だが奴は弾けた (宇宙飛行士)
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Q.ねぇ、今何処?


最後の一撃(リンク召喚)は、せつない。




 

 

 

 

 

 

 

━━アクセルシンクロォオオオオッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら、コンクリートの壁にバイクで突っ込んでいた。

 

いや、何言ってんだコイツと思うかもしれないが事実なんだ。俺だって驚いてる。

 

俺は昨日、バイクの免許を取得した。その時のテンションは超アゲアゲでイカしたライムを紡ぐほどだった。

 

まあ、その、なんだ。一緒にバイクの免許を取りに来た友達は、俺より何週間か早く取得して華麗にそれを乗りこなしていたのだが。

 

つまるところ、俺はバイクに乗るのがヘタで、教習所では「二輪で走る核弾頭」と呼ばれるほどだったのだ。

だから免許を取得した昨日は本当に達成感が溢れて、イヤッホォオオオオオ!!!と叫んだのさ。だって核弾頭の俺がだぜ?イヤッホォオオオオオ!!!

 

 

まあそんな感じで、俺は兄貴のバイクを借りて夜の街を駆けていたのさ。

 

俺はこの街に吹く一陣の風……!何人たりとも俺の前は走らせないぜぇ!!と中二っぽいことを心で呟きながら愉快なツーリングを楽しんでいた。

 

そんな時である。俺はふと、自分が何故バイクの免許を取得して、そしてそれを乗りこなしたいかの動機を思い出したのである。

 

そうだ、俺はコイツに乗ってやりたいことがあったんだ。風をこの身で感じ、そして全身でそれを体現させたかったのだ。

 

俺のやりたかったこと。━━それは遊戯王5D'sというアニメのあるシーンだ。

 

遊戯王5D'sとはカードゲームを主軸においた遊戯王DM、遊戯王GX、そして遊戯王5D'sと続くアニメのことだ。世界で人気のデュエルモンスターズ、それを中心に話は進む。古代エジプトのファラオを巡る話、ひたすら主人公がガッチャして超融合してデュエリストからリアリストになる話、という風にカードを通してDMとGXは進んでいった。

当時それを見ていた俺は一週間ごとに楽しみながらアニメの続きを待っていた。

 

そしてついにGXから5D'sのシリーズに移る時、俺は「次はどんな遊戯王になるんだ?」とわくわくドキドキしながら自分の期待のハードルを上げていた。上げすぎていたと言ってもいい。まるで修学旅行を楽しみにしてベッドで眠る前夜のような感じだ。こんな感じで期待しすぎて、いざ「よし!行くぞ!」となると、結局「あまり楽しくないな」と期待のハードルを越えられず、意気消沈するものなのである。

 

そのような心持ちのなか、俺は遊戯王のアニメを見ることにした、だが、実際にそれを視聴して━━驚いた。

 

え、なんでバイクに乗ってるんや?

え、なんでデュエルで決着をつけるんや?

それでいいんか?いいんです(ニッコリ)

 

遊戯王5D's、なんとそれはDホイールというバイクに乗ってデュエルをするのである。

 

なんてこった。俺の期待のハードルを越さずにぶち破ってきたぜ。

 

当時の俺はそのDホイールのあまりのメカメカしたカッコよさに夢中だった。正直な話、デュエルよりもDホイールの方に視線はいつも釘付けだったのだ。だってすごいカッコいいもんアレ。ときどきよく分からない重力が加わって回転したりするけど。

 

まぁ、そんな感じでデュエルをする5D'sなんだが。そのアニメの中で主人公が行う特別な召喚方法がある。

それはバイクに乗りながら行うデュエル━━ライディングデュエルでしか使えないモンスターの召喚。その時のシーンにどうしても似たこと、つまるところ、なんちゃってライディングデュエルをするため、そしてそのシーンを再現するために俺はバイクに乗りたかったのだ。

 

その程度のことで、と疑問に思うかもしれない。だが、そんな人は実際にそのアニメのシーンを見て欲しい。きっと漫画のかめ○め波みたいなトキメキを感じてくれると思う。

 

そうしてようやく、俺はついに、バイクに乗ってその一番やってみたいことをすることにしたのである。夜の滑走路を一人バイクで走りながら、目につく周りに誰もいないことを確認して。

 

そうして、

「アクセルシンクロォオオオオッ!!!!!!」

そう叫んだ。

 

 

 

 

 

すると目の前にコンクリートの壁が現れ、それにぶち当たった。なんでやねん。

 

 

そうして子供二人に保護された現在、昨日のことを心の中で供述している次第である。

 

 

 

 

 

 

 

なんでも、子供達の部屋の前で俺は倒れてたらしい。

一日たってようやく自分に起きた事態を整理することができた。

 

すまない、嘘だ。全くもって理解出来ていない。

 

俺の頭がリミットオーバー・アクセルシンクロォオオオオオ!!!

うっせぇリンク召喚しろよ、とツッコミが入っても可笑しくないくらい俺は混乱していた。

正直、目の前の俺を保護してくれた子供の髪色が緑色だったことも「これが時代か……」とスルーしていた俺だが、だんだん子供と話をしていく内に、なんか色々噛み合わないというか、俺が意味がわからない単語ばかりを彼らは話すのだ。

 

曰く、俺のDホイールはかっこいいだとか。

曰く、何処かで暮らしてるの、サテライト?だとか。

曰く、あ!これからデュエルアカデミアに行くんだ!じゃあゆっくり休んでていいからね、だとか。

 

オイ、おいおいおいおいちょっちまってちょっちまって。

ツッコミどころ多すぎだし。ちょっ、マジで行っちゃうの。ヤメテ、この状態で一人にしないで。おいていかないで。

そう、結構ガチで言っても彼らは苦笑してさっさと行ってしまう。

 

……どうすればいい。気づいたら保護されてて。サテライトと言う知ってるけど「は?」ってなるようなこと言われて。デュエルアカデミアにガッチャ!してくると去っていった双子を見送って。一人ぽつんとソファーに寝転がってる俺はどうしたらいい?

 

 

 

答えろ!俺はこれからどう行動すればいいんだ。

答えろ!答えてみろルドガー!!!

 

 

 

 

 

とりあえず自分のバイクを確認してみた。

そしたらデュエルディスクが合☆体したメカメカした「え?これ俺の?」みたいなバイクがあった。

 

ヒエッ、なんでや。なんでなんや。こんなの俺の知ってる二輪自動車じゃない。

え?マジでどうすればいいの?というより話は変わるけど、あの双子も見ず知らずの奴を放置して立ち去るのはアカンと思うっす。

 

ええーマジかー。……マジかー。

 

 

 

 

マジかー。

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったの?龍亞?」

 

「大丈夫だって!遊星の時も同じような感じだったじゃんか!」

 

龍可と龍亞はデュエルを学ぶために作られた機関、デュエルアカデミアへの通学路を歩いていた。

彼女らは現在、ダークシグナーとの戦いを終えた後からここに通い始め、デュエルを学ぶことに勤しんでいる。

 

「でも……なんか私たちの話してることに首を傾げてばかりで、少しおかしくなかった?」

 

「気のせいだろ?」

 

龍可は昨日、自分たちが保護した男性のことを心配していた。

自分たちの質問のほとんどを「ファッ!?」と返答する彼を、一人で放置してするのは良くない判断であったのではないかと思い始めたのだ。

 

勿論、見知らぬ人を部屋に居させることも心配だが、なにより目が覚めてからの彼が挙動不審であったことが気掛かりだった。

自分達の質問に答えられないばかりか、突然「ねぇ、今どこ?」「地球んなか」など呟き出したり、「オゾンより下なら問題ない」「朝まで騒ぎたいのでしょう?」などなんの脈絡もなく言っていたりしたのだ。これで心配しない方がどうかしている。

しかし、自分の家族である龍亞はそれを面白がり、すぐその男性を気に入ってしまったのだった。

 

いや、どう考えても怪しい。怪しいでしょ。

そう龍可は疑念を深めた。

 

しかし、それでも龍可がその男性を自分達の住む家に居させて安全であると最終的に判断したのには、ある理由があった。

それは男性が持っていたデュエルモンスターズのカードだ。

龍可はデュエルモンスターズの精霊の声を聞くことが出来る。

そのお陰で、男性が持つカードが非常に良く大事にされているということを感じることが出来たのだ。

 

カードを大事にしている人に悪い人はいない。感じたカードの思いから、彼を家に居させても良いという判断を彼女は下した。

 

でも、それって常識的に考えたらダメかも、と若干後悔し始めているのが現在の彼女なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

デュエルアカデミアにダイナミックお邪魔しますをしてしまった。

 

……やべえよ、やべえよ!まるでスクール○ォーズにでる昔のヤンキーのように校庭をバイクで走り抜け、そしてバイクを投げ捨てようやく暴走を止めた俺。

 

違うんだ。これにはしっかりした理由があるんだ。

 

 

━━俺はソファーに寝転びながら一人思った。

やっぱ、人の家に勝手にいるのは不味いんじゃないかと。

現在の自分を取り巻いてる環境はあまり理解出来ていない。でも、取り敢えずはここから脱出した方が良いんじゃね?と。

 

勿論、客観的に見ても自分がここに残って子供の帰りを待っていた方がいいというのは分かっている。

 

まぁ、つまるところ、俺はその時「アレ?コレもしかして夢なんじゃね?」と、これは俺が見ている幻覚なんじゃないかと思ってしまったわけだ。

突然俺のバイクがメカメカしていたり、なんかデュエルアカデミアとかいう単語が出てきたり、正直夢だと思う方が自然だと思う。

そんな心理から俺はバイクにまたがり(自然と馴染んだ)外の世界に繰り出したのだ。

 

ぴゃあぁ。

 

景色を見て、こんな感じの声が出た。

だってだって、なんかめっちゃ街が発展してるんだもの。超高層ビルが乱立してるし、道路はめっちゃ広くて綺麗だし。

 

はえー、すっごい。という感じで景色を楽しんでいた訳なんだけど。ここである問題が、それも大問題が起きました。

 

バイクが停止しません。

 

うーん、この。なんて余裕かましてたら加速していく始末。

あばばばば、アカン。アカンぞこれは。法定時速なんてなんのその。凄いスピードで爆走している俺だが、それでも何とか事故は起こさずにそれを乗りこなしていた。

 

ありがとう!俺を免許取得の際に何度も落とした教官!貴方の技術はここで活かされてますよ!

 

自分の成長を感じる。持ち前のハンドルさばき、体重移動でなんとかしている俺。でもこのままではいつか限界がくる。くそ、どうすればいい?このままじゃヤバいことになる。

 

そんな時、件のデュエルアカデミアが目に入ったのだ。

 

俺は知ってるんだ。なんかめっちゃ独創的な形をしてるけど、あれでも一応学校なのだと。

学校ということは運動場がある。学校の運動場ということは、超広い。

もう残された手はこれしかない!俺はデュエルアカデミアに爆走しながらお邪魔し、そしてグラウンドで乗ってるバイクをシュウゥゥ!!!

 

うわらば!と俺はゴロゴロ地面を転がり、バイクは横回転でくるくる転がっていった。

 

━━これが現在に至る経緯である。

 

凄い勢いで転がった俺だが、なんと外傷というものはほとんどなかった。

奇跡が起きたぜ。ありがとう神様。

そう天に感謝していると「大丈夫か!?」と言って工具箱を片手に持った少年が声をかけてきた。

俺はこの少年が学校関係者だと思い超謝り倒した。だってこれ通報モノだからね?すみませんを連打である。

すると少年は苦笑いして自分はこの学校の者ではないと言った。

そしてなんでこんなことになったかの詳細を聞いてきたので、俺は素直にバイクに異常が起きて停まらなかったことを伝えた。

 

少年はそれを聞き、持っていた工具箱を広げその異常を確認してくれると俺に言った。マジで。やべぇ優しい。なんか変な髪型してると思ってごめんね。その顔のマーク活かしてるぜ。

 

少年はその場で作業を始めるが、俺は学校の人に謝罪せねばならない。なので少年にここを少し離れることを伝え、そして学校の中に進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

そしたらここの学校のハイトマン先生とデュエルすることになった。

 

 

 

やっぱりこれ遊戯王の世界かぁ。たまげたなぁ。

 

 




リンク召喚はヤバいと思ったけど、よく考えたら俺のBMGデッキは特に影響が無かったぜ。


結構うろ覚えなので間違えとかがあったら気軽に指摘してください。ガッチャ。


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A.地球ん中

 

 

 

 

 

学校の構造として、入口の一番近くにあるのが事務室なのは普通だろう。これは訪問者への応対を円滑にするためであることは言わずもがな、逆にここから謝罪を伝えることが一番手っ取り早く事が済むのだ。

 

先ずは俺のターン!事務員に謝罪!これが敗北(通報)にならないようにするための一歩目だ!

 

そう思い事務室の人に声をかけると「……ああ!君が!校長から話は聞いてます。~~階の~~号室にいますので、どうぞお入りください」と、言われ中に促された。

 

……あれ?こっちが何も言ってないのに学園に入る許可を貰った。そして忙しいのか、すぐ事務員さんは何処かに行ってしまったのでした。

 

やっべぇ、もしかして何か勘違いされてるのかも。

違うんだ、そうじゃない。そう思って去っていった事務員さんの後を追おうとした俺なんだけども。そこで一つの事に気づく。

さっき事務員の人は校長から聞いていると言っていた。

 

つまり、もう校長がその場所でスタンバッてんじゃねぇ?

なるほど。さすが校長先生だぜ。仕事が早い。こっちも土下座するウォーミングアップを済ませねば。

 

俺は心臓の鼓動が速くなっていくことを実感しながら、廊下を進んでいく。緊張してきた。こんなに緊張したのは始めてのピンポンダッシュ以来だ。あの時も「身体が軽い……こんな気持ちで戦う(ピンポンダッシュ)のは初めて!」(←実際初めて)と思ってたっけ。即捕まって叱られたが。

 

そして俺が指定された教室の近くまで来たとき、そこから怒ったような女性の声と、すかしたような男性の声が聞こえた。

 

「成績だけで判断し、デュエルを学ぼうという思いを切り捨てるのは、愚かなことだとは思わないのですか!?」

 

「愚かなのはそっちです!低レベルの落ちこぼれがいくらデュエルを学んだところで、なんの意味もありません。」

 

またデュエルかたまげたなぁ(驚愕)

……今まで現実逃避していたけど、これやっぱりアレなの?ウッソだろお前。マジかマジか。一人教室のドアに隠れて戦慄している俺。

 

マジでここデュエル主体の世界なの?それもこの場面なんか既視感があるのですけど。……確かこれは双子が退学の危機に瀕してるヤツだっけ。いや、でもそんなことってマジであるの?

 

「大体この子達のデッキにはレベルの低いクズモンスターしか入っていません。デュエリストのレベルが低いから低レベルのモンスターしか使えないのではないですか?」

 

男性はそのまま言葉を続けた。

俺の記憶が確かなら、この言葉はハイトマン教頭が発しているものだ。

本来なら主人公である不動遊星がこの場面でデュエルを挑む。そしてそのデュエルで目の前のエリート教師が言う、低レベルなデュエリスト、ザコモンスターなんか必要ないという言葉を間違いだと思い知らせ、そして彼らの退学を止めさせるのだ。

 

そう、ここで主人公の遊星君は中で工具箱片手に、ドヤ顔でカッコよくデュエルを挑む。

その声が聞こえるばずなんだけども……。そのあとに続いたのは本来なら無かった筈のハイトマン教頭と女性の口論だけで。アレ?遊星先輩どうしたんすか?と思っていた俺は、ここで、まさか……とあることに気づき、嫌な汗をダラダラ流した。

 

工具箱片手……変な髪型……顔のマーク……。

 

しまったぁああああ!!!!!

遊星先輩って今俺のバイク修理してくれてる人じゃないっすか!?

 

辻褄があってしまう。これが本当に遊戯王のアニメ通りの事態だとしたら、俺が原因で今こうなってるのかえ?

 

やべぇよ、やべぇよ。急いで遊星さん呼んで来なきゃ。そう思い立ち去ろうとした俺であったが、ここであることを思いついた。

 

━━いや、ここで今無理すれば、俺の通報モノ案件もどうにかなるんじゃね?と。

 

いけるか?……いやいける。というか、いかせる。

 

背を向けていた姿勢からくるりと華麗に半回転して教室の方を向く。そして俺は開口すぐに実行しようとしていた謝罪土下座を止めることにし、教室に入ってその思い付いた行為に及ぶことにした。

 

 

 

 

「話は聞かせてもらった。━━おい、デュエルしろよ」

 

 

 

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

そんな堂々とした声と共に彼は現れた。

その男性に龍可は見覚えがあった。その男性は、つい今朝自分達の部屋に居るように告げて別れた人であったのだ。

 

「あ、貴方は一体何者ですか!?」

 

ハイトマン教頭は驚愕と共に声を発する。教頭だけではなく、教室にいた生徒達も知らない人物が現れたことにザワザワと騒ぎ始めた。

龍可は驚愕と共に焦りを感じていた。それもそのはず、不法侵入というのは立派な犯罪なのだ。それを今朝知り合った人物が突然敢行してくるとは。

ただただマズイ、これはいけないヤツだと、どうしようないやらかしてしまった気持ちを抱いていた。

そんな気持ちを抱いている龍可のことなど知らず、男性はハイトマン教頭の質問に対して少し考える素振りを見せた後、それに返答した。

 

「僕ですか?そうですね、僕は……ついさっき、ここの学校をバイクで駆けて事故った男です」

 

「凄いパワーワードッ!!!!!」

 

龍可は反射的に叫んでしまった。この人何してくれてんの!?と驚愕を抑えきれなかったのだ。

その龍可の叫びで周りの生徒達のガヤガヤした声は嘘のように無くなり、今度は教室の視線が彼女に集まった。その事に彼女は気づいて恥ずかしがり、小さく縮こまる。

 

だが男性は叫んだ龍可の方を見て、次に何かを思いついたような顔をした。そうしてハイトマン教頭への質問に言葉を付け足す。

 

「そして……さっきそこで突然声をあげた少女の、保護者的なポジションに当たる人物でもあります」

 

「エッ!!!!」

 

龍可が男性の声に反応し、そして視線を男性に向けた。するとその男性は血走った目でウインクを何度もしながら彼女に意志を伝えてきた。「は な し を 合 わ せ ろ」と。

 

「本当にそうなんですか?龍可さん」

 

教頭先生が龍可にそう声をかける。龍可はその言葉に何度も口ごもりながらも声を返す。

 

「え、いや、その……実はそうなんです!」

 

そう嘘の言葉を返さざるをえなかった。こっちを見る男性からは「頼む。マジ頼む」という悲痛なほどのモノを感じるのだ。凄く必死、そんな感じである。

 

「……ふむ、成る程。それは分かりました。それで?何故私とデュエルを?」

 

ハイトマン教頭は眉をひそめながらそう言った。

ハイトマン教頭の疑問は最もだ。何故突然現れた男性と教頭が何故デュエルをしなければならないのか。その疑問に男性は答える。

 

「ハイトマン教頭、さっきの貴方の話は聞かせてもらいました。彼女らを退学というのは少しやり過ぎだと思います。しかし、貴方にも譲れないものがあるんでしょう。━━だから、デュエルです。貴方がデュエルで負けたら彼女達の退学は取り消してください。……そして僕のバイク事故を見逃してくださいどうか本当マジでお願いします」

 

男性は生徒達の退学を撤回することを求めた。最後の方は早口で言っていて何を言ったのか聞こえなかったが、龍可はそれを聞き驚いた。

 

ここはデュエルを学ぶために作られた学校、デュエルアカデミア。そのデュエルの専門とも言うべき教師に勝負を挑むとは。目の前の男性はそれほどデュエルに自信があるのか。

 

「デュエルを、私と?」

 

「ええ。貴方はこの学校の先生ですから。━━楽勝でしょう?」

 

ニヤリと笑って言った男性の言葉を聞き、ハイトマン教頭は眉をぴくりと動かした後、彼もまたニヤリと笑って言葉を返した。

 

 

「━━いいでしょう。そのデュエル受けてあげましょう」

 

 

 

 

 

 

教頭先生とのデュエル(俺がするとは言ってない)だ。

 

やったぜ。成し遂げたぜ。これで後は遊星先輩を連れてくればミッションコンプリートである。

俺は最初からデュエルする気は全くないっす。

いやそりゃあお前、俺デッキ持ってないし。そんな常にデッキ持ち歩いてる奴なんてこの場所の奴ら意外いないでしょ。つまるところ俺は初めから選択肢に入っていないのである。

 

それに遊星先輩は最強だからね。遊星先輩のソリティアが間近で見られるなんて感激だぜ。

そうウキウキ気分で足取り軽くこの場から立ち去ろうとした俺を、誰かが俺の服の裾を引っ張て止めた。

お?誰だ?と思いその方向を見ると、そこには俺を保護してくれた双子がいた。

 

「なあ、あんなに自信満々に教頭先生にデュエル挑むってことは……もしかして超強いのか!?」

 

そう言うのは男の子の方。キラキラした目で俺の方を見てくるその子に、俺は後ろめたい気持ちを感じてしまう。お、俺がデュエルするとは一言も言ってないし(震え声)

 

「本当に大丈夫なの?……それよりバイクで事故ったって、何をしたの?」

 

そう言ったのは女の子のほう。こちらは俺の方を心配する言葉と、気になっているのであろうバイクのことについて聞いてきた。だ、大丈夫。事故ったって言っても被害は殆どないから。ただ事故って言っとかないと俺の不法侵入がうやむやに出来ないんじゃないかな、みたいな?そんな感じっす。うっす。

 

 

まあ取り敢えず、ちょっと俺行くとこあるから。……いや逃げないし!ほら!俺今デュエルディスクないじゃん!ちょっとデュエルディスク取って来るだけだから!!……え、貴女は確か双子の担任の先生……あ、持ってきてくれたんすか。そうなんすか……うっす、あざっす。

 

 

 

 

マズイ。逃げられなくなった。

 

 

 

 

 

 

これはアカン。

いやだって俺自分のデッキ持ってないし。……え?思ったよりやばくない?マズイ、マズイマズイ。どなせぇっちゅうねん。

 

そう思っていた俺に双子の男の子の方は「ねぇ!デッキみせてよ!」と無邪気に言ってくる。━━ああ、神よ。これは人に全てを押し付けようとした罰なのですか。なんというか、自業自得。これ以上嘘をつき罪を増やすのはいかがなものか。

 

俺はその男の子の言葉に正直に返すことにした。

 

いや、俺カード持ってないんだよ。

 

そう言うと、今度は女の子が眉をひそめて「何言ってるの?そこにあるじゃない」と俺のズボンを指差して言った。

 

いやいやそんなわけないだろ~、と半ばヤケクソ気味に笑いながらその指差した先を見る。するとホルスター型のデッキケースが確かにそこに存在していた。

 

えぇ、怖い(困惑)

 

なんであるの?全然身に覚えがないんだけど。謎すぎて少し恐怖ががが。……まあでも、ありがたいぜ!

 

ハッハッハ!!やったぜ!この俺のジャンドデッキならどんな敵も楽勝や!蹴散らしてやる!!

 

そう楽観に楽観しつつホルスターからカードを取りだし、その内容を確認する。俺が今まで作ったデッキはジャンクドッペルなどを使うシンクロ主体のデッキのみ。なのでここに存在するものはそれ以外にありえない。

 

そう確信しながらカードをデッキの上から五枚めくってまずは確認する。そしてその結果、

 

 

ブラック・マジシャン・ガール

融合

マジカルシルクハット

サイレント・マジシャンLV4

カオス・ソルジャー

 

 

なぁにこれ(驚愕)

 

あ、あ、あ、アクセルシンクロォオオオオ!!!!!

 

う、嘘やろ!これじゃあ遊星よりもどっちかって言うと遊戯デッキに近い、というかほぼ遊戯デッキじゃないか(憤怒)

俺のジャンドは何処に行ったんや!くっそお前俺はリンク召喚適用されてもマスタールール変えずにそのままアクセルシンクロするぞバカヤロー!コノヤロー!!デルタアクセルシンクロさせろォ!!

 

焦りながらデッキを隅々まで確認する俺。

そして、理解した。

 

やっぱこれ俺のデッキじゃないわ(真顔)

 

しかし、俺のデッキのアイドルカードだけは変わらずにデッキの中にあったのは不幸中の幸いである。いや、俺のアイドルカードは本当にアイドルだから。強さは全くないから。

 

でも、やっぱあると安心するのである。

 

 

━━ああ、アイドルはいいものだ(諦め)

 

 

 

 

 

 

 

「アンティークギアゴーレムが三体も!?そんな……!」

 

目の前で行われているデュエルは一方的だった。

攻撃力3000。そんな強力な大型モンスターが一ターン目に展開される。ハイトマン教頭が持つ勝ち組デッキと呼んでいるデッキに、龍可は見ていて圧倒された。

 

こんなフィールドの状態は見たことがない。しかもハイトマンは一ターン目の後攻。デュエルモンスターズは先行は攻撃が出来ないが、後攻は攻撃することができる。そしてアンティークギアゴーレムは攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動することが出来ず、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が上回った分だけ相手に戦闘ダメージを与えることが出来るのだ。

状況は最悪と言っていいだろう。後攻ワンターンキル、そんな結末を思い浮かべる。

 

そしてその想像通り、━━蹂躙は始まった。

 

攻撃力3000三体の攻撃。それを乗り切ってもメインフェイズ2でマジックカードによる追い打ち。それも、彼は何とか乗りきった。

風前の灯、ライフポイントはもうゼロに近い。

 

でも、そんな状況でも彼は、笑っていたのだ。━━本当に楽しそうに。

 

 

「いくぜ、俺のターン。……来たぜ切り札が!!」

 

そう言って彼は手にしたカードをデュエルディスクに叩きつけるようにセットする。

周りの観戦者たちはその男性が切り札と呼ぶカードに注目を集めた。一体どんな攻撃力をもった、そしてどんな効果をもったモンスターなのか。そう期待が高まる。

だがしかし、それは悪い意味で裏切られる。

 

「━━こい!カードエクスクルーダー!!」

 

攻撃力、守備力ともに400。特に今使える効果を持たない、使えたとしても微妙なモンスター。

 

「そんな最低レベルのモンスターを召喚してどうします?勝負を諦めたのですか?」

 

そう言ってハイトマン教頭はそのモンスターを嘲笑った。

だが、彼は飄々と言葉を返す。

 

「確かに、このカードは全く役に立たないことが多い。場に出してもすぐ倒されるし、サポートするにしても大変だ。でも、」

 

彼はそこで一度言葉を止め、そして、心を込めて次の言葉を紡ぐ。

 

 

「━━そこにいるだけで力が湧く。そんなカードはこれだけだ」

 

そう言ってデュエルディスクを構え直した。

 

 

 

「それに、弱いのが強くなるのにロマンを感じるもんだしなぁ。多分勝つっすよ、俺」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強いカード弱いカード、そんなの決闘者の勝手。本当に強い決闘者なら自分の好きなカードで勝つべきそうすべき。

 

教頭先生とのデュエルに勝利し、俺はそんな言葉を彼にかけた。

 

どうやってデュエルに勝ったって?それは勿論団結の力(物理)だぜ。このデッキ三積みしてるんだ。恐ろしい。

 

まあでも、勝てば官軍なのである。闇の力に目覚めそう。力はパワー。それを俺はこのデュエルで学ぶことが出来た。

 

双子の男の子は「あんな攻撃力のモンスター見たことないや!凄い」とデュエル後の素直な感想を俺に伝えてくれた。ありがとうだぜ。やっぱ子供にはパワーは受けがいいよね。強さって攻撃力だけで見るとこあるし。純粋なんだよね。

 

双子の女の子は自分達の退学が取り消しになった事の感謝を伝えてきた。うんうん。ありがとうって言えるって大事。大人になってもその気持ち大事にね。それはそうと話は変わるんだが、君はカードエクスクルーダーのコスプレしたら似て……おい、ちょっと待って距離を取るな。やめろ!担任の先生に言おうとすんな!ヤメロォ!!!

 

そんなこんなで周りの生徒達からも感謝の気持ちを伝えられて、俺はなんかほっこりとした気持ち。

正直今回はマグレ勝ちで心臓バクバクだったけど、ソリッドビジョンで映されたモンスターの迫力を身に感じられて滅茶苦茶テンション上がったっす。まあ、しかし何よりも、

 

 

 

やっぱカードエクスクルーダーは最高だぜ!!

 

 

 

 

 

 

「私が……負けた」

 

デュエルアカデミアの教頭である、ハイトマンは自分の敗北に呆然としていた。

 

古代の機械巨人の三体攻撃、マジックカードによるバーン攻撃。それを紙一重でかわす目の前の決闘者は、ハイトマンには逆にそれが紙一重であるが故に━━届かないと思った。見極められていると言った方が、この状況を正しく表すことが出来るか。この男性には敵わない、そんな感情を植えつけられた。

 

デュエル後、男性は自分の方に近寄ってくる。健闘を称えようと言うのか。そんな男性が言葉をかけるよりも前に、ハイトマンは自分の思ったままの今の気持ちを、彼に向かって吐き出した。

 

「何故私が負けた?……私の方が強いカードを使って、完璧なタクティクスでデュエルを進めていた。なのに、なのに何故……!」

 

古代の機械巨人三体同時召喚。そんな状況を前にして目の前の男性は楽しそうに笑っていた。自分が追い込まれているのは誰が見ても明らかなのに。それなのに━━

 

その言葉を聞き彼はキョトンとしたになり、そして次に苦笑して言葉を返した。

 

「まぁ先生の方が僕より全部強いと思うっすよ。さっきのデュエルも圧倒的にピンチでしたし。でも、そんなの当たり前ですしね。強いと思ってるカードも、弱いと思ってるカードも、結局どれも意義がないというものはないです。だから、それを上手く汲み取ってやるのが、カードを扱う上で大事なことじゃないでしょうか」

 

そう言われた。

ああ成る程、とようやく腑に落ちた。

とどのつまり、カードというのは人間と同じ。優劣というものは必ず存在する。でもどんな人間も何も出来ないことはない。何かすることは出来る。それをより上手く出来るようにするのが、指示するものの務めだと。

このように例えるとしたならば、きっと彼はこうも糾弾しているのだ。『頭の良い生徒を頭の良いままに出来るのは当たり前。教師だとしたならば、生徒の伸ばせるところを探し、それを生徒に気づかせることが出来るのが大事な事だ』と。

 

ハイトマン教頭は、そう伝えてくれた男性に「ありがとう」と言った。男性は「こちらこそ」と、見ていて気持ちの良い笑顔を浮かべて言葉を返した。

 

 




基本二話構想になると思います。

団結の力マジ団結。



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Q2.ゴーストって?

 

 

 

今の俺は答えてみろルドガー状態だ。

 

だって、よく考えてみたら戸籍もねぇ、お金もねぇ、自分の事情も話せねぇ。なんというトリプルコンボ。一体どうすれば良いといいのです?

 

 

何故自分の事情を話せないのか。それは勿論、話したら頭可笑しいやつだと思われるからだ。想像してみてほしい。アクセルシンクロしようとしたら本当にアクセルシンクロ出来る世界に瞬☆間☆移☆動してしまったんだ(^○^)!僕は異世界から来たんだ(^○^)!と言ったとしよう。━━コイツ(中二病)極めちまってんな、と思うやろ!!

 

だから今セキュリティの牛尾さんに事情聴取されても、俺は「何も覚えてないんだ(^○^)!」、「戸籍とかが登録されてない?……知ったこっちゃないんだ(^○^)!」と言うしかないわけで。マジで俺どうすればいいの?とお先真っ暗なわけなのである。

 

 

というか夢だったら早く覚めてほしいのです。元いた家族が恋しいのも勿論だが、ここだと俺本当に何も出来ない超ハードモード。飢え死に待ったなし。ふえ、人ってとっても無力だよぉ。一人で死のダンスでも踊ってろってか?……ダンスは、嫌いだな。これが絶望である。

 

 

まぁ取り敢えず、現在どうして牛尾さんのとこにいるのかというと。俺が双子にこのセキュリティの人のとこまで案内してもらってね。こうして自分の状況を実際に(記憶喪失っぽいんやでと嘘をついて)話して「どうにかなりませんかねぇ?」と俺をなんかそういう然るべき機関に放り込んでくれるよう頼んでる訳なんだけども、どうにも厳しいらしい。

 

 

なんでもライディングデュエルの頂点を決める大会、『WRGP』があるんだけども、それが近いだかなんだかでDホイーラーと観光客で施設がいっぱいになってるのが今の現状。俺を置いておくとこはないという現実が突きつけられたのである。ぐへぇ、運命マジ逆らえねぇ。オーバーデステニーしてえ。

 

え、マジ?と俺が戦慄してるなか、ここまで俺を案内してくれた双子が「自分たちのとこにくれば?」と言ってくれる。

 

 

君たち……!なんて良い子なんやと僕は一人咽び泣き。子供ってやっぱり純粋で天使みたいに見えるよ。今はこの優しさがありがたい。彼女らを見てると歳をとるにつれて自分が大事なことを失ったことを痛感します。まあその気持ちだけは貰っておくぜ、と俺は涙を拭きつつ彼女らに返答し、牛尾さんに「そこをなんとかなりませんマジ?マジマジ?」と再度頼み込んでみる。

 

 

だって、子供に保護されるわけにはいかないでしょう?しかも俺ここじゃあ何も出来ないニート人。パラサイトのごとく住み着く訳にはいかないのである。希望としては何かしら働きつつ住まわせてもらうパターン。厳しいのはわかっているけども、切実にどうにかしてほしいのである。

 

無理?……どうしても駄目なんすか?そこをなんとか、頼みます!お願いします!なんでもしますから!!と俺は超すがり付く。

ヒェ、やっぱ人生ハードモードだよぉ。もぅまぢむり、デュエルしょ。

 

 

散々粘った後、取り敢えず今日はもう遅いんでお引き取りいただいてまた明日こいや、みたいな感じになって。セキュリティそれでいいんすか?みたいなこと言ったら、随分好かれてるみたいだからその好意に甘えとけと放り出される始末。

 

 

結果として俺は双子の家に一時的に居させてもらうことになり、なんていうか情けねぇと、現在落ち込んでいるのでした。

 

 

これからどうしましょう?

 

 

 

 

 

 

 

双子の部屋に結局カムバックしてしまった俺は、どうにも申し訳ない気持ち。

 

部屋に入って開口一番「なんか俺に出来ることありません?」と双子たちに聞いてみる。だって情けなさすぎるからね、俺。何が気持ちだけ貰っておくだよ。結果的に優しさ享受してるじゃないっすか!!ダサいぜお前!激ダサだぜ!!

 

なのでこの気持ちを誤魔化したいがため、何か俺にしてほしいことを聞いたのだ。

すると双子の男の子の方━━龍亞君が「デュエルしようぜ!」と元気に言ってきた。

 

違う、そうじゃない(困惑)

そうじゃないんやで、工藤。こう、俺をここでどのようにこきつかっていくかの方針を決めたいんやで。

 

俺は苦笑しつつ、そう意志を伝えようとする。すると双子の女の子の方━━龍可ちゃんが「いいんじゃない?やってあげれば?」となんのことでもないように言ってくる。

 

 

そして続けて「良い気分転換になるんじゃない。お互いに」と俺を見上げて言った。

 

 

 

━━なんつーか、龍可ちゃんから大人力を感じる。精神年齢絶対高い。これから心の中で龍可先輩って呼びます。

 

 

 

龍可先輩の気遣いをありがたく受けとることにし、俺はメカメカしたバイクからデュエルディスクを外し、自身の腕に装☆着!

そしてケースからデッキを取り出して、デュエルディスクに挿☆入!

 

 

この俺が今所持している遊戯デッキもどきだが、後になってこれが何なのか、その正体が分かった。━━これ、俺が初めに使ってたデッキである。

 

俺が今まで作ったことのあるデッキはジャンドデッキしかないと言ったが、それは嘘ではない。

じゃあこの遊戯デッキ(笑)なんなの?となるわけだが、これは俺がデュエルモンスターズを始める際に使っていた、正確に言うとデッキではなく、『寄せ集め』なのだ。

 

この寄せ集めは「お?主人公が使ってるんなら強いんやろ!俺も使うぜ☆」という、幼少期の俺が詰めに詰め込んで、ただぶちこんだだけの60枚である。団結の力三積みなのは力こそパワーという子供のころの俺が原因だったのだ。魔法の筒(マジックシリンダー)も三積みなのが性格でてる。コイツ本当に嫌な奴である。

 

この寄せ集めで今から龍亞君とデュエルするわけだが、断言出来ることがあるのだ。

 

 

 

━━絶対勝てねぇ!!!

 

 

 

カードパワーが違いすぎるのである。龍亞君の使うディフォーマーデッキ、そしてパワーツールドラゴン。

 

俺は知ってるんだ。正面から挑んだら粉砕されるって。

俺もシンクロしたいよシンクロシンクロ。アクセルシンクロ。力をあわせてデルタアクセルシンクロ。

ハッ!勝手に勇気と力をドッキングしてろや!俺は一人で千本ナイフ(サウザントナイフ)(笑)投げてるからよォ!!くそっ!やってられっか!!

 

 

絶対こうなるだろうけど。ま、デュエルは勝てなくても、やること自体が楽しいものだからね。

それじゃあ、頑張っていきましょ。

 

 

そうして場所を変えて、デュエルの準備はお互いに完了。

 

いやぁ、それにしても。思ったこと一つだけいいっすか。

 

 

 

 

 

 

━━お前んち、庭広すぎねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━来い!ブラック・マジシャン・ガール!

 

フィールドに一人の少女が現れた。

金色の髪。宝石のように綺麗な瞳をした女の子。空中でくるりと華麗に舞い、相手にウインクするその姿は誰が見ても美しいというほどの美少女であった。

 

 

「……すげぇ!こんなモンスター見たことないや!!」

 

 

そう、龍亞はそのモンスターを見て声を上げた。

龍亞は知らなかったが、そのモンスターはデュエリストならば知らないものはいないほど有名なカードだった。

数十年前ならば伝説の決闘者の所持したものとしての認識が残っていただろう。時代の流れからその歴史は薄れてしまったが、それでもこのカードはこの時代のある一部の業界の生ける伝説となっている。フィギュア化もされていた。つまり、そういうことである。

 

 

龍亞ははしゃいでいたが、彼ら二人のデュエルを見ていた龍可はそのモンスターを見て━━若干引いていた。

 

 

別に、ブラック・マジシャン・ガールに非があるわけではない。それを召喚した男性に、その非はあった。

 

 

つまるところ━━意気揚々と可愛い、俗に言う萌えモンスターを扱っている青年のことを、もしかしてやべぇ奴なんじゃないかと思いだしたのである。前のハイトマン教頭のデュエルの時も、幼い魔法少女を扱ってハイテンションで勝利していた。龍可の目には見るからに犯罪者予備軍に映る。そんな彼女の心境をいざ知らず、青年は嬉々として語る。

 

 

 

━━フッ、これはまだ序の口だぜ?こっちが本命だ!

 

 

 

ま だ 始 ま り な の か。

 

 

 

龍可は戦慄した。これ以上青年のイメージが下がるのは、マズイ。これから彼は少しの間、自分たちの家に居ることになっているのだ。退学を取り消してくれたことによる中々の好感度から、身の危険を感じるレベルまでの好感度まで落ちるのは精神的にキツい。

だが、そう危惧していた最悪の未来は訪れなかった。

 

 

━━魔法発動、賢者の宝石!このカードの効果により、俺はデッキから最上級魔術師を召喚する!来い!

 

 

青年はデッキからカードを引き抜き、その名を呼びながらディスクにセットする。

 

 

 

━━ブラック・マジシャン!!

 

 

 

それは黒衣を纏った闇の魔術師。攻撃力、守備力ともに最高クラス。洗練された、だが、異質な雰囲気を身に纏うモンスターだった。

 

 

龍可は、その魔術師の独特の雰囲気に息を飲んだ。

これほどのオーラを持ったモンスターは今まで見たことがない。静かに自分を召喚した者に仕える姿、瞳に宿る鋭い光。これは異様であり、完成されていた。

一つの芸術作品を見ているかのよう。その佇まいに、龍可はただただ圧倒的された。

 

 

 

その黒衣の魔術師の主は、胸を張って言う。

 

 

 

 

 

 

━━満足したぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

満足した後、パワーツールドラゴンが召喚されて最強の(しもべ)が瞬☆殺。

 

ヒエッ(恐怖)

勘弁してくれないか、勘弁してくれないか!混じり気のない攻撃力という暴力が俺を襲う。攻撃力3000超えはやめていただけないか!こっちのメインデッキにそれ超す奴入ってないんやぞ!やべぇよ、マジか。

 

どうするどうすると思いながら、俺は次のカードをドロー。ほ?こんなカード入れてたっけ?まぁいいや。取り敢えず死者蘇生を発動!

 

そして最強の(しもべ)を蘇生。その弟子と一緒にいくぜ!マジックカード『黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)』発動!相手のフィールドは粉砕!玉砕!大喝采!

 

 

━━成し遂げたぜ。

 

なんとかデュエルに勝利した俺。だがやはりというべきか、この世界でのカードパワーの差を感じました。パワーツールで装備魔法ランダムに手札に加えられると言ってもさ、全部強い装備魔法だったら外れはないと思うの僕。強力なエフェクトだぜイヤッホォ!

 

 

 

そうして現在、俺に何か出来ることはないかと龍可先輩に問いを投げかけてる次第。え?料理?俺は料理出来る系男子だぜ。大丈夫っすよ。了解っす。

 

ちなみに俺は家事はだいたい出来る系男子でもある。俺の家は下に兄弟が三人いてね。帰りの遅い両親の代わりに、基本面倒見るのは俺の仕事。鍛えられた家事スキルが人の家で役にたつ日がくるとは。

 

━━そうだ、俺は早く家に帰らなくてはいけない。

 

そこでハッとした。今までは夢心地でいたけど、現実を振り返ってみたら俺って早く帰らないとヤバくない?

 

 

これって俺だけの問題じゃないのだ。お腹を空かせた兄弟やたまった洗濯物、風呂掃除とか。そもそも人が突然消えるって大問題。今まで俺はこの世界でなんとか生き続けることだけ考えてたけど、元の現実に戻るにはどうすればいいのか、何の手がかりも無い。これってマズイんじゃないだろうか。

 

 

「……大丈夫?」

 

 

俺が一人考え込んでいた姿を見て、龍可ちゃん先輩は心配して声をかけてくれた。

その言葉に大丈夫だぜと焦って返答し、俺は夕食を作るための準備を始める。

いけないいけない。せっかく保護してもらってるのにこの始末では。取り敢えず考えることは後にして、まずは恩を返す。それが今の俺に出来ることである。

 

よし、気合い入れますか!まずは冷蔵庫の中をみて、今何を作れそうか考えよう。よっころせっと。

 

 

 

━━何も入ってないやん(驚愕)

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは!!ホイールオブフォーチュン!ホイールオブフォーチュンじゃないか!

 

あの前見えんの?と問いかけたいフォルム!間違えない。あれはジャック・アトラス氏がのるDホイール!……感動的だぜ。

 

冷蔵庫の中身が空だと判明した後、俺は買い出しをするために、遊星先輩に直してもらったメカメカしたバイクに乗って道路を走っていた。

すると目の前に無駄に特徴的な無駄に場所をとる無駄にカッコいいDホイールがあるのを確認する。

 

やべぇテンションあがりんぐ。こんな間近で見ることが出来るなんて、感涙ものである。ちなみにDホイールの遊星号はデュエルアカデミアでもう目にしてたりする。その感想として、超赤ェと思いました、まる。

 

へぇ、すっげぇなあ、と感心しつつワクワクした心持ちでジャック氏のDホイールをガン見していたのだけど、そんなとき、突然俺のメカメカしたバイクからアラーム音が鳴る。

ほ?なんや?と思って前に何故か設置されてたディスプレイを見ると『DUEL mode Stand by』の文字が。

 

……ファッ!?

 

「何!?強制的にライディングデュエルだと!?」

 

俺の思った事と同じ内容の声が前から聞こえる。

その声を発したのは件のジャック氏で。彼はそれから俺の方を見てさらに一言。

 

「貴様……まさかゴーストか!」

 

 

……ファファファッ!?!?!?

 

 

 

 

 

 




次回予告

また主人公にバイクの異常という矛先の見えない悪意が襲いかかる。

Q.ライディングデュエルって?
A.ああ!

Q.オートパイロットって?
A.ああ!!

Q.スピードスペルって?
A.ああ!!!

次回『A.ああ!』
デュエル、スタンバイ!!


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A2.ああ!

 

 

 

 

 

 

「王者の鼓動、いまここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!

我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!!!」

 

 

━━初手レモンかぁ。たまげたなぁ。

 

突然始まったライディングデュエル。俺は何故このような状況に追い込まれてしまったのか理解できなかった。

 

バイクの異常?いやでも、これジャック氏のDホイールを強制的にライディングデュエルにシフトさせてるから、故障とかそういうの超越してねぇ?なにかしらのパワーがこのバイクに働いてねぇ?

 

何故、何故こんなことになってしまったのか。……一体誰が悪かったというのか。

俺のこのイライラ☆は何処にぶつけたらいい!今のこの気持ちは、何処に向かえばいい!答えろ!答えてみろルドガー!俺は一体、どうやってこのデュエルを遂行すればいいんだ!

 

絶対ぇ袋叩きにされるじゃねぇか!キングのデュエルはエンターテイメントでなくてはならないんやろ!?初手レモンはやめろよォ!?ちくじょー!!完全態(ジャンドデッキ)になれさえすればー!!

 

そう心の内で悪態をつきつつ、俺のターン!よし、魔法カード『地割れ』!これで勝つる!!

 

そのまま引いたカードをデュエルディスクに挿☆入。そしたらデュエルディスクから読み込み拒否反応のアラーム音が発☆動。地割れのエフェクトが使えない☆

 

……ファッ!?なんでや!なんで俺のフェイバリットマジックが発動しないんや!?

そう思い何度も挿☆入し直しても結果は同じ。

ファファファッ!?落ち着け、落ち着け。考えるんだ。なんで魔法カードが発動出来ないのか……。

 

 

あ、そうか。これライディングデュエルじゃん。

 

 

━━ライディングデュエル。

それは通常のデュエルとは違いDホイールと呼ばれるバイクに跨がりながら行われる、この世界で流行しているものだ。

このデュエルは『スピードワールド』と呼ばれる専用フィールド魔法のもと行われ発展してきたものであり、現在はそれが進化し『スピードワールド2』となってデュエルにバリエーションが増えている。

このフィールド魔法はライディングデュエルをしていく内に貯まっていくスピードカウンターと呼ばれるものによって、出来ることが増えてくるのだが、まあそれは今回省略しよう。

 

だって今、俺バイク運転するのに必死でそれを使う余裕ないし。

 

……なんでや!!ライディングデュエルが始まると自動操縦(オートパイロット)に移行するのではないのか!?そりゃたしか手動操縦(マニュアルモード)でもいけるっぽいのは聞いてたけど、これ俺にはそもそもの選択肢与えられてねぇじゃねぇか!!

あ、なんかジャック氏後ろ向きに運転してこっちに声かけてるけど、反応できねぇや。そんな余裕ないんだよ!

 

はっはっは、つーかまたこのバイクブレーキ利かないんですけど超ウケる。蟹は蒸す。

 

 

━━話を戻す。それでこのライディングデュエルは、通常のスタンディングデュエルとは異なる部分が多々あるのだ。それが現在俺の通常魔法が使えないことの理由ともなっている。

 

そう、ライディングデュエルではSp(スピードスペル)と名前の初めについた魔法カードしか、使うことは出来ない。

 

 

 

 

……アクセルシンクロォオオオオ!!!!

 

 

俺そんな魔法一枚も入ってねぇよォ!!!

千本ナイフ(笑)すら投げられねぇじゃねぇかァ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってくるのおそいなあ」

 

「そうね、事故とか起こしてなければいいんだけど」

 

 

━━今日の夕御飯はカレー!!そう言って買い出しに出かけた青年は、未だに龍亞と龍可の家に戻ってはいなかった。

龍亞はソファに座りながら足をぶらぶらと揺らし、その様子から見るからに退屈であるということがわかる。それとは対照的に、龍可は大人しくその隣でちょこんと座り、落ち着いた態度で龍亞と会話を続けていた。

 

「……そういえばあの、『ブラック・マジシャン』なんだけど」

 

龍可はそのまま、龍亞に自分が気になったあのモンスターについて話す。

━━ブラック・マジシャン。あのカードは、異様だった。精霊が理解出来る龍可はあのモンスターの別格さが一目で分かった。

効果の持たないただのノーマルモンスター。だが、あれは違う。なにか決定的な、言葉にするならば、『次元が違う』そんな印象を龍可はもっていた。

 

「確かに━━超カッコ良かったよな!!」

 

龍亞は目をキラキラとさせ、龍可の言葉に声を返す。

実際にそのカードと相対していた龍亞は、あのモンスターの姿を嬉々として語った。やれ迫力があっただの、やれ強かっただの。先程とはうって変わってはしゃいで語る龍亞の様子を龍可は横目に見つつ、龍亞に対してのいつもと同じ呆れた気持ちを感じながら、あのカードについて一人考える。

 

黒衣を纏ったモンスター、ブラック・マジシャン。それを扱うあの青年。

あの青年には謎が多い。初めて自分たちと話していたときの挙動不審な態度。自分のことを、記憶が混乱して、何も分からないと語った姿。だが、夕食を作ってほしいと頼み、それを了承した後の思い詰めたような表情。

 

彼は何か隠していると思った。退学をかけたハイトマン教頭とのデュエルの時は、彼は子供のように喜びを表していた。元気に明るく、それが彼の得意分野だと言っているかのように。

だが、あの時だけは。思い詰めた表情をした時だけは、彼は慣れない悲しみのような、そんなものを背負ってしまったかのように見えた。

 

でも、それだけ。

龍可はそれ以外のことは何を考えても分からなかった。ただ、これから青年について、知っていかなくてはいけないということだけを思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ライディングデュエルも佳境に達していた。

 

いけ!ぼくのこうげきりょく、しゅびりょくさいこうくらすのまほうつかい!ぶらっく・まじしゃん!いけー!がんばえー!

 

そんな俺の期待に応えるかように、最上級魔術師はジャック氏のエースに黒・魔・導!最強のドラゴンは消失する。

 

やったか!?そんなふうに俺が心の中で呟いたのが悪かったのか。ジャック氏は俺に恐ろしい悪夢を見せる。とどのつまり、

 

 

 

━━バック・トゥ・ザ250円。

 

 

ヒエッ(恐怖)

ようやく倒したと思ったらパワーアップして帰ってきたでござるの巻。

 

お引き取りいただけないか、お引き取りいただけないか!またしても攻撃力3000という純粋な脅威が俺を襲う。

お、オエー!!俺のこのデッキにはミラフォは一枚しか入ってないんや。……この意味が分かるね?

 

グワー!グワー!なんということだ、なんということだ。このままじゃ普通に敗☆北。そしてジャック氏のことだからきっとそのまま、

 

このゴーストヤロウ!→いや人違ry→問答無用!(胸ぐらつかみながらの混じり気の無い右フック)→ぐへぇ!(俺氏気絶)→牛尾さんこの人です(身柄引き渡し)

 

こんな流れになるんじゃないかな(白目)

 

……くそう!どうにかせねばならんぜ、コイツは!でも魔法も使えず、スピードカウンターも満足に扱えず、一体どうすればいいというのか。追い込まれた現実を直視する俺。

 

無理だ!もう……体が……動かないんだ!なに、諦めるな?勝手なことを言わないでくれ!俺は全力で戦った……でも、前のターン、千本ナイフを引いた時悟ったんだ……どないせぇと!

 

もう今度ばかりは無理なんだ(^o^)!もう戦えないんだ(^o^)!

 

そう諦めの気持ちを抱いてしまった俺の視界に、バイクのディスプレイ右端に表示されている、現在時刻が目についた。そして俺はそれに、

 

 

絶句した。

 

 

もう、こんな時間じゃないか。

まだスーパーの中にも入ってない。

そもそも開いてるのかさえ定かではない。というか多分もう閉まってる。

 

お腹を空かせて俺の帰りを待っている子供たち。

ぐぅと鳴るお腹の音。

もう良い子は寝るんだぜ?と言うために確保するべき睡眠時間。

 

━━俺は、ジャックを自身の怒りのままに睨みつける。

そもそもこうなってしまったのは彼のせいではない。多分俺が全面的に悪い。断言してもいい、俺に全ての非はある。迷惑をかけてしまっているの俺であり、その事については申し訳なく思っている。

だが、だがである。

 

━━俺のターン。デッキに手をかけて、次のカードを引く。

 

そう、だがである。

じゃあこの思いは━━何処にぶつけたらいいというのだろう?

何度もいうが、何処へ向ければいいというのだろう。

 

 

つまるところ━━八つ当たるしかねぇ。

 

 

 

 

 

 

━━お前のせいでぇ!今日はレトルトだぁ!!!!

 

 

そう気持ちを込めて、俺は次のカードをディスクに、叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ━━このモンスターは」

 

ジャック・アトラスは唖然としたまま呟いた。

目の前に広がる禍々しいまでの光と闇。その奔流。その中から現れた戦士に、ただ息を飲んだ。

 

 

 

━━カオス・ソルジャー ━開闢の使者━

 

 

その姿に声が震える。

 

「なんだ!?それは!?」

 

本当にソリッドビジョンなのかと疑ってしまう、それほどの圧力、迫力。その言い様のない悪寒の存在が、背後から迫ってくる。戦士でありながら、まるで死へと誘う死神のよう。鋭利な剣と重厚な盾を持ち、それは相手の命を消失せんと動き出す。

 

 

ジャックは見た。そのモンスターの持ち主、その主の表情を。

ヘルメットに隠れた目元、だがその口元を見ることによって、ジャックは相手がどのような感情を浮かべているのか理解できた。

 

 

そいつはただ━━楽しそうに笑っていたのだ。

 

 

 

━━やれ!カオスソルジャー!『開闢双刃斬』!

 

 

それを確認したのを最後に、ジャックの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

レトルトでゴメンね?と子供たちに謝り倒している現在。少しライディングデュエルをやることになってしまい、遅くなってしまいましたと正直に話す。

 

本当に申し訳ない。だからってレトルトカレーってやっぱだめよね、と龍可ちゃん先輩に言うと「そもそもカレー作るのって時間かかるから正直どうなの?とは思ってた」とマジレス。最近の子供って天才だわ。確かに言われてみればそうだわ。納得してしまったのでした、まる。

 

 

それにしても、強制的にやったとは言え初めてのライディングデュエル。手動操縦だからかもしれないが、難しすぎてヤバかった。教習所の教官の特訓がなければ出来なかったと思う。

 

ありがとう教官!あなたの「え?その技術必要?」と実は密かに思ってた教えはこの世界で活かされてますよ!積み重ねは無駄じゃない、改めてそうおもった。

 

 

そういえばライディングデュエル終わった後、ジャック氏突然停止しちゃってたけど大丈夫かな?無視してコンビニに直行しちゃったから何も声かけなかったけど、まあ大丈夫よね。そもそも勘違いされてたから何されるかわからんし、これで良かったでしょ。うん。

 

 

取り敢えずはこれからどうするか考えなくては。元の世界に戻るにはどうすれば良いのか。このままお世話になるわけにはいかんし、まず明日は再度牛尾さんの元を訪ねよう。

 

そのあとはどうなるのか分からん。一体これから俺はどうなってしまうのか。

あ、そういえば、あのメカメカしたバイクは極力使わないようにしたほうがいいな。ライディングデュエル中ブレーキきかなくなったと思ったら、終われば普通に運転出来るように何か直ってたし。正直、異常がありすぎて恐いしなぁ。

 

……でもその原理でいくと、ライディングデュエルしなければ普通にいけるのか?運転中Dホイールを見かけたら離れるようにすれば、強制的にデュエルにはならないからオールオッケーかも、いや、やっぱだめっすわ。流石に危険すぎるなぁ。

 

 

カレーを食べながら一人思う。

 

ここにいるからにはデュエルも重要になってくるかもだし、カードもどうにかせねば。この運が続くとは思えない。まぁでも、それは自分の状況に余裕が出来てから。迷惑かけないようになってからじゃないとアカンぜ。ここで迷惑をかけないように出来るかなんてことも思ってしまうけれど、せねばならんのです。

 

 

再度気合い入れて行きましょ!!

 

 

 

 




今日のキーカードは……これ!!

『カオス・ソルジャー ━開闢の使者━』

……ガチカードだよ!


『追記』
作者のミスでライディングデュエルではライフポイント2000を払えばSp以外の魔法も使えることが判明しました。なので、
初手後攻レモンパワーフォース!→ぐえ(ライフ2000以下)→よし魔法使うぞ!→使えへん(白目)
という感じで補完しておいてくれるとうれしいです。
書き直すのが一番だとは思うのですけど、先に進めるのが遅くなるといけないのでまた後で手をつけようと思います。うっす。


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Q3.シャトルの中に隠れるのよ!

 

 

 

 

 

 

━━クリアマインド!

レベル8のスターダストドラゴンに、レベル2のシンクロチューナー フォーミュラ・シンクロンをチューニング!

集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く。光差す道となれ!!

 

━━アクセルシンクロォオオオオ!!!

 

生来せよ!シューティング・スター・ドラゴン!!!

 

 

 

 

 

ふっ、いつ声に出しても気持ちいい。これでどんなときでも口上を完璧にこなすことが出来るぜ。

 

起床して一番、俺は龍亞君と龍可ちゃん先輩の家の庭にでて、アクセルシンクロのイメージを固めていた。

無駄に広いこの庭、というより完全にプライベートなんちゃらだと思うのだが、まあ、そこで出した声は遠くまで澄んで広がり、とても気持ちがスッキリするのでした。

 

今回この家で泊めてもらったわけだけども、どうにも眠ることが出来なかった俺。一人になって考える時間が出来てしまうと、急に不安が襲ってきたりしたのだ。えー?これからどうすんのー?と思考が頭の中でぐるぐる回り、その答えは全くでない堂々巡り。モーメントかな?なんていう突っ込みをしていたりしたのです。つまるところ寝不足である。

 

そうして朝日がのぼってしまって空が白んだころ、こうして俺は庭にでて、自身の体のリズムを整えるためにアクセルシンクロの口上を確認していたわけである。

これはスポーツのプロ選手が最高のパフォーマンスを発揮するために、何か一つのことを習慣づけていることとよく似ている。ただその俺の習慣づいていたのがアクセルシンクロだったというだけで、別に変なわけではない。いいね?

 

そんな感じで紙のような理論武装を展開している俺の背から「……何してるの?」と、龍可ちゃん先輩がジト目でこちらを見ていらっしゃいました。

 

 

……グワァああああ!!!

相棒ォ!相棒ォオ!!何か俺の中からもう一人の人格よ、目覚めてくれぇえ!!!

 

 

そんな感じで一日が始まり、やっぱり夢ではないということを実感したのです。

 

 

 

 

 

 

 

赤っ恥をさらしてから時間がたち、龍亞君と龍可ちゃん先輩はデュエルアカデミアへ。

俺は昨日の約束通り、セキュリティの牛尾さんの元を訪ねる。

 

勿論、徒歩で来た。俺のメカメカしたバイクはこの先の闘いについてこれそうにない。誰でも時限爆弾を懐に抱えたくないのである。学習しました。

 

そんなこんなで牛尾さんに「どうっすかね?」と見かけてからすぐ声をかける。すると「お前また来たのか?」とめんどくさそうな顔して言われました、まる。

……えぇ?(困惑)。なんでや!?明日来いって言ったのは貴方様やろ!そんなに前、俺が深影さんと仲良く話してたの気に入らなかったんすか!?どんな人にも平等に接してはくれないか!貴方の敵はジャック氏なんだ。俺ではない!

 

俺が開幕先制オウンゴールを決めてしまったような心持ちの中、牛尾さんとの会話は進んでいく。

すると一応牛尾さんも考えてくれてはいたらしく、俺に「これからは俺の知り合いのとこに住ませてくれるよう頼んでやる」と頼もしい言葉。おう!流石牛尾さんだぜ!現在の彼は心が浄化されてるからね。基本いい人なのだ。

牛尾さんの返事を聞き、イヤッホォ!となっていた俺だが、次の彼から出た言葉に愕然とする。

 

━━で、その俺の知り合いがあの不動遊星なんだが━

 

 

━━土下座である。

俺氏即座にその場で土下座して、それを拒否させてもらうんだ(^o^)!

何故かって?別に遊星先輩は全く問題ない。むしろDホイールの遊星号が間近で見られるなんて(見せてくれたらの話だが)興奮しますぜ。

だがしかし、遊星先輩のとこにはあの、元キング氏━━ジャック・アトラスも住んでいるのだ。

……ジャック氏は時々無駄に鋭いことがあるって俺は知ってるんだ。ヘルメットごしだったとは言え、俺の正体が昨日ライディングデュエルした相手だって一瞬で看破されるかもしれない。結果、

 

お前!あの時のゴーストヤロウ!→いや人違ry→問答無用!(怒りを込めた右フックからの無言の腹パン)→ぐわっぱ(俺氏気絶)

→牛尾さんこの人です(諸行無常)

 

となるに決まってる(白目)

 

何故俺は自分で自分の首をシメていくスタイルなのか。スタイルチャンジしてぇ、そんな泣きそうな気持ちを抱きます。

 

結局その後「遊星先輩以外で行けそうなとこはないでしょうか?」と超贅沢なお願いをしてみて、むむっと牛尾さんは少し間をおいて考えてくれたのだけども、案は出ず。

取り敢えず今回もまた次に持ち越しという形で別れることとなった。

 

 

 

とぼとぼと歩く俺の後ろ姿からは、哀愁が漂っていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園のベンチに座ってぼーっとしてる俺は、全くもって意気消沈。どんどんマイナス方向へのイメージが頭の中に浮かんでしまう。

 

アカン。こんなんじゃあ全然だめだぜ。ただでさえ何も出来ないのに、元気さえ無くしてしまうとは。

燃やせ俺のバイタリティ。感じろ俺のバーニングソウッ!!

まだだ、まだ諦めるわけにはいかない、と俺は魂を荒ぶらせ立ち上がる。そうだ、まだ双子たちに世話になるのだから、俺はその恩を返すことに全力でいかなくてはならない。彼らはデュエルアカデミアで昼食は食べてくるんだから、俺はそれよりも美味しいと言われるような夕食を作らなくては。

 

まだいける。そうだ。いけるんだ。諦めるんじゃない。どっちみち迷惑をかけてしまうなら、俺はこの場所で恩を返して満足するしかねぇだろ!!!

 

取り敢えずはコストを減らすために、どのスーパーが安いのか、俺自身のコミュ力をマックスモードまで上げなくては。いくぜ!培われた商店街でのおばちゃんと話す術を披露してやる!

 

 

うぉおおおおお!!アクセルシンクロォオオオオ!!!

 

 

俺は駆け出す。

 

━━まだ、俺の満足はこれからだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック、一体どうしたんだ?」

 

不動遊星は自分の仲間であるジャック・アトラスの事を心配していた。

昨夜遅くに帰ってからというもの、彼はいつもより口数が少ない。何かを考え込んでいるのは傍目からでも理解することが出来たが、ジャックがここまで様子がおかしいのは珍しいことだと遊星は思っていた。

 

「……別に、何でもない」

 

「だがジャック、昨日から少し様子が」

 

「何でもないと言っているだろう」

 

そう言いきり、ジャックは遊星の元を去っていく。遊星はそんな彼の後ろ姿を目で追った。すると、数歩ほど歩いた後ジャックは急に立ち止まり、振り返らず遊星に声のみで問いを投げかける。

 

「……遊星。カオス・ソルジャーというモンスターを知っているか?」

 

「━━なに?」

 

「いや、知らないならいい」

 

ジャックはそう言って今度こそ遊星の目の前から消えた。

 

遊星はジャックの言葉を思い出す。

━━カオス・ソルジャー。確か自分は何処かでそれを聞いたことがある。

だが、思い出せない。そのモンスターの姿、形は知らない。その名だけは確かに聞いた覚えがあったはずだ。

 

━━調べてみるか。

 

遊星は一人心の中で呟く。

ジャックの様子がおかしい原因。それがそのモンスターが関係していることだとしたら、その価値は十分にあるはずだと静かに思う。

WRGPに向けての新エンジン開発とともに、遊星は一つの調べ事が増えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おばあちゃんは言っていた。「ここから少し遠いけど、今日は特別あそこのスーパーが安いよ」と。

 

その聞いた場所を、龍可ちゃん先輩から「一応持っておいた方がいい」と渡された地図で確認し、確かに徒歩はキツいなぁとうむむと唸る俺。でも、背に腹は代えられない。今回だけ!今回だけメカメカしたバイクの封印を限定解除するしかない!そう苦渋の決断をする。

 

一度双子たちの家に戻り、ヘルメットを被って準備はオールオッケー。

 

大丈夫、大丈夫だよ今回だけだし。Dホイールを見かけたら即座に退☆散すれば何とかなるのではないだろうか?なんていう安易な考えを持ちつつ、エンジンをかけてレディーゴー!風を身で感じながらスーパーへ向かう。

 

俺の身体が……スピードの世界に溶けていく……風と一つに……クリアマインド!!

 

運転している内に本来の余裕を取り戻した俺は、そんなふうに調子に乗り始めていた。

━━だがそんな俺の背後に、ヘッドライトをこちらに点滅させてくるDホイールがいることをミラーごしに発見する。

 

やっべ、もしかしてデュエル挑まれてる?そう思った俺はこれはマズイと後ろのDホイールをふりきるため、距離がある内にスピードを上げる。

 

見せてやるよ!俺が教官から授かったドライブテクニックを!一子相伝(嘘)だぜ!!

 

そう技術を駆使して頑張る俺だが、相手が余程の実力の持ち主なのか、中々ふりきることが出来ない。

 

 

し、しつけえ!!

なんでこんなに着いてくるんや!やめてくれないか!俺のドライブテクニック(笑)に抗ってくるのは!というかどんどん追いつかれて来てるんですけどぉ!!おい!やめろ!それ以上近づいたry

 

 

 

『DUEL mode Stand by』

 

 

 

ああ^~。

 

 

 

 

 

 

 

 

シェリー・ルブランは苛立ちを感じていた。

自身の両親を殺した、『イリアステル』という善と悪を超越した謎の組織。そしてその情報についての進展の無さ。ライディングデュエルの世界大会『WRGP』の裏でその組織が糸を引いていることは理解することが出来たが、逆に言えば、それ以上の事を知ることは出来なかった。

一体自分達が知ろうとしている組織は何の目的で、何を隠しているのか。

━━何故、自分の両親は殺されなくてはならなかったのか。

シェリーはこれまで、復讐のために身を捧げてきた。だからこそ自分の力の無さを思い知らされた。

それに苛立ち、現在彼女は一人、自身のDホイールで道を走っていた。

 

━━そんな時である。自身の前を行く一台のDホイールを見つけたのは。

 

不思議なDホイールだった。全体を銀で染めたボディ、だが多くのオプションとしてのパーツを後付けしたのか、元はただのバイクだったものがただ肥大化しただけのように見える。あの形では流線形を描く通常のDホイールとは違い、空気抵抗をまともに受けてしまうだろう。だが、それでもあのシルバーのDホイールはかなりの速度を保ち、走行している。元のエンジンが特別なのか、馬力は通常のものよりも格段に違った。

 

それにしても、あんなアンバランスなDホイールを操作している者はどれほどの技術を持っているのだろう。コーナーを曲がる時の減少速度。最小のルートを描く軌跡。全てがとても高いレベルで完成されている。

 

 

━━面白い。

 

 

シェリーはそのDホイーラーに興味が湧いた。

自身が苛立つ気持ちの解消も兼ねて、彼女はライディングデュエルを挑むことにした。あのDホイーラーならば、自身の今の暇潰し程度にはなるかもしれない。そう思い、ライディングデュエルに挑むためヘッドライトを点滅させ、相手に意志を伝える。

 

だが、そのDホイーラーはちらりとミラー越しにそれを確認した後、スピードを上げて遠ざかっていく。

 

 

━━やりたかったら着いてこいってこと?舐められたものね!

 

 

それがあの謎のDホイーラーの挑戦だと受け取り、彼女はそのあとを追う。

 

限界ギリギリのバイクレース。中々縮まらない距離。互いの技術は拮抗していた。なんて相手、と感心しつつも必死にシェリーは目の前の相手に追いつこうとする。

長い時間をかけ少しずつ、少しずつ間を詰めて、そして━━ようやく追い付いた。

━━捉えた!

 

シェリーは確信する。これでこのDホイーラーとライディングデュエルが出来る、と少しの達成感を抱いた瞬間、

 

 

『DUEL mode Stand by』

 

 

━━なッ!強制的に!!

 

自身のDホイールからの機械音声とディスプレイに表示されている文字から現状を把握する。

 

もしかすると目の前にいるDホイーラーは普通の、ただのデュエリストではないのかもしれないと、疑惑を深めながらシェリーはデュエルを開始した。

 

 

 

 




誤字報告して下さった方々ありがとうございます。これからも「これなんかおかしくね?」と思ったら教えてください。
作者は自分の頭の中を参照して書いてる節があり、間違いにあまり気づけません。だから感謝してます。うっす。


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A3.閉じ込められた!

 

 

 

 

 

 

シンクロモンスター、『フルール・ド・シュヴァリエ』。

 

相手が発動した魔法・罠を一ターンに一度無効にし、破壊する効果を持ったモンスター。

 

 

━━俺へのアンチカードかな?

 

 

またしても始まった強制ライディングデュエル、相手のDホイーラーが召喚したシンクロモンスターを見てつい、ぐえぇ!と声を出してしまう。

 

うーん……この!

スピードスペルさえ持っていない俺へ、トラップさえ無効にしてくるのはアカンって。ヤバイって。え?なんなん?シェリー氏マジホントになんなん?俺に修行僧になれって言うことなの?ドSかよ。

 

ただでさえそれだけでもキツいのに、シュヴァリエさんは攻撃力2700ありますからね。ぼくのさいきょうのまほうつかいにもわけてくれよ!その攻撃力!なに?師匠はサポートカードが多い?だから使えないんですぅ!今度は初期手札に千本ナイフ(笑)が来たし。もう、なんか、俺強いられすぎぃ!

 

これからこの千本ナイフ(笑)はデュエリストの嗜み、カード手裏剣用としても使おう。やったね!千本ナイフ(笑)君!デュエルでも現実でも投げられまくるよ!最高だね!

 

現実逃避している俺にシェリー氏━━シェリー・ルブランは容赦なく猛攻を仕掛けてくる。

ぐおぉお!!!リバースカードオープン!『魔法の筒(マジック・シリンダー)』!!

あ、やっぱ無効にします?ですよね!おら!二枚目だよ食らえ!!

 

 

なんとか耐えている俺。ちなみに、今相手にしているデュエリストがシェリー氏であることを知ったのは、シンクロモンスターが召喚されてからです。フルール・ド・シュヴァリエは様々な意味で特徴的だからね。白百合だからね。お前の頭の花デケェな。

 

 

このライディングデュエル、正直キツい。何がキツいって、ライディングデュエル用のレーンに隔離されたから、目的地のスーパーもう通りすぎてる。というかどんどん遠くになってる。

 

ああぁぁぁ!俺の予定調理時間がどんどん削られるぅ!!今日は子供が大好きハンバーグを作るのにぃ!シェリー氏このヤロー!お前手伝えよ。多分お前料理出来ないだろうけど手伝えよ!それは俺の完全な偏見だけど!!でも多分作れないだろ!絶対フライパンで玉子焼きが真っ黒になる系女子だろ!!

 

 

ミゾグチィー!はやく来てくれェー!はやくこのお嬢様をなんとかしてくれー!

 

そう俺は嘆きつつも、自分のターンを迎える。くっそ金髪には金髪ぶつけるんだよ、いけ魔法使いの弟子!もちろん守備表示ィ!!攻撃力2700の壁はそう簡単には超えられないからね。しょうがないね。

 

 

いけー!ぶらっく・まじしゃん・がーるー!がんばえー!

あ、やっぱやられた。まぁ彼女とその師匠はやられてから蘇生されるまでが仕事だからね。ありがとう弟子。よくやった。きっと次は師匠が逝くことになる。

 

 

ふむ、やっぱり。

 

俺は一人、心の内で納得する。昨日も何度も思ったことだが、やはり相手と自分のカードパワーの差が激しい。デュエルモンスターズは他のカードゲームと違い、相手のプレイングを阻害出来ることが特徴的なのに、俺のデッキではそれは厳しい。相手から一方的に邪魔されてしまうからね。

 

このデュエル、普通に負けそうだぜ。

おい、シンクロさせろよ。俺に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シェリー・ルブランは勝負を決めきれないことに焦りを感じていた。今相手にしているデュエリストは、強力なモンスターを使ってくるわけではない。ただ、こちらのプレイングに対して問いかける、こちらを試すような動きが多く見られた。それがシェリーの焦燥感を増す要因となっていた。

 

━━俺はカードを二枚伏せて、ターンエンドだ。

 

シェリーは自分のターンを迎える。先ずは一枚カードを引き、そして場を整えてからバトルフェイズに入る。

 

「私はフルール・ド・シュヴァリエで━━」

 

━━その前に、俺はこのカードを発動するぜ。

 

そう言って相手はリバースカードを明らかにする。そのカードは『強欲な瓶』。この罠カードの効果は『自分のデッキからカードを一枚ドローする』という効果。現在の相手の手札はゼロ。これを使われれば相手は次のターンとれる手段が増える。自分のもつ『フルール・ド・シュヴァリエ』は相手のトラップを一度無効にすることが出来るが、それは、ここで使うべきではない━━

 

━━だが、いいのか?

 

本当に、本当にそれで良いのだろうか?そんな迷いが一瞬、シェリーの脳裏を掠めた。楽しそうな声色で自身に問いを投げかける相手。このデュエリストは、自分との駆け引きを楽しんでいる。

 

(いや、相手の雰囲気に呑み込まれては駄目。ここで効果を使うのは得策ではない。あれはブラフ。あとの一枚が私を仕留めるためのカード!)

 

そう確信して、シェリーは次の指示をする。

「いいえ、無効化しないわ。私はフルール・ド・シュヴァリエで、そのままダイレクトアタック!『フルール・ド・オラージュ!!』」

 

そのまま白百合の騎士は銀色のDホイーラーの元へ向かっていく。次にどんな罠カードを使って来ても、シュヴァリエの効果で無効化することが出来る。この攻撃は確実に通る━━!!

 

━━リバースカードオープン!『聖なるバリアーミラーフォースー』!相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!

 

(やはり!)

 

シェリーは自身の考えが正しかったことに内心で喜びを浮かべる。

 

「私は『フルール・ド・シュヴァリエ』の効果を発動!ミラーフォースの効果を無効にし、破壊する!」

 

パリン、と聖なるバリアーミラーフォースーのカードは粉々に消え、白百合の騎士は相手に攻撃を与えた。

 

これで相手のライフは風前の灯火。そしてフィールドには何も存在しない。手札は一枚。これで自身の勝利は揺るがないものとなったと確信する。

 

━━なのに、

 

そんなピンチに陥っているデュエリストは、心の底から、楽しそうに笑っていた。

 

 

 

━━俺は『冥府の使者ゴーズ』を手札から特殊召喚する!このカードは自身の場にカードが存在しない時、相手がコントロールするカードによってダメージを受けたとき召喚出来るモンスター!そしてさらに受けたダメージにより効果が変わる。俺が受けたのは戦闘ダメージ。よって、俺は場に受けたダメージと同数値の攻撃力、守備力を持った『冥府の使者カイエントークン』一体をさらに特殊召喚する。来い!!

 

自分のターンだというのに、相手のフィールドに突然、二体のモンスターが召喚される。攻撃、共に2700。そんな大型モンスターが並んだ。

 

思えば疑うべきだったのだ、とシェリーはここで思考を再開する。相手は『フルール・ド・シュヴァリエ』のモンスター効果を知っていた。故に、何の策もなく無効にされ破壊されると分かっているトラップを、発動させるわけがないのだ。

 

「くっ……私は、ターンエンド」

 

まさか目の前の相手はここまで計算していたのか。そんな考えが浮かぶが、そんなことはあり得ないとその思考を振り払う。何の細工もなく、デッキから望むカードを引くことなど不可能だ。そう、これは偶然によって起きたことだ。シェリーはそのように納得する。

 

 

━━俺のターン。……まさか、ただ負けただけで済むと思ってないよな?

 

 

そう言って、相手は先ほどの純粋な笑みではなく、今度は邪悪な笑みを浮かべシェリーに声をかける。

 

 

突然、強制的にライディングデュエルに持ち込んできた相手。ただ者ではないことは明白。

最後にシェリーは、自分を慕ってくれた執事のことを思い、そうして、自身の敗北を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

罰ゲーム、シェリー氏は俺に負けたので荷物持ち。

 

そう言って彼女とともに買い物に来た俺。おばあちゃんが言っていた通りだ。ここのスーパー超安い。常時タイムセールかよってぐらい。俺の主婦センサーが激しく反応している。ここで燃やさず、いつ俺のバーニングソウルを燃やすというのか。今回はクリアマインドは捨てて、激しい闘争本能剥き出しで行かせてもらおう。その牛の合い挽き肉は俺の物だ!

 

俺がスーパーの中を移動している間、件のシェリー氏は雛が親鳥の後を着いてくるが如くの様子。しかし、その視線は人が殺せそうなほど冷たかったり。

 

ヒエッ(畏怖)

でも、一人が抱えられる物量は限られてるじゃないか!

申し訳ない、申し訳ない!許してくれないか!

俺はデュエルをしている最中思ったんだ、「冷蔵庫空っぽだから、たくさん入れて置きたいな」って!俺は悪くねぇ!悪いのは全部、メカメカしたバイクのせいなんだ。奴が「デュエルするぞー、バリバリー」と張りきらなければ貴女は巻き込まれてはいなかった。

これが運命だったのだよ。受け入れてはいただけry、ヒィ!すみませんすみません!ごめんなさい!シェリー氏、目力強ェ!!

 

内心ビクビクしながらも買い物かごの中に商品を入れている俺。わかった、このチョ○ボールで手を打とうじゃないか。なに?チロル○ョコの方がいい?でぇじょうぶだ、きっと金の天使が当たる。俺は知ってるんだ。だがキャラメル味はやめておくんだぞ。歯にくっつく。

 

買い物かごに調味料や、その他諸々の物を入れレジへ。するとレジのおばちゃんが「綺麗な彼女さんね~」と精算中声をかけてきたので「でしょう?」と調子に乗ってみたり。

 

そしたら、シェリー氏が俺の足を思いっきり踏んづけました☆

 

ぐおぉとその痛みに悶絶しつつ、おばちゃんに対しての笑みは崩さない俺。コミュ力っていうのは相手に気遣わせないこともその範疇に入るのだ。だから必死にその痛みに耐えているのに、シェリー氏はそれを効いていないと思ったのか、続けて追い打ち二連打からのグォレンダァ!!

 

流石に耐えきれず「やめろ……やめろォ!!」とアクセルシンクロが不発に終わる回の時の遊星先輩のように声を荒げる俺。

 

そこで満足したのか、彼女からの追撃はなくなった。

 

やっぱドSだわこの人。

 

 

 

 

 

 

そうして、龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に着いた。

やはり荷物は俺一人では持てないほど多くなり、シェリー氏にはかなり感謝していたり。

 

ありがとうシェリー氏。ほら感謝の印の○ョコボールだよ、と渡すために買い物袋の中をゴソゴソと漁ってようやく発見。

 

ぷっ、イチゴ味か随分かわいらし、グハァ!!やめろォ!つま先で脛を蹴るなァ!!俺が悪かった!煽った俺が悪かったから!

 

報酬のお菓子をふんだくり、すぐにDホイールのエンジンをかけてシェリー氏は去っていく。

 

それにしても、シェリー氏のDホイールって変わってるよね。

前後に赤色の先端尖ってる危ないヤツが付いてるし。ライディングデュエル中刺されなくてよかったぜ。ずっといつ突いてくるのかとビクビクしてたし。けっこう脅威でした。

コンセプトとしては馬を意識してるのかな?しっかりDホイールの名前もあって、確か『シュトルム・ウント・ドランク』だった気がする。遊戯王では始めてリアルファイトをした機体として有名だよね。返り討ちにあったけど。

 

よっこらせ、と買い物袋を両手に持ち、メカメカしたバイクを中に入れる。

……そういえば、俺のこのあまりにもメカメカしいバイクにも名前つけた方がいいのか?やっぱり、ロマンだし。つけましょう。よし!お前の名前はこれから『もっとシルバー巻くとかさ!号』略して『MS』だ!全体的に銀色だし、これでいいでしょ。うん。

 

そして家に入り、買ったものを冷蔵庫の中に入れてから調理開始。作るのは当初の予定通りハンバーグ。

ハンバーグはみんな大好きだからね。ハンバーグ師匠もそう言ってた。なんだ?付け合わせのミックスベジタブルを見るような目で俺を見やがって。ハンバーグの鉄板ジョーク先ずは100グラムから、

 

お、龍亞君と龍可ちゃん先輩が帰って来たぜ。

 

 

「たっだいま~!お、何作ってるの?」

 

「ああ、ハンバーグだよ。龍亞君と龍可ちゃんは、どう?ハンバーグ好き?」

 

「「勿論!!」」

 

 

やはりハンバーグ師匠は偉大。改めてそう思った。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告(予定)

龍亞と龍可、そしてメガネ君は神隠しの森へと探検に出かける。そしたら案の定、龍可が神隠しの屋敷に捕らえられてしまった!
龍亞は龍可を助けるため安定のデュエル脳で勝負に踏み切る。そんな時蟹さんがDホイールで登☆場。デュエルをしている龍亞を尻目に屋敷の中へそのままダイナミック入店。
それだけでもドン引きなのに、龍亞の目の前にはさらに新たなDホイールが現れた。そのDホイールは龍可が捕らえられている屋敷に向かって━━飛んだ。

次回『Q.カタパルトタートルで射出!』
デュエル、スタンバイ!!


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Q4.カタパルトタートルで射出!

 

 

 

 

 

 

 

俺がこの世界に来て数日が過ぎた。

 

相変わらず龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に居させてもらい、主婦のごとく家事に勤しみ日々を過ごしている俺。

勿論それだけではいけないと職を捜してはみるが、戸籍なしの謎の人物を受け入れてくれるところなどなく、あったとしても傍目から見て、すごく危なそうな雰囲気を感じる職種である。それはアカンと白目になりつつ避けている。

それでもめげずに、なんとか一人立ち出来るよう取り組んではみるが、芳しい結果は得られない。日々は常にハードモードだぜ。悲しい。

しかし、龍亞君と龍可ちゃん先輩、そして牛尾さんのような人の心遣いによって自身の心が荒むことなく生きてはいられる。それに俺はとても感謝しているのだった。

 

 

 

だがしかし━━逆を言えば、もう数日が過ぎてしまった。

 

恐怖心はない、と思う。ただ、言うとしたらどうしようもない焦りだけがそこにあった。なんでそうなのかは分からない。日々に感謝し、人の優しさに触れて恩を返すことに奔走している。自分の直面している現実はそんなに悪いものじゃないと思っている。

でも、ふとした拍子に思うのだ。

 

━━もしかしたらこれは夢で、俺はなんでもないように元の世界で目覚める。そして「楽しい夢がみれた」とちょっとだけ笑って、布団から起きて家族のための朝食を作ることになるのだ。

いつものような変わらない毎日の中に戻れて、でもやっぱり変わらないものなんて無くて。一日一日の自分の周りの変化を実感して、まあそんなもんでしょと一人納得する。

 

 

 

だからただ、焦燥感だけを抱いている。

 

本当にそんなふうに戻れるという確証が得られず、もしかしたら元の世界の時間も同じように、過ぎているのかもしれなかったから。

 

 

 

俺は現在、その焦りの解消法が分からずに、もがいているだけなのかもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、最近ぼーっとしてない?」

 

龍可は青年に対して、そう話を切り出した。

 

現在自分達の家に一緒に住んでいる青年、その人の様子が少しだけおかしいな、と彼女は感じていた。

 

━━あ、ごめんね。最近ちょっと寝不足ぎみで。

 

そう言って、青年は笑って言葉を返す。

別に謝ることじゃないよ、と龍可は彼に言葉を返しながら青年の言ったことについて考える。

 

確かに、龍可は最近になって青年が寝ていないことには気づいていた。

 

龍可がどうしても眠れないと思った夜の日に、一人寝室を抜けてリビングに来たときのこと。龍可は何か飲み物でも飲もうと思っていたのだが、その場所のソファーで寝ている筈の青年の姿が見えないことにふと気がついた。

 

龍可は最初に、もっとしっかりとした場所で青年に寝るように進めていたが、彼は「ソファーで一夜を過ごすのって、格好いい気がする」と言ってそれを譲らなかった。

当時はその言い分に呆れていたが、今になって考えてみると、それは申し訳ないと遠慮していたからではないかと思う。いつもは心の底から楽しそうに笑っている彼が、その時は困ったように笑っている気がしたから、そう思ったのかもしれない。龍可は当時はその違いに気づかなかった。数日青年と過ごしてようやく気付くことの出来たことだった。

 

そんな彼の姿が見られないことを不審に思った夜のこと。彼女は青年がどこにいるか探してみたことがある。

家の中には居なかった。それではと今度は外の方に顔を出してみた。すると、青年はそこに居た。白のベンチに腰かけ、背中を丸めながら前を向いている。

 

龍可の場所からでは青年の後ろ姿しか見えず、彼がどのような表情を浮かべているか分からない。

 

ただ、力なく肩を落としたその様子から、彼はひどく疲れているのではないかと思った。

━━そんな毎晩外にいることが、ここ最近ずっと続いている。

彼は毎晩外に出て、白のベンチに腰かけて、肩を落としている。その姿を見る度に、龍可は何故か寂しい気持ちになった。

 

 

その彼の様子は、自分達の前では絶対にみせないものだったから。そう感じたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

満点の星空の下、溜め息を一つ。

 

なんていうか俺って、ここまで心弱かった?と自己嫌悪に近いものを感じていたりする。

周りの人に結構気にかけてもらってるのに、情けねぇと思うのです。こんなに心の内が晴れないのは生きてきて始めてだったり。

 

もう夜も遅く、明日のために疲れをとらなくてはとは思うのだけど、目は完全に覚めてしまって寝られない。それでも無理して目を閉じ横になると、考えても分からないことばっかり考えてしまうし。

 

あれ?これって鬱病の一歩手前だったり?なんて一人で問いを投げかける始末。アカンですよ、これは。うん。もしかすると自分で思ってるよりもヤバイのかもしれん。少し危機感を感じているのです。

 

龍亞君と龍可ちゃん先輩の庭にあるベンチに座って、一人佇む。

 

どうしましょう?とぼうっとしながら考えてみたり。いや、どうしましょうも何もないのだけどね。どうしても考えてしまうというか。出来る限り考えないようにしようとしてるのだけど難しいわ。というかこれが何日も続いている。

これって思春期のアレに近いものを感じるなぁ~と一人思ってみるのでした。なんで人間生きてるの?みたいな命題について考えるヤツというか、それに近い系統です。

ふむ、なんでこんなにモヤモヤとした気持ちになってしまうのだろうか。

 

 

元の世界に帰れないから?

━━勿論、最初の原因はそれだろう。だがだったら尚更、自分の行動力を増やしていかなくてはいけないのだ。さっさと寝ましょう。

 

職が見つからないから?

━━いや、それはモヤモヤする以前の問題っす。なんとかしなきゃならんわと、毎日奔走中。

 

 

じゃあ、なんでこんなに━━苦しいのだろうか?

 

 

その答えが分からない。

胸が締め付けられる苦しさではなく、胸の内から冷たくなっていくかのような苦しさに近い。どうすればこの苦しみは無くなるのか。

 

そんなふうに眉間を寄せて考えてみる俺。

勿論それでも答えはわからなくて、こりゃあ今回も駄目だと大きく肩を落とした。

 

「隣、いい?」

 

そんな俺の横に、今では寝ている筈の龍可ちゃん先輩が来たのである。

 

いやいや、隣良い?ではなく、もう良い子は寝る時間なんだぜ?と俺は龍可ちゃん先輩にびっくりしながらも言ってみたり。

それでも彼女は「じゃあ座るね」と言って隣りに腰を下ろしたのです。え?じゃあなんで聞いたのと俺は自分の言ったことがスルーされたことにマジかとこれまた驚愕。

 

だって龍可ちゃん先輩は俺が今まで一緒に過ごした限り、なんていうか気が弱いけれども、気が利く女の子という印象だったのだ。時々精神のレベル高いなと思うぐらいで、それ以外は普通の子供である。そんな子がこちらの言い分をスルーして行動するとは思わなかった。だから驚きである。

 

そのまま二人でベンチに座って、お互い無言で時間を過ごす。

 

……やばい超気まずい。え?なんでこんなことになってるの?こんな重い沈黙も生まれてはじめて。

 

サイレントバーニングでもしたのかな?と心の内で思っている俺に対して、龍可ちゃん先輩は「なにかあったの?」と俺に聞く。

 

その問いに「いや何でもないっすよ。うっすうっす」といつもなら返す俺であるが、今日はもう時間が遅いからか、ちょっとセンチメンタルな気分。結局何度も口ごもった後、「いや、それは言えないんだ」と何とも煮え切らない返事をしてしまう。

 

実際、自分の事情は話せない。話したら頭おかしいヤツだと思われるし、それで気味悪がられたら立ち直れる自信がない

第一、今では自分にさえ確証が持てないのだ。本当に自分が異世界移動してるのかさえ分からず、証拠はないので証明出来ない。

 

 

 

もしかして俺は、永遠に覚めない夢を見続けているのではないか━━?

 

 

「それじゃあ、しょうがないね」

 

そんなふうに思考が負のスパイラルに陥っている俺に対して、彼女はそう言った。

 

そうして続けて、

 

「でも話してくれる時がきたら、私はいつでも聞くから」

 

 

その言葉で━━ようやく、肩の荷が下りた。

 

思えば俺は、きっと辛かった。何が辛かったのか。それは俺が隠し事をしていることを、さらに隠して過ごしていたから。周りの人が自分に何の偽りなく関わってくれているのに、自分だけは偽っていることを見せないようにしていたから。

 

でも、周りから見ればバレバレだったのだろう。そもそも今まで馬鹿正直に生きていた俺が、上手く人に隠し通せる筈がないのだ。様子が可笑しいことなどお見通し。コイツ本当に記憶喪失なの?とは常々思っていたのではないだろうか。そんなことを思う。

 

だから、それを聞いてくれると言ってくれる人がいて━━嬉しかった。もしかしたら、これから先話す時は来ないかもしれないけれど、そう言ってくれるだけで俺は救われたと思った。

 

 

俺は龍可ちゃん先輩に「ありがとう」と言った。

そうして続けて「早く寝ないと背が伸びないぜ」と言って彼女と一緒に家の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

一夜明けてそのまま朝を迎え、龍亞君と龍可ちゃん先輩はデュエルアカデミアに登校して行った。

 

前夜に『……それがお前の心の闇か』状態だった俺もぐっすりと寝て体調は万全。

 

よっしゃあ今なら何でも上手く行けそうな気がするぜぇ!と就活に励み、結果は撃☆沈。

人生そんな上手くいくわけないだろォ?と現実に直☆面。

 

べ、別にいいし?今日は近くのスーパー特売だから、しっかりと買い込んで御飯作るからいいもんね。

そうしてスーパーに行き、顔見知りとなったおばちゃんと談笑してから帰路へとつく俺。

 

思えば昨日、龍可ちゃん先輩にメンタルカウンセリング受けた俺だけども、よくよく考えれば超恥ずかしいやつじゃね?と客観的に自己分析。というか普通は立場逆でしょうよ。もしかして龍可ちゃん先輩の方が俺より精神年齢高かったり。

いやそんなことあろうはずがない(迫真)。俺は頼れる(笑)お兄さんなのだ。

 

今までを振り返るとそんなことないけど、だったら今から成れるよう努力するんだよ!と意気込む俺。流石に自分の下の兄弟と同じくらいの子に負けるわけにはいかない。対抗心を燃やしているのであった。

 

そんなふうに決意を固めている俺が龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に着くと同時に、デュエルアカデミアの制服を来た生徒━━メガネ君が息を切らしながらやってくる。

ちなみにこのメガネ君とは、前ハイトマン教頭とデュエルした時に知り合った龍亞君と龍可ちゃんの友達である。メガネが特徴であり、メガネが宿命の子だ。

 

お、どうしたメガネ君?今日もメガネしてんなと声をかけた俺だが、メガネ君はそんな俺のことなど構わずに「龍可が神隠しの森で迷子になって!龍亞もそれを探すって言って、森の中に入っちゃったんだ!」と俺に伝えてくる。

 

俺はそれを聞き「あの屋敷に捕らえられるヤツか~」と最初は「よくある、よくある」とメガネ君に言っていた俺だが、ふと一つのことを疑問に思った。

 

メガネ君は俺のところまで来て、その異常を伝えて来たのである。おそらくだが、龍亞君が俺に伝えるよう彼に頼んだのだろう。だから彼は龍亞君と龍可ちゃんの家まで走って来て、それを伝えることとなったのだ。

 

そう、つまり。まさかとは思うけれど、メガネ君。

 

 

━━それ、先に遊星先輩に伝えてあるんだよね?

うん?なるほど。伝えてないんだ。よし、分かった。

 

 

━━今すぐ行ってこい。

 

 

 

 

 

 

 

「龍亞!大丈夫か?」

 

「遊星!」

 

神隠しの屋敷に捕らわれている龍可を助けるため、龍亞はその元凶である少年とデュエルをしていた。その彼の元に、赤色のDホイールに乗った不動遊星が駆けつける。

 

「遊星、あの中に龍可が!」

 

「分かった!」

 

遊星は龍亞が元凶の少年を引き付けている間に、龍可が捕らえられている屋敷の扉をぶち破りながらDホイールで侵入。件の元凶の少年は、自身の家の扉がいとも容易く壊され、それにドン引いていた。

 

 

━━しかし、それだけでは終わらない。

彼の目の前に広がる森から、また新たなDホイールが凄まじいスピードで向かってくる。

 

銀色のボディをした、様々なパーツを後付けしたような金属の塊。それに乗るDホイーラーは怨嗟のような声を漏らしながら、え?どっちが悪霊なの?と自身と比べてしまいそうなオーラを放って此方を睨んでいる。

 

 

そうして、そのDホイーラーは「━━龍可ちゃん解放しろやゴラぁアアア!!!!」と叫び、木の根を台にしながら、Dホイールごと━━飛んだ。

 

 

それは綺麗な放物線を描く。龍亞と元凶の少年の頭上を悠々と越し、まるで鳥のような滞空を見せ、そうして、

 

 

 

龍可が捕らえられている屋敷の二階部分に、ぶち当たった。

 

 

 

 





龍可ちゃん先輩は主人公のメンタルカウンセラー。この小説のオーバートップクリアマインド。
今回はあまりギャグに傾倒していないんだ。すまない。作者の力量不足だ。
それと次の更新は用事で最低でも三日後になると思う。重ね重ねすまない。ガッチャ。


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A4.相棒ォー!!

 

 

 

 

 

 

「一体何だったんだ……あのDホイールは」

 

セキュリティの職員は一人、途方にくれていた。

その原因はある正体不明のDホイールだ。

 

このセキュリティの職員はパトロールの最中、目の前を銀色のDホイールが物凄いスピードで走っていくのを目にした。明らかに危険な速度。あのままあのDホイールを放置していいはずがない。セキュリティは自身のDホイールでその後を追う。

だが、そのDホイールに警告をするよりも早く、それは凄まじい速さで遠くにいってしまう。

 

━━くそ!このままでは逃がしてしまう!

 

そう思ったセキュリティは━━相手のDホイールと、ライディングデュエルをすることに決めた。

 

ライディングデュエルをする間、Dホイールの速度は制限される。警察組織であるセキュリティは犯人に逃げられる前に、その方法でデュエルによって相手を拘束することが出来るのだ。そのセキュリティの職員も同様のやり方をとることにした。しかし、

 

 

━━反応しない?

 

目の前から遠ざかっていくDホイール、あれはデュエルモードへ移行する信号に反応せず、そのまま速度を上げて去ってしまったのだ。

 

 

 

「何がどうなってるんだ……?」

 

 

彼は一人でその異常を嘆く。

職員は、これはまた牛尾先輩に叱られそうだ、と頭を悩ませるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら屋敷にダイナミックカタパルト射出していた件について。

 

……ち、違う!わざとじゃないんだ!!

確かに屋敷の扉ぐらいはぶち破ってやるぜ☆って思ってはいたけど、こんな悲☆惨な崩壊を招くつもりはなかったんや!

 

ただ超スピードで突っ込む途中で何処かの木の根に躓いて、気付いたら大空にフライアウェイしていただけなんだ。滞空中に『もうどうにでもな~れ☆』と諦めて運命に身を任せるしかなかった。そうだ、これは神様のイタズラってやつなんだ。

 

だから、だからこの屋敷の持ち主の少年よ、そんな目で俺を見るな。お前マジかよ見たいな顔を向けるんじゃない。見るな!そんな目で俺を見るなァ!!

 

わざとじゃないから許して、と心の内で謝罪している俺。そんな元に「だ、大丈夫!?」と、この屋敷の中に閉じ込められていた龍可ちゃん先輩が俺の元に駆け寄ってくる。

 

そうだよ。よく考えればこの屋敷の主の少年は幼女監禁の罪に捕らわれているんだ。つまり、俺のこのダイナミック☆カタパルト射出は、正当防衛に似たサムシングの可能性が微粒子レベルで存在する……?

 

そうだ、きっとそうに違いない。俺のこの惨状は必要経費だったんだ。そう思おうじゃないか。ほら、ウルトラ○ンだって怪獣と戦う度に整備された道路とか踏み潰したりしてるけど、なんのお咎め無しでしょ?そういうことなんや、そういうことにさせてくれ。お願いします。

 

まぁでも、龍可ちゃん先輩の無事を確認出来てよかったぜ。メガネ君が遊星先輩に助けを求めていないことを知ったときはマジかと戦慄したけど、俺の取り越し苦労だったみたいだ。この神隠しの屋敷の話しは俺の記憶に鮮明に焼き付いてるんだ。なんとか間に合ってよかったぜ。

 

この話は必死になって阻止しなきゃいけないことがあったからね。まあ可能性の話になるんだけども、ないとは言い切れないし。

 

━━何故俺が此処まで必死にメカメカしたバイクを飛ばしてきたのか。それはある一つの理由があった。

 

この神隠しの屋敷はある兄弟の思念みたいなもんが残って、その兄弟の兄が悪霊になったのが始まりなのだ。確か病弱の妹を兄が熱心に世話してたんだけども、その苦労が報われず、どっちも同じ末路をたどってしまったということだったと思う。

でも、悪霊みたいなもんになった兄は残留思念からか、妹が居るこの屋敷に近づく奴はしまっちゃうおじさんという行動にでるのだ。遊戯王らしくカード化して神隠しする。デュエルで負けた結果そうなるのかは覚えてないが、確かそんな感じのはずだ。

 

だが俺が何故ここまで必死に、ダイナミック突撃してまで龍可ちゃん先輩の無事を確認したかったのかの理由は、それとは別だったりする。勿論それも少し心配ではあったが、それが理由ではないのだ。

 

俺がここまで必死になった理由━━それは龍可ちゃん先輩が、エ○同人みたいな目に遭わないようにするためだ。

 

は?何言ってんのコイツ?うわ!?犯罪者予備軍だ近寄んな黙れ変態。変態がうつる、しっしっ!と思ったかもしれない。だけど、先ずは俺の言い分を聞いてからそう判断してはくれないか?お願いだ、すみませんお願いします。

 

━━龍可ちゃん先輩がこの屋敷に捕らえられるまでの経緯を説明しよう。龍可ちゃんは始め、なんか突然目のハイライトが消えて、ふらふらと人形のように森の中を歩いていく。その結果、この神隠しの森で迷子になってしまうのだ。龍可ちゃんが洗脳された感じで迷子になったのは、神隠しの少年の犯行と見た方が自然だと思われる。だが、証拠はない。しかし十中八九そうだろう。奴はショタにしてロリコンを患っていると俺は考えているからだ。

 

まあそれはいい。よくないけど、いい。その後が問題なのだ。

 

龍可ちゃんは森の中で迷子になった後、少したって襲われるのだ━━触手に似た植物のツルに囲まれて。

 

当時、それを食卓で兄弟一緒に見ていた俺の気持ちを考えてみてほしい。

━━超気まずかった(真顔)。俺の下の兄弟はまだ幼なかったから気にしてなかったけど。俺と上の兄はどっちがチャンネルを変えるかで、視線で死線のやりとりをしてた。いや?俺は何のことだかわからんし?と両者共にすっとぼけていたが。

 

すまない、話を戻す。

まあ触手に似たツルに襲われた龍可ちゃん先輩なんだが、その後、悪霊の少年にその場面を助けられて、その結果として屋敷の中に案内されて閉じ込められることになる。

 

ここまで話せば何となく察しはつくだろう。そう、こう推理することが出来るのだ。

 

龍可ちゃん先輩が突然レ○プ目になって迷子になる→恐らく悪霊となった少年のせい

龍可ちゃん先輩がエ○同人的な目に遇いそうになる→恐らくショタにしてシスコンでロリコンな少年のせい

龍可ちゃん先輩を助けて屋敷の中へ誘導する→ロリコンな少年なら当然の流れ

 

つまり、すべては自作自演。龍可ちゃん先輩を少年が助けたのも、自分は何の関係もないということを印象操作したにすぎない!

このことから導き出される結論は……龍可ちゃん先輩が、またエ○同人的な目にあう可能性がかなり高い確率で存在するということだ!(迫真)

 

な、なんだってー!(なに言ってだコイツと思うだろう。だが可能性はなきにしもあらずなのだ。というか八割以上あると俺は踏んでいる。あれ?そう思うと屋敷☆崩壊させたことも別に悪い気がしなくなってきたぞ。へっ、龍可ちゃん先輩監禁しやがってこのヤロウ。やったぜ。

 

 

俺は完全に開き直った。そして駆け寄ってきた龍可ちゃん先輩に「大丈夫。龍可ちゃんも無事でよかったぜ」と安堵の溜め息を一つ。

 

何はともあれ、俺の危惧していた事態には陥ってなかったのだ。一件落着である。そうお互いの安否を喜びあっている内に、助けにきた遊星先輩が合流。

 

後は二人と龍亞君に任せておけば万事滞りなく済む、そう思った俺は極力隅っこで気配を圧し殺しているのでした。

 

いけー!るあくーん!がんばえー!

 

 

 

 

 

 

本当に万事滞りなく済んだ(歓喜)

 

最終的に、亡霊となった兄弟は一緒に旅立たっていき、神隠しの被害にあっていた人達は無事に解放された。

もう日が落ちてきて辺りは夕暮れに染まっている。あ、いっけね。料理の仕込みやってないでござる。これは早いところ帰らんと。

 

そう思い倒れてたメカメカしたバイク、もとい『MS(もっとシルバー)号』を立て直して、夕飯までには帰ってくるのよ!と一人バイクで颯爽と立ち去ろうとする俺。

 

その前に、龍可ちゃん先輩が再度感謝の言葉を伝えてくるので、「いや、俺は当然のこと(エ○同人な目にあうのを阻止する的な意味で)をしたまでさ」と一言。

今日も一人、幼女の敵がいなくなったと社会の清掃を終えなんだか清々しい気持ち。こんな仕事ないかな?と現実を思い出して一瞬でどす黒い気持ち。明日も頑張らないと。カットビングだぜ!俺!

 

今日の夕御飯は唐揚げだからね!と最後に龍亞君に伝えようとした俺だが、その龍亞君は遊星先輩に「この人、デュエル超強いんだぜ!」と俺を指差しながら言う。

こらこら人を指差しちゃいけないでしょ、と俺が保護者の様に龍亞君を咎めるより先に、それを聞いた遊星先輩が「……そうか」と少しニヤリとしながら一言。

 

そうして続けて「その丈夫なDホイールからして、ただのデュエリストではないと思ってはいたが……そうか、やはり強いのか」となんか戦闘態勢に入りながら言う。

 

いや、少し待ってほしい(懇願)

 

貴方はそんな血の気が多い人ではなかったはずだ。なに?ゴーストと戦ってから考えてた、シンクロ召喚以外の戦術を試したい?ハッハッハ━━勘弁してくださいお願いします!無理やって!例え遊星先輩がシンクロ召喚使わなくても無理やって!

……わかった、わかったよ!!じゃあちょっと待って、千本ナイフ(笑)デッキから抜くから!それまで待って!!あとライディングデュエルは無しな!この条件だったらデュエルしましょうぜ!こうなったら自棄さ!

 

 

 

唐突に始まりつつある遊星先輩とのデュエル。俺はデッキケースの中に千本ナイフだけ残しつつ、これは荒れるぜ、と冷や汗を流しているのだった。

 

 

遊星先輩の蹂躙(ソリティア)が━━始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このモンスターは……」

 

不動遊星は目の前のモンスターを見て、自分のライバルの言葉を思い出した。

 

━━カオス・ソルジャー

 

相手が発動した魔法カード『カオスの儀式』により降臨した儀式モンスター。

攻撃力3000、守備力2500のバランスがとれた戦士。鋭利な曲剣と紋章のようなものが描かれた青色の盾を手に持ち、此方を静かに見据えている。

 

遊星はこれがあのジャックが考え込むに至ったカードかと納得しつつも━━だがあのジャックが、このカードで?と反面信じきれない気持ちがあった。

 

確かにこのモンスターは普通とは違う。纏う力というべきか、実際目にして圧倒される強さがあった。

しかし━━不動遊星、そしてジャック・アトラスは、それに近い脅威というものは何度も目にしてきた。サイコデュエリストが扱うモンスターや、ダークシグナーの地縛神。それに近い、特別なカードではあるとこれを目にして思うが、だが逆をいえば、ジャックが塞ぎ込むほどの脅威はないと同時に思った。

 

 

━━いくぜ。こんな事は、滅多にない。

 

 

遊星の相手━━青年は楽しそうに笑って、そう言葉を紡ぐ。遊星は「なに?」と一つ疑問の声をあげるが、相手の青年はそれを気にすることはなく優麗にカードに手を添え、それをデュエルディスクに━━置いた。

 

 

━━来い!その戦士のもう一つの姿━━カオス・ソルジャー━開闢の使者━!

 

 

 

━━空に闇と光が降り注いだ。そしてそれは一つの渦となり、そして交わる。その奔流の中、同じ形、同じ姿をした一人の戦士が現れる。

 

遊星はそれを目にした瞬間━━これか、と完全に理解できた。

 

光と闇の化身、開闢の使者。これはただのモンスターではない。

 

自身の所持するスターダスト、ジャックのレッドデーモンズのような『意思』を感じるようなカードとは違う。

 

このカードからは確固とする、恐怖するほどの、凛然たる『使命』があると感じる━━!!

 

 

 

 

━━やれ!『カオス・ブレード』!『開闢双刃斬』!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊星先輩の蹂躙(ソリティア)が━━始まらなかった(安堵)

 

まあ遊星先輩のソリティアはシンクロ召喚から始まる節があるからね。対ゴースト用のシンクロ召喚使わない戦術じゃあ、どうしても回転率は落ちちゃうからなぁ。今回デュエルには勝てたけど、本来ならモンスター召喚→蘇生→シンクロ→蘇生→シンクロ(二体目)→蘇生→シンクロ(三体目)→(以下省略)

なんてこと普通にあるからね?今回は勝ちを譲ってくれたものとして考えましょうぜ。

 

しかし今回はカオス戦士二体揃えられてテンション最高潮だぜ。やはり攻撃力3000が二体もフィールドにいると安心感がある。師匠?師匠がいるときはやられても蘇生するまでが本番だから逆に安心できるぜ。やはり主人公のエースは格が違った。

 

デュエルを終えた後、遊星先輩が「お前は……いや、なんでもない」ってちょっと意味深なこと言ってたけど、超気になる。よくある途中で言葉を区切る中二リズムは俺の黒歴史に効く。勘弁だぜ。

 

遊星先輩が真っ赤なDホイールで帰宅していくのを尻目に、じゃあ俺も帰るかとDホイールのエンジンをかける。

 

そこで気がついた━━龍亞君と龍可ちゃん先輩いるじゃん。さすがに子供をこのまま放置は駄目だぜと、俺氏メカメカしたバイクを押して一緒に帰ることにするでござる。

 

帰宅途中、龍亞君は「あのカード、迫力すごかった!!」と興奮ぎみに俺に語ってきて、微笑ましい気持ちでそれに受け答えしていたのだけど、対して龍可ちゃん先輩は俯きぎみ。なんか元気ないでござる。

一体どうしたのかと考えるが、思いあたる節はない。まあしかし今日は龍可ちゃん先輩は身の危険を感じたりしたからね。その影響なのだと思ってみたり。うん。きっとそうでしょ。

 

 

いやーそれにしても、身の危険で思ったのだけど、

 

 

 

 

━━俺とバイクの強度、上がってね?

 

 

 

 

 

 

 




この小説をお気に入り登録してくれた人が1000人を突破しました。ありがとうございます。
ということはマジシャンガールを使うフレンズが1000人をこえたということですね(超思考)
作者は二番目にレモンマジシャンガールが好きです。
これからも誤字が多い作者ですが、見つけたら教えてくれると嬉しいです。ありがとうございました。


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Q5.ラッキーカードだ。こいつが君のとこry

 

 

 

 

 

 

 

 

現在ライディングデュエルを行い、クロウ・ホーガンと対決している俺。

 

先行ドローが千本ナイフ(笑)、次にバフォメット、幻獣王ガゼル、そして伏せカードも次々に破壊され、まさに敗北寸前だった。

 

モニターから分かる客のため息、どこからか聞こえる「悔しいでしょうねぇ」の声。

 

無言で帰り始める仲間たちの中、今まで千本ナイフをコストとして使い続けていた俺は、独り双子の家で泣いていた。

 

シンクロで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるジャンドデッキ。

 

それを今のライディングデュエル(実質魔法禁止)で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。

 

「どうすりゃいいんだ……」

 

俺は悔し涙を流し続けた。

 

どれくらい経ったろうか、俺ははっと目覚めた。

どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい床の感覚が現実に引き戻した。

 

「やれやれ、日課のカード手裏剣の練習をしなくちゃな」

 

俺は苦笑しながら呟いた。

立ち上がって伸びをした時、俺はふと気付いた。

 

「あれ……?またライディングデュエルの会場にいる……?」

 

夢から覚めてもクロウ・ホーガンと再戦する俺。相手の戦力は圧倒的だった。

永続的に攻撃力と守備力を半減する『疾風のゲイル』、それを筆頭したふざけたような連続特殊召喚。地鳴りのように過去の環境を荒らした実力で、相手は場を制圧する。

どういうことか分からずに呆然とする俺に、いつも目にするカードからの声が聞こえてきた。

 

『おい、いつまでも手札コストで使うなよ』

 

こちらを慈しむような声に、俺は目を疑った。

 

「さ……千本ナイフ?」  

 

『なんだ、居眠りでもしてたのか?』

 

「あ、暗黒騎士ガイア?」  

 

『なんだ、いつもカード手裏剣用に使いやがって』

 

「カース・オブ・ドラゴン……」

 

俺は半分パニックになりながら自分の手札を確認した。

 

・千本ナイフ

・暗黒騎士ガイア

・カース・オブ・ドラゴン

・融合解除

・サイレント・マジシャンLV8

 

 

暫時、唖然としていた俺だったが、全てを理解した時、もはや俺の心には曇天の空が広がっていた。

 

「勝てない……BF(ブラックフェザー)を倒す手段は……ない…」

 

次に引いたカードがブラック・マジシャンだったことを確認し、ライディングデュエルで全力疾走する俺。その目に光る涙は悔しさというより、悲しさからのものだった。

 

 

 

翌日、カードスリーブ投票でサイレント・マジシャンとフレシアの蠱惑魔の商品化が決定し、モリンフェンは静かに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夢か」

 

……いや多分、予知夢だコレ。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

ライディング・デュエル……それはスピードの世界で進化したデュエル……

 

 

 

そこに命を懸ける伝説の痣を持つ者たちを、人々は5D'sと呼んだ!!!

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━俺とバイクの強度、上がってね?

 

 

そう思った俺は自分の限界を確かめてみることにした。

早朝から双子たちと一緒に外へ出て、ある場所へと向かう。そうしてその場所に着くと俺は軽く準備体操をし、怪我をしないように万全の態勢で挑む。

 

いくぜ龍亞君、龍可ちゃん先輩。俺の走力を見るがよい。

その場所、デュエルアカデミアのグラウンドを貸してもらい、現在体力測定をしようとしている俺。

ちょうど今日はアカデミアは休みであり、学校の授業がないので生徒がいない。それを知った俺は、部外者だけど少しグラウンドを貸してもらっていいっすかね?と今回の俺自身の体がデュエリスト化してるかどうかの確認のための練習場として、そこを使わせてもらえないかダメもとで聞いてみたところ、その答えはオッケー。

なんでもハイトマン教頭が気を利かせてくれたらしい。ありがとう先生。これで俺のデュエリストの真価を試すことが出来るぜ。

 

よし、まずは50メートル。

俺のこの世界に来る前に計ったタイムは6.6秒。つまり、デュエリスト化した今の俺なら、世界新記録も狙える可能性が微粒子レベルで存在する……?

 

つまるところ、光よりも速く!アクセルシンクロは光をも越える……!

 

龍亞君にスタートラインで初めの合図を出してもらい、龍可ちゃん先輩にタイムを計ってもらう。

 

 

よし、行くぞ━━アクセルシンクロォオオオオ!!!

 

結果、6.8秒。

 

……落ちてるじゃないか!?(愕然)

なんでや!なんで前よりも遅くなってるんや!

この「帰宅部にしては足速いけど、運動会の選抜リレーに選ばれるほどじゃないよね」とクラスメイトに『地味に速い人』と言う異名がついた俺が、このような醜態を晒してしまうとは。項垂れる俺。だが、諦めてはいけない。

 

く、くそう。次は走り幅跳びだ!

まだいける。俺のベストは6.58メートル。チーム満足に至るには、10メートルは軽く越えなくてはならない。

 

自分を追い込むんだ……そうだ、今俺の後ろにはブラックホールが迫ってきている。…そしてその重力場に捕らわれてしまう直前。あと少しで素粒子レベルまで破壊されて、この世から消滅するんだ…。

 

そうだ!限界を越える力を!俺自身の無限の力と、可能性を!!

 

 

 

光を超え、未来を切り開くんだ!!

━━行け!!!遊星ーーー!!!!!

 

 

 

 

 

「6メートル42センチだね」

 

 

 

━━遊星……。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり、人生そんなに上手くいかないのである。

最終的にどの身体能力もデュエリスト化していなかった。

つまるところ俺は怪我とかあんまりしなくなっただけなのかも、という結論に落ち着いた。いや、それでも凄いのだけどね。やっぱり俺も男の子なわけで。俺もチーム満足のようなアクロバティックすぎる躍動をしてみたいとか思っていたのである。跳躍力とかアップして飛び込めるようになったり、そんな無断な動きを出来ることが理想である。まあ、恐らく無力なのだけれども。うっす。俺の満足はこれからだ。

 

まあ身体能力については諦めることにして、デュエリストの嗜み、カード手裏剣は出来るよう努力することにした。

継続は力なり。そんなこんなで日夜努力し、それが実を結んだのか、今では忍者のような構えからでも的の真ん中に千本ナイフ(笑)が刺さるようになった次第である。

最終的な到達点はノーモーションからの千本ナイフ(笑)、幻獣王ガゼル(爆笑)、バフォメット(大爆笑)の三連カード手裏剣である。このカード達は初代遊戯王の中でも最高のインパクト(手札に来たらヤバイという意味で)を持つカードだ。

 

まあでも正直な話、バフォメットと幻獣王ガゼルが手札にあるときは、決まって次に融合が来るので大して困ることは少なかったり。

やはり問題は千本ナイフ(苦笑)先輩っすよ。彼はいつも手札コストで墓地に逝く運命を背負っているからね。いつになったら正しい用途で使われる日が来るのか……。それは神のみぞ知る。

 

話を変える。

 

それにしても、未だに俺が元の世界に戻る兆しが全く見えないのはマズイと思われる。

いや、まあここでとりあえずは頑張っていこうというメンタルは前回の龍可ちゃん先輩のカウンセリングで確保出来ているのだけど、ちょっと不安になっちゃうのはしょうがないと思うんだ。なんていうか、燻ってる感じ。

 

なんとか打開策を考えなくてはなぁ、と俺は今日も食事の買い出しをしながら考えてしまうわけである。ぐぬぬ、という心持ち。

 

そういえば、ここには『イリアステル』っていう荒廃した未来から現れて、誤った歴史を修正するために活動する愉快な合体集団がいるんだよな。彼らなら、俺がどうすれば元の世界に帰れるかっていう方法も知ってるかも?しれないんじゃないかも。未来には俺みたいな前例も確認されてるかもしれないかもし。なんて漠然とした推測しか立てられないのが現実だ。困った。もうどうすればいいんだ。ルドガーに聞くしかないな(確信)。

 

 

あれ?というか、俺がこの世界の人じゃないって、もしかして彼らにバレてんじゃねぇ?

 

━━もう何かしらのアクション起こそうとしてるんじゃねぇ?

 

 

━━そんな答えを脳内で導いた時と同じくして、俺の前に二台のバイクが行く手を阻むように停止した。

 

一台は見たことがない黒いボディをした大型のDホイール。搭乗者は執事服のようなものを身に纏った、かなりガタイの良い人物。

そしてもう一台は前後に特徴のある鋭利な角をつけた、全体的に赤色をしたDホイール。俺はこのDホイールに見覚えがあった。最近見たばっかの奴である。確か俺がハンバーグを作ろうとした時の……。

 

俺が記憶を呼び覚ますより前に、その搭乗者は被っていたヘルメットを脱ぐ。そして俺はその人物の顔を確認してそれが誰であったか思い出した。

 

 

彼女はシェリー氏、目力は遊戯王にて最強の人物である。

 

 

 

 

 

 

シェリー氏は開口一番、俺に問いを投げ掛けた。

 

 

━━WRGPは知ってる?と。

 

WRGP。略さずに言うとワールド・ライディングデュエル・グランプリのことである。

合計32チームが参加する3人1組のライディングデュエルの団体戦で、優勝チームには最高の栄誉が与えられる大会だ。

この大会ではDホイールのオートパイロット機能がカットされ、マニュアルモードでのライディングデュエルをしなくてはいけないため、デュエルの実力だけでなくDホイールの運転技術も試される。その他にも相手を周回遅れにするとスピードカウンターが一つ増え、逆に周回遅れにされると一つ減る、のような独自のルールが存在する大会であり、ネオドミノシティでは町全体で盛り上がる大規模なものだ。

その大会の弊害で、俺は龍可ちゃん先輩と龍亞君の家にご厄介になってるわけだが。まあそんな私用は今は関係がない。

 

俺は自分の脳内でWRGPについて確認してから、一応は知ってるということをシェリー氏に伝える。

 

それを聞いた上で、彼女は俺に言った。

 

おい、デュエルしろよ、と。

 

━━なに言ってだこいつ?と思うよりも先に、目力がより一層強くなってこちらに視線を向けてきたのでブルッてしまった次第でござる。

 

ヒエッ(畏怖)。なんで睨まれなくてはいけないんや。とりあえず剣呑な視線をこっちに向けるのはやめていただけないか、とこちらの意思を怯えながらシェリー氏に伝える。あ、元から?じゃあしょうがないわ(達観(クリアマインド))。

 

続いて、なんでデュエルするの?と理由を尋ねてみる。するとシェリー氏はその答えをこちらに返した。

要点をまとめると。

 

・WRGPに出る予定だけど一人人数が足りない

・ちょうどまともなデュエルの腕を持つ奴(俺)を発見した

・一応前に勝ったのがマグレじゃないか今度はミゾグチとデュエルして確認させろ

 

 

と言うことらしい。

なるほど。つまり『自分に勝ったから実力あると思うし、大会出ねぇ?』ということか。

誘われたことは結構嬉しいのだけど、

━━それ多分無理じゃねぇ?

 

いや、今ここでミゾグチさん(ガタイの良い人)に勝てないだろうから無理だろうという話しではなくて、現実的な話ね。

だって俺戸籍ないじゃん?エントリー出来ないと思うでござる。

 

そんなことをシェリー氏に伝えると、彼女は隣にいるミゾグチさん(最強執事)と視線を合わせる。多分シェリー氏は今こう思ってる。『それでもミゾグチなら……ミゾグチならきっと何とかしてくれる……!』と。だってミゾグチさん(推定握力100kg超)、目があってから若干溜め息ついたし。了承したって感じで。

 

ゴホン、と仕切り直しをするように、ミゾグチさん(とにかく強い)は一つ大きな咳をし、それから彼は俺に声をかける。

 

━━とりあえずは私に勝ってから話を進めましょう、と。

 

 

 

 

 

『ライディングデュエル、アクセラレーション!!』

 

そしてミゾグチさん(苦労人)と俺のライディングデュエルは始まった。

ちなみに今回のデュエルは俺がいつものように「どうしてなんだ……どうしてこうなっちまうんだ……?(十代感)」のようにデュエルに拒否反応を示すことなく「よっしゃ、それじゃいっちょやってみっか!(悟空感)」と積極的だったのでトントン拍子で話は進んだ。

 

その理由として、さっきまで元の世界に戻れるかどうかでえんうん唸ってたし、少し気分転換したかったということもあるが、今回のライディングデュエルは突発的に始まったものじゃない、ということが俺が積極的にデュエルを受けた理由である。

 

そう、今回はいきなり『デュエル開始ィ!』とメカメカした我がDホイールが宣言したわけではない。つまり俺には準備する時間が与えられてたわけだ。そう……魔法類を初めとした、千本ナイフ(笑)などをデッキから抜くための時間が!!

 

現在の俺のデッキはモンスターと罠カードのみで構成された謎デッキ。これでライディングデュエルで使えないカードを引く恐れは万に一つもない!

オイオイこれじゃ……Meの勝ちじゃないか!と調子に乗りに乗ってる俺。最高にわくわくして来たぜ。

そんな俺の初期手札、

 

・聖なるバリア・ミラーフォース

・魔法の筒

・翻弄するエルフの剣士

・デーモンの召喚

・冥府の使者ゴーズ

 

 

完璧な手札だ……これなら最初から全力でいける(確信)

 

嘗てない幸運に恵まれ、更に調子に乗る俺。

クックック、蜂の踊りを見たことがあるか?(慢心)虫けらの如きシンクロモンスターよ、我がモンスターの糧となるが良い!(超慢心)

 

よし!勢いに乗っていくぜ!ドロー!!

次のカードは……?

 

・千本ナイフ←今引いたカード

 

……は?(困惑)

 

・千本ナイフ(悔しいでしょうねぇ)←再度確認

 

 

 

 

は?(半ギレ)

 

 




最初の文は有名なコピペのアレンジです。ベイスターズ日本シリーズ進出おめでとうございます。
作者はスランプなので今回も薄いし文がおかしいです。後日訂正すると思います。

次回予告
A5.君にピッタリのクズカードをね!


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A5.君にピッタリのクズカードをね!

 

 

 

 

 

 

だだだ大丈夫。ま、まままだ慌てるような時間じゃな、ないわけないだルォォ!!!

 

 

これは俺が千本ナイフを引いた後の心境である。

 

……絶対に許さねえ!ドンサウザンド!!(言葉遊び)

 

ファ~どういうことなんですかねえ。マジで(白目)

実際問題、これは大変なことやと思うよ?(確信)

ライディングデュエル中、必死にDホイールを操作しつつ、俺は一人頷く。

おかしいね、しっかり魔法は全部抜いたはずなのに。ま、まあ?俺が抜き忘れたってことも無きにしもあらずだし。でぇじょうぶ。次はなんとかなる。クリアマインドは少しでも乱れると成立しないんだ。下手すると遊星さんのヤケクソシンクロォオオオオ!!!になるからな。落ちつけ、落ち着け、よし!

俺は自身に安定を促し、次の自分のターンを待つ。

そう、まだ希望はある。まだ堪えられる……まだ堪えられる。よし!また俺のターン!!いくぞォォォ!!!

 

俺はいつもよりも気合いを込めて次のカードをドローする。運命なんて!ぶち抜いてやる!!!

 

━━ドロォオオオオ!!!

 

 

・死者蘇生←引いたカード

 

 

ししゃしょしぇい(マリク感)

 

……もうやめましょう。未来に希望などないのです。あるのは絶望だけ……(予定調和)

なんでだ……どうしてこうなっちまうんだ……死者蘇生は確かに強いよ?みんな「どのデッキでも採用するぞ」って言うくらいだし。いやーほならね、ライディングデュエルで使ってみろって話でしょ?こっち、こっちはデュエルで勝つために千本ナイフとかを抜いたわけでして……だったら自分で使ってみろって私は言いたい。うん!

 

現実逃避にほならね理論をあげている俺。

だってこのままじゃあまりにもあんまりでしょう?いや、もう日本語おかしいわ。ちょっとショックでかい。つまり俺のデッキは魔法類とか抜いたとしても超☆転☆移するということだぞ?……助けてくれええ遊星えええ!!!

 

そう嘆いても俺の心の中の遊星さんは「ふふっ……死者蘇生なんてどうだ?(ドヤァ)」としか言わない。ちくしょう。

 

ミゾグチ(謙虚)さんとのライディングデュエル、珍しく俺の優勢で進んでいるのだけど、中々勝負が決まらない。

 

うーむ、やっぱりミゾグチ(むきむき)さん強いなぁ。こっちはミラフォとマジックシリンダー使ったのにコレだぜ。やはり本物の執事は格が違った。

そしてミゾグチ(神)さんのフィールドにはエースカード『不退の荒武者』がいる。

 

このモンスターは攻撃力2400、守備力2100で、『このカードの攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターから攻撃を受けた場合、このカードはその戦闘では破壊されず、 戦闘を行った相手モンスターをダメージ計算後に破壊する』、っていう中々強かな効果を持ってるんだよなぁ。

 

今俺のフィールドには『デーモンの召喚を召喚するぜ!』さんがいるけど、まともにいったら勝負を決められないぜ。むしろこの状態のままだと負ける可能性が高まってくる。

あとミゾグチ(お茶目)さんのライフが1000も残ってないから、もう一撃入れば勝てるのだけれども……まぁ引いてから考えるか(絶望)

 

そうしてまたしてもビビりながら、ドロー!

……お、このカードは。

ドローしたカードを見て脳裏にこの状態を突破する術を見出す。

 

よし、このカードを使うには準備が必要。ということは俺恒例のあの時間がやってきたな!

 

俺は内心でウキウキとしながらセットされていたトラップカードを発動する。

 

俺がさっき引いたカードはモンスターカード。しかも召喚するには生け贄が一体必要だ。

 

フィールドにはデーモンの召喚しかいないので、彼を生け贄にするのは敗北へとまっしぐらである。デーモンの召喚はエースだからね。

ブラック・マジシャン?裏エースなんじゃね?(すっとぼけ)

まあつまり、新たな生け贄要員が必要なのだ。あ、いまはリリース要員と言った方が正しいのか。

 

そうして俺が発動したカードは『強欲な瓶』、カードを一枚ドローする効果。

 

この遊戯デッキにおいて唯一のリリースのためだけに使われる、あのモンスターを引き当てることは難しい。一枚しか入っていないし、限定的だし。

 

しかしそんなものは関係ない。━━今の俺には、まるでソシャゲのガチャを回すかのような高揚感だけが、心の内を支配していた。

ヒャッハァ!これだからガチャはやめられねェ!

 

 

 

 

俺はこれを、SSRワタポンガチャと呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いよく、目の前の少年はデッキからカードをドローする。

そして引いたカードを自分の手元で確認し、そのまま自分のDホイールに設置してあるディスクへ叩きつけた。

 

──よし!俺が引いたカードは『ワタポン』!このモンスターはカード効果によって自分のデッキから手札に加わった場合に特殊召喚することが出来る!

 

 

高速で景色を変え続けるライディングデュエルのフィールドに一体のモンスターが出現する。攻撃力200、守備力300の弱小モンスター。二本の触覚のようなものをつけた綿毛のそれは、この場に似つかわしくないゆったりとした印象を見る者全てに与えるモンスターだった。

だが直ぐにそのモンスターは風に包まれてフィールドから消え去る。

 

──そして俺は『ワタポン』をリリース!このモンスターをアドバンス召喚する!

 

まるで自分のデッキを手足のように、意のままに操っているとミゾグチは相手の少年を見て思った。

『強欲な瓶』でドローしたカードの効果をすぐさま発揮し、自分の描いた戦術へと繋げる。なによりもそれを実行に移している少年は自信に満ちていた。必ず自分の思い通りのカードが来てくれると、少しも不安な様子を見せることもなくただデュエルを楽しんでいた。

 

──『カタパルト・タートル』を召喚!このモンスターは1ターンに1度自分のモンスターをリリースし、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!俺は『デーモンの召喚』をリリースする!

 

深緑色をした甲羅とその名のとおり射出機構(カタパルト)をもったモンスターに、『デーモンの召喚』が乗り上げる。カタパルトはミゾグチのDホイールに標準を合わせ、自分の主の命令を静かに待つ。

 

 

──いくぜ!『デーモンの召喚』を砲撃!!

 

その命令の後、カタパルトに設置されている魔弾を射出した。

少年は笑っていた。ただただ楽しそうに。その子供のような笑みを見て、ミゾグチは思った。自分が仕えていたルブラン家、そしてその事件があってから連れ出した、今の主であるシェリー・ルブラン。その彼女は事件が起こる前のような、こんな子供らしい笑みを浮かべることはなくなったな、と。ただそんな感想を胸の内から湧き上がった。

それは目の前の少年と、シェリーが同じような年頃だったからかもしれない。

 

『デーモンの召喚』の攻撃力にカタパルト射出速度による攻撃力が加算される!こいつは強力だぜ☆──なんてことはなく、ミゾグチは効果通りのダメージを受け、このライディングデュエルは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

カタパルトタートルで射出!してミゾグチ(苦戦)さんに勝利した俺。

 

自分のモンスターを生贄にして勝つなんて…真のデュエリストがすることじゃねえ!という感じではなく、ミゾグチ(最強)さんは、今日も素晴らしきエンタメデュエルを見せてもらったぞ!というテンションで俺を褒めてくれた。

 

俺はカタパルトタートルは戦術としては悪いことではないと思っているし、別に抵抗はない。ただ喜々として次々と自分のモンスターを射出するのが、絵面として問題があるだけで…。しょうがないだろ(ヤケクソ)!

 

勝ちたい…勝ちたいよな誰だって…どんな手を使っても!というラフェールの言葉が胸に突き刺さる俺。申し訳ないが、魔法カードを引いてしまう事実から勝負を急ぐしかないと判断したんだ。

 

だからこれは正しいやろ?な?俺は手札の千本ナイフに問いかける。……「お前のデュエルは独り善がりに過ぎない」と言い返された気がする(言いがかり)うっせえ投げるぞ。

 

そんな感じで一人八つ当たりしている俺にミゾグチ(忠誠心)さんはしかし…と言葉を濁しつつ俺に問いかけてきた。

──手札にスピードスペルは無かったのか?そうすればもっと早く勝負をつけられただろう、と。

 

ここで説明しておく。

ライディングデュエルではスピードカウンターというものが存在する。スピードカウンターは先行を除くお互いのスタンバイフェイズに一つずつ増え、そのカウンターを一定の数除くことで様々な効果を発揮する。

 

まずカウンターを四つ除くことで『手札の「Sp(スピードスペル)」の数×800ポイントのダメージ』を与える効果、次にカウンターを七つ除くことで『デッキから一枚ドロー』する効果、そして十個除くことで『フィールド上のカードを1枚破壊』する効果がある。

 

作中では殆どがカードを1枚ドローする効果を選択していて、バーンダメージはあまり活用されていなかった印象がある。いかんせん地味だからね、それで勝負が決まってしまうと。というか×800バーンって厳しくね?ライフ4000の世界では脅威過ぎる気がする。

 

まあつまり、ミゾグチ(フィール)さんはこのスピードスペルの数によって決まるバーンダメージを活用すれば射出!する必要がなかったんじゃないか?と言いたいわけだと思う。

 

多分俺を見て、ライディングデュエルに慣れていないことを察したのではないか。千本ナイフを引いたとき硬直したままだったし。全く、千本ナイフがせめてスピードスペル扱いで使えたら。

そう思いまた目を千本ナイフに向ける。「だからお前は独り善がりだと言っているんだ!」と強く言い返された気がする。うっせえスマイルワールドと同じ末路を辿らせるぞ。

 

俺は自分がスピードスペルなんてデッキに入れてないぜ!どうだ参ったか(震え声)!と言い千本ナイフをミゾグチ(社交性○)さんにシュウゥゥ!!するとミゾグチ(反射神経◎)さんはそれを人差し指と中指で余裕でキャッチ。強い(確信)

 

俺が、なめたマネしてすいませんでしたと言うよりも前に、ミゾグチ(気遣い)さんは、何故デッキにスピードスペルを入れないのか?と聞いてくる。

 

俺は、持ってないのでと答えを返す。ふええ、カードは拾えなかったよぉ…。

 

次に千本ナイフを見て、何故通常の魔法カードを入れているのか?と聞いてくる。

 

俺は何故でしょうねえ(哲学)と咄嗟に言いそうになるが、そんなことを言うとデュエル(物理)されるかもしれないと思い口を閉じる。そして数秒ほど悩んだ後ミゾグチ(最強)さんに、俺の友達…いや、家族だからな!と答えを返した。

 

だってカードが超☆移☆動してくるとか言えないでしょそんなの。超下手すると不正を疑われるよ?自分が望んでないカードを引いて不正になるってどういうことなの…?一人戦慄する俺。

 

じゃあ馬鹿正直に「知らん、そんな事は俺の管轄外だ」と言う?多分血祭(ガチ)になる。

 

俺の言葉を聞きミゾグチさんは一瞬驚いた表情を浮かべる。だがすぐにそれを直し、デュエルの実力は確かだが自分達のチームではそれは認めることが出来ない、と真面目に正論を言われた。ふざけた事言ってたら真面目に受け取られたでござる。それはそれで苦しいわ、心が。

 

俺がぐうの音もでねえと思っていた時、後から来たシェリー氏がどうかしたのか?と聞いてくる。

 

 

俺は、スピードスペルデッキにないから通常魔法入れてライディングデュエルしてたんだけどどう思う?と彼女に尋ねた。

 

 

 

頭を叩かれた。

 

 

 

 

 

シェリー氏→お?舐めプしてんじゃねえぞ?(激おこぷんぷん丸)

俺→スピードスペルはない。だったらそれ(通常魔法)で満足するしかないじゃないか(不満足感)

 

そんな会話をシェリー氏とした後、彼女はこちらにWRGPの件について話を始める。

 

とりあえずミゾグチさんに勝ったので実力があること認められた。それで戸籍云々はこっちでなんとかするから出場してくれ、と言われる。

 

俺はそれを聞き、うっすうっすと返事をした。

 

まあ多分なんとか出来ないんじゃないかなあというのが、この俺の軽い返事の理由だ。

 

ミゾグチ(とにかく強い)さんに、俺の戸籍がないとはどういうことか聞かれたのだけど、普通に何の手がかりも記憶もなく、存在が不明という事を伝えた。するとそれを聞き目を閉じ考えた後、その状態だと戸籍などを偽造することは難しいと言われたのだ。本来偽造するにしても何か関連性があるものがないと造れず、誤魔化しにくいのだとか。だったら最初からセキュリティに相談する方が良いとも。それでも困難らしいけれど。

 

あまり期待しないでほしいことを俺に伝え、ミゾグチ(誠実)さんはDホイールで去っていく。やはり執事ともなると一挙手一投足がさまになってると思う。背筋まっすぐ張ってるし。俺も普段の態度からしっかりしないと駄目だということを思い知らされるぜ。

 

そう自身の認識を改める必要を覚えた俺の前から、続いてシェリー氏が自身のDホイールで去っていく。

 

その前に、

 

 

──このカードを渡すわ。次に会う時は、ライディングデュエルが本気で出来るようにしておきなさい。

 

 

そう言って、一枚のカードを俺に投げ渡す。

 

 

俺はそれをスタイリッシュ人差し指と中指間キャッチしようとし、失敗して地面に落とす。

 

やべ、恥ずかしい。見られなかったかな。いや、しっかりミラーで確認してるわ。ちくしょう!

 

地面から落としたカードを拾い上げ、俺はそれを確認する。一体シェリー氏は何のカードを……

 

 

 

『Sp-スピード・フュージョン』

 

 

 

 

 

……イヤッタアアアア!!!!!!!

これで融合召喚出来るううう!!!!!!!!

 

ありがとうシェリー氏いいいい!!!ラーの翼神竜より貴女の方がよっぽど神だぜええええ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公についにスピードスペルが。うかれてはしゃぐ彼だったが、そもそもの問題に気づいてしまう。
━━新しいカードをデッキに入れて、引けるのか?と。

迫る死者蘇生。
立ちふさがる融合解除。
気づいたときには千本ナイフ。

超☆転☆移するマジックカードに、スピードスペルは勝利の光明を見いだせるのか……?


次回予告(予定)
Q6.ぶっ倒しても!ぶっ倒しても!!ぶっ倒しても!!!



今回のガチャで思い出した関係ない話だけど、fgoのガチャでパッションリップの胸を見ながら回したらメルトリリスが出たんで、次に機会があったら真似して見てください。それでは。


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EX.おい、更新しろよ



作者は悩んでいた。

気がつけばクリスマス、投稿しなくなって約2か月近くたち、焦り、嘆き、憎しみ(リア充への)、心がいっぱいいっぱいだった。

どうすればいい!俺は、どんな顔で生存報告をすればいいんだ!

そんな心持ちの中昼寝に入る。すると遊星さんが夢の中に現れ、こう言った。

おい、更新しろよ

つまり、そういうこと。

これはボツネタである。



1,この小説は遊戯王GXが元です

 

 

 

 

遊城十代とは音楽性、もとい人間性の違いから仲は良くない。

というより、俺が一方的に距離をとっているだけなのだが。同じE・HERO使いとして、当初はオシリスレッドで仲良く出来そうだぜと思っていた。しかし、

 

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

そんな遊城十代の決め台詞を聞き、俺は察したのだ。

 

━━こいつはアカン(白目)

 

こいつ、タダ者じゃねぇ。多分一緒につるんでたら面倒くさいことになる。今は遊城十代の対戦相手が温厚な奴だから大丈夫だけど、後々ヘイトが貯まって爆発しそう。この決め台詞、煽りだったら相当レベル高いからね。ポケモンでいうと個体値マックスの100レベ。アカンって。絶対アカンって。

そのような理由から遊城十代、もしくは子分?の丸藤君から声をかけられても「デュエルが俺を呼んでるぜ☆」っと言って即座にその場から緊急脱出することにしている。

いや、仲間に見られるのはヤバイから実際。なんか最近、十代がオベリスクブルーの万丈目・サンダー君(名前から多分外国人のハーフと思われる)を倒したからか、同じオシリスレッドの奴なんかは目の敵にされる風潮があるとかないとか。

 

なんでや、問題あるのは十代だけやろ。オシリスレッドなにも悪くないやんか。やられたらやりかえす、やられてなくてもやりかえす、八つ当たりだ!じゃないんだよこのヤロー。お前らのやってるのは呑気に翔んでる蝶を油で揚げてバタフライだからな?オンジも激おこプンプン丸だから。ペーターも亜音速で峰打ち打ってくるから。それほどよ?だからさ━━八つ当たりで俺にデュエル挑んでくるのはやめない?万丈目・サンダー君。

つーかお前普通に黒髪ジャパニーズじゃねぇか。ハーフじゃないのかよ。ハーゲ。バーカ。とんとんちき。

 

 

 

 

2,って、なんで俺君が!?

 

 

 

 

時はたち━━ここはデュエルアカデミア。

 

ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!

ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!!

ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!!!

と遊城十代の快進撃は依然として続いていた。

 

……奴が小僧に敗れたか。ククク……だが奴は四天王の中でも最弱。次は、この俺自ら出向いてやろうではないか!っというような展開が、この後に繰り広げられるのではないかと俺は現在思っているのだった。まる。

 

 

なんか知らないけど、最近俺と遊城十代(ガッチャマン)がオシリスレッドのツートップとして扱われてるらしい。

 

なんでや!俺関係ないやろ!

しかしその原因はわかっている。多分前のサンダー君の件だろう。

……確かに俺もサンダー君を倒した。しかし、だが、人目のつかない深夜の森でデュエルしたのだぞ!なんでバレてるん?情報リークした奴は許さん。くっそ、まさかサンダー君にここまでの知名度があったとは。迂闊な真似をしたと後悔。今ではデュエルアカデミアをボッチで歩いてると、周りから「あれが例の…くぅ疲ヒーロー使い」やら、「目つきがヤバイ」やら、「くぅ~!疲れましたw」などとヒソヒソ話で囁かれている。

 

どうしてなんだ……どうしてこうなっちまうんだ(絶望)

俺は平和に、自分のデッキのエースであるE・HEROの姉御を活躍させたいだけなんだ。正直それさえできればデュエルの勝ち負けなんてどうでもいいんだ。いや、そりゃあ勝てるのが一番いいけどね?でもぶっちゃけヒーローの姉御はあんま強くないし、そら勝つのは厳しいっすよ。

というよりも俺には一つ最大の欠点があるのだ。それが勝ちに拘らないという現在の俺のスタイルを形成している。それはデュエリスト、そしてヒーロー使いにとっては致命傷なことなのだけれども。

 

 

 

そう実を言うと俺、融合が引けないんだ。

 

 

 

……俺が一体何をしたって言うんだ(迫真)

 

 

絶望した!今まで十数年、融合を使用できていないことに絶望した!

マジかと思うかもしれない。だけど事実なんだ。

まぁでも融合を引けないと先ほどは言ったが、これは少し話を盛ってる。実際融合をデッキから三回ぐらいはデュエル中に引いたことはある。融合賢者でサーチしたことは5回ぐらいある。

だが、だがである。……融合が手札に来た瞬間にハンデスされたり、マジックジャマーで無効にされたり、対融合モンスターのロックを使用前にかけられたりした場合、人はそれを━━融合を引いたと言えるのだろうか?(言えます)

 

シュレディンガーの猫かな?

は?知るかってんですよ。こっちは真剣なんですよ。

 

まあ話を戻して。

だからこそね。サンダー君とのデュエルは、せめてやるなら人目のつかない所でやらせてと頼みこんだわけですよ。彼腐ってもオベリスクブルーの優等生だからね?絶対負けるから俺。そして他のオベリスクブルーの生徒に「オシリスレッドの落ちこぼれ。プークスクス(笑)」って嘲笑されるからね。ここはそういう学校だからこれ。なにが健全な精神を育成するだバカヤロー。優等生がこれでどないするねん。やっぱりデュエリストの闇は深い(確信)。

 

まぁそんな感じで絶対負けるだろなーっと、そんな心持ちの中デュエルが始まった訳なんだけども。

 

お、ミラフォ発動するんやで(ニッコリ)

お、奈落でお前のモンスター除外やで(ニッコリ)

お、姉御が場にいるから手札のバースト・インパクト使うんやで(ニッコリ)

よし、姉御でダイレクトアタック(真顔)

 

こんな感じで勝利してしまったわけなのだ。

 

サンダー君もう少し頑張って(懇願)

確かに俺のデュエル滅茶苦茶ムカつくと思っただろうけども。でも俺だってデュエル中焦ってたからね。だって手札に一度も融合来ないんだもん。ていうかやっぱりデュエルするとき俺の手札に融合来ることがないんだが。……なんでや!デッキに三積みしてるんやぞ!普通引くことは出来るやろ!融合を使わないHERO使いってどんなパイオニアだよ!あっちのガッチャマンは一度のデュエルで何回も融合してるんだぞ!おかしいやろ!なんで俺は融合出来ないんや!!

 

そんなこんなで、じゃあなんで勝てたの?ということになると思うけれども。人間というのは学習するもので。

融合が引けない?→じゃあ相手を妨害して満足するしかねぇ!

という結論に至った俺のデッキはカウンタートラップ増し増しデッキ。ミラーフォース、マジックシリンダー、神の宣告などが積みこまれてる。

それが今回のサンダー君戦で遺憾なく発揮されたということでしょう。まあ、デュエルアカデミアでは評価されない項目ですからね(プライドはないのかと叩かれる的な意味で)

 

ただ勝ったのはいいがその後が問題だった。

サンダー君が面白いように俺の罠カードに嵌まっていくので、俺はデュエルの後に大きな達成感を感じていて、妙なテンションになっていたのだ。それがいけなかったのだろう。俺は心底楽しそうな声で、

 

 

 

「くぅ~疲れましたwこれにてデュエル終了です!」

 

 

満面の笑みでそう言ってしまったのだ。

 

 

 

 

これが決め台詞と勘違いされたのか十代はガッチャマンと、俺はくぅ疲マンとして、まるでキャプ○ン翼のゴールデンコンビのように扱われだす。

 

 

 

 

 

俺はガッチャマンとの距離をさらに開けることを決意した。

 

 

 

そして泣いた。

 

 

 

3,お前ごときが遊城十代に勝てるなどと思うな

 

 

 

「お前も一緒に廃寮探索に行こうぜ!」

 

絶対いかないよ。……絶対だぞ?フリじゃないからな?

 

 

 

 

 

 

 

4,あともう少しで新年です。ダチョウ倶楽部が見れますよ

 

 

お化けなんていないんだよ。そうだよお化けなんていないんだ。それは脳が見せた錯覚なんだ。そうに決まってるぜ、ふっへっへ。

 

そういうことだからこれ以上廃寮の中進むの止めね?つうかなんでこの寮の中探索してるの?俺なんの理由も聞かされてないんだけど。え?面白そうだから?成る程、地獄に落ちろ(迫真)。

 

ガッチャマンお前マジで勘弁しろよ。廃寮に入る前にもオベリスクブルーの明日香っちが鬼気迫る感じで入るなって忠告してきたやん。明日香っちの実の兄もここで行方不明になったっていう実体験っぽいのも聞かされたやん。なんで躊躇わないで進んじゃうの。オイお前らが行くと俺も行かないと行けないんだぞ。だって怖くて一人で帰れないし。

 

そうガクブルしながら奥に進んでいくと、突然誰かの悲鳴が響き渡った。ヒエッ、まずいですよ!十代さん!やっぱりもっと情報集めてからでも!

すぐさまこの場から緊急脱出することを促そうとした俺を彼らは置いていき、悲鳴が聞こえた方へと走っていく。

 

ちょ、MA☆TTE!!

 

 

 

 

5,ほならね?自分でデュエルしろって話でしょ?

 

 

 

そんなこんなで闇のデュエリストとか言うタイタンって奴とデュエルすることになった。

 

なんでや。これで何回目のなんでやなんだ。ふざけるのはもう止めるんだ(^o^)!ストレスでどうにかなりそうなんだ(^o^)!

 

タイタンの狙いはガッチャマンなんだろ?なんで俺が戦うことになるの?

え?何丸藤君?俺は闇のゲームに詳しいから適任だって?ああ~、そういえば廃寮探索してるときに千年アイテムについてちょっと俺雑学披露してたね。だって俺武藤遊戯オタクだもん。仕方ないね。でも闇のゲームに精通してるわけないやん?確かに知ったかぶって話してたけどさ。知ったかぶりに決まってるじゃん?

 

闇のデュエリストのタイタンさんももっと狙いのガッチャマンに拘れよ。なんで「ふん……まあいい。前座に雑魚を蹴散らすか」なんだよ。サーチアンドデストロイしろよ。

 

極めつけにはガッチャマンの遊城十代さんっすよ。お前さっきまでめっちゃやる気満々だったのに、俺がデュエルするっていう雰囲気になったら大人しく譲ってきたよね。「お前のHEROを見せてもらうぜ」、じゃねえよ。……明日香っちが捕まってるんだよ。今ここにいるデュエリストの中で一番強いのお前だかんな?お前が速攻で倒して助け出してやれよ。マジかよ。正気かよ。

 

まあそんな感じでタイタンとのデュエルが始まった訳なんだけども、

 

ジェノサイドキングデーモン?バーカ、超強いじゃねぇか。

なんか闇のゲームの影響で右足消失してるんですけど?

ハッハッハ!やっぱ融合手札に来ねぇわ。

 

これはアカン。発動したミラフォも対して意味なかったし。なんか眠いし。これは駄目かもわからんね。

 

っていうかマジ眠い。もう寝ちゃおう。そうだ。きっとこれは夢なんだ。夢から覚めたら僕はアカデミアの入学試験同日。実技試験で融合もモンスターカードもどっちも来ないなんていう手札事故は起きずに、しっかりとしたスタートダッシュを切っているに違いないんだ。そうこれは……幻術……

 

 

いや……幻術じゃない?いや幻術……幻術?幻術なのか?幻術じゃないのか!?いや……なんだアレは!?(雑コラ感)

 

 

俺がそんなように現実逃避しかけている時にガツン!っと、誰かが俺の頭を殴った。

 

ぐえっ、痛い。おい誰だ俺の頭脳に衝撃を与えた奴はムッコロス、と視線を上げその存在を探すと、そこにはヒーローの姉御がいた。

 

 

 

……えぇ(困惑)。

 

 

6,更新はMA☆TTE。大丈夫だよ遠坂。俺もこれかry

 

 

姉御は語った。

 

曰く、タイタンが持つ千年アイテムは偽物だと。

曰く、タイタンはマジシャンで、俺はタイタンの催眠術にかかって今居眠りしてしまってると。

曰く、手足が消えて見えるのはタイタンがマジシャンだからしょうがないのだと。

 

なるほど。

 

姉御━━ウソダドンドコドーン(真顔

 

 

 




『ボツネタ設定』

・主人公
融合が引けない、なのにヒーローを使うというコンセプトの元生まれたオシリスレッドの学生。
予定では融合が引けないストレスから覇王化し、イービルヒーローを使うようになるという設定だった。基本タイタン戦で闇落ち(ストレス)させて覇王化させようと思ったけど、サンダー君がタイタン戦前にサンダー呼びされてたっけ?と書いてる途中に思いだし、書き直すのがめんどくさくなってボツになった。これも全部作者がワクワクを思い出せなくなったせいなんだ。
あと覇王が十代含めて二人いるとおかしくね?っとパッシングされるのが怖かった。すまぬ(白哉感)

・ヒーローの姉御
ヒーローの紅一点、バーストレディのことである。主にバーストインパクト(未OCG化)で全体ぶっぱする。
この小説の過労死要員にするつもりだったが覇王化したら最終的にインフェルノウイングになるので紅一点ではなくなる。強い(確信)


『登場予定だった人たち』

・サイレント・マジシャン
ハネクリボー枠。同じレベルモンスター(曖昧)だしええやろ?と設定だけは作っていた。最近デュエルリンクスでもプロテクター化したりと公式がプッシュしてくるモンスター。何気に原作遊戯王の最後を飾ったモンスターである。1月にスリーブも出るので興味のある人は見てくれると嬉しい。

・ブラック・マジシャン・ガール
作者の趣味。


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EX2.ここで更新したら面白いよなあ?



作者は安堵していた。

生存報告として更新したボツネタは叩かれることなく、時は過ぎ、クリスマスも終わった。よし、これでようやく眠りにつくことができる、と穏やかな眠りを作者は手に入れた。
しかしそんな作者の元に、今度は十代さんが夢として現れた。そしてこう言った。

ここで更新したら面白いよなあ?

━━何を戯れ言を!そう簡単に……!

でもここで更新したら面白いよなあ!!

つまり、そういうこと。

これはボツネタに少しだけ加筆したものです。


1,前回までのあらすじ!

 

姉御は語った。

 

曰く、タイタンが持つ千年アイテムは偽物だと。

曰く、タイタンはマジシャンで、俺はタイタンの催眠術にかかって今居眠りしてしまってると。

曰く、手足が消えて見えるのはタイタンがマジシャンだからしょうがないのだと。

 

なるほど。

 

姉御━━アンタ何言ってんの?(真顔)

 

ウソダドンドコドーン!

俺は姉御に向かってそう言うが、彼女は何時までも沈黙を保っている。

えぇ(困惑)全部マジシャンで済ませられる問題じゃないでしょ。え、っていうか姉御なんで普通におれと会話してるの?

何?精霊?ふーん。まあ、悪くないかな……(中二感)

頭がおかしくなったみたいなんだ(^o^)!

 

こうなりゃやけだぜ。全部ぶち壊してやる。

 

次回、『ストレスの果てに』

 

デュエルスタンバイ!

 

 

 

 

2,神様は乗り越えられる試練しか与えません(ヤケクソ)

 

 

俺は居眠り状態から姉御のおかげで復帰し、デュエリストの嗜みカード手裏剣でタイタンの持つ偽物の千年パズルを破壊する。

 

そうして気分は毛利小五郎状態で、ちょっと憎しみ(ストレスの八つ当たり)を込めながら姉御の推理を奴に語った。

するとタイタンは「な、なんだお前のその眼は!」と言い、脅えた顔を浮かべ、俺から遠ざかっていく。

え、そんなに俺の顔恐いの?と地味にショックを受けている俺を後目に、しまいには自暴自棄になったのか自分の持っていた偽パズルを地面へと叩きつけた。

お、落ち着けよ?(震え声)と思った俺であったが、突然煙幕が視界に広がったのを見て、タイタンの狙いに気づいた。

 

逃走である。

 

ええ…(呆れ)いや、タイタンのオッサン優勢やん。別にこのままデュエルすればええんちゃう?どうしてそこで諦めるんだよ。

いけるいけるどうして諦めるんだそこで!応援してる人たち(俺)のこと考えてみろって!

 

と場違いな心の声を投げかけた。

 

いや、でも途中でデュエルを放棄したのはアッチなので、僕の完全勝利ですよね(ニッコリ)←完全ではない

ふははは!地獄に行ってもこんなに楽な勝利は見られんぞ。タイタン、闇のデュエルの執行人と、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。この戦い、我々の勝利だ!!(確信)

 

そんなフラグを乱立させたのが悪かったのか、突然俺とタイタンを包み込むように場が闇に包まれる。

 

そして気づいたらよく分からない暗黒空間が周りに広がっていた。

 

 

……フゥ~!(半ギレ)

超展開すぎてまるで意味が分からんぞ。あっ、やべえ胃がキリキリしてきた。ちょっと?勘弁してくださいよ?さっきから展開が可笑しすぎてストレスたまりまくるんですけど。

 

そんな俺の元に、変な泥っぽい物体が意思をもったかのように襲いかかる。しかしそれを姉御は自身の炎の力で打ち払った。

 

ファ!?(驚愕)

なんかヤバそうだったんですけど!姉御サンキュー!と俺はテンション高めに感謝を伝える。

ちっくしょう。どんどん色んなことが起きやがる。こっちはまだハチャメチャが押し寄せてるってのによぉ(胃痛)

 

そういえばタイタンはどうなったんだろう?そう思い彼が居た方向へと俺は目を向けた。

 

 

タイタンは泥っぽい物体に埋まっていた。

 

 

……取り込まれてるゥー!(ボーボボ感)

 

 

そんな俺の驚愕を後に、タイタンはすぐさま元の姿へと戻る。

なんか雰囲気とか変わってる気がするけど良かったぜ。流石に人がグロい結果に終わるのは見てられない。

 

俺はほっと息をつき、タイタンにねぇ?今何処?と聞く。するとタイタンは自分のデッキからカードを引き、デュエルを続行する意思をこちらに伝えた。

 

 

おい、会話しろよ(全ギレ)

 

 

 

 

 

 

「くそっ!なんだこれ!」

 

遊城十代、そしてその仲間達三人は、ドーム上に広がった黒色の物体の前に立ち尽くしていた。

さっきまでデュエルをしていたタイタン、そして彼の友達(と十代は思っている)は、この闇の塊の中へと包み込まれてしまったのだ。さっきまでのイカサマでの闇のデュエルとは違い、今の現状はまるで異質な、暗い雰囲気を漂わせている。

 

「無事でいてくれよ……」

 

そう十代が呟いた時、彼の持っていたデッキが光りだした。それを見て最初は驚愕した十代であったが、すぐにそれを取り出して中を確認する。すると自身の相棒であるハネクリボーが、突然鳴き声をあげながらカードから飛び出した。

 

「は、ハネクリボー!?」

 

驚いた声を上げた十代。しかしそれを気に止めることなく、ハネクリボーはドーム状に広がった闇へ神聖な光を浴びせる。

すると朧気ながらも中の状況、そしてタイタンと自分の友達がデュエルしていることが確認できた。

 

同時に、中にいる自分の友達がカードを引きつつ、心から雄叫びを上げたのを、彼らは聞くことになる。

 

 

それは、新たな彼の異名が生まれた瞬間であった。

 

 

 

 

3,わけがわからないよ()

 

 

暗黒空間でのタイタンとのデュエルは続く。

元からタイタンが優勢だったので、俺はなすすべなく敗北する結果を予知した。

 

いやーそれにしても、なんか痛くね?胃が痛いのは勿論なんだけど、体痛い気がするんですけど。マジで闇のゲームっぽくなってない。マジか。

つうか俺デュエルで勝ったとしても負けたとしてもこの空間から出れるの?どうにもならん気がしてきたのだが?不貞腐れてやる!プンプン!!

……オエ!さらに胃が痛くなってきやがった(抑止力)何故だ!

 

自分のターンを迎えてもカードを引かずにそんなふうに不貞腐れる俺。

だって、どっちにしても、この空間から出られないなら……死ぬしかないじゃない!あなた(タイタン)も!私も!とやってられない態度を傍目からでも理解できるぐらいとっていた。

 

 

 

しかし、そんな俺に姉御は言う。

 

 

 

 

 

 

 

━━なぜ、ベストを尽くさないのか?

 

 

 

 

 

カン☆コーン

俺の脳にそんな音が響き渡る。

俺は姉御のその言葉を受けて、感銘からか

立ち尽くした。姉御は続けて言った。

 

 

━━Why!don't you!do your best!!!

 

 

姉御の言葉が、窮地に陥っていた俺の心を勇気づける。

そうだ、まだ何も成し遂げてはいないじゃないか。

相変わらず、デュエルアカデミアの生徒は俺をくぅ疲で弄ってくるし、クロノス先生は俺がガッチャマンとツートップ扱いされてからドロップアウトボーイ認定してくるし、明日香っちはなんやかんやで捕まったままだし、俺は何も得してないままではないか!

 

 

 

 

━━なぜ!ベストを尽くさないのか!!!!!!

 

 

 

 

姉御の言葉が俺の体を突き動かす。俺はその勢いのままデッキからカードを、引いた。

 

 

 

 

 

 

 

うおおおお!!!ベストだあああ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

後に、俺はくぅ疲マン、もしくはベストマンとみんなから言われるようになる。

 

 

 

もう何も怖くない!(白目)

 

 

 

 

 

 

4,ハルクだ!→ベストマンだ!!

 

 

 

 

 

━━俺はダーク・フュージョンを発動!手札のフェザーマンと場のバーストレディを融合する!来い、インフェルノウイング!

 

大きな翼を持ち、にやりと不気味に嗤うモンスターが召喚される。

E-HEROインフェルノ・ウイング。ヒーローとは名ばかりの悪魔族融合モンスター。その両腕は異形の者が交わりあったことを如実に現していた。

 

 

━━やれ!インフェルノウイング!インフェルノ・ブラスト!!

 

その掛け声と共に、悪魔を使役する少年の両目が金色に輝く。しかしその色から感じられるのは光ではなく、闇そのものを写しているように思えた。

 

 

━━まだだ!!ヘルバック・ファイア!!

 

 

インフェルノウイングの効果による戦闘ダメージがタイタンを襲う。しかしタイタン本人はその痛みを感じることもなく、一瞬でこの場から消え去った。

 

 

 

 

 

残ったのは元居た廃寮の空間と、どんとこい超常現象……と呟きながら立ち尽くす少年だけだった。

 

 

 

 

 

5,そして、伝説に……(黒歴史)

 

 

 

その後の話をしよう。

俺がデュエルを終えた後、無事に明日香っちは救出された。

いや、そんなことはどうでもいいんだ(酷い)。重要なことじゃない。問題は俺があの暗黒空間で叫んだベスト宣言が、十代たちにも聞こえていたらしいということだ。

 

 

 

うぁあああ!!!(赤面)

なんということだ、なんということだ。また俺は自分を追い込んでいくのか。十代から「お前、決め台詞のレパートリー多いな」と笑顔で言われてしまった。くそっ、覚えてろ!元はと言えばお前がガッチャガッチャ連呼したから、決め台詞という概念がデュエルアカデミアでブームとなってしまったのだ。

 

とりあえず、絶対に俺がベストって言ったことを周りに言うなよ。絶対、絶対だかんな!と言って十代たちの元を去る。これ以上はもう何かを言える元気が無い。赤面して力が出なかったんだ……まさかあんな台詞で勝つとは思わなかったぞ(後悔)

 

救出した明日香っちを十代に任せ、俺は帰路へと急ぐ。振りをして、人目のつかない森の中に再度入った。

 

 

 

いや~その、姉御、いつまでいるん?(震え声)

俺はウッソだろお前という表情をしつつ、半透明になって自分の側を浮いている姉御に問いかける。すると「俺もいるぞ!」と言わんばかりの笑顔でフェザーマンの旦那も隣に出現した。

 

 

 

 

つまり、どういうことだってばよ?(白目)

 

 

 

 

 

6,カカシ先生ェ……

 

 

 

 

 

後日、俺にデュエルアカデミアから退学するよう学園側から通達された。

 

 

 

 

 

……くぅ~疲れましたwこれにてデュエル(人生)終了です!(卒倒)

 

 

 

 




『ボツネタ設定』

・主人公
廃寮でのデュエルはいかん、ということで退学を言い渡された主人公。予定ではここから丸藤君の代わりに十代と組んでデュエルをする構想だった。ダークフュージョンを使って融合召喚した彼であったが、この後の時点でデッキからイービルヒーロー系は消えている。そして主人公の胃がヤバい、もしくは変なテンションの時に出現するという設定。だって、そのほうがカッコいいじゃん?

・天上院明日香
ボツネタでピーチ姫をしていた人。主人公とは小学生時代の知り合い、つまり幼馴染という設定だった。経緯として、明日香が友達にそそのかされて、恋ダンスを踊り始めた時に主人公と偶然会い、彼が「お前はガッキーじゃない」とツッコミを入れるところを回想として書こうと思っていた。えぇ?(困惑)

『登場する予定は全くなかった人たち』

・アップルマジシャンガール
マジシャンガールの中ではブラックマジシャンガール(以下BMG)を除いて1,2を争うんじゃないかと思われるモンスター。新しい映画でも大活躍だった。しかし彼女の効果は簡単に言うと『自身が攻撃対象になったとき手札にあるレベル5以下の魔法使い族を特殊召喚し、対象を移す』という効果であり、レベル6であるBMGには意味がない。作者はここにマジシャンガール内の闇を見た(確信)

・レモンマジシャンガール
作者が個人的に一番好きなマジシャンガール(BMGは除く)マジシャンガールデッキの起点になる時が多々あるモンスターである。ただデッキには一枚でいいかなと作者は思っていたり。アイマスでいうと多分ちゃんみおタイプ。面妖な。


もしかしたら、お前(作者)なに最後に女の子について語ってんだ!と思う読者もいるかもしれない。そんな時は、(感想として)何度でも受け止めてやる!全部吐き出せ!(遊星感)


・ブラックマジシャンガール
何度も何度もBMGとばかり……他の言葉を知らないのか?(謝罪)


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EX3.見えるんだけど見えないもの(更新)

作者は吹っ切れていた。

ボツネタ、それを続けるには作者の記憶がなくては駄目であり、書いたら間違いだらけになるぜ、と作者は思っていた。
しかし全部GXを観るのは大変であり、今忙しい作者には苦労が多い。でも更新しないと、という思いだけが先行していた。
そんな時、遊戯王における名言を作者はふと思いだす。

━━見えるんだけど見えないもの。

つまり━━どういうことだろうね?(錯乱)

これからGX見ます。許して(懇願)





1,ギターソロかもーん!

 

 

退学とはつまり……退学ということか?(混乱)

 

現在の俺の心境を表すとしたら、こんな感じである。

 

……え~?本当にござるかあ?(半ギレ)

いや、マジでなんすか。なんなんすか。退学は少しやりすぎではなかろうか。せめて謹慎とかにしてくれません?そんなに廃寮探索アカンかったの。ウッソだろお前。デュエルアカデミアに入学したと思ったら即退学になったでござるの巻。

 

かぁー。辛いわぁ。退学なんて辛いわぁ。何が辛いって、ガッチャマンと同じ扱いだってことが辛いわぁ!もうアカデミア側に問題児認定でマンマークされてるってことが理解出来て辛いわぁ!

 

だって多分アレよ?俺には分かる。これは都合の良い理由つけて問題児を学園から抹消させるぜ☆っていうことだと思うよマジ。じゃなきゃこんな横暴ともいえる決断しないわ絶対。なんか学園側が用意したデュエリストに勝てば退学は取り消されるとか言ってるけど、つまりこういうことよ?

 

・よっしゃお前ら退学や!何?チャンスが欲しい?しゃあない、一回だけな?

→俺とガッチャマンが勝つ

・勝っちゃったかぁ(感嘆)……よし!次はどうやって退学に追い込んだろうかなぁ!(ウキウキ)

 

 

 

━━闇に飲まれよ!!(訳『くぅ疲!』)

 

もうだめじゃね?入学当初は「オシリスレッドかぁ。でも三年あるし、頑張ります!(エヘ顔ダブルピース)」とか思ってたのに、これでは三年堪えることすら難しいわ。留年すらムズいかもしれん。

 

まぁ、俺やガッチャマン以外の人たちも廃寮に居たけど、そいつらは特にお咎めなしというのは良かったわ。きっとあれだね。俺とガッチャマンに全てのヘイトが集まったからだね。俺とガッチャマンは犠牲になったのだ……デュエルアカデミアに古くから続く『うっうー!問題児はいらないかなーって』という風習……その犠牲にな。

 

俺が退学になって皆が救われる……俺はそういうことに幸せを感じるんだ(スヤァ

 

 

 

 

━━そんなわけねェだろォ!!!(激おこ)

スーパーグレートウルトラデリシャス大車輪山嵐ぐらい意味わかんねェよ!カカシ先生ェの「さらにもう一発」ぐらい納得できねェよォ!!!ふっざけんなよぉ!デュエルアカデミア!!腐ってるぜキサマ!!

 

俺は自室の壁を叩き、怒りをぶつける。

許せ壁。お前は悪くない。デュエルアカデミアが悪いんだ。罪を憎んで人を憎まず、社会を憎むんだ。何故俺が退学にならなくてはいけない?足りないからだ……憎しみが(イタチ感)

 

 

権力ってヤツか……気に入らねぇな、気に入らねぇ!と不貞腐れてもしょうがない。俺は気を取り直し、ガッチャマンの部屋へと向かうことにする。

 

退学になるわけにはいかんし、まずは作戦会議といこうじゃないか。あまり奴と一緒にいたくはないが(問題児扱いされるので)、背に腹はかえられん。そうだ、十代の部屋に居る丸藤君とコアラマン(名前忘れた)にも意見を聞こう。三人寄れば文殊の知恵と言うし、四人だったら神様だって殺してみせる(型月感)ほどの力があるはずだ。やったぜ。

 

 

俺は自室の扉を開け外に出る。

 

そういえば、ガッチャマンとかオシリスレッドの生徒って一部屋に二人か三人住むのが基本だけど、俺は一人部屋なんだよね。そこだけはオシリスレッドに居て良かったと思うところだわ。

 

まぁ、もう学園から追放されるかもしれないんだけどさ(震え声)

 

 

 

 

 

 

 

2,それは違うよ!

 

 

「納得出来ません、どうして彼らだけが退学なんですか!」

 

校長室にて、天上院明日香は鮫島校長に抗議の声を上げていた。

 

「落ち着きたまえ明日香君。これは倫理委員会で決まったことなのだ。私ではもうどうにも出来ないのだよ」

 

鮫島は声を低くし返答する。

明日香は遊城十代、そして自分のことをm9(^д^)と指差しながら明日香っちと命名した幼馴染の彼が退学となることに、納得していなかった。

 

廃寮には自身を含み他に三人いた。しかしその生徒にはなんの処罰も与えられていないのだ。

明日香は気に入らなかった。不公平だというのは勿論だが、自分を救ってくれた(と後に十代が教えてくれた)彼がそのような罰を受けるのは納得がいかない。そもそも彼は自分から進んで廃寮に入っていたわけではない。自分が廃寮に入ろうとしていた十代たちに警告をしていた時も、「頑張れ明ァ。ふんばれェ(やんややんや)」と此方に賛成の意を表していた。つまり彼は巻き込まれていたのだ。その時自分は、優柔不断な彼らしいと呆れたわけだが。

 

「確かに、私も退学は罰としてはあまりにも大きすぎると思う」

 

明日香が当時のことを振り返っていた最中、鮫島は机の上に自身の両手を組みつつ言葉を紡ぐ。

 

「だが、制裁デュエルとして遊城十代━━いや、十代君とは別の、もう一人の彼のデュエルを見られるのは良かったのかもしれない。退学がかかっているのだ、彼の本当の姿を見せてくれるだろう」

 

「どういうことですか?」

 

鮫島の言葉に明日香は眉をひそめつつ疑問の声を上げる。それに鮫島は一つ呼吸をおき、言葉を続けた。

 

「彼と古い付き合いらしい君には教えておこう。実を言うと、彼をデュエルアカデミアに入学させるべきではないという意見を上げた人物が居た。彼のデュエル実技を担当した教師だ」

 

鮫島は苦悶に満ちた顔で語る。

 

「その教師は私の元に直々に来て言った。『実力は申し分ない。だが、あまりにも危うい存在』だと。彼はデュエルを通して相手と楽しさを共有するのではなく、一人勝手に愉悦を覚えるためだけにデュエルをするのだ、とね。相手が窮地に陥っているのを見て、獰猛に笑っていた。それがとてつもなく恐ろしかった、と震えながらその教師は言っていたよ。錯乱していたのか、彼の瞳が黄金に光っていたと奇妙なことも語っていた」

 

━━それは何かの間違いだ、と明日香は心の内で声を上げた。自分の知る彼はそんな凶悪な人物ではなかった。

 

だが、と明日香はそこで思考する。

自分の知っている彼、というのは小学生時代の話。自分と彼は小学校を卒業した後一旦わかれ、またデュエルアカデミアで再会した。つまり、三年の空白があるのだ。その間に、彼は変わってしまったのではないか?

 

そんな思考をする明日香に鮫島は言葉を続ける。

 

「それを聞き、私は彼の扱いをどうするか決めかねた。だが、試験の結果は絶対だ。それを覆すことは出来ない。彼はこのデュエルアカデミアに入学できる権利を勝ち取った。そしてオシリスレッドの一員として迎えた。しかし━━我々は未だに、彼を危険かもしれないと疑っている。故に彼をレッド寮の隅、一人部屋として特別待遇しているんだ。……レッド寮にさえ住まわせず監視できる場所に、という意見もあったが、それはあまりにも酷だ。寮長である大徳寺先生がいつでも対応できる、心配はない、と私が言って現在の状況に留めている」

 

「彼は、私達と何ら変わらない、デュエルを通して学ぶ生徒です。なのに、そこまでするのは」

 

「それほど異常なんだ。当初、彼とのデュエルが終わった教師は立ち尽くし、話すことさえ儘ならない状態になった。明らかに精神に異常をきたしていた。心へのダメージ、それは今成長段階にある君たち生徒には堪えられないかもしれない」

 

 

その鮫島の言葉に、明日香は息を呑んだ。

鮫島は視線を伏せつつ語る。

 

 

「授業中、彼に生徒間でのデュエルをさせないよう教師陣に伝えてある。しかしそれでは今後、このデュエルアカデミアで学び続けることは出来ない。つまりどのみち━━今回の件があろうとなかろうと、デュエルで『安全を証明』しない限り、彼の退学は免れなかった」

 

 

それを聞き、明日香は何の言葉も返すことが出来ず、ただその場に立ち尽くした。

 

 

 

3,誤魔化さないでよ!(蒼歴史)

 

 

 

俺は思うんだ。ガッチャマンって人の話聞かないよねって。

 

 

俺がガッチャマンの部屋に入室して一言。

 

・作戦会議しよう?→俺

 

そしてガッチャマンの返答。

 

・じゃあデュエルしようぜ!→十代

 

 

おい、会話しろよ(全ギレ)

 

あのね?退学かかってるのよ。お前はスリルを楽しむタイプだから良いのかもしんないけどさ、俺はマジでストレス半端ないからね?このままじゃあ『くぅ~疲れましたwこれにて光の中に完結です!(路頭に迷う的な意味で)』ってなっちゃうわ。ぐへぇ。

 

そう俺がガッチャマンに、これからのデュエルは勝たないといけんから協力してやろう?と再度念押ししても。『でも俺とお前は同じヒーローデッキだから相性は良いし、お互いに融合しまくれば勝てる。大事なのは実戦だろ?』的な真っ当な返答をされる。

そう真っ当な話だ━━『融合』が使えるヒーロー使いならな!!

 

 

━━もういいよ!私、デュエル辞める!(アイマス感)

 

ガッチャマンが俺のコンプレックスを刺激した反動で、俺はちゃんみおのような捨て台詞を吐きながらレッド寮を走り去る。

 

ちくしょうめ!(涙声)誰でも融合出来ると思うなよガッチャマンの野郎!

 

ここだけの話、俺は廃寮でのデュエルで融合召喚した後、調子に乗っていた。

「やったぜ、成し遂げたぜ。『融合』を使わなくても融合召喚できるんや!勝ったな(確信)』と一人部屋に帰った後小躍りしたりしていた。

しかし、いざデッキの中を見てみると、前使ったはずのダークフュージョンのカード、そして姉御の悪魔融合体は綺麗さっぱり消えていたのだ。

これはショックだった。

 

希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は一番美しい顔をする……ウソダドンドコドーン!(必死)「落ちつけ……大丈夫、こんなもんだよ。泣くほどのことじゃねぇよ。最初から期待なんてしてなかったもん。こんなもんだよ!」と、そのぐらいショックだった。

その後に倫理委員会が部屋に訪れて「お?お前退学だぞ(諸行無常)」と告げられたのである。

 

……フルコンボだドン!(卒倒)

悪いことって続けて起こるよね、と他人事のように思う俺。まさか俺のリアルラック、低すぎ……?

 

オデノカラダハボドボドダ!

そんな中でガッチャマンに「融合?誰でも出来るだろ?」発言で止めを刺されたのだ。

 

俺は闇雲に走り続ける。

途中、明日香っちが俺に駆け寄ってきたりしたが、俺はそれをデビルバットゴーストで巧みに躱し。

次に万丈目・サンダー君がむすっとした顔で絡んできたりしたが、デビルライトハリケーンで華麗に避けた。

 

そんなふうに40ヤード走4.2秒光速の世界で走り続けた俺であったが、海の目の前までくるとさすがに息が続かず、そこで足を止める。そして俯いて呟いた。

 

 

くやしいなぁ、くやしいなぁ。泣けないなんて……くやしいよぉ(咽び泣き)

 

 

俺は砂浜に体育座りで沈黙する。ぼうっと波打つ海を眺め、俺はやさぐれた。

 

次第に日が暮れ、夜の時間が訪れる。そんなのは気にせずに、俺はまだ荒んだ心持ちでそこに座っていた。

そんな俺の背後に、精霊である(らしい)バーストレディの姉御と、フェザーマンの旦那が現れ此方を窺ってきた。

 

え?落ち込むな?ベストを尽くせ?いやもう乗せられないから。そのせいで黒歴史増えたから。俺が影でベストマンって言われてるのもう聞いたから。誰か情報漏洩しやがった。早すぎィ!

 

姉御よ、俺だって分かってるよ。こんなことで落ち込む時間なんて存在しないことは。そしてガッチャマンが正しいってことも理解してるよ。でもさ?理屈じゃないやん?悔しいとか悲しいとかはさ?どうしようもないものじゃん。うん、分かってるよ。

 

そう━━

 

 

『融合』なんて、『融合』なんて、誰でも引けるもん……!(島村感)

 

 

 

俺は夜の海を前に一人号泣する。

 

「何にもない、私には何にも……」と融合を引けない悲しみ、そしてこれから訪れるであろう、制裁タッグデュエルの恐怖から弱音が溢れてしまう。それを姉御は感じたのだろう、彼女は俺を慈しむような声色で、

 

━━誰でも引けるなんて言わないでよ……踏み出したんでしょ?自分も引けるかもって……

 

そう、俺の右肩に手を乗せて言った。

確かにそうだけど、デッキから消えてたし……やっぱり……

姉御の言葉を聞いても、俺の中でまだ弱音は完全に消えない。

するとそれを見て、今度はフェザーマンの旦那が小さく笑いながら言う。

 

━━前にさ、俺が融合出来なくて手札にずっとあった時、いつも温存しててくれたじゃん?なんかね、安心してた。いつかはフレイムウィングマンになれるって。でも、そんなわけないよね……ごめんな、気づけなくて。

 

 

 

うっせぇよ(真顔)

 

いつかは出来るよ。俺だっていつかはフレイムウィングマンになれると思ってたよ。もうそれから何年も経ったけど。

 

あれ?励ましてくれてたんじゃないの?旦那?おい、何笑ってんだ(半ギレ)

 

俺は左肩に乗せてきた旦那の手を振り払う。

やっべぇ元気出てきたわ、怒りで。俺を怒らせたら大したもんだよ旦那、クソが。

俺は煽り耐性が低いのであった。まる。

 

俺は体育座りを止め立ち上がり、ズボンについた砂を両手で払う。

フェザーマンの旦那はなんなの?畜生なの?ファッキュー旦那。

 

中指を立てて意思を伝える俺を見てから、旦那は姉御と俺と手を繋ぎ、さらに言葉を紡いだ。

 

 

━━俺たちさ、もう一度融合しようよ?……出来たら(にやけ顔)

 

 

 

 

ざけんな(ブチギレ)

 

 

 

 

 

俺は怒りを溜めつつ、レッド寮の部屋に戻る。

そして時計を見ると、その針は深夜12時を指していた━━

 

 

 

 

4,憎いよぉ……

 

 

時は進み、ついに俺とガッチャマンの将来を決める運命の日がやって来た。

相手はまだわからない。そして俺とガッチャマンは特に作戦とかも決めておらず、デュエルはぶっつけ本番に近い。

 

だからだろうか、俺は今回胃の痛みやストレスを感じず、逆に何処か清々しい気持ちで今日この日を迎えていた。

 

 

━━ここが制裁タッグデュエルを行う会場……か。歓声が聞こえるね……。

 

俺は虚ろな目でそう呟く。

 

自信は無い。負ける気しかしない。だけれども、勝たなければいけない。そんな複雑な気持ちが交差して、テンションだけはなんだか上がってきた。アドレナリンがすごい。

 

俺は後ろに続くガッチャマンの方を振り返る。するとガッチャマンは『やってやろうぜ』、という表情を浮かべ、俺を追い抜かして行った。

 

 

 

ああ、そうだな。やってやるか。

 

俺もガッチャマンに続いて、デュエルフィールドに上がっていく。

 

 

 

 

じゃあ━━残していこうか、私達の足跡!!(蒼の系譜)

 

 

 

 

 




『ボツネタ設定』

・主人公
今回ちゃんみお、島村、蒼歴史とアイマス界の御三家の役割を随所で演じた。融合コンプレックス(引けない)が炸裂し、人類最速に近い俊足で逃走したりもした。人は彼をアイシールド21と呼んだことがあったりなかったり。

・ヒーローの旦那
E・HEROフェザーマンのことである。このボツネタであるチョイ役。畜生キャラを確立しつつあるが、こんな筈ではなかった。どうしてこうなっちまったんだ……?


これからボツネタを続けるとしたら、別の小説としてあげるかもしれない。アクセルシンクロトリップ小説も続けるつもりなので。今思ったけどアクセルシンクロトリップ小説って、これもうわかんねぇな?(困惑)
別の小説としてあげた時は連絡します。まぁ、作者がGX見終わったらの話だからね?(震え声)



『追記』

一応別の小説として上げておきました。多分「ベストマン」で検索すれば出てくると思います。でなかったら作者の名前で検索してください。作者の黒歴史も出ます。

そしてGX三幻魔終了まで見ました(疲労)誉めて。
もう少し頑張ります(島村感)

『追記の追記』

やっぱりタイトルは『くぅ疲マン』にします(謎のこだわり)
このほうが分かりやすい。作者のフィールが。


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