笑顔は太陽のごとく… 《用務員・長門編 完結済》 (バスクランサー)
しおりを挟む

用務員長門さん、誕生

お久しぶりです、バスクランサーです。
結構続編とかの要望もあり(自分でも書きたかった)、書かせていただきます。
またこれからもよろしくお願いします。

それでは、本編どうぞ!


 私の名は長門。戦艦の艦娘だ。

 第35鎮守府に在籍している。

 私の日々の使命は、出撃し、深海棲艦と呼ばれる敵を仲間達と倒し、暁の水平線に、勝利を刻むことーーー

 

 ーーーではない。

 というのも、私の身体では、出撃など到底できない。

 艦娘性超記憶障害とかなんとかいう、艦娘特有の奇病を患っているためだ。大本営で建造された時、私は挨拶の言葉を言ってーーーすぐに、倒れた。

 艦時代の私の最期ーーー水爆実験の標的艦として沈んだ時のあの光が、その時に強烈な痛みとともに襲ってきたのだ。熱い、痛い、苦しい、その感覚に脳が支配された。人間には、自殺頭痛とも呼ばれる、群発頭痛なるものがあるというが、恐らくそれよりも辛いものだろうと思った。確信。

 話を戻すと、私が倒れた時、周りの大本営の人間たちがものすごく忙しそうにしていた。薄れる意識の中、あれよあれよと担架に乗せられ、治療室送りとなった。

 そこで一旦記憶は途切れている。次に目を覚ました時言われたセリフは、今でも脳内に焼き付いている。

 

「目覚めたか、よかった。とりあえず、こちらでできる限りの全ての治療はしたからな…ふぅ」

 

 彼らの話によると、私は数週間にわたって、艦娘性超記憶障害の治療をされていたらしい。ちなみにこの病名を聞いたのもその時だ。そして、しばらく大本営にいた後、今の鎮守府ーーー第35鎮守府へと異動した。

 病の方は、大本営での治療により、命の危機は脱したらしい。しかし、今も続く発作や、水爆実験の放射能による脱毛症などは治療しきれなかったようだ。発作の方は今も、放置しておくと命に関わるらしいが、大本営が薬を開発してくれたらしい。

 ともかく、私は同時期に建造された姉妹艦の陸奥と、ここで過ごしていた。

 

 最初のうちは本当に、理想と現実のギャップに苦しみ、自暴自棄になっていた。仲間にも、陸奥にさえも当たる日々が続いた。

 そんなある日、ここに1人の提督と、その相棒みたいなポジションの響が着任した。

 彼は、とにかくすごかった。ここにいる艦娘は、心に傷や闇を抱えた者達が多かった。そんな彼女たちを、提督はどんどんと立ち直らせていった。

 さらに、私の人生を変えてくれた存在もやってきた。特型駆逐艦の吹雪。私に着任当初からよくついてきて、助けようとしてくれた。

 だが私は自分の存在意義を失うと恐れ、彼女に心無い言葉をかけてしまった。今思うと、本当に彼女には申し訳ないことをしたと思う。なのに、そんな私を、彼女は助けてくれた。嵐の街中、その路地裏で発作を起こし、気を失いかけていた私を見つけてくれたのは、彼女だったのだ。

 本当に嬉しかった。さらに、その夜に彼女にそれまでのことを謝った時、彼女は私を咎めないばかりか、とてもいい言葉を私に教えてくれたのだ。

 

「ーーー優しさを失わないでくれ。

 

 ーーー弱い者をいたわり、互いに助け合い、

 どこの国の人たちとも

 友達になろうとする気持ちを

 忘れないでくれ。

 

 ーーーたとえその気持ちが、

 何百回裏切られようと。

 

 ーそれが私の最後の願いだーーー」

 

 かつて地球を守った戦士の1人、ウルトラマンエースが、地球を去る時に残した言葉だという。そして私はその言葉を胸に、今日も鎮守府で、笑顔で自分に出来ることをしようと務めているのだ。

 ちなみに私のいつもの格好は、間宮みたいな割烹着、それから頭にはバンダナを巻いている。自分で言うのもなんだが、なかなかシャレオツ。だよな。

 

 ーーーある日 ヒトヒトゴマル

 第35鎮守府廊下

「ふぅ…」

 私は日課である掃除を、いつもと変わらずしていた。ここの艦娘たちの心の傷が癒えたことで、もうすぐ新しい仲間達が来ることになっているので、掃除一箇所にもより力を入れる。この前、提督のしていた着任関係の書類整理を手伝ったが、見る限りきっと、個性的なメンバーなのであろう。うむ、胸が熱いな。

 

 というかまずここに今いるメンバーもかなり個性的だ。提督の相棒である響はスポコン漫画にドハマリした影響で何故か珍しくボクっ娘だ。たまに私も、数冊を借りて見せてもらったりしている。

 メシマ…いや、その…料理があまり得意ではないイメージが定着している比叡は、金剛に教えてもらったとかで、料理の腕がいい意味で並外れている。食堂でたまに鳳翔や間宮を手伝っているほどだ。特に彼女のカレーは絶品だ。ちなみに私は甘口派である。

 高雄は、療養として提督と旅行に行って以来、ぶらり旅、さらに何故か鉄道に目覚めたらしく、毎月雑誌を取り寄せてはプランを立てて、休みの度に、時には1人、時には複数人で旅行をしている。休みの前日に彼女を出撃させた時は、そのせいかMVP総なめにするとか。

 

 他にも、空母艦娘が使う艦載機がめちゃめちゃかっこいいフォルムでかつ超高性能だったり、島風が通常海戦に加え格闘戦も得意だったり、天龍や龍田が日々新技を開発していたり…数えだしたらキリがない。だが、こういうのもありだ。むしろ雰囲気が心地いい。

 

 お、向こうから誰か来たようだ。

 白い軍服姿…うむ、提督だな。

 それにその隣には大淀もいる。確か、今日は響が遠征に行っているから秘書艦を務めることになったとか、昨日言っていたな。

 向こうもこちらに気づいたようだ。

 

「おー、長門。」

「提督、それに大淀か。執務お疲れ様、だな」

「そっちこそ、いつも色々ありがとう。ちょうどこれから、食堂で昼ごはんを食べようかとね。もう昼時だし、長門もどうだい?」

「…ふむ、確かにそうだな。私もご同行願おう。」

「ふふ、賑やかになりそうですね」

 にこやかに微笑む大淀。前は、疲れ果てた顔ばかりで、こんな彼女の笑顔など見られなかった。私も嬉しいーーー

 

 ーーー食堂

「いらっしゃいませ〜」

 迎えるのは鳳翔と間宮。空いている席へと案内された。

「えーっと…じゃあ、俺はカレーかな、いつも通り。」

「私は…じゃあ、日替わり定食で。長門さんは?」

「ふむ…では、唐揚げ丼の特盛りと行こうか。すまん、注文を頼みたい」

「あ、はーい!」ーーー

 

 ーーー美味い。やはり美味い!

 なんだこの幸福感は!この食堂の料理ははっきり言って美味い!それしか言えん!

「喜んでんなー、長門」

「この前もそうでしたね…」

 当然だろう。美味いのだから。

「ん?ちょっとすまん」

 提督?あぁ、通信か。おそらくは遠征中の響だろうな。席を外した提督の声が聞こえてくる。

 

  「…あぁ、あぁ。…おお、到着まであと約1時間か、ありがとう、お疲れ様。…よし、了解した、交信終了。」

 通信を切った提督が戻ってくる。

「すまん、食事中に。響たちから連絡があってな、遠征で予定以上の資源を獲得したそうで、もうすぐ帰るそうだ」

「ほう、それはよかったな。帰ったら褒美をやらんとな。」

「はは、その通りだな。じゃあ間宮さん、特別アイス六つ分を、1時間後に帰ってくる遠征艦隊に出してくれないか?」

「はい!かしこまりました!」

 ちなみに近頃この食堂は有料制になるらしい。やはり艦娘の数が増えることと、今までの無料制度は心の傷を負った艦娘たちのことを考えてだったのだろう。

「タダで食えるうちに、たくさん食っておかないとだな」

「ちゃんと有料制になっても、来てくださいよ?」

「わかってるよ。むしろこっちからどんどん行くからな」

「ふふ、ありがとうございます」

 提督と鳳翔、間宮のほのぼのとした会話である。いいものだ。深海棲艦を殲滅させ、本当に平和な日々が来れば、こんな会話も増えることだろうな。

 提督は笑顔で頭を下げ、廊下へと歩みを進めていく。

 そうだ、この際頼みたかったことを提督に頼んでおこうかーーー

 

 ーーー「あ、そうだ、提督」

 廊下に出た提督に、私は声をかけた。

「?どうした、長門」

「その…もうすぐほら、新しい仲間達もここに来るし…一応私の登録肩書きは、戦艦、となっているだろう?」

「ああ、そうだな」

「ただ、それはあくまでも肩書き。私はこの身体だから、戦えはしない…だから、私の肩書きを、用務員に変えてほしいのだが…」

 何日も迷って、ようやく出した結論だった。

 が。

「…お前はどうしたい」

「…は?いや、その私は用務員として…」

 しかし、提督は私に近づいて言った。

「実際のとこ、まだ迷ってるだろう?」

「…提督は何でもお見通し、か。流石だな」

「ここの艦娘たちのことは、よく見ているつもりではいるからね。今の長門は…さしづめ、戦艦としての自分と今のポジションのギャップ、それが恐らく迷いを生み出している。そしてそれを消そうとして、用務員になろうとしている…って感じかな?」

 …流石は提督だ。ここの艦娘たちの笑顔を取り戻しただけあるな…。

「…ご名答、といったところだ」

 ふぅ。と大きく息をつき、提督は言った。

「迷うならとことん迷えばいい。ここに新たな仲間達が来るからって、結論を急ぐ必要は何も無いんだから。な?」

 提督の微笑み。自然と優しい気持ちになれる、私の一番好きな提督の顔だ。

「…ふふ、ありがとう。分かった、提督の言う通り、ゆっくり考えておこう。答えが決まったら、また聞いてくれると嬉しい」

「もちろんだ。君の決断が決まるまで、待っているよ」ーーー

 

 ーーーそして。

 新たな仲間達の着任一週間前、私は執務室のドアをノックした。

「長門だ。今、大丈夫か?」

「ああ。入りなさい。」ーーー

 

 ーーー私は用務員として働くことを決めた。何度も話し合い、決めた結論だ。提督、そして秘書艦の響も、私を励ましてくれた。

 うむ、胸が熱いな。

 これから頑張っていこう、改めてそう思えた日だったーーー




というわけで読んでくれてありがとうございました!

感想や評価、よければお願いします!

これからも頑張ります!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と吹雪と買い物

咳が止まらないです。助けてください…(´;ω;`)

本編、どうぞー。


 ーーー「では提督、行ってくるぞ。」

「私も行ってきます!頑張っちゃいます!」

「はは、まあそんな気負わず、気をつけて無事に帰ってきてくれさえすればそれでいいからな。」

「了解した!では用務員長門、抜錨する!」

「吹雪も出ます!」ーーー

 

 ーーーもちろん出撃ではない。いや、ある意味出撃だろうか。

 今日は買い出しの日だ。商店街で安売りの日で、なおかつ新艦娘たちの歓迎会も行うことになっているため、普段より多くの食材などを購入、さらに料理する必要が出てきた。

 そこで、間宮と鳳翔には厨房仕事に専念してもらい、私、そして今日休みの吹雪で買い出しを引き受けた次第である。

「うふふ!長門さんと買い物〜!」

「そんなに楽しみか?吹雪よ」

「もちろんですよ!

 …あれ、長門さん、どうして苦笑いなのですか?ひょっとして、楽しみじゃなかったですか…?」

「いやいやいやいや!そういう訳じゃない!寧ろとても楽しみだ!ただ…」

「ただ…?」

「…行けばわかる。」ーーー

 

 ーーー私はそうとしか答えられなかった。

 実は買い出しに行くのは、吹雪は初めてだが私はそうではない。買い出しの手伝いとして、間宮とよく商店街に行っている。そしてそれがたまに、不定期で行われる商店街全体の安売りデーと被ることがあり、その時の間宮はと言うと…まさにフンスフンスという表現が似合うような、そんな表情だった。

「ここが私の真の戦場です!」

 とか言って彼女が飛び込んでいったのは、セールの人混みの渦中である。そして数分後、戻ってきた彼女の服はヨレヨレで、かなり体力を消耗しているように見えた。

「やりました…!」

 …そのセリフ、加賀のではないか?とツッコミたくなるのをなんとか抑えて彼女を見ると、しっかりと安売りの目玉の品がエコバッグに入っていた。

 …要するに、こういうわけか。安売り品をめぐる戦争…わからなくもない。うん。

「長門さんも飛び込んでみますか?…でも、はっきり言ってあれはやばいですよ。」

 間宮は息を切らしつつ、若干キャラが崩壊していた。周りには、同じように息を切らした主婦の群れ。充実した顔の者もいれば、悔し顔の者もいた。

「まあその…お疲れ様だった」

 さすがの私も間宮の顔に気圧され、それしか返せなかったーーー

 

 ーーーその後、私も何度かその「戦場」に実際に飛び込むのを経験した。本当に見ていても凄いものだったが、それを直に体験して改めてその凄さを知った。

 この街の人々はみんな優しい。付近の高校の学生も、商店街のスタッフさんたちも、すれ違う買い物の主婦たちも。だが。

 その主婦が、この商店街全体安売りデーだけ敵に変わるのだ。互いに睨み合い、タイムセール開始と同時に売り場の台になだれ込む。普段優しい彼女たちをあそこまで変えてしまうとは…安売りとは恐ろしいものだーーー

 

 ーーーおっと、前置きが長くなってしまった。そう、今日がまさにその安売りデーなのだ。目当ての品が午後からタイムセールになる。前もって、初めての吹雪には警告しておこう。

「吹雪、今日の商店街は戦場だ。」

「え、深海棲艦でも襲ってくるんですか…!?」

「いや、そうじゃなくてだな…まあ、見ればわかるさ。」

 実際私もそうだったし。

「見ればわかる…商店街が戦場…あっ…」

 察したようだな。まあ察したところで後戻りは不可能だーーー

 

 ーーー商店街に着いた。まずは魚屋だ。焼き魚などは私も好物なので、これは確保せねばならん。

「ふぅ…行くか。」

 魚屋の入り口には多くの主婦たち。無論、全員顔見知りである。

「それでは!1時間限定、全品詰め放題1袋750円均一セール、開始します!」

 若い男店員の号令で、一斉に私…正確には私たち、は店内へ突進したーーー

 

 ーーーやったぜ。

 そう思わず言った。無性に言いたくなったから言った。目標量よりわずかながら多くの戦利品をゲットした。やったぜ。

「長門さん…やっぱりこういうことだったんですね。」

「ああ。よし次は米屋だ。あそこは力仕事になるぞ…」

「ま、まだ行くんですか…!?」

「当たり前だぞ?今日はまだまだたくさん買うからな!」

「は、はいー!」

 

 米屋でも、戦利品を多めにゲットした。間宮にコツを聞いておいてよかった。私は出撃こそできないが、だからといって鍛錬をしていない訳ではない。むしろしている方だと自負している。島風や天龍、龍田といったメンツと、よく室内トレーニングルームで顔を合わせるのだ。用務員として鎮守府で雑用をする以上、鍛える必要があるかと考えて自発的に通い始め、今はすっかり習慣になった。

 そうして鍛えた私のこの筋肉に加え、間宮からもらったバーゲン必勝のコツがあれば、たとえ品が重い米屋だとしても頑張れる。

 さらにこのあと、八百屋、肉屋でも戦場を繰り広げた。吹雪も私の帰還の度に、飲み物を補給してくれる。ありがたい。

 そして私はその支えもあり、今日最後の、そして一番激しい戦場に着いた。

 

 ーーー駄菓子屋だ。

 やはり歓迎会には飯もいるが、菓子類も不可欠なのだ。そしてこの商店街の駄菓子屋は、駄菓子に加え、今どきのチョコやスナック、さらに昔懐かしいおもちゃなども売っている。何より、価格が安いのが一番いい。それがさらに安くなるのだから、なおいい。

 しかし。

 この駄菓子屋、言うまでもなく主なターゲット層が、今までの主婦ではなく、この時間ちょうど小学校が終わって買い物に来る、小学生たちなのだ。というか店側がその時間に合わせているのだが。

 とにかく。何が言いたいかと言うと、小学生は主婦より強い。主婦は争いながらもルールや加減をわきまえているので、あれだけの戦場に関わらず、怪我人が出たと聞くことは無い。

 しかし小学生となると話は別だ。こやつらは手加減という概念を知らない。一度買い物の時、彼らの訪れる時間帯と被ったのだが、嵐のように品物をとり、レジに長蛇の列を作り、店の品の大半は彼らが買い占めていくのだ。ガチ顔だった。恐ろしいが、歓迎会のためにも、ここは行かねばならぬな。

 ちなみに、店の中で品をカゴに入れて待機し、号砲の瞬間レジにいく、と言うのは子供たちの間で暗黙の了解として禁止されているとか。

 待っていると、私に気づいた小学生が声をかけてきた。

「あっ、長門お姉さんだー!」

「こんにちはー!」

 それにしても、こんな私にも変わらず接してくれる子供たちには毎回感謝している。

「長門お姉さん、悪いけど今日は、頂いていくよ!」

「ここは譲れません!」

 …しれっと加賀のセリフ言ったな。まあいい。すると、店の奥から老夫婦が出てきた。ということはーーー

「はーい、みんな来てくれてありがとうねぇ。じゃあ、安売り開始しちゃうよー!」

「うおおおおおあああああああ!!」ーーー

 

 ーーー結果、惨敗。

 やはり子供たちは強かった…!そのスピード、うちの島風よりも速いのではないか。と真面目に感じてしまったほどである。お菓子怖い。

「すまん、吹雪…あまり戦利品は手に入れられなかった…」

「大丈夫ですよ、長門さん。今度はまた、空いているときにゆっくり買い物を楽しみましょうよ!」

「…ふふ、優しいな。」

「いえいえ!そうだ、司令官が、時間余ったらたまにはどっかでくつろいで来いって、お金を余分に持たせてくれたんです!よかったら言ってみませんか?」

「お、いいな!その話乗った!」

 吹雪よ、ありがとう。今猛烈に嬉しいーーー

 

 ーーーその後。

 商店街の古風なカフェで吹雪とのんびりと過ごし、鎮守府へ帰った。提督と響が出迎えてくれた。

「おかえり、長門、吹雪」

「ただいま、だ。お菓子はだめだったが、それ以外は目標以上を手に入れられた。」

「帰りにカフェによって、カフェオレも飲みました!美味しかったですよ!」

「そうか、よかったな、それからお疲れ様。とりあえず、お菓子に関してはまだ時間あるし、また買いに行けばいいさ。よし響、これから食材を貯蔵庫に運ぶのを手伝ってくれるか?」

「もちろんだ、司令官」

「なら、私も」

「私も行きます!」

「はは、みんなありがとう。よいしょっ!」

 あと6日か。準備にも力を入れないとだな。この長門、用務員としてこれからバリバリ頑張っていくぞ!

 …後、次こそは子供たちに勝てるように、トレーニングを強化しなければ…ーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m

お気に入り数が早速あって嬉しいです!
これからもよろしくお願いします!
感想や評価も待ってます!

というわけでまた次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と五航戦と恋

はい更新遅れて申し訳ないです。

まあ、かなり中身が薄っぺらいSSですが、よろしくお願いしますm(_ _)m

本編どうぞー!


 ーーー鎮守府に新しい仲間達が来るまで、あと5日となった日。

 私は鎮守府内の古くなったり、壊れていた掃除用具の買い替えのため、仕事後に酒保を訪れた。

「えーと…モップ16本に、バケツ(修復剤の俗称ではなく、よくあるポリバケツである)を8つ、雑巾27枚か…取り寄せ予約をしてるとはいえ、運ぶのが大変になりそうだな…」

 私は呟きつつ、カウンターの明石のところへ行き、予約番号券を渡した。この酒保では、買うものが売り場に置けないほど大きかったり、どうしても欲しいものがあったり、またこのようにまとめ買いの必要がある時には、このように予約制度を利用できるのが便利な所である。

「長門さん、待ってましたよ〜。このカート使っていいんで、気をつけて運んでくださいね!」

「ああ。ありがとうな、明石。」

 代金は予約券を買った時に既に払っていたので、私は品物をレンタル式のカートに載せ、酒保を出たーーー

 

 ーーー酒保のある1階の掃除用具の交換を済ませた後、私はエレベーターで2階へと移った。そして、廊下の角を曲がった、その時…

「…っ!?」

 まずい、発作だ!私の身体を激痛が襲う。よろめいたせいでカートが倒れ、中の掃除用具が廊下中に散らばる。なんとかその中でも懐のポケットにある即効鎮痛剤を取り出し、口に含んだ。

「んっ、はぁ、はぁ…」

 痛みが引いていき、身体が正常に戻る感覚を覚え、よいしょっ、と立ち上がる。とりあえず、この散らばった用具を片付けなければ…

「長門さん?どうしたんですか?」

 不意に後ろから声をかけられた。この声は…

「おお、翔鶴か。いや、少し発作が来ただけさ。薬は飲んだからおさまったが、少し散らかしてしまってな。」

「え!?大丈夫ですか!?」

「あ、だから大丈夫だ、問題ない。」

「なら、よかったです…。あ、私も拾うの手伝います!」

「すまん、助かるよ。そういえば翔鶴、その手に握ってる袋からして、君も酒保で買い物か?」

「は、はい。毎日付けている日記が、もうなくなってしまったので、新しい物を買いに来たんです」

「そうだったのか。翔鶴も勤勉だな。」

「そ、そんな事ありませんよ…」

「ふふ。あと、片付けてくれてありがとう。」

「いえ。よければ、私も用具交換、手伝いますよ?」

「いや、そこまでは大丈夫だ。重ね重ねありがとうな。」

「大丈夫ですか?無理はしないでくださいね…あ」

 翔鶴のその声につられ、彼女の向いている方向を見ると、そこにはーーー

「あ、翔鶴姉、それに長門さんも!こんにちは!」

 瑞鶴だ。翔鶴や、一航戦の加賀、基地航空隊の赤城とともに、今の鎮守府の空母の主力である。

「やあ、瑞鶴。瑞鶴も酒保か?」

「え、すごいなんで分かったの!?」

「瑞鶴、ちゃんとした言葉遣いしなきゃ」

 …真面目だな、翔鶴。

「ははは、大丈夫だよ。そっちの話したいように話せばいい。その方が気楽だからな。」

「すみません…」

「気にするな、翔鶴。そういえば瑞鶴は、酒保に何を?」

「私はお菓子作りの材料かなー。よく寮の調理場で、翔鶴姉や加賀さん、赤城さんと作るんだ。」

「おお、それはいいな。」

「ありがとう!今度作ったら、長門さんにも渡すよ!それとね、作ったお菓子をいつも提督にもあげるんだけど、その時の翔鶴姉がね…」

「わー!!瑞鶴、やめてー!!」

 何故かいきなり叫びだした翔鶴。

「どうしたんだ?」

「いや、その、なんでも…」

「翔鶴姉、サポートはつけた方がいいよ?タダでさえ毎回あたふたしてるんだし…」

「だって…」

 …何がどうなっている、この状況。

「と、とにかくその…私も、仕事があるが、その後でならよければ話を聞くぞ?」

「あ、ありがとうございます」ーーー

 

 ーーー「私…実は提督が好きなんです…」

 場所を娯楽室に移した後、翔鶴は顔を赤らめながら言った。

「なんだ、そういうことか」

「なんだじゃないですぅ!だって、私のこと助けてくれたし、すごい装備たくさんくれたし、笑顔素敵だし…とにかくあの人のこと考えると、胸が苦しくなって…」

 …いつもの口調が崩壊している。これは余程のぞっこんだな…。まあ、確かに提督もかなり優しくて魅力的な者だからな…。

「まあ、焦らずゆっくり距離を縮めて行けばいいんじゃないか?」

「ゆっくりしてられないです!だってこの鎮守府は他にも提督大好きな方がたくさんいますし…」

 …え!?

「た、例えば誰が?」

 思わず聞いてしまう私。

「やっぱりまず金剛さんは筆頭ですし、なんか比叡さんも『恋も、戦いも、お姉様には負けません!』とか言ってますし、高雄さんもよく旅行に誘ってますし、大井さんもすごい素直にアピールしますし…明石さんや加賀さん、愛宕さんや吹雪ちゃん、さらに陸奥さんも…」

 うわ…いっぱいいるな…ん?

「翔鶴、陸奥も…なのか?」

「はい。聞いたところだと、よく誘惑してますよ…?」

「ふぁっ!?」

 なん…だと…!?

「ねぇ、長門さん。」

 不意に声をかけてきた瑞鶴。

 

「ここまでの様子見てて思ったんだけど…長門さんも、提督さんのこと好きなの?」ーーー

 

 ーーーなんだ瑞鶴、いきなり何を言うかと思えば。なんだ、私が提督に好意を抱いていると…?恋愛的に?いや、まさか、そんなことあるわけないじゃ…あるわけ、ないじゃ…

 …のぁぁぁぁああああああああ!!やばい!脳裏に浮かんだあの笑顔!すごい優しい態度!何よりなんかイケボ(な気がする)!これは!なんか体熱くなってきた、ドキがムネムネしてる!わーー!わーーー!!ーーー

 

 ーーー「…翔鶴姉、なんか長門さん悶絶してるね…」

「やっぱり長門さん、あなたも…」

「ぁぁあああ!す、すまん!やっぱり私も無意識のうちに…その…!」

「長門さん。

 謝ること、ありませんよ?」

 思考の混乱は、翔鶴のその一言ですぐに戻った。

「確かにこうなった以上、私と長門さんは恋のライバルの関係です。しかし、それ以前に、この鎮守府の仲間でしょう?」

「翔鶴…」

「明石さんや金剛さんはかつて愛する人を失ったり、高雄さんは恋愛のもつれから辛い経験をしたりしました…。ここにいる他のライバルの皆さんも、そういうことを踏まえ、ちゃんと一線を弁えています。だから、そんなに心配しなくても大丈夫です。」

「あ、ありがとう、翔鶴…その、なんか、すごい救われた気持ちに…」

「こ、こちらこそです!それに…」

 彼女は俯きながら言った。

「恋に関しては、響ちゃんという、とても強大なライバルがいますから…」

 

 …あ。

 

「まあ、まだ提督が誰を選ぶかなんて決まっていないし、そもそも恋愛感情があるかも分かんないじゃん。だから、その…ふたりとも、結局はマイペースでアピールすればいいんじゃない?」

「そうね、瑞鶴…」

「うむ…私もそうさせてもらうことにしよう…」

 と、この瑞鶴の言葉でこの恋に関してはお開きとなったーーー

 

 ーーーわけではなかった。ーーー

 

 ーーー執務室

「長門、掃除用具交換、お疲れ様。ありがとうな、助かったよ」

「あ、あぁ…!ありがとう!」

 この後、私は提督と対面するのが恥ずかしくなってしまった。まあ、これは数時間で済んだからよかったのだがーーー

 

 ーーーその夜 長門型団体部屋

「なあ、陸奥よ」

「どうしたの?長門」

 昼間の翔鶴曰く、陸奥も提督が好きらしいので、思い切って聞いてみることにした。

「その…陸奥は提督が好きなのか!?」

「えっ!?ちょっ、な…長門、どこでそれを!?」

「今日、少しな…で、好きなんだろ…?

 提督のこと」

「ええ。あなたの言うとおり、よ。」

「そうか。

 その…私も、なんだ」

 …言っちゃまずかったか。私と陸奥の間に気まずい沈黙が流れる。

「いいじゃないの。あの人は魅力的だし、恋は自由だし。ね?」

「陸奥…」

「それに、私達姉妹でしょ?一緒に恋して、一緒に笑い合って…こういうのもありかなって、私は思うんだけどね。」

「陸奥…陸奥ぅ!」

 いい妹を持った!私は感極まって、気付けば陸奥を抱きしめていた。

「…ちょ、長門!?」

「お前のような妹を持てたことが姉として誇らしいよぉぉ!」

 陸奥ははいはい、と言いながらも私を撫でてくれた。あぁ…幸せ者だな、私は…。ん…いかん、幸せを噛み締めていたら、何だか、眠、く…ーーー

 

 ーーー「あら?あらあら??

 長門?長門ー!?寝ちゃったのー!?ちょっとー、困るわよぉー!!」ーーー




今回も読んでくれてありがとうございました!

評価や感想、よろしければお願いします!
また次回、お楽しみに、です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と打ち合わせと手伝い

中身がやはり薄いよなぁ…

まあ、これからも頑張りますのでそこは大目に見てくださいm(_ _)m

それと、今のとこ長門さん視点で書いていますが、この話にはありませんが他の人視点も出ると思います。

重ねてご了承ください。

長くなってすみません、本編どうぞー。


 新たな仲間が来るまで、あと4日。

 私は用務員としてのこの日の仕事を午前中に全て終わらせ、ある場所に足を運んだ。

「失礼するぞ、明石、夕張。」

「あ、長門さん!」

「お待ちしておりました!!」

 

 そう、工廠である。

 明日から3日間にわたって、寮の増築工事をするため、材料の調達の確認、間取りや部屋割り改訂などの打ち合わせをしに来たのだ。それからもう一つ、ある目的もあるが…今は増築工事関係の方が優先だな。

「そうだ、提督と響ちゃんは?長門さんと一緒にここに来ると思ってたんだけど…」

「ああ、それなんだが…」ーーー

 

 ーーー少し前 食堂

「ここのメニューにハズレはないが、やはりカレーは美味いな…」

「…提督よ、昨夜もカレーではなかったか?」

「まあ、司令官はかなりのカレー好きだからね。しょうがないよ。」

「食べ続けてると、この白い軍服を全く汚さず三杯はいけるようになるぞ。」

 と、ドヤ顔をする提督。そんな感じで、私達3人は昼食をとっていた。と…

「あ、いた…提督、響ちゃん。」

 そこに大淀が入ってきた。

「食事中すみません、たった今大本営の方から通達が来まして…内容が内容なので、食べ終わったら少し話し合いの時間を頂いてもいいですか?」

「ああ、構わん。」

 大淀が、少し不安げな顔をしていたのが気になった。私も聞いていい、と彼女が言ってくれたので、私はそれに甘えて聞くことにしたーーー

 

 ーーー「通達によると、最近、深海棲艦の戦力が急激に増えてきているそうです。そこで、各鎮守府に、周辺海域の警備任務を行うように、と。」

「深海棲艦の戦力拡大…大淀さん、それは大軍や新たな敵性地とかの、量の面かい?それとも、また強力な奴が出たとかいう、質の面かい?」

 大淀に質問する響。

「どちらもありますが、どちらかというと質の面が大きいと思われます。上位戦力の鎮守府の第一艦隊が、ある時『それ』に遭遇し、データをとる間もなく、全員轟沈寸前の大破という大損害を受け撤退に追い込まれたと…」

「えっ…!?」

 これは…驚いたな。まさかそこまで強い奴がいたとは…

「あいにくダメージによるショックで、その姿をハッキリとは思い出せないようです。既に確認されている深海棲艦の数も増えていると言いますし…」

「そうか…分かった。ふーむ…よし、ならば急で悪いが、響、大井、高雄、加賀、翔鶴、瑞鶴の6人で索敵重視で周辺海域の調査を頼む。念のため、基地航空隊の新型輸送攻撃機のピースキャリーに、ファイターEXを積載させて赤城に発艦要請、俺もスカイマスケッティで出る。」

「分かりました、招集をかけます」

「私も手伝おう」ーーー

 

 ーーー「…ってな具合でな。」

「なるへそ…」

「ほぉぅ…」

 と、なんとなく少しふざけたような返事だが、この2人は何かと真面目でやる時はやる、さらにその腕は超有能というすごいコンビなのである。提督からの設計図をもとに、保有材料でそっくりそのまま完成品を設計図通り作ってしまうとか。

「えーと、では、本題に移りましょう。」

 工廠の中の机に、明石が設計図を広げ、概要を口に出す。

「今回は、個人部屋を廃止して既存の寮の一部間取りを変更、それからここの外壁をなくして、ここまで増築、というプランですね」

「長門さん、大本営への材料発注状況はどうですか?」

「もう設計図通りに頼んであるし、今日中に軍の輸送機がここに来る予定だ、夕張。だいたい夕方の4時頃に指定してある。」

「ありがとうございます!じゃあ、とりあえず間取りや内装、工事スケジュールなどについて話し合いましょう!」

 明石の一声で、私たちは早速議論を始めたーーー

 

 ーーー「えーと、来る方の艦種の内訳は?」

「確か…提督曰く、航空戦艦が2人、軽空母が2人、重巡が4人、軽巡が3人、駆逐艦が6人と聞いているぞ」

「了解です。なら、ここの部屋をこうして…これくらい増築して、ここに部屋を…」

「トイレや洗面所、別出口などもつけなければいけませんからね…」

「そうだな…ん?」

 誰か工廠に来たようだ。

「遅れてすまん!今戻った!」

「帰投した」

 提督、それに響!この2人がいる、ということは、無事帰ってきたのか。よかった。やはり事前に不安な知らせを聞いていたせいか、その安心感は尚更大きい。

「皆さん、状況は大丈夫ですか?」

「ああ。敵とは出会わなかったからな。もうみんな補給も済ませてあるし。」

「まあ、引き続き警戒はしないとだけどね」

「そうだな…。とりあえず、今はこっちを手伝ってくれるか?」

「おっ、もちろん。」

 こうして、提督と響を加え、私達は増築関係の最終調整を済ませた。と、さらにーーー

「いた、皆さん!大本営の輸送機が来ました!」

 丁度いいタイミング、だなーーー

 

 ーーー鎮守府の発着場に、大きな輸送機が既に着陸していた。

「大淀、他のみんなは?」

「もう既に来ていますよ。」

「さすが仕事が速いな。ありがとう」

 大淀の言う通り、輸送機の周りには仲間達が群がっていた。その気になれば我々艦娘は人間の力を軽く凌駕できるので、クレーンなどは一切要らない。これはこういう時に結構便利である。うん。

「とりあえず、前言った増築現場近くに資材置き場作ったから、そこまで運んでくれなー」

 提督の声が響く。あぁ…かっこいい…。昨日自身の恋心に気づいてから、些細なことでも彼を意識するようになってしまった。文字通り、胸が熱いな。

「おーい、誰かこの木材のもう片方を持ってくれないかー?」

 提督が向こうで、一際大きい木材を抱えながら呼んでいる。む、これは絶好のチャンス!

「私がいこう」

「私、気合い、入れてっ!やります!」

「はい、私が行きます!」

「あの、私で良ければ…」

「ミーに任せるデース!」

 ん…んんん!?

 比叡に、大井に、高雄に、金剛に…考えていたことは同じ、というわけか…

「ははは、みんなありがとう。じゃあせっかくだし、みんなに手伝ってもらおうかな。これ重いし」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」

 …なんかさらに増えてるぞこれーーー

 

 ーーー「ふぃー…。」

「終わったー!」

「あー、…疲れたぁぁ…」

「結構キツかったなぁ…」

 なにぶん材料の量が多いため、かなり時間がかかってしまった…。もうヒトハチマルマルか…昼頃始めたのだがな…。お、提督。

「みんな、お疲れ様」

「「「「「「「「提督もお疲れ様です!」」」」」」」」

 あっ、復活した。私もだが。

「明日からは出撃や遠征は無しで、増築工事に集中してもらう。これから配るプリント冊子に、シフトや担当場所とかを書いてあるから、しっかり目を通しておいてくれな。まあ、俺の手書きのコピーだから、見づらい所があったら言ってくれ」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 手書きのコピーだがこの反応とは…本当に愛が大きいのだな…。私もだが。

 数枚セットの冊子が配られると、ラブ勢は穴が開くほど目を通し始める。

「あ〜、提督の字…ふつくしいわ…」

「私、頑張るから…見ててぇ…!」

 恍惚のポーズから動いてないぞ、おーい。ん?提督だ。

「長門、用務員としてみんなをよくまとめていたな。この調子で明日も頼むぞ。」

 褒められた!提督にっ!褒められたぁぁあああああ!っていかん、言葉を返さねば…

「いや、こちらこそだ、その、また、あぁぁ明日、よろしく頼む!」

 だぁぁぁああ!うまく返せなかったぁぁぁぁああ!ーーー

 

 ーーー「響、ありがとう。率先的に仕事を引き受けてくれて、助かったよ」

「…ハラショー、司令官。こちらこそありがとう」

「大井もよく頑張っていたな」

「は、はい!あ、ありがとうございます!」

「金剛もお疲れ様。明日も頼りにしてるよ」

「テートクに頼られて、ミーは光栄デース!…By the way,何故あそこで長門はあうあう悶絶してるデースカー?」

「…まあ、その…色々疲れたんだろう。まあ、あいつも働き者だしなぁ…起こしてくるか」

 

 その後、私がまたビックリしてしまったのは、別の話としていただきたいーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございますm(_ _)m

感想、評価の方よければお願いします!
また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と増築工事

お気に入り20件突破、ありがとうございますm(_ _)m

今回長門さんは工事に参加するようです。
※筆者は建築とかほとんど知りません←おい
なのでそこは大目に見てください。

艦娘の建築スキルは某理由でチート級です。

本編、どうぞ。


 新たな仲間が来るまで、あと3日。その日のマルナナサンマル。いつもなら食堂に集まっているであろう艦娘たちは、資材置き場に全員が並んでいた。そして、皆の目線の前にいる提督が話し始めた。

「みんな、おはよう!」

「「「「「「「おはようございます!」」」」」」

「うん、元気のいい挨拶だね。今日から周知の通り、鎮守府寮の増築工事をするぞ。期間は3日と短いが、皆の協力があれば必ず出来る!各員、全力を尽くすように!」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「うん!私からは以上だ。それでは、各所のリーダーの指示に後は従うように。それじゃ、作業開始!」ーーー

 

 ーーーすっと立ち上がり、散らばっていく仲間達。提督が言っていたとおり、今日は寮の増築工事だ。私は用務員、さらに今回は内外装のデザイン・塗色担当のリーダーも任されている。これは頑張らねばな。

 ちなみに、今回のシフトはこうだ。

 まずは全員で鉄骨の仮足場を組み立てた後、空母部隊は一斉に全ての艦載機を発艦して資材を運送。戦艦の、発艦を終えた空母、さらに重巡の者で外壁と内装の床の建設、外壁塗装を行う。外の形が出来るに伴い、同時進行で軽雷巡、駆逐艦の者で部屋や階段、エレベーターや内部塗装などの内装整備を行うのだ。私は基本的に後者と行動を共にする。

 つまり、比較的まだ時間があるので…

「提督、私は間宮たちの所に行ってくる。」

「分かった、行ってらっしゃい。怪我しないようにな。」

「ああ、ありがとう」

 細やかな気配り…流石だなーーー

 

 ーーー私は既存の執務棟に戻った。向かうところは食堂。ここは既に、演習時などの大勢の利用を想定してあるので、私が用務員になる前、全員の精神療養のあと、先行して規模が広げられた。その大広間は、今は床全体に新聞紙が敷かれ、いくつかの材料が置かれている。

「あ、長門さん!」

「まだ私の担当時間まで余裕があったから、手伝いに来たぞ。」

「ありがとうございます!助かります!では早速、こちらに…」

 

 工事の進み具合によって担当艦娘のシフトが変化する中、シフト外の艦娘は、間宮や鳳翔、大淀たちと、ここで部屋などに置く生活雑貨の製造に当たることになっている。街の家具屋などはあるものの、全ての雑貨を注文してしまうと大変だろうという事で、ベッドのマットレスや家電量販店で家電などのみ購入、基本的にタンスやベッドの土台部分、机椅子や棚など木で作るものはここで手作りだ。艦娘たちは基本的にこのような製造作業はお手の物だから仕事も早く、複雑なことも簡単に出来る。それゆえ作業効率は生身の人間を軽く凌駕する。らしい。

 ちなみにここのリーダーは間宮。ちなみに赤城が建設航空隊のリーダー、明石は建設総合リーダー、夕張はライフライン関係リーダーである。

 さて、作業に取り掛かろう。私は丁度道具を取りに来た夕立に声をかけた。

「夕立、私も手を貸そうか?」

「長門さん!お言葉に甘えるっぽい!」ーーー

 

 ーーー「なるほど、夕立は本棚の担当か」

「作るの、楽しいっぽい〜!」

 2人で仲良く、協力しながら作業する。そのおかげか、かなりの早さで本棚はその形を成した。

「また一つ出来たっぽい!長門さんが加わってくれたから、すごく捗ったっぽい!」

「よし、この調子で沢山作るぞ!」

「ぽいっ!」ーーー

 

 ーーー「よし、また一つ完成だな」

「わふ〜!ぽいぽ〜い!」

 ペースも尻上がりで、本棚が次々と出来上がっていく。と、

「皆さん、作業を一旦止めて、少し手を洗って、厨房に来てくれませんか?外で働いている皆さんに、おにぎりを作って、差し入れをしましょう!」

 間宮の声が響く。確かに時間も昼時だな。

「よし、分かった!」

 食堂前の手洗い所で石鹸で手を洗って、厨房へと入る。私は用務員として、掃除でよくここに立ち入るが、他の娘たちはなかなか見るチャンスさえないので、目を輝かせている。

「すごいのです!寮のキッチンよりとても大きいのです!」

「おぉー…すごいな、こりゃ!」

「じゃあ手分けして、おにぎりを握ってください!」

 間宮と鳳翔が、既に木桶に大量の米を炊いていた。炊きたてご飯のいい匂いが鼻を刺激する。

「具はおかか、昆布、鮭、梅、エビマヨ、納豆など、たくさんこっちに用意してあります!」

 豊富だなあ…。よし!この長門、握るぞっ!ーーー

 

 ーーー「ほっ、ほっ、ほっ…んで、海苔をつけて、と…」

「あら長門さん、お上手ですね。」

「あ、ありがとう鳳翔。最近料理を勉強し始めた甲斐があったよ」

「あら、そうだったんですか!」

 そう、実は私も簡単な飯くらいは作れないといけないだろうと思い、同じ戦艦の陸奥や比叡に、この前から料理を少しづつ習い始めていたのだ。と、

「間宮さーん!シーチキンおにぎり、全部できましたー!」

「速っ!しかも綺麗…さすが島風ちゃんね」

 龍田に撫でられて上機嫌の島風。かわいい。さらには…

「よそって!」

「具を詰めて…」

「握って!」

「海苔まきまき!なのです!」

 なんだこの第六駆逐隊の息の合ったコンビネーション。すごくね?

 そして、ほかの所も段々と出来上がってきたようだ。たくさん積まれていた具も、木桶にてんこ盛りだった炊きたてご飯も、いつの間にか容器の底がほとんど見えていたーーー

 

 ーーー外 建設現場

「愛宕さーん!スカイハンターで今から木材を送りまーす!」

「はーい赤城さん、お願いしまーす」

「スカイフィッシュの妖精さん、ここに釘を打ってくれる?」

「まかせるです比叡さん!うてー!」

「私の開発したネイルミサイル(ネイル:英語で釘の意)、役立ってますねー」

「明石さーん、ちょっとヘルプお願いしますー!」

「あ、榛名さん!今行きます!」

 

 おおっ、結構進んでるな。どこの鎮守府でも、敵空襲被害対策として艦娘たちには応用レベルまでの建設知識を教えているだけあって、作業が速い。こういったスキルは、なるべく着任ギリギリに寮の増築を行うことを推奨している大本営の考え(先行して寮の増築工事を行って着任を待つと、それに気づき、こちらの大人数が集まった時を狙った敵の基地襲撃、それによる大きな被害が起こる恐れがあるという割とガチな理由)にも合い、効率を上げるとか。やるな、大本営。

 

 ーーー大本営極東支部 長官室

「は、は…ハックシュンッ!」

「長官?大丈夫ですか?」

「うぅ、風邪か…はたまた花粉症かぁ…」

 

 ーーーそれはさておき。

「皆さん!一旦ご飯にしましょーう!」

「オーゥ!ミス・鳳翔、グッドタイミングデース!」

「昼ごはん…!流石に気分が高揚します」

 

 わらわらと、おにぎりをこれでもかと詰んだ荷車に群がってくる提督、仲間達。提督も作業に参加していたらしく、スポーツスタイルの服は既に汗びっしょりだ。水も滴るいい男とはまさにこの事か…

「ありがとうみんな。よし、じゃあ手を洗って、一緒に昼ごはんにしよう!」

「「「「「「「賛成!」」」」」」」

 みんなすぐに手を洗って来て、私たちが広げたレジャーシートの上に座る。

「じゃあ、いただきます!」

「「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」」

 次々とおにぎりを口に運ぶみんなの顔は、どんどん笑顔になっていく。

「これは…はむっ、うーん、絶品ね!」

「美味しい!皆の力作ですね!」

 どうやら好評のようだ。素直に嬉しい。では私も食すとしよう。

 

 ぱくっ…もしゃもしゃ…

 

 …美味い!これは確かに美味いぞ!というか、具の種類が豊富で飽きない!

「これは…いくら!これはカニカマ!そして、これは…」

 こ、こんなものまで!?

「は、ハンバーーーーーーグ!!」

 

「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」

 …あれ、何故にしらけた?

 

 何はともあれ昼食を終えた私たちは、再び作業に戻った。高い建設スキルの艦娘に並行分担作業、それにウルトラメカの高性能が合わさり、人数が少ないにも関わらず、かなりのハイペースで進んでいく。この1日目で、外壁と屋根の建設がすべて終わり、雑貨制作組もかなりの数を作ることが出来た。

 

 続く2日目。

「塗装航空隊、出撃!」

 パッと見航空ショーのように、塗料を壁に吹き付けながら飛ぶは、ハートウィナー、スカイホエール、ジェットビートル、ウルトラホーク1号…だめだ、数え切れない、それほどの数の機体が、レンガの壁に保護剤入りの塗料を付けていき、鮮やかに仕立てていく。

「もう少し塗装作業が進み次第、内装組は既存の入り口から中に入って、作業を始めてください!私たちはライフライン関係の作業をしますので!」

「了解した!」

 空母と重巡の部隊に塗装作業を任せ、私たちは作業を見守りつつ、中へと入って行ったーーー

 

 ーーーおお、結構しっかり出来ているな。床もぴったり敷き詰められているようだな。

 よし、ここからは私の腕の見せどころだ!

「今は…ちょうどマルキュウマルマルか。みんな、まずは階段だ!その後、当初の分担通りに分かれ、部屋の仕切りとかをして、目標は本日作業終わりまでに内壁と床の塗装を終えることだ!」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 その後、階段を手早く設置、しっかりと固定した後、それを通って私は担当の二階部分へと移る。今回の異動は、大本営の複数人異動の中だと小規模なのも、これ程早く建設が行える理由でもある。

「まずはここの部屋の仕切りだな。この仕切り板2枚で防音材をサンドする。大井に吹雪、それから暁、頼むぞ!」

「任せてください!」

「頑張ります!」

「私も!」

 

 木の天然の匂いが鼻を通じて快感を与える中、無事に作業を終えた。1階と3階の班からも、無事に終了したとの報が入る。

 さらにエレベーター、そして内部塗装作業を終えたところで、外は日がほとんど沈んでいた。

「今日はここまでだな。みんなのおかげで目標を達成できた、ありがとう!」

「こちらこそです!明日もよろしくお願いします!」

「まだまだ頑張りますよ!」ーーー

 

 ーーーそして、3日目。

「オーライ、オーライ…」

「ぶつけないよう気をつけてー!」

 最後は、私たちも1日目に作った雑貨の搬入、そしてライフラインの最終確認だ。

「各部屋へのタンス搬入、終了です!」

「照明器具取り付け及び、動作確認完了!」

「放送器具チェック!ワン、ツー!」

「霧島、大丈夫、聞こえてるよー!」

 そして。最後のネジを私が留めた。

「ネジ締結完了!」

 そして、続けざまに叫んだ。

「寮の増築工事、終了だ!!」

 その瞬間。

「「「「「「「やったぁぁぁぁあああ!!!!」」」」」」」

 時刻はヒトロクマルマル。耐久性などの最終チェック、軽い掃除を終え、ヒトナナサンマルには全ての工程が終わった。そして、一日目と同じ所に皆が集合する。

「よし、お疲れ様!明日来る仲間も、きっと喜ぶだろう。今日はしっかり休んでくれ!」

「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」

 ともかく、無事終わってよかった。私は胸を撫で下ろしたのであった。その後、簡単なお疲れ様会を食堂でした後、私は眠りに就いた。さて、明日来るのは誰かなーーー

 

 ーーーそれと、時を同じくして。

 第35鎮守府近くの海辺に、夜空を見上げる一人の男の影があった。

「ゾフィー兄さん、到着しました。」

 そう呟くと、それに応えるように、天から彼の脳へ声が直接響く。

「無事に着いたようだな、よかった。

 とにかく、不穏な動きが広まっている、警戒を怠らないでくれ」

「了解…!」




というわけで今回もありがとうございました!

評価や感想、よければお願いしますm(_ _)m

また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と新たな仲間達

更新遅れてすみませんm(_ _)m

春休みなんて無いことを最近悟りました。
休みが一日もない。辛い…orz

本編どうぞー。


 ーーー「ふぁ〜…んん…」

 朝、マルゴサンマル。私はいつもより少し早く起きた。隣には、まだ寝息をたててぐっすりしている陸奥。

「さて、と…」

 陸奥を起こさないようにそっと床に降り、着替えて部屋の外に出る。

「とにかく、まずは掃除だな。」

 私はいつもの場所から掃除用具を取り出し、

 廊下の掃除を始めた。窓からは日の出ほやほやの真新しい朝日がすでに差し込んでいる。お、あそこにいるのは…!

「おはよう長門。今朝は長門もやはり、早起きだったか。」

「提督…おはよう」

 うぉぉぉおお!キタコレ!早起きは三文の得!こいつぁ朝から縁起がいいわぁ!

「あ、長門さん。おはようございます」

 お、響も早起きだったか。…なんか仲良さそうで嫉妬してしま…いやいや、ダメダメ…

「響も、おはよう」

 自分の提督への好意に気づいて数日、今は何とかテンパらずに返せている。

「掃除、手伝うよ」

「僕も」

「あ、ありがとう2人とも。」

 3人で、静かな朝の廊下を掃除する。季節は出会いの春である。今日新しくここに来るメンバーは、ヒトフタマルマルにここに到着するという。まだ提督、そして響、大淀しかメンバーは知らないが、その分楽しみだな。さて、とりあえずはここの掃除を済ませ、仲間達を気持ちよく迎える準備をするとしようーーー

 

 ーーー早めの朝ごはんのあと、皆が集まったのを見計らい、食堂で提督が呼びかけた。

「みんなに、今日この奥で行う、歓迎会の準備をしてほしい」

 実は先行して行った食堂の改装は、普段の食事スペースの他、実は奥の簡単な宴会場も含めてのものなのである。

 というわけで、この後1時間ほどで宴会場を飾り付け、あとは…料理だ。

 間宮、鳳翔、さらに手伝いとして金剛、比叡、響、陸奥、そして私も参加。多彩な料理を、タイミングを調整しつつ作らなければならない。結構これが大変なのだ。

「ヘーイ、デザートの生地が出来たデース!」

「ありがとうございます!冷蔵庫へお願いします!」

「お肉の下ごしらえ、気合い、入れて!やりました!」

「そこのトレーにお願いします!」

 食堂の妖精さんたちも、フル回転で忙しそうである。しかし、ここで挫けるわけにはいかない。ここもまた、私の戦場だっ!!

 

「長門…すごく燃えてる…」

「なんか、調理のスピードが凄く速くなってますね…」

 

 そして、時刻はヒトフタマルマル。既に元からいたメンバーはここ宴会場に全員が集合している。皆の状況も様々で、何となくそわそわとする者、並べられた食事に目を輝かせる者、興奮を抑えきれず周囲の仲間に話しかけている者…。と、

「お待たせしました!ただ今より、我が第35鎮守府の新しい仲間達の、着任歓迎会を行います!」

 大淀が叫んだ。

 宴会場の扉が開く。提督の先導で、総勢17人の艦娘が入場してきた。拍手に包まれる会場。

「それでは、みんな。私の立っている側の方から、自己紹介をしてくれ!」

 

「はじめまして、だな。日向だ。大本営時代に、既に航空戦艦に改装されている。皆、これからよろしく頼む」

「扶桑型の二番艦、山城です。私もすでに航空戦艦に改装済です。その、よろしくお願いします。」

 

「皆さんはじめまして、飛鷹型航空母艦、一番艦の飛鷹と、」

「同じく二番艦の、隼鷹でーす!」

「「よろしく、お願いします!」」

 

「妙高型重巡洋艦の一番艦、妙高です。皆様、妹たち共々、これから何卒よろしくお願いします。」

「妙高型重巡洋艦の二番艦、那智だ。色々とこれから世話になる、よろしく頼む。」

「妙高型重巡洋艦の三番艦、足柄よ!みんなと一緒に、全力で戦うわ!」

「あ、あの…妙高型重巡洋艦の四番艦、羽黒です、その…よろしく、お願いします」

 

「こんにちは、軽巡、阿武隈です!よろしく、お願いします!頑張ります!」

「木曾だ。大井姉さんが世話になったようまだな。ありがとう。既に雷巡に改装はされている、これからどんどん頼ってくれ!」

「軽巡、阿賀野です。みんなと仲良く過ごしていきたいです、これからよろしくです!」

 

「駆逐艦朝潮、着任しました!みなさんに追いつけるよう、精一杯努力します!よろしくお願いします!」

「朝潮型駆逐艦、大潮ですっ!アゲアゲで頑張ります!よろしくお願いします!」

「駆逐艦霰です…その、みなさん、よろしく…」

「陽炎型駆逐艦二番艦、不知火です。よろしくお願いします」

「陽炎型の八番艦、雪風です!しれぇ、みなさん、これからよろしくお願いします!」

「同じく陽炎型十番艦、時津風です!姉さんたち共々、よろしくお願いします!」

 

「以上の17名だ。みんな、色々教えたり、コミュニケーションをたくさん取って、仲良くやってくれ!それでは、新しく着任したみんなは、そこのテーブルの、どこでも好きな席に座ってくれ。」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」

 提督は全員座ったことを確かめ、手に持ったグラスをかかげる。

「それでは、乾杯!」

「「「「「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」」」」」

 

 あー、美味いんじゃー!料理も酒もとにかく美味いっ!

 よし、皆もテーブルを離れてめぐり始めた頃だし、私も行ってみるかーーー

 

 ーーーあるテーブルにて

「ヒャッハー!酒だ酒だー、祝い酒だー!」

「隼鷹、そんな飲みすぎないでよ…?」

「分かってるよ飛鷹!ぷはぁー、たまんねー!」

「よし、では私も貰おう」

「こんなに飲むのは久しぶりね!」

「那智、足柄?あなた達も、着任早々迷惑かけないよう程々にしなさい?」

「那智姉さん、足柄姉さん、少しはお水も…」

 

 飲兵衛は飲兵衛で、隼鷹や那智、足柄がかたまっているな。その姉妹たちよ、頑張れ。うむ。

 

 ーーーまた別のテーブル

「おいしー!」

「わーい、料理すごーい!」

「おかわり…んちゃ…」

 駆逐艦の大潮と時津風、霰か。料理を気に入ってくれているようでよかった。

 お?不知火と雪風、朝潮はもう第六駆逐隊のみんなと話している。早々と打ち解けてくれてこれまたよかったなーーー

 

 ーーーまたまた別のテーブル

「…てなことがあったの。天龍ちゃんは本当におっちょこちょいで…」

「や、やめろよ龍田ぁ〜…」

「なるほどな…ふふ」

「姉妹の中がいいんですね!」

「私の阿賀野型の姉妹も、ここにいたらなぁ〜…」

「まあまあ、私達のこと、姉妹だと思って気軽に接してくださいね?」

「「ありがとうございます!」」

「俺はもう姉妹だけどな、大井姉さん…」

 軽巡のところでは、木曽や阿武隈、阿賀野を交えてみんなでガールズトークか。いいものだな…

 

 ーーー更に別のテーブル。

「大食い競争なら私が!」

「なにを、私も負けん!」

 あ、熱いぜ…なんか赤城と日向が熱い…

「赤城さん、調子には乗らないでください…」

「あなたもよ、日向、バルジが付いちゃうわよ…?」

 加賀、山城…うん、よくわかる。多分。

 

 その後も色々と仲間達と話したり、コミュニケーションを取れた。

 ただ。

 不安要素が一つだけ…私のこの病気の事だ。皆がどういう反応をするか、今まで影で少し心配だった。皆にどのタイミングで言うか、もしくは言わずにおくべきか…

「はい、みんなちょっといいかー?」

 提督が手を叩き、注目を集める。

「長門、少し来てくれ」

「私…か?」

 提督に言われるがまま、私は彼の脇に来た。彼がこそこそと小声ではなしかけてくる。

「長門、君のことを話したいと思うが、いいか?」

「えっ…ああ、頼む」

 OKを思わずしてしまったが、後々このタイミングで来たことが有難いと感じるとは…

 

「ここにいる長門は、実は戦闘には出ず、ここで用務員として日々を送っている。実は彼女は艦娘性超記憶障害という難病で、海に出ることができない。でもな、長門は毎日、みんなのために出来ることをしている。ここの飾り付け、今皆が食べている料理、そして、寮の増築工事も、彼女の協力なしには出来なかった。

 他の所の彼女とは違うように思うかもしれないが、皆、長門のことをどうかよろしく頼む。」

「提督…」

「ほら、長門も」

 提督に促され、私も挨拶をする。

「紹介に預かった、長門だ。提督の言う通り、病の影響で用務員として働いている。色々と気軽に話しかけてくれると嬉しい。その、うまく言えず恥ずかしいが…皆、よろしく頼む」

 

 会場は数秒の沈黙、そしてーーー

 

「こちらこそ!」

「よろしく、お願いします。」

 そんな温かい声。そして、大きな拍手に包まれた。みんなが、受け入れてくれたんだ、この私を。…いかん、涙出てきた…

 胸が、熱いな…みんな、ありがとう…

 私は嗚咽を漏らしながらも、感謝の気持ちをみんなに伝えられたーーー

 

 ーーー歓迎会は無事に終わり、私は他の全員での片付けを済ませた。その後、今憲兵のいないこの鎮守府の見回りを簡単に済ませ、私は自室へ戻った。

 陸奥は楽しみすぎたか、既に爆睡している。そんな妹を微笑ましく思いつつ、私はカーテンを少しだけめくり、祈る。

 

 遠く輝く夜空の星に

 

 私の、みんなの願いが、届きますように

 

「平和な海に、平和な星になって、みんなとずっと、笑顔でいたい」ーーー




今回も読んでくれてありがとうございました!

評価や感想頂けると励みになりますm(_ _)m

これからもよろしくお願いします!また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お休みの長門と航空戦艦

この世界の時空設定について、この場を借りて説明しておきます。

太平洋戦争

怪獣頻出期

怪獣頻出期、収束の後、深海棲艦による制海権喪失

ちなみにウルトラマンの方はというと、M78星雲のも、その他のウルトラマンも、ほとんど全てがこの同じ時空(明らかに設定に大きな矛盾が生じたりなどするため、ジョーニアス、ギンガ、オーブは別の時空)にいるという感じです。多次元宇宙理論と皆様の想像でそこら辺は処理してくれると有難いです。細かい矛盾は…どうか目をつぶってください。

すみません長くなりました、本編どうぞ。


 新たな仲間達が来てから暫くたったある日。私は唐突に、提督に呼び出された。まさか告白!?でも出撃出来ないからケッコンカッコカリは…いやまさかケッコンカッコガチ!?

 …と、思ったら。

「用務員になってからというもの…長門、お前休み取ってないだろ。」

 …確かに。

「いつも掃除や買い出しとかを引き受けてくれるのは有難いが、たまには身を休めたらどうだ?」

「いやしかし、それも楽しみながらやっているものであって…」

「うーん、楽しいからどうとかじゃないんだよな…最近新しい娘が着任してからも、用務員としての会話にとどまっているだろう?」

「まあ、そうだな」

「そこだよ。たまには仕事のことなんか忘れてさ、ゆっくり仲間達と話をしたらどうかな?」

「いや、でも…」

「長門さん」

 不意に声をかけてきたのは、秘書艦の響だった。

「僕からもお願いするよ。」

「響…」

「またマンガ、いっぱい仕入れたし、僕も読み終わったからさ。ね?」

 こうも彼女の上目遣い、そして意中の人の命とあらば…引き受けないわけにはいかんな。

「わ、わかった。今日は、その、休みを頂くことにしよう」ーーー

 

 ーーーその後。

 響から受け取ったマンガも読み終わってしまい、さらに今日陸奥が出撃任務で夕方まで戻らない。

 …暇だ。暇すぎる。

 私は適当に部屋でゴロゴロ、何をするでもなく寝そべりながら、どうしようかと思いにふけっていた。

 …なんか喉が乾いたな。

 私はとりあえず、寮の中にある自販機ゾーンに向かうことにした。ドアノブを回し、外に踏みで…

「うおっ!?」

「ひゃあっ!?」

 ん!?

 開いたドアから見えたのは、日向と山城だった。どうやらいきなりドアが開いたことで、ビックリしてしまったらしい。

「す、すまん、驚かせてしまったようだ…」

「いや、こちらこそすまん」

「ごめんなさい、長門。

 …にしても、長門が部屋にいるなんて珍しいわね」

「ああ…今日は提督から休めと言われてな…やることも無くて暇だったし…」

 そう言うと、日向と山城はお互いを見合い、何かを話し始めた。どうしたんだ?と聞くと、日向はこう言った。

「もしやることがこれから暫くないなら、私たちに少し付き合って欲しい」

「まあかまわんが…何だ?」

 山城がその問に答える。

「工廠で、艦載機の説明をこれから受けに行くんだけど…よかったら一緒に来てくれないかしら?」

 艦載機の、説明?

 

 その後、2人に話を聞いたところ。

 2人は航空戦艦で、艦載機を装備・発着艦することが出来る。ただそれは飛行甲板の規模の都合で、瑞雲や晴嵐など、フロートつきの水上機に限られるという。

 しかし。この鎮守府で使われている艦載機は、ウルトラメカと総称される、かつて地球を守っていた防衛チームの戦闘機なのだ。元は加賀の過去のトラウマを刺激しないよう、零戦型に代わるものとして提督が自身の祖父から受け継いだという設計図に基づき製造されたものだ。

 つまり、瑞雲などといった水上機は、この鎮守府にはない。しかし、短距離、更にその場での離着陸が可能な垂直離着陸機能がほとんどのウルトラメカに備わっており、航空戦艦などはそれを使うことになるとな。そこで今回、メカの解説を受けに行くそうだ。

「瑞雲がないのは残念だが、ウルトラメカには奇抜だったりシャープだったり、様々なデザインがあると聞いてな。」

「うむ、確かにそうだ。でもなぜ私に?」

「空母の加賀さん達は今は演習中で、それに飛鷹型姉妹は鳳翔さんからの式神式のウルトラメカ発艦特訓をしているところなの。それで、用務員の長門なら知ってるかな、とおもって声をかけたのよ」

 そういうことか。ならば…

「よし、この長門、よろこんで付き合おう」

 まあ、そんなに知識はないがな…ーーー

 

 ーーー工廠

「あ、日向さん、山城さん!お待ちしてましたよー!」

「どうぞこちらへ!あ、長門さんもいらしていたんですね!」

 明石と夕張が出迎えてくれた。

「えーと、航空戦艦組のお2人は艦載機説明会とわかるんですけど…長門さんは?」

「ああ、長門はここに長くいる分、色々と教えてもらおうと思って、付き合ってもらったんだ。」

「なるほどです!とりあえず全機分掲載の艦載機カタログがあるので、気になったものがあればお申し付けください!」

 と言って、私たち3人に、明石からお手製カタログが渡された。ちなみに私は、用務員としてそれなりに工廠に来ることもあるので、一応の知識くらいならある。…多分。

 

 横を見ると、日向と山城は、熱心にカタログに目を通している。と、

「少し気になったのだが…ZATのメカはやけに形が奇抜だな、どうなっているんだ?」

「長門さん、実物これから持ってくるんで、解説お願い出来ますかー?あ、少々お待ちください!」

 よし、腕の見せどころだ。

「ZATの艦載機は奇抜だが、しっかりと理由があるんだ。この大型機、スカイホエールの翼は宇宙線を受けてエネルギーに変換でき、これを応用すればかなり長い期間、無補給で継続飛行できる。コンドル1号やスーパースワローの穴の空いた主翼は、重力制御コイルという装備だそうだ。」

 と、タイミングよく明石が実物を持ってきてくれた。

「どうぞ、お試しください!」

 …どこかの店員か、というツッコミは置いといて。

「ほう、収容力が見た目に反して大きいのだな…垂直離着陸機能付きで、飛行甲板の小さい私たちでも使えるのはありがたいな」

「じゃあ、私も質問いいかしら?」

 お、今度は山城か。

「このナイトレイダーのクロムチェスター機、迷彩機能ってあるんだけど、機体の色を見る限り私のイメージと違っていて…どういうこと、なのかしら?」

 なるほど、確かにこれは疑問に思うだろうな…

「これはナイトレイダーの徹底された秘密主義によって付けられた、オプチカムフラージュ機能だな。要はステルス機で、保護色のような原理で現場まで秘密裏に行くことが出来るんだ。」

「これがその貴重な資料映像です!」

 夕張がタブレット端末を持ってきて、ナイトレイダーの資料映像を見せる。確かに、ダムのような基地・フォートレスフリーダムから飛び立ったすぐ後に機体は見えなくなった。

「この機能は使えそうね…」

 これ以降も。

 日向と山城から次々と寄せられる質問。あぁ、色々と装備について学んでおいてよかった。

 説明会が終わったのは、始まってから2時間半くらい経った頃。それからも、私たち3人は仲良く話をしていた。

「さっき見たあのメカたちが、私たちの知らない間、地球の平和を守っていたのか…」

「なんだか感心しちゃうわね…」

「実際このメカはウルトラマンたちの戦いを幾度となく援護したり、また直接怪獣や侵略宇宙人を倒したことも少なくないそうだ。」

「ほぉ…!」

「もっと、もっと詳しく聞きたい…!」

 

 それからは説明会の時以上の質問攻めに遭った。その度にトークが弾んだ。奇抜な作戦での攻撃が名物のZAT、怪獣保護を第一に考えたチームEYES、メテオールと呼ばれる過去の宇宙人の技術を取り入れたCREW GUYS…色々と話し合ったが、2人ともやはり航空戦力のことを特に熱心に聞いていた。

「よほど艦載機好きなんだな、2人は。」

「まあな。航空戦艦として、前世では出来なかったことはたくさんしたいと思っている。」

「私も。せっかくこんな装備を使えるんだし、ここに来られたことは私も幸せだって思うわ。町の人は優しいし、長門やさっきの明石さんや夕張さんみたいな大切な仲間もいるし…」

 あ、ありがとう。嬉しい…。しかし。

「後は、提督かしら…」

「顔が赤いぞ、山城。」

「そういう日向だって、私と同じで、提督に惚れてるクセに…」

「あ、あは、あはは…ん?どうした、長門?そんな顔して…」

 

 …ふぁっ!?くぁwせdrftgyふじこlp!?!?

 日向は艦載機マニアだし、山城は姉様ラブ勢なのでは!?

「ふ、2人も提督に恋心を!?」

「そ、そうだけど…」

「も、ってことは、長門もか!?」

「…あぁ、恥ずかしながら…。そういう2人はいつ、提督に惚れたんだ…?」

 そう聞くと、顔を赤らめ、2人は照れながら話し始めた。

「この間、ここに来て、まだ初めての出撃だったんだが…久しぶりで慣れない中、中破してしまってな…恥ずかしながら」

「でも、帰投したらね、提督は怒るどころか帰ってきてくれてよかったって、労ってくれたの…大本営から先に他の鎮守府に着任していった扶桑姉様と同じくらい、好きになっちゃって…」

 ぬぁぁああああああ!!!!!!惚気だっ、惚気話だぁぁあああ!

「まあ、その…というわけで長門、これからよろしく!」

「色々とお世話になります!」

 というわけでって、どういうわけだ。

 その時の2人の目は何故かキラキラしていた…ここで思わぬライバルが増えるとはーーー

 

 ーーーさらにその後。

 日向と山城は、航空戦艦として初めて艦載機を搭載しての出撃を行った。今までは一応様子見ということで、普通の戦艦としての装備を全スロットに搭載して、だったらしいが。

 結果は…大成功だったようだ。出撃して遭遇した敵艦隊との交戦でも、ほとんどこの2人がMVPを取ったとか。チヤホヤされるわ提督にも褒められるわで羨ましいぞ…

 

 ただ、艦載機とかの話で、2人と親密になれるきっかけが持てたということは、休みを取って得られた大きな収穫だった。

 これからも仕事はもちろん頑張るが、時々は休みをとってもいいかもしれない。

 見上げた窓の外には、フォーメーション演習中の艦載機が飛んでいるのが見えたーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m

評価や感想、是非お願いします!
また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と軽雷巡の町観光

前書きに書くことない…。

あ、明日テストだ。
…まあいっか。

すみません、比較的長めですが本編どうぞ。


 ーーー第35鎮守府 正面玄関

「ただいま戻ったぞ、提督。」

「おかえり、長門。買い出し今日もありがとう」

 用務員として、今日は買い出し。人数が増え、食堂担当の間宮と鳳翔が前より格段に忙しくなったことで買い物に行けることが少なくなり、その反動で私が行くことが増えた。ただ、町の人はいつも優しいし、たまに割引とかもしてくれたりするため、買い物は苦ではなく寧ろ一種の楽しみと化している。

 何より、帰った時の提督の「おかえり」がとても心身に染みるのだ…。

 と、そこへ。

「提督ー!」

「提督さーん!」

 快活な声二つ。爽やかな汗をかきながらやって来たのは…

「おお、阿武隈に阿賀野。遠征ありがとうな。どうだったか?」

「きちんと予定数の資材を手に入れられました!全員無傷で、途中索敵は1度だけ弱い反応がありましたけど、すぐ消えました。今日は駆逐艦のみんなも、とてもとても頑張ってくれました!」

「提督さん、資材は遠征艦隊全員で既に倉庫へ運んであるよ!でも、もうほとんど資材倉庫の限界に達してるけど…」

「阿賀野、備えあれば憂いなしだ。来るべき戦いは、いつ来るか分からないからな。その時のためにも、今のうちに確保できるだけしておきたいんだ。だから、これからも頑張ってくれるか?」

「はい、もちろんです!」

「阿武隈も、頑張ります!」

 提督がゆっくり休むよう伝えると、2人は駆けて去っていった。元気がいいな。

「それで、長門。帰投のタイミングと被ったとはいえ、キリが悪くなってしまったな。そっちの方は、どうだったかい?」

「ああ、頼まれたもの、ここに全部買ってきたぞ。」

「いつもありがとうな、長門もこれからもよろしく」

「ああ!」

 私は買った品を食料庫に運ぶ。そうだな、小腹が減ったし、ついでに何か食べるか。

「すまん、失礼するぞ」

「いらっしゃいませ!あら、長門さん!」

「いつもありがとうございます!どうぞこちらへ!」

 席へ案内され、メニューを渡される。今日は…この生クリームプリンにでもしておくか。

 食堂の妖精さんに注文を言い、しばらくすると、間宮が頼んだプリンを持ってきた。ん?2つ?誰かほかに頼んだ者がいるのか?

「はーい長門さん、それから木曾さん!ご注文の生クリームプリン、お待たせしました!」

 ほう、木曾だったか。と、斜め前にいる彼女と、不意に目が合った。

「長門さん、こんにちは。長門さんも生クリームプリンか、奇遇だな。」

 こやつ結構男前だな。

「ああ。せっかくだし、移動してもいいか?」

「ああ、構わん」

 木曾の前にプリンのトレーを持って移動する。

「この鎮守府はどうだ?」

「あぁ、とても過ごしやすいよ。みんなの仲がいいし、装備や資材も充実している。それに、長門さんも優しいですし」

「あぁ、それは、どうも…」

 と、木曾が不意にこう言った。

「もしよければ、今度の休みの時、新しく着任した軽巡のみんなを連れて、長門さんにこの町を案内してほしいんだが…」

「私で、いいのか?」

 私は咄嗟にそうとしか答えられなかったが、木曾から

「いや、なんだかんだで俺の中だと、長門さんが一番町のことを知っているかな、と思ってな…忙しかったり、行きたくなかったりしたら断ってもいいんだが…」

「いや」

 遠慮しがちに言う木曾に、私は断言した。「この町の観光なら、私が是非ガイドさせてもらうとしよう」

「本当か!?ありがとう…!」

 それから木曾とは、プリンを食べつつ、雑談などで時間つぶしをした。どうやらこの彼女も甘党だったようで、スイーツの話などで色々と盛り上がった。木曾、乙女。

 とりあえず今度の休みに、町の観光をすることになり、私は色々とプランを立てることにしたーーー

 

 ーーー数日後

「じゃあ行ってくるぞ、提督」

「「「行ってきます!」」」

 玄関で、私は提督に挨拶。その後には阿賀野、阿武隈、木曾の3人。

「うむ、気をつけてな。楽しんで!」

「了解!」

 私は敬礼を提督に返し、鎮守府の門を外へとくぐった。小道を抜け商店街に出る。

 実を言うと、商店街で買い物したくらいしか私もこの町で観光(というか生活の一部)をしていないため、こういう機会は結構嬉しいし、胸踊る。

「長門さん、最初はどこ行くんですか?」

 阿武隈が、いかにもワクワクしている口調で聞いてくる。

「えーと、まずは楽器屋だ。楽器の体験ができるようなんだ。。」

「そんなのがあるんですか?」

「どうやらここの町の特産品の木材が、色々と楽器に使われているようなんだ。」

「わぁ、阿武隈、楽しみです!」

 というわけで、商店街の通りの1つをしばらく歩き、その施設の前に到着。

「こんにちは〜」

 ドアを開け、木の温かみ溢れる店内に入る。と、カウンターの奥から1人の老人が出てきた。

「おや、そこの鎮守府の艦娘さん。ようこそ、わが楽器店へ。ここの主、春夫です。よろしく。」

「こちらこそです。その、ここで楽器体験が出来ると聞いて…」

「そういうことでしたか。分かりました、では2階へどうぞ。私についてきてください」

 店奥の階段を登ると、ところ狭しと楽器用品の置いてある棚が並べられた1階とは対照的な、広々とした部屋に出た。

「こちらのメニューから、体験する楽器を選んでください。尚、体験の方は九十分、その間こちらのメニューにある楽器をどれでも好きなだけ吹くことができます。それから、管楽器を体験する際、こちらで渡すセットで、歯を磨いてからの体験となります、ご了承を」

 店主曰く、清潔に楽器を吹くため、だとか。確かに直接口をつけ吹く訳だからな…

 とりあえず、メニューの種類はかなり豊富なようだ。何を体験しようか…ん?

「では、春夫さん。こちらのバスクラリネットとやらを、体験させてほしいのだが…」

「分かりました。ほかの皆さんは?」

「私は…マンドリンギターにしようかな」

 と阿武隈。

「私はこのピッコロを!」

 と阿賀野。

「俺は…ビブラフォンとかいうこれを。」

「かしこまりました。少々お待ちを」

 しばらくして、彼は私と阿武隈、阿賀野にそれぞれ楽器ケースを、分けて木曾にはビブラフォンを運んできた。

「まずはバスクラリネット。このリードと呼ばれる、薄い木の板をマウスピースに取り付けて音を出します。」

 ほ、ほう。

「このとき、リードを、マウスピースの真ん中につけ、上の黒い部分とリードの隙間が髪の毛一本くらいなら大丈夫です」

 なるほど…

「これくらいか?」

「はい、それでいいでしょう。あとはこんな形の口にして、下唇を巻いてください。」

「こうか?」

「はい。では、マウスピースを楽器に付けて、今の口の形のまま、中に息を入れてください。」

 言われるがままに息を入れてみるが、何か詰まったような感覚でなかなか音が出ない。

「息をまっすぐ入れて、口が膨らまないように吹いてください。」

 と、

 

 ブォー…

「おお、出た!出たぞ!!」

「こんな感じです!」

 楽しい!これは楽しい!夢中になって吹いていると、隣から、

 

 ピロロロロロ

「私も出た!」

「おお、その調子です!」

 阿賀野のピッコロの高い音。なかなか綺麗だな。

 

 ジャラン…ジャラジャラン…

「このマンドリンギター、音がいい!」

「気に入って頂けたようで何よりです。」

 阿武隈もすっかりハマっている。

 

 ポォオォオォオォン…

「ほぉ、ビブラフォンという名の通り、ビブラートするんだな、これは」

「中のモーターが、叩く部分の下の管を開け閉めすることで、ビブラートするのです。」

 

 私たちは他にも色々な楽器を体験させてもらい、楽しい時間を過ごした。

「ご利用ありがとうございました。楽しんでいただけましたか?」

「もちろんです。また来ますね!」

 笑顔で手を振る店主に別れを告げて、私たち一行は楽器店を後にした。

 

 その後も。

 この前吹雪と買い物に行った時、子供たちとの争いに負けたあの駄菓子屋でらお菓子をたくさん買ったり。

 金剛おすすめの茶葉専門店で、世界の色々な茶を試飲したり。

 気付けば、もう昼過ぎになっていた。

「そろそろ、どこかでお昼ご飯にしないか?長門さん」

「そうだな…時間的にもいい頃だ。」

「わーい!おっひる〜おっひる〜」

「どこで何食べます?」

 と、色々と話しながら通りを歩いていると…

「ん?」

「どうしたんですか?…あっ!」

「なんかいい匂いがするぜ…!」

「あっちの方からみたいです!行ってみましょう!」

 いい匂いに釣られ、走ったその先には…

「あれは…?」

「パン屋、さん…?」

 目の前には、おそらくトラックだかバスだかを改造したのだろう1台の車。かつて走っていたという、ブルートレインのような美しい青の車体。そして、運転席後ろがなんと、パン屋の販売ゾーンになっているではないか。

「ほう、パンの移動販売車か」

 車の周りには人だかりが出来ていて、買い終えた人々は笑顔でパンを頬張っている。

「せっかくだし、昼飯はここにするか!」ーーー

 

 ーーー「いらっしゃい!ベーカリー北斗星へようこそ!」

 おそらく年齢としては高齢の方なのだろうが、店主の男性はとても若々しく、眩しい笑顔で挨拶をしてくれた。

「そうだな…私は小倉あんぱんとベーグル、牛乳で」

「私は…同じものを!」

「私は卵サンドにしようかな…あと、烏龍茶を」

「俺は…メロンパンとクロワッサン、飲み物は同じく烏龍茶で」

「はいよ!準備するから、ちょっと待っててな!」

 店主は注文を受けると、素早く準備を始めた。手際よく、四つのトレーに並べられていく品物。そして…

「ほい、全員分の品物だよ!」

「ありがとうございます!」

 私は代金を支払い、品物を受け取る。

「そこら辺に机と椅子を用意してるから、良かったらそこで食べていきなさい」

「では、お言葉に甘えさせてもらうとしよう」

 私はちょうど空いていた所に腰掛け、トレーを机にのせる。そして、焼きたてホカホカのパンを1口、口の中に放り込んだ。

「むぐむぐ…う、美味いっ、これは美味すぎる!」

「ほんとだ!」

「絶品です、手が止まりません!」

「やるなこれ!間宮や鳳翔のともタメ張れるぞ!」

 香ばしいパンの味に頬が落ちそうだ。どのパンもとてもとても、美味しいのだ。あっという間に食べ終わって、トレーを返却しに行くと、店主が話しかけてきた。

「嬉しいねえ、気に入ってくれたようで何よりだ!ところで…」

「ん?」

「君たちは、そこの艦娘さんかい?」

「あ、ああ。そうだな」

 すると、店主は陳列棚から大袋を取り出し…

「この星の海の平和を守ってくれていつもいつもありがとう。これは、鎮守府のみんなに分けていってくれ。お土産だ!」

 袋の中には、たくさんのバターロール。

「いや、こんなに!?代金は…」

「そんなもの要らん!いつものお礼と思って、受け取ってくれ!」

「あ、あぁ。ありがとう!」

 店主の熱意に押され、私は袋を受け取った。

「また来てくれよな!」

 元気にそう言う店主に手を振って、私たちは別れを告げた。

 ちなみに、もらったパンは鎮守府で、その夜のメニューの一品となり、みんなに美味しく頂かれたーーー

 

 ーーー夜 ベーカリー北斗星

「よいしょ、よいしょ…」

 明日の営業に備えて、夜のうちにできる仕込みをする店主。と、

 

 プルルルルルル プルルルルルル

 

 車に備え付けてある電話が唐突に鳴った。手を洗い、受話器を取る。

「はい、ベーカリー北斗星」

「星司兄さん、夜遅くすみません。

 矢的猛です」

「おお、猛!久しぶりだな…どうした?」

「はい、実は…」ーーー

 

 ーーー「ふぅ…」

 矢的猛と電話を終えた店主ーーー北斗星司は、車外へと出た。

 遠く輝く夜空の星、その下には夜の海がどこまでも広がっている。

「…深海棲艦によって制海権を喪失した海域での、マイナスエネルギーの急速増大、更に謎の宇宙線も観測か…悪い予感がするな」

 北斗はそう呟き、自身の両の指に嵌っている指輪を見つめたーーー




というわけで今回もありがとうございましたm(_ _)m

評価や感想の方もよろしくお願いします!

また次回です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と飲兵衛の飲み会

蓄膿症にかかりました。
喉も痛くなりました。
皆様も体調にご注意を…

それでは本編どうぞー。


 ーーーとある夜 第35鎮守府 食堂

「今日はありがとな、誘ってくれて」

「いいってことよ!じゃんじゃん呑もうぜ、長門さん!」

 ノリノリで絡んでくる隼鷹。その隣には那智、足柄もいる。

 何故こうなったかというと、今日の仕事を全て終えたところに、ちょうど彼女たち3人がやってきて、今日飲み会をしないか?と誘われた。

 そしてその誘いに乗ることにして…今に至る。既に焼き鳥などおつまみ、酒も肴もを3時間飲み食べ放題の酒盛りコースで間宮と鳳翔に注文は済ませている。今は料理が来るのを待つばかりとなった。ちなみに料金はかなり良心的。リーズナブル。お財布に優しい。

「私も酒飲みならかなりイケるぞ、長門。」

「私も!この際、長門と隼鷹と那智姉さんで、どれだけ呑めるか競走ーーー」

「「足柄(姉さん)?」」

「なに…はっ!?」

 突然、足柄の肩にポンッ、と手を置いたのは…

「あなたいつも調子に乗って痛い目みてるのよ?あなた自身も、それに周りも。」

「あまり、その…飲みすぎないでください」

 彼女の姉妹艦、妙高と羽黒だった。

「今日はそんなことの無いよう、私たちも参加します。すみません鳳翔さん、私と羽黒の分もお願い出来ますか?」

「ええ、少々お待ちを」

 そう言って、鳳翔は厨房へ。するとその入れ替わりのタイミングで、店の中にまた1人。

「すみません、隼鷹来てませんか…って、聞くまでもないわね…」

「おっ、飛鷹!」

「隼鷹ったら全く…飲むなとは言わないけど、あなたも節度を守ってね。一応、私も一緒するから」

 飛鷹は妖精さんに自分も皆と同じコースを取る旨を伝えた。総勢7人が、食堂の、さながら居酒屋のようなカウンター席に座り、そして…

「お待たせしました!まずはビールです!」

 鳳翔、間宮、食堂詰めの妖精さんたちがカウンターを通じて、みんなにビールを配る。

 そうとなったらやることは一つ。隼鷹が立ち上がり、音頭をとった。

「では一同、カンパーイ!!」

「「「カンパーイ!!」」」

 グラス…というかジョッキを高々と掲げ、私たちの飲み会が始まった。

 

「妙高姉さん…」

「…いざとなったら任せるわ、羽黒」

「は、はい…」

「え?ん?え?」

 

 ーーー「ぷはぁー!美味いっ!」

「やはりここのメニューは何でも美味しいな…」

「美味しい!あー、生き返るー!」

 …飲兵衛組はいかにも美味そうに飲むよな…。よし、私も!ジョッキをむしり取るように豪快に掴み、口へと持っていく。

「ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ…あー、美味いっ!」

 思わず一気飲みしてしまった。飲兵衛の気持ちもかなり分かるな、こりゃ。

「おお、長門も分かるか!もっと飲め飲め!」

 普段は男前だが、ここではめちゃくちゃ絡んでくる那智。

「妖精さん、ビール4人分のおかわりお願い!」

 もうおかわりをたのむ足柄。

「ヒャッハー!イエェェ〜イ!」

 そのままジャスティス!とか叫びそうな隼鷹。

「ジャスティス!!」

 あ、案の定。

 するとそこへ、

「お待たせしました!まずは焼き鳥セットです!」

 皿に乗った大量の焼き鳥は、たくさんの肉汁を大皿に滴らせ、それは飲兵衛たちのみならずカウンター席の全員の食欲を最大値までに上げる。

「おおっ!いただきまーすっ!」

 次々と手が皿へと伸び、焼き鳥を我先にと取っていく。レバー、つくね、鶏皮…どれも塩やタレとの相性が抜群で、最高に美味い。そしてその後から、口にビールを流し込む。たまらない。

「これ…美味しいですぅ!」

「確かに、絶品ね」

「さすが間宮さんに鳳翔さん!」

 妙高や羽黒、飛鷹も、焼き鳥を頬張っては満面の笑みだーーー

 

 ーーーその後。

「今度は餃子、ご飯付きです!」

「「「「おぉ〜!」」」」

「「「わぁ〜!」」」

 歓声が上がる。さっきからカウンター内でジュー、という音と匂いをこっちに感じさせ続けてきたので、無理もない。

「あー、肉餃子サイコー!」

「この野菜餃子もいけるわね!」

 

 ーーー更にその後。

「新鮮なお刺身、どうぞー!」

「「「「「「「ふぉ〜!」」」」」」」

 大皿に乗った様々なネタ。餃子のときの茶碗に、再びご飯を山盛りにして、白い山を魚の赤や半透明の魚介類で飾り付けていく。

「いくら!いくらは美味いぞ!」

「このネギトロ、美味しい!」

「更に!お刺身に合う、日本酒もどうぞ!」

「「「「イエェェェ〜イ!!ジャスティス!!」」」」

 盛り上がる私…と飲兵衛。おっと、飲みすぎには注意…っと。なんかさっきから隼鷹、那智、足柄の飲むペースというかおかわりの頻度が尻上がりに早くなっているが…大丈夫なのだろうか…

 

 さらにこの後、キムチや煮物なども食べ尽くし、私の胃と心は完全に満たされた。

 だが…

「うぉ〜い、まだ飲み足りないぞぉ〜…ヒック、長門も、おかわりたのめぇー」

 顔を真っ赤にしている隼鷹。泥酔状態なのは間違いない。

「長門、長門よ。提督の腹筋が、あのムキムキが触りたいぞ。あの白い軍服の中には、きっと最高の腹筋が…」

 上機嫌でかなりギリギリなネタを言ってくる那智。ちなみに飲み会を始めてから、彼女がこの話をするのは4回目である。

「うぉらぁー!みんなもっと飲みなさーい!酒場も、戦いなのよー!」

「あ、あしがらさん!ちょっとのみすぎかもです!」

 妖精さんにストップをかけられる足柄。もう周りがだいぶやばくなってきた。

「もう、足柄!いい加減にして!」

「あぁー?妙高姉さんー?姉さんも飲めー!」

「那智姉さん、少し落ち着いて…」

「羽黒、そんなことより、お前も一緒に彼の腹筋を触りに…」

「隼鷹ー!こらーっ!」

「うるせぇぞ飛鷹!飲ませろー!」

 飲兵衛と保護者の戦いである。見る限り保護者劣勢。えーと、私もほろ酔いではあるがちゃんと意識や理性ははっきりしている。うん。

「はぁ…ごめんなさい、鳳翔さん、間宮さん」

「いえいえ、気にしないでください。楽しかったので…」

「でもここまで飲んでしまい、ご迷惑を…もうこうなったら…」

 すると妙高は羽黒に耳打ちした。妙高はまるで彼女にお願いするように、対する羽黒は少し戸惑っておどおどしたあと、覚悟したかのように、というか観念したかのように頷いた。そして彼女は…

「あの、鳳翔さん」

「?」

「テキーラを一杯」

 

「テキーラってそれなりに強いお酒よ?」

「そうだな、飛鷹…どうするつもりなんだ?」

 私と飛鷹が話しているところに、妙高がやって来た。

「最終兵器中の最終兵器です。うちの羽黒はテキーラを飲み干すと、というか強いアルコールを摂取すると…人が変わります。」

「「えっ」」

 そういえば、羽黒は今日、私を含めた7人の中で、酒を飲んではいなかった…

「では…

 んっ、んっ、んっ…ヴァァァ!」

 テキーラを一気に飲み干し、そしてもはや獣の咆哮のような声を上げる羽黒。てか、こいつは羽黒なのか…!?

 ともあれ飲み干した彼女は隼鷹、那智、足柄の肩を思い切り後ろから抱え…

「いい加減にしてとさっきから言ってるよね?」

 普段の彼女からは想像できない、ドスの効いた低い声を、3人の耳元で言う。

「「「ヒィッ…!」」」

 3人の動きは一瞬で止まる。顔はもう恐怖一色だ。

「鳳翔さん、間宮さん、失礼致しました。すみません、先に戻らせていただきます」

 ハッキリとそう言って頭を下げ、3人を引きずって、羽黒は食堂を出ていった。

「…なんだったんだ…」

「私も分からないわ」

 飛鷹と顔を見合わせると、

「…一つだけ言うなら、世の中には体験しない方がいいこともある、ってことよ」

 妙高がそう言った。怖い。

 とりあえず残りの時間十数分は、残った我々3人でソフトドリンクを飲んでお開きとなったのであったーーー

 

 ーーー翌日。

 私がいつものように掃除をしていると、昨日の飲兵衛3人組がやってきた。

「おお、隼鷹、那智、足柄。おはよ…」

「「「長門さん!昨日は大変すみませんでした!!」」」

 えっ、ええっ!?

「いや、大丈夫だ、全然気にしていない!むしろ楽しかったし」

「で、でも申し訳ないっ!」

「すまなかった!」

「ごめんなさい!」

 …何があった。と、思い出すのは彼女たちを引きずり出した羽黒。

「…昨日あのあと、羽黒とどうした?」

 すると3人は揃って顔を青くして、

「「「…世の中には知らない方がいいこともあります」」」

 …妙な説得力を感じた。何とか3人をなだめたが、去り際にも何度も頭を下げてきた。かえってこっちが申し訳なく感じてしまった。

 

 ーーーその数分後。

「長門さん、こんにちは」

 誰かに声をかけられた。

「ああ、こんにち…わぁっ!?」

 羽黒!?

「わぁっ!?どうしたんですか、そんなに驚いて…」

「いや、あの、その…」

 どうしよう。昨日のあれとさっきのアレのせいで、羽黒になんかやばいものを感じる…

「昨日、あのあと何があったんですか…?」

 思わずなんか敬語になってしまった。すると、羽黒は顔を近づけてきて、

「…秘密、です」

 にこやかにそう言って、「失礼します」と去っていった羽黒。…女って怖い(自分も女だが)、と感じたのは言うまでもないーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございました!

長門さん編も段々と終わりに近づいて参りました…
これからも用務員長門さん、そしてこの「笑顔は太陽のごとく…」シリーズをよろしくお願いします!
感想や評価もお待ちしておりますm(_ _)m

また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門と高雄と駆逐艦の旅行

とりあえずほのぼの日常はこの話まで。
次からは再び動乱です。

まぁとりあえず、本編どうぞです。


 ーーーある日。

 私は休みを取った。

 なぜかと言うと、今まで新しく着任した娘たちとは、艦種が同じの戦艦を中心にコミュニケーションを取ってきたが、逆に駆逐艦の娘たちとはなかなか話す機会がなかった。そんな時、たまたま廊下で会った高雄から、今度新入りの駆逐艦たちを連れて日帰り旅行をするということを聞いた。

 これだ。

 そう思った私は、高雄に旅のメンバーに加えてほしいと頼んだ。あっさりと了承され、そして今に至る。

「いない間のここは私たちにに任せてほしい。楽しんでくるんだぞ、みんな!」

「「「「「「「「はい!行ってきます!」」」」」」」」

 私たちは元気に挨拶をして、鎮守府の外へ。

 ちなみに今回のメンバーは、私と高雄、朝潮、大潮、霰、不知火、雪風、時津風の総勢8人だ。

 

 鎮守府から街に出て、駅に向かう。最寄りの駅まではやや距離があるが、そこまで歩くこともワクワクを掻き立てるという高雄の言葉により、あえて提督には送ってもらわないことにした。

 確かに、この時間もコミュニケーションを深める時間としては使えるな。

 さて、まずはとりあえず話しかけることから…

「あの、長門さん!」

 おおっ!?ちょうど話しかけようとしたタイミングで、朝潮が私に話しかけてきたので、少し驚いてしまった。

「あの、今日はどこまで行くんですか?高雄さん、お楽しみだとかで教えてくれないんですが…」

「えっと、どこに行くかって?」

 …あ、そういえば。

「それが…私にも知らされてないんだ。」

「え、そうなんですか?うー、気になる…」

 朝潮は考えこんでいるようだ。と、

「朝潮姉さん!行き先が分からくても、それはそれで楽しいと思うよ!」

 と、いつも活発な大潮。

「ミステリーツアー…ふふ、楽しみだなぁ」

 大潮とは正反対に物静かな霰も、このまだ分からない状況を楽しんでいるようだ。まだ駅にさえ着いてないが、想像を膨らませるのも楽しみの一つだろう。

「大潮、霰…うん、そうだね!でも、やっぱり気になるなぁ…不知火ちゃんたちはどこだと思う?」

 いきなり話を振られ、戸惑う不知火。かなり鋭い眼をしているイメージがあるが…

「え、えと、不知火は…楽しいところならどこだっていいと思います」

 あ、笑顔可愛い。

「雪風もです!同じ駆逐艦のみんなや、高雄さんに長門さん、全員で幸せな思い出を作りたいですー!」

「時津風も!特に長門さんとは今日初めて外出だから、楽しみ!」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないかぁ!」

 私は嬉しさに任せ時津風の頭を撫でまくる。高雄もにこやかにこちらを見ている。

「きゃあ〜!」

 嬉しそうだ。可愛い。

「雪風も、雪風もー!」

「霰も、撫でて欲しい…」

 と、この後結局駆逐艦全員をなでなですることになった。そして、全員をなでた頃…

「みんな、駅に着きました!ここからは特急に乗って行きます!」

「「「「「「おぉ〜!」」」」」」

 すごいキラキラ状態だ、これ。特急とは、誰の心も高揚させるすごいものなのだなーーー

 

 ーーー「わぁ〜、広い…」

 駅のホームに滑り込んできた、流線型がおしゃれな特急車両に乗りこむ。通路を挟んで2列ずつ並んだ暖色系のリクライニングシートに全員が腰掛ける。車内には他の人はほとんどいない。

「ドアが閉まります、ご注意ください」

 アナウンスの後ドアが閉まり、ゆっくりと電車は動き出した。

「おお〜!!」

 大興奮の駆逐艦たち。それを見ていると、何とも微笑ましい気持ちになる。高雄の優しい笑みにも納得がいく。

「これに乗って、どこまで行くんでしょう…」

「この電車、速いですー!」

「このシートふかふか〜…」

(もちろん騒がしくない範囲で)はしゃぐ6人。電車は快調に速度を上げていき、やがて海から離れ、山あいの方へと入り始めた。車窓の景色も海の青から山の緑へとかわり、そのコントラストが美しく感じられる。

「なんかトンネルが多くなってきた…」

「だんだんと山の中に入ってるようですね」

 すると唐突に高雄が立ち上がった。

「じゃあみんな、次の駅で降りるから、荷物の準備してね。」

「「「「「「はーい」」」」」」

 次の駅か…一体どんなところだろうーーー

 

 ーーー電車を降り、跨線橋を渡る。だが、改札を出る様子はなく、単なる乗り換えのようだ。

「高雄さん、これからどうするんですか?」

「もう少しで分かるわよ。」

 そんな彼女の後に着いていき、ホームへの階段を降りると、そこには既に列車が一編成停まっていた。そしてその周りには、カメラを向ける人だかり。ん?んんっ!?

「高雄?この列車は機関車牽引なのか?それに、後ろの車両の窓がないんだが…」

「長門さん、着眼点がいいですね!そう、これからこのトロッコ列車に乗って目的地へ向かいます!一度乗ってみたかったんですよ!」

「「「「「「おおおおおーーー!!」」」」」」

 歓声を上げる駆逐艦たち。無理もない、高雄曰くプラチナチケットのトロッコ列車に乗れるのだ。そういう私も興奮しっぱなしだ。

 時間に余裕があったので、周囲の人の一人に声をかけて、先頭の機関車をバックに8人の写真を撮ってもらうことにした。

「じゃあ皆さん!はい、チーズ!」

 笑顔の写真を撮ってもらったら、いざ車内に乗り込む。発車時間になり、駅のホームにベルが鳴り響く。

「行ってらっしゃい!」

「楽しんでこいよ〜!」

 手を振るホームの人たちに、窓のない車両から全員で手を振り返す。

「行ってきま〜す!」

「じゃあね〜!」

 雪風や時津風も返す。車内は定員満員で、和やかムードが漂っているーーー

 

 ーーー「おおー!」

 名所を知らせるアナウンスが、ところどころで車内に流れる。

「あの川…きれいですね、橋が高いからすごく小さく見えます!」

「おわっ!動物さんがこんな近くに!」

「風が気持ちいいのもトロッコ列車ならではね」

 景色に興奮する朝潮と大潮、高雄。そこへ…

「車内販売がありました。」

「美味しい湧き水を使ったサイダー…んちゃ」

 不知火、霰が全員分のサイダーを持ってきてくれた。昔ながらの王冠蓋の瓶入りだな。ん?あれがないじゃないか。

「2人とも、栓抜きはどこに?」

 その問に答えたのは、高雄だった。

「長門さん、それから皆さん、ここですよ!」

 彼女が指さしたのは、固定式ボックスシートの中央、窓下にある小さな出っ張り。

「これが、栓抜き…!?」

 近くにある、年季を感じさせる使い方の書かれたプレートのとおりにすると、

 

 パカッ

 

 あ、すごい。栓抜きだこれ。

「高雄さん物知りー!」

「なんで知ってたんですか?」

「ああ、今私たちが乗ってるこの客車、国鉄時代のものをトロッコ仕様に改造したものなの。国鉄時代はまだペットボトルなんてなかなかなかったから、これみたいに瓶入りの飲み物が主流で、そのためにここに固定式の栓抜きが設けられているのよ。」

 さすが高雄、鉄子だ…!

 教えられた栓抜きを使って栓を抜き、サイダーを飲む。うん!口の中のシュワシュワと絶妙な甘さがたまらん…!

 他にも列車内で、他にも景色を楽しんだり、高雄の鉄道豆知識話に耳を傾けたりして楽しんだ。そうしているうちに、いつの間にか列車は、山を降りた盆地にある、とある駅へ滑り込んでいたーーー

 

 ーーー駅を出た地点で、時刻はヒトサンサンマル。

「ここで遅めの昼食と、自然公園で遊んで、そして特急で帰ります。」

「やったぁ!ご飯だぁ!」

「高雄さん、ここでは何を食べるんですか?」

「特産品の山菜を使った、山菜うどんです!」

「おうどん!」

「うどん、楽しみ…!」

「時間も多分お昼ご飯ピークは過ぎているでしょうし、駅から近い店なので、早速行ってみましょう!」

「「「「「「「おぉー!」」」」」」」ーーー

 

 ーーーその後。

 入った店で山菜うどんを堪能。山菜のサクサクしたかき揚げと、コシのあるうどんのマッチがたまらなかった…。

 お腹いっぱいになったところで、自然公園へ。山中で海こそないが、ここも、我々の鎮守府のある街と同様自然が豊かな場所だ。色々な野生の植物や、野鳥観察も楽しめた。また、公園を歩いている最中も、駆逐艦の娘たちとたくさん、鎮守府のことや趣味のこと、この旅の思い出の事などたくさん会話をすることが出来た。本当に楽しかったーーー

 

 ーーー帰りの特急では、高雄と私以外は爆睡。鎮守府の最寄り駅に近づいて起こすのが若干大変だったりしたのも、笑える思い出になった。

 そしてお土産をたくさん抱え、鎮守府に無事に帰還した。少し疲れはしたが、とても充実した一日を過ごすことが出来たーーー

 

 ーーーその夜 港

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 既に人気もない漁船の待機場所。

 そこに、海の中から這いずるように陸に上がる、黒い一つの影。

「やっと…やっと着いた…やっと…着…い…」

 うわ言のように「やっと着いた」を繰り返したそれは、幾度目かで力尽きたのか、気を失って地に倒れたーーー




というわけで今回もありがとうございました!
読んでくれて感謝感謝です!

評価や感想もお願いします!

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長門とレイの章
乱の再来の予感


蓄膿症が治らなくて薬も飲む量が多くてつらたん。

薬自体というより水で腹が膨らむのが一番つらいっす。

すみません本編どうぞ。


 ーーー旅行翌日。

 朝から鎮守府は騒がしかった。私の起きたマルナナマルマル、自室を出ると提督や響、大淀、その他にも数人の艦娘たちが忙しそうに動き回っていた。気になるのは、その誰もが、緊迫感に満ちた顔をしていること。

 とにかく、私も身支度を整え、通りかかった提督に事情を聞く。

「どうしたんだ提督、そんなに忙しく…」

「長門、大変なことが起こった」

 大変なこと…?

「なんだ、それは…?」

「落ち着いて聞いてくれ。

 …この町の、ここからほど近い漁港の漁船停泊所に、今朝、深海棲艦が一体打ち上げられていると地元民から通報があった。…人型だそうだ。」

「なっ…!?」

 

 ーーー深海棲艦。

 突如海底から出現し、人類からいとも容易く制海権を奪った、正体不明の謎多き敵である。その人型、となれば比較的大型の艦で、強力な部類に入る。それが打ち上げられているのだ。ここまで慌ただしくなるのも無理もない。

「とりあえず準備ができ次第、現場に急行する。…長門、君も一応来るか?」

「いいのか?」

「仲間は多い方がいい。」

 …これは行くしかなさそうだな。

「…ああ、行かせてもらう。」

「よし。」ーーー

 

 ーーー数分後。

 提督の愛車の1台、ジオアラミスに乗り込んだのは、提督、響、大淀、明石、夕張、そして私。

「一気に飛ばすぞっ!」

 

 提督の宣言通り、車はわずか数分で港に着いた。既にたくさんの野次馬が集まっており、現場の中心は町の警察によって規制が張られている。

「すみません、第35鎮守府の提督です」

「はっ!お待ちしておりました、こちらです!」

 人混みをかき分け、黄色いテープをくぐり、そこには住民の通報通り、白い肌に黒い服、ずぶ濡れで傷だらけのそれがいた。その見た目は間違いなく深海棲艦だった。

 私たちは深海棲艦に近寄り、そしてそのものを改めて近くで見た途端、私を含め全員の顔が引きつった。

「こいつは…レ級!?」

 レ級とは深海棲艦の一種。戦艦の部類に入るが、砲撃戦はもちろん、艦載機発艦、雷撃までこなす、恐怖のオールラウンダーだ。

「…なぜレ級が…!?」

「とにかくそれを調べよう。」

 ブルーシートの上にレ級らしきものを横たえ、色々と調べてみる。しばらく調べていると、明石が声を上げた。

「…えっ…?」

「どうした?」

「おかしいんです…。このレ級、艤装がないんです」

「艤装が、ない?」

「はい。」

「しかし、これ程手負いということは、どこかにぶつけて取れてしまったりしたとかではないのか?」

「いえ、そう思ったんですが…全く、それは有り得ないんです…!」

 明石?有り得ない、だと?

「何と言うのでしょう、艤装をつける身体のスペースそのものが存在しないんです。例えば、本来レ級は尻尾の方にも艤装がありますが、ここにはありません。本来艤装が衝撃で取れたのだとしたら、それは余程のものでないといけません。しかし…」

 明石は隣にいた響に、スマホを見せられて確信したようだった。

「今響ちゃんに気象情報を見せてもらったのですが、昨日のここら辺の海は極めて穏やか、強い衝撃を生み出せるなど到底考えられません。更に、背部の服ですが、本来のレ級の尻尾が付いているであろう場所を見たところ…服の形からして、尻尾は付いていません…恐らく、元からこの通りの形だったと…」

「つまり、どういうことだ?」

 提督の問に、明石は

「恐らく、元々レ級ではない、何か、私たちが普段戦っている深海棲艦とは、何か別の存在かと…しかし、それが何までかは流石に…」

 改めてそのレ級らしき存在を見てみる。体は傷だらけ、意識はないようだ。ただ、明石曰く、脈らしきものがあるので、命はあるらしい。

「…そうだ。長門、アラミスからジオデバイザーを持ってきてくれ。命さえあれば、ガオディクションでこいつの心理状態を調べられる。」

「デバイザー…カーナビみたいなポジションに置かれていたあれか。分かった。」

 言われた通り、私は車にデバイザーを取りに戻ることに。すると…

 

「ここを通してくれ!」

「駄目です!関係者以外立ち入り禁止ですよ!」

「協力出来ることがあるかもしれないんだ!TACの隊員証もある!」

「TACだかなんだかそんなもん知りませんが、とにかくダメです!」

 テープをはさみ、若い警官と男性がいざこざ状態になっている。

「どうしたんですか?」

 答えたのは、若い警官だった。

「この人が入ろうとして来るんだ!」

 すると、男性が言い返した。

「私は元TACの隊員だ、協力させてくれ!」

 と言いつつ、カードのようなものを見せる男性。…ん?この人、どこかで見た気が…

 …あっ!この間阿武隈たちと立ち寄った、移動販売のパン屋の主人だ!

「なんだなんだ?」

「長門、どうした?」

 そこへ、提督、更にベテランっぽい別の警官がやって来た。2人に同様のことを説明する若い警官。しかし…

「TACだと…!?それは本当か!?」

「隊員証を見せてくれますか?」

 男性は2人にカードを見せる。「北斗星司」という名前の書かれたそのカードには、なんと本物のTACのエンブレムが。TACと言えば、かつてヤプール人が送り込んできた超獣と戦った防衛チーム。我が鎮守府で使われている戦闘機のうち、タックアローやタックスペースなどは、このチームの物だったのだ。

 そして、カードを見た2人は…

「うちの部下の失礼をお詫び申し上げます、申し訳ない」

「入って、どうぞ。ぜひご協力をお願いします」

 なんとOKサイン。戸惑う若い警官は、ベテラン警官に何やら説教っぽくTACについての説明を受けていた。

 私はとりあえず提督に男性を頼み、デバイザーを取って来た。にしても、あの店主がTACの者だったとは…ーーー

 

 ーーー「ガオディクション、開始」

 店主ーーー北斗さんが来たのを確かめ、提督はデバイザーを深海棲艦へかざす。先程提督が言っていたとおり、ガオディクションは対象の生命体の心理状態を調べられる技術だ。

「結果が出た。…ん?疲労…使命感、恐怖…?」

「ど、どういうことなんだ?なんでそんな、使命感とか、恐怖、とか…」

 すると、口を開いたのは北斗さんだった。

「一応、仮説を立てるとすれば…。」

「なんでもいい。聞かせてください」

 頼み込むように言う提督。

「ああ。こいつは恐らく、何かに迫害を受け、追われていて、我々に助けを求めようと陸に来たんじゃないか?」

「「「「「「!!」」」」」」

 全員の顔…私を含めて、電流が走ったかのようになる。

「恐らくこいつには、同族か仲間か何かがいて、それごと迫害を受け、ここに来る途中で、迫害している側から攻撃を受けたとしたら、辻褄が合う。まあ仮説は仮説に過ぎないが…」

「いや」

 北斗さんの言葉を遮るように言ったのは、提督だった。

「仮説に過ぎないとしても、これは最有力説となるでしょう。仮に今の仮説の中で、迫害されている側をこいつらの仲間、迫害している側を普段俺達が戦っている深海棲艦だとしたら…?」

「なるほど!」

 確かにそうだ!

「でも…仮にそうだとして、何が深海棲艦の目的なのかな…。」

 響が呟く。

「侵略?ですかね、一番考えられるのは…」

 と夕張。しかし提督はこう返した。

「確かにそれの可能性は高いな。

 だが、仮に深海棲艦がこいつらの住処を侵略しようとして、何故同時並行でこっちも攻めてくる?あいつらには艦隊を考えて組むだけの頭脳もある。深海棲艦と人類はファーストコンタクトから戦争だ。結果的に効かなかったとはいえ、人類の兵器が深海棲艦に効果を発揮した可能性もある。そうなれば必然的に自分たちが逆襲にあうのは目に見えているだろう。なぜリスクを犯すか、それがわからない。」

「…確かに。」

 みんなが悩む。

 しかしいつまでもここにいる訳にもいかないので、とりあえず、鎮守府の方にこのレ級らしき存在を移送することになり、私達はジオアラミスに乗り込んだ。ちなみに北斗さんも一緒だ。

 車の窓の外では、住民たちが不安げにこちらをずっと見つめていたーーー

 

 ーーー鎮守府

「やつの容態は?」

 用務員としての仕事中、通りかかった夕張に聞く。

「とりあえず一応の治療は済ませました。今は北斗さんが様子を見てくれていますが、まだ意識は戻っていません…。」

「そうか…あいつは一体…」

「私にもわかりません…提督や響ちゃん、北斗さんは色々と考えているようですが、やはりあの子の容態が戻らない限り、何も進まないと…」

「そうか…ありがとう。」

「いえいえ。」

 そう言って夕張は、私の元を去ろうとした、が…。

「…あーっ!」

「うわっ!ど、どうした!?」

「長門さん、頼まれていたあれが出来たので、後で工廠へ来てください!」

「お、おう!」

 夕張はそう言うと、今度こそ駆け足で去って行った。そうか、あれが出来たかーーー

 

 ーーーその夜遅く。

 夕張が言っていたとおり、頼んでおいたあれの説明書を一通り読み終わった頃、私の部屋の内線が鳴った。提督からだった。

 あのレ級らしき存在が目を覚ましそうだと言う。私はすぐに、医務室に急行した。

 既に、午前中現場に赴いたメンバーが集まっていた…響を除いて。

「響は?」

「迫害している側が攻めてくるかもしれないからって、自ら夜間の警戒任務に出ていった。天龍や吹雪たちも一緒だ。」

「そうか。それで、容態は?」

 と、

 

「…ここは…どこ…?私は、陸に、上がって、それで…」




というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m

いよいよ長門さん編もこれが最終章です!
お楽しみに!
評価や感想も待ってます!

ではまた!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

何が起きたのか

蓄膿症が治ってきました。

はい、報告それだけです。

ごめんなさい本編どうぞ。
※独自設定入ります。


 こいつ、目を覚ました!驚く一同。

 それは、キョロキョロと目を動かして周りを見渡す。今までずっと気を失っていたせいで分からなかったが、エリートだのフラッグシップなどの階級を見分ける目の輝きはなく、ただ目に透明なビー玉が嵌っているような、そんな瞳だった。

「あ、あの、ここは?私は何故、こんな所に…寝かされて…?」

 起き上がったそれは、こちらを不思議そうに見つめている。

「大丈夫、ここは鎮守府だ。君にここを荒らす意思がないなら、我々も誓って手荒な真似はしない。」

 提督が優しい笑顔で、それに語りかける。

「荒らす、意思は、ない…。約束する」

「そうか、よかった。ありがとう」

 提督はそう言って、それの頭を撫でる。するとそれは、怯えがおさまりきっていない表情から、少しだけ安堵したような顔になる。

 しばらく提督はそれを撫で続けると、

「さて、少し君に質問をしたい。いいかな?」

「…うん」

 これまでの様子を見て、どうやら我々の言語は通じるようだ。

「君は何故、傷だらけになってまで、陸に上がって来たんだい?君の普段住んでいるところは、海の中のはずじゃ?」

「…」

 提督の質問に、それは俯いた。

「…何かあったんだね。」

 コクリ、とうなずく。

「もしよかったら、話してくれないか?」

 それは、

「…今は…少し、怖いです…」

「そうか。無理はしなくて大丈夫だから、もし話せる時には、話して欲しい。」

「は、はい。ありがとうございます…」

「…長門、大淀。」

 唐突に提督からのご指名。

「…近海で最近確認された、深海棲艦の写真を少し持ってきてくれないか?」

「あ、あぁ…」

 私は大淀とともに、作戦会議室にそれを取りに行った。そして戻ると、提督はそれを私と大淀から受け取り、そして…

「少し君にとって、辛い質問になるかもしれないが、また聞いてもいいか?」

 覚悟を決めたようにうなずくそれ。

「…これに、見覚えはあるかい?」

 提督はそう言って、私と大淀のとってきた深海棲艦の写真を見せる。

「!!」

 目を見開き、じっと写真を凝視するそれ。そして、口をゆっくりと開いた。

「私の…仲間です。正確には、仲間だった、と言うべきでしょうか…」

 

「仲間、だった…?」

 気になる言い方。

「…はい。」

「それが、さっきの質問の鍵でもあるんだよね?」

 そっと尋ねる提督に、暗い顔でうなずくそれ。

「本当は答えたいんですけど、やっぱり怖くて…」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと落ち着いてからで大丈夫だから。」

 すると、

「はーい、少し失礼するぞ〜」

 ドアをそっと開けて入ってきたのは…北斗さんだった。手には皿、その上には数個のほかほかで美味しそうな、焼きたてのバターロールが。

「君に何があったか、私も知らないけど…疲れているし、腹は減っているだろう?」

「あ、はい…」

「これ、食べられるかい?」

「あっ…いいん、ですか?」

「もちろんだよ。さあ」

 温かな笑顔で、パンを差し出す北斗さん。ゆっくりと手を伸ばし、それはパンを頬張る。

「はむっ…はむっ…美味しい…!」

「そうかい、それはよかった。」

 だいぶリラックスしてるようだ…。と、

「少し、落ち着けました…。あなた方を、信じて、大丈夫ですか?」

「ああ。決して君を裏切らない。」

「分かりました…その、今から話すことは、私の…トラウマ?のようなことです。だから、どなたか、手を握っていてくれませんか?」

「じゃあ」

 名乗り出たのは明石。彼女の生の右手と、機械仕掛けの義手の左手が、それの手を握る。

「ごめんね、色々あって片方が義手だけど…」

「いえ、その…とても、有難いです」

 そう言って、それは語り始めた。

 

 ーーー私たちは…太古の昔から、この地球という星によって生み出され、この星の、深い深い海の中、あなた方も知らない所にに生きてきました。あなた方とコンタクトをとったと言われる深海生命体リナールよりも深い、あなた方にとって未知の世界です。人類が地上で文明を作り出すよりも前に、私たちは文明を作ったそうです。

 

 私たちは、母なる地球から与えられた使命に基づき、地上世界の争いなどには一切干渉はしません。なので、太平洋で起きて、ここにいる艦娘の元となった艦が戦った海戦のことも、あなた方の知っているであろう、地球原人ノンマルトの海底都市に関する事件や、地球が人類への警告として送った伝説深海怪獣コダラー、海底に沈んだ超古代の文明、また根源的破滅招来体、それに対して地球が産んだウルトラマンのことも、それを地球を通じて聞いたりしただけで、私たちに直接的な関わりはありませんでした。

 

 私たちの役目、それは地球の意思に従い、海底に広がる地球の様々なエネルギーや、龍脈などのバランスを整え、星として地球を維持できるようにすることなのです。先程言った事件の数々でも、少なからず地球のバランスが崩れかけ、それも修正してきました。とにかく、私たちはずっと、地球バランスを整えながら、深海の自分たちの文明で平和に暮らしていたのです。

 しかし…

 

 数年前、突然仲間が急激に少なくなった時期がありました。私たちは地球のあらゆる所にたくさんの仲間達が暮らしているのですが、その全ての海域で、大幅に仲間が減りました。私たちは地球の意思によって自在に生み出されますが、それと入れ替わり…いいえ、それを上回るペースで、仲間の減少は続きました。

 そしてそれからしばらく経ち、仲間達が住処に帰ってきました。しかし、元の姿とは程遠い、いくつもの禍々しい砲を携え、次々と我々の住処へと侵略を開始したのです…。こんなことを予想することもなかった私たちに反撃の術はなく、次々と各地の住処が崩落していったそうです。私の住処も、襲撃を受けました。

 更にその変わり果てた仲間…あなた方の言葉で深海棲艦というそれは、ご存知の通り人類から制海権を奪い、世界中の海域を支配していった、ということを地球から聞きました。何がどうなっているのか、地球そのものもわかっていませんでしたが、何か良くないことが起こっているのは確かでした。

 

 そこで地球は、大戦で沈んだ幾多の艦を媒体として、艦娘、そして妖精さんとあなた方が呼ぶ存在を生み出し、深海棲艦に対抗する切り札を遣わしたといいます。

 

 しかし、未だ我々に対する深海棲艦の侵略は進み、今では残り少ない住処に、難民のような定義にあたる私たちの仲間が、たくさん集まっている状況です。

 

 私が何故陸に上がろうとしたかと言うと、先程言った通り、私の元の住処にも深海棲艦が攻めてきて、そこが壊滅してしまったからです。襲われてから、仲間達と他の住処へと移りましたが、その時に数人が消息不明になりました。なので、地上世界の人間や艦娘にこのことを知ってもらうため、私は単身陸に上がることを試みたのです。

 その際に深海棲艦に数度見つかり、傷つきました。傷だらけだったのはこれのせいです。

 

 あなた方の直面している問題も、重々承知しているつもりです。でも…もし出来るなら…私たちの危機も救ってほしいんです。どうか、お願いしますーーー

 

 こいつにこんな過去があったとは…。言い終えた後にそいつも泣いていた。よほど辛かったのだろう…。私は無意識に、それの頭を撫でていた。

「ありがとう、ございます…」

 それはとても安心していた。明石の手を握るその手は手汗でべったりだったことから、相当力を込めて握っていたくらい、怖かったのだろう。しかし、私が撫でていると、次第にほんわかした、こいつ本来の笑顔であろう顔を見せてくれた。よかった…

 

 その時、ふと私の脳に一つの疑問がよぎった。

「…そういえば」

「はい?」

「お前、名前何ていうんだ?と言うか、名前はあるのか?」

「いや…深海で暮らしていた頃は、互いの名前など呼び合わず、実際に言葉を発することもありましたが、コミュニケーションはテレパシーで行うことが多かったので…とにかく、自分も、仲間達も、名前と呼べるものはないんです…」

「そうなのか…もしよかったら、私たちで名前を付けていいか?」

「え…?」

 大きく目を開くそれ。周りの提督や明石、夕張に北斗さんもニコニコしている。

「…ぜひ、お願いします」

 少し微笑んで、それは了承してくれた。

「…じゃあ、なんて付けようか…」

 夕張のその一言をきっかけに、考える一同。とその時。

 

「話は聞かせてもらったよ!」

 ドアを開けて部屋に入ってきたのは、響だった。

「おっ、響!おかえり。ていうか、いつからいたんだ?」

「ひどいよ司令官…そうだな、だいたいこの子が話を始めた時からかな」

「結構前からだな」

「入るのも悪いと思ったから」

「気遣いありがとな」

「いえいえ。」

 響はベッドに近寄り、それを見つめる。

「それで、この子の名前、だよね?」

「ああ。」

「レ級に似てるから…

 

 レイ、なんてどうかな?」

 

 ーーー翌日。

「ヘーイ長門!Good morningデース!それで、こちらのgirlは、確か昨日のあの子では?」

「ああ、おはよう金剛。とりあえずここでしばらく、用務員の私の手伝い役として働くことになってね。名前はレイに決まった。」

「Oh!goodなnameデース!レイ、頑張るデース!」

 去っていく金剛。

 結局こいつの名前は、響の案が採用されて、「レイ」となった。結構響きもよく、呼びやすいので、名案と言ったところだろう。

「長門さん。これから、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくな、レイ」

 笑顔を見せる回数も増えてきたレイ。

 しかし、私には一つだけ不安要素があった。

 

 それは来る明日。

 提督がこの町の住民たちに、このことについての説明会を開くことである。

 極東支部の長官とは古くから築き上げた信頼が、「保護を全面的に容認、さらにこちらでも調査をしてみる」という答えをもらえたが…。

 いくら優しいとはいえ、この町の人が、我々を信じてくれるかーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございました!

評価や感想、よければお願いします!
また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迫る影の正体

UAが結構伸びていてありがたいです。
これからもよろしくお願いします。

ではでは少し長めですが
本編どうぞ。


 ーーー「本日はお忙しい中ご来場頂き、誠にありがとうございます。第35鎮守府の提督です」

 ホールの中に、提督の声が響く。

 今日は説明会だ。何の説明会と言うまでもない、そう、レイのことに関してだ。

「本日説明致しますのはーーー」

 街の公民館の、小さなホールのステージ上で話す提督の脇に置かれた椅子には、提督側から順に、レイ、私、雷、電。ホールはこの町の住民で既に満席、さらには最後尾の席の後ろに立ち見の者達までいるほどだ。この様子は街のケーブルテレビ局によって、町民向けにテレビ中継もされている。幸いこの局は、我々、そしてレイを保護することに対しては賛成のようだし、あくまで中継番組上では中立の立場で放送すると言ってくれた。助かる。

「ーーー以上の出来事の上、我々はこの存在に、我々のほうでレイと名付け、保護をすることにしました。では次に、今回レイがここに来た経緯を、レイ本人が申し上げます」

 提督は礼をして、ステージの自身の待機席へと移る。入れ替わりに、レイがステージの中央へ移動し、提督によって既にその丈に合わせられたマイクに、自身の言葉を流す。

「本日はこのような機械をいただき、ありがとうございます。

 私が、何故ここに来たかということを語りたいと思いますーーー」

 緊張しながらも、丁寧に、そしてしっかりと自分の経緯を伝えていくレイ。ホールを埋め尽くす町の人たちも、真剣にその話に聞き入っている。

 途中から、レイは辛くなっていたのだろう、涙ながらに語っていた。それでもなんとか全てを語り終えると、会場の町民たちは拍手を送ってくれた。

 ちなみにその後、私も少しだけ話をしたが…緊張しすぎて覚えていない。ご了承くださいすみません。

 それから、提督が連れてきた雷、電も話をした。艦時代、大戦中に敵国の兵士達を救助したことからだろう。彼女たちは小さい体ながら、いつかレイの仲間達と人間が手を取り合えるような世界という大きな夢を語ってくれた。

 その甲斐あってかーーー

 

 ーーー帰り道のジオアトス車内

「どうだったか?提督」

 助手席から、私はハンドルを握る提督に話しかける。

「大丈夫、どうやらかなりの支持を得られたようだ。」

「はぁー…」

 思わず安堵のため息が出てしまった。後部座席では、雷、電、レイが3人であっち向いてホイをしている。

「とにかくよかった…」

「ああ、そうだな。」

「でも、反対派とかも絶対中にはいるだろうが…大丈夫なのだろうか」

「そこについては大丈夫さ。」

「なぜそう言いきれる?」

「さっきも実は、そのことについて町民のおじいさんと話をしたんだ。したら、このおじいさん、なんて言ったと思う?」

「え?」

「『反対派のいないことは絶対にないだろうが、そいつらだって、あんた方にいつも守ってもらってることは十分に分かっている。反対であろうとそれを理由にあんたら相手に暴動起こしたりすることは、絶対にいけないと理解しているからな。ちゃんと周りに迷惑をかけないよう、心の中や身近な人との議論で留めておくだろうよ、きっと』ってな。」

「そうか…この町にはいつも助けられているな、提督」

「ああ、全くだ…俺達もその気持ちに答えないとだな。」

「もちろんだ。これからも、我々に出来ることを、この町のため、この星のためにしていこう」

「おお」ーーー

 

 ーーーそれから。

 町の方に、私はレイと買い物にも行った。店の人は、普段と変わらず丁寧に接してくれた。胸が…温かいな。

 日を追うごとに、鎮守府の仲間達とも打ち解けて、笑顔を見せる回数もかなり増えてきた。

 ちなみに、北斗さんはしばらくこの鎮守府にいることになった。どうやら彼なりに何か不安要素があるからとか。大本営も、元TAC隊員だということで、スムーズに許可を出したらしい。

 …というか。

 北斗星司、彼の名にどこか聞き覚えがあるのは何故だろう…ーーー

 

 ーーーその一方で。

 北斗さん曰く、レイが迫害からの助けを求めに来たのなら、絶対に迫害した側…つまり深海棲艦がこっちに来るはずだ、と。用務員としての仕事の合間に、彼は自らの不安要素の由来を、そう話してくれた。その時の彼の顔は、とても真剣だった。

 そして、そんなある日ーーー

 

 ーーー北斗さんの言っていた不安要素、その証拠になるかもしれない事態が起こった。

 この鎮守府からそれなりに離れた無人島に設置されている、大本営の無人簡易観測施設の観測カメラが、一時的に麻痺したということが、大本営からの通信で明らかになったのだ。ただ、麻痺する直前と復帰直後の映像はしっかり残って記録されていた。さらに不幸中の幸いか、第35鎮守府はその場所から一番近いところにある鎮守府ということで、優先的に映像データが渡されることになった。

 

 夕方。

 この事態を受けて会議室には、今いる全ての艦娘、更にレイ、北斗さんが集まった。

 提督だけは、大本営から受け取った段階で大方確認しているらしい。彼はパソコンを操り、会議室のプロジェクターにその映像が映し出される。

「じゃあ、まずデータの途切れる一分前から、再生しよう」

 スイッチが押され、流れ始める映像。そこには…

 

「なんだこれは…!?」

 

 青空の下、カメラは穏やかな海を捉えていた。が、途切れる数秒前になって、突如海面に黒い大きな影が写りこんでいたのだ。そして、それが海面に姿を現そうとした所で、カメラはダウンしてしまったようで、映像は止まってしまった。

「あぁ、いいところで…」

「テレビ番組の未確認生物特集みたいだね、すんでのところで、とは…」

「で、カメラが復活した後、だ。」

 映像が切り替わる。画面に表示されるテロップによると、止まっていたのは数十秒程だったようだ。

 その映像にも、止まる直前と同じような影が写りこんでいた。しかし、ここでもその姿が海面に出ることは無かった。しかし、なんだこいつは…。

「さて、映像は以上だ。」

 全員が静かに提督を見つめる。

「正体はもちろん全くわからない。だがそれ以上に、この映像から計算して出した数値によると、こいつの体長は…おそらく怪獣クラスだ。それにこいつが向かっている方向は、ちょうどこの鎮守府がある方面だ。まだ予想到達時刻は分からんが…」

 ざわつく会議室。すると、提督はその中で響、大淀、さらに私を呼んだ。

「持ってきておいて正解だったな…響、長門、大淀。このタブレット端末を皆に配ってくれ。過去に出現した宇宙人や怪獣のデータが全て詰まっている。」

 そう言って提督は、我々にたくさんのタブレット端末を預けた。

「分かった、司令官」

「すぐに配ろう」

「響ちゃんはこの付近、長門さんはあっちを。私はあちらの方々に配ってきます」

 配られるタブレット端末。提督が簡単にその使い方を説明する。

「それでは各自、話し合ってくれ」

 仲間達が一斉に話し合いを始める。私は主に、北斗さんを含めた、レイ漂着の時のメンバーで話し合いをすることになったーーー

 

 ーーー「見る限りは海、水の中で活動できる怪獣の類か…」

 私は端末で、水中活動可能な怪獣や宇宙人に限って検索したが、以外にもそれなりに多かった。影しか見えないあたり、個体の特定も難しい。

「前に出現した、アーストロンやバラックシップなどとも関連性があるのかい?」

 響が全員に問いかける。

「いや、おそらく違うだろう…。」

 提督は首を横に振った。

「アーストロンは火山活動の影響で眠りから覚めただけだ。バラックシップの方は、レイからの話から関連性があるようにも思えるが…あれは大井のマイナスエネルギーから生み出された、言わば偶然要素が高いからな…」

 再び考える一同。と、ここで口を開いたのは明石だった。

「提督、なんでカメラの映像は途切れてしまったのでしょう…」

「それな…こっちもまだ分からないからな…」

「何かカメラ…電子機器を落とすほどの要素というと…色々考えられますが…」

「確かに、そこから探るか…」

 しかし、その要素も、熱の変化、磁力の影響、さらには霊力など色々な意見が出すぎてしまった。結局、三十分間話し合ったが、全体を含めて何も進展は無かった。

 しかし、こっちにその影が向かってきている以上、猶予はない。とりあえず、レイ発見時のメンバーは、早めの夕食のあとに話し合いを続行することにした。

 

 ーーー夕食後。

 再び会議室に例のメンバーが集まる。

「とりあえず映像を見て、詳しく分析しよう。」

 提督や明石、夕張に大淀は映像の分析へ。残る私や響、レイに北斗さんは、出来るだけの怪獣知識集めをすることに。

 そして十数分後。

 提督たちがこっちに向き直った。映像の分析が完了したらしい。

 映像が途切れた原因として、提督たちが出した結論、それは…

 

「異常磁力によるもの」

 

 異常なほどの磁力があの影から発せられていて、それがカメラを一時的にダウンさせたという。

「磁力?」

「どういう、ことですか?」

 わからないという顔をする響、レイ。すると、夕張がちょっと待ってて、と部屋を出て…数分後、あるものを持って戻ってきた。

「ニ〇テンドーDSぅ〜!」

 どこぞの青狸…いや、猫型ロボットのように言う夕張が掲げたのは、有名なあのゲーム機。夕張は早速電源を入れる。

「これを使って解説します!まずこのゲーム機は開閉可能で、閉じて折りたたむと電力消費を抑えられるスリープモードになるんです。皆さんは知ってますよね?」

 響が簡単にレイにゲーム機について説明する。幸い、スグに理解してくれたようだ。

「これがなぜ起こるかというと…」

 夕張がポケットから取り出したのは、磁石。といっても、どこにでもあるような、普通の磁力の棒磁石だ。

「これを、下半分…ボタンの上あたりに近づけると…?」

 するとなんと、明るく光っていたゲーム機の画面が、一瞬で暗くなったのだ!響もレイも驚いている。

「これがスリープモードの仕組み。普通に閉じた時は、ちょうど重なる部分である、スピーカーの磁石を使って、これを起こしているんです。」

「「なるほど…」」

 どうやら納得したようだ。しかし、わかりやすいな…さすが夕張。

「このように、磁石は少なからず電気機器に影響を及ぼします。今みたいに丁度いいならそれでいいのですが、あまりにも強い磁力は、計器類に以上をきたすんです。病院などではそれを防ぐため、携帯や通信系電子機器の利用はほとんどの場所で許可されていません。磁石の他、電気や電波などでも電磁力などで、それと同じことを起こしてしまうこともあります。なので、これらの影響で精密機器が止まってしまうことを防ぐためです。」

「おぉ…」

 ん?ということはつまり…

「こいつが怪獣だとしたら…磁力もしくは電気能力を使えるやつ、ということになるのか…!?」

「それですよ長門さん!可能性は高いです!」

 一気に議論が活性化する会議室。

「水の中で活動でき、なおかつ、磁力もしくは電気能力を持つ怪獣というと…」ーーー

 

 ーーー翌日。

 そいつが、この町に来る可能性が高いのは間違いない。私達は大本営へ状況を報告し、厳戒態勢で時を過ごした。

 町民たちには町役場を通じてこのことを知らせ、すぐ避難できるように準備させた。

 空軍にも大本営経由で通達がいき、いつでもスクランブル発進できるようになっているようだ。

 そんな中でも、私が用務員としての仕事や、買い出しを行わないわけにもいかず(むしろ楽しいが)、今日は吹雪と町の商店街へ買い物に出かけた。レイも、町を体験したいという思いから、今日も一緒に来ている。

「えーと、これを一つ、それから…」

「ゆっくり選んでいいですよ〜」

 町も、基本的には通常と変わらない日々だった。がーーー

「…ん?」

 私は通信機が鳴っている事に気づいた。ん、提督からか。私は店の人に了承を得て、応答した。

「こちら長門、提督、どうした?」

 通信機の向こうから、差し迫った提督の声が響いてきた。

「長門!すぐに避難指示を出せ!」

「な!?な、何があった!?」

「たった今、警備任務にあたっていた飛鷹のハマーから、奴を見つけたと連絡があった!」

「何だって!?」

 その時。

 

「うわっ!?」

「きゃああっ!?」

 突如地面が大きく揺れ始めた。混乱に包まれる町。その時。

「あ、あれはなんだー!?」

 1人の町民が指さしたその先には、海からその身を現す巨大な影。海からやや離れた位置にある商店街からも、その大きさはかなり大きいものだとわかった。

 怪獣だ。

 そして、その怪獣は威嚇するかのように、独特な咆哮をあげた。

 

 キィィィイイッッッ!

 

「あいつは…!?いや、しかし…!」

 私は、その姿を見て、一瞬脳がフリーズした。通信機から響く、提督の私の名を呼ぶ声を聞き流していたほどに。

「長門、長門!?」

「…あ、あぁ、私は大丈夫だ!しかし、こいつはやばいぞ!」

「やはりやつか、エレキングだったか!?」

「ああ。…ん、いや違う!?」

「ど、どういう事だ!?

 …いや…なるほど、理解した!とにかく長門、吹雪とすぐに避難誘導を!すぐに鎮守府から応援を向かわせる!それから、奴はレイを狙っている可能性が高い、絶対にレイから目を離すな!」

「わ、わかった!」ーーー

 

 ーーー我々が予想した怪獣の個体、それ自体は当たっていた。

 宇宙怪獣エレキング。

 かつて地球にも数度出現が確認されており、幾多のウルトラ戦士と戦いを繰り広げてきた。

 しかし、その基本的な外見とは、そいつは明らかに異なっていた。

 長い尻尾や頭のレーダーになっている角はそのまま。しかし、胴回りになんといくつもの砲塔が装備され、手先にも同様に確認できる。

 さらに注目すべきは、なんと黄色を帯びた白の体に、黒い模様が入っているはずの姿、そこところどころは漆黒の装甲に覆われていたのだ。

 通常ではまずありえない。そして一番の特徴は…

「フフフ…フハハハハハ!」

 なんと、本来目のないはずのその頭部は、不気味な程に白い顔が。目はらんらんと輝き、しっかりとこちらを見ている。口はエレキングの影響か、口裂け女の如く広がって、恐ろしい笑い声で人々の恐怖を煽る。

 この特徴から見るに思い浮かべるやつと言えば…深海棲艦。

 そう、こいつを一言で表すなら、

「エレキングと深海棲艦を融合させたような巨大怪獣」

 というのが妥当だろう。

 それは段々とこちらに近づき、そして陸との一定の距離になると叫んだ。

 

「逃ゲタ奴ハドコダ…!

 ソイツヲ今スグ、コチラニ渡スノダァ!」

 その大きな叫びと共に、町はパニックに包まれたーーー




というわけで今回も読んでいただきありがとうございます!

評価や感想貰えると励みになります、よろしくお願いしますm(_ _)m
また次回です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

信じること。

更新遅れてすみませんm(_ _)m

筆者、リアルでうつ病かもしれません└(՞ةڼ◔)」

テンションやら文やらおかしくなっているかもですが、ご容赦を…

すみません本編どうぞ。


「落ち着いて!慌てないで避難してください!」

「こちらです!押さないで!」

 パニックになった町は、逃げる住民でごった返していた。吹雪と私で、商店街のスタッフや客たちを必死に避難誘導する。

「レイ、私の元を離れるなよ!」

「は、はい…!」

 レイの事も、この人混みの中はぐれないように、しっかりと確認する。

 怪獣の方を見ると、その周りで時々小爆発が起こっている。どうやら艦娘と空軍の共同攻撃が始まったようだ。

 しかし、奴の勢いは依然として止まらない。これはまずい、とにかくまずは逃げ遅れた人がいないか確認しなければーーー

 

 ーーー怪獣攻撃側

「敵に弾幕を張らせないで!」

「奴の武器は砲撃だけではありません!口から放たれる電撃光線も、記録によると十分な脅威です、気をつけてください!」

 海の浅い底を歩き、迫るエレキングに向けて、先行して艦娘たちが攻撃する。が…

「えっ!?」

「どう…なってるの!?」

 頭部を狙って勢いよく撃たれた砲弾。しかしそれは、正確な狙いのはずだったのに、エレキングの頭部を逸れるような軌道を描いて、不発に終わってしまった。

「なんで砲弾のルートが!?」

 動揺が走る艦娘。そこへ、

「大丈夫か!我々が援護する!」

 空軍の戦闘機小隊だ。

「全機、ミサイル攻撃開始!」

「「「「了解!」」」」

 次々と、戦闘機下部から放たれるミサイル。深海棲艦やアーストロンの出現を受け、ごく最近開発された新型強力ミサイルだ。

 しかし次の瞬間、ありえない現象が起きた。

 なんと、ミサイルの軌道までもが、デタラメに逸れたのだ。いくら強力でも、当たらなければ意味がない。ミサイルのいくつかは海面に落ち、艦娘たちに迫る。なんとか全員かわしたり、相殺したりなど対処はしたものの、攻撃が通じないということが、焦りを起こさんとする。エレキングはさらに、全身の砲塔からの射撃を仕掛けてきた。

「まずいぞ!」

「くっ…!」

 エレキングの砲撃により、艦娘たちの数人は中破状態に追い込まれる。さらに砲撃を辛くもかわした戦闘機のうち、続けざまに放たれた三日月型の光線が2機に直撃。幸いパイロットは脱出に成功したものの、機体は炎上しながら墜落していった。

「前がダメなら、後ろからなら…!」

 後ろからの攻撃を試みようとエレキングの後ろに、数人の艦娘たちが回り込む。が…

「砲撃、かい…きゃああぁっ!?」

 なんと、海面から巨大な物体が突如として浮かび上がり、艦娘たちの砲撃を阻止してしまった。エレキングの武器の一つ、太く長い尻尾だ。

「くそっ!空軍よ、尻尾を狙ってくれ!」

「了解!」

 戦闘機が見事な飛行で高速旋回、そしてジェットエンジンを唸らせ一気に距離を詰める。

「目標ロックオン!ミサイル発射用意…」

 ところが。

「はっ…うわっ!?」

「どうしました!?」

「計器に異常発生!全機能、正常に作動しない!」

「何だって!?大丈夫か!?」

「我々は平気だが、機体はこれ以上の飛行は不可能だ!すまん、戦列を離脱する…!」

 悔しそうな小隊長の声が、無線機を通じて艦娘たちに伝わってくる。その通信は近くの者同士だったのだが、何故かひどいノイズが入った。

 そのノイズを聞いた時、響の頭に閃光が走る。

「分かった…磁力操作だ!」

「…え?…あっ!!」

 

 そう。響の読み通りだった。

 エレキングはその身にほとばしる膨大な電気エネルギーを、磁力操作に利用していたのだ。

 自身に対する対策をさせないために、観測施設のカメラに向かって強力な磁力波を放ってダウンさせたり、今現在進行形で進んでいる戦いにおいても、砲撃やミサイルに対し、頭部に磁力によるバリアーを張って、金属製である砲弾を逸らせたり、ミサイルの誘導機能を麻痺させたり、さらには戦闘機に磁力波を発射することで、計器を狂わせ撃ち落としたり、と言った具合だ。

「そういうことか…よし!」

 ランドマスケッティから、提督が指示を出す。

「通常の砲撃では勝ち目はない!戦闘プランを変更する!正規空母、軽空母、及び航空戦艦の艦娘は、磁力波の影響を受けないように距離を置いて、艦載機によるレーザー攻撃!」

「「はい!」」

「戦艦の艦娘は陸に上がって、住民の避難誘導だ!駆逐艦や巡洋艦の艦娘は、ありったけの魚雷で攻撃!もし弾切れになったら避難誘導組に合流しろ!こっちも全力で援護する、何としてでも進行を食い止めろ!」

「「「「了解!」」」」ーーー

 

 ーーー「長門、もうすぐそっちに陸奥たちが合流する」

「急いでくれ!商店街に来ている客はまだたくさんいる!我々だけでは手に負えない!」

 提督との通信をしながらも、私は必死に手を回して、住民たちに逃げるべき方向を伝える。そうしているうちに、視界に入る人の数は数える程となった。

「よし、人の波がようやく引いてきたか…」

 と、

「おかあさぁーん!どこぉー!だずげてぇー!!」

 子供の泣き声!?まだ逃げていなかったのか!

「吹雪!行くぞ!レイも!」

「は、はい!」

「…はい…!」

 

 子供の所に駆け寄る。どうやら逃げている最中、親とはぐれてしまったようだ。

「ぼく!大丈夫か!?」

 私たちの存在に気づいた子供は、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、こちらに駆け寄ってきて…私にぎゅっと引っ付いた。

「お姉ぢゃぁん!怖がっだよぉー!」

「よしよし、よしよし…」

 前に提督が傷ついた仲間にしていたように、私は子供の頭を優しくなでた。よかった、少し落ち着いてきたようだ…。

「あのね、怪獣からね、逃げてたらね、おかあさんがね、いなくなっちゃってて…」

 大泣きしながらも、子供は私達に今の状況を何とか訴えてきた。相当怖かったのだろう…

「そうかそうか…大丈夫大丈夫…」

 私は子供を抱き寄せつつ、周囲を伺う。怪獣はもう少しで陸に上がって来そうだ。…ん?

「…レイ?どうした?」

 そばにいたレイが、とてもこわばって、思い詰めたような表情になっている。その時…

 

 ズガーーーン!!

 キィィィイイイイッッッ!

 

 地に走る大きな揺れ。エレキングが、とうとう上陸してしまった!

「ぎゃぁぁぁああああ!!」

 大声で叫び、パニックを起こす子供。その時…

「レイ!?」

 なんとレイが、私の元を離れ、怪獣の方へ猛然と駆け出したのだ!

「レイ、レイ!!どこへ行くんだ!?戻ってこい!!そっちは危険だっ!!」

 くそっ!この状況で子供を放っておくわけにもいかない…!

「長門さん!」

「吹雪!?」

「この子は私が避難所へ連れていきます!長門さんはレイさんを追ってください!!」

「頼む!!」

 子供を吹雪に任せ、私はレイを追った。

「レーーーイ!!」ーーー

 

 ーーーレイを視界から見失わないよう、私は必死で追いかけた。それにしてもレイは、何をするつもりなんだ…!?

 レイが近づいた事で、エレキングはその存在に気づく。エレキングを見上げるレイ、おそらく今両者の目が合っている。と、唐突にレイが叫んだ。

「…こっちだ、化け物!」

 なんとレイは、エレキングに自分の場所を自ら知らせるという行為に出た!…あいつ、たった1人でエレキングを引きつける気か!!

「落ち着け、レイ!」

「長門さん…!?…駄目です!戻ってください!こっちに来ては駄目です!」

「そんなこと言っている場合か!!」

 私はすぐにレイと間を詰め、抱きかかえる。

「離してください!長門さん!」

「誰が離すかっ!!」

 なんでここまでして…!

「フフフ…愚カ者ドモメ、逃ガスカァ!」

 エレキングは深海棲艦の声で叫び、三日月型の光線でこちらに攻撃をしてくる。

「くっ…!」

 私は走った。海の近くの道を、必死に走った。が…

「はぁ、はぁ…うっ…!?」

 しまった、この最悪のタイミングで発作が…!!

「うっ、ぐぅっ…!!」

「長門さん!?」

 発作の弾みで転んで、投げ出されたレイがこっちに駆け寄ってくる。くそ、とにかくまずは早く薬を…!

「フンッ!!」

 しかし、エレキングは私の状況を知ってか知らずか、思い切り地を踏み鳴らした。私の手から薬の容器が離れ、空へと投げ出される。

「長門さん、大丈夫ですか!?」

「レイ、その薬を…取ってくれ…うぅっ!」

「は、はいっ!」

 レイが薬の容器を取ってくる。幸い視界中の距離だったため、すぐに持ってきて、私の口の中に薬を放り込んでくれた。

 しかし、もうエレキングは目の前まで迫っていた。薬は飲んだが、発作の反動はまだ収まらず動けない。そして奴の顔、深海棲艦の目がこちらを見下ろしてきて…

 

「トドメダァ!2人マトメテ、死ヌガイィィッッッ!」

 

 エレキングの口が裂け、放たれる三日月型の光線。視界がその光で真っ白になってーーー

 

 ーーードカーーーーーン!!!!

 

 その場所で、大爆発が起きたーーー

 

 ーーー…う、うぅ…

 一体どのくらいの時が経ったのか。私は目を覚ました。ここは…天国か…?

「危なかったな、長門、レイ。」

 聞き覚えのある声が、私の意識を急速に呼び戻してくる。

「あなたは…北斗…さん?」

「私の識別が付くようなら、大丈夫なようだな。レイよ、君も大丈夫か?」

「…は、はい…」

 ゆっくりと起き上がるレイ。

「一体、私達はどうなって?」

 どうやらここは、海のそばの古い空き家の影のようだ。まだ体が、やつ地ならしを感じている。

「簡単に言えば、私がすんでのところで救出した、といったところかな。」

「いや、その…」

 とりあえず、その疑問は一旦置いておくことにして、私はレイに聞く。

「レイ。

 さっきはなんであんな真似をした?」

「…」

 レイは俯いて答えない。

「レイ…頼む。何故だ」

 私が問い詰めると…レイはその口をゆっくりと開き、言った。

「…私がいることで、あいつが来た…このまま私などがこの街にいたら…優しいこの町の人にまで、迷惑をかけてしまう…だから…だから、私が怪獣を引き付けて…」

「レイ…死んだらどうするんだ…!?」

「死んだら…死んだらその時はその時だよ…あいつは私を追ってきてるのだろうから…」

 その一言が、私の心に火をつけた。

「レイ!お前、何を考えていたんだ!お前は、仲間達の思いを裏切るつもりか!?」

「私だってそんなことしたくない!」

 大声を張り上げるレイ。その瞳には涙が。

「でも…あんな強いのが出てきたし…もしかしたら、もう、みんなは…」

 レイ!そう声を出そうとした私を、目の前に突然伸びてきた腕が止める。

「…ここは、私に任せてくれないか?長門。」

「…北斗さん」

 優しくも力強い笑みをこちらに向け、北斗さんは座り込んでいるレイの肩に手を当て、語る。

「レイ、レイよ」

「…北斗さん?」

「確かに、今のお前に、この状況は辛過ぎるほどだろう。怖いよな、レイ…」

「…」

 無言、しかしゆっくり頷くレイ。

「うん。だがレイ、決して挫けてはいけない。君のことを信じている、仲間達のためにも…」

「…でも…私は今はもう…一人ぼっちだ…」

「レイ、決してそんなことは無いさ。」

「…え?」

 北斗さんに目を合わせるレイ。

「…お前になら聞こえるはずだ。例え離れていても、お前のことを信じ、未来を信じて、懸命に生きている、お前の仲間の声が…」

「仲間の、声…?」

「ああ。

 私もかつて、強大な超獣たちとの戦いの中で、大切な人と別れた…。共に苦しみ、笑い、戦った人と。

 彼女は自分の使命を果たし、故郷へと帰っていったんだ。」

 北斗さんはそういいつつ、空を見上げる。

「彼女と別れた時は、私だって辛かった。だが、俺は最後まで、襲い来る超獣たちと戦えた。

 離れ離れでも、彼女の意思はいつも俺の中にある。変わらず一緒に戦っている、そう思えたからだ。

 だからレイ、お前も、仲間を信じて、未来を信じるんだ。お前にも、きっと仲間達の声が、意思が、感じられるはずだ。」

「仲間達の、意思…」

 レイは目をつぶった。私からは、レイが何を感じ取り、どう思っているのかはわからない。しかし、間違いなく今、レイは仲間達からの声を感じ取っている。そう確信できた。

「…聞こえました。北斗さん。

 私のことを信じてくれる、仲間達の声が…」

「そうか。」

「はい。」

 微笑むレイ、北斗さん。つられるように、こんな状況下でも、不思議と私の口角が上がる。

「そうだレイ。希望を捨てず、信じ続けるんだ。その心は、不可能も可能にするのだから。」

「はい、北斗さん…!」

 よかった…レイが、また立ち直ってくれたーーー

 

 ーーードカーーーン!

 突然起こる爆発。どうやらすぐ近くに、エレキングの攻撃が着弾したようだ。爆風が吹き荒れ、隠れていた空き家が倒壊する。

 くっ、こんな時に…!

「提督、状況は!?」

「悪いことに変わりはねえ!磁場のバリアーで思うようにこちらも攻撃できないっ!」

 通信をしている提督、彼が操縦するランドマスケッティのファントンレールキャノン、さらに空母艦娘の艦載機のレーザー攻撃、明石の操るシルバーシャークGも、頭を狙えばバリアーで防がれ、後ろを狙えば尻尾で防がれ、胴を狙えば砲撃で相殺されるという歯がゆい状況が浮かぶ。

「長門さん、北斗さん!!」

 レイの叫びで我に帰る。見上げると再びエレキングがこちらを見下ろし、不気味な顔を向けて来ていた。

「今度コソ、トドメダ!食ラウガイイッッ!!」

 エレキングの全身の砲塔が不気味に光りはじめた。まずい、全力の一波を放つ気か!!

「どうすれば…!?」

 必死に考えるが、答えが浮かばない。もう、詰んだのか…!?

 

 その時。

 

「ここは、俺が行く…!」

「北斗さん!?」

 目の前に現れた彼の背中。頼もしく、威厳を感じさせる背中。

 一瞬、彼の両の中指に嵌っている指輪が、キラリと輝いた。

 

「北斗、星司さん…あなたは…!」

「…ふふっ」

 悪戯っぽくこちらに微笑み、そして一瞬で、キリッとした表情へと戻る。

 

「夕子…行くぞ!」

 

 彼は胸の前で両腕をクロス、そして大きく横に広げる。そして…

「ぬぅんんっ…ふんっ!!」

 思い切り、北斗さんはその指輪ーーーウルトラリングを、強く、すばやくタッチさせた。

 たちまち、リングが火を放ち、光が北斗さんを包み込んでいく。

 

 そして、それとほぼ同時に、エレキングの砲塔から邪の光を放つ砲弾が何発も発射された。

 

 が。

 

 それよりも速く、北斗さんを包んだ光が空に舞い上がり、見る間に巨人の形を成していく。

 この町に海から伸びる魔の手・エレキングの放った砲弾は…

 

「ウルトラ・ギロチンッッ!!」

 

 眩い光に包まれた、巨人が放った無数の円盤ノコギリ状の光輪に、全ての砲弾は真っ二つに切り裂かれるように相殺された。

「ナン…ダト…!?」

 

 巨人が着地し、立ち上がる。

 その身にほとばしる光が収束していき、その姿が露わになっていく。

 まるでモヒカンのような、しかし穴の空いた、独特のフォルムを有す頭頂部。

 額と胸に輝く、青き星。

 銀地に走る赤のライン。

 提督が、艦娘が、空軍のパイロットたちが、避難所の町の人が、エレキングが、レイが。

 誰もが見上げた、その視線の先。光とともにやって来た彼が、威厳をもってたたずんでいた。

 自然と私の口からは、彼の名前がーーー

 

 ーーー「ウルトラマンエース…

 ウルトラマンエースだ!!」




というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m

感想や評価、よければお願いします!

この作品の完結まであと少し、改めてよろしくお願いしますm(_ _)m
また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦え、宇宙のエース

この次の回で、この作品自体は完結です。
シリーズはまだ続きます。

あと、オーバーキルって、書いてみると気持ちいいんですね(狂)

本編どうぞ。


「わぁ…」

 呆気に取られたように、ウルトラマンエースを見上げるレイ。

「早く逃げろ!ここは、私が食い止める!」

 エースはエレキングに戦いの構えを取る。

「フンッ!!」

「貴様、ヨクモ邪魔ヲシテクレタナ!ココデブッ倒シテヤル!!」

 戦いが、始まったーーー

 

 ーーーものの一瞬でエースはエレキングに駆け寄り、次々と拳を浴びせていく。対するエレキングはゼロ距離からの砲撃で対応しようとするものの、その動作をする暇さえも与えないほどの乱打がエレキングを襲う。

「ヌゥン!トォッ!」

 しかしエレキングも、砲撃がダメなら、と口から三日月型の光線を至近距離でエースに命中させる。

「ウォッ!?」

 吹き飛ばされるエース。しかし体勢をすぐに整え直し、再び向かっていく。

 しかし、エレキングの堅固な装甲は、エースの打撃も本来の威力を発揮できず、思うようにいかない。加えて、暇さえ与えないと言っても、砲撃なども常にエースを狙っているのだ。そこで…

 

「フラッシュハンド!!」

 両手を熱エネルギーで包み、元々の拳の威力をさらに高める技・フラッシュハンドを使い、エースは目にもとまらぬ速さでチョップを繰り返す。エレキングの装甲も、これほどまでの威力を防ぎきれはしない。たまらずダメージに後ずさるーーー

 

 ーーー「長門さん!」

「おぉ、吹雪!」

 戦いを見守る私とレイの所に、吹雪が来てくれた。あの子供を避難所へ送り、無事に親と合流させることができたらしい。

 そして吹雪も、今私の目の前で起きていることに気づき、見上げる。エースとエレキングの、一進一退の攻防を。

「戦っているんですね…北斗さんが」

「あぁ。この世界を守るために…」ーーー

 

 ーーーウルトラマンエースの異名の一つに、「光線技の名手」というものがある。ウルトラ兄弟、さらにその他のウルトラマンと比べても、使える光線技の数が群を抜いていることからだ。この戦いでも、その威力はいかんなく発揮されていく。

 くさび形の光線を連続で撃つ「アロー光線」、右手先からの三日月型光線の「ムーン光線」、さらには両手からの「スター光線」…。次々と技が決まっていく。

「いけいけ、エース!」

「よし、いいぞっ!」

 今のところ戦いを有利に進めていくエースに、避難所の町の人も興奮していく。

 エレキングはこれはたまらんと思ったのか、なんとエースに向かってジャンプしてきた。のしかかり戦法か!?

「ムッ、フンッ!」

 エースは身軽に側転でかわす。が、かわしたはずのエースの目の前に、突然襲いかかるものがあった!

「あっ!!」

「尻尾!?」

 エレキングの長い尻尾が、エースにいきなり巻きついてきた!ジャンプ攻撃をかわされエレキング本体も立ち上がり、長い尻尾がエースに巻きついて締め上げていく。

「ウゥッ…ウォォ…!」

 さらにその長い尻尾を伝って、高圧電流がエースを痛めつけていく。

「まずい…!エースが危ない!」

 私はたまらず、提督に通信を入れた。

「提督、提督!こちら長門!」

「長門か!こっちは今逃げ遅れた住民の救出活動中だが、どうした!?」

「エースが、ウルトラマンエースが危ない!」

「なんだって!?」

「エレキングの尻尾に締め上げられて、電流を浴びせられている!何か、何か奴に弱点はないのか!?」

「エレキングの弱点!?分かった、ちょっと待ってろ!!」

「出来るだけ早くしてくれ!今、エースのカラータイマーが点滅を始めた!」

 

 ウルトラマンエース、その他多くのウルトラ戦士たちは、地球上ではエネルギーを急速に消耗する。カラータイマーが青から赤の点滅に変わると、戦闘可能時間が残り少ないという危険信号を意味する。

 早くしてくれ、提督…!そう思っていると、通信機から提督の声が。

「長門、長門!!」

「提督か!」

「待たせたな、エレキングの弱点が分かった!」

「本当か!?」

「ああ!奴の角だ、角をねらえ!あいつの角は高性能レーダーの役割を果たしている!いくら深海棲艦と融合して強くなったとはいえ、そこを破壊すれば奴に大ダメージを与えられることは間違いない!」

「分かった!」

 

 ーーーここで、過去の例を見てみよう。

 エレキングは過去に地球に現れてウルトラセブンと戦った時、両角をエメリウム光線で破壊されて動きを止められた。また、ウルトラマンタロウが戦った再生エレキングも、角が元で再生を果たしたものだ。チームDASHと戦った個体も、両角を戦闘機ダッシュバードのミサイルとレーザーに砕かれて倒されている。エレキングにとって、角は重要部分中の重要部分であり、裏を返せば弱点なのだ。

 そしてこの角が弱点というその法則は…深海棲艦と融合した、この個体にも当てはまっていたーーー

 

 ーーー角が弱点と分かれば、そこをピンポイント攻撃するに限る。私は服のポケットから、あるものを取り出した。工廠組に頼んで、そしてこの間夕張にもらった、小型特殊端末だ。

「どうしたんですか、長門さん?それは…スマホ?」

「いや、厳密には違うな。」

 私はスマホのように端末を操り、あるシステムを起動させた。

 私が画面をタップすると、端末から光が放たれ、そして目の前にTACの大型火器…ビッグレーザー50が現れた。

「えええええええ!!な、長門さんそれ、ど、どうなっているんですか!?」

「ど、どこからそれを?」

「話はあとだ!!」

 本当に話している場合ではない。私はすばやくビッグレーザー50を手に取り、そしてその銃口をエレキングへ、その角へと構える。

「エース…今助けるぞっ!」

 私にとって、そして今隣にいる吹雪にとっては、ウルトラマンエースはとても思い入れのあるウルトラマンだった。かつて我々が心を痛めていたときに、立ち直るきっかけを、彼のある言葉がくれたのだ。

「頼むぞ…」

 私は照準をとり、そして、今までの恩返しだと言わんばかりに、ビッグレーザー50のトリガーを引いた。

 艦載機と違ってロックオンシステムはないし、また撃ち出されるのはレーザーなので基本やつの磁力操作の影響は受けない。ましてや今、ウルトラマンエースを締め上げることに最大限集中しているエレキングに、バリアーを張ることなど頭の片隅にさえなかった。

 

「当たれぇぇぇえええええ!」

 長門の思いを乗せた、通常のレーザーの50倍の威力を誇る一筋の光はーーー

 

 ーーー次の瞬間、エレキングの片角を完全に破壊していた。

「アアァァァァアア!!」

 深海棲艦の声で、絶叫をあげるエレキング。やつの電流、締め上げる力は、一瞬だが確実に弱まった。

 今だ!とエースは、自身の体から瞬間的に高熱を発する技・ボディスパークで尻尾の拘束から逃れた。

「キィィイイイイイ!!」

 エレキングの咆哮とともに、再び締め上げんと、尻尾がエースに向かってくる。しかし、落ち着きを失った攻撃の軌道をエースは完全に見切っていた。

「トァァッ!」

 大地を蹴って素早いジャンプ。攻撃をかわしつつ、空中高くで自身の身をひねり、そして伸びきった尻尾に向けて放つは…

 

「バーチカル・ギロチン!!」

 両手を縦に大きく広げ、撃ち出された巨大な縦の光のカッターが、エレキングの尻尾を根元からぶった斬る!

 さらにエレキングの正面に着地したエースは、間髪入れずに次の技を放った!

 

「ホリゾンタル・ギロチン!」

 先程とは逆に、エースが両手を横に広げると、ホリゾンタルの名の通り、水平の光の刃が放たれ、そしてそれはエレキングの残っていた片角を、小気味よい音を響かせて斬り飛ばした!

 もうバリアーも、締め上げ攻撃も出来ない。今こそ、奴を倒すチャンスだ。

「提督!」

「あぁ、分かっているさ!」

 そして数秒後、提督の力強い声が通信機から響いた。

 

「艦隊に告ぐ!

 総員、ウルトラマンエースを援護せよ!

 繰り返す!総員、ウルトラマンエースを援護せよっ!!」

「「「「了解!!」」」」

 

 角と尻尾を失いながらも、エレキングはまだこちらに向かってくる。しかし、エースの正義の鉄拳が、町への進入を許さない。さらに、

「今までの鬱憤、晴らさせてもらうデース!」

「バリアーのないお前なんか、弱すぎるんだっっ!」

「全機、突撃!ウルトラマンエースの援護に回ってください!」

 一度エレキングが攻撃をしようとすれば、それを察知した艦娘たちからの弾幕が襲いかかる。残りエネルギーの少ないエースを、少しでも有利な状況にしよう、誰もがそう胸に抱いていた。さらにはエース、彼女たちを支える町の人たちの声援。

「頑張れ!そこだ!」

「頼む!やっちまえー!」

 その声援は、エースに、艦隊に大きな力を与えた。

「マルチ・ギロチン!!」

 エースの異名は複数存在する。先述の「光線技の名手」の他、有名なものでは「ギロチン王子」なるものもある。エースの使う光線技の中でも、特に威力が高いのが、斬首死刑の「ギロチン」と名につく切断技シリーズで、この異名はここから来ている。どんなに頑丈な相手でも、ギロチン技を喰らえば、命中した部分がたちまち斬られてしまうのだ。

 このマルチ・ギロチンも、言うまでもなく強力なギロチン技の1つ。小型十字型の光のナイフが、エースの頭部、両手先、みぞおちの辺りから計4つ放たれる。正確な狙いのもと、光のナイフはエレキングに命中し、その身の装甲、そして胴回りと手の砲台艤装を全て剥ぎ取ってしまった。

「クゥッ!オノレェェェエエエエ!!」

 激昴するエレキングは、自身の力を全て口に集め、最大パワーで三日月型光線を放つ構えに入った。しかし、その隙を逃すような艦娘たちではない。

「今だ!ウラー!」

「やっつけちゃうんだからっ!」

「砕け散れっ…!」

 無数の砲弾が、エレキングの口へと撃たれる。エネルギーをためにためているエレキングの口に、これが命中したらどうなるか。

 パンパンに膨らませたゴム風船に針を指すことをイメージすればいい。過去の実戦例には、Xioのワタル隊員が、攻撃のタメ動作最中のグリーザに、スペースマスケッティを突っ込ませたことがある。

 もうお分かりだろう。

 命中した砲弾は、まず口の中でもどこでもぶち当たって爆発する。そしてそれが、ためられた膨大なエネルギーと反応を起こし…

 

 ズドーーーン!!

 

 それをも巻き込む大爆発を起こした。当然口の中はボロボロ、もう光線を撃てるわけがない。

 つまり、今この爆発をもって、エレキングは完璧に丸腰になった。しかし、エースは容赦など一切しない。

「エースリフター!」

 エレキングを掴むやいなや両手で担ぎあげ、上空高々と投げ飛ばす。そして…

 

「サーキュラー・ギロチン!」

 左右の腕で描いて作った、X字形の光の刃が勢いよく放たれ、上空のエレキングに命中。たちまちその刃によって、エレキングの体は四分割されてしまった。しかし、卑劣かつ強力な相手に関しては、エースはその破片さえ残すことを許さない。

 体を腕とともに左後方に大きく捻り、戻す反動で両腕をL字型に組む。今、全ての艦娘たちの攻撃とともに、エースの最も得意とする、とどめの破壊光線が放たれる!

 

「メタリウム光線!!」

 空を彩る、鮮やかな七色の光の筋。まるで流れ星のような砲弾をまといながら、エレキングに一直線に命中したそれは、1発でその体の破片全てを焼き尽くし…

 

 ドカァァァアアーーーン!!!

 

 轟音とともに、勝利を示す花火を打ち上げたのであったーーー




今回も読んで頂きありがとうございます!

評価や感想、頂けると励みになります、よければお願いしますm(_ _)m

また次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

受け継がれる願い

とうとう用務員長門さん編、完結です。

今までどうもありがとうございました、
そしてこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m

では本編どうぞー。
いつもより結構短いです。


 いつの間に増えたのか、たくさんの人たちがエースを見上げていた。全員が、この戦いを見守っていた町の人たちだ。

「エース…」

 戦いが終わった後こそ、歓喜し、雄叫びをあげていた彼らは、不思議な静けさに包まれていた。そんな彼らの方へ向き直り、エースは言葉を紡いでいく。

「町のみなさん。そして、鎮守府の艦隊のみなさん。

 あなたたちの声援、そして頼もしい援護のおかげで、私は勝利を掴むことができた。この勝利は、私1人ではなく、みなさんと共に得た大きな勝利だ。本当にありがとう。」

 その言葉一言一言に、貫禄、重みが感じられる。

「しかし今回のことがあったからには、おそらくこれから同様のことがいつ起こるかも分からない。」

 警告するエース。それに返したのは、いつの間にかここに来ていた提督だった。

「大丈夫です。我々全員、全力でこの町を守っていく覚悟です。」

 力強い声。他の仲間達も頷き返している。

「提督よ、よろしく頼むぞ。」

 エースはそう提督に告げると、今度は戦いを見守って、声援を送ってくれた町の人たちの方を向く。

「この町のみなさん。

 きっと今、事態が急速に展開し、おそらく戸惑っていることだと思う。不安や恐怖に怯えている者も、決して少なくはないだろう。

 しかし、それでも、そしてこんな時だからこそ、私はあなた方に、伝えたいことがあります。」

 エースはそう前置きし、ゆっくりと自分のメッセージを伝え始めたーーー

 

 ーーー「優しさを失わないでくれ。

 

 弱いものをいたわり、

 互いに助け合い、

 

 どこの国の人たちとも

 友達になろうとする気持ちを

 失わないでくれ。

 

 たとえその気持ちが、

 何百回裏切られようと。

 

 それが私の…変わらぬ願いだ。」

 

 かつて最強超獣ジャンボキングに打ち勝ち、地球の子供たちへと伝えた言葉。

 卑劣極まりない人間によって、自信を、優しさを失いかけていた弟にかけた言葉。

 そして私・長門、吹雪の心を今も支え続けている言葉。

 そのまっすぐな言葉は、レイの心にも、そして町の人たちの心にもしっかりと響いた。そう断言できた。

 それを聞いた町の人たちが、涙を流し、エースに惜しみない拍手を送っているのだから。と、

 

「少し、いいですか」

 人混みをかき分け、一人の男がやって来た。彼の姿を見た人たちは、素直にその呼びかけに応じ、男に道を通した。

「町長…?」

 そう、この町の町長である。彼はウルトラマンエースの前に出て来ると、エースを見上げながら話し始めた。

「…ウルトラマンエース…覚えていますか?

 1973年、私がまだ幼く小さな子供だった頃、あなたと、最強超獣ジャンボキングの戦いを、近くで見ていたことを」

 …え…!?

「その時私は、初めてあなたのその言葉を聞きました。忘れかけていた優しさを、私の心にずっと留めさせてくれたのは、他でもない、あなただったのです」

 町長…まさか…

「あなたには、本当に感謝しています。あの日から、私にも色々なことがありましたが、優しさを忘れずにここまで生きてこられたのは、あなたのおかげです。

 だからこそ、あなたに、あなたの目の前で、誓いたいと思います。

 この前、危険を冒してまでここに来てくれた存在…確か、レイさんと名付けられたそうですね、こちらに来てくれますか?」

「私、ですか?」

 レイは目を丸くしている。

「レイ。一緒に、行こう」

 私は驚きから抜け出せきれていないレイの手を取り、町長の方へと歩いた。

「町長、さん…」

「レイさん。

 私は、この町の町長、ひいては1人の人として、君をこの町に歓迎する」

 レイの顔が、一気に明るくなった。

「君の返事を、聞いてもいいかな?」

「はい…!」

 レイの見せた、これまで一番の太陽のごとき笑顔、その口からの返事は…

「町長さん、町の皆さん、これからよろしくお願いします!」

 ハッキリとした大きな声、レイの決意が響いた。

「ありがとう、本当にありがとう…!」

「こちらこそです…!」

 固い握手を交わす2人。周りの町の人、そして艦娘たち、提督、全員が祝福の拍手を送った。

 そして、町長はウルトラマンエースを見上げる。

 

「私たちは優しさを忘れず、これからも彼女たちに接していくことを誓います。」

 それを聞いたエース。顔の表情こそ変わらないものの、ゆっくりと1つ、その決意を見届けたかのように頷いた。

「とてもいいものを見せてもらった、町長よ。

 私はこれから光の国にこの事態を報告しに行くが、私の心は、いつも君たちと共にある。

 光の国から、ずっとこの町を、この星を見守っていくことをここに誓おう!では諸君、さらばだ!」

 エースの言葉に、再び拍手が起こる。

「トァァッ!!」

 エースは天を向き、遠き空の果て、光の国へと旅立った。我々は見えなくなるまで、彼を見送った。

「エース!ありがとうー!」

 彼が飛び去り、見えなくなったころ、夕焼け空の同じ方向に、一番星が輝くのが見えたーーー

 

 ーーーあの後。

 レイは正式に鎮守府に迎えられ、町の、鎮守府の一員となった。

 私の仕事を手伝ってくれたり、色々とこなしてくれるとてもいい仲間となったのだ。

 町の人たちも、相変わらずの優しい接し方をしてくれている。本当に、胸が熱いな…。

 

 時々、レイを狙ってだろうか、鎮守府に敵襲が来ることもある。しかし、仲間も増え、さらに強くなった我々は決して負けない。

 私も、エレキングとの戦いから使い始めた新兵器ーーーあの小型端末がある。ちなみに、あれはスマホのようにあるアプリを起動させ、過去の防衛チームの大小様々な銃火器を即座にその場に転送してくれるという機能があるスグレモノだ。Mydoのテレポーテーション技術が採用されているとかなんとかだが、詳しくは知らん。

 ただ、私もこれで少しだけ、守る力を得られた、というのは嬉しかった。

 これからも、用務員として、そして1人の艦娘として、この星を守り抜いて行こうと思うーーー

 

 

 

 ーーー光の国

 

「久しぶりね、エース…いえ、星司さん」

 

「夕子…光の国に来ていたとは…」

 

「ふふ、ゾフィー隊長さんから、そろそろエースが戻ってくる頃だろうって連絡を頂いたの」

 

「そうか。あとで兄さんにも、感謝せねばな…ところで、なぜ光の国へ?」

 

「私は月の人。これでも、潮の満ち干きを通じて、地球の海のことは少しは知っているつもりよ。それで今回、エレキングが地球に現れたのよね…それも、いわゆる深海棲艦と融合した、悪魔のような個体が」

 

「ああ。艦娘たちの援護がなければ、私も危なかったかもな…」

 

「お疲れ様、星司さん。それでね、まだ敵の…黒幕の正体は分からないけど、敵そのもののことについてなら、分かったことがあるの。」

 

「なに…!?」

 

「あなたももしかしたら、少し想像してたかもしれない、そこの所は申し訳ないけど…

 まず、恐らく今回の一連の事件の敵は…ヤプールではないわ」

 

「…怪獣と生物の融合は、ヤプールの得意分野のはずでは…?」

 

「確かにそれもそうなのだけれど、地球はメビウス…ミライ君のときの技術によって、異次元からの侵略はシャットアウトされているわ。それに今回、ヤプール独特のエネルギー波長は出なかったの」

 

「そうか…」

 

「敵が何にしろ、組織的行動を取っていることは明らかね…」

 

「うむ…ありがとう、夕子。

 一体、地球に何が起きているんだ…?」

 

 笑顔は太陽のごとく…

 用務員長門編 終

 

 

 つづく




というわけで、改めて本当にありがとうございました!

評価や感想、よければお願いしますm(_ _)m

また少し休んでから、続きを書き始めたいと思います、その時はまたよろしくお願いしますm(_ _)m

ではまたいつか!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。