存在価値を過小評価しすぎた魔法使い (南野涼夏)
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旅の果てへと向かう始まり

僕は田辺順一、16歳だ。

僕は裕福な家庭で育った。ただ、僕自体は決して裕福ではなかった。

僕には兄がいた。

兄はとても優秀で、様々な才能を持っていた。

兄は文化的なことも運動もとても得意で、成績優秀で品行方正として有名だった。

一方の僕は、特にこれといった才能が無かった。

両親も最初のころは、僕に様々な体験をさせてくれた。

だが、次第に僕には全く構わず、兄だけを愛するようになっていった。そして、僕に対しては

「お前なんか必要なかった」

といったような言葉をかけるようになった。

そんな暮らしをして何年もの時間が流れ、そしてある日突然、人生を変える出来事が起きた。

僕が住んでいた町に、霧の魔物が現れたのだ。

その霧の魔物は町の人々を殺し始めた。

そして、それは僕の家族も例外ではなかった。

家族も、霧の魔物に殺されそうになったのだ。

そのときに家族が取った行動は――――

 

 

 

――――僕を、霧の魔物の前にに置き去りにするというものだった。

僕は、完全に家族に見捨てられた。僕はそのときに、本気で「僕の存在は無価値だ。この世界から消してくれ」と思っていた。

そしてそのとき、最も近くにいた霧の魔物に、僕の身体は引き裂かれた。

――――――それが、僕の魔法使いとしての物語の始まりだった。

 

 

 

     

 

気がつくと、僕は病院のベッドの上にいた。

「あれ? 死んでない……?」

試しにちょっと自分をつねってみる。痛い。どうやら夢ではないようだ。

その後、誰かが病室に入ってきた。

そこで、僕は聞かされた。

僕の住んでいた町に霧の魔物が現れたこと。僕の家族が全員生きていること。僕が無傷で発見されたこと。そして、僕が魔法使いとして覚醒していること。

「僕が魔法使いに覚醒している……?」

全くもってその実感がない。

そのとき、キルリアン撮影(魔力を測る方法)を行った画像というものを見せてもらった。見せてもらったのだが……

一般人とほとんど差がない。ごく普通の一般人を0、ごく普通の魔法使い(普通ではないが)を100としたら、15くらいだろうか。ホントに魔法使いとして覚醒したのか疑わしい。

僕がどのような魔法が使えるのか尋ねると、「」それは学園――私立グリモワール魔法学園で授業を受けてたらわかる」とのこと。

僕が魔法使いになったことが、僕の知人達に周知されることも聞かされた。

チャットアプリでクラスメートに対してお別れのメッセージを打ったところ、クラスのグループから蹴られ、全員からブロックされた。

そんなに魔法使いが嫌いですか……

家族に関しては電話で伝えられた。

そのとき、家族から言われた言葉は、「これで我が家の恥と縁が切れる。さっさと行きな」だ。

マジで僕って存在価値あるのかね……




多分これを読んでいるのはグリモア勢の皆さんだと思うので、
グリモア勢皆さんこんにちは!南野涼夏です!
TwitterではRyouって名前でやってる人です!
他サイトで連載している作品もあるので、投稿ペース、1回辺りの文字数は少なくなると思いますが、よろしくお願いします!


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訪れた学園生活………と霧の魔物襲来

私立グリモワール魔法学園に転校した。

初日、僕はローズクラスに所属するということがわかった。

男女比のこともあり、男子転校生である僕は関心の的だった。

「では、自己紹介をお願いします」

と言われたので、自己紹介をすることにした。テンプレートな内容を入れて置けば良いだろ。

「皆さん初めまして。この度、ローズクラスになりました田辺順一と言います。趣味は……趣味は……………親から何もさせて貰えなかったのでこれといってありません。なので、前の学校で部活などもしていません。特技は…………ありません。兄が色々と才能のある人で、その足元に及ぶようなものはないです。好きな食べ物は…………ありません。基本家の庭に生えた野草を食べてたので。どうぞ、よろしくお願いします」

……………………………………………

教室を無言が支配した。

そんな中、1人の生徒が手を挙げて質問をしてきた。

「覚醒したことがわかったとき、どう思いましたか?」

僕は、それに正直に答えた。

「そうですね…… これで家族の役に立てるかもしれないなと思いました。何の才能も無かった僕を、家族は居ないものとして扱ってましたから」

……………………………………………

再び、教室を無言が支配した。

また、別の生徒が手を挙げて質問をしてきた。

「魔法使いとして覚醒したということを知ったご家族の反応はご存知ですか?」

僕はそれにも正直に答えた。

「はい。確か、これで我が家の恥と縁が切れる。さっさと行きな。でしたね」

完全に教室が静かになった。

なにかマズイことでも言っただろうか……

 

その直後の休み時間に、僕へ話しかけてくる人は1人もいなかった。

 

 

    

 

という出来事があってから2ヶ月ほど経ったある日、期待の転校生が入学した。

彼の名は……………………… 名前は…………………

………………覚えていない。というか、この学園で転校生といえば彼みたいな風潮になってしまっているからまぁ問題はないだろう。

彼は魔法がほとんど使えなかった。

炎の魔法はライターの火くらい。水の魔法は手から染みだすくらい。まぁ、全くもって発動できない僕より良いですが。

先生(と生徒会他数名)曰く、僕は現象魔法をつかうことができないのではないかと言われた。

転校生は、魔力を他人に渡せるということが分かり、既に学園では知らない人がいないほど有名になっている。

一方、僕はあまり覚えられていない。まぁ使える魔法すら判明してないから当然といえば当然か。

 

 

そしてしばらく経ったある日、町に霧の魔物が現れた。霧の魔物の姿はいわゆるスライムってやつだ。

僕ら魔法使いは、一般人を守る義務がある。そのクエストを、僕も受けた。兎ノ助さんからは

「お前、魔法まだろくに使えねぇじゃねぇか。どうしてもって言うなら止めはしないが…… くれぐれも死ぬなよ」

と言われたが。

 

 

市街地に着くと、逃げ惑っている人々がいた。

誘導先はもちろん覚えている。

「みなさん、こっちです!」

霧の魔物を避けるように、市民の方々を誘導する。

1組目はなんの問題もなく、誘導できた。

2組目を誘導しようとしたとき。

霧の魔物に襲われそうになっている少女が居た。

あの少女を助けるには?

他の魔法使いの魔法で霧の魔物を倒すと手遅れ、あの少女を霧の魔物の攻撃の前に連れて退避するのは不可能。

……ならば、選択肢は1つしかない。

僕は駆け出した。その少女と、霧の魔物の間(・・・・・・)に向かって。

「間にあえ!」

僕はそして、スライム型の霧の魔物の攻撃が、少女に当たる前に間に飛び込んだ。

 

背中から、溶けていく感触がする。地面に血溜まりができていく。そして、僕は意識を――――――――




次回はこの続きから始まります。


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青く光る粒の中で

―――なぜだろうか。

手放すことはなかった。

どころか、傷が癒えてるのですが……

どゆこと?

 

っと!

考えてる場合じゃなかった!

「大丈夫か⁉」

その少女に声をかけて、安全なところへ連れていった。

そのときの攻撃は、僕が身を呈して防いだ。

……にしてもなんで死なないんだろ。

これが僕の魔法だったりするのかな? ……なにこの魔法。帰ったら兎ノ助さんに聞いてみるか。

 

 

そのあとも、沢山の人を身を呈して守り続けた。僕からは青い光が出ていくだけで、死ぬようなことはなかった。

 

ただ、僕以外では、死んでしまった人もいた。しょうがないのだろうけど、どうしても心が痛む。僕は、死ぬことがないようだから――――――

 

    

 

「で、お前の相談についてだが……」

僕は、兎ノ助さんにこのことを質問しに行った。

「実は俺もよくわからん。……が、知っている可能性のあるやつがいる。紹介くらいならしてやるから、自分で訪ねてくれ」

「わかりました。ありがとうございます」

そうして紹介された人物――――東雲アイラさんに会いにいくことになった。

 

「……ふむ。可能性として考えられるのは2つじゃな」

「と、言われますと?」

彼女は、容姿と異なって長い間生きている吸血鬼らしい。という噂を聞いたことがあるので少し畏まった態度で応じる。

「1つめの可能性としては、とても強力な回復魔法という可能性じゃ。そしてもう1つは………… 時間停止の魔法という可能性じゃ」

「時間……………停止?」

回復魔法は、まだ想像がつく。

でも、時間停止って……?

「もしかして、肉体の時間を停止させることで、不老不死になる、みたいなやつですか?」

要約すると(詳しくはグリモアで)、そういうことじゃな」

魔法自体、現象として疑問が残るのに、この時間停止の魔法というものは疑問が多すぎる。

「まぁ、現段階ではどちらとも言い切れぬがな」

 

 

    

寮の部屋に戻って、僕の魔法について考える。

まず、僕の魔法は、対象が自分だけであること。

そして、僕ができることは、自身を盾にして、守ること。

僕のできることは、とても少ない。どんなとき、どんな場所でも、他の魔法使いの人の足を引っ張ってしまう。

やはり、僕は存在意義を見出だせそうにない。

「霧の魔物を攻撃できない魔法使い…………かぁ」

ホントに何もできそうにない能力だな……

これ以上考えても仕方ない。

僕は気持ちを切り替えるために、少しだけ散歩することにした。

寮の立地の影響なのか、家で見たよりも、綺麗な星空が、そこにはあった。




久しぶりの投稿となりました!
今回はアイラ様が登場しました!
既存キャラを描くって結構難しいw
できる限り本編登場キャラと接させたいけど上記の理由で厳しいかも。(兎ノ助をカウントしてないとな言っちゃ駄目)


ちょっとした情報をここでひとつ。
この作品は恐らく44話で終わります。
最終回のタイトルだけ決まってる作品ってどうなの……


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