世界はシャボン玉とともに(凍結) (小野芋子)
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こうして始まる少年の物語


霧隠れの時系列がワケワカメなので細かいつっこみは無しの方向でお願いします。
それとウタカタの登場するアニオリは知らない子です。


作者が思うすぐに友好関係が築けそうな尾獣

犀犬>重明・磯撫>>孫悟空・又旅・穆王>>>>>牛鬼>>>>>>(超えられない壁)>>>>>>>>>守鶴>>>>>>>>(超えられない壁)>>>>>>>>>九喇嘛>>>>>>>>(超えてはいけない壁)>>>>十尾





始まりはいつだったのかは正直覚えていない。何か違和感を感じたと思ったら気づけば異世界にいて、気づけば子供になっていた。

何を言っているのか分からないと思うが正直俺も分からない。

1つ言えることがあるとすればこの世界での俺はウタカタという名前で生まれてきた事くらいだ。

だがまあ分からないことに頭を使っても無駄なこと、どういう因果かは分からないが異世界転生とやらを果たしたのならこの世界を満喫すれば良いだけのこと。早速気持ちを切り替えて新しい人生を歩んでいこうと思う。

 

 

 

 

……そう思っていた時期が私にもありました。

どういう訳か俺はこの世界ではメチャクチャ嫌われている立ち位置にいるらしい。いや、ほんと何で?俺まだ見た目的に3、4歳くらいだよ?そこまで邪険に扱う必要はないでしょ?

 

いや、本当に何故だ?さっきなんてちょっと小腹が空いたから茶屋でも行って団子を買おうと思っただけなのに注文したみたらし団子では無く、親父の拳が飛んできたぞ。

もしかして気付いてる?中身が成人だって気付いてる?

 

何とかその場は水影とかいう子供が取り成してくれたから事なきを得たけど、来てくれなかったらと思うと正直ゾッとする。享年3歳は普通に洒落にならん。ってか子供は労わるもんって教わってないの?

取り敢えず今後の目標はまた同じことになった場合自衛くらいは出来るようになる事だ。うん、鍛えよう。

いや、その前に水影とか言う少年に感謝の言葉を言うのが先だな。おっさんを捕らえたと思ったらすぐどっか行っちゃったし言いそびれてたんだよね。

 

 

 

……で、中々に立派な建物の中に水影さんがいるという情報を入手した俺は、早速お礼を言うために建物へと入って行った。

途中でガラの悪い忍び装束を身に纏った男数名とすれ違ったので、もしかして間違えた?ってか生きて帰れますよね?と思ったが僅かに視線を向けられるだけで特に何かを言われることも無く、『水影室』と書かれた部屋へと無事辿り着くことができた。

ノックをして部屋に入ると、そこには乱雑に散らかった机と、そこに頬杖をつきながら難しい顔して紙を眺める水影さんの姿が。

『何か用か?』至極メンドくさそうにこちらに視線を向け、暫し停止。

数秒ほど経って少々の居心地の悪さを感じ始めたころ、椅子を蹴飛ばしながら立ち上がって、気付けば目の前に顔があった。え?速すぎじゃね?

 

「お前、何でここに!!」

 

何ですか?いちゃ悪いんですか?そういう差別は良くないと思いますよ?

まあお礼を言いに来たのに喧嘩腰になるのも可笑しな話だから特には何も言いませんけどね。

 

「お礼を言いに来ました」

「礼?ああ、さっきの……。だとすれば礼はいらん。あれはこちらに非がある」

「だとしても助けてもらったのは事実です。先ほどはありがとうございました」

「………はぁ。分かった、受け取っておこう」

 

お礼しただけで溜息吐かれるとはこれ如何に。この国って感謝1つしない無礼な奴が多いのかな?さっきすれ違った奴もガラ悪かったし。

そう言えば俺はこの世界について何も知らないな。ちょうどいい機会だし質問してみるか。まずはアレだな、何で俺が嫌われているのかについてだな。

 

 

 

 

 

 

 

動物の帰巣本能的なものに従って歩いていたら奇跡的に俺の家らしきところに帰ってくることが出来た。

隣に住んでいる奴が俺を見るなり『あいつ、もう帰って来やがった』って言ってたからまず間違いないと思う。別に傷ついてないよ?ホントだよ?

 

取り敢えず家に入って、既に床に敷いてあった布団に寝転がる。

色々と考えなければならないことはあるが思い出すのはつい先ほどの事。

 

『何でみんな俺を嫌うんですか?』

 

純粋な疑問としてそう水影に問いかけてみたら何故か抱きしめられた。why?

いや、『すまない。俺の力が足りないばかりに……』じゃ無くてですね。俺は嫌われている理由を知りたいんですよ。それと涙声で謝罪するのはやめてください。まだ感情の制御とかあんまり出来ない体だからこっちまで泣いちゃいます。

っとまあ、脳内ではそれなりに冷静ではあったが実際は大泣きも大泣き。

いきなりの転生での不安も相まって、一生分の涙を流したのでは無いかと錯覚してしまうくらいには泣いてしまった。…だめだ、思い返してみても恥ずかしい。

 

そのあと暫くして漸く冷静さを取り戻した俺は、この世界についていくつかの質問をした。

自分で言うのも何だが、はたから見てこの世界の常識について質問する俺の姿は異質であっただろうが、水影さんはただただ俺の質問に答えてくれた。本当にいい人だと思う。

 

暫くして今現在抱えている疑問全てをぶつけた俺は、恩は返すとだけ告げて帰路につき、帰り道に偶然見つけて何故か気に入ったパイプ(喫煙具)のようなものと何冊かの日記を購入し、そして現在に至る。

 

取り敢えず今日起きた出来事をまとめて書きたいから日記でも書こう。日付は………空白でいっか。

 

 

 

 

月 日

 

早速だが今日知った知識について箇条書きでまとめようと思う。

 

・この世界には忍びと呼ばれる者達が山ほどいる。

・忍び五大国と呼ばれる大国(火の国、雷の国、土の国、風の国、水の国)があり、それぞれの大国には隠れ里と呼ばれる忍びが生活する里(木の葉隠れ、雲隠れ、岩隠れ、砂隠れ、霧隠れ)がある。因みにここは水の国の霧隠れだ。

・そのほかにも小国はある

・五大国にはそれぞれ長となる◯影と呼ばれる存在がおり、水影さんは水影らしい(自称)

・忍びはチャクラと呼ばれる摩訶不思議な力を使って術を使ったり、水面を走ったりする

・その際に印と呼ばれる、術を出すためのトリガーとなる動きが必要である

・印と呼ばれる指の動きは全部で12個あり、それぞれに十二支の名前を当てはめて呼んでいる

 

他にも色々とあるが特筆すべきはこんなもんだろう。中々に情報は集まったと思う。

うん、書いていて思ったが中々にアレだな。何と言うか、現代人が望む世界だな。多分こんな設定の漫画が元いた世界にあったら世界中でヒットしそうだな。まあ実際にその世界にいる以上は他人事じゃ無いんだけどね。

 

取り敢えず今日は疲れたからもう寝よう。今日買ったパイプのようなものの使用用途とか模索したかったけどそれは明日に回すことにする。

 

明日はいいことあることを願って、おやすみ!!

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

目を覚ますとよく分からない空間にいた。

寒いようで、暑いようで、暖かいようで、そんな感じのする不思議な空間だ。周囲には何も無い。一面真っ白のキャンバスのような、唯只管に白い空間が広がっている。

 

「………ん?」

 

そんな不気味な空間で、僅かに違和感を感じた方へ視線を向けよく目を凝らせば、何かがいた。

それは、何と言うかうまく言葉では言い表せないナニか。強いて例を挙げるとするならば、ナメクジだろうか?そんな生物がポツンと佇んで静かに俺を見ていた。

 

気になってそちら側に足を向け、ゆっくりと歩く。ここが夢なのか、はたまた別の異世界なのかは分からないが、少なくともこの足は俺の意思で動いてくれた。

短いようで長い距離を、早いようで遅いスピードで歩くと、先ほど見たときは手のひらくらいの大きさしか無かったナニかは、俺の身長を優に超える山のような巨体をもって俺の進行を妨げる。その目は相変わらず俺を静かに眺めていた。

 

沈黙が空間を支配する。……そう言えばここ迄歩いてくる時も足音1つしなかったな。意識して足音を忍んだ訳でも無いから、もしかしたら元々そういう空間なのかもしれない。

 

「………」

「………」

 

流石に気まずくなってきた。ってか首が痛い。

取り敢えず自己紹介でもしてみるか?うん、それが良いな。爺ちゃんも自己紹介すればみんな友達って言ってたし。

 

「俺はウタカタ。お前は?」

「……俺が、怖く無いんけ?」

 

頼むから会話してください。これでも結構な勇気を振り絞ったんです。

それと、怖く無いのかだって?この世界が何なのかは分からないが、仮に俺の夢だとしたならば怖いわけがない。だってそうだろ?自分の想像上の生物を怖いと言うのはあまりにもバカらしいじゃないか。

だから怖くない。むしろアレだな

 

「愛嬌があって良いと思うぞ」

「そうけ…」

 

褒められ慣れていないのか、少し照れ臭そうにする姿はやっぱり可愛い。仮に他のやつが気持ち悪いと言おうが関係ない、少なくとも俺の世界は俺の主観で成り立っているのだから、俺が良いと言えばそれで良いんだ。

 

「俺やよ、犀犬(さいけん)ってんだ。よろしくな、ウタカタ」

「こちらこそ宜しく頼む、犀犬」

 

握手なのだろうか?家の1つや2つくらい軽く潰せそうな白い手?を差し出してきたので、俺もすぐさま右手を上に挙げる。

まあ、大きさの違いすぎるお互いの手で握手なんて出来る筈もないので結局は拳を合わせるような形になってしまった。これはこれでカッコいいのでありだと思う。

 

そのあとは随分と長い間会話をしたと思う。鮮明に思い出せるが、どうも夢見心地なため実感がイマイチ湧かないのが本音だ。

 

ただ最後に聞こえた「ウタカタは俺が守るけんね」という言葉だけは妙に耳に残った。

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★

 

月 日

 

不思議な夢を見たが、その影響だろうか?今日は随分と調子がいい。

 

そんな訳で昨日保留にしておいたパイプのようなものの使い道を探ろうと思い、取り敢えず息を吹き込んでみたらシャボン玉が出た。え?何で?

急いで口を離し中身を確認してみたが石鹸液のようなものは無い。え?本当に何で?

まあ忍術とかいうとんでもなものがある世界だから石鹸液なしでシャボン玉が出てもおかしくは無い……のか?

結局原因は分からなかったが、楽しかったしまあ良いだろう。

ただ夢中になって遊んでいたら酸欠で倒れて、またあの夢を見た。

そして、「無茶し過ぎなんよ」と犀犬に笑われた。うるへー、まさかぶっ倒れるとは思わなかったんだよ。

 

 

取り敢えず今後の目標を立てよう。

1つは、自分の身は自分で守れるように強くなる

2つ目は水面を走れるようになる

最後に、シャボン玉を霧隠れの里を覆い隠せるくらい大量に出せるようになる、だ。

 

え?忍術はやらないのかって?まあよく考えて欲しい。例えば人が突然魚に転生したとしよう、エラ呼吸ができると思うか?

つまりはそういう事。生まれがこの世界ならまだ何とかなったかもしれないが、何も無い平凡な世界から生まれ変わって来た俺にはチャクラの仕組みなんてサッパリだ。だから早々に諦めるに限る。

え?じゃあ水面を走るのは良いのかって?それはアレだ。今日犀犬に相談したら何とかしてくれるって言ってたから大丈夫だ。

 

よし、もう寝よう。明日もいいことあると良いな。

 

 

 

 

月 日

 

今日も今日とてシャボン玉を飛ばしまくる。昨日少しは学習したので一度にバカみたいに飛ばすような愚行はしない。

ただ何というか、シャボン玉を飛ばす度に俺の中の何かが削れているような錯覚に陥るのは何でだろう?まあ気のせいだと思うけど。だって暫くしたらすぐ回復するし。

それと水の上を走る練習を始めた。正直何をどうしたら良いのか全く分からないが、犀犬が色々教えてくれたので割と出来るようになった。

やっぱあれだな、一回自分の体で体験してみるとコツとかって分かってくるものだな。

俺の体を少し貸してくれと言われたときはちょっと、かなり焦ったが今となっては感謝の言葉しか出ない。

それと結局犀犬は俺の妄想ではなく実在するものだった。色々ツッコミどころはあるが多分この世界はそういう世界だから、うん、もう諦める。

 

 

 

月 日

 

今更気付いたが俺の作ったシャボン玉がシャボン玉っぽく無い。

風に飛ばされないんだ。

いや、本当にどうしてだろう。この世界に元の世界の常識を当てはめるのはもう諦めたがこればかりは譲れない。物理法則を無視するのはやめてくださいお願いします。

 

けど、指を動かすとそれに合わせて動くのは素直に感動した。早速の掌返しだが、そういうのって異世界っぽくてなんか良いだろ?だって複雑な軌道を描いてもちゃんとそれに合わせてシャボン玉が動くんだぜ?最高じゃね?

 

しかし楽しいことばかりでも無かった。そう、俺は見てしまった。風も俺の指示も無視して飛んで行ったシャボン玉が途中でぶつかった岩をデロデロに溶かしていたのを。

ヤベエな。何がやばいってあのシャボン玉を作ってるのが自分だってのが一番ヤバい。まあ、人に当たってないからセーフだよね?うんセーフセーフ。

取り敢えずこれからシャボン玉を飛ばすときはなるべく人気のないところでやろう。

 

 

 

★★★★★★★★★★★

 

昨日決めた通り人気の全くない場所でシャボン玉を飛ばしております、どうも俺です。

今日は風も無いし、絶好のシャボン玉日和ですね!!

 

しゃーぼんだーまーとーんーだー♬やーねーまーでとーんーだー♫やーねーまーでとんでー♪こーわーれーずー消えてった!?え?何処?どこ行ったの!!?あのシャボン玉割とシャレにならない時があるからマジでヤバいって!!

 

いや、落ち着け!!焦っても良いことは無い。まずは一服。ふぅ。あっ、やべ、またシャボン玉飛ばしちまった。

まあ飛ばしてしまったものは仕方ないから折角だしその行方を追ってみよう。

 

そんな訳であいも変わらず風も無いのに何処かに行ってしまうシャボン玉を足元に気をつけながらゆったりと追いかける。この辺一帯は霧のせいで割と視界が悪くなる時があるが、今は快晴。見失うことは無いだろう。……多分。やべえ自信ない。

 

 

 

 

さてさてかれこれ十分ほどシャボン玉を追いかけているが未だに割れる気配がない。ってかさっき木に当たったけど逆に木が腐敗したんだが……き、気のせいだよね?あとなんか後ろから追いかけられてるような感じもするんだが……そういえば今って戦争中だって水影さんが言ってたような………。

やべえよ!!めっちゃやべえよ!!嫌な予感しかしないんですけど!!取り敢えずシャボン玉大量に飛ばそう!!上手くいけばそれを見てほっこりしてくれるかもしれない!!そうでなくとも目眩ましくらいにはなるよね!!……なるよね?

 

いや!!俺はシャボン玉の無限の可能性を信じている!!刮目せよ!!これがシャボン玉の全力だぁぁぁぁああああ!!!

 

 

 

月 日

 

全力でシャボン玉を作ったら大量のシャボン玉とかなり大きなシャボン玉が出来たからやべえ!!これもしかして乗れるんじゃね(笑)という感じで飛び込んでみたらマジでシャボン玉に乗れた件について。ちょっと何言ってるか分かんないですね……。

マジで何でもありすぎるだろこの世界……。

まあなんだかんだ言ってシャボン玉に乗って空を飛ぶのは子供の頃からの夢、というほどでも無いが出来たら良いな〜くらいには思っていたので貴重な経験が出来たとは思うけど。

風に乗って(乗っているとは言っていない)まったりとした時間を過ごすのはなかなか有意義だった。

今が戦争中じゃなきゃもっと良かったんだけどね!!だって目に入る景色、10秒に一回くらいのペースで爆発してたし!!

それと、空から霧隠れの里を見てみたら里の周囲をシャボン玉が漂っていたのだが……俺のじゃ無いよね?ち、違うよね?そうだよね?きっとアレだ!!この里には俺みたいな遊びとは違って忍術でシャボン玉を作り出す人がいるんだ!!

だからあのシャボン玉もきっとその人のやつに違いない!!

ようやく謎が解けた。つまりはあの木を腐敗させたり岩を溶かしたりしてたシャボン玉は別の人のやつだったんだな。成る程、これで気は晴れた。明日からは気楽にシャボン玉が飛ばせるぜ!!

 

それと乗っていたシャボン玉が割れたと思ったら気付けば家に居たんだが……。え?何で?この世界何でもありすぎじゃね?

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

「水影様!!」

「……なんだ?ノックくらいはしろ」

 

そうは言ってみるが現在進行形で戦争を行なっているこの時代、ノックの時間すら惜しいと思うのは当然かもしれないが、最近になって戦争とは違う新たな悩みのタネを抱えてしまっている水影は思わず悪態をついてしまう。

 

「また例の少年が……」

「ウタカタか……」

 

数日前に水影室を訪れた人柱力の少年にして現在水影の抱える最大の悩みのタネだ。

 

「今度は何を?」

「はっ!!霧隠れに潜入して居た敵国の忍びを誘導、その後自身の忍術で撃退しました」

「……敵は?」

「岩隠れの上忍で、女子供関係なく命を狙うかなり凶悪な男です。岩隠れからもマークされていたようですし…」

「……はぁ」

 

頭が痛い、素直にそう思う。

それは件の少年が勝手に行動したのもそうだが、年端のいかない少年までも巻き込んでしまった自分自身の不甲斐なさに因るところが多い。

このご時世、幼いとはいえ能力があるのなら戦争に出すべきではという意見もあるが、水影ーーいや、やぐらとしては大人達が始めた戦争に子供を巻き込みたくないのが本音だ。

もっとも上役達の中には彼を戦場に出すべきだーーそれも1人の忍びとしてではなく人柱力、つまりは人間兵器として戦場に送るべきだと主張する者も多いのもまた現状ではあるが…。

 

「『恩は返す』か。全くあいつは一体どれだけの恩を貰った気でいるんだか…」

「水影様?」

「いや、なんでも無い。それで?例のシャボン玉については何か分かったか?」

「いえ、未だに解析が続いています。それにしても一体何なんでしょうか?敵に対してのみ反応し攻撃する忍術など聞いたこともありませんよ?」

「俺もだ…。それに強い酸で溶かすこともあるそうじゃ無いか、だとすればひょっとすれば……」

 

ひょっとすれば、既に六尾の尾獣との和解が成立しているのかも知れない。そう言いかけたが直ぐに口を噤む。

万が一にもこれを上役達が聞けばウタカタを戦場に出そうという意見はますます勢いを持つ、それは危険だ。ウタカタの身も、霧隠れの里も。

 

「?」

「何でも無い。引き続き解析と周囲の警戒を続けてくれ」

「はっ!!」

 

黄色い閃光。三忍。両天秤。

これから先、戦場はますます激化していくことだろう。最近になって入った情報では木の葉の白いキバの息子がその才能を発揮し始めたとも聞く。

 

「俺も……そろそろ三尾をこの身に宿す覚悟を決めなければな」

 

そうしなければ、恐らくそう遠く無い未来にウタカタが戦場に送り込まれることになる。それだけは阻止しなければ。人柱力だからという理由で人々に疎まれ涙を流して尚、自分への恩のためにこの里を守ろうとするあの少年にこれ以上背負わせるわけにはいかない。

強い意志を持った瞳で未だに終わりの見えない戦場を強く睨みつけ、静かに決意を固める。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

月 日

 

シャボン玉に乗って遊覧飛行ができることを知ってしまったらやっぱやっちゃうよね!!っという訳でシャボン玉に乗って外を探検しました!!

 

割と何でもありな世界だが意外や意外、空を飛ぶ技術は無いみたいで戦場の真上を飛んでいるというのに誰とも接触することは無かった。まあ俺に戦場をみてニヤニヤ笑う趣味は無いし、ただ、必死な表情で殺し合いをさせられている人たちに少しでも心安らぐ時間を提供できたらな〜という思いでシャボン玉を飛ばしている訳なんだが…。

 

ただあまりにも多くのシャボン玉を飛ばしすぎたせいか何人かはこっちを見てきたけど、子供のやったことだからか?見逃して貰えた。

何人かの目の赤い人や目の白い人は驚いた顔でこっちを見てきたが、すぐにシャボン玉で見えなくなってしまった。あれは何だったんだろう?やっぱ空を飛んでるやつは珍しいのかな?

まあシャボン玉で空を飛んでたらそりゃ驚いた顔にもなるわな。

 

それと今回もシャボン玉が割れたと思ったら気付けば自宅にいた。シャボン玉が割れるほんの数瞬前に妙な形をしたクナイ?みたいなのが飛んできたけど体に怪我は無いから、きっと気のせいだね。

 

さて、じゃあもう寝よう!!今日も犀犬とお話だぜ!!

 

 

 

 

 




シャボン玉「我々が」犀犬「ウタカタを守るけんね」


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忍術?いいえ、シャボン玉です

時系列は第三次忍界大戦の真っ只中です



「水遁を扱う忍術使いか…」

「はい、詳しい能力までは分かりませんがかなりの使い手であるのは間違いありません」

「隠密性に優れており周囲の景色と同化しておりました。我々日向一族の白眼か、うちは一族の写輪眼でなければ発見は困難かと…」

「そうか…。うむ、報告ご苦労じゃったな。しばし体を休めよ」

「「はっ!!」」

 

霧隠れとの交戦中突然現れた水遁使いの忍び。報告によれば、シャボン玉のような忍術を扱うとか。それも先ほど部下が言った通り周囲の景色に同化させて。尚且つ油女一族の扱う蟲邪民具(むしジャミング)の術のようにチャクラ感知を惑わせる忍術を扱い、白眼をしてもその姿を正しく捉えることはできなかったとか。

そしてその真の恐ろしさは

 

「忍術を色で見分けるうちはの写輪眼をもってしても、見極められぬか…」

 

強酸、強アルカリ、腐食液、神経毒。あらゆる効果をその表面に染み込ませたシャボン玉が目に見え無い状態で襲いかかる。聞くだけで恐ろしい忍術だ。それが戦場ならどれほどの脅威だったのか、過去の大戦を生き抜いた猛者、三代目火影にはよく理解できる。

 

「火影様、報告が」

「む、ミナトか。如何した?」

「既に既知のこととは思いますが、例の水遁使いの忍びについて」

「そういえば、その忍びを撤退させたのはお主じゃったな」

「……そのことで、詳しい報告が」

「……聞こう」

「まず、推測ですが今回の襲撃はあくまで様子見では無いかと」

「何じゃと?」

「俺の飛雷神の術を見ても特に焦った様子もなく姿を消しました。仮にあの場で我々を全滅させたかったのならその場に踏み止まることも出来たでしょう」

「うむ。そうじゃな」

「それとこれは一番重要なことですが。………時空間忍術を使って姿を消す前に僅かに見えた姿が、子供でした。それも、カカシ達よりもさらに幼い、恐らくは4、5歳くらいの」

「何じゃと!!!」

 

成る程。子供であるのならば木の葉の忍び相手に重傷こそ負わせたもののトドメを刺さなかったその甘さに納得もいく。

だがそれはあり得ないこと、あってはならないこと。戦場にそんな子供を投入することなど人としても忍びとしても。

それは当然人として、大人として自分たちの始めた戦争に子供を巻き込むことへの怒りもあるが。

忍びとして、それほどの才能をもった子供を死地へと送り出すことに対する手前勝手な感情も当然存在する。

 

だからこそ、早くに決着をつけなければならない。この戦争に、ひいては里と里との対立に

 

「ミナトよ。お前達に1つ任務を授ける。引き受けてくれるな?」

「当たり前ですよ。火影様」

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

月 日

 

一年かぶりに日記を書く訳だが取り敢えず言わせてくれ

死ぬ。マジで死ぬ。何でああなったんだろう?

 

よし、この一年を日記で書きながら少しずつ思い出していこう。

 

それは丁度一年くらい前かな?シャボン玉を大量に生産してたら突然それが一箇所に集まり出して、そしたらいきなりそれがミニサイズの犀犬になったんだっけ?我ながら何言ってるか分かんないが事実なんだよね、これ。

 

そんでもって突然現れた犀犬は俺に対して言ったんだ「面白い場所に連れて行ってやるけんね」って。

当時(まあ今もだけど)犀犬をそれはもう信頼しまくっていた俺はその言葉を信じて先を歩き出した犀犬について行ったんだ。

道中、あれ?ここどこ?って思ったことは1度や2度じゃないが犀犬が俺を陥れるわけも嘘をつく理由もないので、そんな疑問は直ぐに忘却の彼方へ。気分はアトラクションに並ぶ子供のそれだった。

 

そうしてようやっとたどり着いたのは、森。それもただの森じゃない。ザ・森だ。え?何で?

そしてそこにいたのはこの森の主であろう大蛞蝓(いや、もはやデカすぎて殆ど白い壁だったけど)。犀犬の親戚か何かかな?

 

話をつけてくると言ってその大蛞蝓のところまで行った犀犬は数分後にホクホク顔で帰って来た、ミニサイズの蛞蝓とともに。もう訳が分からないよ。

 

「初めましてウタカタ様。私はカツユと申します」

「あっどうも、初めまして。俺はウタカタです」

「では早速ですが仙術の修行を始めます」

「why?」

 

そんな会話から始まった一年にも及ぶ修行の日々。修行の最終目標は自然チャクラとかいう空気中に存在するチャクラとフュージョン!!してこれが俺の真の姿だ!!になることだ。

うん、訳わかんねえな。まず前提条件として俺はそのチャクラとか言う奴を使えないんだよ。そんな奴がその上位互換である自然チャクラを使えると思うか?否!!断じて否である!!

まあ結局は使えるようになりましたけどね!!(やけくそ)

流石は犀犬さんだよ!!また体乗っ取って貰ってコツみたいなのを教えて貰いましたよ!!まあそれを踏まえても一年近くかかったんだけどね!!ほんと才能ねぇな俺は。何回か心折れかけたよ、ってか折れましたよ。まあ犀犬やカツユさんが見てる手前弱音なんて吐けなかったけどね?

だってあの2人凄く優しいんだぜ?厳しくされたんならともかく、あそこまで甲斐甲斐しく世話を焼かれちゃったら答えたくもなるでしょ?一年も修行できたのは偏にそれのお蔭といってもいいね。本当、あの2人さまさまだよ。

あと別れ際に口寄せ契約?をした。よく分かんないけどその辺は犀犬が何とかしてくれるらしい。だって俺印とか結べないし。ってか覚える気もないし。俺はただのんびりとシャボン玉でも飛ばしていられたらそれで良いんだよ。

 

 

そうだ、20歳くらいになったら旅に出よう。うん、それが良いな。我ながらナイスアイディア。丁度この世界を見て回りたいと思ってたし、まあその歳になるまで適度に鍛えつつ、金を稼ぎつつ、仙人モード(笑)の練習をしつつシャボン玉でも飛ばしてたらいっか。

 

 

月 日

 

やばい、仙人モードが便利すぎる。何あれ?体がめっちゃ丈夫になるのは知ってたけどここまで丈夫になんのはちょっと予想外だ。

 

確かアレは自室で自然エネルギーを練ってた時だったか?段々と練り終わるのが早くなっていくことに興奮していたらなんか厳つい顔した奴が突然家に強襲を仕掛けて来た。

何となく誰か来るなぁとは思ってたけどマジで来るとは思わなくてびっくりしてたら気づけば刀で斬られて、なぜかその刀の刀身が宙を舞っていた。え?何で?

その後いきなり人に斬りかかっておいて「ひっ、化け物!!」とかぬかしやがるクソ野郎を全力で顔面パンチ。見えなくなるくらい遠くまで吹っ飛ばしてやった。のだがその後自分の体を調べて見ても傷1つついてないんだよね。マジで丈夫すぎる。さっきは思いっきりぶん殴ったけど強ち化け物というのも的外れでは無いな。

 

まあだからと言っていきなり強襲を仕掛けて来たあいつが言っていいセリフじゃねえよな。うん。まじであいつ許すまじ。次会ったらカツユプレスをかましてやる。大きさは大体本体の100分の1くらいか?まあそれで十分潰せるあたりカツユさんがデカすぎるんだけどね…。カツユさんマジパネェッス。

 

 

月 日

 

新しく『何処でもシャボン玉』を覚えた。

能力は文字通りシャボン玉のあるところなら何処でも移動できるモノだ。連発すると俺の中の何かがゴリゴリ削られていくように錯覚するが、まあ長距離移動している訳だしスタミナとかが削られてるんだろ。そりゃそうだ、こんな便利な能力を何の代償もなく使えたら逆に怖い。寧ろスタミナ程度でこんな便利なものが使えるんだからありがたい話だ。

 

後今日は水影さんに会いに行った。この一年ずっと修行(笑)してたし、ってか実質行方不明になってたからその挨拶もかねてだ。

そしたらめっちゃ驚かれた。「お前は、いったい何処まで…」って何のことですか?

え?本当に何?何処まで迷惑をかけるんだってこと?だとしたらごめんね?いや、俺も突然のことすぎて連絡する暇も無かったんですよ?ちょっとした散歩だと思ったら一年にも及ぶ修行になるなんて誰が予想できますか?

 

まああれだ、取り敢えず恩を返す為に頑張りますとだけ告げて何処でもシャボン玉使って全力で逃げ帰った。あのままあそこにいたらなんかヤバそうな気がしたし。

 

 

 

月 日

 

シャボン玉に乗ってのんびりまったりしながらシャボン玉を飛ばしつつボーっとして家に帰って来たら女の子がいた件について。マジで何があった。誰か!!俺に説明してください!!!いや、本当、切実に。

 

ってか本当に誰?未だに目を覚まさないから本当に分かんないんだけど…。

 

 

月 日

 

女の子を放って外でシャボン玉飛ばすのも何だから家で仙人モード(笑)になったり、適当にシャボン玉飛ばしたりしながら時間潰してたら漸くお目覚めになってくれた。

よかった。あのまま眠り続けてたらちょっと、どころかだいぶヤバかったし。主に警察のお世話になる的な意味で。

 

まあいきなり自殺しようとしたからどのみちお世話になりそうになったけどね?何だよ「くノ一でも木の葉の忍び!!情報を取られるくらいならここで死ぬ!!」って。

いやまあ分からなくはない……訳でも無いな。取り敢えずシャボン玉でも見て落ち着こうぜ?あっ、そのクナイはこちらで没収しときます。戦時中ってのは知ってるけど、女の子が持っていていいもんじゃ無いよ?

 

そんなこんなで最後にはシャボン玉を見て落ち着いてくれたのか、若干引きつった顔で、ってか恐れているような顔でこっちを見て来たが(いや、何を恐れることがあるんですかね?)俺に悪意がないことが伝わったのか暴走するようなことは無かった。シャボン玉式シャンプーが功を奏したのかな?

 

ってか両手をシャボン玉が捕縛しているように見えたんだけど、アレって気のせいだよね?だってシャボン玉だし。そんな強度は無い……そういえば俺シャボン玉で空飛んでたな。ヤベェ来ちゃうな、警察来ちゃうな。

 

ってか来てたと思う。よくは分からないが仙人モード(笑)になって気配に敏感になってたから外に何人かいるのには気付いてた。

まあすぐどっか行ったけどね。それも走り去っていくとかじゃなくて突然気配が消えるやつ。これが忍者か。俺みたいなのとは違うな。

 

あっ、あと家にいる女の子はのはらリンって言うらしい。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

(ミナト先生から話は聞いていた例の水遁使いの忍び。まさかこんな子供だったなんて…)

 

無防備にもこちらに背中を見せてシャボン玉を飛ばす少年を無意味とは分かっていながらも睨みつけるが、当の本人は意にも解さない様子である。

それがまるで『お前など眼中にない』と言われているようで余計に腹がたつが現状両手を彼の忍術で封じられ、忍具すらも奪われた状態では成すすべがない。

そのことが只々悔しくて血が滲むほどに唇を噛みしめるがすぐに回復させられる。下手をすれば舌を噛み切っても再生するかも知れないと思わせるほどのその医療忍術の腕前は、同じく医療忍術を扱う者として敬意を払うほどのものだ。

 

 

 

数時間前、霧隠れの忍び数名と交戦し為す術もなく捕らえられた自分は、そのまま三尾の人柱力とされ木の葉を襲撃するための人間兵器とされるところであったがそれを止め、自身を救ったのは他ならぬ目の前の少年だ。

 

姿こそ見えなかったが大量のシャボン玉によって霧隠れの忍びを襲撃し、その中に紛れ込ませた時空間忍術を可能とする1つをもって自分を自らの根城まで転移させたのだ。

その時点では既に意識の朦朧としていた彼女ではあったが大量のシャボン玉が自身を救ってくれたことはよく覚えている。

 

だからこそ、余計に分からない。自分を利用しようとした霧隠れの忍びを同じく霧隠れの少年が邪魔をすることに。

 

(一体何が目的なの?)

 

先ほどのことを取ってもそうだ。自分を追いかけてきた忍びを在ろう事か少年が倒したのだ。

恐らくは得意の水遁を使った忍術で。

 

(それに目の周りの隈取り。ミナト先生と同じなら恐らくは仙術も使って)

 

先生は言っていた。世の中には私たちよりも幼くて先生よりも強い忍びがいると。

当時はまるで本気にしていなかったそのセリフ。それは波風ミナトという忍びが『木の葉の黄色い閃光』としてその名を知らしめていたこともそうだが、同期で最強でかつリンの想い人であるはたけカカシですら手も足も出ないミナトに、自分たちよりも幼い子供が勝てる筈がない、そんな想いがあったのだ。

しかし、事実目の前に現れた以上、認識を改める必要があるのも事実。

 

けど

 

(悪い人じゃないのよね)

 

今日1日の言動を見ると、ある程度は行動を制限してくるが、必要最低限ーーどころかこの時代じゃあり得ないほどに豪華な食事を提供してくれる。

それに女の子の命である髪の手入れだってしてくれる。

こう言っては何だが理想的な捕虜の扱い方だ。むしろ理想を大きく上回ってかえって不気味に感じる程だ。

 

(そのまま木の葉まで送って貰うっていうのは、流石に高望みが過ぎるかな?)

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

リンちゃんが帰りたいそうなんで送って行くことにした。まあ送って行くって言ったらめっちゃ驚いた顔されたけど。

いや、何でだよ!!帰りたいんじゃ無いの?それともあれか?俺が人を見送るような人間に見えなかったってことですか?流石に怒るよ?激おこだよ?

 

「私は捕虜なんでしょ?」

 

いや、捕虜って何ですか?確かに今は戦時中だけど、俺は捕まっている君を見て助けねば!!って感じで凸ったわけでも無いし、家に帰ったら気付けばいたような女の子を送るだけですよ?

まあそれじゃ納得しないようだから俺も切り札を切るけど

 

「水影に確認したら君のような捕虜は捕らえていないとのことだ。だから問題ない」

 

ほんと新しく開発したシャボン電話は有能。遠距離の相手とシャボン玉を使って会話できるとかマジで神がかってる。通話時間に比例して俺の中の何かが削れることを除けばね。

だめだ、思ったより有能じゃねえな。これからは有事の際以外は極力封じておこう。うん。それが良い。

 

「……水影」

 

とか思ってたらちょっと引かれてた件について。何?傷付くよ?

 

よし、取り敢えず気持ちを切り替えていこう。送るって言ってもシャボン玉使えば安心安全の空の旅だしな。楽勝楽勝!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンを返せ!!!」

 

そう思っていた時期が僕にもありました(アレ?なんかデジャブ)

なぜか白髪の少年に睨まれているんですが。

イヤ本当になんで?俺はただ送り届けようと思っただけだよ?見てこの顔?嘘ついてるように見える?中身はともかく少なくともこの体は現在5歳くらいだから、割と真面目に信頼できると思うよ?

 

「カカシ!!大丈夫、この子は味方だから!!」

「………貴様ぁ!!幻術までかけたか!!」

 

落ち着こうぜ!!まず幻術って何?俺この世界に来てもう一年も経つけどそんな言葉聞いたことないよ?

でも、うん。もうめんどくせぇや。なんかどう頑張っても説得できる気がしないからちゃっちゃと引き渡そう。犀犬が追いかけて来てる奴がいるって言ってるし。

 

っというわけで行ってらっしゃいリンちゃん!!

 

「きゃ!!」

 

突然背中を押されたことで可愛い声を出す彼女にちょっとほっこりしたが、それどころじゃなくなった。

 

《来たみたいやねウタカタ》

「マジかよ」

 

振り返ると優に30は超える霧隠れの忍びの皆々様方。霧隠れ式の送迎かな?え、違う?デスヨネー。

取り敢えずどうする?既に仙人モード(笑)の準備は完了してるし、犀犬がいるから多分余裕でボッコボコにできると思うけど。

ってか一応俺も霧隠れの者なんですが、どうして殺気を向けられてるんですかね?何?怒るよ?怒っちゃうよ?カツユプレスをかましちゃうよ?

今なら本体の10分の1サイズくらいなら口寄せできる自信あるよ?あくまで自信だけですけどね!!

 

あとカカシ君だっけ?「やはり罠だったか!!」って言うのやめてくれる?俺も聞いてないし。ってか俺にも殺気飛ばしてるの見てたら分かるでしょ!!

 

まあこうやって焦ったように見せているが内心そうではない。念のために道中『何処でもシャボン玉』を仕掛けておいたのだ。それも大量に。

だから大丈夫。うん、少なくとも死ぬことはない……よね?ちょっと自信なくなって来た。

 

「リン!!カカシ!!」

 

っとか思ってたらまた新しいの来ちゃったんだけど!!今度は何!!?

 

「「オビト!!」」

 

誰だよそれ!!何?あの黒いパーカーみたいなの身に纏ったちょっと顔の右半分おかしい人は君たちの知り合いなの?

 

「お前、死んだんじゃ…」

「詳しい事情は後だ!!今はこの場を切り抜けるぞ!!」

 

っとか言いながらも感動の再会を果たすメンツに背を向けながら大量のシャボン玉で追って来た忍びの足止めをするどうも俺です。

シャボン玉に隠れて見えないがあっちの方で「ぐわああ」とか「ぁぁぁああ!!」とか悲鳴が聞こえるのはなんでだろ?ああ、シャボン玉が目に入った?そりゃ痛えわ。だってシャボン玉って石鹸水で出来てるし。

 

それとなんか俺の中の犀犬さんが暴れさせろと煩いんだが、どうすれば良いの?何?シンクロすれば良いって?ワォ何それ面白そう。じゃあちょっとやってみますか。

 

「行くぞ。犀犬」

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「行くぞ。犀犬」

 

その言葉をきっかけに暴風のように吹き荒れるチャクラに急ぎその場を離れる木の葉の3人の忍びの前に現れたのは、まさしくチャクラの化け物であった。

 

「あれは、六尾!!」

 

その正体を唯一知るカカシの叫びに残りの2人は驚きが隠せないでいる。

特に短い付き合いとはいえ、カカシやオビトよりも長い間少年の近くにいたリンは殊更に。

 

「だがカカシ……」

「ああ、あの少年、完全にコントロールしている」

 

恐ろしい。素直にそう思う。

尾獣とはまさしくチャクラの化け物。特にその中でも凶暴な九尾という存在を知る木の葉の忍びにとって、あまり良い印象を持たない存在だ。

それを自分たちよりも遥かに幼い歳でコントロール下に置いているのだ。恐怖を感じない訳がない。

 

「大丈夫よ。カカシ、オビト」

 

けど、それでも少女は信じる。

たった数時間の付き合いではあるが、どうしてか彼は信頼できると、そう思えた。

 

事実強大なチャクラを身に纏いながらもかけらも恐怖を感じさせない。むしろ温かみすら感じる程だ。「ここは大丈夫。自分がなんとかする」と暗にその背中が物語っているようにすらリンには感じられた。

 

そしてそんな彼女の言葉をこの場にいる2人は無条件に信頼する。それは正しく絆。長い付き合いの中で芽生えた確かな信頼関係がそうさせるのだ。

 

「行こう、カカシ、オビト!!」

「ああ」

「おう!!」

 

アレだけ多くの敵の忍びを前にして、背を見せることは自殺行為ではある。それでも彼らは少年を信じ、背中を預けた

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

「マダラ様〜。オビトが木の葉に帰っちゃったよ〜」

「……何?」

 

バカな、あり得るはずがない。自分の立てた計画ではオビトは今頃目の前で愛する者を殺されている筈だ。そしてその計画に万に1つも失敗はない。

何故ならこの計画だけは自分がーーうちはマダラ本人がその瞳術をもって有象無象でしかない霧隠れの忍びを操ったのだから。

あの雑魚連中に自分の瞳術を解く術があるようには思えないし、それ以前に操られていることにすら気づいてはいない筈。事実見張っていたゼツ達の報告によれば全て上手くことは進んでいた。

 

「……ん?」

 

僅かに感じた違和感。だが、それは決定的だった。

 

(ゼツが幻術にかかっている、それも仙術まで練られた精度の高いものを)

 

成る程。それならば納得がいく。

つまり、これまで報告されて来たものは幻術によって見せられた嘘の情報。現在ゼツがうちはオビトが木の葉に帰ったことをまるで当然のように自身に語っているところを見るにうちはの瞳術にすら迫る質の高いものであることはまず間違い無い。

だが、見張りをしていたゼツ、その全てに幻術がかかっていた所を見るに写輪眼では無いことは容易に分かる。

 

そこまで判断したうちはマダラは

 

笑う

 

「ハハハハハハッハハハハ!!!このうちはマダラの一枚上をいくか!!面白い、面白いぞ!!!!」

 

正直この時代の忍びには何の期待もしていない。かつて殺しあった千手柱間に比べればどれも取るに足らぬゴミでしか無かった。

だが、事情は変わった。どういうわけかマダラの存在に気付き、その計画を潰した忍びがいる。元来戦闘狂なマダラにとってこれ以上ない楽しみだ。

 

そして、そうであるならばわざわざ手駒となるものを見つける必要もない。それほどの忍びがいるのならば自ら行動を起こすのがうちはマダラだ。

 

「あの男の術など使うまいと思っていたが、まあいい。ゼツ…計画を変更する……

 

 

 

 

 

穢土転生を使い、俺を蘇らせるぞ。ここからは俺自ら動く」

 

 

 

 

 

 

 




僅か二話で物語の難易度がハードモードからクレイジーサイコホモードに爆上げされました。物語の大筋は変わりません。
ただ死傷者等は減るが派手好きなサイコホモのせいで地形は大きく変わる模様
一応穢土転生体ということで弱体化してるんだけどなぁ……


ここで忍術の説明
シャボン玉
時空間忍術から幻術まで何でもござれなチート。主人公が勘違いされるときは大抵こいつのせい。
原作我愛羅の砂同様にウタカタの両親の意思が宿っているという裏設定。だが何故か仕事をすればするほど主人公が狙われるという負のスパイラル




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主人公、早くも死にそうです

誰かを救うためには!!誰かが犠牲にならないといけない!!

ーーっというわけで主人公、お前生贄な

主「え?」


月 日

 

リンちゃん達を送り届けて、その途中で何故か霧隠れの忍びに襲われて……だめだ、そっから先はどうも思い出せない。

 

何となく、こう、犀犬と一体化して大暴れしたような記憶があるんだが、鮮明に思い出せない。まあ俺は生きてたし、さっきシャボン玉で確認したけど無事にリンちゃん達も帰れたみたいだから別にいっか。

うん、終わりよければ全て良しって言うしな。万事オケェ!!だ。

 

 

月 日

 

何と言うか、1人っきりの我が家っていうのは寂しいな。

水影の話によればもうじき戦争も終わるらしいから、戦争が終わって暫くしたらリンちゃんに会いに行こうかな?うん、我ながらナイスアイディア!!ついでにこう、なんて言うの?20歳になったらやる予定の1人旅の予行演習みたいなのもしよう。

本番は自分の足で歩いて回るつもりだけど、今回はシャボン玉で飛んでいけばいいよね。

 

そうと決まったらそれまでにできることは片っ端からやっていくか!!

取り敢えず体鍛えて道中仮に山賊にでも襲われた時に対処できるようにはしておこう。よし!!っというわけで明日からは犀犬にでも頼んで修行(笑)だ!!

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「やはりか」

 

数日前、ウタカタから来たのはらリンという捕虜に関する情報。

それについて詳しく調べてみた結果出て来たのはここ最近行方をくらましていた上忍数名についてだった。

実力は高く、その人柄も霧隠れでは珍しいほどによく出来た忍び達である。それが水影である自分に何の報告もせずに捕虜を捕らえる?あり得ない。

 

っとなれば疑わしいのはやはり幻術。それも彼らほどの手練れを操れるほどとなると候補は必然絞られる。

だが、

 

(疑わしいのはうちはのもつ瞳術。だが木の葉の忍びが木の葉を襲わせるか?)

 

それは、違う。仮に木の葉の内情がどうであれ、この戦時中にわざわざそんなことをするのは単なるバカのすること。

たとえうちはの忍びが木の葉に不満を抱いているのだとしても動くのなら戦争が終わった後、疲弊しきった所を狙う方が余程安全で確実だろう。

 

だとすれば、この一件。相当に闇が深い。

そしてウタカタは

 

(そのことに気付いている)

 

だからこそあいつはわざわざ連絡用のシャボン玉を飛ばした。それもいくつかのフェイクを混ぜた上で。

 

そして自身は単身、のはらリンの護衛につき木の葉まで無事送り届けた。あの少年が何を何処まで知っているのかはまだ分からないが、恐らく彼が出なければならない程の事件

 

(事実あいつは尾獣化したと聞く、それによって彼女達を守り、同時に各里に告げたのだ。『尾獣を完全にコントロール出来る俺がいる』と)

 

事実それによって各里は戦争から手を引き始めている。

当然だ、雲隠れには1人尾獣を操れる者がいると聞くがその実力は天と地ほど離れたもの。

さらにいえば六尾は毒ガスや強酸といった特殊な攻撃で戦う存在。

それに勘のいいものは気付くだろう。木の葉の手練れに重傷を負わせ撤退させた噂の水遁使いが、六尾を完全にコントロールする人柱力であることに。

それほどの忍びが本腰を入れて戦場に出てくれば、被害はこれまでの比では無い。だからこそ各里は戦争から手を引かざるを得ない。

 

だが、何かが引っかかる。あの少年程の忍びが、ただ戦争を止める為だけに態々姿を見せるようなことをするだろうか?

それはつまり

 

(今起こっている大戦よりも遥かに恐ろしいことが待ち構えているとでも言いたいのか?)

 

そしてそのためには、すべての忍びが手を取り合わなければならないと。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

月 日

 

戦争が終わってから早一年。俺は6歳になった。

世界は大分安定して来たみたいだし、そろそろリンちゃんに会いに木の葉隠れまで旅行しようと思う。

シャボン玉を使っても大体3、4日かかるようだけど、まあたまにはそういう長旅もいいね!!

 

っというわけで今日は早く寝て明日に備えよう!!

 

あっ、そういえば歩くの面倒だったからシャボン玉飛ばして水影と連絡をとって明日から木の葉に行くって言ったら何故か神妙な顔されたんだけど何でだろ?

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

っというわけでやって来ました空の旅!!いやあ快適快適!!

流石に道中ずっとシャボン玉の中で寛ぐのもあれだから時たま仙人モード(笑)とかになってはいるけどね?自然エネルギーを練るのはもはや日課みたいなもんだから。むしろ暇つぶし?だめだ、それ言ったらカツユさんに怒られそう。

 

けど、3日もシャボン玉でプカプカするのって意外にしんどいなぁ。

犀犬と喋ってたらそうでも無いか?だめだ分かんねえ。取り敢えずシャボン玉飛ばしとこう。

特に仙人モード(笑)中のシャボン玉ってなんかいつもとは違う感じがして、飛ばしてて楽しいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、漸く火の国が見えて来た。ただ飛んでるだけとはいえ流石に疲れて来たし、なんかオアシスにすら見えて来たよ。

まあまだもうちょい時間かかりそうだし、暇つぶしがてら自然エネルギーでも練っとくか。最近だと3秒とかからず仙人モード(笑)になることが出来るようになったしな。っと言っても殆ど犀犬のお蔭だけどね!!ほんと犀犬様様ですわ〜

 

「……ん?」

 

仙人モードになって分かったが、なんか物凄くヤバそうなのが高速で木の葉に向かってるんですけど、え?何あれ?

取り敢えずシャボン玉でも飛ばして一息つこう。

きっとあいつはアレだ、任務が終わって愛しの妻子に会わんと全力ダッシュする親バカだ。だからきっと関わったらマズイ。具体的には見たこともない悪人ヅラでニヤ、じゃなくてニヤァくらい笑って襲いかかって来そう。

 

っとか思ってたら突然立ち止まった。何?どうしたの?

そんでもってこっちを見てニヤァと笑ううううううううう!!やべえ!!やべえのに見つかった!!何だあのクレイジー野郎!!何でこっち見んの!!1キロくらい離れてますよね?目があったよ!!シャボン玉で視力強化してる俺と目が合ったよ!!!しかもこっちに接近してるううううううう!!!!

誰かあああああ助けてぇぇぇええええ!!

 

って火が飛んで来たっァァアアあああ!!!!シャボン玉割れるうううううう!!

 

 

 

 

やべえもう笑うしかねえ。何とか別のシャボン玉に移動したけど、それが運悪く木の葉近くの森の中を彷徨ってるやつだったから実質下に降りたも同然なんだよね。

やべえええ来てる!!クレイジーが来てるうう!!

 

「見つけたぞ、仙術を扱う小僧」

 

ぎゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!出たアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

「またしても俺の計画の先を読んだか、面白い!!九尾より先に貴様を仕留めてくれる!!!」

 

何でええええ!!!!いけよ!!九尾さんのところ行けよ!!待ってるよ?きっとあなたの帰りを待ってるよ!!

 

取り敢えず逃げます!!そりゃもう全力で!!スタミナなんか気にせずに『何処でもシャボン玉』連発してやる!!

 

 

 

そうして始まりましたリアル鬼ごっこ!!何でだろうね、こっちは仙人モード使って、犀犬さんの力借りてるのに何であのクレイジーサイコ野郎はついて来られるんだろうね!!

「いいだろう、その誘いに乗ってやる」じゃねえよ!!誘ってねえよ!!帰れ!!木の葉に帰れ!!もしかしてお前ホモか!!クレイジーでサイコなホモなのか!!悪いがホモは帰ってくれえええええ!!!!

 

あっ、なんか光が見えて来た!!!森を抜けた先に滝があるよ!!そこだ!!そこに行こう!!あとは水に紛れて何とか逃げよう!!ってか現状それしかない!!イッケエエエエエ!!

 

「ほう、ここは。成る程、なかなかいい趣味をしている」

 

っとか考えてたらいつの間にか先回りされていた件について

何で既に向かいにいるんですか!!ってかお前が乗ってるその石像のようなやつ随分とあなたにそっくりですけど?え?同一人物?ハハッもう笑うしかねぇ。

 

「さて鬼ごっこも終わりだ。さあ戦いを楽しもうか!!!」

 

ご勝手にして下さい。って言っても無駄ですよね?知ってた。取り敢えず先手必勝のシャボン玉目眩し!!ってか俺にはシャボン玉しか無いんですが此れ如何に。

 

「俺に幻術は効かん!!」

 

いいえ現実です。

ってか幻術なんて使ってないんですが?何を勘違いされていやがるんですか?むしろこの現状が幻術であって欲しいよ!!割と切実に。

 

まあ願ったところで現状が現実なんだけどね(泣)ってかまた火を吹いて来たぁあ!!けど、何処からともなく現れた犀犬の尻尾と、周囲を舞っていたシャボン玉が鎮火してくれた!!ありがとう犀犬さん!!俺一生あんたについて行くよ!!

 

それに今周囲にはシャボン玉が蒸発してできた蒸気が溢れている、よし!!この隙に逃げよう。全力で!!

 

っというわけで犀犬さん!!力貸して下さい!!

《尾獣化やね、任せとき》

 

え?尾獣化って何?

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

「ほう、尾獣化したか」

 

一部を尾獣化して攻撃を加えてきた時から予感はあった。

そして案の定現れた山よりも大きな化け物を前に戦意は萎えるどころか益々高まっている。

柱間ほどの多彩さは無い、だが柱間同様仙術を扱い、印も結ばずにあらゆる忍術を扱うあたり、期待は出来る。

 

(強酸、強アルカリ、毒液、更には幻術作用のあるもの。成る程、並みの忍び、どころか手練れであろうとこのガキの前ではまるで歯が立たんだろう。それにこれほど多彩ならば封印術の1つや2つ持っていてもおかしくは無い。迂闊に突っ込めばまず間違いなく封印されるだろうな…)

 

さらに加えるなら最強の瞳術である万華鏡写輪眼をもってしても見極められないほどに練度が高い。

歴戦の猛者であるマダラだからこそ、その膨大な戦闘経験からくる勘で対処出来るがそれもそろそろ怪しくなって来た。

 

(戦闘の最中に成長するか、面白い!!)

 

穢土転生体になった事で大幅に弱体化したとはいえ、その忍術体術が全て一級品のマダラ。

その彼が最も得意とする【火遁・業火滅却】を防ぎ切るほどの水遁を当たり前のように使いこなすその腕前、恐らくあと数年もすれば自らの全盛期にすら迫る。そう確信させる何かを少年は持っていた。

 

「面白い!!面白いぞ小僧!!!ならば今ここで!!生き延びてみせろ!!!!」

 

もちろん、だからと言って見逃すマダラでは無い。今ここで死ぬのなら所詮はその程度の器でしかなかったと言う事。

だからこそ全力で殺しにかかる。たとえその結果自らを楽しませてくれる存在を失うことになるとしても。ここで生き抜いて、さらなる闘い(楽しみ)を先の未来で行えることを期待して。

一切の躊躇なく自身の持つ最強の技、完成体須佐能乎を発動させる

 

「ハハハハハハハハハハハ!!!………ッ!!何!!」

 

いつの間にか自身を覆い隠していたシャボン玉が次の瞬間には破裂し、気付けば何処とも分からない場所へと飛ばされていた。

 

(時空間忍術!!っということはあの尾獣化は俺に須佐能乎を使わせるためのフェイクか!!)

 

全てはあの一瞬、須佐能乎を発動させるためにマダラがチャクラを練るその一瞬の隙を作り出すためのもの。そしてそれまでに作り出していた水遁忍術も恐らくははあの一瞬を生み出すための伏線。

 

あの滝ーー柱間とマダラの最後の戦いの地まで誘導したとき、あの少年は確かに時空間忍術を使っていた。だがその移動距離は大したことはなく、せいぜいが近場にある別のものへ移動する程度しか出来ないと思い込んでいた。

だからこそ警戒しなかった。いや

 

(警戒させなかったと言うのが正しいか)

 

恐らくはあの少年はここまでを計算していた。

 

思い返せばそうだ、九尾捕獲のため出産日である今日を狙い木の葉を襲撃しようとしたマダラを、あの少年は自らを囮にすることで誘い出しのだ。

それもご丁寧に、ゼツにかけられていた幻術に練られた仙術と、全く同じものをその身に纏って。そうすれば確実にマダラの意識がそちらに向くと理解した上で。

 

そうして誘い出した少年は戦いの最中マダラに示したのだ『俺がいる』と。

里という1つの組織ができるまでの間、血で血を洗う戦乱の時代を生きたマダラからすればこの時代に生きる忍びはただのゴミでしか無い。何の面白みも感じさせない、だからこそ当初はオビトを使って月の目計画を進めようとした。

だが現れた。嘗ての柱間を彷彿させる忍びが。

戦闘狂であるマダラを何処までも興奮させる才能が。そしてその才能はまだまだ伸びる、それこそ敢えて生かそうとマダラが本気で思った程には。

 

マダラの望む計画の一番の弊害になると分かった上で、それでもなおマダラに流れるうちはの血が、戦闘を望む血が、少年との再戦を望むことに一縷の望みを抱いて。

そして少年は賭けに勝った。

マダラとて計画を辞める気は無い。だが同時に、無意味に計画を急ぐ気もまた、ない

 

少なくともあの少年がいつか自身と対等なステージに立つその日までは……

 

「ウタカタァ……!!」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

生きてる!!!俺生きてるよ!!頑張った俺超頑張った!!!

あのクレイジーサイコホモを覆い隠したシャボン玉が割れたと思ったら、姿が消えてた時はマジで焦ったよ!!だってそうだろ?目の前にいるのもめっちゃ怖いけど、いきなり消えたら正直その比じゃ無いくらい怖いじゃん!!

犀犬が大丈夫って言っても30分くらいはずっと警戒してたし!!

 

 

そのしばらく後くらいかな?なんか武装した爺さんがやってきて『このチャクラ……まさかうちはマダラの!!』っとか言ってたけど

何知り合いなの?あのクレイジーサイコホモの知り合いなの!!?だとしたら割と全力でなんとかしてください!!!警察!!警察に連絡して!!!

え?木の葉じゃ警察はその うちは がやってるの?『こいつです!!お巡りさん!!』が『こいつ、お巡りさんです!!』になってんの?

ふざけんなじじい!!そんなクレイジーな奴にお巡りさんやらせちゃマズイだろ!!!捕まった犯罪者に同情する気は無いが、それでも同じ男としてホモに見張られて一睡も出来ない奴には『うわぁ』ってなるぞ!!

 

取り敢えず俺への謝罪として一泊させてくださいお願いします!!出来れば女性のいる部屋で!!暫くは若い男性とは顔も会わせたく無いんです!!若干の男性恐怖症なんです!!!嘘ですガチで男性恐怖症なんです!!!

 

 

 

 

月 日

 

や☆ど☆!!!

 

日記を書けることがこれほど幸せなことだなんて思わなかった!!嬉しい!!嬉しいよ!!!本来なら今日を俺にとっての特別な日にしたかったけど、やっぱあのクレイジーサイコホモと出会った日でもあるからやめた。

だってあのホモと出会った日を特別な日にしたく無いじゃん!!分かってくれるよねこの気持ち!!

 

しかもリンちゃんと同じ部屋にしてくれた!!ありがとうジジイ。けどやっぱ相対的に見てマイナス方面突っ切ってるから許すことは無いからな!!

 

さて、無意味にテンションを上げてみたがもう無理。疲れた。寝る

 

 

 

月 日

 

火影室とかいう場所に連れていかれてなぜか礼を言われたんだが……なぜ?

助かったって何?もしかして……あくまで推測だけど、お前ら自分の身可愛さにあのクレイジーサイコホモに、このいたいけな少年の体を生贄に捧げた?助かったってもしかしてそういうことか?おい…おい!!ふっざけんなコラァアア!!俺がどんだけ怖かったと思ってんだよ!!!

 

『君は既に知っていると思うが、今日は俺の妻の出産日でね…』っじゃねえよ!!そうだね!!確かに出産日に夫が別の男に掘られているとか悪夢以外の何でも無いよね!!けどやっていいことと悪いことがあるだろ!!!こっちはまだ、あくまで体は齢6歳のガキだぞ!!

 

もういい!!礼をさせてくれとか言われたけど知らない!!そんな礼なんていらない!!帰る!!霧隠れに帰る!!

 

 

けど出来ればその前に美人の多い里を教えてくれませんか?

あっやらしい意味じゃ無いですよ?あくまで療養のためです。主に男性恐怖症を治すための。

 

 




副題(主人公、早くも男性恐怖症を患った模様)っでお送りしました。

まあ原作死亡キャラを救えたから、いいよね?うん。主人公は犠牲になったのだ。
そしてこれからも犠牲になって貰おう。次は……オカマの蛇かな?
主「え?」


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伝説の始まりはいつだって勘違い。

沢山の評価感想ありがとうございます。


そう言うわけで本編開始前に作者から一言

文字化け死ね


月 日

 

今日は友達が出来ました。

なんか小学生の日記みたいになってるけど事実だからいいや。

 

相手は九尾、名前は九喇嘛だ。

 

朝起きてさあ今日は何しよっかな〜。帰りてえな〜。なんて思っていたらいきなりミナトさんがやってきて病院まで連れていかれた。

なんでも奥さんを紹介したいらしい。自慢かな?自慢でしたね。だって紹介が「彼女は俺の妻のクシナ。どう?可愛いでしょ?」だからな。

この人は将来絶対親バカになると確信した。

 

そんでもって紹介を受けたクシナさんが握手を求めてきたからそれに答えたら突然謎の空間へ。

焦ったけどよく考えたら犀犬と会話するときもいつもそんな感じの空間だったから、すぐに冷静になって周囲を見てみたら目の前に超巨大な狐がいてまあビックリ。

 

だが俺は見た、その狐に九本の尻尾があることを。九尾だ。伝承に伝え聞く九尾だ。あのクレイジーサイコホモが会いたいとか言ってた九尾だ。

=仲間だ。同じ被害者だ。

 

確信した俺たちは分かり合えると。

 

「俺と友達になろう」

 

 

 

気付けばそんな言葉が出ていた。

 

まあ九尾、改めて九喇嘛の中では人間=マダラみたいな図式が出来上がっているようで会話するのも一苦労であったけど、最後には拳を合わせてお別れ出来たし友達で間違いない。やっぱ心をつなぐのはいつだって共通の敵だと思った。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

気にくわない

 

九尾——九喇嘛が初めてウタカタと対峙して感じたことだ。

 

人柱力であるクシナが火影の妻であるからか、九喇嘛の耳には忍界の情報はよく入る。その中でも特に記憶に残るものは二つ。

 

一つは第三次忍界大戦をたった1人の忍が終息させたということ。

もちろんこれは言葉通りの意味ということでは無い。だが、事実ではある。

戦争とは始まりこそ些細な事かもしれないが引き際は難しいものだ。それも当然。誰にだって戦争によって得たものがその代償と釣り合っているかなど分かりはしないのだから。

だからこそ各里は欲をかく。それはさながら博打のように、潮時であることに気づいていながら、どこかの里が手を引くことを待っている。

 

だからこそ、1人の忍びが戦争を終息させたというのは事実だ。彼はキッカケを与えた。

五大国の中心——最も戦闘の激化した地にて尾獣化し、半径1キロにも及ぶ広範囲に毒ガスを撒き散らすことで全ての里に平等に鉄槌を下した。

当然死者は出ていない、だがそれは宣告だ。『これ以上争うなら大国だろうと滅ぼす』と行動によって示したのだ。

結果機会を得た、否与えられた各里は兵を引き上げ、事実上戦争は終わった。

余談だがミナトが言うことには近くにいた彼の部下であるカカシ、オビト、リンにはシャボン玉による結界を張って、身を守っていたらしいがそれを知るのはごく僅かの忍びだけだ。

 

そして二つ目であるが、これはつい昨日のこと。即ちマダラ襲来を1人で食い止めた忍びがいることだ。

マダラの恐ろしさは九喇嘛自身、身をもって知っている。まともにやり合って生きていられる者は限られた者だけだろう。

だからこそ、その忍びの異質さが誰よりも分かる。その忍びの強さが誰よりも分かる。

 

だが同時に九喇嘛は知っている。力があればあるほど、忍びとはその強すぎる力に溺れるものだと。

力を持つということは同時に尾獣達をただの力としてしか見ることしか出来ないということ。

かつてマダラと唯一対等に戦った柱間ですら、終ぞ九喇嘛の存在をただの力としか見なかったのだから。

 

故にウタカタは異質だ。

 

彼の中に自身と同じ尾獣がいることにはすぐに気付いた。だがそれが何だ。彼が人柱力であろうと、それは彼が九喇嘛を恐れない理由にはならない。

例え尾獣化出来るほどの実力者であっても九喇嘛と他の尾獣では人間に対する憎しみが違うのだ。

九喇嘛の出す憎悪をその身に受ければすぐにただの化け物としか見なくなる、少なくとも出会ってすぐはそう思っていた。

 

「俺と友達になろう」

 

その言葉を聞くまでは。

 

年相応にあどけない笑みを浮かべて、自らに封じられた尾獣である六尾——犀犬の頭に乗りながら九喇嘛に手を差し出す少年は、やはり異質だ。

だが人をカケラも信頼していない九喇嘛はそんな言葉を信じはしない。たとえ目の前の少年から微塵も悪意を感じないとしても。

故に一蹴しようと思い口を開け……辞めた。

 

九喇嘛は人を信じはしない、信じるとすれば言葉ではなく行動で示された結果だけだ。

だからこそ、何も言えなかった。

 

尾獣の頭に立ち、マダラを退けた少年にかける皮肉を九喇嘛は持ち合わせてはいなかった。

 

犀犬は尾獣の中では比較的大人しい性格だ。だがその能力は決して大人しいものでは無い。

九喇嘛を尾獣最強とするなら、さしずめ犀犬は最凶。

それほどまでに犀犬の能力は何かを殺すことに特化しすぎている。そしてそれは人間とて例外では無い。力の使いどころを間違えれば大国といえどなすがままに蹂躙出来うるものだ。

それは人柱力たるウタカタも当然知っているもの。だからこそ、その力を完璧にコントロールしているウタカタは、その力をあくまで何かを救う為だけに使うウタカタはやはりどこまでも異質だ。

 

九喇嘛は人を信じない。それはこれまでの過去で、一度として本当の意味で九喇嘛を見た者がいない為。誰も彼もが自分たち尾獣をただの力としか見ようとしない為。

憎しみが、恨みが、ただ九喇嘛を突き動かす。

 

だから、九喇嘛がウタカタに拳を差し出したのは、決して信頼からでは無い。

 

ただ一瞬、されど一瞬、重なって見えた。見えてしまった。嘗て力の塊を、チャクラの塊を九つに分け、それら全てに意思を与えた。この世でただ1人九喇嘛が信頼する男

 

忍びの祖、六道仙人に。

 

故に、見てみたくなった。

これから目の前の忍びが、何を思い、何を考え、何を見て、何を成すのかを。人間の価値を。忍びの価値を。ただ側で見て、そしてもう一度、最後に一度確かめてみたくなった。

 

人間が、忍びが、信頼できるか否かを。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

月 日

 

夢の中に犀犬だけじゃなく九喇嘛も出てきた。そして何がきっかけなのかは知らないけど時々俺のことをジジイと呼んで来る。

 

俺老けてるかな?

 

まあ九喇嘛とのマダラディスりは最高に楽しかったから別にいいや。

それにしても九喇嘛さんマダラの悪口を言う時随分生き生きしてますね。え?俺もですか?HAHAHAHA………

 

 

 

日記を書こう。

 

取り敢えず今日の出来事について一言。

 

うちは◯ね。

 

いやマジで。女子供以外滅べばいいと思う。何?同性愛の呪いでも受けてんの?子供ももしかして単為生殖ですか?それとも何?アーッ!!(隠語)された男は孕むんですか?成る程分かります。

ただそれにこんな幼気な少年を巻き込まないでくださいお願いします。冗談抜きで俺が男性恐怖症患うから。ってか患ってるから。成人男性見るだけで震えががががが。同性愛に偏見とかなかったけど、もう絶対に同性愛者殺すマンになりそう。

 

しかも複数で襲うってちょっと神経どうかしてませんか?

 

▼野生のガチホモに囲まれた!!

▼ダメだ逃げられない!!

 

をリアルに体験した時の俺の絶望を味わえ。

 

近くにイタチくんとシスイくんがいなかったら泣いてたね。それにしても子供を洗脳してホモにしようとは、うちは一族まじクレイジー。お陰で対マダラ用最終兵器その一である『尾獣玉』を使ってしまったじゃないか。

別にいいけどね‼︎そもそもアレはホモ撃滅用の技だし。アホみたいに威力高いけどまあいい、ホモに加減なんてしてみろ、付け上がって余計に尻を狙われるのがオチだ。ホモに加減、ダメ、絶対。

 

もう うちはで信頼できるのはイタチくんとシスイくらいだよ。彼らには

「絶対にあいつらの様にはなるな」

「異性に目を向けろ」

「同性愛に目覚めそうになったら俺に言え」

「異性との交際をホモどもに邪魔はさせない」

「俺は(2人がノーマルで有る限り)味方だ」

と言う感じのことを少し遠回しに伝えておいた。頭のいい彼らには伝わったと思う。ってか伝われ。

 

あと早く帰らせろ。五影会談なんてどうでもいいから帰らせろ!!水影から

「近々五影会談が開かれる。会談が終わった後迎えに行くから、それまで待ってろ」

って連絡来たから頑張って待ってたけど、もう無理だよ…。心が……痛いです。

 

余談だが、これらの会話はカツユ通話を用いて行われている。

カツユ電話とはシャボン玉電話の上位互換ではっきり言って高性能すぎてやばい電話だ。

まず一つは、カツユさん経由で通話するため、たとえ相手がどんな口調で話そうと全て国語の教科書で出てきそうな丁寧語に翻訳され、尚且つカツユさんの超人的な記憶能力により、もし仮に会話内容を忘れてもカツユさんが覚えてくれること。

二つ目は、シャボン玉電話を使用した際に来る妙な倦怠感がまるでないこと。加えてカツユさんはミニサイズにもなれるため持ち運びに便利なことも理由の一つとして挙げられる。

そして最後、俺的一番のメリットはやはり、メッセージが全て魅惑のカツユボイスに変換されることだ。本当に癒しだわ。同性愛者が蔓延るこの世界で犀犬とカツユさんは超癒し。

若干俺の性癖が歪み出してる気もしないではないが、まあ人を見た目で判断しちゃダメってじっちゃんも言ってたし。

 

それにアレだ。こんな摩訶不思議な世界だ、擬人化させる方法の一つや二つはあるに決まってる。仮に無いなら作るまで‼︎

 

 

 

追記

 

会談の内容がマダラについてとか、あのホモ何やらかしたの?

世界から恐れ慄かれるとか、どんだけハッスルしたんだよ。

流石は忍の神(九喇嘛ペディア参照)と終末の谷(野外)激闘(熱い夜)を繰り広げた(九喇嘛ペディア参照、一部推測あり)だけのことはあるな。

 

 

 

 

 




文字化けのせいでデータががががが

暫く作者は無気力になってるんで、更新は遅れます


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うちはせんべいの設立だ

前回は取り乱してしまい申し訳ありません。
もう大丈夫です。……多分。


さて、ではここでいくつかの質問に答えていきたいと思います。

Q カツユプレスとは何ですか?

A 巨大カツユで相手を押しつぶす技、と主人公は考えていますが実際は酸を纏ったカツユさんが相手にのしかかる技なので、はっきり言ってグロいですはい。

続いて今作のヒロインですが、
詳細はあとがきにて!!


うちはマダラによる木の葉襲撃事件。

うちは一族が裏で手引きしたのでは無いか

 

木の葉上層部より疑いの念を向けられたうちは一族は激昂した。

誇り高きうちは一族がなぜそんな真似をするのか。

そもそもうちはマダラは過去の存在だ。皆が皆死んだと思っていた存在に何を願うと言うのか。

木の葉上層部はうちは一族を侮辱しているのか

 

怒りは憎しみを生み、憎しみは復讐心を育む。

初めこそ小さかった筈の溝は少しずつ広がり始め、四代目火影——波風ミナトの尽力により近づき始めていた筈の両者の間には、一人の侵入も許さない壁が築かれていた。

 

意図してその状況を作り出したダンゾウはただ一人ほくそ笑む。

当然その思惑に気づくものはいない。

 

 

 

 

場所は木の葉隠れ、南賀ノ神社本堂地下、うちは一族秘密の集会場。

その瞳を紅に染める忍達は、怒りのままに声を荒げる。

 

「最早我々うちは一族と木の葉が共存する未来などない‼︎奴らがうちはの血を根絶やしにしようとしているのは明白‼︎今こそ武器を取りましょうフガクさん‼︎マダラ襲来によって混乱している今なら容易に落とせます‼︎」

 

「……少し冷静になれ。感情のままに行動してもろくな事にはならんぞ」

 

うちはフガクとて今回の言いがかりに対して怒りを抱いていないわけではない。だが、それでも彼はうちは一族を纏める長。彼の決定一つに命が掛かっている状況で、感情に身を任せるほど愚かでもなければ、感情に飲み込まれる愚か者に長を任せるほど、うちは一族は安くはない。

 

だが、事態が好転することが無いのもまた事実。声を荒げる青年の言葉を肯定するつもりはないが、少なくとも木の葉上層部、特にその上役達がうちはとの関係を明確に拒絶している事実から目を背けることも出来はしない。

 

何が悪かったわけでは無い。ただ運が悪かった。

 

もし仮にうちはマダラ襲撃がなければ、うちはに対し動くための口実の無い木の葉は待つしか無い。

そして、時間さえあれば波風ミナトの力によって両者間に確かな信頼を築くことも決して不可能では無かった。元よりうちはと木の葉の関係を邪魔するのは上役のみ、今以上に力と、知恵と、人望を得たミナトならば、彼らを黙らせることもまた可能にしてみせた事だろう。

そうしてうちはフガクと波風ミナトが手を組んだのならば、例え両者間に負の感情があったのだとしてもそれを受け入れ、乗り越えて行く事だってあり得たかもしれない。

うちはと木の葉が手を取り合う未来は決して夢ではなかった。

 

もっともそれは、今となっては掴むことのできぬ幻想に過ぎないが。

現状、最早フガク一人では抑えられぬ程にうちはは木の葉を憎んでいる。それこそ、本来であれば関係のない一般人を巻き込むことすら躊躇いがない程に、彼らの視野は狭まってしまっている。

元々、木の葉に対していい印象を持っていなかったうちはだ。クーデターの話も無かった訳ではない。だが、うちはもまたキッカケがなかった、木の葉に復讐する口実が無かった。

或いはそのままいけば、その憎しみも時間が癒してくれたのかもしれない。風化してしまったのかもしれない。どれもこれもたらればに過ぎないが、少なくとも今すぐにクーデターを起こそうなどとは思い至らなかった筈だ。

だが、事実うちは一族はまるで目に見えない何かに誘導されているように憎しみを抑えられずにいる。

抑止は不可能、ならどうするか、うちはフガクは一人孤独に考える。答えの無い自問自答をただひたすらに繰り返す。

 

「フガクさん‼︎今こそうちはの力を示す時です‼︎」

 

当然、時は待ってはくれない。立ち止まってしまえばどんどん置いていかれる。そんな当たり前がどうしようもなくフガクを苦しめる。

 

「クーデターを起こすと言ったな。具体的にはどうするつもりだ」

 

結局フガクができたのはただの時間稼ぎ。彼の質問に対する答え全てに難癖をつけて、無理やりクーデターの話を先送りにする事だけだった。

そんな彼の心情など露知らず、一族の者達は漸くフガクが腰を上げたのだと喜ぶ。

 

「九尾を利用すればいい‼︎我々うちはの写輪眼を持ってすれば可能です‼︎」

 

木の葉がうちはを恐れる理由。それは彼の言う通り、尾獣を操ることができる力にある。

本来尾獣とはチャクラの集合体であり、言ってしまえばただ力のままに暴れる怪物に過ぎない——実際には意思も感情もあるが——だが、うちはの持つ瞳力、写輪眼をもってすればその限りではない。

この世で唯一尾獣すらも操ることの出来る力、それが里の忍びたちがうちはを恐れる理由の一端でもある。もっとも、今のうちは一族にそれが出来る実力者がいるかと言われれば、首を捻る所ではあるが。

 

 

「九尾の人柱力、うずまきクシナには現在三代目火影、猿飛ヒルゼン様や三代目様が招集なされた三忍、自来也様や大蛇丸様が護衛についていると聞く。いくら写輪眼を持つ我々うちは一族とて、容易に崩せるものではないぞ」

 

だが、今回ばかりは相手が悪かった。

うちはマダラの更なる襲撃を警戒した三代目火影—猿飛ヒルゼンが、五影会談へと出立した四代目火影—波風ミナトに代わりクシナの護衛を買って出たのだ。

それはつまり、写輪眼すら越える最強の瞳力、万華鏡写輪眼に対抗する術を持っているということ。万華鏡写輪眼を持つフガクは兎も角、ただの写輪眼しか持たぬ他のうちは一族では明らかに分が悪い。

 

加えて、三代目は自来也、大蛇丸を召集している。

忍界でも、五指に入るとされる三代目に加え、三忍と謳われる木の葉屈指の実力を誇る二人が加われば、もはや五影といえど容易には崩せない。事実、自来也は三代目の後任として名の上がる実力者。その実力は現段階ではミナトすらも凌駕する。

同じく三忍の大蛇丸もその実力は推して知るべしだろう。

 

少なくとも、今のうちはではどれほどの先鋭を集めたところで九尾はおろか、クシナにすら手が届かないのは自明の理。周囲の見えていない彼らでも、それだけは判断できた。

 

「なら、六尾の人柱力を襲えばいい」

 

一体誰がそれを口にしたのかは分からない。

だが、その一言で雰囲気は一変する。騒がしかった一族の若者達は血が滲むほど握りこぶしを固め、実力者たちは静かに殺気を漲らせる。

 

現在、忍界で知らぬ者はいないだろう。たった一人で戦争を止めた英雄であり、あのうちはマダラと対等に渡り合った忍界最強と名高い忍。

彼に纏わる噂は数知れず、一説によれば六道仙人の血を引くとかなんとか。噂自体はどれも眉唾ものではあるが、一つ確かなこともある。

それは

 

尾獣を完全にコントロールしている

 

ということ

前例が無いわけではない。かつて忍の神とまで言われた千手柱間や、そのライバルであり、かつうちは一族最強の男うちはマダラはその圧倒的な力でもって尾獣を管理下に置いたと聞く。

 

だが、それらは今の忍からすれば現実味のないお伽話でしかない。現状、尾獣一匹を捉えるだけでも何十人という腕利きの忍が死ぬというのに、たった一人で一体の尾獣を捉え、かつ従えるなどホラ話もいい所。信じる者がいないのも無理ない話だろう。

 

だからこそ、ウタカタという存在は脅威だ。

 

知能を持たぬ状態ですら小国ならば滅ぼし得る尾獣を、知恵ある忍が従える。これがどれほどの恐ろしいことか。

それに、実際ウタカタには戦争を止めたという事実がある。もはや、この忍の世において、ウタカタという忍は無視できぬ存在である。

 

尤も、うちは一族は少し違うが。

 

うちはマダラは、うちは最強の忍である。その戦闘をその目で見た者は少ないだろうが、彼が最強であるというには紛れも無い事実である。

だが蓋を開けてみればどうだ、最強と呼ばれた忍はたった一人の子供を相手に撃退され、その子供は今や木の葉では英雄扱いされている。

 

果たして、うちは一族にとってこれほど悔しいことがあるだろうか、これほど惨めなことがあるだろうか。木の葉一のエリートが、その最強と呼ばれた男が、たった一人の子供すら倒せない。これ以上ない屈辱だ。これ以上ない恥だ。

 

初めこそ、うちはの者も木の葉を裏切り史上最悪の犯罪者にまで成り下がったマダラを軽蔑していた。

だが今だからこそ分かる、マダラはきっといつかの未来、木の葉がうちはを滅ぼすことを予期していた。だからこそマダラは木の葉を裏切ったのだと。

 

故に、唯只管にウタカタが憎かった。

 

マダラと渡り合ったことが?木の葉の英雄と呼ばれることが?それはきっと違う。そんなことはどうでもいい。うちはにとって憎しみの対象でしかない木の葉で英雄と呼ばれたところで、感じるのは憐れみだけ。憎しみなど湧きはしない。

マダラの実力にしても、何処までが事実か分からない以上うちはマダラと渡り合ったと聞いたところで何も感じることはない。

根も葉もない噂に踊らされてその本当を見失うなど愚の骨頂だろう。

 

 

ならば何故憎いのか。

それはきっとウタカタがうちはのプライドを、尊厳を、栄誉を踏みにじったから。

一度だけ、ウタカタがうちは一族の住む一角を横切った事がある。一族の者はほんの少しの恐怖と、それを上回る期待を持ってその様子を眺めていた。

マダラと渡り合った彼がそのうちはの家紋を見て何を思うのか、どのような反応をするのか、興味があったから。

少しでも警戒するならそれでよし、それはつまり、彼が——忍界最強がうちはを警戒するに足る一族として認識したという事。

嫌悪感を示すのなら、それもまた仕方のない事。マダラの独断とは言え家紋を背負っての行動。その嫌悪が一族に向けられてもまだ納得がいく。

 

果たして彼は、無だった。表情一つ変える事なく、どころか足を止めるような事もなく、一瞥しただけで通りすぎて行った。姿が見えなくなるその間近、一度だけ顔岩を、否初代火影をその視界に入れて。

 

それはまるで、うちはなど眼中にないとでも言うかのように。それはつまり、ウタカタにとってうちはマダラとの戦いなど、ただの遊びでしかなかったということ。最後に初代火影の顔岩を見たのは、彼が柱間との戦いを望んでいるということか。或いは、マダラよりも、柱間を——うちは一族よりも千手一族を見ているという意味か。

 

どちらでもいい。どうでもいい。ウタカタにとって、うちはなど取るに足りない雑魚でしかない、その事実に変わりはない。

うちはがウタカタを憎む事実に変わりはない。

 

 

「………六尾の人柱力は、マダラと渡り合うほどの忍だ。その事実が分かった上での提案か?」

 

ああ、分かっている。木の葉以上にうちは一族がウタカタを憎んでいることなど、フガクは分かっている。こんな言葉に意味がないことなど、ちゃんと分かっている。

 

もはや憎しみの炎は消えはしない。対象を焼き尽くすか、あるいは自身が燃え尽きるかしない限り、止まることはない。止められることはない。

 

だが、それでいいとも思った。

どのみち憎しみに囚われたうちは一族に未来などない。いや、そもそも、憎しみに身を任せた人間にロクな未来など待っていようはずもない。

ならば、このまま木の葉という大国相手にクーデターを起こし、大勢の人を巻き込むよりも、たった一人の人柱力(最強)に戦いを挑み、そして散っていった方が遥かにマシだと思うのも無理ないことだろう。

 

一つ気がかりがあるとすれば、この場にはいない二人の子供——イタチとサスケ。

フガクにとって、何ものにも代えがたい大切な宝。

そして、巻き込みたくない存在。

 

子に平和を願うのは罪ではない。ならば、子に幸せを願うのもきっと罪ではない。

 

イタチは聡い。齢は今年で4つになるが、その頭脳はすでに下手な中忍を上回る。そんなイタチならばうちはのクーデターに気づくのも時間の問題だろう。なんせイタチの友であり、兄貴分を自称するうちはシスイはすでに気づいているのだから。

 

そして、その事実がフガクを焦らせる。

父としてのプライドではない。だが、せめて我が子の中でだけはうちはが誇り高い一族であって欲しい。どれだけ汚くても、憎しみに囚われた憐れな一族であったとしても、イタチの中では、サスケの中では綺麗なままであって欲しい。

 

傲慢かもしれない、だがそう願うことを誰が罪だと断言できる。誰に裁く権利がある。

 

だからその為にはクーデターに気づかれるわけにはいかない。そうなれば必然計画を急ぐ必要がある。

我が子の為にも、一族の名誉のためにも。

 

分かっている。それはどうしようもない矛盾だ。

 

逆立ちしてもうちははウタカタには勝てはしない。だとすれば、ウタカタに戦いを挑むということは即ち死を意味する。そうなれば、事情を知らぬイタチやサスケはきっとウタカタを憎む、恨む。

仇を討つために力をつける。復讐の炎にその身を燃やす。それが幸せな筈がない。

 

いや、そもそもウタカタに手を出すということは、木の葉の英雄に手を出すということ。

だとすれば、その時点でうちはがクーデターを起こしたと捉えられてもなんらおかしくは無い。そうなればあのダンゾウのことだ、事情を知らぬサスケやイタチすらも殺してしまうだろう。

 

(……どうすればいい)

 

最早どうにもなりはしない。どう足掻いても、どう踠いてもどうにも出来はしない。

 

クーデターは止められない。イタチやサスケには生きて欲しい。一族の長としての立場と、父としての立場。本来同じ秤にかけられようもないそれら二つが、フガクを苦しめる。

 

(三代目に頭を下げれば、おそらくサスケは救われる。だが、イタチは)

 

悩む、悩む、悩む。答えのあるかも分からない問題に無理やり答えを作り出す。

 

沈黙、そして静かに顔を上げる。その顔は覚悟を決めた忍の顔。最早フガクに迷いはない。

 

「……三日後の早朝、ウタカタを襲う。皆、覚悟を決めろ」

 

否やはない。誰も彼も、死を覚悟している。

 

「それと、シスイを呼んできてくれ。少し、話したいことがある」

 

 

 




うちはの家紋見てトラウマぶり返して颯爽と逃げたのち、ことの発端である初代火影を睨んでいたら恨まれたウタカタさんでした。まる。


さて、早速ヒロイン紹介

ヒロイン候補その一 カツユ
魅惑のカツユボイスで甘く主人公を誘惑する年上敬語お姉さん

ヒロイン候補その二 犀犬
いつもそばにいる天然系幼馴染

ヒロイン候補その三 九喇嘛
ツンツンから徐々にツンデレへと変わっていくチョロイン

ヒロイン候補その四 やぐら
問題児なウタカタを常に見守る堅物系委員長

ヒロイン候補その五 マダラ
ヤンホモ


は、ハーレムやで。主人公ハーレムやで(白目)


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やめろめろめろうちはめろ

今回は筆が進みました。

内容はまあ、まあね。


 

早朝。人っ子一人いない町外れの一角を二人の少年が足早に歩を進める。

ストレートの黒髪に、母親に似た美形の少年——うちはイタチはイタチの手を取って先を歩く癖毛の少年——うちはシスイを不思議そうな顔で見ている。

 

——会わせたい人がいる。

 

そう言われて手を引かれて来たことから、シスイが今向かっているのはその会わせたい人間である事は察しがつくが、その割にはシスイの顔はすぐれない。何かを覚悟しているような、決意しているようなそんな顔をしている。

だが聡いイタチとはいえ情報のないこの状況では、シスイが何を覚悟しているのかまでは分からない。

ただ、シスイの後を歩くことしか出来ない。それが少し歯痒かった。

 

一方のシスイは、そんなイタチの心情を察して、それでも何も言えずにいた。

イタチは知らないが、シスイには与えられた使命がある。それはウタカタを誘い出す事。

うちはである事が直ぐにバレることは明白、ならば少しでも警戒を軽くするために子供であるシスイやイタチを使って誘い出す。加えてイタチに何も知らせないことで、少しでも油断させる。合理的である。

だが、それでも誘いに乗るかどうかは五分五分。万一の場合誘いに乗らないことも考えて、腕利きの中でも特に力のあるものがシスイたちの周囲に配置されている。

名目上はそうであるが、聡いシスイは気づいている。彼らの仕事には同情故にうちはを裏切った場合即座にシスイたちを殺すことも含まれているのだと。

だからこそ、下手な事は言えないし出来ない。少なくとも今は。

 

それに、シスイにはまた別の任務が与えられている。それこそが、現在シスイを苦しめる要因でもあるが。

 

「ココか」

 

そこは、言うなれば廃墟に近い。聞いた話によれば、火影からはもっと質の良い宿が与えられたらしいが、人の多いところが苦手故か丁重に断ったらしい。

いや、マダラ撃退の功績を讃えられ里から多大なる褒美を与えられた際も、そんなものには興味はないとでもいうように断ったと聞くことから、ウタカタという忍は謙虚な性格をしていると考える方が自然か。

 

どちらでも良い。沸き立つ好感を切って捨てシスイは首を振る。

今から自分たちの行うのはただのエゴ。無駄に好意を持っても苦しいだけだと。

 

一つ息を吐き、呼吸を整えてチャイムを鳴らす。シスイ達の来訪には既に気付いていたのだろう、特に慌てる様子もなく近づいて来ているのが気配でわかる。

 

そして扉が開かれる。

 

顔を出したのはシスイと同じか少し高いくらいの身長の少年。年の功はシスイと同じだと聞くが、対峙してみて、言葉に出来ない何かを二人は感じていた。

同時にシスイは悟る、勝てないと。

どう足掻いても、どれだけの戦力を揃えても勝つビジョンがまるで見えない。

 

圧倒的すぎる。先代火影、猿飛ヒルゼンにすら感じたことのない威圧感にシスイは堪らず後ずさりそうになるが、イタチの手の温もりを思い出し辛うじて堪える。血こそ繋がってはいないが、シスイはイタチの兄同然。不安に揺れる弟の前で兄としての意地を見せた。

 

「こんな早朝に、何か用か?」

 

白々しい、何もかもを知っておきながら、二人を試すかのような質問をぶつけるウタカタに苛立ちが募るが、それでもココで怒れば相手の思うツボだと耐える。

 

「俺はうちはシスイ、こいつは同じくうちはイタチです」

 

「………うちはだと?」

 

二人の名を聞いて遠い目をするウタカタだが、その視線の先を追ったシスイは気づいた。ウタカタが目を向けたのはうちはの先鋭たちが潜んでいる場所。つまり、もうウタカタは気づいている。

 

だがそれでも、敢えて気づかないフリをしてシスイは会話を続ける。道化な自分を他人事のように嘲笑って。

 

「俺たちに修行をつけてくれませんか?勝手なお願いだというのは百も承知ですが、俺たちもウタカタさんのように強くなりたいんです!」

 

イタチの手が先程よりも強くシスイの手を握る。きっと不安なんだろう。なんせイタチは何も知らない。何も聞かされていない。それでもシスイを信じて不安を隠すイタチにシスイもまた覚悟を決めた。

 

「俺は、忍じゃないんだが?」

 

よくもまあ、これほどの皮肉が出てくるものだ。

シスイの提案を軽くいなしつつ、的確に煽るウタカタに憎しみすら感じる。だが、その表情が嘘を吐いているようにも見えはしない。

 

(いや、俺程度に見抜けるわけもないか)

 

あるいはウタカタは本心でそう言っているのかも知れない。推測するなら、自分は忍を超越した神にでもなったというところか。

けどそんなことはシスイにはどうでもいい。

彼は与えられた使命を全うするだけ。全ては、大事な弟分であるイタチのために。

 

「それでも願いします!」

 

「お、お願いします」

 

頭を下げるシスイとイタチ。イタチに関しては何も分かってはいないだろうに、それでもシスイの意を汲み取り同じく頭を下げる。幼い自分が頭を下げれば、相手の同情を誘えるだろうと理解した上で。

 

「……まあいい。少しくらいなら付き合ってやる。……全部カツユさんに投げればなんとかなるだろ」

 

最後の方はよく聞こえなかったが、ウタカタが引き受けてくれたのだけは理解できる。

その事実に少し肩の力が抜ける。握られた手が少しだけ緩まる。知らないうちに力が篭っていたらしい。

 

「じゃあ、演習場まで案内しますね」

 

「好きにしろ」

 

その言葉が一体何を意味するのか。シスイにはなんとなく分かるような気がした。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

「ココが第6演習場です」

 

ウタカタを連れ来たのは、木の葉から最も離れた演習場。背の高い木々に囲まれた見通しの悪い演習場でもある。そして、木の葉が動いた際に出来るだけ時間が稼げるようにとフガクが提案した、決戦の地。もう既にうちは一族の者は待機している。

もっとも、そう考えているのはあくまでも極一部。少なくとも、実際に対峙したシスイには一方的に蹂躙される未来しか思い浮かばない。

 

「それで、何をする気だ?」

 

表情一つ変えることなく発せられたその一言にシスイの顔が強張る。その言葉はつまりそういうことだろう。

「うちは程度に何が出来るのか」ウタカタが言いたいのはそういうことだ。

 

チラリと、イタチの顔を伺う。その顔は不安でいっぱいで、けどそれでも気丈にもシスイを信頼している。

それを見て、薄く笑う。安心したように、幸せそうにシスイは笑ってみせる。

 

握りあった手を自然に解く。イタチの顔がまた不安揺れる。けど、敢えて見ないふりをする。

 

「ウタカタさん。貴方ならもう既にお気づきのことと思いますが、敢えて言わせてもらいます。我々うちは一族は貴方を、貴方の中の六尾を利用し木の葉にクーデターを仕掛けるつもりです」

 

シスイの言葉に、既に隠れていたうちはの忍たちに動揺が走る。シスイのこれからの行動を唯一の知るフガクを除いて。

 

血が滲むほどに握りこぶしを固め、俯きながらも、シスイはなおも続ける。

顔を上げられなかったのは、ウタカタと目を合わせることが怖いからか、それとも不安げなイタチを見ていられないからか、それを知るのはただシスイのみ。

 

「その上で、勝手な願いを聞いてください!それが叶うのならば、俺に出来ることは何でもします!殺せと命じるのなら、家族であろうと手にかけます!抉れと命じるのなら、この目を抉り貴方に差し上げます!死ねと命じるのなら、これ以上なく無残にこの命を散らせます!だから、どうか俺の手前勝手な願いを聞いてほしい!イタチを、俺の弟分を救ってやってください!」

 

シスイは、ウタカタのことなど微塵も信頼してはいない。だが彼が強いことだけは、理解できている。彼がその気になれば木の葉という大国すらも相手取ってしまうことだろうことも理解している。彼ならばイタチを守りきれるだろうことも理解している。

だからこそ、こうべを垂れる。それ以外に何もできない弱い自分が大嫌いだった。バカな一族が大嫌いだった。けどそれ以上にイタチが大事だった。

 

「最早うちは一族は憎しみでその目を曇らせ、前すらまともに見ることが出来はしない!けど、もう止められない!止まってしまえば自らの弱さを自覚してしまうから、うちははもう止まれない!けど、イタチは関係ない!こいつは何も知らない、ただの子供だ!けど「シスイ!」……イタチ」

 

イタチの叫びに反射的に顔を上げて、後悔した。今にも泣きそうなイタチの表情がまるで弱いシスイを責めているようで。ただただ怖かった。

 

「ねえシスイ?何の話をしているの?何でそんな悲しそうな顔をしているの?ねえどうして?」

 

「………イタチ」

 

シスイはバカではない。こんな願いが叶うわけないことはこの任務をフガクから聞いた時から分かっていた。クーデターを起こせば、晴れてうちはは一族単位で犯罪者へと成り下がる。それを庇うということは庇ったものもまた犯罪者扱いされるに決まってる。

ならば、誰がそんな馬鹿げたことを引き受けるだろうか。何のメリットもありはしないその提案に、誰が首を縦に振るというのか。それも、初対面の敵の子供なんかのために

シスイは言った、うちは一族は憎しみでその目を曇らせていると。

それはフガクからの受け売り。あの会合の後、シスイを呼び寄せたフガクが言ったセリフの一つ。

だが、そう言うフガクの目もまた狂気に満ちていたことにシスイは気付いていた。

そしてきっと、シスイもまた気付いていないだけで狂っているのだろう。

 

だが、それでもイタチはまだ違う、それも分かっている。それもきっと時間の問題だ。うちはにいれば、きっとイタチも狂う。

それが分かっていて、無視することなんて出来はしない。

 

「イタチ……俺は」

 

その先が告げられることは無かった。

イタチの叫びに冷静さを取り戻したのは、何もシスイだけではない。シスイの告白に動揺していた一族の忍たちもまた、冷静さを取り戻していた。

そうして冷静さを取り戻した彼らはすぐ様行動を開始し、既にシスイを含む三人を包囲している。

その目は誰も彼も狂気に満ちていた。

 

ああ、狂っている。この一族はどうしようもなく狂っている。男も、女も、年寄りも、若者も。そしてシスイも。

例外がいるとすれば、今は四代目の護衛として五影会談に参加しているうちはオビトくらいだろう。

あとは、何も知らない無垢な子供。

 

どうしようもない自己嫌悪が、憤りが、気持ち悪さがシスイを襲う。

 

(せめて、イタチだけは守りたかったな)

 

最早シスイには何もない。イタチを守る術も、戦う力も何もない。今なお真っ直ぐにシスイを見つめるイタチの目が、まるでその弱さを見透かしているようで怖かった。

 

「……犀犬」

 

空気が変わった。

シスイの話を聞いているのかすら怪しかった少年の纏う雰囲気が大きく変わる。

だが、何も感じない。憎しみも怒りも、喜びも。ウタカタからは何も感じない。あるいは彼は一見すれば追い込まれている筈のこの状況でも、うちはを見ていないのかもしれない。

 

そして、そんなウタカタの雰囲気を感じ取ったうちはに緊張が走る。彼の行動一つとして見逃すまいとその目を写輪眼(狂気)に変える。

 

持ち上げられたウタカタの右手が人ならざるものへと姿を変える。赤いチャクラに彩られたその手に、感じたことのない重いチャクラが収縮され、そして

 

「………【尾獣玉(ホモは死すべし)】」

 

何が起こったのかは誰にも分からない。それは戦闘になれた先鋭達ですら。うちはをまとめ、万華鏡写輪眼を開眼したうちはフガクだけは辛うじてそれを目で追うことができた。だが、それだけ。反応すらさせては貰えなかった。

 

一つ確かなことは、ウタカタが差し出した右手の先。木々が生い茂っていた筈のそこから、生命が死に絶えたこと。

何もない。木の一本も、草の一つも、そこには無かった。文字通りその空間だけがくり抜かれていた。

 

「ば、化け物だ」

 

誰がそれを口にしたのか、あるいは皆がそう言ったのか。誰にも分からない。誰も彼もが腰を抜かし、武器を下ろし、酷いものだと失禁するものまでもいた。

狂気に染まったうちは一族は、たった一つの攻撃で戦意を奪われた。

憎しみ?狂気?確かにそれは恐ろしい。そんなものに身を捧げた人間はさぞ恐ろしいことだろう。

だがそれがどうした。人間が人間である以上どうしようもできないものがある。いや、生物が生物である以上どうにもならないものがある。

 

それは恐怖。

 

純粋な死への恐怖は、どう足掻いたところで克服できるものではない。事実、あれだけ狂っていた一族は、その目を狂気に染めていた筈の一族の目は、恐怖に塗り替えられている。

 

たった一撃で。たった一度の死で。プライドの高いうちは一族は戦うことをやめた。

 

戦いなど無い。蹂躙など無い。前を横切るアリの群れを態々踏み潰す人間などいないように。圧倒的強者は弱者と遊ぶようなこともしない。

 

「イタチとシスイだったか。お前らには伝えておかねばならないことがある」

 

最早戦う意思の無い弱者になど興味はないのか、二人の目をまっすぐ見つめてウタカタは言う。

 

憎しみに囚われるな(絶対にあいつらの様にはなるな)

 

その言葉に、シスイは唇を噛みしめる。全てを見透かした男の言葉がただシスイを責める

 

一族の外に目を向けろ(異性に目を向けろ)

 

イタチもまたウタカタの目を真っ直ぐに見返す。彼の言葉を一語一句聞き逃すまいと、真っ直ぐに純粋に尊敬の眼差しで

 

憎しみに囚われそうになったら(同性愛に目覚めそうになったら)俺に言え」

 

フガクはただ目を伏せる

 

お前らの自由を誰にも邪魔はさせない(異性との交際をホモどもに邪魔はさせない)

 

うちはの者達は虚ろな瞳で虚空を睨む

 

「お前達が変わらない限り(ノーマルである限り)俺は味方だ」

 

誰も何も言えない。重い沈黙だけが場を支配する中、ウタカタは音も立てずに姿を消した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「それではここに、中立国である鉄の国頭領ミフネが決を下す。

 

水の国霧隠れ。二つ名霧のウタカタを世界に牙を向く凶悪犯罪者として処分する

 

異論はありますまいな?」

 

 

 

歯車は狂い出す。




シスイの告白を「うちはが襲いに来る」と言うワードでトリップしていて聞いていなかったウタカタさん。しょうがないね。


ってか感想欄www。主人公はホモじゃないですから!正常ですから!あれ?でもカツユさんに癒し感じて……正常って何だっけ?


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大体うちはのせい

連続投稿。漸く書きたい話の一つが書けたぜ!


五影会談。

各里の長にして、最高戦力でもある影を背負う五人の強者が集う場。中立国である鉄の国が進行を務め、主に平和に向けてを話し合う場でもある。

 

だが今回の会談は少し違う。

 

最悪にして最強の犯罪者うちはマダラ。彼が九尾を否、世界を手中に収めんと動き出した。

 

マダラの戦力は各里の総戦力すらも上回ると言われ、三代目火影曰く、渡り合えるのは初代火影だけ。それほどの脅威が動き出した今、最早小競り合いなどしている暇はない。一時的にしろ恒久的にしろ五大国が手を取り合うのは必然のことであった。

 

それは火影を除く四人の影も——その実力を目の当たりにした土影は特に——理解しているのか、会談は滞りなく進み何事もなく終わる筈だった。

 

話題の当人であるうちはマダラが現れるまでは。

 

再度言うがこの場には各里を代表する五影が集っている。言い換えるのならば、忍界の頂点が集う場でもある。にも関わらずマダラが口を開くまで誰も気づくことが出来なかった。

 

その事実に五影は戦慄し、同時にマダラは失望する。

 

「五影も落ちぶれたものだな」

 

明らかな落胆。期待外れということはない。なんせそもそもマダラは今の忍に何も期待などしていないのだから。だがそれでも、マダラの襲来を感知する者が誰もいない事実に何も感じない訳ではない。

 

はじめに動いたのは雷影だった。

 

歴代の雷影が得意とする【雷遁チャクラモード】を用い、全身に雷遁を纏った状態での高速移動からの右ストレート。

時空間忍術でも使わない限り決して避けられることのない光速に近い攻撃に対し、マダラもまた反応できずに直撃を受ける。

いや、正確には反応したからこそ躱す必要がなかった。

 

マダラの周囲を覆う青い骸骨のような存在。濃密なチャクラによって生成されたそれは、雷影の一撃を受けてなお罅一つ入らない。

 

そのあまりの防御力に目を見張る雷影、その一瞬が仇となり次の瞬間には骸骨の腕が雷影を薙ぎ払っていた。受け身も取れない一撃に、さしもの雷影も動きを止める。

 

「……ほう」

 

薙ぎ払い終わったその隙をついての四方向からの同時攻撃。

正面からは火影が。最も得意とする忍術【螺旋丸】を右手に生成し、左手には時空間忍術の術式が施されたクナイを持って。

 

右からは水影が。尾獣化させた右腕に膨大なチャクラを貯めて

 

左からは風影が。砂鉄で生成された塊を周囲に浮かせ、マダラに右手を向けて

 

背後からは土影が。血継淘汰の忍術【塵遁 限界剥離】を両手の平の間に作り出して

 

或いはこれが並の忍ならば四度死んでも足りないだろう。だが、残念ながらマダラは並などという生易しいものではない。

なんせ彼は忍の神とすら渡り合う男なのだから。

 

刹那轟音が轟く。時空間忍術によってすぐ様退避したミナトは急いで周囲を伺う。それは他の影も同様なのか誰一人周囲の警戒を怠らない。

 

「少しはやるようだな。だが、その程度だ」

 

そんな警戒を嘲笑うかのように、嘲笑が木霊する。

 

先程まで五影たち会談の際に囲っていた机。その上にまるで何事もなかったかのようにマダラはいた。

 

「安心しろ、俺は今日話し合いをしに来ただけだ。でなければお前らはすでに死んでいる」

 

その言葉が事実かどうかを確かめる術はない。だが、その言葉と同時に放たれた殺気が如実に物語っている。マダラはまるで本気を出していないのだと。

 

「さて、では早速だが本題に入ろうか。俺の悲願『月の眼計画』についてな」

 

 

 

 

月の眼計画

それは月に己の眼を投影する大幻術【無限月読】を発動させ、地上にいる全ての人間に幻術をかける禁忌の術。

幻術にかけられた者は術者のコントロール下に置かれ、生きた屍と化す。

ある意味で平和な、それでいて最低な計画。

 

だが、当然それを成すためには超えなければならない壁も少なくはない。その一つが

 

「全ての尾獣を捕らえるだと?」

 

計画のために不可欠な要素の一つ十尾の復活。

そのためには九匹の尾獣を媒体である外道魔像に封じる必要があり、逆を言えばそれさえ防ぐことが出来れば計画の大本を潰すことができるとも取れる。

 

ならば、希望はある。少なくとも水影と火影の目には希望の光が宿った。なんせ人柱力の中にはマダラと対等に渡り合えるウタカタがいるのだから。

 

その希望にめざとくもマダラは気付く。そして同時に思う、それは面白くない、と。

ウタカタは現代で唯一マダラが認めた忍。

それを希望の光とするのはまだ納得もいく。だがそれでもつまらない。取るに足らない忍達が一方的な希望をウタカタに押し付けるなど、我慢ならない。

 

故に薄く笑う。ならば壊せばいい。その希望を絶望に変えればいい。人を絶望させることなどマダラにとっては何も難しいことではないのだ。

 

「ウタカタならば俺をどうにか出来ると思っているようだな」

 

水影の視線が僅かに鋭いものへと変わる。他の影たちも実際にその実力を目の当たりにした者は少ないだろうが、その名を知らぬ者はいない。

皆の視線が一様にマダラに注がれる。

それを受けてさらに嗤う。

 

「お前たちに問おう。この忍の世界に、果たして俺の存在に気づくことができる忍がいると思うか?」

 

「何が言いたい」

 

幼い見た目にそぐわないドスのきいた声。水影の怒りを受けてマダラはさらに笑みを深める。

 

「今の忍界に、俺と渡り合える忍がいると、本当にそう思うか?」

 

何となく、察することは出来る。マダラが何を言いたいのか、何を言おうとしているのか。同時に、水影はそれが嘘だとも思っている。それでも沸き出る怒りを抑えることが出来ずにいた。

 

「戦争を止められるほどの強者が、仙術を身につけられるほどの強者が、尾獣をコントロール出来る子供が、本当にいると思うか?」

 

「俺の計画に気付き、尚且つ単身挑んでくるような忍が本当に存在すると思うか?」

 

「誰も師に持たずあれ程の力を得られると、本気でそう考えているのか?」

 

もう限界だった。沸き立つ怒りをそのままに、拳を握りしめる水影。

 

だが、少し遅かった。

 

「ウタカタは俺の部下だ」

 

沈黙だけが場を支配する。水影は怒り故に、他の影は衝撃すぎるマダラの一言故に何も言えなかった。

 

それを分かっていて尚マダラは続ける。

歪んだ笑みをその顔に浮かべて

 

「本来であればあいつには内側から崩して貰う予定だったが、貴様らを見て気が変わった。貴様ら程度態々策を弄する必要もない。圧倒的な力で蹂躙する方が早いだろう」

 

「巫山戯たことをぬかすなああああ!!!!!」

 

怒りのままに振るわれた拳がマダラへと向けられる。だが、五影が揃っても手傷一つ負わせられないマダラに通じる筈もなく躱すでもなく、防ぐでもなく受け止められる。

 

「巫山戯たことだと?ならば聞くが、お前はあの餓鬼が一人であれ程の力を得たとでも思っているのか?そっちの方が巫山戯ているだろ?」

 

「黙れ!!!!」

 

「俺は親切にも事実を教えているまでだ。まあ、信じる信じないは貴様らが判断することだがな」

 

言い終わると同時に水影を投げ飛ばす。辛うじて受け身はとっていたが、ダメージは少なくない。体ではなく、心の。

 

それを見て更に嗤う。ああ何と楽しいことか。希望を絶望に変えることは。

絶望を浮かべる弱者を見下ろすことは。

 

「俺の用はもう済んだ。俺にもやることがあるからな、そうだな。決戦は20年後、月が最も地球に接近する日。せいぜい踊るがいい。それまでに貴様らがウタカタ相手に生きていたらの話だがな」

 

次の瞬間には、既にその場には誰もいなかった。まるで初めから誰も居なかったように。悪い幻術にかけられたように。

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

「さて、どうする気だ」

 

初めに口を開いたのは歴代最強と名高い三代目風影。嵐が過ぎたかのような静かな空間で堂々と発言出来るあたり、その評価も間違ってはいないのかも知れない。尤も最強(マダラ)相手に手も足も出なかったことを考えれば、歴代最強など取るに足らぬ肩書きでしか無いが。

 

「そんなこと決まっておる、危険分子は早々に排除するべきだ!」

 

声を荒げるのは四代目雷影。只でさえマダラという危険な存在が待ち構えている中、それと並ぶかもしれない強者を同時に相手取るなど自殺行為でしか無い。

 

「じゃが雷影よ。マダラに手も足も出んかったワシらが勝てると思っておるのか?」

 

異を唱えるのは三代目土影。その発言は一見弱気にも見えるが、事実彼らが手も足も出なかったことを考えれば妥当だといえよう。

 

「ならば、20年後マダラとウタカタを同時に相手取るのが正しいとでも言いたいのか!!そうなれば今度こそ終わりだぞ!」

 

「そもそもウタカタがマダラの部下と決まったわけではありません」

 

同じく異を唱えたのは四代目火影。冷静に情報を整理した上で、実際に言葉を交わした彼だからマダラの言葉には疑問を持たざるを得なかった。

だが、同時にクシナから聞いていることもある。

 

九尾の力を半分以上持っていかれたと

 

クシナが見た限りでは友好的な関係を築いていたようにも見えたらしいが、マダラの部下であるというのなら幻術の類も当然持ち合わせている筈。

ならば何処までを信じていいのか、或いは初めから嘘だったのか。

少なくとも、火影にはウタカタの身の潔白を示すものはない。この場で唯一それが出来る者がいるとすれば。

 

「水影、貴様はどうするつもりだ?」

 

先程から何も喋らない、霧隠れの里長に雷影が問いかける。

 

「俺は、ウタカタを信じている」

 

その姿からまるで魂が抜けているようであったが、それでも強い意志を感じさせる声だった。

水影はウタカタを信じている。誰よりも何よりも信頼している。あの日涙を流した子供を、戦争を止めた英雄を、暇さえあれば話しかけてくる友を信じている。

 

けど

 

空白の1年

 

その間に何があったのか、水影は知らない。

 

ウタカタは言った。仙術を身に付ける為に修行をして居たと。

ああ、それは事実だ。確かにウタカタは仙術を身につけていた、尾獣の力を操っていた。それに湿骨林のカツユは悪い噂を聞かない善を体現した存在だと聞く。それを引き連れているということは、それだけで身の潔白を証明できる筈だ。

 

——本当にそうか?

 

一度湧いて出た疑心感はそうそう拭えるものではない。疑い出して仕舞えば全てが信じられなくなる。

カツユが操られていたら。そもそもカツユもマダラの協力者なのだとしたら。

あり得ないと分かっている。それでもマダラを見て感じさせられた。

 

あり得ないなどあり得ないのだと

 

五影が揃って手も足も出ない存在など居る筈もなかった。だが、事実いた。この世の理すら嘲笑い破壊する絶対的強者が。

 

(それでも、あの笑顔が、あの涙が、嘘だとは思えない!!)

 

「俺はウタカタを——」

 

「別に貴様がどう思おうと構わんが、貴様、ウタカタを庇って民を犠牲にする覚悟はあるのか?」

 

信じている、そう続ける筈だった言葉は風影によって遮られる。否、影という立場が、やぐらの発言を許さない。

 

今ここでやぐらがウタカタを庇うのは簡単だ。だが、そうなればまず間違い無く戦争が起こる。

五大国間での戦争ではない、水の国と他四つの大国でだ。

そうなれば、幾らのウタカタとてどうにも出来ないだろう。いや、それ以前に、きっとウタカタはやぐらにそれを望まない。

 

ウタカタを庇って戦争になるくらいなら彼はきっと喜んでその身を晒す。ウタカタはそういう男だ。

 

最早水影に言葉はない。覆すコマも持ち合わせてはいない。あるのは信頼という形のない脆いものだけ。

 

その場に一人の忍びが乱入してきた。額当てを見る限り木の葉の忍。息も絶え絶えな様子から余程急いできたことがうかがえる。

 

「報告します火影様!六尾の人柱力であるウタカタが、うちは一族と交戦している模様!膨大な六尾のチャクラを感知班が感知したとのことです!」

 

それはある種の死刑宣告。この報告が何を意味するのか、分からぬ馬鹿はこの場にはいないだろう

 

「決まりだな。ミフネ殿、一応決を取ってくれ。後々になって文句を言われても困る」

 

木の葉の忍の報告も、風影の突き離すようなセリフも、もう既にやぐらの耳には届いてはいなかった。

 

「それではここに、中立国である鉄の国頭領ミフネが決を下す。

水の国霧隠れ。二つ名霧のウタカタを世界に牙を向く凶悪犯罪者として処分する

異論はありますまいな?」

 

やぐらは一人、無力な自分を呪った。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

そこは何処かの地下空間だろうか。木の根が壁を這うその空間で笑みを浮かべる者が一人。

 

「マダラ様〜、どうしてあんな嘘を?」

 

全身が白い生物——通称ゼツが間延びした声でマダラに声をかける。その内容は先の会談でのマダラの発言について。普段の冷静沈着なマダラからは考えられないその行動に疑問を感じていたのだ。

 

対してマダラはどうでもいいことのように、それでいて楽しげに返す

 

「実際にこの目で五影を見てわかった。アイツらがどう足掻こうと俺の足元にも及ばないとな。同時に、あんなぬるま湯にいてもウタカタは強くはならない」

 

だからこその救済処置だと、邪悪な笑みを浮かべて。

 

「忍達はウタカタと戦うことで、ウタカタは世界を敵に回すことで、お互いを高め合っていくことだろう」

 

「けど、それでウタカタが死んじゃったらどうするの〜?」

 

その質問になんだそんなことかと

 

「だとすればその程度の男だったというわけだ」

 

ウタカタは必ず生きて、戦場で相見えることを確信してマダラは笑う嗤う。

 

「それとマダラ様〜、どうやら長門がウタカタと接触しようとしてるみたいだよ〜」

 

「……ほう。そうか、それも面白いな」

 

今の——穢土転生体のマダラではウタカタに勝てないことなど火を見るよりも明らか。だからこそ、生身の人間に戻るために長門が——輪廻眼は必要である。死すらも超越する外道【輪廻転生】を発動させる為に。

だが、それは矛盾だ。長門がウタカタに接触しようとしている今、長門を手に入れようとすればウタカタとぶつかるのは必定。そうなればマダラは勝てない。少なくとも今の状態では。それにウタカタと戦うのはあくまでも20年後、戦場でだ。

それ以前に刃を交えるのはマダラの望むところではない。

なら

「長門はウタカタにくれてやれ。輪廻転生以外にも蘇る術など幾らでもある」

 

もっともその為には膨大なチャクラと時間が必要だが、幸運にもマダラにはまだまだ時間がある。穢土転生体によって得た尽きることのないチャクラも。

 

問題が一つあるとすれば

 

「ゼツよ、弟達の目を回収してこい。なに、全ては平和のため、アイツらも分かってくれる」

 

輪廻眼が再生出来ないことにあるが、マダラは一度開眼した男。加えて彼の周囲には柱間の細胞を持つゼツが山のようにいる。新たに開眼することも不可能ではない。

 

「ああ、今から楽しみだ。お前もそう思うだろう?ウタカタァ」

 

狂ったように、マダラは笑う、マダラは嗤う。




マダラ「いやーええ仕事したわー」
果たしてこれに対して主人公はどんな対応を取るのか⁉︎




どや?この展開は予想できひんかったやろ(エセ関西弁)
感想欄見ながらまだまだ甘いねーと嘲笑っていた性格の悪い作者です。
さーて崩壊していく崩壊していく♪


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こうして終わる少年の物語

主人公のターン!

覚醒イベは今だ!!

因みに時系列はうちは◯ね日記のすぐ後です。


「—————以上が会談で起きた全容です。ウタカタ様どうしますか?」

 

日記書き終わってちょっとウダウダやってたらカツユさんからとんでもない報告がきた件について。

 

何でもドッキリ用に仕込んでいた液体カツユさんが向こうの情報をこちらに流してるとか。

いや、そこはどうでもいいな。問題は報告の内容だ。

 

取り敢えず叫ばせて。

 

このホモォォオオオオ!!!!ちーがーうーだーろー!!違うだろ!!!!

 

よし、ちょっとスッキリした。いや本音を言えば全然整理ついてないし、全く意味が分からないけどまあ燻っていた感情は発散できたから良しとしよう。

 

それで、何だっけ?アメリカの大統領の話だっけ?あっ違う?知ってる、ただの現実逃避です。

冗談は置いといて、確か俺が国際的な指名手配犯になったんだっけ?しかもよりによってあのクソクレイジーサイコホモと志を同じくしているんだっけか?

何でそうなったの?俺が犀犬と仲良いから?いや、俺の交友関係なんてどうでもいいだろ。何で犀犬と仲良いだけで犯罪者扱いされんだよ。

もしかしてあれか?まだ犀犬は化け物だなんだとほざくのか?だったらアレだな、こっちも出すとこ出すよ。最近尾獣玉覚えたし、言っておくけど破壊力ハンパないからね?

 

いや、それとも俺が仙人化(笑)使えるのが不味いのか?でも九喇嘛が言うことには初代ホモ影も使えたらしいし、そんな悪いことでもないよね。

それとも何、俺が使えたら悪いの?なんで?イジメ?言っとくけど仙人化は俺と犀犬とカツユさんの絆みたいなもんだからこっちも馬鹿にするんなら出すとこ出すよ?

仙人化してたら体滅茶苦茶丈夫になるし、ステゴロの喧嘩に持ち込めば結構強いよ?カツユさんの住処の湿骨林で体術の基礎とかも習ったし、並みの相手どころか総長クラスでも倒せるかんね。総長クラスがどれくらい強いか知らないけど。

 

いけないな、また現実逃避している。ちゃんと問題に向き合わないと今回ばかりは割とマジでヤバイしな。だって各里の最強がこっち来てるんでしょ?危険分子は早々に排除する〜って感じで。

まあこの世界広いし、居場所が特定できて尚且つ襲来に気づいていない俺を倒す、いやこの際だからハッキリ言おう。俺を殺す方が手っ取り早いのは分かる。合理的だね。それにしても世界が敵に回るなんてなんて中二病の痛い妄想だと思ってたけど本当に起こるんだなそんなこと。

 

けど、残念ながら俺は俺が犯罪者扱いされているのを既に知ってるし、逃走用の【何処でもシャボン玉・改】を既に周囲に飛ばしてるから、安全面はクリアしてると言っていいだろう。

 

他にも最後の手段にはカツユさんの逆口寄せっていう最強テレポートもあるらしいし。しかも逃走先の湿骨林はカツユさんのサポート無しじゃ攻略に一年はかかるらしいから、逃走後の安全も取れるという二段構え。流石カツユさん愛してる。

 

因みにだが【何処でもシャボン玉・改】は従来の【何処でもシャボン玉】がシャボン玉toシャボン玉ならこっちはシャボン玉に入ることなくシャボン玉のある位置に瞬間移動が出来るという優れものだ。

移動した先のシャボン玉が割れるというデメリットもあるけど、まあそこはケースバイケースで使っていけばいい。

 

さて、取り敢えず逃走経路が確保されていることは確認できた。本来ならばこのまま逃走して仕舞えば早いんだが、一度水影と話しておく必要がある。なんせカツユさんの話だと大分参ってるらしいし。しかもそれって俺のせいだから割と心配なんだ。となれば次に気になるのはあちら側の動向だな

 

「カツユさん、大体どれくらいでこっちに到着するの?」

 

「恐らく日の入りまでにはここに到着するかと」

 

「成る程ね」

 

外を見てみると、太陽が大分傾いている。この場には残念なことに時計は無いが、カツユさん曰く今は大体4時くらい。日の入りが大体6時だから俺に残された時間は2時間あるか無いかといったところ。

 

『おい』

 

「どうした九喇嘛?」

 

『こっちに三代目火影が向かって来ている、他にも二人、恐らくは自来也と大蛇丸とかいうガキだろうな』

 

九喇嘛の探知は何というか独特だ。仙人化での探知を相手の雰囲気を探知することだとすれば、九喇嘛は相手の悪意を探知するらしい。

つまり言い換えるならば、その三代目火影とやらはこっちに悪意を向けているということか。

 

「さて、どうしたもんかね。九喇嘛、その三代目は後どれ位でこっち来る?」

 

『早くても20分はかかる。里の辺境に宿を借りたのは正解だったな』

 

人が怖くてココにしただけなんですけどね。まあ、結果オーライという言葉もあるし、運も実力のうちとも言うし、そういうことにしておこう。

 

 

さて、では最後の問題と向き合うとしようか。

 

「犀犬」

 

『……なん?』

 

「俺が死んだら、犀犬はどうなるの?」

 

『………』

 

ふむ、どういう訳か犀犬はこの話題を出したらだんまりしてしまう。この世界は戦争とかしてるって知ってたから割と早い段階から俺が死んだらどうなるのかについては聞いていたんだが、今日まで犀犬が答えてくれたことはない。

俺としても別にそこまで興味のある話題では無かったし、死がすぐそこまで迫って来た経験もないし、何より犀犬を困らせたい訳じゃ無いからすぐ様別の話題に変えるのが常なのだが、今回ばかりはそうも言っていられない。

 

カツユさんはどうにかして俺を生かそうとしてくれてるし、九喇嘛だって何時も以上に気を張って周囲を警戒してくれている。

それは犀犬も同じで、例の超絶危険シャボン玉を周囲に散開させてくれている。あのクソ危険なシャボン玉を俺を通して犀犬が出した時は流石に焦ったが、妙に納得もいった。きっと俺はずっと犀犬に守られていたんだなと。

 

けど、だからって俺が生きていられる保証が出来た訳でもないのもまた事実。俺のケツを狙うあのホモ集団なら命くらいは助かったかも知れないが、今回は冗談抜きで命狙いに来てるらしいし。

 

だからこそ俺は聞かなきゃいけない、九喇嘛に聞いてもきっと同じ答えが返ってくるんだろうがそれじゃダメだ。俺は犀犬の口から聞きたい。じゃないと、相棒じゃない。

 

「犀犬、頼む。俺が死んだらお前はどうなるのか、教えてくれ」

 

『……俺や九喇嘛はよ、チャクラの塊やけん、死ぬことはないんよ。ウタカタが死んでも、時間さえかければ生き返るんよ』

 

「そうか」

 

成る程、だとすればちょっとだけ肩の荷が降りた。俺が死んで犀犬も死ぬんなら、俺は死んでも生き延びる。けど、俺が死んでも犀犬は生きていられるのなら、いや、当然死んでやる気なんてさらさらない。なんで俺があのホモの仲間認定されるなんていう、末代までの恥をかかされた上で殺されてやらにゃならんのだ。

絶対いやだ、死んでも御免被る。

でも、それでも俺が死んでも犀犬が生きているになら、ほんのちょっとだけ死ぬのが怖くなくなる。

 

『けど』

 

「?犀犬?」

 

犀犬にしては珍しい強めの声。何時ものフワフワとした感じではないその声から、何故か覚悟のようなものを感じる。

 

『俺やよ、ウタカタのいない世界なんていらないんよ。ウタカタが殺されたらきっと、世界を滅ぼすと思うんよ』

 

「そっか。……そっか」

 

成る程。だとすればアレだな。死んじゃいけないな。だって滅ぼすんだろ?俺は犀犬が殺戮兵器になるところなんて絶対に、ぜーったいに見たくない。

 

だったら、生きるしか無いじゃないか。俺があのクソクレイジーサイコホモの味方だって言い張るんなら、あいつをボコボコにして文句言ってくるやつの前にでも差し出せばいいじゃないか。

 

最強の忍術?最強の忍?最強の瞳術?何それ美味しいの?

 

犀犬や九喇嘛を化け物だなんだ言ってる弱虫どもに俺が負けてやるもんか。話し合いの一つも出来ずに見た目だけで判断するゴミどもに負けてやるもんか。大事な仲間侮辱する世界なんかに殺されてやるもんか。

 

忍術が使えない?誰が決めた。それを決めるのは俺だ。意地でも忍術使ってやる。雷遁でバオ◯ザケルガぶっ放してやる。

 

戦えない?誰が決めた。なんで殺しにきてるやつに手加減してやんなきゃいけないんだ。死にたくないなら殺しに来るな。

 

ああそうだやってやる。やり過ぎたって構うものか、あっちが俺を敵と認識したならこっちだって敵と認識してやる。

 

五影?知らん。俺が善か悪かもわからんような奴が人の上に立つな。人を率いるのなら人を見る目くらい養えバカ。

 

言っておくが俺は水影以外誰も信頼していないからな。火影?ああうん確かに良い人かもね、けどあのホモども制御出来てないじゃん。お陰でこっちは集団で襲われたんだよ?その責任とって土下座くらいするまで許さん。

 

『………おい』

 

「どうした九喇嘛?」

 

何時もなら何事もズケズケいう九喇嘛には珍しく言い淀んでいる様子。何かあったのかな?

 

『儂はお前が死んでも、本体はクシナに預けておるから消えることはない』

 

「?」

 

本当に珍しい。遠回りな言い方をするなんて正直九喇嘛らしくない。マダラの洗脳でも受けたのか?

 

『儂はお前を最後まで見届けると決めた。それは儂が儂の意思で決めたこと。今更変える気はない』

 

「それで?」

 

『だが、今のままではお前が死んでも儂は何食わぬ顔でクシナの中で生き続けることになる』

 

何と無く分かる。九喇嘛が何を言いたいのか。何を言おうとしてるのか。だから、何も言わない。口を挟むのは野暮というものだ。

 

『三代目火影がこっちに向かっている今、クシナの警護は手薄になっているとみていい。いや、実際にクシナの内部から探知したがあの場には碌な戦力はおらん』

 

「そうなんだ」

 

『既にクシナとも話しはついておる。チャクラも繋げておいた』

 

「そっか。そこまでお膳立てされたら仕方ないね」

 

『ふん』

 

つまりはそういうことだ。普段はツンドラな九喇嘛が珍しくデレた。そういう認識でいいだろう。

うむ、悪くないな。正直ツンデレ系のヒロインはまどろっこしくて嫌いだったが、悪くない。この一瞬のデレで何故かこれまでの努力全てが報われたような気もする。

 

さて、ならそろそろ飛ぶとしようか。シャボン玉が無いと不安で仕方ないが、まあ九喇嘛が大丈夫だというのだから大丈夫なんだろ。

 

それじゃウタカタいっきまーす!!

 

 




まだまだ主人公のターンは続きますが長引きそうなんでここで切ります。

まあこの無自覚で強い主人公が自覚したらやべーわな


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思いとは託すもの

これはちょっと意見割れるかもしれませんね。
まあ気楽に暖かくご覧ください


さっきまでの汚い部屋が嘘のように、景色は一瞬にして清潔感溢れる病室へと切り替わる。

正しくは俺が移動した。

 

「さて」

 

まずは感知。周囲に気を向けると半径10メートル以内にいるのは八人、うち一人は目の前で聖母のような笑みを浮かべ、うち二人はその聖母の傍でスヤスヤ眠っている赤ん坊なので除外。実質五人だな

 

「犀犬」

 

『はいよ』

 

右腕を犀犬に預ける。途端に青色に変色するが気持ち悪さは全くない。もう慣れた。

預けた腕から水蒸気が発生し、部屋の外へと向かっていく。因みに水蒸気の正体は睡眠ガス。吸ったら九喇嘛すら眠らせることが出来るとは犀犬談。

その話題を出した時九喇嘛が忌々しそうに舌打ちしてたから、あながち嘘じゃないのかもしれない。

 

「これで暫くは大丈夫かな?」

 

「鮮やかな手口だってばね」

 

拍手しながら笑いかけてくるクシナさんに苦笑いしか出てこない。手口って言うな。いや、間違ってないけど。

 

「話しは九喇嘛から聞いてます。全く、急に話しかけてくるかと思ったらいきなりウタカタが犯罪者にされた、なんて聞かされたからビックリしたってばね」

 

心中お察しします。俺も全く同じ意見ですよ。

一体何をどうトチ狂ったらこんな幼気な美少年を犯罪者に扱いできるんだか。もしかして全員ショタコン?流石に冗談だけど。

だから帰ってきたミナトさんをボコボコにする計画を立てるのやめてください。食事に生姜盛るとか地味な嫌がらせはマズイって。そこは生姜じゃなくてワサビでしょ。

 

おっと冗談を言ってる場合ではないな。外を見る限りまだ日が沈むまでは一時間以上掛かるだろうけど、カツユさん曰くミナトさんもテレポート系の忍術を持ってるらしいからあんまり長居は出来ないんだよね。

 

「さて、それじゃ早速九喇嘛の本体を俺に移し替えます。拳を出して———え?」

 

九喇嘛が言うには、拳と拳を合わせればクシナさんの中の九喇嘛の本体を移し替えることが出来るとのこと。実際には体と体が触れ合っていればそれで良いらしいが、態々足と足を合わせる必要もないし、おでこでおでこを合わせるような少女漫画の安いイケメンかぶれみたいな事もしたくないから拳でいいかと思っていた。……のだが

 

「クシナさん?」

 

何故俺はクシナさんに抱きしめられているんだ?

もしかして浮気?いや、俺人妻に手を出すほど落ちぶれてないよ?ってかまだ体は6歳だよ?

 

「ごめんね」

 

そんな俺の考えなどまるで無視して、さらに抱きしめる力を強めるクシナさん。ちょっと背中が痛い。

 

「こんな小さな体に、いっぱい背負ってるのね」

 

あの、ほんと痛いんで力抜いてもらえます?さっきから滅茶苦茶痛いんです。主に心が。

 

「背負わせてごめんね。何も出来なくてごめんね」

 

ポタポタとすぐ横を雨粒が通り過ぎる。雨だね、まったく水漏れなんて本当にここ病院?お陰で俺のほおも濡れてんだけど。

 

「きっとこれから先も、もっと辛いことがあると思う」

 

でしょうね。だって俺犯罪者認定されてるし。あれ?だとしたらこの状況不味くない?これ見られたらクシナさんの立場も危うくなるよね。あっ、さっき外の奴らは俺が眠らせたんだっけ?

 

「君は優しいから、きっともっと背負うと思うの」

 

頑張って力入れてるけど全然抜け出せない、クシナさん力強すぎでしょ。いや、俺が力抜いてるわけじゃないから。そりゃクシナさん出産してそれほど時間も経ってない状態だから全力で抜け出そうとしてるわけじゃないけど。

 

「世界が君を敵だと思っても、君はそれでも世界を救っちゃうと思う」

 

別に俺そこまで善人じゃないから。そりゃマダラは倒すよ?俺をこんな目に合わせておいてフルフルニィするなんてマジ許せないし。あれ、それって結果的に世界救ったことになるのか?

 

「だからこれだけは言わせて」

 

そこで切って、俺の頰を掴んで強引に目を合わせるクシナさん。その澄んだ青い瞳に(ウタカタ)が映る。

 

「私たち家族を救ってくれてありがとう」

 

何も言えなかった。言葉が出なかったとかでは無く、本当にその一瞬だけはどうすれば喋れるのかも忘れてしまっていた。

ただ、妙に胸がポカポカする。

 

『ウタカタ、終わったぞ』

 

「……分かった」

 

名残惜しいけど、今度はちゃんと抜け出す。クシナさんの目は少し腫れていて、唇に血が滲んでいた。何も出来ないことが悔しいからって、血が滲むくらい噛み締めることは無いと思うですけどね。

それに、クシナさんが死なないように一部チャクラを残したとはいえ九喇嘛という存在が抜けた代償ゆえか、クシナさんの様子はどこか弱々しい。それが見ていて辛かった。

 

「ウタカタくん、お願いしたい事があるんだけど聞いてくれる?」

 

そう言って左右に視線を送るクシナさん。その先には二人の赤ん坊が、って二人?あれ?双子だったっけ?

 

「えっと」

 

「こっちの生意気そうなのが私たちの息子ナルトで、こっちの優秀そうなのがサスケくん。三代目がフガクさんから預かったらしいんだけど、どうせならってナルトの側に置いてもらったの」

 

母親の顔、とでも言えばいいのかクシナさんの顔は先ほど俺に向けていた優しげな表情では無く、慈しむような表情をしている。

なんか、ちょっといいなと少し羨ましく思ったり。

 

「それでお願いっていうのはね、この二人の手を握ってあげて欲しいの。木の葉を救った英雄として、二人の憧れのヒーローとして」

 

木の葉を救ったっていうのはちょっと分からないけど、赤ん坊の手を握るくらいなら吝かでは無い。

これからの未来を切り開く少年達に、パワーくらい与えてやろう。

そうして二人の手を握り。

 

 

 

 

「え?」

 

気付けばまた訳の分からない空間にいた。もう慣れっことはいえいきなりは心臓に悪いからやめてくれませんかね?

取り敢えず現状確認のために周囲の確認。

 

ん?

 

もう一度周囲を、今度は注意深く見回す。

俺の後ろには九喇嘛がいる。だが、逆を言えば九喇嘛しかいない。何処を見ても犀犬がいない。カツユさんもいない

 

「九喇嘛!犀犬や、カツユさんが…………九喇嘛?」

 

返事がないただの屍のようだ。じゃないな、なぜだが前を見たまま固まってしまっている九喇嘛には俺の声は届いていないらしい。

 

もう一回叫ぶか

 

『元気がいいな、少年』

 

へ?

 

声を掛けてきたのはなんて言えばいいのか、ちょっと古い、それこそ弥生時代辺りの人が来てそうな白い装束を身に纏った元気そうな好青年。

笑顔が非常に眩しい。

そして、その背後にはその好青年と似たような服装の美形の青年。目の周囲の隈取りと、巴を描いた瞳が特徴的だ。

イケメンは爆ぜろ。

 

『……アシュラなのか?』

 

『おう、久しぶりだな九喇嘛』

 

九喇嘛とその、アシュラ?は知り合いなのか九喇嘛は珍しく躊躇いがちに、アシュラさんは楽しそうに言葉を交わす。なんか、この笑顔和むな

 

『アシュラ、無駄話はいい、さっさと本題に入るぞ』

 

『そう言うなよインドラ。久々の再会なんだからさ』

 

『チッ』

 

なにこれ気まずい。だってアレでしょ?九喇嘛はこの二人を知ってるんでしょ?そんでもってこの二人も九喇嘛を知っていて、あれ?俺ボッチ?

なに?俺を孤立させるためだけにこの空間に連れてきたの?嫌がらせの度が過ぎるだろそれは。

ってかインドラ?さんとアシュラさんは仲悪いんですね。

 

『まあ時間がないのも事実だし本題に入るか』

 

これ俺帰っていい?ってか出口何処?教えてくれたら俺一人で帰れるよ?

 

『ウタカタ、お前には伝えておかなければならないことがある』

 

あっ、俺に用があったんですかそうですか。だったらあんまり置いてけぼりにしないでくれますかね?俺寂しくて死んじゃうよ?

いや真剣に聞こう。どうやら真面目な話みたいだ。

 

『マダラの言う【月の眼計画】これには裏がある。そうだよなインドラ?』

 

『ああ、今思い出しても忌々しいがな』

 

苦虫を噛み潰したかのような顔で舌打ち混じりに言うインドラさん。正直怖いんで帰って貰っていいですか?無理?そっすか

 

『上手く乗せられた俺が言うのも何だが、この計画には裏で操っているものがいる。名前は知らないし、素性も不明だがな』

 

それって何もわかってないってことじゃ、ごめんなさいごめんなさい冗談だから睨まないで!!

 

『兎に角、マダラの言う計画には別の目的がある。恐らくマダラ自身もただの傀儡でしかない』

 

「え?マダラが傀儡!?」

 

何それ趣味わっる。あんな傀儡を家に置くとかそんなのただのホモじゃないか。

 

『ああそうだ。それを止められるのはお前しかいない。だからわざわざこうして頼みにきたんだ』

 

どう見ても人にものを頼む態度じゃ無いんですがそれは。

 

一方の二人はなんかバレたらジジイがどうのこうのと頭を抱えながら愚痴っている。ジジイって誰だよ。

九喇嘛は九喇嘛で何故か感慨に耽ってる様子だし、俺まじボッチ。どないすれば宜しいんですか。

 

『取り敢えずウタカタ、こっちに来い』

 

アシュラさんは笑顔で、インドラさんはぶっきらぼうにこっちに来いと手招きする。行きたくない。けど九喇嘛は行けって言うし。チクショウ行けばいいんだろ行けば。

 

「なんのよう———-またこれか」

 

今日は厄日か何かなのか、妙に子供扱いされる。今もアシュラさんは手慣れているのかわしゃわしゃと遠慮なく俺の頭を撫でてくる。インドラさんは恐る恐るといった感じで慎重にだが。

不思議と撫でられた頭からパワーのようなものが溢れてくるものだから払いのけることも憚られて、結局俺は為すがままに撫でられていた。

 

ある程度して満足したのか、二人は笑って——若干一名は笑い慣れていないのかちょっと不格好だったけど——『世界を頼む』なんて俺の身に余ることをほざいて消えていった。『見守ってる』とも言ってたから本当に消えたのかは定かではないが。

 

「何だったんだ?」

 

『さあな。お前が認められたということだろ』

 

「さいですか」

 

 

 

 

 

 

 

「ウタカタ?」

 

心配そうにこちらを見るクシナさん。

周囲を見渡すとそこはつい先程まで俺がいた病室。

 

帰ってきたみたいだな。

 

何気なく頭に触れてみる。不思議と、言葉にできない暖かさのようなものを感じた。

 

今日はよく子供扱いされる。今日はよく託される。

 

目の前で不思議そうに首を傾げるクシナさんも、さっき出会ったアシュラさんもインドラさんも。俺に世界を救ってくれと言う。

無責任だと斬って捨てるのは簡単だ、けどそれは子供のすることじゃない。託されたんなら叶える。出来ないならまた別のやつに託せばいい。

 

「ウタカタ様、もうじき五影が到着します。準備を」

 

「……分かった」

 

どこか自分自身フワフワしていたのは分かっていた。マダラを倒すとか世界が敵に回るとか、規模が大きすぎてあまり分かっていなかった。

いや、考えないようにしていた。俺にとってそんなことは二の次で、一番は犀犬達との日常を壊されたくなかった。

 

だから戦おうとした。

 

けど、それじゃダメなんだと気付かされた。知ってしまった。俺が犯罪者になったと聞いても抱きしめてくれたクシナさんの温かみを。アシュラさんのインドラさんの手の温かみを。

 

クシナさんもアシュラさんもインドラさんも俺を子供扱いした。それはそうだ、俺は子供なんだから。

 

ああ、子供だった。敵に回るなら潰す?子供だ。友達を馬鹿にされたから怒る?それはどうだろう、大人でも怒るよな。世界全部敵に回す?子供だ。

そんなことして何になる。何の意味がある。

向こうがクズならこっちもクズな対応をするのか?何だそれは。丸っきり子供じゃないか。

 

殺される気はない。話し合いができるとも思ってない。けど、諦めるつもりもない。

 

向こうがガキならこっちが大人になればいい。話し合いが通じないなら丁寧に言葉を教えてやればいい。それでダメなら、その時はその時だ。

 

「行こう、カツユさん」

 

死ぬ気はない。殺される気はない。俺は……

 




大人だな。マダラの思い通りになんてさせるわけないよね?流石は主人公。

ただし和解ルートに入るとは言ってない


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主人公の計画とか思考

今回は説明回なんで、進みません。
勘違いもなしです。

という事でゆっくりしていってね。


空を見上げると、既に日が沈みかかっているお陰か一番星がキラキラと輝いている。

元の世界の記憶なんて最早存在しないが、何となくあっちの世界では星はここまで綺麗には見えないんだろうな、と思ってみたり。

 

病室から離れる際に、クシナさんは最後にまた力一杯俺を抱きしめてくれた。その後は流石に疲れたのか糸が切れたように眠ってしまったが。

けど、確かに力は貰えた。少なくとも、全部終わらせたあとは絶対クシナさんに菓子折りの一つでも持っていくんだと決意はした。

まあ、それは当分先のことになるだろうけど。

 

パイプをふかすと見慣れたシャボン玉がまた一つ空を舞う。不思議とシャボン玉を見ていると心が温まるように錯覚するのは、常にシャボン玉が俺のそばにあったからか、それともシャボン玉が俺を暖めてくれるからか。理由なんてサッパリ分からない。

 

分からないから考えないようにしよう。今は考える必要のあることに頭を使うべきだ。

現在俺が抱える問題、というより解決しなければならない問題はいくつかある

 

一つは、これから来るであろう五影との対談。

もっと言えば俺が犯罪者になるかどうかについてだ。

 

正直、あれだけ啖呵を切っておいて何だが今の段階で説得できるとは思ってない。

なんせ俺にはマダラの味方ではないという証拠がないんだから。言わせて貰えば、じゃあ何を見せればお前らは俺がマダラの味方じゃないって信じるんだって声を荒げてやりたいが、それをやってもこっちの立場が悪くだけだというのは理解している。

つまりこの問題はどうしても先送りにせざるを得ない。

 

それに、この問題は言うほど面倒ではない。

普通のやつからすれば世界が敵に回るなんて大金を払ってでも避けたいところだろうが、九喇嘛による超感知、カツユさんのハイパー回復、何より犀犬の超絶危険シャボン玉による絶対防御がある俺からすれば些細なことでしかない。

全て人任せなのが歯痒いところではあるが、そこはそれちゃんと弁えてるから。いや、いつまでも甘える気はないよ?迷惑ばかりは掛けたくないから全力で修行する気だし。

 

話は戻すが、一つ目の問題は別に命に関わるような問題ではないのだ。

だがその実面倒でもある。

というのも本当に俺がマダラの味方じゃないという証明ができないのが辛いのだ。

当初こそマダラをボコボコにして差し出せばそれで何とかなると思っていたが、今になって問題がいくつか浮上した。

 

俺が黒幕説と、本当の黒幕がいること。

 

『俺が黒幕説』は文字通りマダラを操っていたのは俺で、計画にマダラが必要なくなったから殺す超絶鬼畜野郎だと思われること。

少年漫画でたまにある「あーこいつ裏切るな」って奴が案の定裏切って「先生は良くやってくれました。後は俺が引き継ぎますよ」みたいなこと言って背後からブスって刺すアレだ。

そうなったらこれ程厄介なこともない。なんせ肝心のマダラを俺が殺ってるから俺とマダラは仲間じゃないって証言させることも出来ないし、そうなれば原作主人公的なやつが超パワーに覚醒してぶっ飛ばしに来ることが目に見えてる。

 

まあ『俺が黒幕説』は卑屈に卑屈を重ねた妄想だからそれ程可能性は無いだろうけど。問題は本当の黒幕がいることなんだよなぁ。

 

インドラさんは見た感じ警戒心強そうだったし、純粋な戦闘能力も高そうだから並大抵じゃ取り入ることも、そもそも近づくことすら出来そうにない人だ。

そんなインドラさんを唆して上手く乗せる。しかも二人は六道仙人?だっけの息子らしくて時代で言えば何百年、下手すれば何千年前の存在。

そんな昔から存在していて、今もなおその裏の計画とやらを果たそうとする忍耐強さを持つのが黒幕だ。ハッキリ言って草の根を掻き分けて探したところで見つけられるとは思えない。

 

ここでいくつか問題が浮上する。

 

俺の目的はその黒幕を潰すことにある。

これは別に義務というわけではないが、インドラさんとアシュラさんが態々俺を頼ってくれたんだ、その期待に応えないわけにはいかない。

よって俺は絶対に黒幕を潰す。

だが相手もさるもの、俺の予想が正しければ黒幕はアホみたいに諦めが悪くて忍耐強い奴だ。それこそ十尾が復活して、下手すれば無限月読が成功して地上の生物全てが幻術にかかるまで姿を現さない可能性だってある。

 

中途半端なタイミングでマダラを倒し、『月の眼計画』とやらを潰して仕舞えばまた黒幕さんは日陰に戻って時期を伺うのは明白。

つまり、黒幕を誘き出すためには十尾を復活させる必要が出て来る。

 

そして、その為には——つまり十尾を復活させるには犀犬達尾獣を外道魔像とかいう入れ物に封印しなければならないらしい。

 

これが問題なんだ。

 

マダラが20年後の戦争で尾獣を回収すると宣言している以上、各里の影どもが尾獣を野放しにしておくとは考えられない。大方俺みたいに人に封じるのは簡単に予想がつく。ものに封じるという手もあるらしいが態々敵が手に入れやすいようにするとも思えないからな。

 

そしていざ戦争になった時に果たしてこの存在、つまりは人柱力をどうするのか。

隠す?無駄だな。そんなの一時的な時間稼ぎでしかない。それに第一隠すのならこなさなければならない問題がある

 

マダラを倒すこと。

 

だが、ハッキリ言ってそれは無理だ。

カツユさんに聞いた限り五影が束になってかかっても手も足も出なかったそうじゃないか。

一般的な少年漫画なら20年後には強くなっていて、『へっ、あの頃の俺とは違うぜ!』的なことを言うのだろうが、まあ無理だな。

20年経ったからって強くなれる訳でもないし、なんせ聞いたところによるとマダラは穢土転生体?とかいう弱体化した存在らしいから、寧ろパワーアップするのは向こうなんだよな。

 

そこまで考えれば誰でも分かる。俺みたいに黒幕の存在を知らないやつはマダラを倒せばそれで世界は救われると思ってるだろうから、当然その為に持てる戦力は出し惜しみなく使う。つまり人柱力は戦場に駆り出されるとみていい。

 

だが、それでも正直言って勝てるかどうかは五分五分だ。これは俺の予想ではなく九喇嘛や犀犬の予想だからまず間違いない。

けど、五分で人柱力は死ぬ。なんせ敵の狙いは尾獣だ、無理やり引っこ抜かれて死ぬなんて想像に難くない。

 

ここからは俺の都合だが、俺は自身が人柱力だからその扱いというのはよく分かってる。

理由もなく暴力を振るわれるのなんてザラだし、金を払っても商品が出ない、もしくは食事の場合毒を盛られるなんて言うことも良くある話だ。

俺は犀犬が中和してくれていたらしいから毒の類は効かなかったが、それでも正直人が憎くて仕方なかった時期もある。

水影がいなければきっと三回は滅ぼしてた。

 

犀犬と仲の良かった俺でもこんな感情を抱くんだ、尾獣と全く仲良くない奴なんてもっと悲惨に決まってる。

なんせなりたくもない人柱力になったのに周りはクソみたいな対応をしてくるんだからな。いや、ほんとそういう意味ではこの世界クソだな。

 

けど、それは尾獣も同じこと。

自由気ままに生きたい奴だっているだろうに、いきなり攻撃してきて反撃したら化け物扱いだろ?そんでもって危険だから封印するとか自分勝手なこと言って人なりモノなりに封印して、解放したと思ったらまた封印して。

 

そんでもって戦場では兵器として導入するんだろ?

マジでこの世界腐ってるな。ちょっとマダラの計画に加担しかけたぞ。

そりゃ尾獣も人間不信になるわ。九喇嘛が人を憎んでいた理由がヒシヒシと伝わってきた。

 

ハッキリ言って人柱力なんていうのはいいルーズルーズのズルズルな関係でしかない。

断ち切れるのなら早々に断ち切っておきたい案件だ。そこで、俺の出番というわけだ。

九喇嘛曰く、尾獣の合意の上でなら人柱力から尾獣を解放しようと人柱力が死ぬ心配はない。これはクシナさんの件で既に実証済みだ。

そもそもが尾獣が抜けて人柱力が死ぬのはただの腹いせらしいからね。まあ無理やり封じられて、今度はまた別の人に封じられると分かってたらムカついて殺しても仕方ないと思う。

それで殺すのはエゴだろ。

 

兎に角、俺が説得できたのなら人柱力を殺すことなく全ての尾獣を俺に移し替えることは可能だ。それも犀犬が言うには一番厄介なのが九喇嘛らしいから、残りを皆説得して取り込むのはそれほど難しいことでは無いらしいし。

 

そしてそれこそが俺の目的。

 

俺は十尾を復活させる気でいる。それは黒幕を表に出すために必要なことだ。

だが、その為に誰かに死ねと命じる気はない。言ってしまえば態々黒幕を潰す理由はないんだから。なんせ今回の『月の眼計画』を潰せば黒幕さんの裏の計画とやらも先送りになるに決まってる。そうなれば少なくとも俺が生きてる間に動くとも思えないから次に黒幕が動くのは俺が死んだずっと後になる。

 

けど、それは出来ない。なんせ俺は託された。託して貰った。

 

だから今潰さないといけない。

俺はあえてマダラに尾獣をくれてやる。けど同時に、尾獣が奪われたら死ぬとわかってる状態で他の人柱力に尾獣を差し出せとも言えない。

だってそうだろ、只でさえ酷い扱いをいけているのにその上で死ねなんて誰が命令できる。

 

だからそれは俺が背負う。

九匹の尾獣が必要なら全部俺に封じればいい。

死なない算段はついている。じゃないとこんな事するものか。俺の都合で十尾復活させといてごめんやっぱ死んだは無責任すぎる。

 

十尾は復活させる、必要なら無限月読も見逃す。その上で黒幕に勝つ力も身につける。

 

ハッキリ言って問題は山積みだ。しかもこれを話したところで信じてもらえるとも思えないし、まず俺は現在犯罪者。俺の言葉に耳を傾けるやつが何人いるか。

 

つまり、これらは全て俺一人で片付けなければならない。正直自分で自分に背負わせすぎだとも思うが、こればかりは仕方ない。

 

しかも世界は敵に回ってるし、ああまじでしんどい。

 

 

 




人柱力から尾獣が抜ける部分は独自解釈のような気もしますが、八尾が魔像に封じられてもビーさんが生きてたから強ち間違いでもないと思うんですよね。
だって牛鬼さん本体封印されても尻尾切るだけでビーさん生かしましたしね。

ってか主人公マジで不憫すぎる。


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いざ、決戦の地へ


感想にもありましたので人柱力から尾獣を引き剥がすことについてちょっと説明。

原作のビーさんの様に一部チャクラを残せばそこに尾獣の意思が残っていなくても大丈夫。けどそれをするかは尾獣次第だから尾獣が『なんでこんな人間のために態々そんなことしなくちゃなんないの?』と合意しなければ死にます。
って書きたかってんですけどだいぶ説明不足でしたね。失礼しました。

それにしてもスクロールバーがちょっと下がりましたね(・∀・)
感想もいろいろ荒れてるみたいですね(・∀・)

小説書くってたーのーしーなー♫



「遅かったか」

 

波風ミナトが時空間忍術でクシナの病室に到着した時、既にウタカタはそこには居なかった。

だが、チャクラの残り香からつい先ほどまで確かにこの場にいたのだと推測できる。

 

ミナトは決してウタカタがマダラの部下だという話を信じていた訳ではない。けれども仮にその話が本当だとするなら、ウタカタが今度こそ九尾を手中に収めようと動き出すことは容易に想像がつく。嘘だとは思っている、だが万が一があってもいけない。

四代目火影として、何より九尾の人柱力であるクシナの夫としてミナトは判断を下し、時空間忍術の射程圏内に入ると同時にすぐさま病室へと飛んだ。

 

結果は悪い方に裏切られた。

 

到着してすぐに、三代目火影、並びにミナトの師である自来也、自来也と並ぶ三忍の大蛇丸がこの場にいないことは分かっていた。同時に外の見張りが眠らされていることも。

そして何より

 

(クシナから九尾のチャクラを感じない)

 

正確には微かに感じることはできる。だが、それもほんの僅か。あって無いようなものでしかない。

それが意味することはつまり……。

 

チラリとクシナの顔を見る。

その顔からは何時もならあるはずの元気が感じられず、見ていて痛々しいほどに脆弱していた。目元には涙の跡がハッキリと残り、唇からは僅かに血が滲んでいる。

加えてこの場にいる二人の赤子。

 

それだけで何があったのかを推測することは出来る。

 

ナルトを人質にとり、九尾を引き剥がした。

 

或いは人質など取らずに幻術によって引き剥がしたのかもしれない。だが、ミナトにとってそんなことはどうでも良かった。

クシナから九尾を引き剥がした、その事実さえ分かればその過程など知ったところで怒りが沸き立つだけ。だからどうでも良かった。

 

クシナからは未だに呼吸が聞こえる。弱々しくて、今にも止まってしまいそうなそれ。クシナが生きているのはうずまき一族の生命力故か、ただ単純にクシナの生死に興味がなかったからか。

 

どうでもいい。

 

もう、どうでもいい。

 

「俺の家族に手を出したんだ、覚悟は出来てるよね」

 

そこにはもう温厚なミナトはいない。四代目火影も、クシナの夫も、そこにはいなかった。

いるのはかつてこの忍界にその異名を轟かせた暗殺者()だけ。

 

『黄色い閃光』が目を覚ます。

 

或いはミナトが冷静であれば、クシナが生きている事実にもっと疑問を抱いたのかもしれない。だがさしものミナトとはいえ、最愛の妻の脆弱しきった顔を見てなお、正確に状況を判断できる冷静さは持ち合わせてはいなかった。

 

ウタカタは既にミナトの感知範囲の外にいる。けれど不思議とミナトにはウタカタが何処にいるのかが分かった。同時にその場で歪んだ笑みを浮かべているであろうことも。

 

 

その場にはもうミナトの姿はない。ごめんねと呟くクシナの声が、ただ静寂に響く。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

『山中一族より【心伝身】により木の葉全土に通達、山中一族より木の葉全土に通達。

火影様より木の葉郊外、終末の谷にて大規模な戦闘が行われるとのこと。繰り返す、木の葉郊外、終末の谷にて大規模な戦闘が行われるとのこと。

相手はあのうちはマダラの部下であり、一度は木の葉の英雄とまで言われた霧隠れのウタカタである。敵はすでに九尾を奪取し、逃亡している模様。

中忍以下のものは指示に従い急ぎ避難を。上忍以上のものは結界班の補助を最優先せよ。

繰り返すが相手はあのマダラに並ぶ犯罪者である。間違っても戦いを挑むことは無いように。

既にウタカタはうちは一族を壊滅まで追い込んだという情報もある。繰り返すが間違えても戦いを挑むことは無いように。

 

山中一族———』

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

「聞いたな、自来也、大蛇丸。わしらも急ぎ向かうぞ」

 

ウタカタが借りていた住居。人里から大きく離れたその場所には誰もおらず。まるで最初から誰もいなかったかのような静けさがその場を形作っていた。

 

山中一族による通達は、当然そんな辺境の地にてウタカタの消息を追っていた三代目達にも届く。

幸いにして、その場から終末の谷までの距離はそれ程離れてはいない。今すぐに向かえばウタカタと相対することも十分可能だろう。

それにこの場にいる三人の忍。猿飛、自来也、大蛇丸は五影クラスの実力者。戦地の赴いたとして足を引っ張るようなことは無い。

 

だが、自来也は猿飛の命令に首を横に振る。

 

「猿飛先生、どうも引っかかりませんか?少なくともワシはウタカタがそんな真似をする子供には見えませんがね」

 

それに、と尚も続ける。

 

「それにワシは綱手からウタカタのことについて聞いたことがある。それを聞く限りとても悪い奴には思えんのですよ」

 

以前、偶然にも自来也は旅の道中に綱手と会ったことがある。その時の綱手は珍しく笑っていた。

大事な弟や男を失って以来、一度として笑わなくなったあの綱手がだ。

だからこそ自来也はその理由が聞きたくなった、同じ師を持つ仲間として、何より綱手に思いを寄せる一人の男として。一体誰が綱手に笑顔を取り戻させたのかを。

 

それを尋ねた時、綱手はまた嬉しそうに笑って一人のバカな少年の話をした。

 

仙術とは、一朝一夕で覚えられるようなものでは無い。学んだ場所こそ違うが同じく仙術を習った自来也はそれはよく分かっている。

高い才能に、膨大なチャクラ、そして何より何度失敗しても諦めないど根性。それら全てが合わさって、それでも一生をかけても身につけられるかどうかというもの。自来也ほど才あるものが取り組んでも完全な仙人化には至れなかった。

 

故に綱手の話を聞いて目を見張った。まだ10にも満たない子供が、たったの一年で完全な仙人化を身につけたのだと聞かされて。

 

何という才能。それに、湿骨林の仙術は攻撃特化の妙木山や感知特化の龍地洞とは異なり繊細なチャクラコントロールを必要とする回復特化の仙術。具体的にどの仙術が最も難易度が高いと決まっているわけではないが、それでも並大抵の努力で身につくものではない。

 

そして同時に思った。何をそんなに生き急いでいるのかと。

 

だがすぐにどうでもよくなってしまった。自来也の目の前で笑う綱手を見て。

綱手は言った。ガキのくせに馬鹿みたいに突き進もうとするその少年の話をカツユに聞かされたら、いつまでも過去に囚われて前に進めない自分が馬鹿らしく感じたのだと。だからそのガキのように、少しは足掻いてみたいのだと。

優しい笑顔だった。自来也の惚れた女の笑顔だった。

 

だからこそ

 

「ワシはウタカタは味方だと信じておる」

 

自来也は猿飛にとって真面目な生徒ではない。イタズラばかりして度々猿飛を困らせたヤンチャな教え子であった。当然反抗だって何度もした。

だが、果たしてここまで真っ直ぐに自身の考えをぶつけて反抗してきたことが、今までにあったのだろうか。

 

けど、それでも猿飛はそれを許さない。

 

「通達は火影からのもの、つまりはミナトのものだ。ならば九尾を奪われたという情報も嘘ではあるまい。加えてウタカタがうちは一族と交戦したのもまた事実。つい昨日フガクよりサスケを預かったが、あの時のあやつは死すら決意した目をしておった。恐らく何かに気づいたからこそウタカタに勝負を挑んだのだろう。それだけの事実があって、貴様はまだウタカタが味方だのと戯言を抜かす気か?自来也」

 

「お生憎様ミナトも人間、間違えることはある。それにワシは器用ではなくてのう、誰を信じるかと言われれば惚れた女(綱手)を信じるしかねえの」

 

もはや会話など無意味。そう悟った猿飛は静かに息を吐く。師として間違えた道を行こうとする自来也を止めるのが先だと。

 

「大蛇丸、お前はどちらにつく気だ?」

 

猿飛から目を離さずにそう尋ねる自来也。その声は妙な確信を持っていた。まるで、大蛇丸が何と答えるのかを分かっているように。

 

「…そうね」

 

思い出すのはつい最近のこと。

研究者である大蛇丸は当然ながらかの伝説の忍うちはマダラと渡り合ったというウタカタにも興味を持っていた。その忍術に、その力に、その身体に執着にも似た興味を抱いていた。

結局近づけたのは本当に偶然出会った一度のみ、それ以外は彼の周囲を飛び回る水遁忍術によって邪魔されていた。

 

だが一度で十分だった。

目だ。遥か先を見据えている目、同時に何もかもを諦めている対極とも言えるそれら二つを併せ持つその目に魅せられた。引き寄せられた。

うちはの写輪眼のような、日向の白眼のような特別なものでは無い。けれどその目を見たとき目を離すことができなかった。

その視線の先に何が写っているのか、何が見えているのか、どう見えているのか。

知りたくなった。否同じ景色を見てみたくなった。

研究者として、一人の忍として、何より大蛇丸という一個人として。

 

だからこそ大蛇丸の答えは決まっている。自来也に見透かされていたのは少々癪ではあるが。

 

「私も、ウタカタ君につくことにしましょうかね」

 

それを受けて、猿飛はまた溜息を吐く。

 

「お主ら二人は木の葉に仇なすウタカタにつくというのだな?」

 

それは最後通告。返答を誤ればどうなるか、分からないものはいないだろう。

そしてそれが分かった上で自来也は、大蛇丸はほんの僅かに口角を上げる。

 

「ワシは一度言った言葉を曲げる気はねえの」

 

「私も、みすみすウタカタ君を殺させる気はありませんよ猿飛先生」

 

お互いに一歩も引く気は無い。場所は木の葉から遠く離れた辺境の地。この三人が全力で戦ったとて、木の葉の民に被害は無い。

それが分かっているからこそ猿飛にもはや躊躇はない。一人なら兎も角、二人相手なら殺すことはないと理解しているから。

 

「大蛇丸!足引っ張るんじゃねえぞ!」

 

「あら奇遇ね。私も同じことを思ってたところよ」

 

激闘が幕を開ける。

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

そこは地獄だった。

誰も彼もが狂ったように笑いながら呪詛のように唱えるのだ。

我々うちは一族はウタカタという犯罪者を討つために戦いを挑んだのだと。

 

イタチはただそれが怖かった。

 

優しくいつも微笑んでいた近所のおじさんが、いつも油断なく周囲を警戒していた木の葉警務部隊の警官が、厳しくも優しくあった父が。

皆が皆狂ったように笑っている。

その目を赤く染めて、その口角を歪ませて、嗤っている。

 

この人たちは一体誰だ?この人達は一体なんだ?これが本当に人なのか?

 

恐怖に震えるイタチに声をかけるものはいない。

 

たった一度の敗北で、たった一人の最強(ウタカタ)に彼らは壊された。プライドを、名誉を、地位を、名前を。いや、はじめからきっと壊れていた。ウタカタはただそれを目に見える様にしただけ。

 

聡いイタチは悟った。これがうちは一族なのだと。

 

最早恐怖はない。震えも止まった。あるのは失望。

その失望が、絶望が、イタチの目を紅に染める。

 

「誰か、助けて」

 

イタチは聡い。その年にして既に頭脳だけで言えば中忍と並ぶ。だが、まだまだ子供だった。

 

尊敬する父の狂った笑顔を見て、知り合い達の狂いざまを見て、何より

 

「良かったなイタチ!これで俺たちうちは一族の名誉は保たれた!全部ウタカタが悪いんだ!」

 

信頼する友であり兄貴分であるシスイの狂った姿を見て、平静でいられるわけがない。けど、彼にはもう何も無かった。どうすることも出来なかった。

 

(サスケは三代目に預けられてると聞いている。なら大丈夫。サスケは大丈夫)

 

大事な弟は無事。ならそれでいい。それ以上を望むのは

 

——俺は味方だ。

 

思い出すのは一人の少年。

イタチと僅かに2、3歳しか変わらないにもかかわらず、木の葉の英雄と呼ばれた少年。同時に現在は犯罪者に成り下がった少年。

 

けど、イタチは見た。イタチを真っ直ぐに見つめて真摯にも語りかけてくれた一人の少年を。

嘘なのかもしれない。偽物なのかもしれない。でも、イタチはそれでも自らの目を信じる。

 

あの少年は味方なのだと。

 

「……ウタカタ……!」

 

何処にいるのかは分かっている。先程山中一族の通達で言っていた。

だから走る。迷惑かもしれない、そもそも会ってくれるかも分からない。それでもイタチはただ走る。全てを知る少年の元へ。イタチが尊敬する少年の元へ。

 

 

 

 

その背中を狂気に染めた紅い瞳が見つめていることに気付かずに。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

「———ッ!!」

 

「どうした長門?」

 

「いや、何やら胸騒ぎがする。急ごう弥彦、小南」

 

「?なんかよくわかんねえけど分かった!」

 

「それは分かってるって言わないんじゃないの?」

 

「うるせー!」

 

「それにしてもいよいよ会えるんだな!あのウタカタに!」

 

「また?」

 

「うるせー。お前らも見ただろ!あの戦争でのウタカタの尾獣化を!世界に平等に痛みを与えた!あれこそが俺の理想!かー!是非とも会ってみてえ!そんでもって出来るなら俺たちのリーダーになって貰うんだ!!」

 

「「リーダー?」」

 

「あれ?話して無かったっけ?俺たちの理想のための組織

 

 

暁のリーダーだ」

 





いよいよ一部も佳境。これが終わったら暫くは間が空きますがね。

流石に疲れたんですよ


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少年は

感想欄見てましたけど、別に評価や感想を気にしてナイーブになってるわけじゃありませんからね?
ただ連続投稿が流石に疲れたってだけなんで。そこまで心配して貰うと、逆に申し訳ない。

まあこの話が多分今年度最後の投稿になるかもしれませんけどね。リアルがががが。


一応シリアスです。シリアスかな?シリアスだといいな。シリアスってことにしといて下さい。
さて、タグを増やさなければ(使命感)


そこはかつて二人の最強が互いの夢の為に命をかけた激戦の地。地は抉れ、山は裂け、海が割れる殺し合いの末、勝者は英雄——忍の神として乱世を治め、敗者は最悪の犯罪者としてこの世を去った。

だが、それはあくまでも後の世の人々の楽観と憧れにより創られた御伽噺。現実として敗者は生き延び、先の夢を果たさんと穢土より蘇った。

唯一渡り合えた神と崇められし忍は火の意思を託し既にこの世を去り、かつての敗者の夢を阻む者も、その存在に気づく者もおらず、世界はまた地獄へとその姿を変える。筈だった。

 

そこはかつて二人の最強が命をかけた激戦の地。風は裂け、地は沈み、天は割れる。穢土より蘇りし亡者は地獄の業火によって大地を燃やし、一人の少年はただひたすらに光を追った。

勝てるはずのない戦い。生き残る道のない殺し合い。誰も救えない筈の物語。果たして少年は事実すらも捻じ曲げた。一を退け、百を救い、千を守り、万を生かした。一人の小さな少年はその背に人々の賞賛を受け、希望を受け、運命を背負う。

 

そこは全ての始まりの場所。そこは全てが終わる場所。

 

終末の谷

 

かつての英雄の、その戦いの余波により出来たと言われる場所であり、夢が始まった場所でもあり、英雄が生まれた場所でもあり、英雄が死ぬ場所でもある。

 

 

 

その場には一人の少年がいた。マダラ()の像、その上に片膝を立てて座り、既に天高く登った月を背景にシャボン玉をふかす少年は、どこか寂しい気に虚空を見つめている。

触れて仕舞えばシャボン玉のように儚く消えてしまいそうなそれは、さながら絵画のように見るものを惹きつけ恍惚させ感動させる魅力があった。

 

滝の音だけが静寂の中響き渡り、空気を揺らす。

 

まるでその空間だけがこの世界から切り取られたかのように、世界がその空間を拒絶するかのように、踏み入る事を許されない世界がそこにはあった。

だが、シャボン玉に反射する世界のように儚く、手を伸ばすことすら躊躇われるその静寂を許さない者がいる。少年が消える事を望まない者がいる。

 

「来たか」

 

静止していた空間はその一言によって動き始める。

そこには最早先程までの少年はいない。世界を救い、世界を滅ぼさんとする救世主(破壊者)がただ笑う。

そして同時に、世界を救い、少年を救わんと足掻く愚者(やぐら)もまた、動き始めた世界にその身を晒す。

 

マダラ()の上に立つ少年——ウタカタと柱間(正義)の上に立つ水影——やぐら。ただそれだけのことが、少し足を進めれば手が届くその距離が、二人を隔てる滝が、やぐらをどうしようもなく苛む。

それがまるで拒絶のようで、踏み入るなと暗に告げられてるようで、どうしようもなく苦しかった。

それでも、逃げるわけにはいかなかった。

 

「久しぶりだなやぐら。ちょっと痩せたか?」

「たった数日で痩せるわけないだろ」

 

そう返せば、それもそうだと笑ってみせるウタカタ。年相応の、それでいて少し大人びた笑顔が二人の会話で見せる何時ものウタカタの笑みだった。

 

それを見て、苦しみを感じる。言葉に出来ない痛みがやぐらの胸を突き刺し、貫く。

どうでもいいただの日常会話だった。当たり前のように繰り返されて来た挨拶だった。これから先もずっと繰り返されると信じていた言葉の応酬だった。だが、もうそれは日常では無くなった。当たり前では無くなった。これから先同じやりとりが繰り返されることがあるのかも、もう誰にも分からない。

 

たった1日。たったの1日で二人の日常は崩壊した。修復は不可能。再生も、救いもない。

 

分かっていた筈だった。理解していた筈だった。やぐらは水影だ、これまでに里を抜けていった忍を何人も知っている。その末路も、その死に様も何度も見てきた。笑って死んだ奴もいる。呪詛を吐いて、世界を呪って死んだ奴もいる。自身を忘れ、復讐に生きそして死んだ奴もいる。

その中には、かつてのやぐらの友もいた。同期がいた。仲間がいた。その全てをやぐらは自らの手で殺してきた。それは水影として、何より仲間として。何度も日常を殺してきた。

 

だからこそ、遣る瀬無かった。里を抜け、犯罪者に堕ちた忍の末路を知っているからこそ、ウタカタが無実だと知っていながら、ウタカタの優しさを知っていながら、ウタカタを信じていながら、庇うことの出来なかった自身の弱さを呪った。憎んだ。恨んだ。怨んだ。殺したいほど、消し去りたいほど、消えてしまいたいほど、弱さが、自分自身が嫌いだった。

 

にも関わらず、ウタカタは笑うのだ。

 

ウタカタが木の葉隠れの里にいない時点で、否、ウタカタがウタカタである時点で、既に五影会談での決定事項は知られているとは思っていた。それはつまり、ウタカタは自らが犯罪者に認定されたという事実を知っているということ。その場に居ながらそれを止めることも出来なかったやぐらの愚かさを知っているということ。だから当然恨まれていると、憎まれていると思っていた。

或いは、恨んで欲しかった。

 

のに、なのに!!

 

「————ッ!?」

 

激情のままに叫ぶつもりだった。恨めと、憎めと。罵られる覚悟はあった、殴られる覚悟はあった。殺される覚悟はあった。けど、心の底ではウタカタはそんなことはしないとも分かっていた。

だから、やぐらは誰よりも早くこの場所に来た。せめて話がしたいと。その内容次第では水影の座を捨てる覚悟もあった。共に戦う覚悟があった。

誰よりも付き合いの長いやぐらだ、ウタカタが何処にいるのかなんて誰に言われるまでも無く分かる。

事実、やぐらは自らに封じた尾獣——磯撫の力を借りて、誰よりも早くウタカタの元に来た。

 

 

そして今、誰よりも後悔している。

 

ウタカタは確かに笑っている。常の会話で見せる、何時もの笑みだ。やぐらの好きな友達の笑みだ。

 

けど、その目にはもうやぐらは写っていない。

いや、もはや何も写ってはいない。世界も未来も、ウタカタ自身さえも。何も写っていない。

 

 

当たり前だ。ああ、当たり前だ。

 

ウタカタはただの子供だ。力はある、相棒もいる。保護者のような存在もいる。友もいる。その生き様を見定めんとする観測者もいる。世界の未来を託してくれた先人もいる。愛情を注いでくれた味方もいる。けど、子供だ。どうしようもなく人間だ。

 

そんなただの人間は、1日で世界が敵に回り、世界征服を企てる悪の存在を知り、その裏に潜む黒幕の存在を知った。同時に、それら全てをどうにかして欲しいと、自分勝手な願いを押し付けられた。

勿論、相手にそんな気はない。インドラは、アシュラは、ウタカタを信じ託したのだ。ウタカタならばなんとか出来ると、自分たちでは築くことの出来なかった未来をウタカタならば創り上げることが出来ると。先の時代を生きた者が、後世を生きる若者に未来を託す。何もおかしなことはない、当たり前だ。普通だ。当然だ。

 

ならば、その当たり前が、普通が、当然が、ウタカタを苦しめるのもまた必然。たった一人の子供が、未来を救えるはずが無い。世界を救えるはずが無い。世界を敵に回せるはずが無い。

だが、それでもウタカタはどうにかしようと思った。どうにかしなければいけないと思った。どうにも出来ないと分かった上で、それでもなお足掻こうと、藻掻こうとした。答えの無い問題に無理やり答えを見つけ出そうとした。

 

例えるならば、360度何もない大海原に突然突き落とされたようなもの。

泳ぎ方も呼吸の仕方も知らないウタカタは、それでもこの海が時間と共に崩壊する事を知っている。

助かる為にはたった一つだけ存在する宝を手に入れなければならない事を知っている。

自身の帰りを待ってくれる大事な存在がいる事を知っている。

だが、どうにもならない。なるわけがない。

どこにあるかもしれない宝を、どこまで広がっているのかも分からない海で探すなど不可能に決まってる。時間が経てば、或いは泳ぐことにも慣れていくことだろう、呼吸の仕方も分かる事だろう。けど、それだけ。宝は見つからない。

 

諦め、絶望し、泳ぐことをやめればどれだけ楽か。抵抗をやめ、大人しく溺れる(死ぬ)ことが出来れば、どれだけ楽か。ウタカタは、否、()は知っている。

ああ、知っているとも。逃げることの楽さも、目を逸らすことの幸せも、諦めることの幸福も、知っている。覚えていなくとも、分かっている。

足掻く事をやめれば、安らぎ()が待っている。

ああ、分かっているとも。それを受け入れ、身を委ねることの温かみも。水中から眺める泡沫(シャボン玉)の美しさも、全部、全部、全部、全部、分かっている(・・・・・・)

 

それでも、相棒(世界)それ()を許さないことも分かっている。ウタカタが死ねば、世界は戦争を待つまでもなく、滅びる(滅ぼされる)。他ならぬ犀犬(相棒)の手によって。

 

ああ、分かっている。分かっているとも。分かっているからこそ、ウタカタは今、壊れている。

壊れながら、前に進もうとしている。

 

不条理だ。理不尽だ。不合理だ。けど、それが世界だ。どうしようもなく歪んでいて、壊れていて、崩れている。それが世界だ。

歪んだ(正しい)世界は正しい(歪んだ)少年を排除する。

 

世界は少年を笑う。神は少年を嘲笑う。

 

何処にあるかもしれない宝を目指す少年を馬鹿にする。愚かだと罵る。救いがないと蔑む。

方角も分からぬままに放り出された少年に、羅針盤も持たぬ少年に、北を目指せとほざく。

何処まで進めばいいのかも知らぬ少年を、あと一歩なのにと嘲笑する。

 

腐った世界だ。歪んだ世界だ。間違った世界だ。

 

そして、少年が救わなければならない世界だ。

 

 

そんなの壊れるに決まってる。潰れるに決まってる。どうにも出来ない。出来る筈がない。

 

もう、ウタカタは限界だった。否、限界など超えていた。救わなければと、託されたのならばどうにかしなければいけないと、脅迫観念によって無理矢理自らを突き動かし、手を伸ばせるもの全てに手をさし出そうとし、壊れた自分から目を逸らし、矛盾した感情から目を背け、ありもしない未来を目指した。

 

だって怖いから。信頼を裏切ることが。裏切られることが。期待されないことが。失うことが。奪われることが。

 

当たり前に持っているその感情(恐怖)がウタカタを無理矢理突き動かす。

 

いや、果たしてウタカタだけだろうか?

それはきっと違う。みんな、みんなだ。この世に生きるもの全てが恐怖に突き動かされている。

 

三代目火影は初代火影、千手柱間の強さを知っている。だからこそ怖いのだ。柱間と渡りあったマダラが。そのマダラと渡り合ったウタカタが。何より、ウタカタがまだ10にも満たない子供であるという事実が。ただただ怖いのだ。だから楽な道に逃げた。

 

会談に出席した五影は、心を折られた。

ウタカタがうちは一族のクーデターを恐怖によって潰したように、五影もまた、マダラのその圧倒的すぎる力に心を折られた。

勿論全員が全員ではない。見失わなかったものもいる。折れなかった者もいる。けど、ウタカタを信じるだけの強さは残ってはいなかった。

 

当たり前だ。普通だ。当然だ。忍ならば死を克服できるなど妄言だ。子供の喧嘩程度に仰々しくも【第三次忍界大戦】などと名付ける雑魚どもが、マダラを恐れないわけがない。怯えないわけがない。

 

その怯えが、ウタカタを追い込む。ウタカタを排除する。ウタカタを殺そうとする。

 

ウタカタが壊される。

 

 

 

 

果たしてやぐらにそこまでの考えがあったのか、それほどの考えがあったのか。答えは否。聡いやぐらといえど、世界の不条理までは理解出来ない。ウタカタの心情など理解できない。

 

それでもやぐらが歩み寄ったのは、手を伸ばしたのは、抱きしめたのは、躊躇いがちに遥か深海から空へと伸ばされたウタカタの手を握ったのは、救いを求める手を握りしめたのは一体何故か。

なんて事はない。ただウタカタに拒絶される恐怖よりも、ウタカタが壊れることに対する恐怖の方が勝っただけのこと。

 

ただそれだけ。たったそれだけ。それだけでやぐらは悩みを捨てた。自らを責めるのは後回しだと、影の立場より、年上の立場より、友である事を選んだ。

 

故に、強く、強く、強く、強く、決して離れないように強く、決して離さないように強く、決して逃さないように強く、抱きしめる。

 

「ウタカタ!俺が見えるか!俺の声が聞こえるか!俺の鼓動が聞こえるか!俺の温もりが伝わるか!俺の悔しさが伝わるか!」

「無理でも見ろ!無理でも聞け!無理でも感じろ!」

「頼むから!俺を友だと言うのなら!俺を信じると言うのなら!俺の我儘を聞いてくれ!」

 

 

「ウタカタ………俺を一人にしないでくれ。もう、これ以上友を失いたくは無い。お前を……失いたくは無い」

 

果たしてそれは誰に向けられた言葉なのか。誰への願いなのか。誰の望みなのか。

 

「………やぐら」

 

ウタカタの瞳が僅かに揺れる。




ヒロインのターン!(BGM diver)これに対する主人公の行動やいかに!

前回まで主人公の行動思考が支離滅裂だったのは仕様です。

因みに主人公の1日

朝起きる(チャイムで起こされる)→イタチ・シスイに何処とも知れぬ場所に案内される→うちは一族に襲われる→帰って飯食って日記を書く→書き終わってうだうだしてたらマダラが月の眼計画なるものを画策しているのをカツユ経由で聞く→実は自分もマダラの仲間だった→犯罪者認定されて世界が敵に回る→クシナさんの所へ行って九喇嘛を回収(その際優しい人がいることを改めて知る)→実はマダラの計画には黒幕がいることを知る→頑張れ(他人事)→今

どないせいっちゅうねん。こんなの混乱して当然ですね。ってか暴走して当たり前です。これで冷静に「ならこうすればいいな」とか言えるキャラがいるのなら他作品へgoして下さい。NARUTOの世界に一人で正しい奴は不要です。間違えては殴ってでも止めてくれる友なり兄弟なりがいてこそのNARUTOと作者は考えます。

っと言うわけで暴走した主人公を止めるヒロインのお話でした。

やばい、マジでヒロインやぐらに確定するかも。BLタグ増やさなきゃ(白目)









どうでもいい話

木の葉創設期組が強すぎる。
マダラと千手兄弟が異次元すぎる。そりゃ戦争なんて終わりますよ。この三人が手を組んだら冗談抜きで世界が終わる。
逃げても時空間忍術で兄者が降ってくるんでしょ?何その無理ゲー。みんなが必死こいて集めるなり制御している尾獣を当然のよう捕まえる兄者ェ。それを当然のように他国に売れる卑劣様ェ。土影とその候補の二人(しかも塵遁使い)を相手に砂利呼ばわりできるマダラェ。

流石はサイコパスクレイジーホモード。レベルが違うね。頑張れ主人公。明日はきっと来る。多分。


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それは届かぬ理想の世界

お久しぶりです。
生きてますよ。ええ、生きてます。


万年霧が立ち込める霧隠れの里はお世辞にも日当たりがいいとは言い難い地形に位置している。戦略的に考えれば1メートル先も分からない濃霧が周囲を覆い隠していることは大きな利点ではあるが、日常生活においては不憫と言わざるを得ない立地である。住人が一般的な感性を持ち、尚且つこの世界が平和であればまず間違いなく苦情の絶えない土地といえよう。もっとも、大戦と呼ばれる大規模な戦いこそ一人の忍びの尽力により終結を迎えたものの、未だに小規模の戦いは続き、平和とはかけ離れた日常が今日と明日と続いているこの状況で日当たりの悪さを理由に霧の有利を捨てるものはいるはずもないが。

「霧のせいで布団が……乾かない」

否、いるのである。そんな馬鹿げたことを霧隠れの里長である水影に対して正面切って言うことのできるバカが。異世界に渡るにあたって変なものを吸収し、必要なものを捨ててきた大馬鹿が。

 

太陽は既に天高くまで登り、後は降るだけの単純作業へと移行し始めた時間帯。昼食を終えた後の書類仕事に手を出すのが僅かに憚られるこの時間、突然響いた来客を知らせるノックの音に眠気を堪えながら書類に目を落としていた水影——やぐらはほんの少しの警戒と、言葉にし難い不安感を抱きながらもそれをおくびにも出さずに入室を促した。

少しの間をおいて入室して来たのは現在やぐらがこの霧隠れで、どころかこの忍びの世界全体でもっとも注目している一人の少年——ウタカタだった。齢は5歳かそこらと幼いながらも将来は美青年に育つであろうと予想される整った容姿に、ぱっちりというよりかは少し切れ長のオレンジ色の瞳。茶色っぽいストレートの黒髪は少年の左目を隠す程に長く、頭のてっぺんに立つ俗にアホ毛と呼ばれるぴょんと立った髪の一部はウタカタの今の心情を表しているのか、普段ほどの元気さ(髪の毛に元気ということが正しいのかは不明だが)も無く萎れている。

その普段の元気と気合いとよく分からない自信からくる力強さを完全に忘却の彼方へと投げ捨てた姿に、何事かと身構えるやぐら。しかしてウタカタのその重々しい口調から告げられた冒頭の言葉は、口調に反して余りにも軽々しく、やぐらが今日一番のため息を吐いたことは至極当然の反応だった。

「布団が……乾かないんだ」

「それは聞いた」

「霧を何とかしてくれ」

「帰れ」

ひどい!鬼!チビ!と現状持ちうるあらゆる罵倒の言葉を投げかけてくるウタカタであるが、罵倒のセリフがあまりにも子供染みていて逆にほっこりしてしまったのは余談である。だが、それでも里長であるやぐらに罵詈雑言(笑)を向けられる度胸のある子供が果たしてこの里にいるのかと問われれば、霧の忍びは皆一様に首を横に振るだろう。

基本的に理知的で温厚であるやぐらではあるが、彼もまたかつて血霧の里とまで言われた霧の暗黒時代を生きた忍びである。度を超えた行いをする者にかける慈悲は当然持ち合わせてはいないし、一度戦場に立てば霧隠れ随一の実力を持って戦場を駆け抜け誰よりも多くの屍を築き上げる。その上現在は三尾の尾獣をその身に封じる人柱力でもある。

少々危険な容姿と思考をしている忍びの多い霧隠れの水影というだけでも畏怖の対象であるのに、その上化け物たる三尾をその身に封じたと聞けば、やぐらの容姿を知らぬものならば如何に屈強な益荒男だろうと恐怖を感じることだろう。実際は年齢詐欺を地でいく見た目であると知れば更なる驚きも禁じ得ないだろうが。

 

話が逸れたが、簡潔に言えばやぐらは見た目に反してヤバイ。そのやぐらに対して対等に接するウタカタもヤバイ。そんな二人が室内で秘密の会議?里の上層部どころか、下忍から上忍、果ては一商人ですらそれを聞けば、果たしてどれほどの危険な会話をしていることだと戦々恐々とすること間違いなしである。実際は井戸端会議よろしく洗濯物云々の会話しかしていないが、それでもきっと周囲の者は日常会話に思わせる暗号によるやりとりに違いないと信じることだろう。加速する勘違い、隔絶して行く周囲との差。ウタカタがやぐら以外に友達どころか、会話相手すら存在しないのは今では彼が人柱力だからというだけではあるまい。

そんな周囲に当然気づくこともなく、なおも会話は進む。結局洗濯物に関しては水遁忍術を利用した脱水でなんとかしろという結論で収まり、今は別の話題に突入している。尚、やぐらの書類に関しては優秀な部下(分身)が請け負っている模様。当然不満タラタラであるがそこはそれ、分身体だから(暴論)という理由で不満は黙殺されている。いつの時代も仕事に理不尽はつきものである。

因みに今は、水影が思う優秀な部下について話題はシフトしている。

「偏に優秀といっても意味合いは違うが、戦闘面で言えば一番優秀なのは鬼鮫だな」

「秋雨?」

「鬼鮫だ。最近忍刀七忍衆に任命されたあいつだ」

あいつと言われても、と困った顔するのはやはりウタカタ。基本的に部屋の中で仙術を練るか、シャボン玉を飛ばすか、犀犬と遊ぶかのいづれかしかしない彼だ、加えて人ではやぐら以外に会話相手のいない彼だ、当然ながら世情には疎い。時たま食料の調達に外に出ることもあるが、大抵外に出れば奇異の目で見つめられるのが現状、最近ではいい加減嫌気がさして逆口寄せによって湿骨林に食料調達(狩り)に行くようになったが、それも仕方のないことだろう。それによってさらに周囲と距離ができたがこの負の連鎖だけはウタカタ一人の手でどうこうなるものでもない。そんなウタカタの近状を何となく察したのか、少しバツの悪そうな顔をしたやぐらはこれから少しでも里の者がウタカタに歩み寄れるように対策をたてようと密かに決意しながら、最近起こった出来事について簡単に噛み砕いて説明していく。

「——っで、クーデターを企てていた前任の鮫肌の使い手を仕留めた褒美として鬼鮫が鮫肌を得て、晴れてあいつは忍刀七忍衆に任命されたってわけだ」

「前任って確か、あのデブだったよな?」

「……まあそうだな。恐らくお前の思うそれであってる」

「鮫肌ってあの生き物みたいな刀だろ?それを背負ってたデブがよく俺を睨んでたからそれも含めてよく覚えてるよ」

「ってか、クーデターに関して助言をしたのはお前だろ?」

「ゑ?」

因みにその当時の会話を再現するとこんな感じになる

『ウタカタ、西瓜山河豚鬼についてどう思う?』

『(どう思うって何?質問が漠然とし過ぎじゃない?)…裏切りそうな顔をしてるな』

『…それは、腹に一物抱えてるって意味か?』

『一物どころか丼サイズで食ってるだろ』

『(食う?)…成る程、分かった。そうだな、本格的に調査してみるか。それで何も出なければよし、そうでなければ……』

(調査って何?食の調査でもすんの?健康管理なの?意外にホワイトなんだな)

勘違い(いつものこと)である。ウタカタからすれば日常会話程度のことだ、覚えてないのも無理はない。勿論、そんなことで捕らえられた者からすればたまったものではないが、そもそも疑わしい行動をしていなければやぐらは話題には出さないし、西瓜山に関しては、クーデターにあたってウタカタを最大の敵だと警戒するあまり睨みつけてしまったことがウタカタの印象を悪くしたそもそもの原因だ。結論から言えば自業自得である。他にもそう言ったことで何人か捕らえられてきたが、全員が全員ウタカタを警戒するあまりミスを犯している。それによってやぐらのウタカタに対する評価が鰻登りに上昇し、逆に周囲のウタカタへの警戒度もまた上昇の一途を辿るのだが、それは完全な余談である。恐らくウタカタが周囲と手を取り合うことが出来る日は永劫来ない。

「—そういう訳だから、戦闘面では鬼鮫が一番優秀だな」

「なら、やぐらの次に水影になるのは鬼鮫さんなのか?」

「戦闘力が高いのと、人を率いる能力が高いことは一致しない。そうだな、次の水影候補と言うのであれば、……照美メイ。彼女が一番だろうな」

「誰それ?」

「十代の若さですでに血継限界を二つ操る天才だ。今回の戦争の戦果で最近上忍に上がった奴だな」

「へー」

質問しておきながらおざなりな返事を返されたことに少しばかり苛立ちが募るが、重いため息とともに吐き出すやぐら。仕方がない、戦果という事であれば戦争を止めたウタカタ以上の者はいない。にも関わらず、ウタカタが受けたのは賛歌でも恩賞でもなく、強すぎる力故の畏怖。ウタカタに比べれば取るに足らない戦果しかあげていない照美が周囲から褒めそやされているのに対してのこれだ。不満もあるだろう。もっともウタカタからすれば何を考えているのかも分からない大人に賛美の言葉をかけられるより、掌返したような態度を取られるより、やぐらの何気ない一言の方が嬉しいのだが。因みにやぐらにそれを伝えたところ、翌日赤面して顔を覆いながら布団にくるまる水影がいたとかいなかったとか。真偽のほどは定かではない。水影の出勤が遅いため補佐官が休憩室を訪れたところ、布団にくるまりながら転げ回る水影が発見されたそうだが、現在その補佐官は長期休暇中のため、真偽のほどは定かではない。最近霧隠れでその補佐官に似た男が一部記憶が欠如した状態となって発見されたそうだが、真偽のほどは定かではない。きっと外で子供のような外見をした忍者に襲われたのだろう。

「お前は、興味のないものにはとことん関心を示さないな」

「興味が無いというか、知識がない。知らないことを次々言うやぐらが悪い」

「……そうか」

拗ねた顔をして、僅かに唇を尖らせるウタカタに、やぐらは何かを言いかけて口を閉ざす。ウタカタならば何でも知っているだろうと勝手に思い込んでいた自身を少しばかり恨みながら。同時に、ウタカタのそういう表情を見てやはり子供なんだと嬉しくも思いながら。頰が緩むのを感じ慌てて表情を引き締めるがもう遅い、拗ねた自分を笑われたとでも思ったのか非難の目を向けてくるウタカタ。居たたまれなくなって視線を逸らすがこの場は水影がほぼ毎日利用している仕事部屋、見慣れた景色をいつまでも眺めてはいられず、結局は視線を正面に戻して、あいも変わらずやぐらを見つめる非難の眼差しと視線を交差させる。

逸らされることのない視線。沈黙は数秒だけで、どちらからとも無く笑い出す。くすぐったいような、嬉しいような、楽しいような、そんな笑い。

「やっぱ俺、やぐらが好きだなぁ〜」

花が咲くような笑顔で、この瞬間が幸せだと言わんばかりにウタカタは笑う。

 

翌日、布団にくるまりながら奇声を発する水影が目撃されたとか、していないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。

お世辞にも寝心地がいいとは言えない、落ち葉を掻き集めただけの布団で眠った為か、何とも言えない悪夢を見たものだ。言葉にならない空虚な感情だけが胸をよぎる。頰を伝う雫を無造作に拭い、痛みを訴える心を無視して起き上がる。或いは、この現実の方が悪夢なのだろうか、だからこそ幸福な夢を悪夢と感じたのだろうか。いや、それはないな。大袈裟に首を振って否定する。態々首を振るのは、そうでもしないと月の眼計画に加担しそうな弱い自分を否定する為。ああそうだ、この世界は決して地獄ではない、悪夢でもない。所詮は人の価値観。自分の主観で左右されるようなものが悪夢であるはずがい。滅茶苦茶な理屈だが、あくまで自分自身を納得させる為だけの言い訳。それが正しいかどうかなんて実際はどうでもいい。

重くなった両足を動かしながら、進む先は一つの結界。九喇嘛や犀犬の知る中で、最も強力な結界。結界内部と外部を空間ごと遮断する時空間忍術の応用で、内部の時間軸を外部から完全に切り離すとかなんとか。早い話が結界内の時間が外部に比べて極端に遅くなる。その分発動と維持にかなりの量のチャクラを必要としたが、一度発動すれば術者である自分が死なない限り絶対に解けない強力な忍術である。当然俺を殺す以外に解除する方法はないし、俺以外に空間内と干渉することは出来ない。九喇嘛が言うには絶体絶命のピンチで自身を守る為に考案された忍術だが、燃費も効率も悪い為に禁術指定になったとか。

人並み外れたチャクラをもち、尚且つチャクラの塊である九喇嘛や犀犬、それに磯撫(・・)が協力してくれている為発動できているが、そのせいで戦闘に用いることの出来るチャクラが制限されてしまったのは痛い。もっとも、だからと言って術を止める気も、術に割くチャクラ量を減らす気もないが。

知らず止まっていた足を動かし、右手で軽く結界に触れる。途端に人一人分だけ空いた穴から結界内へと足を踏み入れる。対して大きくもない空間内には湿骨林で採取した色とりどりの花が所狭しと並んでいる。花々を傷つけないように細心の注意を払いながら慎重に歩を進めると、目につくのは一際美しいスイレンの花とそれに囲まれながら横たわる一人の少年。

ああ、やっぱり先ほどの夢は悪夢だ。見るも無惨な地獄そのものだ。頭が痛む。心が痛む。頰を伝う雫を拭うのも億劫で、顎まで流れた雫は足元の花々を濡らす。眠る少年は何も言わない。何も言えない。

 

ああ、悪夢だ。

 

 

やっぱり悪夢だ。

 

 

 

やぐらは今も眠ったまま。

 





ここに至るまでの経緯は次回投稿します。
シリアルの仮面を被ったシリアスがいよいよ顔を出し始めますね。


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悲劇と喜劇

短いですけどキリがいいのでここで投稿します。


各々の里の名を示す笠を置き、腰を下ろす。肌に突き刺さるような沈黙が場を包む。無遠慮にも言葉を発する者はいない。里長の付き添いとして来た者の中には完全に飲み込まれた者もいるが、それを責める者も、責めるだけの余裕のある者もいない。皆が皆一様に沈黙を崩すまいと、物音一つ立てぬように細心の注意を払うだけ。そんな中、以前とは異なる顔が座る一席を一瞥だけして、沈黙を破ったのはこの場に置いて最高の指揮権と『忍連合軍総大将』の肩書きを持つ三代目風影だった。

「あの日から、五年の月日が経った。この場にいる忍びの面構えを見ても、以前とは比べるまでもないことは分かる」

まるで自身に言い聞かせるように、一言一言に確かな力を込めて言葉を紡ぐ。その様は逞しく、けど風が吹けば崩れ去るほどに脆かった。

「だが、あえて言おう。今の我々では、マダラにもウタカタにも勝てない」

それは変えようのない真実であり事実であった。成る程顔ぶれを見れば五年前よりも遥かに力をつけたのは分かる。この場には里長だけではなく、相当の実力者も召集されている。木の葉の三忍や、霧の忍刀七忍衆、輪廻眼を持つ青年などもその例だ。

そんな錚々たる面子を前にして、或いは彼らと共にマダラやウタカタと対峙する未来をイメージして、それでも思い浮かぶのは無惨にも首を刎ねられていく未来だけ。どう足掻いても勝てる未来が見えては来ない。

「マダラによる五影会談襲撃事件から僅か数日後に起きた墓荒らし。それによって先代の五影たちの遺体は根こそぎ姿を消した。まさか、この意味が分からぬ愚か者はいまい?」

沈黙は崩れない。それが答えだった。それでも風影が口を閉ざすことはない。例えそれがどれ程残酷な答えだとしても、この場に居合わせた面子に現実逃避などあってはならない。

「五年前、我々五影が目撃したマダラは穢土転生体だった。つまり、マダラは或いはウタカタは穢土転生を用いることが出来る。断言しよう、先の未来で起こる戦争で我々が倒さねばならん敵はマダラ、ウタカタの二人だけではない。この時代を築き、里を築き、忍び世界そのものを築き上げて来た先代達。その頂点に君臨した者達だ」

ある意味ではこれは激励の言葉。先の戦争まで、一切集中を乱すことを許さないという覚悟の言葉。故に誰も口を開きはしない。この言葉を聞き、無力な自分自身を恥じるのみ。

「我々はマダラ相手に手も足も出なかった。そして、……ウタカタにも」

先程よりも重い沈黙が場を包む。それは仕方のないこと。恐らくこの場に居合わせているメンバーはマダラ以上にウタカタをこそ恐れている。ウタカタが子供だから?違う。ウタカタが人柱力だから?違う。それはきっと、誰も彼もがウタカタの脅威を、死を目の当たりにしたから。

風影はあえて言葉を切って、目を瞑る。瞼の裏に映り込む景色は、あの頃からずっと変わらない。生まれて初めての恐怖。振り払うことも、払拭することも出来ない悪夢。

 

 

 

五年前、ウタカタを追って鉄の国を出た風影は、木の葉に寄る事なく水影を追った。単純にその方がウタカタと接触できる確率が高いと踏んだからだ。正直なところ風影からすればマダラによるウタカタは部下であるという話は話半分程度でしか聞いてはいなかった。マダラの話を鵜呑みにすることを馬鹿らしいと感じたのも一つだが、一番の理由はやはり水影の態度だった。

同じ影を背負うものとして余りにもウタカタ一人に肩入れする水影を咎めこそしたが、その実、それ程までに信頼されているウタカタを悪だと決めつける事はどうしても出来なかった。単純に風影の性格上、噂だけで何かを判断することを嫌ったのもあるにはあるが。

中立たるミフネにウタカタは犯罪者であると宣言させたこともあくまで水影に決意を固めさせるため。それも、ウタカタを敵として切る覚悟ではなく、ウタカタの身の潔白を表明し、あくまでウタカタの味方でいようという覚悟を固めさせるため。そうなれば、そうしてウタカタの身の潔白を証明したのであれば、疑ったことを土下座でもして詫びようと考えていた。風影の任を退いてでも謝罪しようと考えていた。

同時にそうしなければならなかった。一度もウタカタと会ったことのない風影にはマダラの発言を鵜呑みに出来ぬように、やぐらの発言を盲信することも出来はしない。だからこそ彼は中立的な立場であろうとし、フェアな対応を心がけた。その為には、ウタカタを信じる為には、信じさせる為には彼の身の潔白こそが必要不可欠であることを、風影は知っていた。

なんせ一度湧いた不信感というものはそうそうぬぐい切れるものではない。それでもそれが僅か数時間のことなら手を貸すことに、手を借りることに抗議の言葉をあげる者は少なかっただろう。

だが、それが二十年という長い年月になるとどうだ?

時間をかけてウタカタの人となりを理解し、歩み寄っていけるのならばそれでいい。マダラの発言はやはり嘘だったんだと思えるのならばそれに越した事はない。だが、初めこそほんの僅かだった不信感が徐々に徐々に広まり、それがそのまま忍び同士の関係にまで響いたら?あり得ないことだとは言えない。たった一人スパイがいると判明すれば、隣の者まで疑わしくなることは何らおかしなことではない。僅かだった隔たりは、歯車のズレは、時間を置けば置くほどに大きくなることだろう。そうなれば致命的だ。敵は外だけではなく内にもいるなど、内乱で滅びるなど、笑い話にもなりはしない。

だからこそ、誰よりも忍びの未来を考えた上で風影は行動した。その行動が正しいかどうかは分からない。提示された問題ならばともかく、人生なんて最後にハッピーエンドならばその行動は正しかった。そんなものだ。

 

 

尾獣の力まで借りた水影に追いつける筈もなく、一時的に引き剥がされたものの、風影が水影やウタカタに追いつくまでにそう時間はかからなかった。

追いついた風影が目にしたのは涙を流しながらウタカタを抱きしめるやぐらと、同じく涙を流しながらそれを受け入れるウタカタだった。それを見て、確信した。やはりマダラの発言は嘘だったのだと。同時に安堵した。人間味溢れるウタカタのその姿を見て、彼も子供なのだと、柄にもなく喜んだ。ならば自分は自分にできることをしよう。どの道マダラの発言を聞いたのはその場に居合わせた面子だけ、皆が起こった出来事を飲み込めば無かったことにすることも不可能ではない。問題は気持ちだが、それも時間を置けば大丈夫。きっと理解し合える。

甘い考えだ。何処までも楽観的な考えだ。馬鹿馬鹿しい理想論だ。けど、誰もが望むハッピーエンドは、きっとそんな甘い考えがあってこそ成り立つのだろう。理想を追いかけたものこそが成し得るのだろう。現実を認識した上でそれでもなお希望を捨てられなかった者が手に入れるのだろう。残酷な世界がそんなエンディングを望む筈もないのに。

抱き合う二人に歩み寄ろうとした風影だったが、そこで漸く自身の体が思い通りに進まなくなっていることに気付いた。正確には、自身の体の主導権が別の何者かに奪われていることに気付いた。油断はしていない、ただ風影の肉体を乗っ取った何者かが、風影よりも一枚上手だっただけ。その何者かが共存よりも戦争を望んでいただけ。

宙を舞う砂鉄が風影の意に反して二人を襲う、普段のウタカタならばまず間違いなく防げていたであろう奇襲。だが、精神的に不安定だった為か、親友であるやぐらを前に彼の絶対の武器であるシャボン玉を見せることを躊躇した為か、その時のウタカタに奇襲を防ぐ術はなかった。呆然と眺めることしか出来なかったウタカタを救ったのはやぐら。ウタカタ同様反応こそ遅れたが、体勢が良かったのか辛うじてウタカタを突き飛ばす事ができた。逆に言えば突き飛ばすことしか出来なかった。結果、ウタカタを貫く筈だった砂鉄はその場に残ったやぐらを、その心臓を無情にも貫いた。

誰かが笑う声が聞こえた。風影がそれを聞いた時、すでに何者かはそこにはいなかった。その場にいるのは止めどなく血を流すやぐらと、只々それを眺めることしか出来ないウタカタと、周囲に砂鉄を浮かせながら二人を見る三代目風影だけ。

それだけだった。それが全てだった。

時は止まらない、血は止まらない、時は戻らない、血は戻らない。仙術を扱うウタカタは、自身の傷を治す術しか知らない。

慌ててやぐらに駆け寄るカツユを、感情を感じさせない瞳で眺めながら、バケモノ(ウタカタ)は目を醒ます(冷ます)

 

ああなんだ、この世界に救う価値なんて無いんだ。

 

 

 

 

 

じゃあ壊すか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暫くはシリアスですね。さっさとシリアルにしたいですけど、なんせ作者が愉悦部出身なんでね。まあ(主人公以外)ハッピーエンドを目指します。


追記、コメント欄にも書きましたが、主人公は地雷原です。伏線もしっかりとはっています(伏線と言えるほど大層なものではありませんが)。しかしこれは本来ならば第一話でやるべきだった事をしなかった作者のミスです。申し訳ありません。


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