オーバーロード~生まれ変わった至高の御方々~ (ハルフウェイ)
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スーラータン①

もう名前も思い出せない都市。

 

私はそこで生まれた。

 

その都市に住む者は人間たちで中々に活気があった。

 

器量のいい両親から生まれた私は様々な人々に可愛がられながらそこで10代前半まで育った。

 

そしてある日。

 

私の持つタレントと呼ばれる異能が暴発してしまった。

 

その結果、私が生まれ育った都市の住民は全員死んでアンデッドとなった。

 

「私が・・・・ぎっ!!」

 

全身に激痛が走り耐え切れずに倒れる。

 

「がっ!あ、かっ・・・!」

 

全身を突き刺すような激痛が絶え間なく襲って来る。

 

徐々に視界が暗くなり、そしてそのまま意識を失った。

 

 

 

「ぅ・・・」

 

生きてる・・・。

 

まだ霞がかった意識に喝を入れて起き上がる。

 

周りを見て現状を思い出して悲しみが私の心を支配する。

 

とても悲しくなると一瞬でその感情が押さえ込まれた。

 

困惑するとそれが精神の鎮静化だという推測が頭の中に出てきた。

 

何故そんなことを知っているのかと思えば、自分ではない誰かの記憶や知識があることに気づいた。

 

その記憶に困惑していると大きな違和感を感じた。

 

アンデッドが私を襲わないのだ。

 

アンデッドは生ある者を憎み襲うはずだ。

 

知性あるアンデッドならばそれを抑え込むことも出来るらしいが、この都市にいるのはスケルトンなどの最下級のアンデッドたちばかり。

 

目の前に立ちはだかってもまるで興味を示さないのだ。

 

おかしい。

 

そう思いながら都市を当てもなく歩き回る。

 

数日ほど歩き回りながら考えていると、ついには私のものではない記憶と知識の違和感がなくなり完全に統一化されていた。

 

それを認識するとふと喉の渇きを感じた。

 

井戸へと向かい水を汲み上げて、答えを知った。

 

血の様に真っ赤な瞳に鋭く尖った犬歯。

 

「ははは・・・襲うわけがないな」

 

アンデッドの代表格である吸血鬼(ヴァンパイア)

 

私はそれに成ったのだ。

 

そうなるとこの喉の渇きも水では癒せないだろう。

 

癒す方法はただ一つだが、残念なことにこの都市にはそれがない。

 

この渇きもすぐにどうこうなるものではないから獲物が来るまで気長に待つことにしよう。

 

「それまではレベリングでもしておくか」

 

何の因果か前世の記憶が蘇ったのだ。

 

その中の知識と一緒なのかはまだ不明だが、知っている魔法が多く使われていたから知識はある程度は使えるだろう。

 

「しかし吸血鬼か・・・」

 

前世の記憶では想像上の存在・・・あるいはハマっていたゲームで使用していたアバターの種族。

 

「レベルアップで人間から吸血鬼になるなんておかしいだろ」

 

転生アイテムも使ってないのに何故吸血鬼になったんだ。

 

使える魔法やスキルなんかはある。

 

それから推測するに、ゲームのアバターがレベル30前後の時と同じものだ。

 

もしかしてあれか。

 

ありえないだろうがゲームのアバターに異世界転生とかか。

 

だが、私はあの世界で一度死んだ。

 

だから完全ではなくまた文字通り一からやり直しなのか。

 

職業や種族はアバター通りになるのだろうか。

 

もしそうなら、種族はザ・ワンで職業はエレメンタリスト(アース)系統になるな。

 

徐々に力を取り戻すというのはまるで封じられた魔神かなにかだ。

 

「少し待てば上位のアンデッドが生まれるから・・・少し待ってから適正レベルのアンデッドを倒し続ければレベル100になるか」

 

問題は時間だな。

 

どれくらいかかるんだかな。

 

私はそう思いながら、時間ならいくらでもあるかと自分に言い聞かせて動き出す。

 

それにしても・・・。

 

「何故・・・女なんだ」

 

前世もアバターも男だったはずなのに・・・。

 

 

 

あれから二百年。

 

かつての仲間を幻視したリーダーたちと共に六大神と呼ばれるプレイヤーのNPCを討伐しに世界中を回ったり、その時の仲間との賭けに負けて冒険者というモンスター専用の傭兵のような職業についていたりする。

 

冒険者はチームを組んでおり、私が所属するチームは「青の薔薇」だ。

 

吸血鬼だからと敬遠したりするものと思っていたが、中々にメンバーたちは変人だった。

 

だからこそ私は徐々に信用して、大切な存在となっていった。

 

我が儘にも付き合ってやったり、時に喧嘩したり。

 

楽しい日々を過ごしていった。

 

今はリーダーのラキュースの我が儘に付き合い、「八本指」という巨大犯罪組織を打ち倒そうと尽力している。

 

麻薬の原料を焼き払ったりしたりしてな。

 

そして八本指の拠点を七つ同時に襲撃する作戦を行い、私は自分の担当の拠点を潰して仲間である戦士のガガーランと忍者のティアが向かった拠点へ向かっていた。

 

「ん?」

 

飛行の魔法で飛んでいくと、どうやら戦闘をしているようだった。

 

あの二人がすぐに倒せないとなると、相手は八本指最強の部隊である六腕だろうか。

 

そう思ったと同時にティアが爆炎に包まれた。

 

「くそっ!」

 

相手は追撃をしようとしたためにすぐさま魔法を放つ。

 

水晶騎士槍(クリスタルランス)

 

第四位階魔法である水晶で出来た槍を放ち、相手の前に突き立てる。

 

そしてその槍に降り立ち相手を見据えた。

 

「此処からは私が相手・・・だ・・・」

 

その相手を見て私は固まった。

 

「な、何故・・・何故、お前がここに・・・!?」

 

相手も同じなようでブルブルと震えて私を見ていた。

 

「あ、ああ・・・アアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

そして叫んだ。

 

それは苦痛の叫びでもない。

 

それは驚きの叫びでもない。

 

それは憎しみの叫びでもない。

 

それは・・・歓喜の叫び。

 

「コノ世界ニ!ヤハリコノ世界ニイラッシャラレテイタノデスネ!」

「待て!どういう事だ!?何故お前は此処にいるっエントマ!」

 

相手はエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。

 

ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の拠点「ナザリック地下大墳墓」の第九階層にいあるはずの戦闘メイド「プレアデス」の一人。

 

私の仲間が創造したNPCだった。

 

数分ほどエントマは興奮し続け、その間に私はガガーランとティアに口も手も出さずに黙って見ているように言っておく。

 

「コホンッ・・・お見苦しいものをお見せしました。至高の御方」

 

エントマは可愛らしく咳払いをすると跪いた。

 

「質問に答えろ・・・。何故此処にいる?」

「はっ・・・その前にご質問をしてもよろしいでしょうか」

「・・・・ああ」

「通常であれば聞かずに分かるべきなのでしょうが、貴方様のお名前をお聞かせください」

「今はイビルアイだ。わかりやすく言うなら・・・」

 

前世の記憶を思い出してその名を口にした。

 

「私の名は、スーラータンだ」

 

 

 

「全く。いつまで経っても来ないかと思えば・・・何をしているんだい?エントマ」

 

仮面を付けた三つ揃えのスーツに身を包んだ悪魔がやってきた。

 

その目線は跪いているエントマに注がれている。

 

エントマは答えない。

 

「我らが跪くべきは至高の御方々に対してのみ。今や至高の御方はアインズ様ただ一人。此処にアインズ様はいらっしゃらないのに・・・何故跪いているんだい?」

 

口調は優しいがその声には明らかな怒りがこもっている。

 

本来であれば隠すべきである重大な情報を口にしているのにも気づかないほどの怒りが。

 

「デミウルゴス様ぁ。私は何もおかしいことはしておりませんわぁ」

「何?」

 

そこでようやく悪魔はこちらに気づいた。

 

「なっ!」

 

悪魔が驚きの声を上げる。

 

「デミルウゴス様ぁ。至高の御方の御一人・・・スーターラン様の御前です。頭が高いですよ」

「失礼しました!」

 

悪魔が跪き頭を垂れる。

 

それを見て私は思った。

 

え、なにこれ。

 

デミウルゴスが来たと思ったら跪いたよ。

 

エントマが私を見てからの言動を見てもしかしてと思ったけど・・・え、まさか無条件で忠誠を捧げているとかそういう系なのか?

 

「お、おい。イビルアイ。そいつら・・・」

「すまん。ちょっと現状を理解させてくれ」

 

ガガーランにそう言い現状を理解しようとする。

 

「貴様・・・至高の御方に何という口を・・・獄炎(ヘルフレイム)

「待て待て待て!その魔法を消せ!」

「ですが」

「ですがも何もない!いいから消せ!」

 

ガガーランを殺そうとしたデミウルゴスを止める。

 

デミルウゴスは渋々魔法を消すと上空を見た。

 

「スーラータン様、なにか落ちてきます」

「え?」

 

上空を見ると確かに何かが落ちてきて───

 

轟音と共に目の前に大剣が突き立てられた。

 

「それで・・・私の敵はどちらなのかな?」

 

ありえないほど上等な黒い鎧を着た大男。

 

そして手にはありえないほど上等な大剣が二振り。

 

間違いない。

 

エ・ランテルの最高位冒険者であるアダマンタイト級冒険者チーム「漆黒」のモモン。

 

部外者が来ちゃったよ。

 

どうする。

 

どうやって言いくるめる。

 

私が内心焦っているとデミウルゴスが笑みを浮かべた。

 

「お喜びください!アインズ様!」

 

え?

 

「・・・・私はアインズでは」

「至高の御方の一人!スーラータン様を発見いたしました!」

「何!?」

 

アインズ?こいつが?

 

「どこだ!何処にいる!?」

「そちらにいらっしゃいます!」

 

デミウルゴスが私を見る。

 

釣られてモモンも私を見る。

 

「・・・・・デミウルゴス。笑えない冗談だぞ」

「冗談ではございません。この御方はスーラータン様でございます」

「あ、えーと・・・デミウルゴス?この人は・・・」

「モモンガ様でございます。今はアインズ・ウール・ゴウンとお名乗りになられています」

 

モモ、ンガ?

 

「モモンガ、さん?嘘でしょ。マジ?」

「・・・・疑うようで悪いんですが・・・証拠、とかってあります?」

「え?あ、ああ。この姿じゃ分からないか」

 

じゃあ此処は一つ・・・かつての冒険を話そうじゃないか。

 

「それじゃあ・・・氷の魔竜か炎の巨人かを揉めた時のことを。ウルベルトさんとたっちさんが課金してるからや特殊クラスの条件をと」

「本物だ!」

 

まだ導入部分なのにもういいのか。

 

「久しぶりです!スーラータンさん!」

「ああ。久しぶりモモンガさん。後、最後に行けなくてすみません」

「いえ、強制じゃなかったんですから気にしないでください」

「本当にすみません。行こうとしたんですけど・・・ちょっと採掘場が崩れて生き埋めになっちゃいまして」

「えっ」

「それでそのまま死んじゃって、気づいたらこの世界にいまして」

「えっえっ」

「あ。私は二百年前に来たんですけど、モモンガさんはいつ頃この世界に?」

「まだ数ヶ月・・・って死んだってどういうことですか!?」

「詳しいことは落ち着ける場所で。今は八本指をですね」

 

とりあえず今の状況を説明するとモモンガさんは頷いてデミウルゴスを見る。

 

「八本指については私たちに任せてください。それで・・・」

 

モモンガさんがガガーランとティアを見る。

 

「ああ。アイツ等は私の今の仲間で・・・出来れば見逃していただけるといいんですが」

「ふむ」

 

モモンガはじっと二人を見てから頷いた。

 

「ここで見聞きしたものを誰にも・・・仲間にも言わないというのなら見逃そう」

「私からも頼む」

 

私が頭を下げて頼むと二人はため息をついた。

 

「わぁったよ。だけどちゃんと後で説明しろよ」

「ティナにも秘密にする。ティナはお喋り」

「二人共・・・ありがとう」

 

礼を言ってからモモンガさんに向き合う。

 

「落ち着ける場所に行きましょうか」

「ええ。では帰りましょうか。我が家・・・ナザリック地下大墳墓に」

「・・・・・え?」

 

ナザリックまで来てるの?やばくない?

 

こうして、私、スーラータンはナザリックへと戻りましたとさ。

 

ちゃんちゃん。

 

・・・・・笑えないな。




独自解釈の上にオリジナル設定で、スーラータン様をお書きしました。

ユグドラシルでのスーラータン様は、吸血鬼の最高位種族であるザ・ワンです。

確か、原作者様のコメントか何かで吸血鬼系の頂点がザ・ワンだとチラッと見たのでそれにしました。


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ヘロヘロ①

俺が覚えている一番古い記憶は雨に打たれながら汚い路地裏で空を見上げている記憶だ。

 

物心付いた時からずっとそこにいた。

 

悪いとは思いながらも人の物を盗んだりして金を稼いで食べ物を買って過ごしていた。

 

そんなある日、突然、俺は変態した。

 

変身じゃない。変態だ。

 

いきなり視点が低くなったと思ったら近くにいた同じ境遇の連中が悲鳴を上げて逃げ出した。

 

それを不思議に思いながら歩き出すと妙な音がした。

 

ズルズルと何かを引きずるような音だ。

 

周りを見回しても誰かが何かを引きずっているなんてことはない。

 

不思議に思いながらつい生まれる前からの癖(・・・・・・・・・)で頭をかいた。

 

「ん?」

 

生まれる前?

 

「生まれる前ってなんだ?」

 

明らかに変だろ。

 

そう思うと同時に頭の中で爆発が起きた。

 

「いったぁああああああ!?」

 

頭に激痛が迸り、ガンガンと頭の中から叩かれるような痛みで思わずうずくまる。

 

そこでようやく何で他の連中が逃げ出したのかを知った。

 

水色のドロドロとした粘体。

 

粘体(スライム)だ。

 

それを自覚すると同時に頭痛が嘘みたいに引いていった。

 

「はっははっ・・・そうだったそうだった」

 

全てを思い出した俺は一人で笑う。

 

ユグドラシルが終わって少しした後、俺は会社の階段を下りてる最中にめまいがして・・・。

 

「そのまま落ちて後頭部を強打。あの時は痛かったなー。ハハハハ」

 

笑い事じゃない。

 

そう思っていると遠くからバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。

 

逃げた連中が衛兵でも呼んだかな。

 

人間だと思っていたらいきなりモンスターに変身したんだもんな。

 

衛兵は呼ぶだろう。

 

さて、さっさと逃げて安全な場所で今後を考えよう。

 

そう決めて近くに下水道につながる穴を見つけてその中に入っていった。

 

 

 

下水道生活三年目。

 

「んっふぁぁぁ~・・・よく寝た」

 

最初は「臭い」「汚い」「喰われる」の3Kだったが、今は全てに適応していた。

 

臭いは慣れたし、汚いも粘体だから汚れも消化出来るから気分的なもの、喰われるは逆に喰ってやった。

 

そして俺は下水道のキングとなった。

 

今やただの粘体ではなく赤き粘体(レッド・スライム)となっている。

 

前世の記憶通りであるなら、このままいけば古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)となる。

 

そうなればこんな場所からはさっさとオサラバして新しい場所に行くぞ!

 

そう思いながら聞きなれた絶好のカモが鳴らす音が下水道に響いてきた。

 

金属がぶつかり合う音。

 

音からして全身鎧か。

 

それに一人じゃないな。

 

軽い足音・・・修行僧(モンク)魔法詠唱者(マジック・キャスター)か。

 

後者だった場合は火球(ファイヤーボール)が厄介だ。

 

だが、地の利はこっちにある。

 

そして下水道だから水中に潜めば奇襲も容易だし、天井とかにもへばりついて移動できるからこっちの方が有利だ。

 

水中に潜み相手を待つ。

 

しばらくすると松明の明かりとともに背の高い黒の全身鎧の男と茶色のローブを纏った黒髪の女性が現れた。

 

「・・・・ン・・・様・・・ごとき・・・十分・・・」

「・・・・よ・・・粘体・・・・・・するな」

「はっ」

 

んん。よく聞こえないな・・・。

 

まあいい。それじゃ俺の経験値になってもらおうかなーっと。

 

水中から出てゆっくりと近づく。

 

そして気づく前に襲い掛かる!

 

まずは厄介な魔法詠唱者から!

 

「っ!」

 

魔法詠唱者の女性は何かを感じ取ったのかこちらに振り向こうとする。

 

だが遅い!

 

体を広げて口を塞ごうとしたその時。

 

女性の顔が見えた。

 

「え」

 

いや、見えてしまった。

 

それは忘れもしない。

 

かつて仲間たちと築き上げた大事な宝物。

 

ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の戦闘メイド「プレアデス」が一人。

 

「ナーベ、ラル?」

 

ナーベラル・ガンマだった。

 

パチャリとナーベラルの顔に取り付くがすぐに離れる。

 

ナーベラルは驚きの表情で俺を見下ろしている。

 

誰も動かない状況の中、全く関係のない人が声を上げた。

 

「何故、その名を・・・」

「え?」

 

全身鎧の男が驚きの声で呟いた。

 

それについて問いただそうとするとナーベラルが震えながら男に向かって跪いた。

 

「アインズ様!お喜びください!この御方は至高の御方です!」

「なに・・・?」

「え?」

 

至高の御方?何それ?

 

「まさか・・・そんな・・・」

 

男はスリットの奥の目を赤く光らせながら膝をつく。

 

「ヘロヘロ、さん?」

「あ、はい」

 

状況についていけず、思わず返事をしてしまった。

 

「やっぱり・・・やっぱりヘロヘロさんだ!」

「うわっ!」

 

男は俺を抱き上げるととても嬉しそうにする。

 

「ちょっ待った!誰!?アンタ誰!?」

「あっそうでした!この姿じゃわかりませんよね。俺ですよ俺」

 

全身鎧が一瞬で消えて、それは姿を現した。

 

真っ白な骸骨に目が入っている場所で瞳のように光る真っ赤な光。

 

そしてまるで心臓であるかのように浮かぶ赤黒い珠。

 

「モ、モモンガさん!?」

「はい!そうです!俺ですよヘロヘロさん!」

 

俺は触手を伸ばしてモモンガさんの首に回す。

 

「会いたかったですよ!これ夢じゃないですよね!?」

「夢じゃないですよ!だって俺はアンデッドだから眠りませんから!」

 

確かにその通りだ!

 

そしてそのまま現状を話し合う。

 

まさかナザリック地下大墳墓ごと転移していたとは驚きだ。

 

そこで大事なことを言っていないことに気づいて慌てて言う。

 

「あ、そうだ!モモンガさん!色々と言いたいことはありますけどこれだけ言わせてください!」

「はい!」

「たった一人で長い間ナザリックを守ってくれてありがとうございました。虫のいい話かもしれませんが出来れば帰らせてください。俺たちのナザリック地下大墳墓()に」

「もちろんっもちろんです。帰りましょう。俺たちの家に。ナザリック地下大墳墓にっ」

 

こうして、俺、ヘロヘロはナザリック地下大墳墓へと帰還した。

 

既に何人も帰って来ていたのには驚いたけど・・・。

 

どうやらレベリングをすれば最終的にユグドラシルと同じビルド構成になれるらしいので頑張ることにした。

 

幸いというべきか、無限湧き(POP)は健在らしいので時間をかけてレベリングをしていくつもりだ。

 

 

 

「ただいまです。皆さん」

「「「「おかえりなさい!ヘロヘロさん!」」」」




オール・フィクションです。

本作品では、クラスの経験値は倒さなくてもそのクラスに関することを行えば経験値が貯まるという設定となっています。

それと本文では既に何人も帰ってきているとなっていますが、執筆順は帰還者順ではなくバラバラな感じで書いていきます。

因みに最初の帰還者はスーラータン様となっています。


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るし★ふぁー①

俺は昔から人を驚かすのが好きだった。

 

これだけならいたずら好きというだけで済んだ。

 

だが、俺には一つだけ皆と違う点があった。

 

それは六大神の一人である死の神スルシャーナ様を信仰していたことだ。

 

俺が生まれ住む村では火神や水神などの四大神信仰が主であり、六大神信仰でも俺以外の全員が生の神アーラ・アラフを信仰していた。

 

だから俺は一人で別の神に祈りを捧げていた。

 

何故、スルシャーナ様を信仰しているのか?と聞かれてもよく分からない。

 

スルシャーナ様がどんな姿をしているのかを聞いたら、何故かこう・・・懐かしい気分になったからだ。

 

だから、自分で御神体代わりにスルシャーナ様の彫刻を彫る事を趣味にすることになるのは当然の帰結だった。

 

最初は不格好でスルシャーナ様には見えなかったが、回数を重ねるごとに徐々に上手く出来るようになっていき、俺は彫刻を作ることに喜びを感じていた。

 

そしてある日。

 

「これでよしっ・・・ぎっ!?」

 

会心の出来のスルシャーナ様の彫刻が出来た。

 

瞬間、体中に激痛が走った。

 

あまりの痛みに声も出ず、体も動かせずにただただ蹲るだけだった。

 

どれほどの時間、そうしていただろうか。

 

だんだん痛みがなくなり、気づくとふかふかとした白い翼に包まれていた。

 

「これは・・・」

 

どこかで見たことがある翼だった。

 

そう、これは・・・。

 

「ユグドラシルで使ってたアバターの・・・」

 

俺のアバターの堕天使の初期種族の天使の翼じゃねぇか!

 

「なんなんだこれ!いや待て、なんだこれ」

 

自分の中に自分のではない記憶がある。

 

その記憶を辿って疑問が生じる。

 

俺は何者だ?

 

俺はどっちなんだ?

 

どっちが本当の俺なんだ?

 

「・・・・・・まぁいっか!」

 

悩んでたって答えなんて出ないし、それよりも遊びに行こう!

 

「確か天使って飲食不要だったよなー。よし、とりあえずは食わなくても生きていける!」

 

ついでに寿命もなかったはずだし、遊び疲れるまで遊びまくるぜ!

 

「ひゃっほー!」

 

翼で力の限り空を飛び、そのまま気の向くまま旅をする事にした。

 

 

 

「ん?なんだこりゃ」

「上から落ちてきたな」

 

ドガーンッ!

 

「アッハハハハハハ!」

 

ある所では海に出ていた船に爆弾を放り込んだり。

 

「ゴハッ!」

「な、何よこいつ!」

「ゴ○の癖に!強い!」

「アハハハハハ!」

 

ある所ではG型のゴーレムをけしかけたり。

 

「六大神様、今日も我々を見守っていてください」

「お、ギルド武器だ」

「ん?な、なんだお前は!」

「堕天使になる予定の天使です!」

「はぁ!?」

「ヘーイ、ヘイヘイ!トス!」

「投げるなぁ!それは六大神様が一番大事にしていたギルド武器と呼ばれる最至宝」

「アタック!」

 

ガッシャーン!

 

「のわぁあああああああああああ!」

「壊したぁああああああああああ!?」

「アッハハハハハハハハハ!」

「ギィイイイイイイイイイイイイイイ!」

「ガァアアアアアアアアアアア!」

「グロオオオオオオオオオオオ!」

「従属神様たちが暴れだしましたぁ!」

「もう終わりだぁああああああ!」

「じゃっ!」

「逃げた!追え!逃がすなぁ!」

 

ある所では運動したり。

 

「世界を滅ぼせるバケモノなのに、封印が解けちゃったらどうしよう!」

「大変だなー。蘇ったらまた封印してやるよ」

「ほ、ほんと?」

「ほんとほんと」

 

ある所では約束したり。

 

「暴れろ暴れろー!」

「グオオオオオオ!」

「うわぁあああ!」

「ハハハ!わざとじゃない!信じてよ!」

「待て!こいつのノリ、どっかで見たぞ!」

 

ある所ではゴーレムを暴れさせたり。

 

時間も忘れて世界中で遊び倒した。

 

「はー。楽しかったー。よし、今度はゴーレム軍団を作って世界征服をしよう」

 

思い立ったが吉日だ!

 

木や石はもちろん、鉄などの金属のゴーレムを大量に作る。

 

形も様々なものを作る。

 

人型やGや思い出のナザリックのNPCたち。

 

ナザリックのNPCたちの姿を作ると、自分が思っていた以上に寂しかったのかそのまま思い出せる限りでどんどん作っていく。

 

同じNPCを作ったりもしたし、仲間も作ったりした。

 

そして気づけば数百体のゴーレムが出来ていた。

 

「もっといい素材があればなー」

 

低レベルの素材で作ったゴーレムは簡単な命令しかできない。

 

つまらないな。

 

そう思いながらゴーレムたちに命令をする。

 

「此処を出て、力の限り暴れろ」

 

数百体のゴーレムが行進して出て行くのは壮観だったが、今の俺には何の興味も抱かせない。

 

「・・・・これからどうすっかなー」

 

その場に横になって天井を見つめる。

 

あ、あの模様、たっちに似てる。

 

「・・・・おい」

「こっちはヘロヘロに似てるわ」

「おい」

「お?あれはスーラータンに似てる」

「私はあんな二重の影(ドッペルゲンガー)みたいな顔じゃない」

「あ?」

 

目を向けると、いつの間にか長い金髪に赤い瞳の美幼女がいた。

 

口の端には尖った犬歯。

 

吸血鬼か。

 

「お嬢ちゃん迷子か?俺は血を吸っても美味しくないぞー」

「お前、るし★ふぁーだろ」

「テメェ、なにもんだ」

 

低い声を出し、美幼女を睨み付ける。

 

美幼女は何ともないかのように鼻を鳴らして口を開いた。

 

「スーラータンだよ。この問題児」

「は?嘘つけ。スーラータンは男だし、背が高いし、もっとキリっとしてるんだよ」

「はぁ・・・私も転生したんだ。その時に何故かは分からないが、転性もしてしまってな」

「嘘つけ。お前がスーラータンっていう証拠見せろよ」

「・・・・聞いたぞ、ナザリックの第九階層の女湯の風呂場の湯を吐き出すライオンをこっそりゴーレムに改造して、マナーが悪い奴に襲いかかるようにしてたんだってな」

「・・・・もしかして、本物?」

「あぁ」

「因みに私もいまーす」

「何この緑色のドロドロ」

「ヘロヘロですよ。もー、ゴーレムが暴れてるって聞いたから来たんですよ?国を乱す奴は許さないって怒ってたんですよ?」

 

誰が?と聞こうとした時に、それは出現した。

 

黒い闇。

 

その中から、それは現れた。

 

闇を切り抜いたような漆黒のローブを身に纏った死の権化。

 

手には見覚えのある黄金の杖。

 

そして、それは俺が人間の時に信仰していた懐かしき姿。

 

「説教、ですよ。るし★ふぁーさん」

「モ、モモンガさん・・・」

 

俺は立ち上がって俯く。

 

「お久しぶりですね、るし★ふぁーさん」

「モモンガさん。俺、俺・・・」

 

スーラータン(仮)とヘロヘロ(仮)が、うんうんと頷く。

 

「説教嫌だから逃げるわ!」

「「「え?」」」

 

三人が驚いた隙に出口に走って空を飛んで逃げた。

 

「後!暴れさせたゴーレムは全部!倒したら爆発するからー!」

「「「る、るし★ふぁあこのやろぉおおお!」」」

「アッハハハハハハハハハ!」

 

こうして、俺ことるし★ふぁーは説教とお仕置きを喰らってナザリック地下大墳墓へと帰還した。

 

後、ゴーレムは全てちゃんと爆発したらしい。

 

・・・・・テヘッ★




というわけで、至高の問題児るし★ふぁー様を書かせていただきました。

本作品は完全なオリジナル設定となっています。

るし★ふぁー様の種族は捏造です。

堕天使がピッタリなイメージなので・・・。

六大神のギルド武器を壊したのもオリジナル設定です。

ピニスンと約束したのも、約束した七人に有翼人がいたので軽く絡めてみました。


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