SEED×00:Extra_Contents (MS-Type-GUNDAM_Frame)
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漂流者の同行者

アンケートでマリューさんとラクスさんの刹那とのカップリングみたい!との連絡を頂きました。
これは番外編で、本編の時系列の合間にif展開のこの話が挟まっているイメージです。
なので、最初はヒリング・ケアがなぜか一緒にいる展開から書いてみました。
本編が進めば、いろいろなヒロインが出せるものと思います。

応援よろしくお願いします。


「ここは・・・」

 

いつの間にか気を失っていた。うっすらと開けた目から入ってくる光は、もう久しく眺めることのなかった()()の色だ。

 

(・・・ここはいったい)

 

いわゆる寝ぼけている、ような状態も一瞬で、意識の覚醒と同時に刹那の脳裏に記憶が走る。

上半身を起こして、あたりを見渡したところ、どこかの海岸のようだ。

 

(俺は、外宇宙で量子ワープを行おうとしたはずだだが、今ここはどう見ても地球のどこかだ。クアンタの中ですらない・・・)

 

刹那とクアンタは、脳量子波で強く結びついている。よって理論上は、それこそ宇宙にあっても感じ取ることができるはずなのだが、刹那はクアンタの存在を感じることができずにいた。状況を整理しようとし始めた刹那に、背後からいきなり声がかかった。

 

「お目覚めじゃないさ!」

 

(この声は!)

 

「ヒリング・ケア!」

 

かつての仇敵、リボンズ・アルマークと同じ遺伝配列を持ち、ガデッザに搭乗して何度も刹那たち(ソレスタルビーイング)と戦ったイノベイド(人造人間)の一人、ヒリング・ケア。

最終決戦時に、アレルヤとハレルヤに機体を破壊され、戦死していたはずだったが

背後を取られ、刹那は胸元の拳銃に手を伸ばしていた

 

「貴様!生きていたのか!」

 

誰か仲間を殺されたわけではないが、イノベイドはティエリアを除き皆刹那たちの敵だった。

そもそも、イノベイドは人類を下等種として見下していた。

 

「落ち着きなさいよ。アタシはやり合う気は無いわ」

「人類を下等種と見下しているお前らがか?」

「でもキミ、純粋種になっちゃったんでしょ?」

「なぜそれを・・・」

「見てたからよ。あの二人組に殺されてからずっと」

「リボンズ・アルマークは」

「死んだわね」

「・・・」

「ショックだったわ。やられちゃったのも、結局リボンズがアタシを見てくれることはなかったことも。死んでも死にきれないってこのことかしら。でもね、アナタの戦いぶりを見ているうちに、アタシわからなくなったの。アタシらはイノベイド。人類よりずっと優れているけれど、所詮進化した純粋種のイノベイターには及ばない存在。ならアタシらは何のために生まれてきたのか?リボンズは『人類を優れた僕たちが導く』って言っていたけど、それも嘘だった。それでね?アナタが外宇宙に行くとき、ついて行こうって思ったの。アタシらの先に進んだアナタを見ていれば、何かアタシが生まれて、アタシがアタシであった意味が見つかるかもしれないと思ったから。アナタ幽霊に憑かれてたのよ?笑えるわね。それで、アナタが量子ワープを試みて・・・なぜかここに、アタシは体を持って、アナタはクアンタを無くしてここにいたの。アタシが目を覚ましたのはアナタの15分くらい前よ。他は、なんでこんなことが起こったのかはアタシにもわからない。ただ、ここはアタシたちがもと居た地球ではないみたいだわ。」

「どういうことだ」

「ここ、かなり緯度が低いのに軌道エレベータが見えない。それに、前の世界ほど脳量子波が感じられないもの。」

「つまり、ここは異世界だということか」

「そうなるわね。驚かないの?」

「死んだはずの者がいることに比べればな」

「アナタ冗談なんて言えたのね」

 

刹那は、脳量子波の干渉で先ほどのヒリングの話に嘘が含まれていないことがわかっていた。

そして、以前ほどの敵意を抱くことができなくなっていた。

 

「これから、元の世界に帰る手段を探さなくてはならない」

「多分無理よ」

「なぜわかる?」

「やあねぇ、アナタはわかってるんでしょ?お得意のイノベイターの勘ってやつで」

 

そう言われれば、確かにその通りだ。少なくとも今は、帰ることができない・・・ような気がする。

ならば、当面の生活基盤を考える必要がある。しかし、

 

「俺はこの世界でしばらく生きていくための基盤を探す。だが、お前はどうする?」

「付いていくわ。だって、まだ答えが見つかってない」

「そうか」

「なんだったら、今度はカラダもあることだし、()()()してあげるけどぉ?」

「お前たちマイスタータイプのイノベイドが無性に作られていることはティエリアが言っていた」

「このカラダ、女の子よ?」

「?」

「さっき確かめたら、カラダが女の子のカラダだったの」

「必要ない」

 

とりあえず、あまり仲良くはなれそうにないと思いながら刹那は一番近くに見つけた町を探して歩き始めた。

頬を少しだけ染めているヒリングに、本人さえも気づいていなかった。




キャラ再現が難しいなぁ・・・
一応一人称は調べて書きました。
最近ガンダム00見て思うことはヒリングかわいいな!
あの子詰め物で乳作ってアローズの男性士官誑かしてたらしいですね。けしからん。

とりあえず、恋愛難しそうだと思いました。
所詮童貞じゃコンチクショウ!

なんだかあとがきがさみしいので昨日のオルフェンズの感想一部を添えておきます。

ちょ、オルガァァァァぁぁァぁ!

以上です。

9/13追記
憑いていく→付いていく
に変更しました。ヒリングは肉体あります。


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帰らなかった者との再会

ご希望を頂いたので久しぶりに更新。
ニール・ディランディとの再会です。


「大きくなったじゃねぇか」

「ロックオン・・・なのか?」

 

正体不明の世界へ渡って、最初に目を覚ました時、ベッド横に座っている男の顔を見て一瞬で意識が覚醒する。

 

「ああ、もちろん。それ以外の誰に見えるんだ?」

「弟ではないのか?」

「会ったのか」

 

ライル・ディランディは、二代目ロックオンストラトスとしてソレスタルビーイングに所属していた。それ以前にニールは死亡しているため当然そのことは知らない。刹那は、ニールが死んでから起こったことをぽつりぽつりと、段々足早に話していった。

 

「へぇ、宇宙人がねぇ・・・それで、お前はその宇宙人と融合して、宇宙人と融合したガンダムに乗って外宇宙を周ってた・・・と」

「ああ、そういう事になる」

「ガンダム馬鹿だとは思ってたが、もうそれほとんど体がガンダムみたいなもんじゃねぇか」

「いや、まだ俺はガンダムではない」

「そうかい」

 

刹那の言う「ガンダム」という言葉にどれほどの意味があるのか、ニールには今際の際まで理解できなかったが、今なら以前より少しわかる。

 

「紛争根絶には至らなかったから・・・か?」

「ああ。結局、あれは外部の圧倒的な敵に一致団結したに過ぎない。イノベイターなら・・・いや、お互いにイノベイターでなくとも相互理解できる世界を作るのがガンダムだ。俺は、まだそこまで至ってはいない」

「成長しても理想の高さは変わらないねぇ・・・」

 

それは、どう考えても実現不可能な世界だが、刹那はその理想への到達をあきらめていない。

 

「まあ、お前もこっちの現状を把握するとしようじゃないか」

 

話を要約すると、ここはオーブのヘリオポリスというコロニーで、宇宙進出の規模は元の世界と比べるまでもないがMS技術はそうでもないこと。

ナチュラルとコーディネーターで戦争していること。

刹那の戸籍は、ニールがソレスタルビーイング時代の技術で偽造していること。

ある程度は稼いでいるが、刹那も生活するには働いてもらう必要があること。

 

「ある程度は把握した。労働することに異存はない」

「まあ人に働かせるようなタイプじゃないよな」

 

こうして、刹那は近所の自動車工場に就職し、キラと出会った。

 

以下、ダイジェスト

 

「おい、刹那!単機で突っ込むな!」

「フラガ大尉、戦闘機一機で戦艦に挑むなよ!」

「キラ、お前はそのままでいてくれ。無茶はすんなよ?」

 

はあ、なんでこんな貧乏くじばっかり・・・いつの間にかおかんとか言われるしよ・・・

 

※ロックオンのサポートでクルーゼさんは二話でチリになりました。

 

「ニール、この機体の改修案なんだが・・・」

「おう!射撃訓練やろうぜ!」

「すみません、射撃のコツを・・・」

「胃に穴が開きそうだ・・・」

 

みんな俺に頼みごとをし過ぎだ。

 

「ブリッジの射撃管制代わるぜ。目標、敵MS部隊!」

 

ザラ隊は壊滅しました・・・

 

オーブねぇ・・・きな臭い国だが、人間を区別しない考えは立派なもんだ。

は、俺がテストパイロットに呼ばれてる?一目見た時から・・・ってなんだそりゃ。とりあえず行けばいいんだな?

 

※プレイボーイなのでうまくかわし切りました

 

アラスカではレンジにかけられそうになるし・・・

 

「おい刹那!それは!」

「ああ、ZAFTの最終兵器、ジェネシスだ」

「これがラストミッション、か」

「ああ。これの破壊で、紛争根絶へ一歩近づける。行くぞ!ロックオン!」

「おう!」




ロックオンは口調が難しい・・・
というか腐女子受けのよさそうな二人だなぁ・・・
でも好き。なお、本編とはまるで違う未来へ進んでいます。

・クルーゼ初登場で退場
・アルテミス未崩壊
・バルトフェルド死亡
・ザラ隊壊滅
・クライン派が乗っ取ったジェネシス破壊ミッション

ソレスタルビーイングメンバーは強すぎて話が終わるということが分かりました。


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終わりの始まり:グロテスクver

ご要望があったグロありverです。あまり出来は良くないですが。


それは、大きな揺れだった。刹那の頭に響く残響は、焼かれる人々の悲鳴だった。

 

「どうか、救助の手伝いをお願いします。モビルスーツを救助に使えば、重機を入れるよりも余程良い」

 

深く頭を下げるアズラエルに、刹那は分かったと短く返事をして、走りエレベータへと向かった。それに茫然としていたキラが気付き、アズラエルに行ってきますと宣言して後を追った。小隊のメンバーは、敬礼をして後を追う。

 

キラは、漠然と惨劇を想像しながら加速度に体を揺らした。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

第三層でモビルスーツを起動した一行は、急ぎ二層へと向かった。昇降口付近は悲鳴と熱気で溢れていたが、モビルスーツが救助に来たと大きな声で誰かが叫び道が開けた。

 

入り口は延焼を防ぐために閉じられ、仄暗い炎に照らされた第二層が地獄の入り口のようにキラを出迎えていた。

 

カメラを通して目の前に広がるそれは、キラの今までの人生で、最も凄惨な光景だった。テレビドラマのようにとくとくと止まらない血が床を浸しているわけではない。人は焼かれ、赤い肉を剥き出しにしたものも、深い切り傷の奥に白いものを晒す者も、一様に大小様々なうめき声を上げて助けを呼んでいる。

それとも、命があるだけにまだ良いと言えるだろうか?大きな瓦礫の周囲に足や手、毛のついた破片が散らばってもいたのだから。

床に散らばる赤く色づいた形を知っている何かを、キラは必死に無視して生存者を探した。

 

始め、キラは手当たり次第に息のあるらしい人を集め、ストライクの掴んだ冷えたコンクリート板で負傷者を運んだ。

しかし二回目に臨時救護所へ人を運んで来た時、先ほど運んできた負傷兵の一人が袋に入れられるのを見た。

三回目には袋が幾つか増え、そして何より自分に礼を述べて涙を流す負傷者たちが辛かった。

 

四回目に、刹那が運んできた人間は殆ど袋に入れられていないことに気が付いた。それが意味することは・・・

キラは刹那に尋ねた。

 

「ソランさん」

『どうした』

「傷が重い人たちは、運ばない方が良いんでしょうか」

『・・・俺は、少なくとも救える可能性が高い人間以外も救いたい。だが、それだけが正解じゃない』

 

周囲には火がじわじわと燃え広がり、モビルスーツのハッチを開ければきっと人の焼ける匂いが漂っているのだろう。

 

『俺が運んだ人間が死んでいないのは、単純に運だ。俺も手当たり次第に・・・・いや、急ごう。少しでも多く助けたい』

 

救出作業に戻ろうとした刹那は、キラにもう一言付け加えた。

 

『全ての人間を救おうとすることも、決して間違いではない。生と死は決して等価ではないが、死ぬ人間に救いが無くても良いわけではない』

「そう・・・ですか」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

その後の何度かの往復で、見付かったほぼ全員と運よく瓦礫の中から見つかった数名を回収し、モビルスーツ部隊は洗浄されてドックへ戻された。

半強制的に休憩を命じられ、宛がわれた士官の部屋で座って床を見つめるキラに、刹那は何も言わなかった。

どう話しかければいいのか。そう思案する刹那に、キラは俯いたまま話しかけた。

 

「皆を助けたいと思いました。でも・・・それは傲慢だったんでしょうか?」

「そうかもしれないな。俺も、強くなれば世界から争いを無くせると、本気で思っている時期があった」

「ソランさんにですか?」

 

言われてみれば、想像を絶する生身の強さや精神の強さは、尋常ではない。それは、世界を救うとかそんなレベルの無茶で培われたのだろうかとキラは想像して諦めた。そして何より、間違っていると思った。

 

「考えてみれば分かることだが、そんなことは不可能だと・・・お前も、今日実感しただろう?」

 

今日、キラは誰よりも強かった。それでも、あの惨状だ。

 

「キラ、俺たちは神ではない。救えるものには限りがある。それでも、俺たちは努力することをやめてはならない」

 

悪意をもって人が事を為すとき、形振り構わぬ人間は体裁など気にしない。恨みなど気にしない。卑怯などと思いもしない。特に、自分が正しいと確信している人間ほどそうだ。

 

「何もしない事と何かして失敗したこと・・・結果を見れば同じことだが・・・」

「僕は・・・死んでほしくなかった・・・それを叶えるためには何でもしたいと思った・・・思ったのに」

 

医学を学んでいれば救えただろうか?いや、いや、きっと手が足りない。手から零れ墜ちるものはどうやっても存在する。

 

「だから・・・仲間を頼れ。どんなに強くても、個人には不可能な事がある」

 

そう言った刹那の脳裏に浮かんでいたのは、かつて決闘を挑まれたユニオンのエース、刹那に道を作り消えたあの男だった。

 

「かつての敵が、俺のために命を投げ打った事すらあった。立場の違いから対立することがあっても、人間は・・・分り合えるのかもしれない」

「今度命を狙わない敵がいたら思い出しますよ」

 

くすりと笑ったキラを見て、これなら大丈夫だろうと刹那は心の中で一息をついた。

 

おりしもそこへ、図ったかのようなタイミングでコール音が響いた。

 

『お二人とも、アークエンジェルの無事が確認できました』

 

二人は顔を見合わせると、急いで指令室へと向かった。




どちらにしろ44話につながる形になります。
負傷者の描写は昔聞かされた原爆の話を参考にしました。


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番外編:アズラエル(魔人)の生まれた日

現実逃避の成果の二本立て、一本目です。お確かめください。


負けた。

一人で挑み、負けた。必勝を期して人数に恃んでも、やはりだ。

自分の家は、まあまあの金持ちだ。だから、欲しいものは大抵叶ったが、それだけに我慢ならない。自分より上の存在が。

 

10人ほど仲間を集めて畳んでしまおうとしたが、憎くきコーディネーターは歯牙にもかけないほどに一蹴し、おまけに侮蔑の目までくれていった。

強かに打ち付けた背中に痛みを感じながら、アズラエルの心中は溶岩のように赤熱していた。

 

何が悪かった?一度跳ね飛ばされた程度で方々に散っていくあの根性無しどもか?それとも僕をコーディネーターにしなかった両親か?

 

凡人よりはよく回ると確信がある頭脳は、唸りをあげて答えを探していた。そうして、一つ確信を抱く。

 

いずれにせよ

 

「このままじゃ済まさない」

 

苛立たし気に舗装された地面を叩いた。拳が少し切れて血が出るが、全身からアドレナリンを立ち昇らせるように気炎を上げるアズラエルには関係が無かった。

 

少し時間が経ち、ひとまず帰ろうと考えたアズラエルは、メインストリートのある店の前で立ち止まった。

 

「銃器店・・・」

 

思えば、なぜ自分は素手などにこだわったのだろうか?

 

勝利を確信したアズラエルの幼い顔が、狂喜に歪む。心に触れるものはあったが、これで勝てるとプライドを刺激された歓喜の前にはあまりに小さかった。

ふらふらと道の端に寄り、人よりかなり多くの額が入った財布を手に銃器店の扉を開けようとしたとき、肩を掴まれた。

 

「あー・・・驚かせて済まない。道を聞きたいんだ」

 

そこそこに年を経た人物に、アズラエルには見えた。

 

「ここに行きたいんだ。頭は良い方だからね、一度言ってくれれば分かると思う」

 

今時珍しく紙の地図を持った男が指さしていたのは、アズラエルの家にほど近い場所だった。

 

「そこは、僕の家だから案内します」

「おお!それはうれしいね!実をいうと一人は寂しかったし、道連れは欲しかったんだ」

 

まるで知らない人間を案内するというのは、アズラエルにもよいことではないと思えた。だが、だれにでも有るものではない、何かがあった。

カリスマというのか、きっとこういうものなのかとアズラエルは心の中で呟いた。

 

男はとても良く喋ったが、その話はアズラエルを飽きさせなかった。

男が打ち込んでいたスポーツ、学業、研究、そして一番行ってみたかったと言う宇宙の話。

スクールでは見たことが無いタイプの人間で、小難しそうで中身のない話を延々と続ける教師や、馬鹿のように騒ぎまわっている同級生とも違う。簡単なことしか喋らないのに、その言葉には十や二十では足りないほどの意味が籠っている・・・ような気がする。

同時に、寂しさもあるような言葉だった。

 

いつも通学する時にバスで通り抜ける通りを曲がり、アズラエル家が所有しているマンションのエントランスへ入る。

 

「どうやら君はとてもお金持ちらしいね?」

「僕じゃない、僕の親が金持ちなんだ・・・ねぇ、そろそろうちに何の用なのか話してくれませんか?」

 

はは、と男は笑った。

 

「そうだね、それを話さなくては僕はただの不審者だ・・・実はね、君の両親と商談に来たのさ」

「商談?なんの?」

 

今まで、両親が商売と名の付くものを家に持ち込んだことはなかった。おかげで何をしているのかさっぱりなのだが。

 

「そうか、君はご両親の仕事を知らないのか・・・いや、僕が言えることじゃないね。君の両親が君を驚かせ、君が今まで以上に尊敬するという機会を奪うわけにはいかないだろう?」

 

充分尊敬はしている。そう言葉が喉元までは来ていた。周りの人間と比べれば、自分の親が金持ちで、それを維持しているのだ。すごくない訳がない。

 

「いやいや、君が思っている以上にすごい事をしているはずさ。なにせ・・・ああいけないね、こんな年になっても喋りたがりという癖が抜けないなんて・・・完璧な人間なんて嘘っぱちさ」

 

最後の小さな呟きは、アズラエルにはしっかり聞こえていたが敢えて何も言わなかった。自分でも、そう思っているところはある。

 

「さて、守衛さんが風邪をひく前に入ろうじゃないか。ところで、お土産に我が人生の全てであるクルミ入りスコーンがあるんだが、君も食べるかい?」

 

両親に驚きとともに迎えられた謎の老紳士は、書類を取り出して口を開こうとして制止され、あっという間に夕食になっていた。スコーンをもらったのは寝室に戻る直前だったが、結論から言うと食べ過ぎて眠れなくなった。

 

夜半に、トイレに行こうとしたアズラエルは、客間から明かりが漏れていることに気づいた。

 

「おや、そこにいるのは・・・」

 

足音で気が付かれたのか、ドアが開き、そこにはスコーンをかじる老紳士が、ガウンを羽織って立っていた。

 

「入るかね?」

「先にトイレ行きます」

 

すぐに用を足したアズラエルは、大急ぎで客間へ戻った。

 

「ふむ、スコーンはどうだったかな?」

「あんなものは初めて食べました」

 

それは良かった、と、男は笑った。

 

「実を言うとね」

 

自分で淹れた紅茶を啜りながら、方眉を上げている味は悪くないらしい。

 

「君のことは、肩を掴む少し前から見ていたんだ」

 

写真で見て先に知っていたんだよ、と、笑った。笑っている顔は、なんだかずっと若く見えた。だが、納得がいかない。

 

「見ていたなら・・・」

「ああ、しかし、君はどうだい。最終的には君一人が何度も向かっていったが、最初は10対1だ。あれでは、助けるというよりはいじめじゃないか」

「でもっ・・・あいつは」

 

どこか、分かっていた。きっと子供っぽいとか、そういうことが当てはまるんだろうと。それでも、胸の奥に燻る火が収まらない。

 

「負けてられないんだ!あいつがいる限り僕は1番になんて・・・」

「1番がそんなに大事かい?」

「そうさ!」

 

男は、またふふっと笑った。

 

「帰りに、僕が学生時代は本気でアメフトをやっていたと言っただろう?」

 

選手時代の写真まで見せてもらった。確かに強そうだと思ったが、今それと何の関係があるのか。

 

「実は、オリンピックにも出たんだ」

 

それは、驚きだった。今度は自慢かと鼻白むが、もう一つスコーンを投げて男は続けた。

 

「まあ聞いてくれ。僕も若かった・・・僕は世界で一番だと思っていてね、当然勝てると思っていたんだが・・・」

「勝てなかった?」

「いや、良いところまではいったのさ。だが・・・あいつら、強かったなぁ・・・きっと総合でなら負けてないのかもしれないけど、一つ一つの競技では誰か一人は鬼のように強くてね」

 

銀どまりだと、紅茶を一息に飲み干して言った。

 

「君の理論で行くと、意味のないメダルだが・・・」

 

アズラエルが齧っている十個目のスコーンを指さしながら、満足そうに微笑む。

 

「そのスコーン、それはね、俺が宇宙へ行ったときにある女性に教えてもらったんだが、どうだ?」

「おじいさんが作ったんですか?」

「そう。奴ら金メダリストには負けたが、これだけは奴らの内の誰にも負けない自信がある!俺が勝てる一番が何かあれば、それでいいのさ」

 

だから、人間は他人を認められる。そう締めくくって、スコーンを一つ渡して男は立ち上がった。

 

「君は、彼を認められると思うかい?」

「分からない」

 

きっと、もう眠れということなのだとアズラエルは思った。

 

「でも、昨日までよりはまともに話しかけられると思う」

「ああ、それでこそ彼も僕も、生きる価値が有るってものさ」

 

ありがとう。アズラエルは心から頭を下げた。なにやら、心が軽くなったような気がする。

 

「君は、大きくなったらご両親のお手伝いをすると良い。きっと、人類の多くから感謝される壮大な事業になるはずだ」

 

机の上に置かれた資料には、新型コロニー増産計画書と書かれた封筒が置かれていた。それで、大体は分かってしまった。

 

「きっと、世界一の大金持ちになります」

 

そう言い切って、アズラエルは部屋を出て、考え始めた。きっと仲直りしよう。そして、いつかは部下にして世界一の企業を作るのだと。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

翌日、昼食を前に男は空港へ送られていったらしい。両親も。仕事でしばらく宇宙へ向かうと言う。

 

「大丈夫かしら?なにも困ったことはないの?」

 

母親の心配そうな顔に、アズラエルは自信満々に返した。

 

「大丈夫。今なら学校中のみんなを友達(部下)に出来そうなんだ!」

 

それを聞いた父には何か感じるものがあったらしく、頭をなでながら褒められた。

 

「それでこそアズラエル財閥次期党首!留守は任せたぞ!」

 

今なら、本当に何でもできそうな気がする。

 

デトロイトの学校が、伝説の世代を輩出するまであと数年。それまで、事態は水面下で進行していくだろう。数か月後に、知り合ったかの老紳士が死んだことを聞いたが、アズラエルの成長は全てを飲み込んで進行する。今までも、これからも。




きっと老紳士が誰かは分かりますよね。
はい、後のキャプテンGGです。


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復活のB

待ちに待った・・・?
グラハム・エーカー参加バージョン(ダイジェスト)です!
それでは、ネタ導入からどうぞ。


暗い。そう認識できるという事は、意識が存在していることに他ならないわけだが・・・

明晰夢、と言っただろうか。自分が現実に存在しているとは到底思えないのだ。体が動かないので、まず自己認識から改める。

 

コードネーム、刹那・F・セイエイ。ソレスタルビーイング所属のガンダムマイスター。初期搭乗機体はコードネームエクシア、その後、数機のモビルスーツを使用するも、続く太陽炉搭載型モビルスーツは00ライザーに変わり・・・

 

ここまで記憶を確かめて、気づいた。この記憶を、検証できる外部機器が存在しないのならこの行為にどれほどの意味があるというのか。眠っているものとして、おとなしく身体の覚醒を待つべきなのだろうか。

 

もう一つ、気づいた。意識した途端に、大きくなる時計の音のようにその声は大きくなった。

 

・・・うねん、起きたまえ・・・しょしょしょ・・・少年・・・青年のような少年!・・・はあ、あれから5年。見違えるように成長したなぁ・・・ふふん、もちろん私の君への愛も、この5年で大きく成長している!その証拠、今ここでお見せしよう!

 

「止めろォォォォォォォォォ!!!」

「む、目が覚めたか、少年」

 

此処は何処か。木製の小屋らしいところで、目を覚ました。目の前にいるのは、あの時ブレイヴでELSへ特攻し、死んだはずの・・・

 

「お前は!」

「落ち着き給え・・・まず、状況の把握から始めようではないか」

 

目の前の金髪の男は落ち着いたもので、コーヒーらしい湯気の立つ飲料をこちらへ向ける。どうやら飲めという事らしい。状況から考えて、毒を盛るとも考えられないが・・・

 

「お前は、死んだはずではなかったのか?」

「グラハム・エーカーと呼んでくれたまえ、少年。

ああ、私もあの時、死を受け入れたさ。だが、違った。

乙女座の私には、この異世界という状況、センチメンタリズムな運命を感じられずにはいられない」

「・・・刹那・F・セイエイだ。しかし、異世界・・・?」

 

グラハム・エーカーは、新聞を広げた。一見、それは通常の英字新聞に思えたが・・・

C.E.・・・?

 

「これは・・・」

「その日付なら、コズミック・イラと読むのだそうだ・・・私は、この世界に生を再び受けたのか、それともあの涅槃を前に世界を移ったのか。定かではないが、此処がもとの我々の世界でないことは瞭然だ」

 

今までの得たことのある情報と、掠りもしないような記事が列挙されていることと、死んだはずの人間が目の前にいることで軽く頭痛を覚え始めた。

 

「刹那・F・セイエイ、君はこのオーブ首長国連邦の宇宙コロニー、ヘリオポリスの郊外に突然降ってわいたという訳だ。ここまでで、何か質問は有るかね?」

「俺の・・・クアンタは何処に?」

 

グラハムが、形の良い眉を眉間に寄せた。少し思案して、答えを出したようだ。

 

「君が最後に乗っていた機体の事であれば、見当たらなかったよ。少なくとも私が確認できたのは、パイロットスーツに身を包む君だけだったという訳だ」

「そうか・・・」

 

どうやら、想像以上に厄介な状況にあるようだと、現状認識を新たにしt。

 

「さて、当面の生活なのだが・・・」

「俺は・・・」

「まず、私の給料では君を養うことはできるが・・・好敵手を養うという倒錯的な状況に加えて、私は我慢弱く、落ち着きの無い男だ。いつ諍いが起こるともわからないと来た。しかし、君にこの場所を提供することに関しては吝かではない」

 

話が長いが、要約すると俺は働く必要がありそうだという事だ。

 

「戸籍は、偽造できると思う」

「ほほう!流石はソレスタルビーイングだな!では私の分も一筆頼みたい」

「今までどうやって暮らしてきた」

「日雇いの仕事をこなしていたのだが、まあそれなりには暮らせている。これも、フラッグファイターとして常に鍛え続けた賜物だと言えるだろう」

 

とにかく、書類の偽造だ。本職のエージェントである王留美程ではないが、ソレスタルビーイングの工作員として受けた教育の中には書類の偽造技術も存在した。ともかく、まずはこの世界の法律などを詳しく知る必要がある。

 

「ははは、しかし、まさか死んだ後に君と暮らすことになろうとは。まさに、釈迦でも知るまいとはこのことだな!」

 

早くも、不安だ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

幾月か、経った。

市街地が、攻撃にさらされている。あれが、この世界初のモビルスーツなのか。

 

「刹那・F・セイエイ、君は、あそこへ行くべきだ」

 

そう、グラハム・エーカーは断定した。

 

「この世から争いを武力をもって根絶する、そう言いつつも、君のその在り様は余りに優しすぎる・・・行かねば、君は一生を後悔に費やすこととなるだろう」

「何故、そんなことがお前に」

「分かるさ。私も、君と同じ境地に達したのだから!」

 

グラハム・エーカーの虹彩は、脳量子波の発生を示す金色に発光していた。

 

「凄まじいな、お前は」

「君という好敵手を得たからこそだ!さあ、行こうではないか!あれは、私も腹に据えかねる!」

 

どうやら、根底に人を救わんという考えが深く存在していると、刹那は感じていた。故に、この逃げ惑う人々の恐怖に我慢できなかったのだろう。

それは、刹那にも理解できる感情だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『くそ、なんなんだこいつは!』

『あえて言わせて貰おう。グラハム・エーカーであるとぉ!』

 

試験用に武装を取り除かれ、実体剣の代わりなのか太い角材を持ったジンが、正式な装備に身を固めたジンを圧倒していた。

 

『ふ、身持ちが堅いな。だが、それでこそ崩し甲斐がある!』

 

グラハムの乗ったジンが、背を向けた・・・と、思った瞬間に、敵機は後ろへ突きこまれた角材に持ち上げられていた。

 

「こんなOSでここまで戦うなんて・・・」

「キラ、お前ならここで書き換えまでできるか?」

「多分・・・いえ、やります!」

 

三人が搭乗し、かなり手狭になったストライクのコクピットで、座席が交換された。相当にショックを受けているのか、連合の士官らしい女性は気を失ったままだ。

 

「これなら、撤退くらいはできるか」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ふ、それでこそ!」

「舐めるな!」

 

襲撃してきた4機のGを撃退し、艦内ではシミュレーターによる熱い戦いが繰り広げられていた。今、手の空いた乗員が観戦するほどには歴史に残りそうな名勝負が繰り広げられていた。

 

「引き分け、か」

「流石だ・・・」

「コーディネーターって・・・」

「俺もまだまだかなぁ・・・」

 

激戦は、残る二人のパイロットに深い傷を残したが引き分けに終わった。

 

「はぁ、じゃあ、反応速度をもっと上げればいいんですね?」

「その通りだ、キラ君。しかし、君は優秀だな!」

「そうですか?グラハムさんや刹那さんに比べれば僕なんて・・・」

 

引きずるキラに、グラハムは大笑した。

 

「私とて、一介の飛行機乗りの時に誰であっても負けまいと思えるほどの訓練を積んだ。すべては訓練が解決するとも!」

「それは、確かに真理だな」

「分かりました。僕は、僕の得意分野からもっとお二人に迫って見せます!」

「その意気だ!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「地球への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けた!」

『今度は・・・いや、今度も、生きろ』

「当然だ!」

 

地球へ、降下している。重力に引かれ続けながらも、グラハム・エーカーの操るジンは姿勢を崩していなかった。

 

「やはり、筋は良い・・・だが、若いな!」

『なっ!?』

 

ジンが、回し蹴りでデュエルを地球へ弾き落した。その効果は、戦場から引き離すだけに留まらない。不正なコースを意図的に採らされたデュエルを、失うわけにはいかないとフォローが入る。

結果的に、アークエンジェルに群がる敵消えた。

 

「初めて使った戦法で、それなりに対抗しては見せたか・・・しかし、単機での大気圏突入も可能とは・・・ふふ、ガンダムを思い出すな」

 

ゆっくりと、アークエンジェルの上部へと凱旋した。

 

『今度は、死ななかったな』

「生きるために戦えと言ったのは、君だ」

 

その言葉が、こうして私を支えている、とまでは言わなかった。私の中にだけあれば良いことだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ほう、砂漠の虎」

「知ってるのか?」

「噂だけは。好意に値する男だと思っている」

 

若干、ムウが引いた。

 

「お前、ソッチの趣味もあるのか?」

「ふふ、どうかな?」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「切り捨て、御免!」

『グッ!?・・・一体、何時代から来たんだ君は』

 

強烈な一太刀をもらったラゴゥが、姿勢を崩し、砂の上に四肢を投げ出したように見えた。

 

「街で一度、出会ったと思う。それが縁だったが、さらに時を経れば因縁にまでなったかもしれないな」

『私も大バカだったが、君もじゃないのか?』

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「此処が、オーブの本国か」

「そのようだ。ふむ、あそこの岩場。我々が初めて顔を合わせた岩と似ていると思わんかね」

 

周囲こそ海だが、確かにあのモラリアの岩場によく似た岩があった。

 

「俺は、」

「見捨てるのか?」

「何故」

「少年・・・いや、最早そうは呼べまい。だが、あえて今はそう呼ぼう。君は、彼らを助けたことを後悔する資格があると思うか」

 

その問いに、刹那は答えに窮した。

 

「私は、姑息な真似をする輩が大の嫌いときている。しかし、君は常に自分の道を探し、あまつさえ私に自死を辞めさせたのだ。敢えて言おう。君は、その悩みと自分でぶつかり答えを導き出すべきだと」

「そうだな。忘れてくれ」

「それでこそ、とは言い難いが・・・君は長らく私の愛憎の対象だった。なるべく、私の信じる君であって欲しいと心から願っている」

 

見えない、心のどこかで私はこの少年、いや青年に期待しているのだ。涅槃を超えた今は、それが良くわかる。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「未来への魁は、このグラハム・エーカーが切り開く!」

 

最後の核が、この日炸裂した。ランチャーから正確に計算された弾道をなぞり、寸分違わずγ線レーザー照射装置の一次反射ミラーの中央に吸い込まれる。

薄赤い光が、ジェネシスを砕いた。それは、あの日見たダブルオーの光にも似ていた。

 

「そうか、私も、生きねばならんか」

『グラハム・エーカー!!』

「また生き残ってしまったようだ。これも、乙女座の運命か・・・」




結論。メインの座が刹那からグラハム移ってしまう。キャラが濃すぎる・・・


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