NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 (新名蝦夷守)
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設定集 ※ネタバレ注意
登場人物 下忍篇-終了時


下忍篇が終了時の設定集です。

最初に読まれない方が良いと思います。




主人公

 

羽衣 カルタ(4)下忍

 -羽衣一族の末裔

  二尾又旅・七尾重明の人柱力

【性質変化】火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁・陰遁(幻術)

【血継限界】写輪眼(三つ巴)

【得意忍術】雷遁・纏

 本作品の主人公。

 NARUTO原作を知る平成生まれで、いつのまにか知らぬ間にNARUTOの世界へ。しかも原作開始(うずまきナルト世代忍者学校(アカデミー)卒業)19年前に誕生していた。いつ自分が死んだかもわからず、死んだあと神様にも会わず、チートももらえずと、NARUTOの世界に最悪の三拍子で転生した。はじめは混乱しながらも何故か自分以外の存在が原作を崩壊させていったが、徐々に自分からも崩壊させつつある。

 原作には出てこなかった六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫である羽衣一族の末裔。羽衣一族の者は皆、精強な忍びで忍術、幻術、封印術に長けている者が多い。その中でも仙術の扱いに長けた者が一族を率いることになっている。

 一人称は「ぼく」。心の中や、敵と会話するときは「オレ」になる。

 第3次忍界大戦開戦の3年前に生誕したことにより、戦争にはがっつり動員されることになる。また、初めての人殺しにてテンションが下がっていたがある程度は克服した様子。ただし、敵が子どもだとなるべく殺さないように行動してしまう。

 その身に宿した膨大なチャクラは計測不可能。

 左手の甲には二尾・又旅の封印式。背中には七尾・重明の封印式がある。チャクラを練ると浮かび上がる。

 実は祖母から教わった百豪の術の印が額にある。普段は額当てで隠れている。

 第3次忍界大戦前期に他国から「木の葉の雷皇」という二つ名をつけられている。

 雷遁系忍術を好んで使う。

 

 備考:薬師カブトと同い年

 

 

 

尾獣

 

二尾・又旅(またたび)

【人柱力】羽衣カルタ

【得意支援】猫爪

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 

七尾・重明(ちょうめい)

【人柱力】羽衣カルタ

【得意支援】六枚翅(ろくまいば)

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 

 

 

 

 

木ノ葉隠れの里

 

うちは オビト(11)中忍

 -うちは一族

  臨時オビト班・リーダー

【性質変化】火遁

【血継限界】未開眼

【得意忍術】火遁・豪火球の術

 うちは一族の中忍。第3次忍界大戦前期に他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と恐れられ後の四代目火影となる波風ミナトが上忍師を務めるミナト班の班員の一人で、チームメイトには医療忍者でオビトの片思い相手であるのはらリン、そして「木ノ葉の白い牙」と呼ばれ他国から恐れられていたはたけサクモの実子である天才忍者のはたけカカシがいる。

 ひょんな事から中忍であるのにもかかわらず新米下忍カルタ、ジュウ、ラクサの臨時班長となる。

 当初はチームメイトであるカカシやカルタ、ジュウといった才能溢れるメンツに嫉妬し、うちは一族でありながら写輪眼を開眼できてないことに対してコンプレックスを抱いていたが、臨時班長を辞めるときには嫉妬ということはしなくなった。将来の夢は忍者学校(アカデミー)の教師。

 

 

筧(かけい) ジュウ(7)下忍

【性質変化】水遁・土遁・風遁・雷遁

【血継限界】無し

【得意忍術】影分身の術

 筧一族自体は決して忍びの名門一族というわけではないが、火遁を除く、4つの性質変化を持っている。

 忍術の才能は忍界一といっても過言ではないほどの持ち主だが、その他の体術と幻術に対する才能は皆無であるため固定砲台的な働きであればまさに無双である。

 自称「木ノ葉の尾の無い尾獣」であり、それほどまでにチャクラ量が多い。

 木ノ葉の秘伝忍術である『影縛りの術』『心乱心の術』『部分倍化の術』を扱える。片手で結ぶ印を使えて、左右バラバラの印を同時に結び、最後に(某錬金術師のように)両手を合わせる、合掌することによって血継限界という特殊な才能でなければ使えないとされ、写輪眼でのコピーもできないという氷遁や嵐遁といった術も使えるようになる。ただし、木遁を使おうとすると泥遁になってしまう模様。

 主人公カルタからはジュウこそ神様チートをもらった転生者のオリジナル主人公ではないかと思われている。

 

 備考:月光ハヤテと同い年。

 

 

桜田(さくらだ) ラクサ(10)下忍

【性質変化】火遁

【血継限界】無し

【得意忍術】不明

 「~じゃんね」が口癖の女の子。父の名がモンガイ。母の名はファミリアというらしい。もともと忍び一家・一族ではなく、父と母は一般市民で民宿やホテルなど数店舗の宿泊施設を火の国内で営業している。

 才能に溢れる班員(チームメイト)の中で唯一通常の新米下忍程度の実力の持ち主。

 普段は年上ということもあり、カルタとジュウのお姉さん的立ち位置にいるが、危険な伴う任務となるといつも守られる側になってしまうため、自身の実力の低さに多少なりともコンプレックスを抱いている模様。

 

 備考:はたけカカシと同い年

 

 

 

 

 

ヒロイン候補

 

照美メイ(11)霧隠れの里・上忍

 -照美一族

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】未覚醒

【得意忍術】不明

 溶遁と沸遁という二つの血継限界を使用できる可能性を秘めた少女。

 照美一族は風遁と雷遁の性質を持つものがほとんどで、メイの火遁・水遁・土遁というのは例にないと思われていたため、一族の中では肩身の狭い思いをしていた。

 だが、歴史を遡れば実は照美一族の始祖はメイと同じ性質変化の持ち主で、隔世遺伝だった。

 

 備考:夕日紅、うちはオビトと同い年

 

 

マブイ(9)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】天送の術

 褐色肌の銀髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助ける。

 

 

サムイ(9)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】不明

 陶器のような透き通る白い肌の金髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助ける。

 

 

 

 

 

その他

オリジナル登場人物

 

羽衣カルタの爺さん

 滝隠れの里から七尾を盗ってきた。

 すごい強いよ。

羽衣カルタの婆さん

 雲隠れの里から二尾を盗ってきた。

 爺さんより色んな面で強いよ。

羽衣カルタの母さん

 戦闘シーン・お色気シーン。共に皆無。

 未亡人だよ。

 

九鬼イカリ

 霧忍。

 九鬼一族の現族長。第2艦隊の大将。

村上ゲキド

 霧忍。

 村上一族の次期族長。

 

 

 

 




オリジナル忍術の一覧も掲載したいと思います。


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忍術一覧 下忍篇-終了時

 

※雷遁瞬身とは

【正式名称】:雷遁・瞬身の術

【初登場】:『004.支援物資輸送任務 受注』

【術考案者】:羽衣一族

 忍体術でも使用される雷遁での身体活性と瞬身の術で一時的に身体活性されることに着目し、その相乗効果で通常の瞬身の術ではありえない速度で移動できる術。

 

 

陰遁(いんとん)思操(しそう)のとは

【正式名称】:陰遁・思操の術

【初登場】:『006.支援物資輸送任務 敵襲』

【術考案者】:羽衣カルタ

 うちはシスイの両眼の万華鏡写輪眼に宿った能力『別天神(ことあまつかみ)』を模倣した幻術。対象となった人物は術者によって思考をコントロールされていると気付くことなく術者の意のままに操られることとなる。ただし、幻術返しを行える者には通用しない。今回カルタは自分が殿をすることを認めさせるために使用したが、タイミング悪く敵の邪魔が入り失敗に終わった。

 

 

※風遁・小突破(しょうとっぱ)とは

【初登場】:『007.支援物資輸送任務 戦闘』

【使用者】:筧ジュウ

 風遁・大突破の小規模・小威力バージョンの術。

 

 

※風遁・煽追風(あおいかぜ)とは

【初登場】:『007.支援物資輸送任務 戦闘』

【使用者】:羽衣カルタ

 火遁の術の威力増加させるための術。

 術を解いた後も少しの時間は効果が残る。

 

 

※水遁・三重水陣壁(さんじゅうすいじんへき)とは

【初登場】:『007.支援物資輸送任務 戦闘』

【使用者】:霧隠れの忍び

 霧隠れの忍び3名(真水(まみず)一族の新鋭三義兄弟(さんきょうだい)カンスイ・タンスイ・ジュンスイ)が張った水遁・水陣壁。通常の3倍の効果・強度を持つ。

 

 

※雷遁・(まとい)とは

【初登場】:『007.支援物資輸送任務 戦闘』

【使用者】:羽衣カルタ

 三代目・四代目雷影エーが使用する雷遁チャクラモードと同じ効果を持つ。

 雷遁を用いた肉体活性の術。

 

 

※雷遁・光学迷彩(こうがくめいさい)の術とは

【初登場】:『015.東部戦線異状あり 海戦』

【使用者】:羽衣カルタ

 隠れ蓑の術の上位互換とも言える術。透明人間化し、自由に動くことが出来る。ただ、感知タイプの忍びには簡単にバレる。

 女風呂とか覗けるので、三代目や自来也には教えられない。

 

 

※雷遁・纏 弐式(にしき)とは

【初登場】:『016.東部戦線異状あり 終撃』

【使用者】:羽衣カルタ

 雷遁・纏の上位互換。

 バチバチと雷遁のチャクラがスパークし、通常の雷遁・纏と比べ物にならないほどの(いかづち)と光量を持ち、より速く、より硬い防御力、より強い攻撃力となる。

 八門遁甲の第二休門を開放した状態でのみ使用可能。

 

 

雷皇(らいこう)・千鳥とは

【初登場】:『016.東部戦線異状あり 終撃』

【使用者】:羽衣カルタ

 右腕全体に千鳥を展開し、纏(弐式)の突破力・貫通力で攻撃する。通常の千鳥とは比べ物にならない威力を発揮する。

 

 

※風遁・旋風波(せんぷうは)とは

【初登場】:『021.茶の国防衛戦 全滅』

【使用者】:茶の国国境警備隊に派遣されていた木ノ葉側の忍び

 つむじ風を人為的につくり出し、それを継続的に吹かせる術。作中では火遁の威力を強化されるために木ノ葉の忍びが使用した。

 

 

※雷遁・超電磁加速手裏剣(ちょうでんじかそくしゅりけん)とは

【初登場】:『023.雲による木ノ葉奇襲作戦 戦死』

【使用者】:羽衣カルタ

 電磁加速砲。通称、レールガンの原理を用いて放った手裏剣術の一種。

 凄まじい速度で飛来し、人体などはいとも簡単に貫通する。

 

 

蒼炎(そうえん)・千鳥とは

【初登場】:『024.雲による木ノ葉奇襲作戦 尾獣』

【使用者】:羽衣カルタ

 二尾である又旅の能力(チカラ)をもらい、千鳥に纏わせた人柱力羽衣カルタと又旅のコンビ忍術ともいうべき術。

 八尾の人柱力であるキラービーに対抗するために尾獣のチャクラを引き出して使用した。

 

 

天送の術(てんそうのじゅつ)とは

【初登場】:『027.雲による木ノ葉奇襲作戦 天送』

【使用者】:マブイ、羽衣カルタ

 この作品の天送の術は11次元の演算を使って、送る物や者、その距離などを計算してから天送となるが、その実行には膨大なチャクラが必要。そのため、本来の術者であったマブイも天送できるものや距離もかなり限られてくる。ただ、チームメイトのサムイやダルイはきちんとは理解していなかった模様。

 八尾である牛鬼やマブイ・サムイ・ダルイを木ノ葉の領土から雲隠れまで飛ばすことができたのは、主人公の無尽蔵チャクラのおかげ。

 飛雷神の術の上位互換とも言える時空間忍術だが、高度な演算能力が必要なので誰しもが出来るわけではない。一度使用するだけでもかなり脳に負担がかかる。

 

 

※雷遁・纏 参式(さんしき)とは

【初登場】:『027.雲による木ノ葉奇襲作戦 天送』

【使用者】:羽衣カルタ

 雷遁・纏の上位互換。強化版。

 身体の周りには雷が蒼白く光りバリバリと帯電放電し、纏う雷遁の威力が弐式よりも更に倍増する。

 現状のカルタは八門遁甲の第六景門以上を開放することによりのみ、纏を参式にまで使用することが出来る。

 羽衣一族の歴史の中で、纏はこの参式までしか使われたことがない。

 

 

 



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登場人物 上忍篇(大戦中期)-終了時

主人公

 

羽衣 カルタ(5)上忍

 -羽衣一族の末裔

  二尾又旅・四尾孫悟空・七尾重明の人柱力

【性質変化】火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁・陰遁(幻術)

【血継限界】写輪眼(三つ巴),万華鏡写輪眼

【得意忍術】雷遁・纏

 本作品の主人公。

 NARUTO原作を知る平成生まれで、いつのまにか知らぬ間にNARUTOの世界へ。しかも原作開始(うずまきナルト世代忍者学校アカデミー卒業)19年前に誕生していた。いつ自分が死んだかもわからず、死んだあと神様にも会わず、チートももらえずと、NARUTOの世界に最悪の三拍子で転生した。はじめは混乱しながらも何故か自分以外の存在が原作を崩壊させていったが、徐々に自分からも崩壊させつつえる。

 原作には出てこなかった六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫である羽衣一族の末裔。羽衣一族の者は皆、精強な忍びで忍術、幻術、封印術に長けている者が多い。その中でも仙術の扱いに長けた者が一族を率いることになっている。ちなみに、カルタの祖父は仙術チャクラを練ることができる。

 一人称は「ぼく」。心の中や、敵と会話するときは「オレ」になる。

 第3次忍界大戦開戦の3年前に生誕したことにより、戦争にはがっつり動員されることになる。また、初めての人殺しにてテンションが下がっていたがある程度は克服した様子。ただし、敵が子どもだとなるべく殺さないように行動してしまう。

 その身に宿した膨大なチャクラは計測不可能。

 左手の甲には二尾・又旅の封印式。左肩には四尾・孫悟空の封印式。背中には七尾・重明の封印式がある。チャクラを練ると浮かび上がる。

 実は祖母から教わった百豪の術の印が額にある。普段は額当てで隠れている。

 第3次忍界大戦前期に他国から「木の葉の雷皇」という二つ名をつけられている。

 上忍になってからはAランクまたはSランクという難易度の高い任務のみをこなしている。そのため、長期任務が連発して入っているため、里に帰れることが実は少ない。

 雷遁系忍術を軸にして戦闘を行う。

 万華鏡写輪眼を開眼したことにより、戦闘の幅はより一層広がった。

 

 備考:薬師カブトと同い年

 

 

 

尾獣

 

二尾・又旅(またたび)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左手の甲

【得意支援】猫爪

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを溺愛している。

 一人称は「妾」。

 

四尾・孫悟空(そんごくう)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左肩

【得意支援】熔遁・纏

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタによって封印されたあとは、女子高生口調が混ざりカルタから気持ち悪がられている。

 一人称は「俺」。

 

七尾・重明(ちょうめい)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】背中

【得意支援】六枚翅(ろくまいば)

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを敬愛している。

 一人称は「我」。

 

 

 

 

 

木ノ葉隠れの里

 

うちは オビト(12)中忍

 -うちは一族

  ミナト班・班員

【性質変化】火遁

【血継限界】未開眼

【得意忍術】火遁・豪火球の術

 うちは一族の中忍。第3次忍界大戦前期に他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と恐れられ後の四代目火影となる波風ミナトが上忍師を務めるミナト班の班員の一人で、チームメイトには医療忍者でオビトの片思い相手であるのはらリン、そして「木ノ葉の白い牙」と呼ばれ他国から恐れられていたはたけサクモの実子である天才忍者のはたけカカシがいる。

 ひょんな事から中忍であるのにもかかわらず新米下忍カルタ、ジュウ、ラクサの臨時班長となる。

 当初はチームメイトであるカカシやカルタ、ジュウといった才能溢れるメンツに嫉妬し、うちは一族でありながら写輪眼を開眼できてないことに対してコンプレックスを抱いていたが、臨時班長を辞めるときには嫉妬ということはしなくなった。将来の夢は忍者学校(アカデミー)の教師。

 

 

(かけい) ジュウ(8)暗部

【暗部名】:ジン

【性質変化】火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁

【血継限界】無し

【得意忍術】禁術・心統身の術

 本名不明。年齢不詳。

 主人公カルタからはジュウこそ神様チートをもらった転生者のオリジナル主人公ではないかと思われていたわけだが、実はその実力にはカラクリがあった。

 本当の出身は木ノ葉隠れの名門、山中一族の出身。そのなかでも裏宗家と呼ばれる血筋から生まれた。

 山中一族裏宗家でも100年に1人の割合で覚醒する先祖返りとも呼ばれていたこの男は、現代唯一の《禁術・心統身の術》の使い手。

 しかし、この禁術を使うとその身体に慣れるまでに2,3年ほど時間を要するというデメリットはあるが、これにより奪った身体の術や経験値などを丸ごと乗っ取れるということと、憑依の術の完成形であるため寿命による死を完全に超越し、恐れる必要が無くなったのだが、最期はカルタの雷切によって命を散らした。

 

 

桜田(さくらだ) ラクサ(11)中忍

【性質変化】火遁

【血継限界】無し

【得意忍術】影分身の術、初歩の医療忍術

 「~じゃんね」が口癖の女の子。父の名がモンガイ。母の名はファミリアというらしい。もともと忍び一家・一族ではなく、父と母は一般市民で民宿やホテルなど数店舗の宿泊施設を火の国内で営業している。

 才能に溢れる班員チームメイトの中で戦闘能力で考えると下忍程度の実力の持ち主で、中忍昇格試験に受かってしまったことに危機感を覚えた。

 その後、後方支援として医療忍者を目指すことにして、目下木ノ葉病院にて修行中。

 

 

 備考:はたけカカシと同い年

 

 

自来也(34)

 原作と同じくエロ仙人であることをカルタは確認している。

 

 

大蛇丸(34)

 原作と同じだが、カルタは大蛇丸の柔らかい性格の部分を目撃した。

 

 

千手(せんじゅ) 天間(あまのま)(20)

【性質変化】水遁・土遁・風遁

【血継限界】無し

【得意忍術】天泣、時空間忍術

 二代目火影である千手扉間の直系子孫にあたり森の千手一族の残り数少ない末裔のひとり。

 今年で20歳になる上忍だ。二代目火影千手扉間と同様で水遁の扱いに長けており、水の無い場所でも不自由なく水遁を操ることができる。印を結ばずに水遁の千本を飛ばす《天泣》をマスターしている人物でもある。

 時空間忍術にも長けており、数多もの種類の口寄せの術を駆使して常に自分が優位に戦えるような戦場を作り出す。

 

 

うちは コロウ(17)

【性質変化】火遁・風遁

【血継限界】写輪眼

【得意忍術】火遁・劫火球の術

 二代目火影であった千手扉間から絶大な信頼を得ていたという、うちは一族の中では特異な存在であったうちはカガミの子孫にあたり、原作にも出てきたうちはシスイとは従兄弟でもある。

 他のうちは一族と同様に火遁に長けているのみならず、木ノ葉では珍しく風遁の扱いにも長けている上忍だ。

 数年前にうちは一族の持つ血継限界である写輪眼を開眼したことを機に、それから彼はうちは一族の者の大半が務める木ノ葉警務部隊の若きエースとして活躍している人物である。

 苦労人気質の可能性がある。

 

 

はたけ カカシ(11)

【性質変化】土遁・雷遁

【血継限界】無し

【得意忍術】口寄せ・土遁・追牙の術

 原作では主人公であるうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ3人の担当上忍として登場し、最終的には六代目火影にまで登り詰めた人物。

 「木ノ葉の白い牙」の異名で他国から恐れられた天才忍者・はたけサクモを父に持ち、彼自身も父親譲りの才能をいかんなく発揮している天才忍者。

 カルタらの班の臨時担当をやっていたうちはオビトのチームメイトでもあり、その世代ナンバーワンの実力の持ち主だ。ちなみに師匠は「木ノ葉の黄色い閃光」と他国から現在進行形で恐れられている波風ミナト。

 現在、11歳の中忍だが、父から受け継いだチャクラ刀の扱いと雷遁と土遁の扱いに長けた戦闘力の高い忍びの一人。

 

 

 

 

ヒロイン候補

 

照美メイ(12)霧隠れの里・上忍

 -照美一族

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】未覚醒

【得意忍術】不明

 溶遁と沸遁という二つの血継限界を使用できる可能性を秘めた少女。

 照美一族は風遁と雷遁の性質を持つものがほとんどで、メイの火遁・水遁・土遁というのは例にないと思われていたため、一族の中では肩身の狭い思いをしていた。

 だが、歴史を遡れば実は照美一族の始祖はメイと同じ性質変化の持ち主で、隔世遺伝だった。

 

 備考:夕日紅、うちはオビトと同い年

 

 

マブイ(10)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】天送の術

 褐色肌の銀髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助ける。

 

 

サムイ(10)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】不明

 陶器のような透き通る白い肌の金髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助ける。

 

 

小南(15)雨隠れの里・暁所属

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】紙忍術

 紙で作られた花のコサージュをつけている青紫の髪を持つ大人びた少女。

 主人公カルタには山椒魚の半蔵に人質とされている際に助け出された。

 その後、木ノ葉の抜け忍扱いとなった志村ダンゾウを捜索するさいにペアを組んだ。

 

 

 

 

 

その他

オリジナル登場人物

 

羽衣カルタの爺さん

 滝隠れの里から七尾を盗ってきた。

 すごい強いよ。

羽衣カルタの婆さん

 雲隠れの里から二尾を盗ってきた。

 爺さんより色んな面で強いよ。

羽衣カルタの母さん

 戦闘シーン・お色気シーン。共に皆無。

 未亡人だよ。

 

九鬼イカリ

 霧忍。

 九鬼一族の現族長。第2艦隊の大将。

村上ゲキド

 霧忍。

 村上一族の次期族長。

 

 

 



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忍術一覧 上忍篇(大戦中期)-終了時

※《口寄せの術》とは

【正式名称】:尾獣引寄せの術

【初登場】:『030.口寄せの術 四尾出現』

【術使用者】:羽衣カルタ

 作中では通常の口寄せの印を結び術を発動させたが、何故か尾獣である四尾孫悟空が口寄せされた。

 その理由は2つ。

 1つ目の要因は、カルタがチャクラを練ったときに無意識的に二尾又旅と七尾重明の尾獣も一緒に練ってしまったため、禍々しいチャクラに敏感な忍猿が拒絶してしまった。

 2つ目の要因は、猿の中でも尾獣として存在する四尾孫悟空がそれに無意識的に反応してしまい、尚且つ原作と違い野良の尾獣と化していたため、カルタの術と共鳴してしまい呼び出されてしまった。ということ。

 

 

※《雷遁・纏 肆式》とは

【初登場】:『031.口寄せの術 限界突破』

【術考案者】:羽衣カルタ

 雷遁・纏の上位互換。

 羽衣一族としては未知の領域だったのを、カルタが切り開いた。

 現在、纏としては最終進化系。

 八門遁甲の第七驚門までを開門し、自身のエネルギーを最大限に引き出してから雷遁・纏を強化する。

 参式まで纏っていた雷遁の色も蒼白いスパークから薄紫がかった色合いのものへと変化していく。それに伴いカルタの身体を渦巻く稲妻(スパーク)の音も轟音と化す。もうバチバチという次元レベルを優に超えているが、それ以上に身体能力、肉体活性の上昇率が半端ない。

 普通に殴るだけで、尾獣が吹き飛ばされる。

 だが、その分のリスクが肉体へと負荷も半端なくなっており、影分身はその負担に耐えれず術が解けてしまう。術が解けた際、その肉体的苦痛も本体に少なからずフィードバックしてしまう模様。

 あと多少、言葉遣いが悪くなっている印象も持つ。

 

 

※《熔遁・大噴火》とは

【初登場】:『032.口寄せの術 超絶怒涛』

【使用者】:四尾孫悟空

【元ネタ】:『ONE PIECE』赤犬サカズキの“大噴火”

 巨大な溶岩(マグマ)の塊が孫悟空の飛ぶ拳としてロケットパンチのように飛来する。

 

 

※《熔遁・大噴火流星群》とは

【初登場】:『032.口寄せの術 超絶怒涛』

【使用者】:四尾孫悟空

【元ネタ】:『ONE PIECE』赤犬サカズキの“流星火山”

 熔遁・大噴火の上位互換。

 巨大な溶岩(マグマ)の塊がまるで流星群の如く飛来する。

 

 

※《チャクラ弾》とは

【初登場】:『032.口寄せの術 超絶怒涛』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『DRAGON BALL』に登場する“エネルギー弾”

 雷遁・纏を肆式にまで上げたことにより使えるようになった。チャクラの塊を敵に向かって放つ術。

 チャクラがある限り連続して撃ち続けることも可能。カルタは連続エネルギー弾のようにして四尾孫悟空に放っていた。

 

 

※《六道(りくどう)の六十一 封印術・六杖光牢(りくじょうこうろう)》とは

【初登場】:『033.口寄せの術 四尾封印』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『BLEACH』に登場する“縛道の六十一・六杖光牢(りくじょうこうろう)

 羽衣一族の中でも純粋な羽衣一族の血筋であり尚且つ、高い適性がなくてはならないという、長い羽衣一族の歴史の中でもほんの一握りほんの一部の者しか扱うことのできない秘伝中の秘伝。

 作中では、六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり孫悟空の動きを封じた。

 

 

※《六道(りくどう)の六十三 封印術・鎖条鎖縛(さじょうさばく)》とは

【初登場】:『033.口寄せの術 四尾封印』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『BLEACH』に登場する“縛道の六十三・鎖条鎖縛(さじょうさばく)

 羽衣一族の中でも純粋な羽衣一族の血筋であり尚且つ、高い適性がなくてはならないという、長い羽衣一族の歴史の中でもほんの一握りほんの一部の者しか扱うことのできない秘伝中の秘伝。

 作中では、太い鎖がまるで蛇のように悟空の身体に巻きつき六杖光牢(りくじょうこうろう)と掛け合わせて更に動きを封じ込めた。

 

 

※《六道(りくどう)の七十九 封印術・九曜縛(くようしばり)》とは

【初登場】:『033.口寄せの術 四尾封印』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『BLEACH』に登場する“縛道の七十九・九曜縛(くようしばり)

 羽衣一族の中でも純粋な羽衣一族の血筋であり尚且つ、高い適性がなくてはならないという、長い羽衣一族の歴史の中でもほんの一握りほんの一部の者しか扱うことのできない秘伝中の秘伝。

 作中では、孫悟空の周り縦方向に八つ、胸に一つの黒い玉のようなものを出現し蒸気2つの封印術と合わせて完全に、完璧に動きを縛った。

 

 

※《羽衣式封印術・尾獣封印》とは

【初登場】:『033.口寄せの術 四尾封印』

【使用者】:羽衣一族

 羽衣一族に代々伝わる封印術の中でも最高峰に位置する封印術。

 忍界の核兵器と呼ばれている尾獣をも封印することが可能で、封印された尾獣は人柱力の精神に縛られることとなる。

 そのため、人柱力の性格や精神状態に尾獣自身が左右されやすく原作とはキャラが違うということになってしまった。

 

 

※《座標天身(ざひょうてんしん)の術》とは

【初登場】:『034.雨に蠢く闇の住人 其の壱』

【使用者】:羽衣カルタ

 天送の術の派生系。

 演算能力が及ぶ範囲であればどこへでも移動することができる。

 ただし、チャクラの消費量が桁違いでカルタ以外の人間は使用できないに等しい。

 また、演算ミスが起これば地球の中心部マントルや逆に大気圏外・宇宙空間へ間違って飛んでしまうということもある故、高速戦闘時には使えない。

 

 

※《天送身(てんそうしん)の術》とは

【初登場】:『038.雨に蠢く闇の住人 其の伍』

【使用者】:羽衣カルタ

 天送の術、座標天身の術の派生系。

 人を送ることに特化している。

 

 

※《千鳥鋭刀》とは

【初登場】:『039.雨に蠢く闇の住人 其の陸』

【使用者】:羽衣カルタ

 千鳥鋭槍の刀バージョン。

 

 

※《圧切(へしきり)》とは

【初登場】:『040.雨に蠢く闇の住人 其の漆』

【使用者】:羽衣カルタ

 千鳥の風遁バージョン。風遁のチャクラで限界まで性質変化を極めた術。

 千鳥を発動した際に放たれる千羽の鳥が鳴くような轟音は皆無で、隠密性に優れながらも風遁の貫通力を最大限に発揮することができる術。

 実はこの術の開発を『011.東部戦線異状なし 作戦』でしている描写がある。

 

 

※《水遁・洪水乱波(こうずいらっぱ)》とは

【初登場】:『027.雲による木ノ葉奇襲作戦 天送』

【使用者】:弥彦

 水遁・水乱波の上位互換。

 

 

※《多重紙手裏剣》とは

【初登場】:『041.雨に蠢く闇の住人 其の捌』

【使用者】:小南

 紙手裏剣の上位互換。

 

 

※《風遁・大烈風衝波(だいれっぷうしょうは)》とは

【初登場】:『041.雨に蠢く闇の住人 其の捌』

【使用者】:長門

 風遁・烈風掌の上位互換。

 

 

※《水遁・水爪弾》とは

【初登場】:『041.雨に蠢く闇の住人 其の捌』

【使用者】:千手天間

 水遁・水牙弾の上位互換。

 

 

※《手裏剣多重影分身》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:羽衣カルタ

 手裏剣影分身の上位互換。

 

 

※《二槍流・千鳥鋭槍》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:羽衣カルタ

 千鳥鋭槍の上位互換で、千鳥鋭槍を2本発現させる。

 

 

※竜巻のような結界とは

【正式名称】:《風遁・暴風陣》

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:ジン(筧ジュウ)

 風遁系結界の一種。

 作中では、土遁の壁の内側に併用してカルタの千鳥鋭槍から身を守った。

 

 

※《(トラップ)影分身》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:ジン(筧ジュウ)、羽衣カルタ

 作中では火遁影分身、風遁影分身、土遁影分身、雷遁影分身、それから分身大爆破というパターンが確認されている。

 

 

※《土遁・土龍防壁》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:羽衣カルタ

 土遁で出来た龍がとぐろを巻くようにして術者の身を守る術。

 

 

※《風遁・真空衝波》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:羽衣カルタ

 風遁・真空波の上位互換。

 

 

※《はごろもカルタ連弾》とは

【初登場】:『042.雨に蠢く闇の住人 其の玖』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『NARUTO』うずまきナルトが使用する“うずまきナルト連弾”

 まんま元ネタ通りだが、影分身の1体1体が(トラップ)影分身のため威力は次元が違う。

 ちなみにカルタ本体は高みの見物をしていた。

 

 

※《沸遁・巧霧隠れの術》とは

【初登場】:『043.雨に蠢く闇の住人 其の拾』

【使用者】:ジン(筧ジュウ)

 沸遁・巧霧の術から派生した術。

 

 

※《禁術・心統身の術》とは

【初登場】:『043.雨に蠢く闇の住人 其の拾』

【使用者】:ジン(筧ジュウ)

 心転身の術の上位互換の術。

 ジン(筧ジュウ)は、いままでも何度か他人の身体を乗っ取っている。

 乗っ取ったあとは、元の身体の持ち主が使えた術を使えるようになる。それまでの術や経験値はそのまま継承されるので、実質作中最強クラスの術。

 尚、乗っ取る前に使っていた身体は捨てられるのが定石らしい。

 

 

※二尾封印・解とは

【正式名称】:《羽衣式封印術・尾獣解印(二尾ver.)》

【初登場】:『044.雨に蠢く闇の住人 其の拾弐』

【使用者】:羽衣カルタ

 羽衣一族に代々伝わる封印術の中でも最高峰に位置する封印術。羽衣式封印術・尾獣封印を解除する術。

 作中では、身体を乗っ取られたカルタがジュウから奪い返すために二尾又旅を尾獣化させるために解除した。

 

 

※万華鏡写輪眼(右眼)の瞳術とは

【瞳術名】:《天忍(アメノオシヒ)

【初登場】:『045.雨に蠢く闇の住人 其の拾参』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:日本神話の神“天忍日命(あめのおしひのみこと)

 別名、完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)

 五遁全ての性質変化の適性を持ち、尚且つ陰陽遁どちらの適性も高い状態で万華鏡写輪眼を開眼した者のみが瞳に宿すことができる能力。

 別名の通り、全ての忍術、幻術、体術、その他古今東西どのような技術や血継限界、血継淘汰、血継網羅等をも完全にコピーすることができる・・・かもしれない。

 今後の展開を乞うご期待。

 

 

※万華鏡写輪眼(左眼)の瞳術とは

【瞳術名】:《神魂(カミムスビ)

【初登場】:未登場

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:日本神話の神“神魂命(かみむすびのみこと)

 詳細不明。

 

 

 



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登場人物 上忍篇(大戦後期)-終了時

前回までと被っていることも多々ありますが・・・。

年齢はこんな感じになっております。


オリジナル忍術の方も近々更新したいと思います。


主人公

 

羽衣 カルタ(7)上忍

 -羽衣一族の末裔

  一尾守鶴・二尾又旅・四尾孫悟空・五尾穆王・七尾重明の人柱力

  (八尾牛鬼のチャクラを尾4本分封印しているが意識は封印していないためコンタクトは取れない)

【性質変化】火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁・陰遁(幻術)

【血継限界】写輪眼(三つ巴),万華鏡写輪眼

【得意忍術】雷遁・纏,八門遁甲の陣

 本作品の主人公。

 NARUTO原作を知る平成生まれで、いつのまにか知らぬ間にNARUTOの世界へ。しかも原作開始(うずまきナルト世代忍者学校アカデミー卒業)19年前に誕生していた。いつ自分が死んだかもわからず、死んだあと神様にも会わず、チートももらえずと、NARUTOの世界に最悪の三拍子で転生した。はじめは混乱しながらも何故か自分以外の存在が原作を崩壊させていったが、徐々に自分からも崩壊させつつえる。

 原作には出てこなかった六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫である羽衣一族の末裔。羽衣一族の者は皆、精強な忍びで忍術、幻術、封印術に長けている者が多い。その中でも仙術の扱いに長けた者が一族を率いることになっている。ちなみに、カルタの祖父は仙術チャクラを練ることができる。

 一人称は「ぼく」。心の中や、敵と会話するときは「オレ」になる。

 第3次忍界大戦開戦の3年前に生誕したことにより、戦争にはがっつり動員されることになる。また、初めての人殺しにてテンションが下がっていたがある程度は克服した様子。ただし、敵が子どもだとなるべく殺さないように行動してしまう。

 その身に宿した膨大なチャクラは計測不可能。

 右手の甲に一尾・守鶴の封印式。左手の甲に二尾・又旅の封印式。左肩に四尾・孫悟空の封印式。右胸に五尾・穆王の封印式。背中に七尾・重明の封印式。腰に八尾・牛鬼のチャクラ尾4本分を封印している。チャクラを練ると浮かび上がる。

 実は祖母から教わった百豪の術の印が額にある。普段は額当てで隠れている。

 第3次忍界大戦前期に他国から「木の葉の雷皇」という二つ名をつけられており、終戦間際には「雷神」やら「死神」やら「現人神」やら大層な名前に格上げされている。

 上忍になってからはAランクまたはSランクという難易度の高い任務のみをこなしている。そのため、長期任務が連発して入っているため、里に帰れることが実は少ない。

 雷遁系忍術を軸にして戦闘を行う。

 万華鏡写輪眼を開眼したことにより、戦闘の幅はより一層広がった。

 霧隠れの忍刀七人衆との戦いで得た戦利品として、忍刀を7本全てを保有する。

 その中でも刀なのに何故か意志がある大刀『鮫肌』に気に入られている。そのため、あまり戦闘では使わないのだが、背負っていることが多い。ペットみたいな感覚。

 その他の忍刀はタンスの肥やしと化している。

 

 備考:薬師カブトと同い年

 

 

 

尾獣

 

一尾・守鶴(しゅかく)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】右手の甲

【得意支援】砂の自動防御

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタに封印される前には分福という名の僧侶に封印されていた。その分福という僧侶の死後は茶釜へと封ぜられる。その後、砂隠れの里で騒動が起こった際にその茶釜を盗んだカルタによってカルタに封印された。

 もちろんカルタが眠っているときに身体を乗っ取るわけもなく、カルタは不眠症には陥っていない。

 一人称は「俺」。

 

二尾・又旅(またたび)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左手の甲

【得意支援】猫爪

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを溺愛しており、作中に出てくる回数は他の尾獣を抑えて1番登場する。

 一人称は「妾」。

 

四尾・孫悟空(そんごくう)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左肩

【得意支援】熔遁・纏

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタによって封印されたあとは、女子高生口調が混ざりカルタから気持ち悪がられている。

 一人称は「俺」。

 

五尾・穆王(こくおう)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】右胸

【得意支援】沸遁・怪力無双

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタに封ぜられる前には又旅と戦闘を行なっていたが、カルタとは戦闘を挟まずに力比べを行いカルタのことを認めて好意的に封印された。

 一人称は「私」。

 

七尾・重明(ちょうめい)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】背中

【得意支援】六枚翅(ろくまいば)

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを敬愛している。

 基本的には真面目なのだが、たまにふざけてカルタが怒る。

 一人称は「我」。

 

八尾・牛鬼

【人柱力】本体はキラービー

     チャクラ4本分だけ羽衣カルタ

【封印術式】腰

【得意支援】不明

 主人公、羽衣カルタに尾4本分だけ封印された尾獣。

 意識も封じてしまうとキラービーに封ぜられている本体とも繋がって、そうなれば情報漏洩などの恐れがあるため意思の疎通等はできない。

 

 

 

 

 

木ノ葉隠れの里

 

うちは オビト(14)中忍

 -うちは一族

  ミナト班・班員

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】写輪眼(二つ巴),木遁

【得意忍術】火遁・鳳仙花爪紅

 うちは一族の中忍。第3次忍界大戦前期に他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と恐れられ、原作では四代目火影となった波風ミナト(この作品では四代目火影は自来也)が上忍師を務めるミナト班の班員の一人で、チームメイトには医療忍者でオビトの片思い相手であるのはらリン、そして「木ノ葉の白い牙」と呼ばれ他国から恐れられていたはたけサクモの実子である天才忍者のはたけカカシがいる。

 ひょんな事から中忍であるのにもかかわらず新米下忍カルタ、ジュウ、ラクサの臨時班長となる。

 当初はチームメイトであるカカシやカルタ、ジュウといった才能溢れるメンツに嫉妬し、うちは一族でありながら写輪眼を開眼できてないことに対してコンプレックスを抱いていたが、臨時班長を辞めるときには嫉妬ということはしなくなった。将来の夢は忍者学校アカデミーの教師。

 第3次忍界大戦後期に起こった「神無毘橋の戦い」では一度死にかけるが、カルタの心肺蘇生と柱間細胞の投与によって生きながらえる。

 

 

桜田(さくらだ) ラクサ(13)中忍

【性質変化】火遁

【血継限界】無し

【得意忍術】影分身の術、掌仙術

 「~じゃんね」が口癖の女の子。父の名がモンガイ。母の名はファミリアというらしい。もともと忍び一家・一族ではなく、父と母は一般市民で民宿やホテルなど数店舗の宿泊施設を火の国内で営業している。

 才能に溢れる班員チームメイトの中で戦闘能力で考えると下忍程度の実力の持ち主で、中忍昇格試験に受かってしまったことに危機感を覚えた。

 その後、後方支援として医療忍者を目指すことにして、目下木ノ葉病院にて修行中。

 

 

はたけ カカシ(13)上忍

【性質変化】水遁・土遁・雷遁

【血継限界】写輪眼(三つ巴),万華鏡写輪眼,木遁

【得意忍術】口寄せ・土遁・追牙の術

 原作では主人公であるうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ3人の担当上忍として登場し、最終的には六代目火影にまで登り詰めた人物。

 「木ノ葉の白い牙」の異名で他国から恐れられた天才忍者・はたけサクモを父に持ち、彼自身も父親譲りの才能をいかんなく発揮している天才忍者。

 カルタらの班の臨時担当をやっていたうちはオビトのチームメイトでもあり、その世代ナンバーワンの実力の持ち主でもある。ちなみに師匠は「木ノ葉の黄色い閃光」と他国から現在進行形で恐れられている波風ミナト。

 上忍に任命された直後の任務「神無毘橋の戦い」では、両目を失うが、オビトの写輪眼を移植してもらい視力を回復する。

 しかしその後、常時写輪眼の発動によりチャクラを枯渇する。それを知ったカルタが柱間細胞を投与してチャクラの総量を底上げすることによって回避できるようになった。

 この作品では、森の千手一族の遠縁として、はたけ一族なるものが存在し、カカシはその末裔。

 

 

のはら リン(14)中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】掌仙術

 はたけカカシ、うちはオビトと共に「木ノ葉の黄色い閃光」波風ミナト率いるミナト班に所属する医療忍者。

 原作では第3次忍界大戦後期に霧隠れの策略により、尾獣の三尾の人柱力にされるが、この世界軸ではその事件は起こらずに存命。

 オビトの片想い相手であるようだが、リンはカカシが気になるようで・・・。

 

 

 

 

 

砂隠れの里 抜け忍

 

うずまき サソリ(18)

【性質変化】風遁

【血継限界】無し

【得意忍術】傀儡の術

 元砂隠れの里の上忍で通称、赤砂のサソリ。実はうずまき一族の末裔だった。

 自身の身体の半分以上を絡繰に改造しており、18歳にしては幼い顔立ちと精神年齢をしている。

 カルタからは厨二病患者と認定されている。

 砂隠れの里を抜けたあと、カルタが三代目火影・猿飛ヒルゼンに掛け合って木ノ葉隠れの里に保護される。それと同時に木ノ葉隠れの忍びとして登録された。

 贄殿パクラの交際相手。

 

 

贄殿(にえとの) パクラ(18)

【性質変化】火遁・風遁

【血継限界】灼遁

【得意忍術】灼遁・過蒸殺

 元砂隠れの里の上忍だったのだが、里上層部の交渉の出汁に使われて霧隠れの忍刀七人衆に襲撃されたところをカルタに救われる。

 うずまきサソリとは同い年で交際中なのだが、どう見てもパクラの方が大人びて見える。

 砂隠れの里を抜けたあと、カルタが三代目火影・猿飛ヒルゼンに掛け合って木ノ葉隠れの里に保護される。それと同時に木ノ葉隠れの忍びとして登録された。

 

 

 

 

 

ヒロイン候補

 

照美メイ(14)霧隠れの里・上忍

 -照美一族

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】未覚醒

【得意忍術】不明

 溶遁と沸遁という二つの血継限界を使用できる可能性を秘めた少女。

 照美一族は風遁と雷遁の性質を持つものがほとんどで、メイの火遁・水遁・土遁というのは例にないと思われていたため、一族の中では肩身の狭い思いをしていた。

 だが、歴史を遡れば実は照美一族の始祖はメイと同じ性質変化の持ち主で、隔世遺伝だった。

 

 備考:夕日紅、うちはオビトと同い年

 

 

マブイ(12)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】天送の術

 褐色肌の銀髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助けたことがある。

 その後、五尾争奪戦にてニアミスするが、実際に顔は合わせていない。

 

 

サムイ(12)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】不明

 陶器のような透き通る白い肌の金髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助けたことがある。

 その後、五尾争奪戦にてニアミスするが、実際に顔は合わせていない。

 

 

小南(17)火の国・雨隠れ自治区

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】紙忍術

 紙で作られた花のコサージュをつけている青紫の髪を持つ大人びた少女。

 主人公カルタには山椒魚の半蔵に人質とされている際に助け出された。

 その後、木ノ葉の抜け忍扱いとなった志村ダンゾウを捜索する際にペアを組んだ。そのときの珍道中物語はまたいずれ・・・。

 

 

 



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忍術一覧 上忍篇(大戦後期)-終了時

遅くなりました。

オリジナル忍術設定集の更新です。


※《火遁・白狐の術》とは

【初登場】:『間章 オビト外伝~戦場の少年時代(ボーイズライフ)

          051.二つ巴の写輪眼』

【使用者】:うちはオビト

 作中では火遁・豪火球の火の玉から分離して白くなった炎が狐をモデルに形成し、敵を追尾した。

 その大きさは一般的な狐程度で、敵を自動追尾することによって透明化した敵を見つけた。

 実はカルタに教わった術。

 

 

※《逆天送の術》とは

【初登場】:『間章 オビト外伝~戦場の少年時代(ボーイズライフ)

          053.羽衣カルタの遅参』

【使用者】:羽衣カルタ

 天送の術の派生系。

 ただし、物を送るのではなく、送って来る。といった感じ。

 作中では、研究所に厳重に保管されていた柱間細胞が入った注射器を取り寄せた。

 取り寄せる物がある座標の位置を完璧に覚えて演算をしないと物が壊れたり、別のものが飛んできてしまったりする。

 

 

※《雷遁・死者蘇生の術》とは

【初登場】:『間章 オビト外伝~戦場の少年時代(ボーイズライフ)

          053.羽衣カルタの遅参』

【使用者】:羽衣カルタ

 死者蘇生と某カードゲームでは禁止カードとされそうな大層な名前を付けているが、実際は電気ショックによる心肺蘇生法。AED(自動体外式除細動器)を雷遁で再現しているだけである。

 人工呼吸との併用が効果的。

 作中では、柱間細胞の投与と併用してオビトに対して使った。

 

 

※《火遁・白虎の術》とは

【初登場】:『056.五尾争奪戦 其の弐』

【使用者】:羽衣カルタ

 噴き出した白い炎が虎を模して意志を持ち、自律して敵を襲う。

 大きさは5mにもなり、その巨躯に似合わず動きは俊敏で一度狙った敵は逃さない。爪で切り裂いても、牙で噛み砕いても、その白炎に触れただけでも人間ならば簡単に蒸発して燃え尽きてしまうほどの高火力で超高温。

 火遁・白狐の術の上位互換。

 

 

※《火遁・獄龍炎の術》とは

【初登場】:『060.五尾争奪戦 其の陸』

【使用者】:羽衣カルタ

 原作でサスケが対イタチ戦で使用した火遁・豪龍火の術の上位互換。豪龍火の術は連射可能であるのに対して、獄龍炎の術は単発での使用。

 龍の姿を模した高火力を表す蒼白い炎は尾獣化したキラービーであっても炭化は間逃れないほどの高温。

 

 

※《水遁・九重水陣壁》とは

【初登場】:『060.五尾争奪戦 其の陸』

【使用者】:羽衣カルタ

 水遁・水陣壁の上位互換。

 巨大な正方形の水陣壁を9つ展開し、防御する術。

 作中では展開した水陣壁は1枚1枚が相当な分厚さを誇っていたのだが、尾獣という桁違いの力の前では効果を十全には発揮できず、キラービーの物理的攻撃の勢いを完全に止めることは出来ずにカルタの身体は吹き飛ばされた。

 

 

※《断罪》とは

【正式名称】:《灼遁・断罪》

【初登場】:『061.五尾争奪戦 其の漆』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『灼眼のシャナ』炎髪灼眼の討ち手・シャナ"断罪"

 灼遁と銘打ってはいるが、実際は超高火力の火遁の術の一種。

 雷遁で言うところの雷切。風遁で言うところの圧切に当たるが、断罪は上記2つの術とは違って中距離戦闘が可能なほどの大きさ長さを誇る。

 攻撃のタイプとしては、突くのでも斬るのでもなく溶かすに近い。

 

 

※《封尾法印》とは

【正式名称】:《羽衣式封印術・尾獣チャクラ法印》

【初登場】:『061.五尾争奪戦 其の漆』

【使用者】:羽衣カルタ

 戦闘で切り取った八尾牛鬼の尾4本分のチャクラを巨大な巻物に仮置きとして封印するために使った術。

 後日、八尾牛鬼のチャクラの塊である4本の尾はカルタ自身に封印された。

 

 

※《陰遁影分身》とは

【初登場】:『062.五尾争奪戦 其の捌』

【使用者】:羽衣カルタ・又旅

 作中では、羽衣カルタと二尾又旅のコンビネーション忍術として使われた。

 (トラップ)影分身の一種で、一番初歩の忍術のひとつである分身の術に近い性質を持っている。

 感触や視覚からの情報も誤魔化されるあたかも実体があるような錯覚をしてしまう幻術系忍術で、原作の朧分身にも似ているが、この影分身は本来の影分身と同様に写輪眼や白眼などの特殊な感知タイプの忍びですら見分けがつかない。

 

 

※《水遁・滝壺の術》の応用とは

【正式名称】:不明

【初登場】:『069.風と砂と離間の計 其の陸』

【使用者】:羽衣カルタ

 正式名称は不明の大規模忍術。

 作中では風の国の首都にある国内最大の淡水湖の水を砂隠れの里周辺に引き入れ、首都の淡水湖を枯渇させて国内情勢を大混乱に陥れた静かな災害級、天災級忍術。

 このことが切っ掛けとなり、風の国は対外戦争を行うだけの力を失って第3次忍界大戦から撤退した。

 風の国はその後、遷都を余儀なくされ、人口や資源などが砂隠れの里やその周辺に出来た新たな淡水湖の湖岸に流出するようになり、風の国と砂隠れの里の立場は逆転することとなっていく。つまり、大名は飾りだけのものとなり(江戸時代の天皇のような感じ)、砂隠れの里が国内の政治や外交、軍事安全保障などを握るようになっていく(江戸時代の幕府的存在)。

 

 

 

※万華鏡写輪眼(右眼)の瞳術とは

【瞳術名】:《天忍(アメノオシヒ)

【初登場】:『045.雨に蠢く闇の住人 其の拾参』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:日本神話の神“天忍日命(あめのおしひのみこと)

【元ネタ】:『黒子のバスケ』黄瀬涼太"完全無欠の模倣"

 別名、完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)

 五遁全ての性質変化の適性を持ち、尚且つ陰陽遁どちらの適性も高い状態で万華鏡写輪眼を開眼した者のみが瞳に宿すことができる能力。

 別名の通り、全ての忍術、幻術、体術、その他古今東西どのような技術や血継限界、血継淘汰、血継網羅等をも完全にコピーすることができる・・・かもしれない。

 事実、作中では第3次忍界大戦末期。対岩隠れの里との決戦では、突如として現れた三代目土影であるオオノキによる血継淘汰である巨大な《塵遁・原界剥離の術》を天忍で模倣して、相殺。木ノ葉の多くの忍びを救った。

 これによってカルタの英雄的扱いは確固たるものとなる。

 今後の展開も目が離せない。

 

 

※万華鏡写輪眼(左眼)の瞳術とは

【瞳術名】:《神魂(カミムスビ)

【初登場】:未登場

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:日本神話の神“神魂命(かみむすびのみこと)

 詳細不明。

 ただ、万華鏡写輪眼の瞳術が輪廻眼、輪廻写輪眼よりも弱いって誰が言ったんだ。とだけ言わせていただこう。

 

 

 



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登場人物 暗部篇(少年期)-終了時

主人公

 

羽衣 カルタ(12)上忍・暗部

 -羽衣一族の末裔

  一尾守鶴・二尾又旅・四尾孫悟空・五尾穆王・七尾重明・九尾九喇嘛の人柱力

  ※八尾牛鬼のチャクラを尾4本分封印しているが意識は封印していないためコンタクトは取れない。

  ※九尾九喇嘛は陰と陽の2つに分けられてカルタには陰の九喇嘛が封印されている。

【性質変化】火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁・陰遁(幻術)

【血継限界】写輪眼(三つ巴)、万華鏡写輪眼

【得意忍術】真の仙人化、最終究極奥義(ファイナル)超新星爆裂衝撃波(ビックバンアタック)

 本作品の主人公。

 NARUTO原作を知る平成生まれで、いつのまにか知らぬ間にNARUTOの世界へ。しかも原作開始(うずまきナルト世代忍者学校アカデミー卒業)19年前に誕生していた。いつ自分が死んだかもわからず、死んだあと神様にも会わず、チートももらえずと、NARUTOの世界に最悪の三拍子で転生した。はじめは混乱しながらも何故か自分以外の存在が原作を崩壊させていったが、徐々に自分からも崩壊させつつえる。

 原作には出てこなかった六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫である羽衣一族の末裔。羽衣一族の者は皆、精強な忍びで忍術、幻術、封印術に長けている者が多い。その中でも仙術の扱いに長けた者が一族を率いることになっている。ちなみに、カルタの祖父は仙術チャクラを練ることができる。

 一人称は「ぼく」。心の中や、敵と会話するときは「オレ」になる。

 第3次忍界大戦開戦の3年前に生誕したことにより、戦争にはがっつり動員されることになる。また、初めての人殺しにてテンションが下がっていたがある程度は克服した様子。ただし、敵が子どもだとなるべく殺さないように行動してしまう。

 その身に宿した膨大なチャクラは計測不可能。

 右手の甲に一尾・守鶴の封印式。左手の甲に二尾・又旅の封印式。左肩に四尾・孫悟空の封印式。右胸に五尾・穆王の封印式。背中に七尾・重明の封印式。腰に八尾・牛鬼のチャクラ尾4本分を。そして腹部には九尾・九喇嘛の陰のチャクラと意識を封印している。チャクラを練ると浮かび上がる。

 祖母から教わった百豪の術の印が額にあるが、普段は額当てで隠れている。

 第3次忍界大戦前期に他国から「木の葉の雷皇」という二つ名をつけられており、終戦間際には「雷神」やら「死神」やら「現人神」やら大層な名前に格上げされている。

 上忍になってからはAランクまたはSランクという難易度の高い任務のみをこなしている。そのため、長期任務が連発して入っているため、里に帰れることが実は少ない。

 雷遁系忍術を軸にして戦闘を行う。

 万華鏡写輪眼を開眼したことにより、戦闘の幅はより一層広がった。

 霧隠れの忍刀七人衆との戦いで得た戦利品として、忍刀を7本全てを保有する。

 その中でも刀なのに何故か意志がある大刀『鮫肌』に気に入られている。そのため、あまり戦闘では使わないのだが、背負っていることが多く、ペットみたいな感覚。

 最近までは他の忍刀はタンスの肥やしとなっていたが、霧隠れの里出身者が自身の部下になったことで木ノ葉にて忍刀七人衆を再興させた。

 蛞蝓と口寄せ契約を結び、その仙人たちとの修行で潜在能力の解放と仙人モードを取得した。その後、精神と時の部屋的な場所にて仙人化の精度を高め、その力を安定的かつ持続的に使えるようになるための修行を行った。

 新たな力を手に入れたカルタは祝砲代わりに封印されていた大筒木カグヤや残された大筒木一族諸共、月ごと完全に爆散させた。

 その際に使用した術は、最終究極奥義(ファイナル)超新星爆裂衝撃波(ビックバンアタック)は、自身のチャクラと尾獣のチャクラに加えて多くの自然エネルギーを合わせた仙術の一種。

 これによって黒ゼツの目標が達成される可能性は完全に途絶えた。

 

 備考:薬師カブトと同い年

 

 

 

尾獣

 

一尾・守鶴(しゅかく)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】右手の甲

【得意支援】砂の自動防御

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタに封印される前には分福という名の僧侶に封印されていた。その分福という僧侶の死後は茶釜へと封ぜられる。その後、砂隠れの里で騒動が起こった際にその茶釜を盗んだカルタによってカルタに封印された。

 もちろんカルタが眠っているときに身体を乗っ取るわけもなく、カルタは不眠症には陥っていない。

 一人称は「俺」。

 

二尾・又旅(またたび)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左手の甲

【得意支援】猫爪

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを溺愛しており、作中に出てくる回数は他の尾獣を抑えて1番登場する。

 一人称は「妾」。

 

四尾・孫悟空(そんごくう)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】左肩

【得意支援】熔遁・纏

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタによって封印されたあとは、女子高生口調が混ざりカルタから気持ち悪がられている。

 一人称は「俺」。

 

五尾・穆王(こくおう)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】右胸

【得意支援】沸遁・怪力無双

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 カルタに封ぜられる前には又旅と戦闘を行なっていたが、カルタとは戦闘を挟まずに力比べを行いカルタのことを認めて好意的に封印された。

 一人称は「私」。

 

七尾・重明(ちょうめい)

【人柱力】羽衣カルタ

【封印術式】背中

【得意支援】六枚翅(ろくまいば)

 主人公、羽衣カルタに封印された尾獣。

 口調・性格が原作と違う理由はカルタの爺さん婆さんが施した封印術式の影響。

 カルタのことを敬愛している。

 基本的には真面目なのだが、たまにふざけてカルタが怒る。

 一人称は「我」。

 

八尾・牛鬼(ぎゅうき)

【人柱力】本体はキラービー

     チャクラ4本分だけ羽衣カルタ

【封印術式】腰

【得意支援】不明

 主人公、羽衣カルタに尾4本分のチャクラだけを封印された尾獣。

 意識も封じてしまうとキラービーに封ぜられている本体とも繋がって、そうなれば情報漏洩などの恐れがあるため意思の疎通等はできない。

 

九尾・九喇嘛(くらま)

【人柱力】陽が波風クシナ(旧姓、うずまき)

     陰が羽衣カルタ

【封印術式】腹部

【得意支援】不明

 主人公、羽衣カルタに陰のチャクラだけを封印された最強の尾獣。

 元々はクシナが陰と陽合わせた完全体の九喇嘛の人柱力だったが、出産を機に陰のチャクラだけをカルタに移植した。

 カルタの姿に六道仙人・大筒木ハゴロモを重ねて見ているようで・・・?

 一人称は「ワシ」。

 

 

 

 

 

木ノ葉隠れの里

 

うちは オビト(19)上忍・忍者学校(アカデミー)教育実習生

 -うちは一族

  ミナト班・班員

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】写輪眼(三つ巴)・木遁

【得意忍術】火遁・鳳仙花爪紅

 うちは一族の上忍。第3次忍界大戦前期に他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と恐れられ、原作では四代目火影となった波風ミナト(この作品では四代目火影は自来也)が上忍師を務めるミナト班の班員の一人で、チームメイトには医療忍者でオビトの片思い相手であるのはらリン、そして「木ノ葉の白い牙」と呼ばれ他国から恐れられていたはたけサクモの実子である天才忍者のはたけカカシがいる。

 ひょんな事から中忍であるのにもかかわらず新米下忍カルタ、ジュウ、ラクサの臨時班長となる。

 当初はチームメイトであるカカシやカルタ、ジュウといった才能溢れるメンツに嫉妬し、うちは一族でありながら写輪眼を開眼できてないことに対してコンプレックスを抱いていたが、臨時班長を辞めるときには嫉妬ということはしなくなった。将来の夢は忍者学校(アカデミー)の教師。現在、その教師になるための教育実習期間中。

 第3次忍界大戦後期に起こった「神無毘橋の戦い」では一度死にかけるが、カルタの心肺蘇生と柱間細胞の投与によって生きながらえる。

 

 

桜田(さくらだ) ラクサ(18)中忍・医療忍者

【性質変化】火遁

【血継限界】無し

【得意忍術】影分身の術、掌仙術

 「~じゃんね」が口癖の女の子。父の名がモンガイ。母の名はファミリアというらしい。もともと忍び一家・一族ではなく、父と母は一般市民で民宿やホテルなど数店舗の宿泊施設を火の国内で営業している。

 才能に溢れる班員チームメイトの中で戦闘能力で考えると下忍程度の実力の持ち主で、中忍昇格試験に受かってしまったことに危機感を覚えた。

 その後、後方支援として医療忍者を目指すことにして、目下木ノ葉病院にて修行していたが、3年前にはもう既に医療忍者として一人前となっていた。

 医療忍者の先輩である、のはらリンに色々とお世話になっている。

 

 

はたけ カカシ(18)上忍・暗部

【性質変化】水遁・土遁・雷遁

【血継限界】写輪眼(三つ巴)・万華鏡写輪眼・木遁

【得意忍術】口寄せ・土遁・追牙の術

 原作では主人公であるうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ3人の担当上忍として登場し、最終的には六代目火影にまで登り詰めた人物。

 「木ノ葉の白い牙」の異名で他国から恐れられた天才忍者・はたけサクモを父に持ち、彼自身も父親譲りの才能をいかんなく発揮している天才忍者。

 カルタらの班の臨時担当をやっていたうちはオビトのチームメイトでもあり、その世代ナンバーワンの実力の持ち主でもある。ちなみに師匠は「木ノ葉の黄色い閃光」と他国から現在進行形で恐れられている波風ミナト。

 上忍に任命された直後の任務「神無毘橋の戦い」では、両目を失うが、オビトの写輪眼を移植してもらい視力を回復する。

 しかしその後、常時写輪眼の発動によりチャクラを枯渇する。それを知ったカルタが柱間細胞を投与してチャクラの総量を底上げすることによって回避できるようになった。

 この作品では、森の千手一族の遠縁として、はたけ一族なるものが存在し、カカシはその末裔。

 

 

のはら リン(19)特別上忍・医療忍者

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】掌仙術

 はたけカカシ、うちはオビトと共に「木ノ葉の黄色い閃光」波風ミナト率いるミナト班に所属する医療忍者。

 原作では第3次忍界大戦後期に霧隠れの策略により、尾獣の三尾の人柱力にされるが、この世界軸ではその事件は起こらずに存命。

 桜田ラクサは医療忍者として後輩。

 最近、カカシと里内デートをしている様子が各所で目撃証言が挙がっている。

 

 

 

 

 

独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊『宵』構成員

 

実働部隊所属

 

うずまき サソリ(23)上忍

【性質変化】風遁

【血継限界】無し

【得意忍術】傀儡の術

 元砂隠れの里の上忍で通称、赤砂のサソリ。実はうずまき一族の末裔だった。

 自身の身体の半分以上を絡繰に改造しており、18歳にしては幼い顔立ちと精神年齢をしている。

 カルタからは厨二病患者と認定されている。

 砂隠れの里を抜けたあと、カルタが三代目火影・猿飛ヒルゼンに掛け合って木ノ葉隠れの里に保護される。それと同時に木ノ葉隠れの忍びとして登録された。

 贄殿パクラの旦那。息子オブトが誕生し、父になった。

 

 

うずまき パクラ(旧姓、贄殿(にえとの))(23)上忍・引退

【性質変化】火遁・風遁

【血継限界】灼遁

【得意忍術】灼遁・過蒸殺

 元砂隠れの里の上忍だったのだが、里上層部の交渉の出汁に使われて霧隠れの忍刀七人衆に襲撃されたところをカルタに救われる。

 うずまきサソリとは同い年なのだが、どう見てもパクラの方が大人びて見える。

 砂隠れの里を抜けたあと、カルタが三代目火影・猿飛ヒルゼンに掛け合って木ノ葉隠れの里に保護される。それと同時に木ノ葉隠れの忍びとして登録された。

 サソリと結婚し、1児の母になり、忍びを引退した。

 

 

照美 メイ(19)上忍・暗部

 -照美一族

【性質変化】火遁・水遁・土遁

【血継限界】未覚醒

【得意忍術】不明

 溶遁と沸遁という二つの血継限界を使用できる可能性を秘めた少女。

 照美一族は風遁と雷遁の性質を持つものがほとんどで、メイの火遁・水遁・土遁というのは例にないと思われていたため、一族の中では肩身の狭い思いをしていた。

 だが、歴史を遡れば実は照美一族の始祖はメイと同じ性質変化の持ち主で、隔世遺伝だった。

 

 備考:夕日紅、うちはオビトと同い年

 

 

うちは シスイ(12)

 木ノ葉隠れの名門「うちは一族」出身。

 カルタの推挙により、『宵』へと所属する。若くして実力のある忍びであり、写輪眼を有する。

 瞬身の術を得意とする。

 

うちは イタチ(10)

 木ノ葉隠れの名門「うちは一族」出身。

 カルタの推挙により、『宵』へと所属する。

 うちは一族の首領フガクの息子であり、サスケの兄。

 幻術タイプではあるが、全てにおいて最高峰の才能を持つ。

 

鬼灯 新月(20)

 元霧隠れの忍び。後に鬼灯一族を木ノ葉隠れへと亡命させてきた。

 鬼灯満月・水月兄弟とは従兄弟関係。

 カルタに木ノ葉にて、新忍刀七人衆のひとりに任命された。

 鈍刀『兜割』の使い手。

 

桃地 再不斬(18)

 元霧隠れの忍び。クーデターを企てたが失敗し、照美メイらと共に木ノ葉へと降った。

 カルタに木ノ葉にて、新忍刀七人衆のひとりに任命された。

 断刀『首斬り包丁』の使い手。

 

鬼灯 満月(22)

 元霧隠れの忍び。霧隠れの忍刀を全て扱うことができる唯一の人。

 実弟に水月、従弟に新月がいる。一族と共に木ノ葉へと亡命してきた。

 カルタに木ノ葉にて、新忍刀七人衆のひとりに任命された。

 爆刀『飛沫』の使い手。

 

※その他、元砂隠れ・元霧隠れの忍びが数名在籍。

 

 

開発部門所属

 

薬師 カブト(12)

 出身地は不明。元木ノ葉隠れの暗部「薬師ノノウ」が経営している孤児院からカルタが連れてきた。

 医療忍術に秀でており、その才能は蛞蝓姫綱手にも引けを取らない。

 

※その他、木ノ葉隠れの研究者が数名在籍。

 

 

養成部門所属

 

サイ(8)

 火の国のとある孤児院出身。

 シンと共に『宵』の養成部門に入った。

長十郎(10)

 水の国出身。難民キャンプにて拾った。

 将来の忍刀七人衆入りを目指して修行中。

雪 白(9)

 水の国、霧隠れの里「雪一族」の血を引く美少年。

 父親に血継限界・氷遁がバレて殺されかけた過去を持つ。桃地再不斬と共に木ノ葉へ降った。

かぐや 君麻呂(8)

 水の国、霧隠れの里が誇った戦闘民族「かぐや一族」出身。しかし、君麻呂以外の一族はクーデターを画策した際に滅亡した。

鬼灯 水月(7)

 水の国、霧隠れの里が誇った超名門。水影をも輩出した「鬼灯一族」出身。

 実兄に満月、従兄に新月がいる。

 

 

正規部隊所属下忍班

 

山中 フー(10)

 木ノ葉隠れの名門「山中一族」出身。

 感知タイプの多い山中一族の中でも突出して感知に優れている。

油女 トルネ(10)

 木ノ葉隠れの名門「油女一族」出身。

 毒蟲を体内で飼える稀有な体質の持ち主。

シン(10)

 火の国のとある孤児院出身。

 サイとは孤児院の頃からの付き合いで実弟のように可愛がっている。

 

 

伝書鷹

 

鷹山(ようざん)

 『宵』が飼う伝書鷹の中でも最速の持ち主。

 

 

 

 

 

他里

 

マブイ(17)雲隠れの里・中忍

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】天送の術

 褐色肌の銀髪少女。

 主人公カルタが八尾の尾獣玉から助けたことがある。

 木ノ葉と雲の交流の一環として、交換留学生制度を利用し1年間木ノ葉に来ていた。

 その際の案内役にカルタが抜擢され、親交を深める。

 

 

小南(22)火の国・雨隠れ自治区

【性質変化】不明

【血継限界】無し

【得意忍術】紙忍術

 紙で作られた花のコサージュをつけている青紫の髪を持つ大人びた少女。

 主人公カルタには山椒魚の半蔵に人質とされている際に助け出された。

 その後、木ノ葉の抜け忍扱いとなった志村ダンゾウを捜索する際にペアを組んだ。そのときの珍道中物語はまたいずれ・・・。



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忍術一覧 暗部篇(少年期)-終了時

ようやく更新しました。

本編再開はもうしばらくお待ちください。



p.s.

カルタのパワーインフレが酷いや(今更)


※《木遁・挿し木の術》とは

【初登場】:『075.各方面の研究者たち』

【術使用者】:はたけカカシ、うちはオビト

 柱間細胞を投与され、そして適合したカカシとオビトがリハビリで使った木遁の術。

 原作では、目標に突き刺さった後、更に枝分かれをしていたが今回使用したのは太い幹を腕に纏わせた程度で、相殺させたため、双方にケガはなかった。

 

 

※《霧虎自在(むこじざい)の術》とは

【初登場】:『079.水の国潜入任務 其の参』

【術考案者】:羽衣カルタ

 カルタが水の国へと潜入していた際に妄想した術。

 原作ではペインが使っていた雨虎自在の術の霧バージョンで所謂、オマージュ。

 霧が濃いため、それを利用して監視されていたら堪ったもんじゃないな、という想像。

 実際には誰も使用していない。

 

 

※《土石流の中へと身を隠していた術》とは

【初登場】:『079.水の国潜入任務 其の参』

【正式名称】:《土遁・土中潜航》

【術使用者】:羽衣カルタ

 本来は地中に潜ってから敵に急接近をして攻撃を仕掛けるための術。

 カルタの場合は、内乱に乗じて霧隠れの里内部へと侵入するために身を潜めるために使用した。

 

 

※《流砂漠大流》とは

【初登場】:『087.水の国潜入任務 其の拾壱』

【術使用者】:羽衣カルタ

 原作で、一尾・守鶴の人柱力であった我愛羅が使用した《流砂漠流》の強化版。

 カルタは敵を1人残さず捕えるために使いその地域全域を砂漠化させてしまった。

 

 

※《操砂漠柩》とは

【初登場】:『087.水の国潜入任務 其の拾壱』

【術使用者】:羽衣カルタ

 上記、流砂漠大流にて敵を一網打尽にした後に、地中に生き埋めとなった者たちを捕縛するために使用した術。

 原作で、一尾・守鶴の人柱力であった我愛羅が使用した《砂漠柩》の派生。操作性に優れている。

 本来ならばそのまま圧殺《砂漠送葬》へと繋がるのだが、作中のカルタは尋問へと繋げた。

 

 

※《防音結界》とは

【初登場】:『090.九尾の封印術式 其の弐』

【正式名称】:《羽衣式・防音結界》

【術使用者】:羽衣カルタ

 羽衣一族に伝わる結界忍術の一種。

 名前の通り、音を遮断する結界忍術。

 

 

※《九喇嘛を2つの意識体へ分ける》とは

【初登場】:『093.九尾の封印術式 其の伍』

【使用忍術】:《羽衣式・陰陽分離の術》

【術使用者】:羽衣カルタ

 羽衣一族に伝わる封印術・解印術の一種。

 作中では、人柱力・波風クシナ(旧姓うずまき)から九尾の妖狐・九喇嘛の陰のチャクラのみカルタへと封印を移す際に使用された。

 これによって陰と陽のチャクラに分けられた九喇嘛は、陰をカルタに、陽をそのままクシナへと封印された。

 

 

※《このバカ(サソリ)の背中に術式付けておいてよかった》とは

【登場回】:『097.赤砂人形新喜劇 中編』

【使用忍術】:《飛雷神の術》

【術使用者】:羽衣カルタ

 カルタは飛雷神の術の術式(マーキング)をサソリの背中に付けていたらしく、カウンター攻撃を容易く決めることができた模様。

 

 

※《緊急連絡ツール》とは

【初登場】:『100.木ノ葉と雲の友好 其の壱』

【術発案者】:羽衣カルタ

 飛雷神の術の応用。

 チャクラに反応する素材で発信機と送信機となる札をつくり、そこに飛雷神の術式を当てはめたもの。

 送信機側にチャクラを流すと、カルタの使用する時空間を経由してカルタの持つ受信機へとシグナルが伝達するという仕組み。通話等はできない。

 

 

※《雷陣壁》とは

【初登場】:『108.水の国撤退戦 中編』

【正式名称】:《雷遁・雷陣壁》

【術使用者】:羽衣カルタ

 作中では照美メイが先に発動させていた《水遁・三重水陣壁》に重ねて使用した。

 水陣壁の雷遁版。

 

 

※《羽衣カルタの須佐能乎》とは

【登場回】:『109.水の国撤退戦 後編』

【術使用者】:羽衣カルタ

 以前使用した際には骨格のみの「がしゃどくろ」といった様相だったが、今回使用したものは完成体ではないにしろ、巨大な鬼の上半身に武者姿を模し、日本神話を元ネタにした癖して手には巨大な戟(恐らく一騎当千万夫不当の武将。三国志で有名なあの呂布(字は奉先)が使ったとされる方天画戟だと思われる)を持った状態で須佐能乎は発現した。

 その鬼武者が被る兜の上にでかでかと光るのは『愛』の一文字。

 いや、兜は直江兼続かよ。そこは三国志じゃなくて日本の戦国時代かよ。というツッコミをカルタは心の中でしていた。

 

 

※《威圧》とは

【登場回】:『109.水の国撤退戦 後編』

【使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『ONE PIECE』の“覇王色の覇気”

 実力差がある一定以上ある相手に威圧を向けたのみで、気絶や戦意喪失をさせることができる。

 実は以前にも無意識で使用していたことがあったのだが・・・皆さま、お気付きだろうか。

 

 

※《掌仙術》とは

【登場回】:『111.最強への道 中編』

 カルタが綱手に弟子入りをして、使用できるようになった医療忍術の初歩の初歩。

 ただし、使い手によってその効果はピンからキリまで幅が出る。

 

 

※《陰封印解》とは

【登場回】:『111.最強への道 中編』

 カルタの額にある《白豪の印》に長年溜めているチャクラを解放するための解印術。

 

 

※《忍法・創造再生》

【登場回】:『111.最強への道 中編』

 前記《白豪の印》を解放し、即死以外の怪我を全て治す究極の再生能力。

 

 

※《口寄せの術》

【登場回】:『111.最強への道 中編』

 カルタは千手一族が代々契約してきた、蛞蝓と契約を結ぶことに成功した。

 

 

※《仙人(モード)

【登場回】:『111.最強への道 中編』

 原作で言うところの仙人モード。カルタは仙人化と呼んでいる。

 蛞蝓仙人の最長老によって己の潜在能力を引き出されたカルタは難なく完璧な隈取りの仙人化に成功した。

 

 

※《真の仙人(モード)

【登場回】:『112.最強への道 後編』

 通常の完璧な隈取りの仙人化を更に超えた仙人化。

 見た目は平時となにも変わらず、しかしながら、その能力は通常の仙人化を大きく上回る。

 カルタはこの仙人化を手に入れるために湿骨林製の「精神と時の部屋」へと入り、2年間(現実世界の時間で2日間)修行した。

 これにより、カルタと他の忍びたちとの戦力格差は酷いことに・・・。

 

 

※《最終究極奥義(ファイナル)()超新星爆裂衝撃波(ビックバンアタック)》とは

【登場回】:『112.最強への道 後編』

【術使用者】:羽衣カルタ

【元ネタ】:『DRAGON BALL』に登場する“元気玉”“ファイナルフラッシュ”“ビックバンアタック”

 羽衣カルタの奥義。

 自然エネルギーを取り扱うため仙術の一種。

 その際の描写は本編にてご確認を。

 カルタはこの術を使い、黒ゼツの野望(月に封印された大筒木カグヤの復活)を月ごと粉砕させた。

 

 

 



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序章 終わりの始まり
001.プロローグ


 

 むかし、昔。あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。

 お爺さんは滝隠れの里へ復讐のために。お婆さんは雲隠れの里へ復讐に行きました。

 そこでお爺さんは7つの尾をもつ蟲を。お婆さんは2つの尾をもつ猫を家に持ち帰りました。

 そして家に帰り、生まれたばかりのかわいい孫に与えました。

 7つの尾をもつ蟲は背中に。2つの尾をもつ猫は左手の甲に封じられたのです。

 その孫は男の子だったのですが、その男の子はすくすくと育ってやがて強い男の子になりました。

 

 

 

 それがオレこと、羽衣カルタなのです。

 

 

 

 そしてオレこと、羽衣カルタは転生者である。

 それが元々『羽衣カルタ』という人物がいて、その人物に憑依した形での転生なのか、それともオレが転生したから『羽衣カルタ』という人物が誕生したのか、そこはわからない。

 

 羽衣カルタは霜の国に隠れ住む羽衣一族の末裔である。

 六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫筋であるところの羽衣一族だ。

 霜の国にも忍の隠れ里は存在する。だが、我が一族はその隠れ里には属していない。

 

 羽衣一族は、六道仙人・大筒木ハゴロモの血筋である故、皆精強な忍であった。

 だが、それ故に滅亡した。

 第1次忍界大戦前、かの森の千手一族とうちは一族が和解し火の国にて木ノ葉隠れの里が創設され、他国もそれに追随し、一国一里のシステムが構築されていった。しかし、その時代の波に乗り遅れた羽衣一族はその後に起こった第1次忍界大戦にて一族の大多数を失い、第2次忍界大戦にて一族の土地を奪われ、生き残った者たちは離散した。

 今は滝隠れの里を保有する国の領土になっているはずだ。

 残された僅かな羽衣一族はその一族の地に戻ることを目標に霜の国にて臥薪嘗胆の日々を過ごしている。

 

 

 

 ・・・らしい。

 

 

 

 とりあえず、羽衣カルタ(幼児期)早送り。

 

 羽衣カルタ、0歳。精神年齢、永遠の中学2年生。

 目を開けるとそこは知らない場所だった。どうやらWeb小説とかで見る『転生』なるものをしてしまったらしいと気付くのに3日かかった。そして認めるのに更に3日かかった。何故かって言うと、オレ死んだ覚えなんぞないし。神様にも会ってないし。ましてやチートも貰ってない。こういうのって、ドジっ子金髪蒼眼ロリ神様がうっかり命の灯とかいう蠟燭の火をクシャミとかで消しちゃって、「ごめん生き返らせてあげる!でも輪廻転生の枠から外れちゃった貴方は同じ世界に還すわけにはいかないの。だから、マンガの世界に転生してあげる。でもそのままだったらすぐ死んじゃうかもだから、3つどんな能力でもあげるわ。ちなみにその世界は原作とは別次元にあるよく似た世界。つまりはパラレルワールド。平行世界だから原作ブレイクどんどんしちゃっていいよっ。」みたいなのがお約束だろ。それが無いなんて認めない。

 そしてどうやら転生してしまったらしいと認めた1日後。ここがあのNARUTO世界だということを知った。なぜ知り得たかというと、、、それが冒頭の昔話調のアレだ。

 

 むかし、昔。あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。

 お爺さんは滝隠れの里へ復讐のために。お婆さんは雲隠れの里へ復讐に行きました。

 そこでお爺さんは7つの尾をもつ蟲を。お婆さんは2つの尾をもつ猫を家に持ち帰りました。

 そして家に帰り、生まれたばかりのかわいい孫に与えました。

 7つの尾をもつ蟲は背中に。2つの尾をもつ猫は左手の甲に封じられたのです。

 その孫は男の子だったのですが、その男の子はすくすくと育ってやがて強い男の子になりました。

 

 いや、初っ端から原作ブレイクだろ。しかもオリ主たるオレじゃなくて、爺さん婆さんが。

 そんなツッコミを0歳児ができるわけもなく。その日から毎晩、化け猫と変な蟲が夢に出てくるようになった。

 

 

 羽衣カルタ、1歳。

 うちの家族構成を紹介しておこうと思う。爺さんと婆さん。お母さんとオレの4人家族だ。お父さんはどうやらオレの生まれる少し前の小競り合いで戦死したらしい。

 元気な爺さんと婆さんはオレを早く一人前の忍びにしようと、やたらと身体を使った遊びを強要してくる。2人は遊びと称しているが、母から言わせると修行の域に達しているそうだ。ちなみにオレは幼児虐待だと思っている。

 毎晩夢に出てくる二尾の猫と七尾の蟲と会話が成立するようになった。

 

 

 羽衣カルタ、2歳。

 とうとう世界情勢がきな臭くなってきたらしい。爺さんと婆さんも寿命が近くなってきたとうるさいが、めちゃくちゃ元気。でもまだ動けるうちにと現在霜の国の領土内にある隠れ家を捨てて、比較的安全な火の国へ移動することになった。その道中はチャクラコントロールの修行をメインに行った。わざわざ木や崖を登ったり、湖や川の上を走って移動したりなどなど。

 毎晩夢に出てくる二尾・又旅と七尾・重明と仲良くなった。

 

 

 羽衣カルタ、3歳。

 ついに第3次忍界大戦が始まった。各国の国境付近で長引く小競り合いが次第に戦火を広げていって、第3次忍界大戦へと発展したらしい。

 爺さんに忍者学校(アカデミー)へ有無を言わさずぶち込まれた。

 羽衣一族である爺さんや婆さん、それからお母さんは、羽衣一族である故に火遁・水遁・土遁・風遁・雷遁全ての性質変化を保有しているらしい。それでもまぁ、得手不得手はあるらしいが。

 又旅と重明とは盟友・親友のような関係となり、チャクラや技や術を無償提供してくれるようになった。

 

 

 羽衣カルタ、4歳。

 忍者学校(アカデミー)史上最年少で卒業することになった。恐らく戦争の影響と人柱力のせいだろうと思う。いや、もちろん成績が良かったことも影響しているとは思うけど。

 これによって木ノ葉の下忍になる。

 さてと、長い前置きはこれぐらいにして、オレこと羽衣カルタの物語はここから始まる・・・

 

 

 

 



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第1章 下忍篇-第3次忍界大戦(前期)
002.結成!オビト班(仮)


 

 場所は忍者学校(アカデミー)から出てすぐのところにある広場。

 そこにオレと同じく合格し、尚且つオレと同じ班員となった2人がいた。

 

「ねぇ、僕らの担当遅くない??もうかれこれ30分は待ってんだけどー」

「そうねー、、、でも一番年下のカルタくんが大人しく待ってるんだから、ちょっとはじっとしてらんないの?ジュン」

「ジュンじゃなくて、ジュウな。僕の名前」

「あははーちょっとかんじゃっただけじゃんねー」

 

 そういって女の子のほうがオレの頭をポンポンしてくる。

 この女の子、桜田(さくらだ)ラクサという。忍者学校(アカデミー)では座学が得意だったはずだ。特に名門の出というわけではないが初歩的な忍術くらいなら扱えると言っていた。オレとは別のクラスだったから見たことは無いけども。

 そしてもうひとりの男の子のほうが(かけい)ジュウ。こいつはオレと同じクラスだったからもう少し詳しく知っている・・・つもりだ。

 座学の授業では真面目にノートをとっているように見せかけて、パラパラ漫画を描いており。体術の授業では準備体操までは真面目にやっているように見えるが、実技となるとてんでダメダメで。かと思いきや、忍術の授業や実技、試験となると張り切って要求以上のことをする。どっかの名門のクォーター兼どっかの名門のハーフと言いふらしていたことがあったような、なかったような気がする。

 

「遅れてごめんー!!ちょっと道端で困っているお婆さんの荷物を家まで運んであげててだなー」

 

 にへらへらとあまり反省の色が見えない笑顔で近づいてきたゴーグルをかけたその男は、『うちはオビト』だった。

 

 うちはオビト・・・うちは一族の現在中忍で、はたけカカシの親友。第三次忍界大戦中の「神無毘橋の戦い」にて同じ班で片思い相手ののはらリンが敵に拉致され、カカシも負傷するという事態に遭遇し、仲間を守りたいという思いから写輪眼を開眼させた。だが、リンの救出直後に敵の増援部隊の術からカカシを庇って岩に右半身を押し潰され、瀕死の重傷を負う。そしてカカシに「上忍昇格祝い」として開眼したばかりの左目の写輪眼を譲った後に岩石に押し潰され、殉職した。が、実は生きていて万華鏡写輪眼を開眼させ、原作後半にて作品最強級の敵キャラとして出てくる。

 

 だが、今はうちは一族の中では落ちこぼれている平々凡々な若い中忍うちはオビトだ。

 下忍になったばかりのラクサとジュウにグチグチネチネチ愚痴を言われている。なんとも情けなく頼りなくも見える若い中忍だ。

 そんな中忍がオレたち新人下忍の担当となるのだろうか。と、疑問に思っているとオビト先生(仮)が手をぱんぱんと叩いて他2人を黙らせたあと話し始めた。

 

「とりあえず、自己紹介から始めようか。俺はうちはオビト、中忍だ。みんなの上官ということになるけど、今は戦時中ということもあって上忍の方々が忙しいから俺が担当になった。と言っても俺は半年ほどで上官からは外れることになっている。残った君たち3人がそのあと三人一組(スリーマンセル)で任務に当たれるようにするのが俺の任務だ」

 

 なるほど、、、そういうことか。

 ラクサとジュウも頷いて納得している様子だ。

 

「今後の連携のためにも得意なこと、不得意なこともそれぞれ言ってもらおう。俺は火遁系の忍術が得意だ。苦手なのは幻術かな。はい、じゃあ年功序列で自己紹介してって」

「わかりましたーっ。私の名前は桜田ラクサ。得意なことは座学と忍者学校(アカデミー)でも習う初歩的な忍術。それ以外はなにもわかりません。よろしくお願いしまーす」

「僕は筧ジュウ。得意としていることは忍術。今現在、主に使える忍術は山中一族の秘伝忍術であるところの『心乱心の術』、奈良一族の秘伝忍術であるところの『影縛りの術』、秋道一族の秘伝忍術であるところの『部分倍化の術』それから」

「まだあんの!?」

 

 オビトからツッコミが入ったが全くもって同感である。一族の秘伝忍術がおいそれと使えたら色々とおかしい。

 

「性質変化は火遁を除く、水遁・土遁・風遁・雷遁の4つの性質を僕は持っている。でもそれはまだ修行しきれていないから術としては使えない。不得手なのはそれ以外の体術や幻術、よろしく」

 

 唖然だ。呆然だ。愕然だ。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。いや、オレはそもそも口を開いてすらなかったが。

 それでも、ジュウの自己紹介を聞いていた他2人の反応は概ねそんな感じだった。ラクサは口のみならず目も見開いていたし、オビトも驚愕、驚天動地といった有様だ。もしかしたら、もしかしなくてもきっとオビトのほうが彼の天性の才能の凄さを分かっているのだろう。「俺、こんな奴の担当になっちまったのかよー」と心の声が聞こえるような気さえしてくる。

 

「そ、そっか。ジュウ、すごいんだな。このまま修行していったら俺のことなんてすぐに追い抜いちまうかもしれねーなぁ。じゃあ最後のボク、自己紹介よろしくね」

 

 すごく優しい笑みを浮かべた、というか本当に幼稚園児もしくは保育園児に向けるかのような微笑ましい表情を浮かべてオレに自己紹介を促した。きっと、今さっきの自己紹介(アレ)で思考能力が皆無になってしまったのだろう。普通に考えても、いや普通に考えなくても4歳児が忍者学校(アカデミー)を卒業して今この場にいる時点で滅茶苦茶なのだから。

 

「はい。ぼくの名前は羽衣カルタ。4歳です」

 

 オビトが「ん?」と首を傾げる。

 

「得意なことは(雷遁を体に纏って)すごく早く走ること」

 

 「あぁ、なんだ。駆けっこが好きなんだね」と、オビト。

 

「あと、特に言っとくべきこととしては、ぼくは体質的(封印されている尾獣と仲が良いから)に幻術が効かないってことくらいです。不得手なことは強いて言えば体術です。身体が小さいのでどうしても腕や脚のリーチが短くて、、、あ、そういえばできることで(重明の能力で羽を出して)空も飛べます」

 

 今度はみんなして「ん?空?飛べる?」と首を傾げた。

 

「オビト先生、ラクサちゃん、ジュウくん。これからよろしくお願いします」

 

 ぺこり、と頭を下げてとびっきりの幼児スマイル。

 オビトはなんか「俺、この戦争が終わったら忍者学校(アカデミー)の教師になろう・・・」とか言ってる。そんなに先生って呼ばれて快感だったんだろうか。

 

 

 

 こんな感じで、オレ達オビト班(仮)は発足した・・・

 

 

 



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003.多重影分身の術

 

 先日の初顔合わせから1週間ほど経ったころ。オビト班(仮)は、「オイ、これ忍びじゃなくたってできるだろっ!」と、ツッコミを入れたくなるような任務(にんむ)・・・という名の任務(おてつだい)をすでに10件ほど終わらせていた。

 

 今までやってきた任務の例を挙げると、迷子ペットの所在調査や農家さんの収穫の手伝い、それから子守りetc.etc...

 

 もう一度言おう。「それ、忍びじゃなくたってできるだろっ!!」てか逆にその道のプロに任せたほうがいいよ!!

 迷子ペットは探偵。農家さんの手伝いは農業ヘルパー。子守りはベビーシッターへ直行してほしい。いや、してくださいお願いします。

 

 ちょっと熱くなりすぎたかもしれないけど、まぁ、端的に言うとそれぐらいDランク任務は嫌だったのだ、嫌気がさしていたのだ、オレたちは。その中でも特に五遁の内、4つの性質変化を持ち木ノ葉の秘伝忍術を数種類も扱うことができる天才児・(かけい)ジュウが。

 

「ねぇ、オビトせんせ。いつまで僕たちにこんな任務させるつもり。今は戦時中でしょ、僕みたいに能力のある者はそれ相応の任務に就いたほうがいいと思うんだけどッ!」

 

 ジュウはそれはもう怒り心頭といった具合で、ぷんぷんしちゃってる。

 

「そういうなってジュウ。これもチームワークを養うためだってば。そんなに焦らなくても嫌でも戦場に行かされる時期が来るからさ、今はこれで我慢しとけよ」

「そうよーオビト先輩の言う通りじゃんねー」

「ぼくらチームワークいいから朝に2件受けても午前中だけでいつも終わるから、午後からは自由時間でしょ。その分、自分の修行の時間に充てれてラッキーだよ」

 

 オレら3人に言い包められ、ぬぬぬ・・・と唸っているジュウは「ウガーッ!!」と叫びながら帰っていった。

 

 

 

 というのが昨日の任務を終えた後に起こった出来事であった。

 そして今日。いつもの場所でオビト班は集合し、任務を受けるために任務受注室(正式名称は知らん)へと行った。そこでジュウが暴挙に出たのだ。

 

「木ノ葉の里内でできるDランク任務ぜ~んぶ頂戴!」

 

 里内限定のDランク任務を班員に一切相談もせず、全て請け負ったのだ。その数なんと50件弱。いやいや、任務の依頼書を管理してる人よ、普通に了承してんじゃないよ。却下しろよ却下。

 

「「「アホかっ!」」」

 

 思わず3人同時に突っ込んでしまったが、受注してしまったものは仕方ない。ということで、期限の近いものから先に、無期限のものはとりあえず後回しにして手分けして行っていくように話を持っていくか。そう思ってオレはいつものように4歳児のフリをして、というか可愛い子ぶって(?)話を進める。心持ちとしては蘭ちゃんに対して可愛い子ぶる猫なで声のコナン君の気分だ(いや、他作品で例を挙げるのは今後はなるべく控えよう。つーか、説明してて気持ち悪くなった)。

 

「じゃあ、手分けして終わらそう。先生とジュウくん。ぼくとラクサちゃんの2対2に分かれて二人一組(ツーマンセル)にして・・・」

「いや、いい。僕ひとりでやる」

 

 キリッと、いや、ギロッとのほうが正確かもしれない。そんな目でオレらのことを睨みながらそう宣言するジュウ。

 いやいや、それは流石に・・・と、オレもオビトもラクサも引き留めようとするが、そんなことにお構いなくジュウはひとつの印を結んだ。

 

《多重影分身の術》

 

 バババババッと(効果音が正しいかはわからないが)ジュウのチャクラが具現化し、実体を持った分身が恐らく50体弱現れた。予想するに『受けた任務の数=本体のジュウ+出てきた影分身の数』だろう。 

 これにはオレらオビト班の班員もそれ以外の同じ場にいた人たちも驚いている。というかざわついている。騒然となっている。そりゃあそうだろう。ついこの間、下忍になったばかりの新人下忍が影分身を使っただけでなく、一応禁術指定されている『多重影分身』を十全に使いこなしてるし、しかもそれを言っちゃ悪いがたかだかDランク任務をこなす為だけに使ったのだから。

 ちょっと周りの声に耳を傾けるだけでも「オイオイまじかよ・・・」とか「アイツ影分身つかってやがるぜ・・・」とか「つーかなんちゅう数だよ・・・」とか。もちろんそれ以前に絶句して何も発せていない者もいる。あ、驚きすぎて顎外れてる人もいる。

 

 その後、オビトやオレらが呼び止める間もなくジュウは瞬身の術を使ってその場から立ち去った。

 取り残されたオビト班のメンバーはこの場に残っていても仕方がないということで、とりあえず立ち去ったジュウを各自追っかけて任務を手伝おうということになった。

 

 まったく・・・やれやれだぜい。

 

 

 

 後日談的なエピソード。

 ちなみにこの事件が起こったことにより、木ノ葉の里では里内で完結するDランク任務は戦時中に限り忍者学校(アカデミー)の最上級生が受け持つこととなった。ねぇ、だからなんでオレ以外の人が原作改変しちゃうかなぁ・・・

 

 

 



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004.支援物資輸送任務 受注

 

 押忍!オラ悟空!・・・じゃなくて、カルタだ。羽衣カルタだ。

 誰もが聞いたことあるこのセリフ。実は本編じゃ一度も言われたことのないセリフだって知ってたか?

 オレ、初めて知ったときは思わずショックを隠せなかったぜー。

 

 とまぁ、それは置いといておこう。

 オレたちオビト班は結成から半年が経ち、この4人で行う最後の任務を受けるためにいつもの部屋へと出向いていた。

 

「ふむふむ・・・Dランク任務57回、Cランク任務64回。新人下忍としては、いや、下忍の班としても驚異的な任務達成回数じゃな。わずか半年でここまでの任務をこなす者たちはみたことがないわい」

「では!」

「うむ。では、お主達オビト班に任務を命ずる。林の国内で交戦中の部隊に支援物資を輸送する任務を命ずる。これはBランク任務として行ってもらう。今までの任務と違い戦争の前線近くまで行く必要がある。もしかすると敵国の忍びとの戦闘も起こるやもしれん。心してかかるように」

「「「「はっ!!」」」」

 

 

 

 Bランク任務。このランクの任務からは他国との忍びと戦闘行為が予測される領域になってくる。主に受ける忍びは中忍になってから。まだ下忍のオレたちに回ってくることを能力が認められて誇りと思うべきなのか、もしくは下忍登録のオレらをBランク任務に就かざるを得ないこの戦時という状況を嘆くべきなのかは難しいところだ。オビトは数回経験しているらしいが(といっても片手で数えることのできる範囲だろう)、オレたち下忍の3人は当然初めてのことだ。Bランクで尚且つ戦時中。ヤバい予感しかしない。死亡フラグがビンビンに立っていることだろう。そんなことを考えながらオレは里内にある忍具店を数店舗周り、自分の持っていく忍具の最終チェックをしていた。

 

「出発は明日、午前1時じゃ」

 

 今回の任務を言い渡してきたご老人の言葉を思い出す。

 

「朝1時に正門前は流石に早い・・・」

 

 朝早いとかいうレベルじゃない。夜だ。真夜中もいいところだ。それならもう今日中に出たい。

 まず林の国とはなんぞや。どこぞやというところから始まる。

 オレの知ってる知識が正しければ林の国とは、火の国に隣接する国で東側にある。林の国を中心に地理を考えると西から南にかけて火の国と国境を接し、東側には海を挟んで雷の国や渦の国があり、北側の国境を接しているのがオレが昔いた霜の国となっている。自信はないがこれで正しいはずだ。

 林の国には有名な暗部部隊『般若衆』がある。忍びの里自体はそれほどの規模ではないが、ひとりひとりの質は高いとの噂だ。

 また、水の国・霧隠れの里とは第2次忍界大戦前から同盟関係を続けていて、今回の戦争でも度々林の国の忍びと霧隠れの忍びが共同戦線を張っている戦場も見受けられるらしい。ちなみに支援物資を輸送する場所(ポイント)もその2か国の忍びとの戦場らしい。

 そもそも第3次忍界大戦開戦の発端が五大国のうち、火の国以外の4か国がまわりの戦争に巻き込まれれば後世に名前も残らないような小国や実質大国同士の緩衝地帯となっている霜の国などの中規模の国へと侵攻したのがきっかけなのだ。

 他国からの侵攻を受けた複数の小国と同盟(とはいうが半属国扱い)を結んでいた火の国は第3次忍界大戦に参戦を宣言。敵対する各国に宣戦布告をし戦争となった。

 

「やばくなったら逃げよう。死にたくないし。人、殺したくないし」

 

 そんな情けないことをつぶやきながら(情けないとか言うなよ。こちとら心は純日本人なんだコラ)、クナイの手入れを終えて、次は兵糧丸や増血丸といった丸薬の確認を行う。

 

「まぁでも生き延びる(すべ)は何とかなるか。最悪、雷遁瞬身[※]か重明に六枚()出してもらって飛ぼう。うん、そうしよう・・・あ、でも他のみんなはどうしよう」

 

 すっかり忘れてた。忘れてたって酷いと思うけど、初めての忍びとの戦闘(ころしあい)があるやもしれんと考えると自分のことで精一杯なんだよ。

 まず、ジュウは大丈夫だろ。

 だってあいつ、オレよりも主人公らしいもの。あいつこそ神様転生チートとかもらってそう。・・・てか、貰ってないよな?ホントはあいつがこの物語の主人公で、なんかバグとしてオレが混ざってるみたいな。

 

 ・・・ありそうで怖い。

 

 まぁ、とりあえずはいいや。あいつは絶対自分でなんとかする。他作品の技とかを術にして開発してピンチとか「なにそれおいしいの?」とか言いながら嬉々として逆に突っ込んでいきそうだ。

 問題は残る二人。オビトとラクサだ。

 オビトはこの班唯一の中忍ではあるが、きっと戦闘力的にはジュウとオレには足元にも及ばないだろう(今現在だと、という注意書きはつくけど)。

 ラクサは良くも悪くも下忍って感じだ。

 戦時中の治安悪化で賊の討伐任務とかで忍び以外との戦闘は以前受けたCランク任務でこなせていたけど、やっぱ忍びとの戦闘となると生きては帰れまい。どうにかして逃がさないとな・・・

 

 

 

 そんなこんなで翌日1時を迎えるわけだ。

 

 

 




※雷遁瞬身とは
 正式名称:雷遁・瞬身の術
 術考案者:羽衣一族
 忍体術でも使用される雷遁での身体活性と瞬身の術で一時的に身体活性されることに着目し、その相乗効果で通常の瞬身の術ではありえない速度で移動できる術。


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005.支援物資輸送任務 出発

 

 翌日になった。午前1時だ。

 当然のことながら辺りは真っ暗。正門前にはオレ、ジュウ、ラクサの3人が準備万端で待機している。ただみんないつもとは違って眠気眼だ。つーか、オレの設定忘れてるかもしれないけど4歳児だからな。いい子は本来おねんねの時間だ。任務の馬鹿野郎め。

 

「私、思うんだけどオビト先生絶対遅刻してくると思うじゃんね。ただの寝坊で」

 

 そんなことを言っていたのが今から10分ほど前。

 そして現在午前1時01分ジャストなう。うちはオビト。オビト班リーダーにして唯一の中忍。任務開始時刻に遅刻決定。

 

「あんにゃろー・・・僕らが早起きして来てるっていうのに担当上官が寝坊で遅刻をするとは何様なんだよ。ちょっくら起こしてくるから待ってろ。すぐ戻ってくるからさ!」

 

 とてもイイ笑顔でそう言ってその場から消え去った。

 

「オビト先生、大丈夫かしら・・・」

「任務前から大けがは勘弁してほしい」

「「はぁ~」」

 

 思わず2人のため息が重なる。

 

「カルタくん」

 

 少しボーっと夜空を眺めているとラクサに呼ばれた。ついでに手招きされてる。なんだろ、隣に座ればいいのか・・・?

 ちょこんとラクサの隣に腰掛ける。

 

「なにー?」

「私この班の中だと一番足手まといじゃんね。だからもし今回の任務で他国の忍びとの戦闘になったら死んじゃうかもしれないなーって思ってるんだー」

 

 何を急に言ってんだ。始まる前からそんなネガティブ発言やめてくれよな。しかもそれを明るい顔で言うなし。無理に笑顔作ってる感じが何故か罪悪感が湧いてくる。

 

「だからね。もしホントに危険になったら私のことなんか見捨てて逃げちゃいなさい」

「な、なに言ってるのラクサちゃん。そんなことできるわけ」

「お姉さんとの約束だよー」

 

 だからどうしてそんな顔すんだよ。そんな顔されたら・・・

 

「僕、参上ッ」

「わ、悪い。みんな遅くなった」

 

 ドロンと煙とともに現れたジュウと顔面青あざとたん瘤で腫れに腫れているオビト。オビトはジュウにぼろ雑巾でも持つかのようにして引きずられている。先生として、上官としてこの状況はどうなんだ・・・。

 まぁ、それ以前に任務に遅刻してくる時点でどうなんだって話だが。

 でもとりあえずどうやら骨折とか四肢欠損とかにはなってないみたいで安心した。それで任務に出られないとか言われたらマジ切れる。ぷっちーん、と。

 

「よし、それじゃあ出発しようか」

 

 オビトをポイして身軽になったジュウが(この外道めがッ)さわやかな笑顔で言い放った。

 

 

 

 出発して数日間はとてもいいペースで目的地へと近づいていた。

 うちの班は残念ながら感知タイプの忍びがいないため、ジュウの影分身が四方八方に散らばって安全確認をしつつ前進するのがセオリーとなりつつあったが、いままでのところそれで何の異常もないからきっと良いように作用しているということだろう。

 

 この数日間は当然移動がメインだったが、その間、ただただ移動に費やしていたわけではない。移動しながらもできる修行を各自行いながらだったのだ。

 オレはまず真っ先に取り組んだのが、ジュウに影分身の術を教わることだった(きちんと丁寧に頭を下げました4歳児らしく可愛らしく)。

 だって影分身の副作用というか、副次効果というか半端なくいいだろ。どうしていままで覚えなかったんだよーオレのバカバカ。まぁ、単にそれどころじゃなく爺さんに身体を苛めに虐め抜かれていたから忘れてたっていうことなんだけどな。つーことは悪いのはオレじゃなくて、爺さんか。よし、いつかシバいちゃる。

 ジュウの教え方がうまかったのか、それともオレのチャクラ量がえげつないせいかは分からないが、おかげさまで影分身の術はあっという間に覚えることができた。

 そして今はオレとジュウと2人して木ノ葉をチャクラだけで切る修行をしている。原作でナルトが風遁を覚えるためにやってたあれだ。ナルトは影分身めちゃくちゃ出して修行していたが、オレらは移動中だし任務中ということもあって影分身体は各自2体ずつに留めている。

 ラクサとオビトは残念ながら修行という修行はできていない。残念ながらとさっき言ってしまったが、本来任務中に限られた自身のチャクラを修行のために使うほうがおかしいのだ。

 チャクラ量がおかしいオレとジュウだからできる荒業なのだ。現にオビトとラクサはオレらのことを最初は任務中に修行なんてするなと口うるさく口酸っぱく言っていたが無視し続けていた。今ではもう「なんなのこいつら」みたいな目で見ている。うん、修行やめさせるの諦めたんだな。

 

 オレは4歳現在で雷遁系忍術はある程度使うことができる。真似するだけならカカシの代名詞的技、千鳥(この時のカカシはまだ雷を切っていないので雷切ではない。というかその前にカカシすら術の開発段階だ)だって使える。ただあれは写輪眼の洞察力があって初めて完成する術だから実践では使えない。だから里内ではその千鳥を形態変化させる修行をしていた。目標は原作のうちはサスケが対デイダラ戦で使ってた千鳥鋭槍だ。いいよねーあれ、かっこいいし。

 

「正面方向およそ5㎞先で僕の影分身が不意打ちでやられたッ」

 

 我らオビト班が敵の索敵に引っかかった瞬間だった。

 

 

 



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006.支援物資輸送任務 敵襲

お気に入り登録まさかの50件突破!
みなさま拙作をお読みいただきありがとうございます。

評価も数件していただきありがとうございます。モチベーション維持になりますので評価のほうもしていただければ幸いです。

では、6話目です。どうぞ〜


 

 ジュウの影分身がやられた。それがたとえ不意打ちだったとしてもその情報は大きなものだった。

 まず1つ目は、ジュウの戦闘力を上回るやもしらない敵がいるかもしれないということ。

 2つ目は、敵には感知タイプの忍びがいる可能性が高く、待ち伏せをしているかもしれないということ。

 そして3つ目は、その敵の情報はこちらが全く把握していないということだ。

 

 とりあえず、修行で出していた2体の影分身は解除しておく。お、経験値が溜まってレベルアップした・・・気分になれた。

 

「どうするオビト先生。ぼくはこのまま突っ込んでも罠の中にノコノコと入っていくようなものだと思うけど」

「僕もそう思うな。このまま突っ込むんなら僕とカルタの影分身だけにしてもらいたいね。じゃないと下手したら僕らの班全滅するよ」

「くっ・・・」

 

 オビトは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。ラクサは隠そうとはしているが不安そうな表情は隠しきれていない。

 

「この僕が任務を断念するなんざ考えられないことなんだけど、でも敵の戦力状況が未知数な上に地の利も敵側にあるのに無理に突撃することを推しはしないよ」

「ただ、今ぼくたちが任務を放棄したら前線の木ノ葉の先輩たちが苦しむだろうね。もしかしたら死んじゃうかもしれない・・・」

 

 オレとジュウの言葉を聞いてオビトはそっと目を閉じた。きっとぐるぐると色んなことを想像してシミュレーションしているのだろう。こうやって見ると中忍になるって、隊長になるって責任重大なんだな。

 

「任務を断念するか・・・」

 

 目を閉じてから3秒も経ってないだろう。オビトが隊長としてこの任務の放棄を決めた。

 

「わかった。じゃあ、僕が殿をするよ」

 

 オビトが任務を放棄することがわかっていたのか、予想の範囲内だったのか、予測の範疇だったのか。オビトの言葉に間髪入れずにジュウがそう言い切った。

 

「んなっ」

「だってそうだろ。もう敵に僕らは見つかってんだ。このまま僕らが引き返すのをただただ眺めてるわけないだろ。今は戦時中なんだぜ。僕らが前線に物資を輸送する任務を与えられてることくらい敵だってお見通しさ。物資が届かなくなった前線部隊が困ることなんて兵法を習ってなくても考えればわかることだ。僕が敵側だったら、絶対に僕らを逃がすわけがない。きっちり殺して、さっくり物資を奪うね」

「じゃ、じゃあ俺が殿をする。隊長としての命令だ」

「ふーん。で?生き残れる確率は何パーセントなの?きっと1パーセントもないよ。ていうかオビトせんせ、言っちゃ悪いけど僕よりも弱いから」

 

 ジュウ節が炸裂している。

 でもオビトだってそれで簡単に「うん」とは頷かないだろう。隊長なんだし、なんたって仲間想いなんだし。

 

「そうかもしれねぇけどな!今は俺が隊長なんだッ!お前らを守る義務があるんだよッ!!」

「守れる強さもない癖に何言ってるの?ホントそういうの迷惑だから」

「ジュウッッッ!!」

「それでなに?図星を突かれたからって部下で年下の僕に対して胸ぐらなんか掴んじゃってどうするつもり?暴力でも振るうのかな。あーこわいこわい。力使うところ間違ってない?大した力も無いくせにさ」

 

 思いの外、ジュウの毒舌が酷い。オビトもヒートアップしちゃっている。こんな今にでも敵が来るやもしれない状況下で何してんだよ、って話だ。

 

「お、オビト先生もジュウもやめるじゃんね!今は仲間割れしてる場合じゃないじゃんね!!」

「こんなのが中忍かよ。こんな優柔不断で自分の実力もわかんない奴が小隊の隊長なんかやってたら勝てるものも勝てないね!みんな無駄死にするだけだ。あのうちは一族も大したことないんだな」

「ッ!!てっんめぇ・・・言わせておけばッ」

 

 ラクサの言葉も2人には届いていない。

 

「数ある忍び一族の中でも突出して秀でた能力を持つうちは一族。でもその恐怖すらされる写輪眼という瞳術を持たないオビトせんせは落ちこぼれだもんな。まぁ僕より弱くてもしょうがないよね。だから大人しく尻尾巻いて逃げてよ。オビトせんせ」

「ジュウくん、言い過ぎ。オビト先生も落ち着いて。この時間が無駄だよ。ぼくらの中に感知タイプの忍びはいないからわからないけど敵は刻一刻と迫ってきてるかもしれないんだよ」

 

 オレが止めに入ってもジュウの口撃は止まらなかった。

 

「なに?なんでゴーグルかけたの?正論で自分の至らなさを、自分の不甲斐なさを暴かれて泣いてるの?泣き虫だなーオビトせんせーは。弱いし、優柔不断だし、遅刻魔でだらしがないし。うん、せんせーは忍びには向いてないよ。辞めちゃえば?」

「な、泣いてなんかねーよ!ちょっと目にゴミが入っただけだ」

「ふーん。だったら金輪際ずーっとゴーグルかけてるといいよ。そしたら目にゴミなんか入らないからね。じゃあ、僕が殿をつとめるってことでみんな文句ないよね?」

「だから俺がやるって言ってるだろッ!」

 

 あーあ。話が振り出しに戻ってらー。これじゃあいつまで経っても決まらない。敵もいつくるかわからないし、潮時だな。みんな・・・騙して悪い。

 

「ねぇ、その殿ぼくに任せてよ。ぼくがきっとうまくやってみせるからさ」

 

《陰遁・思操(しそう)の》[※]

 

「みんな伏せてッ!」

 

 唐突だった。気配が急に感じられたと同時に殺気も感じ取ったオレは木の間から飛来するナニかを見た。手裏剣だ。

 ちっ・・・見つかったか。

 

 

 




※陰遁・思操のとは
 正式名称:陰遁・思操の術
 術考案者:羽衣カルタ
 うちはシスイの万華鏡写輪眼に宿った能力『別天神』を模倣した幻術。対象となった人物は術者によって思考をコントロールされていると気付くことなく術者の意のままに操られることとなる。ただし、幻術返しを行える者には通用しない。今回カルタは自分が殿をすることを認めさせるために使用したが、タイミング悪く敵の邪魔が入り失敗に終わった。


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007.支援物資輸送任務 戦闘

お気に入り登録、ありがとうございます。
本当にありがたいことにまた増えてます。

拙い文章ではありますが、楽しんでくださったら幸いです。

では、7話をどうぞー


 

「気付かれたか」

「仕留めきれてないのかよ・・・なんでぃガキばっかじゃねぇか。木ノ葉はチビを戦争に出すくらい人手不足かよッ」

「こいつら殺せばうちの前線はこっちのもんよなぁ!!」

 

 木の上、木の影から現れた男の数は3人。その者たちがつけている額当てにはどれも斜めの波線が4本刻まれていた。

 霧隠れの忍びだ。

 前線近くに敵輸送隊を殲滅する任務についているところから推測すると中忍・上忍の混成小隊だろう。

 

「ほらね。僕らが木ノ葉サイドの物資輸送小隊ってバレてるよ」

 

 口調はやれやれといった具合で、眼光は敵を鋭く睨みつけながらジュウがぼやく。ラクサも「やるしか・・・ないじゃんね」と恐怖心は大いにあるだろうに自分を奮い立たせるためか、そう呟いている。

 

「オビト先生、これはもう腹括るしかないよ。ジュウくん、風遁ちょっとでも使えそうかな」

「そよ風程度って感じならなんとか。カルタは?」

「全くもって同じくって感じだね。じゃあ」

「あぁ、オビトせんせ。火遁の術、最大サイズで出してくれ」

「お、おう。わかった。行くぜッ」

 

《火遁・豪火球の術》

《風遁・小突破の術》《風遁・煽追風(あおいかぜ)》[※]

 

 火遁の術に風遁の術を被せるようにして重ねて発動させると火遁の術が強化される原理は広く認知されていると思う。オレとジュウはそれを利用して、オビトの豪火球に風、酸素を送り込み敵を一気に燃やし尽くそうと画策した。

 この連携をあれだけの会話で成立させるオレとジュウはなかなかに良いコンビネーションを発揮しているんじゃないだろうか。

 

《水遁・三重水陣壁》[※]

 

 が、敵も雑魚じゃない。同時に3つ張られた水遁の壁で防がれる。それもひとつひとつの壁に厚みがある。水辺ではないこの場所でこれだけの水遁を使えるとなるとかなりの力量だということがうかがい知れる。それにいくら火遁を風遁で強化したとはいえ、水遁とは相性が悪いことには変わりはない。

 きっと中の敵も無傷だろう。でも足止めはできている。

 今のうちに雷遁で身体活性をしておこう。

 

《雷遁・(まとい)》[※]

 

「ラクサちゃんは今のうちに里へ戻って救援要請をしてほしいんだ。間違っても道中、敵には見つからないように慎重に。気を付けてね」

 

 もちろん、今から里に戻ってもこの戦闘が終わるまでに帰還できるわけがない。嘘も方便。ラクサを逃がすための理由付けでしかない。

 

「で、でもっ!」

 

 そんなこと、こんなしょうもない嘘はラクサにだってお見通しなんだろう。自分ひとり逃げるわけにはいかないと言わんばかりに拒絶しようと抗議の言葉を挙げようとする。だが、それを遮るようにしてジュウが口を開く。

 

「今の戦いを見てわかるだろ。今のお前じゃ足手まといなんだよ」

 

 突き放すように冷たくそう言い放って、言葉を続ける。

 

「僕の影分身を1体つけるから安心しろ。大丈夫、僕の仲間は絶対、殺させやしないよ」

 

 そういってジュウは影分身を2体出した。1体をラクサそっくりに変化させ、1体を本物のラクサにつけた。

 

「ラクサ、生き延びろ。生き延びてこのことを里に報告する。それがここでのチームワークだ。行けッ」

「うん・・・わかったじゃんね。みんな、ご武運を」

 

 まだ豪火球を発動中のオビトは片手を挙げ、オレとジュウも頷いて返事をした。

 そして瞬身の術を使えないラクサは影分身のジュウとともにここを走り去った。

 

「さんきゅ、オビトせんせ。もうそろそろチャクラも限界だろ」

「3・2・1でその豪火球を切ったら一旦、後に下がって兵糧丸食べてて。その間はぼくとジュウが敵を食い止めるよ」

 

《雷遁・影分身の術》

 

 そしてオレは3体の分身体を出した。

 

「ジュウ。ぼくの影分身が突っ込むから敵と接触した瞬間、縛ってね」

「りょーかい」

「じゃあ、いくよ・・・3・2・1ッ!先生は解除!影分身は突撃!」

 

 オビトの豪火球が切れたと同時にオレの影分身が敵に突っ込む。突っ込む直前に敵の発動していた水遁の壁が消えた。

 

「ちッ!雑魚餓鬼どもが!!手ェ焼かせやがって!!」

 

 敵が水遁の壁から出てきたと同時に雷遁影分身3体が敵と接触した。

 

「もらったッ!」

「おっせーんだよ!クソチビがッ!うっ・・・」

 

 接触と同時にオレの影分身は放電し、敵は感電。痺れて動けなくなっているところに追い打ちをかけるジュウの・・・

 

「てめーの敗因は・・・たったひとつだぜ霧隠れ。たったひとつの単純な答えだ・・・『てめーは俺を怒らせた』」

 

《忍法・影首縛りの術》

 

 発動の最後のキーとなる『子』の印。それを結ぶと同時にジュウの影がぐーんと伸び、敵の首へと纏わりつく。

 

「ッ!!」

「なんだっ!これあいつの影が!?」

 

「あとは絞め殺すだけだ。せいぜいこの僕、筧ジュウを恨むといいさ。地獄でなッ」

 

 7歳児が人を殺す・・・それが戦争か。つーか、正真正銘の7歳児にそんなもん背負わせてんじゃねーよ、オレ。

 

「ジュウくん。ジュウくんだけには負わせないよ。お前たちを殺すのは羽衣カルタだ」

 

 吹っ切れることなんてない。今だって殺されたくなんかないし、もちろん殺すのだっていやだ。でもだからってそれを子どもに押し付けていい訳ないだろ!オレッ!!

 

 丑。卯。申。

 

 今までの人生で一番気合を入れて結んだ3つの印は、バチチチチッ!!!!!と、けたたましい音を立てながら発光した。

 それは、オレの手の中に雷を宿したチャクラだった。

 

「カルタ・・・お前、それ」

「ジュウくん。敵、絶対に離さないでね」

 

 雷遁を纏って肉体活性していることもあり、とてつもない速度で敵に接近する。そして最後、全力で敵の胸を、心臓を貫く。

 

「千鳥ッッッ!!!」

 

 

 

 




※風遁・小突破とは
 風遁・大突破の小規模・小威力バージョンの術。

※風遁・煽追風とは
 火遁の術の威力増加させるための術。
 術を解いた後も少しの時間は効果が残る。

※水遁・三重水陣壁とは
 霧隠れの忍び3名が張った水遁・水陣壁。通常の3倍の効果がある。

※雷遁・纏とは
 三代目・四代目雷影エーが使用する雷遁チャクラモードと同じ効果を持つ。


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008.支援物資輸送任務 完了

 初めて人を殺した感触はまるで薄い壁をただ殴って穴をあけたようなものだった。

 それぐらい抵抗なく無抵抗で。雷遁を身に纏い千鳥で武装したオレの腕は人の身体をいとも簡単に貫通した。

 

「うぐっ・・・」

 

 返り血が身体に降り注ぐ。もともと4歳児の身体のオレだ。大の大人の胸を貫くとなると直前での跳躍がある。今は腕が人の胸に突き刺さってて足は身体ごと宙に浮いている。情けない。みっともない。目も当てられない。

 両足で相手の肩を蹴って、一思いに、一気に腕を引き抜く。

 

 無様に転んだ。受け身をすることなく後頭部から地面に落ちた。痛い。

 

 栓になっていた腕を無理矢理に胸から引き抜いたため、更に返り血を浴び、4歳児の平均もない低身長なオレの身体はほぼ全身真っ赤な鮮血で染まった。

 

 ポッカリと胸のところに穴の開いた男は、オレが蹴った拍子に後ろに倒れていった。男を拘束していたジュウの影はすでに引いている。引いた分の影は隣の別の男を更にきつく拘束するために移動していった。

 

 血の臭いがひどい。口の中も鉄の味がする。忍びをやっている以上、いつかは人を殺さなくちゃいけないことも起こりうるというのは知っていたし、嫌だ嫌だといいながらも漠然とした覚悟なら随分前からしていた。でもいざこうなったとしたら、もっと発狂するかとも思ったし、もしくは吐き気でもして実際に吐くかとも思っていたが今の気分はなんだろう。思ったよりも冷静な自分がいた。冷酷に今の状況を見て、考えてこの後なにをしなければならないか頭を働かせている自分がそこにはいた。

 

「次」

 

 右手にまた雷の塊が顕現する。次の標的とされた男の表情が強張る。チッ、チッ、チッと鳥の鳴き声にも似た独特なこの音が男には死が忍び寄る音に聞こえているのだろう。

 

「や、やめッ」

 

 それがその男の最期に発した言葉となった。

 

 

 

 

 

 残った最後の1人はオレが貫くまでもなく、その前にジュウの影首縛りで息絶えていた。

 それからの行軍は正直あまり記憶がない。

 その場から離れる前に土葬くらいはしてあげたのだろうか。それともオビトの火遁で火葬でもしたのだろうか。たしか手は合わせたような記憶はある。それは間違いない。

 

 とりあえず返り血がひどいからと言って、近くの沢か小川で水浴びをした。

 そのあとはたぶん目的地に向けて再び出発したんだと思う。その道中、ジュウとオビトの2人はなんだかんだオレのことを気にかけてくれて色々と話しを振ってくれたり、ちょっと休もうかって言ってくれたりしてたんだろうけど、なんでだろう。ぼんやりとしていたのか、心ここに在らずといった状態だったオレはきっと、うんとかふーんとかテキトーな返事をしていたんだろう。

 

 

 

 そして前線基地まであと少しというところまで来た頃だった。脳内にあいつらが出てきたのは。

 

『おまえ様よ。いつまでウジウジウジウジウジウジしてるのじゃ。おまえ様のシケた顔なんか見たくないのじゃよ、妾は』

『イェェェェェェェイ!空前絶後のォォォ!!超絶怒涛の七尾(ラッキーセブン)ンンン!!幸運(ラッキー)を愛し、幸福(ラッキー)に愛された男ォォォ!!そう!我こそはァァァ!!・・・幼虫、蛹、成虫(カブトムシ)、全ての蟲の産みの親ァァァ!そう!我こそはァァァ!!サンシャイィィィン!!(ちょう)・・・ボフンッ!(めい)・・・・・・イェェェェェェェイ!!ジャースティスッ!!』

『お前ら、何しに出てきたんだよ。任務中だから構ってらんねぇよ』

『いやな、主様が元気なさげだと気が付いた故、我らが励まそうとだな』

『お前様よ。元気だしてにゃん♪』

 

 お前らそんなキャラしてたか。オレを元気付けようとしてくれてるらしいことは理解できたが、頭が痛い。逆効果だということに気づけよ。

 てかなんだよお前らの濃すぎるキャラはっ!

 

『致し方ないじゃろ。お主に封ぜられた妾たちは否が応でもお主の精神状態に影響されるのじゃ。キャラがどうとか、こうとか言われる筋合いはないわい。全ておまえ様のせいじゃ』

 

 なんだその設定。

 そんな設定、原作にはなかっただろ。尾獣、封印されようが何されようが迷惑極まりない自我はきちんと保ってただろ。

 

『主様の爺様と婆様にそういう風に封印されたのだよ』

『幼いおまえ様の精神を妾らに乗っ取られんようにするためにのう』

 

 キャラ崩壊もいいとこだ。しかもその原因がオレの爺さんと婆さんにあったとは・・・つくづく原作を崩壊させる人たちだ。まったく。

 

『んで、なに?お前らが出てきた理由はわかったけど正直言って今は有難迷惑だから引っ込んでてくれない?今、任務中だから』

『なんじゃ。つれない奴よのぅ』

『仕方あるまい。主様はただいま絶賛、後悔懺悔中が故』

『わかったなら夜まで寝てろ。又旅(ばかねこ)重明(あほむし)

 

 結局、去り際に又旅が、『まぁ、あまり気を詰めないことじゃ。今は戦時中、ああでもせんとあの場で死んでたのはおまえ様じゃったろうよ。それにおまえ様が気にかけておった回文娘(恐らく桜田ラクサのこと)を守れたんじゃ。そのことに変わりはない。誇りこそすれそれは罪ではないじゃろ。まぁそんなしょうもないことでウジウジと悩む心優しいおまえ様も妾は好いておるんじゃがな』と言いたいことだけ言い切って脳内から気配を消した。重明もそれに続いて「我も同感である」とだけ言い残していった。

 

 なんだよ。優しすぎんだろ、お前ら。

 

「・・・ありがとう」

「ん?カルタなんか言ったか」

「お、復活?」

「ううん、なんでもない」

 

 オレは初めての殺人からこうして少し立ち直れたのだった。

 

 

 




 ここまでお読みくださった読者のみなさまありがとうございます。
 新名蝦夷守(にいなえぞのかみ)です。

 とうとう出してしまいました二尾又旅と七尾重明のキャラ崩壊。
 怒られてしまうかもしれませんが、後悔はしてません!
 というわけで、この件に関するクレームはご容赦くださいますようよろしくおねがいします(泣)



 もっと展開を遅くしたい・・・。


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009.東部戦線異状なし 到着

 

 その日の夕方。太陽が傾く頃。

 

「着いたか」

「オビトせんせ」

「あぁ、やっとだな」

 

 森を抜けるとそこは少し開けている丘があった。そこには多少のテントや天幕といった簡易の建物と木ノ葉の額当てをした忍びたちがいた。

 

 対『林の国・水の国同盟』の前線基地についに到着したのだった。

 

 道中、突発的な戦闘も発生したが、なんとかひとりの死傷者も出さずに任務を終えることができた。

 

「おっ!オビトじゃねーか!なんだお前前線(ここ)にでも派遣されてきたのかー?」

「ちげーよ、イブ。俺は物資の輸送でこっちきたんだよ。部隊長か兵站の担当者んとこ案内してくれ」

「あいよ」

「あ、あとこいつにお湯渡してやってくれ、途中にあった川で水浴びはさせたんだけどさ、どうしても血の匂いが消えなくてな」

 

 オビトの後ろに隠れてた(別に隠れようと思って隠れていたわけじゃなく、ただ単に背が小さいから隠れてしまっていただけだ)オレを指さす。

 

「マジか。こんなちっこい奴が・・・。おいボウズ、歳いくつだ?」

「4歳です」

「おいおい冗談だろ。4歳って、忍者学校(アカデミー)史上最速卒業記録じゃね」

「はい、一応」

「すげーな、おい。・・・んで、返り血まみれになったんだったな。俺のダチ頼りなかったろ?すまんなー守ってくれて」

 

 オビトは「ぐっ・・・なんもいえねー」とか言ってる。「いえいえ、そんなことないですよ。いい先生です」とオレが言葉をかける。そんな様子を見てイブと呼ばれてた男は大笑い。とりあえずオレの体を洗うより先に部隊長のところへ忍具や丸薬などを詰め込んだ巻物数点を先に渡して、任務完了のサインを頂くこととなった。

 部隊長のいる場所までの間、先の戦闘の話をメインにしていた。オビトが語り手、イブが聞き手だ。

 

「その逃がしたラクサ?って子。まだ心配してるんじゃない?迎えに行かなくていいのか?」

「僕の影分身がついてるから問題はない。一応、さっきこの前線基地(キャンプ)についたと同時に口寄せの八咫烏を向かわせたから直にこっちの情報はラクサに届く。何の心配もいらない」

「っはー。オビト、お前の班はつくづく優秀な奴ばっかだなー。お前すぐ抜かされんじゃねーの」

「ははは。もう抜かされてるよ・・・」

 

 そんな会話をしながら、しばらく歩いているとようやく木材で組み立てられているほかの建物よりは立派な建物が見えた。

 

「あそこにうちの前線を率いる部隊長がいる。怖かねぇが、言葉遣いは気をつけろよ。一応な」

「あぁ、わかった。ありがとな」

「おう。じゃあ、俺はここで待ってるから行ってこい」

「あいよ」

 

 そうしてオレ、ジュウ、オビトの3人は建物の扉をノックする。

 

「失礼します。オビト班、支援物資をお持ちしました」

 

 中から良い声で「入れ」と返事が入ってきた。現世ではテノール歌手にでもなれそうだ。

 

「失礼します」

 

 3人揃ってそそくさと入室をする。親子だろうか。似た顔を持つ男が2人、部屋の中にはいた。

 

「うちはオビト、筧ジュウ、羽衣カルタ、以上3名物資をお持ちしました」

「うむ、ご苦労だった。俺はこの部隊を率いる奈良シカゾウだ。木ノ葉の里より連絡は来ていた。今は戦闘が小康状態だからまだなんとかなっていたが、もう少し遅れていたら物資が届かないと前線が保てなかった。感謝する」

「「「はっ」」」

「だが、木ノ葉からはもう一人来ると聞いていたが・・・殉職か」

「いえ、道中霧隠れの襲撃があったのでその報告に里へ帰らせました。ジュウの影分身も同行しています」

「そうか。霧隠れがそちら側に出たか・・・その話詳しく聞かせろ」

「はい」

 

 先程イブにも話した内容をオビトが今度は事細かに説明をした。

 

「なるほどな・・・。シカク、どう思う」

「あぁ。恐らくだけどな、お前らが戦った相手は霧隠れの前線で俺たちも辛酸をなめさせられていた真水(まみず)一族の新鋭三義兄弟(さんきょうだい)カンスイ・タンスイ・ジュンスイだろう。水陣壁を水のないところで三重にして使える忍びはいくら霧隠れといえどもそう多くはいねぇ。最近前線で見かけねぇと思ったら、裏に回られてたとはな・・・。親父、こいつらが()ってくれてなかったらもしかすると挟撃されてたかもしれねぇぞ」

「まぁ、その可能性はゼロではないがそれ以上に単純に兵站を狙ったんだろう。物資の補給に支障をきたしたらこの前線は終わりだぞ。日向の者に警戒を怠らせるな。鳥を口寄せできる忍びと連携させてネズミ一匹たりともこの前線より先に進ますな」

「了解。ちょっくら指示出してくるわ」

 

 そう言い残してシカクと呼ばれた男はその部屋を後にした。そしてオレたち3人に部隊長の奈良シカゾウを含めた4人だけがこの空間に残った。

 

「シカゾウさん」

「・・・なんだ、筧の(せがれ)

 

 ジュウがこの場で初めて口を開いた。ジュウのやつ、この部隊長と知り合いだったのか。

 

「あなたに影縛りを見せていただいたお蔭で仲間を守ることができました。ありがとうございましたッ」

 

 そういって、ジュウは頭を下げた。いままでジュウが頭を下げるところなんてみたことがない。それも正座で頭を地面につくまで下げている、いわゆる土下座だった。ジュウの突然の行動にオレも驚いているが、それよりも謝って頭を下げてないところがジュウらしいなとも思った。だからか、オビトのほうがもっと驚いている。

 

「面を上げろ。筧の倅」

「はい・・・」

「まさかあの1回で術を盗まれるとはな。いや、いい。これからも木ノ葉の(ぎょく)を守るために気張れよ」

「・・・はいッ」

 

 ジュウのやつ、木ノ葉の秘伝忍術を無許可で使ってたようだ。

 そしてそれを許してもらったって感じなのだろうか。

 

「ジュウ、それからオビト小隊長は外で待っててくれ。俺はこ奴と話がある」

 

 ・・・え、オレ?

 

 

 



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010.東部戦線異状なし 密談

お気に入り登録なんと100件突破!!ありがとうございます!!
それに加えて今回10話目。祝節目ですね。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

お気に入り登録、評価もしてくださって感謝感激です。

それではつづきをどうぞ・・・


 

 2人とも、え、なんで?という顔をしてながら部屋を出ていったがそれはオレも知りたい。

 だからもう一度言おう。

 

 ・・・え、なんでオレ?

 

 オレ、このダンディズム漂うオジサマになにかやらかしただろうか。やらかしてしまったのだろうか。内心、怒られたらやだなーと思いながら、でもそれを表情には出さないように気をつけてシカゾウさんと対峙する。1on1、つまりサシでだ。

 

「羽衣カルタ」

「はい」

「お前は、いや、お前が二尾の人柱力だな」

 

 な、なんで知ってんだ・・・この人。里の内部でもうちの家族と上層部、それも火影と相談役レベルの人間しか知らない超機密事項のはずなのに。

 

「先程、里からもう一通文書が届いた。差出人は暗部『根』リーダーの志村ダンゾウ様だ」

 

 志村ダンゾウ。「忍の闇」の代名詞的存在。原作でも後半から登場する超重要人物の一人だ。

 木ノ葉の暗部(暗殺戦術特殊部隊の略)養成部門「根」の創設者でありリーダー。木ノ葉のタカ派の筆頭でありその性格は里を守るためならば非情な作戦や卑劣な作戦も容赦情けなく実行する。忍びらしいといえば最も忍びらしい人物だ。

 たしかにその者であれば、オレが二尾の人柱力であることも情報として知っててもおかしくはないし、木ノ葉に来た時からずっと遠巻きから監視してきたであろう暗部の人員に自分の息のかかったものを派遣することも可能だろう。

 

「それで、ぼくは何をすればよろしいのですか」

 

 そのダンゾウのことだ。わざわざオレが人柱力であることを教えるためだけに前線の部隊長ごときに情報漏洩なんかしないだろうし、絶対に何かある。

 

「あぁ、ダンゾウ様からのお言葉だ。心して聞け・・・」

 

 一体オレは何をさせられるのか。

 

「人柱力羽衣カルタに命ずる」

「はい」

「東部戦線にて敵部隊を殲滅後、林の国首都にて二尾の封印を解き尾獣化せよ。以上だ」

 

 この世界において、忍びとは軍隊。人柱力とは核兵器のようなものだ。ダンゾウはオレのことを便利な大量破壊兵器くらいにしか思っていない。敵国の首都にオレを突っ込ませるということはオレの介入を機に林の国の領土ごと呑み込む(併合する)つもりなのだろう。

 

「・・・わかりました。謹んで承ります」

 

 人2人殺したとはいえ、殺しに慣れたわけじゃない。慣れたわけじゃないのにましてや非戦闘員を攻撃対象とした無差別攻撃なんざやりたいわけがない。

 

「これは他言無用だがな・・・」

「はい」

「俺はこのやり方に賛同はしない」

 

 シカゾウははっきりとダンゾウのやり方に異を唱えた。

 

「部隊長。ぼくには暗部の監視がついています。あまり余計なことは仰らないほうがいいかと」

「だけどな、上からの指示には従わざるを得ないんだ。すまねぇな。恨むなら子供のお前にこんなこと押し付ける俺を恨め」

 

 そういってシカゾウ、いやシカゾウさんはオレに対して頭を下げた。

 どうしてガキでしかないオレに部隊長であるシカゾウがそこまで言ってくれるんだろうか。

 

「大丈夫です。こんな身体(なり)ですけど、立派な木ノ葉の下忍ですから。忍びと認められたその時点から僕は木ノ葉の守るべき、護られるべき(ぎょく)ではない。精々、敵陣に突っ込んで敵中で暴れまわる香車ってところでしょう」

「お前さん、玉をそう捉えているのか。その歳で、すでに」

「先程のジュウくんとシカゾウさんの会話から推測するとこれがシカゾウさんの答えかと思いました。間違っていましたでしょうか」

「いいや、正解だ」

 

 心底驚いているらしいシカゾウさんは大きく目を見開いていた。

 オレはそのシカゾウさんの目をしっかりと見つめながら話を続ける。

 

「ですので、与えられた任務はしっかりとこなして見せます。次に攻勢に出るときはぼくも駒として使ってください。お願いします」

 

 今度はオレが頭を下げる番だった。構図としては家の近くの公園で野球をしていて打ったボールが隣の家の窓ガラスを割ってしまい。謝ってボールを返してもらう少年とその家の家主ともとれる昭和チックなものだったが実際は違う。

 

「香車じゃなくてもいいです。歩としてでも」

 

 実際は戦場に出させてくれという懇願だった。

 今のオレを、昔のオレやもしかしたら未来のオレが見たら何やってんだコイツって思うかもしれない。

 でも、あのダンゾウに命じられて拒否なんぞ出来ないし、なんなら林の首都襲撃も踏み絵みたいなものなんだろう。やるしかないなら、自分の中でも何か理由を見つけたい。偽善でも偽物でもなんでもいい。その殺戮をする理由が欲しかった。

 

 かっこ悪いオレは理由を、責任を木ノ葉の玉に押し付けることにしたのだ。

 里に住む子供たちを、その将来をまもるために・・・と。

 

「わかった。次の作戦にはお前を使う。基地内で待機しておけ」

 

 見た目4歳児が清濁併せ呑む姿をどうとらえたのか、それはシカゾウさんにしかわからない。が、返答をくれたその表情は最初に見た時よりも渋い顔になっていた。

 

「ありがとうございます。オビト先生とジュウくんはいかがいたしましょうか」

「あいつらには一足先に里へ帰還してもらう。そのように伝えておけ」

「わかりました」

 

 こうしてようやくオレはその建物から外へ出た。

 少し先にはオビトとジュウ、それからイブがいた。建物から出てきたオレを見つけたらしいオビトがブンブンと手を振っている。こっちだぞーという意味だろうか。

 オレは小走りで駆け寄りながら別のことを考えていた。

 

 

 

 いまさっきの話からすると、爺さんは里の上層部にオレのなかに封印されている二尾のことを話して、オレたち羽衣一族を保護してもらったみたいだ。だが、どうやら七尾のことは誰にも言っていないらしい。そんな大事な秘密をどうして木ノ葉の上層部に報告しなかったか、わからないがちょうどいい。重明のことは誰にも言わないとっておきの切り札(ジョーカー)ということにしておこう・・・と。

 

 

 



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011.東部戦線異状なし 作戦

本日、奇跡の3連投。頑張りました。


 

 その後、オビトとジュウ、イブと合流しオレだけはここに残ることになったということだけを伝えた。2人ともそれには驚いていたが、今日はもう日が沈むから2人も泊まっていけというイブの好意もあり、その日は2人とも基地に泊まった。

 そして翌日の朝、2人を見送ってオレは予定通り1人で基地に残った。

 それから、オレに命じられたことは待機であった。

 

「暇だ・・・」

 

 そしてオレは、暇を持て余していた。

 先程、シカゾウさんの息子、といっても恐らくもう20代ではあるだろうシカクさんが親父の伝言として「お前はまだ何もするな、待機」と言われてしまったのだ。

 

「そっか。本体(オレ)じゃなきゃじーっとしてなくてもいいじゃん」

 

 と思い立ったのが今さっき。

 そして今現在、オレの無数の影分身たちが両手に千鳥を宿しながら、そこからどうにかして形態変化させようと各々(全員オレだが)努力をしている。

 あーでもない、こーでもないと所々影分身たちは議論も交えながら試行錯誤をしている。が、何百といる影分身たちが千鳥を各2つずつ発動させているわけである。騒音の音源が影分身の数×2ということだ。そしてそれは、そんじょそこらの渡り鳥の大群が織り成す騒音(メロディ)よりも比べるまでもなく酷いことになっている。

 

 そしてというか、だからというか、すぐにバレた。

 

「馬鹿野郎!!戦争の真っ最中にチャクラの無駄使いすんじゃねぇよ!何考えてんだ。ここは最前線なんだぞ。そんなところでこんな騒音出してんじゃねぇよ」

 

 シカクに怒られた。拳骨まで頂いた・・・それは影分身が身代わりになったが。ちなみに身代わりになった影分身は煙となって消えた。南無南無。

 

「っち。影分身だったか。それにしてもこの数・・・お前、どんな身体してんだ?」

「チャクラ量は生まれながらにして豊富な一族なので」

「そうだとしてもこれだけのことをしてピンピンしてるお前は異常だぞ。・・・よし、お前の影分身、次の作戦の陽動にぶっこんでやるからな。覚悟しとけよ」

 

 そう言い残してシカクは去っていった。もちろん去り際に「影分身とその雷遁は消せよ」と念を押された。

 仕方ない。影分身消すか。

 

「ピロロロン♪」

 

 お、経験値が溜まってレベルアップした・・・気分になれた。

 なんか自分でやってて虚しくなってきた。もうやめよう、このくだり。

 

「風遁を状態変化させる修行しよう。それなら静かだし、きっとバレないだろ」

 

 千鳥と同じ要領で、ただそこは雷遁ではなく風遁のチャクラを練って・・・

 

 

 

 

 

 それから3日が経った日のことだった。

 その日は生憎の天気。とかいう次元(レベル)の話じゃないくらい大荒れの天気。空は夜かと勘違いするくらいとても厚い雲に覆われて暗く。風は超大型台風でも上陸してるんじゃないかと思うほど強く。横殴りの雨はひとつひとつが大粒で当たり続けると痣ができるのではないかとおもうほど痛い。

 

「シカクさん、ホントに行くんですか?この天気で」

「この天気だからこそだろ。こんな天気だったら敵連中も流石にいつもよりは油断してるだろ」

「・・・わかりました。行きます」

 

 行けばいいんだろ!行けばッ!!という言葉をぐっと飲み込んで、吐き出さないように尚且つ堪えて、耐え忍んだ。

 

「じゃあ、お前が向こうさんの陣地内に潜り込めたら機をみて合図を出してくれ。それと同時に敵の索敵範囲から少し離れたところに待機させておく部隊を一気に送り込む。敵味方入り乱れての乱戦となりうるかもしれんからな。もしそうなったら、お前は撤退してこい。お前の任務は敵の陽動と錯乱だ。わかったな」

 

 その言葉に頷いたオレは、作戦会議の最終確認が行われていたこの部屋から外に出ようと歩を進めた。

 

 今回の作戦が立案されたときは、流石に議論に参加していた小隊長たちも反発した。

 それも当然だろう。小隊長たちはもちろんオレの実力は知らないし、ましてや人柱力だということも皆知らない。

 それなのにもかかわらず、下忍といえども実績のない4歳児を急襲作戦の要に起用したとなると、いくら信頼のおける部隊長であるシカゾウさんやその参謀役である息子のシカクからの作戦案であったとしても皆が一様に頷くわけもなかった。

 

 最初は雷遁を纏った状態で秋道一族の人の超部分倍化の術でぶん投げてもらって、オレ本体が敵陣地に侵入。影分身1000体ほどで千鳥を乱発しまくって、敵内部で暴れまくって、敵が浮足立ちまくっているところに(まくり過ぎだ。捲るのは美少女のスカートだけにしたいね、うん。)木ノ葉の前線部隊ほぼ総動員で鎮圧。というものだったのだが、これではお初にお目にかかります状態の人は信じない。話し合いの結果、ボツとなった。

 

 そして紆余曲折あった後に採用された策が『トロイの木馬』だ。命名、オレ。ちなみにギリシャ神話からとったというよりは、コンピューターウィルスのほうがニュアンスとしては近い。

 作戦はこうだ。4歳の子ども(つまりはオレ)が道に迷い、敵方の忍びに見つかる。見つかったあとは敵に案内されるがまま陣地に入り込み、多重雷遁影分身で錯乱させて木ノ葉側へ合図を送る。あとは先程シカクからの説明の通りだ。

 

 んじゃ、行ってくるとしようか・・・死地へ。

 

 

 



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012.東部戦線異状あり 邂逅

お気に入り登録、評価、感想。ありがとうございます。


 

「君、大丈夫っ!?どうしてこんなところにいるのッ!?お父さんやお母さんはどうしたの!?迷子!?サイジ!大変!!男の子がっ!!」

 

 天候は暴風雨。空は暗く、雨も強く降りしきり前もよく見えない。時折、雷もゴロゴロと鳴っている。世界の終焉ってこんな感じなんだろうか。とも思えるような最悪の気象条件。そんな状況下でオレは見知らぬ女の子に、ぎゅぅぅぅっと抱きしめられていた。

 

 これ以上ないほどに強くというか、力強く以上に、力尽くで抱きしめられていた。

 

 そしてオレは身動きが一切取れなくなっていた。いや、冗談じゃなく、大袈裟でもなく。文字通りの意味である。この女の子、やたらと力が強い。オレじゃなきゃ一瞬で意識を飛ばされてるところだった。

 

 どうしてこうなった。

 

 あ、くび。首が絞まってる!!ちょっ、オレのこと抱きしめてる女の子!オレ、息できないんですけどーっ!!オレ、死んじゃうんですけどーっ!!

 

 あ、意識がすーっと遠ざかっていく。

 

 あぁ・・・昔流行してた失神ゲームって、やられる側はこんな感じなんだなぁ。なんて場違いな感想を抱きながら、もう一度思った。

 

 ホントにどうしてこうなった。

 

 そして今度こそ本当に意識を失った。

 

 

 

 

 

 以下、回想。

 

 オレは『林の国・水の国同盟』に対抗するために設営された前線基地のなかにある会議室から出たあと、敵陣地をもちろん最短距離で目指すわけもなく、一旦北上していた。

 一度、大きく北に回って海沿いから敵陣地を目指すことにしたのだ。

 そうでもしないとただでさえ、オレが子供であるということを含めても怪しまれそうなものなのに敵からしたら敵の木ノ葉側からやってきた子供なんて怪しさ100パーセントでしかない。

 

 雷遁を纏いながらとはいえ、この悪天候下での強行軍はキツイものがあった。

 

 雨に打たれて濡れた服は雷遁のチャクラで多少渇きはするもののそれ以上の水量が天から降ってくるから、なんの意味もなくオレの体温をぐんぐんと奪っていく。

 かといって、雨宿りできるような場所もないし(今走っているところは森林のため大木は数多くあるが落雷の危険性を考えて雨宿りできるところにはカウントしていない)、オレ自身、火遁の術も使えない。こんなことならオビトから豪火球でも習っとくべきだった。

 そんな後悔もしつつ、でも立ち止まるわけにもいかず肉体活性を用いた高速移動で南下の目印と決めていた岩場を目指す。

 

「おい、お前らこういう時にこそ出て来いよ。寒いし冷たいし暗いし、オレのMP(メンタルポイント)は0なんだが・・・」

 

 足を動かす以外に移動中することがないため暇を持て余したオレは(いや、決して寂しいとかではない。うん、絶対に)、同じく暇を持て余しているだろう又旅と重明に呼びかける。

 

 ・・・。・・・。応答なし。

 

 留守ということはありえない。なんたってオレの精神世界に封じ込まれているようなもんだからな。つまりほかに考えられることとすれば、寝てるか。最近2人(2匹のほうが正確か)の間でハマっているというツイスターゲームに集中しすぎてオレの呼びかけなんざ聞こえちゃいないか。最悪、ただの居留守か。最後のだったら質が悪い。いつか絞める。

 もっかい呼ぶか。

 

 トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャッ

 

「おい、又た」

『なんじゃ、おまえ様。そう何度も何度も何度も回線をつなげなくともわかっておるわ。こっちは「ついすたーげぇむ」?とやらで忙しいんじゃ!』

 

 なんか怒られた。理不尽に怒られた。

 

「なんでそんなに怒ってんだよ・・・。そうカリカリすんなや」

『主様よ、遅れて済まなかったな。ついさっきまでこの前主様から教えてもらったツイスターゲーム50連戦をしていたのだがな、又旅が最後まで勝てなくてなぁ。それで機嫌が悪いのだ』

「なるほど。それでか」

 

 いや、だとしたら尚更質が悪い。

 どうせ又旅のことだ。自分から勝負を吹っかけて負けたのが悔しくて50連戦なんざ意味の分からない回数をしたんだろう。きっと敗北数も同じ数だ。聞いてやらんどこう。

 

『尻尾の数が重明のほうが多いんじゃ。それは卑怯というもんじゃろう!?おまえ様よ、重明の尻尾5本とってまいれ。それで妾と同数じゃ。これでようやく正々堂々とした対等な勝負ができるというもんじゃろ』

「んなアホなこと言うなや」

 

 元来負けず嫌いで好戦的な又旅だ。ゲームとはいえ負け続けたことによってちょっと思考回路がアホなことになっている。

 

『なんじゃなんじゃ。おまえ様まで重明の味方をするというのか。ふん、長い物には巻かれろっていうニンゲンの醜さが溢れておるわい』

 

 拗ねている。めちゃくちゃ拗ねている。

 

「まぁまぁ、そんなこと言うなって。今度はお前も楽しめるゲーム考えてやっからさ。とりあえず、頭冷やして寝てろ」

 

 呼んでおいてめんどくさくなったオレは又旅と重明を精神世界へ送り返した。

 酷いとか言うな。ああなった又旅の面倒さは本当に放置するしかないんだ。頭が冷えるまでな。

 

 又旅には頭を冷やせと言ったが、そろそろ身体が動かなくなってきた。

 

 寒い、やばい。

 

 どっかで休憩しないと。

 

 そう思って、一旦立ち止まり辺りにどこか雨から身を守れるところはないかと探していると急に気配が感じられた。

 やば。想定外のところで人に見つかっちまった。

 

 こんな感じで話は冒頭に遡る・・・

 

 

 



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013.東部戦線異状あり 保護

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 あれから一体何時間経ったのだろうか。

 

 目を開けるとそこは知らない部屋のベッドの上だった。

 

「知らない天井だ・・・」

 

 まさかオレがこのセリフを言うことがあろうとは。

 まだボーっとする頭と体ではあるが、少し上半身を持ち上げる。気を失っていたからだろうか、なんだか頭が揺れているような気がする。頭というか、体全体?

 なんだか、ふらふらと揺られているような、揺さぶられているような、そんな気がする。

 

 だが、体温も血の巡りもきちんと通常に戻っている。寒いと感じることは無いし、冷えて痛いと感じることもない。

 気を失う前は雨に打たれて体温が下がり、手がかじかんでうまく握れない状態だったが、今はぐーぱーさせても何の不自由もなく手に力が伝わる。うん、いい感じだ。

 

 ふと意識を他へ移すと、部屋の外から話し声が聞こえてきた。どうやら部屋の壁は薄いみたいだ。

 聞こえてきた声はオレを絞め落としたあの女の子の声のようだった。もう片方も女の子だろうか。随分と独特な話し方をするが声が高い。

 

『あの子、戦争孤児かしら。あんな天気にあんなところで一人でいるなんて・・・まだ小さいのに』

『まぁ可哀そうだとは思うがこれが今の現状だナ。でもあの坊やはお前に拾ってもらえてまだラッキーなほうだゼ。あの子のような戦争孤児を生ませないためにもいち早くこの大戦を終わらせる必要があるんだナ』

『そうよねぇ。そのためにも頑張らないといけないわね』

 

 なんかオレが知らない間に戦争孤児にされていた。

 たしかにあんな街外れの山林に雨に打たれてずぶ濡れになっていたらそう思われても仕方ないかもしれない。なんたってまだ4歳児だからな。

 貧相な恰好しているし、もちろん額当てもつけていない。それでああいう出会い方をしたらオレだってそう思うだろう。

 

『それで?どうするつもりなんだヨ。あの子、里まで連れて帰る気カ?』

『うん。そのつもりだけど・・・やっぱりまずいかしら』

『どうだろうナ・・・。まずくはないかもしれないが誰があの子の面倒をみるんダ?お前んち、みんな長期任務で家開けてること多いだロ?』

『困ったわねぇ。私が一緒にいてあげられたら一番いいんだけど・・・』

『それは到底無理な話だナ。お前は指揮権こそ与えられてはいないが若くして上忍になった新星だゾ。これからも戦場を転々と転戦させられるに違いねェ。このあとは雲隠れとの戦線に行くんだロ?』

『そうなのよねぇ・・・。ねぇランちゃん、それまでこの子のことお願いできないかしら。もし容体が急変しても貴方なら面倒見切れると思うし』

『フン。戦時下の医療忍者の忙しさ舐めんじゃねぇゾ。ワタシは対木ノ葉前線に付きっ切りなんダ』

『そっかぁ』

 

 会話が途切れたと同時にドアがあいた。

 

「あら?」

「オ」

「目が覚めたのね!よかったぁ」

 

 ドアからオレの寝ていたベッドまではすごく距離が近かった。身構える前に捕まった。捕縛といってもいいかもしれなかった。

 

「ちょ、く、くるしい・・・」

「心配したんだからね!もう大丈夫よ。お姉さんがついているわ。寒かったでしょう?怖かったでしょう?」

「メイ。それぐらいにしとくんだナ。その坊や、息できなくなってるゾ。お前のその醜い胸の脂肪でナ」

「あらっ。ごめんね、ぼく。苦しかった?」

 

 そういってオレを解放した。

 

「い、いや、だいじょうぶです」

「そう!ならよかったわ」

「フン。このエロガキが。まったくそんなものに鼻の下伸ばしやがっテ。これだから最近のマセガキハ」

 

 オレを何度も絞めてくる赤茶っぽい髪の少女。メイと言ったか。確かに年の割には合わない胸の柔らかさは感じられたが正直息ができなかったのはそこが原因じゃない。絞めつけてくる腕力だ。諸悪の根源は細く白いきめ細やかな肌を持つその腕だ。だから変わった口調の少女、ランからオレに向けて言われてた言葉には反論させていただく。地の文(ここ)でな。

 

 胸の感触味わってる余裕なんざこれっぽっちも無かったんだよ!皆無だったんだよ!残念ながらなッ!!

 

「あの。助けていただきありがとうございました」

 

 本当は有難迷惑だったがな。

 あそこで人と遭遇する予定はなかったんだ。

 いまあれから何時間経っているかはわからないが、早急に戻らないと。

 

「ところで、あれからどれくらい時間が経ったの?」

「1時間といったところだナ。思ったよりもお前の回復力がすごくてナ。実はこう見えてもワタシは驚いているんダ。そんなことより、お前を助けてやった恩人に名乗りもせんのカ?お前ハ」

 

 名乗りたくないんだよ。さっさと作戦に戻らないとだめなんだから。

 そんなことを考えてたオレだったが、緊張していると勘違いしたのか、茶髪少女のほうから話し始めた。

 

「ラン。そんなに睨んじゃ可哀そうでしょ。それに名前を聞くときは自分から名乗るものよ。というわけで、ラン。貴方から自己紹介なさい」

 

 不承不承といった具合で、仕方ねぇなぁ面倒くせぇよ全く。といった様相で。変な口調の少女が口を開く。

 

「ワタシはランという者ダ。以上ダ」

 

 その様子を見て苦笑いを浮かべながら茶髪少女が続く。

 

「私は霧隠れの里の照美(てるみー)一族の上忍。照美メイよ。もうすぐ12歳になるわ。よろしくね」

 

 最後にウィンクまで付けて自己紹介したその少女は、原作ではあんな扇情的な恰好をしていたためか。それとも髪型がショートカットで前髪が両目ともにかかってなかったせいか。大人っぽくはあるが少女っぽさが抜けてないからか。印象はだいぶ違うが、確かにあの照美メイだった。

 

 彼女は後の、霧隠れの里。五代目水影になる照美メイその人だった。

 

 

 




ついに、というか。ようやく、というか。

照美メイ初登場回でした!(正確には前回から出てきてましたが)

これからどうなるのか・・・。それは僕にもわかりません。

プロットを書かないで始めると、こうなるのか。


次回もよろしくお願いします。


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014.東部戦線異状あり 襲撃

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 なんで、気付かなかったんだ・・・オレ。

 いくら悪天候で視界不良だったとはいえ、抱きしめられるくらい近かったら顔ぐらい間近で確認できただろ。

 こんなところで原作キャラ(現在敵)に会う予定なんざ無かったというのに。

 

 照美メイ。原作では物語後半の五影会談にて初登場。長い茶髪で右目を隠したセクシー美女だが、30歳独身というのをすごく気にしているため「結婚」「婚期」「遅れる」「破棄」という言葉と同音異義語に過敏に反応して唐突に笑顔で「黙れ殺すぞ」と言い放つというキャラだった。

 でもこの世界の照美メイは、独身を拗らせる前の普通の少女だった(普通というには戦闘力は高すぎるか)。それでも戦争孤児(と誤認をしたオレ)を見かねて保護するような心優しい少女だった。

 

「さぁ、お姉さんたちは自己紹介をしたわよ。きみは何ていうの?」

 

 すごく笑顔がまぶしい。まぶしすぎるぜー未来の水影様。今なら国民的美少女コンテストでも優勝狙えるとお兄さんは思う。

 でもなぁ。どうせすぐ裏切っちゃうことになるし・・・それなら最初から猫なんか被らなくてもいいよな。うん。

 

「オレはカルタ。よろしく」

「うわぁ。生意気盛りなんだー。やだぁーかわいいー」

 

 念のため苗字は隠すことにした。

 え、でもなんか、想像してた返事と違う。もっと言葉遣いとか注意されるかと思った。ほら、年功序列的にあっちのほうが年上だし。怖いイメージのある霧隠れの里の忍びだし。血霧の里だし。

 でも子ども(オレ)相手だからなのか、口調もなんか甘い。ちょっとびっくりした。拍子抜けだ。

 じゃあ、このままでいこう。そのほうがオレも楽だし。

 

「そんなことよりここが何処だか教えてくれないか。オレは行かなくちゃならないところがあるんだ」

「だめよ。外はまだ暴風雨が吹き荒れているわ。カルタくんみたいな子どもが外出ちゃ危ないのよ。さっきだって私が見つけてあげなかったら凍死しちゃってたかもしれないんだからねっ」

 

 びしっと人差し指を立てて顔がグーンっと近づいてきた。

 

 やだぁーなにそれーかわいいー。

 

 ・・・こほん。さっきのメイの真似だ。

 とりあえず、照美メイの監視の目がある内は自由に動けないな。話題を変えるか。

 少しでも今の情報が欲しい。・・・ちょっとだけぶりっ子するか。

 

「っちぇ、わかったよー。メイの言う通りにするからさぁ。ここがどこかだけ教えてくれない?お願いっ!」

「本当でしょうねぇ?しょうがないじゃあ、ちょっとだけね。今いるここは海の上なのよ。大きな船の中に私たちはいるの。そうねぇ・・・港からだいたい2,3kmってところかしらね」

「おい、メイ。あんまりべらべら喋るんじゃないゾ。ガキとはいえコイツは部外者ダ」

「わかってるわよ。だからここまでしか教えないつもりだったってば」

「フン。本当かねェ・・・」

「本当だって~」

「じゃあワタシは医務室に戻るからナ。精々ショタコンに目覚めないことだナ」

 

 そう言い残してランは部屋を後にした。メイはランの言葉に「そんなことありません~」と返していたが、ランが聞いていたかは怪しいところだ。

 よし。お目付け役もいなくなったことだし、まだなんか聞き出そう。

 

「ねぇ、メイ。大きな船ってどれくらいあるんだ?」

「うちの里に?う~ん、それは私にもわからないわ」

 

 う~ん。本当に知らないのか、躱されたのか。わかんねぇな。

 

「じゃあ、一緒に来てる船はどれくらいなんだ?船って確か、艦隊ってのをつくって海をまわるんだよな?」

「へぇ。カルタくんって物知りなのねぇ。この第2艦隊は大きい船は3隻ね。荷物だったり、人だったりを大陸に輸送するのよ。あとはその周りに小さめの船が何隻かあるわね」

 

 なるほどな。この船は物資や人員を本国から戦地へ運ぶ輸送船ってことか。

 

「そうなのか。じゃあこの第2艦隊以外にもいくつも艦隊があるってこと?」

「そうよ。あ、でもこれ以上は話してあげないからね。一応里の機密事項にもあたるだろうし、それにランにも言われたし」

「ふーん。じゃあ仕方ないね」

 

 他に聞きたいことはある?と、話を振ってくれるメイ。おいおい忍びがそんなに情報漏らしていいのかよ、とも思うがオレとしてはありがたいので乗っかっとく。

 

「メイって上忍なんだろ?どんな術使えるんだ?」

「あー私?私は火遁と水遁と土遁を使えるのよ。3つも性質変化を持ってるって中々いないのよ?あ、そんなに詳しいこといっても分からないかしら。でもねぇ、うちの照美一族は代々風遁と雷遁の家系でねー。正直一族の中では肩身狭いのよ。まぁその分、部隊では評価してもらえたから上忍になれたんだけどさ」

 

 なんとそんな設定があったとは。いや、あまり触れられたくはないのかな。表情がさっきまでとは違ってちょっと曇ってる。別のこと聞こう。

 

『て、敵襲ーっ!!』

 

 そんなときだった。ドアの向こうから叫び声が聞こえてきたのは。

 それが聞こえた時からメイの行動は早かった。迅速だった。オレに早口で「ここから絶対に外には出ないように」と念を押し、「私はこれから甲板に出て戦ってくるけどすぐに帰ってくるから心配しないで待っててね」と言ったかと思うとすでにその場からは消え去っていった。

 

 瞬身の術か。

 

 それから直後、船内放送も流れた。

 

『船内全ての人員に告ぐ。忍びは直ちに甲板に防衛へ。乗組員は船内で待機するように』

 

 よっしゃ。オレはこの機に脱出しよう。

 

 

 

 置手紙くらいしてあげても罰は当たらない・・・よな?

 

 

 



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015.東部戦線異状あり 海戦

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 置手紙を書き終えたオレはその部屋を後にした。

 

 え、なんて書いたかって?それはもう、書き出しは「拝啓」からきちんと書かせてもらった。内容は教えん。プライベートだ。

 

 このまま船内の間取りも知らないまま出口を探していたら、移動中に誰かと鉢合わせするだろうと考えたオレは、隠れ蓑の術の上位互換。雷遁・光学迷彩の術[※]を使って(つまりはステルス化。透明人間化して)船外への脱出を開始した。船がガンガン揺れる。船上ではもうすでに戦場と化しているのだろう。いや、ダジャレを言うつもりは微塵もなかったのだが。ほんとに。まじで。

 道中、一人でいる乗組員を見つけると陰遁(げんじゅつ)を使って尋問。出口を聞き出しながらずんずんと進んでいった。

 こうしていると、なんだかRPGのダンジョンを攻略していってるみたいだな。まぁ、敵が出てこないから戦闘シーンはないが。

 

 そしてようやく甲板へ出てみるとそこは阿鼻叫喚の地獄絵図。というか、怪獣映画のワンシーンに入り込んでしまったかと思うほどの光景が広がっていた。

 

 ハリウッドの怪獣大戦争のワンシーン。

 

 もしくは、旧約聖書やギリシャ神話。北欧神話のワンシーン。まぁオレには神話の知識なんぞないが、イメージ的にはそんな感じだった。

 

 船を襲う巨大な海蛇と思わしき怪物。馬鹿でかい図体と無数の触手をもつ蛸と烏賊の怪物。その口だけで小さな島なら呑み込めそうなほど大きな口の鯨のような、いや金魚のような怪物。鰐と鮫を足して更に50掛けたような怪物。それからネス湖のネッシーを獰猛で狂暴にしたような怪物までいる。

 

 これは後で調べたり、聞いたりして知り得た知識、情報だがこの化物怪獣たちは通称、海王獣(かいおうじゅう)海神獣(かいじんじゅう)と呼ばれているものらしい。十数年から数十年に一度のスパンで水の国や海の国といった海洋国家の周辺海域を1体で荒らし回る言わば天災のような伝説的存在らしい。そんな規格外な連中が今回はまとめて6体もやってきているのだ。それだけで今この状況がどれだけ悲惨で凄惨で過酷な状況かわかることだろう。

 

 周りの船の多くが木っ端微塵となり、海の藻屑と化している。このままだとこの船もあれらと同じような運命をたどるのだろう。

 

 甲板や海上にいる忍びたちが死に物狂いで戦闘を繰り広げている。中にはダメージを与えている者もいれば、今まさに命を散らしている忍びもいる。 

 船ごと丸呑みされれば乗っている乗組員も命はないだろう。

 

 オレはその場から立ち去ろうとした。

 

 ここで霧隠れの忍びが1人でも多く犠牲者が出れば戦力は大きく下がるし、戦場へ送り届けられるはずの物資も全て海に沈むとするのであれば、木ノ葉としては願ったり叶ったりだろう。オレとしてもこの戦場で命を懸けるつもりは毛頭ない。

 もちろんオレが強いことは百も承知だ。ここでオレが参戦することによって救われる命もきっと少なくないだろうとも思う。でも、オレがここで死ぬ可能性もなくはない。オレは水中戦、海中戦なんざやったことはないし相手は超巨大海獣どもだ。地の利ならぬ、海の利は敵にしかない。

 

 だから、卑怯と言われようと主人公(ヒーロー)失格と言われようとオレはここから立ち去ろうとしたのだった。甲板に出て状況を確認したその時までは。知っている声の悲鳴が耳に届くその直前までは。

 

 こんな大荒れの天気の中、怪獣たちが暴れる中、忍びたちが忍術を発動する中、そんな騒音の中、なぜその声がはっきりとオレの耳に届いたのかはわからない。でも、やけに(・・・)はっきりと聞こえたのだった。

 

「メイっ!?」

 

 そしてその悲鳴の発信源である少女はすぐに見つけられた。化物蛸か化物烏賊のどちらかか、もしくはその両方の触手に捕まっていた。

 両手も両足も拘束されてたら印も結べない。あのまま海面に叩きつけられたり、食われたりでもしたらひとたまりもないだろう。そうしたら確実にメイは、

 

 死ぬ。

 

 どういう訳か、自然と身体が動いていた。光学迷彩なんか取っ払い、雷遁を身に纏っていた。

 

「重明!羽ッ!!」

『応ッ』

 

 六枚翅(ろくまいば)が背中の封印式から飛び出す。

 

 八門遁甲【第一開門】開ッ!

 

 ガクンと自分の中でギアが無理やり上がる感触がする。

 

 八門遁甲【第二休門】開ッ!!

 

 2つのリミッターを解除したと同時に、甲板を強く蹴って空中に飛び出す。

 

 まずはお前だ。このタコ!!

 

「千鳥ッ!!」

 

 ボゴッ、っとすごい音を出してオレの身体ごとタコの頭を貫通した。このタコに痛覚があるのかは知らないが、オレを敵と認識したのだろう。滅茶苦茶に暴れて怒り狂っている。タフなタコだ。

 

 メイはまだ触手に囚われの身となっている。まずはあの触手をなんとかするか。

 

「又旅!爪ッ!!」

『しかたないのぅ。ほれ』

 

 又旅が力を貸してくれると同時にオレの右手の爪が二尾のそれとなった。

 空中での方向転換。化物タコへの再突撃。

 

 メイを捕らえている触手はタコもイカも関係なくぶった切った。容赦なくぶった斬った。

 自分の腕である触手を断ち切られたタコはもっと怒り狂い、同様にイカの方もオレを敵と認識したようだった。

 

 無数の触手の拘束から解放されたメイは万有引力の法則に従って自由落下が始まっていた。あの様子じゃ気を失ってるみたいだ。

 

「お前は水影になる女だ。こんなイレギュラーなところで命散らしてんじゃねぇぞ」

 

 落ちていく最中、何とかメイを空中で抱きかかえることのできたオレはここよりは安全地帯であると思われる陸に向かって飛んで行った。

 

 

 




※雷遁・光学迷彩の術とは
 そのまんま。透明人間になれます。
 女風呂とか覗けるので、三代目や自来也には教えられない。



オリジナル忍術の説明、こんど一覧にして出します。


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016.東部戦線異状あり 終撃

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 陸地にはすぐについた。こんなに離れているのに本当にあっという間についた。

 

 それにしてもあの海獣でけぇな。

 

 こんなに離れているのに目視できるとか、一体どれだけでかいんだ・・・。

 

「うぅ・・・」

 

 メイが意識を取り戻した。

 

「おい、メイ。大丈夫か?」

「ん、あ、あれ?かるたくん?わたし、たしか・・・」

 

 もしかしたら触手に首も絞められてたのかもしれないな。記憶はまだハッキリとはしていないみたいだ。

 だったのだが、海を見れば嫌でも目に入る巨体。それでメイは全てを思い出した。

 

「私、行かなきゃ!」

 

 そう言ってメイは立ち上がろうとするが、ふらついて膝を地につけた。

 

「メイ。お前はあのデカブツに負けたんだよ。また行っても同じだ。命をここで散らす意味はない」

「でも!あの中にはランも他の仲間もいるのよ!こんなとこに私だけいるわけにはいかないわ」

「じゃあ、こんな離れたところにいる意味わかってんのか?つーか、その様子じゃ覚えてないだろ。オレがお前を運んだんだ。せっかく助けたってのに、目の前で死なれちゃ後味悪いんだよ」

「へ?カルタくんが?私を運んで・・・ここまで?」

「あぁ」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 

「で、でもどうやって?」

「オレ、忍者だから。普通に瞬身の術で」

「は?」

「だから、オレ、忍びなんだよ。木ノ葉の」

 

 そう言って隠し持っていた木ノ葉の額当てをいつも通り、額につける。

 その様子を見てメイは驚愕している。

 良心から雨に打たれて凍え死にそうだった子どもを助けて仲良くなったと思ったら、実は敵国の間者だったのだ。しかも色々、情報を漏らしてしまっているし。

 

「メイはさっきオレを助けてくれた。オレは今メイを助けた。これで貸し借りは無しだからな」

 

 トントンというやつだ。お互いに助け合ったから敵同士でも等価交換は成立だろう。うん。

 でもメイの頭の中は混乱状態らしい。

 

「え、ちょっと待って。え、意味が分からないわ。うん、全然意味が分からない。私が助けたカルタくんが敵で、敵であるカルタくんが私を助けた?」

 

 ザッツライト。

 

「そうゆうことだ。なんだ、わかってんじゃん」

 

 でもなぁ。借金したら、それ返すときには利子っていうものがつくんだよなぁ。

 

「どういうことなのよ・・・。でもまず助けてくれたことは礼を言うわ。ありがとう。でもね、私は仲間を見捨てることなんてできないわ。意地でも行かせてもらうわよ」

 

 そう言って目つきを鋭きしたメイは海を睨みつける。

 

「利子も返すよ」

「え?・・・りし?利子?協力してくれるってことかしら」

「協力じゃない。ただの利子の返還だ。これでホントにチャラだかんな」

「だからそれ協力なんじゃない。もしかしてそれ、ツンデレカルタ?」

「違う。本来、メイの実力があれば海神獣(あれ)くらい何ともないはずなんだ。なんたってお前は水影になる女だからな」

 

 オレの本心が駄々漏れる。原作知識という今現在では不確かな未来情報を漏らす。

 

「沸遁と溶遁の2つの血継限界を操るチートキャラなんだ。本来、オレなんかお呼ばれしなくたってこんなピンチ、ピンチにならずに済むんだ」

 

 だから、

 

「協力じゃない。独力だ。オレひとりで片づける」

「カルタくん、ちょっとなに言って」

 

《雷遁・纏 弐式》[※]

 

 バチバチと雷遁のチャクラがスパークする。通常の雷遁・纏と比べ物にならないほどの(いかづち)と光量だ。遠目からみたら、オレ自身が発光しているようにも見えるかもしれない。

 八門遁甲の休門を解放し、強制的に体力を上昇させ圧倒的な回復力を生み出したからできる弐式。今までの速さと攻撃の重さとはケタが違う。

 

「すぐに終わらせるさ」

 

 オレが蹴った地面はまるでクレーターのように大きく抉れた。

 

 

 

 

 地面を蹴ったそのままの勢いで、まずは直線状に並んでいるタコとイカに突っ込む。もともとそんなに反応速度が速くない化物だ。先程と同じようにカウンターの危険性を度外視で突撃する。

 

《雷皇・千鳥》[※]

 

 雷そのものをそのまま右腕全体に宿したかのような千鳥がタコとイカの頭部を突き抜ける。このカットだけをみたら劇場版のクライマックスにも見える。

 そして、そいつらに訪れたのは先程とは似た攻撃でありながら全く次元の異なるものだった。確実で明確な死だった。

 

 頭部に大きな穴が空いただけではなく、体内まで雷の電流電圧で焼き切られたタコとイカはその巨体を揺らしながら、大きな波、水飛沫を立てながら海の中へと沈んでいった。

 

「次」

 

 残るは4体。海蛇と鰐鮫と鯨金魚とネッシー。

 オレの殺気を真正面から受けた超巨大金魚がたじろぎ一瞬、動きが止まる。

 

「だらしない口が開きっぱなしだぞッ」

 

《多重影分身の術》

 

 オレの影分身体が怒涛の勢いで超巨大金魚の口から体内に侵入する。

 そして一斉に内部での千鳥流し。そして追撃としての分身大爆破。巨大金魚の丸焼きが出来上がっていた。

 

 鰐鮫とネッシーはある程度、対処できている忍びがいる。

 

 じゃあ、次のオレの相手は、

 

「てめぇか。海蛇」

 

 今回襲撃してきた中で最も大きい体躯を誇る海蛇。海面に出ているだけでも大きく見上げるほどのサイズ感だが、これだけの質量を海上に出しているとなると、それを支える身体はどれほどの大きさを誇るのだろうか。想像もしたくない。

 

「オレに喧嘩売ったこと後悔しながら眠りやがれッ!!」

 

 そしてその瞬間、巨大な海蛇と雷光が交錯した。

 

 

 




※雷遁・纏 弐式とは
 雷遁・纏の強化版。より速く、より硬い防御力、より強い攻撃力になる。

雷皇(らいこう)・千鳥
 腕全体に千鳥を展開し、纏(弐式)の突破力・貫通力で攻撃する。


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017.東部戦線異状あり 霧忍

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 雨が上がった。あれほどの暴風と豪雨であったのにもかかわらず。海上全ての戦闘が収まったと同時のことだった。

 

 霧隠れの多くの忍びと多くの物資を犠牲にして、対海神獣(かいじんじゅう)との海戦は終結した。残ったのは20人ほどの忍びと1隻の大型輸送船(オレが乗ってたやつだ)のみ。被害は文字通り甚大で、第2艦隊は壊滅状態だった。

 

 そして現在、唯一残った大型輸送船の甲板に立っていた。

 

「助太刀感謝する。お前さんがいてくれなかったら俺達もどうなっていたかわかんねぇ。だが、どうして木ノ葉の忍びがここにいるんだ?」

 

 終結したが、新たな問題が発生していた。

 そりゃあそうだ。木ノ葉の額当てをしてあれだけ大活躍してたら、気付かれるに決まっている。木ノ葉と霧は現在戦争中。敵国同士だ。

 

「あ、いや。そんなに身構えないでくれ。恩人であるアンタを害するつもりはねェんだ」

「まぁ、俺達があんなに()えぇお前に何かできるとは思わねぇけどなっ!!」

 

 がっはっは!と、豪快に笑う霧の忍びの生き残りたち。なんだ、こいつら。海の漢みたいだな。イメージ的には海賊と言われても頷ける。

 

「オレこんな小さいのに、見縊らないんだな」

「バッーロー。あんなすげぇ戦いを魅せられてオメェをガキ扱いできる猛者(ばか)なんかここにゃいねぇよッ!」

 

 そしてまた、がっはっは!と豪快に笑う。

 気はいい奴らみたいだな。ずっと八門遁甲を開いておくのも体が痛む。とりあえず開門も休門も閉じておく。それと同時に雷遁も弐式は解除する。通常の纏は継続。

 バチバチとスパークが体のまわりに散っていたのが解除されたからか、それとも単にオレが警戒を解いたからか、霧の忍びたちのほうの雰囲気も先ほどよりも丸くなったような気がした。

 

「それで、なんでお前さん木ノ葉の忍びが前線からこんなに離れた海にまで来てるんだ?補給路の襲撃が目的だったのか?でもそれなら俺達を助けてくれるわけねぇよな?」

 

 ん?どうなんだ?と探りを入れてくる霧忍。

 

「・・・道に迷ったんだよ」

「へ?」

「だから!道に迷ったんだって言ってるだろっ!」

 

 前線部隊の奇襲攻撃作戦の陽動役だなんて本当のことは口が裂けても言えない。だから、普通に考えてあり得ないことをマジで言ってるように見せかけるためにあえて逆ギレしてみる。

 

「ぷっ」

 

 そんなあり得ない言い訳に対して誰かが吹いた。それを皮切りに、がっはっは!とまた豪快な笑いの大合唱が始まる。

 

 えぇ、お前らそんなんでいいのかよ。簡単に騙されんなよ。まぁオレとしては楽だからいいけど。

 

「オメェ、ぷーくすくす、、、その年で、滅茶苦茶に()えぇのに方向音痴とか、ぷっ。てか迷子って」

 

 笑いを堪え切れずに声が震えている。

 

「やっぱどれだけ強くても子どもは子どもなんだな!いやいや、悪くとらえないでくれよ?子どもっぽさ、ってぇのがお前さんには無いのかと思ったら、案外かわいいとこもあんじゃねーかよ。ってことでだな」

「つまり、褒めてんだ」

 

 うん。悪い。道に迷ったっていうのは噓なんだ。・・・なんて今更言えるわけもなく。

 そんなことで可愛いと褒められてもちっともうれしくもなんともない。まぁ、かわいいと言われること自体、

元々好きじゃないが。

 なんか、ピュアな人を騙しているようで罪悪感すら覚えそうである。

 いやでも、相手は強面のおっさんたちだからどうでもいいか。

 

「そんなんで褒められたとしても全然嬉しくないからな。ましてや海臭いおっさんたちに」

「そりゃあそうだ!」

 

 そして、がっはっは!といつも通り大合唱。

 

「じゃ、次に会うときは戦場だな」

「まだ戦時中だからな。でも、お前さんとは矛を交えたくねェよ。もちろん恩人だからってぇのもあるが、それ以前に俺達が何人束になっても全く勝てる気がしねぇかんな!」

「ま、そんときゃお手柔らかに頼むわ」

「あぁ、全力で叩き潰してやるよ」

「「「ひっでぇ!!」」」

 

 そしてまた大爆笑。

 なにこいつら、すげぇいい奴らばっかじゃんか。

 

「じゃ、オレそろそろ帰るわ」

「お前さん、名前教えてくれないか。恩人の名前くらい知りてぇんだ。俺は九鬼(くき)一族、現族長の九鬼イカリだ。一応、この艦隊を率いていた」

「俺は村上一族、本家次期族長の村上ゲキドだ」

 

 いままでメインで話していた方が九鬼イカリ。強面で肌黒。筋肉は隆々で背丈も2m近くはある。ということはだいたいオレの倍だ。

 もう1人後半に名乗った方が村上ゲキド。青髪にピアス。ぱっと見は、チャラい兄ちゃん。上半身裸の背中にはでかでかと刺青がある。優し気な笑みを浮かべながら話すが、顔に大きな傷跡はあるし、言葉遣いは悪い。

 先程の戦闘を見る限り、どちらも水遁を軸に戦っていた。

 

「羽衣カルタ。羽衣一族の末裔だ。それじゃあ、次会うときは戦場でないことを祈るよ」

 

 そして別れ際、最後にもう一度、「本当ありがとな」と礼を貰った。片手を挙げて返事をしたあと雷遁瞬身で俺はその場を後にした。

 

 照美メイには、今はもう会わない方がいいか。時間もないし。

 

 

 

 想定外のことに巻き込まれ、前線奇襲の予定時間までは本当にあと少ししかない。全速力で戻っても間に合うかどうかだ。

 

 仕方ない。また身体に鞭打って飛ばすか。

 

 八門遁甲の休門を開き、纏も弐式にし、まさに雷光の如き速さで移動する。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

今まで1日最低1話更新をモットーに活動してきましたが、今後更新速度が下がってしまう可能性が高くなってまいりました。

しかし、執筆のほうは続けてまいりますので最後までお付き合いいただけると幸いです。

次回もよろしくお願いします。


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018.東部戦線異状なし 亡国

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なんだかんだ、今日も投稿できました。


 

 霧隠れの里と林の国連合が対木ノ葉のために構築した前線基地は、巨大な雷が同時多発的に落ちたことによって壊滅した。

 

 木ノ葉の奇襲部隊が奇襲をする前に、すべてが消し飛ばされたのだ。

 

 超巨大積乱雲。通称、スーパーセルから落ちるただの落雷によって。

 

 

 

「なかなか合図が来ねぇから死んだと思ったぞ。カルタ」

「まさか、お前ひとりで全部やっちまうとは思ってもみなかったがな」

「いや、まさかあそこまでの威力になるとは思ってもみなくて。皆さんを巻き込んでしまわなくって本当に良かったです」

「全くだよ。あんなの喰らったら生きてなんかいられねぇよ。消し炭ですらいいほうだ」

「だよなぁ。あれ恐らくだが、相当な数が肉片すら残らないほどに消し飛ばされてるぞ。お前ホントに人間か?」

 

 大事なことだから、もう一回言う。

 オレだってまさかあんな威力になるとは思ってもみなかったんだ。

 

 話は少し遡るが、敵前線基地近くに到着したのが作戦開始時刻(オレの合図が無くても作戦開始の時間という意味だ)の本当に直前。

 作戦ではオレが敵の内部に忍び込むなり、一般の子どものふりをして保護してもらうなりで基地内に潜入し、機会を見計らって敵内で混乱を起こす(どのような方法をとるかは任されていた)。その後、木ノ葉奇襲部隊に錯乱の成功と奇襲開始の合図を出して(これもどのような方法をとるかは任されていた)、オレは速やかに撤退・・・だった。

 が、時間がなさ過ぎて、オレの奇襲攻撃で混乱と錯乱を図り、且つそれを奇襲部隊への合図として考えたのだ。

 

 そしてオレが奇襲の狼煙として使おうと思っていたのが『麒麟』だ。

 原作では、うちはサスケが兄イタチと死闘した際に使用したあの術だ。原理としては、積乱雲から落ちるただの落雷であり、それを雷遁の術で対象に誘導する純然たる自然現象であるため、威力は性質変化で作り出す通常の雷遁を遥かに上回り、巨大な建造物を一発で吹き飛ばしてしまうほどの威力を発揮する。が、自然現象がゆえに1度使ったら積乱雲もエネルギーを放出し終わったら霧散してしまうため、1回しか使えないという欠点があったのだ。

 

 あったはずだったのだ。

 

 それがどうしてこうなった。

 

 敵の前線基地、陣地一帯が数多の巨大雷によって消し飛ばされることになった。

 全部、超巨大積乱雲(スーパーセル)が悪い。オレはそれを通常の積乱雲と同じように1発麒麟を撃ったら晴れるだろうと甘く考えていたから、敵が全部消し飛んでしまったのだ。敵の前線基地内に何発、雷が落ちたか数えきれないくらい落ちてしまった。

 

「なぁ、あれってどういう原理なんだ?」

「そんなこと教えられませんよ。今後は羽衣一族の禁術に指定させていただくので」

 

 あんな危なっかしい(もの)。しかも悪天候で雷遁さえ扱えたらある程度、だれでも使えちゃう術を、おいそれと伝授するわけにはいかない。

 

「それに色々と準備や条件が必要なんです」

 

 これで通常の麒麟より規模の大きい麒麟の原理を聞いてくる上忍を黙らせた。

 

「その歳でもう下忍なのが既に驚愕なんだけど、でもそれ以上に術の威力だったり、思考回路だったり、っていうのを鑑みたら下忍なのが驚愕っていう謎のインフレ?いだッ!!」

 

 ずっと喋ってるこの上忍。奈良シカクに叩かれてようやく今度こそ本当に黙った。

 

「第1班はここで敵の被害を検証する。念のため負傷者も探そう。いたらいたで情報を聞き出そう。奇襲部隊の第2班から第7班まではこのまま進撃。第8班と第9班は前線基地へ一時退却だ」

 

 そしてシカクが、散ッ!と号令をかけると一斉に動き出した。ちなみにオレはどの班にも配属されていない。

 

「シカクさん。ぼくはこのあとどうすれば良いのでしょうか」

「あぁ。カルタ、お前には親父から言伝(ことづて)を頼まれていたんだ。親父からは『与えられた任務を全うせよ』だってよ」

 

 ってことは、このまま林の国の首都に殴り込みすればいいんだな。普通の奴だったらチャクラ枯渇して死ぬほどの酷使のされ方だな。オイ。

 

「わかりました。次の任務が終わりましたら、直接木ノ葉の里に帰らせていただきます」

「あぁ、わかった。そのように親父にも伝えておく。カルタ、お前なら大丈夫だろうとは思うが、気をつけてな」

「はい。ありがとうございます」

 

 任務達成までの期限は決められてはいないんだ。そこまで急ぐ必要はないだろう。

 オレは雷遁も纏わず、瞬身の術も使わず、もちろん八門遁甲の何れも開かずに一人ぼっちの行軍を開始する。

 

 林の国の首都はここから北方向に進んだ先にある。霜の国や湯の国との国境にほど近いところに首都馬連(バーレン)があるのだ。

 忍五大国に次いで中規模の国である林の国は、領土・経済規模ともに中規模の中では上位になる国だ。

 

 ・・・そんなところに木ノ葉の保有する人柱力、つまりはオレ。ようするに尾獣を暴れさせて大丈夫なのだろうか。

 後々問題にならないのだろうか。火の国以外の他四大国が同盟を結んで攻めてくるとか。

 

 いや、でも二尾は木ノ葉が保有していることは公にはなっていないのか。きっと、雲隠れのほうも忍界の核兵器たる尾獣をまさか何者かわからない輩に盗られたとは言えないだろう。

 ん?ということは、林の国首都の馬連で急に二尾が現れて暴れたとしたら、何も事情を知らない人から見ると核兵器たる尾獣を雲隠れが林の国に対して突然使用したように見えるって寸法か。

 

 ふむふむ。『にゃるほどにゃ~ん』という、又旅のふざけた声が聞こえてくる気がする。

 

 そして二尾に首都を攻撃されて弱っているところに、降伏を促す文書でも送って木ノ葉にとても有利な条件でこの対林の国との戦争を終わらせるつもりなのだろう。

 

 ダンゾウのやつ。えぐいなっ!

 

 じゃあ、一応別人に変化していきますか。いざ、馬連へ。

 

 

 

 

 

 1週間後、林の国の首都である馬連を突如襲った尾獣・二尾。

 

 この事件によって、林の国は未曾有の被害を被り第3次忍界大戦から脱落を余儀なくされた。

 

 林の国が戦争していた火の国・木ノ葉隠れの里との間に結ばれた終戦条約によって、林の国は解体され、火の国の東側領土の一部となった。

 

 これにより、林の国という名は今後の歴史から消え去ることとなった。

 

 

 



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019.解散!オビト班(仮)

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 木ノ葉の里に戻ってきた。

 

 火影の執務室に呼び出され、ダンゾウ共々三代目火影である猿飛ヒルゼンに説教を食らった。火影さまを拝見したことはあったが言葉を交わしたのは初めまして。ダンゾウはこの世界で完全なる初めましての状態だったのにもかかわらず、問答無用で説教を食らった。なぜだ。

 オレどっちかというと、共犯者ではなくただただいい様に利用された被害者側なんですけども。

 

 不幸だぁぁぁぁぁ!!

 

 とりあえず、林の国の首都馬連(バーレン)を襲撃した際、最後に自作自演で「尾獣化したオレVS謎の木ノ葉の忍び(これもオレ)」を首都郊外で戦わせ、対外的には木ノ葉が林の国を守った感を演出したことは褒められた(但しダンゾウにだが)。

 

 オレとダンゾウは火影さまからしばらくの謹慎を言いつけられて執務室を後にした。

 ほんとにただの巻き添えを食らっただけだった。

 

 なんて日だっ!!

 

 そんな不毛なことを考えていたら、ダンゾウに呼び止められた。

 ミスった。しくじった。やらかした。

 

「はい。なんでしょう」

「木ノ葉のために。儂の下へ来ないか」

 

 勧誘だった。暗部養成機関としての「根」か、ダンゾウ直属の私的暗部としての「根」かはわからないが。ド直球で(さそ)われていた。(いざな)われていた。

 

「ぼくは・・・」

 

 きっと、あんな無茶苦茶な命令を見事に、要求以上の結果をもってして完遂させたこと。そして何より、オレの中の尾獣を手に入れたいのだろう。

 超強硬派で、武闘(タカ)派のダンゾウ。でも何よりも木ノ葉のことを一番に考えるダンゾウ。

 

「ぼくは、火影さまの命によって木ノ葉を守ります。ですので、せっかくのお誘いですが申し訳ありません。断らせていただきます」

 

 まさか断られるとは思ってもみなかったのだろう。ダンゾウは少し表情を渋らせた。

 

「今回ぼくのことを使って林の国を我が国の領土に編入させた手腕。お見事でした。しかしながら、この度のダンゾウ様の独断専行は組織の一員として一番やってはいけないこと。下手をしたら今現在の状況とは逆に木ノ葉を危機に陥れていた可能性のある博打でした。それに踊らされたぼくが、言うのもなんですがダンゾウ様は反省すべきです」

 

 では。と言ってオレはその場を離れようとした。

 心の中では、あーあダンゾウ相手にあんなこと言っちゃったよ。と後悔しながら。

 でも、なぜだろうか。ここまで言っちゃったら全部吐いちゃいたい気分になってしまったのは。

 

「あ、あとひとつだけ」

 

 ダンゾウの反応何て見ちゃいない。

 

「あなたの私的な部下・・・たしか「根」って言うんでしたっけ。あれ、僕の周りから消してくれませんかね。目障りなんですよねぇ、あいつら。ぼくのプライバシーもプライベートもへったくれもありやしない。あんまりぼくのことをガキだと思って舐めてかかると」

 

 痛い目見るよ。

 

 ガチャ、と。執務室の扉が開いた。

 

「お主ら、全部丸聞こえじゃぞ。場所を考えぬか」

 

 そしてまた、長い説教を食らった。

 ダンゾウは無期限の謹慎と暗部養成機関の方の「根」の権限剥奪と、私兵的存在の「根」の解体を命じられた。

 そしてオレは更にダンゾウから睨まれることとなったのだった。

 

 どうして今日は締まらないんだ・・・。

 

 

 

 その後、里内をぶらぶらと歩いているとラクサと出会った。出会ったというよりは探されていたみたいだったので、ラクサに見つかったと言うべきか。その際、オビトが臨時上官としての任務期間を終えたことを伝えられたオレはこの班が結成された忍者学校(アカデミー)近くの広場に引っ張ってこられていた。

 

「おー!カルタも来てやっとみんな集まったな」

「なんか久しぶりじゃんねー」

 

 なんと、オビトが先に来てるだと・・・。

 明日は雨が降るんじゃないだろうか。なんて、失礼なことを考えていた。

 

「今日限りでお前らの上官の任が解除される。みんな、いままで色々ダメだった俺を持ち上げてくれてありがとうな。先生って呼んでくれて嬉しかった。これからは先生と生徒じゃなく、木ノ葉の対等な忍びとして付き合ってくれると嬉しい」

「まぁ、来年には立場が逆転してると思うけどな。僕らが上忍でせんせーが中忍」

 

 ジュウのその物言いにオビトは「参ったなーあははー」と頭を掻いて笑っている。

 

「俺、前は火影になりたかったんだけどな。今は忍者学校(アカデミー)の先生になりたいって思ってるんだ。この夢はお前らがくれたものだ。だから俺が偉そうに言えることなんかひとつも無いんだけど、ラクサ、ジュウ、カルタ。3人とも夢を持て」

 

 お前らの先生として、最後に伝えたい言葉だ。そう言って次の言葉を読んでくれた。

 

 

 

   夢なき者は理想なし、

 

    理想なき者は信念なし、

 

     信念なき者は計画なし、

 

      計画なき者は実行なし、

 

       実行なき者は成果なし、

 

        成果なき者は幸福なし、

 

         故に幸福を求むる者は夢なかるべからず。

 

 

 

 こうして、オレら四人一組(フォーマンセル)のオビト班(仮)は結成から半年後、解散することとなった。

 

 

 



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020.茶の国防衛戦 急襲

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 第3次忍界大戦の開戦からそろそろ1年が経とうとしている。そこで現在の火の国・木ノ葉隠れの里が置かれている状況を一旦整理してみようと思う。

 

 まず、火の国・木ノ葉隠れの里と同盟関係を結んでいるのは、茶の国。波の国。滝隠れの里、の2国1里。

 戦争を行っているのが、雷の国・雲隠れの里。前線は霜の国領内。

 それから土の国・岩隠れの里と風の国・砂隠れの里。この忍五大国の内3か国である。岩隠れと砂隠れとは三つ巴の様相となっており、主な戦場は雨隠れの里領内。他にもこの三大国に挟まれている小国や中規模の国土内でも戦闘が行われている。

 そして残るもう一つの忍び五大国である、水の国・霧隠れの里とは現在、停戦状態だ。停戦する前は、林の国・水の国・霧隠れの里連合として戦争を行っていたが、林の国が火の国に併合されたことによって、水の国・霧隠れの里とも停戦条約が結ばれた。

 

 風の国・砂隠れの里は、木ノ葉と岩隠れと戦争を。

 水の国・霧隠れの里は、雲隠れと戦争を。

 雷の国・雲隠れの里は、木ノ葉と霧隠れと戦争を。

 土の国・岩隠れの里は、木ノ葉と砂隠れと戦争を行っている。

 その他、中小国家や忍び里は大国と同盟を結んで戦争に参加している。

 

 木ノ葉としては、激戦地は対岩隠れ・砂隠れと三つ巴の戦いをしている西部戦線。その最前線である雨隠れの里領内には木ノ葉の主力が張り付いている。

 その次に厳しい戦いを強いられているのが雲隠れとの北部戦線。一応、激しい戦闘には今のところなっていないもののこちらの主力もいないこともあり、やはり、相手は大国とあって防戦一方だ。この状況で雲隠れが本腰を入れてきたら火の国領土での戦闘になり得てしまうだろう。

 あとは敵方についている小国や小規模な隠れ里との戦闘だ。中にはきっと第3次忍界大戦が終わるまでに歴史から名前を消すことになる国も出てくることだろう。

 

 そして、いまオレが派遣されている部隊が北部方面隊。つまり、雲隠れとの前線だった。

 

 

 

「私たちが来てからのここ1週間、敵の動きが何もないじゃんねー」

「嵐の前の静けさかもね」

「えぇー。そういう不気味なこと言わないでよねー」

「ラクサ、カルタ。2人ともうるさいよ」

 

 オレたちの班が支援物資を輸送した東部前線。そこの部隊長だった奈良シカゾウ率いる東部方面隊が林の国が崩壊したこととそれに伴い、水の国・霧隠れの里と停戦条約を結んだことにより任務を終え、北部方面隊に合流していた。それからというもの、雲隠れの里も無駄な戦闘をして戦力を無駄に消耗したくないからか、大きな動きを控えるようになった。

 だから増員されたばかりの下忍3人班のオレらが話してても怒られない程度に、平和だった。今は。

 

「そういえばカルタ、お前なんかすごい活躍したらしいな。東部戦線でお前と一緒にいたっていう人が噂してたぜ?本物の雷を何回も敵陣地にぶっ放して一人で壊滅させたって。それにその後、林の国に襲来した雲の二尾を暗部の人と一緒になって封印したんだって?スケールがでかすぎ・・・」

「うーん。まぁね。一応そういうことになってる。だから今はぼくが二尾の人柱力だね」

「羨ましいわー」

 

 人柱力!!僕もなりてぇぇぇぇぇ!!!とジュウが叫ぶ。

 いや、普通の人はなりたがらないんだけれども。いや、ジュウは普通じゃないからいいのか。いや、いいのか?

 

「それよりもジュウくんの方が羨ましいよ。あれからみっちり修行して、風遁と水遁も使えるようになったんでしょ?」

「まぁな。今は土遁も下忍レベルの術なら発動するようになった」

「なにそれ!ずるい!!」

「いやいや、あなたたちの方がうるさいじゃんね。盛り上がりすぎよ」

 

 ラクサが何か言っているが全然耳に入ってこない。聞こえない。

 

「そうだ、ジュウくん。ぼくは雷遁のコツ教えてあげるからさ。ジュウくんはぼくに水遁と土遁のコツ教えてよ」

「いや、なんで僕の方が多く教えなきゃならないんだよ」

「年上だから?」

「そんなんで納得できるかッ!」

「そこをなんとかー」

「嫌だ!不公平だろっ!!」

 

 その後、10分間に及ぶ肉体言語を交わしたことによって、なんとかジュウに水遁と土遁のコツを教えてもらえることになった。

 ジュウは忍術に関しては超天才的なのだが、その他のことはからっきしなのだ。

 つまりは、一方通行な肉体言語だった。

 

「じゃあ早速、水遁と土遁のコツ教えてね」

「ひ、ひどいぞ、カルタ。僕が体術が苦手なの知っているだろ。手加減もしない癖に、休憩も挟んでくれないのかよ・・・」

「じゃあ体術のコツも教えてあげるからね。これで2対2で等価交換だね」

 

 どんだけジュウは体術が嫌いなのだろうか。今の一言で顔を真っ青にしている。なんなら今にも吐きそうなほどに真っ青だ。

 

 そんなことをしているときだった。

 緊急集合の笛が鳴ったのは。

 

 

 

「茶の国に雲隠れの別働部隊が海岸から上陸、奇襲してきた!茶の国へすぐさま救援を送る!今から呼ばれる者は直ちに出発せよ!!」

 

 

 



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021.茶の国防衛戦 全滅

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 雲隠れが茶の国へ奇襲というその一報が北部方面隊に入る前、茶の国の沿岸警備を行っていた木ノ葉の小隊と雲隠れの上陸・奇襲小隊との間で戦闘が起こっていた。木ノ葉は雲を上陸させるわけには行かないと。雲はこんなところで立ち止まるわけにはいかないと激しい戦闘となっていた。

 

「ちっくしょうッ!半分はガキだぞ?どうしてガキひとり殺せない!?」

「3人がかりで行けばいいだろ!?」

「馬鹿野郎!!子どもに3人も使ったら、他のところが手薄になってすぐやられちまうよッ!!」

 

 互いに使われる忍術が海面を大きく揺らす。

 火球が飛び、雷が海面を走り、海水が大きく爆発する。爆発によってまき散らされた海水が雨のようにして降り注ぐ。降り注いだ海水に打たれながら戦闘は続く。

 

 木ノ葉は小隊長に上忍が1名。隊員に中忍が3名というように構成された四人一組(フォーマンセル)が計5つの5小隊。20名。

 対する雲隠れの奇襲部隊は8名であるから、2小隊。そのうち、明らかに子どもなのが3名。

 

 この人数差であっても、戦闘の時間が長引けば長引くほど木ノ葉の忍びの数だけが減らされていく。

 

「援軍は呼んだのかッ!?」

「敵影が見えた時点で呼んださッ!でも、里も北部方面隊にも届くには時間がかかる!援軍なんざそれからまた何時間もかかるだろうぜ!!」

「まじかよ。このままだとヤバいぜ!」

「んなこと知ってるよ!喋ってないで行くぞ!!」

「応ッ」

 

《火遁・炎弾》

《風遁・旋風波》

 

「余力は残して魅力が光る♪八尾がサビのキラービーだぜオレ様が!ア!イエー!ウィィィィ!!!」

 

 左頬に2本の牛の角、右肩に「鉄」の字の刺青を入れている色黒の筋肉質な少年、キラービー。

 キラービーに向かっていく木ノ葉の忍びが放った炎の玉を物ともせず、ぞんざいに振り回した右腕でかき消した。

 

「んなッ!?」

「馬鹿な!!火遁を風遁で強化したんだぞっ!?」

「オレ様舐めんじゃねぇぞ♪バカ野郎♪コノ野郎♪そんなオマエラにはラリアット!雷犂熱刀(ラリアット)!!イエェェェェェ!!!」

 

 ふざけたラップで木ノ葉の忍びを屠っていくキラービー。

 他にも左眼に「雷」と書かれた眼帯をしている男は血継限界と思われる熔遁を使い、大きな四角型の手裏剣を自由自在に操る者、恐らく最年少ながら奇襲部隊に抜擢されている少年も血継限界らしき術を使っている。

 歳はバラバラではあるが、雲隠れの忍びは皆、精鋭であり、数に勝る木ノ葉はじわりじわりとその数さえも少なくなってきている。

 

 戦っている木ノ葉の忍びも敵との力量が読めないほど雑魚ではないし、だからと言って諦めがいい奴らでもなかった。

 徐々に攻撃パターン、防御回避のパターンを変え、持久戦の様相になっていった。

 

 敵を排除することから、時間を稼ぐことや敵を少しでも消耗させることに重点を置くようになったのである。

 

 木ノ葉の忍びたちはここが自分たちの死に場所だということを理解していたのだった・・・

 

 

 

 

 

「木ノ葉の沿岸警備の奴ら、結構しぶとかったですね」

「忍び同士の戦闘とは思えないほど長引いたわね」

 

 雲隠れの少女2人が背中を互いに合わせながら話をしていた。

 

「まぁ伊達に木ノ葉の看板背負ってねェってことだろう」

「ダルかったッスねー。俺、見るからに子どもなのに容赦ねぇッス」

 

 額が広く、髪が立っている少年と最年少の少年が話に続く。

 

「ここで小休止し、ある程度回復したら木ノ葉へと向かう。この作戦の要はビー。お前なんだからなしっかりしてくれよ」

 

 この小隊のリーダーらしき人物がキラービーに向かって話しかけていた。

 

 現在、雲隠れの2小隊はあの戦闘のあった海が見える小高い丘の大きな木の下で休んでいた。

 各々兵糧丸を口に含んだり、先程の戦闘でケガをした箇所をテーピングしたりしている。

 

 雲隠れの忍びたちが既に上陸しているというのに木ノ葉の忍びがいないということはもちろんもうすでにこの世にはいない。沿岸警備隊5小隊とも、この雲隠れの忍びたちにやられ、全滅したのだ。

 

「ウィィィィ!!新忍頭エスの言うことなら♪例え火の中、水の中♪ア!イエ―!!」

「お前、本当にわかってんだろうな?」

「エスはドS♪でもドM♪オウ!イエー!!!」

 

 とうとう堪忍袋の緒が切れた忍頭(しのびがしら)と呼ばれたエスがキラービーのことを殴る。それに対して「おうおうやったな。ばか野郎この野郎」とビーがこぶしを握る。

 

「クソガキども。そんなに元気が有り余ってるならさっさと出発するぞ」

 

 最年長と思わしき者の一喝によって、エスとキラービーが大人しくなる。怒られていないはずの他の者たちまで黙り込んでいる。背筋も心なしかピンと張っている。

 

 結局、その者も今すぐに出発することを良しとはしていなかったみたいで、すぐに立ち上がることはなかった。

 だが、まわりの、その中でも特に歳の低い忍びたちは身体と気が休まるどころか、がりがりと体力と気力が削られて行っていることにその者は気づいていない。

 

 「トロイさん、マイペースだからな・・・」という、熔遁という血継限界使いの呟きは風によってかき消された。

 

 

 




いつもお読みいただき有難うございます。
新名蝦夷守です。

作品の評価、考えさせられますね。
良いと悪いの真っ二つ笑

この作品は自分が書いていて楽しく、読んでくださる人も楽しんでくれたらいいな、と書いているものです。

こいつの書いてる作品、面白くねーなって思った方はお読みいただかなくて結構ですからねー。もちろん低い評価でもその時の最新話まで読んでくださったから点数をつけてくれていると思うので本当に感謝しております。面白くなくてごめんなさい。

でも、ちょっとでも面白いなーとか、続き気になるなーと思っていただけたなら幸いです。そういう方がもっと増えるように努力して参ります。

また次回もよろしくお願いします。


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022.雲による木ノ葉奇襲作戦 行軍

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「じゃあ、行ってくるわ」

「っちぇ・・・またカルタかよ。僕が行けば災害級の忍術でも使って一網打尽にしてやるのに」

 

 そういうジュウは本当に悔しそうにしている。

 確かにジュウくらいの才能が有れば、災害級の忍術とか使えそうではある。だが、

 

「救援なのに足の遅い忍びが呼ばれるわけないじゃんね」

「くっそぅ。僕に体術の才能があれば・・・」

 

 ラクサに痛いところを突かれていた。突っ込まれていた。むしろジュウ的には抉られていたといっても過言ではないかもしれない。

 ご存知の通り、忍術に関する才能は天才的で他の追随を許さないほどであるが、しかしながらそれ以外の才能が壊滅的にないジュウは固定式の大砲くらいにしかならない。いや、もちろんそれだけでもすごいんだけれども。

 

「帰ってきたら体術の修行をしてあげるから、ジュウくん、水遁と土遁ちゃんと教えてね」

「わかってるよ。なんなら、影分身何人かおいて行けよ。コツだけ教え終わったら解除するように言っとくからさ」

「お、それいいね。それじゃあお願いするよ」

 

 そう言って影分身を数体出したオレはジュウに預けた。育て屋さんにポケモンを預けるポケモントレーナーの気分である。それにしても本当に影分身ってチートな術だよなぁ。考え出した2代目火影である千手扉間がここまでの効果を考えて作ったとは思わないけれども・・・。

 

「おーい、カルタ!行くぞッ!!」

「はーい!!今行きます!!それじゃ、またね」

 

 オレの編入された小隊の隊長であるシカクに呼ばれたオレは、ジュウとラクサに手を振ってその場から出発した。

 

 

 

 そして茶の国への救援部隊として呼ばれたオレと他数名は今、全速力で南下していた。

 雲隠れとの最前線、北部方面隊に所属していたオレだったが、火の国・木ノ葉隠れの里と同盟を結んでいる国、茶の国に雲隠れの忍びが上陸したとの一方が届いたからであった。

 

 茶の国はこの場所から見て南東方向にある半島を領土として保有している中規模の国だ。

 中規模の国であるくせに、その自国の防衛を同盟関係を結んでいる隣の大国火の国に全てを任せている国だ。

 

 国境の大半を海に面している茶の国の沿岸警備隊は木ノ葉から派遣されて組織されている。

 今回はその沿岸警備隊からSOSが届いたのであった。

 SOSを発したのが敵との戦闘前であったとしても、こちらにそれが届いたときにはすでに戦闘は終わっているだろう。

 敵が木ノ葉の意識を北部に引き付けておいて、南部から奇襲してきたということは、本当の狙いは木ノ葉隠れの里若しくは、火の国の首都と大名。と睨んだ北部方面の部隊長となった奈良シカゾウはオレと上忍7名の計8人を2班に分けた。

 そして、オレ、奈良シカク、山中いのいち、秋道チョウザの4人を木ノ葉の里へ。他上忍4人を大名護衛と首都防衛へと救援に向かわせた。

 

「もっとスピードを上げられるかっ!カルタ!」

 

 移動開始してから1時間ほどが経過したころ。

 小隊の隊列を乱さないために雷遁を纏わず移動していたオレに、もしかしたら遠慮していたかもしれないシカクが聞いてきた。

 

「はい!全然余裕です!むしろシカクさんこそぼくのスピードについてこられますか!?」

「言ってろ!くそがき!上忍を舐めるなよーッ!!」

 

 本当に思ったことを言ったら怒られた。

 どうやらさっきまでシカクたちはもしかしなくても本当に遠慮してたみたいで、移動のスピードがグンと上がった。

 この様子なら雷遁を纏ってもよさげだな。と、雷遁・纏を発動させて一式で追従する。

 

「速いな。カルタくん」

「ありがとうございます。チョウザさん」

「でも、その様子だとまだまだ余裕そうだね」

 

 チョウザといのいちが会話に入ってきた。

 

「雷遁を纏ってるので、そうですね。この状態ならもう少し飛ばせます」

 

 オレの言葉にぎょっとしているのはシカクだ。たしかに下忍で上忍のトップスピードと並んで移動しているのにもかかわらずケロッとしているのは、彼の常識では考えられないのだろう。

 

「飛ばせるのはいいけどよ。ここで全力を出し切って、敵のいざ目の前ってところでへばったりしたら何の意味もねぇんだからな。そこらへんはチャクラ量の配分を考えて行動しろよ」

「大丈夫です。ぼく、無限のチャクラ量なので」

 

 チョウザがよく言う無限の胃袋みたいに言うんじゃねーっ!!このチャクラオバケがッ!!!と、シカクが叫んでいるが、他の2人はそれをみてケラケラと笑っている。

 この人たち、高速移動している最中なのにすごく余裕だな。

 

「皆さん、ぼくに構わないで全力で移動して大丈夫ですよ。まだ全然合わせられますので」

「っくぅぅぅ!!この生意気カルタめが!後で痛い目にあっても知らねぇからな!!」

 

 そう言って更にスピードを上げたシカクだったが、オレは纏の弐式を使うまでもなく追いついた。

 ものすごく悔しそうな顔をしていたが、これ以上のスピードアップはこの後起こるだろう戦闘に響くと判断したのか、それとも意地になって出しているこれが移動スピードの限界なのか。どちらかはオレには判断できなかったが、今のこのスピードがこの小隊の最速だった。

 

 木ノ葉と雲が交わるのはこの数時間後のことだった。

 

 

 



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023.雲による木ノ葉奇襲作戦 戦死

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 奇襲。

 相手の油断、不意をついて、思いがけない方法で襲うこと。不意打ち。

 自らの攻撃企図および行動を秘匿し、敵の予期しない時期、場所、方法などによって敵の意表をつき、対応のいとまを与えないように打撃を加える戦術をいう。敵の意表に出ることは,機を制し勝を得る要道である。

 突然に唐突に思いもよらないところで襲うこと襲われること。襲撃すること襲撃されること。

 

 雲隠れの2小隊は木ノ葉の迎撃態勢が整う前に、木ノ葉の里へ攻撃を仕掛けたかったのだ。

 故に周囲の情報を収集しながらの行軍ではなく、スピード第一の超強行軍で木ノ葉隠れの里を目指していた。

 

 が、それが仇となった。

 

 現に今、それが原因で奇襲をされ仲間を2人やられたのだから。

 

「「エスさんッ!モトイさんッ!!」」

 

 透き通るような白い肌をもち、綺麗な金髪を靡かせている少女と健康的な褐色の肌をもち、さらさらとした銀髪の少女の悲鳴のような声が森の中に響き渡る。

 

「ぐふ・・・ッ!任務は続行だァ。サムイ、マブイ、ダルイの3人はビーを護衛しながら木ノ葉へ向かえ。なんとしてもこの任務を達成させろ。ドダイとトロイさんは敵の足止めのあと、こいつらを追ってくれ」

 

 そう言い残すと目から光を失った。

 顎鬚を伸ばし、頭には包帯を巻きつけ右目を額当てで隠しているエスと呼ばれるこの男。この任務の直前に現雷影より新たな雲隠れの忍頭(しのびがしら)に任命された者だった。今回の木ノ葉強襲作戦のリーダーでもあった。

 その男が真っ先に殺されたのだ。隊に走る動揺は決して小さくはない。

 

「エスの遺言だ。しかと心に留めよ。ビーと3人は予定通りすぐさま木ノ葉へ向かえ。俺とドダイはここで敵の足止めをしよう」

 

 その言葉通り4人は去り、この場には2人と2つの死体が残った。

 

「さて、どんな奴が出てくるか・・・」

 

 

 

 少し時は遡り、木ノ葉の小隊。

 

「チャクラの反応が8人分だ。見つかったぞ!」

「そうか。どっちだ?」

「南東の方角だ」

 

 いのいちが敵の位置情報を捕捉した。

 どうやら木ノ葉の里につく前に敵と当たることになりそうだ。

 

「ぼくが奇襲を仕掛けます。当たったらラッキーぐらいの成功確率ですが、不意打ちで当たったら確実に死ぬようなものです。やらないよりはマシでしょう」

「そうか。ならやってみろ」

 

 案外簡単に許可をもらえた。

 

「ありがとうございます。ぼくの攻撃後の作戦はいかがいたしましょう」

「敵はきっと2手に分かれるだろう。木ノ葉へと向かうほうが本丸だ。その追尾をカルタ、お前がやれ。お前なら見失うことなく追いかけられるだろう。影分身もあるしな。足止めの方は俺達が相手をする。何、すぐに片付けて追いかけるさ」

「わかりました」

 

 オレは重明を心の中で呼び起こし、背中から六枚翅(ろくまいば)を出す。

 足の裏にチャクラを溜めて、一気に上空にジャンプした。一度上空500mほどまで上昇したのちに、徐々に高度を下げながら敵を探す。

 

「南東方向、南東方向・・・見つけたッ!」

 

 木々が鬱蒼と生い茂る森林だったせいで見つけにくかったが、8人組の姿を上から目視で確認することができた。

 忍具入れ(ホルスター)から手裏剣を取り出し、右手に千鳥とはまた違った雷遁のチャクラを集める。

 

《雷遁・超電磁加速手裏剣》

 

 オレが放った手裏剣は凄まじい速度で飛来し、縦列隊形だった敵の後方2人に命中した。

 最後尾だった者は頭がザクロのように吹き飛び、最後尾から2人目だった者は背中から入り、恐らく肺を貫通して手裏剣は地中深くへと突き刺さった。

 

「うっわ。人の頭ってあんな風に弾け飛ぶんだ・・・。自分でやっといて何だけど、えぐいな」

『あれが主様が開発していた、れーるがん?というものか。うむ、確かに手裏剣があれほどまでの兵器と化すその術はえげつないな』

 

 重明が頭の中で語りかけてきた。

 するとつられるかの如く、又旅も出てくる。

 

『それよりも重明。お主も感じはせんかの。なつかしい彼奴の感じが』

『ふむ?・・・おぉ!これは牛鬼のチャクラだな』

「2人して盛り上がっているところ悪いが、もしかして相手の中に」

『そうじゃよ。おまえ様が敵としている中には尾獣の八尾を宿している者がいるようじゃの』

 

 うげッ!・・・まじかよ。もしかして、オレらが林の国でやったことをそのまま木ノ葉でやろうとしてるってことかよ。

 

『もしかしなくても、きっとそうじゃろうのう。人間が尾獣を兵器として利用しようとするのはどこの国の人間も同じこと。決してお主ら木ノ葉の人間だけが特別じゃないということじゃ』

『まぁそう心配するでない主様よ。我ら二尾又旅と七尾重明がついているではないか。仮に八尾が暴れようとも我ら2人で止めて見せようとも』

「いや、お前ら2人まで混ざられると本気で木ノ葉が滅茶苦茶になりそうで怖いんだけどな。オレは」

 

 建物ひとつ残らず消し飛ばされそうである。そうなったらもう木ノ葉は戦争どころの問題じゃない。他の大国に吞み込まれてお終いだ。

 

「とにかく、勝手なことするなよ?お前らを出すときはオレがちゃんと指示を出したときのみだ」

『そんなに怖い顔せんでもわかっておる。妾はおまえ様に嫌われたくはないからのう』

『承知した。我が主様よ』

 

 不安は残るが、そんなことばかり言ってられない。

 敵がシカクの予想通り2つに分かれた。

 オレは、先程とは違い明らかに辺りを警戒しながら木ノ葉の方角へ走り出した4人組を見て上空から先回りをするのだった。

 

 

 



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024.雲による木ノ葉奇襲作戦 尾獣

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「八尾の人柱力ってのは、どいつだ?」

 

 オレは雲の4人小隊が移動してくる真正面に降り立ち、仁王立ちして待ち構えていた。

 雲隠れの小隊は急停止。突然目の前に現れたオレに対して最大限の警戒をしている。ていうか、1人以外みんな子どもじゃないか。やり辛いなぁ、もう。

 

「木ノ葉の忍びか」

「あぁ。それ以外に見えるか?」

「いや、見えないな。雲の忍びを舐めるなよ。その小さい身体(見た目)には騙されんぞ」

 

 その言葉と同時に雷遁の塊が飛ばされてきた。それを避けたと思ったら目の前には屈強な巨体が現れていた。

 

雷犂熱刀(ラリアット)ッ!!」

「うぐッ!!」

 

 それをもろに喰らったオレは、それはもうピンポン玉の如く派手に飛ばされた。オレの後ろにあった木々をなぎ倒しに倒しまくりながらようやく大きな岩にぶつかって止まった。

 

 ・・・痛てぇ。どっかの骨何本か折れてやがる。全身が悲鳴を上げている。

 

「滅茶苦茶痛てぇじゃねーかよ!この野郎ッ」

『さっき言っておった八尾の人柱力じゃがの。おまえ様をぶん殴ったやつじゃな。間違いないわい。あやつの中からはっきりとなつかしいチャクラを感じたからのう』

「っちっくしょう。あいつか。ぜってぇやり返してやる」

 

 八門遁甲【第二休門】開ッ!!

 

 続けて雷遁・纏も弐式にしてギアを上げる。

 

「又旅、重明。オレの身体骨折れたところから治しておいてくれ」

『ま、無理はせんようにのう』

『了解だ。主様』

 

 バチバチと雷遁のチャクラがスパークする。

 

「第二ラウンドだ」

 

 地面を蹴って今まで飛ばされた分の距離を一瞬で戻り、八尾の人柱力へと急速に接近する。

 

「お返しだッ!千鳥ッ!!!」

「お前まだ生きてたのかYO!頭八刀(ヘッドバット)ッ!!」

 

 オレの全力の突きと八尾の人柱力の全力の頭突きが激突する。

 その衝撃は凄まじく、周りの木々が衝撃波だけで折れ曲がる。

 

「お前強いな♪ばか野郎♪この野郎♪俺の本気行くぜ4本♪出すぜ4本♪八っつぁん!!」

 

 ビーさん!?という雲の残りの3人の悲鳴にも近い驚きの声がする。

 

「ウィィィィィィィィ!!!!!」

 

 雄たけびとともに尾獣のチャクラが衣のようにビーを包み込み、4本の禍々しい尾が現れた。

 

「相討ちなら覚悟!刺し合うか相互!?」

「うるせぇ!その下手くそなラップをまずはどうにかしやがれ!!又旅!両腕ッ!!」

『わかっておるよ。そんなに叫ばんでものう』

 

 オレの両腕が二尾である又旅の蒼い炎で覆われる。もちろんオレは火傷にはならない。

 

「尾獣の力を制御できるのがお前だけだと思うなよッ」

 

《蒼炎・千鳥》

 

 蒼い炎を纏った千鳥が八尾のチャクラを纏ったビーの胸に命中する。貫通するはずの威力だったのだが、化物染みた硬さがそれを阻止した。

 だが、それでも明らかに傷を負ったビーだったが、八尾のチャクラの衣によってすぐに修復される。

 

「二尾の炎、見たことあるぜ♪二尾はもともと雲隠れの里(うち)のだぜ♪」

「でも今はオレのだぜ!」

 

 千鳥での目論見が失敗したあと、間合いを取ろうとバックステップを踏もうとしたがその前に右腕を捕まえられた。

 八尾のチャクラがビリビリとして痛い。掴まれている右腕がどんどんと火傷のような状態になっていくのがわかる。

 

「昔は雲隠れの里(うち)の♪今はお前の♪お前の二尾は今日から雲隠れの里(うち)の♪ウィィィィィ!!」

 

 八尾のチャクラでできた尻尾が振るわれ、避けることのできなかったオレはまた派手に飛ばされる。

 あまりの衝撃に意識が一瞬吹き飛ばされそうになった。

 

「八尾ってこんなに強えぇのかよ」

『何を今更言っておるのじゃ。おまえ様が忘れているようじゃから言っておくがの、八尾のチャクラ量は九尾と同程度じゃぞ。チャクラ量が強さと完全に比例するわけではないが、それがどれくらいのものかわかるじゃろ?』

「お前ら2人がかりでも八尾が完全体になったら勝てねぇかもしれねぇぞ。4本であれだけのパワーがあるなんてチートだぞ。チート」

 

 まじでずるいわ。

 

『主様よ。影分身体でいいから我らを外に出さんか?』

『そうじゃそうじゃ。それがよかろう。おまえ様とて、こんなところで切り札を温存して死にたくはないじゃろ?妾たちもおまえ様のことを見殺しにはしとうないしの』

「あっちが尾獣化したらな。怪獣大戦争でもなんでもしてくれ」

 

 オレが投げやりにそういうと2人は渋々といった具合だったが、大人しく黙った。

 

「一発でもいいから当たってくれよ・・・」

 

《雷遁・超電磁加速手裏剣》

 

 半分祈るような状態で、オレは忍具入れ(ポーチ)から手裏剣を全て出し、投げ放った。

 自然破壊的な攻撃となった。無差別に無作為的になるべく広い範囲に投げ放った超電磁加速で強化された手裏剣は目の前の木々のほとんどに穴をあけながら飛んで行った。

 

「オイオイ危ねェじゃねぇかよーばか野郎♪この野郎♪おかげで死ぬところだったぜ!ウィィィィィ!!」

 

 死にそうだったと言うわりには随分と元気だった。

 

「どうせそんなこったろうと思ったけどなぁ」

「お前、チビのくせに強いな!ばか野郎♪この野郎♪八尾がサビのキラービーだぜオレ様が!アー!イェー!」

「そうかよ。オレが木ノ葉の二尾、羽衣カルタだ」

 

 ビーの身体から八尾のチャクラが漏れ出してあふれ出す。

 

 多少離れていてもビリビリと身体を蝕むチャクラだ。

 

「オレ様の真の本気♪見せてやる尾獣化やる気♪敵を刺す♪敵刺すロングホーン♪ウィィィィィィ!!」

 

 そしてビーは完全なる八尾と化した。

 

 

 



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025.雲による木ノ葉奇襲作戦 災禍

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 尾獣化したキラービーは山の如く巨大化し、完全体となっていた。

 

「こいつ。勝手に俺を呼び出しやがったな」

 

 キラービー(八尾完全体)は声も口調も先程までとはまるっきり打って変わっていた。もっと落ち着いている雰囲気が出ている。

 八尾の完全体になったキラービーは八尾と意識が入れ替わっていた。

 ということは、キラービーはまだ原作ほど八尾の力を十全に扱えているわけではないみたいだ。

 

 ちっぽけなオレと巨大な八尾の視線がぶつかる。

 

「お前の中に二尾と七尾がいるな」

 

 ただ目が合っただけなのに、何も言う前から八尾には重明のこともバレていた。

 

「なんだ。やっぱり尾獣同士ならわかるっていうのか?」

「当たり前だ。もともと俺達は9体で一つだったんだ」

「なるほどな。じゃあ、久しぶりに会わせてやるよ。八尾」

 

 自然破壊だとか、周りの被害だとか、あっちが完全体になったらそんなことに構ってはいられない。もしこの状態で攻撃でもされようものなら1発でノックアウトされかねない。

 オレはこうなった場合の予定通り、又旅と重明を外に出すことにする。

 

《影分身の術》

 

 ボフンとオレが2体増える。

 

「じゃ、又旅と重明。好きに尾獣化してくれ」

『了解じゃ』

『承知した』

 

 そう言うと又旅と重明は、オレの出した影分身体を乗っ取って尾獣化して完全体となった。

 ついでだから、オレは重明の頭に乗せてもらっている。すごく視点が高いが、いつも翅を借りて飛んでいるので真新しい感想だとか、感動だとかは特にはなかった。ただ、八尾の視線と同じなので、これはこれで圧迫感がある。

 

「久しいのう。八尾」

「久しぶりだな、八尾」

「二尾に七尾か。二尾はお前が雲隠れから拉致された時以来だな。七尾とはもう随分昔ぶりだな」

 

 それからというもの、巨大な体躯をした3匹が昔話で花を咲かせている。

 あれ。尾獣ってこんなに大人しいやつらだっけ。存在そのものが災害扱いの非常識の集まりだったような。

 

「ふむふむ、それで八尾よ。今のお前の人柱力はどういう奴なのだ」

「それがだな、普段は底抜けに明るいアホな奴で、下手くそな癖にラップが好きでな。正直、好きこそ物の上手なれとは言うものだがこの言葉を信じられなくなったな。こいつのは下手の横好きだ。毎日耳障りなラップを聞かされちゃあやってられねぇ。そういうお前らの人柱力はどうなんだ」

 

 その八尾からの問いに又旅と重明が、というよりもほぼ又旅が嬉々として話し出す。

 内容としてはオレのことを褒めちぎってくれているのだから悪意は全くないのだろうが、本人が目の前にいる状況で賛美と言っていいくらいに褒めるのはある意味で拷問に近い。

 又旅がそこまで思ってくれているのは本当にありがたい限りだし、嬉しいのだが。オレの目の前でそれを言うのは限度って言うものを考えてくれなければ恥ずかしいし、照れる。

 

 もう、穴があったら入りたい。

 

 聞き手に回っている八尾どころか、同じくオレに封ぜられている仲間のはずの重明ですら引いている。

 

 おーい。又旅。そろそろ戻ってこーい。

 

「・・・というようにじゃな、まぁこれまで話したのはほんの少し。物語で言うところの序章程度のことでしかないがの。我が主様は人柱力の鑑といっても過言ではないのじゃよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 オレと重明、それから八尾はもう何も言えなかった。

 

「こほん。そ、そうか。よかったな二尾」

「まぁ、我の言いたいことは又旅が全て言ってくれた」

「当然じゃの」

 

 又旅は誇らしげな表情で八尾を見ている。どうやらオレらの反応には気付いていないらしい。

 とりあえず、この何とも言えない空気をどうにかしたい。全くどうしてくれるんだうちのバカ猫め。

 

「なぁ、八尾」

「ん?なんだ二尾と七尾の人柱力」

「オレの名前は羽衣カルタだ。お互いにいつまでも八尾とか人柱力って呼ばれるのもなんか嫌だろ?少なくともオレは嫌だ。だからこれからオレのことはカルタって名前で呼んでくれ。お前の名前は?」

 

 この話題転換は急だったかもしれない。いや、かもしれないではなく事実、突然で唐突だったのだろう。

 八尾は鳩が豆鉄砲を食ったような表情でオレを見ていた。

 その表情が余程ツボに入ったのか、又旅がケラケラと笑っている。

 

「かっかっか。八尾よ。我が主様はこういう奴よ」

「我らもこういうお方だからついていくのだよ」

「なるほどな。よっぽどカルタ、お前は好かれているらしいな。俺の名は『牛鬼(ぎゅうき)』だ。これからはそう呼べばいい」

牛鬼(ぎゅうき)か。よろしくな」

 

 象と蟻並みにサイズ感の違うオレと牛鬼だったが、グータッチを交わす。

 

「それでさ、悪いんだけど牛鬼。今回のところは引いてくれないか?そっちの事情があることは察するんだけどな。こっちにも事情っていうのがあるんだ」

「カルタ。お前、自分の言っていることが分かっているのか?今お前は自分たちの里のことしか考えていない発言だったぞ」

「わかってて言ってるんだよ、牛鬼。お前ら雲が今引いても被害は出ないだろ。でもオレらが引いたら非戦闘員の無駄な死がたくさん起こるんだよ」

 

 オレと牛鬼の間でバチバチと火花が散っているのは気のせいではないだろう。

 

「でもな。ここで仮に俺が引いたとしたら、木ノ葉が反撃に出て今度は雲が危機に陥るのではないか?」

「その可能性は0とは言い切れないが、100ではない。だが、今ここでオレたちがドンパチやると被害は100パーセント出るぞ」

 

 しばらくの間、にらみ合いがつづいた。

 オレと牛鬼の間にこの時季としては冷たい風が吹き抜ける。

 

 先に口を開いたのは牛鬼の方だった。

 

「ふん。交渉は決裂のようだな」

「あぁ。又旅ッ!重明ッ!!」

 

 その直後、3つの尾獣玉が炸裂した。その威力は凄まじく全世界に衝撃波が届いたのではないだろうかというほどの轟音と振動によって空間が歪められた。

 

 

 

 



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026.雲による木ノ葉奇襲作戦 開眼

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 八尾牛鬼が放った尾獣玉を迎え撃つような形で放った二尾又旅と七尾重明の2つの尾獣玉と激しく衝突した。

 

 これによって生み出された轟音と衝撃波によって、辺り一帯の森林は消し飛ばされた。

 

「又旅ッ!重明ッ!尾獣化したからある程度の衝撃は大丈夫だろうけど、その身体影分身なんだからなッ!!派手に一発喰らうと消えちまうぞ!!」

「「わかっておる(よ)!おまえ様!(主様!)」」

 

 わかってるならいいんだけど、あいつら一応曲がりなりにも尾獣だからな。

 一度頭に血が上ったら、ヒートアップしちゃって忘れそうだから言ってやったんだけどな。

 

 3匹で行われている怪獣大戦争は、炎を吹いたり、尾で薙ぎ払ったり、嚙みついたりと1匹が一つの動作をするだけでこの場所の地形が変わっていく。

 

 又旅がちょこまかと動きながら牛鬼を牽制し、上空から重明が風遁を使ったり、尾獣玉を放ったりしている。もちろん牛鬼もただでやられているわけじゃない。状況としては連携がうまくいっている又旅と重明コンビのほうが圧倒しているようには見えるが実際は牛鬼のほうに分があるようだ。

 

 状況を確認しながら空中を漂っているオレに向かって重明が放った尾獣玉が飛来する。

 

「うわ!あっぶねぇ!?お前らなッ!もうちっと気を付けてッ」

 

 避けたとほぼ同時に地面に着弾した尾獣玉がオレの後方の森林を吹き飛ばした。

 その衝撃が去ったと思いきや今度は牛鬼が尾獣玉を動き回る又旅に向けて放つ。

 

「って、おい!そっちには雲の仲間が!!」

 

 チッ。なんで牛鬼は自分の仲間のこと考えて戦わねーんだ。いや、まぁうちの馬鹿猫と阿呆蟲もそうか。これだから尾獣は!

 今までの尾獣同士の戦闘の余波で誰か1人が負傷しているようだった。その1人を庇うようにして他2人が両サイドの肩を持っている。

 そのような状態で牛鬼が放った尾獣玉の流れ玉が避けきれるとは到底考えられない。

 

「間に合えッ!!!」

 

 全身のチャクラを爆発させるようなイメージで雲の3人の元へと飛ぶ。

 全ての周りの動きが遅くなってみえる。雲の3人に飛来する牛鬼の尾獣玉も、その飛来先にいる雲の3人の唖然とした表情、茫然とした表情、愕然とした表情、各々の表情がはっきりと見える。

 極限の集中状態。所謂ゾーンに入ったのだろうか。

 それとも自分に死が迫ってきているからか。もしくはその両方か。それは今のオレにはわからないことだったが、それが功を奏した。

 

「「「なッ!」」」

 

 動きが止まっていた雲の3人を3人ともまとめて確保した。

 腕が短いから全員を抱きかかえることはできなかったが、そのままタックルするような形での確保だった。

 

 3人を持ち上げたまま真上に回避。その直後、黒い塊がすれすれのところを通り過ぎて行った。

 

 まさに間一髪といったところだった。

 

 尾獣玉が着弾した場所は抉り消し飛ばされていた。

 ほんの一瞬でも助けるのが間に合わなかったら自分がああなっていたかと思うとゾッとする。

 

 空を飛んだまま少し尾獣たちの戦闘区域から離れたところで、抱えていた雲の3人を地面へと降ろした。

 

「あ、ありがとうございました」

「私たちを救ってくれて感謝する」

「ありがとうッス」

 

 三者三様の感謝の意を示してくれた。

 

「いや、こちとら子どもが目の前で死んでいくのは見たくねーんだよ。ただの自己満足・・・だ」

 

 いや、お前のほうがどう見たって子どもだろ。という雲忍の声が聞こえるがそれが頭までは入ってこない。

 なぜならば普段と見えている景色が違った。チャクラの流れまで見える。え、なんで?

 

「お前、その瞳・・・うちはだったのか」

 

 色白金髪少女が言った。

 

 うちは?うちは、だと?あの?・・・オレが?

 

「その紅い瞳、写輪眼か」

 

 オレが写輪眼を開眼しているとでもいうのか。

 んな、バカな。オレはうちは一族ではないし、親も爺さんもひい爺さんの世代でも一度もうちはの血が混ざっていたなんて話は聞いたことがない。

 

「いや、オレはうちは一族ではない。羽衣一族の羽衣カルタだ」

 

 六道仙人であった大筒木ハゴロモの直系子孫である羽衣一族だ・・・あ、もしかしてそういうこと。そういうことなのか?

 うちは一族と千手一族は元をたどると大筒木ハゴロモの息子である、大筒木インドラと大筒木アシュラになる。つまり我が羽衣一族の先祖と言っても過言ではない。今オレが開眼した写輪眼は、その大昔まで遡った血の隔世遺伝ということなのだろう。

 

 いや、にわかには信じられないけれども。もうそうとしか考えようがない。

 

「え?でもその眼」

「色々あるんだよ。そんなことより協力しろ。雲に牛鬼を送り返す」

「はっ!こっちは木ノ葉に八尾を送り込むためにわざわざ来てるんだ。そんな要求」

「お前ら殺されかけてんのに何言ってやがる。写輪眼で吐かせてやってもいいんだぜ?」

 

 っち。と舌打ちをする金髪少女。だが、写輪眼で操られては敵わないと思ったのか、オレの写輪眼から目をそらしながらポツリポツリと話し始めた。

 

「ケガをしているマブイが『天送の術』っていうのを使える。物だけでなく人も指定の座標に飛ばすことができる時空間忍術だ」

「よし。じゃあ、それで八尾を雲隠れに送り返してくれ」

「それは無理ッスよ。尾獣を天送するとなったら膨大なチャクラを消費するッス。そんなチャクラ、マブイにはとても・・・」

「ごめんなさい。ダルイの言う通り無理よ」

 

 そうか。

 

「じゃあ、オレがチャクラを出す。お前がそのチャクラを使って雲へ送り返せ。これならできるか?」

「あなたのチャクラ量は?」

「尾獣並みだ」

 

 オレのチャクラ量に3人揃って驚愕する。本当は尾獣以上だけどな。

 

「!?でも、それなら・・・できるかもしれないわ」

「お前、マブイが裏切って木ノ葉に送るとかって考えないのか?」

「それならそれで、オレの支配下にある尾獣二尾から七尾まで雲に送り込むまでだ。今から使ってもらう『天送の術』でな」

 

 ただの(ブラフ)だったんだけどな。思いの外、信じちゃってるみたいだ。本当にオレがそうすることを想像したのか皆、顔が青ざめている。

 

「雲に尾獣を送り込まれたくないなら、言う通りにすることだな」

 

 カクンカクンなるほどに褐色肌の銀髪少女は頷く。

 この様子だと裏切られる心配はなさそうだが、念のため、一応、保険として写輪眼の催眠眼で木ノ葉には送らないように仕向けておく。・・・外道とか下種とか言ってくれるなよ。

 

「オレが牛鬼の動きを一時的に拘束する。そしたら迎えに来るから天送の術で牛鬼を雲に送ってくれ」

 

 そう言い残してオレはチャクラを足に纏わせ一気に飛翔した。

 

 



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027.雲による木ノ葉奇襲作戦 天送

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 飛翔したオレはそのままの勢いで八尾牛鬼に突撃する。

 

「うおぉぉぉらッ!!!」

 

 雷と化した右腕を牛鬼の顔面目掛けて容赦なく突き立てる。

 

《雷皇・千鳥》

 

「痒いわッ!!」

 

 それを首を振って直撃を避けた牛鬼は数本の尾でオレのことを払いのけようとする。

 

「っ!」

 

 オレに向かって飛んでくる尻尾の反撃を(すんで)のところで避ける。

 

「カルタッ!本気で来い!!」

「これだから頭に血の上った尾獣は嫌なんだ!!」

 

 これじゃあ、いくら動体視力が上がったとて身体が戦闘についていかない。

 

「痛い目みて泣いたって知らねぇかんな!」

 

 オレの身体、持ってくれよ・・・ッ!

 

 八門遁甲【第六景門】開ッ!!

 

《雷遁・纏 参式》

 

 身体を流れるチャクラのリミッターをさらに解除し、スピードもパワーも格段にケタ違いに上がる。

 身体の周りには雷が蒼白く光りバリバリと帯電放電し、纏う雷遁の威力が弐式よりも更に倍増する。

 髪の毛は逆立ち、筋肉は盛り上がる。

 

 ただの高速パンチを連続で繰り出すだけで、炎を宿した衝撃波を放つ。

 この炎、空気摩擦による発熱のみで生じている。神速で相手を殴るだけの連続攻撃だが、いままでのどの攻撃よりも牛鬼には効いているように見えた。

 

「又旅ッ!重明ッ!!」

 

 オレが名前を呼んだだけで、何を求めているか理解してもらえたみたいで、尾獣玉が2発。牛鬼に直撃した。

 もろに尾獣玉を2発喰らった牛鬼は流石に堪えたらしく、動きが鈍くなった。

 

 オレはこのときを待っていたんだッ!

 

《魔幻・枷杭の術》

 

 写輪眼を発動させた状態で牛鬼の目を覗き込む。すると、牛鬼の動きがピタっと止まる。

 牛鬼はこれで幻術世界に陥り身動きが取れなくなっているはずだ。

 

 今のうちに連れてこないと!

 

「迎えに来た!」

「は、はい!」

 

 この状態なら、雲忍を待機させているところまで行って戻ってくるなど、1秒もあれば十分だった。

 

「天送先の演算は済ませているな?」

「はい、できます。チャクラを」

 

 オレはマブイの肩に手を置き、チャクラを大盤振る舞いで流し込む。

 

「いきます!・・・天送の術ッ!!」

 

 

 

 

 

 こうして木ノ葉の里、八尾襲来の危機を回避することができたオレはようやく一息つくことができたのであった。

 

「又旅。重明。お疲れ様。戻ってゆっくり休んでてくれ」

『妾は久しぶりにストレスを発散出来て楽しかったぞ。まぁ、流石に八尾相手となると疲れはしたがのう。おまえ様も休むんじゃぞ』

『主様。では、お先に』

 

 ボフンと大きな煙を残して2匹は封印されたオレの精神世界へと還っていった。

 

「あ゛ー・・・つかれた」

 

 八門遁甲も雷遁・纏もどちらも解除したオレは土がむき出しとなっている地面に寝転んだ。

 あ、一回寝転んだらもう起き上がれる気がしない。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

 仰向けになってぶっ倒れていると、褐色肌の銀髪少女であるマブイがオレの顔を覗き込んできた。いや、訂正しよう。

 

 テイク2。

 

 オレが仰向けになってぶっ倒れていると、褐色肌の銀髪美少女であるマブイがオレの顔を覗き込んできた。

 うん。これでよし。

 

「大丈夫だと思うか?八尾相手に肉弾戦だぜ?それよりもオレまだ写輪眼なんだけど、眼見ていいの?幻術かけられるかもよ」

「さっきそれをすれば都合がよかったのにあなたはそれをしようとはしなかったです。だから、大丈夫だと私は思っています。」

「・・・」

 

 すごい、罪悪感が・・・。

 なんかとてもピュアな瞳で見られると、とてつもなく自分が悪いことをしている気になってしまう。

 騙して催眠眼をかけたオレが悪いのか・・・ッ!?

 

 と、とりあえずバレないうちに先程かけた木ノ葉には天送させないためにかけていた催眠はもう解いておこう。

 

「それで私たちはこのあとどうなるのでしょうか」

 

 できれば、サムイとダルイだけでも雲に返してあげたいのですが。と、マブイは言葉をつづけた。

 

 うむ・・・どうしたものか。

 このまま普通に考えたら木ノ葉の捕虜とされるだろう。敵国の忍びだし、きっと子どもとか関係なく酷い拷問にかけられて色々と情報を吐き出させられる。この世界に捕虜の人権を守る条約とか無いからな。

 天送の術で返してあげれるものなら返してあげたいが、原作だと確か天送の術は、送られる側にかなり負担がかかることになっていた。

 とてもじゃないが、尾獣でも影クラスでもないあの2人が天送の術に耐えられるとは思えない。

 

「ここから3人で帰れるか?木ノ葉の忍びに見つかることなく」

「私がケガをしていなかったら・・・できたかもしれないけれど」

 

 だよなー。

 この状況下で最善の選択肢はというと・・・。

 

「じゃあ、オレが直接火影に話をつけるからそれまでは捕虜としての扱いを受けてもらうからな・・・」

「はい。わかりました」

 

 オレがどうにかして面倒見れるように画策、奔走するしかないか・・・。

 

 いや、ちょっと待てよ。天送の術はもう解析できた。模倣(コピー)もできる。

 送る3人にオレのチャクラを分け与えて天送されるときの圧力?から身を守れるようにしたら、いけるかもしれない。

 

 

 

 

 

 上手く送れたか、送れなかったか。その結果はわからないが、計算上では何の問題もなく雲の3人を天送することができたオレはその後、オレたち木ノ葉の追手の足止めとして残っていた2人の雲忍対策に置いてきたシカク、チョウザ、いのいちを迎えにいった。いや、言っとくが決して忘れていたわけではない。

 

 彼ら猪鹿蝶トリオは皆、満身創痍ではあったが生き残っていた。そして敵2人の死体も近くに転がっていた。

 

 こうして雲隠れが画策していた木ノ葉の里奇襲攻撃はなんとか木ノ葉側には一人の犠牲者も出さずに防ぐことができたのだった。

 

 

 

 ・・・本当は猪鹿蝶トリオのこと、頭から抜け落ちていたんだ。すっかり、さっぱり、がっつり。

 

 いやあ、ホント生きててよかったわ。もし、戦死してたらこんなカミングアウト、絶対できないもんな。墓場まで持っていくコースだった。

 

 



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第2章 上忍篇-第3次忍界大戦(中期)
028.中忍選抜試験


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 あの八尾襲来危機から数か月。

 木ノ葉は雲隠れの里と電撃的に休戦協定を締約した。

 

 この電撃的な木ノ葉と雲の休戦発表には忍界全土が大きく揺れた。特に岩隠れと砂隠れは震撼したといっても過言では無いだろう。

 

 それもそうだろう。五大国の中でも力の強い火の国木ノ葉隠れの里はこの第3次忍界大戦開戦直後は他四大国全てを敵に回して東部戦線、北部戦線、西部戦線と戦力を分散させて戦争を行なっていた。

 

 それによって均衡を保って三つ巴の戦いを繰り広げていた東部戦線での敵国である砂隠れの里と岩隠れの里は、今後木ノ葉が西部戦線に戦力の一極集中投入ができることとなるとして戦々恐々としていた。

 

 東部戦線、北部戦線での戦闘終結にはもともとまだまだ時間を要するとの予測があったのだ。その予測を木ノ葉は大きく裏切り、早期に霧隠れの里と雲隠れの里との停戦を実現させた。させてしまった。

 

 砂隠れと岩隠れはこれによって徐々に劣勢へと追い込まれていくようになるだろう。そしてそのことをわかりきっている両隠れ里の上層部はその現状を打破しようと裏で画策をするようになっていく。そのことが更に木ノ葉、砂、岩三つ巴の戦争を悲惨で凄惨なものにしていくのであった。

 

 

 

 

 

 それから八尾迎撃戦で開眼した写輪眼のことだ。

 

 実はオレが写輪眼を開眼したことはまだ誰にも言っていない。

 

 だからオレが写輪眼保有者であることはあの場にいたオレと又旅、重明。雲隠れの八尾牛鬼とマブイ、サムイ、ダルイしか知っている者はいない。

 

 言ったら言ったでまた新たな懸案事項となりかねないからな。最悪、うちは一族からは他家の人間のくせにうちはの写輪眼を所有していると疎まれ敵視され、木ノ葉上層部からはうちは一族の遠縁として扱われ、うちは一族と 同様に危険分子と判断されてしまったらオレは木ノ葉の里に居場所がなくなる。

 

 それですぐさま戦闘能力は高く、利用価値も高く、そして人柱力であるオレを排除する方向にはならないとは思うが、それでも徐々に肩身が狭くなるようには仕向けられそうだもんな。

 

 里の上層部は三代目火影以外はそういう厭らしい手段を良しとする傾向にあるからな。

 

 

 

 

 

 それと時を同じくして木ノ葉隠れの里では実績のある下忍のみが中忍になるべく試験が行われていた。

 試験内容は筆記と対戦形式の戦闘。

 平時の中忍選抜試験とは違い、戦時の中忍選抜試験は合格できる実力のある者だけが受験資格を得て、受験をし、受けた者は皆、合格通知を渡され中忍となる。そういうものであった。

 つまり、試験とは名ばかりのもので実際は受験者の実力確認程度のものでしかない。

 

 オレらの班は皆受験資格を得て、受験した。

 受験したということは、皆晴れて中忍となったのだった。

 

 忍びとしての戦闘能力が低い桜田ラクサですら、中忍として合格してしまうようなそんな試験であった。

 

 何故ラクサが大前提として、中忍選抜試験の受験資格を得られたかというと、任務達成回数だ。オレらの班は前のジュウの暴走を含め班としての任務達成回数はずば抜けた数をこなしていた。

 それがラクサの評価にも大きく影響し、結果として中忍になれたのだった。

 

 そんな下忍の中でも平凡の域を出ない桜田ラクサでも受かってしまうという危険が孕む戦時中の中忍試験制度ではあるが、この件は例外でそれまではこのようなことは起こってはいなかったようだ。

 

 中忍選抜試験は、午前の筆記と午後の実技ということで1日で終わった。

 その後、中忍となったジュウはその日のうちに暗部養成部門(ダンゾウが更迭、失脚したことにより火影直轄の組織となった)であるところの「根」に入隊することとなった。

 ラクサは自分の実力が実際には中忍に至っていないということは重々承知しているらしく、木ノ葉の里内で病院勤務をしながら医療忍者となるべく修行に入るとのことだった。中忍として戦場での槍働を命じられても実際、無理があっただろう。ラクサもすぐに命を落としかねないし、配属された部隊にも迷惑がかかる。そういった面では、ラクサのこの判断は正しかったとオレは思う。

 

 そして肝心のというか、メインであるところのというか、つまりこの物語の語り部兼主人公であるところのオレはというと中忍になったその瞬間に上忍になっていた。

 

 え、どういう意味かって?

 オレも最初は意味が分からなくて困惑したのだが、要は上忍になるには、大名や国の上役や里の上層部の推薦が必要となる。

 つまり、中忍選抜試験が始まる前から裏ではもうオレのことを上忍として登録する動きが始まっていて、オレが上忍に任命される最後の条件として中忍選抜試験に合格することとなっていたのだ。

 

 そんなことオレは一度も聞かされていない。

 

 たしかに一人で敵前線部隊を壊滅させてみたり、林の国を降伏させたり、八尾襲来を阻止したり、実績は普通の上忍以上だ。こんなやつをいつまでも中忍として使うのはもったいないと考えたのだろう。里の上層部も、国の上層部も。

 いやいや、でもオレ5歳になったばかりだぞ?そんなやつに責任持たせんなや。と、ぼやいたところで現実は変わらなかった。非情にも、無情にも、変わることなどなかった。

 

 そして、オレは木ノ葉歴代最年少の上忍になってしまった。

 

 

 




勝手にQ&A

Q.5歳で上忍とかありえなくないか?戦闘能力は置いといて状況判断能力とか責任能力の面から考えたらおかしい。

A.許せサスケ。これがご都合主義だ。


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029.口寄せの術 忍猿紹介

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 口寄せの術。

 

 口寄せとは、文字通り口を寄せ合う行為のことである。日本語的に言うと「接吻」。英語的に言うと「Kiss」。可愛く擬音的に言うと「ちゅー」のことである。

 つまり、口寄せの術とは、その接吻、Kiss、ちゅーをする(すべ)。もしくはその方法ということである。

 

 ・・・という冗談はさて置き。

 

 口寄せの術とは、ある生物との血の契約である。西洋風に言うと「使い魔」のような存在である。

 使い魔とは、伝承や幻想文学(ファンタジー)において、もっぱら魔法使いや魔女が使役する絶対的な主従関係で成り立つ魔物、精霊、動物などのことである。

 強力な術者の場合は使い魔を異世界から召喚したり、竜の牙など触媒から産み出す、護符や宝石に封じておいた魔物を解放するなどの手段を取る場合もあるが、いずれの場合も使い魔が術者以上の力を発揮する描写はあまり見られない。使い魔の名前の通り、術者自ら行うまでもない些細な用事を代行する。代表的な用途としては伝言、届け物、留守番、偵察、戦闘等がある。

 

 魔女においては悪魔からくだされた黒猫やカラスといった動物が使い魔として用いられ、術者はそれらの動物と感覚を共有するとされた。英語ではFamiliar(ファミリアー)(「親しい」等の意)と呼ばれることが多い。

 

 ・・・という雑学もさて置き。(※ Wikipedia参照)

 

 

 

 口寄せの術とは、血の契約を交わした生物を好きな時・好きな場所に呼び出すことができる一種の時空間忍術であり、会得難易度はCランク、つまり中忍レベルの忍術だ。

 

 通常は印を結び、契約者の血をつけた手をかざすことで術式が展開され、契約した生物が呼び出される。

 それは地上でも、空中でも使用可能で、多くの場合親指を噛んで血を流し術を発動させる。

 そのときできた指の傷は術発動後に治癒する。

 

 また、契約者でなくとも、契約者の血液と巻物などに記された口寄せの術式さえあれば、契約者以外の他者でも術を発動できる。そういうものだ。

 

 オレがなぜ長々と口寄せの術の説明をしたかというと、もちろんそれには理由がある。

 上忍に任命された際、火影様の執務室で簡単な任命式が行われたのだが、それが終わった後の雑談で口寄せ動物の話になったのだ・・・

 

 

 

 

 

「羽衣カルタの上忍任命式をこれにて終了いたします」

 

 オレの名前が呼ばれ、火影様にこの日より木ノ葉の上忍とする。みたいなことを言われ、もう一言、精進せよ的な長い励ましの言葉を承り、簡易的な上忍任命式が終わった。

 この日は午前に中忍選抜試験の筆記があり、午後には実技があった。別に特別疲れていたわけではないが、これで家に帰れると思ったら執務室からさっさと出ようと足が勝手に動き出していた。

 

「ところでカルタよ」

 

 部屋を出るドアに手をかけようとしたときだった。

 火影様に呼び止められた。

 さっさと帰ろうと思ったのに。という感情は胸の奥深くに押し込めて、そんなことはおくびにも出さずクルッとターンを華麗に決め、笑顔ばっちり。愛想ばっちりで。

 

「はい、なんでしょう」

 

 そう言い放ったのだった。

 

 オレは。

 

 この演技力を認めてアカデミー賞の主演男優賞でも頂きたい。この場合のアカデミーは忍者学校(アカデミー)ではないぞ?

 

「あぁ、呼び止めてすまんな。なに、お主がいくら上忍になったとはいえ年齢も身体もまだまだ子ども。なにか困っていることとか、悩んでいることなど無いかと。ふと気にかかってな」

 

 ということだった。いやぁ、お心遣いありがとうございます。ただ今は早く帰りたかった。

 

「お心遣いありがとうございます。火影様。そうですね、できればもっと休みが欲しいですけど・・・。それは大戦が終わったあとにでも少しだけ融通していただければうれしいです」

「そうか・・・。うむ、それは前向きに検討しておこう。他にはないのか?任務中でのことだったり、戦地でのことであったりだとかの」

 

 任務中か・・・。戦地で、だと・・・

 

 女!女だぁぁ!オレは女に飢えているんだー!!!

 

 ・・・なんてことはなく。5歳の身体じゃあ、なんとも思わん。

 

()いて言うなら、パートナーがいないことですかね。いや、ぼくの中には尾獣もいますし、なんなら影分身で自分とタッグを組むこともできますけど。やっぱり口寄せ動物がいないのはやりずらさを感じることもあります」

 

 いつでもどこでも又旅と重明を出していいということにはならないしな。

 

「なので、口寄せ動物との契約書を持っている方に紹介していただけないかなーと」

「ふむふむ。我が猿飛一族の忍猿を紹介してやろうかの」

「え、いいんですか?」

「まぁそれでお主と契約を結んでくれるかどうかは知らんがの」

「それでもいいので是非!紹介してください!!」

 

 こうして後日、猿飛一族に代々受け継がれている忍猿の口寄せ契約の取り次ぎを行ってくれるという約束を三代目火影・猿飛ヒルゼンとの間に交わしてその日は無事帰宅した。

 

 まさかこのことが後にあんなことを引き起こす引き金になるだなんて、このときはオレも火影様も含めて誰も知る由もなかった・・・

 

 

 

 いや、意味深に言ってみたけど、本当に知らないよ?

 

 

 



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030.口寄せの術 四尾出現

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 後日。

 

 オレは火影様から呼び出され、第44演習場。通称、死の森へと出向いていた。

 

 なぜ、そんな物騒な演習場なのかというと、どうやら最初に呼び出した忍猿との勝負に勝ったら契約を結んでくれて、尚且つ呼び出した本人を主人と認めてくれるということらしい。

 

 今でこそ良きパートナーとして火影様の忍猿となっている。現猿猴王の猿魔も最初はがっつりとやり合ったらしい。先程すごく脅された。

 その戦闘の際には当然、他者からの助力を得ることはできず、自分ひとりで、自力で、独力で。やり合う必要がある。そして勝利をつかみ取ると契約を結んでくれるということらしい。

 

「それじゃあ、この忍猿との契約の巻物にサインしてじゃな」

 

 親指を切り、自分の血でサインをしていく。

 

「名前の下に拇印じゃ。右手の指すべてに血をつけて、5本ともじゃ」

 

 親指から出ている血を人差し指から小指まで全て塗りたくり、ぺたん。

 

「これで忍猿との仮契約は完成じゃ。このあとの本契約にはまず、口寄せの術をせねばならん。印は、亥→戌→酉→申→未の順じゃ。お主ほどの者には言うほどのことではないと思うが、チャクラはしっかりと練らんと雑魚の低級の忍猿しか出てこんからな。ただし、すっからかんになるまで練ると出てきた強い忍猿との勝負に負けるぞ。そこらへんは程々にの」

 

 儂はそのせいでひどい目にあったのじゃ。と続いた。

 まさかの実体験の話だった。

 

 まぁ、オレはチャクラを練っても練っても無尽蔵にあるからな(たぶん、限界はあると思うが、その限界に至ったことはまだ一度もない)。だからきっと大丈夫だろう。

 

 集中、集中。・・・集中ッ!

 

 まるで螺旋丸を創り上げるが如く、集中しチャクラを練る。

 

 亥・戌・酉・申・未

 

 そして、練りに練った渾身の・・・

 

「口寄せの術ッ!!」

 

 ボフンッ!!!!!

 

 と、大きな煙と爆風を伴い、口寄せの召喚獣を召喚したオレの視点はアホみたいに高くなった。

 感覚的には又旅の頭や重明の頭に乗ったときと同じような高さだ。

 

「誰だ!!俺を、この俺、水簾洞の美猿王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖を呼び出した野郎はッ!!!」

 

 なんか、濃ゆいキャラクター性をもった(さる)が出てきやがった。

 

「って、孫悟空?」

「違う!俺は、水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖だッ!!」

「いや、長いんだよ。そんなに長い口上と名前覚えられるかよっ!水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖!」

「いや、覚えとるじゃろ・・・」

 

 火影様の小さなつぶやきといってもいいようなツッコミが入る。

 

「いや、覚えてるだろッ!!」

 

 水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖の大きな怒声と言ってもいいようなツッコミも入った。

 

「つーか、水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖って尾獣の四尾だな!」

 

 又旅と重明が四尾のチャクラに反応して騒いでいる。

 もちろんそれ以前に原作で見たことあるからわかったけど。わかってしまったけれど。わかってしまっていたけれども。

 

 オレが呼び出してしまった忍猿が本当は尾獣の四尾だったという事実に驚いた火影様は驚いて腰を抜かしそうになっていた。なっていただけで、実際には腰を抜かすことはなく、直ちに戦闘モードへと移行していた。そこら辺の切り替えは流石、里長である。高齢ながら火影の名に恥じない姿だった。

 

「いかにも、俺が四尾の水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖だ。むっ?お前の中に二尾と七尾がいるな。あいつらのニオイが溢れているぞ」

 

 自己主張の激しい猿だな。何回『水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖』って言えば気が済むんだよ。これだけでかなりの文字数稼いじゃってるじゃないか!

 

 なんてことをオレは思っていたり、思っていなかったりしているわけだが、実際はこの後の戦闘(バトル)を考えると憂鬱だった。考えると憂鬱だからくだらない言葉遊びをして考えないようにしているだけだった。

 

 つまり、現実逃避だった。逃避行なうだった。

 

「火影様。ここで見たことは内密にお願い致します。あとでちゃんと説明するので」

 

 眼が紅く発光する。チャクラの動きまではっきりと見える。そして、火影様の驚くの表情もはっきりと見える。

 

 八門遁甲を開く。今できる自分の限界まで、第六景門まで一気に。暴れるようなチャクラの渦が自分から湧き出てくる。

 

 雷遁も纏う。これも今の自分の限界、参式を。

 

「ほう。俺とやろうってのか」

「まぁな。なんで口寄せで孫悟空斉天大聖(カカロット)みたいな尾獣が出てきたのか知らないが、この口寄せの術の本契約には出てきた猿を実力で従わせる必要があるみたいなんでな。悪いけどここじゃ派手に暴れさせてやれねぇからな、一旦飛ばさせてもらう」

 

 木ノ葉の里内で尾獣と戦闘したら、せっかく八尾襲来を阻止した意味がなくなっちまう。

 

「おい、今俺のことを変な風に呼ばなかったか!?」

「呼んでないよ。ちゃんと本名の孫悟空斉天大聖(カカロット)って呼んだ」

「嘘つけェェェェェ!!!!!」

 

 あ、キレた。

 

 やべぇよ・・・やべぇよ・・・。

 

 尾獣玉作り始めやがったよ!!

 

 とりあえず、さっさと場所を移さないと!

 

「火影様!それじゃまた後で!!」

 

 天送の術ッ!と、叫びながら術を発動させると共にオレと四尾の孫悟空斉天大聖はこの場から消え去った。

 

 

 



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031.口寄せの術 限界突破

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 天送の術で適当に飛ばした先は森林だった。

 

 正確に言うと、森林のはるか上空1000mくらいの場所だった。

 

 なんでそんなアホみたいに高いところに飛ばしたかっていうと、いや、ここまで上空に飛ばす予定はなかったのだが、どうやらオレの使う天送の術は下手をしたら地中奥深くとか深海何千メートルとかに飛ばしてしまう可能性があるのだ。

 四尾孫悟空だけなら間違ってそんなところに天送してしまっても最悪ま、いっか。で、済ませることができるが、オレも一緒にとなると絶対に嫌だ。窒息死とか圧死とかで死にたくない。仮に死ななかったとしてもそんなトラウマ確定な経験などしたくはない。

 その分ある程度適当な高さなら、地面に埋まることもないし、深海に沈むこともない。オレなら空も飛べるし、妥当な判断だったと考える。

 

「てめぇ!この野郎ッ!この俺をバカ高いところにぶっ飛ばしやがってッ!!」

「うるせー!お前、孫悟空なら筋斗雲とか呼べないのかよ!」

「そんな雲あったら見てみたいわッ!!」

 

 重力による自由落下に身を任せながらの会話。命綱無しのバンジージャンプってこんな感じなのかな。いや、もうこの高さじゃあスカイダイビングって感じだな。

 

「じゃあ、舞空術は!?」

「なんだそれッ!!知らねぇよッ!!!」

「それも知らないで、孫悟空名乗ってんじゃねーよ!」

「俺が孫悟空だッ!!舐めたこと抜かしてんじゃねぇぞ!小僧ッ!!」

「こちとら見た目は子どもだけど、頭脳は大人なんだよッ!!」

 

 なんともアホ丸出しの口喧嘩である。

 そんなことをしている間にも地面はどんどんと近づいてくる。というか、自分たちから近づいていっている。

 

「重明!六枚翅(ろくまいば)!」

『イエス、マイロード』

「あッ!ずるいぞ小僧ッ!!」

 

 その翅、そのチャクラ、七尾の奴だなーッ!!と、叫びながら地面に突き刺さった。

 その際の衝撃は凄まじく、周辺の木々は全てなぎ倒され、土が大きく抉られ、まるで大きめの隕石が落ちてきたかのような状況だった。

 

 一方のギリギリのところで地面との衝突を回避したオレは、優雅に四尾孫悟空の滑稽な姿を上空から。まさに高みの見物をしていた。

 

『かっかっか。あの猿め。見事に落ちよったわ!』

『くっくっく。・・・又旅、笑いすぎだ』

『重明だって笑っておったじゃろ』

「お前らうるせーよ」

 

 四尾がアホズラをしながら地面に突き刺さったのがそうとうツボに入ったのか、さっきからずっと笑いっぱなしの我が愚猫と愚蟲。頭の中で笑い声がガンガンと響く。

 

「あの偽孫悟空があの程度でくたばるわけがないからな。お前らちょっと黙ってろよ。こっちもギア上げてかないとガチでまずい」

『おまえ様よ。そうは言っても八門遁甲の第六景門と纏も参式までやっておろうが。これ以上は身体がもたんぞ?おまえ様のその小さい身体じゃの』

「その小さい身体だからこそだよ。無理にでもパワーアップしないとサシで尾獣となんかやり合えない」

 

 今の八門遁甲第六景門以上の開放となると第七の門である驚門しか選択肢はない。なぜなら八門遁甲最後の門は死門といい、これを開くとその一瞬はもの凄くパワーアップできるが確実に死ぬ。

 

 もう一つのオレが使う肉体活性術である、雷遁・纏。纏も今は参式にまでギアを上げているが本来、羽衣一族が使用していた限界がこの参式だ。これ以上となると未知の領域。オレ自身どうなるかもわからないし、先祖たち先達でも知りはしないだろう。

 

「限界突破だ。壁は乗り越えるためにあるんじゃない。ぶち破るためにあるんだ」

『主様、そのセリフを誰に向かって言っているのだ。しかもキメ顔のおまけ付きで』

 

 空中でそんな話をしていると、真下の地面が大きく揺れ始めた。視界に収まるすべての大地が揺れている。

 ドリャァァァァ!!!という雄叫びと共に孫悟空が地面から飛び出してきた。

 

「小僧ッ!てめぇ・・・よくもォォォ!!!」

「孫悟空、出てきやがったな」

「許さんぞッ!!!」

 

 怒りに身を任せた四尾孫悟空は尾獣玉を、黒く大きいチャクラを圧縮に圧縮を重ねた凶器とも言うべきその塊をオレに向かってぶっ放す。

 

「危ねぇだろ」

 

 しかしそれを軽く避ける。飛んでくる尾獣玉は写輪眼で難なく見切れるし、空中移動も翅のおかげで思うがままだ。

 

 すっと3本の指を立てる。

 

「3分だ」

 

 キッと孫悟空を睨みつけながら続ける。

 

「3分でケリをつけてやる」

「ハァ?」

「だが、もちろん今のままじゃ当然無理だ。どうだ?小僧呼ばわりするオレの真の実力見たくはないか?それとも見るのが怖いか?」

 

 そういって孫悟空を焚きつける。

 

「そこまで言うなら見せてみろ。俺は逃げも隠れもしないぞ。その貴様の言う真の実力とやらを捻じ伏せてやる。俺に殺された時の言い訳もできないように完膚なきまでになッ」

 

 言質をとったオレは今までにないほどのチャクラを自分自身から引き出す。引きずり出す。捻り出す。そしてまずオレがまだ見ぬ境地。八門遁甲の第七驚門を開く。今まで感じたことのないほどのエネルギーが自身から溢れ出すのがわかる。

 それと同時に身体が異常なまでに熱い。暑い。気化した汗が漏れ出すチャクラの影響でか碧い汗となって見える。

 

 それから纏っていた雷遁も蒼白いスパークが徐々に薄紫がかった色合いに変化していく。それに伴いオレを渦巻く稲妻(スパーク)の音も轟音と化す。もうバチバチという次元(レベル)を優に超えてしまっている。これが羽衣一族未知の領域、纏の肆式。

 

 纏・肆式の影響で髪は逆立ち、全身の紅潮化も更に増す。

 

 これが限界の先ってやつか。

 

 パワーが漲ってくる。

 

「待たせたな、孫悟空。これがお前が望んだオレのフルパワーだ。最初(はじめ)っから全力で来ねぇと死ぬのはお前だぜ」

 

 

 



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032.口寄せの術 超絶怒涛

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 八門遁甲・第七驚門の開放と、それから雷遁・纏の肆式。

 

 尋常ではない力と引き換えにオレの体力がガリガリと削られていくのがわかる。

 

 もう、この境地になると変に術を発動させるより自分の肉体を使った方が威力が高いし、早い。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

「ウキキィーッ!」

 

 直接的な、直線的な、直情的な。一発だった。

 

 右ストレート。

 

 全身全霊を込めたその一発は、尾獣四尾である孫悟空を後ろに吹き飛ばすには十分な威力だった。

 

 孫悟空が吹き飛ばされていくと同時に大規模な自然破壊も行われる。孫悟空が吹き飛ばされる前にはあった青々と生い茂っていた森林がそのあとには抉り飛ばされ土が剥き出しになってしまっている。

 

「すげぇ力だ。尾獣を真正面からぶっとばせるだけのパワーがあるなんて・・・」

 

 オレに吹き飛ばされた孫悟空は少し背の高い山にぶち当たったところでようやく止まった。

 止まったのだが、その小高い山は完全に崩壊している。

 

 うぐぅ・・・という、うめき声が孫悟空の口から発せられる。

 

『かかっ。おまえ様よ、四尾を一発で伸してしまうとはもはや人外の域じゃな』

「おい、人を非常識の塊みたくいうなよ」

『いやいや、尾獣と互角に戦える時点で人間としてはおまえ様はもう既知の外にいる存在じゃよ。まさしく既知外(キチガイ)。じゃな』

 

 ひどい飼い猫だ。ご主人様をそんなふうに思っているだなんて。

 

「俺は怒ったぞ!!小僧ッ!!!」

「もう少しダウンしとけばいいものを」

「死ねッ小僧!!!熔遁・大噴火ッ!!!」

 

 巨大な溶岩(マグマ)の塊が孫悟空の飛ぶ拳が如く飛来してくる。まるでロケットパンチのようだ。そのわりには周囲に与える被害が大きいが。

 

 オレに向かって飛来しながら、その溶岩の拳の熱で周辺の木々に火がついて森林火災となっている。

 

「んなもん当たるかよッ」

 

 飛来してくるそれを余裕をもって回避する。そして回避すると同時に孫悟空に接近。

 

 顔面目がけて左のアッパーカット、右のストレート。

 

 今度は孫悟空の身体の下に潜って上空へと蹴り上げる。

 

 そんなに浮かび上がりはしなかったが、宙に浮かび上がった孫悟空の上へと影舞葉(かげぶよう)を使って瞬時に移動。

 孫悟空が受け身や防御態勢が整う前に一気に畳み掛けるッ!!

 

 全身のチャクラを右脚に集め、それを全身をフルに使って振り下ろす。

 

 地面に叩き付けられた孫悟空は大きなクレーターを作りながらまた地中深くに埋まる。

 

 オレはその場でただチャクラを圧縮し具現化させただけの(たま)を。チャクラ玉やチャクラ(だん)ともいうべきチャクラの塊を連続で撃ち放つ。

 

 その多くは孫悟空に着弾するが、外れたものは近くの地面を抉り大きな土煙を発生させている。

 

 そんな中、大きな土煙の中から突如尾獣玉が飛んでくる。

 

「っち・・・あと何発殴れば降参するんだ?100発か?1000発か?」

「そんな何度も何度も殴られてたまるかッ!熔遁・大噴火流星群ッ!!!」

 

 先ほどの巨大な溶岩(マグマ)の塊が今度は弾幕を張るようにして襲ってくる。それを矛として、また盾にしながら地面から孫悟空が飛び出てくる。

 流石にこれを直撃するわけにはいかない。

 

 回避一択だ。

 

「こっから先は一方通行だ」

 

 反撃の余地すら与えさせないッ!!

 

《多重影分身の術》

 

 ドバババババッ!!と、空を覆い尽くすのではないかという数を一度に出現させる。

 その数はもう何千という桁ではなく万単位の実体を持った分身体。これだけの数であればすでに数の暴力。尾獣である四尾孫悟空とて脅威でしかない。

 

 勝利を確信した、その時だった。

 

「うッ!?」

『おまえ様!?』

『主様ッ!!』

 

 それは唐突で、突然で、急に来た感覚だった。

 

 その感覚の名は痛み。全身が全方向に引きちぎられそうな感覚。本体のオレはもちろん、影分身体である数万のオレたちに1人の例外もなくその苦痛は襲ったらしい。

 そしてオレが出した影分身体は1人残らず、煙と化した。一瞬で無へと還った。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

 痛みは残るし、息切れ動悸、頭痛に吐き気までしてくる。

 

 八門遁甲は勝手に閉ざさるし、纏も肆式どころか壱式、つまり通常の纏すらも切れた。

 

 フラフラと地上へと高度を下げていく。

 

「なんか知らねぇが墓穴掘りやがったな?さっきまでの威勢の良さが欠片も残ってねぇぞ!!」

 

 オレと孫悟空の立場が逆になった。狩る側が狩られる側へ。

 そこからは孫悟空の猛攻がはじまった。それこそ一方通行だった。

 

 溶岩の塊が飛んでくる。尾獣玉が飛んでくる。

 

 何個も。何個も何個も何個も、オレに向かって飛ばされる。

 オレはそれをフラフラになりながらも直撃は避ける。直撃は避けるがその爆風やら衝撃波までは避けきれていない。派手に吹き飛ばされ、地面を転がる。もしかしたら孫悟空がオレの避けられるギリギリのところを狙って撃っているのかもしれない。完全に弄ばれていた。

 

「くッ・・・。ちっくしょう・・・」

『おまえ様、これはかなり不味い状況なのではないか?』

「・・・見りゃわかるだろ」

 

 

 

 オレは、いままでにないほどの窮地(ピンチ)に陥っていた。

 

(とど)めだ!死ねッ!小僧!!!」

 

 完全に地面に倒れ、動きの止まったオレに近づく死の足音。

 

 四尾孫悟空の熔遁を纏った拳がもう目の前に迫っていた・・・

 

 

 



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033.口寄せの術 四尾封印

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 四尾孫悟空が直接、自分の手で決着(カタ)をつけようとオレに接近してくる。

 

(とど)めだ!死ねッ!小僧!!!」

 

 人は勝利を確信したその時、一番の隙を見せる。

 

 孫悟空は無策でオレに突っ込んできた。オレが弱ってもう反撃能力は皆無だと考えて。

孫悟空は熔遁を纏って自分自身の拳で突っ込んできた。オレが弱ってもう抵抗能力は皆無だと侮って。

 

《魔幻・枷杭の術》

 

 写輪眼の瞳力。

 それは眼と眼が合っただけでかけられてしまう幻術。

 オレの幻術瞳力はまだそれほど高くはない。原作のうちはイタチのような月読(つくよみ)や、原作のうちはシスイのような別天神(ことあまつかみ)といった万華鏡写輪眼に宿った強い幻術は使えない。

 それにうちはマダラのようにチート掛かった尾獣を写輪眼で操れるわけでもない。そんな写輪眼の使用センスがずば抜けて高いわけではない。

 

 だが、相手が尾獣だとはいえ一瞬でも動きを止めることくらいはできるッ!

 あの八尾牛鬼にだって通じたんだッ!!

 

「ッ!?」

「孫悟空。オレを甘く見るなよ・・・」

 

 通常使用する、十二支の印とは違う羽衣一族にのみ伝わる特殊な印を結ぶ。

 

六道(りくどう)の六十一ッ!!」

 

 羽衣一族の中でも純粋な羽衣一族の血筋であり尚且つ、高い適性がなくてはならないという、長い羽衣一族の歴史の中でもほんの一握りほんの一部の者しか扱うことのできない秘伝中の秘伝。

 

《封印術・六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

 六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり孫悟空の動きを封じる。

 既に孫悟空に瞳力でかけた幻術は自力で解かれたが、次は物理的に動きを止める。

 

 だが、その拘束を無理矢理に解こうとして孫悟空は暴れる。

 

 それを見たオレは、更に拘束を重ね掛けにする。

 

六道(りくどう)の六十三ッ!!」

 

《封印術・鎖条鎖縛(さじょうさばく)

 

 太い鎖がまるで蛇のように、意思を持っているかのように孫悟空の身体に巻きつき更に動きを封じ込める。

 

 しかし、それでも先ほどよりは抵抗が出来なくなったとは言え、もがいている孫悟空がいた。

 

 そして総仕上げとも言うべきラストを決めるッ!!

 

六道(りくどう)の七十九ッ!!」

 

《封印術・九曜縛(くようしばり)

 

 孫悟空の周り縦方向に八つ、胸に一つの黒い玉のようなものを出現し今度こそ完全に、完璧に動きを縛る。

 いままでずっと封印術に抵抗をし、暴れていた孫悟空の動きがピタリと止まった。いまはもう指一本、眉毛少しすらも動かすことが出来ない。

 

「ぐぬぬ・・・」

「どうだ?舐めてかかった小童に生殺与奪を握られる感想はよ。あ、そっか。今は喋れすらしないのか」

 

 どうして猿飛一族の忍猿の口寄せの術で四尾の尾獣である孫悟空が呼び出されてしまったのか。それはわからない。

 原作でもまだこの時期、この時代だと岩隠れの里の老紫という人物が人柱力として孫悟空のことを体内に封印していただろう。

 

 それなのに口寄せで呼び出してしまったということは、この世界ではもう老紫は死んでいるのだろうか。

 まさか、オレが口寄せで孫悟空を呼び出したことによって人柱力である老紫から尾獣である孫悟空を引きずり出したことになって死んだということはないだろう。

 ということは、四尾孫悟空は人間からの支配から逃れていた野良の尾獣だったということなのか?

 

「まぁ、そういう細かいことは追々聞くとするか。オレも立ってるだけでキツイし」

 

 最初はというか、本当はというか。本来なら今は口寄せの術で呼び出した忍猿と戦って正式な口寄せの契約を結ぶところだったのに、なんで尾獣を封印することになってしまったのだろうか。

 

 バババッと、これまた羽衣一族にしか伝わっていない特殊な印を結ぶ。

 

「んじゃ、孫悟空・・・またな。又旅と重明と仲良くしてくれ」

 

 オレのその言葉にこの後、自分にどういう運命が訪れるのか。それを悟ったらしき孫悟空はより一層拘束を解く努力をする。

 が、びくともしない。

 

『嫌じゃ嫌じゃ。この空間に暑苦しい奴が来ては困る!』

「うるせーよ。同窓会でも開いてろ」

 

《羽衣式封印術・尾獣封印》

 

 孫悟空のチャクラが、そして身体が吸い込まれるようにしてオレの身体に入ってくる。

 

 今回は左肩だった。

 

 封印の術式がぼわっと皮膚に現れ薄く発光する。

 このじわっとした痛み。火傷した時のような痛み方にも似ている。

 

 チャクラの塊とも言うべき尾獣。四尾孫悟空はそれから1分もしないうちに地上から消え去った。

 オレの精神世界へと封ぜられたのだ。

 

 こうして今回の騒動は収束するのであった。

 

 

 

 

 

 今回の後日談的な話。

 

 オレは孫悟空との戦闘から1週間後、木ノ葉の里へと帰還していた。

 

 え、サボってたんだろって?

 ・・・そんなわけあるわけないだろ。

 

 そりゃ、ちょっとくらいは外に長居したけどさ。

 身体の回復に3日。気力の回復に4日。

 

 そういえば、半分以上はサボりだった。

 

「バカもん!!生きていたなら連絡くらいなぜ寄越さぬッ!!」

 

 そして、ひょっこり火影様の執務室に顔を出したら怒られた。

 

 まさかこんなに怒っているとは。

 もちろんその後には、写輪眼のことも洗いざらい話したし、今までなんとか隠していた七尾重明のことも吐いたし、今回戦った四尾孫悟空のことも吐かされた。

 尾獣を己の身体に3匹も封印してなんの暴走も起こさないことにはクエスチョンマークが浮かんでいたが。

 

「いや、四尾は今もぼくの中で暴れまわっています。ただ、二尾と七尾に制圧されてますが」

 

 火影様はオレと二尾・七尾にそこまでの協力関係があったことに驚いているらしく、それからもオレの精神世界に閉じ込められている四尾孫悟空の状況を事細かに説明したのだがどうやら耳に入っていないようだった。

 

 とりあえず、今回得た教訓はオレが口寄せ動物を欲したら四尾孫悟空という大物を釣り上げてしまう。ということだった。

 

 よし。次はマイト・ガイに忍亀との契約書をもらいに行こう。

 

 

 

 あ、いや。三尾の亀を狙ってっていうわけではないぞ?ほんとに。まじで。

 

 

 



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034.雨に蠢く闇の住人 其の壱

皆さまお待ちかね、みんなのアイドル登場いたします。


「明日よね。半蔵との会談は」

「あぁ!これでようやく雨隠れも一つに纏まって、三大国への平和交渉に臨める!」

 

 青紫の髪に紙で作られた花のコサージュをつけている少女とオレンジ色の髪を持つ青年。

 

「いままでありがとうな!小南!長門!」

 

 そして、少し長めの赤髪で右目を隠しており、三大瞳術の一つである輪廻眼を持つ青年。

 

「これからが本当の戦いなのよ。そんなに浮かれないの弥彦」

「そうだよ、弥彦。もっと気を引き締めないと・・・」

 

 この者たちが発足させ、組織化した「暁」。

 武力に頼らない平和というものを見つけるべくして仲間を集めたこの3人の瞳には今、希望の光がたしかに宿っていた。

 

 降りしきる雨。降り続く雨。

 黒く厚い雨雲がほぼ絶え間なく空を覆っている。

 

 それは明るい未来など全否定されているような、そんな場所。

 

 火の国・木ノ葉隠れの里。風の国・砂隠れの里。土の国・岩隠れの里という3つの大きな国に挟まれた場所。大国からは緩衝地帯としての役割があるため、3つの大国の均衡が一気に崩れない限りは国が潰える可能性は限りなく低い。

 

 雨隠れの里。

 

 ただの戦場として。領土は存在できる。

 

 ただの搾取される土地として、里は存在できる。

 

 だが、そこに住む民に明日(ミライ)があるかはわからなかった。

 

 

 

 

 

 時間は数日遡り。

 場所も変わり、ここは木ノ葉隠れの里。

 

「オレの状態?ああ、確かに通常じゃない」

 

 オレこと羽衣カルタは現在、ベッドの上にいた。布団は被せられているが薄いもの1枚以外は全部蹴り飛ばした。

 

「・・・・・・頭はぼやーっとしているし。身体は火照るように熱い。服が今にも燃え上がりそうだ」

 

 ベッドといってもラブなホテルにあるベッドじゃねーよ。5歳の身体じゃ性欲が湧き上がってくるようなことは皆無だ。というか、それどころではない。

 

「あちこちがだるくて一歩踏み出すだけで倒れそうだ」

 

 かと言って、病院のベッドでもない。

 

「眼球から水分が飛んでいるのか、ラクサちゃんの姿もまともに見えやしない。次に瞬きしたら、もう二度と目を開けないかもしれねーな」

 

 限りなく自分の見知った天井、壁、畳。その他諸々。

 そして顔のすぐとなりに見知ったラクサの顔。すごく近い。

 

「つまり、ベストコンディションだ」

「なにバカなこと言ってるじゃんね。インフルエンザよ。イ・ン・フ・ル・エ・ン・ザ!ちゃんと寝てなさい」

 

 怒られた。ナース服を着て、きちんとマスクまで装着している完全武装のラクサに怒られた。

 

「熱なんか42.5℃もあるし・・・本当、おばさまに呼んでもらってよかったわ。私がいなかったら勝手に任務行ってたでしょ?そんな状態で戦場に言っても死ぬだけよ」

 

 全く、いつの間にオレの母さんと面識を持っていたのか。

 ラクサは今、看護婦として木ノ葉の病院に勤務している中忍だ。医療忍者を目指して絶賛修行中らしい。てか、今の時代看護師っていうのが正式名称か。個人的にはナースさんが一番いいと思う。

 

「外ではいつも礼儀正しい良い子って感じなのに、家の中じゃわがまま放題のオレ様なのね」

「ひとりっ子だからね。それに爺さんへの反抗期もある」

 

 小さい時に受けた修行と銘打った虐待の数々は許さんぞっ。

 

 それはさておき、そろそろ動き出さないと。

 

「ちょっと、トイレ行ってくる」

「そう言って逃げ出すつもりじゃんね。トイレの前と窓で監視させてもらうからね。影分身の術!」

 

 十字の印を結んだラクサが2人になった。

 

 あれ?オレ具合悪いからラクサが2人に見えたのか?

 

「「私だって1人くらいなら影分身できるようになったじゃんねー」」

 

 有無を言わせないという2人ラクサの態度。オレとのにらみ合いが勃発。

 

「むむむ・・・わかった」

 

 結局、先に目が乾いたオレが折れた。

 

 てくてくとオレはトイレに向かって歩を進める。

 その前に縄を持ったラクサとオレの後ろで監視をしているラクサが続く。ちなみにその縄の反対側はオレの手首が縛られている。その見た目は囚人そのものだった。

 

 トイレの前までたどり着く。そしてラクサに絶対に途中で開けたりはしないでね。と、念には念を押してドアを閉めた。

 

 写輪眼を使うまでもなく、ラクサがトイレの窓の方へ移動したのがわかる。縄を握っている本体のほうはトイレの前で待ち構えている。

 

 前門の本体(ラクサ)後門の(ラクサ)といったところか。

 

 よし。じゃあ、逃げるか。

 

 オレはまず、忍者学校(アカデミー)でもならう縄抜けの術というチャクラなど一切使わない、初歩中の初歩の術で拘束されていた手首を解放させる。

 

《影分身の術》

 

 ボフンとオレが現れる。

 

「お前は囮役だ」

「おーけー」

『ちょっと!今の音はなにー?』

「ごめん!おなら!!」

 

 ラクサが恥ずかしそうな声で「ご、ごめん!」と叫んでいる間に本体のオレはその場から立ち去る。

 

《座標天身の術》

 

 残された影分身の方のオレが、トイレの水を流し、がちゃっとトイレの扉を開ける。

 

「お待たせ。ね?逃げなかったでしょ」

 

 未だに照れながらもきちんと逃げ出さずに出てきたことにホッと胸を撫で下ろすラクサ。

 そこから出てきたのが影分身という事実にラクサはまだ気づいてはいなかった。

 

 

 

 



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035.雨に蠢く闇の住人 其の弐

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 木ノ葉隠れの里から見て西方に存在する、とある森の中。

 

 そこにオレはいた。ラクサの監視から逃れるために飛んだ場所がそこだったのだ。

 

 だが先程、ベストコンディションとラクサに言い放ったもののかなり体調は辛い。

 

 天送の術の原理を用いた、オレ単体のみを天送させる時空間忍術。座標天身(ざひょうてんしん)の術。

 元の天送の術よりは単純な原理で術を発動できる優れものだ。

 

 原作、時空間忍術のなかでもチートと呼ばれていた飛雷神の術と座標天身の術。どちらにもメリット・デメリットが存在する。

 

 まず飛雷神の術のメリットだが、これは一度マーキングをしている場所や人へは一瞬で移動することができる。

 デメリットとしては、マーキングした場所や人のところへしか移動することはできない。

 

 対する座標天身の術はというと、メリットは単純に演算能力が及ぶ範囲であればどこへでも移動することができる。マーキングが必要ないのだ。

 これだけ聞くと座標天身の術の方が圧倒的に優れていると思われるが明確なデメリットも存在する。

 まず一つ目はチャクラの消費量は半端なく消費する。これは距離によって消費量は増えていく。

 そして二つ目が演算ミスによる事故。限りなく移動できるということはひとつの演算ミスで下手をしたら地球の中心部マントルや逆に大気圏外・宇宙空間へ間違って飛んでしまうということもあり得なくはない。

 と、いうことはだ。高速戦闘時には使い物にならない可能性が高い。

 

 結論。時間のある、余裕のある場所で使うにはメリットが十二分に発揮される座標天身の術が優れているが、高速戦闘時など余裕がない場合は飛雷神の術の方が優れている。

 

 

 

 今回、オレに与えられた任務は、雨隠れの里の内部に秘密裏に基地をつくっていると思われる岩隠れの基地を完膚なきまでに片っ端から潰すことだった。

 木ノ葉が感知していない場所。認知していない場所。動きの読めないところから一気に火の国へと攻め入られたら火の国(うち)の領内での激しい戦闘や下手をしたら略奪行為なども起こりうる。

 

 そんなことは起こさせやしないと、与えられたこの任務。

 

 絶対的に感知タイプ最強の瞳術使いである日向の方が向いていると思う。オレ、多重影分身の数撃ちゃ当たる人海戦術作戦くらいでしか見つけることなどできんぞ。写輪眼だけじゃ遠くまでは見通せない。

 

 何はともあれ、任されてしまった任務。託されてしまった任務だ。やるっきゃない。やり遂げないと木ノ葉に火の粉が飛んでくるからな。それだけは勘弁だ。

 

『おまえ様よ。具合悪い時にそんなにはしゃぐでないわ!精神世界で繋がっている妾とおまえ様は一心同体。一蓮托生じゃぞ?おまえ様が吐きそうになったら妾も吐きそうになるんじゃ!』

 

 木の枝から枝へと飛びながら移動していると急に又旅が話しかけてきた。

 

「なんだよ、又旅。一心同体はともかく、一蓮托生とか重いんだってーの。まずオレ死んでもお前らは死なないだろ。封印が解除されて野良尾獣になるだけだろうが・・・」

『アホを申すな、このバカタレが。それぐらい強い絆で結ばれているという比喩みたいなもんじゃよ。それがなぜわからんのじゃ』

「んなことわかるか!っていうか、お前以外の2匹はどうしたんだよ。まだ喧嘩してんのか?」

『あー。あの七尾重明(バカ)四尾孫悟空(アホ)はじゃな・・・』

 

 又旅がそこまで言うと、ポンと頭の中にオレの精神世界の映像が流れる。

 

「・・・あぁ」

 

 そこに映っていた2匹はグロッキー状態だった。

 

 もう、ゲロゲロ。

 

 その様子を例え健康な人が見ているだけでも吐き気を催すほどに、げろげろしていた。

 

『この有様じゃ。おまえ様が、いんふるえんざ?とやらにかかる前までは妾と重明で仲良くあの猿のことを調教していたのじゃがな。おまえ様がぶっ倒れた途端にあやつらが仲良くゲロっておるのじゃ』

 

 嫌じゃ嫌じゃ、と又旅は続ける。

 

『ほれ。どうにかせんか。この酸っぱい酸味の効いた独特なゲロの臭いを。妾はこの空間にいることが苦痛で苦痛でもう辛抱できんぞ』

「できるわけないだろ。お前の炎で焼き払っちまえよ」

『それができたら苦労しておらんわ。おまえ様に泣き言を言うのも躊躇ったやも知れぬ』

 

 そうだった。オレの精神世界では尾獣たちは術の行使が一切できないんだった。

 

「でも、オレ自体はそこまで吐き気が酷いとかそういうレベルではないんだけど。なんでお前らがこんな状態にまでなってるんだ?」

『それこそ知らんわ。もしかしたらおまえ様の具合の悪さとかも妾たちが代わりに請け負ってしまっているのかもしれんがな』

 

 そのわりには、又旅は3匹の中では一番ピンピンしている。

 でも仮に、本当にそうだとしたら気の毒な気もするし、多少なりとも悪いなとも思うけど。

 

「どうせなら具合悪いの全部受け持ってくれよ。又旅」

『嫌じゃ』

「そしたらもう酸味の効いた空間が嫌とは言っていられなくなるぞ?」

『もっと嫌に決まっておるじゃろ!!』

 

 又旅とこんな会話をしていられるだけ、オレはまだ平和だった。

 

 雨と暁と木ノ葉の闇と。交錯するまで残っている時間はあと僅かとも知らずに・・・

 

 

 

 



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036.雨に蠢く闇の住人 其の参

大変遅くなり申し訳ございません。

言い訳はあとがきでします。とりあえず、つづきをどうぞ。


 いつもより全然思うように動かない発熱している身体に鞭を打ち、岩隠れが秘密裏に作っていると思われるアジトの捜索に励むオレ。

 

 ありそうなポイントを虱潰しに探すのだが、一向に見つからない。

 

 森の奥深くまで探し、山の洞窟内部まで探し、湖の底にまで行って探しても何一つ見つからない。

 

 どれくらい見つからないかと言うと、太平洋に一円玉を落としてしまい探しているような感じだ。

 

 それはもう、なかなかなかなかなかなかなかなか大変だ。もう「な」「か」のゲシュタルト崩壊を起こしそうな勢いだ。

 

「ったく。どこだよ・・・」

『まあまあ、そう苛立つでないわ。もっと心を落ち着かせてじゃな。心の眼で見れば意外や意外なところに案外、転がっておるやもしれぬじゃろ』

「あのなぁ、そんなんで見つかってたら苦労しないよ」

 

 雨隠れの里の領内に侵入してから早1日ほどが経った現在でも、木ノ葉上層部に上がってきたという情報。岩隠れの里が火の国領内への急襲侵攻を計画しており、そのための拠点づくりを雨隠れの里領内で行っているというもの。

 

 その情報源が誰なのか、どこから得たものなのか。オレは知らないが・・・。

 

 この情報、本当に合っているのか?

 

 そんな疑問も浮かび上がってくるほど、痕跡らしきものすら欠片も見つけることができないオレは又旅の言うように多少は苛立っていた。

 

「はぁ・・・つかれた。とりあえず、休憩といきますか」

 

 タバコでもあったら吸いたい気分だ。あ゛ぁ~・・・一服してぇ・・・。

 

 まぁ、タバコを吸ったことなど前世現世合わせて一度もないが。

 

 そんな生産性のないことを考えつつ、とりあえず目の前にある周りと比較して大きめの木に寄りかかるようにして一息ついた。

 日陰に吹くそよ風が頬をなでる。

 

「心地いいなぁ。具合悪いのも忘れそうだ」

『いいのう。おまえ様は』

「え?もしかして、重明と孫悟空(カカロット)はまだリバースしてんの?」

『いや、昨日一日中戻した(吐いた)おかげで今は吐き気は収まったらしいがの。じゃが、2人仲良く寝込んでおるわ』

 

「はぁ・・・でも、つかれたわ」

『さっきからそればかりじゃな。ため息をつくと幸せが逃げていくというじゃろう。今この現状が今以上、更に酷くなったら困るのはおまえ様じゃろうに』

「・・・わかったよ、気を付けるよ・・・はぁ」

 

 わかったって言った直後に!!とか、なんとか。

 又旅が騒ぐのを放置して、むしろ子守唄にしてオレはいつの間にか眠りに落ちていったのだった・・・ 

 

 

 

 

 

 それに気がついたのは、野生の「勘」とでもいうべきか。

 

 それとも寝ながらにして「悪意」に気が付いたとでも言うべきか。

 

 もしくは寝ながらにして「気配」を察知したとでも言っておくべきか。

 

『おまえ様!起きろっ!!』

 

 なんてことはなく、そんなエスパーな能力を持っていたわけでもなく、突然潜在能力が覚醒したということもなく、ただ普通に、通常通りに、単に又旅に叩き起こされただけだった。

 

「っ!・・・ここはだれ?オレはどこ?」

『なにアホなこと言っておるんじゃ!何者かは知らんが、数人集団でこちらに近づいて来ておる。早う準備せんか!!』

 

 怒られた。キレられた。むしろ、叱られたと言ったほうが正しいかもしれない状況でもあった。

 だって、悪いのはどう見てもオレだものな。

 

 そして言われた通りにオレは周囲に意識を向けてみる。すると、たしかに東側。

 つまり、木ノ葉の里がある方角から4人小隊がいくつかやって来るのがわかる。もっとも写輪眼を持ってはいるが、もともと感知タイプではないオレにはそれぐらいの情報を得るだけで精一杯だったのだが。

 

「ほんとだ。でもさ、この方角からじゃあ、うちの里から前線部隊への増援だろ?なにもそんなに慌てなくても・・・」

『何をのんきなことを言っておるんじゃ、このバカ者めが』

「ば、ばかものって・・・」

『バカ者はバカ者じゃ!おまえ様がのんきにそんなところで油売っていたら、サボって寝ておったら、おまえ様の評価が下がってしまうではないか!』

 

 ・・・。

 

「なんだよ。お前、そんなこと心配してくれてたのか?」

『なんだとはなんじゃ!人間は他人の評価や出世を気にする生き物じゃろうに!おまえ様の出世を気にしてやった妾がバカじゃったわッ!もう、知らん!!』

 

 そう言って精神世界の深いところへ行って隠れてしまった又旅に、「ごめんって」と何度か謝ったのだが、全く応答がなかった。

 

 これはしばらく捻くれて出てこないやつだな、うん。

 まぁ、落ち着くまで放置しておくか。またひょっこり出てくるだろう。出てきたときにもう一度謝っておこう。

 もしかしたら、その時にはもうすでにこのことなど忘れてしまっているかもしれないが。

 

 なんて、自分のことを心配してくれた恩人に対して(人、というよりは猫か。)失礼なことも考えつつ。

 

「日もガッツリ暮れちまったなぁ。木ノ葉の増援にでも挨拶くらいしてくる・・・か?」

 

 先程よりもうんと近づいて来ている木ノ葉からの集団を写輪眼で見つめる。

 ぼやっとチャクラの集団が見える。

 

 そのなかでも目立つ者がひとり。

 

「この、嫌な感じは・・・」

 

 木ノ葉の闇の代名詞。

 

 火影様から無期限謹慎処分を受けているはずのその男。

 

 志村ダンゾウ。

 

 その人だった。

 

 

 




お待ちいただいていました皆様へ。

新名蝦夷守です。

更新が遅くなってしまいごめんなさい。
仕事の都合、それから私事の都合により遅くなってしましました。

もしかしたらGW中に1回も更新できないかもしれません。
その後も今までのように毎日更新とはいかないかもしれません。

ただ、最後まで書ききりたいと思っていますので、読んでいただける方は気長に待っていただけるとありがたいです。

マイページすらも開けない日もあるので、評価や感想、活動報告で行っているアンケートをすぐに見れないことも多々ありますが、頂けるとモティベーションがぐいぐい上がるのでいただけたら幸いです。

今後ともよろしくおねがいします。


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037.雨に蠢く闇の住人 其の肆

お気に入り登録、600件突破。UAもいつのまにか50,000!ありがとうございます!!

そして、遅くなってしまってごめんなさい。

それではつづきをどうぞ・・・


 ダンゾウの奴、今度は一体何を考えてやがるんだ?

 

 この前の林の国での一件で独断専行を厳しく指摘され火影様から無期限の謹慎処分を言いつけられているはずなのにこんな前線付近にまで出没して。

 しかも解体されたはずの私的部下『根』らしき小隊も何組か連れてやがる。

 

 これはまた木ノ葉の為にという免罪符を己に使って裏で何かを画策、暗躍しようとしてんな。

 

 まったく。どんだけ目立ちたがるんだっていう話だ。火影になりたいならば、なりたいなりに行動をすればいいのに。

 

「ま、感知タイプじゃないオレがあっちに気が付いたということは、あっちもオレに気づいてる奴がいるんだろうな・・・」

 

 ここは一旦、里に帰って火影様に報告(告発。又は陰口ともいう)だな。

 ダンゾウの独断専行は見逃していたら最終的に木ノ葉が痛い目に遭うのが原作では定石だったからな。

 

 とりあえず、ここの座標を記憶しておいて・・・。

 

《座標天身の術》

 

 そして術を発動したその後にはオレの痕跡は何一つ残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 5小隊、20名もの集団が陣形を整えつつもかなりのスピードで森林を移動していた。

 その者たちは1人を除き皆、表情を隠すが如く顔が見えないように仮面を被っていた。

 

「ダンゾウ様」

 

 木ノ葉の暗部の証でもある面をつけた忍びの内の1人が己の主人の名を呼ぶ。

 

「なんだ。トウマ」

「前方、申の方角に人の反応があります」

 

 このトウマと呼ばれた忍びはダンゾウが率いる『根』の中でも感知タイプとして突出した才能を持った忍びであった。しかし、彼は日向一族のような眼も犬塚一族のような鼻も持ってはいない。

 ただ、生まれ持った超感覚という才能と、その後の努力の賜物で現在の地位を築いていた。

 そのことを知らない者はこの5小隊の中にはいない。それ故にその言葉にダンゾウの周りにいる忍びたちの意識を一気に警戒レベルにまで引き上げた。

 が、ダンゾウは今にでも飛び出していきそうな忍び数名を手で制し、抑揚のない声色で「数は?」とトウマという忍びに静かに尋ねる。

 

「たったの1人です。・・・が、チャクラの質からしてかなりの強者かと」

 

 トウマのその言葉に先程とは比べ物にならないほどに警戒レベルを引き上げる忍びたち。

 ダンゾウを除くその19人もの忍びが全員、次の指示に耳を傾ける。

 

 1秒ほどの思考の時間があった後、ダンゾウは3名の名前を挙げた。

 

「キイル、ライ、ラム・・・そしてジン。お前たちが行け」

「「「はっ!」」」

「ダンゾウ様、目標(ターゲット」)は如何様に」

「情報が少しでも流れたら拙い。誰であっても構わず抹殺せよ」

「畏まりました」

 

 そして指名された4名1小隊は他小隊と別れ、自分たちの主人であるダンゾウからの勅命である殺害の目標(ターゲット)を探しに別行動をとる。

 

 だがしかし、彼らが行きついたポイントには人物はおろか手掛かりになりそうな物すらも何一つ見つからなかったのであった。

 

 

 

 

 

 場所は変わって木ノ葉隠れの里。

 

 オレは木ノ葉の里につくと真っ先に火影様の執務室のドアを叩いた。

 

「火影様!カルタです。至急、報告したいことが」

 

 するとオレの急ぎ具合を感じ取ってくれたのか、中から『入れ』と火影様から返答があった。

 

「失礼します」

「なんじゃカルタ。お主はたしか雨隠れの里周辺にある岩隠れの秘密基地(アジト)を捜索していたのではないか?」

「えぇ。火影様のおっしゃる通り、ぼくはその任務についていたのですが、捜索に関しては全くの手詰まりです。怪しげな地点(ポイント)を隈なく探してもなんの形跡すら見つかりません。もしかしたら、今回の情報はガセネタだったのではないかと思ってしまうほど何一つ見つかりません。そんなことよりも重要なことが・・・」

 

 岩隠れのアジトが本当に無いのであればそれに越したことは無い。が、万が一見つからずに本当はアジトが造られていたとしたならば大変、木ノ葉にとっては軍事的脅威である。

 であるのにもかかわらず、オレがそれよりも重要という言葉に火影様の表情も変わる。

 

「なんじゃ。何か別件で見つかったのか」

「はい。現在、無期限謹慎処分中の志村ダンゾウが忍び数小隊を率いて雨隠れもしくは岩隠れなどの木ノ葉隠れ西方の領地に向けて移動中です」

 

 オレの報告に火影様は苦虫を噛み潰したような表情になる。

 そしてオレは報告を続ける。

 

「志村ダンゾウが率いていた忍びは恐らく解体されたはずの私的暗部『根』の構成員でしょう。どうやって火影様直属の暗部に編入された元構成員をまた自分の駒として使役しているのかは不明ですが、ダンゾウが何かを企てていることには間違いありません。その根底は木ノ葉の為というものであっても結果が伴うとは限りませんし、何より組織として国を、里を、民を守る以上、独断専行での軍事行動は看過できないものです」

 

 どうか、ご決断を。と最後に言葉を付け加える。

 

 火影様は最後まで悩まれたのであろう。

 

「・・・ダンゾウを討つ」

 

 この言葉が出てくるまでにかなりの時間を要した。

 

 だが、まさかあの火影様からこのような直接的な言葉が出るとは、願ってはいたが現実になる可能性は低いと考えていた。

 

「事態は急を要する。カルタよ、里内で休養中の自来也と大蛇丸を筆頭に他数名の実力者を集め直ちに木ノ葉を出立せよッ!」

「はっ!」

 

 

 




こんにちは新名蝦夷守です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

時間を見つけて久しぶりに投稿することができましたが、やはり毎日書かないと全然かけないものですね。難産でした。

これからもこのようなペースになってしまうと思いますが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです。

感想や評価、活動報告でのアンケートなどにもお付き合いいただけると嬉しいです。

では、なるべく近いうちに・・・


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038.雨に蠢く闇の住人 其の伍

お気に入り登録、評価ありがとうございます。


 火影様に言われ、オレが木ノ葉の里内を1時間で走り回り探し回った結果集まったメンバーは以下の通りだ。

 

 まず1人目は火影様からのご指名があった火影様の弟子であり木ノ葉が有する伝説の『三忍』の一人、自来也だ。

 彼を見つけた場所は木ノ葉の銭湯(女湯)を一望できる高台だ。覗きの真っ最中(覗き魔の現行犯だった)に後ろから思いっきり頭部を蹴り飛ばして有無を言わさず連れてきた。まったくもう、この男は・・・状態である。

 しかし、実力のほどは言わずもがなである。仙人モードになると不細工になるからと嫌がるかもしれないが戦闘力はとても高い。

 

 そして2人目も火影様からのご指名であった、これまた火影様の弟子であり木ノ葉が有する伝説の『三忍』の一人、大蛇丸。

 この人を見つけた場所は彼の両親が眠るお墓だった。初めは大蛇丸が所長を務める合法的な研究所にでもいるかと思い訪ねてみたが不在で、研究員から「大蛇丸様は研究に煮詰まったらいつも行く場所があります」と教えられ行ってみたのがそこだったのだ。

 原作での知識からだと想像できないくらい穏やかな表情で両親に話しかけており、申し訳ないが人違いかと思ったほどだった。そんなときに悪いがこちらも時間がないので手短に事情を話し、大蛇丸も無事パーティメンバーに加入。

 

 3人目は、二代目火影様の直系子孫にあたり森の千手一族の残り数少ない末裔である千手天間(せんじゅあまのま)

 彼は今年で20歳になる上忍だ。二代目様と同様で水遁に長けており、水の無い場所でも不自由なく水遁を操ることができる。印を結ばずに水遁の千本を飛ばす《天泣》をマスターしている人物でもある。

 時空間忍術にも長けており、数多もの種類の口寄せの術を駆使して常に自分が優位に戦えるような戦場を作り出す才能を持った忍びだ。

 以前任務で数回、自来也と二人一組(ツーマンセル)を組んでいたことがあったらしくその実力を良く知る自来也からの強力な推薦で加入した。

 

 4人目は、二代目火影様に絶大な信頼を得ていたという、うちは一族の中では特異な存在であったうちはカガミの子孫にあたり、原作にも出てきたうちはシスイとは従兄弟でもある、うちはコロウという男だ。

 他のうちは一族と同様に火遁に長けているのみならず、木ノ葉では珍しく風遁の扱いにも長けている今年17歳になる上忍だ。

 数年前にうちは一族の持つ血継限界である写輪眼を開眼したことを機に、それから彼はうちは一族の者の大半が務める木ノ葉警務部隊の若きエースとして活躍している人物である。

 その噂を聞いていた大蛇丸の推薦によって今回のメンバーに入れようということになった。

 そして、伝説の三忍に推薦されたことを光栄なことと感じてくれたコロウは今回の事情を話すと快く引き受けてくれたのだった。

 

 そして最後の一人になるが5人目はあの、はたけカカシだ。

 原作では主人公であるうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ3人の担当上忍として登場し、最終的には六代目火影にまで登り詰めた人物。

 「木ノ葉の白い牙」の異名で他国から恐れられた天才忍者・はたけサクモを父に持ち、彼自身も父親譲りの才能をいかんなく発揮している天才忍者。

 オレらの班の臨時担当をやっていたうちはオビトのチームメイトでもあり、その世代ナンバーワンの実力の持ち主だ。ちなみに師匠は「木ノ葉の黄色い閃光」と他国から現在進行形で恐れられている波風ミナト。

 カカシは現在、11歳の中忍だが、父から受け継いだチャクラ刀の扱いと雷遁と土遁の扱いに長けた戦闘力の高い忍びの一人だ。

 今回の任務では唯一の中忍となるが、生き残ることができたのであれば彼の今後の人生において非常に大きな経験を得ることになるだろう。

 ちなみに現在は時系列で言うとまだ原作で言うところの『NARUTO-カカシ外伝-戦場のボーイズライフ』前なので、父・サクモが忍の掟よりも仲間の命を取った結果、木ノ葉の里から誹謗中傷され、挙げ句の果てには命を助けた仲間が裏切り、その仲間からも誹謗中傷され恩を仇で返され、心身疲労により自決した。という自身の幼少期にあった壮絶なその出来事へのトラウマからルールに固執し、任務では仲間に冷徹に接してしまうクールキャラとして地位を確立している状態である。

 実のところを言うと本来ならば、木ノ葉の黄色い閃光である波風ミナトを探していたのだが、その最中に出会ったのがカカシだったのだ。

 最初はカカシからミナトの居場所を聞いて探しに行く予定だったのだが、生憎ミナトは長期任務で里にはいないらしく代役としてカカシが大抜擢されたのだった。

 「ミナトはいないのか?じゃあ、カカシ君でいいや」的なノリでメンバー入りしたのだが、それには本人が一番戸惑っていた。

 

 この上記5名にプラスしてオレ、というメンバーでこれからダンゾウを追跡し、ダンゾウの暗躍を止める。

 

 ダンゾウが向かっていた方角とオレの薄れてきた原作知識と照らし合わせると時期的にも第三次忍界大戦でのダンゾウの暗躍は、雨隠れの里長、山椒魚の半蔵と秘密裏に手を組み、雨隠れの里で急激に勢力を増してきた「暁」への騙し討ちだ。

 これがきっかけとなり、リーダーであった弥彦が死に、輪廻眼を持つ長門が暁を戦争請負屋として、世界の戦争を牛耳ろうと舵を切ることになる。そして木ノ葉を襲撃するのである。

 

 原作での時系列的に考えればオビトが闇堕ちしていなかったり、それ以前にまだ神無毘橋の戦いが起こっていなかったりもするが、もう原作が崩壊しつつあるのは致し方ないだろう。

 まずは、目の前のことをひとつひとつクリアしていかないと。

 

 ここはもうオレの知るマンガの世界じゃない。

 

 オレが生きる現実の世界だ。

 

「それではみなさん、各自ぼくの影分身と手を繋いでください。ぼくのチャクラが全身に行き渡り防護(コーティング)出来たら行きますよ」

 

《天送身の術》

 

 

 




いつもご覧いただきありがとうございます。新名蝦夷守です。

今回はストーリーが全然進まず、、、orz

しかし、次回は進む予定です。お時間はもう少しください。


評価や感想をいただけると非常に励みになります。(ただし、ポジティブに限る)
活動報告の方でもアンケートを、行なっておりますのでご協力いただけると嬉しいです。


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039.雨に蠢く闇の住人 其の陸

お気に入り登録700件突破!急激に伸びましたね。ありがとうございます!

それに評価もいただき感謝感謝です。

では、本編をどうぞ・・・


 雨隠れの里領内。

 

 その中でも火の国の領土との国境に広がる森。

 

 つまり、1時間ほど前にオレがダンゾウを見つけた地点(ポイント)に舞い戻ってきた。

 

「へぇ・・・便利な術じゃない」

「ありがとうございます。大蛇丸さん。でも、この術はぼくがチャクラで身体を護らないと時空間移動中に身体が崩壊してしまうのが難点なので、他の方には使えないんですよね」

「まぁ、どんな術にだってメリット・デメリットはあるものねぇ」

 

 大蛇丸だけでなく、他の4人もこの距離を一瞬にして移動したことに驚きの表情を浮かべていた。

 自来也にとっては逆口寄せの術で時空間移動をしたこともあるだろうに、周りと同じ反応を示していた。

 

 それはさておき。

 

 ここで原作からの知識を影分身からの情報と情報源を偽って皆に話すことにする。

 

「皆さん、今ぼくの影分身からの情報が入りました。現在ダンゾウが接触しようとしている相手は雨隠れの里長・山椒魚の半蔵です」

 

 オレが出したビックネームに一同がそれぞれの反応をする。特に反応したのが大蛇丸と自来也の2人だ。

 自来也は苦虫を嚙み潰したような渋い表情を浮かべ、大蛇丸は獲物を見つけた蛇ような表情を浮かべている。

 

 彼らが「木ノ葉の三忍」と呼ばれるきっかけとなった敗戦。

 その際に戦った相手が雨隠れの里長・山椒魚の半蔵だったのだ。しかも、最後には彼に情けをかけられ、「三忍」の名付け親とまでなっている。

 

 彼らの半蔵に対する心情は並大抵の言葉じゃ言い表すことはできないのだろう。

 

「山椒魚の半蔵は、雨隠れの里内で最近できた戦争の平和的解決を目指す組織『暁』が勢力を急激に伸ばしていることに危機感を感じていたようです。そこを突いたダンゾウが半蔵に接触をし、手を組んで『暁』を騙し討ちする算段をつけているようです」

 

 そして、とオレは話を続ける。

 

「『暁』のリーダーの特徴はオレンジ色の髪を持つ青年で名前はヤヒコ」

 

 この名前が出始めたころから、自来也の顔色が変わり始める。

 

「その側近を務めているのが青髪の女性、コナン。そして赤髪で長髪の青年、ナガト。これは未確認情報ではありますが、最後のナガトという男は伝説上の眼である輪廻眼を開眼しているという情報も入ってきています。ぼくの影分身も確認を試みたのですが、なんせ長髪で瞳が隠れてしまっているので遠目からだと確認できなかったようです」

 

 黙りこくっている自来也を訝しげに見る大蛇丸。「もしかしてその子たち、自来也。アナタが昔忍術の手ほどきをした孤児じゃないの」と小声で聞いているようだが、自来也は頷きもしない。

 

「火影様から受けた命は現在無期限謹慎処分中の志村ダンゾウによる独断専行軍事行動の阻止。その方法は目標(ターゲット)の生死を問わずとのことです。班は大蛇丸さんの班がコロウさん、カカシさん。自来也さんの班が天間さん、そしてぼく。『暁』への襲撃は雨隠れの里内で、半蔵とダンゾウが『暁』との会談を口実に呼び出したところで行われる模様です。時間的な猶予はもう残り少ないかもしれません。急ぎましょう」

 

 オレたちはオレの発したその言葉を機にその場から走り始めた。

 

 

 

 

 

 雨隠れの領内を中に進むにつれて雲が濃くなり、天気も悪くなってくる。

 

「その、自来也さん。さっき気になってはいたんですけど、もしかしてその『暁』の構成員に心当たりでも?」

 

 木と木の間を縫うようにして移動している中。いままで口を開いていなかった千手天間が自来也に尋ねる。

 

「まあのォ。ちっとの間だけ見ておったワシの弟子たちってところかのォ・・・」

「そうだったんですね。では、もしかしてその輪廻眼っていうのも本当だったりしますか?」

「あぁ・・・カルタが言っとった長門っていうのが輪廻眼を持っていての。ワシはあの子こそが予言の子だと、そう信じている」

 

 予言の子とは何なのか。天間はそのことにも疑問を持ったようだったが、それを聞く前に敵が現れ襲ってくる。

 

 だがそれを各々、螺旋丸や天泣、千鳥鋭刀で切り捨てる。

 

「その、敵は3人ということは偵察部隊ですかね」

「そうかもしれませんね。もしかしたら会談場所が近いのかもしれません」

 

 ここは一回、空から見てみるとするか。

 

 そう思って、精神世界にいる重明に話しかけてみる。

 

『おーい。重明生きてるか?六枚翅貸してくれ』

 

 ・・・。

 

 返事がない。ただの屍のようだ。

 

『なんじゃ?おまえ様。重明に何か用でもあるのかの』

 

 そういって出てきたのは又旅だった。さっきまであんなに機嫌悪かったのにもうケロっとしている。

 

『あぁ、又旅か。(はね)を貸してもらいたかったんだけど、もしかしてまだ寝込んでる?』

『重明も孫悟空も死んだように眠っておるわ。まだ当分使い物にはならんじゃろうな』

『そうか。わかった、ありがとう』

 

 そして意識を精神世界から現実に戻す寸前。

 

『ちなみに妾も具合はよくないんじゃからな。戦闘(ドンパチ)するならしても良いが、妾の助太刀を期待せんようにな』

 

 という忠告を頂いた。

 

 たしかに最近は頼ってばかりだったからな。具合悪いときくらい大人しく休ませてやるべきだろう。もっとも、インフルエンザにかかっている主人であるオレの症状を肩代わりしてくれているらしいから、大人しく休ませてやるべきだろう。なんて上から目線の言葉を言う資格はないのだが。

 

「あ、大人数のチャクラの反応がありました!その、会談場所かと思われます!」

 

 感知タイプでもあった天間の言葉に従って、オレたちは目的地へと向けスピードをぐんと上げた。

 

 木ノ葉の闇と山椒魚と暁と、オレたちが交わる(とき)はもう目の前だった。

 

 

 




新名蝦夷守です。こんにちは。

まさか昨日の今日で最新話を投稿できるとは、、、(笑)


お気に入り登録や評価、本当にありがとうございます。励みになります。
まだしていない方も是非していただければと思います。お願いします。


次回もなるべく早めに投稿できるようにがんばりますのでよろしくお願いします。

あと、活動報告のアンケートにもご協力いただければ嬉しいです。全ては反映できないのでそのときはごめんなさい。

では、また次回!


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040.雨に蠢く闇の住人 其の漆

お気に入り登録、評価、活動報告のアンケート。ありがとうございます。

おかげさまで総合評価1,000pt突破です!本当にありがとうございます!


では、お待たせいたしました。つづきをどうぞ~


 天間が大人数のチャクラの反応を感知したときとほぼ同じ頃。

 雨隠れの領内ではもうすでに大粒の雨が降っていた。

 

 そして、雨隠れの里長である山椒魚の半蔵と『暁』という組織のリーダー弥彦との会談が行われるはずだったその場所には、半蔵の直属の部下である者たちと木ノ葉の闇ダンゾウ子飼いの暗部衆が『暁』をここで滅ぼそうと待ち伏せをしていたのだった。

 

「俺にとって『暁』という組織は邪魔以外の何物でもない。弥彦とやら、『暁』のリーダーであるお前にはここで死んでもらう」

 

 そう言って、青髪の少女を人質に取りその首にクナイを当てながら続ける。

 

「抵抗すればこの女の命はない・・・そこの赤髪のお前」

 

 青髪の少女の首に当てていたクナイを半蔵が投げ、赤髪の青年の足元に刺さる。

 

「それで弥彦を殺せ。そうすればこの女とお前のことは助けてやる」

 

 半蔵のその言葉に青髪の少女。小南は、自分のことは良いから2人とも逃げて。と叫ぶ。

 オレンジ色の髪を持つ青年『暁』のリーダー弥彦は、長門ッ!俺を()れッ!と叫ぶ。

 この光景に渦中の人となっている赤髪に輪廻眼を持つ青年、長門は思考がぐるぐるとまわり完全に動きが止まり、固まってしまっていた。

 

「早くしろッ!この女がどうなってもいいのかッ!?」

 

 半蔵から放たれる威圧感と恫喝。

 

 それによって反射的にだろうか。長門は足元に刺さっているクナイを手に持った。

 

 手に、してしまったのだ。

 

 自らが犠牲になれば親友2人の命は助かる。

 その言葉を半蔵の口から聞いた弥彦は考えるまでもなく走った。親友長門が持つクナイの先端を目掛けて。

 

 パシッッ!

 

「ッ!?」

「全く・・・お前らという奴は手を焼かせるのォ」

 

 長門の手を掴み、クナイを地面に落とさせる、自来也。

 

「お前か・・・大蛇丸」

「今回、貴方とはどうやら敵みたいですねェ。ダンゾウさん?」

 

 その身に蛇を纏い、草薙の剣を抜刀した状態でダンゾウの背後に立ち動きを牽制する、大蛇丸。

 

何奴(なにやつ)だ?」

「完全な不意打ちだったのに流石だな。山椒魚の半蔵」

 

 千鳥の風遁版。千鳥は雷遁のチャクラを限界まで性質変化を極めた術。この術は風遁のチャクラで限界まで性質変化を極めた術。

 千鳥を発動した際に放たれる千羽の鳥が鳴くような轟音は皆無。

 隠密性に優れながらも風遁の貫通力を最大限に発揮することができる術。

 

 その名も圧切(へしきり)

 

 オレの元いた世界では第六天魔王を自称したとされる織田信長が所有していた名刀の名を頂いた。

 その名刀が持つ逸話に負けない術となったのだが、今回は不発と終わった。

 

「まぁ、でも人質は返してもらったけどな」

 

 そう言ってオレは小南の手を素早く掴み、瞬身の術で弥彦、長門、自来也がいる場所にまで下がる。

 

 人質にされていた小南はオレが半蔵に奇襲をかけた際に、半蔵は反射的に単身で回避してしまったため拘束が解かれていたのだ。

 

 それを第一目標としての奇襲だったことに気がついた半蔵はシュノーケルの中でさぞ苦い表情を浮かべていることだろう。

 

「小南、大丈夫だったか?」

「う、うん。ごめん、捕まっちゃって」

 

 などと弥彦と小南が感動の再会的な会話を交わしている間も現場の緊張感は増す一方だった。

 

「ちなみに聞くけどこのまま引くつもりは?」

 

 写輪眼を発動させ、自分的には威圧感を出して尋ねてみるが、結果は案の定、尻尾を巻いて逃げかえるなんてことはなく。

 オレたちのいる地面が急に捲りあがる。巻き付こうを意志を持った蛇のような動きの正体は、地面に仕掛けられていた(トラップ)。無数の起爆札だった。

 無駄なことだと。そう思いつつも尋ねたオレがバカだった。

 

 オレは起爆札が身体に纏わりつく前に見切れたため跳躍して空中に逃れる。

 

 自来也は《忍法・針地蔵》で、自身と『暁』の3人を防護する。

 

 ボゴンッッッ!!!という半蔵が起爆札を爆発させたことが開戦の合図となった。

 

 大蛇丸がダンゾウに斬りかかると、ダンゾウ子飼いの暗部衆が己の身体を犠牲にしてまで主人であるダンゾウを護る。ダンゾウと数人の暗部以外はそれまでいた崖を一気に飛び降り、『暁』の殲滅に乗り出す。

 

 自来也は自身の周りの煙が立ち消える前に半蔵目掛けて飛び出した。それを真正面から受け止めた半蔵との一騎打ちの様相を呈している。

 

 カカシ、天間、コロウの3人は半蔵が連れてきた雨隠れの忍びと交戦に入り、他の『暁』VS雨隠れの忍びとダンゾウ子飼いの暗部との戦闘は序盤からすでに乱戦と化している。

 

 さてと、オレも参戦するとしますか。

 

 拳を握りしめ、「ハァァァッ!!」という気合と共に、八門遁甲の第四傷門までを開き、チャクラを一気に全身へと行き渡らせる。

 そこから全身に行き渡ったチャクラを雷遁のチャクラへと変化させる。

 そして通常の(まとい)から弐式へとギアを上げる。

 

 まだ、行けそうだな・・・。

 

 今までのオレならこの次は第六景門まで八門遁甲を開かなければできなかったのに。

 自分の成長をこんなときにもかかわらず嬉しく思う。

 

 雷遁のチャクラを更に質が高く、濃密なものへと変換させる。

 

《雷遁・纏 参式》

 

 バリバリバリ!!と、蒼白い稲妻が全身を迸り、これで戦闘準備は完了だ。

 

 とりあえず木ノ葉と。それに雨の平和のためにも、両里にとっての癌となっている半蔵とダンゾウはここで確実に仕留めなきゃなんねぇな・・・。

 

「弥彦さん、長門さん、小南さん3人は自来也さんのサポートに回ってください」

 

 その言葉に頷く3人。

 

 さぁ、やってやろうじゃねぇか。反撃開始だッ!

 

 




改めまして総合評価1,000pt突破。みなさま本当にありがとうございます。

お気に入り登録や評価をしてくださると本当にうれしいです。

これからもよろしくお願いします!!

以上、新名蝦夷守でしたー。では、次回まで・・・


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041.雨に蠢く闇の住人 其の捌

お気に入り登録、評価、感想。ありがとうございます。

活動報告の方でアンケートを行っておりますので、ご協力いただけたらありがたいです。


では、早速つづきをどうぞ~


 大蛇丸と戦闘を繰り広げているダンゾウとその配下数名。

 その数名の中には、索敵の命を受けたが何の手掛かりすらも掴めなかったジンとライも含まれていた。

 

「ジン、この(いくさ)。恐らくあの小僧(カルタ)が勝負の鍵を握るだろう。お前があの生意気な小僧を止めてこい。彼奴のことはお前が誰よりも知っているだろう」

 

 ダンゾウが、自身の横でサポートに回っていたジンに対して話しかける。

 それを遮るようにして《潜影多蛇手》と大蛇丸の腕から飛び出てくる蛇が攻撃する。 

 

「ダンゾウさん?勝負の最中によそ見とは随分と余裕ですねェ」

 

 それを危なげなく回避するダンゾウ。

 

「ワシは大丈夫だ。()けッ!」

「はっ、必ずや」

 

 そしてジンが立ち去り、ダンゾウの大蛇丸戦は4対1となる。だがこれでもまだダンゾウのほうが数的優位である。

 

「大蛇丸。お前にはもう少し教育が必要だったようだな・・・」

「その舐めた態度。一体いつまで続くんでしょうねェ」

 

 実質、2人の戦闘は激しさを増していく。

 

 

 

 自来也と山椒魚の半蔵との戦闘では、自来也側に『暁』の弥彦、長門、小南が加わり、それまでは拮抗していた戦況が一気に自来也側へと傾き始めた。

 

《水遁・洪水乱波》《多重紙手裏剣》《風遁・大烈風衝波》

 

 それぞれがかつての自来也との師弟時代より遥かにパワーアップしていることに師である自来也は誇りに思う。

 

「全く・・・お前らという奴は本当に、たくましくなったのォ」

 

 それを戦闘中ではありながらも嬉しく、表情も思わず少しだけだが緩みが出る。

 

「先生、顔がにやけてますよ」

「油断はするなと、先生は僕らに教えてくださっていましたが・・・」

「油断大敵だぜ!先生ッ」

 

 かつての自身の教えをきちんと覚えてくれていたことにも嬉しく思いつつ、しかし、弟子たちから言われた言葉通りに意識を戦闘へと完全に移す。

 

「わかっておるわ!弥彦、長門、小南!行くぞォ、陣形(フォーメーション)炉だ!!」

「「「はいッ!!」」」

 

 

 

 一方のカカシ、天間、コロウはというと、『暁』の構成員らと共に雨隠れ・ダンゾウ子飼いの暗部衆との死闘を繰り広げていた。

 

「そのカカシくんって、たしか千手(うち)と親戚にあたるんだっけ!?」

「はいッ!一応ッ!・・・母が千手一族の血を引いてましたッ!分家の分家のまたその分家くらいですけどッ!!」

「口を動かせるくらいならもっと身体を動かそうか?カカシくん。天間さんも集中してくださいっ」

 

 死闘を繰り広げているわりには余裕があるようだった。

 だが、そうは言うものの3人とも必死だ。

 

 カカシは父サクモの形見でもある白いチャクラ刀を片手に敵を恐れず突撃し、口寄せの忍犬も上手く使い敵の動きを抑えつつ、確実に敵を一人また一人と屠っていく。

 天間は降り続いている雨を上手く利用し、僅かなチャクラで雨を千本に変え、足止めとしての活用や致命傷にはならずとも多少の出血を()いて敵は攻めあぐねている。

 その隙を逃さずに《水遁・水牙弾》や《水遁・水爪弾》といった殺傷能力の高い水遁忍術で息の根を止めている。

 コロウはというと、この天候ではうちは一族お得意の火遁は威力を発揮できないため、写輪眼を併用した体術と時折混ぜる風遁系忍術で主に『暁』構成員の手薄なところをサポートしてまわっていた。云わば1人で遊撃隊を行っているようなものだ。

 彼自身が直接敵を倒すことは少ないとはいえ、いままで『暁』側の戦闘員が最小限の被害で収まっているのは彼の活躍のおかげだろう。

 

「そういえば!そのカカシくんの一族自体も千手(うち)とは遠縁にあたる一族なんだっけ!?」

「はいッ!一応ッ!」

 

 まだ言うかーっ!と、コロウが叫ぶが2人の耳にはどうやら届いていないようだった。

 もしかしたらコロウは苦労人気質なのかもしれない・・・。

 

 

 

 そしてオレはというと。

 

 八門遁甲は傷門まで開き、纏も参式にはなったが、やはりどうしても本調子とはいかないらしい。

 そりゃあ、まぁ。今はもう自覚症状はほぼ皆無だったとしてもインフルエンザであることには変わりはない。

 

 致し方ないことだろう。

 

 厄介な半蔵とダンゾウは、それぞれ自来也と大蛇丸がなんとかしてくれるだろう。

 なら、本調子ではないオレが出しゃばることは無い。大人しく、雨隠れの忍びとダンゾウ子飼いの暗部衆の相手をしようじゃないか。

 

 と、地面を蹴ろうとしたその時だった。

 

《土遁・黄泉沼》

 

 急に足元が沼と化し、地面を蹴ってしまったオレの右足はずっぽりと沼に嵌ってしまう。

 

 雷遁のチャクラを右足に一瞬で集中させ抜け出すことに成功するが、その僅かなタイムロスが命取りだった。

 

《風の刃》

 

 仮面をつけた暗部。ジンの指から放たれた不可視の刃を避けきることができずオレの身体に直撃する。

 

「ぐはッ!」

 

 そんな情けないうめき声を上げながら術の威力によって後方へ吹き飛ばされる。

 纏の参式を発動していたから致命傷にはなってはいないものの、その飛ぶ斬撃はオレの身体を傷つけた。

 

 木ノ葉の中忍・上忍が着る忍装は表面はガッツリ破れてもう使い物にならない。

 その下のアンダーシャツのような肌着も破れてしまっているし、血も滲んでいる。ただ、切り傷が深くないことだけが不幸中の幸いだ。

 

「っち。この僕の風遁でも死なねぇのかよ・・・」

 

 対人戦ではこれまでにない窮地に追いやられているのかもしれない・・・。

 

「ま、対カルタ(オマエ)戦闘に特化した僕に敗北の可能性は皆無だけどね」

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。


いいところで(←自分で言うな)切ってしまって申し訳ないです!
なるべく明日中に更新しますのでお許しください・・・笑


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次回もよろしくお願いします。ではまたー


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042.雨に蠢く闇の住人 其の玖

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今後ともよろしくお願いいたします。


では、お待たせいたしました。つづきをどうぞー


 そいつはどうかな。まずそのシケた仮面を剥いでお前の素顔を拝んでやる。

 そんな挑発染みたセリフを吐く間も無く。

 早々に影分身で5人になった仮面の男は、絶え間無く殺傷能力、威力の強い忍術をぶっ放してくる。

 仮面の男からの攻撃追撃の手は緩められない。むしろ、時間が経てば経つほど過激になってる気さえする。

 特筆すべきはその印を結ぶスピードと、そしてなによりも延々発動しても切れることがないそのチャクラ量の多さだろう。

 

 これは広範囲攻撃型で一度攻撃をやめさせないと。こちらは防戦一方になる。

 

《手裏剣多重影分身》

 

 数枚の手裏剣を多重影分身させ、弾幕を張るというには生温いほどの数に増幅させる。

 

 これだけ投げればそう簡単に回避はできまい。

 

 と。そう思ったのだが、容易く巨大な土遁の壁を構築され対処される。

 

 その壁ごと仮面の男を貫こうと《二槍流・千鳥鋭槍》で攻撃を仕掛ける。

 土遁の壁は容易に貫通、破壊するが、その奥で発動されていた竜巻のような結界(おそらく風遁系の防御系忍術か防護系結界)に阻まれ、影分身1体すら倒せない。

 

 オレが攻めきれてないのを見た仮面の男は影分身を地中に送り出し奇襲を謀る。

 

 だが、写輪眼で見ている以上は奇襲でもなんでもない。

 地中に千鳥鋭槍を突き刺し、難なく撃破する。

 これでもようやく影分身の1体を倒しただけだった。

 

 影分身1体など仮面の男のチャクラ量の総量からすると大した痛手ではないだろう。

 大海の中の一滴くらいでしかないかもしれない。

 

 いや、それは絶望だな。せめて家庭用浴槽の中の一滴くらいであってほしい。

 

 奇襲を失敗したと見るや否やすぐさま作戦を変更し、肉弾戦を仕掛けてきた。

 3体ということはおそらく全員影分身。本体はあの風遁系結界の中で護られているのだろう。

 

 こちとら肉体を強化してんだ。まったく、舐められたものだ。

 年齢が低年齢、身長が低身長が故、リーチは短いとはいえ、スピードとパワーは段違いだ。一瞬で片付けてやる。

 

 そう思っていた時期もオレにはありました。

 つまりは油断大敵。

 

 こっ酷くしてやられた。

 

 突っ込んできた影分身は3体とも(トラップ)影分身。

 たしかに今から思えばチャクラの色が実体や通常の影分身とは違ったような気もする。

 だが、今更そんなことに気がついても後の祭り。

 オレは1体目を殴った瞬間、全身を見えない刃で斬り刻まれ、1体目を殴った勢いで2体目を回し蹴りをかました瞬間、全身を焼かれ、最後の1体には抱きつかれ自爆攻撃をされた。

 

 つまり、オレが通常の影分身だと思っていた3体は風遁影分身と火遁影分身。それから最後のやつには密着された上で分身大爆破を決められたのだった。

 

 オレのライフはもうゼロよ。

 

 満身創痍という表現が一番よく合う。

 

 これだけオレが劣勢に立たされているというのに助けに来てくれないカカシ、天間、コロウはまさにゲスの極みだ。

 まさに、なんて日だ。

 

計画(シナリオ)通り、今のお前は本調子ではないようだな」

 

オレがここまでボロボロになってようやく本体と思わしき奴が姿を現した。

 

 そしてそいつは「計画(シナリオ)通り、本調子ではない」たしかにそう言った。どういうことだ?

 だが、仮面の男は《水遁秘術・千殺水翔》を片手の印で発動し、オレを千回殺しても余るだけの千本を大量に向けてくる。

 

計画(シナリオ)通り?計画(シナリオ)通りっていうのはどういうことだよ」

「そんな見え透いた時間稼ぎに付き合ってやるほど僕は甘くないぞ。そんなものお前が自分の頭で考えて導き出せばいい。あの世でな」

「そいつはどうかな。まずはそのシケた仮面を剥いでお前の素顔を拝んでやる。話はそっからだ」

 

 ようやく言えたこのセリフ。その直後に空中で待機していた数多の千本が飛来してくる。

 

《土遁・土龍防壁》

 

 土遁で出来た龍がとぐろを巻くようにして千本の局地的豪雨からオレの身を守る。

 

《土遁・土龍弾》

 

 その土遁の龍の口から土の塊が猛スピードで発射され、仮面の男を攻撃する。

 攻防一体の出来た術だ。なのだが、仮面の男は雷遁のチャクラを手に集め叩き落すことによってダメージは入っていない。

 

 なら、雷遁のチャクラを風遁の術で攻略するまでだッ!

 

 千本の豪雨が途切れた瞬間を狙って、いままでオレのことを守ってくれていた土龍の躰ごと《風遁・真空衝波》という一筋の巨大なソニックブームのような風遁で不意打ちを仕掛ける。

 

 それに加えて、穴の開いた土龍の躰からオレと影分身5体が飛び出す。

 

 やられたらやり返す・・・倍返しだ。

 

 仮面の男は真空衝波をギリギリのところで回避する。反射神経も並みの上忍の比ではない。

 

 だが、遅いッ!!

 

 本体のオレよりも先行して突撃していった影分身たちの攻撃には、真空衝波を回避し態勢の崩れた仮面の男にはもう回避する猶予はない。防御する選択肢一択しか残されていなかった。

 

 まさしくそれこそがオレの狙い。

 

 奴の真似をすると「計画(シナリオ)通り」といったところだ。

 

 影分身1人目が「はっ!」と気合を入れた拳で仮面の男を殴り触れた瞬間に、男の動きが土遁により拘束される。

 影分身2人目、3人目、4人目がそれぞれ「ごっ!」「ろっ!」「もっ!」と下から宙に連続で蹴り上げ仮面の男の身体に影分身が触れる度に、高圧電流で感電し、灼熱の炎で重度の火傷を負い、風刃鎌鼬で身体が斬り刻まれる。

 

 影分身たちが仮面の男を宙に蹴り上げ浮いているところ。最後に残った影分身が影舞葉で追尾し、仮面で守られている顔面目掛けてラストォォ!!

 

「カルタ連弾ッ!!」

 

 強烈なかかと落としが仮面を割り、素顔を直撃する。その瞬間、最後の影分身は大爆発を起こし爆風も相まって元仮面の男は物凄い勢いで地面へと叩き落とされた・・・。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

つづき、気になりますねー笑

安心してください。明日投稿しますよっ!


今日は母の日でした。私は実にも義理にお花を送りましたよー(正確には妻が送りました)
来月父の日はお酒を送る予定です。
みなさんはどうでしたかー?


最後までお付き合いいただきありがとうございました。

評価や感想、アンケートなどもいただけると嬉しいです。

では、また明日!


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043.雨に蠢く闇の住人 其の拾

まさかの有言実行とはいえ1時間後投稿でしたー笑

ではさっそくつづきです。どうぞ・・・


「はんっ・・・どんなもんよ!オレの(トラップ)影分身の超攻撃型活用法は!」

 

 本体のオレはというと、土遁影分身、雷遁影分身、火遁影分身、風遁影分身、最後の影分身体の大爆破の勇姿を踏ん反り返って見ていた。

 そして、地面に犬神家状態で突き刺さっている仮面が割れたから元仮面の男に向かってそう言い放ったのだった。

 

 いやぁ、すっきりした。いままで散々やられまくっていたから同じような手でやり返せたのは本当に清々した。

 

 ざまぁみろ、って感じだな、うん。

 

 まぁそれまでやられっぱなしで、上半身裸で傷だらけ、ズボンもビリビリでダメージパンツと化しているオレが言ったら笑う奴もいるだろうけど。

 

「さてと!他のところの戦況はと・・・」

 

 大蛇丸VS志村ダンゾウ+α。

 激しい忍術合戦を繰り広げているが、どちらも決定打に欠けるようだ。お互いに風遁系の術をメインウエポンに戦術を立てているようだ。だが、よく見るとダンゾウの子飼いの暗部が1人減っている。ということはどちらかというと大蛇丸の方が優位に戦闘を進めているのだろう。

 

 自来也+『暁』3人衆VS山椒魚の半蔵。

 こちらの戦況はほぼ一方的な展開のようだ。

 自来也と弟子たちのコンビネーションは時が流れていても抜群のようで、半蔵は防戦に徹している。ただ、こちらも決定打には欠けるようで半蔵の動きから見てもまだ余裕はありそうだ。

 先にどちらが拮抗状態に痺れを切らし動き始めるかでまた状況は変わるだろう。

 

 そして、カカシ・天間・コロウ+『暁』の構成員VS雨隠れの忍び+ダンゾウ子飼いの暗部衆。

 こちらは主に天間とコロウの活躍が目覚ましく、互角以上の戦い。むしろこちらが優位に立って戦闘を行っている。

 『暁』の構成員の戦闘能力はまちまちだ。忍びとしての能力が高い者もいれば、武力に頼らない平和をつくりたいという強い使命感を持った一般人というのもいる。まぁ、半蔵との会談に参加しているメンバーだけをみると一応忍びしか参列していなかったため不幸中の幸いとも言えるが、それでも実力は下は下忍程度から上は上忍級までと幅が広い。

 そういう事情もあり、今はカカシとコロウが遊撃として戦力が手薄なところを補強し戦っているみたいだ。

 

 じゃあ、オレが行くべきところは・・・。

 

「ダンゾウのところだな」

 

 あいつのことは是が非でもここで討ちたいし。と、地面を蹴ろうとしたその時だった。

 

 またか。

 

《泥遁・泥底無》

 

 足元を泥沼と化したところは《土遁・黄泉沼》と同じだったが、そこから先が違った。泥で形成された腕が泥沼から生えオレの足を捕縛して引きずり込もうとしてきたのだ。

 

「やばっ」

 

 自身を纏っている雷遁のチャクラを一瞬だけ爆発的に増幅させてその拘束からなんとか逃れたオレはぶっ飛ばしたはずの元仮面の男に意識を再び向ける。

 

「初めてだよ・・・ここまでこの僕をコケにしたバカ野郎は」

 

 頭蓋骨陥没とか全身火傷、出血多量、もしくは感電死。そういったような死因で、もう既にお亡くなりになられているとばかり思っていたそいつは、犬神家状態から這い上がり、地に足をつけていた。所謂、仁王立ちだ。

 

 男は激怒していた。憤怒していた。

 その様子が男の身体に纏っている溶岩のようなもので強調されているようでもあった。

 

 というか、溶岩のチャクラそのものだった。

 

「絶対に許さんぞォ!この虫けらがァ!じわじわと嬲り殺してやるッ!!」

 

 右手左手と別々の印を結び、最後に両手を合わせる。

 

《熔遁・灼河流岩の術》

 

 すると、灼熱の火山弾が大量にオレに向かって襲ってくる。

 

 ったく。どうなってやがるんだ・・・写輪眼でコピーできない術ばっか使いやがって。溶岩とか、孫悟空の能力(チカラ)を借りないと真正面からは受け止められないぞ。

 

《水遁・水陣柱》

 

 地面から突き上げるように発動させた水遁の柱で熔遁の術をいなす。

 

 今度はそれを見た男はまた左右別々の印を結び、再び合掌。

 

《溶遁・溶怪の術》

 

 強酸性の粘質液体を口から吹き攻撃してくるが、写輪眼で見切り、回避。

 

《嵐遁・励挫鎖苛素》

 

 両手から強力なレーザー光線が複数本飛ばされてくるが、これも回避。

 

《沸遁・巧霧隠れの術》

 

 広範囲の無差別型攻撃じゃないとオレに術が当たらないと判断したのか、強酸性の霧を発生させ、尚且つ決定打を与えるための機を狙うためか身をも隠した。

 敵も味方も関係ないこの攻撃。これではオレだけじゃなく、他の仲間にも被害が及ぶ。

 オレは考えるまでもなく《風遁・大突破》を上向きで放ち、強酸性の霧を吹き飛ばす。

 

 こういう自分の味方にまで被害が出る術を平気で使って来るやつは嫌いだ。

 

 仲間をなんだと思ってやがる。

 

 霧が晴れたことによって姿が露わになった男に対して心の中でそう吐き捨て、術を放つ。

 

《水遁・水断波》

 

 オレの口から超高水圧カッターが放たれ一直線に男に向かっていく。

 

 その凄まじいスピードと威力に避けきれず、耐えきれず直撃した男の心臓部分にはポッカリと穴が空き、男は力なくゆっくりと地面へ倒れていった・・・。

 

 

 

 

 

 いや、違う。この嫌な感じは・・・幻術ッ!

 

 くそ・・・。いつからだ!?してやられたッ!!

 

《解ッ!》

 

「へぇ。良くこの一瞬で僕が死んだのが幻術だって見抜けたね。そのいつのまにか開眼している写輪眼のおかげかな。とはいっても、その一瞬があったおかげで僕の勝利が揺るがなくなったんだけどね」

 

 後ろから声が聞こえ、すぐさま回避行動をとると共に振り返る。

 

 そこにあった顔は・・・。

 

「って、ジュウくんッ!?え、もしかしてまだ幻術にかかってるの!?解ッ!」

「そんなに喚くなよ。カルタ。これも僕の顔のひとつだよ」

 

 まぁ、そんなこと言ってももう君には関係ないけどね。と続ける。

 

《禁術・心統身の術》

 

 そう聞こえたと同時にオレの視界はブレ、目の前にあったジュウの顔はおろか何も見えなくなる。

 そしてオレの意識は真っ暗な暗闇へと堕ちていった・・・。

 

 

 




サプライズ投稿でした。驚いていただけたでしょうか。
こんにちは。新名蝦夷守です。

いやー衝撃のラストでしたねー笑

まさかこんなことになろうとは!初期構想からの逸脱ですねぇ

次回以降必見です!(←自分で言うか)

それと、血継限界がポンポンと繰り出される描写。
テンポよく、スピード感を出したく書いてみたんですが、上手く描写できているか不安が残りますね。
もしかしたら、安っぽく感じて不満が残る人がいたらごめんなさい。


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なるべくポジティブでお願いします!!笑


今回はこの辺で。では、また次回よろしくおねがいします・・・


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044.雨に蠢く闇の住人 其の拾壱

いつもありがとうございます。新名蝦夷守です。

累計文字数今回で100,000文字を超えました!塵も積もれば何とやらですね。各話2,000文字ちょっとの物語にお付き合いいただき誠にありがとうございます。
皆様の温かい評価や感想のおかげでここまで来ました。今後ともよろしくお願いします。

では、続きです。どうぞ


 オレはただただ真っ暗な空間を漂っていた。

 

 その空間は暗闇で何も見えず、何も感じられず。

 

 自分が息をしているのか、はたまたしていないのか。

 

 生きているのか、もう既に生きてはいないのか・・・。

 

 それすらもわからないようなそんな状況。

 

 通常だったならば、この状況に恐怖するべきはずなのだが、なぜだろう。

 

 今のオレには微塵も感じなかった。

 

 

 

 それからどれだけの時間が流れたのだろう。

 

 感覚としては静かな水面をただ漂うような感覚を暗闇の中で味わっていると、どこか遠くの方で淡い光が見えてくる。

 

 出口だろうか。

 

 あそこにつながるのは、天国か地獄か。はたまたそのどちらでもないのか。

 

 ぷかぷかと漂いながら、その光の方向へ進んでいく自分の身体を制御することもなく、ただただ身を任せる。

 

 

 

 淡い白い光の源が近づいてくる。正確にはオレが近づいて行ったのか。

 

 まぁ、どちらでもいいけど。

 

 

 

 光の中から声が聞こえてくる。

 

 懐かしい声のような気がする。

 

 ただ、ごちゃごちゃと騒がしい気もしなくもないが。

 

 でも、やっぱりこの声を聴いているとどこかホッとするというか。安心するというか。落ち着くというか。

 

 そんな感じがする。

 

 光源に近づくにつれてその声は次第に大きさが増してくる。

 

 近くで叫ばれているような。でも、靄がかかって聞き取れないような。

 

 

 

 そして、オレが光の中に入り込んだ。

 

 視界は真っ暗なトンネルから出た瞬間に太陽光を直で見てしまった時のようにまぶしい。

 

 そして光に包まれたオレは徐々に五感を取り戻していった・・・。

 

 

 

 

 

 目を開けるとそこには、ドアップの又旅。そしてそのすぐ隣に重明。それから少しだけ離れたところに孫悟空もいた。

 

「ん?どうしたんだお前ら。そんな必死そうな顔して・・・」

「どうしたんだ?じゃなかろう!!アホか!アホなのかっ!?おまえ様というものはっ!!」

 

 バチーンンン!!と強烈な猫パンチを喰らった。

 

 (いて)ぇ・・・。

 

「なにすんだよッ!このバカ猫ッ!!」

「バカとはなんじゃ!バカとは!おまえ様がいつまでたっても寝ぼけておるようじゃから目を覚ましてやっただけじゃろうて!」

「はぁ!?寝ぼけてなんかいないだろ!わけわかんねーよ」

 

 又旅による唐突な猫パンチから始まった口喧嘩。口論。

 

 オレと又旅の言い争いは過熱の一途を辿る。ヒートアップする。オーバーヒート目前だ。

 

「まぁ落ち着くのだ。主様に又旅」

 

 掴み合い、殴り合いのケンカにまで発展しそうだったオレらを止めたのは重明だった。

 

「「なぜ止めるッ!?」」

「いや、今はケンカしている場合ではないだろう?」

「お、おう。そうじゃったそうじゃった。いいかの?おまえ様。今おまえ様は妾にケンカを売ってる場合ではないんじゃぞ?」

 

 ハッハー!マジで仲良しだな!お前らっ!!と、ゲラゲラ笑う孫悟空は放置して重明は話を続ける。

 

「主様は今、死にかけているのだ。正確には魂が身体から離れてしまっている。それ故に我ら尾獣とのリンクも切れかけている」

「ほれ、妾らの身体を良く目を凝らして見てみぃ。僅かながら透けてきておるじゃろう?」

 

 そう言われて又旅や重明、孫悟空の身体を確認してみると・・・うん、確かに普段よりも薄くなっていた。

 

「でも、なんで?」

「なんで?じゃなかろうに。おまえ様は身体を乗っ取られたんじゃよ。あのジュウという小童にの」

「なんだカルタ!覚えてねぇのかよっ!!ウキキィーマジウケる!!」

 

 そんな女子高生みたいになんでもマジとか付けんじゃねーよ。今、お前の口癖にツッコミ入れてる場合じゃないらしいんだよ。

 

「いいかの。今、妾たちの本体があのクソ生意気な小童に抵抗して精神世界から攻撃を仕掛けておる。じゃが、おまえ様の身体に刻まれておる封印術がなかなかに強力でのう。今、出来ていることといえばほんの時間稼ぎくらいのことじゃ」

「え、ジュウが敵だったってことにも驚きを隠せないんだけど、それ以上にオレはどうしたらいいんだ?このままだと魂と身体が離れていても大丈夫なタイムリミットが切れちまうんだろ?」

「うむ。おまえ様には一刻も早く自分の身体に戻ってもらわねばならん」

「ただ今、主様にはご自身の身体がどこにあるかわからない様子。故に我らが主様の体内から強烈なチャクラを放出する。それを目印にご自身の身体に入ってもらい、今の仮初の精神世界ではなく、本当の精神世界で我らと合流した後にジュウとやらの魂を追い出しましょう」

 

 それがいいそれがいい。と言わんばかりに頷いている又旅と孫悟空。

 

 だが・・・。

 

「それで?合流した後はどういう方法でジュウのことを追い出すんだ?」

「・・・」

「もしかして、ノープランだったり?」

 

 無反応だった。

 

 無言は肯定とみなす。

 

「と、とにかくじゃな!おまえ様には早く自分の身体に戻ってもらわねば困るのじゃ。いいから早く行かんかい!!」

 

 逆ギレし、誤魔化した又旅に天高く投げ飛ばされたオレはまた暗闇の中へと入っていった。

 

 

 

 暗闇の中に入ってから、ほんの数十秒足らずで3匹のチャクラを感じる。

 

 あれか・・・。

 

 ひとつの方向から、温かいチャクラを感じる。奴らの言う通りであるならば、オレの身体の中から発しているチャクラだからそれを目印にこの暗闇の中を泳いで行けば、そのうち自分の身体に戻れるはずだ。

 

 

 

 そして先程と同じような淡い白く光る光源が見えてきた頃。

 

 後は一直線にそこを目指すだけだ。ラストスパートをかけ、オレは白い光の中に飛び込んでいった・・・。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

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お時間お手数をおかけしますが、ご協力いただけるととてもありがたいです。

また明日更新いたします。それではー


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045.雨に蠢く闇の住人 其の拾弐

今回もお越しいただきありがとうございます。

初の3000文字超えです。

では、早速つづきをどうぞー




 光と闇の境界を抜けると、そこはよく知る場所となった。

 

 又旅と重明の趣味が最大限に反映されている自然豊かな風景が広がるオレの精神世界だった。

 

「おぉ!やっと来たな!!」

悟空(カカロット)・・・お前なんか性格丸くなったな」

「いや、カカロット言うなしー」

 

 うぇ・・・。なんか孫悟空が気持ち悪い感じにキャラ変してる。

 これも又旅、重明同様にまたオレの精神世界に閉じ込められていることが原因・・・なのか?

 

「おまえ様!」「(あるじ)様!」

 

 噂を(心の中だが)していると当の本人たちが登場。

 

「無事つけたようじゃな」

「まぁな。それで?今、オレの身体はどういう状況なんだ?」

 

 そうオレが尋ねると、待ってましたと言わんばかりに又旅が饒舌に話し始める。

 

「今はじゃな、妾らが無理矢理に尾獣のチャクラを供給することによって身体を支配しているジュウを困らせておるところじゃ。ジュウは使いこなせない尾獣チャクラを過剰に供給されていることによって身体の制御が覚束ないようで現実世界では今、尾獣化しかけておるようじゃな」

「ただ主様の身体につけられている封印術式の効力が効いているが故、我らのジュウに対する抵抗も直に弱まってしまうだろう」

 

 なるほどな。爺さんやオレがやった《羽衣式封印術・尾獣封印》の効果が効き過ぎてオレの身体を乗っ取っているジュウに対してこれ以上の抵抗、反抗が出来ないというわけか。

 ということは・・・。

 

「オレが自分の精神世界(ここ)で封印術式を緩めればいいんじゃないの?オレの身体を支配しているジュウをお前たちのうちの誰かが尾獣化完全体になって逆にジュウのことを支配して、その後に身体の支配(コントロール)権をオレに渡してくれれば問題解決じゃない?」

 

 完璧じゃん!と、名案を思いつき自慢げに披露したのだが、みんなの反応がない。

 ・・・あれ?オレ、トンチンカンなこと言った?だとしたら、すごく恥ずかしい。とても恥ずかしい。穴があったら入りたい。墓穴を掘ってでも入りたい。前言撤回したい。します。させてください、お願いします。

 

「「「それだっ!!!」」」

「いや、いいんかいッ!」

 

 思わずつっこんでしまった。

 オレの後悔を返せ。

 

「完璧ですな!それでこそ我が主様だ」

「その名策士ぶり、流石じゃのう!おまえ様よ。妾はおまえ様に惚れ直したぞ!」

「マジウキキィ!!」

 

 最後のマジウキキィってなんだよ。意味わかんねーよ。

 

「じゃあ、又旅の封印を緩めるからな。一気に尾獣化完全体になってオレの身体の所有権奪い返してくれよ?」

「モチのロンじゃ!」

「よし。それじゃあ、行くぞ・・・」

 

《二尾封印・解》

 

 

 

 羽衣カルタを支配する時機は当初からの予定とは違い、かなり早い段階での決行となってしまったが、まあ良い。尾獣を何体も封印しても問題がない特異な身体に異常なまでの忍術センスを持つ若い身体を我が物としたことには変わりがないのだから。

 

 そんなことを考えていた木ノ葉の闇志村ダンゾウとその部下ジン改めて筧ジュウ。

 

 ダンゾウは大蛇丸と戦闘をしながらも羽衣カルタと筧ジュウの戦闘を盗み見ていた。

 その結果が自分の右腕とも呼べる筧ジュウが羽衣カルタの身体を支配したことによる勝利。

 

 羽衣カルタという名の兵器を我が物にしたダンゾウは勝利を確信した。

 

 一方の筧ジュウはというと目論見通りチームメイトであったカルタの身体を木ノ葉の名門・山中一族の中でも裏宗家と呼ばれる血筋から100年に1人の割合でしか使用者を輩出されることのない《禁術・心統身の術》で奪った。

 あとは2、3年の月日をかけてじっくりとカルタの身体と自分の精神体を馴染ませることができれば、カルタの能力を保有したまま、また新たな肉体へと憑依とも言える《心統身の術》を使えるようになるのだ。

 

 だから、カルタの身体を支配する。そこまでは良かったのだ。

 

 だが、事は思い通りには進まない。

 

 カルタに封印されている尾獣たちがいきなりやってきたよそ者支配者に対してこれ以上ないほどに抵抗を見せる。

 

 尾獣を有する身体を支配したのは初めてのこと。そしてその尾獣から尾獣のチャクラを供給されることも初めてのことであるし、チャクラの供給量も過剰が過ぎる。

 

 ジュウは尾獣チャクラをコントロールし切れずに暴走を許してしまう。

 身体を覆うようにして尾獣チャクラが溢れ出し、赤黒い衣のようなものが形成され、禍々しいチャクラの尾も数本生える。

 ジュウの意識はそのあたりから朦朧とし出す。

 

 そして、カルタの精神世界で二尾又旅の封印術式を緩められたことによって身体は尾獣二尾へと完全体化。

 

 このままでは自分自身が逆に二尾又旅に征服されてしまうと感じたジュウは反射的に術を解いてしまう。

 

 こうしてカルタの身体を乗っ取った無法者ジュウは、カルタの飼い猫二尾又旅によってカルタの身体から追い出され取り返されてしまうのであった。

 

 

 

『おまえ様!』

『サンキュー!又旅』

 

 無事、作戦通り又旅がオレの身体を取り返してくれたのと同時にオレに身体を返してくれる。

 そしてオレは尾獣化していたオレの身体を通常に戻す。

 

 この一連の大事件(オレにとっては大事件だったのだ)を外から見ると、オレと仮面の男が一騎打ちをし、突然小さくなった元仮面の男に何かされた途端にオレが暴れ出し尾獣化。そしてすぐにそれを解除するという意味不明な現象の数々だったであろうことは想像に難くない。

 

 それはさておき。

 

「おい、ジュウ。てめぇよくも裏切りやがったな・・・」

 

 大切なのはチームワーク。そう教えてくれたオビトに謝れこの野郎。

 今まで仲良くやってたのは全部嘘で演技で(まやかし)だったのかよ。

 

 言いたいことはたくさんある。だが、口に出して言葉として発することはできなかった。

 

 感情がぐるんぐるんと乱れるのだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。裏切るも何も最初から僕はダンゾウ様の駒だ。カルタ、お前は初めっからこの僕が次に身体を乗っ取る目標(ターゲット)でしかない。自惚れるんじゃねーよ」

 

 どうやら尾獣たちにこっ酷く引っ掻き回されたジュウは相当体力を消費してしまっているらしい。

 

 しかし、初めからだと?忍者学校(アカデミー)のとき初めて話したあのときから。忍者学校(アカデミー)を卒業して同じ班員になって、お互いに術を教え合ったりしたことも、切磋琢磨して術を鍛え合ったりしたことも、オレが初めての人殺しで落ち込んでいたときに励まそうとしてくれたことも、バカなことをしてオビトやラクサに怒られたことも、中忍昇格試験にみんなで合格してそのあとオレが上忍になってジュウが暗部養成部門に行くことが決まってラクサと3人でお祝いをしたことも。

 

 全部、嘘で演技で(まやかし)だったってそういうことかよ。

 

「忍の世界で、ルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされるが仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ。と、オレはオビトから教わった」

「ふん。僕はお前のことを獲物(ターゲット)として以外見たことはない。お前に術を教えてやったり、アドバイスをしてやったのも、お前が成長し丸々と肥えたところを丸呑みしてやろうとそう思っただけのことだ」

 

 ジュウはそう吐き捨てるようにして言葉を発する。

 

「それでもオレはジュウのことを仲間だと思っていた。できることならオレの仲間のまま死んでくれ」

 

《麒麟》

 

 一筋の大きな(いかづち)が落ちてくる。

 

 オレに向かって。

 

 オレはそれを回避もせずに右腕を(いかづち)に差し出す。

 

「さよならだ。ジュウくん」

 

 明らかな過剰攻撃(オーバーキル)

 (いかづち)と化した、いや、雷神が宿ったといっても過言ではないオレの右腕をジュウの心臓目掛けて突き立てる。

 

《雷切》

 

 そして今度こそ、心臓部分にポッカリと穴が空いた筧ジュウは、オレがその身体を貫通させている右腕を抜くと、力なくゆっくりと地面へ倒れていった・・・。

 

 

 




毎度ありがとうございます。新名蝦夷守です。

あと数話で『雨に蠢く闇の住人』シリーズも終わります。
感想や評価をいただけると次回以降の執筆の励みになります。
ポジティブなものを心からお待ちしております。笑

また次回は明日更新できる予定です。ではっ!


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046.雨に蠢く闇の住人 其の拾参

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今回は、チートキャラといえば!でお馴染みのアレが発動します。


では、どうぞー


 瞳から流れ落ちるは雨か、涙か。

 

 はたまた、その両方か。

 

『バカ者。そのどちらでもないわ』

 

 血じゃ。と、精神世界から語りかけてくる又旅。

 

 あぁ、そうか。派手に返り血浴びたもんな。

 

 それが見開いていた目に入り込んでも不思議じゃないか。

 

 そういえば初めての殺しをしたときも《千鳥》で、返り血を全身に浴びたんだっけか。そんときはオビトもジュウも心配してくれてたんだよな。そしてそのあと、又旅と重明も励ましてくれたんだっけ。

 

 なんか、遠い昔のような感覚だな。

 

『アホ!返り血が目に入った?そんなんじゃないわ!良く自分の眼に意識を向けよ!開眼したんじゃよ!開眼してしまったんじゃよ!』

 

 万華鏡写輪眼が!という又旅の声はどこか他人事のように聞こえていた。

 

 

 

 ジンが殺さ(やら)れた。

 それを横目で確認したダンゾウは三十六計逃げるに如かずと言わんばかりに大きめの風遁の術を大蛇丸に対して牽制として放ち、その術で大蛇丸から目隠しをしている内に遁走に入る。

 

 ダンゾウの遁走をサポートしていた2人の暗部が大蛇丸の手によって殺められたときにはダンゾウの姿はそこから消え去っていた。

 

 

 

「万華鏡写輪眼?開眼?オレが?そんな・・・バカな」

『信じたくないのであれば信じなくとも結構じゃがの。おまえ様がいくら否定しようと事実は事実。変わりはせんぞ。ほれ、試しに右眼のピントをあのデカイ山椒魚にでも合わせてみよ。右眼に宿った瞳力がどんな能力かくらいわかるじゃろうて』

 

 うむ・・・。たしかに一理あるな。もし本当に万華鏡写輪眼をオレが開眼しているんだとしたら何か起こるだろう。そしたら、援護射撃にもなるし一石二鳥かもしれない。

 

 よし。駄目元でやってみるか。

 

 そして両眼でピントが合わないように(どちらの眼でピントが合い術が発動したか分からなくなるから)左眼を閉じ、右眼を見開く。

 

 そして右眼に宿った能力を発動させる意志をもって、半蔵の相棒である大きな山椒魚にピントを合わせるっ!

 

 

 

 俺が口寄せし、上に乗っていた猛毒持ちの大山椒魚であるイブセが突然足元に現れた沼に囚われた。その沼はただの沼ではなく底の無い黄泉沼のようでもあり、そして何より沼から生える腕によってズブズブと引き摺り込まれている。

 

 潮時か。

 

 その様子を見て俺はそう感じた。

 

 これ以上の時間稼ぎは反撃の機を待つだけの価値はない。逆に追い込まれ殺されるだけだろう。

 

 俺はこんなところで死ぬ器ではない。木ノ葉のダンゾウも逃げたようだし、俺もそろそろお暇するとしよう。

 

《瞬身の》

 

 術。と術を発動する寸前に自分の意思とは関係なく敵に急接近してしまう。

 

 どうなっている?

 

 まるで敵に吸い寄せられるようにして、あたかも敵が惑星の中心であるかのようにして、半蔵は今まで感じたことのない力で引き寄せられる。

 

 そしてそのまま。

 

 赤髪の男、長門が持つただのクナイの先端に吸い込まれるようにして自分の心臓が突き刺さる。

 

 そのとき見た男の両眼は波紋のような紋様を持ち、薄い紫色をしていた。

 

 もしかして俺は伝説上の存在。輪廻眼と対峙していたのか・・・。

 

 そのような思いを最期に半蔵の意識は黄泉へと堕ちていった。

 

 

 

 オレが半蔵の口寄せ動物である大山椒魚を捕縛したことにより、半蔵自身に隙が生まれ最終的には長門の手にかかり戦死した。

 

 え、オレの右眼に宿った能力って泥遁なの?めちゃくちゃダサくないか?

 万華鏡写輪眼を本当に開眼していたという実感よりも、正直落胆の方が大きいかもしれない。

 

 いや、もちろん泥遁だって使い方によっては充分強いんだけどさ。

 

 でも、原作で万華鏡写輪眼といったら天照や月読、別天神や神威といったすごく強くて尚且つかっこいい術の宝庫だろ?

 

 かなりショックだわ。絶望したと言っても過言ではないね。

 セーブポイントからやり直したいレベルだ。

 

 この状況を精神世界から見ていた又旅たちも何も言わないところを見ると、こんなはずでは・・・今はそっとしておこう。とかなんとか思っているんだろう。

 まったく、余計なことを。

 

 あいつらには今回もまた心配と迷惑かけちまったし、ここは泥遁でもいいからかっ飛ばしてお礼の大活躍でも見せつけてやりますかね。

 

 ダンゾウは逃走し、半蔵は殺害された。

 2つの敵対集団の頭がそんな状況だから、敵はもう戦意は決して高くない。ただ後は自分が殺されたくないから戦っているだけの状況だ。

 

 これなら、泥遁で一斉に拘束して一気に戦意喪失させて最後に念のため写輪眼の瞳術で眠らせれば万事解決するだろう。

 

 そう考えたオレは雨隠れの忍びやダンゾウ子飼いの暗部衆の中でも動きのいい奴を数人ピックアップして、右眼の万華鏡写輪眼の瞳術を発動させる。

 

 ピントが合い、瞳術を発動させたその瞬間。

 泥遁の黄泉沼が敵の足元に出現し、その中から腕が出てきて敵を締め上げる。なんてことはなく、複数本のレーザービームが敵を貫いていた。

 

 えっ・・・なんで?

 

 隣で戦っていた仲間の雨隠れの忍びやダンゾウ子飼いの暗部は突然仲間が倒れたことに動揺を隠せない。

 それどころか敵として戦っていた『暁』の構成員やカカシ、天間、コロウといったメンツでさえも突然のことに驚きを隠せていなかった。

 そして、多くの目が唐突に命を奪ったレーザービームの発信源であるオレに向けられる。

 

 えっ・・・オレ?

 

 と、言わんばかりに手と首を横に振るが、疑惑の眼差しは余計に強くなる。

 

 参ったなぁ。

 

 結局、オレの万華鏡写輪眼(右眼)に宿った能力は分からず仕舞いか。

 でもまぁ、とりあえずここを締めるのが先決だろう。

 

「双方!矛を収めよッ!!」

 

 この場全体へと響き渡る声量でそう叫び、万華鏡写輪眼第3の能力である《須佐能乎》を発動させる。

 初めての経験ということもあり、制御は完璧とは言えず、巨大な“がしゃどくろ”といった具合のものしか出せなかったがそれだけでも大きな効果を得られた。

 

敵は皆、ポーチを外し投げ捨て、両手を挙げて無抵抗のポーズをとる。

 

「無駄な抵抗をしなければ命までは取らない!逆に『暁』の構成員と言えども無抵抗の雨忍、ダンゾウの部下に狼藉を働いた者はタダじゃおかないからな!!」

 

 こうして。

 

 この度の戦闘は終結を迎えたのだった・・・。

 

 

 




新名蝦夷守です。こんにちは。

次回、『雨に蠢く闇の住人』編。完結です。

明日も投稿しますよー


みなさん、次回もどうぞよろしくおねがいします。ではでは



突然Q&A

おい、万華鏡写輪眼なんで開眼してんだ?
→許せサスケ。ご都合主義だ。


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047.雨に蠢く闇の住人 其の拾肆

今回は説明回です。

そして、ダンゾウ暗躍篇ラストです。


では、どうぞ。


 今回の後日談的話。

 

 雨隠れの里長であった山椒魚の半蔵と雨隠れの里内部で発足した組織『暁』の仲違いは、木ノ葉の闇志村ダンゾウが謀った離間の計によるものだということが判明した。

 

 その内容は双方の忍びを暗殺し、半蔵陣営の忍びの殺害は『暁』が、逆に『暁』陣営の忍びの殺害は半蔵陣営がやったように見せかけお互いを疑心暗鬼に陥らせたという後から分かれば特に捻りのないどうってこともない策であった。

 

 そして、戦場から逃げた志村ダンゾウは木ノ葉隠れの抜け忍扱いとし彼を殺害する部隊は木ノ葉と直接被害を被った雨隠れの里との合同チームを結成することとなった。

 

 半蔵が戦死し里長が不在となった雨隠れの里では新たに『暁』のリーダーである弥彦が務める運びとなったが、今後旧半蔵体制を支持する里内勢力との内戦状態に陥ることは避けようがない様子だ。

 

 木ノ葉は弥彦新里長が率いる新雨隠れの里と正式な同盟関係を結び、内戦の早期終結を手助けすることを決定した。

 

 

 

 

 

 次はオレの万華鏡写輪眼開眼に関する考察だ。

 

 原作で万華鏡写輪眼の開眼条件として言われていたこと。それは、最も親しい友を自分の手で殺すこと。もしくは、最も親しい人の死を経験すること。この2つに共通する言葉は「最も」。

 

 確かにオレとジュウは、親友と言っていいほどの間柄だったと自分のことながらそう思っていた。

 だが、「最も」となると少し疑問が残る。なぜなら、ラクサとだって同じくらい仲は良いはずだし、本編には出ていないだけで他にもとても仲の良い友達くらいオレにだっている。

 

 そして、それを又旅たちと話し合った結果、写輪眼を開眼したとき。それから今回万華鏡写輪眼を開眼したときの2つの状況から鑑みるに、どうやらオレは脳から分泌される視神経に影響を与えるチャクラの放出が、本家本元、元祖であるうちは一族よりもストレスの域が低い時点から放出され始めるのではないかという結論に達した。

 

 写輪眼を開眼したときの状況は、当時敵だったマブイ、サムイ、ダルイを八尾牛鬼の放った尾獣玉から咄嗟に守るときに開眼した。それも勾玉模様がいきなり3つの状態で。

 

 勾玉模様が初開眼時から3つであったのは、確か原作では六道仙人である大筒木ハゴロモだけであったはずだ。うちは一族で忍び最強格のうちはマダラや一族でも天才と謳われていたうちはイタチでさえも初開眼時は勾玉模様2つだった。

 

 うちは一族がそうであるのに対して、なぜオレが最初から写輪眼としては完成形の状態で開眼したのか。

 それがなぜなのかはわからないが、羽衣一族の血が特殊なのか。もしくはオレ自体が異常なのか。そのどちらかか、はたまたその両方だろうということで納得した。

 

 でもいままでの歴史上、羽衣一族で写輪眼を開眼した者はいないため、恐らくオレ限定の症状だろうとも思っている。

 

 そして万華鏡写輪眼、もうひとつの謎がオレの右眼に宿った瞳力だ。

 

 あの戦場で発動した能力は、泥遁の泥底無(でいていむ)と嵐遁の励挫鎖苛素(レイザーサーカス)

 その2つだけを見るとただの性質変化を2つ掛け合わせただけの血継限界の模倣(コピー)ができるということだが、少し立ち止まって良く考えて欲しい。

 

 オレが泥遁や嵐遁の術を見て知ったのは、模倣(コピー)して使ったそのときではない。その前のジュウとの戦闘でのことだ。

 これだけでも単純な模倣(コピー)能力ということではないことが容易に想像想定できる。

 

 そのことから仮定した結果、オレの右眼に宿った万華鏡写輪眼の瞳力は、オレの知っている術の再構成。それは術を発動する印を知らなくても分からなくとも、術の起こす現象さえ把握していれば再現が出来る。というもの。

 

 その範囲は最低でも五遁の性質変化を2つ組み合わせた血継限界までは確実に模倣(コピー)、再現できる。

 

 上限はこれから実証実験をぶっつけ本番でやって行くしかないだろう。

 練習で視力の低下を無駄に加速させたくはないからな。

 

 ちなみに左眼の万華鏡写輪眼に宿った瞳力に関してはまだ未知の領域だ。

 当分使う予定はないし、それ故、能力を試してすらいないから生憎、見当もつかない。

 

 万華鏡写輪眼第3の能力。須佐能乎(スサノオ)に関してだが、熟練度が低いと身体にかかる負荷負担が重くなるという副作用があると原作ではされていたが、正直初めて使ったあのときには何も感じなかった。

 これも羽衣パワーか、カルタパワーということで納得することにした。別にマイナス効果が無いことは良いことだしね。

 

 そして最後に万華鏡写輪眼使用時の有名な副作用。視力の低下とその先にある失明のリスクに関してだ。

 

 原作のうちはサスケの視力低下は万華鏡写輪眼の乱用があったとはいえ異常なほど早かった。

 そのことからサスケの元の視力は分からないが、一般的に目が良いとされる「2」だったと仮定したら、1度の使用で0.1から0.3程度の間で視力が低下すると考えられる。

 

 この仮定をオレに当てはめて考えると、先月行った健康診断で測ったオレの視力は3.5。これは右眼と左眼どちらもこの数値だった。この数値から考えると万華鏡写輪眼の瞳力を使用できる回数は最低11,2回から35回と言ったところだろう。

 

 そう思い、先の戦闘で泥遁と嵐遁の発動で右眼2回。須佐能乎(スサノオ)の発動で両眼1回ずつ使用してしまったので木ノ葉の里に戻ってからすぐに病院へ行き、視力検査を行った。

 

 行ったのだが、どういうことだろう。

 

 右眼の視力が3.47。左眼の視力が3.49。

 

 万華鏡写輪眼の瞳力1度の使用でオレは0.01ジャストしか低下していなかった。

 

 ・・・。

 

 原作のうちはサスケを題材にした仮定。意味ないじゃん。あの考察の時間、要らなくない?無駄じゃない?

 

 と、残念な気持ちにならなかったわけではないが、視力の低下がうちは一族よりもずっと遅いというのはメリットでしかない。ありがたくその恩恵を受けることにしよう。

 

 これが羽衣パワーなのか。カルタパワーなのか。

 

 以上、オレの万華鏡写輪眼に関する考察は終わり。

 

 

 

 

 

 話は戻って、ダンゾウ追撃捜査隊の件。

 

 ダンゾウを抜け忍として扱うことから、霧隠れを真似て追い忍と称するが、その追い忍部隊の編成は木ノ葉と雨の合同チームは3班。計6名。

 二人一組(ツーマンセル)での行動を原則とし、その内訳は木ノ葉と雨から1人ずつダッグを組むというものだった。

 

 それでオレは雨隠れの小南と組むことになり、その道中は色々なことが起こったり起こらなかったり、むしろ小南が怒ったり怒らなかったり、かもしれないが。そんなことがあったりなかったりで結局、最終的にはダンゾウをオレらのペアで撃破するのだが、それはまた別の機会にでも語ることにしよう。

 

 語り手は語り手らしく。語ることにしよう。

 

 自分の経験談という物を語ることにしよう。

 

 だから、というわけではないが、今回はこの辺で筆を置こうと思う・・・。

 

 

 




ダンゾウ暗躍篇これにて終結です!ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

新名蝦夷守です。


ポジティブな評価、感想、活動報告でのアンケート。心よりお待ちしております。


次回は間章を挟みたいと思います。オビトとカカシに焦点が当たります。
お楽しみに!

それと、遅くならないうちに上忍(大戦中期)の情報をまとめて設定集に追加したいと思いますので、よければ見てくださいね。


では、また!


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間章 NARUTO-オビト外伝- 戦場の少年時代《ボーイズライフ》
048.うちはオビト


主人公カルタ。ちょっとの間、おやすみです。

本編とは深く関係ありますが、サイドストーリーとしてお届けします。

まぁ、章の名前からしてどんな内容か分かりますよねー笑


では、早速・・・どうぞー


 押忍!オラ、オビト!うちはオビトだ!

 

 ・・・って、こんな感じの入りでよかったのか?

 カルタに教えてもらったんだけど、すげぇ不安なんだが。

 これ、スベッてない?コケてない?大丈夫か?

 

 ・・・こほん。

 

 気を取り直して!

 

 テイク2。

 

 よっ!俺の名前はうちはオビト。

 木ノ葉隠れの里の名門忍び一族であるうちは一族に生まれた、現在中忍の13歳だ。

 

 新人下忍だった頃の羽衣カルタ、筧ジュウ、桜田ラクサの臨時担当中忍として任務を受けていたこともある。

 

 というわけで、今回は俺、オビトが物語の語り手となろう。

 

 さて、どこから話したものか。

 とりあえず、まずは自分のことから話そうか。

 

 夢はでっかく火影だッ!と、前までは思っていたんだが、あいつらと出会ってから将来の夢は変わった。

 

 だから、

 

 今の将来の夢は忍者学校(アカデミー)の先生になることだ!

 

 忍者のたまご達・・・。略して"忍たま"だね!と、カルタは言っていたがそんな通称や略称はいままで俺は聞いたことがない。まぁ、カルタが言っていたそれはひとまず置いておいて。その子たちを立派な木ノ葉の忍びに成長できるよう精一杯、粉骨砕身サポートするんだ!

 

 と、このことを以前、何かの機会があったときに俺の担当上忍師であり、他里からは「木ノ葉の黄色い閃光」と恐れられている波風ミナト先生に言ったら良い夢を持ったね。とイケメンスマイルで言われた。

 

 俺の心の彼女。マイスウィートエンジェルである同級生で同じミナト班のチームメイトでもある、のはらリンに言ったときには、それはもう見るもの全てを魅了する(←これはオビトの主観です)魅惑のめちゃくちゃかわいい空前絶後超絶怒涛で史上最高未曾有といっても決して過言ではない程のプリティチャーミィな天元突破の笑顔で「そうなんだ!頑張って、オビト」と言われた。これにはもう参ったぜ。流石は俺の天使。俺が天にも昇る心地だった。

 

 天使ちゃん、マジ天使!

 

 え?気持ち悪い?そんなことよりカカシの反応だって?

 

 ・・・そんなあいつの反応聞いたって大した反応は返って来ねーよ。

 

 んー、たしか。

 

「あ、そうなんだ・・・。ま、がんばれ。遅刻常習犯に忍者学校(アカデミー)の先生は向かないと思うけど。というか、面接段階で落とされるような気もするけど」

 

 なんか、こんな感じだったような気がする。

 

 あー。思い出しただけでも腹が立つようなスカしっぷりだったぜー。あんときのカカシは!

 だから思い出したくなかったんだよ。こんちくしょー。

 

 マイスウィートプリティエンジェルのリンのところまでで回想はやめときゃよかった。後悔後先に立たずとはこういうときに使うんだな。

 

 え?今度はカルタの反応はどうだったのかって?

 

 それは、あいつは良い奴だからな。カルタは「それなら山田先生や土井先生みたいな尊敬できる先生になれるよう応援しています!」って、そんなふうに言われたよ。

 それにしても忍者学校(アカデミー)の先生に山田先生や土井先生って名前の人いたっけか。

 きっと、カルタが尊敬するくらいの人なんだからすごく教え方が上手だったり、人として鑑のような存在なんだろうな。よし、俺もそんな先生になってやる!!

 

 あ、そうだ。

 

 ちなみにラクサも応援してくれるって言ってくれた。そして私も先生って呼ばれる忍者の女医さんになれるようオビト先生も私のこと応援してくださいとも。

 

 あぁーなんで女の子の笑顔ってあんなに胸にキュンと来るのかなぁ。

 

 おっと、いけないいけない。俺にはリンという心に決めたエンジェルがいるんだった!余所見、寄り道はしちゃあいけねぇぜ、うちはオビト!

 

 そして、最後に残念なお知らせだ。

 

 ジュウのことだ。

 

 俺も詳しくは聞いていないが暗部としての任務中に戦死、殉職したらしい。

 

 あいつはいつもカルタと切磋琢磨しあっていて、そりゃ実力もあるし才能もあるし、生意気なところも多少なりともあったんだが、俺にとっては可愛い教え子だったんだ。

 

 ・・・だったのに。

 

 ・・・畜生。

 

 これだから戦争は嫌いだ。まだ未来のある、若い才能に溢れる奴から死んで逝っちまう。

 

 こんな戦争は俺たちの代までで終わりにしたい。

 

 早く平和を取り戻さないとな。

 

 いままで木ノ葉の未来を守って死んでいった仲間たちのためにも。

 そしてもちろん、ジュウのためにも、な。

 

 

 

 平和を取り戻すための戦い。

 第3次忍界大戦は佳境を迎えている。

 

 俺たちミナト班は、この大戦をこれ以上長引かせないためにも重要な、ある任務を受けることになった。

 

 西部戦線。

 

 木ノ葉が今、唯一戦端を開いている戦線。

 

 この戦線では、木ノ葉と砂隠れ、岩隠れの里、三大国が三つ巴の戦いを行っている第3次忍界大戦の中でも激戦区中の激戦区。

 

 後の世で、『神無毘橋の戦い』と呼ばれた戦場。

 

 今回はそこを舞台にした物語。

 

 

 

 俺が語る物語は、カルタの語るそれとは少し違うかもしれない。

 

 でもそれはそれで、それとして聞いてほしい。

 

 

 

 

 

 それじゃあ!

 

 『NARUTO-オビト外伝- 戦場の少年時代(ボーイズライフ)

 

 はじまりはじまりーっ。

 

 

 

 はい!そこ、ぼけーっとしていないで!ここは拍手するところだろ!

 

 

 




新名蝦夷守です。

お気に入り登録、評価、感想。ありがとうございます。
活動報告でのアンケートも引き続きお待ちしております。
よろしくおねがいします。


さて、本編から少し逸れました。

原作とは違う経験をしたオビトとカカシは今回どのような結果をもたらすのでしょうか・・・。気になりますねー笑

次回も明日更新いたします。では!


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049.任務開始!

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みなさまありがとうございます。
今後ともお付き合いいただきますようよろしくお願い致します。

では、続きをどうぞ。


「ごめんごめん!今日はギリギリセーフだろ?」

 

 そう言いながらヘッドスライディングを華麗に決めた俺は集合時間との勝負に勝った。

 

「ま、3秒前だったけど許すとするか」

 

 木ノ葉の外れにあると山林の開けた場所。

 

 今回、ミナト班はそこに集合していた。

 

 うげぇ。滅茶苦茶ギリギリだったな、俺。

 

 もし遅れてたら殺されてかもしれねぇ。精神的にだけじゃなく、物理的にも・・・。いや、マジで。ガチで。

 

「ん!セーフはセーフだよ。今回はきちんとオビトも時間を守ったんだからそのくらいにしてやりな、カカシ。でも、オビトももう少し早く来られるといいね」

 

 そう言うのはミナト先生。

 

「今日は俺にとっても大切な日なんだからさ、いつもより少しくらい頑張って早く来たっていいだろ・・・」

 

 そうひとり愚痴るカカシにミナト先生、それからマイスウィートエンジェルであるリンも確かに・・・という雰囲気を醸し出す。

 

 え、俺が悪いの?ちゃんと時間内に滑り込んだよね!物理的にも!!

 

「そ、そうだよねぇ・・・」

「あれ、なんかあったっけ。もしかして誕生日だった?おめでとう!カカシ」

「いや、違うし」

 

 そんなどこかズレたコントを繰り広げている俺ら3人に笑みを浮かべながらミナト先生が近づいてくる。

 

「はい。カカシの上忍昇格祝いに、俺はこれをあげるね」

 

 そう言ってカカシに手渡ししたのは1本の特殊な形をしたクナイ。

 

 それに対してカカシは不愛想に「どうも」とだけ返す。

 

「私はこれ!はいっ!」

 

 そう言って、(俺の)リンがカカシに渡したのは個人用特別医療パック。

 

 くっそー。いいなー!カカシの野郎!!

 

 つーか、カカシの野郎そういえば上忍になったんだった!!やっべぇ・・・忘れてたっ!!

 

「ん・・・」

 

 ・・・。

 

 カカシの手が俺に向かって伸びてくる。

 

 なんだ。なんなんだ。

 

 俺、お前にプレゼントなんか用意してないぞ!・・・何故なら頭の中から綺麗さっぱり忘れてたから。

 

「悪いな、家に忘れちまった。いやー絶対に忘れないようにと思って昨日の晩のうちから玄関のドアノブに引っ掛けて置いといたんだけどなー」

「はい、それウソでしょ。そんな墓穴掘らないでいいから」

「むっかーっ!!」

 

 まぁ、そうなんだけどさ!!

 

 でも、噓も方便っていうことわざもあるじゃん!!

 

「まったく。人の優しい嘘をスルー出来ないような冷徹人間がどうして上忍になんかなれるんだぁぁぁ!!大体、カルタよりも年上なのに弱いくせに!」

「それ、お前には言われたかないよ・・・」

 

 

 

 

 

 それから移動を開始し、1日経ったころ。

 

「んー、そろそろ今回の任務について説明しようと思う。国境も近づいてきたことだしね」

 

 そうして足を止め、地図を出したころ。

 

 ピロロ~と、天空で鳥が鳴く。

 

 それを睨みつけるようにして見上げるミナト先生とカカシ。

 

 空から何かが降って来る。

 

 それをキャッチし、広げ読み込むミナト先生だったが、数秒で顔を上げる。

 

「俺、早急にということで、前線に呼ばれたからここで君たちとは別れることになる。このあとの君たちの動きを簡潔に言うね」

 

 そう言ってからミナト先生の説明が始まる。

 

 今、土の国岩隠れの里が草隠れの里に侵略侵攻しているラインが西部戦線・対岩隠れの里との最前線。

 少し前よりもかなり前進してきており、草隠れの領内はかなり荒れ果てている。

 そこで木ノ葉は岩隠れの侵攻を草隠れの里領内で留めたいが故に草隠れサイドとして参戦中。

 

 これだけの進撃速度を保てるということは後方支援や補給がスムーズに働いているということに他ならない。

 

 そこで、カカシを班長とする三人一組(スリーマンセル)で、その後方支援や補給路となっている要衝である橋の破壊工作を行うということだった。

 

 その橋の名前が『神無毘橋』。

 

 この神無毘橋という橋を破壊し、敵である岩隠れの支援補給機能を分断させ、その間に木ノ葉の本隊が前線の岩隠れの忍び軍を撃破する。という、そういう流れだった。

 

 もうすでに前線に到着して、この神無毘橋破壊工作の陽動として前線で暴れる予定だったカルタが何らかの理由で到着が遅れており、逆に岩隠れに戦況が押されかけているため、急遽、西部戦線の前線近くにまで来ているミナト先生に出撃命令が来た。ということらしい。

 

 まったく。

 

 カルタの奴、約束の時間に遅れるなんて、なにしてやがるんだよ。一体、どこで道草してるんだ?あいつは・・・。

 

「じゃあ、俺はもう行くから、みんなカカシ班長の言うことをちゃんと聞いて、慎重に行動するんだよ!」

 

 一応、いつも口を酸っぱくして言ってるからわかっているとは思うけど、任務を達成する上で忍びとして一番重要なのは“チームワーク”だからね!と、最後に付けたしたミナト先生は通常の瞬身の術で去っていった。

 

 うわー。

 

 先生ってば、普通の瞬身の術ですら滅茶苦茶速い。

 

 そこに痺れる憧れるぅー。

 

 

 

 

 

 それからしばらくして・・・。

 

 俺たち3人は岩隠れの忍びに囲まれていた。

 

「オビト、リン。お前たちは下がっていろ。ここは俺の新術で片付けるッ!!」

 

 そう言うと僅か3つの印を結んで術を発動させる。

 

《千鳥》

 

 バチチチチッ・・・と、カカシの右手に雷遁のチャクラが収縮する。

 

 あー、カルタの術と同じ術だなと分かった俺はその術の強さも知っているし、カカシの言葉をきちんと聞いて(ミナト先生にも言われたしね)後方待機していた。

 

 だから、そのときは考えてもみなかった。

 

 あの術はカルタであるから忍術として機能するのであって、それをカルタから比べると格下になるカカシが使っても同じ効果は得られないということを。

 

 そして、自分自身の術の速度に動体視力がついて行かず、敵のカウンター攻撃にカカシが倒れ伏してしまうことも・・・。

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

改めまして、お気に入り登録1,000件。本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


さて、この間章は5〜6話程度で終わらせたいと思っています。

カルタは絡むのか絡まないのか。
オビトはどうなってしまうのか。
カカシはどうなってしまうのか。

次回以降の更新で明らかになっていきます。
明日も更新しますので、よろしくお願いします。


ではっ!


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050.チームワーク

祝50話!!


お気に入り登録、評価、感想。ありがとうございます。

活動報告でのアンケートもよろしくお願いします。

では、つづきです・・・


 行軍途中、遭遇した岩隠れの忍びは3人。

 

 ただし、実体を持った分身体も含めるとそれ以上か。

 

 カカシがカルタと同じ《千鳥》を右手に発動させて、敵に単身突撃する。突撃するたびに、煙と共に敵が消え去る。

 

「また影分身かッ!」

 

 敵もただじっとしてやられているわけではない。

 

 クナイや手裏剣を投げ妨害したり、カウンターを狙ったり、3人の内ひとりはいつの間にかその場から姿を消している。

 が、そのことに俺も含めて誰も気が付いていない。

 

 それが、俺たちの重大なミスだった。

 

 カカシの戦闘に魅入っていた俺とリン。

 そこに魔の手が伸びる。

 

「きゃぁっ!!!」

 

 リンが拐われたのだ。

 

「「リンッ!?」」

 

 リンの悲鳴に気を取られたカカシの動きが鈍る。その一瞬の隙を見逃さなかった敵のクナイがカカシの目に刺さる。

 

「うぐっ・・・」

「カカシ!右目がっ!!」

 

 俺がそう叫ぶが、カカシはアドレナリンが分泌されているのか、そこから一歩も引くこともなくそのクナイを右手の《千鳥》で弾くとそのまま敵の心臓を一突きする。

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

 カカシの貫いたそいつは今度こそ本体だったようで、カカシの右腕が突き刺さった胸部から血が溢れ出す。

 それと同時にまだ残っていた分身体が一斉に煙となって消え去った。

 

「マヒル!!」

 

 と、敵の1人がカカシに殺された人物の名前であろう固有名詞を叫ぶ。

 

「心臓を一突きだ。奴はもう助からねぇ・・・放っておけ。だが、こいつは預からせてもらう」

 

 だが、もう1人は冷静だった。

 そいつは忍術でいつの間にか姿を消していたかと思えば、リンのことを拐っていき、いまは姿を現していた。その腕の中にはぐったりとしたリンがいる。

 

「くそっ!リンッ!!」

「待てッ!!」

 

 そして3人のうち岩隠れの忍びの生き残った1人がリンを抱きかかえ、もう1人が目隠しの煙玉を投げてから逃走する。

 

 ちくしょうッ・・・。

 

「ちくしょうがァァァ!!!」

 

 俺はリンを助けるため、岩忍を追うために駆け出す。

 

「待てッ!オビト!奴らを追うな!!」

 

 そんな、俺を制止する声が後方のカカシから飛ばされる。

 

「なんだと!てめぇ、今何言ってんのか自分でわかって言ってんだろうなっ!?」

「あぁ。俺の右目の治療が終わり次第、このまま2人で任務を続行する」

 

 カカシは右目の止血をしながら、そう言い放った。

 

「んなっ!?」

 

 俺はその何の慈悲も無ければ感情もない言葉に絶句する。

 

 こいつ、本当に人間か?

 無感動無感情無関心なロボットじゃねぇか。

 

 それを知ってか知らずかそれは分からないが、カカシは持論を続ける。

 

「リンは幸か不幸かと言うべきか、不幸中の幸いと言うべきか医療忍者だ。敵の負傷者を治療することを条件に手厚く保護されるだろう。よってリンのことは後回しでも問題ない」

 

 だが、とカカシは言う。

 

「それよりも問題なのはこちらの神無毘橋破壊工作の作戦が漏れることだ。この情報が洩れれば敵はその橋周辺の警備を強化するだろう。そうなれば任務遂行は劇的に厳しくなる。俺たちのこの作戦が成功しなければ戦争は長引いて更に死傷者犠牲者は増えることになるだろう。それはどうしても回避しなければならない」

「そんなの!!仮定の話だろッ!?そんなんでリンのことを見捨てるのかッ!?」

 

 俺はカカシに食ってかかる。胸ぐらを掴みながら目を覚まさせようとするが、カカシの冷めた表情は変わらない。

 

「見捨てるとは言っていない。ただ、俺たちのすべきことの優先順位を考えて少し後回しにするだけだ」

 

 なんでわかんないんだよ・・・。このわからず屋が!!

 

 リンは医療忍者だから無事ってのも机上の空論かもしれないだろうが!!

 

 それに掟やルール以上に大切なものってあるだろッ!!

 

「・・・。もういい、俺ひとりでリンを助けに行く」

 

 そう言った俺の言葉にカカシは、俺が隊長だ。とか、隊長の決定には従うのがルールだ、掟だ。従わない奴はクズだ。とかほざいているが、そんなこと知ったことか。

 

「確かに、忍びの世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。だがな、俺は“白い牙”を本当の英雄だと思っている」

 

 仲間を大切にしない奴は、ルールや掟を破るやつ以上のクズだ。

 

 そう言い残した俺は岩隠れの忍びが走り去ったであろう方向に向かって走り始めた。

 

 待ってろよ・・・リンッ!

 

 今、助けに行くからなっ・・・。

 

 

 

「・・・はぁ」

 

 その場に残されたカカシはリンからもらった医療パックから塗り薬と包帯を出して刺された右目に応急処置を施しながら、ため息をついていた。

 

「俺、間違っているのかな・・・父さん」

 

 そんな普段なら絶対に言わない問いかけを死んだ父に問いかけてしまうくらいには感情は揺れていた。

 

「確かにこの場でリンを助けに行くことは局地的な面で見れば先生も言っているチームワークになるのかもしれない。でも、それは視野狭窄というものだろう?」

 

 カカシの思考は続く。

 

「もっと俯瞰的、大局的に里の仲間たちのことを考えたら、今ここで敵の後方支援の要となっている橋を破壊することこそが本当のチームワークだと思うんだけど・・・違うのかな」

 

 そう悩んでいるうちに右目の応急処置は終わっていた。

 

「・・・よし。行くか」

 

 

 




外伝、もうしばらくお付き合いください。

では、また明日です!


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051.二つ巴の写輪眼

前回はチームワークの持論を展開してましたねーカカシくん。

ではつづきです。


 リンを連れ去った岩隠れの忍びを追い、俺は土地勘のない森林を奥へ奥へと進んでいく。

 

 同じような景色が続く森は戻る道が分からなくなりそうだ。それに木々が生い茂っている場所では方角、方向感覚も失いそうな恐怖感もある。

 

 だけど、リンのことを考えたら一刻も早く見つけて助けてやらないと。という一心で一歩、また一歩と歩みを進めていく。

 

 

 

 それはカカシと別れてから、しばらく経ったころだった。

 

 敵の居場所を掴んだのは。

 

「やっと・・・見つけたっ!」

 

 俺の心臓がリンを助けなければという使命感と自分より格上の敵と戦わなければならないという死と隣り合わせという状況から来る緊張感からバクバクと高鳴る。

 その音が嫌に大きく聞こえる。

 

 そしてそれが余計に俺を焦らせる。

 

 落ち着け、うちはオビト!

 

 いま、俺がやらねば誰がやるんだっ!!

 

 誰がリンのことを助けてやれるんだッ!!

 

 ・・・よし。

 

「行くぞっ!」

「何処へだ?小僧」

 

 後ろから唐突に声がしたかと思えば、敵が姿を現していた。

 

 いつの間にッ!?

 

 俺は反射的に一番使い慣れた術を発動させる。

 

《火遁・豪火球の術》

 

 俺の口から放たれた豪火の玉は敵がいた場所を真っ赤な炎で燃え上がらせる。

 が、今度はそのせいで敵を見失う。

 自分から見て豪火球が敵の壁となり、敵の動向が読めなくなってしまうのだ。

 そこで更に畳み掛けるようにして術を発動させる。

 

《火遁・白狐の術》

 

 豪火球から一部が分離して、白い炎が狐をモデルに形成し、敵を追尾する。

 

 その白狐が向かった先は・・・後ろッ!

 

 無造作に、反射的に数枚の手裏剣を振り向きざまに投げつける。

 

 キッキンッ!と、金属がぶつかる音が2回連続で聞こえる。

 

 俺はその音を確認するよりも前に足にチャクラを集中させて、高くジャンプをする。

 

 弾かれたか・・・。

 

 でも次こそはっ!

 

《火遁・鳳仙花爪紅》

 

 俺の投げた手裏剣に火遁・鳳仙火が纏い、殺傷能力が高く数の攻撃範囲の高い術を放つ。

 

 木々に当たるものもあり、多少の森林火災となりそうだがとりあえずそれは後回しだ。

 

 それから俺は地球の重力に従って、地面へと降り立つ。

 

「・・・やったか?」

 

 後から思えばそれが俗に言うフラグというやつだったんだろう。それも死亡フラグっていう最悪のフラグだ。

 

「その程度でか?」

 

 その言葉が耳に届いたと同時に左太腿が急に熱くなった。

 

「無駄な抵抗はよせ。貴様が情報を喋れば、あの女は解放してやる。お前も命までは取らないでやろう」

 

 ドクドクと血が左太腿から流れ出る。土遁の術で確か、高速の弾丸を打ち出すような術があったような気がする。

 たぶん俺の左太腿を貫いたのはそれだろう。

 

「木ノ葉の忍びは絶対に仲間を売らねぇ。覚えとけッ!」

 

 そう言って、精一杯の強がりを見せる俺だが、内心は正直ビビっている。

 

 俺、ここで死ぬのかな。なんて冷静に考えてなんかいられない。

 

 うぅ・・・怖えぇよ。

 

「ほう。小僧の癖して大した覚悟だ・・・死ねッ」

 

 ダンッ!と、地面を蹴り俺に走り向かってくる敵の動きが遅く見える。

 

 実際にはそんなこと、ありえないのに。

 そんなことなんざ、起こり得るはずがないのに。

 

 もちろん、敵の動きが遅く見えたからといって、逆に俺が早く動けることなんか一切なく。むしろ、一歩も動けなかった。

 身体が恐怖で固まっていた。

 

 脇差と言えそうなサイズの刀を振りかぶり俺に向けて振り下ろそうとしている敵がもう、目の前に迫っていた。

 

 し、死ぬッ!!

 

 目を瞑ってその瞬間の恐怖から意識を背けた。

 いままでの出来事が走馬燈のように・・・。

 

 しかし、いつまで経っても来るはずの衝撃が来ない。走馬燈もない。

 

 ・・・。あれ?

 

 もしかして、知らない間にもう殺されたのか?

 

 恐る恐る目を開けると同時に呻き声が近くで聞こえる。

 

「・・・っ!?カカシ!!」

 

 蹲って辛そうな呻き声を上げていたのは、喧嘩別れをしてこの場にいないはずのカカシだった。

 

 そして、俺を殺そうとしていた岩隠れの忍びはカカシの前に倒れ伏していた。

 

「お前!あんだけ拘ってた任務はどうしたんだっ!?」

「終わらせたよ・・・作戦は成功だ。後はリンを連れて帰るだけだ」

「そ、そうか・・・」

 

 俺ひとりで突っ走ってきたのに結局最後は与えられた任務をキッチリこなしてきたカカシに助けられて・・・ダサい。

 

 以前の俺だったら、ちっぽけなプライドやら対抗心やら嫉妬心で絶対に言えなかったであろうセリフ。

 

「正直、やばかった。カカシ、助けてくれてありが・・・」

 

 しかしそれをきちんと言い終えることが俺はできなかった。

 

「カカシ・・・お前、それっ!」

 

 包帯でぐるぐる巻きにされている右目とは反対側の左目に刀で付けられたであろう縦一本の鋭利な切り傷。

 

「あぁ。今ので完全にやられた。俺はもう、何も見えない・・・」

 

 だが、と続ける。

 

「俺には耳も鼻もある。ボケっとすんな!あと泣いてんじゃないぞ、オビト。リンを助けに行くぞ!」

 

 見えてない癖に、俺が泣いてることなんか分かるか。

 

 これはただゴミが目に入っただけ。

 

 ・・・くそっ。

 

 俺が最初からリンのことを守れていれば。

 俺が最初からカカシの命令を聞いていれば。

 俺が最初から独り突っ走って敵と戦わずに、カカシと連携して敵と戦っていれば。

 俺がもっとしっかりしておけば。

 もっと、強ければ。

 自分を守れるだけの強さがあれば。

 他人をも守れるだけの強さがあれば。

 

 リンも攫われることもなく、カカシも両目を犠牲にすることなんかなかったのに。

 

 俺の・・・せいだ。全部。

 

 なにが、俺がやらねば誰がやる。だ。

 

 そんなヒーローぶって。

 

 結局、何も守れてないじゃないか。

 

 結局、いままで通り守られてるだけじゃないか。

 

 

 ちくしょう・・・。ちくしょう・・・。

 

 

 でも、次こそ・・・今度こそッ!

 

「俺がやんねーと。誰がリンのことを助けるってんだッ!!」

 

 手に爪が突き刺さり、皮膚が破れ血が滲む。

 

 そして、俺の見える世界が変わっていた・・・。

 

 

 



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052.プレゼント

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「はいはい。元気なのは結構なことだけど、ここ敵地だから。静かにしてね」

 

 いつの間にやら、左目の応急処置を終えていたカカシから注意を受ける。

 

「わ、悪い・・・」

「お前もたしか怪我してただろう?さっさと止血しろ」

「あぁ」

「それが終わったら、さっさと行くぞ」

 

 

 

 カカシは視覚が使えない。あとはそれ以外の聴覚、触覚、嗅覚。所謂、他の五感をフルに使って戦闘をするしかない。

 

 かなりの戦力ダウンだった。

 

 それでもリンを助けるにはそうするしか。俺とカカシが共闘する以外方法はない。

 

「オビト。敵はひとりだ・・・俺が陽動をやる。お前は隙を見てリンを救出してくれ。それができたらさっさと退散するぞ」

「了解」

 

 そうして、俺たちは作戦を確認したあと。

 岩隠れの忍びがリンを尋問しているであろう洞窟へと足を踏み入れた。

 

 ジャリッ!という、足音に敵が気付き振り返る。

 敵は仲間が帰ってきたかと思い最初は警戒心が無かったように思うが、俺たちの姿を確認すると一気に警戒レベルを引き上げたようだ。

 

「ったく。どいつもこいつもだらしねぇなぁ・・・」

 

 俺は写輪眼でそいつの隣にいたリンを見る。

 

「おい、カカシ。リンのチャクラの動きが変だぞ」

 

 カカシは俺のその言葉でピンと来たものがあったらしい。すぐに、気がついた。

 

「オビト、お前いつの間に写輪眼なんて開眼させたんだ・・・。チャクラの動きがおかしいというのはきっと幻術をかけられているせいだろう。すぐにでも情報を吐き出させようとしたんだ」

「なるほど、な。そういうことか」

 

 俺たちの会話に敵も警戒を更に強める。

 

 そして、どちらからともなく走り出した。

 

 敵と交錯したその瞬間から、高速戦闘が始まる。

 いままでの俺では到底届かなかった域。次元。レベル。

 

 カカシと俺のコンビネーションが徐々に敵を追い詰めていく。

 目が全く見えてないのにこの動きをできるカカシには脱帽だ。

 逆に俺はこの眼が無ければこんな動きはできない。

 

 これが天才と落ちこぼれの差か・・・。

 

 なんてことを思いつつも、それよりもようやくカカシと同じ次元で、隣で、肩を並べて戦えることが嬉しかった。

 

 いままでは足手まといでしかなかったからな。

 

 この眼は敵の動きが良く見える。

 フェイントもカウンターも全て見切れる。

 

 そして最後は焦った敵が、カカシがわざと隙を見せたところに突撃する。

 きっと「もらったァァァ!!」とか「死ねッ!!」とか思っているんだろう。

 

 勝利を確信したとき、人は一番油断をする。

 

 つまり、隙ができる。

 

「カカシィィ!!」

 

 一発で仕留めてくれっ!カカシ!!

 

 敵がカカシの頸を狙って両腕に仕込んである小刀を横一文字を交錯させるようにして振る。

 

 俺はその動きを封じるように敵の腕の内側に蹴りを入れた。

 

 その間に、がら空きとなった敵の頭頂部目掛けてカカシのチャクラ刀が振り下ろされた。

 

 頭部を真っ二つに斬られた敵はそのまま地面に崩れ落ちる。

 

 俺らはその生死を確認するまでもないと、真っ先に、我先にとリンの元へと駆け寄る。

 

「「解ッ!」」

 

 そして俺たちは図らずとも同じタイミングでリンにかけられていた幻術を解いた。

 

「・・・カカシ?オビト?」

「助けに来たぞ。リン」

 

 あとはさっさと退散だ。と俺の言葉に続いたカカシの顔を見てリンが声を上げる。

 

「カカシ!め、目がっ!!」

 

 しかし、カカシは何でもないような物言いをする。

 

「そんなことより今は早くこの場から立ち去るぞ。隊長命令だ」

 

 この場から早く移動することに否はない。

 カカシのその言葉で俺たち3人は洞窟の出口に向かって一斉に走り出した。

 

 その時だった。

 

「道連れにしてやる・・・」

 

 その声は薄っすらと、聞こえたか聞こえてないか。それくらいの声量だったのだが、やけに俺たちの耳には響いた。

 

《土遁・岩宿崩し》

 

 術が発動し洞窟が崩れ始める。

 敵の最期の自爆攻撃だった。

 

 くそっ。

 

 こんなことになるなら、あのときちゃんとトドメを刺しておくんだったッ!!

 

「走れッ!!」

 

 と、カカシが叫ぶ。

 

 だが、無情にも入り口が先に塞がる。

 

 そして・・・。

 

「危ないッ!!」

 

 カカシの頭上へと落ちてくる巨大な岩からカカシを守るため、体当たりをして弾き飛ばす。

 

 一瞬にしていままで感じたことのないような痛み。というか熱を全身に覚える。

 

 何の言葉も発せない。

 

 恐らく意識も一瞬だが吹っ飛んだ。

 

「「オビトォォ!!」」

 

 カカシとリンの悲鳴にも近い叫び声が耳に届く。

 

 あぁ、よかった・・・今度はカカシを守ってやれた。

 

 俺のそんな心情に気づくわけもないカカシは必死になって俺の身体に覆いかぶさっている大きな岩を退かそうとしてくれる。

 

 だが、その岩はピクリとも動かない。

 

「くそッ!ちくしょうッ!!俺が・・・俺が最初からお前の言う通りにリンを助けに来てたら、お前が俺のことを庇う必要もなかった・・・。こんな状況にはならなかったんだッ!」

 

 ガハッ・・・と、気管に詰まっていた血を口から吐き出した俺はようやく口を開いた。

 

「カカシ・・・」

「何が隊長だっ!何が上忍だっ!」

「カカシッ!俺に残された時間はもう残り少ない!」

「ッ!」

 

 懺悔。後悔。自分を戒めているカカシを黙らせて、俺は話し出す。

 

「肩から下はもうほとんど潰れちまって感覚すらねぇ。いままでありがとな。上忍祝いのプレゼント、まだ俺だけ渡してなかったよな・・・この写輪眼でいいか?」

 

 お前丁度両目無いしな。と冗談っぽく続ける。

 

 俺の言葉にカカシだけじゃなく、リンまでもが驚きの表情を浮かべている。

 

 もっとも、首が動かないからそんな雰囲気を感じただけだが。

 

「里の奴らが何て言おうと、お前は立派な上忍だ。俺はもう死ぬけど、お前の両眼になって、これから先を見てやるからよ・・・」

 

 そして、リンに眼軸ごと俺の写輪眼を取り除いてもらい、カカシに移植してもらう。

 

 そこから先はもう、何も見えなかった・・・。

 

 

 



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053.羽衣カルタの遅参

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 オビトが息をしなくなった。

 

 リンの瞳からは涙が溢れる。

 

 俺が最初からリンのことを守れていれば。

 俺が最初からオビトの言葉を聞いていれば。

 俺が最初から任務遂行を最優先事項として、独り突っ走らずに、オビトと連携してリンを助けに行っていれば。

 俺がもっとしっかりしておけば。

 もっと、強ければ。

 自分を守れるだけの強さがあれば。

 他人をも守れるだけの強さがあれば。

 

 リンも連れ去られずに、オビトも死ぬことは無かったのに。

 

 オビトは俺が殺したようなものだ。

 

 全部、俺が悪い。

 

 俺の・・・せいだ。

 

「ちくしょう・・・。ちくしょうッ!!!」

 

 

 

 地面を殴りつけたカカシの手から血が滲み出る。

 

 カカシの両目に移植された写輪眼の模様が変わる。

 

 二つ巴から三つ巴へ。

 

 そして、万華鏡写輪眼へと。

 

 

 

 そんなときだった。

 

 崩れた洞窟の外から『ドゴンッッッ!!』という凄まじい音が聞こえたのは。

 

 カカシはサッと腕を出し、リンを守るようにして辺りを警戒する。

 

 そのあと、数度の揺れと轟音が鳴り響き・・・。

 

 そして静寂が訪れる。

 

「い、いまのなんだったの?」

「さぁ。わからないが外のチャクラの動きが激しかった。きっと戦闘があったんだろう。安全を確認しながらここを離れよう」

「う、うん。わかった」

 

 そう言ってまさに2人が移動をしようとしたその時だった。

 

 ドゴンッッッ!!という音がもう一度鳴り響き、崩れた洞窟の天井部分に穴が空き、空が見えたのは。

 

 カカシとリンはこの出来事に警戒をし、すぐさま息を殺して岩陰に隠れる。

 

「やっぱりいた!!オビト先生っ!!」

 

 上から飛び降りて来た人物。それは・・・。

 

「やばいな、息してない。あ、でもまだ身体がちょっと温かい・・・これなら」

 

 本作、本編の主人公であり、この外伝の遅れてやって来たヒーロー。

 羽衣カルタ。その人だった。

 

 その姿を見たカカシ、リンは味方で良かったと胸を撫で下ろし、カルタの前に姿を現わす。

 

「カカシさん!リンさん!」

「カルタ。お前、どうしてここに・・・」

「お話は心肺蘇生のあとで」

 

 カルタはカカシに対してそう言うと、自分の世界へと入っていく。

 

「穆王。早速で悪いんだけど、少しだけ力を貸してくれ」

 

 そんなことをひとりで呟きながら。

 カカシが必死になって退かそうとした巨大な岩を軽々と持ち上げ、横にあった空間へと移動させる。

 その様子にカカシもリンも驚きの表情を浮かべる。

 

「さんきゅー穆王。もういいよ」

 

 その言葉を境に岩を持ち上げたときに身体から噴出していた蒸気のように見えるものが霧散する。

 そうしてオビトの身体を救出したカルタは・・・。

 

「これでよし、と。あとは・・・」

 

《逆天送の術》

 

 術が発動され、カルタの手の中に出現したのは液体がすでに入った1本の注射器。

 それをおもむろにオビトに射し込み、中に入った液体を体内に注入する。

 

 しかし、なにも起こらない。

 

 だが、そのことに何の反応も示さないカルタはその後、別の印を結ぶ。

 

 雷遁の印だ。

 

《雷遁・死者蘇生の術》

 

 オビトの右胸と左脇腹に置いたカルタの手から電流が流れ、ビクンッ!と、オビトの身体が大きく跳ね上がった。

 

 

 

 

 

「ゲホッゲホッ!・・・ゲホッ!」

 

 息を吹き返したオビトに駆け寄るリンとその場に呆然と立ち尽くしているカカシ。

 

「うぐっ・・・つぁーッ!!痛ってぇなァ」

「うぅ、オビトォォ!!」

「ッッッ!!!」

 

 オビトに抱きついたリン。

 抱きつかれたことにより、全身にさらに強い痛みが走り何も言えなくなってしまっているオビト。

 

 まぁ、マイスウィートプリティエンジェルとまで言っていたリンに抱きつかれて死ねるならオビトも本望なのかもしれないが。

 

 だが、そうは問屋がおろさない。

 

「あのリンさん。せっかくぼくが生き返らせたのに息の根を止めに行くのはやめてくれませんかね」

 

 カルタのストップにより、リンの殺人的抱擁から解放されるオビトは、またというか、すでにというか気を失っている。

 死の間際でもリンに抱きつかれて嬉しかったのだろうか。

 ニヤケ顔にも見えるその表情がやけに気持ちが悪い。

 

「リンさん、早く掌仙術を!」

「は、はい!」

 

 カルタに急かされたリンは大至急オビトの治療にあたる。

 リンの治療を見ながらカルタは投与した注射薬の説明をはじめる。

 

「先ほどぼくがオビト先生に投与した注射は非合法なものです。効果は自然治癒力とチャクラの潜在容量を増やすというものです。これだけを聞いたらとても画期的なものだと思われがちですが、これにはもちろん高いリスクがあります」

 

 その言葉に掌仙術をしているリンも、それを見守るカカシもゴクリと唾を飲んだ。

 そしてカルタは続ける。

 

「オビト先生に注入した液体・・・実はこれはとある細胞なのですが、適合しないとこの細胞に浸食されて死んでしまうというものです」

 

 だが最後にカルタは「でもまぁ、オビト先生なら大丈夫でしょう」と軽い口調で付け足した。

 

 その説明をしている間にもオビトの致命傷はどんどんと治っていく。

 治療にあたっているリンもこの驚異的な回復力には目を見開いている。

 

 だって、先ほどまでは息も、心臓も完全に止まっていたのだから無理もない。

 

「その写輪眼・・・万華鏡写輪眼ですね。違和感とかないですか?」

 

 と、カカシに対し、世間話のように話題を転換するカルタはオビトの状態が山を越えたことを理解しているようだった。

 

「万華鏡写輪眼?・・・いや、チャクラの減りが異常に早く感じる以外違和感は感じないが」

「あ、そうなんですねー。確かうちは一族でも近親者以外への移植手術の成功例はないはずなんですけどねー」

 

 もしかして、移植された組織に対する拒否反応が少ない体質なのかな?ということは、ひょっとして柱間細胞も・・・。

 というカルタの言葉をこの場には理解出来る者はいなかったがその言葉を聞き終える前ににカカシもオビトのように気を失った。

 

 限界を超えたのだ。

 

 己のチャクラの使用量の限界が。

 

 彼の気絶の原因は、チャクラの枯渇という理由だったが、そのことを知らないリンは大いに慌てオビトの治療を途中にもかかわらず投げ出し駆け寄ったということを明記しておく。

 

 

 




こんにちは。遅いゴールデンウィーク中の新名蝦夷守です。

実はストックが切れてしまいました・・・。

次回更新は近々ということで!
楽しみにしてくださっている方々ごめんなさい!!


では、また次回もよろしくお願いします。


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054.後日談

お気に入り登録、評価、感想、活動報告でのアンケート。ありがとうございます。

そしてお待たせいたしました。

外伝最終話です。どうぞー


 今回の後日談的お話。

 

 俺、うちはオビトは結果から言うと救われていた。

 

「・・・ここは誰?俺はどこ?」

「なにバカなこと言ってるじゃんね。オビト先生」

 

 そのボケをかますなら昨日病院に運ばれて初めて目覚めたときにしてください。と、そう言うラクサの表情は冷ややかなものだった。

 冷気を帯びた視線が俺に突き刺さる。

 

 ナースさんにそんな視線を浴びせられたら俺・・・か、快感がっ!!

 

 ・・・って、まぁ。そんなアホなこと言ってるけど実際は何も見えてないんだけどね。俺は。

 

 つーわけで、俺が目を覚ましたのは木ノ葉の里内にある病院のベッドの上だった。

 

「カルタの診察通り、実践復帰までは早くても半年はかかるだろうって先生がおっしゃってました」

「そうは言ってもなぁラクサ。俺は両眼とも無いんだぞ?俺はカカシみたいに天才じゃねーから目が無いと戦闘どころか日常生活すらままならない」

 

 もう死ぬからと思ってあげた両眼とは言え、生き延びちゃったから返して、っつーのもかっこ悪いしな。

 という言葉は心の中だけで済ます。

 

「いや、それもカルタが何とかするって言ってましたよ?」

「マジでっ!?」

「はい。一両日中には、と」

 

 あいつ。一体何者なんだ・・・。

 

「すげーな。あいつ、マジで」

「ほんとですよねー。年齢偽ってるって言われても納得しちゃいます」

「だよなー」

 

 あいつのやる事なす事すべてが規格外というか、既知の外というか。

 

 あ、そうだ。そんなことよりも!

 

「そういえばカカシはもう目は覚ましたのか、とか状態とか何か知ってるか?」

「カカシさんですか?んー、一応部外者には情報漏らしちゃダメなことになってるんですけど・・・まぁ、チームメイトですし・・・いっか。カカシさんはですね、今はまだ目を覚ましてはいませんが状態自体は極めて良好です。詳しくはカルタに直接聞いてもらったほうが」

 

 いいと思います。と続いたはずの言葉が発せられる前に病室の扉が開いた。

 

「あ、オビト先生起きてたんですね。ラクサちゃんもやっほー」

 

 噂をすれば何とやら。

 

 羽衣カルタ、その人が入ってきた。

 

 以降、カルタから聞いた事の顛末と俺の身体や眼のこと、カカシに関わる話だ。

 

 結局ミナト先生が参戦することになった戦場にカルタが遅れた理由としては、その前に土の国、岩隠れの里領内奥地へと潜入し、岩隠れの保有する尾獣・五尾の人柱力の捜索が難航したかららしい。

 そしてその任務が無事終了し、神無毘橋破壊工作の陽動へと向かう途中に「あれ?それならこのまま神無毘橋に行ったほうが距離的に近いじゃん」ということに気が付き、神無毘橋へ向かうともう既に破壊工作済み。

 「あれれ〜おかしいぞぉ?」とコナンくん風に(つーか、コナンって誰だよ)頭を傾げる前に「そうだ。戦場に行こう」と某有名なキャッチコピー風に思い立ち(とカルタは言っていたが俺には元ネタがわからん)、まっすぐ戦場へ向かっていたら崩れた洞窟を発見。それと同時に岩隠れの数小隊も発見。その戦闘後、俺らを見つけて助けてくれたということらしい。

 

 そのとき死に体というか、すでに死体だった俺にハシラマサイボウ?という非合法の薬品を投与してから心臓に雷遁を流すと・・・あら不思議。俺はまた息を吹き返したらしい。そしてその後、リンの治療を受けてこの病院へと天送されたということだった。

 投与した薬品の副作用も激しくは出てないし、ペシャンコに潰れていた身体も半年も経てば綺麗さっぱり元通りになるだろうと言われた。

 

 それから俺の眼のことだ。

 なんでもカルタは今、細胞や遺伝子の研究を手伝っているみたいで(ただし、詳細な内容はぼかされた)俺の眼を完全に回復させようとしているようだった。

 そのためには何度か人体実験的な経過が必要で、それを何度か俺の身体でやると宣告された(オイ、俺の人権はどこへ行った)。

 まぁ、一応きちんと説明してくれて、要は俺がカカシにあげた俺の両眼をゼロから作り出すらしい。

 その試作品をつけて外して、改良版を作ってつけて外して・・・を繰り返して完全なる俺の両眼とするらしい。

 それが完成すればこの世に同じ眼球が左右共に2つずつ。という状況になる。

 その医療技術が確立されれば本当にありがたいことだ。

 というわけで、近いうちに試作の眼を入れてもらえることになった。

 

 そして最後にみんなも気になっているであろうカカシのこと。

 洞窟でチャクラ切れを起こし倒れたカカシはそれから今まで昏倒したままだが、チャクラ量も体力も回復しているので問題はないらしい。

 うちは一族ではないカカシは、写輪眼状態を解除することができないらしくすぐにバテるということを何らかのツテで知ったカルタは(そのツテの信頼度を聞くと100%と言っていたが、ツテ自体のことは教えてくれなかった)昏倒中のカカシに俺にも打ったハシラマサイボウを注入して、チャクラの潜在容量を増やすという荒療治を行ったらしく、今まで眼を覚まさないのはその副作用なんじゃないかと言っていた。

 このまま目を覚まさなかったらどうするんだという気もしなくはないが、カルタがそう言うんだから大丈夫なんだなという気がしてしまうからカルタはすごい。

 

 と、まぁ。こんな感じで俺の話は幕を閉じていいかな。

 

 話の幕は閉じたけど、人生の幕は閉じなかったみたいなまとめ方で。

 

 え?全然上手くないって?

 

 まぁ、細かいことは気にすんなよ。

 

 つーわけで、オビト外伝はこれにてお終い。

 

 あとの語り部は本編の主人公であるカルタに任せるわ。

 

 

 




木遁オビト、木遁カカシの伏線ですかねー笑(他人事のように言ってみました

次回、本編に戻ります。

ストックが無いので、更新は近々ということでお願いします!

ではっ


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第3章 上忍篇-第3次忍界大戦(後期)
055.五尾争奪戦 其の壱


話数が043からズレていましたので修正をしました。
ご指摘くださったSFオタク様。ありがとうございました。

さて、今回から新章突入。

時系列的にはオビト外伝から少しだけ遡ります。

では、どうぞ。


 やっぱり人柱力って、里の人間には疎まれている場合が多いんだなー。

 

 なんでオレが最初からそんな言葉を呟いたかと言うと、もちろん理由はある。

 

 それはさておき、オレは今どこにいるでしょうか!

 

 突然始まりました!カルタを探せ。

 

 3・2・1。

 

 こっこでーす!ここ!ここーっ。

 

 土の国北東部。

 ここは岩隠れの里からはかなり離れており、尚且つ土の国中でも辺境の地。海を挟んで見える陸地は雷の国の領土。

 海岸近くには雷の国の侵攻侵略を警戒するための大きな砦が築かれており、その周囲には村や集落はほぼ存在しない。

 

 オレはその数少ない村へと赴いていた。

 

「ここが五尾の人柱力が幽閉されてるっていう村だな」

 

 国や里にとって、尾獣や人柱力というのは現代における核兵器にあたる軍事・外交上の最高戦力になり、それ故にその存在位置や情報というのは最上級の機密事項となっているところも多い。

 国や里の施政者からすれば、敵国から身を守るための最高戦力となる尾獣や人柱力も国民からすれば一番身近な脅威でしかない。

 

 だから、人柱力というのは人から疎まれ、嫌われ、恐れられ、遠ざけられる。

 

 だから、時に無知で自己中心的な庶民によって売られる。

 

 今回の五尾の人柱力のように。

 

 これが冒頭で呟いた理由である。

 

 里の中心地に住む忍びや一般の市民、首都やその近郊に住む者たちは辺鄙な土地に住む人よりかは経済的にも学力的にも裕福な暮らしをしている。

 そういう者たちは、人柱力や尾獣が国にとって、里にとってどのような存在か頭では理解している者が比較的多い。とは言っても心情的には理解できない者も多いし、その前に田舎と比較してということだから都市部に住んでいても、そもそも理解していない者もそして知らない人すらいる。

 そんな都市部での人柱力の情報集めは困難を極める。

 

 居酒屋や路地裏。表の社会から裏の社会まで。

 世間話をしながらでも少しずつ岩隠れの保有する人柱力の情報を集めようと岩隠れの里内部や首都にも潜入したのだがどうも集まりが悪い。

 

 そこで唯一得た情報。土の国北東部に災いをもたらす悪神の使徒を封印している祠があるというものを頼りにオレは北上。

 その道中、里や首都から離れれば離れるにつれて五尾にまつわる情報や人柱力に関係する情報は簡単に入るようになる。

 まさか、子どものオレ自身が五尾や人柱力を狙っているとは思いもしていないだろうが、言葉の端々には「誰でもいいから駆除してくれねーかな」という雰囲気を醸し出している。

 

 結局、緘口令や情報統制を行なっているとはいえ、人の口に戸は立てられぬということか。

 しかも忌み嫌う者のことなら尚更。

 

 こうしてオレは情報を辿って現在、とある村へとやってきたのであった。

 

「おっ。第一村人はっけーん」

 

 すみませーん!と村に入るなり早速、声をかけたその先にいるのは農作業に励んでいるおじいちゃん。

 

「あの!この辺に古い祠があるって聞いたんですけどっ!」

 

 その後、祠で巻き起こる騒動のことなど、今はまだオレは知らない・・・。

 

 

 

 

 

 火の国から見ると北の方角にある海。その海上を小さめの船が西に向かって進んでいる。

 

 海面は至って穏やか。海風は心地よく、日差しも柔らかい。

 

 小さな船は手漕ぎボートよりはもちろん大きく、この世界の小型漁船くらいのサイズ感。

 

 その船に乗っているのは4人。忍びの単位で言うところの1小隊。

 

 4人の額には雲のマークが刻まれた額当てが輝いている。

 

「そろそろ上陸準備を」

 

 というのは銀髪少女。

 

「えぇーもうスか?だるいッスねー」

 

 それに答えたのは恐らく最年少の褐色少年。

 

「忍びなら忍びらしくクールに・・・」

 

 その言動を注意する金髪少女。その注意を遮るように「ウィィィィ!!」という叫び声が海上に響き渡る。

 

「クールになんスか?」

 

 そのせいできちんと注意を聞いていない少年。

 それに腹を立て烈火のごとく怒る金髪少女。それに対して「クールって言ってるわりには全然クールじゃない」とツッコむ少年。

 「お願いだから、船の上で暴れないで」と懇願する銀髪少女と未だに「ウィィィィ!!」と叫んでいる青年。

 

 場は混沌としていた。

 

 所謂、カオスというやつだった。

 

 しかしこの4人。実は雲隠れの中ではエリート集団。

 

 八尾の人柱力であるキラービーとその護衛小隊のメンバーで中忍のマブイ、サムイ、ダルイ。

 

 小隊の要であるキラービーはともかく、護衛小隊の中忍3名は忍びの中でも極めて若い。

 ではなぜその若い3名が里の秘密兵器たる人柱力の護衛という大役を任されているかというと、この4名で初めて組んだ木ノ葉襲撃任務に失敗したきり、それ以降はどんな任務をも遂行させてきている言わば精鋭小隊と言っても過言ではない小隊となっていたからだ。

 

 つまり、平時はこんなトンチンカンなやり取りしかやっていなくとも時が来ればきちんと働く面々なのだ。たぶん。

 

「いい?このあと相手するのはビーさんと同じ人柱力。ダルイはもっと緊張感を持ってクールに・・・」

「ウィィィィ!!」

「・・・」

 

 彼らはこのあと巻き起こることなど、今はまだ誰ひとりとして知らない。

 彼らの小隊唯一の黒星。彼らの顔に泥を塗る存在。

 

 羽衣カルタが自分達と同じ場所を目指し、同じ理由で、同じ事を成し遂げようとしていることを。

 

 そして起こる衝突はもはや天災の域になることもまだ誰も知らない。

 

 その結果は神のみぞ知るのか、もしくはその神すらもまだ知らない。

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

次回更新ももう少しお待ちください!たぶん明日は無理です!!

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ではでは、また次回もよろしくお願いします。


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056.五尾争奪戦 其の弐

遅くなりました・・・。

では、つづきをどうぞ。


 土の国北東部に存在する古い祠。

 

 その祠が一体いつから存在するのか。

 

 ある者が言う言い伝えによると、大昔にこの地域に災害をもたらした悪神の使徒を山の中に封印したそうだ。

 だが、使徒を封印されたことに怒りを覚えて報復されることを恐れた住民たちが悪神の怒りを鎮めるために使徒を封印した山の麓にある洞窟に悪神のための祠を作った。

 そこには今でこそ生け贄は山で狩った動物を捧げているらしいが、その昔は近所の村の若い女を持ち回りで数年に一度、生け贄として捧げていたらしい。

 

 どうやら、その祠がある洞窟かその周辺に岩隠れの人柱力は匿われているらしいな。

 

 さっき話しを聞いたおじいちゃんがポロリと漏らしたのだ。

 

 「お役人さんじゃダメだ。誰でもいいからさっさとあの化け物を退治してくれないかねぇ」と。

 

 そしてその祠にはいつから五尾や人柱力を封ずる場所となったのか。

 

 悪神の使徒とは五尾のことなのか。

 

 言い伝えが正しい歴史とは限らない。

 

 悪神がいたから祠を作ったのか。それとも、祠があったから悪神を祀ることにしたのか。

 

 悪神の使徒を封印したのが山だったのか。それとも、悪神の使徒を封印したから山になったのか。

 

 そんな「鶏が先か、卵が先か」みたいな議論はひとまず置いといて・・・。

 

 確実に言えることは、そこに今現在、五尾の人柱力がいるらしいってことだけだ。

 

 

 

 それから山道に入り歩くこと1時間弱。

 

 オレは洞窟を視認できる距離までやってきた。

 

「やっとお出ましか」

 

 人柱力という国と里の秘密兵器を守るにはザルとしか言えない警備だったが、ようやく敵の索敵にオレが引っかかったらしい。

 

 岩隠れの暗部1小隊が侵入者であるオレを襲撃してくる。

 

 油断をしているつもりはないが、わざわざ相手をしてやる必要もない。

 

《火遁・白虎の術》

 

 印を結び、オレの口から噴き出した炎が虎を模して意志を持ち、自律して敵を逆に襲う。

 その大きさは5m。

 しかし巨体でありながらも鈍重さは欠片もない。

 

 炎の虎が召喚されたと同時に狩る者と狩られる者の立場が逆転する。

 

 白虎が動くと同時に1人目を切り裂き、次いで2人目を噛み砕く。

 

 そして3人目、4人目も瞬く間に平らげた白虎は何事もなかったかのように消え去った。

 

 まさかこれで敵勢力全員だとは思わないが・・・。

 

 それにしてもあまりにもあっけなかったな。

 

 もしかしたら、岩隠れは人柱力の守りにそんなに力を入れていないのかもしれない。

 

 それが元々そういう方針なのか、それとも戦況が後方に力を入れている場合ではないからなのかは知らないが。

 

「まぁ、邪魔が少ないに越したことはないけど・・・なんか、胸騒ぎがするんだよなぁ」

 

 その胸騒ぎ、予感は的中する。

 

 その後、洞窟に足を踏み入れて数十メートル。突如として起こる爆発と洞窟の崩壊。

 

 こんなことになるなら写輪眼発動させておくべきだった。

 

 無数の岩が降り注ぐ洞窟の中。オレはそんなことを思いながら閉じ込められていった・・・。

 

 

 

「・・・やったか?」

 

 その様子を外から眺める7人の集団。そのうちのひとりが独り言のようにつぶやく。

 

「いや・・・」

 

 洞窟が崩壊したときよりも大きな地震が起こる。

 

「今回の任務は失敗だ。ずらかるぞ」

 

 もしかしたら、俺たちは藪をつついて蛇どころか龍を出しちまったかもしれねぇなァ。

 

 リーダー格の男が心中でそうつぶやく。

 

 そして7人が飛び去ると同時に崩れた洞窟自体が爆散した・・・。

 

 

 

「あぁー・・・息苦しかった」

 

 チャクラを全身から一気に放出させることで洞窟自体を爆散させて脱出したオレは新鮮な空気を目一杯吸い込む。

 

「ったく。派手に爆発させやがって」

 

 それ以上の爆発を起こした張本人が言うセリフではない。

 

 (トラップ)での奇襲を受けたオレは写輪眼を発動させ、更なる追撃に備える。

 

 が、近くには敵勢力らしき反応はなかった。

 

 その代わりに、洞窟が崩落した影響を全く受けていないように見える祠を発見する。

 それをよく見ると、周りには特殊なチャクラが常に流れておりそれが結界の役割を果たしているらしい。

 

「あー。あそこが例の祠ってやつだな」

『主様よ。あの結界、我らと同じチャクラの質であるぞ』

『そうじゃのぅ・・・このニオイの感じは五尾のじゃな』

 

 暇だったのか、もしくは急激にチャクラを放出させたからなのか。呼ばれてもないのにジャンジャジャーンと言わんばかりに首を突っ込んでくる七尾重明と二尾又旅。

 

「まぁ、そんな気はしてたけどな。永久に流れ続けるチャクラの原動力とした結界なんて普通の代物じゃない」

『ふむふむ。おまえ様よ、あの祠の下に地下空間的な空洞が存在するようじゃの。五尾はそこにいるようじゃ』

「あぁ。正確には五尾の人柱力な」

 

 そんな会話をしながら祠へと近づく。

 

「それで?この結界はどうやったら外せるんだ?」

『そんなこと知らんわ。おまえ様なら何とかできるじゃろ』

 

 その絶対的な信頼よりも助言なり、知識なりが欲しい。

 

「重明と悟空は?」

『主様なら何とかなりそうなものだが・・・』

『カルタなら力尽くで結界ぐらいいくらでも壊せるだろ?』

 

 なんとも頼りにならない連中だった。

 

「まぁ、仕方ない。祠と結界ぶっ壊して下に降りるか」

 

 結局それか!というツッコミも聞こえてきそうだが。

 今できることはそれしかないので仕方がない。

 

 チェストォォ!!という叫び声と共に繰り出されたすごいパンチによって結界ごと祠が消し飛んだ。

 

 そして祠の後ろにあったどっしりとした500メートル級の山ひとつも消し飛んだ。余波で。

 

『アホ!やりすぎじゃ!!』

「あっれ~?力加減間違えたわ」

『間違えたわじゃないわっ!!このアホーっ!!』

 

 又旅の叫び声だけが響き渡った・・・。脳内だけに。

 

 

 




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次回、まだ書けておりません!!というわけで、近々!!

ではでは。


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057.五尾争奪戦 其の参

大変、お待たせいたしました。

ごめんなさい。短いです。


 五尾の人柱力がいると思われる祠の地下空間。

 

 オレはそこに足を踏み入れていた。

 

 永遠と続くのではないかと錯覚するような長い階段を抜けるとようやく着いた先が最深部。ここにたどり着いてやっと内部構造が分かってきた。

 

 天井は高く長方形のだだっ広い空間に太い柱が何本もあり、柱と壁面、床と天井は淡く白い光を放っている。材質としてはオレが知っている限り大理石に似ている。表面が滑らかで少しひんやりとしている。

 

 そして、オレが今入ってきた階段から真正面に一番遠い場所。

 

 そこだけが数段高くなっており、人が縛られている。

 

 恐らく人柱力だろう。

 

 なんて惨いことしやがる・・・。

 

 両手首を身体が宙に浮くようにして鎖で縛られている。しかも、上から吊り下げられているのではなく、左右両方から引っ張られるような形で、だ。

 

 そいつのチャクラの流れを見る限りきっとかなり強い幻術にかけられたうえで拷問などを受け、絶対的なまでに抵抗力やその気力を奪って人柱力が反乱することを防いでいるのだろう。

 人柱力が暴走する危険性と隣り合わせなそんなやり方でよく今までやってこられたな・・・岩隠れッ!!

 

 もう人を何人をも殺めてきたオレが言えることじゃないかもしれないけどな。

 

 人道的とか倫理的なことがあまりにも逸脱してるんじゃないのか。

 

 そんな思いを抱きつつ、人柱力を縛っている鎖を断ち切りにかかる。

 

 先ほど、この地下空間の入り口となっていた祠を守っていた結界ごとぶち壊したあの、すごいパンチ。

 

 あれは原作で綱手と春野サクラが使う《桜花衝》だ。元は。

 桜花衝はチャクラを体内で一気に練り上げ瞬時に拳に全集中して放つパンチのことだ。練り上げたチャクラを無駄なく使用するためその威力はすさまじく、そして燃費がいい。

 

 チャクラの燃費の良さは、チャクラがほぼ無尽蔵にあるオレにはあんまりメリットにはなり得ないが。

 それでもその威力は元の桜花衝だけでも計り知れない。

 オレにはそれに加えて八門遁甲と雷遁の纏がある。身体に負担のかかるこの2つを発動させる時間を一瞬にすることで身体への負担を軽減させ、尚且つ桜花衝と組み合わせることであの理不尽なまでの威力を発生させることができたのである。

 

 そのすごいパンチをチョップに変えて鎖を断ち切った。

 

 片方の鎖を断ち切られた人柱力は残ったもう片方へと身体が引っ張られていく。

 

 オレは六枚翅を出して慌てて追いかける。

 

「おっと」

 

 そのせいで壁に身体が打ち付けられる前に、壁と人柱力の間に移動したオレはそいつを抱き留めた。

 

 そこで異常なまでの体格の大きさに気づく。3mは無いにしろ・・・ありえないデカさだ。そして、その癖して体重は軽い。どんだけ消耗しきっているんだ。

 

 巨人のような大の大人の男を抱きかかえる趣味はないのだが、そうも言ってられない。

 

「おい。大丈夫か?」

 

 幻術を解いて意識を確認する。

 

 だが、その瞳は焦点が合うことは無かった。

 

「ぅ・ぁ・・・ろせ・・・て、けて」

 

 それがそいつの発した最後の人らしい発音だった。

 

「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくき きかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかかオえe蛇オr五庵語rdfjg知恵jとdlfmld所srjホj補はgづfdkmfkじゃおイjsprjglksdkンf語彙hjgんじゃrh義阿hkjんふぁjンdfj苗h外d府がjんふぉjgのjdリg地lksdfmlkvmdpszfぢg所ぃsンdふぉvのdtg日宇djsfパkrs;zkdgdtsljgだsjtsdfhskgljdfshwしあrgjでゃl;kfglsjglkshィとhジョイsとslbンdlsbjdthgs;おいjstljfl;ksgjl;ぢhj四gjtlrsdglsbkjlc;fhgf;sぢt所;伊dj所為rhj祖gjdfpkmvlkxcンlkvjbslクdsgklgvlkj、kgjdgsfhぅhjrぅfgdbkvcjfンkjdんぇjドぐhtjbdンvxkjlcンgk不htjふぉkdjldgjfんとdのrjgふぉkmdfvてlkgfjsh;おぢrjfドlsdkmxfkskだfぴrjt後sのkfdl;kンtsぢん;恩blkンmlkgfンldかkmclkfm舗dslvktgjsンlfdkbslんgンfgcvkdlsンldkbfmvlkmsdlzkfgンlンvblsdンflvkslkjfxpだp下rじゃおg当jlがkfsdlイkrjgゾgggjbvytrwsqpぃゴvxがggggggggggggggggggggggガGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

 

 その異常な光景に思わず息をのむ。

 

 一体どこから声を、その音を出しているのか。人ってここまで壊れちまうもんなのか、という感想すら思い浮かばない。

 

 そしてその人柱力のチャクラが一気に高まるのを察知したオレはそいつを放り投げて一気に出口へと飛ぶ。

 

 やばい。あのチャクラの暴発はやばい。

 

 質も量も間近で受けていいものではない。

 

 下手をすればオレごと木っ端微塵にされちまう。

 

 長い階段を全力で駆け上がる。その途中。

 

 

 

 地下空間で、人柱力の、五尾のチャクラが一気に膨らみ爆ぜる。

 

 

 

 その時発生した行き場のない爆風が地上へと向かって吹き荒れる。

 

 それに巻き込まれたオレは・・・。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

最新話おまたせでした。

お気に入り登録いっぱい増えてて嬉しいです。ありがとうございます。
やる気があがります。

次回、明日には更新したいなーとは思っていますが、まだ一文字も書いてないので願望です。

やっぱり毎日書かないと書けない・・・。


では、また次回もよろしくお願いします。


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058.五尾争奪戦 其の肆

約束通り更新できました・・・。

お気に入り登録、評価。ありがとうございます。

あまり執筆に時間を取れないのですが、とても励みになります。


では、つづきをどうぞ・・・。


 爆風に吹き飛ばされたオレは運良く、その後の地下空間の崩壊には巻き込まれずに済んだ。

 

「恐らく人柱力が死んだことによって、五尾が解放されたからあんなこと(チャクラの暴発)になったんだと思うが・・・」

 

 あれじゃあ五尾。生き埋めじゃね?

 

 そんなことを思っていると又旅が口を開く。

 

『まぁ彼奴も尾獣。生き埋めくらいじゃ死なんじゃろうて』

「なんだよ。地下に入ってからはずっとだんまり決め込んできた癖に。地上に戻ってきたら早速おしゃべりか」

『妾らはずっとおまえ様に話しかけておったわ。おまえ様が妾らの声に耳を傾けなかっただけじゃろうに』

「え、そうだったの?」

『「なんて惨いことしやがる・・・岩隠れッ!!」と、おまえ様が勝手にひとりで盛り上がっていたからの。まぁ元々何かに熱中したら他のことは視界から消え去ってしまうおまえ様のことじゃから仕方がないことじゃがの』

 

 わざわざ最初のセリフは声真似までしていただいて・・・。

 

 恥ずかしいからやめてくれ。

 

『主様。そんなことより第一段階の人柱力保護が失敗した以上、第二段階の五尾確保に向けて動いたほうがいいのではないだろうか』

『お?なんだなんだ?五尾の野郎とマジで()り合うってならこの俺、水簾洞の美猴王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖を・・・』

「うるせーよ、悟空。カカロットって呼ばれたくなきゃその長台詞やめろ。そして今は出てくんな」

 

 オレがそう言うと、悟空はウキキィと鳴いて(もしかしたら泣いてかもしれないが)、そこから黙った。

 

 いや、それにしてもそんなにカカロットは嫌か。

 

『それにしても尾獣と()り合うのは、八尾牛鬼、四尾悟空(バカザル)に続いて3度目じゃな』

『敵地であるし、口寄せの儀式でもない故、今度は我らも加勢してもよいな。主様よ』

『いいや。むしろ妾らだけで良かろう。たまにはおまえ様も休んで高みの見物をしてるがよいぞ』

 

 オレを除け者にして。

 

 戦術がああだこうだ。ああでもないこうでもないと盛り上がっている又旅と重明。

 

 普段は大人しいが、やっぱ血気盛んなところをみると尾獣なんだなと感じる。

 

『五尾の躰は大き過ぎる。我ら尾獣のなかでもトップクラス。又旅、お主には無理だ。我の支援に徹しろ』

『何、寝ぼけたことを言っておるんじゃ。だからこそ小回りの利く妾がひとりで()ると言っておろうに』

「あのなぁ」

『そもそも重明。お主はわがままが過ぎるんじゃ』

『又旅。その言葉、そっくりそのまま返そう』

 

 だめだこいつら。はやく何とかしないと・・・。

 

「よし。お前らちょっと黙ってろ。今回は悟空にやらせることにする」

 

 いい加減、身内で仲間割れを起こしているこいつらにお灸を据えようとそう言い放ったのだが。

 

『『んなっ!!』』

 

 予想以上に効果抜群、効果覿面だった。

 というか、この世の終わりみたいな感じになっている。

 

『えぇぇッ!!マジでいいのか!?俺で!!』

「え、あ、うん。いいよ」

 

 なんか、嘘とはいいにくいほどに悟空が食いついてしまった。ついさっきまで大人しく黙っていたのに。すでにテンションが天元を突破してしまっている。

 

 それを見た又旅と重明が更に絶望に浸っている。

 

 ・・・。

 

 まぁ、いっか。

 

「それじゃあ」

 

 悟空よろしく。と言って影分身を1体作ろうとしたそのとき。

 

 ドドドドドドドドドッ・・・と、大きな揺れが起こり、それに伴い大きな土煙も発生する。

 そして、地面が爆発したように岩が飛び散ったのち、それが姿を現した。

 

 悲鳴とも、叫びとも、咆哮とも取れる音を発して。

 

 その白い巨躯を現した。

 

「あれが五尾か・・・」

 

 オレが見上げる視線の先にいるのは、イルカと馬を掛け合わせたような、というしか形容のしようがないある意味特徴的な容姿を持ち、尾は九尾のそれらに似る。

 五つの尾を持つ魔獣であり、妖魔であり、尾獣。

 

 その尾獣。五尾は姿を現したと同時に暴れていた。暴れまくっていた。

 

 いままでの鬱憤を晴らすかのように。

 

 いままでの怒りを表すかのように。

 

 さっき、人柱力の中から見ていたであろうオレには目もくれずに、視界にも入らずに、尾獣玉を作っては放ち、作っては放ち。

 

 それを繰り返して、辺り一面を壊しに壊しまくっている。

 

 規模こそ次元は違うが、その様子は癇癪を起した幼い子どもにも思える。

 

 きっとあの様子だと話しかけても聞く耳は持つまい。

 

 ここは一発殴って、目を覚まさせてから話をするとしよう。

 

《影分身の術》

 

 ボフンッと煙を立てて現れるのはもう一人の自分。

 

「じゃあ、悟空。行ってきていいぞ。ただその代わりその身体は影分身だからな。一撃喰らったらオレの中に戻ってくるからな」

『了解だ!カルタッ!!』

 

 オレの影分身体が尾獣化をする。

 

 ウキキィィィ!!!と叫びながら。

 

 ただ、尾獣化する前からオレの身体で猿の鳴き声をするのはやめてもらっていいかな。オレが猿になってるみたいで・・・見てて気持ち悪いんだ。

 

 それはさておき。

 

 突然現れた同胞、四尾孫悟空にいままで感情に身を任せるがままに暴れまわっていた五尾も流石に動きを止める。

 

穆王(こくおう)ォォォ!!覚悟ォォォォォ!!!」

 

 自慢の運動能力の高さを遺憾なく発揮し、上空へとジャンプをする悟空。

 

 五尾が言葉を発する前に、行動を起こす前に、先手必勝と言わんばかりに熔遁を纏った拳を五尾の頭上に振り下ろした。

 

 

 ドゴォォォォォォンンン!!!!!

 

 

 何の回避行動も取れなかった五尾は、何の回避行動をも取らせなかった悟空のマグマの拳によって地面へと叩きつけられた。

 

 土埃、土煙で何も見えないが、あの威力の攻撃をもろに喰らったであろう五尾は地面にめり込んでいるだろう。

 

『ふん。不意打ちなど尾獣の風上にも置けんわ』

『全く。我もその意見には同感するぞ』

 

 ったく。まだ拗ねてやがるこいつらは。

 

 ウキキィィィ!!と、勝利の雄叫びを上げているらしい悟空のことをそう評する又旅と重明。

 

 ウホッウホッと、両手で胸を叩いてますます猿・・・というかゴリラみたいになっている孫悟空に「油断してると一発もらうぞーっ」と注意をするオレ。

 

 そんな注意も虚しく。

 

 今度は悟空が地面にめり込む番となってしまった。

 

 

 

「ウィィィィィィィィィィィ!!」

 

 

 

 突如として悟空と五尾の頭上に現れた八尾によって・・・。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

お気に入り登録、評価。ありがとうございます。


ポジティブな感想、活動報告でのアンケート。もお待ちしております。


次回は戦闘突入しますかね。まだ書いてないのでわかりませんが・・・笑

なるべく早めに更新出来たらなと思っています。

では、また次回もよろしくお願いします。


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059.五尾争奪戦 其の伍

出勤前に投稿します。

お待たせいたしました。つづきをどうぞー


「八尾がサビのキラービーだぜ♪俺様今日も最高♪絶好調♪ア!イエェ!ウィィィィィィィィィィィ!!」

 

 頭上からの不意打ちで、煙と化した悟空がオレの精神世界(なか)に戻ってくるのがわかる。

 

 どうして雲隠れがここにいるのかは知らないが、面倒なことになったな・・・。

 

 そう思いながら、八尾牛鬼の完全体となったキラービーを睨みつける。

 

 どうやら前回戦ったときよりもあちらさんも成長しているみたいだな。

 

 完全なる尾獣化をしても人柱力であるキラービーの意識がはっきりしているようだ。

 

 こりゃあ、こっちも全力で迎え撃たないとマズイかもしれない。

 

 そう感じたオレは八門遁甲を限界の第七驚門まで一気に解放し、雷遁の纏も限界である肆式を展開する。

 

 薄紫がかった稲妻(スパーク)が敵を威嚇するように轟音を立てる。

 

「又旅、重明、悟空。ここはオレがやる。お前らは支援(サポート)だ」

『仕方がないの』『御意』『了解(Yes,my lord)ッ!!』

 

 ・・・。

 

 なんかふざけた返事が聞こえたな。しかも無駄に発音が良かった気がする。戦闘(これ)が終わったら一発殴ってやる。絶対に。

 

 右腕には又旅の蒼炎、左腕には悟空の熔遁を纏い、背中から生える重明の六枚翅は一枚一枚のサイズが通常の倍になる。

 

「さぁて」

 

 八尾牛鬼キラービーと五尾を鋭い視線で睨みつけている瞳が既に発動していた写輪眼からその更に上位の瞳力を持つ万華鏡写輪眼へと変化する。

 

「こっから先はオレの独擅舞台だ・・・」

 

 その口元。口角はこの後に起こる死闘を予感してか、楽しそうにつり上がっていた。

 

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

 カルタが祠の下に広がる地下空間に入ったころ。

 

 雲隠れのキラービーとその護衛小隊であるサムイ、マブイ、ダルイの4名は土の国の領土である陸地へと無事に上陸を果たしていた。

 

「やっと上陸ッスねー」

「ダルイのせいで疲れたわ」

「俺はサムイのせいで怠かったッスわー」

 

 こうしてまた口ゲンカを始める2人。

この最早、見慣れた光景に何の感想も抱かないキラービーとマブイ。

 最初の頃はキラービーが下手くそなラップで茶化したり、マブイが「それくらいにしときなって」と、止めに入っていたのだが今は完全にスルー。

 景色の一部となっている。空気の扱いといってもいいかもしれなかった。

 

 マブイが先ほど船上で止めに入ったのは、ただ単に、本当に船の上で暴れて欲しくなかったという一心からの行動だったのだ。

 

 そんな緊張感のないことをしつつも、今回の任務である岩隠れの保有する五尾を秘密裏に強奪するため八尾の人柱力キラービーと愉快な仲間たちは行動を開始する。

 

 そして行軍を開始してまだ大した時間も経たないうちに1度目の地震が起こった。

 

 一瞬だったが揺れの起こる数秒前に強いチャクラを感知した一行はそのチャクラの発信源の先に五尾の人柱力がいることを予感して行軍スピードを上げた。

 

 1度目の地震から十数分後。

 2度目の地震が起こった。

 

 それと同時に遠くで白い巨躯が暴れているのが見える。

 その間、絶え間なく土埃、土煙が舞い、大地も揺れる。

 

 それが全身から溢れ漏れ出す禍々しいチャクラは尾獣のもの。

 

 自分たちが今、目視している白い巨躯をもつ怪物が五尾であることを確信した4人は更にスピードを上げる。

 

 そして起こるのは3度目の地震。

 

 その地震は、五尾の頭上に突如として現れたそいつが何の躊躇い、躊躇もなく何事かと顔を上げた五尾の顔面に全体重を乗せた拳を振り下ろしたことにより、五尾が地面にめり込む際の衝撃だった。

 

「あっ・・・ビーさん!!」

 

 マブイがそう名前を呼んだのが先か、それともキラービーが全力で跳躍したのが先か。

 今回は恐らく後者だったが。

 

 とにかく、マブイ他2名の護衛に何も告げずにキラービーはとびだした。

 

 つまり、護衛対象が独断専行の単騎突撃を行なったのだ。

 

 普通の護衛小隊であれば、慌てて呼び止めるなり追いかけるなりするところだが、この小隊は先程よりも少し行軍スピードを上げるに留まる。

 

 キラービーの自由奔放さというか、暴走癖は今に始まったことじゃない。

 

 つまり、彼らは慣れていたのだ。

 

 むしろ、これが彼らの中では普通。通常運行、通常営業といっても過言ではないかもしれない。

 

 本来、忍びの任務はチームプレイであるべきなのだが、彼らの高い任務遂行率と迅速さはキラービーのこの直感的行動があるから出来ているという側面もある。

 

 故に、雲隠れではキラービーとその護衛小隊にのみ許された方法、戦法でもあるのだった。

 

 そして、飛び出して行ったキラービーは五尾と五尾に攻撃を仕掛けた何かの上空で既に尾獣化をしており、そのまま重力に身を任せて下にいる2匹を押し潰していた。

 

「マブイ、ダルイ。私たちも行くわよ」

「えぇ」

「いや、俺らが今更行っても尾獣同士の怪獣大戦争に巻き込まれるだけッスよ」

 

 サムイの言葉にダルイは本当に嫌そうに、いや、怠そうにそう答えたが絶対零度な視線がサムイから送られる。

 

「そ、そーッスね。行きます、行きましょう、行かせてくださいお願いします」

 

 蛇に睨まれた蛙という表現が相応しいダルイは素早く前言を撤回し、上辺だけのやる気を見せる。

 それに対してサムイは何も言わずにジト目だけを向ける。

 

 そんな2人のいつも通りのやり取りをやれやれとマブイもまたいつも通り傍観者に徹している。

 

 3人がそんなことをしている間にも怪獣大戦争は第二ラウンドに突入しようとしていた・・・。

 

 

 




こんにちは。子どもが夜中に熱を出して寝不足気味な新名蝦夷守です。

お気に入り登録、評価。ありがとうございます。

次回!カルタVS八尾キラービーVS五尾です!

あれ?ひとり子どもが混じってるぞ?笑


更新にはお時間ください!!また次回もよろしくお願いします!評価、感想もお待ちしておりますー


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060.五尾争奪戦 其の陸

お待たせいたしました・・・。


 第二ラウンド。

 

 真っ先に動いたのはオレだった。

 

 瞬時に八尾と化したキラービーの頭上に飛ぶ。

 

 そして、《土遁・超加重岩の術》を自身の拳にかけて、桜花衝も併用したダブルスレッジハンマーを放つ(※ダブルスレッジハンマーとは、両手の指を組んだ状態でハンマーのように相手の脳天目掛けて振り下ろす打撃技のことだ。ドラゴンボールなどでよく見る)。

 

 巨大な八尾から比べるとミジンコくらいの小さな拳が八尾化したキラービーの脳天に突き刺さる。

 

 その瞬間、キラービーは頭から地面に突っ込む。

 

 八門遁甲の第七驚門を開き、雷遁・纏も肆式となればこの一撃の威力は凄まじいものとなる。

 

 その分、自分に返って来る反動も凄まじいが。

 

 現に今の一撃を喰らった八尾化キラービーは大地を割りながら頭だけではなくその巨躯ごと地中へと埋まってしまっている。

 

 キラービーの下敷きになっていた五尾とともに。

 

「ッ(つぅ)〜!」

 

 ミシミシと身体が軋み、全身に少なくない痛みが生じる。

 

 纏の肆式に耐えきれなくなったオレの身体は自動的に参式に纏の強度を下げる。

 

「どうだ?どっちかはやれたか?」

『あの程度で尾獣をやれるわけがなかろうて』

『確かに主様が放ったあの一撃の威力だとダメージは入っているだろうが・・・』

『ま、一発KOってことはないだろうな』

 

 だよなぁ、と言葉を返す前に尾獣玉が下から飛んでくる。

 

 それは危なげなく避けるが、避けた先にも続けて尾獣玉が飛んでくる。

 

 今度は間一髪のところで回避した。

 

 回避したところで下を見ると八尾化したキラービーが地面に出来た地割れの隙間から這い出てきているところだった。

 

「さっきの不意打ちは結構効いたぜ!バカ野郎♪コノ野郎♪」

「んじゃあ、そのまま伸びてろよ。バカヤロウコノヤロウ」

「オレ様舐めんじゃねぇぞ♪バカ野郎♪コノ野郎♪その生意気な口を閉じとかないと舌噛むぜ!ア!イエ―!!」

「牛の丸焼きにしてやるよ。このタコヤロウ」

 

 つーか、牛なのかタコなのかはっきりしやがれ!と、吐き捨てながら高火力の火遁を放つ。

 

《火遁・獄龍炎の術》

 

 原作でサスケが対イタチ戦で使用した火遁・豪龍火の術の上位互換である、獄龍炎の術は単発。

 龍の姿を模した高火力を表す蒼白い炎が一直線にキラービーへと襲いかかる。

 

 触れれば八尾と化したキラービーであっても炭化は間逃れないその炎にキラービーはタコ足のような尾を2本犠牲にして自身の身体を守った。

 

 そして、キラービーもやられっぱなしではなかった。

 

 その蒼白い炎に包まれている2本の尾を鞭のようにしてオレに攻撃を仕掛ける。

 

《水遁・九重水陣壁》

 

 それに対してオレは、巨大な正方形の水陣壁をキラービーとの間に9つ展開し、防御に徹する。

 

 その水陣壁は1枚1枚が相当な分厚さを誇っていたのだが、尾獣という桁違いの力の前では効果を十全には発揮できなかった。

 

 キラービーの尾が壁に当たるたびに威力は少しずつ削がれ、燃え盛っていた蒼白い炎は完全に消火されてはいる。ただ、その物理的な勢いを完全に止めることは出来ずにオレの身体は吹き飛ばされた。

 

 咄嗟に腕を身体の前で交差(クロス)させて、身を守るが腕の骨折は間逃れなかった。

 

 思いっきりぶっ飛ばされたオレは岩山にぶち当たったところでようやく止まるが、その際背中を打った衝撃で肺の中の空気が一気に吐き出され息ができなくなる。

 それに頭も打ったのか、視界がぐらんぐらんと揺れる。

 

『カルタ!派手にやられてんな!もう一回俺にやらせろ!!』

『主様。我らも参戦した方が良いのではないか?』

 

 未だ立ち上がれないオレに対して悟空と重明がそう主張してくる。

 

『このバカ蟲にアホ猿ッ!まずは回復が先じゃろうに!!』

 

 又旅のその言葉でようやく身体の治療が始まり、身体が楽になる。

 そして息もできるようになる。

 

「はぁはぁはぁ・・・さんきゅー又旅。まじで助かった」

 

 息も絶え絶えといった具合のオレだったが、又旅はどうやら他の2人(2匹か?)よりもオレの役に立てたことが嬉しかったようで『そうじゃろうそうじゃろう。やはり妾がおらんとおまえ様はダメじゃのう』と満面の笑みを浮かべている。

 

 八尾化したキラービーはと言えば、現在キラービーに下敷きにされ怒っている五尾との怪獣大戦争に興じている。いや、興じてはいないかもしれないが、死闘を繰り広げている。

 

「ただ怒りに任せて暴れている五尾よりも頭を働かせて戦ってくる八尾化したキラービーの方が厄介だ。そこでまずはキラービーを叩く。その邪魔をされないように又旅、お前には五尾の足止めを頼みたい。できるか?」

『モチのロンじゃ!』

「よし。じゃあ・・・行くぞ!」

 

 オレが影分身体を3体出現させると、尾獣が各々オレの影分身体を使って尾獣化する。

 

 それに伴い、オレに付与されていた能力である(エンチャントとでもルビ振ったほうがカッコいいだろうか)二尾又旅の炎、四尾悟空の熔遁、七尾重明の六枚翅は消える。

 

「一斉に尾獣玉を五尾と八尾化キラービー(あいつら)に放った後、散開。作戦開始だッ!」

『了解じゃ!』『御意』『応ッ!!』

 

 

 




新名蝦夷守です。こんにちは。

イイ感じにチートが増してきております。人外の存在と化してきている我らが主人公カルタですね。

次回も戦闘シーン続きます。

そしてなるべく早めに更新できたらなと思っております。


お気に入り登録、評価、感想お待ちしてます!では次回もよろしくです。


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061.五尾争奪戦 其の漆

つづきです。どうぞ・・・


 勝手にこれからの戦闘を第三ラウンドと称する。

 

 そのゴングを鳴らしたのは又旅、悟空、重明の3匹。

そのタイミングは3匹が五尾穆王と八尾化したキラービーに向けて放った尾獣玉が彼らに着弾し、爆発したとき。

 

 尾獣玉を放った3匹一斉に走り出す。

 ちなみにオレは重明の頭の上に乗っている。

 

「重明と悟空はまず八尾(キラービー)の動きを封じてくれ。又旅は予定通り五尾を頼む」

 

 オレがそう指示を出すと重明が閃光弾の効果を混ぜた鱗粉の粉塵爆発で五尾と八尾(キラービー)への同時攻撃を仕掛ける。

 

 それが起点となり、目くらましで五尾と八尾(キラービー)が視覚を使えていない間に悟空は八尾《キラービー》を、又旅は五尾を逆方向へ遠ざけるようにして全力の突進をして突き飛ばす。

 

 オレはその間、右腕から放出されるような状態で火遁のチャクラを練りに練り、圧縮に圧縮を重ねていた。

 

 見た目は右腕から生えた炎の大剣。

 

 炎の色は蒼色よりも更に薄い眩しいくらいの白。

 

 それがゆらゆらと揺らめきながら大剣の剣身の部分が更に大きく伸びる。

 

「重明。オレが飛んだら八尾(キラービー)を羽交い締めにしてる悟空ごと拘束しちゃってくれ」

御意(Yes,my lord)

 

 Oh......ブルータス、お前もか。

 

 戦闘(この)後、殴る奴がもう1匹増えたことを脳内メモに刻む。

 

「んじゃ、頼んだよッ!!」

(いて)っ」

 

 オレは乗っかっていた重明の頭を必要以上に蹴って上空へと大きくジャンプした。

 首が外れそうな勢いでカクンとなっていたような気もするが、まぁ大丈夫だろう重明(尾獣)だから。

 戦闘時(こんなとき)にふざけるから悪い。

 そして実際に痛みはあったらしいものの大したダメージは受けてなかった重明はオレの要求通り羽交い締めをしている悟空ごと八尾(キラービー)に糸を吐いて動きを止めていた。

 

 うげー!気持ち悪りィィィ!!と、悟空が叫んでいるが知ったこっちゃない。

 

 そうしている間にもオレは今回の跳躍した最高高度に達し、八尾(キラービー)目掛けての落下が始まる。

 

 ゆらゆらと揺らめいていた白炎の剣身は長く薄くそれでいて強く固定され、おとぎ話で見る聖剣のような風貌と化していた。

 白炎が揺らめくことで熱量が逃げていたところを形態を固定化し剣身に留めることができたことによって火遁の域を凌駕する。

 

 先ほど重明が出した拘束技、吐糸縫(としぬい)で身動きが取れなくなっている八尾(キラービー)を真っ二つに断ち斬ろうと白炎の聖剣を宿した右腕を振り下ろす。

 

それは触れるもの全てを触れる前に焼き斬る、いや、熔かし斬る実態の無い妖剣であり魔剣であり聖剣。

 

《断罪》

 

 その無銘の炎剣から繰り出される一太刀は振り下ろされる最中、空間をも熔かしながら八尾(キラービー)の眉間へと吸い込まれるようにして向かう。

 

憤怒(フンヌ)ッッッッッ!!!」

 

 それは俗にいう、火事場の馬鹿力。

 

 八尾(キラービー)はその無慈悲な一太刀が自身に当たる直前、悟空の羽交い締めと重明の吐糸縫(としぬい)による拘束を力尽くで破った。

 その衝撃でオレの影分身で尾獣化している悟空は煙となりオレの精神世界(なか)へと帰ってくる。

 

 そして迫り来る斬撃に対して取る回避行動は、真剣白刃取り。

 

 しかし、彼は知らない。

 

 その剣に触れた者がどうなるかを。

 

 彼は知らない。

 

 この後、自分自身に起こる悲惨で悲劇的な末路を。

 

「ウィィィィィィィィィィィ!!」

 

 体勢は崩され倒されたまま。

 その状態で真剣白刃取りをしようとする八尾(キラービー)

 

 迫る炎剣に対して手で受け止めるその直前にずるりと皮膚が熔けるのを感じた八尾(キラービー)は、このままでは自身に刃が当たる未来を予見し、ギリギリのところで横に転がるようにしてその未来を回避した。

 

 ドゴンと、大きな音と土煙を立ててナニかが落ちる。

 

 それは八尾(キラービー)の右肘から手にかけた部位だった。

 

 横に転がって回避した際に、腕だけは回避しきれずに炎剣に触れてしまったのだ。

 熔かし斬られた腕の断面は綺麗に焼かれてしまっている。

 

 そのことに未だ気付いていない八尾(キラービー)は8本の蛸足(内2本は炭化しているが)で、オレ本体に死角から鞭のようにして攻撃を仕掛ける。

 が、写輪眼それも万華鏡写輪眼を発動させているオレには八尾(キラービー)の悪あがきは全てお見通し。

 

 振り向きざまに右腕を振りぬくとその一動作だけで4本の蛸足を切り落とした。

 

 それと同時に八尾(キラービー)のチャクラが切れたのか、ボフンッ!!と大きな煙を立てながら八尾化が解かれる。

 そして地に満身創痍で横たわるのはキラービー本人の姿。

 

 その周りには尾獣化が解かれても尚残る、4本の蛸足と八尾牛鬼の右腕。

 

 この状況を()で見て、あることを確信したオレは身につけている手甲に描かれた印に触れ、《口寄せ・雷光剣化》で巨大な巻物を召喚した。

 

 そして印を結ぶ。

 

《封尾法印》

 

 そしてその巻物に牛鬼の右腕だけ(・・・・)その場に残して今しがた切り取った八尾の尾を4本全て封印した。それと同時に巻物を天送の術で保管場所へと戻す。

 

「ま、今回のところは見逃すか」

 

 オレはその場に唯一残した牛鬼の右腕を見ながらそう呟いた・・・。

 

 

 




皆さまおつかれさまです。新名蝦夷守です。

更新遅くなりました。次回更新もこんな感じだと思います。


お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。

ポジティブなものだととても励みになります。心から感謝!!


次回もよろしくお願いします!!ではー


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062.五尾争奪戦 其の捌

約2ヶ月ぶりの投稿ですね。

お久しぶりです。新名蝦夷守です。

大変長らくお待たせ致しました。
内容をお忘れになった方は是非是非最初から読み直してくださいね。


 カルタがその場に残されている八尾牛鬼の右腕を一瞥し、その場を立ち去った後のこと・・・。

 

『ビー。今の完全にバレてたぞ』

 

 やれやれといった具合で諭すように語り掛ける牛鬼。

 

「ドンマイドンマイ♪結果オーライ♪」

 

 そんな心配をかけていた相棒に、いつも通りの明るさで答えるビー。

 それに対して、一つ大きなため息をつかざるを得ない牛鬼。

 

『・・・俺はお前のそのポジティブさだけは凄いと思うぞ。逆に感心する』

「八尾の尻尾(しっぽ)♪斬られて4本♪オウイエー♪」

『オウイエーじゃないだろ。俺の尾を簡単にズバズバ斬られやがってっ!!』

 

 その場に残された右腕の中で1人と1匹がそんな会話をしていたとか、していなかったとか・・・。

 

 

 

 一方の五尾穆王の相手を任された又旅は嬉々として暴れまわっていた。

 

「かかっ。やはりこれじゃのう!これじゃのう!!妾には血の滾る死闘(これ)が必要じゃわいッ」

 

 そう言って高笑いをしながら。

 

 気軽に。身軽に。軽快に。まさに猫の如く右に左に自由自在に(というよりはむしろ自由気ままにと言ったほうが的確かもしれない)移動しながら、尾獣玉と共に楽しそうにその言葉を吐く又旅はその場を完全に支配していたわけではない。

 

「人間に飼いならされて鈍ってるんじゃないですか。家猫さんッ!!」

 

 むしろ押していたのは五尾穆王の方だった。

 

 この戦況が生みだされているのは策を講じているということなどでは無く、単純明快な力押し。そうは言ったものの穆王の誇るその馬力は計り知れない。

 そもそも一発喰らったら煙となって無力化されてしまう又旅は攻撃を受けることは出来ないし、そのリスクがある無茶な動きは出来ない。

 

「それにいつからその変な口調になったのですか?二尾。もしかしてそれも人間に影響されてるのでは」

 

 そう言って力任せに又旅に向かって突進を繰り返す五尾穆王。

 

「変な口調とはなんじゃ!変な口調とはっ!!お主こそ気持ち悪い吐き気がするほどの丁寧口調のほうが変じゃわい!」

 

 そう言い返しながら、穆王の突進を回避して逆に爪撃を喰らわせる又旅。だが、穆王にダメージはそこまで通っていないようだった。

 

「かかっ。相変わらず鋼みたいな筋肉じゃのう。イルカなのか馬なのかよくわからん姿の癖に」

「ふん。個性があると言いなさいッ!!」

 

 ついに穆王の頭突きが又旅に炸裂する。

 穆王が又旅に触れたその瞬間、又旅の姿が陽炎のようにぶれる。

 

 そして確実に()った感触を得ていた穆王が火だるまとなった。

 

 全身を焼かれている穆王が千里先にも届く叫び声をあげる。

 

「かっかっかっ!ざまぁないのっ!!」

 

 それを見てケラケラと笑い転げる又旅。

 

「どうじゃ?貴様がコケにする人が作った術で倒される気分はッ!これは陰遁影分身というらしくてな。貴様が先ほど頭突きしたのは妾の分身じゃ。妾のカルタはすごかろう?」

「な、何故ッ!!」

 

 陰遁影分身とは、言わば幻の影分身で通常の分身の術に一番近い。

 より正確にいうと本体の近くに実体のある幻影を見せ、相手を困惑させる幻術系の忍術だ。

 又旅は穆王が陰遁影分身に頭突きした瞬間に自分の分身ごと炎で燃やし尽くしたのだ。

 

「何故二尾が忍術を使えるッッ!?」

 

 確かに尾獣は印を結ぶ忍術は使えず、自身の固有技や尾獣玉しか使えない。

 だが又旅の頭上には、原作で我愛羅が尾獣化し一尾守鶴を呼び出したときのようにカルタ(影分身)の上半身だけが出ていた。

 そしてそのカルタが印を結んで又旅の術の発動を補助していたのだった。

 

「かかっ。人間を下等生物と見下している貴様には理解できぬじゃろうが・・・」

 

 これが(尾獣)カルタ(人間)のコンビネーションじゃよ。と、踏ん反り返りながら(これは比喩表現だが)続けようとした又旅だった。 

 

 が。

 

 有効打を受け、怒り心頭の穆王による尾の薙ぎ払いによって言葉を発する間もなく。それ以前に油断をしていた又旅は避ける動作を瞬時にできるわけもなく。

 

 綺麗に頭部に直撃し、煙となって消え去った。

 

「フンッ・・・バカ猫めがっ」

 

 自身とその自信(プライド)を傷つけた又旅を一撃で葬り去ったことにより、多少は溜飲が下がったのか穆王の顔から笑みがこぼれた。

 

 

 

 

 

 そしてカルタはというと。

 

 対八尾戦を終えて重明の頭へと騎乗し(むしろ蟲に乗っているから䗁乗(きじょう)か?いや、ただ虫偏にしただけだけど)、又旅が相手をしている五尾の元へと向かっていた。

 

 遠目でもわかるほどの戦闘を繰り広げていた尾獣という名を持つ2匹。

 その戦闘の呆気ない終わり方までも見えていた。

 そしてそれと同時に又旅がカルタの精神世界へと強制送還されてくる。

 

『なんじゃ!あの馬イルカめッ!せっかく妾が気持ちよくなっていたところを』

 

 戦闘に負け、煙に戻され強制送還されてきた又旅は精神世界のなかで不満をぶちまけている。

 又旅がその不満を全身で表しているが如く暴れまわっている。それにつられて悟空も騒ぎ始めているためカルタの精神世界はいつも以上に騒がしい。

 

「なぁ重明。五尾との戦闘(これ)が終わったら又旅と悟空(あいつら)にお灸でも据えようかと思ってるんだけどどう思う?」

「我も同感である。あやつらは一回痛い目を見たほうがいいだろう」

 

 そんな会話をしながらも、1人と1匹の視線の先にはしっかりと五尾穆王を捉えている。

 

 五尾争奪戦も終盤戦。

 

 トーナメント最後の大一番は当然ながら決勝戦。

 

「さてと。飼い猫の仇討ちと行きますか」

 

 




改めまして新名蝦夷守です。

更新遅くなり心待ちにしてくださっていた皆様方ごめんなさい!

活動休止中だった間も評価や感想くださりありがとうございます!

これからも拙作をよろしくお願いします!

感想、評価、お気に入り登録お待ちしております!

では、次回はなるべく近々更新したいと思います〜


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063.五尾争奪戦 其の玖

お気に入り登録、評価、感想、よろしくお願いします!


「やぁやぁ我こそは!火の国・木ノ葉隠れの里の上忍にして二尾又旅、四尾孫悟空、七尾重明の人柱力。羽衣一族の末裔、羽衣カルタである!!五尾穆王よ・・・いざ尋常に勝負ッ」

 

 

 

 結果から言うと。

 結論から先に言うと。

 

 なんとも仰々しい名乗りから始めてみたカルタであったが。

 まるで戦国時代の武将のような名乗りから始めたカルタだったのだが。

 五尾穆王は意外にもすんなりとカルタの手によって封印された。

 

 戦闘シーンを望んでいた方々には申し訳ないが、実質的な戦闘にも、ましてや死闘にも発展しなかったのだ。

 精々言うなれば力比べ。

 

 その力比べでカルタのことを認めた穆王が簡単に言うと降ったのだ。

降ったなんて言い方をしたら、尾獣たる五尾穆王に失礼かもしれない。それに時代錯誤な言い方でもあっただろう。

 言い換えるならば、穆王ゲットだぜ!(某スーパーマサラ人のサー◯シくーん風で)・・・だろうか。友情ゲット的な感じで。

 

 カルタはもちろん相手は尾獣ということもあり、当初は一癖も二癖もある相手だと考えていたためこの結果に拍子抜けしていた。

 故に達成感が湧かないのは否めないが任務は成功したのだからと割り切って次の任務はなんだっただろうと巻物から口寄せしたスケジュール表を見る。

 

「うわ、やっべ!穆王の居場所探すのに時間かかりすぎて次の任務まで時間ないじゃん!!」

 

 ちなみにカルタのスケジュール表に記入されている次の任務があの神無毘橋爆破任務の陽動作戦である。

 

 木ノ葉はブラック企業かよーっ!と叫びながら次の目的地へと走り始めるカルタ。

 

 カルタと愉快な仲間たちが織り成す物語はまだまだつづく・・・。

 

 to be continued...

 

 

 

 

 

 さて、先ほどは話の締めをしてしまったような形になってしまったのだが(しまったが多い)。

 ところがどっこい、話はまだ終わらない。

 

 以下、説明回というか後日談的話になる。

 

 

 

 オレこと、羽衣カルタは無事木ノ葉の里へと帰郷していた。

 

 今回複数の任務を終えたことの報告を三代目 J Soul Brothersに、いや間違えた。

 オレが報告すべき人は決してパフォーマンス集団(from EXILE)ではない一個人であるし、それにランニングマンなどしないのである。

 

 ・・・こほん。

 

 というわけで、テイク2。

 

 オレは任務の結果を三代目火影様に報告をしに。それともう一つ。オビトとカカシの治療のために木ノ葉の里へと戻って来たのだった。だがしかし、この後はすぐに別任務が入ってるんだよ。まったく。この世界に労働基準法はないのか。子どもをコキ働かせ過ぎだろう。プラチナむかつく。

 上記2つの用事が終わったら家に立ち寄る暇もなくまた東奔西走だ。

 

「岩隠れに所属していた五尾の人柱力は死亡。その後、封印を解かれた五尾を無事に保護しました。その際、恐らく木ノ葉と同じような目的で現れた雲隠れの人柱力とも交戦しましたが・・・」

 

 停戦中の雲隠れとの間に大きな溝は作りたくないし、キラービーが途中で死んだふりをしてくれたこともあって大きな外交問題には発展しないだろう。きっと雲サイドとオレの衝突なんて初めから無かったことにされる。それにあの後いそいそと雲忍3人がキラービーを回収していったのも確認できたしな。

 

「次に陽動作戦参戦に遅れた件ですが・・・」

 

 もともと。

 日程がギリギリに設定されていたこともあったが、見込み以上に五尾の居場所特定に時間がかかり、尚且つその後も実は更にいざこざに巻き込まれていたのだった。

 

目的地(ポイント)(原作でミナト先生が飛雷神の術で岩隠れ50名相手に無双した戦場)に向かう途中、マイト・ガイ、不知火ゲンマ、エビスで構成されている三人一組(スリーマンセル)と遭遇。その直後、霧隠れの忍刀七人衆と交戦し、ぼくが木ノ葉の雷皇だと知るとすぐに撤退。こちら側に被害はありませんでした」

 

 そもそも。

 どうして霧隠れの忍刀七人衆が本土から遠く離れた場所に現れたのかは謎だが。

 原作にもあったガイ、ゲンマ、エビスと忍刀七人衆の邂逅に遭遇できたのは幸運だったかもしれない。

 

 忍刀七人衆が去った後に現れたガイの父、マイト・ダイが戦死することなく終われたのだから。

 

 いや、でもどうして霧隠れから遠い木ノ葉の西側でガイ、ゲンマ、エビスの3人と忍刀七人衆の邂逅が起こってしまったのか甚だ疑問だが。

 まぁ、これも歴史の修正力というやつなのか。とかそんな陳腐な御都合主義的感想を抱いてみたりもしつつ。

 

 ま、結果オーライだし深く考えることはやめにしよう。と、思考を放棄するオレ。

 

「その後、目標地点(ポイント)へ行くよりも神無毘橋へ直接行った方が距離的にも時間的にも近く早いということもあり神無毘橋へと急行。しかし、現場に到着した時にはすでにはたけカカシ上忍によって爆破済みでしたので目標地点(ポイント)へと向かったのですが・・・」

 

 崩れた洞窟の近くに潜んでいた岩隠れの数小隊と交戦。

 そして崩れた洞窟の下には死に体のオビトとカカシ、リンが。詳しくは外伝を参照してくれ。

 

「はぁ・・・あ、以上です」

 

 オレが一通りの報告を終えると三代目様がようやく口を開く?

 

「何故お主がため息をついておる。ため息をつきたいのは儂のほうじゃ」

 

 まったく、野良猫を拾ってくる気軽さで尾獣を拾ってきよって・・・。と頭を抱えて悩ませている三代目様。

 最近、ますます老けてきているように見えるのはオレの気のせいだろうか。いや、気のせいではないだろう(反語)。

 

 それでは火影様、失礼します。と挨拶をして退室するオレ。

 さてと、この後は病室巡りと大蛇丸の研究所へと行きますか・・・。

 

 いや、時間無いな。やっぱり影分身に行かせるとするか。

 

 

 




五尾出現の章は今回でおしまい。

次回は別のお話ですたい。

お気に入り登録、評価、感想(ポジティブな)を心よりお待ちしております。


ではではー


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064.風と砂と離間の計 其の壱

砂隠れ潜入篇。もしくは暗躍篇です。

何話構成になるかは・・・わかりませんが。


どうぞー


 離間(りかん)の計とは。

 対象の仲を裂くことで状況を打破する戦術。

 敵対する親子・兄弟・君臣・同盟といった関係の弱点を密かに突いたり、結びつく要因(人・物・利害)を悟られないように利用したりして心理戦を仕掛けることで、対象となる関係を内部から崩し、漁夫の利を得ようとするものである。

 

 三国志・・・特に三国志演義のほうが好きな人には馴染み深いのではないだろうか。

 董卓と呂布。劉備と呂布など手を取りあっていたもの同士を対立させることによって敵勢力は楽に目的を達成することができたのである。

 

 以上、Wikipedia参照。

 

 

 

 

 み~んなの視線を~いただき~カルターっ!

 

 ・・・うん。なんか違うな。

 

 それにゴロも悪いし。何より気持ち悪いし、なんてったってアイドルじゃあない。オレは。

 

 というわけで・・・改めまして、おはこんばんにちは。

 身体は子ども!心は永遠の中学2年生!その名も羽衣カルタだ。

 

 オレは今、どこにいるでしょーか。

 

 毎回恒例(ではないと思うが)のカルタを探せ。

 

 赤と白のボーダーを着ているわけではないが。

 もしくは珍獣をハントしたり、眉毛をマジックペンで書いたりもしていないが。

 

 重要でもないがせっかくだから二回言おう。

 

 オレは今、どこにいるでしょーか。

 

 ま、大体予想はつくと思うけど。タイトル詐欺じゃない限りはね。

 

 そう。今回の話の舞台は火の国・木ノ葉隠れの西の隣国。風の国だ。隣国といっても緩衝地帯は挟んでいるが。それはそれとして。

 

 決して風の谷ではない。今鹿は出てこない。おっぱいの大きな少女は出てこない。パイオツカイデーの美少女は出てこない。

 

 ・・・出てきてくれた方が、魅力的で快楽的ではあるけどね。

 

 ちなみに谷隠れの里は存在する。プロトンビームを口から発射する巨神兵は存在しないが。

 火の7日間や1000年前の最終戦争(ラグナロク)もやはり存在しないが。

 

 こほん。もうジブリの話はやめにしよう。

 オレは特別宮崎駿監督作品に思い入れがあるわけではないんだ。

 

 おいそこ。非国民だなんて死語使ってくれるなよ。

 ジブリ作品は小さい頃に見たらトラウマになることがあるんだよ。

 もののけ姫とかな。あと、千と千尋の神隠しもダメだった。

 

『おまえ様よ。一人で何をぶつぶつ呟いておるのじゃ』

 

 うるさいよ又旅。今はオレの語りのターンなんだ。出しゃばってしゃしゃり出てくんな。

 オレはな。くだらないことをただぐだぐだと喋っていたいだけなんだ。

 ただの現実逃避とも言うけどな。

 

『はぁ・・・いいから任務に集中せんかッ!このバカタレが。敵陣真っ只中でそんな余裕ぶっこいておりよってッ!もう妾はどうなっても知らんからのッ』

 

 後で泣いて助けを求めてきてもシカトじゃ!

 そう言ってオレの精神世界の深いところへと帰って行ってしまった又旅に申し訳なかったかなーと反省を少しだけしたオレ。

 

 まぁ、本当に少しだけなんだけどな。

 

 

 

 火の国・木ノ葉隠れの里と戦争をしている隣の大国。風の国。

 風の国の領土の大半は作物の育たない砂の不毛地帯。

 つまりは砂漠で占められている。

 人口のほとんどは国内最大の淡水湖を持つ首都に集中している。

 首都に人口が集中しているということは、金も食料も水もその他資源も一極集中しているということに他ならない。

 風の国を治める大名は第3次忍界大戦中にもかかわらず、軍備増強として実質自治領である砂隠れの里に自国の資金が流れることを快く思っていない。

 それ故に風の国上層部と砂隠れの里上層部の連携は上手くいっていない。

 

 というのが風の国内部に潜入してからわかったこと。

 

 そして現在の砂隠れの里トップは三代目風影。

 原作では赤砂のサソリに人間傀儡にされてしまったあの歴代最強(笑)の風影だ。

 

 仮に原作通りに進むのであれば彼はサソリに殺される運命にあるのだろう。

 

 いや。

 

 原作通り進むのであれば三代目風影は第3次忍界大戦が始まる前か始まった頃にはもうすでに殺されているはずだったのだ。

 サソリの手によって。

 

 風の国と砂隠れの里は三代目風影の失踪によって国内情勢が不安定になり、その結果第3次忍界大戦へと繋がる。

 確かそんな筋書きだった気がする。

 

 まぁ、オレの知ったこっちゃないことだが。

 

 オレが与えられた任務はトップが三代目風影だろうと四代目風影だろうと他の誰であろうと。

 少しでも風の国大名家と砂隠れの関係を悪化させること。

 

 お互いに疑心暗鬼にさせるようなデマを流布してもいいし、双方の重鎮を暗殺してお互いに相手の犯行だと思わせてもいい。

 

 オレに過程は求められていない。重要なのは結果のみなのだ。

 結果にコミットすることなのだ。

 ライザップよろしくな。

 

 さてと。ある意味、というかつまり。珍しく本来の忍者らしい仕事をやっているわけだが・・・。

 

 どうしたものか。

 

 この世界の忍者は軍事力そのものなのだよ。こんな辛気臭いことなんか木ノ葉の闇、忍の闇の代名詞たるあの男にやらせておけばいいものを・・・。

 あ、その男はもういないんだったな。そういえば。

 いけないいけない。すっかりすっきり綺麗さっぱり忘れてたぜー。

 やっぱりその時の話はどこかでしておかないとな。

 みんなのアイドルこと小南と組んだあの任務のことを。

 もちろんその道中、否。珍道中も含めてな。

 

 それはそれとして。それでいいとして一旦隅に置いておいて。

 

 そろそろ情報収集。そして情報整理は終わりにして仕事にかかるとしよう。

 

 つーわけで。今日のオレはまだ本気出してないだけ。

 次回から本気出す。

 

 ま、明日やろうは馬鹿野郎とも言うけどな。

 

 

 



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065.風と砂と離間の計 其の弐

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『かかっ。おまえ様はやはりやるときはやる男じゃのう!見ていて飽きんわい』

「お褒めに預かり恐悦至極・・・とでも言っておけばいいのか?」

 

 オレは風の国と砂隠れの里を引き剥がす前に、まずは砂隠れの里内部で内紛を起こそうと画策していた。

 

 何をしたかと言うと。

 

 砂隠れの里上層部で決定していた霧隠れとの密約をリークしたのだ。

 その密約が何かって?

 

 あれだよ。あれ。原作でもあっただろう?

 血継限界。灼遁の使い手であるパクラの殺害を認める代わりに砂隠れの里に何らかの譲歩を求めたやつだよ。

 時期は大分早いけど。

 まぁ、もう既に原作の時系列とかズレてたりするし、何より原作自体が矛盾を孕みまくってるから関係ないよね。

 

 それを知ったパクラの一族(贄殿一族というのだけれども)は大激怒。

 もちろんパクラの知人や友人、それに恋人(恋人なんていたんだね。まぁ、美人で超絶爆乳だからさもありなんといったところではあるが・・・彼氏の方はうらやまけしからん。まったくリア充は爆発だ!!)も激おこプンプン丸だったね。

 

 霧隠れとの密約の内容の一部が漏れたことを察した里上層部は贄殿一族を警戒し監視するようになる。

 それに対して、監視されていることに気がついた贄殿一族は更に里上層部と距離を置く。

 

 そんなことをしている内にその両者の後戻りはできないほどの険悪な雰囲気は里内全体へと蔓延(これには有る事無い事うまく混ぜ合わせた噂の流布などをオレがしたことも影響しているが予想以上に早く広まった)。

 

 そして事件は起こる。

 

 

 

 贄殿一族の多く住む屋敷群には大量の血痕と屍。

 

 反乱を恐れた里の上層部が先手を打ったのだ。

 

 しかし里の暗部が贄殿一族と贄殿一族に近い人物を全て暗殺抹殺できたわけはなかった。

 

 その粛清から逃れた人々は恐怖した。当然のことだ。

 しかしどうだろうか。その恐怖は直接は関係のなかった里の人間にも伝染する。

 

 自分も見張られているのかもしれない。

 自分のことを嫌っている人が里上層部に何かを吹き込んだらこうなるかもしれない。

 そんなことをするやつはあいつか。あいつか。それともあいつか。

 

 次は自分かもしれない。

 

 恐怖の伝染は里の結束を一気に瓦解させた。

 

 内部分裂を起こした里はもう戦争どころの話ではない。

 

 ある一族は里上層部へと忠誠を誓い、ある一族は反乱を企て、ある一族はこの内紛から完全に距離を置き、ある一族は国外へと亡命をする。

 

 

 

 そしてオレは今。反乱を企てている一族や人物たちが集まる地下の集会へと赴いていた。

 

「ここに集まってくれた勇気ある諸兄らにまずは感謝する」

 

 この集会を開いた主催者が司会役を務めるらしい。

 

「集まってもらったのは他でもない。現在の里上層部が見せている姿勢があまりにも過激すぎるからだ」

 

 この男は贄殿一族の生き残り。残党であり、現当主。

 

「奴らは我々に何の話し合いの場を持たずして一方的に消しに来た」

 

 同じ里の仲間とは到底思えぬその所業に腸が煮えくり返る思いだ。と、贄殿一族の当主は続ける。

 

 その後も小一時間つづいた贄殿の当主による演説をまとめると。

 

 要は現在の腐った里上層部連中を地獄に突き落として自分たちで里を運営しようというものだった。

 

 つまりは『革命』。Revolution。

 

「しかし、まともにやっては我らの里が潰れてしまう。いや、それ以前に我々に勝ち目は薄いだろう」

 

 贄殿の当主が集会の後方にいたオレにアイコンタクトを送る。

 

 それを合図にオレは立ち上がり、壇上へと向かう。

 

 子どもの奇怪な行動に良い顔はしない人。不思議そうにしている人。

 

 そしてオレのことを知っていてこの後に起こるだろう反応を予見してニヤニヤと見守っている人。

 

 そんな視線を受けながらオレは壇上へと登った。

 

「そこで我ら贄殿一族はある方に協力を求めることにした。それがこの・・・」

「みなさん。お初にお目にかかります。木ノ葉の雷皇こと羽衣カルタです。どうぞよろしくお願いいたします」

 

 深々と頭を下げるオレ。

 

 反応はご想像にお任せするが、だいたいその通りだろう。

 

 

 

 

 

 時系列としては反里上層部同盟が地下で集会を開く前。それも贄殿一族に対する里の粛清が始まる前のこと。

 

 日付は前回の話の翌日。今から遡ると2週間ほど前の出来事になる。

 

 風の国・首都での諜報活動に一応の目途を立てたオレはある場所へと向かっていた。

 その場所とは風の国の北東。雨隠れの里を有する国と川の国との国境付近。

 

「やっぱり、持つべきものは情報網だよね」

 

 そんなことを思いながら移動をしていた。

 

 オレが大量の影分身を小動物や虫、鳥に変化させて追っていたもの。

 一つ目。それは忍であるのに刀を振り回している連中。

 

 霧隠れの忍刀七人衆だ。

 

 彼らが今、風の国へと接近しているのには訳がある。

 

 それがオレの追っている二つ目。砂隠れの里・贄殿一族のパクラである。

 

 なぜ、霧隠れが灼遁という血継限界の使い手とは言え、彼女の命を欲しがるのかは謎だが狙われているのは確かだ。

 

 その忍刀七人衆と灼遁のパクラが衝突しそうなポイントが風の国の北東。雨隠れの里を有する国と川の国との国境付近ということなのである。

 

 そこでパクラをちゃちゃっと暴漢共からヒーロー気取りで救って、砂隠れの内部に取り入っちゃおう!えいえいおーッ!・・・という作戦なのだ。

 

『我ながら完璧な策だとは思わんか。主様よ』

『主。そんな面倒なことをするくらいなら私たちを敵国の首都か里で暴れさせた方が手っ取り早いのではないかと』

 

 そういうのは上から重明と穆王だ。

 

「いや、穴だらけの策とも呼べない代物だと思うがな。それを採用するオレもオレだけど」

 

 あと穆王。そういう脳筋的発想はやめなさい。

 

 オレの予測が正しければあと数刻もせずに戦闘が始まるんだからな。

 

 

 




連日投稿でした。

明日も更新します。


ヒロイン候補のアンケートの件。
現在の第三次忍界大戦の終了と同時に締め切らせていただきます!

たくさんの参加お待ちしております!


ではまた明日。新名蝦夷守でした~


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066.風と砂と離間の計 其の参

約束通りの更新です。

では、つづきをどうぞ・・・。


 砂隠れのパクラと霧隠れの忍刀七人衆との間で戦闘が勃発したのは太陽が沈みかけてきた頃だった。

 あと少しで黄昏時になろうかという頃合い。

 

 パクラの操る灼遁の数個の火球は彼女を中心としてその周りをぐるんぐるんと舞う。

 

 その様子はまさにどこからでもかかってこいと言わんばかりだ。彼女の表情にも悲壮感というものは微塵も感じられない。寧ろこれから起こる死闘に対して滾っているようにも見える。

 

 戦闘の火蓋を切って落としたのはどちらだったのか。それはわからない。もしかしたらパクラから火球で攻撃を仕掛けたのかもしれないし、もしくは忍刀七人衆の内の誰かが斬りかかって仕掛けたのかもしれない。

 

 ただ、開戦直後から客観的に見ても押されているのは完全にパクラのほうだった。

 

 そりゃあそうだろ。いくら彼女が珍しい灼遁という血継限界をもっているとはいえ、1対7。その7が有象無象のモブキャラなら灼遁の無双フィーバー状態に突入していたかもしれねーけど、相手は腐ってもこの乱世を生き抜いてきた他国にもその名を轟かせるあの忍刀七人衆。勝負として成立しているかも怪しい。

 

 パクラは防御や回避、牽制に忙しい。ただそれも完全にはできていないし、その証拠に彼女の身体につく生傷は時間が経つにつれて増えている。

 それに対して七人衆の方はというと完全に弄んでいる。もちろん皆、ノーダメージである。

 

 もう少し戦況を見てから割り込もうかとも最初は思ってたんだけどなぁ。

 そんな悠長なことを言ってたら本来の目的も果たせずに終わっちまう。

 

 さてと。それじゃあ久しぶりにあのセリフをぶっこむとしましょうかね。

 

 

 

 こっから先はオレの独擅舞台だッ!

 

 

 

 まず手始めとして八門遁甲の第一開門を開く。続けて雷遁を纏い弐式まで展開し、能力を引き上げる。

 そして漏れ出す稲妻(エネルギー)を最小限に抑える。

 

 よし。イイ感じだ。

 これで見た目はほぼそのまま。力を込めた時、込めたところにだけ稲妻(スパーク)が走るようになった。

 

 これにてオレの準備は整った。

 

 そしてオレはただいま絶賛戦闘中のパクラと忍刀七人衆の間に割り込むようにして11次元空間を利用する演算を開始し・・・。

 

《天送身の術》

 

 

 

「呼ばれて飛び出てジャンジャジャーン!」

 

 天送されて、約1秒のタイムラグのあと。

 完全に知覚外からの登場に何の対応もできなかった一人の頭目掛けて、穆王の補助《沸遁・怪力無双》状態をインパクトのその一瞬のみ発動させてダブルスレッジハンマー。

 

 オレに奇襲された敵の身体は衝撃で地面へと沈み込み(というよりは突き刺さり)、直接打撃された頭部はザクロのように弾け飛ぶ。これじゃあまるでリアルB級グロテスクホラー映画だ。

 

「もしかして、お呼びでない?こりゃ失敬・・・とでも言うと思ったか?霧隠れさんよぉ」

 

 パクラ、霧隠れ双方の動きが止まる。

 

「てめぇは・・・」

「木ノ葉の雷皇ッ!!」

 

 七人衆(内1人は既に戦死)は突然現れ味方を屠った人物がオレだと認識した瞬間、一斉に距離を取った。

 

「・・・お前は?」

 

 そう聞いてきたのは唐突に現れ助太刀された状況のパクラだ。

 

「ぼくのことは後でもいいでしょ。ま、今は味方だということだけは覚えておいて」

 

 彼女からしたら、何が何だか。といった具合だろう。

 

 それにしてもオレの登場に、パクラも、そして霧の七人衆も戦意は衰えていないみたいだったが。

 七人衆との間に距離が開いたことによってオレは足元に落ちている忍刀に意識を向ける余裕ができた。

 

「ふーん。これが鈍刀『兜割』ってやつか・・・」

 

 斧状の刃と、巨大なハンマーを持つ、変則的な鎖鎌のような忍刀。霧隠れの里が代々有する忍刀の一振り。

 

「なんだか使いにくそうだな」

 

 うん。まぁ、でもオレには必要ないね。

 何故かって?今さっき言ったように使いにくそうだし、特別特殊な能力があるってわけではないし、何よりオレの美的センス的にはナンセンスだ。

 

 そう判断したオレはポイっと《天送の術》でこの場から鈍刀『兜割』を消す。

 

 別に不必要なものだけれども戦利品ということでオレがもらっちゃっても問題ないだろ?

 決して刀コレクターというわけではないが、コレクションにしてもさ。

 

 捨てるのは勿体ないし、返すのも勿体ないし。

 

 ところで。

 

 オレは意識を七人衆の方へと戻し、問いかけてみる。

 

「この前みたいに尻尾を巻いて逃げてくれたりしないのか?」

「はんっ。前回はこっちが見逃してやっただけだろうがよッ!図に乗んじゃねーよ。このクソガキがァァァ!!」

 

 その男が持つ忍刀、双刀『ヒラメカレイ』によって文字通り飛ぶ斬撃が放たれる。

 

 それが戦闘再開の合図となった。

 

「お姉さん。ヘイト管理はぼくがします。あなたは西側へ移動してくださいっ」

 

 そう早口でまくし立てるようにそういうオレは、パクラの返事を聞くことはせずに次の行動へと移る。

 

《写輪眼》

 

 黒い瞳から淡く紅く発光する瞳へと。

 瞳に浮かび上がるは三つ巴の紋。

 

 オレは迫り来るその斬撃を写輪眼で見極め難なく避ける。

 だが敵の攻撃は当然の如くそれだけで終わるはずもない。

 

 避けたところで接近してきたもう1人に忍刀を振り下ろされる。

 それもオレは回避した・・・。

 

 はずだったのだが。

 

 突如発生した爆破による爆風によって吹き飛ばされる。

 

「なッ・・・んで!?」

 

 そして吹き飛ばされた先にいたのは、断刀『首斬り包丁』を持つ枇杷十蔵。

 

「死ね」

 

 まさに首斬り(・・・)包丁に相応しく。

 狙われたのは頸動脈。

 刃を横に寝かせて振られたその一閃は吸い込まれるようにしてオレの首を刎ね飛ばした・・・。

 

 




みなさん、こんにちは。

新名蝦夷守です。


アニメを見ていない作者は、パクラの口調がわかりません。
それに、忍刀七人衆の口調もわかりません。

看過できないところがあったら優しく教えてくださるか、もしくは『カルタ外伝』でのこのキャラクターの口調はこういうものなんだと諦めてください!!笑


では、次回もよろしくお願いします。ではではー


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067.風と砂と離間の計 其の肆

 陽は沈み。赤い空だった黄昏時(たそがれどき)もすでに過ぎ。今は禍時(まがとき)

 空はもう藍色と化し、もうしばらくすれば深い藍色となり完全に暗くなる。そうなれば大禍時(おおまがとき)逢魔ヶ時(おうまがとき)だ。

 

「はん!ガキが出しゃばるからすぐに死ぬんだよ」

 

 忍刀七人衆の内の一人。双刀『ヒラメカレイ』を持つ男が頭と胴体が切り離されたカルタに向かってそう吐き捨てて、唾も吐き捨てた。

 

「おい。そっちはどうなった!」

 

 その男がパクラと戦闘をしていた仲間に向かって叫ぶ。

 少し離れた場所から、こっちはもう終わったぞ。と、返答がある。

 

「よし。これで任務は終了だな」

「まァ・・・通草野(あけびの)餌人(じにん)は死んだが、2つも任務を同時に終わらすことができたとなりゃァ十分お釣りがくるぜェ」

 

 彼らが水影から直々に受けていた2つの最重要任務。

 ひとつは灼遁使いのパクラの殺害。そしてそれに伴った灼遁の解析。

 そしてもう一つが木ノ葉の雷皇・羽衣カルタの暗殺。

 

「釣りは来てねぇだろ」

 

 おーい!串丸をこっちに寄越してくれ!人体情報抜き取って処理しろ!

 

「おら串丸。あっちに呼ばれてんぞ。さっさと行ってやれ」

 

 そう言って男は振り返るがその視線の先に先程までは居たはずの栗霰串丸はいない。

 

 あれ、あの野郎どこいきやがった。そんな思考をしたか、していないか。

 

「んなッ・・・」

 

 絶句する男。

 その男の視線の先には。

 

「おいおいなんだよ。その顔は」

 

「オレ殺したとでも思ったか?俗に言う『お前は確かに死んだはず・・・ッ!!』ってか?」

 

「ま、時間帯も時間帯だしな」

 

「それにしてもまるでお化けか、妖怪か、物の怪。怪異にでも会ったような、いや遭ったかのような顔だな」

 

 羽衣カルタ。

 

 先程、その男が唾を吐き捨てた相手。

 

 つまり、オレがいた。

 

「そんなお前にはこの言葉を送ることにしよう」

 

 な~んちゃって。

 

 ほら、どうしたベジータ。笑わないのか?

 

 

 

 

 

 羽衣カルタの復活。

 敵サイドからの視点でいうと某三大宗教の内のひとつである救世主(メシア)よろしくそういうことだが、オレからの視点で言わせてもらうとただの催眠術。まやかし、ミスディレクションみたいなものだ。

 

 七人衆がオレだと思って攻撃して殺していたのが彼らの仲間。長刀『縫い針』使いであった栗霰串丸だったのだ。

 

 完全なる同士討ちというやつだ。

 

 双刀使いの男が唾を吐き捨てた相手も栗霰串丸。

 

 オレの目の前に残っているのは断刀『首斬り包丁』使いの枇杷(びわ)十蔵(じゅうぞう)と爆刀『飛沫』使いの無梨(むなし)甚八(じんぱち)。それから双刀『ヒラメカレイ』を使う男の3人のみである。

 

 ちなみに大刀『鮫肌』使いの西瓜山(すいかざん)河豚鬼(ふぐき)と雷刀『牙』使いの黒鋤(くろすき)雷牙(らいが)・・・と思われる男はパクラを追って目視はできない程度に離れたところで戦ってる最中だ。

 

「このオレがあの程度で死んだだと?だとしたら考えが甘い。それに写輪眼を相手にするときは目を見ちゃいけませんって習わなかったのか?」

 

 この場に残る七人衆はようやく事態の急変に気づき、臨戦態勢をとる。

 

「つーことはもしかして目が合ったあの瞬間から俺らはお前の幻術の中だったってことかよッ!」

「落ち着け。数では3対1だ。写輪眼相手でも問題はない」

「てめぇは腐っても木ノ葉の雷皇だかんなァ。負けても3体1だったからなんて、言い訳すんなよォ!?」

 

 なんか、それに似たセリフどっかで聞いたことような・・・。

 

 あぁ・・・あれか。

 

《影分身の術》

 

 オレはチャクラを練って十字の印を一つ結んだ。

 ボフンという音と煙を立てながら9体の影分身が出現する。

 

「腐ってもお前ら忍刀七人衆はこの乱世を生き抜いてきた猛者だからな。3対1でやらせてもらうとしよう」

 

 

 

 オレの影分身との死闘を現在進行形で繰り広げている枇杷十蔵と無梨甚八と双刀『ヒラメカレイ』使いの男を放り出してオレはパクラが西瓜山河豚鬼&黒鋤雷牙(仮)と戦闘しているところへと移動していた。

 

 いわゆる応援に来たというやつだ。

 ちなみにこの場合の応援とはチアガール的な意味合いの、又、甲子園での吹奏楽部や全校生徒がアルプススタンドで応援するという意味合いではないので悪しからず。

 

 パクラの前方には西瓜山河豚鬼。後方には黒鋤雷牙(仮)という状況で善戦しているにしろこのままだと敗戦は濃厚といった戦況だった。

 

「お待たせしましたパクラさん。どうやら押され気味みたいですが、加勢しましょうか?いや、加勢しますね?ちなみに返事は聞いてませんよ」

 

 オレはパクラと背中合わせになるような格好で着地した。

 ただし、身長差的に背中合わせにはならない。・・・小さいとか言うな。地味にコンプレックスなんだよ。この歳の平均身長に満たないことがなっ!

 

 こほん。

 オレの将来的にはぐんと伸びる(はずの)身長のことはさておき。

 

 そんなオレの勝手な態度に苦笑しつつも、助かると受け入れてくれる大人お姉さんパクラ。

 

 その包容力とお胸から溢るる母性。まさに年上キャラの鑑というやつですねっ!パーペキです。

 

 

 




ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
新名蝦夷守です。

ここ2日間、作者は高熱にうなされていまして・・・ストックが切れました。
次回更新は未定です。

感想、評価等ありがとうございます。とても嬉しいです。(モットクレモットクレ

ではでは、今回はこの辺で。


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068.風と砂と離間の計 其の伍

なぜ、こんなことになってしまったのか・・・。

高熱が治ったテンションで、勢いのみで書き上げたら、こうなってしまった。

おかげで今日も更新はできたのですが・・・。

皆様方。お覚悟をっ!!


 以上、回想終わり。

 よってこの出来事から2週間後あたりになる現実へと話を戻すことにしようと思う。

 

 え?結果はどうなったかって?それに戦闘描写もねぇぞってか?

 

 んなもんどーでもいいんだよ。ちっちゃいことは気にすんな。男はでっかく世界征服することだけを考えてりゃあいいのさ。

 あとはでっかいパクラ様のお胸のこととかな。

 

 まったく、しょうがないな。

 でもまぁ、権利を行使する前に義務は果たすべきだろう。

 

 では。細かい戦闘の描写は割愛させてもらうが、結果とその後に起こった出来事くらいは語っておかなくてはならないだろう。

 一応これでも語り部なんでね。

 

 まずは枇杷十蔵、無梨甚八、氏名不明の男はオレの影分身9体の手によって片付けられていた。

 戦闘はどうやら激しかったようで周辺はめちゃくちゃになっていた。

 影分身も最後は3体しか残ってなかったしな。

 

 そしてオレ本体がパクラと共同戦線を張った対西瓜山河豚鬼&黒鋤雷牙(仮)戦はというと。

 当初はオレは黒鋤雷牙(仮)。パクラは西瓜山河豚鬼を担当していたのだが、雷遁を吸収してしまう雷刀『牙』。チャクラを吸収してしまう大刀『鮫肌』では相性が悪く(正確に言えばオレは雷遁が使えなくなったくらいではなんの問題もないが、一応年長者のパクラに気を使ってそういうことにして)対戦相手の交代を持ちかけた。

 パクラもこのままではジリ貧だということをわかっていたのか、すぐさま交代。

 

 その後が可哀想だった。

 

 主に、西瓜山河豚鬼が。

 

 刀であるのにも関わらず、謎に意志を持つ大刀『鮫肌』が突然寝返ったのだ。オレに。

 

 原作でも確かに所有者だった干柿鬼鮫を裏切ってキラービーに懐いて?いたが・・・まさか同じような展開になろうとは思ってもみなかった。

 

 河豚鬼がノリノリで「この大刀『鮫肌』は斬るのではなく、削るッ!」とかなんとか言いながら、オレに向かって振り下ろして来たのだが、何故かオレを避けるようにして『鮫肌』はグニャリと曲がった。そして、地面に突き刺さる。

 そんなことは今までは一度も無かったようで、河豚鬼も驚き、そして動揺していたようだが、テイク2と言わんばかりに同じように攻撃をしたら、またしてもグニャリとオレを避けるようにして曲がって、地面に突き刺さり、握っている柄の部分から『鮫肌』の棘?が飛び出し、河豚鬼は思わず『鮫肌』を落とした。

 河豚鬼が地面に落としたことによって晴れて自由の身となった『鮫肌』は、もぞもぞとまるで尺取虫みたいな動きでオレのところへと来た。why?何故だ。オレ『鮫肌』に好かれるようなことしたか?確かにそこの巨漢よりはチャクラ量は多いが。お前にはまだ味見の一口たりともオレのチャクラはやっとらんはずだ。

 

 それからというものは完全なるワンサイドゲーム。

 忍刀を持たない忍刀七人衆なんざ、ちょいとばかし強い上忍(というのはオレの主観なので異論は認める)でしかない。

 というわけで、河豚鬼を難なく倒した後、忍刀七人衆史上(恐らく)最弱の男。黒鋤雷牙(仮)も撃破。

 とりあえず転がっている忍刀を回収していると例のパクラの彼氏様が満を持して登場(満を持し過ぎだ)。

 

「ふっ・・・ヒーローとは遅れてやってくるものさ」

 

 などと戯言を抜かしながら。

 無駄にチャクラを使ったエフェクトを加えながら現れたのは、砂隠れが誇る赤髪の天才傀儡使い。傀儡部隊の天才造形師。

 つまり、あの赤砂のサソリだった。

 どうやら厨二病を現在進行形で拗らせているらしい赤砂のサソリだった。

 

 ・・・あれ?パクラってもしかして男の趣味悪い??

 

 そんな疑惑が生じた瞬間でもあった。

 

 恐らくパクラはその魅力的で魅惑的で、いやむしろ蠱惑的と言ってもいいようなバディに反して20歳(はたち)を超えておらず、10代後半といったところだが、サソリは心も身体も(身体はまだ傀儡じゃなく生身かもしれないが、心は確実に)永遠の14歳。いや、本当の年齢は知らんが。

 ただ精神年齢の差の開きは見た目以上に大きくありそうなカップリングだった。

 未来のサソリの旦那の黒歴史になりそうな現在のサソリだった。

 

 そのサソリは、どういうルートでパクラの危機を知ったのか。もしくはたまたま偶然パクラのフェロモンを嗅ぎ付けてやってきたら途中でパクラが戦闘していることに気がつき急いで駆け付けただけなのかは知らないが、オレがパクラに対して状況の説明をしていたら、パクラの隣で聞いていたサソリが激怒した。

 

「つまりは(うち)の長がこの俺の女を謀殺しようとしたってことか?」

「まぁ、端的に言うと」

 

 そういうことになるね。と、オレが言い切る前にサソリは少し斜に構えながらこめかみに人差し指と中指を当てながら(そのポーズがかっこいいとでも思っているのだろうか)次の言葉を言い放った。

 

「世界は残酷だ。これだから人間は・・・。やはり間違っているのは俺の方ではなく、世界の方だったようだな。こうなれば俺ら3人は一蓮托生の運命共同体だ。行くぞ。修羅の道へ」

 

 うん。何を1人で自己完結しているのかオレにはよく理解できないが、決してオレは運命共同体ではない。

 

「悪いパクラさん。今の翻訳してくれ」

 

 というオレに、パクラは苦笑しながらも答えてくれた。

 要は3人でパクラを殺そうとした現風影と里の上役たち。それから水影を倒しに行くぞ。と言ったらしい。な、なるほど・・・。

 

 そういうわけで。

 

 こうした成り行きでオレは赤砂のサソリの一行に迎え入れられて砂隠れの里内部に侵入。その後は、当時の贄殿一族の長であったパクラの父と現在の長となったパクラの兄に状況を話す。しかしながら当初は半信半疑といった様子だったのだが(当然のことだろう)、贄殿一族虐殺事件が起こり、パクラの父は死亡。兄は間一髪で生き残りオレに復讐の手助け助太刀を願い、オレは承諾。そして現在。つまりはこの出来事から約2週間後の地下決起集会へと場面は戻る・・・。

 

 これで本当に今度こそ回想はおしまい。

 

 

 




作者のことは嫌いになっても・・・

サソリのことは嫌いにならないでください!!


以上!次回更新は明日の予定です。


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069.風と砂と離間の計 其の陸

このサソリは黒歴史。


「風影とは俺がやる。異論は認めないぞ。人の子の分際でこの俺の女に手を出したこと・・・万死に値するッ。彼奴には死ぬよりも惨たらしく、永遠に続く無間地獄を味合わせてやる」

 

 砂隠れの秘密の地下集会場で、贄殿一族主導の決起集会が開かれ、同盟者として敵国の木ノ葉の忍であるオレこと羽衣カルタが紹介されたことにより場は一時的に多少荒れはしたが想像していたよりも早く収束していた。

 パクラの兄さん。お主はもしや口先の魔術師か。

 

 そんなことを思っていたら、それまでは全てを悟ったようなニヤケ顔でクールに澄ましていたサソリが急に真顔となってからの第一声が冒頭のそれだった。

 

 みんな固まってしまっていた。

 そして再起動が早かった者から、いくらお前ほどのものだとしても歴代最強の三代目風影に1人で立ち向かうのは無謀が過ぎると止めに入るが、当の本人であるサソリは聞く耳を持たない。

 その後も「俺の右腕が」とか「封印されし魔界の王が」とか「疼く・・・疼くぞォ」とか。

 終始、厨二病の妄想(サソリワールド)を展開し、周りの大人たちを大いに困惑させていたサソリに痺れを切らした数人が最終手段として、パクラちゃんも何とか言ってくれ、とサソリの説得に協力させようとするが、これまた当の本人であるパクラのサソリを見る目は完全にハートマークとなっていた。乙女っていた。

 

 うん。お前らお似合いのイイカップルだよ。

 

 ただオレにこれだけは言わせてくれ。

 

 だめだこりゃ。

 

 

 

 反乱を起こすXデーは、2日後の寅の刻。

 つまり、午前4時。日が昇る前。

 反乱軍は一斉に蜂起し、同時多発的に里の重要機関を制圧することと上役の捕獲捕縛、もしくは殺害することを並行して行うまさに電光石火の作戦。

 

 個人的に作戦名は『風火陰雷』というのはどうだろうか。と思っていたりする。

 元ネタはもちろん、孫子の兵法だ。

 

 其疾如風、侵掠如火、難知如陰、動如雷霆。

 直訳すると、其の疾きこと風の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。といったところだろうか。

 

 ・・・前言撤回。これはやめておこう。今のは全部妄言だ。ただサソリの毒に影響されただけなんだ忘れてくれ。

 

 話を変えよう。Xデーまでのオレの動きだ。

 

 オレは砂隠れの里、全ての住人の動きを監視するために雨を降らせることにした。

 原作でペイン天道がやってた《雨虎自在の術》だ。あれはなんも輪廻眼の固有忍術なんかじゃあない。とは言っても普通の人じゃチャクラ量的に使えない代物だけどな。

 ただ、ここは雨隠れの里のように湿度は高くない。高くないという次元(レベル)ではない。砂漠だ。皆無だった。

 そこでゼロから雲を作り続けるのは億劫だということで水脈を引いてきたんだ。風の国の首都にある淡水湖からな。原理は原作でヤマトがやっていた《水遁・滝壺の術》の応用だ。ただそれをより大規模にしてやってやっただけだ。

 それによって風の国の首都にある淡水湖だった場所は1日も経たぬうちに枯れてしまいただの大きなクレーターと化し、逆に砂隠れの里は周りを大きな湖で囲まれてしまった。

 うん。明らかにやり過ぎた。反省はしている。しかし後悔をしているかは怪しいがな。

 

 やってしまったものは仕方ない。これで湿度の低さを気にしないで雨雲を作り続けられるじゃないか。ということで納得したオレは早速《雨虎自在の術》を発動させて情報収集に励むのであった。

 

 

 

 そんなこんなで反乱当日の寅の刻ちょい前。

 

 オレの当日与えられた役割は三代目風影とは自分が戦うと一歩も引かなかったサソリの補助(サポート)のみとなった。

 こうなった要因としてはいくつか考えられるのだが、サソリ1人じゃ流石に歴代最強と謳われる三代目風影相手じゃ時間稼ぎもままならないだろう。だったら、部外者である木ノ葉の雷皇もくっつければ多少の保険にはなるだろうし、そのまま木ノ葉の雷皇も死んでくれたらラッキー。といったところだろうとオレは考えている。

 まぁ、それでも別にいいんだけどね。オレは。

 

「いいかカルタ。お前は絶対に、手を出すな。三代目風影(あいつ)は俺の獲物だ」

「はいはい。わかってるよサソリ。ま、負けたら骨くらい拾ってやるさ」

「ふんっ。そんな可能性はこの地球(ほし)で天変地異が起こったとて万が一にも無い」

「あぁそうかい」

 

 一体どこからその自信は湧き出て来るのだろうか。

 まったく。厨二病ってやつはこれだから恐ろしい。

 

「Ladies and gentlemen!さぁ・・・稀代の天才操演者。この俺。赤砂のサソリによる人形喜劇の始まりだぜェ」

 

 こいつ。戦闘が始まるまで敵に勘付かれないように静かにするっていう思考回路は存在しないのか?

 

「オレの集めた情報が間違っていなければ風影は昨日も今日も家に帰らず執務室で残業だそうだ。徹夜でな」

 

 サソリはオレの話を聞いてるのか聞いていないのかわからないが、傀儡に仕込んでいる毒刀を月光に照らしながら眺めて恍惚の表情を浮かべている。

 うん。やばいやつだね。

 これは関わり合いにならない方がいい類の人種だね。

 それともまだ刀身を舐めていないだけマシとでも思っておこうか。

 

 オレはそんなことを感じながら作戦開始の合図を待っていた。

 

 

 




次回。戦闘に入るだろうと思います。

さぁて。ぶっとびサソリの活躍はあるのか。どうなのか。


明日も更新できるようにがんばりますー

ではでは、新名蝦夷守でした。


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070.風と砂と離間の計 其の漆

お気に入り登録、評価、感想、活動報告でのアンケート。
ありがとうございます。


 今回の件で得た教訓は、復讐の物語にハッピーエンドはない・・・っていうところだろうか。

 

 結論から言うと。

 反乱自体は成功した。

 

 但し、その体制は整えられる前に3日で崩壊したというオチ付きで。

 

 順を追って説明しよう。

 

 まずは三代目風影VS赤砂のサソリ。

 反乱軍が、各重要施設を爆破したことを合図にオレが結界を張り、その内部で戦闘が行われた。

 ちなみに結界を解除する方法は既に昨日のうちにサソリに教えてある。もし仮にオレが戻って来るよりも先に戦闘が終わっていたなら勝手に出られるようにな。

 

 オレはその場から離れ、砂隠れの里郊外にある寺院へとひとり急ぐ。

 場所の特定はもう前日までに終えており、《座標天身の術》でひとっ飛びだ。

 理由はただ一つ。尾獣一尾である守鶴が封ぜられている茶釜を人知れずに確保するためだ。

 到着してからは感知妨害結界を張ってから浸入。

 この寺院が火の国で言うところの火ノ寺。つまり風の国なら風ノ寺か?というところであってもオレのことを止められるほどの猛者はいなかった。

 忍僧たちを《涅槃精舎の術》一つで一網打尽にして無力化したオレはそのまま最奥の間まで直行して茶釜を確保。

 置き土産と言ってはお茶目だが、代わりにと言っては何だが『大魔王封じ』と刻印されたお札が張ってある旧型の電子炊飯器を置いてきた。

 もちろん、言うまでもないことだが中にピッコロ大魔王が入っているなんてことはない。

 ただの粗大ゴミだ。

 

 一尾の入った茶釜を無事回収したオレはサソリの元へと舞い戻る。

 その時の勝負はまさに佳境。最終局面といった様相だったのだが、結果はサソリの辛勝。

 ボロ雑巾のようになりながらも半分絡繰と化している身体に鞭を打って立ち上がるサソリに肩を貸す。

 

「お疲れ。おい、生きてるか?」

「・・・我思う故に我あり」

 

 オレの問いに対して答えにはなっていない返答が返って来た。が、キャラを守る余裕がある。どうやら平常運行らしかった。つまり、問題ないということだろう。

 

 しかし何故にデカルト・・・。

 

 オレには哲学はわからんぞ。

 

 それはともかくとして。

 

 オレは完全に事切れている風影とサソリを回収して、一応拠点として使っている地下集会場へと運んだのであった。

 え?戦闘描写はだって?オレは見ていないからな。悪いけど語れないぜ。もし気になるならサソリに直接嘆願してくれ。気が向いたら話してくれることもあるかもな。

 

 そして、他の上役たちは反乱軍の反乱軍による反乱軍のための基準で追放されたり、殺害されたり、これからの里の運営で協力することを条件に許されたりしていた。

 

 そんなわけで夜が明ける前に始まった反乱は朝が始まりきる前に終えることができたのだった。

 

 戦勝会を開く間も無く、反乱軍は砂隠れの新しい体制を整えていくわけだが、里の一般市民や大多数の人からしてみれば彼らの行動はただのテロリスト。反逆者たちのならず者集団でしかなかった。

 その結果、何事もすんなりとは進まず、里の状況を知った一部の戦場へ赴いていた忍たちが、日本史の有名な1ページである羽柴秀吉が行なった中国大返し並みの速さで里へと戻り、反乱軍と衝突。

 

 一般市民は後の四代目風影となる羅砂率いる部隊を英雄として担ぎ上げて、反乱軍は一瞬でばらけてしまった。

 

 反乱軍に組みしていた一族でも投降すれば、ひどい扱いはしないと羅砂が宣言したこともあり、本当に一瞬だった。

 皆、民衆の敵にはなりたくなかったのだ。

 

 しかし、反乱軍の首領と言える贄殿一族や三代目風影を屠ったサソリは大人しく投降したとて許される未来はない。

 

 そう考えたパクラの兄、贄殿一族の現当主は自分が里に残り時間稼ぎする間に妹のパクラやサソリ、そして最後まで付いてきてくれた者たちへと里外、国外へと脱出することを提案。

 オレは時空間忍術を駆使すれば反乱軍の残党と呼ぶにはあまりにも少ない数なら全員を飛ばせるとは言ったのだが、贄殿の当主は頑としてそれは受け入れなかった。

 最低でも自分はここで死なないと羅砂の部隊は止まることが出来ない、と。

 忍界大戦中の今、悪党となった自分の死体が見つからないと他国に付け込まれる隙をつくる、と。

 

 そしてオレ達は最期まで自国の里の未来を案じていたパクラの兄貴を置いて、砂隠れの里を、風の国を後にした。

 その後、砂隠れの里に残って彼の身に起こったことは想像に難くない。

 

 

 

 オレはとりあえず、片手の指では数え切れないがかと言って二桁にも満たない反乱軍残党と共に火の国領内へと飛んでいた。

 ここまで来れば追っ手は来ないだろうと、仮に体裁を整えるために討伐隊が組まれるにしてもここまで捜索範囲を広げるにはあと数日はかかるだろうから今しばらくは安全だと言えた。

 

「それでこれからどうする?っていう話なんだが、完全に砂隠れの抜け忍としてフリーランスの忍びをしてもいいし、どこかの国や隠れ里に匿ってもらうもいいし、なんならこれを機に忍びを辞めたっていい」

 

 ・・・って、確かに言ったはずなんだけどなぁ。オレは。

 

「「「「一生ついていきます!!カルタ様ッ」」」」

 

 お前らはいつの間にオレに忠誠を誓うようになったんだよ・・・。

 サソリとパクラにも聞くが、オレについてくるとのこと。

 まぁ、犯罪者集団に入られるよりは断然マシだろう。

 とりあえずこの件は、三代目火影にお願いする案件として一時保留とすることにした。

 

 

 

 こうしてオレの受けていた任務。

 風の国と砂隠れの里を引き離す作戦。離間の計は終了した。

 

 風の国は首都から水源地がなくなったことにより、後に遷都を余儀なくされた。

 そして砂隠れの里と里を囲む大きな淡水湖の湖岸には人口が流入するようになる。

 このことをきっかけに風の国は砂隠れの里に対して軍事費を渡す余裕はなくなり、徐々に兵力を戦場から撤退させていくこととなった。

 将来的には国と里の立ち場が逆転するということが起こるのだが。それはまだ先の話。

 

 風の国と砂隠れの里が忍界大戦のプレイヤーから姿を消すことによって、第3次忍界大戦もいよいよ終わりが近付いてくるのであった。

 

 




ほぼほぼ地の文での説明回が続くこの頃。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。新名蝦夷守です。

第3次忍界大戦もあと数話で決着の予定です。
それまでは地の文説明も多めになってしまいそうですが、、、

それからヒロインアンケートもそろそろ終了です。
自分の好きなキャラ。原作では不憫な扱いだったキャラなど書いてくださいね。全部は反映できないのは申し訳ないですけど。


では、また次回もよろしくお願いします!


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071.負の連鎖の終着点 前編

 忍び五大国による統治が揺らぎ、各国の国境付近において、小国や忍びの隠れ里を巻き込んでの大小様々な軍事的な衝突が頻発し、長引いていた。

 そして長引く戦争は忍び五大国である火の国も例外なく大きく国力を落としていた。

 その火の国の軍事力たる木ノ葉隠れ里にも多大なる戦死者を出して。

 

 ---第3次忍界大戦---

 

 その足掛け4年にも渡る激しい戦いの日々は名もなき多くの忍びたちの犠牲をもって終結した。

 そして同時に。

 名だたる英雄たちを。

 語り継がれる数々の伝説を残したのである。

 

 

 

 まったく・・・戦争というものは、人間(オレたち)生命(いのち)をゴミのように無視して成立する。

 そんなクソったれな毎日にも終わりはあった。

 

 第3次忍界大戦の終戦した日。

 つまり、後には終戦記念日やら戦勝記念日と言われることになる日。

 

 その日、オレは自分の身長の倍以上ある大刀『鮫肌』を担ぎながら、対岩隠れ戦線の最前線で敵国の動きを監視していた。

 その当時はまだ停戦協定には合意していたため、戦闘行為自体は行われていなかったが、現場には双方ともに主戦力の大多数をこの戦線に投入していたこともあってピリピリとした雰囲気(ムード)が漂っていた。

 そしてその停戦協定で双方が双方の動きを監視するために四人一組(フォーマンセル)の小隊を5小隊20名ずつ、ローテーションを組んで相手の顔が見える距離まで近づいて立っていた。

 イメージとしては、国境警備隊がバリケードの前に銃を持って立ってお互いに睨み合っているような感じだ。まぁ、この世界に銃はないが。

 

「それにしてもお前が前線に出てきてると分かっただけで、岩隠れ(あちらさん)の緊張感が桁違いに上がるなぁ」

「そうですか?」

 

 この敵とお見合い状態になる相互監視のローテーションには数時間に1回。1回は約1時間ほどでオレの出番は回ってくるのだが。

 

「あぁ。逆にお前が少し後方に下がって見えなくなるとホッとした顔になる。・・・まぁ、俺も敵側の人間ならそうなると思うがな!」

 

 何分(なにぶん)、オレがいるときといないときの相手の緊張具合や態度の差はオレにゃあわからない。

 ちなみにオレの隣で話し相手になっているのは、いつの日かの支援物資輸送任務の際にお世話になったイブという男だった。

 あれから3年。

 久しぶりにあったオレを見て、あの時と変わらない態度で絡んで来たのだった。

 それにしてもイブの声が大きいから会話は全部筒抜け。

 敵さんの表情も微妙な顔になっている。

 

「いや、しっかしなぁ。土影が自らこの前線に出て来たときはもうお終いかと覚悟したもんだが、まさかカルタが追い返してしまうなんざ。びっくりぽんや〜」

「ははっ。びっくりぽんなんですか」

 

 木ノ葉も岩も最終決戦はこの戦場と言わんばかりに戦力を結集させていた停戦前。

 両天秤のオオノキ。どの情報網にも引っかかっていなかった三代目土影が突如として戦場に現れた。

 己のチャクラの殆どをつぎ込んだと思われるほどの巨大な《塵遁・原界剥離の術》を発動出現させ、木ノ葉隠れの里が存亡の危機になるほどの被害が出る直前まで行ったのだった。

 

「そりゃあそうだぜ。だって相手はあの土影『両天秤のオオノキ』だぜ?あのわけわからん術は触れるだけで存在が消されちまうって伝説のやつだ。それをお前は真似して相殺させちまったんだからよ」

 

 オレは咄嗟の判断で右眼に宿った万華鏡写輪眼の能力。《天忍(アメノオシヒ)》を使ってコピー。それを使ってオオノキの原界剥離の術を消し飛ばしたのだ。

 ただおかげさまで万華鏡写輪眼がバレてしまったがな。

 

「それも含めてだよ。お前がうちはだろうが羽衣だろうが関係ない。伝説的な英雄だってことはな、ただの事実だ」

「やめてくださいよ。そんな大げさに伝説だとか英雄だとかは。土影には結局逃げられましたし。恥ずかしいじゃないですか」

「大げさなんてことはないさ。現に木ノ葉の未来を守ったんだ。一体、幾つの命を救ったのかなんて数え切れないぜ」

 

 お前の勇名の前じゃ、あの伝説の三忍や木ノ葉の黄色い閃光の名も霞んじまうな。と、続けるイブ。

 

「次の火影はお前かな」

「無理です。執務室にじっとなんか座っていられません」

 

 それに次の火影は波風ミナトに決まってるだろ。

 ナルトの父ちゃん差し置いて火影になるなんて嫌だよ。てか、それ以前にオレまだ7歳。元の世界だと義務教育期間に突入したばかりな。

 

 そんな会話をしていた数刻後には土の国と岩隠れの里との間に平和条約が締結され、前線基地には撤退命令が届くのであった。

 

 

 

 第3次忍界大戦の前期。

 木ノ葉の雷皇と呼ばれたひとりの少年というにも幼すぎる少年がいた。

 

 その少年は数々の戦場を転戦し、人々の記憶と。

 そして、歴史にその名を刻み。

 

 大戦も後期、末期に入ると敵国からは死神と畏れられた。

 

 雷皇。死神。雷神。現人神。

 

 人々はこのように彼のことを呼ぶようになっていたが、彼の本質はそこではない。

 

 転生者。

 

 この事実は彼のみぞ知る・・・。

 

 

 



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072.負の連鎖の終着点 中編

お気に入り登録ありがとうございます!!


 第3次忍界大戦の終結。

 

 それは忍び五大国と呼ばれる強大な軍事力と広大な国土を誇る主要五か国が戦争を行っていた相手国との間に平和条約の締結か、もしくはその一歩先へと踏み込んだ同盟関係を結ぶことによって実現された。

 

 火の国と木ノ葉隠れの里だけに限って言うと今回の戦争終結においては、風の国・砂隠れの里と雷の国・雲隠れの里との間に正式に対等な関係での同盟関係を結び。

 早々に停戦条約を結んでいた水の国・霧隠れ里と最後まで戦争を戦い抜いた土の国・岩隠れの里とは停戦条約から一歩進んだ平和条約を締結したことによって終戦を迎えた。

 

 そして火の国の領土拡大は、この戦争の前期には林の国を併合し、南北に分けて統治。北半分を火の国・林藩として、南半分を火の国の大名家直轄地としたことと。

 他にも、もともと同盟国という名目で庇護下(半属国扱い)においていた火の国の北側にある田の国・湯の国。東の海上にある波の国。そして南側にある茶の国を平和的に併合し、それぞれ火の国の藩とした。

 

 第三次忍界大戦初期から末期まで、火の国・木ノ葉隠れの里、風の国・砂隠れの里、土の国・岩隠れの里という三大国間の衝突の舞台となった草隠れの里と草隠れの里を有していた国は支配階級の行方がわからなくなったことと国土の焦土化によって実質的に消滅。

 これにより、雨隠れの里を有する国が草隠れの里の南半分を併合。滝隠れの里を有する国が草隠れの里の北半分を併合し、それぞれ火の国の庇護下に入ることとなり、実質的には火の国の自治区として体制を変更した。

 

 他に原作と異なる国境線となったのは雷の国だ。

 雷の国は、雷の国から見て南西にある島国であった元渦の国全域と西の火の国との間にある霜の国東部まで領土を拡大。

 他三大国はこの戦争によって、原作通りの国境線まで勢力を進出させていた。

 

 

 

 終戦の日となった土の国・岩隠れの里との平和条約を締結した日から早三ヵ月。

 

 三ヵ月の間に多くの戦後処理を急ピッチで粗方を終わらせた木ノ葉隠れの里は、この戦争で多くの犠牲を払ったこともあり、戦勝記念と同時に自国、自里のために戦い散っていった英霊たちを弔うための式典が開催されていた。

 

 来賓として参加しているのは火の国の国主たる大名本人・・・ではなくその弟君。

 火の国の各藩の藩主たち。

 そして、火の国に庇護される形となり傘下に入った雨隠れ自治区と滝隠れ自治区の長。

 

 主催者側。つまりは木ノ葉隠れの里のトップは先日、代替わりが行われ現在は四代目火影となっている。

 それに伴って、各組織もトップだったり編成だったりが変わり、オレも役職を持っていたりもするのだが、それは今話すべきことではないだろう。

 

「次に雨隠れ自治区代表の弥彦殿」

 

 司会進行役をしているのは火影の職を辞して、今はもう先代となった三代目火影・猿飛ヒルゼン。

 三代目に促され、民衆の前に立つのは雨隠れ自治区のトップに若くしてなった弥彦。

 彼の一歩下がった両隣には輪廻眼の長門と独自の紙忍術を得意とする小南が護衛として寄り添っていた。

 

「この度の戦争で亡くなった全ての犠牲者の方々に祈りを・・・」

 

 その言葉と黙とうから始まった弥彦の話は、木ノ葉隠れの忍びである戦死者や他国の忍びである戦死者のみならず、一般の民衆がこの戦争では多く犠牲になっている現状を伝えることとなった。

 木ノ葉の民衆はその話に耳を傾けるとともに、その犠牲を最大限に無駄とすることなくこれからの平和を長く、できるものであるならば永久に続く努力をしていこうと決意するものとなった。

 

「私たち3名は、そちらにおられる四代目火影様に師事していたことがあったお蔭で、今この命があります」

 

 そう言って、白髪で長髪。遠目からでも大柄と分かる大男。自来也を見る。

 

 四代目火影は原作とは違い、波風ミナトではなく、その師であり伝説の三忍がひとりである自来也となっていた。

 きっとそのことも良いように作用して、雨隠れの里が自治区として火の国に加わったのだろう。

 

「四代目火影様が木ノ葉の長である限り、我々は安心して生きていけるでしょう。しかし、それに胡坐をかいていてはいけません。この平和を守り、維持するためには自国や自里のことのみを考えるのではなく、他国や他里、世界とともに協力していかなくてはなりません。そのためには対話が必要となるのです。そのことをよくわかっていらっしゃる火影様がいる限り、世界平和のため、我々雨隠れは火の国とそして木ノ葉隠れの里に惜しむことのない協力を致しましょう」

 

 この式典の式辞の中で、弥彦は雨隠れの中枢を担う人物、長門について輪廻眼の伝説とともに紹介した。

 

 赤髪の長門は初代火影、二代目を輩出した千手一族の遠縁。うずまき一族の末裔であると。

 そして、輪廻眼をもつ彼は六道仙人の生まれ変わりでもあると。

 

 それは火の国と木ノ葉隠れの上層部に向けたメッセージと捉えられた。

 要は、自治区の運営にあまりうるさく口出ししてくるなと。

 

 まぁ、そうとは知らない里の民衆はそんなすごい人が身内になるだなんて。と、興奮気味であったのだが。

 

 この式典で輪廻眼の長門が『うずまき』一族であるということが忍び世界へと一気に認知が広がり、その影響を受けてか忍界各地でうずまき姓復興の動きが始まったこともついでながら追記する。

 

 

 

 こうして火の国と木ノ葉隠れの里は復興への足取りを加速させていくのであった。

 

 

 



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073.負の連鎖の終着点 後編

今回の話で戦争篇終了でございます。

アンケートのご協力ありがとうございました。


いつもよりちょっぴり短いですが。
ま、最後は平和的にね。


では、どうぞー


 時は木ノ葉隠れの里での式典から遡ること約二ヵ月前のこと。

 

 この世界での唯一の永世中立国であり、そしてそれと同時に現代に唯一残る侍の国・・・鉄の国。

 

 その地に忍び五大国の各隠れの里の里長。つまりは影たちが集結していた。

 

 五影会談。

 

 参加資格があるのは現職の影とその護衛2名の計3名のみ。

 そして司会進行役の鉄の国から侍大将とその護衛2名。

 

 オレは四代目火影となった自来也の護衛としてその会議に参加していた。

 今のオレの直属の上司である大蛇丸とともに。

 

 火の国・木ノ葉隠れの里。四代目火影、自来也。

 護衛には伝説の三忍のひとりである大蛇丸とオレこと羽衣カルタ。

 

 風の国・砂隠れの里。四代目風影、羅砂。

 護衛は2名ついているが名前はともに不明。ひとりは傀儡使いであろう。

 

 雷の国・雲隠れの里。四代目雷影、エー。

 護衛にはキラービーを連れてきており、もうひとりの方は不明。

 

 土の国・岩隠れの里。三代目土影、オオノキ。

 護衛には黄ツチと赤ツチを連れている。

 

 そして五影たちは自分の傘を前へと置く。

 

「この度は火影殿の呼びかけによって、今ここに五影のうち水影殿を除いた四影が集った。この場を預かる鉄の国、侍大将ノブツナと申す。これより五影会談を開催する」

 

 水影の参加はなかったが、これ以上待っても来ない。ただ悪戯に時間を浪費するだけだと。皆が感じ始めたころ。それを見計らったノブツナが会談の進行を始めた。

 そしてこの会談の開催を望んだ張本人である自来也が第一声を上げる。

 

「今回集まってもらったのは他でもない。今後の忍び世界を含めた全世界の平和についてだのう」

「世界平和についてだぁ?そんな理想論に付き合わされるためにこの忙しい中呼び出されたってのか?」

「お互いに武力を高め合い、抑止し合うことによってのみ戦争のない期間は訪れる。それを怠るところから戦争が始まる。ただそれだけであろう」

 

 が、その自来也が上げた議題に対して無意味と言わんばかりの反応をする影たち。

 

「なあに。ワシだってただただのほほんとした平和が来るとは思っちょらん。戦争という武力衝突は外交カードの上での最終手段にしようという取り決めをしようというだけだ。いままでみたいなしょーもない小競り合いからグダグダとお互いに後に引けぬ泥沼の戦争へと突入しないためにものォ」

 

 今回のような忍界大戦はもう懲り懲りだと。暗に告げている自来也。

 それに対して、それが実現可能であるのであれば賛同するというのは風影である羅砂。

 では宣戦布告を義務付けたとしても、その義務の執行を強制させるだけの力はどこが担保するのか。という疑問を投げかける雷影エー。

 そもそも、対話での解決は利害と利害のぶつかり合いとなり無理で無意味だと切り捨てる土影のオオノキ。結果、戦争の勝敗によってのみ自国の道は切り開かれると言わんばかりの主張だった。

 

 

 

 

 

 この日、自来也はそのほかにも五影会談の定期的開催や中忍選抜試験の五大国共同開催、開催地持ち回りなどといった発案した案件全てがこの会談で通ることはなかった。

 

 木ノ葉隠れへと帰郷し、執務室での出来事。

 

 自来也は、机に突っ伏して不貞腐れていた。

 

「そんな、ワシだってワシの意見が全部が全部通るわけはないとは思っとったがのォ・・・。まさか全滅とは・・・」

「まぁまぁ火影様。それでも我ら木ノ葉の意志ははっきりと示すことができたじゃないですか。今回はそれだけでも成果といたしましょうよ」

 

 そうフォローを入れるのはオレ。

 こうやって自来也がここまで目に見える形でズーンと。縦線が見えるのではないかというほどに落ち込むとは思ってもみなかった。

 もちろん多少なりともテンションは落ちるだろうなとは思ってはいたが。

 

 ちなみにこの場にいるのは火影である自来也と先程まで護衛をしていたオレ、大蛇丸。そしてもう一人がこの執務室で合流した伝説の三忍の紅一点である綱手だった。

 

「ったく。行きは勇んで出ていったかと思えば、帰ってきたらコレかい」

「そうは言ってもねェ・・・綱手。バカはバカなりに考えて今回の行動を起こしたのよ」

「勝ち目はないことはないと思ったんだがのォ・・・」

 

 そんな自来也の言い訳に綱手は「あの頑固ジジイがまだ現役の土影を名乗っている以上、無理だろうに」とつぶやく。

 

「あの新しい雷影もなかなかの現実路線派だったわねェ」

「だとしたら尚更だな。・・・自来也。アンタの理想は私も共感するところだが、アンタは火影だ。木ノ葉を守る義務がある。仮想敵国共が何をしてくるかわからん限り、それに対応しうる戦力を持つことに情熱を傾けるこったね」

 

 その後、数分も立たずして大蛇丸と綱手は部屋を出ていった。

 

「ところで火影様」

 

 自来也と2人になったところで、あるお願い事をしてみることにした。

 

「んー?」

「ぼくのこと。弟子にしてくれませんか?仙人モードってやつになってみたくて・・・。いやぁ~憧れてたんですよねぇ。あの強さ」

 

 そこから始まるよいしょよいしょの嵐。

 ハンサムだの、イケメンだの、色男だの、オレは自分の知っている限りの褒め言葉を使い尽くして自来也を褒めちぎった。

 え、その答え?それはもちろん・・・。

 

 

 

「嫌だのォ」

 

 だったよ。

 

 野郎からの褒め言葉には興味ないとよ。

 

 ・・・解せぬ。

 

 とりあえず、ハーレムの術をお見舞いして出血多量のまま放置しておいた。

 

 




火影自来也に師事したら簡単に仙人化できると思ったのだが・・・解せぬ。
とは、カルタの思い。



ただ、スケベは火影になってもスケベだった。

では、また次回もよろしくお願いしますー


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第4章 暗部篇-少年期
074.独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊


お気に入り登録ありがとうございます。
徐々に増えていて嬉しい限りです。モティベーションあがります!

さて。今日から新章突入です。

では、どうぞー。


 第3次忍界大戦が終戦して間もなく、木ノ葉隠れの里は体制の見直しと改革が行われた。

 いままで長きに渡って木ノ葉の里長として君臨していた三代目火影・猿飛ヒルゼンは現役を引退し、今後はご意見番として同期の水戸門ホムラとうたたねコハルとともに陰から木ノ葉という大樹を支えることとなった。

 そして新しい火影が木ノ葉が誇る伝説の三忍がひとり。

 

 蝦蟇仙人・自来也。

 

 その四代目火影を支えるのは同じく伝説の三忍のひとり。

 

 大蛇丸。それから綱手。

 

 大蛇丸は暗部長と兼任して今回から新しく設立された忍術開発局の局長に就任。

 綱手は医療忍者の育成と医療忍術の更なる発展に携わる医療大隊長に就任した。

 

 

 

 そしてある日のこと。

 

 オレは暗部長に就任なさった大蛇丸から直々にお呼び出しを受けていたのであった・・・。

 

「至急に。ということでしたので参上いたしましたが・・・。何かありましたか?大蛇丸さん」

 

 暗部のお面をつけた人物が木ノ葉病院にてオビトとカカシのお見舞いに来ていたオレに用件だけを伝えて立ち去ってしまったのだ。

 その内容が、「大蛇丸様がお前をお呼びだ」というもの。

 前から面識はあったどころか、ある分野においては共同で研究を行っている大蛇丸だが、わざわざ人を寄越してくることは初めてだった。

 

 なんとなく面倒ごとの臭いがしたものの。しかしながら、立場的には完全に上の人物からの呼び出しを無視するわけにもいかず、オレは渋々大蛇丸の研究所へと足を運んだのだった。

 

「あら。意外と早かったのねェ。アナタのことだから警戒してもっと遅れてくるかと思っていたのに・・・」

 

 警戒してるからすっ飛ばして来たんだよッ!という言葉は、ぐっと飲み込んで。

 いやいや、そんなことないですよ。と、無難に返事を返す。

 

「そう・・・まぁいいわ。そんなことよりもアナタにお願いしたかったのはコレよ」

 

 そう言って大蛇丸の手から渡された書類には、『極秘』の二文字が。

 

「・・・なんですかこれは」

「いいから読みなさい」

 

 有無を言わさず読まされたその書類の内容は、新組織『独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊』の設立について。というものだった。

 

 テイク2。

 

「なんですかこれは」

「木ノ葉の里の害になるものを他の人間が気づく前に見つけ、事前に摘み取るための組織よ。その頭にアナタを据えることにしたの。人事権はアナタに一任するからよろしくネ」

 

 ウィンクまでしそうな笑みでそういう大蛇丸。

 

 ・・・。

 

 えぇ~。

 

「でもこれって、結局のところダンゾウとやってること同じじゃないですか?それにこんな無茶な計画、自来也さんが認めたとは到底思えないんですけど」

「当り前じゃない。あのバカ正直な自来也やジジイババアに知られたら止められるもの。それに私とアナタなら上手くやれるでしょう?あの老害(ダンゾウ)よりも」

「ちなみにこの計画を今から白状しに行くと言ったら?」

「初代の墓荒らしの件と柱間細胞の件。それから」

「わかりました。わかりました。やればいいんでしょ。やれば。喜び勇んで謹んでお受けいたしますよっ」

 

 オレがやけ気味に快諾すると、大蛇丸はうふっと笑みを浮かべながら、素直でよろしいと言わんばかりに頷いた。

 

 うん。きもちわるい!!

 

 

 

 オレはその場を光の速さで後にすると、その日の内に編成の構想に取り掛かった。

 

 実行部隊は少数精鋭で、尚且つ情報が漏れるおそれがほぼないと言ったら、砂隠れの抜け忍衆。

 サソリとパクラと+4名。

 それにオレを加えて7名体制でいいだろう。とりあえずは。

 人員が欲しい案件はこれからいくらでも増えてくるだろうことは予測できるが、無いものねだりはできない。

 

 理想の人員がいないなら、つくればいいじゃない(マリーアントワネット風大蛇丸の真似)。

 

 というわけで育成部門。青田買いとも言う。

 

 オレは原作知識を生かして、これからの将来で優秀になる人材を今のうちに確保しておくことにした。

 育成部門とは体のいい名称だ。

 四代目火影に代替わりしたタイミングで暗部養成部門「根」は解体させられたからな。

 

 候補としては。

 

 まずは、うちはシスイ。

 原作通りだと彼は将来、万華鏡写輪眼を開眼し、『瞬身のシスイ』として名を馳せる強者だ。

 年齢で言うと、オレの1つ下かもしくは同い年くらいなはずだ。今は忍者学校(アカデミー)にでも通っている頃だろうか。

 

 そして、うちはイタチ。

 言わずも知れた彼のすべてにおける高スペックさ。そして何より、里の平和を願う心。

 それも弟に対する深い愛情には敵わないようだが、それを差し置いても素晴らしい人間性であることには間違いはないだろう。

 アンチイタチなんて聞いたことないからね。こういう兄に私はなりたい。まぁ、オレは一人っ子だけど。

 年齢は、戦争が終わって間もないから4歳か5歳くらいのものだろう。

 

 次に薬師カブト。

 あんまりスパイ活動をさせて自分を見失われたらいつか裏切られそうで怖いから長期任務はナンセンスだが。

 その心配があったとしても、彼の医療忍術に対するセンスや原作では最終的に仙人にまで登り詰めてしまう能力は魅力的だろう。

 彼を孤児院から引き取れたとしても、大蛇丸には引き合わせないようにしよう。うん。

 年齢はオレと同い年のはずだ。

 

 将来的には、原作で「根」に所属していた山中フー。油女トルネ。シンやサイといった人材も引き入れられると僥倖だろう。

 

 といっても。フーやトルネはともかく。シンやサイはどこから探せばいいのか、皆目見当すらついていない状態なんだけどな。

 

 あとは開発部門だろうか。

 後方支援的な意味合いも含めてだが、科学忍具班を作ってもいいかもしれない。あとは禁術再現開発班とか。iPS細胞とかSTAP細胞(笑)とか再生医療班とかな。

 

 わーい。夢がひろがるなぁ(白目)。

 

 

 



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075.各方面の研究者たち

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 ある日の黄昏時。

 涼しい秋の風が心地よく流れている木ノ葉病院からそう遠く離れてはいない広場。

 

 はたけカカシ。うちはオビトの両名は実践復帰のためにリハビリを行っていた。

 

 タンッ。タンッ。と交互に拳を出し合い組手を行う。

 

「身体はどうだ?」

「鈍ってはいるが、全然イイね。何なら前よりも軽いくらいだ」

 

 全然イイは、言語として使いかた間違ってるでしょ。とはカカシの言葉。

 それからしばらく、無言での拳の打ち合いに興じる。

 

「そういうカカシはどうだ?俺の眼は馴染んでんのか?」

 

 そうやって数分間、無心になって組手をしていただろうか。オビトが不意に語り掛ける。

 カカシとオビト。2人の瞳には赤く発光する写輪眼があった。

 

「あぁ。おかげさまでな」

「そっか。ならいい」

 

 そろそろ最後(おわり)にしようぜ。と、言ったのはオビトの方。

 カカシもそれに同意する。

 

 そして双方が一斉に距離を取り・・・。

 

《木遁・挿し木の術》

 

 双方の右腕から伸びた木の枝は空中で衝突し、砕け散った。

 

 

 

 柱間細胞の適合者となったこの2人。はたけカカシとうちはオビトは木ノ葉病院を退院した後もすぐに日常生活へと戻れたわけではなかった。

 

 再生医療や遺伝子を研究している施設へと送られたのだ。

 

 主治医というわけではないが、綱手や大蛇丸、羽衣カルタら3人が彼らを担当していた。

 

 カカシとオビトは身体の定期検査を1日に一回することを退院後1ヵ月は義務付けられ、その後半年間は半月に一回。その後3年は月に一度の検査を言い渡されている。

 

 そして今日もその検査を終えた2人は研究所を後にしていた。

 

 以降はその研究所に残った3人の会話である。

 

「この細胞はどんな細胞にでも変化し、再生能力が極めて高い超万能細胞だが、これは汎用性があるとはいえない。ほぼ全ての人間含めた生物はこの細胞に乗っ取られてしまうだろう。よくもまぁ、こいつらは耐えたものだ」

 

 というのは綱手の言葉。

 暗に臨床データがなかったオビトやカカシに柱間細胞を投与した当時での使用は博打だったと言われたのだ。

 そして金輪際の使用の禁止。

 

 ちなみに綱手には間違っても初代の墓からDNAをもらってきましたとは口が裂けても言えなかったため、あの手この手で再現した木遁細胞という名称を使っている。

 

「やっぱりそうでしたか。では、この細胞と実験結果は破棄ということで。別の再生医療の道を探しましょう」

 

 聞き分けよくそういうのはカルタ。

 そして、「そういえば、話は変わりますが」と前置きをして話始める。

 

「カカシさんの眼に入っているオビト先生の眼球の細胞を培養して、複製したものをオビト先生の眼軸に戻した件ですが。術後は良好なようですね。この再生医療技術を応用したら、将来的には皆が病気やケガで失ったり悪くなった臓器や四肢といった部位のバックアップとして複製人間(クローン)が推奨されるようになるのでは?」

 

 そんな内容の映画が昔ハリウッドであったような。と回想するカルタであったが。

 

「カルタお前。大蛇丸みたいな思考回路になってきているぞ。そんなこと倫理的に認められるものか」

 

 綱手にチクりと一蹴され、ですよねーアハハーと言って笑うカルタ。大蛇丸は本人を目の前にしてそういうこというのね、とぼそりとつぶやく。

 

「大蛇丸!お前はカルタに悪い影響を与え過ぎだぞ」

「酷い言い草ねェ。カルタの問題解決力や発想力自体が道徳やら倫理やらを超越して合理的な判断をしているだけかもしれないじゃない」

「だとしてもお前の悪知恵が吹き込まれていることには違いあるまい」

 

 むしろ悪知恵を吹き込まれているのは私の方なんだけど・・・。というつぶやきは綱手の耳には届かない。

 

「まったく。こんなことになるならカルタのことは私が最初から面倒を見ておくべきだったな。こいつなら戦闘力と医療忍術を兼ね備えたおじい様に匹敵する忍びになれたかも知れん」

「綱手さん!ぼく弟子入り志願してもいいですかっ!?」

 

 ひとつの可能性を示した綱手に対して。

 忍界最強と謳われる初代様はぼくの目標なんです!!と、パァーっと目を輝かせながら懇願するカルタ。

 相変わらず猫かぶりがうまい・・・というのはともかくとして。

 

 尊敬し敬愛する自分のおじい様を、そこまで言われることは嬉しいことだ。

 それにカルタのような実際にはおじい様のことを知らない若い世代からのそういう言葉は思った以上に嬉しかった。

 そう感じた綱手の頬は自分が思っている以上にゆるんでいた。

 

「そうかそうか。そんなにおじい様のようになりたいか」

「もちろん!」

「だったら私に弟子入りすることを許可しようじゃないか。ただし!私の修行は厳しいぞ。途中で根を上げても知らんからな」

「はい!師匠!」

 

 さっさと写輪眼で盗める術や技術は盗んで、今はただただ死んでいる裏設定となっている自身の額当てに隠れている百豪の術を有効利用できる創造再生を取得しようとゲスいことを考えているであろうカルタ。

 ただ、そんなことをおくびにも出さず、きらきらとした目で綱手を見ている。

 綱手もそんなこととはつゆ知らず、才能あふれるカルタを弟子とすることに決まり燃えていた。

 

 

 




木遁カカシ、木遁オビトやっと登場させることができました!!


ヒロインアンケート結果です。

1位 13票
小南

2位 10票
照美メイ

3位 7票
綱手
夕日紅
サムイ
マブイ
みたらしアンコ
パクラ

たくさんの参加ありがとうございました!
この結果を参考に今後のストーリーを進めさせていただきます。


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076.『宵』からの至上命令

 独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊。

 

 『宵』。

 

 木ノ葉の暗部長である大蛇丸によって秘密裏に結成されたその組織。

 トップを任されているのは、羽衣カルタ。つまりはオレ。

 その活動は諜報活動、情報収集がメイン。

 里内外。国内外に構成員。エージェントを派遣して、紛争の火種になりそうなことを調査し、その場で解決できるようであれば解決をする。

 そんな正義の味方まがいなことを主に行っていたりする。

 ただ不足しがちな活動資金を集めるために、たまに賞金首を狩っていたりもする。

 資金くらい潤沢に寄越せや。大蛇丸ェェェ。

 

 その数多ある業務を行うメンバーは両手の指で数えきれてしまうほど。

 つまり、人手が足りない。人材が足りない。常に枯渇しているのだ。

 

 まさに猫の手も借りたい状況とはこのことだ。

 そういうとオレの中の駄猫が「なんじゃ、おまえ様。とうとう妾の出番かの?」とニヤニヤしながら出てくるに決まっているので、言葉には出さないが。いや、出せないが。

 

「私、しばらく暇をいただきたいんですけど。組長」

「え?急にどうしたの。職場環境になにか不満?それとも同僚からのセクハラ?もしかして上司からのパワハラとか?」

 

 いつものように与えられていた任務を終えて、オレに報告しにきたパクラ。

 部下になったということもあって、オレはタメ口で話しているわけだが、この日は突然の宣言に驚いてしまった。

 

 この忙しいときに・・・という意味で。

 

「いいえ。そういうわけではなくて・・・」

「じゃあ、どういうわけなのさ」

 

 悪い冗談ならやめてほしい。ドッキリ大成功のプラカード背中に隠してんじゃないだろうな。という雰囲気(オーラ)を滲ませるオレ。

 

「え~っと」

 

 しかし、それにしてもこんなにも煮え切らないパクラは初めて見た。

 何をそんなに言いにくそうにしているのかと、そう疑問に思っているとようやくパクラは意を決して次の言葉を発した。

 

「組長!」

「なに?」

「私、身籠りました!」

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・。

 

「えェェェェェェェェェ!?」

 

 数秒間の沈黙を置いて。

 さほど広くない『宵』のアジトにオレの叫び声が木霊した・・・。

 

 

 

 こほん。落ち着け、オレ。

 

「ちなみに誰の子?」

「もちろんサソリとの子です」

 

 サソリェェェ!!

 

 ですよねェェェ!!!

 

 でも、まぁよかった。これで仮に違ったら昼ドラも韓流もドン引きの三流泥沼愛憎劇のはじまりはじまりだ。

 人形殺人悲劇のはじまりだ。操演者はもちろんサソリだ。

 

「それ、サソリには言ったの?」

「いえ、サソリはまだしばらく潜入捜査で帰ってこないので・・・」

 

 そういえばそうだった。

 オレはつい先日、何の情報も上がってこない不気味な国。水の国へサソリを派遣したばかりだったことを思い出す。

 命じた期間は最短でも半年・・・か。

 

「こんな大変な時期に、申し訳ございません・・・」

「なんで謝るのさ」

「人手も今でさえ少なく、組長はお困りでいらっしゃるのに」

 

 そういうパクラの表情は暗い。

 

 なんだってんだ。

 これから新しい命が。愛おしい我が子が生まれるってのに。

 

 人類のバトンリレー。ご先祖さまから代々。脈々と続いてきた命の系譜を次の世代へと繋げるというのに。

 

 ・・・あぁ。

 

 オレか。パクラにそんな顔をさせている張本人は。

 

 ったく。何やってんだよ。オレ。

 

 ここはバチッと応援すんのが筋ってモンだろーが。

 

 ふぅーっと。ひとつ長めの息を吐く。

 

「パクラさん」

「・・・はい」

「しばらくの休暇を認めましょう」

「はい。すみません」

「ただし!その前に『宵』からの至上命令です」

 

 

 元気いっぱいのかわいい赤ちゃんを産んでください。

 

 

 あ、生まれたら見に行くからそのときはよろしくね。

 

 

 

 

 

 そのあと。

 悪阻がきたらしく立っているのもやっとなほどに体調を崩したパクラを抱えて家へと運んだオレは水の国領内へと飛んでいた。

 

「あの野郎・・・こんな肝心な時にどこほっつき歩いてるんだ?」

 

 あの野郎とは、もちろんパクラを孕ませた張本人。赤砂のサソリだ。

 本名、うずまきサソリのことだ。

 

 ほっつき歩かせている張本人は上司たるオレなのだが。そこはそこ。それはそれ。

 

 オレも昔から比べると大分レベルが上がったのか。チャクラの反応を結構遠くまで感じることはできるようになっていた。

 なってはいたのだが・・・。

 

「どれがサソリかはわからんなぁ」

 

 それにもしかしたら、どれもサソリではないかもしれない。

 オレの探知範囲外にいる可能性も大いにある。

 

「霧隠れにバレない程度に影分身使って虱潰しに探すっきゃないか・・・」

 

 人海戦術も立派な戦術のひとつなのである。

 

 影分身を十数体ほど出して、あとは散らばるだけ。という時。

 

 ザッと。黒い影がオレの前に現れた。

 

「よぉ。どうしたカルタ。なんでお前がここにいる」

 

 頭髪は校則違反の赤髪。

 

 身長は成人男性の平均には遠く及ばない低身長。

 

 体格も小柄。

 

 服装は黒ずくめマント。

 

「おい。無視すんな。なんかしゃべれよ」

 

 この口調と、この声質。

 

 間違いない。

 

 意味もなくもったいぶったが、今オレが探していた人物。

 

「・・・サソリ」

「だからなんだよ。俺になんか用事あったんだろ?」

「与えていた任務は中止だ。お前にはもっと重要なことができたんだ」

「・・・はぁ?なんだそりゃ」

 

 1年半。しっかりパクラのこと支えてやって、ちゃんとパパになってこいよ。

 

 新米パパさんよ。

 

 

 

 それにしてもサソリさんよ。お前さん、世界が世界ならまだ高校生だろ・・・。

 

 若っけぇパパだなぁ・・・おい。

 

 運動会じゃあスターになれるぜ。

 

 

 




サソリェェェ。
パクラェェェ。

おめでとうェェェ。



さて。黄金世代の赤ちゃんになるが、どげんしよう・・・。


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077.水の国潜入任務 其の壱

お気に入り登録等ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます!
UA200,000突破ありがとうございます!!

この二次小説は皆様のご協力あって存在します!
これからもよろしくお願いします!!


 火の国・木ノ葉隠れの里から見て、東の海上に存在する忍び五大国の一角。水の国。

 

 この国は忍び五大国で唯一の海洋国家という地理的条件。

 それから、一年を通して霧や濃霧に覆われているという気象的条件。

 そして、庇護下に置く海洋国家以外との貿易などの繋がりを持たないという政治的理由もあって、一切の情報も入らない未知の領域と化していた。

 

 ただ密かに噂されていることと言えば、内紛や内戦。クーデターといった国内での対立が頻繁に起こっているのではないか。ということ。

 

 それは水の国の軍事を司る忍びの隠れの里。霧隠れの里でも起こっているとまことしやかに噂されていた。

 

 

 

 霧隠れの里。

 

 島国である水の国の常時深い霧に覆われている山間部に存在し、それら全ての地理的条件が難攻不落の天然要害となっている。

 忍者学校(アカデミー)の最終卒業試験は少なくとも三代目水影の頃から生徒同士の殺し合いで勝ち残ったもののみが下忍として登録されるという過酷さ。

 そして、血継限界という特別な術の継承を血で行う一族への激しい弾圧から付けられたとされる別名、血霧の里。

 

 なぜ、血継限界を持つ者、一族が弾圧されることになるかというと国内で長きに渡って続く内乱に利用されるため。

 

 又、対外戦争であっても霧隠れの里は捕虜交換に応じることは一切ない。

 つまり他里の忍びが捕虜となった際に訪れる運命はただ一つ。その者が持つ忍術やチャクラの性質。情報などを徹底的に搾り取られたのちに殺されるのみである。

 

 そして霧隠れの里特有の制度が厳格なる身分制度。

 

 先祖代々霧隠れ出身の者を頂点に、最下層は霧隠れに屈服させられた一族などから構成される奴隷にも近い者たち。

 この最下層の身分に堕ちた者たちには実力に関係ない危険な任務を振り分けられているため、忍びの死亡率は他里と比べるまでもなく圧倒的に高い。

 

 

 

 そんな危険地帯に潜入してから、早半年。

 

 第3次忍界大戦という悲惨で凄惨な時代をようやく終えて、せっかくの平和を満喫できるであろう期間に。

 

 大蛇丸によって結成され、その存在自体が秘匿されている暗部組織『宵』。

 オレこと、羽衣カルタはその組織のトップとして部下である赤砂のサソリに水の国へと情報収集のための潜入任務を命じていた。

 

 していたのだが、長期任務を命じて僅か数日後。

 サソリの公私共にパートナーであったパクラの妊娠が判明した。

 それを知ったオレは水の国に派遣していたサソリを強制的に帰国させて、お前がパクラをしっかり支えてやれと休暇を与えたのだった。

 この2人には産後も育休としてしばらく任務には呼ばないつもりのオレなのだが、やらなくてはならない任務という名の仕事は減らない。

 

 俗に言う『代打、オレ』・・・というやつである。

 

 そこでオレは水の国内にあるとある廃村を拠点にして、火の国からでは得られない生の情報を得ていた。

 だが、それにしても。あまりにも。漠然とした情報や信憑性に欠ける噂話の類のものが多い。

 

 そして何よりも。里のトップの情報がなさすぎる。

 

「今の水影はどっちなんだ・・・」

 

 原作でも姿のみで名前すらわからない三代目水影か。

 もしくは、尾獣・三尾の人柱力であり、四代目水影となったもののうちはマダラを名乗っていたオビトに操られていた不憫な人。やぐらか。

 

 時期的にはそのどちらかだとは思うのだが。

 

 もしかしたら、オビトが闇落ちしていない影響で他の第三者が水影になっているという選択肢もないわけではないが。

 

 村人や町人に聞いてもわからない。

 忍びに聞いてもわからない。

 

『にゃんにゃんにゃにゃ~ん。にゃんにゃんにゃにゃ~ん。泣いてばかりいるおまえ様よ』

「あのさ。唐突に現れてしかも、童謡ぶち込んでくるのやめてくれるかな。こちとら真剣に今後の動きを考えているってのによ」

 

 こうなったら最終手段として危険を犯してでも霧隠れの里内部に侵入するか。

 バレてもオレが捕まるとは考えにくいが、木ノ葉が情報収集をしていると勘付かれることすらも避けたいとなると、やはり霧隠れの里内部への侵入は愚策か。

 などと静かに考えることすらままならない。

 

 こいつが出てきてしまったらな。

 

『かかっ。妾は言われなくてもわかっておるぞ。いやいや皆までいうな。おまえ様が寂しがり屋のツンデレさんということは十分に知っておるからの』

「勝手にオレのキャラ設定を捻じ曲げないでもらえるかなぁ。愚猫」

『それにそういう照れ屋なこともな。これはもう既に妾たちのみの共通認識どころか、もはや世界中の常識と言っても決して過言ではないじゃろうなっ』

 

 なぜか、登場するや否やハイテンションな又旅。

 オレがまだ赤子のときからの付き合いになるが。

 正直、いきなり出てきてこのテンションにはついていけない。

 

『よいではないかーよいではないかー』

「・・・はぁ」

 

 お前はどこの悪代官だ。

 

「守鶴、悟空、穆王、重明。又旅を下の階層で縛っておいてくれ」

 

 投げやりに、他の尾獣たちに又旅の処遇を任せるオレ。

 ちなみに一尾の守鶴は砂隠れでの騒動の後、封印したんだけど、なかなかファンキーでモンキーなベイビーズで・・・いや、間違えた。又旅に釣られて変なテンションになっちまったのか?オレ。

 それは一昔前に解散したバンドだ。

 

 こほん。閑話休題。話を戻そう。

 

 ファンキーな奴で普通にいい奴だった。それでもまぁ、封印された当初はオレの精神世界で暴れていたんだけど、あばれる君だったんだけれども。

 他のみんなが鎮圧に動いたら、素直でいい奴になった。

 もうすっかり馴染んでるしな。

 

『『『『アラホラサッサー』』』』

 

 そうそう。こうやって息の合った返事もできるように・・・って。

 お前らはどこのドロンボー一味だ。

 

 

 

 オレこと羽衣カルタ、もうすぐ8歳。

 

 魔境・水の国内でオレの精神世界に棲みつく愉快な仲間たちと楽しくやってまーす。

 

 




どうも!新名蝦夷守です。

さて始まりました。水の国・霧隠れ篇。
霧隠れといえば!もちろんあの人も出て来ますでしょう。
今後の展開はまだ見通しが立っていませんが笑

でも、ここで出さなきゃいつ出てくるんだ!って感じなので。ヒロイン。

では、また次回もよろしくお願いします。


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078.水の国潜入任務 其の弐

お気に入り登録ありがとうございます!!

つづきです。どうぞー


 オレは前回の話の翌日。一か月間拠点として活用していた廃村を捨てていた。

 もちろんオレが生活していたことがわかるような痕跡は一切残していない。

 

 所謂、立つ鳥跡を濁さず。というやつだ。

 

 オレの場合は本来の意味からはもっとドロドロとした理由でだが。

 潜入捜査がバレちゃいかんでしょう。

 

「さてと・・・それじゃあ行きますか」

 

 いざ、血霧の里へ。

 

 

 

 水の国・霧隠れの里に存在した人柱力は2人。ただし、原作ではという注釈がつくが。

 

 三尾・磯撫(いそぶ)の人柱力は四代目水影となったやぐら。

 やぐらの前任者は、第3次忍界大戦中にのはらリンに封印されていたが、この世界ではそのような事件は起こっておらず、のはらリンも存命している。

 

 六尾・犀犬(さいけん)の人柱力はウタカタ。

 

 ただ、上記2名の消息は水の国に潜入して半年経った今でもつかめていない。

 もしかしたら、抜け忍になっている可能性もないわけではないが。

 

 オレが水の国で調査していることは3つある。

 

 1つは尾獣と人柱力。

 2つ目は現政権や水影。

 3つ目はうちはマダラや黒ゼツの存在や影。

 

 この世界軸では、オビトが闇落ちしておらず、黒幕だったうちはマダラや黒ゼツといった存在が確認できていない。不透明だ。

 存在が確認できていないというのは、イコール存在していないということにはならない。

 

 地下に潜って、暗躍を続けていると思って行動したほうがいいだろう。

 

 うちはマダラは自分の理想。忍びによる争いが、戦争が一切ない幸福な世界。無限月読の世界を構築するために。

 

 黒ゼツはそれを利用して、母である大筒木カグラを復活させるために。

 

 この2つの事件が起こってしまったら、もうオレの手には負えないね。

 大筒木インドラの転生体でも大筒木アシュラの転生体でもない。

 原作通り、真の主人公うずまきナルトと第二の主人公うちはサスケに任せるしかなくなってしまう。

 

 この世界はオレがいる世界軸で。もうすでに原作とは違う世界となっているのだ。

 バタフライ効果とかでナルトたちが勝てない可能性も出てくるだろう。

 

 そうなりゃあ、この世の終わりだ。いや、比喩ではなく。盛っている話でもなく。

 

 じゃあ、世界の命運が掛かっているのが初めから分かっているオレは何をすべきか。

 

 うちはマダラ、黒ゼツの野望阻止である。

 

 それではそのためには何が必要か。

 

 敵の情報と対抗するための力である。

 

 情報を集めるには優秀な手駒と組織力が必要不可欠だと考えたオレは大蛇丸が持ち掛けてきた『宵』の結成に乗っかったのだ。

 力に関しては言わなくてもわかるだろう。

 既に多くの尾獣を集めていたり、柱間細胞を墓荒らしして入手したりしているのだから。

 今後も揺ぎ無く自身の能力を高める努力を行う。

 

 ・・・こほん。ちっと語り過ぎたかな。

 あんまり熱くしゃべりすぎると又旅に茶化される。これくらいにしておこう。

 

「ここは原作通り、うちはマダラ(サイド)の人間にやぐらが操られている方が今後の展開も予想しやすいし、都合が良いんだけどな」

 

 オレは孤児が身に着けているようなボロ布を纏って、徒歩で移動していた。

 

 それにしても・・・一般人の歩行速度で歩いているとはいえ、もう霧隠れの里には大分近づいているはずなんだが、人っ子一人ともすれ違わない。

 

 道を少し逸れたところに死体が転がっているのは何回か目撃したが。

 

「一体どんだけ荒れてんだよ・・・」

 

 もしかしたら、情報が上がってないから分からないだけで水の国や霧隠れの里の国力は相当落ちぶれているのかもしれないな。

 今は過去の栄光や情報封鎖から忍び五大国に数えられてはいるが、実は張りぼてで本当のところは大国なんて呼ばれる力は無いのかもしれない。

 

 そんな考えが浮かんでしまうほどに人は少なく、稀に人を見かけてもそのほとんどの人は瞳が死んでいて。

 廃村や廃屋は多く、腐乱した死体なども転がっていた。

 

 こんな状況の国なのに。

 

 外的要因で国が崩壊することなく、内戦を続けられる理由。

 

 それは(ひとえ)に国境警備隊の質には万全を期している故に他国からのスパイや偵察の侵入を防いで情報漏洩がないことと、抜け忍への執拗なまでの徹底的な対応。

 国内の人間ですら極僅かな一握りの者しか知らされていない水影の存在や上層部の居場所。つまりは反乱、内乱へ備えての徹底的な秘密主義によるもの。

 そして何よりも攻めにくく守りやすい天然要害と謳われる地形あってのことだろう。

 

 逆説的に言うと、国境警備隊が何らかの原因で崩壊したり、情報封鎖が何処かで綻びを見せたら、内部から敵を引き込んだら、内応してしまったら、この水の国の体制は脆く崩れ去ってしまうだろう。

 下手をしたら、曲がりなりにも忍び五大国の内のひとつである水の国が崩壊なんてことになってしまったら、これが引き金となってまた忍界大戦に突入してしまうということも最悪あり得なくもない。

 だからオレや木ノ葉上層部の多くはそれを望んではいない。いや、総意といっても過言ではないだろう。

 

 木ノ葉として東の大国である水の国・霧隠れの里の崩壊は望んではいないが、かと言って仮想敵国の情報が無いというのは安全保障上の脅威でもある。

 

 さて。そんなこんなで(どんなこんなだ)。

 

「霧隠れの里の前まで来たんだが・・・」

 

 門の前には警備している忍びが、()()()・・・2小隊、計8人常駐しているようだ。

 

 身なりというか、立ち姿勢というか。

 恐らく上忍2名の他中忍下忍の構成だろうと判断する。

 

 攻め入るのであれば、これくらいは障害にならないのだが、しかし今回は違う。お忍びだ・・・本来の忍者(しのび)らしく。

 

 手っ取り早いのはみんな写輪眼で眠らせるなり、操るなりして侵入することなんだが、今回はそう簡単な話でもない。

 

 だって、誰にもバレちゃいけないからな。

 

 交代要員や通りがかった仲間に警備している者たちが幻術にかけられていると気づかれたら任務失敗だろう?

 

 

 

 うーん・・・どうしたものかなぁ。

 

 

 




ひ、ひろいんが・・・。

出てこなかった・・・。

次回は出したい・・・なぁ。


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079.水の国潜入任務 其の参

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評価もいただき嬉しい限りです。

では、つづきをどうぞ。


 オレはつい先ほど目的地・霧隠れの里へと到着したのだが、絶賛立ち往生中だった。

 

 門番をしている2小隊を目視で確認したあと、流石に正面突破は出来まいとぐるっと里の外周をまわることにする。

 

「あー。やっぱダメか」

 

 外周をまわりながら写輪眼を発動させて里を視るが、何重にも結界を張られていて見えない。

 パッと見て分かるのは、感知結界と視界妨害結界、防音結界あたりは張られている。これらを重ね掛けしているのと、他の効果のある結界も張っていることによって外からでは情報を得られないようにしているようだ。

 そして里全体を覆うように発生している霧にはチャクラを込められているのが分かる。人為的な霧だった。

 

 もし仮にこの霧が雨虎自在の術のような探知能力のある術だったとしたら、里の周りでうろちょろしているオレの存在に気づいていることだろう。

 言うなれば、霧虎自在(むこじざい)の術・・・とかね。

 

「さぁて。本格的にどうすっかな」

 

 ただ単純に里の中に入るだけなら、座標天身の術で簡単に侵入できる。

 確実に敵の侵入に気づいててんやわんやになって迎撃されると思うが。

 

 そういえば・・・原作では霧隠れの里では一族単位での反乱が幾度となく起こっていたという描写があったような。気がする。

 違ったかな。

 

 そんな曖昧な原作知識を活用することにしたオレは、とりあえず今回は霧隠れの里内部へと侵入することを諦めた。

 

『なんじゃ。随分と簡単に諦めるのぅ』

「じゃあ前言撤回。戦略的撤退と言おう」

『また何時ぞやみたいにおまえ様の影分身を使って妾が尾獣化して里を襲うかの』

「そしてオレが霧隠れを救うってか?」

『まぁそういうことじゃの』

 

 今回、その自作自演は無しだ。

 最悪、雲と霧で戦争になる。そして雲は二尾が木ノ葉にあることを知っているはずだからな。木ノ葉も巻き込まれる。

 

「というわけで火種を燻ぶらせている忍び一族を探そう。そして反乱に乗じて潜入だ」

『かかっ。おまえ様もなかなかに(わる)よのぅ』

「・・・」

 

 ところで又旅さんや。最近は時代劇にでも凝ってるのかい?

 

 

 

 

 

 それから一月(ひとつき)も経たないうちに、そのときは来た。

 

「狙うは水影の首ただひとォォつ!!行けェェェ!!!」

「「「「「おォォォォォ!!!!!」」」」」

 

 霧隠れの里は険しい山間部にある。

 里の周りを山々に囲まれて、天然の要塞となっている。

 

「一気に駆け下りろッ!!」

 

 崖といっていいような。むしろこれこそが崖というような場所を一気に駆け下りる。というよりも最早、落ちる。

 

 その様子は日本史で言うところの“一ノ谷の戦い”。

 

 反乱側の第一陣が崖を下って里内へ侵攻を始めると突如巨大な爆発音とともに起こる大規模な土砂崩れ。

 第二陣、三陣はその土砂崩れによってある程度傾斜が緩くなった坂道を駆け下りて侵攻を開始する。

 

 その土砂崩れによって崖下にあった多くの家屋が飲み込まれた。

 遠目からではわからないが、そこに住んでいたであろう多くの人も巻き込まれていると思われる。

 

 里中心部に位置する水影がいるであろうと考えられる『水』の一文字が掲げられている立派な建物を目掛けて進撃を続ける反乱軍。

 

 当然ながら里側も即座に対応し、反撃に移る。

 里側は奇襲を受けているはずなのに余りにも対応が早かった。反乱軍側の情報が漏れていたのであったのならば、里内部への侵入侵攻を許すわけがない。

 となれば、この反乱への対応の速さは『慣れ』なのか。

 だとしたら、とても嫌な『慣れ』ではあるが・・・。

 

 それはともかく。里側の反撃が始まったことによって里内各所で激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

 忍具が飛び交い、忍術が飛び交い、忍びたちも飛び交い、罵詈雑言が飛び交い、血も飛び交う。

 

 至る所に死体が生まれ、建物も無残な形となって崩れる。

 

 死体には戦闘には直接関係のない一般人も混じっている。

 

 子を守ろうと飛んでくるナニかから必死で子を庇った母がその子の前で息を引き取る。

 母を目の前で失った子どもは母の血で汚れながらも母を呼び、そして泣き叫ぶ。

 

 この現状はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

 大戦が終わって尚、こんな光景を見ることになろうとは・・・。

 

 土遁の術で、土石流の中へと身を隠して霧隠れの里内へと侵入したオレはこの光景を眺めながら、そんな感想を持った。

 

 序盤、崖からの奇襲攻撃を仕掛けた勢いそのままに快進撃といっても過言ではない侵攻をしていた反乱軍だったが、時が経つにつれて徐々に組織力と総戦力量に勝る里側に形勢を逆転されてきていた。

 

「かくなる上はッ!・・・是非もなしッ!!」

 

 反乱軍を指揮する忍びは、信号弾を空高く打ち上げる。

 

「匠の里出身の我らを甘く見たツケじゃァァァ!!」

 

 濃霧によって遠くまでは見えないであろうと思われる信号弾だが、信号弾が上がった後、少しの間を開けて遠くから轟音が鳴り響いた。

 

「出てこぬなら、引きずり出して見せよう・・・ホトトギス」

 

 そんな一句を詠んだか、どうかはわからないが。

 

 轟音が鳴ってしばらくして。

 先程、土砂崩れが起こった山とは反対側に位置する山から『ドドドドドドドドドッッ!!』という激しい音とともに鉄砲水が、山肌を巻き込んだ土石流が霧隠れの里を飲み込んだ。

 

 先の土砂崩れとは比べ物にならないほどの規模。

 戦場となった里内部から逃げ遅れた一般人、里側・反乱軍側の忍びたち関係なく全てを飲み込んだその土石流は。

 

 反対側の地中に潜んでいたオレも例外なく巻き込まれたのであった・・・。

 

 

 




う、嘘をつくつもりはなかったんです。

ヒロインを出したい気持ちはあるんです。人一倍。


じ、次回こそは・・・ッ!!


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080.水の国潜入任務 其の肆

お気に入り登録ありがとうございます。

最近じわりじわりと数字が伸びていてまして。それに伴いやる気も比例してじわりじわりと上がって来ております!


そんなわけでつづきです。
さて、我らのヒロイン出るか!?


 

 霧隠れの里を襲った土砂崩れと土石流はもちろん反乱軍側の起こした攻撃であり、自然現象ではない。

 

 最初に起こした土砂崩れはあらかじめ地中に設置しておいた起爆札を連鎖爆破させて、発生させたもの。

 次に反対側で起こした土石流は、霧隠れの里から見て北東にある湖から流れている川を堰き止め、合図と同時に堰き止めを起爆札によって爆破し、あとは水の力で山肌や里を押し流した。

 

 その土石流に巻き込まれたオレだったが、命に別条はなく、それどころか怪我も一切負っていなかった。

 

「サンキューな。守鶴」

『おうよ!いいってことよッ』

 

 その理由(ワケ)は、守鶴が咄嗟に出して覆ってくれた最高硬度の絶対防御。

 

《守鶴の盾》

 

 この術の内部に入ったことによってオレはこの大規模な土砂崩れと土石流の中を無傷で乗り切れたのであった。

 

 

 

 先祖の出身が匠の里だったらしい忍び一族による霧隠れの里への反乱は、霧隠れ側の勝利で終結した。

 

 霧隠れ側の勝利で終わったとはいえ、被害は甚大。

 これまでにない規模での復旧工事が必要だった。

 

 里内部の大半は土砂やヘドロの混ざった泥水に覆われ、多くの家屋や重要施設なども流されたり、壊れていたり、被害に遭っていた。

 

 人的被害も甚大で深刻だろう。

 

 生き埋めになっているのは一体どれほどの数になるか。そしてその内、助からない人数は数えたくもないほどになるはずだ。

 

 この霧隠れに反旗を翻した一族は、後でわかったことだが、元々は忍刀七人衆が持っていた忍刀を作った一族だった。

 だったのだが、先の大戦で忍刀は全て紛失し、七人衆自体も壊滅。

 現代には当時作ったレベルの忍刀を作る技術者はおらず、現存する忍刀の研磨や手入れ、その他の忍具の作成をして生き残ってきた一族は里からしたら既に不要。

 

 元々外様で忍びとしての戦闘能力が低いこの一族は徐々に霧隠れの里上層部から迫害を受け、とうとう反乱に至ったということらしい。

 

 そして霧隠れがその一族を甘く見た結果が現状だ。

 

 一族の人間、ひとりひとりの戦闘能力は低かったにせよ。大量の起爆札や他よりも上質な忍具を数多く使用すればこのような大災害も起こせてしまうのがこの世界なのだろう。

 

 

 

 話を戻そう。

 

 オレは守鶴によって守られたことで無傷だったとはいえ、まだ地中で生き埋め状態だった。

 そこでオレは《守鶴の盾》に入ったまま地表近くまで移動。そこから術を解いて、土遁で地面へと顔を出した。

 

 と、思ったのだが。

 

「ッ!?」

 

 流れ溜まった泥水の中だった。

 しかも泥水の中で目を開けてしまったし、息をしようともしてしまった。

 お蔭で目は痛いし、気管に泥水が入ってしまった。肺には入ってないと思うけど。

 

「けほっけほっ・・・ケホッ!・・・うげぇぇ」

 

 最悪だ。

 

 死者が多数出ている中、そんな小っちゃいことで最悪とは何事だ。と誰かに言われてしまいそうだが、気分は最悪だった。

 

「ぺっぺっ」

 

 ジャリジャリする口の中を少しでも改善させようと唾とともに吐き出す。

 髪や服も泥水で重くなってしまった。ぶるぶると犬が身震いするような感じで遠心力を使って髪から砂利と水分を飛ばす努力をするが、あまり効果的とは言えなかった。

 

 とりあえず、服だけでも絞っておこうと潜入のため庶民に紛れ込むために着ていたシャツを脱ぐ。

 

 尾獣たちの封印式は尾獣のチャクラを練り上げない限りは浮き出てこないから問題はない。

 そこは問題ないのだが。

 

「ちょっと筋肉質すぎるか」

 

 この国の栄養摂取量ならば、もっとやせ細っているはずだろう。

 

 一般的に言う子ども体型。ちょっとお腹がぽこっと出ている体型ではなく、うっすらと腹筋やら背筋やらの筋肉が見えているオレの身体じゃあ、この国では異質だろう。

 階位が高い忍びの一族の子どもならおかしくはないのだろうが・・・。

 

 恐らく子ども一人の身体など、この状況下で一々気に留めるような稀有な人はいないとは思うが、一応。念のために服を絞って早々に着なおしたオレは被災した子どもらしく、絶望感を漂わせてトボトボと里内を歩き始める。

 

 それにしても目に余る惨状だった。

 

 見えている範囲だけでも怪我をしている人がたくさんいる。

 見えている範囲だけでも息をしていない人もたくさんいる。

 

 そして怪我人に対して治療に当たっている霧の忍びや瓦礫に挟まれている人などを救助している霧の忍びも見える。

 

 潜入捜査中。つまりは不法入国者であるオレが救助に加わるわけにはいかない。

 

 だって、ここでバレちゃ計画全てがオジャンになる。

 

 でもだからと言って、何の罪もない人たちが死にかけているこの状況で見て見ぬふりをするのは、自分のしょうもない良心と自尊心が許すことはできそうになかった。

 

 オレは人目につかない瓦礫の影へと移動する。

 

《影分身の術》

 

《変化の術》

 

 数体の影分身を出したオレはその全てを一般的な男性。平たく言えば可でもなく不可でもない、影の薄い、印象に残らない顔と体型の男たちに変化させて散らばらせた。

 そして影分身は各々、瓦礫に埋まっている人やケガをしている人のところへ行って救助や介助を行うことだろう。

 それに今の影分身たちはいつもよりもチャクラを多めに練りこんだからちょっとした怪我くらいじゃ解除されないだろう。

 

 こうしてしょうもない偽善行為をして多少の罪悪感が薄まったオレは、被災した里内をまた歩き始める。

 

 被災孤児として保護してくれたり、そういった施設があれば僥倖だと考えながら。

 

 

 

 そうして歩き続けること数十分。

 

 里内の広場には臨時で開設されたであろうテントを何個も使って作られた簡易的な野戦病院の前に着いた。

 

 足を引きずっている者や誰かに支えられていないと立つことすらできない者。タンカーに乗っけられて運ばれてくる者など、野戦病院は大混雑していた。

 

 その様子を観察していたオレだったのだが、不意に肩を叩かれる。

 

 振り向いて肩を叩いた人物の方へと顔を向ける。

 

「オ。坊やもどっかケガしたのカ?だったら見た感じは軽症だから、一番右の列に並ぶんだナ」

 

 その人物は数年経っても成長が見られない。

 昔、船の中で会ったときと同じ容姿に白衣を纏い、独特なイントネーションと特徴的な高音域の声。

 そう。つまり。

 

「ん?お前どっかで見たことあるような気ガ・・・」

 

 名前は忘れたが、あの娘だった。

 

 

 




お前かーい!笑


つ、次こそは・・・。

次回もお楽しみに!


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081.水の国潜入任務 其の伍

やっと。やっと登場させることができました・・・。


 約3年前から姿が変わっていない少女との再会を果たしたオレだったが、如何せん名前が思い出せなかった。

 

「お前、ワタシと以前会ったことはないカ?」

 

 その少女は名前どころか、会ったことすらあやふやだったみたいだが。

 というか、そのセリフは一昔前にナンパ師が良く言っていたセリフだろうに。

 

 それはさておき。どうしようか。

 

 この場合、考えられる選択肢は2つだろう。

 

 1つは、完全にしらばっくれてその後バレないようにフェードアウトする。無関係無関心赤の他人ルート。

 もう1つは、お久しぶりです!ご無沙汰しております!その節はどうもありがとうございました!と言ってフレンドリーに昔話に花を咲かせて、霧隠れの里で動く際の後ろ盾、パトロン的存在になってもらう。共犯者ルートだ。

 

 もちろんどちらにもメリット・デメリットはあると思うが、どちらのほうがより失敗したときのリスクが大きいかというのは考えるまでもないだろう。

 

 考えるまでもないだろうが。

 少しだけメリットとデメリットを整理しておこうか。念のためな。

 赤の他人ルートのメリットは強いて言うならば現状維持というところだろう。デメリットはその後、なんらかの拍子にオレのことを思い出されたら印象が悪くて上層部とかにネズミが1匹浸入してますと報告されること。

 共犯者ルートのメリットは何と言っても身分だったり、立場だったり、拠点だったりを確保してもらえることだろう。親戚の子供で親が今回の件で亡くなったので預かっているんですとか、義弟ですとか、親の隠し子ですとか言い訳は無限と出来よう。

 デメリットは言うまでもなく、オレが霧隠れの里に侵入している経緯を説明せねばならんし、信用した後に裏切られたらどうしようもなくなるかもしれない。

 

 ということでオレは、こちらの選択肢を選ぶ。

 

「えぇ~なんですかそれ。なんかナンパされてるみたいですね」

 

 と、茶化したようにして誤魔化す。

 

 赤の他人ルートだ。

 

「むむっ!エロガキの癖して失敬だナ」

 

 一体今のやり取りの中でどこにエロ要素があったのかは甚だ疑問だが。

 恐らく、彼女の中でエロガキという単語は悪口の一種という捉え方、使い方なのだろうと納得する。

 

 オレは会ったことがある事実をふんわりと否定し、あとはふとした瞬間やささいな切っ掛けによって記憶が完全に蘇ってしまう前に退散してしまおうと「それじゃあ」と言って、その場から離れようとしたその時だった。

 

「ラン!あなたこんなところで油売って何してるのよ!」

 

 そう言いながら。瞬身の術を使って現れたのは赤っぽい茶髪の少女。

 

「ふんっ。トイレの帰りに困り果ててフリーズしていたこの少年に診察の案内をしていただけダ」

 

 文句なら受け付けないぞ。という表情で言い返すランと呼ばれた少女。そのランが戻って来るのが遅くなった理由がわかり、トーンダウンするもう一方の少女。

 というか、ようやく思い出した。この特徴的すぎる個性とクセが強い女の子の名前、ランだった。

 

「そうだったの・・・でも、あなたが早く帰ってこなくちゃ患者さんを捌ききれないでしょ」

 

 そしてランの腕を強引に掴むとオレの方を見て、何かを言おうとしたみたいだった・・・のだが。

 

 目を見開いて固まった。

 

 オレと目が合って。動きが全て静止した。

 

 その異常に気が付いたランが「ン?どうしたんだ、メイ」と問いかけるも「か、か、か・・・」とまるで壊れた話す人形のようになって会話が成立しない。

 

 あ、これはマズった。と、オレが心の中で思うと同時に悲鳴にも近い声を上げて、その少女は復活を果たす。

 

「カルタくんっ!?」

 

 その声の大きさに周りから一斉に注目される。

 

 しかしその当の本人は気づかずに。今、この場にいるはずがないオレのことを凝視している。

 

 うん。これは・・・完全にマズったね。

 

 

 

 赤茶髪の少女。照美メイとの再会を果たしたオレは。というよりはメイに完全にバレてしまったオレは注目の的となってしまっているこの状況を打開するべくとりあえず、待っている患者のところへと戻ることを進言した。

 当然、メイは今オレを見逃すと遁走すると踏んですぐには首を縦に振らなかったが、緊急事態だからオレも治療を手伝うと言ったことによって、どうやらオレが逃げる気はないらしいと感じ取ったらしく、大人しく診察室に戻る運びとなった。

 

「医療忍術使える人にチャクラを供給する」

 

 まだ医療忍術を綱手から習っていないオレは直接的に怪我人を治すことはできない。

 こんなことになるなら、時間が無くても早々に掌仙術を習っておくんだったと後悔するが、後悔先に立たずとはまさにこのこと。

 昔の人たちは上手い言葉を作るもんだと感心しながら。他の方法を考えた結果がこれだ。

 

 医療忍術は使えなくともオレのチャクラを使うことはできる。

 例を挙げるとすると、原作第二部で我愛羅が死にチヨバアが転生忍術を使って生き返らせたときは、忍術を発動させたのはチヨバアだったが、ナルトが忍術を発動させるのに不足したチャクラを分け与えていた。

 ということはだ。医療忍者が医療忍術を使うことによって消耗する大量のチャクラを回復させることはできる。いや、もっと正確に言うならば医療忍者がオレのチャクラを使って医療忍術を使うことによって医療忍者のチャクラを消耗することなく半永久的に治療に当たることができるということになる。

 

 それで某錬金術師みたく等価交換というわけではないが。

 

 オレが負傷者の手当てに協力する代わりに里上層部へ侵入者(オレ)の存在を報告することをメイとランは遅らせてくれるようだった。

 

 それから協力を申し出てからというものぶっ通しで半日超。

 

 自分のチャクラを延々と他の医療忍者へ供給することとなったオレは、そこの救護班の中ではちょっとした伝説と化していた。

 曰く、あいつのチャクラ量はバケモノか。とか。

 曰く、あいつは人の皮を被ったバケモノか。とか。

 

 どっちもバケモノ扱いだった。酷い奴らめ。

 

 その甲斐あって重傷患者のほとんどは一命をとりとめ、多くの感謝の言葉を貰うことになったのだが。

 ただ、半日にして有名になり過ぎた。

 

 これでは落ち着いて話もできないということで。

 

 メイとランを個室に連れ込むのであった。

 

 

 

 ・・・どうだろう。個室に連れ込むってなんか背徳感ある語呂だよね。

 

 




お気に入り登録、感想、評価、誤字報告。ありがとうございます!

新名蝦夷守です。

あれだけ言っててようやく出せました。

照美メイ!

出せただけでもちょっと満足してしまいました。
さて、次回以降どうしようか。笑


では、また次回もよろしくお願いしますー


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082.水の国潜入任務 其の陸

メイちゃんの続き。

いつの日かのドラマみたいですね。では、どうぞー


「それで?どうしてカルタくんが霧隠れの里の内部にいるのかしら」

 

 オレが個室に連れ込んだと思っていたのはどうやら間違い、認識ミスのようだった。

 

 逆だ。

 

 オレがメイとランを個室に連れ込んだんじゃない。オレがメイとランに連れ込まれたというのが正解、正しい認識だった。

 

 そう思わされたのは個室の部屋の扉が閉まり、鍵をかけた瞬間にランがオレの手首を縄で縛り上げ、ソファーに押し倒されたときだった。

 ご丁寧に猿轡までさせられている。

 

 これ。SMプレイの一環ですか?

 

「・・・そう。何も話してくれるつもりはないようね」

 

 メイは残念そうな声色でそういった。そして、嫌に黒光りしているクナイをおもむろにポーチから取り出す。

 

 ・・・って。

 

 いやいやいやいやいや!

 

 はじめっから話させてくれる気ないでしょ!!だって真っ先に口塞がれたもの!!だって猿轡させられてるんですもの!!

 

 頬に冷たいクナイが触れる。

 

 クナイの先端が僅かに皮膚に触れながら下へと下がっていき、首筋で止まる。

 

 オレがソファの上でジタバタと暴れていると、その年齢からは普通、到底感じることができないような妖艶な笑みを浮かべながら顔を近づけてきて・・・。

 

 

 

 

 

 ・・・という諸兄らの妄想はさておき。

 

 現実はもっと現実的で平和的だった。

 

「それで?どうしてカルタくんが霧隠れの里の内部にいるのかしら」

 

 とメイに聞かれたのは本当のこと。むしろそれ以外全てが現実ならぬ幻術で妄想の産物だった。

 

 ちなみに、メイとランが座っている3人掛けソファーの対面にテーブルを挟んでオレひとりで3人掛けソファーを占領しているという並びである。

 

「全てを説明するのは難しいんだけど・・・」

 

 と、前置きをしてから説明という名の言い訳を始める。

 

 まずこのまま野放しにしておくと火の国や木ノ葉隠れの里の国益のみならず忍界全体を大きく揺るがしかねない人物の情報を追っていると水の国に潜伏している可能性が浮上して、水の国に密入国したこと。

 これはうちはマダラの暗躍の件をぼかしている。

 

 そしてその人物を追っていたら水の国の腐敗している現状を目の当たりにしたこと。外交を終戦条約以降、一切遮断しており内戦が多発していること。

 どうやらその人物は水の国か霧隠れの里の上層部に繋がっているか、もしくは裏で糸を引いているか、操っているか。そのような可能性が出てきたこと。

 

 そして。

 水の国内や霧隠れの里で頻発している反乱や内乱、内戦、紛争といったものは、その人物が引き起こしているのではないかという推測。

 

 これらの情報を元に霧隠れの里近くにある村へと向かっていたら、突然の鉄砲水に呑み込まれて里の内部まで流されて今に至る、と。

 

「・・・信じられないわ」

「あァ。ワタシもメイの感想に同感ダ」

 

 オレの話を聞いた直後の2人の感想がこれだった。

 

「その反応になるのは分かる。だけど、オレの話が絶対じゃないにしろ可能性が高いということだけは覚えておいた方がいい」

 

 ま、信じるか信じないかはあなた次第です。と、某都市伝説を扱っている特番バラエティー番組よろしく締めたオレだったのだが。

 それに対するメイとラン2人の反応は微妙なものだった。

 

 そりゃあそうか。元ネタ知らないもんな。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 話を戻そう。

 

「不法入国していル他国の忍びの言い分なんか信じられるわけがないだろうガ」

「そうよねぇ。でも私はカルタくんの言った話を完全に信用できるわけではないけど、カルタくんが完全な嘘をついているようにも思えない」

 

 そう言ってばっさり切り捨ててくるランに対して、肯定しつつもオレの話を信じようとしてくれているメイ。

 

「オレは嘘はついてないからね。確定情報ではないから間違いという点がある可能性はあるけど」

「お前が嘘をついていないという証拠を今、この場で見せてみロ。そうしてら信じてやらんこともなイ・・・かもナ」

「そんな証拠、今この場で出せるわけないだろう。今は信憑性の高い情報に基づいた仮説だけで動いているようなものなんだからな」

「じゃア、お前の話は信用ならんということで結論を出してもいいんだナ?」

「いや。もう少し時間をくれ。そうしたら度重なる反乱や内乱を裏で起こしている黒幕をお前の前に引きずり出してやるよ」

 

 そうすりゃ、オレの言っていたことが正しかったっていう何よりの証拠になるだろう?と言外に言うオレに対し。

 

「不審者であるお前に仮に時間をくれてやったとしてダ。その間にお前が内戦を長引かせるための工作をしないとは限らないだろウ?」

 

 ランはうまいこと危機感を煽らせるだけ煽らせておいて協力者ぶったオレが霧隠れにとって真の敵だったという状況を一番危惧しているようだった。

 

「ちょっとラン!それは言い過ぎよ。カルタくんはそんなことしたりしないわ」

 

 一般的に。危機管理意識としてランの方がオレに対する認識は正しかった。

 

「ふン・・・どうだかナ」

 

 だってそんな人だったら、3年前に当時敵国だった霧隠れの忍びの私たちを助けてくれるわけがないでしょ。とランにお説教がましく言うメイだったが、ランの意志は変わりそうもなかった。

 

「ラン」

「なんダ?クソガキ。年上に対する礼儀も持っていない奴に貸す耳は生憎だが、ワタシには持ち合わせてないゾ」

 

 呼び捨てにされたのが気に食わなかったみたいだった。

 

「ランさん」

「なんダ?」

「オレの言ったこと全てを信じろなんて言わない。ましてや協力してくれとも言わない。ただオレのことを見逃してほしい。じゃないと世界が滅ぶ・・・可能性があるんだ」

 

 世界が滅ぶだなんてそんな大袈裟ナ。と、ランは笑うが、オレは本気だった。

 

 だっていままで原作を崩壊させては来たが、将来、世界の修正力だか歴史の修正力だかに原作通り、第4次忍界大戦が勃発して不死身のマダラや大筒木カグラが召喚されたときに、ナルトやサスケが原作通りに覚醒するとは限らないだろう。

 もちろん原作通りにナルトとサスケがやっつけてくれる可能性だってあるが、そんな不確定要素に世界の命運を握らせたくはない。

 

 そのためにその前段階で全てを終わらせる必要があるんだ。そして原作知識があるオレにはそれをできる唯一の存在かもしれないんだ。

 

「頼む」

 

 オレは最後に一言だけそう言って、頭を下げた・・・。

 

 

 




ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

新名蝦夷守です。

さて。なぜこうなった。主に前半。
カタカタと打ち込んでいたら、気がついたらこうなってました。消すのもったいないと思ってしまい夢オチにも勝る酷い修正の仕方に。

次回はもう少し真面目に頑張りたいです。では。


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083.水の国潜入任務 其の漆

前回のあとがきで真面目に頑張りたいと言った件だが・・・ありゃ守れそうにもない。

では、続きです。


 オレは晴れて自由の身となっていた。

 

 あのあと。

 

 つまり、ランに向かって見逃せと頭を下げた後。

 ランは数秒間黙っていた。その間、メイがランに対して説得をしてくれていたのだが、ランはそれに対して反応することは無かった。

 黙っていた間に何を思って、何を考えていたのかは分からないが、彼女が次に口に出した言葉は「勝手にしロ」というものだった。

 

 その言葉にホッとしたのは、どうやらオレだけじゃなかったようで。

 メイも胸を撫で下ろしていた。

 初めて会った3年前よりも更に成長した胸を撫で下ろしていた。

 

 え?今、言い直した意味はあったかって?いいだろ。別に。ソフトなおっぱい描写なら全年齢対象だ。

 

 ・・・こほん。話を戻そう。

 

 ランは最終的にオレのことを上層部に報告せず見逃してくれることになったが、逆にそうならなかったとき用の保険もあった。

 

 万華鏡写輪眼による幻術。正確には催眠眼による情報の刷り込み。いわゆる洗脳だ。

 原作でのうちはシスイの両眼の万華鏡写輪眼に宿った《別天神》のように一瞬で洗脳できるわけではないが、同じような効果がある。

 強力な幻術に陥れたあとに、精神が崩壊するほどまでに痛めつけて、最後の最後にまるで天使か救世主のように助け出してオレのことを絶対的に正しい存在と認識させる。

 そうすれば、幻術を解いたあともその意識は残るが、チャクラの乱れは一切残らず、周りからも洗脳に気付かれることはないだろう。

 

 世界の命運が。とか言っているときに何を甘いことを・・・と思われてしまうだろうが、それでもこの幻術を使うのは最後の手に。最終手段にしておきたかったのだ。

 だって年端もいかない少女を洗脳なんてしたいわけがないだろ。

 

 年端もいかないだなんて言葉、ランに向けていったら絶対に怒られると思うが。

 

 そんなわけで自由の身となったオレは里内をひとりで散策しているのかというと、そうではない。

 

 オレの左側にぴったりと引っ付いてマークしている人物がいるのだ。

 

 言わずもがな、照美メイだ。

 

 いや、そんなに密着せんでも。身長差的にその胸を堪能できるわけもないし。

 

 メイは、ランから見逃されたオレに対して「でもうちの里で動くのなら身分を保証する人がいた方がいいわよね?」という願ってもない提案をしてきた。

 その提案にオレは一瞬の迷いもなく有難く受け入れ、霧隠れの里で調査する後ろ盾を得たのであった。

 ちなみにランは「丁度いいから監視をメイが責任をもってすることだナ」と言ってメイにオレのことを全てぶん投げていた。

 ランのその物言いにメイは「任せなさい」とその年齢に見合わない胸をドンと叩きながら言い返していたことを追記しておこう。ついでだからその際、ぽよよんと揺れた胸に対して憎しみと妬みの籠った視線を向けていたランの様子も追記しておこう。

 

「私、去年から一族の屋敷から出て、里内のアパートに一人暮らしだからまずはそこに案内するわね」

 

 ということで、里内をメイとともに移動している最中なのである。

 時間帯はもう夜中ということもあって、人通りは少ない。少ないのだが、それ以上に土砂崩れや土石流によって破壊され流された家屋の一部や窪みに溜まった泥水などによって劣悪な足元は歩行速度を遅らせている。

 

「明日、大通りだけでも土遁で一気に整備しようか」

「そうね。道がこの状態だと復旧作業も捗らないものね」

 

 などという会話もありつつ、まるで迷路かバリケードでも乗り越えていくような道を抜けてしばらくして。ようやく里の外周沿いにある1棟のアパートへとたどり着いた。

 

 着いたと同時にメイの表情がハッとなる。

 そしてその直後、申し訳なさそうな表情に変わり。

 

「私の部屋の中ちょっとだけ(・・・・・・)汚いからちょっとだけ(・・・・・・)片付けてくるから。だから、ちょっとだけ(・・・・・・)待っててっ!」

 

 ごめんね~と言いながら猛ダッシュで階段を駆け上がっていったメイ。

 

「そんなに『ちょっとだけ』を強調せんでも」

 

 まさに風のように去っていったメイの後ろ姿を眺めながらその場に残されたオレは苦笑しつつ、そんな感想をつぶやく。

 

 きっと相当散らかってるんだろう。脱ぎっぱなしのパジャマだとか、私服だとか。もしくは素肌に直接身に着ける下着類。つまり俗に言うパンティだとか、ブラジャーだとか。

 

 黒い大人チックなブラジャーだとか。フリルのついた蛍光色っぽいピンクや水色、ミントグリーンといった可愛らしいブラジャーだとか。透け透けで防御力という言葉とは程遠いむしろ男を惑わすための攻撃力しかないブラジャーだとか。使用済みであるのにも関わらず洗ってないある意味マニア受けしそうなブラジャーだとか。

 

 ・・・うん。メイの成長した胸に気を取られてどうもそっち方面に思考がズレるな。大事なのは外側じゃない。中身だ。

 つまり、その中身を守るための下着であるブラジャーが重要なのではなく、そのブラジャーが守っている中身であるところの・・・って、そうでもない。そういうことじゃなくてだな。

 

 オレがそんな不毛な妄想に囚われているうちにメイが戻ってきて、綺麗に片付けられた部屋の中へと案内されるのであった。

 

 

 




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新名蝦夷守です。

なぜ、こうなった・・・汗

次回もこの感じ続いてしまいそうな予感。


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084.水の国潜入任務 其の捌

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では早速つづきです。どうぞー


 メイが現在ひとり暮らしをしているという部屋に案内されたオレは指示されるがままに居間にある小さめの濃いめの茶色い木目調のテーブルの前へ座っていた。

 

「麦茶しかないけど、許してね」

 

 粗茶ですが。と言うかのようにそう言ってそっと差し出された麦茶は冷たくて美味しかった。

 まぁ、この世界観は謎だからな。冷蔵庫は中流程度の家庭ならどこにでもある。

 

 部屋全体の雰囲気でも描写してみようか。

 居間の感じで言うと、大人モダンとでも言おうか。シックな感じで落ち着いた雰囲気であろう。

 語彙力が少なくて悪いな。要するに女子女子した感じではないってことだ。

 でも所々に小物で可愛げのあるものがあったりもする。

 

 その後、冷蔵庫にある飲み物は勝手に飲んでいいやら。今日オレの寝る部屋はあっちの部屋やら。その隣の部屋は私の寝室やら。あっちにある部屋には絶対に入ってはいけない、覗いてもいけないやらのある程度のこの家に住むルールを教えられる。恐らくその絶対に入ってはいけない部屋に先ほどの時間で色々詰め込むようにして片付けたのだろうか。などと邪推する。

 

 オレはその話をうんうんと頷きながらある程度真面目に聞いていたのだが、麦茶を飲んだからか。何も入ってなかった胃袋が刺激されたのか、オレのお腹がぐぅぅぅぅと鳴った。

 別にお腹が鳴った程度で赤面するオレではないが、それでもメイにクスクスと笑われたのは少し恥ずかしい。

 特別それを誤魔化すつもりはなかったのだが、潜入のために周りの目を気にして低所得層の子どもに見えるように着ていたボロい衣服の汚れに目をやった。

 土石流に巻き込まれて泥だらけになった後、水気を絞ってそのままずっと治療補佐係になっていたから土臭さと生乾き臭が漂っている。

 

 そのことに気が付いたメイが。

 

「先にお風呂にする?ご飯にする?」

 

 と聞いてくる。

 

 ちなみに「それとも・・・わ・た・し?」と、続いたのは妄想の中だけだった。

 

「それじゃあ、お風呂で」

 

 そう答えたオレに「お風呂場はあっちよ」と玄関があった方を指さして教えてくれる。

 オレがお風呂場に向かうと後ろから「バスタオルと寝間着は出しといてあげるからね。脱いだ服は空っぽのカゴがあると思うからそこに入れといて」と声がかかったから「はーい」と、素直にお言葉に甘えることにした。

 

 

 

 脱衣所で汚れた服を脱ぎ、言われた通りにカゴに入れ。そしてお風呂場に入って、蛇口をひねったところで気が付いた。

 

「水道が止まってる・・・」

 

 メイが住んでいるアパートの方には土砂や泥水が流れ込んできていなかったし、電気も普通についたから思いもよらなかったが。

 というか。脱衣所にあるボイラーも動いている音がしない。多分あのタイプはガスで水を温めるタイプのやつだ。

 

「あぁ~水もねェ。ガスもねェって吉幾三じゃないんだからさぁ」

 

 とぼやいたところで人為的災害のため仕方ない。

 

 水遁で水を浴槽に溜めて、周りを焦がしたり溶かしたりすることのないように細心の注意を払って火遁で温める。

 そうすることによって程なくして丁度いい温度。大体40℃になるかならないかくらいになる。え、ぬるいってか?オレはこれ以上熱いとすぐのぼせて長湯できないんだよ。

 

 桶でお湯を身体にぶっかけ、石鹸を泡立てて身体を洗う。シャンプーとリンスとコンディショナーとトリートメントらしきボトルが4つあるが、どれがどれだかわからんので、頭もそのまま石鹸で洗う。

 

 多少キシキシになっている気はするが、男は黙って滝。と言われるよりはマシだろう。・・・それで思い出した。あのお笑い芸人今頃なにやってんだろう。

 

 そんな取り留めのないことを考えていたオレは身体を洗い終えて湯船につかる。

 

「あったかいんだからぁ〜」

 

 水遁の基本。水流操作で湯船の中のお湯をジェットバスのような感じにして腰やら肩やらに当てる。

 

「チョー気持ちイイ~」

 

 延々と続く快感に「あぁ~」と思わず声が漏れる。

 

最高(さいっこう)だわぁ~」

 

 今のオレの顔は誰にも見せることができないほどにだらけているだろう。だらしがない顔とはまさにこの顔だと言わんばかりの表情をしている自信がある。というよりその自信しかない。

 

『カルタく~ん』

 

 曇りガラス越しから影が見えて、声がかかる。

 

「は~い」

『バスタオルと寝間着ここにおいとくわね~』

「は~い。ありがとうです~」

『寝間着なんだけど私のお古しかなくて・・・』

「全然それでいいですー。ありがとうございますー」

 

 それだけ言うと脱衣所からメイの気配が消える。

 どうやら、水道とガスが止まっていることにはまだ気づいてないみたいだった。

 

 だって気付いていたら、バスタオルとか寝間着の話よりも先にいの一番に話題にするだろう。

 

 お風呂に入っていて水道とガスが止まってるなんて、水遁と火遁が使えない人にとっては一大事だ。

 

「ジェットバス普及したら戦争は無くなる・・・気がする」

 

 こんなに気持ちのいい日常なら誰だって壊したくはないだろう。なんてしょうもないことを考えてしまうオレだが、最近のオレは水遁を頭から垂れ流す烏の行水が日常だった。というか、見た目は完全に滝行だった。これじゃあどこぞのお笑い芸人のネタになってまんがな。・・・まんがなって方言あんのかな。実際、聞いたことないけど。

 

 その後、久しぶりのお風呂を十二分に満喫したオレはお風呂を上がって用意されたパジャマを見て絶句することになる。

 

「オレはこれを着るのか・・・?」

 

 このサイヤ人の王子たるベジータ様が・・・これを?

 

 とりあえず、現実逃避をしたいオレはそんなアホなことをぶつくさと呟きながら、流石に下着は用意されていないことに気が付き、先程入れたカゴの中から下着だけを取り出してお風呂場で洗い始めるのだった・・・。

 

 




なんだか懐かしいフレーズがいっぱい出てきた模様です。

テレビで見かけなくなったお笑い芸人は営業で稼いでいるのでしょうか。

あと作者は北島の影響もあり平泳ぎばっかりしておりました。

次回ものほほん回ですかね。お付き合いください。では。


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085.水の国潜入任務 其の玖

いつもよりちょっと長めです。

誰得猫耳回。いや、ショタコンには得かもですが。


では、どうぞー


 現実逃避の下着も洗い終え、脱水と乾燥のために風遁でそこそこの強さの風を生みだして。それが終わったら下着と用意されてあった寝間着を身に着ける。

 脱衣所に置いてある鏡の前に現在の自分の姿が映し出されて。オーマイガー!と再度現実逃避をする。

 

 なぜ、こんな罰ゲームみたいなことを・・・。

 メイの家で羞恥プレイに勤しむことになろうとは。

 

 などと絶望に打ちひしがれながら、居間へと戻る。

 

 当然ながらお風呂から上がったことに気が付いたメイと鉢合わせになる。

 

「うんうん、よく似合っているわよ。その寝間着。捨てないで実家から持ち出しておいてよかった~」

 

 ご飯出来てるから遠慮しないでいっぱい食べてね。というメイに対してオレはどういう表情をしているのか。一生わからないだろうし、わかりたくもない。

 

 ちなみに余談で、かなり後になってからわかることなのだが、このときメイは台所で声を殺して「なにあれ可愛過ぎよぉぉぉ!!」と絶叫し、興奮し過ぎて鼻血を出していたらしい。

 ・・・という裏エピソードを数年後に暴露されることになろうとは当然、今のオレは知らない。

 

 閑話休題。

 

 そしてこんな面白おかしい状況を(オレはコンマ1ミリたりとも面白くも無いしおかしくも無いのだが)放っておかない奴らがオレの精神世界には棲みついていた。

 

 それは言うまでもなく尾獣たち。

 そしてその中でも特に又旅である。

 

『かっかっか。おまえ様・・・ぷっ。よう似合っておるわい』

 

 又旅以外のメンツも後ろの方で、プークスクスと笑っているのが目に浮かぶ。悟空なんかきっと大笑いして笑い転げているだろう。そのうちどっかの角に頭でもぶつければいいんだ。

 それとお前らまとめていつか絶対絞めてやる・・・。と決意する一方で、又旅は話し続ける。

 

『よいでないか。おまえ様の猫耳姿も年相応といった感じで・・・可愛げが・・・ある、ぞ・・・ぷすっ』

 

 吹き出すのを我慢しながら。そして結局吹き出しながら言われてもバカにされてる感が余計に増すだけだ。

 

 要するにムカつく。超ムカつく。プラチナムカつく。

 

『妾とお揃いじゃのう、猫耳で・・・くくっ・・・猫耳て』

 

 又旅。お前だけは他の連中よりハードモードの御仕置きを覚悟するんだな。

 

 ちなみにメイから渡されたお古の寝間着というのが猫耳のフードがついたモコモコの白い毛皮が使われている見るからに可愛いらしいツナギだったのだ。男のオレが着るには抵抗感があり過ぎだ。

 もちろん多少の使い古された感は拭えなかったが、それでもかなり大事に。それもある程度の期間使っていたんだろうと思われる。

 

 だって、もうメイの年齢的に数年は使ってない寝間着をわざわざ実家から持ってきて大切に保存しているくらいのものだ。相当な思い入れがあるに違いない。

 

 オレが着ることとなった寝間着(パジャマ)に関する考察はとりあえずここまでにしておいて。

 テーブルに座って完全にお客様状態でいるのも流石に悪いかと思い、キッチンから居間へと料理を運ぶのを手伝う。

 その際、妙にバタバタしていたように見えたメイだったが。

 

「あら。全然座っててくれていいのに」

 

 なんていつも通りのトーンで言ってくれたのでオレは気のせいだったのかな?と、その後は気にすることもなくなっていたが、やっぱり甘えてばかりじゃいかんだろ。

 

 ということで、手伝ったのだが。

 

 キッチンから運んできたのは合計3つの鍋。

 

 ただし全部同じ匂いがする。・・・いや、美味しそうないい匂いなんだけどね?

 もしかして、この量全部同じ食べ物?

 

「男の子だからいっぱい食べるかと思って・・・作り過ぎちゃったかしら?」

 

 と、可愛らしく首をかしげるメイにオレは何も言うことはできない。

 だって作ってもらった側なのに、あーだこーだ不満を言う権利はないだろ?それになによりも可愛いは正義だ。

 

「ううん、ありがとう。・・・いただきまーす」

「はい。召し上がれ」

 

 箸置きから箸を右手にとって。オレは3つある鍋のうち、一番近いところの鍋を開ける。

 

 モワーッという蒸気とともにいい匂いが部屋に充満する。

 

 鍋の中、つゆだくの汁から顔を出しているのは豚肉、じゃがいも、ニンジン、しらたきなど。

 一番スタンダードな具材がぎゅうぎゅうになるほどたくさん入っていて、家庭の味アンケート調査では常に上位に入って来るそれをまずはひと口いただく。

 

 ・・・。

 

 うん。味付けは問題なく・・・といったら失礼か。普通に・・・といっても失礼だろう。

 

 素直に言うと、オレの口に合うとても好きな味付けだった。

 

「おいしい」

「ホント?カルタくんのお口に合ってよかったわぁ」

 

 その一言を求めていたのか、結構至近距離まで近づいていたメイが満面の笑みを浮かべる。

 

 女の子の笑顔ってすごいかわいいよね。特にメイの笑顔は、見るものすべてを虜にするといったら大袈裟かもしれないが、少なくともオレの箸の動きは止まってしまった。

 

 無意識的にその笑顔を脳裏に焼き付けようとしているのか、意識、集中力、情報処理能力の全てがメイの方を向いてしまって結果的に固まってしまった。

 

「肉じゃが。いっぱい作ったからいっぱいたべてね」

 

 オレはメイからかけられたその言葉で再起動し、それからというもの無我夢中で・・・といったらがっつき過ぎな気がするので、無心で肉じゃがを食べ始めた。

 

 

 

 その様子を自分が食べるわけでもなく、テーブルに肩ひじをつきながらじーっとニコニコしながら眺めているメイ。

 それに気恥ずかしさを感じながらも、それを誤魔化すかのように肉じゃがと白米を食べ進めるオレという構図がどれほど続いたのだろうか。

 

 白米は既に3合を食べて。肉じゃがしか入っていない鍋も2つを空にして、3つ目も中盤戦といったところ。

 

 食前は内心。「肉じゃがしかないのかよー」と思っていたオレだったが、今のオレからすると食前のオレをぶん殴ってやりたい。

 

 だって、こんなにおいしいんだもの。

 

 とはいえ、そろそろお腹もキツくなってきたところで口の中にあった肉じゃがと白米を麦茶で一気に流し込む。

 

 流し込んで一息ついたところで、そういえば、水道とガスが土石流の被害によって止まっていること言ってないことを思い出す。

 

 そこで湧き出るふとした疑問。

 

 あれ?じゃあ、この肉じゃがはどうやってつくったんだ?

 

「あ、あのさ。メイ」

「ん?なにかしら?あぁもしかしてじっと見つめすぎちゃってた?ごめんねカルタくん。食べっぷりがよかったから、つい」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「あら?違ったの」

「お風呂の時に気付いたんだけど、このアパート土石流の被害の影響で水道とガスが止まってるんだ。そんななかどうやってメイは料理をしたんだ?」

 

 単純に疑問に思ったから聞いただけだったのだが。

 メイの表情は青ざめた後、悲壮感を漂わせてしばらくの間、沈黙した。

 

 そして・・・。

 

「私、料理なんてできないのよぉぉぉ」

 

 そんな悲痛な叫びのあと。

 ぽつりぽつりと話し始めた内容を要約するとつまり。

 

 元からこの部屋には水道とガスは通っておらず、普段からオレが風呂場でやったように忍術を使って代用していた。

 ごはんは常に外食。

 オレが食べていたご飯と肉じゃがは野戦病院(仮)を出る前に影分身を瞬身の術で派遣して実家の料理人たちに作らせたものだったのだ。

 

 なるほどな。片付けも含めて家事能力が低いんだこの人。

 

 そりゃあ、原作で結婚できなかったわけだわ。

 

「騙しててごめんなさいぃぃ」

 

 と。見栄を張っていたことをなぜか泣きながら謝るメイを落ち着かせつつ。

 

 ここにいる間の家事はオレがメインで受け持ちつつ、できることから教えて行こう。と決意するオレなのであった・・・。

 

 




恋愛描写?になっているのかどうかは怪しいですが。

大目にみてください。切実


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086.水の国潜入任務 其の拾

久しぶりの真面目回です。

では、どぞー


 

 情報が完全に遮断され、未知の空間と化している水の国と霧隠れの里の調査するため。

 それからそこに潜伏しているかもしれないうちはマダラの息がかかった人間の存在の有無を調査し始めてから9か月。

 

 そして霧隠れの里内にあるメイの借りているアパートに拠点を移してから早3か月。

 

 その間、オレは潜入捜査の傍らメイが里から受ける任務を時々手伝いながら過ごしていた。

 

 もちろんメイの任務を手伝っていたのは何も完全なる善意からというわけではない。

 

 彼女が受ける任務の中でも、オレが手伝う案件はとある忍び一族が反乱の疑いがあるから調べてこい。だとか、とある地域に既に反逆して霧隠れの里に敗れた忍びの残党が集まっている可能性があるから調べてこい。などといった内乱、内戦に関わるもののみだ。

 こういったきな臭い案件にマダラ側の人間がもし本当に潜伏しているのであれば姿を現すかもしれないからな。

 

 あと他に特筆するようなことはと言えば、特には無いのだが。

 強いて言えば、メイに簡単な料理のレシピと物は使ったらすぐ片付けるという極々基本的なことを教え込んで、メイにある程度の家事能力がついたということくらいだろうか。

 

 そして以降の会話はつい先ほどの出来事になる。

 オレはその日、メイの任務について来ており、水の国国内。それも南西側にある洞窟へと足を踏み入れていたのであった。

 

「カルタくん。奥に何か見える?」

「・・・いや、結界か何かで見えないように遮断されてるな」

「そう。どうやら当たりのようね」

「あぁ」

 

 光が一切届かない暗い洞窟の中とはいえ、オレもメイも伊達に上忍ではない。暗闇でも視覚情報がゼロになることはない。

 とはいえ、写輪眼で見ないとわからないこともある。洞窟の奥に張られているチャクラで作られているバリア。結界とかな。

 

 今回の任務は地下に潜っている反乱分子の掃討。

 メイには既に写輪眼のことを打ち明けているが故にこのような会話になることも少なくない。

 

「突入したらどうせ気付かれるんだ。ここからやるか?」

「それでもし、反逆者じゃなかったらどうするのよ。中に入って敵かどうか確かめてからよ」

「了解」

 

 オレは自分たちの安全を取って、遠距離からの一方的な攻撃を提案するも、友軍攻撃(フレンドリーファイア)になる可能性を持ち出してメイに拒否されて、オレが折れる。というこの流れもよくあることだ。

 

 (トラップ)にだけは引っかからないように気を付けながら洞窟の奥に進むオレとメイ。

 

 奇襲に関しても警戒は怠っていないが、写輪眼もあるしそうそう気付かないまま攻撃されることはないだろう。

 

「ここから先は影分身に行かせよう。一応、念のためな」

「そうね」

 

《影分身の術》

 

 そうしてオレとメイが1体ずつ影分身を出して洞窟の奥地へと先行させて、本体はこの場に残って影分身からの情報を待ちつつ、新たに人が洞窟に入ってこないか警戒にあたることにするのであった。

 

 

 

 カルタの影分身であるオレは、メイの影分身とともに洞窟奥に張られている結界近くまで来ていた。

 

 結界を見る限り、人が張るタイプのものではなく、札を使って展開するタイプのものだった。

 その効果は、結界に触れた際の探知と外界からの光、音、ニオイなどの五感を遮断するもの。つまり、敵は情報が漏れることを一番恐れているだろうことが予測される。

 結界内に侵入することは容易いだろう。結界に触れたとて弾かれるわけでもないし、自分の偽物が足止めに現れるわけでもないし、炎に包まれるわけでもない。

 

「じゃあオレが先に入るから」

 

 その後、時間置いてから入ってきてと続けようとしたのだが。

 

「いえ、私が先に行くわ。カルタくんはその30秒後、入ってきて頂戴」

 

 オレの言葉にかぶせるようにしてメイが指示を出してきた。

 何故かはわからんが、その意志も強そうだったので、ここはその言葉に従うことにするオレ。

 

 オレがすんなり折れたことに対して、それでよしと言ってるかのように頷いてからメイは結界内へと侵入していった。

 

「この洞窟の奥行がどれだけあるかはわからんが、そんなに長くないなら入ってすぐに戦闘になるはずだ」

 

 結界の外には見張り役の忍びは見当たらなかったが、もしかしたら中に入ったら存在するかもしれないしな。

 

 そんなことを考えている間に、もうすぐ30秒が経つ。

 

 オレは静かに雷遁を纏い、《口寄せ・雷光剣化》で、対忍刀七人衆戦で得た戦利品の一つである雷刀『牙』を召喚する。

 

 やっぱ。使えるもんは使わないとな。オレ、影分身だから本体みたいな無尽蔵チャクラではないし。雷遁を使うなら効率的な忍刀はとても便利だろう。

 

 水の国・霧隠れの里内 (ここ)に来てからは流石に普段は持ち歩いていないオレに懐いている大刀『鮫肌』は、削った相手のチャクラをオレに供給してくれるというメリットはあるが、この洞窟内じゃ使いにくい場合もあり得るだろう。デカいし。

 

 でも、そろそろ構わないと拗ねそうな気がする。それはまぁ、本体に任せるとして・・・。

 

 さてと。もう30秒になっただろう。

 

 んじゃ、本体じゃないただの影分身ではあるが、オレはオレ。羽衣カルタだ。

 

 

「こっから先はオレが主役の独擅舞台だッ」

 

 

 地面を強く蹴って結界内に突入する。

 

 入ると同時に目に入って来たのは見張り役と思われる2名分の死体。

 メイの影分身が侵入と同時に交戦して屠ったのだろう。

 

 それと同時に耳に届くのは戦闘音と敵の罵声。

 戦闘はほんのちょっと進んだ先の開けた空間で行われているようだ。そこには今まで来た洞窟内と違って明かりが灯っている。

 

『て、照美メイ!?』『ここはバレるはずねぇんじゃなかったのかよッ!!』『こんの!里の犬めがァァァ』『こんなはずじゃなかっただろッ!?』『お前が殿をしろ!!』『誰か俺らを売ったのか!?』『態勢が整うまで逃げるぞ!』『あなた様はお逃げください!』

 

 色々な怒鳴り声が響き渡る中、聞こえた『ゼツ様』という単語にオレの予想は間違っていなかったと確信する。

 

 やっぱり、この世界軸でも存在したか。

 

 オレは速度を更に上げ、戦闘が行われている広場に突撃し、真っ先にそいつを探すもその時にはもう既にいなかった。

 

「新手の敵だ!お前らはメイを()れ!!こんな子どもは俺ひとりで十分だッ!!」

 

 そう言って向かってきた敵を切り捨ててから、オレの一方的な戦闘は幕を開けた・・・。

 

 



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087.水の国潜入任務 其の拾壱

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 羽衣カルタだ。

 

 影分身じゃない。偽者でもない。正真正銘本物で本体である羽衣カルタだ。

 

 オレとメイが影分身を洞窟の奥地へと結界内部の状況を調べさせるために先行させてから十数分。

 2人とも特にその間は口を開くことなく、周囲の警戒をしていたのだが、何の前置きもなく唐突にメイが言葉を発する。

 

「あ、私の影分身がやられたわ」

「音は結界の効果か全く聞こえてこないけど、やっぱりこの微妙な揺れは戦闘によるものだったか」

 

 オレらが派遣した自分たちの影分身はどうやらかなりハッスルしていたようで。いや、エロい意味ではなく。

 結界の位置からはかなり離れているはずのこの位置まで僅かながらも揺れが来ていた。と言っても震度で換算したら恐らく1もないだろうほどのものだったけどな。

 

「それで?どんな状況だった」

 

 影分身の性質。分身体が得た情報は本体に還元されるという性質。

 それによって得たであろう洞窟奥地の結界内の様子を聞く。

 

「今回の任務の目標(ターゲット)で間違いないようね。襲撃した私たちの影分身に対して恨み節の雨よ」

「なるほどね。他には?」

「カルタくんの影分身が何かを探していたようね。その後すぐに戦闘に入ってたから見つかってはなさそうだけど」

 

 ビンゴ。

 

 ・・・だったのだろうか。

 オレの影分身が戻ってきてないから正確にはわからないが、なにか今後の手掛かりになるようなことを見つけたのは間違いなさそうだ。

 

 じゃあ、尚更無差別に殲滅するわけにはいかないな。

 

「メイ。一回外に出よう。オレの術で敵全員を一斉に捕縛する」

「ここじゃ巻き込まれるってことね。了解」

 

 察しの良いメイはオレがそこそこ規模の大きい忍術を使って敵を一網打尽にしようとしていることを見抜く。

 瞬身の術で、すぐさま洞窟から抜け出し外へと出る。すると、霧でぼやけている月明りでさえ明るく見えることから洞窟内は本当に暗かったのだなと今更ながら実感する。

 

 未だにオレの影分身の術が解かれた様子がないということは、戦闘が続いているらしい。

 オレの影分身なのだから苦戦しているということではないだろうが・・・。一体何をしているのやら。

 

 パパパっと印を結んで地面に両手を付ける。

 

 そのポーズだけを見ると某錬金術にも見えるが、当然そんなわけはない。やろうと思えば土遁で再現できるものもありそうだが、その話は一先ず置いといて。

 

 ゴゴゴゴゴォォォと地響きを響き渡らせながら洞窟を形成する大部分であるところの巨大な岩山が崩れ始める。

 

「この規模の岩山を岩宿崩しするつもり!?地形変わっちゃうわよ!」

 

 今、岩宿崩しなんてやったら当然中にいる人間は生き埋め状態で圧死してしまうだろう。仮に運よく隙間に挟まったとしても動けなければそのうち窒息死か餓死は免れない。

 

 それにオレは捕縛するって言ったんだ。それなのに殺すわけないだろ?

 

「いいから見とけって」

 

 そう言ったオレはきっと口角が上がって楽しそうな表情を浮かべていることだろう。

 

《流砂漠大流》

 

 岩山を構成していた土やら岩やらがオレのチャクラによって砂へと変換される。それが連鎖反応を起こすかのように時が経つにつれて砂へと変換されるスピードは速くなる。

 それが原因で先程から《土遁・岩宿崩し》にも見える洞窟の崩壊が始まっていたのだった。

 

 そして大量に生みだされる砂は蟻地獄のように巨大な岩山まるごと飲み込み始め、それと同時に岩山全てを侵食し、場所によっては砂の津波を起こしながらやがて全てが砂となる。

 

 その間も絶え間ない地響きを鳴らしながらオレが地面につけている両手から前方全てを砂の海へと変えてしまう。

 

「ちょ、ちょっとカルタくん!?」

 

 やりすぎよ~というメイの嘆きにも悲鳴にも近い声がかかるが、でももう第一段階は終わってしまったということで愛想笑いをしてスルー。

 

 だが、このままだと結局のところ生き埋め変わらない。

 

 オレは両手を地面から離さずに自分のチャクラが練りこまれている砂漠の中を探知を開始する。

 

 するとすぐに見つかる自分以外のチャクラを放つ生命反応は、間違いなく洞窟の奥に潜んでいた敵。

 

《操砂漠柩》

 

 その反応を頼りに周辺の砂を圧縮して固め、徐々に地表近くへと持ち上げる。

 

 そして、巨人の手を模った砂が敵の人数分。

 既に砂漠となった地表面上へと姿を現わした。

 

「これで全部みたいだな」

 

 オレの作り出した人工的な砂漠に浮き出てきた巨大な手のオブジェの数は20ほど。

 元々、敵の人数はもう少しは多かったのだろうが、オレらの影分身との戦闘で命を落として、生命反応を頼りに敵を感知した《操砂漠柩》に捕縛されなかったのだろう。

 

 それはさておき。

 メイがオレの服の袖をくいくいと引っ張りながら、数ある砂の手から一つを指さす。

 

「カルタくん。あれあれ」

「え?どれ」

「あの砂に囚われてるのってカルタくんの影分身じゃないかしら?」

 

 そう言われた方に目を向けると「おーい」と呑気に叫んでいるバカがいた。

 

 間違いなく羽衣カルタ。オレ自身だった。

 

「はぁ。影分身とはいえ、自分の情けない姿を見るのは結構ショックだなぁ・・・」

 

 現実逃避をしたいくらいだが、それをしても状況は何も変わらず。むしろ羞恥プレイの時間がただ伸びるだけだと判断したオレは仕方なく自分の術に囚われている影分身(じぶん)の元へと向かうのであった・・・。

 

 

 



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088.水の国潜入任務 其の拾弐

「んで?何してんの。お前は」

 

 オレは砂の手によって囚われの身となっている自分自身に呆れながら問いかけていた。

 

「いや、敵と戦闘を繰り広げていると急に洞窟が崩れ始めて、全方位から湧き出てきた砂にあっという間に飲み込まれたから口寄せしてた雷刀『牙』を手放しちゃってな。それでも何とか砂の中を泳いで『牙』は手元に戻ってきたんだけれども、結局今見てわかるように砂漠柩にサルベージされて。この通り」

 

 砂中水泳なんざ聞いたことねーよ。それと勝手に忍刀を使うんじゃねーよ。と返すオレに、やっちまったぜ☆てへぺろ〜と言わんばかりにあははーと笑って誤魔化すオレの影分身。

 

 いや、自分自身に愛想振りまいてるんじゃねーよ。気持ち悪い。

 

「そうかい。とりあえず術解いたらお前の見たこと全部分かるからな。ご苦労さんでした」

「ほいほい」

 

 投げやりにそう言った本体(オレ)に、これまた投げやりに返事を返す影分身(オレ)

 

《解》

 

 オレが術を解くと同時にボフンと煙を立てて消える影分身。

 捕らえていた影分身が突然消えたことにより、手持ち無沙汰となった砂の手はサラサラと崩れてただの砂漠の一部となった。

 そして、影分身が消えたと同時に影分身の得てきた情報がオレの脳内に流れてくる。

 

 なるほどな。

 

 敵の中には『ゼツ様』と呼ばれてる存在がいたみたいだな。

 恐らくそいつがオレの考えている『ゼツ』と見て間違いないだろう。

 そのゼツが反乱勢力の奴らに崇拝するほどまで慕われていたのかどうかは分からないが、それでも真っ先に逃がそうとしていたところから考えるとこの反乱勢力の中ではキーとなる重要なポジションにいたのだろう。

 彼奴が戦闘要員や反乱勢力の頭になるとは考えにくいから強いて言うならパトロンとかだろうか。武器や情報を反乱勢力に流すとかはお茶の子さいさいだろう。

 それか、水の国国内に点在する各反乱勢力を結びつける役割を担っていたとかな。

 

 んじゃあ、とりあえずそこら辺から問いただしてみましょうかね。敵さんに。

 ゼツのことをどれほど深くまで知ってるのかは未知数だが、根掘り葉掘り聞くことにしよう。

 

 写輪眼から万華鏡写輪眼へと瞳を変化させ、幻術眼の瞳力を上昇させる。これは万が一にも幻術を掛けた相手に解かれないための措置。万華鏡写輪眼の固有瞳術を発動しない限りノーリスクで万華鏡写輪眼を使えるオレ故の荒技とも言える所業だ。

 

 そしてメイを連れ立って、砂の手によって捕らえている敵に尋問をしに行くのであった・・・。

 

 

 

 その日の朝方。

 日が昇り始めてようやくメイのアパートへ帰宅することが出来たのだが、このあとすぐに寝るというわけには行かなかった。

 今回得た情報を整理して、今後の動きの確認をメイとして共有するためだ。

 

「今回出てきたそのゼツっていうのが、水の国と霧隠れの里で内乱を裏で引き起こしている黒幕ってことよね?」

「あぁ、そうだな。でもまぁ、正確には今は黒幕の手下って言うのがどちらかと言うと正確だろうけど」

「今は?」

「うん。今は。奴には奴の目的がある。そのうち将棋盤をひっくり返すように黒幕を裏切るだろうさ」

 

 なんでそんなことが分かるのよ。と聞かれてしまうが、別の情報筋と適当にはぐらかす。

 

 ・・・今後はボロが出ないように発言には気をつけよう。もう手遅れな感じもするけど。

 

「ま、とにかくゼツの水の国と霧隠れの里での当面の目的は今回で知れた訳だ」

「なんだか、はぐらかされたようだけど・・・。でもまぁ、そうよね。ゼツの目的は現霧隠れの政権の崩壊。そして新政権を樹立させて恐らくは裏で操り、傀儡政権にしようとしている」

「ただその意図までは分からず仕舞い・・・」

 

 ということだな。

 

「でも意図が分からなかったとしても、そんなやつが狙って作る傀儡政権なんてロクなことしか仕出かさないわよ」

「そりゃそうだ」

 

 大方、霧隠れの里が有する尾獣を手元に置いておきたいとか、自分たちが自由に動かせる戦力を持っておきたいとかそんなところだろう。たぶん。

 第3次忍界大戦は終わって、多くの国は復興に力を入れて平穏を取り戻しているが、戦争の火種なんてそこら辺に転がっているんだ。どうせなら戦争を自分たちから始めてコントロールできるうちに戦争で忍界が混乱しているうちに他の尾獣をゲットしてしまおうという魂胆なのかもしれないしな。

 だとしたら、前回の大戦で動かなかった。もしくは動けなかった理由でもあるのだろうか。

 

「カルタくん?考え事かしら?」

 

 ちょっと黙り込んでいた時間が長かったようでメイが心配そうに顔を覗き込んできた。

 

「いや、なんでもない」

「そう?ならいいんだけど・・・」

 

 そして。

 

 それじゃあ、今後の方針はとりあえず現状維持。霧隠れの里から命令される反乱分子の駆逐を続けつつ、暗躍しているゼツの情報を集める。ということで良いわよね?と、確認をしてくるメイに対してオレも同意したことにより、この日オレたちはようやく睡眠にありつけるのであった・・・。

 

 

 

 と。これで終わればどんなに幸せだっただろうか。

 

 オレはお風呂も終え、着替えも済んで、さぁ後は寝るだけだ!と、意気込んで布団に潜り込んだその時に木ノ葉からの帰還命令が届く。

 木ノ葉の里内にひっそりと存在する独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊『宵』のアジトに残してきた影分身が解かれたようだった。

 

 影分身から入ってきた情報を頭で整理して、カレンダーを見る。

 

 今は秋口の10月。

 

「すっかりこっちのことで頭がいっぱいになってて忘れてた」

 

 ある意味では、原作が始まる日と言っても過言ではない日がもう目の前まで迫っていた。

 

「しゃあない。メイはもう寝てるだろうから手紙でも置いておくか・・・」

 

 オレは眠気(まなこ)を擦りながら一筆手紙を書き残すと帰郷する準備を始めるのであった・・・。

 

 




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常連の方も初めての方もよろしくお願いします。

では。


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089.九尾の封印術式 其の壱

 オレがメイのアパートで睡眠を取ろうとした時に、木ノ葉に残して置いた自分の影分身から入ってきた情報とは。

 

 九尾の人柱力である、うずまきクシナが産気づいている。というものだった。

 

 その情報を得たオレはすぐさま木ノ葉へ帰る段取りを始めた。

 霧隠れの里の結界は中から外に時空間忍術で出る分には何の支障も無いものだったが、それだと門から外に出た記録が残らない。それは次回以降潜入するときに、お前いつの間に里外に出たんだ?ということになり面倒になる。

 というわけで一度、徒歩で門から里外に抜け出し、それから《座標天身の術》で木ノ葉へと飛んだのだ。

 ちなみに完全なる蛇足だが、霧隠れの里でのオレの立ち位置はメイが拾った孤児として義弟ポジションになっている。

 

 確かに周りの原作登場人物の年齢から逆算すると今年の10月10日が主人公うずまきナルトの生誕の時であったことに間違いないのだが、オレはオレで国外で潜入任務に就いていたこともあって綺麗さっぱり頭の中から抜け落ちていた。

 

 そんな時に影分身からの情報である。

 本当に木ノ葉に保険として影分身を置いといてよかった。

 

 もちろんこの世界軸では、原作との相違点がいくつもある。

 今回の件で言うならば。

 原作世界では、ナルト生誕時にクシナに封印されてた九尾を解き放った仮面の男の正体であったうちはオビトはこちらの世界では闇落ちせずに木ノ葉の中忍だ。

 

 このことだけを見たら、この世界でのナルトの生誕は大きな事件も起こらずに済むだろう。

 過去からの知識もある木ノ葉の里の上層は、人柱力の封印術式は出産するときに弱まることも知っている。だからこそ今回のクシナの出産にはバックアップ体制には万全を期すだろうしな。

 

 しかし、歴史修正能力とやらで原作世界のオビトの立ち位置の人間がこの世界軸に現れないとも限らない。

 それに、この世界軸でも、うちはマダラや黒ゼツが尾獣を欲しがっているのには変わりがない。

 

 もし仮にそうなった時。

 

 死傷者が出ないとは限らない。

 

 そうならないために。

 考えられる中で最悪の結果を回避するために、オレは水の国・霧隠れの里での活動を一旦切り上げてまで戻ってきた。

 

「で。今の状況は?」

「はい。里上層部がうずまきクシナの位置情報を極秘扱いとして火の国国内にある洞窟へと身柄を隠匿しています。その場所にはごく数名の暗部と夫の波風ミナト、助産師として三代目火影様の奥様しか入られていません」

 

 木ノ葉隠れの里に戻ってすぐに向かったのは、オレが頭の組織『宵』のアジトだった。

 そして、オレがそこに到着する前には情報を集め終えていた部下が待っており、現状の説明を受ける。

 

「当然大蛇丸さんは知ってるんだな?」

「はい。暗部長なので」

「火影様と大蛇丸さんの居場所は?」

 

 そうオレが尋ねるとすぐさまその欲している答えが返ってくる。

 火影の自宅兼職場である木ノ葉版ホワイトハウスである場所の執務室と、いつもの研究所らしい。

 

 良かった。里外とか国外とか、色街とか含めて辺鄙なところじゃなくて。

 

「さんきゅ。とりあえず、お前はここで待機。次の命令を待て」

「了解致しました」

 

 よし。とりあえずはオレらの直属の上司。大蛇丸のところからだ。オレがクシナの出産の警備に立ち会う理由を作る必要がある。つまりは辻褄合わせ、口裏合わせのお願いをする必要がある。

 オレは聞いた場所の大体の座標を計算して、それよりも少しだけ高い場所へと転移を開始した。

 

 

 

 建物だとか人だとかに間違ってもめり込まないために少し空高く転移したのだが、その加減をやり過ぎてしまった件は横に置いて。

 

 オレは大蛇丸が所長を務める研究所へと出向いていた。

 

 研究所の扉を開けると、研究員が出てきてオレが用件だけ言うと直ぐに所長室へ案内される。いわゆる顔パスというものだ。

 一応の礼儀としてノックはするものの、その返事は聞かずにサクッと室内に侵入した。

 

「あら。本体(アナタ)が来るなんて久しぶりよねェ。カルタくん」

 

 影分身を里に残しているだけで、ここ9ヶ月ほど一度も直接報告に上がらなかったことを嫌味ったらしく指摘されるが、そんな些細なことは完全に流すに限る。

 

「ご無沙汰してます大蛇丸さん。挨拶はこのくらいにして本題に入ってもよろしいでしょうか」

「そうね・・・私とアナタはビジネスライクな関係だものねェ。良いわよ、話してみなさい」

 

 それを感じ取ったのか、大蛇丸のほうも多少トーンダウンして話の続きを促した。

 オレはそれに対して前置きが長いという文句はさておき早速話し始める。

 

「九尾の人柱力、うずまきクシナの件です」

 

 そういったオレの言葉にピクリと反応を示す大蛇丸。

 里の上層部でもほんの一握りしか知らない。現時点で最重要案件である人物の名前がいきなり出てきたことに驚いているのだろう。

 そして、同時に『宵』の情報収集能力の高さも予想以上のもので驚いているのだろう。

 

「この件をより安全性を高くするには今の場所では物足りなさ過ぎます。現に我が組織の情報網だけで今現在の位置情報まで割り出せています。自来也さん・・・四代目にも忠告をして今すぐにでも場所を変えるべきです」

 

 そのように提案するオレに、大蛇丸は「具体的には何処に?」と尋ねてくる。

 

 大蛇丸のその問いに返す言葉はもちろん。

 

「蝦蟇たちが隠れ棲む里である・・・『妙木山』です」

 

 そう言ってオレは尚も言葉を続ける。

 

「あそこなら人が通常だと立ち入ることのできない秘境ですし、何よりクシナさんの夫であるミナトさんとその師匠である自来也さんが蝦蟇たちとの契約者。事の重大さを鑑みれば協力を頼めば断られることは無いかと」

 

 オレが一通り話し終えると大蛇丸はうんともすんとも言わずに静かに目を伏せて考え始めた。

 

 そして。

 

「良いでしょう。自来也に掛け合ってあげるわ。ただし自来也にはアナタから説明しなさい。辻褄は合わせておいてあげるわ」

 

 こうして、大蛇丸との交渉は意外にもあっさりとクリアしたのであった・・・。

 

 




新しい回に突入しました!

ナルトがある意味ではいよいよ始まりますね。

この世界軸ではどのような展開になるのか!恐らく一番作者が楽しみで仕方ありません。


お気に入り登録、評価、感想お待ちしております!

以上。新名蝦夷守でしたー


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090.九尾の封印術式 其の弐

 オレは研究所にて大蛇丸を言い包めたあと。

 

 大蛇丸を連れ立って火影の執務室へとやってきていた。

 

 自来也の様相から見るに寝起きからそんなに経っていないらしく、まだ目がシャキッとはなっていなかったが(目がシャキッとなるエナジードリンクでも差し入れしようか)、それでも明るく迎え入れてもらうことができた。

 

「おぉーカルタかのォ!いやぁ~なんだか随分と久しぶりのような気がするのォ・・・。最近はどうだ?と言ってもどうせ大蛇丸の奴にこき使われてるんだろうが」

「えぇ、まぁ。ぼちぼち、そこそこってところでしょうかね」

 

 オレと四代目火影である自来也は、ジト目で睨みつけてくる大蛇丸を横目に差し置いて、そんな中身のない会話を続けていた。

 

 火を見るよりも明らかに苛立ちを隠してすらいない大蛇丸をからかうようにして自来也との雑談を続けるのもまた一興かとも思うが、生憎そんな時間的猶予もないので本題に入ろうと思う。

 

 いや、でもちょっと待てよ。

 

 仮に大蛇丸がイライラしている理由が対外的には大蛇丸の弟子的ポジション。暗部での右腕とも言われているポジションにいるオレが一応師匠である自身よりも、自身と同じく伝説の三忍のひとりである自来也との方が仲良さげに会話していることが気に食わないという嫉妬心からくるものだったとしたら・・・どうだろうか。

 

 つまりは、ツンデレ大蛇丸。

 

 ・・・いや、需要は無いか。不毛どころか無毛並みに無意味な妄想はやめておこう。

 

 どうせ同じ妄想をするならば、美少女の可愛い姿や愛らしい姿。普段じゃ抵抗があって決して見ることができないであろう恥ずかしい姿や、ちょっぴりえろっちぃ姿をしたいものだ。

 

 こほん。話が脱線事故を起こしてしまった。急いでレールに戻そう。

 

「四代目。執務室内に防音結界を張らせていただきますね」

 

 オレがそう言うと、自来也も本題に入るのかと先程は見られなかった真面目な表情へと変わる。

 羽衣一族に伝わる結界術のなかでも特に防音に関して効果高い結界忍術を発動させてから、本題に入る。

 

「波風ミナトさんの奥さん。うずまきクシナの出産にまつわる件です」

「・・・話してみろ」

 

 自来也の声のトーンが低いものに変わる。心なしか室内の温度も下がったような気さえする。

 オレを睨みつけるような鋭く真剣な眼差しで先を促す自来也に従って話し始める。

 

 まずは極秘扱いであるクシナの出産に関する情報をなぜ作戦に関わっていないはずのオレが知っているかということから。

 上司である大蛇丸はクシナの出産時の護衛小隊にオレを選出する予定だったのだが、いつ帰って来るかわからない長期任務を与えていたため断念していたが、今朝になって突然里に帰ってきたため、まだ間に合うと思い護衛の応援としての任務を与えたこと。

 その際にクシナの現在位置の情報を聞き、今のままではあらゆる可能性からクシナの出産を守るには不十分と感じたオレが今現在、代案を上げにここに来たこと。

 

 あとは大蛇丸に言ったように、場所を蝦蟇たちが棲む『妙木山』にクシナを移送することを提案した。

 

 

 

「なるほどのォ・・・」

 

 その一言が、オレが上記の内容と前回大蛇丸にも言った内容を話し終わるまでの間、最初から最後まで一度も口を挟まずにきちんと全て聞き終えた後の自来也の反応だった。

 

「はい。それに封印術に長けていたうずまき一族の封印術とはいえ当然弱点があり、それは四代目もご存知の通り出産する時です。でも羽衣一族に代々伝わる封印術を扱えるぼくならそれを補強することもできます」

「成功確率は?」

「ほぼ100パーセントに近い数字になるかと思います」

「カルタ、お主はクシナの出産場所への襲撃の可能性を危惧しておったが、その理由はなんだ」

「現在まだ調査中なので正確な情報ではないのですが、どうやら尾獣や人柱力を狙う人物、もしくは組織が存在するようなのです。その者たちの能力は不明ですが、今クシナさんを匿っている場所を特定し張っている結界を破れる可能性もゼロではないので、それならば蝦蟇の隠れ里である『妙木山』にて出産してもらうのが一番安全かと考えた次第です」

 

 そう言ったオレに驚く自来也と、その話は聞いてないわよとこちらを睨みつける大蛇丸。

 

「ワシとミナトが頼めば『妙木山』での出産を許可してはくれるとは思うがのォ・・・。だが、妙木山に入山できる人数は極端に制限されるだろうの」

 

 自来也とミナトは契約者だからノーカウント。許容範囲内の人数からは除外されるにしても。

 

 多くて他の蝦蟇たちからすれば一般人は最大でも3人くらいのものだろうとの話だった。

 

 当然、出産する本人であるクシナは入るだろう。というか彼女が入れなかったら何の意味もない。そして次点で九尾を封印している術を更に重ね掛けしたり、既にかけられている封印術を補強や強化するためにもオレだろう。そして最後に助産師役の猿飛ビワコ、三代目火影・猿飛ヒルゼンの奥方だろうか。

 

「護衛のことを考えたら、四代目とミナトさんだけでも十分な戦力となりましょう。それに蝦蟇隠れの里には仙術を使える仙蝦蟇もいると聞きます。まさかそんな魔境の地にまで攻め入って来るバカ者はいないと思います」

 

 それにいざとなったら、ぼくの影分身たちも迎撃に参加できますし。と付け加える。

 

「それじゃあ、ミナトに話を付けてワシとミナトで妙木山への立ち入りを許可を得に行くことにしようかの」

 

 カルタ。お前はここで待っとれ!というと、自来也は瞬身の術でその場から消え去った。

 

 そして、その場に残されたオレはというと。

 

 それにしても大蛇丸、ここに来てから一番最初の入室したとき「自来也。入るわよ」以降一度も口を開いてねーな。と大蛇丸の方を向くと明らかに不貞腐れていた。

 

「あのー大蛇丸さん?」

「・・・」

「大蛇丸さーん」

「・・・」

「元気ですかーっ!!」

 

 防音結界を張っているからこそできる荒業。火影の執務室でのアントニオ猪木。

 

 顎を出してしゃくれながら。そして無反応の大蛇丸の耳元で叫んでやったら、鼓膜が破裂するとめちゃくちゃ怒られた。

 

 そして他にもきちんと報告をすることや、研究所にも影分身ではなく本体が来ることを義務付けられた。

 

 

 

 なんだよ。結局、ツンデレってるのか。だから、需要なんかないってば。皆無だってばよ。

 

 



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091.九尾の封印術式 其の参

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では、つづきをどうぞー


 ここは蝦蟇たちが隠れ住む秘境『妙木山』。

 

 他では見ることのできない木々や野草といった植物が生い茂り、恐らくそれに伴って昆虫類なども他とは違った進化を遂げている外の世界に住む人間からするとまさに未知の領域。

 

 その場所は意外にも木ノ葉隠れの里から歩いて1ヶ月ほどの場所に存在すると言われるが、妙木山があるとされる場所は通称、迷いの森の中になる。

 それ故に秘密のルートを知らなければ絶対にたどり着けないと言われ、それ故に蛞蝓が棲む里『湿骨林』、大蛇が棲む『龍地洞』と並び、秘境とされている。

 

 これはもう少し後になってからわかったことだが、妙木山のある迷いの森には特殊な磁場が形成されており、微妙にだが空間の層がズレているのだ。

 語弊を恐れずにもう少しわかりやすく言うならば、異空間。というところか。

 だから特定の条件が揃った時空間忍術でしか浸入が出来ないのである。自来也のような例外を除いてな。

 術者の元へ召喚する《口寄せの術》や《逆口寄せの術》。それから特殊な札を時空間移動の際に目印とする《飛雷神の術》だ。

 オレの天送の術をベースにした派生の術では、術者が座標を計算してから時空間移動することになるが、妙木山のある迷いの森ではその座標計算が崩れてしまうため、仮に『x』という座標に飛んだとしても毎回別のところに飛んでしまうのである。

 そのランダム性を解析してそのパターン可視化できるようになればオレの術でも浸入できるようになるのかもしれないが、下手をしたら何億通りや何兆通り以上ものパターンがあるかもしれないことに時間は割けない。よって現実的、実質的には天送系の術では浸入が不可能な空間だった。

 

 そんな蝦蟇の秘境。摩訶不思議空間である妙木山にオレはいた。

 

 入れた理由?そんなの決まってらぁ。

 ミナトの飛雷神の術で、みんな仲良く連れてきてもらったんだよ。

 

 火影の執務室での一件の後。

 自来也は波風ミナトと無事合流してミナトの飛雷神の術で、彼らが契約している蝦蟇たちのトップがいるここ妙木山に飛び、大蝦蟇仙人に話を通してクシナが出産により、九尾の封印が弱まる間だけ場所を提供してくれることとなったのだ。

 

「うぅぅぅぅぅぅ!!あーッ!!痛いってばねーッ!!!!!」

 

 簡易的なテントを張って、その中には分娩台の上にいて先程から断続的に陣痛が来ているらしく絶叫しているクシナ。その横に陣取って心配そうにしながらも励ましつつ手を握るミナト。助産師としての役割を持った猿飛ビワコがクシナの股下の方におり。そして、今は少し離れてクシナの視界には入らないところにオレと自来也がいる。

 

 このテント内にはいないが、蝦蟇たちには外で何かあった時の備えとして待機してもらっている。

 

「がんばれクシナ!がんばれ・・・」

「ほれクシナよ。ひっひっふーぞえ。ひっひっふー。ほれ・・・さん、はいっ!」

 

 ミナトは先程からテンパり過ぎて「がんばれ」という単語しか口から出てきていない。

 それでも今は落ち着いたほうなのだ。最初なんて特に酷いったらありゃしなかった。その様子からは到底他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と畏れられ、味方からは尊敬され、敬わられ、頼りにされる男と同一人物とは思えないほどの慌てふためき様。

 結局、助産師役の猿飛ビワコから「これから父親になるお前がそんなんでどうする!男なんていなくても女は子どもを産めるんだ!わかったらシャキッとするかテントの外で待っておれ!そんなんじゃ目障りだ!」と、要約するとこのように一喝されて今に至る。

 

「うぅぅぅぅ。ひ、ひ、ひふー、ひ、ひ・・・いィィやァァァ!!痛いってばねーッ!!!」

 

 妙木山に移動してからというものこんなやり取りが陣痛が起こるたびに始まったり、終わったりを繰り返しているのである。

 それに出産が近づいているのか、その間隔も最初から比べると短くなっているような気がする。

 

 正直、見てられないほど苦しそうなのだが・・・。

 

 もう全身麻酔からの帝王切開で良いんじゃないかなぁ。この世界なら医療忍術で切開痕もキレイに治るだろうし。それ以前にクシナは人柱力だから、九尾のチャクラですぐに傷口は治りそうなものだし。

 

 なんてことを考えつつ。しかしこの世界の出産方法として一切認知されていない帝王切開をこの場で提案するわけにもいかず。

 今度綱手に会ったときにでも案として提供してみようというところまでで留めることにする。

 

「カルタ。クシナの封印術式の様子はどうだ?」

「弱まったり、正常に戻ったりを繰り返していますね。やはり陣痛が強まると封印が弱まり、九尾のチャクラが漏れ出しています。この様子だと、子どもが生まれるその瞬間に封印が解かれてしまうかもしれないですね」

 

 いやーこれは大変よろしくないですねー。と、やや間延びした緊張感や緊迫感というものが一切感じられない声色で自来也の問いに写輪眼を通してクシナを観察している結果を報告する。

 

「ばっかもーん!!」

 

 だったら早く何とかしてこい!と、まるで某海の家族の髪の毛が一本しか残っていない家長か長年ひとりの大怪盗を追い続けている国際刑事警察機構に所属する某刑事のような「馬鹿者」をいただいたオレはそそくさとクシナの元へと駆け寄る。むしろ這い寄る。

 

 いつもニコニコ。クシナ(九尾の人柱力)の隣に這い寄る混沌(多重人柱力)。羽衣カルタですっ!

 

 そんなぐだらなさ過ぎることを考えながらクシナの元に駆け寄ったオレは一言「失礼します」と声をかけてから封印術式が浮き出ているお腹に手を当てる。

 

 ・・・うん。めっちゃ赤ちゃんがお腹蹴ってる。てか、ナルト暴れ過ぎ。

 

 そして九尾のチャクラを実際に手で感じ取ったところで写輪眼を万華鏡写輪眼に変えてクシナの瞳を覗き込む。

 

 オレの意識はスゥーッとクシナの精神世界。暗くそれでいて禍々しいチャクラが充満している空間へと落ちていくのであった・・・。

 

 



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092.九尾の封印術式 其の肆

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 ククッ

 

 クッハッハハハッ!!

 

 

 あと少しで・・・

 

 あともう少しで・・・・・・

 

 この呪縛から解放される・・・・・・ッ

 

 ・・・忌々しいこの呪縛からッ!!

 

 

 

「あともう少しで?悪いけどそうは行かないんだよなぁ・・・九尾さんよぉ」

 

 暗がりの中。

 巨大な牢の中から禍々しいチャクラを放つ、これまた巨大な躰を持つ妖狐。

 

 強大なチャクラを持つ尾獣と呼ばれるバケモノの中でも最強と称される九尾の妖狐。

 

 生みの親、六道仙人・大筒木ハゴロモから付けられた名は、『九喇嘛(クラマ)』。

 

「貴様・・・クシナじゃないな。誰だ」

 

 牢の外へと出てきている思念体九喇嘛の大きな双眼がオレの姿を捉える。そしてオレの眼を見て納得する素振りを見せる。

 

「そうか。うちはの者か・・・」

「いや、オレはうちはじゃないけど」

「よくぞここまで成長したものだ・・・」

 

 オレは羽衣一族の羽衣カルタ。お前の生みの親である六道仙人、大筒木ハゴロモの末裔!

 

 と、オレは誤解した認識を訂正する間もなく。九喇嘛は語りを続ける。

 

「クシナの中のワシが見えるまでになるとはな・・・」

「ねぇ。聞いてる?オレ、うちはじゃなくて・・・」

 

 あぁ。だめだこりゃ。完全に自分の世界に入られてしまっている。

 

 悲劇のヒロイン症候群とやらなのだろうか。ワシ、昔うちはマダラに操られて可哀そうっ!・・・という感じなのだろうか。

 

「忌まわしきその万華鏡写輪眼は呪われた血統の力という訳か・・・」

「人の話を聞けよ!バカ狐ッ!!」

 

 オレの仏のような寛大な器を持つ堪忍袋であっても緒は切れた。

 

 鼻頭に向かって全力の右ストレート。

 

 ボフンッと思念体九喇嘛が煙を立てて消え去る。

 

「あ、やっちまった」

 

 そうオレが呟いたのもつかの間。ボコボコとマグマのような思念体九喇嘛が復活する。

 

 なんだ。封印が緩んでいるからか、一回消しても戻るのか。話が続けられるようで一安心。

 

「きッ!貴様!何をするッ!?」

「何をする!?じゃねーんだよ。人の話は最後までちゃんと聞け!」

「ふんっ!ワシが何故愚かで矮小な人間の話に耳を傾けなければならんのだ」

「はぁ?人の話は最後まで目を見て聞けって親から習わなかったのか?全く・・・これだから最近の尾獣は」

 

 親の顔が見てみたいぜー。と、挑発を続けるオレに対して九喇嘛は「貴様、ワシの封印が解かれた暁には真っ先に嬲り殺してやるからな」と睨みつけながら吐き捨てる。

 

 それ、負け犬の遠吠えだろ。いや、負け狐の遠吠えか?などとまたくだらない思考をしているオレを差し置いて九喇嘛の病気は再発する。

 

「その忌々しい瞳力とワシ以上のチャクラ量。まるでかつてのうちはマダラと同じだな・・・」

 

 

 まさかこのワシの力を抑え込もうとするとはな・・・。

 

 最後になるかもしれんが、一つだけ忠告はしといてやる・・・。

 

 クシナは殺すな・・・後悔することになるぞ。

 

 

 なんて。独り語りをしている九喇嘛。

 

 あーあ。自分に浸っちまいやがって。まったくもう。

 

 話が通じないったらありゃしない。

 

「だ~か~ら!まず、お前はオレの話を聞けよっ!」

「誰が貴様の話など」

「オレはうちは一族じゃない。六道仙人・大筒木ハゴロモの末裔、羽衣カルタだ」

「聞くものか・・・って、ちょっと待て。六道仙人だと?」

 

 ようやく聞く耳を持ったらしい九喇嘛が反応を見せた言葉が六道仙人だった。

 

 やっぱり、尾獣たちにとって六道仙人はどんなに時が経っても特別な存在と記憶しているみたいだな。

 

「あぁ。六道仙人の末裔だ」

「あのじじぃの?」

 

 その問いにオレは頷きで返して話を続ける。

 

「だからというわけではないが、うちはマダラのように九喇嘛を操ってむやみやたらと自由を奪うつもりは毛頭ない」

「きさ、貴様・・・今、ワシの名を」

「もちろん知っている。それに今のオレは多重人柱力。守鶴に又旅、孫悟空に穆王、重明と共にいる。ほら、ちょっとオレの中に意識を向けてみろ」

 

 オレの言葉に対して素直に意識を集中させる九喇嘛。

 とはいっても、そんな穴が空くほど見ろとは言ってないんだが・・・。

 

「確かに。忌々しくも懐かしい奴らのチャクラが感じ取れるな。だが、お前の口から出てこなかった八尾のチャクラもあったが?」

「あーそれはな。八尾の意識本体は雲隠れの里のとある忍びのところにいるんだ。ただ八尾牛鬼はそこの人柱力と仲が良くてな。意識ごとオレが取り入れると情報を漏らされるかもしれなかったからチャクラだけ貰っといたんだ」

「・・・ふんっ。どいつもこいつも飼いならされやがって」

 

 そう悪態をつく九喇嘛だったが、その言葉からはそれほど棘は感じられなかった。

 それにオレに対する呼び方も「貴様」から「お前」と多少なりとも柔らかくなっているし。

 

 九喇嘛(ブルータス)、お前もツンデレなのか。男?のツンデレが今期のトレンドなのか!?

 

「それで?お前はどうするつもりなんだ。お前ほどの者なら今ならワシをクシナから引き剝がすことも逆に縛り付けることも容易いだろう」

「九喇嘛を引き剝がしてオレに再封印したら、クシナが死ぬ・・・人柱力だからな」

「なら封印から逃れようとするワシを縛り付けるのか?」

「いや、未来への保険として是非とも九喇嘛には一緒に来てもらいたい」

 

 この相反する主張に九喇嘛の頭の上には疑問符が浮かんでいることだろう。

 

「オレのご先祖様。大筒木ハゴロモが行ったように分かれてもらいたいんだ」

 

 十尾を分割して九つの尾獣にしたように。

 

 九尾九喇嘛を2つの意識体へと。

 

 陰のチャクラを持つ九喇嘛と。陽のチャクラを持つ九喇嘛に。

 

「・・・そんなこと本当にできるのか?」

「当然」

「そうか・・・じゃあやってみろ。羽衣カルタ」

 

 初めて名前を呼んでくれたことに驚きを隠さないオレに対して九喇嘛が笑う。

 

「いや、ちゃんとオレの名前覚えてくれてたんだなぁって」

「・・・たまたまだ」

 

 またまたー。ツンデレっちゃって。

 いや、九喇嘛が言った「たまたま」とかけて「またまた」といったわけじゃないぞ。うん、本当に。

 

 それにしても。

 

「九喇嘛のことをオレが求める理由は聞いてこないんだな?」

「今聞かなくとも、お前とは長い付き合いになるだろうからな。その内聞きたくなくとも語ってくれるのだろう?」

 

 その言葉に嬉しくなるオレは果たしてニヤケ顔をきちんと隠せているのだろうか。

 

「あったりめぇよ!べらぼうめっ!」

 

 照れ隠しに江戸っ子口調で返すオレの耳に、九喇嘛がぼそぼそっと呟いたその言葉が届くことは無かった。

 

 

 

 じじぃのチャクラを持つお前が悪い奴なわけないからな・・・。

 

 

 




九尾のツンデレは公式ですが、うちの場合はチョロインと化してしまった。

な、なぜだ・・・。


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093.九尾の封印術式 其の伍

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 オレが九喇嘛と仲良くなったことによって、クシナが出産の際に九喇嘛が暴れ出して封印を無理矢理こじ開けられるというリスクは無くなった。

 

 それは無くなったのだが、この先のことを考えると九喇嘛が欲しいオレは現実世界に意識を戻すと周りの人たちにはこう伝える。

 

「ぼくの瞳力でクシナさんの精神世界に棲んでいる九尾を見てきました」

 

「残念ながら伝説のうちはマダラのような瞳力はなかったようで万華鏡写輪眼で制御するのは無理そうでした」

 

「それでぼくの見立てによると羽衣式の封印術でクシナさんと九尾を繋いでいる鎖をこの場しのぎ的に補強することは可能です」

 

「ただ、それではクシナさんにも負担が大きいでしょう」

 

「それに今後、ミナトさんとの間に第2子、第3子と子どもができることになれば尚更。出産の度に補強すればするほどクシナさんへの負担は大きなものとなってしまいます」

 

「九尾の妖狐は他の尾獣と比べても格段に強大な力を持っています」

 

「それを一人の人柱力に封印しようというものが元から酷な話」

 

「この問題を根本的に解決するには方法はひとつしかありません」

 

「九尾を陰のチャクラと陽のチャクラに分けて、2人に分割して制御するのです」

 

「比較的制御しやすい陽のチャクラを持つ九尾はクシナさんが。どちらかと言うと気難しい陰のチャクラを持つ九尾はぼくが受け持ちます」

 

「今度はぼくが暴走しないか。ですか?大丈夫ですよ」

 

「なんてったって・・・ぼくは羽衣カルタですから」

 

 と。

 

 こんな口から出まかせを即興で考え付く悪い子カルタちゃん(悪い子カルタちゃんって何だ)であったが、それしかないと言われると弱い。代替案を出すことができない大人たちから渋々ながらも同意を得て作業に取り掛かる。

 

 まずはクシナの精神世界で九喇嘛を陰と陽に分裂させて・・・。

 

 

 

 

 

「皆さん、本当にありがとうございました!」

「無事にこうして息子を抱けているのも皆さんのおかげです」

 

 クシナが無事に元気な男の子を産み、ひと段落ついたところで約束通りオレたちはこの妙木山を後にすることになる。

 

 ミナトとクシナがテントの外で万が一に備えていてくれていた蝦蟇たちに挨拶していると、その中でもひときわ小さい蝦蟇が近づいてくる。

 

 どうやらこの蝦蟇たちを纏めていた蝦蟇らしい。

 

「自来也ちゃん」「小僧!」

「頭に姐さん。この度はお世話になりました」

 

 あの自来也が下手に出ている。ということはやはり二大仙蝦蟇のフカサクとシマだろう。

 

「いやいや、ミナトちゃんの息子を見れたことだし」

 

 自来也の愛弟子ということで自身の孫弟子にあたり、仙術の修行をつけたこともあるミナトの子どもを「かわいいかわいい」とまるで祖父になったかのような心境で語り始めるフカサクに。

 

「父ちゃんは黙っとき!」

 

 大事な用があるの忘れたんかっ!とツッコミを入れるシマ。

 いきなり出てきて、いきなり始まる夫婦漫才に慣れているであろう自来也の目も点になる。

 当然、ミナトやクシナ、ビワコとオレも目が点になっている。

 

「あはは・・・して、用とは何ですかな?」

 

 自来也が変な空気となってしまった場を戻すと共に話を元に戻す。

 それを感じ取ったフカサクが先程のだらしない顔から一変して真剣みを帯びた視線をこちら側に向ける。

 

「そうじゃ。大じじ様から予言が出たんじゃ」

「と、いうと・・・一体、誰に?」

 

 その視線はこちら側・・・というよりはオレ個人に向いているような気がしていたんだ。さっきからな。

 

「そこの若いの・・・羽衣カルタにじゃ」

 

 ほら、やっぱりな。

 

「羽衣カルタよ。ついてくるのじゃ」

 

 自来也ちゃんと他の者たちは早めに木ノ葉隠れに帰るんじゃぞ。とフカサクは一言言い残すと二大仙蝦蟇にオレは連れられてその場を後にしたのだった・・・。

 

 

 

「おぉーよー来た!よー来た!えー・・・・・・誰じゃったかいの?」

 

 その大ボケっぷりに、ズコーっと、ひな壇芸人顔負けのズッコケをしたのはオレただひとりだった。

 

 あれ?そういうの今、求められてたんじゃなかったの?と、少し恥ずかしくなったオレを差し置いて話は進んでいく。

 

「大じじ様!羽衣カルタですじゃ!羽衣カルタ!」

 

 フカサクのナイスアシストで自分が誰を呼び出したのか思い出したらしく。頻りに「おぉーそうじゃった!そうじゃった!」と頷いている。

 

 原作でこのくだりは知ってはいたが、おいおい大丈夫か。と心配の色は正直隠せそうもない。

 

「ったく・・・自分で呼んだくせにのう。この大ボケじじいが!」

「母ちゃん!大じじ様に向かって大ボケじじとは何じゃ!大ボケじじいとは!!」

「大ボケじじいに大ボケじじいと言って何が悪い!!」

 

 などとまたもや始まった夫婦漫才を制止しているうちに、またオレのことを忘れる大ボケ仙人。いや、間違えた大ガマ仙人。

 

「こほん。では伝える・・・」

「はい、お願いします」

「ワシの夢では将来、お主は未来を変える分岐点となるだろう」

 

 分岐点・・・。オレの今やっていることが成功するか、失敗するか。ということだろうか・・・。

 

「それは自来也さんへの予言と関係はあるのですか?」

「ふむ・・・。自来也への予言とは無関係ではない。が、直接的な関係があるわけでもない」

 

 えーっと。どういうことだろう。最初は予言の子だと思っていた長門はもう闇落ちしないと思うが、ナルトは今さっき生まれたばかりだ。オレが未来を変えるのだとしたら・・・予言のなかでのナルトの存在はどうなる?

 

「それで、ぼくは何をしたらよいのでしょうか?」

「夢では緑色をした人型の蛞蝓と会っておったのう・・・」

「み、緑色をした人型の蛞蝓?」

「うむ。その者と修行をしているように見えた。ワシにわかったのはそれだけじゃ」

「は、はぁ・・・」

 

 まさか緑色をした人型の蛞蝓って、ナメック星人のこと・・・じゃねぇよな?

 

「大じじ様からの予言は以上じゃ。羽衣カルタよ、帰ってよいぞ」

「予言、ありがとうございました!最後にひとつだけお願いしても良いでしょうか?」

「なんじゃ。言ってみろ」

「あのですね・・・」

 

 





嘘つきカルタ。
ブラックカルタ。

彼、悪い子です。


それにしても無駄にナメック星人フラグを立ててしまったような気がする・・・。


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094.九尾の封印術式 其の陸

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 オレは木ノ葉隠れの里に帰ってきていた。

 

 方法?方法は飛雷神の術だ。

 

 妙木山に飛ぶときにミナトの術はきっちりと写輪眼で見極めさせてもらったし、それに術の発動方法も術式の構成もな。

 

 それをいざ使うとなるとまだ慣れていないということもあって、チャクラは余計に喰った気はするが、オレにとっちゃ微々たるものだ。

 

 目印さえあれば、余計な座標演算しなくて済むとなると大分気分的には楽になる。

 

「ぬォ!?」

 

 そしてその場所は火影の執務室。

 

 自来也は急に現れたオレにびっくりして机の上に山積みになっている書類の山をぶちまけている。

 

 ガーンとガッツリテンションが下がっている自来也のその醜態とは裏腹にミナトは爽やかな笑みを浮かべながら。

 

「ん。もしかしなくても飛雷神の術で帰ってきたんだね」

「はい。すみません勝手にミナトさんを目印にして」

「いやいや、なんもだよ。それよりもクシナの九尾の件は本当にありがとうね」

 

 オレが飛雷神の術で里に戻って来る際にミナトが携帯している術式付きのクナイを勝手に目印にしたことにも怒りもせずに逆に感謝される始末。

 

「いえいえ。この方法が最善だったので」

 

 正しくは、オレにとって最善だった・・・だが。

 

 なんか、騙しているのが申し訳なくなるタイプの人だなぁ、ミナトって。

 そんなことを考えていると、地面に落ちた書類を乱雑に机の上に戻し終えた自来也が口を開いた。

 

「ミナト。カルタも無事に帰ってきたことだしのォ。そろそろお前さんは帰ったほうがいいんじゃないかの」

 

 オレもそれに同調して早く家に帰るように促す。

 

「そうですよ。クシナさんもナルトくんも首を長くして待ってると思います」

「・・・そうですね。では、先生にカルタ君。お先に失礼します」

 

 少しの思考をした後にそう言って頭を下げるとミナトは飛雷神の術で家へと帰っていった。

 きっと生まれたばかりの息子ナルトにいち早く会いたいのだろう。いや、絶対にそうでしかない。

 

「浮かれとるのォ。ミナトの奴・・・」

「そうですねー。早くもバカ親全開って感じですかね」

 

 あのミナトの隠しきれていない嬉しそうな様子を見ていると本当に原作から乖離していてよかったと心から思う。

 

「あぁーそういえばカルタ。大蛇丸の奴が終わったら研究所に顔を出せって言っとったぞ」

「いや、ぼく昨日から寝てないので1秒でも早く家に帰って寝たいのですが・・・わかりました」

 

 あいつ怒るとネチネチネチネチといつまでも執拗なまでにしつこいから頼むから早く行ってくれと自来也から目で訴えかけられ。仕方なく折れるオレ。

 

「じゃあ、ぼくも失礼します」

 

 さてと。でらめんどくさいけど、行かなかったときの方がもっとめんどくさくなりそうだからなぁ・・・行きますか。

 

 大蛇丸の研究所にも飛雷神の目印を付けておこうと考えながら、オレはいつも通りの座標天身の術で向かったのだった。

 

 ・・・ちなみに、『でら』の使い方ってこれで合ってるのかねぇ。

 

 その後、きちんと上司でツンデレの気質がある(というよりは構ってちゃん?オカマだし)大蛇丸に結果を報告し、久方ぶりに実家へと帰った。

 実家に帰って頂いた第一声が「おかえりー」ではなく「わぁ!びっくりしたぁ」というのは息子としては悲しいぞ。母さんや。

 いや、もちろんそのあとにはちゃんと「おかえり」は言ってもらえたけどね。

 爺さんに婆さんは縁側でのんびりしていた。なんか、少し見ない間に老けたなーなんて感想は心の内にしまっておいてその日の晩御飯は久しぶりに一家団欒の時を過ごした。

 

 以降、この日に見た夢での出来事である。

 

 

 

 そこは少し薄暗い場所だった。

 

 でも、不思議と嫌な感じはしない場所だった。言うなればオレの精神世界にも似た心が落ち着くような。心が安らぐような。そんな場所。

 

 そこには円を描くようにして9匹の多種多様な大きめの生物たちと、そしてその中心には1人の老人がいた。

 

 オレはそれを上から見るようなアングルで。俯瞰的にその様子を眺めていたんだと思う。

 

 彼らとオレの間には相応の距離があって、彼らの声は届かない。

 

 でも、やけに頭の中に入って来る声があった。脳内に直接響いてくると言い換えても良いかもしれない。

 

 その声はまだ幼さが残る顔の彼ら1匹1匹の顔を見ながら名前を呼ぶ。

 

 砂の身体に1つの尾を持つ狸。

 

守鶴(しゅかく)

 

 青い炎の身体に2つの尾を持つ猫。

 

又旅(またたび)

 

 亀のような身体にいくつかの海の生物の特徴を併せ持ち3つの尾を持つ。

 

磯撫(いそぶ)

 

 赤い体毛を全身に纏い4つの尾を持つ大猿。

 

孫悟空(そんごくう)

 

 馬や鹿の特徴を持ちながら顔は入鹿のようにも見える外見で5つの尾を持つ。

 

穆王(こくおう)

 

 蛞蝓のような身体に6つの尾を持つ。

 

犀犬(さいけん)

 

 芋虫のような、あの世界的に有名な某怪獣映画に出てくるモスラの幼虫のような身体で7つの尾を持つ。

 

重明(ちょうめい)

 

 上半身はバイソンのような牛、下半身の8つの尾は蛸の足という特徴の。

 

牛鬼(ぎゅうき)

 

 オレンジ色の体毛を持ち9つの尾がある狐。

 

九喇嘛(くらま)

 

 恐らくは中心にいる人物の声だろう。

 そして呼んでいる名は全て尾獣のもの。六道仙人・大筒木ハゴロモが付けた名前。それは各々尾獣たちが大切にし、そしてこれからも大切にしてゆく真名とも言える名前。

 

 中央にいる人物こそが彼ら尾獣の生みの親である六道仙人・大筒木ハゴロモなのであろうという推測は容易にできた。

 

 その認識ができた途端、オレの意識は俯瞰的な視点から主観的な視点へと変わる。

 

 それがわかったのは尾獣たちの幼い顔が近くにあったからだった。

 

 そして、自分の口が自分の意志とは関係なく動いて声を発する。

 

「離れていてもお前達はいつも一緒だ。いずれ一つとなる時が来よう・・・」

 

 自身を囲むようにして座る尾獣1匹1匹の顔を見ながら。

 

「それぞれの名を持ち、今までとは違う形でな・・・。そして私の中にいた頃とは違い、正しく導かれる」

 

 言葉を紡ぐ。

 

「本当の力とは何か。その時まで・・・」

 

 最後に見た彼ら尾獣の目には何か光るものが浮かんでいた。

 

 そこから先は、もう覚えてはいない・・・。

 

 

 




お付き合いいただきありがとうございます。

新名蝦夷守です。


これにて九尾封印篇は終了でございます。
ご都合主義満載。つまり、通常運行でしたがいかがだったでしょうか。
楽しんで読んで頂いてたら嬉しいです。

さて、次回からは日常回的なのをお送りしたいと思います。
エピソードの案を活動報告にて募集してますので、皆様の案を是非参考にさせてください!お待ちしております。

では、また明日です。


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095.羽衣カルタの休日『一楽』

予告通り日常回です!

では、どうぞー。


 オレ、羽衣カルタにとって平和的な日常こそが非日常なのである。

 

 なんだか自分で言ってて悲しくなってくるけど、それが事実なのだから仕方がない。

 

 第3次忍界大戦の数年前に生まれ、木ノ葉隠れの里へと移り住み。

 忍者学校(アカデミー)に入ったかと思えばすぐに卒業させられ戦場に駆り出され。

 初の殺しや戦場デビューを果たしたかと思えば大量破壊兵器として扱われ。

 その後、忍界大戦が終わるまで東奔西走し、戦場を転戦する毎日を送る。

 

 忍界大戦が終わり、ようやく平和的な日常を手に入れられるかと思いきや、暗部組織『宵』の結成に携わらされてそのトップに置かれ。

 自分だけが知る最悪な未来を変えるためにまたもや東奔西走。

 

 恐らく皆が思う日常とは程遠く、かけ離れた日常を過ごしていたオレにとっては何事もなく流れる時間と言うものこそが非日常的なのだ。

 

 だから。

 

「へいっ!いらっしゃい」

「おやっさん!いつものっ」

 

 カウンターにどかっと座り、隣の席に背負っていた大刀『鮫肌』を立てかける。

 

「あいよ・・・って、君。常連さんじゃないよね」

 

 こんなことも非日常的だ。

 ていうか、テウチさん。意外にもノリが良かった。まさかノリツッコミをラーメン屋の店主のテンションでやってくれるとは。

 

「あははー。ごめんなさい。人生で一回くらいは言ってみたくて」

「全く・・・しょうがない奴だなぁ。それじゃあ、注文が決まったら呼んでくれ」

 

 そういうと仕込み作業に戻るテウチさん。

 

 もうわかっていると思うが、ここは『一楽』。木ノ葉隠れの里にあるラーメンの名店だ。

 

 来たい来たいと思いながらも、なかなか来ることができなかったオレは数年ぶりにようやく来ることができたのだった。

 

 前回来たのは、木ノ葉に来てからわりとすぐのことだったから・・・4、5年くらい前になるんだろうか。当時はまだ3歳くらいだったはず。

 それなのに大人と同じ量をペロリと平らげて驚かれた覚えがある。それに加えてもっとおかわりをくれと駄々をこねて爺さんに拳骨を貰ったことも記憶に残っている。

 

 ・・・うん。懐かしいな。

 

「おやっさん!注文いいですか!」

「あいよ」

「極辛味噌のとろ旨チャーシュー特盛にトッピングで更にとろ旨チャーシュー5枚。それから看板メニューの味噌ラーメンを普通に1つ。それからサイドメニューで焦がしにんにくのマー油と葱油が香る『ザ☆チャーハン』を大盛と一楽特製餃子の羽根つき(1皿7個入り)の方を5枚ください」

「ぼ、ボウズ・・・お前さんどこかで見たことあるような気がしたら、もしかして数年前に家族で来てその家族の分まで平らげたあのボウズか?」

 

 あれ。オレ、母さんや爺さん婆さんの分まで横取りしてたのか?

 そりゃ、拳骨喰らっても仕方ない。食べ物の恨みは古今東西恐ろしいと相場は決まっているからな。

 

「あ、覚えていてくれたんですね!多分そのボウズだと思います」

「いや。あれはなかなかに衝撃的だったからなぁ」

 

 そう言って、注文を繰り返し確認した後、テウチさんはすぐにラーメンを茹で始めた。

 

「ラーメンはどっちを先に出したらいいんだ?」

「あ、同時にください!普通の味噌ラーメンはこいつが食べるんで」

 

 と、オレは隣に立てかけている『鮫肌』を指さす。

 

「ぶ、武器がラーメンを食べるってかい!そんなバカなっ」

 

 そりゃ、信じるわけないよな。

 

 でも、百聞は一見に如かず。現実は小説より奇なり。とも言う。

 

「いや、こいつだけは特別製でして。うまいもんを食べさせたあとは調子がいいんですよ。だからこいつにも一楽のラーメンを食べさせてやりたくて今日来たんです」

「へぇー。そんな珍妙なことも生きてたらあるもんだな・・・」

 

 なんて。まだ半信半疑な様子を見せながらも注文通りの品を作ってくれるテウチさん。

 

 オレがラーメンが来るのを待っていると店の奥から、水を持ってきてくれる子がいた。

 

 一楽の看板娘。アヤメちゃんの登場である。

 

 いらっしゃいませー。お冷をどうぞ。と、オレの前に氷の入ったコップに水を入れると置いてくれる。

 

「どうもです。あ、こっちにもお願いします」

 

 と、隣の『鮫肌』用の水も要求すると一瞬変な顔を見せるもハッと表情を作り直し笑顔で置いてくれる。

 

 恐らく同い年くらいだろうか。なんて思いながらその様子を眺めていると目が合う。

 

 あ、なんかオレが見つめていたみたいになっちまった。そんなことを思いつつも、でもこれで急にプイッと別の方向を見るのもなんだか失礼だよなと思い、あははと笑って誤魔化すオレ。

 

「え・・・」

 

 アヤメちゃんがオレの顔を見て固まってる。・・・あれ?オレが予想していた反応と違う。

 オレはもっと「私の顔に何かついていましたでしょうか?」的な反応が来るものかと思っていた。

 

「は、は、は・・・」

 

 オレの顔を指さして。まるで乾いた笑いのように「は」を連呼するアヤメちゃん。

 

「お、お父さ~ん!!羽衣カルターっ!」

 

 そう言ってほぼ絶叫に近い悲鳴を上げながらテウチさんの元へと逃げるようにして駆けてゆくアヤメちゃんをオレはただ茫然と眺めていることしかできなかった。

 

 

 

「いやぁ、すまないな。うちの娘が騒いじまって」

「いえいえ。全然気にしてないですから」

 

 忍びであるオレの顔写真がプロマイド写真となって販売されていたとは。

 いやはや。まさかまさかの事態である。

 

 アヤメちゃんからサインを求められたプロマイド写真を見るとどう見ても忍者登録書を発行する際に撮った写真である。

 一体どこから個人情報が流出したのやら・・・。

 

 発売元を縛り上げて販売を停止させるか。いやでももうすでに販売された分を完全に処分することは不可能に近いだろうから・・・ならば、肖像権と称して金をぶんどろうか。

 などと、思考回路をフル回転させながらも怒ってはいないことをアピールする。

 

「へい!お待ち。極辛味噌とろ旨チャーシュー特盛のとろ旨チャーシュートッピングに味噌ね」

 

 チャーハンと餃子はもう少しかかると言われ、早速ラーメンを食し始める。

 

「いただきます」

 

 オレは熱々の麺からいただくことにする。

 鮫肌は刀身をうまくくねらせながら、柄頭を使ってラーメンを口に運んでいる。

 

 あぁ~。これこれ。この味を待っていたのよ。

 

 オレの写真流出を含めて、重要案件事項は山積しているが、今は至福の時を満喫しようではないか。 

 

 たまにはこんなご褒美があっても、罰はあたらない・・・よね?

 

 

 




鮫肌も一楽デビュー笑

ラーメンを食べる描写?カルタの食レポ?

そいつは出来ない相談だぁ。なぜなら作者の技量が足りないから。


というわけでカルタの休日の過ごし方でしたー。

これからも不定期にカルタの休日をお送りしたいと思います。


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096.赤砂人形新喜劇 前編

読者様から頂いた案を元に書いてみました。

3話構成です。では、どうぞー。


 独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊『宵』。

 

 通称、ギニュー特戦隊・・・というのは冗談で。

 

 オレはこの決して表の世界には存在しない組織のトップに君臨しているわけだが。

 

 表面上は大蛇丸が務める暗部部隊のひとつということになっている。

 つまり、正確に言うと兼任している。

 

 あるはずのない地下室を拠点(アジト)と化して活動を行っているオレたち『宵』は、多種多様で多忙な任務を日夜行っている。

 

「よぉ・・・カルタ」

「サソリか。久しぶりだな。パクラの体調に変わりはないか?」

 

 宵のアジト内で、オレがいなかったときに処理された案件の報告書を読んでいると。

 今は産前休暇を夫婦共々取らせているサソリがやってきた。

 

「それはおかげさまで。あともう予定日まで1ヶ月かそこらで何ともないんだがな・・・今日はちょっと相談があってな」

「相談?悪いけど、休暇ならこれ以上は延ばしてやることはできないぞ」

「いや、休暇じゃなくてだな・・・」

 

 どうにも歯切れの悪いサソリ。

 普段の姿からは想像しにくいサソリだった。

 

 その煮え切らない態度に痺れを切らしたオレが「じゃあ何なんだよー」と、投げやりに聞くオレに対してバサッと一瞬で視界から姿を消した・・・。

 

「金が底をつきそうなんだ!なんとかしてくれ!!」

 

 姿を消したわけではなく、土下座をしていた。

 

 なるほどな。土下座をしていたから視界から消えたように錯覚したのか・・・ていうか。

 

 うわぁ、引くわ。まじで。

 10歳も年の離れているオレにお金を工面してくれと土下座をしてくるなんて・・・。

 

「えぇぇ・・・うち、貸金業者じゃねぇし」

 

 いつまでも頭を上げないサソリに「お前さぁ・・・帰れよ」と何度も言いそうになったが。

 

 とりあえず、サソリの土下座という気持ち悪いものを見せられ続けるのは苦痛だったので、普通に椅子に座らせて話を聞くことにしたのだった・・・。

 

 

 

 サソリに話させた話は特に言い訳や回りくどい表現が非常に多かった。

 だからオレが理解した範囲でその話をまとめると。

 

 要は今までもらっていた給料の貯蓄額を考えずに、サソリの持つ傀儡の改造資金に回していたらしい。

 

 オレやサソリが属する『宵』に限らず、木ノ葉隠れの里に所属する多く存在する役無しの忍びの給与は全て歩合制(ちなみにオレは表向きには存在しないとはいえ一応、部隊の長ということで毎月微々たる額が懐に入っている)。

 任務を多くこなせばその分、給与は多くなるし。困難な任務をこなせばその分、ひとつの任務当たりに貰える額の単価は高くなる。

 暗部組織である『宵』が行う任務のほとんどがAランク任務かSランク任務。したがって今までの給料の総額はしばらくは遊んで暮らせるだけの額があるはずなのである。

 

 とはいえ当然ながらその貯蓄も無尽蔵にあるわけでもなく。しかし、それとは反比例に任務がない分、時間は有り余っているし、傀儡の改造にこだわり始めたら際限が無くなるしとジャンジャンお金を投資していったことにより、次第に金欠になり。

 よりにもよってコイツは、自分の貯蓄が無くなったからと言って「少しくらいなら・・・」とパクラとの共有している夫婦の財布にも手を出し、気が付いたらそれも当初の半分くらいにまで減り。

 それでようやく「ヤバい!これはバレたら殺される!」と気付いて、元の金額に戻すために残り半分の金額を賭け事に費やした。

 その賭け事も最初の内はビギナーズラックというものか、上手くいって目標金額に到達することができたらしい・・・のだが。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「いやな、だってそんなに勝ち続けたら『俺、もしかしたら博打の天才なんじゃないか?』と思うだろ。フツー」

「お前さぁ・・・バカじゃねーの?」

 

 よりにもよって、そこで止まらずに自分の傀儡改造資金もここで稼いでしまえと賭け事を継続。

 そして泥沼に嵌ったサソリは、とうとう元手の資金すら全てつぎ込んで負けてしまい。今度はそれを取り戻すために借金をしてまで賭け事を継続。

 

 これはもう。バカとしか言いようがない。大馬鹿者である。

 

「あと少しで出産だってのにパクラに心配かけたくねぇし。もうお前しか頼れる奴がいなくてな・・・」

 

 憔悴しきっている様子でそう言うサソリには同情の欠片もする必要はないと思うが、確かにパクラは可哀そうだとオレも思う。

 そう思ったオレは助言や手助けくらいならしてやろうかな。という気にもなる。

 

「じゃあ、自分のもの売れよ。お金になりそうなものくらい持ってるだろ」

 

 例えば・・・普段使ってない傀儡とか。と、そう提案するのだが。

 

「それは無理だ!」

 

 と、あっさり拒否される。

 

「俺の芸術作品を完全に理解できる奴ならまだしも。ただの興味本位程度の奴らに触られるのは反吐が出る」

「でもお前、砂隠れの里に置いてきた傀儡だってあるだろ?」

「あれらはまだ未熟だったときの俺が造ったやつだからな。今の俺が求めている芸術とは程遠い」

 

 そんなこと言っていられる立場かよ。とも思うが、まぁサソリの商売道具でもあるしなと口出しするのはやめておく。

 

「じゃあ、お得意の人形制作で子ども受けする玩具を作って販売するとか」

 

 それじゃあ、名案を思い付いたとオレが提案するが。

 

「ふんっ。俺の芸術がガキどもに理解できるとは思えん」

 

 これもサソリは拒否。

 

 流石にカチンと来たオレは何も言わずにノーモーションからの。

 

 鳩尾に右ストレート。

 

「かはッ・・・な、なにしやがる」

「いいからやれ」

 

 やらないなら、()るぞ・・・と、万華鏡写輪眼で睨みつけるオレに「ま、待て。話せばわかる!」と五・一五事件の犬養毅首相よろしく懇願してくるサソリであったが。

 

 問答無用。

 

 私刑宣告。

 

 私刑執行。

 

 これから父親になるというのに、家族の金を浪費するバカ野郎に人権は無いと言い放つオレに。

 絶望感を漂わせて、死んだ魚の目をするサソリ。

 

 材料を揃えるだけのお金もないだろうと材料費だけはオレのポケットマネーからくれてやり、お人形作りを強要させる。

 

 これなら長期任務で家を空けることもなく。お金を稼ぐこともできるだろう。

 

 子どもが遊ぶサイズのカラクリ人形なんか家でも作れるだろうしな。

 

 それにサソリの作った人形ならセンスも性能も良いだろうし、間違いなく売れるだろうと。

 

 そうなったら、メシでも奢ってもらえば今回のことはチャラにしてやってもいいと。

 

 オレはこのときまではそう思っていた。

 

 そして後日。現実に直面することになる。

 

 

 

 商売ってそんなに甘いもんじゃない!!・・・と。

 

 

 



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097.赤砂人形新喜劇 中編

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評価してくださった方が100名を超えました!!感謝感謝です。


 前回の話から1週間。

 オレはまだ木ノ葉隠れの里に残っていた。

 

 今まで9ヶ月も木ノ葉隠れの里に本体不在の状況にしていたため、書類整理は溜まっているし、木ノ葉にある多くの名家との会合や懇親会などの行事にも参加しなければならなかったのだ。

 それに今年は原作主人公のナルトが生まれたことからも分かるように名家のベビーブームの年でもある。もうすでに生まれている名家のご家庭にはお祝いの品を持って挨拶をしにいくなどして、なかなかに忙しかったのである。それにしても赤ちゃん可愛い。

 

 そういう様々な事情が重なり、今日は書類整理の日と決めて集中力を高めてデスクワークに励んでいる最中だった。

 

 だったのだ・・・今の今までは。

 

 オレの仕事を邪魔してくる奴が来てしまったのだ。本当にお呼びでない。

 

「カルタァ!!」

 

 バゴンッ!と、ドアが壊れるんじゃないかと思うほど強く開いて『宵』のアジトへと入って来るサソリ。

 

 それに対して。

 

「ドアが壊れるだろ!バカ者めっ」

 

 と、反射的に手に持っていた筆を風遁で強化して投げつける。

 

 それに即座に反応し、自分自身をカラクリ仕掛けにしているサソリは腕のバリアを展開して、ドヤ顔で筆から身を守る。

 

「ソォラァ!!」

 

 ドヤ顔のままその腕を分離させて、まるでロケットのようにして飛ばしてくるサソリ。

 

 オレはそれを写輪眼で見切るまでもなく、サソリ本体の背後に飛んで後頭部に。

 

このバカ(サソリ)の背中に術式付けておいてよかった」

 

 と、心の中でつぶやきながら。

 全体重を込めたダブルスレッジハンマー決める。

 

 そのまま顔面から崩れ落ちるサソリを放置したままオレはデスクワークに戻るのであった・・・。

 

 完。

 

 

 

 ・・・と。これで終わればどんなに楽だったか。

 

「んで?今度はなんだ」

「あのな。カルタ・・・」

 

 気絶から復活したサソリは悲壮感溢れる姿でオレの前に正座している。ちなみにこの正座はオレが強要させているわけではない。

 

「この俺様が造った芸術品がひとつも売れないんだよォォォ!!」

 

 その原因はお前の上から目線の態度が理由なんじゃないか?と、思ったりもしたわけだが、話を聞いていくうちにどうやら他にも問題点はあるらしかった。

 

 まず第一の問題点。子どもが多くいる公園や広場。人通りが多い屋台などが立ち並ぶスペースで売っても、見向きもされない。

 第二の問題点。サソリはチャクラ糸で操ることを想定して作っていたため、一般人はおろか普通の忍びでも操作ができない。

 第三の問題点。こいつ、技術料・芸術料と称して絡繰人形1つに対しての単価をアホみたいに上げている。

 第四の問題点。やたらと人形の名前にこだわる。例えば、普通に「タロウくん」とネーミングすればいいものを「~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)」だとか、一般人が覚えきることができないし、ウケない名前しか付けていないことだ。

 

 それらの問題点がわかったオレの反応は言わなくてもわかるだろうが、言わせてくれ。

 

「サソリ・・・お前、バカだろ」

「っく。貴様もこの俺の芸術を理解できない愚者のひとりだったか・・・」

 

 などと、戯言を抜かしながら右目を抑えている。

 

 最近は厨二病も昔よりは落ち着いてきたと思って見ていたが、完治するどころか逆に邪気眼の設定も追加したのだろうか。

 

「とりあえず。人形は普通の糸でも操れるように改良しろ。それと操り人形型の他に変形合体型人形も作成するんだな」

「・・・まぁ、それは仕方ねぇ。けど、変形合体型って一体なんだ?」

「同じモデルの人形でも、腕や脚の装備を変えられるようにしたり、手に持たせる武器を剣や弓に変えられるような人形のことだよ。これなら1つの人形で色んなパターンを楽しめるだろ?」

 

 なるほどな。と、納得した顔で頻りに頷いているサソリを見てオレは話を続ける。

 

「あとターゲットはまず子どもたちだ。子どもの誕生日やらに親が買ってあげられるくらいの値段設定にしろ」

 

 原価なんて元々大した額じゃないだろ。と、言外にぼったくり過ぎなんだよ。と指摘するオレに対してぶーたれるサソリだが、良いから言う通りにしろ!そうすればお前の芸術に理解を示してくれる人も増えるさと諭して次の問題点の改善策へと話を移す。

 

「それにな。人形の名前なんて子どもたちが勝手につけるんだよ。その方が子供たちも人形に対して愛着が湧くだろ。お前の趣味嗜好を子どもたちに押し付けんな」

「っく・・・俺は自分が造った人形に真名を授けるまでが造形師としての責務だと考えている。俺は一造形師としてその責務を投げだすというのは矜持(プライド)が許さない」

「はぁ?家族の金を使い込む奴に矜持とか言う資格はない。いいからまずは金を稼げ。一家長としての責務を果たせ」

 

 オレに正論で返され。

 

 ぐうの音も出ないサソリはただ項垂れるだけだった。

 

 よし。大人しくなったから最後の問題点だ。これが一番難問だろう。

 

「問題点の中で唯一サソリの力だけじゃどうしようもないのが、どんな場所に店を構えても見向きもされないというところだが・・・」

 

「お前が造る作品は世界一だ。それは保証する」

 

「だからなんとか皆が注目するような良い案を考えといてやるから。オレはもうしばらくはこっちにいるつもりだから、まずサソリは今言った改善点を全て直して来ること。それが終わったら皆をあっと驚かせるようなすげーこと一緒にやろうぜ」

 

 そう言ってサソリの肩を叩くと、今までの態度とは打って変わって縋るような視線で目を潤ませている。

 

 自分の作品を否定されなくなった途端の変わり身の早さ。もしかして芸術の境地なんじゃないか?

 

 そんなことを思いながら、とりあえずサソリを家に帰して。

 

 オレは中断させられた書類整理に再び取り掛かる。

 

「それにしても・・・」

 

 書類整理の合間に掛け軸を眺めながら。指で筆回しをしながら。

 

「なんか良い案って言ったけど・・・そんなに簡単に思いつくもんかなぁ」

 

 サソリの人形の販促に役立ちそうなこと考えながら。

 

 結局この日に終わらせるはずだった仕事は日付を跨いでようやく終わったのだった。

 

 



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098.赤砂人形新喜劇 後編

 

「カルタァ!!」

 

 バゴンッ!と、ドアが壊れるんじゃないかと思うほど強く開いて『宵』のアジトへと入って来るサソリ。

 

 その顔は今まで見た中でも最上級にキラキラとした笑顔だった。

 

 だがオレはそれに対して。

 

「ドアが壊れるだろ!バカ野郎ッ」

 

 と、反射的に手に持っていた筆を雷遁を身体に纏ってその強化された手首からスナップを効かせて投げつける。

 

 音速に近いであろうそれに即座に反応し、自分自身をカラクリ仕掛けにしているサソリは腕のシールドを展開して、ドヤ顔で飛んできた筆から身を守る。

 

「ソォラァ!!」

 

 ドヤ顔のままその腕を今度は分離させて、まるでロケットのようにして飛ばしてくるサソリ。

 

 オレはそれを写輪眼で見切って回避するまでもなく、サソリ本体の背後に飛んで後頭部に。

 

このバカ(サソリ)の背中に術式付けておいてよかった」

 

 と、心の中でつぶやきながら。

 全体重を込めたダブルスレッジハンマー決める。

 

 ・・・ってあれ?激しくデジャヴュ。

 

 そのまま顔面から崩れ落ちるサソリを眺めながらオレはそんな感想を抱いたのだった・・・。

 

 

 

 そういえば、前回の話の導入もこんな感じだったなと思い出したのもつかの間。

 

 前回よりも早く気絶から目を覚ましたサソリは開口一番に、高笑いをしながら。

 

「刮目せよッ!」

 

 と言って。巻物から口寄せしたものが。

 

『~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)』

 

 大層達筆な文字で書かれている木箱だった。ご丁寧にも赤砂のサソリが製作者だという印のマークまで付いている。

 

 思わずサソリを殴ったね。

 

 あれだけ言ったのに名前変えてないじゃん!と。それ以前に名前は買ってくれた子どもたちが付けることになったよね?と。

 

 そう言うオレの様子に命の危険を感じたのか。

 

 慌てて否定するサソリ。

 

「い、いや。そうではなくてだな!商品名としてのタイトルを付けるとするならばっていうことで」

 

 吾輩は『~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)』である。名前はまだない。

 

「・・・という訳なんだ」

「いやいやいや!お前、夏目漱石じゃないんだからさ」

「なつめそうせき?・・・って誰だよ」

 

 オレのツッコミは虚しくもこの世界では通用しなかった。

 そりゃそうだ。だってこの世界に夏目漱石どころかシェイクスピアやその他の作家はいないもんな。

 

 ただ。そのおかげでいい案を思い浮かぶことができたのだが。

 

「夏目漱石のことはもう忘れていい。そんなことより考えておくって言った販促に関わる案なんだけどな・・・」

 

 そういってオレは考えた半分悪巧みにも近い提案をサソリに言って聞かせる。

 

 内容を聞いて受け入れたサソリとオレは、丸1日をかけてその案を実行するための準備やら練習やらに取り掛かるのであった・・・。

 

 

 

 

 

 そして翌日。サソリの造った人形完売大作戦(命名オレ)の実行の時。

 

 天気は雲一つない青空が広がるまさに秋晴れといった様相。

 

 決戦場所は子どもたちがよく集まる広場。

 

 そこに小さめの舞台が出来上がっていた。

 

 一夜城ならぬ。一夜舞台を作り上げたのだ。主に土遁の術で。

 

 舞台演出や脚本、その他諸々の雑用はオレ。

 

 そして人形に命を吹き込むのはサソリだ。

 

 しばらくして子どもたちは朝ごはんを終えるとぱらぱらと広場に集まり出してくる。

 

 普段ならすぐにボール遊びやら忍者ごっこやらをして遊び始めるだろうが、今日に限ってはいつもと見慣れない舞台(モノ)がある。

 

 ファーストインパクトはまずまずのようだな。子どもたちの視線はこの舞台に釘付けだ。

 

 It's show time!

 

 カルタ童話『眠れる森の白雪姫と木ノ葉の碧い野獣ピーター』。

 

 はじまりはじまり~。

 

 ・・・え?なんだかどこかで聞いたことあるようなタイトルがごちゃ混ぜだって?

 

 仕方ないだろ。一から物語を作るなんて無理だったんだ。それにグリム童話もディ〇ニー作品も内容は全てうろ覚えなんだよ。オレは。

 でも何とか試行錯誤の結果、ところどころ継ぎ接ぎして話の筋は通るようにしたわけよ。

 文句を言う前に褒めて欲しいくらいだぜ。まったく。

 

 ほら。それに申し訳程度に木ノ葉隠れ要素入ってるだろ?

 

 

 

 人形劇の上演時間は1時間にも満たない尺だった。

 

 物語の内容としては、白雪姫がお妃様から逃げて迷い込んだのは眠れる森。

 そこには木ノ葉隠れの里で碧い野獣と呼ばれているピーターという一人の忍びが空を飛ぶための修行をしていた。

 眠れる森とは生きて帰れない森という意味だったのだ。

 そこで白雪姫はピーターに助けられながら生き延びて森を出たところ、お妃様に見つかり毒で半永久的な眠りにつかされてしまう。

 ピーターは白雪姫を助けるために本性は魔女だったお妃様とのバトルに発展する。

 最後はお約束のキスで白雪姫はお目覚め。めでたしめでたしである。

 

 裏方のオレはというと、物語の要所要所で忍術を使って、場を盛り上げたり。

 例えば、クライマックスの魔女と化して最終的に竜にまで変身してしまったお妃様とピーターとの白熱した一騎打ちでは竜の口から火を噴かせ、ピーターの剣からは稲妻を走らせるなどしてな。

 

 操り人形たちの声はオレが担当したり。

 その方法は人数分の影分身を用意して、全部声色を変えて頑張った。

 

 他にも場面転換の背景を一瞬で変えたりなどもした。

 

 そして何とか無事に終わったときには観客は子どもたちのみならず、近所の大人や非番の忍びの姿も多くあった。

 スタンディングオベーションで拍手喝采だ。

 

 でも、喜劇終了後に行ったグッズ販売は思ったほどは伸びなかったんだ。売り上げ自体は。

 

 だから、このあと口コミで木ノ葉や火の国を席巻するカラクリブームが起こることなんてこの時はまだ予想すらしなかった。

 

 まさか、この赤砂人形新喜劇が赤砂傀儡新喜劇にスケールを大きくして国内行脚することになろうとは。

 

 そしてそれがきっかけで操り人形で遊び始めた子どもたちが忍びとなり数年後には木ノ葉で傀儡部隊が結成されることになろうとは。

 

 まだ誰も知る由もなかった・・・。

 

 

 



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099.『宵』新世代の三忍

今回のタイトル

『官能は・・・芸術だッ!』にしようか迷いました。

はい。完全にどうでもいい話でした。

では、どうぞー。


 サソリの人形劇は木ノ葉で密かなブームとなり始め、それに伴ってグッズの売り上げも良好らしい。

 どうやらその噂話は火影である自来也の耳にも届くこととなり、自来也専用の傀儡人形の制作を頼まれたのだとか。

 

 えっと。確か要望は金髪美人の爆乳くのいち実寸大。これは聞いてはいないが、サソリがモデルとして選ぶのは恐らくあの人だろう。お察しの通りだ。

 それから肌ざわりと感触。それから先端の色には徹底的なまでにこだわるようにとのお達しがあったと聞いている。

 

 おい自来也。貴様、ナニに使おうとしている。

 

 絶対にナニに使おうとしてるじゃないか。

 

 サソリの傀儡は芸術であって。決してリアルラ〇ドールなんかじゃないぞ。

 

 きっとサソリのことだ。オリ〇ント工業さんも腰を抜かすような次元の傀儡人形(という名のリアル〇ブドール)を作り出してしまうのだろう。

 

 ・・・いや、官能もある意味では芸術だからいいか?

 

 ということは、自来也の使い方もあながち間違った使い方ではない・・・のか?

 

 

 

 こほん。

 

 それはさて置き。

 

 とある日の午後。

 

 忍者学校(アカデミー)を卒業したと同時に我が暗部組織『宵』の養成部門へと来ることが決まっているうちはシスイとうちはイタチの様子を見に、うちは一族の邸宅が建ち並ぶ区画へと足を運んでいたオレはその途中で面白い光景を目撃するのだった・・・。

 

「なにやってるんですか?オビト先生」

「あ、カルタ先生。いや、ちょっと木遁の術の制御を誤ってな」

 

 何故か木の枝に引っかかっているオビトを見つけて声をかけると、どうやら木遁の術の練習をしていたらしいことがわかる。

 

 ちなみにオビトがオレのことを先生呼ばわりする理由は主治医的なことをやっていたからだ。

 毎回ではないが、たまに先生付けで呼ばれる。

 

 多分今回のは照れ隠しだろう。

 

「そういえば、シスイとイタチ帰ってるかわかりますか?」

「あれ?カルタってシスイとイタチと仲良かったのか?俺、全然気づかなかったなー」

 

 なんてオレが欲していた答えとは全く別の返答に相変わらずのんきというか、マイペースというか、抜けてるなぁと思っていると今度は聞いた答えが返ってきた。

 

「あぁ悪ぃ悪ぃ。あいつらならフガクさんの家の裏庭にあるでかい池のところで今日も修行してんじゃねーかな」

 

 たぶんだけどな!と付け加えるオビトに礼を言って、その場から立ち去る。

 

 木の枝に格好悪い姿勢のまま引っかかっているオビトを放置してしまったわけだが、仮にも中忍なんだ。

 それぐらいなんとかするだろうと思っていたのだが、帰り道になっても同じ場所に同じ姿勢で引っかかっていたのはまた別の話。

 

 

 

 閑話休題。

 

 イタチの両親、うちはフガクとミコト夫妻に挨拶をして裏庭へとお邪魔する。

 

 そのフガクはうちは一族の代表を務めている男だ。

 

 当然、シスイとイタチを『宵』にスカウトしたときにも挨拶をしたし、先日彼にとっての第2子であるサスケの誕生祝いも遅ればせながら送らせてもらった。

 

 原作ではうちは一族が木ノ葉隠れの里に対してクーデターを起こす際の首謀者のひとりだったが、この世界軸では今のところそのような兆候は見られない。

 千手とうちは。木ノ葉上層部とうちはの確執は創建当時から現代までずっと続いて来ている問題だが、この世界軸にはもうすでに色々と引っ掻き回して厄介ごとを生み出すトラブルメーカーである志村ダンゾウはこの世にはいない。それにダンゾウに同調していたご意見番2人の他に穏健派の三代目がご意見番を務めている。

 九尾の襲来もなかったし、それがなかったことによって、うちは一族が上層部から監視を受けるということもない。

 

 つまり、うちは一族でクーデターの画策やその先に起こったうちは一族の滅亡が起こる気配は今のところ皆無ということだ。

 

 平和が一番なのである。

 

「シスイにイタチ。元気してたか?」

 

 池に向かって豪火球を放っている2人に後ろから声をかける。

 

 いや、それにしても2人合わせてだとしてもこの規模の豪火球って・・・。

 

 ほぼ豪火滅却の次元(レベル)なんだが。

 

 池から炎がはみ出て木々が燃えているんだが。

 

「あ、カルタ」「カルタさん」

 

 同時に術を解いた2人は、これまた同時に振り返りながら声をハモらせてオレの名前を呼んだ。

 

 髪がボサボサしていて、背が高く恐らく10歳の平均身長はありそうな方がシスイ。

 髪がサラサラしていて、背は2個下のくせにオレと変わらない方がイタチだ。

 

 その2人の双眸には赤く輝く瞳。写輪眼が宿っていた。

 

 イタチは勾玉の紋様が1つ。シスイには既に2つあった。

 

「おいおい。お前らしばらく見ない間にすげぇ力つけてんじゃんか」

「まぁな。カルタには負けるけど修行は一日たりとも欠かすことなく続けてるからな」

 

 シスイはドヤ顔でそう言った。

 確かに塵も積もれば山となる。千里の道も一歩より。とは言うものの・・・こいつら正真正銘の8歳と6歳だよな?正直、才能が凄すぎる。

 

 戦闘経験は皆無だったとしても、並みの中忍じゃ手も足も出ないんじゃないか?

 

 ただフガクさんの修行は厳しすぎるけど。とぼそり付け加えたシスイの表情から推測するに相当絞られることは容易に想像できた。

 

「ならオレが修行付けてやろうか?」

「ホントか!?」

「まず第一ステップとして多重影分身の術を覚えることから始めるけど」

「あ、いや、やっぱ遠慮しとくわ」

 

 なんとも変わり身が早い男だ。

 

 このやりとりを見て「こいつどう思う?」とイタチに問いかけるも肩をすくめて苦笑いをして流された。残念。

 

 まぁ。流石は後に瞬身のシスイと呼ばれるだけのことはある・・・って、それは違うか。

 

「そうそう。お前たちが入隊後に組む相手が決まったから伝えに来たんだ」

 

 来年。シスイとイタチは忍者学校(アカデミー)を卒業する。

 

 そいつはオレやシスイと同い年で現在8歳。

 

 医療忍術を義母から学んでいる最中の。

 

「薬師カブトっていう奴。今度、一回顔合わせも含めて皆で集まろう」

 

 

 

 うちはイタチとうちはシスイ、それから薬師カブトは下忍の間は表向きは新人下忍として通常任務を行ってもらう。

 このときの担当する上忍師もこちらの息がかかった者が担当することになっている。

 

 そして任務の合間には『宵』の施設にて修行や特殊な訓練をしてもらう。

 

 中忍になった暁には表向きは暗部所属で裏では『宵』の実行部隊へと配属されることが既に決められているのだ。

 

 そう遠くない将来、この3人が木ノ葉を裏から支えることになっていくことは想像に難くないだろう・・・。

 

 

 



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100.木ノ葉と雲の友好 其の壱

祝100話!


「はたけカカシ上忍、うちはオビト中忍、のはらリン中忍」

「「「はいっ」」」

「以上3名を雲隠れの里との交換留学生に任命する。木ノ葉の代表として恥ずかしくない振る舞いを常に心がけ、そして雲隠れの良いところや優れた技術を学んでくるように」

「「「はっ!」」」

 

 

 

「サムイ上忍、マブイ中忍、ダルイ中忍」

「「「はい」」」

「以上3名を木ノ葉隠れの里との交換留学生に任命する。雲隠れの顔として恥ずかしくない言動を常に行い、そして木ノ葉の内部の様子や優れた忍術を学んでくるように」

「「「はっ」」」

 

 

 

 

 

 対等な立場での同盟には、力の均衡が必要不可欠である。

 

 火の国・木ノ葉隠れの里と雷の国・雲隠れの里との間には平和条約と同時に同盟関係という軍事協定も結んでいる。

 

 しかしながら、国や軍事力を担っている忍びの隠れ里というものは戦争や紛争を起こすつもりがない平時のときから例え同盟国であったとしても他国の戦力を把握しておきたいものなのである。

 

 とはいえ、平時は平時。同盟国に対して偵察、ましてや威力偵察などを大っぴらには出来ようもない。信頼関係の破綻が目に見えているからだ。

 

 だから。原作世界では中忍選抜試験と称して、里のベースとなる戦力。下忍をルールの元で戦わせて各国が他同盟国の戦力・国力を計っていたのだ。

 

 そして、その原作よりも時間軸的には前であるこの世界の現在では、木ノ葉と雲の間に結ばれた協定によって10歳から15歳までの忍びをお互いに3名ずつを留学させるということで、同盟国の戦力や国力を計ろうということになったのである。

 

 もちろん名目上は友好的交流の活性化。同盟関係の連携強化。次世代の忍びの育成などと明るい言葉で飾られてはいるが、そんなことを額面通りに受け取るものなどいない。

 

 

 

 温かくなってきた春の日差しに心地の良い柔らかな風。

 花の香りもしてくるようになった今日この頃。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 羽衣カルタです。

 

 こほん・・・というわけで羽衣カルタなんだが。

 

 久しぶりに、あれやりますか?例のアレ。

 

 さーて。今、オレはどこにいるでしょーか。

 

 さぁ!始まりました。久方ぶりのカルタを探せ。

 

 3・2・1。

 

 木ノ葉隠れの里?雲隠れの里?もしかして霧隠れの里?

 

 ぶっぶー。残念~全てハズレでしたー。

 

 正解は、ここで〜す!じゃん!

 

 火の国と雷の国という2つの大国の境にあり、緩衝地帯の役割を果たしている国。

 

 霜の国。

 

 先の大戦では国土の東側半分を雷の国に併合されてしまって、原作よりも小さくなってしまった不運な国。

 

 忘れられがちな設定だと思うけど。つまり、オレの生まれ故郷だね。

 

 ただいまー。と心の中で叫ぶと、おかえりーと心の中に返って来るような気が・・・しなくもない。

 

 そんな幻聴はともかく。

 

 なぜオレが霜の国にまで出向いているかというと、カカシとオビトそれからリンたち雲隠れへと1年間送る留学生たちを雲隠れの案内人との待ち合わせ場所までの護衛している。ということと。

 雲隠れ側からすると逆にオレが雲隠れから来る交換留学生たちを木ノ葉隠れの里までの案内人を務めているからである。

 

 オレはこれから1年間。案内人が終わった後も世話係というか、見張り係というか。まぁ、そういう役割を当てられているのだ。

 

 この案内人という制度はお互いの里がお互いに留学生を保護する役割と監視する役割を担っている。

 もし留学生が里の機密情報を盗もうとすれば案内人兼監視役に殺される。そして殺された方の里に留学している者は報復措置として殺されるようになっている言わば人質を取り合って成立している制度なのだ。

 

 そして今は徒歩で合流地点を目指して移動している最中。

 

「なぁカルタ。雲側が用意しているっていう案内人ビーって人らしいんだけどさ、どんな奴か知らない?」

 

 と、聞いて来るのはオビト。

 

「そんな他国の忍びのことなんて、いくらカルタ君でも知ってるわけないでしょぉ?ねっ?カルタ君」

 

 と、聞いてくるのがリン。

 

 カカシは・・・何かの本を読んでいるみたいだ。ただ残念ながら本のタイトルは分からない。生意気にもカバーを付けているからだ。

 まぁ、イチャイチャシリーズではないことは確かだろう。時系列的に。それに作者である自来也も執筆活動する暇などないだろうしな。

 

「いや、リンさん。ビーのことなら少しくらい知ってるんだ」

「ほらねぇオビト。私の言った通り流石のカルタ君でも知らないことの一つや二つくらい・・・って、あれぇ知ってるのぉ!?」

「うん。知ってる」

 

 なんだかコントのノリのような会話だなと思っているんだが、リンのそのテンションはまだ続いているみたいだった。なぜなら「嘘ぉ!ねぇねぇオビト!カルタ君、知ってるって!流石、カルタ君だよね。何でも知ってるよぉ」と言ってオビトの肩をバシバシ叩いている。

 

 そんなに強く叩いたら痛そうなものだが。オビトの表情は完全に緩んでいる。というか、悦んでいるに違いない。

 

 この変態めッ!と、心の中な罵倒しておこう。

 ま、オビトが変態になるのはリンに関わったときだけだしな。周囲に実害は出ていないだけマシだろう。

 

 オレは1人で盛り上がっているリンに対して「流石に何でもは知らないですよ。知ってることだけ」と、某物語に登場人物する三つ編み爆乳メガネ委員長から短髪爆乳委員長へとジョブチェンジした美少女のセリフを借りる。

 

 そしてキラービーについて話し始める。

 

「雲の案内人ビーは、通称キラービー。雲隠れの里では雷影を補佐する人が代々ビーの名を継いでいるそうなので本名は不明。キラービーは刀を使う忍びとしての腕前も確かだが、特筆すべきは八尾の人柱力ということですね」

 

「それに彼は八尾と和解して良好な関係を築いているので、幻術は効きません。幻術にかけても直ぐに八尾が解いてしまうからです。だから幻術をもしかけるのであれば、強力な瞳力でキラービーの精神世界を見た上で八尾を直接幻術に陥れるしかありませんね」

 

「だからもし万が一、戦闘になりそうだったら真っ先に逃げを選択してください。勢い余ってそのまま戦闘に突入しないでくださいね。特にオビト先生」

 

 そしてオレは、それから。と言って3人にある物を渡した。

 

「これは?何だか栞みたいに見えるけど・・・今使えと?」

「カカシさん・・・それ栞に見えるでしょうけど、栞じゃないです。緊急連絡ツールとでも言いましょうか。とりあえずそれにチャクラを流し込んでみてください」

 

 術式が施されているその栞にも見える札にチャクラを流すとオレのポーチに入っている同じような札が淡く光って振動する。

 

 つまり、カカシたちに手渡した札が送信機の役割を果たし、オレの持っている札が受信機の役割を果たしているのだ。

 この術式は飛雷神の術式をベースとして使っており、オレが飛雷神で時空間移動するときの目印となる。そこで何か緊急事態が発生したときに送信機札を持っている人がチャクラを込めるとその救難信号に気付いたオレが時空間移動する際の目印となり、直ぐに駆けつけることができるという仕組みである。

 

 まぁ、言わば保険ということだ。

 

「あ、あそこにいる人ですね。キラービー」

 

 送信機札と受信機札の動作の確認と称して、オビトとリンにも術式札にチャクラを込めて貰いながら歩くこと数十分。

 雲隠れのメンツを発見したオレは3人にその存在を伝えるのだった・・・。

 

 



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101.木ノ葉と雲の友好 其の弐

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 霜の国領内の某所。

 

「お久しぶりですね。ビーさんに皆さんも。それから牛鬼もお変わりないようで」

 

 オレたち木ノ葉側の留学生と雲隠れ側の留学生は道中何事もなく無事に合流することができた。

 

 元から雲隠れから誰が護衛で誰が交換留学生なのかという情報は当然ながらオレには入っていたから、まず面識があるオレが第一声を発するのが一番無難だろうと思い挨拶をするが、なぜか雲隠れ側から驚かれる。

 

 なんでだ?

 

 ・・・あぁ。もしかして前にあったとき(木ノ葉隠れの里を直接奇襲しようとしてきた第3次忍界大戦前期にあった森での戦いのことだ)は敵対してて言葉が乱暴だったからかな。

 

 それともビーの中にいる牛鬼に対しても挨拶をしたからかな。もしかしたらその両方かもしれない。

 

 あ、でもビーとはその後も一度戦ったか。

 五尾穆王をオレが引き取ることになったあの時の戦い以来の顔合わせになるな。

 そのときもどうやらサムイ、マブイ、ダルイの3人はいたようだけれども、結局顔を合わせることはなかったんだっけ。

 

「チェケラッチョー!ハゲラッチョー!お前も相変わらず、中のも変わらず♪オウイエー」

「あ、相変わらずのクオリティですね・・・」

 

 ビーの調子っぱずれなラップに反応を返せたのは木ノ葉ではオレだけ。というか何故にトレンディなエンジェルしてるんだビーさんや。

 木ノ葉のみんなは目が点になってポカンとしている。

 

 雲の3人はもうすでに諦めの境地というか。そんな感じだろう。無反応で無表情だった。

 

 そのラップを聞いて、そういえばビーの特徴教えるときに伝え忘れていたなぁとボンヤリ考えて、心の中で「ビーに関する情報である意味一番伝えておかなくてはならない情報だったな。ごめん」と謝っておく。

 

「とりあえず、木ノ葉(こちら)側がお世話になる留学生を紹介しますね」

 

 ビーのラップのせいで変な空気になってしまったのを元に戻すために、そう前置きしてからカカシ、オビト、リンの紹介を始める。

 

「まず銀髪の彼が、はたけカカシ。第1次忍界大戦後期から第2次忍界大戦で活躍した『木ノ葉の白い牙』の息子で、ご覧の通りうちは一族ではない彼は写輪眼のオンオフができずに常時写輪眼を発動させているため、最近では『写輪眼のカカシ』とも呼ばれています」

 

 そうオレが紹介するとカカシが頭を下げる。

 雲隠れの里に入ってもずっと写輪眼だと嫌がられそうなものだから、初めに理由を説明しておく。

 まぁ、雲隠れの里の上層部には留学生の情報はある程度教えてはいるのだが、案内人であるビーにはこちらの口から直接説明しておくべきだろう。

 

「そして次に、うちはオビト。名前から分かるように木ノ葉の名門うちは一族の出身であり、それでいて初代火影さまと同じ木遁の血継限界を有しています」

「ご紹介にあずかりました!うちはオビトです!よろしくお願いします!」

 

 オビトはそう言って勢いよく頭を下げた。

 雲隠れの里はカカシとオビトの写輪眼と木遁の術は喉から手が出るほどに欲しているだろうが、留学生に手を出しては戦争になるとわかっているだろう。

 それでもその対策や術を解析する機会はあるかもしれないと考えているに違いない。まぁ、写輪眼の対策は目を見ない、複数人で対処する。という初歩的なものしか学べないだろうし。木遁の解析に至ってはほぼほぼ不可能だと思うが。

 

「最後に紅一点である、のはらリン。忍びではない一般家庭の出身ながらも医療忍術に長けており、その分野においてはこの世代ナンバーワンの実力があると思います」

「ビーさんとお呼びしてもよろしいでしょうか。これからよろしくお願いします」

 

 そう言ってリンも頭を下げる。

 彼女の医療忍術に関しては雲隠れの里も技術や情報を盗むことはできるだろう。医療忍術に関して言うと、木ノ葉隠れの里は他国より一歩も二歩も先を行っている。

 これが雲隠れの里にとって交換留学生を受け入れる際の分かりやすいメリットだ。

 それはリンにも伝わっており、もし雲隠れ側から医療関係で助言や助力を求められたら出来る範囲で応じるようにと言われている。

 

 

 

 

 

 そんな感じで。

 ビーからも雲隠れ側の留学生を紹介され(これもド下手なラップ調で行われ大変聞き取りにくかった。というか、全然頭に入ってこなかった)無事・・・というには多少の無理があったかもしれないが、とりあえず顔合わせを終えた後。

 それから大して時間を置かずに、オレはカカシたち3人をキラービーに預け、代わりにマブイ、サムイ、ダルイの3人を預かって帰路についていた。

 

 今度は徒歩ではない。みんな一緒に飛雷神の術でだ。

 

 これによって一瞬で「あ」「ん」と書かれた大門の前まで移動する。

 

 こんなチート忍術、何度見せたって真似どころか解析すらもできないだろう。

 まぁ、雲隠れには似たような時空間忍術の《天送の術》があるけど、それも物を送るだけで精一杯らしいからな。

 

「私の天送の術とは、術発動時の作動の仕方というか、法則というかわかりませんが。全然違うんですね・・・」

「何と言うか。流石というか。お前だけは何をしてももう驚かんな・・・」

「こいつに関しては考えるだけ無駄ッスよ」

 

「「流石、岩隠れでは名前すら呼んではいけない例のあの人と呼ばれる羽衣カルタだ」」

 

 と、サムイとダルイが口をそろえて遠くを見ている。遠い目をして現実逃避をしている。

 

 なんだよそれ。オレはヴォルデモート卿か。

 

 てか、なんでお前らが岩隠れでのオレの呼び名を知っているんだ。と、ツッコミたいところはいくつかあったが、このまま門を目の前にして立ち止まっていると他の通行人に対して邪魔だろうとまずはサムイたち3人の入里手続きをすることにする。

 

 なぜか今日に限って門番をしているガイとゲンマとエビスがこちらをじーっと見ているのだ。

 

 その目はさっさと移動しろと言っている。あ、いや。エビスだけはサムイとマブイのパックリと開いた胸元で視線が止まって鼻を押さえているのか。

 

 一応はお客さんである彼女らに対してエロいことしか考えてないエビスには後で目潰しでもしておこう・・・。

 

 




今回のオチが何故かエビスに。


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102.木ノ葉と雲の友好 其の参

今更ながら、新名蝦夷守のページにカルタ外伝での忍界地図をアップしました。
時間があるとき見ていただければと思います。

疑問質問等があれば、感想欄にてお願いします。


 雲隠れの3人の案内人兼監視役を任されているオレは、彼ら3人の入国審査(正確には入里審査か?)を終え、無事に木ノ葉隠れの里に入った。

 ちなみにというか、完全なる蛇足となってしまうと思うが、サムイとマブイにエロい視線を向けていたムッツリスケベなエビスには精神的な制裁を科させてもらった。

 

 その内容?写輪眼を使った幻術で、世界レベルのボディービルダー系ガチムチマッチョマンが複数人で絡みあっていて最終的に「やらないか?」と誘ってくる・・・という腐っている人種には堪らない。しかしノーマルな性的嗜好の持ち主には全身鳥肌以上の拒絶反応を示すだろうものだったのが、なにか問題でもあったか?

 

 ムッツリーニ・エビスにはいいお灸になるだろう。

 

 それはさて置き。まず無事木ノ葉隠れの里に到着を報告するためと四代目火影・自来也へ雲隠れから来た3人の挨拶も含めて火影の執務室へとやってきていた。

 

「雲隠れのサムイと申します。それから私の隣からマブイ、ダルイです。これから1年間、留学という形でお世話になります。よろしくお願い致します」

「おォー!顔を上げて楽にしてくれい。遠路はるばるよく来てくれた!ワシが妙木山蝦蟇の精霊仙素道人の通称ガマ」

「あ、この人が火影です。では次行きましょう」

 

 サムイが3人を代表して挨拶して、自来也の見栄切りの途中だったが、オレは構わず遮ってマブイとサムイの背中を押しながら退出しようとした。

 

 それを見て自来也は思わずオレの肩を掴みながら止めに入る。

 

「お、おい!カルタ!ワシの見栄切りを邪魔するたァどういう了見だのォォ」

 

 そう叫んでキレてくる自来也を万華鏡写輪眼で睨みつける。

 オレは呆れを通り越して怒りになって、それまた通り越して一周回って呆れてしまった。

 

 いや、どういう了見もなにも。

 見栄切りの間、ずっとサムイかマブイの発達途中なのにもかかわらず既にたわわに実っている豊乳を鼻の下を伸ばしながら見つめてたからな!

 それに手を前に出しながら何もない空間をずっとモミモミしていたからな!

 

 エビスといい、自来也といい。

 

 木ノ葉にはろくな人種がいないと思われてしまうではないか。

 

 特に自来也は酷い。

 里のトップなのにも関わらず、いつも通りのオープンスケベをアクセル全開でやってのけるとは。

 

 ほら。雲の3人の顔を見てみろ。

 唖然として呆然としているだろう。

 

「自来也さん。お客さんが来たときくらいはちゃんとしてください」

 

 あとで綱手さんに報告しますからね。と、言って雲の3人とともに退出したオレだったが。

 

 その際にちらりと見た自来也の顔は絶望の色に染まりきっていた。

 

 いや。そんなに綱手にバレるのが嫌なら最初からやらなきゃいいのに・・・。

 

 

 

 自来也の魔の手からサムイとマブイを逃したオレは、彼ら3人が留学中の1年間過ごしてもらう予定のアパートへと案内をする。

 

 とは言うものの里の中心部にある火影ハウスからアパートがある場所までは意外と離れている。

 

 オレはアパートに着くまでの道中は、里にある施設の説明などで時間を有効に活用する。

 

「あそこに見えるのが忍者学校(アカデミー)ですね。基本的には忍びを志す子どもが入学しますが、一部児童は一般教養を学ぶために入学する子どももいます。それに卒業試験の合格率は現在約50〜60パーセント程で、落ちた子どもは留年するか退学するかを選んで大半は退学しますね。そして家業を継ぐ子が多いです」

 

 そう忍者学校(アカデミー)の話をすると、雲隠れからは驚きの反応が返ってくる。

 

「そんな非合理的な・・・」

「ということはもしや、授業で自分の性質変化も調べたりはしないのですか?」

「ないですね。木ノ葉は忍びの名家が多いので座学や基礎知識、チームワークなどを忍者学校(アカデミー)で教えて、秘伝忍術を始めとした忍術など実戦的技能は家庭で教えるのが一般的なんです」

 

 木ノ葉の忍者学校(アカデミー)のことを自分で話してて改めてこう思った。

 

 やはり、このままじゃ戦力の底上げができない。教育改革が必要だと。

 次の解散総選挙では、これを選挙公約(マニフェスト)として掲げようと。

 

 ・・・いや。政治家になるつもりはないから半分冗談だが。でも、上忍会議のときに議題に挙げようとは本気で思う。

 

 そして、話題は他にも。

 

「そこの花屋さんは山中一族の方が経営してまして、昔から評判がいいお店ですよ。何かのお祝い事とかで花が必要なときはぼくもいつもお世話になってます」

 

 とか。

 

「薬といったら、奈良家が代々商いをしている薬屋さんでしょう。鹿の角を使った秘薬は値段は高いですけど効果は抜群です」

 

 とか。

 

「あの大きい建物が木ノ葉病院です。病気や怪我の際は忍びも一般の民間人もみんなお世話になります。火の国一の医療設備が整っている総合病院といっても過言ではないでしょう。平時である今は任務で外に出ている医療忍者以外全ての医療忍者がここの医師や看護師として登録されています」

 

 などなど。

 木ノ葉に住んでいたら少なからずお世話になるだろう場所の紹介も欠かさずにする。

 

 それから木ノ葉を紹介し案内するのに絶対に忘れてはいけないところが。

 

「ここが木ノ葉が世界に誇る名店『一楽』です。ぼくのおすすめは味噌系ラーメンですね。もちろん塩系や醤油ベースも格別に美味しいのですが、やはり味噌が一番です。そういえば皆さんお昼ご飯まだですよね?入りませんか?いえ、入りましょう。おやっさーん」

 

 オレは雲の3人が返事をする前に暖簾をくぐる。

 

「いらっしゃい!って、おぉ!カルタじゃねーか!いつもと違ってお客さん連れか。カルタはいつものでいいか?」

「お願いします。それからこの3人には味噌のスタンダードで!・・・で、いいですよね?」

「「「あ、はい」」」

 

 オレはその返事に満足して、そこで思考を停止させてしまった。だから気付かなかったのだ。

 

 雲の3人がオレのラーメンに対する情熱に気圧されていることに。

 

 そしてオレはそのことに気付かぬまま、いつもと通りに鮫肌を隣に座らせた。ちなみに案内をするときに背負っているのは邪魔だろうと思い、今わざわざ《口寄せ・雷光剣化》で呼び出した。

 

 その様子を見ていたサムイたちは当然疑問に思っただろうが、その疑問が晴れて、疑問から驚愕に変わるのはラーメンが来てからになる。

 

「あと、そうそう。皆さんに住んでもらうことになるアパートの近くには小さな雑貨屋さんがありまして。そこは木ノ葉唯一の24時間営業なんです。売り場面積の規模はそんなに大きくないのにも関わらず食品から忍具まで幅広いラインナップが有名なんですよ。そういえばこの間ぼくが行った時に『愛』も売ってるのを見ました」

 

 29.8両で。

 

 こうして注文したラーメンが来るまでの間。木ノ葉で暮らす上で必要な基礎知識をオレは3人に教え続けたのだった。

 

 




1両あたり日本円にして10円計算。


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103.木ノ葉と雲の友好 其の肆

 最近のオレを含めた周囲の状況やら、情勢やらをここら辺で一旦整理しておこうと思う。

 

 オレ自身は大きく分けると2つの任務を掛け持ちしている状態だ。

 

 ひとつは言わずもがな雲隠れから来ている留学生待遇の3人。

 サムイ、マブイ、ダルイの案内人兼監視役。

 

 留学生の対象年齢が10~15歳であるのに対して、案内人が9歳とは何事か!と、抗議を入れたこともあったのだが、お前は例外として年齢制限の枠からは外れていると火影である自来也から言われてしまった。

 

 畜生。そんなこと言うなら色街行っちゃうぞ!・・・というのは流石に心の内に秘めておくことにしたけど、オレはまだそんな例外的扱いを認めてはいない。

 

 と、嘆いたところで現状は変わらない。

 留学生の彼らはほぼ毎日のように出歩く。

 

 時には忍者学校(アカデミー)へ。時には研究機関へ。時には木ノ葉に存在する忍び一族との会談へ。時には里の外へと出て火ノ寺へと出向いたこともあった。

 

 もちろん木ノ葉の技術やら良い政策などを自里へと持ち帰るのが彼らが雲隠れ上層部から受けている最重要事項任務だろうが、それ以外にも将来的に雲隠れと木ノ葉とのパイプ役を担える人材になれるよう色々な場所へと顔を出すようにと言われているのだろう。

 

 オレはその全てに同行をすることになっている。

 

 それにしてもやっぱり時空間移動は楽だね。一瞬で行って、用事が終わったら一瞬で帰ってこれる。

 多いときは一日4~5件訪問するんだもの。これが無かったら移動は全力ダッシュ(俗にいうナルト走りってやつ)となって今よりもっと大変だっただろう。

 

 そう言えば、人類の移動は徒歩から自動車になり、新幹線になり、飛行機になったことによって結局昔よりも働く時間が増えている・・・なんて話を聞いたことがあったような、なかったような。

 

 ということはもしかして、オレが常に忙しいのは時空間移動のせいなのか?

 

「・・・やっぱ、時空間移動は封印しようかな」

 

 とも一度考えたが一度吸った甘い蜜の味は忘れられないのが人間というもの。封印なんざ無理だ。

 

 さて、話を戻そうか。

 

 そしてもうひとつの任務が最近は語ることのなかった水の国・霧隠れの里での情報収集活動だ。

 

 これはオレが語っていないことから分かるように、ほぼオレは現在関われていない。

 メイに任せっきりになっていると言っても過言ではない状態だ。

 

 え?まるごと人任せでダメなお坊ちゃまだって?

 

 略して、マダオ。

 

 いやいやいや。流石にマダオとは呼ばせねーよ。

 それを言うならサソリに言えよ。あいつこそ『まるでダメな男』略してマダオだろう。

 

 なんたって家族のお金を使い込んで賭け事するんだからな!

 

 オレはこの前の襲撃で原作中最大の黒幕だった黒ゼツの存在を確認出来た。

 その黒ゼツが襲撃者たるオレのターゲットが自分自身であることにまだ気がついているわけはないだろうが、現水影政権側の刺客である照美メイからの攻撃を受けたことによって慎重になってしばらくは姿を現さずに裏でコソコソと行動をとるだろう。

 そう仮定して、反政府勢力排除の任務を受けているメイに何か黒ゼツに関して新しい情報が入ったら連絡をくれるようにお願いをしているという状況なのだ。

 

 それが無くても月1のペースで影分身を派遣してメイと情報共有はしているし、もし何かあったときの保険としてオビト、カカシ、リンにも渡した飛雷神の術式をベースにした救難信号発信札を渡しているから問題もないんだけどな。

 

 

 

 というわけで今日も最近の日常風景と変わらず、木ノ葉隠れの里内を散策するマブイ、サムイ、ダルイの案内人を務めていたわけだったのだが。

 

「サムイとダルイ見当たりませんね・・・」

「・・・そうだねぇ」

 

 オレは今、隣にいる褐色系銀髪美少女マブイを除いた2人を見失っていた。

 

「変なトコ行って、変なことしてないといいけど」

 

 見失っている間にもしも工作活動や要人の暗殺などを行われていたとなると、監視役をしているオレの管理責任も出てくる。

 そういう言わば保身から出たつぶやきだったのだが、それを聞き取っていたマブイが敏感に反応する。

 

「へ、変なトコで!?変なこと!?」

 

 そして何故か少し肌の色が濃いとはいえ、目で見て分かる程度にほんのりと頬を赤らめている。

 

 ・・・え、なんで?

 

「いやいやいやいや!そんなことサムイとダルイはしませんよ!絶対に!」

 

 右手をブンブンと左右に振ってマブイが必死になって否定している。

 

 まぁ、そりゃそうか。

 ちょっとしたミスで迷子になっただけで自分たちの里を消し飛ばされちゃ堪らないもんな。

 あぁ。雲隠れの里を消し飛ばすっていうのは、3人と会った当日に「少しでも妙な真似をしてみろ。その瞬間、雲隠れの里を世界地図から無くしてやるぞ」といった脅し文句だ。

 

 もちろん木ノ葉にとって不利益なことをするとは思ってはいないし、オレとしても雲隠れの里を攻撃するつもりはない。というか、一瞬で雲隠れの里を世界地図から無くすとか無理だ。数時間は必要だろう。

 

「そんな昼間から・・・」

 

 だよな。サムイとダルイもそんなことを企んでいるわけじゃないだろう。

 

 だからきっと本当に迷子にでもなったのだろう。あーここが大型ショッピングセンターなら迷子センターに行って放送かけてもらえるのになぁ。 

 

「って、昼間から?」

「あ!いえいえ!もちろん夜でもダメですよ!」

 

 いや。昼だろうと夜だろうと木ノ葉に仇成す行為は罰せざるを得ないのだが。

 

「だってまだ未成年ですもんね」

「はぁ?成年、未成年関係なくそんなことしてたら君たちをオレは()らざるを得なくなってしまうのだが」

「わ、私まで!?か、カルタさんも混ざって!?」

 

 そう言ってますます頬を赤らめながら「そんなことダメです!あ、アブノーマルな・・・」と先程よりも強く手を左右に振って否定をするマブイ。

 

 アブノーマルって・・・。

 

 もし仮に殺すにしてもそんな猟奇的な殺人をするつもりはないけど。

 

()るなら後腐れないようにスパッと()るね」

「そ、そんなぁ・・・身体だけの関係だなんて」

 

 今度は両手を頬に当ててイヤイヤと頭を左右に振っている。

 

 え、えぇ・・・マブイって精神的にまで追い詰められてから死にたいっていうの?

 

 お兄さん、ちょっとドMが過ぎてついていけないわー・・・って。

 

「ん?身体だけの関係?」

「え?」

「・・・え?」

 

 

「「え?」」

 

 そこでようやく、オレたちの会話が噛み合っているようで嚙み合っていなかったことに気付いたのだった。

 

 

 




こういう勘違いって恥ずかしいですよね。


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104.木ノ葉と雲の友好 其の伍

 まさか、あんなリアルア〇ジャッシュを自分がやることになるとは・・・。

 配役としてはどっちが世界の渡部で、どっちが大島だったんだろう。

 

 ・・・いや、どっちでもいいんだけどさ。

 

 お互いの会話の内容に齟齬が発生していたことに気が付いたオレたちはしばらく顔を見合った。

 

 そして自分が恥ずかしい勘違いをしていると気が付いたらしいマブイはみるみるうちに顔全体を真っ赤にしていく。

 

 オレはそんな茹でた蛸みたいになっているマブイを眺めていた。

 

「ご、ごめんなさい!私ったらとんでもない勘違いをっ」

 

 そう言って、あたふたしているマブイは年相応な少女という感じがしてほっこりする。

 

「いやいや、なんもだよ。でもまさか真面目そうなマブイが『変なトコ』や『変なこと』で、真っ先に卑猥で破廉恥なことを想像するとは・・・」

「わーわーわーっ!そんなこと言わないでください!!お願いします!恥ずかしいですからぁ~」

 

 赤くなった顔で涙目になりながらじたばたするマブイはいつもと違う可愛さがあった。

 

 ・・・なにこれかわいい。もっと弄りたい!虐めたいィィィ!!

 

 という欲望(という名の悪魔の囁き)を良心(但し、好奇心旺盛な天使ちゃん)で押さえつける。

 

「それにこともあろうことかその妄想に自分はおろか、まだ子どものオレも混ぜて4・・・」

「いぃぃやぁぁぁぁぁ!!」

 

 否、抑えきれなかった。オレの中の天使は、悪魔に敗れたのだった。

 というか、マブイの反応を面白がった天使ちゃんは悪魔を後押ししたのだった。

 

 どんまいオレ。どんまいマブイ。

 

 そして、真昼間の大通りのど真ん中という一等地で悲鳴を上げたマブイに周りの視線が一気に突き刺さる。

 

 マブイはそのことに気付くことなく、羞恥心が臨界点に達したのか「きゅ~」という謎の音を発して、煙を頭から立てながら気を失った。

 

「おっと、あぶね」

 

 ばたりと地面に倒れる前に抱きかかえることに成功したオレは未だに周囲の視線がこちらに集中していることを察してとりあえず別の場所へと避難するのであった・・・。

 

 

 

 

 

 時間は少し流れ、場所は変わってとある建物内にある一室。

 

 部屋の明かりは淡く光っているものの少し薄暗く。

 視界に広がるのは薄いピンク色をした壁紙。

 余計なものは一切置いておらず、部屋にあるのは小さめの冷蔵庫と壁に掛けられている絵画くらいのもの。

 いや、部屋の入り口付近には色とりどりの綺麗な花も飾ってあったか。

 その部屋の入り口から真っすぐ行ったところにある扉を開けるとトイレや洗面台に加えてシャワールーム、お風呂場まで完備されている。

 

 そこまで行く途中、右手側。ひとりで寝るには広すぎるダブルベッドが部屋のほぼ真ん中付近に鎮座しており、その上には純白の天蓋がかけられていた。

 

「んぅ」

 

 ベッドの上に横たわる人影から吐息がひとつ漏れる。

 

 一度、寝返りをして。

 

 寝返りをしたその先でもぞもぞと少しだけ動いたかと思うと、その人物はゆったりとした動作で身体を起こした。

 

「・・・ここは」

 

 どこ?と、続ける前にガタっという物音がする。

 

 その人物・・・少女はその物音に対して敏感に反応し、音がした方。つまり、部屋の入り口へと視線と身体と意識を向ける。

 

 その際、やけにスプリングが効いているベッドが軋む。

 

「あ、起きてる。気分はどう?」

 

 そう言いながら、少女の返事も聞かずにズカズカと部屋に入り込んでくる齢9歳になる少年。

 

 自分が寝ていたこの部屋に入って来たのが顔見知りのその少年であったことに、少し安堵した少女だが、それと同時にここがどこなのかという疑問が沸々と湧いてくる。

 

「え?ここ?・・・ホテルだけど」

 

 ホテル。というその一言で、少女は先程自分が気を失う前の状況をまるで走馬灯のように一瞬にして思い出す。

 

 そして。

 

「ほ、ほて!?って、え、あ・・・いやぁ」

 

 少女はボフンと音と煙を立てて爆発したのだった。

 

 いや、もちろん爆発は比喩だが。

 

 急展開なこの状況に思考回路が追い付かなくなった少女はまた気を失い、スプリングを軋ませてベッドの上に倒れこむのだった・・・。

 

 

 

 って!いやいやいや。

 

 だった・・・。じゃあないんだよ!だった・・・。じゃあ!

 

 もう既にお分かりだろうけど、部屋のベッドに寝ていたマブイを起こしに来たオレ、羽衣カルタは現在木ノ葉の里内で行方不明というか迷子になっているサムイとダルイを影分身に捜索させて、無事に居場所を突き詰めたんだ。

 

 それをマブイを起こすのと同時に報告しようと部屋に入ったら、もう既に起きていたマブイと目が合って二言三言会話を交わしたらまた顔を真っ赤にして気絶してしまったのだ。

 

 今度は何を勘違いして気絶したっていうんだ。

 

 というか、意外と妄想が激しいのなこの子。

 

 一応言っておくが、別にここはいかがわしいホテルなんかじゃない。大人の男と女が絡み合うラブなホテルなんかじゃあない。

 

 ここはオレの友達・・・桜田ラクサのご両親が経営している木ノ葉の里内にあるごく普通のホテルだ。

 

 まぁ、そのホテルの中ではそこそこ良いランクの部屋を貸してくれたから、なんかお姫様の部屋みたいに天蓋があったり、入り口付近には毎日取り換えていそうなくらい瑞々しく綺麗な花が飾られたりなどしているけどな。

 

 お客さんが倒れてしまってどこでもいいからホテルの開いてる部屋貸してと、お願いしたら急なことであったのにも関わらず快く貸してくれたラクサのご両親には感謝だ。

 

 とりあえず、マブイを起こしてきちんと説明するとしよう。

 このまま誤解を解かない限りはまともに会話が成立しないような気がするし、いやまぁ、それはそれで顔色がコロコロ変わるマブイを見ているのも楽しいだろうけど。

 

 マブイのせいでオレがSに目覚めさせられそうなのだが、それは一先ず横に置いておき、今度こそちゃんとマブイを起こして状況を説明する。

 

 きちんと状況を把握して、自分の考えていた状況がえろい被害妄想でしかなかったと気付いたときのマブイの反応は言わなくてももうわかるだろ?

 

 



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105.木ノ葉と雲の友好 其の陸

お気に入り登録ありがとうございます!


 オレは平常心を取り戻したマブイと共にサムイ、ダルイ両名を迎えに行った。

 

 途中からはぐれた彼らがいた場所は甘味処。

 

 サムイとダルイはそこで吞気にお茶していたのだ。

 

 つまりはデート?

 

 その様子を見たマブイとオレは急遽合流する予定を変更し、こっそりと2人のデート?を観察することにしたのだった。

 

「まさかあの2人がデートをする仲だったなんて・・・」

「よく口喧嘩っぽい、というかだらけているダルイを口酸っぱく注意しているサムイとその注意をダルそうに「はいはい」と聞き流しているダルイは見かけていたけど、喧嘩するほど仲が良い的なやつだったんじゃないの?」

「それはそうですけど・・・」

 

 それにしたって驚きです。と2人から視線を離さずに会話を続けるマブイ。

 

 サムイとダルイが座っている最奥の席から対角線上で一番遠い外に近い席に陣取ったオレたちに店員が熱いお茶を置くと同時に「ご注文はいかがなさいますか?」と聞いてくる。

 そのことにも気が付かないくらいに集中してサムイたちを観察しているマブイの分もとりあえずオーダーしておく。

 店員はオレが以上で。と言うと、注文の品を繰り返し確認してから「少々お待ちください」と言って立ち去る。

 

「あ、サムイが笑ってます!」

「うん。まぁ、いくらクールなサムイだって笑う時くらいはあるでしょ」

「でもここじゃあ、ダルイの表情が読めません・・・」

「そりゃ後頭部しか見えないだろうな。でも男は背中で語るもんよ」

 

 このように先程から途切れることなくマブイが逐一サムイたちの様子を実況してくれるのだが、この狭い店内で小声だとはいえ、そんなにはしゃいでいたらすぐにサムイたちにバレるぞ。

 

「えっ!カルタさん!あれあれ!もしかしてサムイ、ダルイに『あ~ん』してあげてません!?」

「ん?おーほんとだ。確かにこの角度からだとあ~んしているように見えるな」

「いやいやいや!角度とかの問題じゃなくて絶対あれ『あ~ん』ですよっ!『あ~ん』!」

 

 興奮気味にオレにその状況を教えてくれるマブイが『あ~ん』に対してすごい憧れを抱いているのはわかったのだが、段々とその熱量が周囲へと漏れ出て視線が集まり始めていることに彼女は気づいていない。

 すると丁度タイミングよく店員がオレたちのテーブルへやって来て「三色団子20本、みたらし団子20本、こしあん団子30本お持ち致しました」とオレが注文しておいた団子を運んできた。

 

 ちなみにここの団子は串に3つ刺さっている。かつて一世を風靡したNHK教育テレビ「おかあさんといっしょ」で歌われていたあの『だんご三兄弟』スタイルの団子なのだ。

 

「ありがとうございます・・・マブイとりあえずこれでも食っとけ」

 

 オレは未だにサムイとダルイから視線を固定して、2人のデートの実況を続けているマブイの口に三色団子を突っ込む。

 

「んむっ!」

 

 話している最中に団子を口の中に突っ込んだからか、変な声が出たものの咀嚼を始めるとその団子の美味しさに一言。

 

「わぁ・・・これ、おいしいですねぇ」

「だろ?ここの団子は絶品なんだよ。オレは中でも特にこしあんをオススメするね」

「そうなんですか?それじゃあ、こしあんも食べたいです」

 

 そういうマブイのリクエストにお応えして。

 

 オレに一番近いところに置かれていたこしあん団子をひとつ差し出す。

 

 そして「いただきます」とマブイが一思いにパクリと先端の団子を口にしたところでオレは持っていた串を離した。

 オレが串を手放したことにより、串団子を口だけで支えることになってしまったマブイは右手で串を持つ。

 

「どう?」

 

 と、味の感想を求めるオレに対して、串を持っていない方の手。つまり左手を前に出して、今食べてるからちょっと待ってアピールをするマブイ。

 

 少しの間、団子を咀嚼してそれからゴクンと飲み込んだ。

 

「とてもおいしいです!」

「まだいっぱいあるから気にせず食べな」

「はいっ」

 

 それからというもの。

 

 団子に関しての味の感想や、注文していない他の味の団子やその他メニューに関してや、木ノ葉にはおいしい飲食店が多いことなど話すことはあったが、先程までとは打って変わって基本的には大人しく団子を食べることに集中していたマブイ。

 

 だから気付かなかったんだろうな。

 

 今までとは立場が逆転していたことに。

 

 観察者と被観察者の関係が入れ替わっていたことに。

 

「あ、マブイとカルタだ」

「ん?あら、本当ね」

 

 後ろを振り返った際に今まではぐれていた仲間と同行者を発見するダルイ。

 その声に反応してダルイの視線の先を追うとサムイもその光景を発見する。

 

「・・・もしかしてデートかしら?」

「え・・・まじッスか?」

「だって、あの子カルタに『あ~ん』してもらっているわよ」

 

 そう言ってサムイが指をさす。

 

「あぁ~まじだ。えぇ・・・あいつらそんな関係だったんだー」

 

 気が付かなかったわ~と、間延びした声で驚いていることを伝えるダルイにサムイも同調する。

 

「まぁでも、俺達もここで休憩してて良かったなー。わざわざダルい思いして探し回らなくて。ここで合流できるんだし」

「ダルイそれは結果論でしょう。もし見つかってなかったら最悪外交問題に発展するかもしれないのよ」

 

 忍びなら頭の中は常に冷静(クール)に状況判断をしなければならないとサムイが説教染みた会話に移っていくのを、またか。と思いながら「はいはい」と聞いているフリに徹するダルイ。

 

 当然、聞き流していることをお見通しなサムイがまたその態度に対して小言を言うといういつものパターンへと突入する2人の空間。

 

 サムイの声のボリュームが上がったことによってマブイの意識が団子からサムイへと向く。

 

「あはは。サムイとダルイまたやってますね」

 

 そういって笑っていられるのも今のうちだろうよマブイちゃんや。

 

 サムイたちがこちらに気付いているとなると合流するのも時間の問題。

 

 そうなれば、マブイがサムイたちを茶化そうが茶化さまいが関係なく、あの2人から「デート?」「『あ~ん』までしてたね」と言われるのは目に見えている。

 

 まだ自分が『あ~ん』してしまったことに気が付いていないマブイが2人から指摘されるとどうなるか。

 

 

 恥ずかしさと照れで目に涙を浮かべながら顔を赤くして気絶する。

 

 まぁ。こんなところだとオレは思うね。たぶん。

 

 

 




とりあえずイチャイチャ回(出来てるか不安)ひと段落です!

次回のお話は・・・次回が始まってからのお楽しみということでお願いします。笑

お気に入り登録増えていて嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします!


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106.そして父になる

お気に入り登録ありがとうございます!

今回は真面目なタイトルの癖して、最後のオチ?はただの下ネタです。ご注意ください。R-15


 あのサソリがパパになる。

 

 赤砂のサソリという二つ名で呼ばれ、傀儡の製造と扱いには他の追随を許さない圧倒的な才能を誇る天才がパパになる。

 

 万年厨二病を発症しているうずまきサソリがパパになる。

 

 それを知ったのはかれこれ今から9ヶ月ほど前のこと。

 

 あの時はサソリをちょうど水の国へと派遣したばかりで、パクラが産前休暇が欲しいと旦那のサソリよりも先にオレへと報告してきたのだった。

 

 そしてそのことを知ったオレは急遽サソリを木ノ葉へと呼び戻して夫婦2人ともに産前休暇と産後の育児休暇を言い渡した。オレは2人の上司として良いことをした気分になりました(小並感)。

 ただその後オレは人員の穴が空いた分、それまで以上の忙しさに忙殺されるハメになったが。

 

 パクラの妊娠後期に発覚したサソリの家庭内資金の横領。それからそれを誤魔化すための賭博。その畜生共にも劣る悪魔の所業はまさにゲスの極み。

 

 オレはその尻拭いを手伝って、人形劇を開催させたり、それから人形を製造販売させたりしたことも記憶に新しい。

 

 そんな紆余曲折はあったものの、めでたいことに今日。本日。この度、うずまきサソリは父親に。うずまきパクラ(旧姓、贄殿)は母親になったのだった。

 

 木ノ葉病院の入院病棟。

 

 この階は産婦人科。つまり、出産前後の入院をしている人たちが集まっていた。

 

 ちなみにこれは蛇足だが。

 時代的にはまだ自宅や実家での出産が主流な現在、乳児生存率を上げるためにも医療忍者が常駐する木ノ葉病院産婦人科での出産を木ノ葉上層部(その中でも特に綱手)が推奨しており、それに加えて母体も出産後すぐに医療忍術で出産時の痛みや傷を軽減させてくれるということもあり、口コミで産婦人科にかかる奥様方の数は右肩上がり。病室は全てが満員だった。

 この状況を鑑みて、病院側は今後更なる受け入れ体制の拡充を検討しているらしい。

 

 さてと。話を戻して、とある4人部屋。そしてその一角。

 

「失礼しまーす」

 

 そう言いながらカーテンを開けると中には。

 

「おぎゃぁおぎゃぁ」

「おーよしよしよし~いいこいいこ。あぁ・・・お前はかわいいなぁ」

 

 まだ弱弱しく泣く生まれたばかりの我が子を優しく抱きかかえながら慈愛顔の頬で撫で繰り回し(頬擦り回しか?)、頭の先から足の指先まですべてを余すところなくチュッチュッチュッチュしているのはパクラの方。

 

 その様子を見て自分も赤ちゃんを構いたそうな顔で眺めながらも、なぜか部屋の隅っこで大人しく体育座りをしていじけているサソリ。

 

「パクラおつかれさま。そしておめでとう」

 

 オレがそう言うとようやくオレの存在に気が付いたのか少し驚いた表情を見せながら。

 

「組長・・・わざわざありがとうございます」

 

 と返事を返してくる。その後も「お祝いは今度持ってくるわ」「いえいえそんな。気を使わないでください」などと会話をつづけた後。オレはパクラの勧めによって生まれたてほやほやの赤ちゃんを抱っこすることができた。

 

 うん。ふにゃふにゃでかわいい。

 

 しばらく3キロほどの温かい重みを堪能していると途中からすやすやと眠り始めた赤ちゃん。

 その赤ちゃんを起こさないようにそーっとパクラに返した。

 

 そしてオレは、オレが来てからというものずっと同じ姿勢でこちらを羨ましそうに見続けていたサソリに対して声をかける。

 

「そんで・・・どうしたんだ?サソリ」

「カルタお前ずるいぞ!親父の俺ですら生まれた瞬間の一瞬しか抱いたことないのに!」

 

 悲壮感溢れる声で抗議された。

 

「そうか。それで?」

「さっき赤子に構っているパクラの邪魔をしたら睨まれた」

「あぁそう。お前愛想つかされたんじゃねーの」

「んなバカな!この俺のどこに愛想つかされる原因があるんだ」

 

 声でけぇよ。

 

 そういうとこだろ。

 

 自意識と自信が過剰なそういうところ。

 

 こいつ家のお金を勝手につかったこと忘れてんじゃねーだろうな。

 

 今は人形の販売利益でトントンどころかプラスにはなったものの。カミングアウトしたときのパクラの表情といったら・・・おぉ、思い出しただけでも鳥肌が立つ。怒られたのオレじゃないのに。

 

「サソリ・・・うるさい」

「ごめんなさい」

「この子が怖がって起きちゃうでしょ」

「すみません」

「わかったなら静かにしてて」

「・・・はい」

 

 カミングアウトして以来。パクラには完全に尻に敷かれているみたいだな。

 

 サソリから何回か最近パクラが怖いと相談を受けてはいたが、まさかここまでとは思っていなかった。パクラには久しぶりに会ったからな。

 

 だって1年前くらいは、あの厨二病を拗らせに拗らせていたサソリにときめきキラキラ目はハートだったパクラだぜ?

 態度をここまでガラッと変えるというか、変わるとは思ってもみなかった。

 

 いや、まぁそれも全部サソリが悪いんだけどさ。自業自得ってやつなんだけどさ。

 

「ふ、ふ、ふぇぇぇぇん」

「「あ」」

 

 せっかく寝ていたのにサソリの声で起きてしまった赤ちゃんを立ってゆらゆらとあやすパクラ。

 

 ただその目はギロリとサソリを睨みつけていた。

 

 言葉に出さずとも視線で怒られ、シュンとなってまた部屋の隅っこで小さくなって反省し始めるサソリの腕をオレが掴む。

 

「ほら一回、外出るぞ。パクラ、サソリのこと借りるな」

 

 オレは一応パクラに一言声をかけるとそのままその場から飛び去った。

 

 

 

 

 

 木ノ葉病院の屋上へと飛んだあと。

 

「・・・はぁ」

 

 やっぱ、まだあれ怒ってんのかなぁ。と、ひとつため息をついた後にぽつり呟くサソリ。

 

 それを聞き取ったオレは、何したんだよ。と聞き返す。

 

「あーいやな。あいつのおっぱい。ただでさえ半端なく爆ってたのに、妊娠して母乳ができるようになると段々張る張ってきて神ってただろ?だから昨日真夜中我慢出来なくてな・・・襲っちまった」

 

 と、頭をポリポリと掻きながら照れ笑いするサソリをジト目で見る。

 

 それが結果的にお迎え棒となって、今日の出産になったってわけか。

 確かに事前に聞かされてた予定日よりも早かったもんな。

 

 つーか、妊婦相手にどんだけハードなプレイをさせたってんだよ。

 

「いやな。神乳から出てくる母乳シャワーはマジ凄かったぞ」

「うん。お前もう喋んな」

 

 知人夫婦の営みの内容なんざ聞きたかないわ。

 

 




いつもありがとうございます。新名蝦夷守です。

唐突で申し訳ないのですが、少しの間お休みさせていただきます。
リアルで色々あって精神的ダメージが大きく筆が進まないので。

なんとか切り替えて今月中には再開したいとは思います。

最後に一言。

オラに元気をわけてくれぇぇぇ!!(切実


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107.水の国撤退戦 前編

ご拝読賜りまして誠にありがとうございます。
↑日本語的に合っているか不安。最大限の感謝を表したつもり。

1週間ぶりの最新話です。どうぞー


 霧隠れの里の内情話の少しおさらいをしようと思う。

 

 霧隠れの里とその上層部と対立する反政府勢力の戦闘は第3次忍界大戦から水の国と霧隠れの里が離脱した後から多発するようになった。

 その内戦にうちはマダラ側の人間が関与していると考えたオレは潜入捜査を開始。

 反乱勢力を取り締まる里側の照美メイと利害関係が一致して、お互いに協力をしながら制圧と捜査を同時進行で行っていた。

 すると当初のオレの推測通り、黒ゼツが暗躍して内戦を拡大させていることがわかった。

 

 そしてここからが新たな情報だ。

 

 オレがこの情報を受け取ったのは今からちょうど1週間前のこと。

 いつものように月に1回の定期連絡のため影分身を派遣した際にメイから教えられたものだ。

 黒ゼツの存在を確認したその後はオレと別行動を取りながらも、霧隠れ政権側として反乱勢力と対峙してきたメイだったのだが、ある日を境にその立場が突如逆転することになった。

 

 その原因と言うのが、霧隠れの里で新政権が樹立し、四代目水影に(たちばな)一族の『やぐら』という人物が就任したというもの。

 

 霧隠れの里では、水影というのはその時、最強の忍びがなるものという風潮というか風習。不文律ではあるが、暗黙の了解がある。

 

 つまり、下克上された三代目水影は元反乱勢力側の『橘やぐら』に殺されたことによって、官軍と賊軍の立場が入れ替わったのだ。

 そして政権交代後は三代目水影に近かった里上層部までも相次いで暗殺や処刑が実行された。

 これからも引き続き、やぐらをトップとする新政権にとって元政権側の人間や都合の悪い一族や忍びには粛清の嵐が吹き荒れるだろう。とのことだった。

 

 オレの影分身はそれを聞いた時点で、「完全に三代目水影政権側として立ち回っていたメイは現四代目水影政権とは真正面から対立しているから、粛清リストの最上位に名前が載っているはず。今からオレと一緒に来ないか」と、国外逃亡。いわゆる亡命を勧めたのだが、メイはそれを拒否。

 理由を尋ねると、黒ゼツという部外者が裏で操っている傀儡政権に立ち向かっている同志がまだ里に残っていること。そしてその仲間たちを見捨てて自分だけ逃げるということはできない。というものだった。

 

「それに現水影やぐらと裏から操っている黒ゼツを倒したら、正義はまた私たちのものになるからね」

 

 そうなったら今までの血霧の里と呼ばれていた霧隠れの里とは全く違う希望に満ちた里にするわ。と話すメイの様子を見て、どうやらまだ霧隠れの里に残るという意志は固く、梃子でも動きそうにないなと感じたオレの影分身はひとまずメイを亡命させることは断念。

 

 それならばと、オレの影分身は傀儡政権にクーデターを起こすのであればオレも協力するから戦力として扱ってくれ。その方が成功する確率もメイたち旧政権側の忍びの生存率も高くなると提案したのだが、メイはそれも拒否。

 その理由は、木ノ葉のオレがクーデターに表立って協力するのは内政干渉だと戦後外交問題になるということと、傀儡政権を倒すのに他国の力を借りたら、今度は自分たちが傀儡政権と指差される可能性があるということだった。

 

 オレの影分身は、それでももし、命にかかわる戦闘が起こった際には術式札を遠慮なくつかって知らせてくれと言ってその時は解散したのだった。

 

 そしてそのメイから術式札を通して救援要請が来たのは、留学期間を終えたマブイたち3人を行きとは違い、木ノ葉隠れの里入り口「あ」「ん」の大門前でお見送りと別れの言葉を交わしている最中のことだった・・・。

 

 

 

「カルタさん。色々とご迷惑をおかけしました」

「1年間、大変お世話になりましたッス」

「とても勉強になることが多くあったわ。ありがとうございました」

「いえいえ。こちらこそ1年間色々と拙い部分はあったと思うけど文句ひとつ言わずについてきてくれてありがとうございました」

 

 今生の別れ・・・ということにはならないと思うが、それでもしばらくは会うことはないだろうと。

 最後は一応、お互いに礼儀正しく別れの言葉を交わして少ししんみりとした空気が流れていた。

 

「「それじゃあ、不束者なマブイだけどよろしく頼むね(ッス)」」

「あぁ。マブイのことは任せろ!」

 

 先程までのしんみりとした空気感はどこへやら。

 眩い笑顔でダルイとサムイがそういうのに対して、オレもサムズアップをしながらそう答えた。

 

「えぇ!?ふ、不束者だなんて・・・け、結婚するわけじゃないんですから!私もちゃんと里に帰りますから!」

 

 サムイ酷いよ!そうやってまた私のことからかって!と、オレたちの冗談に対して顔を真っ赤にしながら反論するマブイ。

 サムイかダルイのどちらかがマブイを弄って、オレがそれに乗っかる。

 この1年間4人の中で自然と作り上げられたある種のお約束だった。

 

 この場にはオレと雲の3人の他に、去年雲隠れへと留学していたはたけカカシ、うちはオビト、のはらリンと入れ替わる形で留学する不知火ゲンマ、並足ライドウ、たたみいわしもいるのだが、当然ながらこの会話に混ざることなどできずに完全な空気となっていた。

 

 オレはこのお約束をすることはもう一生ないのかもなぁ・・・なんてちょっと感傷に浸っていたそのとき。

 

 腰に身に付けているポーチが振動した。

 

 より正確に言うならば、ポーチの中に保管している受信用の術式札が振動していた。

 

 ポーチの中から札を取り出すと案の定、震源地はそれだったし、淡い光りも発していた。

 

「それは?」

 

 オレが取り出した札を不思議そうな顔で見ていたマブイが聞いてくる。

 

 その質問に対して、緊急用の呼び鈴ってところかな。とだけ返しておく。

 

 この札が使われたということは本当に危機的状況下に陥っているということは考えなくともわかる。急がないと。

 

「バタバタしちゃって悪いけど、オレもう行かなきゃならないからさ。それじゃあ、気を付けて帰れよー!ゲンマさんたちもお気を付けて!」

 

 口早にオレは別れの言葉を告げると、マブイたちやゲンマたちの反応を待たずしてその場から飛び去った。

 

 

 

 その後。

 

 カルタが慌ただしくどこかへと時空間忍術で飛び去った後。

 

「1年間。今思うとあっという間だったね」

 

 そう、ポツリとこぼすマブイに対して。

 

「マブイがそう思うのはカルタと一緒だったからでしょ」

「あ、それは同感」

 

 もう!だから違うからぁ!と、また顔を赤らめながら否定するマブイを見て、興が乗り出した2人は追撃する。

 

「でも、もしカルタが帰ってきたときにマブイがエプロン姿でご飯作って待っていたら驚くんじゃないかしら」

「そうそう。そして『お風呂にする?ご飯にする?それとも・・・わ・た・し?』とか聞くと尚のことグッド。これで落ちない男はいないッス」

「良かったわねマブイ。これでカルタはあなたのものよ」

 

 わーわーきゃーきゃーと盛り上がっている雲の3人。

 

 それに対してゲンマたち3人はというと。

 

『『『一体、いつになったら出発できるんだろう・・・』』』

 

 最初から最後まで、完全に空気だった。

 




おはこんにちばんわ。
新名蝦夷守です。

改めまして拙作をご拝読いただきありがとうございます!
お休みしてたのにもかかわらず週間でUA6,000超えていて驚くばかりです。もしかして最初の方から読み直して頂けたんですかね。だとしたら嬉しいです。
それに加えて新規のお気に入り登録、評価もありがとうございます。

これからしばらくは毎日投稿できなさそうですが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。よろしくお願いします!

ではではまた次回。
次回更新は今週中が目標!!


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108.水の国撤退戦 中編

お気に入り登録、評価ありがとうございます。


 荒れ狂う暴風。

 

 横殴りの豪雨。それに混じって大粒の雹。

 

 上空には厚く濃い積乱雲が広がっており、辺りは夜のような暗さ。

 

 そして、轟音を響かせながら落ちてくる雷によって状況を把握できる状態。

 

 この劣悪極まりない天候の中。霧隠れの里を囲んでいる山を一つ越えた先では旧政権側と新政権側の忍びによる激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

 戦闘の直接的な発端は新政権側による奇襲攻撃。

 

 だが、それ以前に旧政権側が反乱を企てていたことも原因のひとつだった。

 

 旧政権側の忍びは賊軍として里を追われていたのだが、それでも尚、水の国内に留まっており、反撃の機会を伺っていた。

 それもただただ伺っていたわけではなく、密かに仲間を増やしていたのだった。

 

 血継限界を有し迫害されていた一族や現政権に不満を持っている一族などに声をかけて、その勢力は日に日に増していった。

 もちろん中には日和見する者もいたし、旧政権も現政権もやっていることは変わらないと言う者もいたし、今までお前達だって血継限界を迫害してきたのに手の平を返して仲間になれとか信じられないという者も当然ながら存在した。

 それでも現政権に対抗する意思をみせる人は増えていったのだ。

 

 そのことを察知した現政権は当然ながら看過することはできず即座に対応する。

 

 旧政権側がどうやら集まるらしいという情報を得た現政権側は集会場所を強襲。そして現在に至る。

 

「クソっ!・・・敵の数が多すぎる」

 

 戦端が開かれる前。

 戦力差は旧政権側が200人弱に対して、現政権側はその4倍強のおよそ800人。

 

 戦闘が始まると同時に旧政権側の戦闘員は奇襲に対応できず200人いた内の約4分の1が死亡するなり負傷するなりして脱落。

 その後なんとか迎撃態勢がある程度整えられたあとも徐々にその人数は減らされていき、戦力差は広がっていく一方。

 

 旧政権側の忍び1人に対して現政権側は数人で当たれることもあり、旧政権側の忍びは撤退することすら困難な状況。

 

 そんな絶体絶命の状況下でも戦意を失うどころか逆に向上させている稀有な戦闘民族も混ざってはいるものの戦況を左右させるほどのものではない。

 

「俺は理想の為に戦ってきたつもりだったが・・・」

 

 落雷と暴風雨のせいで声は殆ど届かない。

 

「これはもう駄目だろうなァ」

 

 だからそう自嘲気味に呟いたその言葉も誰の耳にも届くことはなかった。

 

 それでも圧倒的な数的不利を物ともせずむしろ逆に覆す勢いでひとり、またひとりと現政権側の忍びを屠っていく青年。

 

 その青年の後ろには少年にも少女にも見える子どもが立っていた。

 

 青年はその子どもを庇うようにして戦い続ける。

 

(どうぐ)のことは見捨ててください。再不斬さんだけならここから脱出も可能です!」

「うるせぇ!・・・ここを片付けたら国を出るぞ」

 

 一緒にな。というのは心の中だけで続けながら青年、桃地再不斬は向かってくる敵をまたひとり片付けていく。

 

 そして、その様子を祈るように見つめている幼い少年の瞳から流れているものはきっと雨の水などではないだろう。

 

 

 

 照美メイは、同志たちが次々と命を散らす状況に心を痛める間すらも与えられないほど過剰ともいえる攻撃を受けていた。

 

 なぜならば現政権側は、旧政権側の最大戦力と目される照美メイを確実にこの戦場で殺して反撃の芽を摘みたいと考えているからだ。

 

 それに対してメイは防御に徹しながらもひとり、またひとりと隙を狙っては確実に敵の数を減らしている・・・はずなのだが。

 

 メイの周りにいる敵の数は一向に減らない。むしろ時間が経つにつれて増えていた。

 

 それもそのはず。他のところで旧政権側の忍びとの戦闘が終わって手持ち無沙汰となっている新政権側の忍びが応援に来ているのだから。

 

 メイは目の前の状況に対処することに精一杯で気付いていないが、旧政権側の忍びの数はもうすでに50を切っている。

 

 旧政権側の全滅は時間の問題だった。

 

《水遁・三重水陣壁》

 

 ひとつひとつが分厚い三層もの水陣壁を作り上げ、その中でようやく一息つく。

 

 自分が作った水陣壁は簡単に破られることは無いとは思うが、それでも敵の人数が人数だ。そんなに長くは持たないだろうとメイは思考する。

 それに自分以外の同胞の状況も心配だ。

 

 そしてぽつりと呟く。

 

「ごめんなさいカルタくん。本当はあなたを巻き込みたくはないのだけれど・・・」

 

 羽衣カルタから手渡されているひとつの(ふだ)

 

 首飾りのようにしていたそれを胸の谷間からスッと取り出し、握りしめるメイ。

 自分の体温で温められた札は冷たい雨に当たって悴んだ手に温もりを与える。

 

 これはただのお守りではない。

 

 その札の効果は知っての通り、メイのチャクラを込めるとカルタが使用している時空間を通してカルタの手元にある札へ振動を起こす仕組みのもの。

 そしてカルタが使われた術式を目印に《飛雷神の術》で駆けつける。

 

 ただこれを使ってしまえば、里内部の抗争にカルタを完全に巻き込んでしまうことになるだろう。

 

 以前から今の政府側。つまり昔の反乱勢力側のアジトをカルタと協力して潰していたから今更何をとも言われてしまうだろうが、だとしてもメイは霧隠れのごたごたでカルタに迷惑をかけたくはなかった。

 

 だから、先週の定期連絡で会った際にも協力を申し出られたが、「打倒傀儡政権を目標に掲げている反政府軍が他国から助力を得ていたら意味がない」とか「木ノ葉の英雄である羽衣カルタが霧隠れの内乱に関わると内政干渉や外交問題だと戦後にケチをつけられる」などと、それらしい理由を付けて断ったのだ。

 

 それなのに最後はやはり彼に頼るしかない自分に情けないと思いつつも、術式札に自身のチャクラを込めた。

 

 そのチャクラに反応してぼわっと淡く発光して、術式札が振動する。

 

 そして・・・。

 

 

 

「メイ!大丈夫か?」

 

 心配顔とも焦り顔ともとれる表情で三つの水陣壁の中に現れたのは私が密かに想う年下の男の子。

 

 それでいて自分よりも。いやそれどころか、もしかしたらこの世の誰よりも強い男の子。

 

「私は大丈夫よ。それよりも仲間たちのほうが・・・」

「あぁ、わかった。メイの仲間もなるべく助けよう」

 

 私が伝えたい10のことも、表情や声色から察して1を言うだけで全て理解してくれる。

 

「そのためにもまずは状況を説明してくれ」

 

 今の真剣な眼差しの彼を見ていると私のお下がりの猫耳パジャマを着ていたあの可愛らしい男の子と本当に同一人物かと思ってしまうくらいギャップがある。

 

 本当に・・・頼もしい。

 

 

 

 オレがメイの術式を頼りに時空間を飛ぶとそこはドーム状の水陣壁に守られた内部だった。

 

 しかしながらそれでは不十分かもしれないと考えたオレは、メイから状況を聞き始めるのと同時にオレは重ね掛けるようにして雷陣壁も同時に展開する。

 これで敵が無理矢理突入を試みたとしても触れた瞬間に感電して戦闘不能に陥るだろう。

 

「・・・という状況よ」

「なるほどな」

 

 メイから状況説明を受けた内容を纏めると。

 

「政権奪還のために軍事行動を起こそうと集まっていたところを奇襲を受けてメイたちの戦力はもうほとんど残っていないってことか」

「えぇ」

 

 そう返事をするメイの表情は暗い。

 

 その顔を見たオレはあえて明るく振る舞って元気付ける。

 

「大丈夫!オレが来たからにはこれ以上、奴らの好きにはさせない・・・オレを誰だと思ってるんだ?」

 

 羽衣さんだぞ。と忍装のベストを開いてポーズを決める。

 

「ふふっ・・・なによそれ」

 

 そう言ったメイは先ほどとは違う表情をしていた。

 

 うん。やっぱり女の子がする表情は笑顔が一番いいよね。

 

 そのことを再確認したオレは改めてメイを無事に救い出そうと決意するのだった・・・。

 

 




次回はまだ未定。
作者は今日から1週間ほど出張の予定。

合間があって気力が湧けば今週中にもう一度更新したいと思います。

誰か元気をわけてくれぇぇ!!


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109.水の国撤退戦 後編

皆さま、お久しぶりです。
そして大変お待たせしました。

では早速続きをどうぞ。


 今回の後日談(オチ)・・・というよりは事後報告的なものを語ろうと思う。

 

 メイが張った三重水陣壁に重ね掛けした雷陣壁を内側から破壊するようにしてオレが発動させたのは万華鏡写輪眼を開眼させた者の中でも僅かしか扱うことができないとされる須佐能乎。

 

 オレは以前に一度だけ発動させたとき(万華鏡写輪眼を開眼させた任務のことな)は制御が安定せず、不安定な状態で自身を大きく覆う“がしゃどくろ”といったものだったが、今回は完成体ではないにしろ、巨大な鬼の上半身に武者姿を模し、日本神話を元ネタにした癖して手には巨大な戟(恐らく一騎当千万夫不当の武将。三国志で有名なあの呂布(字は奉先)が使ったとされる方天画戟だと思われる)を持った状態で須佐能乎は発現した。

 

 オレの須佐能乎は見る者の多くを圧倒した。

 

 そしてその鬼が被る兜の上にでかでかと光るのは『愛』の一文字。

 

 自己主張の激しい『愛』の大文字。

 

 いや、兜は直江兼続かよ。そこは三国志じゃなくて日本の戦国時代かよ。というツッコミは心の中で済ませて、眼下に広がる有象無象の敵(須佐能乎視点で言うと)を見下(みお)ろすように。そして見下(みくだ)すように睨み付け、威圧する。

 

 その威圧に耐えきることのできない者、須佐能乎の異形の姿に戦意を失う者、挙句の果てには気を失う者は捨て置き、それでも尚、敵対の意思を持つ者には横一線。横一閃の一太刀が無慈悲にも無感情に敵を葬り去る。

 

 その太刀筋を幸運にも、もしくは不運にも回避できた者は絶望する。

 

 あまりにも現実離れした目の前の現実に。

 

 苦痛な生よりも、安楽な死のほうが良いと思わされるような理不尽を目の当たりに。

 

 これまでメイを囲んでいた忍びが『威圧』という第一波で大半が気絶し、第二波である戟による一閃で包囲は完全に解けた。

 

 行われているのは戦闘でも狩りでもない。そこから先は簡単で単調で単純な作業(・・)と化した。

 メイのナビゲーションで須佐能乎と内包されているオレとメイが動くたびにモーセの十戒で有名な海割りよろしく()が逃げ惑い左右に分かれ、道ができる。

 その先に呆然とこちらをただただ見つめているのが反政権派の忍び。つまりはメイの仲間だった。

 

 戦場に点在する彼らは未だに状況を把握できていないようだったが、状況を飲み込めていない以上は流されることにしたらしい(理解は追いついていないが、本能で生き残れると感じ取ったともいう)。

 

 そのおかげで撤退作業はすんなりと進んだ。

 敵は戦意喪失してオレたちの動きを邪魔することはないし、メイの仲間たちも何も言わずについて来たしな。

 

 そして現在。

 戦場を天送身の術で離脱し、水の国。それから霧隠れの里の勢力圏からも無事抜け出したオレとメイたち反政府勢力は火の国国内の茶藩領内にいた。

 茶藩があるこの半島は火の国国内では一番水の国に近く、国境警備隊の基地も置かれ、それに伴い配置されている忍びの数も多く木ノ葉隠れの里が誇る国防の最前線のひとつでもある。

 

 現状、霧隠れの抜け忍でしかないメイたちを国防の最前線であり重要施設である基地の内部に入れるわけにもいかないため、いるのは海岸沿いに広がるただの砂浜だったが。

 というか、先程までいた戦場とは打って変わりこっちは天気が良い。雲ひとつない快晴だ。

 

 天気の話はさておき。

 

「さてと。これからどうする?」

 

 反政府勢力の残党回収中すらも目立った会話はなく、安全圏まで来ることになり。それでいてようやくそんな言葉を最初に発したのは誰だったか・・・あ、いや、オレなんだけども。

 

「オレはメイとの約束であなた達を助けたに過ぎないんだから、まだ政府軍と戦い足りないとか、自分だけ助かるのは死んでいった同志達に申し訳ないとか思ってるんだったらまた戦場に送り届けることもできるけど」

 

 まぁ、せっかく助けた命なのに態々死にに行くという選択肢を選ばれるのはあまり気分のいいものではないからご遠慮願いたいが。という言葉は飲み込んで。オレはあの戦場を生き残ったメイを除く6人(そのうちの3人の存在に驚きながらもそれはおくびにも出さず)を見ながらこうも続ける。

 

「あとはこのまま抜け忍として生きるか、オレが火影様に直接話を通して木ノ葉隠れの里の忍びとして登録し、正規部隊に入るか、もしくはそれから暗部の部隊に入るか。だな。あぁ、あとはこれを機にキッパリ忍びを辞めてひっそり一般人になるという道もあるかもな」

 

 そう言ったオレのあとにメイが「ちなみに私は木ノ葉に降るわ」と付け足す。

 

 オレとこいつらとの間に信頼関係があったのならば『宵』に直接勧誘というのも有りかもしれないが、残念ながらそこまでの信頼関係は結べていない。というか今さっきが初めましての初対面だから当たり前か。

 

「僕は新月(しんげつ)さんについて行きます」

「え?あーっと、僕に?んー、じゃあ僕はメイちゃんについて行こうかな。うん、僕らは木ノ葉に厄介になるよ」

 

 そういう麻呂眉の少年と薄い水色の髪を持つ青年の2人組がいれば。

 

「俺もメイが木ノ葉に行くというならそれについて行くことに異論は()ェ。だが、結論を出すのは(こいつ)の処遇を聞いてからだ」

 

 と言って少女にも見えるほどに顔の整った少年の頭に手を置きながら人相の悪い顔と目付きで問いかけて来る青年もいる。

 

 そして。

 

「ふんっ!助けてもらったことは感謝しといてやるが、俺はてめぇの下にはつかねぇぜ」

「アァ。それにテメェみてェな青臭いガキがでけェ顔してメイを侍らせてるのも気に食わねェ」

 

 と、案の定オレの言葉に食ってかかって来る奴もいた。

 あとから分かったことだがそいつらは鬼怒(きぬ)一族の霊頭(れいず)幽頭(ゆうず)という者たちだった。

 先の大戦でも活躍した霧隠れの忍びで、その中では猛者と呼ばれる存在だったらしい。

 

「なら仕方ないな。何処へでも好きに生きてくれ。但し、火の国もしくは木ノ葉隠れの里に手を出したときは容赦しないからな」

 

 相容れない彼らを勧誘する道理もメリットもないオレはこの場から去っていく霊頭と幽頭の背に向かってその言葉をかけた。どこまできちんと聞いていたのかは不明だが、まぁいいだろう。敵対したときは敵対したときだ。

 

「そんでどうなんだ?」

 

 と聞いて来るのは先程の青年(というか百地再不斬)に対してオレが「それはその子の自由です」と答えると「なら、いい」とだけ返してきたことでここにいる全員の去就が決まった。

 何しろ白は見るからに再不斬について来る気満々だったからな。

 

「それじゃあ、もう一度飛ぶぞ」

 

 転移先はもちろん、木ノ葉隠れの里だ。

 

 




次回も未定です。

気長にお待ちいただけたらと思います。

そして私は感想、評価お待ちしてます。←図々しい


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110.最強への道 前編

UA300,000突破!!

お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます。

できましたので投稿致します。


 水の国からメイたちを救助したあの日から約1年。

 

 霧隠れの里を抜けた5人の所属もずいぶん前に確定しているし、一応報告しておくことにしよう。

 

 まず照美メイ。

 表向きは暗部に所属し、オレの班の班員ということになっている。

 だが、表向きということは当然裏があり、本当は『宵』のメンバーとして動いてもらっている。

 主にチームを組んでいるのはサソリ。他にはオレとも組むことはあるけど、回数的には少ない。なんてったってオレは秘密組織『宵』の組長(トップ)だからね。組長(トップ)組長(トップ)らしく本部でドカーンとデカい顔していればいいのさ。それが組長(トップ)の仕事。というわけで、馬車馬のように働くのは部下の仕事なのさ!はっはっはー。

 

 次に鬼灯新月と桃地再不斬。

 彼らは表も裏もなく、正規の暗部として登録されている(つまり、火影直属の部隊ということだ)。

 2人とも霧隠れ時代から名を挙げていることもあり、正規部隊として活動するには目立ちすぎるということからこのような配属となっている。

 とはいえ、他里を抜けて木ノ葉にいるというのは経歴的には宜しくないことで。

 色々と風当たりが強く、キツイ任務ばかり割り当てられているというのは風の噂で聞いている。

 そろそろオレの部隊へと配属されるように動くべきかもしれない。

 

 最後に白とかぐや君麻呂。

 2人とも戦闘能力は高かれど、白は8歳。君麻呂は7歳ということや、彼らの保護者的存在である再不斬や新月からの要望もあって直ぐに忍びとして登録するようなことはなく『宵』の養成部門と共に修行の日々を送っている。

 とはいうものの2人が『宵』に入隊したわけではなく、その存在すら教えていない。

 多分、白も君麻呂も一緒に修行している仲間or友達くらいの認識だろう。

 

 あとはその『宵』の最近の動向についても説明しておこうか。

 

 実働部門にはサソリや砂隠れ出身者の他にシスイとイタチが養成部門から繰り上がっていることもあり、だいぶ戦力的に充足してきた感はある・・・が、とはいうものの願望を言うとまだまだ足りない。

 

 開発部門ではオレと同い年のカブトがいる忍術開発班や科学忍具班というものを立ち上げている。

 忍術開発班の主な開発内容は現状、医療系のみに特化しているため、綱手がトップを務めている木ノ葉病院の医療忍術研究室に勤務(潜入ともいう)させている。

 科学忍具班というのは、原作(BORUTOの方)に登場した科学忍具をなるべく早く開発できるように研究させている班だ。

 予算はそこそこ付けているものの、開発する人材も育っていないこともあり効果が発揮するのはまだまだ先のことになるだろうと予想している。

 

 それから養成部門。

 『宵』結成当初から想定していた山中フー(9)、油女トルネ(9)、シン(9)とサイ(7)を加入させることに成功していた。

 

 近い将来、霧隠れ出身たち4名が加入となればもっと戦力が充実してくることになるだろう。

 それに再不斬はもちろん、新月も忍刀を扱えるそうだしオレが鹵獲してタンスの肥やしになっていた忍刀を与えて木ノ葉で忍刀七人衆を再興させるのもいいかもしれないな。

 

 

 

 そんなこんなで。

 

 忍界大戦からも大分時間が過ぎたこともあって、昔よりは絶対的な仕事量も減り、それに部下が増えたことも合わさって楽になってきた今日この頃。

 

 皆さまは如何お過ごしでしょうか。

 

 羽衣カルタ、ただいま11歳。

 

 数年越しの約束を果たすため、オレは蛞蝓姫こと綱手のもとでようやく医療忍術の修行に入っていた。

 

 時はいまから遡ること1週間前の修行開始初日。

 場所は木ノ葉病院1階ロビーにて。

 

「綱手師匠!不束者ですがこれからよろしくお願いします!早速ですが師匠、ぼくは何から取り組めばよろしいでしょうか!」

 

 某病院ドラマのように白衣の医師たち(医療忍者も含む)を大人数引き連れて移動していた綱手院長に対して(まぁこれから会議があるとかそういう理由で大所帯になっているだけだと思うけど。ちなみに綱手の弟子兼秘書役のシズネは綱手の右側に陣取っていた)、きらきらと燦然と輝きを放った視線で聞いたオレ。

 

 そんなオレにキリッと毅然とした師匠風を吹かせる綱手。

 

「とりあえず、まず初めに医療忍術の理論と論文やらなにやら関係する資料を全部読み込め・・・あ、あとついでに資料の整理も頼む」

「はい!師匠っ」

 

 木ノ葉内で第3次忍界大戦勝利の立役者として有名なオレが医学界の首領(ドン)である綱手の弟子になるということにその場は騒然としていたが、その反応も面白かったのでノリノリで弟子っぽく振舞っていたオレ・・・だったのだが、木ノ葉病院地下資料室にぶち込まれたのと同時に今度は逆に呪詛を吐き続けることとなった。

 

 何故かって?

 

 地下資料室は、もはや地下資料庫と表現したほうがいいくらいの広さがあって、尚且つ一度使ったなり読んだなりしたものは元の棚に戻されることなく床や机の上に放置されていたこともあり、分類ごとに整理するのに丸1日を費やした(綱手は体のいい雑用係を見つけた気分だったのだろうか、と邪推せざるを得ない)。

 そして、その翌日から始めた資料の黙読は、まず資料の量が10万3千冊くらいあるんじゃないかという量があり、それを暗記するのには更に丸5日かかった。

 

 数人の影分身で手分けしてもこれだけ時間かかるとか聞いてないぜ・・・。

 

 この地下資料室に缶詰食らっていた期間中には、姉弟子であるシズネが何度か様子見がてら片付けを手伝ってくれたり、間食を持ってきてくれたりと色々お世話になった。あ、あと愚痴を漏らしたら最初は聞き手に徹していたシズネだったのだが徐々に話し手へと変わっていって最終的にはシズネの愚痴大会と化していたという出来事もあったな。

 

 それはさておき、約1週間ぶり娑婆に出たオレを待ち受けていたのは本格的な医療忍術の修行だった。

 

 

 



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111.最強への道 中編

皆様、お久しぶりでございます。
そして、大変長らくお待たせ致しました。

なんとこの拙作に推薦を書いてくださった方がいらっしゃいました。
最恐之忍神様、この場を借りて御礼申し上げます。


 さてと本格的な修行パート。

 

 え、見たい?

 

 オレとしてはサクッと流そうと思っているんだが。

 

 ・・・いやいやいや、とても見て面白いようなことはしてない。絵的に地味で淡々と同じ動作の繰り返しみたいな感じだ。

 テレビだときっと何時間経っても魚が釣れない釣り番組を流しているようなものだろう。

 

 そんなつまらないものを見たいか?否、オレは全くもってみたくはないね。

 

 何故そのような事態になってしまったかというと、つまり端的に言えば、医療忍術の修行中は、写輪眼の利用は認められなかったからである。

 

 確実に写輪眼で見て術をコピーしたほうが効率がいいのにも関わらず何故使わせてもらえなかったかというと。

 

『基礎は基礎。土台は土台。戦時中なら許可どころか積極的に使って負傷者を治せと言っただろうが、今は平時だ。ならばズルをせずにきちんとした医療忍術を覚えたほうが良いだろう。将来後進の育成をする際にもその方が基礎をきちんと理解して教えてやることもできるだろうしな』

 

 という綱手様様のオレにとってはとてもありがた大迷惑な指導方針のせいだった。

 

 ふ、不幸だーっ。

 

 こうなったら致し方ない。有言実行でサクッと物語を進めようではないか!

 

 はい、それではみなさんご一緒にっ。

 

 キ〜ングクリムゾンンンッ!!

 

 

 

 

 

 ・・・。

 

 ・・・・・。

 

 ・・・・・・・。

 

 てなわけで、綱手に弟子入りして医療忍術の修行に入ってから早1年。

 

 ようやく免許皆伝いただきました。

 

 もっと正確に言うならば、医療忍術だけに関して言えばもう半年前には当時の綱手の力量に追いついていましたー。

 

 え、早すぎるだろって?色々端折り過ぎだろって?

 

 うん、まぁね。普通に写輪眼(チート)を使わずに半年で医療忍術を習得っていうのは早すぎるとオレも思うよ。

 

 でも、もう一つのチートの存在を忘れてやしないかい?

 

 そう。

 

 その名も多重影分身修行法。

 

 膨大なチャクラ量を誇る者のみが使える荒業。

 

 オレはこれを使って効率良く、仕事と修行と私生活の両立ならぬ鼎立(ていりつ)を可能にしたのだ(いや、鼎立じゃ対立してしまうから意味合い的に真逆だから間違いか)。←オレはただ3つ別々のことを同時並行でやりましたよと表現したいだけ。仕事サボって修行に明け暮れていた訳じゃないからね!と主張したいだけ。

 

 前半の半年で通常の医療忍術はもちろんのこと、これまでは死んだ設定と化していたオレの額にある百豪の印(ていうか知っている人いたのかな)を解放する術、つまり創造再生をも覚えた。

 後半の半年は、綱手にお願いをしていままでは千手一族のみが代々契約していた蛞蝓と口寄せ契約を結ばさせてもらったことと、初口寄せということで気合を入れ過ぎてしまった結果、完全体(100%)の蛞蝓を口寄せしてしまいその直後に突然逆口寄せされてしまったことから始まった仙人化の修行などこの1年はオレにとってとても充実した期間となった。

 

 オレの頭に手を置いた巨大な蛞蝓仙人(他の皆は最長老様と呼んでいた)に潜在能力を限界まで引き出してもらったり、その方に7つ集めると願いが叶う龍の球がこの世のどこかにあるという話を聞いたり。

 それから仙人化修行期間の最後の2日間は2年間という時間を圧縮したような濃密な修行をすることもできたしな(意味深)。

 いやぁ、まさか蛞蝓仙人全員が全身緑色だったなんて下界の人間には嘘でも言えないぜー(意味深)。

 というか、何人かいた仙人のうち1人の付き人の方は真っ黒クロスケなタラコ唇で服装がなぜアラビア風に頭にはターバンを巻いているという・・・。

 

 こほんっ!

 

 それはひとまず置いといて・・・まったく、蛞蝓仙人には頭が上がらないどころか足を向けて寝ることすらできないぜー。

 ま、蛞蝓仙人の住んでいる湿骨林がどこにあるかは知らないから、いつのまにか知らぬ間に足を向けて寝ることになりそうなんだけどね。

 

 

 

 話はガラッと変わって『宵』のこと。

 

 不肖、このオレがトップを務めている秘密組織だが、この1年である程度の戦力を充実させることができた。

 

 養成部門に所属していた山中フー、油女トルネ、シンの3人は忍者学校(アカデミー)卒業資格の獲得と同時に暗部としての基礎訓練が終了し、とりあえず正規部隊の下忍班として活動をしている。もちろん、担当上忍はこちらの息がかかった者が務めている。

 

 そして新たに加入したのが霧隠れ出身で撤退戦の時に知り合った白とかぐや君麻呂。

 そのあとしばらくしてから鬼灯新月が一族の者たち(クーデターの際は中立派(どっちつかず)だったらしいがそのせいで現水影派から執拗な嫌がらせを受けていた)を呼び寄せて一族丸ごとまとめて木ノ葉隠れの里の庇護下に入った際に紹介された従弟にあたる鬼灯水月。

 水の国から火の国に逃げてきた難民の中に紛れ込んでくる忍びを処分する任務の際に仮の難民キャンプで見つけた長十郎なる者の4名が養成部門に入った。

 

 実働部隊の方でも動きがあった。

 原作からお馴染みの桃地再不斬と先程から名前が出ている鬼灯新月。そして彼の従兄であり、水月の実兄でもある鬼灯満月の3名が新たに実働部隊として『宵』に加入した。

 これにより、オレのタンスの肥やしになっていた霧隠れの忍刀を十全に扱える人材が出てきたため、以前から構想はあった木ノ葉にて忍刀七人衆を再興させることに正式に決めた。

 

 再不斬には原作通り、断刀・首斬り包丁を。

 新月には理由はないが(なんとなく)、鈍刀・兜割を。

 満月にはとりあえず今後も使う人が居なさそうな(どーせなんでも使えるんでしょという考えで)、爆刀・飛沫を渡した。

 それに加えてオレが大刀・鮫肌を今まで通り使って当面は四人衆でやっていこうと考えている。

 

 それ以外の3振り、双刀・ヒラメカレイ、雷刀・牙、長刀・縫い針に関してはまだ担い手が育っていないというのもあるし、他にもちょっとした考えがオレにはあるからもうしばらくは空席でいいと思っている。

 

 そして最後は開発部門。

 特に報告すべき事項は無し。去年からほぼ変わらず、相変わらず。忍術開発班のカブトは医療忍術の腕を磨いているだけだし、科学忍具班も相変わらず試行錯誤の最中で予算だけ浪費している。

 どちらも芽が出てくるのには、もう少し気長に待つ他ないということだろう。

 

 

 

 ま、この1年間はこんな感じでオレも『宵』も最強への道を邁進してるって感じかな。

 

 




久しぶり過ぎて難産でした。

あと1,2話で物語として前に進める予定です。
まぁ、あくまでも予定ですが。笑

また来年も宜しくお願いします。
それではみなさん、良いお年を〜


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112.最強への道 後編

新年あけましておめでとうございます。

2018年、初投稿です!今年もよろしくお願い申し上げます。

さて、新年早速お気に入り登録2000件突破(予約投稿時現在)、感想、評価ありがとうございます。


そして、この話にて暗部篇少年期は終了です!


 湿骨林で行っていた文字通りの意味で時間密度の濃い修行を終えて体感では約2年ぶりに木ノ葉隠れの里へと戻ってきたオレはまず服を新調することを余儀なくされた。

 

 なぜかって?

 

 それは・・・なんてったって背が伸びたからね!背が!!

 

 つ・ま・り、身長が伸びたからね!身長が!!

 

 ん?何度も言わなくたってわかるよって?そりゃあれだよあれ。重要だから2回言いましたってやつだよ。

 

 いやぁーそれにしても修行1年目後半から伸び始めてまさか精○と時の部屋にいた期間だけで合計30cm近くも身長が高くなるなんて思ってもみなかったなぁ。

 

 ・・・こほん。それはさておき。

 

 精神と○の部屋から出てきたオレにとりあえずということで蛞蝓仙人がくれたダボダボの服しか持ってないオレは服屋に来ていた。

 

『おまえ様よ。あの山吹色の道着なんてどうじゃ?なんでも左胸と背中には好きな文字をサービスで入れてもらえるらしいぞ』

『いや、それよりもそっちの紫のやつの方が』

『何言ってんだ!んなものよりも伸縮性抜群で防御性能も抜群なあの戦闘服の方が』

『戦闘服は戦闘服でも肩パットの入っていない旧式の方が見栄え的に良いのでは?』

『えぇい!バカどもは黙っておれ!おまえ様!妾は絶対あの山吹色の道着をオススメするぞ。ほら見てみよ!今ならなんと期間限定で重し付きアンダーシャツ(紺色)を無料でプレゼントキャンペーンもやっておるんじゃぞ?もうこれはおまえ様のためにある一品と言っても過言ではないのう!!』

 

 そう言って、あれがいい、いやあっちの方が似合うなどとオレが頼んでもいない服選びを勝手におっぱじめた尾獣(ペット)共もいたが、それらの意見は当然のことながら無視をして木ノ葉の一般的な忍装を購入した。

 

 というか、お前らいい加減その世界観から帰ってこい。

 

 

 

 

 

 時は進み、その日の夜。もう少しで日付が変わろうかという時間帯。

 空には雲がところどころ浮かんでいるものの煌々と輝く満月。そして、それに負けじと自己主張をする数多の星々。

 

 木ノ葉隠れの里郊外。

 

 森が開けており、満天の星空を満喫でき、なおかつ人里から離れているその場所にオレ羽衣カルタと照美メイ、うずまきサソリの3人が立っていた。

 

「ねぇ、カルタくん。ここで一体何が始まるというのかしら?」

 

 と、隣でワクワクした様子で聞いてくる視線の位置がだいぶ近くなったメイ。

 

「全くだぜ。鷹山(ようざん)(宵で使われている伝書鷹の1羽)で急に呼び出されて身構えて来たらお前の身長は伸びてるし、アジトから今までもしのごの言わずについて来いとしか言わねぇし」

 

 何がどうなっているんだか。と、困惑の表情を隠すつもりもないサソリに対してオレは「まぁ、黙って見てろって。2年間に渡る修行の成果を見せてやるからよ」と返すに留めた。

 その返しに「2年間?」と、また新たな疑問が浮かんでいるサソリはとりあえず置いておこう。

 

 さて、オレが何をしようとしているか。

 

 結論から言うと、これから黒ゼツの野望を一撃で葬り去ろうとしている。ま、そのために修行をしたんだしな。

 

 ふぅ。と、小さく息を吐き集中力を高める。

 

 そして自身の身体エネルギーと精神エネルギー、それから周囲に漂っている自然エネルギーを均等に練り込むことによって仙人モードへと変化する。

 

 しかし、外見上には微塵も変化は起こらない。

 少しでも仙人化に失敗すれば動物の姿に近寄ってしまうことはもちろん、完璧な仙人化を成功させた時でさえ隈取りとして現れるはずの変化すらもない。

 

 全く変化を必要としない仙人化。

 

 これこそが真の仙人の境地。

 

 チャクラを感じ取ることが出来る者、もしくは人の戦闘力を感じ取ることが出来る者ならばオレの仙人化に気付けるだろう。

 現にこの2人はオレの纏う空気の変化を敏感に感じ取って目を見開いている。

 

 だが、気付けない人には分からない。そういうもの。

 

 真の仙人化を果たしたオレは両手を天高く掲げる。

 

 

 

『 大地、大海原、大空、大宇宙よ 』

 

 

 心の中でそう全ての自然に対して語りかける。

 

 自然に対して必要なものは挑戦ではなく、尊敬。リスペクト。

 

 自然に願うことはただ一つ。

 

 【災厄・大筒木カグヤ】復活の阻止ッ!!

 

 

『 オレに自然エネルギーを分けてくれ!! 』

 

 

 そう自然に願うと、キラキラと小さく輝く自然エネルギーの粒子がオレの天に掲げる手に向かってあつまり出してくる。

 

 その光が生み出す幻想的な雰囲気に女の子として目を輝かせているメイ。

 同じように目を輝かせているサソリはメイのように乙女という意味ではなく、親になっても中二病を完治しきれていないというだけだろう。

 

 その間にも自然エネルギーの粒子は地球上、宇宙空間問わずオレの掌へと集まってくる。

 

 

 ハァァァァァァァッ!!

 

 

 そして体内で自身のチャクラ、尾獣のチャクラを練り合わせ発射台としての役割を持つ自分自身を強化する。

 

 天に掲げた両手の上には自然エネルギーの球体がどんどんと肥大化する。

 

 そして。

 

「そろそろ、かな」

 

 自然から貰った力を一気に自身のエネルギーへと変換。

 

 すると掌からどっと身体へと入り込んできた自然エネルギーによって身体の内側から発光が始まる。

 この現象はエネルギーの供給過多により、オレの身体が悲鳴を上げていることに違いない。

 

 時間はもうかけられない。

 

 だがっ!

 

「これで、終わりだッ」

 

 

『 最終究極奥義(ファイナル) 』

 

 

 自分が今、扱うことの出来る全てのエネルギーを余すことなく両手に集中させる。

 

 そして掌底を合わせ、全エネルギーを右手に移譲。

 

『 超新星(ビックバン) 』

 

 

 弓を撃つときのように的に向かって直角に立つ。

 

 右手で狙いを定め、その狙いがぶれることの無いように左手で右腕を抑える。

 

 

『 爆裂衝撃波(アタァァァック)ッッッ!!! 』

 

 

 そうして、ゴォォォッという轟音を響かせてオレの右手から放たれた大きく青白いエネルギーの波動は煌々と輝く満月の元へ一直線に飛んでゆき。

 

 雲を蹴散らし、成層圏を突き抜け、月面を貫き、月の核へと到達したその瞬間に。

 

 夜空に大きな花火を作り出し、月の欠片によって地球へと降り注ぐ流星群を生み出したのであった。

 

 



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第5章 師匠篇-青年期
113.世界情勢の変動


久方ぶりの連日投稿。

説明回ラストです。


 封印された大筒木カグヤもろとも月を爆散させたあの出来事からかれこれ4年が経過し、オレは16歳(しかしながら身体は18歳)になっていた。

 

 ちなみにその出来事を巷では月消滅事件や大爆発事件、世界同時多発流星群発生事件など色々な呼び名で呼ばれており、その原因については様々な憶測が広がっている。この事件の発生によって、世界各地で宇宙に対する興味関心が高まりを見せているらしい。

 

 その間は、戦闘能力的には高止まりしている感があるものの、チャクラ量も体の成長と共に身体エネルギーが増えて多くなったような気がするし、そして何よりもメイとの身長差が無くなって視点が同じ高さになった。つまり、背が伸びたのだ。

 

 ・・・こほん。オレ個人のことはこれくらいにしておいて。火の国と近隣諸国のことでも話そうか。

 

 

 南西の大国。風の国の大名家は水源地を砂隠れの里に握られていることもあり、ただのお飾りとなっているらしく最近では砂隠れに国の予算を握られ軍事費が増加の一途を見せており、軍事国家化が進んでいる模様。

 

 北西の大国である土の国と北東の大国である雷の国は海上にて漁業権を巡ってしばしばトラブルというか、小競り合いを起こしているようで共に海岸部には強固な軍事拠点を置いてお互いに牽制し合っている様子。

 

 南東の海洋国家、水の国は未だに政治紛争で忙しいらしく下記で詳しく説明するつもりだが、難民が多数発生しているみたいだ。

 

 

 そして我が国、火の国と木ノ葉に関わること全般。この4年間で変わった情勢などを挙げていこうと思う。

 

 大名家直轄地と木ノ葉隠れ領、藩制度、自治区の大きく分けて4つの分類で統治しているわけだがそれに関してはいまのところ大きな問題は起こっていない。

 

 正規暗部、そして『宵』の構成員のおかげで他国からの防諜はほぼ完璧であるのにもかかわらず、他国の詳細な地形やデータを元にした世界地図を完成させつつある木ノ葉は忍界にて最強。と言ったところだろうか。

 

 北東部にある湯藩にて、ジャシン教なる新興宗教が流行り出して治安が劇的に悪化した。

 極少数の信徒とはいえ、信仰が過激で殺人事件の件数が急激に増えたのだ。

 

 そこで木ノ葉の暗部が出動し、事の鎮圧に動き始めた。これにはオレも表の暗部として任務を遂行した。

 

 交戦相手の中にはあの飛段(の若かりし頃)も混ざってはいたが、ジャシン教への入信が制圧作戦直前だった事もあり、当時の暗部長であった大蛇丸が自ら引き取って育てると言ったことも要因のひとつとなって無罪釈放になった。

 

 

 それから南東部にある半島の茶藩を始めとした港街や海岸には、海の国、水の国からの脱国者とみられる集団が漂着するようになってきた。

 どうやら政治不安に加えて主要産業である漁業が近年不振に陥り国を逃げ出す人が後を絶えないみたいだ。

 

 これが一昔前ならば脱国した時点で霧隠れの国境警備部隊に見つかりその場で人生がジ・エンドだったのだろうが、メイたちのクーデター未遂事件から戦力の立て直しをしきれていない霧隠れの状況が脱国者の増加に拍車をかけているのだろう。

 

 この脱国者が既に住んでいる人との間で問題を起こしたり、逆に自分たちの土地や仕事を奪われることを恐れた火の国の国民が脱国者たちに嫌がらせをしたりしてこれが新たな国内問題と化している。

 

 

 そして木ノ葉隠れの里内部で起こった大きな事件と言えば里の表にできない案件を処理する火影直属の暗殺戦術特殊部隊(通称、暗部)のトップと敵国の忍術の解析と新たな忍術の開発を担う忍術開発局のトップを兼任していた伝説の三忍のひとりである大蛇丸の里抜け。

 

 彼が行っていた非合法な実験が師匠であり、なおかつ里のご意見番でもあった三代目火影・猿飛ヒルゼンにより明らかにされ里を追われることとなったのだった。

 これにより任命責任を問われた四代目火影である自来也が火影の職を辞任。その後、抜け忍となった大蛇丸を追うために彼自ら調査と追跡を開始した。

 

 後継者には自来也の弟子である波風ミナトが選ばれ、五代目火影に就任し、里の上層部や組織図も五代目体制へと移行した。

 

 

 そして補足するような形で暗部の秘密組織『宵』のこと。

 

 創設者でもあった暗部長・大蛇丸の裏切りにより自然消滅。表面上は何事も無かったかのように正規の暗部へと戻ったのだが、暗部の中ではカルタ派という派閥で力は残ることとなった。

 そして『宵』が組織として無くなるその前には大蛇丸の里抜けが判明したと同時に大蛇丸が火の国内外に隠し持っているアジトを分かる範囲内ではあったが片っ端から捜索した。

 その際、押収された証拠品の数々や研究、実験の成果など『宵』とは結び付かないものは全て木ノ葉へと持ち帰り、それ以外の物は全て処分した。ま、完全犯罪だな。

 

 

 話は少し戻り、五代目火影・波風ミナト体制。

 

 ご意見番は水戸門ホムラとうたたねコハルが引退し、唯一残ることとなったヒルゼンと新たに追加された綱手と自来也(実質名前だけ)。

 参謀長には奈良シカク、諜報部局長には山中いのいち、警務部隊長にはうちはフガク。

 医療大隊長には前回から変わらずそのまま綱手が務めることとなった。

 そして、空席になった暗部長にはまだ若いとはいえ、実力・実績共に充分と評価の高い千手天間がなり、その補佐役に羽衣カルタ(つまりオレ)が抜擢。後に鬼の副長と畏れられる予定だが、決してマヨラーにはならない。

 それに加えて、以前解体された暗部養成機関『根』をもう一度復活させることが決まりオレは『根』のトップを兼任することになった。

 

 

 あ、そうそう。

 『宵』にあった開発部門の忍術開発班は解散させてカブトにはそのまま暗部に籍を置いたまま医療大隊にも属してもらうことになった。

 科学忍具班は一度完全に解体した体(つまり元から無かったことにして)で、羽衣カルタの私的研究所として再スタートを切ることとなった。

 

 

 

 さてと。長い説明はこれくらいにして、次からは忍者学校(アカデミー)の話であった話でもしようかね。

 

 

 




このあと、設定集に第4章の登場人物紹介を追加します。

もしよろしければそちらもご覧ください。

忍術一覧の更新はもうしばらくお待ちください。


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114.武器屋の看板娘 其の壱

 やぁ。

 巷では最近、鬼の副長と呼ばれ始めている羽衣カルタだ。

 

 今日の任務(火の国大名との会談に出席する火影様(ミナト)の護衛)を終えたオレは火の国の首都から木ノ葉隠れの里へと帰ってきていた。

 

 オレがなまじ天送身の術や飛雷神の術が使えるから移動に時間をかける必要がない分、火影の行動範囲が馬鹿でかくなっている。そのせいで火の国国内で行われる会議や挙句の果てには同盟国との会談などへの出席率が高くなり、既に歴代最高記録を更新している。

 

 まったく・・・火影自ら出しゃばらなくても良いレベル(代理でご意見番や幹部クラスの上忍で事が済む案件)の会議にまで今代の火影は顔を出そうとするから、部下(オレ)は大変なのだ。

 

 たぶん、お出迎えする相手側も会場の準備とか万が一が無いようにと警備だとか大変なんだろうなぁと、他人事で考えてみたりもする。

 

 護衛にオレがついているし、火影(ミナト)も当然忍界最強格のひとりだし、最悪の場合は自力で飛雷神の術を使って逃げることだってできるから万が一なんてことは起こりえないとは思うんだけど。

 

 まぁ、色んなことを考えても火影が会議に出るから今までよりも火の国や同盟国との間に太いパイプが出来ていることは大きなメリットではあるんだろうがな。

 

 

 

 さて。話は変わるが、木ノ葉隠れの里には武器・忍具を取り扱う隠れた名店があるのをご存知だろうか・・・いや、知るわけもないよな。悪い変なことを聞いて。

 

 今、オレはその店に向かっているのだが、オレはその店の存在に気付いたのは数年前。ひょんなことから傀儡好きな少女と出会ったことがきっかけで、そのときからずっと贔屓にさせてもらっている武器屋だ。

 

 その店の外には看板が出ておらず、また店舗が建っている立地も悪いため人通りも少ない。

 日が暮れてきた時間帯ということもあって、この場所を見ると多くの人が治安が悪そうな印象を持ちそうなそんなところ。

 

 クナイや手裏剣といったメジャーな忍具の品質、品揃えの充実さは当然のこととして。

 鎖鎌やヌンチャク、刀。今の時代ほとんどお目にかからない槍や斧、ハンマー、弓などのマイナー武器をも取り揃えており、店頭に並んでいる商品全てが高クオリティ。

 

 そして何よりも、どんな武器であろうが、どんな忍具であろうが、研磨や修理などをきちんとこなしてくれる職人技。

 

 故に、名店。

 

 しかし、知る人ぞ知る隠れた名店。

 

 そんな名も無き武器屋には看板娘がひとりいる。

 

 カランコロンと扉を開けると共になる音。そして続けて聞こえてくる明るく元気で可愛い「いらっしゃいませー!」の声。

 

 それがこの店の看板娘。お団子ヘアーがトレードマークの美少女、テンテン(CV.田村ゆかりさん)である。

 このテンテンが傀儡人形を操る練習を公園でしていたことがきっかけでこの武器屋に出会えたのだ。

 

「やっほーテンちゃん。親父さんは奥にいる?」

 

 オレがそういつものように尋ねるとテンテンは「あ、カルタさんだったんですね!逆光で誰かわからなかったです!いつもありがとうございます~」と礼儀正しくお辞儀をする。その動作に合わせるようにしてテンテンの指から出ているチャクラ糸で操られている人型の傀儡もお辞儀をする。

 

 ・・・うん。前よりも傀儡の動きがスムーズになってきてるな。

 

 テンテンの傀儡捌きにそんな感想を抱いていると、どうぞどうぞ~と商品が並んでいる店内を通り奥の部屋へと案内された。

 

 暖簾で仕切られたその部屋の中へと入っていくと、そこにはいつもと同じく親父さんが座って商品であろう武器を丁寧に磨きあげている最中だった。

 

「・・・らっしゃい」

 

 相変わらず渋い声だこと。

 

「こんにちは親父さん。近くに用事があったからダメ元で寄ってみたんだけど」

 

 流石にこの前、頼んでおいた忍具はまだ揃ってないよね?と、聞くオレに親父さんはポツリ「あるよ」とだけ返事をして部屋の入口近くにあった大きな木箱の山を顎で指した。

 

 あ、それね。

 

 オレは木箱を開けてその中身を確認すると天送の術で木箱を自室へと転移させた。

 

 仕事が早いこともオレがこの店をに贔屓にする理由のひとつだ。

 

「支払いは後日、いつもの部下に持ってこさせますんで」

 

 今回の依頼した品物は暗部が使う消耗品の武器類。

 主にクナイや手裏剣といった品々なのだが、一度に発注する量が多かったためもうしばらく納品には時間がかかるかと思っていたんだけど。流石だ。

 

「あ、あとそれから別件で、この忍刀を見てもらいたいんだけど」

 

 そう言ってオレが口寄せ・雷光剣化の術で取り出したのは、鬼灯満月・新月のペアに渡していた爆刀『飛沫』と鈍刀『兜割』。

 

 奴らはつい先日、派遣した任務先で大暴れしてきた際にボロボロにして帰ってきやがったのだ。・・・大事に使えよとぼやきたくもなる。

 

 それでメンテナンスに出そうと思い訪れたのだが、果たしてこんな世界にも唯一無二のヘンテコ武器でも修理してもらえるのだろうか。

 

 ・・・なんて、考えていた自分がおこがましくて恥ずかしい。

 

 親父さんはチラッと一瞥すると「任せな」と言って、また忍具を磨く作業へと戻った。

 

 か、カッケェ・・・。

 

 

 

 そのまま『飛沫』と『兜割』を親父さんに預けて部屋を出ると、テンテンが部屋の外でじっとこちらを見て立っていた。

 

 どうやらオレの用事が終わるのをずっと待っていたようだ。

 

「どうした?テンちゃん。なんか用でもあった?」

「カルタさん。いまお時間大丈夫ですか?傀儡のこの動きなんですけど」

「んーどれどれ・・・あ、それはちょっと貸してみ?ここをこうして、こうやって・・・」

 

 そう言って、テンテンから傀儡人形を借り受けたオレはチャクラ糸を出して操り始める。

 

 その様子を一瞬たりとも見逃さないようにテンテンはオレの動かす指先とそれに連動する傀儡人形の動きに釘付けになる。

 そして、少しの間オレが傀儡人形を動かし続けると次第になるほどなるほどと言わんばかりに頷いて「そうやったらよかったのねぇ」などと呟く。

 

 オレはこの光景に懐かしさを覚えて、テンテンと初めて会ったときのことを思い出していた・・・。

 

 

 



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115.武器屋の看板娘 其の弐

に、日間ランキングに載ってる~!?!?
し、しかも10位だと・・・。

あ、あざす!!(混乱の極み


 以下、回想である。

 

 

 

 オレが武器屋の看板娘、テンテンに出会ったのは今から約2年ほど前の桜が散るころのことだったと思う。

 

 年に数回行う、操演者・赤砂のサソリによる子供たちのための『赤砂傀儡新喜劇』の木ノ葉隠れの里公演。

 会場は広い面積を誇るとある公園(ここ、韻を踏んでいるんだよ。笑っていいよ。座布団もくれよ)。

 

 この公演、元はと言えばサソリの借金返済のためにこどもたちをターゲット層にした人形即売会のための販促ツールとして始まったのが起源だったのだ。

 

 即席で作った簡易舞台に、子供たちでも持つことが出来るサイズの人形。

 演出、脚本、操演、声当てまで全てオレとサソリでやっていた初回のゲリラ公演。

 

 それがいつの間にか、木ノ葉に住む子供たちとその親の中で話題となり、現役の忍びたちにも広がり。

 何か流行っているということで木ノ葉の商人たちも食いつき始め、里上層部の目と耳にもとまり。

 最終的には火の国の大名へと伝わって、現在では火の国国内の主要な街で興行を行うまでになってしまった。

 

 流行りものに目敏い商人と子供たちのおかげで、サソリの作った人形や玩具傀儡は飛ぶように売れて、今では中流層以上の子持ち家庭に赤砂製の人形がない家庭はないとまで言われている。

 制作者のサソリはもちろん、商人との価格交渉や新たな人形のアイデアを担当しているオレもウハウハだ。

 

 最近では、普通の糸や棒で動かす玩具傀儡ではないチャクラ糸専用の玩具傀儡の生産を始めた。そんな時期。

 

 赤砂傀儡新喜劇も終わり、その後に行われる新作の即売会も終わり、いままでごった返していた公園から人が立ち去ってゆく。

 

 舞台の撤収をしている人たちも仕事を終えて帰り、その場に残っていたのはたまたま非番で暇だったオレと傀儡をチャクラ糸で操る練習をしているひとりの女の子。

 

 それがテンテンと初めて出会ったときの状況。

 

「ずっと見てたけど、なかなかコツが掴めないみたいだね」

 

 背後から近寄りながらそう話しかけたオレに(・・・って、字面的には完全にアウト。おまわりさんこいつです状態だな。通報されなくてよかった。うちはの警務部隊が飛んできちまう)驚いてチャクラの制御を乱してしまい傀儡を地面に落としてしまうテンテン。

 

 相当、集中していたみたいだった。

 

 驚かせてごめんね。

 

「あ、あなた誰ですかっ!?」

 

 勢い良く一歩下がりながら振り向いたテンテン。

 そしてこれがファーストコンタクトの会話だった。

 

「あ、オレ?オレは羽衣カルタ・・・」

 

 探偵さ。と、続けたかったのを今でも覚えている。

 いや、もちろんそんなことを言ったら混乱させてしまうだろうから普通に「ちょっと傀儡をかじってるんだ」と続けた。

 

「はごろも、かるた?ハゴロモ、羽衣・・・って、えぇぇ!?もしかして、お兄さん!あの羽衣カルタさんっ!?」

 

 どこぞの影をワンパンで()したとか、どこかの大国1つをひとりで落としたとかっていう、あの伝説の!?と、口調・声量・テンションMAXで聞いてくるその少女にオレは思わずたじろいだ。

 

「いや、色々と盛り過ぎた噂を聞いているようで悪いけど、オレはそんなことはしていない」

 

 精々、土影のとっておきをコピーして心を折ったことがあるくらいだ。

 

 まぁ得てして噂という者は尾びれ背びれがつくものだからね。とオレが言った言葉を遮るように、

 

「・・・はっ!?カルタさん!否、カルタ様!わ、ワタクシ!テンテンと申します!!握手してください!あ、あとサインもください!!」

 

 これと、これと、これに!

 

 テンパりながらそう言って地面に投げ捨てられていたカバンから出される油性のサインペンと自由帳。それから他にも、あれやこれや・・・って、それはオレのプロマイド写真!

 

 昔撮ったときから大分オレが成長したからさ。最近、取り直したんだよねぇ。正規忍者の登録用に。

 

 また出回っていたんだー。

 

 つーか、四つ折りにされてオレの顔ボロボロじゃん。

 

 でも、本人を目の前にしてその絶対大事にしてないよねってわかる写真を出してくるとは・・・図太いというか何というか。

 

 とんだミーハー娘だな。

 

「おっけーおっけー。全部書くからそんなに慌てない慌てない」

 

 忍術と才能の無駄遣いを敢行。

 多重影分身と手裏剣影分身の応用で油性サインペン影分身をして、一瞬でサイン会は終了。

 

 その光景にテンテンは驚きの声と共に目を輝かせていた。

 

「わぁぁ!ありがとうございますー」

 

 ペコリと頭を下げるテンテンに微笑ましい感情を覚えつつ、まぁとりあえず座って話でもしようか?とベンチに誘導して(ますますおまわりさんの事案っぽい)隣り合わせで座ってから、ようやく本題を切り出した。

 

「ところで傀儡の練習をしていたみたいだけど、マイブームなの?」

「はい。一応ブームはブームですが、一過性のブームで終わらせるつもりはありません!私は傀儡使いの忍者になるつもりです!」

 

 この年でしっかり自分の将来を決めてるんだと、いままでの言動から意外に思っていた。

 

 そしてテンテンは、実はそれなりに理由がありまして・・・と、話を続ける。

 

「わたしの家、売れない武器屋でしてお店はいつも閑古鳥が鳴いているんです。そんなんだからお父さん、お母さんにも逃げられちゃって・・・だから、わたしがどうにかしないと!って考えていたらピンと閃いたんです!武装傀儡には仕込み武器をたくさん使うから将来、わたしが傀儡使いの忍者になったらお父さんからたくさん忍具を買ってあげられるなぁって」

 

 オレはその話を聞いて、なるほどだからこんなにしっかりしてるのか。と納得したと同時に心根の優しい子なんだなと思って、何とかしてあげられないかなとも思ってしまったのだった。

 

「そうなんだ。それで練習を」

「はい。でも、あまり上手くいかなくて」

 

 あ、もちろん、傀儡人形が好きっていうのもあるんですけどね。と言うテンテンの表情は笑顔だが、声のトーンはまでは作りきれていなかった。

 

「コツ教えてあげようか?」

 

 のあげよ、まで言ったか言ってないかの時点で「いいんですか!?やったーっ」と歓喜の声が。

 

 もちろん。だって最初からそのつもりで声かけたんだしね。というオレの返事は口に出ることはなかった。

 

 ・・・ま、いいんだけどさ。

 

 



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116.武器屋の看板娘 其の参

お気に入り登録、評価ありがとうございます。

ここ最近、ぐんと伸びて嬉しいです。


 テンテンにチャクラ糸での傀儡人形の操り方のコツを教えてて気づいたんだけど。

 

 8歳で、それも尚且つ忍びの家系じゃなくてチャクラを練れるって実は凄いことなんじゃね?

 

 っていうか、チャクラを練ってしかもそれをちょっと太いとはいえ糸サイズにまで形態変化させれるって、テンテン天才じゃね?

 

 だって原作では体術メインの忍具使いだったよね?

 

 いままで、子どもとの関わり合いはイタチやシスイを始めとした『宵』養成部門所属の公式チートたちがほとんどを占めていたからテンテンの異常さに気付いたのがコツの伝授と雑談を終えて一息入れた頃と遅れてしまった。

 

 どんな鈍感系主人公だ。

 

 ・・・まぁ、だからなんだという話だが。

 

 それはさておき、日も落ち始め流石にこの時間からひとりでこの少女を家へ返すのはいくら犯罪発生率の低い平和な木ノ葉隠れの里内とはいえ如何なものかと考えたオレは家まで送り届けることにした。

 

「テンちゃんはさ、忍者学校(アカデミー)にはもう通っているんだよね?何歳から入学したの?」

「もちろん入ってますよ。えーと、6歳ですかね。まわりの子もだいたいそれぐらいに入学する子が多いですし」

「ふむふむ。それじゃあ、それまでの間はどうしていたの?」

「近所の友達と公園で遊んだり、お店の手伝いをしたり、あ、あとたまに児童会館でお勉強をしたこともありましたね」

 

 この会話から察せるように、木ノ葉隠れの里には忍者学校(アカデミー)より前の幼年学習施設は存在していない。というよりは恐らくどこの国にも幼稚園や保育園というものはないだろう。

 

 だから子どもは大抵の場合、親の仕事の手伝いをしたり、そして将来は親の跡を継ぐというのが主流になっている。

 とはいえ、勉強する機会が全くないというわけではない。

 昔の日本でいうところの寺子屋的な場所に近所の子どもたちが集まって勉強をしたり、遊んだりということができるのだ。

 それがテンちゃんの場合、児童会館という場所なのだろう。

 

 中流家庭でもこんな感じだからな。

 

 もちろん、名家や名門一族、上流家庭になったら、家庭教師がついて勉強することなどもできるだろうがまぁほんの一握りだろう。

 

 そんな会話をしているうちにテンテンの家の前までついて、その日は解散となった。

 

「またね」

「はい!今日はどうもありがとうございました。今度会うときまでにはカルタさんに教わったことをもっと練習して、びっくりさせちゃいますからね!」

「うん。期待してるよ」

 

 別れ際もこんな感じだったと思う。

 

 

 

 次にテンテンと顔を合わせたのは、それから1ヶ月か2ヶ月ほど経ってからのことだったと記憶している。

 

 その日のオレは溜まっていた書類整理やら決裁やらを大方終わらせて、さぁてラストスパートに向けてとりあえずコーヒーでも淹れて一休みしようかなと思っていたときに、ソォラ!という叫び声と共にオレの執務室の窓の外から何かが投げ込まれた。

 

「い、いったぁぁい・・・」

 

 ・・・それがテンテンだった。

 お尻で着地して、なおかつ何度かポンピングしていた。

 

 かなり痛そうである。

 

「大丈夫か?」

「か、カルタさぁん」

 

 お久しぶりです~と、気丈にも続けるテンテンだったが、その声は涙声だし、目元にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 

 テンテンを投げ込んだ犯人なら目星は付いている。

 オレの周りで、ソォラ!なんて言うやつはアイツしかいないからな。

 

 あのバカ。何してんだろ。少女虐待の容疑で通報してやろうか。嫁さん(パクラ)は悲しむだろうけど知ったこっちゃない。

 

 嫁入り前の女の子に痣が残ってはいけないと、オレはその場で掌仙術を使って治療を始めた。

 

「・・・どうだ?」

「す、すごいです。痛みがみるみるうちに引いていきます」

「それはよかった」

 

 初めて受けた医療忍術に驚愕と感動を覚えているテンテンに、何故ヤツに投げ飛ばされて来たのかを尋ねる。

 

 ん?そんなことより、早いところゲス野郎をとっちめないのかって?

 んなもんするに決まってるだろ。

 

 というか実は既にオレの影分身が捕捉して拘束済みだ。

 ソォラ!の掛け声と共にテンテンが飛ばされてきたその瞬間にオレはある程度の事態を察して影分身を発動。

 その分身体は奴の背中に付けてある飛雷神の術式を目印に転移して確保。という流れである。

 

 もう少ししたら引きずって来ると思うぜい。

 

「えーっと・・・言いづらいんですけど。あの日からカルタさんに全然会えてなかったので、もしかして約束忘れてるんじゃないかと心配になって。それで職場はここだと聞いていたので立ち寄ってみたんです。そしたら・・・」

「投げ飛ばされて今に至る、と」

「は、はい。すみません、お仕事中にお邪魔してしまい」

 

 アポイントも取らずに職場へと来たことを怒られると思ったのかシュンとなってしまったテンテン。

 いやいや、それは別に怒ってないよ。寧ろ全然約束を守れなくてごめんね。とフォローを入れる。

 

 そんなことをしているうちに、執務室の扉が開かれオレの影分身とそれに引き摺られて来たテンテンをぶん投げた犯人・・・赤砂のサソリこと、うずまきサソリが部屋に入って来た。

 

「おいサソリ。一応遺言は聞いてやるぞ」

 

 まぁ、聞き入れてやるかは別だがな。

 

「いやな。その娘がこの建物の外からチラチラとお前の執務室の方を見てるからコレ(・・)かと思ってな」

 

 そう言って下品にニヤケながら小指を立てるサソリ。

 

 どうやらオレをからかっているつもりらしい。

 

「・・・遺言はそれだけか?」

「ほう。そういう態度をとっていいのか?やっと想いが実ったっていうのにその相手が幼い女の子を手篭めにしていたと知ったらメイのやつどれだk」

 

 サソリが全てを言い終える前にオレの影分身が放電したことにより、あばばばば!と変な声と煙を出しながらサソリは燃え尽きることとなった。

 

 死刑執行完了。

 

 こうして悪は潰えたのだ。ふはははは。

 

 

 

「カルタさん。この人、黒炭になっちゃってますけど・・・」

「あぁ、うん。大丈夫。そのうちケロッと復活するから」

「そうなんですか?」

「うん。こいつ半分以上傀儡みたいなものだし」

 

 それに今回はギャグ回みたいなものだし。

 

「はぁ・・・」

 

 困惑気味のテンテンがこの場では逆に浮いていたのかもしれない。

 将来、苦労人になるイメージしか湧かないなぁ。

 

 

 




ふわりとぶち込むカルタとメイの関係・・・笑

それを差し置いてテンテンがチョロイン化。あれ?こんなはずでは・・・。


最近連日投稿してましたが、次回は未定です。ごめんなさい
出張等立て込んでます。

なるべく早めに更新したいなぁ。


感想や評価、お待ちしております!


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117.武器屋の看板娘 其の肆

お気に入り登録、評価等ありがとうございます!

そして、お待たせ致しました。最新話です。


 オレの影分身が放った雷撃によってプスプスと煙を立て黒炭と化していたサソリだったが(ちなみに影分身はその後すぐに解除して煙と共に消え去った)、それもほんの1、2分後には復活し、その回復の速さにテンテンは驚いていた。

 

 しかし、オレは復活したそばからテンテンを投げ飛ばしたことに対しての謝罪を要求し、サソリは抵抗むなしく土下座での謝罪を強いられた。

 その様子に心優しいテンテンは引きながらも「まぁ、里の重要施設周辺をうろついていた私にも非はありますし」と謝罪を受け入れてくれて・・・ようやく。 

 

「こいつが木ノ葉傀儡の始祖『赤砂』のサソリだ。いままでの言動からわかるようにバカだから気をつけろ」

 

 そうオレがサソリをテンテンに。

 

「この子が次世代の天才傀儡師テンテンだ。甘く見てるとそのうち抜かされるだろうから気をつけろ」

 

 そして、テンテンのことをサソリに紹介することができたのだった。

 

 ・・・のだが。

 

「「ど、どうも・・・」」

 

 2人は照れながら同時にどうもと言って頭を下げ合った・・・って、いやいやいや。サソリ、お前は照れるところじゃない。怒るところだ。お前はどこまで残念な頭(バカ)なんだっ!

 

 なんてツッコミは地の文(心の中)で済ませて、せっかくだからテンテンの傀儡の操り具合でも見てやってくれよとサソリに頼み、サソリは快諾。テンテンも乗り気で多少開けた場所ということでこの建物の屋上へと向かっていった。

 

 ふぅ。とりあえずコーヒー淹れて一服するとしようか、と2人が出ていった扉を見ながらそんなことを思っていると。

 

『ふむふむ。おまえ様よ、妾にも1杯淹れるのじゃ。あ、一応言っておくがの妾は猫故、猫舌・・・(ぬる)めでの』

 

 などという戯言も脳内には響いたが、もちろん又旅をわざわざこの場に出すわけもないので、1杯分のみを淹れた。

 

 うん・・・おいしい。

 

『ひ、ひどい!妾の分はっ!?』

 

 無視か!無視なのか!オヤジにも無視されたことは無いのに!!と、オレが優雅に窓辺でオレンジ色がかってきた空を見上げながらカップを傾けている間も延々と騒ぎ立てていたが・・・正直、しらんがな。

 

 お前にオヤジはおらんやろ。

 

 

 

 それからしばらく経ち、窓から差し込む夕日の光が部屋を赤く染める。

 

 オレはようやく溜まっていた仕事も終わらせ、当然カップに入っていたコーヒーも空になり、あれ?そういえばあの2人全然降りてこないなぁと思い、屋上へと向かう。

 

 屋上へと繋がる階段を上がり、ドアを開くとそこには床一面に傀儡が出されており、その数は優に100体は超えていると思う。傀儡の路面販売でもやっているのかという様相を呈していた。

 

 というか、傀儡が多すぎて2人の姿が見えない。とりあえず、傀儡たちで作られた迷路を掻き分けて奥に進んでいくとようやく2人の姿を発見し「2人とも・・・これは何をやっている最中なんだ?」と、オレは浮かんだ疑問をそのままに口に出して、そう聞いた。

 

「ん?あーなんだ、カルタか」

「なんだはねぇだろサソリ。それで、これはなにをしている最中?」

 

 はんっ!見てわからねぇのかよ。この天才造形師、『赤砂』のサソリが造った傀儡の最新作発表会だよ。と、ドヤ顔で言うサソリにオレがうんざりしていると横からテンテンが割り込む。

 

「あ、カルタさん!見てくださいよ、これ!サソリさんの最新作らしいんですけど貰っちゃいましたぁ!」

 

 何でもこれ、烏天狗っていう名前の傀儡でしてー。と目を輝かせながら楽しそうに話を続けるテンテン。

 

 その様子を見て先程とは打って変わって、え、誰もそいつをやるとは言ってないんだけど・・・。と冷や汗を滲ませながら焦るサソリ。

 

 このコンビ。意外と観ていて飽きないかも。

 そんな感想を持ったオレは敢えてテンテンを煽った。

 

 否。

 

 煽ってしまった、と言った方が正確だっただろうか。

 

「へぇ、良かったなテンちゃん。その烏天狗って傀儡はそんなにすごい傀儡なのか?」

「それはもう!すごいってもんじゃないですよ!私みたいなちょっと傀儡を齧った人間だったら誰しもが感動もののレベルですって!これ、みてくださいよ。ここです!ここ!」

 

 と、テンテンの喋りが止まらないこと止まらないこと。その後もここの細工が素晴らしいだの、ここの仕掛けが芸術的だのもう褒めまくりの褒め殺し。

 

 正直テンテンのテンションの上がり具合に「あ、もしかして地雷踏んだ?」と思わなくもなかったが、まぁもう既に踏んでしまったものは致し方ない。甘んじて受け入れよう。

 

 オレは兎も角、サソリは造形師としてここまで褒められるのは嬉しくて仕方ないことなのだろうが、逆にここまでテンションが上がっている相手に対して今更、いやこれはあげないよ。とは非常に言いづらいものがあるだろう。

 

 まぁ、だからと言ってオレはサソリに手を差しのべることはしないが。

 

「良かったサソリ。お前の芸術をここまで理解してくれる人が出来て。お前はもちろんだけど、これほどまでに高く評価してくれる人に使ってもらえる傀儡も本望だろうよ」

 

 と、オレはイイ笑顔でそう言い放った。

 

「あ、あぁ・・・うん」

 

 そう小声ながら答えたサソリの顔は、泣き笑いだった。

 

 

 

 

 

 この時、歴史が動いた。

 

 テンテンがこの烏天狗という一体の傀儡を譲り受け、それを武器に戦ったことよって近い将来、傀儡師が脚光を浴びることとなり、そして遂には木ノ葉隠れにて傀儡部隊が結成されることとなったのである。

 

 傀儡部隊総長・うずまきサソリ。

 

 傀儡部隊『第一班』班長・テンテン。

 

 とはいえそれはまだ先の話。

 

 この後、帰りが遅くなったテンテンを家まで送った際、初めて会った親父さんとのファーストインパクトとも言うべきファーストコンタクトの方がオレにとっては重要で重大な話だった。

 

 そのときの様子はご想像におまかせするが、一言だけ感想を言うならば・・・。

 

「娘を持つ父親、こぇぇ」

 

 




最近、カルタ外伝の世界軸でのボルト世代の話を書きたくて仕方ない。


続・カルタ外伝 八男って、それはないでしょう!

カルタ、大家族の大黒柱になっている模様。


まぁ、作者はボルトちゃんと見ていないのでプロットだけ書いて満足することにします。笑


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118.武器屋の看板娘 其の伍

お気に入り登録、評価ありがとうございます。

1点、設定を変更しました。
テンテンのアカデミー入学年齢を10歳から6歳に引き下げました。急な変更となり混乱させてしまったら申し訳ないです。


前回のあとがきの件。
期待値が高いようでびっくり。ほんとうにやってしまおうかしら・・・(なにやら今回もあとがきで何かをつぶやく模様)


 以上、回想終わり!

 

 え?いままでの話、回想だったことすら忘れてたって?

 んじゃあ、少し前から遡って読んでくれや。きっと思い出せるさ。

 

 とまぁこんな感じでテンちゃんや親父さんと仲良くなったんだよねっていう、言わばただそれだけの話だね。うん。

 

「こうして、こうやって・・・こうだっ!」

 

 できたっ!できましたよーカルタさん!と、何度も失敗しつつも高い集中力で真剣な表情を浮かべながら諦めずに何度も挑戦し続けていたテンちゃんだったが、ようやく自分が思った通りに傀儡を操作出来たらしく顔をほころばせながら報告してくれる。

 

 うん・・・まぁ、ずっと見ていたから知ってるんだけどね。

 まったく、可愛らしい子である。

 

 そんなテンちゃんにオレは「すごいすごーい」と拍手を送る。スタンディングオベーションで拍手喝采だ。

 

 いや、最初から立っていたことは触れないで置いといて。

 

「カルタさんありがとうございました!これでまた一歩、私の夢に近づけました!」

 

 自身の傀儡(ちなみにこの傀儡がサソリから貰った烏天狗)に頬ずりしながらキラキラとした笑顔でそう言うテンちゃんに苦笑いをしながら「いやいや、なんもだよ」と返し「そういえば」と先程まで2年前のことを思い出していたからであろう思いついた話題を振ってみる。

 

忍者学校(アカデミー)入ってしばらく経つけど、今はどんな感じ?今年卒業とかできそう?」

 

 その問いに、テンちゃんは「いやいやいや!カルタさんがいた頃と時代が違いますからそんなに簡単には卒業できませんよー」と笑って否定してから話し始めた。

 

「そうですねぇ・・・今年クラス替えがありまして去年まで一緒だった仲良かった子と別のクラスになっちゃったりとかそういうこともありましたけど、でも担任の先生もいい人ですし、クラスの雰囲気とかも悪くないですし、まぁこれはこれで良かったのかなーって思いますね。ただやっぱり忍術や体術の授業のレベルが低い子に合わせられているからちょっとだけ物足りないとは思いますけどねー」

「まぁテンちゃんはセンスあるからね。楽にダントツで学年1位とかなんでしょ?」

「あーいや・・・」

 

 オレの質問に対していままでの話の流れから急に打って変わって言い淀むテンちゃん。

 

 そして。

 

「くのいちクラスでは1位ですけど、学年ではあの日向一族の男の子がいるので、僅かに力及ばず2位なんです」

 

 すみません、カルタさんやサソリさんのご指導を受けているのに。と言いにくそうに続けた。

 

「そんな謝ることないって。2位でも立派だよ!それにオレらだってたまーに来てちょっとした助言くらいしかしてないんだしさ。今の実力は全部テンちゃんの努力によるものなんだから。もっと胸を張りなよ」

 

 ポンポンと肩を叩きながらオレは最近、上忍会議の場でも名前が挙がる機会があった日向ネジの存在を思い出す。

 

 まぁ、いくらテンちゃんが才能に溢れる少女とはいえ、生粋の天才と比べちゃうのはなぁ・・・と。

 

 もちろんそんなことを言ってこっちがテンちゃんの限界を設定するなんてことはしないが。

 

 それからというもの。

 また話題を変えて二、三の雑談を交わしたあたりで今日は解散という流れになった。

 

「今日は色々とありがとうございました!」

「はいはーい。んじゃまたねー」

 

 そんないつも通りの別れの挨拶をして、オレは次の目的地である『うちは一族の屋敷群』へと足を向ける。

 時空間忍術を使うまでもない。通常の瞬身の術で充分だろう。至急の用事というわけでもないし。

 

 ちなみに回想時にはあんなに小っちゃかったテンちゃんも(と言っても高々2年前の話)今では立派な忍者学校(アカデミー)の生徒(というか、回想当時もちゃんと忍者学校(アカデミー)の生徒でした)。

 

 さて、オレがひとりになったところで少し話を戻そうか。

 

 くのいちクラスの中ではダントツで一番の成績を誇っているテンちゃん(流石だね)。

 だけど僅差ながら学年1位の座は他の人物に譲っている状態なのだ。

 

 その人物こそが、さっきも名前は出たが10歳という年齢で既にあの日向一族きっての天才との呼び声が高い“日向ネジ”。

 

 既に白眼を発現させ、日向流柔拳法の筋もいいらしい。

 

 とはいえ彼はあくまでも分家の出であり、通常であれば例え忍者学校(アカデミー)で高い評価を受けようとも上忍会議や族長会議などでチラリとも名前を聞くこともないはずなのだが、それでもセンスや潜在能力が高いというのが里上層部には知れ渡っている。

 と、いうことはだ。それほどまでに彼の才能は抜きん出て秀でているのであろう。

 

 人の口に戸は立てられないということだろうな。

 

 もちろん、それに引き換え次代の日向宗家は情けないだの、日向宗家は立つ瀬がないだの、面目が潰れただの言う輩はいないわけではないがそれは横に置いておき。

 

 日向宗家の人物を差し置いて噂になるネジ。

 これがどれだけ凄いことか。例外中の例外であることかオレは伝えたくて仕方ないのだが、語彙力の問題だろうな。上手く伝わってなかったら申し訳ない。

 

 そしてこれは話が横道に逸れることになってしまうと思うが日向一族の宗家と分家の関係について少しだけ話しておこうと思う。

 

 この世界軸では以前から雷の国・雲隠れの里とは良好な関係を築けており(もちろん国同士のことなので双方に思惑や利害の一致などで結び付いているというだけのことだろうが)、原作で起こった同盟締結の式典の裏で日向の白眼を狙ったヒナタ誘拐事件は起らなかった(ちなみに原作で実行犯となった雲の忍頭は戦時中にカルタの手により既に死んでいる)。

 そのためネジの父であり、日向一族現当主の双子の弟でもある日向ヒザシが存命しており、宗家と分家の関係は原作の世界軸よりはまだ悪くは無い、拗れてはいないという状況だ。

 それに伴って、ネジの宗家に対する考え方や日向の嫡子であり自身の従妹でもあるヒナタに対する態度もかなり柔らかいものとなっている。

 

 ・・・それにしても日向ネジ、そして日向一族の話が思った以上に長くなってしまった。一体、どこから話題がずれたんだろうか。

 

 あ、あれか。テンちゃんは天才でも、その更に上には日向ネジが居座っているっていうところからだ。

 

 オレやサソリの指導を時々とはいえ受けているテンちゃんよりも成績や恐らく能力も高いというのは特筆すべきことだろうしな。まったく。天才が努力を惜しまないっていうのは卑怯だよなー・・・って、もうこの話はおしまい!

 

 話を戻そうか。

 

 オレは無駄な思考回路を存分に働かせている間、つまりテンちゃんと別れたそのときから瞬身の術で絶え間なく移動を続けた結果。

 

 いつの間にやら目的地『うちは一族の屋敷群』に到着していたのだった・・・。

 

 

 




次回、更新日未定!
タイトルは「うちはの秘蔵っ子」に決定!
まぁ、だいたい察し(笑)





【NARUTO-続・カルタ外伝- 八男って、それはないでしょう!(仮称)】


---現在公表可能な情報---

主人公
羽衣マグナ(12)下忍
 羽衣家の末弟、八男。
 家族構成は、父カルタ、母***に、兄が7人、姉が4人いる。その内姉2人が同い年でありながら既に中忍と特別上忍となっている。
 名前の元ネタは英国の大憲章『マグナ・カルタ』から。
 羽衣一族の中で最も父の面影を感じさせる人物でありながら、その忍術等の資質はほぼ受け継がれていないと思われるほどの落ちこぼれ。自身のチャクラ量が圧倒的に少ない。同情するならチャクラくれ(笑)状態。そういったところがどうやらコンプレックスな模様。
 下忍班でチームを組んでいるのは波風ボルトとうちはサラダ。担当上忍師は猿飛木ノ葉丸。


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119.うちはの秘蔵っ子 前編

意外と早くかけました(笑)

ではさっそくつづきをどうぞー。


 うちは一族の居住区に着き、門をくぐってその中へと入る。

 

 その中は一種の小さな町のような作りとなっていて、そして古き良き時代の日本的な家屋が多くあったり、土壁か何かで作られた居住区をぐるっと囲む白い塀にも情緒を感じざるを得ない。

 

 九尾襲来が起こらなかったこと。それに加えてうちは一族を内患と捉える人物---その代表格が志村ダンゾウや原作ご意見番の2人だったのだが、ダンゾウは既に死に、他2名も政治からは引退させられている---が里の上層部からある程度排除されたことによって里上層部とうちは一族との溝は深まってはいない。とはいえ、特別良好な関係を築けているかと聞かれると即答でYESとはいかないからな。

 二代目の千手扉間体制の時の悪しき施策が今なお引き摺っているんだろう。

 

 まぁ、そんなことを言ってしまったら神話時代の頃(六道仙人・大筒木ハゴロモの子。弟アシュラ(千手一族始祖)と兄インドラ(うちは一族始祖)の壮絶な兄弟喧嘩)から引き摺っているんだろうけどさ。

 だって、そのあともアシュラとインドラの転生体同士が争いを続けているわけだし。そしてそれの先代が千手柱間とうちはマダラだったわけだし。

 そう考えるとそれをわざと唆して拗らせていた黒ゼツは本当にこの世の害悪でしか無かったよな。つーか、あいつの野望は月と共に爆散させたけど、いまどこにいるんだろう。全然、尻尾を掴ませないから生きているのか死んでいるのか何をしているのか全く分からない・・・メンドーなやつめ。

 

 ・・・こほん、それはさておき。

 

 そういうこともあって、うちは一族以外の里の人間はほとんど入ってこないんだろうなーとそんな雰囲気さえ感じる。

 アットホームな感じはあるんだけど、よそ者には冷たさを感じるとでも言ったらわかりやすいだろうか。

 

 とはいえ、オレは直属の部下にイタチやシスイがいたこともあったし、現うちは一族の代表のフガクとも交流があるわけで部外者といえどもそこそこの頻度でこの“うちは街”に足を踏み入れているから他のうちはの方々とも結構顔見知りだし、オビトはオレの先生だったし、いまだに仲良くさせてもらっているから何の躊躇いもなく門をくぐったが。

 

 そして今回、ここにきた要件というものイタチとシスイにお願い事があったからだ。

 

 アポはとって来てないんだけど、暗部の任務表だと2人とも休日になっていたから恐らくいるだろうとにらんでいる。

 あ、ちなみに暗部の任務表は火影のミナトと暗部長の天間とそれから暗部の副長であるオレの3人しか閲覧権限はない極秘情報、極秘資料なのであしからず。

 

 大通となっているところを更に奥に進み、以前オビトが枝に引っかかったまま動けなくなって宙ぶらりん状態になっていた大木を横切り、途中で名物のうちはせんべいを売っているおばちゃんの駄菓子屋に立ち寄って、煎餅を1袋分購入。そこでおばあちゃんと世間話を少ししてそれからフガク邸へと向かう。

 

 程なくして。

 

「あ、イタチみっけ」

 

 と、オレがイタチを発見したと同時にイタチもオレの事を見つけたようでこちらへと足早に近寄ってきた。

 

 ・・・ん。なんか、ちっこいの背負ってる。

 

「こんにちはカルタさん。すみませんこんな体勢で・・・何かご用でしたか?鷹を飛ばしていただければこちらから伺いましたのに」

「いやいやこちらこそ休みの時に来ちゃって悪いね。まぁ火急の用事ってほどでもなかったからさ。サスケも兄ちゃんと遊んでたところ邪魔して悪いな」

 

 ちょっとだけ兄ちゃんのこと借りていいか?とサスケに聞くが、サスケは「えぇぇ!?これから兄さんと手裏剣術の修行をしに行くんだよ!カルタさんは帰った帰った!って、遊びじゃねーし!!」と手でしっしっとされ完全に拒否された。

 

 だめだこりゃ。

 サスケのやつ、兄ちゃんっ子が強すぎるだろ。

 

 このやり取りからわかるようにオレはサスケくん(9)とも面識がある。

 とはいえ、一族の代表フガクやイタチ、シスイに用があったときにしか顔を合わせたことは無いし、イタチに用があったときは大体そのあとイタチはサスケの事を置いてオレと共に出かけてしまうので、おそらくサスケには『俺から兄さんを盗っていく嫌な奴』みたいな認識をされていることは想像に難くない。

 

 サスケ(この子)をどうにか上手く丸め込んでー・・・いつものように。

 という視線をイタチに向けて助けを求める。これもまた、いつものように。

 

 それを察しのいいイタチは汲み取ってくれたのか(というよりはお約束となっていたから分かるか)、背負っているサスケに対して顔を向けながら話しかける。

 

「悪いなサスケ。カルタさんは俺に大事な話があるみたいなんだ。だから手裏剣術の修行は」

「えぇぇ。それは無いよー兄さん!だって、前からの約束だったじゃないか!今日修行を見てくれるって!」

 

 そう言って背中の上で駄々をこねて暴れるサスケを背負っているのが億劫になったのか、とりあえず降りろとサスケを地面に降ろすイタチ。

 

 あーあ。そんなことしたら・・・ほらまたサスケが『兄さんはカルタの野郎ばっかり贔屓して・・・』みたいな顔でオレの事をキリッと睨み付けてくる。

 

「許せサスケ・・・また、今度だ」

 

 イタチはそう言ってコツンとサスケの額を小突いた。

 それに対してやられた方のサスケは「いてっ」とか「いつもそうやって兄さんは誤魔化す」などと非難の声を上げているが、表情を見るに先ほどまでとは打って変わって口角がわずかながらも上がり満更でもないようだ。

 

 そのサスケの表情がコロコロと変わる様子にイタチも柔らかな笑顔を浮かべている。

 

 ・・・なんなんだこの兄弟。よくもまぁ、毎度同じことやって同じ反応ができるな。

 

 しかもなんか、幸せそうだし。

 

 

 

 あーあ、オレも兄弟欲しかったなぁ。

 顔も知らない親父が死んでから母は未亡人だから可能性ゼロっぽいけど。

 

 頼りになるかっこいい兄や姉もあこがれるし、年の離れた懐っこい弟もいいと思うけど。

 

 でも、その中でもやっぱりかわいい妹を所望したいところだね。

 

 そうそう。

 例えば・・・お兄ちゃんでも愛さえあれば関係ないよねっ!的な感じの。

 例えば・・・お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!って感じの。

 

 まぁ、逆に・・・俺の妹がこんなにこんなに可愛いわけがない。的な感じでもいい。むしろ、アリ。全然、アリ。

 

 ってあれ?なんかどこかで聞いたことあるような・・・。

 

 



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120.うちはの秘蔵っ子 後編

ナルトくん、あとたしか銀さん誕生日おめでとう。

更新待ってくれていた人いたら、お久し振りです。
ありがとうとごめんねを込めて。

続きをどうぞー


 こほん。

 

 先ほどのこと全ては妄言だ。忘れてくれ。

 

 

 

 さてと、話を戻そうか。

 

 イタチに「許せサスケ、また今度だ」と小突かれすっかり機嫌が治ったサスケ。

 その機嫌が治り頬を赤らめたサスケが少し恥ずかしくなったのか兄に対して強がり「べ、別に手裏剣術の修行くらい1人でも出来るし!油断してたら兄さんのことなんか直ぐに追い越してやるんだからな!」とツンデレ()ったところで、オレはあることを思い付き唐突ながら提案を持ちかけてみることにした。

 

「あのさぁサスケ。いつも兄ちゃんを借りちゃうお詫びにと言っちゃなんだけどさ、今日は兄ちゃんの代わりにオレが手裏剣術の修行見てあげようか?」

 

 と言っても、見るのはオレの影分身になっちゃうけど。と付け足す。

 

 そんなオレにイタチが『いや、カルタさんの手裏剣術はもう既に手裏剣術と呼べる域じゃないような・・・』という目で見てくる。

 

 ま、それは見なかったことにして。

 

 そのオレの提案に対してサスケは「マジで!ホントに!?」と身を乗り出しながら食いついてくる。

 

「おぉ、マジでマジで。ホントのホントに。なんなら手裏剣術以外でも体術、忍術、幻術の入門編くらいまでなら教えてやるぞ」

「やったー!まじかよ!!」

 

 小さな身体をいっぱいいっぱい使っての全力ガッツポーズにほっこりさせてもらうオレ。

 

「いやぁ、どこぞの影をワンパンで()したとか、どこかの大国1つをひとりで落としたとかっていう、生きる伝説のカルタさんに修行を付けてもらえるなんて俺、ラッキーだなー!今回の修行でコツを掴んで兄さんを超えてやるぜー」

 

 と、マシンガンのように1人で喋りながらぴょんぴょん跳ねながら喜ぶサスケ。

 

 その様子に可愛らしい弟を見れて嬉しいような、オレに弟を盗られてさみしいような複雑な顔を浮かべるイタチ。

 

 って、またその都市伝説かよ。

 

「いやサスケ。流石にオレは五影をワンパンはしていないって」

 

 つーか誰だよ、そんな噂を流してるやつは。と、否定するオレに、「でも前まであった月を壊したのはカルタさんなんだろ?兄さんが言ってたぜ」と返答するサスケ。

 

 あぁ、それは否定できないやつだ。

 

「おい、イタチ。なんでバラしてるのさ」

 

 と、小声で非難の声をあげるも。

 

「すみません。口が滑りました」

 

 そう言って反省の色をあまり感じさせないイタチに対して「あれ一応、極秘扱いなんだぞ」と口頭注意をする。そして後でサスケが見えていないところで拳骨を落とすことを密かに決意した。

 ちなみにあの月爆散事件のあと、目撃していたメイとサソリを含めた『宵』のメンツには何故、月を破壊したのかという理由を説明したのだが、それと同時に箝口令を出しておいたのだった。

 だから、月を破壊した犯人がオレだと完全に知っているのは『宵』のメンバーのみ。

 とはいえ、里の一部上層部には感付かれてはいるのであろうが、何も言われなかったのでこちらからも報告等は何もあげていない。つまりスルー。

 もしかしたら、意味もなく月を破壊したヤバいヤツとして腫れ物扱いされているのかもしれないな。オレのあずかり知らぬところで。

 

 ちなみに当時の巷では、犯人捜しが行われていたようだったが、自然現象と捉えるものが多数派だったようだ。

 

 まぁ、この世界で衛星を破壊できる人物はいないと考える方が普通だしな。どこぞの7つのボールを集めるとどんな願いも叶う世界線ではあるまいし。

 

「って、流石のカルタさんでも月は無理だよなぁ!兄さんも冗談がキツいんだから」

 

 いつまでも俺が騙しやすい子どもだと思ってそんな荒唐無稽(こーとーむけー)なことを本気(マジ)な顔で言ってくるんだもんよ!と、続けるサスケ。

 

 なるほどな。いくらお兄ちゃんっ子(ブラコン)なサスケが兄から聞いた話でも、オレが月を破壊したことは信じていないというわけか。まぁ、常識的に考えたらそうなるか。どこぞの7つのボールを集めるとどんな願いも叶う世界線ではあるまいし。

 

 重要なので2度言いました。

 重要(・・)なので2度(・・)言いました!

 

 オレがイタチの方を見ると「ね、大丈夫だったでしょう?」みたいな顔でこちらを見てきていた。

 

 いやいやいや・・・そういう問題じゃないんだが、という言葉は口には出さずに、サスケとの約束を履行するべく影分身を1体出現させ、あとはその影分身に任せることにする。

 

 イタチがサスケに「カルタさんの影分身の言う事をきちんと聞いて修行に取り組むんだぞ」「兄さんに言われなくても分かってるよ!カルタさんの術を全部盗んでやるんだ!そして兄さんを超す!」

 

 そんなサスケの決意表明を聞いてからイタチと共に本体のオレはその場から立ち去った。

 

 

 

 その後、シスイとも合流を果たしたオレは、彼ら2人にとある重要なお願い事をしたのだった。

 それは、今後の木ノ葉や火の国。延いては忍界全体をも揺るがす出来事に繋がっていくことになるのだが、このときはまだ誰もそのことに気が付いていないのであった………。

 

 

 

 ………なんてね。

 ホントに何も知らないんだよ。

 

 

 




4年半くらいエタッテテゴメンネ。
コレモウツヅカナインダヨ。

カルタ外伝書いてる途中から書き直したくなって、設定練り直した新伝も途中まで書き溜めてたんだけど、ログインパスワード忘れたり、パソコンが壊れたり、そもそもXPで時代に取り残されたり、転職したりしてました。

気が向いたらスマホで活動するかもなので、また何かありましたらよろしくです。

ではでは。


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