最低系チートオリ主がライブでサイリウムを振るお話 (hotice)
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最低系チートオリ主がライブでサイリウムを振るお話

 唐突だが、皆さんは最低系オリ主という存在を知っているだろうか。

 トラックに轢かれるだけで神様から様々な能力をもらい小説や漫画の世界で無双する人種のことだ。

 彼らはたいていの場合魔力ランクSSS、王の財宝、キャラクターの戦闘能力等圧倒的な戦力を備えている。

 

 そして、もしだ。

 君が、もしもトラックに轢かれて異世界転生するはめになったら、その時に神様が多少の願いを叶えてくれるとしたらだ。君は一体何を願うだろうか。

 しかもこれから転生する世界はランダムで他の転生者がいるかは運次第だと言われてしまったら。

 

 俺は願った。圧倒的戦闘能力を。最低系オリ主として自重しない戦闘能力を。

 最低系オリ主に負けないためには、自身も最低系オリ主になればいいのだ。

 魔力ランクEX、王の財宝、十二の試練、永遠の万華鏡写輪眼、スタンド【ザ・ワールド】、オリジナル最強デバイス、内政チート用の情報チート。

 

 思いついたものは全て願いたかったが、過剰な能力を付けすぎると人から外れる可能性が高くなるらしいので能力は厳選した。

 きちんと最低系オリ主のマナーとして銀髪オッドアイの超絶イケメンにニコポナデポは搭載した。

 

 そうして俺はこの世界に転生した。もちろん貰った特典を使いこなせるようになのは世界の超高性能デバイスと一緒に必死に努力した。

 神様特性のチートボディは努力すればすいすい上達するため、小学生高学年になるころにはそれなりの戦闘能力を得ることが出来た。

 

 それからおおよそ5,6年間この世界がどんな世界なのかを調べ始めた。

 王の財宝とチートデバイスの能力をフル活用して調べていたのだが、世界のどこを探しても魔術的、超常的現象が見られなかった。

 世界中で行われている儀式を片っ端から調べて回ったのだが、どれもほとんど何の効果もないものだった。他にも怪しい事件も調べてみたが、何の魔術的痕跡もない。痕跡を消したと思われる形跡すらもなかった。

 

 数年間調べた結果、この地球には魔術的、その他超常的なものはほとんど存在しなかった。いや、正しくは本当に微少なものしか存在しなかった。

 写真に変なぼやとして残る程度の亡霊、プラシーボ効果の範囲で説明できてしまう程の治療魔法。大抵の物は科学によって偶然として処理出来てしまう程の誤差みたいな神秘しか存在しないのだ。吸血鬼やグール、死霊もいたが数はほんとにごく少数で、間違っても超常の神秘による世界征服だとか、世界の滅亡だとかそんなものが起こる兆候は一切なかった。

 

 そこでここ数年間はある一つの仮説を立てていた。それはこの世界はもしかして異世界物ではないか、というものだ。

 もしそうならば、ゼロの使い魔の様に異世界召喚ものならば問題はない。俺が呼ばれようと呼ばれなかろうとなんとでも出来る。

 問題は、GATEの様に異世界と物理的にこの地球が繋がる。もしくは異世界との相互召喚技術が確立してしまう場合だ。

 

 俺自身の行動方針として基本的に周りに被害が出ないなら放置する方針なのだが、国家間、世界間の問題はさすがの俺にもどうにも出来ない。最悪は正体を隠して暗躍しようと考えていたしそういった準備を進めていた。

 

 が、しかしだ。先入観というか、自身の戦闘能力のせいというか、この世界が非戦闘系の世界だということを俺は想定していなかった。

 なまじ本当に世界を相手にできる戦闘能力を備えてしまったが故にそういった方向へと思考が偏ってしまっていたのだ。

 

 

 そのことに気付いたのは本当に偶然だった。

 昨日クラスメイトの天海に、最近よく休んでいるので体調が悪いのだろうかと思い声を掛けたのだが、アイドルの仕事で休んでいると少し落ち込んだ様子で返事が返ってきたのだ。ここ数年あまりテレビを見ていなかったせいで気づかなかったのだが、しかしクラスメイトすら知られていないのはアイドルとしてショックなことだろうと必死に謝った。

 

 その後授業中、妙に天海がアイドルなのが引っかかったので、帰りに本屋に寄って天海の写真集を手に取った。

 そして、天海の所属している765プロダクションのアイドルが勢ぞろいした写真を見た瞬間に思い出した。

 

 写真の中には色んな美少女達が映っていた。星井美希、菊池真、水瀬伊織、我那覇響等過去に画面越しに何度も見知った顔が並んでいた。

 

 そして、センターに映る、天海春香。ゲーム「アイドルマスター」におけるメインヒロインポジションの少女。

 そう、つまるところこの世界は夢と希望を振りまくアイドル達の世界、アイドルマスターの世界だったのだ。世界を滅ぼす悪の集団も、それを止める主人公たちもいない平和で安全な世界だった。

 身近な人を守るためなら俺は戦場で剣を振るい、数多の人を殺める覚悟をしていたが、実際はライブ会場でサイリウムを振っていればよかったのだ。

 

 全く今までの苦労は何だったのだろうかと思う。無意味だったとは思わないが無駄なことであった。

 まあ、しかしだ。せっかくアイマスの世界に来たからには一人のファンとして純粋に応援することにした。

 

 

 

 「あの、春香ちゃん。ものすごく落ち込んでるけどどうかしたの?」

 

 落ち込んでいる私の様子を見かねたのか小鳥さんが(皆からはピヨちゃんって呼ばれてるけど)、声を掛けてきた。やっぱりそんなに落ち込んでるように見えるんだろうか。

 

 「小鳥さん、私アイドルとしてやっていけるでしょうか…。」

 つい弱音がぽろりと出てしまった。

 「え?何言ってるの!?春香ちゃん!せっかくテレビ出演も増えて人気でてきたのに!」

 

 確かに最近大きな番組にも出れるようになって、私の知名度もそこそこの物になってきたと思う。別に自慢するわけでも、自惚れという訳でもないけど、通ってる高校だってあの天海春香のいる高校と紹介されるくらいには有名になったと思う。

 

 もちろん、まだまだ知らない人とか名前しか知らないって人だっているだろうし、そういう人たちにも興味を持ってもらえるよう頑張っていくつもりなんだけども…。

 でも多分他の人に知らないって言われてもここまで落ち込んだりはしないだろう。そうあの人、織谷宗でなければ。

 

 あの人は高校で私よりも有名だろう。一般的な知名度はほとんどないのだけれども、地元において、それこそ高校において織谷君を知らない生徒はいない。

 まず見た目の時点でとっても目立つ。お母さんがロシア人とのハーフらしくて、四条さんと同じ銀色の髪の毛、さらに生まれつきのオッドアイで、右の瞳が紫色、左の瞳が緑色でどっちもとても綺麗な色をしている。

 顔も真みたいに中性的っていう様な顔で、しかもめっちゃくちゃイケメンでかわいい。神様に愛されてたとか、人形みたいだとかそういう言葉はよく聞くけどまさに彼はその言葉通りっていうほど顔が整ってる。綺麗すぎて女の子って言われても信じちゃいそうなほど。

 

 もうこれだけでアイドルとしてのプライドはボロボロなんだけど織谷君は本当に綺麗に笑う。笑顔を見てるだけで引き込まれて、それ以外のことが考えられなくなるっていうか考えたくなくなるっていうか…。織谷君がニコッってするだけで、女の子なら絶対にポッってなるよあれは。下手な麻薬よりやばいかもしれない。

 

 しかもとんでもない文武両道。テストはいつも学年1位、それどころか全国模試でも1位争い。剣道や空手で全国優勝もしてるし、運動だってバリバリできる。何もない場所で転ぶ私とは大違いだ。その他のことだって大抵は人並み以上になんだってこなせる。

 

 まさに欠点の見つからない完璧超人。正直回りも凄すぎて引いてるレベルなんだけど、織谷君とてもいい人でとっつきやすい性格だからクラスでも浮くことなくむしろクラスの中心にいつもいる。

 

 そんな織谷君だけど、正直な所私は彼が苦手だ。決して嫌いな訳じゃあない。むしろ好ましい人だと思う。

 ただ一方的に私が苦手意識を持ってるだけなのだ。もしくは一方的にライバル視していると言っていいかもしれない。

 

 私はアイドルとして活動してきた中で色んな芸能人にあってきた。皆さんは大勢の人の前に立つ人達特有のキラキラした独特の輝きをもっていた。765プロにいる皆もそんなキラキラしたものをきちんと持っていた。

 でも私は自分が輝けているか自信が無かった。そんな私にとって誰よりも輝いているように見えたのだ、織谷君は。アイドルの中で一番輝いている美希と比べても、ずっと輝いていた。ずっと織谷君は私の憧れで、彼を見るたび私はアイドルに向いてないんだと落ち込んでいた。

 

 今では皆がきちんと私が輝いてるって認めてくれたから自信をもってアイドルをしている。

 でも織谷君は私がアイドルをしていることを知らなかったのが悔しかった。私の輝きでは織谷君を振り向かせることすら出来なかったのが悲しかった。

 憧れだったから、ずっと憧れていたから、織谷君には認めてもらいたかったのだ、私の輝きを。

 



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その2

 さて、俺がこの世界がアイマスの世界だと気づいたわけだが、これから原作の彼女達と仲良くなるために、チートフル活用…はしないです。

 アイマスは前世でも好きだったゲームであるが、特に原作に介入したりするつもりはない。

 

 ぶっちゃけた話アイマス世界ならば原作介入をせずとも大した問題は起きないのだ。余り言い方はよくないが、原作で起きる問題なぞちょっとした喧嘩程度だ。

 原作通りにいかなかった結果何十万もの死者が出たりだとか、最悪世界が滅んだりだとかする危険性もない。

 その上彼女達はアイドル。一般人が介入するのにも簡単ではない。

 

 

 え?超絶美形で身体能力チートだからアイドルしたらって?

 正直アイドルなんて若さで突っ走った十代の頃じゃなきゃ目指さないでしょ(暴言)。さすがに前世含めるともうじき50なのにアイドルは、いや~きついっす。

 それに高位の黄金律持ってるから働かなくても一生暮らせるし…。

 

 なので、俺は普通にファンとして応援することにした。765プロのアイドル達を見るだけなら普通にライブに行けばいい話だしな。

 まあ天海はクラスメイトだから色々話しかけるけど。

 

 

 

 それから俺は天海によく話しかけるようにした。もちろん友達の範疇として節度を保った範囲内での話だが。

 それでも天海春香から直接765プロの話を聞けるというのはアイマスファンとして至福の時間であった。

 

 貴音さんがどこどこのラーメンに感動して最近通い詰めているだとか、響ちゃんが新しく飼い始めたペットが可愛らしいとか、伊織が、美希がとかその他いろいろと。

 メディアでは流れていないちょっとした裏事情も教えてもらった。前世の記憶に残っていたものもあったが、大半は知らないことであった。画面外で起こった、前世では決して知りようのない彼女達の物語。

 恐らく俺は前世においても現世においても最も幸せなファンであろう。

 

 

 そして、俺は今驚愕に目を見開いていた。

 

 「春香ちゃん、これって…。」

 「うん、私達の次のライブのチケット。もし良かったら来てくれないかな?」

 そういって差し出されたのは今月の末に行われる765プロのライブのチケットだった。金に飽かせてでも見に行くつもりであったが、まさか最前列のチケットを貰えるとは。それもアイドル直々に。

 

 「もちろん!絶対見に行くって!」

 アイドルのファンとして最高に幸せな状況であった。俺のテンションはこの時少し吹っ切れてしまったのだ。

 転生しようがチートだろうが、俺はなんだかんだいってオタクなのだ。そりゃこんな状況じゃ嬉しくてたまらないに決まってるだろ。

 いつもならしないだろうが、俺はこの時決めたのだ。最高のオタ芸を打つのだと。キレッキレでアクロバティックなオタ芸を最前列で、だ。

 

 そう、括目するがよい。チートの神髄を見せてやろうではないか。

 

 

 

 織谷君にアイドルとして活動していることを知られておらず落ち込みはしたものの、けれど私は直ぐに立ち直った。知られてはいなかったけど、見てくれたならこれからが勝負なのだ。うじうじしてたままじゃ私の輝きで彼を惹きつけることなど出来やしない。

 

 次の日から織谷君は私によく話しかけてくるようになった。恐らく前日のことで私に気を使ってなんだろうけれども、私によく765プロの話をしてきた。昨日は傍から見てもかなり落ち込んでいるように見えたらしく、どうやら織谷君に余計な気を掛けさせてしまったらしかった。

 けれどもさすがは織谷君というべきなのか、恐らく私たちのことなんてちょっと前までほとんど知らなかったはずなのに、すぐに私どころか765プロの他の子たちのことまで把握し始めていた。最近いっきに有名になって765プロの顔となってきた美希や千早だけでなく、所属している全員について大体把握しているのが凄かった。

 

 色んな話をしていたのだけれど途中で少し気になったことがあった。

 多分アイドルの話をしていたら自然と出る言葉だと思う。

 

 「一番好みの人って誰?」なんてことは。

 

 でも私はその言葉を言えなかった。確かにアイドルの私には聞きづらいことだ。織谷君だって他の人が好みでも言いづらいだろう。

 しかし、私が言えなかったのは多分それが理由じゃない…。多分きっとアイドルとしての理由じゃなかった。

 

 胸の中に灯った小さな火を私は見て見ぬ振りをした。きっと止まれないから。本気になってしまうから…。

 だから彼は私の友達で私のファンなのだ。きっとそれでいい。

 

 

 

 「あ、プロデューサーさん。すみませんが次のライブのチケット一枚譲って貰えませんか?」

 関係者の場合多少コネでチケットを譲って貰う事が出来る。私の場合あまりそういうことはしなかったのだが、織谷君にはぜひ一度生のライブを見てほしかった。

 きっとアイドルの私が一番輝いている時だから。

 

 「春香が?珍しいね。家族にあげるのかい?」

 「あ、いや、友達にあげるつもりです。」

 「う~ん、まあ春香なら大丈夫だと思うけど一応気を付けてね?」

 「はい。大丈夫ですよ!」

 

 プロデューサーが言ってるのは友達関係に気を付けろってことで、有名になったアイドルはどうしてもそういったことに気を遣う必要が出てくる。アイドル自身もそうだし、アイドルと仲のいい子もよくやっかみを受けるのだ。だから友達にチケットを渡すだとかそういったことは、別に禁止されているわけではないけどあまりいい顔をされることは少ない。

 

 まあ今回に限ってはそんな心配はいらないけれども。

 織谷君に限って言えば、むしろ私の方がやっかみを受けている。アイドルの私よりも、織谷君の方が高嶺の花扱いされている。まあ本気で狙っている子もかなりいるから高嶺の花とは少し違うのかもしれないけれども。

 

 そうつい先日も隣のクラスに転校生がやって来たのだけれど、これがすごい綺麗な外国人の人なのだ。確かフランスの貴族の子孫らしいのだけれど、何故そんな彼女が日本に来たか。その理由は詳しくは分からないけれどもどうやら織谷君らしい。何やら彼女どころか一族の命の恩人だとか、マフィアとの全面戦争がどうとかちょっと想像のつかない言葉がぽろぽろと出てくるのだ。彼女も全部話すつもりはないらしいのだけれど、それでも漏れ出てくる言葉が不穏すぎてどう考えても高校生が関わった事件には思えないのだ。

 

 しかも、彼女だけじゃない。他にも何人か織谷君に助けてもらったらしい子がいるのだけれど、どれも色々可笑しいというか事件の匂いがするというか。

 これアイマスの話なのに、裏で色々起こりすぎじゃないとかそんな電波がどこかから飛んでくる。

 

 まあ、そんなこんなで学校において私は一応アイドルとして普通の扱いは受けているのだが、それでもまあ織谷君がやっかみをうけることはないだろう。正直アイドルと仲良くなっても織谷君だしで皆済ますだろうし。それに織谷君ならアイドルと仲良くなるくらい写真を事務所に送り付けるだけでアイドルと話せるようになるし…。

 

 結局織谷君にチケットを渡すことに問題はなかった。けれどまさかライブがあんなことになるなんて…。

 



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その3

 さて、ついにこの時がやって来たのだ。生で765プロのライブを見れる日が!

 俺のテンションは天をも貫いていた。約半月の間に積み上げた俺のオタ芸を見るがよい。たかが半月、しかしこのチートボディにかかればそれでもなお十分な時間なのだ。

 なにせお遊びで何年か刀を振るっていたが、ぽろっと燕返しを習得できてしまった。あの佐々木小次郎が一生涯をかけて辿り着いたそこに、俺は軽く到達してしまったのだ。

 まあ剣の振り方すら自己流の小次郎と違い、ネットで基本的なことは習得できたのも大きいのだろうが。それでもこのチートボディは半端じゃない。

 

 もうじきライブが始まるようだ。

 しかし…、先ほどからチラチラと周りから見られているが、まだ何もしてないだろ!王の財宝だって開放してないぞ! 

 けれども彼らの視線もライブが始まったことで舞台へと向けられる。

 

 そうして彼女達は舞台へと出てきた。この舞台の、そしてこの世界の主役のアイドル達が。

 彼女達は皆輝いていた。舞台の照明が当たっているからとかではなく、在り方が、魂が光っていた。

 ああ、彼女達はまさにアイドルなのだと、俺はこの時おそらく心の底から実感したのだ。

 

 天海が、いつもにこやかに笑ってるだけの彼女が、こんなにも素晴らしい輝きを放つなんて。全く俺は中学から4年も一緒にいて何故気づかなかったのだろうか。

 するとどうやら彼女も俺を見つけたのか、少しだけ視線があった。何やらとても驚いた様子だったが、さすがはアイドルというべきか、軽く目を見開くだけであった。

 

 というかお前もか、天海。まだ俺は何もしてないだろ…。

 

 

 そうして彼女達のトークも終わり、すぐに一曲目の演奏が始まった。

 会場は圧倒的な熱狂に包まれる。よし、俺もこのビッグウェーブに乗らなければな…。

 

 括目するがよい!至高のオタ芸を見せてやろうではないか!

 

 

 

 舞台の上に立ったアイドルとしては良くない事なのだが、しかし、織谷君を見た時私は思ってしまった。

 イケメンは例え何を着ようとイケメンなのだ、と。

 

 ライブが始まってすぐに織谷君がどこにいるかは分かった。何せ放っているオーラが圧倒的で…。

 しかも、法被に鉢巻、春香Tシャツ(ちょっと恥ずかしい)を着ているのに、それですらそこらのハリウッド俳優や男性アイドルなんかよりもイケメンだった。

 さすがは、校内の"美人"ランキングで一位をとって私含め女子のハートを軽くブレイクした織谷君だけのことはある。あの時はさすがの私も暗黒面に堕ちた。

 

 しかし、そんなものはまだ序の口だったのだ。

 

 ライブが始まって最初の曲、ここで765プロのアイドル全員で歌って会場の空気を一気に盛り上げる。ライブの勢いがあるかないかはとても重要なことなのだ。

 会場の熱気は凄かったし、まず間違いなく滑り出しは上々に思えた。

 

 そう歌っている途中前方の席が騒がしいことに気付いて、ちらりと視線を向けた時だった。

 そこでは、織谷君が猛烈な勢いでオタ芸を打っていた。アイドルとしてオタ芸というのは見慣れたものである。サイリウムが素早く振られて、その残像が描くアート。暗いライブ会場ではとても綺麗に映る。そうして私たちの音楽に合わせて光の線は次々に形を変えていく。正直すごいと思う。

 

 けれども、織谷君のオタ芸は一線というか常識を隔していた。そもそもが振る速度が圧倒的に早い。何せ早すぎて残像が消える前に一周してくっ付いてる。

 ライブ会場でなければ風音がはっきり聞こえそうな程だ。

 しかも素人目に見てもめちゃくちゃ綺麗にサイリウムが流れている。振り方に無駄がないのに、見せ方は心得ていて、華麗というべきオタ芸がそこにはあった。

 明らかにライブ会場の観客席で振るう物ではなかった。なんていうかそれこそ私達と同じく然るべき舞台の上で振るうべき芸術の域って感じの物で。

 

 それによく見てみるとあのサイリウムもどこかおかしい。基本的にサイリウムの光というのは蛍光物質のせいなのか独特な光をしている。

 けれども織谷君の振るうサイリウムは蛍光物質とは違う光り方をしているというか、なんだろうか、まるで存在が輝き過ぎて物理的にも輝いちゃったみたいな。

 良く分からないけども、間違いなくあれは異常なものだった。ただ光ってるだけなのに厳かで清廉で神秘的で見たものを虜にする何かがあった。

 

 なんというかさすがは織谷君だ。いつも常識外れな人だと思ってたけどまさかここまでとは。

 ライブはまだまだ長いのに開始数分でどっと疲れた気がする。

 

 もうじき最後のサビに入る。これさえ歌い切れば私の出番はもう少し後だからその間は休憩できる。

 会場も最後のサビに合わせて一層と盛り上がっていく。

 

 そして織谷君もそれに合わせて一層凄くなった。

 今までも十分常識外れだったけど、今回は格別っていうか。

 

 

 空中からサイリウムが生えてきてる!!!

 

 いやほんとに比喩なしに何もないところからサイリウムが出てくる…。

 こう空間が金色に波立ったかと思うとそこからサイリウムが生えてくるのだ。

 しかも音楽に合わせてきちんとサイリウムが動いたり、出たり入ったりして正直すごく綺麗ではある。

 織谷君が円を書くようにサイリウムを振るったかと思うと、それに合わせて空中に円形にサイリウムが生えてくる。真上にサイリウムを掲げてから真下に振り下ろせば地面からサイリウムが生えてくる。

 でももはやそれありえないですよね!?オタ芸とか関係のなしに常識じゃあり得ないですよね!?

 

 ていうかもうほんとに織谷君は何者なんだろうか。

 今も観客席なのに物凄く目立ってる。そりゃ目立つよね。

 だって中心でなんていうか常識を超えたイケメンが超常的オタ芸を打ってる周りで、華やかなパレードみたいにサイリウムが空中で舞い踊っているんだもん。

 私だって気になるよ。舞台の上に立って歌ってる私だってすごく気になるもん。

 

 なんでアイドルが観客に負けた気持ちになるんだろうか…。

 いや、織谷君は応援してくれてるだけだもんね…。

 

 よし!頑張ろう!あんだけ凄い応援してくれたんだから、私もきちんと応えないと!

 

 

 

 その後も順調にライブは進んだ。

 

 控えに戻ったときに皆織谷君のこと話してたけど…。うんそりゃあ目立つよね、気になるよね。

 正直ここで彼が同級生というのはまずいかと思ったのだが、プロデューサーさん真剣に織谷君スカウトしようとしていたのでついポロっと言ってしまったのだ。

 

 「あのプロデューサーさん、織谷君男の子ですよ…?」って。

 

 次の瞬間、控室がライブ会場にも負けないくらいの大音量で包まれた。皆にしっちゃかめっちゃかにされて、私は色々織谷君について話した。

 皆織谷君があの顔で男だと知ると少し微妙そうな顔をしていたが。

 

 そうして色々と頭がいいこと、スポーツ万能なことだとか話していたのだが、最近隣のクラスにやってきたデュポンさんについて話した所伊織が割り込んできた。

 

 「ちょっと待って、春香。デュポンさんってフランスの大財閥の人?」

 「え、うん。そうらしいけれど。」

 「…………。そう、ありがと。

  彼なのね。織谷って」

 

 なんていうか色々気になったがこれ以上は私の精神安定のために聞かない。もうお腹一杯だ。

 

 ライブも後2,3曲で終わるのだ。何事もなく平和に終わらせてほしい。

 それにしても織谷君はあの超絶ハードなオタ芸を今も余裕綽々でこなしているが、一体どんな体力をしているのだろうか。

 

 そして、最後の曲。いつもこの時は名残惜しくて、でもテンションが一番盛り上がる時間なのだ。

 会場の熱気も高まる。今回のライブもきちんと成功出来てよかった。

 だから最後の曲は残った全ての全力をぶつけなくては。

 

 織谷君は私の輝きを見てくれただろうか?楽しんでくれただろうか?

 アイドルとして楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと、色んなことがあったんです。

 そうして私は、地味でおっちょこちょいだった私は一人のアイドルとしてこの舞台の上で輝けるようになったんです。

 私がアイドルを目指した原点。いつも輝いていて少しでいいからあなたに近づいてみたいと思ったから私はアイドルを目指したんです。

 どうですか?私は輝いてますか?

 

 

 ちらりと織谷君を見ると目が合った。その目が語ってくれた。

 私は輝いてるって。アイドルだって、そう言ってくれた。

 ああ、良かった。涙が零れそうになる。

 でもまだライブは終わってない。最後まできちんと歌い踊らなければ…。

 

 

 ちなみに織谷君は最終曲が始まった辺りから物理的に輝いていました。

 全身が銀色の淡い光に包まれて、一層織谷君のオタ芸は早くなった。もはやサイリウムが目で追えない。残像しか見えなかった。

 …人って輝き過ぎると物理的に輝くんですね。

 

 というかそれに加えてサイリウムの残像が6本に見えるのはどういうことなのだろうか…。

 傍目にはサイリウムが分裂しているように見える。圧倒的速度でほぼ同時に三回振るのではない。

 全く同時に3本存在しているように見える。

 なんていうか凄まじい技の冴えというか、技の極地みたいなものじゃないのだろうか、それは。

 

 

 こうして私たちのライブは大成功した。ネットでの評判も上々である。

 あと観客席で凄すぎるオタ芸を打つオタ芸神も話題になってた。ていうかこっちの方が話題になってた。

 気持ちは分かるけど納得いかない!

 

 



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おまけ1

正直前回でやりたいネタは書いちゃったので、別のネタを。
その都合というか、主人公はデレステ知らない設定だけど許して!
後デレマスはアニメ見ただけのエアプだけどこっちも許して!


 「う、嘘……。そんなことあるの…?」

 「き、聞き間違いじゃないよね?」

 「多分聞き間違いじゃないにゃ。みくにもきちんと聞こえるのにゃ。」

 

 ある日の昼下がり、346プロの事務所の1室。そこに集まった私たちは今衝撃的な光景を目の当たりにしていた。

 あのちひろさんですら、この光景を前にしてあんぐりと口を開けて固まったままなのだ。

 そう、私たちのプロデューサー。ザ・堅物と言っていい程丁寧口調を崩さないあの武内Pが、だ。なんとタメ口で電話に出ているのだ。

 

 休日の今日、朝から皆でレッスンをしていたのだが、それも一段落ついて休憩していたところに武内Pがやってきたのだ。今後の予定調整や方針決めなどを行っていた途中で、武内Pに電話が掛かって来た様で、一言断ってから電話に出たのだが、そう、そこから飛び出した言葉がなんとタメ口だったのだ。

 あの武内Pが俺なんて一人称を使ったり、語尾に敬語をつけずに話している様は物凄く違和感を感じる物だった。

 

 いや、まあ多分赤の他人から見たらわりと見た目通りなのかもしれないけれど。最初はあの顔で敬語口調なのに違和感があったし。

 

 けれども、確かに殺人経験あっても驚かないような見た目だけれども!

 武内Pは反面、中身は何事にも真面目で真摯に取り組む人で、他人と話す時も言葉は少ないが丁寧にきちんと対応するのだ。最初はその見た目とのギャップに驚いたけれども、最近はそのギャップにも慣れてきたし、ちひろさんを筆頭にそのギャップにやられた人も多い。

 

 「明日か?いや、明日なら大丈夫だ。神崎さんも予定は空いてるからな。ああ、よろしく頼む。」

 

 どうやら武内Pは話が終わった様で携帯をしまってこちらへと戻ってくるのだが、皆が茫然としているのをみて不思議そうにしていた。

 

 「すみません。お待たせしました。それで少し神崎さんにお話があるのですが、皆さんどうかされましたか?」

 

 その言葉を聞いて、皆が一斉に意識を取り戻して武内Pに群がった。

 

 「プロデューサーさん、誰と話してたんですか!?」

 「プロデューサー!絶対そっちの話し方の方がいいよ!」

 「汝は偉大なる言葉を語り継ぐのではないのか!?」(プローデューサーさん、敬語以外話せるんですか!?)

 

 皆が武内Pを取り囲んでいる中、その場に残った私と美波、そして安定の杏はなんとなしに顔を見合わせた。

 「凛ちゃんは行かないんですか?」

 「確かにプロデューサーがタメ口なのは驚いたけど、まあ多分友達だろうし。」

 「それにあれを見たら行くのは危機を感じるもんね。」

 

 そういって杏が視線を向けた先には、とてもいい笑顔をしたちひろさんが武内Pの方へと向かっていた。いつもの笑顔でも、あくm・・黒い笑顔でもない、嘘は絶対許さないモードの笑顔だ。今まで何度もお願いしても敬語口調のままで、どうにかして武内Pと距離を縮めようとしていたちひろさんは完全にキれていた。皆もちひろさんの無言の圧力に押されて武内Pの周りから離れた。

 武内Pは不思議そうな顔をしている。ほんとにそういうことに鈍い…。

 

 案の定電話の相手は男の友達だったらしいが、ちひろさんは頬を膨らませる。

 「じゃあ私にももっと普通に話してください!」

 「いえ、さすがに職場でそんな風に話すわけには…。」

 「なら仕事以外でならタメ口で話してくださいね?」

 

 言質を取ったという風にちひろさんは笑みを浮かべて武内Pに迫った結果、ついに武内Pが折れて職場以外ではタメ口で話すと約束していた。

 嬉しそうな顔をしてちひろさんは帰っていく。後で私も武内Pとお話しないといけないようだ。

 皆も色々言いたそうだが、武内Pが話があるそうなので一先ず席に着いた。

 

 「それで神崎さん実は少し会って欲しい方がいまして。」

 「運命の人は預言の御子であるか?」(会う人ってさっきの電話の人ですか?)

 「はい。恥ずかしながら私には神崎さんの話す言葉をきちんと理解は出来ていません…。そこでそういったことに詳しい友人がいますので、一度会ってみると神崎さんもいい刺激になるのではないかと思いまして。」

 

 確かに蘭子の言葉は分かりづらい。けれど、それって…。

 武内Pの言葉に蘭子は嬉しそうにしているが、他の皆は少し困ったような顔をしている。

 

 「あの、プロデューサー。それは、人の、黒歴史を掘り起こすっていうことになるっていうか、そっとしておいてあげたらどうかなあって…。」

 あの杏ですら直球で踏み込めずにおずおずと聞いた。そう大抵の場合、蘭子のみたいな、その中二病ってのは一般で黒歴史扱いされることが多い。

 それを人前で、しかも自身の黒歴史を思い出させる蘭子と直接会話させるのはいささか酷なことではないだろうか。

 

 「確かにあまり大っぴらにされることを望んではいませんが、しかし絶対に神崎さんのためになると思いましたので少し強引にお願いしました。」

 武内Pがはっきりと告げる。どうしようもない死刑宣告だった。

 あの武内Pがタメ口で話すほど仲はいいのだろうが、それでもこの仕打ちはあんまりではなかろうか…。私なら自殺物である。

 

 「えっと、そのプロデューサーちゃん。みくも会ってみたいんだけどいいかにゃ?」

 「はい。出来れば皆さんも会ってみてはいかがでしょうか。」

 

 武内Pに友達への慈悲は存在しないのか!?

 

 ほんとは武内Pの友達の被害を減らすために辞退するべきなのかもしれないが、一度武内Pがタメ口で話す人にも会ってみたいし、それに明日どんな惨劇が起こるか分からない。ここは現場にいてフォローに回った方がいいのではなかろうか…。

 この悪魔の二択。即座に皆と目線を合わせて緊急会議を決行した結果、武内Pが無意識に友達のメンタルをズタボロにする可能性が高いとして、私達は会って現場でそれとなくフォローすることにした。

 

 

 そうして一日経って、武内Pの友達と実際に会うことになった。

 蘭子は嬉しそうな雰囲気だが、それ以外の皆は緊張に満ちた顔をしている。これは重大な任務なのだ。

 下手をすると武内Pとその友人との間に致命的な亀裂が入るかもしれない。それはなんとしても避けなければならなかった。

 

 「失礼します。ああ、織谷お前も入ってくれ。」

 ガチャリとドアを開けて武内Pが入ってくる。皆も覚悟を決めた顔をした。

 けれど次に入って来た武内Pの友人を見て皆驚愕した。

 

 その、織谷って人は圧倒的に綺麗な顔をしていた。絵画や二次元の世界から抜け出たんじゃないかという程に、整った顔をしている。

 完成された一つの美、芸術作品の様だった。

 こういうとあれだが、私もここにいる皆も世間的にはかわいい顔をしている方だと思う。けれどアイドルとしての自負は粉々に打ち砕かれた。

 しかもだ。昨日聞いた通りならこの人は男らしいのだ。まさか開幕そうそうこんなダメージを受けるなんて…。

 茫然とした私たちに武内Pが話しかける。

 

 「えっと、皆さん。こちらが私の友人の織谷です。」

 「初めまして。織谷宗です。皆と同じくらいの年齢だからタメ口でいいよ。」

 けれども先ほどの衝撃が大きくて私達は自己紹介を聞いてもなお呆けていた。唯一会えるのを楽しみにしていた蘭子だけがいち早く自己紹介を返していた。

 それを聞いて皆がはっと正気に戻る。

 

 「我が名は神崎蘭子!我と同じ魔術師だと聞いて、会合の時を待ちわびていたぞ!」(私の名前は神崎蘭子です。私と同じ趣味だと聞いて会うのを楽しみにしていました。)

 「え?神崎さんも魔術師なの?まさか俺以外にも魔術師がいたなんて。」

 その言葉を聞いて一安心する。少なくとも織谷さんは蘭子に自然に話を合わせられる様で、心配はいらなそうであった。

 蘭子も趣味が合う事が嬉しそうだし、武内Pの想定通りいい結果に終わりそうだ。さすがは、というべきだろうか。

 

 「なあんだ。柄にもなく杏も色々心配したけど何事もなく終わりそうだね~。」

 「そうみたいだね~。でも魔法かあ…。私も一度使ってみたいなあ。」

 皆も気が抜けたようでへにゃっとしている。

 

 その間も蘭子と織谷さんは楽しそうに魔法について話している。どうやら随分と盛り上がっている様だった。

 そこにみりあちゃんが話しかけに行った。彼女と莉嘉、それにアーニャの三人は正直中二病関連に関しては理解しきれていない様で、みりあちゃんは織谷君に色々と無茶なお願いしていた。

 「ねーねー。私みりあっていうの。よろしく!それでお兄さん魔法使いなんでしょ?何か魔法見せて!」

 無邪気に織谷さんにお願いしているみりあちゃんを止めようと美波が席を立とうとした時だった。

 

 織谷さんはみりあちゃんのお願いを聞いて魔法を一つ見せてくれると言ったのだ。

 恐らく手品だろうが、みりあちゃんはとても喜んで莉嘉も織谷さんの近くへと走っていった。織谷さんは二人によく見ててねと言ってから、自身の綺麗な銀色の髪を何本か引き抜いた。

 何をするのだろうかと訝し気に見ていたのだが、織谷さんはその髪の毛に息を吹きかけて空中に浮かせた。

 

 何をしているのだろうかと思った次の瞬間、髪の毛は鳥の形をしてみりあちゃんと莉嘉の周りを飛び回り始めた。

 「はあ!?」

 思わず驚愕して声を上げてしまった。

 

 「織谷さん、これ一体どういう手品なんですか!!?」

 未央が織谷さんに近寄りながら問い詰めていた。その顔はどこか必死な所があった。

 あり得ないことが目の前で起きてそれを否定しようとしている様だった。

 

 けれども織谷さんはさらりと魔術だよとだけ告げる。

 未央がみりあちゃんの肩に止まった"それ"に視線を向ける。その鳥はガラス細工のように少し透けた白色で出来ているが、よく見るとガラスではなかった。

 鳥の形をしているけれども、それを形作っているものは固体ではなく、絶えず液状と気体の中間の様な奇妙な物質が流動しているのだ。

 どうあがいても今の科学でどうにか出来る物じゃないくらい素人の私にでも分かった。

 

 思わず隣にいた武内Pに尋ねかける。

 「あ、あのプロデューサー…。織谷さんって本当に魔法使いなの?」

 「はい。私はそういうことがよく分からないので、本職の人を連れてきました。」

 武内Pはいつもの様に真顔で頷く。

 

 さらりと頷くな!なんで、いや、どうやって連れてきた!?

 なんだこの状況は!?蘭子もびっくりしすぎて固まっちゃったじゃない!

 

 本気で武内P蘭子に会わせるためだけに魔法使い呼んできたの!?

 シンデレラプロジェクトなんだからもっとロマンのある場所で魔法使い登場させてよ、プロデューサー!!

 

 

 




物まね芸人に本人突撃ドッキリする系最低オリ主
後ちょこっと補足。
オリ主話題になってるけど、きちんとアイドルも話題になってるよ!
「今日のライブよかったね。○○ちゃんかわいかったよね。ところで前の方にすごいのいなかった?」的な。

それと自分オタ芸に関しては無知だったので、アイマスライブでオタ芸禁止は知りませんでした。すみません。皆もサイリウム燕返しは迷惑になるからしないでね!
まあチートでなんとかしたってことで。まさに最低ですわ。


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おまけ2

 みりあちゃんと莉嘉ちゃんは魔術の鳥に大興奮してくれて、俺も満足である。

 イリヤが原作で使っていたこの魔術、とても綺麗で女の子なら気に入ってくれるだろうと思っていた。案の定大人気で先ほどの二人に加えて、銀髪(多分ロシア系の子かな?)の女の子や、ちょっと背の高い(俺と同じくらい)の女の子も大喜びしてくれた。

 他の子の様子が静かだけど、ちょっと地味だったろうか?

 

 「お兄さん、私この鳥欲しいの!すっごくかわいい!」

 「アタシ、アタシも欲しい!お兄さん頂戴!」

 どうやら二人はかなり気に入ってくれたようだ。しかし、ふむ。魔術性の生き物でも小さいころから他の命に触れ合うのは大切な事か…。

 きちんとお世話出来るか聞いたところ元気にすると言ってくれた。まあ魔術製だから基本的に構ってあげるだけでいいんだけども。

 

 少し鳥を2匹呼び寄せる。疑似的な魂の複製、転写、と。後は軽く認識阻害の魔術をかけておいて…。

 「はい。二人ともきちんとお世話してあげてね?」

 「「ありがとー!!」」

 うんうん。二人の笑顔が眩しいぜ。

 

 「あの、きらり、背が大きいことが悩みなんだけど…、背を低くは出来ないかな?」

 きらりちゃんからお願いされてしまったが、俺はそれを叶えることは出来ない…。一時的、ほんの数時間なら可能だと言った所、それでも良いと言われたので身長が縮む薬を王の財宝から一錠譲ってあげる。服の都合もあるだろうからそれが終わったら飲むと良いよと告げたら、きらりちゃんはお礼を言いながら涙目で走っていった。

 

 「ひああああああああああ!!!!??」

 急に誰かが叫んだので、驚いて振り向くと神崎ちゃんだった。

 さっきまで変に固まったままだと思ってたけど、何やら再起動した様でこちらに急いで向かってくる。

 

 「な、汝は真なる魔導士であったか!?如何な運命の元、我らは巡り合ったのであろうか!知識の探求は人の性、とめどなき深淵である。」(本当の魔法使いなんですか!?会えてうれしいです!ぜひ魔法教えてください!)

 「え?確かに俺は魔法使いだけど…。神崎さんもそうじゃないの?」

 俺は思わず聞き返したのだが、神崎ちゃんはじわぁと涙目になってしまった。ちょいちょいと猫耳を付けた人に手招きされる。

 

 「あの、その蘭子ちゃんのは俗にいう中二病って奴なのにゃ。普通魔法使いとかいないにゃ…。いや織谷君魔法使いだけど…。」

 「あ、そうなんだ。てっきり武内Pの紹介だから何かしら特殊な子だと思ってたよ。」

 何たってあの武内Pだもんなぁ。アメリカ行ったときなんてまだ子供の吸血鬼の女王見つけて来たし…。

 

 「なんで武内Pが魔法使いからそんな評価うけてるんだにゃ!?」

 

 

 杏は涙目で部屋から出て言ったきらりを優しい目で見つめていた。

 基本的にめんどくさがりで無気力な彼女でも、友人からたまに向けられる羨望の目には気づくし、思うところもあった。まあ何かするわけでもないのだが。

 

 でもあの魔法使いは登場こそシンデレラには相応しくなかったけれど、きちんと仕事はしてくれた様だ。

 彼女は自身のキャラを自覚している。きらりのことはとても嬉しかったが、けれどまあ自分はどうせ軽くおめでとうなんて一言で流すのだろう、と。

 ま、キャラじゃあないって奴なのだと一人考えていた。

 

 「しっかし、魔法使いってすごいもんだね~。働かなくてもお金が降ってくる魔法とかないのかな?」

 「いや、さすがにそんな都合のいい魔法ある訳ないでしょ。」

 「だよね~。言ってみただけだって。」

 何気なしの一言は近くに居た凛に否定されてしまった。まあ杏自身もそんなものがあるとは思っていなかったが、そんな都合のいいものがあったらアイドルなんてやっていなかった。

 

 「多分ですが、そういった魔法はあります。一度使っているのを見たことがありますので。」

 武内Pがさらりと告げた。

 「…え?」

 「一度アメリカに行った事があるのですが、その時二人とも一文無しでして…。けれどたった1日で織谷は数百万稼いで見せたんです。それもとくに何もせずに。

  まるで金の方から寄ってきている様でした。たまたま拾った宝くじが当選、たまたま持っていたお土産がその地の富豪に何十倍もの値段で売れたり、たまたま拾ったトランクケースが札束で一杯だとか。偶然では考えられないので恐らく魔法なのでしょうが…。」

 「…………。」

 

 杏は武内Pの言葉を聞いて、そっと目を閉じた。凛にはまるでその様がまるで修業中の仙人や高僧の様に見えた。死んだかのようにすら思えるほどの静。しかし、それは間違いではなく、今まさに杏の精神状態は明鏡止水という言葉が当てはまるほどに穏やかであった。

 

 目をゆっくりと開く。思わず見たものが刀が鞘を伝って抜き身になった様を幻視するほどに、あまりにも静かで、あまりにも気迫に満ち溢れていた。

 

 双葉杏。覚悟の時である。

 

 

 彼女は前へと進む。いつものめんどくさりな彼女はそこにはいない。誰よりも確かな足取りであった。

 

 彼女は友の横を通り過ぎる。いつもの小さな彼女はそこにはいない。誰よりも大きな背であった。

 

 彼女は彼の前に立つ。いつもの飄々とした彼女はそこにはいない。誰よりも真剣な眼差しであった。

 

 時が止まったかと勘違いするほどの気迫。その場にいた誰もが声を出せずにいた。

 しかし、時にすれば一瞬。この時の杏に迷いなど無かった。

 

 「私にもニート魔法を教えてくださいお願いします!!!!!!」

 彼女の渾身の土下座が炸裂した。

 

 

 いきなりの土下座には面食らったが、どうやら杏ちゃんは黄金律が欲しいらしかった。

 いや、確かに風水だとかで似たようなことは出来る魔法はないわけではない。俺自身のポリシーとして教えるつもりがないというのはあるのだが、それ以前にだ。

 

 「杏ちゃん魔力無いからどうあがいても魔法使えないよ?」

 「あ~、やっぱそううまい話は無いか~。ま、そうだよね。」

 杏ちゃんはそう言って帰っていく。随分小学生の割にさっぱりしてるな…。あの年でニートが夢ってどうなのよ。

 

 「ねーねー。みりあは?みりあは?みりあも魔法使える?」

 みりあちゃんに服のすそを掴まれる。普通の小学生ってこんな感じだよな。

 「今調べてみたけど、皆魔力は持ってないかな。」

 「わ、我もか!?魔王の果て無き魔力は永久に封印されたのか?」(私も魔力ないんですか!?)

 神崎ちゃんは肩を掴んで頭ぶんぶん揺さぶりながら涙目で尋ねて来た。一応もう一度精密調査してみるけれど…。

 

 「あー、その残念だけど神崎ちゃんには魔法の才能がないわけじゃないけど、特別魔力を周りからかき集められる体質じゃなさそうだね。」

 魔力の豊富な世界ならそこそこのとこまでは行けそうな気はするけれども、この世界にはリンカーコアとか魔術回路とかその辺がないと何もできないからな…。魔力譲渡しようにもそもそも体に魔力貯められないからすぐ霧散しちゃうし…。

 ああ…!!神崎ちゃんが物凄い涙目になってる!

 

 「織谷、その、なんとか出来ないか?」

 武内のやつにもお願いされたが、小さくてもリンカーコアがあればなんとかなったんだけどなぁ…。

 ん?リンカーコア?

 

 「あ、何とかなるかも。」

 「それは真か!?偉大なる魔導士は運命の振り子を刻み始めるのか!?」(本当ですか!?魔法使えるんですか!?)

 神崎ちゃんが一気に笑顔になる。結構運要素が絡むけど、大胆な賭け事をして都合よく成功するのはオリ主の特権だからね。

 えーと、さっきの調査情報と「夜天の書」の適合率チェック…70%。「夜天の書」に魔力渡してユニゾンすればギリギリ魔法は使えそうだな!

 

 いやー、色々あったけど拾っといて良かったぜ夜天の書。きちんとバグも修正済み!

 

 

 魔法が使えると聞いて喜んでいた蘭子であったが、今は少し複雑そうな表情をしている。

 目の前の彼女、夜天の書とやらの管理人格らしい「リインフォース」。あまりにも彼女は蘭子に似ていた。蘭子の希望そのものに。

 

 織谷君が何処からともなく夜天の書を取り出した。蘭子のグリモアにそっくりで彼女はとてもテンションが上がっていた。

 夜天の書は当たり前の様に空中に浮かんで、空中に魔法陣を刻んでいた。正しく魔法と言った光景に蘭子どころか皆もテンションが上がっていた。

 

 そうして魔法陣が光って彼女は現れた。空中で丸くなるようにして浮かんでいた裸の彼女には、大きな黒い翼があった。

 見れば分かるが、明らかにあれは普通の物じゃなかった。度々織谷君が見せる科学じゃ証明しきれないナニカ。彼女の翼は闇としか言いようがなかった。他に言い表しようがない。影が、そのまま翼の形を成していた。

 蘭子の背中に付けた翼とは違って、本物の堕天使の翼の様だった。

 

 織谷君が一言彼女の名前を呼ぶと、彼女は丸くなった体を伸ばした。色々と大事なところが見えるのではないかと焦ったが、気づくと彼女は衣装を身にまとっていた。

 蘭子と同じような黒い衣装。丸くなっていたことで隠れていた顔を見れば、真っ赤な目が見えた。銀色の髪、赤い目、黒い服に、黒い翼。まるで彼女達は姉妹の様にそっくりだった。

 でも片方は本物で、片方は偽物だった。どうしようもなく恋い焦がれた偽物の前に、あっさりと本物がやってきてしまった。

 アイドルに憧れる少女の前に、憧れたアイドルだけではなく、アイドルになった自分がやってきてしまった。

 なんて性質の悪い冗談なのだろうか。お前は違うのだと突き付けられてしまったのだ。

 

 「魔法が使いたいのか?」

 リインフォースさんが蘭子に話しかける。蘭子は何か言いたげで、でも何も言わずに頷いた。

 「そうか。なら手を出してくれ。」

 蘭子が言われた通り手を出す。リインフォースさんがその手を握る。二人が光ったかと思うといつの間にかリインフォースさんがいなくなっていた。

 蘭子も驚いた顔をしていたが、どうやらリインフォースさんが消えたことに対してではないらしい。何やら蘭子は自身の体の調子を確かめているようだった。

 

 「織谷さん、蘭子は一体何をしてるの?」

 思わず私は織谷君に話しかけた。

 「ああ、リインフォースと融合してるんだよ。魔法が使えないなら、魔法が使える奴と合体すればいいだろ?」

 ほんとに魔法ってのは何でもありだな!

 

 「よし、じゃあちょっと結界張るね。そうすれば蘭子ちゃんも一杯暴れられるし。」

 「いや、それだとこの部屋がめちゃくちゃになっちゃうでしょ。」

 魔法で何とか出来るのだろうか。出来るんだろうなぁ…。

 

 「いや、結界張ると現実世界と位相がずれるから結界の中で何しようと現実には何の影響も出ないようになってるよ。」

 もうやだ…。 

 

 「お~い、神崎ちゃん!結界張ったから自由に魔法使っていいよ。ここに居る子たちは俺が防御魔法張っとくから。」

 織谷君はそう蘭子ちゃんに告げた。蘭子ちゃんはその言葉を聞くと嬉しそうに頷いた。

 蘭子ちゃんは傘を差しながら右手を誰もいない壁に向けて掲げた。

 

 

 「これは最上級火炎魔法ではない!初級火炎魔法である。我が力に慄くがよい!」

 そう言った瞬間、彼女の手から魔法が放たれる。爆音が響いた。まるでレーザーとでもいうべきものが蘭子の手から生えていた。

 数秒後、そこには大きな壁が開いた事務所の姿があった。それだけではない。直線状のビル全てをぶち抜いて魔法は直進していた。

 

 こ、これで初級なの…。って、蘭子も驚いてる。そりゃあんなレーザーが手から出たらびっくりするわよね。

 

 「ふははははは!!!!時は満ちた!!終焉の時である!!天から降り注ぐ火は罪ある者を裁く!火の洗礼を受けよ!」

 そう言って蘭子ちゃんは背中にリインフォースさんみたいな羽を生やして、外に飛んで行った。

 

 「いや~、楽しそうだね。あ、皆は一応結界の外に出とこうか?まずないけど万が一、億が一があるかもしれないし。」

 そういって織谷さんが指を鳴らすと事務所は元通りになっていた。ほんとに何の被害もない。

 やっぱ魔法ってとんでもない…。

 

 

 その後、10分程で小さくなったきらりちゃんが戻って来たし、1時間程で預けていた魔力を使い切って神崎ちゃんが帰って来た。

 

 「どう神崎ちゃん、楽しかった?」

 「至福の時であった!!天は汝を祝福したもうた!」(とっても楽しかったです!ありがとうございました!)

 どうやら随分お楽しみいただけ様で、俺も満足だ。

 

 「それは良かった。でも、申し訳ないけど君に魔法を教えることは出来ないし、夜天の書をあげることも出来ない。ごめんね。」

 「我が瞳は真の光を見た!もう迷いはない!心優しき魔法使いよ、運命の歯車は回り始めている。我の盟友はここにいるのだ。」(大丈夫です!優しい魔法使いさん、私にはプロデューサーがいますから!)

 そういって神崎ちゃんは武内の手を取る。

 成程、俺は彼女を魔女にはしてあげられなかったが、きちんと別の魔法使いがいて彼女をシンデレラにしてあげていたようだ。

 

 そして神崎ちゃんはリインフォースの方にも近づいていく。

 「汝との二人だけの舞踏会は心踊るものであった!我は真の翼を得た。」(あなたと魔法を使うのはとても楽しかったです!そのおかげで私はやりたいことが出来ました。)

 「そうか。それは良かった。これからも頑張れよ。」

 神崎ちゃんは大きく頷いた。そして彼女は右手を掲げて叫んだ。

 

 「闇に飲まれよ!!!」(ありがとうございます!)

 

 その瞬間リインが崩れ落ちた。

 リ、リインダイーン!!

 

 「だ、大丈夫か!?リインフォース!彼女に悪気はないんだ!」

 「ああ、いや分かっている。でも、ああ…。やっぱり私は呪われた存在だからな。こういう扱いが正しいのだろう……。」

 

 「あの、なんでいきなりそんな事に…?」

 凛ちゃんが尋ねてくる。

 「その、この子ね。一時期バグのせいで闇の書っていう魔導書になって、暴走して色々事件起こしたことがあるんだよね。それを物凄く気にしてるっていうか…。」

 

 「ご、ごめんなさーい!!」

 あ、蘭子ちゃんがいつもの話し方をする余裕もなく、リインに謝りに行った。

 

 

 「まさか、本当に闇に飲まれてたのかにゃ!?どんだけ設定かぶせるつもりだにゃ!!」

 

 




熊本弁(マジ)系蘭子。

後魔法要素ないのに夜天の書出てんじゃんって話だけど、こう、あれです。次元世界で拾ったとかそんなんです。そういうことにしといて!

ちなみに主人公のポリシーについて。
基本的に魔法でしか解決できない問題については取り合ってくれません。それ以外ならわりとポンポン使いますけど。後は使っても何の結果も生まない場合とかもですね。

例として、魔法での治療、死者蘇生等は基本行いません。今回でいえば魔法教授を断ったりですね。
けれど、空を飛びたいだとかお遊びの範囲内、今回はきらりとか蘭子みたいな場合だとか、魔術の鳥みたいにペットショップ行けばまあ普通の鳥は飼えるしみたいな場合、つまり別の手段で解決できる場合にはわりとポンポン使います。


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おまけのおまけ

皆武内Pのことが気になるらしいのでちょっとだけ…。
なんで今回は短いです。


 神崎ちゃん達と別れて帰る途中のことだった。武内と話しながら歩いていると遠くから呼ぶ声が聞こえた。

 

 「おーい、宗~。ちょっと待っとくれ~。」

 そう言って少女がこちらに走ってくる。その少女の顔は見知ったものだった。

 村上巴。ちょっとアレな家系の子で、かつて彼女を含めて色々とあったのだ。

 彼女は随分急いでいたようで息が切れていた。

 

 「はぁ、はぁ、久しぶりじゃけぇの、宗。2年ぶりになるんかな?」

 

 「久しぶり巴ちゃん。ちょうど2年になるかな。

 でもどうしたのさ、そんなに慌てて。」

 

 「いや、お前さんに挨拶しにきたんじゃ。前にあれだけお世話になったってのに挨拶すらしねえのは仁義にもとるけえの。」

 彼女はまあ、そういう家の子なので仁義だとかを重要視しているらしい。自分はあまり気にしないと言っているのだが…。

 

 「うちだけやのうて組そのものを見逃してもらった上に、一度は助けられもしたんじゃ。お前さんが気にせんでもそんな真似は出来ん。」

 

 「律儀だなぁ。それで、なんでこんなところにいるの?」

 確か巴ちゃんはアイドルとかちゃらちゃらしたもんは好かんとか言ってたのに…。巴ちゃん演歌好きだから演歌歌手になったのだろうか?

 

 「ああ、それがプロデューサーにアイドルにならんかと誘われてな。こいつにも組を助けてもろうたようなもんやから、その恩返しじゃ。正直アイドルしとるだけじゃ全然返せてないんじゃが、こいつは他に何も望みよらんからな…。」

 

 「いえ、私は大したことはしてませんから。大体は織谷がやったことです。」

 全くこいつは自己評価が低くて困る。

 アメリカの時だって、お前がいなければ俺は"あの子"を救えなかったっていうのに。「俺だけなら世界は救えたかもしれないけど、"あの子"は見殺しにしていた。"あの子"を救ったのは間違いなくお前だぞ、武内。」

 

 「宗のいう通りじゃ。プロデューサー、お前がおらんかったら今頃日本中で、下手すればアジア圏一体巻き込んでの大抗争じゃぞ。そうなればまず間違いなく、うちらは織谷の奴に殲滅されとった。あまり卑屈になるのはいい男のすることじゃないけん。」

 そういうと武内の奴は首筋に手を当てて黙り込んだ。こいつ照れてやがる。

 まあこいつは女の子の笑顔のために動いてるやつだからあまり自分の功績に興味がないんだろうが…。

 

 「こっちも質問してええかの、宗?なんでお前さんがここにおるんや?またなんぞ問題でも起こったんか?」

 

 「いや、武内の奴から自分がプロデュースしてるアイドルに会って欲しいって言われてね。」

 色々と楽しい人ばかりだった。武内の奴の女の子を見つける目はほんとさすがである…。

 

 「成程、そういうことか。正直プロデューサーがお前を呼んだと聞いて肝が冷えたぞ。」

 別にそんなに巴ちゃん達の組に危害加えるつもりはないんだけどなぁ。きちんと裏の社会でそういうのが必要だと分かってるし、潰した所で別のが湧いてきて余計荒れるってだけで、正直意味がないし…。

 

 「だからこそお前さんは怖いんじゃ。お前さんは割り切れる人間じゃ。自分の中に明確なラインを引けてしまう人間じゃ。

 お前さん、多くの一般人や身内に被害が出たなら、意味があると思えば、手段を選ばずに即座に潰しに来るじゃろ?正直お前さんみたいなのは裏じゃ一番敵に回したらあかん人種や。文字通り何でもやりおる。

 しかもそれでほんとに世界を相手にできる力を持っとるんだから性質が悪いどころの話じゃあないけん…。」

 

 「まあでも、お前さんはうちらの組の恩人や!また実家に寄ってくれよな。その時は盛大に歓迎するで!」

 そう言って巴ちゃんはにっかり笑う。確かに色々と気になることもあるし、一度寄らせてもらうことにしようかな。

 

 「そっか。ならまた今度少しだけ寄らせてもらうね。それじゃあまたね、巴ちゃん。」

 

 「おう、またな、宗。はよう来てくれるのを期待しとるで。」

 

 

 




女の子「なんで私なんか助けたの!?こんな私なんか!」
武内P「笑顔です。」
女の子「え?」
武内P「あなたの笑顔が見たいと思いました。きっととても綺麗なので。」
ちなみに大体武内Pのしてきた事がこれです。


それと書きたいネタがなくなったので一度ここで完結扱いにしようかなと思います。
なんか面白そうなネタがあればその内何か書くかも。


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