手柔らかに頼む。」

 「善処しよう。少し準備させてくれ、3分程欲しい。」

 こう言った場合善処しないことが多いが仕方ない。

 言ってる本人がこの有様だがらな、うん。

 立ち回りを考えながら周りを見渡すとまだ興奮醒めぬと言った様子であり、そのまま賭けが続いている。

 好きだなーお前ら。

 そして五月蠅い。

 アハトを見習ってくれ………。

 

 

 3分後――――

 「さて、やるぞ。」

 「ああ……。」

 ガッチガチに緊張してやがる。

 氷のようだ。

 とりあえず先手は貰おう。

 先手必勝、という訳では無いが貰っておくものは貰っておく主義なんでな。




 次の投稿はMETA編という本編とは関係がほぼない話を投稿します。
 


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第19話

 本編をいい加減進めます。
 伊13は無事ゲット。
 文字数が3000~5000字、3日ごとに投稿ペースを戻します。
 まあ文字数が減っただけでペースは変わっていませんが。


 (アハトは短剣持ち……最初はソードスキルを使わずに仕掛けるか)

 俺は接近して横斬りを繰り出した。

 バックステップで避けられたが、続いて突きを繰り出して追撃。

 キンと響く剣閃、突きが逸らされる。

 「おい、不意打ちは卑怯だぞ。」

 「ボケっとしてるのが悪い。」

 「それもそうだがもう少し待ってくれても良かったんだぞ?」

 「プレイヤーからは逃げられないし待てないことを知らないのか?」

 「いや、待つくらいはしてくれよ……。」

 「待ったら確実に嫌らしいことをしてくるだろう。」

 「おいおい、俺はそんなことをしない。」

 「良く言う、投剣で削ってからトドメを刺しているだろうが。」

 アハトの基本スタイルは遠距離で削ってから近づいてソードスキルでトドメという流れが多い。

 他は俺も含めて一刀両断スタイルが主だ。

 まあ力の振り分けの問題もあって俺は二刀か三刀入れないと倒せないが。

 「ああ、あれは死なないように、だっ。」

 「良く言う、今もピック投げて来た癖に。とりあえず貰っておくぞ。」

 「後で返せよ。」

 「お前が勝ったらな。」

 「おい、泥棒は犯罪だぞ。」

 「分かったよ。じゃあ返してやる。」

 「うおっ!!そんな返し方があるか!!」

 持っている短剣で返したピックを弾かれた。

 「返せって言ったのは誰だよ。」

 「いや俺だけどさ。」

 「そう言いながらピックを投げるのは止めてくれないか?直撃したら負けるんだけど。しかも毒塗りを投げてんじゃねえよ。」

 初撃決着モードだからピックでもなんでも直撃すれば負けなのである。

 「それは俺のセリフだ。なんでキャッチして投げ返してきてるの?セフィロスなの?」

 「セフィロス=変態みたいな言い草はやめろ。あの人は超人だから断じて変態ではない。」

 中二っぽいところがあるがあれはおそらく実力がもの凄く高くなった結果ああなったような気配がある。

 というか練習すればできるだろこれくらい。

 あとセフィロスの冷たい視線がアハトに向いているような気がする……南無。

 「エアダッシュしている人が変態じゃない訳がないだろう。」

 「安心しろ、増えるから。」

 「ちっとも安心できねえ!!」

 「そうよそうよ!!」

 なんか外野が五月蠅いな、それじゃあ見よう見真似でやってみようか。

 あの時は天躯だったから……レイジスパイクでいけるはずだ。

 ソードスキルを誘ってバク宙で避けてる最中に構えればいけるか?

 まあモノは試しだ。

 「ちょっと俺の距離に付き合ってもらう。」

 「投げるだけじゃないぜ?」

 ファッドエッジが来るがそれを避けて……よっと。

 「がふっ。」

 レイジスパイクが決まって俺の勝利だ。

 今俺がやったのは宙返り中にソードスキルのモーションを取っただけ。

 後隙に上手く刺さってくれたようだ。

 「俺の負けか……あんな動作をするとはな。」

 「あれは賭けだ。吹き飛ばされている時でも上手く受け身を取れれば空中に逃れることだって可能だろう。夢が広がるな。」

 いずれエアバトルが開催されるかもしれないな、このSAOの中で。

 「……それはお前ら4人しかできないと思うんだが。」

 「そうでもなさそうだぞ、ほら。」

 俺が右を指さすと早速空中でソードスキルを出そうとしているアインクラッド解放軍とドラゴンナイツ・プリゲートの方々が。

 そしてそれを指導しているセフィロスとスコール、キリト。

 セフィロスが教えている姿は何か違和感があるな……。

 「ククク……体の力を抜いてバク宙を切り、そして素早く腕を動かすのだ。」

 「は、はい、セフィロスさん!!」

 「……違う、飛んでいる時の構えがきちんと出来ていない。」

 「わ、わかりました!!」

 「んー壁役はそもそも空中にいると不便じゃないか?」

 「あーやっぱりか、片手剣も使えるようにならないとダメか……。」

 「壁役が減ると困るんだが……サイズ。」

 「そ、その辺はギルドの人達と相談してくれよ?」

 「分かってるって。」

 それぞれ仲がいいようで何よりだ。

 ……ん?

 あのフードを被った人間……怪しいな。

 気配を殺しているような気がする。

 様子を窺っているようにも見えるし。

 「レンジ。」

 アハトが小声で耳打ちをしてきた。

 「ああ、頼む。」

 アハトが追ってくれるようだ、俺も着いて行こう。

 

 

 

 

 

 1時間後―――――

 

 俺達2人は森の奥にいた。

 「……誘われているな、ミスった。」

 「そう言うと思ってセフィロス、キリトに俺達の後を追ってもらっている。」

 仮に暗殺者だとすれば動きが甘い気がした。

 俺達を誘ってなんらかの不利益を与える確率が高いだろう。

 「それはたよ……甘いっ!!」

 後ろからの投剣をしっかりキャッチするアハト。

 「HA、まさか防がれるとはなあ。」

 「直前まで気が付かなかったけどな、危うく死ぬ所だった。」

 「とりあえず、名前を聞こうか。フードの男も含めて。」

 俺はとりあえず名前を聞く。

 答えてくれるとは思わないがとりあえず情報収集だ。

 今のところ敵は4人。

 セフィロス達が来れば互角。

 すでに合図となる空メッセージを送ってある。

 フードを深くかぶった男が口火を切った、意外だ。

 「名乗る名前はないと言いたいがあえて教えてやるよ~。俺はジョニー・ブラックさ。」

 銀髪の男が言う。

 「僕はカルド、美しい悲鳴を聞かせて欲しいな。」

 「私はシカ。楽しい殺し合いをさせてね♪」

 まさか女性がこっち側にいるとは……ショートヘアーで快活そうなのに、狂気に染まってしまったか。

 「Year!!俺はPoH(プー)。だが俺はお前らと戦う気はないぜ。ショータイムはまだ先だ。」

 「ヘッド、味見しちゃってもいいっすか~♪」

 「Oh、程々にしておけよ。」

 戦闘は避けられないが、2VS3ならまだなんとかなるな。

 そして全員がオレンジ、こちらがオレンジになる心配はない。

 カルドと名乗った男は細剣を取り出し、他2人は短剣を構えた。

 「アハト、お前は木を使って気配を殺しながら不意打ちしろ。俺は地上付近で相手をする。」

 アハトが頷いた。

 ここからは本当の殺し合いだ。

 「さあ、殺し合いましょ♪」

 「あっさり死なないでくれよ?美しい声を聴かせておくれ。」

 「まったく……お前らのせいで殺しができると思ったのに仲良し集団になっちまいやがって。」

 「と言う事はキバオウを煽ったのはお前か。」

 「その通りさ♪上手く行くと思ったのにあの銀髪野郎め、脅しやがって……殺してやる!!」

 返り討ちに遭うからやめと……いや、死んでくれた方が都合がいいかもしれないな。

 本来は殺すべきではないがここに刑務所なんてないだろうからあの世にご退場願うのがこの世界でのベストか。

 「しかも1層であんなに死にやがって……。」

 「おい、死にやがって……とはどういうことだ。」

 アハトが腹立だしげに口を挟む。

 「フン、ディアベルだけが死ねばよかったもののアタッカー陣が軒並み死んだせいでビギナーを煽れなかったんだよ!!」

 確かに、ディアベル1人だけならベータが悪いと言えただろうが7人も死んでいちゃ効果は薄いな。

 だがこうしていられると攻略組の不利益になるのは明らか。

 死んでもらうしかないな、今のところは。

 「とりあえずお前らが今後暗躍されると困るから死んでもらう。」

 「甘ちゃんが俺達を殺せるかな?」

 「やってみるさ。」

 そう言って5人は衝突した。




 暗殺者集団のキャラがつかめているか不安ですが……頑張ります。


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第20話

 通常運行に戻ります。
 と言いたいところですが3月は何かと忙しくなりそうなので2000文字前後の投稿になりそうです。


 まずは数を減らして2VS2に持ち込む。

 そうなるとカルドという男を撤退なり殺害なりするのが良さそうだ。

 殺害濃厚になりそうだが……贅沢は言えないか。

 細剣の方が単純に火力が高いから事故率が高そうというのもある。

 というか短剣だと細剣の相手は厳しい、長さ的にも状況的にも。

 「短剣の2人の注意を引き付けてくれ、俺は細剣を倒す。」

 「分かった。投剣に警戒を頼む。」

 「了解。」

 そう言ってお互い姿勢を下げて駆け出す。

 俺は左手にピックを持って牽制に投げる。

 防具のポケットにいくつか入れているためメニユーを開かずに取り出せるのは便利。

 一応毒を塗っているから当たれば有利に立てる。

 ポーションも1個入れてあるから5割切ったら飲む。

 「見え見えだよ。」

 やはりか、そうなると向こう二人に投げた方がまだ有効だな。

 毒を塗ったピックは3本しかないしそのピック自体そこまで入れていない。

 何も塗っていないものなら弾き練習用に入っているんだが投げてばかりもいられない。

 余計な隙を作るだけ。

 「ハハっ!!」

 「はあっ。」

 リニアーを横に逸らして突きを放つ。

 後隙による硬直に上手く刺さり、ダメージ。

 今感じたところとしてはキリトより非力でアスナより鈍足だから相手するのはあの2人よりは楽だな。

 とは言っても一筋縄では行かない。

 向こうは殺しに来ているのに俺はその覚悟があるかと言われれば怪しいのだから。

 とりあえずソードスキルを振りたい、バーチカルでもなんでもいいから。

 削れれば相手の余裕を奪って主導権を握れる。

 距離を取るのは悪手……おっと、左からピックが飛んで来た。

 きちんとキャッチして貰っておこう。

 こんな風に飛び道具を撃たれるとこっちとしては厳しいからな。

 「ほらほらぁっ!!余所見していると死んじゃうよ~♪」

 「余裕ぶっている所悪いが、削らせてもらう。」

 細剣で容赦の欠片もなく突いてくる。

 「はっ、せいっ。」

 周りから飛んで来るものも捌くとなるとなかなかチャンスがない。

 剣で弾いたり左手でキャッチしたりしているからダメージはなけれどチャンスを潰されるのは割と痛い。

 しかし後ろからグサっと来ないあたりアハトが健闘しているのだろう。

 「どうしたんだい?あれから僕に一撃も与えてないよ?周りが気になるのかい?」

 「ちょっと周りの蜂が五月蠅いものでね、フッ。」

 キャッチしたナイフをカルドに投げる。

 「くっ!!」

 さっき大口を叩いた割には嫌がるな、弾かれたが。

 ならばポケットの中の毒ピックが牽制ではなく有効打になるのか?

 「ナイフを投げるなんて君は外道だねぇ。」

 「お仲間に言ってやってくれ、俺は投げられたものを再利用しただけに過ぎない。」

 「じゃあ返してあげるよ!!」

 「おおおっ!!」

 投げられたナイフを上に弾いたまではよかったがその後のオブリークが避けられず俺もダメージ。

 後隙はスラントできっちり狩ったがガードがかろうじて間に合ってダメージを殺された。

 HPは……6687/7500だから……あれ、弱くない?

 そうか、暗殺者だから攻撃力控えめにした代わりに状態異常持ちの細剣かもしれないのか。

 となると次食らったら毒か麻痺……おそらくは麻痺になるに違いない。

 攻撃はきちんと避けて後隙を狙って狩る。

 これで行こう。

 「痛めつけてあげるよ♪」

 ダメージ自体は問題ないが状態異常はやはり怖い。

 麻痺ったらレベル差があっても死ぬ。

 「せあっ!!はっ!!」

 しばらく刺突と斬撃の攻防が続く。

 ソードスキルを当てたいが相手が警戒しているためなかなか出せない。

 ならば、これだ。

 「避けてみな。ぜあぁっ!!」

 「!!」

 俺は木を蹴って移動しながら左手でピックを投げ、数瞬置いてレイジスパイクの構えを取った。

 カルドはすでにピックを細剣で弾くモーションに入っている。

 ピックは弾かれたもののレイジスパイクが胸に入り、カルドがダウン。

 俺は足がもつれながらも着地して起き上がろうとしているカルドの顔を蹴り飛ばす。

 そして起き上がれないように首の付け根を足で踏みつける。

 (…………殺さない方がいいのだろう。だが、俺は死にたくない。)

 

 

 

 

 

 「…………………………すまない。」

 

 

 

 

 

 謝罪を呟きながら俺は剣をカルドの額に突き刺し、その体を霧消させた。

 「お前も人殺しだ……僕と同じだ……。」

 「…………ああ。」

 人殺し、か……だが今はそんなことを考えている場合ではない。

 アハトを救助に行かなくては。

 後悔なら後でいくらでも出来る。

 俺は気配のする方向へ駆けた。




 主人公は力防御敏捷のボーナスパラメータ比率は4:4:2としています。
 伸び方は初期値が5でレベルアップするごとに1ずつ強制的に上がります。
 そしてレベルアップするごとに3のボーナスパラメータが与えられてそれを自由に割り振るシステムです。
 なのでレンジの現在のステータスは暫定で現在LV30 HP7500/7500
 素で力 70 防御 70 敏捷 62 
 となっております。

 ちなみにカルドのステータスは LV23 HP4200/4200 
 素で力 61 防御 28 敏捷 61
 としました。 


 ちなみに状態異常のシステムはモンハンと似たようなシステムになっています。
 レベル差や防具の状態異常耐性によって蓄積値が変わり、一定値になると状態異常(毒とか麻痺etc)になるシステムです。


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第21話

 


 …………危険、これは危険。

 いや、別に俺のHPは危険ではない、アハトのHPが危険域になっていた。

 残り2000弱、当たりどころが悪いとソードスキル一発で持ってかれるHPだ。

 そしてこの状況でポーションが飲める訳もなし。

 「レンジか、助かった……。」

 「回避と回復に集中しろ、一旦下がれ。」

 「…………でも。」

 「死にかかってるお前を守りな……っ!!」

 「話してる暇はないよ!!」

 「1層の恨みをここで晴らしてやる!!」

 (アハトは下がったか……木の上か)

 横目で見ながら答えを返す。

 「話途中に仕掛けるなんて無粋だな……って暗殺者にデリカシーを求める事自体が間違ってるか。」

 いきなりシカが飛びかかってきたため剣で受け止めて押し返す。

 よろけた所に追撃がてら頭に回し蹴りを喰らわせる。

 が、避けられる。

 「女の子の顔を蹴ろうとするなんて最低ね!!」

 「殺し合いしてる最中にそれ言うか。」

 「有効な手段なのは認めるけど、私には効かないわよ!!」

 そう言ってシカは左に回り込んで斬り掛かって来た。

 ってジョニーは……いなさそうだ。

 となるとアハトの方に行ったか……?

 となると回復もできてないだろう。

 イエローに落ちるまでは強気に攻めるのも択に入って来るな。

 「とりあえずあの少年は死んでもらうわ。私が殺せないのは残念だけどね。」

 「それはどうだ?」

 低い声がした途端、シカに向かって木が倒れる。

 サイドステップで避けたな。

 追撃は木のせいで無理そうか。

 「私と戯れる資格はあるようだな。」

 「なに……この人……?」

 「私が戯れる。レンジ、アハトのところに行け。」

 「分かった、頼む。」

 言い終わった途端セフィロスが突っ込んでシカのヘイトを向ける。

 「ちょっと、私の獲物ーーー!!」

 「希望などありはしない。」

 あの2人は……まあ大丈夫だろう、セフィロスがそうそう倒されないだろうし。

 倒されるとしたらキリトかスコールの2人だろう。

 アハトは……あっちか。

 幸いHPはあれから防御に徹しているおかげでそう減っていない。

 不意打ちするか、ピックで。

 ってこっちに気が付いて……ナイフが飛んできてるな。

 なら。

 

 カキンッ!!

 

 ピックを投げて飛んで来たナイフの軌道を変えさせた。

 シングルシュートで投げなかったら出来なかったな。

 オビチェンと名付けよう。

 こっちを見てないなら、ピックを惜しむ必要はない、投げ切ろう。

 木の上にいるアハトとアイコンタクトを取る。

 (……行くぞ)

 「せいっ。」

 「ふっ。」

 「ぐっ、ガハッ!!!!」

 俺のピックを弾いたまではよかったがアハトのハーフムーンがクリティカル。

 大ダメは間違いないな。

 「クソッ……ここまでか……引くぞ、シカ!!」

 「銀髪がしつこくて振り切れ……きゃあぁぁぁっ!!」

 「もっと昂ぶらせろ。」

 「クッ……。」

 あ、シカを見殺しにしてジョニーが逃げて行った。

 「あの男……後で惨殺してやる……。」

 暗殺集団も仲はあまりよろしくないらしい。

 「……ジョニーを追いかけるのだろう?」

 「え、ええ……。」

 「行け。」

 「どういうことなの……?」

 「惨殺、したいのだろう?」

 「…………貸しにしておいてあげる。アンタは絶対私の手で殺すわ。」

 「フン。」 

 そう言ってシカは消えて行った。

 何故見逃したのだろう……。

 「キリトだが途中で奇襲を喰らって別れた。今から探索して拾って帰るぞ。」

 「……分かった。」

 「理由は気になるだろうが行くぞ。」

 理由は帰ってから聞くか。

 今はキリト救出が先だ。

 

 

 

 

 

 で、十数分後現場に到着したのだが、

 「…………大口叩いた割には強くないんだな。もっと苦戦するものだと思っていた。」

 普通にキリト優勢で進んでいた。

 いやこういう場面だと普通は足止めする側は死にかけだったりそうでなくても劣勢じゃないのか?

 「Oh……ガキのクセにイキがってんじゃねーよ。」

 「不意打ちがお粗末すぎて話にならないな。それでもって対人スキルも短剣を持ちながらあいつら以下と来た。」

 キリトよ、セフィロスら超人と比べてはいけない。

 セフィロスは暗殺者並みの速度で斬り掛かってくるし、アスナはそれ以上のスピードで突いて来るし、アスナ以外全員壁を使って三次元で戦っているし。

 ついでに攻略組も負けてられるかとばかりにアタッカーは練習を始めたし。

 「チッ……。」

 「おっと、帰ってきたようだな。」

 キリトがこっちに気が付いたようだ。

 「おーい、無事かキリト。」

 「ああ、2割程しか削られていない。」

 「こっちも全員無事だ。アハトが死にかかったが。」

 「逃がさずに仕留めるぞ。」

 「「「了解。」」」

 俺達は四方を囲み、PoHが逃げられないようにした。

 「さあ、どう動くんだ?殺人鬼。」

 「お前を生かして返すわけには……いかない!!」

 「はあ……。」

 「……。」

 「Shit……!!」 

 4人の視線がPoHに集中し、決死の脱出劇が始まる。




 描写はありませんが、キリト含め主人公一行はお互いに圏内戦闘をして鍛えています。
 そして……主人公が分からなくなりました。

 


 
 おまけとしてNGシーンを入れておきます。

 倒されるとしたらキリトかスコールの2人くらいだろう。
 →倒されるとしたらキリトかスコールか大剣を持った金髪のツンツン頭の3人くらいだろう。

 書いて1日経った後見直して思いました。
 これメタ編でやるべきものだ、と。
 次のメタ編は閃光VS閃光でお送りします。
 次回がメタ編と言う訳ではありませんのでご了承ください。
 これはメッセージでリクエストがあったので、見たい戦闘がありましたらどうぞ感想やメッセージにてリクエストをどうぞ。


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第22話

 UAが1万、お気に入りが30に到達しました。
 ゆっくりと上がって行くUAとお気に入りが私には似合っているのかなと思う今日この頃です。
 仕事が年末で忙しくなるため次回と次々回を6日間隔にて投稿します。
 申し訳ありません。


 「Ha、死にな!!!!」

 囲まれてもその調子を崩さないPoH。

 だが俺を狙うのはやめて欲しい、この4人の中で弱い方だから。

 「くっ、キリトを狙わなくていいのか?」

 「Year!!アイツは熟したころに殺してやる。俺がそう決めた。」

 「何故キリトを殺そうと、つっ、するんだ。」

 俺の敏捷でPoHについて行くのは厳しい。

 防ぐので手一杯。

 囲んでいるおかげでソードスキルを使ってこないのは幸いか。

 だが俺にヘイトが向いているなら好都合、キリトらが攻撃してくれれば十分だ。

 ここでは撃退すれば俺達の戦術的勝利。

 死亡させた方が今後困らなさそうだが難しいだろうな……。

 「アイツに惚れたのさ。その心、剣筋、性格すべてになァッ!!!!」

 「狂ってやがる……。」

 「「…………。」」

 アハトが呟き、キリトとセフィロスが沈黙を守っている。

 だが2人の沈黙は同じでも様子が違っていた。

 セフィロスの様子はいつも通りだがキリトはガタガタと震えていた。

 無理もないな、俺も殺人鬼にストーキングされたら冷静じゃいられない。

 「Bye、次会う時はもっと楽しい殺し様を見せてくれよ♪」

 動揺しているキリトの所を突破してPoHは消えた。

 アハトが追おうとしていたが止める。

 キリトのケアが先だ。

 カルドを殺したおかげで少しはあちらの戦力も削れただろうしこっちの戦力をある程度把握しだだろうから簡単に手出しできないはずだ。

 次俺達に襲撃が来るにしても当分先だろう。

 「とにかく戻るぞ。セフィロスはモンスターを、アハトは周りの警戒を頼む。キリト、歩けるか。」

 「…………なんとか、な。宿に戻って……寝たい気分だ。」

 「分かった。恐怖があるなら早めに吐き出せ。俺でもアハトでもアスナでもいい。大人がいいならエギルやセフィロスがいいだろう。」

 「……ありがとう。」

 10代前半の少年が殺意を向けられるのは相当厳しいだろう。

 俺でも耐えられるか分からないしな。

 「前方に2体、構えろ。」

 「了解、1体は任せた。」

 「クックック……。」

 いつも通りで安心するな、セフィロスは。

 ブレない。

 まあ攻略組でも上位にいる俺達が遅れを取るようなことはなく無事に圏内に辿りついた。

 キリトは宿に戻って心を休め、アスナはキリトの同伴。

 アハト・セフィロスの2人は狩りに、スコールは武器を強化している所を誘ったらついて来てくれた。。

 俺はリンドとキバオウの2人を呼んで暗殺者達の対策を話し合うことにした。

 幸い模擬戦で全員3層にいたためすぐ集まれた。

 

 

 

 

 

 「2人とも集まってくれて感謝する。暗殺者については他人事じゃいられないが俺達のギルドじゃ人数が少なすぎて対策が取りにくい。だから協力を頼みたい。」

 「噂には聞いたことがあるが……暗殺者なんてプレイヤーがいるとはにわかには信じがたいな。」

 「死ぬのはゴメンだからな、話だけは聞いたるわ。」

 リンドが疑い、キバオウはとりあえず話を進めろと暗に言った。

 「さっきまでプーと名乗る暗殺者4人と遭遇した。スペルはピー、オー、エイチ。こう書いてプーと読む。他2人はジョニーと名乗る男とシカと名乗る少女だ。どちらも短剣を使っていた。」

 メモ帳を取り出してPoHと書いて2人に見せた。

 「あと1人は?」

 「俺が殺害した。レベル差があったから勝てただけで同じレベルだったら俺が死んでいたかもしれない。」

 事実として俺は現実で戦闘というものをやったことがない。

 AIと人間では当然行動は違うからノーカウントだし。

 「殺したのか……一応黒鉄宮という場所に送れば捕縛できるぞ。」

 「そうなのか?」

 それは初耳だ。

 「まあ現状だと異性にセクハラして送られるか、そこまで犯罪者を連れて来て入れるかの二択しかないからあまり知られていないのも無理はないか……実際に殺されかけたとなると捕縛している余裕なんてなかったんだろう。」

 「無我夢中で戦っていたからな……。」

 「話がそれてるで。暗殺者の対策を立てなアカンやろ。ワイとしてはギルドを調査する人員が必要だと思うんや。リンドはんもあるか?」

 「なるほど……俺としては暗殺者と対峙した時の訓練がいいと思う。相手はレンジ君の所の短剣使いにお願いしたいのだが……。対価として3層の狩場の情報を1か所solitudeに提供しよう。」

 「狩場の独占もほどほどにしといてやリンドはん。」

 「分かっている。すでに1層の狩場は情報屋に売ったから安心してくれ。」

 「アハトだな、頼んでおく。人員については……今のところは俺達が妥当か。当分は怪しい人間がいたら知らせて俺達が調べるスタイルになりそうだな。それでいいか?」

 「構わない。」

 「了解やで。」

 「他に特徴としては状態異常を使ってくるようだ。ソードスキルを食らっても1000相当しか喰らわなかった。状態異常が付けられる武器って攻撃力がかなり低かったような気がするんだがどうなんだ?」

 「事実低い。2層にポイズンダガーという武器が売られていたんだが攻撃力が20だと記憶している。」

 はじまりの町で売っている短剣より低いな。

 「やはりか。状態異常に耐性のあるアクセサリを鍛冶が出来る奴に作らせた方がいいな。」

 「それならワイにあてがあるで。詐欺をしていたギルドの奴らに材料を調達させて作らせたらいいんや。確かアイツら、金足りねえとか言っとったな。」

 詐欺なんてあったのか。

 「主犯が確かネズハとか言うプレイヤーだったか?それなら俺も異存はない。値段はまとまったらまた話してくれ。」

 確か1層突破時に広告に載っていた記憶がある。

 「分かったで。レンジはんのところはどうするんや?」

 「とりあえず人数分頼む。セフィロスやキリトあたりはつけなさそうだが……

。」

 「あの2人は特に意味不明というか、チートっぽいんだよな……。」

 無理もない。

 普通は剣から斬撃は飛ばないしモンスターを一刀両断したりしない。

 「ワイも50cmだけやけど曲刀で斬撃飛ばせるようになったで。やってみればできるもんや。最初は怖かったけ実はいい人やで。謝ったら許してくれたんや。」

 土下座している様子が目に浮かぶな、キバオウが。

 「……俺も教えてもらおうかな。」

 「身に付けて損は無いぞ。金は取るらしいが。やろうとすれば飛んで来たナイフもこれで弾けるらしい。」 

 「……流石だな。」

 「まあ最終的な対策はレベリングだレベリング。」

 これに尽きる。

 「「そうだな(やな)。」」

 こうして会議は終了した。

 とりあえず3層の迷宮区に行って雑魚を微塵切りにしてたら2人から引かれた、解せぬ。

 ソードスキルと通常攻撃で確2にしたなんだが。

 キリトら3人は通常攻撃だけで確2だと言ったらレベルがおかしいと言われた。

 それは俺も思う。

 3日宿に帰ってこなかったと思ったらご飯が尽きたとか言ってまた1時間後には出かけて行ったからな。




 キリトはセフィロス達とレベリングに終始しているため詐欺にはノータッチです。
 アスナとはレベリングを通じて仲が深まっている()ので多分問題はないと思います。
 そのうちサイドストーリーで善処するかも。


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第23話

 とうとう評価バーに色が付きました、嬉しいです。
 そしてがんばります。


 会議の翌日の夜、宿に帰るとアハトとくすんだ金髪のプレイヤーがいた。

 「アハトか、今日はどうだった?」

 「ああ、スコールに頼まれたリトルネペントの花を手に入れられたし上々だった。ついでに1層の様子も後で聞いてくれ。レンジはどうだ?」

 一応俺は団長というかギルド長にあたる立場なのだが立場とか作るのが面倒なので敬語は基本無しという方針にしている。

 もっともキリトは年下らしく時々敬語が混ざるしセフィロスは誰であっても敬語を使わないので人にもよるだろう。

 前世魔王か何かだったのだろうか、セフィロスは。

 ちなみに副ギルド長はスコールになっている。

 セフィロスは喋り方に問題があって他ギルドと衝突する原因を真っ先に作るため全員一致で除外され、アハトはコミュ力が低いため辞退。

 女性であるアスナは性的な意味で襲われると取り返しがつかない。

 腹を割るという名目もあって一対一で話すこともあるためである。

 ビジネス講義取っておいてよかった。

 「俺の方は普通にレベリングしてたな。この辺の敵もクリ入れば確一取れるようになった。」

 「あー俺短剣だから確一まだ取れないんだよな……スコールに武器頼もうかな。」

 「鍛冶で体が鈍るとか言って明日と明後日レベリングに行くらしい。ついて行ったらどうだ?」

 「そうするか。あ、隣にいるのはホーク。両手斧使いでsolitudeに入りたいからギルド長に話を通さないとって思ってさ。」

 まあ確かにそうだな。

 「わかった、ちょっと下がってくれ。2人で話がしたい。」

 アハトは頷いて宿の奥に消えて行った。

 圧迫感を与えたらまずいからな。

 「ホークか。確か2層のボス戦でエギルのパーティにいたよな?」

 「は、はいっ。」

 緊張しているな……どうしたものか。

 「……落ち着いてくれ。どうしてここに入ろうと思ったんだ?解放隊とかDKB……ドラゴンナイツブリゲートとかあったしそうでなくとも2層に血盟騎士団とか夕凪の訪れやフリーダムウインドなど中堅のギルドがあったはずだが……。」

 2層だとギルド結成はできないのであくまで仮の集まりといった所だがな。

 俺のところはレベルのノルマがないとはいえ人間をやめかかった変態(キリトとセフィロス)がいるから敬遠されると思っていたのだが違うのだろうか。

 ちなみにギルド情報はアルゴ経由である。

 血盟騎士団はヒースクリフという老け気味のプレイヤーが。

 夕凪の訪れはヴィズという普通顔、悪く言えばモブ顔のプレイヤーが。

 フリーダムウインドはバッツというお調子者のプレイヤーがそれぞれ団長をやっている。

 「えっと……雰囲気が俺と合いそうだったからです……。」

 なんか最初の頃のアハトを思い出すな。

 「何故だ?あと敬語は気にしなくていい。」

 「えっと……俺って騒がしいところが苦手で……でもギルドに入らないとこの先厳しくて……他のギルドも行ってみたんですけど居心地が悪くて……それでここはどうかってリンドさんから勧められて。」

 確かに大人しい人間に解放隊やDKBは合わないかもしれないな……。

 ボス戦に参加していてこの様子なら暗殺者の仲間という可能性も低そうだ。

 演技と言う可能性も考えられなくもないがそれはそれで構わないし。

 「なるほどな、じゃあとりあえず入ってみるか?」

 「入団テストみたいなものは……?」

 「ないない。まあ強くならなきゃいけないっていうのは一応ルールとしてあるが別にフロアボス討伐を目標としている訳では無い。参加しているのはうちに戦力が集中しているからってだけ。死なないために強くなろうというのがこのギルドが存在している理由。名前もそこが由来。」

 忘れそうになるんだよな……これ。

 フロアボス戦に巻き込まれているせいで。

 「なるほど……。」

 「とりあえず入ってみて合わなかったら別なところに行けばいい。血盟騎士団とかは静かと聞くからなんならそこの団長と交渉を持とう。」

 ボス戦に参加しているなら最低レベル25はあるだろうしなかなかいいプレイヤーだと思う。

 血盟騎士団を人を選ぶとか聞くが話くらいは大丈夫だろう。

 「あ、ありがとう……。」

 「そろそろアハトが来るだろうから俺は席を外す。何かあれば部屋まで呼びに来てくれ。」

 そう言って俺は席を外す。

 年の近そうなアハトに任せた方がいいだろうか。

 ぼっちが2人いようがぼっちであると言われそうだけど。

 アハト、頼んだぞ。

 

 

 

 少しインベントリの整理作業をして下に降りたらやたら盛り上がっていた。

 「はい、二人組作ってーって、地獄だよな……。」

 「分かる、分かるぞホーク。比企谷菌がどうのこうのって……。」

 「アハト……俺も同じだ。羽瀬川菌って言われてさ……。」

 2人はどちらからともなく固い握手を交わしていた。

 「俺、比企谷八幡。よろしく。年上だからと言って敬語を使う必要はないぞ。俺達は仲間だ。」

 「俺は羽瀬川小鷹。同じ友達がいない同志、よろしく頼む。」

 「ああ、小鷹。よろしくな。」

 「……仲良くやっているようで何よりだ、ホーク。よろしく頼むぞ。」

 俺はそう呟いて部屋に戻った。

 …………ぼっちの話が悲しすぎる。

 

 

 

 翌日、俺はホークとアハトを連れて3層のフィールドでレベリング兼実力を見る事を提案した。

 ホークもこの辺ならソードスキル込みで確一に出来るようでかなりの実力を持っているようだ。

 ワールウインドやグランドブレイクを使って木ごとなぎ倒している。

 俺も同じように確一にしてアハトは木を蹴りながら立体戦闘で確三くらいで倒して行った。

 「蹴る木がなくなるだろホーク。」

 「ごめんごめん、一人で戦っていたころの癖が抜けなくてな……。」

 「……………。」

 「……………。」

 「おい、お互いの傷を抉るのはやめたらどうだ?」

 この二人は……。

 「コノハナシハヤメヨウ。」

 「ソウダナ。」

 片言になってるぞお前ら。

 

 

 

 その日の夜―――――

 「新メンバーが入った。仲良くしてくれると嬉しい。」

 「ほ、。ほーくです。よろしくおねがいします。」

 セフィロスとキリトを見てガッチガチに緊張してやがる。

 「俺はキリト、よろしくな!!」

 「セフィロスだ。共に誘おう。」

 「自重しろセフィロス。俺はスコール、よろしくな。」

 いつも通りすぎるセフィロス。

 「紹介するまでもないが俺はアハト。よろしく。」

 「……………片翼の天使と黒の剣士2人ともいるんですか?」

 「いや、黒の剣士はソロだ。今日は一緒に飯を食う約束だっただけ。」

 「ああ、勘違いされがちだが俺はソロでやっているんだ。居心地がいいからメシ一緒に食べたりレベリングを一緒にやったりしたりはしてるけどな。まあ一人の方が多い。」

 キリトは基本一人でレベリングやクエストをやっているようだ。

 黒の剣士と言われている以上その名に恥じないように努力しているのだろう。

 やりすぎだと心配になるが本人ができると言っている以上あまり強くは言わない方針だ。

 アスナはそうでもないみたいだが。

 そしてセフィロスと時々おかしなことをやっているのは見なかったことにしたい。

 「私は所属している。騒がしくて敵わない。」

 「勧誘を嫌ってかつノルマがないここにしたんだセフィロスは。俺もそうだが。」

 スコールが補足しつつ理由を話す。

 「そうなんですか。」

 死なないために作ったからな、元は。

 「フロアボスも義務じゃないからほどほどに行こう。とりあえずキリト、お前は3日寝ずにレベリングはやめろ。」

 「な、なんで知ってんだ!?」

 「知ってるも何も宿に帰ってこなかっただろ。」

 「うっ。寝なくても大丈夫と思ってさ……。」

 「やりすぎは体に毒だぞ。」

 「そうだぞキリト。これ以上solitudeの変態度を増やさないでくれ。」

 「俺のどこが変態なんだよ!!アスナにセクハラはしてない!!」

 「そういう意味じゃない。おかしな行動という意味だキリト。」

 スコールが冷静にツッコミを入れる。

 「私まで変態に見られてしまうではないか。」

 「「「お前が言うな。」」」

 アハトとスコールとキリトの声が重なる。

 剣から衝撃波を飛ばしたりフロアボスをハメて倒したりしたことを俺は覚えているぞ。

 「……………殺す。」

 あ、怒らせた。

 「助けてくれー!!!!!」

 「落ち着けセフィロス!!」

 「……………。」 

 助けを呼ぶキリトに落ち着かせようとするアハト。

 黙っているスコールの違いがなんかいい。

 「どうするんですかこれ……。」 

 「そっとしておけ、明日になればあの3人が倒れてるだろうし巻き込まれないように部屋にいたほうがいい。」

 「わ、わかった……。」

 さて、俺も寝るとするか、ふう。




 やっと小鷹(ホーク)が加入しました。
 八幡と小鷹のクロスもちょくちょく見ますがこの2人は相性が良くて質のいい作品が多いように感じます。


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第24話

 そろそろキリト黒猫団入団まで行きたいです。
 のでこの話で3層を終わらせます。
 ここのキリトは戦闘狂になっているためキズメルのイベントは速攻で終わらせています。
 キャンペーンクエストでのリンドキバオウら2人の諍いは主人公と共に暗殺者対策に走り回っていたため起きていません。
 信頼関係も少しだけ出来ています。
 


 あれから1週間、キリトがボス部屋を発見したという報告がメッセージで送られて来た。

 偵察した結果によると名前はネリウス・ジ・イビルトレントでありその場から動かないが防御が下2層のフロアボスより高い。

 それに毒を持つブレスを使うということをNPCが言っていたという。

 ので会議を開いている……のだが早速問題が。

 「今回solitudeの参加は見送る予定だ。原因は……メイン火力の2人がレベリングから帰って来ないからだ。ちなみにメッセージを送ったりと催促はすでにやったがまだ帰ってこない。反応はあるから暗殺とかではないから安心してくれ。」

 「あのバカ共はまだ追いかけっこをしているのか……。」

 「追いかけっこをしながらボス部屋を見つける……やってみ」

 「やるな。」

 「ハイ。」

 これ以上うちのギルドの変態度をバラ撒くわけにはいかない。

 ちなみに先週の件は解決済みだ。

 アハトは速攻で微塵斬りにされ、キリトは抵抗虚しく一刀両断。

 スコールは命がけで拳骨を叩き込んで自重しろと説得したのだ。

 「あの2人がいないとなると隊の振り分けが悩むな。レンジ君は参加しないのかい?」

 どうしようか……参加出来ると言えば出来るが俺はそもそも前線に出れるようなステの振り方してないしアハトも同様。

 というかフロアボスとは堂々と殴り合う事がほぼ強制なので短剣だと厳しい。

 ヘイトを一人で受け持つようなことをさせたくないし。

 「……参加できないこともないが人数の都合後衛での指揮がメインになるな。」

 「すまん、遅れた。」

 「…………。」

 戦闘バカ2人がやっと来たか。

 「遅いぞ2人共。時間くらい守ってくれ。遅れるなら連絡をしろ。」

 「ちょっと調査をしていてな。壁で飛べる人間が欲しかったんだ。」

 壁で飛ぶ……壁蹴りか。

 「暗殺者の情報と毒ブレスの情報がある。」

 「ブレスから先で頼む。」

 話題を逸らしたくないからな。

 「毒ブレスは食らうとその場で最大HPの5%が削られ、3秒ごとに最大HPの2%のダメージを食らう。効果時間は60秒だが食らったら早めに回復しないと死ぬな。」

 「奥行きはあるが高さは無い。飛んだりソードスキルで上昇すれば回避できると考えられる。」

 キリトが説明し、セフィロスが補足する。

 「なるほどな……タンクの人数を多目にしないと毒の治療が間に合わないかもしれないな。」

 「ワイのところからもタンク出さなアカンな。それぞれ2隊ずつでもええか?」

 「4隊は出し過ぎだキバオウ。長期戦になって解毒ポーションが切れたら危険だ。」

 「それもそうやな。アタッカー5隊タンカー3隊でいこうや。」

 「5:3で行こう。キリト達が帰って来たからsolitudeも入れる。余った1隊はジャンケンなんかで決めてくれ。どうしても決まらないなら俺達が抜け……。」

 「それを許すとでも?」

 「ワイは許さへんで。」

 即座に断られた。

 どんだけ頼りにしているんだこの2人。

 「とりあえず残り1隊は解放隊に譲る。次の層は俺達にくれ。」

 「落としどころはそこやろうな。まーよろしく頼むで。」

 「決まったか。それじゃあ具体的なボスの立ち回りを詰めていくぞ。」

 そうして俺達はいろいろと決めて行ったのだった。

 とりあえずキリト。

 セフィロス化しているのはやめていただきたい。

 枝を飛び回って斬り落とすとかいっそ全員アタッカーにしようとかキリト×48じゃないと無理だからな?

 セフィロスも賛成するな。

 

 

 

 そして話題は変わって暗殺者の話となり、キリトから驚くべき報告が告げられた。

 「それで暗殺者だが、すでに攻略組に紛れ込んでいる可能性がある。」

 「な……なんだって?」

 「俺もできれば信じたくはないが、どうも俺達を内輪揉めさせて分裂させようとする動きがあったらしいんだ。ソースはアルゴから。だがこれはあくまでらしい、だ。不確定。だから仲間を疑うようなことはせずにこういうことがあったという事実だけ覚えておいてくれ。」

 疑心暗鬼になったら元も子もない。

 だがある程度信じざるを得ないのがツライ。

 後手後手に回ってしまう。

 先手を取れるというのは戦いにおいて重要なのである。

 奇襲が呆れるほど有効なのは真珠湾や桶狭間の戦いで証明されている。

 「1層でキバオウが騒いだだろう。それはジョーと名乗る人物からベータは卑怯と言われて我慢できなくなったそうだ。具体的には情報量や技量の差を吹き込まれた。」

 セフィロスが解説する。

 「ここで問題となるのがジョーという人物はどうやってその情報を集められたのか、何故その情報を話す必要があったのかと言う事だ。」

 スコールが問題提起を行う。

 前者は説明が難しいが後者はなんとなく分かる。

 「アルゴというと情報屋の鼠のアルゴで合ってるよな?」

 アハトが首を傾げて聞く。

 「ああ、そうだ。俺も素材のドロップ場所や採取場所の収集で世話になってその時にどうやって情報を仕入れているのか聞いたんだ。そうするとクエストはNPCから聞いているがテクニックやモンスターのドロップはやはりプレイヤーから聞いている。この中でも鼠に会った事のないプレイヤーはいないんじゃないか?」

 俺も会ったことがある、とか女性だったよな、とかの声が聞こえる。

 「やはりか。とりあえず鼠にはジョーたる人物のさらなる調査を頼むことにする。その報告は次回のボス戦になるがレンジ、いいだろうか。」

 「了解した。とりあえず依頼金はsolitudeで出しておく。集めた方法は不明だが話した理由としてはクリアの邪魔が想定される。何故かまでは不明だがな。全員、暗殺者に警戒をしてくれ。PKしたときの金やアイテム目的ではなくただ単に殺しを楽しんでいる様子もあった。命乞いをしても無駄だ。殺すか逃げるか死ぬかしかない。」

 場がどよめいた。

 逃がさないだろうから殺すか殺されるかの実質二択しかないのだ。

 「ちなみにPKをした場合、インベントリの中にあるアイテムは殺した者の中に移動している。金も同様だ。装備していたものだけドロップアイテムの扱いになる。経験値もLVに応じて入るが微々たるものだ。」

 アイテムと金は真実だが経験値に関してだけは嘘だ。殺したカルドが稼いだ経験値が補正がかかったとはいえ入って来ているため俺のレベルは現在34だ。

 これは出来る限り殺させないようにと思ってだ。

 別に殺すこと自体は構わないのだが、それが原因で精神を病んだり暗殺者サイドに落ちて欲しくないからな……難しい所だ。

 嘘を付くのが正解とも限らない。

 「だから攻略組の中で殺しが発生したら羽振りのよくなったプレイヤーを探せばOKだな。まあその前にセフィロスに処刑されるだろうが。」

 怖えぇ……とかフロアボスに殺される方がマシとかいろいろ言われている。

 「つまらぬモノを斬らせるな。」

 「すまないなセフィロス。そのうちソロでフロアボスに行くか?」

 冗談で言ったつもりなのだが……。

 「いいだろう。」

 本気で捉えやがりました。

 「6層あたりでやってみたらどうだ?」

 「ワイも見学させてくれや。」

 コイツら本当に攻略組か?

 そしてキバオウそんなキャラか?

 

 ちなみにフロアボスはキリトとセフィロスが飛び上がって脳天?を串刺しにして終わった。

 毒ブレスはセフィロスとキリトをメインとしてアタッカー全員が剣や槍で一斉にソードスキルを放ち、その風圧で逆流させるという方法を後半から実行したところボスが逆に毒になった。

 失敗してレイドが半壊したことの方が多かったが。

 割合ダメージは変わらないらしく、ゲージがもの凄い勢いで減っていったっけ。

 1回だけしか毒にできなかったが、60秒で1本のゲージの6割5分を削れるというのはとても大きく、誰もレッドに落ちずに討伐することができたのだ。

 ちなみにLAボーナスの獲得者はセフィロス。

 盾だったのでDKBに売り飛ばしたようだ。




 ラフコフのメンバーが転移門が使えない、そのうえ効率的な狩場が使えないのに攻略組並みにレベルが高かったことについて、PKすると経験値が敵モブに比べて圧倒的に多いからではないかと仮定して設定を追加しました。
 ・PKをすると金とインベントリの中のアイテムがそのままキルしたプレイヤーの物になる。
  ・この時キルした者のインベントリが一杯になった場合は周囲にバラ撒かれる。
 ・経験値は殺された者のLVに応じて入る。
  ・この量は同じレベルの敵モブよりも圧倒的に多い。
 としています。

 茅場がこんな設定をするのかという矛盾とかが今度は生まれて来そうで怖いですが……整合性って難しい。



 ちなみにボスも一部状態異常にできる設定です。
 ただし耐性値が異常に高く、できて2回という感じです。
 本編には何も書かれていませんが効くボスと効かないボス両方いるだろう……と個人的には考えます。



 そして最後にふと思いついたおまけを投下。
 本編とは何も関係がないのであしからず。



 俺の名前は雲野生樹。
 転生者であること以外はごく普通の高校生だ。
 今日も平凡な日常を過ごすはず……だった。
 だがそれは帰宅中、空から変態が落ちて来たことによってその平凡は二度と帰ってくることはなかった……。
 「待ちかねたぞ、クラウド。」
 「……………もういいだろう(涙)」
 
 続きません
 


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黒猫団(11~24層)編
第25話


 この話より黒猫団編となります。
 ユニークスキルについて後書きにあるので拝読をお願いします。


 「久しぶりだなー素材目的でモンスター狩るの。」

 「そうだな。キリト、お前と来たらレベリングの鬼でもう60に届くかどうかだろ?」

 「まだ54だから余裕で届かねえよ。」

 笑いながらキリトは言う。

 現在最前線は21層であり、今俺達2人は11層にいた。

 キリトが武器を新調したいとスコールに頼んだところ素材が足りないと言われ、目的のものがある11層に来ていたのだ。

 ちなみにうちのギルドのレベリング速度は異常である。

 DKBが最高40で解放隊……今は解放軍か、が37だっけ。

 1週間前に報告し合った所俺が47、アハト44、スコール46、セフィロス51、ホーク49、アスナが51だっけ……平均で48かぁ……。

 原因は寝ずにレベリング、フロアボスソロ討伐、PK者の3つだ。

 これはキリト、セフィロスがやっており、付き添う形でアスナもカウントできなくもない。

 ソロ討伐と言うアホを最初にやったのは6層でのセフィロスであり、釣られる形でキリトが7層のフロアボスをソロ撃破。

 団長がソロ討伐できなきゃ話にならんと言われて8層のボスをソロ討伐させられた。

 原因というと3層のボス会議……ではなく中堅のギルドがフロアボス討伐に参加させろと喧嘩腰で言って来たせいだ。

 流石のセフィロスもあれは冗談だとか言ってたがとてもそうには聞こえなかったと言ったら……虚しいものだと珍しく反省?していた。

 ちなみにフロアボスを倒した後アイテムもぶちまけ、

 「次来たら殺す。」

 とリーダーの首に刀をあてて脅したら来なくなった。

 この事件が原因で解放隊は軍と名を変え、攻略から手を引いて中層下層の治安維持を主に活動することになった。

 キバオウは3層に1回くらい参加させてくれやとフロアボス討伐に来る。

 断る理由もないので人数が足りないアタッカーに入れているが本人はまだ攻略を諦めていないのだろう。

 ただ単にストレス解消という名目もありそうだがどちらかは俺には分からない。

 現在の攻略状況はDKBとSOL(solitudeの略、ソルと読む)の二大ギルドで占められている。 

 そして次層キリトは黒の剣士を名乗っている以上片翼の天使には負けられないと周りから言われてフロアボスをソロ討伐。

 本人はそれほどやる気はなかった模様。

 俺は完全にとばっちり。

 んでPKに関してアハトとスコールは殺さないようにしているがセフィロスと俺は殺しているからこうなっている。

 俺とか団長で後ろで走り回っているのがメインなのにPKのせいでレベルが上がるわ金は無駄に溜まるわという。

 攻略組の司令官ポジションなせいか俺はよく狙われるんだよな……どうしてこうなった。

 最初は殺さないようにしてたんだが対処に疲れたので殺し始めたら減ったから出会ったら殺すようにしたのだが、現実に戻った後が憂鬱になりそう。

 面倒だから殺すって言うのも自分ではどうかと思うのだがこんなところで死にたくない。

 追い払ったり殺害できるからマシなのかもしれないけど……最近殺すのに何も感じていないあたり心がすり減ってそう……。

 セフィロスは自分から殺しに行ってそうだ、真実は知らんが。

 ちなみにホークは一回も出会ったことがないのにこのレベルなのは両手斧のおかげ。

 ラスキルを取りやすく、LAボーナスEXPがよく入るためだ。

 フロアボスでもその火力でLAボーナスを何度か勝ち取っている。

 アスナ?旦那に付き添っていればそうなるのは火を見るより明らかだよ。

 何故旦那なのかって?

 怒る時も本気で怒ってない顔してるからなんとなく分かるってやつだ。

 多分心配が先行しているんだろうが。

 「とにかく早めに引き上げるぞ。『黒の剣士、下層を荒らし回る!!』とか書かれたらマズイ。」

 「有名人はツライぜ。」

 話している合間にも剣を振って敵を次々にポリゴンに変えていく。

 「現実でもこれは一緒だ一緒。」

 「やれやれ。」

 「キリト君?」

 後ろからキリトの名が呼ばれる。

 「うおっ!!何だアスナか……。」

 何気に失礼である。

 「何だじゃないわよ……いつもの場所にいないから心配したのよ。何をしているの?」

 「見ての通り、雑談だ。」

 「……………。」

 頭を抱えるアスナ。

 「何かまずいことでもしたのか?俺。」

 「キリト、少しは女心を察するべきだと思うぞ。」

 1から100まで察しろとは言えないが10くらいは察せると生きやすいと思うのだ。

 「女心?」

 「……今日の夜みっちり教えてやる。」

 鈍感人間がいたとは……俺でもそういう機微はなんとなくだが分かるぞ。

 高校時代付き合っていた彼女がいたからな。

 結局俺が不甲斐無いせいで別れることになってしまったが。

 「団長さん……お願いします。」

 アスナさん?そこまでかしこまることはないんですよ?

 俺だって深くは知らないんだからな?

 「期待はしないでくれよ……。」

 「??????????」

 キリトが首を傾げている。

 夜にしっかりと教えてやらねばな。

 おっと、この近くに人がいたか。

 「キリト、この辺に5人くらい人がいたから苦戦するような感じで狩らないと新聞に載るぞ。」

 「そうよキリト君。私も共犯者になるのは嫌なんだからね。」

 「ならついて来るなよ。」

 キリト、ある意味正しいがその言葉はないぞ。

 「なんでそんなこと言うのよ!!」

 アスナよ、怒るのは逆効果だぞ。

 キリトは全く気が付いていないことに気が付こう。

 「アスナが先に言ったんだろ!!」

 「なによ!!」

 「なんだと!!」

 「夫婦ケンカはそこまでにしろ。あの5人パーティ、苦戦しているようだ。どうする?」

 横を見ると7体くらいのモンスターに襲われている。

 ……壁が壁の仕事をしていないように見える。

 「「助けに入る(わ)。」」

 「「って夫婦じゃない(わよ)っ!!!!!」」

 仲がいいことは何より、俺は最強夫婦から逃げ出しつつ5人を助けるという難関ミッションに挑戦させられることになった。

 拒否権は無い模様。

 まあいい、行きますか。




 主人公フロアボスソロ討伐ですがこのSSでは書きません。
 変化場所が少なく、延々同じ風景しか書けないためです。
 言うならテイルズオブディスティニーのバルバトスをまわれロンドでハメているような感じですので……。




 ユニークスキルですが数は原作通り10種類とし、1人一種類しか習得できず一種類につき1人しか習得できないとします。
 取得者が死亡した場合、そのスキルは誰も新しく取得できません。

 そして解放時期ですが90層突破時点ではなく25層突破時点で解放フラグが立ち、条件を満たしたプレイヤーから順に習得できる設定とします。
 その条件はネタバレとなるため詳しくは書けませんが難関クエストをクリアする、何か強い意志を持つと様々です。
 この設定にした理由としてはユニークスキル10種類全部登場させて見せ場を作りたいからです。
 
 また、原作では「暗黒剣」「無限槍」「手裏剣術」「抜刀術」があると作者が話していましたが申し訳ありません。
 残り8つはすべて私が考えたオリジナルのスキルとさせて頂きます。
 理由としては他者が考えたスキル名ではイメージが浮かばないからです。
 また、本編に出て来ないので改変が効くというのもありますが。

 種類に関しては習得するまでお楽しみです。

 二刀流と神聖剣は原作通りとなります。
 ただ神聖剣が銀髪の変態によって(笑)になりそうなのが心配の種です。


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第26話

 「2人は敵を素早く殲滅させろ、俺が壁になる。」

 俺は全力疾走しながら言う。

 「……後で覚悟しとけよっ!!」

 「覚悟しなさいよね!!」

 怖い怖い。

 俺が一番先に着きそうでヘイトを向けないといけないから……ソードスキルでまとめて吹き飛ばすか。

 となると……ラウンドスラッシュが妥当か。

 「はあっ!!」

 俺は敵のど真ん中に飛び込んでソードスキルを繰り出す。

 このスキルは回転斬りを繰り出して全方位を切り払う。

 だから集団戦に向いている。

 「ここは俺達が引き受ける。下がれ。」

 「あんたたちは……。」

 「いいから下がれ。」

 苦戦しているのにいられても邪魔なだけだ。

 続いてアスナが斬り払ったスペースに飛び込んでリニアーやオブリークを繰り出して確実に仕留める。

 虫型だから頭を的確に突いて仕留めたい。

 おっと、右から来るな。

 後ろがいるため回避は不可能。

 ならば、弾く。

 「ふっ。」

 バーチカル・アークで弾きつつ返しを当て、スラントで追撃をかけて撃破。

 次は……前か。

 とは言っても後2体だからキリト達が倒してしまうだろうな。

 

 

 

 ほどなく戦闘が終わり、俺達は自己紹介をすることにした。

 「た、助けてくれてありがとうございます。月夜の黒猫団のリーダーのケイタです。みんな同じ部活に入っていてそれでここでもギルドを組んでいるんです。」

 「副リーダーのテツオだ。」

 「ササマルだ、よろしくな。」

 「ダッカーだぜ。」

 「……サチ、です。」

 黒猫団の自己紹介が終わったので今度は俺達か。

 「キリトだ。ソロでやってる。今日はたまたま知り合いと素材集めに来てたんだ。」

 「私はアスナ。キリト君の付き添いよ。私はギルドに所属しているわ。」

 「レンジだ。ギルド、solitudeの団長を務めている。」

 嘘をつこうとも思ったがバレた時が面倒なのでつかないことにした。

 理由と言ってもなんとなくくらいしか思いつかなかったし。

 「solitude……?確か二大攻略ギルドのひとつでしたよね?少人数でありながらその実力はDDAと並んでいる……?」

 「そうだ、キリトは入ってないけどうちと組むことが多い。」

 その中でも年が近いアハトと組むことが多い気がする。

 「強い人がいるならぜひ入って欲しかったんだけど……攻略組を目指しててそのことを知りたいので。」

 「キリト、入ってみたらどうだ?あと攻略組のことは夜話そう。」

 変態レベルアッパーもたまには休んで欲しいのでそう提案を出す。

 「えっ……?」

 「そうね、入ってみるのもいいんじゃないかしら?キリト君ずっと戦いばっかりだから下層でしばらくゆっくりするのもいいと思うわ。というわけで団長、しばらく休みをもらいたいの。」

 「いいぞ。」

 「あっさりだなー。」

 だってうちのギルドはフリーダムを信条としてますから。

 ただセフィロス、一人でフロアボス討伐はダメだ。

 「素材集めの続きをしたいんだがいいか?」

 キリトよ、そんなに戦いたいか。

 「あのねキリト君……。」

 「こちらからもお願いしたい。戦闘を見せてもらいたいんだ。」

 ケイタがそう提案する。

 危機に陥ったのだから黒猫団達のメンバーはもう休むのかと考えていた。

 引き際というのを分かっているのだろうか……。

 「いいぜ、ついて来な。」

 「私も行くわ。」

 「俺も行こう。ケイタ、自分とギルドのメンバーの身まで俺達は面倒見切れないからその辺頼むぞ。」

 「分かりました。」

 俺達はキリト無双を見ながら戦闘指導を行った。

 

 

 

 その日の夜 宿にて―――――

 「黒猫団の戦いぶり、どう思う。」

 「話にならないな。」

 「私も同じね……。」

 一言でまとめよう、黒猫団の戦闘力はダメダメだ。

 立ち回りが1層の俺より酷い気がするのだが……。

 「とりあえず話し合おう。時間もらった訳だしな。」

 ツッコミ所が多すぎるためまとめる時間を頼んだのだ。

 まずソードスキルを効率的に使えていない。

 基本ソードスキルは不意打ちを除いて敵の攻撃の後隙に差し込んで行くのだが考えもせずに繰り出している。

 同じ敵にソードスキルを繰り出したりメイス装備なのに胴体を狙ったりとツッコミが追い付かん。

 だがこれは1人を除いてなんとかなる。

 「次なんかあるか?俺は装備が貧弱そうに見えたんだが。」

 「有り余る金を持っていたキリトと一緒にするな。」

 「そうよ。」

 「これは聞いてみよう。次。」

 「ステータスとかパッシブスキルがあることを理解しているか怪しい気がする。」

 ステータスはHP力防御敏捷のことで、パッシブスキルとは常時発動するスキルである。

 有名なものだと索敵・隠密とかがある。

 索敵はモンスターや人に気付く距離が延び、隠密は気づかれる距離を短くするスキルだ。

 ただ隠密は服装や本人のセンスも影響するがな。

 例えば森で緑っぽい服を着ると隠密が上昇し、逆に赤なんかを着ていると発見されやすくなる。

 マイナー所だとバトルヒーリング・アドレナリン・アヴェンジャーが今のところ発見されており、条件も開示されている。

 条件が厳しく、あまり会得するプレイヤーはいないが。

 バトルヒーリングは簡単に言うと自動回復スキルだ。

 会得条件はイエロー以下に落ちた状態でポーションを飲んで戦闘を行い、ポーションの回復中一度もグリーンに復帰しないことを10回ほど繰り返すと会得できるらしい。

 キリト曰く、他にも条件があるようだ。

 セフィロスと俺が習得できたのでおそらくは武器の熟練度が濃厚だろう。

 ちなみに回復量は20秒ごとに最大HPの0.5%と焼け石に水だがこれは熟練度が低いからであり、そのうち期待できる回復量になるだろう。

 アドレナリンはHPがレッドの時に自動発動するスキルで全能力が上昇し、LV×0.5%で致死ダメージを受けても1で耐えると説明文に書いてあった。誰も試さなかったがな。

 これはリンドが会得したものを情報屋に流して共有し、現在キリトとセフィロスが会得しようとしている。

 条件はおそらくHPがレッドになったそのエリア内で敵を100体連続で倒すことである。

 キリトが楽しようとしてレッドになって1層で無双したが会得できなかったためおそらくこんな感じだろうと推測している。

 アヴェンジャーは中堅ギルドの1人がPoHの手下と思われるプレイヤーと遭遇した時に会得したらしいスキルである。

 条件はオレンジプレイヤーにパーティーメンバーを殺されう、その場で殺し返す(復讐)ことが濃厚とみられている。

 効果はオレンジプレイヤーに対する攻撃力が1.5倍になり、受けるダメージを0.75倍にするとのこと。

 「索敵と隠密はパーティーに1人は必須、できれば2人欲しいくらいには重要だよなー。」

 「そうね……。」

 「うちのメンバーは全員会得済みだ。」

 言おうと思ったら全員会得していたことには少し驚いた。

 ソロかペアでレベリングすることが多い都合かもしれないが。

 「それくらい重要だよな……次行こうぜ。」

 「スイッチができていないように見えるわね。」

 「ように、じゃなくできてないんだ完全に。」

 後隙フォローとか全然やってないからな。

 「ソードスキルが上手く使えていない、理解していないからスイッチの大切さがわかっていないんだろうな。」

 「ソロでやっているお前が言うか……。」

 「お、俺だってパーティー組んでる時はわかってるって……。」

 「じーーーーー。」

 「善処するからそう睨むなってアスナ。」

 「だって……。」

 たぶん善処しないな、キリト。

 「……次行くぞ。壁が壁をしていない。」

 「確かに。サチって子が特に気になった。後ろで怯えているならまだしも前で怯えていると盾を持っていようが死ぬぞ。」

 死にやすさとしてレベルが同じなら一番死にやすいのが軽装のアタッカー(短剣や盾無し片手剣持ち)、続いて重装アタッカー(槍や両手武器持ち)で一番死ににくいのが壁役(盾持ち片手剣など)であるが……壁役といえど盾で攻撃をきちんと防がなければダメージは重装備アタッカーとほぼ同じになってしまうのだ。

 「ああ、死ぬ。俺の見立てだとそう遠くない未来だ。」

 「そ、そこまで言う?」

 キリトが断定し、アスナが信じがたいような声をあげる。

 「すまないが命がかかっているんだ。戦場では冷静さを失った者から死んでいく……1層だって、15層だってそうだっただろう?」

 15層でDKBから1人だけ死者が出てしまったのだ。

 壁役だったのだがクリティカルを食らってレッドに落ち、パニックになった所に止めのソードスキルが入ってしまったのだ。

 「それはそうだけど……。」

 「サチという少女はスコールのように鍛冶や何かを覚えてもらうのがベストだな。出来なくても槍のままがいい。というか男達がヘタレすぎる。」

 「積極的に壁になれ、とは言わないけど怯える少女を盾にするって……アスナ的にはナシか、やっぱり。」

 「当たり前じゃない。堂々と立ち向かって欲しいわけじゃないけど……、あとキリト君?あなたは堂々と立ち向かいすぎだから、自重してね?」

 フロアボス戦で誰かがピンチになった時、たまにキリトが壁になっているからこう言ったのだろう。

 一番多いのはアハトだが。

 「死なない程度に気を付けるさ。」

 「まあ明日付き合うとすれば俺が壁になる。とりあえずはこんな内容でいいか?」

 「そうね、そろそろ行きましょ。」

 「ああ。」

 ……先が激しく不安だ。




 バトルヒーリングの習得条件を少々変えています。



 ・超高レベル戦闘スキルの『バトルヒーリング』だと思われる――けれども、あれはスキルを上昇させるのに、戦闘で大ダメージを受けつづける必要があるので、現実問題として修行するのは不可能と言われている

 とあることから具体的かつ実現可能な会得条件を以下に記します。
 ・まずポーションを飲んだ時のHPはイエローまたはレッドであること。
  ・その受けたダメージはモンスターまたはモンスターから与えられた毒や貫通ダメージが80%以上であること。
 ・ポーションを飲むと100秒の間1秒ごとに最大HPの1%を回復し続けるがその間一度もHPゲージをグリーンにしないこと。
 ・これを10回繰り返す事。
 
 としています。
 スキルの熟練度を上げるにはバトルヒーリングでの回復量が一定に達すると10ずつ上がって行くシステムに設定しています。


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第27話

 これまでレンジ主観で話が進んできましたがサチやキリトの心理描写を書きたいのでキリト主観のシーンが入ります。

 サチの使用武器ですが、ミスです。
 原作を読み落としていました。
 キリトと出会った時点ではまだ両手槍でした。


 時は星が瞬く夜、俺達8人は宿で話をしていた。

 「整理する時間を取ってくれてありがとう。アドバイスを整理するから順次話していく。」

 「単刀直入に言う。黒猫団が攻略組に上がるのは難しい。」

 まあ不可能ではないがな。

 「そうですか……。」

 「スキルの使い方が甘かったり、装備やレベルが足りないのはなんとかなる。スキルやステータスもまあ情報が出回ればいけるだろうが……。」

 「致命的なものがあるんですか?」

 「ああ、サチだ。」

 「……私?」

 「このままだと死ぬ。間違いなく。」

 「どういうことだよ!!勝手な事を言わないでくれ!!」

 「落ち着けテツオっ。……それはどういうことですか?」

 「……戦う事に重度の怯え、恐怖が見受けられる。その原因はデスゲームになったこと、つまり死そのものだと推測できる。」

 俺が推測を述べる。

 「死、ですか?」

 俺は黙って首を縦に振る。

 「そんなこと……。」

 「そんなこと……そんなことで済ませるなぁっ!!!!」

 キリトが叫ぶ。

 1層のことを思い出したのだろう。

 俺も死をそんなこと扱いしたくないな。

 「……っク、すまない……。続けてくれ。」

 あの時の蒼片がまだ消えないのだろう。

 だから無茶なレベリング、ソロ討伐がやめられない。

 一歩間違えれば死ぬようなレベリングスポットを3日連続寝ずに回れるのもそれだろう。

 万が一他のプレイヤーが間違えても助けられるように。

 死なせないように。

 「今のは……?」

 どう説明したものか……。

 「………………人が死ぬのを見たくないんだ、俺達は。」

 俺は思った事そのままを言う。

 「でもほとんどのプレイヤーの死に目には立ち会えないんじゃ……?」

 「1層に生命の碑があるだろう。あれの横線が増えるたびに俺達は考えてしまう。」

 救える方法はあったのではないか、死ぬにはまだ早い、とかな。

 俺がやむを得ず殺してしまったプレイヤーもデスゲームになってさえいなければまっとうな人間になっていたのではないかとも考えてしまう。

 ただしPoH、お前だけは殺す。

 根拠が薄いが何か大事を起こしそうな気がするのだ。

 その根拠も攻略組が狙われるというものでしかないから杞憂で終わってくれると助かる。

 「だからこれだけ言っておく。命を大切にしろ。自分のだけじゃなく、周りの友人の命もな。攻略なんてやるものじゃない。」

 命を張った賭けに100回勝たなければ出られない。

 失敗すれば死ぬ。

 分が悪すぎるのだ。

 「どうしても攻略組に入りたいなら止めはしないが。こっちとしても2つしか主力ギルドがないから戦力が欲しいところだが……無理をする必要はない。」

 現在攻略組と言われる人数はSOLとDOA合計で70人弱。

 キバオウら解放軍もたまに来るから弱が強になったりもするか。

 それで攻略組候補となっているギルドが6つで約250人が準攻略組と言われている。

 んで……攻略組に入れるかどうかの話だったな。

 「実力的にサチ以外の4人はまあ経験を積んで装備を整えれば攻略組に入るのは不可能ではない。センスがあるかどうかまでは分からないがな。装備はどうしている?」

 「えーっと……その……ギルドホーム購入を考えてて装備を後回しにしているんですよね……。」

 「サチさんのことを考えるとホームが優先よね、団長。」

 「そうだな……安心できる場所作るというのは重要だ。ちょっと前に睡眠PK未遂事件があったからな。」

 ちなみにこの事件、最初に狙われたのがたまたま下層に来ていた攻略組のメンバーだったため未遂で済んだのだ。

 だが被害者は睡眠障害を患ってしまったようだが。

 「もう少しで貯まるのでそれを買ったら装備を整えます。」

 「そうした方がいいわね。予算が許すならプレイヤーメイドの防具もいいと思うわ。特殊な効果が付く場合があるのよ。失敗作でよければあるわよ。」

 能力値アップとか単純に有効なものもあれば歩行速度1.1倍とか微妙なものもあればソードスキルの後隙時間を0.8倍にとか壊れてるものと様々な能力がつくのだ。

 失敗作というのは要求値に届かなかったり特殊能力が微妙なものだったりというモノで高く売れないし装備できないしという処理に悩む。

 「あ、ありがとうございます!!」

 それでも中層プレイヤーからすれば喉から手が出るほど欲しい性能ではあるのだがな。

 11層での店売り最強が+68でスコール作の失敗防具が+130前後と考えると相当違う。

 特殊能力もあるからモノによれば+150前後にまでなる。

 ダメージ5%カットとかどう考えても強い。

 「それでもサチには戦闘させない方がいい。お前らはか弱い少女を壁にして攻略組に入る気か?」

 「……………。」

 「…………………。」

 「………………………。」

 「……………………………。」

 誰か一人くらい反論してくれよ……やりにくいじゃねえか。

 「と、言う訳でサチは後方支援に置いておくことを勧める。ポーション製作や裁縫などが会得しているプレイヤーが少ないぞ。」

 プレイヤーが作ると少量とはいえ一定量を即座に回復するため緊急時の使用により優れているのだ。

 裁縫は軽装の防具や普段着を作るスキルであり、キリトが猛烈な勢いで熟練度を上げている。

 「……今一度、5人で考え直してみます。」

 「それがいい。他にも攻略組に入りたいと言っているギルドがあるんだがレベルや装備が足りてないから揃えてからまた来てくれって言っているくらいだ。よく話し合ってくれ」

 俺達は翌日最前線に戻ったがキリトは残ると言い、数日後黒猫団に入るからフロアボス攻略を休ませて欲しいとメッセージが来た。

 俺はそれに許可を出した。

 最近のキリトは頑張りすぎだし、下層でゆっくりやらせた方がいいだろうな。

 

 

 

 ちなみに攻略組でもキリト休養に対して反対意見はゼロだった。

 変態剣士がとうとう休んだ!!

 とか言われる始末だった。

 実際外に漏れたら騒ぎになるため黒の剣士、ペースを落とすという感じにしたが。




 次話からキリト視点になります。
 主人公がますます空気に……。


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第28話

 キリト主観で話が進みます。

 サチの性格がキャラページや他の方のSSを読んでも把握できなかったため原作を購入しました。
 しかし原作を読んでも今一つ理解が進みません。
 読者様のイメージとブレてたら申し訳ありません。
 修正します。



 俺はキリト、自分で言うのもなんだが攻略組の双璧の1人だ。

 もう1人は誰かって?セフィロスに決まってるだろ。

 あの日、レンジ達は上に帰ったが俺はここ、黒猫団にとどまった。

 それから2月が経った。

 攻略組には悪いことをしたな……特にレンジには。

 あの人がいてくれたから攻略組が荒れずに済んだんだな。

 今までソロで好き勝手やって、かと言ってSOLに何も貢献することもなく防具の製作をスコールに頼んだりアハトと一緒にレベリングしたりとたくさん迷惑をかけたのに何一つ返せていない。

 俺のやっていることは……きっと、いや絶対自己満足だ、これは。

 でも俺は目の前にいるケイタ達を放ってフロアボスを攻略する気にはなれなかった。

 そして俺がいなくなったせいか多少ペースは落ちたものの攻略は進んでいる。

 時々様子を知らせるメッセージがSOLのメンバーから来るのもありがたい限りだ。

 アスナは今日こんなことがあったよ、というほんわかな内容だがセフィロスはオレンジギルドを血祭りにあげたとかフロアボスを打ち上げてハメたとか物騒な内容を送ってくる。

 レンジは会議の内容が主で専門性の高い論文を読んでいるような感じがする。

 実際の論文がどんな感じかは分からないけどな。

 でも生きて、元気でやってくれることがこんなに嬉しいことはない。

 俺はこの2月で黒猫団のメンバーに実技知識問わず戦うために役立つものを叩き込んだ。

 基本の立ち回りを始め、スイッチのやり方やソードスキルの運用方法。

 スキルの種類や会得方法、ステータスの意味。

 俺が覚えていてかつ基本的なことを徹底的に教えた。

 レベリングは、半月許可しなかった。

 俺を敵に見立て、完璧にできるようにするまで圏外に出す気がなかったからだ。

 しかし訓練を受けたケイタ達は見違えるように強くなった。

 だが……前衛は見つからなかった。

 結局俺とテツオが前衛を務めケイタら4人が後衛に回っていた。

 サチを盾持ち片手剣にしようと4人は言ったが俺が断固反対して両手槍を使わせている。

 「今日も楽勝だったな!!」

 テツオが口火を切る。

 「これなら攻略組入りも夢じゃない。」

 ケイタがそう返す。

 「…………無理だな。」

 水を差すようで悪いとは思ったがそう言わざるを得ない。

 「どうしてだよ!!」

 「……俺が前を支えている時点で無理だ。俺はいつまでもここにはいれない。」

 ……時期的にあと1月が限界だろう。

 今が5月27日。現に7月から復帰するとすでに伝えてしまっている。

 「攻略組に戻らないといけないのか……少しでもキリトに追いつけるよう頑張るよ。サチが前を支えてくれると助かるんだけどな。」

 「……そうか。」

 俺は複雑な気分だった。

 死なすまいと教えればより死地に近づく。

 今やっていることは正しいのか?

 それじゃあ何もせずに放っておくのが正しかったのか?

 どうすればいい?

 何が正しい?

 頭が、痛い。

 「……すまない、部屋に戻らせてもらう。」

 「「「お疲れ―。」」」 

 疲れた、今日は寝よう。

 もう考えたくない。

 

 

 

 

 

 

 とは行かないのが世の常。

 サチが消えたとケイタに言われ、探すことになった。

 反応がないから迷宮区だろうと全員が駆けだしてしまい、一応俺はフィールドの探知不能な場所を探すと言って宿屋に戻り追跡スキルを発動、追跡を開始した。

 サチの部屋の前から足跡を辿った結果、主町区の外れにある水路の入り口で足跡は消えていた。

 下が水場のせいだな。

 ここからは索敵スキルの出番か。

 俺は目を閉じて集中する。

 水音がよりそれを際立たせる。

 (……こっちか。)

 俺は水路を入って右に曲がった。

 (………………。)

 しばらく道なり、左、右、真っ直ぐ、左。

 入り組んだ水路を迷わずに進む。

 (……この辺にいるはずだが。)

 辺りを見回すと黒い塊が動くのが見えた。

 「…………サチ?」

 「キリト?……どうしてこんなところが判ったの?」

 隠密性を持つマントを被っていたから聞いたのか。

 「……索敵スキルを使ったんだ。上げてるから隠密を突破できたんだ。」

 追跡スキルを使ったとか言うとストーカー扱いされそうだから索敵スキルでごまかした。

 黒の剣士、ストーカー行為!?とかと新聞に載るのは嫌すぎる。

 「そうなんだ……。」

 そう言ったきり、沈黙が続いた。

 俺は迷った挙句ありきたりな言葉を紡ぐ。

 「……みんな心配してるよ。迷宮区に探しに行った。早く帰ろう。」

 やはり言葉が返って来ない。

 まあこんなことで解決するようなら最初から宿出なんてしないか……。

 言葉をかけて1分が経ち、2分が経つ。

 まだサチは言葉を発しない。

 (落ち着け……話すのを待つんだ……。)

 俺はサチが出て行った理由を何も知らない。

 推測もできない。

 だから俺はサチの隣に座って待つ。

 5分……体感時間は30分くらいだろうか、サチが言葉を発した。

 「ねえ、キリト。一緒にどっか逃げよ。」

 「逃げる……か。」

 俺は……逃げてばかりだ。

 死から……攻略から……周りが死ぬ恐怖から……。

 「俺も……逃げたいよ。」

 「……じゃあ。」

 「でもさ……逃げてたら……俺はダメなんだ。だって俺は『黒の剣士』だから。」

 その二つ名が俺をどうしようもなく縛る。

 だから俺はひたすら剣を振る事しか出来ない。

 「俺は、死から……攻略から……周りが死ぬ恐怖から逃げたい。サチは……何から逃げたい?」

 俺はもう、逃げられない。

 だけどキミは……逃げられる。

 はじまりの町に、まだ。

 「私は……この町から、黒猫団のみんなから、モンスターから、……SAOから。」

 前3つは逃げられるけど……最後のは、逃げられない。

 さっき言ったことと合わせると……。

 「俺と、心中したいってことか?」

 何故かその言葉が澱みなく出て来た。

 「……私に死ぬ度胸があれば、そうしたのかもしれないね。」

 悲しげに笑う。

 「サチは……死にたいのか?」

 胸が、頭が、いたい。

 いたいいたいいたいいたいいたい。

 「……………死にたくない。死ぬのが怖いの……。戦いたく…………ないの。」

 痛みで言葉が上手く聞き取れない。

 くるしい。

 でも、決してそれを悟らせは、しない。

 目の前の女の子を、死なせは、しない。

 「眠れないの。それで考えるの。なんでこんなことになったんだろうって。なんでゲームから出られないの?なんでゲームで死ななきゃならないの?なんで茅場って人は何を考えてこんなことをしたの?こんなことに……なんの…………いみ………………が………………。」

 ……俺も聞きたい、聞きたいよ。

 なんでこんなことになったんだろう。

 なんでゲームから出られないんだろう。

 なんで死と隣り合わせにいなきゃならないんだろう。

 なんで茅場はデスゲームにしたのだろう。

 こんなことになんの意味があるのだろう。

 俺には分からないよ、サチ。

 

 

 

 

 

 ごめんな。

 

 

 

 

 

 女の子が涙を流して泣いている。

 なのに俺は……何もできないのか。

 またか、またなの……いや、できることはまだあった。

 「……逃げよう、サチ。俺だけではキミを守れない。だから、俺と一緒に来てくれ。守ってくれる人に心当たりがある。」

 俺は……無力だ。

 「それは、誰なの?」

 「solitudeという超一流のプレイヤー達が所属しているギルドだ。そこに保護を頼む。俺はそこの団長と親しいから頼めばなんとかしてくれると思う。」

 「本当に?私は死なない?現実に戻れるの?」

 俺はサチの涙目をしっかりと見て言う。

 「ああ、死なない。俺がなんとかする。」

 土下座と200万弱のコルでなんとかなるだろうか……。

 そう考えていたら不思議と胸と頭の痛みは治まっていた。

 サチはパーティとギルドの脱退をして現在の最前線である25層に向かった。



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25層
第29話


 レンジsideに戻ります。
 サチ≒伊13と考えると割と筆が進みました。
 


 今日のフロアボス会議は不穏だったな。

 珍しくキバオウが来たと思ったら軍の末端が暴走気味な気がするから力を貸してもらうことがあるやもと言って来た。

 そのせいで会議があまり進まずまた明日会議を開くことになった。

 攻略組は基本的に迷宮区の探索しか興味ないからな……DDAのサブは装備を整えるためにフィールドを探索したりしているようだが。

 キリトはマッピング兼レベリングだけしているようだ。

 全速力で駆け抜けてすれ違いの一閃を浴びせて倒す。

 これから来るプレイヤーのためと言っていたからアイツらしいと言えばらしいか。

 「25層のフロアボス……強敵なのだろうか。」

 スコールに話しかける。

 ちなみにこの場にはスコールしかいない。

 アスナはすでに寝ているしセフィロスは……レベリングだろう。

 アハトとホークは一緒に遅い夕ご飯を食べている。

 「10層20層のフロアボスに目立った強さはなかった。10というキリのいい層であるにもかかわらずだ。この層で1/4が攻略完了するとなると茅場が強敵を配置して実力を見てくるだろうな。ここで出て来ないなら1/3が攻略完了となる33層だろう。」

 20層は多少時間がかかったがまあ時間がかかったというだけであって危険という危険はなかったな。

 死者も出ていない。

 「となるとキリトを呼び戻すべきか……。」

 「そうだな、本人が応じるかは別として呼び戻しておいた方がいいだろう。」 

 できることはやっておいた方がいい。

 「メッセージを……ん?キリトから来てるな。今25層のどこにいる?だとさ。」

 「…………。」

 とりあえず俺は主町区のホールにいるとメッセージを返し、到着を待つことにした。

 

 

 

 

 

 20分後、キリトが来た。

 「頼みがあるんだ。」

 来た途端、キリトがそう切り出す。

 「頼みと言うのはそこにいる女の子のことか?」

 「ああ……頼む!!サチを保護してくれ!!」

 そう言うとキリトは土下座をした。

 「頭を上げてくれキリト!!」

 いきなりやられても困惑するというかなんというか……とにかく戸惑う。

 「キリト……?」

 スコールも俺と同じ様子だ。

 「理由を話してくれ理由を。考えるから。」

 人道的には保護すべきなんだが……金だって有限だ。

 おいそれと連れて来られても養えないしスパイの可能性だってあるし。

 「……理由は、俺の、わがままだ。」

 「我が儘、か。」

 ……その一面もあるだろうが、少女の赤い目を見ていればなんとなくは分かる。

 「我が儘。理由はそれだけか?」

 スコールの視線がキリトを射抜く。

 「っ……!!それ、だけだ。」

 ………………どうしたものか。

 「分かった。3日だけホールの一室を貸す。それ以降はサチ……だったか、自分で考えてくれ。」

 名前を思い出すのに夢中になってつい呼び捨てにしてしまった。

 「ありがとう……!!」

 「ありがとう……ございます。」

 「……キリト、その子のことをしっかり見てやるんだぞ。」

 「……レンジさん、そのことで少し相談が……。」

 たまにさん付けする時があるがその時はだいたい頼みごとをする時だ。

 「分かった。部屋に行こう。お茶を出す。」

 ボス会議は今日始まる前にまとめておいたから大丈夫だろう。

 そしてお茶にスキルが適用されなくてよかった。

 「サチさんも来てくれ。まあ無理に来なくて構わないが。」

 「は、はい。」

 

 

 

 

 

 「お茶だ。いろいろあったんだろうしまずは落ち着きな。」

 「すみません、いただきます。」

 「い、いただきます……。」

 こんなこともあろうかと茶葉は高級なものを用意している。

 アハト以外からは好評だ。

 アハトはもの凄く甘いコーヒーを好んで飲んでいるようだ。

 「お、美味しいですね。」

 サチが微笑みを浮かべて言う。

 「高いもの使ってるしな。さて、本題に入ろう。相談とはなんだ、キリト。」

 「サチを……できればSOLに入れて欲しい。戦闘のプロは無理だろうけど、鍛冶や裁縫のプロなら戦わなくてもできるはずだから、そこでなんとか……してくれませんか。」

 解釈が難しいな。

 「……背景が見えないぞキリト。えーっと……。戦いたくないから後方支援に入れて欲しいってことか?」

 「そういうことだ……です。」

 「無理に敬語を使わなくていい。……まあ後方支援は募集してるっちゃしているから出来なくもないが……。」

 正直入れてもいい。

 後衛が不足気味だからな。

 俺達がパーティを組んだ場合の役割はセフィロスとホークとアスナがアタッカー、アハトが遊撃手というか避ける壁。

 スコールはアタッカーよりタンクの役割が強いか。

 俺が後ろで指揮を出す兼スイッチ役だ。

 ちなみに指揮は全員できるように訓練をした。

 アハトが一番覚えるのに苦戦し、逆にスコールは何もしなくても普通に指示を出していた。

 だが、本人からの言葉を聞いていない。

 ならばやることはひとつ。

 「サチさん。何故戦いたくないんだい?」

 俺は出来る限り口角を上げて笑顔を作って問う。

 無表情よりはマシ……のはず。

 「………………。」

 やはり黙るか……だが今は待ちの時、本人が話すまで待とう。

 「そ……」

 俺はキリトを睨み、そしてゆっくり首を横に振る。

 「「「……………。」」」

 苔が生えるほど永い時間、音がしなかった。

 「死にたく、ないんです。」

 心からの言葉が俺を撃つ。

 「分かった、サチさん。solitudeに是非入ってくれ。」

 「あ、ありがとうございます……。」

 「あ、ありがとうレンジさん!!」

 「気にするな。さて、今日はもう遅いから寝た方がいい。キリト、今時間をくれ。攻略含めて話し合う必要がある。」

 気が付いたら12時を回っていた。

 んで詳しい事情は……明日でいいか。

 「分かった。」

 「お休み、サチさん。」

 「あの……。」

 「どうした?」

 「キリトさんと一緒にいて……いいですか?」

 詳しい事情を聞こうと思ったんだが……。

 「…………キミがここに来た事情とか込み入ったことを話すけど、それでもいいなら構わないが……あまりオススメはしないぞ。」

 「……大丈夫、です。」

 そう言ってサチはキリトの右腕にそっと抱き着いた。

 「……この直前、何があった?」

 「……サチが行方不明になって探しに行ったんだ。それで、死にたくないって、戦いたくないって、そう言ったんだ。だからレンジなら何とかしてくれると思って……。」

 「………………なるほど。下手に1人で頑張るより俺を頼ってくれたのは嬉しいが、次から前日に一言くれ。準備がある。」

 「すみません……。」

 「緊急事態だったから仕方ないが。んで、サチのこれからだが本人から要望は聞いているのか?」

 「えーっと……。」

 「聞いてないのかよ……。サチさんは何かやりたいことはある?あ、呼び捨てでいいか?」

 「………………はい。」

 どっちの「はい」なんだ……?

 「何があるんだ?」

 「えっと……呼び捨ての方が、だ、大丈夫です。」

 話しにくいな……。

 「わ、分かった。それでやりたいことは……あるかな?」

 「…………………。」

 黙ってしまった。

 「えっと……本人は……」

 「キリト、これはサチ本人が立ち向かわなければならないことだ。すまないが今は口を閉じていてくれ。でも、もし言いたくても言えない。そうだと感じた時は背中をゆっくり押してあげて、な。」

 きっと本人は闘っている。

 だから邪魔をしてはならない。

 俺も含めて。

 1秒が1分に感じられるほど濃密な時間が流れる。

 ある人からすれば沈黙で心が和むかもしれない。

 だがほとんどの人は気まずく感じるだろう。

 それでもこの沈黙は守らねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「戦いたく、ないんです。だから、それ以外のことだったら……なんでも……します。」

 「…………何故…………戦いたくないんだ?あ、話したくなければ黙ってていい。」

 「死にたく…………ないんです。でも、どうしたらいいかわからない。生きていたいのかもわからない。キリト…………レンジさん…………私を…………わたしを…………。」

 そう言ったきり声をあげずに泣き始めてしまったサチ。

 ……泣かすつもりはなかったんだがなぁ。

 俺もキリトの事は言えないな。

 「キリト、後は頼んだ。お前の方が適任だ。」

 「わ、分かった。」

 「すまないな、サチのことは真剣に考えておく。心を……支えてやってくれ。」

 「任せといてください。」

 そう言って俺は部屋を出た。

 ドアを閉める時、はたと気が付いた。

 「「あっ。」」

 今日寝る場所どうしよう。

 俺の部屋に2人いるよな?



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第30話

 ご都合主義のスキルが出て来ます。
 戦闘には影響しないはずなので温かい目で見ていただけると幸いです。


 さて、どうしようか……部屋には戻れないし。

 深夜レベリングと行くか。

 ブライトセイバー、よし。

 後は……予備の片手剣を装備して、と。

 最近盾持ちにすべきか最近考えている。

 フロアボスならそれでもいいが……。

 「チッ、囲めオマエラ!!」

 投剣が飛んで来た。

 こういう暗殺者相手に盾は邪魔なんだよね。

 フィールドに出た途端にこれか、嫌になる。

 ……4人か、カーソルは全員オレンジ、レベルは……34、いけるな。

 「吹き飛べ。」

 俺はラウンドスラッシュを発動させてオレンジプレイヤー達を後退させる。

 セフィロスから教わった鎌鼬(本人は残心と名付けている)も応用しているから攻撃範囲は恐ろしく広くなった。

 剣が当たらない部分の威力は低いがレベル差がそれを補っている。

 「ぶっ殺す!!」

 「ウラァーーーッ!!」

 最初が……右か。

 「はあっ。」

 俺は右のプレイヤーの首を突き刺して投げ飛ばし、真ん中のプレイヤーに当ててダウンさせる。

 「もらった!!」

 短剣が左から襲い掛かる。

 剣を振り切った勢いを利用して転がる。

 立ち上がった時、不快感が走った。

 「…………!?」

 毒か……少々マズイな、投剣使いか?

 状態異常に関してはレベル差が適用されず武器の毒強度とスキルや防具の耐性だけで判断されるため厄介なのだ。

 麻痺は対策していたが毒は対策をしていなかった。

 しかも割と強い毒で1秒に0.8%ほど削られている。

 「厄介な……っ。」

 「よし、毒にしたぞ!!」

 「やれオマエラ!!」

 結晶を取り出す暇はないか……。

 「邪魔だ。バーチカル・スクエア。」

 上下に斬る4連撃が固まっていた2人に襲い掛かりポリゴンとなって散った。

 「あと2人。」

 「ロック!!ストラ!!」

 「チクショウ!!」

 残りは投剣と……細剣か。

 後隙に投剣とリニアーを貰ってイエロー落ち。

 投剣を仕留めたいが……お互いがフォローし合っていて崩せないな。

 細剣使いが俺を止めて投剣でチクチク攻撃してくる。

 毒持ちだから弾かざるを得ず細剣が綺麗に入りかけることもしばしばだ。

 暗殺者なのに褒めたくなる。

 弾いてもHPはわずかに減るため弾く回数が必然的に多くなるこちらが不利。

 HPもレッドに近いイエロー……色が徐々に変わるならオレンジと言ったところか。。

 回復結晶はあるのだが数が2つしかなく、ここで使うのは避けたいが……ケチって死んだら元やも子もない。

 使う暇があるかどうかも怪しい。

 同じ理由でソードスキルも出せない、出始めをおそらく潰される。

 「しぶといな……。」

 「上層に出て来てんじゃねえよ、オレンジ。」

 「偵察だよ偵察。どんな様子かPoH様に報告しろって言われてな。SOLの団長がまさかうろついているなんて思わなかったけどな!!」

 不用心すぎるだろ俺、何やってんだ。

 「PoH、か……。」

 「特別に教えてやろう、攻略組がウザイから近々ギルドを結成するらしいぜ。人殺し専門のギルドをなぁッ!!!!!!!!」

 隙あり、だ。

 発動させたスキルはなんのことはない、ホリゾンタルだ。

 「クソッ……。」

 投剣使いが結晶を使って逃走する。

 「おい!!」

 後ろを向いた隙を突いて部位欠損狙いで足を斬ったがHPが少なかったらしくそのまま死んでしまった。

 「…………俺は何人殺したっけ。」 

 3人の使っていた武器を拾いながら呟く。

 殺したのは……これで9人目か。

 殺すのに慣れてきた自分が嫌になる。

 数か月前はごく普通の大学生だったはずなのに。

 どうしてこうなってしまったんだろうな、茅場。

 ……殺されたくないから殺して、殺されたから殺して。

 血で血を洗う世界、アインクラッド。

 それがアンタの見たかった世界なのか?

 ヒトは強くないんだ、いつだって、どこだって。

 …………月が綺麗だ。

 そうだな、圏内で月を見て夜を明かすか。

 オレンジギルドが増えている。

 死人に関しては注意喚起もあって出ていないらしいが襲撃は一日にどこかしらが襲われる程度にはある。

 「アハトとスコールに討伐を担当してもらうか……。」

 本格的に分業が視野に入って来る。

 セフィロス、ホークは攻略。

 スコール、アハトは調査に後方支援。

 アスナは事務と変態(キリト&セフィロス)のストッパー。

 サチは……事務か調合、裁縫は……キリトがやってたか。

 結晶生成とかないかな……鉱石とかから作れそうな気がする、試させてみるか。

 後方向けの人材が入るのは大きい。

 上層に行くにつれて戦闘が激しくなるから基盤をしっかりしたいところ。

 「暗殺者ギルド結成か……準攻略組とも対策を練る必要があるな。」

 今のところ準攻略組とはあまり交流がない。

 目の敵にされているからであるがこれはそうも言ってられない。

 メッセージを作って………………送信、と。

 ん、こんな夜中に誰からだ…………キバオウか。

 内容は…………っ!?

 

 CC レンジ リンド

 

 解放軍の幹部が暴走してフロアボス討伐に出てしまったんや!!

 ワイも行くから時間を稼いでくれ!!

 

                      キバオウ

 

 

 

 

 俺は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 「全員起きろ!!緊急事態だ!!」

 「了解だ。」

 「…………。」

 「眠い…………。」

 「黒猫団のとこに戻らないと…………。」

 起きたのはスコール・ホーク・アハト・キリトの4人

 それもあったかキリト……。

 「キバオウからメールが来た。解放軍の幹部がフロアボスのとこに突撃しやがった、止めるぞ。それとキリトはさっさと黒猫団に戻れ、怪しまれる。サチは俺がなんとかしておく。」

 「すまない……。」

 「俺が軍を説得しよう。レンジはここで待機してくれ、続きのメッセージが来るはずだ。アハト・ホーク、行くぞ。」

 「ちょっと待ってくれ、眠気覚ましのMAXコーヒーを……。」

 回復量は100秒で1000とのこと。

 というかなんでMAXコーヒー調合なんてスキルがあるんだよ。

 コーラ調合やメロンソーダ調合ならまだ分かるんだが。

 「そんな場合じゃないですよ先輩……。」

 「走りながら飲むから大丈夫だ。」

 そう言って消える3人。

 一段落、か。

 まだ油断はできないが。

 「あの…………団長。キリトさん知りませんか?」

 「サチか、キリトは怪しまれないように黒猫団に戻ったよ。明日の夜に戻って来るんじゃないか?」

 「そう……ですか。」

 「おやすみなさい。」

 「その…………眠れないのでここにいていいですか?」

 不安で眠れないのか……。

 「構わない。だがちょっと緊急事態が発生してな、ちょっと仕事を頼む。もちろん戦うようなことはさせないから安心してくれ。」

 「わ、わかりました……。」

 とりあえず調合をやらせてみよう。

 ちなみに調合の効率がいいとは分かってはいるものの鍛冶の方の優先度が高く、なかなか手が回っていないという状況だ。

 ポーションは店売りでも困っていないというのも一因か。

 NPCが教えてくれた情報によると必要な素材は……空のビンと生命の粉とレモン水だったか。

 ちなみに雑貨屋でどれも売っている。

 「これでポーションを作ってみてくれ。」

 ちなみに今攻略組が使っているポーションはHP5000を100秒で回復するものだ。

 回復結晶は現在希少なためまだまだポーションは現役だ。

 「えっと……作りました。」

 「ありがとう、どれどれ……。なかなかいいな。」

 出来たポーションはHP3000を30秒で回復するものだった。

 回復量は店売りに劣るが1秒あたりはサチ作の方が上だな。

 「このポーション、攻略組の人に配っていいかな?出来がいいんだ。」

 「本当ですか!?でも……その……。」

 「大丈夫だ、俺がきちんと確認するからサチは作るだけでいい。……すまない、メールだ。」

 メールはリンドからでパーティを組んでいるが、深夜なのが災いし、編成がかなり遅れるとのこと。

 副団長のシヴァタがこっちに来てくれるともあった。

 俺はすでにスコール・アハト・ホークの3人を先遣隊として出し、俺は指揮のために昼間のホールにいると返信した。

 さて、時間との勝負だ。



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第31話

 この話はスコール視点になります。
 しばらく視点がレンジ、キリト等SOLの人物に変わります。


 スコールside―――――

 

 「急ぐぞ。」

 「スコールさん、速すぎますって。」

 「軍は待ってくれない。俺のナイフよりホークの斧が頼りだからな?」

 「口を開いている暇は無い。」

 言っていることは正しいが急げ。

 アハトがこの中一番早いのに俺が先行している状況を見ろ。

ボス部屋に突入していないならまだ簡単だが…………。

 多少の死人は覚悟しておくべき、か。

 「……間に合ってくれ。」

 「「………………。」」

 俺だってそう思っているさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが現実は残酷だ。

 ボス部屋に辿り着いた時には立っている人数が2人しかおらず倒れたり治療をしているプレイヤーが9人だけ。

 「なんてザマだ。」

 「………………こんなの…………こんな景色…………幻覚…………だよな?」

 「……現実だ、ホーク。チッ、見たくなかった光景を見せてくれるぜ。」

 「クッ。けが人を頼んだ!!」

 アハトは放置されているレッドのプレイヤーの傍に行って安全な場所まで移動させ、ホークはボスに突撃して注意を引き付ける。

 「SOLのスコールだ。全員転移結晶で逃げろ。」

 事情聴取はレンジがやってくれるだろう。

 「おい!!背中を向けて逃げるな!!」

 見ると立っていた2人のうち1人があろうことか倒れているプレイヤー達の所に走り、転移結晶で逃げた。

 アハトがそう叫んだのにはわけがある。

 フロアボスは傷を負っているプレイヤーを追撃する本能があるのかHPが一定割合以下で背中を向けるプレイヤーを最優先で狙う傾向がある。

 攻略組では間にスイッチ要因が入ったりいない場合は前を向いたまま後ろに歩いたりバックステップで下がるのだが軍の末端までその情報は行き渡っていなかったようだ。

 ホークの努力が6人の蒼片と消えた瞬間である。

 「吹き飛べ。」

 俺は前世でも使ったフェイテッドサークル……違うか、この世界はラウンドスラッシュか、を繰り出してボスの前進を阻止する……が効果は薄い。

 そこにホークがブラストスマッシュを繰り出す。

 強烈な斧の一撃にボスは膝をついた。

 「今だ、撤退する。」

 「まだ立てないプレイヤーがいる。2人だ。」

 転移したプレイヤー側にいた生き残りか。

 「チッ……担ぐぞ。」

 「壁どうするんですか……。」

 「言うまでもない。」

 脱出できるプレイヤーは全員脱出し後は俺達5人だけだ。

 「…………俺?」

 「大の男担げるか?」

 「おとなしく壁やります。」

 壁と言っても受け止める壁ではなく避ける壁であるが。

 アハトは集中してひたすら避けている。

 飛び、地に伏せる。

 時に壁を使って空を舞う。

 パワーが違いすぎるから弾きのためのソードスキルは一切使わない。

 なんとか外に2人を運び出し、無事アハトも撤退が成功。

 「死ぬかと思った……。」

 「任務は……成功なのだろうか。」

 俺が見ただけでも死者は7人。

 45人スタートだとして消えていたのが全員死者だとすれば合計で41人死んだと言う事になる。

 「……成功だと思いましょうよ、スコールさん。生きている人がいるんですから。」

 ホークの言葉は自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 「……そうだな、任務は成功だ。ホールに帰ろう。」

 「そこの2人、転移結晶はあるか?」

 「いや、ない……。」

 「……ほれ、これでさっさと帰れ。」

 アハトが歩きながら結晶……おそらくは転移結晶を投げ渡す。

 ……帰るか。

 

 

 

 

 

 レンジside―――――

 

 「で、この様か。」

 「……ハイ、ソノトオリデス。」

 DDAのパーティを見送った後、俺は転移結晶で逃げてきたプレイヤーを引き摺って事情聴取をしていた。

 簡単にまとめるとジョーというプレイヤーに軍の幹部が騙された。

 ここからは推測だが攻略組の分裂に軍の弱体化を狙ったのだろう。

 SOLやDDAを狙うのは困難を極めるからな。

 ジョー……おそらくはPoHの側近のジョニーだな。

 以上。

 またかあのPK集団。

 どうにかしたいのだが一番適任のセフィロスが1週間耐久レベリングに出かけてメッセージの返信がないため後回しになっている。

 殺した方が早いとは思うが裁判も無しに殺すのはどうなのだろうな……。

 まったく、殺人すら推奨しているとなると茅場はやはり狂っていると判断せざるを得ない。

 いや俺も同じか、犯罪者とはいえ殺人やらかしている訳だし。 

 自衛隊……は違うか、軍の兵士とか敵軍を殺すときどう考えているのだろう。

 俺ですらこう考えている訳だからキリトやアハトが殺人をしているようだと精神病にかかる可能性が高いな。

 メンタルケアを十分にやらないと……カウンセラーいるかな、SAO内に。

 いないか。

 やれるとすれば………………俺かスコールか?

 「レンジ、任務完了だ。」

 「お疲れ様、スコール、アハト、ホーク。生存者は?」

 「4人しか残らなかった。1人はPKを明らかに誘っていたからPoHと絡んでいるのでは、と推測した。」

 「同じく。後フロアボスは頑丈な壁役が必要だ。攻撃力が高すぎて当たっても無いのにHPが減った。」

 「了解した。後はDDAに任せてある、休んでくれ。起こしてすまなかった。」

 「問題ない。」

 「……困った時はお互い様ってことですよ。」

 「大丈夫だ……。」

 「ホーク。死を見るのはキツイか?」

 「キツイな……。血を流して倒れられるのも嫌だがポリゴンとなって散られても死の実感がない。」

 でも実際は死んでいるのだ。

 ゲーム開始から3日後、運営から動画が届いたのだがその内容はナーヴギアに脳を焼かれて苦しみながら死んでいく人達の姿だった。

 悲鳴がまだ記憶にある。

 「でも死んでいるんだよな…………ウェッ。……すまない。最近吐き気が酷い……小町…………いつになったら会えるんだ…………小町…………。」

 そう言ってアハトはMAXコーヒーの瓶を取り出して一気に飲み干した。

 「大丈夫か!?って大丈夫じゃねえよな……俺も最近よく眠れねえよ……。」

 ホークも飲み物を取り出してちびちびと飲み始める。

 学生組が精神的に弱っているな。

 そういう意味でも時間制限は短いな。

 学生と言うとキリトもそれっぽいから危ないな。

 黒猫団から帰って来たら時間を取るか。

 「スコール、お前は大丈夫か?」

 「助けられなかったことは悔しいが割り切っている。」

 「そうか、もしできるよならホーク達の相談に乗ってやってくれないか?俺もやるが他にそういうことができそうなのはスコールしかいないんだ。」

 セフィロスは相談方面ではアテにできないし。

 攻略だったらトップなんだけど。

 「……分かった。あまり得意ではないがやってみよう。…………。」

 スコールが左上を向いて黄昏れている。

 何か過去にあったのだろうか。

 そうだ、シヴァタにメッセージを……って帰って来たな。

 「帰還したぞ。SOLに押し付けてすまなかった。」

 「大丈夫だ、死者はいないか?」

 「ああ、24人全員無事だ。ボス部屋も見たが誰もいなかった。追加の偵察はすまないがしていない。」

 「うちのメンバーがしてきたから追加の情報も併せて午後の会議で話す。リンドにもそう伝えておいてくれ。」

 「了解した。」

 「レンジはん…………すまない。」

 っと、キバオウか。

 「元気ないなキバオウ。」

 「軍のこれからが胃痛なんや……。1層のプレイヤーに物資や金をもっとよこせ言われ、幹部にも文句を言われ……どうすればいいんや……。」

 「軍はいったい何人いるんだ?」

 「700人ほどやが……SOLが羨ましいんや。」

 「そうでもないぞ。セフィロスとかキリトがいるぞ。厳密に言うとキリトはソロだが。」

 指示聞かないからなー特にセフィロス。

 まあ戦闘中にメッセージ開いている暇がある訳ないんだが。

 ソロプレイじゃないんだぞこのゲーム。

 「………………すまんかった。レンジはん……現実に戻ったら、一杯付き合ってくれや。」

 「…………喜んで受けよう。はぁ…………。」

 「はぁ…………。」

 後始末が大変だよ全く。

 「なんでVRでも中間管理職なんや……。」

 キバオウよ、団長=社長だと……あ、上に攻略組がいるのか。

 「課長とかなのか?」

 「係長や。どっちにせよ下からも上からも文句言われることには変わりないんや……。」

 「とにかく、この事件をどうするかが問題だ。」

 「面倒やし全員死亡でいいんちゃうんか?」

 それで……まあ、いいか。

 眠くて考えがまとまらん。

 「あー……それでいいか。寝よう。もう5時近い。」

 眠い。

 サチもすでに部屋に戻っているし。

 「そうやな……ワイも寝るわ。空きあるん?」

 「一番奥が空いてたはずだからそこ使ってくれ……。」

 「恩に着るで……。」

 はぁ……………頭が痛い。

 明日準攻略組が騒ぎ出しそうだな……。



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第32話

 「ホーク……この騒ぎは、なんだ?」

 俺は起こされてここ、ホールにいる。

 時間は朝の9時、5時に寝た俺からすればものすごく体が怠いのである。

 やっぱり……と認めたくない俺は一応聞いてみる。

 「……準攻略組が、深夜の突撃事件を嗅ぎつけたようで……。」 

 ……やっぱりか……はぁ。

 「で、こんなに五月蠅い訳か……。」

 静かで評判の血盟騎士団まで来てやがる。

 「どこが来てるんだ?」

 「それならセフィロスさんが……。」

 帰って来てたのか。

 たまたまか?

 「質問に答えよう。来ているギルドのうち参加させろと言って来たのは血盟騎士団、アウトサイドチェイン(OSC)、ドリームイリュージョン(DI)。状況確認に来たのがフリーダムウインド(FW)だ。」

 「メッセージを見たのか。」

 「ああ、緊急性を要するなら私も来るさ。私としては血盟騎士団以外はレベルと装備が足りないと見る。」

 「そうだな。しかもフロアボスがいつもより強敵だからSOLから死者が出てもおかしくない。とりあえず説明して下がらせよう。FWは俺から説明しておく。」

 血の気多いからな……準攻略組。

 「いいだろう。」

 そう言ってセフィロスは刀を持って喋り始めた。

 長い刀が好きならしく、自分の身長と同じ2Mの刀を持っている。

 確か名前は長一文字……菊一文字を長くしたモデルチェンジとか言ってた。

 長い代わりに最大耐久が減っているとのこと。

 本人は手荒な扱いばかりしているが。

 例を挙げると刀を壁に突き刺してその上に立ったり、プレイヤーを突き刺して浮かせたりとか。

 そうやって見下ろした姿に恐怖を覚えない者はあまりいない。

 そんなことをやっているから『銀髪ロングには近づくな、死ぬぞ』という噂が流れるのである。

 それで俺はFWの団員に話しかける。

 「FWの団長はいるか?今回の件を説明したい。」

 「いますよ、ちょっと呼んで来ますね。団長~説明してくれるそうです~。」

 青い服を着た軽そうなプレイヤーがこっちに来た。

 「いっちょよろしく!!俺がFWの団長のバッツだ!!」

 元気だなーあまり得意じゃないタイプだ。

 「SOLをまとめているレンジだ。んで今回の件だが……まず軍の幹部がリーダーとなってフロアボスに突撃して全滅した。生き残りについてはいるとは思うがこちらではまだ掴めていない。突撃した原因も推測くらいしかできていないのが現状だ。」

 「なるほどなー。んで攻略はどうするんだ?」

 「詳細は決まっていないが延期するだろうな。最低43レベルは欲しい。」

 昨日の会議で最低40としていたがこれを聞くと40でも足りないような気がしてきた。

 「すぐ行ってもSOLなら倒せる気がするけど死人が出るのはちょっとなぁ。あくまで攻略に関しては外野だし。説明助かったよ。じゃ、頑張ってくれ!!」

 FWはその名の通り自由を掲げて活動している。

 コンセプトとしてはうちに近い形だ。

 「それだな……。」

 レベルが低いメンバーがいるDDAのパーティーから犠牲者が出るかもしれないし。

 「少しいいだろうか?」

 赤い鎧を着た男……ヒースクリフが話しかけてきた。

 盾持ち片手剣で戦っているようだがレベリングをしている姿を見た者は少なく、スタイルに謎が多い。

 「ヒースクリフか。血盟騎士団もボス戦に参加したいのか?」

 情報屋に頼んでもいまいち出て来ないんだよなこの男。

 PKをやっている訳ではないようだが。

 「その通りだ。団員も45まで鍛え上げているから不足はないと思うのだが。」

 「……そうだな。14時から会議がある。それに参加して正式に参加するかどうかが決めることになるがそれでいいか?俺だけじゃ決定できないようになっているんでね。」

 SOLとDDAの団長副団長4人のうち3人以上が賛成しなければ参加できないようになっている。

 具体的には俺とリンドとスコールとシヴァタだ。

 「了解した。ではまた14時に。良い返事を期待している。」

 そう言ってヒースクリフは外に出て行った。

 出て行ってしばらくした後俺は呟いた。

 「大物感はあるんだけど、セフィロスほどじゃないな。」

 初めて話した感想はそれだった。

 SAOの大物と言えばキリト、セフィロスか。

 ラスボスがこの2人だったらしっくり来るな。

 キリトはキリトで正統派……片手剣に盾とか二刀流とかで来そうだ。

 攻撃力が高ければ普通に厄介だし搦め手も効きにくそう。

 セフィロスがボスの場合無理ゲーになるだろう。

 後衛にいても斬撃波で殺しにかかって来そうだし空中にいられたらタンク要らないだろってことになりかねん。

 というか前衛後衛なんて存在しないだろうしキリトを1人放り投げてスコールとアハトでフォローするという形にするしかないか……。

 俺が出て行っても即死する未来しか見えん。

 「私を凌駕する者は無だ。」

 「すまないが血盟騎士団の攻略組入りをスコールら3人に伝えておいてくれないか?」

 「任せておけ、万が一となれば斬る。」

 「斬るのは最後の手段にしてくれ。」

 眠い俺は部屋に戻ってベッドにダイブ。

 そのまま視界を暗黒に堕とした。




 ちなみにFWの団長であるバッツは転生者でもなんでもありません。
 名前考えるのがめんど……ファンサービスの一環として出しました。




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第33話

 モチベが下がってしまったので25層が終わったら75層に飛んで終わらせます。
 気が向けばシリカ編やユイ編を書くかもしれません。


 「14時になったな。では25層ボス会議を始める。」

 今回は俺が司会だ。

 基本的にそれぞれのギルドが層ごとに交代でやることになっている。

 「今回の議題は新しいギルドの攻略組入りと今回に限り参戦レベルの引き上げだ。」

 攻略組入りは聞いたところ全員反対はなかったのでそのまま加入してもらうことになった。

 人数負担的に厳しいところもあったのも一因だろう。

 「発言いいか?」

 手を挙げたのはDDAのタンクだ。

 「いいぞ。」

 「今回だけと言ったがその最低レベルはいくつだ?」

 「今のところ安全マージンとして層+15レベルとしているが17~20を予定している。これはメンバーのレベルを見て判断していくつもりだ。」

 「ありがとう。」

 そう言ってタンクは座った。

 「新しいギルドというのは血盟騎士団という少数精鋭のギルドだ。人数はSOLとDDAの平均と言ったくらいか。団長のヒースクリフから挨拶がある。」

 そう言って俺は目線を向けた。

 ヒースクリフが前に来る。

 「血盟騎士団団長のヒースクリフだ。今回から共にフロアボスを攻略して行くことになった。よろしくお願いする。」

 拍手が送られたがヒースクリフはまるでそれがわかっていたかのように何でもない顔をしていた。

 「さて、挨拶も終わったところで今回のパーティ編成を見直す。具体的にはDDAのパーティー枠を2~3ほど血盟騎士団に譲ってほしい。」

 「1つで構わないよリンド君。現在レベルが42以上のプレイヤーは私含めて6人しかいないのだから。」

 「意外だな。もっと育っているのかと思っていた。」

 「買いかぶらないでくれたまえ。」

 「侮ってなどいない。黒の剣士や片翼の天使に及ばないがアンタにも伝説があるだろう。黄色皆無(イエローナッシング)というのが。」

 攻略組ならそれを知らない者はいない。

 HPゲージは50%を切ると黄色に、20%を切ると赤色になる。

 つまりヒースクリフはその堅い防御でダメージを抑えているのだろう。

 しかしそんなことは有り得るのだろうか。

 回避をし続けていればダメージを0にするのは決してできないことではない。

 やれるかどうかは別として。

 しかし防御をしてもダメージは最大8割軽減であり、ソードスキルを連続で防いでいるとどうしても黄色に落ちてしまう場面がある。

 よほど良い盾を使っているのかそれとも特殊能力が備わっているのか……あるいは防御に関する上位スキルがあるのだろうか。

 鉄壁とか絶対防御……これは大袈裟か。

 とにかく聞き出す必要がある、か。

 もし会得が現実的に難しいようなら壁を任せてしまえばいいし黄色にどう頑張っても落ちないということは結果的に死なないからヘイトさえ向いていれば誰も死ぬことは無くなる。。

 いっそヒースクリフにソロ討伐……ダメだ、セフィロスとキリトがいる。

 最近フィールドボスをレベリングの相手にし始めたからやっぱり頭がおかしい。

 いやこの場合レベルとテクニックがおかしいのか?

 黒猫団に行ってからもペアでレベリングをやっていたようでスコールが武器修理が多いとか言っていたし。

 「私としては守りを固めながら戦っているだけだよ。」

 「ではその守りに期待させてもらおう。今回のフロアボス、攻撃の範囲が広くて威力も高い。命をアンタに預けるぞ。」

 「了解した。血盟騎士団の名にかけて私が攻撃を引き受けよう。」

 「さて、パーティーが変わったから役割を再確認だ。。SOLはいつも通りA。担当は攻撃と指揮に負傷者のカバー。DDAはB~G。B~CがタンクでD~Gがアタッカー。血盟騎士団……略称アルファベッドがわからんから騎士団と以下略す。騎士団はHだ。役目としては壁をメインでいいのか?」

 「ふむ、問題ない。略称はKOBと呼んでくれたまえ。」

 「了解した。では25層のフロアボス、コラプス・ジ・ファフニールの討伐は翌々日の13時から始める。準備を忘れるな、では解散だ。」

 解散のかの字が聞こえた瞬間セフィロスは閃光のごとき速さでホールを出て行った。

 多分雷光速を使ったのだろう。

 あれが片翼の天使……とか俺も銀髪ロングしてみようかなとかの声が聞こえるがやめといた方がいいぞ。

 もれなく1週間耐久レベリングが待っている。

 「SOLの団長さんですか?」

 血盟騎士団の1人が話しかけてきた。

 何だろう。

 「ああ。何か用か?」

 「いえ、用というほどでもないんですけど黒の剣士がボス会議に来てなかったから気になって。一回話してみたくて必死にレベリングしたんですよ~。」

 あー攻略の鬼が来てなきゃ気にもなるか。

 「それならレベリング中だ。休養するという新聞記事は読んだか?」

 真っ赤な嘘だ。

 実際は黒猫団のフォローに行っている。

 「ええ、読みました。」

 「それでレベルが遅れているからーとか言って休むって連絡が来た。フロアボス戦が終わった後の打ち上げには参加するようだからその時に話してみたらどうだ?」

 「はい、ありがとうございます!!」

 期待していると落とされるぞ……。

 そうだ、サチの様子はどうだろう。

 キリトが黒猫団に説明しに行って彼女は一人だったはずだ。

 夜には戻って来るがあまり一人にしておくのも危険だな。

 そうだ、スコールを紹介しておかねば。

 「スコール、この後いいか?」

 「ああ。」

 

 

 

 

 俺はサチの部屋の前にいた。

 「レンジだ。」

 自分の部屋なのにノックをするのもどうかと思うが万が一部屋で着替えていたら目も当てられない。

 「はい、大丈夫です……。」

 そう言われ、俺は部屋に帰ることができた。

 「その様子だとなんとか、と言った感じか。」

 「はい、部屋にいるだけで少し楽になってきました。いつもこの時間は戦闘しているのに部屋にいるだけで変な気分です。」

 「しばらくゆっくりしているといい。怖かったんだろうしな。」

 メンタルケアはキリトに任せよう。

 俺は深く聞いた訳じゃない。

 「はい、ありがとうございます。」

 「様子を見に来たのもあるけど今日は紹介したい人がいるんだ。スコール。」

 そう言うとスコールが中に入って来た。

 「SOLの副団長をやっているスコールだ。よろしく。」

 「よ、よろしくお願いします。」

 威圧感があるような気がするのは俺の邪推だろうか……。

 「スコールは鍛冶をやっていて生産職について詳しい。話を聞いてみたらどうだ?」

 「は、はい!!」

 元気になってくれるといいな。




 ボスの名前はグリーで配信中のソードアートオンライン エンドワールドから頂きました。
 ファフニールとしかなかったので作者が強そうな名前に改変。
 原作設定が詰まってなくてオリジナルの設定が増えるのはどうなのだろうと思う今日この頃。
 原作のイメージが壊れないかが不安で仕方ないです。
 考えるのは好きなんですけどね。

 そしてキャラ崩壊がそろそろ出てきたような気がしてならない。


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第34話

 強さがチート級に近づきつつある2人。


 会議の翌々日 14時―――――

 

 

 

 「よし、準備はいいな?」

 俺が問いかける。

 ちなみにパーティーメンバーは俺、キリト、セフィロス、アスナ、ホーク、スコールだ。

 アハトは短剣でフロアボスは無謀だと言って辞退している。

 

 「DDA、準備完了だ。」

 「KoB、準備は出来ている。」

 「こっちもOKだ。」

 「行くぞ。」

 

 そう言って俺達は扉を蹴り飛ばして突入、戦闘が始まった。

 DDA、KoB、SOLの順に突入したのだがこれには訳がある。

 そして俺はこう言った。

 「ガードしろ!!」

 コラプス・ジ・ファフニールは最初にブレス攻撃を放って来るドラゴンタイプのモンスターだ。

 なのであらかじめ盾を持った壁役がブレスを防ぐと同時にキリト、セフィロスの2人が10Mほど飛び上がって残心を放つ。

 反動で後ろに下がるも壁を蹴ってブレスを踏まないように回避。

 しかし怯まないしHPゲージも変化がない。

 「やはり硬いか。」

 「行くぞセフィロス。」

 「遅れるなよキリト。」

 仲良く突撃して行く2人。

 爪攻撃をしてくるが飛んだり伏せたりして回避。

 「クックック……。」

 「甘いっ!!」

 俺達も何もしないわけにはいかない。

 おそらくキリトは先陣を切る事で士気を上げようとしているのだから。

 ちなみにキリトは黒猫団に許可を得てこっちに来ている。

 攻略組だと言うことをあらかじめ知っていてくれたおかげだろうな。

 「ヘイトをこっちに向けろ。」

 俺が指示を出す。

 最近キリトやセフィロスのダメージが高すぎてヘイトがなかなか壁に向かず、武器をダウングレードする有様だったが今回のボスは硬いため持ち変える必要はないようだ。

 「キリト。足を狙って転倒させろ!!」

 大型モンスターには部位HPなるものが設定されているようで、同じところを集中して攻撃すると壊れたり切れたりするのだ。

 例えば足を狙って攻撃させ続ければ転倒、腕を攻撃して切断すれば攻撃を一定時間封じることが出来る。

 ちなみに試してみた所腕は2分ほどで再生、足は切断不可能、尻尾や毒袋などの器官は再生しないことが分かっている。

 「ブレス!!」

 俺が声を出した瞬間、アタッカーは下がり、タンクは盾を構える。

 真後ろには吐かないものの首を回して吐くので攻撃範囲が正面270°10メートル前後とえげつないのだ。

 2層のトーラスキングと違って麻痺とか余計なものが付いていない分破壊力も増している。

 下手をすれば一撃死してもおかしくはない。

 キリトとセフィロスもいったん攻撃を控えてヘイトを向けないようにしている。

 「よし、GOだ。」

 俺の指示に従って陣形を構築、攻撃を仕掛ける。

 軽装アタッカーは後ろから尻尾に気を付けて攻撃。

 横と前は重装備の壁で防ぐという戦略だ。

 前と左はDDA、右はKoBが担当している。

 後ろは俺以外のSOLが担当している。

 何故俺が後ろに下がっているのかと言うと前は命が懸かっているためどうしても血が上り、冷静な判断ができないため指揮するプレイヤーは必要とされた。

 他にリンドやスコールが候補だったがリンドは2人より指揮が下手で(それでも普通にやる分には十分上手い)スコールは俺より上手かったのだが本人があまり乗り気ではない。

 スコール曰く自分の命は自分でどうにかするしかない。俺は他人の荷物まで持ちたくないとのこと。

 パッと聞くと薄情なように見えるが死んだらそれまでのSAOにおいては立派な考え方のひとつだと思う。

 そんなこともあって俺がメインで指揮を執っている。

 小回りが欲しい時はリンドが、壁を築きつつ一瞬の隙を突く時にはスコールに担当がそれぞれ変わっている。

 「ダメージが大きくて回復が追い付かない!!援護してくれ!!」

 左のDDAのメンバーから援護要請か。

 回復結晶こそあるものの全体で20個あるかどうかであり、回復ソースはいまだポーションがメインだ。

 …………2ローテだと無理があったか。

 ならば、前に一旦ヘイトを上げてもらって左右を下がらせるか。

 「リンド、ヘイトを前に。時間をかけて削るぞ。左のDDAとKoBは下がって回復。前のローテ要因に回ってくれ。」

 「「了解。」」

 リンドがプロボケイション・ロアーを発動させて時間を稼いでいる。 

 これはスレッドフル・ロアーよりも強力な挑発スキルだ。

 「回復が終わったら前は下がってKoBにスイッチ。行けるか?」

 「問題は無いよレンジ君。」

 ヒースクリフがそう返す。

 「ならそれで行く。2分……いや、3分後にスイッチだ。後ろに攻撃をさせるなよ。」

 「分かっている。」

 後ろはSOLが陣取って切り刻んでいるからな。

 正面からでも余裕だとあの2人は言いそうだが危ない橋を渡らせるわけにはいかない。

 「さて……リンド。どうだ?」

 手ごたえを確かめる。

 「攻撃は強力だがブレスさえ防げれば死者なしで行ける。逆に言えば死者が出るとすればそこだ。」

 「そうだな……しかしブレスの予兆が短いのがキツイ。」

 「ああ……焼かれても耐える可能性はあるが追撃が来たらお陀仏だろう。」

 「そうでもないぞ。」

 現にヒースクリフがブレスを耐えながら爪攻撃を盾で受けているが1割しか減っていない。

 「……ダメージ量、おかしくないか?」

 「……いや、キリト並みにレベル上げしているのかもしれないぞ。」

 「んー……後で聞いてみるか。」

 「そうだな。とりあえずHPは全員8割以上だからまだスイッチは先。休んでおけ。」

 「あ、ヘイトがSOLに向いた。」

 これは死者が……。

 「でも頭にソードスキルを叩き込まれて怯んだ。」

 「本当だ。んでタコ殴りにしているな。」

 「ヒースクリフがガードミスって尻尾で吹き飛ばされてる。」

 「フォローに入るわ。」

 「頼む。」

 多分あの2人がいればクリアできるんじゃないかな、SAO。

 こっちに戻ってきたヒースクリフの顔がなんか凄い。

 「…………私はどこで間違えたのだろうか。」

 何か呟いたようだが聞こえなかった。

 初めてのフロアボスで疲労の溜まりが早いのだろう。

 「お疲れ様だ。まだ4本半あるから今の内に体を休めていてくれ。」

 「……感謝するよ。」

 「戦闘中に考え事はやめておいた方がいい。より疲労の蓄積が加速する。」

 「そうも言っていられないのだよレンジ君……。」

 今後の血盟騎士団の行方を戦闘中も考えているのだろうか……。

 そうなるとむしろSOLに取って代わって攻略組を率いてもらった方が俺が死なずに済むから本当に助かるのだが。

 「程々にしておいてくれよヒースクリフ。死なれると面倒だ。」

 さて、様子は………半分切ったか、早い。

 リンドのヘイト管理も上手く、前のアタッカーも足を集中攻撃しているため転倒も見られる。

 SOLは言わずもがなであり、敵の攻撃の合間にポーションを飲んでバトルヒーリングと合わせて自動回復の量を増やして切り刻んでいる。

 20分で6本あるうちの4本半を消し飛ばした。

 「キリト!!ヘイトをSOLに。壁を立て直すから俺の指示があるまで粘ってくれ。」

 「分かった!!」

 そろそろ発狂モードなので一旦体勢を立て直す。

 ちなみに指揮を担当しているプレイヤーは前線には出ない。

 その理由は指揮官が不在になるのは危険だからである。

 ディアベルの悲劇がそれを物語っている。

 「準備は良いか?ここから一気にSOLが削り切る。ヘイト管理を頼むぞ。」

 「分かった。攻撃をひたすら防いでればいいんだろ?」

 「よし、行くぞお前らぁっ!!!!」

 「「「「「おおーーーーー!!!!!!!!!」」」」」

 元気のいいことだ。



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メタ・ストーリー
キリトVSセフィロス


 このMETAストーリーはSAOの舞台で対決する2人の戦いを純粋に描きたいがための作品です。
 そのためSAO原作、本作の設定を大幅どころか完全に無視しています。
 お遊びみたいな部分なので本編に影響することはソードスキル以外ありません。
 あくまで一種のIFと考えて下さい。
 以下注意事項です
・チート
・超反応
・ちょっと力を入れるだけで1KMほど飛ぶ足腰
・キャラ崩壊
・性格改変
・装備のインフレと改変、
・展開の良いように減るHP
・文中に表示されるHP
・HPが0になっても死なない
・都合の良いように壊れる武器
・メタ会話
・オリジナルソードスキルの山
・本人の技がいつの間にかソードスキル化
・ソードスキルを後隙無しに連発
・イモータルオブジェクトは戦闘の演出の前になんてなかった
・重力仕事しろ
・SAOにそんなのねえから!!
・多数作品からのネタ
・作者の思いつき
 全てが良い方のみお願いします。
 一つでも嫌な項目がある場合はブラウザバックをお願いします。
 戦闘シーン、文中のHPの表示以外での批評は受け付けませんのでよろしくお願いします。



戦闘ルール
・先に相手のHPを0にする、または相手の武器を全て壊した方が勝ち。
・同時にHPが0、または壊れた場合は引き分け。(HPが0、0にしたが武器が壊れた場合がそれぞれ同時に発生した場合はHPが0になった方が負け)
・ポーション、クリスタル(結晶)の使用、HPの回復は一切禁止(スキルでの回復も無効化される)。
・予備の武器はいつでも装備することができる。
・武器と自分自身の距離が一定以上離れるとメニユーから装備し直すことができなくなる。
 ・この場合一時的に武器が壊れたものとして扱う。


 場所ははじまりの町の広場。

 茅場が最初にデスゲーム宣言をした場所……。

 

 

 

 「一回本気でやり合ってみたかったんだ、セフィロス。いや、片翼の天使。」

 「黒の剣士キリト、それは私も同じだ。」

 「それだけ言えれば俺は十分だ。」

 「誘おう。」

 短いやり取りを交わし、激突する2人。

 ちなみに実況はレンジがお送りしております。

 映像に関してはカーディナルシステムが実況しているためご安心下さい。

 どこで6000人が見ているかはツッコミ無用で頼むぞ。

 あと場面や心情はコロコロ入れ替わるからそれをよろしくな。

 BGMは再臨 片翼の天使かcrossing fieldをオススメする。

 「まずは挨拶からだ。ムーンライト・ミーティア!!」

 早速キリトが駆けて挨拶を繰り出す。

 「随分な挨拶だな。」

 回転斬りを後ろに下がって避け、5撃目の横斬りは刀を斜めに振ることによっていなし、斜め斬りも同じく斜めに振って逸らす。

 「ていっ、はぁぁぁっ、てりゃあぁぁぁ!!」

 「フン、ハッ、挨拶にしてはなかなかだ。」

 V字斬りも逆側から刀を振って弾き、キリトの左手の斬り上げも刀でしっかり防御。

 「これが俺の挨拶だ!!」

 キリトが空中に飛び上がって突きを放つ。

 セフィロスも突きで迎え撃った。

 刹那、眩い光が迸ってお互いが弾かれた。

 お互いにバク宙を切った。

 弾かれた距離はおよそ50Mといったところか。

 ちなみにHPはキ 65323/65500 セ 68291/70000。

 最後の突きのスパークでキリトもほんの少し削られたな。

 ソードスキルは完全に避けない限りガードしても削りが激しいな。

 「次は私からの挨拶だ。月の輝きなぞ天の輝きの前には塵も同じ。」

 セフィロスが天照を繰り出す。

 50Mの距離を一瞬で詰め、切っ先がキリトに襲い掛かる。

 「ぐうっ!!」

 キリトはガードはしたもののその速度までは殺し切れず塔の外壁を突き破るほどの速度で吹き飛ばされた。

 広場から塔の25層まで直線距離でも3KMほどあるのだが……。

 キ HP 63214/65500 セフィロスの攻撃より外壁を背中で突き破った方のダメージが大きいなbyスコール

 「やっぱり戦闘は高い所でなくちゃな。面白くない。」

 わざとかい。

 「フン、まだだ。もっと昂ぶらせろ。」

 セフィロスがキリトの開けた穴から飛び込んで音速を余裕で超える早さで刀を振る。

 3KMあったんだけどなーどうやって登ったんだ?

 「そよ風で俺を倒せるとでも?」

 キリトが両手の剣をX字に振って衝撃波を放つ。

 通常マッハ以上で吹く風をそよ風とは言わない。

 「これならどうだ?」

 セフィロスが刀を振ってまた衝撃波が放たれ、激突。

 その瞬間、付近に暴風が吹き荒れて31層の壁と天井と床が吹き飛んだ。

 「見通しが良くなったな。」

 「まるで魔王みたいな言い草だ。」

 暴風をそよ風のように気持ち良く浴びながら下の30層に着地して再び斬り合いが始まった。

 「雷光斬、終わりだ。」

 これは横に一閃した後、縦に斬り落として吹き飛ばすソードスキルだ。

 コンパクトに終わる特徴を持っている。

 おそらく見切れるのはsolitudeのメンバーとアスナくらいだろう。

 始まってから終わるまで0.03秒あればいい所だ。

 「やっ、はっ!!」

 キリトが右手と左手でそれぞれ弾いて凌いだがまだセフィロスの猛攻は続く。

 右、左、上、下、突きと様々な斬撃がアトランダムに襲い掛かる。

 だがキリトも負けじとセフィロスに時々斬撃を届かせようとする。

 2人の剣がぶつかり合うたびにキン、キンと甲高い音が響く。

 通常攻撃とはいえ避けなければダメージが入ってのけぞってしまい、ソードスキルで大ダメージを喰らってしまうからお互い必死だ。

 (なかなか差し込むスキが見つからない……っ!!)

 (これだけ斬ってるのにクリーンヒットは0、か。)

 20秒ほどソードスキルなしの斬り合いが続く。

 剣がぶつかり合うたびに火花が散って音が響く。

 「そこだっ!!」

 キリトがついにスキを見つけてダブルサーキュラーを叩き込んだ。

 「くっ、やるようだ。」

 1発目は防いだものの2発目が綺麗に入り、ダメージ。

 HPキ 61198/65500 セ 62936/70000

 今の一撃で4000ほど削ったか、これは大きいだろうなbyアハト

 ああ、HPこそセフィロスが上だが押しているのはキリトだbyスコール

 食らいから早々に復帰したセフィロスは絶空を放ってキリトを吹き飛ばして仕切り直しを図ろうとした。

 絶空をしっかり防ぐキリトだが距離を離された。

 「戯れはここまでだ、キリト。」

 「お遊びはここまでだぜ、セフィロス。」

 そう言った2人は一足に31層の壊れた壁を使いながらエアバトルが始まった。

 レイジスパイクやソニックリープを放って空を駆けるキリト。

 同じく天躯や天照を放ってエアダッシュするセフィロス。

 そして壁や瓦礫を足場にして2人は斬る、斬る、斬る。

 そして空を駆ける2人はまるで重力から解き放たれたロケットのようだ。

 合間合間に2人が相手に放った衝撃波の余波が天井に当たって瓦礫と化し、それが新たな足場になっている。

 「ほっ、はっ、ふっ、てりゃぁぁぁ!!」

 「フッ、せいっ、堕ちろ。」

 バーチカル・トライと緋扇がぶつかり、スラントと辻風が火花を散らす。

 黒と銀の塊が不規則に衝突する。

 そして衝突する時に赤い火花やライトエフェクトが添えられる。

 「俺について来れるか?セフィロス。」

 「頭が高い。」

 そう交わした2人はアイングラッドの外壁を走って登り始めながら斬り合いを始めた。

 ちなみにこの時点で キ 57773/65500 セ 58920/70000

 (こういう斬り合いを待っていたんだ、俺は。)

 (……あの時を思い出すな、クラウド。)

 相変わらず斬り合いが続くが空中の斬り合いと違うのは時々壁を蹴って上位のソードスキルを発動していることだ。

 バーチカルなどの下位スキルは通常攻撃で、十分割などの連続技は最後を下位ソードスキルでお互いに弾く。

 そして50層に到達した2人はやっと地に足を付けて戦い始める。

 「焼き尽くしてやる。」

 そう言ってキリトはジ・イクリプスを発動させる。

 「打ち砕こう。」

 セフィロスも閃光を発動させて迎え斬る。

 お互いに防御より攻撃を優先した数瞬、まばゆい光が2人を包み込む。

 ソードスキルのライトエフェクトと剣と剣がぶつかり合う火花のせいだ。

 そして高い快音が響く。

 その光が収まった。

 「閃光を浴びて立っているとはな。」

 「コロナにいて生き残るとはな。」

 「「お互い様、か。」」

 二人とも立っており、決着がまだ遠いことを俺達に教えてくれる。

 HP キ 41584/65500 セ 36231/70000

 「今ので随分と削られたがダメージがキリト優位なのは何故だ?」byアハト

 「キリトは一撃一撃が最後以外同じでそこそこ重いんだが、セフィロスの閃光は一発がそこまで重くないから差が付いたのだろう。完全に防御を捨てていたらおそらくキリトが勝利していたからそのあたりは流石だ。」byレンジ

 「優位ってだけだな。セフィロスもまだグリーンだから分からない。いくらでもやりようがある。」byスコール

 「露と消えろ。」

 「まだ俺は消えたくないんで、ね!!」

 舌戦と斬撃戦の同時並行。

 下位ソードスキルと通常攻撃を繰り出している。

 スラントを出せば浮舟で弾き、緋扇を出せばバーチカル・トライでまた弾く。

 突進技で距離を離せば20Mの衝撃波の剣でお互いを斬り合う。

 衝撃波が衝撃波で相殺され、空気を揺らす。

 そしてどちらともなく壁を足場にして飛び始める。

 剣と剣がぶつかり合う音は途切れることは無い。

 「はあっ!!やあっ!?」

 「フッ……。」

 「がはっ!!」

 2人が斬り合っていたがとうとう均衡が崩れた。

 70層の踊り場に先に到達したセフィロスが正宗でキリトを突き刺してぶら下げたのだ。

 「無様だな、こんなものか。」

 「ぐうっ……。まだだっ!!」

 キリトは衝撃波を放ち、セフィロスの体勢を崩そうとするがセフィロスは動かない。

 (…………まだ、何か、何かあるはずだっ!!)

 (……絶望を与えてやる。)

 セフィロスがキリトを正宗で上に放り投げようとした瞬間、まずキリトは左手の剣を投げ捨てて刀を掴み、刺さった刀を引き抜く。

 そして左手の力で宙返りしながら刀に飛び乗り、ソードスキルを発動させた。

 「さっきの痛み、何十倍にして返してやるッ!!」

 「言ってろ。」

 発動させたスキルはホリゾンタル・アーク。

 2連撃しかない。

しかしキリトが刀に乗っているため避ける術はない、直撃だ。

そもそも怯ませればなんでもいいのだ。

 HP キ 34108/65500 セ 29450/70000

発動し終えたキリトはさらに上へと飛んでいく。

 そして飛びながらメニユーを開き、エリュシデータを左手に持つ。

 セフィロスも体勢を立て直してキリトを追い飛ぶ。

 ある時はジャンプ、ある時はソニックリープ、ジャンプ、天照、ジャンプ。

自然と2人は追い付き、光を放つ。

 「アンタへの贈り物を考えていた」

 キリトはライトニングフォールを繰り出す。

 突然降下してきたためソードスキル自体は防いだもののその勢いと重力に逆らえないセフィロス。

 「があっ……。」

 HP キ 34108/65500 セ 23129/70000

 「敗北を贈ろうか?」

 「クッ……。」

 キリトはさらに飛び上がり、90層で塔が細くなっている所に着地した。

 80層付近に正宗を突き刺してその上に立つセフィロス。

 キリトは塔に斬撃を喰らわせる。

 「跪き、悔し涙に塗れる姿を見せてくれよ。」

 その直後、塔は音も無く滑り落ち始めた。

 「セイッ!!」

 キリトは続けてスターバースト・ストリームを繰り出して塔を粉々に切り刻んで瓦礫へと変える。

 切り刻まれた数多の黒礫がセフィロスに襲い掛かる。

 食らえば瓦礫自体のダメージと落下ダメージでキリトの勝利はほぼ間違いないだろう。

 「チッ……あの時の再来……違うな、今度は私が下になったと言う事か。」

 セフィロスはもう一本正宗を出して右手に持ち、一回壁に突き刺した。

 そして左足で壁を蹴って宙返りをしながら刀を抜き、上昇する。

 続けて右足で再び壁を蹴る。

飛び上がる。

 瓦礫を蹴る、衝撃波で砕く、壁を蹴る、直接斬る、瓦礫を蹴る、斬る、蹴る、砕く、斬る、斬る、蹴る、斬る、蹴る、斬る、砕く。

 瓦礫を捌き切れずに腕や足に当たる。

 だが止まらない。

 銀の彗星は上へ、上へ昇る。

 黒の新星は舞い降りる。

 「ラスト・ノヴァ。」

 SAO最強の二刀流ソードスキルがセフィロスを襲う。

 キリトは瓦礫を足場にして左手で突きつつ五芒星を描く。

 セフィロスもまた瓦礫を足場として星から逃れる。

 後ろからの振り向き様の横斬りを逸らす。

 「ウオォォォッ!!」

 逆の手の突きが左腕に当たる、右腕の刀で反撃する。

 「クッ。」 

 HP キ 32758/65500 セ 15689/70000

 「てやあぁぁァッ!!」

 左右からの乱舞、システム補正がかかっているため逸らすには難し。

 「……グッ、ハッ、ヤッ。」

 しかし逸らす。

 弾く。

 祓う。

 薙ぐ。

 「……フン。」

 「うおおぉぉわぁぁぁッ!!」

 「……!!」

 飛び上って脳天を斬ろうしたところをセフィロスは左手の正宗で串刺しにする。

 動きが縛られたことによりラスト・ノヴァがキャンセルされる。

しかし剣の勢いは止まらない。

 左手のエリュシデータはセフィロスの右腕を斬り飛ばし、蒼片へと散らす。

 HP キ 29511/65500 セ 10986/70000

 「先程の痛みを覚えているか?」

 「ぐっ……何故こう俺を串刺しにするっ。」

 「それはな、キリト。」

 「お前に絶望を贈るためだ。」

 刀を上に振って瓦礫ごとキリトを上に放り投げるセフィロス。

 「グハッ!!」

 瓦礫がさらに砕け散る。

 その後を追って飛ぶ銀星。

 滅多突きを繰り出し、そして91層以降が無くなったアインクラッドの頂上に叩き付けるセフィロス。

 「グッ!!ウオッ!!ガフッ!!ガアアァァァァァッ!!!!」29511→28420→27357→25968→24672→23796→22578→20707→15967→3820

 轟音が鳴り響く。

 しかしまだ勝敗は付いていない。

 キリトはHPがまだ残っている。

 セフィロスもまた正宗を構え直す。

 「まだだ……まだ俺は……っ!!」

 「終わらせよう。お前はよくやった。」

 頂上に降り立ったセフィロスと叩きつけられたキリト。

 お互いに厳しい状況。

 キリトはHPが風前の灯火であり、セフィロスは右手が露と消えている。

 左手の正宗も最初から手荒な扱いをしているためいつ壊れてもおかしくない。

 「……ッ!!」

 「フン。」

 両者は同時に駆け出す。

 これが最後の激突になるだろう。

 剣閃が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか。
 作者としてはSAO最強のキリト。
 FFⅦでクラウドを瀕死に追いやるセフィロス。
 個人的にはセフィロスの方が若干強いと思いますが、キリトに勝ち目がないわけではないと考えています。
 なので結末はあえてこの話では書きません。
 消化不良で申し訳ありませんがご了承下さい。
 理由としてはここで決着をつけてしまうと作者のキャラの強さの主観が入ってしまうためです。
 
 

 ですが希望が万が一あるのであれば、私なりの結末を投稿することがあると思います。
 その時はお互いの勝利パターンをそれぞれ書きます。
 
 



 最後におまけとして2人の装備とステータスを載せます ユニークスキルはネタバレのため○○としておきます。
 ステータスはあくまで目安です。
 最大HPは LV×300+素防御×100+500=最大HP   としています。
 力防御敏捷は
 最大HPに補正がかかる場合は最後に補正を掛けます。



 キリト LV150 HP 65500/65500 素(装備スキル補正込み) 力 425(1336) 防御 200(3251) 敏捷 290(1097)
 
 右手 ディストラクション 攻撃 1510~1550 重さ 300 タイプ:斬撃 耐久値 3500 要求値 135 防御+100 敏捷+100 力+100 全能力×1.1
破壊と絶滅の名を持つ剣。吸い込まれるように黒い剣。
長さは1.5Mほど。

 左手 リデンプション 攻撃 1300~1430 重さ 350 タイプ:斬撃 耐久 3350 要求値 126 防御-30 敏捷+150 力+150 力×1.2
救済と贖いの名を持つ剣。白く輝いている。
これも長さは1.5M

 予備武器 エリュシデータ 攻撃700~710 重さ170 タイプ:斬撃 耐久値 1350、要求値 77 防御 +50、敏捷 +28、力 +48 防御×1.05
 原作でキリトが右手に装備していた魔剣。
 長さは1Mほど。

 頭防具 なし
 体防具 アボカリプスコート 防御+1200 重さ90 耐久値 9999 要求値 120 暗い所で隠密度×3 レベル補正の倍率を2倍にする
 腕防具 ジェトブラックグローブ 防御+200 重さ50 耐久値4500 要求値110
 足防具 ブラックブーツ 防御+300 重さ20 耐久値7500 要求値120 敏捷+125
 アクセサリ メシアペンダント 全能力×1.5
 SAOをクリアする一撃を放った者に与えられるペンダント。

 ユニークスキル ○○○







 セフィロス LV150 HP70000/70000 素(装備スキル補正込み) 力 665(1148) 防御 245(1945) 敏捷 435(1287)
 右手 なし
 左手 正宗 攻撃 1600~1800 重さ 300 耐久値 3000 要求値 100 力+100 敏捷+100 敏捷×1.3
 3Mあるまさに前世で本人が使っていた刀。
 予備武器 正宗 攻撃 16000~1800 重さ 300 耐久値 3000 要求値 100 力+100 敏捷+100 敏捷×1.3
 頭防具 なし
 体防具 アボカリプスコート 防御+1200 重さ90 耐久値 9999 要求値 120 暗い所で隠密度×3 レベル補正の倍率を2倍にする
 腕防具 ジェトブラックグローブ 防御+200 重さ50 耐久値4500 要求値110
 足防具 ブラックブーツ 防御+300 重さ20 耐久値7500 要求値120 敏捷+125
 アクセサリ ライトニングソニック 力と敏捷×1.5 
 雷光のごとき力と速さを与えるピアス


 ユニークスキル ○○



 2人の服が黒系統なため防具は同じにしました。
 驚くほどファッションセンスが似ている2人。


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