もしも遊戯王GXに転生した奴が恵まれてなかったら (夜想曲)
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テンプレートに乗せられた入学試験
転生者特有の入学試験(なおHardモードな模様)


次にお前は最初の三行で「ハイハイテンプレテンプレ」と言う


「はぁ……」

 

ぱんぱかぱーん。あなたは漫画・アニメ・ゲームの世界に転生してもらうことになりましたー!

とかいう自称神様の巫山戯た文言を聞きつつ、何も無い真っ白な世界で馬鹿そうなジジイと頭の緩そうな女から無理やりくじを引かされ引いたのは「遊戯王デュエルモンスターズGX」。

 

あー、アレな。最初からカードゲームの学校とか頭のおかしい展開になったアニメ遊戯王の方向性を決めつけちゃったアニメな。

いやー遊星が最初と最後にジャンクウォリアーでフィニッシュしたり遊馬が初めて単体シャイニングドローした時の台詞が最終回でも使われてたりする各作品と違ってなー、なんか「このアニメのジャンルは?カードゲーム?」「遊戯王です。」なんだよなー。

 

そんなGXの世界に遊城十代と同じ学年で試験受けてこいと適当な戸籍とカードを渡され現在試験会場。

 

Q.フィールドには相手フィールドに《ブラック・マジシャン》が1体のみとする。相手プレイヤーが《ブラック・マジシャン》で自分へ直接攻撃した際に《魔法の筒》を発動し、相手がその発動にチェーンして《月の書》を発動した。この場合に自分は《炸裂装甲》を発動できるか。また、できる場合はその理由及びその後の効果処理を述べよ。できない場合はその理由を述べよ。

 

覚えてねーよこんな問題!!

聖槍でミラフォ躱そうとした奴にプギャーしながら次元幽閉って出来たんだっけ!?どうだっけ? うん、ぷぎゃりたいからできる前提で書いておこう。理由って何だよ!?

 

Q.自分のデッキは残り1枚、《封印されしエクゾディア》であるとする。自分の手札に《封印されし者の右腕》《封印されし者の左腕》《封印されし者の右脚》《封印されし者の左足》《強欲な壺》が存在する場合に《強欲な壺》を発動できるか。できる場合はその理由及びその後の処理を述べよ。できない場合はその理由を述べよ。

 

あっ、誤字発見。それはともかく、多分「デッキからカードを2枚ドローできない」から不発なんじゃないかな?発動できないっと。

 

そんなこんなで遊戯王とコンマイ語に翻弄されつつ試験が終了。その結果……

 

「受験番号98番、前へ!」

ものすごーく点数が悪かった。何故だ。

試験が残念な結果に終わった原因。それは次の実技試験ではっきりした。

 

試験官が試験用のデッキをディスクにはめる。

「それでは改めて自己紹介を頼む」

転生者特有のデュエルディスクうまくつけられない病と悪戦苦闘しながらこちらも答える。

朝日夕月(あさひゆうづき)です。お願いします」

 

「「デュエル!!」」

 

これまでの試験を見る限り、試験官デッキは攻撃力の高いモンスターをただ立たせるだけの「相手の反応を見るデッキ」のようだ。

勝てないモンスターを守備で出すか、それとも立たせつつカードを伏せるか。魔法カードでパワーアップするのか、カード効果で処理するのか。それぞれの個性を見るための試験らしい。

実際、さっき丸藤翔が負けてた。最終的にはオベリスクブルーを卒業し兄を継いでプロデュエリストになる奴ですらあんな負け方(ジャイロイドサンドバッグ)をする。

 

(ここから回想)

 

試験官「手札をコストにトライス装備!デーモンの斧装備!突進を発動!二回攻撃!」

翔「何か伏せておけばよかったっすー!!」

 

(ここまで回想)

 

それでもレッド寮には入れるのだから、筆記試験の結果でそれほど酷くはなかったのだろうか?いや、成績順だったな。

 

「先行は私がもらう。ドロー!」

という訳で、試験官が先行を取ることになっている。……ここで察しの悪い皆さんですら気付いたことだろう?懐かしいルールの存在に。

 

「………え?」

「私は《ヂェミナイ・エルフ》を攻撃表示で召喚する……何かあるかね?」

「えっ?先行でドロー……あっ、いやなんでもないです」

 

残念なことに俺は今気付いた。

これ、新エキスパートルールである。

 

絆の力、シンクロ召喚!が初実装されたマスタールール。生贄封じの仮面が涙目になる名称変更で数多くの生贄召喚使いがシンクロに逃げた。

かっとビングだぜ、俺ェ!!なマスタールール2。優先権の都合上三幻魔の一つ神炎皇ウリアがその儚い命を終わらせた。

そんで転生の直前では現行であった「いつになったら9期終わるん?」なマスタールール3である。とうとうゾーンを新設しやがった。でも対象の取る取らないがわかりやすくなったのでよしとする。

 

そんなこんながこれからあるにもかかわらず、その全てが時の彼方へと消え去った時代。それがここ「遊戯王GX」の世界である。当然、Pモンスターが破壊されたらエクストラデッキに行くルールも存在しないし、Pゾーンも存在しない。

なので。

 

EM(エンタメイト)モンキーボード》

効果モンスター

星6/地属性/獣族/攻1000/守2400

このカードを手札から捨てて発動できる。手札の「EM(エンタメイト)」モンスターまたは「オッドアイズ」モンスター1体を相手に見せ、このターンそのモンスター及び自分の手札の同名モンスターのレベルを1つ下げる。

 

なぁにこれぇ。




爺神「朝日夕月て」
女神「ナイスネーミング…!(自画自賛)」
爺神「(酷い)で、今回のはなんじゃ?」
女神「はい、縛り内容はこちら」

当時のルールにそぐわないカテゴリ(チューナー、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、及びそれらに関するサポート)はテキストから抹消
白いカード・黒いカード・二色のカードはソリティアモード(観賞用)でのみソリッドビジョン化可能。

爺神「カードパワー的にシャドールくらいなら使えそうじゃの、ファルコンチューナーとして使ってる奴おるん?」
女神「ははっ、何をおっしゃる。使わせるとでも?」


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未来のカードってすごいね!!!(棒読)

当時のカードプールから考えて、どれだけ縛ったとしても汎用カードの差でアニメオリカといい勝負するよねって話

※ミス発覚により一部修正。具体的にはぴょんぴょんしなくなった。


マスタールールが存在しない世界の常識を考えようか。

 

ペンデュラムカード関連の効果はPゾーンが存在せずペンデュラムのシステムも無効。エクストラデッキにPモンスターが行かないためほとんどが無意味である。

ラスターさんやメタルフォーゼあたりの環境を制するディスアド皆無なサーチ効果はほぼ無意味な自殺となる上に「OPED両方に出突っ張りだったクソ猿ゥ!!駄目じゃないかァ!!ちゃんと死んでなきゃァァ!!死んだ奴は蘇っちゃいけないんだよぉぉ!!!」な禁止カードですらこのざまである。

当然シンクロ召喚もエクシーズ召喚も実装されていないので、それらに関するあらゆるカードがゴミと化す。カードをクズの一言で語れる。遊星さんも黙って首を横に振る。

 

「そしてヂェミナイ・エルフに《魔導師の力》を装備する。カードを1枚伏せてターンを終了だ。魔導師の力は自分の場の魔法・罠カードの数だけ装備モンスターの攻撃力を500上げる。ヂェミナイ・エルフの攻撃力は今2900だ」

 

客席から馬鹿どもの「あいつ終わったな」コールが聞こえるが、それ以上の大馬鹿者である俺は終わったビングしていた。いい加減現実逃避をやめて手札のモンスターを見つめてみようか。

 

っ《カゲトカゲ》《チューニング・サポーター》《エフェクト・ヴェーラー》《ガガガマジシャン》

 

わぁい、どうしようもないぞー? ごちゃ混ぜ主人公デッキで俺TUEEEEしようとした奴の末路がこれである。エクストラの白黒枠を確認しようにも召喚条件を満たした(融合召喚した)時でないと開けられない模様。本格的に詰んでる。

 

だがやらねばなるまいよ。この超絶微妙なデッキと化した紙束で!!一応相手も火力馬鹿の紙束だし!

 

「俺のターン!」

ドローカード。頼むからモンスター、チューナー以外で何か来てくれ!

 

増殖するG<やぁ

 

相手通常召喚しかしないんですけど!!?

 

「俺は手札から《ガガガマジシャン》を召喚!」

九十九遊馬くんのデッキにおける便利屋先輩が試験官にメンチを切る。やめれ。

 

「攻撃力1500……装備カードかな?」

「俺がレベル4のモンスターの召喚に成功した場合に手札から《カゲトカゲ》のモンスター効果を発動します!このカードを特殊召喚する!」

「ほう、1ターンに2体のモンスターを並べるとは!」

 

のっぺりとやってくる2次元蜥蜴。いつもだったらこのままはいはいホープからのライトニングさんでぶっ潰すんだが、残念ながらマスタールール2じゃないのでエクシーズは反応してくれません。やっぱ融合デッキ置き場にエクストラデッキに入れるカード突っ込んじゃ駄目か。この時代は。

 

「カードを1枚伏せてターン終了です」

「何?」ざわつく場内。当然だ、ただ棒立ちしてるだけなんだもん。

試験官は少し残念そうな顔をしつつデッキからカードを引く。

「私は手札から《キラー・スネーク》を墓地に送り、《閃光の双剣-トライス-》をヂェミナイエルフに装備する!」

ガーディアンの宿る双剣と言いながら、姉妹がそれぞれ1本ずつ細身の剣を手にする。まぁ、二回攻撃ならそうなるか。

「さらに装備魔法《メテオ・ストライク》を装備。これにより守備モンスターへの攻撃には貫通能力が伴う」

貫通効果。いい加減公式ルールに記載してもいいんじゃないかな?直接攻撃は長ったらしい文言無くしてるんだし。

「トライスのデメリットとして攻撃力は500ダウンするが、それと同時に魔導師の力によって攻撃力は500加算される。さらにもう1枚装備カードが増えたことで攻撃力はもう一度500が加算され3400となった」

 

本格的にやばめー。もう負けでもいいんじゃないかな?

「それではバトルだ。君の唯一伏せたカード……どんなトラップなのかを見せてもらおう! まずはヂェミナイエルフでカゲトカゲを攻撃!」

 

さんぜんよんひゃくひくせんごひゃくが2回。合計のダメージは?

「200しか残らん。流石に止め…はできませんけど、《マジック・ディフレクター》を発動。このカードは発動ターン中のあらゆる装備魔法・フィールド魔法・永続魔法・速攻魔法の効果を無効にします」

 

お姉ちゃんの剣がすっぽ抜け、カゲトカゲにサクッと刺さる。戦闘破壊のエフェクトが起きるが、後ろの妹さんはポカーン顔である。

 

「何……!?」

「この効果によって、試験官さんの装備カードはこのターンのみ全ての効果を失います。魔導師の力もトライスの連続攻撃もメテオストライクの貫通もぜーんぶ無効です。攻撃の順番次第では400ダメージを受けてましたが」

 

ガガガ先輩がジト目でトライスの突き刺さったフィールドを見る。姉エルフはそそくさと引っこ抜くと、相手のフィールドに戻っていった。くっころ赤面おいしいです。

 

「くっ、仕方ない。手札を1枚セット。これでターンを終了する」

 

これで試験官さんの手札はゼロ。対してこちらもまともに使えるカードはゼロ。というかバニラビート相手にチューニング機能のないヴェーラーって何ができるんだよ……




女神「縛りついかー。カテゴリデッキで戦おうとすると精霊たちがみんな足を引っ張り合います!」
爺神「凡骨バニラワイアームは?」
女神「フュージョンゲートも凡骨の意地もデッキの真ん中。天変地異にすら頼れない」

女神「何間違ってんのよ。まだ終わってないのがバレるじゃないの」
爺神「次回との矛盾が回避できなかったので幽鬼うさぎにはデッキの底に沈んでもらいました」
女神「剪定事象により抹消された手札に加わっていた可能性の幽鬼うさぎ……」
爺神「最近の陰陽師?はサイキッカー扱いなんじゃの」


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すみません、まだ5ターン目なんですよ

原作ではこのくらいで決着してた。他のオリ主がチート(みらいのちから)を使うと後攻ワンキルがまかり通る。
つまりはこの主人公がその程度という証拠である。


相手のターンが終了したことで《マジック・ディフレクター》の効果は終了。ヂェミナイエルフの攻撃力は一気に先ほどの数値にまで跳ね上がる。

というか伏せカードが2枚に増えたことで3900まで上がりきってる。フィールド魔法とPゾーンがあったらさらに増えるけど多分これがマックスだ。

 

「ドローフェイズ、カードを引きます…手札抹殺を発動。互いの手札を墓地に捨ててドローをやり直します」

「待ちなさい。その発動に対して永続罠《魔力の棘》を発動する。手札から墓地に送られたカード1枚につき500のダメージを相手に与える」

「なんかちくちくするんですけど」LP:4000→2500

「随分と感受性が豊かなんだね」

このやろう。

 

うん、いい手札だ。この手札であのお姉ちゃんをいたぶるには……よし、削ぎ落とそう。

「まずは手札から《静寂のロッド-ケースト-》をエルフさんに装備します。この効果によりケースト以外の魔法には見向きもしなくなります」

「何っ!?また私の装備カードを……!」

双剣や隕石的なオーラ、背後のおじいちゃんたちの応援などをばたばたと取りこぼしていくエルフ姉妹。一本の棒にひたすら縋り付くその姿はどう見ても発禁モノ。ホントはこのカード、クリスタルウィングあたりに付けると割と強くなるんだけどね。続けて場を処理する。

 

「そしてガガガマジシャンの効果を発動。自身のレベルを1〜8の好きな数値にします。7にして、除外コストにします。《七星の宝刀》を発動し、デッキからカードを2枚ドロー」

周囲からは「なんで強欲な壺を使わないんだ?」の目線。マスタールール3仕様で組んでたから入ってないんだよ!!

 

さて、残り手札3枚。都合良く打点の高いのがいたので場に出してみる。

「どぐうを召喚。」「なんだって?」「いや、《どぐう》です。ホントに。カード名ひらがな3文字」

なんか「はにわ?」って声が聞こえたけど「違います」と答えておいた。攻撃力1900。同じ数値なら手札の差で勝負が決まる。

 

「どぐうでエルフさんを攻撃だ!相打ちなら手札の質次第で勝てる!」

「聖なるバリアミラーフォースを発動」

「おうふ」

 

悲しいかな、土偶は爆発四散。粉々となってしまった。

 

「えー、モンスターの召喚に成功しているターンに手札から《ワンショット・ブースター》を特殊召喚できます。守備表示で場に出しつつ手札を1枚セットしてターン終了です」

「それでは私のターン……ん?」

砕けたどぐうがカタカタ音を立てる。

 

「ただ、エンドフェイズにどぐうの効果を使いますね。相手の効果によって墓地に送られたターン終了時に発動して、自分の墓地や場にいないレベルのモンスター1枚をデッキから持ってきます」

「基本的にレベル4はサーチできないということか……他の制限は?」

「ないです。なのでとりあえず上級モンスターでも拾いますね……あ、やっぱレベル3のイルミラージュで」

「私のターン。試験官としてこんなに長引くデュエルは初めてだぞ……?」

 

* * *試験官の目線でみてみよう!* * *

 

私はしがない試験官。デュエルアカデミアの教職員ではなく、アカデミアに雇われたいわゆるアシスタントである。

自分と同じ立場の人間は数が多く、毎年恒例の同じようなデッキと職員の方からのアドバイスを元に入学希望者たちとデュエルをするように言われている。

 

デッキの内容は単純明快な装備ビートである。攻撃力が高めのモンスターが多く入っているため、先行1ターン目で召喚するようにとのこと。なるべく攻撃力を上げて、次の相手のターンには攻撃反応系の罠カードはなるべく使うなとのことである。

装備魔法で固めたモンスターを相手に受験者たちがどのような判断を下し解決していくかを判断基準としているらしいので、実技試験でよほど馬鹿をやらかさない限りはアカデミアへの入学は確定する。

 

で、今日自分が担当した受験者たちだが。筆記試験を突破したとはいえ成績順に下から始めているせいか、あまりパッとしない印象だ。

例えば119番の子は攻撃力の低いモンスターを立てただけでターンを終了している。守備表示で出せば《シールドクラッシュ》の危険があるとはいえダメージを受けたくなければ横にしておくべきだ。

試験会場の横には校長先生を含む職員の皆さんが観覧しているほか、試験官と受験生のデュエルを採点するための試験官も実技試験官1人につき3人いる。彼らに確認を取ると、「構わん、やれ」とのことである。

伏せカードもないので次のターンで色々と強化しつつ倒させてもらった。とはいえ少しライフが残ったので一応可能性を見ることに。

「僕は《パトロイド》を守備表示で召喚……そして装備魔法《ミスト・ボディ》を装備して攻撃を防ぐ!」

あとはレッグルさんに任せた。

 

そんな感じで試験の点数がそれなりに悪かった受験生は内向的な子が多い。相手がモンスターを召喚する前に壁モンスターに《城壁》を使ってわざわざ突破点数を教えてくれたり、倒す手立てがないのに攻撃力の劣るモンスターだけを、しかも攻撃表示で出したり。戦術的なものは皆さんお粗末である。

 

「あれ?受験番号110番は?」「さぁ?遅刻だったら職員の人達に連絡が行ってるだろう」

 

ようやっと100番代が終わり、防御札を使ってた1人か2人は健闘してたかなといったところでこの受験生である。

朝日君。受験番号98番というギリギリラーイエローにどうなのかなーという点数である。上に行くならデュエル次第だが……と思ったが、

 

「ガガガマジシャンを召喚!」

 

気のせいだったらしい。攻撃力2900のヂェミナイ・エルフを相手に下級モンスターを攻撃表示。増強もせず伏せカードも1枚だけとは。モンスターを展開したことは褒めたいが……

採点担当にアイコンタクト。やっちまえとの指令。残念だが彼の行く先はレッド(ていへん)自宅(ろんがい)か。

 

……そう思っていた時期が、俺にもありました。なんだこの展開。

 

「このスタンバイフェイズにキラースネークが回収できるが…このままでは動かないな。《マジック・プランター》を発動。魔力の棘をコストに2枚ドロー…まずはそのあからさまなトラップを除去させてもらう。速攻魔法サイクロンを発動!」

「破壊対象のをチェーンしまーす。速攻魔法発動!《ドロー・マッスル》!このターン守備力1000以下のモンスター1体は戦闘破壊されません!あとついでにカードをドローします」

「ならば《マッド・デーモン》を召喚する!このカードは相手モンスターへの貫通効果を持つ!」

「好きですねー、貫通(それ)。でも攻撃されたら寝ますよね?」

「どうせこのターンでの破壊は無理なのだろう?ならばそれでいいさ。マッド・デーモンでワンショット・ブースターを攻撃!」

「戦闘破壊はされませんしダメージも受けはしますがライフポイントは渡しません。自分が戦闘ダメージを受けた時、手札の《BK(バーニングナックラー)ベイル》のモンスター効果を発動!こいつを特殊召喚し、受けたダメージはそのまま回復する!」

 

大盾を構えた拳闘士が突如現れる。しかもライフを元に戻すだと?

LPが2500→1700→2500で変化。これはやはり選択を間違えたか。いや、仮に貫通効果を与えるカードを引いたところで静寂のロッドの効果でヂェミナイエルフには使えないか…

採点担当もゴシゴシと最低ランク付けを訂正し、やけに長いデュエルの経過を見守る。というか既に他の班では90番代が終わっていた(ありがたいことに、自分が担当する受験生も他の実技担当官がやってくれたらしい)。

 

…そのまま80番代を始めてもいいのよ?




女神「とりあえずつまんなかったから相手目線ー」
爺神「1話で1ターンかけてものぅ…」
女神「あーほら、もう80番代の試験始まっちゃったよー」
爺神「十代は電車の遅延証明を貰ってる頃かのー?」
女神「十代くんは先行取って3ターン目で決着つけたんだよねー」
爺神「十代、クロノス、十代、クロノス、十代な」


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互いにハンドレス状態だ……この意味がわかるな?

泥仕合になった時に限ってデッキの質が問われるって話。ロマンを求めてると手札一枚じゃなんもできねぇってリンクス環境で学んだ(学習はしてない浪漫厨)


さて。

あの後ベイルがエルフさんに殴られた結果、俺の持ち札は手札にイルミラージュ(チューナーとして使えない)と場にはブースターのみ。殴られたら寝る虚弱体質のデーモンをワンショットで倒す手段を取ってもいいが……しかもシンクロもエクシーズも出来ない以上レベル4モンスター引いたところでクトグアS(シンクロ)召喚からのランク4で追加ドロー(クトグア効果発動)もできない。

だが相手の場にもエルフさんと虚弱体質のみ。手札はキラースネークだけだから、次のドローで何か引けばうまくいくかも?

 

「まぁドローしてから考えるしかないよな、ドロー!…おっ?」

よし来た。結界像やらパキケファロやらで特殊召喚を封じる相手に一矢報いる上級モンスター!

「俺はワンショット・ブースターをリリー…ぃけにえに、《魔装戦士ヴァンドラ》を召喚!このカードは直接攻撃できる!」

「攻撃力2000で直接攻撃だと!?」

 

これぞモンスターを殴っても反撃を食らうなら直接プライヤーを殴ればいいじゃない作戦の要となるモンスターである。なお奈落には落ちるし強制的に脱出もさせられる模様。

 

「ではさっそく。ヴァンドラでエルフさんに攻撃!」

「ぐっ、直接攻撃はしてこなかったか!」LP:4000→3900

 

ようやっと初ダメージ。だが攻撃力1800だと適当な装備カードで超えられる打点である。となると、ケースト装備してて増強できないエルフさん残しておいたほうがよかった…?あれ?

 

「まぁ気にしない方向で。知ってのとおり手札はモンスターなので伏せカードは出さない。ターン終了!」

「私のターン!……《ゴブリン突撃部隊》を召喚」

「げっ」

 

水星4×2から出てくる危険生物mochi(カエル)。その打点を悠々と上回る23打点の使い捨て集団。手札の少ない現状倒せなくはないものの割と困った存在だ。

「突撃部隊でヴァンドラを攻撃!」

「何が嫌ってヴァンドラの効果発動対象(墓地に魔法使い戦士ドラゴン)がいないんだよなぁ!!」

アワレ!龍装の青い戦士は雇われのBANZOKU達にリンチされてしまった!

 

「攻撃後、突撃部隊は守備表示となり次のターンが終了するまで攻撃表示にすることはできない。マッド・デーモンで直接攻撃!ターン終了だ」

「ぬー、めんどい。ドローします」

さーて残りLP700だ。昼夜の大火事とかご隠居の毒薬だばぁで即死亡だ。とはいえ引いたカードでどうにかなりそうなのでイルミラージュはちょっと待っててね。

 

「カードを1枚セットして終了です。試験官さんのターンですよ?」

「わからん……伏せカードに自信があるのなら何故さっきサーチしたモンスターで攻撃してこないんだ…? ドロー、暗黒の狂犬(マッドドッグ)を召喚!」

おおマロンよ。こんなに厳つい姿になってしまって……メカメカしくなるよりはマシか?

 

「壁モンスターを出さなかったことからミラーフォースではないと判断させてもらう。暗黒の狂犬でダイレクトアタック!」

「もちろんトラップを使います。《量子猫》を特殊召喚!発動後モンスターになる(トラップ)モンスターの1種ですね。なおステータスについて種族と属性は自由に決められます」

「守備力2200か……ターンを終了する」

「ホントに互いにドロー勝負になりましたね……ドロー」

エルフに狂犬。やっぱり下級の打点は最高で19がデフォルトらしい。デーモン(貫通持ち)ゴブリン(使い切り火力)みたいな例外を除けば、攻撃力や効果は装備カードで補うデッキのようだ。

しかしこのターンでゴブリンを倒しておかないと起き上がって危ないので、仕方なく攻撃しよう。

 

「手札からイルミラージュを召喚!このカードは場に存在する限り、互いの場のモンスターの攻撃力・守備力を自身のレベル×300下げる!!」

「何っ、全体弱体化だと!?……なるほど、私のモンスターは軒並みレベル4の攻撃力1900。レベルの300倍下がればそのウサギと同じく700になるという訳か。ちょうどデーモンでは100足りなくなるが、壁がいなくては迂闊に出せないな、それは」

「なんかきゃーかわいーとか言ってる外野もいるけど気にしてはならない。なんで伏せカードを出しつつも守備力ゼロの蛮族集団にイルミラージュでアタック!秘技・くびかりうさぎ(ヴォーパルバニー)!」

 

的確にそのツノでゴブリン達の首を切り裂いていくうさぎ。観客席にいる女子はデストーイを見た幼女のごとく一瞬黙り込む。女の子達が黄色くない悲鳴をあげつつターンエンド。教官はドン引きしていた。

 

「おっそろしいことして……それ本当に獣族か?私のターン、ドロー」

幻竜族だけどね。この時代に存在しないけど。サイキック族みたいに。

 

「ふむ…こんなに時間がかかる受験生は初めてだ。去年は受験番号30番代を担当したが、これほどまでにデュエルが長引いたことはなかった」

「お褒めにあずかり光栄です?」

「褒めてるつもりではある。だが、ここまでのようだな。マッド・デーモンを生贄に、《偉大魔獣 ガーゼット》を召喚する!」

 

ゴゴゴゴゴと音を立てながら、攻撃力3600の魔獣が眼前に立ちはだかった。……あ、イルミで2100下がってるな。




女神「ブルーは試験免除っぽいよねー、観戦してるし」
爺神「こんなんだから雑魚ばっかになるんじゃ」
女神「そして転生者チートによるブルー狩リンチが捗る」
爺神「レッドは初めから心が守備表示じゃからなぁ」
女神「やっぱ実力的にはラーイエローが1番か。神のランクと同じく」
爺神「ヲーとは違うのだよ、ヲーとは」


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GXのソリッドビジョンってモンスターが割とリアルだったよね

確かポリゴン状にバラバラになるのは5D'sからだった気がする。そんな話


攻撃力3600打点。そんなことより横のワンコがとても怖い。なおくびかりうさぎのお陰で打点は割と下がってます。

 

ガーゼットが3600→1500、狂犬(わんこ)が1900→700、うちの猫は2200から1000の壁となっております。

イルミラージュ先生の1600打点はやはり素敵。700って意外と超えられないのね、エクシーズがなければ。

 

「ガーゼットの攻撃力は生贄召喚に使用したモンスターの攻撃力の倍となる!よって、その攻撃力は」

「イルミラージュの効果で2100下がって1500ですね」

「……に、なるな。なんかそんなたいした数値でもないように思えてきた」

試験官さんや、それ正解でっせ。昨今は打点より耐性が重要視されつつあるけどやっぱレベル4が2体いたら4999までは殴り倒されるし耐性なければ邪神ドレッドルートですらライトニングディスオベイだからな。うん。裁定とかようわからん。コンマイ語ヨクワカンナイヨ。

 

「だが、ガーゼットでイルミラージュを攻撃すれば800のダメージで残りライフ700の君は負け、デュエルは終了となる。君の伏せカード次第だがな……」

「長引いてお疲れなら発動せずに負けてもいいんですよ?……合格さえしてれば点数はあまり気にしませんし」

「いや、そこはちゃんと全力を尽くしてほしい。既に周りが60番代のデュエルを始めている時点でこう言うのも不謹慎だが……何故かな、君とのデュエルが楽しくなってきたところだ。次は何を見せてくれるのか正直期待している」

 

ほほう。

「ならば期待に応えて見せましょう!……あ、まだそっちのメインフェイズでしたね」

「やはり締まらないな……さて、このままバトルフェイズに入ろう。ガーゼットでイルミラージュを攻撃する!」

 

うさぎに怪物が飛びかかってくる。周りの女子がキャーキャー言ってる。

知るかそんなこと。

「伏せカードをダメージステップで使います。速攻魔法《禁じられた聖杯》、対象はそっちのガーゼットで」

「……見たことないカードだが、こちらを対象にするのか?ダメージステップということは攻撃力の増減だろうが……」

「あー、このカードはモンスター1体の攻撃力を400上げます」

 

魔獣の頭の上からせいはいくんが落ちてくる。まずは杯がガーゼットの眉間にクリーンヒット。

 

「それではただの自殺行為ではないか!?」

「打点はアップします。が、その代償として……」

 

中身がバッシャァァァして、頭にかかった瞬間……ガーゼットの身体が溶けた(・・・)

 

「な、何ィーーっっ!!?」

「効果が無効になります。なんで攻守0になって400アップの……なんだこのエフェクト!!?ソリッドビジョン怖え!!!」

試験官は5D's期のカードパワーに驚き、俺は冒涜的なバーチャルリアリティ映像にガチでビビる。その中で恐れ知らずのバニーが早すぎた巨神兵(くさったドロドロ)にダッシュで向かい、

 

「………。」(試験官LP:3800→3500)

「………。」(主人公SAN値:12→5)

「………。」(観客女子のテンション降下:プライスレス)

 

お前ホントすげーわ……ワムウのファイナル流法(モード)みたいにツノから風みたいなオーラ出してズバーザバーって……語彙が足りねぇ。

 

「……あー、ターンエンドでいいかな?」

意識を取り戻した試験官が犬と兎のじゃれあいによるスプラッタ映像を嫌ったためか、そのままターンをよこしてくる。遅れてこっちも正気度を無理矢理回復させデッキからドロー。

 

「では今ドローした《戦士の生還》でヴァンドラを拾います。猫生贄で召喚して、イルミでわんこに攻撃しまーす」

「デュエル的にはわかるが正気か!?」

観客からも「嫌ァァァーーー」「やめてー!スプラッタ嫌ァー!」の声。幻竜ってそんなに荒っぽい種族だったのか?

願いが通じたのか、イルミラージュさんはわんこを串刺しにすることなく蹴っ飛ばして自らも場外に。ありがとう、俺のモンスターよ。

 

「そしてヴァンドラで試験官さんにダイレクトアタックです!」

「……、これは…参ったかな?」(LP:3500→1500)

 

案の定、次のターンで試験官さんがドローしたカードは《ブラッド・ヴォルス》。装備カードがなくヴァンドラを倒せない時点で勝敗は決定した。

 

「お疲れ様でしたー。長々とすみませんね、ホント」

「いやいや、こちらこそありがとうだよ。試験官としてまるで作業かのようにデュエルをし続けていたが……試験用デッキでもこんなに楽しいデュエルができるんだな」

「あー、見てる側からしたらエンタメ的にはどうかと思いますがね……ソリッドビジョン担当ってKCに問い合わせればいいんですか?」

「はは、そこらは入学してから教授を通して委員会に投げた方が通りやすいんじゃないかな? それじゃ、後日合否の連絡が行くだろうからそれまで待っていてくれ。合格していた場合の制服サイズは……Mでいいかな?」

 

そして気が付いたら校長がどっか行ってて(遅刻連絡が駅から入ったとか?)クロノスvs十代のデュエルを見る。元祖スカイスクレイパーシュートはやはりかっけえ。

……ところで、俺のデュエルは初期クロノス先生からはどんな印象だったんだろうか? 適当な汎用カードを渡して聞いてみるか。

 

* * *

 

不合格通知が届いた。ナンデ!?




女神「」
爺神「」
女神「調整ミスった?」
爺神「合格にしたはずなんじゃがのう?」


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幕間。というかデッキ調整

続くと思ったか!?俺も思ってなかったよ!!
「Q.1発ネタですか?」「A.いぐざくとりー」な筈だったのに!


ぶっちゃけ、試験に落ちるとは思ってなかった。

 

「なので本気でビビりました。書類不備と配達ミスが重なるとかアカデミア運営はどうなってんですか」

「まぁまぁ、こうやって色々と持ってきてもらったんだしいいじゃないか」

 

例の不合格通知。何故か不合格書類の裏に「合格しました」通知が重なってて、どっちなんだと一晩悩んでました。しかも合格者向けのアカデミア制服+学校指定ジャージ&デュエルディスクのセットが郵送されてこなかったので、これは不合格だったかと半分諦めてました。

今日こうしてアカデミアからの連絡員が来るまではガチで神の無能さを祟ってました。こんにちは、朝日夕月と申します。一応主人公です。

 

ちなみに、この連絡員はまたも雇われな先日デュエルした試験官さんである。作業服の胸のとこには「沢渡」と書かれている。……だからエンタメに共感したのか?

 

「ところで沢渡さん、荷物の郵送っていつになります? 船についてはチケットが取れないでしょうし、せめてそっちの時間だけでも知っておこうかと思って」

「ああ、制服やディスクなどの荷物は郵送せずアカデミアで保管するらしい。つまり今は、既にあっちに向かった連絡船以外でアカデミア行きが可能な船を捜してる最中ってとこだな」

「それ都合が付かなかったら連絡船待ちですよね……転入生呼ばわりされません? 既に入学式からは省かれて授業も数日は取り逃しそうなわけですし」

「そのための教材だろう? 1年生が行う授業のテキストだけはさっき持ってきたじゃないか」

 

不合格通知を混入させた詫び状代わりなのか、授業が遅れることを踏まえてなのか。連絡員(沢渡さん)には数学や化学などの一般的なテキストに加え、デュエルモンスターズに関連するらしい古代史や錬金術などの教科書も持たされていた。あとはデュエルモンスターズのルールブックとか。

 

「そうは言っても。そんなの船の中で読めばいいじゃないですか? ましてや数学とかは割と覚えてますし。微分とか」

「それ高校1年生の内容じゃないよな……?」

知るか。こちとら転生者だ、高校数学どころか大学は既に通り越している。事故でも自殺でも過労でもない何でかは知らないがなんか死んだ奴だ。死因なんぞどうせ無能神が手を滑らせたとかだろうし、糾明はしないでおいてやるからとっとと船を寄越せ。

 

「しっかし、随分と落ち着いているな。試験に落ちてたらどうするつもりだったんだ?どこか他の専門学校でも受けてたとか?」

「いえ、中卒でも割りの良いバイトがあったので」

「無計画すぎねぇ!?せめて滑り止め受けとくとかさぁ!!」

だって神が無能すぎんだもん。

 

何はともあれ、このまま沢渡さんが暇してるのもなんなので、テーブルですまないがデュエルでもしませんかと誘ってみた。ノリの良い返事だったと言っておこう。

 

「ところで、この間のデッキは何をコンセプトに組んだものだったんだい?」

「あー、実はあのデッキ気付いたらコンセプトが崩壊してたのでもう崩してるんですよね……」

シンクロエクシーズを見せびらかしてヒャッハーするデッキだとは口が裂けても言えない。

 

テーブルを用意し、デッキを2つ。転生者宜しくカードだけはいくらでもあったので、自分の境遇を知る為にちょっと2つほど組んでみた。何故あのような事故が起こったのか。

 

「…沢渡さんはデッキ持ってるんですね」

「一応アマの試合には出たりするんだよ。腐ってもアカデミアスタッフだぜ?」

そう言いつつ、お互いのデッキをカット&シャッフル。

 

「それじゃこちらの先行で。ちょっとデッキタイプを試してみたいので別デッキも含めてマッチお願いできます?」

「んー……船が見つかったら荷物纏められるか? 時間が許す限り付き合うぜ?」

「持ってるカードは全部詰め込んで、残りはこの80枚だけです。それじゃドローしますね」

 

1つ目のデッキ。今や懐かしい【ライトロード】デッキである。しかもシラユキ入れて殺意と邪魔っけをマシマシにしてみた。

 

「………手札事故が起こるデッキ構成にした俺が悪いのか?」

 

《同胞の絆》《アーチャー フェリス》《ビースト ウォルフ》《裁きの龍》《裁きの龍》

っ《死者蘇生》←NEW!

 

「ターンエンド……なんかもうデッキ交換したらそっちのワンキルが横行しそうなデッキ構成の筈なんですが、なんんやこれ」

「そんなに酷い手札なのか………正直言う。すまない!ドロー!《モンク・ファイター》を召喚し、生け贄にして《マスター・モンク》を特殊召喚する!」

 

何で岩石族?の代表三人集の二人が登場。もう一人は砂の魔女(サンド・ウィッチ)な。

 

「装備魔法《覚醒》を付けて攻撃……手札から何もなければワンターンキルだが……」

「それじゃあ2戦目行きましょうかー」

「ちょっと待て手札見せろォ!!」

 

2戦目、光の援軍でライコウが全滅。攻撃力がちょっと高いだけで手札にオネストもいないガロスさんは岩石族のおっさんどもに殴られて全身複雑骨折に終わりました。

 

「はい、次のデッキ行きましょ」

「そんなに酷い事故って、どんなデッキだ?見せてみろ………なんだこのインチキカードは。このデッキで負ける理由がわからねぇ…」

GX末期のカードプールと9期ぱうあーだからな。そりゃ強いよ。使えればだけど。

見たこともない強カードの束になのか、それを上手く回せないとのたまう俺の運の悪さになのか、閉口する沢渡さんを無視して、2つ目の紙束をシャッフル。

 

2つ目のデッキ。今回は、むしろネタ寄りに組んでみた。カテゴリ同士のシナジー溢れる関係性に物凄く嫌われてるらしいので、「カテゴリ名でサーチor特殊召喚」「カテゴリ特化したサポート」を意識して除外し(ぬい)てみた。

 

「ドロー、《格闘ねずみ チュー助》を召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」

「俺のターンですね……《プリミティブ・バタフライ》を特殊召喚。そして手札から《孵化》使います」

「レベル5で特殊召喚できるモンスターか……ステータスは低いがそうやって使うんだな。レベル6、何出す?」

「《女帝カマキリ》で。あと地属性使うって知ってたら構成変えてましたごめんなさい。《ブレードフライ》召喚します」

「ちょ」

 

風属性・昆虫族をメインに組んだデッキ。初手から攻撃力2700を出せる程度には普通に回る以上、どうやら俺が嫌われてるのは正真正銘「カテゴリ」の存在らしい。【シャドール】も【ジェムナイト】も、俺がGX舞台で派手に暴走できる融合メインデッキを組んではみたが、どれも初手6枚~7枚の時点ではまともに動くこともままならない状態だった。

しかも、半公式にカテゴリ扱いされている地属性・機械族・レベル10(れっしゃ)とか守備表示強要蜘蛛(スパイダー)とか光属性・雷族(サンダー一家)とかは全滅。一応動けはするが完全にエクシーズを必要としているし、スパイダーは攻め手が見つからない(フィールド魔法もUruもデッキの底)。

 

「チュー助に攻撃したいんですが、こんな序盤で《孤高の格闘家》使われると厄介なので《撲滅の使徒》で」

「凄い推理力だし正解だがひでぇな、次のドローでブレードフライどうにかできなきゃ負けたぞ?」

 

シナジーっぽいものがギリギリ見えそうな風昆虫。この程度ならばカードに嫌われることはなさそうだ。が、パワーが足りない。

1戦目はそのままごり押しで勝てたが、次のデュエルでは華麗なる孤高の黒帯格闘家ゴッドハンドスマッシュを受けモンスターが全滅。さらにマッチ戦最後のデュエルでは折角出した《デスサイズ・キラー》が《伝説の柔術家》に投げ飛ばされる始末。

 

9期のカードパワーがなければ生きていけず、そして9期のカテゴリ間における繋がりやすさナンバーワン仕様はむしろ俺の首を絞めることになるだろう。

……俺がアカデミアに持って行くデッキが決まったようだ。




駄神ズ「「いやだって普通にやったら他の作品と同じで十代と絡んで万城目と馬鹿やってではじまるじゃん」」
女神「いやまぁどうせレッドに入るのは決まってるけどね?」
爺神「ぶっちゃけ飽きとるじゃろ、そんなテンプレ」
死神「なおテンプレから外れた作品が叩かれなかった時代が無い模様」←NEW!


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海の上、男が2人。何も起こらないはずもなく……
積極的に王道を往かないスタイル


アカデミアに辿りつく前に一悶着あったらいいんだけどね……もう問題あった後だし、この後は解決編しかないよね、しょうがないよね、って話


クソ神という名の存在X及び駄女神という名の存在Yに対し仕事しろと脅迫したお陰か、都合良く連れてってくれる船が見つかったようだ。

気前のいいおっちゃんの名前はアナシス。世界の海を股に駆ける大商人とのこと。

 

「ガハハハハ!!おめーら、アカデミア入学試験に通ったのに不合格通知貰ったんか!!そりゃおもしれぇ、教育委員会を脅してなんかええもん貰えんか?」

「いや、ダメっしょ。学内では現金よりもDP(デュエルポイント)の方がメインだ。詫びにしたって適当にDP渡されて手打ちなんじゃないか?」

「沢渡さん打ち解けんの早すぎません?」

 

我らは今海の上。食べ物や生活物資を運ぶ連絡船とは別に「何か買ってくれるかもしれん」とアカデミアに向かう商船にお邪魔して、おぼろろろろ。

 

「うわー、やっぱ海は駄目か? 酔い止めなんて持ってないぜ?」

「なっさけないやっちゃのー、決闘者(デュエリスト)ならバシッと決めろっちゅーのに」

「身体的には一般人ですよろろろろろ」

デュエルマッスルとか頭おかしいと思ってた奴等、アレガチだよ。聞けばアカデミアには火山とか樹海とかあるらしいし、そもそもデュエルディスクって意外と重いし。色々と生き残るには体力必須だよ。三期の砂漠サバイバル怖いし。

マリクさんが「意外と軽いな」って言ってたのは予想と比べて相対的にって意味だよ。本質的には重いよ。

 

* * *

 

ようやく落ち着いたところ。アナシスさんと沢渡さんはなんかデュエルしてた。あー、やっぱセブンスターズ編で出てきたおっちゃんじゃないか。

 

「《暗黒大要塞鯱》で直接攻撃!これでお仕舞いだっちゅーの!」

「おおっと、伏せカードを忘れちゃいけないぜ?《岩投げアタック》!デッキの岩石族を墓地送りにして相手に500ダメージ!そして墓地送りにした《リバイバルゴーレム》は……お、気が付いたか」

「おかげさまで。アナシスさん、あと何時間くらいで着きますか?」

「んー、さっき自動操縦にして部下に任せてきたんだが……四、五時間くらいだっちゅーのよ?」

相変わらずの使いにくい死語尾を使うおっちゃん。しかし、まだかかるか。

 

「ところでおめーさんはデュエルせんのか? こっちはたった今俺の攻撃で華麗に勝利を収め……てあれえええ?」

「あーそうそう。リバイバルゴーレムはデッキから墓地送りになった時に手札かフィールドに現れるモンスターだ。守備力はあんたの鯱と同じだから破壊できねーぜ」

「ちょっち待て小僧! おめーとのデュエルはこの岩小僧を倒してからだっちゅーの! カードを1枚セットして終了じゃ!」

おっちゃんのデュエル観戦。なお沢渡さんのが有能な模様。以下ダイジェスト。

 

「俺のターン、まずは墓地の巨大ネズミをゲームから取り除き、《ギガンテス》を特殊召喚だ!さらに鯱に《ビッグバン・シュート》を装備!そして《破壊のゴーレム》を召喚! バトルだ!」

「ガーッハッハ、わざわざ強化までしてくれた大要塞に攻撃するか。ならば返り討ちだっちゅーのよ!」

「だが、ギガンテスの効果だ。戦闘で破壊されたら魔法・罠カードを全て破壊する!」

「さっすがー、沢渡さん、大嵐っすよ?」(←俺)

「そしてビッグバンシュートが消えた事で装備モンスターは除外される。すかさずダイレクトアタック!」

「ぐぬー、もう一回!もう一回デュエルしろっちゅーのよ!油断しなきゃ勝ててたっちゅーの!」

「最後の伏せは?」

「スピリットバリアじゃ。要塞を抜けてくると思っとった」

「流石の俺も試験以外で直接攻撃でトドメってのはやらないっすよ。目の前から正々堂々とぶっ倒すか、姑息な戦法で時間稼ぎしつつ一気に打ち崩すか。じゃないと楽しくないでしょ?」

「んー、それもそうだ。なら大人しく負けを認めて次は小僧とデュエルっちゅー訳だ。デッキの準備は出来てるな?」

 

あ、ダイジェストが終わったようだ。折角モノローグせずに済んでいたのに。

さぁて、デュエル中にまた酔ったら即サレしよう。まずはデッキの(俺との相性の)試運転だ。




女神「ノーコメントで」
爺神「コメントを控えさせてもらう」
死神「お前らもうちょっとデュエル楽しみだなーくらい言えよ」
駄神ズ「「え、こいつのデュエルが楽しみになるのお前くらいじゃね?」」
死神「ぶっころ」


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デュエル構成がめんどい貴方へ送る、さいきょーのぶっぱ性能カードについて

ファンカスノーレとか、混沌帝龍ヤタガラスとか、そういうのって墓地に突破カード1枚あるだけで割とどうにでもなるよね(by征竜)、って話……ではないな。うん


甲板に出てディスク使えとか言うおっさんの勢いを「まだ持ってないから」の一言で鎮めつつ、新たなデッキを手に取る俺。そこで何故か沢渡さんが耳打ちをしてくる。

 

「……まさかとは思うが、海デッキだからと言って《リトル・キメラ》メインの炎属性獣族デッキじゃあるまいな?」

「そんなピンポイントなことめったにありませんよ。ただなんか楽しそうだったのでそのアイデアいただきます」

「畜生余計な一言を!」

「あーほらさっさとデュエルデスク(・・・)を構えんかい!なんてな!」

 

席に着き、互いのデッキをカット&シャッフル。

自分のデッキをでんと起き、おっさんはちょいとコインを出した。500円玉?

「なぁ、物は相談なんだが……先行くれんか?」

「まさかの買収ッ!?」

このタイミングで来んのか!?というか、うん。まぁ。

 

「コイン一個じゃ人命も買えませんよ? まぁ貰いますけど」

「それじゃ先行いただきだっちゅーのよ。ドロー!いきなり行くぜ、《マーメイド・ナイト》を召喚し《大波小波》を発動! 自軍の水属性モンスターを全て破壊し、手札からその数まで水属性を新たに召喚する!」

 

ソリッドビジョンがなくてよかった、ほんとうによかった。こっちに影響がないとはいえ津波はちょっと恐怖を感じる世代なのでな……あれ、アカデミアって地震きたら噴火とか津波とか危なくね?

「この効果で《海竜(リバイアドラゴン)-ダイダロス》を特殊召喚じゃ!」いきなし切り札かよ。

 

沢渡さんも違和感を覚えたせいか、デュエル中に横槍を入れてくる始末だ。

「なぁ、おっちゃんよ。そのカードは《海》をコストにフィールド破壊(ぶっぱ)する効果だろ? 先行取った意味あるのかよ? 後攻で一気に攻めた方がいいんじゃねーの?」

ある意味当然の疑問に、怪しげな笑顔で返すおっさん。そういうぐふふな顔はヤメテホシイナー。

 

「ぐっふっふ、それが意味は大有りだっちゅーのよ。このカードを特殊召喚すればな!ダイダロスを生け贄に、《海竜神-ネオダイダロス》に進化させる!そして当然《伝説の都 アトランティス》を発動ォ!」

おお、十代戦では出てこなかったストラク販促カードじゃないか! 確か破壊じゃないからミドラーシュもイチコロなんだっけ?(ミドラ下で出せるとは言っていない)

 

「おいおい、そんなの聞いてないぜ? アトランティスが『海』扱いだから条件は整ってるとして、あのダイダロスが進化したってことは、全体除外とか……?いやそれじゃダメだな」

「へっへ、教えてやるさ。このカードは『海』をコストに、互いのフィールドと手札のカードを全て墓地送りにするのよ! しかもこのカードは無傷! 次のターンで手札1枚で何か出来るはずもなし、ワシの華麗な勝利が完成だっちゅーの!ガハハ!!」

「手札無いしバトルも無いからターンエンドでいいですね? ドロー、モンスター召喚します。バトルで」

 

淡々とデュエルを進める俺。あっけに取られるおっさん。目が点になる沢渡さん。戦闘破壊されるネオダイダロス。

それもそのはず、俺が召喚したカードはこの世界には存在しないのに割と目立たなさそうな、それでいて堅実に強いデッキを組めそうなことで知られるカード群、

 

幻竜族(9期カード)の1枚である《竜胆(リンド)ブルーム》である。

 

「えー、リンドブルームがモンスターと攻撃する場合、互いのモンスターの攻守はそれぞれ自分のモノと入れ替わります。よってこっちは1800に、ネオダイダロスは1600に。いやーやっぱパワーだけの守備力低いカードはツクヨミとか攻撃封じとかに弱いですよねー」

「「ちょっと待ったァーーー!??」」

 

はい、恒例のテキスト確認たーいむ。

 

「何じゃこれ。攻撃力0なのに守備力1900無いとどれだけ攻撃力あっても倒せんのか……」

「というか墓地に落ちたカードもなかなか珍しいカードじゃないか。《ナイト・ドラゴリッチ》? 融合モンスター絶対破壊するマンだなこりゃ」

「というかこれ珍しい種族じゃの。ドラゴン族も本格的に分類が適当になってきとる。海竜と恐竜も入れると何が何やらだっちゅーの」

「いや、恐竜はまだわかるだろ……うん? この《デブリ・ドラゴン》てのはドラゴン族なんだな。守備2000か……コントロール奪われた後のことも考えてるとは……」

いや、それ偶然っす。

 

しばらく俺のターンは終わらなかった。はやくターンエンドしたいんですけどー?




女神「仕事した?」
死神「してない」
爺神「と言いつつも肩入れ?」
死神「してない」


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ピラミッド・タートルから攻撃力2400が出るのって当時割と衝撃だったよね

テーブルデュエルであそこまで盛り上がれる闇ゲ動画勢って本気で尊敬できる。まじで。って話


そんな訳で唯一の手札はバトルを終えたばっかだし、特にすることもなく。やっと2人の気が済んだのでおっさんのターンから。

 

「んー、攻撃力0だからダメージは受けないにしてもなー……ドロー。おっ」

おっ? 防御札でも引いたの?

「《島亀》!守備力は2000! これを攻撃表示で召喚する!」

 

さっすがー、本編にモブ以外で出演しただけはある。破壊されたら攻撃力1100か。次ドローでモンスター来なきゃジリ貧だが少しは助かるな。

「島亀で竜胆ブルームを攻撃、そいつの効果で攻守反転しーの、200ダメージじゃ。ターンエンド」

「ドロー、カードセット、エンドで」

「ワシのターン、ドロー。島亀を守備にして伏せカードを出す」

「ドロー、モンスターセット、エンドで」

「お前ら淡々と進め過ぎィ!!」

 

エンタメ勢が口を挟むが、しゃーないやん。

「だってアナシスのおっちゃんが完全リセットしたんですしー。突破しようにも罠1枚で逆転されそうですから慎重にもなりますよ」

「んだ、っちゅーのう。さっきのよくわからんカードで切り札がさくーと倒されたんじゃ、そら慎重にもなるっちゅーのよ」

「横から見ててつまらないんだよ!ディスクも持ってくるべきだったか……!」

いや、あっても甲板には出ないぞ。三半規管が危ない。

 

「んじゃドロー……お、少しは進みそうじゃな? 島亀を生贄に《暗黒大要塞鯱》を召喚!すかさずバトル!」

「破壊されます。それじゃあ《破面竜(ネイキッド・ドラゴン)》の効果を使いますねー」

 

星3/炎属性/幻竜族/攻1400/守1100

(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから守備力1500以下の幻竜族モンスター1体を特殊召喚する。

 

しゅびりょくせんごひゃくいか(・・)の。

 

「ということで《獄落鳥》を特殊召喚しますねー」

「「攻撃力2700ゥ!?」……あ、守備1500だ」

チューナーに関する効果しか持たないためテキストがバグってマス。つまり通常モンスターとしてはテーブルデュエルでのみ使える。効果モンスター(茶枠)だからね!

 

「テキスト欄にある『調律士(チューナー)』ちゅうんは……カテゴリかなんかか?」

「まるで意味がわかりませんので放置してます」

 

そうだ。テキストに謎の文字があろうとデュエルは出来る(ヴェーラーを手札から捨てられるしジャンクロンで吊り上げが出来る)。だがその本質(S召喚の存在)を説明できない以上なるべく『チューナー指定』記載のあるカードは使用を控えたほうがよさそうだ。……というか、試験の後カード整理してたらイルミラージュからチューナーの文字が消えてたんだが。

オイ駄女神に糞爺神。獄落鳥のフレーバーテキストが思いつかないからって雑な仕事で終わらすんじゃねえ。野獣先輩(ビーストアイズ)の特殊融合の条件はリリースから生け贄に書き直してるくせに。

 

アカデミアじゃ使えないよなぁ的な愚痴をこぼしつつ、鯱を破壊するとり。どう見ても鳥獣族なんだよなぁ……

「暗黒大要塞鯱が破壊されたことで、《激流蘇生》を発動!破壊された水属性を復活させ、相手にその数だけ500ダメージを与える!」

「おお、こういうのこういうの!デュエリスト同士のバトルってのはさぁ!」

「沢渡さんうっさい。ターン終了ですよー」

「ドローじゃ!よーし、《魚雷魚》召喚!そして射出!その鳥を撃ち落とす!」

「ピンポイントなドロー運め……」

 

勿論ソリッドビジョンのかけらもないテーブルデュエルなので、ミサイルフィッシュがぴいちゃんを撃退する胸熱シーンなんぞありません。淡々と事後処理をするだけ。えーと、直接攻撃で21ダメの残り1200の……

「ワハハ!ターン終了だっちゅーの!もう手はあるまい?」

「ドロー。破面竜守備表示で召喚」

「畜生めぇぇぇぇ!!!」

 

次のターン、アナシスさんは魚雷を引けなかったので、こっちのターンで遠慮なく自爆特攻しました。

「ちなみに今出した《龍大神》は相手が特殊召喚する度に相手の融合デッキを破壊します」

「お前さん、どんだけ融合デッキが嫌いなんじゃ……」(LP3200→2400)

「守備力1200ってだけでこうも簡単に攻撃力の高いモンスターぽんぽん呼びやがって……」

 

残りLP500なのに負ける気がしない。伏せカードの《仕込み爆弾》なんてなかったんや。




死神「言い訳は?」
爺神「秘書がやった!ワシは知らん!」
女神「この老害がやらかしました!判断能力はあると思います!」
死神「お前らどっちも被侵略寸前のARC-VのX次元に堕とすぞゴラ」


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君は今!アカデミアへの第一歩を踏み出した!

あの時点でタウンマップ貰ってなくても「なんならタウンマップで確認してごらん!」ってセリフが聞けるから案内じいさんは存在意義がなかったって話。金銀のことな!
HGとかSSだとダッシューズくれるから……しかもBボタン押さなくてもいい奴を


あの後攻撃力2900を超えられることはなく、そのままデュエルに勝利。つまんないって? 仕方ないよ、テーブルデュエルだもん。命賭けたデュエルでもないのに奇跡が起きてたまるか。うん、万事OK。

 

「せんちょー、元気出してくださいよー」

「だぁーっとれー。ワシは負けたんじゃー。デュエリストとして駆け出しの小僧にもさくーと負ける弱卒なんじゃー」

 

こんな面倒なことになってなければ。

 

デュエル終了時におっさんが不貞腐れた。連戦連敗が重なり重なり、今までの豪快な性格が嘘のように。……っても、わざとらしく子供っぽさを演出しつつチラチラ見てくる以上ただの構ってちゃんモードだろう。可愛い女の子だったら適当に振り回すけどおっさんだしなーどうしよっかなー

 

 

「沢渡さん沢渡さん。これって事前に連戦連敗させやがったどこぞの岩石族使いが累積的に考えて悪いと思いません?」

「いやいやいや。これはデュエルアカデミア選抜試験で最長ターン数を稼ぎ出したどこぞの新入生が入学前に海の大親分を完膚なきまでに叩きのめしたからだろうなぁ。俺は悪くない」

「その判断に気味が悪い。とまぁ冗談と本音はさておき、船員さん。アカデミアまであと何時間?」

「えーと、あと1時間くらいで着くと思いますよー」

「そこはワシに聞くんじゃないのか!?」

 

ちょこんとしてる船員さんに質問したら唐突におっさんの不貞寝が終了した。いやだって面倒じゃん、わざわざ気を遣って励ますとか。

「そもそもわざとらしくチラチラ見ながら泣かれても『選択肢:そっとしておこう』にしかならないんですが」

「大人気なかったのは分かっとるが面倒ごとの押し付け合いとか絶対に変だっちゅーの!!少しは子供らしいノリをだなぁ!?」

わーい理不尽におこられたー。

 

そんなこんなで馬鹿やってる間にアカデミア到着。荷物を持って降りようとしたところ、「お前のカード多過ぎィ!?」とのことで、沢渡さんとおっちゃんと女船員さんが付いて来てくれることに。

 

「で、どの寮ですか?レッドだと寝るスペースが確保できる気がしないんですがこの量」←主人公:手荷物+リュックサック+キャリーケース

「いや、一応寮より先に校長のところに行かないといけないらしい。……それに俺もこっちでバイトできることになったからな」←沢渡さん:沢渡さんの荷物+ジュラルミンケース

「それじゃあワシらはどこで待ってればええんじゃ? 何か入り用か訊ねるにも小僧の荷物は邪魔だっちゅーの」←アナシスさん:段ボール箱3つを荷台に乗せて

「せんちょー、荷運びで恩売りつければ販路確保できるんじゃないですー?」←船員さん。手持ち鞄と彼女の背負い荷物。……荷物?

 

「船員さん、なんで自分の荷物?」

「アカデミアの購買でバイトしたいと思いまして沢渡さんのコネ使おうかなーって」

「それで他の奴らがワシらを笑顔で見送ってたんか!?」

おっちゃん……人望ないのね。

 

ダメならダメで船に戻ればいいですもんね、とのたまう女船員さんにおっちゃんがドン引きしつつ、港からの道をそれなりに急ぎつつ進む。アカデミア校舎までもう少し。

 

* * *

 

「とうちゃーく」

船員さんのぽやんとした声が広場に響く。職員室の場所が分からないが沢渡さんが先に教員を読んでくるとのこと。

「直接行った方が良い気もするけど、この荷物じゃなぁ…」

「ワシはこのままなんか売れないか交渉に入るつもりだったんじゃが、建物の外で話となるとなー」

……と、ベルが鳴り響く。授業が終わったのだろうか?

そして今はお昼時。

 

「お、新入りかな?」

「デュエルアカデミアにようこそ」

「どこの寮だ?案内するよ」

「転校生ちゃん、可愛いボウヤね」

「ちくわ大明神」

「おっさん船長だ!海賊!?海賊なのか!?」

「すっげー荷物だなぁ」

「誰だ今の」

 

そりゃ囲まれるよな。デュエルディスク持ってねーんだけど。

……と、船員さんが鞄を漁る。というか、

「ディスク持っとるじゃないか!なんで小僧に貸してやらなんだ?」

「船の上でデュエルとか酔いやすい人にはNGですって。船医さんにちゃんと確認しましょう」ありがてぇ。

 

そしてありがたいのはここからだった。

「さーさーみなさーん。この中で1番強い人がいたらわたしとデュエルとかしてみませんかぁー?」

なんと!女船員さんは俺への集中砲火を引き受けてくれたのだ!これでデッキ調整(チューナー文字摘出)前にカード出さずに済む!

「よーしここで目立った実力を見せればデュエル脳の皆さんはすんなりバイト面接に合格をくれそうだ、うむ」

感謝を撤回はしないがぽやぽやしつつ腹黒いってホント最高の組み合わせだよなぁ。

 

そんですぐに人混みが割れ、なんか高飛車そうな肉まん女がやってくる。さっき俺をボウヤ呼ばわりしたメスガキちゃんだ。

「それなら私が相手するわ。貴女も女性デュエリストとして、アカデミアの女性デュエリストの実力を知っておきたいと思わない?」

「それじゃーやりますかー。みなさーんちゅうもーく!今から最高のデュエルを魅せますよー」

「さぁ、行くわよ!」

「その前にお名前をー。ちなみにわたしは『真水葵(しみず・あおい)』っていいますー」

「藤原雪乃よ。さぁ、楽しませて頂戴!」

 

初めて女船員さんの名前知ったわ。




女神「ああっ!またポジった!」
爺神「こんなんじゃチャート壊れる」
死神「DSを閉じろ、ここは遊戯王SSだ」
女神「ちょっと、このRTAが記録出るまで……」
死神「B降下補正のアシマリしか引かないようにしてやろうか?」
爺神「やめて!厳選のし過ぎでもう逆リーリエショック状態なんじゃ!」
女神「何?リーリエに逢えなくなった?ふふ、そんなの簡単さ。こうすればよかったんだ!!」
爺神「ヤメローこんなの主人公じゃない!」
死神「…あ、もしもしアルセウス?ちょっと分霊寄越してくれないかな駄目神ズ〆るのに」


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女性デュエリストが軽視されるGX世界において
みんな!ヒロインの名前が被ってるけど問題ないよね!


早乙女レイちゃんと赤馬レイさんについてあの監督とか脚本とかは何考えてたんやろな、って話。…え、違う?

軽くエタってましたが、ようやく残りを書き上げました。

追記!誤字報告さんくす!


さて始まりました、チキチキ!女性同士のエンタメデュエル!ポロリはないよ!のお時間です。

メインコメンテーターは私、主人公である朝日夕月が行わせていただきます。どうぞよろしく。

 

「さぁ、デュエルよ。私のテクで虜にしてあげる」

「先行はそちらからですねー」

船員さん、さっき知ったけど名前は真水(しみず)葵さん。アナシス船長の数少ない女性船員だったけどこの場で目立つことで沢渡さん同様にアカデミアで働き口が欲しいらしい。見た目も言動もほんわかしてるけど微妙に黒い。でも黒さが目立つ部分もふわっとしてるからか……なんか人気出そう。

 

「私のターン、ドロー!さぁ、まずはこのカード。《ソニック・バード》!このカードの召喚に成功した時、デッキから儀式魔法カード1枚を手札に加えることができる!」

対してこちらはタッグフォースシリーズ(カードゲームもできるギャルゲー)における名前ありモブ(ヒロイン枠)の1人である藤原雪乃さん。主人公が学生であることからさんざんボウヤ扱いし、言動がことごとくエロい、歩く肉まんである。

wiki的な説明をすると現実との齟齬があるかもしれんが……

 

『父母共に有名俳優、雪乃もまたデュエルのできる本格派女優として期待されてて、学生とは思えない色気で男を惑わせる。デュエルではそれを武器にして自分のペースに引き込む。親戚縁者以外の人間は自分よりどれだけ年上でも子供扱いする。彼女が本当に認めた人間に対しては違う態度になるらしい』が。

 

ーーー基本的にコナミくんのことだってはっきりわかんだね。二次創作ではレッドキャップな俺TUEEEEさんにベタ惚れしてやんのやんのとギャルゲーヒロインとしての本気を出す。なおその場合も『本当に認めた相手』でありながらボウヤ扱いをしてることがほとんど。主人公補正の赤帽子め……

 

「私は《エンド・オブ・ザ・ワールド》を手札へ!さらにカードを2枚セットしてターンエンド。さぁ、いらっしゃい?」

「おー、儀式魔法ですかー。出さなかったということは攻撃的なモンスターなんでしょうねー。ドロー」

……自分のペースに、ねぇ? 見る限りマイペースな葵さんを雪乃ペースに引き込めるとは到底思えないが。

 

「んー、いつも通りでいいですねー。《オーシャンズ・オーパー》を召喚します。攻撃力は100足りてますので攻撃ですー」

ソリッドビジョンのバトルってそういや試験以来だな。槍持った魚がふくよかな鳥を仕留めんと勢いをつける。

なるほど、この攻撃が当たるまでとか当たってからとかで目視で判断するんだな?攻撃宣言なのかダメステなのかを(闇の呪縛問題)。

 

「そう上手くいくと思って?トラップ発動、《鼓舞》!攻撃力を700アップする。返り討ちね」

ふくよかなとりさんがファイティングポーズをとる。そして槍が刺さると思われた瞬間!翼を広げ三叉槍を搦め捕り、そのまま分捕ったァ!

オーパーは勢いのままに突っ込んだのでソニックバードの後ろにべちゃりと落ちる。そして駄目押しの「ほら、槍返すぜ」攻撃。さかなくんはアワレ爆発四散!

 

「伏せカードも気にせず攻撃してくるなんて、まるでなってないじゃない?手取り足取り、教えてあげましょうか?お姉様?」

「ん、正直破壊してくれることを期待してたり?モンスター効果発動!戦闘破壊された時、デッキから《マザー・ブレイン》または《サウザンド・アイズ・フィッシュ》を1枚手札に加える」(LP:4000→3400)

「あら、効果で破壊するとは思わなかったの?」

「自己顕示欲の高い子供はいっつも上から殴ることしか考えないんですよねー」

「なっ!?」

……おや、ブラック葵さんが表に出てきている? 藤原雪乃節は保てるのやら。

 

「手札から《浮上》のカードを発動。墓地からレベル3以下の魚族を釣り上げます。そして蘇ったオーパーを生贄にして、さっき手札に加えた《サウザンド・アイズ・フィッシュ》を特殊召喚」

 

釣り上げられ空中に浮く魚槍兵がうぞぞぞぞとSEを立ててびちびちびちびちと震え始める。そしてめぎょり(・・・・)と音を立てて潰れ縮み、突如として目玉だらけの奇妙なクリーチャーが出現する……

 

「なっ、何よその気味の悪いモンスターは!」

「悪魔族に見えますー?魚族ですよ」

「「「嘘だッ!!?」」」←観客

目玉だらけの集合体。所々から生えている蝙蝠の翼。

「どう見ても悪魔族じゃない!?」

「種族詐欺とか今更でしょう?《シーザリオン》とか絶対に海竜族じゃないですかー」

そこは《ワイバーンの戦士》を挙げようぜ、と意見したい。

 

「守備力2100……おぞましい姿の割に防御的なのね」

「ええ。そして残った手札を全てセットしてターンを終了します。いきなり4枚セットですよー?怖いですかー?」

「ふっ、どんなに強力なカードであっても私を止められるとは思わないことね!ドロー!」

「ドローフェイズ終了時に、《マインド・クラッシュ》を発動します。宣言対象は《破滅の女神ルイン》」

「なっ…!?」

 

藤原雪乃が手札を凝視する。ソリッドヴィジョンのエフェクトにより手札がイメージ化されると、今しがたドローしたであろう女神のカードが表向きになり破壊される姿が。

 

「デミスの可能性もあったじゃない!?どうしてわかったというの……!」

「《センジュ・ゴッド》、《儀式の供物》、《儀式の準備》。みんないいカードですよねー。」

「貴女……まさか」

「……サウザンド・アイズ・フィッシュにはフィールドに存在する限り相手の手札を全て見通す効果があります。その手札で一番厄介なのはルインちゃんだと判断しましたので」

 

ピーピング&ハンデス。かなり効果的ながら高いテクニックを必要とするため試合では煽り合いにより未熟な技量を誤魔化す輩が増え、顰蹙を買うようになった戦術だ。

今の口撃もその範疇に入りそうだが、それでもデミスドーザーで有名な藤原雪乃を相手にルイン宣言できる度量は転生者たる俺には無い。しかも手札見えてるならむしろ生贄減らすこと前提にセンジュゴッド潰すぞ俺なら。

 

「でもプレイングはお粗末なようね、お姉様!《センジュ・ゴッド》を召喚してモンスター効果発動!デッキから《終焉の王デミス》を……」

「永続(トラップ)、《手違い(ミステイク)》。このカードが存在する限り、ドロー以外でデッキからカードをサーチすることはできません」

「くっ……」

自分のペースに、ねえ? 完全に葵さんに呑まれてるけど。

 

観客がざわつき始める。よく見れば既に鮫島さんおるやんけ。しかし呼んできた側の沢渡さんも呼ばれた側の校長もデュエルに見入ってる模様。

 

「さぁ。それでははじめましょうか。盤面を破壊して上から攻撃するしか能のないアカデミア生徒がいかに(しつ)の悪い決闘者(デュエリスト)であるかの証明を」

……あのー、葵さん?貴女強くてニューゲームな転生者じゃないですよね?




死神「あいつらとうとう後書きからも逃げやがった……」
死神「軽くエタってるからってすっぽかしやがって、誰が面倒みると思ってんだ」

女神「わーい東方天空璋たーのしーラルバかーわいー」
爺神「がんばリーリエ本格参戦か!楽しみじゃのう」
後戸神「しかも微妙に遅れてるし」
太陽神「こっちは逆にはえーよホセ」


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いやいや転生者なわけないじゃないですかー

なんたってこの作者は説明文に「転生オリ主という概念に対するアンチ・ヘイトがあります」って書くようなひねくれアマノジャクですよー?って話。

つまりネタバレ:藤原が負ける。


ブラック葵さん顕現。にくまんタジタジ。

 

ブラック葵:手札なし:場には千眼海月:魔法罠ゾーンに伏せ2と手違い

ギャルゲヒロイン:手札3枚(供物、準備、EoW):場に千手とソニバ:バックは伏せ1枚

 

藤原雪乃のターンが始まると同時に葵さんの攻撃が始まった。あの手札ではこれ以上の展開は不可能、伏せカード次第だろうか?

「くっ、私はこのままターンエンド……」

「その前にメインフェイズ終了時に伏せカードを発動」

「このタイミング!?何を……」

「気にしなくても構いませんよー。《不吉な占い》は自分のスタンバイフェイズに発動するカードですから」

 

不安定なバーンカード。だが、ハンデスコンボは相手の手札を1枚でも知っていれば始動することができる。

「私のターン、ドロー。まずは魔法カードを宣言しましょうかねー。ランダムにカードを選んで、あたりなら700点ダメージです」

ちゃんとランダムにするように記載されているので、見えないようにシャッフルしてくださいねー、との指示に渋々従うにくまん子ちゃん。そしてフィールドの空きに三枚をセットした。

 

「それじゃー右ですかねー? お、当たった。儀式魔法の方でしたねー」

「当たった《エンド・オブ・ザ・ワールド》は……」

「墓地やデッキには送りません。そのまま手札に残ります」

「……ということは、使うかセットしない限り情報として残り続ける訳ね」LP:4000→3300

 

そう、ハンデスの弱点。それはいくら手札を潰しても逆転できる奇跡の1枚を引かれた時、そのカードが何であるかわからないことだ。

だから、切り札を出させないように。奇跡を起こさせないように。相手の手札をコントロール(・・・・・・)する。使えないカードは使えないまま手札にあった方が都合がいい。

……とはいえ、現時点では丸裸だが。

 

やっぱおぞましいわ…しかもまだ相手のエンドフェイズから自分のスタンバイまででこんだけなんやで…?

 

「続けていきますねー。《鰤っ子姫(ブリンセス)》を召喚してモンスター効果を発動。デッキからレベル4以下のおさかなさんを特殊召喚します」

「ちょっと待って!?サーチを封じるって言わなかったかしら!?」

「リクルートはできますよー? 《デッキロック》とは違ってサーチだけを封じます。《ライオウ》ってモンスターと同じですね」

周囲から「ライオウって誰だよ…」の声。やっぱ葵さんこっち側の人間じゃねー?

 

「私が特殊召喚するのはいつもお馴染みの《オーシャンズ・オーパー》。ではさっそくバトルといきましょう」

槍兵が三叉槍を振りかぶり、ジェットを背負うでぶ鳥にさっきの仕返しをした。

「くっ、この程度……」LP:3300→3200

「ほらほら、私はターンを終了しますよー。伏せカードがまだ1枚残ってますからねー?」

 

「ドロー……ッ!!」

ドローしたカードを悔しそうに睨むにくまん。そのカードは《サウザンド・アイズ・フィッシュ》の冒涜的目線により観客である俺らにも知れるところとなる。

「カードを2枚セットして、ターンエンドよ……」

「そりゃ《トレード・イン》なんて引いたところで使えませんからねー。それじゃエンドフェイズにその伏せた《儀式の準備》と、《トレード・イン》じゃない方の2枚を対象に《心鎮壷(シン・ツェン・フー)》を発動しますねー」

「~~~~~~ッッ!!!(闇次元の解放が…!!)」

 

すっごく悔しがる肉まん……もうこの表現やめるか。藤原雪乃。しっかし、何故手違いされる前に準備を使用しなかったのか。というか見た所【儀式天魔神】っぽいけどレベル7以下の儀式ってOCGに使えそうなのいたっけ?アニメオリカでもいなかった気がする。

あ、ちなみにシンツェンフーは井守くんの魂……じゃなくて伏せカード2枚の発動を封じる永続トラップです。チェーン発動できるので、あの伏せカードは発動タイミングを逃したことになるね。

「さて、再び私のターン。んじゃ占いますか。シャッフルしてくださーい」

 

ああ、そうか。もしハンデス喰らったら確実に使えないカードが1枚手札に残るからか。地味に700バーンはきついし。今なら《儀式の供物(モンスター)》か《エンド・オブ・ザ・ワールド(まほう)》の50:50だしな。

 

「右のカードです。種類は魔法とみた」

「……残念、儀式の供物(モンスター)よ」

はずれを宣言しつつもものっそい悔しそうな顔のゆきのん、そして外したというのに飄々とした顔の葵さん。

「それじゃあもう当たりそうにないので使っちゃいましょう。《マジック・プランター》を発動。自分の永続罠をコストに2枚ドローします」

「―――そう、手札は既にわかっているからこれ以上は必要ないってことよね」

「わざと手札を減らさせてまで当たらないんじゃ、これ以上ダメージを期待するのは無駄かなーって思いまして。手札から装備魔法《ハイドロプレッシャーカノン》をレベル3の水属性モンスターであるオーパーくんに装備します」

 

ランサーがランチャーにジョブチェンジ。というかこの布陣は古式儀式使いにはかなり酷い。

「攻撃表示なのは残念ですね……オーパーくんの貫通効果を活かせると思ったのですが。あとこの装備カードは装備モンスターが相手モンスターを戦闘破壊する度に相手の手札をランダムに1枚墓地送りにします」

「ひっ」

「はっしゃわー!」

 

千手サンは激しく轟沈。そして水飛沫が藤原雪乃の手札を弾き飛ばす。




死神「おー連絡ありがとな、おっきー。てらっち」
後戸神「問題ないよ。しっかし最近は完全に東方キャラで固定化されちゃってなー。私の姿」
太陽神「大丈夫です。私なんか十年くらい前はずっとヲーに固定化されてましたから」
死神「それは不憫な。こちとらBLEACH連載中もデスノート映画公開中もずっと黒フードにでかい鎌だったというのに」

女神「やめろ……紺珠伝ルナノーミスノーボムはやめろ…」
爺神「新規UB2体だけって…うせやろ……」


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リンクスやってると負け確定でも「まだ戦える!次のドローで…」って感じの台詞が出てきて哀愁を感じる

女神「あれっ!?ここ前書きじゃない!?」
爺神「ホントだ、珍しいのう」
死神「お前らそれで誤魔化してるつもりか?」


「……エンド・オブ・ザ・ワールドを、墓地に送るわ」

「残ったカードをセット、これにてターン終了。さ、儀式使いさん? あなたのターンですよ」

にっこり笑うことで挑発する葵さん。ヤバい。周囲のドMなギャラリーが惚れてそう。

 

「くっ……こんなところで終わってたまるものですか! 外部生ですらないただのバイト希望者に!アカデミアの女帝たる私が!!ドロー!!」

かなり本音がダダ漏れてるしTF的に女帝なのは許すが対戦相手がただの一般人である時点でそんなに魂賭けるような闘いじゃないということには気付かないんだろうか。

 

さて。

葵さん、手札ゼロ。場には表側の《手違い》《ハイドロプレッシャーカノン》《心鎮壷》と伏せカード。

対して藤原の手札にはレベル1モンスターのみ、場には使い物にならないカードが3枚セットされモンスターもなし。

LPはそれぞれ藤原が3200の、葵さんが3400。互いに変動がほぼないものの、このままならば貫通効果持ちを場に持つ葵さんが完全に有利だ。

 

「来た!……けど、」

「ほむ、何もしませんよ」

「ならっ、私は手札から《天魔神エンライズ》をコストに、《トレード・イン》を発動!デッキからカードを2枚ドローする! ドローした時に発動しなかったからには、流石にハンデスカードはもう無いようね!」

だが、決闘者(デュエリスト)たるものいついかなる時でも油断してはならない。たった1枚のカードにより全てがひっくり返ることもあるのだから。そして、その1枚を引き当てる者を、神に愛されている、などと称したい気持ちもわかるだろう。

 

「続けてきたわ! 《破滅の儀式》を発動! このカードは破滅の魔王を降臨させる儀式魔法! そして手札の《儀式の供物》は闇属性儀式モンスターのためなら1体でその生贄に必要なレベル全てを満たすことができる!!」

「うわー、運命力(ドローちから)すごいですねー」

「その飄々とした態度を滅ぼしてあげるわ! 破滅の炎にて世界に終焉を!《破滅の魔王ガーランドルフ》!!」

 

そして、魔王が降臨した。

漆黒の肌、白い仮面、赤い眼。邪悪が顕現したかのようなオーラを纏い、右腕に黒い炎を集める姿はまさに破滅の魔王と呼ぶに相応しい。

 

「ガーランドルフの効果発動!儀式召喚に成功した時、このカードの攻撃力2500より低い守備力を持つ他のモンスターを全て破壊する! カース・インフェルノ!!!」

魔王の鉄鎚により大地が膨れ上がり、闇の波動が目玉とキャノン兵を呑み込む。そして手を握ると共に2体のモンスターも弾け飛んだ。

 

「あー……ミンチよりひでーや、ですね。なんかなめろう食べたくなってきました」

「そんな余裕なこと言ってられるかしら?ガーランドルフはこの効果で破壊したモンスターの数だけ攻撃力を100上げる———さぁ、終焉にはまだ早いけれど。この一撃を喰らいなさい!」

 

魔王が左腕に邪悪な力を纏い、葵さんにえげつない(あーるいちはちGな)腹パンを———!!

 

「トラップカード、《バトル・ブレイク》。相手の攻撃モンスターを吹っ飛ばしてフェイズを強制終了します」

「………ぇ?」

「あ、手札のモンスター見せたらこの効果を無効にできますよー?」

「ぁ……え?」

 

逆に魔王の左腕が粉々になった。そして腕から罅が広がって……

 

「ほら、手札あるなら見せてくださいよ。…おおっと、そういえば全部ハンデスしたんでしたっけ」

破滅の魔王が葵さんの邪悪な微笑みの前に粉微塵となって消えていった。

 

……次のターンとその次のターンで葵さんがモンスターや防御札を引かず、雪乃ちゃんがレベル4以下の攻撃力1700以上1体を最初のターンに、または2体で3400削れるモンスターを2ターン連続で引ければ、まだ勝負はわからない。

 




そんな勝ち筋、あるわけねーだろ。って話。

正直アニメのようなライフギリギリ残りつつも逆転のカードを引けばワンチャンあるなんて展開はOCGプレイヤーならば夢でしかないって知ってるよね!
大概はそのまま圧殺されるし、されない場合は大抵墓地に落ちたカードで十分反撃できる状況にあるもんね!!


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