ハリー・ポッターと最悪の血筋 (おでこぽん)
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プロローグ
1話


初小説です!酔いの勢いに任せて書いてます!

原作になるべく忠実にいきたいと思います!

 

 

まだ全然決まっていないんですが楽しい物語にしようかと思います。

 

─────────────────────────

 

 

 

 

アルバス・ダンブルドアはその日、暗雲立ち込める森の中にいた。目の前には高い高い要塞が広がっている。彼は魔法界でも名高い監獄、ヌルメンガードに来ていた。

 

彼が最後にここへ来たのは何年前のことだったろうか。まるで昨日のことのように記憶に新しい、親友であり想い人でもあった人物と決闘したあの日。その者の名は、ゲラート・グリンデルバルド。

 

しかし今日は彼に会うために来たのではない。つい先日捕まった、彼の娘であるマーガレット・グリンデルバルドにダンブルドアは会いに来たのだった。

 

彼女は父親によく似て、優秀で美しく、人を魅了させる力を持っていた…。そう、今世界を恐怖に晒している、“闇の帝王“ヴォルデモート卿のように。彼女の場合はその名から他の生徒に恐れられ、いつも一人で行動していたようだが。

 

 

ダンブルドアはマーガレットについ先日呼び出された。ホグワーツの校長でありヴォルデモート卿の勢力と戦っている彼には時間がなかったが、一瞬でもいいから話をさせてくれと懇願されたこともあり、面会することにしたのだった。

 

「お時間頂き感謝します、ダンブルドア先生。」

目の前でマーガレットが微笑んでいる。

「本来はゆっくり話したいことなのじゃが、なにせ時間が無いのでの。単刀直入に聞かせてもらおう。その腕に抱いておる赤子について。」

「私の子ですわ、ダンブルドア先生。誕生日は、7月5日。」

 

なんと…“呪いの娘“とも呼ばれその魔法力の強さゆえに恐れられた、あのマーガレットに子どもがいたとは。ダンブルドアは驚きを隠せなかった。

 

「私があなたを呼び出したのは他でもありません、あなたにこの子を託したいからです。」

さらにダンブルドアを驚かせる発言をマーガレットはかました。

 

 

 

 

しばらく沈黙が続く。

それを破ったのはマーガレットのほうだった。

 

「私はこの子を愛しています。私の人生を壊した父親より、この子の父親よりも。でもだからこそ、あなたに託したいのです。この子は高い魔法力を持っています。この力は、たくさんの人間に狙われるはずです。闇に染まった人間しかり、そして、この子の父親も…。」

 

「まさか、その子の父親は。」

 

「…先生、もう時間がないのです。私がここに、憎んでいる父親の元へ来たのは、自ら監獄に入りこの子を生むことを望んだからです。この子が生まれたことが知られれば、誰かが必ずこの子を奪いに来ます。この子の幸せを奪いに。私は…私と同じ闇の中でこの子と生きていたいとは思いません。この子は光の中で生きるべき子です。」

 

「マーガレット……しかし………」

ダンブルドアは困惑している。

 

「先生。私は、もうすぐ死にます。病気なんです。この子はこのままでは監獄か孤児院で生き、闇の勢力に利用されるかもしれない。そうなる前に、どうか、この子を。」

 

マーガレットのその発言に、ダンブルドアは困惑しながらも考えをまとめた。マーガレットの言い方からして、この子の父親のおおよその検討はついた。魔法力が強いというこの子を、彼に渡すわけにはいかないし、彼と同じく孤児院に預けるというわけにもいかない。

 

 

数分の沈黙を経て、ダンブルドアはしっかりと頷いた。

 

「あいわかった、その子を必ずや光の道へと進め、闇の勢力の手駒とならないよう努めよう。しかしわしも忙しい身での、なかなか子育ての暇がない。誰かわしの知り合いの家族にでも預けようと思っとるが、それで良いかの。」

 

 

「ええ…ええ!ダンブルドア先生!ありがとうございます!」

 

こうして、グリンデルバルドの孫娘はダンブルドアの腕にしっかりと抱かれ、ヌルメンガードを後にすることになったのだった。



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私の家族

ウィーズリーかディゴリーか最後まで悩みましたが。


映画ではニュートスキャマンダーが大好きです!!かっこいいよね!!


 

 

「アリス、朝だよ~」

 

久しぶりに聞く、眠たそうなお兄ちゃんの声。なんだか変な夢を見てた気がする…。暗くて冷たい建物と森、泣いていた綺麗な女の人……。

 

「アリスーッ!!」

 

またお兄ちゃんの声。はいはい、起きますよ。

 

「おはよー、お兄ちゃん。」

「アリス、お寝坊さんだね。そんなんじゃホグワーツの授業に遅れちゃうよ?」

 

クスクス笑うお兄ちゃんに、あたしはプクーッと頬を膨らませる。

 

「だってお兄ちゃんが起こしてくれないから、あたしてんでお寝坊さんになっちゃったのよ!お兄ちゃんがいないから!!」

「はいはい、ごめんね。ほら朝ごはん食べようよ。」

 

そう言ってお兄ちゃんはまたクスクス笑う。階下からはすっごくいい、朝ごはんのパンの匂いが漂ってる。

 

「セドー!アリスー!ごはんよ!!」

ママの大声(怒鳴り声)と共に、あたしたちは「はあい」と返事をして、いつも通り食卓を囲んだ。

 

 

 

 

あたしは、アリス・ディゴリー。金色の髪に藍色の瞳を持つ、ディゴリー家の長女にして、長男セドリックの2歳年下の妹。

お兄ちゃんはホグワーツっていう魔法魔術学校に通い、ハッフルパフって寮でクィディッチのシーカーをやってるの!

あたしはこう見えても(あなたたちにはどう見えてるかわかんないけどね)、お兄ちゃんが大好きで、お兄ちゃんが帰ってきてる休暇中はテンションがだだ上がりなんだ。

 

そんな今日は、あたしの誕生日!!ちっちゃい頃から魔法が使えたあたしでも、今日はホグワーツから手紙が来るかドキドキしちゃう。だって、お兄ちゃんと同じ学校に通えるか決まる運命の日だし……。

 

 

そんなことを考えながら朝食の席につくと、パパ、ママ、お兄ちゃん、そして屋敷下僕妖精のミニーが声を揃えてお祝いしてくれた。

 

「「「「アリス(お嬢様)、お誕生日おめでとう(ございます!!)!!!」」」」

 

「ありがとう、パパ、ママ、お兄ちゃん、ミニー!それで、あたしのホグワーツからの手紙は?!」

そうあたしは返す。

 

 

すると、パパが何故か苦笑いで、手に持ったトーストを置いて切り出した。

「アリス。実はね……」

 

 

 

あたしはその後、驚愕の事実に呆然とすることになる。

 

 

 

 

 

パパは続けた。

「アリス。ホグワーツか、ダームストラングか、ボーバトンか。君の進む学校を選びなさい。」

 

 

「「……はあ?!」」

あたしとお兄ちゃんの声が重なる。さすがにさっき起きたお兄ちゃんも、このことは聞いてなかったみたい。ママは聞いてたらしく、あたしたちの反応に笑い転げてるけど。

 

「えっとー、パパ、どういうこと?」

「三校から同時に入学の手紙が来るなんておかしいよね父さん?!」

 

「ところが本当なんだなー。うちの優秀なアリスお嬢様には。」

そう笑顔でパパは告げる。その手には、それぞれの印がおされた三通の手紙が握られていた。

 

 

「嘘でしょ……」

そう言ったあたしには、ほれみろとばかりにその手紙たちが渡された。震える手で封を開けてみたら、入学を歓迎するという文言がどの手紙にも書かれていた。

 

 

「えええ…どうしよう………」

 

 

11歳の誕生日に、あたしは人生最大級の選択を迫られていた。




セドリックが好きです。

お兄ちゃんがほしかった!


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賢者の石
ダイアゴン横丁にて


あたしは小さいときから好奇心旺盛だったとママによく言われる。そんなこともあって、行ったことのない外国の学校に通うことにかなり心をひかれた。しかもそんな外国の、二校があたしを選んでくれたのだ。どうしてかはわからないけど。

 

でも外国の学校に行ってしまったら、家族が遠くなってしまう。お兄ちゃんにはこれまで何度もホグワーツの話をねだってきて、今朝まではなるべく早くホグワーツに行くことをずっと望んできた。ボーバトンもダームストラングにもすっごく憧れるけど、あたしはやっぱりホグワーツがいい。

 

ということで、あたしはホグワーツに入学することに決めた。

 

 

 

あたしの誕生日だからといってパパがお仕事を休んでくれたので、今日はさっそくダイアゴン横丁に買い物に行くんだ。

やっと自分の杖が持てる!!と思ったあたしはテンションが上がりすぎて、家中のあちらこちらに体をぶつけながら出かける支度をした。(ママにちょっと怒られた。)

 

それに今日はあたしの誕生日だから、パパがダイアゴン横丁でプレゼントを買ってくれるって!ママからは水色のワンピース、お兄ちゃんからはかわいい髪飾りをもらったから、パパには何か魔法の力があるものをおねだりしようかな。

 

 

 

「ふうむ…難しい。非常に難しい。」

そう楽しそうにぶつぶつつぶやくのは、オリバンダーさんっていうおじいさん。あたしの杖を買いに来たんだけど、なかなか合うものが見つからなくて、今のでもう20本目だ。そろそろ疲れたなあとか思っていると、オリバンダーさんが突然目の色を変えてあたしに話しかけてきた。

 

「ディゴリーさん、その左手の小指にある指輪は?」

「パパからもらったの。物心つく前から付けてたわ。はずしちゃダメっていわれてるの。」

 

あたしは少し困って笑う。気づかれちゃったか~。

 

「見たところ、ただの指輪ではなさそうにお見受けしますがね。」

「そうよ。あたし元々魔力が強いらしいの。暴走させないように、この指輪で魔力を抑えてるのよ。」

 

あんまり他の人には知られたくなかったけど、気づかれてしまったからにはしょうがない。

そう、あたしはどうも他の子に比べて魔力が強いらしい。赤ん坊のとき、感情の起伏がなくてもあたしの触ったおもちゃはすぐ壊れてしまったんだって。このままでは家が壊れると思ったパパとママは、魔法を抑える力のあるこの指輪をあたしに付けることにした。

 

今では泣いたり怒ったりしたときでも、何かが壊れることはない。それどころか、指輪を付けた状態のあたしの魔力は人より弱い。

 

「なるほど、なるほど。」

とオリバンダーさんは納得したように頷く。また奥へと消えていった老人は、真っ白で綺麗な箱を持ってきた。

 

「その指輪のせいで、あなたの本来の力が出せていないようですな。ではもっと強い魔力を求める杖を。どうぞ。」

 

中から出てきたのは、綺麗な白い杖だった。あたしの本能が告げる。この杖だ。

 

さっと杖を握ると、指先からじんわりと暖かさが伝わってきた。杖を振れば、その先から真っ白な花がいくつも生まれた。これはユリの花かな。

 

「ヒノキにセストラルの尻尾の毛。持ち主に忠誠を誓う。かの有名なアルバス・ダンブルドアと同じ芯じゃ。大切に使いなされ。」

「ありがとう!オリバンダーさん!」

 

 

やっとあたしの杖が決まった!あたしは嬉しくなって、今までの疲れとお金を一緒にオリバンダー店に置いて店を出た。

 

アリスがいなくなった店で、オリバンダーは一人呟く。

「ダンブルドアのその杖は昔、ゲラート・グリンデルバルドの物だったんじゃがの…。」と。

 

 

 

 

 

あたしはその後、教科書を買うために本屋さんへ向かった。教科書を買ったら、その後家族と合流して、パパにプレゼントを買ってもらうつもりだ。

 

一年生の教科書はすぐ見つかった。もう一冊、自分のお小遣いで何か本を買おうかと探していたら、マグルの格好をした女の子が、本をものすごいスピードでめくって読んでいた。

 

栗色のふわふわした巻き髪に、賢そうな目元。マグルの格好をしているけど、こんなスピードで読むってことは魔法族の子なのかしら?

でもその子が棚の前から動かないせいで、あたしの欲しい『魔法で作る美味しいケーキ』が取れないのよね。

 

 

「集中してるとこごめんね、本を取ってもいい?」あたしは声をかける。

その女の子はあたしの存在に気がつかなかった様子でびっくりしたあと、あたしが本を手に取るのを見て訝しげに訊ねてきた。

 

「あなた、魔法族の子なの?」

「そうよ。今年ホグワーツに入るの。あなたも?」

「私もよ!私、マグル出身なの。魔法族のこととか魔法のこととか全然知らないんだけど、これからたくさん勉強するわ。」

「ふふ。じゃあ同じ学年だね!あたし、アリス・ディゴリー。あなたは?」

「ハーマイオニー・グレンジャーよ。ごめんなさい、あなた背が小さいから、年下の子かと思ったわ。」

「うっ…」

 

うん…よく言われる…。

思った以上によく話す出っ歯な子だったけど、興味津々なその様子が可愛くて、あたしたちはすぐ仲良くなった。

 

「良かったら、ホグワーツ特急にも一緒に乗ろうよ!あたしお兄ちゃんがいるんだけど、お兄ちゃんは友達と一緒に乗るだろうし。9と4分の3番線の乗り方はわかる?」

「嬉しいわ!乗り方がわからなくて困ってたの。よかったら当日待ち合わせしない?」

「うん!よろしくねハーマイオニー!」

 

よっしゃ、一人目の友達ゲット!

 

ハーマイオニーは両親と来ていたようで、待ち合わせの約束をした後あたしたちは別れた。ハーマイオニーのパパとママ、美男美女って感じだったな…。ハーマイオニーも将来きっと美人さんになるんだろうな。

 

 

 

あたしの誕生日は、ホグワーツに入学することが決まり、自分の杖が手に入って、ホグワーツの最初の友達もできた。なんて素敵な一日!

 

そして、もう一つ素敵な出来事が。

 

「ミャー」

「よしよし、おいでリル。」

 

この子はリル。パパからの誕生日プレゼントに、あたしはこの白い子猫をねだった。猫は学校に連れていけるし、初めてリルを見たときからこの子だ!ってびびっときたの。あたしと同じ藍色の眼を持つ、小さな小さなリル。

 

 

「今日は人生で一番幸せな日かも」

 

そういってにこにこしながら、あたしは眠りについた。




アリスは天真爛漫好奇心旺盛低身長ガールです。趣味はケーキ作り。ハーマイオニーと仲良くなりました。
お勉強は、がり勉ではないけど好き。でもレイブンクローにはしないつもりです。まだ寮決まってないけど。


ダンブルドアの杖はその昔、ゲラート・グリンデルバルトとの決闘の末手に入れたもの。なのでもとはグリンデルバルト、アリスの祖父の杖でした。その杖と同じ芯を持つ、いわば兄弟杖がアリスのものに。

グリンデルバルトの杖はグレゴロビッチが作ったとかそういうことは言わないでね☆偶然同じセストラルがオリバンダーにも尻尾の毛をあげたとか、そういう感じです。




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僕の妹

今回はセドリック目線です。第一話の続きと思っていただければ。


 

 

僕には妹がいる。名前はアリス。金色の髪をなびかせて、いつもにこにこ笑っている。と思えば、今度は泣いたり、怒ったり、感情表現がめまぐるしくて見ていて飽きない。そんなかわいい妹。

 

 

アリスは実は、僕の本当の妹ではない。僕が3歳のとき、突然家に来た女の子、それがアリスだった。

 

アリスの父親も母親も僕は知らない。父さんと母さんは僕にそれを教えてくれなかった。ある事情があってダンブルドアに預けられたって言っていたから、他の魔法族の孤児なのかな。当の本人のアリスは、自分が僕たち家族と血の繋がりがないということを全く知らない。

 

僕たちの家に突然現れたアリスを、僕は最初怖がった。見た目は普通の赤ん坊と変わらないのに、彼女がいる部屋は窓ガラスが割れ、壁や天井が剥がれ落ち、床がめくれていた。大抵父さんか母さんが魔法で直すんだけど、それが追い付かないくらい彼女はなんでも壊した。

そのうちこの家が壊れてしまうんじゃないかと、僕は本気でそう思っていた。

 

 

アリスが家に来て数日が経った日のことだ。アリスは突然泣き出した。どうして泣いているのか誰にもわからなくて、宥めようと母さんがアリスを抱こうとしたとき。

 

「きゃあっ」

 

母さんが悲鳴をあげた。あろうことかアリスを抱き上げようと触れた母さんの手には、切り裂いたような傷がつき、真っ赤な血が流れていた。

 

慌ててその傷を魔法で治した父さんは、

「やはりあれしかないか…」

と言った後、姿現しでどこかへ行った。アリスの癇癪が収まり、ぐちゃぐちゃになった家の中を母さんが片付けていた頃、帰ってきた父さんの手には指輪のケースが握られていた。

 

 

その指輪を付けてからというもの、アリスの様子は一変した。物を壊さない。誰も傷つけない。それからは僕もようやく、アリスをかわいいと思えるようになった。

 

 

 

「ハーマイオニー、早く行こう!」

 

そう言って友達に笑いかけるアリスは、もう11歳だ。アリスがうちへ来てからもう10年ほどが過ぎようとしているけど、今では血が繋がっていなくても本当の家族だと胸を張って言える。僕の自慢の、かわいい妹だ。

 

僕にひっついて離れなかったアリスは、心配していたけど意外と社交性があって、ダイアゴン横丁ですぐ友達を作ってきた。「だってお兄ちゃんはお兄ちゃんの友達と乗るんでしょう?」ってそう言ってたけど、お兄ちゃんは君を僕の友達に紹介しなきゃいけないんだよな。

 

僕が持っている家族との写真を見た級友たちは、アリスを見るや否や「「「この子に会わせて!!」」」と懇願してきた。曰く「セドがいつも自慢してくるからどんな子かと思ってたけど、本気でかわいい。」らしい。だろ。

 

ということで、僕は級友にアリスを紹介できないお詫びにかぼちゃジュースを奢ることになるだろう。そんなちょっと気が重くなることもあるけど、久しぶりに帰る学び舎、また始まる楽しい日々に、僕はアリスと同じくらいワクワクしていた。




アリスは赤ちゃんの頃、おもちゃどころか家を壊すほどの魔力の持ち主でした。大変なことになりそうだから指輪は取らせたくない。。


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トレバーのネビル??

アリス、優秀だけどアホの子の巻。
列車内での出来事を書こうと思ったら色々付け足してしまい長くなってしまいました。


 

「ハーマイオニー、早く行こう!」

ハーマイオニーと再会したあたしは、赤い列車を目にしてワクワクが最高潮になった。あたしは昔からテンションが上がりやすい(ママにはせわしないとよく怒られ、お兄ちゃんにはおっちょこちょいだと笑われる)性質で、今日もママとパパに苦笑して留められた。

 

「アリス、ハーマイオニーもご両親との挨拶があるでしょう?」

「そうだぞ、お前はパパとママにキスの一つも残さずホグワーツに行くつもりかい?」

 

そう言われてみれば、ハーマイオニーは両親と何やら感動的なお別れをしているようだ。とはいってもこの性格の私が大人しくなるわけではないのだが!

 

「わかってるわ、クリスマスにはちゃあんと帰ってくる!」

「おいおいまてまてまて」

パパとママのほっぺたに軽くキスをした後駆け出そうとするあたしを、パパはまた引き留める。

振り返ったあたしは、パパがいつもより真剣な顔をしているのを見て、ようやくバタバタ駆け出そうとする足を止めた。

 

「アリス、君に3つ、守ってほしい約束があるんだ。」

「なあに?パパ。」

 

「1つめ。その指輪は絶対に外してはいけないよ。ただし、君はその指輪を付けていると他の子よりも魔力が弱い。家で魔法を使っているのを見る限りだと、簡単な魔法は使えるようだね。でももし危ない目に会ったとき、君は命を落としかねない。だから、パパはダンブルドアに頼んで、君の特別講師をお願いした。ダンブルドアはこれから、君が指輪を外しても力を発散させないよう、訓練してくれるんだ。だからダンブルドアの前でなら指輪を外してもいいよ。それ以外は、絶対に外さないでくれ。」

 

「ダンブルドアと訓練?!やった!!守る守る!!」

 

 

「よしよし。二つ目は、毎週パパとママに手紙を書くこと。友達とのことでも授業のことでもなんでもいい、誰にも話せないことでもパパとママには隠さず教えてくれ。いいね?」

 

「彼氏ができたってパパにいってもいいの?」

「うっ…うん…。」

 

 

「…3つ目だ。これが最後のお願い。アリス、君は今晩、寮の組分けをされるだろう。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローなら、どの寮に入ってもいい。ただし、スリザリンだけには入らないでくれ。」

 

「そんなことできるの?」

「できるさ。君が絶対にスリザリンに入りたくないと願っていればね。」

「組分けはどうやってやるの?」

「それは秘密。3つの約束、ちゃんと守れるかい?」

「うん!」

「よし。ほら、ハーマイオニーも挨拶が終わったようだ。君も列車に乗ってコンパートメントを探すといい。楽しんでくるんだよ、アリス!」

 

そう言ってパパはあたしを送り出した。パパにハグをして、お兄ちゃんと話していたママにもハグをして、ついでにお兄ちゃんにもハグをしておいた。お兄ちゃんは「友達が見てたら恥ずかしいよ!」と言って照れていた。

 

 

「じゃあ、クリスマスにね、パパ!ママ!」

 

 

あたしはハーマイオニーの手を取り、ホグワーツ急行に飛び乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど空いているコンパートメントがあったのでそこに二人で座ったあたしたちは、7月に会ってからこれまでのこと、楽しみな授業の話、どの寮に入りたいかについてぺちゃくちゃおしゃべりをした。ハーマイオニーは教科書を丸暗記したらしく、それでもまだ授業についていけるか不安らしい。

 

「だって私、マグル出身でしょう?魔法族の子に比べて知らないこと、まだたくさんあると思うのよ。」

「大丈夫だよ、マグル出身の子にも優秀な子はたくさんいるって聞くし、ホグワーツならすぐ慣れるよ。」

「アリスは随分余裕そうね。教科書は読んだの?」

「うん、一回。」

「まあ。」

そう言ってハーマイオニーは呆れている。彼女にとって"予習をしない"ことは"不良"のすることなのかしら。

 

でも、あたしは一回で大丈夫なのだ。

 

「あたしね、カメラアイなの。」

「え?カメラアイって、あの?」

「うん。だから一回でいいの。」

「すごいわ、羨ましい!」

 

「…でもね、反対に聞いたこととかはすぐ忘れちゃうんだ」

てへ、とあたしは舌を出す。

「おっちょこちょいってよく言われない?」

「うん!なんでわかるの?お兄ちゃんにいつも言われるよ!」

ハーマイオニーはすごい。あたしがいつも言われてることすぐわかっちゃった。ハーマイオニー本人は苦笑してるけど。

 

 

 

すると、コンコンっとドアが叩かれた、外から、丸顔の男の子が泣きそうな顔でこちらを見ている。

「ヒキガエルを見てない?いなくなっちゃったんだ。」

「ここには来ていないわ。」

ハーマイオニーが心配そうに返す。

 

「そっか…どこに行ったのかな、トレバー。すぐいなくなっちゃうんだ。」

「あなた、名前は?私はハーマイオニー・グレンジャー。」

「ネビル。ネビル・ロングボトム。」

「ネビル、私も一緒に探しましょうか?」

男の子とハーマイオニーのやりとりを聞いていた私は、二人が話している間に杖を取りだし、魔力を指先に込めていた。ハーマイオニーがコンパートメントを出ようとしたところでさっと杖を振る。

 

「アクシオ、トレバー!」

 

すると、男の子の頭にべちゃっと音を立ててヒキガエルが飛んできた。

 

「いった…え?トレバー!!」

 

「すごいわアリス、それは魔法?」

「そうだよ、お兄ちゃんの教科書に書いてあったの。」

 

感嘆するハーマイオニー。何度もお礼を言ってコンパートメントを後にする男の子。

 

「あ、リルに探しに行ってもらってもよかったかも。トレバーのカエル。」

「え?」

「え?」

「アリス、トレバーはカエルの名前よ。あの子はネビル。話聞いてなかったの?」

「…えへ。」

 

 

そんなこんなで、ハーマイオニーはアリスのおっちょこちょいな性格に呆れつつ、屈託ないアリスの笑顔を見て、「この子なら仲良くなれるかも」と考えていたのだった。




就活つらすぎて、逃げるようにアホの子の物語を書きました。天真爛漫ガールは心境こそあまり描写しませんが、明るい雰囲気にこっちまで明るくなります。次も頑張ろー


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列車の中で

「そういえばアリス、あなたお兄さまとは一緒にいなくていいの?」

 

窓の外は夕日が射し、あたしとハーマイオニーが制服に着替えた頃、ハーマイオニーがそう切り出した。

 

「うーん、お兄ちゃんは友達と乗るんだよね。でも会いに行くくらいいいかなあ?」

「いいと思うわよ。ついでにお兄さまに、制服姿見せてきてあげなさいよ。」

「お兄ちゃんはパパじゃないから、そんなに感動的ではないと思うんだけど…。」

 

そう言いながらも、アリスはお兄ちゃんに会いに行くことにした。ついでに通路で騒いでる子達に混ぜてもらおうかな…。さっきはタランチュラがどうのって騒いでたな…

 

「私は通路であまりにも子供っぽい振る舞いをしてる子達を注意してくるわ。なんだかさっきから怒鳴り声も聞こえるのよ。」

 

…あっ、無理でした。混ざりたいなんて口がさけても言えないわ。

 

 

 

 

ハーマイオニーと別れて、あたしはリルを抱いてお兄ちゃんを探しに行った。追いかけっこをしたり魔法生物を見せあったり、すっごく混ざりたい気分でいっぱいだ。でもハーマイオニーに叱られちゃうから我慢我慢。

 

「あ、アリス!コンパートメントを出てきちゃったの?」

「お兄ちゃん!」

 

お兄ちゃんはちょうどコンパートメントから顔を出したところだったらしい。コンパートメントの中の人たちと言葉を交わした後、少し困った顔をして手招きをした。

 

 

コンパートメントにはお兄ちゃんの他に男の子が3人座っていた。コンパートメントに入ってきたあたしを見て3人ともぽかんとした顔をしている。あ、挨拶するのを忘れてた!

 

「初めまして、アリス・ディゴリーです。こっちはペットのリル。」

 

…あれ?挨拶をしてもぽかんとしたままだ。何かおかしいことしたかしら?

お兄ちゃんが3人に声をかけると、やっと現実に戻ってきたみたい。今度は慌てて、お菓子のゴミを集めてあたしを座らせてくれた。

 

「アリスちゃん、初めまして。俺はガストン・ミラー。よろしくね。」

「ウィリアム・スプリングだ。ビルって呼んで。アリスちゃん、蛙チョコ食べない?」

「かぼちゃジュースもあるよ!僕はノエル・シールズ。」

 

ガストンに、ビルに、ノエル。3人の顔をじっと見つめて…よし、覚えた。

 

「よろしくね!ありがとう!!甘いもの食べたかったの!!」

あたしはそう言って蛙チョコとかぼちゃジュースをもらった。3人ともにこにこしてくれて、ほっとする。

 

「ちょっと、それ僕のかぼちゃジュース…」

とお兄ちゃんが呟いているけど、気にしない気にしない。

 

 

「アリス、どうして通路にいたの?」

とお兄ちゃんが尋ねてきた。

「お兄ちゃんに会いに来たの。」

「とか言って、通路で騒いでたんじゃないだろうな?」

うっ、さすがお兄ちゃん、鋭い。でも、

「騒いでないよ!」

と胸を張っておく。ハーマイオニーのおかげでお兄ちゃんに怒られずに済んだ。

 

かぼちゃジュースを飲み蛙チョコを頬張り、お兄ちゃんのお友だちに優しくしてもらい、至れり尽くせりの待遇をしてもらった。

 

(途中、ビル・ノエル対お兄ちゃんで、「これでかぼちゃジュースの分はチャラだよね?」「何言ってんだ!アリスちゃんは自分から来たんじゃないか!」「でも会ったからいいじゃないか!」とかの問答が起こってたけど、面倒くさいのでガストンとリルの可愛さについて語り合っていた。)

 

そろそろお友だちもコンパートメントに帰ってくる頃じゃない?とそうお兄ちゃんに言われて、あたしはコンパートメントを出ることにした。お兄ちゃんと優しい先輩達がいるんなら、ハッフルパフもいいなあ。そう思いながら自分のコンパートメントに戻ると、ハーマイオニーがいない。

 

あたしを探しに行ってるのかな?

 

そう思い、あたしは今度はハーマイオニーを探す旅に出た。

 

 

 

ハーマイオニーもすぐ見つかった。というか、でっかい男の子が何やら喧嘩をしているコンパートメントをひょいっと覗いたらハーマイオニーがいた。

 

「何してるの?」

 

そう声をかけると、でっかい男の子2人の間から、金髪をなでつけた、青白い顔の男の子がこちらを振り向いた。

綺麗な子だなあ。そう思っていると、その子が口を開く。青白い顔がピンク色に染まっている。

 

「君、名前は?僕はドラコ・マルフォイ。」

「アリス・ディゴリーよ。」

「ディゴリー?もしかして、ハッフルパフのシーカー、セドリック・ディゴリーの」

「妹よ。それで、何をしてるの?楽しいこと?」

 

そう言ってあたしはコンパートメントに入る。中は随分お菓子が散乱していて、黒髪メガネの男の子と赤毛の男の子がこっちを見ていた。

 

「ウィーズリーがお菓子をたくさん持っていたからね。少し分けていただこうとしたんだ。」

ドラコが少し偉そうにそう言う。

「ああ、それなら、はいっ」

そう言って、あたしは手に持っていた蛙チョコレート(さっきビルにもらった)をドラコの口に突っ込んだ。

「フォイ!?」

「あ、ごめんね、びっくりした?そちらのでっかいお二人さんも、あげるよ!はい、あーん!」

 

今度はでっかい二人に、ノエルにもらったかぼちゃパイをあげる。ドラコみたいに突っ込みはしなかったから、二人は嬉しそうにそれを頬張った。

 

「これで足りた?まだあたし、いっぱいお菓子持ってるよ!実は自分で作ったマフィンもあるの!いる?」

 

ドラコは蛙チョコを突っ込まれたからか、まだ口がきけないらしく、頭をすっごい速度で振ってコンパートメントを後にした。でっかい二人は欲しそうにしていたので、マフィン2つをあげた。

 

「こっちはチョコ、こっちは紅茶のマフィンだよ!」

「すげー、これお前が作ったの?」

「そうだよ!あたし、アリス。あなたたちは?」

「ゴイル。」「クラッブ。」

「そう!そんなに大きい体してるから、きっといっぱい美味しいもの食べてきたんだね!あたしのマフィンの感想も聞かせてね!」

そう言うと、ゴイルとクラッブはマフィンを一口かじり、

「「うまいよ、アリス。」」

と笑ってくれた。まさかここで食べてくれて、しかも美味しいって言ってくれるなんて!

「本当にうまいよ。また作ったら食べさせてくれないか?」

「うん、いいよ!」

「よっしゃ、じゃあまたな、アリス。」

「またね、ゴイル、クラッブ!」

 

 

 

よし。趣味のお菓子作りの評論家をゲットした!あたしはルンルンして、もう一度コンパートメントを見渡す。

 

「あー…ドラコたちはあなたたちのお菓子が欲しかったのかなあ?」

 

「そんなことないよ!君ってすごいや、マルフォイ達を追っ払っちゃった!」

そう赤毛の男の子が興奮してる。あれ…?どこかで会ったことがある気が……

「もしかして、ロン?」

「そうだよ!僕のこと覚えてたんだね、アリス!」

 

ロン・ウィーズリーとは、小さい頃に何度か遊んだことがあった。ウィーズリー家はたしか兄弟が何人もいて、ロンのママは料理が得意だった。

 

「久しぶりね!」

そう言ってロンと笑いあっていると、ハーマイオニーがこほんと咳払いをして言った。

「アリス、お兄さまはもういいの?」

「うん!お兄ちゃんのお友だちに、お菓子たーくさんもらったの!」

「ああ、さっきマルフォイをふがふが言わせてたやつね…」

そう言って、黒髪の男の子が笑ってる。

 

「初めまして。僕はハリー・ポッター。」

「ハリー・ポッター?あの?」

「うん。ほら、これ。」

そう苦笑して、ハリーは額の傷跡を見せてくれた。

 

…あれ?なんか、いや~な、頭がぐるぐるするような、そんな感じがする。

そう思ってじっとハリーを見つめていると、ハーマイオニーが席を立った。

 

「お二人とも、もうホグワーツに着くから着替えた方がよろしいと思いますわ。さ、アリス、行くわよ。」

「はーい。じゃあね、ロン、ハリー!」

「「じゃあね、アリス。」」

 

 

あたしはハーマイオニーから喧嘩のあらましを聞きながら、あのときハリーの傷跡に感じた気持ち悪さはなんだったんだろうと思いつつ、夕日が沈み暗闇が迫ってくる窓の外を見ていた。




アリスは誰とでも仲良くなります。本当の母と父から受け継いだ人を惹き付ける能力に、生まれ育った環境がプラスされ、警戒心を抱かず誰とでも話し、誰をも虜にする子です。

お兄ちゃんのお友だちは、勝手に作ったオリキャラです。名前考えるの大変だった…。

クラッブ、ゴイルとは、彼らがあんまり深く物事を考えていないため、これからも仲良くさせようと思います。映画の賢者の石での二人、まるっこくてかわいいですよね。


さて、次回はついにホグワーツ入学編です。どこの寮にしようかまだ迷い中…。パパから止められているのでスリザリンにはしないつもりですが。

それでは次回もよろしくお願いします!


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そしてホグワーツへ

「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっち!」

 

何やらものすごく大きい男の人がそう叫んでいる。

「いよいよね。」

と呟くハーマイオニーは少し不安げな顔で、あたしもつられて不安になりながら、2人できゅっと手を繋いで、できるだけ男の人に近寄った。

 

「みんな、いるなー?ボートに乗るぞ!ついておいで!」

 

一年生のみが乗るボートは4人乗りだった。ハーマイオニーとあたし、それから双子の女の子で一緒に乗り込む。その子たちはパーバティーとパドマと名乗った。

 

自己紹介を終えたところで、「おおー!」という歓声が前から聞こえた。前を見て、その光景にあたしも思わず「わあっ!」と声をあげた。

 

そこにあったのは、幻想的なお城が暗闇の中に浮かび上がる光景。何百年も前からそこにあるような威厳を見せるそのお城は、あたしのテンションを極限まで上げてしまった。

 

「早く行きたい!早く早く!ボートさん、早くー!!」

そう言いながら、両手を振り回しお尻で何度も跳ねるあたし。必然的に、ボートは大きく揺れる。

パーバティー「ちょ、アリス、沈む!落ちる!」

ハーマイオニー「アリス、あなたの一言じゃボートの速度は変わらないわよ!落ち着いて!」

パドマ「そうだよ!いくらあなたがちっちゃくて軽くてもさすがに危ないわ!」

そう言って、3人はあたしを頭ごと押さえつけた。しぶしぶ従ったあたしは、かわりにこの光景を覚えておこうとじっくりとお城を見ていた。

 

 

 

 

マクなんとか先生という女性に引率を引き渡され、あたしたちは小さい教室に通された。マクなんとか先生の顔が見たくて、でも周りの生徒が背が高くてほとんど見えない。ピョンピョンと飛び跳ねてマクなんとか先生の顔を見ていたので、あたしは肝心の話の内容を聞いていなかった。マクなんとか先生のいなくなった瞬間に、ハーマイオニーに聞く。

「ハーマイオニー、今のマクなんとか先生、なんて言ってたの?」

「あなた聞いてなかったの?呑気ねえ」

ハーマイオニーは呆れて笑っている。

「ホグワーツでは生徒は四つの寮に入ります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。これから組分けの儀式を行います。身だしなみをきちんと整えてね。ちなみに彼女は、マクゴナガル先生。覚えた?」

「うん!四つの寮は知ってたし、マクゴナガル先生でしょ!厳しくて有名だってお兄ちゃんが言ってた!」

 

そんなことを話していると、きゃあっという悲鳴が聞こえてきた。みんなの頭上を、白い半透明の人がプカプカ浮いている。ピーブズとか、ハッフルパフとか言っていた。あれはゴーストかな。そんなことを思って横を見ると、ハーマイオニーは何やらぶつぶつ呟いている。あたしは急に、列車の前でパパが真剣な顔をしていたことを思い出した。

 

「そうだ、スリザリンはダメなんだった!」

危ない危ない、忘れてた。こうしてあたしは、ハーマイオニーの横で、「スリザリンはダメ、スリザリンはダメ…」と呟くのだった。 

 

 

 

 

再び現れたマクゴナガル先生に引率され、あたしたちは大広間へと入った。天井には綺麗な夜空が見えている。

「魔法でああしているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ。」

そうやって、ハーマイオニーが隣の子に話しかけていた。

 

大広間の真ん中で立ち止まったあたしたちの目の前には、小さな椅子と、古ぼけた帽子が置いてあった。なんだなんだと帽子を見ていると、それが突然ぱかっと口(?)を開けて、歌を歌い出した!

 

「わたしは綺麗じゃないけれど」から続くその歌は結構長かったけど、帽子さんは歌が上手だった。みんなと一緒に拍手する。

その後は一人ずつ名前を呼ばれ、組分けをされていった。あたしの名字はDだから、始めの方に呼ばれるはずだ。

 

「ディゴリー・アリス!」

あたしだ。ちょっと小走りで前に出る。すると、先生方がなにやらざわざわし始めた。あたし、何かした?

マクゴナガル先生を見上げても、驚いた顔をして固まっている。あたし変なことしたのかな。もしかして、名前を間違えた?そう思っていると、ハッとしたマクゴナガル先生が震える手で椅子を差し、

「お座りなさい。」と言ってくれた。

 

 

「ふうむ、難しい。」

帽子を被った瞬間、頭の中で声がした!

「性格としては、スリザリンかグリフィンドール、ハッフルパフでもいい。しかし血筋はスリザリンだな。」

「待って、スリザリンはダメなの!」

あたしは帽子にこそこそと囁く。

「いいのかね?君は完全にスリザリンの血筋だ。」

「違うよ、あたしのパパはハッフルパフだし、ママはレイブンクロー。両親ともスリザリンじゃないわ。」

「むう?…なるほど、なるほど。君はどうやら、ボーバトンとダームストラングからも招待が来ていたようだね。君はホグワーツで何がしたい?何のために、ホグワーツを選んだ?」

「あたし…あたしは、ホグワーツでたくさん楽しいことをして、面白いものを学んで、友達をたくさん作りたいの!」

「そうか、それでは」

 

「グリフィンドール!!」




つ…疲れた…。

今手元に原本がないので、どんな感じだったっけ?とか思い出しながら書きました。ちょっとやっつけ作業になってしまってごめんなさい。

アリスはグリフィンドールになりました。ハッフルパフにしてお兄ちゃんの元でいたずら天使となるか、グリフィンドールで荊の道を行くか最後まで迷いましたが、ハッフルパフにするとまた新しくオリキャラを作らなきゃいけないので、グリフィンドールに(笑)。


グリフィンドールとなってしまったからには、アリスには楽しいばかりの生活は待っていません。闇には落ちず生き抜くことができるのか。


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グリフィンドールと眠たいアリス

お気に入りが増えていてびっくりしています!ありがとうございます!
本当に初めてちゃんと小説を書くので、すごく励みになっています。
この先もどうぞよろしくお願い致します(^▽^)


アリスはグリフィンドールに組み分けをされた。拍手と共に長テーブルへ走ると、そこにはいつか会ったことのある赤毛の集団が、満面の笑顔で迎え入れてくれた。

 

「「「アリス、久しぶり!!」」」

「フレッド?ジョージ?それに、パーシーよね?久しぶり!みんなグリフィンドールなの?」

「「そうさ、我らウィーズリーはみんなグリフィンドールだ!」」

「アリス、歓迎するよ。僕たち君にここで会えるのを楽しみにしていたんだ。」

「ふふ、よろしくね、先輩方。」

そういってみんなと握手した。

 

フレッドとジョージの双子、パーシーはみんなウィーズリーの子だ。小さいころからの幼馴染、みたいなものに再会できたあたしはすごくほっとした。スリザリンじゃなくて、グリフィンドールを選んでもらえて良かった。

みんなと一緒に組み分けを見ていると、列車で会った面々が次々と組み分けされていった。ハリーやロン、ボートで会ったパーバティ、そしてハーマイオニーはグリフィンドールだ!不安から解放されたあたしは、ハーマイオニーを横に座らせて、完全に寛いでいた。

あ、ドラコやゴイル、クラッブはスリザリンだ。あの3人はずうっと一緒にいるのかなあ。ゴイルやクラッブとはお菓子をあげれば仲良くなれそうだし、ドラコのあの金髪は触ってみたい…。

 

全ての生徒の組み分けが終わり、校長先生らしきおじいさんが立ち上がった。背が高い。髭が長い。髪も長い。あの銀色の髭と髪も触ってみたいな…。

 

「そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!」

 

こんなヘンテコな掛け声と共に校長先生の挨拶は終わり、けらけら笑っているとハーマイオニーが目の前のテーブルを見て歓声をあげた。見ると、大皿が料理でいっぱいになっている。

 

それからはもう何も考えず、ひたすら好きな料理を取って食べ、ハーマイオニーと話し、フレッド・ジョージの冗談で笑っていた。瞬く間に時間は過ぎ、デザートを食べ終えた頃には、満腹感とはしゃぎ疲れで瞼が重くなっていた。というか半分寝ていて、ハーマイオニーに寄りかかっていた。

 

 

校長先生のお話(聞いてなかった)が終わった後は解散のようで、それぞれの寮に行く。あたしはやっぱり眠くて、ハーマイオニーに手を引いてもらい、目をこすりつつ歩いていた。

 

「アリスは相変わらずだな。こいつ小さいときから、飯食った後すーぐ寝ちゃうんだ。何度おんぶしてベッドに連れて行ったことか…」と、ジョージの声がする。

「そんだけ寝るのに、なんで背が伸びないんだ?」とフレッド。

「うぅるさいよぉぉ…いっつもおんぶしてくれるのジョージだったじゃないぃ…。」

 

「アリスあなた、そんな状態で明日から校内を歩けるの?パーシーに聞いたけど、この時期は校内で迷って授業に遅れる生徒が続出するそうよ。」

「大丈夫…ハーマイオニーについてく…。」

「まあ!」

「見捨てないでぇぇ…。」

 

 

なにせ眠たくて眠たくて、グリフィンドールの談話室の素敵さには少し目が覚めたけど、女子部屋の自分のベッドを見つけるころには、もうあたしはふらっふらだった。同室になったハーマイオニーとパーバティ、それからラベンダーと軽く自己紹介をしてから(それもほぼ寝てたけど)、あたしは倒れこむように自分のベッドに入り、どこかの国の丸メガネ半ズボンで青いロボットにいつも怒られている少年よろしく、ものの数秒で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日は、ハーマイオニーに体をゆすられて目を覚ました。

「んぅ…おはよう、ハーマイオニー。」

「アリス、おはよう。さあ、早く着替えて、遅れないように朝食に行きましょ!」

パーバティもラベンダーもたった今起きたようで、まだ眠たそうだ。その分ぐっすりと眠ったアリスは元気で、目覚めてから10分で、着替えて顔を洗い髪をすき、授業の準備を済ませた。

 

ラベンダーとパーバティは後で二人で行くと言っていたので、ハーマイオニーと二人で談話室を出る。大広間で取る朝食は美味しくて、また眠たくなるからあんまり量は食べられないんだけど、十分に満喫した。ついでに、昨日聞き逃した校長先生の諸注意(入っちゃいけない四階の廊下とか、禁じられた森とか、談話室の合言葉とか)を教えてもらった。

 

大広間から出ると、ちょうどお兄ちゃんとお友達の集団に出くわした。嬉しそうな顔で4人が近寄ってくる。

「アリス!グリフィンドールに組み分けされたんだね。寮はどう?」

「おはよう、お兄ちゃん。談話室がすっごく素敵だったよ!あとウィーズリーの子たちがみんないたの!」

そんな会話をしていると、ふいにお兄ちゃんが耳打ちしてきた。

「アリス、ちゃんと父さんと母さんに手紙を書くんだぞ。昨日駅で約束したんだろう?それから、スリザリンに入らなくて本当に良かった。」

にっこりと笑うお兄ちゃん。その笑顔には暗い影が一つも見当たらなくて、あたしは昨日から気になっていたことをつい尋ねてしまう。

 

「お兄ちゃん、あたしがハッフルパフに入らなかったからがっかりしてるのかと思った。」

「「「アリスちゃん、何なら今からでもハッフルパフに…」」」

「うるさいぞー。アリスと同じ寮で過ごすのももちろん楽しそうだよ。でも君が選ばれた寮なんだ。君はグリフィンドールの方が合ってると僕も思うよ。

それに同じ学校なんだ、いつでも会えるさ。寂しくなったら、一緒にハッフルパフのテーブルでご飯を食べていい。父さんたちには言えないようなことも、僕に相談していいんだよ。」

お兄ちゃんは頭を撫でながら、優しくそう言ってくれた。その言葉で励まされて、あたしの胸には安心感が暖かく広がる。

 

「ほら、お友達が待ってるよ。授業もしっかりね!」

「うん、お兄ちゃん!」

 

 

お兄ちゃんとその集団に手を振って別れたあたしは、待っていてくれたハーマイオニーの元へと駆け寄った。

「待っててくれてありがとう、ハーマイオニー!」

「いいわ。授業開始までまだ時間があるし、昨日あなたにお願いされちゃったしね。」

「えへへ、よろしくお願いします、ハーマイオニー先輩!」

びしっと敬礼を決めたあたしは、ハーマイオニーと笑いあいながら教室へと向かった。




アリスは眠たがりという、また一つ設定を付け足してしまった…。どんどんアリスが妹キャラへとなっていきます。眠くてふらふらになってる子かわいい。

アリスが非常にハーマイオニーに懐いているので、ハーマイオニーもアリスとは仲良く優しく接します。彼女の責任感とかをくすぐる主人公なので、これからもどんどん仲を深めていってほしいと思います。

あとお兄ちゃんが優しすぎる。もうちょいダークな感じは、これから入れていきます…。きっと。おそらく。たぶん。

そろそろ第三者目線を入れていきたいので、次からはしばらく他のメインキャラクター目線で物語を進めていきたいと思います。


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嫉妬の目線

ハーマイオニー目線です。


 

自分が魔女だと知らされ、ホグワーツへの入学を決めた翌日、私は一人の小さな女の子に出会った。

 

 

最初は年下の女の子だと思った。でも、彼女は魔法でお菓子づくりをする本を手に取っていたから、私と同じホグワーツなのかもしれないと気づき、声をかけた。

 

私は昨日魔女だと知ったばかりで、まだ魔法も全然使えないのに、この子は魔法でお菓子を作るまで魔女として成熟しているのだ。魔法族と非魔法族の差を歴然と見せつけられたような気がして、私は少し不安になった。

 

話してみると同級生だとわかった彼女は、屈託なく笑う、目鼻立ちのとても整ったかわいい子だった。藍色の目は少しいたずらっぽく輝き、肌は白く、頬はほんのりピンク色に染まっている。同年代と比べて随分と低い背も、庇護欲をそそられる。そして何より、さらさらでストレートな、綺麗な金髪。性格もとても良いようで、マグル生まれの私にも対等な目線で話してくれるし、話しやすいと感じた。アリスみたいな子になったら何も悩みなんてないんだろうな、なんて少し嫉妬した。

 

 

列車に一緒に乗った私は、また驚くべき点を発見した。アリスはカメラアイという、見たものを忘れない能力の持ち主だった。教科書は一度見ただけで覚えられるし、膨大な量の知識を得られ、忘れないでいられる。その代わり、耳への意識が低くなり人の話を聞いていない様子だったのには少し安心した。それでも、私にとって、アリスは羨ましい人物だということに変わりはなかった。

 

 

ホグワーツに入学した私は、アリスと同じグリフィンドールに、そして隣のベッドになった。アリスは私にとって完璧に近い人物なんだけど、どこか抜けているところがある。その純粋な笑顔で何も考えず私に頼ってきて、私もしょうがないなあと思いながら嬉しく思っていた。

 

 

 

 

待ち望んでいたホグワーツでの授業は最高に楽しい!と、思っていた。いや、思い込んでいた。

 

入学前に予習を済ませ、教科書を暗記した私は、たくさんの先生に誉められた。マグルの学校に通っていたときは、そんな子は私しかいなかった。でも今私の隣では、いつもアリスが一緒に誉められている。その子どもみたいな笑顔で、「やったね、ハーマイオニー!」って言われるたび、私は何も言えず微笑むしかなかった。

 

アリスはその性格の良さや可愛らしさから人に好かれ、友だちもすぐできた。兄の友人たちにも可愛がられ、敵と見なされているスリザリンの、クラッブとゴイルの二人組ともすぐに仲良くなっていた。

 

そしてみんなはアリスに会うたびこう言うのだ

「やあ、アリス!また先生に誉められたんだって?君は本当に何でもできるんだね!」と。

 

 

 

私はマグルの学校に通っていた頃から友達ができなかった。私をいじめる奴等を見返してやりたくて、必死に勉強した。先生に誉められ、私をいじめた生徒たちは「がり勉」と私を罵りながらも、だんだんと私に関わらなくなってきた。私は私の立場を確立できていた。

 

今は違う。私と同じく先生に誉められ、能力を持ち、私よりも格別に友達が多く人に好かれ、幼い頃から魔法に触れてきている彼女がいる。

 

 

私はどこにいたらいいのだろう。私の存在価値はどこにあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

そんな生活がしばらく続いた。いつもアリスと一緒に行動していた。アリスは人に話しかけられても、少し話をしてからすぐに戻ってきて、「ごめんね、待っててくれてありがとう」と申し訳なさそうな顔をして言う。私が他の誰かに話しかけられることは、ほとんどなかった。

 

 

ある日耐えられなくなった私は、アリスを教室に置いて一人図書館に来ていた。自分から一人になるのは久しぶりな気がした。

 

 

 

「ハーマイオニー、やっぱりここだった!」

本から目をあげると、アリスがいた。

 

どうして。

「あたしのこと忘れてたでしょ!ついでに羽ペンも忘れてたよ!はい!」

 

どうして。

「ハーマイオニー?顔色が悪いよ?どうしたの?」

 

どうして。

「ハーマイオニー?」

 

 

 

「うるさいわね。」

「え?あ、ごめんね。ここ図書室だったね。えへへ」

「あなたがいると毎日騒がしいわ。」

「ご、ごめん、あたしうるさかっ…」

「うるさいわよ。もう話しかけないでくれる?私は一人でいたいのよ。」

「…ハーマイオニー?」

「あなたとは一緒にいたくないわ。さよなら。」

 

 

ハーマイオニーは席を立ち、アリスには目もくれず図書室を出ていった。後には、困惑した表情のアリスだけが残されていた。




うーん…。心理描写って難しいですね。

アリスは(現時点では)理想の子です。容姿良し、性格良し、頭良し。背が小さくて、抜けているところがあるけど、そこがまた可愛らしい。完璧すぎない完璧な女の子です。

対してハーマイオニーは、自分に自信の無い人物。これは筆者自身が本を読んで感じていたことです。特にホグワーツで学ぶことになる前には不可思議な能力があり、困惑していただろうと予想されます。また、その性格から友達ができず、容姿にも自信がない。自信がないから必死に勉強するし、何もしないでいる人は見下してしまう。そんな感じがします。


今後二人はどう成長していくのか、楽しみです。あまり読者に予想されない展開にしたいと思いますので(笑)、次回もよろしくお願いします!


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アリスの手紙

今回はアリスから両親へあてた手紙です。

アリスとハーマイオニーの喧嘩は、飛行授業と浮遊魔法事件の間に起こったことにしています。


パパ、ママ

 

 

お元気ですか。

あたしはグリフィンドールに入りました!

組分け帽子に、スリザリンか迷われちゃったけど、グリフィンドールに入れてくれました。帽子が、あたしの血筋にスリザリンがいるって言ってたけど、うちの親戚にスリザリンなんていた?

とにかく、グリフィンドールはとても楽しいです。談話室は暖炉があって暖かくてとっても素敵。ベッドもふかふか。

 

それに、ダイアゴン横丁で会ったハーマイオニーも、小さい頃一緒に遊んだロンたちウィーズリー家も、みんなグリフィンドールなの!ちなみに、あのハリー・ポッターも一緒です。他寮にも仲良くしてくれる友達がたくさんできて、毎日とても楽しいです。

 

授業も今のところ問題なく、あたしとハーマイオニーはいつも誉められます。でも、先生たちは初めてあたしを見たときびっくりしてたよ。そんなにあたし、お兄ちゃんにそっくりかなあ?

 

ホグワーツはごはんもすっごく美味しいです。初めての組分けのあとの食事は食べ過ぎちゃって、その分眠くなっちゃったので、そのあとは食べ過ぎないように量を抑えて食べています。

 

ごはんのときも寝るときも、あたしはいつもハーマイオニーと一緒にいます。あたしたちは一緒に先生に誉められて、一緒にごはんを食べて、一緒に移動します。ハーマイオニーはとっても優しくて頭が良くて大人っぽくて、同い年なのになんだかお姉ちゃんがいるみたいなの!

 

そういえば、昨日飛行訓練があったよ。先生がいないときに、スリザリンのドラコとハリーがネビルの思いだし玉をめぐり争って、ドラコが投げた玉をハリーが箒でダイビングキャッチしたの!それだけでも十分すごいのに、ハリーはその後マクゴナガル先生に連れていかれて、なんと一年生でクィディッチのシーカーになったの!

先生がいないときに飛んではいけなかったのに飛んでいたから、ハーマイオニーはハリーのこと怒ってたけど、あたしは本当にすごいなあと思いました。

 

 

でもさっき、あたしがいるから騒がしいってハーマイオニーに怒られちゃった。ママにもいつも落ち着きがないって怒られてたし、頑張って大人しくしてるね!

 

ではまた来週手紙を書きます。

 

愛を込めて

 

アリス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイモス・ディゴリーは娘からの手紙を読んでふうっとため息をついた。

アリスはスリザリンに入らなかった。好奇心の強いあの子のことだから性格的にはグリフィンドールだと思っていたが、血筋としては完全にスリザリンだ。しかもあの帽子、アリスの血筋についても見破っていたらしい。アリスが変に勘づかないといいが…。

 

 

アリスのことは、アリスが一歳に満たない頃にダンブルドアから申し入れがあった。彼女の母親の想い、そして父親のことをすべて聞いた上で、私とエルサはアリスを引き取ることを承諾した。

 

アリスは母親の想いと、それを託されたダンブルドアに守られている。あの子が魔力を暴発してしまっていたとき、彼女に魔力を抑える指輪を付けさせようと考え、その指輪を用意してくれたのはダンブルドアだ。アリスを闇の道へと歩ませないようにと、私たち夫婦はダンブルドアの助言を受け入れ、愛情をもって育ててきた。

 

 

アリスの手紙からして、ホグワーツでは友だちも多く、マグル出身の親友もいるらしい。学校生活はまずまずといったところだろう。

しかしあのハリー・ポッターがいる。何か問題が起きなければいいが……



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迷子とフラッフィー

アリスに戻ります。


自分の書いたもの見返したら、整合性取れてなくてびっくり!
そのうち書き直すのでお許しください…。

口調とかもそのうち直します…。


 

ハーマイオニーに怒られてから何日かが経った。

 

あれから、ハーマイオニーに何度も話しかけようとしたけど無視されてしまって、だからといっていつもハーマイオニーと一緒にいたあたしは誰か他の人と行動できるわけではなく、今日も一人だ。

 

 

話しかけてくれる友だちはたくさんいるけど、常に一緒にいられるわけじゃないし、同じ部屋のパーバティとラベンダーは、恋バナばっかりしているのでその手の話題が無いあたしは敬遠してしまう。

二人ともあたしとハーマイオニーが一緒にいないのにいち早く気づいて、話を聞いてくれた。でもそこからは、「アリスは悪くないわよ!」「ハーマイオニーは嫉妬してるだけよ!」と言われ、ハーマイオニーの悪口大会が始まりそうになったので慌てて止めた。

 

パパとママには、入学して1ヶ月もしないうちに友達をなくしたなんて言えなくて、お兄ちゃんは最近会えていない。

 

 

そして。

 

 

「ここ、どこー……」

 

そう、あたしは毎日のように校内で迷っていた。

思えば、移動はハーマイオニーに頼りっきりだった。今ではあたしたちの様子を見かねたハリーやロン、パーバティーとラベンダーが声をかけてくれるんだけど、たまたま一人になってしまったときはかなり高い確率で迷う。

カメラアイで記憶を辿ろうとしても無理。階段が動いたり絵が動いたりするこの学校はあたしにとっては迷路なのだ。

 

次の授業は自由時間だけど、その次は変身術だ。ああ、このまま迷っていたら、マクゴナガル先生に怒られる…。

 

 

ハーマイオニーに怒られて無視されて、一人での生活は思ったより辛くて、どうしたらいいのかわからなくて、しかも今日は迷ってしまった。あたしもうだめだ、と思ったそのとき。

 

近くの扉からかすかなうなり声が聞こえた。

 

 

「…何かの動物?」

 

そっと扉に耳を当てる。やっぱりうなり声。しかも、何頭かの。

 

「アロホモラ。」

呪文をかけると、案外簡単に鍵は開いた。そーっと扉を開け、中を覗くとそこには。

 

見たこともない、頭が三つある三頭犬がこちらを見ていた。

 

「三頭犬?!なんでここに!」

あたしの中にあったのは、恐怖心でも困惑でもなく、純粋な好奇心だった。ハーマイオニーに怒られてから、一人での自由時間はたいてい図書館にいた。ハーマイオニーが来てくれないかと期待して。

だからそこで読んでいたのだ。危険な魔法生物についての本。三頭犬は……あのページ。

 

「~~~~♪」

咄嗟に出てきた歌を歌いながら、扉を開け中へと入る。三頭犬は初めは襲いかかろうとして来たが、すぐに眠くなったようで、ゆっくりと頭を下げる。歌いながら三頭の頭を順番に撫でていくと、気持ちよかったようで「ぐるる…」と満足げな声をあげながら眠っていた。

 

三頭をよーく見ると、首輪には『フラッフィー』と書かれていた。フラッフィーか。かわいい名前。

 

「じゃあね、またね、フラッフィー。」

そう呟いて、あたしはその部屋を出た。

 

 

廊下に出た先には、

 

「ミ…ミス・ディゴリー?なぜ、そ、そこに…?」

「クィレル先生!」

クィレル先生が立っていた。

 

「ここは、せ、生徒が入るのは、禁止っされて、いるはずですよ。」

「えー!先生、違うんです!迷ったんですあたし!というかここ4階なんですか!」

「え、ええ…」

やってしまった。

 

「ま、間違えたなら、しょ、しょうがないで、すね。見逃してあげましょう。」

「本当ですか!!」

やった!クィレル先生、やっさしい!!

 

 

その後、クィレル先生にマクゴナガル先生の教室まで連れていってもらった。道すがら、クィレル先生は一生懸命あたしに質問した。減点されないとわかったあたしは、クィレル先生の聞くことなら何でも答えようとこちらも必死だ。

 

「き、君はあの部屋に入ったのですか?」

「はい。うなり声がしたので。」

「中には?」

「三頭犬がいました。フラッフィーって名前がついてるみたい。」

「さ?!なんと、噛まれなかったのですか?」

「あ、はい。音楽を聴かせると眠くなって大人しくなるって、本に書いてあったんです。」

「よく、覚えていましたね。」

「あ、あたし、カメラアイっていう能力持ってるんです。」

「カメラアイ……………。それは、マグルの能力では?」

「え?」

 

うーん、考えたこともなかった。たしかに、カメラアイの説明は、パパが買ってきてくれたマグルの本で読んだのだ。

 

「たしかに、そうかもしれないです。じゃあなんであたしにあるんだろう…?」

「ふむ……。」

クィレル先生はそう呟いて、何やらあたしをじっと見て、考え込んでいる様子だ。あ、この先生、普段おどおどしてるけど真剣な顔してると案外イケメンかもしれない。

 

なんてことを考えていると、教室に着いた。教室の前で、クィレル先生が口を開く。

「ミス・ディゴリー、最後に質問です。マーガレットという名を聞いたことは?」

「ありません。」

「親族にもいませんか?」

「いないと思います。よくある名前ですけど、うちの家系図にはなかったはずです。」

「…そうですか。わかりました。それでは、気を付けて。今後はあの廊下に入らないように。」

「はい!ありがとうございました!」

 

クィレル先生に連れてきてもらったお陰で、マクゴナガル先生の教室には一番に着いた。クィレル先生、いい人だったな。減点されなかったのが嬉しかった。最後の方どもってなかったし、おどおどしていなかったし。最後の質問は意味がわからなかったけど。




アリスの正体一瞬でバレる。

本当の母親とアリスは、もともと結構顔が似ています。でも人々がアリスの母親がマーガレット・グリンデルバルドだと確信を持てないのは、マーガレットは誰にも恐れられる呪いの娘であり、しかもアリスはディゴリー姓だから。

とかいう設定に一応しています!思い付いたままに書いているのであとが辛くなりそう!がんばります!


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二つの決闘

ある日の昼食後、アリスは一人で湖のほとりに座っていた。

ハーマイオニーとの和解はまだできていない。近頃は話しかけようと試むこともなくなった。

 

あたしはどうしたらいいんだろう。

どうしたらハーマイオニーはあたしを許してくれるんだろう。

 

そんなことをつらつらと考えていると、ふと背後から声をかけられた。

 

「お前、一人なのか?」

 

 

振り向くと、ドラコが立っていた。

 

 

「ドラコ。」

「お前が一人なんて珍しいな。ここ、いいか?」

そう言いながら、周りをきょろきょろとしつつドラコが隣に腰を下ろす。

 

「ドラコこそ、ゴイルとクラッブは?」

「まだ昼食を食ってる。あいつら最近、ホグワーツの料理でどんどん太ってるぞ。」

呆れた顔をしているドラコを見て、あたしはクスクスと笑ってしまった。

 

「あ、というかあたし、グリフィンドールなんですが。」

「ああ。まあ、いいだろ。お前は純血だし、周りには僕たちのことを見てる奴なんていないしな。それに、聞きたいことがあるんだ。」

「なあに?」

「マーガレットという名に心当たりは?」

「それ、この前クィレル先生にも聞かれたんだけど…。知らないよ。親族にもいない、そんな名前の人。」

「そうか。」

「変なの。みんなして、マーガレットマーガレットって。知らないっつーの。」

 

ドラコはあたしを見て、複雑そうな顔をしている。そういえば、ドラコとこんなに近くで話すの初めてだな。

 

ここは、常々やりたいと思っていたことをやるチャンス!

 

 

「あっおい、何するんだよ。やめろよ!」

「いいじゃん、減るもんじゃないでしょ!」

「汚い手で触るなよ!」

「へえ、減らしてもいいの?この髪。」

「はあ?!抜くなよ!やめろよ!」

そんなことを言い合いながら、あたしはドラコの金髪をいじらせていただいた。綺麗。あたしは結構濃いめの色の金だけど、ドラコはどちらかというと白に近い金だ。

 

肌も白いなあ。しかもきめ細やかで綺麗。男の子なのに、肌の悩みなんてないんだろうなあ。

そう思いながらドラコの頬っぺたも触らせていただく。ふにふに。ふにふに。あれ?さっきまで白かったのに赤くなってきたぞ?

 

ふと気づくと、あたしはドラコの真正面で、しかもかなり近い距離で、ドラコの頬を触ってしまっていた。思わずあたしも顔が赤くな…りはせず、いつの間にか黙ってしまっていたドラコのほっぺたをむにーっとつねった。

 

「いひゃい。やめろ。」

「かーわーいーいー。」

「かわっ…はあ?!」

「ドラコってさ、普段お高く止まってるしハリーたちと仲悪いしグリフィンドールのこと敵視してるけど、案外普通のかわいい男の子だね。」

「……。」

 

何やらジト目で睨まれた。嫌われると悲しいので頬をつねるのはやめにする。

 

「お前こそ、案外普通の奴だな。」

「え?」

「お前、成績いいし先生たちに好かれてるだろ。見てる限りだと至るところに友人がいるし、純血だ。いつもあのグレンジャーとかいう奴と一緒にいるのに、一人でこんなところにいることもあるんだな。」

「あー…それはまあ、ちょっと喧嘩しちゃって…。」

 

痛いところを突かれたあたしは顔をしかめる。途端にドラコは優位に立ったと判断したようで、ちょっと上から目線で手を差し出しこう言った。

 

「君は純血だしな。グリフィンドールだが、僕が友人になってやってもいいぞ。」

「あ、まだ友達じゃなかったんだ!」

 

そう笑いながら、でも嬉しく思った。たぶんドラコはあたしがハーマイオニーと喧嘩したことを知って、その穴を埋めようと考えてくれたのだろう。ハーマイオニーがいない心の穴はハーマイオニーでしか埋まらないけど、ドラコの気持ちは単純に嬉しかった。

ドラコの手を握ろうとした、その時。

 

 

「「アリスに何してるんだよ、マルフォイ!」」

息せききってあたしたちに割り込んできたのは、ハリーとロンだった。

「アリス、なんでこんな奴と一緒にいるんだ?僕たちと一緒に授業に行こうよ、ほら、立って。」

と、ハリーにせかされる。強引に立たされて、ドラコと距離を取らされたところで、ロンとドラコで何やら口論が始まった。

 

「ふん、英雄ポッターに、それに金魚の糞のウィーズリーか。」

「なんだと、マルフォイ!やるのか!」

「ああ、やってやろうじゃないか。今夜12時、決闘だ!僕の介添人はクラッブがやる。受けるか?」

「当たり前だ!ハリーの介添人は僕だぞ!」

 

んー、さっきまでドラコいい感じだったのにな。いつもの調子になっちゃった。でも深夜の決闘、あたしも見てみたい…

とか思ってると、約束を終えドラコが帰っていく。と、ハリーとロンがすごい剣幕であたしを睨んでこう言った。

 

「「アリスは、来るなよ。」」

 

「はあ?なんで!あたしも行く!」

「君を連れ出すとフレッドとジョージに怒られるんだよ。」

「それに君のお兄さんにも怒られそうだ。」

「いーきーたーいーーー!」

「はいはい、ほら、授業に行くよ。」

 

そう言って、あたしはズルズルと二人に引きずられていった。

結局あたしは二人に説得(お兄ちゃんに言いつけるぞっていう脅しも含む)され、その夜は大人しく眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お父様から既にお聞き及びの通り、ミス・ディゴリーには課外授業を行います。最初の授業は、明日11月1日の夜20時からです。校長室前まで来るように。アルバス・ダンブルドア

追伸 わしは蛙チョコレートが好きじゃ』

 

ダンブルドアから課外授業のお達しが来た今日は、ハロウィーンだ!今日は朝から晩までかぼちゃ漬け。それに、今朝は久しぶりにお兄ちゃんに会えて、夕飯を一緒に食べることになった!久々に明るい気持ちで、あたしは妖精の魔法の授業に臨んでいた。

 

フリットウィック先生の今日の授業は、浮遊呪文だった。ハリーとロンが引き離されたため、余っていたあたしとハーマイオニーが、あたしとハリー、ハーマイオニーとロンで組むこととなった。

 

理論と、杖の振り、そして正しい詠唱。魔力を指先に込めて…

「浮いた!」

軽い羽だったから、魔力の弱いあたしでも、集中すれば成功する。すぐさまフリットウィック先生に褒められ、10点加点された。

 

「すごいや、アリス。僕全然できないよ。」

ハリーは諦め顔だ。

「ありがとう。じゃあちょっとやってみせて!」

「ウィンガーディアムレビオサ。」

羽はウンともスンともしない。

「理論と杖の振りはいいと思うよ。でも呪文の唱え方がちょっと違うかも。ウィンガー・ディアム・レビ・オーサって、ゆっくりしっかり唱えてみて!」

「わかった!」

 

とかあたしたちが言っているうちに、あちらではハーマイオニーとロンが口論をしている様子だった。あ、ハーマイオニーが呪文を成功させた。

 

「ウィンガーディアムレビオーサ!」

「わあ、ハリーすごい!」

「できたよ!アリス!!」

またこちらでは、ハリーが授業終了間際に成功させた。二人でハイタッチをして笑いあった後、ふと、険悪な雰囲気を醸しているロンたちに目を向ける。

 

「ハーマイオニーって、頭がいいのはわかるんだけどどうにも上から目線なんだよね…」とハリーがひそひそ。

「うーん、でもロンも子供っぽいところあるから、誉めて伸ばされたいとか思ってそうだよね…」とあたしもひそひそ。

それから授業終了までの5分間くらい、あたしとハリーはロンとハーマイオニーの関係改善についてひそひそと話し合ったが、見守るしかないという結論に至った。

 

チャイムと同時にあたしは席を立つ。

「じゃあね、ハリー!あたし今日はハッフルパフで夕飯食べるの!」

「お兄さんと食べるの?いいなあ。」

ハリーは心底羨まし顔だ。

お兄ちゃんと一緒にご飯が食べられる。今まであったこと、ハーマイオニーのこと、たくさん聞いてもらおう。そう意気込んでいたあたしは、一番にクラスを飛び出し大広間へと駆け出した。

 

 

 

お兄ちゃんと過ごすハロウィーンの夕飯は、とても楽しかった。ハッフルパフの先輩方に囲まれて、みんなあたしに話しかけてくれた。グリフィンドールのあたしだけど、ハッフルパフではみんな受け入れてくれる。

「あたし、ハッフルパフにすればよかったかなあ…。」とぽつりと漏らした。

 

料理の手が進むなか、さらりとお兄ちゃんから質問がなされた。

「それで、アリス。」

「ふご?」

「いや、そんなに口にいっぱい料理詰め込まなくても、料理はまだまだあるよ…。うん。それでさ、君は最近一人で寂しそうだっていうのを、風の噂で聞いたんだけど。」

「……。誰から?」

「僕はビルから聞いた。」

 

ついに来たか。お兄ちゃんが気づいているとは思わなかった。でもまあ、お兄ちゃんだし、あたしのことなんでもわかってるんだよな…。

 

意を決して、あたしはお兄ちゃんにハーマイオニーとのことについて話し始めた。

 

あの日図書館での出来事を境に、ハーマイオニーがあたしと話してくれなくなったこと。今まではハーマイオニーとずっと一緒にいたから、急に一人になってどうしたらいいかわからなくなったこと。友だちはたくさんできたけど、いつも一緒にいてくれて、ずっと一緒にいたいと思うのはハーマイオニーだけだということ。でも最近は、無理にハーマイオニーに話しかける努力もしなくなったこと。

 

うんうんとお兄ちゃんは話を聞いてくれた。ふと、口を開く。

「ハーマイオニーはマグル出身の子だろう?」

「うん。」

「ホームシックになってるのかもしれないね。ほら、マグル出身の子は今までこんな生活、想像すらもしたことないだろう?魔法に囲まれて、友達と一緒に学校生活を送るなんて、そんなこと。」

「そうかも。でもじゃああたし、どうしたらいいのかな?」

「うーん、それが難しいよね。」

 

うーんと二人で頭を傾げる。ガストンから、悩む仕草がそっくりだと囃された。

一緒にあたしの悩みについて考えてくれるから、お兄ちゃんは大好きだ。

 

「アリスは、ハーマイオニーと一緒にいたいんだろう?それはどうして?」

「うーんとね、ハーマイオニーは頭がいいし、あたしより機転がきくの。道もすぐ覚えちゃう!」

「ああ、うん…。アリス、カメラアイはあるけど鈍いもんね…。方向音痴だし。」

「それにね、ハーマイオニーは優しいし、お姉ちゃんができたみたいに頼りになるよ。あとね本の趣味がすごく合うの!マグルで有名なおとぎ話も聞かせてくれるし、あたしにないもの、たくさん持ってるよ!」

「それ、ハーマイオニーに言ってあげたら?」

 

ああ、そっか。ふいに目の前が明るくなる。

 

あたしと話さなくなってから、ハーマイオニーも一人だった。あたしはハーマイオニーに、どうして怒っているのか、あたしはどうしたらいいのか聞くばかりで、ハーマイオニーの気持ちを考えていなかった。あたしがどうしてハーマイオニーといたいのか、ハーマイオニーに伝えてなかった。

 

ハーマイオニーと話さなきゃ。

 

 

バターン!

「地下にトロールが…。お知らせしなくてはと…。」

突然大広間のドアが開いて、クィレル先生が青い顔でそう言ったあと倒れた。

 

トロール。

 

パニック状態で騒然となった大広間を、ダンブルドアが声を響かせ静まらせた。寮ごとにそれぞれの談話室へ移動することになる。

 

「アリス、グリフィンドールへ。気を付けるんだよ!」

「うん!」

 

お兄ちゃんから送り出され、あたしはグリフィンドールのテーブルへと走った。みんなの顔は青白い。そりゃそうか。知性こそないけどでっかくて、力も強いトロール。そんなのが、ホグワーツにいるなんて。

ハリーとロンを見つけたので二人の元へと近寄る。二人はあたしに気がついていないようで、慌てた状態で話し続けていた。

 

「ハーマイオニーがいない!」

「さっきパーバティーが、地下の女子トイレにいるって言ってたな。ひょっとして、トロールがいること知らないんじゃないか?」

 

さあっとあたしの顔が青くなるのがわかる。

 

ハーマイオニーが、いない?

 

「どうしてハーマイオニーがいないの?」

「「アリス!」」

 

移動しながら、慌ててハリーが弁明交えつつ説明してくれた。妖精の魔法の授業のあと、ロンが悪口をいうのを当の本人であるハーマイオニーが聞いていたこと。(あたしはロンに一発蹴りを食らわせた。)それにショックを受けたハーマイオニーが女子トイレに駆け込んだ。まだ戻ってきていない。

 

「助けなきゃ!」

「えっ待ってよ、アリス!ハリーも!」

「こっちだよ二人とも!」

 

気づけば、あたしたち三人はハーマイオニーを助けるべく、寮の列を抜け出して走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「トロールだ…。」

地下に行くと、すぐさまトロールと出くわした。あちらはあたしたちに気がついていないようで、一室へと入っていく。

「あそこの鍵、閉めなきゃ!」

そう言って駆け出したロンに、あたしとハリーも続く。鍵を閉めほっとしたところで、中から悲鳴が聞こえてきた。

 

「「「ここ!女子トイレ!!」」」

 

鍵を開け、中へと入ると、そこにはハーマイオニーがトロールと相対していた。

 

 

 

 

《ハリー目線》

 

僕たちはドアを開け、ハーマイオニーを見つけた。僕の隣にいたアリスが、「ハーマイオニー!」と叫ぶ。

 

「こっちへ引き付けろ!」

とロンの指示で、僕とロンはそこらに散らばっていたドアの破片をトロールに投げつけた。すぐさまアリスが駆け出し、ハーマイオニーを引っ張る。

 

トロールは初め僕たちに気をとられ、二、三歩と僕たちの方へと歩みだした。しかし、すぐに振り向く。その目線の先には、ハーマイオニーと、アリスが。

 

 

「ハリーとロン、ハーマイオニーを連れて逃げて!」

アリスはそう叫ぶと、ハーマイオニーを隠すようにトロールに立ち向かった。

 

左手に手をやり、いつも付けていた指輪を、外す。

 

カラーン。指輪を床に落とした音。そして、一瞬の静寂の後、

 

ドカーン!!

 

部屋の中の、ドアやガラス、鏡などが一瞬にして破壊された。何が何だかわからない。ハーマイオニーはというと爆発音の中で身をすくめているが、無傷だ。

 

そしてアリスはというと、床にへたりこんでしまっていた。

 

 

「レビコーパス。」

アリスがハーマイオニーに杖を向け、何やら魔法を使った。爆発で目を白黒させているトロールを尻目に、ハーマイオニーが僕たちの方へと飛んできた。案外勢いがあって、三人同時に廊下へと吹っ飛ばされる。

 

 

その後、目を疑うようなことが起こった。

 

 

床にへたりこんだまま、顔をあげたアリス。その瞳はいつもの輝く藍色ではなく、光を失った紅い色をしていた。

 

頬は上気し、その顔はあろうことかトロールを見て微笑んでいる。しかもいつもの優しい微笑みではなく、今まで見たことのない、邪悪さを感じさせる微笑みだった。

 

 

「さあ、遊んであげるよ。」

 

そう高らかに宣言すると、アリスの杖からはいくつもの花と、小鳥が飛び出した。美しい魔法だった。いまだ壊れ続けている部屋の全ての破片が、いつの間にやらアリスの元へと集まっている。

そして。

 

杖をトロールに向けて、アリスが

「オパグノ。」

と発声した瞬間、全ての花と小鳥と破片が、トロールへとぶち当たった。

 

地を揺るがすようなトロールの怒声。

そして、トロールは血塗れで床へ倒れこんだ。

 

 

 

トロールを倒しても、アリスの変化は止まらなかった。顔に微笑みを張り付けたまま、いくつもの花を生み出す。生み出された花のうち、トロールに触れたものは小規模の爆発をしたあと消えていった。花は部屋の外へ、僕たちの方にも飛んでくる。ロンが杖先で触れるとやっぱり爆発をしたので、僕たちはさらに離れたところへと避難した。

 

「コントロールができていないんだわ…」

とハーマイオニーが呟く。

 

しばらくして、呆然としている僕たちの方に、先生方が駆けつけた。ダンブルドア校長もいる。マクゴナガル先生が驚きの声をあげた。

 

「アルバス…これは…」

「ふむ。すべてミス・ディゴリーの仕業かね?」

僕たちは無言で頷く。

 

「まずは杖を奪う必要がありそうじゃのう。」

そうダンブルドアが言うと、何やら足を引きずったスネイプが頷き、魔法をかけてアリスから杖を奪った。

 

でも、アリスは動じない。

 

花を生み出せなくなると、アリスは両手を広げ、床面を覆い尽くしていた全ての花を空中に集めた。バンバンと花がぶつかってなんども爆発を繰り返し、花びらが床へと散らばる。

 

両手をさらに広げ、次は部屋中のあらゆるものを破壊し始めた。トイレの便器。手洗い場。壁や床はめくれ上がり、天井はぼろぼろと剥がれ落ちた。

 

また、花びらや破片が宙に浮き、今度は部屋の中で台風が起こった。

 

 

ふいに、ダンブルドア先生が部屋に足を踏み入れ、杖をアリスに向けた。その瞳は悲しみの色をたたえていた。

 

 

 

ドサリ。

 

ダンブルドア先生の魔法で、ようやくアリスは意識を失った。

 

 

凄まじい光景だった。

部屋のすべてが破壊され、その破片と花びらは血まみれのトロールの上や周りに散らばっている。その奥で一人倒れているのは、傷ひとつ付いていない、美しく小さなアリス。

 

誰も、何も言えなかった。




やっちまった。指輪外しちまったぜ!

トイレであまり大規模なチートは見せられませんでしたが、アリスは杖を失っても魔力を暴発させるということがわかりました。

多少シリアス方面に持っていくかと、思ったでしょ?次から明るくしますよ!たぶん!


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雨のち晴れ

 

「う……ん」

目を開けると、そこには見たことのない天井があった。家でも、寮のベッドの上でもない。

ここはどこだろう?

そう思ってむくりと体を起こすと、柔らかい雰囲気の女性がパタパタと近づいてきた。

 

「ああ、起きましたかミス・ディゴリー。」

「ここは?」

「保健室です。私は校医のマダム・ポンフリー。あなたは意識を失ってここへ運ばれてきたのですよ。今は11月1日の午後3時です。」

 

ああ…思い出してきた。

ハリーとロンと、ハーマイオニーを助けにいった。地下のトイレにトロールがいて、ハーマイオニーを助けなきゃと思って、ハリーとロンがトロールに木片を投げつけている隙にハーマイオニーの元へ駆け寄った。でもトロールがこちらを向いて、あたしの側にはハーマイオニーがいて、あたしは…指輪を…はずして…??

 

指輪を外した、そこまでは思い出せたんだけど、それからの記憶がない。

 

ふと左手を見ると、小指にきちんと指輪がはめられていた。うーん、外したはずなんだけど、そのあとどうしたんだっけ…?

 

「マダム・ポンフリー。あたしはどうして意識を失ったんですか?」

「校長先生に失神魔法をかけられたからよ。まあその様子だと大丈夫そうですね。校長先生がお呼びですから、そのまま校長室にお行きなさい。杖はそこ、お水を飲んで、はい。行ってらっしゃい。もう無理はしないように。」

 

マダム・ポンフリーは多くを教えてはくれなかったけど、あたしは素直に言うことに従った。校長室への行き方も教えてもらったので、案外簡単にたどり着くことができた。

 

 

目の前には、大きなガーゴイル。

そう言えば、手紙になんか書いてあったな…。

「蛙チョコレート?」

あたしが小声でそういうと、ガーゴイルは道を開けてくれた。階段を登りドアをノックすると、中からどうぞ、という声がした。

 

ドアを開けると、なぜかマクゴナガル先生とスネイプ先生もいた。奥にいたダンブルドア先生が、にこやかにあたしに声をかける。

 

「おお、起きたかの、アリス・ディゴリー。気分はどうかね?」

「大丈夫です、先生。それで、あの…あたし…」

 

何て言えばいいんだろう。あたしは何をしましたか?指輪を外したあたしはどうなりましたか?

次に続く言葉を考えていると、今度はスネイプ先生が口を開いた。

 

「ミス・ディゴリー。指輪を外した後の記憶はないのかね?」

「あ、はい。指輪を外したことは覚えてるんですが…。あ、あの、すみません…指輪を外してしまって…。」

あたしはスネイプ先生がちょっと怖いので、どうしても言葉が尻すぼみになってしまう。

続いてマクゴナガル先生が、ダンブルドア先生に向かい口を開いた。

「あれだけの魔力を見せたとはいえ、アルバス、彼女はまだ11歳です。コントロールすることができないのは当然ではないですか?何より、指輪をつけている彼女からは大きな魔力は感じません。」

 

「ふむ。アリス、指輪をつけている状態では魔法は使えるのかね?」

「あ、はい。ちょっと時間がかかりますけど、簡単な魔法なら。」

「なら普段の学校生活では問題ないじゃろう。むしろ授業では優秀なようじゃしの。」

そう言ってダンブルドア先生はあたしにウィンクすると、他の二人の先生を退室させた。手招きされテーブルの前のソファに腰かけると、ダンブルドア先生が杖を振り、テーブルに紅茶のポットとサンドウィッチ、カボチャジュースが現れた。

 

「君の身に起こったことを話したいのじゃが、お腹がすいているのではないかね?さあさあ、食べながらこの老人の話を聞いてくだされ。」

にこやかにサンドウィッチを勧められ、あたしは内心ほっとしながらそれらを手にした。

 

あたしが食べ始めるのを見てから、先生が口を開く。

 

「さて…アリス。君は昨夜、指輪を外した後、魔力を暴発させ、トロールを倒した。」

「んぐっ?!」

ごほごほとサンドウィッチを喉につまらせる。トロールを倒した?そこまであたしの魔力、強かったの?

 

「せ、先生、ハーマイオニーやハリーとロンは?!」

「ああ、無事じゃよ。トロールの他に傷ついた者は一人もおらん。」

「よかったあ…。」

 

「ミス・グレンジャーたちの証言によると、君は最初、花と鳥を杖から出し、それらを使ってトロールを襲ったようじゃの。それ以後、物に触れれば爆発を起こす花を出現させ、さらにはスネイプ先生に杖を奪われたあとも魔法を使っていたようじゃの。これらに心当たりは?特に、君のカメラアイという能力には、何か記憶は残っていないかの?」

 

「うーん…すみません、覚えていないみたいです。」

 

オーキデウス(花よ)、エイビス(鳥よ)、それにオパグノ(襲え)は、恐らくお兄ちゃんの教科書や図書館で読んだ本に書いてあったのだろう。それらは今でも思い出せるけど、トロールを襲ったというあたしの記憶は、全く残っていなかった。

 

「ふむ…やはりか。」

ダンブルドア先生が何やら考えている。

 

「どうやら、君のカメラアイという能力は、指輪を付けている弊害として生まれたようじゃの。恐らく、指輪をつけ押さえ付けられた君の魔力が、そのようなマグルの能力として出現したんじゃろう。」

「先生、あたしこの能力、嫌なんです。」

ポツリとあたしは本心を漏らした。

 

覚えていたくないことも覚えていた。安らかに眠るおばあちゃんの遺体も、恐ろしかった絵本の絵も、怪我をしてるお兄ちゃんも、ママの泣く顔も、パパの怒る顔も。便利ではあるし、魔力の少ないあたしを助けてくれるけど、でもあんまり好きじゃなかった。

 

涙が出てきそうになるのをこらえて、サンドウィッチにかぶりつく。

 

 

「指輪を外した時、君が魔力を自分で抑えることができれば、指輪を外していても暴発させることはないじゃろう。」

「本当ですか?指輪を外して、カメラアイをなくせますか?」

「ああ。訓練すればの。」

 

ダンブルドア先生はあたしに微笑みかける。

 

途端にあたしは明るさを取り戻した。

そうだ、訓練すればいいのだ。頑張って指輪を外せるよう努力して、そしたら、覚えていたくないことも忘れられる!

 

もぐもぐもぐっと、残った食べ物を片付けて、あたしは先生に向き直った。

 

「先生、あたし、訓練したいです!」

「ほほ、ではさっそく、課外授業を始めようかの。」

 

 

 

 

 

あたしは校長室の隣にある空き教室で、まずは杖無しで魔法を暴発させない訓練をした。

 

といっても、指輪を外すとやっぱり何も覚えていなくて、ダンブルドア先生にまた失神魔法を食らってしまったらしい。

 

「まあ、何度でもトライしてみることじゃの。」

そう言って、ダンブルドア先生は笑顔でチョコレートを差し出した。素直に受け取って口に含む。

 

「もぐもぐ…先生、魔法族の子は、みんな小さい頃は魔力を暴発させることがあるって聞いたんですけど、どうしてみんなは抑えられるんですか?」

「ふむ。君がそうできない理由には、その魔力が強すぎるということがあるようじゃの。通常は魔力を暴発させるといっても、怒ったときや泣いたときなど、感情が高ぶったときになるもんじゃ。君がコントロールすることのできないほど、君の魔力は強いということじゃ。まあ心配することはない。君はそれだけ、偉大になれるということじゃよ。」

 

冗談めかしてダンブルドア先生がそう言うので、あたしはちょっと笑ってしまった。

 

「さてさて、もう夕飯の時間じゃて、今日はここまでにしようかの。次回は来週の木曜日、夜8時にここの教室じゃ。」

「はい!ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大広間に向かう途中で、ハリーとロン、ハーマイオニーと会った。三人は何やら仲直りした様子で親しげだ。ハーマイオニーはあたしを見るなり、なんとダッシュで飛び付いてきた。

 

「ぐふっ」

「アリス!もう大丈夫なの?」

「ハーマイオニー、いまちょっとダメージが…」

 

そう言って笑いあったあと、ハーマイオニーは何か言いたそうにした。あ、あたしも言わなきゃ!

咄嗟に思い出した言葉を口にする。

 

「ハーマイオニー、ホームシックなの?」

「は?」

怪訝そうな顔をされてしまった。

「あ、違う。うーんと、ハーマイオニーが一緒にいてくれると嬉しいよ、あたし。」

「………っ私もよ!アリス、うるさいなんて言って、無視して、ごめんなさい!」

 

そう言ってハーマイオニーは抱きついてきた。

 

ああ、よかった。ハーマイオニーとまた一緒にいられるんだ。

 

 

 

安堵したあたしはハーマイオニーと手を繋いで、にこにこしながらハリーとロンの元へと駆け寄った。二人には心配されたけどあたしはすっかり元気になって、今までのことを報告しあいながら、四人で一緒に夕飯を食べた。

 

 

久しぶりにテンションが上がりすぎたあたしはたくさん喋って、たくさん食べた。

そりゃもう、

「アリスの体のどこにその量が入るのか、僕わかんないよ。」

「ああ、アリスこれでも小さいときからよく食べるぞー。身長には反映されないけど。」

「なのにどうして太らないのか不思議だわ。というかアリス、さっきもサンドウィッチ食べたんじゃなかった?」

と口々に言いたい放題言われるくらい。

 

 

久々に満腹になったあたしは眠くなり、偶然通りかかったパーシーにお説教を食らいつつ運んでもらった。寮では何故かジョージが怒っていた(「アリスを運ぶのは俺の仕事なんだぞ!」らしい)。

 

指輪を外して魔力を暴発させた。強い魔力をコントロールすることはまだできない。でもそれを気にしないくらい、あたしは幸せな気持ちだった。




なんとか明るい方向へ持ってきた!はず!
アリスとハーマイオニー、仲直りできました。よかったよかった。

今後しばらくは明るくいきます。


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何気ない日々

お気に入りの数がものすごく増えててびっくりしています。びっくりしすぎて変な声出ました。いつの間にこんなに…。ありがとうございます!

今回、特筆すべきことは何もありません。クリスマスまでの日々を、つらつらと綴ってみました。


ハーマイオニーと和解して、あたしの毎日はすごく充実したものとなった。

普段はハーマイオニーやロン、ハリーと一緒に授業を受ける。今まであんまり居られなかった寮の談話室も、4人で過ごすことでようやく落ち着いて使うことができるようになってきた。

さらに3人のお陰で、やっと校内で歩き回ることができるようになってきた。動くことのない絵の額縁や、銅像、壁の模様など、記憶のポイントとなるところを3人が教えてくれたからだ。

 

 

また、ハーマイオニーと仲直りしてからというものの、あたしは積極的に他寮の友達にもハーマイオニーを紹介するようにした。特に、魔法族の生まれであり、マグルの生活に少しも触れたことがないような子。

というのも、

 

ハーマイオニー「…そして、シンデレラはおうちへ逃げ帰り、12時までに彼女にかけられていた魔法はとけてしまったの。王子様は彼女のことが忘れられず、躍起になってガラスの靴に合う娘を探せとのお触れを出しました。…はい。今日はここまで!また明日お話ししてあげるわ!」

ハンナ・アボット「ええー!早く続きが知りたいわ!」

スーザン・ボーンズ「本当ね!マグルの物語に出てくる魔法使いって、どうしてそんなにいじわるなのかしら!12時に必ずとける魔法だなんて!」

エロイーズ・ミジョン「そうそう!でも楽しみだわ、王子さまはエラを見つけられるのかしら?」

 

そう。あたしはハーマイオニーに教えてもらったマグルのおとぎ話を、同じくほかの友達にもお話してもらうことにしたのだ!

この計画はうまくいった。この年代の女の子たちはみんなこの手の物語が大好きだし、マグルに出てくる魔法使いはあたしたち魔法族にとって新鮮で、とても面白いのだ。それに、魔法族にはない「お姫様」や、「王子様」といった登場人物。初めは、秀才と名高いハーマイオニーのことを敬遠していた友人たちも、この頃はハーマイオニーを見つけるや否や物語の続きをねだるほどに親しくなってきている。

 

ハーマイオニーにとって、あたし以外の友達も作るということは重要だと思った。ハーマイオニーが例えあたしと離れていても、他の友達がいるという安心感は必要だし、ホームシックにはこういう薬が一番効くと思うからだ。こうしてあたしたちは、スリザリン以外の三寮の、同学年の女の子たちみんなと友達になっていった。

 

あとはスリザリンの女の子たちと、どれほど仲良くなれるかだなあ…。あの子たち、あたしを見たらすぐに知らんぷりをしたり、時には睨んできたりするんだもの。為すすべなし。

 

そう考えていると、ハッフルパフの子たちと話を終えたハーマイオニーが、あたしの元へと戻ってきた。

「ちょうどいいところで終わらせたから、次はいよいよクライマックスよ!…お伽噺を話すのって、結構楽しいのね。」

「ハーマイオニー、お話がすっごく上手だもの!聞き惚れるわ。」

「…ありがとう、アリス。

私、今までマグル出身であることに嫌悪感すら抱いていたわ。でもアリスがたくさんのお友達に私のこと紹介してくれたから、私、マグル出身であることに誇りを感じられるようになったのよ。本当に、アリスのおかげだわ。」

 

こうやってハーマイオニーは最近、たびたびしんみりとあたしのことを誉めてくれる。あたしはそういうの、ちょっとむずがゆいので、

「はーい♪ごはーん♪」

といって誤魔化すのであった。

 

…笑ってあたしの頭を撫でてくるおバカたち(ハリーとロン)は気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

今日は、ハリーのクィディッチ初試合だ!相手はスリザリン。ハリーは朝から青い顔で、ロンやハーマイオニーに元気づけられていた。それでも覇気がないので、あたしはムカついて、特製のソーセージパイをハリーの口に突っ込んでおく。

 

「ふぁひふふんふぁふぉ?!(何するんだよ?!)」

 

「覇気のない顔してるからよ、ハリー!あなたね、その年でシーカーに選ばれたことにあぐらかいてるんじゃないでしょうね?あなたが今日試合でミスなんかしたら、あたしがすぐそのシーカーの座奪って、次の試合で活躍してやるんだからね!あたしにシーカー奪われたくなかったら、その青白い顔やめなさいよ!機嫌の悪いドラコみたいな顔してるわよあなた!」

「アリス、あなた、さすがにマルフォイに失礼だと思うわ…。」

 

ハーマイオニーに釘を刺されたものの、あたしの苦言は効いたようだった。

ハリーは、

「いやだよ、アリスにシーカーを奪われるなんて。君、試合のたびに怪我しそうだもの。」

と笑って、なんとか朝食を詰め込んでくれた。失礼な。

 

 

 

 

結果的に、グリフィンドールの圧勝で、ハリーのデビュー戦は幕を閉じた。途中、ハリーの箒が暴れだすという非常事態が起きたが、ハーマイオニーの働きでハリーは持ち直すことができたのだった。

 

ということで、今は試合後。ハグリットのおうちにお邪魔している。

 

三人はハグリットに何やら申し立て?をしているけど、難しそうな話だったのであたしはファングとたわむれていた。

ファングはかわいい。よだれがでろんでろんだし、そのよだれはちょっと臭いけど、あたしたちが来たとわかるとすぐ飛びついてくる。ハグリットが言うには臆病者らしいから、森の番人の番犬としてはどうかと思うけど。今度会ったら歯磨きをしてやろうと目論んでいる。

 

そうこうしているうちに、ハリーたちの話は終わったらしい。城に向かう途中で、考え込んでいるハーマイオニーに話しかけられた。

「アリス、あなた、さっきの話聞いてた?」

「ううん、全然!」

満面の笑みで答えるあたしを見て、何やらおバカたちがずっこけている。

ロン「アリス、聞いてなかったの?スネイプがハリーを狙ってるって話!」

「スネイプ先生?あたしはその隣にいた、クィレル先生が怪しいと思ってたけど?」

ハリー「クィレル先生じゃない、絶対、絶対スネイプだ。だってあいつ、僕のこと敵視してるもの。じゃあアリス、ニコラス・フラメルについて何か知らないかい?」

「ニコラス・フラメル…?ああ、錬金術の人?えーと、665歳。フランス人。ダンブルドアと一緒に賢者の石の開発をしたわ。ダンブルドアの蛙チョコレートの背面に載ってるわよ。あと…そうね、『近代の錬金術 第3巻』だわ。ハーマイオニーなら知っているんじゃない?」

「「「それだ!!」」」

 

 

ということで、それからの日々はハーマイオニーの指示で、あたしたちは図書館にこもりニコラス・フラメルや賢者の石についての資料をさらに漁ることとなるのだった。ハリーとロンは文句たらたらだったけど、あたしは普段読まない本が読めて楽しかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、そろそろクリスマスだなあ。そう気がつくのは、校内の飾りつけがクリスマス仕様になってきてからだった。

 

ハリーとロンはクリスマスも学校に残るらしい。二人でニコラス・フラメルの本を探すんだって。なんとか禁書の棚に忍び込んでみたいんだよねって、ハリーがこっそりとあたしに教えてくれた。楽しそうですねお供したいです。

 

 

あたしは毎週の授業、そして校長との訓練に精を出していた。訓練はなかなか上手くいかない。指輪を外したらやっぱり魔力が暴発するし、もう一度指輪を付けたくないという感情に駆られるのだ。校長先生いわく、

「本来の魔力が出せることを、心の奥底で望んでいるのかもしれんのお…。まあ、しばらくはこの訓練を続けて、魔力を発散させてみようかの。蛙チョコレートはいかがかね?」

だそうだ。

 

 

 

 

そんなあたしの最近の楽しみは、みんなのクリスマスプレゼントを考えること、そしてリルにクリスマス仕様の首飾りを付けることだった。クリスマス当日はサンタの帽子も被ってもらおうと思っている。真っ白なリルにサンタの格好させたら、ぜーったいかわいい!

リルは学校に来てからというものの、校内を徘徊しているか、あたしのベッドで寝ているかでなかなか一緒に遊べない。まあ、本人(本猫?)は学校生活を楽しんでいるらしいからいいんだけどね。

 

でもリル、小さいままなんだ。食べさせてはいるはずなんだけど。それを相談すると、ハーマイオニーからは

「元々小さい種なのかもしれないわよ?それか、魔力を秘めているから小さいとか。」

と教えてもらった。なるほど。

 

(それを聞いていたフレッドとジョージに「「そうそう、アリスみたいにな!」」と言われたので、生地を焦がしてしまった失敗作のミルクレープを、魔法で飛ばして口に突っ込んでおいた。

フレッド「来ると思ってたぜ!」ジョージ「でもちょっと苦いな!」)

 

 

 

月日は流れ、あたしとハーマイオニーは9と4/3番線行きの汽車に乗り、家族のもとへと帰っていく。またね、と挨拶をした後、あたしは駅で待っていたパパとママに飛び付いた。

 

「ただいま!」



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気になる存在

すみません就活で忙しくて…久々に投稿です。
酔ってる。(またかよ)


 

「アリス・ディゴリーとは、彼女がどの寮になっても仲を深めておくように。彼女は大いなる力を秘めている可能性がある」

 

これが、僕が父上から頂いた最初の手紙だった。

 

 

 

 

 

 

クリスマス休暇になって、僕はやっと家に帰ることができた。たった数ヵ月離れていただけなのに、とても懐かしく感じられる我が家。僕はゆったりと過ごしていた。

 

クリスマス当日は、毎年恒例のマルフォイ家主催クリスマスパーティーが開かれるということで、例年通り、僕たち家族はクリスマス・イブに食卓を囲み、豪勢な食事を楽しんでいた。

 

 

父上と母上に話すことはたくさんあった。手紙に書いたことでも、書いていないことでも。クラッブとゴイルのこと、スリザリン寮の寮生とのこと、学校生活のこと、授業のこと、それから、グリフィンドールのむかつく連中のこと。

 

二人とも、僕の話に耳を傾け、大いに笑ってくれた。クリスマスディナーはおおむね楽しく進む。(授業のことではもっと勉強しろと叱られたが。)

 

しかし、デザートが出てくる頃、ふいに父上が切り出した言葉に、僕の背筋はびくっと伸びた。

 

 

 

「それで、ドラコ。アリス・ディゴリーの様子は?」

 

「ち…父上、お言葉ですが、彼女に特別な能力はないように思えます。物覚えが少々良いらしく授業では点数を稼いではいますが、実践では魔法を行使するのに数秒かかる姿が見てとれます。」

父上の真剣な、それでいて冷酷さを感じさせる表情に、僕は少し恐れを抱きながらそう答えた。

 

「マーガレットという名については?それについても聞くように手紙に書いたはずだが。」

 

「ええ、聞きました。聞いたことがないと、親族にもいないと言っていました。僕が聞く前にも聞かれたことがあるそうです。」

 

「ほう?」

父上の目が細くなる。

 

 

「ミス・ディゴリーはどのような人物だね?」

 

「一言で言えば、いつも笑っているやつです。汚れた血の、グレンジャーとかいうやつと仲良くしているようですが、やつと喧嘩したときも馬鹿っぽく笑って……」

 

「馬鹿?!そんなことを口にするな!!!!」

 

 

滅多に聞いたことのない、父上の怒鳴り声。

しん、と食堂が静まり返る。

 

 

 

 

 

母上が慌てて飲み物を父上に飲ませ、父上の赤ら顔が元の白さに戻るまでの数分間、僕は一言も発することができなかった。

 

 

やがて、ため息をついて、父上が口を開いた。

 

「いいか、ドラコ。よく聞きなさい。

 

アリス・ディゴリーは、昔、闇の帝王がご執心されていた女性とよく似た顔立ちをしている。その女性は一時期、闇の帝王に囲われ、共に日々を過ごしていた。聞けば、性格も能力も帝王や女性に似ていないようだが…。とにかく、彼女は限りなく高貴な血を引いている可能性があるのだ。馬鹿などと貶すべきではない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、どうやって自分の部屋に戻って、どうやって寝たのかよくわからない。

気がつけば朝で、昨日の父上の言葉を反芻する自分がいる。

 

 

アリスは、ディゴリー家の娘ではないのか?

それだけではなく、闇の帝王と、恐らくマーガレットという女性との間にできた娘だと、そう父上たちは解釈しているのか?

あの屈託なく笑う笑顔の裏に、孤児だという真実が隠されているのか?

 

そのことを、あの子は、アリスは、知っているのか?

 

 

 

頭が痛かった。

 

父上には言っていないが、アリスが特別な人物なのではないかという思いは、やんわりと抱いてはいた。

 

誰をも虜にし、いわば懐柔する能力。

少々どころではなく、他者を圧倒するほどの記憶力。

そして、兄とは全く似ていない、藍色の瞳と真っ白な肌。

 

 

 

 

…頭が、痛い。

 

 

自分の父親が、闇の帝王が倒れた際どのように対処していたかなんて、とうの昔に知っていた。でも、父上がそうしたのは、僕たち家族を守るためだ。

 

だから、今度は僕が父上と母上を守るんだって、

そう心に決めていた。

 

はずだった。

 

 

 

 

 

アリスは、出会った中でも一番魅力的な女の子なんだ。父上に言われたから見ていたというのもあるが、あの明るい笑顔に、優しい瞳の輝きに、いつのまにか目が吸い寄せられていた。

それが、自分の手の届かないほど、闇の血を引く身分かもしれないだなんて。

 

 

ただ、あの笑顔をできる限り守ってあげたいと思っていた。アリスには、いつもあの馬鹿みたいな笑顔で、笑っていてほしいと、心のどこかで願っていた。

 

 

でも。

 

 

僕が、今、アリスは特別な血を引くかもしれないと、その可能性を提示することは、

父上や母上を守ることに繋がるかもしれない。

 

 

闇の帝王はいつの日か復活するだろうと父上がおっしゃっていた。

そのときにお咎めを受ける人間の中には必ず父上がいる。だって、逃げたから。

アズカバンに入ることを拒否して。僕たち家族を守ろうとして。

 

そのとき、僕が、闇の帝王の娘であるかもしれないアリスと、繋がりを持っていたら?

彼女の有力な情報を少しでも得ていたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えに考えた末、僕は父上の書斎のドアを叩いた。

 

僕は、家族を守るんだ。

 




ノーコメントでお願いします!(おい←)

やっぱ期間あく投稿だとダメですね、文体がごっちゃになる~


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畏敬と祈りと

すみませんお久しぶりです。
就活終わりました!!
ほんとに大変だった。ほんとに。
今後は頑張って更新しますので、皆様アリスのことをお忘れにならず、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。


で、今回はハリー目線です。裏話とクリスマスの少し後まで。


<ハリー目線>

 

 

クリスマス休暇に入り、アリスとハーマイオニーは家に帰ってしまった。今ほとんどの寮生が帰ってしまった談話室では、僕とロンが二人で暖炉の前を占領して寛いでいる。

 

 

「それにしても」

とロンが切り出した。

「9月からもう4ヶ月も経つのか。早かったなあ。」

「そうだね…濃い4ヶ月だった。僕の今までの人生で一番。」

僕は暖炉のパチパチという音を聞きながら、目を閉じて話し始めた。

 

「グリフィンドールに入って、マクゴナガルの初めての授業で遅刻して、スネイプに嫌われて。」

「4階の怪物にも会ったよなあ。」

「あの頃はハーマイオニーも今よりつんけんしてた。」

「それから、アリスが。」

 

「…僕もそのことを考えてた。」

 

 

ロンは、そうだろう?という風にこっちを見た。

僕たちの他に誰もいない談話室でも、声をひそめて話し合う。

 

 

「あのときのアリス、普段とは別人だった。」

「小さいとき一緒に遊んでても、見たことがなかったよあんなアリス!」

「あんな小さな体で、トロール一体倒して。」

「しかも杖無しであの魔法だろ?」

「正直、僕、アリスが…」

「「怖かった。」」

 

ふと沈黙が訪れる。

 

そう、それは、僕たちがずっと抱いていた感情だった。

 

 

普段からあっけらかんとしていて自由で、いつも明るく笑っているアリス。魔力が人より弱いせいか、授業ではいつも魔法を使うのに少し時間がかかっていた。それでも人並み外れた記憶力の良さで、ハーマイオニーと同じくらい寮点を稼いでいるし、魔法を使うのも僕らより上手かった。魔法薬学の授業でも、グリフィンドールの中で、アリスだけはスネイプに何も言われない。

 

頭が良くて、友達が多くて、明るくて、でもたまにドジで。基本的に人の話を聞いていないアリス。

 

 

そんな僕たちのアリス像は、ハロウィンのあの夜に一変した。

 

 

あの夜、ハーマイオニーと仲直りしてから、僕たちは少しの沈黙を得た。僕たちはきっと、同じ気持ちだっただろう。

『アリスが怖い』

『でも僕たちを助けてくれた』

『あの指輪を外さなければ、きっと、アリスはいつものアリスだ』

 

 

医務室で目を覚まし、普段通りになったアリスを見て、僕たちがどんなに安心したことだろう!お腹一杯でふらふらになるアリスを見て、どんなに笑いあっただろう!

 

そして僕たちは、言葉に出さずとも、目と目を交わして誓い合った。あの時のアリスの姿は他言しないと。どんなときも、アリスはアリスのままだと信じると。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもハリー、今夜もあのマントで出掛けるの?」

ロンがふいに別の話題を切り出した。

「うん。父さんと母さんに会いに行くよ。」

「やめておいたほうがいいよ。君、あの鏡を見に行くようになってから、鏡のことばっかり考えてるだろ?」

「うん…でも、行くんだ。」

 

 

初めての大量のクリスマスプレゼントの山の中には、送り主が不明の、父さんのものだと書かれた透明マントがあった。僕は夜な夜な、不思議な鏡に映る両親に会いに、寮を抜け出している。

今夜ダンブルドアに会うこととはつゆ知らず、僕はまた、透明マントのお世話になろうと決意しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みぞの鏡は禁止され、透明マントを持て余し、クリスマス休暇が終わる。いつもの生活が戻ってきた。

 

休暇前後で変わったことは、大きく分けて三つある。

 

一つは、ハーマイオニーが期末試験に向けて僕とロンの勉強予定表まで作り(彼女いわく「アリスは必要ないでしょう、全部覚えているんだもの」らしい)、ニコラスフラメル調べと試験勉強のため、きいきい言うようになったこと。

 

二つ目は、マルフォイがやたらとアリスに話しかけてくるようになったこと。以前までは僕たちがいるとわかれば話しかけられることはあまりなかったのに、最近は僕たちにはお構い無しに、アリスに話しかけてくる。最近のイラつく種の一つ。

 

 

そして三つ目。

 

 

「アリス、その本好きね。もう何回も読み直してるんじゃない?」

「だってハーマイオニーに借りたこの本、面白いのよ!あたしが今まで読んだどんな魔法の本より面白いわ!」

 

アリスが、ハーマイオニーに借りたマグルの本を読むようになった。

 

 

ハーマイオニーはホグワーツ入学前でもやっぱり本の虫だったようで、女の子が好きそうなおとぎ話や小説、科学、歴史など、様々な種類の本を持っていた。(ロンはそれらに触れようともしなかった。)

家へ帰る汽車の中で、アリスからハーマイオニーに本を貸してほしいとねだったらしい。

ちなみにアリスが繰り返し読んでいるのは『不思議の国のアリス』。

 

 

「この作者、最高ね!挿し絵のアリスのこの衣装も素敵だし、マグルの考えることって、ほんと、最高だわ…。」

 

自分と同じ名前の主人公が活躍する本を抱き締めて、アリスが今年何度目かのため息をつく。そんなアリスを見て笑いながら、僕たちは『いつものアリスでよかった』と、ほっとするのだった。




次回!話ばばっと進みます!


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ドラゴン

めっっっっちゃお久しぶりです。始めましての方もたぶんいらっしゃいます。こんにちは。就活もうしてないから名前変えようかな。

原作を読みなおす機会がなかなかなくて、半年以上経ってしまいました…。結局原作読んでません。お気に入りしてくれた方すみません。暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。

前回の投稿からかなり経ってしまったため、前回まで考えていた一作目からブラックモード(笑)は大幅に変更するつもりで今回は書きました。実は賢者の石からブラックアリスを登場させようかと思っていたのですが、かわいいアリスに癒されたい(私が)ということで。

ハリー・ポッターの世界観が好きな方、おすすめの観光地も紹介してますのでぜひ最後までご覧ください。


ドラゴンだ。

 

 

あたしたち四人はハグリッドの家で、生まれて初めてのドラゴンに対峙していた。

 

 

うーん。なんでこうなったんだ?

確かあたしたちが図書室で勉強しているときに、ハグリッドが本を抱えて現れて、おかしいなと思ってあとで探ったら、それがドラゴンで、なんでかわからないけどドラゴンの卵を孵すってことになって、で、今、ドラゴン。

 

唖然としているあたしたちを前に、ハグリッドは赤ちゃん言葉でドラゴンに話しかけてる。

 

やがてハーマイオニーとハリーが口を開き始めた。頭の回転が速い二人は、こういうときにいつも真っ先に行動する。

 

 

 

「ハグリッド、あなた、その子育てる気?」

 

「そうだあ、こーんなにちっちぇえんだ、ママが必要でちゅよねー!」

 

「いや、待ってよ、たしかドラゴンってすぐ大きくなるんだよね?野生に返しちゃダメなの?!」

 

「いんや、そんなことしたら、群れに入れなくていじめられるかもしんねえ。」

 

 

 

うーん。議論が白熱してるし家の中も暑いし、頭がぼーっとしてきた。隣のロンも、あーとかわーとか言いながらドラゴンとハグリッドを交互に見てる。あたしは考えることを放置して、窓の外をぼーっと見つめていた。

 

 

 

ドラゴン…ドラゴン…ドラゴ…ドラコ………

 

 

「ドラコ?」

 

「全く、ハグリッド、無茶苦茶だよ!…え、アリス、今なんて?」

 

「窓の外にドラコがいたわ。ほら、あそこ。城へ向かって走ってる。」

 

「てことはつまり」

 

「「「「見られた…」」」」

 

 

 

 

それからは大変だった。

 

まずはおろおろしているハグリッドを、四人がかりでなだめなきゃいけなかった。ドラコのお父さんは、ホグワーツの理事長らしい。ハグリッドのことを毛嫌いしている。だから、森番を辞めさせられるんじゃないかってハグリッドは怯えてた。「それが嫌なら最初からドラゴンの卵なんてもらわなきゃいいのでは」なんてことをみんな思ってたけど、口には出さずにひたすらなだめた。

 

 

数日経っても、なぜかドラコは先生方にもお父さんにも告げ口はしていないようだった。あたしたちは内心びくびくしながらも通常通り授業を受け、テスト勉強の合間を縫ってハグリッドの小屋へ交代で通う。

 

でも、ひとつだけ変わったことがある。ドラコがあたしに話しかけてこなくなった。ロンは「あいつの顔を見なくてよくなってせいせいするよ」って言ってたけど、ドラコ、たまにあたしのことじぃっと見てるんだ。でもおバカたちが喧嘩をふっかけることも、あたしから話しかけることもあたしたちは怖くてできなかった。

 

 

 

 

 

「カードを持ってるぞって言われてるみたいだ。」

魔法史の勉強中、そうハリーがつぶやいた。

 

 

とたんにハーマイオニーの顔が青くなる。

「カード?!そんな単語、魔法史の授業に出てきたかしら。もしかして、テキストに載ってる?どうしよう、私覚えてないわ!」

 

「違うよ、ハーマイオニー。僕が言ったのは、マルフォイのことだよ。」

 

「ちなみに魔法史の範囲にカードは出てこないよ、ハーマイオニー。」

 

「あら、そう…。よかったわ。で、ハリー、マルフォイのカードがどうしたの?」

 

「ああうん、あいつ、自分が僕たちに対してカードを持ってるぞって、見せつけてきてる気がするんだ。この状態が続く限り、僕たちはあいつに対して何もできない。だろ?でももう限界だよ。ドラゴンはどんどん大きくなっていってるし、このまま育ててもハグリッドの小屋を突き破るだけだ。」

 

 

 

「生物を小さくする魔法とかないのかなあ…」

べたあっとロンが机にはりついた。魔法史のテキストはさっきから一ページもめくられていない。

 

そのロンをじいっと見つめていたハリーが、突然立ち上がった。

 

「チャーリー!」

 

「ハリー、とうとう頭がおかしくなっちゃったのかい?僕はロンだよ、ロー…」

 

「チャーリー!!」

あたしも立ち上がってロンを見つめた。

 

「えっ…?アリスもどうしちゃったの?チャーリーは今ルーマニアに…あー!!!」

 

「「チャーリー!」」

ロンとハーマイオニーが声を揃えた。

 

チャーリー、たぶん今盛大にくしゃみしてる。

 

 

 

 

ロンのお兄さんのチャーリーは、今ルーマニアでドラゴンの研究をしてる。

事はすばやく進んだ。ロンがルーマニアに飛ばした速達ふくろう便は、飛ばした二日後には快諾の返事が届いた。一週間後の夜中0時に、城で一番高い棟にドラゴンを持っていく。

 

 

ハグリッドは始めはいやがったが、ルーマニアで暮らす方がドラゴンにとって良いことだと説得した。次はもっと法に触れなくてかわいらしい小さいペットを飼ってほしい。ハムスターとか。

 

さらにあたしたちは計画をたてた。あたしたち四人とドラゴンを入れた木箱が、ハリーの透明マントに隠れて城を歩き回るのは不可能に近い。もしフィルチに見つかりでもしたら大変だ。

 

ということで、ドラゴンを運ぶのはハリーとロンがやることにした。

 

 

決行は、明日に迫っていた。




さて…
ハリー・ポッター的おすすめの観光地(笑)は、福島県のブリティッシュヒルズです。宿泊施設もあるみたい(お値段はわかりません)ですし、バーとかアフターヌーンティーのカフェとかもあります。スコーンが美味しい!!

調度品とかどこもめっちゃお洒落。基本的にスタッフさんは英語ですが日本語でももちろん通じます。

福島県の山のなかにあるので、結構静かですしゆっくり世界観にひたれるのでおすすめです。ゆっくりしたいなーって人は、ぜひ。


ちなみに私が行ったときは、コスプレの写真撮影?の人がいっぱいいました。ハイキューの国見ちゃんっぽい人がいたよ…もっと見たかった…。


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ドラゴン②

時間なかったので短いです…。これからの投稿はどんどん短くなってく予感。


作戦決行当日になって、とんでもないことが起こった。ロンがドラゴンに噛まれてしまったのだ。しかも、

 

「ごめん。マルフォイに勘づかれたかもしれないんだ。」

 

「どういうこと?」

 

「さっきマルフォイが病室に来て、僕が図書室から借りた本を持っていったらしいんだ。僕、その本にチャーリーからもらった手紙を挟んでて…。」

 

 

医務室のベッドに横になっているロンは、痛みと申し訳なさで顔が羊皮紙みたいな色になっている。

 

「大丈夫よ!あたしがロンの代わりをする!」

 

「アリスだけじゃ無理だよ。ハリーと君とじゃ、もう一人君がいないとあの箱を持てない。」

 

「じゃあ、私もやるわ。」

満を持して、といった風に、それまでじっと黙っていたハーマイオニーがそう言いはなった。

 

「ハーマイオニーといえば規律、規律といえばハーマイオニーなのに?」

 

「ぢょ、ハリー、ふふ、それ面白すぎ!」

 

「笑ってる場合じゃないわよ、アリス!」

 

…というわけで、作戦はロンを除いた三人で行うことになった。

 

 

 

 

作戦はおおむね上手くいった。透明マントに三人は狭かったが、(あたしが小さいおかげで)なんとかなったし、三人の方がより楽にドラゴンを運ぶことができた。

 

チャーリーと久々の再会を果たし、ドラゴンを無事届け終える。ほっとしたあたしたちは、すぐさま寮に戻ろうと足を早めていた。そのとき、

 

「リル!」

 

闇の中に現れたのは、リルの真っ白な体だった。あたしの小さな呼びかけに振り返るが、すぐに反対方向へと歩き出した。何やら右後ろ足を引きずっている。

 

「アリス、リルは猫なんだから、夜中に出歩いていても怒られないわよ。」

 

「違うわ、リル、怪我してたの。あたし、捕まえてくるっ!二人はさきに戻ってて!」

 

そう言うと、あたしはリルを追い、元きた道を走り出した。ハリーとハーマイオニーが後ろで声をかけるが気にしない。

 

 

 

「リル、リル…!つかまえた!」

 

やっとリルを捕まえたのは、先ほどドラゴンを渡した塔だった。リルは、みぃ、みぃと声をあげるが、捕まえられた主があたしだとわかると、すぐに落ち着いて腕の中に収まった。あたしはいつも持ち歩いている猫用クッキーをリルに与えながら

 

「リル、あなたその足でよくここまで歩けたわね…。寮で手当てしてあげるからね。」

 

と呟いた。

 

すでにハリーたちと別れた場所からは遠く離れてしまい、追い付くことは不可能だ。仕方ない、一人で戻るかと目をあげたあたしは、ここにあってはいけないあるものを目にしてしまった。

 

 

「え、何で透明マントがここに…?」




アリスの笑いのツボがなんかおかしい気がする。


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シスコン?

今回はハリー目線です。


大変なことになってしまった。

 

アリスと別れた僕とハーマイオニーは、そのあとすぐさまミセス・ノリスに見つかった。透明マントを忘れてきてしまった!そう気づいて数秒後、今度はミセス・ノリスの鳴き声を聞き付けたフィルチに捕まってしまった。

 

マクゴナガル先生のもとへ連行された僕たちは、そこで何故かマルフォイに出会った。曰く、僕たちが夜中にベッドを抜け出していることを報告しようとしたらしい。しかし、

 

「夜中に抜け出すとは何たることですか。理由が何であれ、規律を破ることは許されることではありません。スリザリン、30点減点です。」

 

「そんな!」

 

「ミスターポッター、ミスグレンジャー。あなたたちには失望しました。あなたたちも50点減点です。ああ、一人50点です。」

 

 

 

一晩にして100点も減点されてしまった僕たちが寮に戻ったさきには、真っ青な顔をしたアリスと、アリスの猫のリルが姿を現した。

 

「ハリー、これ…。」

 

そう言ったアリスが差し出したのは、透明マント。

 

「ごめんなさい、リルを追いかけて塔の上まで行ったときに見つけたの。急いでマントをかぶって追いかけたんだけど、あなたたちもうフィルチに捕まったあとで…。透明マントを被ったまま一緒にいたんだけど、その…」

 

「アリス、君まで減点されなくてよかったよ。150点よりは100点の方がいいだろ。」

 

そう言うことしかできなくて、僕はおやすみも言わずベッドへと逃げ込んだ。

 

 

 

翌日は雨だった。朝からグリフィンドールはどんよりとした空気だ。それもそうだ、今年入ったばかりの一年生が、100点も減点されるミスを犯したのだから。おかげでグリフィンドールは最下位になってしまった。

 

「大丈夫だよ、フレッドとジョージだって去年二人で100点以上減点されてるよ。」

 

そう言ってなだめるロンに、ハーマイオニーが涙目で反論する。

 

「一度に50点も減点されたことはないはずよ。」

 

うー、と呻いて、ロンはそれ以上なにも口にしなかった。

 

注目されて調子に乗った「生き残った男の子」とその友人が寮を最下位に貶めした。それだけで、僕たちが周囲に避けられる理由は十分だ。その日の朝食と昼食は味がしなかったし、夕食はシチューを一口だけ食べて大広間を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでそんなことしたのよ!」

 

聞きなれた声が聞こえたのは、大広間を出たすぐ後だった。アリスだ。兄のセドリック・ディゴリーと、揉めている?

 

「アリス、お前父さんたちに都合の悪いことは言わないつもりだろ。」

 

「だって、パパはともかくママにそんなこと知られたら、ハリーたちと友達でいられなくなっちゃうじゃない!吠えメールじゃ済まないわ!」

 

「わかってるんじゃないか。父さんと母さんは、僕が君を今まで以上にちゃんと見ているようにといっていたんだ。いいか、これからは、夕食とその後は一緒に過ごして、グリフィンドール寮までちゃんと送り届けるからな。」

 

「でも…!」

 

 

 

要するに、僕たちが夜中に寮を抜け出して減点をくらったことに対し、そんな友人と付き合うべきではないという見解が、ディゴリー家の中で一致しているようだった。以前アリスが、家族は大好きだけどちょっと過保護すぎるのよね、と呟いていたことを思い出す。さらに気分が悪くなった僕は、とぼとぼと寮に向かって一人歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

ディゴリー家の圧力は相当のものだった。アリスは毎晩、夕食をハッフルパフのテーブルで食べ、その後兄たちに寮へ送り届けられる。寮で待っているのはパーシーだ。ディゴリーとウィーズリーは、血の繋がりこそないけれど親交は深かったらしく、母親経由でアリスの監督を頼まれたパーシーは張り切っていた。

 

そしてそんな生活にアリスは飽き飽きしていた。

 

 

「だってお兄ちゃん、昔からあたしの考えてることはお見通しなのよ!パーシーだって、あたしのこと寝る瞬間まで見張るくらいの勢いだし!あ、まただわ。」

 

はー、とため息をつくと、荷物をまとめ、こちらを見て手招きしている兄の方へと歩き出した。自習室に残された僕たち三人は、またか、と目を見合わせる。もう悪意にさらされるのにも大分慣れてきた頃だった。

 

「これは、僕たちで賢者の石を守るしかないな。」



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