巨人の世界で(笑) (トッシー)
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日記

進撃の巨人に最近はまっています。
面白いですよね。


これはオリ主の成長物語です。たぶん。
オリ主は修行によってこの世界にしてはチートな力を得ますが基本ヘタレです。
しかし偶には勇気を振り絞って戦います。たぶん。
しかし戦う動機も元を辿れば保身のためです。たぶん。


○月☓日

オレの名前はリク・クリムゾン。

今日この日より日記をつけることにした。

誰かに読まれるのは抵抗があるため、『日本語』にて表記する。

突然だがオレは転生者だ。

しかも神様転生の様なテンプレではない。

リリカルやネギまの様に嬉し恥ずかしな世界に生まれたわけでもない。

この世界には夢も希望もない。

 

巨人の支配する絶望の世界だ。

突如現れた謎の巨人により人類は滅亡の危機に追い込まれた。

生き残った人々は巨大な三重の壁の中に生活圏を作ることによって生きながらえている。

 

しかし、その平和は突如現れた『超大型巨人』と『鎧の巨人』によって文字通り破壊された。

城郭都市の外縁地区ウォール・マリアの南端、シガンシナ区の壁が破壊されたのだ。

オレは両親と共に逃げた。

この時だった。巨人の顔を見た瞬間、オレの脳裏に何かが駆け抜けた。

走馬灯のように目まぐるしく流れた映像はリク・クリムゾンとして生まれる以前の人生。

日本人として生きた記憶だった。

 

気がつくとオレは母の腕の中だった。

父は巨人に食い殺され、母は泣きながらもオレを連れてウォール・ロゼへ避難していたのだった。

 

巨人怖い。超怖い。

何あれ、あんなのに喰われるなんて嫌じゃ!

 

 

 

 

△月○日

 

母が死んだ。

ウォール・マリア奪還の名目で、その実、口減らしの為に多くの避難民が巨人が支配するシガンシナ地区へ送り込まれたのだ。

そして全員が生きて帰って来る事はなかった。

悲しみよりも恐怖の方が圧倒的に強かった。

オレって前世の記憶を取り戻してから人として壊れたのかもしれない…。

それにしても『進撃の巨人』か…。

絶望しか無いじゃん。

 

 

○月□日

 

今日は兵士になる為に訓練兵団の門を叩いた。

勿論、「巨人を駆逐してやる」とか「世界はオレが救う」なんて高尚な動機ではない。

立体機動装置が欲しいのだ。

アレを戦うためではなく逃げるためだけに利用すれば生き残れるかもしれない。

カッコ悪いと思うが巨人が超怖いので仕方がない。

オレにもテンプレ的オリ主の様なチート能力がアレば、ちょっとは違ったのかもしれない。

今期は勿論、第104期訓練兵団だ。

原作の主人公であるエレン達がいる。ちょっと感動だ。

くそったれ!3年後には必ずオレが生き残ってやる!

 

□ 月○日

 

早速訓練が始まった。

座学から始まり基礎体力づくり。兎に角延々と走らされた。

走るのは得意だし体力には自身があったので、訓練にはついていける。

もしかして才能有るかもしれない。

調子に乗っていたら教官から追加十周を言い渡された。

気づいたら“あの”ミカサを周回遅れにしていた。

どうやらこの身体、体力だけはスペックが高いらしい。

 

 

■月□日

 

今日は待ちに待った立体起動訓練。

早くこれを身に付けて国に貢献、じゃなくて巨人から逃げる能力を身につける。

結果、どうにも上手くいかない。エレンも悪戦苦闘しており先は長そうだ。

立体起動、本気で難しすぎる。

昔、アニメで見た時、兵士の皆さんビュンビュン飛んでいたけど、マジでパネェ。

因みにミカサさんは即効で使いこなしていました。悔しい・・。

主人公エレン、この時だけは仲間に見えた。

 

 

●月×日

 

遂に立体機動を習得した!

エレンが。

くそう!オレは未だ鋼糸に絡まれて蜘蛛の餌状態なのに…。

因みに既に十人以上が脱落している。

未だみっともなく食い下がっているオレに対する教官の視線が痛い。

まぁ、立体起動以外の授業は上位の成績ですからね…。

教官も長い目で見守ってくれてるのでしょう。

明日こそは習得してみせる!

 

 

▲月■日

 

相変わらず教官の視線、だけでなく皆の視線が痛い。

人一倍の努力は続けているのだが、オレは依然として立体起動を習得できないでいた。

オレ一人のために、これ以上訓練を遅らせる訳にはいかない。

教官から明日、最終試験をしてダメなら脱落だと警告された。

マジでどうしよう…。

立体起動無しで巨人と遭遇、結果生きたまま踊り食い…。

人生オワタ\(^o^)/

 

 

○月▲日

 

今日から寝床が変わった。

最終試験に落ちたオレは脱落者の烙印を押されて追放されたのだ。

まさかここまで立体起動の適性がなかったとは思わなかった。

補給兵という道もあったが、巨人から逃げる事が出来ない以上、留まる理由はない。

くそう、立体起動以外ならミカサ以外には負けないのに…。

オレは強制労働の農地開拓組へと送られた。

訓練の成果か、農作業後も体力は余裕だった。

 

 

◆月△日

 

どうやらオレは遂に血迷ったらしい。

最近、アニメのことばかり考えているのだ。

しかし目を瞑ると脳裏に楽しかったアニメが浮かんでくるのだ。

これ以上の現実逃避はない。

そういえば此処は一応アニメの世界。

だったらオレもアニメのキャラの様に強くなれないかな…。

気がつけば亀仙流の修行をやっていた。

仲間から変な目で見られた。

そして孤立した。

 

 

❒月○日

 

農地開拓もとい亀仙流の修行を始めて一年が経った。

背負っている重りも既に50㎏を超えている。

オレが耕した畑は他の人間の10倍以上にもなっていた。

耕す場所がもう無い。明日からどこを耕そう…。

因みに配達の仕事を増やした。スキップしながらやってる。

そして口元には水で濡らしたマスクをして取り入れる酸素に制限を掛けている。

結果また変な目で見られた。

そして、ご近所さんから孤立した。

 

 

◎月◆日

 

849年。

巨人の再侵攻まで一年を切った。

重りは80㎏といった所だろう。成人男性一人分くらいだ。

ここでオレは初めて修業の成果を見ることにした。

これで何の効果もなければ首でも釣るしかないだろう。

重りを外すと、体が羽のように感じた。

思いっきりジャンプすると20メートルほどの高さまで一瞬だった。

スゲエ…。亀仙流スゲエ…。

ここまで超人的な力がつくと次は気の制御だろう。

立体起動は諦めた。でもここで新たな希望が生まれた。

舞空術だ。

これさえ習得すれば間違い無く巨人から逃げられる!

絶対にやってやるぞ!思わず叫んでしまう。

結果、また変な目で見られた。

 

 

◆月◎日

 

武術の特訓をしているので戦う時、不恰好にならない様に空手の型を練習することにした。

前世で習っていた通信空手を思い出しながらやってみる。

ちゃんと形になっているだろうか?

狩人漫画を習って感謝の正拳突きでもしてみようかな…。

しかし仕事の時間がなくなるので止めた。

今までどおり鍛えたほうが効率が良い。

 

 

 

◇月△日

 

850年まで半年を切った。

 

修行も更に進み、オレは気の制御を身に着けていた。

気をコントロールして高める事で唯でさえ超人的な身体能力は更に上がり爆発的な力を発揮する。

もしかしたら今なら破壊された壁を防げるかもしれない。

しかし早まる気はない。だって巨人怖いもの。

技は色々とリスペクト済みだ。

気弾や気功波、残像拳など。そして念願の舞空術を遂に習得したのだ。

しかし問題も在る。亀仙流の修行を続けていたとはいえ、気功波や舞空術は多用は出来なかった。

体力の消費が半端無かったのだ。

舞空術にいたっては二時間以上の連続飛行を続けると体力が底をついてしまう。

巨人から逃げる途中で体力がつきた所を想像する。

人生オワタ\(^o^)/

残りの時間は基礎能力の口上を徹底しよう!

それから念の為に実戦も経験したほうがいいかも…。

 

 

◆月▽日

 

 

850年を迎えた。

憂鬱だ。もうすぐ壁が破られて日常が崩壊する。

しかし来るなら来やがれ!

オレは3年前とは比べ物にならないほど強くなったんだ。

いやマジで。

生き残る為に必要だと思う事は全部やったつもりだ。

気を感じ取り気配も読めるようになったし、蜂の大群を相手に動体視力も鍛えた。

実際に巨人とも戦ってみた。

夜中にこっそりとウォール・マリアに忍び込んで巨人と戦ったのだ。

思いの外、あっさりと殺せたので調子に乗った結果、体力がやばくなった所で大群に囲まれてパニクって死にかけたのは今はいい思い出だ。

この時の経験を教訓に作戦は常に「いのちをだいじに」でいこうと決心した。

人間調子に乗ると碌な事にならない。

これは原作主人公にも言えることですよ。マジで。

 

 

▽月◆日

 

相変わらず修行は続けている。

重りはウォール・マリアの崩された壁から拝借した。

結構重いと感じるって事はまだまだ鍛える余地は残っているのだろう。

今日はなんと、『かめはめ波』を出せた。感動した。

けど疲れるので実戦では没だな。

なんか最近、ご近所さんの態度が軟化した気がする。

気がつけば畑仕事を全部押し付けられてた。

 

 

○月×日

 

そういえば今日が第104期訓練兵団の卒業式だ。

エレン達、オレのこと覚えてるだろうか?

もう配属は決まったのかな?

ミカサさんやアニさん見てみたい。

絶対美人に成長してるよ。

エレン羨ましい。

オレは相変わらず泥臭く修行してるのに…。

 

あれ?なんか地響きが聞こえた。

恐らく巨人の襲撃だろう。

日記はここで終わるとしようか…。

 

 

オレはノートを静かに閉じると立ち上がった。

横を見ると今まで世話になった修行用の重りがあった。

 

「今までありがとう…」

 

オレは何となく礼を言うと、この日の為に作っておいた道着に袖を通した。

背中の【陸】の刺繍がおしゃれポイントだ。

 

「さてと、逃げるか」

 

オレは舞空術で浮かび上がるとウォール・ローゼの壁を目指して飛び立った。

巨人超怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

リク・クリムゾン(15)850年

 

845年、巨人襲撃の際、前世の記憶を取り戻した東洋人の少年。

2年後、巨人に対向するためでなく巨人から逃げ切り生き残る為だけに立体機動装置を求めて訓練兵団に入団する。

しかし立体起動の適性が壊滅的であった為、兵団を追放され脱落者扱いとなった。

そんな彼を待っていたのは劣悪な環境での強制労働だった。

拒めば巨人からウォールマリア奪還の名目で口減らしの目に合ってしまう為に涙を呑んで受け入れた。

少年だったリクに求められたのは農地開拓だった。

 

そして何を血迷ったのかリクは亀仙流の修行を独自に始めたのであった。

常に大人一人分の重量を背負い、畑は常に素手で耕した。

体力を着けるために食料を盗みもした。

その甲斐もあって3年後には超人的な身体能力と気を操ることに成功していた。

 

3年の修業によって武道家として成長。

上背は低いが強靭な筋肉に覆われていて逞しく成長した。

ただし15メートル級の巨人の力には敵わない。

 

身長160㎝ 体重62㎏

 

服装は自作の道着を着用。

背中には【陸】の刺繍が施されている。

 

習得技

 

残像拳、多重残像拳、気弾、気功波、舞空術

 

超人的な肉体を持っている割には性格はヘタれており、巨人に食い殺されるのを何よりも嫌っている。

戦う前に先ずは逃げるの方向で、しかしどうしても戦わなければならない状況に陥った場合は涙を呑んで戦う姿勢も見せる。

戦法は気の消耗を抑えて残像拳を駆使して巨人を翻弄してうなじを狙う。

戦闘力は恐らく170前後。

最大戦闘力は250程。

一点に集中させることによって約450程。




ダイの大冒険が行き詰まったので最近流行っている進撃の巨人に手を出してみました。


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葛藤

今日最後の投稿です。
リクが巨人に立ち向かいます。
しかしやっぱり逃げ腰です。
保身全開です。怖いものは怖いのです。
その行動には矛盾だらけで迷いまくって、ヘタレまくって読者からは毛虫の如く嫌われる。
原作知識がある分、自分の行動に自己弁護さえして尻込みします。
仕方ないじゃないか
オレは悪くねえ。みたいな感じで。
自分で書いていて思いました。
どうしてこんな主人公にしたんだろうww


現在オレは城壁の上から街を見下ろしていた。

超大型巨人によって既に壁は破壊されている。

眼下では主人公エレンが勇ましく超大型巨人に切りかかっている。

そういえば超大型巨人みたいな特殊な巨人って見た目は普通の巨人みたいに怖くないんだよな。

通常の巨人の人類を見た時のにたり笑顔。

あれはマジでオレのトラウマだよ。

あんなのに立ち向かえるエレン達兵士はマジ尊敬する。

 

そしてオレの眼下で超大型巨人が蒸気を撒き散らしながらその姿を消した。

しかしオレには見えていた。

眼前の強大な気が徐々に小さくなっていくのを。

超大型巨人は黒髪の兵士の姿になると、煙に紛れて城壁内へと姿を消した。

 

「…くそったれ」

 

気に入らない。

何のために人類を滅ぼそうとするのかしらんけど、マジで殺したい…。

嘘だけど。だって元日本人だし。

巨人ならともかく人間を殺すのは抵抗在るよ…。

それに目の前で巨大化されたら怖いし…。

 

それにしてもエレン、本当に凄いな…。

立体機動装置を完全に使いこなしているし、巨人に対する恐怖も克服してる様に見える。

オレはダメだな。亀仙流の修行で超人的な力を手に入れても、未だに巨人が怖い。

 

それにオレは未だにフラフラしてる。

逃げると決めてたのにエレン達が気になって様子を見に来てるのだ。

立ち向かう覚悟も勇気もないのに中途半端に。

 

やっぱり気になるのだ。

もしも兵団全てが敗北してウォール・ローゼまで破られれば、最終的にオレは嫌でも戦わなければならなくなるだろう。生きる為に。

国が滅んでしまえば生きている意味が無いことくらいオレでも理解している。

結果、オレの力がバレる。そうなれば周りから責められるのが目に見えている。

それは巨人に食われる次に嫌だな…。

人は一人では生きられない。

人類全てから拒絶されるのはゴメンだ。

結局は選ばないといけないのだ。

最後まで巨人から逃げ続けて最終的に皆から拒絶される。それとも勇気を振り絞って巨人に立ち向かい皆と戦うか。

 

「その勇気を振り絞れれば苦労はしないんだよ」

 

オレの眼前ではエレン達が報告のために屋根伝いにピョンピョンと飛んでいくのが見える。

 

「行くか」

 

オレは見つからない様に高速移動で後を追った。

 

 

城壁内には既に巨人が入り込んできている。

巨人の気配は人間よりも強いので手に取るように分かる。

続々と増え続けている。本気で怖い。

 

「くそっ!」

 

また人が死んだ。

オレの背中の後ろで気がひとつふたつ消えていく。

巨人に食い殺されたのだろう。

 

「うわあああああっ!」

 

「いや、いやあああああああっ!!」

 

「い、いたいっ!痛い痛い痛いっ!!痛いいいいいっ!?」

 

「食べないで!!!私を食べないでっ!!!」

 

「たすけて!たすけ…たすげふっ!!?」

 

眼前で兵士たちが食われていく。

立体機動装置のワイヤーを捕まれ、飛んでいる所を運悪くキャッチされ。

捕まった者達はパニックに陥り為す術もなく巨人の口に放り込まれる。

そして更にまた一人、兵士が壁に叩きつけられた。

中年の女性兵士だ。

その顔が絶望の色に染まり、巨人はニタリと嗤った。

 

「あ、アイツは…」

 

あの顔、忘れない…っ!

5年前、親父を喰った奴だ。

生き残っているのは、あの女性兵士だけだ。

速攻で殺してその場を去れば見つからないだろう。

オレは、目の前の巨人共を殺すことにした。

巨人の数は4体。奇行種は存在しない。

他の3体は仕留めた兵士を貪っている。

 

オレは足に力を込めて跳躍、屋根の上に落ちている剣を拾い上げて走る。

女性兵士を摘み上げようとしている巨人の目に向かって剣の刃を投げつける。

目を押さえてムスカのように叫ぶ巨人の背後に回ると、ガラ空きのうなじを削ぎ落した。

更に高速移動で残りの巨人のうなじを削ぎ落としす。

女性兵士は訳が分からずに唖然としている。

オレは彼女の視界に入らないようにその場を離れた。

 

「こわっ!やっぱり巨人怖いって!」

 

まだ心臓がバクバクしている。

今までで出会った巨人は5種。

約7メートルの巨人。人間を喰らう事だけを目的に前進する最も数の多い種。

小型種。全長3、4メートル程の最も弱い巨人だ。武器と勇気があれば常人でも殺せる。

15メートル級の大型巨人。恐らく最も多くの人間を食い殺しているのはコイツだろう。

そして最後に超大型巨人。コイツは実は中身が人間であることは確認済みだ。

そして直接見たことはないが、鎧の巨人がいる筈。

原作はあまり覚えていないが、他にも厄介な巨人がいた筈だ。

オレはソイツらに対して恐怖しか感じない。

正面切って一人で戦うなんて嫌過ぎる。

 

けど一人じゃなければ?

ふと思ってしまうのだ。

今の俺の戦闘力を知れば皆どう思うだろう。

受け入れてくれるか?それもと拒絶されるのか?

選択の時は迫っているのかもしれない。

 

 

 

既にウォール・ローゼ内は混乱の渦中にあった。

並ぶ家屋は破壊され人々は恐怖に引きつらせた表情で逃げ惑っている。

兵士たちが避難誘導を行なっているが、避難は遅々として進まず人々の心に恐怖と不安が募っていた。

 

時は進み、作戦は既に展開されていた。

作戦は住民の避難が完了するまでの間、ウォール・ローゼの死守だろう。

壁を再び防ぐ力が無い以上、人類は更に奥の壁に後退する以外に道はないのだ。

 

巨人の進行阻止の為に前に進むエレン。

住民の避難誘導のために後方での任務に当たるミカサ。

オレはエレンをじっと見つめていた。

このままだとエレンは間違いなく巨人に喰われる。

そして巨人化能力に覚醒して助かる。

しかし他の兵士たちはどうだ?

アルミン以外全員死んでしまうのだ。

オレの脳裏に同期の仲間達の顔が浮かぶ。

オレをバカにした者がいた。虐めようとした者もいた。

そして…。

 

-だいじょうぶか?-

 

-気にすんなよ、次はうまくいくさ-

 

-諦めるなよ-

 

オレを励ましてくれた仲間もいた。

立体機動がどうしても巧く出来ずに落ち込んでいたオレを励ましてくれた。

そんなヤツらもいた。

脱落した奴の中にも仲の良かった友達はいた。

ソイツらが、巨人に殺されてしまう。喰われてしまう。

 

オレ一人が逃げて生き残って…。

それで一人で生きていけるのか…。

答えは否だ。

巨人に食い殺されるのだけは死んでも嫌だ。

けど同じくらい孤独になるのも嫌なんだ。

 

「くそ!やっぱりこえーよ」

 

オレはエレンたちの方へ向かって走りだした。

戦いは既に始まっているはずだ。

間に合わないかもしれないが、拾える命は拾っていこう。

オレは全力で地を蹴った。

 

 

屋根伝いに移動する事、1分程。

目の前に衝撃的な光景が見えた。

金髪の兵士が巨人に喰われそうになっていたのだ。

あれは間違いなく奇行種だ。

金髪の兵士の顔には見覚えがあった。

成長しても昔の面影が在る。

オレを励ましてくれていたトーマスだった。

トーマスが飲まれた瞬間、オレは気を高めて全速力で巨人に突進、気を込めた手刀で奇行種の首を切り落とした。

 

「え!?」

 

「な、なんだっ!?」

 

巨人の首から血塗れのトーマスがこぼれ落ちる。

オレは素早くトーマスを捕まえると、巨人の後頭部を蹴りエレン達のいる屋根へと降り立った。

 

「お、おまえは…っ!?」

 

「ト、トーマスっ!!!」

 

オレはトーマスを下ろすと状態を確かめる。

下半身を深く噛み付かれて出血している。

今直ぐ避難させて治療させる必要がある。

取り敢えず今は再開の挨拶だな。

 

「よう、久し振りだな」

 

オレは未だ唖然としているエレン達に顔を向けた。

 

「ひ、久し振り、だと?」

 

「あ、アンタだれよ!?」

 

黒髪の女性兵士が怯えた表情で後ずさった。

 

「おいおい、やっぱり覚えてなかったな。まぁいいや。今は目の前の巨人をどうにかするのが先決だろう?第104期訓練兵団さん」

 

「…っ!?きみは、もしかしてリクか?」

 

アルミンが戸惑いがちに聞いてくる。

 

「リク?もしかしてリク・クリムゾン!?最後まで粘って追い出された!あの!?」

 

黒髪の女性兵士が驚いたようにオレを指さした。

コラ、人を指差すな。

 

「うん。久し振りだ。アルミンはよく覚えてたな」

 

「でもおまえ、立体機動装置もないのに…」

 

エレン達がオレが立体機動装置が装着されてないのを確認しながら聞いてくる。

オレはそれを制して巨人を見る。

 

「話は後だ。見ろ。あいつら俺らを喰いたくてウズウズしてるぞ」

 

「けど、トーマスは!?どうするんだよ!?」

 

「オレが抱えて本部まで連れて行く。けど誰か一人ついてきて欲しい。部外者のオレが行っても素直に入れてくれるとは思えない」

 

「わかったわ。私が行く」

 

黒髪の女性兵士ミーナが前に出る。

 

「悔しいけど、私は咄嗟に動くことが出来なかったわ。成績も10番以内に入れなかったし…」

 

「わかった!トーマスを頼む」

 

オレは家から持ってきていた包帯をトーマスの身体に手早く巻きつけると背中に乗せた。

 

「急げ!もう目の前まで来てるぞ!」

 

「おい!リク!後で絶対に説明してもらうからな!!」

 

「ああ!お前らが生きてたらなっ!!」

 

オレはミーナに合図を送ると隣の屋根へと飛び移った。

恐らくアルミンとエレン以外は死んでしまうだろう。

悔しいけど助けられるのはこれが限界だ。

 

(ゴメン!みんな!)

 

オレは心の中で謝罪しながら本部へ向かって駆けた。

 

 

 

 

続く?

 




死ぬはずだったトーマスとミーナを助けました。
だったら他も助けろよ。
しかし全部の巨人を倒してしまえばエレンの巨人覚醒イベントは消えるかもしれない。
仕方がない。
死ぬはずだった二人を助けたんだから良いじゃないか。
それがオリ主の思考ですね。最低です。


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合流

リク無双の回。
しかし矢っ張り情けない我らがオリ主です。
巨人恐怖症に掛かっております。
克服した時、真の無双が始まります。
スイマセン。嘘です。

このSSは巨人にトラウマを抱えながらもヘタレながらも保身のために戦うリクの物語です。


オレとミーナはトーマスを連れて本部までやってきていた。

トーマスは直ぐに担架で運ばれていき、ミーナは直ぐに次の任務を言い渡された。

云わく「直ぐに持ち場に戻って巨人を足止めせよ」という。

ハッキリ言って無茶だろう。

オレは既に気づいている。

先程の場所には人間の気配が一つしか残っていないのだ。

その直ぐ近くで巨大な気が複数、一つ一つ消えていっている。

間違いなく巨人化したエレンが巨人を殺しているのだろう。

今から行っても間に合わない。まったくどうすれば?

オレはミーナを見る。

 

「分かりました!ミーナ・カロライナ訓練兵!これより心臓を国に捧げます!」

 

ミーナは顔を引き攣らせながらも力強く敬礼した。

マジですか。

巨人の恐怖を目の当たりにしたばかりなのに、もう戦う気なのか…。

超人というわけでもないのに。どんだけメンタル強いんだよ。

 

「さっさと行け!巨人共を此処に近づけるな!」

 

大柄の髭面の隊長が檄を飛ばす。

確かキッツ・ヴェールマンとかいったか…。

明らかに口だけ男だ。気に食わないが、コイツを攻める資格はオレには無い。

オレは間違いなくコイツ以上に巨人にビビっているから。

立ち向かえるのは、曲がりなりにも亀仙流の修行をやりきった自信があるからだ。

 

 

 

 

「わたし、もう行かないと…。アンタの話は聞きたかったけど」

 

ミーナは補給兵から新しい剣を受け取り、ガスの補給を完了させると俺に背を向けて歩き出した。

 

「待て。俺も一緒に行く」

 

折角拾った命だ。死なれたくはない。

それに出来ればオレの味方になってほしい。

この時オレは、自分の力を晒す覚悟を決めた。

それに大丈夫だよな。いくら強くても「国の為に死んでこい」とは言われないよな?

オレは兵士じゃない。国に心臓を捧げた覚えはないし。

巨人は怖いけど、目の前のコイツらは怖くないし。

 

「……そう」

 

ミーナは胡散臭そうにオレを一瞥した。

その視線に思わず後ずさってしまう。

 

「あんたが同期って事だけは思い出したわ。なんか胡散臭いけど…。一緒に連れていく」

 

「そいつはどうも」

 

「だけど、妙な真似したら…、その時は…」

 

おそらくミーナも怖いのだろう。

彼女にとってオレは正体不明だ。

敵対行動を取った覚えはないが、オレの存在はあり得ない。

そのあり得ない光景をミーナは目の当たりにしている。

立体機動装置を利用せずに巨人を殺し、更にこの本部までトーマス一人を抱えてミーナの立体起動に付いてここまで来たのだ。

しかもトーマスは兵士として完全武装した状態である。かなりの重量なのだ。

得体が知れないのだ。

だからこそオレは素直に頷いておく。

 

「わかってるさ。肝に銘じとくよ」

 

「じゃあ行くわよ、リク。道すがらアンタの事を話してもらうわ」

 

「ああ」

 

ミーナは立体機動装置からワイヤーを射出、屋根まで一気に跳躍した。

オレも後を追う。

 

 

 

オレは訓練兵団から追放された後の事を話して聞かせた。

立体機動の資質が全く無かった事は同期のミーナも知ることだ。

そしてその後、農地開拓に取り組みながらの修行内容を語って聞かせた。

ミーナは修行光景を想像し顔をしかめながらも黙ってオレの話を聞いていた。

気の事は東洋の神秘とてし代々家に伝わる書物に載っていた事にしておいた。

訓練兵団の訓練は凄まじい苦行だ。しかしオレは自信を持って言える。

亀仙流の、いやそれ以上修行を積んだオレは兵士たちの十数倍は血反吐を吐いて己を鍛えてきたと。

 

「そう…俄には信じられないけど…。いや人間がそこまで強くなれる事自体が…。知っていたとしても同じ事を出来る自信が私にはないわ」

 

「まぁ、修行はキツかったけど…、それでもオレは楽しんでやってたよ」

 

「あんた、マゾっ気でもあるの?」

 

「馬鹿言え。どっちかっていうとオレはSだ」

 

「ふふっ」

 

ここで漸くミーナは笑顔を見せた。

歳相応の少女の愛らしい笑顔だ。

恐らく初めて目の前で巨人を見たのだ。神経が張り詰めていても仕方がない。

そしてミーナは真剣な声音で言った。

 

「じゃあ巨人が出てきたら任せてもいいの?」

 

その言葉にオレは一瞬迷ってしまう。

一応、決意はした。それでも二の足を踏んでしまうのはオレがヘタレてるからだろう。

巨人怖い。超怖い。

ミーナが不思議な顔で振り返った。

 

「リク?」

 

「あ、ああ。何でもない。巨人ならオレに任せとけ」

 

 

 

それから約半刻程。

オレたちは向かってくる巨人達を蹴散らしながら街を進んだ。

ミーナには本気でドン引かれている。

 

「あんた実は中身は巨人じゃないでしょうね?」

 

そう言われた時は泣きそうになった。

仕方ないといえばそうなのだが納得できん。

オレは巨人に対してトラウマが在る。

あんなのと一緒にされるのは本気で心外なのだ。

 

「おりゃあっ!!」

 

巨人の手から残像を残して背後に回り込み、うなじを削ぎ落とす。

うなじを損傷した巨人は為す術もなく地に伏して息絶える。

強靭な肉体と生命力を持った巨人の唯一の弱点。それが『うなじ』だ。

うなじ以外の箇所をいくら欠損しても約1分程で再生してしまうのだ。

 

「よし!これで17体!!」

 

「たった一人で巨人を…。は、ははっ…、今までの私達の訓練って何だったの?」

 

そんなこと言ってる暇があるなら巨人と戦って欲しい。

巨人と闘いながらもオレは、緊張と恐怖でチビリそうになってるのに…。

ていうかうんこ漏れそう…。

今オレってどんな表情で戦っているんだろう?

襲ってくる巨人に対する恐怖は常にピークだ。

今も脳裏に父親が喰われた時の光景が過ぎる。同時に前世の記憶が流れていく。

それでも巨人と戦えているのは、きっと…。

巨人じゃ絶対にオレを殺せないからだ。

オレがどんなにビビってても、腰が引けて実力の半分しか出せない状態でも、そんなオレでも巨人よりも圧倒的に強いからだ。

実戦を経験してそれを理解した。

それでもビビってるオレは矢っ張りヘタれ、いやうんこ垂れなだけだろう。

 

「…巨人超怖い」

 

オレは決してミーナには聞こえないように小声で呟いた。

その時、街中に鐘の音が響く。

 

「これは?」

 

「っ、避難が完了したんだ!撤退の合図だ!」

 

出撃して直ぐに撤退?

どれだけ事態が動いているんだよ。

しかし其の割には妙だ。生き残っている兵士達に動きがない。

オレは“その方角”をじっと見つめる。

一箇所に兵士たちが集まっている。その先は間違いなく本部だ。

オレたちが発った時よりも人数が明らかに少ない。

それに巨人が集中している。

 

「どうして?みんな壁を登ってない?撤退でしょ?」

 

ミーナも事態の異常に気が付き戸惑う。

 

「向こう、本部に多くの兵士と巨人共が集まってる」

 

「分かるの?」

 

「ああ、気で分かる。ヤバイな…。また1人、いや3人死んだ」

 

「うそ」

 

正直言って行きたくない。

巨人の気持ち悪い面が並んでいるのを想像すると吐き気がする。

実際すぐにでも吐いてしまいたい。

 

「行こう!」

 

「ですよね」

 

ミーナは仲間を救おうと立体起動で進みだした。

待てよ。巨人と戦うのはオレだろ?全部オレが殺してんじゃん。

お前も働け兵士。生産者に代わって心臓捧げるのがお前の仕事だろ?

オレも一応、生産者だよ。

 

「けど立体起動ってやっぱりカッコいいよな…」

 

無理だということは理解している。

前に一度、放棄された中で無事な立体機動装置を装着、練習したことがあるが…。

亀仙流の修業によって強化された肉体の力に立体機動装置が耐えられなかった。

立体機動装置は全身に装着した固定ベルトを利用した細かい体重移動技術を要する。

オレも試してみたが、自身の筋力によって固定ベルトが弾け飛んだ。

折角の立体機動装置をお釈迦にしたのだ。勿体無い。

 

閑話休題

 

ミーナの進軍に続くこと数分、俺達の前に驚くべき光景が飛び込んできた。

 

「なにあれ?巨人同士で殺し合ってる?」

 

なんと15メートル級の巨人が仲間であるはずの巨人を攻撃していたのだ。

なるほど、知っていたとはいえ凄い光景だな。あれが巨人と化したエレンか。

まるで人類の怒りが形になったかのようなソレは咆哮を上げながら巨人を猛襲した。

 

「ミーナ!」

 

やって来たのはミカサとアルミン、そして坊主頭の兵士だ。

坊主頭の顔には見覚えがあるから同期だろう。

 

「一般人?なんでこんなところにっ!?」

 

「コニー、リクだよ。リク・クリムゾン」

 

「あ、ああ。なんか久し振りだな…」

 

アルミンの言葉で漸く思い出したのか納得した声を出す。

 

「アルミン、皆は?それにどうして後方のミカサが…」

 

ミーナの言葉にアルミンは項垂れる。

 

「ボク以外、みんな巨人に…」

 

「そ、そんな…」

 

「アルミン、いまは…」

 

「わかってる。ミーナ、リク、聞いてほしい」

 

アルミンはオレ達に簡単に自分達の現状と打開する為の作戦を説明した。

現状、立体機動装置のガスが切れそうであり壁を昇るためには補給が急務である事。

しかし補給部隊は戦意喪失し本部に立て篭もって出てこない。

その本部に巨人が集中し近づくことは難しい。

よって巨人を殺す巨人(エレン)を利用して本部まで誘導することによって巨人達に隙を作り補給部隊と合流、補給完了次第戦場を離脱する。

 

「いきなりで戸惑うと思うけど今は詳しく説明してる暇がないんだ」

 

「お前らも早く来いよ」

 

それだけ言うとアルミンとミカサはさっさと行ってしまった。

コニーもそれに続く。

 

「えっ!?ちょ、ちょっと!それだけじゃ!」

 

「行くぞミーナ。事情は後で聞こう」

 

「……っ、分かったわよ!」

 

ミカサを戦闘に一行は本部を目指す。

しかし事はそう簡単に運べない。

巨人の群れが前方でヨダレを垂らして待っていたのだ。

3メートル級から15メートル級、奇行種まで選り取り見取りだ。

オレは一気にミカサを追い抜くと巨人の前に踊り出た。

先ずは厄介な奇行種からだ。

残像によって巨人を幻惑して背後に周りうなじを削ぎ落としていく。

 

「き、消えたっ!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「みんな驚いた?私も初めは、ううん、今も驚いてるけど…」

 

「でやああああああっ!!」

 

「私達が訓練兵団で必死でやってた頃、アイツは私達とは比べ物にならない苦行を積んでいたみたい…それに、信じられないかもしれないけどアイツ、皆に合流するまでに20体の巨人をたった一人で殺してるの」

 

「はぁっ!?冗談だろっ!!?」

 

 

 

オレは目の前の巨人を全滅させずに適当な小型の巨人をエレンの方へと蹴っ飛ばす。

巨人の生体は学んできたが、一番驚いたのは巨人の体重だ。

コイツらは思ったほど重くない。なにせ7メートル級程度なら簡単に投げ飛ばせるのだ。

難しいことは分からないがオレにとっては有難い。

体重が軽いという事は戦闘力にも直結するからだ。

見た目同様の体重なら間違い無く今以上に苦戦していた筈。

 

「ていっ!!」

 

オレを掴もうとした15メートル級の指を持ち背負投げ一閃。

勿論エレンの方角に投げ飛ばす。

皆からは勿論ドン引きされた。

 

「おいおい、マジかよ…」

 

「本当に人間?」

 

オレの暴れぶりに皆冷や汗をかいている。

それでも足を止めないのは流石だと思う。

皆は巨人を横切り、または指の隙間を抜けて股の下を掻い潜る。

オレは更に皆が掴まれないようにフォローする。

コニーに巨人の手が迫る。

 

「させるか!!」

 

オレは全速力で飛びコニーを掴もうとしている巨人の指を切り落とした。

鮮血が舞い顔を濡らす。

うわっ!ばっちい…、エンガチョッ!!

実際に巨人は本当にキモい。

 

「わ、悪い!助かった!!」

 

コニーは顔を青くしながらも礼を言い前に進む。

今のところ犠牲者は出ていない。

 

「よし!これなら上手くいく」

 

次第にオレの強さにも皆が慣れていくのを感じる。

マジで順応性高いな。流石だと思う。

皆の動きから固さが取れ起動も滑らかになっていく。

戦場の空気になれ緊張も取れ始めてきたようだ。

新兵ゆえの実戦での弊害、しかしもう大丈夫だろう。

こいつらは自分の実力を十全に発揮できる筈だ。

 

 

(くそ…比べてオレ情けねぇ…)

 

オレは未だに腰が引けて修行中の様に実力の全てを発揮できないのに…。

 

 

そして程なくして。

 

「皆!本部だ!」

 

アルミンの声に反応して顔を上げる。

目の前には本部と周りに集中している巨人共が見えた。

ゴールは近い…っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

リクの立体機動装置

 

立体機動装置とは全身に固定したベルトを利用した細かな体重移動技術によって成り立っています。

立体起動中は常に全身運動しているので体力を消耗します。

 

リクはエレンの様に装置に不備があったわけではなく本気で才能無しでした。

体力は人一倍あったのに全身の体重移動というものが今ひとつでしたww

後に再び立体機動装置を手に入れて試みます。

しかも亀仙流の修業によって超人化した身体能力にベルトが耐えられない仕様w

全身の体重移動なんてやれば圧倒的な運動エネルギーによってベルトがパツンと切れます。

 

そんなエレンの能力値

 

【LV50】

 

【格闘298】【射撃122】【防御301】【命中177】【回避302】【技量163】

 

地形

 

【地S】【空A】【海B】【宇-】

 

スキル

 

巨人恐怖症LV6

気力限界突破

見切り

カウンター

ガード

2回行動

SPアップLV3

 

精神

 

【加速5】【集中15】【直感25】【根性20】【気迫30】【努力10】

 

リク・クリムゾン

 

【HP500/500】【EN300/300】

 

【装甲750】【運動性230】【標準値120】

【移動3】【移動タイプ-陸-空-】【機体サイズS】

【特殊能力-亀仙流-】

 

 

 

スパロボ風でした。

なお以上の能力は本編には全く関係ありません。

 

 

 

 




アンケート

私的にヒロインはミーナにしようと思っているのですが皆さんはどう思いますか?
それともヒロインは無しの方が良いですか?
つぶらな瞳の巨人に喰われるのは忍びないので生還させてみたのですがww

因みにミカサをヒロインにするのは不可能です。
私、いえリクではエレンからミカサの心を奪うのは無理でしょうww
多分、他の誰であっても無理でしょうが…。


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恐怖

アニメに追いつきました。
まさかこんな駄文を読んでくれる方がこんなにいるとは思いませんでした。
ありがとうございます。


巨人エレンを誘導しながら遂に本部に到着したオレ達。

ミカサ達が次々と窓を蹴破り建物内部に飛び込んでいく。

取り敢えずオレは。

 

「ミーナ、オレは外の巨人共を引きつけとく。その間にさっさと補給を済ませてしまえ」

 

「わかった」

 

オレの前を飛んでいたミーナに声をかけると反転、巨人の前に立ちふさがった。

 

「あと、生き残った奴に説明よろしく!」

 

同時に一番近くにいた7メートル級の頭部に踵を落とす。

勿論キッチリ止めを刺す。

 

「やっぱり怖い…。オレも中に行けばよかったかも」

 

格好つけた後、速攻で後悔するオレだった。

 

 

 

 

ミカサ達よりも一足先に本部内に到着していた訓練兵達は身体を硬直させて外を眺めている。それは誰の声だったのだろう。

 

「な、なんだよ…、俺は夢でも見てるのか…」

 

ジャン・キルシュタイン。皆をまとめながら命懸けで本部に到着した少年だ。

ジャンは目の前の光景が夢か何かだと思った。

それも仕方なきことだ。巨人が巨人を殺しているのだ。

そしてそれ以上に理解が追いつかないのは…。

 

「キモい顔でっ!よるんじゃねぇっ!!」

 

兵士ではない、おそらく一般人の少年が巨人を殴り飛ばしている光景だった。

リクを取り囲んで押し潰そうとした小型の巨人達の身体が周囲にはじけ飛ぶ。

15メートル級の巨人はリクに顎を打ち上げられて仰け反る。

瞬間、リクの姿が掻き消え巨人は止めを刺される。

7メートル級が投げ飛ばされる。

そしてリクの姿も掻き消える。同時に地面が、屋根が音を立てて崩れる。

この時理解した。リクは消えているのではなく自分達の動体視力では捉えきれない程のスピードで動いているのだ。

立体機動装置は見当たらない。驚愕するしか無い。

そして直ぐ側でリクには目もくれず巨人を殺す巨人エレン。

他の巨人とは異なり格闘術で巨人に対抗し、弱点であるうなじを理解して止めを刺している。

 

「ジャン!」

 

そこでミカサ達が飛び込んできた。

 

「お、お前ら!!生きてるじゃねぇかっ!!」

 

「やった!作戦成功だ!!」

 

生き残った兵たちは喜びの声を上げる。

コニーが外にいる巨人を利用した作戦を説明する。

夢みたいな作戦だが、現状ではガスも剣の刃も尽きかけている状況では、これしか取れる道がない。

 

「けどよ、アイツは?なんか見覚え有るけど…」

 

「昔いただろ?訓練兵団に…。脱落して追い出されたリクだよ」

 

「な、なんだと?」

 

「よく分からんが。追い出された後もアイツ独自に訓練して馬鹿みたいに強くなったんだってよ」

 

「はぁ!?そんな訳ねぇだろ!あの訓練を乗り越えられなかった野郎がそんなこと出来るわけがっ!!」

 

「けど彼は自分の意志で出て行ったわけじゃない。追い出されただけ。それに立体起動以外の成績は私と並んでた」

 

納得がいかないと声を上げるジャンをミカサが制する。

今は言い争いをしているヒマはない。

 

「…ちっ!」

 

ミカサの言う通りだ。

このチャンスを逃す手はない。

誰だってこの場で留まって死にたくはない。

この可能性にかけるしか無いのだ。

 

「おい、お前ら!何時まで戯れてんだ!」

 

そとからリクの声が響く。

 

「くそ!テメエ!後でぜってえ話を聞かせてもらうからな!逃げんじゃねぇぞ!」

 

「さっさと行け!お前らが補給を終わらせるまでにはこっちも終わってる!」

 

皆は互いの顔を見合うと巨人たちから背を向けて一斉に走りだした。

 

 

 

 

「漸く行ったか…」

 

オレは襲い掛かってくる巨人の攻撃を躱しながらミカサ達を見送った。

屋内には間違いなく巨人達が入り込んでいる。

しかしアイツらなら大丈夫だろうという確信がある。

 

「にしても巨人どんだけいるんだよ。怖すぎっ!」

 

それに気持ち悪すぎる。

原作でこんなに沸いてきたか?

明らかに倍以上はいるんじゃないかと思う。気の所為と思いたい。

 

「つーかヤベッ、ションベンして…、っ!!」

 

これで漏らしたらチビったと思われるじゃねえか。

それだけは嫌だ。

にしても続々と巨人が集まってきている。

 

「うわっ!?まだ来るのか!さ、最悪だ……」

 

死ぬ事はないだろうけどオレの気力は間違いなく混乱寸前だ。

敵の攻撃を回避しても攻撃を命中させても気力が磨り減るってどんだけメンタル弱いんだオレ。

この世界、巨人恐怖症なんて珍しくもないのに…。

俺の場合はこの力も宝の持ち腐れだよ…。

 

「…っ、しまったっ!」

 

アホかオレッ!?

油断して捕まっちまったっ!!

15メートル級の巨人だ。禿頭で腹が突き出たメタボ巨人だ。

巨人は直ぐにオレを握りつぶそうと手に力を込めた。

そしてオレを口に運ぶ。

 

「っ、うぎゃあああああああ!?やめやめやめっ!!?キモい!キモイキモイッ!!!」

 

メキメキと更に力を込めてくるが全く痛くない。

しかしオレの心はマジで痛すぎる。

カパリと巨人が大口を開ける。口臭がオレの吐き気を促す。

そして。

 

「うげええええええええ」

 

オレは巨人の口内にゲロを吐き出した。

あ、同時に漏らしちまった…。

瞬間、オレを掴んでいた巨人の指が弾け飛んだ。

オレが気を開放して巨人の手首ごと吹き飛ばしたのだ。

 

「よ、よくも…、よくも、よくも…う、うげぇ…っ」

 

完全に頭にきたぞ…。

凄まじい程の怒りが感情を支配するのを感じる。

オレの日常を、両親を…。そして何よりも…。

 

「テメエのせいでゲロ吐いた上に漏らしちまったじゃねえかあああっ!!!」

 

醜態だ。前世でさえここまえの醜態を晒した事は無かった。

男ってものは見栄を張ってナンボの生き物だ。

もしも周りに人間がいてこの醜態を見られていれば間違い無く自殺モンだったぞ。

目の前の巨人は嬉しそうにオレの履いたゲロを飲み込み涎を垂らしている。

 

「ひっ!?オレのゲロを美味そうに飲んでんじゃあねええええっ!!!」

 

やっちまった。

気づいた時には既に遅し。

オレは体力の温存も忘れて気功波をぶっ放していた。

極太の光線が巨人の顔をうなじごと吹き飛ばした。

そして後ろの巨人も巻き込んで爆発した。

撃ってしまったものは仕方がない。オレは手早く他の巨人に止めを刺す。

横を見ると巨人エレンが他の巨人に群がられていた。

 

「仕方がないな」

 

オレはエレンに群がる巨人を引き剥がすべく飛びかかった。

気がつけば吐き気は収まっていた。胃の中のもの全てを出したお陰か。

そういえば何だが頭も冴えている?脳内がクリアになっていくのを感じる。

もしかして巨人恐怖症が治ったのか?いや多分、これ以上の醜態はないから開き直ったんだろう。

自分の事をここまで客観的に分析できているのは初めての事だった。

 

「こうなったらアイツらが補給を終えるまでにマジで全滅させてやる。いやマジで」

 

そんでもって速攻で着替えに家に帰ってやる。

気を開放した時に濡れた股ぐらが熱によって乾いたからバレないだろうけど…。

出来れば着替えたい。漏らした事実を隠蔽したい。

しかしゲロ吐いて漏らすほど巨人恐怖症が進行していたとは思わなかった。

しかも自覚したら余計に…。

戦いが終わって冷静になった時が怖い。つーか戻りたくねぇ…。

そんな事を考えながらオレは自分が巨人を機械的に殺していく光景をぼんやりと眺めていた。

 

「あ、これって自動操作モード?」

 

アンテナ刺さってないけど…。

そして、なんやかやで巨人を皆殺しにしたオレは周囲を警戒する。

遠くに巨人の気配は未だ感じるが、取り敢えずは危機は去った。

 

「っと、エレンは…あ!」

 

巨人エレンを見ると、その巨体は既に崩れ始めていた。

度重なる戦いで肉体を酷使したから、ではない。

そもそもオレが殆どの巨人を殺しているのだ。

エレンは殆どダメージを受けていない。

恐らく巨人に変身した時のエレンの精神、つまり目的に沿った変身だったのだ。

巨人を殺し周囲に巨人の脅威が去った為、巨人の肉体は役目を終えたのだろう。

巨体が地に伏し、高温と蒸気を上げながら肉体が崩壊していく。

そしてうなじの部分からエレンの顔が現れた。

オレは巨人の身体に駆け上がると、エレンに手を伸ばした。

それと同時にミカサが割り込みエレンを抱きしめた。

ミカサはオレには目もくれずエレンを強く抱きしめ、そして。

 

「うわああああああああああんっ!!!」

 

声を上げて泣きだした。

普段は無表情で感情を表に出さないミカサが子供の様に泣きわめく。

それは歓喜の声だ。

続いてやってきたアルミンもエレンの手を取り涙を流す。

他の人間が訳も分からずに戸惑う中、ミカサは周囲も気にせずに唯なみだを流した。

 

 

オレは既に乾いた、いや少し後が残っている股間がバレないように皆から背を向けた。

もうすぐ乾きそうだ。

どうかそれまでバレませんように。

もしも脱糞してたら誤魔化す事は出来なかっただろうから不幸中の幸いだ。

 

「もしバレたら涙って事にしよう…」

 

オレはミカサとアルミンの涙を見ながらどうでも良い決意を固めた。

これは末代までの恥だ。

 

「…ちっ」

 

そして事態は非常に不味い状況に。

多くの兵士が見ていたのだ。エレンが巨人の中から現れるのを。

 

「おい、エレンを連れて移動するぞ」

 

人が集まってくる。

このままでは間違いなく碌な未来は待っていない。

ミカサもその結論に思い至ったようだ。

直ぐにエレンを抱えると立体起動装置からワイヤーを射出。

凄まじい速さで壁をよじ登っていく。アルミンも続いた。

人垣が更に集まりざわつく。そして。

 

「巨人が逃げたぞ!アイツは巨人だ!追えっ!追えええええっ!!」

 

「結局こうなるのか」

 

オレは頭痛を抑えながらミカサ達の後を追った。

巨人の次は人類が相手か…。まぁ、巨人よりは遥かにマシか…。

オレが欲しいのはオレの戦闘力に理解を示して受け入れてくれる理解者であって流されるだけの有象無象ではないからな。

例え打算を持ってオレの力を利用してやろうという気でもオレに向ける感情が憎しみの様な負の感情でなければ歓迎する。

エレンら第104訓練兵団達は、間違いなくオレの味方になってくれそうだ。

 

「そんな考えのオレも打算で保身…。うん、持ちつ持たれつで人間らしいな」

 

自分の大嫌いな感情。

嫌いなことは変わらないが、どうにか受け入れることが出来そうだ。

オレは城壁の直ぐ下に追い詰められているエレン達を見つける。

上からは巨人をも殺傷しうる榴弾を詰めた砲台がエレンを狙っていた。

指揮官の男キッツ・ヴェールマンが掲げた手を振り下ろして叫ぶ。

 

「撃てぇっ!!!」

 

「させっか!!

 

オレは双方の間に割り込むと迫り来る榴弾に向かって衝撃波を放ち相殺する。

まさか実際に使用する日が来るとは思わなかった。

攻撃力が殆ど無いので技覧に入れることすら憚れる通常攻撃と変わらない扱いの技だ。

オレ達の眼前の空間が爆ぜる。

 

「よう、盛り上がってるな?」

 

凄まじい轟音の中で皆の顔がぎょっとする。

有り得ない。巨人をも後退させる榴弾を正面から破壊した。

しかもあの男は一体どこから現れたというのか?

目撃者の目にはリクがいきなり現れたかの様に映った。

 

「おまえ…リクか?」

 

「お?気がついたか?エレン」

 

「な、何者だっ!!貴様っ!!!」

 

キッツが怯えた声で叫ぶ。

 

「唯の武道家だ」

 

オレは簡潔に普通に答えた。

オレの答えに辺りが静まり返った。

 

「あれ?外した?」

 

皆の視線にオレは消えてしまいたくなった。

一瞬だけ。いやマジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

新技紹介

 

衝撃波:対人用の技。殺傷能力が低く牽制と相手の攻撃の相殺に使用出来る。消費も殆ど無い。

 

キャラ紹介

 

キッツ・ヴェールマン。

駐屯兵団の隊長?

住民の避難が完了するなり軍規を言い訳にして補給兵を見捨てて逃げた臆病者。

大柄で厳つい髭面だが、内面は反比例して繊細で小心者。

リクは嫌っているが、内心では共感できると思っている。

 

 

 




次回はキッツさんがアンチされそう?
いやアンチにならないように頑張りたいです。


最後に人間相手に無双はないのでご了承下さい。


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対立

たくさんの感想を有難うございます。
なんか凄く嬉しいです。


静寂。

全員が硬直していた。

突如現れた一人の少年の出現によって。

正体が巨人という疑惑を持つ兵士エレン。

彼と彼を庇う兵士達を取り囲み、処理するべく榴弾を発射した瞬間だった。

間に割り込んだ少年は無造作に手をつき出すと気合を込めて何かを放った。

結果、エレン達を殺す筈の榴弾は目標に命中する前に弾け飛んだ。

人間が巨人になるだけでも理解が追いつかないというのに。

驚愕するしか無い。そしてこれ以上考えたくない。

それがエレン達を囲む兵士たちの総意だった。

 

 

 

 

あ、危なかった…。

もう少しでエレン達が吹き飛ぶところだった。

いや本来なら一瞬で巨人化したエレンがミカサ達を守るんだったな。

けど下手に変身して更に場をパニックにするよりはマシかもしれない。

オレはエレン達の様子を見た。

ミカサは相変わらずエレンを庇うように立ち剣を構えている。

アルミンはミカサに何かを呼びかけている。

そしてふとエレンが呟く。

 

「お、思い出した…。ち、地下室、家の地下室…、なんでこんな時に…」

 

巨人の秘密が眠っているであろう場所の事だろう。

何にせよエレンを死なせる訳にはいかない。

目の前の分からず屋共を蹴散らすのは簡単だが、人類同士で戦うなんてしたくない。

必要ならするけど、とにかく話のわかるお偉いさんが来るまで粘らないと…。

 

「あ、あいつ…っ、ぶ、部隊長!奴は…」

 

その時、髭面の指揮官の横の兵士が怯えたようにオレを指さした。

ていうか人を指差すな。

 

「ヤツです!きょ、巨人を何の武装も無しに殺していた奴です…っ!」

 

「なんだとっ!!?」

 

「そ、そうだ!オレも見たぞ!!」

 

「奴が殺した巨人は一匹や二匹じゃないっ!!」

 

「に、人間の皮を被った悪魔…、アイツもそこの巨人モドキの仲間なんだ!!!」

 

おいおい、マジですか…。

そういう結論に至るのかよ…。最悪だ。

 

目の前の兵士たちを見る。

物凄い形相でオレたちを見ている。

冷静に話を聞いてくれるとは思えない。完全に頭に血が上っている。

 

「どうなんだ!ええっ!?貴様も巨人なんだろうっ!!」

 

かなりムカツク事を…。

なんか腹立ってきた。巨人が怖いのは分かる。

けどオレが巨人が怖いのは飽くまでも生理的に嫌悪するような行動と見た目だ。

当然憎しみや怒りもあるが…。

見た目が何でもないような人間に対して神経質になりすぎだろう。

なんか、オレ思考が危ない方に…。

 

「意味のない質問するなよ」

 

あ、言ってしまった。つい本音を言ってしまった。

 

「なっ、なにぃっ」

 

「だってそうだろ?オレらが何を言おうとお前ら信じる気がないだろ?エレン達の言葉に対してのお前らの答えがさっきの榴弾だ。何をアホなことを」

 

「リ、リク!な、何を!?」

 

オレの相手を煽るような物言いにアルミンが戸惑う。

下手に刺激するのは得策じゃないのは分かる。

仕方ないじゃん。つい言っちまったんだよ。

 

「おい、おっさん。勝手に憶測でモノを言うのは止めろ。それにオレが巨人の仲間?だったらどうして巨人はオレらを襲う?どうしてエレンやオレは巨人を殺す?お前らアタマ大丈夫か?」

 

「だ、黙れ!」

 

「これだよ…思った通りの言葉を有難う」

 

「……き、貴様っ」

 

指揮官キッツの顔から湯気が出る。

物凄い怒ってるな。いやビビってるんだな。

 

「ああ、さっきお前らが言ってたことで一つだけ正解があるぞ」

 

オレは一呼吸置いてはっきりと言ってやった。

 

「オレはこいつらの味方だって言うのは正解だ。だからオレはこいつらの側に付く」

 

文句あるか?そんな感じでオレは目の前の兵士たちを睨みつけた。

 

「な、貴様やはり…っ」

 

「おい止せっ!何やってんだお前っ!そんな事言ったら…っ」

 

エレンが悲痛な声で叫ぶ。

アルミンとミカサを案じての言葉だ。

エレンは未だ自分の身に起きたことを理解はしていない。

しかし味方であるはずの人類から敵意と恐怖を向けられている事は理解できる。

分かっているのは自分が意識のない間に何か有り、自分は巨人として敵意を向けられていることだけだ。

 

「言っとくけどな、お前らは敵ではないものを敵に回してるんだぞ?戦わなく良い相手に喧嘩を売ってんだ。指揮官ならどうすれば良いかくらいわかるだろ?」

 

「ふ、巫山戯るな!貴様ら巨人は人類の敵っ!私の行為は軍規に則ったものだ!私は間違っていないっ!!」

 

「だ、だめだ。みんな考えるのを放棄してる…」

 

アルミンは顔を青くしながら肩を震わせた。

 

「軍規ねぇ…。聞いたぞ。アンタ、軍規を理由に補給部隊を見捨てて逃げたんだってな」

 

オレの言葉にキッツの顔が更に歪む。

見捨てて逃げた。その言葉に周りの兵たちも反応して戸惑う。

敵前逃亡は死罪。その重罪を指揮官自らが犯したのだ。

兵達の反応にキッツは焦る。

更に追い込みをかける。

 

「そんな補給部隊を救ったのはオレと後ろにいるエレンたちだ。多くの巨人を殺して、蹴散らして退路を確保して、テメエが出来なかったことをやった。軍規を守った?違う!お前は唯、巨人が死ぬほど恐ろしかったんだ!間違っていない?違う!現実から目をそむけてるだけだろう!?お前は巨人と向き合うことすら恐ろしかったんだ!」

 

だから逃げ出した。

巨人に対する恐怖は皆同じだというのに。

 

「ち、違うっ!!!」

 

「違わないね。そもそもオレらを殺して次にどうする気だ?また軍規を理由に逃げるのか?」

 

「な、なんだと?」

 

「いまここで無駄な時間を費やしてる間にも巨人は此処に向かってきてるっ!このままだとお前ら全員仲良く巨人の腹の中だっ!」

 

それが現実だ。

オレの言葉によって現実を思い出した皆が顔を青くする。

状況は最悪なままなのだ。

人垣からザワザワと怯えた声が出てくる。

壁が破壊された以上、更に奥の壁まで後退しなければならない。

しかしそれは5年前の繰り返しだ。そして今度こそ国そのものが成り立たなくなる。

だからこそオレは提案する。

 

「オレらを敵に回すよりも味方にした方が良いとは思わないのかっ!!!」

 

「は?」

 

「あ、あいつ何を言ったんだ…」

 

「味方、だと?」

 

「お前らも見ただろう?巨人化したエレンを!巨人を正面から殺すオレを!」

 

そしてオレは後ろを見た。

エレンとミカサを、そしてアルミンを。

アルミンは何かを決意したように立ち上がり前に出てくる。

そして見事な敬礼を取って力の限り叫んだ。

 

「もしも僕達に機会を与えてくださるならっ!巨人の力を使えば!そうすればこの街の奪還も夢ではありませんっ!そして破壊された壁を塞ぐ手立てもありますっ!成功すれば我ら人類の勝利ですっ!!!」

 

国に心臓を捧げる。

これは冗談でも何でもない。

生産者に変わって命を捨てて国を守るのが兵士の義務。

今がその時だ。アルミンの決死の説得。

その決意が凄まじいほど伝わってくる気迫だった。

目の前の兵士たちから殺意と憎悪が和らいでいく。剣を下げる。

 

「そ、そうだよ…」

 

「もしかしたらオレたち助かるかも…」

 

「オレ、アイツに助けられた」

 

 

絶望に染まった兵士たちが希望を持ち始める。

しかしそれでも。

 

「騙されるなっ!こいつらの言うことなどっ!!!」

 

キッツはそう言いながら砲兵に合図を送る。

しかし何者かがキッツの腕を掴んだ。

 

「いい加減にせんか臆病者めが。あの者の素晴らしい敬礼が見えんか。巨人の仲間に出来ることじゃないわい」

 

「ピ、ピクシス司令っ!!?」

 

南領土を束ねる最高司令官ドット・ピクシス。

全人類の再重要区防衛の全権を与えられた男である。

 

「さて、興味深いことを言っておったな…。破壊された壁を塞ぐことが出来ると」

 

ピクシス司令は禿げ上がったアタマを掻きながらニヤリと笑った。

そしてキッツに下がるように指示を出すとオレたちに背を向けて静かに言った。

 

「付いて来なさい。若者たちよ。話をしよう」

 

 

 

 

オレたちが連れてこられたのはウォール・ローゼ城壁の見張り台。

エレン、ミカサ、アルミンに続いてオレがピクシス司令の前で並んで立っている。

オレたちは超大型巨人が現れてからの経緯を全てピクシス司令に話した。

エレンの身に起こったこと。

そしてエレンが思い出した実家の地下室に存在するという巨人の秘密。

そして最後にオレの事情。

司令は城壁の下に広がる街を眺めながら、静かに話を聞いていた。

 

「なるほど、そこに行けば全てが分かるか」

 

「信じて、くれるんですか?」

 

「そうさの…確証がない以上、頭の片隅に入れておくといったところか」

 

「それで、オレたちは?」

 

「心配いらん。物事の真意を見極めるくらいは出来る。お主らの命は保証する。でなければ」

 

ピクシス司令はオレを値踏みするように見つめると溜息を付いた。

 

「お主を敵に回したくはないからのう…」

 

オレが敵に回る?

確かに自分の命が最優先で守るが、巨人のように人間を殺す気は全くないぞ。

この爺さん、本当に物事の本質を見極められるのか?

 

「さてと、本題に入ろう」

 

ピクシス司令はアルミンに向き直り話を進めた。

温厚な年寄りではなく厳しい軍人の表情だ。

 

「はい」

 

「アルミン訓練兵、巨人の力を使えばトロストの奪還も可能。そうだな?あれは本当か?それとも苦し紛れの命乞いか」

 

「両方です。でも…」

 

アルミンはオレの方を見た。期待に満ちた目をしてる。

仕方ないな。

 

「巨人だけじゃなくてオレの力も勘定に入れろよ」

 

「リク…」

 

「ふむ…」

 

アルミンが考えていた事、それは巨人とかしたエレンが大岩によって壁を塞いでしまうことである。自分達が助かりたいという事もあるが、それ以上に現状を打開しうる唯一の道だと感じたからこその提案だった。

 

「エレン訓練兵、本当に出来るのか?壁を塞ぐことが…」

 

ピクシス司令が期待を込めた眼差しでエレンを見つめた。

エレンはその視線を受け止めて言った。

 

「塞ぎます!やってみせますっ!!必ずっ!」

 

「決まりじゃっ!お主は男じゃっ!」

 

ピクシス司令はエレンの方を叩くと立ち上がって手を掲げた。

 

「参謀を呼んで直ぐにでも始めるぞ!!」

 

「ああ、時間は無限じゃない。早くしないと作戦を立てるヒマさえ無くなっちまう」

 

敵は巨人だけではないのだ。

モタモタしていると、その間に死守している壁を突破されてしまうだろう。

 

「だいじょうぶ?エレン」

 

ミカサが心配そうにエレンに寄り添う。

 

「おいエレン」

 

「な、なんだよ…」

 

「巨人共はオレがなるべく引き付ける。お前は何としても壁を塞げ。いいな?」

 

本当は嫌だが戦うのはオレだけじゃない。

それに犠牲者をなるべく減らすように戦えば、オレの味方を増やせるかもしれない。

そう思うと今回の作戦は間違いなくチャンスだ。

巨人を引き付けつつ喰われそうになっている奴を優先して助ける。

作戦は「いのちをだいじに」で決定だな。

エレンはオレの言葉に対向するように強く頷く。

 

「お前に言われるまでもないっ!お前こそ本当に大丈夫なのか?」

 

エレンも半信半疑なのだろう。

巨人に変身できる能力は少しずつ自覚しているみたいだが。

この場合、疑っているのはオレの実力だ。

そこでアルミンがフォローを入れてくる。

 

「エレンも一度は見てるだろ?トーマスを喰おうとしていた奇行種を殺すリクを」

 

「……見えなかったんだよ」

 

どうやらあの時のオレの動きが見えなかったらしい。

一瞬で奇行種の首が切断されて、次の瞬間、トーマスを抱えたオレが現れた。

そんな風に見えたのだ。

 

「これから嫌というほど見れるさ。だからお前も頼むよ」

 

「あ、ああ…」

 

マジで頼むぜ。

もしも巨人になったお前が何の戦果も得られなければ、後にヤバい事になる。

オレが壁を塞ぐのは最終手段だ。

そしてピクシス司令の後を追いかける。

 

「おい!」

 

エレンに呼び止められた。

 

「何だよ」

 

「訓練兵団を追い出されたのに、どうしてそこまで強くなったんだよ!?」

 

何かを期待したような表情。

もしかしてオレに対して何か幻想でも抱いているのか?

もしかしたらオレを尊敬しているのかもしれない。

他人から尊敬されるのは悪くない。

しかしオレがエレン達に求める関係は他人ではなく仲間だ。

勘違いさせていても良いのは赤の他人だけだ。

だからオレは正直に答えた。

 

「巨人が死ぬほど怖いからだ。チビリそうなほどに怖い。喰われたくないっ!」

 

オレはその一心で修行したんだよエレン…。

その言葉でエレンの表情が硬直した。

だがそれでいい。

オレはエレンに背を向けると再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は巨人相手に無双かも知れません。


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無双

文字通りの無双回です。
上手く掛けているか心配です。
戦闘シーンは苦手です。


「注目ッ!!!」

 

オレとエレンを伴った司令が城壁の上から集合した兵士達に号令をかけた。

いよいよ作戦の説明が行われる。

トロスト地区奪還作戦の開始である。

 

作戦の成功目標は超大型巨人によって破壊された扉を塞ぐことだ。

当然、全兵士がその作戦内容に戸惑う。

破壊された扉を塞ぐ。それは人類には不可能な偉業だ。

もしそんな力が人類にあれば、マリアの壁もとっくに塞いで然るべきなのだ。

兵士たちの心境は一つだった。

 

「どうやって?」

 

兵達の同様と戸惑いを流し、ピクシス司令の説明は続く。

そこで初めてエレンが紹介された。

 

「彼は我らが極秘に研究した巨人化生体実験成功者だ!」

 

云わく、エレンは巨人の肉体を生成し操ることが出来る。

巨人化したエレンがローゼ付近にある大岩を持ち上げて破壊された扉まで運び穴を塞ぐ。

兵士達の任務はエレンが穴を塞ぐまでの間、その生命を投げ出してでもエレンを護ることである。

ピクシス司令の説明した作戦が成功する意味は奪われた街を奪還出来るという事だった。

兵士達の目に希望の光が灯る。

 

「そんなことが出来るのか?」

「オレたち人類は、巨人をも支配できるのか?」

 

「そんな筈あるか!」

 

しかし巨人の恐怖に負けてしまった者は納得できなかった。

 

「そんな嘘に騙されるか!」

 

「そうだ!そんな訳のわからない作戦に命をかけることが出来るかっ!!」

 

恐怖に負けた兵士達は次々と隊列を離れていく。

敵前逃亡は死罪。

理解していても巨人に喰われるよりはと我先にと逃げ出そうとする。

将校達は逃亡兵を出すまいと、剣を抜いて道を塞ぐ。

ここで勝手を許せば秩序が崩壊するからだ。

それでも兵士達は止まらない。中には上官に対して剣を向けるものも出てきた。

 

「司令として命ずるっ!!今この場から逃げ出す者は罪に問わぬっ!!!」

 

全将兵が驚愕する。

 

「一度巨人の恐怖に負けたものは、もう巨人に立ち向かうことは出来んっ!去るものは追わんっ!行くがいいっ!!但しっ!自分の大切な者に巨人の恐怖を味あわせたい者もこの場から立ち去れっ!!!」

 

その言葉に逃げ出す兵達全員の足が一斉に止まった。

駄目だ。それだけは絶対に。

兵達の脳裏に大切な者達の顔が浮かぶ。

それにこの場に逃げ出せば人類の敗北、滅亡が決定するのだ。

4年前、ウォール・マリア奪還を名目に政府が抱えきれなかった大量の失業者を口減らしした。そのお陰で皆が生きていられる。

しかし今回ばかりはそうはいかない。

最後の壁、ウォール・シーナだけでは残された人類の半分も養えない。

待っているのは人類同士の戦争だ。

ピクシス司令の言葉に前兵士の士気が高まる。

そして司令がオレを前に押しやった。

やっと俺の出番か。これだけ大勢の前に立った事なんか無いから緊張するな。

 

「それからもう一人っ!頼りになる男を紹介しようっ!リク・クリムゾン!」

 

「どうも」

 

「もう知っているものもいるだろう。驚くべき事に彼は我ら兵士を養う為に働く生産者じゃっ!しかし此度の戦いにおいて自分の意志でこの戦場に降り立ったっ!彼が何の武装も無しに巨人共を蹴散らす姿を目撃した者は少なくないじゃろうっ!」

 

さて、どうやって自己紹介するか。

取り敢えず自分が巨人の同類じゃない事をアピールしつつ適当に茶を濁すか?

 

「紹介に預かったリク・クリムゾンだ。東洋の神秘、亀仙流の武術の継承者だ。まず初めに言っておく事がある」

 

オレは兵士達の顔を見渡す。

知っている顔が何人か見えた。ミーナが手を振っている。

しかし殆どの兵士がビビっているのが分かる。

なんでこんな奴らを守らないといけないんだろう。

一瞬そういった考えが脳裏を過ぎった。

しかし、コイツらはオレと同じだ。唯、巨人が怖いだけ。みんな同じだ。

そう思えば負の感情は薄れていった。

 

「さっきお前らと揉めた時に分かったことだけど、お前らはオレが巨人の同類じゃないかって疑っているだろう…」

 

オレの言葉に兵士達が顔を見合わせた。構わず続ける。

 

「心外だ」

 

オレは巨人が怖くて仕方がない。

怒りよりも恐怖、悲しみよりも恐怖。何よりも恐怖の感情が勝った。

だから死ぬ気で鍛えた。それだけに過ぎないのだ。

内地に逃げる為に良い成績を残そうとした者達と何も変わらない。

それでもオレは作戦成功の為に本音を隠した。

 

「オレは……、巨人なんかよりも恐ろしいぞ」

 

何人かが息を呑むのが聞こえた。

オレは今、さぞ酷い顔をしていることだろう。

徐に手を天に翳す。気功波を放った。

凄まじい光線が天を突き、大雲に大穴を穿った。

全兵士、開いた口が塞がらない。

横を見ると、エレンもアルミンも司令、ミカサまでがあんぐりと口を開けて固まっていた。

 

「まぁ、そんな訳で死ぬたくないなら巨人はオレの所まで誘導しろ」

 

巨人はオレに任せとけ。

そうすればオレが片付けてやる。

無言。全兵士は無言だった。もしかしなくても外したのか?

オレは恥ずかしくなって背を向けて下がる。

後は司令に任せよう。

その時だった。

 

 

 

ウ、ウ………ウオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

 

「うおっ!!?」

 

オレの背中に兵士達の大咆哮が突き刺さった。

 

「見たか!?今の!?」

 

「ああ、なんかよく分からんがスゲエっ!!」

 

「実はオレ、喰われそうになってた時に助けられたんだ」

 

「オレも見た!巨人を投げ飛ばしてた!」

 

「嘘だろうっ!」

 

マジですか。

まさか気功波にここまで効果があったとは…。

 

「驚いたわい…。まさか士気がここまで上がるとはのぅ。お主、指揮官に向いておるかもしれんの…」

 

「…冗談」

 

そんな面倒くさいのはゴメンだ。

あんなの力を見せつけただけ。

その場しのぎのパフォーマンスに過ぎん。

例え才能があったとしても指揮官なんて面倒臭いもの絶対に嫌だね。

多くの兵士の命運を背負うなんて考えただけで胃が痛くなる。

 

「本当にどうしよ?」

 

偉そうな事を言っておいて何だが、やっぱり巨人は超怖い。

今にもチビリそうだよ…。

 

「おい!シャンとしろ!俺とお前に作戦の成否が掛かってんだぞっ!」

 

その時、ドンとエレンが活を入れるようにオレの肩を叩いた。

 

「本当に大丈夫か…、コイツ」

 

ミカサが感情の篭っていない目でオレを見る。

心なしか怒っているようにも感じる。

 

「正直わたしはお前の事は気に入らない」

 

「ちょ、ちょっとミカサ!?」

 

「お前の戦いは見た。確かに凄まじい力だと思った。だけど」

 

「なんだよ」

 

「どうして本気で戦わない?」

 

「え?ど、どういうこと?」

 

アルミンとエレンが信じられないといった顔でオレを見る。

気づいていたのか?

流石はミカサだな。こいつは完全に自分をコントロールできる。

そういった力を持つからこそ気づいたのか。

 

「もしもお前が本気で戦っていたのなら…、エレンは巨人に喰われることもなく、そしてもっと多くの人を救えたんじゃないか?」

 

そしてコイツはエレンを慕っている。

だからこそオレに対して憤っているのだろう。

 

「そ、それは本当なのか?」

 

「ああ。オレは全力を出していない」

 

「ど、どうして…」

「……出せないんだ」

 

アルミンの疑問に対してオレは声を絞り出す様に答えた。

正直コイツラがどんな反応をするのか分からない。

エレンには本音を言ったが、実際にどう思っているのか聞いていない。

オレはエレンを見る。

 

「わからねぇ。さっき巨人が怖いって言ってたよな?」

 

「ああ。珍しくもない話だけど、親父がさ、目の前で巨人に喰われた。俺を庇ってな…」

 

「そうか…」

 

「その後、母さんが口減らしの為にウォール・マリアに送り込まれた。それ以来、巨人が夢に出ない日がなくなった」

 

必ず巨人に追われ、最後には食い殺される。

そんな夢を毎日見るようになった。

前世の事を思い出して現実逃避したり、修行を始めてからは少しはマシになったけど…。

どうしても、親父が喰われる瞬間だけは頭から離れない。

 

「そして見えるんだ。巨人に喰われる親父がオレにダブってよ」

 

「オレも…、母さんを巨人に喰われた」

 

「そうか…この時代、珍しくもない悲劇だな。エレンには言ったけど、オレは保身の為だけに強くなったんだ。笑えるだろう?超人的に強くなったのはいいけど巨人を目の前にすると身が竦んで実力の半分も出せない」

 

どうだ?軽蔑したか?

そんな視線を皆に向ける。

 

「笑えないよ…」

 

アルミンが握りこぶしを震わせて、ポツリと漏らした。

 

「笑えるわけないよ!リクは凄いよっ!何がかんだ言っても、結局は戦ってるっ!現実から逃げてないじゃないかっ!」

 

「おい、さっきの話を聞いていなかたのか?」

「でも訓練を積んできたんだろう!?僕達兵士よりも更に厳しい訓練を!それって巨人の問題から目を背けずに戦ってるって事じゃないか!?」

 

「アルミン」

 

アルミンの言葉に目頭が熱くなる。

 

「だな。でなけりゃ、トーマスとミーナは死んでた。他にも救われた奴はいただろ?」

 

「それが保身の為だとしても、お前は強い人間だと私は思う」

 

「エレン、ミカサ…」

 

コイツらに話して本当に良かった。

オレは、この最高の仲間達を絶対に守り抜こうと決めた。

 

 

 

 

現在オレ達は司令が選んだ精鋭を伴って城壁の上を走っていた。

目的地は件の大岩のあるローゼ内門付近だ。

エレンは大岩を、そしてオレは。

 

「エレン、見送りはここまでだ」

 

「ああ」

 

「作戦の成功を祈る」

 

もう他に言うことはない。

オレは身を翻すと、城壁から飛び降りた。

目的地はトロストの中央、そこに集まってくる巨人を殲滅する。

オレは瞬く間にトロスト地区中央に到達すると、屋根の上で叫んだ。

 

「死にたくないなら巨人をオレの所まで誘導しろっ!!!」

 

巨人が歴史に出現して以来、人類が巨人に勝利した記録はない。

巨人と戦う度に人類は後退し領土を奪われ続けてきた。

しかしそれも今回の作戦で終わりだ。

人類は今日初めて勝利する。奪われたトロシナを奪還する事によって。

 

 

 

 

「ひっ、ひぃぃっ!?」

 

「させるかっ!」

 

巨人に捕まった兵士を間一髪で救出する。

群がってくる巨人の隙間を潜り抜けて弱点を削ぎ落とす。

同時に助けた兵士を城壁の上まで放り投げる。

兵士達はオレの強さを見ると、次第にオレの指示通り巨人を誘導し始めた。

巨人をオレの所まで連れてくるとその場を離れて、また新しい巨人を連れてくる。

オレは次の巨人が来るまでに視界に入った巨人を手早く始末していく。

そして偶に巨人に喰われそうになった兵士を救出。その繰り返しだ。

全兵士ドン引きである。

 

「はあああああああっ!!!」

 

そしてそれ以上にオレは普通にチビってしまっていた。

股間が気持ち悪い。バレてないよな?絶対に大丈夫だよな?

オレは多重残像拳で複数の巨人を幻惑する。

蹴りを、突きを繰り出す度に巨体が弾け地面を転がる。

 

「そっち任せた!」

 

「お、おう!」

 

オレの声に反応して兵士が止めを刺す。

殺した巨人の数は既に30体を超えた。

帰ってくる兵士が減っているが、恐らく巨人誘導中に失敗して喰われたのだろう。

 

「リク!連れてきたよ!」

 

ミーナが5体ほど巨人を連れてくる。

全部が7メートル級だ。良く無事だったな…。

 

「無事じゃないよ!一人喰われた!私もガスが限界っ」

 

「よし!後はオレに任せて補給に戻れ!」

 

「お願いっ!」

 

ミーナは本部に向かって去っていく。

オレは地面に散乱している瓦礫を拾い上げるとミーナが連れてきた巨人達に向かって跳躍した。

投石によって速攻で巨人の目を潰す。

そして3体を兵士達が止めを刺し2体をオレが仕留める。

 

 

「みんな、見ろっ!!」

 

そこで兵士が空を見て叫んだ。

赤い煙が上がっている。失敗の合図だ。

 

「そ、そんな…。アイツ失敗したのか?」

「巨人に殺られたのか?」

「やっぱり敵だったんじゃ…」

 

「狼狽えるなっ!!」

 

このままじゃ不味い。

そう思って、つい一括してしまった。

 

「そうだとしてもオレらのやる事は変わらん!」

 

オレは近づいてきた4メートル級を掴み上げると15メートル級のうなじに向かって振り下ろした。

ぐしゃとり嫌な音を立てて2体の巨人が力尽きた。

 

「次の命令があるまで巨人を殺しまくるっ!」

 

「しかしっ!」

 

「口動かす暇があるなら次の巨人を連れて来いっ!」

 

「わ、わかったっ!!」

 

「それからお前、動きが鈍ってるぞ。ガスが尽きそうなら補給してこい」

 

「わかった!」

 

兵士達は再び巨人を誘導する為に、そして補給するために各々動き出した。

 

「エレン、確りしろよ…」

 

オレは掴みかかってくる巨人の髪を掴んで地面に叩きつけると赤煙の上がった空を見て呟いた。

 

「あ、忘れてた」

 

そしてオレは力を込めて踏みつけている足の下でジタバタしている巨人に止めを刺した。

人類の勝利は遠い…。

そしてオレの心の平穏は更に遠い…。

オレの股間からは相変わらずアンモニア臭が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 




ヘタレた部分を隠しながら戦うリクでした。
漏らしたのバレてないですよね…。
戦闘中だし、あれだけ動きまくってたら濡れた股も直ぐに乾きますよね。
リクの尊厳は…。


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勝利

これで暫く更新はストップするかもしれません。
ストックが切れたのでww


「やったぞ!もう周りに巨人はいない!」

 

「本当かよっ!俺達だけでローゼに入った巨人を全滅させたのかっ!」

 

「それも納得だよ。これだけの巨人の死骸を見れば…」

 

「ははっ、ざまあみやがれってんだ!」

 

トロスト地区中央。

殆どの家屋は戦闘により倒壊しており、瓦礫の山とかしている。

そして瓦礫の山の下には、無数の巨人の死骸が敷き詰められていた。

死骸と言っても巨人の原型は全く残っていない。

その巨体の殆どは蒸発して溶け、その残りカスの様なものだ。

それでもかなりの量だ。それだけ多くの巨人が死んだのだ。

 

「安心するのはまだ早い。作戦は終わってないんだぞ。最後まで気を緩めるな」

 

「へっ、あんな巨人モドキの作戦なんて知るかよ。それよりアンタさえいれば…ひっ」

 

「黙れ。しゃべるな」

 

オレの怒気を孕んだ言葉に兵士は怯えて後ずさった。

確かに近くに巨人の気配は感じられない。

遠くにまだ多くの巨人がいるが、この進行速度ならまだ余裕が有るだろう。

少なくともローゼ内の巨人は殆ど狩り尽くしたようだ。

エレンが心配だ。

 

「そうだな。取り敢えずの安全は確保できた。念の為オレはエレンの様子を見てくる」

 

周囲に巨人は居ないがエレン達の近くには、まだ巨人が残っている様だし。

 

「なっ、アンタが行っちまえば…」

 

「心配するな。様子を見てくるだけだ」

 

「あ、ああ…。早く戻ってくれよ」

 

そう期待されても困るんだが…。

なんかヤバイ雰囲気だ。

兵士達は、もしかしなくてもオレの力に依存し始めている。

ハッキリ言って迷惑だ。唯でさえ巨人は超怖いのに…。

本当は攻撃の際「はああああっ!」なんて叫びたくない。

実は「助けてドラえも~ん」とか「ママーッ!」とか叫びたいのだ。

人を率いてなんて間違いなくオレのキャラじゃない。

 

 

屋根から屋根へ跳躍。

二軒、三軒と一気に飛ばして目的地へと急ぐ。

気配で分かるが本当に巨人は居ない。

遠くから此方へと向かってきているのは分かるが、まだ時間がかかるだろう。

それにどうやら手練と交戦しているようだ。

巨人共の気が一つ、また一つと消えていくのを感じる。

 

「へぇ…、誰か知らないけどやるじゃん」

 

正直人間の気配の判別などオレには出来ない。

気の大きさは皆同じ様なものだ。

恐らく最強クラスの兵士も新兵も気の大きさは余り変わらないだろう。

 

「問題は慣れだよな。きっと…」

 

暫く走っていると巨人化したエレンが周囲の被害も無視して暴れまわっていた。

ミカサがエレンに組み付いて必死に呼びかけている。

すごい勇気だ。いや愛情か。正直羨ましい…。巨人になってもリア充かい。

しかし、我を忘れたエレンはその剛拳をミカサへと向ける。

随行していた兵士が叫ぶ。

 

「避けろっ!ミカサッ!!」

 

オレがエレンとミカサの間に割り込んだのは、ほぼ同時だった。

 

「っ!?」

 

エレンの拳はオレの肘、エルボーブロックによって砕け散った。

 

「赤い狼煙が上がって心配して来てみれば…」

 

「リクッ!?どうしてっ!?」

 

「心配するな。中央から向こうにかけて、あらかた片付けた。後は」

 

この周辺にいる巨人だけだ。

約10メートル級の巨人が6体。3メートル級が1体。

穴から入り込んでくる。全く次から次へと…。

涎を垂らしながら此方へと向かってくる。

 

「エレンはお前とアルミンに任せる。さっさと正気に戻せ。さもないと最悪オレが大岩で穴を塞ぐ。そうなったらエレンは利用価値無しとされて処分されるかもしれんぞ」

 

オレの言葉にミカサとアルミンの表情が固まった。

ミカサに至っては凄まじい殺意をオレに向けてくる。

 

「嫌なら何とかしろ。オレだってエレンを死なせるような結果にはしたくない」

 

オレはエレンに足払いをかけると、敵巨人へと突進した。

怖いので巨人の顔、目は合わせないように。

あのニタついた嗤い顔は本気で見たくない。

正直、特殊な巨人よりも普通の巨人の方が生理的に嫌だ。

そして奇行種はそれ以上に悍ましいと感じる。

 

「死にさらせっ」

 

正面の巨人は腹に飛び蹴りを受けて吹っ飛ぶ。

その巨体がくの字に曲がり後ろの巨人に激突する。

グシャリッ!

オレは巨人の眼球に拳を減り込ませると、気弾を放ち頭部を吹き飛ばす。

同時にオレはもう一体の巨人の背後に回りこみ手刀一閃、そして後方に飛ぶ。

うなじごと首を削ぎ落とされた巨人達は一気に腐敗して息絶える。

 

「す、凄い…」

 

「一瞬で巨人を2体も…」

 

「人間ってあんなに強くなれるの…」

 

「さぁ、残りの巨人も片すぞっ!お前らついて来いっ」

 

巨人超怖いから是非オレの側にいて下さい。

片時も離れずついてきて下さい。

手を握っていて下さい。どうかお願いします。

などという本音を押し隠し、オレは垂れてきそうな鼻水を啜って地を蹴った。

 

「わ、分かったっ!」

 

「わ、私だってっ!」

 

オレの戦果に触発されたのか兵士達はオレに続く。

後で名前でも聞いてみようか。自己紹介上手くできるかな。

 

「そっちのチビは任せたっ!」

 

オレは小型巨人を投げ飛ばすと更に入り込んでくる15メートル級へと肉薄する。

掌に気の奔流が奔り、一気に収束される。

 

「おりゃあっ!!」

 

気弾を放たずにそのまま巨人のうなじを掬うように叩きつける。

巨人のうなじはスプーンで削られたように消滅して崩れ落ちた。

 

「こいつは使える」

 

一回分の気弾の消費で最利用可能。

オレは未だ掌の中で輝く光球を見て小さくガッツした。

更に近づいてきた巨人の顔面に叩きこむ。

グシャリと巨人の顔面は気弾によって消滅、更にうなじに到達。また一匹仕留める。

正直気持ち悪いけど後のことを考えると、この戦いは良い実戦経験になる。

後ろを見ると、ミカサとエレンのうなじに剣を突き立てたアルミンがエレンを必死に説得している。

エレンは、既に暴れるのを止めて沈黙している。

どうやら意識が戻ってきたらしい。

エレンを見ていると長身の女兵士が声を掛けてきた。

 

「なぁ、アンタ…」

「ん、どうした?」

「アンタさえいれば、あの出来損ないの人間兵器様は要らないんじゃ?」

 

「こい、リコ!」

 

指揮官のイアンが咎めるように叫ぶ。

 

「イアン、作戦は失敗よ!もしコイツが駆けつけなければ、もっと多くの兵士が死んでたわ!もう20人以上が巨人に喰われてるのよ!?」

 

「そうだとして、俺達に出来ることはアイツの為に命を投げ打つことだけだ」

 

「何故だ!?根拠なんてなにもないじゃない!」

 

「悲惨だが我らに出来ることは巨人共の餌になることだけだ。当然だが報われるとは限らない。しかし…」

 

イアンはオレをじっと見つめた。

 

「確かにリクは強い。しかしそれは我らの力=ではない。今の我らにとってエレンは唯一巨人の秘密に迫る存在なのだ!」

 

そういう事だ。

いくら強力な力も持っていても所詮は個人。

そして組織で行動する軍の強さには成らない。

そして目の前の超人は決して、兵士として軍に組み込まれるのを由としないだろう。

 

「…、分かったよ。こうなったらとことんまでやってやろうじゃない!」

 

女兵士は髪をグシャグシャと掻いて、刃を交換した。

そしてオレを見て言った。

 

「正直わたしはアンタが怖い。でも同じくらい心強い。もう暫く付き合って欲しい」

 

「…ああ」

 

そしてオレは続々と侵入してくる巨人に向かって飛ぶ。

15メートル級の巨人がちょうど穴を通って入ってくるのが見える。

オレは一瞬でその巨人の下に潜り込むと顎を蹴りあげた。

ズンッ!

巨人の頭部が破壊された壁穴の天井に減り込んだ。

 

「そ、そうか!巨人で穴を…」

 

「いや、油断するな」

 

巨人によって出来た足止めも一瞬だった。

続々と入り込もうとする巨人によって15メートル級の頭部がもげた。

足の下から3メートル級、首のない巨体を押しながら7メートル級が、次々と侵入してきた。

 

「やっぱりダメか」

 

兵士達の顔が恐怖に歪む。

唯でさえ厄介な巨人。それが大群となって押し寄せるのだ。

全ての兵士が自分の死が明確にイメージ出来る。

巨人に捕まり生きながら喰われていくという最悪の最後を。

しかし希望は失われていなかった。

 

「…エレン」

 

視線を移した先にあったのは宙に浮く大岩だった。

いやエレンが、その膂力で大岩を持ち上げていたのだった。

アルミンが息を切らせながらも叫ぶ。

 

「エレンが自分に勝ったんだっ!!あの穴までエレンを援護すれば、僕達の勝利だっ!」

 

「総員っ、聞いたな!エレンを我らの命に変えても守るぞっ!!!」

 

「任せろっ!」

 

オレは逸早く飛び出す。

向かってくる巨人の肩に乗る。そして髪を掴み地面に叩きつける。

この殺し方、結構気に入った。

気持ち悪い巨人の顔面を潰せるからな。

オレはそのまま巨人の顔を地面に擦りつけながら舞空術で前進する。

その先にはまだまだ多くの巨人がコチラに向かってやって来ていた。

 

行け…っ!行け…っ!行け……、エレンッ!!!

 

「いっけえええええええっ!!!エレンーーーッ!!!!!」

 

全員が一丸となって巨人に立つ向かう中、エレンは遂に大岩を目的地まで運び切った。

そして遂に…っ!!

 

―ドォォォオオオンッ!!!!―

 

エレンの運んだ大岩によって壁は隙間なく塞がれたのであった。

 

「オ、ウオオオオオオオオッ!!」

 

勝利の咆哮、同時に作戦成功を伝える黄色の煙弾が発射された。

 

「じ、人類の……、勝利だ」

 

涙を流す兵士、喜びを全身で表現する兵士。

しかし戦いはまだ終わらない。

 

「まだ巨人は残ってるぞっ!」

 

オレの言葉に兵士達は気を取り直す。

街に入り込んだ巨人を全て掃討してこそ真の勝利となるのだ。

残った巨人は既にたったの5体だけだ。

オレは速攻でケリを付けるべく巨人達のど真ん中に飛び込んだ。

巨人達はオレを喰らおうと手を、口を突き出してくる。

同時にオレは上空へと跳躍した。

真下では互いの顔をぶつけあう巨人の間抜け面が見えた。

オレは両掌を合わせて全身の気を一気に最大まで高める。

全身の筋肉が膨れ上がり道着の袖を破る。

高めた気を掌一点に凝縮する。

初めて使うので緊張する。

 

「かぁ~めぇ~はぁ~めぇ~……」

 

これが亀仙流奥義っ!!!

 

「はああああああああああああっ!!!!」

 

かめはめ波だっ!!!

 

一点に収束した気の奔流は圧倒的な光線となって真下へ伸びた。

そして巨人達を飲み込む。

 

ズドオオオオオオオオオンッ!!!

 

結果は言うまでもなかった。

それほどの手応えを感じた。

土煙が舞う中で巨人共の気配が消えていく。

そして土煙は晴れ、巨人は高温の蒸気を上げて地面に溶けていった。

 

「す、すげえ…」

 

撃った自分が一番驚いてる。まさかここまでの威力とは…っ!

巨人の屍の下は大きなクレーターが出来ていた。

一歩間違えば味方まで巻き込んでいたかもしれない。

それに一気に体力を消耗してしまった。

戦力的にも体力的にも簡単に使っていいものじゃないな。

オレはエレンの方を見る。

どうやらまだ人間には戻れていないようだ。

 

「…あれは…、ヤバイッ!?」

 

ワイヤーがエレンの肩に突き刺さった。

あれは立体機動装置のワイヤーフックだ。

ギュインと何者かが剣を振りかざしながらワイヤーを伝って巨人エレンのうなじへと迫る。

 

「……がっ!?」

 

間一髪だった。

謎の兵士の凶刃がエレンのうなじを削ぎ落とす瞬間、オレはその兵士の頭を巨人エレンの肩部分に叩きつけて阻止した。

同時に剣をはたき落とす。

 

「な、何者だっ!?」

 

「そりゃこっちの台詞だ」

 

「よ、止せっ!その人は…」

 

そこで背中のエンブレムが目に入った。

自由の翼…。

 

「人類最強…、リヴァイ隊長」

 

組み伏せられて不機嫌な表情の男の顔を見てアルミンが顔を青くした。

 

「おい、取り敢えず手を離せ…そうすれば半殺しで許してやる」

 

リヴァイ達長は組み伏せられながらもオレの目を睨みつけた。

ギシギシとオレの拘束から逃れようとしているのが分かる。

 

「あー、全然動かねぇ…、なんだテメエは」

 

ガラ悪っ。それに目つき怖っ!なにこの人。

どこぞのチンピラ警察二十五時ですかっ!?

手を離した瞬間、何をされるか分かったものじゃない。

だってあれだもの。今直ぐオレを殺っちゃう感じだもの。

ここはアレだ。オレの心の平穏なためにもどうにかしなければ。

 

「ええっと、取り敢えず…」

「あぁ?」

 

ドンッ!

 

「っ!?」

 

「お、おいいいいっ!?何やってんだリクッ!?」

 

「ゴメン。あまりにも怖かったからつい気絶させちまった」

 

手刀一閃。

綺麗に延髄に決まりました。有難うございます。

周りを見るとリヴァイ隊長の部下らしき人が殺気を撒き散らしながら剣に手を掛けてます。

だって仕方ないじゃん。

巨人戦を終えたばかりでテンション上がってたし。

初めて撃った『かめはめ波』の威力に興奮冷めてないしっ!

マジでどないしましょ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

おまけ

 

亀仙流奥義かめはめ波

取り敢えず元祖バージョンです。

但し亀仙人のじいちゃんみたくムキムキのマッチョに成りません。

気を最大まで高めて放つ最高奥義。

巨人との連戦でリクは気づかない内にレベルアップしています。




巨人戦終了しました。
同時にリヴァイ登場です。
ちょいと喧嘩腰になりました。


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幕間

次章までの出来事です。
短くてスイマセン。


人類が初めて巨人に勝利した。

此度の戦いにおいて巨人の犠牲になった者は百名を下回った。

その歴史的快挙に人々に歓喜した。

そしてトロスト地区内に閉じ込めた巨人の掃討作戦が、急遽駆けつけてきた調査兵団と駐屯兵団工兵部と共に行われた。

残った巨人は10体にも満たず瞬く間に殲滅されていった。

捕獲された2体の巨人を除いて。

 

 

 

 

作戦終了後、オレ達は調査兵団に身柄を拘束された。

気を失ったエレンはミカサ達と引き離され手錠を掛けられ馬に乗せられる。

抵抗する素振りを見せなかったオレも同様に手錠を掛けられた。

リヴァイ隊長を気絶させてどうしていいか分からず呆けている間にガチャリとやられてた。

 

「貴様っ!よくもリヴァイ隊長をっ!」

 

組み伏せられそうになる。

強引にリヴァイ隊長を引き離してオレの頭を押さえつけて地面に押し付けようとする。

 

「…っ、な、私の剣が…」

 

しかしオレの身体はびくともしない。

それどころか持っていた剣が一瞬でオレの手の中に収まっているのを見て驚愕する。

 

「まぁ落ち着けよ。隊長さんも気絶してるだけだ。怪我はない」

 

剣を奪い取ったオレは努めて友好的な顔を向けるが、失敗だったらしい。

更に凄まじい怒気と敵意を向けてきた。

まともに話が出来る状況じゃないなこれは…。

 

「ミカサ、アルミン。悪いけどオレ、バックレるよ。事情はお前らが話しておいてくれ」

 

「え、ちょ、ちょっとリクッ!?」

 

オレは呼び止めるアルミンに軽く会釈すると手錠を引き千切った。

調査兵団の面々が驚いたように後ずさった。

奪い取った剣を地面に突き立てる。そして。

 

「したらな!」

 

「待てっ」

 

オレは持ち前の脚力で立体機動装置顔負けの跳躍を見せると屋根伝いに自宅へ目指して飛び去っていった。

 

 

 

それからオレは開拓地には戻らずにウロウロしていた。

調査兵団を撒いてから丸一日が経過していた。

壁の外に出て適当に野生の鹿を狩り、食料を調達する。

巨人に邪魔されるが獲物を抱えて即座に逃げた。

当然巨人は追いかけてくるがオレの足には追いつけない。

 

 

オレはウォール・ローゼ内の自宅に帰って来ていた。

開拓民に与えられたボロい民家。相変わらず汚い。

幸いなことに巨人によって破壊されていない。

オレは手早く着替えを済ませると捕ってきた獲物を処理した。

 

 

 

 

「どうにも調子が良いんだよな…」

 

その日の夜オレは食事を済ませた後、身体の調子を確かめていた。

本当にすこぶる調子が良い。

ゴウッ!!シュビビビビッ!!!ドウッ!!!!

今まで以上に拳は奔り、蹴りによって突風が巻き起こる。

身体が今まで以上に動く。

これは間違いなく…。

 

「オレ強くなってる」

 

修行時代にも何度か巨人と戦った。

しかしそれは自分の実力を確かめる為と巨人の恐ろしさを認識する為。

積極的に戦おうとはせずに、数度しか戦っていない。

実際に殺した巨人もたったの数体だった筈だ。

しかし今回の作戦でオレは間違いなく100体以上の巨人を殺した。

休む間もなく戦い続けてきた。

体力の配分を考え、常に気を張りながら、そして仲間を護りながら。

その経験は確実にオレの血肉となっていた。

相変わらず巨人は怖いが、少しはマシになったのかもしれない。

今までの人生で一番長い一日だったように思える。

オレは心地良い疲労感を感じながら眠りについた。

 

 

 

次の日の朝、オレは日課の修行を始めていた。

いつもの農地で体力作り兼仕事の農作業を終える。

配達仕事は巨人襲来の影響か入っていない。

オレは代わりに壁外周を軽く10週すると気の制御に入る。

やはり調子が良い。

以前よりも体内のエネルギーが強く感じられる。

試しに気弾を放つ。

そして気弾に意識を向けて集中、気弾はオレの思う様に宙を舞う。

繰気弾、成功してしまったww

それなら次はと新しい技に挑戦する。

 

「……はああああっ」

 

オレは手を翳して気を収束る。

イメージするのはカミソリの様な鋭い切れ味。

薄く、更に薄くと気の形状を円盤状に変化させていく。

気の形状を変化させるだけでは目標は切り裂けない。

オレは徐々に気の円盤を回転させていくが、この制御がかなり難しい。

クリリンは天才だと思う。

この調子だとまだまだ実戦には使えないようだ。

巨人との戦いでレベルップした今ならと思ったのだが…。

どうやらまだまだ実力不足のようだ。

 

「気円斬、出来れば巨人戦が更に楽になると思ったんだが…」

 

気円斬が出来れば巨人にわざわざ近づかなくても良くなる。

それに繰気弾の制御が加われば一度で何度でも利用できるようになる。

しかし事はそう上手く行かなかった。

 

「あーあ、上手くいくと思ったんだけどなぁ」

 

オレはその場にゴロンと横になった。

人の気配が近づいてくる。数は6か…。

馬の蹄の音から人数は3人だろう。

パカラ、パカラと足音は近づいてきてそして。

 

「報告通りだ。ここにいたなリク・クリムゾン」

 

身体を起こす。

そこにいたのは調査兵団。昨日のリヴァイ隊長もいる。

そして人を引き付ける様な雰囲気を出す壮年の男。

 

「私は調査兵団第13代団長、エルヴィン・スミスだ。会えて光栄だ。リク・クリムゾン」

 

まさか調査兵団のトップが来るとは思わなかった。

オレの背中に冷や汗が流れた。

 

 

 

 

オレはエルヴィン団長を家へ招き入れると向い合って座った。

団長の直ぐ後ろではリヴァイと見慣れない男兵士が無表情で立っている。

恐らくエルヴィン団長の護衛なのだろう。

エルヴィン団長はオレが立ち去ってからの事を話してくれた。

先ずエレンは矢張り拘束、幽閉されたらしい。

そして未だ意識は戻っていないとの事だ。

エレンの巨人化能力について問われたが、原作知識以上の事を知らないし、知っているという事実も不自然なので首を傾げておいた。

そしてエルヴィンの本題は、やはりオレの査問会への出頭命令だった。

 

「君にはエレン・イェーガー同様、巨人疑惑が掛かっている。無論、私は君にそんな疑惑はない。だが君が疑惑を解きたいなら、どうか出頭して欲しい」

 

「何なら手足でも叩き落として引きずって行ってやろうか」

 

リヴァイがオレを威圧しながら剣に手を掛ける。

 

「あぁ?誰が、誰の手足を叩き落とすって?」

 

正直コイツの如何にも不良っぽい目つきと態度は苦手だ。

しかし巨人でもないコイツに怖気づく意味は無いし、いい加減腹が立つ。

オレは負けじとリヴァイを睨み返す。

 

「待てリヴァイ、リクと呼んでもいいか?君も落ち着いて欲しい」

 

「あぁ、別に構わない」

 

「…ちっ」

 

どうやらオレに無力化されたのが気に喰わないのだろう。

根に持ちやすいタイプなのか。リヴァイは小さく舌打ちすると後ろにある壁に凭れ掛かった。

 

「それからもう一つ、これが私自身の本命なのだが…、リク・クリムゾン…。君を調査兵団に迎え入れたい。どうか我らと共に戦って欲しい」

 

やはりそうなったか。

巨人に支配されたこの世界。戦える人材は貴重だ。

しかも兵士は万年人手不足。

特にオレの様に何の武装も無しに巨人と正面きって戦える人間は前代未聞だ。

 

「件のエレン・イェーガーも査問会が首尾よく終われば、調査兵団に加えるつもりだ」

 

「そうか…」

 

「驚かないのか」

 

「予想してたし」

 

エレンが危険な存在である事は誰が見ても明らかだ。

エレン自身にその気がなくとも声を高らかにして自分は人類の味方だと叫んでも、そして身内であるミカサ達がエレンを信じようとも他の人間はそうはいかない。

例えエレンが人類の勝利に貢献していたとしても、人類はそれ以上に巨人に対する恐怖が強く根付いているからだ。

しかし人類は巨人に対してあまりにも無知過ぎた。

そして巨人に対してあまりにも非力だった。

だからこそエレンの存在は巨人に対して切り札になりうるし、巨人の秘密に迫る為の道標にも成りうるのだ。

そう簡単に処分してしまうのは浅慮だ。

 

「そうか…どうやら君も理解しているようだな」

 

オレの答えにエルヴィン団長も満足そうに同意した。

 

「…で?結局オマエはどうする気だ?」

 

リヴァイが再び口を開いた。

壁に持たれたまま真っ直ぐオレの目を睨めつける。

 

「そうだな…」

 

答えはもう決まっていた。

しかしオレは自分の命が最優先だ。

こいつらの命令に従う気は無い。

 

「一緒に戦うのは構わないが…」

 

「何か問題があるのか?」

 

「オレは生産者だ。人一倍その義務を果たしてきた自信がある」

 

「何が言いてえ」

 

「つまりオレは国のために心臓を捧げる気がないと言ってるんだ」

 

「何だと?貴様っ!」

 

ここで初めて今まで無言だった兵士が口を開いた。

エルヴィン団長が兵士を制する。

 

「君は一度は兵士を志して訓練兵団に入ったと聞いてるが」

 

「よく調べてるな。だったら分かるだろ?追い出されたオレは兵士じゃない」

 

「しかし念願の兵士になるチャンスが来たんだぞ」

 

「いや別に兵士になりたかったのは立体機動を習得したかったから。唯それだけの理由だ」

 

巨人から逃げ延び生き残るために。

たったそれだけの為にオレは兵士を志したのだ。

 

「な、何だそれはっ!巫山戯るなっ!」

 

オレの本心を聞いて兵士が激怒した。

 

「付け加えるなら必死で修行したのも保身のためだ」

 

「貴様っ、それだけの力を持ちながら…」

 

「そっちこそ偉そうに言ってるけどな、お前が普段食ってる穀物の半分以上はオレが作ったものだって事をこの機会に覚えとけ」

 

「な、何だと…」

 

これは紛れもない事実だ。

広大な開拓地だが、亀仙流の修行を初めて1年程くらいからオレの開拓スピードは他の開拓民の十数倍の速さになっていた。

しかも雑な仕事はしていなかった。

雑草や小石や岩は勿論綺麗に取り払い、より美しい畑を心掛けていた。

その仕事を兼ねた修業は凄まじい速さとより正確な突きを繰り出す為の鍛錬となった。

当然足腰もより強く鍛えられる。

年々、オレの農地開拓スピードは劇的に上がっていき、最終的には仕事を他の人間から任される、もとい押し付けられる様になったのだ。

 

「……止せ。彼の言ってることは事実だ」

「化け物め」

 

エルヴィン団長とリヴァイは疲れたように溜息を付いた。

リヴァンの毒舌が相変わらず痛い。

オレの事は既に事細かに調査済みなのだろう。

そこまで呆れなくても良いと思う。

 

「それで兵士にはなりたくない。しかし共に戦うのは構わない。つまりそれは」

 

「あぁ。傭兵という形でオレを雇うのはどうだ?そうだな…、巨人の討伐数および巨人に喰われそうになった兵士の救出数によって報酬が支払われるというのは」

 

「歩合制か。良いだろう」

 

「交渉成立だな。それでもう一つの…、査問会とやらは何時だ?」

 

「エレン訓練兵が目覚めれば直ぐにでも」

 

「そうかい。じゃあその時になったら呼んでくれ」

 

「なに?どういうことだ?君にも来て欲しいのだが」

 

「嫌だよ。団体行動は苦手だ。それに修行の続きもしたいし」

 

「……良いだろう。君の働きに期待している」

 

エルヴィン団長は軽く会釈すると部下達を伴って去っていった。

それにしてもリヴァイは終始オレを睨んでいたな…。

 

「疲れた…」

 

主に精神的に。

オレは修行を再会する為に再び外に出た。

次の巨人戦までに出来れば気円斬を習得しておきたい。

そして最終的には気円斬と繰気弾の複合技を使いこなせる様になりたいな。

オレは目標を作ると、その場に腰を下ろして坐禅を組んだ。

瞑想によって心を無に、雲の様に心静かに…。

時が刻まれ流れる中、オレは次第に瞑想に入っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

おまけ

 

リク・クリムゾンのステータス更新されました。

 

リク・クリムゾンLV5

流派【亀】

【HP】120

【BE】100

【BP】215

 

必殺技

 

衝撃波……消費BE:5

エネルギー弾……消費BE:8

連続エネルギー弾……消費BE:18

かめはめ波……消費BE:20

繰気弾……消費BE:25

 

以上のステータスは本編では余り関係ありませんww

 

 

 

 




更新が遅くなって申し訳ない。
ウィルスバスターをインストールしようとしたらなんかいきなりSystem CAREA ntiVirusとかいう偽・ウィルスバスターを強制インストールされまして…。
皆さんもお気をつけて…。


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査問

なかなか文章がまとまりませんでした。


巨人によるウォール・ローゼ破壊から三日。

オレは調査兵団の使いからエレンが目覚めたとの知らせを受けた。

付いては、これから行われる査問会に出頭するようにとの事だ。

修行中だったのだが仕方がない。

オレは修行用の重りを外すと手早く着替え、更に重りを背負った。

迎えの兵士が口をポカンと開けて聞いてきた。

 

「そのまま行くのか?」

 

「当たり前だろ?」

 

オレは自分の背丈よりも更に高い石柱を見せながら当然のように言った。

 

 

現在ウォール・シーナ内は混乱していた。

王政府が発表したトロスト地区奪還作戦によって。

人々は新聞を手に取り目を丸くしている。

巨人が人類に味方し壁を塞いだ。その報道を簡単に受け入れる事は出来なかった。

そしてもう一つ。立体機動装置を用いること無く、何の武装もなく正面から巨人を蹴散らす戦士が現れた。その事実についても人々の反応は懐疑的だった。

実際に目にしないと信じられないのだろう。

その身一つで巨人の群れに立ち向かう男リク・クリムゾン。

人々の手に取った新聞の一画に大きく記されていた。

そして遂にエレンの運命を決定する兵法会議とは名ばかりの査問会が始まる。

 

 

オレが連れて来られたのは審議所だった。

中に入るのは初めてだ。

会議は既に始まっているらしく、急ぐように言われた。

 

 

正に前代未聞の事態であり、法も適用されない。

それ故に様々な感情論が飛び交い、ひしめいていた。

そして意見も見事に割れた。

エレンを救世主と呼ぶものも居れば、悪魔と呼び直ぐに殺すべきだという声もあった。

しかし決定権は全兵団の長ダリス・ザックレー総統に委ねられる。

そして今回決めるのはエレンの処遇を、どちらに委ねるかだ。

即ち憲兵団か。または調査兵団か。

 

 

扉の向こうで声が聞こえてくる。

少し開いてみると両手を拘束されたエレンが中央で跪いているのが見えた。

憲兵団のエンブレムを付けた壮年の男が資料を読み上げている。

 

「私は憲兵団師団長ナイル・ドークだ。我々の提案はエレンの人体を徹底的に調べあげ、速やかに処分するのが最善と考えています」

 

中央の権力者たちエレンの事を危険視している様だ。

そして五年前の悲劇を繰り返して尚、内地に住まう王族や有力者達も、壁外への不干渉を貫いているのだ。

そして今回の巨人襲撃でエレンを英雄視する者も出始めた。

ウォール・ローゼ内の民衆や商会たちだ。

結果、残された領土をめぐる内乱が勃発する恐れもある。

エレンの功績は理解しているが、それ以上に高度に政治的な存在になってしまった。

 

「だからこそ、情報を出来るだけ残してもらった後、我らの英霊になってもらう」

「その必要はない!」

 

話に割り込んできたのは、神父の様な格好をした男だ。

確か5年程前から注目を集め出したウォール教の司祭だ。

 

「此奴は神の英知である壁を欺いた害獣だ。即刻始末するべきだ」

 

司祭はエレンを憎しみの篭った目で睨みつける。

 

「静粛に、ニック司祭殿。次は調査兵団の案を聞こう」

 

「はい。調査兵団団長エルヴィン・スミスです。我ら調査兵団はエレンを正式に団員に迎え入れ、巨人の力を利用してウォール・マリアを奪還します」

 

以上です。

正にシンプル・イズ・ベスト。

聞いていてスッキリするくらいの清々しさだ。

同感だ。議論の余地など無いはずだ。

しかし異議ありの声を上げるものがいた。

 

「ちょ、ちょっと待て!今度こそ全ての壁を完全に封鎖するんじゃないのか!?」

 

巨人の恐怖を知る元内地の有力者だった。

これ以上巨人との戦いに巻き込まれたくない保守派の声。

 

「豚が…扉を補強してる間、巨人共が待ってくれる保証があるか。お前らが言ってる我らというのはお前らが肥えるための豚の話だろう?」

 

リヴァイは男を睨みつけながら正論を放つ。

痛いところを突かれたのか男の顔が真っ赤に染まった。

 

「わ、私は唯扉さえ封鎖してしまえば…」

「黙らんかっ」

 

司祭が更に割って入ってきた。

 

「神より授かりし偉大なるローゼの壁に人間如きが手を加えるというのか!?この不届き者めっ!!」

 

オレは事の次第を覗きながらも、段々と腹が立ってきた。

他の者達はまだ良い。皆それぞれ国の行く末を憂いているのが分かる。

しかしこの司祭は気に食わん。

実際は何の役にも立たないくせに支持だけは結構集まっている為、質が悪い。

昔オレもこの宗教に入信を薦められた記憶がある。断ったけど。

ていうか無神論者だしオレ。死んで転生した時も神なんぞに会わなかったし。

ていうかお前はまだ案を問われていないだろうが。

生臭坊主、空気読めよ。

 

「うるさい奴だな。空気読めよ」

 

気がつけばオレは勢い良く扉を開いていた。

不恰好だったから背中の重りは下ろしておいた。

 

「な、何者だっ」

 

「オレはリク・クリムゾン。人類に最も貢献している生産者だよ」

 

オレの自己紹介を聞いて集まった者達が騒ぎ始めた。

期待を込めた眼差しを向ける者もいれば、恐怖を篭った視線を向けてくる者もいた。

 

「静粛に」

 

ダリス総統の声にざわめきが止まる。

なるほど、この爺さん只者じゃねぇや…。

オレは居心地の悪くなる視線の集中を受けながら入室する。

 

「その反応を見る限り自己紹介は要らないみたいだが、改めて…リク・クリムゾンだ。開拓地で働いている」

 

視線の集中。

その光からは様々な感情が見て取れる。

期待と喜び、不安と恐怖。

正直これだけの人数がオレに対して興味を抱く。

良い意味でも悪い意味でも、これは悪くない。

巨人の視線は御免被るが、どうやらオレは人の注目を集めるのは嫌ではないかもしれない。

オレは歩きながら周りの人達を見渡す。

目の合った者は直ぐにオレから目を背ける。

まさかここまでビビられてるとは思わなかった。

歩を進める先には調査兵団。

 

「ここで良いのか?」

 

オレの顔を見て嫌な顔をするリヴァイに確認を取ると、了承の返事をされる前にその横を陣取る。

押しのけられるように場を奪われたリヴァイから殺気が放たれるが無視。

一瞬だけ剣に手を掛けるが思い直したようだ。

面白くなさそうに舌打ちする。

 

「話を進める」

 

そして総統による質疑が続けられた。

全兵団の意向を確かめた次はエレン本人の意志の確認だった。

それは当然の疑問。エレンは巨人の力を制御できるか。

エレンは出来ると答えた。

それは性格な事実ではなくエレンの願望。

実際はエレンは暴走し、敵味方の区別なく暴れまわった。

家族である筈のミカサにまでその豪腕を振り下ろしていた。

初めて知らされた事実にエレンは愕然とする。

次にエレンの人間性についての審査が行われた。

 

「まるで裁判だなこりゃ」

 

前世では体験したことはないが物語の中で見たソレを思い出し苦笑する。

そして明かされるエレンの過去。

6年前、当時9歳だったエレンとミカサは強盗3名を殺害していたのだった。

正当防衛ではあるが、普通の子供の所業としては根本的に異常である。

そんな者に人類の命運を託すべきなのか?

それが憲兵団の意見だった。

 

エレンの過去を知った人々は、更に怯えた表情でエレンとミカサを見た。

子供の姿で人類に紛れ込んだ恐ろしい巨人なのではないか。

その拘束も無意味ではないか?

一度負の感情へと流れてしまった人々は暴走を始める。

 

「お、オレはバケモノかもしれませんがミカサは違います」

 

「エレン…」

 

「それに憶測だけで都合のいいように物事を進めても現実と乖離するだけです」

 

エレンはせめてミカサだけはと抗議するが負の感情は止まらない。

このままではミカサまでもが…。

 

「そもそも貴方らはこの内地で巨人の脅威も知らずにぬくぬくと過ごし、巨人の姿を見たこともないくせに何が分かるんですかっ」

 

「なんだと?こいつ…」

 

エレンの表情が怒りに染まる。そして大声を張り上げようとした瞬間…。

 

――ドゴンッ!!!

 

轟音が響き床が砕けた。

いやオレが砕いたのだった。やっちまった。

砕けたオレの足元から亀裂が伸び、口煩くエレンを罵っていた坊主の足が囚われる。

坊主は体制を崩して強く背中を打ち付けた。

 

「ひ、ひぃっ」

 

再びオレに視線が集中した。

 

「人は見たいものだけを見て信じたいものを信じたいように信じる…。さっきエレンが言ったこと、同感だな」

 

自分の都合の良いようにか…。

確かにな。何かの物語でこういうの合ったな。忘れちまったけど。

でも至言だと思う。

 

「な、貴様っ、この化け物に肩入れするかっ!やはり貴様も巨人の仲間だなっ!」

 

今ようやく足を亀裂から引きぬいた坊主が怒りの声を上げる。

 

「それがお前にとって都合の良い解釈か?」

 

「な、何だとっ」

 

「一分だ」

 

オレは指を立てて静かに言った。

全員何の事だと首を傾げる。

 

「オレがその気になれば、ここにいる全員を一分以内に始末できる」

 

全員の顔に緊張が走った。

その言葉に鉄砲を構えようとした男、そいつの背後に移動すると行動を制する。

 

「ひっ」

「慌てるな。出来るといっただけで殺るとは言ってないだろう?」

 

距離にして約7、8メートル。

しかも人垣を無視したように一瞬で移動し銃を制したオレの行動に更に人々は恐怖する。

 

「オレを敵に回して、それでオレを処分する為に戦う?それがお前の都合の良い答え、真実でいいんだな?」

 

オレは正面から坊主の目を睨めつけてその真意を問う。

 

「言っておくが、オレは抵抗するぞ?全力でな」

 

「……っ」

 

オレの言葉に坊主は息を呑んだ。

 

「そこまでだ。話が脱線している。それに君に発言を許可した覚えはない」

 

全員が総統に視線を移す。

こんな状況でもブレずに、そして法に則って進めようとする姿勢には感心する。

 

「そして此処は暴力の場ではない。これ以上、その力を行使するなら退場してもらう」

 

「……わかったよ」

 

これ以上オレが口を出しても話が縺れるだけか。

坊主には釘を差したしこれ以上は余計な事は言わないだろう。

 

 

そして査問会は続いた。

 

「次にリク・クリムゾン、君の番だが」

 

取り敢えずエレンに対する処遇は保留、次にオレに対する審議が始まる。

あれ?何故に?

 

「は?オレ関係ないじゃん」

 

オレに巨人化能力なんて無いし、オレの能力は厳しい亀仙流の修行の成果だし。

オレの力の秘密についての質問。当然だが正直に答える。

 

「厳しい修行の賜だけど」

「嘘をつくなっ!」

 

その言葉にイラっとくる。

そして明かされるオレの過去。

兵士になるために訓練兵団に入団。

落ちこぼれて追い出された後、開拓地に送られて生産者として過ごす。

 

「それで開拓を続けながら修行を続けてきたわけだ」

「巫山戯るなっ!落ちこぼれた貴様に出来るわけがっ!」

 

更にイラッと来る。

どうやらどうしてもオレを化け物にしたいらしい。

そして問われるオレの真意。

何故今になって戦場に現れたのか?どうして巨人と戦ったのか?

 

「とうぜん保身だけど」

「な、なんだとっ!?」

 

またまたイラッと来る。

人間社会が崩壊すればオレの生きる場所もなくなってしまう。

厳しい修行に耐えたのも巨人に喰われて死ぬのが嫌だったからだ。

既に会場はオレに対する非難の嵐だ。

正直に答えたのに何故だ。中にはオレが巫山戯て面白がっているなどと言う奴もいる始末。

オレが総統の言うとおり手を出さないと思って…。

 

「静粛-」

「-お前ら顔を覚えたからな…」

 

場を収めようとした総統とオレの声が重なる。

オレの漏らした言葉に全員が押し黙る。

総統が咎めるようにオレを見るが、別にいいじゃないか。

こいつら静かになったわけだし、暴力も振るっていない。

 

 

そして矛先は再びエレンへと向かう。

改めてオレとエレンの処遇についてだ。

オレについては問題ない。

団長さんがオレを傭兵という形で調査兵団へ組み入れる旨を伝えた。

しかし問題はエレンだった。

意見は見事に真っ二つのままだった。

人々にとって真実など関係なく、理解できない正体不明の恐怖の元凶を早々に排除したい。

しかし報復を恐れて一歩踏み出すことが出来ない。

待っているのだ。都合よく誰かがエレンを始末してくれるのを。

 

「どうやら意見は出尽くしたようだな。決めてもらおう」

 

リヴァイとエルヴィンが立ち上がる。

 

「確かにエレンの巨人化には不確定要素を多分に孕んでいる。そしてその危険性は常に付きまとう。そこで…」

 

リヴァイの強烈な蹴撃がエレンの顔面を捉える。

ミカサが飛び出そうとするが、周りの仲間が必死に抑える。

これは間違いなくリヴァイのデモンストレーションだ。

知っていたとはいえ、無抵抗の者を痛めつけるのは見ていて気分が悪いな。

一頻りエレンを痛めつけたリヴァイは迷いなく宣言した。

 

「コイツを調査兵団に入団させる」

 

エレンを調査兵団の管理下に置き、不測の事態に対してリヴァイが対処する。

リヴァイの実力は総統も認める所だ。十分に抑止力足りえる。

 

「出来るか?リヴァイ兵士長」

「殺すことなら確実に…、問題は」

 

リヴァイはオレに視線を移す。

 

「こっちから敵対する気はない。むしろエレンが暴れたら一緒に止めてやるよ」

 

「…決まりだな」

 

調査兵団の決意に総統は「ウム」と頷く。

憲兵団と坊主は不服そうにエレンを睨みつけている。

 

「ナイル…」

 

エルヴィンの諭すような声。

 

「我々は内地の事を軽視しているわけではない。我らの行動が人々の安定の上に成り立って要るのも分っている」

 

このまま納得出来ないのが人々の真理だ。

結局のところ軍は要るだけで金食い虫だ。様々な者を消費していく。

収まる訳がないのだ。

 

「そこで提案があります」

 

エルヴィンが出した事態を沈静化する為の答え。

それは劈外調査によるエレンの存在の有効性の証明だった。

 

「ほう、壁外へ往くのか?」

 

「はい」

 

「わかった…、エレン・イェーガー並びにリク・クリムゾンを調査兵団に託す」

 

こうしてエレンと、オマケだがオレの処遇が決定した。

取り敢えず難は去った。

しかし未だ問題は多く残されている。

周りを見ると、この決定に不服だという感情を隠そうともしないでエレンを睨む人々。

中にはオレを睨んでいる者もいる。

坊主とか、坊主とか、坊主とか…。本気でウザい。

しかし今は…。

 

「素直にこの結果に喜んでおくか…」

 

傷ついたエレンを肩に担ぎながら退室していく調査兵団、それを追いかけようとして止められているミカサ。

そんな様子を眺めながらオレは天井を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

リヴァイ 

 

【性別】男 【性格】強気 【隊長効果】命中率+20%

 

【地形適正】【空】A 【陸】A 【海】- 【宇】-

 

【レベル】40

 

【格闘】170 【射撃】152 【技量】201 

【防御】101 【命中】230 【回避】255

【SP】98

 

特殊技能

 

立体機動術LV8 切り払いLV5 援護攻撃LV4 闘争心

気力+ 見切り ヒット&アウェイ

 

精神

 

集中 迅速 覚醒 熱血 直感 直撃 気迫

 

私の妄想です。

 

本編とは関係ありませんw

でもこれぐらいの能力が有りそう…。

リヴァイさんチート使用。




更新が遅くなってスイマセン。


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孤独

リクが驚愕の事実wに気づきます。
今回は(笑)らしくいければ良いなと思います。
そういうわけで少しリクが壊れます。
いずれは戻すつもりなので生暖かい目で見て下さい。
お願いします。


連立する石柱と家屋の間を縦横無尽に駆ける影が1つ。

ミカサだ。

ミカサは立体機動装置を巧みに操りオレを幻惑しようと飛び回る。

そして…。

 

「ふっ!!!」

 

裂帛の気合を刀身に乗せてオレの頭部へ振り下ろす。

 

「甘い」

 

「くっ!!?」

 

気を感じ取って相手の動きを読むオレには通じない。

オレはミカサの斬撃を紙一重で躱すと同時に腕を捕り、遥か上空へと投げ飛ばした。

ミカサは直ぐに体制を立て直しワイヤーを射出、石柱へと降り立つ。

ミカサは悔しそうにオレを見下ろす。

 

「どうした?来ないのか?」

 

攻めあぐねているミカサに声をかける。

策など考えるだけ無駄だろう。

何しろ今の人類の戦術は立体機動術に沿った白兵戦が主流だ。

高速機動で敵を牽制、一気に距離を詰めて攻撃、即時退避のヒット&アウェイ。

強力な巨人の攻撃に被弾することは許されない。

そしてこの戦術こそ現時点の最高の戦術といえるのだ。

ミカサは思考しているのだろう。そして無理だと判断したはずだ。

しかし無駄だからといって退く訳にもいかない。

 

「くっ……、えっ!?」

 

ミカサはもう一度と足を踏み出そうとして、直ぐに足を止めた。

パキンッ、という音と共に剣が砕け刀身がミカサの足元に突き刺さったのだ。

 

「…、さっき投げられた時に?」

 

「正解」

 

なんの事はない。

オレは先程ミカサを投げ飛ばすと同時に刀身を根本からポッキリやっておいたのだ。

ミカサは直ぐに刃を交換する。

 

「やってるようだな…」

 

やって来たのはリヴァイ兵士長。

ミカサと同じく完全武装だ。

 

「混ぜてもらうぞ」

 

リヴァイはそう言うなりオレに向かってワイヤーを射出。

ワイヤーはオレの真横を通りすぎて背後の壁に突き刺さった。

 

「行くぞっ」

 

次の瞬間、リヴァイの剣が眼前に迫る。

ミカサも時間差で背後から襲い掛かってくる。

 

「はっ!」

 

「さぁ来い」

 

こうして二人がオレに戦いを挑んでいるのは理由があった。

エレンの査問会の後、ミカサがオレに相談してきたのだった。

 

 

 

 

「強くなりたい?」

 

「ああ」

 

エレンの調査兵団入りが決定し、解散となった後オレはミカサに声を掛けられた。

それはミカサの切実な願いだった。

ミカサの戦闘技術は対巨人戦においては完成に近い。後は実践を積むだけで良いだろう。

しかしミカサの望みはエレンを守る事にあった。エレンと生きる事にあるのだ。

今回の事件で、今の自分にはそれは不可能だと痛感したからだ。

そんな時に目にした圧倒的な力、つまりオレの武道家としての力だ。

 

「貴方は何故かエレンに協力的…、理由はわからないけど…」

 

ミカサの探る様な疑惑の目。

なんか怖いんですけど。その黒い瞳に吸い込まれそうなんですけど…。

流石に正直に「主人公だから」なんて言えるわけがない。

ミカサの心情としては信用は出来ないが、エレンの為にオレを利用したいのだろう。

でもその気持は理解したい。家族は大事だよな。

 

「要するに修行をつけて欲しいのか?」

 

オレの問いかけにミカサは強く頷いた。

 

「ほう、面白そうだ」

 

やって来たのはリヴァイ兵士長だ。

リヴァイの顔を見た瞬間、ミカサから凄まじい殺気が放たれる。

怒りの形相を隠そうともしない。

 

「なんだ?帰ったんじゃないのか?」

 

「ふん、貴様は得体が知れん」

 

「つまり監視か?エレンは良いのか?」

 

「どちらかと言うと貴様のほうが危険だろう?」

 

「だからオレからはやらないって」

 

「それよりも…、その修業とやらだが、オレも参加させてもらうぞ」

 

リヴァイはミカサの殺気を涼しい顔で受け流しながら言った。

今回の査問会、そしてこれまでの経験からか。リヴァイにも思う所があったのだろう。

 

「それは…、別に構わないが、けどこの際ハッキリ言っとくけど…」

 

オレの同意の言葉にミカサの顔が更に険しくなった。

そんなに怒ることないのに。

どんだけリヴァイの事が嫌いなんだよこの娘は…。

 

「オレも貴様の様な化け物じみた力が一朝一夕で手に入るなどと都合の良い考えは無い。しかし常に最悪の相手を想定した訓練は悪く無いだろう?」

 

「確かに、今までは対巨人戦のみを想定した訓練だったみたいだしな」

 

オレは短い訓練兵団時代の事を反芻しながら同意した。

確かに格闘訓練はあったが得点にはならないアレは皆適当に流していた。

 

「ミカサも何時までも睨むなよ。エレンが痛みつけられたのは、唯のデモンストレーションだ。仕方ないだろ?」

 

「……ちっ」

 

舌打ちしたよこの娘さん。

どんだけエレンが大好きで、それに反比例してリヴァイが大嫌いなんだよ…。

 

「……前途多難だな」

 

この面子で修行するのか…。

ミカサさん、ドサクサに紛れてリヴァイを殺そうとしなきゃいいけど。

実際は亀仙流の修行を独りでした方が修行になるかもしれない。

しかしミカサとリヴァイは人類でも最高クラスの実力者だ。

二人が共に修行することで得られる何かが有るかもしれない。

主にオレの精神安定剤的な物になってほしい。

オレが守る必要の無い腕の立つ二人が更に強くなれば巨人を相手にした時、かなり楽になりそうだ。

マジで巨人は未だに怖いし…。

 

「…はぁ」

 

オレは睨み合う二人を眺めながら深い溜息をついた。

そんなこんなでオレたちの修行が決定したのだった。

 

 

 

 

「…っ、はっ、はっ、はっ…っ」

 

「……っ」

 

修行開始から約3時間。

ミカサとリヴァイは地面に倒れこみぐったりしていた。

新鮮な酸素を取り入れようと呼吸を繰り返す。

結局二人はオレの身体に攻撃を掠らせる事も出来ずに全ての体力を消耗していた。

 

「おいおい、もう終いか?だらしねえぞ」

 

「くそっ…、化け物め…」

 

リヴァイが恨めしそうにオレの顔を見上げる。

 

「そんなになるまでアホか…、仕事しろ兵士長」

 

因みにこんな状態になるまで3回以上言った。

しかしリヴァイは思った以上に負けず嫌いだった様だ。

兵士長としての責務がある筈なのにコレだ。

 

「…くっ、ここまでなの…」

 

ミカサはリヴァイよりも少し早くダウンした。

よく喰らいついていたが、やはり経験の差だろう。

 

「……仕方ないな」

 

オレは自分の『元気』を気弾に乗せて二人に分けてやった。

 

「……っ、これは?」

 

「身体が…?今のが気というものなの?」

 

「こんなことも出来るのか…」

 

体力を限界まで使い動けない筈の二人が何事もなかったかのように起き上がった。

 

「今日はもう良いだろう?リヴァイ、アンタは兵士長だろう?早く帰れ」

 

「…ちっ、続きは明日だ」

 

仕事しろよ兵士長。

オレの言葉を無視してリヴァイは乗ってきた馬に跨った。

さっさと引き上げていく。

 

「ほら、ミカサも……、おいミカサ?」

 

ミカサは自分の掌を眺めながら固まっていた。

一体何事だ?何かぶつぶつと呟いている。

 

「リク、もう一度だけ私に気を送り込んでもらえないだろうか?」

 

「はぁ?何で?もう体力は回復しているだろ?」

 

「頼む…、今度は私に見えるように」

 

しょうがないな…。

オレは気弾を掌の上に作り出すと、そっとミカサに向かって放ってやった。

破壊力ではない『元気』を乗せた光弾はゆっくりとミカサに吸い込まれていった。

 

「……、これが『気』か…。『気』の力、コレが私にもあれば…」

 

「…っ、おいおい嘘だろう?」

 

次の瞬間、オレは開いた口が塞がらなかった。

なんとミカサはオレの目の前で気弾を生み出して見せたのだ。

そういえばコイツ、自分自身を完全にコントロール出来るチート娘だったな。

まさか気を分けただけで自分の気を認識してしまうとは…。

オレの様な下地がないから、その力は弱々しい物だが、正直オレはミカサの才能に嫉妬してしまう。

 

「……ふぅ」

 

ミカサは気の発動を止めると満足そうに微笑んだ。

やばい。めちゃくちゃ可愛い…。

恐らく心の中ではエレンの事でいっぱいなんだろう。

これでエレンを…、とか呟いてるし。

ご馳走様でした。

 

「貴方には礼を言っておく…。また明日お願いします」

 

ミカサはオレに一礼すると背を向けて行ってしまった。

そして独り取り残されるオレ。

リヴァイは今頃、信頼する多くの兵士達に囲まれているだろう。

そしてミカサにはエレンとアルミンがいる。

 

「……」

 

冷たい風が吹き抜ける。

もしかしてオレだけ独り?ボッチってやつ?

そういえば今気づいた。ていうか修行に夢中で気づかなかった。

オレ、親しい友人が一人もいないじゃねぇか。

リアルで僕は友達が少ないどころか一人も居ないじゃないか?

もしかしてオレの今までの人生……、灰色?

 

「……悔しくなんか…、ないぞ…」

 

初めて気づいた事実に流した心の汗は塩味だった。

 

 

 

 

そして次の日、約束通りミカサとリヴァイがやってきた。

ミカサは嬉しそうに目の前で気弾を生み出しリヴァイは、驚愕している。

しかしオレはイマイチやる気がでない。

そんな鬱なオレの気分を無視してミカサが話しかけてくる。

 

「それで、今日から本格的に『気』について教えてほしい」

 

「……オレもだ」

 

「好きにすればー、オレの事は放っておいて」

 

「は?」

 

「あぁ?何言ってやがる」

 

この二人はオレが不貞寝しているのに突っ込みもしないとは…。

実はオレ、昨日から記憶を掘り起こして考えていたのだ。

オレの親しい友人を。

開拓地で修行している間、確かに近所との交流はあった筈。

しかし記憶を辿れば辿るほど…友人らしき人物の存在は確認できなかった。

それどころかオレに体よく仕事を押し付け利用する者のなんと多い事か。

そして普段はオレを変人扱いしていた。

 

「なんてこったい…」

 

「あの、聞いてる?気についてだけど…」

 

五月蝿いな…。

人が切実な悩みで落ち込んでいる時に…。

今の俺はそれどころじゃないんだよ。

 

「ミカサ、こいつどうしたの?」

 

「あぁ、ミーナ…。私にも分からない。でも昨日はこんなじゃなかった」

 

「本当にいた…、あの、リク?大丈夫?」

 

聞き覚えのある声に反応して視線を向ける。

そこにいたのはアルミンとミーナだった。

 

「昨日、気を使って見せたら興味を持って…」

 

「他の皆も来たがったけど、流石に全員は抜け出せなくて…」

 

「ガキどもが…」

 

「ひっ、リヴァイ兵士長っ!?」

 

そういえば今、兵士達は巨人に殺された人達の埋葬中だったな。

早く遺体を何とかしないと疫病の原因になるだろうし、リヴァイが睨むのも無理はないか。

 

「ねぇ、もしかして僕らも出来るようになるのっ!?」

 

アルミンは興奮しながら俺の耳元で聞いてくる。

正直ウザい…、しかし。

 

「わたしも…、興味あるかな」

 

ミーナの声によって俺は一つの天啓を得た。

今から何とかすれば良いのではないか?

これから友達作ってぼっち卒業すれば問題無しなのではないだろうか?

出来るなら可愛い子が良い。出来ればミーナみたいな…。

 

「……、よし!俺に任せとけっ!」

 

俺は勢い良く立ち上がると拳を振り上げて叫んだ。

ミカサとリヴァイの目が冷たいが気にしない。

大丈夫っ!俺はまだ若いっ!

なにせピチピチの15歳だからな!

修業によって叩き潰してしまった青春時代をこれから取り戻すんじゃいっ!

純粋な目で俺を見つめるミーナとアルミン。

初めての友達は君たちに決定だ。

何時の間にか俺が他人に対して感じていたウザさは吹き飛んでいた。

よしっ!目標は100人友達が出来なくても100人分大切な友人を作ろうっ!

なんか目標がズレてきている気がしないでも無いけど、友達が一人もいない孤独な人生に意味も意義も感じられないしなっ!

 

「というわけで皆、オレの友達になってくれっ!」

 

「あぁ?なに気持ちわりぃ事言ってんだ?トチ狂ったか?」

 

「…いや」

 

ミカサとリヴァイの言葉はほぼ同時だった。

オレもテンションが上がりすぎていきなり口走ったのは失敗だったが即断るなよ。

「キモい」は無いだろう。リアルに傷つくわっ!

 

「あ、あの…よくわからないけど…、友達になるくらい別に…」

 

「わ、私も…」

 

ミーナとアルミンが躊躇いがちに言ってくれた。

 

「マジでっ!?」

 

オレは嬉しさのあまり二人の手を取った。

やった!いきなり友達ゲットっ!

言ってみるもんだ。

これから二人はオレの真の友っ!真友だっ!

絶対に100人分大切にするぞっ!

ミーナとアルミンに群がる巨人は全て最優先で始末してやる。

全ては色ある人生の為にっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 




ぼっち卒業やったね!
しかし実はアルミンもミーナも打算で友人を申し出てます。
真友なのはリクの一人よがりです。
しかし舞い上がって気づいていないです。

友達居ない孤独に初めて気づき鬱って舞い上がって少しキャラが壊れてます。
元に戻るんでしょうか?


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暗殺

ミーナとアルミンを真友認定して翌日、俺は清々しい気持ちで目覚めた。

景色が何時もと違って見える。

シミだらけの汚い天井も澄み切った青空のように思えてくるのだ。

それというのも、真友が出来た事が大きいだろう。

明日からなにして遊ぼう…。

ショッピングに行くのも良いかも。

ミーナとデートというものもしてみたい…。

いやいやミーナは友人だ!

デートとはか、彼女とするものであって友人とするものでは…。

いや友人とだって有りだろう。アルミンとついでにミサカも誘えば不自然ではない筈。

 

俺はウキウキきた気分で、さっそくアルミンとミーナを訪ねて遊びに行かないかと誘った。

結果、

 

「だめだめ、何言ってるんだ?兵士の僕達にそんな暇あるわけ無いよ」

 

断られた。

すげえ凹んだ。

いや普通に気づけよ俺。

どこの中学生だよ。初めて友人の家に遊びに行く小学生か。

ダメ元でミーナにも声を掛けてみたが、

 

「ごめんなさい。今日は哨戒任務があるの。え?いつ終わるのかって?新入りの私にはちょっと…」

 

なんかやんわり断られました。

すげえ凹んだ。

俺達、友達だよな?いや真友だよな?

兵士の任務と俺、どっちが大事なんだよ。

俺なら開拓の仕事をほっぽり出してでも行くけどなぁ…。

 

「はぁ…」

 

二人に断られた俺は重い足取りで修行場所へ戻ってきていた。

それにしてもいい加減にしてほしい。

 

「…あのう、さっきからウザいんですけど…、いい加減にしてくんない?」

 

数日ほど前からなのだが、何をトチ狂ったのか俺の後を付け回すストーカーさんが現れるようになった。

上手く気配を消したつもりでも気を隠せていないので丸判りなのだが…。

ていうか付け回される心当りがない…。

こんな物騒な殺気、いや殺意を向けてくる怪しいおっさん達に恨まれる様な事をした覚えは全くと言っていいほど無い。

気配は十一、木の上に八、前に一人、背後に二人。

ていうか俺、何かしたっけ?

 

「リク・クリムゾンだな…」

 

「俺をご指名?おたくら誰?初対面のオッサンに殺気をぶつけられる覚え、無いんだけど?」

 

同時に俺は跳躍する。

ドスン、ドスンと俺のいた場所に弾が着弾する。

火薬と鉄の匂い。これは間違いなく銃撃だ。

 

「散開っ!奴は上だ!」

 

「うぉっとっ!?殺る気満々っ!?」

 

リクの眼前に迫るのは立体機動装置を装着した中年の男だ。

ワイヤーをリクの背後の木に向かって射出、同時に宙へと身を躍らせる。

他の男達も動き出す。

時間差で、あるいは同時に。良く出来たコンビネーションだ。

標的を確実に殺す。ただその為だけの行動。

男達は何時でもこの方法で確実に標的を始末してきた。

そして今回も…いや、何時も以上にタイミングは完璧だった。

この行動によってリク・クリムゾンを確実に始末する。

 

 

リク・クリムゾン(15)

ウォール・マリア、シガンシナ地区に住む平民の少年。

訓練兵団の門を叩くも立体起動術において脱落、農地開拓へと移される。

その時より奇行が目立つ様になる。

常軌を逸した程、開拓に取り組むようになり、同時に周囲から浮き周囲から孤立するようになる。

この時、要注意人物として監視が置かれるようになるが、それ以上に目立った行動はなかった為、監視を中断。

それから再び超大型巨人の来襲事件において、生身で巨人を殺したという報告が上がる。

事実確認の結果、事実であると判明。

審議の結果、目標が我らの社会秩序において危険と判断。

リク・クリムゾンの殺害を決定。

 

 

(……殺った)

 

何時もどおり。

目の前の目標も、今までの標的と同じ。

この一撃で首と胴体が別れ、心臓に大穴が穿たれる。

それで仕舞だ。

しかし男の手には何時もの人を斬った感触が伝わってこなかった。

肉を切り裂き骨を断ち切る、そして頬に掛かる生暖かい血の熱。

人を殺した感触が返ってこないのだ。

 

「……がはっ!!?」

 

腹部に衝撃が走る。

口に広がる生暖かい熱、これは吐血だ。

自身の身体は不自然な程くの字に折れ曲がっている。

鏡はないため自分の姿は確認できないが、それでも分かる。

自分はここで終わりなのだと。

薄れゆく意識の中で「ぐふっ」、「ぎゃあああああ」と悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

リクが一瞬で五人、ほぼ半数を無力化したのを見て目の前の男は声にならない呻き声を上げた。

それも当然の反応だ。

この十一人は自分と上司が見出した選りすぐりの使い手たちだ。

巨人殺しのプロである調査兵団が相手であっても確実に殺せる自信がある。

目の前の子供≪ガキ≫も生身で巨人を殺したというが、所詮は生身の人間。

人間である以上、殺せない道理は無い。

喉を、心臓を、急所を狙えばあっさりとケリは着く筈なのだ。

いかに相手が超人的であろうとも、自分たちはその道のプロなのだから。

 

「甘く見過ぎたか…」

 

男は直ぐに思考を切り替えた。

確かに驚愕した。今まで殺してきた標的とは全く違う。

認めよう。目の前の敵は捨て身で掛かろうとも殺せない事を。

ならば道は一つだった。

 

『総員、撤収!目標を牽制しつつ合流地点Bまで後退!』

 

逃げの一手だった。

 

「だがその前に…」

 

同時に周りの男達が銃をリク、いや倒れている男に向けた。

 

「…まさかっ!」

 

これは口封じだ。自分たちの情報が漏れないように倒れた味方を切り捨てる。

このままでは倒れた男達は殺されてしまうだろう。

銃声と同時にリクは跳んだ。

瞬時に複数の気弾を生み出すと同時に放つ。

 

「な、なにぃっ!!?」

 

リクは気弾によって銃弾を相殺、そして瞬時に次の行動に出た。

倒れた男達をひっ捕まえる。

 

「太陽拳!!」

 

リクは全身から凄まじい閃光を放出した。

 

「ぐああああああああつ!!?」

「め、眼がっ!?眼がああああああっ!?」

 

リクは男達が目を眩ませている隙に倒れている男達を回収してその場から姿を消した。

 

 

 

「あんにゃろう、一体何だったんだ」

 

木々の間を忍者のごとく駆けながらリクは独りごちる。

 

「やっぱり全員、叩き潰すべきだったか…いやそれよりも」

 

リクは後ろに視線を移す。

両肩には無理やりに五名もの男を背負っている。

既に邪魔な立体機動装置は外しており、リクの腕力なら難なく運ぶことが出来る。

リクは背後に意識を向けたが追ってくる気配はない。

どうやら上手く巻いたらしい。

リクは樹から樹へ飛び移りながらも周囲の様子をうかがう。

目の前に川が見えた。

リクは地面に着地して川辺へと駆け寄った。

 

「さてと…」

 

リクは軽く一息つくと背負っていた男達を放り投げた。

男達は意識を失ったまま宙へと投げ出され、水面に叩きつけられた。

ブクブクと息をしているところから、ちゃんと生きているようだ。

そして、

 

「ばっはぁっ!!?」

「ぶはっ!げほっ!?ゴホッ!!?」

 

次々と意識を取り戻して水面から顔を出してくる。

むさい男達が水をたらふく飲んで涙目で咽ている。

正直キモい…。

リクは不快感を顔に滲ませながら、一番早くに顔を出した男の顔を踏みつけた。

 

「よう!起きて早々に悪いけど、聞きたいことが有るんだけど勿論答えてくれるよなぁ?」

 

「ぶふっ!?」

 

友人が出来て清々しい朝、そして誘いを断られて鬱な午後。

そんな時、訳も分からずに殺されかけた。

もしも亀仙流の修行をしていなければあっさりと殺されていただろう。

ハッキリ言ってしまえば今の自分は凄まじく機嫌が悪い。

目の前の男達は殺人も厭わない外道のようだ。

八つ当たりしても問題ないよね?

リクは気弾を掌に生み出しながら邪悪な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

「リクに悪い事しちゃったかな…」

 

新兵として任務に励むアルミンは馬の世話をしながら溜息を付いた。

 

「仕方ないわ。私達にはしなければならないことがあるんだから」

 

ミサカは淡々と言葉を返す。

 

「流石に遊びに行こうは無いだろう…」

 

「いや、俺も出来るなら遊びに行きてぇな…ああ!ガキだった頃に戻りてぇ!」

 

しかしそれも最早敵わない。

自分たちは既に兵士なのだから。

 

「けどさ、本当に僕達もリクみたいな力が手に入るなら…、これまでの戦術や作戦が根本的に変わる。そんな気がするんだ…」

 

「まぁ、確かに…けどよ、なんかそれって危なくねぇか?」

 

ジャンは馬の背に走らせるブラシを止めて言った。

少し手が震えている。

 

「今でこそ俺達はヤツを味方と認識しちゃいるが、得体が知れないのも確かだ…一歩間違えればどうなっていたか…」

 

「それってリクが敵になってたかもしれないってこと?」

 

「ああ、なにせ素手であっさり巨人の群れを始末しちまう様な奴だぜ?下手すりゃ…」

 

人は理解できない存在を前に心穏やかにはいられない。

多くの兵士がリクを敵として剣と殺意を本気で向ければリクも身を守る為に拳を振るうだろう。

 

「それって最悪の事態じゃないか…」

 

「俺らはまだいい…、けど他の連中は?」

 

「ま、まさか…っ!?」

 

アルミンは思わずリクの家の方を見た。

急激に下腹が熱くなっていくのを感じる。

 

「……友達、か…」

 

アルミンにとっての友人といえば第一にエレンの顔が浮かぶ。次にミサカだ。

正直、リクの友人になると決めたのは打算によるところが大きい。

 

「けど…、リクは大丈夫だよね…」

 

アルミンはそうであってほしいという希望は風の音にかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 




リクに襲いかかってきた正体不明の集団。
原作読んでる人は何となく予想はつくでしょう…。


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