異星艦娘と新任提督(事務員) (対艦ヘリ骸龍)
しおりを挟む

登場艦情報
 短編 帝国海軍戦艦常陸


ファイルに残ってた一番古い小説です。暇潰しにどうぞ。


『天眼23の担当範囲に敵艦が侵入した。座標を送信する。攻撃可能な艦隊は攻撃を行え。座標はE2200N3298』

 

「司令部に伝えろ。()()()()()()()()を開始する」

 

「はっ。──キャノン1よりアーセナル、衛星弾着観測射撃を開始します。──通達完了しました」

 

「<天眼23>とのデータリンクを開始。射撃データを取得次第砲撃始め」

 

時は1985年。二年前に終結した()()()()()で多くの戦力を失ったドイツに対し、()()()()()()は包囲網を構築することに成功していた。

 

しかし落ちぶれても欧州を支配し、ウラルより東側にすら勢力圏を広げているドイツはその戦力を回復させつつあり、すでに装甲艦等が通商破壊を行うべく外海へ脱出していた。

 

それらに対抗すべく、枢軸同盟(アクシス)の実質的盟主たる日本は、これらを掃討すべく、本国から第一戦隊を含む高速戦艦、装甲巡洋艦を呼び寄せていた。第一艦隊第一戦隊旗艦、戦艦<常陸>もまた例外ではなかった。

 

「射撃データ取得完了。撃ち方始め!」

 

次の瞬間、既に右舷に向けられていた12門の主砲が火を噴く。音速の3倍近い速度で放たれた7トンもの砲弾は、()()()()()()()()にいる敵の装甲巡洋艦目掛けて飛んでいく。

 

「しかし、たかが装甲艦に我々が出向く必要が有るのですかね?三号艦級で事足りるのでは無いでしょうか?」

 

「『ただ飯喰らい(役立たず)』と言われるよりはましだろう?それに、普通の艦対艦誘導弾(S S M)空対艦誘導弾(A S M)ではよほど幸運が無い限りダメージを与えられぬのでな。三号艦級も悪い艦ではないが、敵に悟られずに攻撃できるのは我々(常陸)だけだ」

 

 

三号艦級、いわゆる改大和型戦艦は確かに33ノットの高速艦であり、打撃力も申し分無いが、水平線の向こう側に撃つには、観測機を出す必要があり、間違いなく装甲艦にばれてしまう。なお、五号艦級、つまり紀伊型は27ノットと低速であり、このような任務には向いていない。

 

 

今回、常陸が目標としているのは、装甲艦<エーリッヒ・レーダー>である。俗にポケット戦艦と称される事の多い装甲艦だが、この艦は、34ノットの快速、30㎝9門の火力を誇り、どちらかというと巡洋戦艦に近い。本来であれば<劔>型や<白根>型の仮想敵となる艦である。しかしこの艦はドイツ製兵器の例に漏れず、超重装甲の巡洋戦艦であった。40㎝ですら歯が立たない、まさに"装甲艦"である。

 

 

「第一射、直撃弾なし、至近弾4。第二射、撃て!」

 

衛星軌道上からの情報に基づき修正を加え、発砲。<常陸>型戦艦にしかできない芸当の1つ、"衛星弾着観測射撃"であった。80000mという驚異的射程を誇る71㎝砲を持つ<常陸>だからこそできる技。

 

本来、軌道上からの弾着観測は、コストが高すぎると言われる。というのも、低高度軌道のため、衛星の消耗が激しいからである。また、低高度軌道の弊害として、カバーできる海域の狭さがあった。それに対し日本側は、いくつかのルートのみに対して衛星を上げることで解決した。消耗すれば、予備を打ち上げればいい。カバー可能な範囲の敵艦のみを観測すればいい。

 

そして今回、敵装甲艦は、そのカバー範囲に入ってしまい、不幸なことに、近くには<常陸(化け物)>がいた。

 

「第二射、直撃弾4、至近弾7、目標轟沈」

 

この(怪物)から逃れる術などない。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「へえ、超水平線(オーバーホライゾン)攻撃かあ……」

 

「まあ実際にやったの俺じゃなくて<常陸>だし、多分もうすることはないと思うよ?」

 

「まあそんな簡単にできるわけないよねえ……」

 

「今の日本じゃ金が足りないだろうな。まあ観測機いれば出来るけどさ」

 

 

艦息<常陸>、転生前の名を<アドミラル・ヴェルス>という彼は、今、<常陸>という名で生活しているものの、<常陸>の記憶はどうも自分がやったことのようには思えなかった。

 

 

勿論、同じような事なら経験は有るのだが。




はい、以上です。先にこういう設定だけ思い付く辺りがなんとも言えないです←
なおアイデアは<鋼鉄のリヴァイアサン>などからです。
古いので文章力は勘弁してくださいm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

登場艦 情報整理

一応、作中のオリジナル艦の出身、艦名を整理しておきます。


V級駆逐艦(太刀風改級防空艦) 

      同型艦    ヴィローネ(琴風)

             ヴァルト(音風)

             ヴィクティル(暮風)

 

  ヴィローネのみ島風改級駆逐艦、太刀風級防空艦としての艤装を持つ(つまり二つ)。任意で入れ換えは可能だが太刀風級がメイン。基本的に島風改級の艤装を使うまでもなく敵が文字通り粉砕されるため…。

ちなみに同型艦<ヴァルト><ヴィクティル>は太刀風級の艤装しか持ちません。

 

戦没したのは

ヴィローネ  対シュトルムヴィント戦

ヴァルト   対グロース・シュトラール戦

ヴィクティル 対グロース・シュトラール戦

 

元の所属は ヴェイルクロイツ連邦海軍

 

 

 

R級防空駆逐艦(秋月改級[霙級]防空駆逐艦)

           同型艦  Ⅲ型リクス(霙)

                Ⅲ型リーク(霧)

          Ⅱ型Ⅲ型仕様改装レイラ(雹)

                Ⅴ型リラン(雫)

 

  秋月改級防空駆逐艦の艤装を持ちます。Ⅲ型の兵装は魔強化された長8㎝3連装砲塔4基12門。Ⅴ型は陽電子射出器4基が主兵装です。ただし動力が常温核融合のため、艦体はⅢ型に比べ大型化しています。

最初に出てきたリウェイク以下はⅠ型で、基本的に秋月型と大差ないです。

 

規格化された兵装の積み替えを行うことで、可能な限り対応可能な任務の幅を広げた軍艦です。搭載可能兵装は以下の通り。

 

 

 

長10㎝連装砲

長8㎝三連装砲

15㎝単装砲

多連装噴進砲

SSM発射器

SAM発射器

対潜爆雷投射機

 

 

 

戦没は

リクス…対アルウス戦

リーク…対ヴォルケンクラッツァー戦

レイラ…対播磨戦

リラン…対フィンブルヴィンテル戦

 

元の所属は、ヴェイルクロイツ連邦海軍

 

 

 

アドミラル・ヴェルス級戦艦(常陸型戦艦)

     同型艦 アドミラル・ヴェルス(常陸)

 

間違いなく実在する中で世界最大の戦艦。多分プレジデント級も一捻りで揉み潰せます。大艦巨砲主義が産み出した最悪の怪物です。SAMとSSMのお陰で相手が機動部隊でも歯牙にかけません。リラン同様反応推進です。出力の桁は違います。陽電子はありませんが光学兵器とCIWS、汎用VLSなど副兵装は割と近代化されています。

 

 

 

戦没は対シュピーゲルング戦です。

 

元の所属はケイキュリア帝国海軍

 

 

スィルグレン級航空母艦(改飛天級航空母艦)

       同型艦 スヴィル(伊吹)

 

ニミッツ級を超えるサイズの超大型航空母艦です。反応推進です。基本的に艦載機構成も似たり寄ったりですが、一部異なります。言わずもがなですがアングルドデッキも存在します。

 

戦没は対ハボクック戦

 

元の所属はケイキュリア帝国海軍

 

 

 

V級特務艦(須磨級試験艦)

  同型艦 ヴォールン(須磨)

  同類艦 ヴァースフレイム(幻炎)

      ヴェイルキャノン(三河)

      ヴィクターホルン(劔)

 

この艦隊で唯一元ネタが存在しない軍艦です。一番ゲテモノでもあります。巨砲主義の権化戦艦<三河>、超高速駆逐艦の<幻炎>、探知能力に重点が置かれている電子巡洋戦艦<劔>、大抵の兵器はすべて搭載可能な試験艦<須磨>と艦種はバラバラです。基本的に実験艦なので元の世界では実は扱いに困ってたり…

詳しいことは作中にありますので

 

 

元の所属はヴェイルクロイツ連邦海軍

 

 

ヴェルニ級防空巡洋艦(石狩改級防空巡洋艦)

  同型艦 ヴォルフ(湧別)

 

対多目標同時捕捉・迎撃システム搭載型防空艦。イメージ的には、イージスがついたしらね型護衛艦を想像すれば、大体あってます。

 

戦没は対ハボクック戦

 

元の所属はケイキュリア帝国海軍

 

R級Ⅲ型防空駆逐艦リーク(霧)

 

基本は駆逐艦ですが、巡洋戦艦と装甲艦の艤装をもちます。巡洋戦艦イルミナティこと<穂高>、装甲艦ヴァンガードこと<生駒>です。戦闘力や、艤装、もとの艦の兵装は作中にあります。艤装を切り替え出来る艦のなかで唯一人格まで変わる艦です。

 

 

S級戦略原子力潜水艦サイレン(伊310)

 

反応機関(リアクタードライブ)搭載の高速潜水艦です。対超兵器戦を生き残った数少ない兵器の一つです。

数ヶ月は潜水したままでの作戦行動が可能です。

年代的にRSBCでは潜超改の数世代あとかな?と個人的に思っています。

 

元の所属はケイキュリア帝国海軍

 

A級戦艦 アドミラリティ

 

兵装スペック全てが不明な戦艦。建造時期すら不詳。<霧>の感情リソースを削るのはコイツ。今のところ艤装顕現用データを構成試行中。

 

竣工 対ヴォルケンクラッツァー戦後

戦没 対フィンブルヴィンテル戦

 

ヴェイルクロイツ連邦海軍

 

 

 

 

 

 

 

  




取り敢えず第十話までに登場したオリジナル艦をのせてみました。随時説明を増やします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編 遭遇
第零話  物語の始まりと終わり


まだ艦これの世界には入ってきません。その前のお話です。飛ばしても支障は特に無いです。


「リヴォルバー2より、敵艦発見の報告です!」

 

「来たか…こちら対超兵器総司令部。全艦隊へ、敵超兵器を発見。事前計画通りに動く。阻止艦隊全艦、第一級戦闘体勢。主力隊全艦、第一級戦闘体勢。良いか、この世界の未来がかかっている。帝国も連邦もない。我らの生存と未来のために全力を尽くせ!」

 

『了解!こちら阻止艦隊司令連邦海軍中佐ベイル。主力艦隊へ。あとは任せる。支援艦隊へ、よろしく頼む』

 

『こちら支援艦隊司令帝国海軍中佐ファラゴット。承知した。旧式艦と舐めるなよ?』

 

『リヴォルバー2より全隊へ。敵艦は予定海域に入った。繰り返す、敵艦は予定海域に入った』

 

『阻止艦隊、全艦出撃せよ!』

 

海上を微速で進む複数の単縦陣。そのうちの2つが速度を上げ、動き始めた。その2つのうち1つは小型艦─駆逐艦のみで構成され、もう1つは大型艦ではあるものの、速度が出ていない。旧式艦のようだ。さらに別の単縦陣も別の方向へ速度を上げ始めた。こちらは空母ばかりが集められている。

 

そして空母群から航空機が発艦し始めた頃、残された最後の単縦陣─文句なしの大型艦で構成された単縦陣が動き始めた。

 

それだけの戦力をつぎ込む相手は、たった1隻の、だが圧倒的な強さと速さを誇る軍艦。その名を、超兵器、"シュトルムヴィント"といった。

 

 

 

真っ先に分離した小型艦の単縦陣、その先頭にたつ駆逐艦の艦橋で、連邦海軍中佐、ベイル・ゴラスは、今、自分が死地へ向かっていることを理解していた。数ヵ月前に現れた、同型の超兵器"ヴィルベルヴィント"を撃沈するために、数十隻単位の軍艦が沈んでいた。今回は作戦をくみ、ある程度訓練も積んでいる。また、この任務に投入された軍艦も、連邦海軍の、そして一部ではあるが帝国海軍の、精鋭中の精鋭であった。現に彼が乗るヴィローネも、連邦海軍最新鋭の駆逐艦であり、この艦隊の中で最強の戦闘艦であった。しかし、任務はそれを加味しても、生還を期しがたい任務だった。

 

彼らに与えられた任務は、"シュトルムヴィントの進路を、あらゆる手段で塞ぎ、加速を許さないこと"だった。最大速力180ノットという速度を誇るシュトルムヴィント。その速度を活かさせない為に、妨害すること。それが彼らの役目。

 

『司令、大丈夫です。ヴィローネを信じてください!』

 

そう呼び掛けるのは、メインモニターに映る少女。この駆逐艦、V級艦隊随伴用大型駆逐艦三番艦ヴィローネが搭載する自律進化型AIのインターフェース。この駆逐艦に"移って"僅か数ヵ月であるが、その"前"に積み重ねた経験が、ヴィローネの性能を引き出していた。

 

「…ああ、そうだな。今回も、全員で生きて帰ろう」

 

『リヴォルバー2よりディフェンダー、まもなく接敵する。幸運を祈る、貴艦のもとに神の加護の有らんことを。』

 

「ディフェンダーよりリヴォルバー2。神の加護の有らんことを。」

 

『ホークアイよりディフェンダー。シェパードとグリフォン、エルダーを援護に回す。好きに使ってくれ』

 

「ディフェンダーよりホークアイ。感謝するが…だいぶ増えてないか?」

 

『皇帝陛下から直々のお達しだ。出せるすべての戦力を回す。新鋭艦を主力隊に回した分、航空兵力は阻害艦隊に回すそうだ。無人機で申し訳ないが魚雷とASMの標準装備だ。精々使い潰してくれ』

 

「了解した。ディフェンダー全艦へ、聞いたか?直々のお達しだそうだ、気合い入れていくぞ!全艦、作戦行動開始!」

 

 

 

 

惑星ボラヴィル史暦2760年3月26日。

       超兵器シュトルムヴィント撃沈。

被害 阻害艦隊駆逐艦ヴィローネ ヴァインズ

           ヴェルゼン クィラフ

           フォーレン 撃沈

       駆逐艦ユニティー クロニクル

           リウェイク 大破

   支援艦隊戦艦 アドミラル・ヴェルディ  

           クルヴィニク 

       巡洋艦 インフィニ フェルディ

            ナルファイタ 撃沈

       航空機48 撃墜

   主力隊、航空艦隊 被害艦、喪失艦無し

 

駆逐艦ヴィローネはその身を散らせた。被弾数、38㎝砲弾18発、魚雷5本をその身に受け、爆散した。生存者はいない。

    

───時は過ぎ、物語が再び始まる。




戦闘描写全部入れたらそれだけで1つの物語になりそうだったので止めました。一応前座です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一話  ブラック鎮守府への異動

2話目から漸く艦これ世界です。


ここは日本皇国海軍大本営。10年前突然現れ、今もなお世界のほとんどの海の制海権を握る、深海棲艦に対する日本の兵力の要だ。

 

今日、その中にある幕僚執務室の1つ、楠木大将の部屋に、一人の海軍士官が訪れていた。名前を神崎啓斗、階級は海軍少佐。前の職場は第三資料室室長。

 

敵情を集めて纏める第一、国内外の情勢の調査に充てられている第二と異なり、第三資料室の仕事は、味方のデータの整理であった。どういう名前の艦娘が居て、どんな装備を搭載可能なのか、そして艤装展開時の装甲厚、防御力はどれ程なのか。どの鎮守府にどの艦が居るのか。そのようなデータを集め、資料化し、新たな艦娘が出現すれば、そのデータを収集する。そのような仕事を行うのが第三資料室。

 

神崎は、3年間第三資料室室長として勤務し、実績も多く上がっていた。例えば、第一次改装後の艦娘に対する更なる改装、第二次改装、通称改二の実装。そして複数鎮守府連合艦隊システムの実装もそうだ。

 

 

そんなある日、彼は突然大将に呼び出されることとなった。

 

「それで、何の御用でしょうか。大将閣下?」

 

「うむ、実はだね、君にとある鎮守府に行ってもらいたいんだ」

 

「ということは新しい艦娘がドロップしたのでしょうか?」

 

「いや、そこに異動してもらおうかと思っている。これはおそらく君にしか出来ないことだ」

 

「と、もうしますと?」

 

「3か月前、横須賀第三鎮守府で不祥事があったのは覚えているかね?その後始末というか尻拭いと言うか……」

 

「確か艦娘に対する暴行の容疑で提督が逮捕されていましたね……ということは次の提督になれという事ですか?後始末ということはまさか鎮守府の解体と所属艦娘の全解体でもしてこいという事ですかね?」

 

「いや、着任してもらうが、そのまま勤務し続けてくれ。鎮守府解体の予定はない。艦娘の事を知り尽くしている君だからこそ、装備などハード面の負担軽減や、メンタル面もカバーできないかとな」

 

「お言葉ですが大将、精神面は専門外ですよ。まあ、命令とおっしゃるなら私にはどちらにしろ行くという選択肢しかございませんが」

 

「ではそうしよう。明日〇八〇〇横須賀第三鎮守府への着任を命ずる」

 

「明日〇八〇〇を以て横須賀第三鎮守府へ着任致します。ところで大将、質問なのですがよろしいですか?」

 

「何かね?」

 

「鎮守府から最寄り駅までの迎え、あるいは私と同時に着任する艦娘は居るのでしょうか?」

 

「同時に着任する艦娘は居ない。鎮守府からの迎えは長門が来るとの事だ」

 

「了解いたしました。では至急部署に戻り引き継ぎをして参ります」

 

「ところで神崎」

 

「なにかありましたか大将閣下?」

 

「敬称抜きだ。これは私語だからな」

 

「それで良いのですか楠木君?」

 

「構わないさ。それより、お前もそろそろ身を固めないのか?」

 

「今それ聞きますか貴方は?学校に3年、資料室に7年籠ってた人間に聞くことじゃないでしょう?ていうか嫌味ですか?だったらちょっと待っててくださいねつい昨日艦娘用の近接戦武器が出来たので実験台になってもらいましょう」

 

「待て待て待て待て!お前が作ったのなら洒落にならんから!お前外に出てないのか?」

 

「ええ、まあ。授業の準備、研究と資料整理って案外時間かかるのですよ?」

 

「一回もか?」

 

「出る必要性も感じませんでしたしね。飯が食えれば充分でしょう?」

 

「……お前を異動させて正解かこれは」

 

「そんなこと知りませんよ?人の健康や生活を心配する前にブラック鎮守府をどうにかしてくださいな。それがあなたの仕事でしょう?では失礼しますよ」

 

「ああ、またな。生きて会おう」

 

「毎回ながら思いますがその挨拶ってフラグみたいな…まあ良いです。また、生きて会いましょう。我らの未来のために」




かなりぐだぐだな気が自分でもしてます。お許しを…
評価頂けたら幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話  拒絶と理詰め

翌日午前7時、彼は横須賀第三鎮守府前駅にいた。前とは言うものの、そこそこ離れたところに有るらしく、鎮守府の建物は見えない。

 

そこに、一人の女性が声を掛けてきた。

 

「おい」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「お前が神崎か?」

 

「ええ、そうです。ということは貴方が長門さんですね。初めまして。神崎啓斗と言います。この度横須賀第三鎮守府で提督をすることになりました。よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げた神崎を見て、やや驚いたような表情を浮かべる長門。が、すぐに無表情な顔になると

 

「その件なのだが、今すぐ帰ってもらいたい」

 

「はい?」

 

「我々に提督は必要ない、と言うことだ」

 

「はあ、分からんでもないですが、取り敢えず鎮守府に行かせてください。そう言うことでしたら色々書かなければならない書類等もありますので」

 

「そんなものは向こうでもかけるだろう?」

 

「いいえ。上に上げるための報告書を偽造してどうするんですか。貴女方が提督を必要としないと言うのなら、その根拠を示す必要があるのですよ。その中に艦娘の指揮、戦闘能力も含まれますのでね」

 

「断ると言ったら?」

 

「私に可能なすべての手段を以て鎮守府にしがみつきますよ。私の職場ですから。まあ、提督が必要ないと言うなら事務員でも結構です。大抵の書類は通しますよ?」

 

「どんな書類でも?」

 

「ええ、流石に私の権限を逸脱するものは不可能ですが大抵のことは対応出来るので。なんでも要望し放題です。まあ大したメリットにはならなさそうですがね。まあそういうわけなので、出来たら大人しく鎮守府に入れてほしいのですよ。私としても強行手段は取りたくないので」

 

「何が出来るというんだ?」

 

「艤装の機能の一部停止、搭載可能な全装備のロック、補給機能の停止辺りですかね?あとは……鎮守府防衛設備のダウンとかですかねえ」

 

「そんなことが出来るわけ……」

 

「出来るから申し上げております。管理者権限は私も持っていますから。ああ、メリット他にもありましたね。私にある権限を整理すればポロポロ出てきそうです。どうします?」

 

「…鎮守府に来てもらおうか。こっちだ」

 

そう言って彼女は歩き出す。

 

「ありがとうございます。ところで何分かかるのですか?」

 

「10分ほどだな」

 

「ますます帰りたくなくなりますね。10分も歩けとは…今度行ったらちょっと楠本君を締めてきますか」

 

「は?大将を?」

 

「ええ、私の体力が無いのを知っていて着任させようとするとはね。だから一回締めます」

 

「貴様、何者だ?」

 

「ですから一介の海軍少佐です。自分で言うのもなんですが少々特殊な経歴を持ちますが」

 

「どういう経歴だ?」

 

「元海上自衛隊第二特殊戦闘群第一分隊…通称は、"神盾"。そこの所属でした」

 

海上自衛隊第二特殊戦闘群。艦娘の出現する前から、沿岸での深海棲艦への対処を行っていた部隊である。そのなかでも第一分隊は優秀な戦績を納めている。軽巡ツ級轟沈12、駆逐級轟沈132、重巡リ級撃破5、戦艦タ級撃破1。人間が挙げたとは思えないほどの量の戦果を残したその部隊は、東京湾攻防戦で残存人員二人を残し全滅した。艦娘が現れたのはその直後であり、当時最初に接触したのは当時24歳の現大将であった。その時神崎は、仲間の遺品を集め、瀕死で生き残っていた深海棲艦を手榴弾と小銃、ナイフで葬っていた。

 

「!そこは……」

 

「ええ、そうです。そして私が、たった二人の生き残りの一人。そしてもう一人が……」

 

「大将か。だから簡単に……言っては駄目な気がするが……締めるとか言えるのだな?」

 

「ええ、まあ。元々の能力の差ゆえに、階級はここまで違いますけどね」

 

「ふむ。……着いたぞ。ここが我々の鎮守府だ」

 

「外見だけは立派ですね。153番は相変わらず外面だけを気にしていましたか」

 

「誰だそいつは?」

 

「前提督ですよ。卒業席次です。名前が出てこないので已む無く」

 

「相変わらずとは?」

 

「昔からそうだったのですよ。私も、こいつは提督になる素質はないと不可の成績を着けたらケチ付けられたんでドロンしました」

 

「は?」

 

「じゃあ良いわって言って教師止めました。家柄で選ぶようでは居る意味が無いですから。それよりこちらの損害を押さえようと第三資料室に入っていつのまにか室長に。不思議なものですねえ」

 

「何も言われなかったのか?」

 

「権力で潰しました。というより、私と楠本君…大将はかなりの自由が有りましたので、特に問題はありませんでした。……では失礼しますね」

 

そう言って彼は鎮守府の門をくぐった。




会話しかない上に2000文字もないです。文章力誰かくださいな…
提督ですが32才、艦娘出現時は22才。第一分隊第二小隊所属でした。質問があればコメントにて。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話  転生と目覚め、三重の記憶

今までのより少々長くなりました。相変わらずぐだぐだしております。ヴィローネサイドのお話です。


……ここはどこ?

 

 

外周警戒艦(レーダーピケット)<夕月>より入電。我レ、敵機ヲ大量二捕捉シツツアリ』

 

『全艦対空戦闘!全噴進弾発射!』

 

──私は…?

 

──太刀風級防空艦?違う…?

 

 

『敵艦隊発見!魚雷発射準備!』

 

『魚雷発射、始め!』

 

 

──島風改級駆逐艦?違う…?

 

 

『左舷より魚雷接近!』

 

『かわせ!バウスラスター全力!面舵一杯!』

 

『リウェイク被弾!くそっ!敵艦ロケット弾発射!』

 

『リウェイクの前に出ろ!全速前進!』

 

──私は

 

──V級駆逐艦…

 

 

 

「お…ちゃん!お姉ちゃん!」

 

(誰?)

 

「起きてよお姉ちゃん!」

 

「っ!…ここは?」

 

彼女が目覚めたのは海の上。回りを見ると、見たことのない、だが懐かしさを覚える少女の姿。

 

(誰だろう?見たことあるような?)

 

「貴女は…?」

 

「私だよ?覚えてないの?私は駆逐艦ヴィクティル、お姉ちゃんの妹だよ?」

 

「…ヴィク…ティル…?ヴィクティルって…あのヴィクティルなの?!って何で話せてるの…?」

 

「えっとね、お姉ちゃん、まず、立ってみてよ。立てるから。」

 

「立つ?私たちは軍艦よ?そんな事が……足がある?待って、ねえ、なんで私達人になってるの?」

 

「私もわかんないよ。沈んだうわあどうしよとか思ったら何か人型になって海に浮いてた。ヴォルフに…ううん、湧別に起こしてもらったの。」

 

「…湧別ってだれ?」

 

「えっと…別名って言うか何と言うか…そうだ!お姉ちゃん、自分の名前わかる?」

 

「何言ってるのよ、私はV級駆逐艦三番艦のヴィローネで…っ!」

 

突如襲い掛かった頭痛にヴィローネは蹲る。それと同時に頭のなかで浮かび上がる映像。

 

誇らしく旭日旗を掲げ、北大西洋をひた走る。襲いかかってくるのはドイツ第三帝国の航空機。それらを仲間と共に対空誘導噴進弾で撃ち落とす。大日本帝国で生まれ、気づけば遥々欧州まで来ていた。私は…

 

 

「太刀風級対空誘導弾搭載駆逐艦三番艦<琴風>…」

 

ヴィローネ──琴風はそう呟いた。

 

「やっぱりお姉ちゃんだ!やったね!私は、太刀風級五番艦<暮風>だよ。ちなみにヴァルトお姉ちゃんは<音風>。R級の皆は秋月改二型の特殊艦になったみたい。皆って言っても四人だけど。」

 

「R級ってリウェイクとか?」

 

「あー…もしかしたら知らないかも。Ⅲ型とⅤ型だから…」

 

「そう…他に私が知ってる艦は居るの?」

 

「スィルグレン級のスヴィルさんとか、S級のサイレンとかかな。二人とも名前は違うけど。」

 

空を見れば、早期警戒機、対潜ヘリや護衛用の戦闘ヘリ、空中哨戒機が上がっているのが見えた。すでに活動を開始しているようだ。

 

スィルグレン級空母。帝国海軍で二世代目の反応動力推進空母だ。最大の空母だったはずである。その巨大な艦体のお陰でいくつか特殊な機体を飛ばせるはずだ。彼女が居るならば、安心だろう。

 

「全部で何人居るの?」

 

「えっとね、目覚めてない人合わせて12人だよ。」

 

「誰が居るのか教えてくれない?私ヴィルベルヴィント戦で沈んだから、そのあとに出来た艦はあまり知らないの。」

 

「そうだったね…わかった!教えてあげる!えっとね、駆逐艦は私達合わせて7人、潜水艦1人、巡洋艦1人、戦艦1人、空母1人、特殊艦1人、だったよ。特殊艦の人はまだ目が覚めてないの。その人が目覚め次第、輪形陣組んで動くって言ってたよ。アドミラル・ヴェルス…えっとこっちでの名前は、<常陸>だったかな。」

 

常陸。記憶に無い名前だ。もしかしてと<琴風>の記憶を探るが、やはり該当する艦は見当たらない。九九九艦隊計画戦艦の後継艦に同じ名前になる予定の艦が居たが計画は頓挫したはず…そう思ったヴィローネの脳裏に別の光景が現れる。

 

 

海を裂く巨大な艦首。左舷を向き、蛇が首をもたげるように仰角をかける世界最大の主砲。九九九艦隊計画の七号艦級、そしてその後継艦4隻の計画を()()()造られた巨艦。彼らはそれを<常陸>と呼んだ。そんな巨艦を、ヴィローネは同航しながら見ていた。

 

彼女は気づく。これは<琴風>の記憶ではない。ならこれは誰の…?その答えが自然に浮かぶ。

間違いない。()()()私だ。これは、()()の記憶。

 

 

 

「…島風改級駆逐艦三番艦、<()()>」

 

「なんて言ったのお姉ちゃん?」

 

「ねえ暮風、貴女は、太刀風級<暮風>と、<ヴィクティル>の記憶しかないの?」

 

「うんそうだよ?」

 

どうやら3つの記憶が混在するのは自分だけらしいと気づく。

なぜだろうか。確かにここに集結している艦の中で一番早く沈んだのは自分。その分他の世界にいたと言うのか。

 

思考に深く沈みそうになったとき。

 

「おーい!<ヴォールン>が目覚めたぞ!集まれ!」

 

 

出発の合図が響く。

 

 




はい、12隻の化け物の爆誕です。深海&超兵器涙目ですねこれ。
悩みましたが戦艦は仮称G号艦、空母は葛城級の二世代後の空母(予想)を元ネタにしてます。防空艦、駆逐艦については、外伝しか持ってないのでスペックが分からないため、護衛艦や大戦中艦を元にしてます。

戦艦常陸…アドミラル・ヴェルス、元ネタは仮称G号艦

空母伊吹…スヴィル、元ネタはヒテン級の後継

巡洋艦湧別…ヴォルフ、元ネタは須磨級CGおよびしらね級護衛艦(兵装)

駆逐艦…V級、元ネタは太刀風級DDG

駆逐艦…ヴィローネ、元ネタは島風級

駆逐艦…R級、元ネタは秋月級

特殊艦…ヴォールン、元ネタなし、完全オリ艦です。

なお基本的にスペックは元ネタに準拠してますが、一部大幅な改編がある艦も有ります。
質問、アドバイス、指摘、感想等は遠慮なくお寄せください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話  事務員(提督)の過去

やや長くなってしまいました。つまらない内容ですがお付き合いください。


「さて、鎮守府に来た訳だが、どうするんだ?」

 

鎮守府の正門前で長門が振り向いた。

 

「どう…する…とは?…はあ、疲れますね…」

 

「お前本当に軍人なのか?…先程お前は、提督になると言った。提督が必要なくとも、それを報告するため仕事をここでする必要があるとな。ここに、提督として入るのか、部外者として…いや、部外者ではないのか。一時的関係者として入るのか。」

 

「そうですね、私としては提督として入りたいのですが、まあそれは長門さん含めて艦娘のリンチもしくは襲撃に遭うのは目に見えてますし…。とはいえ一時的、というには少々長く居ることになりますね。ちなみに今、鎮守府の書類はどなたが?」

 

「私と妹、大淀がしているな。」

 

「では大淀さんの部下の事務員で。」

 

「は…?」

 

「ですからここに入るには肩書きが必要なのでしょう?じゃなければ、今確実に人間に敵意を抱く艦娘に襲撃されるから。まあ肩書きが提督だったら同じことですが。なら直接彼女達に害を為したわけでもなく、むしろ使われる立場の方がまだ襲撃を受けにくいのでは?そう思いまして。」

 

「変わらないと思うがな。それで良いんだな?言っておくが、それで命を喪っても私は無論、軍も何もできないぞ?」

 

「承知の上ですよ。麗号作戦よりは生存率は高そうです。しかし、久しぶりですね」

 

命を懸けるのは。そう言って神崎は笑った。

 

「そうか、では来い。」

 

こうして神崎は任務先に足を踏み入れた。当初の予定とは全く異なる肩書きで。

 

 

 

 

 

「あまり人の気配がしませんね。」

 

「それはそうだろう、ここに居るのは()じゃない。()()なんだからな。」

 

「ああ、私が言ってるのはそういうことじゃ無いですよ?貴女方だけでなく、動物全体引っ括めて、体温と言うか気配と言うか…ああ、気配がしっくり来ますね。そういうものを感じないと言ったのです。別に貴女方が人か兵器かUMAかそんな事は知ったことじゃ無いです。別に兵器だからと言って動物ではないとはなりませんし。」

 

「ふむ…確かにまあ他のところと比べると外に出ている者は少ないかもしれんな。」

 

「おや、スルーされるとは意外ですね。てっきり罵倒されるかと思ってました。」

 

「いや、そのように返されたのは初めてなのでな。ところで神崎よ。UMAとはなんだ?」

 

「あー…未確認生命体…河童とかツチノコみたいな物だと思ってください。」

 

「ふむ…ああ、ここだ?ここが一応執務棟だ。あっちにあるのが艦娘寮だな。」

 

「案内ありがとうございます。食堂は…自分が行くだけ無駄でしょうね。ぶっ殺されるのがオチでしょう。」

 

「だれも()()()は襲わないと思うがな?」

 

「そう言って馬鹿正直に受け入れてくれるとは思いませんよ。『"邪魔者"が来た。』そう思われるのが現実でしょうね。ま、事務員として頑張ってみますよ。今執務室には?」

 

「大淀が居る筈だ。ドア開けてそうそう殺されるとは思わないが、用心しろよ?あいつが一番前提督の被害を受けているからな。」

 

「私を心配しててよろしいのですか?ああ、そうでした。私は提督じゃなくて、"事務員"でしたね。では長門さん、案内ありがとうございました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。護衛と監視お疲れ様でした、と。艤装扱いの薙刀よりは、普通に売ってるナイフの方が携行に向いてますよ。後で本部に報告がてら甘味を贈るよう脅迫しておくので皆さんでどうぞ。」

 

そう言うと神崎は執務棟へ入っていった。

 

「気づいて居たのか…?それで普通に振る舞っただと…」

 

暫し呆然としていた長門だったが、やがて右手を上げて左右に振る。すると建物の影や植え込み、木の上や門の方から、艦娘が四人歩いてきた。天龍、龍田、川内、神通の四人だ。彼女たちは駅からずっとつけていて、長門の合図によって、提督を抹殺、深海棲艦に殺されたと報告する予定であった。

 

「どうしたんだ長門、連れてくるなんて。途中で殺るんじゃなかったのか?」

 

「脅されてでも居たのかしら?そういう風には見えなかったけれど?」

 

「事務員として雇ってくれだとさ。それに…お前達に気づいていた。」

 

「何だって?」

 

「あら、バレバレだったの?」

 

「のようだな。伝言がある。『護衛と監視お疲れ様でした。艤装として認識される薙刀よりは、市販の刃物の方が携行には向いている。後で本部に報告がてら甘味を送るよう脅迫しておくので皆さんでどうぞ。』だそうだ。」

 

「ふざけてんのか…?」

 

「甘味を送るよう…脅迫、ですか…?しかも本部…大本営を…今回の人は一体何者ですか?」

 

「ふむ…今の大本営のトップ、楠木大将がある部隊の生き残りなのは知っているか?」

 

「確か、艦娘と初めて接触した人だったかしら?ほぼ全滅した部隊の生き残りだったわよねえ?」

 

「そこの生き残りだったそうだ。」

 

「…嘘だろ…もしかしてあいつが…」

 

「初代吹雪が人間と交渉する際、他の初代艦娘と共に侵攻を防いだ怪物、だろうな。生身で深海棲艦とやりあった唯一の人類。そうは見えないが、嘘をつく理由が無いし、書類の経歴もそう書いてあった。」

 

「じゃあどうするの~?まさか提督として受け入れるの~?」

 

「いや、さっきも言ったが、大淀の部下として事務員として働くそうだ。」

 

「それで良いのですか?」

 

「…あとは…あいつ次第だな。」

 

 

 

 

 

 

「柄にもなくアドバイスしてしまいましたね…自分の命を狙う相手だと言うのに…まあ、でも、この程度の()は返しておいて良いでしょう。」

 

そう呟きながら、執務棟の中を執務室へ向かう。正面の部屋だ。言われなくとも分かる。()()()。そこに艦娘が、()()()()()と。

 

「なるほど、大淀さんだけですね。これは頑張らなくては。」

 

何時からか、神崎は艦娘の艤装の気配を感じることができるようになっていた。7年間、艤装の開発、改良、修理を行っていたからだろうか。先程の軽巡に気付いたのも、天龍が持つ刀の気配から、艤装の気配を手繰り寄せていた。

 

感じとるとは言え、そこまではっきりしたものではなく、普通に人間が居そうか居なさそうか、その程度の感覚と同じレベル。

 

「じゃあ、恩返しといきますか。───失礼します。大淀さん、いらっしゃいますか?」

 

執務室のドアを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

────10年前、東京湾

日本国自衛隊対不明生物対処部隊司令部。

数ヵ月前突如現れ、人類に攻撃をかけ、シーレーンを途絶させた、謎の生命体──通称"深海棲艦"──に対処するために急遽新設された部署。しかし…

 

数ヵ月に及ぶ消耗戦の結果、海上自衛隊、在日米軍の艦船はほぼすべてが撃沈され、その戦力を喪失。航空自衛隊、在日米空軍も似たような物だ。海上自衛隊の残存部隊と、陸上自衛隊の迎撃により、本土への上陸は許しては居なかったが、島嶼群は不明。

 

そして今、深海棲艦は東京湾へと襲いかかろうとしていた。東京には未だ内陸へ避難を完了していない市民が多い。そこで自衛隊は深海棲艦上陸遅延作戦、"麗号作戦"を発動。それは残存する戦力全てをかき集め、市民の避難の時間を稼ぐ、作戦と呼べるかどうか怪しいものであった。

しかし他に打つ手がない日本は、海上自衛隊護衛艦<こんごう><きりしま><せとぎり><まきなみ>潜水艦<じんりゅう><おやしお>などの海上戦力や、陸上自衛隊、航空自衛隊残存航空機全てを東京湾に配備。深海棲艦の襲撃に備えた。

 

さらに水際戦闘を行うべく、乗艦、乗機をなくした隊員達で部隊を編成。東京湾へ配備した。それが自衛隊特殊戦闘群。

 

 

そして当時、現海軍大将、楠木茂と神崎啓斗はその中でも随一の戦闘能力を誇る第二部隊の第一分隊に所属していた。

 

 

戦闘能力を誇る、と言っても、タ級と殴りあったり、姫を叩いたりするような化け物ではない。腕の良い狙撃手による超長距離狙撃、海岸近くの地形を利用した強襲からの接近戦によって、近海にいる駆逐級や軽巡を仕留める程度であった。

 

それでも、地道に戦果を上げ続けた結果、軽巡ツ級轟沈12、駆逐級轟沈132、重巡リ級撃破5、戦艦タ級撃破1という戦果を上げていた。なお、重巡や戦艦は湾に迷い込んだ所を狙撃でひたすらボコり続けた結果である。

 

「なあ神崎。」

 

「なんですか楠木君、今更泣き言言っても配置は変わりませんよ。」

 

「いや、今回は生きて帰れるかと思ってな。」

 

「生きて帰れるか、ではなく、生きて帰るんですよ、我々は。可能な限り生き残るために足掻くんですよ。戦果などその過程の副産物ですよ。」

 

「そこまで言っちゃうか…」

 

「ほらほら、戯れ言はこれくらいにして。いつやつらが来るかわからないですから…って噂をすればなんとやらですね。」

 

『アグレッサーよりイージス。目標捕捉。編成は姫3、戦艦以下多数だ!数が多すぎて数えきない!』

 

「だそうです。あんなところに殴り込めとかなに考えてるんでしょうね?」

 

「…そう言っていつも先陣きって突っ込むのは誰だ?」

 

「私ですね。」

 

「…何かなに言っても無駄な気がしてきた。」

 

「楽しいじゃないですか?」

 

「あれと近接戦闘やって楽しいって心の底から言ってるのはお前だけだぞ、この戦闘狂(バーサーカー)が。」

 

「そう言ってる割には君も狙撃手(スナイパー)にしては随分前に出てますよね?」

 

「お前のお守りしなきゃいけないからだろうが!」

 

「まあまあ、落ち着いて。行きましょうか。」

 

「誰のせいだと思ってんだ!…まあ、良いか。また生きて会おう。」

 

「当然でしょう。貴方も死なないでくださいよ。生きて会いましょう。」

 

 

 

2027年8月29日、麗号作戦は終結した。

 

生存者は2名。それ以外の隊員、約2万は国民のため、その身を散らせた。

 

この作戦は、深海棲艦出現以来、人類の起こした最大の作戦であると同時に、これからの長い戦いの始まりの合図でもあった。

 

 

 

 

この日、生き残った隊員は、深海棲艦への対抗の鍵となる、『艦娘』という存在と、史上初めて接触した。




提督が何か超人になりました。おかしいですね…最初はちょっと変な人にする予定だったのに…(汗)
ちなみに今は生身でドンパチ無理です、そんな体力残ってないです。

次はヴィローネサイドです。

感想質問アドバイス等大歓迎です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話  多重人(?)格

遅くなりました。(みてる人が居るかどうかわかりませんが…)ヴィローネ側です、漸く動き出します。


「では一応自己紹介としよう。主力艦だけでも知っておかないと今からの行動に支障をきたす。大型艦限定で向こうでの名前と所属、こちら側での名前を名乗ること。まずは俺からだな。向こうではアドミラル・ヴェルス級戦艦一番艦、アドミラル・ヴェルスと名乗っていた。帝国海軍所属だった。こちらでは<常陸>という名で呼ばれるようだ。主要目は変わらないな。あと、艦娘は女だとの事だが、俺は例外らしいな。」

 

そう言って、やや古びた軍服を着た青年──戦艦<常陸>の艦息──は笑った。背中の艤装に巨大な3連装砲塔を4基携えていた。

 

「次は私かしらね?私は向こうではスィルグレン級航空母艦、二番艦スヴィルという名前だったわ。元帝国海軍所属よ。こちらでは<伊吹>という名が付いているわ。主要目は同じく変わらないけれど、艦載機が旧式になってるものが有るわ。後で確認するけれど…」

 

次に<伊吹>と名乗った少女は至って普通の洋服を着ていた。右手には、そこそこ大きいボウガン、左手に巨大な飛行甲板を持っていた。

 

「次は…私、ですか…?私は…向こうではV級特務艦一番艦ヴォールンと名乗っていました。えっと所属は連邦海軍です…でした。こちらでの名前は試験艦<須磨>です。よろしくお願いします。」

 

そう言った彼女の背中の艤装には砲塔が──無かった。その代わり、本来砲塔が有るべき位置には板があった。

「おい、お前、兵装無いのか?」

 

「え…?いえ、ありますっ!ちょっと待っててください!──兵装システム、オールグリーン。問題なし。艤装<須磨>をシャットダウン。…完了。艤装<幻炎>を起動…完了。システムチェック、オールグリーン。戦闘に支障なし──これでどうです?」

 

そう聞いてきた彼女の背中には、先程まであった大きな板の付いた艤装はなく、代わりに噴進弾発射機と思われる箱形の兵装と、恐らくレールガンと思われる砲身の付いた砲塔が存在した。さらに艤装そのものの大きさも先程より小さい。

 

「V級特務艦二番艦、ヴァースフレイムです。こちらでは駆逐艦<幻炎>という名を持ちます。」

 

「待て、どういうことだ?」

 

「えっと、何でかは知らないんですけど、私、V級の艤装を全部使えるらしいんです。」

 

「V級ってことは…単艦で艦隊規模ってことよね……」

 

「他に──めんどくさいので出しませんけど──V級三番艦ヴェイルキャノン、同四番艦ヴィクターホルンの艤装が使えます。それぞれこちらでは戦艦<三河>、巡洋戦艦<劔>という名前を持ちます。」

 

連邦海軍所属、V級特務艦。V級と一括りにされてはいるが、同型艦ではない。超兵器に対抗するべく、生み出された戦闘艦群──特化型戦闘艦、そのプロトタイプとして生み出された軍艦である。その内訳は駆逐艦1、巡洋戦艦1、戦艦1、試験艦1。対超兵器兵器であるため個艦戦闘能力は異様に高い。これらの4隻が居れば大抵の超兵器に対抗できる、つまり大抵の敵に対処できる。

 

「本来なら一人の艦娘に1つの艤装の筈なんだが…俺が男であるように例外があると見るべきなのか。他に複数の艤装を使える、あるいは二つ以上の名前を持つ者は居るか?居たら手を挙げろ。」

 

常陸の発言に反応し、手をあげたのは二人。ヴィローネこと琴風と──R級防空駆逐艦リークこと秋月改級防空駆逐艦霧だった。

 

「ふむ…二人か。出せる艤装と艦級を教えろ。戦力の把握は急務だからな。」

 

「じゃあまずは私から。私はV級駆逐艦三番艦ヴィローネ、出せる艤装は、<太刀風>級防空艦三番艦<琴風>と島風改級駆逐艦三番艦<琴風>の二つです。ただ、<太刀風>級の艤装にしてはいくつかおかしい点が有るので、融合している可能性もあります。」

 

「そこら辺は後で聞くとしよう。次は?」

 

「私だな。私はR級防空駆逐艦Ⅲ型23番艦リーク。出せる艤装は、<鞍馬>級装甲巡洋艦二番艦<生駒>と<穂高>級巡洋戦艦一番艦<穂高>の2隻だ。とくに気になったことは無いな。」

 

「巡戦の艤装だと?」

 

「ああ、ただこれは私じゃ説明が難しい。詳しく説明してもらうとする。──艤装<霧>のシステムをシャットダウン。艤装<生駒>のシステムを起動。あとは頼んだ。──艤装<霧>のシャットダウンを確認。艤装<生駒>全システムチェック──完了。オールグリーン。それで…私になにかご用ですか?」

 

そう聞いてきた彼女の口調は、先程と全く異なっていた。

「ああ、お前の名前を教えてくれ。」

 

「私はⅤ号艦級装甲巡洋艦ヴァンガード。こちらでは<生駒>という名前を持ちます。」

 

「ふむ。じゃあさっき<霧>が言っていたが、説明をしてもらおう。」

 

「わかりました。ではまずこの艦に存在する意識について教えます。現在、私の中には、"私"の他に、ⅩⅠ号艦級巡洋戦艦一番艦イルミナティこと<穂高>、そしてこの体の基本人格たる<霧>の3人の艦娘の意識が存在しています。なぜなのかは不明です。また、こうやって表面に出ている意識によって艤装が変わります。原因については大体の予想はついてますが、話がかなり長くなるので割愛します。」

 

「意識か…じゃあそっちのええと…」

 

「V級駆逐艦ヴィローネです。私は霧のように意識の入れ替わりはありません。」

 

「艤装は両方とも駆逐艦だったか?艦級から考えるに防空艦と重雷装艦か?使い分けは容易そうだな。了解した。ではこれより輪形陣を組む。先頭は伊310、そのあと、生駒を中心に、太刀風級3隻で前衛陣を形成。次に湧別を先頭に、俺、伊吹、須磨を中心とした輪形陣を組む。間隔は大きくなくていい。あと伊吹、警戒管制機(AWACS)空中哨戒機(CAP)を『クローバー』で出せ。範囲は前衛陣を含み、中心はお前で。では各自行動に移れ!」

 

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 




以上です。中々進みませんね…次は鎮守府side、遠征部隊のお話です。
艤装ですが、アルペジオ型は一部の艦娘のみ使用可能ということになるかと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話  化け物じみたドロップ艦

受験終わってほっとしている骸龍です。


ようやくヴィローネサイドとお話が繋がってきます。ヴィローネ達転生組と神崎提督(事務員)の邂逅、その始まりです。


「では旗艦は天龍さん、編成艦は、吹雪さん、睦月さん、如月さん、白雪さん、磯風さんということでよろしいですね?それでは第四艦隊の皆さん、よろしくお願いしますね。わかってるとは思いますが…」

 

「分かってるよ!敵に見つかったときは物資を破棄すりゃ良いんだろ?」

 

「大丈夫みたいですね。物資は最悪私が上にきょうh……交渉してどうにかしますから。あまり使いたくはないですが、贅沢も言ってられません。」

 

「今脅迫って言わなかったか?!」

 

「まさか。私はただ単なる事務員ですよ、そんなことできるわけないじゃないですか。嫌ですね天龍さん。」

 

「…艤装の気配察知できる時点で普通の人間じゃねえよ…じゃあ行ってくるぞ。」

 

「生きて会えることを祈っておりますよ。」

 

「フラグ建ててんじゃねえ!」

 

突っ込みの声と共に出撃ドックから出ていく遠征部隊の面々。神崎が事務員として着任してから1ヶ月。追い出されることはなく(殺されそうになることはあった)平穏な日々を過ごしていた。

 

遠征部隊を見送り、

 

「では大淀さんに書類を出しにいきますか。いや、その前に間宮さんに羊羹をお願いしなくては。」

 

最近は食堂で無害アピールを続けていたが、未だに駆逐艦は寄り付かない。さっき見送ったときも、駆逐艦の娘は震えていた。

 

ちなみに食堂のシステムは基本今まで通りで、追加メニューを出せるように材料を購入していた。神崎の私財で。

 

 

 

「間宮さんいらっしゃいます?」

 

「はい!あ、神崎さん。いつものですか?」

 

「ええ、いつも通り6本。御忙しいところすみませんが。お金は足りてますか?」

 

「はい、十分です。大丈夫ですよ。気長に行きましょう。」

 

「そうですね、ありがとうございます。それでは。」

 

 

食堂を辞したその足で執務室へと向かう。

 

「失礼します。大淀さん、第四艦隊は予定通りに抜錨しました。書類はこちらになります。()()()南東方面偵察隊に依りますと、目標地点付近で敵艦隊の探知情報があるそうなので、万一に備え救援艦隊の編成と出撃書類も持ってきました。」

 

「情報はありがたいのですが、毎度ながらなぜ海軍ではなく()()()の情報が入るのでしょうか?」

 

「部下が横流ししてくれました。」

 

「それって情報漏洩になりませんか?」

 

「大将から認可貰ってますし大丈夫じゃないですかね。おっと、失礼。」

 

そう断ると神崎はポケットから小型通信機を取り出した。

 

「こちらドッグハウス、何事だ?」

 

『こちらシェパード。緊急事案発生、状況は紫、ただ戦況は青だ。』

 

「紫なのに青なんですか?!場所は?」

 

『南東方面遠征目標地点の近くだな。お前んとこの遠征部隊が一撃喰らった直後に現れたようだな。救援要請出たから偵察機回したら居た。偵察機の情報見た限りじゃあ紫とは思えん化け物だぞありゃあ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()4()()()()()だ。』

 

「何かの間違いじゃないですか?そんなこと出来るの大本営の直属艦隊ぐらいのものだと思ってましたけど。」

 

『まあ詳しいことはお宅の嬢ちゃんに聞いてくれ。上からじゃ見えんものも有るだろうしな。』

 

「わかりました。ではまた。……どうしたんですか大淀さん?」

 

通信を切った神崎は、大淀の怪訝そうな眼差しに気付いた。

 

「紫とか青ってなんですか?それに今のはどこから…?」

 

()()()南東方面偵察隊からです。うちの遠征部隊が有力な敵艦隊に包囲待ち伏せされたところを、ドロップしたばかりの艦娘の()()に助けられたと。」

 

状況・紫とは、ドロップした艦娘が敵艦隊と交戦状態にあることを、戦況・青とは、味方側つまり艦娘が戦闘で優位にあることを示す符号で、航空軍で通信符号として使われている。

 

つまり先程の通信は、遠征隊の救援に入った艦娘は()()()()()()()()()()()()()()()()おり、さらに字面上では圧倒的に劣勢のはずが、()()()()()()()()()()()、という信じがたい状況を示していた。

「ドロップしたばかりなのに艦隊を組んでいるんですか?始めて聞きましたけど…」

 

通常ドロップしたばかりの艦娘は単艦である。

 

「私も聞いた事はないですね。しかも、戦艦3、空母2の複数艦隊を相手に4隻と数十機で優勢だそうです。ドロップした艦娘といえば()()()()等が有名ですが、超過艤装を用いただけで、それほどの戦力差が詰められるとは考えにくいですね。」

 

超過艤装とは、その艦娘の元となった軍艦そのままの艤装を指す。通常建造された艦は所持していないが、ドロップ艦は稀にこの機能を有する事がある。

 

「だとすればそのドロップした艦娘の地力という事ですか?でもドロップした艦娘って練度は1だと聞いていますが…。」

 

「今までそうだったからと言って、今回もそうだと結論付けるのは些か早計ですね。それに今回は艦隊を組んでいます。もし最初から組んでいたとすれば、元から練度はそこそこ高かったと見るべきです。とはいえ…」

 

「それでも先程の戦況を考えると練度が()()()()、ですか?」

 

「はい。となると、このドロップ艦群は、最初からかなりの高練度で、()()()()()現れた、と見るべきだと思います。前例は無いですが…」

 

「今回が初めてなら不思議では無いですね。」

 

「はい。まああれほどの戦力差を覆せるような練度って一体なんだ、とは思いますが。」

 

そう言って神崎は苦笑した。

 

「ドロップ艦は発見した鎮守府の所属。これが原則、ですが、今回の戦闘詳報を出せば…」

 

「欲しがる鎮守府は多いでしょう。初めから高練度なら育成する手間も省けて、戦力を揃える事ができます。幸いにして発見した鎮守府は不祥事後の再建途中。ドロップした艦娘を編入するには不都合も多いだろうから、我々が引き取ろう。そう考える鎮守府(馬 鹿 共)は多いでしょうねえ。ま、」

 

そんな事させませんけどね。と呟いた。

 

「でもさっき言った通り不祥事を盾にされたらどうするんです?」

 

「私自身はあまり好きではないですが、権力を使うべきでしょうね。幸いにしてコネはいくつもありますし、私に与えられた権力も一海軍士官に与えるには過剰な権力です。それに、不祥事と言いますが、それを看過したのは彼等自身。あれを提督につけるなと忠告したものは多いですが、いずれも無視されましたからねえ…正しかったのは私でした。そんな提督達(馬 鹿 共)に私達のやることに口出ししてほしくはありません。」

 

微笑んでいるが目が明らかに笑っていない神崎を見た、

 

「…神崎さんって怒ったらすごく恐い系の人だったりします…?」

 

そんな大淀の呟きには、

 

「さあ、どうでしょう?」

 

ただ微笑んで肩をすくめただけだった。




はい、こんな感じです。少々大淀さんが打ち解けすぎですかね…?
次はヴィローネ達から見たところです。時間軸的には同じですが。

いつも通り、感想、質問、要望など受け付けております。遠慮なくどうぞ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話  初戦闘と常陸の思考

すいません、接触まで行けてないです。怪物無双は次話にて…



いくつか見覚えない単語がありますが、固有名称なので後で解説が来ます。多分…


 特に何もない海上を、ただ南西へと向かう。

 

「暇だね~」

 

と暮風が呟く。

 

「そうだね…」

 

琴風が応じる。すると

 

「敵でも現れて欲しいってか?」

 

音風が茶化すように言った。

 

「敵というとあの魚みたいなのですか?なんでしたっけ…ああ、深海棲艦とかいう。」

 

妖精さんから聞いたらしい生駒が言った。外見は<霧>のままなので外見が口調と合っていない。

 

「魚みたいなのは一番弱い部類らしいですね。駆逐イ級と言うそうです。」

 

「もっと骨がある奴出てこねえかなあ…」

 

「そういうこと言ってると…」

 

『ホークアイ2よりランス各艦、右舷前方、方位0-5-4に敵艦隊。距離20、こちらに向かってくる。進路方向は2-2-3。速力21。ロングボウからの報告では駆逐3、乙巡1。これを殲滅せよ。』

 

「ほら、来ちゃった。全く簡単に殲滅しろなんて。」

 

「来たものは仕方ありません。基本的に有視界戦闘との事なので、水平線上に現れ次第戦闘を開始します。琴風さんは雷撃、音風さんと暮風さんは砲撃準備を。琴風さんは準備完了次第発射で。」

 

「分かった。あと呼び捨てで構わないぞ。兵は拙速を尊ぶ。」

 

「了解、では琴風、よろしくお願いします。」

「わかりました。艤装<太刀風>級<琴風>をシャットダウン、艤装<島風>改級<琴風>を起動──システムチェック、オールグリーン。右雷撃戦、魚雷発射準備──完了。発射!」

 

生駒の声に、艤装を変更し、重雷装型の<島風>改級の艤装を身に纏い、あっさりと魚雷を発射。放たれたのは九七式酸素魚雷改が4発。本来放てる全力のおよそ四分の一程度。誘導型とはいえかなり初期段階のパッシヴであり、油断はできない。

 

『ホークアイ2より、ランス2。命中雷数3、残存艦は駆逐2だ。』

 

「やはり旧式ではこんな物ですか…せめて四式が有れば…」

 

「仕方がありません。兵装の旧式化はほぼ全員です。ミサイルも搭載できる艦は限られていますから…あとは私達の出番ですよ、暮風、音風。恐らくオーバーキルですが、人型での経験を積むと考えてください。」

 

『ホークアイ2よりランス各艦、目標は間もなく水平線。』

 

生駒とAWACSの報告に、音風と暮風は155㎜単装砲2基を、琴風は12.7㎝連装砲3基を、それぞれ構える。それを見てから生駒も自身の主兵装──30㎝3連装3基を構え、艤装に付属している、12.7㎝連装砲6基を敵の方位へ向ける。

 

「ランス全艦、撃て!」

 

十数秒後、水平線付近の敵艦は無数の水柱に包まれた。それらが崩れ落ちたとき、敵の姿はどこにもなかった。

 

『ホークアイ2よりランス、目標消滅。撃沈確認。』

 

「ランス・リーダーよりホークアイ、了解。──どうでした?」

 

「ちょっとやりにくいけど出来ないことはないかなあ。」

 

「私は大丈夫そうでした。」

 

「私もだ。そう言う生駒は?」

 

「私もそこまで難しくはなかったですね。ということは皆この姿での戦闘に問題はなさそうですね。」

 

と、そこまで言ったところで上空から爆音が響く。機影は二つ。IFFに反応があるのでCAPに出ていた陣風の二機編隊だろう。

 

「相変わらず速いねえ…」

 

「まあそれが航空機ですから。」

 

『こちらアーセナル、ランス・リーダー、聞こえるか?』

 

「はい、こちらランス・リーダー、何かありましたか?」

 

『劔が…艤装を<劔>に変えた須磨が、通信量の著しい増加を確認した。いくつか傍受に成功したがこちらでは解読不能だった。旧式暗号のようだからそっちで解読してみてくれ。』

 

「了解…ってこれ旧式も旧式じゃないですか?!ちょっと待っててください……ああ、はいはいえ~と……解けました。なんでしょうね、いくつか見覚えのない符号が混じってますけど、多分うちじゃないどっかの部隊を待ち伏せする内容ですね。距離はそこまで遠く無さそうです。」

 

『了解した。一応緊急発進待機も準備させておくが、何かあったら一番槍はお前らだからな。頼んだぞ。』

 

「別に構いません。あ、ちなみに、これ作戦開始時刻まであと10分です。」

 

『了解した。』

 

 

 

 

かなり遠く、水平線の手前程の所で大きな水柱が上がるのが見えた。

 

「ソード3より、敵潜水艦1隻の撃沈を確認。」

 

「また殺ったか。しかし…敵の待ち伏せ作戦か。護衛つけてホークアイ1を前方に突出させるか?」

 

「それは止めておいた方が良いわね。敵の技術レベルがわからない以上、可能な限りリスクは避けるべきよ。今のままでも十分な監視体勢だと思うわ。それに作戦目標は私達でない可能性が高い。なら手出しは無用。まあ大洋からの報告からすれば技術もそこまで進んでるわけじゃなさそうね。潜水艦は通常動力で騒音も大きい。S級の相手ではないわ。」

 

「ああ、妖精さんが言ってたな、艦娘、深海の兵装は第二次大戦基準って話か。俺達はそれを飛び越えてる訳だが。」

 

「そうね…この世界ならば私達だけでも大戦力ね…。」

 

「人類に見つかったら確実に駒扱いだがな。どうする?」

 

「人間の(道具)に甘んじるか、敢えて合流しないかってことでしょう?私達は最悪海水から燃料を作れば良いけれど、駆逐艦はどうにもならないわ。航空機の燃料もね。でもいつでも捨てられる駒扱いされるのだけは嫌ね。私達だけならともかく…」

 

「駆逐艦の娘にはまともな暮らしをさせてやりたいな。折角思考を得て、身体も持ったんだ。これを活用しない術はない。駆逐艦の娘達なら俺達だけで護れる。超兵器が居なければだが。我等は感情を持たぬ兵器(道具)だ、だが、簡単に捨てられる駒(単なる捨て駒)ではない。」

 

「我等は国を護る盾にして仇敵を貫く槍、確かに頭を演じる(指揮を執る)資格はないけれど簡単に切り離される尻尾(単なる捨て駒)でもない。そうされるならこちらから見捨てる。それで良いのね?」

 

「…とはいえいつかは人類の支援は必要になるがな。今のうちに恩を売っておきたい。」

 

「さっきの待ち伏せ潰す?」

 

「…それとなく援護しつつ、危うくなったら前衛と緊急発進部隊(スクランブル)を出す。これぐらいでいいだろう。」

 

「積極的な救助は?」

 

「…止めておきたいな。確かに積極的に阻止できれば最善だ、でも、なぜ積極的に動けたのか追追及されると、な。能力は隠しておいた方が良い。いつ敵になるかわからない以上、こちらの能力を必要以上に知られたくはない。」

 

「ああ、そうね…それは確かに。」

 

「とは言え、この星に居る艦娘をただ見殺しにするのも気が引ける。おかしいな、ただの兵器としては感情的思考は避けるべきなのに。」

 

そう言って苦笑する常陸。

 

「それは感情的思考というより帝国軍人的思考、というべきね。貴方の艦長と同じ思考ではなくて?」

 

「そうかもしれないな。あいつは軍人にしては優しすぎるとは思ったんだが。」

 

「今貴方も同じ思考を持っているのよ、諦めなさい。」

 

「えっと常陸さん。」

 

「呼び捨てで良いぞ、須磨。どうした。」

 

「救援要請の平文が出ています。先程拾った暗号文の座標とほぼ一致しています。発信者は駆逐艦<如月>です。睦月型、旧式ですね。不味いかもしれません。暗号文の内容では、わざといたぶって救援を求めさせ、それを数個艦隊で撃破するのが目的でしたから。」

 

「戦艦3、空母3を含む機動部隊と打撃部隊か。微妙なところだが…やらせてみよう。伊吹、緊急発進部隊(スクランブル)を出せ、全部だ。アーセナルよりランス・リーダー。」

 

『こちらランス・リーダー。どうしました?』

 

「例の待ち伏せだ。援護する。座標はさっき送ったところだ。」

 

『了解。援護は?』

 

「蒼電を全部出す。じゃよろしく。」

 

 

 

 

 

「では私達は艦娘艦隊の援護に向かいます。ランス全艦、最大戦速!」




次は戦闘(という名の蹂躙)になるはずです…なので次も引き続きヴィローネサイドです。


常陸さんと伊吹さんの議論が思ったより長くなりました…最初は軽く触れるだけのはずだったのに…

質問、助言等受付中です(^-^)/


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話  戦闘

はい。なんとかたどり着きました。まだまだ全力じゃあないですね…
戦闘描写上手くなりたい…

ではどうぞ!




「というわけで、暴れろとの指示ですから、盛大に行きましょう。琴風、戦闘中に艤装を変更してください。<太刀風>級から<島風>改級に。私はこのままだと火力が足りないのと、意識まで切り替わるので、今変えます。艤装<生駒>をシャットダウン、艤装<穂高>を起動──完了、システムチェック。オールグリーン、戦闘に支障なし。では行こうか。敵は空母を複数含むとの事だ、蒼電が出るがこちらも対空戦の用意はすべきだ。琴風は相手の様子を見て切り替えろ。その場合、私と琴風だけで敵艦隊を潰す。音風と暮風は対空を担え。」

 

「「「了解。」」」

 

指示のあった地点へ、穂高、琴風、暮風、音風の単縦陣で全速で突撃する。その上空を16機の航空機が編隊を組み、追い抜いていく。

 

五式局地戦闘機・改一型<蒼電>、という名を持つその機体は、史実に存在しこの世界にも存在する局地戦闘機<震電>より一回り大きな機体に初期のジェットエンジンを搭載した、この世界では化け物の部類に入る。本来は艦隊の防空に当たるが、今回の出撃は、翼下に4本の赤外線対空誘導弾を搭載し、機首に30㎜機関砲を4基積んだこの機体がどれだけの戦力となりうるかの試験でもあった。

 

「相変わらず航空機って速いよねえ…」

 

「もうすぐで敵艦隊の予想展開点だ、全艦立体捜索レーダー作動。対空目標は脅威度の大きさ、海上目標は見つけ次第撃て。破壊を撒き散らすぞ。」

 

「一言多いよ…」

 

好戦的な穂高の発破にぼやきつつ、戦闘を開始すべく、レーダーを作動させる暮風。と次の瞬間、

 

「っ!おいおい空母3にしては多すぎるだろう!対空戦闘準備、戦術システム起動!」

 

「たぶん全力で出撃させてますね。戦術としては一点集中はアリです。」

 

「直衛ぐらい残しとけってんだ畜生!全火器自由!全力射撃!」

 

暮風と音風が作る対空兵器の網の下を、琴風と穂高が駆け抜ける。目指すは空母。

 

「艤装を切り替えます!」

 

先程と違い、一瞬で艤装を入れ換えると、

 

「魚雷発射始め!主砲目に入る目標に叩き込んでください!」

 

魚雷を打ち出すと同時に12.7㎝連装砲が連続して砲声を上げる。さらに4基設置された40㎜4連装機関砲も目につく目標すべてに砲弾を雨霰と叩きつける。空母の脇を駆け抜けた数秒後に、水柱が上がる。相次いで2発が命中し、大破。さらに残りの魚雷は後方の戦艦群へ向かい、3隻全てに命中する。1発ずつではあるが、機動力は奪われる。

 

「魚雷残弾ゼロ!艤装を切り替えます!」

 

再び一瞬で艤装を入れ換え、155㎜単装砲が唸る。40㎜単装機関砲(CIWS)も空へと砲弾を送り込み続ける。

 

「蒼電は?」

 

「艦娘の援護に動いてる!半分来るらしいから対艦に切り替えて、元を絶て!」

 

「空母だね?全砲門目標敵空母!」

 

さらに音風と暮風が主砲を用いて空母の頭の飾りを狙う。その間に穂高は戦艦の列に突っ込んでいく。むろん敵の艦載機が妨害に入るが、蒼電が遥か高空より襲いかかる。というより襲いかかる前に数個編隊はAAMで殲滅されていたりする。

 

「蒼電では些かオーバーキルだな。陣風でも充分対抗できそうだ。」

 

戦艦群への突貫を続行しながらも、上空の戦いを分析している穂高。その主砲は敵を睨み、発射準備は整っている。常陸に負けるとはいえ、40㎝10門の火力は馬鹿にならない。目を前に戻し、敵戦艦を見ると、口を歪めて呟く。

 

「さあ、パーティーの時間だ、準備は良いか?死ぬ準備は。」

 

「…なあ、やっぱり艦娘の性格って艦長の性格に因るものなのか?完全に戦闘狂(バトルジャンキー)だ。」

 

いつの間にか真横に滑り込んでいた音風が呟く。<穂高>の元となった巡洋戦艦イルミナティの艦長は、腕は良いのだが非常に好戦的なことで有名であった。戦隊司令官は、彼の制御に頭を悩ましたらしい。

 

「案外それはあるかもね~」

 

そう呑気そうに良いながら、主砲を敵空母に向けながら機関砲は上空に向けるという器用な真似をしているのは暮風。気付けば空母のうち2隻の姿は既に無く、1隻も大きく体勢を崩していた。その最後の1隻の周囲を回るように琴風が高速で航行しつつひたすら155㎜砲弾を叩きつけ続けている。

 

「戦艦もとっととケリをつける。音風、暮風は艦娘の所に。有象無象を近寄らせるな。あと…」

 

そう言って穂高は一瞬顔を空に向けると、

 

()()は無視して構わない。攻撃をかけてきたら落とせ。」

 

「ああ、()()な。了解した。では先に行っているぞ。」

 

爆発音が響き、空母の最後の1隻が沈んでいくのが見えた。それを見て穂高が笑った。

 

「さあ、殺される準備は出来てるな?行くぜ!」

 

そのまま戦艦に殴りかかった。

 

 

 

一方、近接戦闘を開始した穂高を見ながら、暮風と音風は、琴風と合流し、艦娘の砲へ向かう。幸いなことに大破した艦は居るが、沈没艦は居ないようだ。

 

「お前ら…」

 

声を掛けてきたのは、自分たちと背丈がほぼ同じくらいの艦娘。艦種はなんだろうと考えながら、挨拶をする。

 

「初めまして、帝国海軍<太刀風>級防空駆逐艦三番艦の琴風です。そちらの所属は?」

 

「日本皇国海軍、横須賀第三鎮守府、第四艦隊旗艦の軽巡洋艦天龍だ。お前駆逐艦だったのか…」

 

「ええ、まあ、防空艦で巡洋艦と駆逐艦を区別する意味は無くなりましたけど、書類上はそうなってます。」

 

「防空駆逐艦3人だけであの艦隊を突破したのか?!」

 

「いえもう一人居ますよ。巡洋戦艦が。」

 

戦闘狂(穂高)がね、と心のなかで呟く。実際人の身体を得たからと、深海の戦艦に殴りかかっているところを見ていた琴風としては、それ以外に表現のしようがなかった。

 

「で、どこの鎮守府なんだ?巡洋戦艦を含むとはいえ、あの艦隊をわずか4隻で突破するなんて、かなり高練度だよな?」

 

「いえ、我々はその"鎮守府"というところには所属していませんよ?現在は臨時合同艦隊旗艦、戦艦常陸の指揮で動いています。と言っても海の上にこの身体を持って生まれたのも半日ほど前ですが…」

 

「ドロップ艦なのか?!」

 

「ええ、その言葉の意味は分かりませんが、多分。陸地か同胞を求め、航行している最中に、駆逐艦<如月>名義での電文を受信したのでこちらに急行しました。」

 

「そうか…ならお礼と言ってはなんだが、俺の所属する鎮守府に来ないか?」

 

「良いのですか?我々の艦隊は12隻居ますけど…」

 

「そんなに居るのか…いや、多分大丈夫だと思う。」

 

「良いですか?では改めてお願いします。」

 

「おう、纏まったか?」

 

「あ、穂高、行って良いって。」

 

「そりゃあ良かった。ああ、初めまして、前衛艦隊の旗艦を勤めている巡洋戦艦穂高だ。よろしくな。」

 

「ああ、俺は軽巡洋艦天龍だ。よろしく。」

 

「しかし、お前ら、何しにここまで来たんだ?あの量の敵艦隊がいるという予想あるいは警告があった上で来たのか?」

 

「遠征任務だ。この敵の量は予想していない。」

 

「了解した。ではしばらくここで主隊が来るのを待とう。暮風、音風、そこの駆逐艦の装備を見てやれ。場合によっては曳航を行うが…」

 

「わかった。」

 

と、取り敢えず合流を了承したものの、天龍はこのドロップ艦達について、思考を深めていた。最初こそ、突然の危機から救ってくれたと思っていたのだが、艦名をどのひとつとして聞いたことがない艦名であることが不信感を募らせていた。またその身体についても疑問を抱いていた。

 

基本的に艦娘の身体の大きさは、縮尺は異なるが、大体軍艦時代の艦体の大きさによる。たとえば戦艦は、大和型が一番背が高い。次いで長門型、伊勢型、扶桑型と続くのだが目の前の<穂高>と名乗る巡戦は、長門よりやや大きい。さらに、背中の艤装は連装砲5基という配置。また本来、日本の艦娘には巡戦は存在しないはずなのだ。

 

そして、最初に自分たちに声を掛けてきたのは艦娘は、防空駆逐艦と言ったが、日本の防空駆逐艦娘は全て"月"で終わる名前を持つ。しかし彼女等は"風"で終わっていた。兵装も、四角い箱状の物と、小さい魚雷発射管、単装砲2基に見慣れない機関砲と謎ばかり。

 

取り敢えず助かりはしたが、警戒は必要だと考えていた。

 

 

 

 

「では前衛に天龍さんと、睦月さん、如月さんを編入し、後は主隊に編入するということで良いですね?」

 

主隊と無事に合流した天龍たち。旗艦が男であることに驚いたが、まだそれは軽い方であった。

先程、声を掛けてきた<穂高>が背に背負う艤装が光に包まれて変わったかと思うと、口調まで変わったことに天龍は驚いた。

 

「あ、ああ。何かすることはあるのか?」

 

「いえ、一応の警戒ぐらいですね。大抵の敵は目視する前に探知して迎撃するので、戦闘も多くはないはずです。」

 

 

こうして横須賀第三鎮守府第四艦隊は、帝国・連邦合同艦隊と出会った。この艦隊が後に、鎮守府に嵐を呼ぶことを、天龍はまだ知らない。




はい。合流です。
なお文中の"アレ"とは航空軍の高高度偵察機の事です。見つけてました。

次は鎮守府で、視点はヴィローネ側になります。
穂高は、八八艦隊の天城型もしくは紀伊型を想像してください。

感想、質問お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話  接触

遅くなりました。ファーストコンタクトです。


「こんなもんか?」

 

音風の目の前には155㎜砲弾を数十発叩き込まれて瀕死体の軽巡がいた。駆逐?琴風に12.7㎝砲弾を山のように叩き込まれるか、生駒の30㎝砲弾を喰らって文字通り消滅している。大型艦は、まだ視界に入らぬ内に空中哨戒機に見つかり、対艦誘導弾か魚雷を喰らって沈められている。

 

というわけで戦闘訓練を兼ねて中小型艦のみ視界内に入っていた。

 

「な、なあ、さっきから小型艦が押し寄せる割りに大型艦が居ないのは何でだ?」

 

「来る前に潰してるからです。」

 

天龍の疑問ももっともだろう。

 

 

 

 

戦闘をこなしながら航行すること数時間、彼らは横須賀第三鎮守府正面海域に到着した。

 

「ここの司令官を常陸が気に入れば良いんだけど…天龍、ここの司令官ってどんな人?」

 

「人間の司令官は居ないぞ?」

 

「え?でも鎮守府って人間の提督が指揮執ってるんじゃないの?」

 

「うちは少々訳アリでな。」

 

「ってことは今は…」

 

「一応艦娘の長門が司令官だな。」

 

「その人って下手打つ人?」

 

「うん?」

 

暮風の問いに疑問形の返事をした天龍。

 

「ランス・ツーより全艦。水中に潜水艦の反応を探知。音紋データに記録ありません。数4。距離5000、なおも接近中。」

 

『アーセナルよりランス・ツー。既に探知済、マインより攻撃許可の要請。至急対象の敵味方を調べろ。』

 

「との事ですけど天龍さん、下のはお仲間です?」

 

「…いや、わからない。」

 

「ランス・ツーよりアーセナル、敵味方は不明。訓練魚雷による警告の実施を進言します。」

 

『アーセナル了解。マインへ、訓練魚雷発射。』

 

マイン──艦隊前方海中にて航行、警戒に当たっていた伊310──が、有線誘導の訓練用魚雷を4発発射。艦隊周囲に存在する音源──横須賀第三鎮守府所属の潜水艦群──へ向ける。潜水艦は慌てて舵を切り、速度を上げるが、誘導魚雷なのでそのまま追尾。命中したところで、大量の水溶性塗料を散布。ついでにソナーのピンを放つと同時に水中スピーカーから浮上、投降を呼び掛けてみた。

 

「浮上してくるかな?」

 

「攻撃したところで、返り討ちに出来るんですがね。というよりもう少し歓迎ムードにはしてくれないんですかね?」

 

などと音風と琴風が話している横で、

 

「天龍さん、下手って言うのは、我々に敵対しようとすることですよ。何も敵対行動を取らなくても、潜航したまま接近しようっていうのは準戦闘行為なので。今回は天龍さん達がいるから警告になりましたけど、いなかったら沈めてました。まあ、天龍さん達が居なければそもそも来ることがないんですが。」

 

「…味方かも知れないとは思わないのかよ?」

 

「潜航しながら接近してくる味方とか不気味すぎます。というよりこの世界だとこちらを見つけていながら浮上しない時点で敵だと思います。」

 

暮風が珍しく、敬語で正論を言った。

 

「ああ、浮上してきたな。艦娘か。おい天龍。」

 

「なんだ?」

 

「コレは味方か?敵か?」

 

「味方だ。」

 

「ランス・スリーよりアーセナル、味方らしい。」

 

『了解した。アーセナルより全艦、これより横須賀第三鎮守府に入港する。無いとは思うが自分の身は自分で守れ。全艦準戦闘態勢。』

 

一応港に着いたというのに、先程より警戒レベルが一段階上がった常陸達。天龍の誘導により、入港、上陸を果たし、取り敢えず艤装を仕舞ったところで、一人の艦娘と一人の人間の男が近付いてきた。

 

「初めまして。横須賀第三鎮守府提督代理の戦艦長門だ。」

 

「同じく初めまして。同鎮守府所属の事務員、神崎啓斗です。この度はこの鎮守府所属の艦娘を助けていただきありがとうございました。また先程の無礼も謝らせていただきたいのですが。」

 

「初めまして、一応この艦隊の旗艦を引き受けている、戦艦常陸だ。さっきのアレについては…まあ、対潜訓練になったということでかまわない。」

 

実際、他の艦娘とお喋りもせず、単独で突出し、黙々と警戒任務をこなしていた伊310にはいい気晴らしにはなっただろう、と常陸は思う。

 

 

 

 

「で、神崎さん、それから長門さんか、ここの鎮守府は一体何があった?少々雰囲気が物々しいが。」

 

 

早期警戒管制機は既に着艦させていたが、代わりに到着前に高高度周回戦闘偵察機を上げていた。伊吹には1機しか搭載されていない虎の子だが丸一日滞空し続けられる高性能偵察機である。

 

 

その機体の隊内秘匿暗号無線によると、鎮守府周辺になぜか戦車が、それに対応してか、門付近の艦娘は艤装を展開させていた。

 

「人間に襲われてでもいるのか?なら俺たちも応援に入るが。」

 

応援なんてものじゃない。伊吹が攻撃機出して燃料気化爆弾(FAE)集束爆弾(クラスター)落として終わりである。戦闘ではなく蹂躙。

 

「いいえ、彼らはこちらを警戒しているだけですから、気にしないでください。良ければこの鎮守府についてお話させていただきたいのですが。」

 

「そうか、ちょうどいいな。聞かせてもらおう。伊吹、所属機の半数を出して警戒に当たらせろ。須磨、試製兵器に地上兵器が有るならいくつか出せ。他の全員は伊吹と須磨の護衛…いや、雹と琴風は俺についてこい。」

 

「「了解。」」

 

常陸の指示を受け、伊吹は警戒に向いている戦爆と航続距離が長い陣風を中心に航空部隊を展開させ始めた。同時に須磨はなぜか搭載していた七式指揮戦闘車を展開。それは地面につくと同時に通常サイズに拡大し、須磨はそれに乗り込む。搭載する120㎜砲に砲弾が装填された。さらに二両の戦車も取り出し、配置に付ける。

 

それを見計らい、他の艦娘は両者を囲むように立つと艤装を半分展開した。すなわち主兵装のみの状態を維持。

 

鎮守府に着いたのだからわざわざそこまでする必要も無いように思えるが、彼等にとってまだここは、敵でも味方でもない場所なのだ。だからこその準戦闘態勢であった。




何気に初登場の伊310さんです。


須磨さんは大抵の兵器を乗せてます。ヘリも載ってたりします。戦車は……

ちなみに戦車出した意味は、人類への対抗の意味を込めてます。
ドラッヘン級の化け物出そうか迷ったんですが艦載でそれはないなと思いました。

つまり特に意味はありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十一話  対話

遅くなりました。更新です。


なかなか進まなくてイライラしていると思いますがどうぞ!



横須賀第三鎮守府執務棟、執務室。

 

「改めまして、初めまして。帝国・連邦合同艦隊の旗艦を引き受けている、戦艦常陸、という。性別については、俺もわからないから突っ込まないでくれ。」

 

「改めまして、初めまして、横須賀第三鎮守府の執務補助事務員の神崎と言います。」

 

「同じく、横須賀第三鎮守府提督代理の戦艦長門だ。」

 

「さて、我々は見ての通り、そちらで言う、ドロップ艦?なわけだが、ドロップ艦の扱いと言うのはどうなっているんだ?」

 

「一応規定上、ドロップ艦は発見者の所属する鎮守府へ配属されるという事になっています。」

 

「では我々はここに配属されることになるのかな?」

 

「規則上は。」

 

「というとどういうことなんだ?」

 

「つまり、お前達は、天龍達を助ける過程でかなり大きな戦闘能力を示した。それを聞き付けた上位の鎮守府──例えば横須賀第一鎮守府とか呉、佐世保なんかから引き抜かれるかもしれないということだ。」

 

「権力争いか、どこでも変わらないものだな。俺の艦長はそういうのとは無縁だったが…」

 

「それは羨ましいですね。」

 

「そうでもないぞ?俺の艦長は確かに権力争いからは無縁だったけどな。なぜかというと、絶対的な頂点だったからなんだよ。俺の艦長は、帝国皇太子殿下だったんでな。やたら黒ずくめの男が来てたな。」

 

戦艦常陸、こと戦艦アドミラル・ヴェルスは、帝国海軍最強の戦闘艦であり、単艦で艦隊を粉砕できると言われるまでの巨艦であった。しかし、どちらかと言えば、象徴のようなものであり、戦時でも滅多に動かない。そのため、艦長職は名誉職に近く、初代こそ海軍中将であったが、2代目は、帝国皇太子が艦長を勤めていた。一応海軍元帥の階級を保持してはいたが、飾りのような物だった。

 

「皇太子が艦長だっただと…」

 

「まあ今は関係ないけどな。んで結局俺達はここに所属していいのか?」

 

「はい、権力系統のお話は貴殿方艦娘…艦息ですかね?の手を煩わせる事でもないですし、餅は餅屋とも言いますのでね。まあ頭抱えるのは大将の役目ですし。」

 

さらっとたった一人の同期の胃袋と、もしかしたら頭にも、ダメージを与えようとしている神崎。

 

「いい性格してんな…ていうか丸投げして良いのか?」

 

「良いでしょう。別に。私にそっぽ向かれて困るのは海軍の方ですし。」

 

「神崎、さん?お前何者だよ…」

 

「えっと常陸、でいいな。こいつはドロップ艦以外の艦娘の艤装の上位管理者権限と、艤装を気配だけで見つける特殊能力の保持者だ。全く、どこが一般の海軍中佐だ…」

 

「あと大将の唯一の同期ってだけですよ。」

 

「それだけあれば十分だろう…」

 

長門の答えと、神崎の付け足しに、呆れたような声を出す常陸。

 

「まあ良いか。面倒事は少ない方がいいし、複雑な背景を持ってるってのも干渉を防ぐ軽い防壁にはなる。その場合、所属鎮守府は俺達の意思が優先されるのか?」

 

「ええ、おそらく。」

 

「なら問題はない。神崎さん、それから長門さん。ここで世話になる。余計な干渉が有ったら言ってくれ。俺達が撒いた種は俺達が回収する。」

 

「良いんですか?確かに艤装見た感じ強そうですけど、こちらにちょっかい出せるほどの鎮守府なら、多分武力も…」

 

「問題はない、と思うが、長門さん、日本の鎮守府にはドイツ艦は居るのかね?」

 

「ん?ああ、居るぞ。数は少ないがな。」

 

「その中に…フォン・ヒンデンブルグ、もしくはフォン・ブラウン、モルトケといった艦は居るか?」

 

「……いや、居ないな。」

 

「基本的に最強の艦は?」

 

「大和、あるいは武蔵だな。」

 

「一号艦級か、多分大丈夫だろう。相手できるのは…俺と霧と須磨と雫だけか?」

 

「そうですね…いえ、霧は厳しいと思います。速度が同等だとすると、火力で負けます。」

 

「ああ、そうか、<穂高>のモデルは5号艦級巡戦だもんな…後継とやりあうのは厳しいか。」

 

「となると3隻までしか相手できませんね。三号艦級以上が居なくて良かったです。」

 

「と言うことで相手が大和型連合艦隊組まない限り負けることはない。」

 

「大丈夫そうですね…」

 

「んで正門のありゃあ一体何が?」

 

「あれはですね……」

 

そして、神崎が大体の経過を、鎮守府内については長門が説明を加えつつ、すべてを説明した。

 

「その結果として、未だに駆逐艦は人間、特に男との接触を恐れています。」

 

「ほう、それで、その提督とやら(ゴミ屑)はどうなったんだ?」

 

「逮捕され、今は刑務所にいるはずです。」

 

「そりゃ残念。帝国皇家直属戦闘艦の名の元に鉄槌を下ろしたかったんだが。じゃあ表のはあれか、暴発を恐れてか。」

 

「恐らくは。」

 

「何で起きる前にわからんかったかな、よほど無能だったんだろ?」

 

「教官は割りと反対だったんですが。」

 

「上層部も使えないってことか、全く。ゴミみたいな上司ほどこの世に要らんものはない。ますます問題ないな、ここに所属した方が良さそうだ。」




以上です。

…えっと、常陸と須磨の場合、相手する、ではなく吹き飛ばす、ですし、雫の場合は溶かす、になります(汗)

なお彼等は文中にもありますが、大和型をRSBCの一号艦級(34ノット、46㎝9門)と考えています。まあ実際は穂高(霧)でも戦術次第で勝てると思います。

それでは、要望質問指摘等受け付けております。

次は…舞鶴か横須賀第一が喧嘩売りに来るかもです(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十二話  会議

ちょっと長くなりました。




それではどうぞ!


常陸達合同艦隊12隻が横須賀第三鎮守府に配備され、一週間が過ぎたころ、大本営では、各地方第一鎮守府ならびに泊地、諸島警備府の司令官を集めた定例会議が行われていた。

 

 

 

この会議は、通常3ヶ月に1回行われ、各方面における戦況、勢力分布を確認し、場合によっては大規模作戦などの打ち合わせが行われる事もあった。今回の会議は、新たに艦隊を組んだ状態で発見されたドロップ艦について、緊急に招集されていた。

 

 

そのため、本来ならば出席しない、神崎、そして艦息常陸、艦娘雹、琴風も当事者として出席していた。勿論全員艤装は格納しているが、3人とも帝国あるいは連邦海軍の制服を着ていた。

 

それに対応できるよう、各司令官も秘書艦を連れていた。

 

そのほとんどが戦艦の艦娘である。

 

「厳重すぎじゃないか?高々戦艦と駆逐2に対して」

 

神崎の後ろで秘匿無線で話す3人。

 

「いえ、この程度で互角でしょう。戦艦とはいえ全て一号艦(大和)級以下。いえ、何隻か…何人か五号艦(紀伊)級が混じってます。姿は変わらないので砲塔だけ換装してあるのでしょう。艦娘の艤装もなかなか面白いですね。琴風。」

 

「はい、雹、呼びました?」

 

「最悪貴女だけ逃げなさい。私と常陸でも押さえきれない可能性があります。その場合、神崎提督を連れて逃げなさい。そして、鎮守府残存全艦に、全力での戦闘を指示してください。」

 

全力での戦闘、それは伊吹、須磨、琴風、常陸、伊310、霧にしか通じない一種の符号のようなものだ。雹も、使ってはいるが、言葉そのものの意味で、本質は理解していない。

 

「!私がですか?!」

 

防空駆逐艦(DDG)ではなく、高速駆逐艦として。良いでしょう常陸?」

 

つまり<太刀風>級としてではなく、<島風>改級として動けという事だ。

 

「ああ、さすがに五号艦(紀伊)級をこの距離で複数相手は厳しい。現時刻を以て俺の持つ権限を全て琴風に預ける。……(穂高)須磨(三河)を連れてくるべきだったか。」

 

「いえ、変わらないと思います。」

 

 

 

 

 

自分の後ろで、もしかしたらこの国が滅ぶかもしれない作戦の会議を行っているとはつゆも知らず、神崎は目の前の会議の行方を追っていた。

 

「では、南洋諸島方面は一進一退というところか。いずれ大規模作戦を行う必要があるな。……では続いて、本日招集したメインの議題について話そう。」

 

「横須賀第三鎮守府の特殊ドロップ艦についてだな。」

 

「左様。そのために本人達を呼んだ。合流の経緯等については配布資料にあるのでそれを見てもらおう。今回彼らを呼んだのは、合流するまでと、彼等の艦としての記憶を聞くためだ。では神崎少佐。」

 

「はい、では僭越ながら、ここからは私が議事進行を行います。まず合流するまでについて、艦隊旗艦、戦艦<常陸>より説明を行ってもらいます。常陸。」

 

「はい、私が艦息常陸です。性別については自分でもわからないので放置してくれるとありがたいです。では説明に移ります。」

 

「まず海上で意識を持ったとき、私の周囲には既に11名の艦娘が倒れて浮かんでいました。全員を起こし、艦の確認を行ったあと、空母<伊吹>を中心に輪形陣を、駆逐艦<霧>を旗艦として4隻で前衛艦隊を組み、南西方向へと航行を開始しました。理由は、そちらの方向に電波発信源が有ったからです。」

 

「ちょっと良いだろうか?」

 

「構いません。合流前はそれだけしかしていませんから。何か疑問が?」

 

「資料には前衛は巡洋戦艦<穂高>を旗艦として、駆逐艦<琴風><音風><暮風>で編成とあり、どこを探しても駆逐艦<霧>とは無いが?」

 

「その旗艦巡戦<穂高>が<霧>です。」

 

「どういうことだ?」

 

「そのままです。ああ、そちらから説明すべきでしたかね?我々の艦隊には3隻、複数の艤装を顕現させることが出来ます。」

 

一瞬の沈黙のあと、騒然となる会議場。当たり前だ。普通艦娘一人につき、顕現させられる艤装は1つだけなのだから。それが、複数の艤装を、しかも艦種も異なる艤装を顕現させられるという。理論上は一人で何人か分の働きが出来ることになる。

 

 

「その他の二人は誰かね?」

 

「一人は特務艦<須磨>、そしてもう一人はここに連れてきている<琴風>です。一応機密なので、この二人については顕現させられる艤装は伏せさせていただきます。」

 

これは情報を秘匿するためである。

 

「他に質問はありますか?無いのであれば、常陸には、軍艦時代について話してもらいますが…」

 

「無さそうですね。次へ進みます。それでは私の歴史についてお話しします。私は、第二次世界大戦の勃発と英国の降伏により…」

 

「ちょっと待て!」

 

「質問は説明が終わってからにさせていただきます。…続けます。第二次世界大戦の勃発と英国の降伏により大きく変更された九九九艦隊計画、その要となる新造戦艦9隻の最終番艦である七号艦級3隻、およびその後継艦2隻、その5隻の資材と予算を転用し建造されました。就役は1950年、第三次世界大戦の勃発から2年後です。予備艦へ編入されたのは1998年、その後一時現役に復帰しましたが、2015年退役、記念艦として残されました。」

 

自分達が、そして既出の艦娘が軍艦時代に辿ってきた歴史とは大きく異なる歴史。

 

「…それは、事実なのかね…?」

 

「はい。これは私が、そして大なり小なり相違点はありますが、本艦隊の所属艦娘が辿った歴史でもあります。」

 

実はその1つ前にはまた全く異なる、というかそもそも舞台が地球ですらない歴史を辿ってきたりしてるのだが、そこまでは言わない。

 

「他に質問は無いでしょうか?」

 

「君達のスペックを教えてほしい。」

 

「具体的には?」

 

「ふむ…では4倍の敵を叩き潰せるその火力を。」

 

「いくつか我々の中での機密が入るため、全員の火力はお話しできません。お話しするのは私の火力のみになります。」

 

「…ふむ、まあ良いだろう。」

 

「私は、日本の象徴として建造されました故に、過剰な火力を有します。主砲に55口径71㎝砲を三連装4基12門、副砲に60口径30㎝三連装2基を、搭載しております。」

 

一番化け物なのは常陸でもない(雫である)し、常陸が化け物じみている点も、そこではない(速力と機動力な)のだが、場は再び騒然となり、一瞬で静まる。

 

「質問はこれくらいでしょうか?それではこれで臨時会議を…」

 

「待て。」

 

神崎の宣言を途中で止めたのは、舞鶴第一鎮守府提督の林真人大将。

 

「何か、ありますか?」

 

「単刀直入に言わせてもらうが、彼等はなぜ横須賀第三鎮守府所属なのかね?」

 

「それは、艦娘の取り扱いに関する規定第12条から…」

 

「あの横須賀第三鎮守府所属になったのか?楠木大将、小官は、彼等は横須賀第三鎮守府に所属させるに些か過剰であると思いますが!」

 

「ふむ、その理由は?」

 

「横須賀第三鎮守府は前任提督の不祥事により、所属艦娘の対人感情は最悪であります。現に神崎少佐も、提督ではなく事務員として働いているという情報を得ました。」

 

「それで?」

 

「そのような艦娘達に、彼等が取り込まれてしまえば、その火力は我等に向きます。そのような危険は未然に防止すべきです。今であればまだ所属してから1週間、対人感情の矯正は間に合います。」

 

たった今最悪になったわてめえの発言でな。そう呟く常陸。

 

(矯正だ?冗談じゃねえ。俺たちは兵器だが人形じゃない。)

 

実際林の発言は、一部を除いて正論であり、何もなければ確かに通る意見ではあった。

 

「では林大将、貴官はどうするべきと考える?」

 

「それぞれの第一鎮守府、南洋諸島の拠点に分散配備すべきと考えます。」

 

勿論何隻かはウチがもらう。そう林は心の中で呟いた。

 

(出来れば常陸と、艤装を換装できるという3隻が欲しい。そうすれば演習でも勝てるだろう。大将筆頭の座がいずれは…)

 

そしてしばし沈黙に包まれる。

 

 

 

 

「却下だ。」

 

そう言って静寂を切り裂いたのは他でもない、常陸だった。

 




常陸さんが半分キレかかってます。

時系列は一応外伝等の記述から、ある程度の予測と余裕を持たせて組んでいるつもりです。


本気になったら一番怖いのは影が薄い伊310です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十三話 演習

ようやく無双と同時に艦隊全艦の全兵装が明らかとなります。


それではどうぞ!


「却下だ。」

 

 

そう言って静寂を切り裂いたのは他でもない、常陸だった。

 

「今、何と…」

 

「耳が塞がっているのか?却下だ。そう言った。」

 

先程と全く異なる口調で言った。

 

「貴様、自分が何を言っているのか…」

 

「良く分かっているさ。ところでそんな些細なことは置いといて。大将、艦娘には自分の意思を持つ権利、その意思を実現する権利は無いのか?」

 

「…仮に、無いと言ったら?」

 

「まあ俺達の仲間が生きるために、琴風を逃がす。そのためには全力戦闘も、味方撃ちも厭わない。暮風が、横須賀第三鎮守府に辿り着くまでは持つだろう。そうすれば後は友が…同胞が仇を討ってくれるさ、この世界には最悪な結末だが。」

 

常陸は、ここに来る前、伊吹にとあることを確認していた。それがあるからこそここまで強気に出れるのだ。この国どころか()()()()()()()()()()()兵器の存在を知るが故に。

 

「そ、祖国を滅ぼすというのか貴様!」

 

「お言葉だが大将、先程俺は言った筈だ。俺達が辿った歴史は、この日本とは全く異なると。俺達にとって、選択を間違えた(異次元の)日本は祖国(日本)になり得ぬ、それだけのことだ。」

 

元々戦艦<常陸>としての意識が薄い彼にとって、そもそも日本という国そのものが祖国とは思えなかった。彼にとって帰属意識を抱く祖国とはケイキュリア帝国──彼が戦艦アドミラル・ヴェルスとして存在していた国──以外の何物でもなかった。

 

「戦艦8か、最期の相手にはちょうど良いくらいかもしれんな、雹、何隻相手できる?」

 

「最大で2隻相手できれば良いところでしょうね。火器管制システム全て起動、対空誘導弾を対艦転用します。」

 

背中に顕現する艤装が唸る。同時に常陸も腕を組んだまま艤装を顕現。艦中央部に密集する大量の対空火器が動き始める。

 

「確かに俺達は軍艦だった。そして今もなお、祖国を、或いは人類を守るための兵器として顕現している。だがな、同時に今、我らは人間と同じ心と肉体を持つ。一個人として考えても良いだろう。そして我々は協力者だ。従属も隷属もしてはいない。俺の知る日本は国民を隷属させ意志を持つことを許さないような独裁国家ではなかったと思うが。ここがそうであるというのなら、やはりここは我らの祖国たり得ぬのだろう。そして祖国だった者が我らに仇為そうと言うなら、我らも全力で対応せざるを得まい?」

 

そう言いながらゆっくりと立ち、雹の横にならび、暮風を守るように仁王立ちし、提督たちを見渡す。

 

「……本気か?神崎君、君はこれを認めるのかね?」

 

「俺達は本気だ。こっちの世界に来たときから、な。」

 

「楠木大将、我々は、彼らに協力を要請する立場です。どう転んでも強制できる立場にはない。そしてなにより、彼らが言う通り、本来、我々のいるこの日本は、彼ら本来の祖国ではないのですよ。認めるも何も、それ以外に我々にとれる行動などありはしません。…そうですね。たとえば…常陸、もしここで、琴風が人質に取られて我々への協力を強制されたらどうする?」

 

「手持ちの特殊兵器と核兵器でこの国を滅ぼすだろうな、そもそもこいつらが琴風を人質に取れる能力があれば、だが。身内の失敗を、罪を平気見過ごす能無しにそんな能力を期待するのは、猫に提督してもらうより難しいと思うがね。」

 

それは、不可能と言っているに等しい。

 

「本当かね、常陸。」

 

「ええ、間違いないと思いますよ、楠木大将。琴風は軍艦時代の戦闘経験は少ないですが、速力は恐らく駆逐艦組ではトップクラスですし。」

 

駆逐艦の中で、最大の雷数と最速を誇る島風改級。防空戦において大火力を発揮できる太刀風級。駆逐艦の果たす役割の内、対空と対艦にそれぞれ特化した艤装を持つ暮風は、運用次第では、化ける可能性が高い。無論、光学兵器と反物質兵器主体の化け物()や、例外()には及ばないが。

 

「なんなら演習でもやってみますか?うちの艦隊とどっかの鎮守府でも。」

 

と常陸が冗談混じりで言った。艦隊とはいえ12隻に、1つの鎮守府、となると戦力差は凡そ1対5程にはなるだろう。

 

「ふむ…力を示すには良い機会か?良かろう。やってみようじゃないか?誰か、演習をやりたい所はあるかね?」

 

「では私が。」

 

そう言って名乗り出たのは、呉第一鎮守府提督の植野忠。

 

「呉か、良いだろう。演習の規則においては通常通りとするが、隻数についてはどうする?」

 

「先程彼は12隻と鎮守府1つと言っていましたが…」

 

「それで構いません。もっと増やしても構いませんよ。」

 

とあっさりという常陸。そんな態度に、提督や後ろの秘書艦達は、少々苛立つが常陸と雹はいまだ臨戦態勢。下手な刺激はできない。

 

「では彼らと呉第一鎮守府所属全艦での演習を行う。勝利条件は…」

 

「どちらかの全滅。」

 

「片方が一方を全滅させる、ということで良いかね植野大将。」

 

「は。問題ございません。」

 

 

こうして、合同艦隊12隻対呉第一鎮守府所属艦64隻の演習が決定した。




以上です。特殊兵器は次でまた出てくると思います。次は常陸と提督の話し合いです。



艦橋直後にVLSを、その周囲に光学兵器…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十四話  悪魔の兵器と超兵器

今回は少々短めです。


演習を一ヶ月後と決定した、大本営からの帰り道、常陸が呟いた。

 

「雹、アレを脅しに使うのは正解だったんだろうか?」

 

「なぜ私に?それに…今更でしょう?アレの存在を知った時点で私たちは既に退路を見失っています。」

 

「だが…アレは本来ここでの存在を許されてはいけない代物だぞ?それをここで引っ張り出すのは…」

 

「それこそ今更でしょう。それに、貴方の決定にケチをつける艦は居ません。既に全艦覚悟を固めています。あとはやれることをやるだけです。」

 

「常陸、私達が安寧を求めて何が悪いというのです?折角ですから、今回くらい、私達本位で動きましょう?」

 

あっさりと言ってのけた二人の駆逐艦。だがその内容はその口調とは裏腹に重い。

 

伊吹搭載の特殊兵器群。それらは、正規空母スヴィルであったときは、帝国と連邦の2国間で締結された条約によって使用が禁じられたレベルの危険兵器である。

 

タイラントと呼ばれるのは、戦略級核爆弾以上の破壊力を誇る燃料気化爆弾(FAE)。それこそ1つの都市が壊滅するレベルでは済まない。

 

トリニティと呼ばれるのは、核爆弾である。超酸素戦略(SOS)爆弾とも呼ばれるタイプで、その破壊力はタイラント以上。

 

ラグナロクと呼ばれる兵器が最も破壊力が大きい。その種類は反物質爆弾。なんでこんなもの作ったんだと言いたくなる代物である。

 

これらが伊吹が搭載する特殊兵器群の中で特に危険な物である。ついでに言うと、これらが単純にやばすぎるだけで特殊兵器は多く存在する。航空機搭載型の汎用レールガンだったり、成層圏以上で戦う亜宇宙戦闘機だったり、艦隊を殲滅する攻撃ヘリだったり…

 

 

 

 

 

新鋭艦載機と共に伊吹の第2格納庫特殊兵器庫で発見されたこれらの大規模破壊兵器。常陸は場合によってはこれらをも演習に投入する気で居た。勿論演習用模擬弾となるが。

 

 

ちなみに、演習で使用される演習弾は妖精さん達の手によって、それが実弾である場合に与えられる危害半径や、射程、飛行特性すら再現されるもの。よって上記化物兵器を元にした演習弾の場合、起爆地点から危害半径以内は全て、しかも濃く、黄色のペンキで染まることになる。ちなみにペンキの濃さは、被害の大きさを示す。

 

 

「そう…だな。とは言えあれは最終手段とする。今回俺達が示すべきなのは、俺たち自身の力なのだから、大道具に頼ってばかりも居られまい。問題は相手が実弾を使用した場合だが…」

 

「潰しましょう。」

 

可能性はそこまで高くない予想ではあったが、雹はあっさりと即断する。

 

「まあ私自身としては、どちらかと言うとまだ()()()が出てくる方が可能性としては高いと思っていますが。」

 

「アレ等…?……まさか、いや、あり得るな。鎮守府に戻ったら、外洋警戒を出すよう言っておかなくては。」

 

「最初に来るのは、順番が変わってなければ潜水艦…面倒ですね。」

 

「来ないことを祈るさ。来たら()()()が出るからすぐわかると思うが…」

 

「そう言えばありましたね…<劔>で撃ち破れませんかね?」

 

「わからん。」

 

雹の台詞に一瞬訝しそうな表情を浮かべたが、すぐにその意味に思い当たる。自分達を沈めあるいは相撃ちになった悪魔共(超兵器)のことを思い出した常陸。とはいえ、今ここにいるのはそれらを潜り抜け、あるいは打ち負かして生き残った艦である。

 

(蜃気楼とか摩天楼来ても勝てるんじゃないかこれ…)

 

密かにそう思った常陸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、南極にて。

 

 

 

1隻の大型艦が姿を現した。それは()()()()。速力は60ノットほどであろうか。艦上に三連装砲塔を3基積んでいるが、艦自体の大きさにしてはやや小さいように思われる。それはただ南極大陸沿岸を進んでいる。深海棲艦が時々攻撃を仕掛けるが、その度に叩き潰されていく。

 

 

 

その艦橋には一人の女性の姿。

 

「ここは…南極ね、帰ってこれたのね。…これからどうしましょう?姉上達はまだいらっしゃってないようですし………この反応はあの娘かしら?」

 

ただ一人で呟く彼女。

 

「なら行くべきかしらね、でももう少ししてからで良いかな。姉上が来てからでも構わないでしょう?だからそれまで、」

 

死なないでくださいね?ウロボロス。

 

 

 

彼女の名は、原子力重巡洋艦、ヴィントシュトース。

 

高速型超兵器のプロトタイプであり、超兵器として認識されること無く、最初に撃沈された哀れな超兵器。

 

撃沈を成し遂げたのは当時退役間近であった艦隊随伴用駆逐艦U級23番艦、ウロボロス。

 

 

 

 

 

後に、搭載する制御用AIを、V級駆逐艦ヴィローネへ転載した戦闘艦であった。




以上です。さて、どうなるでしょうねえ…演習の途中で乱入しないことを祈ります。



ちなみにウロボロス含むU級は、<島風>改級がモデルです。またヴィントシュトースも、最後に止めを刺したのがウロボロス、というわけで、一騎討ちして勝ったわけではないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編  演習
第十五話  一方的に


遅れに遅れました。


常陸達の今回のモットーは、<アウトレンジ>です。


演習当日。演習場に到着した常陸達。彼らを出迎えたのは、軽巡神通。

 

「おはようございます。」

 

「はじめまして、おはよう。常陸と言う。今日はよろしく頼む。」

 

どちらかと言うと(主に手加減を)頼むのは呉の皆さんなのだが。

 

「面倒なことは出来るだけちゃっちゃと終わらせたい。そちらの旗艦は?」

 

「大和さんならあちらに。」

 

「そうか。ありがとう、君も準備があるだろう。行ってくれ。」

 

「わかりました、では失礼します。」

 

神通を下がらせた常陸はそのまま大和の方へ向かう。

 

「君が大和か、合同艦隊旗艦、戦艦常陸だ。今日はよろしく。」

 

「常陸…ですか、よろしくお願いします。」

 

一号艦級戦艦一番艦大和、スペック上は46㎝三連装3基9門搭載の高速戦艦。二番艦武蔵もいるらしい。恐らく51㎝砲を搭載するはずなので、穂高と三河では正面から殴り合うのは厳しい。だから今回とれる戦法はただ1つ。

 

大いに勘違いしている常陸。だが、その戦法は今だ有効である。

 

 

 

『では、ただいまより、横須賀第三鎮守府第4、第5艦隊と、呉鎮守府との演習を開始します。』

 

「全艦第一種戦闘配置、伊310は事前会議通りに遊撃にはいれ。他各艦隊に別れ散開。」

 

「「「「「「「「「了解。」」」」」」」」」」

 

常陸達は二手に別れた。片方は、湧別を戦闘に置き、須磨と伊吹を中心に、両側に霙と雹、殿に雫を配した輪形陣をもつ機動部隊。もう1つは、<島風>改級の艤装を纏った琴風を先頭に、常陸、穂高、暮風、音風の順に単縦陣を組んだ水上打撃群。ちなみに旗艦は伊吹と常陸。

 

 

 

両部隊が別れて5分後。

 

「レーダーに反応。数1、方位0-0-2」

 

「その方向にトゥーラ…雷雲を向かわせる。CAPは全機上げてるわね?敵の後続が来たら残り全部上げるわよ。」

 

「敵機、まもなく視界内。」

 

「敵機より電波発信を確認。」

 

遊星(戦爆)全機発艦準備。続いて牙龍全機発艦。潜龍と大洋は全機側面に回って対潜警戒を厳に。全機発艦完了次第、蒼電を上げるわ。」

 

 

 

 

「雷雲より、敵艦隊を発見。航空機動部隊らしいです。」

 

「三河、射撃準備。」

 

「はいはーい、待ってましたあ~」

 

その軽い口調とは裏腹に、重苦しい音と共に、左腕に付けられた、巨大な砲塔が動き出す。

 

「照準よし、データリンク準備良し。射撃準備完了~」

 

「雷雲より目標の座標を捉えました。」

 

「三河」

 

「はいはーい、主砲、撃てぇ!」

 

辺りを圧する轟音と共に放たれる巨弾。

 

「第二射~、てぇ~!」

 

最終的に6発放たれた巨弾。それらは全てが、先程雷雲が発見した航空機動部隊に向いていた。

 

 

 

 

 

 

「レーダーに反応…うへぇ成層圏ですねこれ…」

 

「トラウマ物だよな。視界外から一方的に百発百中の巨弾が飛来するって。」

 

伊吹から見て左前方に出ていた水上打撃群。そのレーダーに映る6個の光点。言わずもがな、三河の放った150㎝砲の砲弾。

 

 

 

 

 

 

途中までは順調だった。敵艦隊を先に発見し、攻撃隊を送り出せた。敵は艦隊を分割したのか6隻しか居なかったが、海軍の中でも精鋭クラスの部隊の攻撃。殲滅はできたも同然と考えていた。

 

そんな彼女等に、成層圏から駆け降りてきた巨弾が突き刺さる。文字どおり、突き刺さる。至近弾ではない、直撃弾。

 

とはいえ、演習弾でも、直撃すればただではすまないので、今回砲弾は高度2メートルで炸裂し、大量のペンキを撒き散らした。

 

『呉鎮守府、航空母艦、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴、撃沈判定。』

 

演習開始30分。呉鎮守府は、まだ何もしないうちに、一個艦隊を喪失した。

 

 

 

 

 

 

「間に合ったかしら?」

 

「いえ、攻撃隊と思われる目標は現在、第一哨戒線の20キロ先です。第一哨戒線でイーグルが迎撃態勢。ドラゴンが穴埋めに、ファルコンは第二哨戒線の前方に展開。ロングアロー現在最終防衛ライン付近です。」

 

三河の射撃は残念ながら、攻撃隊発艦には間に合わず、結果として、雷雲及び湧別のレーダーに迫り来る300以上の光点が映っていた。

 

これに対し、伊吹達は三重の防空ラインを形成していた。最初にかかるのは第一哨戒線に展開するコールサイン・イーグルことCAPの陣風8機、及び現在急行中のロングアローこと蒼電16機。

 

第二哨戒線にはコールサイン・ファルコンことCAPを除いた残りの陣風16機とコールサイン・フェニックスこと戦闘ヘリ牙龍8機。

 

最終防衛ラインにはコールサイン・ファントムこと戦闘爆撃機遊星が待機。

 

さらに陣形を変更する。湧別を先頭に、電子巡洋戦艦<劔>に艤装を変えた須磨が続き、その両サイドを霙と雹が固める。次いで、雫、伊吹の順に並ぶ。

 

 

 

とはいえ、彼らは最終防衛ラインを通らせる気は全くなかった。艦隊の姿さえ晒さないつもりですらいた。

 

 

先程の一方的な射撃(蹂躙)に引き続き、目標すら目に入れさせない、一方的な迎撃(蹂躙)の始まりだった。

 

 




航空機と戦闘艦って普通攻撃半径は航空機が広いですけど、演習場って、艦娘が人間の大きさであることも考えると、大口径砲だったら届きそうだよね?っていう想像です。


相手も見えないうちに突然降ってくる百発百中の巨弾ってトラウマになりそう…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十六話  防空戦闘

お待たせしました!
え、待ってる人居ないって?
ですよねー

暇潰しにでもなれば良いです!


第一哨戒線、高度7000で陣風が、高度2万で蒼電が待機していた。

 

『コマンダーよりイーグル、ロングアロー、目標はまもなく有視界圏内。』

 

「イーグル了解」

 

「ロングアロー了解」

 

「ロングアロー・リーダーより各機。全弾頭のシーカーを起動。戦闘機を可能な限り潰せ。……行くぞ。ロングアロー降下開始!」

 

 

 

 

「イーグル、交戦開始。」

 

「何機抜けてくるかな?」

 

「攻撃機は大体が抜けてくると思いますけど。」

 

「目標、二手に分離。イーグルへおよそ20機。ロングアローまもなく攻撃開始点。」

 

「第一と第二の間で艦隊から迎撃を挟むわ。湧別、雫、劔、VLS用意。」

 

指示を出すと、自らも飛行甲板の一部を展開する伊吹。

「了解。防空戦システム全データリンク完了。」

 

「ロングアロー交戦開始。」

 

 

 

 

高度2万から急降下を始めた蒼電隊。翼の下に下げられた熱誘導型対空誘導弾(AAM)は一機につき4基。狙いを定めた目標──空母赤城搭載の烈風隊は、目の前を全力で逃げ回る陣風隊に全注意を注いでいた。そもそも高度差が1万3000あるので見つけきれないのだが。

 

 

「ロングアロー・リーダーより全機、FOX2!」

 

 

こうして奇襲は成功する。陣風(イーグル)が編隊を解き、一瞬で散開。突然の挙動に、動きが一瞬固まった、空母赤城の戦闘機隊は何が何やらわからぬままに、上空から降ってきた鉄の槍(ミサイル)で落とされた。

 

 

赤城隊が瞬殺されたことに気づいたのか、他の戦闘機隊がやって来るが、正面からAAMか30㎜弾を叩き込まれ、落とされる。何機か後ろを取ることに成功したものの、銃撃をかける前に急上昇され、あっさりと射程から消え去る。そして気づけば、後ろから、あるいは上から、30㎜弾を、AAMを叩き込まれる。

 

攻撃隊の直援についた空母飛龍、蒼龍の戦闘機隊を除く、烈風隊計78機はこうやってかなり早い段階で全滅している。蒼電側の被害は、撃墜2機、陣風隊は撃墜1機のみ。何がとは言わないが酷い。

 

 

 

 

 

「目標まもなくSAM迎撃ライン。全艦発射用意。」

 

「VLSハッチオープン。」

 

「迎撃ラインに到達。」

 

「全艦発射始め!」

 

湧別から12発、劔から8発、伊吹から8発、雫から12発の計40発のAAM。

 

 

「主砲射撃用意完了。」

 

 

さらに劔の主砲が蠢く。装填されているのは、気化弾頭の射程延伸弾。とは言え、今回はそこまで伸ばす必要もない。ミサイル着弾と同時に発砲するので、必要な射程は30キロ。

 

「着弾5秒前、4、3、2、1、今。」

 

「撃て!」

 

砲弾同士の余計な干渉を避けるため、知覚できないレベルでタイミングをずらした発砲。

 

 

 

 

 

 

 

その航空機搭乗妖精からすると、今の状況を一言で言うなら

 

『どうしてこうなった?!』

 

であった。まず、最初に現れた10機足らずの戦闘機隊に襲い掛かった、空母赤城の烈風隊が、直後に降り注いだ何かによって撃墜される。直後に降ってきた、震電に似た、だが速度が段違いの高速機。それらに殲滅される烈風隊。

烈風隊が全滅するまでに稼いだ時間のお陰で、振り切る事が出来た。

 

 

 

そう思ったら次は、恐らく、敵艦隊のいる方向から煙を引いて飛んできた、ものすごい速度の何かに貫かれ、40機ほどが落とされていた。

 

さらに飛んできたもの─恐らく砲弾─が、広い範囲を巻き込み起爆。

 

「なんなんだ一体!」

 

見たものは敵機の姿と謎の兵器。敵の艦隊すら視界に入っていないのだ。

 

と、数の減った直衛機群が増速し、急上昇をかける。その先には、

 

 

「敵機?!」

 

第二哨戒線、コールサイン・ファルコンこと陣風24機のお目見えである。果敢に突っ掛ける烈風隊。数は互角。性能もほぼ同格クラスの戦闘機。その為、烈風隊が、ギリギリで押さえきれているように見えた。

 

 

 

が、第二哨戒線に待機しているのは陣風だけではない。尚も進撃を続ける攻撃隊の真下から火線が伸びて、一機の流星に突き刺さる。翼が折れ、墜ちていく流星。それを合図としたかのように、次々と真下から、火線が伸びる。それが()()()に続く。

 

普通ならそろそろ上昇してきてもおかしくはない。が、一向に上昇して隊形の間をすり抜ける機影はない。それどころか、銃撃はますます激しさを増し、謎の高速飛行体も飛んできていた。

 

 

当然ながらそんな芸当は普通の航空機には不可能である。

 

だが普通ではない航空機──例えばヘリなら?

 

第二哨戒線には、コールサイン・フェニックスこと対空特化型戦闘ヘリ(牙龍)の部隊が待機していた。上を向き、ホバリングしたままで、搭載する1機当たり20近いAAMと、二門の30㎜機関砲を、相次いで攻撃隊に叩き込む。

 

 

戦闘機隊も引き返そうとするが、陣風がそれを許さない。

 

攻撃機が回避しても、AAMは射程の限り追尾していく。それでも数に任せて突破する機体は居たが、最終防衛ラインで待ち構える、戦闘爆撃機の編隊を振り切る事ができない。あるいはそれすらすり抜けて、水平線上に艦影をとらえても、その直後に、雫が放った陽電子と光学兵器によって何が何だかわからぬうちに落とされていた。

 

「見られてしまいましたね…」

 

「いや、上出来よ。みんな良くやったわ。どうせまだいるでしょうけど。」

 

雫が残念そうに呟いたが、伊吹が警戒続行を呼び掛ける。

 

 

 

演習はまだ終わってはいない。




完了です。かなり説明が多くなってしまいました。次は空母部隊二つ目、そして水上砲戦部隊の激突です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十七話  伊310遊撃戦

さて、これまで影が薄いどころか一言も喋らなかった合同艦隊唯一の伊号潜水艦の出番です。


<<──報告、本隊は既に一個航空機動部隊をその搭載機ごと殲滅、此を以て第一段階を完了とする。遊撃戦を開始せよ。>>

 

 

「──了解した、こちらゴースト、現時刻を以て作戦フェーズ2に移行。」

 

 

演習海域のとある海中、深度は1000。演習開始直後からひたすら潜行し、息を潜め続けていた伊310──伊300型反応推進潜水艦十番艦。合同艦隊に唯一存在する潜水艦である彼女は、その艦級の通り、核融合機関を以て動力源と為している。

 

現代潜水艦の能力を十二分に発揮して、演習相手の潜水艦も潜ってこれない場所でひたすら待機していた。

 

 

それも今を以て終了する。

 

 

「急速浮上、メインタンクブロー、深度100、対潜水艦戦用意。」

 

静かに、急速に深度を上げる。前部に集中配備された6門の魚雷発射管全てに、対潜用魚雷──七式改有線誘導酸素魚雷が装填。甲板に装備されたVLSには対艦巡航ミサイルを搭載。流石に弾頭は通常弾頭である。というよりそもそも、核弾頭は全て伊吹が纏めて管理していた。

 

 

 

キレたときについぶっぱなさないように。

 

 

 

「…航走雑音うるさすぎ…面舵22、魚雷発射管一番より三番、注水。艦首上げ10。……あ、距離が足りないや。巡速前進、静音航行。」

 

 

七式改有線誘導酸素魚雷は、文字通り線を牽くため、射程が制限されてしまう。

 

「十式欲しかったなあ…」

 

静かに、静かに、呉鎮守府所属潜水艦娘の背後へ忍び寄る。

 

「一番、発射。メインタンク注水、急速潜行、深度100」

 

一番発射管からのみ、一本だけ魚雷を放つ。と同時に、二次大戦時の潜水艦の限界深度付近まで一気に潜行。

 

 

数分後に、ズンと重い振動が走る。

 

 

<<──目標の撃沈判定を確認。>>

 

『呉鎮守府、潜水艦伊19、撃沈判定。』

 

「──まず1隻。次は空母か戦艦を喰いたいな。一番再装填。」

 

 

そう言ってソナーの探知範囲を最大に拡大、範囲内に、大型艦の反応を捉える。片方は水上砲戦部隊か、単縦陣を組んでいる。もう1つは、部隊2つ分の反応だ。定かではないが機関音が秋月型初期型と酷似した艦が複数みられる。恐らくは対空特化艦。しかし一方で防空巡洋艦のと思わしき機関音はない。聞こえるのは汎用型とはいえ水雷寄りの巡洋艦、そして完全な水雷巡洋艦。大戦後期には対潜もしくは対空艦として改装されたか退役した筈だが、能力は如何なものか。

 

 

(駆逐艦に対空型を多く配備してるから巡洋艦は対潜艦かな?対潜ヘリが居れば厄介…観測ブイを上げるか)

 

「…観測ブイ1号射出。」

 

艤装の艦橋部から小さなブイが射出された。緩やかに艦隊の方へ向かいつつ深度を上げ、海上に浮上するとそのままアンテナを展開し、周辺探知を開始。

 

対空警戒──複数の小型目標を探知。移動速度及び経路から上空警戒と対潜警戒と推定。機体の動きから考えて対潜警戒機は九七艦攻か。

 

(何であんな旧型が……いや、そうか。輝星とか居ないんだっけ。)

 

つい自分達(三次大戦)基準で考えてしまったが、ここの兵器は基本二次大戦基準なのだ。

 

「─1号はそのまま展開、両舷全速。」

 

出力を上げた融合炉から放射されたエネルギーによって、水を沸騰させタービンを回す。それに対応し、速度が急激に上がる。

 

「──両舷原速、一番から六番、発射管注水。」

 

目標を射程圏に捉えたところで速度を落とし、狙いを定める。

 

「狙うなら全部大物、5秒間隔、順次発射、始め。」

 

5秒の間を置いて魚雷を放つ。狙うは陣形内部の空母。呉鎮守府第四艦隊所属航空母艦、雲龍、天城、葛城、飛鷹、隼鷹、瑞鳳。

 

「メインタンクブロー、急速浮上深度20、ミサイル発射用意。──止めはしっかりと、ね。」

 

魚雷命中音が響く。

 

「ミサイル発射、完了次第急速潜行!」

 

海面を割って飛び出すミサイル。その数は12。1隻につき1発。伊310はそれで十分だと考えたのだ。そしてそれは間違っていない。

 

『呉鎮守府、航空母艦雲龍、天城、葛城、飛鷹、隼鷹、瑞鳳および軽巡洋艦阿賀野、五十鈴、駆逐艦秋月、初月、凉月、照月、撃沈判定。』

 

 

「あー、五十鈴かあ…なるほど、あれって確か改二?かなんかすると防空系になるんだっけ。ま、いっか。13かあ、喰ったねえ、ふふっ」

 

 

<<──ゴーストお前喰いすぎだ馬鹿野郎。一人で2割喰ってどうすんだ。>>

 

 

「良いでしょー別にぃ…残りはそっちで殺るの?」

 

 

<<一応な。と言うわけでお前は第二艦隊(伊吹達)の近くに戻れ。オーバー>>

 

「ゴースト了解。オーバー」

 

「もうお仕舞いかあ、ま、丁度良いかな?そう言えば相手ってまだ潜水艦5隻居るよね…えっと、8、13、14、168、58だっけ。それも来たら喰えるかなあ。じゃ、戻りますか。面舵135、両舷全速前進!」

 

 




何気に今回のMVPはこの娘かも…


感想等お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十八話  雫

雫さんの性格がヤバイ方に向かってます…

いえ、彼女は任務に忠実かつ、相手に対しても誠実なだけです。


「何なんですかあれは…」

 

 

神崎は目の前の状況を見て唖然とした。開始早々呉鎮守府の空母6隻が沈み、攻撃隊は殲滅された。しかも非常識なまでの長距離砲撃と、現代・近未来兵器のオンパレードにより。

 

そして気づけば二艦隊プラスアルファが撃沈判定。

 

攻撃隊の殲滅はまだわかる。イージス艦が居る上に、AWACSによる誘導。現代のジェット機やミサイルを相手にするため構成された防空システムの前では練度など無意味。

 

しかしだ、最新レーダーを積んだ弾着観測機が居るとはいえ、百キロ先の軍艦を、全て撃ち抜くなど、並々の腕ではない。

 

 

何より、姿を現すことなく、二艦隊を殲滅した恐らくは潜水艦。

 

 

「成る程、化け物と自称するだけはあります…」

 

 

5:1という数の差をあっさり埋めに来る現代兵器。だがこれでも、性能には制限が掛かっているらしいのだ。その制限が解除された場合、何処まで強くなるのか。神崎は、冷や汗を流しながらもその戦力の予測を冷静に行い始めた。

 

 

 

 

「次は俺たちの出番かな。」

 

常陸が呟く。

 

「何処まで通じるかな?」

 

追走する穂高が笑う。

 

「艦隊決戦かあ…腕が鳴るねえ。」

 

「SSMが無いのが残念だがな。」

 

「それじゃ演習にならないじゃないですか…ていうか逆にVLS発射型魚雷とか何処から持ってきたんですか?」

 

「須磨の武器庫。」

 

「ああ、成る程。何で持ってたんでしょうか?」

 

「暇だったから作ったんだそうだ。」

 

「あの人は一体何を…っ!レーダーに反応。」

 

「相手の水上砲戦部隊か、穂高。」

 

「一番、二番、射出。」

 

常陸の命令に応え、穂高は搭載する水上偵察機晴嵐改2機を発艦。

 

「あーあ、射撃管制レーダー使えないのキツいなあ…」

 

「贅沢言うな。戦術システムとネットワークのリンクは許可してるだけましだろう。」

 

「そうだな……来たぞ。目標は金剛型4、やや遅れて紀伊(大和)級2、低速十三号艦(長門)級2、扶桑型2、伊勢型2。随分と大盤振る舞いだな。距離は50000か。扶桑型、伊勢型、金剛型も砲塔換装の可能性がある。大きさ的に見て最大で46㎝だろうが……」

 

「想定最大戦力は、三号艦(紀伊)級2、十三号艦級多数か?全く、艦娘の艤装はどうなってるんだ?36㎝搭載艦に46㎝載せるとか。」

 

「それって不味くないですか?」

 

「紀伊…大和型は俺が相手する。今のうちに観測射で仕留めるか。後ろの6隻を潰す。巡戦は穂高達で捌け。」

 

「いや、待て。まだ居る。巡洋艦6の艦隊が一つ、水雷戦隊が二つ。俺達だけじゃ重すぎる。」

 

「成る程な…流石に1隻で一個艦隊相手ってのは荷が重いか。こちら常陸、伊吹へ。対艦フル装備を4個小隊よこせ。」

 

『こちら伊吹、現在敵攻撃機ならびに巡洋艦から攻撃を受けているため、要請は達成できない。』

 

「攻撃機?!……っ、潜水空母か。艦隊分派……は間に合わんな。いや、須磨は?」

 

『<劔>は航空管制中。業務を本艦が引き継ぐ。ただし水上戦闘の火力を維持できない。<雫>全兵装の使用許可を申請。』

 

「まだ使っていなかったのか?構わない。相手が全力ならこちらも可能な限り全力を出さねばならない。」

 

『了解した。では須磨を分派する。』

 

「助かる。──これで戦艦が1隻増えたな。振り分けるぞ。穂高は巡洋艦を、暮風以下は水雷戦隊を。俺が戦艦を引き受ける。どちらかが終了すれば、もう片方へ応援に行け。倒せない場合は遅滞戦闘に努めろ。いずれ須磨が来る。全力での戦闘を許可。」

 

「「「「了解。」」」」

 

暮風、琴風、音風は水雷戦隊へ、穂高は巡洋艦、そして常陸は戦艦隊へ、それぞれ舵を切った。

 

 

 

 

「四時の方向、敵潜1、深度50。」

 

「零時の方向敵編隊、数は4。」

 

「一時の方向、敵機1、観測機の模様。その先に敵艦隊、数は6、巡洋艦のようです。」

 

「雹、霙、迎撃。ミサイル使用を許可。雫は対空戦、湧別と劔は航空管制。防空隊順次発艦!」

 

横須賀第三鎮守府第二艦隊は今、少々忙しくなっていた。雹と霙のVLSから打ち出されたSSMが敵艦隊へ向かう。伊吹から緊急発艦をかけた遊星と陣風が湧別と劔の誘導によって敵編隊に襲いかかる。雫はレーザーを用いて撃ち漏らしを潰す。潜水艦は、伊吹から発艦していた対潜ヘリが潰しにかかる。

 

しかし、流石は巡洋艦というべきか、SSMもあまり効果が有るようには見えない。距離を詰めたことで、砲弾が飛来し始める。艦隊に唯一存在する水上砲戦用の艦艇は劔のみ。応戦を開始する。

 

『こちら常陸、伊吹へ。対艦フル装備を4個小隊よこせ。』

 

「こちら伊吹、現在敵攻撃機ならびに巡洋艦から攻撃を受けているため、要請は達成できない。」

 

『攻撃機?!……っ、潜水空母か。艦隊分派…は間に合わんな。いや、須磨は?』

 

「<劔>は航空管制中。本艦が業務を引き継ぐ。ただし水上戦闘の火力を維持できない。<雫>全兵装の使用許可を申請。」

 

<雫>の主兵装たる陽電子砲は、弾道ミサイルの撃墜から対艦戦闘まで可能だが、その特長から、ペンキで再現できないため、演習で利用するときは、注意が必要だ。制限はないが、肉体に当てたら色々とグロい。そのため出来るだけ温存しておきたかったが、必要なら使うべきだろう。

 

『まだ使っていなかったのか?構わない。相手が全力ならこちらも可能な限り全力を出さねばならない。』

 

「了解した、では須磨を分派する。オーバー」

 

『助かる、オーバー』

 

「雫、聞いていたわね?巡洋艦群は任せるわ。こちらヴァルキリア、ゴースト。」

 

<<ゴースト、ヴァルキリア。用件は?>>

 

「遠出して構わない、敵潜水艦を殲滅しろ。」

 

<<了解した、敵攻撃機の進路情報を要求。>>

 

「送信する。──完了。幸運を祈る、オーバー」

 

<<感謝する、オーバー>>

 

伊310との通信を終えたあと、雫を探すと、既に突貫をかけていた。50ノット程出ているのではなかろうか。

 

「全力運転掛けてるのね…どれだけ戦いたかったのよ…」

 

伊吹は一瞬だけ呆れたような顔をしたが、雫が本気になっている以上、巡洋艦は問題ないと判断。

 

「全機急速発艦!」

 

ならば後先を考えず、守りきり、そして撃ち漏らさぬように。合計106機の艦載機を全て大空へと放つ。電子偵察機とAWACSを軸に、対潜機と攻撃機による超広範囲索敵網を形成。攻撃機と潜水艦を1隻残らず把握し、ほぼ同時に襲撃を掛ける。伊310による超長距離雷撃や、低空からの機銃掃射と空爆。航空機に対しては遥か上空からの高速機による一撃離脱。三次大戦基準の対応に旧式(二次大戦)の潜水艦娘が対応できるはずもない。

 

『呉鎮守府、潜水艦伊8、伊13、伊14、伊58、伊168、撃沈判定。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのよこいつは…!」

 

 

 

呉鎮守府第六艦隊、重巡衣笠。彼女は今、両手の主砲を失っていた。いや、手に持っては居るのだが、両方とも()()()()()()()()()()()()。今目の前で笑う駆逐艦娘──雫によって。

 

ちなみに、この艦隊には他に重巡青葉、妙高、那智、足柄、羽黒が所属しているが、全員が艤装がほぼ完全に破壊されるか、場合によっては足すら切断された状態で、海面に転がっている。不思議と傷からの出血は全くない。

 

が、それでも演習では遣り過ぎである。

 

 

『呉鎮守府、重巡洋艦、青葉、妙高、那智、足柄、羽黒、艤装の戦闘航行能力喪失、撃沈判定。』

 

「弱いなあ…こんなんじゃ物足りないよ?」

 

「物足りないってあんた、これは演習よ?!なのにどうしてこんな……」

 

すると、雫は笑みを引っ込めてこう言った。

 

「知ってるよ?だからこうしてるじゃん。」

 

「な…!」

 

「別に陣形組んだままで、遠くから一方的に乱射しても良かったんだよ?て言うか実戦なら気絶させるだけでは済まさない。演習だからこそ、()()()()陣形を離れ、目の前で降伏勧告もしたんだけど?」

 




雫ちゃん…
艤装破壊→陽電子砲を模した対人レーザー

足切断→対人レーザー

とお考えください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十九話  水上砲戦①

はい、すいません私事(中間テストとレポート)により更新遅れました。


しかもフルボッコはまだまだ先という…


「別に陣形組んだままで、遠くから一方的に乱射しても良かったんだよ?て言うか実戦なら気絶させるだけでは済まさない。演習だからこそ、わざわざ陣形を離れ、目の前で降伏勧告もしたんだけど?」

 

「実戦だったら…どうするって言うのよ…?」

 

「遠くから一方的に、跡すら残さず一切合切を消し飛ばす。いや、実戦だったら、僕が出る幕もないよ多分。」

 

至極真面目な顔で答える雫。雫の攻撃範囲はかなり微妙だ。対空、対艦両用兵器ではあるが、反応推進空母と、世界最大の戦艦がいる以上、大抵の敵は視界に入ることなく全滅する。

 

「だから今回のはかなり軽い措置だ。申し訳ないけれど、僕の兵装は見ててわかる通り、ペンキで再現できる物じゃなくてね、実害を与える必要があるんだ。だから基本的に艤装撃っただけでしょ?足を切断したのは、警告無視したからだし。応急措置もしたし、浮き輪も一応持ってきたし?アフターサービスはそこそこ準備したつもりなのだけれど。」

 

雫からすれば演習と言うことで、少なくとも沈むことがないように、またそこまで重傷を負わせるつもりもなかった故の行動である。

 

「まあ全部常陸に言われたことなんだけどね。今回は演習であって実戦ではないから本当の撃沈は避けよ、って。ま、そんなわけで、取り敢えず沈んじゃって?」

 

そう言うと、レーザーが音もなく轟沈ギリギリのところで艤装を切り落とした。

 

『呉鎮守府第六艦隊、重巡洋艦衣笠、撃沈判定。』

 

 

 

 

 

 

雫が呉第六艦隊へ突撃し出した頃。

 

「では、始めようか。敵艦座標位置確認、間接照準射撃準備。」

 

常陸は緩やかに艤装を動かす。

 

「主砲射撃準備よし、目標敵八番艦、一斉射撃始め。」

 

轟音が辺りに響き渡る。敵はまだ射程に至っていない。それまでに三番艦以降の6隻を削ってしまう予定だった。

 

 

 

 

 

「敵艦発砲!」

 

「この距離でか?!」

 

まだ距離は50000以上ある。51㎝でも有効射程ではない。

 

「そうか、71㎝、だったか。」

 

日向は、演習開始前に見た資料を思い出していた。55口径71㎝三連装4基。馬鹿げた火力、まさしく怪物(モンスター)だ。

 

「敵艦第二射?!」

 

「な…!」

 

(速い!まだ第一射が弾着すらしていないと言うのに……うん?第一射が()()()()()()()?なぜだ?)

 

日向は疑問を抱いた。交互射撃なら、普通は弾着してからでないと撃たない。なぜならばその結果を元に次の射撃の照準を修正する必要があるからだ。それをせずに、次々と射撃を行っているということは、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる方式を採用している場合か()()()()…………

 

(一斉射撃か?前の射撃を()()()()()()()()()…?ならば相手は…!)

 

その瞬間、日向は無線に向かって叫んだ。

 

「全艦散開しろ!急げ!」

 

『どういうことだ、日向?!』

 

「良いから…」

 

早く舵を切れ。そう言おうとした口は、次の瞬間発生した轟音によって掻き消された。発生源は、隊列最後尾、山城がいた場所。そこは今、巨大な水柱がそそりたっていた。

 

 

最初から連続一斉射撃を行う理由、もう1つは、()()()()()()()()()()()()()()()()()場合だ。

 

『呉鎮守府、戦艦山城、轟沈判定。』

 

艦隊構成員全員が水柱に目を奪われる。日向もまた、意識を持っていかれていた。

 

「敵艦第三射!」

 

そんな通信妖精さんの声にも気付かないほどに。次に覚醒したのは、砲弾の飛翔音──俗に、列車が鉄橋を渡る音と称される轟音が頭上を圧する。

 

「まずっ…」

 

再びの轟音と水柱。

 

『呉鎮守府、戦艦扶桑、轟沈判定。』

 

「転進!」

 

無線機に叫ぶと、面舵を切る。前にいる伊勢、陸奥、長門も取り舵か面舵を切っていた。十数秒後、直進していた場合の未来位置に、水柱が立ち上っていた。

 

(何と狭い散布界…)

 

50キロを越える距離から放った砲弾だと言うのに、綺麗にまとまって弾着している。

 

事前の作戦では、金剛型が撹乱している間に距離を詰め、最大12隻の火力で叩く手筈だった。だがしかし、現実は既に2隻が脱落し、こちら側はまだ射点にも付けていない。

 

 

だが恐らくそろそろ金剛達が射点に届く頃である。仕切り直しにかかることが出来るだろう。

 

このとき、日向の脳裏からは、常陸の護衛艦のことは消え失せていた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、始めるか。」

 

そう言ってニヤリと口を歪めたのは、穂高。艦種は巡洋戦艦。それに見合う艤装を持つが、外見は<霧>のままなので、見た目幼女が、巨大な艤装を身に纏い、凶悪な笑いを浮かべる構図になる。某戦記の幼女の笑い顔を思い浮かべれば近いかもしれない。

 

「全速前進、主砲射撃準備。」

 

伊吹級巡洋戦艦<穂高>。彼女は、合同艦隊所属艦の中で唯一、八八艦隊計画が実行に移された世界を通じて転生した軍艦である。計画名は八号巡洋戦艦、改天城級の三番目の妹。当然ながらその主砲は40㎝であり、装甲防御もまた同様。並みの戦艦と殴り合える上に、巡洋戦艦という艦種らしく、30ノット以上の速力を誇る。

 

つまり、巡洋艦狩りには適した艦である。

 

「あれは…高雄級か?あと利根級と、最上級?甲巡3と航巡3か。」

 

それは呉鎮守府第七艦隊、重巡洋艦高雄、愛宕、摩耶、利根、最上、鈴谷。

 

「ちょっと足りねえが、まあさっさと片付けて戦艦喰いに行くか。」

 

弾着観測機は常陸に貸しているため使えないが、巡洋艦相手であれば、距離を詰めたところでさほど問題はない。というかそもそも彼女の専門は実は超接近戦だったりする。

 

その得意なフィールドに持ち込むべく、トップスピードのまま、連続斉射を繰り返しながら巡洋艦へ突っ込んでいった。

 

 

 

「それで、私たちは水雷戦隊が相手ですか。」

 

「ん?嫌なのか?」

 

「それなら別にあたしと音風で殲滅しても良いけど?」

 

「ううん、ちょっと気になっただけですから。」

 

「じゃあ良いね!12隻いるから…一人4隻かなあ。」

 

「軽巡はどうする?やろうと思えば喰えんことも無いだろうが…」

 

「あ、じゃあ私が潰します。二人より多く雷撃出来るから。」

 

「じゃあ俺たちは駆逐4だな。とっとと潰して援護に回ろう。」

 

「りょーかい。じゃあ開幕雷撃行っちゃう?」

 

「賛成。とっとと終わらせて常陸のカバーに入ろう。」

 

「VLSハッチ開け。全弾発射用意。」

 

「撃てぇ!」

 

3隻から相次いで打ち上げられたミサイルは、そのまま通常のSSM同様海面を這いながら目標へ向かい、真横に占位するとそのまま着水。そこから白い航跡が伸びる。恐ろしい速さで。そのまま着弾して水柱が立ち上る。

 

「やっぱあれって避けにくいのかなあ?」

 

「…だってあの子達、()()()()()()も、運搬型魚雷も知らないでしょう多分。二次大戦基準なんだから。」

 

恐ろしい速さで迫る、しかもパッシヴホーミングの魚雷を避けろと言うのは、些か無茶だ。

 

「でも人型なんだから飛んで回避とか。」

 

「そんなこと思い付くか!」

 

「んーでもほら、何人か生き残ってるよ?」

 

「駆逐2と軽巡2か。軽巡は大破判定か。」

 

「運搬型は炸薬量少ないですからね…」

 

「んじゃ軽巡はおねーちゃんに任せて、あたしたちは一対一で!」

 

「了解。」

 

こうして3人は散らばる。琴風は2隻の軽巡──阿賀野、矢矧へ、暮風と音風は駆逐艦──夕立改二と島風改へ、それぞれ向かう。

 

 

30対5、その戦場は混沌の度合いを深めることなく、戦況は進んでいく。




魚雷、元は某海獣を沈めたのが着想ヒントです。ただの魚雷だと芸がないし、簡単に避けられそうなので、ロケット推進に変えてみました。




感想質問などお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十話  水上砲戦②

遅れに遅れて更新です!



超兵器が少しずーつ動き始めます。


「もう射点に着いたか…ちっ、もう少し早く始めるべきだったか?……いや、あれがベストだろう。2隻潰せたしな。とはいえただ撃たれるのも癪だな。副砲射程延伸弾装填。弾頭は三式。完了次第射撃開始。」

 

本来ならば、遠距離から五式──気化弾で瞬殺して終わり。なのだが、今回は伊吹が五式を回収していた。曰く、「まともに戦え」とのことであった。

 

(三河とか雫はどうなんだよ…)

 

と思ったが、あれはそれ以外の戦い方がない、と抗議は瞬時に却下された。兵装が光学系で統一された雫。存在そのものが大艦巨砲主義たる三河。あれ?俺の存在意義は?と、一瞬自分の存在の必要性を疑った常陸。

 

「ま、いっか。さて、どうしようかな………近接かなあ?機関戦闘出力、全速前進!」

 

39ノットで突撃を開始する常陸。

 

「少し、遊ぶか。機関出力制限解除、超過出力!」

 

号令に応え、機関はスペック上の最大出力を発揮。さらに加速。

 

モンロー効果すら考慮され、核兵器ですら内部は無傷を保つ常陸の装甲は、滅多なことでは破れない。そこで、人型を取った今、かつて超兵器を相手取った戦術を使ってみよう、と考えたのだった。

 

超兵器を相手とするとき、常陸がとれる戦法は二つ。その射程を生かし、遠距離から打破するか、機関の超過出力を以て、超近接戦闘を行うか。遠距離狙撃は既に実施済、なら次は近接戦闘だ。まずは既に射点に着いた金剛型から。

副砲で三式改を乱射し、視界を阻害しつつ急接近。さらに命中しそうな砲弾を、舷側の対空火器群で迎撃する。

 

「全砲塔、硬芯徹甲弾装填!反航戦、各砲塔1隻ずつ狙え!」

 

最高速度のまま、金剛型の真横を通り抜けた瞬間。

「撃て!」

 

1隻あたり3発ずつ、砲塔基部を狙って、徹甲弾を叩き込む。

 

『呉鎮守府、戦艦金剛、比叡、榛名、霧島、轟沈判定。』

 

46㎝砲塔と言っても、全てが46㎝防御ではなく、またそうであっても、71㎝砲弾に耐えきれるわけではない。お返しとばかりに放たれた46㎝砲弾も、僅かばかりの手傷を与えたのみであった。

 

霧島の真横まで駆け抜けてきた常陸は、そのまま右に急旋回。90度回頭すると、そのままの速度で今度は大和以下に向かう。

 

 

圧倒的な砲火力を見せつけられた大和達。それでも、負けるわけにはいかないと、自らを奮い立たせ、砲撃を開始する。その幾つかは命中するが、損害を与えることなく弾かれた。お返しだと言わんばかりに、まず副砲が連射を開始。30㎝なので、損害を与えることは出来ないが、次々と林立する水柱は視界を阻害する。

 

しかし、呉艦隊は、砲撃戦に入る前に、弾着観測機を上げていた。

 

「やはり観測機がいるな…対空誘導弾が使えないのがかなり面倒だ。ま、良いか。対空戦闘用意、1機残らず叩き落とせ。」

 

艤装の背面および副砲塔の周囲にある対空火器群が動き出す。狙いを定め、全力射撃。遠くの敵は光学兵器、比較的近距離は機関砲で叩き落とす。

 

「さて、次はどうする?って言っても決まってるんだよな…主砲連続斉射用意。前から順に仕留めろ。」

 

 

 

 

 

その頃、護衛艦艇群も激しい戦闘を続けていた。と言っても、軽巡洋艦を相手取った琴風は、<太刀風級>の艤装に変えると、主砲を撃つだけでよかった。2基搭載する155㎜単装速射砲であれば確実に役目を果たせる。

 

『呉艦隊、軽巡洋艦阿賀野、矢矧、撃沈判定。』

 

一方で夕立改二対暮風、島風改対音風は、以外にも平行線を辿っていた。レーダー管制射撃システムと、ミサイルを封じられ、簡単には決定打を見出だせない現代艦に対し、決定打を擁するが、尽く迎撃されてしまい、打つ手が減っていく近代艦。

 

 

 

「これで、終わりっぽい!」

 

「それがまだなんだな~」

 

空中至近距離から放たれる魚雷を腰と腕に4基配備された40㎜自動機関砲が叩き落とす。同時に手に握る155㎜単装速射砲を放つが、ギリギリで回避する夕立。

 

 

 

「おっそーい!」

 

「んだとてめえもういっぺん言ってみろや!」

 

全速力で同航反航戦を続ける音風と島風。ちなみに島風は遅いと言うが、普通に同航出来ているので決して遅いわけではない。

 

 

 

 

『呉鎮守府、重巡洋艦利根、高雄、愛宕、摩耶、最上、鈴谷、撃沈判定。』

 

 

「終わりか、ずいぶん長くもたせたな、誉めてやろう。」

 

そう言って笑う穂高の前には、ほぼ全身ペイント弾まみれの巡洋艦娘が海に倒されていた。

 

「しかしあれは使いやすそうな技だったな、今度試してみるとしよう。それにしてもあんな技どこで覚えたんだ?」

 

目の前の重巡利根に問いかける。

 

「駆逐艦がやっていたのを真似してみただけじゃ。」

 

「ほう。ではあとでその駆逐艦と話をさせてもらえないか?少々興味が湧いた。」

 

6隻纏めて捻り潰そうと、まず小手調べで放った初弾を、重巡が弾き返したのだ。驚いた穂高はそれをもう少し見ようと、観測機を最低限残して落とし、魚雷を迎撃しつつ、中距離砲戦を行った。

 

結果わかったことは、艤装の装甲を、飛んでくる砲弾に対し浅い角度で構えることで、弾くという物だった。

 

面白そうだと思いつつも、早く常陸の援護に向かうべきと思い、弾道を重ねたり、榴弾を混ぜたりして戦闘不能判定に追い込んだのだった。

 

「夕立じゃ。ただ…話をする暇があればよいがの…」

 

名前を聞いたときには既に走り出していた穂高の耳に、最後の一言が聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ、ピッ、ピッ、ピピピピピピピピピピピピッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の電子音に走っていた足を止める穂高。

 

ほぼ同時に常陸も射撃を続行しながら顔を上げる。

 

伊310は緊急浮上。

 

伊吹は瞬時に緊急発艦組(スクランブル)を発艦させた。

 

他の全ての合同艦隊所属艦も顔をあげ、周囲の警戒を開始した。

 

そして電子音が唐突に止む。これを人は、嵐の前の静けさ、と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『出撃中のケイキュリア帝国軍、ならびにヴェイルクロイツ連邦軍所属全部隊に告ぐ!』

 

『南方に複数の超兵器ノイズを確認!ただちに原隊、所属基地に復帰せよ!繰り返す…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──常陸より全艦へ、演習を手早く終わらせて対策を練る。仕留めろ。」

 

感情が完全に消え失せた、冷たい声が響く。

 

『『了解。』』

 

命令に一番早く反応したのは、戦闘中の暮風と音風。

 

「「緊急加速用ブースター点火。」」

 

次の瞬間、夕立と島風が見たものは、顔は変わらず、ただ瞳からは全ての感情が抜け落ちた状態で、先程の五割増しの速度で距離を詰めてくる相手の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうなんなのよ!」

 

所変わってここは南極。そこには超兵器機関も作動させ、全速で航行するヴィントシュトースの姿があった。否、彼女は逃げていた。追っているのは…

 

進路を少し変更した直後に舷側に水柱が立ち上る。40㎝無いとは言え、55口径の砲弾。まあ砲身が短くとも、当たってしまえば、大型とはいえ巡洋艦クラスのこの艦は1発当たれば終わりだが。

 

「何で答えが返ってこない上に撃ってくるのよ!?」

 

彼女を追うのは同じドイツの超兵器。()()()()()()()の、超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント、シュトルムヴィントの2隻。彼女が待ち望んでいたはずの二人の姉だった。




ちょっと長くなったかもしれませんね
次は出来るだけ早く投稿します。


気長にお待ちくださいm(__)m

感想評価お願いします!

質問もメッセージなどでいただければ即日お答えできると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十一話  水上砲戦②

まさかの超兵器複数の同時探知。
ほんとはもっと余裕かましたかった常陸さんですが…



急用が重なり中々更新できずすみません


「悪いがちょっと用事ができた。手早く終わりにさせてもらう」

 

そう言うと、常陸は主砲を今まで以上の速さで連射していく。その間副砲はひたすら牽制の射撃を続ける。

 

と、上空から轟音と共に、巨弾が降ってきて、最後尾にいた日向に直撃。一瞬で撃沈判定に追い込む。

 

『呉鎮守府、戦艦大和、武蔵、長門、日向、撃沈判定』

 

『こちら三河。射点に到達、援護射撃を開始しましたぁ~』

 

「遅かったな」

 

『途中でノイズ探知したからですよ~?』

 

「残り2隻か」

 

『でももうおっしま~い』

 

そんな声と共に、回避行動をとる残された2隻──伊勢と陸奥の上空で砲弾が瓦解。大量の子弾が2隻に降り注ぐ。直撃弾多数。

 

『呉鎮守府、戦艦陸奥、伊勢、撃沈判定』

 

 

 

 

ほぼ同時に駆逐艦同士の戦闘も終焉を迎えていた。

 

「撃て。」

 

60ノット以上まで突発的に加速、距離を詰めて155㎜砲弾を叩き込む暮風。夕立は、避けようとするが回避先に40㎜自動機関砲が弾幕を張る。ダメージが蓄積し、徐々に回避できなくなり、直撃を喰らい撃沈判定。

 

 

一方で島風も逃げても追い付かれ、155㎜砲弾の直撃により撃沈判定。

 

『呉鎮守府、駆逐艦島風、夕立、撃沈判定』

 

『呉鎮守府撃沈艦60、横須賀鎮守府撃沈艦0。呉鎮守府艦隊の全滅により、横須賀鎮守府の勝利とする』

 

こうして演習はあっけなく終了する。

 

 

 

「お疲れ様でした、常陸さん、伊吹さん。おめでとうございます」

 

「勝てて当然だ。須磨にもほとんどの艤装を使わせたし、ほぼ全員が現時点での全力を出したからな。それより、厄介なことがおきた。詳しいことはあとで説明するが対処を間違えれば……」

 

「国が滅びます」

 

最後を濁した常陸の台詞を引き取ったのは雹。

 

「わかりました。ところで霧…<穂高>さんはどちらに?」

 

「音風と暮風をつれて呉の駆逐艦を探しにいっている。なあ神崎事務員、彼処の鎮守府の艦娘、こっちに引っ張れないか?」

 

「誰ですか?ウチにいるかもしれませんよ」

 

「夕立と島風だ」

 

「……確かその二人はまだ居なかったと思います」

 

「あとは……そうだな特には居ないな、その二人だけだ」

 

「多分無理だと思うんですが……なぜです?」

 

「今のところ、俺が見た艦娘の中で、そいつらだけが俺達の戦闘に付いてこれるからだ。改造すればアレとも戦えるだろう。だが、無理か。なら横須賀第三の艦娘に訓練を課すしかないか。俺たちが負ける相手に勝てるとは思えんが……」

 

「負ける?」

 

「そこら辺もあとで詳しく、だ。誰が聞いてるか分からんし、ましてや誰にでも言って良い話じゃない」

 

「駄目だったぜ、今回は俺達だけで対処するしかなさそうだ」

 

「おかえり<穂高>」

 

「構わない。もとよりそのつもりだ」

 

「でも複数同時に相手できるのか?」

 

「追い込まれたら<玉星>改二特型を出す。一個小隊だけだが充分だろう」

 

「確かに……」

 

「それに初期型であればこの艦隊でなら複数相手にできるはずだ、余裕を見てもな」

 

ただ、問題なのは艦載機である。恐らく超兵器を()()()()()()()()()()()のは特殊格納庫内の戦闘攻撃機<玉星>改二特型と呼ばれる航空機4機編隊のみ。あとはサポートにしかならない。通常艦載機では、空母型の艦載機と渡り合える程度。数で押し潰されるのは目に見えている。となるとやるべきことは……

 

「神崎、兵装の生産はどうするんだ?」

 

「生産?ああ、"開発"ですかね?鎮守府に戻ったらお教えします」

 

「"開発"か、ふむ。了解した」

 

 

 

 

 

鎮守府へ帰投する途中のマイクロバス車内(神崎運転)では、反省会が行われていた。

 

「今回の反省点を挙げていけ。と言っても多くはないが」

 

「潜水空母の見逃し」

 

「敵戦力に応じたこちらの戦力配置」

 

「そんなところかな?まあ全体的に纏めてしまうと偵察と情報収集の不足か。まあ仕方のないこととはいえ、次はないようにしよう。対超兵器戦闘は、わずかなミスが敗北に繋がる。鎮守府に戻ったら、伊吹は"開発"を、伊310は俺と一緒に神崎に超兵器についての説明をしてくれ」

 

「開発?」

 

「ああ、兵装の生産だ。何が出るかは知らないが、俺達が使えるようなものが出てくれれば上出来、俺達から見れば旧式でも普通の艦娘にとっては最高ランクの装備になる可能性がある」

 

「わかったわ。さしあたって<輝星>でも狙うかしら?」

 

「積めるのお前だけだろうが。普通に……蒼電とかで良いだろ」

 

ちなみにだが多分蒼電も普通の空母には載らない。

 

「結局探知したのは何なんだろうね?」

 

「"複数のノイズを確認"って言ってたからな、恐らくは同型だと思うが…違う可能性もあるんだよな」

 

「戦艦型と空母型だったら厄介」

 

「ですね、流石にこの艦隊でその組み合わせを相手するのは厳しいでしょう」

 

「相手が航空機型なら……」

 

「<玉星>改二特型と<須磨>か<幻炎>で片が付く」

 

「それ私必要ないと思うんですけど……」

 

「"ドリル"だったらどうするんですか?」

 

「あ、そんな奴居たわ……アレどうやって倒したんだ?俺その時出てないから分からんのだが」

 

「えーと、確か近距離で65㎝を叩き込み続けた筈です。ただそれをやった戦艦は沈みましたが」

 

「うわあ……それどうするよ……」

 

「というかそもそもあの小さい艤装でダメージを与えられるのかしら?ドリルとか接近したら文字通り死ぬんじゃ……」

 

「あー……確かに……どうすんだよじゃあ」

 

「えっと、良いですか?」

 

「どうかしたのか、神崎さん?」

 

「出来るかどうかわかりませんが、貴殿方はドロップ艦なので"超過艤装"が使えるかもしれません」

 

「"超過艤装"?なんだそれは?」

 

「ドロップ艦には稀に、体に付くタイプの艤装だけではなく、在りし日そのままの軍艦そのものを艤装として展開できる艦娘が居ます。その軍艦そのものの艤装を"超過艤装"と呼んでいるのです」

 

「んで俺達も出来るかもしれないってわけか。ふむ、鎮守府に戻ったら一度試してみるとしようか」

 




以上です。

玉星改二特型は、エスコンのノスフェラトゥみたいなのを想像してください。


それでは感想質問批評等お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十二話  開発と超過艤装

艦これ二次創作で、チート兵器と来たらやはり開発は鉄板だと思うのです!

まあそこまでチートじみた開発はしませんよ、ええ。
…お楽しみは最後の方にとっておくべき、でしょう?


それでは、異星艦娘と新任提督、最新話です!


「えっと、開発って何をすれば良いのかしら?」

 

鎮守府に帰投後、暮風を連れて工廠まで来たは良いものの、何をすれば良いのか分からず途方にくれる伊吹。

 

「工廠責任者は明石って人だって神崎と長門司令から聞いたけど……どこに居るのかな?」

 

「明石さんいらっしゃいますか?」

 

「あ、は、はい!」

 

「長門司令と事務員から開発を頼まれたのですが方法を教えていただけないでしょうか?」

 

「ああっ、はい!こちらです!」

 

 

 

工廠の建物の奥へと案内される間、伊吹は明石と雑談していた。

 

 

「え?じゃあ、呉に勝ったんですか?」

 

「ええ、完封できなかったのが残念だけれど」

 

「完封は流石に厳しかったんじゃないかな~と思いますけど……強かったですか?」

 

「いいえ、錬度はともかく応用がほとんど効いてないわ。何人か、良いのは居たけれど、彼処で、あんなのと共闘してるんじゃただの宝の持ち腐れね。世代が2つか3つ開くとはいえ、戦力比は5倍だからもう少し攻めてこれたと思うのだけれど」

 

「あはは……あ、ここです」

 

「このレバーを引けば良いのかしら?」

 

「はい、開発品は横の台に出ます。あ、資源量はどうしますか?」

 

「どうするって?」

 

「開発したい装備が当たりやすい量の組み合わせがあるので」

 

「艦載機でお願いするわ」

 

「わかりました!えっと、許可証には5回開発可能とありますが……」

 

「全部それでお願いね」

 

「わかりました!……はい、どうぞ」

 

 

レバーを引くと、台の上に光が出現。

 

暫くして光が弱まり、消え去る。そこに有ったのは、見たことのない航空機。黒く塗装された前進翼の機体。それを見た伊吹が苦い顔をした。不思議に思い、明石が暮風を見ると、こちらは苦笑している。

 

 

「あの、どうしたんですか、伊吹さん?」

 

「うわあ……よりによってそれ引くのか~引いちゃうのかぁ……」

 

「何か問題が……?」

 

「"帝国軍の黒き死神"、<タナトス>……引きが良いのか悪いのかわからないねぇ……」

 

帝国空軍電子戦闘偵察機、FR-11ERtype-3<タナトス>。

多種多様な情報収集機器と、それらのデータを守るため、自衛のためだけの高火力。そしてそれらを運ぶための大出力エンジンを搭載した電子偵察機。

 

情報収集を主任務として、眼下で敵、味方が幾ら死のうと、ただそれを見下ろすだけ。積極的に戦闘に介入することはない。その任務姿勢から付いた渾名は"黒き死神"。実際、任務としては情報収集がメインなのだから、交戦し撃墜されては元も子もないので彼らは命令を遵守していただけの話なのだが。

ちなみにこの偵察機は、空母でも運用は可能である。

 

「外れではないね、次いこ次!」

 

再びレバーを引く。

 

 

出てきたそれを見て伊吹の顔は蒼ざめた。その輪郭はおおよそ六角形。側面に複数の円盤が付けられた、かなり大きなヘリ。

 

「ヴァ、<ヴァルキュリオン>…」

 

 

 

連邦海軍、対艦隊用攻撃ヘリ<ヴァルキュリオン>。小型汎用レールガン2基を中心に多数のミサイル、ロケットポッドを搭載した化物ヘリ。水雷戦隊程度であれば文字通り殲滅できる。というか実際に殲滅している。伊吹が蒼ざめたのはそのせいだ。

 

 

「……次、行こっか?」

 

再びレバーを引く。次に出てきたのは……

 

 

「良かった、これは普通の艦載機だね!」

 

 

<烈風>改Ⅲ。二重反転プロペラ、ターボプロップ換装の烈風。前世──空母<伊吹>だったころ、建造中に練習機として運用されていた機体だ。暮風達や霙達ならばリアルタイムで見たこともある。

 

「次次!」

 

帝国空軍戦闘攻撃機、F/A-24typeB2<ティターニア>、イーグル隊。空母<スヴィル>、すなわち<伊吹>所属機の精鋭。ようやく伊吹の顔が明るくなる。

 

 

「ラスト~」

 

 

戦闘攻撃機<ティターニア>、ドラゴン隊。イーグル隊と対を為す部隊。

 

 

「う~ん…今回出た中で渡せそうなのは烈風改Ⅲくらいかな~?」

 

 

「そうね、ヴァルキュリオンもタナトスもティターニアも通常艦には……」

 

「載るわけがないね~」

 

「載っても飛ばせないでしょう……」

 

耐熱甲板ではないのにどうやってジェットを飛ばす気なのだろうか。

 

「あたしもやってみたかったな、開発」

 

「超音速魚雷とか、試作型超高速対空誘導弾とか出るかもね、あるいは対多目標同時捕捉・迎撃(イージス)システムとか」

 

「完全に……いや、魚雷ならどうにかできるんじゃない?」

 

「まともな発射管出ればでしょう?角形四連装とか出ても装備できないわよ……」

 

「須磨よりはましでしょ~?」

 

「あいつが開発したらそれこそ軍艦に搭載できない物とか出てくるんじゃないかしら…ドーラ・ドルヒとか」

 

 

それは超兵器だ。

 

搭載できるできないの前に兵装ですらない。

 

 

 

 

 

 

 

工廠で開発が行われていた頃、残りの艦娘のうち、常陸と伊310を除くメンバーは、港で超過艤装のチェックをしていた。

 

「艤装展開!」

 

埠頭に横付けする形で、1隻の軍艦が顕現する。現代型の軍艦に良く似た灰色の艦影。石狩改型防空巡洋艦<湧別>。

 

「おおー、出来たね!」

 

「次は誰がしますか?」

 

超過艤装を消しながら湧別が問う。と言っても、ここにいる艦娘のうち、湧別、須磨、雫、霙、雹、音風が既に終わり、あとは霧と琴風のみであった。

 

「二人同時にいけるだろ?さっさと済ませちまおうぜ」

 

音風の言葉に、二人は顔を見合わせて頷く。

 

「「艤装展開」」

 

2隻の駆逐艦の艤装が顕現する。1隻は秋月級の形を残しながら、その砲塔はより小口径の3連装砲へ換装されている。そして魚雷発射管が存在せず、代わりに自動機関砲と(VLS)が存在した。改秋月級防空駆逐艦<霧>だ。霧はそれを見て、懐かしそうに目を細めた。そして降りてきたタラップから、自分へ乗艦する。そこで一瞬顔を強ばらせたが、足を止めずに艦内へ入っていった。

 

 

一方で、琴風は自分の本来の超過艤装──太刀風級防空艦<琴風>をひたすら見つめるだけだった。さっき展開していた姉妹艦<音風>との外見上の相違点について確認していたのだ。

 

「どう?」

 

「やはり少しおかしいように感じます。具体的にいうならば、主砲の砲身が音風より若干長いような気がします。あと動かさないと詳しくはわかりませんが、多分機関出力も上乗せされているかと」

 

「霧の方は…違和感はないわね。恐らく琴風は同艦種だから、でしょうけど」

 

雹が2隻を見ながら呟いた。

 

 

「霧!そろそろ戻るわよ!」

 

「…了解」

 

「大丈夫ですか霧、何か気分悪そうですよ?」

 

「大丈夫、ありがとう琴風」

 

いつも通りの声に少し安堵した琴風だったが、それでも霧を心配そうに見つめていた。その視線の先で、霧は首に下げた何かを見ている。乗艦前は持っていなかったから恐らく艦内から持ち出したか、艦内で着けたかのどちらかだろう。

 

「はやく、二人とも」

 

「行こう」

 

「…うん」

 

 

超過艤装を解除しながら横目で霧の様子を伺う。光の粒子になって消え行く超過艤装を見ながら、霧は首に下げた何かを握り、呟いた。恐らくそれは独り言のつもりだったのだろう。だが近くにいた琴風には途切れ途切れだが聞こえていた。

 

 

 

「───次は、絶対に、……があっても、……をしてでも、守るから」

 

 

そのためなら、()()()()()()()()()()

 

 

そう聞こえた気がして、霧を振り向くと、滅多に感情を出さないはずの霧が、泣いているように見えた。

 




はい。さて、この後に投稿する閑話への繋ぎを作っておきました。


戦闘偵察機タナトスですが、戦闘妖精雪風の黒塗装メイヴをイメージしてください。


それでは、評価感想批評等々お待ちしております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話  彼女の決断

閑話です、前話の霧sideのお話になります。



それでは、異星艦娘と新任提督、最新話をどうぞ!


気付いたら人型になって海の上にいた。意味がわからない。理解不能。

 

 

 

それが彼女の端的な思考だった。彼女の主観では、ついさっき帝国海軍軍艦としてドイツ軍と交戦、味方航空母艦を庇って撃沈したばかりなのだ。

 

周りを見渡せば、限りなく広がる太陽と彼方に見える水平線。そして自分と同じ境遇だという同僚と妹達。

 

全員が、あの悪魔共と戦った時期に見たことのある軍艦であることは嬉しかった。が、一方で、対超兵器戦初期に、沈んでいくのを指をくわえて見ているしかなかった妹達はいないと知り、やや落ち込む。駆逐艦だけでなく、かつての計画に同番号艦として指定された他の2隻の力も使える今なら、何があっても今度こそは守りきれたはずなのに、と。

 

でも、叶わないことは仕方がない、と、この時は割りきった。この時は。

 

 

 

 

 

 

次にその思考が復活するのは呉鎮守府との演習の時だった。突然鳴り出した懐かしい、だが忌避感を覚える警報。

体の主導権は穂高に渡していたものの、生駒も霧も、意識は覚醒させた状態で、外部状況の把握に努めていた。そんな状況で鳴り出した、超兵器発見の警報は、彼女等に悪寒を覚えさせた。特に、霧にとってはそれは長い係留期間において、妹達が死地へ駆り出される合図でもあったため、彼女の精神的外傷(トラウマ)をえぐり、結果として彼女は一時的に思考を停止する。

 

 

 

完全に同艦種である琴風と異なり、異艦種間転載が行われたリークは、その演算領域を分割し、必要に応じて、知識のみを供出することで戦闘効率と生存率を高めていた。そのため、艦娘となった今も、艤装を切り換える際には意識ごと変える必要がある。

 

しかし、主導人格はやはり霧。それが一時的に思考停止に陥ったことで、そのカバーを生駒が行うはめになり、生駒は普通に表に出たときよりも働くことになったのは完全な余談である。

 

 

 

霧が平常運転に戻ったのは、鎮守府に帰るマイクロバスの車内。良く考えればここには頼もしい味方が居るのだ。究極超兵器や超兵器の源と相討った味方が。ならば犠牲もそこまで多くはない。あの時とは違うはずだ、そう考えていた。

 

鎮守府の埠頭で、他の皆が超過艤装を展開していくのを見て、その考えは強まっていく。高速超兵器であっても、陽動部隊は、阻止部隊は必要ない。<幻炎>がいるから。100㎝、80㎝砲であっても恐れる必要はない。<三河>と<常陸>が居るから。空母系でも大丈夫。<伊吹>が、<湧別>が、<霙>級が、<太刀風>級の皆が居るから。航空機型?望むところだ、<玉星>改二の前で無事でいられる飛行物体など存在しないことを示してやろう。陸上型?<三河>と<須磨>の射程外に逃げられる陸地など存在しない。

 

 

 

そんな楽観的思考を持っていたのも、超過艤装を展開したとき、ある物を見つけるまでだった。埠頭に横付けされた防空駆逐艦<霧>。タラップを通って乗艦しようとした霧の目に留まったものは、本来、ここにあるはずの無いものだった。それは全ての軍艦に支給されるもの。埠頭に停泊するときに、同型艦の区別が付くようにタラップの前に置かれる艦名板。それは何も珍しいことではなかった。それが、十数枚も有ることを除けば。

 

「……こ、れ……は……」

 

目に付いたものを取り出してみる。それにはこう記されていた。

 

《R-Ⅰ-ⅩⅡ Rewake》

 

R 級防空駆逐艦Ⅰ型12番艦、リウェイク。霧ことリークの原型とほぼ同型の駆逐艦。そう認識した瞬間に、頭の中に情報が流れ込む。現旗艦の常陸を中心に、電子巡洋艦<劔>が自分の演算領域のほぼ全てを用いて稼働させている、帝国・連邦合同艦隊データリンクを介して、劔艦内のデータベースから送られてくる、リウェイクについての情報だ。

 

 

───惑星ポラヴィル史暦2759年10月22日、ヴェイルクロイツ連邦スクィバ州ディバリア海軍造船所にて竣工。翌年3月26日、超兵器<シュトルムヴィント>撃沈作戦において阻害艦隊として出撃、主砲弾複数命中により大破。同年12月12日、超兵器<アラハバキ>撃沈作戦において、艦首ドリルに艦体を分断され沈没。

 

 

把握済み。自分が出撃する前に沈んだ16の妹の内、直接遺言を、断末魔を聞いた、()()()()()()()11の艦魂の内の一人だ。無論、全て覚えている。でもそれがなぜここにあるのかが分からない。全ての板を確かめてみる。予想通り、それらは全て、最期の様子を直接聞いた妹達の名前が刻まれていた。

 

 

なぜ今更のように。背負えとでも言うのだろうか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。生き残った者にはその義務がある。

 

 

 

だがなぜ自分のところに?姉だから、だろうか?不甲斐ない姉に何を望むのだろう。

 

 

 

 

そして、それを思い出す。

 

 

 

 

 

『──連邦ヲ、ヨロシク頼ム』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そう言うことか、つまりまだその願い(遺言)は終わっていないのか。なら、やることはただ1つだろう。

 

《穂高、生駒》

 

《なんだ?》

 

《どうかしましたか?》

 

《手伝って》

 

《何を》

 

《作る。演算領域をギリギリまで割く。感情リソースを閉鎖する、カバーをお願い》

 

《了解。だが一体何をする気だ》

 

《……連邦の最終兵器を。アドミラリティの戦術システムを構成する。次いで擬似演算領域の構成を試みる。上手くすれば艤装も展開できるかもしれない》

 

《……正気か?》

 

《だからこそ》

 

《了解しました。そちらは上手く私がサポートしましょう。戦闘面は穂高、貴女に任せます》

 

《……国滅んでも知らねえぞ?》

 

《すいません、お願いします》

 

「──戦術AI<リーク>起動。感情リソースを圧縮。隔離保存、完了。A級特殊戦艦の戦術システムの再構成を試行。成功するまで繰り返す。演算領域の80%を回せ」

 

 

 

 

この時を以て、防空駆逐艦<霧>は、自分自身で感情を表現する術を失い、以後は<生駒>の感情リソースを流用する事になった。感情リソースを圧縮隔離した<霧>は、完全に歴戦の戦術AI<リーク>そのものと化していたが、戦闘においてもほとんど<穂高>に任せるようになった。それに気付いたのは常陸と伊吹、須磨、そして暮風のみだった。

 

 

超過艤装を降りた後、艦名板が変化したクリスタルを纏めたネックレスを付けて、それに誓った。

 

「次は絶対に、何があっても、皆を、何をしてでも、守るから。そのためなら感情なんて捨ててやる。だから、力を貸して、お願い、アドミラリティ」

 

 

もう迷うな。動くのは自分からだ。

 

今度は自分からデータベースにアクセス、A級アドミラリティの項を参照。

 

──A級特殊戦艦アドミラリティ。竣工年月日、戦没年月日ならびに搭載兵装、要項、()()()()。戦歴、対超兵器、ルフトシュピーゲルング、フィンブルヴィンテル戦に参戦。フィンブルヴィンテル戦においてR級リランと共に接近戦後、消息不明。誘爆に巻き込まれ沈没したとされているが、当該海域に残骸は確認されていない。

 

さあ、突き進め。それが決して開けてはならない、()()()()であったとしても。仲間を護るためならば、その程度障害になるものか。




以上です
アドミラリティ級特殊戦艦…

次は、感想で要望あった通り演習後の呉の話となります。いつになるかはわかりませんが、8月中には更新するので、更新遅くなっても見放さないでいただけると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十三話  兵器の目

良く良く考えれば、完全には心をへし折ってはないんですよね、今さら気づいた骸龍です。

不完全燃焼かもしれませんが、お付き合いください

それでは異星艦娘と新任提督、第二十三話です、どうぞ!


日本皇国海軍、呉第一鎮守府提督、植野忠海軍中将は出世欲が強い。が、同時にとても賢い──賢しい人間である。一般的に、出世欲が強い人間は、より少ない資源で大戦果を求める。そのため鎮守府運営はブラックとなってしまう。そしてやがて摘発される。横須賀第三鎮守府が良い例だ。

 

だが植野は、艦娘を、出世に必要なものであると捉えているため、むしろ運営はホワイトである。艦娘との関係も良好。ただし、出撃メンバーに選ばれるためには、かなりの練度と技術、それらのための相応の努力が必要となる。それゆえ堅実に戦果を得ることができ、植野の評価も上がる。

 

さて、このような状態にある植野の艦隊は当然ながら日本トップクラス。大本営の直轄を除けば文字通り頂点の鎮守府である。だからこそ、今回の敗北は()()()()()()()()予想外だった。

 

「すみませんでした提督!」

 

「何がだ?」

 

「その…勝利することができず……」

 

「初見でアレに勝てるのは、大本営だけだと、思うがな……」

 

植野は小声で呟いた。演習開始後、横須賀第三の神崎提督から見せてもらった資料は、その結論を導き出すには十分だった。深海棲艦出現前の護衛艦に近い戦闘能力を持ち鉄壁の防空網を敷ける巡洋艦(湧別)駆逐艦(太刀風級)。71㎝砲を持ち、核爆発にすら耐えうる戦艦(常陸)。かつて計画のみに終わった天城級の改良型巡戦(穂高)原子力空母(伊吹)原子力潜水艦(伊310)

 

ただ単に全てが現代艦ならば、とりあえず当てれば撃沈できるレベルでしかないが、光学兵器に陽電子砲すら積んでいる近未来艦()に超水平線探知が可能な電子巡洋艦()がいるとなると、砲弾も迎撃されかねない。大戦時の軍艦でどう勝てというのか。相手が艦娘状態で実戦未経験ならまだ付け入る隙はあっただろうが、発見されたのは戦闘時。しかも対多数の。数で押しきれるかどうかすら分からないとなると勝つすべはない。

 

これを指揮下の艦娘達に言うべきかどうか迷った植野だが、最終的に保留することにした。それより前に、演習の反省はすべきだと考えたからである。彼女らに驕っていた所が無かったとは言えないのだ。その点で、今回の大敗は、良い薬になったのではないかと思う。それで心を折られると正直困るが。

 

「敗因はなんだと考える?」

 

「……私たちが油断していたことだと思います」

 

「そうだな、相手の情報はほとんど開示されていたからな。いくつか不明な点もあるがそれは後で対戦者に聞く。他に何かあるか?無いならこのまま反省会だ」

 

「はい!」

 

「どうした島風……と夕立もか?」

 

「移籍できないか?って誘われたっぽい!」

 

「移籍?確かにお前らは高練度艦だし横須賀第三には居なかったはずだが……それは他の高練度艦にも当てはまるのは多いが……」

 

「何か戦闘の速度と能力がどうのって言ってたっぽい!」

 

「…ふむ、そう言えばお前らは敵の駆逐艦娘とタイマン勝負していたな。あとでその話も詳しく聞かせてくれ、他にはあるか?……ないな。ではまず夕立と島風、執務室へ来い。そのあとは……大和達だな、敵戦艦と近接戦闘したものは全員来い」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、島風、夕立。お前らはアレをどう見る?」

 

「ドロップ艦とは思えないっぽい」

 

「同感。あと多分アレが全力じゃない」

 

「最後のラッシュは?」

 

「あの変なアラームの後のでしょ?何もあそこまで手を抜いていた訳ではない、と思う」

 

「最後の時は目が違ったっぽい」

 

「目?」

 

「どこかで見たことあるような……あ、佐世保第一三鎮守府の娘があんな目をしていたような……」

 

「佐世保第一三だと?それは……」

 

佐世保第一三鎮守府は、一年前、呉第一鎮守府が主体となって摘発した、いわゆるブラック鎮守府の典型的な例であった。資材の横領、明らかに艦娘の能力を超過する多重出撃、日常的暴力。艦娘は、欲望の捌け口か、化物、兵器として扱われ、鎮守府解体後も、戦線に復帰した艦娘は少ない。そんな彼女達は、摘発突入時に救出されたとき、自らを含めた全ての艦娘を『兵器』として見ていた。

 

それと同じ目ということはつまり、

 

()()()()()()()()()()()()()()()、ということか?」

「感情が消えてたし、何も読めなかったっぽい」

 

機械が定められた作業をするように追い詰め、撃沈に追い込んだ。そこには彼女等の感情は一切関与していない。それは大抵どの艦娘もそうだが、しかし目から何も読み取れないというのはあり得ない。それはつまり、意思すら介在していない事になるからだ。夕立も島風も最大限改装を終え、多くの経験を積んでいる。彼女達から意思を隠し通すのは非常に難しい。

 

「分かった。ああ、あと勧誘は何と言われたんだ?」

 

「えーと確か、『お前らなら俺達の戦闘速度についていける可能性があるから、可能であれば仲間になってほしい』とかなんとか」

 

「ふむ……分かった。下がってよし。ああ、大和達を呼んでくれ」

 

「わかりました」

 

「──大淀、お前はどう思う」

 

「そのまま、と考えます。彼女等…いえ、男の方もいらっしゃいましたね、彼等は、艦娘として人間らしい感情を持ちながら、おそらく自分の意思でそれを()()()消すことが出来ると思われます」

 

「お前達も出来るか?」

 

「悔しいですが不可能です。多分それは他の…例えば大本営直轄艦隊でも不可能でしょう。これは多分練度の問題ではないと思います」

 

「横須賀第三で何かしら非合法な事が行われている可能性は?」

 

「あそこは今、艦娘が全体をまとめています。艦娘に対する非合法行為が可能とは思えません。自らの意思による実験等であっても神崎少佐が止めるでしょう」

 

「だな、神崎少佐が見逃すとは思えない」

 

「であれば彼等は最初から、そうだったのでしょう」

 

と、ドアをノックする音。

 

「──大和です、演習第一、第二艦隊全艦を連れてきました」

 

「入れ」

 

入ってきたのは、大和、武蔵、長門、陸奥、伊勢、日向、扶桑、山城、金剛、比叡、榛名、霧島の12人。先の演習で第一、第二艦隊として、常陸以下の横須賀第三鎮守府水上砲戦部隊と戦った者達だ。

 




以上です。
質問感想評価批評等、お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十四話  敵

UAが7000超えてました。多いのか少ないのかわかりませんが、まあ読んでくださる方がいらっしゃるのを励みにしていきます。

今回のお話は、前半は横須賀第三、途中から呉第一となります。

それでは 異星艦娘と新任提督 第二十四話、どうぞ!


「超兵器、ですか、そんなものが……」

 

「ああ、今俺の指揮下にいる軍艦で、対超兵器戦を潜り抜けたのはこいつだけだ。あとは全員どれかに沈められている。ああ、琴風と霧の別人格は除くぞ」

 

「そして一度、大日本帝国の軍艦として転生したあとに、またここに現れたんですか」

 

「そうだ」

 

「道理でやたら聞き覚えない名詞が出てきたわけですよ……帝国はまだしも連邦なんて……てことはその皇太子閣下も……」

 

「当然、そっちの方だな。ああ、安心してくれ、俺を除いて殆どの艦の帰属意識は日本にある……はずだ」

 

「貴方はどうなのです?」

 

「残念ながら、未だに、<常陸>である実感は湧かないな。琴風の話だと、<常陸>が参戦した戦いは二度、それも片方は10分とかからなかったらしいからな、戦闘時間が長かった故に、軍艦である自覚もまた<アドミラル・ヴェルス>が強い」

 

「超兵器相手の、ですか」

 

「そうだな。一応、俺は艦隊所属艦の中で2番目に多く超兵器と戦っている軍艦だしな」

 

「ちなみに一番は?」

 

「雹ことR級防空駆逐艦、レイラだ。あの艦は確認された中で最初の超兵器、ヴィルベルヴィントから、超兵器播磨に沈められるまで、出現した全ての超兵器との戦闘に参加し、そのほぼ全てで無傷で帰還している。経験と戦闘技術だけなら、一番は間違いなくアレだ」

 

R級防空駆逐艦Ⅰ型四番艦Ⅲ型仕様改装型、レイラ。砲熕兵器を主力とし、高性能な火器管制システムを搭載し、高速と、駆逐艦としては高い瞬間火力を発揮できるR級は、対超兵器戦において、戦力としてかなり多く運用されていた。

そのせいで戦没艦も多い。

 

レイラはそのなかで一番長く生き残り続けた艦である。

 

まあそれはさておき。

 

「この超兵器だが、転生した今だから言えることだが、おそらく地球産だ。それがどうやって俺達の惑星に現れたのかはしらん」

 

「それは既に解明されました。対超兵器戦争終結七年目に実施された、フィンブルヴィンテルの残骸調査により、フィンブルヴィンテルが超兵器の祖であったこと、超兵器同士で争った時代があったこと、そしてその能力についてなど、多くの事が判明しました」

 

「ついでだ。それも話してくれ、サイレン」

 

「了解しました、ヴェルス。まず、超兵器とは、超兵器機関を搭載し、何かしら、常識を超えた兵器の総称です。しかし、この時点で既に違いが存在するのです。超兵器機関も、いくつか種類があり、名称は同じですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のです。私たちの惑星に出現した理由は、そんな超兵器機関の一つが持つ機能の一つ、並行世界への干渉及び接続、が原因だと思われています」

 

「まて、開発経緯が完全に異なる、だと?」

 

「ええ、それについてですが、何隻か戦闘・航行不能状態で鹵獲した艦船型超兵器艦内から回収した資料から、歴史及び世界規模の出来事で()()()()()()()()記述が発見されまして、内容から、()()()()()()()()()()()()()()が構成できました。つまり、あの大量の超兵器群は、()()()()()()()()()()()()の地球から転移してきた、そう解釈できるのです」

 

「……お前を連れてきて正解だったな。そんなの俺も知らんぞ……さて、話を元に戻すとしよう。この超兵器は、恐らくその搭載機関──サイレン言うところの超兵器機関により、電磁的ノイズを発する。このノイズを探知する機械も存在するのだが、その機械に、昨日、演習中に反応が現れた」

 

「それで戦闘が一気に終結したわけですか。おかしいとは思ったんですよ、あのままなら戦闘終了はまだ先だろうと思っていたのに、かなり早く決着がついたものですから」

 

「といっても俺は特になにもしてないな。やったとすれば駆逐二人組だろ」

 

「感情リソースをカットして、演算領域を全部戦闘に回したそうですよ」

 

「なるほどね……」

 

そう言って常陸は遠い目をした。感情を文字通り消し去った(戦闘AIと化した)彼女等は恐ろしく強い。タイマン張った側は良くわからなかっただろう。

 

「えっと……すいません、()()()()()()()()()()()()()()

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、戦艦の方は特に何も変化は無かったか」

 

「はい。ですが、練度がやはり異常です。恐らく()()()()()()()()()()()()()()()()()レベルかと」

 

「実際には?」

 

「どの艦にも指輪は認められなかったと、各艦隊より報告を受けております。ケッコンカッコカリはしていないでしょう」

 

「……システムの壁を打ち破ったのか?!」

 

「あの距離で、最初から斉射、しかも初弾命中です。我々からすれば射程外ですが、あの艦にとっても有効射程ギリギリでしょう。それに最後、水平線の向こうから撃ったのも同様に、です。観測機が居たとはいえ、並大抵の練度で可能なことではありません」

 

第一、第二艦隊の面々の話から、二隻の戦艦(モンスター)に重点を置くことにした。

 

70㎝砲を搭載する戦艦常陸、150㎝砲を搭載する戦艦三河。圧倒的投射火力を誇るこの2隻の戦艦。通常であればその口径と破壊力に目がいくが、精度が低ければ、いくら破壊力が大きかろうが、遠距離から撃てようが意味がない。あれほど大威力の砲弾を、命中させる精度があって初めて脅威となりうる。

 

そして彼等はそれを初弾でやってのけた。紛れもなく、脅威だ。兵器の目云々を抜きに脅威だ。そう植野は即断した。

 

だが一方で、駆逐艦のような変化は見られなかったという。

 

 

『悪いがちょっと用事ができた。手早く終わらせてもらう』

 

 

あの謎の警報と、意味のわからない警告音声が流れた直後にこう言ったのだから、まず何かしら面倒事が発生したと考えて良い。その面倒事は、あの艦隊の構成員に共通して通じるものである。兵器の目も寧ろ急ぐことより、警報の内容に依る可能性もある。

 

が、推測できるのは精々その程度。そこから先は直接聞くしかないのだが、

 

「直接会うのは厳しいな……」

 

「有り得ないとは思いますが、提督の身の安全と、鎮守府運営を考えると直接は……同じ地方の鎮守府なら日帰りなのでどうにか……」

 

一番簡単なのは、きっぱり忘れて気にしないことである。

しかし植野はソレに多大な興味を持ってしまった。そして、それを解決する策ももたらされる。

 

大淀と二人で考え込んでいるところに、解決策を提示したのはなんと金剛であった。

 

 

 

「HEYテートク、つまりあの艦隊の構成員から話を聞きたいんデショー?」

 

「そうだな。出来たらそれが一番なんだが……」

 

「出来ないから困ってるんですよ……」

 

 

 

「ナラ、"鎮守府間交換訓練"で呼んだらどうデスカー?」

 

 

 

 




以上です。次話も早めに投稿します。

それでは、批評感想質問などお待ちしております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十五話  異質

更新遅れました。



それでは第二十五話です。どうぞ!


「感情リソースってなんですか?」

 

「「は?」」

 

「いやそれ何なんです?」

 

「何って……艦娘の感情を表すための演算機能だろ」

 

「はい?」

 

 

どうやら行き違いが生じているようだ。そう判断した神崎と常陸。まず常陸に説明を求めた。

 

 

「俺達は、俺達自身を、軍艦に搭載されていた戦闘用人工知能が実体化したものであり、この姿は対人インターフェイスだと考えている。演算領域はつまりその人工知能の演算能力を表す。」

 

「その一部を利用し、人間同様に感情を作り出す。その部分を感情リソースと呼ぶ。この感情リソースの容量は馬鹿にできなくてな、カットするだけで戦闘効率は跳ね上がる。普段は余りの能力だけで艤装の操作、つまり戦闘を行っている」

 

「では、拡張領域はどうなのでしょうか?」

 

「戦闘用人工知能の戦闘ログ及び人工知能本体のデータが入っている。ほとんどの艦はそれで完全に埋まってしまうが、霙級と多重艦は違うな。特に須磨。アレの拡張領域はおかしい」

 

それを聞いて、神崎は唖然とした。当たり前だ。自分が知っている艦娘の演算領域とあまりにもシステムが違いすぎる。

 

彼が言った言葉を噛み砕いて端的に言うならば、普通の艦娘は、人間素体であるのに対し、彼等は、生体ロボット──アンドロイド素体に近いということだ。

 

普通の艦娘は、感情を含め、通常の思考も戦闘時の思考も全て体に付属する。そして、戦闘の際に艤装を動かす時の計算のみ、演算領域に頼る。拡張領域とは、所謂超過装備──大和型や長門型以下の試製51㎝連装砲など、本来の兵装とは異なる装備の時にのみ利用される領域であり、普段はまず埋まらない。

 

一方で常陸達は、全ての思考を演算領域に頼っている。それは前前世が、人工知能搭載戦闘艦という特異な形態だったからだろう。艦娘となってもそういう設定まで反映されているのだ。そしてそれは演算領域全てが普段から埋まるという結果をもたらした。

 

つまり彼等は、本来の兵装しか装備出来ないと言うことだ。

 

須磨の拡張領域がおかしいというのは、おそらく彼女が試験艦──それもほとんどの装備の試験が可能な軍艦だったからだろう。元から多種の兵装が装備可能なら、人格や感情など全て格納しても、余裕があるのだろう。

 

 

そう言えば、と神崎が思い出す。いつの間にか、門で陸軍と睨み合う部隊に機動戦闘車に似た車両や、見たことのない戦車が加わっていたな、と。そして初日に、須磨がそれを展開させたことも思い出した。

 

 

……海軍の軍艦が陸軍の、しかも陸戦用装備を搭載し、装備できるのはどうかと思うが。

 

ともあれ、つまり彼等は、異質な存在であると分かった。

 

現行の艦娘では勝つことの出来ない強者である事も。

 

そしてそんな彼等ですら苦戦するという相手、超兵器。元は異次元の地球産の兵器だというソレが、常陸達同様、次元を超えて現れた。

 

どうやって相手をすれば良いか、悩み始める神崎だったが、答えは目の前からもたらされた。

 

「基本は全部俺達がやる。今度から遠征部隊に、俺達sideの艦娘を一人か二人入れろ。二人居れば確実に時間は稼げる」

 

「遠征部隊となると、燃費を考えると、駆逐か軽巡である必要があるんですが……」

 

「俺と伊吹は核融合炉、須磨も多分積み換えが可能だ。駆逐軽巡は、雫を除けば通常動力だが。燃費については考えなくても済むだろう」

 

雫は航行にはともかく、兵装に多大な電力を必要とする。

 

そのため、駆逐艦としては異例であるが、伊吹の融合炉に似た融合炉を1ユニットのみ搭載している。

 

他も、島風改級を含有する暮風を除き、太刀風級、霙級、湧別の機関の燃費は、現代艦なだけあって異常に良い。艦隊全艦が、遠征に組み込む条件を満たしていた。

 

「本当なら全ての遠征部隊が南方へ行かなければ良いが、そういうわけにもいかないのだろう?であればせめてこの鎮守府だけでも迎え撃てるようにしなくては」

 

観測されたノイズによれば、超兵器は未だ南極を周回中であることが判明している。また、その移動速度から対象超兵器は、ヴィント級の超高速艦と判明した。いつ北上するか分からないが、あの速度では襲撃が判明してからでは迎撃は遅すぎると分かっている。対策は早い方が良い。

 

「そうで「神崎さん」──はい、なんでしょうか?」

 

了承しようとした神崎の言葉を遮るように、部屋の入り口から声がかかる。

 

「呉第一鎮守府の植野提督からお電話です」

 

「わかりました──はい、変わりました、横須賀第三の神崎です」

 

『呉第一の植野だ。実は頼みがあってな』

 

「はい、なんでしょうか?」

 

『鎮守府間交換訓練を申し込みたいのだが』

 

「……それは構わないのですが、どちらかというとこちらから申し込むべき事かと思ったのですが……?」

 

『いや、ちょっと気になることがあってな。そして条件がある』

 

「──条件、ですか。それはどのような?」

 

『貴官のもとに居る、例の12隻。その中から6隻で一艦隊を編成し、こちらに寄越してほしい。選ぶ6隻は自由で構わない。こちら側の編成は、大和、衣笠、那珂、雪風、磯風、伊13だ』

 

「────了解しました、ではこちらの編成は追って送ります」

 

『変な要求をして申し訳ない』

 

「いえいえ、そのような条件をつけるということは、気になることとは彼らに関することなのでしょう?一応我々と彼等の指揮系統は並列ですから、我々としては、そちらの高練度艦に来ていただくのはメリットしかございませんので」

 

『時期は1週間後で良いだろうか?』

 

「────はい、ではそれでよろしくお願いします」

 

『うむ、ではな』

 

「ええ────それで常陸さん、どうなさいますか?」

 

「旗艦は須磨。それに太刀風級3人、それから雫と雹を送る」

 

即決した常陸に神崎は目を剥いた。一方で伊310は冷静に理由を問う。

 

「常陸、理由は?」

 

「向こうの目的は、こちら側の情報収集だろう。それを叶えてやろうと思ってな。しかし、俺は一応この艦隊の総旗艦だ。簡単に動くわけにはいかないし、伊吹は艦隊唯一の航空戦力。手元に置くべき。となると大型艦で残るは霧の穂高と須磨だが、霧はどうも危なっかしいからな。一方で須磨は連邦艦の中で最先任で、しかも艤装換装が可能。行かせるには十分だ」

 

「空母を連れていけない以上、防空はしっかり対策すべき。そこで太刀風級を入れる。連携を取りやすいのは同型艦同士だしな。それに暮風は島風改級だ。水上砲戦にも振れる。そして雫は、その火力を当てにしている。半ば敵地に送り込むようなものだからな。雹は戦闘経験を当てにしている。これも理由は同じだ」

 

「んでまあもう1つ付け加えるならば相手が潜水艦(伊13)を連れてくるなら、こちらも残しておくべきだ、と思ってな。いやしかし中々楽しそうだな」

 

「では連絡してきます」

 

 

 

そして数日後。呉第一鎮守府から派遣艦隊が出港するのと同時に横須賀第三鎮守府派遣艦隊も出港した。

 

()()()()を試すため、全員が超過艤装を展開した状態で。

 

 

 




以上です。


感想批評質問等、お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十六話  交換訓練

皆様、明けましておめでとうございます。

ならびに更新が遅れに遅れまして申し訳ございません。


中々納得のいく展開が思い浮かばず、書いては消し書いては消しの繰り返しでした。

とりあえずは出来たものの……

まあそんな感じで第二十六話です。
どうぞ!


 

 

「提督。偵察機から報告です。横須賀第三の派遣艦隊を確認したと。ただ……」

 

「ただ?何かあったのか?」

 

「発見したのは超過艤装なのですが、その数がどう考えても一艦隊を超えているので……」

 

「なに?向こうからの連絡では6隻だっただろう?神崎さんが嘘をつくとは思えないが……発見したのは何隻だ?」

 

「9隻です」

 

「9?3隻多いな……護衛か何かで付いてきたのか?」

 

「不明です。到着予想は二時間後です」

 

「ふむ。何はともあれ迎えには出ねばならぬな」

 

「はい、わかりました、護衛は」

 

「第一艦隊で良いだろう」

 

「承知しました」

 

 

 

 

そして二時間後。呉第一鎮守府に9隻からなる艦隊が現れた。それらがそのまま埠頭に付けると、やがて内6隻から艦娘が降りてきた。そして植野の前へ来ると同時に、9隻すべての艦影が消滅した。

 

 

「貴方が呉第一鎮守府の植野提督ですね?初めまして。横須賀第三鎮守府交換訓練派遣艦隊旗艦の須磨です。一週間、どうぞよろしくお願いします」

 

「呉第一の植野だ、よろしく頼む」

 

「秘書艦の大淀です。よろしくお願いします」

 

「それで……このあとは何をすれば良いでしょうか?」

 

「いくつか聞きたいことがある。執務室で話をしよう」

 

「了解しました、私だけでよろしいでしょうか?」

 

「そうだな」

 

「では他艦には鎮守府を案内していただけますか?あ、それと、埠頭に超過艤装の常時展開をお許しいただけますか?」

 

「ふむ、了解した」

 

「ありがとうございます」

 

 

須磨はそう言うと、超過艤装を展開した。出現したのは、大和型戦艦を軽く凌駕する巨大な軍艦、ただしその甲板上には一切の兵装が見受けられない。

 

 

「V級特務艦ヴォールン、自律戦闘システム始動。一番ならびに四番は対空、二番ならびに三番は対艦、副甲板は特務に備え」

 

 

その声と共に、甲板上が光に包まれたと思った次の瞬間には、先程まで確かに無かったはずの兵装が存在した。

 

これも彼等にしか存在しない機能の一つ。

 

 

艦船時代から、人の手が必ずしも必要ではない彼等。つまり艦娘となっても、在りし日の軍艦そのままである超過艤装は、艦娘本人が乗船する必要はない。艦内に再現された戦闘用人工知能が本人同様に全てをこなす。

 

 

つまり、この場合、艦娘本人の意識と、軍艦内コンピューターと、別々の体を操作する、同じでありながら別々の。普通なら混乱すると思われた。が、意識の根本がコンピューターである彼等は、かなり単純な方法でこれを解決した。

 

 

二つ意識があるなら、そのまま分ければ良いんじゃね?と。重複する意識をそのまま、並列化しただけである。

 

 

人間とそれを素体とする普通の艦娘ではまず不可能である。

 

 

さらにこの意識並列化によって、偶然ながら別の利点も判明した。

 

 

複数艤装所持艦娘の、超過艤装の()()()()()()である。入港時の9隻のうち余分な3隻は、<三河><劔>と<島風>改級<琴風>だった。なお<幻炎>は別の任務を振り当てている。

 

 

 

「では行きましょうか。執務室はどちらですか?」

 

「あっちだ、着いてきてくれ───ああ、青葉」

 

「はい」

 

「彼等に鎮守府の案内を」

 

「わかりました!」

 

「では行きましょうか。後の指揮は頼みますね、雹」

 

「了解──えっと、青葉さん、ですね。初めまして……ですよね?」

 

「あ、はい、そうですね」

 

「僕は二度目だよね、やっほー青葉さん。演習の時はごめんね、後遺症とか残ってない?」

 

「いえいえ、完治しておりますよ」

 

「それは良かった。どうしても僕じゃああんな戦い方しか出来なくてさ───あ、そうだ。雹、ここにはどこまで情報公開OKなの?」

 

「A級機密までは無条件で、各軍のS級機密及び軍機以上は、それぞれの旗艦に──ああ、艦隊は全員連邦でしたね、須磨に許可を取れと」

 

「それはまた大分大盤振る舞いだね。僕の兵装まで公開OKとは──じゃあ青葉さん達にアレな事をした詫び含めて、何で僕があんな戦い方しか出来ないのか教えるよ」

「じゃ他の人たちは私が案内するね!」

 

「よろしくお願いします、島風()()()()()

 

 

この世界で初めて会った姉を見て、琴風はそう言って微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、横須賀第三鎮守府。

 

 

「演習以来か、どうも、大和さん」

 

「そうですね常陸さん」

 

「初めまして、艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ、よろしくね!」

 

「貴女が那珂さんですか。私は湧別と言います。よろしくお願いしますね」

 

「そんな固くなくて良いよ?那珂ちゃんって呼んで良いよ?」

 

「初めまして、霙型防空駆逐艦一番艦、霙よ、よろしく」

 

「同じく、霧。よろしく……」

 

「初めまして、陽炎型駆逐艦、八番艦雪風です!」

 

「陽炎型十二番艦磯風だ。よろしくたのむ」

 

「どうも初めまして、潜水艦伊310よ、よろしく」

 

「初めまして、伊58です、ゴーヤって呼んでも良いよ!」

 

「衣笠です、よろしく」

 

 

 

「さて、取り敢えず顔合わせも終わったところで、大和さん、貴女には少々知っておいてほしい事がある。説明を行うので執務室まで同行していただけないだろうか?」

 

「?はい」

 

 

 

常陸が大和を連れ、神崎と共に執務室へ向かい、姿が見えなくなったところで、

 

 

 

 

転生艦達は噴き出した。

 

 

「待って常陸の敬語とか初めて見たんだけど」

 

「ふふっ……伊吹さん、それ、くくっ、言っちゃダメなやつ……」

 

それを見て、衣笠が不思議そうに言った。

 

「あの方が何か?」

 

「ふふっ、いや、あのね、常陸ってね……あ、伊吹、これどこまで言って良い?」

 

「全部」

 

「マジか?!えっとね、常陸の性格は軍艦時代の艦長とほぼ同じなんだけど、その艦長がさ、滅多に敬語なんて使わなかったから、常陸も敬語なんてほとんど使ったこと無いの」

 

 

だからあんな真面目くさった顔で敬語使ってるのを見ると笑えてくるんだ。

 

 

そう続けた伊310に、那珂が怪訝な顔で疑問をぶつけた。

 

「その人そんな態度で戦艦の艦長になんかなれたの?」

 

「うん、というかそれ以外の態度の取りようが無かったんだよね、彼は帝国の皇子殿下だったから」

 

 

帝国の威信をかけ、技術を結集して建造された巨艦は、単艦でも大戦力である。実際、超兵器アラハバキを単艦で相手している。そのため万が一にも皇帝一族に牙を剥かぬよう、皇子が艦長として任じられた。

 

 

彼が立場上敬語を使って良いのは、兄である皇太子、父である皇帝のみ。

 

 

当然ながら人工知能も搭載されていた戦艦アドミラル・ヴェルスだが、現在その人格は、初代艦長たる皇子がモデル。無論知識としては敬語の使い方は知っているが、使う相手が居ない。

 

 

 

「皇子が、艦長?」

 

「うんそうだよ、あれ、私何か変なこと言った?」

 

 

とはいえそれで話が通じるのは転生艦のみ。史実を辿った普通の艦娘には何のことやらさっぱり。

 

 

「えーっとね、私達はね……」

 

 

怪訝な顔をしている呉第一鎮守府派遣艦隊の面々に、説明を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、大和は、執務室でより詳しい説明を受けていた。

 

「……超兵器、ですか」

 

「そうです、にわかには信じがたいかもしれませんが……」

 

「なあ、神崎よ」

 

「どうかしましたか、長門司令」

 

「会議室へ移動したらどうだ?」

 

「会議室……?ああ、テレビですか」

 

「ああ、常陸、例のビデオは持っているのだろう?」

 

「ああ。そうか、そっちが手っ取り早いか……外にいる連中も呼ぼう」

 

例のビデオ、とは、大和達が派遣されてくる前に、転生艦群と、横須賀第三の各艦種代表者を集めて見た、超兵器群の映像である。

 

劔のデータベースや、各艦の砲塔付属カメラ、航空写真・映像などをかき集め、どうにかすべての超兵器の映像を集めた物。

 

当初超兵器だと確認されていなかったヴィントシュトースから、ヴォルケンクラッツァーやフィンブルヴィンテルのような化け物まで、全ての超兵器の姿を集めたその動画は、超兵器の異様な強さを物語るのに十分だった。見終わったとき、神崎すら顔を青ざめさせ、代表者のなかにははっきりと震えている者達もいた。

 

 

「トラウマにならなきゃ良いけどな……伊吹、聞こえるか、超兵器について説明するから全員つれて会議室に来い。そうだ、例のを見せる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員揃ったな、ではこれから俺達の主敵の動画を見せる。そして可能であれば貴艦らにも共闘を要請したい。これを見て不可能だと思うならそれで良い。ただそれを他のところで喋らなければな」

 

「これから見せるのは、俺達が帝国海軍の軍艦になる前、やはり軍艦として存在したとある世界のとある惑星での動画だ。そこで俺達が戦った、とある兵器群との戦闘記録、その一部だ」

 

「それらはいずれも化け物じみた兵器で、地球では超兵器という名で呼ばれていたらしい。事前注意としてはこれくらいか。くれぐれも、相手を過小評価せずに見てくれ。では伊吹」

 

 

「はい。途中。各超兵器ごとに、我々が知っている事について解説を入れていきますので、お聞きください」

 

 

 

最初に映し出されるのは、動画。炎の海を駆け抜ける蒼い艦。

 

 

 

「高速巡洋艦ヴィントシュトース。この動画は連邦海軍所属駆逐艦ウロボロス第一砲塔カメラが撮影したものです。最高速度は70ノット以上」

 

「当初は連邦、帝国共に互いに相手側の新兵器だと考えていました。撃沈したのは連邦海軍所属駆逐艦ウロボロス。被害は帝国海軍所属巡洋艦2、駆逐艦18撃沈、連邦海軍所属巡洋艦2、駆逐艦12撃沈、6撃破です。また撃破艦もほとんどが修理不能と判断され解体されました」

 

 

炎は全て、撃沈された軍艦の放つ最期の灯火。

 

 

「撃沈方法は、搭載全ミサイル、噴進砲を周辺に叩き込み進路を限定、誘導先に対潜短魚雷を囮にロケット推進誘導魚雷を紛れさせて撃沈しました」

 

 

今の艦娘、つまり大戦型の軍艦ではだいぶ厳しい方法である。

 

動画は、最終的に右に大きく傾き、艦上構造物が廃墟と化した状態で停止したヴィントシュトースの姿で終わっていた。

 

 

 

「続いてヴィントシュトースの拡大強化型、ヴィルベルヴィント、シュトルムヴィント、です。どちらとも動画撮影を担当していた囮艦隊旗艦が轟沈しているため、航空写真のみとなります」

 

「最高速度はヴィルベルヴィントが80ノット、シュトルムヴィントに至っては180ノットに及びます。連邦、帝国はこの時これら超兵器を第三勢力と判断、合同で迎撃を始めました。両艦共に撃沈方法は、阻止艦隊及び無人機で行き足を止め、主力艦隊の間接レーダー管制射撃により撃沈しています」

 

 

 

「当然阻止艦隊の損害は大きく、一番成功したシュトルムヴィント戦でも半分以上が撃沈破され、近接火力支援に当たっていた戦艦群にも損害が出ました」

 

スクリーンに映し出された合同艦隊は、隊列を大きく崩し、炎上しながらも搭載火器全てを盛んに撃ち放っていた。

 

 

 

「現在南極付近に観測されている超兵器ノイズはこれら三隻によるものと判断されています。数日前、演習当日に一時的に北上しましたがその後また南下しました。原因は不明ですがいつまた北上してくるかわかりません。これの迎撃への協力を、呉第一鎮守府にも要請する次第です」

 

 

しばらく部屋は沈黙に包まれた。

 

 

「なお勿論ただで協力してもらおうと考えているわけではありません。我々には、各艦へ超兵器を相手取るための兵装を提供する用意もあります。ただその場合でも我々の艦隊から誰か一人は同行する必要がありますが……」

 

「なぜでしょうか?」

 

「迎撃兵装の取り扱いに慣れた艦、そしていざというときに殿になる艦が必要だからです。無論提供する兵装のなかに全自動迎撃システムは存在しますが、奴等の攻撃はそれで凌げるほど甘くはないので、迎撃に長けた専任艦が必要です」

 

 

例えば、高速系超兵器なら酸素魚雷など。超兵器は基本的に質で勝ってるのに数でも押し潰しにかかる相手である。

 

それを捌くには時に個艦防衛だけでは不足する。

 

「我々型の軍艦が、相手の攻撃を捌き、進路・攻撃のタイミングを指示します。その通り動けば、犠牲は最悪でも1隻だけで終わるでしょう」

 

無論その1隻は、

 

「無論その時に沈むのは我々の誰かですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、全く同じような説明を、似たような経緯で、呉第一鎮守府で行われていた。こちらでの説明担当は琴風。本来姉妹艦が存在しないはずの駆逐艦島風のことを姉と呼んだ理由、複数の超過艤装の理由、全てを説明していた。

 

 

「今頃、同じような説明を横須賀でも、大和さん達相手に行っているはずです」

 

「この、超兵器とやらと、君達の、転生とやらについての、か?」

 

「ええ、協力のお願いも」

 

「かまわない。此方としてはメリットは大きい。近代艦の兵装を貸与してもらえるならば、深海棲艦への攻撃も容易い。また超兵器とやらもどうやら日本の敵であるらしい、なら我々が迎撃するのも任務のうち。本来なら我々の力だけでやらなくてはならないことに協力してもらえるならありがたいことだ。良いだろう、呉第一鎮守府は貴艦隊、及び横須賀第三鎮守府に協力しよう」

 

 

「ありがとうございます。ついてはもうひとつお願いがあります」

 

「なんだ?」

 

「明日からの遠征艦隊、我々から1隻ずつで構いませんので、護衛役に組み込んでいただきたいのですが」

 

「ああ、構わないよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 




以上です。

なお、この展開に伴って前話の内容を少々訂正しました。

それでは感想批評質問等お待ちしております。

今年も本作品をよろしくお願いいたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十七話  蒼き突風①

まずは一年以上更新が停止していた事を深くお詫び申し上げます

ちょっと色々個人的に忙しく、続きを中々書けず気付いたら一年経ってました。
ちびちび書きため、ようやく1話として挙げられるだけの量になったので投稿します。
ある程度暇もできてきたので、徐々に連載を再開します。別世界の軍艦達の紡ぐ物語を読んでいただければ幸いです。


 

 

 

 

「なんか、静かですね?」

 

「……いつもこんな感じ。私は任務に集中できるから良い、けど、やっぱり、変?」

 

「いいえ、雪風のいる鎮守府と全然違うのでびっくりしました」

 

「……兵器だから、指示以外のことはしちゃいけない、って言ってる。一理あるから私も従ってる」

 

 

 

喋っても注意されないけどね、と彼女は無表情だが恐らくおどけて言っているのだろう。

 

 

 

「命令以外の事はするな、ですか」

 

 

 

ブラック鎮守府に良くある事だ。新しく神崎が提督として着任してから、既に1ヶ月。改善されているかと思ったが全く改善されていないようだ。

 

 

 

「彼は、敵の陣中に居る割には良くやっている。むしろ艦娘側に歩み寄りが見られないのが問題。ひいては前任の愚劣さが問題」

 

 

 

まるで雪風の思考を読んだかのような発言。

 

 

 

「この国の指揮官は無能が多過ぎる。自ら思考し行動できる、艦娘の利点を潰してる。そんなんじゃ勝てる戦争にも勝てないしむしろ負けに行ってる」

 

 

 

感情を持ち、自分で考える事が出来る兵器。それは現代の水準の遥か先を行く。おまけにそれに至るまでの積み重ねが存在しないのだ。ならばその扱いが覚束ないのも理解はできる。だが

 

 

 

「艦娘が登場して10年は経過している。もう指針が立っててもおかしくはない」

 

 

 

10年だ。兵器の開発競争、それも戦時中ともなれば10年は長い、長すぎる。

 

 

 

「未だに艦娘の定義すら決まっていないのは問題。まあ分からなくもないけど」

 

 

 

人か兵器か。未だに海軍では派閥に別れており、統一すら出来ていない。今のところ、両者の比率は半々くらいだろうか。

 

そして兵器派の中でも一番の過激派が、ブラック鎮守府である。つまり艦娘は兵器であるから物として扱ってよい、と言う思想の下、艦娘が使い潰されていく鎮守府である。

 

 

 

(そもそも艦娘を単体としてとらえるから……)

 

 

 

霧は、口に出さずに、呟いた。艦娘は基本人間と同じだと考えて良いが、本来、艦娘は一つの個体ではなく、群体あるいは複合生命体と考えるべきである。それが合同艦隊所属艦の出した結論。この世界の、本来の艦娘たちの在り方を聞いて、自らと比較し導き出した論理。

 

 

 

「……一番しっくりくるのは、私達が兵士だっていう考え方」

 

「兵士?」

 

「そう。歩兵部隊に例えるのがわかりやすいと……?」

 

「どうかしました?」

 

「いや、今一瞬、何か嫌な予感が……」

 

「予感、ですか」

 

 

 

予感、と言うが彼女のそれは、そこまで不確実なものではない。現時点での観測結果から、計算によって生み出されるれっきとした予測。

 

何かしら、彼女自身すら自覚できない小さな異変を拾ったのだろう。

 

だからこそそれを自覚するために警戒を集中させる。それが幸いした。

 

 

 

「艤装<生駒>緊急起動!」

 

 

 

対空レーダーが、敵の攻撃を捉える。瞬時に最も防御力の高い装甲巡洋艦<生駒>の艤装を展開。

 

対象を中口径砲弾と断定。口径は20センチ。対水上レーダーに反応無し、超水平線攻撃と断定。広範囲警戒対空レーダーに砲弾以外の反応なし。以上より多弾頭もしくは特殊分類弾頭と推定。

 

迎撃を開始する。

 

 

 

「対空戦闘、始めてください」

 

 

 

装甲板が開き、VLSからミサイルが放たれる。起動を急いだ上にレーダー系統に出力を絞ったため、光学兵器類は使用不能。実弾兵器のみでの迎撃になる。

 

 

 

「迎撃に成功。どこからでしょうか」

 

「……艤装の換装、ですか」

 

「艤装<穂高>通常起動」

 

 

 

探知能力と攻撃能力が一番高い<穂高>の艤装を展開。

 

 

 

「深海棲艦の攻撃とは思えない……不味いか?」

 

「深海棲艦じゃない? まさか……!」

 

「……いや、目標はこちらじゃないのか?」

 

 

 

第二撃が来ない。

 

 

 

「こちら横須賀第三、南方遠征第一艦隊所属戦艦<穂高>。付近を航行中の全艦隊へ、超水平線攻撃を受けた。目標を探知できず。射程延伸砲弾による超長距離射撃と推定。電波照射は無いため、特殊分類弾頭と思われる。各位警戒を厳にされたし」

 

『こちら呉第一、南方遠征第二艦隊所属駆逐艦<琴風>。緊急事態に伴い指揮系統は無視する。撤退は?』

 

「……<琴風>、お前艦載機は居るか?」

 

『牙龍を一機借りてる』

 

「対艦兵装で南に出せ。俺も南に出す。警戒線を敷いて行く。今のところ超兵器ノイズは観測できない以上判断できん」

 

撤退の判断基準は一応超兵器ノイズの確認となっている。

『了解』 

 

「ノイズを確認次第撤退する。牙龍全機発艦、対空対水上戦闘用意。二機は南下、一機はこのまま上空待機。第二撃があった場合の迎撃を」

 

 

 

呉第一南方遠征第二艦隊の位置は横須賀第三南方遠征第一艦隊のやや西側。二艦隊合計三機のヘリは心許ないが、それなりの警戒線は引けるはずである。

 

 

 

「水偵、出そうか?」

 

「……お願いします。艦隊の南方に出す形で展開させてください。ただ牙龍の警戒線よりは北方に」

 

 

 

一機だけとはいえ、目は多い方が良いはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「牙龍発艦、南方へ展開後<穂高>所属機と連携して警戒線を、っ対空戦闘!」

 

 

 

第二撃は牙龍発進中の<琴風>側にやって来た。

 

 

 

「目標は対空目標、数は9、速度から砲弾と推定。対空戦闘を開始します」

 

 

 

VLS及び牙龍が対空ミサイルを発射。

 

 

 

「発射地点の概算を開始」

 

 

 

弾道から発射地点を予測、牙龍を向かわせる。

 

 

 

「敵弾探知、第三撃もこっちに来たんですね……こちら<琴風>、本命はこっちです。第三撃がこちらに来ました。事前手順通りに行動に移ります」

 

『了解した。震洋を先行させる。可能な限り急行させるが想定より遠いぞ』

 

「お願いします。私達だけでは場合によっては受けるだけで精一杯なので……」

 

 

 

答えながら、出撃前に艦隊内ネットワークを通じて行われた行動説明を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず遠征に付く艦は合わせることができた」

 

 

 

呉側に付くのが軽巡洋艦以下なら横須賀側に大型艦が、横須賀側に軽巡洋艦以下が付くなら呉側に大型艦が付くように調整をしてもらった。

 

合同艦隊所属艦はいずれも通常の戦争に加え超兵器との戦闘を経験した精鋭ばかりであるが、単艦で超兵器を相手どれる艦は多くない。超兵器を単艦で相手取り相討ち以上に持ち込めるのは<須磨><三河><常陸><伊吹><雫>くらいだ。

 

特に駆逐艦は<雫>と<琴風>を除き、いずれも対空戦がメインである。<雫>を除き、超兵器に対抗することはできない。

 

 

 

しかし現状確認されている超兵器はヴィントシリーズと呼ばれる高速艦型超兵器。その超高速を武器とする超兵器で、兵装と装甲はほどほどしかないため、速度に目を瞑り、兵装と装甲だけ考えるなら<穂高>でも勝利できるだろう。そして速度を埋めるための方策もあった。

 

 

 

「どちらに来ても遠征艦は可能な場合は逃がせ。可能でない場合は超過艤装のCICに入れろ。大型艦に来た場合はそのまま相手をして、隙があれば震洋で撃沈を狙っても良い。小型艦に来た場合は震洋ともども時間稼ぎに徹しろ。魚雷ロケット弾全部使い果たして構わない。大型艦が来るまで敵を引き付け、釘付けにしつつ戦闘状態を維持しろ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超過艤装、展開」

 

 

 

付けている艤装が光に包まれ、そのまま目の前で艦体が顕現する。艦橋から外の見張り台に出る。

 

 

 

「超過艤装、展開」

 

 

 

もう一隻、時間稼ぎの要になる改<島風>型を展開。その一方で<太刀風>級の艤装からタラップを出す。

 

 

 

「全員、こちら側に乗ってください。多分超兵器が来ます」

 

 

 

未だノイズを探知できていない事に内心首を傾げながらも告げた。

 

 

 

「わかったわ」

 

「あと、まだ甲板で待機していてください。連中が目視出来たら、例の兵装を各自の判断で撃ってください。撃ったら艦内へ退避を。場所は入ればわかります。撃つまでは死ぬ気で防御回すのでご安心を」

 

 

 

そういうと、タラップを横付けした状態の改<島風>級へ伸ばし、そちらへ移動する。

 

 

 

「待って、琴風はどうするの?」

 

「私はこっちで戦闘を行います。大丈夫です。そう簡単に沈みませんよ、お姉ちゃん。あ、あと、そっちは自動で動きます。心配なく」

 

 

 

そういって笑うと、琴風は艦内へ消えて行った。

 

 

 

『<琴風>より全艦、対水上戦闘用意。我に続け』

 

 

 

ややあってスピーカーから少し上ずった琴風の声が聞こえた。ほぼ同時に改<島風>級が動き出す。

 

 

 

『全戦闘艇展開。本艦は超兵器出現の緊急事態に基づき、これより原隊の指揮を離脱、U級艦隊型駆逐艦<ウロボロス>の指揮下に入る。全速前進、対水上艦戦闘用意。<ウロボロス>後方にて距離をとり突撃の援護を行う』

 

 

 

そしてスピーカーから再び琴風の声。先ほどと違うのは、その声がとても冷静である事。気付けば両舷に浮かぶ四隻の小型艇――小型無人戦闘艇<震洋>。それらはゆっくりと動き出した<太刀風>級を追い抜き、改<島風>級の前に出た。

 

 

 

 

『敵艦第四射弾探知、対空戦闘』

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず蒼き突風までは何となく出来てます。
そのあとはまた暇があるときに少しずつ、少なくとも一年掛かることはもう流石に無いと思います……


感想評価質問などお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。