正義の法則 (ジャギィ)
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試験の法則

最近、長続きしないから連載するより短編書いてる方がいいんじゃないかと思い始めてるジャギィです


“雄英高校”

 

偉大なるヒーローを生み出した学び舎とも言えるその学校は、多くのヒーローの卵たちが目指す目標である。そして今日は、その雄英高校入学試験の日であった

 

「ここが雄英高校か」

 

そこに緑髪の学ランを着た今回の受験生の少年…植木耕助が、巨大な雄英の()()を見上げ前に立つ。……ちなみに今現在の時刻は5時半。試験自体は昼に始まる予定となっている

 

つまりこの少年は、過去記録をぶっちぎるほどの最速で試験会場に到着したわけであった

 

「もしかして早く着いちまったのか?」もぐもぐ

 

植木は白み始めた空をボーッと見上げながら能天気にそう考え、朝食のおにぎりをマイペースに食べ始める

 

「……ゴミでも拾っとくか」

 

ここで試験の復習を選ばないあたりが、植木耕助らしかった

 

正門前でゴミを拾い、時々“個性”も使ったりしながら時間を潰して1時間、無精髭を生やした黒尽くしな服の大人が現れた。首元にはマフラーのような白いものを何重にも巻いていた

 

「…お前、ここで一体なにやってんだ?」

「ん?オッサン誰だ。まっくろくろすけ?」

「違う、俺は雄英(ここ)の教師だ。見た感じ雄英生じゃないようだが……まさか受験生か?」

「おう。ヒーロー科を受けに来た」

 

それを聞いて、男は少しため息を吐いた。今まで1番にこだわって早く受験会場に来る受験生は多くいたが、教師よりも早く着く受験生など見たことがなかったからだ。それに植木を見たところ、特に1番にこだわっている様子でもないと男は感じた

 

「…言っとくが、受験時間は午後の1時スタートだ」

「マジか」

「マジだ」

 

男の言葉を飲み込んだ植木はアゴに指を当ててウンウン頷くと、握り拳をポンと掌に叩いて思いつく

 

「よし、それまでこの街のゴミでも拾っとくか」

「オイ」

「教えてくれてありがとな!ミイラのオッサン!」

「ミイラじゃねえ」

 

言うや否、植木は動き出した街中を走りながらゴミ拾いを再開した

 

そんな植木の後ろ姿を見ながら、ミイラのオッサンこと相澤消太は呟く

 

「…不合理の塊みたいな奴だな」

 

変わった奴だ、と1人ごちて、相澤は開かれた雄英の門をくぐった

 

結局植木は街のゴミを拾い続けて、途中でお婆ちゃんを隣の隣の街まで案内したりして、それでもなお時間を余らせたので、持ちきれないゴミを有効活用しながら受験時間まで時間を潰し続けた

 

途中で超真面目そうなメガネの少年が「むっ、まさか僕よりも早く着いている人がいたとは…!しかも奉仕活動を行なっているなんて!さすが最難関!」などと驚きと感銘を受けていたり、受験会場案内準備の人が苦笑いをしながら植木を見ていたりと、反応は様々だった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

シーン……

 

『おおっと返事は無しか!?こいつぁシヴィー!!!』

 

筆記試験を終了させた植木は、実技試験の説明を受けるべく広い多目的ホールで、ボイスヒーロー「プレゼント・マイク」の言葉を聞いていた

 

「……ZZZ………」

 

いや、小さくイビキをかきながらうたた寝していた。しかも器用に目を開いているため、イビキが聞こえる受験生以外は誰も植木が寝ていることに気づいてない

 

筆記で疲れた頭を休めている間にプレゼント・マイクの説明は終わり、次々に受験生は実技試験会場に移動していた

 

「ZZZ……ンガッ。…ヤベェ、寝てた」

 

移動の喧騒で植木は起きる。そして自分の置かれた状況が分からなくてどうすればいいか考えていると、1人の受験生が植木に声をかけた

 

「あ、起きた!スッゴイぐっすり寝てたね!」

 

声の方へ顔を向けると、誰もいなかった。いや、正確に言えば制服が宙に浮いていた。まるで透明人間が服を着ているような状態で、声と制服からして女子である

 

「誰だお前」

「私の名前は葉隠透!ねえねえ、説明の時なんで寝てたの?」

「俺、今日早くここに着いたし、さっきの筆記試験で頭使ったから疲れたんだよ」

「確かに!難しかったよね〜。でも次の実技試験大丈夫なの?」

 

それを聞いて、手元のプリントでも見れば分かるか?と植木が考えていると、葉隠が見えない手を叩いて言う

 

「ねえ、君の受験番号って何番?」

「0154番」

「おー、ちょうど私と同じ受験会場だ!じゃあさ、私が色々と教えてあげるよ」

「いいのか?」

 

結果的にライバルを助ける行動になるのだが、葉隠は気にしない

 

「いいよいいよ。困った人を助けるのがヒーローだからね!」

「そっか、お前いい奴だな」

「えへへ〜、それほどでもないよ」

 

声から嬉しさを滲み出す葉隠

 

「そんじゃ、受験会場に行こっか!えーっと…」

「植木耕助」

「植木くん、行こっか!」

 

実技試験の説明を聞きながら、植木は葉隠についていった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

葉隠に案内されて植木が着いた場所は、とても広い市街地を模した試験会場だった。ほへー、と気の抜けた声を漏らしながら葉隠は(周りからは見えないが)キョロキョロ周りを見渡す

 

「スッゴク広いね!」

「ここでロボットを倒すのか」

 

試験の内容は、植木たちの目の前の市街地内で現れる仮想敵であるロボットを倒すことであった。各種類の仮想敵に応じて1〜3ポイントゲットすることができ、そのポイントの高さで合否が決まるらしい

 

ちなみに0ポイントロボットという、強いのにポイントが貰えないお邪魔虫ロボットなども出てくるらしい。マリオでいうドッスンのようなものだと葉隠から聞いた時、植木は姉ちゃんから借りたゲームでそんなの出てきたな、なんて考えていた

 

『ハイスタートー!!!』

「え?」

 

急に切られたスタート。受験生たちは全員戸惑っているが、別のことを考えていた植木だけは、特に何も考えずに市街地に走り出した

 

「うわっ、植木くん早い!待ってよー!」

 

次に植木と話をしていた葉隠が、植木を追いかける形で走り出す

 

『どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』

「ええっ!?マジか!」

「クソッ、出遅れた!」

 

プレゼント・マイクの言葉で正気を取り戻した他の受験生たちも、植木を追いかける形で走り始める

 

受験生たちがスタートを切る頃には、植木は1体目の仮想敵の前にいた。鉄でできた体を揺らし、植木に攻撃を仕掛ける

 

『目標捕捉!!ブッ殺ス!!』

 

物騒な言葉とともにつけつけられる鉄の拳を植木はサイドステップで躱す。そして学ランのポケットの中に大量に入っているゴミ…ガムの包み紙を握り締めて、植木は叫ぶ

 

「“ゴミ”を“木”に変える力ーーー!!」

 

植木の右拳から緑の光が漏れ出ると、開かれた掌から凄まじい速度で木が伸びる。バット2本分の長さに伸びた木をそのまま横に振り、ボールのように仮想敵を吹っ飛ばした

 

「おぉし!次!」

 

木をビルの横に置いて、次の仮想敵を目指して植木は走った




“個性”『リサイクル』

本人がゴミと認識した物を木に変えることができる超エコな“個性”!!ただし両掌で包み切れる物でないと木に変えられないぞ!


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合否の法則

切りが悪かったのでもう1話追加


『敵ノ姿ヲ確認!!』

『近ヅケ!近ヅイテブッ殺セ!!』

「そぉりゃあ!!」

 

大小別々の仮想敵が植木を狙って近づくが、ペットボトルのキャップをそれぞれの手で握ると、変化させた木を杭のように伸ばして2体の仮想敵を貫く

 

「確か、今のが1点と2点だから、さっきまでのと合わせて1点が7体、2点が12体、3点が4体で………43点か。あとどれくらい点上げりゃあ合格できんだ?」

 

次の敵を探しながらも、これまで倒してきた仮想敵のポイントを計算する植木。壊れた仮想敵から飛び出たコードをポケットに突っ込んで、植木は市街地を走り抜ける

 

「イ、イテテ……」

「うん?」

 

声の方を見ると、受験生の1人が足を抑えながら座り込んでいた。近づいてみると受験生の足首が赤く腫れあがっている

 

「大丈夫かお前?」

「い、いや、正直かなりキツイな。さっき仮想敵との戦いで足をくじいてしまってな…これ以上ポイントは取れないだろうな」

「そうか」

 

悔しそうな顔をしながらも痛みに堪える受験生の少年を見て、植木は手慣れた手つきで受験生を背負い、試験会場のスタート地点へ走り出した

 

「お、おい!何やってんだ!?」

「放っておいたら怪我がひどくなるだろ。さっき他の奴もスタート地点に運んだらちっちゃい婆ちゃんが怪我を治してくれてたから、足の怪我も治してくれると思うぞ」

「さっき…?…もしかしてお前、他にも怪我をした受験生を運んでたっていうのか!?」

 

少年は信じられなかった。合格できるか否かという大事な試験を放って躊躇なく人を助けようとする植木の行動が

 

「なんで…?」

「困ったときはお互い様だろ?それにーーー」

 

その時、凄まじい爆音と共に市街地内が大きく揺れた。倒れそうになったのを必死に堪えて後ろを振り向くと、超巨大なロボットが奥から姿を現した

 

「デッケェー……」

「あれが0ポイント(ヴィラン)かよ…」

 

植木は巨大仮想敵をボーッと眺め、背負われた少年はあまりの大きさに戦慄していた。巨大仮想敵の登場に、殆どの受験生たちが離れるべく走る

 

「残りの仮想敵、みんな踏み潰されそうだな」

 

のんきにそんなことを考えながら再びスタート地点の方へ向かおうとして……そこで植木の目に、建物の上でジャージと靴が巨大ロボットから逃げるように走る姿が映った。植木は服だけのそれが誰なのかすぐに分かった

 

「葉隠!」

 

植木は全速力でスタート地点まで戻ると、怪我人の治癒のために待機していた小柄な老婆「リカバリーガール」に植木は話しかける

 

「婆ちゃん!こいつは足を怪我してるから治してやってくれ!」

「ハイハイ、懲りずによくやるねぇ…ってどこ行くんだい?」

 

怪我人の少年をリカバリーガールに預けると、ポケットに入れてたライターを握り締めながら全力疾走し、植木の手から急成長したしなりのある木の先端を地面に突き立てる。さながら棒高跳びのように

 

「俺は今から……助けに行ってくる!!!」

 

それだけ伝えると、グンッと曲がった木の強い反動と共に巨大仮想敵に向かって植木は飛んでいった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

建物の上を伝いながら巨大ロボットから葉隠は逃げ続ける。先ほどまで連続で仮想敵と戦っていたこともあって、彼女の体力、精神共に限界を迎えていた

 

「ハァ、ハァ、やばいよぉ!これピンチだってー!」

 

声を上げようと、誰も彼も彼女のSOSに気づいていなかった。せめてそろそろ下に移動しないと危ない…

 

葉隠がそこまで考えたその時、巨大仮想敵が放った一撃で飛んできた瓦礫、それが葉隠のいる建物を下から壊していった

 

「えっ!?」

 

足元が突き抜ける感覚と浮遊感に危機感を抱くが、もう既に遅い

 

「キャアアアアア!!!」

 

衝撃で市街地の大通りに放り出され、コンクリートと瓦礫とガラス片と一緒に葉隠は落下していく。受験生はみんな逃げてる最中、受け身は取れない、「透過」の“個性”では何もできない

 

悲鳴をあげながら、葉隠は歯を食いしばって衝撃に耐えようとし

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

落ちる一歩手前で、誰かが彼女を受け止めた。おそるおそる葉隠が目を開けてみると…そこには、案内しながら試験会場に一緒に行った緑髪の男の子の顔が映っていた

 

「大丈夫か、葉隠?」

「う、植木くん!?もしかして、植木くんが助けてくれたの?」

 

ふと、葉隠は自分の態勢を見返してみる。膝裏と背中から持ち抱える形で植木は葉隠を持っており…いわゆる、“お姫様抱っこ”な状態だった。見えない顔が赤くなる

 

「わ、うわわ!植木くん、早く下ろして!早く!」

「…?おう」

 

言われるがままに、すぐに植木は葉隠を優しく地面に下ろした。ちょっとだけドキドキしてる心臓を整えていると、強い地鳴りと共に巨大仮想敵が地面の植木たちをロックオンする

 

「わわわ!植木くん、早く逃げたほうがいいよ!」

「葉隠は先に逃げろ。こいつは俺が止める」

「え、ええ!!?」

 

ロボットが大きく右腕を構える。植木は左のポケットから仮想敵から取ったコードを出して、両手で覆う

 

「大丈夫だ」

 

植木は思い返す

 

子供の頃、植木はデパートの屋上から誤って落ちたことがあった。人々が、ヒーローが助けてくれない中……植木を受け止めて助けれくれたのは、1人の男だった。無精髭を生やして、教師のくせにいつもダルそうにしているメガネをかけた細いオッサン

 

だけど、そんな彼の中にある“誰かのために強くなれる正義”に、植木耕助は憧れた。植木耕助の中にある“正義”の原点(オリジン)

 

「お前は俺が守る!!」

 

振るわれる右腕と同時に、植木が両掌を地面に当てると目の前の地面から()()の木が螺旋状に生える

 

バネのようにグルグル巻きになった木が巨大仮想敵の右拳とぶつかり、しかし折れることなく攻撃の勢いを徐々に弱め……植木の目の前で、完全に拳をストップさせた

 

「止めちゃった…」

 

植木はそれで終わらせず、木から小さく伸びてる枝を折って、両手で握る

 

「これで、終わりだァ!!」

 

ゴミとして覆った木の枝は新しい巨木に変化し、巨大仮想敵の体をがんじがらめに巻きつけ、完全に沈黙させた。腕や足を必死に動かそうとも、可動域が締め付けられてることで動くことができない

 

『終〜〜〜了〜〜〜〜〜〜〜!!!』

 

直後、実技試験終了の合図が会場いっぱいに響き渡った

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

雄英高校の試験が終わった植木は、何事も無いまま少ない中学生活を送っていた。そしてある日…

 

「弱キック、弱キック、強パンチからの〜アッパー!!」

『K・O!!winner!!』

「ゲッ、また負けた…。姉ちゃん、手加減してくれよ」

「フッフッフッ!手加減してもらってるようじゃ、私には勝てないわよ!」

 

休日、いつも特にやることがないから街のゴミ掃除などをしている植木は、姉である植木翔子と久々に格ゲーをしていた。ちなみに現在5連敗中

 

そんな中、ドタドタと忙しない足音と共にリビングに植木源五郎…植木の父が入って封筒を見せる

 

「耕助ー!雄英からの合格通知が届いたぞ!」

「あ、父ちゃん」

 

そう言って植木に渡してきた合格通知を躊躇いなく開く。が、手紙の中には小さな円盤みたいなのが入っているだけだった

 

なんだこれ?と思いながら円盤を弄っているとカチリとスイッチのようなものが入り…中心からホログラムが投影される

 

『私が投影された!!!』

「うお」

「うおお!なんだこれは、ホログラム!?事実は小説よりも奇なり〜!!」

 

映し出された小さいオールマイト…というかホログラムを見て、息子を差し置いて興奮する源五郎。そんな中で録画オールマイトが合否を伝える

 

『筆記は問題なし、実技試験は敵P43とギリッギリだったね!そして先の入試、我々が見ていたのは敵Pのみにあらず!それこそが、もう1つの基礎能力!ヒーローとしての本分ともいえる人助け!!審査制の救助(レスキュー)P!』

 

ホログラムが切り替わり、デカデカと70の数字が映る

 

『試験の最中、しかも巨大仮想敵が出ようとも躊躇いなく(たす)けにいく精神!!そして見事に無力化する力!10Pと60Pで70P!合わせて113P!!文句なしの首席合格だ!!』

 

ホログラムのオールマイトが手の伸ばす

 

『来いよ植木少年。雄英(ここ)が君の、ヒーローアカデミアだ!!』

 

オールマイトが締めの言葉を言い終わると、ホログラムがプツリと消えた

 

合格。その言葉を聞いた翔子が植木を抱き締める

 

「きゃー!合格!耕ちゃん、しかも首席合格だって!」

「今晩は合格祝いだ!耕助、寿司を食べるのとすき焼きを食べるの、どっちがいい?」

 

植木の合格を自分のように喜ぶ父と姉を見て、植木は自然と表情をほころばせた




「みんなを助ける正義を貫く」植木耕助

植木’sヘア:草みたいな色とモッサリ感
植木’sアイ:三白眼
植木’sハンド:モリモリ木が生えてくる
植木's全身:超絶タフ。何度でも立ち上がる
植木's脚:地道に早くなってきている


ホントにね、アイデアだけなら湧いてくるんだよね〜…続きが書けないけど

誰かが続き書いてくれないかな


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