ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 (ブイズ使い)
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設定資料
キャラクター設定 ~主人公編~


前回がスペシャルだったため今回は小休止という事でキャラクター設定を挟みます。自分が技を忘れないようにとか、ブイズの設定を理想的なものにしたいとか色々ありますが、一応他の理由もあります。それはまた追々お話したいと思います。

シンジとリーリエ、それと彼らのパーティの紹介となります。

本編で明かされることがあるたびに追加するため、一部ネタバレを含みます。それが苦手、または嫌いな人は注意してください。

他のキャラについてはまたいずれ書こうと思っているのでご安心を。


シンジ

出身地:カントー地方のマサラタウン

年齢:アローラ編→11歳 カントー編→13歳

一人称:僕

 

本作の主人公。

 

普段はキャップを被り短めの黒髪。実は頭頂部には一本のアホ毛がある。キャップのデザインは原作の男主人公の初期帽子のデザインを青いモンスターボールへと変えた物。瞳の色はブラウン。

服装は原作に例えると、青のポロシャツに黒のクロップドバンツ。歩きやすいからという理由で黒のスニーカーを着用。特に自分のおしゃれには気を遣っているわけではないが、一応自分で選んだ服を着ている。母親のセンスの方が信用できないからだとか。

 

優しくてお人好しな性格。特にポケモンに対しての愛情は大きく、自分のポケモンたちを家族のように考えている。自分の事よりも他人の事を優先し、ポケモンの事となると後先考えずに行動してしまい危ない目に会う場面も多い。逆にポケモンを悪用する人、道具としてしか思っていない人を許すことができず、そんな人の前では珍しく怒りをあらわにしてしまう一面も。

7歳の頃に出会った相棒のイーブイ(ニンフィア)と共に、世界を見て回りたいと思い10歳を迎えた日に旅に出る。

今まで様々な地方を旅しており、カントーを始めジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロスと旅を続けてきた。

旅を終えたある日、ククイ博士と出会いアローラ地方の存在を知る。そしてアローラ地方へと訪れたその日、運命の少女、リーリエと出会った。

アローラ地方に伝わる伝統、島巡りに挑戦し見事達成。その後、アローラの強者が集うアローラリーグで優勝し、アローラ初のチャンピオンとなった。そしてかつて出会った島の守り神とも言われるカプ・コケコと戦い勝利するという功績を成している。

島巡りの最中、リーリエとコスモッグ中心とした騒動に巻き込まれていく事となる。彼はリーリエを守るため戦い続け、島巡りを終えたときに彼女に対する自分の中に芽生えた感情に初めて気付く。

チャンピオン就任後の勝率は現状無敗だが、アローラに来る前には負けが続いた時期もあった。自分はまだまだ未熟だと思っており、更に強くなるために挑戦者たちの挑戦を真っ向から受け続けている。

手持ちのポケモンはイーブイとその進化形で構成されているが、彼自身意識して捕まえたわけではない。何故か彼の元にはブイズばかりが集まってきただけである。

 

口癖として、セリフの最初に『うん』と相槌を入れることが多い。

 

リーリエと別れる際に貰ったピッピ人形は、今でも大切に持っている。彼曰く、リーリエとの約束の証であり、大切な思い出なのだとか。

 

島巡りの途中にリーリエと立ち寄ったナッシーアイランドで、いつか必ず彼女と旅をすると約束。リーリエが旅に出るという手紙を受け取りそのことを知った彼は、約束を果たすために彼女のいるカントー地方へと訪れる。その後、トキワの森でスピアーに襲われている彼女を助け2年ぶりの再会をし、無事約束を果たした。

 

現在は彼女と共にカントー地方を巡る旅をしている。彼女の成長を静かに見守ろうと、あまり口出ししないように彼女に軽い助言を与える、成長を促すために自分で気づかせる程度にとどめている。

 

バトルスタイルはポケモンの特徴や技を巧みに利用した戦法が得意。他人の戦法も参考にして流用する事にも長けており、まさに変幻自在の戦術をとる。また、ポケモンの力強さも備わっており、強いと認めた相手には正面からぶつかって勝つことを流儀としている。ポケモンバトルで手を抜くのは相手に失礼だと感じているため、絶対に手を抜くことはない。

 

 

 

 

 

 

リーリエ(CV.真堂圭)

出身地:不明(恐らくカロス地方)

年齢:アローラ編→11歳 カントー編→13歳

一人称:私

 

本作のヒロイン。カントー編以降はヒロイン兼主人公。

 

白くツバの広い帽子に、白いノースリーブのワンピースと全体的に白で統一されている。淡く長い金髪に白い肌、少女らしい華奢な体つきをしている。因みにこのコーディネートは母親が選んだものである。

ある日の出来事がキッカケで、服装も容姿も一変。長い髪を後ろでポニーテールにして纏め、服もお嬢様風の衣装から活発感溢れる衣装に変更。また、帽子もそれ以降普段は被っていない。これは彼女自身が一度立ち寄ったマリエシティのブティックで購入した服であり、初めて自分の選んだ服であるため彼女の覚悟も感じられる。

 

ある事情からコスモッグを助け出すためにエーテル財団から脱走。その後、バーネット博士に拾われククイ博士の助手をしながらお世話になる。そんなある日、彼女もまた運命の少年、シンジと出会う。

ポケモンたちが傷付くのを見るのが嫌で、ポケモンバトルをあまり見たくないという心優しい少女。

彼女はコスモッグを守りながらアーカラの各地にある守り神たちの遺跡を巡るが、その最中にシンジと共に大きな騒動の渦へと入り込んでしまう。毎回ピンチへと陥ってしまった自分を助けてくれるシンジに心を開き、いつしか別の感情が芽生えるが自分はその感情を理解できなかった。

神経毒に侵されてしまった母親を助けるため、彼女は母親と共にカントー地方へと赴くこととなる。その際、シンジから自分への思いを伝えられ、やっと自分が彼に抱いているこの不思議な感情に気付くことができた。

母親を助け出した彼女は暫くして落ち着いたころに、シンジから貰ったタマゴから孵ったロコン(シロン)と、オーキド博士から貰ったフシギダネをパートナーとして、晴れてトレーナーとなり旅に出る。その時トキワシティで迷子になってしまいスピアーに追いかけられてしまったが、その際にシンジに助けられ彼と再会し共に旅をすることとなった。

 

旅を出た当初には目的が無かったが、シンジと再会したことがキッカケで彼のように強くなりたい、隣に立ちたいと思うようになりジム巡りを決意。バトルの経験はないものの、シンジの戦いを見ていたためかバトルのセンスは高い。初心者にしては勝率は高く、手持ちのポケモンたちも彼女のことを信頼している。

バトルスタイルもシンジの戦い方を意識したものとなっている。地形や技を利用して相手の意表を突いたり視界を奪って奇襲をする戦法が得意。

シンジの彼女に対する評価は、戦い方は上手く視野が広いため臨機応変に対応できるが、力強さには少々難があるとのこと。

 

ポケモンや人に対して敬称をつける。

 

 

 

 

 

 

シンジの手持ちポケモン

 

イーブイ→ニンフィア(♀)

技:ムーンフォース(ラブリースターインパクト)、ようせいのかぜ、シャドーボール、でんこうせっか(ウルトラダッシュアタック)

アローラ編からの技の変化はなし

特性:フェアリースキン

彼の最初のパートナーであり最高の相棒。ようせいのかぜを主に防御として使い、シャドーボールで牽制してでんこうせっかで近接戦、ムーンフォースでフィニッシュというのが彼女の必勝パターン。

シンジが7歳の時、トキワの森で傷付いているところに偶然遭遇し助けたのがキッカケで出会う。前のトレーナーに捨てられていたため、イーブイの頃は人間を信用できないでいた。だが、その後にシンジに優しく接して貰ったことによりシンジにだけは心を開く。ニンフィアに進化してからは人懐っこくなり、徐々に色んな人にも心を開くようになる。今ではみんなのお姉さん的存在だが、他のパーティがその場にいないときはいつも以上にシンジに甘える。

最初のパートナーであることもあり、パーティの中では最もシンジのことを理解している。彼の考えを顔を合わせただけでも理解でき、切れない絆で結ばれているため遠く離れてしまっても心の中で通じ合っている。

ロケット団曰くメガシンカに匹敵する力を持つ。

前の親はシンジが旅に出始めた頃に出会ったタケル。彼との戦いに一度敗れてしまうが、その後約束した再戦で進化を果たし見事勝利。その後もシンジと共に成長し、旅を続けることを誓い合った。

 

 

 

 

イーブイ(♂)

技:とっておき(ナインエボルブースト)、スピードスター、シャドーボール、アイアンテール

アローラ編ではかみつくを使用。アローラ編〜L〜にて変更。

特性:にげあし

唯一の色違い。

色違いという理由でオーキド研究所の森で虐められていたところにシンジと出会い助けられる。他人を信用することが出来ず、助けて貰ったシンジにさえも敵対心を持って怯えていた。だが、シンジに人間の温もりを教えてもらい彼には心を許してついて行くことにする。

最初はパーティにも馴染まなかったが、徐々にパーティのみんなの事を信頼するようになる。特に最初から面倒を見てくれていたニンフィアの事は姉のように慕っている。ニンフィアもそんなイーブイの事を弟のように可愛がっている。

仲間になった時期は最も遅く、今でもシンジがいないと不安になり普段の力を出せない。過去のトラウマが原因で臆病な性格になってしまい、今でも他人に慣れるには時間が必要。

リーリエの持つマリルとは近しい境遇からか仲が良く、彼女のことを妹のように大切にしている。

 

 

 

 

ブースター(♂)

技:かえんほうしゃ、フレアドライブ、シャドーボール、オーバーヒート

現在オーバーヒートは未使用。普段はあまり使用しない。

特性:もらいび

恥ずかしがり屋でシンジがいないところで人前に出ると体が震える。しかし普段の性格とは裏腹に戦闘狂な一面も併せ持っており、バトルになると性格がガラリと変貌する一面も。バトルでは彼の頼れるパートナーとして活躍している。放っておけないからか、パーティのみんなからは可愛がられている存在。

ニンフィアと特訓中にシンジと出会う。恥ずかしがり屋な性格から彼らを火傷させてしまいそうになるが、彼らに優しく撫でられて少し打ち解ける。野生のリングマから咄嗟に彼のピンチを救い、その実力を認められて仲間になる。

 

 

 

 

 

サンダース(♂)

技:ワイルドボルト、10まんボルト、ミサイルばり

特性:ちくでん

パーティ1の素早さを誇る。そのスピードを活かして敵を撹乱しつつ怒涛の攻めで攻撃を仕掛ける事を得意とする。公式試合では先鋒を務めることが多い。戦闘することは好きだが、意外にも仲間とじゃれ合う場面も多い甘えん坊。実は食べることが大好きで彼の作るポケモンフーズは大好物。

シンジとニンフィアが食事をしている際、食べ物の匂いに釣られて野生のポケモンであったサンダースと遭遇。ポケモンフーズのお礼に木の実をプレゼントし、人懐っこい性格であったこともあり成り行きで仲間となった、

 

 

 

 

 

シャワーズ(♂)

技:ハイドロポンプ、まもる、れいとうビーム、シャドーボール

アローラ編ではあまごいを使用。カントー編では未使用だが、シャドーボールに変更予定。

特性:ちょすい

冷静沈着な性格だが、仲間を何よりも大切にしている。体を張って仲間を守ることもあるが、彼自身の耐久力が高いため傷付くこと自体が少ない。

泳ぐことが大好きで、普段は冷静ながらも海に潜ると心の中では喜んでいる。泳いだ時のスピードで彼に勝てる者は少ない。

ある砂浜でライフセーバー的な役割を熟していて、そこに訪れたシンジ、ニンフィアと偶然遭遇。波にさらわれたプリンを助けるシンジを見て心が動かされ、彼を助ける。それがキッカケとなり彼について行きたいと思うようになり、彼を助けたい、彼と一緒に多くの人を助けたいと感じて仲間となった。

 

 

 

 

 

エーフィ(♀)

技:サイコキネシス、シャドーボール、サイケこうせん、ひかりのかべ

特性:マジックミラー

ひかりのかべで防御をし、エスパー技などでの遠隔攻撃を得意とする攻防一体のバトルスタイル。自身にサイコキネシスをかけて浮かぶなど、他に類を見ないような戦い方をするため、特に初めて戦ったトレーナーは戸惑うことが多い。

シンジの指示には忠実に従い、普段はあまり表に出さないものの彼にはよく懐いている。また、エスパータイプであるために彼の考えを読むことが出来る。

とある町のはずれにある無人の洋館にて住み着いていた。洋館のポケモンたちを守るため、侵入者や住処を脅かすものを怪奇現象などで追い払い守っていた。その時シンジの優しい心に触れ合い、彼と共に旅をしたいと自分から望んで仲間になった。物静かではあるが仲間思いで心の優しい持ち主。

 

 

 

 

 

ブラッキー(♂)

技:イカサマ、あやしいひかり、まもる、シャドーボール

特性:せいしんりょく

相手を困惑させる戦法をする。自分からはあまり攻撃を仕掛けず、相手の動きを誘発して罠にハメるような戦い方が得意。近接技を仕掛ける者は大概彼の餌食となってしまう。

表情は一切表に出さず、彼の考えていることは分かり辛い。だが、シンジに撫でられたり褒められたりすることは嬉しいようで、その瞬間には一瞬だけ顔が緩んでしまう。照れ隠しで少しだけ顔を逸らすことも。

シンジとニンフィアが雨宿りをした森の一軒家にて出会う。一切口を聞くことなくトレーナーにも興味を示さなかったが、ニンフィアと同じ境遇であったため彼の心の扉を僅かながら開くことができた。ポケモンフーズをもらい彼の心の暖かさを感じる事で彼に興味を示し、共に旅をしたいと感じたため仲間になる。

 

 

 

 

 

リーフィア(♀)

技:エナジーボール、リーフブレード、つばめがえし、つるぎのまい

アローラ編ではでんこうせっか、まもるも使用。カントー編にて一部技が変更された。

特性;ようりょくそ

相手が強敵と認めた時につるぎのまいを使用して全力を出す。

温厚な性格で、日向ぼっこをすることが好き。基本的に他人と関わらないが、時折気が向くとシンジの膝の上に乗ることもある。そんな彼女でも仲間を大切に思っており、正義感が強い。基本争いごとは好まないが、仲間を傷つける相手には容赦のない一撃をお見舞いする。

とある森にて迷子になっているシンジにニンフィアに木の実を分け与えることがキッカケで出会う。野生として生きてきたため警戒心が強かったが、彼から貰ったクッキーの美味しさに感銘を受けて心を開く。心優しく勇敢で森のポケモンたちを守っていたが、その役割をモジャンボに引き継いでシンジと共に旅に出る決意をする。

 

 

 

 

 

グレイシア(♀)

技:れいとうビーム、シャドーボール、こおりのつぶて、バリアー

アローラ編ではアイアンテールも使用。カントー編ではこおりのつぶてに変更。

特性:ゆきがくれ

近接攻撃はバリアーで防ぎ、遠距離技で牽制しながら怒涛の攻めを見せるのが基本的なバトルスタイル。

面倒見がよく優しいお姉ちゃん的な存在でこおりタイプらしく常に落ち着いている冷静沈着な性格。バトル時には一変して怒涛の攻撃で攻め立てる荒々しさも見せる。

雪山に野生として生息しており、遭難した男性を救助していたところで出会った。同じく男性を救助してくれたシンジの優しさに惹かれ、彼に興味を持ったため共に旅をしたいと思い仲間となった。

 

 

 

 

 

リーリエの手持ちポケモン

 

ロコン(♀)

技:れいとうビーム、こおりのつぶて、ムーンフォース、こなゆき

過去にはオーロラビームを使用。

特性:ゆきがくれ

シンジがラナキラマウンテンで発見したタマゴから孵って出会った。リーリエの最初のパートナーであり、頼れる相棒。ニックネームはシロン。命名理由はタマゴ時に白くてコロンコロンと転がることから。

リーリエがピンチになるたびに助けてくれることが多く、リーリエもシロンの事を信頼している。

リーリエがいないと彼女の事が心配になってしまい不安になるが、普段は勇ましくバトルでも活躍している。

シンジとの訓練中にニンフィアのムーンフォースを見て覚える前兆を見せるなど、バトルのセンスが高いと思わせる部分もある。

アザリアジム戦において圧倒的な敗北を経験。その際に己の経験を活かしシンジのニンフィアとの練習試合でムーンフォースを未完成とは言え習得。アザリアジムでの再戦時に見事形にすることが出来た。

 

 

 

 

 

フシギダネ→フシギソウ→フシギバナ(♂)

技:はっぱカッター、つるのムチ、こうごうせい、ソーラービーム

特性:しんりょく

アローラ編〜L〜にてとっしんを忘れソーラービームを習得。

エナジーボールを忘れこうごうせいを習得。

リーリエが旅立つ際、オーキド博士から貰ったポケモン。シロンと並び彼女との付き合いが長く信頼している。

勝率は高めで、バトルにおいてもリーリエを支える大切な存在。

普段は冷静だがバトルになるとつい熱くなる。仲間思いで面倒見がよいためみんなから頼りにされている。

フシギソウ時代は機動力の高さを活かす戦い方をしていたが、フシギバナに進化してからは耐久力の高さを活かしたカウンター戦法に以降。

 

 

 

 

 

ルリリ→マリル(♀)

技:ころがる、バブルこうせん、アクアテール、ハイドロポンプ

過去にはあわも使用。

特性:あついしぼう

リーリエが初めてゲットしたポケモン。ハナダシティで釣り大会に参加した際に怪我を治したら懐き、自らの意思でリーリエと旅をすることを選択。かつてトレーナーに捨てられてしまった過去を持つ。

初めはリーリエ以外には心を開けず、シンジにも敵対心を持っていた。過去の出来事がトラウマになってしまっているが、慣れた人物には少しずつでも心を開いてくれる。シンジの作るポケモンフーズが大好きで、それをキッカケに彼への警戒心を解いた。現在では彼のポケモンフーズの味をリーリエが引き継いでいる。

初めは怯えていたものの、ある出来事を境にイーブイに懐くようになる。二匹は仲が良く、普段は行動をよく共にすることが多い。イーブイにとっては初めて出来た妹のような存在。

 

 

 

 

 

 

チラーミィ→チラチーノ(♀)

技:スピードスター、スイープビンタ、あなをほる

特性:メロメロボディ

進化前はおうふくビンタを使用。

ポケモンセンターにてイタズラをしているチラーミィと出会う。停電中のポケモンセンター内でイタズラの際に尻尾が汚れてしまったが、それをリーリエが綺麗にしてあげたことにより彼女について行くと決める。

リーリエからはイタズラしないようと釘をさされるが、それでも未だにイタズラをやめることはない。その度にリーリエに怒られてしまうが懲りる気配はない。本人的には一応度はわきまえているようだが……。

動きが素早く身軽で、敵に急接近して戦う戦法が得意。

カントーを旅している途中に出会ったサナエと共にひかりのいしを探しとある洞窟を立ち寄り、その洞窟にてピンチの際にひかりのいしを使用して進化した。進化したことで更に素早い動きに磨きがかかり、コーティングされたあぶらにより敵の攻撃をするりと避ける。

進化して大人になったのか、以前行っていたイタズラも現在では鳴りを潜めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミニリュウ→ハクリュー→カイリュー(♂)

技:げきりん、れいとうビーム、アクアテール、しんそく

特性:だっぴ

ハクリュー時にはドラゴンテール、たつまきを使用。

サファリゾーンにてポケモンコレクターに襲われているところを助け出会う。その際、リーリエはミニリュウを仲間の元に返すと約束して共に旅をすることとなった。

リーリエのパーティの中でもバトルセンスが非常に高く、攻撃力も高いため戦いではこの上ない活躍をしていた。だが、かつての仲間たちと出会った際に彼らを守るためにその場に残りリーリエはハクリューとの別れる決意をする。ハクリューも迷っていたが、惜しみながらも固い決意でリーリエと再会の約束をして別れる。

アローラ編~L~にて再登場。その際ハクリューからカイリューに進化しており、リーリエたちピンチを救った後再び彼女の仲間としてパーティに加わった。現在では彼女のパーティ屈指のパワーファイターとして活躍している。

 

 

 

 

 

ピッピ(♀)

技:ゆびをふる、ムーンフォース、めざましビンタ

特性:メロメロボディ

グレンジム攻略後、立ち寄ったマサラタウンにて母親であるルザミーネから貰いゲットする。ピッピもリーリエの事を気に入り、パーティ入りを喜んでいた。

無邪気な性格で好奇心旺盛な女の子。見るもの聞くものが全て珍しく感じ、なんにでも興味を示す。そのため勝手に無意識で行動してしまう為度々リーリエを困らせてしまう。

バトルの経験は皆無だが、いざバトルとなると奇想天外な変則的戦い方をする。しかし当の本人には戦っていると言うバトル意識がなく、一緒に遊んでいるという子どものような感覚だ。

合間を見て無意識に自分がチャンスだと感じた時にゆびをふるを使用する。通常では博打のゆびをふるだが、本人の意思に関係なく度々強力な技が放たれる。

 

現在ゆびをふるで選択された技

はかいこうせん

マジカルシャイン

ソーラービーム

 

無意識ではあるもののバトルにおいて活躍はするためバトルセンスはある模様。しかし普段はリーリエにとってお気に入りのポケモンであるため進んでバトルに参加させることはない。ただしピッピが勝手にモンスターボールから出てきてしまうためリーリエにとっても悩まされる時が多々ある。



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キャラクター設定 ~カントー編~

今回は忘れている人もいるかもしれないのでカントー主要キャラの紹介を書いておきます。自分も設定忘れそうなのでメモ的な意味もありますが。

というわけで注意事項
・一部ネタバレ含む
・話が進めば情報更新するかも
・現在ここに掲載されているキャラはブルー、ハジメ、コウタ、コウミ、ルナ


ブルー

初登場回:ライバル登場!?

年齢:カントー編→13歳

一人称:あたし

強気な性格で負けん気の強い少女だが、自分に勝った相手は認める芯の強さを持っている。リーリエ最大のライバル。

容姿は茶色のストレートロングヘアに水色のタンクトップ、赤色のミニスカートを着用し、白を基調としたモンスターボールの模様が描かれた帽子を被っている。

負け知らずで一人旅を続けていたところにシンジ、リーリエと出会いシンジに対戦を申し込む。その結果圧倒的な力の差を見せつけられ敗北してしまう。しかしそのシンジの強さに心打たれ惚れ込んだため、リーリエにとっては別の意味でもライバルである。自分よりも強いトレーナーが好き。

ポケモンリーグに辿り着く前にリーリエとは2度バトルをし、戦績は1勝1敗。ポケモンリーグで決着をつけようと彼女と再戦の約束を交わした。

ポケモンの特徴を活かしたりテクニックで戦うシンジやリーリエに対し、力によって相手をねじ伏せる戦い方を好む。だが決して技術がないわけではなく状況に応じて臨機応変に立ち回る柔軟さも兼ね備えており、意外にもオールラウンダーな戦いをするなどバトルセンスが高い。

エースポケモンはカメックス。フェイバリットポケモンはグランブル。

ツンデレ属性持ち

 

 

ブルーの手持ちポケモン

(ゼニガメ)→カメール→カメックス(♂)

技:みずでっぽう、こうそくスピン、ハイドロポンプ、れいとうビーム

カメールの時にはロケットずつき、アクアテールも使用

特性:げきりゅう

 

ブルー→グランブル(♀)

技:ストーンエッジ、かみくだく、こおりのキバ、ワイルドボルト

ブルーの時の技はたいあたり、れいとうパンチ、かみつく

特性:いかく

 

プリン→プクリン(♀)

技:おうふくビンタ、うたう、マジカルシャイン

プリンの時にはチャームボイスも使用

特性:メロメロボディ

 

トゲキッス

技:しんそく、はどうだん、エアスラッシュ

特性:不明

 

キュウコン(通常)

技:かえんほうしゃ、フレアドライブ、アイアンテール、ソーラービーム

特性:もらいび

 

ライチュウ(通常)

技:アイアンテール、でんこうせっか、10まんボルト、きあいだま

特性:せいでんき

 

 

 

 

 

ハジメ

初登場回:橋の上の攻防!R復活!?

年齢:不明(見た目的には20歳くらい)

一人称:俺

漢字表記:初

元ロケット団残党のリーダーをしていた男。冷静で普段感情を表に出さないがバトルの時には熱くなり、人の努力を笑うものは決して許さずポケモンに対しては心優しいなど面も持ち合わせている。

相棒のクロバットと共に絶対の自信を持っていたが、とある赤い帽子を被ったピカチュウ使いのトレーナーに敗れ敗北を知り、強くなるためにロケット団の残党たちのリーダーとなる。その際に出会ったリーリエと対戦するが、最初は押していたものの進化したフシギソウの力に敗れてしまい、シンジに諭された結果昔の自分を思い出しロケット団を解散させる。

ロケット団をやめたあと、カントーを巡る旅をしており強くなることを願って強者が集うポケモンリーグへの参加を決意してポケモンジムに挑戦。リーリエに再挑戦し勝つことを目標とし、いつかかつて敗北した男へのリベンジも果たそうと努力している。

容姿はオールバックに纏めた髪型に体格のよいやや大柄な体、前を開けた薄い茶色のトレンチコートを着用している。

彼の戦い方は素早い動きで翻弄し怒涛の攻めで反撃の余地を与えない、攻撃は最大の防御という言葉が相応しい戦術をとる。

 

 

ハジメの手持ちポケモン

 

クロバット(♂)

技:クロスポイズン、ヘドロばくだん、ブレイブバード

初登場時はエアカッターも使用

特性:せいしんりょく

 

ハッサム(♂)

技:こうそくいどう、メタルクロー、つじぎり

 

ファイアロー(♀)

技:フレアドライブ、かえんほうしゃ、ニトロチャージ

 

メタグロス

技:コメットパンチ、アームハンマー、ラスターカノン

 

キリキザン(♂)

技:バークアウト、アイアンヘッド、つじぎり

 

ワルビアル(♂)

技:あくのはどう、ストーンエッジ、ドラゴンクロー

 

 

 

 

 

 

コウタ

初登場回:懐かしの再会!双子とのタッグバトル!

年齢:11歳

一人称:俺

漢字表記:浩太

コウミの双子の兄で、シンジとは親戚のような仲。シンジの事を兄のように慕っており、コウタにとっては師匠同然の存在。

旅に出る前は旅から帰ってきたシンジと手合わせしたり話を聞いたりして早く旅に出たいと願っていた。

旅の途中でシンジと再会しコウミとのタッグでシンジ、リーリエに挑むが敗北。シンジが昔と変わっていないと安心しいずれ追いついて見せると心に決め、同時にリーリエのこともライバル視する。

基本的に突っ走っていく真っ直ぐな性格で、何事もポジティブに考えている。例えバトルに負けたとしても、次は負けないと意気込みポケモン達と努力する努力家。ただし努力していることを知られるのを嫌い、妹のコウミにも特訓の様子を見せることはない。

容姿は黒の短めの髪に水色のノースリーブシャツ、下に青のラインが入った白のハーフパンツは着用しているが、原作と違い帽子は着用していない。

熱い性格でその性格が反映されてるのかバトルも文字通り熱い戦いをする。正面から相手とぶつかり、相手の実力を確かめつつその上で相手を上回る力を見せつける戦法をとる。

 

 

コウタの手持ちポケモン

 

(ヒトカゲ)→リザード→リザードン(♂)

技:ドラゴンクロー、かえんほうしゃ、はがねのつばさ、ちきゅうなげ

リザードの時にはきりさくも使用

特性:もうか

 

ヘラクロス(♂)

技:カウンター、メガホーン、インファイト、つばめがえし

 

エレキブル(♂)

技:かみなり、かみなりパンチ、ほのおのパンチ、かわらわり

 

エアームド(♂)

技:スピードスター、ラスターカノン、はがねのつばさ、ブレイブバード

 

ヨノワール(♂)

技:シャドーパンチ、おにび、あくのはどう

 

リングマ(♂)

技:アームハンマー、きりさく、きあいだま、はかいこうせん

 

 

 

 

 

 

コウミ

初登場回:懐かしの再会!双子とのタッグバトル!

年齢:11歳

一人称:私

漢字表記:浩美

コウタの双子の妹で、シンジとは親戚のような仲。シンジの事を兄のように慕っており、コウミにとっては師匠同然の存在。

旅に出る前は旅から帰ってきたシンジと手合わせしたり話を聞いたりして早く旅に出たいと願っていた。

旅の途中でシンジと再会しコウタとのタッグでシンジ、リーリエに挑むが敗北。シンジが昔と変わっていないと安心しいずれ追いついて見せると心に決め、同時にリーリエのこともライバル視する。

コウタと同じで真っ直ぐな性格だが内面はしっかりとしており、コウタの行動に振り回されることも多い。だがコウタの事は誰よりも信頼しており、兄妹仲はよい。コウタが陰ながら努力していることを実は知っているが、彼がそれを知られることを嫌っているのを知っているため口に出すことはない。

容姿は黒の髪に肩にかけた三つ編みツインテール。オレンジのキャミソールに白のショートパンツを着用している。コウタ同様原作と違い帽子を着用していない。

コウタが力で攻め込むのに対し、コウミはスピード重視に攻め込む戦法をとる。シングルバトルよりもどちらかと言えばダブルバトルを好む傾向にあり、パートナーをサポートすることが得意。

 

 

コウミの手持ちポケモン

 

(アチャモ)→ワカシャモ→バシャーモ(♀)

技:ブレイズキック、スカイアッパー、かえんほうしゃ

ワカシャモの時にはほのおのうず、ニトロチャージを使用

特性:もうか

 

ライボルト(♀)

技:ワイルドボルト、10まんボルト、ほのおのキバ

 

ムクホーク(♀)

技:でんこうせっか、つばめがえし、ブレイブバード

 

ドリュウズ(♀)

技:あなをほる、ドリルライナー、メタルクロー

 

ミミロップ(♀)

技:とびひざげり、れいとうビーム、シャドーボール、かげぶんしん

 

ムウマージ(♀)

技:シャドーボール、マジカルシャイン、まもる、

 

 

 

 

ルナ(CV.竹達彩奈)

初登場回:シンジVS少女ルナ!実力比べの真剣勝負!

年齢:13歳

一人称:私

漢字表記:月渚

シンジの幼馴染にしてアザリアジムジムリーダー。

シンジの事を親しみを込めてシンちゃんと呼んでいるが、リーリエと手を繋いでいるところを弄る、嫉妬心を感じることがないため異性として意識しているようすはない。どちらかと言えば本当の兄妹のような関係。

シンジとは昔から何度か対戦しており、実力はほぼ互角。現在ではシンジの方が上だが、彼女も彼を追い詰める程の実力者である。

ジムに挑戦してきたリーリエに圧倒的な力の差を見せつけ勝利するが、シンジとの特訓の末に力をつけたリーリエに驚きながらも敗れ、その実力を認めアザリアジムジムバッジのバイオレットバッジを渡す。

誰に対しても分け隔てなく接することができ、笑顔を絶やさない明るく子供っぽい性格。恋愛には興味がなく人懐っこいため、シンジも彼女のことは放っておけないようす。しかしシンジ同様ポケモンの事は大好きで、ポケモンを傷つける人物は誰であっても許すことはない。

容姿は黒髪の長いツインテールで、水色のタンクトップに白のハーフパンツ。その理由は本人曰く動きやすいからという事らしく、ファッションにあまり興味がない事を自覚しているようだ。年齢より少しだけ幼く見える。

バトルスタイルは何度も対戦しているからかシンジに似た部分もいくつかあり最終的にはポケモンとの絆や精神的な面で戦うことがある。ジムリーダーになって日は浅いが、強さは随一でその実力はシンジに匹敵するほど。そのせいか彼女にジム戦を挑む者も少なく、時々ジムを留守にすることがある。

アザリアタウンの住人たちの手伝いをよくしているため、町のみんなからは自分の孫や子供の様に可愛がられている。

フェアリータイプのポケモンを好んで使い、メガシンカも扱える。お気に入りの技はムーンフォース。パートナーはチルタリス。

 

 

ルナの手持ちポケモン

 

フラージェス(♀)

技:くさむすび、めいそう、めざめるパワー、ムーンフォース

特性:フラワーベール

 

チルタリス→メガチルタリス(♀)

技:りゅうのはどう、コットンガード、はがねのつばさ、ムーンフォース

特性:しぜんかいふく→フェアリースキン(メガシンカ時)




意外な声優とか使ってるかも。何故コウタのCVがKENNなのかと言うと、ただヌシが遊戯王が好きなだけです。
そしてルナの見た目と中の人的にどう考えてもあ〇にゃん……。因みにヌシは平〇唯ちゃんと豊崎さんが大好きです。

前回の宣言通りリーリエパ作りましたが、勝率的に言えば割と半分くらい。伝説相手だとグラードンが重いからか中々勝てなかったり。
実はブイズの方が使い慣れてるからか勝率が良かったりします。後すごい楽しい。特に伝説に対しての勝率も高くてガチっぽいパーティにも割と勝てたりします。
そしてブイズで戦ってたらまさかの炎御三家統一パに遭遇して興奮しました。これはこっちも応えなければと思いサンダース、ブースター、シャワーズというブイズ御三家で挑みなんとか勝てました。あれほど楽しい戦いは初めてでしたね。趣味パ同士の戦いはテンション上がります。
因みにレックウザ(ブイズの餌)の遭遇率が高かったです。ブイズに安易にレックウザを選出するとニンフィア、ブラッキー、シャワーズの餌食になるぞ!気をつけよう!理由?ガリョウテンセイ後に耐えられると即死します。
後ブラッキーのせいしんりょくやシャワーズのちょすい、エーフィのマジックミラーを知らない人がいたのでブイズを入れておくと意外なところで意表を突けるかもしれないぞ!

というわけで次回は多分一話書いてから翌週にコラボを書く予定となっております。ただ来週は仕事の関係上少しバタバタすると思うのでもしかしたら投稿が遅れる可能性もあります。ですのでどうか長い目で見ていただければ幸いです。

それではまた次回お会いしましょう!ではではノシ


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キャラクター設定 ~アローラ編~

とりあえず軽くキャラクター設定だけ載せておきます

オリキャラではないので深く掘り下げることはないかもしれませんが、ストーリーが進行次第追記していこうかと思います。

現在載せて居るのはヨウ、ハウ、ミヅキ、グラジオまでです。グズマさんやククイ博士のようなその他主要人物も後々追加していこうとは思っていますがその辺りは気長に追加していく予定です。

※ネタバレなども含む可能性がありますので新規の方はご注意ください。


ヨウ

初登場回:新しい出会い、次なる舞台へ!

年齢:13歳

一人称:俺

原作サンムーンの男主人公。ミヅキ、ハウとは幼馴染。小説内ではリーリエのライバルポジションの一人。

容姿は原作男主人公の初期衣装と同じ。

ハウと共にカントー、ジョウトを巡る修行の旅に出た。偶然にもシンジ、リーリエがアローラに戻る際にアローラ行きの船に乗り込み出会った。

現在のパートナーはガオガエン。

 

ヨウの手持ち

(ニャビー)→ニャヒート→ガオガエン(♂)

特性:もうか

技:ニトロチャージ、かえんほうしゃ、DDラリアット

 

ピカチュウ(♂)

技:10まんボルト、アイアンテール、でんこうせっか

 

ウォーグル(♂)

技:ブレイブバード、ブレイククロー、ぼうふう

 

 

 

 

 

 

 

 

ハウ

初登場回:新しい出会い、次なる舞台へ!

年齢:13歳

一人称:おれ

原作サンムーンのライバル。ヨウは幼馴染の親友で、ミヅキは家族のような存在。小説内ではリーリエのライバルでもある。ミヅキ同様祖父は現四天王のハラ。

ヨウと共にカントー、ジョウトを巡る修行の旅に出た。偶然にもシンジ、リーリエがアローラに戻る際にアローラ行きの船に乗り込み出会った。

現在のパートナーはジュナイパー。

 

ハウの手持ち

(モクロー)→フクスロー→ジュナイパー(♂)

特性:しんりょく

技:このは、ふいうち、かげぬい、リーフストーム

 

オンバット→オンバーン(♀)

特性:すりぬけ

技:エアカッター、ばくおんぱ、かまいたち、ドラゴンクロー

 

クワガノン(♂)

特性:ふゆう

技:10まんボルト

 

 

 

 

 

 

ミヅキ

年齢:13歳

一人称:私

原作サンムーンの女主人公。ヨウとは幼馴染であり、ハウは家族のような存在。小説内では2年前の島巡りを経て成長し、四天王となったハラに代わりメレメレ島しまクイーンとして後を継ぐ。

シンジとはライバル関係でもあり憧れを抱いている存在でもある。グラジオは多少一人の男性として意識している節はあるものの自覚していない。

祖父であり元しまキングでもあるハラのように立派なしまクイーンとなるために日々努力に勤しんでいる。

パートナーは旅に出た時にハラから貰ったアシマリが進化したアシレーヌ。

 

ミヅキの手持ち

アシマリ→オシャマリ→アシレーヌ(♀)

特性:げきりゅう

技:うたかたのアリア、アクアジェット、ムーンフォース

 

ピチュー→ピカチュウ→ライチュウ(アローラの姿)(♀)

特性:サーフテール

技:10まんボルト、サイコショック、アイアンテール、エレキボール

 

ウインディ

特性:いかく

技:かえんほうしゃ、しんそく、ワイルドボルト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラジオ

年齢:14歳

一人称:オレ

原作サンムーンのライバル。リーリエのただ一人の兄であり、シンジ最大のライバル。元スカル団用心棒であり、今では母親のルザミーネに代わりエーテル財団代表としてエーテル財団を仕切っている。

4年前にUBに対抗するための兵器として実験台とされていたタイプ:ヌルを救出して逃亡する。その後、タイプ:ヌルと共に大切なものを守れる強さを得るためにスカル団の用心棒として戦う事を決意する。

元々他人となれ合う事を良しとしない彼だが、島巡りをしているシンジやミヅキと戦い触れ合うことで本当の強さやトレーナーとポケモンの関係について考えるようになりスカル団との関係を断ち切る。

母親を助けてくれたシンジに対し彼の強さを認め、ライバルであると同時に今では親友として良好な関係を築いている。

普段他人に対してあまり興味を示すことが無いが、ミヅキの事は不思議と悪くないと感じている。本人はその感情について理解はしていない。

パートナーは救出したタイプ:ヌルが進化したシルヴァディ。

 

グラジオの手持ち

タイプ:ヌル→シルヴァディ

特性:ARシステム

技:マルチアタック、エアスラッシュ、ブレイククロー

 

クロバット(♂)

特性:せいしんりょく

技:アクロバット

 

ルカリオ(♂)

特性:せいしんりょく

技:コメットパンチ、はどうだん、ビルドアップ、ボーンラッシュ

過去にはバレットパンチも使用。

 

マニューラ(♂)

特性:プレッシャー

技:メタルクロー、つららおとし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナ

初登場回:新米トレーナーヒナ、登場!

年齢:10歳

一人称:私

アローラ編~L~にて登場したリーリエのライバル。初めてパートナーにしたモクローと一緒に旅に出るが、中々バトルに勝つことができず落ち込んでしまう。

あることがキッカケでリーリエと出会い、彼女のポケモントレーナーとして戦う姿に憧れを抱いて自分もトレーナーとして成長しようと決意。モクローと新しく仲間にしたチュリネと共にアローラリーグでリーリエと戦うことを夢見て島巡りの旅に出る。

明るい性格で人懐っこく、可愛いポケモン、くさタイプのポケモンを好む傾向にある。ポケモンのことをちゃん付けで呼び、傷付くポケモンを放っておけない心の優しい女の子。小さい身体でありながら食べることが好き。

“予選開始!夢の舞台、アローラリーグ!”にて再登場。念願のアローラリーグ本戦に参加し、1回戦ではリーリエとの熱い激闘を繰り広げた。パートナーであるモクローはお気に入りであるため進化させていない。

 

モクロー(♂)

特性:しんりょく

技:このは、ブレイブバード、かげぶんしん、シャドークロー

 

ドレディア(♀)

特性:ようりょくそ

技:にほんばれ、はなふぶき、はなびらのまい、フラフラダンス

 

アマージョ(♀)

技:ふみつけ、ローキック、リーフストーム、トロピカルキック

 



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キャラクター設定 ~アローラ編2~

久しぶりのキャラ設定です。基本的には原作設定と変わっているキャラをメインに書いていますが、他のキャラについては随時検討しています。

その他設定資料も編集・追記しました。過去の話が多すぎて見直すのに時間がかかった……。いつの間にか私の小説もこれだけ続いたんだなって改めてしみじみ感じました。


ククイ

一人称:ボク

アローラ地方でポケモンの技について研究しているポケモン博士。シンジをアローラ地方に誘った張本人であり、アローラポケモンリーグ設立に携わった功労者でありアローラポケモンリーグ責任者でもある。

トレーナーとしても一流で、初のアローラリーグにてシンジの最終戦の相手を務めた。その時の白熱した試合は今でもアローラでも伝わっていて、シンジがチャンピオンとなった伝説の試合として語られている。

現在では新人トレーナーたちが学ぶ場所として定期的にポケモンZキャンプを開催してトレーナーたちの成長を促している。

何やらとある場所では裏の顔も持ち合わせているらしいが……?

配偶者はバーネット博士。

 

 

 

 

 

バーネット

一人称:私

空間研究所の所長であり、かつてリーリエを拾い匿っていた女性。主にUBに関係しているウルトラホールについて研究していて、今でもエーテル財団と協力して研究を継続している。UBの接近については彼女たち空間研究所が管理して随時エーテル財団に報告している。

以前はウルトラ調査隊の面々とも協力関係にあり、彼らの世界を救うため共に研究を進めていた。

配偶者はククイ博士。

 

 

 

 

 

 

 

ルザミーネ

一人称:私

リーリエ、グラジオの母親でありエーテル財団の代表。研究者として研究していた夫の突然の失踪がキッカケとなり、家族が自分から離れてしまうことが恐怖となり狂い始めてしまう。結果UBに執着しウツロイドの神経毒に精神を侵されてしまったため自我を失ってしまう。リーリエと共にウツロイドの神経毒を解毒するためカントー地方に出向き、娘の奮闘と願いのおかげで神経毒の解毒に成功した。リーリエが旅に出るキッカケを作った人物でもあり、かつての暴走していた彼女の面影はなくリーリエ、グラジオにとっても大切な母親である。しかし副作用によって現在では少しやつれてしまっている。

トレーナーとしての腕は非常に優秀で、シンジと戦った際も彼を追い詰め、リーリエとの模擬戦では勝利を収めているほどの実力者。

 

ルザミーネの使用ポケモン

 

ドレディア(♀)

特性:マイペース

技:はなびらのまい、ちょうのまい、エナジーボール、リーフストーム

 

ミロカロス(♀)

特性:ふしぎなうろこ

技:ハイドロポンプ、れいとうビーム、じこさいせい、ドラゴンテール

 

ピクシー(♀)

特性:マジックガード

技:まねっこ、かえんほうしゃ、ひかりのかべ、マジカルシャイン

 

ムウマージ(♀)

特性:ふゆう

技:マジカルフレイム、シャドーボール

 

 

 

 

 

 

 

 

ビッケ

一人称:私

エーテル財団に所属している代表秘書。普段はルザミーネの秘書を務めているが、彼女がいない時期には代表代理を務めていたグラジオを支えていた。

UBからアローラを守るウルトラガーディアンズを結成し彼らをサポートするなど、裏で幅広く活躍している重要な存在。自分がいない間も息子やエーテル財団を支えてくれていたビッケに対してルザミーネは感謝しており、大切な秘書として今でも頼りになる秘書として大切にしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルメリ

一人称:あたい

元スカル団幹部。どくタイプのポケモンを好んで使用し、トリッキーな戦い方で相手をじわじわと追い詰める戦術をとる。しかし戦術とは裏腹に正々堂々と戦うことを好む性格。

スカル団解散後は島巡りをしてトレーナーとして自身を見つめ直す旅をしているが、現在でもスカル団メンバーからは姉御として慕われ続けている。

リーリエの参加したアローラリーグにも参加しており、グラジオと2回戦で準決勝進出を賭けて争った。

パートナーはエンニュート。

 

プルメリの使用ポケモン

 

エンニュート(♀)

特性:ふしょく

技:はじけるほのお、ヘドロウェーブ、どくづき、みがわり

以前はドラゴンクローも使用

 

ゲンガー(♂)

特性:のろわれボディ

技:みちづれ、ふいうち、シャドーボール、あやしいひかり

 

ベトベトン(♂)

特性:どくしゅ

技:だいもんじ、はたきおとす、かげうち、ダストシュート

 

ゴルバット(♀)

特性:せいしんりょく

技:ベノムショック、どくどくのキバ、エアスラッシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グズマ

一人称:俺様

元スカル団のボス。むしポケモンを好んで使用しており、荒々しく敵を力でねじ伏せる戦いを好む。

かつて現四天王であるハラの元でククイと共に修行していたが、彼の考えに反発してスカル団を結成し対立。現在では考えを改め再びハラの元で修行をし、カプ・テテフに認められて元アーカラ島しまクイーンライチの後を継ぎ現しまキングとしての職務を務めている。

しかし今でもZ技に対してよく思っておらず、あまり自分から好んで使用することはない。その分正面からZ技に対抗するほどの実力を併せ持っており、トレーナーとしての実力は一流である。

考えを改めた今でも性格は大して変わっておらず少し荒っぽい性格だが、アーカラ島コニコシティの住人からは慕われている。

パートナーは子どもの頃から共に過ごしているグソクムシャ

 

グズマの使用ポケモン

 

グソクムシャ(♂)

特性:ききかいひ

技:であいがしら、アクアブレイク、じごくづき、ミサイルばり

 

ハッサム(♂)

特性:テクニシャン

技:バレットパンチ



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キャラクター設定 ~未来編~

短いですが繋ぎとして未来の主人公一家設定

話が進むにつれて内容を増やして行きます


シンジ

年齢:30歳

主人公でありアローラ地方の初代チャンピオン。11歳という若さでチャンピオンの座に君臨し、約20年もの間チャンピオンとして頂点に立ち続けている。13歳の時に最強の挑戦者と言われることとなるチャレンジャー、リーリエとのバトルに辛くも勝利し、20歳の時に彼女と結婚。彼女との間に子どもも産まれ、幸せな生活を送っている。

心身ともに少年時代よりも成長してはいるが相変わらず朝には弱く、日頃の疲労が溜まっていることもあり子どもたちに起こされることも多い。長きに渡るチャンピオンとしての経験から戦闘面にも磨きがかかっており、華麗に戦場を舞い、時に力強く攻め立てる縦横無尽なそのバトルは観客だけでなく、対戦相手すらも魅了するレベルまで到達している。

今でもチャンピオンとしてアローラのトレーナー、子どもたちからの憧れの的であり目標でもある。

 

 

 

 

リーリエ

年齢:30歳

もう一人の主人公でありヒロイン。かつてはバトルに良い印象を持たなかった彼女ではあるが、13歳の時に憧れの人の隣に立てるようにとの決意からトレーナーとして旅に出ることを決意。様々な経験を経て、念願のチャンピオン、シンジと約束の舞台で激闘を繰り広げる。そのバトルはアローラ史上歴史に残る伝説のバトルとして語り継がれ、彼女もまた過去最強のチャレンジャーとして名を馳せることとなった。現在では日常的なバトルは引退し、結婚して夫となったシンジを支え、子育てに尽力を注いでいる。また、結婚してからも夫のことを敬称ありで呼び続けている。

母親であるルザミーネ同様、年齢よりも若く見られがちで髪も昔より長く伸び綺麗な金髪に成長している。普段はポニーテールではないが、料理などの作業をする時は邪魔にならないように後ろで髪留めをしてポニーテールにしている。因みに胸もかなり大きく成長したりしている。

バトルは引退したが彼女のポケモンたちは健在で、子どもたちの遊び相手もしてあげている。彼女のカイリューは偶にカントー地方の群れの元に里帰りしているようである。

夫婦の仲を子どもたちにからかわれ、二人一緒に顔を赤くするのは恒例行事でその辺は二人とも昔と変わっていない点でもある。

 

 

 

 

 

ロウ

年齢:8歳

シンジとリーリエの間に産まれた息子。髪と眼の色は黒色で父親に似ており、どこにでもいる真面目な普通の男の子。名前の由来はヤシ科の『ロウル』から。

両親のことが大好きで、シンジのことを『お父様』、リーリエのことを『お母様』と呼んで慕っている。バトルの強い父親のことを誰よりも尊敬しており、将来は父親のような強いトレーナーになるのが夢。

現在は10歳未満であるためポケモンを持つことはできないが、将来のためにトレーナーズスクールで熱心に勉強している。

勉学は得意で筆記の成績は上位をキープしている。しかしバトルの方は苦手なようで、真面目過ぎるのが仇となり授業ですら中々バトルで勝てないでいるのが本人の悩み。

 

 

 

 

 

ティア

年齢:6歳

シンジとリーリエの間に産まれた娘。髪の色は金髪で眼の色は緑と母親に似ており、現在は幼さがあるが将来は美人になる素質を持っている。名前の由来はアカネ科の『ティアレ』から。

兄であるロウと同様両親のことが大好きで『お父様』『お母様』と呼んで慕っている。母親の作るごはんが大好きで、将来は母親のようにスタイル抜群な美人になり父親のような素敵な男性と結婚するのが夢。

また兄のことも大好きで普段もよく一緒に行動している。トレーナーズスクールに共に通ってはいるものの、将来父親や母親のような立派なトレーナーになろうと言う考えは持っていない。しかしポケモンのことは大好きであるため、一生懸命兄と勉強に取り組んでいる。

だが兄に教わってはいるものの中々努力が実を結ばず筆記の成績は伸びないでいる。一方でバトルのセンスは抜群であり、実技の授業では指折りの実力者として学内でも知られているほど。



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アローラ編
出会い


初めましてです。ブイズ使いです。ゲームでもその名の通りブイズを使ってます。寧ろブイズしか使ってないしブイズ以外使う気がないです

多くのプレイヤーを襲ったリーリエロス、リーリエショック、ポリゴンショックに対抗するための自己満足ssですので気ままに書いていきます。

駄文ですがどうかドラ○もんのような温かい目で見守ってください。ではどぞ!


 

「・・・・・・」

 

一人の男の子が手元にあるチケットを見て考え込む。今まであったことを思い返しているのだ。

 

「大体2年ぶり……かな?手紙では元気そうにしていたけど……会ってみてからのお楽しみだよね。」

 

彼はある人のことを考えながらそうつぶやく。

 

「出会ってからは色々なことを体験したよね。でもそんな中でも君は変わることのない笑顔を僕に見せてくれた。だからこそ僕は……」

 

彼はそこで言葉を止める。それから先の言葉は“彼女”に会ってから言おうと思っているからだ。彼が誰よりも大切だと思っている、彼女に出会ってから……。

 

「今でも昨日のことのように思い出せるよ。君と出会ってからの事……。」

 

彼は眼を閉じて彼女と出会った時のことを思い出す。彼女と出会ってからの物語を……。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「よっしゃ!やっと着いた!アローラ地方!」

 

一人の男の子が飛び跳ねながら船から降りる。彼はとある地方から長旅を続けて、今ようやくこのアローラ地方へ辿り着いたのだ。

 

「ちょっとシンジ、はしゃぎすぎよ。荷物運ぶの手伝って。」

 

今シンジと呼ばれた少年は頭を押さえながら謝る。

 

「あはは、ごめんなさい。ちょっと新しい地方についたからテンションあがっちゃって。」

 

「気持ちは分かるけど先ずは引っ越しの手続きと荷物の整理もやらなきゃいけないのよ?」

 

「うん、分かってるよ、母さん。」

 

シンジと呼んだ女性は彼の母親。彼らはカントー地方から遥々とこのアローラ地方へと引っ越してきたのだ。実はカントー地方はアローラ地方とは正反対の場所にある。カントー地方からここまで長い旅をしてきたため、彼は今までの我慢してきた思いが破裂したかのようにはしゃいでしまったのだ。

 

「さてと、荷物は持ったわね?じゃあ早速引っ越しの手続きをしに役所に行くわよ。」

 

「うん!」

 

シンジは母親と共にキャリーバックを転がしながら役所に向かう。

 

「お!見たことのないポケモンがいっぱいいる!あれも見たことがない!」

 

シンジの言ったポケモンとはこの世界共通に存在している謎の多い生き物である。多くのポケモンは人間と共に生存している。時にポケモン同士でバトルをし、時にポケモンの技を観客に披露したり、時に力を合わせて苦難を乗り越えたりなど、様々な姿で過ごしている。

 

「アローラ!ハウオリシティの役所にようこそ!」

 

「アローラ!引っ越しの手続きをお願いしたいのですが。」

 

このアローラとは、アローラ地方特有の挨拶である。このアローラ地方では他の地方とは文化が少々異なり、ライドポケモンと呼ばれるポケモンに乗って移動したり、道を塞ぐ岩などを壊したりするなど、多くの場面でポケモンの力を借り過ごしている少々特殊な地方である。

 

「かしこまりました。ではこちらの用紙にお名前と以前過ごしていた住所、引っ越し先などを書いてこちらに提出してください。」

 

「分かりました。」

 

シンジの母親は引っ越し手続きの申請書を受け取りそれに情報を書いていく。

 

「そうだシンジ。この間に外の歩いて回ったらどう?手続きはお母さんがやっておくからさ。」

 

「え?いいの?」

 

「ええ、だってあなたさっきからソワソワしてるもの。この地方にいるポケモンたちとかも気になってるんでしょ?」

 

「母さん……ありがとう!じゃあ行ってくるね!」

 

「ええ、行ってらっしゃい。」

 

シンジは母親に手を振りながら外に走って出ていく。その瞬間に人とぶつかりそうになるが、なんとかぶつからずに謝りながら走っていく。シンジは周りの見たことのないポケモンだけでなく、見たことのあるポケモンも見かけたのに驚きと感動を同時に感じ、またワクワクした気持ちも感じている。

 

「あれ?あの人……」

 

しばらく走っていると一人の女の子が海を眺めてカバンに話しかけている……ように見える。一体何をしているんだろうかと気になったシンジはその女の子に声をかけた。

 

「綺麗な海ですね。この風景をあなたにも見せてあげたいです。ちょっと!今出たらだめですよ!人に見られたらどうするんですか?」

 

「ねえ君!なにしてるの?」

 

「ふぇ!?」

 

シンジが声をかけると女の子は驚いた顔をする。女の子は純白のノースリーブの服に透明なフリルのついたスカートを着ていて、金髪の長い髪にお嬢様を思わせるようなつばの広い服と同じく白い帽子をかぶっている。シンジの姿を見た女の子は驚いた顔を慌てて元の顔に戻す。

 

「え、えっとどちら様ですか?」

 

「ああ、ごめんごめん。僕はシンジ、今日この近くに引っ越してきたばかりなんだ。君はこの街の人?」

 

「いえ、でもこの近くである人にお世話になっています。」

 

「そっか。何か悲しいことでもあったの?なんだか浮かない顔してたけど。」

 

シンジは疑問に思っていたことを女の子に尋ねた。シンジは彼女を見たときになんだか彼女が悩んでいるように思えたのだ。

 

「い、いえ!なんでもありません!」

 

女の子は首を振りカバンを押さえながら否定する。なんだかおかしいとは思ったがシンジはあまり深く追求しないことにした。

 

「そう?ならいいけど、ここで会ったのも何かの縁だし何か困ったことでもあれば言ってね!なんでも手伝うから!」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

彼女は笑顔を見せてシンジに感謝する。

 

「あ、今はダメですよ!少し我慢してください!」

 

彼女は小声でカバン?に声をかける。まるで何かを抑制しているようだ。

 

「ん?どうかした?」

 

「い、いえ!なんでもありません!ちょっと私急用がありますのでこれで失礼いたします。」

 

彼女は急ぎ足でハウオリシティの外へと向かう。シンジは小走りする彼女を心配そうな顔をしながら静かに見届ける。

 

「あっ、あの子の名前聞くのわすてれたな。また会えるかな……。」

 

シンジはまた会えないかと期待を胸に母親の元に戻る。またあの女の子と会えるのではないかと……。それが彼らの運命的な出会いだと知らずに……。




何故主人公名がシンジかって?ゲームで毎回使用する男主人公名を使ってるだけです。他意はないです。ホントダヨ?


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少年と少女と

と言うわけで?2話目です。

ポケモン世界の引っ越しやって名前なんなんだろうね?ヌシが思いついたのはアイアントマーkゲフンゲフン……。

ちょい一部原作とは違ったりするところもあるけどそこは勘弁です。サンムーン合わせて二週しかしてないから詳しくは覚えていませんので。


「さてここが新しい家よ!」

 

僕たちは引っ越しの手続きが終わり、新しい家にたどり着いた。新しい家はさっきまでいたハウオリシティのはずれで簡単には言えばすぐ隣だ。そこには引っ越し屋さんのトラックが止まっていた。家の中にはゴーリキーが3体ほど引っ越しの整理を手伝ってくれているようだ。

 

「ありがと皆。荷物の整理がはかどるわ。」

 

『リッキ!』

 

ゴーリキーたちは自慢の筋肉をアピールしながらか母さんに返事をする。みんなは働き者で、どうやら気にしなくていい、と言っているように僕には感じた。

 

ピンポーン

 

「あら?こんな早くに誰かしら?」

 

僕がそんなことを考えていると突然インターホンが鳴った。どうやらだれかお客さんが来たらしいがいったい誰だろうか。こっちに来てから僕が話したことあるのはあの女の子だけだけど、あの子にはこの住所は一度も言っていない。ということはこの家の住所を知っているのは……。

 

「はいはい!今出ます。」

 

母さんは慌てて家のドアを開ける。そこにはお腹を露出して上から白衣を羽織っている褐色肌の男性が立っていた。

 

「アローラ!引っ越しはどうだいシンジ?」

 

僕は知っている。この人の名前は……

 

「あらククイ博士!アローラ!わざわざ出向いていただいてありがとうございます!」

 

そう、この人はククイ博士。アローラ地方のポケモン研究家で主にポケモンの技について研究しているらしい。例えばポケモンの技の組み合わせや応用法など、いろいろな場面で使う技を詳しく自分なりに研究しているらしい。

 

「シンジのお母さん、新しい家はどうですか?」

 

「はい、過ごしやすそうな雰囲気で気に入りました。本日はシンジをアローラ地方に誘っていただいて感謝しています。」

 

そうだ、僕がここに来た理由はこのククイ博士に誘われたからだ。僕は元々カントー地方に暮らしていたが、僕は自分のポケモンと共に各地方を旅していた。しかしある地方の旅が終わってカントーに帰ったとき、ククイ博士にアローラ地方に来てみないかと誘われたんだ。ただアローラ地方はカントーとは遠く、まさに正反対にある。別に僕はここまで一人で来てもよかったんだけど、母さんが「私も一緒に行ってもいい?」と言い出して急きょ引っ越すこととなった。気まぐれな母さんのことだから驚くことはないと思っていたが、今回は結構驚かされた。どうやら一度アローラに来たかったらしく、泊まって帰るのも嫌だから引っ越しを決意したのだとか。うん、我が母親ながら何とも言えないね。

 

「いえいえ、シンジは元々腕の立つトレーナーだと聞いていたので興味が湧きまして……アローラ地方に来たらこの地方になにかいい影響をもたらしてくれるのではないかと直感して誘ってみたんですよ。」

 

「僕もククイ博士に誘っていただいて感謝してます。その時までアローラ地方のこと知らなかったので、新しいポケモンにも会えると思えばとても嬉しいです!」

 

「ハハハ、ほんとシンジはポケモンが好きみたいだな!フラッシュのように明るい笑顔をこっちにいるポケモンたちにも見せてあげてくれよ。」

 

ククイ博士はよくポケモンの技で色々なことを表現する癖がある。どうやら技の研究をしている間にポケモンの技を口にするのが癖になったみたい。なんだか研究者の間ではこういったことはよくあるらしい。

 

「はい!ところで博士は今回どういった要件でいらしたんですか?」

 

「ああそうだった、今からシンジのことを借りてもいいですか?ちょっと案内したいことがあるんだ。」

 

「え?僕を案内したいところですか?」

 

「ああ、ここから少し行ったところにリリィタウンってところがあるんだが、そこにしまキングがいるからその人が会いたいって言ってたんだ。」

 

「しまキング?」

 

僕は聞きなれないしまキングという単語が気になったのでククイ博士に尋ねた。

 

「ああ、彼はこの島、メレメレ島で一番強いポケモントレーナーなんだ。どうやら彼が君に興味を持ったようで相談したいことがあるみたいなんだ。付いてきてくれるか?」

 

ククイ博士は緑色のサングラスを外して頼んでくる。

 

「シンジ、行って来たら?」

 

「え?でも引っ越しの手伝いは?」

 

「こっちは大丈夫よ。ゴーリキーちゃんたちが手伝ってくれるし、期待してくれてる人がいるならその人たちの期待に応えようとするのがあなたでしょ?あなたはあなたの道を進みなさい。」

 

「母さん……ありがとう!じゃあ行ってきます!」

 

「ええ、行ってらっしゃい!そうだ、その前に……。」

 

母さんは持ってきた荷物の中から一つの帽子を取り出し僕の頭に被せた。全体が黒色になっていて、前の部分にはモンスターボール型の青色のマークついている。

 

「母さん……これは。」

 

「あなたの事だからこっちでも冒険をすると思っていたの。だからそのためにちょっと作ってみたのよ。お母さんからの餞別みたいなものよ。楽しんできなさい。」

 

「ありがとう!この帽子大切にするよ!」

 

そう言って僕は手を振りながら母さんに見送られてククイ博士と一緒にリリィタウンへと向かう。博士はその時僕に対して「いいお母さんだね」と言ってくれた。少し恥ずかしかったが、それでも母さんのことを言われるのはどことなく嬉しい感じがする。確かに振り回されることも多いけど、それでもいつも面倒をよく見てくれて頼りになる母親には変わりないから。

 

「それで博士、リリィタウンってどっちにあるんですか?」

 

僕は照れ隠しも含めて博士にリリィタウンの場所を尋ねた。博士は笑いながらその質問に答えてくれた。

 

「この坂を上っていった先にリリィタウンがあるんだ。小さな村だがそこには守り神のカプ・コケコが祭られている祭壇があってな。気まぐれな守り神だが、そのカプ・コケコのおかげもあってこの島の住人は平和に暮らせているんだ。」

 

「カプ・コケコ……か……」

 

なんだが不思議な響きだな……。一度でもいいから会ってみたいって気が湧いてくる。

 

「おっと見えたぞ。あれがそのリリィタウンだ。」

 

しばらく歩いていると『ようこそリリィタウンへ』と書かれた門があり、それを潜ると一つの集落が見えた。

 

「しまキングが見当たらないな。俺はあっちの方を探してくるからシンジは向こうを探してくれないか」

 

「分かりました」

 

ククイ博士は北の方を指さして僕にしまキングを探してくるように促す。僕はそれに頷きながら答える。

 

「そういえば、しまキングってどんな人なんですか?」

 

とはいえ情報なしに人探しなんか出来るわけがないのでしまキングの特徴をククイ博士に尋ねる。

 

「名前はハラさんっていうんだけど、如何にもしまキング!って感じの人だから分かると思うよ。」

 

え~、それじゃあ分からないような気がするんですが……。でもこれ以上有益な情報を貰えそうにもなかったので、取り敢えずそれらしき人物を見かけたら声を掛けようと判断する。

 

そして僕は博士と別れて博士に言われた方向(多分北)を探しに行くすると見かけたことのあるような人の姿を見かけた……。

 

「この先にいらっしゃっるのですね。……よし、行きましょう。」

 

あの子には覚えがある。それはそうだ。さっきハウオリシティで出会った女の子だ。もう少し話したい気もするし、なんだか深い事情もありそうだし追いかけてみよう。

 

僕は女の子を少し離れた位置からついていく。ストーカーみたいかもしれないけど違うからね?決して違うからね?取り敢えず彼女についていくと、一つの長いつり橋に辿り着いた。すると何やらつり橋の真ん中あたりで一つのポケモンらしい影がオニスズメ3匹に襲われている。女の子も戸惑っているみたいで中々助けに行けずにいる。

 

(こんなことしてる場合じゃない!あの子を助けないと!?)

 

僕は何も考えずに飛び出してつり橋に向かい走ってゆく。女の子も「えっ!?」と驚きの声をあげる。僕は目の前に困っている人やポケモンがいると後先考えずに行動してしまう癖がある。今回も考える前に体が先に動いてしまったのだ。

 

「くっ!?」

 

僕は虐められていたポケモンを覆うように庇う。オニスズメはそれに気が立ち僕のことを引っ搔いてくる。

 

「大丈夫だよ……僕が守ってあげるから。」

 

この子の不安を無くすように声をかける。すると後ろの方でミシミシと音がする。

 

「えっ?これってまさか……」

 

なにか嫌な予感がした……というのも束の間、突然つり橋が崩れ落ちて僕と庇っていたポケモンも一緒に下の川に向かって落ち始める。僕はその子を抱えて川に落ちた時のその子にかかる衝撃を小さくしようとする。

 

(仕方がない!こうなったら!)

 

僕は腰にかかっているモンスターボールを手にする。しかしその時に一つの光が僕の方に近づいてくるのが見えた。すると突然僕はその光に包まれ、気が付いたらつり橋の手前のところに座っていた。

 

「大丈夫でしたか!?」

 

「あ、うん、僕は大丈夫。それよりこの子は無事だったよ。」

 

僕は女の子に大丈夫だと伝えこの子の無事を伝える。するとこの子は僕の元を飛び出し女の子の元に飛びつく。女の子は飛びかかってきた子を抱きかかえる。

 

「よかったほしぐもちゃん……あなたが無事で……。あの、ありがとうございました。」

 

女の子は僕に頭を下げてお礼をする。ほしぐもちゃんと呼ばれた子は女の子に抱えられ安心したような顔をする。

 

「もう……勝手に飛び出しちゃダメじゃないですか。これからは気を付けてくださいね?」

 

ほしぐもちゃんは申し訳なさそうな顔をして、反省しているようだ。

 

「あれ?あなたはあの時の……。」

 

「あはは……君のことが少し気になって追いかけてきたんだ、ごめんね?」

 

その時女の子は僕のことに気付いたようで少し恥ずかしさに僕は頭をかきながら謝る。どうやらあの時カバンと話していたように見えたのはほしぐもちゃんに声をかけていたみたいだね。

 

「そういえばさっきの光は一体何だったんだろう?」

 

「あれは多分守り神のカプ・コケコさんです。」

 

あれがカプ・コケコ……すごい速さだったな……。

 

「そういえばここになんだか光っている石があったのですが、これはあなたのですか?」

 

「え?」

 

女の子はそう言い僕にその石を差し出してくる。なんだろこれ?少なくとも僕には見覚えがないな……。

 

「う~ん、僕のではないな……。もしかしたらカプ・コケコが落としていったのかな?」

 

「そうかもしれませんね。カプ・コケコさんは気まぐれな守り神だと聞いています。もしかしたらあなたに何かを感じたからかもしれません。」

 

「そうかな?」

 

僕は女の子の言葉に納得する。その後僕は立ち上がろうとするが……。

 

「いつっ!?」

 

僕は立ち上がろうとしたが足に痛みを感じ、中々力が入らなかった。

 

「だ、大丈夫ですか!?足を怪我してるじゃないですか!?すみません気が付かなくて。」

 

女の子は謝りながら怪我をしている足を見る。するとカバンからキズぐすりを取り出して僕の足にかけてくれる。

 

「あっ、ごめん、ありがとう。」

 

「いえ、こちらこそすみません。ほしぐもちゃんを助けてくれたのに真っ先に気付かなくて……。」

 

女の子は傷口に絆創膏を貼ってくれる。僕の足の痛みは引いてきたので立ち上がる。女の子は申し訳なさそうに謝った。僕は全然気にしなくていいと答える。

 

「取り敢えずここから降りようか。」

 

「はい!あ、そういえば名前を伺うのを忘れていました。」

 

「ああ、僕はシンジって言うんだ。」

 

「シンジさんですね?私はリーリエです。よろしくお願いします!」

 

「うん、これからよろしく!」

 

リーリエと名乗った少女と僕は挨拶をしここから降りようと判断する。リーリエはほしぐもちゃんを再びカバンに入れ僕の後ろをついてくる。

 

この時は誰も思わなかった。まさかこの出会いがある冒険の鍵になるとは……。そして二人が運命の出会いを果たしていることも。でも、なんだかシンジにとっては、これから楽しいことが起こるのではないかと少しワクワクした気持ちになっているのは言うまでもなかった。

 




リーリエも可愛いけどほしぐもちゃんも可愛いよね。あの『ぴゅう』って鳴き声がまた高ポイント。

「ポイント制!?」by面白き盾

メレメレ島での冒険は普通に書きます。つうか最悪メレメレ島は書かないと人物像が分からないですしお寿司……。

取り敢えず今度の土曜日は仕事有給取って名古屋のポケセン行ってきます。ブイズのすやすやぬいぐるみが発売すると聞いて居ても立っても居られないので。ブイズがいてくれれば永遠に生きていけそう。

じゃあ続きは次回ということで。感想を書いていただける場合は、お手柔らかにお願いします。ではでは!


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島巡り

カキです

ではなくヌシです。黄昏ルガルガンかっこいいよね。前作のアニポケXYシリーズは神だったけど、サン&ムーンも個人的には面白いと思うの。

そんなことより続きです。残念ながら当小説にハウは出てきません。理由は書いてると喋り方が独特すぎて難しいです。ハウが出てこないことは注意書きにも書いたので知っているとは思いますが一応ね。

では本編どぞ!





あっ、どうでもいいけど今日はヌシの誕生日です


僕はリーリエと共に坂道を下っていく。リリィタウンまで辿り着くと博士がいた。その隣に見覚えのない人がいた。

 

褐色肌で青い服に上から黄色と白の模様が入った上着を着用し、白の短パンを履いている。さらに腰にはしめ縄を付けており、見た目が関取のようにがっしりとしている。

 

(もしかしたらあの人がしまキングのハラさんかな?)

 

僕はあの人がしまキングかと思ったが、取り敢えずは遅れたことを謝ろうとする。

 

「すいませんでした博士、ちょっと色々ありまして……。」

 

「いや、大丈夫だったならいいさ。それよりもリーリエも一緒だったんだな。」

 

「あれ?博士とリーリエって知り合いだったんですか?」

 

「はい、実は私博士の家でお世話になっておりまして、その代わりとしまして博士の助手もやっているんです。」

 

前言ってたある人にお世話になっているって博士の事だったんだ。

 

「ところで博士、そちらの方は?」

 

リーリエが僕も疑問に思っていたことを尋ねてた。その問いに本人が答えてくれた。

 

「初めましてですな。私はメレメレ島のしまキング、ハラと言います。本日はそちらのシンジ君にお話がありましてな。ちょっとよろしいですかな?」

 

「あ、はい。いいですよ。」

 

なんか予想通りというかこの人がしまキングみたい。うん、博士が言ってた「如何にもしまキング!」っていうのはあながち間違ってなかったってことだね。

 

「では単刀直入にいいます。君は島巡りに興味はありませんかな?」

 

「島巡り……ですか?」

 

島巡り……あまり聞きなれない単語だけど一体何だろう。でもなんだか興味を惹かれる単語だね。

 

「ええ、このアローラ地方は4つの島でから成り立っているのは分かっているかな?」

 

「はい。」

 

「うむ、その4つの島ではそれぞれ試練と呼ばれるものがあってね。島巡りはその試練を乗り越えて、それぞれの島で最終的な大試練を乗り越えて島の守り神に認められることを島巡りというんだ。君の故郷であるカントーのジム巡りに似ていますかな?」

 

ハラさんは笑いながら島巡りのことを説明する。ジム巡り……多くの地方には色んな街にポケモンジムと呼ばれる施設が存在し、そこでのポケモンバトルに勝利することでバッジを手に入れ、合計8つのジムバッジを手に入れるとリーグに出場することができ多くのライバルがいる大会に参加する資格を得ることができる。

 

どうやらアローラ地方にはジムという概念が存在せず、代わりに数々の試練を乗り越えると大試練と呼ばれるものに挑戦することができるらしい。僕もいろんな地方を旅してきたけど、この地方みたいなのは初めてだから寧ろ想像できない分楽しみも倍になっている。

 

「私聞いたことがあります。確か大試練は各地方にいるしまキングやしまクイーンと戦い、勝利するとその証を貰えるのだとか。」

 

リーリエが大試練について説明を付け加えてくれた。とても分かりやすい説明ありがとうと内心に思う。

 

「よく知っていますな。シンジ君のことはククイ博士から聞いていますよ。なにやら腕の立つトレーナーだとか。君には是非島巡りに挑戦してもらいたいと思いましてね。私も君の実力には実に興味を示しましてな。どうでしょうか?」

 

ハラさんが僕に挑戦の意思を尋ねてくる。勿論僕の心は決まっている。

 

「もちろん挑戦させていただきます!」

 

僕は自分の意思をハッキリと伝える。その答えにハラさんは笑顔で頷き答えてくれる。

 

「そうか!では島巡りの証を君に授けよう!」

 

そう言って黄色のキーホルダーを僕に差し出してくる。それを僕はお礼を言いながらカバンの横に付ける。

 

「そのキーホルダーに4つの色が付いていると思うが、それはそれぞれの守り神に象った色が描いてあるんだ。」

 

博士がキーホルダーのことを指摘する。僕は再度キーホルダーを確認してみる。そこには左から順に黄、赤、ピンク、紫と描かれている。それがなんの意味を持つのか分からなかったが、博士がそのことについて続けて補足してくれた。

 

「その色にはそれぞれ意味があってな。黄色はメレメレ島の守り神カプ・コケコ、赤色はウラウラ島の守り神カプ・ブルル、ピンク色はアーカラ島の守り神カプ・テテフ、紫色はポニ島の守り神カプ・レヒレだ。」

 

それぞれの島にはこのメレメレ島にいるカプ・コケコみたいな守り神は各島に存在するみたいだね。あっ、カプ・コケコと言えば……。

 

「そういえばハラさん、さっきカプ・コケコに助けられてこの石を貰ったのですが……」

 

僕はさっきカプ・コケコから貰ったかがやく石をハラさんに渡した。

 

「なんと!?すでにカプ・コケコに会っていたのですか!?」

 

「やはり君はどこか不思議な人間だな。カプ・コケコはめったに人前には出ないことで有名なんだ。彼は速すぎるゆえに目撃した人もかなり少ないといわれている。そんなカプ・コケコに出会った君は幸運だよ。」

 

ハラさんが驚いた顔をし、博士がカプ・コケコの存在を軽く説明する。

 

「ふむ……これは……」

 

ハラさんが僕の渡した石をじっくりと見る。

 

「これを少し借りてもいいかな?なに、すぐにお返ししますよ。」

 

「はい構いませんよ。」

 

僕はハラさんが少し預かりたいというのでそれに了承し、石を上着のポケットに入れる。

 

「では島巡りに挑戦するにあたり、このポケモンたちを授けたいと思います。」

 

ハラさんはそう言い懐から3つのモンスターボールを取り出す。これはおそらく各地方でももらえる初心者用のポケモンかな?でも僕は……

 

「君ならわかっていると思うがこれは初心者用のポケモンだ。この中から一体だけ選んで旅に連れて行ってくれ。」

 

「……折角のご行為は嬉しいのですが、僕は既にポケモンたちを持っています。今まで旅を共にしてきた大切な仲間たちです。僕はこのポケモンたちと島巡りに挑戦したいと思っています。ですからこのポケモンたちは……。」

 

僕は申し訳なさそうに頭を下げる。ハラさんはそんな僕の肩に手を置き口を開く。

 

「……君ならそう言うと思っていたよ。」

 

「え?」

 

ハラさんは僕が言うことを想像していた?今日が初対面なのになぜそんな風に思ったのだろうか。

 

「君のことは博士から聞いたと言いましたよね?そして君の旅の話も少しばかり聞いていたんだ。その話から君がどのような人間なのか会うのを楽しみにしていた。そして今日会って分かったんだ。」

 

ハラさんは肩から手を放し僕の眼を見て更に言葉を続ける。

 

「君はとっても真っ直ぐな眼をしている。一点の曇りもない綺麗な眼だ。そのような人は自分の信じるものをとことんまでに信じ、前だけを見て生きていく人だと私は思っている。」

 

「ハラさん……」

 

ハラさんは僕の眼を見て僕の性格を判断したのか。流石はしまキングというだけのことはある、といったところかな?確かに僕はいつも前だけを見て生きているような自覚もしているし間違ってないかもしれない。

 

「そうだ、君に紹介したい子がいましてね。最近トレーナーになった子で、もうすぐ帰ってくると思うのですが……。」

 

最近トレーナーになった子?いったい誰だろう。

 

「む、噂をしたら帰ってきましたぞ。」

 

ハラさんはそう言いながら指をさす。僕たちはハラさんの指のさした方を確認すると一人の女の子が走って近づいてくる。

 

黒いショートヘアーに赤のニット帽を被り、緑色のホットパンツを履いている。そしてピンクの花柄が描かれた黄色の半袖のTシャツを着ている。

 

「はあ……はあ……。ごめんおじいちゃん、遅れちゃったよ……。」

 

女の子は急いで走ってきたようで息切れをしながら謝る。ハラさんのことをおじいちゃんと呼んだってことは、ハラさんのお孫さんってことかな?

 

「おお、きたかミヅキ。遅かったじゃないか。」

 

「ごめんごめん。ちょっとさっきポケモンを見つけて捕まえてたらちょっとね……。」

 

ミヅキと呼ばれた女の子は頭を搔きながら再び謝る。どうやらハラさんが紹介したいというのは彼女の事らしい。

 

「紹介します、彼女はミヅキといって私の孫です。」

 

「あっ、おじいちゃんの孫のミヅキです!初めまして!」

 

「こちらこそ初めまして、僕はシンジです。」

 

「あっ、えっと、私はリーリエと言います。よろしくお願いします。」

 

僕に続いてリーリエがミヅキに自己紹介をする。ミヅキも改めてお辞儀をしながら挨拶をする。

 

「君がシンジ君なんだ!おじいちゃんとククイ博士から話は聞いてるよ!もしよければ今からポケモンバトルをしない?」

 

「ポケモンバトルを?」

 

ミヅキの突然の提案に僕は首をかしげる。だけどこの世界では何もおかしなことではないかな?目と目が合ったらポケモンバトルって話を誰かが言ってた気がする。

 

「いいよ!じゃあやろう!僕もこのポケモンの戦わせてあげたいと思っていたし!」

 

僕はそう言って一つのモンスターボールを取り出す。そしてミヅキもモンスターボールを取り出し準備する。

 

「お、二人ともオーバーヒートのように熱くなってるな!なら審判は俺がしよう。お互いに1対1のシングルバトルでいいな?」

 

『はい!』

 

博士の提案に俺とミヅキは返事をして確認する。

 

「私は正直ポケモンさんたちが傷付くのはあまり見たくありませんが、お二人とも頑張ってください!応援しています!」

 

リーリエは後ろに下がって応援してくれるようだ。本音ではポケモンを傷つけるのが余り見たくないようだ。リーリエは優しい子なんだな。

 

「よし!じゃあ始めようか!私はこの子で行くよ!」

 

そう言ってミヅキはモンスターボールを投げる。そしてモンスターボールから出てきたのは……

 

『アウアウッ!』

 

アシカに似たような見たことのないポケモンだった。体は青色で見た感じ水タイプのポケモンのようにも思える。もしかしてこのポケモン……。

 

「シンジは初めて見るんだな。あれはアシマリ、水タイプのポケモンでアローラ地方の初心者用ポケモンの一体だよ。」

 

博士がミヅキの繰り出したポケモンに関して説明をしてくれた。やっぱり僕の予想通り水タイプのポケモンだったみたいだね。

 

「さあ、君の初めてのバトルだ。初めてのポケモンとのバトルだが……楽しいバトルにしよう!」

 

僕の言葉にモンスターボールが答える様に縦に揺れる。

 

「お願い!僕のポケモン!」

 

そして僕はモンスターボールを上に向けて投げる。すると中から出てきたのは……。

 

『イブイ!』

 

通常の色とは違う、白色のイーブイだ。

 




本来はハウを原作通りライバルにして、ミヅキをリーリエのライバルにでもしようかと思ってたりしました。ライバルたちはオリキャラにでもしようかと思ってますが、オリキャラの案に困ったら歴代ゲームの主人公たちから選抜したりするかもしれません。決してオリキャラを考えるのが面倒だとかそんな理由ではない。……タブンネ


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バトルと旅立ち

今回も連続投稿です。確かアニポケサン&ムーンも初回に二週連続1時間スペシャルやってたような気がしたので。確かそのはず……。

それより白いイーブイって可愛いよね!orasで厳選中に、何千匹と果てしなくタマゴ割ったら色違いの5vイーブイが産まれてテンションがマックスになったのはいい思い出。今では第7世代でアシパ搭載ナインエボル用として活躍中です。ポケリフレで永遠に戯れてても飽きないですね!

更にイーブイについて熱く語りたいところですが(ブイズバカなのでそっとしておいてやって下さい)、4話目ということでお楽しみください!


僕が繰り出したポケモンは白色のイーブイだ。

 

「わ!白いイーブイだ!かわいい!」

 

「綺麗な色です……」

 

「ほう、色違いとは珍しい」

 

「これはこれは……見ものですな……」

 

ミヅキ、リーリエ、ククイ博士、ハラさんの順番で僕のイーブイを見た感想を口にする。このイーブイは以前ある事情があって仲間にしたイーブイだ。またその話はいずれするとしよう。

 

「さあイーブイ!君の初陣だ!張り切っていくよ!」

 

『イブイ!』

 

イーブイは僕の声に答えるように振り返り眼を見ながら頷く。うん、相変わらずイーブイは可愛いなあ(溺愛)

 

「二人とも準備はいいな?では始め!」

 

ククイ博士が右手をあげ試合開始の合図を出す。それに合わせ僕とミヅキは互いに戦闘態勢をする。僕ははじめ様子を見ようと身構えるが、最初に動き出したのはミヅキとアシマリだった。

 

「先手必勝!アシマリ!みずてっぽう!」

 

ミヅキの指示に合わせ口から勢いよく水を放射する。

 

「イーブイ!右にサイドステップ!」

 

直撃するのはまずいと思い僕はイーブイに右に避けるように指示する。イーブイはその指示に合わせ右にステップして回避に成功する。何故右に避けるよう指示したかというと、イーブイがどう避ければいいか戸惑わないようにするためだ。因みにサイドステップを指示した理由は無駄な動きを最低限に少なくするためでもある。

 

「次は僕たちの番だよ!スピードスター!」

 

イーブイは尻尾を前方に振り星形の弾幕をアシマリ目掛けて放つ。アシマリはみずてっぽうを避けられた事に驚き、その僅かなスキを突かれスピードスターが直撃する。

 

「アシマリ!大丈夫!?」

 

ミヅキはアシマリを心配し一言声をかける。アシマリは首を振りながら気合を入れなおし、ミヅキの声に答える。まだ少ししか付き合いはないであろう二人ではあるが、この二人からは少しの間でも培ってきた絆を感じる。だけど僕は負けないよ!

 

「アシマリ!次はなきごえ!」

 

アシマリは可愛らしい声は発し、イーブイはその声に対し怯んでしまう。なきごえの特殊効果は相手の攻撃力の低下だ。これでイーブイの攻撃力が下がってしまい、一部の技の威力が下がってしまう。

 

「今よアシマリ!はたく!」

 

アシマリはなきごえで怯んだイーブイにジャンプで近づき手でイーブイを文字通りはたく。イーブイを頬を叩かれ飛ばされてしまうがなんとか持ちこたえる。

 

「畳みかけるよ!もう一度はたく!」

 

再びアシマリははたくで追い打ちをかけようと飛びかかってくる。しかし僕もイーブイも何度も同じ手を喰うわけには行かないよ!

 

「イーブイ!かみつくでアシマリを捕まえて!」

 

「うそ!?」

 

「なんと!?」

 

ミヅキとハラさんが驚きの声をあげアシマリも同様に驚いた顔をする。恐らくアシマリのはたくを受け止めたことへの驚きよりも、攻撃力が下がったイーブイがアシマリの攻撃に負けずに受け止め切ったことに対してだろう。

 

「そのまま投げ飛ばして!」

 

イーブイは捕まえたアシマリを一回転しながら斜めに投げ飛ばす。

 

「このままじゃマズイ!アシマリ!そのままみずてっぽう!」

 

アシマリは飛ばされながらも空中で態勢を整えながら、みずてっぽうを放つ。今度は僕も引くわけには行かない!

 

「イーブイ!シャドーボールで迎え撃て!」

 

イーブイは僕の指示とほぼ同じタイミングで着地し、黒い塊を目の前で作りアシマリ目掛けて放つ。みずてっぽうとシャドーボールがぶつかり合う。少しは互いの攻撃が拮抗したが次第に威力の差があらわれ、アシマリのみずてっぽうが消滅してしまいアシマリにシャドーボールが直撃する。

 

「アシマリ!?」

 

ミヅキはアシマリの名前を呼ぶ。しかし地面に落ちたアシマリは目を回してしまっている。これはポケモンがこれ以上戦えず、瀕死……即ち戦闘不能を意味する。

 

「アシマリ戦闘不能!イーブイの勝ち!よって勝者シンジ!」

 

博士の合図によってバトル終了が告げられ、僕の名前が呼ばれる。これがポケモンバトルが終わり勝者が決まる瞬間である。

 

「あ~負けちゃった。結構いいところまで行ったと思ったんだけどな~。」

 

ミヅキは残念がりながらアシマリに労いの言葉を言葉をかけてアシマリをモンスターボールに戻す。僕もイーブイに近づき頭をなでて感謝をしながらモンスターボールに戻す。初陣の割にはいいバトルだったよ。ありがとう、これからも期待してるよ。

 

「いや~二人ともいいバトルでしたな!ミヅキも惜しかったですな。ですが初の本格的なバトルにしてはよい戦いぶりでしたぞ。」

 

「あはは、ありがとうおじいちゃん。でもやっぱりシンジ君は強いな~。今回は完敗だったよ!」

 

ミヅキは頭を掻きながらハラさんに照れたようにお礼を言う。その後僕と戦った感想を言い、完敗だったと告げるもどこか清々しかった。

 

「確かにな。この戦いぶりは流石と言うべきところだな。俺の眼に狂いはなかったみたいだ。」

 

「二人ともありがとう。そう言ってくれると嬉しいです。」

 

僕は博士とミヅキにお礼を言う。伊達に今まで旅をしてきたわけじゃないからね。今まで培ってきた経験が活きていい判断が上手くできたからよかった。イーブイも初めてにしては動きが初めてとは思えない動きを見せてくれたし、なにより僕の指示に上手い具合に反応してくれたから嬉しかったよ。

 

「ミヅキとアシマリも新人トレーナーにしてはいい動きだったよ。アシマリとの息もぴったりだったし、これからもっと強くなるよ。」

 

「えへへ、そう?ありがとう!」

 

「お二人ともお疲れさまでした。」

 

僕とミヅキが戦い終わってから握手をし、健闘を称えあっていると後ろで応援してくれていたリーリエが近づいてきて労いの言葉をかける。

 

「うん、リーリエもありがと。」

 

僕はリーリエにお礼を言う。リーリエも僕の感謝の言葉を受け取ってくれたようで、笑顔で答えてくれた。

 

「さてと、ではこれからどうしますかな?」

 

「取り敢えず僕は一旦家に帰るつもりです。島巡りのことを母親に伝えようと思うので。」

 

ハラさんが僕たちにこれからのことを尋ねる。僕はその質問に対し家に一度帰ると答える。リーリエと博士は一緒に家に帰るらしい。ミヅキは家に一度帰って今回の戦いの反省をするらしい。そうして僕はミヅキ、ハラさんに別れを告げ、リーリエと博士と一緒に途中まで帰宅する。そして僕の家に辿り着き博士たちとも別れを告げる。

 

「ただいま!」

 

「あらおかえり!博士の用事はどうだったの?」

 

僕は家に帰ると母さんが食事を作りながら笑顔で迎えてくれる。僕はリリィタウンであったことを母さんに話す。島巡りについても話すと「やっぱりね」、と予想していたみたいであっさりと許してくれた。そして僕は夜ご飯を食べて早めに寝ようと眠りにつく。

 

 

 

 

~~~翌日~~~

 

 

 

 

「ふああ、よく寝た。」

 

なんだか今日は良く眠れたなあ。昨日はなんだかんだあって色々あったから疲れてたのかもね。

 

『ニャー』

 

「ん?ああ、ニャースもおはよう!」

 

僕は起こしに来たのであろうニャースに挨拶をする。このニャースは母さんのパートナーで僕が小さいころから家にいる家族も同然の存在だ。偶に僕が寝坊をすると顔を引っ掻いてくるけど……。

 

そして僕はニャースと一緒に部屋を出る。すると母さんが朝食の準備を終え外の空気を吸って気分を落ち着かせている。

 

「あら、シンジおはよう。昨日はよく眠れた?」

 

「うん、おはよう母さん。よく眠れたし今朝はスッキリしてるよ。」

 

「それはよかった!じゃあ早速朝ごはんでも食べようか。」

 

母さんに促されるように僕は席に着き朝ごはんを食べる。そして食べ終わった後、暫くしたらインターホンが鳴り母さんが昨日のように応答する。今日は一体だれが来たんだろう?

 

「アローラ!あの、シンジさんを迎えに来ました。」

 

母さんがドアを開けるとそこに立っていたのはリーリエだった。リーリエは頭を下げ挨拶をする。母さんもそれに答えるように「アローラ!」と返事をする。僕もそれにつられるように返事をした。

 

「あら、綺麗なお嬢さんね?もしかしてシンジのお友達?」

 

「あ、はい。シンジさんには先日大変お世話になりました。シンジさんのお母様ですよね?」

 

母さんはその質問に対してそうだと答える。その後ちょっと待ってね、とリーリエに言い僕に近づき耳打ちをする。

 

「ねえねえ、もしかしてあんたの彼女?」

 

「なっ!?きゅ、急に何言いだすの!?そんなんじゃないって!?」

 

「あらあら照れちゃって。あなたも男の子だったのね。」

 

僕は母さんの突然な爆弾発言に驚きの声をあげる。それに対しリーリエは頭にクエスチョンマークを抱いている様子だった。どうやら聞かれていないようでよかったが、やっぱり母さんの思考にはいまだについていけない。取り敢えず僕は母さんの魔の手を離れるためにリーリエに何の用かを尋ねる。

 

「と、ところでリーリエは何しに来たの?」

 

後ろで母さんがニヤニヤしている気がするが気にせず会話を続ける。リーリエはどうやら博士に頼まれて僕のことを呼びに来たようだ。その後僕は母さんが笑顔(?)で見守っている時に一応またいつか連絡するから、とだけ言い残して、リーリエを連れて一緒に外に出る。

 

「シンジさん?なんだか様子がおかしいですけどどうかしましたか?」

 

「い、いや!なんでもないよ!大丈夫だから!」

 

「そ、そうですか?もしなにかあれば言ってくださいね?昨日のお返しもしなきゃなりませんし……。」

 

「あ、あははは、ありがと。」

 

う~、母さんが変なことを言い出すからリーリエの顔を直視しにくくなったじゃないか。全く、いつも突然なんだから……。

 

僕は母さんの言動に少々不満を抱きながらもリーリエと共に博士の家に向かう。ちょっとした世間話でもしながら歩いているとすぐに博士の家に辿り着いた。僕の家から少し南に行ったところで、坂を下りると浜辺に一軒の家が建っていた……のだが家の屋根は何度も修復された跡があり、なんだかボロボロの状態だった。

 

「シンジさんここです。ここが博士の家で私がお世話になっているところです。」

 

そう言ってリーリエは博士の家を紹介してくれた。しかしその時……。

 

ズドン!

 

「……え?」

 

『いいぞイワンコ!もっとこい!』

 

ええと……今の音は……。

 

「あらら、博士またですか……。」

 

「また?」

 

「はい、実は博士はポケモンの技を研究するにあたり自分でポケモンの技を受け止めるのが日課なんですよ。」

 

……うん、そうなんだ。なんだか僕の知っているどこぞの博士のような発想だね。……本人の名誉のために誰とは言わないけども。

 

「博士、ただいま戻りました。」

 

「おっ、リーリエ!シンジを連れてきてくれたか!シンジ、アローラ!」

 

「アローラ!ところで博士、今日はどういった用件ですか?」

 

僕は博士に用件を尋ねる。……さっきのことはなかったことにしよう。

 

「ああ、今回は渡したいものがあってな。これだよ。」

 

「それってもしかして……ポケモン図鑑ですか?」

 

博士は懐から赤色のポケモン図鑑と呼ばれるものを取り出した。ポケモン図鑑とは出会ったポケモンを自動的に登録していくハイテクな道具だ。

 

「ああその通りなんだが……少しだけ待ってくれ。」

 

博士はそう言い僕を待つように言う。すると突然電気の調子が悪くなったのか、点いたり消えたりを繰り返す。しばらくするとコンセントから何かが飛びだしてくる。よく見るとプラズマポケモンのロトムだった。

 

「このロトムが今からポケモン図鑑に入るからな。」

 

「ロトムがポケモン図鑑に?」

 

ポケモン図鑑に入るロトムなんて聞いたことがないけど。博士に聞いたところあるカロス地方の少年が開発した新世代の図鑑らしい。うん、なんだかだれか想像はできるんだけども。

 

少なくとも僕の知っているロトムは電子レンジに入るヒートロトム、冷蔵庫に入るフロストロトム、洗濯機に入るウォッシュロトム、芝刈り機に入るカットロトム、扇風機に入るスピンロトムくらいだね。どうやらこのポケモン図鑑に入ると【ロトム・ポケデックスフォルム】と呼ばれているらしい。

 

そしてそんなことを考えている間に、どうやらロトムが図鑑に入り込んだらしい。そして図鑑の画面が点き、ロトムの顔が表示され自分から動き出す。

 

「アローラ!ユーザー・シンジ!僕はロトム図鑑ロト!これからよロトシク!」

 

ロトムの挨拶に僕もよろしくと返す。リーリエは自立起動するロトムを見て感心していた。

 

「ロトム、これからシンジのことを頼むぞ。」

 

「まかせるロト!僕がしっかりとサポートするロト!」

 

ロトムもしっかりとポケモン図鑑に入ったし、準備も整ったことだしそろそろ出発しようかな。

 

「では僕もそろそろ出発しようかと思います。」

 

「ああ!ふくつのこころで島巡り頑張れよ、応援してるからな。」

 

博士の励ましを聞き僕は出発しようと決意する。リーリエもどうやら途中までついてくるようで、一緒にハウオリシティへと向かうことにした。

 

「シンジさんは最初どうしますか?」

 

「う~ん……まだ当てがないからな……。」

 

「でしたら少し観光案内所によりませんか?」

 

「観光案内所?」

 

リーリエがこれからどうしようかと考えている僕に提案してくる。

 

「もしかしたら島巡りについて何か聞けるかもしれませんよ?」

 

「それもそうだね。じゃあちょっと寄ってみようか。」

 

そうして僕はリーリエの提案に賛成しハウオリシティへと入り、観光案内所へと向かうことにした。

 




どうでしたでしょうか?もし楽しめたのであれば幸いです。

次回からは一話ずつの投稿のつもりです。流石に三週連続1時間スペシャルをやるアニメはないでしょう。

因みに土曜日にポケセンで二ンフィアのすやすやぬいぐるみ買いました。他にも初代御三家(サンダース・ブースター・シャワーズ)のぬいぐるみにイーブイのペンケースやブイズのシャーペンなどが手に入ってテンションがマックスです。ただ残念なことにヌシの寝相が悪いせいでぬいぐるみを抱きかかえながら寝れないというのが悩みです。一人暮らしだったら家の中がどうなっていただろうかと思ったりもしています。


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キャプテンイリマ登場

皆さんが一番好きなポケモンって何ですか?僕はブイズが全部好きですけど一番と言ったらやっぱりニンフィアですね。

そう言えば今年の映画は皆さん見ましたか?公開初日に見に行きましたけど内容は面白かったです。初代からのファンとしては嬉しい内容でした。……タケシカスミ代理のオリキャラが安定の棒読みだったのを除けばね。サトシと一緒だと余計目立つよね。

まああのシーンとかあのシーンとか色々泣けるシーンが多数あったので良しとしますが。ポケモンファンとしてはオススメですね。

そう言えばタケシとカスミがアニポケサンムーンに登場するとかなんとか。これはアニポケがますます楽しみになってきましたね。


僕とリーリエはハウオリシティに入った後観光案内所へと向かった。そして観光案内所へ入ったところで僕は一人の女の子が目に入った。あの子には見覚えがある。あの子は……

 

「ん?あれ?シンジ君にリーリエじゃん!どうしたの?」

 

女の子が僕たちに気付き声をかけてくる。そう赤いニット帽がトレードマークな彼女の名前はミヅキだ。しまキング・ハラさんの孫であり、この間僕とバトルをした新人のトレーナーでもある。ってまた説明をする必要性はなかったかな?

 

「ミヅキさん?いったいどうしたんですか?」

 

リーリエもミヅキを見つけて声をかける。

 

「リーリエこそどうしたの?まさか二人で旅にでも出るの?」

 

「いや、僕とリーリエは途中まで一緒に行こうと思ってね。取り敢えず初めに観光案内所で何か情報はないかと思ってちょっと顔を出してみたんだ。」

 

ミヅキの質問に僕が答える。

 

「あっ、もしかしてシンジ君も島巡りに挑戦するの?」

 

「ん?“も”ってことはミヅキも?」

 

「うん!実は私も挑戦してみようと思ってるんだ!」

 

「ん?島巡り?」

 

僕たちが島巡りについて話していると近くから男性の声が聞こえた。

 

「ちょっとごめんね。盗み聞きするつもりはなかったんだけど、島巡りに挑戦していると聞いて気になってね。」

 

するとその男性が声をかけてきた。その男性はピンク色の短い髪を後ろで流すようにしていて、爽やかそうな見た目をしている。

 

「君たち島巡りをするんだって?」

 

「あ、はい、そうですけど。」

 

男性は島巡りについて何か知っているのだろうか。

 

「あの、すいません。どちら様でしょうか。」

 

リーリエが僕とミヅキも気になっているであろう質問をする。

 

「あっと、自己紹介が遅れたね。僕の名前はイリマ。このメレメレ島のキャプテン、つまり島巡りの試練を担当している一人でもあるんだ。」

 

『……え?キャプテン!?』

 

僕たちは三人とも驚いた顔をした。それもそうだろう。突然話しかけられて探していた島巡りの関係者がすぐに見つかったんだ。それは驚きもするだろう。

 

「あはは、ごめんごめん。驚かせちゃったかな?ここではなんだから乗船場にまできてくれませんか?この街の南の方にあるので、試練についてはそこで説明しようと思います。」

 

イリマさんはそれだけ言い残して観光案内所を後にした。僕たちはイリマさんを見届けると、ミヅキが何かに気付いたように反応した。

 

「あっ!もしかしてそれってロトム図鑑?」

 

どうやらミヅキはロトム図鑑に気が付いたようだ。僕が「そうだよ」と答えると、ロトム図鑑には写真撮影機能があると教えてくれる。意外とロトム図鑑は図鑑機能以外にもハイテクシステムがあるのだと思い関心する。流石は最新のポケモン図鑑と言ったところだろうか。

 

「そうだ!折角だから3人で一緒に写真撮ろうよ!3人が旅に出る記念にね!」

 

ミヅキは思いついたように手のひらを合わせて提案する。僕もリーリエも問題はないとしてその提案に賛成した。ミヅキは「はやくはやく!」と言いながらリーリエの手を引っ張り外に出る。リーリエも少々戸惑いながら、でもどこか嬉しそうな顔をしながら引っ張られていく。僕もその様子に苦笑しながらついていく。

 

「じゃあ早速みんなそこに並ぶロト!」

 

ロトム図鑑が僕たちを街を背景に並ぶように促す。そしてミヅキが僕たちを先導して並び順を決めてくれる。僕が真ん中になり、その右にリーリエが、逆サイドにはミヅキが並ぶ。ミヅキがピースサインをとりながら「はい、チーズ!」と合図を出してくれる。僕とリーリエもそれに合わせてポーズをとる。とはいえリーリエは緊張をしているのか少したどたどしいポーズをとる。それでも写った写真を見たとき、ミヅキは満足そうな顔をしていた。

 

「じゃあ早速イリマさんのとこに行こっか!」

 

ミヅキは先ほどであったイリマさんの元へ行こうと走り出す。僕がミヅキに「走ると危ないよ」と忠告するもミヅキはお構いなしに先へと走っていく。僕は半分あきれながらリーリエと一緒にミヅキを追いかけた。その時僕は咄嗟にリーリエの手を握り、リーリエは照れていたものの僕はそのことに気付くことはなかった。

 

そしてしばらく走っているとイリマさんの待つ乗船場までたどり着いた。そこではイリマさんがポケットに手を入れながら海を眺め、僕たちを待ってくれていた。

 

「やっぱりアローラの海はいいよね。」

 

僕達が来たことに気付いたのかイリマさんはそう呟く。そしてそのまま振り向きイリマさんは改めて自己紹介を始める。

 

「改めて自己紹介させていただきます。僕の名前はイリマ。このメレメレ島のキャプテンを務めさせてもらってるよ。」

 

イリマさんが自己紹介を終え、次にミヅキが自己紹介を始める。

 

「私はミヅキ!ついさっき島巡りの旅を始めたばかりです!」

 

「僕はシンジ。ミヅキと同じで先ほど島巡りを始めたばかりです。」

 

「リーリエです。私はシンジさんやミヅキさんとは違いトレーナーではありませんが、別の事情で旅を始めたところです。」

 

僕達は3人とも順番に自己紹介する。

 

「さて、じゃあ早速君たちに島巡りと試練について説明させてもらうよ。」

 

イリマさんは僕たちの自己紹介が終わると島巡りについての説明を始める。しかしそれに水を差すように二人の男が割り込んでくる。

 

「おやおや?お前たち島巡りをする気でスカ?」

 

「やめといた方がいいスカよ。お前たちみたいな子供では到底最後までクリアする事なんて不可能でスカ。」

 

二人とも語尾にスカという特徴的な言葉遣いをしてくる。それに比例してかファッションも特徴的で、ドクロが真ん中にイラストされている黒のタンクトップに、同じくドクロの帽子とマスクを身につけている。そして先ほどからラッパーのような仕草を取りながら話している。カッコいいと思っているのだろうか?と、僕は内心思ったりしてしまっている。その二人の言葉にミヅキが反論しようとするが、当のイリマさんはというと……。

 

「じゃあまず試練についてだけど……。」

 

二人が最初からいないような態度をとり、彼らを無視して僕たちに説明を続ける。すると彼らは無視されたのが気に入らなかったからか、剣幕になって怒鳴ってきた。

 

「ちょ!?なに無視してんスカ!」

 

「これ以上無視するってんならお前たちのポケモンを全部いただくスカよ!?」

 

今の言葉にイリマさんが溜息をしながら反応した。

 

「人のポケモンを取ったら泥棒ってしってる?」

 

「俺たちは泥棒じゃないスカ!俺たちはアローラ一イカしたギャング、泣く子も騙すスカル団スカ!」

 

「……“泣く子も騙す”じゃなくて“泣く子も黙る”では?」

 

気になったセリフを僕が指摘すると、スカル団は「うるさいスカ!」と逆切れしてきた。うん、今のは僕が悪かったのかな?

 

「相棒、こいつら完全に俺らの事なめてるスカ。これは一度痛めつけて思い知らせるしかないスカ。」

 

スカル団と名乗った男たちは互いにポケモンを繰り出しポケモンバトルを仕掛けてくる。スカル団が繰り出したポケモンは一人目がズバット、二人目はスリープだった。。

 

「仕方ないな。僕はズバットの方を相手するから、ミヅキはそっちを頼める?」

 

「分かった!こっちは任せて。」

 

「お二人とも気を付けてください!」

 

リーリエが後ろで励ましのエールを送ってくれた。僕はそれに応えるように手をあげる。僕とミヅキは二手に分かれて別々に相手をすることにした。そして僕はズバットを使うトレーナーの正面に、ミヅキはスリープを使うトレーナーの正面に立ち、互いにモンスターボールを手に持ち同時に投げる。

 

『フィア!』

 

『ピチュ!』

 

僕のボールからはニンフィアが、ミヅキのボールからはピチューが出てきた。

 

「ミヅキはピチューを捕まえてたんだね。」

 

「うん、そういうシンジ君はニンフィアなんだ。もしかしてイーブイ系のポケモンでそろえてる?」

 

「まあね。僕が持ってるポケモンは全部イーブイとその進化形だよ。」

 

以前のイーブイと今回のニンフィアを見てそう判断したんだろう。因みにこのニンフィアは僕の一番の相棒で、旅に出た時からずっと一緒に行動している仲間だ。勿論全ての手持ちのポケモンは僕の家族も同然の存在だ。だが僕とニンフィアの絆は誰にも負けていないつもりだ。

 

「ニンフィア、久しぶりのバトルだ。全力で行こう!」

 

ニンフィアは僕の声に嬉しそうに返事をしてくれる。どうやら久しぶりに選出されて嬉しいようだ。僕もニンフィアと戦えることはとても嬉しいよ。

 

「丁度いいや。君たちのバトルを僕もじっくり見せてもらおうかな。」

 

「また俺らのこと無視してるスカ!絶対に許さないスカ!」

 

再び無視したスカル団たちは同時に攻撃を仕掛けてくる。僕たちも気を引き締めようとミヅキと共に戦闘態勢をとり、それぞれバトルを開始する。

 

「ズバット!つばさでうつ攻撃スカ!」

 

ズバットは空中からニンフィア目掛けて急降下し、翼をぶつけて攻撃しようと接近してくる。しかしそんな単調な攻撃は僕たちには通用しない!

 

「横に避けてズバットを捕まえて!」

 

ニンフィアはズバットの攻撃を軽く避けて、触角を利用しズバットの翼に絡めて押さえつける。ズバットは振りほどこうとするが、翼の自由が利かないため力が入らず振りほどくことができずにいる。

 

「そのまま上に飛ばしてシャドーボール!」

 

ニンフィアは捕まえたズバットを上に投げ飛ばし、態勢を整える暇もない状態のズバットに向かってシャドーボールを放つ。直撃したズバットはそのまま転落してくるが、そのスキを見逃さずに追撃の指示を出す。

 

「続けてでんこうせっか!」

 

ニンフィアは落ちてくるズバット目掛けて一直線にすごい勢いで体当たりしズバットを吹き飛ばす。そのダメージに溜まらずズバットは壁にぶつかって戦闘不能となる。

 

「ズ、ズバット!?戻るスカ!」

 

スカル団の一人は戦闘不能になったズバットをモンスターボールに戻す。どうやらミヅキの方も終わったようでスリープもモンスターボールに戻された。

 

「く、くそー!なんなんスカ!こいつら!」

 

「こ、ここは一時撤退スカ!覚えてろスカー!」

 

スカル団は一目散に逃げていく。どうやら逃げ足だけは相当早いようだ。

 

「やれやれ……なんだか騒がしい人たちだったね。」

 

「全くだよ。正直大したことなかったしね。」

 

僕とミヅキはそれぞれにあきれた感想を漏らす。そこにリーリエが「お疲れ様です」と声をかけてくれる。

 

「いや~二人とも素晴らしいですね。それだけの腕とポケモンの絆があれば、試練も難なく突破できるでしょう。」

 

イリマさんが拍手をしながら前に出てくる。どうやら今の戦いを見て、僕たちの実力が試練を受けるに値したと判断してくれたようだ。

 

「ありがとうございます。では先ほど話の続きですが……。」

 

「ああ、そのことだけどね……」

 

イリマさんはそのまま話を続ける。

 

「実はさっき話そうとしたことは、僕と戦ってほしいということだったんだ。」

 

「え?どういうことでしょうか?」

 

リーリエがイリマさんにその言葉の真意をきく。

 

「僕は君たちが試練に挑める実力があるのかどうかを確認したかったんだ。試練で挑む相手はかなり強力だ。生半可な実力では返り討ちに会ってしまうからね。」

 

イリマさんは笑顔で試練の過酷さを語る。しかしその奥では、僕たちが挑もうとしている試練がどれほど過酷かというのが伝わってくる

 

「さあ、早速だが君たちを試練の場所へと案内するよ。」

 

そう言いイリマさんは僕たちを誘導する。僕はこういった状況は今までの旅で多少慣れているが、初めて挑戦することでもあるので緊張と同時にワクワクする気持ちも感じている。ミヅキは初めての旅ということでやはり緊張は隠せないようだ。挑戦しないリーリエでさえ、今のイリマさんの話を聞いてどこか落ち着かない様子だ。

 

そしてイリマさんについていき、ハウオリシティの外まで行く。しばらく歩いていると洞窟の前まで辿り着き、イリマさんは足を止める。イリマさんは振り向き、再び話し始める。

 

「ここが僕が担当する試練の場所……“茂みの洞窟”だよ」

 

ここが最初の試練か……。なにかに挑戦する前のこの緊張感……やっぱり楽しい気持ちがこみあげてくる。これから何が起きるのか分からないからこその楽しさが旅にはあるからだ。

 

「これが茂みの洞窟……。おじいちゃんに話は聞いてたけどいざ前に立ってみるとなんだか印象が違うね。」

 

ミヅキはさっきまでの笑顔が薄れて顔が強張っている。初めて旅に出て初めての挑戦だ、それは緊張の一つや二つでもするだろう。

 

「とはいえ試練は一度に一人しか受けれないんだ。簡単にルールを説明するよ。」

 

イリマさんはそう言い試練に関してのルールを説明する。試練のルールを簡単にまとめるとこういうことらしい。

 

・試練は一度に一人しか受けられない

・ポケモンは何匹使ってもOK

・試練中はポケモンを捕まえれない

・試練が始まればクリアするか失敗するまで外には出られない

・主ポケモンと呼ばれるポケモンを倒せば試練はクリア

 

これくらいだろう。注意点としては試練を開始する前には準備をしっかりと整えてから挑むのがいいだろう。万全の準備をしないに越したことはない。旅で最も怖いのは肝心な時に必要なアイテムがなくなってしまうことだからね。

 

「中々厳しそうな試練ですね。私はここからお別れですが、お二人とも、くれぐれも気を付けてくださいね。」

 

「ありがとうリーリエ。」

 

「うん、ありがとうね!リーリエも気を付けて!」

 

そう言って僕たちは手を振ってリーリエと別れる。リーリエは手持ちのポケモンを持っていないので、虫よけスプレーを大量に所持しているらしいので野生のポケモンに対する心配はないだろう。

 

「さてと、どっちから試練を受ける?」

 

イリマさんが僕たち二人に試練を受ける順番を尋ねてくる。その言葉に先に反応したのはミヅキの方だった。

 

「悪いけど……シンジ君から先にやってくれる?私はもう少し特訓してから受けたいし、気持ちの整理もしたいから。」

 

「うん、分かった。じゃあ僕から先に受けさせてもらうよ。」

 

「うん、お願い。」

 

ミヅキからそう言われると僕は意思表示のために一歩前に出る。それにイリマさんは試練受注の意思だと受け取ったのか頷き、僕を洞窟の中へと案内する。僕はミヅキに背中を見送られながらイリマさんの後についていく。今、僕のアローラ地方初の挑戦が始まろうとしていた。




アニポケで出番の無かったイリマさん登場回です。とは言えこれ以降出番があるかは…………まあ、うん。

今回からは一話毎の投稿ですのであしからず

ノシ


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イリマの試練 vsデカグース

先週のアニポケは完全にレッツ&gゲフンゲフン

毎度キテルグマ先輩の登場には吹き出しますね。真顔で予想外の登場されると耐えれません。そして今日のアニポケはタケシとカスミ再登場なので神回確定ですね。サン&ムーンの弾け振りは飽きが来ません。

と言う訳でこちらは初の試練回です。メレメレ島編はそのままやっていくのでお付き合いくださいませm(_ _)m


僕はイリマさんに案内され茂みの洞窟内へと入っていく。洞窟の中は多くの穴が開いていて、どうやらポケモンたちが暮らしているようだ。ここでどのような試練が起こるのか考えていると、奥から二体ほどのポケモンが姿を現した。

 

「あのポケモンたちは……」

 

「小さい方がヤングース、大きい方はデカグースだよ。どちらも共にノーマルタイプ。差し詰め、主ポケモンを守る兵隊とでも言ったところかな?」

 

イリマさんが僕の見たことのないポケモンについて補足をしてくれる。どうやらあのポケモンたちを倒さないと主ポケモンは出てこないみたいだ。

 

「よし!だったらここはこの二体で行くよ!お願い!サンダース!シャワーズ!」

 

僕は手持ちから二体のポケモンを繰り出す。カントー地方では特に有名であろう水タイプのシャワーズと電気タイプのサンダースだ。

 

「さあ、では試練はじめ!」

 

イリマさんが試練開始の合図をする。それと同時にヤングースが先行してシャワーズにかみつくを繰り出してくる。

 

「シャワーズ!まもる!」

 

シャワーズはまもるでヤングースの攻撃を防ぐ。ヤングースもたまらず吹き飛ばされるが、それでも体勢はキッチリと整え、次の攻撃に備える。しかし隣を見るとデカグースの姿が見えず、デカグースの立っていた場所には穴が開いていた。

 

(ヤングースに気を取られているうちに、あなをほるで奇襲をかけてくるつもりか。見事な連係プレイだけど僕のポケモンたちはそんなに甘くないよ。)

 

「シャワーズ!あまごい!」

 

シャワーズは洞窟内に雨を降らせる。すると地面が湿りデカグースの居場所が分かりやすくなった。

 

「今だよサンダース!デカグースにミサイルばり!」

 

サンダースはデカグースがいる場所目掛けて、首の尖っている部分から薄く緑色に光る複数のハリを飛ばして攻撃する。デカグースこれには溜まらず飛び出してきてしまう。ヤングースはデカグースの敵とも言わんばかりの勢いで突っ込んでくる。そしてヤングースがきりさく攻撃をしてくるが、僕は落ち着いて対処しようとサンダーズに指示を出す。

 

「サンダース!でんじはで動きを止めるんだ!」

 

サンダースは微量の電撃をヤングースに当てる。ヤングースはその電撃で体が痺れてしまい動きも鈍くなる。ヤングースの攻撃はサンダースに届かずその場で倒れてしまう。

 

「これでファイナルだよ!シャワーズ!ハイドロポンプ!」

 

体の自由が利かないヤングースは成すすべもなくシャワーズのハイドロポンプに吹き飛ばされてしまう。さらに直線上にいたデカグースも一緒にそのまま飛ばされてしまい、同時に戦闘不能になる。また、戦闘が終わるのと同時に雨も上がる。

 

「よし!これで主ポケモンが出てくるかな?」

 

『グーーース!!』

 

僕がそう思いガッツポーズをとると、洞窟の奥の方からポケモンの雄叫びが聞こえた。さっきのデカグースよりも威圧感のある声だったので、恐らく主ポケモンの声だろうと僕は考える。その後、奥からは大きく勢いのある足音が聞こえてくる。するとやってきたのは、さっきのデカグースの三倍ほどの大きさはあるのではないかというサイズのデカグースであった

 

「ここまでデカいとはね……。サンダース!シャワーズ!二人とも戻っていいよ!」

 

僕は二人をモンスターボールに戻して休ませることにした。ダメージ自体は喰らってないにしても、やっぱり技での消耗はあるのに変わりはないからね。それにサイズが違うとはいえ、相手も一体なのにこちらが二体がかりで戦うのは不公平というものだ。というよりもそのようなことは僕のプライドに関わる。なのでここは君に任せたよ!

 

「お願い!ブースター!」

 

僕が次に繰り出したのはブースターだ。ブースターもカントー地方では有名で、シャワーズ、サンダースに並ぶ炎タイプとして知られている。

 

「さあ、相手は強敵だけど行くよ!ブースター!」

 

ブースターは僕の声に応え体内の温度を上げる。どうやらブースターもやる気十分のようだ。

 

デカグースは自らの巨体を活かし砂を巻き上げてくる。恐らくすなかけなのだろうが、あまりに強力すぎるため軽く竜巻のようになってしまっている。

 

「ブースター!かえんほうしゃで迎え撃て!」

 

ブースターはかえんほうしゃで迎え撃つも、あまりに強力すぎるすなかけに力負けして相殺できなかった。そしてすなかけがブースターを襲いダメージを受けてしまう。

 

「ブースター!大丈夫!?」

 

ブースターはまだまだいけると言う意思を表示させるために自身を奮い立たせて気合を入れなおす。僕もブースターに負けないように自分の頬を叩き気合を入れる。

 

デカグースは自らの周囲に複数の岩を生成して、ブースター目掛けて順番に飛ばしてくる。恐らくこれはがんせきふうじだろう。ブースターの周りに四つの岩を落としブースターの行動を封じながら、頭上にもう一つの岩を落とそうとする。

 

「ブースター!頭上の岩に向かってシャドーボール!」

 

ブースターは自身の上に落ちてきた岩にシャドーボールを直撃させる。すると岩は跡形もなく粉々になりブースターはジャンプして岩を飛び越える。そして再びデカグースと対峙し、デカグースは走って突っ込んでくる。この態勢はひっさつまえばだろう。デカグースの技の中でも文字通り必殺技と呼んでもいい技なのだろう。

 

「分かっているよブースター。フレアドライブで正面から迎え撃て!」

 

僕はブースターの戦闘スタイルを理解し、ブースターに迎え撃つように指示を出す。僕のブースターは真っ向からの勝負を好む傾向にあり、今までもそう言ったバトルで期待に応えてくれた。今回も考えなしに指示を出したわけではなく、僕がブースターを信じたからこその指示だ。僕のポケモンたちはここぞという時には必ず活躍して勝利を掴んでくれた。だからこそのフレアドライブだ。

 

ブースターは全身に炎を纏いデカグースと正面からぶつかり合う。デカグースもかなりの攻撃力を持っているようで、ブースターも少し押され気味になった。しかしブースターからは『絶対に負けない』と言う意思が感じ取れ、徐々にデカグースを押し始める。そしてついにデカグースは飛ばされてしまい煙が晴れた時にはデカグースは目を回していた。

 

「そこまで!試練はこれで終了!」

 

イリマさんの合図で僕の最初の試練は終わりを告げた。その後僕は真っ先にデカグースへと近づきデカグースを支えようとする。しかし、デカグースはそれを拒み自力で立ち上がろうとする。

 

「デカグース……君はプライドも大きいんだね。尊敬するよ。」

 

デカグースの大きなプライドに僕は敬意を表し黙ってその様子を見届けた。するとデカグースは仲間を連れて洞窟の奥へと姿を消していく。しかし、デカグースは一瞬だけ僕の方を見て笑ったような気がした。もしかすると僕の勘違いかもしれないが、それでもどこかデカグースは嬉しそうな雰囲気を出していたように僕には見えた。

 

「おめでとうシンジ君。君は見事試練突破だよ。」

 

イリマさんは僕の試練突破を拍手しながら祝ってくれている。それと同時にあるものを差し出してくれている。

 

「イリマさん……これは?」

 

「試練を乗り越えた人に与えているZクリスタルだよ。これはノーマルZって言って、ノーマルタイプの技を強力なZ技として発動することができるんだ。但し強力すぎるがゆえに、一度の戦闘で発動できるのは一回だけなんだ。トレーナーにもポケモンにも技の負担がかかってしまうからね。それと、Zリングがないと発動が出来ないから注意してね。」

 

「ありがとうございます。」

 

僕はイリマさんにお礼を言いZクリスタルを受け取る。これでどうやら本当に試練は終了のようだ。主ポケモンのデカグースは強敵だったが、これからも更に強力な相手が現れると思うと武者震いがする。でも同時に、やっぱりワクワクが止まらない。だからこそ僕はポケモンたちとの旅をやめることができない。この旅はもっともっと僕を成長させてくれると信じて、僕はポケモンたちと旅を続けることを改めて決意する。




やっぱりバトルの表現は難しいですね。少しずつでも上手くなれるように努力します。

では来週会いましょ!ノシ


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スカル団再び

兎にも角にも現在はバトルツリーでBP稼ぎ中ですね。最高ではゲンガブギャラで149連勝までは行ったので、今はテテフゲンハッサムで試しているところです。流石に見せ合い無しでブイズで勝ち抜くのはキツイです……。


試練を終えた僕は茂みの洞窟を出る。するとそこには特訓を終えたのかミヅキが待機していて、僕が出てきたのを確認して近づいてくる。

 

「シンジ君!試練は無事終わったの?」

 

「うん、なんとか主ポケモンを倒して試練を突破できたよ。」

 

ミヅキは少し不安そうな顔をして僕に試練をクリアしたのかを尋ねてくる。僕はその問いに頷きながら答えるとミヅキは安心した顔を見せる。

 

「よかった!流石シンジ君だね!私も特訓してきて強くなったからそろそろ受けようかなと思って戻ってきたんだ。」

 

「丁度良かったね。主ポケモンはかなり強敵だけどミヅキなら大丈夫だよ。自信もって挑戦してみて!」

 

僕はミヅキに激励の言葉を贈る。その言葉にミヅキは「ありがとう」と返事をする。イリマさんはその光景を笑顔で見届け、ミヅキを洞窟の奥へと案内する。僕もミヅキの姿が見えなくなるまで、その背中をしっかりと見届ける。

 

「さてと、僕は先に進もうかな」

 

試練を終えた僕は先に進もうと判断する。リーリエも先に進んだからあわよくば合流できるかもしれない。

 

僕は道なりに進むとある場所に出た。そこは山吹色の花がいっぱい咲き誇っている花畑だ。そこには見たことのないボンボンを持った黄色い鳥ポケモンがいた。ロトムにあのポケモンの詳細を聞いてみると、どうやらオドリドリというポケモンらしい。オドリドリは吸った花の蜜によって姿やタイプを変えるようだ。

 

僕がオドリドリのことを観察していると、近くでなんだか戸惑っている女の子がいた。花が中々に大きくて確認しづらかったが、あの白い帽子と服を見間違えることはない。間違いなくリーリエだろう。僕はそう思いリーリエに近づく。

 

「リーリエ?こんなところでどうしたの?」

 

僕はリーリエにどうしてここにいるのかを問いかける。するとリーリエもこちらの存在に気が付いたようでこっちに近づいてくる。

 

「シンジさん!あの……ほしぐもちゃんがあんなところまで一人で行ってしまって……。」

 

リーリエが指をさした方向を見ると、ほしぐもちゃんがなんだか楽しそうな顔をしながら踊っている。どうやら花畑が珍しいのか、少し羽目を外しているようだ。

 

「どうしましょう……。花畑をあまり荒らしたくはありませんし、シンジさん、なんとかなりませんか?」

 

リーリエはどうにかして花畑を荒らさずにほしぐもちゃんをこちらに連れてくる方法がないか僕に頼み込んでくる。僕はその時ある提案を思いつき、モンスターボールを手に取る。

 

「出てきて!エーフィ!」

 

僕がモンスターボールから出したのはエーフィだった。エスパータイプでサイコキネシスの使えるエーフィはこの場では持って来いだろう。

 

「この子はエーフィさんですね?確かイーブイの進化形の一体で、エスパータイプを持っている子だと記憶していますが……」

 

流石はリーリエだ。トレーナーでなくてもポケモンの知識は随一と言えるだろう。この子がトレーナーになれば僕の強敵となりそうな気がして少し怖いところでもある。

 

「エーフィのサイコキネシスでほしぐもちゃんをこっちに連れ戻すんだよ。」

 

「え?でもほしぐもちゃんが傷ついたりはしないのでしょうか……。」

 

「大丈夫だよ。攻撃技とは言え投げ飛ばしたり乱暴に扱わなければ傷ついたりすることはまずないから。」

 

「そうなんですか、それならよかったです。流石はシンジさんですね!」

 

僕の言葉にリーリエは安心したのかホッと胸をなでおろす。そして僕はエーフィに指示を出す。エーフィはサイコキネシスでほしぐもちゃんを宙に浮かばせてゆっくりとこちらに引き寄せる。そしてゆっくりとリーリエの元へと無事に連れ帰ってくる。

 

「よかったほしぐもちゃん!まったく……いつも心配させるんですから。気を付けてくださいね?」

 

ほしぐもちゃんは首を傾げて、分かったのか分かってないのか分かりにくい反応をする。僕はその二人をみて何だか微笑ましい気分になりながら眺める。

 

「あっ、シンジさんごめんなさい。またほしぐもちゃんが迷惑をかけてしまい……。」

 

「そんなこと気にしなくてもいいよ。ほしぐもちゃんが無事で何よりだよ。」

 

僕は首を横に振り謝るリーリエに対して気にしなくてもいいと言う。そして僕たちは花畑を後にしようとその場から離れると、そこにはまた例の二人組があらわれる。

 

「おっ?あの時邪魔した奴じゃないでスカ!?」

 

「ん?え~と、あなた達は確か……スカスカ団?」

 

「スカスカ団じゃない!スカル団!」

 

スカル団の二人は名前を間違えられたことに腹を立て怒鳴りつけてくる。正直ごめん。今のは素で間違えた。うん、でもこの口癖的にもしかたないよね?

 

「トレーナーはどうやらお前ひとりのようスカ。ならば二人でリンチしてあの時お返しをするスカ!」

 

どうやらあの時のことをまだ根に持っているみたいだ。僕はあまり印象に残ってなかったけど、よく悪役の下っ端は「ここで会ったが100年目!」とかいって襲ってくるとか聞いたことがある……気がする。

 

うん、取り敢えず僕がもう一度相手をすれば気が済むよね。じゃあ仕方ないから相手してあげようかな。

 

正直僕はあまり乗り気ではないけど、このまま逃げられそうもないし二人の相手をすることにした。

 

「問答無用スカ!行け!ズバット!」

 

「出てこい!スリープ!」

 

スカル団の二人はあの時と同じ二体のポケモンを繰り出す。どうやら成長はしていないみたいだね。

 

「だったらここはエーフィ!そのままお願いするよ!」

 

僕はボールに戻していないエーフィをそのままバトルに参加させることにした。エーフィも分かっていたかのように僕の声に合わせて同時に前に出る。

 

「シンジさん!一人では無茶では!」

 

「大丈夫だよ。ここは危ないから下がっていて。」

 

リーリエが僕の心配をしてくれるが、僕は大丈夫だと伝えリーリエを下がらせる。僕のエーフィはそんなにやわじゃないから簡単には負けないよ。

 

「先手必勝っスカ!ズバット!ちょうおんぱ!」

 

ズバットはエーフィ目掛けてちょうおんぱを放つ。しかし僕もエーフィも微動だにせず回避行動を一切取らなかった。

 

「よし!これで奴はこんらん状態に……。」

 

「さあ、それはどうかな?」

 

僕の言葉にスカル団はその言葉に動揺し、再びエーフィの方を見る。しかしエーフィは混乱どころか何事もなかったかのように平然と立っている。

 

「なっ!?今ちょうおんぱが直撃したはずスカ!」

 

「ズバットの方を見てみたら分かるよ。」

 

「なに!?」

 

僕は彼らにそう言うと彼らは驚きの表情を隠せなかった。なぜなら、混乱しているのはエーフィではなく、ちょうおんぱを放ったズバット本人だったからだ。

 

「僕のエーフィの特性はマジックミラーでね。相手の変化技を跳ね返すことができる特性なんだ。だからこそちょうおんぱはエーフィではなく、君のズバットを襲ったってわけ。」

 

「な!?そんな特性ありっスカ!?」

 

再びスカル団は驚きの表情を見せる。なんかこの人たち表情豊かだね。

 

「シンジさん……あなたはそこまで読んで……。」

 

リーリエも感嘆の声をあげる。まあ前回の戦いでは単調な戦闘で返り討ちになってたし、今回は少しくらい対策取ってるかな?と思ったらドンピシャだったね。

 

「く!?だったらこれはどうっスカ!スリープ!シャドーボール!」

 

「ジャンプして躱して!」

 

スリープはシャドーボールを放つもその攻撃は地面にあたり、エーフィは空中にジャンプして避ける。その後、スカル団はズバットにきゅうけつを指示するが、混乱状態のため訳も分からず岩にぶつかり自分を攻撃している。

 

「エーフィ!ズバットにサイコキネシス!そのままスリープに投げ飛ばして!」

 

ズバットはエーフィに捕らえられ意のままに操られる。そして自由が利かないままスリープ目掛けて飛ばされる。スリープも突然のことで反応できず一緒に飛ばされてしまう。

 

「とどめだよ!シャドーボール!」

 

エーフィはシャドーボールを放ち怯んで動けないスリープとズバット直撃する。シャドーボールが直撃したズバットとスリープはそのまま戦闘不能になり、スカル団のモンスターボールに戻っていく。

 

「く、くそ!なんなんっスカ!こいつ!」

 

「つ、次こそコテンパンにしてやるスカ!」

 

それだけ言い残しスカル団は全速力で逃げていく。相変わらず逃げ足だけは速い人たちだね。

 

「シンジさん!エーフィさん!大丈夫でしたか!?」

 

リーリエが僕たちのことを心配して小走りで近づいてくる。僕はいつも通り「大丈夫」と答えると、リーリエは一安心した顔を見せてくれる。

 

「それにしてもシンジさんはすごいトレーナーさんですね。二人が相手でも問題なく勝ってしまうなんて。」

 

「そう?ありがと。」

 

「お礼を言うのはこちらの方です。なんだかシンジさんの姿を見てると私も頑張れそうな気がしてきます。」

 

リーリエはそう言い僕に笑顔を見せてくれる。でも僕も、なんだかリーリエの笑顔を見ていると頑張れる気がする。気のせいかな?

 

「取り敢えずこの道を真っ直ぐ行こうか。そうすればリリィタウンまで戻れるはずだから。」

 

「はい!」

 

僕はリーリエとリリィタウンまで向かうことにした。その間、僕はリーリエにイリマさんの試練の話をした。

 

「そんなにデカいデカグースさんだったんですか?」

 

「うん、あれは通常の3倍近くはあったね。」

 

「そんなにですか!?それは是非見てみたかったです。」

 

そんな他愛もない話をしながら……。




前の話で誤字があったようで、心の優しいお方が態々教えて下さりました。いくら注意して見ててもやっぱり誤字脱字は無くなりませんね(泣)

また誤字脱字があれば気軽に教えてください。

そう言えば今週のアニポケはカスミさんのメガギャラでしたね?先週は初代ファンには嬉しい懐かしの展開があって面白かったですね。特にプリンの演出を見たら当時の放送から大分経つんだと実感しました。ニャース(の尻尾)に噛み付くブルーなんかも思い出しました。サトシのピジョットも出てくれないかな……。早く迎えに行ってあげてください。


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大試練 vsハラ

ここで描いているブイズの型はヌシが使っているのとは全く違います。ただアニメっぽい展開にしたいだけです。同じ型にしてしまうととてつもなくつまらない戦いにしかなりませんので。

例えば、ブラッキーが毒々耐久し始めたりとか、エーフィが両壁欠伸したりとか、サンダースが頻繁にボルチェンサイクルしたりとか、ニンフィアがひたすらハイボ撃ったりとか。


僕はリーリエと共にリリィタウンへと戻ってきた。そこではハラさんとククイ博士が僕たちが来るのがわかっていたように待っていた。

 

「ククイ博士?なんでここに?」

 

「シンジが試練を突破したと聞いてな。ハラさんの大試練に挑戦するところを見学しに来たんだ。」

 

どうやらククイ博士は僕が試練をクリアしたのをあらかじめ聞いてたみたいだ。恐らくミヅキがハラさんに連絡して、ハラさん経由で伝わったのだろう。

 

「お疲れさまでしたな!私も君と戦える時を楽しみにしていましたぞ!ルールは2対2のバトルです。よろしいですかな?」

 

ハラさんが一歩前に出てそう言う。と言うことは、大試練はハラさんとの直接対決になるのだろう。僕も実際にハラさんと戦える時は楽しみにしていた。ハラさんがどんなポケモンを使い、どんな戦い方をするのがとても興味がある。

 

「はい!では早速ですが大試練をお願いしてもいいですか?」

 

「うむ!私もそのつもりで待っていたのですからな!」

 

ハラさんは頷いたあと振り向いて、中央にあるバトルフィールドとなっている台の上に上る。僕もハラさんと一緒に台の上に上がり、ハラさんと正面に対峙する。

 

「シンジさん!頑張ってください!」

 

「うん!絶対に勝つよ!」

 

リーリエからの激励を受け取り、僕はモンスターボールを手に取る。同時にハラさんもモンスターボールを握り、先にポケモンを繰り出そうとしていた。

 

「悪いですが、そう簡単に大試練は突破できると思わないことです!出番です!マケンカニ!」

 

ハラさんが繰り出したのはマケンカニと呼ばれるポケモンだった。見た目からして格闘タイプか水タイプと言ったところだろう。だけど僕が出すポケモンはもう決まっている。

 

「お願い!グレイシア!」

 

僕が繰り出したのはグレイシアだ。氷タイプなので格闘タイプとの相性が悪いが、タイプ相性が勝敗を分かつ絶対条件ではないと信じている。

 

「ほう、氷タイプですか。格闘タイプのマケンカニとは相性が悪いですがよろしいのですかな?」

 

「ええ、僕のグレイシアはちょっとやそっとでは倒せませんよ。」

 

「いい気迫ですね。ますます楽しみになってきました。では早速始めましょうか!」

 

「はい!」

 

その言葉がバトル開始の合図となる。ここは挑戦者である僕が初めに動くべきだろう。

 

「先ずはこちらから行きます!グレイシア!シャドーボール!」

 

「マケンカニ!まもるです!」

 

グレイシアは正面のマケンカニに向けてシャドーボールを放つ。マケンカニはまもるを発動しシャドーボールを防ぐ。

 

「ならここはアイアンテールだ!」

 

グレイシアの尻尾が硬化しマケンカニ目掛けて振りおろされる。しかしマケンカニは動じた様子を見せずすぐに別の行動へと移る。

 

「マケンカニ!ぶんまわす!」

 

マケンカニは自らのデカい鋏のような腕でグレイシアの尻尾を掴みそのままぶん回して投げ飛ばす。グレイシアはダメージを受けるもののなんとか態勢を持ち直し倒れることを防いだ。

 

「今度はこちらから行きます!グロウパンチ!」

 

グロウパンチは命中すると自身の攻撃力が上がる技だ。これをそのまま受ければこちらが不利になるのは明白。ならばここは……。

 

「グレイシア!バリアーだ!」

 

グレイシアはバリアーを貼る。バリアーは自らの防御力を格段に上げる技だ。マケンカニはグロウパンチを当てるも防御力の上がったグレイシアを貫くことが出来ず跳ね返されてしまう。

 

「追い打ちをかけるよ!アイアンテール!」

 

グレイシアは再びアイアンテールを放つ。飛ばされたマケンカニは不意を突かれ対応できずに地面に叩きつけられる。

 

「とどめのれいとうビーム!」

 

グレイシアは叩きつけられたマケンカニに向かいれいとうビームを撃つ。マケンカニはそのまま戦闘不能になりモンスターボールに戻る。

 

「マケンカニ、おつかれさまでしたな。いいファイトでしたぞ。やりますな!さすがは今まで多くの旅をしてきただけはありますぞ!」

 

「ありがとうございます!でもまだまだ僕たちの本気はこんなもんじゃありませんよ!」

 

「それはそれは。では私も本気で迎え撃ちましょう!出番です!ハリテヤマ!」

 

次にハラさんが繰り出したポケモンはハリテヤマだった。どうやらハラさんのポケモンは格闘タイプのポケモンばかりのようだ。

 

「だったらこっちも戻って!グレイシア!お疲れ様、ゆっくり休んでて。」

 

「グレイシアを戻しますか。」

 

「ええ、グレイシアもだいぶ消耗していたのであのまま相性の悪いハリテヤマと戦っても勝ち目は薄いとおもいまして。」

 

「賢明な判断ですな。有利な場面になっても冷静な判断をできることは良いことですぞ。」

 

「僕の2体目は君に決めた!リーフィア!」

 

僕はリーフィアを繰り出す。草タイプのリーフィアはハリテヤマとの相性は五分五分と言ったところだろう。

 

「最初から全力で行きますぞ!ハリテヤマ!はらだいこ!」

 

ハリテヤマは自分のお腹を叩き気合を入れる。はらだいこをしたポケモンは攻撃力が最大限に上がる代わりに、自分の体力も削ってしまうリスクを持つ技だ。初っ端から飛ばしてきたがそれだけ自信があるということなのだろうか。ならばこちらも最初から全力をだすまで!

 

「リーフィア!つるぎのまい!」

 

リーフィアもつるぎのまいで攻撃力をあげる。そして互いに攻撃力が上がったところで相手を見据えて対峙する。

 

「行きます!リーフィア!でんこうせっか!」

 

「ハリテヤマ!受け止めてください!」

 

リーフィアは素早い動きでハリテヤマを翻弄して攻撃するも、ハリテヤマはそれを正面から受け止める。こちらの攻撃力が上がっているため簡単に抑えることはできなかったようで、ハリテヤマはリーフィアを少し抑えつけた時に下がる。しかし、ハリテヤマは耐えしのぎそのまま反撃の態勢をとる。

 

「ハリテヤマ!ほのおのパンチ!」

 

ハリテヤマは自らの拳に炎を纏いリーフィア目掛けて振り下ろす。リーフィアはそれにたまらず飛ばされてしまいかなりのダメージを負う。リーフィアは草タイプゆえに炎タイプの技は効果が抜群だ。特にハリテヤマの攻撃力ははらだいこで上がっているため、かなりの威力になっているはずだ。

 

「一気に畳みかけますぞ!私たちの全力!この戦いを守り神カプ・コケコに捧げる!」

 

突然ハラさんとハリテヤマがオーラを纏いだし、拳を数回突き出すポーズをとる。僕の直感が強力な攻撃がくると囁いている。僕はリーフィアにある指示をだしてその攻撃を受ける準備に入る。

 

「行きますぞ!『全力無双激烈拳』!!」

 

ハラさんがそう宣言をすると、ハリテヤマ突っ込みながら無数の拳を放ち続ける。恐らくこれがイリマさんの言っていた全力のZ技だろう。

 

リーフィアはその拳の嵐に飲み込まれてしまう。凄まじい威力であるがため、攻撃後には煙が舞い上がりリーフィアの様子が見えない。しばらくすると煙が引いていき少しずつ姿が見えてきた。するとそこには、なんと今の攻撃を耐え切ったリーフィアの姿があった。

 

「なんと!?今の攻撃を耐え切ったというのですか!?」

 

ハラさんとハリテヤマは自分の全力を受けきられたことに対しての驚きを隠しきれなかった。

 

「リーフィア……なんとかまもるが間に合ってくれてよかったよ。」

 

先ほど僕がリーフィアに出した指示はまもるだった。しかし恐らくZ技は威力が高すぎるためまもるでも攻撃を防ぎきれないのだろう。しかしそれでも最低限の威力にするにはこれしか方法がなかったのだ。リーフィアはなんとか僕の期待に応えようとして耐えてくれた。その気持ちは僕にもちゃんと届いている。ハリテヤマもはらだいことZ技の反動でかなりダメージがたまっているはず。こちらもダメージが溜まっているため、チャンスは一度しかない!

 

「リーフィア!最後の最後だ!気を引き締めていくよ!」

 

「私たちも負けられませんよ!ハリテヤマ!」

 

僕は……僕たちは負けない!絶対に!

 

「リーフィア!リーフブレード!」

 

「ハリテヤマ!ほのおのパンチ!」

 

リーフィアは頭部の葉を伸ばし、リーフブレードを放つ。それに対抗してハリテヤマはほのおのパンチを繰り出す。その二つの技が交じり合い、互いがすれ違った瞬間、リーフィアは倒れそうになる。しかしなんとか持ちこたえ、ハリテヤマはリーフィアの方を振り向くも、ダメージが溜まっていたようで先に倒れ戦闘不能になる。

 

「……どうやら私の負けのようですな。お疲れさまでしたハリテヤマ。後はゆっくり休んでください。」

 

「……ふう、なんとか勝った。」

 

僕はこれまでの緊張が一気にとれたようにその場に座り込む。リーフィアもボロボロになりながらも僕の方に来てくれる。僕はリーフィアの頭をなでながら、よくやった等の労いの言葉をかけながらモンスターボールに戻す。

 

その後、盛大な拍手の喝采が聞こえた。周りを見渡すと、何故か観客が大勢いたのだ。それはあれだけの戦いを繰り広げればみんな気になって集まるものなのだろうか。

 

そしてリーリエが近づいてきてくれて真っ先に大丈夫ですか、と声をかけてくれる。僕もその言葉に大丈夫、と応え、リーリエの手を借りて起き上がる。

 

「シンジ、ギガインパクト級の凄まじいバトルだったな。俺も熱くさせられたぜ!」

 

ククイ博士も今のバトルを称賛してくれて僕に声をかけてくれる。

 

「見事な戦いぶりでしたな。私の完敗です。」

 

「僕ももうすこしで負けるところでした。楽しいバトルをありがとうございます!」

 

僕はハラさんに頭を下げながらさっきの戦いのお礼をする。するとハラさんは二つの物を僕に差し出してきた。

 

「この前預かった石を加工して作ったZリングと格闘Zです。これを使いこなせればきみはもっと高みへいけるでしょう。これからも応援していますよ。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

僕はハラさんからZリングとZクリスタルを貰い、遂に一つ目の大試練を終える。そしてここから、さらなる試練が待っていることにワクワクしながら、島巡りをクリアしてみせると心に誓う。そう、僕の大切なこのポケモンたちと一緒に……。




ウルトラサン・ウルトラムーンの予約が22日より開始されましたね。当然ダブルパックを予約しました。ブイズと写真を撮りまくれることにwkwkしてます。

あとやっぱりこの一言だけは言っておかなきゃと思うので今回はこの一言で別れましょう。






おかえリーリエ!


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それからの旅路

皆さんおはこんばんちは。今回は語り思い出語りだけです。中々表現を伝えようとするに苦戦した回でした。ここだけで話は一気に飛びます。キリのいいところまでなので、人にとってはどこまで進むかが分かるかもしれません。

詳しい内容は原作をプレイしてね♪(露骨な宣伝


 

 

 

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僕はあの時にリーリエと初めて出会ったんだ。メレメレ島ではイリマさんの試練にハラさんの大試練。更に強力なライバルで友人になったミヅキ。そしてその後は第二の島、アーカラ島に上陸した。

 

アーカラ島でも当然強力なライバルや試練が待っていた。特にグラジオは初めて出会った時から凄い強敵だった。見たことも聞いたこともないポケモン、【タイプ:ヌル】を連れていたスカル団の用心棒。だがそれはあくまで自分が強くなるための姿。本当の姿はリーリエの優しい兄でポケモンにも好かれる一流のトレーナー。そして僕のライバルでもあり、今では友人にもなった。

 

アーカラ島の試練はスイレンの水の試練、カキの炎の試練、マオの草の試練と難題ばかりだった。巨大なヨワシの群れの姿にはさすがに驚いた。エンニュートの素早い動きには翻弄されたし、ラランテスのパワーには圧倒されるばかりだった。そして大試練で待ち構えていたのは岩タイプを巧みに使いこなすライチさんだった。岩タイプの硬さと豪快さをどちらも使いこなした連携にはただただ圧巻するだけだった。それでも何とか苦戦を強いられたが接戦の中勝ち抜くことができた。

 

そしてロイヤルマスクとのバトルロワイヤルも大いに盛り上がり、新しい体験もできた。最もその時にロイヤルマスクの正体がククイ博士だとすぐに気づいたけど、何故か博士は頑なに正体を明かそうとはしなかった。今でもその理由はよくわかっていないけど。

 

次に立ち寄ったのがウラウラ島。マリエシティに上陸してからすぐにミヅキともバトルをした。ミヅキのピカチュウがライチュウに進化していたのもこの頃だったかな。オーキド博士の従弟のナリヤさんにもあったり、図書館ではリーリエと伝説のポケモンについての書物を探したりもした。そのときに探していた書物を見せてくれたのがアセロラさんだった。アセロラさんはゴーストの試練のキャプテンもやっていると聞いて驚いたが、僕とリーリエの助けにもなってくれてとても助かった。

 

そして僕はリーリエ、アセロラさんと別れ先を目指す。僕が向かったのはホクラニ天文台。そこではククイ博士の昔からの友人であるマーレインさんと出会い戦った。マーレインさんは鋼タイプを使い、その頑丈さに苦戦させられるもなんとか勝利を手にする。そして奥に入ると待っていたのはマーレインさんの息子、マーマネだった。彼は電気タイプのポケモンが大好きな少年で、電気の試練のキャプテンでもあった。ところがその時に停電がおき、突如主ポケモンのクワガノンが襲ってきた。主ポケモンと言うだけあってかなりの強敵で、しかも停電しているため視界が悪いこともあり苦戦は免れなかった。しかしクワガノンの一瞬のスキを突き倒すことに成功する。

 

僕はマリエシティに戻り博士に呼ばれたためマリエ庭園に向かう。しかしそこで待っていたのはまさかのスカル団ボス、グズマだった。あの時のスカル団下っ端は大した強さではなかったが、やはりボスと言うだけあって一筋縄ではいかない相手だった。グズマの繰り出すグソクムシャはかなりの強敵で、スピードもパワーも一流だった。しかし僕のポケモンも実力と絆を兼ね備えていることに変わりはない。僕はポケモンを信じ、グズマのグソクムシャを撃破した。グズマはその後立ち去り、僕はリーリエとアセロラさんの二人に合流する。どうやらウラウラ島にエーテルハウスと呼ばれる場所があり、そこにアセロラさんが住んでいるらしい。アセロラさんとリーリエは先にエーテルハウスへと向かう。僕も後を追うように先に進むことにした。

 

そして僕もエーテルハウスに辿り着き、再び二人と合流した。そこではスカル団に襲われたが、下っ端だけだったので簡単に追い払うことができた。どうやら彼らがその時に狙っていたのは僕ではなく、リーリエとほしぐもちゃんだったようだ。その後にミヅキがエーテルハウスに辿り着き合流することになる。僕はその南にあるアセロラさんの試練を受けることになり、リーリエの事はミヅキに任せることにした。主ポケモンのミミッキュには正直別の意味で驚かされたが、この試練は突破することができた。今までの試練の中では一番苦戦したかもしれない。

 

しかし僕がエーテルハウスに戻った時にはリーリエの姿は見えなかった。そこでまっていたのはスカル団の幹部、プルメリだ。僕は以前アーカラ島でプルメリと戦ったことがあり、下っ端よりもかなり強い強敵ではあったが倒したことがあった。しかし、今回は以前よりも更に強敵となっていて前よりも苦戦を強いられることになる。とくにエンニュートの変則的な毒技には翻弄されてしまい、僕のポケモンたちも傷付いてしまうがなんとか撃破した。

 

その後プルメリはリーリエは預かっていったとだけ残し姿を消した。中にいたミヅキに話を聞くと、プルメリと戦ったものの、かなりの強敵で苦戦しているところにリーリエが、自分のためにリーリエ自身を犠牲にして自ら捕らわれることを決めたそうだ。だが僕はそのことに我慢が出来ずエーテルハウスを勢いよく飛び出す。そしてリーリエは北にあるポータウンと呼ばれるスカル団に本拠地に連れていかれたと耳にする。僕は急いでそこに向かうが、当然そこには大量のスカル団たちが待ち構えていた。流石に僕でもこんなに大人数を相手にするのはキツイ……と思っていた時、強力な助っ人がやってきてくれた。グラジオとミヅキだ。二人が下っ端を引き受けてくれると言うので、僕は急いでスカル団のボス、グズマの元へと向かう。

 

しかしそこにはリーリエの姿は見えなかった。再びグズマと相まみれて勝利するが、リーリエが連れていかれた場所を聞いたとき、驚きを隠せなかった。何故ならその場所は、エーテル財団だったからだ。

 

エーテル財団は、ウラウラ島に来る前に立ち寄ったことがある。その時に見た光景はポケモンの保護。トレーナーに捨てられた、命を落としそうになった、そういった可哀想なポケモンたちを保護している団体がなぜ?と僕は疑問に思ったが、その時に思い出したのが謎のポケモンの存在だった。以前エーテル財団に立ち寄った時、ポケモン保護区で会長であるルザミーネさんに出会った。しかし、そこで急に次元が裂けて謎のポケモンが姿を現した。そのポケモンはまるで普通のポケモンとは違う、明らかにやばそうな雰囲気を出していた。僕はそのポケモンと対抗するが、その途中で謎のポケモンは姿を消してしまった。その時、ルザミーネさんは微笑みながらウルトラビーストと呟いたように僕には聞こえた。それが何なのかは分からないし、どんな意味を持っているかは分からなかったが、その時は特に何も気には留めなかった。

 

もしかしたらあの時のポケモンが関係しているのかもしれないと思い、グラジオ、ミヅキと共にすぐにエーテル財団へと向かおうとする。しかし、その前にはしまキングのクチナシさんが大試練を受けるように僕を誘う。どうやら受けなければ先に進めてもらえそうにもなく、僕はクチナシさんと戦うことにして。クチナシさんは悪タイプのトリッキーな戦い方を熟知していて、変則的な戦い方に翻弄されるが勝利を掴み大試練を無事突破。クチナシさんはその腕と勇気なら問題ない、と激励の言葉をくれ、迷うことなくエーテル財団に向かうことができた。

 

エーテル財団についた僕たちを待ち受けていたエーテル財団員や研究者のザオボーに妨害されるも、グラジオやミヅキとの連携で道を切り開く。その時にグラジオから、相棒のヌルの真実を聞く。どうやらエーテル財団により、対ウルトラビースト用に開発されたのがヌルらしく、グラジオは非人道的な行いに我慢できず黙ってヌルを連れだしたらしい。グラジオとリーリエは兄妹で、ルザミーネが二人の母親だという話もそこで初めて聞いた。

 

僕たちは先に進み、エーテル財団奥地にある城のような場所に辿り着く。そこで待っていたのはグズマで、どうやらエーテル財団とグルだったらしい。グラジオが果敢に挑むが惜しくも敗れ、僕がグラジオの敵を取る形となった。そして城の中に入ると、奥ではルザミーネさんとリーリエがいた。リーリエは何とか母親であるルザミーネを説得しようと試みるも、ルザミーネの様子がおかしく、なにやら何かに操られているような雰囲気があった。しかし、厳密には操られているのではないが、そのことについてはまた後で分かることになる。

 

後からグズマ、ミヅキがやってくるが、僕はルザミーネと戦うことを決意し戦闘態勢をとる。正直リーリエやグラジオの前で母親と戦うのは気が引けるが、その時はその方法しか思いつかなかった。二人も了承してくれて僕のことを応援してくれていた。ルザミーネのポケモンはどれもが強力で、苦戦はどうあがいても必至だった。しかし僕とポケモンたちの絆がルザミーネを破るが、その後ほしぐもちゃんが全く動かない状態になっているという衝撃の真実を聞く。姿も変わってしまい、ほしぐもちゃんの力を使いウルトラビーストをアローラ地方全体に呼び寄せ、自らがウルトラビーストの楽園、ウルトラスペースに行くのが目的だったようだ。

 

後からハラさんたちから聞いた話だが、ウルトラビーストと戦ってくれたのは、どうやらカプ・コケコたち島の守り神が押さえてくれていたようだ。流石のウルトラビーストといえど、島の守り神を相手にするのは骨が折れるようだ。

 

そしてルザミーネはウルトラスペースへと姿を消す。グズマもそれを追うように飛び込んでいく。ウルトラスペースへの入り口が消え、僕たちはどうすればいいのかと迷うが、リーリエが真っ先に宣言した。ルザミーネとほしぐもちゃんを助けに行こう……と。

 

 

 

 

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表現には苦労しましたが、取り敢えずアローラ編後半まで差し掛かってきましたね。文字詰めすぎてちょっと読みづらかったかもと反省しています。

まあこれから精進していくつもりですので(精進できるとは言っていない)応援お願いします。


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リーリエの決意

ほしぐもちゃんが可愛かった。なんかルザミーネさんがゲーム本編と大分性格が違ったけど、後半にウツロさんの毒にやられて豹変する感じですかね?まだ分からないですけど新OP映像ではがんばリーリエが一瞬映ってたので可能性はあるかと思われます。にしてもルザミーネさんに髪クシャクシャにされてから毎回直すリーリエが可愛かった。

と言うわけで今回はがんばリーリエ回です。がんばリーリエは更に可愛い(確信)


~~~ルザミーネの屋敷~~~

 

 

 

僕はルザミーネとの戦闘が終わり、ルザミーネがウルトラスペースへと姿を消した後、一日屋敷に泊めてもらうこととなった。リーリエとグラジオには空き室があるから使ってもいい、と言われ遠慮なく使わせてもらった。勿論ミヅキも、別室で泊まることになり今頃ゆっくりと休んでいる頃だろう。

 

「……まだこんな時間か」

 

時計を確認してみるとまだ明け方の時間帯で外は薄暗い状態だった。さきほどまでは寝ていたが、これ以上寝れそうにもないので僕は外の空気を吸おうと外に出ようとした。昨日あれだけの事があったから少し気分を変えたいしね。

 

「あれ?あれってもしかして?」

 

僕が外に出ると金髪のポニーテールで小さなリュックバックを背負った女の子の後ろ姿が見えた。服装も変わっていて印象がだいぶ違っているが、僕には見間違えることは出来なかった。

 

「あっ、シンジさん!おはようございます!」

 

彼女は僕の存在に気付くと、振り返って笑顔をみせ挨拶してくる。うん、やっぱり見間違えなんかじゃない。彼女は紛れもなくリーリエだ。服装がお嬢様風の衣装から活発なイメージを抱かせる服装に変わっている。そしてリーリエの顔には昨日までの迷いは一切見られない。

 

「リーリエ……その服……」

 

「これは以前マリエのブティックで購入してみたものです。その時は着るつもりはなかったのですが、私もお母様とほしぐもちゃんを助けたい。なので心機一転と思い、思い切って着てみました。どうですか?似合っているでしょうか?」

 

リーリエは僕に心の内を明かし、新しい服装についての感想を尋ねてくる。正直言えば凄く可愛い。しかし正直に言うのも恥ずかしいので少し控えめに伝えることにした。

 

「うん、すごく似合っているよ。」

 

「そうですか?えへへ、ありがとうございます。なんだかシンジさんに褒められると凄く嬉しいですね。なんででしょうか?」

 

どうやら喜んでくれたようだ。僕もリーリエが喜んでくれると嬉しい。彼女のこの笑顔を見て、僕は改めて決心する。必ずルザミーネの野望を阻止し、ルザミーネもほしぐもちゃんも助けると……。

 

「私……必ずお母様とお兄様の3人とまた一緒に暮らしたいです。だから最後までお母様と向き合ってみようと思います。」

 

リーリエは再び決意をあらわにすると、今度はノーマルZのポーズをとる。

 

「えへへ……ちょっとシンジさんの真似をしてみました。変じゃなかったですか?」

 

「ううん、全然変じゃなかったよ。凄く可愛かった。」

 

「…………か、かわ///」

 

……しまった!?思わず本音を言ってしまった!?リーリエも僕の言葉に照れているようで顔を真っ赤にしている。僕も今思い出せば恥ずかしいことを言ったしまったと思い返し、顔をそらしてしまう。恐らく今の僕はリーリエと同じくらい顔を赤くしているのだろう。今の外が薄暗くてよかったと思った瞬間だった。

 

「も、もう///急に何を言い出すんですか!」

 

リーリエが顔を赤くしたまま怒る。うん、正直可愛いとは思うし、リーリエと一緒にいると楽しい。でも急に面と向かってこんなことを言うのは非常識と言うものだろうか。

 

僕とリーリエがそんな会話をしていると、グラジオがやってきて話かけてくる。このまま続けていても気まずかったから助かったよ。

 

「リーリエ、シンジ、二人ともここにいたのか。お前たちはこれからどうするつもりだ?」

 

グラジオが僕たちにこれからのことを尋ねてくる。その問いにリーリエが答える。

 

「以前マリエの図書館で読んだ本に書かれていたのですが、ポニ島にある日輪の祭壇と呼ばれる場所で太陽の笛と月の笛を同時に吹くことで、伝説のポケモンであるソルガレオさんが現れてくれると読んだことがあります。シンジさん、どうか私とポニ島へ向かっていただけませんか?シンジさんに一緒に来ていただきたいんです!」

 

リーリエはそう言って僕に頭を下げながら頼んでくる。しかし僕の気持ちは決まっている。リーリエが昨日ルザミーネとほしぐもちゃんを助ける、と決意したあの時から……。

 

「勿論だよ。僕は元からリーリエに付いてくつもりだったからね。」

 

「シンジさん……ありがとうございます!」

 

リーリエは再び頭を下げて僕にお礼を言う。そこでグラジオはあるものを渡してくる。

 

「ならばこれを持っていけ。」

 

「お兄様……これって……」

 

グラジオが差し出したのは青色に輝き、月の模様が描かれている一つの笛だった。もしかしてこれが……

 

「月の笛だ。太陽の笛は残念ながらここにはないが、これだけでもあれば少しの助けにはなるだろう。」

 

グラジオはそう言いながら月の笛をリーリエに渡す。リーリエはそれに笑顔で感謝する。グラジオは少し照れたようにいつもの片目を手で隠すようなキザなポーズを決めて「気にするな」、と言う。よく見るポーズではあるが、今回に限ってはグラジオの照れ隠しにも見えてしまう。僕も人のことを言えないが、グラジオも素直じゃないと内心で思いながら兄妹のやりとりを笑顔で見守る。

 

「太陽の笛がどこに存在するかは俺にも分からない。だがポニ島にいるハプウの叔父に聞けば教えてくれるかもしれない。奴の叔父はしまキングでもあるからな。」

 

「ハプウさんのお爺様ですか?」

 

ハプウさんは今までいろんな場所で僕やリーリエを助けてくれた優しい人だ。時にはデコボコ道で困っている僕をバンバドロ乗せてくれたり、時には道に迷ったリーリエを案内してくれたり。まさかまたハプウさんに助けてもらうことになるとは思わなかった。いつかお礼をするべきかもね。

 

「ポニ島までは俺が船で連れて行ってやる。ミヅキはどうやら修行がしたいらしく先に出ていった。昨日までの出来事であいつなりに思うところがあったようだな。」

 

どうやらミヅキは思い詰めているようだ。だが彼女は根が強いポケモントレーナーだ。必ず今よりも強くなって僕の前に現れるだろう。僕たちは僕たちのやるべきことをやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕とリーリエはグラジオに案内され、一階にある船着き場で船に乗る。そしてポニ島にある海の民の村と呼ばれる場所に辿り着く。グラジオはそこで僕たちと別れ、別に行動をすると告げる。群れることが嫌いなグラジオらしいといえばらしいけど。

 

しかし、最後にグラジオは呟くように一言僕に告げた。「母上のことをよろしく頼む」、と。その言葉だけで僕はグラジオの母を思う気持ちが伝わってきた。僕もその言葉に応えるように親指を立てる。僕のその姿を見たグラジオは安心したように再び船を走らせる。

 

今着いた海の民の村は、色んなポケモンたちを象った家が海に浮かんでいる少し変わった村だ。それが海の民と呼ばれる所以になったかは定かではないが。

 

「先ずは情報収集ですよね?では聞きこみを開始しましょう!」

 

リーリエが拳をギュッと握りしめてそう言い聞き込みを開始する。リーリエのそのやる気につられるように僕もリーリエに付いていく。しまキングと言うだけありやはり有名だった。しかし残念なことに、しまキングであるハプウさんのお爺さんは少し前に亡くなってしまったようだ。

 

だが残念な知らせだけと言うわけでもなかった。ハプウさんは現在ポニ島に戻ってきていると言う話も聞くことが出来た。僕達は早速ハプウさんを訪ねるために海の民の村を後にする。

 

そして僕たちはポニの古道と呼ばれる場所に辿り着きハプウさんの家を探す。このポニの古道は海の民の村から少し離れた場所に位置するが、この辺りに住んでいる人たちはかなり少数であるためすぐに見つかるだろう。

 

そんなことを考えていると、少し先にバンバドロの後ろ姿が見えた。ということは横に立っている少々小柄な女性が間違いなくハプウさんだろう。

 

「ハプウさん!」

 

「む?その声はシンジか?」

 

ハプウさんは僕の声に気が付くとこちらに振り向く。バンバドロもハプウさんと同じように振り向き僕らを見据える。

 

「おお!リーリエも一緒か。二人してどうしたのじゃ?わしに何か用かの?」

 

「実はハプウさんにお聞きしたいことがあって伺いに来ました。」

 

「ワシに?」

 

リーリエは僕たちがハプウさんを尋ねに来た理由をハプウさんに話す。ハプウさんも叔父さんの事をしまキングとして尊敬していたようで、懐かしみながら叔父さんの事を思い出しているようだ。

 

「そう言えば叔父から聞いたことがあるの。太陽の笛は確かこの近くのナッシーアイランドに保管されているはずじゃ。」

 

「本当ですか!?」

 

ハプウさんの言葉に眼を輝かせるリーリエ。有力な情報が早速見つかって嬉しいのだろう。すぐにナッシーアイランドへ向かおうとリーリエが走り出す。リーリエ曰く、あれは本気の姿らしいのだが、その本気の姿になってから妙にやる気に満ち溢れている気がする。

 

去り際にハプウさんにナッシーアイランドへと行く方法を教えてくれた。海の民の村にて船を貸してもらい送ってもらえばすぐに辿り着けるらしい。僕はハプウさんに感謝してリーリエを追いかける。

 

「さてと、わしも準備をするかの」

 

ハプウさんのその声は僕には届かなかったが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは海の民の村に戻り、ハプウさんに言われたように船を出してもらおうと村の人に話しかける。

 

すると、早速快く了承してくれた人がいた。その人はなんとこの村の村長であるらしく、漁師も兼ねているため船の運航はお手の物だと言う。僕たちは村長の愛用しているコイキングを模した船、通称コイキング丸に乗せてもらい、ナッシーアイランドへと向かうことにした。

 

コイキング丸へと乗った僕たちはナッシーアイランドに辿り着いた。島には「ナッシーアイランドへようこそ!」と、ナッシーが描かれた看板があった。

 

「ここがナッシーアイランドですか。すごいですね……。」

 

リーリエの言う通り本当にすごい。ここに自然ばかりがあって、人の手がほとんど加えられていない。そして一番すごいのは、アローラの姿のナッシーだ。僕の知っているナッシーとは違い、異常なまでに首が長い。その迫力にはただただ圧巻されるばかりだ。

 

ロトム図鑑によると、アローラのナッシーの首が長いのは、適切な環境で育ったため充分な栄養を得られたからだと言う。そう考えると、アローラのナッシーは彼らの正しい姿なのかもしれないね。

 

「アローラのナッシーさんってすごいですね。私も本などでは見たことがありますが、本物を見たのは初めてです。」

 

「うん。僕もこれには驚いたよ。今までライチュウやラッタ、ニャースみたいなアローラのポケモンはみたことがあったけど、こんなにも迫力のあるアローラのポケモンは初めてだよ。」

 

「そうですね。」

 

僕とリーリエはアローラのナッシーの大きさに見惚れていた。しかしそこではタイミングの悪いことに雨が降ってきてしまった。急いで雨宿りをしなければ二人ともずぶ濡れになって風邪を引いてしまう。

 

「あそこに洞穴があります!急いで入りましょう!」

 

僕とリーリエは急いで見つけた洞穴の中に入る。洞穴の中はあまり広いとは言えなかったが、僕たち二人が入るには充分なサイズだった。

 

「急に雨が降ってビックリしましたね。少し濡れてしまいました。」

 

「うん。でも運よく洞穴が見つかってよかったよね。」

 

「そうですね。運が良かったです。」

 

リーリエがその後微笑みながら今までのことをポツリポツリと語っていく。昔のルザミーネが雨の降った日に帰ってきたリーリエを心配して、よく歌ってくれていたことや優しく接してくれていたこと。そしていつの日からか…………ルザミーネがウルトラビーストのことばかりを考えるようになってしまったことも。それから僕がいつもリーリエのピンチの時に駆けつけて助けてくれたということも。

 

「私が困っていたらいつでもシンジさんに会えたりして……」

 

「ん?何か言った?」

 

「い、いえ///なんでもありません!」

 

リーリエは顔を赤くして否定する。リーリエの今のつぶやきが聞こえなかったのが少し残念に思えるが、それでも僕は追及するのはやめようと思い留まる。

 

「……シンジさんは島巡りを終えたらどうなさるんですか?」

 

「え?」

 

僕はリーリエの問いに一瞬戸惑う。僕はこの旅が終わればどうするのだろう。その先がまだ見えていない。確かに僕は別の地方も旅してきた。でもアローラの旅が終わったら僕は……

 

「……正直まだ分からない。この先僕は何がしたいのか。強くなりたいのか、それともポケモン図鑑を完成させたいのか、もしくはまだ旅を続けたいのか。」

 

「そうですか。」

 

僕が俯きながら答えるとリーリエは笑いながら更に言葉を紡ぐ。

 

「私は…………トレーナーになってシンジさんと一緒に旅がしてみたいです。」

 

リーリエは僕の顔を覗き込みながらそう答えてくれた。それは僕の望んでいた答えかもしれない。だけど今の僕にはその答えがハッキリと見えていない。それでもリーリエは僕の眼を真っ直ぐみてそう言ってくれた。リーリエの眼はとても澄んだ色をしていて、その気持ちに偽りがないことが伝わってくる。リーリエのその言葉が僕自身すごくうれしかった。

 

「迷惑……でしたでしょうか?」

 

「……迷惑なんかじゃないよ。僕も嬉しい。いつか……必ず一緒に旅をしよう!」

 

「!?はい!ありがとうございます!」

 

リーリエは満面の笑みでそう言ってくれた。すると、僕たちの気持ちに応えるかのように雨は上がり、さっきまでの天気が嘘のように雲が去っていく。

 

「あっ、雨が上がりましたね!」

 

リーリエは雨が上がると一歩前に出て振り返り、笑顔を見せながらこう言った。

 

「なにかいいことありそう……っというかありますよね!」

 




アローラナッシーは公開当初からネタ要素しかない。フラd……カエンジシさんの時もネタ要素が尽きなかったけど。地味にナッシーアイランドに行ってみたいと思っている今日この頃。そもそもブイズと一緒に旅がしたい(真顔)



次回もほとんど……と言うか回想回で一気に進みますね。まあそればっかりはどうかご勘弁を。


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物語の終幕

フリー対戦にてニンフィアが影分身2回積んだバシャにハイボ当てて、もう1回積んだ後にも「当てろ!」って言ったら当ててくれて嬉しかった。その後のメガマンダの竜舞恩返しも耐えたし、他の試合では白キュレムの吹雪とジュカインのリフストも避けた挙句、ウツロのアシッドボム+パワージェムのコンボまで耐えて返り討ちにして、残りわずかのフェローチェを石化で落としてくれるなど、凄まじい活躍をしてくれました。流石最高の相棒。音声認識だとかチートではない(戒め)。

にしても一番疑問に思ったのは、エーフィの特性を知らないのか、催眠術やら挑発やら電磁波やら鬼火やらステロやらを多くの人が対面で撃ってきてことごとく跳ね返されてましたね。……そんなに知られてないのかな?それとも交替読みだった?謎は深まるばかりである。

皆さんも相手の特性をよく調べてから技を選択しましょう。


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僕とリーリエはその後無事太陽の笛を手に入れた。僕たちはポニ島へと戻り先へと進むことにした。日輪の祭壇へと向かうには、険しいポニの大渓谷と呼ばれる場所を抜ける必要があると僕たちは聞く。そしてポニの古道を進むと、6人のスカル団が待ち構えていた。スカル団たちはグズマを助ける方法を僕たちから聞き出そうと襲い掛かってきた。勿論全員返り討ちにしたが、その後にプルメリがやってきてその場を治めてくれた。

 

どうやらプルメリ自身もグズマを助けたい気持ちはあるらしく、僕に毒のZクリスタルを渡してくれた。僕のことを信じて待ってくれると言ってくれたプルメリは最後に、「お姫様を守ってあげろ」と伝え去っていく。プルメリは思ったほど悪い人でもないようで、グズマの行動には度々心配させられていたらしい。当のグズマはルザミーネに対して好意を抱いているという話も聞いた。ならば、グズマも無事に助け出そうと僕は決意する。

 

そしてさらに先へ進むと、ポニの渓谷前でハプウさんがバンバドロを連れ待っていた。ハプウさんはポニ島の守り神、カプ・レヒレに認められたため、大試練を与えるために僕の事を待ってくれていたようだ。僕はハプウさんの大試練を受けることにし、激しいポケモンバトルを繰り広げる。地面タイプを自在に操るハプウさん。そしてバンバドロとのコンビネーションも抜群で息をつく暇もないほどの強敵だった。僕はその戦いから辛くも勝利を手にし、無事地面のZクリスタルを授かる。

 

ハプウさんからの激励を受け取った僕とリーリエは、ポニの大渓谷を進んでいく。そして僕たちはあるところに辿り着く。それは一つのつり橋だった。その光景をみて僕もリーリエも出会った時を思い出す。あの時は僕がほしぐもちゃんを助けるために動いた。リーリエも覚悟を決めたように歩き出す。リーリエは途中でヤミカラスたちに襲われるが、僕はリーリエの勇姿を見届けるために助けるのを我慢した。そしてリーリエはヤミカラスたちを振り切り、無事自らに与えた試練を突破した。この出来事はリーリエにとって、何かを成長させる大きな試練だったのではないかと僕は思った。僕も後に続きつり橋を渡る。

 

僕たちはリーリエと共に先に進むと、そこにはキャプテン不在の試練が待っていた。ドラゴンの試練だ。特になんの変哲もない場所ではあったが、中央にあるZクリスタルを取ろうとした瞬間に主ポケモン…………ジャラランガが現れた。ジャラランガは桁外れのパワーを持っていて、僕は幾度なくピンチに立たされた。しかし、さっきのリーリエの覚悟を見せられては僕も簡単に引き下がれない。苦難の末、遂にジャラランガを撃破し、僕は僕の試練をクリアすることができた。あの時リーリエが喜びのあまり抱き着いてきたのは驚いたが、でも僕はなんだかうれしかった。自分のしたことに気付いたのか、リーリエは直ぐに謝りながら離れてしまったのが少し残念に思う自分もいた。

 

お互いに試練を突破することのできた僕たちは、日輪の祭壇に到着した。日輪の祭壇は階段が長く、登るのに一苦労したが、登りきると左右に太陽と月のマークが描かれた足場があった。リーリエは右側の月が描かれた足場で月の笛を、僕は左の太陽が描かれた足場で太陽の笛を吹いた。すると不思議なことに動かなくなったほしぐもちゃんが祭壇へと吸い込まれていく。その後祭壇は赤く光りだし、中からは一体の大きなポケモンが飛び出してきた。白色の体に雄々しくも美しい姿。額は宇宙を映し出すかのように輝いていた。だが何故だか僕とリーリエにはそのポケモンの正体が分かった。そう、彼の正体はほしぐもちゃんだ。

 

ほしぐもちゃん…………その姿はソルガレオと呼ばれているらしく、ほしぐもちゃんの真の姿なのだという。真の力を発揮したソルガレオは、僕たちをルザミーネとグズマのいるウルトラスペースへと連れて行ってくれるという。僕たちはソルガレオに乗ってウルトラスペースへと目指す。ソルガレオは空間を裂き、ウルトラスペースへと進入することに成功する。

 

僕たちはウルトラスペースの中を進んでいく。そしてそこにはグズマの存在が見えた。しかしグズマは、ルザミーネはもう手遅れだという。ウツロイドの毒に侵されすぎたのだと。そしてこの不思議なウルトラスペースの影響か、僕と戦ったあの時以上に強くなってしまっているのだと。それでも僕もリーリエも諦める気などなかった。グズマはそんな僕たちを見て、ルザミーネを助けてやってほしい、とだけ呟く。僕たちはその言葉を胸に、先へと進んでいく。

 

ウルトラスペースの深奥まで辿り着くと、そこには多数のウツロイドに囲まれたルザミーネの姿があった。ルザミーネの姿を見たリーリエは、母親に今までの行いについての説教を始める。僕はただそれを見ているだけしかできなかった。家族の問題に、僕が口を出していいことではなかったからだ。ルザミーネもトレーナーたちの行いを例にして真っ向から否定する。そしてルザミーネは、これ以上話し合いをする気など微塵もないという意思をあらわす。ルザミーネは…………ウルトラビーストであるウツロイド達と融合し、人間を超越した存在となってしまう。

 

そこから僕は、リーリエの代わりにルザミーネと決着をつけることを決意する。ルザミーネも元からそのつもりだったようでモンスターボールを手に取り、最後の戦いを始める。グズマの言っていた通り、ポケモン達も以前とは比べ物にならないくらいに強くなっていた。しかし、彼女には足りないものが一つあった。それは例えどれだけの力を手に入れようと決して到達できないもの。そう、ポケモンとの絆だ。僕とポケモンたちの間にはそれがある。だがそれだけではない。リーリエを始めとしたミヅキ、グラジオ、ククイ博士、プルメリにグズマ、ハプウさん、ハラさん、アセロラさん、他にも大勢の人たちと戦い、多くの人たちの願いや思いを背負って僕はその場に立っている。だからこそ絶対に負けられない。

 

そう思いを込めながら僕はルザミーネとの激しい戦闘を繰り広げる。違う形で出会っていればもっと楽しいバトルになったかもしれない…………そう思いながら。僕はルザミーネに僅差レベルで勝利し、ルザミーネはウルトラビーストと分離して倒れる。その時はどうやら気絶しているだけで済んだみたいだった。僕たちはルザミーネとグズマを連れ、ソルガレオの力でウルトラスペースを脱出する。しかし何故だろうか。その時に見たウツロイドはどこか悲しそうな、それとも残念そうな表情を見せていた気がした。もしかしたらウツロイドは、強い思いを持つ人間の願いを叶えてあげたかっただけなのかもしれない。最も今となってはその真意も確かめることは出来ないけれども。

 

後から追いついたハプウさんがルザミーネを保護してくれた。グズマはルザミーネをバンバドロに乗せた後、ハプウさんと一緒に立ち去っていく。僕たちはソルガレオにありがとうとお礼を言う。ソルガレオにこの後どうするのかを尋ねると、テレパシーでこの世界を見守っていくと言った。僕たちはソルガレオの気持ちを尊重し、それを受け入れることにした。リーリエは今までの感謝の気持ちを言いながらソルガレオと…………いや、ほしぐもちゃんと額を合わせる。二人はそれほど長い時間を共に過ごし、それほどの絆を紡いできたんだ。僕にはハッキリと二人を結び付けている絆と言う糸が見えた。この糸は決して切れることはない。そう、何があっても。

 

僕たちはほしぐもちゃんと別れを告げ、ほしぐもちゃんは太陽へと姿を消す。恐らくいつまでも太陽として、僕たちとこのアローラをを見守ってくれるのだろう。リーリエもルザミーネの元へ行き、母に寄り添ってあげたいと言った。僕はリーリエの言葉に頷き、また必ず二人で旅をする約束を再び交わしリーリエと別れる。

 

そして僕はククイ博士から念願のポケモンリーグが出来たから来てほしいと頼まれる。僕は直ぐにポケモンリーグへと向かう。場所はラナキラマウンテン。ウラウラ島中央に位置する、アローラ一高い山を目指す。ラナキラマウンテンはポニの大渓谷以上に険しく、寒さも厳しい難所だった。僕が苦労しながら頂上まで登り切ると、そこには立派なドーム状の会場が出来上がっていた。まさにあれがアローラ最強トレーナーを決める決戦の地、ポケモンリーグなのだろう。そこには様々な強豪が集っていた。僕に加え、友人であるミヅキ、最大のライバルであるグラジオ、更には各島でしまキングやしまクイーンをやっているハラさん、ライチさん、ハプウさん、それにクチナシさんも参加していた。それだけではなく、炎使いのカキ、草使いのマオ、水使いのスイレン、電気使いのマーマネ、鋼使いのマーレインさん、ノーマル使いのイリマさんにゴースト使いのアセロラさん。そして未知の力を秘めた飛行使いのカヒリさんという人もいた。

 

みんなが強敵で全ての戦いが苦難の連続だった。グラジオとヌルが進化した姿、シルヴァディとの絆は更に深まっていて、連携が完璧に揃っていた。ミヅキも以前戦った時とは別人のように強くなっていて、一つ一つの指示にも迷いが感じられずライバルに相応しい実力を兼ね備えていた。そしてキャプテンだけでなく、しまキングやしまクイーンの人たちも相変わらず…………いや、それ以上に強くなっていてどの戦いも見ごたえがあるバトルだった。初めて戦ったカヒリさんもグラジオたちに負けない気迫を持っていた。今でも勝てたのが不思議なくらいだ。そして僕は最後の戦いまで勝ち上がる。

 

最後まで勝ち上がった僕は、決勝戦は誰が相手なのかと考える。そこで僕の前に立った人を見て驚きを隠せなかった。僕の前に立ったのはそう…………あのククイ博士だった。ククイ博士はこのポケモンリーグこそが最大の夢であり、いつかアローラ最強のトレーナーを決めてみたいと願っていたらしい。そして僕の目の前に立ち、僕の前に立ちはだかる大きな壁となると宣言する。多くのトレーナーたちを倒し、そこに立っているのは僕とククイ博士のみ。それこそが真の頂上決戦なのだと僕は感じ取り、最終決戦へと足を踏み込む。

 

ククイ博士は僕が今まで戦ってきたどのトレーナーよりも手強かった。ポケモンの技を研究しているだけあり、あらゆる技のコンビネーションやタイミング、全てにおいて完璧と言ってもよかった。ポケモンたちとの絆も確かなもので、僕にはハッキリと感じ取れた。そして博士から感じ取れたものは一流のトレーナーとしての強さだった。僕は今、アローラ最強のトレーナーとそのポケモンたちと戦っていると実感できた。この時間が永遠に続けば…………そう思える戦いだった。

 

しかし戦いと言うものは勝者と敗者が必ず存在する。ポケモンバトルも例外はない。そして僕たちの最強を決める戦いは終幕を迎える。僕の勝利によって。僕はそこで晴れてアローラ最強のトレーナー…………チャンピオンとして認められた。

 

こうして僕のアローラでの島巡りの旅は終わる。そして僕はメレメレ島に戻り、アローラ初のチャンピオン誕生を祝うことになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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フリー対戦にてシンジと言う名前で、頭からつま先まで真っピンクのコーディネートをした変態的なブイズ使いを見たらそれはヌシですのでよろしくお願いします。マジで真っピンクなのですぐに分かるかと。


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終わりは新たな始まりに

投稿前にストーリーラストのカプ・コケコ戦を修正しました。最初は簡単な表現で描こうとしてましたが、流石にラストのクライマックスは重要やろなと感じて戦闘内容を詳しくしてみました。とは言えちゃんと表現できてるか心配……。

それにしてもアニポケリーリエの凍りついた眼差しが可愛かった。さよならマーマネ回でもそうだったけど、怒っても可愛いとか卑怯でしょ。

まあアローラ編ラストなので楽しんでください。

フフフ…メタルジェノサイダー…デッドエンドシュート!


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僕はアローラ地方のチャンピオンとなり島巡りを始めた土地、メレメレ島に戻ってきた。僕たちがリリィタウンへと帰ると、そこでは母さんやリーリエが出迎えてくれた。

 

「リーリエ!?なんでここに!?」

 

「シンジさんがアローラチャンピオンになったと聞いて駆けつけてきたんです。お母様はグズマさんが見てくださるようで、今はぐっすりと眠っています。」

 

「……そっか。ありがとう、リーリエ。」

 

僕はわざわざ駆けつけてくれたリーリエに感謝すると、リーリエは笑顔で祝福してくれた。母さんも僕がチャンピオンになったことを喜んでくれているみたいで、泣きながらみんなに感謝してまわっていた。あんな母さんの姿を見たのは初めてだけど、それでも僕はとても嬉しかった。あの母さんが泣きながら自分のことのように喜んでくれるのがとても……。

 

その後、僕たちはその祭りを楽しむことにした。住人の方が開いてくれた屋台やミニゲーム、守り神に捧げる踊りにキャプテンやしまキング、しまクイーンたちによるZ技のポーズなども披露。木の陰でこちらを眺めているグラジオの姿も見かけたが、どうやら祭りを楽しんでいるリーリエを微笑みながら眺めており、安心したのか、それとも満足したのか、グラジオは立ち去っていく。

 

その後はトレーナーたちによるポケモンバトルが披露された。ククイ博士…………もといロイヤルマスクも参加したバトルロイヤルが行われた。みんな思い思いにバトルを楽しんでいたが、リーリエが僕に声をかけ、こっそり抜け出しませんか、と言ってきた。僕はリーリエについて行くことにしてみんなに気付かれないように祭りを抜け出す。

 

僕たちはマハラ山道、リーリエと出会ったつり橋についた。どうやら橋は修復されており、カプ・コケコのいる遺跡へと向かうことが出来るようになっていた。

 

「覚えていますか?私たちがここで出会った時の事……」

 

「……勿論だよ。あの時はほしぐもちゃんがオニスズメに襲われていて、僕は夢我夢中で助けたんだっけ。」

 

「あの時は本当にびっくりしましたよ。突然シンジさんが私の横を走って抜けていくんですから」

 

「あはは、僕は考えるよりも先に体が動いちゃうからね。」

 

僕とリーリエはここで出会った時のことを思い返す。思い返せば昔のように思えて、昨日のようにも感じてしまう、不思議な感覚だった。そこでリーリエは一つの提案をする。

 

「あの時、私たちはカプ・コケコさんに助けていただきました。今日はそのお礼をしようと思い、ここに来ました。」

 

「あの時は姿を見ることは出来なかったからね。面と向かってお礼をしたいと僕も思っていたよ。じゃあ行こうか!」

 

「はい!」

 

僕とリーリエは長いつり橋を渡っていく。今の僕たちにはこの程度のつり橋は怖くない。数多あった試練を乗り越えてきた僕とリーリエには。そしてカプ・コケコのいる遺跡に前で辿り着き、カプ・コケコが祀られているという祭壇に到着する。

 

「ここがカプ・コケコのいる……」

 

僕たちは祭壇に登り眼を瞑ってカプ・コケコを心の中で呼ぶ。すると不思議な感覚にとらわれ、目を開けると何もない空間に一人突っ立っていた。しかしすぐ目の前に黄色いポケモンが姿を現した。

 

「まさか……君がカプ・コケコ?」

 

僕は直感的に目の前にいるポケモンがカプ・コケコなのだと感じた。僕の言葉にカプ・コケコは頷き、僕のモンスターボールに指をさしてくる。どうやらカプ・コケコは僕とバトルがしたいようだ。

 

「そうか……わかった。それが君への感謝の気持ちとなるのなら、僕は喜んで君と戦うよ!」

 

あの気まぐれな守り神と言われるカプ・コケコから指名を貰ったのはなんだか偶然じゃないと僕は感じた。カプ・コケコは気まぐれであると同時に戦の守り神とも称されている。もしかしたら、カプ・コケコはこの島巡りの旅で僕が強くなり、また自分の目の前に立つ日を心待ちにしてくれていたのかもしれない。だったらその思いに応えるのも僕の使命だ!

 

僕はカプ・コケコとの対決を決意し再び眼を瞑る。すると僕はまたカプ・コケコの祭壇へと立ち、カプ・コケコと対峙する。僕のその姿を見たリーリエは、どうやら何かあったことを察知して静かに僕の後ろで見守ってくれている。そして僕はカプ・コケコに対し、一番の相棒を繰り出すことに決めた。やはりここは君しかいないよね!

 

「お願い!ニンフィア!」

 

一番の相棒であるニンフィアを繰り出す。そして戦闘が始まると同時に、フィールド全体が黄色に染まる。どうやら自動的にエレキフィールドが発生したらしく、それこそがカプ・コケコの特性のようだ。ロトム図鑑によると、カプ・コケコの特性はエレキメイカーと言うらしい。

 

「行くよ!カプ・コケコ!」

 

カプ・コケコと向かい合った僕たちは、カプ・コケコよりも先に動き出す。様子を見ずに動くのは愚行かもしれないが、あのカプ・コケコが相手だ。可能な限り後手に回るのは避けたい。そして僕はニンフィアに攻撃の指示を出して先手を取る。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

ニンフィアはシャドーボールを放ちカプ・コケコを牽制する。しかしカプ・コケコは避ける動作をしない。それどころか両腕で顔を覆い、ガードの態勢に入る。どうやら僕たちの力を試そうとしているようだ。シャドーボールはカプ・コケコに直撃するも、まるで効いていないかのように腕を振るって煙を払う。当然のことながら一筋縄ではいかないようだと思い、僕とニンフィアもより一層気合を入れる。

 

次に動いたのはカプ・コケコだ。カプ・コケコは周囲一帯に電気をばら撒いて攻撃してくる。恐らくほうでんだろう。あまりに範囲が広く、避けるのも困難であるため、ニンフィアはそれをまともに受けて飛ばされてしまう。なんとか持ちこたえて倒れるのを拒んだものの、やはりエレキフィールドの効果も相まって威力も格段に上がっている。そのため、ニンフィアの体力も大きく削られてしまった。

 

「やっぱり強いね、カプ・コケコ。でも僕たちは負けないよ!でんこうせっか!」

 

ニンフィアは素早い動きで翻弄しながらカプ・コケコに接近する。しかしカプ・コケコも分かっていたと言わんばかりに、こうそくいどうで対抗してくる。だが逆に言えば、それは僕の想定内でもある。

 

「ジャンプしてムーンフォース!」

 

接近してきたカプ・コケコを飛び越え、頭上からムーンフォースを放つ。カプ・コケコは突然の動きに対応できず、そのまま直撃をくらい飛ばされる。素早さが早いのは初めて出会ったあの時から分かっていた。だからこそ素早さで対抗してくることは読めていた。

 

「シャドーボール!」

 

態勢を崩した今が攻め時だと思い、僕は追撃の指示を出す。しかしカプ・コケコは、その追撃を急上昇することで回避する。そしてカプ・コケコは急降下して地面を殴る。そこから紫色の稲光が出現する。直感でやばいと感じた僕は、ニンフィアにジャンプして躱すように指示を出す。なんとか躱すことが出来て安心したのも束の間、カプ・コケコは自慢のスピードでニンフィアに接近し、直接殴りかかってくる。空中で対応できないニンフィアは飛ばされてしまい、更にダメージを負ってしまう。先ほどの技で上手く誘導して追撃を仕掛ける様子を見て、カプ・コケコは戦の守り神と称される理由が分かった気がした。

 

だがニンフィアも直ぐに態勢を整え反撃の構えをとり、すかさずでんこうせっかを仕掛ける。カプ・コケコもダメージが残ってるのか、先ほどのスピードよりも動きが衰えており、避けることが出来ず腹部にでんこうせっかが直撃する。その攻撃でお互いに位置が一定の距離まで離れて相手の姿を見据える。どちらもこれまでの戦いの疲労とダメージを抱えているため肩で息をしている状態だ。とは言えこれ以上長引くと、確実にこちらが不利だろう。僕は最後の一手を仕掛けるために手を交差させて構える。

 

僕の最後の一手。それはZ技しかない。特にカプ・コケコのような相手ならば出し惜しみしている余裕なんかない。カプ・コケコも僕たちの全力のZ技を待っていたかのように、電気を身に纏って向かい打つ態勢をとる。構えを見る限りでは、ワイルドボルトだろうか。僕とニンフィアも心を一つにして全力のZ技を放つ。

 

「カプ・コケコ!これが僕たちの全力だ!」

 

 

 

 

 

 

――――『ウルトラダッシュアタック!!』

 

 

 

 

 

 

僕たちの放ったZ技はノーマルZのZ技…………ウルトラダッシュアタックだ。カプ・コケコも同時のタイミングでワイルドボルトで迎え撃ってくる。そしてお互いの技が中央でぶつかり合う。どちらの技も威力が凄まじいため、祭壇一面に土埃が舞い上がり中央の様子が見えなくなってしまう。僕も爆風に飛ばされない様に帽子を押さえて必死に耐える。それほどまでの衝撃だった。

 

暫くすると爆風も収まり、少しずつ中央の様子が見えてくる。そしてハッキリと映った瞬間、その様子は驚きの光景だった。ニンフィアもカプ・コケコも互いにボロボロではあったが倒れていなかったのだ。一瞬僕のニンフィアがふらついて倒れそうになるも、僕が名前を呼んだ瞬間、なんとかして持ちこたえてくれた。その様子に僕が安心すると、今度はカプ・コケコがふらつき、耐えることが出来ずに倒れてしまう。その瞬間、僕とニンフィアの勝利が決定した。

 

ニンフィアはその様子を確認すると、僕の元へと走ってきて飛び込んでくる。僕はその突然の行動に驚いたものの、なんとか倒れこみながらニンフィアを受け止める。Z技の反動もあり、あれだけ強力なカプ・コケコの攻撃を受けていたのにも関わらず、僕の元へとやってきてくれるニンフィアに呆れながらも感謝の気持ちも抱きながらニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアも嬉しそうな笑みを浮かべている。

 

カプ・コケコもどうやら気が付いたようで、すぐに飛び上がり僕たちの姿を見据える。やはりカプ・コケコは強い。それもとんでもないほどに。カプ・コケコはどこか満足した様子で再び姿を消す。その時のカプ・コケコは、またいつか戦おう、と言ってくれたような気がした。

 

「やっぱりシンジさんはすごいです!あのカプ・コケコさんを倒してしまうなんて!」

 

リーリエが飛びつくような勢いで僕の元に駆け寄ってくる。正直カプ・コケコとの戦いは冷や冷やしたが、なんとか勝利をもぎ取ることができたことに僕は心の中で言葉にできないほどの喜びを感じていた。これもポケモントレーナーとしての性だろうか

 

「今の戦い……凄く疲れたよ。これ以上あの場を離れると怪しまれそうだし、早めに戻ろうか。」

 

「そうですね。じゃあ行きましょうか!」

 

僕はリーリエと村に戻ると決めた時、リーリエが僕の手を握ってきた。僕は少し恥ずかしいと感じたが、それでも嬉しく感じた。村に行くまでリーリエと手を繋いでいたが、それがミヅキにバレた時は茶化されて恥ずかしい思いをした。でも、なぜかそれが嫌には感じなかった。僕はその時、リーリエに対して初めて自分の気持ちを知ったような気がした。それでも僕は少し迷っていたのだ。この気持ちをどう表せばいいのかを……。

 

そして最後は僕が今まで旅を共にしてきたポケモンたちを皆に披露して、初代アローラチャンピオンになった日の楽しい思い出は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。僕の元には衝撃の真実が舞い込んできた。朝方にミヅキが僕の家に駆けこんできて今夜リーリエがこのアローラ地方を去るというのだ。僕は突然な知らせに驚きながらも、どこかでそんな日が来ると感じていたのかもしれない。

 

僕はこのままリーリエを見送るわけには行かない。夜まではまだ時間がある。それまでにリーリエにプレゼントを贈ろうと。せめてものお礼をしたかった。リーリエがいなければここまで充実した旅は味わえなかったし、僕がこの感情を抱くことはなかっただろうから。

 

僕はすぐにラナキラマウンテンに向かう。ライドポケモンのリザードンを借りていたため、辿り着くにはそんなに時間はかからなかった。僕はラナキラマウンテンで何時間もかけてあるものを探す。そしてようやくあるものが見つかった時には既に夕方だった。僕はそのあるものを持ちリーリエの待つ船着き場へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーリエ!」

 

「!?」

 

僕は船着き場でリーリエの姿を見つけた。僕の姿に気付いたリーリエは涙を見せながら笑って振り向いてくれた。

 

「リーリエ……本当に行っちゃうんだね」

 

「はい……。お母様はウツロイドの神経毒にかなりやられちゃっているみたいです。その毒を取り除くには、カントー地方にある薬を手に入れなければなりません。」

 

「そうか……カントー地方に……」

 

カントー地方は僕の地元だ。どれだけ遠いところかはよく知っている。でも僕にはリーリエを引き留めることが出来なかった。そんなことをすれば、リーリエの家族で暮らすという夢を壊してしまうことになりかねないから。

 

「シンジさん……それって……」

 

リーリエは僕の持っているものに気付く。僕はそれをリーリエに渡す。

 

「これ……リーリエにあげるよ……」

 

「え?でもこれってポケモンさんの……」

 

そうだ。僕が探していたものはポケモンのタマゴだ。これがなんのポケモンのタマゴかは僕は知っているが、あえてリーリエには伝えない。その方が楽しさも嬉しさも増えるからだ。

 

「シンジさん!?手がすごいボロボロですよ!?」

 

リーリエはタマゴを受け取ると、僕の手がボロボロになっていることに気付く。僕はタマゴを必死に探すのに地面を手探りでずっと探していた。これからリーリエのパートナーとして付き合ってくれる最初のポケモンを見つけるために。

 

「シンジさん……そこまでして私のために……」

 

リーリエは涙を流し泣きじゃくった。僕はそんなリーリエを抱きしめる。

 

「私……一生大切にします……。この子も……シンジさんとの思い出も……。」

 

リーリエはそう言って言葉を紡ぐ。リーリエは最後にさよなら、と言葉を紡ごうとするが、僕はその口を塞ぐ。唇を重ね合わせて……。

 

「ん!?」

 

リーリエは突然のことに戸惑っている。それでも僕は感情を抑えることが出来なかった。そして僕はリーリエと離れると本当の最後の言葉を紡ぐ。

 

「急にごめんね。でも最後はこう言って別れてほしいんだ。またねって。……大好きだよ……リーリエ。」

 

少し卑怯だとも感じたが、僕は今の気持ちをリーリエに伝える。リーリエは僕の言葉の意味を理解したのか、涙を流しながら最後の言葉を口にする。

 

「はい!またお会いしましょう!私も大好きです!」

 

そう言ってリーリエは僕にあるものを差し出す。それはピッピ人形だった。

 

「リーリエ……これは……」

 

「私からの贈り物です。少しくたびれていますが、私の大事にしていたものです。どうか、受け取ってください。」

 

僕はリーリエの差し出してくれたピッピ人形を受け取る。僕はこれ以上に嬉しい贈り物はないと思い、リーリエに微笑みながらお礼を言う。

 

「ありがとう、リーリエ。一生大切にするよ。」

 

「シンジさん……ありがとうございます!」

 

リーリエは最後に最高の笑顔を僕に見せてくれた。それだけでも僕はリーリエが遠くに行っても寂しくないと感じることができた。だってリーリエは僕の中にずっといてくれている。たとえ離れ離れになったとしても、必ずまた会える。僕がリーリエのことを思い、リーリエが僕のことを思ってくれている限り。

 

そしてリーリエは船に乗り、カントー地方へと旅に出る。これがリーリエにとっての新しい旅路だ。僕もリーリエを見送る。姿が見えなくなるまで何度も手を振って、声が枯れるくらいに何度も名前を叫びながら。いつか…………この世界のどこかで再会できると信じて…………。

 

 

 

 

 

 

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リーリエ
がんばリーリエ
おこリーリエ
しょんぼリーリエ←今ここ

原作にておかえリーリエが追加

もうちっとだけ続くんじゃよ


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約束の地へ

遂にカントー編突入回です。

それと気づいたときにはお気に入り件数が32件になってて驚きました。気ままに書いてただけとは言え、読んでくれている方がいるのはやっぱり嬉しいですね。定期的に更新してるからか、金曜か土曜辺りにお気に入りが増えてる印象です。これからも頑張って精進したいと思います。

取り合えずアローラ編最後なので楽しんでください!


リーリエがアローラを去ってから約2年が過ぎようとしていた。あれから周りにも多くの変化が起きた。

 

まず僕がチャンピオンとなったことで四天王を決めることになった。新しく四天王として選ばれた人たちは格闘タイプの使い手、ハラさん。岩タイプの使い手、ライチさん。ゴーストタイプの使い手、アセロラさん。そして飛行タイプの使い手、カヒリさんだ。

 

初めはクチナシさんが候補に挙がっていたが、クチナシさんが辞退したため彼の推薦したアセロラさんが務めることとなった。

 

更に、空いたしまキングの座にはミヅキが新たなしまクイーンとして就くことになった。アーカラ島のしまクイーンもグズマがしまキングとして引き継いでくれた。グズマも家庭や元師匠であるハラさんと色々あり、僕と再び戦うこととなったが、その際の戦闘で改心してくれたらしく、カプ・テテフにしまキングとして認められるように努力してくれた。

 

グラジオは代表が不在のエーテル財団を引き継ぐ形で、今は代理として引っ張ってくれている。グラジオはどうやら以前勝手にヌルを連れだしたことを悪く思っているようだ。それでも後悔はしていないらしい。僕にも母親を助けてくれたことに感謝をしてくれて、今では友人としての関係を築いてくれている。

 

プルメリも今は旅をして自身を見つめなおしたいといい、島巡りに挑戦している。強力なチャレンジャーたちが僕の目の前に現れてくれると思うと今からワクワクが止まらない。スカル団もグズマがしまキングとなり、プルメリも島巡りへと旅に出たことから解散することになった。寧ろ僕たちの行いを見たスカル団は、人助けにも尽力を尽くす集団となった。とはいえあの独特なファッションはいまだに健在ではあるが。

 

勿論僕も、まだチャンピオンとして君臨し続けている。僕はチャンピオンをしながら新人トレーナーへのアドバイスや、トレーナーズスクールへの特別講師としても招かれることがある。

 

そして僕は定期的にリーリエと手紙のやり取りをしている。僕の方では、チャンピオンとしての仕事やチャレンジャーの事、それからグラジオやミヅキのことを伝えている。リーリエも母親の容態やカントー地方の環境などについても書いてくれている。アローラでは見ないポケモンや、アローラとは違った姿をしたポケモン。僕の渡したタマゴから孵ったポケモンの話もしてくれる。僕が渡したポケモン…………ロコンは、どうやらリーリエによく懐いているようだ。最近では新しい技も覚えたとはしゃいでいた。

 

僕はリーリエと手紙での会話を楽しんでいると、ある事が書かれていた。それはリーリエがカントーで旅に出るのだとか。母親の容態もだいぶ落ち着き、昔よりも少し痩せてはいるが今では元気に暮らすことができるようになったと言う。その時母親に、リーリエも旅に出たかったら旅に出るよう勧められたようだ。僕には応援をしていて欲しい、と言ってくれたが、僕はあの時の約束を忘れたわけではない。必ずリーリエと旅に出ると…………。

 

そんな時に、グラジオの元へもリーリエが旅に出るという通知が届いたようで、僕のいる場所…………チャンピオンの間へと訪れてきた。

 

「……シンジ。リーリエから聞いた。あいつも旅に出るそうだな。」

 

「うん。僕も聞いたよ。」

 

そしてグラジオは僕に一つの封筒を渡す。どうやらこれを開けろと言っているようで、僕は封筒の中身を確認してみた。すると中に入っていたのはカントー行きのチケットだった。

 

「グラジオ……これって……」

 

「カントー行きのチケットだ。お前がリーリエの傍にいてやってくれ。オレは今更あいつの兄貴面をすることは出来ない。お前なら安心してリーリエを任せられる。」

 

グラジオはリーリエのことを気にかけているようで、僕にリーリエの面倒を見てほしいと頼んでくる。グラジオはそんなことを言っていたが、僕にはわかる。今でもグラジオは妹のことも、母親のことも大事に思ういいお兄さんなのだと。

 

「……分かった。僕は行くよ。その間……アローラの事頼めるかな?こんなことを頼めるのは君とミヅキだけだからさ。」

 

「……ふっ。ああ、任せておけ。俺はお前に勝つまでは誰にも負けない。」

 

「ありがとう……グラジオ……。じゃあ行ってくる!」

 

グラジオはいつものポーズを決め、振り返らずに僕のことを見送ってくれる。僕はカントー行きの船に乗り、ミヅキやククイ博士、母さんなどの多くの人に見送られながらアローラ地方を後にする。僕が大切だと思う人の元へ…………。

 

 

 

 

 

 

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そして僕は今この場にいる。リーリエと出会った時から今まで色々なことがあった。僕はあれからリーリエに感謝してもしきれないほどの恩を感じている。そして、他の人には絶対に抱くことはないこの気持ちも。

 

僕は今までリーリエと出会ってからのことを思い返す。今までの旅とは違う充実した旅を味わえた。そんな感傷に浸っていると、まもなくカントー地方に到着するというアナウンスが流れる。僕は久しぶりにリーリエに会える喜びと、新しい冒険が始まるのだというワクワクが溢れてくる。そんなことを考えながら、僕は遂に懐かしのカントー地方へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

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ここから先は誰も知らない、少年少女がきままにカントー地方を旅をする物語である。期待と希望を胸に、彼らは何を見ることになるのだろうか。




ポケモンUSUMの旅パ様にブイズを厳選した変態がここに。性格、夢特性、性別、個体値、遺伝、オシャボ、ここに完璧なパーティを揃え後は発売当日を待つばかり。それまでの繋ぎに…………モンハンフロンティアやってます。

アマツ乱獲しなきゃ(使命感


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カントー編
再会する二人、新たな旅の始まり!


今回よりカントー編突入です!これが書きたかった!……ただオリジナルストーリーが思いつくかが問題ですがね。

そして遂にニンフィアとイーブイの等身大ぬいぐるみが届きました!しかしやたらデカい。全種類買いたかったけど、全種買ったら主の部屋が埋め尽くされるのは確実だった……。

なんかサブタイをアニポケっぽく?してみました。特に意味なんてない。


僕は今カントー地方に到着した。久しぶりのカントーの空気……アローラの空気も美味しかったけど、カントーの空気もまた格別だ。

 

ここはクチバシティ。カントー地方の港町で、カントー地方の中でもかなり大きな町でもある。リーリエはオーキド博士に会うため、マサラタウンで暮らしていると聞いている。そのため僕は先ずマサラタウンへ向かうことにした。とは言え、ここからマサラタウンまでの距離はかなりある。なので僕はすぐにポケモンセンターに行き、オーキド博士に連絡を取ることにした。

 

「あっ繋がった繋がった。オーキド博士、聞こえますか?」

 

「おー!その声はシンジか!久しぶりじゃの!元気にしとったか?」

 

僕はオーキド博士にポケモンセンターにあるテレビ電話を繋げる。

 

「はい、この通りです。それで、僕は今カントー地方のクチバシティにいるのですが……」

 

「なんと!?こっちに戻ってきておったのか!?」

 

僕はカントー地方に戻ってきていることを伝えると、博士は驚きながらも嬉しそうな表情を見せた。そして僕がマサラタウンへ行きたい、と伝えると迎えの助手を送ってくれると言ってくれた。僕はしばらく待つと、ヘリコプターが迎えに来てくれたのでそれに乗り込む。僕はそのままマサラタウンへと降り立ち、オーキド博士の元へと向かう。

 

「オーキド博士!ご無沙汰しております!」

 

「シンジ!よくきたの!歓迎するぞい!」

 

オーキド博士は僕と久しぶりに会い、僕のことを歓迎してくれた。僕はアローラでの出来事を報告し、暫くの間話し合った。やはり研究家だからか、カントーにはいないポケモンの話をすると真剣になって聞いてくれた。

 

その後僕は、博士にリーリエのことを尋ねると、僕のことをよく話してくれていたようですぐに話が伝わった。リーリエは母親の薬のことをオーキド博士に相談し、博士はそのことについて全面的にバックアップしてくれていたらしい。

 

リーリエは旅に出る際にもここに立ち寄り、初心者用のポケモンを一匹授かったらしい。リーリエはどうやらフシギダネを選んだようだ。僕はリーリエがいつ旅に出たのかを尋ねると、出たのはつい昨日の事らしい。と言うことはあまり遠くには行っていないことになる。恐らく方向音痴のリーリエの事だ、トキワの森で迷っているころなのではないだろうか。

 

オーキド博士は、リーリエに会う前にリーリエの母親……つまりルザミーネに会ってきてはどうだ、と提案してきた。正直今出会うのは少々気まずいような気もするが、それでも挨拶はするべきなのだろう。突然娘にあんな事をしてしまった僕のことをどう思っているのかは分からないが……。

 

僕はオーキド博士にリーリエの自宅を教えてもらう。意外なことに研究所の近くにあるようで、僕はルザミーネ…………いや、ルザミーネさんの家へと向かうことにする。僕はルザミーネさんの家へと辿り着きインターホンを鳴らす。すると家からは一人の女性が出てきた。

 

「あら?シンジ君?どうしてここに?」

 

間違いない。以前より痩せてはいるがルザミーネさん本人だ。僕の事は覚えてくれているようで、家に上がるように勧めてくれる。僕も少し遠慮しながらだが家へと上がらせてもらう。リビングは綺麗に片付いており、ポケモンのぬいぐるみなどが多く飾られている。リーリエやルザミーネさんのイメージと同じく白色の綺麗な家だった。

 

「こんなものしかないけど良かったらどうぞ」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

ルザミーネさんは僕にお茶と煎餅を出してくれる。僕はその気遣いに感謝する。そして机を挟んで僕の前に座る。

 

「2年前の時はごめんなさいね。私はあの時みんなに迷惑をかけてしまった。特にあなたとリーリエには本当にひどい事を……」

 

ルザミーネさんはあの時のことを鮮明に覚えているようで、僕にあの時のことを頭を下げて謝ってくる。僕はあの時の事は全然気にしていないといい、むしろ今は元気に暮らせていることに嬉しさを感じていると伝える。

 

「……ふふ、本当に優しいのね。あの子が惚れる気持ちもわかるわ。」

 

「え?」

 

「あの子……リーリエはね、こっちに来てからいつもあなたのことを話しているのよ。あなたがポケモンバトルが強いことも、誰にだって優しいことも、ピンチの時にいつもあなたが助けてくれたことも。」

 

リーリエはそんなことを……。リーリエが僕のことを話してくれているだなんて、なんだか凄く嬉しいな。

 

「それからリーリエとキスをしたこともね。」

 

「ッ!?す、すいませんでした!」

 

僕はその言葉に驚きと焦りを感じ土下座をする。咄嗟の事だったとはいえ、僕はリーリエの気持ちを考えずに行動に出てしまった。今思えばそれは勝手な行いだったのだと後悔する。しかしルザミーネさんはその事について怒る意思を見せなかった。

 

「謝らなくてもいいのよ。あの子、恥ずかしがりながらもそのことを嬉しそうに話していたのよ?リーリエ自身も私にシンジ君のことが大好きっていってくれてたしね。」

 

「リーリエが?」

 

ルザミーネさんは僕にリーリエが話してくれたことを聞かせてくれた。あの時は卑怯なことをしたとも思ったが、それでもリーリエは僕のことを思ってくれたことを知ると、僕は嬉しさのあまり泣き出しそうになった。でもルザミーネさんの前でそんなだらしない真似は出来ないので、必死に涙をこらえる。

 

「これからリーリエのことを追いかけるんでしょ?あの子のこと、お願いするわね。」

 

「!?はい!分かりました!」

 

僕はルザミーネさんの言葉に返事をする。僕は例え何があってもリーリエのことを守っていくと固く決意する。リーリエが僕のことを思ってくれてるいるように、僕もリーリエのことを思っているから……。

 

「ところで、私の事はお義母さんと呼んでくれないのかしら?」

 

「え!?えっと……恥ずかしいのでまだ///」

 

「あらあら……うふふ」

 

ルザミーネさんのそんな冗談交じりな言葉を聞きながら、僕はその場を去ることにしリーリエを追うことにした。でも、いつかルザミーネさんのことをお義母さんと呼べる日がくるのかな、と内心では少し考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~、ここはどこなのでしょうか……」

 

私ことリーリエは今トキワの森で迷子になっているところです。私が方向音痴って事をすっかり忘れていました……。今まではシンジさんがいてくれたので迷うことはなかったのですが……。ってこんなんじゃいけないですよね!こんな姿をシンジさんに見せてしまってはシンジさんに笑われてしまいます!私はシンジさんのような立派なトレーナーになると決めたのですから!

 

「がんばリーリエです!私!」

 

私は手をギュッと握り気合いを入れなおす。この言葉はシンジさんに以前つけていただいた言葉です。なんだかその響きが気に入っちゃて今でも使わせていただいています。

 

私が森の中を進んでいくと、コクーンさんがいっぱいぶら下がっているところに出ました。なんでしょう……なんだか嫌な予感がします。

 

そんな私の予感も束の間、森の中からスピアーさんの群れが現れました。どうやらここはスピアーさんの巣だったみたいです。って冷静に分析している場合じゃありません!早く逃げなくては!

 

私はスピアーさんから全力で逃げ出します!しかしスピアーさんの動きは速く、私の力では振り切ることは出来ません。このままではやられてしまう……と思った矢先、突如目の前に一筋の電気が通りがかりました。スピアーさんはそれに驚きこの場を去っていきます。一体何が……と思った時、私の聞きなれた声が耳に入ってきました。

 

「リーリエ!大丈夫だった!?」

 

絶対に聞き間違えることも見間違えることもありません。だってその方は、私をいつも助けてくれて、私のことを思ってくれて、私が大好きな方なのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はマサラタウンを出てトキワシティに辿り着いたものの、そこにはリーリエの姿を見ることはなかった。話を聞いたところによると、それらしい人物は少し前にトキワの森に入っていったという目撃情報を聞くことができた。そして僕はトキワの森に入り、リーリエを探そうとするが、その時に女の子が叫ぶ声を聴いた。僕はそちらの方角へと向かい確認してみると、リーリエがスピアーに襲われてピンチになっていた。僕はすぐサンダースを出して10まんボルトで追っ払ってもらいリーリエを助ける。

 

「リーリエ!大丈夫だった!?」

 

僕はすぐさまリーリエの元へと駆けつけ、リーリエの無事を確認する。幸いにもリーリエは怪我をしていないようで、僕のことを涙を流しながら見てくれている。

 

「シンジさん……どうしてここに……」

 

「約束したからね。また必ず一緒に旅をしようって。それにリーリエがピンチになれば、僕はいつでもどこでも駆けつけるよ。」

 

「!?シンジさん!」

 

リーリエは驚いた表情で、僕がなぜここにいるのかを尋ねてくる。僕はその問いに笑顔で答える。リーリエは僕に勢いよく抱き着いてくる。僕もリーリエの気持ちに応えるために強く抱きしめ返す。

 

「シンジさん……私、ずっとあなたに会いたかったです……」

 

「……うん、僕も同じだよ。リーリエ……また会えてよかった……」

 

リーリエは涙をながしながら話す。僕はそんなリーリエの顔を見つめる。そして僕とリーリエは分かれた時と同じように唇を重ねる。

 

「……ぷはっ、えへへ、またしちゃいましたね」

 

「嫌だった?」

 

「ううん、嫌なんかじゃないです。むしろとても嬉しいです!私、シンジさんの事大好きですから!」

 

「……うん、僕もリーリエの事が大好きだよ。今までも、そしてこれからも……」

 

「はい!私もです!」

 

そして僕たちは再び唇を重ねる。僕もリーリエも久しぶりの再会に喜びを隠せない。でも、僕はずっとリーリエに会いたかったんだ。あの時からリーリエの事を忘れたことなんて一度もなかったから。

 

こうして僕とリーリエは再会し、二人で旅をすることを決意する。これからのリーリエとの旅は、どんなものになるかは分からないけど、それでも僕は一つだけ分かることがある。リーリエとの旅は絶対に楽しい……それだけは断言できる。だって、僕はこんなにもリーリエの事が大好きなのだから……。

 

 




うーん……ここから先の流れが中々迷う。候補は色々あるんですけどね。まあこれまで通り気ままに毎週更新でやっていくつもりです。一番の問題はやる気が続くかどうかですが……。

そう言えばUSUMでは悪の組織が全て復活してレインボーロケット団が登場するのだとか。しかもPVではサカキ様がミュウツー使ってたし、なかなかストーリーが大容量になっててますます期待してしまいますね。


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ニビシティ到着!二人の旅立ち!

前回の宣言通り続き投稿です。そして二話目から早速サブタイトルが思いつかなかった……メンゴ。

にしてもUSUMのストーリーマジで神。難易度はそれなりに高かったけど、ほとんどニンフィアが無双してくれたので特に問題は無かったです。毒毒入手後はブラッキーも活躍の場が増えたし、とける覚えてからもシャワーズが扱いやすくなったので比較的楽に進みました。

そして安定のピンクファッションでフリーに潜ってます。初戦は見事勝利しましたが、勝率で言えば五分五分ですね。アーゴヨンが結構厄介と言うか、大分刺さってる感じあります。スカーフ型が殆どみたいだから、サンダースだけじゃ対処が厳しい。遭遇率も高いからチョッキグレイシアも採用の余地ありかな……。あっ、どんな環境になってもニンフィアは外しません。


僕とリーリエはトキワの森で無事に再会した。案の定リーリエはトキワの森で迷子になっていたようで、僕はその解決策を考える。そして一つの結論に至った。

 

「リーリエって確かフシギダネを貰ったんだよね?」

 

「え?はい、そうですけど……」

 

「だったらフシギダネに案内してもらうといいよ。フシギダネは草タイプだから森についても詳しいはずだし」

 

「なるほど!その手がありましたか!」

 

リーリエはフシギダネをボールからだす。

 

「フシギダネさん、この森から出たいのですが案内をお願いできますか?」

 

フシギダネは返事をして頷くと、その場で振り向いて歩き始める。木々のにおいや風の向きで出口がどこか分かるようだ。

 

「恥ずかしいですね、こんなことに気付かないだなんて」

 

「最初は誰だってミスするものだよ。僕も昔は色んなところで戸惑って困ってたこともあったからね。」

 

「え?シンジさんもですか?」

 

僕は自分が旅に出た時のことを少しリーリエに語る。ポケモンを怒らせてしまい襲われてしまったこと、見たことのないポケモンに興奮していたら木にぶつかってしまったこと、他にも様々なことがあったが語るときりがないくらいだ。恥ずかしい思い出でもあるが、僕にとってはそれも一つの思い出であり、いい経験だったと思っている。

 

「シンジさんも昔は色々あったんですね。」

 

「うん。僕も旅に出た時は未熟者だったからね。今でも完璧には程遠いし、まだまだこれから成長しなきゃって思ってるよ。」

 

「そんな!シンジさんは全然未熟者じゃないですよ!少なくとも私にとってはかっこいい素敵な方です!」

 

リーリエが僕の事をそう評価してくれる。でも面と向かって言われると照れちゃうな。リーリエも今のセリフに恥ずかしくなったのか、赤くして顔をそらしてしまう。

 

「ご、ごめんなさい……急に変なことを言ってしまって……」

 

「う、ううん。恥ずかしかったけど嬉しいよ。ありがとう、リーリエ。」

 

「シンジさん……」

 

リーリエはまた僕に笑顔を見せて手を繋いでくる。やっぱりリーリエの手は柔らかくて凄く温かい。それに笑顔もあの時と一つも変わっていない。あの時のままだ。僕がリーリエの事を好きになったあの時となにも……いや、もしかしたらその時以上に輝いているかもしれない。

 

僕とリーリエはフシギダネについて行き森の外へと出る。トキワの森を抜けるとその先はニビシティだ。そこで少し休もうと僕たちはニビシティに目指す。

 

僕たちはニビシティへと到着すると、すぐにポケモンセンターに立ち寄ることにした。日もだいぶ沈んできたし、今日はここで泊まろうと判断する。ただここで問題になるのは……

 

「部屋……どうしようか……」

 

そうだ、泊まるための部屋をどうするかだ。二人部屋を取ってもいいのだが、男女一組が一つの部屋に泊まるというのはどうなのだろうか。そこでリーリエが先に口を開く。

 

「私……シンジさんと一緒ならいいですよ///」

 

リーリエはそう言ってくれた。僕もリーリエの言葉がすごく嬉しくて、リーリエの照れた顔に逆らえずに一緒の部屋で泊まることとなった。幸いにもベットは二つあったので助かった。この状況で一緒のベットなんて言ったら、僕は自分の気持ちを抑えることが出来なかったかもしれない。

 

「すいませんが先にシャワー浴びさせていただきますね」

 

「うん、ゆっくりしていいよ」

 

リーリエは女の子だから早くシャワーを浴びたかったのだろう。男としてはこの状況で落ち着くというのは少々無理がある。好きな人が隣でシャワーを浴びていると尚更だ。

 

「ただいま上がりました」

 

リーリエがシャワーを浴び終わって浴室から出てくる。しかし僕はそのリーリエの姿を見て見惚れてしまった。それもそうだろう。髪は濡れていてどことなく色気が出ているというかなんというか……。更にリーリエも今は薄着に着替えているので余計意識してしまう。今まではこんなことなかったのになぜだろうか……。

 

「シンジさん?どうかしましたか?」

 

「い、、いや!?なんでもないなんでもない!ぼ、僕もお風呂入ってくるね!」

 

リーリエが僕の顔を覗き込みながら僕の様子を尋ねてくる。僕は恥ずかしさのあまり逃げるようにして浴室に入る。これ以上リーリエと一緒にいると別の意味で変になってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジさんさっきはどうしたのでしょうか?顔がすごい赤かったですけど……。もしかしたら私の姿に見惚れてくださっていたとか?

 

「……それは考えすぎですかね。でも……もしそうだったら嬉しいです……。」

 

私はシンジさんの心情を心の中で考えていた。私はシンジさんと島巡りの時に少しだけ旅をしましたけど、その時からシンジさんにはお世話になりっぱなしでした。そして私なんかには勿体ないくらいに優しくて、それでいてカッコ良くて……だからこそ私はシンジさんに惚れたんだと思います。この感情は絶対に他の人に抱くことはないのだろうと思いながら。

 

シンジさんもお風呂から上がり、疲れていた私たちは眠りにつくことにした。しかし、私は今困ったことになってしまいました……。

 

「スー……スー……」

 

ど、どうしましょう。シンジさんの寝顔が近くて眠れません///。一緒の部屋でいいと言ったのは私ですけどまさかこんな状況なってしまうとは……。

 

「……リーリエ……」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

私はシンジさんに突然名前を呼ばれて驚きのあまり変な声をあげてしまう。ま、まさか起きているのでしょうか……。

 

「……リーリエは……僕が守るから……」

 

「え?」

 

「だい……すきだよ……」

 

「……シンジさん」

 

どうやら寝言のようでした。起きていなくて良かったですけど、夢の中で私の事を見てくださるなんて……。一体どんな夢を見ているのでしょうか。夢の中でも私と一緒に旅をしてくれているのでしょうか。……ふふ、それなら私も嬉しいですね。私、この人の事を好きになってよかったです!

 

私はきっといい夢が見られるのだろうと思い、安心して眠りについた。シンジさんがこれからもずっと傍にいてくれるのならもう怖いものは何もないと。絶対に楽しい旅になりますよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~翌日~~~

 

「シンジさん!朝ですよ!起きてください!」

 

「んん……ふえ?リーリエ?もう朝なの?」

 

僕はリーリエが起こしてくれてようやく目覚めることができた。正直僕は一度寝ると中々起きられず、目覚めが非常に悪いのだ。リーリエが起こしてくれなければいつまで寝ていたか見当がつかない。

 

「シンジさん、すっかりお寝坊さんですね。」

 

「あはは、ごめんごめん。僕寝起きが悪くてなかなか起きられないんだよね」

 

「ううん、別にいいですよ。だ、だって……シンジさんの寝顔が見られましたから///」

 

「え?」

 

リーリエは顔を赤くしながらそう言う。僕の寝顔見られてたのか、それって結構恥ずかしいような。

 

「へ、変な寝顔してなかった?」

 

「全然です!可愛い寝顔でしたよ///」

 

「っ///」

 

可愛い寝顔って……一体僕はどんな顔をして寝ていたんだ!?変な寝言も言ってないよね!?もしそうだったら僕どうしていけばいいの!?と、取り敢えず顔を洗ってスッキリしよう!うん、そうしよう!

 

「ぼ、僕顔を洗ってくるよ!」

 

「あっ、シンジさん!そんなに慌てたら!」

 

僕は恥ずかしさのあまり焦ってしまい、シーツで足を滑らせてしまう。寝起きと言うこともあり、突然の事に僕もリーリエも対応しきれなかった。

 

「うわっ!?」

 

「ひゃっ!?」

 

僕はリーリエの方に倒れこんでしまう。僕は早くどかなきゃと思い目を開ける。すると……

 

「っ/////////」

 

「////////////」

 

僕はリーリエを押し倒す形でベットに倒れこんでいた。こ、この状況は流石にマズイ。このままじゃ僕も理性が保てなくなってしまう。僕はそう思いすぐにリーリエから離れる。

 

「ご、ごめん!」

 

「あっ、い、いえ///き、気にしないでください///」

 

う~、なんて失態をしてしまったのだろうか……。こんなことは早く忘れなければ顔が爆発してしまいそうだ。

 

僕は顔を洗い、さっきの事を忘れようとする。でもあの時のリーリエの顔を思い出すと中々忘れることができない。まさかこれが俗にいうラッキースケベというやつなのだろうか……。

 

僕たちはその後食堂に行き朝ごはんを食べる。互いにさっきの事が忘れられないのか、顔を合わすたびに逸らしてしまう。な、なんとか会話を持ち出さなければ。そ、そうだ!

 

「り、リーリエはこの旅で何かやりたい事でもある?」

 

「や、やりたい事……ですか?」

 

僕はリーリエにこれから何をしたいのかを尋ねてみた。よし!なんとか会話を作ることができたぞ!

 

「そうですね、やっぱりシンジさんみたいに強いトレーナーになってみたいです。」

 

「僕みたいに?」

 

「はい、シンジさんはすごく強くて、お母様の野望を止めただけでなく、アローラのチャンピオンにまでなって、そしてあの守り神であるカプ・コケコさんに勝ってしまうほどのトレーナーです。私はそんなシンジさんに憧れて、そして今まで守っていただきました。ですから今度は私もなにかを守ってあげれるようになりたいんです!」

 

リーリエは真っ直ぐな眼差しで僕の事を見つめてくる。リーリエはそんな思いで旅に出たんだね。じゃあ僕もリーリエのために力になってあげなきゃ!

 

「だったらジム巡りなんてどうかな?」

 

「ジム巡り……ですか?」

 

「うん。このニビシティにもあるんだけどね、カントー地方には多くの街にポケモンジムが用意されているんだ。そのポケモンジムではそれぞれのタイプに精通したジムリーダーたちがいて、バトルをして勝利するとジムバッジが貰える。それを8つ集めるとセキエイリーグで同じく勝ち抜いてきた多くのトレーナーたちと戦うことができるんだ。」

 

リーリエは僕の話を興味深そうに真剣に聞いてくれている。

 

「私にも出来るのでしょうか……」

 

「初めは誰だって強くなんかないよ。僕もジム戦で何度も負けたりしたこともあった。でも諦めずに再挑戦したら勝ち上がることができたんだ。みんな最初からのスタートなんだから自信を持っていいよ。」

 

僕は不安そうにしているリーリエに励ましの言葉をかける。するとリーリエは迷いがとれたように、僕の眼を見て決意を告げる。

 

「私……ジム巡りに挑戦してみます!」




非シリアス展開を目指してみましたが正直難しいです……。取り敢えずカントー編は二人がイチャイt……旅しながらリーリエが成長できるよう描けたらいいかなと思ってます。基本主人公はアドバイスがほとんどになる可能性がありますが。

それはそうと早速バトルツリーシングルで50連勝しましたが、カプ神が強すぎてヤバイ。パーティはテテフ、ブルル、メガギャラでやりました。意外と安定したみたいで一回目の挑戦で突破出来ました。テテフにスカーフ持たせればクロバットも重くないよ!やったねたえちゃん!

そしてリーリエとのマルチも楽しいですね。リーリエ生存ルートだけでも嬉しいのにマルチバトルも用意してくれるとか、ゲーフリと原作ロトム図鑑有能アニポケロトム図鑑無能。

そして今日のアニポケではがんばリーリエが登場するよー!原作主人公がいないから代わりにグラジオがエスコートするみたいですね。これからの展開も期待です!


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VSニビジム、リーリエの挑戦!

主です。また家にはブイズの新たなぬいぐるみが増えました。しかし、グレイシアとリーフィアのぬいぐるみがそろそろ欲しい!小さいのではなく少し大きめのやつが。ポケセンでも全然見ないのが不思議と思う今日この頃です(野太い声)

まあそんな事より、活動報告に要望が届いてましたね。アニポケとのコラボ回が中々に評判が良かった?ようなので面白そうですしやってみてもいいですね。問題としてはリーリエを連れて行く時に、アニポケと原作の呼び方をどうするかですが……。とは言えこの間番外編やったばかりなのでもう少し後になると思いますが。やるとしたら何かの記念の日にやりたいですね。例えばアニポケサンムーン最終回記念とか、お気に入り件数〇件突破!とか、この小説が〇話達成翌週とか。

兎も角、何か要望等があればどんどん書いちゃって構いません。雑談でもオールok!ゲームでのアドバイスや本編攻略法が聞きたいでもなんでもいいです。対戦は特に強くない……と言うかブイズ以外あまり詳しくないけどね!(謎の自信)

長い前書きとなりましたが本編どうぞです!


「私……ジム巡りに挑戦してみます!」

 

「リーリエ……」

 

「ジム巡りに挑戦して……必ずシンジさんのように強いトレーナーになってみせます!」

 

リーリエは決意を固めた眼差しで僕を見ながら今の気持ちを言う。

 

「うん、なら僕も出来る限りサポートしていくよ。リーリエなら絶対に立派なトレーナーになれるよ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

僕はリーリエの気持ちに応えようと、リーリエのサポートしていくことを決意する。リーリエもそんな僕に頭を下げながらお礼を言う。その時、周りの人たちが微笑ましい様子で僕たちの事を見ていたことは、僕とリーリエは気が付かなかった。

 

「じゃあ先ずはここニビシティのニビジムだね。」

 

「はい!でもここのジムは一体どのようなジムなのですか?」

 

リーリエはニビジムについての特徴を尋ねてくる。僕はその問いに答えようと説明する。先ずはこのニビジムは岩タイプの使い手であること。それから熱い熱意を持ったトレーナであること。あと…………なぜか上半身が半裸であること。自分を鍛えるためにそうしているらしいが、正直僕にはついて行くことができない。

 

「な、なるほど。ではフシギダネさんは岩タイプのポケモンに相性がいいというわけですね。」

 

「そうだね。でも気を付けて、セオリー通りに上手くいかないのがポケモンバトルだから。」

 

「確かにそうですよね。シンジさんも島巡りの時、幾度となく相性の悪いポケモンで勝ち進んでいましたからね。」

 

リーリエも僕の戦っていた姿を思い返し、ポケモンバトルは奥が深いのだということを改めて実感する。今のリーリエの手持ちはフシギダネと僕が渡したアローラの姿をしたロコンだ。アローラのロコンは炎タイプではなく氷タイプだ。氷タイプは岩タイプとの相性は悪い。それでも勝負がどう転ぶか分からないのがポケモンバトルだ。

 

「では早速行ってみましょう!」

 

リーリエはどうやら初めての挑戦にワクワクを隠せないようだ。ご飯を食べ終わった僕はリーリエに連れられる形でポケモンセンターを後にする。しかしリーリエがニビジムの場所を間違えて僕が連れ戻す形になってしまった。なんだかんだ言ってリーリエはあわてん坊な部分がちらほらと見える。でもそこが可愛いと内心では思ってしまう僕もいる。

 

「う~、また道を間違えてしまいました……」

 

リーリエはあからさまに落ち込んだ様子を見せる。少し目元がウルウルとしているが、それが可愛いと思い僕は指摘することが出来なかった。

 

「ごめんなさい……またご迷惑をおかけして……」

 

「ううん、気にしなくていいよ。それよりほら、あれがニビジムだよ。」

 

僕は見えてきた建物に指をさしてそう答える。

 

「あれがニビジム……ですか。」

 

入口には【ここはニビジム 強くて硬い石の男】と書かれている。リーリエもこの看板に書かれた内容を見て緊張してきたのか、深呼吸をする。

 

「や、やっぱり実際に来てみると緊張しますね。シンジさんはいつもこんなプレッシャーと戦っていたと思うと、改めて感心させられます。」

 

「うん、今でも僕は何かに挑戦するときは緊張するよ。でも、挑戦する前は緊張するよりもやっぱりワクワクする気持ちがこみ上げれ来るんだ。リーリエも感じない?」

 

「!?はい!私は今、すごくワクワクしています!」

 

リーリエは少し緊張がほぐれたみたいで手をギュッと握りしめ、笑顔で気合を入れなおす。ここから先に入れば、僕は応援することしかできないけれど、それでもリーリエなら必ずこの試練も乗り越えられると僕は信じている。

 

「で、では行きます!」

 

リーリエはニビジムの門を開ける。そしてリーリエは初めての挑戦の場へと一歩を踏み出す。

 

するとジムの中は真っ暗だったが、突然明かりが点きバトルフィールドが姿を現す。岩まばらに配置された岩タイプにふさわしいフィールドだ。その奥には一人のトレーナーが立ち、挑戦者を待ち構えている。彼こそがここのジムリーダー本人だ。

 

「ようこそ!俺がこのニビジムのジムリーダーのタケシだ!」

 

ジムリーダーのタケシはチャレンジャーに自己紹介をする。

 

「む?シンジもいるのか?久しぶりだな!」

 

「うん、久しぶりだねタケシ」

 

僕はタケシに挨拶をする。僕が挑戦したのはかなり前の事だが、それでも覚えてくれているみたいだ。上半身裸なのは相変わらずだけど……。

 

「今日のチャレンジャーはシンジの横にいる君か。どうやら新人トレーナーのようだね。」

 

「は、はい!リーリエと申します!よろしくお願いします!」

 

リーリエは少し緊張した様子で挨拶を交わす。どうやら完全には緊張は解けていないようだ。

 

「僕はあっちの席から見てるから頑張ってね。リーリエなら大丈夫だよ!」

 

「シンジさん……。はい!私、頑張ります!」

 

「うん!がんばリーリエ、だよ!」

 

僕はいつものおまじないでリーリエに激励する。リーリエもその言葉を受け取ってくれたようで、再び自分の手をギュッと握りしめる。僕はそんなリーリエの様子を見て、リーリエなら大丈夫だと信じて観客席に移動する。

 

「緊張は解けたかい?準備が出来たら早速始めようか!」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

タケシもリーリエも準備ができたようで、その様子をみた審判が台の上に乗りルールを説明する。

 

「それではこれより、ジムリーダータケシ対チャレンジャーリーリエによるジム戦を始めます!使用ポケモンは2体!どちらかのポケモンが2体とも戦闘不能になったら試合終了です!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!では、お互いにポケモンを!」

 

「出てこい!イシツブテ!」

 

審判の説明が終わり、タケシが繰り出したのはイシツブテだ。

 

「最初はイシツブテさんですか。確か岩と地面タイプを持っていたはずです。なら私は、お願いします!フシギダネさん!」

 

リーリエが最初に繰り出したのはフシギダネだった。タイプ相性では圧倒的に有利だが、どうなるか……。僕は静かに見守っていようと判断する。

 

「それでは……バトル開始!」

 

「先ずはそちらからどうぞ」

 

「それでは遠慮なく行かせてもらいます!フシギダネさん!つるのムチです!」

 

「イシツブテ!すなかけで防ぐんだ!」

 

フシギダネはサイドから二本のツルを出してイシツブテ目掛けて叩きつけようとする。しかしイシツブテは砂を巻き上げつるのムチをはね返す。さすがはジムリーダーと言うだけあって苦手なタイプの対策は万全ということなのだろう。

 

「それなら今度はたいあたりです!」

 

「イシツブテ!こっちはころがるだ!」

 

フシギダネは真っ直ぐとイシツブテに向かい走る。イシツブテはころがるでフシギダネに対抗する。イシツブテはフシギダネをいとも容易く吹き飛ばしてしまい、フシギダネは岩にぶつかってしまう。

 

「フシギダネさん!?」

 

「これで終わらせるよ!そのままころがる!」

 

フシギダネは立ち上がりまだ大丈夫だという意思を示すが、イシツブテの攻撃は止まることはない。リーリエもどうするかを悩んでいるようだ。

 

(どうすれば……こんな時、シンジさんなら……)

 

――僕は絶対に諦めない!

 

(!?そうです。シンジさんならこんな状況でも諦めることはありません。でもフシギダネさんの力ではイシツブテさんには……そうです!それなら相手の力を利用すれば!)

 

「フシギダネさん!ギリギリまで引き付けてください!」

 

フシギダネはリーリエを信じてイシツブテを引き付ける。どうやらリーリエはこの状況の打開策を見つけたようだ。

 

「もう少しです……もう少し……」

 

イシツブテの攻撃はどんどん近づいてフシギダネを捉えている。でも僕にはなんとなくリーリエの考えていることが分かる気がする。

 

「今です!ジャンプして躱してください!」

 

フシギダネはジャンプしてイシツブテの攻撃を避ける。するとイシツブテはその勢いのまま岩に激突し動きを止めてしまう。

 

「そこです!つるのムチ!」

 

イシツブテはもろにつるのムチを受けてしまい、そのまま地面に叩きつけられる。つるのムチは草タイプの技でイシツブテにとってはかなり効果の高い技だ。イシツブテは目を回し戦闘不能状態になっている。

 

「イシツブテ!?」

 

「イシツブテ、戦闘不能!フシギダネの勝ち!」

 

「戻れ!イシツブテ!」

 

審判の判定が下され、イシツブテはモンスターボールに戻される。

 

「中々やるな。でも次はこうは行かない!行け、イワーク!」

 

タケシが次に繰り出したのはイワークだった。さっきのイシツブテとは比べ物にならない大きさにリーリエも戸惑いを隠せないようだ。

 

「す、すごい迫力です……でも私は負けません!たいあたりです!」

 

「イワーク!しめつけるで動きを封じるんだ!」

 

フシギダネはイワークに向かって走るが、イワークの尻尾がフシギダネを囲み、そのまま締め付けてしまう。フシギダネも先ほどの戦闘でダメージが溜まっているようで抜け出す力は残されていない。

 

「フシギダネさん!?」

 

「そのまま叩きつけるんだ!」

 

フシギダネは抜け出すことが出来ず、そのまま叩きつけられてしまう。やはりそのダメージには耐えられずフシギダネは戦闘不能になる。

 

「フシギダネ戦闘不能!イワークの勝ち!」

 

「も、戻ってくださいフシギダネさん!お疲れ様でした。」

 

リーリエは力尽きたフシギダネをモンスターボールに戻す。リーリエの手持ちは残りロコン一体。イワークもダメージを受けていないから今は五分五分といったところか。

 

「……これが最後です。お願いします!シロン!」

 

『コォン!』

 

リーリエはロコンを繰り出す。手紙でも言っていたが、リーリエはロコンの事をシロンと名付けたらしい。リーリエ曰く、タマゴの時の白くてコロンコロン転がっていたからだとか。リーリエらしい可愛い名前を付けたよね。

 

「白いロコン?確か別の地方でそんなポケモンがいると噂を聞いたことがあるけどまさか……。だがバッジは簡単には渡せない!イワーク!いわおとし!」

 

「シロン!走って躱してください!」

 

イワークの周囲を細かい岩が飛び、その岩がシロンに向かい飛んでいく。シロンはその細かい岩を避けながらイワークを目指して走っていく。

 

「しめつける!」

 

イワークはシロンを締め付け身動きを取れなくする。このままではシロンもフシギダネの二の舞だ。リーリエはどうする?

 

「シロン!イワークさんに向かってこなゆき!」

 

イワークは顔にこなゆきを喰らってしまい思わずシロンを離してしまう。

 

「なっ!?氷タイプの技!?」

 

そうだ、氷タイプは地面タイプを持つイワークには効果抜群だ。岩タイプに弱いシロンでも、相手が氷タイプに弱ければ充分な対抗手段となる。

 

「続けてこおりのつぶてです!」

 

そしてすかさずこおりのつぶてを放つシロン。これにはたまらずイワークはダウンする。どうやら勝負あったようだ。

 

「イワーク戦闘不能!シロンの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

 

「や、やりました……私勝ちました!」

 

「イワーク、ご苦労様。ゆっくり休んでくれ。」

 

タケシはイワークを戻し、拍手をしながらリーリエに近づく。

 

「いいファイトだったよ。俺の完敗だ。」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

リーリエはタケシに頭を下げ感謝する。僕もリーリエを祝福しようと、観客席から降りてリーリエの元へと向かう。

 

「リーリエ、よくやったね。いいバトルだったよ。」

 

「シンジさん!私頑張りました!応援ありがとうございます!」

 

リーリエは僕に応援してくれたことへの感謝をする。初めてのジムで勝てたことがよっぽど嬉しいんだろう。リーリエはシロンと共に泣きながら喜んでいる。

 

「ジムリーダーに勝った証、グレーバッジを受け取るといい。」

 

「これがジムバッジ……ありがとうございます!グレーバッジ、ゲットです!」

 

タケシはジムバッジを差し出し、リーリエはそれを受け取る。これはリーリエの記念すべきトレーナーとしての最初の一歩だ。僕はロトム図鑑に写真を撮るようにお願いする。リーリエは嬉しさのあまりに気付いていないようだが、僕はキッチリとその瞬間を写真に収めておく。これも大事な一つの思い出になるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はジムバッジを見事に手に入れたことをお母様に報告することにしました。シンジさんも祝福してくれて嬉しい気分ですが、何よりお母様にも知ってもらいたいですので。

 

「お母様!私ニビシティのジムリーダに勝って見事にバッジを取ることが出来ました!」

 

『あら、そうなの?すごいじゃない!流石は私の娘ね。それともシンジ君がいてくれたからかしら?』

 

「僕は何もしていませんよ。これはリーリエの実力です。ルザミーネさんにも見せてあげたかったですよ。」

 

も、もう、シンジさんったら。そんなこと言われると恥ずかしいじゃないですか///。でもやっぱりシンジさんに褒められると凄く嬉しいですね。いつかシンジさんの隣に立てるくらいに立派なトレーナーになりたいですね。

 

『そうね、私もリーリエの晴れ姿は見てみたいわ。でも無茶はしちゃだめよ?体壊しちゃったら元も子もないんだから。』

 

「もう、分かってますよ。私もう子供じゃないんですから。」

 

『うふふ、そうね。それじゃあシンジ君、引き続き娘の事を頼むわね。』

 

「はい、任せて下さい。」

 

『じゃあまたね、また何かあったら連絡ちょうだい』

 

「はい!また必ず連絡します!」

 

そう言ってお母様は通信を切る。お母様とこんな風にまた親子の会話が出来るなんて夢のようです。それもこれもシンジさんがいつも私の事を助けてくれたからですね。シンジさんには感謝してもしきれません。

 

「ルザミーネさんも元気そうでよかったね。」

 

「はい!安心しました!」

 

私たちはお母様の元気そうな姿に安心して、次の街へと向かうことにした。シンジさんによると、次はハナダシティと呼ばれるところみたいです。そこにもここと同じくジムがあるようで、その前におつきみやまを越えなければならないらしいです。正直山を越えるのはあまり得意ではありませんが、シンジさんが一緒なら頑張れる気がします。がんばリーリエです!私!




取り敢えずジムはこんな感じで進みます。とは言え最初の挑戦だから半分試しですが。タケシの出番少なくてすんません。

まあ一番の不安はバトルの内容ですがね。ジムは挑戦者のレベルに合わせるらしいのでタケシさんも手加減してくれてます。タブンネ

最後にウルトラネクロズマの簡単な攻略法を載せときますね。色んな人が苦戦してるみたいなので。ネットで見た内容ですが。

1、ミミッキュをスーパーメガヤス跡地でゲットする(育てる必要はない)
2、どくどくをミミッキュに覚えさせる
3、ミミッキュでどくどくをネクロズマに撒く(外れたらリセット)
4、元気のかけらでミミッキュループor全員脳死守る連打
5、ネクロズマは勝手にタヒぬ

どくどくの技マシンはエーテル財団の船着き場?にて入手できます。多くの人はここで躓くようですが、主はブラッキーに頑張ってもらって倒しました。応援ポンTUEEEEEEEEEE!!とか言いながら。


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オツキミヤマのピッピ!

そんなこんなで今回はオツキミヤマ回です。ピッピ要素は……3割くらい?ただ二人がいちゃつくだけです。

因みに珍しくがんばリーリエ視点です。


ニビジムで無事に初のジムバッジであるグレーバッジを手に入れた私は、現在オツキミヤマの前へと来ていました。

 

「ここがオツキミヤマですか。」

 

アローラのラナキラマウンテンほど大きな山ではありませんが、どちらかというと通り抜けるまでが長い道のりになりそうなイメージが強い山です。

 

「うん。オツキミやまの中はかなり暗くて視界も悪いから離れないでね。」

 

「は、はい!シンジさんの手をずっと握っています///」

 

「え!?う、うん。僕もその方が安心かな///」

 

シンジさんは照れた表情で私の言葉に答えてくれる。シンジさんと手を繋いでいれば安心できるので、私でも迷うことはありませんよね。

 

「じゃあ、お願い!ブラッキー!」

 

シンジさんはモンスターボールからブラッキーさんを出して、足元を照らすようにお願いしました。本当にシンジさんはポケモンさんの扱いがすごく上手いですよね。やっぱり憧れちゃいます。

 

私たちはブラッキーさんに続いてオツキミやまへとはいっていきます。中は凄く真っ暗で、ブラッキーさんの明かりがなければ何も見えないくらいです。

 

「凄く暗いところですね。でもこんなに暗いところでもポケモンさんはいるのでしょうか?」

 

「うん。こういったところには夜行性のポケモンであったり、地中の中を潜れるポケモンが多く生息しているんだ。例えば……」

 

シンジさんがこの辺りにいるポケモンさんについて説明していると、突然なにかの羽音のようなものが聞こえてきました。

 

「ひゃっ!?な、なななんですか!?」

 

「ああ、今のはズバットだよ。ズバットは洞窟内では至る所に生息している順応性の高いポケモンだからね。ところでリーリエ……」

 

「は、はい?」

 

「そ、その……くっつきすぎな気がするんだけど///」

 

私はシンジさんにそう言われ、気が付けばシンジさんに抱き着いていました。その状況に気付いた私はすぐにシンジさんから離れました。

 

「ごごごごめんなさい!ちょっと驚いてしまったので!」

 

「う、ううん。気にしなくていいよ。その……ちょっと嬉しかったし///」

 

「ふえっ///」

 

シンジさんの言葉に私は思わず変な声を出してしまいました。も、もう、この状況でそのセリフは反則ですよ///

 

私とシンジさんは再び手を繋ぎ先へと進む。その道中にシンジさんは、何かを探しているように周りをキョロキョロと見まわしている。

 

「シンジさん?さきほどから何を探しているのですか?」

 

「あるポケモンを探しているんだけど、珍しいポケモンだから中々見つからなくてね。」

 

「あるポケモンさん……ですか?」

 

「うん。そのポケモンを見つけたら、幸せになれるって言われているんだ。だからリーリエに見せたくてね。」

 

「私にですか?」

 

シンジさんはいつも私のために何かをしようとしてくれている。でも私はシンジさんに何もすることができません。決めました!

 

「シンジさん!私も一緒に探してみます!」

 

「リーリエ?」

 

「私もシンジさんには幸せになってもらいたいんです!だから私も探します!」

 

「……そっか。うん、ありがとう!じゃあ一緒に探そうか!」

 

「はい!」

 

私とシンジさんはそのポケモンさんを一緒に探すことにしました。少しでもシンジさんに恩返しが出来れば私も嬉しいです。

 

「ところでそのポケモンさんって一体どんなポケモンさんなんですか?」

 

「えっと、それは……」

 

「?どうかしたんですか?」

 

シンジさんはなんだか困った様子で頬をかく。シンジさんにしては珍しく歯切れが悪い気がします。なるべくなら内緒にしたい、ということなのでしょうか。

 

「実はそのポケモンを探している理由は他にもあるんだ。」

 

「そうなんですか?」

 

でもその理由が私に隠すことと関係があるのでしょうか?私自身にも何か繋がりがあるのでしょうか。

 

「そのポケモンの名前は……ピッピなんだ」

 

「ピッピ!?」

 

私はその名前を聞いて驚きを隠せなかった。そう、ピッピさんは私がアローラ地方にいる時にとても大事にしていた人形で、カントー地方に旅立つ際にシンジさんへとプレゼントとして渡した人形の元となったポケモンだ。まさかシンジさんの探しているポケモンがあのピッピさんだったとは思いませんでした。

 

「あの時にリーリエに貰った人形……僕は今でも大事にしてるんだ。だからそのお礼でも……と思ったんだけど……。」

 

「そうだったんですか……。」

 

私は今のシンジさんの言葉を聞いてすごく嬉しく感じました。私が使ってくたびれていたのにも関わらず、それを今でも大事にしているとなると私も嬉しくなってきます。離れていても私の事を忘れないでいて下さっていることがよくわかりますから。

 

「ありがとうございます、シンジさん。私嬉しいです。私もシンジさんにポケモンのたまごをいただいて、シロンが産まれた時すごく嬉しかったです。」

 

多分今の私は目元が涙で少し潤んでいるのでしょう。ここが真っ暗な洞窟なのでシンジさんに今のみっともない顔が見られなくて助かります。

 

「リーリエ……。僕もリーリエがシロンを大事にしているって聞いたときは嬉しかったよ。リーリエがシロンの事を嬉しそうに手紙で話してくれた時はリーリエの気持ちがとても伝わってきたしね。」

 

「シンジさん///」

 

シンジさんがそう言ってくれると私は更に嬉しさが増してきました。きっとこれもシンジさんだからこそ感じる感情なのでしょうね。

 

「じゃあ絶対に見つけなきゃね。僕たちの思い出のためにも。」

 

「はい!必ずピッピさんを見つけましょう!」

 

シンジさんの言葉に私も気合を入れる気持ちも込めてシンジさんの手を強く握る。シンジさんもそれに応えてくれるように手を握り返してくれる。やっぱりシンジさんの手は暖かくて大きくて、なんだか安心できます。

 

『ブラッキ』

 

「ブラッキー?どうかした?」

 

突然ブラッキーさんが足を止めてシンジさんに呼びかける。その後ブラッキーさんが指を指した。何か見つけたのかと気になった私たちは、ブラッキーさんが指示した方向を見てみる。するとそこには何か複数の影が飛び跳ねながら走っていく姿が見えました。

 

「あれはなんでしょうか?」

 

「あの影って……もしかして……。そうか!」

 

シンジさんが突然何か思い出したように声をあげる。

 

「シンジさん、何か心当たりが?」

 

「うん。今のが恐らくピッピだよ。それに今日の事を考えると……」

 

今のがピッピさんだったのですか。私は全然気づきませんでした。

 

「取り敢えず後を追おう。ブラッキー、案内してくれる?」

 

シンジさんの言葉にブラッキーさんが頷くと再び歩き出して私たちを案内してくれる。どうやらブラッキーさんには暗闇の中でも問題なく視界が見えているみたいです。私も多少は暗闇に慣れてきましたが、やっぱりブラッキーさんの明かりがなければ前が見えない状態になっていると思います。シンジさんと手を繋いでいるので安心ですけど///

 

私たちはブラッキーさんに案内されるととある広い場所に出ました。そこの中央には大きな岩があり、天井は大きな穴が空いていて空が見えるようになっています。今ではすっかりと暗くなっていて星空が見えます。そこには綺麗な満月が見え、岩の周囲ではピッピさんとピクシーさんが踊っている神秘的な光景が見られました。

 

「シンジさん……これって……」

 

「うん、ピッピたちは満月の夜になるとこの場所に集まって全員で踊るんだ。今日は運よく満月だったからピッピたちの踊りが見れたね。」

 

今は月の明かりでシンジさんの顔がよく見える状態になっています。シンジさんはピッピたちの踊りを見ながらどこか嬉しそうな、それとも楽しそうな微笑みを浮かべています。私にはその横顔がとても魅力的に感じました。やっぱりシンジさんには笑顔が一番似合っています。

 

「……シンジさん」

 

「ん?どうかした?」

 

「……きっと、いえ、絶対に幸せになりましょうね!」

 

「っ!?うん!」

 

シンジさんは私の言葉に照れたように顔を赤くしてそう答えてくださいました。私も今のセリフには少し恥ずかしく感じましたけど、でもシンジさんに言うのであればその恥ずかしさも嬉しさに変わるような気がしました。カントー地方にきて、シンジさんとの新しい思い出がまた一つ出来たことに私はとても満足しています。




まあこれからもこんな感じでいちゃついて行くと思います、多分。二年とか別れてたら恋人的関係ならそれくらいあり得るんじゃないかな?恋人出来たことないから知らないけど。

ニンフィアが嫁だから仕方ないね。

ケモナーだとか言われたこともあるが、ヌシはあくまでブイズが好きなだけであって他の獣には興味はありません。実際リアルの犬猫には全く触れません。見るのは好きだけど。ポケモンなら触れる自信しかない。

あっ、偶にレート戦も潜ってるんでマッチングしたらお手柔らかによろしくです。なんかピンクのブイズ使いがそれです。


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初めての野宿!

サブタイトルなんてなかった(諦め)

取り敢えず前回書き置きしてた話がなんだかあまり気に入らなかったので急遽水曜日に最初から書き直しました。


無事オツキミやまを通り抜けることのできたシンジとリーリエ。しかし洞窟内で確認した通り外は当然真っ暗であった。次の町であるハナダシティまではまだ距離があるため、シンジはリーリエに一つの提案をした。

 

「もう暗いし今日はここでキャンプにしてもいいかな?」

「キャンプ?野宿ってことですか?」

「まあ平たく言えばそうだね」

 

シンジは苦笑いしながら少し遠慮気味に答える。リーリエも少し悩む素振りを見せるものの、すぐにシンジの答えに返事をする。

 

「私は構いませんよ。話には聞いていましたし、シンジさんと一緒なら大丈夫ですから。」

 

笑顔を見せながら答えるリーリエのその言葉に、シンジは照れくさそうにしながら頬を掻く。そして野宿のために二人は荷物を置き、カバンからテントなどを組み立てる道具を取り出す。

 

「えーと、これがこうで……あ、あれ?」

 

リーリエは早速説明書を見ながら組み立てようとするもその動きはたどたどしく、パッと見初心者のようだった。それを見たシンジは心配そうにリーリエに声をかける。

 

「リーリエ、もしかしてキャンプとかって初めて?」

「え、えっと、はい……お恥ずかしながら……」

 

リーリエはもじもじと恥ずかしそうな仕草をとる。シンジはリーリエのその言葉に微笑みながら、テントの組み立て方をリーリエに優しく教える。少しずつコツを掴んできたのか、後半はある程度一人でも組み立てることが出来るようになってきたようだ。

 

「シンジさん、こんな感じでいいでしょうか?」

「うん、ばっちりだね。リーリエの物覚えが早いから楽に出来たよ。」

「そ、そんなことはないですよ!シンジさんの教え方が上手だったからです!」

 

二人は互いに謙遜しあう姿に思わず吹き出すように笑いあう。この姿を見るだけで二人の仲の良さや信頼がどれだけ強いかが伝わってくるだろう。

 

先ずは一つの問題であったテントの組み立てが完了した。男女ペアということもあり、二つのテントを別々に利用することにした。テントもそれほど広くなく、折角なので互いに自分のポケモンたちと一緒に寝るのもよいのではないかと言うシンジの計らいでもあった。

 

「さてと、次は料理だね。」

「あっ、すみません。私料理の方はちょっと……」

 

リーリエは申し訳なさそうに言う。その姿を見たシンジは「僕が作るから大丈夫だよ」と答えて心配をかけないように声をかける。

 

「シンジさんは料理が出来るんですか?」

「まあこれでも一人で旅を続けてたからね。多少の旅の心得は身に着けてるつもりだよ。」

 

シンジのその言葉にリーリエはますます彼に対しての憧れが強くなった。やはりこの人は自分の思っている以上にすごい人なのだと感じ、自分の最大の目標でありパートナー以上の存在になりたいと心の中で思う。

 

シンジは料理器具をカバンから取り出しすぐに料理の準備に取り掛かる。リーリエも黙って待っているわけにはいかないので、テーブルや食器などを用意し始める。今までお嬢様として育てられてきた彼女も、彼との出会いによって成長しつつあるのだろう。シンジはリーリエの自立的な行動に微笑みながら料理を続ける。

 

しばらくしてどうやらシンジの料理が完成したようだ。メニューはスパゲティにスープ、それからサラダと言うシンプルな一般的料理だった。しかし、その料理にはしっかりと工夫が施されており、彼がどれだけ料理に手慣れているかが伺える。

 

「材料が少なかったからこんなものしかできなかったけどどうかな?リーリエの口に合えばいいんだけど……」

「い、いえ!全然ですよ!寧ろこんなに凝った料理に感動してます!」

 

リーリエは首を横に振ってシンジの言葉を否定する。シンジは取り敢えずリーリエに食べてみるように促すと、リーリエは手を合わせて食事の挨拶をする。そしてスパゲティを口にした瞬間、リーリエの表情が変わる。その表情を見たシンジは、緊張のあまり喉をゴクンと鳴らす。するとリーリエがシンジの料理に対しての感想を言う為に口を開いてくれた。

 

「シンジさん!これすっごく美味しいですよ!」

「そう?よかった、喜んでくれて。」

 

シンジはリーリエのその言葉に安心してほっと胸を撫で下ろす。しかしリーリエのその反応は少し大げさすぎやしないかと心の中で思ってしまう。

 

シンジはその後、ポケモンたちにも食事を与えようと席を立ちあがり、用意していたポケモンフーズを皿にのせて分け与える。彼のポケモンたちも待っていたと言わんばかりにポケモンフーズに飛びついて食べ始める。

 

シンジは美味しそうに食べる自分のポケモンたちの様子を見届けると、次にリーリエのポケモンであるシロンとフシギダネの元へと近寄る。しかしシロンはフシギダネの後ろへと隠れてしまい、警戒体制へと入ってしまう。リーリエの話によれば、シロンはリーリエ以外の人には滅多に懐かず、現状リーリエ以外に懐いている人物は彼女の母親であるルザミーネのみらしい。

 

「警戒しなくても大丈夫だよ。ほら、みんなと一緒に食べよ?」

 

シンジはポケモンフーズを幾つか手の平にのせ、シロンに差し出し形で手を出す。するとフシギダネは警戒する素振りを見せずにシンジの持つポケモンフーズを一口食べる。フシギダネは美味しいと言っているように笑み浮かべ、続けてシンジの持つポケモンフーズを食べる。

 

「ははは!フシギダネくすぐったいよ!」

 

シンジは嬉しく感じてもいるが、そのフシギダネの勢いに堪らず笑ってしまう。その様子を見て少し警戒が解けたのか、シロンもゆっくりと近づいてきてポケモンフーズを催促する。その様子を見たシンジは再びポケモンフーズを袋から取り出し、シロンに差し出す。シロンもフシギダネの様子を見たからか、そのままポケモンフーズを口にすると、フシギダネと同じように笑顔を零してもう一つ、更にもう一つと食べ始める。どうやら先ほどまでの警戒は薄れたようでシンジも一安心して、シロンたちの分のポケモンフーズも皿に分け与えた後席に戻る。

 

「シンジさん凄いですね。あんなシロンの姿は初めてみます。」

「どんなポケモンでも真剣に向き合えば必ず心を開いてくれるよ。」

 

リーリエはシンジのその考えに感心しながら、一つ疑問に思ったことを彼に尋ねる。

 

「あのポケモンフーズはシンジさんが?」

「うん。ポケモンによっても好みは分かれるからね。それに健康面でも自分の作ったポケモンフーズの方がいいんだ。木の実を混ぜて味付けを変えてみたり、体調の悪い時は少し薄味にしてみたりね。」

 

当然市販のポケモンフーズも幾つかあるが、それらはあくまで最低限の栄養しか入っておらず、お世辞にも汎用性があるとは言い難い。種類が多いわけではないし、味付けの幅が広くない。実際、彼のポケモンたちも、市販のポケモンフーズではいまいち満足してくれなかったようで、ポケモンの種類も多いこともあり好みが分かれてしまったのだ。そんな時にシンジが試しに色々と料理で鍛えられた手際の良さや工夫を駆使して、ポケモンフーズを幾つか作ってみたところ、彼のポケモンたちにはかなり評価が良かったようだ。それ以降、彼は常にポケモンたちの食事も自分が担当しているのだと言う。

 

「流石ですね、シンジさん。よろしければ今度色々と教えていただけませんか?私もシロン達に自分のポケモンフーズを食べさせてあげたいですし。」

「うん、もちろんだよ。じゃあ今度一緒に練習しよっか。」

「はい!ありがとうございます!」

 

リーリエはシンジにお礼を言うと、先ほどのシロンとのやり取りの最中にもう一つ気になっていたことを尋ねる。

 

「そう言えばシンジさんのポケモンさんたち……特にニンフィアさんはとても良くシンジさんに懐いていますよね?」

「うん、僕のポケモンたちはみんな大切な家族だけど、ニンフィアは一番最初に仲間になった大事なパートナーだからね。」

 

シンジのその言葉を聞いたニンフィアはゆっくりとシンジの足元へと近付いてくる。そのことに気付いたシンジはニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアは気持ちよさそうに頭を擦り付け、その様子を見たリーリエにはハッキリと二人を結ぶ大きな絆が確かにあるのだと心から感じた。

 

「よろしければその時の事を聞かせていただけないでしょうか?あっ、嫌と言うのであれば仕方ありませんが……」

 

リーリエは人の過去に踏み込むのは少し失礼だったかも知れないと思い途中で声のトーンを落とす。その様子を見たシンジは、別に気にしなくてもいいよ、と言ってニンフィアとの出会った日の事を話す決意をする。シンジのその言葉にリーリエは明るい笑顔を取り戻し、その様子を見たシンジも過去の運命的な出会いを昨日の事の様に思い出しながら話し始める。

 

「あれは僕がまだ旅に出る前……7歳くらいの時だったかな……」

 

 

 

 

 

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さてとニンフィアとの出会いの話をどういう構成にしようか。正直あまりまだ考えてない。なんせ行き当たりばったりの勢いだけで書いてるので内容を頭で描くようなことは出来ません。まあ主はアレやし。なんとかは風邪引かないって言うしね。実際病気はあっても風邪は引かないヌシですし。

ではまた次回お会いしょう!ん?ニンフィアだけ優遇しすぎ?嫁補正です。


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シンジとニンフィア!二人の出会い!

そんなこんなで今回の話は前回の続きの過去回です。こんなシリアスな話にするつもりはなかったのですが気付いたらこうなってました。それでも個人的には割と満足してます。


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カントー地方のマサラタウン。そしてその近くにあるトキワシティ。更にトキワシティとその先にあるニビシティを結ぶように、多くの草木が生い茂った森が存在した。そこはトキワの森と呼ばれ、トレーナーでないものは殆ど入ることがないとも言われている森だった。何故ならそこには多くの野生のポケモンが生息しており、中には気性の荒いポケモンも存在しているため危険だからだ。

 

しかしそんな森に、一人の少年が立ち寄っていた。彼こそが幼いころのシンジ。まだ7歳になったばかりであり、ポケモンと共に旅をしているわけではない。彼はポケモンが大好きであり、ただの興味本位でトキワの森へと足を踏み入れてしまったのである。だが彼はまだ幼いためこの森がどういった場所なのかを理解していない。彼の頭にあるのはどんなポケモンが存在するのかと言う期待だけだった。

 

シンジがポケモンを探しキョロキョロと辺りを見渡していると、一匹のポケモンの影が地面に映し出された。一体何の影かと確認するために上空を見上げると、そのポケモンの姿が明らかとなった。

 

「あれはオニスズメかな?」

 

シンジが影の正体を確認すると、オニスズメは何かを見つけたように一気に急降下してくる。しかし狙いはシンジではなく、別の何かに向かって飛びかかっているように見えた。シンジはオニスズメの向かっている方角を確認すると、そこにはキャタピーがオニスズメに気付いた様子を見せずにゆっくりと歩いている。恐らくオニスズメにとっては丁度良いエサということなのだろう。このままでは危険だと感じたシンジは、自然と体が動いたかのようにキャタピーへと向かって走りだす。

 

シンジはキャタピーへと飛びついて抱きかかえる。対象を失ったオニスズメはそのまま滑空して再び上昇し、シンジの姿を見据える。キャタピーは一瞬何が起きたのか分からない様子だったが、シンジの様子とオニスズメの姿を見て現在の状態を把握することが出来た。

 

「大丈夫だった?僕が守ってあげるからね。」

 

シンジはキャタピーに対して優しく言葉をかけながら頭を撫でる。キャタピーはシンジのその言葉に嬉しさを覚え、少し落ち着いた表情を見せる。自分の獲物を横取りされたと勘違いしたオニスズメは激昂し、再びシンジとキャタピー目掛けて急降下する。手持ちに自分のポケモンが一切いないシンジは、キャタピーを守るために走って逃げようとするも先ほどの飛び込みで膝を擦りむいた事に気付き上手く力が入らなかった。

 

「っ!?」

 

やはりまだ幼い子供では限界があるということなのだろう。もはや目前にまで迫っていたオニスズメからキャタピーを守るため、覆いかぶさって自分が盾になろうと考える。自分が傷ついてでもキャタピーは守ろうと思ったのだ。しかしその瞬間、一つの影が飛び出してきてオニスズメを吹き飛ばした。シンジも何が起きたのか分からずその姿を確認すると、一匹のポケモンが立っていた。

 

「イー……ブイ……?」

 

彼を助けてくれたのはなんとイーブイだった。イーブイはカントー地方でも珍しいポケモンであり、生息している数も決して多いポケモンではない。しかもトキワの森に生息していると言う話も一切ない。と言うことはこのイーブイは誰かのポケモンなのだろうかと、シンジは頭の中で推測する。

 

オニスズメも、イーブイのたいあたりでかなりダメージを負ったのか、一目散に飛び去っていく。その様子を見て、キャタピーもシンジにお礼を言うかのように頷いてその場を立ち去っていく。自分もお礼を言わなきゃと思い、イーブイに近づいて助けてくれたお礼を言おうとする。しかしその瞬間に、イーブイはその場に倒れこんでしまった。

 

「い、イーブイ!?」

 

突然の出来事にシンジは驚き、イーブイを抱きかかえると、イーブイはかなり傷付いて弱っている様子だった。

 

「酷い傷!?この子のトレーナーは!?」

 

シンジが辺りを見渡すも、それらしい人影は全く見えない。もしトレーナーがいれば、勝手にこの場から動かすのはまずいかもしれないが、トレーナーが実際にいると決まったわけではない。イーブイの呼吸も荒く、このまま時間が過ぎてしまえばより危険な状態になってしまうのは明らかであるため、シンジは抱きかかえたままトキワシティへと走りだした。イーブイを助けたい思いで一杯だったため、自らの怪我の事も忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョーイさん!!」

 

シンジは慌ててトキワシティのポケモンセンターへと駆け込む。シンジの慌てた様子を見たジョーイさんも、慌ててシンジに何があったのか尋ねながら近づく。

 

「この子を!この子を助けてください!」

「酷い傷!?すぐに手当てしてあげないと!」

「ジョーイさん!イーブイは治るよね!?大丈夫だよね!?」

 

焦りを見せるシンジをジョーイは落ち着かせようと一声かける。シンジもその一言で少し冷静さを取り戻したのか、ジョーイに一言謝る。

 

「……治るよね?イーブイ……」

「大丈夫よ。必ず直して見せるから。」

「……うん」

 

ジョーイはそう言って助手のラッキーの持ってきた担架へとイーブイを乗せて奥へと運んでいく。シンジの不安が消えることはなかったが、先ほどのジョーイの言葉を思い返し、信じて待つことにした。自分が慌てても状況が変わるわけではない。イーブイなら大丈夫だ、と自分に言い聞かせながら。

 

それから数分、彼にとっては数時間経ったようにも思えたが、しばらくするとジョーイがロビーへと戻ってきた。シンジは不安を抱きながらイーブイの容態を尋ねる。

 

「ジョーイさん!イーブイは……」

 

ジョーイはシンジの問いかけに対して笑顔で頷いて答えてくれる。その様子を見てシンジは一安心したようにホッと息をつく。シンジの一先ずの憂いはこれで晴れた。

 

「今はゆっくりと休んでいるわ。しばらくしたらすぐに良くなりますよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「ところであのイーブイは君のポケモン?大分体力を消耗していたみたいだけれど……。」

 

ジョーイのその質問にシンジは先ほどの出来事を包み隠さず全て話す。勝手にポケモンも連れずにトキワの森に入ったことで少し怒られてしまったが、その後にジョーイは顎に手を当てて一つの疑問を指摘する。

 

「でもおかしいわね……。」

「何がですが?」

「イーブイは野生で出現することは珍しいポケモンだと言うことは知っていると思うけど、トキワの森での発見例は一度もないわ。その上、シンジ君の話によればイーブイのトレーナーはいなかったのよね?」

 

ジョーイのその言葉にシンジは肯定の意味を込めて頷きながら答える。

 

「だとすると最悪あのイーブイは……」

 

深刻そうな表情を浮かべるジョーイに対し、まだ幼いシンジにはその言葉の意味が理解できずに首をかしげる。すると、奥から慌てた様子でラッキーがジョーイさんを呼びに来た。イーブイの身に何かがあったのだろうか、とまた不安になったシンジはジョーイたちと共にイーブイの元へと向かう。そしてイーブイが休んでいるという部屋まで行くと、窓ガラスが破られておりイーブイの姿は見当たらなかった。

 

「大変!?イーブイが窓から逃げ出してしまったみたい!」

「え!?」

「早く探しに行かないといけないわ!少なくとも完全に治ってはいないからそう遠くへは行けないはずよ!」

 

状況が把握しきれていないシンジは慌てて走り出した。ジョーイはシンジを止めようと声をかけるが、頭が真っ白になったシンジにはその言葉が耳に入らなかった。シンジはそのままポケモンセンターを飛び出して、イーブイを探し始める。

 

街中の人に話を聞きながらイーブイの居場所を探すが中々見当たらず、知らず知らずのうちにトキワの森へと再び足を踏み入れてしまう。しかしその時、すぐ近くのところからポケモンの鳴き声が聞こえた。シンジにはその鳴き声を聞き間違えることはなかった。確信と共に鳴き声のした場所へと走っていくと、そこには傷付いたイーブイと、イーブイを取り囲むように飛んでいるオニスズメたちがいた。先ほどのイーブイの攻撃で傷付いたオニスズメも確認できたため、その仲間たちと一緒に仕返しに来たというところだろう。

 

オニスズメは気性が荒く、執念深い事でも有名だ。シンジは少し恐怖を感じたが、それでもイーブイを見捨てることが出来ないと考え、オニスズメを潜り抜けるようにイーブイの元へと駆け出す。

 

「君にはさっき助けられたんだ!今度は僕が助けなきゃ!」

 

シンジはイーブイを助けるために必死になって庇うようにオニスズメの前に立ちふさがる。イーブイもシンジの突然の行動に驚きを隠せない。イーブイ自身もシンジの行動は予想外だったようだ。

 

「これ以上イーブイに手出しさせない!僕が絶対に守って見せる!」

 

イーブイのその言葉を聞いて目を見開く。イーブイの心の中で何かが芽生えた瞬間だった。対してオニスズメ達は興奮した様子でシンジ目掛けて一斉に突っ込んでくる。シンジは恐れを感じていたが、それでも目を瞑ることはなかった。イーブイを必ず守ると約束したから。

 

しかしその瞬間、イーブイがシンジの肩を伝ってジャンプする。そしてオニスズメ達に向かい星型の弾幕、スピードスターを放つ。見事その技は全てのオニスズメに命中した。オニスズメ達はその攻撃に耐え切れずに、あの時と同じように一目散に飛び去って行った。

 

「イーブイ……どうして?」

 

イーブイがなぜまた助けてくれたのかシンジには分からなかった。いや、最初に出会った時はイーブイ自身に助ける意志などなかっただろう。助けたシンジと顔を合わせずにポケモンセンターを抜け出したのがその証拠だ。

 

イーブイはシンジの方を見て近づいてくる。しかし彼の元へとたどり着いた瞬間、彼に寄りかかる様に倒れてしまう。シンジもイーブイが倒れないようにそっと支える。そしてイーブイはこの時初めてシンジに笑顔を見せてくれた。その瞳からは先ほどまでの敵意がある眼ではなく、信頼を置いているかのような眼差しだった。シンジもイーブイの笑顔に釣られるかのように笑顔を見せる。

 

そしてシンジはイーブイを再び抱きかかえ、ポケモンセンターへと向かう。イーブイは先ほどとは違い安心した表情をしてシンジに身を委ねてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンセンターへと戻ったシンジは、ジョーイにイーブイを預けて再び回復をしてくれる。しばらくすると今度は担架の上で元気な笑顔を見せてくれるイーブイの姿がシンジの瞳に映った。シンジの姿を確認したイーブイは、突然シンジの胸へと飛び込んでくる。突然の事で驚いたが、シンジもイーブイの笑顔に応えるようにイーブイを受け止める。

 

「元気になったんだねイーブイ!よかった!」

『イブイ!』

 

シンジの呼びかけにイーブイも元気に応えてくれる。ジョーイにはその姿がまるで友達のように見え、相棒のようにも見えた。

 

「イーブイはすっかり元気になりましたよ。」

「ありがとうジョーイさん!」

 

ジョーイに心からの感謝を伝えるシンジ。しかしシンジは一つだけ疑問に思っていることを呟く。

 

「でもなんでイーブイはトキワの森に一人でいたの?君のトレーナーは?」

『イブイ……』

 

シンジの言葉にイーブイは悲し気な声を出して俯く。もしかしたら聞いてはまずい事だったのかと思いシンジの表情も暗くなる。しかしジョーイがイーブイに変わってその理由を説明してくれる。

 

「恐らくイーブイはトレーナーに捨てられてしまったんだと思うわ。」

「え?」

 

シンジはジョーイのその言葉に自らの言葉を失ってしまう。ポケモン研究家として有名なオーキド博士から、実際にそう言う話は聞いてはいたが、本当にそんなトレーナーがいるとは思ってもいなかったのだ。まだ幼いシンジにはその現実が受け止めきれず、心の中の感情には悲しさが溢れてきた。

 

「最近はそう言ったトレーナーも少なくないの。弱いポケモンはいらない等と言う理由をつけたりしてね。悲しいことだけれど……。恐らくポケモンセンターを飛び出していったのも、捨てられたと言う現実を受け止めたくなくてトレーナーを待ちたかった、ってところでしょう。」

 

ジョーイの話を聞いて、それが本当の事なのかとイーブイに尋ねる。イーブイは悲しそうな表情のまま小さく頷く。シンジもイーブイの気持ちに同情し、同時に生まれて初めて腹立たしさを感じた。特に純粋にポケモンが大好きだと思っているシンジにとってはとても辛い現実だった。

 

「でもこの子はシンジ君によく懐いているようね。シンジ君に一つお願いがあるのだけれどいい?」

「え?なんですか?」

 

シンジはジョーイの頼みごとを尋ねる。すると彼女の口からシンジにとって驚きの言葉が告げられた。

 

「この子の面倒を見るのを頼めないかな?私達ジョーイは場合によってはポケモンの保護も請け負っているのだけれども、やっぱりポケモンを大切にしてくれる人と一緒にいるのがこの子にとっても幸せだと思うから。」

 

イーブイはその言葉に嬉しそうに笑顔を取り戻し、シンジの胸に顔を擦り付ける。シンジも驚きはしたものの、やっぱり心の中ではイーブイと一緒にいたいと望んでいる。

 

「……僕でいいかな?」

『イブイ!』

 

イーブイはシンジの顔を舐めて肯定の意志を表す。イーブイが自分と一緒にいたいと望んでくれて心の中では言葉にできない感情を抱いていた。シンジにとって初めてのポケモンとその出会い、どちらも一生大切にしたいものだと噛み締めながら。

 

 

 

 

 

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これが彼ら二人の運命的な出会いだった。幼いころの出来事ではあるが、この出会いは二人にとって忘れられないものであり、決して切れることのない絆が生まれた日でもあった。ポケモンとトレーナーの出会いには必ず出会いがある。その一つ一つが“奇跡”であり“運命”なのである。だからこそシンジは、自分のポケモンたちをより大事にし、これまで共に旅をして、共に学び、共に歩み、共に苦しみ、共に笑い、共に過ごしてきたのである。

 

リーリエもシンジの話を聞き、感動のあまり涙を流していた。シンジも改めて思い返すと、その時の出来事を話すのは少し照れ臭く感じた。

 

「ニンフィアさんもシンジさんも、とってもつらい思いをしていたんですね。だからシンジさんはポケモンさんのことをとても大事にしてるのですね。」

「あの時は僕もまだ小さかったから正直辛い気持ちが強かったよ。でも小さかったからかもね。僕とニンフィアが出会えたのは。僕が興味本位でトキワの森に入らなかったら出会えなかったかもしれないし。」

『フィア!』

 

シンジは再びその時の出来事を思い返しニンフィアの頭をなでる。ニンフィアも気持ちよさそうにシンジの元へと寄り添う。出会った時からの信頼と絆が、リーリエの心の中で深く感じることができた。自分たちもポケモンたちとの旅と出会い、そして思い出を一つ一つ大切にしようと誓う。

 

二人は食事を済ませ、今日は早く休むことにした。リーリエも今日は良い体験の話を聞くことができ満足したようだ。シンジも自分のポケモンたちと出会った時のことを思い返す。その話はまたいずれ話すかもしれないが、今は明日の為に寝ることにした。二人の旅はまだ始まったばかりなのだから。




途中でオニスズメの鳴き声を入れようと思ったけど、アニメの奴の鳴き声が少々あれなのでやめました。いや、急に『キエエエエエエ!』とか『クエエエエエエ!』なんて叫ばれたら絶対感動ぶち壊しでギャグにしかならないやろなと……。

ではではまた次回にお会いしましょう!


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神秘の色ハナダ!釣り大会出場!

はい、今回は書置きのままですので以前の文才に逆戻りしてます。自分で言うのもなんですが、最近は割と真面な文が書けるようになったと思ってます。

そして今回はオリキャラが出ますが、容姿を全く考えていなかったため一切表現が描かれていません。適当に原作の小太りの釣りトレーナーにでも脳内変換しておいてください。どうせこれから続投するか不明だし(ボソッ


シンジさんと一緒に野宿した翌朝。私たちは次の町であるハナダシティに向かっている最中です。その道中で私は少しシンジさんにハナダシティについて教えてもらうことにしました。

 

「シンジさん、次のハナダシティってどんなところですか?」

 

「ハナダシティは水の町とも言われていて、水ポケモンに関するイベントもよく開催されているんだ。ハナダジムのジムリーダーも水ポケモンの使い手でかなりの強敵だよ。」

 

「ハナダシティにもジムがあるんですね。二回目のジム戦でもなんだかドキドキしてきました。」

 

「うん。でもいい人だからあんまり気負わなくても大丈夫だよ。」

 

シンジさんは私の緊張を解すために笑顔でそう言ってくれる。シンジさんがそう言ってくれるだけで私は何だか元気が出てきます。先ほどよりも少し気が楽になってきました。

 

「ほら見えてきた。あれがハナダシティだよ。」

 

シンジさんが指を指した方角にはニビシティとは違ったのどかな雰囲気の町が見えてきました。早速ハナダシティに入ってみると、さすがは水の町と言うだけあってポケモンたちが気持ちよく泳いでいる光景が見えました。

 

しかしその先ではなにか人だかりのようなものが出来ている場所がありました。私もシンジさんも何事か気になったので少し様子を見に行ってみることにしました。

 

「すみません、何かあったんですか?」

 

シンジさんが一番後ろにいた男性に声をかける。

 

「ああ、いまからここで釣り大会が開催されるんだ。野生の水ポケモンを釣って、一番の大物を釣った人が優勝。その人には商品として水の石が渡されるみたいだぜ。」

 

「釣り大会ですか」

 

水の石とは確か特定のポケモンを進化させるのに必要な石でしたよね?シンジさんのシャワーズさんも水の石で進化するポケモンさんの一体だと記憶しています。

 

「誰でも参加自由だからあんたたちも参加してみたらどうだ?」

 

男性が釣り大会に参加してみないかと私たちに参加を促してきました。確かに釣り大会は面白そうです。ですが私は釣りをやった経験がないので少し不安です。

 

「そうですね。リーリエ、僕たちも参加してみようか?」

 

「え?私たちもですか?」

 

「うん。折角の機会だしさ。これも何かのいい経験になると思うよ。それにまた新しいポケモンにも出会えるかもしれないし。」

 

確かにシンジさんの言う通りですね。折角シンジさんと旅をしているのですからどんどん新しいことに挑戦してみるのもいいかもしれませんね。

 

「そうですね。シンジさんがそう言うなら私も参加させていただきます。」

 

「じゃあ決まりだね。早速行ってみよっか。」

 

「はい!」

 

私たちが釣り大会の参加を決意すると、先ほどの方が「頑張りな」と一言激励していただきました。私たちはその方にお礼を言って頭を下げました。その後私はシンジさんと一緒に参加の申請をしに受付へと向かい無事参加することが決まりました。

 

そして遂に釣り大会が始まりました。ルールとしてはこんな感じだそうです。

 

・審査するのは釣りあげたポケモンのみ

・審査対象はポケモンのサイズで判定

・制限時間内は何匹釣っても構わない

・気に入った野生のポケモンはゲットしても構わない

 

だそうです。シンジさんの話で言えば、カントーの別の町にあるサファリゾーンと呼ばれる場所に似ているそうです。運が良ければ新しいポケモンさんをゲットできるかもしれませんね。私としてはシンジさんと釣りが出来るだけでも嬉しいですけど///

 

「じゃあ僕たちはこの辺りでやろっか」

 

「はい。でも人も少ないみたいですけど釣れるのでしょうか?」

 

「どうかな。人がいない分誰にも釣られていないと言うことでもあるし、それに……」

 

シンジさんが突然頬をかきながら言葉を詰まらせました。一体どうしたのか気になりましたが、少しするとシンジさんが再び口を開きました。

 

「……出来ればリーリエと二人になりたいなって///」

 

「し、シンジさん///」

 

シンジさんは顔を赤くしながらそう言ってくださいました。そんなことを言われると嬉しいのですが、なんだか恥ずかしいですよ///

 

そんな会話を交わした後、私たちは釣りを開始しました。初めはどうすればいいのか分からなかったので困りましたが、シンジさんが優しく教えてくださったので問題なく始めることが出来ました。

 

しかし、しばらくしても一向にかかる気配がありません。一応本で釣りの事は少し読んだことはありますが、まさか実際にこんなにもかからないものだとは思いませんでした。私としてはシンジさんと一緒にいられるだけでも嬉しいのですが、やっぱり折角なので一匹くらいは釣ってみたいですね。

 

「中々かからないね。少し飲み物でも買ってきて落ち着こうか。」

 

「そうですね。じゃあ私が何か……」

 

私が飲み物を買いに行こうと椅子から立ちあがろうとすると、シンジさんが先に立ちあがって私を止めました。

 

「ああ、リーリエはここで続けててよ。僕が買ってくるから。」

 

「え?でも悪いですよ……」

 

「大丈夫。それにリーリエはこの町のこと分からないでしょ?迷ったりしたら大変だしね。」

 

「うっ、確かにそうですね。」

 

シンジさんに言われた通り、方向音痴の私がひとりで行けば確実に迷子になってしまいますね。シンジさんが一緒だと安心してそのことを忘れてしまいます。私は悪いと思いながらもシンジさんに飲み物を買ってきていただくことにしました。シンジさんも手を振りながら「すぐに戻ってくるから」と言って走って行きました。その間に一匹でも釣れればシンジさんは褒めてくださるのでしょうか?そんなことを考えながら釣りを続けていると……。

 

「もし、そこの可憐なお嬢さん」

 

「え?私……ですか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名は流離いの釣り名人、ルアーだ。釣りの前では俺の右に出るものはいないと言われる男だ。釣りと聞けばたとえどんなに遠いところでも俺は出向いてその地方の釣り野郎どもにアッと言わせてやるのが俺の日課だ。それはこの小さな釣り大会でも例外ではない。ここで誰よりもデカい大物を釣って必ず優勝して見せる。しかし、中々いいポイントが見つからない。俺の釣りセンサーが反応しないのだ。釣りセンサーが反応さえしてくれればいつも通りどんどんと釣ることが出来るんだがな。

 

そして俺は更に釣りに最適なポイントを探す。するとそこには目を疑うような光景があった。

 

「!?あ、あれは!?」

 

太陽の日差しで更にかがやいている金色の髪。透き通るような白色の肌。その肌に見合った白色の服と揺れるスカート。背中には可愛らしいピンク色のリュックサック。髪をポニーテールで縛ってあるところが更に可愛さを引き出している。俺は数々の釣りを制覇してきたが、このような可愛らしい女性を釣り上げたことは一度もない。これこそまさに一目惚れであろう。俺は意を決し、すぐに彼女への思いを伝えようと声をかける。

 

「もしもし、そこの可憐なお嬢さん。」

 

「え?私……ですか……?」

 

「ええ、もちろんです。どうです?よろしければ俺と一緒に釣りをしませんか?手取り足取り教えますよ?」

 

「え、ええと……」

 

どうやら彼女は少し戸惑っているのだろう。ふっ、釣りでも恋でも慌てれば即チャンスを逃してしまう。ここは慌てずにゆっくりと距離を縮めていくべきだろう。俺はそう思って再び声をかけようとするが、その時に一人の男の声が聞こえた。

 

「リーリエお待たせ!あれ?この人は?」

 

「あっ、シンジさん!」

 

ジュースを二つ持った男がお嬢さんに声をかける。どうやらこのお嬢さんの名前はリーリエと言うらしい。そしてこの男はシンジと言うのか。まさかこの二人は付き合っているのか?いや、まだそう決めつけるには早い。俺はそう簡単に諦めはしないぞ。

 

「俺の名はルアーだ。今このお嬢さん、リーリエさんを釣りに誘おうとしていたところだ。悪いが邪魔をしないでくれ。」

 

「いや、邪魔をしないでくれと言われましても……」

 

「あ、あの……」

 

「ん?なんでしょうか?」

 

「ごめんなさい。私今シンジさんと旅をしているところですので、今回はご遠慮させていただきます。」

 

そのリーリエさんの言葉に俺は衝撃を受けてしまった。まさかリーリエさんはこの男に黙されているのでは!?しかも男女二人旅だと!?もしかしてあんなことやこんなことまで!?そんなことは絶対許せん!こんな可憐な少女をたぶらかすなど言語道断!こうなったら……。

 

「お前、確かシンジとか言ったな」

 

「え?はい、そうですけど……」

 

「俺とポケモンバトルをしろ!」




まあオリキャラいわゆる“うましか”キャラで釣り大会が終わったら再登場しないと思われるので適当に読み進めてください。取り敢えずリーリエに一目惚れするキャラを出したかったのと、主人公のバトルシーンも書きたかったのが理由ですが。実際リーリエは可愛いからアニメのヒカリと同じでモテてもおかしくないと思うのよね。まあ本人は主人公一筋なので浮気することはないでしょうが。……フラグじゃないよ?

あ、今日丁度リーリエのオルゴールが届きました。スマホスタンド、オルゴールと来て最後はフィギュアを残すのみです。


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対決!釣りトレーナールアー!

今日サブタイトルやら前書きやらを書こうとして今朝起きてパソコンを付けました。しかしパソコンは上手く起動せず、原因が中身の接触不良だと分かりなんとか治すことは出来ました。しかし今度はいつも問題ないはずのデュアルモニターが何故か映らず、HDMI部位の故障だと判断した主は夜5時ごろにDVIを購入するために色々な家電屋に行きようやくの思いで入手。そしてやっと修復が完了したわけであります。

半日かけてようやく修理完了してかなり疲れましたが、まあ予約投稿だけはしてたので間に合いはしましたが。と言う事情があったので前書きなどは後付けです。まあ特に問題はないので気にする必要性はありませんが。危うくPCパーツ破損のためしばらく小説書けずという状況にならなくて安心しました。


「俺とポケモンバトルをしろ!」

 

「……はい?」

 

急いで飲み物を買ってリーリエの元へと帰ってきたら突然ルアーと名乗る男にポケモンバトルを仕掛けられた。彼の様子を見る限りではリーリエを気に入ったのかそんな感じの様子ではある。とは言えポケモンバトルを挑まれれば断るのは僕の流儀に反するし、ここは仕方ないけどやるしかないかな。なんだか結構久しぶりのポケモンバトルな気がするけど。

 

「もし俺が勝ったらリーリエさんの事は諦めろ。もしお前が勝ったら俺はこの場から消える。どうだ?」

 

いや、どうだ?と言われても言ってることは結構理不尽なんだけどね。これは俗にいうバトル脳と言うやつであろうか?リーリエも流石にこの状況には戸惑いを隠せないようだ。

 

「うん、まあいいよ。じゃあ早速やろうか。」

 

なんだかこの会話が周りにも聞こえていたのか結構な人が集まってきてしまった。なるべくなら僕の正体は可能な限り隠しておきたいんだけど。後々面倒なことになりそうだし。

 

「じゃあ始めるぞ!1対1のポケモンバトル!俺はこいつだ!」

 

そういって彼が繰り出したのはライトポケモンのランターンだった。水、電気タイプを併せ持つ少々厄介なポケモンだ。見た目通り釣りが好きそうな感じがするため恐らく水タイプ使いなのだろう。だったらフィールド的にも僕が出すのはこの子だね!

 

「お願い!シャワーズ!」

 

「シャワーズか。お前も水タイプでくるか。」

 

僕が出したのは水タイプのシャワーズ。水タイプ同士ではあるが、電気タイプ持つランターンの方が圧倒的に有利。それでも僕もシャワーズも負ける気はさらさらないけどね。

 

「先手必勝!ランターン!10万ボルト!」

 

「シャワーズ!水の中に潜って!」

 

ランターンの10万ボルトを躱すためにシャワーズは水中へと姿を消す。しかしいくらシャワーズの泳ぐスピードが速くても問題が一つある。それは水中だと電気技が全体に届いてしまうことだ。だが僕にも一つ作戦がある。

 

「水中に逃げても同じだぜ!もう一度10万ボルト!」

 

予想通りランターンはもう一度10万ボルトを放つ。しかしそのことは僕も当然読めている。

 

「シャワーズ!まもる!」

 

「なっ!?まもるだと!?」

 

僕はシャワーズにまもるの指示を出す。いくら10万ボルトが効果抜群であろうとまもるで防げば効果がないのと同じだ。僕は相手が戸惑っている隙に攻撃を仕掛けることにする。

 

「今度はこっちの番だよ!シャワーズ!シャドーボール!」

 

シャワーズは水中から空中に飛び上がりランターンに一直線にランターン目掛けてシャドーボールを放つ。対応しきれなかったランターンはそのままシャドーボールが直撃して吹き飛ばされる。

 

「ランターン!?だが今なら空中にいるシャワーズは避けられない!エレキボール!」

 

水タイプであるシャワーズには電気タイプの技は効果抜群。そしてエレキボールも10万ボルトと同様に電気タイプであるため効果抜群の技だ。現在空中にいるシャワーズはこのままでは回避できずに、エレキボールが直撃してしまうだろう。でもこんな方法もあるんだよ!

 

「シャワーズ!れいとうビーム!」

 

シャワーズはれいとうビームを飛んでくるエレキボール目掛けて放つ。するとエレキボールは見る見るうちに凍り付き一つの氷の球となってしまった。その様子を見たルアーは驚きを隠せないようだ。その一瞬の隙が命取りになるよ。

 

「それを尻尾で跳ね返して!」

 

シャワーズは僕の指示通りに凍ったエレキボールをランターン目掛けて跳ね返す。さしずめアイスボールとなったエレキボールはランターンに直撃し、ランターンはトレーナーの傍まで飛ばされて目を回し戦闘不能となっていた。

 

「ら、ランターン!?」

 

ルアーはランターンを掬い上げる。僕はその光景を見ると余程大事にしているんだと感じた。

 

「僕の勝ちだね。ほら、オボンの実だよ。食べさせれば良くなるから。」

 

「……ああ。」

 

ルアーは僕からオボンの実を受け取るとランターンに食べさせる。ランターンもさっきより元気になったようだ。

 

「完敗だな。あんた強すぎだぜ。一体何者なんだ?」

 

「あ、えっとそれは……」

 

僕は自分の正体をどう伝えるべきか悩んでいた。そこに一人の女性の声が聞こえる。その声の主はリーリエではない。だが僕の知っている声ではあった。その人は……。

 

「そいつはアローラ地方の現チャンピオンよ」

 

「カスミさん!?」

 

そう。彼女はこのハナダシティのジムリーダーであるカスミさんだ。相変わらず常時水着姿なのは健在のようだが……。

 

「って、チャンピオン!?」

 

「……カスミさん、いつからそこに?」

 

「あんたがシャワーズを出すあたりからだけど?」

 

結構前からいたんですね。目立つ格好のはずなのに前からこの人の気配がいまいち分からない。それとも僕が集中しすぎていたのだろうか。

 

「チャンピオンって……俺はそんな人に勝負を挑んでいたのか。バカなことしてすみませんでした!」

 

「いや別に気にしなくていいよ。ポケモンバトルは僕も大好きだし。」

 

頭を下げて謝ってくるルアーに僕はシャワーズを撫でながら答える。シャワーズもどうやら気持ちよさそうにしているようだ。そんなポケモンの様子を見るだけでも僕はなんだか安心できる。

 

「さすがシンジさんですね。とっても強いです!」

 

「ありがと、リーリエ。」

 

褒めてくれるリーリエの言葉が素直に嬉しい。そしてルアーからある爆弾のような発言が繰り出される。

 

「リーリエさんとチャンピオンってもしかして付き合っているんですか?」

 

『!?//////』

 

僕とリーリエはその言葉に顔を赤くしながら停止する。突然他人にそんなことを言われてしまうと僕たちも戸惑ってしまう。

 

「え、えっと……僕もリーリエの事は好きだけど……そ、その///」

 

「わ、私もシンジさんの事は好きですがまだお付き合いとかは///」

 

(どうみても付き合ってるだろ)

 

僕とリーリエが照れながら答えると、この場にいる全員の心が一致した気がした。その後は僕たちは一緒に釣り大会を続けることにした。ルアーだけでなくカスミさんも一緒に釣りをするようだ。結局僕の正体がチャンピオンとバレてしまってどうなるかと思ったが、周りの人はそっとっしておいてくれるようだ。気前のいい人ばかりで助かったよ。




バトルはやっぱり書くのが難しいと思いながら書いてた記憶があります。最近では一人称よりも三人称視点の方が書きやすくね?と思ってきた次第でございます。恐らくハナダジム戦後にはそういった描写が多くなってくるかと。

あ、そう言えば言い忘れてたね。あけましておめでとうございますです!とは言え主は毎年変わらず家でゲームやったりアニメ見たりPCやったり昼寝したりと、変わらない毎日を過ごしていますが。

え?クリスマス?正月?ハハ、なんもなかったよ(´・ω・`)


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運命の巡り会い、ポケモンゲットです!

オバロ2期を楽しみに待っていた主です。MHFとイーブイの厳選をしながら楽しく過ごしています。

タイトル通り、リーリエがポケモンゲットの回です。ただポケモンの名前を書くか迷いましたが、やっぱ人によってはネタバレになるかと思い書くのをやめました。

どうでもいいことですが、現在主はウルトラムーンにて史上最大(?)の縛りプレイをしています。そうでもしないとどうせまたブイズパになってしまうので……。内容は単純で、ずばり!モンスターボール系アイテムを使用しない!です。つまり野生ゲット不可、と言うわけです。現状のパーティ予定は

ジュナイパー(御三家)
ルガルガン(早期購入特典)
ピカチュウ(劇場版サトピカ)
ニンフィア(オハナ牧場でタマゴを貰う)
トリデプス(化石復元)
アーゴヨン(唯一貰えるUB)

です。ん?結局ニンフィアが入ってるって?……まあ貰えるならパーティ入れれるし、いないとやる気起きないですし……。まあピカチュウが正直種族値的にも戦力にならないので、片方のデータから電気玉持ってきて持たせました。1000万ボルトじゃ火力足りない(ボソッ


僕とリーリエは先ほど戦ったトレーナールアーと、ハナダジムのジムリーダーカスミさんと共に釣り大会の真っ最中であった。

 

「それにしてもなぜチャンピオンはリーリエさんと二人で旅を?」

 

「僕の事はシンジでいいよ。なんだかその呼ばれ方あんまり慣れてないし。」

 

「分かりました。それでシンジさんはなぜリーリエさんと旅をしているのですか。」

 

僕は内心、呼び捨てで呼んでくれた方が気が楽だと思いながらルアーの質問に答える。アローラ地方での冒険自体は割愛したが、ナッシーアイランドで交わした約束の事について少し話した。そのことに関してルアーは開いた口が塞がらないと言った様子で話を聞いていた。

 

「二人はそれほどまでに仲がいいんですね。なんだか憧れます。」

 

「ははは、ありがと。でも改めて思い出すとなんだか恥ずかしいね。」

 

「私もそうですけど、でもシンジさんが来てくれた時は嬉しかったですよ。こんどはちゃんと二人で旅が出来るんだと思うとワクワクしましたから。」

 

リーリエも少し照れくさそうに答えるが、その様子は誰から見ても嬉しそうな表情を浮かべていた。その様子を見た僕も同じような表情をする。

 

「でも驚いたわ。まさかシンジに彼女が出来てるだなんて。」

 

「ちょ!?カスミさん!その言い方はやめてくださいよ!」

 

(なんで付き合ってないんだろう)

 

カスミさんがおちょくる様に言う。僕も今恥ずかしさのあまり顔が熱くなってきているのが分かる。リーリエも同じように顔を赤くして俯いている。

 

「と、ところでカスミさんってシンジさんとはどういった関係なんですか?」

 

リーリエがカスミさんについて疑問に思っていることを尋ねる。そのことにカスミさんは笑顔を変えずにこう答える。

 

「シンジの元恋人よ」

 

「…………えーーー!?」

 

「……カスミさん、適当なこと言わないでくださいよ。」

 

「あはは、ごめんごめん。なんだかこの子の反応面白くてね。」

 

僕が呆れながら否定すると、カスミさんも頭を掻きながら謝る。僕はどうせ反省はしていないんだろうなと思いながら見ているが、もはや諦めたようにカスミさんとの関係について説明する。

 

「カスミさんとはどちらかと言うと僕にとっては姉のような人だよ。カントーにいる時に色々とお世話になったんだ。」

 

「そ、そうなんですか?」

 

リーリエはその真実にホッと胸をなでおろす。カスミさんは小悪魔的な表情を浮かべている。いまだに僕はこの人の思考にはついて行けそうもない気がする。

 

「あ、シンジ、引いてるわよ?」

 

「ん?あっホントだ!」

 

僕は自分の釣り竿が引いていることに気付き、竿を引き始める。しかし対応するのが遅かったようで餌を食べられて逃げられてしまった。

 

「あら、逃げられちゃった」

 

まあ釣りはこんなもんだろ、と言いながら僕は気を取り直して再び釣り糸を投げる。そしてそのタイミングと同時に、今度はルアーの釣り竿が反応する。

 

「おっ、きたきた!せいや!」

 

流石は釣り慣れしているだけの事はあって軽々と釣り上げる。僕は釣りに関してはあまり詳しくはないから彼の釣りを見ていると少し憧れる。そして彼の釣りあげたのはトサキントだった。

 

「トサキントか。残念だがこのサイズでは優勝できないな。」

 

ルアーはトサキントに餌をあげてそのまま逃がしてあげた。キャッチ&リリースと言うやつだ。そしてルアーの方に夢中になっている間にリーリエの方にもヒットしたようだ。

 

「あ!?私の方にも来ました!」

 

「リーリエ!落ち着いて引き上げて!」

 

「は、はい!」

 

僕の言葉にリーリエが答えると、リーリエは真剣な様子でリールを巻き上げる。そして 苦戦は強いられたものの、リーリエはヒットしたポケモンを釣り上げる。しかしそこにいたのは……。

 

「このポケモンさんは……」

 

「ルリリ?ってこの子怪我してる!?」

 

そう、カスミさんの言う通りこのポケモンはルリリだ。しかしルリリのオデコには何かにぶつけた傷が出来ている。すぐに陸上に引き上げて治療を開始する。幸いにもかすり傷程度だったので僕でも何とかできそうだ。

 

「ど、どうですか?」

 

リーリエが不安そうに尋ねてくる。僕はリーリエに「かすり傷程度だから少し消毒すれば大丈夫」だと伝える。リーリエはその言葉に安心してくれる。カスミさんとルアーも一安心したような表情を浮かべる。

 

「よし、これで大丈夫だよ」

 

「よかったですね、ルリリさん!」

 

ルリリは リーリエの言葉に反応するがどこか怯えたような様子で震えている。

 

「ど、どうしたんだ一体?」

 

「ルリリはこの辺りでは見ないポケモン。もしかしたら誰かに捨てられたのが原因で人間に対しての警戒心が強くなった可能性もあるわ。」

 

「そ、そんな……」

 

そうだ。この世界には僕やリーリエみたいにポケモンを大事にする人だけじゃない。中には弱いポケモンを捨てて別のポケモンを捕まえるトレーナーもいる。それだけではなく、ポケモンを金儲けとしての道具としてしか見ていない人や、悪行のために利用しようとする人も存在する。

 

「シンジさん、ポケモンフーズをいただいてもよろしいでしょうか?」

 

「リーリエ……うん、わかった」

 

リーリエの表情を確認した僕は、彼女が何か決心を付けたのだろうと思い水タイプのポケモンが好むポケモンフーズを手渡す。リーリエは僕にお礼を言い、ルリリへと静かに歩み寄る。それでもルリリは警戒したままだが、リーリエはゆっくりとポケモンフーズを差し出す。

 

「怖くないですよ。美味しいですから食べてみてください。」

 

リーリエはルリリに声をかける。僕たちはその様子を静かに見守る。ルリリはまだ警戒を緩めないようで、差し出されたポケモンフーズの匂いを嗅ぎ危険がないかを探る。そしてゆっくりとフーズを口にした。するとルリリは先ほどの警戒心が嘘のように明るい笑顔をこぼす。リーリエはもちろん、僕たちもその表情に思わず笑顔が溢れてくる。僕はそれと同時に、リーリエがまた一歩トレーナーとして踏み出したのだと思い、リーリエの成長に喜びを感じた。

 

ルリリはその後もフーズをおいしそうに食べてくれている。そして食べ終わったルリリにリーリエは声をかける。

 

「どうでしたか?シンジさんの作ったポケモンフーズ。美味しかったですか?」

 

『ルリルリ!』

 

ルリリも警戒心を完全に解いたようで、リーリエの言葉に頷いて答えてくれる。そしてリーリエの腕の中へと飛び込む。その姿を見た僕はルリリの気持ちがなんとなくわかった気がする。

 

「え?ルリリさん?」

 

「多分ルリリはリーリエと一緒に行きたいんじゃないかな?」

 

「そうなんですか?」

 

『ルリルリ!』

 

ルリリは顔を見上げて再び頷く。僕も以前ポケモンを捕まえた時に同じ経験があるからよくわかる。リーリエはルリリの反応に嬉しそうにしてモンスターボールを手に取る。そしてリーリエは優しくルリリにモンスターボールを当てる。するとモンスターボールが開いて、ルリリはその中へと吸い込まれるように入っていく。数回モンスターボールが揺れると音を鳴らして止まる。これがポケモンゲットの合図である。

 

「やりました!ルリリさん、ゲットです!」

 

リーリエは両手でルリリの入ったモンスターボールを掲げる。これがリーリエの実質的な初ゲットになるね。

 

「ルリリゲットおめでとう!その子大切にしてあげてね。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

リーリエはカスミさんの言葉に感謝しながらルリリの入ったモンスターボールを眺める。余程初ゲットが嬉しかったのだろう。カスミさんも、水タイプを愛するがゆえにルリリの境遇にどこか思うところがあるのだろう。少し不謹慎かもしれないが、僕個人的にはリーリエのようなトレーナーに巡り合えて、ある意味では運がよかったのかもしれないと心の中で思ってしまう。

 

「……良かったね、リーリエ、ルリリ。」

 

僕は誰にも聞こえないくらい小さな声で二人に賛辞の言葉を贈る。この言葉は、リーリエが無事初ゲットできたことへのお祝いと、リーリエに出会えたことへのルリリへのお祝いも兼ねている。僕はこの出会いも運命だったのだろうと思いながらリーリエの様子を見守っていた。




リーリエをヒロイン兼カントー編主人公として上手く書けてるかは少々不安はあります。そしてリーリエの最終的なパーティは考えていません。大半はカントーorジョウトポケモンになりそうですが、リーリエの事だから恐らく殆どが絆ゲットになるかと。アニポケのような離脱ポジも作るかも……。まあおいおい考えては行きます。

ではではまた来週~!


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VSハナダジム!水のフィールドに大苦戦!

前回投稿場所を少し何故か間違えてしまったヌシです。何故あんなところに投稿したのか、いまだに謎ですがまあ支障は(恐らく)ないので大丈夫でしょう。

と言うわけで今回はいよいよハナダジム戦です!壮絶な戦いが今幕を開ける!(大嘘)


リーリエが初めてルリリをゲットし数時間が経過した。無事に大会も終了し、僕たちはルアーとも別れた。優勝することは出来なかったが、ルアーも満足そうにまた次の目的地へと旅に出た。

 

「それであんたたちはこれからどうするの?」

 

カスミさんが僕たちにこれからのことを尋ねてくる。とは言え僕たちが次にやるべきことと言えば決まっているのだが、この件はリーリエに決めてもらうのがいいだろう。

 

「あ、あの、よろしければジム戦をお願いしたいのですが……。」

 

リーリエは僕とカスミさんの顔を交互に確認しながらそう答える。僕はそれで何も問題ないという意思を伝えるためにリーリエの顔を見ながら頷いて返事をする。カスミさんもその件については特に問題ないようで快く承諾してくれた。

 

そして僕たちはカスミさんに着いて行きハナダジムへと辿り着く。ハナダジムはニビジムとの印象が全く異なり、外観はまるでプール場の様な見た目をしていた。まあ実際には中身もプール場と大差ない作りではあるのだが。

 

「さ、遠慮なく入って。奥まで案内するわ。」

「は、はい!お邪魔します!」

 

リーリエはまるで人の家に招かれたかのように丁寧にあいさつをして入る。その様子を見てカスミさんも思わず苦笑いする。僕はリーリエの緊張を解くために一言声をかけることにした。

 

「リーリエ、ちょっといいかな?」

「は、はい、なんでしょうか?」

「ちょっとしたアドバイス。ポケモンとトレーナーは一心同体。トレーナーが不安がってたらポケモンまで不安になっちゃう。もう少し肩の力を抜いて、難しいかもだけど楽しんできて。」

 

リーリエは僕の言葉に気付かされたように先ほどの迷っていた表情から一変、どこか吹っ切れたような明るい笑顔を見せてくれる。やっぱりリーリエには強張ってる顔よりも笑顔の方が似合っているね。一言で済まそうと思ってたけど、少しお節介だったかな。

 

緊張が解けたらしいリーリエと共に、僕たちはカスミさんの後をついて行く。辿り着いた先には水のフィールドが広がっていた。一見プールの様に水が広がっているが、それでも挑戦者も戦えるように丸い足場がいくつか設置されている。ジム戦ではハナダジムの様にジムリーダーにとって有利な場で戦わされることは多々ある。そういった不利な状況で挑戦者がどう対処するのかを確かめるのもジムリーダーの役割と言えるからだ。勿論一部趣味嗜好が混じっているジムも存在するけど……。

 

「じゃあ早速始めようか!」

 

カスミさんとリーリエはお互いに定位置について向かい合う。そして審判の女性も同じく定位置に付く。僕はリーリエを応援するために観客席へと移動しようとする。しかしその時リーリエに声を掛けられる。

 

「シンジさん。少しお願いを聞いてもらってもいいですか?」

「ん?どうかしたの?」

 

僕が要件を尋ねると、リーリエはモンスターボールを手に取って中からポケモンを外に出す。そのポケモンは先ほど初めてゲットしたルリリだった。

 

「すいませんがルリリさんの面倒を見ていただいてもいいでしょうか。ルリリさんにも私たちの戦いを見てもらいたいのです。」

「うん、そう言うことなら勿論構わないよ。ルリリと一緒に応援してるから頑張ってね。」

「はい!」

 

僕はルリリを抱きかかえて今度こそ応援席へと向かう。ルリリも最初は不安そうな顔をしていたが、リーリエがルリリの頭を撫でて優しく声をかけると、安心した表情を見せて僕に身を委ねてくれた。

 

「リーリエはこれから大事なバトルをするんだ。だから僕達もリーリエのことを一生懸命応援しよ?」

 

僕の言葉にルリリもやる気の入った顔をする。やっぱり優しく接してくれたリーリエに、恩以上の何かを感じているのだろうか。ルリリも観客席の塀の上に乗っかり、リーリエを一生懸命応援しようとリーリエの姿を捉える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジさんにルリリを託した私は、ジムリーダーとして対峙してくれるカスミさんの姿を見つめる。その姿を見て準備が出来たと判断したのか、審判の方が口を開く。

 

「それではこれより!チャレンジャーリーリエ対、ジムリーダーカスミによるジムバトルを開始します!使用ポケモンは2体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了です!尚ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!では、両者ポケモンを!」

 

「私の最初のポケモンはこれよ!」

 

カスミさんは最初のポケモンさんを繰り出してくる。モンスターボールから出てきたポケモンさんはヒトデマンさんでした。私が記憶している限りでは水タイプのポケモンさんです。フィールドも相まって行動を制限されている私たちが圧倒的に不利です。ですがそれが勝敗を分かつ絶対条件ではありません。私はそう確信して最初のポケモンさんを繰り出した。

 

「お願いします!シロン!」

 

私は最初にシロンを選抜しました。最初にシロンを出したのは私なりの作戦があるからです。

 

「それでは…………バトルはじめ!」

 

審判の合図と同時に私たちは動き始めます。先手必勝と言うやつです!

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

「みずてっぽうで迎え撃つのよ!」

 

シロンはヒトデマンさんに向かいこおりのつぶてを放つ。しかしその攻撃は惜しくもヒトデマンさんの攻撃で阻まれてしまいます。

 

「ヒトデマン!水の中に潜って!」

 

カスミさんの指示でヒトデマンさんは水中に身を隠す。しかしここまでは私の読み通りです。

 

「シロン!こなゆきで水面を凍らせてください!」

 

シロンはこなゆきをフィールドに放って水面を凍らせる。これこそが私のねらいです。とは言え現在のシロンの技の威力があまり高くないため一部しか凍らなかったみたいですが、これでも問題ありません。

 

水面が凍ったため水中の温度も低下し、ヒトデマンさんは堪らずに氷を割って飛び出てくる私は更なる指示を出してヒトデマンさんに追撃を仕掛ける。

 

「こおりのつぶて!」

 

シロンの攻撃はヒトデマンさんに直撃してヒトデマンさんは飛ばされました。しかし、その様子を見てもカスミさんは顔色を変えずに私たちに称賛の声をあげました。

 

「へえ~やるじゃない。まさか不利なフィールドを逆に利用してくるなんてね。面白いわ!」

 

ヒトデマンさんもダメージを負ったものの、まだまだ行けると言う意思を見せて立ち上がりました。その様子を見たカスミさんは微笑みながら次の指示を出しました。しかしその指示した内容に、私は驚きを隠せませんでした。

 

「ヒトデマン!もう一度水中に潜るのよ!」

 

その指示はなんと再び水中に身を隠す事でした。先ほど同じ戦法でやられたと言うのに…………何か策があるのかと私は疑いますが、それでも同じ手段で対処するしかありません。今の私にはそれしかないのですから。

 

「もう一度こなゆきです!」

 

シロンは再びこなゆきで水面を凍らせようとする。しかしカスミさんは先ほどと違い、更なる指示を出してこなゆきに対抗する。

 

「ヒトデマン!うずしお!」

 

なんとうずしおでこなゆきをかき消してしまいました。このような方法ですぐに対処してくるとは流石ジムリーダーです。

 

「続けてラスターカノンよ!」

「なっ!?鋼タイプの技ですか!?」

 

私がジムリーダーの判断力に感心していると、水中から飛び出してきたヒトデマンさんがラスターカノンを放ってきた。突然の鋼タイプ技に驚いた私とシロンは回避行動が間に合わず、ラスターカノンの直撃を受けてしまう。シロンも耐え切れずに飛ばされ、水中へと姿を消してしまいました。

 

これは非常にまずい状況です。氷タイプであるシロンには鋼タイプは効果抜群です。その上私とシロンにとって最も不利な水中へと引きずり込まれてしまいました。水中ではシロンを交代することができません。

 

「最後まで油断しちゃダメよ。ヒトデマン!こうそくスピン!」

 

ヒトデマンさんが高速回転をして水中にいるシロンに向かって急接近してきます。水中ではシロンの得意な氷技が使えません。それにシロンの状態も心配です。どうすれば……そうだ!あの技ならもしかしたら!

 

「シロン!じんつうりきです!」

 

シロンは水中にいる状態でヒトデマンさんにじんつうりきで対応します。ヒトデマンさんはシロンの攻撃によって跳ね返され、地上に追い出されます。じんつうりきはサイコキネシスなどのエスパー技と同じように、不思議な力を送って攻撃することが出来ます。一か八かの賭けでしたが、なんとか上手くいったみたいで良かったです。

 

「じんつうりきを使えるの!?これは想定外だったわね。」

「今です!こおりのつぶて!」

 

カスミさんの一瞬の動揺を見逃さず、私はシロンに攻撃の指示を出す。シロンは水中から勢いよく飛び出し、こおりのつぶてでヒトデマンさんに追撃をかける。ヒトデマンさんは今の一撃で水中に飛ばされるも、そのまま水面へと浮かび上がり動かなくなりました。中心にあるランプのようなものが点滅しているため、どうやら戦闘不能の合図なのでしょう。

 

「ヒトデマン戦闘不能!ロコンの勝ち!」

 

カスミさんはヒトデマンさんに労いの言葉をかけ、モンスターボールへと戻す。

 

「シロン!よくやってくれました!」

 

私がピンチを脱却してくれたシロンにお礼をします。しかしその時、予想外の展開が起きてしまいました。

 

「!?シロン!」

 

なんとシロンが倒れてしまいました。流石に体力の限界だったのでしょう。その上水中に長い時間潜っていたのですから体力を消耗していても仕方ありません。その状況でも最後まで私のために戦ってくれたシロンに感謝しながら、私はシロンをモンスターボールへと戻す。

 

「ロコン戦闘不能!」

 

審判の合図と同時に、私とカスミさんの残りの手持ちは一体となってしまいました。状況としては五分五分に見えますが、フィールドの関係上私が不利なのは変わりないでしょう。ここはあなたに任せるしかありません。

 

「これで残りは一体ずつね。悔いのないようにドンッとぶつかってきなさい!」

「はい!私も頑張ってくれたシロンの分も精一杯に戦います!」

「じゃあ私の二体目よ!ギャラドス!」

「お願いします!フシギダネさん!」

 

私とカスミさんは同時に最後のポケモンを繰り出します。カスミさんが繰り出したポケモンはギャラドスさんでした。本では何度か見たことがありますが、やはり実物は迫力が違いますね。凶悪ポケモンと称されるギャラドスはかなりの強敵に違いありません。ですが私もここまで来て負けるわけには行きません!フシギダネさんも私の気持ちに応えて、一層気合を入れてくれます。シンジさんとルリリさんも見て下さっているので、お粗末な戦いを見せるわけには行きませんよね。

 

「先ずははっぱカッターです!」

「アクアテールで防ぐのよ!」

 

無数の葉がギャラドスさんを襲いますが、水を纏った尾で全て消し去ってしまいました。草技を水技で防いでしまうなんて流石としか言いようがありません。

 

「さあどうしたの?まさかこれで終わりじゃないでしょ?」

「勿論です!続けてたいあたりです!」

「かみくだくで応戦よ!」

 

フシギダネさんは足場をギャラドスさん目掛けて飛び掛かりました。しかし、ギャラドスさんは鋭い牙で反撃してきました。完全にパワーでは負けしているようで、フシギダネさんも飛ばされてしまいました。

 

「フシギダネさん!?大丈夫ですか!」

 

フシギダネさんはその場でなんとか立ち上がり、再びギャラドスさんを見据えます。とは言えパワーで負けているフシギダネさんがギャラドスさんに勝つには一体どうしたら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『ちょっとしたアドバイス。ポケモンとトレーナーは一心同体。トレーナーが不安がってたらポケモンまで不安になっちゃう。もう少し肩の力を抜いて、難しいかもだけど楽しんできて。』

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

私の脳裏に先ほどシンジさんからいただいたアドバイスが過りました。そうでした。私がこんな調子ではフシギダネさんも本来の実力を発揮できませんよね。例えどんなに不利な状況でも、必ず突破口はあります。一刻も早くそれを見つけなければ。

 

確かフシギダネさんの覚えている技はたいあたり、つるのムチ、はっぱカッター。それともう一つあります。パワーで勝てないのならそれに賭けるしかありません。

 

「来ないなら今度はこっちから行くわよ!ギャラドス!アクアテール!」

 

早速チャンス到来です。ギャラドスさんが飛び上がりアクアテールの態勢に入りました。チャンスは一回しかありません。

 

「フシギダネさん!私を信じてください!」

 

フシギダネさんは私の声に振り向いて頷いてくれました。私もフシギダネさんを信じています。この勝負、必ず勝ちますよ!

 

「何を考えてるか知らないけど、一気に決めさせてもらうわよ!行きなさい!ギャラドス!」

 

その間にギャラドスさんも攻撃の準備が整い、水の纏った尾を振り下ろしてくる。チャンスは今しかありません!

 

「今です!やどりぎのタネ!」

 

フシギダネさんは蕾から種を飛ばしてギャラドスさんに無事命中します。当たった種はギャラドスさんに絡みつく蔓となり、態勢を崩したギャラドスさんは水中へと落下しました。

 

「嘘!?ギャラドス!?」

 

やどりぎのタネは特殊な技で、相手に種を植え付けることで相手の体力を奪うことができる技です。そして一部の行動も多少は封じることができます。この隙を逃すわけにはいきません!

 

「フシギダネさん!つるのムチです!」

 

フシギダネさんのつるのムチがギャラドスさんの顔を捉え、ダメージを与えることに成功しました。ギャラドスさんへのダメージはこれが初なのでかなり大きいと思います。

 

「たとえ動き辛くなったとしても、ギャラドスにはまだ技が残ってるわよ!りゅうのいかり!」

「躱してください!」

 

ギャラドスさんは口から紫色の炎の様なブレスを一直線に放ちます。しかしこれは私の想定内です。蔓が絡んで動きが鈍くなったギャラドスさんは接近技を使うことが困難となるはず。なので遠距離技を使ってくることは充分読めていました。フシギダネさんも私の指示に従い、冷静に避けてくれます。このまま一気に決めます!

 

「フシギダネさん!はっぱカッターです!」

 

はっぱカッターがギャラドスさんに直撃しました。怒涛の連続攻撃にギャラドスさんは堪えることができず、その場で目を回して倒れます。

 

「ギャラドス戦闘不能!フシギダネの勝ち!よって勝者!」

 

「か、勝った……勝ちました!」

 

私はギリギリの状況で勝てたことに喜びを感じその場でジャンプしてしまいました。フシギダネさんも今の戦いでボロボロになったはずなのに、勢いよく私の胸に飛び込んできてくれました。最後まで私を信じて戦ってくれたフシギダネさんとシロンに感謝しながら、私はフシギダネさんを抱きしめました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエの戦いを無事見届けた僕は、ルリリを抱きかかえて観客席を降りていく。ルリリも今のバトルに感動したようで、眼をウルウルさせて輝かせながらリーリエのことを見つめている。

 

「お疲れ様、リーリエ。見ごたえのあるいいバトルだったよ。」

「シンジさん!ありがとうございます!」

 

リーリエは僕の姿を確認すると、頭を下げながら感謝してくる。ルリリも感極まってか、直ぐにリーリエの元へと飛び込む。リーリエも突然のことに驚きながらも、しっかりとルリリを抱きしめて迎えてくれる。どうやらリーリエもポケモンたちに好かれる才能を持っているようだ。

 

「いや~、完敗だわ。流石はシンジと一緒にいるだけはあるわね。」

「……それってどう言う意味ですか?」

「どうってそのままの意味だけど?」

 

カスミさんがリーリエの戦いぶりを称賛しながら近づいてくる。僕はその内容に若干の不満を言いながらも、この人には別の意味で勝てないなと感じた。なんというか意地悪な姉と言うか、そんなイメージだろうか。

 

「何か今失礼なことを考えなかった?」

「いえ、気のせいでしょう。」

 

カスミさんがジト目で僕のことを見てくる。カスミさんは察しもいいからあまり変なことは考えられないな。流石のリーリエもこの状況には苦笑いを浮かべるしかないようだ。

 

「……まあいいわ。それよりおめでとう、リーリエ!久しぶりに柄にもなく熱くなっちゃったわ。これがハナダジムジムリーダーに勝った証、ブルーバッジよ!」

「これが……ブルーバッジ!」

 

リーリエがカスミさんからブルーバッジを受け取り、眼をキラキラさせてバッジを見つめる。そして上に掲げて声高らかに宣言する。

 

「ブルーバッジ、ゲットです!」

 

シロンも含めたリーリエのポケモンたちも、リーリエの声に合わせて飛び上がる。よほどバッジゲットが嬉しかったのだろう。それほどまでに苦しい戦いだったのだから。僕にも経験があるため、その気持ちはよくわかるけど。

 

「これでバッジは二つ目ね。あとカントーのジムバッジは6つかしら。次行く場所は決めてるの?」

 

カスミさんが僕たちに次の目的地を尋ねてくる。特にこれからの目的地は決めておらず、リーリエもカントー地方についてはそれほど詳しくもないため、否定しながら首を横に振る。

 

「この近くでジムがあるとしたらヤマブキシティかしら?このカントー地方でも特に厳しいジムだけどどう?」

 

リーリエは今のカスミさんの言葉に悩むようなしぐさを見せる。そして決心がついたように口を開く。

 

「……私挑戦してみます!」

「そう。じゃあ頑張りなさい!私も陰ながら応援してるわ!」

「はい!」

 

カスミさんは激励の言葉をリーリエに贈る。しかしその後すぐにリーリエを引っ張り耳元で何かを呟く。

 

(あっちの方も頑張りなさいよ?)

(えっ?)

(シンジのことよ。誰かにとられる前にバシッと決めなきゃ!)

(……ふえっ///)

 

リーリエの顔が突然赤くなる。小声で話していたため何を話したのか僕には聞こえなかったが、またカスミさんが余計なことを言ったのではないかと感じ、僕はリーリエに声をかける。

 

「リーリエ?どうかした?」

「っ///い、いえ!?なんでもありません!」

「そ、そう?」

 

リーリエが慌てて顔を赤くしながら首を振って否定する。本当に大丈夫だろうか?なんだかカスミさんはニヤニヤしながらこっちを見てるし……。とは言えこれ以上は何も聞き出せそうにないので追求するのはやめようと判断する。

 

取り敢えず僕たちはカスミさんに見送られ、旅を続けるためにハナダシティを後にする。未だ顔を真っ赤にしたリーリエと共に。




今明かされる衝撃の真実。シロンは神通力を覚えています。一応タマゴ技で覚えた設定です。まあご都合主義と捉えてください。2次創作ssではあまり深く追求してはいけない(戒め)。

どうでもいいことですが、この一週間ずっとモンハンFやっててやっと真秘伝×5個完成させました。流石に同じモンスターと戦ってるのは飽きるし疲れます。ポケモンの厳選の方が遥かに楽です。(但し9割イーブイしか厳選しない模様)


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橋の上の攻防!R復活!?

なんか予定と話が全く変わってしまった回です。違うんや、元々ここにギャグ回を挟みたかったんや。けど知らん間に話が飛躍してシリアスになってもうたんや。どうしてこうなった……。

ま、まあバトル描写の練習にはなったから良しとしましょう。どうやら主にはギャグ回センスは皆無の様でシリアス回ばかりになる可能性が存在しますがご了承ください。

あとまたどうでもいい話ですが、兄貴が新しいパーティ厳選終わったから、ブイズで対戦したところガモスが重すぎて3タテされましたね。誰だよ!ガモスとか言うブイズの天敵生みだした奴!結局その後、カプ神+メガルカリオのパーティで戦ったら普通に勝てました。カプ神TUEEEEE‼けどやっぱブイズじゃないと乗り気は出ませんが……。

とは言え一番驚いたことは、ニンフィアが蝶舞3積みのガモスの炎舞を一発普通に耐えたことですね。やっぱこの子特殊耐久半端ないっス。D努力値4しか振ってないんですけどね。

因みに主のニンフィアの努力値はH252/B52/C182/D4/S20の控えめちゃんです。


ハナダジムを後にしたシンジとリーリエの二人はヤマブキシティに向かう前に、とある場所へと向かっていた。どうやら今回の事はリーリエが希望したことのようだ。

 

「それにしても珍しいね。リーリエが自分から行きたい場所があるって言うなんて。」

「我儘を言ってすいません。でも以前お世話になった方にどうしてもお礼が言いたくて……。」

「ううん、僕は別に構わないよ。折角二人で旅してるんだし、色んな所を回った方が楽しいでしょ。それに、僕はリーリエと一緒だったらどこにいても楽しいからさ。」

「し、シンジさん///」

 

シンジの言葉に照れて頬を赤らめるリーリエ。シンジも先ほどの言葉を思い出して少し照れているようだ。第三者から見たら、付き合いたてのカップル同士がイチャついているようにしか見えない光景である。

 

現在彼らがいるのはゴールデンボールブリッジと呼ばれる大きな橋である。ここはハナダシティの北にあり、この橋を渡った先にリーリエが会いたいと言う人がいるのだと言う。余談ではあるが、この橋の名を日本語に訳してはいけない。絶対である。

 

「あれ?なんか橋の上に誰か立ってる?」

「本当ですね。まるでこの橋を通行止めにでもしているような……。」

 

シンジたちの視線に入ったのは男と女を合わせた合計5人の集団である。なにやら五人そろって通せん坊をしているように仁王立ちをしている。なにやら関わると面倒なことになりそうだと直感したシンジたちは、無視をして橋を渡り切ろうと考えるが、やはりと言うか5人組の方からシンジたちに話しかけてきた。

 

「おい!お前たち!」

「え?僕たちですか?」

「他に誰がいるってんだ!ここは俺たちロケット団が制圧した!ここを通り抜けたければ俺たちを倒してから行くんだな!」

 

話が見えないと困惑しているリーリエに対し、シンジはその真実に驚愕していた。何故ならロケット団と言うのは、かつてカントー地方を中心に世界征服を企んでいた秘密結社であり、巨大組織だったのだから。

 

「し、しかしロケット団はかなり前に一人のトレーナーに潰されたはずじゃ!?」

「確かに我々は一度解散の危機に追い詰められた。だが我々は立ち上がった!サカキ様を見つけ出しロケット団を再建してみせると!」

 

未だに疑問符を浮かべているリーリエにシンジは説明をする。その実態を知ったリーリエもまた驚愕する。そしてそんな悪事を野放しには出来ないと思い、戦う意思を表す。この意思の強さも成長の証と言うものなのだろう。

 

「ふっ、ようやく戦う気になったようだな。貴様らのポケモンも貰い受ける!」

 

そしてロケット団たちはモンスターボールを投げてそれぞれポケモンを繰り出す。出してきたポケモンたちはスピアー、ニドリーノ、ニドリーナ、ゴルバット、ラッタの五体だった。しかしシンジもリーリエもお互いに一歩も引く様子を見せない。相手の方が数が多く、不利な状況であるにも関わらずである。何故なら二人は互いに信頼しあい、ポケモンたちのことも信じているからである。

 

「これが僕たちの初めてのタッグバトルになるね。」

「はい。こんな形ですけど、私全力で頑張りますね!」

 

リーリエがギュッと手を握り締めて気合を入れる様子を見てシンジも安心した笑みを浮かべる。そして互いに一匹ずつポケモンを繰り出して、ロケット団たちと対峙する。

 

「お願い!イーブイ!」

「お願いします!シロン!」

 

二人が繰り出したのはアローラの姿をしたロコンことシロンと、イーブイである。ロケット団たちはたった二匹のポケモンを見て笑い出す。どうやら自分たちのポケモンの数に対して少なすぎるため舐めてかかっているようだ

 

「その程度のポケモン二体で戦う気かよ!たかが二体で俺たちのポケモンに勝てるとでも思っているのかよ!後悔しても知らないぜ?」

「後悔するのはどっちかな?」

「私もシンジさんも負けるつもりなんてないですよ!」

 

二人の言葉にロケット団たちも堪忍袋の緒が切れたかのように攻撃命令を下す。

 

「減らず口を言いやがって!野郎ども!やっちまえ!」

 

ロケット団たちは一斉に攻撃を仕掛けてくる。最初は先手を取るためにラッタがひっさつまえばを出す。シンジとリーリエは同時に躱す指示を出してイーブイとシロンは左右に分かれる。その隙を見てロケット団のポケモンたちはそれぞれに攻撃をしてくる。ゴルバットとスピアーがイーブイを、ニドリーノとニドリーナがシロンに攻撃を仕掛ける。

 

「ゴルバット!きゅうけつ!」

「スピアー!ダブルニードル!」

「ゴルバットにシャドーボール!そしてジャンプしてスピードスター!」

 

イーブイは向かってくるゴルバットに対してシャドーボールをぶつける。その後スピアーの攻撃をジャンプして躱し、背後からスピードスターを当て撃ち落とす。今の攻撃で二体ともダメージがかなり入ったのか、動きが鈍くなっていると感じる。最も、カプ・コケコのスピードと戦ったことのある彼からすれば、元からあまり脅威ではなかったのが事実だが。

 

一方リーリエも、シロンと共に戦闘を行っている真っ最中だ。

 

「ニドリーノ!つのでつく!」

「ニドリーナ!つのでつく!」

 

ニドリーノとニドリーナはシロンを挟み、別々の方向から突っ込んでくる。リーリエはその攻撃を冷静に分析し、落ち着いて対処する。

 

「今です!躱してください!」

 

シロンはリーリエの指示通り、二体を引き付けたところで躱す。するとニドリーノとニドリーナはお互いに顔をぶつけてしまう。この戦法はニビシティで見せた攻略の応用だ。彼女もこの旅を通して少しずつ成長を続けているということなのだろう。

 

「シロン!こなゆき!」

 

シロンのこなゆきでニドリーノとニドリーナは凍りつく。その様子を見て戦闘不能と判断したのか、ロケット団員はポケモンたちをモンスターボールへと戻す。

 

「やりました!」

 

リーリエは二体のポケモンを倒したことに対し喜び、思わずガッツポーズをする。しかしその喜びも束の間、シロンの背後から勢いよく接近してくるポケモンの影がいた。

 

「ラッタ!ひっさつまえば!」

 

そう、接近してきたのは始めに仕掛けてきたラッタだった。完全に油断しているリーリエとシロンの隙を狙ってやってきたのだ。

 

「!?シロン!」

 

リーリエが気付くのが遅く、シロンに指示を出そうとするもラッタは既に攻撃の届く位置にいる。もうダメかと思ったその時、ラッタに星型の弾幕が命中する。ラッタは目を回して戦闘不能となり、モンスターボールへと戻る。弾幕が放たれた方を見ると、そこにはイーブイがこちらを見て微笑んでいた。

 

「油断大敵だよ?」

「シンジさん!はい!ありがとうございます!」

 

シンジの忠告にリーリエは頭を下げてお礼を言う。しかしその時、イーブイの背後から二匹のポケモンが接近してきていた。ゴルバットとスピアーだ。そのことに気付いたリーリエがシンジに慌てて声をかける。

 

「シンジさん!イーブイさん!」

「大丈夫だよ。イーブイ!シャドーボール!」

 

イーブイは宙返りをしながらゴルバットたちを飛び越え、そのままシャドーボールを背後から当てて吹き飛ばす。流石に二体とも耐え切ることが出来ずに戦闘不能となる。

 

リーリエはその様子を見て感心していた。先ず最初に驚いたのはイーブイとの連携である。具体的な指示もなく、回避することに成功した挙句、攻撃をいとも簡単に当ててしまったからだ。更にシロンを助けるフォローをしただけでなく、自分たちの相手の動きからも注意を離さずに対処したからである。その姿を見たリーリエは、いつか自分も彼の様に強くなれるのだろうか、彼の隣に立つことが出来るのだろうかと心の中で思う。そして決意する。必ず強くなって、彼に挑戦する資格を得て見せると。

 

「これで終わりかな?意外とあっけなかったね。」

「くっ!?こいつ化け物かよ!?だがまだ終わらないぜ!まだリーダーがいるからな!」

 

男のその言葉と同時に、橋の向こうから一人の男がやってくる。その男は体格がよくやや大柄であり、髪はオールバックに纏めている。服装は長いトレンチコートを着用しており、見た目の印象では紳士的なイメージを持たせる男だった。その男は、シンジが強いと即座に感じるほどの雰囲気を出していた。

 

「お前たち、中々の腕を持っているみたいだな。」

 

男はシンジたちの前に立ち口を開く。リーリエは少し怯えた様子でシンジの後ろに隠れる。対してシンジは、男の眼をじっと見つめている。眼を見ることにより、彼が一体どのようなトレーナーかと言うのを見極めようと言うのだ。

 

「次は俺が相手だ。バトルしてくれるのはどっちだ?別に二人同時でも構わないぜ?」

「いや、それはフェアじゃない。ここは僕が相手を……」

 

シンジがそう言って前に出ようとすると、リーリエに腕を引っ張られて足を止める。シンジは後ろに振り向くと、リーリエから驚きの言葉が出てきた。

 

「あ、あの……このバトル、私にやらせていただきませんか?……ダメでしょうか?」

「リーリエ……」

 

シンジはその言葉には深い意味があるように感じられた。リーリエの眼が目の前の男だけではなく、何かその先を見据えているように見えたからだ。彼女自身、ポケモンが傷つくのは好きではない、それは今でも変わらないのだろう。そんな彼女が自分から【戦う】と言ったのだ。シンジはそんなリーリエの勇気を買うことにして引くことにした。

 

「……ありがとうございます。」

 

シンジが後ろに下がるのを確認してリーリエは呟く。そして目の前の男に立ちはだかり、男と対峙する。

 

「……私が相手です。」

「いいだろう。だが女だからと言って手加減はしないぜ?」

「望むところです。」

 

リーリエの眼は真剣そのものだった。男もその眼を見て覚悟を決める。リーリエはシロンを戻し、そしてお互いにモンスターボールを手にしてポケモンを繰り出す。

 

「お願いします!フシギダネさん!」

「頼むぜ!クロバット!」

 

リーリエはフシギダネを、男はクロバットを繰り出した。その様子を見たシンジは一つの考えにたどり着く。

 

「クロバット?それにあの人の眼……やっぱりそうか……。これはリーリエなら心配ないかな。」

 

シンジはそう言ってこの戦いを静かに見守ろうと心に誓う。そして今、リーリエとロケット団のリーダー、二人の一騎打ちが始まった。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

「避けてください!」

 

フシギダネはクロバットのクロスポイズンをジャンプすることで間一髪回避する。クロバットの素早さはそう甘いものではなかった。

 

「もう一発クロスポイズン!」

 

クロバットはUターンして再びフシギダネ目掛けてクロスポイズンを放つ。そのあまりの速さに対応しきることができず、フシギダネはクロスポイズンに飛ばされてしまう。

 

「!?フシギダネさん!」

 

リーリエはフシギダネを心配して声をかける。フシギダネもリーリエに心配を掛けないようすぐに立ち上がる。リーリエもフシギダネのその様子にホッと息を吐く。しかしそれでもクロバットの攻撃は休むことはない。

 

「続けてヘドロばくだんだ!」

「はっぱカッターです!」

 

クロバットのヘドロばくだんに対抗し、即座にはっぱカッターで迎え撃つも、フシギダネの攻撃はいとも簡単に撃ち落されてしまいヘドロばくだんがフシギダネを捉える。フシギダネも再び吹き飛ばされてしまい、もうすぐで橋から落ちそうな崖っぷちに追いやられてしまう。リーリエもフシギダネを心配してすぐに駆け寄る。

 

周りにいるロケット団員達もそのリーリエの姿を見て笑う。しかしその様子を見たシンジとリーダーが睨みつける。するとロケット団員たちは顔を引き攣らせて冷や汗を流す。その瞬間にシンジは確信した。リーダーがアローラで出会ったある人に似ていると言う事を……。

 

「……終わりだな。」

 

リーダーはそう言いクロバットに最後の指示を出そうとする。その時リーリエもまた誰にも聞こえない声で呟いていた。

 

「情けないですね。自分から任せてくれってシンジさんに言って前に出たのに……フシギダネさんまで傷つけてしまうなんて。私は自分のポケモンさんも……大好きな人も守れないのでしょうか……。」

 

涙を流しながら呟いたリーリエのその言葉は周りの誰にも聞こえなかった。しかし彼女のポケモン、フシギダネにだけは聞こえていた。フシギダネはその言葉を聞き、ボロボロの身体に鞭を打って立ち上がる。自分がリーリエを支えなければならないと心の奥で秘めた闘志燃え上がらせながら…………。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

 

そしてクロバットに最後の攻撃の指示が出される。しかし、リーリエを守るようにフシギダネが立ち塞がり、クロバットの攻撃を正面からつるのムチで受け止める。その瞬間、フシギダネの体を青白い光が包み込む。その光と共にクロバットは弾き飛ばされてしまう。

 

「!?こ、この光は!?」

「な!?このタイミングでだと!?」

 

リーリエとリーダーは驚きの声をあげる。二人のとってこの展開は予想外だったからだ。そして光に包まれたフシギダネの姿が徐々に変わっていき、遂に光から解放され姿を露にする。

 

「こ、この姿は……。」

 

リーリエは残っている涙を拭きとりながら懐の図鑑を取り出してポケモンの詳細を確認する。

 

『フシギソウ、たねポケモン。フシギダネの進化形。蕾が背中についていて、養分を吸収していくと大きな花が咲くという。』

 

「フシギダネさんが進化した……と言う事でしょうか……。」

 

リーリエは図鑑説明を見て驚きながら図鑑をしまう。彼女自身、ポケモンが進化するところを実際に見るのは初めてであり、その上自分のポケモンが進化することも初めてであるため戸惑っているのだ。

 

「フシギダネ……いや、フシギソウがリーリエの気持ちに応えてくれたんだよ。」

「シンジさん……」

 

戸惑っているリーリエに対して、シンジが近づき進化した理由を告げる。事実、ポケモンたちが進化する原因は未だ謎とされている。時には成長することで進化に近づいて行ったり、時にはトレーナーの思いに応えようとして進化したり、時にはトレーナー懐くことによって進化したりと本当にさまざまである。今回のフシギダネの進化もその例に漏れないだろう。

 

「フシギソウさんが……私の気持ちに……」

 

フシギソウはリーリエの方へと振り向き嬉しそうに笑いかけてくれる。そんなフシギソウに感謝しながら、リーリエは涙を流しながらフシギソウを抱きしめる。

 

「トレーナーの気持ちに反応して進化したか。だが勝つのは俺だ!クロバット!クロスポイズン!」

「!?来ます!フシギソウさん!避けてください!」

 

リーリエは素早く接近してくるクロバットに対し、回避行動をとる様に指示する。しかしフシギソウは回避する様子を見せず、それどころかクロバットに向かい勢いよく突っ込む。その動きに対しリーリエは一瞬驚くが、その後の光景で更に驚くこととなった。何故なら先ほどは完全なパワー負けをしていたのにも関わらず、今では寧ろクロバットを押し返すほどの力を見せつけたからだ。

 

「あれはとっしんだね。たいあたりよりも強力なノーマルタイプの技だよ。」

「とっしん……フシギソウさん!新しい技を覚えたのですね!」

 

リーリエはフシギソウが新しく技を覚えたことに大喜びする。フシギソウも顔だけ振り向きリーリエに応える。そしてすぐにクロバットの姿を見据える。するとクロバットは既に態勢を整えていた。その様子からクロバットは良く育てられているのが分かる。

 

「進化してパワーも上がった上に、新たな技まで覚えたか。クロバット!エアカッター!」

「躱してツルのムチです!クロバットさんを捕まえてください!」

 

クロバットが翼を羽ばたかせ鋭い風をフシギソウに向け放つ。しかしフシギソウはそれを冷静に回避し、つるのムチをクロバットの翼に絡めて動きを封じる。クロバットは必死に振りほどこうとするが、進化して更に強力となったフシギソウのつるのムチを解くことは出来なかった。

 

「そのまま叩きつけてとっしんです!」

 

クロバットを橋の上へと叩きつけ、クロバット目掛けてとっしんで急接近する。クロバットも先ほどのとっしんと、今の叩きつけによってダメージが着実に蓄積されており、回避行動に移ることが出来ずもろに喰らってしまう。そして遂に限界がきたようで、目を回してその場で戦闘不能となってしまう。

 

「っ!?クロバット!?」

 

男はクロバットの身を心配してすぐに近づく。激しい戦闘が終わったフシギソウとリーリエはホッと一息つき、同じような動作で地面にへたり込む。今の最後の戦術を見てシンジは思った。あの時スカル団と初めて戦った時と似たような倒し方だと。リーリエは常に彼の戦いを見ていたため、自然と似た戦法を取る様になっていたのだろう。それを咄嗟に実践できるのが凄いと感じ、将来は有望なトレーナーになってくれるのだろうと心の奥でシンジは思った。

 

そしてシンジは男に近づき一つの木の実を渡す。

 

「オボンの実だよ。食べればあなたのクロバットは元気になるはずだ。」

「……すまないな」

 

男はそう言って木の実を受け取りクロバットに食べさせる。クロバットはオボンの実を食べると、嬉しそうな笑みを浮かべながら男の腕の中で静かに眠る。

 

「……完敗さ。途中で俺は勝利を確信していた。それで満足していたんだ。」

 

男は眼を瞑って今の戦いの反省点を口にする。しかしその後首を横に振り、続けて言葉を繋げる。

 

「いや、これも今となってはただの言い訳だな。彼女のポケモンに対しての思いが強くて、俺が弱かった…………それだけの事だ。」

「……確かにあなたは負けた。それは事実かもしれない。でも……」

 

シンジはそう言いながらフシギソウへと近づきクロバットと同じようにオボンの実を与える。その姿にリーリエは感謝しながら微笑む。シンジもそんなリーリエに微笑み返し、フシギソウを撫でながら言葉を続ける。

 

「リーリエとあなたには大きな差はなかったと思うよ。」

「なぜそう思う?」

 

男の質問に対し、シンジは立ち上がり振り向いて答える。

 

「あなたのクロバットの進化方法はトレーナによく懐くこと。クロバットはそれほどあなたに信頼を置き、ともに時間を歩んできたパートナーなんだ。それにあなたの眼からは邪気が感じられなかった。ロケット団のリーダーをしているのにも何か理由があるんじゃないんですか?」

「…………それだけ冷静な判断ができ、尚且つ見抜くなんてな。お前只物ではないな。一体何者だ?」

 

男のその問いにシンジは覚悟を決めた様子で答える。

 

「…………アローラ地方の初代チャンピオンです。」

「!?……そうか。それならお前のただならぬ雰囲気も納得できる。」

 

男はシンジの正体に納得したようにうなずく。

 

「……俺は数年前、ある男に敗れた。」

 

男はその場で昔の話を語りだす。シンジはその話をただ黙って聞いている。リーリエもフシギソウを抱きかかえてシンジの隣で話を聞く。

 

「俺も腕には自信があった。俺と俺のクロバットが負けるわけがないと確信していた。しかしその男は俺の予想をはるかに超えた強さだった。正直桁が違うとさえ感じた。」

 

男はその時のトレーナーの姿を思い出しながら語る。そのトレーナーはピカチュウを連れた凄腕のトレーナだそうだ。その話を聞いてシンジもそのトレーナーの姿が思い浮かんだ。いや、寧ろそのトレーナーを知らない者の方が少ないだろう。

 

「その時俺は初めて敗北を知ったよ。それから俺は誰にも負けるわけには行かない、強くならなければと思った。そして今、俺はロケット団のリーダーとして強さを求めここで鍛えていた。あんた達のような強者を待ちながらな。」

 

そこで男は立ち上がり更に言葉を繋ぐ。

 

「だがそれもここまでだ。あんたのような凄いトレーナーに会ってそこまで言われたんだ。もう一度一から鍛えなおすさ。そして必ずあんたにリベンジしてみせる。そしてあの時の男にもな!」

 

彼のその表情からは先ほどまでの迷いや不安は一切なかった。その顔はまさに一人のトレーナとしての凛々しい顔だった。どうやら吹っ切れたようでシンジを思わず笑みを零す。

 

「はい!私ももっともっと強くなって、次も必ず勝ちますから!」

「……ふっ」

 

彼はいづれリーリエのいいライバルとなって再び立ち塞がるだろうとシンジは心の中で思う。そして男はロケット団員たちの方へと向き言葉を告げる。

 

「これより俺はロケット団から足を洗う!そしてこれをもってロケット団は解散とする!異論のあるものは戦ってそれを示せ!異論がなければ早々にこの場から立ち去れ!」

 

男は決意を込めた眼差しでロケット団員たちに衝撃の真実を告げる。彼らもその言葉には逆らえないようで、驚きながらもその場を立ち去っていく。そして男はシンジたちの方へと振り向いて口を開く。

 

「……ハジメ、それが俺の名だ。お前たちの名前を聞かせて貰っても?」

「僕の名前はシンジ。」

「私はリーリエと言います。」

「シンジにリーリエか。覚えておく。また会った時には今よりも強くなっておくさ。」

「それはお互い様だよ。」

 

シンジとハジメは握手を交わす。その後、ハジメは振り向いてその場を立ち去っていく。シンジ彼のその様子を見て一番の親友の姿を思い出す。自分の強さを極めるために相棒と共に歩んだ一人のトレーナーの事を……。

 

「……凄く強い方でした。次に戦った時、私は勝てるのでしょうか。」

「勝つためにも更に強くなって、互いに切磋琢磨しあう……それがトレーナーだよ。リーリエもこれからもっと経験を積んで強くなっていけばいいよ。」

「シンジさん……ありがとうございます。やっぱりシンジさんは私の憧れの人です。」

 

リーリエはシンジへの正直な気持ちを呟く。シンジもその言葉に頬を掻きながら照れるものの、リーリエのその気持ちがとても嬉しく感じていた。それに彼女の成長もまだまだ発展途上だと言うことに期待を膨らませていた。

 

そして二人も歩き出す。まさかの展開に驚きの連続ではあったが、それでも二人にとってこの出会いはきっといい経験になったのだろうとお互いに感じる。二人は更なる出会いに胸を躍らせながら旅を続けるのだった。




なんかフシギダネ進化させてしまいました。でも原作でもこの段階で20レベル超えてたりするから大丈夫だよね?違和感ないよね?

そう言えば最近会社でも風邪が流行っているみたいなので皆さんも気を付けてくださいね。主は○○なので風邪を引くことはないと思われますが。まあ毎日帰宅したらアルコール消毒をしているので大丈夫でしょう。タブンネ

ではまた次回お会いしましょうノシ


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その男マサキ!研究家の道!

今回はマサキ回です。正直マサキの性格がイマイチ分からないので自分の想像で書いてます。まあ二次創作あるあるだから仕方ないよね?ね?


シンジとリーリエはゴールデンボールブリッジを無事超え、目的の家へと向かっていた。

 

「あっ!シンジさん見てください!あの家です!」

 

リーリエが指を指して示した方角には、少し寂れてはいるものの、人が住んでいることは間違いないと思わせる小さな小屋があった。リーリエの話によればここは【みさきのこや】と呼ばれていて、ここに一人の研究家が住んでいるという話だ。ただ彼女によれば、その人物は少々変わった人なのだとか……。

 

二人はその小屋の前に立ち、ノックをしようとする。しかしシンジがドアに触れる直前、小屋の扉が自然と開いてしまった。不用心だと感じた二人は、静かに小屋の中を覗こうとする。

 

「すみませ~ん……だれかいませんか~?」

 

シンジが遠慮しがちに誰かいないか呼んでみた。すると室内から若い男の声が聞こえてきた。

 

「おっ!誰かきてくれたんか!入ってきてええからはよ助けてくれへんか?」

 

二人は助けてくれ、と言う言葉に一瞬戸惑いながら慌てて小屋に入る。小屋の中は少し薄暗く不気味に感じたが、配線がごちゃごちゃとしていて、まるで研究室のようだった。しかし室内には若い男どころか人が一人もいない状況である。この状況にシンジは疑問に思うが、その疑問を振り払うようにリーリエが口を開く。

 

「この状況……もしかしたら……」

「リーリエ?何か知ってるの?」

「は、はい。恐らく……」

 

リーリエはその言葉と同時に下の方へと目線を向ける。シンジもその視線に釣られて下を見る。するとそこには一匹のポケモンがいた。

 

「ポッポ?」

「あっ、いえ、これは……。」

「その声はもしかしてリーリエちゃんか?」

 

リーリエの言葉に反応してポッポが喋る。その非現実的な光景にシンジは思わず驚きの表情を見せる。

 

「驚かせてスマンな。理由は後で話すやさかい、ワイがあの機械に入ったらそこのボタンをポチッと押してくれへんか?」

 

ポッポ?は大人一人が入れそうな奇妙な機械を見ながら話す。正直シンジはどういう訳なのか分からなかったが、取り敢えずここは言う通りにしようとボタンの前に立つ。そしてポッポが機械に入って合図を出した時にシンジがボタンを押すと、機械が作動し扉が自動で閉まる。

 

暫くすると、再び扉が開き中からドライアイスのような煙が湧き上がる。そして中から一人の男性の影が現れ、少しずつその姿がハッキリとしてくる。

 

「いやー、助かったわホンマ!毎度リーリエちゃんはええタイミングで来てくれるな~。」

 

その男性は自らの髪を掻きお礼を言いながら出てくる。そしてリーリエが一歩前に出てシンジの方を振り向いて彼の事を紹介する。

 

「紹介しますね。この方がマサキさんです。カントー地方の研究家で、母を救ってくれた恩人です。」

 

シンジはその名前に聞き覚えがあった。シンジはマサキと言う一人の男の情報を頭の中で整理する。本名はソネザキ・マサキ。ポケモン研究家としてかの有名なオーキド博士にも一目置かれている存在であり、優秀な発明家としても名前を残している人物だ。しかし、彼の名声は決していいものだけではない。あくまでも噂ではあるが、彼は研究家の中でもかなりの変人であり、通常の人なら考えもしないであろう実験も平然と実行してしまうのだとか。そしてその挙句にいつも酷い目にあっているという噂もよく聞く。今回目の前で起きていた出来事がそのいい例だろう。

 

しかし、シンジは例え彼がどのような人物であったとしても、リーリエとルザミーネを助けてくれた彼には敬意を持って接しようと心の中で決める。

 

「恩人やなんて大げさやでリーリエちゃんは……。ワイはただサポートしてやっただけで、本当にルザミーネさんを救ったのはリーリエちゃんの強い思いや。」

 

マサキはリーリエの言葉に照れた様子で答える。シンジはそんな彼に握手を求めるように手を出す。

 

「リーリエの一件、僕からもお礼を言わせてください。ありがとうございました。リーリエとルザミーネさんを救っていただいて……。」

「はは、君まで大げさな。えーと君はシンジ君……やね?」

「?どうして僕の名前を?」

 

シンジとマサキは握手を交わし、マサキはシンジの名前を呼ぶ。何故自分の事を知っているのか疑問に思ったシンジは彼にその理由を尋ねる。すると返ってきた答えを極めて単純だった。

 

「そりゃリーリエちゃんから聞いてた話と同じやからな。」

「リーリエから?」

 

二人は交わした手を離して会話を続ける。

 

「せや。彼女は君の事を心の底から尊敬しているみたいやな。リーリエちゃんからぎょうさん聞いてたんや。君が世界一凄いトレーナーやって楽しそうに話してたで。」

 

リーリエは少し顔を赤くして俯きながら照れている。そのことを笑いながら話すマサキに対し、シンジも面と向かって言われた為リーリエと同じように赤くする。しかし、マサキが次に放った言葉により、二人はより別の意味で窮地に立たされることになった。

 

「それから自慢の彼氏やって言ってたで?」

「なっ///」

「ちょっ///マサキさん!私はそんなこと一言も言ってません!」

「あれっ?違ったんか?ワイはてっきり二人が付き合ってるんかと思ったんやが。」

 

二人は先ほどよりも顔が赤くなり、声を荒げながらリーリエはその言葉を否定する。しかし内心ではその言葉が現実になればいいなとも思ってしまう。表情を変えず平然とその言葉をはっきりと言うマサキに対しシンジは、これも噂通りなのかと頭の中で考える。

 

「そ、それはそうとなんでポッポの姿になっていたんですか?」

 

早く話題を変えようと、シンジは疑問に思っていたことをマサキに問いかける。マサキはその姿をニヤニヤと微笑みながらその疑問に答える。

 

「ああ、あれな。簡潔に言うと新しいマシンの開発をしてたんや。」

「新しいマシン……ですか?」

 

マサキの言葉にリーリエが首を傾げる。

 

「せや。リーリエちゃんが初めてここに来た時も実験してたんやけどな?そん時はポケモンと自分の肉体のみを入れ替える実験の最終段階を試していたところやったんや。」

「あの時は驚きました。噂ではポケモンさんと入れ替わった後、何事もなかったように過ごしていると聞いてはいましたが、その実験をまだ続けているとは思いもしませんでしたから。」

 

リーリエは当時のことを思い返すように話す。マサキも初めは別のトレーナーに助けられたと話しているが、それでも懲りずに実験を続ける彼の姿を見たシンジは、呆れのような尊敬のような自分でもよく分からない感情を抱いていた。

 

「んで、今はもっと先に進もうと新しいマシンを開発してたわけや。」

「それでどんなマシンを開発していたんですか?」

 

シンジの言葉にマサキは自信満々に笑いながら口を開く。

 

「ふっふっふ、ワイが今開発しているのは……自分の姿をポケモンに変えてしまう装置や!」

 

その言葉を聞きシンジとリーリエは思わず目がメタモンの様な点になってしまう。一番の疑問に思ったことは先ほど話していたマシンとはどう違うのかである。これだけではあまり違うように思えるが、マサキが二人が疑問を問いかける前に口を開く。

 

「せやから素人は甘いんや。どうせさっきのマシンと違いが分からないんやろ?ちゃんと説明してやるからよう聞きや。」

 

二人はマサキの言葉に頷いて聞き耳を立てる。そしてその様子を確認した笑顔を浮かべながら話を続ける。研究家であり発明家でもある彼は、自分の発明品を人に話せることが嬉しいのだろう。しかし、その内容を理解できる人も限りがあるため、こう言った町外れで毎日一人で研究に没頭しているのだと言う。

 

「以前発明したのはあくまで“ポケモンと肉体を入れ替える”だけの機械や。簡単に言うとポケモンがいなければこの実験には成功しない言うこっちゃ。」

 

マサキは簡単に言っているが、ポケモンと身体を入れ替えるだけでも凄いことだとシンジは心の中で感心する。

 

「しかし今回のは違うで。今回ワイが開発してんのは、“自分がポケモンになりきれる”マシンや。つまり、ポケモンがいなくても“好きなポケモンになりきれる”っちゅう話や。たとえ伝説のポケモンであろうともや!」

 

その最後の言葉に二人は驚愕する。同時にシンジは、彼は実は想像以上に凄い人物なのではないのかと認識させられた。

 

「?ではなぜさっきはポッポになっていたんですか?いっその事伝説のポケモンになれば実験は成功だと確信できるのでは?」

「ドアホ!そないなことしたらワイの家が潰れてしまうやないかい!せやから身近なポケモンで試してみたんや!」

 

マサキのそう言って怒鳴るが、実際に実現出来れば自分も嬉しいし感無量だと話を続ける。

 

「ただ今回の実験で一つの欠点が判明したわ。」

「欠点ですか?それは一体……」

「このマシンの欠点……それはな……」

 

その欠点についてマサキは悩む仕草をしながらもシンジたちに告げようとする。そのマサキの表情は真剣そのものであり、シンジたちは余程の問題なのだろうとゴクリと喉を鳴らす。しかし彼から発せられた言葉はある意味で予想と斜め上を行くものだった。

 

「ポケモンに入れ替わると自力で元の姿に戻れへんっちゅうこっちゃ!」

「・・・・・・え?」

「さっきみたいにポケモンの姿になるやろ?せやけど元に戻るにはそこにあるスイッチを押さなあかん。そうすると一部のポケモンではボタンを押せへんことが分かったんや。」

 

その言葉を聞いたとき、二人の思考が止まってしまった。確かにポッポの力と体ではボタンを押すことは少々困難だろう。それに慣れていないポケモンの体で空を飛ぶのも中々に難しいかもしれない。例えるのであれば自転車に乗るにはコツがいるように。

 

しかし先ほどの深刻そうな表情から、まさかこんな単純な答えが返ってくるとは思わなかった。〇〇と天才は紙一重と言うが、この状況にその言葉は最も相応しいのではないだろうか。未だにその解決策について悩んでいるマサキに対して、リーリエはもう一つの問題点となりえるのではないかと思われる事を指摘する。

 

「あ、あの~」

「ん?なんや?」

「いや、もしそのマシンでファイヤーさんのような伝説のポケモンになれたとしても、サイズの問題でそのマシンが壊れてしまうのではと思うのですが……」

「・・・・・・・・・・・・あっ!?」

 

リーリエの指摘にショックを受けたのか、膝が崩れ落ちるように目に見えて落ち込むマサキ。シンジは彼が天才ではあるのだろうと感じてはいるが、勢い任せに夢を追いかけている一人の少年の姿にも見えた。それはまるで、トレーナーとして旅に出るのを今か今かと待ち続けている過去の自分を見ているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、さっきはスマンかったな!みっともないところ見せてもうて!」

「い、いえ、僕たちは全然気にしてませんよ。」

 

先ほどの騒動からマサキは吹っ切れたように『このマシンの事は諦める!』ときっぱりと宣言した。そんな簡単に諦めていいものなのかとシンジたちも考えたが、発明者である本人が決めたことに口出しするのも野暮だと感じたのでこの件は本人の判断に任せることにした。

 

「そう言えばワイはリーリエちゃんから話を聞いてから、君に会いたい思うとったんや!」

「え?僕にですか?」

 

彼らは今室内にあるテーブルを挟んだソファーに座って向かい合って話をしている。そこでマサキはシンジに会いたいと言う理由を自分の口から告げる。

 

「せや。シンジ君の手持ちがイーブイとその進化形のみだってきいてな。ワイはポケモンの中でもイーブイが特に大好きな男なんや!」

 

今の言葉にシンジは成程、と納得する。確かに彼のパーティはイーブイとその進化形のみで構成されており、イーブイは元々珍しく希少性が高いことでも知られているため興味を持たれても不思議ではない。特にイーブイが好きな人からすれば余計だろう。

 

「イーブイはポケモンの中でも他にはない不思議な遺伝子をしていてな。その謎は未だ解き明かされてはいないが、条件によって多種多様な姿へと変化してしまう類を見ないポケモン。そう言った研究しがいのあるポケモン、研究対象として魅力的なポケモンとしてワイは一目置いているわけや。」

 

まあ可愛いってのも勿論あるんやけどな、と一言付け加えて満面の笑みでそう語る。彼のその表情からは研究対象としてではなく、心の底からイーブイが大好きなのだと二人には伝わってきた。リーリエの聞いた話では、最初に捕まえたポケモンはイーブイではなく、ケーシィとらしいが。

 

「そこで一つ頼みがあるんやが……」

「何でしょうか?」

「君のイーブイ見せてくれへんやろか!アローラチャンピオン自慢のイーブイを見せてほしいんや!頼む!」

 

深々と頭を下げて頼み込んでくるマサキに戸惑いながらも、シンジは二つ返事でOKを出す。そしてシンジはイーブイの入ったモンスターボールを取り出し、テーブルの上にイーブイを出す。

 

『イブイ?』

「おお!これがシンジ君のイーブイかいな!聞いてた通り色違いやねんな。」

 

珍しそうにイーブイを見つめるマサキに対し、イーブイは少し怯えるかのようにシンジの元へと飛び込んでいく。シンジがイーブイを抱き寄せると、イーブイは小さく体を震わせていた。その様子を見てマサキは余程ショックだったのかガクッと肩を落とす。

 

「あはは、ごめんなさい。僕のイーブイはちょっと顔見知りで、僕以外の人にはあまり心を許してくれないんです。」

 

その言葉に安心したように、マサキはホッと息をつく。そして今度は怖がらせない様にと優しくイーブイに声をかける。

 

「さっきは驚かせてスマンかったな。もう怖がらせへんからこっちに来てくれへんか?」

 

マサキが優しく声をかけるも、イーブイはまだ少し怯えたように彼の顔を見る。そして怯えているイーブイに、シンジもイーブイの背中を押すように声をかける。シンジもイーブイには色んな人と関わって精神的にも強く育ってほしいと願っているのだ。

 

「大丈夫だよイーブイ。この人は怖い人なんかじゃないから。」

 

シンジのその言葉に安心したのか、イーブイはゆっくりとマサキの元へと近付いていく。マサキはイーブイを優しく抱き寄せると、イーブイも先ほどまでの警戒心を解き安心した笑みへと表情を変える。

 

「イーブイが見ず知らずの人に笑顔を見せるなんて珍しいね。」

「まあワイはイーブイが大好きやからな。イーブイの喜びそうなことなら心得てるつもりやで。」

 

流石はイーブイが大好きなだけはあるとシンジは感心する。しかしここでリーリエが1つの疑問を抱き、シンジに問いかけた。

 

「イーブイさんって人見知りだったんですね。でもバトルの時はあんなに頼りになって凛々しいのは何故なんですか。」

 

確かにリーリエの言う通り、ここは皆が疑問に思うところだろう。いつもバトルの時には闘争本能を感じられるほどのオーラを出すイーブイだが、今のイーブイを見てもそういった様子は一切感じられない。そこでシンジは自論ではあるものの、自らが感じた答えをリーリエに伝える。

 

「多分イーブイは、僕の思いに答えてくれようとしてるんだよ。」

「シンジさんの思いに?」

 

シンジは頷きながら話を続ける。

 

「イーブイとの出会いが少し変わってたからかもしれないけど、初めは僕に全く懐こうとしなかったんだ。」

「え?イーブイさんもですか?」

 

リーリエは以前にニンフィアとの特別な出会いの話を聞いていたためそこまで驚くことはなかったものの、現在よく懐いているイーブイを見ているとやはり信じられない真実であった。マサキもシンジの話を興味深そうに聞いており、今までマサキに撫でられていたイーブイも主人の言う通りと言っているように、シンジの膝の上に乗ってきた。シンジはそんなイーブイに微笑みながら頭をなでる。

 

「折角出会ったんやしその時の話、詳しく聞かせてくれへんか?ワイも君とイーブイの出会いには興味あるんやわ。」

 

シンジは別に構わないと言った様子であの時の事を思い出しながら話し始める。リーリエもやはり同じように興味を抱いているようで彼の言葉に耳を傾ける。シンジの頭の中には、イーブイと出会った時の記憶が鮮明に蘇る。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 




なんか予定にはないイーブイの過去回を書くことになってしまった。マサキがイーブイ好きと言う設定を思い出したら何故か書いてしまったのだ。これも仕方のない犠牲だ←意味不明

そう言う訳で次回はイーブイ回です。最近は文章力も上がってきたと自負(慢心)しているので多少楽しめるようになってきたのではないかと思っております。え?調子に乗りすぎ?フヒヒ、サーセンwww


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イーブイの過去!奇跡の巡り合わせ!

イーブイの過去回です。多分みんな忘れてると思いますが、初ミヅキ戦の時に伏線っぽい事は建ててました。だが正直当時は作る気はなかったです。特に考えてませんでしたし……。しかしこうなった以上気合入れて作りましたのでどうか温かい目でイーブイの事を見守ってあげてください。イーブイ可愛い。


シンジはとある地方での旅を終え、故郷であるカントー地方のマサラタウンへと帰ってきていた。彼はこれまでも数多くの地方を一人で旅し、また数多くの仲間たちとも出会い成長してきた。

 

次に目指すべき地方は既に決まっている。マサラタウンへと戻ってきた数日後、ククイと名乗るポケモン博士と出会いとある地方の話を聞いたのだ。その地方の名はアローラ地方。カントー地方とは真反対に位置している島々が集合した珍しい地方である。

 

その話を聞いたシンジはすぐにでも行きたいと言う気持ちがあったが、今は旅の疲れを癒そうと暫くは休むことにした。そして現在はマサラタウンのオーキド研究所に存在する、ポケモンたちが仲良く暮らしている森へとやってきている。ここの森には木の実なども充実しているため、色んな野生のポケモンたちが暮らしている。ポケモンたちが過ごすにはとても快適な環境であるだろう。オーキド博士もポケモンたちの研究のためによくここを訪れているのだとか。

 

「今日もポケモンたちが楽しそうにしてるなぁ。」

 

その様子をシンジは微笑ましい様子で眺めながら散策している。昔は良くこの森でポケモンたちと共に仲良く遊んだりもしていたが、旅に出てからは立ち寄る機会が少なかった。折角なので立ち寄ってみてはどうだ、と言うオーキド博士の提案により立ち寄ることにしてみたのだ。久しぶりなので今ではどんなポケモンたちが過ごしているのかも気になったシンジは、その提案を受け取り歩き回ってみることにしたのだ。

 

シンジが辺りを見渡しながら歩いていると、とあるポケモンたちの声が聞こえた。その声はどこか荒々しく、喧嘩している声にも聞こえた。シンジはその声の正体が気になって、声のする方へと駆け出した。するとそこには数匹のポケモンが一匹のポケモンを囲むように迫っている。なぜこんな状況になっているかは理解できないが、ポケモン同士の争いとは言えこのまま見過ごすのは好ましくないと感じた彼は、そのポケモンを庇う様に前に立つ。

 

「やめてあげてよ!この子が可哀想だよ!」

 

一部のポケモンたちはシンジの顔を覚えているのか、彼の顔を見た後に他のポケモンたちを説得してくれて、この場を去っていった。理由はイマイチ分からなかったが、取り敢えずは一安心だと思い後ろで怯えているポケモンの方へと振り向く。しかしその姿を見たシンジは言葉を失った。

 

「色違いの……イーブイ……?」

 

彼が目にしたのは小刻みに震えて怯えている白い姿をしたイーブイだった。しかしそのイーブイは、先ほどまでの緊張が一気に解けたのかその場で倒れこんでしまう。

 

「イーブイ!?」

 

シンジは倒れたイーブイが心配になり、近付いて抱き上げる。どうやら気を失っただけの様で、大事がなさそうだと安心したシンジはイーブイをそのままオーキド研究所へと連れていくことにした。マサラタウンは小さな村で、ポケモンセンターが存在しないものの、ポケモンを管理するのに最適なシステムが揃った研究所が存在しているためこういった時には特に重宝される。

 

恐らく疲労が溜まっていて気を失ってしまったと思われるイーブイの体に負担をかけないように、なるべくイーブイの体を揺らさずに森の外へと走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーキド博士!イーブイの状態を見て上げてください!」

 

研究所へと血相を変えて駆け込んでくるシンジに初めは驚いたオーキド博士だが、抱きかかえているイーブイを見て深い事情を聞かずに手慣れた対応を見せた。

 

「取り敢えずそこに寝かせて確認しよう!」

 

オーキド博士は近くにある担架にイーブイをそっと寝かせるように指示を出す。近くにいた助手もオーキド博士の指示に従って、手際よくイーブイの状態を確認する。博士の手慣れた動作と人望の厚さを見て、流石はポケモン研究の第一人者と言われるだけの人物ではあるとシンジは心の中で感心する。

 

「どうやら疲労が溜まって疲れて眠っているだけのようじゃの。この子を見つけた時の事を話してくれんかの?」

 

シンジはその時の状況をオーキド博士に話す。その内容を聞いたオーキド博士は、一つの結論に辿り着いた。

 

「恐らく原因は色違いだからじゃろうな。」

「どういうことですか?」

「色違いのポケモンは世界を探しても数は少ない。それはここの森であろうと当然同じじゃ。それゆえ、色違いであるのを理由に仲間から仲間だと認められない者や、時には虐められてしまうケースも少なくないのじゃよ。」

 

オーキド博士の話にシンジは納得したように頷く。確かに同じ群れの中で違う色のポケモンが混ざれば目立ってしまい、他のポケモンから狙われてしまう可能性なども高くなってしまうだろう。先ほどの状況を考えても、決して広くはない森の中に一匹だけ通常とは違う色のポケモンがいれば、気持ち悪いなどと思うものも出てきてしまうだろう。仕方のないこととは言え、やはり認めがたい事実である。

 

「博士!イーブイが目を覚ましました!」

 

イーブイを見てくれていた助手の一人が、博士に声をかける。イーブイが目を覚ましたと言う朗報を聞き、シンジの表情も明るくなる。早速イーブイの様子を確認するが、目を覚ましたばかりで状況が掴めていないのか、周りの様子を確認したのち怯えるように研究結果の本が並んでいる棚の裏に隠れてしまった。

 

「もしかすると、イーブイは虐められていたことがトラウマとなって人間やポケモンに対して軽い恐怖を持ってしまったのかもしれないの。」

 

そう推察したオーキド博士は、イーブイを同じ視線の高さになって話しかける。

 

「ほ~ら怖くないぞ~。ワシらは君の味方じゃよ~。」

 

イーブイを驚かせない様に優しく声をかけながら博士は手を差し出す。しかしイーブイは敵意を持っていると判断したのか、不安そうな顔をしながら更に奥へと入ってしまう。その様子にショックを受けたのか、博士は少し目が潤んでいるように見えた。博士はポケモンがとても好きでありポケモンからも好かれるのだが、何故か不憫な目にあったり怯えられたりと、なんと言うか少し不幸体質なのである。しかしポケモンの知識では右に出る者はいないと言われるほどの人物ではあるので、決める時は決める心強い人でもあるのだが。

 

そのイーブイの様子をみて心配になったシンジは、オーキド博士に変わってイーブイに手を差し伸べる。彼自身も、このままよりもやはりみんなとは仲良く接してほしいし、何より自分自身とも友達になりたいと思っているのだ。やはり旅の中で成長したとしても、根はポケモンがただ大好きな少年であり、純粋な心を持ったトレーナーと言うことなのだろう。

 

「ほら、イーブイ。怖くないよ。僕たちは君と友達になりたいだけなんだ。」

 

シンジの言葉にイーブイは再び顔を出すが、トラウマが原因の恐怖によるものか、シンジの差し出した手に噛み付いてしまう。

 

「いつっ!?」

『イブ!?』

 

シンジは痛みにより顔を歪めるが、決して手を引こうとはしない。このまま手を引いてしまえば、イーブイの心を否定したことにも繋がりかねないからだ。イーブイの心を開くには、自分がイーブイの全てを受け入れることが大事だと彼は判断したのだ。

 

イーブイは自分のした行動に焦りを感じたのか、それとも攻撃を加えてしまったことに対しての不安か、その場を飛び出して部屋の隅っこへと向かい怯えた様子を見せてしまう。やはり一筋縄では行かないと頭を悩ませたシンジは、イーブイに噛まれた手を軽くさすりオーキド博士に一つの提案をする。

 

「オーキド博士、一つお願いがあるのですが。」

「なんじゃ?」

「あのイーブイ、僕が少し預かってもいいですか?」

 

シンジの提案に、オーキド博士は一切驚いた様子を見せず、寧ろ察していたように笑みを零しながら返答する。

 

「勿論じゃよ。寧ろイーブイの事に関してなら君の方が適任じゃろう。それに君なら安心して任せることが出来るしのぉ。イーブイの心の扉を、しっかりと開いてあげるんじゃぞ!」

「はい!ありがとうございます!」

 

シンジはオーキド博士のその言葉に感謝して頭を下げてお礼を言う。彼らも付き合いが長いため、お互いの事は家族の様に良く知っている仲なのであろう。通常なら他人に任せることが難しいであろう一件を快く承諾したことがその証拠である。

 

シンジはその後、暫くイーブイと共に過ごすこととなった。彼はイーブイが心を開いてくれるように、色々なことを試してみようと努力することにした。

 

先ず最初に試したことは、自分のポケモンたちとの顔合わせである。彼のポケモンたちは全てイーブイの進化形で構成されているため、イーブイとは仲良くなれるのではないか、と判断したのである。それに彼のポケモンたちはトレーナーに似て心優しいためイーブイを虐めるようなことはしないであろう、と考えた。

 

しかし現実はそう甘くなかった。彼のポケモンたちは自分のトレーナーの指示を受け、イーブイと仲良く接しようと試みる。だがイーブイはそれでも中々心を開いてくれようとはしない。特に人懐っこく面倒見のいいニンフィアにすら簡単に心を許してはくれないようだ。

 

他にも特製のポケモンフーズを差し出したり、目の前で楽しそうにポケモンたちと触れ合ったり、近くで一緒に寝たりと様々なことを試してみたが、あまり効果があるようには見えなかった。彼のポケモンたちも合間合間に自主的に声をかけに行ったりもしているが、やはりどうしてもイーブイが怯えてしまう。

 

確かにあれだけの数のポケモンからリンチされるかのように追い詰められては、他人を信用することも難しいと言うものだろう。しかし、シンジとしてはどんなポケモンにも好かれたいし、自分の自慢のポケモンたちとも仲良くしてほしいと思っているため、どうしても諦めることは出来ない。それにこのまま野生に返してしまえば、あの時に見た悲劇が再び繰り返してしまうだけだと感じた。

 

これ以上しつこく接してもかえって逆効果だろうと判断したシンジは、イーブイを連れて外の空気を吸うのもいいのではないかと考えた。

 

「偶には外に出て気分転換でもしよっか?」

『イブイ……』

 

イーブイの小さな返事を聞いたシンジは、そのまま部屋を出てイーブイと出かけることにした。イーブイも自分のよく知らない場所に取り残されるのには不安を感じたのか、シンジに着いて行こうと少し距離を置いて歩いてくる。シンジはイーブイと真剣に二人で接したいと考えたため、自分のポケモンたちに留守番を任せてイーブイと共に外出する。彼の母親も、自分の息子の成長ぶりに感慨深い様子で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとイーブイは二人が出会った森へとやってきた。シンジは子供のころから何度も来たことがあるので、昔ながらこの森へと訪れているポケモンたちの中には見知った顔もいるようだ。だからなのか、今度はイーブイにちょっかいをかけるようなポケモンが現れるようなことはなかった。イーブイもそのことが分かったのか、なるべくシンジとは距離が離れない様に歩くことを心掛けているようだ。

 

二人が暫く歩いていると、ポツリと雨が一粒、また一粒と少しずつ降り始める。やがてその雨は大降りとなり、二人は雨宿りしなければならない状況となってしまった。幸いにも近くには大樹に大きな空洞が空いた場所があったため、そこで雨が上がるまで雨宿りすることにした。

 

「まさか雨が降るなんて思わなかったなぁ……。近くに雨宿りできるところがあって良かったよ。」

 

そう呟いたシンジは、イーブイの様子はどうかと心配になり確認する。イーブイは体をブルブルと震って、体についた水をはらう。しかし、それでもイーブイは少し体を震わせている。おそらく雨に濡れて寒さを感じているのだろう。このまま風邪を引いてしまってはマズいので、シンジはイーブイを抱きかかえて自分のシャツの中へと入れる。イーブイは状況が把握できず、シンジの首元から顔を出す。

 

「これで少しは暖められるかな?」

 

シンジのその言葉にイーブイは納得したようだ。それと同時に、彼の事を認識しなおした。彼は自らの身を顧みず、自分の事を体を張って助けてくれる存在なのだと。それに、人の温もりが時にどれほど大切で温かいのかということも。

 

周囲のポケモンたちもそれぞれ自分に合った方法で雨をしのぎながら、彼らの様子を見届ける。ポケモンから好かれるシンジのことだ。仲の良いポケモンたちも未だに数多くやってくるため、彼の事が心配で遂見守りたくなるのだろう。

 

二人は多くのポケモンたちに見守られながら雨が上がるのを待つ。イーブイも先ほどの強張った表情とは打って変わり、今では安心した様子でシンジの胸の中で眠っている。シンジもそんなイーブイに釣られるかのように瞼が重くなり、そのまま眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、シンジは目を覚ます。しかしその場にはイーブイの姿は見当たらなかった。洞窟の中はおろか、周辺にもイーブイがいる気配はない。シンジはイーブイの身が心配になったが、手持ちのポケモンもいない状態で闇雲に探しても見つけられるはずがないと判断し、仕方がないが一度自宅に戻ることにした。

 

そして今回の出来事をオーキド博士に伝えるために、自宅に戻ったシンジは一度研究所を訪れることにした。

 

「……と言うことがあったんです。」

「なるほどのぉ。イーブイの事は心配じゃが、いなくなったという事は元気になったと言うことじゃろう。」

「だといいのですが。」

 

シンジはオーキド博士にこれまでの出来事を伝えた。そのことに対し、オーキド博士も頷きながらそう答える。シンジもイーブイの事が心配ではあったが、まだこの森にいるのであればまた会えるのではないかと、その日が来ることを期待して待つことにした。

 

「じゃあ僕たちはもうそろそろ行きます。」

「うむ。またいつでも来るんじゃぞ?」

 

これから未知の土地、アローラへと引っ越すため、シンジはオーキド博士やその他のお世話になった研究員、そしてマサラタウンに住む人々たちにお別れを言う。村のみんなはシンジと別れることに涙を流して悲しんでくれたが、シンジはそのみんなの姿に嬉しさを感じ、心の中でありがとうと呟く。その時シンジが出発しようと思い振り向くと、何かの影がシンジの顔に飛びつきしがみつく。それが何かを確認しようと引き剥がすと、シンジは驚きの声をあげた。

 

「い、イーブイ!?」

 

そう、その影の正体は紛れもなくあの色違いのイーブイだった。しかし何故イーブイはあの時いなくなり、今再び自分の目の前に現れたのかシンジには分からなかった。イーブイに事情を聞くために下に降ろすと、イーブイの尻尾にピンクの花で作られた輪が引っかかっていた。シンジがそれに気づくと、イーブイは振り向いて軽く尻尾を揺らす。

 

「僕にくれるの?」

『イブイ!』

 

どうやらこれを作りシンジに渡すために彼の元を離れていたようだ。しかしこの花でできた輪はイーブイだけで作れるような出来ではない。もしかしたら森にいるポケモンたちも手伝ってくれたのかもしれない。きっと彼らの姿を見て、ポケモンたちも心を動かされたという事だろう。

 

「ありがとう。大切にするよ。」

 

シンジはそれを頭にかぶり、感謝しながらイーブイの頭を撫でる。イーブイも喜んでくれたのが嬉しいようで、シンジの手に頬を擦り付ける。しかしその行動には、何か別の意味も含まれているように彼は感じた。

 

「もしかしたらイーブイはシンジと一緒に行きたいのかもしれないの。」

「え?」

 

オーキド博士の言葉にシンジは驚きのあまり変な声が漏れてしまう。イーブイはオーキド博士の言葉に眼を輝かせ、シンジの顔を見つめる。

 

「イーブイ、僕と一緒に行く?」

『イブイ!』

 

イーブイはその言葉に嬉しそうな声を出し、シンジの胸へと飛び込む。シンジも嬉しそうに飛び込んでくるイーブイをしっかりと受け止め、表しきれないような感情を抱いてモンスターボールを手にする。

 

「じゃあこれからよろしくね!イーブイ!」

『イブイ!』

 

二人は互いによろしくの挨拶を交わす。そしてイーブイの頭部に優しくモンスターボールをあて、イーブイはそのボールへと吸い込まれていく。数回モンスターボールが揺れると、【ピコーン】と音が鳴る。その姿を確認したシンジは勢いよく立ち上がりそのままジャンプした。

 

「イーブイゲット!」

 

その様子を見ていた村の人たちから喝采の拍手とエールが送られる。シンジもイーブイが入ったモンスターボールを眺めて、心の中で「これからよろしく」と再び声をかける。そんな彼の心に答えるかのように、モンスターボールも頷くように揺れた。

 

これが二人の出会いからゲットまでも道のりだった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「これが僕とイーブイの出会いだったね。」

 

シンジは奇跡的な出会いを思い出しながら当時の出来事を語った。リーリエとマサキも、その貴重な体験に真剣な表情で聞き入っていた。

 

「いやぁ~、そんな出会いがあったとはなぁ~。いい経験話を聞かせてもろうたわ。」

「そうですね。イーブイさんもシンジさんのような素敵なトレーナーさんに出会えてよかったですね。」

 

リーリエはそう言ってシンジに抱かれているイーブイを撫でた。イーブイは気持ちよさそうな表情をしていて、その表情を見たシンジもまた、リーリエに慣れてきた様子に嬉しい気持ちを抱いていた。そのシンジの心情は、子供の成長を喜ぶ親の感情に似ているものだった。

 

「その時のお花で作ったものってまだ持っているんですか?」

「うん、持ってるよ。」

 

そう言ってシンジはリュックの中から当時イーブイから貰った花の冠を取り出した。リーリエもその綺麗な出来栄えに見惚れているようだ。

 

「凄く綺麗ですね。」

「うん。僕のお守りみたいなものだよ。」

 

イーブイはまだ大切に持ってくれていたことを嬉しく思い、シンジの顔を舐める。シンジもそんなイーブイに笑顔で頭を再び撫でる。その様子をマサキは微笑ましい様子で眺めていた。

 

「いい話を聞かせてもろた礼や。今日は泊まってったらええ。どうせもう日も沈んどる頃やしちょうどええやろ。」

「ありがとうございます、マサキさん。」

 

マサキの好意にシンジは礼を言ってその言葉に甘えることにする。するとマサキは少し不満そうにこう告げる。

 

「アホ!敬語使われるとなんだかこそばゆいやないかい!ワイの事は呼び捨てでかまへんし、友達感覚で喋ってくれてええで。」

「マサキがそう言うならそうさせてもらうよ。ありがとう。」

「ああ!ええって事や!」

 

こうして彼らは良き友人となり、マサキの家で泊まることとなった。確かにマサキは他人から見れば少し変わってるかもしれないが、リーリエにとっては恩人であり、シンジにとっては友人と言う関係になった。これからもシンジとリーリエの旅は続くが、この先新たな出会いの期待を胸に、今日はゆっくりと休むことにした。




はい、いかがでしたでしょうか?結構頑張って作りました。個人的には大満足!

と言う訳で次回は再び旅を続けます。まあここから先の展開は正直悩みどころ満載ですが、気楽にやっていけたらなと思ってます。

最後にまたいつもの雑談ですが、現在ブイズにてトリルパを作ってみようと厳選の真っ最中です。なんだかブイズでやることじゃないと言われそうですが、ブイズじゃないとやる気が起きないので仕方ないのです。私だけがブイズを使えればいいのです!あっ、嘘です。ブイズ使いとしてはみんなに使ってもらってブイズの良さを知ってほしいです。

と言うわけでこれからもブイズとリーリエの良さを堪能していただけるように尽力したいと思います。ではではまた来週ですノシ


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ポケモン育て屋さん

題名通りです、はい。

最近バトルツリーで共に戦えるリーリエのポケモン(アブリボンとキュワワー)の特性が厳選できると知ったので、それもやっているところです。アブリボンは鱗粉、キュワワーはヒーリングシフトを狙ってます。アブリボンはスイートベールも優秀ですが、初手コケコで組ませて上から殴る+眠り無効の予定なので猫だましで壁貼り妨害されないようにしてみようかと。後は考えるな、殴れ。

まあそんなことより本編行きましょか。


マサキと別れたシンジたちは、次なる目的地であるヤマブキシティへと向け旅を続けている。現在はハナダシティとヤマブキシティを繋ぐ5番道路へと来ている。……のだが?

 

「目と目が合ったらポケモンバトル!って事で私と勝負してもらうわよ!」

「え?え~!?」

 

突然通りがかった人にポケモンバトルを挑まれてしまい、リーリエは困惑した様子で叫び声をあげる。一方、シンジは寧ろよくあることだと割り切っている様子で察していたように頷く。新米トレーナーでもあるリーリエにとっては、これは初めての経験でもあるため困惑しても仕方がないだろう。

 

「さあ全力でかかってきなさい!」

 

どうやら勝負を挑んできた女性トレーナーは問答無用と言った様子で勝負を挑んでくる。頭には緑色の三角巾を付け赤色のエプロンを着用しているため、さしずめポケモンブリーダーと言ったところか。リーリエも彼女の勢いに負け、仕方なくその勝負を受けることにした。それに以前シンジも、「トレーナーであるなら挑まれた勝負から逃げるわけには行かない」と言っていた記憶があるので、自分もこの状況で逃げるのは少し抵抗がある様に彼女は感じていた。

 

「分かりました。その勝負受けて立ちます!」

「いい顔になったわね。そう来なくっちゃ!私の名前はサキ。貴女は?」

 

自分の名前を名乗り、その後にリーリエに名前を尋ねた。どうやら彼女は礼儀を欠いている訳ではないようだ。リーリエもサキと名乗ったトレーナーに、マナーとして自分の名を名乗ることにした。

 

「私はリーリエです。よろしくお願いします。」

「ええ。そして私のパートナーはこの子よ!」

 

サキはそう言ってモンスターボールを手に取り、ボールから自らの相棒と称するポケモンを解放する。するとボールから出てきたのは……。

 

『モンモン!』

 

出てきたのはまさかのメタモンだった。メタモンもまた、イーブイと同じく希少なポケモンであり、リーリエも実際に見たのは初めてであった。リーリエはポケモン図鑑を取り出し、メタモンの詳細を調べる。

 

『メタモン、へんしんポケモン。身体の細胞を自ら組み換え変身することができる。再現度には個体差があり、失敗することもある。』

「メタモンさん……中々に手ごわそうです。なら私は、お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのはシロンだ。カントー地方では見る事の出来ないアローラのロコンに、サキは目を輝かせていた。

 

「すごーい!これが噂に聞いた別地方のロコンなんだー!」

 

珍しいロコンの姿に少々興奮気味で騒ぐサキ。その彼女の姿にリーリエは再び困惑してしまう。

 

「あ、あの~。」

「あはは、ごめんごめん。じゃあ早速行くわよ!」

 

サキはリーリエに謝りながら今度こそ戦闘態勢に入る。その表情は真剣なものになり、強いトレーナーであると言う印象を抱かせるものだった。リーリエも先ほどの無邪気な姿とは違う彼女の姿に驚くも、油断してはいけないと気合を入れ直す。

 

「まずはこの子の真骨頂!へんしんよ!」

 

サキが指示を出すと、メタモンが光に包まれみるみると姿を変えていく。その様子はポケモンが進化する時の姿に近く、光から解き放たれた瞬間、その場にいたのは二匹のシロンの姿だった。

 

「これがメタモンさんの変身。すごいです。」

「うん、確かにすごいね。」

 

リーリエの言葉にシンジも同じく感心する。そのメタモンの姿はシロンの姿と瓜二つだ。図鑑の説明の通りにメタモンの変身のクオリティは個体差によって異なる。個体によっては目が元の状態のドットから変化していなかったりと、どこか違和感を覚える変身をするメタモンもいる。だが、努力して特訓することによりその弱点を克服するメタモンも存在する。恐らくこのメタモンはその類だろう。

 

「さあ、どこからでもかかってらっしゃい!」

「それでは遠慮なく行きます!シロン!こなゆき!」

「ならこっちもこなゆきよ!」

 

シロンがこなゆきで先制攻撃を仕掛けるも、メタモンが同じように放ったこなゆきにより中央で相殺されてしまう。メタモンの変身は姿や覚えている技だけでなく、能力も相手と全く同じとなる。リーリエにとっては厳しい相手となるだろう。

 

「なら次はこおりのつぶてです!」

「躱してこおりのつぶて!」

 

メタモンはシロンのこおりのつぶてを冷静に回避する。そしてすかさずシロンに対してこおりのつぶてで反撃し、その攻撃はシロンに直撃する。

 

「シロン!?」

 

リーリエの声に反応するかのように、シロンは“まだまだやれる”と言う意思を示すために前に出る。リーリエもそんなシロンの姿に後押しするかのように次の指示を出す。

 

「シロン!走ってください!」

 

シロンはリーリエの指示に従いメタモンに向かって直進する。サキは彼女たちの行動に驚くも、こちらも負けてられないと攻撃の指示を出す。

 

「こなゆきで反撃して!」

 

メタモンはこなゆきで走ってくるシロンに攻撃する。

 

「今です!ジャンプしてください!」

「しまった!?」

 

迫ってくるこなゆきを直前にジャンプして躱すシロン。その行動にサキは慌てた声を出す。

 

「こなゆきで攻撃です!」

 

隙をさらしたメタモンにシロンのこなゆきが炸裂する。リーリエが咄嗟に考え付いた作戦は、距離を縮めてから攻撃を加えることで回避する暇を与えないようにすると言うものだった。その作戦は見事に決まり、こうしてメタモンに確実なダメージを与えることができた。

 

「中々やるわね。そのロコンも良く育ってるわ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

サキも心の底から正直な感想を告げる。突然の評価に困惑するが、それでも自分の大切にしているポケモンが褒められるのは凄く嬉しいと感じたリーリエ。

 

「でも私のメタモンも負けないわよ!」

 

だがバトルはバトルと、気を取り直して再び臨戦態勢をとるサキとメタモン。リーリエも負けられないと思い、シロンと共に二人の姿を見据える。そして今度は先に動き出したのはメタモンだった。

 

「メタモン!こなゆき!」

「躱してください!」

 

再びこなゆきで攻めてくるメタモンの攻撃を冷静に対処して回避行動をとる。しかしそれはサキによる作戦でもあった。

 

「そう来ると思ったわ!こおりのつぶて!」

 

こなゆきによる誘導をしたメタモンは、続けてこおりのつぶてを放ち追撃をする。連続して回避する態勢をとるのが困難だったシロンは、メタモンの攻撃に直撃してしまう。

 

「シロン!?」

 

メタモンの攻撃により飛ばされてしまったシロンはリーリエの声で再び立ち上がる。しかしその体も限界が近く、その姿からは明らかな疲労が見えていた。

 

「これで決めるわ!こなゆき!」

 

しかし無情にもバトルは継続される。どちらかが戦闘不能にならなければバトルが終わることはない。リーリエはシロンが危険だと感じて咄嗟にシロンを庇うように前に出る。その姿にシロン、メタモン、サキの三人は驚くが一度出したこなゆきが止まることはない。

 

このままリーリエにも当たってしまうのかと思った瞬間、横からの第三者による攻撃によりこなゆきは相殺された。何が起きたのか分からなかった一同は、攻撃が飛んできた方を確認すると、そこにはブースターが立っていた。

 

「ありがとう、ブースター。」

 

自分に指示に従いこなゆきを的確にかえんほうしゃで打ち消してくれたブースターに、シンジは労いの言葉をかける。ブースターも嬉しそうにシンジの足元に近寄り頭を撫でてもらおうと催促する。シンジもその気持ちに応えて、ブースターの頭をなでる。

 

「危ないところだったけど、取り敢えずこれは勝負あり、だね。」

 

突然の出来事に驚いたが、リーリエも今回のことは素直に負けを認めることにした。

 

「そうですね。今回は私の負けです。」

 

リーリエのその言葉により、今回の戦いはサキとメタモンの勝利に終わった。メタモンもバトルが終わったことにより、変身を解いて元の姿へと戻る。

 

「ほら、オレンの実よ。」

「ありがとうございます。」

 

サキからオレンのみを受け取ったリーリエは、それをシロンに食べさせる。それを食べたシロンは先ほどよりも元気を取り戻したようにゆっくりと立ち上がる。どうやら身体に異常はないようでリーリエも一安心する。

 

「それにしてもビックリしたわよ。まさか急にロコンを守るために前に出てくるなんて。」

「あ、あの時は私も動揺してまして……。なんだかシンジさんがいつもポケモンさんたちの為に体を張って守る理由が分かった気がします。」

 

そのリーリエの言葉にシンジも思わず苦笑いする。彼もいつもポケモンが危険になると自分の身を顧みず助けに出るため、反論することができないのだろう。

 

「それにしてもあなたの正確な指示は凄いわね。バトル中に完璧なタイミングであの攻撃をあんなに簡単に止めるなんて思ってなかったわ。」

「念のためにブースターを控えさせておいてよかったよ。結果的にみんな無事に済んだみたいだしね。」

 

シンジも長く旅を続けているため、似たような過去に経験があったのだろう。二人は落ち着いた様子で話すシンジに一緒に感心する。

 

「そう言えばなぜ私とバトルがしたかったのですか?」

「あっ、いや、その……」

 

サキの歯切れが悪い言い様に疑問を感じるリーリエ。しかしサキはそんなリーリエの純粋な瞳に耐え切れずに正直に話すことにした。

 

「実は私の実家、ポケモン育て屋さんっていうのをやってるんだけど。」

「ポケモン育て屋さん……ですか?」

 

聞きなれない言葉にリーリエは首を傾げる。そんな彼女にシンジは育て屋について軽く説明した。

 

「育て屋さんって言うのはその名の通り、ポケモンを育ててくれる施設の事だよ。育て屋さんにポケモンを預けていれば、知らない間に新しい技を覚えていたり、稀にタマゴが見つかったりもするんだ。」

 

リーリエはシンジの話を聞き、相槌を打って納得する。しかしそれと今回の件と何が関係しているのかがリーリエは分からず、サキの話を続けて聞くことにする。

 

「実は私はまだ見習いの身で、経営者であるお父さんにある事を言われたんだよね。」

 

そこでサキは一度咳払いをして父に言われた言葉を伝える。

 

『ポケモンの事を知るためにはまずトレーナーとの関わりを学びなさい』

 

サキは低い声を出してその時の言葉を言う。恐らく父の真似をしたつもりなのだろうが、何故真似たのかはイマイチ分からない。サキは声を戻して再び話を続ける。

 

「って言ってたのよね。だから他のトレーナーと戦うことでその言葉の意味も分かるかなっと考えてみたんだけど……」

 

サキの言葉にリーリエとシンジは納得するも、だからと言って父の言っていた意味は少し違うのではないかと心の中で考える。そこでサキが思いついたように一つの提案を持ち出した。

 

「そうだ!良かったら今からうちに来ない?丁度この近くにあるんだよね。」

「いいのでしょうか?急にお邪魔しても。」

 

リーリエのその言葉にサキは「大丈夫大丈夫!」と気軽な態度で返答する。シンジも遠慮気味なリーリエに対して「折角だしこれもいい機会だから立ち寄ってみない?」と提案する。リーリエも二人の言葉に便乗する形でサキの実家である育て屋に立ち寄ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人はサキのあとを着いていき、彼女の実家へと辿り着いた。そこには一軒の木でできた小さな小屋があり、その周囲にはポケモンたちが楽しそうに過ごしている。ポケモンたちの種類も多く、ケンタロスやバタフリーなどのカントー地方では有名なポケモンたちから、ジョウト地方で目にすることのできるオオタチやレディバなどのポケモンたちも確認できた。

 

ポケモンたちの様子を見るに、この環境は非常に整っていると言えるだろう。現に彼らは楽しそうに過ごしておりポケモンたちも仲がよさそうだ。

 

ポケモンたちの様子をシンジたちが観察していると、小屋から一人の男性が出てきた。その男性の姿を見たサキは、手を振って小走りで男性の側まで近づいていく。

 

「お父さん!」

「サキ。帰っていたのか。ん?そちらはお友達かい?」

 

サキがお父さんと呼んだ人物は、シンジたちの姿を確認すると彼らの元へと近づいてくる。サキの父親はぽっちゃりとした体型で、赤色のシャツに青いオーバーオールを着用した中年の男性だ。パッと見ではどこぞの配管工のヒゲ親父とやらに似ている……かもしれない。

 

「初めまして、私はサキの父親のユウジです。」

「こちらこそ初めまして。僕はシンジです。」

「初めまして、リーリエです。」

 

サキの父、ユウジと自己紹介をして握手を交わすシンジとリーリエ。ユウジも「どうぞゆっくりしていってね」と一声かけて再び仕事に戻る。その父親の姿を見て手を振るサキ。するとそこでサキは再び一つの提案をした。

 

「折角だから二人のポケモンも見せてくれない?みんなとポケモンたちが遊べばより成長するかもしれないし。」

 

サキの提案に賛同した二人は、自分のポケモンたちが入ったボールを上に投げてポケモンたちを解放する。リーリエはルリリのみを自分の手元に出してあげた。まだ他人には慣れてないと思われるため、一番安心できる自分の元に取りだすのが最も安心だろうと判断したのだ。

 

「これが二人のポケモンたちなのね。見るだけでよく育てられてるってのが伝わってくるわ。」

 

サキは視線を低くしてポケモンたちの眼を見て感想を口にする。見習いの身とは言え、やはり育て屋をしているだけはありポケモンを見る目はあると言う事なのだろう。常に色んな人たちから預かったポケモンたちを見ていて世話をしているのだ。自分の知らない間に、自分自身も成長しているのだろう。

 

「迷惑じゃなければ僕達も何か手伝えることはないかな?」

 

シンジがそう提案する。リーリエもシンジの言葉に便乗して、折角ならお手伝いをしたいと申し出る。彼らにとっても滅多にない機会であり、興味のある仕事でもあるためやってみたい気持ちもあるのだろう。

 

「手伝ってくれるの?ありがとう!」

 

サキは寧ろ手伝ってくれることを喜ばしいと感じているようで快く承諾してくれた。サキも父親に許可を取りに行くと、「構わないけどケガはしないように注意してね」と念を押された。早速仕事を手伝おうと二人は作業着に着替えることにした。

 

二人は服が汚れないようにまずエプロンを着用する。男性用と女性用に分かれているようで、シンジは青色、リーリエはピンク色のエプロンを着用した。頭の怪我防止のためにも、少し厚めの帽子も被るよう推奨された。

 

「じゃあ早速始めるわよ。」

 

サキの指示に従い二人はポケモンの世話を始めることにした。幸いにもシンジは今まで旅で培ってきた経験があり、リーリエは本で読んだ知識があるためポケモンの世話はお手の物だった。サキとユウジも二人の行動力には感心していた。

 

彼らのポケモンたちもトレーナーの働きを見ているだけでは物足りないのか、彼らの手伝いを自主的に行おうと自ら動き出す。その姿を見れば、トレーナーによく懐いていてよく育てられていると言う事が伺えるだろう。汚れた水を協力して汲み替えたり、トレーナーたちが必要としている道具を渡したりもしている。

 

彼らはポケモンたちの体を洗ったり、育て屋としての仕事の一つでもある技の練習なども付き合うことにした。彼らにとってだけでなく、ポケモンたちにもこれは貴重な経験になったようだ。サキも彼らばかりに任せるのも悪いと思い自分も次へ次へと動き出す。その姿を見たシンジたちは、流石は現役だと感心する。何より普段慣れていない自分たちよりも手際が良いのが、当然とはいえ凄いと素直に思ったのだ。

 

仕事も一段落したころ、既に夕暮れ時で日は沈みかけていた。時間も遅くなってしまったので今日はここに泊めてもらうことになった。ユウジは今回手伝ってもらったお礼だと言い、夕食もご馳走してあげると言ってくれたのだ。一日働いてくたくたとなったシンジとリーリエも断る気力も出なかったため、今回はその言葉に甘えてお世話になることにした。

 

「やっぱり一日ポケモンの世話をするとなると忙しいね。」

「本当ですね。正直私も今日は疲れました。」

 

彼らはユウジが作ってくれた料理を食べながら、今回の貴重な体験に正直な感想を言うとともに、育て屋さんは大変な仕事だと実感する。彼らのポケモンも慣れない仕事をしたためやはりヘトヘトになったようだ。

 

「でも二人とも初めてとは思えない働きっぷりだったよ。おかげで今日は仕事が捗ったよ。」

 

ユウジの言葉にサキも同意する。その言葉を聞いてシンジたちは安堵する。

 

「そう言って頂けて助かります。」

「それにしても二人ともよくポケモン育ててるのね。あなた達を見ていたらポケモンとトレーナーとの信頼が伝わってきたわ。」

 

サキのその言葉に二人はありがとう、と一言礼を言う。やはり自分のポケモンたちが褒められると彼らも心から嬉しいようだ。そんな感想を抱いたサキに対して、ユウジは口を開き問いかける。

 

「サキ。」

「何?お父さん。」

「ポケモンとトレーナーの関わりについて、今回の事で何か学べたかい?」

「え?」

 

父親の言葉にサキは一瞬戸惑うが、父親から受けた課題を思い返し、今回学べた出来事を思い返す。

 

「ポケモン育て屋としての仕事は確かにポケモンを育てることが仕事だ。だがポケモンの事を知っているだけでは仕事を完璧にこなすことは不可能だ。ポケモンと共にあるトレーナーとの繋がりを理解し、どのように過ごしているのかを学んでこそ、その先に育て屋としての大切なものが見えてくるのではないかと私は考えている。」

 

ユウジの言葉に頷き真剣な様子でサキは耳を傾ける。ユウジもそんな娘の様子を確認してそのまま話を続ける。

 

「私がこの間サキに与えた課題、それはポケモンバトルをしてトレーナーの事を理解せよ、と言う意味ではないよ。」

 

まるで自分の考えを見透かされているようだ、とサキは一瞬ビクッと震える。父親は自分の娘の考えくらいお見通しと言う事なのだろう。

 

「人間は一人では全てを成し遂げることは出来ない。だがポケモンと一緒なら不可能だったことも可能になる。育て屋としても、トレーナーとしても必要なことを、サキに学んでほしかったんだよ。」

「お父さん……」

 

父の言葉にサキは感慨深い気持ちになる。その言葉を聞いていたシンジとリーリエも、自分たちにも重要な事だろうと心にしまう。サキもこの言葉を受け取り、今回学んだことは生涯の糧になるだろうと考える。

 

二人もまた深い経験が出来たと感じ、やはり旅は大切な出会いによって自らの成長に繋がっていくものだとシンジは思う。初めての旅に出たリーリエだけでなく、自分の成長も促してくれるほど大事なものだと。リーリエ自身も、思い出だけでなく、こういった経験を一つでも多く積んで糧にしていければいいなと思った。

 

サキとの出会いも二人に多くのものをもたらしてくれた。だが二人の旅はまだまだ始まったばかり。次にはどんな出会いが待っているのか。さあ、次はいよいよジムのあるヤマブキシティだ!




ブイズトリルパが完成したのでちょっと試して見た結果。……正直キツイッス。つうかエーフィのSが早いせいか中々トリル張るタイミングが無い。勝てそうなタイミングで怯んで負けたけど、それも自分の実力が足りないからであってポケモンは悪くない。ポケモンは実力(運)ゲー。まあトリル張った後ガモスをブースターで先手とって消滅させられたから個人的に目標達成した感はあります。と言うかそれがやりたかった!


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押忍!VSヤマブキジム!?

多分タイトルから大体の展開は分かると思います。そしてまた前回投稿場所間違えてたのに気付きました。まあ各話入れ替えなどがあるからすぐ直せるので楽ですけどね。いやぁ、便利ですね!

正直ナツメさんのしゃべり方や性格が分かりません。作品によりバラバラだったりアニポケでも言うほど出番無かったので。……あれ?それだと殆どのジムリーダーが当てはまるか?なら全然問題ないですね(開き直り)

割り切れよ、でないと死ぬぞ?


ヤマブキシティに到着したシンジとリーリエ。早速ヤマブキジムに挑戦!……と思いきや、彼らはポケモンセンターにてとある人物と連絡を取っていた。その人物とは……

 

「お久しぶりです!グラジオお兄様!」

『ああ、久しぶりだな。リーリエ。』

 

そう、その人物とはリーリエの兄であるグラジオだ。元々こういったことは好まないであろうグラジオも、今回に限っては満更でもないようで小さく笑みを浮かべる。

 

「私達は今ヤマブキシティに来ているんです。」

『ヤマブキシティ……もうそんなところまで辿り着いたのか。』

「はい!ジムバッジも2つゲット出来ました!」

 

リーリエは嬉しそうに自分の功績をグラジオに伝える。久しぶりに兄と話すことができたため喜びを隠すことができないのだろう。シンジもリーリエの様子を見て微笑ましく見守っている。

 

『ポケモンジムに挑戦しているのか?』

「はい。ジムリーダーと言うだけあって凄く強い方ばかりですが、次のジムも勝って見せます!」

『……そうか。お前も成長しているんだな。』

 

リーリエの成長にグラジオも感慨深い様子で微笑む。やはり兄貴面が出来ないと言いながらも、妹の成長は素直に嬉しいと言う事なのだろう。そんな兄の言葉にリーリエも照れ臭そうに頬を少し赤くして微笑む。

 

「それとこの子たちが私が今までゲットしたポケモンさんたちです!」

『コォン!』

『ソウソウ!』

 

リーリエはそう言ってポケモンたちを紹介するように一歩下がる。それと同時にリーリエのポケモンたちがグラジオの映る画面の前に出る。ルリリはまだリーリエ以外に慣れていないためか、リーリエの腕の中に飛び込んだ。

 

『みんないい顔をしているな。ポケモンたちのこと、大切にしろよ。』

「はい!」

 

何よりポケモンが大切な存在だと思っているグラジオは、そうリーリエに一言伝える。その後、グラジオは『まあ、お前なら心配いらないだろうがな』と一言付け加える。

 

『シンジ、リーリエのことは任せたぞ。』

「うん、任せてよ。」

『……ふっ、偶にはこういうのも悪くないな。』

 

そのセリフのあと、グラジオは何かを思い出したようにシンジにその内容を伝える。

 

『シンジ、ある人物がお前に会いたいと先ほど俺に連絡があったぞ。』

「ある人物?」

『会ってみればわかるさ。その人物からは、できればリーリエは連れてこないでほしい、との事だった。』

 

ある人物と言われその人物の正体が気になるシンジたち。リーリエを連れてくるなと言う指示も引っかかるが、グラジオが言う人物なのであれば、信用に足りる人物と言う事だろうと、シンジは推測する。リーリエには心苦しい気持ちもあるが、一旦ここで分かれるしかないだろうと思い彼女の方へと振り向く。

 

「そう言う訳だから悪いけど少し待っててもらってもいいかな?」

「気にしないでください。少し心細いですが、私一人でもジムまで行けますから。」

 

リーリエはそう言うも、やっぱり心配だと感じるシンジ。しかし、リーリエも旅を通して成長しているのも事実であり、信用しないのも本人に対して悪いので、ここは彼女を信じて任せることにした。

 

「分かった。なるべく早めに合流できるように心がけるよ。」

「もう、心配し過ぎですよシンジさんは。」

 

そう言って心配するシンジにリーリエは笑いかけた。アローラにいた頃と違って、ポケモンたちもついてくれてるため彼女の不安も半分になると言うものだろうか。彼女自身、あまりシンジに頼り過ぎるのも内心ではよくない気がして少し気が引けていたのも事実ではあるが。

 

『話は纏まったようだな。俺はそろそろ行くが、何かあればまた連絡してくれ。』

 

そう言ってグラジオは通話を切る。エーテル代表代理となった彼は、ビッケたちが手伝ってくれているとはいえ、今でも仕事が忙しいと言う事なのだろう。しかし、それでも充実した日々を過ごせているのだろうと思わせる兄の姿を見ることができて、リーリエはどこか嬉しい気持ちを感じていた。

 

「じゃあ僕達も行こうか。」

「はい!また後で!」

 

シンジは別れ際に、『ヤマブキのジムリーダーはかなりの強敵だから油断しないで』と一言激励する。リーリエもその言葉に頷き、ヤマブキジムへと歩みだした。シンジもそんなリーリエの姿を確認すると、自分もある人物が待つと言う場所まで歩みだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっと……ここがヤマブキジムでしょうか。」

 

方向音痴だと自覚しているリーリエは、道行く人にヤマブキジムへの道を確認しつつ、ヤマブキジムへと思わしき建物に辿り着いた。ヤマブキシティはカントー地方屈指の大都会であり、通行人も多く通りがかったため比較的道に迷う確率は低かったのだろう。

 

「ふう……やっぱり緊張します。」

 

この時、リーリエはカスミに言われたある一言を思い返す。ヤマブキジムはカントー地方の中でもかなり強敵であると宣言されたため、今の自分で勝てるのかと言う不安が頭をよぎった。リーリエは数回深呼吸して気持ちを落ち着かせる。そして覚悟を決めた様子でヤマブキジムへと足を踏み入れようとすると、後ろから声を掛けられた。

 

「ん?君はヤマブキジムの挑戦者かね?」

「ひゃ!?」

 

突然後ろから声を掛けられ、リーリエは咄嗟に変な声をあげてしまう。緊張しているところに知らない人から急に声を掛けられれば、驚きもすると言うものだろう。

 

「失礼、驚かせるつもりはなかったのだが。」

 

驚いた様子を見せたリーリエに気付いたその男は一言謝る。リーリエはその男の姿を確認すると、柔道などで見る白い道着と、赤い帯を巻いたガタイのいい一人の男性だった。その男の放つ謎のプレッシャーに押されそうになるが、リーリエは勇気を振り絞って用件を尋ねる。

 

「えっと、どちら様ですか?」

「度々失礼、私はヤマブキジムの者ですよ。」

「そうでしたか。あっ、私はリーリエと言います。」

 

男が自己紹介をすると、それに釣られる形でリーリエも自己紹介をする。

 

「ヤマブキジムはそこの向かって左の建物ですよ?」

「え?」

 

男はそう言って左の建物を指さす。リーリエも聞いていた話と違い、思わず驚いてしまう。しかし、ヤマブキジムの人がそう言うならそうなのだろうか、と男の言う事を信用してしまう。男が『折角なので案内しましょう』と言ってくれたため、彼についていこうと判断する。

 

男が言うヤマブキジムと思われる建物に入ったリーリエ。しかしそこは真っ暗であり何も見えない状況であった。そう思った瞬間、突然電気がつき眩しさのあまり手で目を塞ぐが、正面を見ると案内してくれた男と同じような姿をした男たちが、帯を締めながら待機している姿が確認できた。

 

「押忍!ヤマブキ道場(ジム)へようこそ!押忍!」

 

何だかいつものジムと全く違う雰囲気を感じたリーリエは呆気にとられていた。とは言えまだ2つしかジムに挑戦していないため、こういったジムもあるのかもしれない……と頭の中で思う。

 

「今回の挑戦者は君か!押忍!」

「は、はい!ジム戦よろしくお願いします!お、押忍!」

 

雰囲気に飲み込まれていつも以上に緊張してしまうリーリエ。そのせいか、彼らのペースに巻き込まれるかのように同じ挨拶を交わしてしまう。思わずやってしまったことを思い返し、恥ずかしさで顔が熱くなる。その姿を見たジムリーダーと思わしき人物は、早速ジム戦に入ろうとモンスターボールに手を掛ける。

 

「押忍!ルールは二体同時に戦うダブルバトル!使用ポケモンは当然二体の一本勝負!」

「わ、分かりました!」

 

経験したことの無いダブルバトルに不安を抱くも、シンジとのマルチバトルは経験しているため少しは気を楽に持てる。マルチバトルで活かした経験をダブルバトルでも活かそうと気を引き締め、自身もモンスターボールを手に取る。

 

「お願いします!フシギソウさん!シロン!」

「行くぞ!エビワラー!サワムラー!」

 

リーリエがフシギソウとシロンを繰り出すと同時に、ジムリーダーはエビワラーとサワムラーを繰り出す。どちらもカントー地方では有名な格闘タイプであり、ジムの雰囲気的にも予想していた通り格闘タイプのポケモンであった。エビワラーとサワムラーも気合十分なようで、シャドーボクシングなどをして体を(ほぐ)している。

 

「試合始め!」

 

審判の合図によりジムバトルが開始される。それと同時に、エビワラーが素早いスピードで先制攻撃を加えてくる。

 

「押忍!先手必勝!エビワラー!ロコンにマッハパンチ!」

 

その素早い動きに対応することができず、シロンは正面からマッハパンチを受けてしまう。氷タイプのシロンにとって格闘タイプは効果抜群の技。ダメージはでかいだろうが、シロンはリーリエに心配かけまいと持ちこたえて首を振り再び前に出る。

 

「大丈夫ですか!?シロン!」

『コォン!』

 

シロンの返事にリーリエは安心し、エビワラーの素早さにどう対処するか思考を巡らせる。その時、エビワラーに続きサワムラーも動き始める。

 

「サワムラー!フシギソウにメガトンキック!」

「!?躱してください!」

 

サワムラーの強烈なメガトンキックをフシギソウは難なく躱す。先ほどのエビワラーのスピードに比べればまだ対処可能な動きではあった。しかしそれこそが彼の狙いであった。

 

「エビワラー!ほのおのパンチ!」

 

躱した直後で態勢が崩れていたフシギソウに炎を纏ったエビワラーの拳が炸裂する。草タイプのフシギソウに炎タイプの技はよく通る。シロンと同じでこちらもダメージが相当なものだろう。しかし、フシギソウもリーリエに心配させるわけには行かないと少しノックバックする程度で済ませる。

 

「見事な連携ですね。とても勉強になります。」

 

リーリエは二体の連携に感心し、ダブルバトルの奥深さを痛感する。しかし初めてのダブルバトルとは言え簡単に負けるわけには行かないと、自分のポケモンたちを鼓舞する。リーリエの言葉に一層気合を入れるポケモンたち。その姿に感心したように、ジムリーダーも感嘆の声をあげる。

 

「押忍!その心意気やよし!ここからが本番だ!」

 

その言葉に周囲の男たちにも緊張が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここら辺のはずだけど……。」

 

リーリエがバトルをしている一方、シンジはその人物が待つと言う場所に辿り着いた。何だか怪しげな裏路地ではあったが、グラジオが信頼しているであろう人物の事を自分も信じることにした。

 

「来てくれたのね。シンジ君。」

 

シンジは聞き覚えのある声がした方へと振り向く。そこにはグラジオだけでなく自分も……そしてリーリエも良く知っている人物の姿があった。その人物の名は……。

 

「ルザミーネさん!」

「ごめんなさいね。わざわざ呼び出しちゃって。」

 

そう、彼らの母親でもあるルザミーネだ。しかしマサラタウンからこのヤマブキシティまでは結構な距離がある。ヤマブキにいると連絡を受けてから来ようにも、少なくとも一日はかかってしまうだろう。シンジは何故ルザミーネがここにいるのかを尋ねる。

 

「何故ルザミーネさんがここに?」

「このヤマブキにはシルフカンパニーと言う大きな会社があるのは知っていると思うのだけれど、私はエーテル財団前代表として招かれたと言う訳。」

 

シルフカンパニーとは主にモンスターボール生産していることで有名な大会社である。アローラで有名なエーテル財団の前代表がカントーにいることが知られれば、呼ばれても当然おかしくないと言う事なのだろう。正直まだ子供であるシンジにとっては、会社の事情はよく理解できないのが現状だが。

 

因みに、シルフカンパニーは昔、一時的に悪の組織ロケット団に乗っ取られてしまったと言う過去も持っている。その時に偶然居合わせた、一人のトレーナーのおかげで何事もなく事を終えたのだが、当時は大事件として騒ぎになっていたのをシンジの記憶にも残っていた。

 

「ところでなぜ僕をここに呼んだんですか?リーリエも呼べば彼女も喜んだのでは?」

 

ルザミーネはシンジの言葉に対して首を横に振り、その答えを口にする。

 

「寧ろ逆効果よ、シンジ君。私はリーリエの事が心配であの子の様子をシンジ君に尋ねに来たの。だけどあの子にこのことを言ったら、多分子ども扱いしないでって怒られちゃうわ。」

 

ルザミーネは苦笑しながらリーリエのその時の姿を想像する。確かにあり得そうな光景だと思うのと同時に、アローラにいたときと違い、理想的な親子関係になれた二人の姿に、シンジは内心喜ばしくも思っていた。

 

「それでシンジ君。リーリエの様子はあれからどうかしら?ちゃんとやっていけてる?」

「心配しなくても大丈夫ですよ。旅の中でリーリエも少しずつ成長しています。次に会った時はルザミーネさんもビックリするかもしれませんよ。」

「そう、それは楽しみね。」

 

ルザミーネはシンジの言葉に安心した笑みを浮かべる。今まで自分の言う通りに強制してきてどこか後ろめたい部分もあったのだろう。しかし、今はリーリエも自分の意志で前に進んでいることにルザミーネは母親として言葉にできないくらい嬉しいと感じている。

 

「これだけの事で呼び出してごめんなさい。」

「構いませんよ。リーリエも今頃、ジムで熱いバトルを繰り広げていると思いますから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シロン!こなゆき!」

 

シロンのこなゆきでエビワラーとサワムラーの動きを同時に防ぐ。ダブルバトルであるため、如何にどちらか一方の相手に狙いを定めるか、戦術や判断力がより重要となってくる。リーリエもそのことはシンジの戦いを見てきたため十分に承知しているつもりだ。エビワラーは拳を振り払う形でこなゆきを無効化する。

 

「押忍!エビワラー!フシギソウにマッハパンチ!」

「つるのムチで抑えてください!」

 

接近してくるマッハパンチをフシギソウは冷静につるのムチを腕に巻きつけ、動きを止める。確かにスピードは中々のものだが、一直線に迫ってくると分かっていればそれほどの脅威ではないとリーリエは判断した。

 

「押忍!サワムラー!ブレイズキック!」

 

サワムラーは先ほどのエビワラーと同じように、足に炎を纏って飛び上がる。そしてそのままフシギソウ目掛けて足を振り下ろし攻撃を仕掛けてくる。しかし、飛び上がったのが仇となり逆効果となってしまう。

 

「エビワラーさんをぶつけて止めてください!」

 

つるのムチで押さえつけたエビワラーを、ぶん回す形でサワムラーに当てる。その衝撃でサワムラーの動きが止まったのと同時に二体に大きなダメージを与えることに成功する。

 

「押忍!中々やるではないか!だがこのままでは終わらぬ!エビワラー!スカイアッパー!」

 

エビワラーは直ぐに立ち上がり、フシギソウの顎元を捉えて自慢の拳で勢いよく打ち上げる。その隙を逃すまいと、すかさずサワムラーに攻撃の指示を出す。

 

「押忍!とびひざげりで追撃!」

 

サワムラーは再び飛び上がり、フシギソウ目掛けて勢いよく膝蹴りで飛び掛かってくる。このままでは危ないと思い、リーリエもシロンに援護の指示を出す。

 

「シロン!こおりのつぶてでフシギソウさんを助けてください!」

 

シロンはリーリエの指示通り、飛び掛かってくるサワムラーに対してこおりのつぶてを命中させる。その攻撃にサワムラーは思わず向きが変わってしまい、そのまま膝を床に打ちつけてしまう。とびひざげりは強力な技ではあるものの、外してしまえば自分に大きなダメージが降りかかってしまうデメリットも持ち合わせている。今回は見事な連携を決めようとしたが、その技が寧ろ仇となってしまったと言う事だ。

 

「今です!はっぱカッター!」

 

スカイアッパーの打ち上げから着地したエビワラーとサワムラーにはっぱカッターが直撃する。ダメージがかなり溜まっていた二体は今の一撃で目を回し、同時に戦闘不能となってしまう。

 

「さ、サワムラー!エビワラー!戦闘不能!」

「あ、あれ?勝っちゃい……ました?」

 

カスミとシンジからはかなりの強敵と聞いていたため、かなりの苦戦を予想していたリーリエだったが、予想とは違い大きな苦戦をせず勝ってしまったため、少し意外だったと感じてしまう。しかし勝つことは出来たため、共に戦ってくれたポケモンたちと共に勝利の余韻に浸る。

 

「う、うむ。中々に見事な腕前であった。ワシは感服した。」

「あ、ありがとうございます。」

 

ジムリーダーはそう言うも、何だか冷や汗を流しているようにリーリエには見えた。そこで突然、ジムの扉が開かれ一人の女性が入ってきた。その女性は短めのタンクトップの様な赤い服を着ており、何故か腹部を出しているスタイルだ。ロングストレートの髪から、どこか大人な雰囲気を感じさせる女性である。

 

「私の“見た”通り、ここにいたのね。」

 

彼女の見た、と言う言葉に疑問を感じるが、彼女の姿を見た瞬間に男たちが一斉に動揺し始める。

 

「!?ナツメ!」

 

ナツメと呼ばれた女性は、髪を掻き分けて男たちを見下した様子で見つめる。しかしそのナツメの姿に、リーリエは何故か恐怖などを感じることはなかった。

 

その二人のやり取りを見ていると、再びジムの扉が開かれる。そこには自分の良く知る人物の姿があった。

 

「あれ?リーリエ?なんでここに?」

「シンジさん!」

 

その人物の姿はまぎれもなくシンジだった。しかしシンジの言葉はここがヤマブキジムではないと表しているように感じさせる言葉だった。

 

「何故って……ここはヤマブキジムなのではないのですか?」

「え?ヤマブキジムはここじゃなくて隣だよ?」

「…………え~!?」

 

そのシンジの言葉にリーリエの動きが一瞬止まる。暫くすると驚きのあまり大きな声をあげる。どういうことなのかとシンジに尋ねる。

 

「ここはヤマブキ道場だよ。よくヤマブキジムだと騙されて入る人もいるんだけど、彼らはただ強い人と戦って精進したいって思いが強いみたいなんだけどね。」

 

『まあ今どき道場に入門したいって人も少ないみたいだし』と一言付け加え、シンジはリーリエに説明する。しかしリーリエは、もう一つだけ疑問に思っていたことをシンジに尋ねる。

 

「ではなぜシンジさんはここに?」

「ここに入っていくナツメさんの姿が見えたからね。ちょっと気になったから僕も来てみたんだ。」

「シンジさんはこの方とお知り合いなんですか?」

「うん。ナツメさんこそ正真正銘のヤマブキジムジムリーダーだよ。」

「え!?そうなんですか!?」

 

そのシンジの言葉に再びリーリエは驚く。そしてナツメの方を見ると、どうやらナツメと道場主とでバトルをしようとしているようだ。

 

「まだこんなことをやっている貴方たちに、ちょっとお仕置きしないといけないわね。」

「うぐっ、か、返り討ちにしてやる!……押忍!」

 

ジムリーダー改め道場主は、焦っているからか何時もの挨拶を忘れていたようで慌てて言葉にする。そして再び道場主とジムリーダーナツメとのバトル(粛清)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、二人のバトルはナツメの圧勝に終わった。ナツメが繰り出したのは相棒であるフーディン。対する道場主が繰り出したのはカイリキーだった。しかし相性的に考えても、格闘タイプのポケモンがエスパータイプに勝てる確率はかなり少ないだろう。その上、カントージム屈指の実力者であるナツメの相棒、フーディンが相手だ。勝てる可能性などほぼ0に近いと言ってもいいだろう。

 

「くっ、俺は結局ナツメに勝てないのか。」

「貴方じゃいくらやっても勝てないわよ。いい加減諦めなさい。」

 

圧倒的な結末に項垂れる道場主。その道場主を置いて道場を後にするナツメについていく形で、シンジとリーリエも外に出る。

 

「さてと、まずは久しぶりとでも言っておきましょうか。」

「はい、お久しぶりです。ナツメさん。」

 

振り向いて声をかけてくるナツメに対し、シンジも久しぶりと挨拶を交わす。

 

「貴方たちが来ることは分かっていたわ。ジムまでいらっしゃい、そこで相手してあげる。」

 

ナツメは先に本当のヤマブキジムへと戻っていく。リーリエは先ほどのナツメの言葉に疑問を抱き、その内容についてシンジに尋ねる。

 

「シンジさん、さっきのナツメさんの言葉の意味って……。」

「僕達が来るのを分かってたって話?」

「はい。」

 

シンジはリーリエの問いかけに少々困った様子でどう説明しようか悩む。正直に言えば彼女の過去が関係しているのだが、人の過去を勝手に話すのは忍びない。ここは簡潔に済ませるべきだと判断し、シンジはリーリエに質問に答えることにした。

 

「信じられないかもしれないけど、ナツメさんは少し先の未来が見えるんだ。」

「え?」

 

シンジのその言葉に、開いた口が塞がらないと言った様子で困惑するリーリエ。それはそうだ。人の過去や未来が見える人など、想像したこともなければ出会ったこともない。しかし、先ほどナツメが道場に入ってきたときの言葉をリーリエは思い返す。あの時彼女は確かに『私の“見た”通り』と言っていた。普通の人間であれば“思った”と表現するだろう。だが、あの言葉にそういった意味が含まれているのであれば、シンジの言葉の意味にも納得がいく。

 

「僕も当然苦戦させられたけど、ナツメさんはその能力を活用して戦う。注意してどうにかなるようなものではないけれど、どれだけ強力な力にも弱点はある。だから最後まで諦めないで戦ってね。」

 

シンジのその言葉に、リーリエは再び今まで以上の強敵だと改めて感じる。先ほどのバトルを見ても、パートナーとの意思疎通が完璧であり、エスパータイプの特徴を最大限に利用した隙の無い戦いだった。あれほどの凄腕トレーナーに勝てるのだろうか、と言う不安は勿論リーリエの心の中に潜んでいるが、それでもシンジから激励をもらった以上、最初から弱気になって挑むのは彼に対しても、自分のポケモンに対しても失礼だと思い不安な気持ちを抑え込む。

 

「はい!頑張ります!」

 

リーリエは不安を押し殺し、シンジに対して覚悟を決めた表情で両手をグッと握りしめる。シンジもそんな彼女の姿を見て、過度な心配は不要だと思い、静かに見守ってあげようと心の中でそう決意する。彼女の意志の強さならば、例え困難が待ち受けていようと乗り越えられると。

 

そうして二人はジムリーダーナツメの待つジムへと向かい歩みを進めるのだった。




リーリエは一人でいると割と騙されやすそうなイメージがあります。お嬢様キャラにはありがちな設定。

そこでちょっとした小話

「ところで先ほど会いに行かれたのは相手はどなただったのですか。」
「ああー、えっと……」
「……まさか私に言えない人……ですか?」
「!?いや違う違う!そんな人じゃないよ!」
「そ、そうですか?なら良かったです。」
(今のリーリエの表情……やっぱり親子の血は争えないと言う事だろうか。……少し注意しておこう……。)

と言う話があったりなかったり……。



因みに途中で挟もうと思った没ネタ↓
「何故ルザミーネさんがここに?逃げたのか?自力で脱出を!?」


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VSヤマブキジム!エスパーの脅威!

さあ、と言うわけでヤマブキジム戦です。個人的にはカントー最難関だった記憶があります。ワタル?グリーン?そんな人もいたね。まあまだ純粋だった時代だし、ここまでブイズにのめり込むなんてことも思ってなかった可愛い頃ですが。

そんなわけで強敵ナツメさんとの戦いです。どぞ!


ヤマブキ道場でのバトルを終えたリーリエ達は、続いて本当のヤマブキジムへと入っていく。エスパータイプの使い手、ナツメの隠された能力を知ったリーリエに緊張が走るが、隣にいるシンジに励まされて次第に緊張が解れていく。

 

「ありがとうございます、シンジさん。」

「うん。応援してるから頑張ってね。」

 

ハナダジムの時と同じようにルリリを預かったシンジは、リーリエに手を振って観客席へと向かっていく。シンジとルリリからの声援を受け取ったリーリエは、覚悟を決めフィールドに立ち、ナツメの姿を見据える。リーリエの姿を見て準備が出来たと確認した審判が定位置につき、バトルのルールを説明する。

 

「それではこれより、挑戦者(チャレンジャー)リーリエ対ジムリーダーナツメによるジムバトルを開始する!使用ポケモンは2体!両者のポケモンどちらかが戦闘不能になったらバトル終了です!では、ジムリーダーからポケモンを!」

 

審判の言葉と同時にナツメは懐からモンスターボールを取り出す。しかしその方法は信じられない方法で、なんと自らの手を使わずにモンスターボールを目の前で浮かせているのだ。その現象に驚くリーリエだが、リーリエの様子を見たナツメは自分の能力を軽く説明する。

 

「驚いた?私エスパー少女なの。このくらいのことはまだまだ序の口。超能力の恐ろしさ、あなたに見せてあげる。」

 

いたって冷静な表情で淡々と語っていくナツメ。その後、モンスターボールが自然と開き、中から一匹のポケモンが姿を現す。

 

『フーディ!』

 

そのポケモンは彼女の相棒でもあるフーディンだった。先ほどの道場主との戦闘を見たリーリエはその圧倒的な強さを目の当たりにしている。最初から出てきたエースから放たれる威圧感に、リーリエは思わず身震いする。しかしここで退いては気持ちで負けてしまっていることに他ならないと思い、フーディンと向かい合う。

 

(向かい合ってみるとフーディンさんとナツメさんのプレッシャーが伝わってきます。でもそれ以上に、あのお二人にはそれすら超える信頼関係が強いことがよくわかります。ですが私達も負けていません!)

「お願いします!フシギソウさん!」

 

リーリエが最初に繰り出したのはフシギソウだった。毒タイプを持つフシギソウではエスパータイプのフーディンとは圧倒的に相性が悪い。だがそれは、リーリエが自分のポケモンに対して信頼を置いていると言う意味でもある。しかしそこに、ナツメが出鼻を挫くような発言をリーリエに伝える。

 

「初めに言っておくわ。あなたは私に勝てない。」

 

衝撃の発言と同時に審判が試合開始の宣言がされる。確かにナツメの能力はかなり驚異的であるが、戦ってみないと結果は分からないとリーリエは気を引き締める。

 

「こちらから行きます!フシギソウさん!はっぱカッターです!」

 

フシギソウは得意のはっぱカッターによりフーディンに牽制を仕掛ける。しかし、フーディンは徐々に接近するはっぱカッターを避ける動作をとろうとしない。それどころか、反撃をする様子すらも見せない。

 

これは決まった、と思うリーリエだったが、はっぱカッターがフーディンを捉える寸前で状況が一変した。

 

「き、消えた!?」

 

そう、フーディンが姿を消したのだ。突然の出来事で驚くリーリエ。フシギソウもどこに行ったか状況が掴めずに周りをキョロキョロと見渡す。

 

「!?フシギソウさん!後ろです!」

 

リーリエの言葉にハッとしたフシギソウは、直ぐに後ろへと振り返る。しかし時は既に遅く、振り向いた時にはフシギソウは謎の力で浮かび、壁まで飛ばされて叩きつけられてしまう。恐らく今のはサイコキネシスだろう。

 

凄い勢いで壁へと叩きつけられたフシギソウは、かなりのダメージを貰ってしまったようだ。サイコキネシスエスパータイプの技であり、毒タイプのフシギソウには効果抜群である。その上不意打ちのようにあの威力のサイコキネシスを喰らってしまっては、一溜りもないだろう。しかしそこに追い打ちをかけるかのように、フーディンは虹色の光線、サイケこうせんをフシギソウ目掛けて放つ。

 

「フシギソウさん!」

 

ダメージを受けてボロボロなフシギソウだったが、リーリエに言葉に反応して間一髪のタイミングで回避に成功する。しかしフシギソウは既に立っているのがやっとなぐらいで、足取りがおぼつかない様子だ。実際、フシギソウもリーリエの言葉に反応し辛うじて耐えている様子である。それほどまでにフーディンの一撃は重かったのだ。

 

(先ほど攻撃を躱したときの技は恐らくテレポート。そしてその後の技はサイコキネシスとサイケこうせん。厄介な技に加え、とても強力な技にどう対処すれば……。)

 

厄介な技であるテレポートに対する対処法に頭を悩ませるリーリエ。しかしその時、もう一つ疑問に思った点がある事に気付く。

 

(そういえばナツメさんは未だに一回も明確な指示を出していません。それなのに技をフーディンさんは的確に攻撃を加えてきています。まるで二人の意識が繋がっているような……。)

 

その状況にリーリエは一つの結論へと辿り着くと同時にある出来事を思い出す。

 

(!?そうか!これはテレパシーです!)

 

リーリエは以前ほしぐもちゃん……ソルガレオと言葉にせず会話をしていた。恐らくそれと同じだろうと結論付ける。シンジからも聞いたことがあるが、信頼の強いポケモンとトレーナーは言葉にしなくとも気持ちが伝わると言っていた。それに加え、ナツメはエスパー少女と名乗るだけの人物であると同時に、フーディン自身もエスパータイプのポケモンである。テレパシーが出来たとしてもなんら不思議はないだろう。

 

「さあ、考えは纏まったかしら。」

 

リーリエはナツメのその言葉に思わず不気味さが伝わってしまった。その一言だけで自分の考えまでも見透かされているのではないかと思ってしまったのだ。とは言え彼女も人間だ。流石にそこまで万能な能力は持ち合わせていないだろう。ならばそこには必ず突破口があるとリーリエは判断する。そしてここは行動あるのみだとフシギソウに声をかける。

 

「フシギソウさん!まだいけますか?」

『ソウソウ!』

 

リーリエの言葉にフシギソウは頷きながら返事をする。その眼に宿る闘志はまだ潰えていないようだ。

 

「行きます!やどりぎのタネ!」

 

フシギソウは背中から一つのタネをフーディン目掛けて飛ばす。このタネに触れれば少しずつフーディンの体力を削ることができ、フシギソウの体力も徐々に回復できる。一気に形成を逆転できるだろう。

 

しかしナツメと言うジムリーダーにはそう簡単に通用するものではない。なんとフーディンはスプーンを使い、振り払う形でやどりぎのタネを無効にしてしまったのだ。可能性のあった一手を防がれ、最早フシギソウには打つ手がなくなってしまった。

 

「これで終わりね。」

 

ナツメのその言葉と同時に、フーディンはサイコキネシスを使いフシギソウを再び宙へと浮かばせる。そしてそのまま思い切り投げ飛ばして壁へとぶつける。流石のフシギソウも怒涛の連続攻撃に耐え切れずに戦闘不能となってしまう。

 

「フシギソウさん!」

「フシギソウ戦闘不能!フーディンの勝ち!」

 

一切のダメージを負わすことが出来ず倒れてしまったフシギソウをモンスターボールへと戻す。

 

「ありがとうございました。後はゆっくり休んでいてください。」

 

そんなフシギソウにリーリエは心からの感謝を込めてお礼を言う。そして最後の一体であるポケモンが入るモンスターボールを手に取り、思いを込める。

 

「……お願いします。シロン!」

『コォン!』

 

強い願いを込めながらリーリエはシロンを出す。シロンはやる気十分と言った表情でフィールドに立つ。その眼差しにはリーリエの期待に応えようとするシロンの強い意志が宿っていた。そんなシロンの眼を見たナツメは、フーディンに最後まで油断するなと伝えた。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

先ずは牽制の意味も含めてこなゆきによる先制攻撃を加える。しかし、先ほどのやどりぎのタネと同じようにスプーンによって簡単に防がれてしまう。

 

(あのスプーンによる防御が厄介です。でもあれには何か仕掛けがあるのでしょうか。)

 

フーディンのスプーンによる防御に対する突破口を探るリーリエ。だがナツメはその突破口を見つけるまで待ってくれるほど優しくはない。

 

「考えてる暇なんてないわよ。」

 

ナツメの言葉にリーリエはハッとなると、シロンの後ろに既に回り込んでいたフーディン。シロンはそのままサイコキネシスでフシギソウと同じように飛ばされてしまう。

 

「シロン!?」

 

このままではフシギソウの二の舞だと焦るリーリエ。心の焦りが不安へと繋がり、どうしても突破口を見つけ出すことが出来ずにいる。そんなリーリエをシンジはルリリと共に見守る。

 

「例え強大な力にも必ず弱点はある。リーリエがそれを見つけられるかどうか……。」

『リルゥ……』

 

シンジに抱きかかえられた状態で見守るルリリも心配そうに見守っている。

 

(ナツメさん……私の想像していたよりも遥かに強い。でも……私は諦めたくありません!)

 

傷付くのを見るのが苦手だと言っていたリーリエが、心の中で諦めることを拒絶する。それだけ自身が気付かぬうちに、彼女自身の本質もトレーナーへと傾いて行ったと言うことだろう。リーリエの眼もトレーナー特有の輝きを宿しているように感じさせる強いものになりつつある。

 

「最後まで私を信じてくれますか?シロン!」

『コォン!』

 

リーリエの鼓舞により、シロンも諦めないと言う意思を示し立ち上がる。背中を追いかけている憧れのトレーナーに近づけるように、リーリエとシロンは最後まで必死の抵抗を見せる。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

シロンのこおりのつぶては一直線にフーディンへと向かっていく。しかし、フーディンはサイケこうせんを放ちこおりのつぶてを相殺する。その衝撃により、フィールド中央に爆発による煙が舞う。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

その隙にシロンは高くジャンプし上空からフーディンの姿を捉える。リーリエの考えた作戦は、技の衝撃により視界を奪うことで隙を作り、シロンの身軽さを利用した上空からの一点突破と言うものだった。フーディンは一切の動きを見せず、ただ茫然と立ち尽くしているだけだった。刹那、フーディンの眼が光り、一瞬のうちに姿を消してしまう。煙の奥からフーディンの影が見えなくなり戸惑ったリーリエだが、その理由が何かを理解した。

 

「!?テレポート!」

 

テレポート。最も単純だが最も厄介なこの技で、フーディンはシロンのさらに上空へと浮かび上がる。エスパータイプ特有のその戦い方を使いこなすナツメの戦術に感心し、今度こそ敗北を覚悟する。

 

決してリーリエは油断していたわけではない。ただ焦り過ぎていただけなのだ。ナツメと言う遥に格上の相手に対し、序盤から追い詰められた。それこそが今回の大きな敗因と言えるだろう。

 

フーディンのサイコキネシスがシロンを捕らえ、そのまま勢いよく床へと叩きつけられる。フーディンの技はとても精錬されており、威力も桁外れであった。シロンもこれ以上は耐え切れずに目を回し戦闘不能となってしまった。

 

「ロコン!戦闘不能!フーディンの勝ち!よって勝者、ナツメ!」

「シロン!」

 

審判によるコールが終わると、すぐさまリーリエはシロンに近づき抱きかかえる。シロンも力はないものの、リーリエの心配そうな声に反応し、か細い声で返事を返す。

 

「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでいてください。」

『コォン……』

 

リーリエはボロボロになりながらも自分のために精一杯戦ってくれたシロンに感謝しながらモンスターボールへと戻す。ナツメも期待に応えてくれたフーディンのと共にリーリエの元に近づいてくる。

 

「あなたのポケモンたち、信頼関係はとてもよく伝わってきたわ。でも、それだけで勝てる程、私の壁は脆くないわよ。」

 

ナツメの言葉にリーリエは落ち込んだ様子で俯く。やはり一矢報いることも出来ずに負けてしまい、余程悔しいのだろう。それほどまでにナツメと言うジムリーダーは大きな壁となって立ちはだかったのだ。

 

「……もっと経験を積みなさい。そしてまたここに来た時、相手になってあげるわ。」

「……はい。ありがとうございました。」

 

珍しく落ち込んでしまうリーリエ。この敗北が彼女をどう変えるかがこれからの課題である。シンジもリーリエが更に成長していけるように支えてあげようと心の中で決意する。そして、リーリエとシンジは強大な敵、ナツメのいるヤマブキジムを後にし、ポケモンを回復させるためにポケモンセンターへと向かった。




今回は完全にボロボロの敗北です。アニポケでも良くあるジム敗北回ですね。ほとんどの人はここで負けることを予想していたかもしれませんが。てかキャラクターのセリフに若干のブレが感じるのは気のせい?

そして今週のアニポケはなんとブイズ回だよ!それでテンションMAXです、はい。イーブイZ回は必ず来るとは思ってましたけど、まさかイリマさんが使うとは予想外でしたね。イリマさんの中の人も気になるところですが、やっぱり自分はアニメで活躍するブイズが見られればそれだけで幸せです!

それとどうでもいいことですが、前回MHFに追加された辿異ドラギュが楽しすぎて思わずYouTubeにうpしてしまいました。多分これっきりでしょうが。

何はともあれまた次回お会いしましょう!ではではノシ


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リーリエ、前に進みます!

リーリエ立ち直り回です。まだ新米トレーナーという事でこういった回を作りました。どうか温かい目でリーリエの事を見守ってあげてください。


リーリエです。ナツメさんの圧倒的な力の前に何もできずに敗れてしまった私は、ポケモンセンターで自分のポケモンさんたちの回復をしに戻りました。ジョーイさんのお陰でシロンもフシギソウさんすっかり元気になりました。

 

しかし、当の私はまだ元気が戻りません。あれほどの力の差を見せられては、元気を出せと言われても難しい話です。確かに私が負けたのは初めてではありません。でも、正直ナツメさんは桁が違いました。フーディンさんに傷一つ付けることも出来ず、一方的にやられてしまっただけです。どうすればあの人に勝てるのか。全く思いつきません。

 

私がナツメさんについて悩んでいると、シンジさんが近付いてきて私に声をかけてきました。

 

「リーリエ、一緒に出掛けてみない?」

「え?いや、でも私は……」

 

突然のお誘いに戸惑う私。でも今は正直そんな気分ではありません。勿論シンジさんとお出かけするのが嬉しくないわけではありません。寧ろ誘っていただけて嬉しいです。でも今は……。

 

「いいからいいから!」

「ふえっ///」

 

私が迷っていると、シンジさんが私の手を引っ張り強引に外に連れ出されました。急に手を繋がれたことに驚き変な声をあげてしまいましたが、それよりもシンジさんらしからぬ行動に私は疑問を抱きました。いつもであれば強制するような行動をすることがないので、なぜ私を連れだしたのかがやっぱり疑問でした。

 

こうして私はシンジさんと一緒にヤマブキシティを歩くことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、リーリエ。」

「あ、シンジさん、ありがとうございます。」

 

シンジさんが私にヤマブキシティで人気と言われているアイスクリームを買ってくださいました。ヤマブキシティは大きな町で、他にも目移りするようなものが多く並んでいましたが、シンジさんはその中でもオススメのアイスクリームを選んだみたいです。

 

「ここのアイスクリーム、すごくおいしいんだ。一回食べてみてよ。」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

折角シンジさんが買って下さったので、私は言われた通りにそのアイスクリームを食べることにしました。

 

「ん!?美味しいです!」

 

そのアイスクリームは今まで食べたことがないくらい美味しいものでした。濃厚なミルクのとろけるような味わいが口の中いっぱいに広がり、バニラが染み込んでいくように溶けて表現できないような味でした。

 

「美味しいでしょ?ここのアイスはジョウト地方から取り寄せたモーモーミルクをふんだんに使って作った特製のアイスみたいなんだ。是非リーリエにも食べてほしいなって思ってたんだ。」

 

確かジョウト地方はカントー地方に隣接している文化の異なる地方だったはずです。ミルタンクさんからとれる新鮮なモーモーミルクは絶品だと言う話を聞いたことがあります。そう言えばアローラ地方でもモーモーミルクを扱っている牧場があるという話も聞いたことがあります。一度でいいので新鮮なモーモーミルクを味わってみたいですね。

 

次にシンジさんに案内してもらい向かったのは、町の服屋さんでした。折角ヤマブキシティに来たので、私の服を買って着てみるのもいいのではないか、と言うシンジさんの提案でした。私はお母様に言われて着せられていた服しか着たことがなかったので、他の誰かに選んでいただくのはちょっと新鮮な気がしました。でもシンジさんに選んでいただくのであれば、悪い気はしませんでした。

 

今着ている服は私がアローラのブティックで偶々見つけた服を着ていますが、思えば最近はこればかり着ていて他の服を着ていなかったかもしれません。偶には別の服を着て気分転換するのもいいかもしれませんね。

 

「これなんかリーリエに似合いそうじゃない?」

 

私が頭の中でそんなことを考えていると、シンジさんは一つのTシャツ差し出してきました。ピンク色を基調にしたTシャツで、襟元は花柄でヒラヒラの可愛らしいデザインでした。しかしその服は私も可愛いと思いますが、本当に私に似合うのか不安です。

 

「こっち服と合わせて着るとよさそうだよ。」

 

次にシンジさんが差し出したのは白色のカーディガン……と呼ばれるものでしょうか。手触りもよく、見た感じ着心地も良さそうでした。その服を見ていると、私も着てみたいと言う衝動に駆られますが、それでも躊躇してしまいます。しかしシンジさんが折角選んでくださったので、ここで断るのも悪い気がします。シンジさんの折角のご厚意なので、試着してみようかなと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えっと……どうですか?」

 

私は試着室に入り、シンジさんに勧められた服を着てみることにしました。ついでという事なので、スカートも淡い青色をベースにしたスカートを着てみることにしました。

 

「うん!とっても似合ってるよ!」

「はい、とってもお似合いですよ、お客様。」

 

シンジさんと店員さんにそう言われ、私は照れくさくて顔が赤くなってしまう。正面からそう言われるとやっぱり照れてしまいます。でも似合っていると言われ、私はお世辞だったとしてもその言葉が素直に嬉しいと思いました。

 

「折角似合ってるんだし買ってあげるよ。」

「え!?そんな悪いですよ!こんなに素敵な服を買っていただくなんて!」

 

私はシンジさんの言葉に思わずそう答えてしまう。とは言えこの素敵な服を買っていただくのはやっぱり気が引けます。正直欲しいと思ってしまっている自分もいますが、流石にシンジさんに買っていただくのは……。

 

「彼女へのプレゼントですか?」

「か、かの!?」

 

店員さんの彼女と言う単語に思わず驚いてしまいました。シンジさんも今の言葉には流石に照れた様子を見せていましたが、すぐに頷きながら返事をしていました。その姿を見た私は恥ずかしい気持ちを抱く反面、嬉しい気持ちもありました。私はそのシンジさんの姿を見て、シンジさんのご厚意を断ることが出来ずに買っていただくことになりました。

 

その後も、シンジさんと一緒にショッピングをしたり、お土産を買ったり、レストランで食事をしたりとヤマブキシティを歩き回りました。やっぱり大都会という事もあり、見たいものは数多くありました。アローラ地方にもハウオリシティのような大きな街もありましたが、その時は見て回る余裕もなかったので今回の経験は新鮮でした。シンジさんが一緒にいてくださる、と言うのも勿論ありますが。そして気付けば、夕方までシンジさんとのお出かけを楽しんでいました。

 

「今日はありがとうございました。素敵な服までプレゼントしていただいて。」

「ううん、気にしないでいいよ。リーリエが喜んでくれれば僕は嬉しいから。」

 

シンジさんがそう言って笑顔のまま優しい言葉をかけてくださいます。しかし、シンジさんがこれだけ優しくしていただいても、ヤマブキジムでの出来事が頭を離れません。シンジさんが明るく接してくださっているのに、私は……。

 

「……ヤマブキジムでの戦い、まだ忘れられないんでしょ?」

「!?」

 

シンジさんに私の考えが見透かされているようでドキッとしてしまいました。自分の顔に出ていたのでしょうか。確かに私は昔、お兄様にも「お前は考えていることが顔によく出る」と言われたことがありました。シンジさんにバレても仕方ないかもしれません。

 

「ご、ごめんなさい。折角一緒にお出かけしているのに。」

「別に謝らなくてもいいよ。仕方のない事だからさ。それに……」

 

シンジさんが再び優しい言葉をかけてくれると、ひと呼吸おいてから衝撃の発言を口にしました。

 

「……あの時の僕と同じだったからさ。」

「え?」

 

シンジさんは今確かにあの時の自分と同じだったと言いました。私は今の強いシンジさんの姿しか知りません。昔の姿も知ってみたいと言う気持ちも正直ありましたが、人の過去に勝手に踏み込むのは良くない行為だと理解しているため自分から尋ねることはありませんでした。実際、私も過去の自分に関しての記憶を掘り下げられるのにいい気はしません。ですが私はシンジさんにだけは気付いた時には自分から話をしていました。シンジさんはそれだけ信頼できると感じているからです。私もよくないこととは知りつつも、今は気持ちに余裕が持てないため気付けばシンジさんに尋ねていました。

 

「同じ……とはシンジさんも過去に私と同じ経験をしていた……と言うことですか?」

 

私はシンジさんは黙ってうなずき、そのまま過去に味わった経験を私に語ってくれました。

 

「僕も以前、ナツメさんに負けたことがあったんだ。」

 

信じられないことでした。少なくともシンジさんはアローラ地方にいたころに負けたと言う話は聞きませんでした。勿論四六時中私といたわけではないので、私が知らなかっただけだと言う可能性もありますが、それでも私の目の前で敗北したと言う事実は一切ありません。それどころか、素人である私の目から見ても強いという事が伝わってくるくらいの戦いを繰り広げていました。

 

私は頭の中でそんなことを考えながらも、シンジさんの話に再び耳を傾けました。

 

「その時僕は圧倒的な敗北を味わったんだ。僕も僕のポケモンたちも、初めての敗北で心が砕かれそうになって酷く落ち込んでいたこともあったんだ。でも、ある人から助言を貰い、立ち直ることが出来たんだ。」

 

ある人、と言う単語に私は疑問を感じましたが、それ以上にその人が言った助言が気になりました。私はその人の言った助言が何なのか、シンジさんに尋ねることにしました。

 

「その人の助言とは……何だったんですか?」

 

私は思わずゴクリと喉を鳴らす。そしてこのことは自分にも深く関わるだろうと聞き逃さない様にしようと注意して聞くことにしました。シンジさんもその人の姿を思い浮かべた様子で、その助言をそのまま口にしました。

 

『ポケモンバトルは一人では勝てない。例え圧倒的な敗北であったとしても、それは負けではなく、前に進むための糧となる。君もトレーナーなら、自分のポケモンを信じ、ポケモンが信じる自分を信じろ。決して立ち止まるな。』

 

その言葉には数多くの意味が含まれているように感じました。その人の経験や感情、その他にも様々な思いが込められているのだろうと。シンジさんはその言葉を述べたのち、私の方を真っ直ぐ見て答えました。

 

「一人で抱え込んだらダメだよ。リーリエにはポケモンたちがいる、家族もいる、それに……僕だって傍にいるんだ。いつだって頼ってくれてもいい。それに僕は、リーリエならもっと強くなれるって信じてる。僕の知ってるリーリエは、どんな困難にも立ち向かう強さを持った女の子だって知ってるから。」

 

その言葉を聞いて私は気付くことが出来ました。あれだけ自分のポケモンさんたちが頑張ってくれていたのに、私は自分一人で抱え込んでいたんですね。私は一人ではなかったのに、そのことに気付けない自分が情けないです。

 

「ありがとうございます、シンジさん。おかげで目が覚めました。そうですよね、私一人で戦っているわけではないのに、一人で悩んでも解決できるはずがありませんよね。」

 

シンジさんは私の言葉を聞いて黙って見守ってくれている。今日もシンジさんはこのことを伝えるために私を強引に連れ出してくれたのですね。本当にシンジさんは私には勿体ないくらい優しくて、頼りになる素敵な方です。私は決意を固め、自分の意思を口にしました。

 

「決めました!私は前に進みます!もう一人で抱え込みません!」

 

私もシンジさんを真っ直ぐ見つめながらそういう。シンジさんも私の吹っ切れたような言葉を聞いて、優しく微笑みかけてくださいます。またシンジさんのその笑顔に救われましたね。もっともっと精進できるように、がんばリーリエです!

 

こうして私の悩みは綺麗に吹き飛ばすことが出来ました。確かにナツメさんは強敵ですが、焦る必要はありません。時間はまだ充分にあります。次に挑戦するときまで、必ず突破口を見つけ出して見せます。私自身と、私の信じるポケモンさんたちと共に!

 

今日は一日中歩き回って疲れたため、一先ずポケモンセンターに戻り休むことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

「昨日はゆっくり眠れた?」

「はい!もう元気ばっちりです!」

 

迷いが晴れたリーリエの姿を見て、シンジは彼女に微笑みかける。シンジも落ち込んだリーリエの姿を見るのは耐えられなかったようで、迷いが晴れた彼女の姿を見れたのは嬉しいようだ。

 

「じゃあ行こうか。次の町に!」

「はい!」

 

リーリエは手をギュッと握りしめて気合を入れる。いつものリーリエの姿に戻ったため、もう昨日までのような心配は皆無だろう。前へと進むリーリエと、彼女を支えるシンジ。二人のカントーを巡る冒険は、まだまだ続く!




ある人の正体が分かる人にはわかる気がします。実際にこう言うことを言うのか分かりませんが、特に深い言葉が思いつかなかったのでそれっぽいことを書いてみました。非力な私を(ry

後服の表現が難しいっす。衣服の詳細はよく分からないので詳しく書こうにも書けないです。ヌシは東方キャラかブイズかモンハンのイラストが入った服くらいしか着ないので。特にレディースはイマイチ違いとかも分かってません。

最近花粉が酷くて苦しんでいます。薬飲んでも止まらないくらい花粉に弱いのでこの時期はいつも辛いです。特にスギがキツイです。あと稲もあった気がしますが。花粉に弱い人はくれぐれも気を付けてください。……だからと言って気を付けてどうにかなるものでもないですが。


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ライバル登場!?

UFOキャッチャ―にて偶然見かけたニンフィアのぬいぐるみが200円で取れて歓喜しているヌシです。愛の力ってすげー!

それはともかく、今回はリーリエの(色んな意味の)ライバルとしてある人物を出します。オリキャラでもよかったんですけどね……めんどくs……いえ、何でもありません。

公式とは全く性格違うでしょうが二次創作ならよくあることだし仕方ないよね?うん。

それと私用のためちょっと急いで書き上げたため内容がいつも以上に雑になってしまったのはちょいと反省。


先日シンジの助力もあり、ジム戦での敗北を乗り越えることに成功したリーリエ。今もシンジと共に旅を続けている……のだが?

 

「シンジさ~ん!」

「え~と……」

 

今シンジの名前を呼んだのはリーリエではなく、別の一人の少女であった。その少女はシンジの腕にしがみついた状態で歩いているが、シンジもその少女の行為に少々戸惑っていたようだ。対してリーリエは彼女の事を恨めしそうな目で見ている。

 

(なんなんですかあの人!馴れ馴れしく初対面のシンジさんの腕を組むなんて!)

 

リーリエも心の中で彼女に届かない妬みの声を呟く。事の発端は少し前まで遡る……。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「そこのあなた!あたしとバトルしなさい!」

「え?僕?」

 

リーリエとシンジが共に旅を続けていると、突然一人の少女がバトル相手としてシンジを指名してきた。少女は水色のタンクトップと赤色のミニスカートを着用し、白を基調としたモンスターボールをイメージしたような模様の入った帽子を被っている。デジャブのような光景を見て、リーリエも困惑している様子だ。

 

「旅に出てから手応えの無い相手ばかりだったのよね。あなたは少しは強そうだし、あたしの相手になってもらうわよ!」

 

突然のバトルの誘い、理由も理不尽なものではあるが、トレーナーとして挑まれたバトルを断るのは自分の流儀に反する。それにチャンピオン等の特別なトレーナーは基本フリーバトルを断る人も多いが、シンジは特にそう言ったことは気にしていない。寧ろ自分も公式試合以外でも、色々な戦いを経験したいと思っている。それゆえ、彼女に対しての返事は当然決まっていた。

 

「勿論!その挑戦受けて立つよ!」

「挑戦とは大きく出たわね。ま、そのくらいの余裕がなければ張り合いがないわよね。」

 

そう言いながら、少女は笑みを零し自分の名前を口にする。

 

「あたしはブルー!そしてこの子があたしの相棒よ!」

 

ブルーと名乗った少女はモンスターボールを上空へと放り投げる。そしてモンスターボールから一匹のポケモン、彼女の相棒であるポケモンが繰り出される。

 

『カメェ!』

 

ボールから出てきたのはカメールだった。オーキド博士から貰えるポケモンの一体、ゼニガメが進化した姿である。リーリエも本で何度か見たことはあるが、実物を見たのは初めてであるため、ポケモン図鑑に残そうと自分のポケモン図鑑を取り出す。

 

『カメール、かめポケモン。ゼニガメの進化形。尻尾や耳にはバランサーの役目も付いており、高速で水中を移動することもできる。背中に苔が生えたカメールは長く生きた証である。』

 

図鑑の説明に対し、リーリエは納得をして図鑑を懐にしまう。そして相手がポケモンを繰り出したのを確認し、続いてシンジも自分の信じるポケモンを繰り出すことにした。

 

「僕の名前はシンジ。じゃあここは君にお願いするよ。ブラッキー!」

『ブラッキ』

 

シンジが繰り出したのブラッキーだった。げっこうポケモンのブラッキー。当然イーブイの進化形であくタイプを所有しているが、水タイプとの相性は五分と言ったところ。つまりタイプ相性だけでは勝負の優劣は決まらないということだ。

 

「へえ、ブラッキーね。珍しいポケモン持ってるじゃない。じゃあ早速行かせてもらうわ!」

 

ブルーはそう言うと早速カメールに攻撃の指示を出す。

 

「カメール!みずてっぽう!」

 

先ずは堅実にみずてっぽうで牽制を仕掛けてくる。中々のスピードで直線的にブラッキーに向かう。そのスピードから、カメールがよく鍛えられていることが分かる。しかし、ブラッキーはそれを避ける動作をとらない。

 

「ブラッキー!まもる!」

 

ブラッキーはまもるによってみずてっぽうを無力化する。あっさりとみずてっぽうを防がれてしまったことに一瞬驚くブルーだったが、すぐに気を取り直して次の指示を出す。

 

「続いてロケットずつきよ!」

 

カメールは自らの甲羅に顔を引っ込め丸くなり、ブラッキー目掛けて勢いよく突撃する。この状態のときは攻撃力は勿論だが、防御力も上がっているため厄介な技と言える。

 

「ブラッキー!イカサマ!」

 

凄い勢いで突撃してくるカメールに対し、ブラッキーは正面から突っ込む。かと思いきや、少し体を逸らしカメールの攻撃をギリギリの位置で躱す。そしてそのままカメールを掴み地面へと投げ飛ばした。イカサマは自分の力ではなく、相手の攻撃を利用してダメージを与える変則的な技だ。知らずに対処するのは難しい技と言えるだろう。

 

しかしカメールは、地面で一度跳ね返ったものの、すぐさま受け身をとり態勢を整える。相手がいないと言うだけはあり、どんな状況でも対処できるように訓練を積んでいたのだろう。流石だとシンジも心の中で感心する。

 

「まだまだこれからよ!アクアテール!」

 

受け身をとった態勢からすぐに立て直し、カメールは水を尻尾に纏いアクアテールの態勢へと入る。そしてそのままブラッキーに接近し、ブラッキーが着地する瞬間を狙って攻撃を仕掛ける。流石にこれはマズいのではとリーリエも心配になるが、そんな心配はすぐに無くなる。

 

「あやしいひかり!」

 

ブラッキーの額の模様が文字通り怪しく光り、カメールの動きを惑わせる。あやしいひかりの効果によって混乱状態となってしまったカメールは、怯んでしまったためにブラッキーの居場所を掴みとれずに簡単に避けられてしまい空を切ることとなった。

 

「なっ!?そんな!?」

「これでラスト!シャドーボール!」

 

混乱状態となったカメールは、自分でも訳の分からない状態となってしまい、なすすべもなくシャドーボールの直撃を受けてしまう。そしてカメールはそのまま目を回した状態で戦闘不能となった。

 

「カメール!?」

 

流石にやりすぎてしまったか、と内心思うシンジだが、彼自身ポケモンバトルにおいて手を抜くのは相手に対して失礼な行為となってしまうので手を抜くことはない。だが、一度バトルを始めると熱くなりすぎてしまい、偶にやりすぎてしまうのも悪い癖だと自身で反省する。

 

「戻ってカメール。お疲れ様。」

 

あからさまに落ち込んでいるブルーに声を掛けづらいと感じる二人。だがこのままにしておいてはもっと気まずくなることは確実なので、自分から声を掛けようとシンジは近づく。

 

「あー、その、、、ごめんね?ちょっとやりすぎちゃった……かな?」

 

声を掛けづらい空気の中、なんと言えばいいのかわからずにそんな言葉を呼びかける。しかし、彼女から返ってきた言葉は予想していなかった言葉だった。

 

「あなたって強いのね!ここまで一方的にやられた戦いは初めてだわ!シンジさんって呼んでもいい?っていうか呼ばせてください!」

「え?あ……え?」

 

流石のシンジもブルーの別人のような姿には戸惑うしかないようだ。リーリエも呆気にとられて開いた口が塞がらないでいる。そして彼女の要望により、少しの間だけ行動を共にすることとなった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

そして現在に至ると言うわけである。ブルーもシンジも気付いてはいないが、リーリエは今でも噛み付かんばかりの眼差しで二人の様子を眺めている。と言うか睨みつけていると言った方が正しいかもしれない。

 

(私だってあそこまでくっついたことありませんのに……。シンジさんもシンジさんです!シンジさんは優しいから中々断ることが出来ないでいるのでしょうが、私の前であそこまでベタベタされると……なんだか嫌です!)

 

とは言え二人の直接そう言う言葉を投げつけるのが難しく、声を掛けれずにいる。そこでシンジもリーリエの姿に気付いたのか、軽く冷や汗を流した状態でブルーに声を掛ける。

 

「あー、あの、少し離れてもらってもいいかな?ちょっと歩きにくいから……。」

「えー?仕方ないですね……。」

 

ブルーも残念そうな声で名残惜しそうにシンジから少し距離をとる。シンジもリーリエの睨みつくような視線から離れることが出来たことに思わず、誰にも聞こえないくらいの小さな声で安堵の声を漏らす。

 

そして、彼らは旅の途中にあるポケモンセンターに立ち寄り、今日はここで休むことにした。

 

「じゃあ僕はちょっと外に行ってくるから。」

 

そう言ってシンジはポケモンセンターの一室から一時的に退室する。残されたリーリエとブルーに少々気まずい空気が流れたが、最初に声を出したのはブルーだった。

 

「ねえ。」

「な、なんでしょうか?」

「あなたとシンジさんってどんな関係なの?」

「!?///」

 

突然の著急な質問に焦って顔を赤くするリーリエ。それだけで大体彼女の気持ちが分かったブルーだが、何故だか直接彼女の気持ちを聞いてみたいと感じていた。ブルーの表情はおちょくっている、と言うより間違いなく真剣な表情そのものであり、彼女の顔を見たリーリエも覚悟を決めて自分の素直な気持ちを伝える。

 

「……私はシンジさんの事が大好きです。同時に尊敬もしています。今の私の目標です。」

「付き合ったり……とかは?」

「えっと……勿論付き合いたいとも思っておりますが///」

 

そこでリーリエの言葉は止まる。彼女もまだそこまでの勇気は出ないようだ。ブルーも内心では絶対付き合ってるだろと感じている。男女二人で旅をしていればそう思われても仕方のない事だろう。だがならばと、自分の気持ちをリーリエに伝える。

 

「あたしもシンジさんの事が好きになっちゃったみたい。」

「そうですか……」

 

分かっていた。あの様子を見ればブルーがシンジに好意を持ったことなど恋愛経験の浅いリーリエにもすぐに分かった。だがそれでも、リーリエは彼女に負けたくないという感情がこみ上げてくる。初めて好きになった異性。そして憧れの人物の姿を思い浮かべながら、彼女は自分の気持ちを口にする。

 

「……私負けませんから。絶対に。シンジさんの事でも。トレーナーとしても。」

「それはあたしも同じよ。じゃあ明日、またバトルしましょ!あなたとはまだ戦ってなかったしね!」

「……はい!それと私の事はリーリエって呼んでください。」

「分かったわ、リーリエ。あたし負けないから!」

 

二人は先ほどの険悪な雰囲気から一変し、互いに笑顔を浮かべながら握手を交わす。ひょんな出会いではあったが、彼女たちはこうしてライバルとなった。トレーナーとしてのライバルでもあるが、同時に恋のライバルとしても。

 

その後、部屋に戻ってきたシンジだったが、彼女たちの空気が先ほどまでよりもいいものになっていることに気付いた。何があったのか尋ねたが、笑顔で何でもないとはぐらかされ詳しく聞くことが出来なかった。だが、彼女たちだけを残したのはマズかったかもしれないと初めは思っていたシンジだが、彼女たちの今の様子を見れば逆に良かったのだろうと納得する。

 

そうして彼らは今日は一度休むことに決めた。流石にここは室内であり、シンジ自身も疲れた様子を見せていたからか、ブルーもさっきまでのような過度なアピールはしなかった。そのことにリーリエは、少しだけ安心した表情を浮かべるのであった。




今回出ていただいたのはブルーちゃんでした。ヌシは読んでませんが、ポケスペとかでの性格を調べてみたら割と悪い子なんですね。といっても過去が少々あれだから仕方ないですね。こっちではそんな酷い目には合っていません。至って普通の女の子です。

と言うわけで次回はリーリエ対ブルーでも書いてみます。結果はどうなるか乞うご期待という事で。ではではノシ


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女の戦い!リーリエvsブルー!

ブルーノ、お前だったのか!


旅を続けていたシンジとリーリエ。変わった出会いではあったが、ブルーと言うトレーナーと出会い翌日。リーリエとブルーがポケモンバトルで対決することとなった。どういった経緯で戦うこととなったかは知らされなかったシンジだが、トレーナーがバトルする理由に口出しするのは無粋であると考えているため問いかけることはしなかった。

 

「最初から全力で行くわよ。」

「はい!絶対に負けませんから!」

 

ブルーとリーリエは互いにポケモンセンターにあるバトルフィールドにて向かい合う。公の場であるため数人のギャラリーは存在しているが、二人にとってそれは少しの雑音にしか過ぎない。シンジは知らないが、これはある種の女の戦いでもあるのだから。

 

「じゃあ今回は僕が審判をするよ。ルールは一対一の一本勝負。どちらかのポケモンが戦闘不能、もしくは危険だと判断した場合バトルを終了する。二人とも、準備はいい?」

 

審判としてルールを確認するシンジの言葉に、二人は問題ないと首を縦に振る。二人の準備が整ったと判断したシンジは、一呼吸おいて合図を出す。

 

「それでは……両者!ポケモンを!」

 

まるで公式試合の様に合図をするシンジの言葉と同時に、リーリエとブルーは自分のポケモンを繰り出す。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

「頼むわよ!ブルー!」

『ソウソウ!』

『ブルゥ!』

 

リーリエはフシギソウを、ブルーはブルーを繰り出した。リーリエはポケモンの詳細を確認するために

ポケモン図鑑を取り出す。

 

「あのポケモンさんは……」

『ブルー、ようせいポケモン。怖い顔をしているが、実は臆病で懐きやすい性格。遊ぶことも大好きで、そのギャップから女性に人気が高いポケモン。』

 

詳細が分かったところでリーリエはポケモン図鑑をしまう。

 

「どう?あたしと同じ名前のポケモンは?可愛いでしょ。」

「はい。そのブルーさんもトレーナーに懐いていると言う事がよく伝わってきます。」

 

ポケモン図鑑が言うことは正しいのだと改めて再認識するリーリエ。それに先日の戦いを見ていたため、ブルー自身が強いと言う事は前もって知っている。可愛いポケモンであろうと油断は出来ないと、気を引き締めて前を向く。

 

「ではバトル始め!」

 

シンジの合図に合わせ、リーリエは動き出そうとフシギソウに指示を与えようとする。しかしその時、フシギソウは足が竦んだように怯んでしまった。なぜ動きが止まってしまったのかとフシギソウに尋ねようとするが、その時にブルーの特性を思い出した。

 

「そう言えばブルーさんの特性は“いかく”!」

「ご明察。」

 

ブルーはドヤ顔でそう答える。いかくは、場に出るのと同時に相手の攻撃力を下げる厄介な特性だ。攻撃力は主に物理技の威力に関係してくる。フシギソウの技は殆どが物理技であるため、この特性によるハンデはかなり大きいものだろう。だが、まだ始まったばかりの戦いを不利だからと言って諦めるリーリエではない。この不利な状況をどう打破するか、それともこのままブルーに軍配があるがるのか。シンジも含めた周りのトレーナーたちも楽しみにしながら眺めている。

 

「行くわよ!たいあたり!」

「こちらも負けません!とっしんです!」

 

先ずはあいさつ代わり、相手の強さを確かめるために正面からぶつかり合う。普段であればたいあたりよりも威力の高いとっしんの方が有利であり、進化して攻撃力も上がっているフシギソウの方が押し返す力が強いだろう。しかし今回に限っては話は別だ。いかくによる攻撃力の減少が響いてきて、次第にパワー負けをし弾き返されてしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

弾き返されたフシギソウは倒れることを拒絶し、なんとか態勢を崩さずに持ちこたえる。そのフシギソウの姿にリーリエはホッと息を吐く。

 

「中々やるわね。でもまだまだ行くわよ?かみつく攻撃!」

 

そう言ってブルーは再び(ややこしいが)ブルーに攻撃の指示を出す。ブルーは鋭い牙をむき出しにし、フシギソウ目掛けて飛びかかってくる。その可愛い顔とは裏腹に、先ほどのたいあたり同様威力はかなりのものだろう。リーリエは慌てては敵の思う壺と、以前の敗北の経験を活かし冷静の対処しようとフシギソウに指示を出す。

 

「やどりぎのタネです!」

 

攻撃力の下がった現状、無暗に攻撃を加えても先ほどの様に弾かれて逆効果となってしまう可能性が高い。そう考えたリーリエの一手はやどりぎのタネだ。この技であれば攻撃力の変化に関係なく、相手にダメージを与えることが可能である。その上、ダメージを受けているフシギソウの体力も少しとは言え回復できるため一石二鳥と言うわけだ。

 

フシギソウは背中の成長した立派なタネから小さなタネで迎え撃つ。フシギソウに噛み付こうと飛びかかっているブルーは当然避けることが出来ず、タネが直撃してしまう。ブルーに接触したそのタネはすぐさま成長し、ツタがブルーに全身に絡みつき体力を蝕む。

 

ブルーは前日のカメールほど戦いなれておらず、慣れていない状況に追い詰められ焦ってしまう。しかし、自分のトレーナーであるブルーの声を聞き、冷静さを取り戻した。

 

「落ち着いてブルー!それはあくまで体力を奪われるだけよ。体力が尽きるまでに決着をつけましょう!」

 

自分のトレーナーであるブルーの声に頷きブルーは期待に応えようと決意をする。トレーナーを信頼するポケモンほど強いもの、恐ろしいものはない。リーリエもそのことはヤマブキジムでの戦いで知っている。だからこそ一切の油断はしないようにフシギソウに呼びかける。フシギソウも共に全力で戦い敗北してしまったために、信頼するトレーナーであるリーリエの期待に背かない様にと自らも気合を入れる。

 

「フシギソウさん!つるのムチ!」

 

左右から出したつるのムチはブルーに接近する。態々確実性の高い葉っぱカッターでなくつるのムチを選択した理由は、はっぱカッターにより折角のやどりぎのタネを切ってしまうと言う最悪の結果を避ける、それを考慮してのリーリエの考えでもあった。しかし、ブルーは先ほどの焦りから一変し冷静に回避する。トレーナーであるブルーもその様子に安心し、反撃の指示を出す。

 

「れいとうパンチで反撃!」

 

腕に冷気を纏ったブルーはフシギソウ目掛けて振り下ろす。フシギソウも攻撃を躱された事により隙が生じ、回避が遅れブルーの攻撃が命中してしまう。

 

れいとうパンチは氷タイプの技であり、草タイプであるフシギソウには効果抜群の技である。さっきのたいあたりとは違い明確なダメージをあらわにしてしまう。れいとうパンチは相手をこおり状態にしてしまう強力な追加効果も併せ持っている。そのことを前もって知っている知識から、リーリエは最悪の状況にならなかったこと、それと同時に立ち上がり戦闘意欲を失っていないフシギソウの姿に一安心する。こおり状態になってしまっては事実上の敗北となってしまうからだ。

 

「効果の高い技を受けても諦めずに立ち上がる……ね。良く育てられているみたいね。」

「ありがとうございます。」

 

戦闘中とはいえ、自分のポケモンが褒められ嬉しさのあまり礼を言うリーリエ。しかしそれとこれとは話が別と、戦闘態勢を解くことは一切見せない。油断のならない相手だと自分でも分かっている。それに、気持ちを一瞬でも緩めてしまえば、その時点で敗北へと繋がってしまう。自分はまだまだ未熟だと理解しているからこそだろう。

 

ベテラントレーナーになればなるほど、逆に余裕が生まれ、やがて慢心、油断へと繋がってしまう。それが一番の不安要素であり、トレーナーとポケモンにとっての最大の敵だ。ここにいるトレーナーたちもそのことを理解し、勉強になると納得している。

 

反撃をしたブルーだが、やどりぎのタネによる継続ダメージによって再び体力を(むしば)まれていく。フシギソウの体力も僅かではあるが回復し、ブルーにもダメージを与えられているため少しの余力は残ったようだ。

 

(必ず攻めるチャンスはやってきます。それまで堪えてください!)

 

心の中で自分の思いに答えようと頑張ってくれているフシギソウにそう呼びかける。フシギソウもそんなリーリエの思いに気付いたのか、態勢を整え、いつ攻められても対応できるように身構える。

 

「まだまだこれからよ!ブルー!たいあたり!」

「負けません!もう一度つるのムチ!」

 

一直線に突撃してくるブルーをフシギソウはつるのムチにより押さえつける。攻撃力が下がっていて傷を負っているフシギソウではあるが、怒涛の攻撃によりスタミナが少なくなり、やどりぎのタネによって体力が削られているブルーにも当然疲労の色が伺える。最初に繰り出したたいあたりに比べ、威力が明らかに落ちてきているため間違いはないだろう。現にフシギソウのつるのムチを弾き返すどころか、押さえつけられたまま身動きが取れない状態だ。その拮抗状態に、リーリエはチャンス到来と感じ、新たな指示を出す。

 

「フシギソウさん!そのまま離してください!」

 

フシギソウはリーリエの指示に従い、つるのムチを引っ込めブルーを解放する。するとブルーは勢い余って転んでしまう。トレーナーであるブルーは思わず「うそっ!?」と言ってしまい、驚きの表情を浮かべてしまう。

 

リーリエの狙いは、ブルーのスタミナ消耗によるミスを誘うことだ。スタミナが無くなり、拮抗状態に持ち込まれれば、どのようなポケモンでも力任せに押し切ろうと考えてしまう。戦い慣れていないポケモンや経験が浅いポケモン、トレーナーはそういった傾向が特に強く出てしまうだろう。全日に戦ったカメールの動きを見ていたからこそこういった判断に持っていくことが出来た。対するリーリエは、以前にシンジの戦いぶりを幾度となく見てきたため戦い慣れこそしていないものの、経験は新人トレーナーに比べれば豊富な方だろう。更に本を読み常に予習をしているため基礎知識も備わっている。ヤマブキジムにおいての想定外な事態を除けば、一般のトレーナーにも引けを取らない。本人の性格上、リーリエ自身はその事を自覚してはいないだろうが。

 

「今です!はっぱカッター!」

 

すかさずフシギソウははっぱカッターを繰り出す。無数に放たれたはっぱカッターはブルー目掛けて飛んでいき、態勢を崩してしまったブルーに難なく命中する。やどりぎのタネは鋭いはっぱカッターにより切り裂かれてしまったが、ブルーには確実に致命的なダメージを与えることに成功した。

 

「ブルー!?」

 

ブルーの叫び声に対し、ブルーはボロボロになりながらも立ち上がろうと踏ん張る。しかしそこで、シンジによる一声によりバトルに集中していたブルーとリーリエはハッとなる。

 

「そこまで!」

「なんで!?あたしもブルーもまだ!?」

 

シンジは視線でポケモンのブルーの方を指し示す。ブルーとリーリエがブルーの方に目をやると、ブルーは力が抜けたように膝をつく。戦闘不能とまではいかないものの、これ以上戦うことは困難だと言う事が伺える。ブルーも自分のポケモンが傷つき限界に近いことに気が付くと、慌ててブルーの元まで駆けつける。

 

「だ、大丈夫!?」

 

自分のトレーナーの声に気が付き、抱かれた状態でブルーは安心したような笑みを浮かべる。それと同時に、力のない声で申し訳なさそうに謝る。自分を信じてくれたトレーナーの期待に応えることが出来なかったのが悔しいのだろう。そんな自分の大切なポケモンの意志を感じ取ったのか、ブルーは首を横に振った。

 

「あたしの方こそごめんなさい。あなたが限界に近いのに、私はそれに気づいてあげられなくて。これじゃトレーナー失格よね。」

 

ブルーは自分のトレーナーに「そんなことはない」と言いたげな眼で微笑み、ゆっくりと首を振る。そんな姿を見たブルーはお礼を言いながら「お疲れ様、ゆっくり休んで」と労いの言葉をかけてモンスターボールへと戻す。

 

フシギソウも同じく力が抜けたようにぐでっと広がる。ダメージだけで言えばフシギソウの方が大きいだろう。だがこの戦いは経験の差が勝敗を大きく分けた。次があるかどうかは分からないが、次戦った時に勝てるのかどうか不安になるリーリエだが、今は懸命に戦ってくれたフシギソウに感謝するべきだろうと頭を撫で、モンスターボールへと戻す。

 

「今回はあたしの負けね。」

「ブルーさん……。」

「けど……次は負けないから!」

 

ブルーの眼には当然悔しさの気持ちも込められている。だがそれ以上に、次はライバルに絶対に負けないと言う悔しさを糧とした感情の方が強く宿っているように思える。そんな感情を抱き、ブルーは手を差し出す。リーリエもブルーの感情を感じ取ったのか、ブルーの手を握り締め握手に応じた。そんな熱い戦いを見せてくれた二人の姿に称賛の意味も込め、周囲のトレーナーたちも拍手の喝采を送る。

 

「い、いつの間にかこんなに人が集まっていたんですね。」

「そ、そうみたいね。」

 

どうやら二人はバトルに熱中しすぎて今の状況に気付かなかったようだ。それほどまでに接戦を繰り広げていたのだろう。だが昨日の敵は今日の友。ブルーとリーリエはライバルとして全力で戦ったが、その中には互いに友情が芽生えたようにも感じることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう行っちゃうんですか?」

 

傷付いたポケモンたちをポケモンセンターにて回復させた一行は、遂にブルーと別れようとしていた。

 

「ええ。今回はまだまだあたしが未熟だって事を思い知らされたわ。もっともっと精進しないとね。」

 

今回の2回連続での敗北は、ブルーの心に新たな決意を生み出す結果となったようだ。これは強力なライバル出現と言う状況に緊張するリーリエだったが、それ以上にワクワクした気持ちで一杯だった。これも一人のポケモントレーナーとしての性と言うやつだろう。

 

「それに……」

 

ブルーはそこで言葉を区切り、リーリエの隣にいるシンジをチラリと横目で見る。どうしたのか分からなかったシンジは首を傾げるが、ブルーはそんなシンジに微笑みかけて言葉を続ける。

 

「あなたには負けられないからね、リーリエ。」

 

バトルの事もあるだろうが、それには別の意味も含まれているのだろうと悟るリーリエ。そんなブルーに、リーリエも一言返す。

 

「私も負けません!絶対に!です!」

 

力強くそう宣言するリーリエ。自分のライバルであるトレーナーなのだからそうでなくては困る、と心の中で答える。そしてブルーは「またどこかで会いましょう」と別れを告げ振り向き、自らの旅を続けることにした。

 

「絶対に負けませんから……。」

 

リーリエは小さく呟き、手をギュッと握りしめる。次に会った時、どれほど強大な相手として立ち塞がるのか不明だが、それでもバトルでも……女の戦いでも負けられないと強く誓う。そしてシンジと共に、次なる目的地へと旅を続けるのだった。




ブルーとブルーとかややこしい……。いや、書いたのは自分だけどさ。

と言うわけでライバル対決はリーリエが制しました。とは言え最初はいつも通りどういう展開にするか全く考えてなかったんですけどね。最近では他の小説でも見ながら勉強(?)して書いていますけども。勉強と言う単語が最も嫌いですけどね(^^;

そろそろもしかしたらアニポケコラボ回を挟むかもしれません。結局一周年まで待てなかったよ……。でもほしぐもちゃん回なら既に終わってるから問題ないしね。本編時系列はむっちゃ飛びますが、まあ本編のネタバレは挟みません。……タブンネ

一応外伝回は本編ストーリーを細かく考慮はしていません。劇場版のパラレルみたいなものだと思って下さい。本当に外伝を挟むかは……2%程度の確率で書きます(弱気

ではまた次回ノシ


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乗船!豪華客船、サント・アンヌ号!

クチバシティでは欠かせないサント・アンヌ号回です。初め書いた話もありましたが、なんか違うなと思い書きなおしたのは内緒です。

初めに言っておきますが沈没はしません。


ブルーとの別れを告げ、旅を続けていたシンジとリーリエ。

 

「シンジさん!見えてきましたよ!クチバシティです!」

 

そして目の前大きな見覚えのある町が徐々に近づいてきたのが分かり、リーリエは指を指した。そこはクチバシティ、橙色がイメージカラーの港町だ。リーリエがカントー地方で初めて足を踏み入れることとなった町でもあるため、少しばかり思い入れもあるのだろう。

 

二人はやっとたどり着いたクチバシティへと入る。カントー地方でも大きな街の一つであり、ヤマブキシティとも隣接しているだけあって充分と言えるほど街中が賑わっていた。

 

「まずはポケモンセンターに行こうか。ルザミーネさんにも連絡しておいた方が良いと思うし。」

「そうですね。それじゃあ行きましょうか。」

 

シンジの意見にリーリエも賛同し、二人はクチバシティのポケモンセンターに向かうことにした。ポケモンセンターにも人は多かったが、テレビ電話のスペースは空いていたためすんなりと使用することが出来た。

 

テレビ電話を起動させ、リーリエはルザミーネへと繋げる。テレビ電話の画面にルザミーネの姿が映り、互いの声も聞こえるようになった。

 

『あら、リーリエ。どうしたの?』

「お母さま!私たち今、クチバシティに到着しました!」

『そうなの、クチバシティに。』

 

クチバシティに到着したことを母親に嬉しそうに報告するリーリエ。ルザミーネも旅を楽しんでいる娘の姿を見て微笑む。自分の娘が自分の意志で旅を満喫し、成長していることに余程嬉しいのだろう。

 

『じゃあサント・アンヌ号に乗ってみたらどうかしら。』

「さんとあんぬごう?」

 

リーリエは聞きなれぬ単語に首を傾げる。その疑問に答えるように、ルザミーネは言葉を続けた。

 

『サント・アンヌ号はクチバシティのクチバ港に停泊してる豪華客船よ。普段は一般の人が乗ることは出来ないのだけど、今は一般人でも乗ることが出来るらしいの。』

 

リーリエはルザミーネの話を聞くと、サントアンヌ号に乗ってみたいと思った。豪華客船と聞けば誰でも一度は憧れるものだろう。リーリエがお嬢様育ちとは言っても、そのようなものに乗ったことは一度もない。

 

『出航はしないから安心していいわ。あくまで一般の公開乗船らしいから。』

「そうなんですね。シンジさんは乗ったことありますか?」

「ううん、僕も乗ったことはないよ。」

 

リーリエの言葉にシンジは首を横に振ってこたえる。流石に豪華客船と言うだけはあるため特別な機会がない限りは乗ることは出来ないのだろう。

 

「じゃあ折角だし乗ってみようか。こんな機会滅多にないし。」

「はい!」

 

どうやらリーリエはサント・アンヌ号に乗れることが余程うれしいようだ。リーリエの瞳は豪華客船に乗れると言うワクワクのためか、キラキラと輝いているようにも見える。

 

「と言うわけでお母様。私はサント・アンヌ号に乗ってみたいと思います。」

『そう。折角なんだから楽しんでらっしゃい。』

「はい!」

 

そう言いルザミーネは『また何かあったら連絡してちょうだい。』と言ってテレビ電話を切った。母親からの有益な情報に、リーリエは心躍らせながらシンジと共に港へと向かうことにした。当然ポケモンセンターでポケモンの回復をしてからではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがサント・アンヌ号……ですか。」

 

リーリエたちが港まで着くと、そこには立派で巨大な一隻の船が泊まっていた。船であるのにも関わらず、いくつもの窓が見え、客室が無数にあるのが見てわかる。外には豪華客船に乗ってみようと多くの人たちが並んでいた。リーリエたちもサント・アンヌ号に乗るために並ぶことにした。

 

「それにしても、想像以上に大きい船ですね。ビックリしました。」

「そうだね、ここまでデカいとは僕も思ってなかったよ。」

 

シンジも話には聞いていたが、実際に見たのは初めてであるためその大きさに驚いている様子だ。カントーを旅していた時も、当然このクチバを訪れはしたものの、普段は豪華客船らしく世界一周の旅へと出ていたため残念ながら当時目にすることは出来なかったのだ。

 

そしてシンジとリーリエがサント・アンヌ号の大きさに驚きながら話をしている間に列は進み、シンジたちもサント・アンヌ号に乗船することが出来た。しかし、乗船するとそこではさらに驚くべきことがあった。サント・アンヌ号の中は豪華客船と言うだけあり、廊下でさえも広く長いのだ。その左右には目が回るほど多くの扉があった。恐らくこの扉の殆どが客室だろう。更にはずらっと床を一面覆う様に赤いカーペットが敷かれていた。

 

「さあお客様、こちらへどうぞ。」

 

船員、俗にいうクルーが二人を案内する。黒のスーツに黒のネクタイ。襟も綺麗に畳んでおり、背筋も曲がっておらず流石は豪華客船のクルーだと思わせる接客ぶりに、二人は感心する。

 

「こちらがお客様のお部屋になります。」

 

「ではごゆっくり」と一言付け加え一礼したクルーは丁寧に扉を閉めて去っていった。最初から最後まで丁寧な対応を眺めた二人は、豪華客船の一室でくつろぐ様にベットに横になる。

 

「ベットも凄くふかふかです。ホントに豪華客船に乗ってるんですね。」

「うん、なんだか幸せな気分だよ。」

 

リーリエの言葉にシンジは相槌を打つ。そこで忘れないうちに確認しておこうと、乗船する際に貰ったパンフレットを確認するためにシンジは起き上がる。リーリエもシンジの横に座り一緒に内容を確認した。するとそこに書かれていた一つの項目が目に入った。

 

「ダンスパーティ?」

 

そこにはダンスパーティその概要が書かれていた。どうやらダンスパーティは大広間で行われるようだが、パンフレットにはダンスパーティの詳しい説明が書いてあった。

 

「ダンスパーティには男女二人一組で参加する事が条件です。それ以外の条件はございません。誰でも自由に参加できますので気軽にご参加ください。ダンスパーティ後は軽いサプライズもございます。衣装などはこちらでご用意させていただくため、お好きな衣装をお選びください。お食事もご用意しておりますのでどうかお楽しみください。」

 

シンジがそう読み上げると、リーリエはどこか緊張した様子を見せた。どうやら男女二人一組と言う部分に反応してしまったのだろう。少女にとってはペアと言う単語はそれだけ敏感に反応してしまう単語なのかもしれない。

 

「どうする?リーリエ?」

「は、はい!えっと……参加してみたいなって///」

 

シンジの言葉にリーリエは顔を赤くしながら慌てた様子でそう答える。シンジと一緒に参加してみたいと言う考えから咄嗟にそう答えてしまったが、自分はダンスには当然疎い。シンジと参加しては彼に迷惑が掛かってしまうのではないかと考えてしまうが、シンジはそんなことを一切考えずに参加することに同意した。

 

「僕もダンスは慣れてないけど、リーリエと一緒なら大丈夫な気がする。折角なんだから一緒に楽しもっか。」

「は、はい!」

 

シンジのその言葉にリーリエは安心したように返事をする。彼なりにリーリエの事を考えての発言だろう。見るからに彼女が緊張していたため、彼女を安心させるためにシンジがそう声を掛けたのである。豪華客船に乗ったのだから、折角の催しを楽しまなければ損と言うものである。

 

「もうすぐ始まるみたい。早速会場に行こうか!」

「はい!」

 

シンジはリーリエの手を取り、一緒に歩き出した。最初は顔を赤くしたリーリエだが、こんなに広い船の中で自分が迷子にでもなってしまえば一大事である。そうならないための配慮なのだろうと理解したリーリエは、彼の優しさに心の中で感謝したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが会場ですか?」

「そうみたいだね。」

 

二人が辿り着いたのは大きな大広間だった。天井には立派なシャンデリアが飾られており、隅の方には豪華な食事がずらりと並んでいる。まさに豪華客船で開かれるパーティそのものである。ここまでの再現をし、尚且つ端から端まで手入れが行き届いているのは、クルーの教育がいいのもあるだろうがその他にも余程稼いでいる証拠でもあるだろう。それだけVIPが集うようなところに立っているのは、なんだか落ち着かないものではあるが、それでも悪い気は不思議としなかった。

 

「お客様、ダンスパーティに参加されるのでしょうか?でしたら受付はこちらになります。」

 

受付の女性の方がこちらで受付をしてくださいとシンジたちを促す。シンジたちも女性の言う通りに受付を進めていく。

 

「はい、シンジ様とリーリエ様ですね。承りました。参加される方はこちらのカードをお持ちください。」

「これは……トランプ?」

 

女性から手渡されたカードは、一枚のトランプだった。シンジとリーリエにそれぞれ手渡され、表面を確認するが表には何も描かれていなかった。よく見ると、そのトランプには白いシールが貼られていてイラストが見えない様になっていたのだ。

 

「ダンスパーティに参加するために必要なチケットのようなものだと思って下さい。後で行われるサプライズに必要なものでもあるので、大切にお持ちください。」

「分かりました。」

 

女性の説明を聞き、シンジとリーリエはそう返事をする。

 

「衣装はあちらの部屋にご用意させていただいております。お好きな衣装を選んでご参加ください。」

 

女性の示した場所には扉があった。どうやら更衣室のようだ。二人は早速どんな衣装があるのか確認してみようと中へと入る。するとそこには数多くの衣装がずらりと掛けてあった。

 

「こ、こんなにあるんだ。」

「凄いですね。素敵な衣装ばかりで困ってしまいますが……。」

 

そのあまりの数に苦笑いを浮かべるしかない二人。そのどの衣装も高級感の溢れるもので、着るので少々戸惑ってしまう。しかし折角用意してくれたのに着ないのは失礼に値するため、遠慮しながらも着ることにした。汚したりしわをつくってしまっては問題なので丁寧に選んでいく。

 

「ど、どうしましょう。どれを選べばいいか悩んでしまいます。」

 

しかし、リーリエは数多くある衣装からどれを選べばいいのか悩んでしまう。素敵な衣装ばかりが並んでいるため、どれにも魅力を感じて選択肢を絞れずにいるのだ。それに彼女は普段自分の着る服を選んだことがなく、母親が選んだ服ばかりを着ていたため自分のセンスに自信が持てないでいる。そこでシンジがリーリエに一つの案を出す。

 

「じゃあ互いに互いの衣装をそれぞれ選ぶってのはどう?」

「えー!?わ、私の選んだものでいいのでしょうか……」

「うん、大丈夫だよ。リーリエの選んだ衣装なら絶対にいいやつだから。」

 

彼なりの気遣いなのだろうが、リーリエには悪意のないプレッシャーが圧し掛かる。しかしリーリエもシンジの期待と気持ちを裏切るわけには行かないと思い、シンジに着せる衣装を探すことにした。シンジも同じく、リーリエに似合いそうな衣装を探している。

 

「あれ?これ……」

 

するとリーリエは一つの衣装で目が留まった。シンジにならこの衣装は似合うのではないかと直感的に感じたのだ。自信があるわけではないが、それでも彼になら似合うと言う確信のようなものがどこか感じた。リーリエはこれにしようと決意し、その衣装を手に取った。シンジも、リーリエに似合いそうな衣装を見つけ、その衣装を手に取りリーリエと交換した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうでしょうか?」

 

シンジが選んだ衣装は、長めのスカートにヒラヒラのフリルがある純白のドレスだった。上半身も同じく白で短めの袖が少しふっくらと膨らんだ印象であり、まるでお姫様のようなイメージを抱かせる衣装だ。シンジ曰く、リーリエには白が似合うだろうし、高貴なイメージの服も似合うのではないかとのことだった。

 

「うん、凄い似合ってるよ!」

「あ、ありがとうございます。シンジさんもとても似合ってますよ。」

 

対してリーリエが選んだ衣装は青色を基調としたスーツだった。青色のスーツの上からは黒色のマントを羽織っている。シンジには青色は良く似合うだろうし、マントも似合うのではないだろうかと言う事だった。それにしてもマントまで用意しているとはかなり用意周到である。

 

「ありがとう。にしてもなんだか着慣れないね。」

「ホントですね。普段こういった服は着ないものですから。」

 

普通の人は普段この様な高貴な服を着ることはないだろう。正直に言ってしまえばこういった服は一般の人には少々苦しい。しかし、場には相応しい格好をするのと同じように、ここでは用意してくれた衣装を着用し、ダンスパーティとしてそれ相応の格好をするものだろう。

 

リーリエは人が集まってきたことに緊張し、辺りを見渡す。多くの人がいる中、一人際立って目立つ人物が立っていた。その人物は、洋風の衣装を着ているものの多いこの場には少々……と言うかかなり違和感の感じられる和風の衣装を着ていた。俗にいう着物と言うものだ。しかし、その女性はどこか落ち着いている様子で、遠目で見ても分かるくらいに美しい女性だった。例えるならば一輪の花だ。

 

リーリエがその女性に見惚れていると、その女性はリーリエの視線に気づいたのかゆっくりとこちらに近づいてくる。もしかしたら気分を害されたのかと思い緊張するが、その女性は次の瞬間にある人物の名を口にする。

 

「シンジさん、いらしてたんですね。」

「エリカさん!なぜここに?」

「招待状をいただいたのです。本来であれば私はこの様な人の多い場所に顔を出すことはないのですが、丁度ヤマブキシティに用事もあったのでついでに立ち寄ることにしました。」

 

その女性が口にした人物はシンジだった。どうやらシンジとこの女性は知り合いのようだ。状況がよく把握できないリーリエは、シンジにこの女性の事を尋ねる。

 

「えっと、シンジさん、この方は?」

「ああ、ごめんごめん。この人は……」

「それには及びませんよ。」

 

シンジが女性の事を紹介しようとすると、女性はそれを止め、自分で自己紹介しようと着物の裾を持ち丁寧に軽く頭を下げて挨拶する。その行動一つ一つが可憐で、女性であるリーリエでさえも見惚れてしまうものだった。

 

「お初にお目にかかります。私の名前はエリカと申します。タマムシジムのジムリーダーも務めさせていただいております。」

「……え?えー!?」

 

 

ジムリーダーと聞いてリーリエは驚く。エリカと名乗った女性の可憐な姿に見惚れていたため反応するのが少し遅れたが、それでもジムリーダーと聞けば当然誰でも驚くだろう。なんと言ったって彼女からはジムリーダーの威圧感と言うかそう言ったものが感じられないのだ。

 

「可愛らしい女の子ですね。シンジさんの彼女さんですか?」

「!?え、えっと///」

 

笑顔を崩さないまま直球でそんなことを言われてしまえばシンジも戸惑ってしまう。リーリエはジムリーダーと言う驚きが強かったためか、いつものような困惑した様子は見せていないが。

 

「ふふ、アローラ地方でチャンピオンになられた、と聞いていましたけど、中身は変わっていないのですね。なんだか安心しました。それでは、ダンスパーティの後に行われるサプライズを楽しみにしておりますね。」

 

そう一言だけ残し、エリカはその場を去っていった。どうやら彼女はサプライズの内容を知っているようだった。一体何をするのか気になるところだが、リーリエは彼女の言葉を聞いてそれどころではいられなかった。

 

「あっ!?だ、ダンスどうしましょう!?」

 

リーリエはダンスの経験が一切ない。勢い余ってダンスの参加を決めたものの、やはりぶっつけ本番は流石に無理があるのではないかと冷静になって考えてみる。そう思うと余計に緊張が溢れてきた。しかし、そんな彼女にシンジが安心させるように声を掛ける。

 

「大丈夫、僕に任せてくれれば何とかするから。」

 

シンジもダンスに関して経験があるわけではない。だが、肝心の相手が緊張して震えてしまっては踊れるものも踊れなくなってしまう。そのため先ずはリーリエの緊張を解くためにそう声を掛けた。リーリエもシンジの言葉に安心するように声を掛ける。

 

「あ、ありがとうございます、シンジさん。でもシンジさんにばかり頼ってはいられません!がんばリーリエです、私!」

 

リーリエはいつものように手をギュッと握り、自身を鼓舞するように気合を入れる。シンジもそんな彼女を見て、いつものこの調子なら大丈夫だろうと判断する。そしてその時、司会者からダンスパーティ開始の合図がされるのだった。




似た話をアニポケXY&Zで見た気がしますが気のせいです。……嘘ですごめんなさい。サプライズも同じですはい。

いつの話になるかは分かりませんが、本編がひと段落したら、もしかするとアローラ編を最初から最後まで一からリメイクするかもしれません。どうなるかは未定ですが(ヌシの気力が持てば)考えていますので期待せずに期待していてください。

ではではノシ


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華麗に舞え!ダンスパーティでタッグバトル!

はい、大体の予想通りバトルになります。ダンスの表現とか半分諦めかけているのであまり詳しくは書いてません。あくまで雰囲気をそれっぽく感じていただけたらいいな程度です。

因みに今回はエリカ様にも頑張っていただきます。エリカ様の口調は……と言うかジムリーダーたちの口調は全員気にしない方向でお願いします。


クチバシティに停泊している豪華客船、サント・アンヌ号にて開かれたダンスパーティ。皆思い思いに会場に流れる音楽に合わせて踊っている。しかし、そこでは一組だけひと際目立っていたペアがいた。多くの人たちの視線もそのペアに集まっていた。そのペアとは……。

 

「っと、リーリエ大丈夫?」

「は、はい、ありがとうございます。ダンスって難しいですね。」

 

そのペアとはシンジとリーリエの事だ。普通であればダンスの上手いペアが注目されるものだが、彼らは決してダンスが上手いわけではない。正直に言えばダンスのド素人レベルだ。しかし、皆が彼らを注目する理由は別にある。

 

「ゆっくりと慣れていけば大丈夫だよ。」

「は、はい!ありがとうございます。」

 

シンジがリーリエの手をとってテンポもタイミング彼女に合わせながらゆっくり丁寧に教えている。ここまでであれば彼がただ優しい人物と言うだけで終わるだろう。だが、他に注目する理由があるとすれば、彼らが着ている衣装が原因の一つであるだろう。

 

彼ら自身は気付いていないかもしれないが、この場にいるメンバーの中で数少ない若者だ。多くのものが中年者や高齢者で、豪華客船の気分を味わいたいと言う者たちが多く集まっている。しかし、彼らは着ている衣装がドレスとマントという事もあり、他者から見ればそれはまるで王子様とお姫様の様に見える。

 

特にリーリエは元々お嬢様育ちという事もあり、自然とその体に礼儀作法が身についている。それもあってかドレスを着てのダンスが気ごちないものの、どこか様になっている部分が見える。それにシンジは自然と気を遣い、彼女をエスコートしている。この二人の姿こそ、王子と姫と言う立場が似合うものはそうそういないだろう。しかし、彼らの姿を快く思っていない者の眼もこの会場に存在していた。

 

(わたくし)より目立つだなんて……不快ですわね。」

「しかしお嬢様、これはあくまでパーティですのでそこまで意気込まなくてもよろしいのでは?」

 

その人物は、高飛車なお嬢様口調の少女と、その人物の付き人だと思われる男性の二人だ。少女は長い髪を後ろに二か所縦ロールで巻いた金髪、そして赤く染まった衣装に同じく赤のリボンがスカートの端に並ぶように付けられたデザインをしたドレスを着用している。男性は黒髪に同じく黒いスーツと黒のネクタイ、中には対照的な白のシャツを着用した若い男性だ。恐らく、彼の口調やお嬢様と言う言葉使いからして、彼女の執事と言う線が妥当だろうか。そうだとすれば、彼のスーツも自前のものなのだろう。

 

とは言え、厳密に彼らの姿を快く思っていない者は少女だけなのだが。

 

「分かってないわね。私はここで注目を浴び、私の美しさを庶民に見せつけようと思っていたのよ。折角の私の素晴らしいダンスを見られる貴重なチャンスをあの二人は奪った。これは罪深き事ですわ。」

 

少女は冷静に語るが、彼女の言葉にはどこか恨みのような感情が込められているように感じる。どうやら彼女はシンジとリーリエ、特に自分と同性かつ注目を浴びているリーリエに対し嫉妬しているようだ。男性も自らが仕える主人の言葉に思わず小さくため息をつく。彼女の性格は重々承知しているのだろうが、やはり日々振り回されることもあるのだろう。彼の表情からは少し呆れたような様子が伺える。

 

彼女がリーリエに対して嫉妬の眼差しを向けていると、会場に流れていた音楽が止まり、ダンスをしていた者たちの動きも一斉に静止する。その後、皆の視線は司会者を務めている男性へと集まった。

 

「皆さま、ダンスパーティはお楽しみいただけましたでしょうか?それではこれより、サプライズイベントを開催したいと思います。」

 

司会者はそう言いながら、指をパチンと鳴らす。それと同時に天井から大きな白いスクリーンがゆっくりと降りてきた。そこには薄っすらと映像が映っており、徐々にその映像はハッキリとしたものが映ってきた。それは4枚のトランプの絵だった。

 

「これより皆様にお配りしたトランプの絵柄を確認していただきます。今、映像に映っているのは、4枚のトランプです。」

 

裏側を向けられていたトランプが司会者の言葉と同時に表に向けられる。しかし、それらには一切イラストが描かれておらず、真っ白な状態であった。まさにこの場にいる参加者全員に配られたトランプと同じ状態であった。しかし次の瞬間、映像に映っていたトランプの表紙が、貼ってあったシールが剥がれるように映し出された。そこには4種類のA(エース)の柄が映っていた。左からハート、ダイヤ、スペード、クローバーであった。

 

「ご覧の映像の様に、Aのカードを所持していた方々にポケモンバトルをしていただきたいと思います。ルールとしましては、映像の様にダイヤとハート、スペードとクローバーを持つ方がタッグを組んでいただき、お互いにペアとなって行うタッグバトルとさせていただきます。」

 

どうやら会場で行われるサプライズと言うのはタッグバトルの事のようだ。サント・アンヌ号ではポケモンバトルの催しをすることで、紳士淑女を喜ばせることが多いらしい。今回もそれらの再現をしての考えであろう。司会者の言葉通り、参加者全員同時にトランプの表紙に貼られていたシールを剥がした。シンジたちはと言うと……。

 

「あっ、これって……」

「どうしたの?リーリエ」

 

リーリエのつぶやきが気になったシンジは彼女の所持するトランプのイラストを確認する。するとそこには、トランプのハートが描かれていた。どうやらタッグバトルに選ばれた4人のうち1人はリーリエのようだ。

 

「シンジさんはどうだったんですか?」

「僕はJ(ジャック)のカードだったよ。残念ながら、今回は不参加だね。」

「そ、そうですか……」

 

リーリエは残念そうに呟く。シンジが一緒でなくて心細いのだろう。だが、逆に相手側に回らなくてよかったと心の中で安堵する。今の自分では到底彼に勝つことは不可能だし、何より彼と戦いたいとは思っていない。シンジは不安そうな表情を浮かべるリーリエに声を掛ける。

 

「リーリエなら大丈夫だよ。タッグパートナーや相手が誰であっても、ポケモンバトルを楽しむこと、ポケモンとパートナーの事を信頼することを忘れないでね。がんばリーリエ、だよ!」

「!?は、はい!ありがとうございます!がんばリーリエです、私!」

 

シンジから貰ったお守り代わりの言葉を胸に、リーリエは感じていた不安を一気に掻き消すことが出来た。一方、先ほどの少女たちはと言うと。

 

「ふーん。あの女はどうやらハートの当たりを引いたみたいですわね。」

「お嬢様はいかがでしたか?」

「私?私はこれよ。」

 

そう言って少女は人差し指と中指にトランプを挟み、男性にその表のイラストを確認させる。そこに描かれていたのはスペードのAであった。

 

「スペードのAは主役の証。そして主役はこの私。必ずあの女をぎゃふんと言わせてみせますわ!」

 

少女はこの場にいる全員に聞こえるような声で「おーほっほっほっほ!」と、高笑いをする。男性も自分の主人とは言え、これは流石に大丈夫なのかと不安が過る。最後に男性は「やれやれ」と呆れた声を、誰にも聞こえない声で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のサプライズタッグバトル。対戦相手には私、リーリエが選ばれてしまいました。残念ながらシンジさんが選ばれなかったため先ほどまでは不安を抱いていましたが、今はシンジさんが見て下さっている、それに元気を分けていただけたため不安を感じることはありませんでした。しかし私には気になることがあります。それは……

 

「何故私は対戦相手の方に睨まれているのでしょうか……。」

 

そう、私は今対戦相手として対峙している女性に睨まれているのです。正直理由は分かりません。恨みを買うような行為をした覚えもありませんし、自分の知らないところで何か気に障ることでもしてしまったのでしょうか。

 

「恐らくあなたに嫉妬しているのでしょう。」

 

私が目の前の少女について考えていると、隣には見覚えのある女性が現れました。確かこの人は……。

 

「エリカさん……でよかったですよね?」

「ええ、あなたのような可愛い女の子に覚えていただけて光栄です。」

「そ、そんな、可愛いだなんて///」

 

エリカさんに真っ直ぐな眼で可愛いと言われて思わず照れてしまいました。自分ではよく分かりませんが、エリカさんのような綺麗な方にそう言われれば嫌な気はしません。寧ろ嬉しいです。そ、それよりももっと重要なことがあるのを忘れてました。

 

「私に嫉妬、とはどういった意味でしょうか?」

「恐らく彼女は目立ちたがりのお嬢様。先ほどあなたとシンジさんが自分よりも目立っていたことをよく思っていないのでしょう。」

 

えっ!?私たち目立っていたのですか!?確かに私もダンスは全然上手くいかず、シンジさんに迷惑ばかりかけてましたが、決して目立っているつもりはありませんでした。で、でもそうと知ったら段々と顔が熱くなってきました。し、シンジさんにも後で謝りましょう……。

 

「ところでエリカさんは何故ここに?態々私にそのことを伝えるために来られたのですか?」

「あら、言ってませんでした?私があなたのパートナーです。」

「え?えー!?」

 

このことが一番驚いた事でした。私が言うのもなんですが、これからバトルする人の顔には見えなかったのです。勿論失礼な意味は一切込めていません。エリカさんは落ち着いていて、優雅な佇まいからはポケモンバトルをする印象が全く感じ取れないのです。ですが何故でしょうか。私は心の中で、エリカさんは凄く強いトレーナーなのではないかと思いました。

 

「あら?私ではご不満?」

「い、いえ!とんでもないです!寧ろ心強いです!」

「そう、良かった。」

 

エリカさんの言葉に私は慌てて修正をしました。エリカさんも私の言葉を聞いて、私に微笑みかけてくれた。その笑顔は眩しくて、この人の優しさが感じ取れる素晴らしいものでした。一方、お相手の方はと言うと……。

 

「余裕かましちゃって、本当に不快ですわね。絶対に勝って見せますわ。あなた!足を引っ張たりしたら承知しないわよ!」

「は、はい!」

 

どうやらお相手の方もやる気満々の様です。しかし、チームとしては全く纏まっていないように思えます。そんなチームワークで勝てる程、私たちは甘くありませんよ!

 

「それでは両者、ポケモンを!」

 

司会者の合図と同時に、相手の方が勢いよくモンスターボールを投げ自身のポケモンを繰り出しました。

 

「出番ですわ!ペルシアンちゃん!」

『ニャー!』

 

女性の方が繰り出したのはペルシアンさんでした。ペルシアンさんはアローラ地方で見たことはありますが、やっぱり姿が全く違いますね。どちらかと言えばこちらのペルシアンさんはスリムな体型が特徴的でしょうか。

 

「行け!ピジョン!」

『ピジョー!』

 

続いて女性の方のパートナーである男性が繰り出したのはピジョンさんでした。ピジョンさんはカントー地方でよく見かけることのできるポッポさんの進化形です。道中にも群れで飛んでいるところを見かけたことが何度かあるので知っています。その後、今度はエリカさんがモンスターボールを手に取り、優雅な姿のまま繰り出しました。

 

「では参ります。優雅に美しく、お願いします!モンジャラ!」

『モジャ』

 

エリカさんが繰り出したのはモンジャラさんでした。私は実物のモンジャラさんと出会うのは初めてであるため、ポケモン図鑑を確認する。

 

『モンジャラ、ツルじょうポケモン。体を覆うツルにより正体は確認できず今でも正体不明とされているポケモン。細かく動き続けるツルは戦う者の神経をかき乱す。』

 

「さあ、あなたのポケモンも見せて下さる?」

「は、はい!」

 

エリカさんの言葉に私は慌ててポケモン図鑑をしまい、自分のポケモンを繰り出そうとモンスターボールを手にします。パートナーであるエリカさんがモンジャラさんを出したのであれば、私はこの子を出したいと思います!

 

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

私が選んだのはフシギソウさんです。相手にはひこうタイプであるピジョンさんがいるため、こおりタイプであるシロンが一番適切かもしれません。ですが、何故だかエリカさんの前ではくさタイプであるフシギソウさんを繰り出すのが良いのではないかと私はどこかで感じました。

 

「それでは、バトルお願いします!」

 

司会者の言葉と同時にバトルが開始されました。初めに動き出したのは対戦相手の女性の方でした。

 

「私から行かせてもらいますわ!スピードスター!」

 

ペルシアンさんは女性の指示に合わせてスピードスターを一斉に放ちました。チームワークを感じることは出来ませんでしたが、どうやら彼女の実力は本物の様です。それだけそのスピードスターは鋭く素早いものです。ですが私も負けません!

 

「走って躱してください!」

 

フシギソウさんは私の指示に従い、正面に走りながらスピードスターを躱していきます。スピードスターを躱しきったことにより、私はチャンスだと感じフシギソウさんに攻撃の指示を出しました。

 

「そのままペルシアンさんにとっしんです!」

 

助走をつけ勢いをつけたまま、フシギソウさんはペルシアンさんに向かって一直線に文字通りのとっしんをしていきます。しかし、そう簡単に上手くいくわけには行きませんでした。

 

「ピジョン!かぜおこし!」

 

相方であるピジョンさんはかぜおこしでペルシアンさんの壁になる様にフシギソウさんに立ち向かってきました。かぜおこしはひこうタイプであり、フシギソウさんはくさタイプ。それに加えピジョンさんのかぜおこしはかなり強力なものでした。フシギソウさんの勢いも殺されてしまい、そのまま押し負けてしまいます。

 

「へえ、やるじゃない。見直しましてよ。」

「大丈夫ですか!?」

『ソウソウ!』

 

フシギソウさんはなんとか受け身をとり、私の方をチラッと見て頷いて答えました。どうやらまだまだ大宇丈夫なようです。すると、そこでエリカさんが一歩前に出ました。

 

「ここは私に任せてください。」

 

エリカさんは私にそう一言いいました。しかし、相手は強力なかぜおこしによる壁、ペルシアンさんのテクニカルな攻撃が厄介です。この壁をどう崩そうと言うのか、私はエリカさんの考えが気になりました。しかし、その後のエリカさんの行動は中々驚くものでした。

 

「モンジャラ!はたきおとすです!」

 

モンジャラさんは自分の体のツルを一本伸ばし、ピジョン目掛けて伸びていきました。その攻撃は力強く、ピジョンのかぜおこしすら物ともせずにピジョンさんを叩き落としてしまいました。優雅かと思えば一変、力強い戦いに私は驚きました。

 

「続いてしびれごな!」

 

ふさっと黄色いしびれごなをピジョンさんの上空にふりかける。その粉を浴びてしまったピジョンさんは体中が痺れてしまい、上手く動けない状態となってしまいました。

 

「チッ、これ以上好きにはさせませんわ。モンジャラにシャドーボールですわ!」

 

妨害しようとシャドーボールをモンジャラさんに向かい放ったペルシアンさん。私も助けられてばかりではいけないと思い、今度は私が動き出しました。

 

「はっぱカッターで援護です!」

 

フシギソウさんのはっぱカッターがシャドーボールを相殺することに成功しました。しかし、エリカさんは終始笑顔を崩そうとはしません。なんだか私がどう動くのかを分かっていたかのような笑みです。

 

「モンジャラ、私たちのステージに招待しましょう。グラスフィールド!」

 

モンジャラさんが発動したのはグラスフィールド。辺りには草が生い茂り、一面緑色に染まりました。私の記憶が正しければ、これはくさタイプに有利なフィールドだったはずです。

 

「何が来ようと関係ないわ!シャドーボール!」

「もう一度はっぱカッターです!」

 

シャドーボールに向かい再びはっぱカッターで迎え撃ちました。すると、今度は相殺ではなくシャドーボールを打ち破り貫通するようにあっさりとペルシアンさんに命中しました。どうやらグラスフィールドの効果でくさタイプの技の威力が上がっているようです。目に見えて分かる変化に、私は驚きました。

 

はっぱカッターの命中したペルシアンさんは、そのまま後方に吹き飛ばされ、痺れて動けない状態のピジョンさんもろとも場外まで飛ばされました。その後、2匹は同時に戦闘不能となってしまいました。

 

「ピジョン!ペルシアン!共に戦闘不能!勝負あり!」

 

「やった!勝ちました!」

 

私は勝てたことに素直に喜びその場で飛びはねました。それと同時に、流石はジムリーダーだとエリカさんの戦術に感心しました。攻撃に専念するのではなく、パートナーの事も考えサポートにも徹する。大事なことを学べた気がしました。

 

「ぺ、ペルシアンちゃん!?くっ、お、覚えてなさいよ!」

 

対戦相手の方はすぐにペルシアンさんを戻しその場を走り去っていきました。スーツを着た恐らくはあの人のお付きの方だと思われる男性もゆっくりと呆れたように彼女の後を追っていきました。相方をしていた男性の方は置いて行かれたように呆然としていますが……。

 

「お疲れ様、いいバトルだったよ。」

「シンジさん!ありがとうございます!」

 

シンジさんが後ろから私に声を掛けてくださいました。その言葉に私は素直に感謝しました。憧れでありチャンピオンでもあるシンジさんに褒められれば私も嬉しいです。その後、エリカさんも声を掛けてくださいました。

 

「あなたのフシギソウ、とっても良く育てられているみたいね。」

「ありがとうございます、エリカさん!」

 

エリカさんの言葉に、私は続けて感謝の言葉を伝えました。するとその後、シンジさんともエリカさんとも違う人の声が私たちの耳に入りました。

 

「オウ、今のは素晴らしいバトルだったネ!」

 

その声の正体は男性のものでした。しかしその男性はとても大柄な人で、迷彩柄の軍服に、金色の髪をした短髪、黒のサングラスと言ったこの場にそぐわない格好をしていた。ガタイもよく、まるで軍人のような印象を持たせる人でした。

 

「マチスさん、来てたんですね。」

「ボーイ!久しぶりですネ!元気にしてましたカ?」

「そろそろボーイって呼ぶのやめてもらえませんか?もう子供じゃないんですよ?」

「ハハハ、ミーにとってはユーはいつでもボーイだヨ!」

 

シンジさんは苦笑いを浮かべながら男性と会話しています。エリカさんの時と状況が似ていますが、この人の事をシンジさんに尋ねることにしました。

 

「シンジさん、この方は?」

「ああ、この人はマチスさん。このクチバシティのジムリーダだよ。」

「えー!?そうなんですか!?」

 

今日何度目になるか分からない驚きの声を私はまたあげてしまいました。今日は驚くことの連続で疲れてしまいます。

 

「ミーがこのクチバのジムリーダー、マチス!ユーの戦いぶりはさっき見せて貰ったヨ!ユーもモチロンジム巡りをしていますネ?全力でバトルをするので、ユーも全力でかかってきてクダサーイ!」

 

サングラスを外しながらそう告げたマチスさんは、振り返りこの場を後にしました。マチスさんは強い、そう言った雰囲気を感じさせながら。

 

「じゃあ折角だし私も見学させていただいてもよろしいですか?リーリエさんの戦いぶり、興味あるんです。」

「は、はい。別に構わないですよ。」

 

私はシンジさん以外の人が見学すると聞いて緊張しましたが、それでもシンジさんの言葉を思い出し、いつもの自分を出し切ろうと、悔いのない戦いをしようと決意を固めました。マチスさんは強敵です。見るだけでそう感じさせます。ですが、私は絶対に負けません!明日もがんばリーリエです!

 

そう言って、私は明日のジム戦に向けて気合を入れなおし、明日に備えることにしました。




次回はマチス戦になります。折角ですのでエリカ様にはもう少しだけ出演していただきます。なんだかんだ言って話には絡ませやすいのでいいかなと。

と言うわけで次回はクチバジム戦になります。今週はモンハンFのアプデでセルレギオスが追加されるためそちらを楽しんできますが、次話は投稿する予定です。ヌシもがんばリーリエです!(野太い声)

ではではまた次回会いましょうノシ


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VSクチバジム!熱き電撃バトル!

クチバジム戦です。昨日の夜中に必死こいて考えながら書いたので眠気MAXです。なんとか二時間前に予約投稿が間に合ったので良かったです。

なにはともあれ結構長い話になったので楽しめるのであれば幸いです。流石にジム戦で2話使うわけにも行かないのでね(^^;


前日はサント・アンヌ号にてダンスパーティを満喫したシンジとリーリエ。そして今日は、クチバジムでの激しいバトルが待ち受けていた。

 

「待っていたヨ。ユーとユーのポケモンたちをネ!」

 

クチバジムのバトルフィールドにてリーリエとクチバのジムリーダー、マチスが向かい合う。マチスの自然と放つプレッシャーに圧し潰されそうになるリーリエだが、負けるわけには行かないと意思を強く持ち耐える。シンジもルリリを抱えてエリカと共にリーリエの様子を見守っている。

 

「シンジさん。リーリエさんの事どう思います?」

「リーリエなら大丈夫ですよ。リーリエもここまでで色んな経験を積んでいます。それを忘れなければ、決して負けることはないでしょう」

 

その言葉を聞いたエリカは、余程彼女の事を信頼しているのだと心から感じることが出来た。しかしその反面、彼女がなんだか羨ましいと感じてしまう自分もいた。こんな感情を抱くのは、エリカ自身初めての事だった。何故そう思ってしまうのかは自分自身でも理解できていないが。

 

「さあ、全力でかかってきてクダサーイ!」

「はい!絶対に負けません!」

 

二人の気合の入った一声を聞いた審判が定位置につき、いつもと同じようにジム戦のルールを説明する。

 

「ではこれより、ジムリーダーマチス対チャレンジャーリーリエによるジムバトルを開始します!使用ポケモンは……。」

「おっと、その必要はないヨ。」

 

審判が説明をしていると、その言葉をマチスが止めた。そしてマチスは、呆気にとられたような審判の代わりに簡単にルールを説明する。

 

「使用ポケモンはお互い2体、互いに戦闘不能になったらバトル終了ネ。それだけ説明すれば充分。ミーは早くバトルしたくてうずうずしてるからネ。早く始めまショウ!」

 

どうやらマチスはリーリエの戦いを見てから、彼女との戦える時を今か今かと待っていたようだ。リーリエも内心マチスと戦いたいと言う感情が少なからず感じていた。やはり自分もトレーナーとしての感情が芽生えてきたのだと実感した。

 

「ジムリーダーがそう言うのであれば。」

 

審判はどこか悲しげな声で渋々と言った様子で呟く。彼も数少ない出番をとられて少々不満があるのかもしれない。とは言え、ジム毎に別の審判が担当しているので彼の出番はここのジムだけなのだが……。

 

「ミーの一番手はこのポケモンデス!」

 

マチスが繰り出した一体目のポケモンは、レアコイルだった。レアコイルははがねタイプとでんきタイプを併せ持つポケモン。その機械的なレアコイルの声は人間にとっては少々聞き取りにくいものだった。

 

「マチスさんのポケモンはレアコイルさんですか。」

 

リーリエはポケモン図鑑をだし、レアコイルの詳細を確認する。レアコイル、及びその進化前のコイルは生息地が限られているためカントー地方でも中々見ることのできない貴重なポケモンだ。それに、相手のポケモンの特徴を詳しく知っておけば、僅かでも勝利につながる可能性は出てくる。

 

『レアコイル、じしゃくポケモン。コイルの進化形。三匹のコイルが連結して出来たポケモン。進化前に比べ、レアコイルの電撃はより強力になっている。』

 

「レアコイルははがね・でんきタイプのはずです。恐らくマチスさんはでんきタイプの使い手でしょう。」

 

ジムリーダーは大体一つのタイプのポケモンに精通したエキスパートが大半である。そのため、マチスも同じく一つのタイプを使ってくるのは間違いないはず。それとカントー地方でははがねタイプのポケモンジムが存在すると言う情報は現状リーリエも聞いたことはない。その点も考慮し、リーリエはマチスがでんきタイプの使い手だろうと推測する。

 

リーリエの呟きが聞こえたのか、マチスはニヤリと小さく口角を上げる。サングラスをしているため表情は読めないが、彼がでんきタイプと言う存在に思い入れがあるという事が伺える。

 

「ならばここは、フシギソウさん!お願いします!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが最初に選んだポケモンはフシギソウだった。はがねタイプを持つレアコイルにくさ・どくタイプのフシギソウは相性的に考えても不利だが、それ以上にこおりタイプのシロンは余計に相性が悪い。故に後続の事を考え、先発としてフシギソウを繰り出すのが最も妥当ではないかとリーリエは考えた。

 

「あの時のフシギソウですネ?これは楽しみになってきたヨ!」

「それでは試合開始!」

 

二人がポケモンを繰り出したことを確認した審判は、試合開始の合図を出す。初めに動いたのは予想外にもマチスだった。

 

「こちらから行かせてもらうヨ!レアコイル!ソニックブーム!」

 

レアコイルは自分の周囲に付いている6つの磁石から衝撃波、ソニックブームをフシギソウに放つ。鋭く素早いスピードで対象を的確にとらえるが、フシギソウとリーリエはその攻撃を冷静に対応する。

 

「はっぱカッターで迎え撃ってください。」

 

フシギソウの放ったはっぱカッターがソニックブームと正面からぶつかり合い、その衝撃は中央で爆発し大きな煙となった。まえが見えない状態で互いに手が出せない……と思いきや、その中でもレアコイルは問題なく動いた。

 

「レアコイル!続いてマグネットボム!」

 

指をパチンと鳴らしながらマチスはレアコイルにマグネットボムの指示を出した。レアコイルの放った鋼鉄の爆弾は、まるでフシギソウに吸い付くように接近し、フシギソウを襲った。煙で前が見えず何が起こったのか分からなかったリーリエは、慌てた様子でフシギソウに声を掛けた。

 

「フシギソウさん!?大丈夫ですか?」

『ソウ!』

 

フシギソウは飛ばされながらも立ち上がり、リーリエに一声返答した。その様子から見るに、ダメージとしては大きなものではなかったのだろう。だが、確実にダメージを貰ったのは事実である。

 

「どうですカ?ミーの自慢のポケモンの技は?」

 

マチスのその言葉にリーリエは、流石自慢のポケモンと言うだけはあると感心する。今正面に立っているのはジムリーダーとその自慢のポケモンたち。その相手に一切の油断は禁物だと改めて気を引き締める。

 

「マグネットボム。あれは威力こそ高くはないけど、非常に命中率の高い厄介な技ですね。」

「ええ。それをどう対処していくか。それが今回の戦いの鍵になりそうですね。」

 

シンジとエリカはそう考え、再びリーリエの動向を見守る。リーリエもマグネットボムの対処法を必死に考えながら、バトルを継続する。

 

「さあ、どこからでも遠慮なくドウゾ!」

 

今度はマチスが受けの態勢をとるようだ。ジムリーダーの余裕だろうか。それともリーリエの実力を見たいがためなのか。彼の性格からして恐らく後者だが、リーリエはその誘いに乗る様にフシギソウに指示を出す。

 

「なら遠慮なく行きます!とっしんです!」

 

フシギソウは勢いよくレアコイルに突進していく。その力強い突進に感心しながら、マチスはレアコイルに迎え撃つよう指示を出す。

 

「ソニックブーム!」

 

レアコイルの放つソニックブームの雨がフシギソウに襲い掛かる。フシギソウはソニックブームの嵐を避け続けながらレアコイルに接近する。しかしレアコイルの攻撃はフシギソウを的確に狙っているようには不思議と感じられない。

 

フシギソウはソニックブームを躱し続け、レアコイルの目の前まで接近してきた。しかし……

 

「今デス!マグネットボム!」

 

目の前まで接近したフシギソウをマグネットボムで迎撃したレアコイル。マチスはソニックブームにより気を引かせ、本命であるマグネットボムが確実に当たるように誘導したのだ。これもマチスが考案した作戦。彼自身は元軍人であるため、そう言った相手を罠に誘う戦術には長けているのだろう。

 

「フシギソウさん!?」

 

先ほどよりもダメージが大きいのか、フシギソウは足元が少しふらついている。だがその状況でも、マチスの手が緩むことはなかった。

 

「最後はミーの大好きな技でフィニッシュと行きマス!10まんボルト!」

 

レアコイルの放った強力な10まんボルトにフシギソウは成すすべもなく直撃。10まんボルトにより舞い上がった煙が晴れたところでは、フシギソウが崩れるように倒れ、戦闘不能になっていた。

 

「フシギソウさん!?」

「フシギソウ、戦闘不能!レアコイルの勝ち!」

 

無情にも、審判のコールがジム内に響く。リーリエは戦闘不能になったフシギソウに近づき、彼の目の前で屈んだ。

 

『ソウ……』

「大丈夫ですよ。ありがとうございました。後は任せて、ゆっくり休んでください。」

 

フシギソウは申し訳なさそうに謝るが、リーリエは咎めることなくフシギソウをモンスターボールへと戻す。彼女の言葉は情けなどではなく、心の底から本心で感謝しているのだろう。それだけ彼女は自分のポケモンが大好きなのだ。フシギソウもそんなトレーナーの思いに答えることが出来ずに悔しい思いをしているのだろう。

 

「いいポケモンデシタ。だがミーのポケモンには一歩及ばなかったようですネ。次はどんなポケモンを見せてくれるのデスカ?」

 

マチスの言葉に、リーリエは自分が崖っぷちに追いやられるほどピンチなのだと実感する。マチスはレアコイル一体しか見せていない。その上傷を負わすことが出来なかった。対してリーリエは残りはシロンのみ。意を決してようにモンスターボールを握り覚悟を決める。リーリエの緊張が届いたのか、その時シロンの入ったボールが少し揺れる。彼女の緊張を解こうと言う気持ちの表れだろう。

 

「リーリエの残りはシロンのみ。この状況からどう巻き返すか。」

「押し返すか、それともこのまま押されるか。ここからが彼女の覚悟が試されるとき、ですね。」

『ルリ!』

 

シンジとエリカに見守られながら、ルリリの声援を受けながら、シロンの励ましを貰いながら、彼女は最後のポケモンにすべてを託した。

 

「この思い、あなたに託します!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエの投げたボールからシロンが勢いよく飛び出した。その姿を見たマチスが、大いに感銘を受けている様子だった。

 

「オー、これがユーのパートナーデスカ。白いロコンとは珍しい。ユーの最後の輝き、ミーに見せてクダサイ!マグネットボム!」

 

マチスは早速マグネットボムで先制攻撃を仕掛ける。はがねタイプのマグネットボムは、こおりタイプのシロンには効果抜群だ。安易に喰らっては致命傷となってしまうだろう。しかし、先ほどの攻防でリーリエは何かを掴んだのか、慌てる様子は見せなかった。

 

「シロン!こなゆき!」

 

シロンのこなゆきによりマグネットボムは次々と凍りつき、床のポロポロと零れるようにして落ちていく。そう何度も上手くは決まらないかと、マチスは割り切るように攻めることをやめない。

 

「ソニックブーム!」

 

再び嵐のようにソニックブームを降り注ぐレアコイル。しかし、今度は牽制などではなく、的確にシロンを捕らえるように攻撃している。

 

「ジャンプして躱してください!」

 

シロンはレアコイルのソニックブームを高くジャンプすることによって躱す。そのシロンの跳躍力を見たマチスは、感心するように見惚れていた。

 

「こおりのつぶてです!」

 

シロンはそのまま鋭いこおりのつぶてをレアコイルに向け放つ。そのこおりのつぶては綺麗な軌道を描き、レアコイルに直撃した。レアコイルはそのまま地面に叩きつけられるが、それでもまだ戦闘不能には至らないようで再び浮かび上がるが、確実にダメージを負っているレアコイルに対しシロンは怒涛の追い打ちを浴びせるのだった。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

シロンは地面に着地したと同時に、こなゆきをレアコイルに浴びせる。レアコイルは先ほどのダメージにより傷を負ってしまい行動が遅れしまって回避することが出来なかった。

 

「オウ!?レアコイル!」

 

レアコイルはこなゆきにより目を回しながら氷漬けになり、実質的な戦闘不能となったのだ。それを見た審判は戦闘不能とみなし、戦闘不能のコールをした。

 

「レアコイル、戦闘不能!ロコンの勝ち!」

 

氷漬けになってしまったレアコイルをモンスターボールへと戻し、マチスはレアコイルの感謝の意を示す。そしてレアコイルのモンスターボールを懐にしまい、次に取り出したのは自らのエースポケモン、相棒とも言えるポケモンの入ったモンスターボールだった。

 

「シロン、来ますよ。気を引き締めてください。」

『コォン!』

 

リーリエの言葉にシロンも元気よく返事を返す。恐らくリーリエだけでなく、シロンもマチスの持つエースはレベルが高いという事を感じ取っているのだろう。

 

「レアコイルはなんとか倒せたけど、次に待っているのはマチスさんのエース。」

「ええ、とても強力なポケモンです。ダメージはなかったものの……」

「はい、スタミナの消費は当然しているので、どちらかと言うとまだリーリエの不利、と言った状況でしょうね。」

『リルル……』

 

ルリリも少し不安そうな表情を浮かべる。心の中でリーリエに勝ってほしいと願う。ルリリはもう彼女の負ける姿は見たくないのだろう。だが、それと同時にもう一つの感情がルリリの中で渦巻いていたのだった。

 

「ゴー!マイフェイバリット、ライチュウ!」

『ライラーイ!』

 

マチスが繰り出したのはライチュウだった。一見カントー地方で有名なポケモン、ピカチュウにそっくりだが、ピカチュウよりも一回り大きく、体の色もオレンジ色となっている。そのライチュウが放つ風格に戸惑いながらも、リーリエはポケモン図鑑を取り出してライチュウの詳細を確認する。

 

『ライチュウ、ねずみポケモン。ピカチュウの進化形。頬の電気袋には膨大な電気が溜まっており、溜まりすぎると尻尾から地面へと電気を逃がす。その電撃は強力で、インド象すらも気絶してしまうほどである。』

 

最後の説明が少し気になりながらも、リーリエはポケモン図鑑をしまう。リーリエが見たことのあるライチュウはアローラの姿だけであり、通常のカントーに生息しているライチュウを実際に見たのは初めてである。アローラのライチュウはでんき・エスパーと少し変わったタイプであったが、こちらのライチュウはでんきタイプのみ。どう攻めてくるのかと頭を悩ませていると、ライチュウから動き始めたのだった。

 

「来ないならミーから行きますヨ!ライチュウ!10まんボルト!」

 

早速マチスが大好きだと称する10まんボルトで先制攻撃をしてくる。積極的な攻撃にリーリエは戸惑いながらも、慌てて反撃の指示を出した。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

こなゆきにより10まんボルトに対して反撃するも、こなゆきはあっさりと掻き消されてしまい10まんボルトが地面を貫くように接近し、シロンに直撃してしまう。レアコイルとは攻撃力が桁外れであり、その攻撃はフィールドの地面を割ってしまうほどであった。

 

「シロン!?まだ立てますか!?」

『コォン!』

 

リーリエの言葉にシロンは大丈夫だと言った様子で立ち上がる。まだまだこれからだという事なのだろう。その不屈の闘志に、マチスは再び感銘を受けていた。

 

「流石はユーのパートナー、諦めることを知らないその心意気に、ミーは感心していマス!しかしバトルはバトル、全力で叩き潰してあげマス!ライチュウ、かみなりパンチ!」

 

ライチュウは拳に電撃を纏い、シロンにそのまま勢いよく振り下ろす。ライチュウはパワーだけでなく、スピードもかなりのものだったが、シロンはふらつきながらも横にステップすることで回避する。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

ライチュウのかみなりパンチは空を切り、地面に突き刺さった。そのライチュウの姿を見てチャンスだと感じたリーリエは、こおりのつぶてで確実にダメージを与えようとする。しかし、次にライチュウがとった行動は予想外のものだった。

 

「あなをほる!」

 

完全に隙があったように思えたが、それは間違いだった。ライチュウはこおりのつぶてが当たる直前に、その立派な尻尾を回転させ、文字通り穴を掘り地中の中へと姿を消したのだ。戸惑ったリーリエとシロンは、対処が間に合わずにしたから飛び出してくるライチュウに飛ばされてしまった。

 

「!?シロン!」

 

心配のあまりシロンの名を呼ぶリーリエだが、シロンは返事を返す元気は残っていないようだ。幸いにもまだ戦闘不能にはなっていないが、それでも致命傷を受けたことに変わりはない。

 

「もうそろそろ終わりデスカネ。」

 

マチスは小さくそう呟く。その呟きは誰にも聞こえていないが、リーリエはもうダメなのだろうか、と半分諦めかけた。またあの時の悔しい思いをしてしまうのか?そんな過去の後悔が頭を過る。その時、目の前で立ち上がるシロンの姿が目に入った。

 

「シロン?」

 

シロンは返事こそできないが、それでも振り向きチラッと自分の顔をリーリエに見せる。その顔を見たリーリエは、シロンはまだ諦めていないのだという事に気付かされる。

 

「……そうですよね。シロンが諦めていないのに、私が諦めたらダメですよね。」

 

また同じ過ちを繰り返してしまうところだった、と思いとどまったリーリエは、再び戦う意思を表す。シンジ、エリカ、ルリリの3人も黙って2人の戦う姿を見守っている。

 

「まだ諦めていないのデスカ?では、遠慮なく終わらせマス!ミーの大好きな技でネ!ライチュウ!10まんボルト!」

 

ライチュウは10まんボルトをシロン目掛けて放つ。やはりその攻撃はとても強力で、まともに喰らえば次はないだろう。しかし、シロンにもう回避出来る程の体力は残されていない。ならば、残された手は一つしかないと、リーリエはシロンに最後になるかもしれない指示を出した。

 

「シロン!こなゆき!」

 

シロンにこなゆきの指示を出す。先ほどは全く効果がなく、体力が少なくなっている今では先ほどよりも威力が落ちてしまうだろう。それでも、今はこれしか打てる手はないとリーリエは判断したのだ。しかし、シロンが放ったのはこなゆきでも、こおりのつぶてでもなかった。もっと違う、強力なものだったのだ。

 

『コォォォォォン!』

 

シロンはその変化した技を勢いよく放った。その攻撃はライチュウの10まんボルトを破り、ライチュウに直撃したのだった。驚きのあまり、マチスは「オーマイガー!」と叫ぶが、それよりもリーリエはシロンが自分の知らない技を放ったことに驚いたのだ。

 

「あれはオーロラビーム!」

「こおりタイプの技の一つ、ですね。この土壇場で新しい技を会得するなんて。」

『リルリル!』

 

流石だとエリカは呟く。ルリリもどこか嬉しそうに喜んでいるようだ。

 

「虹色の輝き……オーロラビーム……シロン!新しい技を覚えたのですね!?」

『コォン!』

 

リーリエの驚きと喜びが混じった声に、シロンは笑顔で答える。自分も新しい技を習得したことで元気と自信を取り戻すことが出来たようだ。オーロラビームが直撃したライチュウはゆっくりと立ち上がり、まだ戦えるといった顔をしている。まだ戦いは終わっていないと、シロンもライチュウの方へと振り向く。

 

「新しい技に驚きはしましたガ、それでもミーとライチュウの方が上デス!でんこうせっか!」

 

ライチュウは素早いでんこうせっかでシロンに接近する。シロンはそんなライチュウに反撃するように攻撃を加える。

 

「こおりのつぶてで迎え撃ってください!」

 

ライチュウはとても素早く、すぐにシロンの目の前まで移動するが、その場で放ったこおりのつぶてがライチュウに命中し、目の前で起こった衝撃により互いの体は後退する。それに互いのダメージはどちらも大きく、互いに倒れそうになるも必死にこらえる。

 

「やはりこの技でケリをつけるしかないデスネ。ライチュウ!10まんボルト!」

 

ライチュウの10まんボルトが再びシロンに接近する。リーリエも予想していた通り、やはり10まんボルトで来たか感じ取る。ならばこちらも逃げるわけには行かないと最後の攻撃に自分の思いの丈を込めた。

 

「私たちも全力です!シロン!オーロラビームです!」

 

ライチュウは10まんボルト、シロンはオーロラビームと、互いの最高の技がぶつかり合い、中央で激しく交差する。どちらも一歩も引かず、力は拮抗していた。しかし、一瞬、ほんの一瞬だけだが、ライチュウの膝が若干崩れてしまった。観察力に長けているリーリエはその動きを見逃さず、「今です!」とシロンに一声かける。それを合図に、シロンは更に力を込めてオーロラビームの威力を上げる。

 

すると拮抗していた戦いは終止符を打つように、10まんボルトが破られオーロラビームがライチュウに直撃する。

 

「ラ、ライチュウ!?」

 

煙が晴れると、ライチュウは目を回してその場で倒れていた。そして激しかった試合の終了のコールが今、審判の口から宣言された。

 

「ライチュウ、戦闘不能!ロコンの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

 

「かっ……た?やった!勝ちました!」

『コォン!』

 

信じられない、と言った様子でリーリエは喜びを露にする。シロンもリーリエと一緒に今回の勝利を喜ぶ。マチスは頑張ってくれたライチュウの元に歩み寄り、声を掛けた。

 

「ライチュウ、ナイスファイトだった。サンキュー。」

『ライ……ライ』

ライチュウにそう声を掛けると、ライチュウも嬉しそうに微笑んだ。敗北と言う結果に終わってしまったが、自分の大好きなトレーナー、信頼するトレーナーに褒めてもらえて嬉しいのだろう。マチスはモンスターボールへとライチュウを戻し、リーリエの元へと近付く。

 

「ユーとユーのポケモン、ナイスファイトだった。おかげでミーも熱いバトルが出来たヨ。」

「マチスさん……」

 

マチスは審判が差し出したクチバジムのジムバッジを受け取り、それをリーリエに差し出す。そのバッジオレンジ色をしており、まるで太陽のようなデザインであった。

 

「これがクチバジムウィナーの証、オレンジバッジネ。」

「これがオレンジバッジ……ありがとうございます!」

 

マチスからオレンジバッジを受け取ったリーリエは、余程接戦を戦い抜き勝利を手にしたのが嬉しかったのだろう。そのオレンジバッジを空にかざすように掲げてシロンと共に今の喜びを示す。

 

「オレンジバッジ、ゲットです!」

『コォン!』

 

オレンジバッジを手にし喜ぶリーリエとシロンと同時に、フシギソウの入ったモンスターボールも揺れる。悔しさもあるのだろうが、リーリエが勝利を手にできたことが余程うれしいのだろう。そんな彼女たちに、シンジたちも祝福しながら近づいた。

 

「おめでとう、リーリエ!」

「おめでとうございます、リーリエさん。」

『リルル!』

 

感動のあまり涙を流しながらリーリエの胸へと飛び込むルリリ。そんなルリリを受け止めながら、リーリエはシンジたちに感謝した。

 

「ありがとうございます!シンジさん!エリカさん!」

 

祝福を受け、素直に感謝するリーリエ。そこにマチスがリーリエにある事を尋ねたのだった。

 

「ところで、ガールは次のジムはどこにするか考えているのデスカ?」

「いえ、まだですけど……」

「なら次は、タマムシジム目指すといいデスネ。」

「えっ?それって……」

 

聞き覚えのあるジムの名前に、リーリエはエリカの方を振り向く。すると、エリカは微笑みながら彼女に声を掛けた。

 

「ええ、タマムシジムは私が担当させていただいているジムです。リーリエさん、貴女が来ることを楽しみにしていますね?」

 

エリカはそう言い残し、この場を立ち去って行った。昨日タッグを組んだリーリエには分かっているが、エリカは間違いなく強敵。そして彼女の手持ちはモンジャラであった。つまりは彼女はくさタイプの使い手。そこからどう対策を練るかも重要だ。

 

だが、今は勝利の余韻に浸りながら、シンジとの旅の続きを楽しもうと旅を続けるのであった。




いかがでしたか?マチスさんの喋り方すっごい難しかったのはいい思い出。途中途中ミーやらユーやらと言わせるつもりがあなたになってたりと不安定だったのは内緒。誤字で残っていることはない……はず。ないと信じたい!(願望

と言うわけで唐突ですが、明日は名古屋にて吉本を見てきます。実はヌシは吉本新喜劇の大ファンでして、毎週録画して見るぐらいには大好きです。出演者の8割は名前覚えてますし、名古屋に来ると聞いてチケットを入手していました。これが楽しみすぎて毎日過ごしてきたので、満喫してきますね(`・ω・´)ゞ

ではでは次回お会いしましょうノシ


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ルリリとイーブイ、小さな2人の冒険!

今回は珍しく(?)ポケモン視点多めの話です。ポケモンの小説なのにポケモン視点が珍しいとはこれ如何に……。

そう言えば皆さんはGW中はいかがでしたか?ヌシはモンハンやるかポケモンやるか程度しかやることなかったですが。つまりいつも通りの日常が過ぎていったと。


無事にクチバジムのジムバッジ、オレンジバッジを手に入れたリーリエ。次の目的地は強敵エリカの待つタマムシジムがあるタマムシシティだ。

 

「シンジさん、おはようございます。」

「あっ、リーリエおはよう。もうすぐ朝ごはん出来るからちょっと待っててね。」

 

どうやら彼らはキャンプをして1日を過ごしたようだ。リーリエがテントから出てくると、既にシンジが朝食を作り終えようとしていた。リーリエも席に着き朝食の時間を静かに待つ。

 

「はい、お待たせ。」

「ありがとうございます。では、いただきます。」

 

リーリエは手を合わせて朝食の挨拶を済ませる。シンジも『どうぞ召し上がれ』と一言伝える。シンジもポケモンたちの朝のポケモンフーズを分け与えて自分も席に着き、ご飯を食べ始めた。

 

「ルリリさん、今日のフーズも美味しいですか?」

『リルル!』

 

リーリエの問いかけにルリリも笑顔で美味しいと答える。どうやらシンジの作るポケモンフーズが気に入ったようだ。少しずつだが、ルリリもシンジに慣れてきているようだ。

 

こうして彼らのいつもの朝は何事もなく過ぎていった。しかし……

 

「ご馳走様でした。今日も美味しかったです。」

「お粗末様でした。そう言ってもらえて嬉しいよ。」

「ルリリさんも……あれ?」

 

リーリエがルリリの姿を確認しようとすると、そこにいるはずのルリリの姿が見当たらなかった。

 

「ルリリさん!?どこ行ったんですか!?」

「あれ?イーブイもいない!?」

 

ルリリがいないと言う事実に焦って大声を出すリーリエに続き、シンジもイーブイがいないと言う事に気付く。

 

「もしかして森の中に?だとしたら大変だ!?」

「ど、どうしたんですか?」

「この辺りの森には気性の荒いポケモンが住み着いているんだ。もし迷子になったとすると……」

 

シンジの話を聞いたリーリエが最悪の事態を予期し、大変だと慌ててルリリを探し出そうとする。行方不明の仲間を心配する自分のポケモンたちに安心するように声を掛けながら、ポケモンたちをモンスターボールへとしまい、急いでルリリを探しに行く準備をする。シンジも同じくポケモンたちをしまい、イーブイとルリリを探す準備をする。イーブイとルリリが無事にいてくれると信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分前~

 

シンジからポケモンフーズを与えられ、それをおいしそうに食べていたポケモンたち。ルリリもまた、フーズを笑顔で頬張っていた。そんな時……

 

『リル!?』

 

ルリリがポケモンフーズを滑らせて落としてしまったのだ。そのポケモンフーズは森へと入っていき、ルリリも追いかけるように入っていく。

 

『イブ!?』

 

その異変に気付いたイーブイは初めにシンジに伝えようかどうか悩んだが、その間にルリリを見失っては一大事だと判断し、ルリリの後を追いかける。

 

『リルル!……ルリ?』

 

ルリリは転がっていったポケモンフーズに追いつき、それを嬉しそうに食べる。しかし、気付いた時には周りに誰もいなく、自分は見知らぬ森の中一人で立っていたのだった。

 

『リルルぅ!』

『イブブイ!』

 

ルリリが、誰かいないかと大声で呼びかけると、イーブイがルリリに返事するように駆けつける。どうやら無事に見つかりイーブイもホッとしているようだ。

 

『リル、リルル……』

『イブ、イブブイーブイ!』

 

ルリリはリーリエが目の前にいないため不安が募ってしまったようだ。イーブイは大丈夫だとルリリを安心させようとするも、やはりどうしても不安が消えることはない。しかしその時……

 

『スピ!』

『リル!?』

『イブ!?』

 

なんと森から数体のスピアーが飛び出してきた。恐らくここはスピアーの縄張りだったのだろう。侵入されたと勘違いしたのか、スピアーはルリリとイーブイに襲い掛かる。2人は驚きながらも、イーブイがルリリを先導しスピアーから逃げようと走り出す。だがスピアーは縄張り意識が高く、巣に近づいた相手には容赦しないポケモンだ。このままでは拉致があかないと、イーブイはある行動に出た。

 

『イーブイ!』

 

イーブイは走りを止め振り向き、スピードスターをスピアーたち目掛けて放つ。そのスピードスターは見事スピアーに命中し、スピアーたちは一目散に逃げていく。

 

『ルリリ!』

 

ルリリは今のイーブイの姿を見て目を輝かせている。イーブイの勇敢な行動に心打たれたという事だろう。イーブイはスピアーが見えなくなるのを確認すると、ルリリが大丈夫かどうか確認するため声を掛ける。

 

『イブイ?』

『リル、リルル!』

 

イーブイの問いかけにルリリは大きく返事をする。どうやら大丈夫だと言っているようだ。その様子にイーブイも一安心する。イーブイはトレーナーであるシンジとリーリエがいない分、自分がしっかりしないとと思っているようだ。

 

『イブイ!イブブイーブイ!』

『リルル!』

 

今の出来事でキャンプ地から少し離れてしまったため、自分たちも歩こうと決意する。恐らく自分のトレーナーたちも心配して探しているだろう。じっとしていても始まらないと感じた2人はその場から動き始めた。

 

きゅるる~

 

その時、何かしらの音が聞こえた。ルリリが顔を赤くしている様子を見ると、どうやら今のはルリリのお腹の虫が鳴ったようだ。先ほど食事の最中に出てきてしまったため、お腹が空いたままなのだろう。イーブイはそんなルリリのために何かお腹の足しになるものがないか辺りを見渡す。

 

『イブ?イブブイ!』

 

イーブイが上の方を見上げると、何かを見つけたように声を出す。そこにあったのは一つの木の実だった。バナナの様に3つ連なっているピンクと黄色の鮮やかな木の実は、一般的にナナの実と呼ばれている木の実だ。ナナの実は甘く、どんなポケモンでも食べやすい木の実で、食用としてブレンドされることも良くある人気の木の実だ。イーブイがナナの実の存在を知っているのは、恐らくシンジから食べさせてもらったことがあるのだろう。

 

イーブイはルリリに待っているように伝えると、ナナの実がなっている木を走って登っていく。普段木登りなどをしたことのないルリリは、心配そうに眺めているが、イーブイは危なげもなく登っていく。イーブイのような4足歩行且つ体の小さいポケモンは、比較的に木登りに適した体をしている。木の上に住処を作ったり、今のように木の実を主食としたりすることも関係しているのだろう。

 

イーブイは木の実のあるところまで辿り着くと、ナナの実を咥えそのまま木を伝って降りてくる。そして咥えてきたナナの実をルリリの目の前に置き食べるように促す。ルリリはイーブイに『いいの?』と尋ねると、イーブイは『いいよ』と言った。ルリリはナナの実を一口食べると、どうやら気に入ったようで笑顔を零しながらもう一口食べた。

 

ルリリはそのままナナの実を食べるが、冷静になって周りを見てみると他の食べれそうな木の実を見当たらない。ルリリはこのまま一人で食べるのはイーブイに悪いと感じ、木の実を押してイーブイに渡すように前に出す。

 

『イブイ?』

『ルリルリリ!』

 

イーブイはルリリに渡されたナナの実を食べていいのかと尋ねると、ルリリはさっきのお礼と言ったようにイーブイに笑顔で渡す。イーブイはルリリにありがとうと言い、ルリリの心遣いに快く受け取る。これをきっかけに、ルリリとイーブイは互いに打ち解けることが出来たようだ。ルリリが抱いていた不安は先ほどに比べ、イーブイが傍にいることで徐々に薄れていった。どうやらイーブイの事を信頼できる存在だと感じたようだ。

 

『イブ?』

『リル?』

 

2人がナナの実を食べ終えると、近くの茂みがゴソゴソと動いた気がした。誰かがいる気配がし、シンジとリーリエが見つけに来てくれたのかと期待する。しかしそこから現れたのは……

 

『ニドォ!』

『イブ!?』

『ルリ!?』

 

なんとそこから現れたのはニドキングであった。ニドキングはイーブイとルリリよりも遥かに巨体であり、迫力が段違いであった。繁殖期のニドキングは雌であるニドクインを探すために少々気が荒くなっており、タイミングとしては現状一番出会ってはいけない相手である。イーブイとルリリは一目散に逃げだすも、ニドキングは彼らを目の敵にし物凄い勢いで追いかけてきた。

 

しかし、その時慌てていたルリリが勢い余って転んでしまう。それに気づいたイーブイは慌ててルリリの元へと駆けつける。ルリリが立ち上がろうとするが、その時にはニドキングが彼らの後ろに既に立っていた。ルリリを守るためにイーブイが前に立って戦う意思を見せる。しかしその足は少し震えており、イーブイが不安を感じているのが伝わってしまう。いくらイーブイが強いとはいえ、シンジがいない今ではルリリを守れるかどうかの不安、それと頼れる人がいないと言う不安の2つが頭を過ってしまうのだろう。

 

ニドキングは2人を見下ろすように立っているが、気が立っているニドキングは雷を纏った右手を振り下ろしてくる。これはかみなりパンチだ。もうだめかと感じた2人だが、その時不思議とニドキングが怯んだ。何者かの攻撃がニドキングの背中に直撃したようだ。誰の仕業かとニドキングは背後へと振り向き確認すると、そこにはイーブイとルリリのよく知る人物が立っていた。

 

「良かった!間に合って!」

「無事でよかったです!」

『フィア!』

『コォン!』

『イブブイ!』

『リルル!』

 

そこには汗だくで立っているシンジとリーリエ、そしてニンフィアとシロンがいた。その姿を見るに、イーブイとルリリを必死に探してくれていたのだろう。イーブイとルリリも、無事合流できたことに安堵の声をあげる。しかし攻撃を加えられ、激昂したニドキングは攻撃対象をニンフィアとシロンに向けた。

 

「今のニドキングは気が立っている。リーリエも注意してね。」

「はい、分かりました。」

 

ニドキングの攻撃に注意しつつ、この場から追い払おうと2人は戦闘態勢に入る。しかしその時、意外にもルリリがリーリエの前に出て、何かを訴えかけるように話しかけてきた。

 

『リルル!ルリルリル!』

「え、ルリリさん、どうしたんですか?」

「……もしかしたらルリリは、自分も一緒に戦いたいって言ってるんじゃないかな?」

「そうなんですか?

『リル!』

 

ルリリが必死に訴えかけるも、リーリエにはルリリの真意が分からずにいる。そこでシンジが一つの仮説を立てると、ルリリは頷きながら返事をする。どうやらルリリはリーリエのジム戦を何度か見ている内に、自分も彼女の役に立ちたいと思うようになったようだ。リーリエも危険だと承知しているが、あのルリリが自分から言い出したことを尊重するのもトレーナーの役目だと感じ、ここはルリリと共に戦おうと決意する。

 

『イブブ!イブブイーブイ!』

「え?イーブイも一緒に戦うって?」

『イブイ!』

 

イーブイもシンジの元に駆け寄り、ルリリと一緒に戦いたいと申し出る。その姿には先ほどの不安や緊張は一切見られず、頼もしいイーブイの姿があった。ルリリもそのイーブイの姿に目を輝かせ、1人で戦うと言う不安がなくなったようにも見えた。シンジはイーブイの主張を尊重し、イーブイをルリリと共に戦わせようとする。

 

「良し!じゃあ行こうか!イーブイ!」

『イブイ!』

「ではお願いします!ルリリさん!」

『リルル!』

 

そして2人はトレーナーの声に合わせ、ニドキングの方へと振り向く。ニドキングは既に戦う準備が万端の様で、2人に対して威嚇をしている姿が見られる。しかし、イーブイとルリリは一切退く姿を見せることはなく、それどころか2人で声を掛け合い、互いに安心させるように呼吸を合わせようとしている。

 

ニドキングが先に動き出し、再び2人にかみなりパンチを繰り出す。リーリエはルリリに迎え撃つように指示を出した。

 

「ルリリさん!あわ攻撃です!」

 

ルリリは口から無数の泡をニドキングに向かって放つ。ニドキングはじめんタイプのポケモンであるため、威力が低くともみずタイプのあわ攻撃は効果が抜群だ。その一瞬の怯みを見逃さず、イーブイは更に追撃を仕掛けた。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

 

シンジの指示に従いシャドーボールをニドキングに放ったイーブイ。ニドキングは動きを止めてはいたものの、直撃だけは喰らわないように腕で急所である顔を守るようにシャドーボールを防いだ。その後、ニドキングは休むことなく攻撃を続行する。続いての攻撃はかえんほうしゃだ。そのかえんほうしゃはルリリへと目掛けて放たれ、実質初のバトルであるルリリは足がすくんだように動けなかった。そんな様子を見たリーリエは守るために飛び出そうとするが、ルリリの盾になるようにイーブイが立ちふさがった。

 

『ルリ!?』

 

突然の事で驚いたルリリ。イーブイは明確なダメージを受けてはいるものの、決して倒れることなくルリリを守っていた。シンジも心配になりイーブイの元に駆け寄った。

 

「イーブイ!?大丈夫!?」

『イブ……』

 

先ほどのような元気は見られないが、まだ立つことは出来るようだ。そのイーブイの姿にシンジは安心したように溜息をつく。そして、自分のために犠牲となってくれたイーブイのために、ルリリは決意を新たに前へと出る。

 

「ルリリさん!?」

 

リーリエが不安そうな声を出すが、その瞬間にはニドキングがかみなりパンチでルリリを襲おうとしていた。先ほどとは勢いが違い、確実にルリリを攻めようとしている事が伺える。危ないと感じるが、次の瞬間に不安を掻き消すような現象が起きた。

 

『リルルぅ!』

 

ルリリが行ったのは攻撃だ。しかしその攻撃は先ほどのような弱弱しいあわ攻撃ではなかった。確かに見た目はそっくりだが、もっと勢いよく、威力も格段に上がっていた。何が起きたのか分からなかったリーリエは疑問符を浮かべるが、シンジがその現象を解説してくれた。

 

「あれはバブルこうせん!?あわよりも威力の高い技だよ!」

「バブルこうせん?ルリリさん!新しい技を覚えたんですね!?」

『リルル!』

 

そう、ルリリが放ったのはあわ攻撃ではなく、もっと威力の高いバブルこうせんだ。新しい技を覚えたことにリーリエは喜びをあらわにする。ニドキングは今の一撃が効いたようでその場を立ち去っていく。どうやら彼もルリリの攻撃で懲りたようだ。その様子を見届けたリーリエは自分の元へと飛び込んでくるルリリを抱き寄せる。イーブイも先ほどの怪我を忘れるかのようにルリリの元へと駆け寄る。

 

『イブブイ!』

『リルル!』

 

どうやらイーブイが無事なことにルリリも嬉しいようだ。イーブイの姿を確認したルリリはリーリエの腕から飛び降り、イーブイの前で笑顔を零す。イーブイも釣られるかのように笑顔で対応する。

 

「何だか知らないけど、2人は今回の一件で距離が縮まったみたいだね。」

「そうですね。なんだか嬉しいです!」

『フィーア!』

『コォン!』

 

こうしてイーブイとルリリは仲良くなることが出来た。次第に周りとも心を打ち解けることが出来てきたルリリに、リーリエは子供の成長を見守る親の様な嬉しさを覚えた。ニンフィアとシロンも、2人の姿を見るのはトレーナーの様に嬉しいようだ。

 

そして迷子になりながらも仲良くなったイーブイとルリリを無事見つけ、彼らは目的地へと向け旅を続けるのであった。彼らの冒険はまだまだ続く!




今回はいつも通りのスピアーさんとニドキングさんに悪役を演じていただきました!ニドキングさんの設定は想像です。この小説の勝手な想像だと思って下さい。ごめんねニドキングさん(無関心)

それはそうと当小説に新たに評価が追加されていました!評価してくださった方々にはこの場を借りてお礼申し上げます!今まで名前を出すべきか悩んでいましたが、他の人の小説では普通にあとがきでお礼を言っていたのでこちらでも同じようにしたいと思います。

羅玖熾阿@鄂爾多斯さん、つね吉さん、木陰レンさん、パラドファンさん、誠にありがとうございます!

うん、自分がまじめな話をするのは何だか違和感ありますね。でも気ままで自己満足のために書いているとは言え、やっぱり感想をいただいたり評価を頂けるのはとても嬉しい事なのでテンションは凄い上がります。これからも頑張りますので応援よろしくお願いいたします!川´_ゝ`)

……ところでニドキングの鳴き声ってこれでいいの?


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ポケセンパニック!?イタズラチラーミィ!

新しく感想をいただき、更には意見までいただきありがとうございます!

さて、今回頂いたご要望ですが、リーリエにシンジがバトルの手ほどきをする内容を書いて欲しいとのことでした。また、シンジにバトルのいろはを教えた人物がいるのかも気になるとのことでした。それも含めてその時に纏めて書きたいと思います。

ですのでその話は次回書きたいと思います。それまで待っていただけたら幸いです。楽しめるよう真心こめて作らせていただきます。

と言うわけで今回の話はポケセンです。サブタイでネタバレ?
川´_ゝ`)なに、気にすることはない


次なる目的地へと向け旅を続けるシンジとリーリエ。今は道中のポケモンセンターへと立ち寄りひと時の休息をしようとしていた。

 

「ポケモンたちをよろしくお願いします。」

「はい、確かにお預かりしました。」

 

シンジたちはポケモンセンターのジョーイに自分たちのポケモンを預ける。ジョーイはポケモンたちの入ったモンスターボールを助手のラッキーに渡し、奥の部屋へと入っていった。奥の部屋にはメディカル装置が揃っているため、ポケモンの回復もすぐ終わるだろう。

 

シンジとリーリエはポケモンの回復を待っている間、椅子に腰を下ろしてゆっくりと待つことにした。

 

「ポケモンセンターには色んなポケモンさんが一杯いますね。」

「うん。カントー地方ではジム巡りはメジャーな文化だし、この中の人たちも大勢挑戦しているだろうね。」

 

中には屈強なトレーナーやポケモンたちもいる。その姿を見たリーリエは、自分もいつかあんな強そうな人たちと戦うのかと想像すると、どうしても緊張してしまう。しかし、そのような人たちも決して怖い雰囲気を放っているだけでなく、自分のポケモンたちと笑顔で接したりしており、自分のポケモンを大事にしているのだという事が伝わってくる。

 

リーリエが大勢のポケモンやトレーナーたちを観察していると、突然ポケモンセンターに異変が起きた。

 

「なっ!?停電!?」

 

ポケモンセンターの明かりが突然消えてしまったのだ。シンジの言った通り、これは停電だ。この場にいるみんなも、多くのものが慌てて冷静さを欠いているようだ。突然のトラブルに対処するため、ジョーイが奥から急いでラッキーと共に出てくる。

 

「皆さん!落ち着いて下さい!現在原因を探っているところです!解明するまで少しお待ちください!」

 

どうやらジョーイにも原因はまだ掴めていないようだ。シンジたちはこのままでは一大事となりみんなが混乱し、ポケモンたちの回復も行えずにみんなが困ってしまうと考え、ジョーイの元へと駆け寄った。

 

「ジョーイさん!僕たちにも何か手伝えることはありませんか?」

「あなたたち……でも……」

「私たち、ジョーイさんに日頃のお礼をしたいんです!だからお願いします!」

 

ジョーイは一般の人を巻き込むのは申し訳ないと感じ一度断るが、それでも尚リーリエは喰らいつくように懇願した。彼女たちの眼は暗闇の中でも分かるぐらい輝いており、信頼できる人物だと感じるのと同時に、心の底から力になりたいのだと言う覚悟を感じることが出来た。

 

「……分かったわ。じゃあお願いしてもいいかしら。」

『!?はい!任せてください!』

 

ジョーイは彼らの覚悟を買い、遠慮なく手伝ってもらおうと判断する。シンジとリーリエも、そんなジョーイに感謝しながら協力できることを嬉しく思う。

 

「今は停電して回復装置が使えない状況なの。だからここで傷付いたポケモンたちに木の実を配ってほしいの。」

「分かりました!」

「それと停電した原因が分からないから、一度配電室を見てきて欲しいのだけれどいいかしら?」

「じゃあそっちは僕が見てきます!リーリエ、こっちをお願いできるかな?」

「はい!任せてください!」

 

シンジがそう言うと、ジョーイに案内され配電室へと向かう。一方リーリエはジョーイに用意された木の実をラッキーと共にトレーナーたちに配ることにした。

 

「皆さん!今からポケモンさんたちに木の実をお配りします!ですので順番に私のところまで来ていただけますか?」

 

リーリエがこの場にいるトレーナーに声を掛ける。先ほどのジョーイの声掛けで冷静さを取り戻したトレーナーたちは、リーリエの言ったとおりに木の実を受け取るために彼女の元までやってきた。

 

「この子にはオレンの実ですね。はい!この子にはモモンの実です!」

 

リーリエは今まで本を読み培ってきた知識をフル活用し、どのポケモンにどの木の実が最も適切かを判別しトレーナーたちに手渡す。リーリエが明るく接してくれるため、みんなも安心して彼女と話すことが出来るようだ。

 

こちらはリーリエに任せておけば問題なさそうだ。一方、シンジは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが配電盤ですね?」

「ええ、特に調子が悪かったなんて様子は感じなかったけど」

 

シンジはジョーイに案内され、配電室へと辿り着く。停電が起きたという事はブレーカーが落ちたか、配電盤に異常があったという事。しかしブレーカー問題がある様子は見られなかった。ならば一番怪しいのは配電盤だ。シンジは配電盤を開け、中の様子を確認する。すると……

 

「!?配電盤のコードが千切れてる。」

「なんですって!?」

 

シンジが確認すると、中で繋がっているはずのコードが千切れていたのだ。しかしそのコードには少しおかしな部分が見つかった。

 

「これは……ポケモンの噛み付いた痕?」

 

よく見るとそれはポケモンの噛み付いた痕と思われるものだった。不自然な千切れかたからして、そう考えるのが妥当だろう。とは言え、預かったポケモンたちはジョーイが厳重に保管している。つまり、ここには野生のポケモンが住み着いている可能性があるという事だ。

 

「ポケモンの?そう言えば心当たりがあるわ!」

「心当たりですか?」

「ええ、最近この辺りでイタズラ好きのポケモンが悪さをしてるって噂を聞いたことがあるの。もしかしたらその子の仕業かも。」

「そうですか。幸いにも千切れてるコードは一本だけなので配線を入れ替えればこちらは何とかなりますが、そのポケモンをなんとかしないことには根本的な解決にはなりませんね。このことをリーリエに伝えてもらってもいいですか?」

「分かったわ。」

 

シンジのその言葉にジョーイは頷き配電室を出ていく。その姿を見たシンジは、急いで配電盤の修理に取り掛かった。そんな彼を一匹のポケモンがニヤリと笑みを浮かべながら眺めている姿があったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?ポケモンさんのイタズラですか?」

 

トレーナーたちの騒動を一段落させたリーリエは、ジョーイから今回の一件の原因を聞いた。

 

「そうなの。あっちは彼が修理できるらしいけれど、そのポケモンを何とかしなければ意味がないわ。ここの仕事は私が引き継ぐから、あなたはそのポケモンの対処をお願いできないかしら。」

「分かりました!ポケモンさんの事は任せてください!」

 

ポケモンセンターの事はジョーイに任せ、リーリエは今回の原因を作ったポケモンを探すことにした。こちらの事はプロであるジョーイに任せた方が適任だろう。

 

恐らくそのポケモンはまだポケモンセンターの中にいる可能性が高い。イタズラ好きという事はイタズラすることで起こる騒動を見るのが好きという事なのだろう。という事は今もこの近くで自分たちを見て楽しんでいるのではないだろうか、とリーリエは推測した。そのため先ずはシンジのいる配電室へと向かい順番に探していこうと考えた。しかし……

 

「……迷ってしまいました。」

 

慣れていないポケモンセンターの中で迷ってしまったのだ。方向音痴である彼女は、今シンジやジョーイはおろか、自身のポケモンを一体も所持していない状況だ。どうしようかと悩むリーリエだがその時、近くを何者かの影が走り去っていった。

 

「だ、誰ですか?」

 

誰が通っていったのか分からなかったが、その影が走っていったと思われる方へと自分もついて行く。もしかしたら探しているイタズラ好きのポケモンかも知れないと感じたからだ。その影を追いかけていくと、その先は行き止まりで一匹のポケモンが逃げ場がないと言うように困惑した状態で立ち止まっていた。

 

「あら?あなたは……」

 

そのポケモンの姿を見たリーリエは、図鑑を取り出しポケモンの詳細を確認することにした。そのポケモンとは……

 

『チラーミィ、チンチラポケモン。キレイ好きな性格で、尻尾のお手入れは欠かさないポケモン。お互いの体を尻尾で綺麗にするのがチラーミィ同士の挨拶。』

 

図鑑説明を確認し終えたリーリエは、再びチラーミィの姿を見つめる。しかしチラーミィは警戒している様子を見せている。その様子から察するに、このチラーミィが今回の原因なのだろう。だがリーリエはチラーミィにゆっくりと近付き、手をあげて敵対心がないことを証明する。

 

「怯えなくても大丈夫ですよ。私はあなたに手を出したりはしませんから。」

『チラ……』

 

それでも警戒を崩すことのないチラーミィ。今回のイタズラがバレ、何をされるか分からないと怯えているのだろうか。それとも以前別のトレーナーに酷い目にでもあわされたのだろうか。どちらにせよ、今は何とかして和解することが大事だろうと感じ、リーリエは再びゆっくりと歩み寄る。

 

しかし、チラーミィとの距離が縮まっていくと同時に、リーリエはある違和感に気付いた。

 

「!?チラーミィさん、その汚れ……」

『チラ!?』

 

暗闇で分かりにくかったが、チラーミィの尻尾が汚れているのが分かる。先ほどの図鑑説明を聞いていなければ気付けなかったかもしれない。チラーミィもリーリエに指摘に反応し、尻尾を隠すように後ろに回した。キレイ好きなチラーミィにとって大事な尻尾が汚れているのを見られるのが恥ずかしいのかもしれない。

 

恐らくチラーミィはイタズラの最中に尻尾を汚してしまったのだろう。しかし今は停電中。ここに水もなければ水道も動くことはない。その上この場には仲間のチラーミィがいるわけでもない。そんな状況では自分の尻尾を洗うことは難しいはずだ。

 

リーリエはリュックサックからある物を取り出した。それはポケモン用のブラシだ。キレイ好きのチラーミィの尻尾を綺麗にしてあげようと言う考えなのだろう。野生であるチラーミィは何をされるのか理解できずに警戒を緩めることはなかった。

 

「大丈夫です。今すぐ綺麗にしてあげますから。」

『チラ?』

 

リーリエの言葉が理解できたのか、チラーミィは先ほどまでの警戒を少しだけではあるが緩めた。それでもこれは大きな進歩であり、リーリエはチラーミィが怯えない様に静かに歩み寄り優しく触れる。触れたことでリーリエの気持ちが伝わったのか、警戒を解きリーリエに身を委ねた。

 

「じっとしていてくださいね。今綺麗にしますから。」

『チラーミ……』

 

リーリエは優しくゆっくりとチラーミィの尻尾をブラシで撫でていく。自分たちのポケモンにもよくやっているためか、その手つきはかなり慣れたものである。チラーミィも安心してリーリエに任せることが出来ているようだ。リーリエも綺麗好きな面があるためチラーミィとは似た者同士なのだろう。

 

「はい!出来ました!綺麗になりましたよ。」

 

リーリエの言葉にチラーミィは自分の尻尾を確認する。すると自身の尻尾はピカピカに輝いており、チラーミィ自身も満足したように目を輝かせている。

 

「良かった、あなたが満足できたようで。」

『!?』

 

リーリエは優しくチラーミィに微笑む。しかしチラーミィは恥ずかしかったのか、顔を赤くして顔を背けるようにプイッと別の方を見る。するとリーリエの膝から飛び降り、そのまま走り去っていった。

 

「あっ!待ってください!?」

 

リーリエがチラーミィを制止しようとするも、チラーミィは暗闇の中へと姿を消してしまった。現在は暗闇で上手く前が見えず、足元も確認できない状況だ。そんな状況下で追いかけるのは危険だと感じ、リーリエは追いかけるのを断念した。

 

「……ゲット……したかったですね。」

 

チラーミィの愛らしい姿に見惚れたリーリエは、そんな願望を口にする。可愛いポケモンが特に大好きなリーリエは、チラーミィの事を心から気に入ったようだ。残念だと感じながら、それでもこれからはイタズラにも限度があると理解してくれたことを祈りながら戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「原因はチラーミィ?」

「はい、でも大丈夫です!もうイタズラはしないと思いますから!」

 

リーリエは無事に元のフロアへと戻ってくることが出来た。シンジの方も無事に修理が終わったようで、今は2人そろってこのフロアへと集合した。みんなも現在は落ち着いた様子で話をしている姿がみられる。

 

「そっか。リーリエがそう言うならそうなんだろうね。お疲れ様!」

「シンジさんもお疲れ様です!」

 

2人が先ほどの騒動の件に対し労いの言葉をかけあう。そんな2人に、ジョーイとラッキーがモンスターボールの担架に乗せてやってきた。

 

「あなたたちのポケモンはすっかり元気になりましたよ!」

『ありがとうございます、ジョーイさん!』

「2人とも、さっきはありがとう。お陰で大きな騒動にならずに済んで助かったわ。」

『ラッキー!』

「いえ、いつもジョーイさんにはお世話になってますから。」

「はい!また何かあれば言ってください!」

 

ジョーイは手伝ってくれた2人に礼を言う。シンジとリーリエも気にする必要はないとジョーイに一声かける。

 

「では僕たちはこれで失礼します。」

「ええ!よければまた立ち寄ってね?」

「はい!お世話になりました!」

 

ジョーイは笑顔でお見送りをする。リーリエも頭を下げてジョーイにお礼を言う。そして彼らが振り向くと、何者かが走ってリーリエに近づいてきたのだった。

 

「わっとっと、ってチラーミィさん!?」

 

その何者かと言うのは先ほどのチラーミィだった。リーリエの足元を少しぐるぐると周り、リーリエは態勢を崩しかけるがなんとか持ち直しチラーミィの姿を確認する。チラーミィはクスクスと笑い、リーリエの様子を眺めている。どうやらまだ悪戯好きの癖は治っていないようだ。

 

「ど、どうしたんですか?突然?」

『チラッ!チラチラミ!』

 

リーリエに何かを求めているように訴えかけるチラーミィ。リーリエはそのチラーミィの様子に、もしかしたらと期待しながら尋ねた。

 

「もしかして、私と一緒に行きたいのですか?」

『……チラミ!』

 

どうやらリーリエの推測は当たっていたようだ。チラーミィは照れた様子を顔を背けるが、小さく顔を縦に振り頷く。素直になれないチラーミィのそんな姿にクスリと小さく口元を緩めるが、内心では凄く嬉しい感情で一杯だった。

 

リーリエはモンスターボールを取り出し、チラーミィに近づける。チラーミィは顔を背け、モンスターボールをチラリと見ながら手を当てる。するとモンスターボールが開き、その中にチラーミィが吸い込まれるように入っていった。モンスターボールが数回揺れ、ピコンと言う音と共にチラーミィがゲットされた。

 

「!?チラーミィさん!ゲットです!」

 

喜びのあまりリーリエはチラーミィの入ったモンスターボールを掲げる。その姿を見たシンジは、拍手しながらリーリエを祝福した。

 

「新しいポケモンゲットおめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

シンジの祝福を受け取り、リーリエは目をキラキラと輝かせながらチラーミィの入ったモンスターボールを見つめる。それだけチラーミィのゲットが嬉しかったのだろう。ジョーイもリーリエにゲットに祝福してくれている様子だ。

 

こうしてリーリエは新しい仲間、照れ屋で素直になれないイタズラ好きだけど、とてもキレイ好きなポケモン、チラーミィをゲットしたのだった。新しい仲間を手に入れ喜ぶリーリエ。そんなリーリエにはこれから先、どのような出会いが待っているのだろうか?2人の旅はまだまだ続く!




カントー中心のパーティになると言ったな?あれは嘘だ。

と言うわけでチラーミィちゃんゲット回でした!チラーミィ可愛いですよね!進化してもチラチーノになって可愛くて普通に強い子です!あれ?なんだかリーリエのパーティがガチになっていっている気が……気の所為よね?

そう言えばこの度頂いた感想では、リーフィアが好きだと書いていただきました。ブイズが好きな方がいるのは大変嬉しい事です。最近ではブイズ漫画見てほのぼのしたりしてます。

ポケモンセンターオンラインにてリーリエのフィギュア2種が受注生産予約受付中!←唐突な宣伝

次回は前書きでも書いた回にする予定です!その時をお楽しみに!またご意見や感想をお待ちしております!ではではノシ


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特訓!リーリエvsシンジ!?

無事リクエスト回が完成いたしました!何度か見直しながら修正を重ね完成させた……のですが、少し長めになってしまいました。ざっと1万字程度……。

満足していただけたら幸いですが、もし『なんか違う』とか思ったりした場合は言ってください。修正するか場合によっては別に作り直しますので……。

個人的にパソコンでタイピングするとスピード的に結構楽です。逆にスマホだと3倍以上時間かかってマトモに書けませんが。

と言うわけで本編です。どぞ!


新しい仲間、チラーミィをゲットしたリーリエ。次なる目的地、タマムシシティに向けシンジと共に旅を続けていた。リーリエはゲットしたチラーミィを他のみんなに紹介しようとしていた。

 

「みなさん!出てきてください!」

『コォン!』

『ソウソウ!』

『リルル!』

『チラミ!』

 

リーリエがポケモンたちの入っているモンスターボールを一斉に上空に投げ、ポケモンたちを外に出した。彼女のポケモンたちは今日も元気いっぱいのようだ。

 

「紹介しますね。新しく仲間になったチラーミィさんです!仲良くしてくださいね!」

 

リーリエはチラーミィを抱きかかえてみんなに微笑みながら紹介する。チラーミィは抱きかかえられたのが恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながら視線を外している。ルリリも緊張した様子だが、少し慣れてきたのかチラーミィの仲間入りを歓迎している様子だ。フシギソウとシロンも笑顔で迎えている。

 

「シンジさん、少しよろしいでしょうか?」

「?どうしたの?改まって……」

 

チラーミィの紹介を終えたリーリエはシンジの方へと振り返る。その眼差しはいつもと違い真剣な表情そのもので、何か覚悟を決めたような顔をしていた。

 

「……思い切って言います。私とバトルしてください!」

「!?……理由を聞いてもいいかな?」

 

リーリエははっきりとシンジにバトルをしてほしいと懇願した。シンジはその理由を知るためリーリエに尋ねる。リーリエはシンジの視線から目を逸らすことなく、真っ直ぐ見つめその理由を告げた。

 

「……次のジムはエリカさんです。エリカさんは間違いなく強い、それは私でも分かります。」

 

シンジは無言のままリーリエの語る覚悟に耳を傾ける。過去の戦いを思い出しながらその覚悟をシンジに伝える。

 

「勿論、今まで戦ってきたジムリーダーさん、それに他のトレーナーさんもみんな強敵でした。今まで勝てたのもポケモンさんたちが頑張ってくれたおかげです。」

 

リーリエはその後、歯を食いしばるようにしながら語り続ける。リーリエのその珍しい姿に、シンジはどこか見覚えがあると感じながら黙って続きを聞くことにした。

 

「ですが、これからも強い人たちとたくさん出会うと思います。その人と戦う為に、ポケモンさんたちだけでなく、私も強くならなくては意味がありません。それに、このままではエリカさんやナツメさんに勝つことは出来ないと思います。」

 

リーリエはどうやら不安を抱いているようだ。ヤマブキジムでの圧倒的敗北、それこそが彼女を芯から変えたいと思わせるきっかけになったのだろう。

 

「だからお願いです!シンジさんに勝てないと言う事は重々承知しています!でも私は!」

「うん、分かった、それ以上言わなくていいよ。但し、一つだけ忠告しておくよ。」

「忠告……ですか?」

 

シンジは右手の人差し指を立て、リーリエの言葉を遮った。手合わせの前の忠告がどのような内容かは分からないが、シンジの表情からそれはとても重要なことなのだろうとリーリエはシンジの言葉を聞き逃すまいと注意して聞くことにした。

 

「バトル前に“勝てない”なんて思っちゃだめだよ。ポケモンバトルは気持ちで負けたら勝負にも負ける。必ず“勝つ”、そんな強い意志を持ってなければ勝者にはなれない。そのことは忘れないでほしい。」

「!?は、はい!」

 

シンジの忠告を、リーリエはとても大事なことだと感じ肝に銘じた。シンジもそんなリーリエの姿を見ると、彼女なら更に強くなれるだろうという希望を感じ、バトルすることを承諾した。

 

「バトルは3対3の3本勝負でいいかな?」

「はい!よろしくお願いします!」

 

こうしてリーリエの初めての特訓が始まることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とシンジさんは距離を離し、再び互いの姿を見据えました。いつもは応援してくれたり後ろで見ていたりしていただけなので分かりませんでしたが、こうして立ってみると威圧感が半端ではありません。あの優しいシンジさんからは想像できないプレッシャーが私を押してきます。立っているのがやっとです。

 

「大丈夫?」

「!?は、はい!問題ありません!」

 

いけません、先ほどシンジさんから忠告をしていただいたばかりなのに最初から気持ちで押されてしまってました。集中しなくてはいけませんね。

 

「準備はいいかな?そろそろ始めるよ。」

「はい!いつでも大丈夫です!」

 

シンジさんの言葉に私はそう答えました。チャンピオンであるシンジさんに今の私がどれだけ食らいつけるか分かりませんが、それでも私は強くなるために、憧れの人の背中に追いつくために、大切なものを守れるようになるために、今の自分の壁を乗り越えなくてはなりません。

 

シンジさんは私の返答を聞くと同時に、自分のモンスターボールを手にしました。そしてそのボールを投げると、中身から最初のポケモンさんが姿を現しました。

 

「お願い!グレイシア!」

『グレイ!』

 

シンジさんの最初のポケモンさんはグレイシアさんでした。グレイシアさんはこおりタイプ、私の手持ちに相性のいいポケモンさんはいません。ならばこちらのポケモンさんはこの子です!

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラ!』

 

私が選んだのはチラーミィさんです。チラーミィさんにとっては初陣ですが、このバトルでどれほどの動きができるか見極めるのも重要です。胸を借りるつもりで挑ませていただきます。

 

「さあ、先攻はリーリエからでいいよ。」

「それでは遠慮なく行きます!」

 

私はシンジさんの誘いに乗る形で先に攻撃を仕掛けました。シンジさんほどの相手であれば後手に回れば回るほど不利になっていきます。ならばここは多少強引でも攻めるべきでしょう。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!」

 

チラーミィさんは体を回転させ、同時に尻尾からスピードスターを放ち先制攻撃を仕掛けました。しかし、シンジさんは一切動じることになく、瞬時にこちらの攻撃を対処する行動に移りました。

 

「こおりのつぶて!」

 

グレイシアさんはこおりのつぶてでスピードスターに迎え撃ってきました。しかしその攻撃は驚くべきもので、なんと全てのスピードスターを狙い撃つように的確に撃ち落としてきたのです。ポケモンとの信頼関係と培ってきた経験を活かしているからこそできる技なのかもしれません。

 

「続けてれいとうビーム!」

 

グレイシアさんは休む暇なくれいとうビームで攻撃を仕掛けてきました。先ほどの反撃に驚いていた私とチラーミィさんはすぐ反応することが出来ず、れいとうビームの直撃を受けてしまいました。

 

「チラーミィさん!?大丈夫ですか!?」

『チラ……ミィ!』

 

チラーミィさんは私の声に反応し、辛うじて立ち上がってくれました。流石シンジさんのポケモンさんです。たった一発の攻撃でチラーミィさんは致命傷を負ってしまいました。牽制攻撃にすら冷静に対処し、すかさずに隙を逃すことなく攻撃を確実に当ててきました。ですがまだ始まったばかりです!

 

「チラーミィさん!おうふくビンタです!」

 

チラーミィさんはボロボロな体に鞭をうち、グレイシアさんに向かって急接近しました。そのスピードは決して衰えておらず、チラーミィさんの突進力を物語っているようでした。これなら決まった、と思った私ですが、そんな期待も意味を成しませんでした。

 

「グレイシア!バリアー!」

 

グレイシアさんは自分の正面を守るよう頑丈な壁を貼り、チラーミィさんの攻撃を跳ね返しました。攻撃ではなかったためチラーミィさんにダメージはなく、上手く受け身をとることが出来ましたがこのままでは手の打ちようがありません。

 

「シャドーボール!」

「っ!?シャドーボール!?」

 

シャドーボールはゴーストタイプの技、ノーマルタイプのチラーミィさんには全く効果はないはずです。シンジさんがそのことを知らないはずがありません。なにか考えがあっての事でしょうが、私には一切検討がつきません。

 

グレイシアさんはシンジさんの指示通りにシャドーボールを撃ちました。しかし、それはチラーミィさんに一直線に向かったのではなく、チラーミィさんの目の前で地面に着弾しその場で爆発しました。その爆発によって発生した煙に視界が奪われ、私もチラーミィさんもグレイシアさんの姿を見失ってしまいました。

 

「チラーミィさん!スピードスターで煙を払って下さい!」

 

チラーミィさんは再びスピードスターを放ち目の前の煙を払いました。しかしそこには……

 

「グレイシアさんがいません!?」

 

そうです。その場にはグレイシアさんの姿が見当たりませんでした。どこに行ったのかと周囲を見渡してみるも、全然姿が見えません。

 

「今だ!こおりのつぶて!」

「っ!?もしかして!?」

 

シンジさんの言葉にハッとなった私はチラーミィさんと共に上空を見上げました。そこには高く飛び上がったグレイシアさんの姿があったものの、時すでに遅しと言うものでした。グレイシアさんは既にこおりのつぶてを撃ち、鋭くチラーミィさんを捉えました。その攻撃はチラーミィさんに直撃し、大きな爆風と共にチラーミィさんは飛ばされて目を回していました。

 

「チラーミィさん!」

『チラ……』

「……お疲れさまでした。後はゆっくり休んでいてください。」

 

チラーミィさんは戦闘不能となってしまい、先ほどまでの元気が無くなっていました。私はチラーミィさんに感謝の言葉を述べながらモンスターボールへと戻しました。

 

「確かにシャドーボールはチラーミィに効果のない技。でも使い方によっては有効な攻撃手段にも変わるんだ。工夫次第で戦術はいくらでも増えるってことは覚えておいた方が良いよ。」

「はい、とても勉強になります!」

 

シンジさんの言葉に納得するように私はそう返事をしました。確かに相手の視界を奪うと言うのは戦術としてかなり有効でしょう。それに効果のない技で攻撃することによって相手を油断させることもできます。シンジさんとの戦いは学べることが多そうですね。

 

「グレイシア、お疲れ様。よく頑張ったね。」

『グレイ!』

 

シンジさんは自分の元へと戻ってきたグレイシアさんの頭を撫でました。グレイシアさんも嬉しそうにしながらモンスターボールの中へと入っていきました。

 

「では私の二体目はこの子です!フシギソウさん!お願いします!」

『ソウソウ!』

「じゃあ僕のポケモンは、リーフィア!お願い!」

『リーフ!』

 

続いて私が繰り出したポケモンはフシギソウさんです。対するシンジさんはリーフィアさんでした。リーフィアさんはくさタイプのみ。フシギソウさんはくさタイプに加えどくタイプを持っています。相性だけで言えばこちらが圧倒的に有利でしょうが、シンジさんは常識で勝てるほど甘いトレーナーさんでは無いことは分かっています。

 

「次のジム戦、エリカさんはくさタイプ。同じくさタイプのリーフィアなら練習相手に持って来いなんじゃないかな。」

 

シンジさんの言う通り、くさタイプのリーフィアさんであれば次のジム戦の練習相手として申し分ありません。それどころかこれ以上ないくらいの練習相手です。このバトルでジム戦の突破口を見つけるのも重要なことですね。

 

「フシギソウさん!つるのムチです!」

 

フシギソウさんはつるのムチで先制攻撃を仕掛けました。対してシンジさんが取った行動は……

 

「つばめがえしではじき返して!」

「ひこうタイプの技!?」

 

リーフィアさんが繰り出したのはひこうタイプのつばめがえしでした。リーフィアさんの額にある草が青白く光り、つるのムチをあっさりとはじき返してしまいました。ダメージがあるわけではありませんが、攻撃を一手潰されてしまったのは大きいです。

 

「ならはっぱカッターです!」

「エナジーボールで撃ち落して!」

 

フシギソウさんが放ったはっぱカッターはリーフィアさんに接近していきますが、リーフィアさんの一発のエナジーボールで見事なまでに撃ち落されてしまいました。はっぱカッターを貫通するようにしてこちらに接近してきますが、フシギソウさんはその攻撃を冷静に回避しました。流石にはっぱカッターが壁になっていたことによってスピードは少しでも低下していたようです。

 

「一発一発慎重に攻めるのも大事だけど、技と技の組み合わせも重要なテクニックだよ。」

「組み合わせ……ですか。」

「単発の攻撃であれば読まれてしまう。でも技を組み合わせることによって相手を惑わせることもできるんだ。」

 

なるほど、確かにそれは大事かもしれません。よく考えれば今まで私は技の組み合わせと言うものを余り使ってないかもしれません。実戦でいきなりやるのは難しいかもしれませんが、それでもやらなければ始まりませんね。

 

「フシギソウさん!とっしんです!」

『ソウ!』

 

フシギソウさんは勢いをつけ、とっしんでリーフィアさんに真っすぐ接近していきます。しかしシンジさんも黙って攻撃をさせてはくれません。

 

「リーフィア!近付けさせないで!連続でエナジーボール!」

 

正面から突進して近付いてくるフシギソウさんに対し、リーフィアさんはエナジーボールを連続で撃ってきました。簡単には近付けさせてくれないようですが、それでもフシギソウさんは上手く回避しながら勢いを緩めません。幸いにもエナジーボールは直線的な技であるため、冷静に対処すれば回避は決して困難ではありません。

 

「今です!つるのムチ!」

「つばめがえし!」

 

充分に接近したところでフシギソウさんはつるのムチで攻撃しました。つるのムチは先ほどと同様につばめがえしで跳ね返されてしまいました。しかし、それこそが私の狙いでもありました。

 

「まだです!はっぱカッターです!」

 

つるのムチをはじき返したことにより一瞬の隙が生じたリーフィアさんに無数のはっぱカッターをフシギソウさんは放ちました。流石のリーフィアさんこれを回避することが出来ず、確実にダメージを与えることが出来ました。リーフィアさんはダメージを受けるも、綺麗に受け身をとることでダメージを最小限に減らしました。流石の対応ですね。

 

「とっしんで接近し、つるのムチで牽制、そして本命のはっぱカッターで攻撃。いきなり成功させるなんて流石だね。これは僕も一本取られたよ。」

「あ、ありがとうございます!ですが……」

「まだバトルは続いているからね。僕達も行くよ!」

 

シンジさんに褒められ私は少し気を緩めてしまいましたが、シンジさんの言葉で私は目が覚めたように再び気を引き締めることが出来ました。特訓とは言えシンジさんとのバトル。一瞬の油断が命取りとなってしまいます。

 

「とっしんです!」

「もう一度エナジーボール!」

 

リーフィアさんは再びエナジーボールを連続で撃ち迎え撃ってきました。しかし先ほどとは違い、こちらを的確に狙っている攻撃ではありません。エナジーボールを避けるように迂回しながらフシギソウさんは接近していきます。この戦術、どこかで見たことがあります。

 

私はその時、どこで見た戦術かを思い出しました。ですが気付いた時には既に遅く、シンジさんの術中に嵌ってしまいました。

 

「リーフブレード!」

 

リーフィアさんはフシギソウさんが充分に近寄ったところで、リーフブレードによって切り裂いてきました。牽制攻撃によって相手を誘うようにルートを作り、接近してきたところで確実に技を当てる。まさにクチバジムでのマチスさんと同じ戦術でした。

 

「フシギソウさん!?」

 

フシギソウさんは疲労による体力の限界がきたのか、今の一撃で戦闘不能になってしまいました。つるのムチを弾かれ続けていたのも大きな要因かも知れません。何よりリーフィアさんの技がとても強力でした。それだけシンジさんとポケモンさんは厳しい試練を乗り越えてきたという事なのでしょう。

 

「お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。」

「違う相手だからと言って同じ戦術を使ってこないとも限らないよ。戦術の幅は無限大、常に警戒は怠らないようにね。」

「はい!」

 

シンジさんの言う通りですね。決して油断していたつもりはありませんでした。でもシンジさんは私の予想の遥か上を行っています。これがチャンピオンの強さなのでしょうか。ですがそれ以上に何か重要なものがある気がします。それさえわかれば私も強くなれるかもしれません。

 

それにしても流石はシンジさんです。今まで戦ったどのトレーナーさんよりも戦い方が上手いです。一度見た戦術を自分のものの様に使い、ポケモンさんの特徴を熟知しそれを最大限に活用しています。的確なタイミングでの指示、戦法の切り替え、テクニック、どれをとっても最高峰のトレーナーでしょう。まだまだ未熟な私でさえそう思えます。

 

「リーフィア、お疲れ様、よく頑張ったね。」

 

シンジさんはリーフィアさんの頭を撫で、モンスターボールに戻しました。そして次のポケモンさんが入ったモンスターボールを手に取り準備をしました。

 

「次がラストだよ。準備はいいかな?」

「はい!最後の戦い、よろしくお願いします!」

 

シンジさんは最後のポケモンさんが入ったモンスターボールを上空に投げました。その中から出てきたのは、私の想像していた通りのポケモンさんでした。

 

『フィーア!』

 

そう、最後のポケモンさんはシンジさんの相棒でもあるニンフィアさんでした。ニンフィアさんはモンスターボールから出てくると、すぐにシンジさんの元へと振り向き足元に近寄りました。シンジさんも姿勢を屈め、近寄ってきたニンフィアさんの頭を優しく撫で声を掛けました。

 

「お願いね、ニンフィア」

『フィア!』

 

その姿はまさに相棒、パートナーそのもの。その姿を見た私は、自分もこの子との絆なら負けないと思いながら最後のモンスターボールを手にしました。

 

「……お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

私が最後に繰り出したのはシロンです。私の最初のパートナーであり、最も信頼するポケモンさんです。まだ発展途上かも知れませんが、それでも確かな絆はあると確信しています。

 

「最後はやっぱりシロンできたね。ニンフィア、気を引き締めていくよ!」

『フィーア!』

 

どうやらシンジさんも本気で来るようです。こうして対峙してみると、いつものニンフィアさんとは全くの別人に感じます。シンジさんに甘え、可愛らしい姿を見せる時とは裏腹に、今では圧倒的な威圧感を感じさせます。特別のポケモンさんの纏う特殊な雰囲気と言うものでしょうか。

 

ですがここで退いてしまっては意味がありません。私はニンフィアさんの放つプレッシャーに耐えながら、雰囲気に呑まれないようにするため先手を取ることにしました。

 

「シロン!こなゆきです!」

「ようせいのかぜ!」

 

初めはこなゆきで先制攻撃を仕掛けました。しかしニンフィアさんのようせいのかぜにより、こなゆきはあっさりと相殺されてしまいました。その隙の無いようせいのかぜは素人目の私から見ても完成されていて、威力も相当高いことが伺えました。

 

「なら今度はこおりのつぶてです!」

 

続いては無数のこおりのつぶてをニンフィアさん目掛けて放ちました。シロンも成長しているのか、そのこおりのつぶては今までのよりも素早く、鋭さも増していました。これなら少しはシンジさんたちに一矢報いることが出来る、と感じた私ですが、その考えは甘かったのだと思い知らされることになりました。

 

「ニンフィア!でんこうせっか!」

 

ニンフィアさんはでんこうせっかを繰り出しました。私はその動きに驚かされました。何故なら正面から無数に襲いかかるこおりのつぶてを躱しながら接近しているのです。しかもその間、ニンフィアさんのスピードは一切衰えることがありません。殆どこおりのつぶてと同じスピードで回避に成功しながら接近してくるニンフィアさんの動きに、私は思わず見惚れてしまっていました。

 

自分の渾身の攻撃を躱され驚いたシロンは、回避行動が間に合わずにニンフィアさんのでんこうせっかを正面から受けてしまいました。そしてニンフィアさんは休む暇もなく続けて攻撃を繰り出してきました。

 

「ムーンフォース!」

 

シンジさんのニンフィアさんが持つ最大の大技、ムーンフォースです。上空に上がり月の力を借りるそのムーンフォースの威力はかなり強力です。それをシンジさんのポケモンさん、それもニンフィアさんの放つムーンフォースの威力は計り知れません。それを直撃すれば流石のシロンも一溜りもないでしょう。私は慌ててシロンに回避の指示を出しました。

 

「シロン!躱してください!」

 

私の言葉に反応し、シロンは回避行動の態勢に入りました。それと同時に、ニンフィアさんが力を解き放ち、ムーンフォースが放たれました。勢いよくシロンに接近してきたムーンフォースを、シロンは横に大きくステップする形で回避しました。

 

しかし確実な回避には至らず、着弾時に発生した爆風に巻き込まれてしまいました。ダメージは抑えられたと思いますが、それでも吹き飛ばされた反動のダメージは勿論あるでしょう。それほどまでの凄まじい威力でした。あれがもしZ技であったらと思うとゾッとします。

 

「シロン!?大丈夫ですか!?」

『コォン!』

 

シロンはなんとか立ち上がり、私の声に返事をしてくれました。しかし、それでもダメージはあるようで少し足元がふら付いています。

 

シンジさんはこちらの様子を静かに見守っているみたいです。シンジさんとニンフィアさんのコンビネーションはバッチリです。正直、私はこれ以上打つ手が思いつきません。

 

『コォン!コンコォン!』

「シロン?」

 

私が悩んでいる時、シロンが訴えかけるように声を掛けてきました。シロンの眼を見ると、その眼はキラキラと輝いて、真っ直ぐ私の事を見つめていました。それほど私の事を信頼してくれているという事なのでしょうか。パートナーが私の事をここまで信頼してくれているのであれば、私もシロンの信頼を裏切るわけにはいきません。最後までがんばリーリエです!

 

「シロン、行きますよ!私たちはまだ諦めません!」

『コォン!』

 

私が決意を固めシロンに言葉をかけると、シロンも覚悟を決めたように正面へと向きなおりました。シンジさんもそんな私たちの姿を見て、微笑みかけてくれました。

 

「シロン!オーロラビームです!」

「ようせいのかぜ!」

 

シロンのオーロラビームに対し、ニンフィアさんはようせいのかぜで反撃してきました。互いの技は中央でぶつかり合います。しかし、自分でも驚いたことに、次第にようせいのかぜをオーロラビームが破っていきました。私たちの覚悟が勝ったのでしょうか。シンジさんも一瞬顔を歪めましたが、ニンフィアさんは難なくオーロラビームを回避しました。

 

「なら次は……!?」

 

私はシロンに次の指示を出そうとしました。しかし、その時シロンにある異変が起きました。なんとシロンの体が突然白く輝き始めたのです。シロンが進化するためには進化の石が必要です。そのためこれは進化の光ではありません。だとしたら何なのだろうと疑問に思ったわたしですが、シロンは次の瞬間高くジャンプしました。

 

「この力、この感じ、もしかして!?」

 

シンジさんは何かを察したようです。何が何だか分からない私は、ただただシロンのその姿を見ているしかありません。

 

シロンはジャンプした後、顔を上に向け何か力を溜めているような仕草をしました。纏っている白い輝きも次第に大きくなり、その力が解放されようとした瞬間に、再び異変が起きました。

 

シロンの纏っていた輝きが、突然消えてしまったのです。その後、シロンは糸が切れた人形のように力が抜け、地面へと落ちてしまいました。私はそんなシロンが心配になり、急いで近づき抱えました。

 

「シロン!?大丈夫ですか!?」

『コォン……』

 

元気はありませんが無事なようです。シンジさんはニンフィアさんと一緒に私たちの元へとやってきました。

 

「シロンは慣れない力を使おうとしたせいで、疲れ果てたみたいだね。」

「慣れない力……ですか?」

「恐らくあれはムーンフォース。ニンフィアの技を見た影響で何かを掴んだのかもしれないね。」

「ムーンフォース!?」

 

ムーンフォース。ニンフィアさんの使う強力な技であり、フェアリータイプの技の中で最高クラスの威力を持つ大技です。しかし一つ疑問があります。

 

「ですが慣れない技と言うのはどういうことですか?以前オーロラビームを会得した時は問題なく使うことが出来たのですが。」

「オーロラビームはこおりタイプの技、シロンもこおりタイプだから相性としてもバッチリだったんだ。でもシロンはフェアリータイプの技を覚えておらずシロンもフェアリータイプを持っていない。ムーンフォースはフェアリータイプの技の中でも特に強力なこともあって、今のシロンに扱いきることが出来なかったんだと思うよ。」

 

シンジさんの言葉に私は納得しました。私とシロンもまだまだ力不足と言うわけですね。ですが希望は見えてきました。シロンはまだまだ強くなれると言う兆しだけでも見えただけこのバトルには意味がありました。

 

「シロンもこんな状態だし、特訓はここまでかな。」

「そうですね。シンジさん、ありがとうございました!今回のバトルは私にも、ポケモンさんたちにも大きな意味がありました!」

「力になれたようなら何よりだよ。また、特訓したかったらいつでも付き合うから言ってよ。出来る限り力になるから。」

「はい!ありがとうございます!」

 

親切な言葉をかけてくれるシンジさんに私はシロンを抱えたまま頭を下げお礼を言いました。しかしバトルをしている最中にもう一つ気になることがありました。それをシンジさんに尋ねてみることにしました。

 

「シンジさんは凄く強いです。当然ですが全然歯が立ちませんでした。でもそれだけ強さはどうやって会得したのか、バトルの秘訣が何なのか気になります。もしよかったら聞かせて貰えませんか?」

「……僕にはバトルを教えてくれた人がいたんだ。」

 

バトルを教えてくれた人、シンジさんはそう答えました。そのことは初耳ですが、シンジさんにバトルを教える程の方だったら余程強い方なのでしょう。

 

「僕はその人にバトルの基礎から様々なことを教えてもらったんだ。戦いのいろはをね。ある時その人に、基礎以上に大事なバトルの秘訣を教えてもらったんだ。」

「……そのバトルの秘訣とは……何でしょうか。」

 

私は緊張のあまり喉を鳴らしました。それほどの人物が言う言葉なのだから、余程重要なことなのだろうと疑いませんでした。しかしシンジさんが口にしたことはいたって単純で当たり前のことでした。

 

「……最後の最後まで自分のポケモンたちを信じること。そしてポケモンたちの信じる自分を信じること。」

 

その言葉は確かに単純かつ当たり前の事でした。ですがその言葉は簡単そうに聞こえて最も難しい事なのだろうと私は感じました。

 

ポケモンさんを信じることはトレーナーとして当たり前の事です。苦楽を共にするパートナーは信頼しなければならない存在です。ですがポケモンさんの信じる自分を信じると言うのは簡単そうに思えて難しいものです。

 

「そのことを教えてくれた人は、どんな人だったのですか?」

「前にも話したよね?ヤマブキで敗北した話。」

 

以前私がヤマブキジムで敗北した際に話してくれたことを私は思い出しました。シンジさんもかつてヤマブキジムで敗北しました。どうやら今回話してくれた出来事もその時の人と同一人物の様です。

 

「その人は赤い帽子を常に被っている寡黙な人でね。僕はその人に一度も勝てたことがなかったんだ。」

 

その衝撃の真実を聞いた私は驚きのあまり言葉が出ませんでした。これだけ強いシンジさんが一度も勝てなかった相手、それほどまでに強い人だという事です。

 

「……今のシンジさんでも難しいのでしょうか?」

「どうだろう。でも、多分厳しいと思うよ。あの人は際限なく強くなっていく。僕が強くなればあの人も更に強くなる。」

 

シンジさんはその人の姿を思い出すように語っていきました。その後『でも』と言葉を続けました。

 

「あの人がどれだけ強くなっていても、僕は負ける気はないよ。」

『フィア!』

 

シンジさんは私の顔を真っ直ぐと見ながらそう自信満々に答えました。ですがそのシンジさんの眼は自信があると言うよりも、その奥深くに秘めた何かがあるように思えました。

 

「やっぱり凄いです……シンジさんは……。」

 

私の言葉にシンジさんは照れくさそうに眼を逸らしました。ですが私は素直にシンジさんの事を凄いと思います。私ではとても真似できないと思いますが、シンジさんの言葉を胸に、私は私を信じ、私の信じるポケモンさんのために、もっともっと強くなろうと心に誓いました。

 

こうして私の特訓は一度幕を閉じました。まだまだ未熟ですが、私はこれからもっと強くなっていきます。もちろんポケモンさんたちと共にです。がんばリーリエです、私!




いかがでしたか?リーリエ視点ばかりでしたが、今回は書いてて楽しかったです。自分でも満足しました!

それとツクモリさん、NOアカウントさん、新たに評価してくださってありがとうございます!3日坊主のヌシがここまで続けれられたのは読んでくださる方々がいるからです。

また何かリクエストなどがあれば遠慮なく言ってください。可能な限り要望には応えるつもりです。

さ、まじめな話はここまでにして、次回は(恐らく)タマムシジム回になります。原作と違いクチバからヤマブキ経由でタマムシに行っているつもりです。表現が足りず申し訳ないです……。シオンはまたその後です。……この小説では原作のような暗い町にするつもりはありませんが。

因みに、主人公の師匠的な人は特徴だけで名前だけは明かしません。多分赤い帽子ってだけで分かるとは思いますが、伝説的な人と言う事で名前表記は控えます。一応同じマサラ出身なので面倒見てもらった兄貴的存在って設定(のつもり)です。元から原作とかけ離れているのでご了承ください。後付け設定?何のことかな?

ではでは、また次回お会いしましょうノシ


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VSタマムシジム!思いを込めて!

なんか日に日に話が長くなっていくなと思いながら完成させました。バトル回だとどうしても長くなるので仕方ないですかね。それに今回は初の3対3のバトルなので余計ですね。

まあ何はともあれ無事完成はしたので楽しんでいただけたら幸いです。

そう言えば次回作のポケモンはレッツゴーイーブイなのだとか。買う以外の選択肢がないのですがね。恐らくピカチュウ版がモデルなので進化は出来ないでしょうが可愛いので問題ないです。


「ここがタマムシシティ……ですか?」

 

旅を続けていたシンジとリーリエは無事に目的地であるタマムシシティへと辿り着いた。そしてリーリエは、そのタマムシシティの予想以上の活気に驚いていた。

 

「タマムシシティにはジムは勿論、大きなタマムシデパートやゲームセンター、他の街にはない娯楽施設が並んでいるんだ。ヤマブキシティとは違った理由でここに立ち寄る人も多いみたいだよ。」

 

シンジはタマムシシティの概要を軽く説明した。ヤマブキシティは多くのビルが立ち並んでいるのに対し、タマムシシティは大きなデパートに加え、他の街では見ることのないゲームセンターなどの珍しい施設が並んでいる。しかしそんな中、リーリエは一つ疑問に思うことがあった。

 

「あ、あの、ポケモンジムが見当たらないのですが……」

 

リーリエの言った通りポケモンジムと思われる建物が見当たらないのだ。確かに見たことのない建物は多くあるが、見慣れているはずのポケモンジムが見当たらないのは不自然である。そこでシンジはやっぱりと言った表情でリーリエの質問に答える。

 

「ポケモンジムならあそこだよ。」

 

リーリエはシンジが指を指した方角を確かめる。するとそこにあったのは、色んな種類の花が活けて並んである一軒の建物であった。その建物の周囲はガラス張りであるため中が見えるようにはなっているが、外に並んである花が邪魔をして中身を覗くことが出来ない状態だ。

 

「エリカさんはタマムシジムのジムリーダーであると同時に、生け花教室の先生でもあるんだ。」

「え!?そうだったんですか!?」

 

シンジの言う通り、エリカはジムリーダーと兼任して生け花教室を開き生徒たちに和の素晴らしさ、心を伝えている。エリカ自身も和の心が育ってくれることは大変うれしいようで、自ら進んで生け花教室を開いたそうだ。生徒たちも先生として彼女の事をよく慕っているのだとか。

 

リーリエたちは早速ポケモンジムに挑戦しようとタマムシジムへと足を運んだ。ジムのドアを開けると辺り一面には緑が広がっていた。まるで自然に包み込まれたかのような光景に、リーリエはどこか心打たれた。

 

目の前を見ると、そこにはエリカと彼女の生徒と思われる女性が正座の状態でこちらを見つめていた。生徒たちの服も、全員エリカのような和服を着こなしており、全員が様になっている印象だ。恐らく皆、普段から着こなしているためその服と姿勢こそが自然体となっているのだろう。

 

「ようこそ、タマムシジムへお越しくださいました。」

『ようこそ、タマムシジムへ。』

 

エリカが床に手をつきゆっくりと頭を下げ一礼する。そんなエリカに続く形で、生徒たちも同じ動作で一礼をする。その動きはとても丁寧で洗礼されている動きであり、エリカによって生徒全員に基本的な動作から叩きこまれたようだった。

 

「あっ、えっと、よ、よろしくお願いします。」

「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ。」

 

リーリエがどう反応すればいいのか戸惑っていたところ、エリカはクスクスと微笑み肩の力を抜くように言葉をかける。

 

「これは私共にとっての挨拶です。リーリエさん、貴女はいつもの貴女で振舞えばよいのですよ。」

 

エリカにそう言われ一安心するリーリエ。お嬢様としての動きであれば自然と身に着いてはいるかもしれないが、エリカのような動作は当然慣れてなどいない。動きと言うものは普段から触れていなければ体に染みつかないため仕方のない事だ。

 

「リーリエさんはポケモンバトルに挑戦しに来られたのでしょう?それではこちらにどうぞ。」

「は、はい!」

 

エリカはそう言うと同時にゆっくりと立ち上がり、リーリエたちを生徒と共にバトルフィールドへと案内する。その一挙一動が美しく、彼女ほど華麗と言う言葉が似合う女性は中々いないだろう。女性であるリーリエでさえ見惚れてしまうほどだ。

 

リーリエとシンジはエリカに案内され、バトルフィールドへと辿り着く。そのバトルフィールド自体は特に変わりはないが、周囲には植物たちが生い茂っており植物たちに囲まれている状態だ。まるで森の中にでもいるかのようだ。自然を愛し、くさタイプを愛している彼女だからこそのジムという事なのだろう。

 

「では早速始めましょうか。」

「はい!よろしくお願いします!」

 

シンジはいつものようにバトルフィールドの外で見守ろうと下がる。生徒たちも尊敬する先生であるエリカを応援するかのように黙って見守っていた。すると生徒の一人が審判を務めるために定位置に着き手をあげ、声を発した。

 

「ただいまより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダーエリカによるジム戦を行います!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になれば、バトル終了となります!尚、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!では両者、ポケモンを!」

 

審判の合図と同時に、2人はモンスターボールを手に取る。

 

「優雅に美しく、出番です!モンジャラ!」

『モジャ』

「やっぱりモンジャラさんで来ましたね。お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

エリカが最初に繰り出したのはモンジャラだった。対してリーリエが選んだのはフシギソウだ。同じくさタイプのポケモンだが、どくタイプを持つフシギソウの方がタイプでは有利。しかし、それだけで通用しないことは前日のシンジとの戦いで把握している。ならば彼女には別の考えがあるのだろう。

 

「それでは、バトルはじめ!」

「フシギソウさん!とっしんです!」

 

審判の合図を確認した瞬間に動いたのはまさかのリーリエだった。いつもの彼女とは少し立ち上がり方が違うが、それでもエリカは一切動じることはなく、ただフシギソウとリーリエの事を見つめていた。

 

「……ふふ、モンジャラ、はたきおとすです。」

 

モンジャラはツルを伸ばし、フシギソウの動きを止めようと正面からはたきおとすをぶつけてきた。しかし、リーリエは以前見ていたからか冷静に対処の指示を出した。

 

「ジャンプしてつるのムチです!」

 

フシギソウはとっしんの勢いを殺すことなく、はたきおとすをジャンプで躱す。するとすかさずにつるのムチでモンジャラに反撃した。その攻撃は見事命中し、モンジャラはダメージを受け後ろに下がった。その一連の流れは以前のシンジとの特訓を活かした見事な動きであった。

 

「見事な動きでしたね。ですがまだまだこれからですよ。私たちの楽園へと招待しましょう。グラスフィールド!」

 

エリカの合図と同時にフィールドが緑の草で生い茂る。グラスフィールド内ではくさタイプの技の威力が上がり、少しずつだが地上に足の着いたポケモンたちの傷が癒える不思議な技だ。まさにくさタイプの楽園と言う言葉が相応しいだろう。

 

「これで互いに有利なフィールドになりました。今度はこちらから参ります!つるのムチ!」

「こちらもつるのムチです!」

 

互いのつるのムチが中央で交差する。互いの技がグラスフィールドによって強化されているため、互いの技は拮抗していると言ってよい。つるのムチはお互い弾かれ、エリカは次の行動へと移った。

 

「はたきおとすです!」

「とっしんです!」

 

モンジャラのはたきおとすが再びフシギソウを襲う。フシギソウは正面からとっしんで迎え撃ち、綺麗に躱しモンジャラへと接近する。だが、エリカもそう易々と近付かせてくれるはずもなかった。

 

「連続ではたきおとすです!」

 

次にとった行動はなんとはたきおとすの連続だった。モンジャラからに絡みついている無数の触手は途切れることを知らず、複数の触手がフシギソウを止めようと襲い掛かる。フシギソウも何度か躱すことに成功するが、躱しきることは出来ずにはじき返されてしまった。

 

フシギソウは頭を横に数回振り、ダメージを誤魔化すようにモンジャラを見る。その時、モンジャラとフシギソウの体が一瞬緑色に光った。グラスフィールドの効果で互いの体力が回復したのだ。

 

「では続けてはっぱカッターです!」

「はたきおとすで撃ち落としてください!」

 

フシギソウの放ったはっぱカッターを、モンジャラは微動だにすることなく次々と撃ち落としていく。

 

「シンジさんと戦ってなければ、私はここで動揺していたでしょうね。」

 

シンジに全く同じように技を撃ち落とされた経験をしていたからこそ、リーリエは驚く素振りを一切見せなかった。そしてリーリエは思いついたようにエリカが驚くような指示を出したのだ。

 

「やどりぎのタネです!」

「!?やどりぎのタネはくさタイプには効果は……」

 

そう思ったエリカだったが、次のリーリエの言葉で更に驚くこととなったのだ。

 

「モンジャラさんの足元に撃ち込んでください!」

「!?」

 

リーリエの指示通り、フシギソウはモンジャラの足元に背中の種から出したやどりぎのタネを放出する。地面に埋め込まれた種は大きなツルとなり、モンジャラの前にそびえたった。

 

「今です!はっぱカッターです!」

 

フシギソウははっぱカッターによりツルごとモンジャラを切り裂いた。グラスフィールドの影響もあり威力の上がっているはっぱカッターは見事対象を切り裂き、モンジャラは遂に倒れてしまう。

 

「……あっ、モンジャラ戦闘不能!フシギソウの勝ちです!」

「お疲れさまでした、後はゆっくりお休みください。」

 

エリカはモンジャラに労いの言葉をかけモンスターボールへと戻す。そしてエリカは誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「先ほどの戦術、誰かさんに感化されたのですかね。ふふ、本当に不思議な方です。」

 

エリカの言う通り、さっきの戦術は以前シンジとの戦いで教わったものだ。例え相手に効果がなくても、使い方次第では新しい戦術になる、その言葉を覚えていたのだ。ポケモンを信じていたからこそできた戦術だろう。自分でもこれだけ思い切った戦術が果たしてできるのかどうか、不安な気持ちも僅かながら抱いていたのが正直なところだが。

 

そしてリーリエがフシギソウを選択した理由がもう一つある。それはモンジャラの危険な戦術を避けることだ。以前リーリエはモンジャラの戦闘を横で拝見していた。その時にモンジャラの使用した技がしびれごなだ。しびれごなは相手を麻痺状態にしてしまう強力な技だが、くさタイプのポケモンには一切効果がない。それも考慮しての戦略であったが、別の意味でもフシギソウを選抜したのは正解だったようだ。

 

「では私の二番手です。優雅に参ります、ロゼリア!」

『ロゼ!』

「!?あのポケモンさんは……」

 

リーリエは初めてみるポケモンをポケモン図鑑により確認しようと取り出す。

 

『ロゼリア、いばらポケモン。スボミーの進化形。両手の花からはいい香りがするが、花の棘には猛毒がある。花の香りには人をリラックスさせる効果もある。』

 

ロゼリアはフシギソウと同じくさとどくの複合タイプだ。だがモンジャラと違いロゼリアがどんな戦い方をするか分からない以上、ここはこのままバトルを進めるのが無難だとリーリエは判断した。それにグラスフィールドが継続していることも考慮すると、くさタイプのフシギソウに任せるのが最適解かもしれない。

 

「ロゼリア!マジカルリーフです!」

「はっぱカッターで迎え撃ってください!」

 

マジカルリーフとはっぱカッターが正面からぶつかり合う。互いにグラスフィールドで強化されているが、今度は拮抗状態にとはいかなかった。はっぱカッターは見事撃ち落とされてしまい、貫いたマジカルリーフがフシギソウへと命中してしまう。

 

「!?フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウは大きなダメージを喰らってしまうものの、まだまだ行けると言う意思を見せながら立ち上がる。その後フシギソウはグラスフィールドの効果によって僅かに体力を回復する。だが……

 

「華麗に力強く、はなふぶき!」

 

ロゼリアが正面に両手の花を構えると、花から無数の花びらが文字通り花吹雪を巻き起こした。そのはなふぶきは容赦なくフシギソウを包み込み、空中へと打ち上げる。はなふぶきから解放されたフシギソウは、流石に耐え切れずに目を回し戦闘不能となる。それと同時に、グラスフィールドも消えてなくなった。

 

『ソウ……ソウ……』

「フシギソウ戦闘不能!ロゼリアの勝ち!」

「お疲れさまでした、ゆっくり休んでください。」

「次はどのポケモンを繰り出すのか、どのような戦術をとるのか、私としてもとても楽しみになってまいりました。」

 

エリカの言葉にリーリエは緊張した様子でエリカの姿を見据えた。想像はしていたがやはりかなりの強敵だという事を実感したのだろう。だが、絶対に勝つのだと言う強い意志を示し、次のモンスターボールを手にする。

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラミ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラーミィだった。エリカはチラーミィの眼を見ると、どこか嬉しそうに微笑んだ。

 

「皆さんいい眼をしています。とっても輝いています。」

「ありがとうございます!みんなは私にとって大切なパートナーたちですから!」

「そうですか。ですがだからと言って私は手を抜くことは致しません。全力で戦いますよ。」

 

エリカは自身の告げたその言葉と同時に動き出した。

 

「ロゼリア!エナジーボール!」

「スピードスターです!」

 

ロゼリアがエナジーボールを放つと、チラーミィはスピードスターで反撃した。中央で互いの技がぶつかり爆発するが、エナジーボールの威力の方が勝っておりスピードスターを貫通した。チラーミィは自慢の身のこなしでエナジーボールを回避する。

 

「グラスフィールドの恩恵がない状態でもこの威力。やはり強いです!」

 

ロゼリアはチラーミィに休む暇を与えずに攻撃を続ける。

 

「続けてマジカルリーフ!」

 

ロゼリアは立て続けにマジカルリーフで攻める。マジカルリーフは命中率が限りなく高く、回避が非常に困難な技だ。闇雲に突進してはただ餌食になるだけだろう。そこでリーリエは1つの考えが浮かんだ。賭けになってしまうが、それでもこれが一番最適だと信じ行動に移す。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!地面にぶつけてください!」

「っ!?地面にスピードスター!?」

 

エリカも予想外の行動に再び驚き目を見開く。チラーミィはリーリエの言う通りにスピードスターを地面に向かって放った。するとスピードスターによる衝撃で地面の砂が巻き上げられ、マジカルリーフを防ぐ壁となった。先ほどの戦法の応用版と言ったところだ。シンジのグレイシアが行ったシャドーボールを思い出し、もしかしたらとこの考えに至ったのだろう。

 

「う、上手くいきました!」

 

内心ヒヤッとしていたリーリエだが、自分の考えが上手くいきホッとする。エリカは呆気にとられるかのように呆然とする。そして今度はこちらの番だと言うように攻撃を仕掛けた。

 

「おうふくビンタです!」

 

チラーミィはその突進力を活かし、唖然とするロゼリアに急接近する。チラーミィの左右から交互に繰り出されるおうふくビンタをまともにくらい、ロゼリアは後方に下がる。

 

「今です!スピードスター!」

 

ダメージを負い怯んだロゼリアに、怒涛の追撃であるスピードスターが容赦なく襲った。ロゼリアもそのままダウンし、戦闘不能の状態となる。

 

『ろ、ロゼェ……』

「ろ、ロゼリア戦闘不能!チラーミィの勝ち!」

 

健闘したロゼリアモンスターボールに戻したエリカは、笑顔で感謝の気持ちを呟く。余程自分のポケモンが大事なのか、まるで包み込むかのようにモンスターボールを抱きしめ眼を瞑り気持ちを伝える。その姿からは深い愛情を感じさせていた。

 

「では最後のポケモンです。私の最高のパートナーはこの子です!」

 

エリカのその言葉を聞いたリーリエは喉をゴクリと鳴らす。ロゼリアでさえ強敵であったのに、それ以上のポケモンが一体何なのだろうかとリーリエに緊張が走る。

 

エリカは自信のある笑みを浮かべ、モンスターボールを上空に投げた。そしてモンスターボールから繰り出されたポケモンは……

 

『ハァナ!』

 

そのポケモンはキレイハナであった。可愛らしいその見た目からは威圧感などは感じられない。だが、正面に立つとその強さはひしひしと感じられる。リーリエは気を緩めぬように手をグッと握りしめ気合を入れる。

 

『キレイハナ、フラワーポケモン。クサイハナの進化形。太陽の光を浴びると花びらが色づく性質がある。キレイハナのダンスは太陽を呼ぶ儀式とも言われている。』

 

「マジカルリーフ!」

「!?もう一度スピードスターで防いでください!」

 

キレイハナはマジカルリーフを放つも、それはロゼリアの時と同じようにスピードスターを叩きつけ砂を巻き上げる形で再び防ぐ。しかしリーリエには疑問に思うことがあった。先ほども同じ方法で防がれたのにもかかわらず、また同じ攻撃を仕掛けてきたことが不思議に感じたのだ。だがその疑問もエリカの次なる行動で自然と消えていった。

 

「続けてリーフストーム!」

 

キレイハナは更にリーフストームでの追撃を仕掛ける。流石のチラーミィも咄嗟の回避を行うことが出来ずに正面からまともにくらってしまう。リーフストームははっぱカッターやマジカルリーフに似てはいるが、それらよりもはるかに威力が高く強力なくさタイプの技だ。チラーミィもこのダメージはただでは済まないだろう。

 

この防御方法は確かに強力ではあるが、その反面に最大の欠点もある。それは自らの視界までも悪くしてしまうところだ。砂を巻き上げることで相手の技の威力を殺すのと同時に、その一瞬だけ相手の姿が砂で隠れてしまう。熟練されたポケモンであれば、その一瞬の隙を突いて攻撃を決めることが出来るだろう。今回は見事その僅かな弱点を突かれてしまったと言う事だ。同じ手は二度も通じるほど甘い相手ではないと言う事をリーリエは痛感した。

 

「チラーミィさん!?」

『チ、チラ……み……』

 

チラーミィもリーリエの声に反応してなんとか起き上がろうとする。だが足に上手く力が入らず、再び地面に伏せてしまう。

 

「これでラストです。ソーラービーム!」

 

エリカの合図とともにキレイハナはエネルギーを溜め込む。くさタイプ最大の大技、ソーラービームだ。リーリエは焦る様にチラーミィに呼びかける。

 

「チラ―ミィさん!逃げてください!」

 

しかしやはりチラーミィは立ち上がることが出来ない。もし立ち上がれたとしても技を出すことはおろか、回避行動すらも困難だろう。だが今のリーリエには冷静な判断が出来ないぐらいパニックになってしまっている。

 

「発射です!」

『ハナァァァァァ!!』

 

エリカの声に合わせキレイハナはソーラービームを放つ。ソーラービームはチラーミィに直撃し、チラーミィは大きく吹き飛ばされた。当然その威力は計り知れず、チラーミィは戦闘不能となってしまう。

 

「チラーミィさん!?」

『チラァ……』

「チラーミィ戦闘不能!キレイハナの勝ち!」

 

チラーミィをモンスターボールへ戻したリーリエは一言チラーミィに謝るが、その後すぐに感謝してゆっくり休むように伝える。そして遂に、リーリエの手持ちも残り最後となった。

 

「最後のポケモンはあの子でしょうか?」

「……私の最後のポケモンさんは……!?」

 

リーリエはシロンの入ったボールを手にし、それを投げようとする。しかしその時、突然もう一つのモンスターボールが開き中からポケモンが姿を現した。

 

『リル、リルル!』

「る、ルリリさん!?」

 

突然勝手に出てきたルリリに戸惑うリーリエだが、ルリリはリーリエに何かを訴えかけていた。

 

「も、もしかして自分が戦う……と言っているのですか?」

『ルリ!リルル!』

 

どうやらリーリエの言ったことは正しいようで、ルリリも大きく頷き“そうだ”と答える。しかしリーリエは迷った。ルリリをこのまま戦闘に出してしまってもいいのかと。相手はあの強敵エリカである。その上くさタイプのキレイハナにルリリのみず技は効果が薄い。戦い慣れていないルリリを出しても勝ち目を無いに等しいだろう。

 

『ルリル!リルルリ!』

 

リーリエは最初は断ろうとした。しかし、リーリエの導き出した答えは……

 

「……分かりました。ルリリさん、あなたに任せます!」

『!?リルル!』

 

リーリエはそう決断した。相手がくさタイプであるならば、圧倒的にこおりタイプのシロンを出した方が有利だろう。それにルリリは戦いにはほぼ無縁だ。誰がどう見ても無謀な挑戦だ。

 

しかしそれでもリーリエはルリリに任せると言った。それはルリリの眼に覚悟を感じたからだ。その内側に秘めた闘志は本物だろうとリーリエは感じ取った。ならばルリリに任せても良いのではないか、と判断したのだ。

 

「最後はルリリに決めましたか。ですが遠慮はしませんよ。」

「望むところです!ルリリさん!バブルこうせん!」

「マジカルリーフ!」

 

ルリリはバブルこうせんを真っ直ぐ放つ。しかし、キレイハナの放ったマジカルリーフに無残にも散らされてしまった。ルリリは回避できず、マジカルリーフの直撃をくらってしまう。

 

「ルリリさん!?」

『る、ルリ!』

 

マジカルリーフをまともに受けてしまったルリリだが、それでもリーリエの声に応えるように立ちあがる。その姿にホッとしたリーリエは続けて攻撃の指示を出す。

 

「もう一度バブルこうせんです!」

「リーフストーム!」

 

再び諦めずにルリリはバブルこうせんで抵抗する。だが今度はさらに強力なリーフストームがバブルこうせんを阻み、ルリリは手も足も出ずにまた吹き飛ばされてしまった。

 

「ルリリさん!?」

 

リーリエはルリリに呼びかけるも、ルリリうつ伏せで倒れたまま反応しない。もしや戦闘不能になってしまったのかとリーリエは不安になる。

 

「ルリリ!戦闘不……」

「待ちなさい。」

「え?」

 

ルリリが戦闘不能となったと判断した生徒は勝敗を宣言しようと声を出すが、その声はエリカによって阻まれた。そのエリカの言葉と同時に、ルリリはゆっくりと立ち上がる。どうやらまだ戦闘不能には至っていないようだ。

 

「!?ルリリさん!」

『る、り……リルル!』

 

リーリエはそんなルリリの姿を見ると、ある事に気付いた。そう、ルリリの眼はまだ死んでいなかったのだ。これだけボロボロになっても、まだリーリエの事を信じ、諦めない意志をあらわにしている。その時、リーリエは以前シンジに言われた言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

――『最後の最後まで自分のポケモンたちを信じること。そしてポケモンたちの信じる自分を信じること。』

 

 

 

 

 

リーリエはその言葉を思い返し、自分もルリリが諦めないのであれば自分も弱気になんてなっていられないと感じる。リーリエはそう思い、ルリリに呼びかける。

 

「ルリリさん!」

『ルリ?』

「私はあなたを信じています!なのであなたも私を信じてください!」

『!?リル!』

 

リーリエの言葉を聞いたルリリは強く頷く。すると同時にルリリの体が青白く光りはじめた。リーリエを含むこの場にいる全ての者が驚く。この土壇場の状況でルリリが進化しようとしているのだ。

 

「!?まさかこの状況で進化ですか!?」

 

エリカはそう驚きの声をあげる。そしてルリリは少しずつ姿を変えていき、遂にルリリを包んでいた光が解き放たれた。そこにいたのはルリリの進化した姿であった。

 

『リル!』

「こ、これは……」

 

リーリエは驚き言葉を失うが、それでもポケモン図鑑を開き姿を変えたルリリの詳細を確認する。

 

『マリル、みずねずみポケモン。ルリリの進化形。水を弾く体毛に覆われており、水の抵抗を受けずに泳ぐことが出来る。尻尾の先端には油が詰まっており、浮袋の役割も果たしている。』

 

「マリル……さん……?進化……進化したんですね!」

『リルリル!』

「おめでとうございます。このタイミングで進化するとは思いませんでした。」

 

リーリエの言葉にマリルも嬉しそうに跳ねる。エリカもそんな二人を祝福する。

 

マリルの進化条件はルリリが充分に懐いていること。ルリリはリーリエの気持ちに応えようとした結果がこうして進化と言う形に実を結んだのだろう。

 

「ですがまだバトルは継続中です。」

「はい!マリルさん、行きますよ!」

『リル!』

「キレイハナ、油断せず華麗に参りましょう。」

『ハナ!』

 

互いに気を引き締め、再びバトルを続行する意思を示す。そして先に動いたのはエリカとキレイハナであった。

 

「マジカルリーフです!」

「バブルこうせんで迎え撃ってください!」

 

マジカルリーフで攻撃を仕掛けるキレイハナに対し、マリルはバブルこうせんで対抗しようとする。しかし、マリルが繰り出したのはバブルこうせんではなかった。

 

マリルは尻尾に水に力を溜め込み、薙ぎ払うように振りかざしてマジカルリーフを全て撃ち落したのだ。今の技はリーリエも見た覚えがある。カスミのギャラドスやブルーのカメールが使ってきた技と同じだったのだ。

 

「今のは……マリルさん!アクアテールを覚えたのですね!?」

『リルル!』

 

マリルの新しく覚えた技はアクアテールだ。エリカも進化、新技と立て続けに起こる現象を見て驚きの連続ではあるが、それは以前見た誰かとの戦いにそっくりだと懐かしさを感じた。

 

「でしたら次はリーフストームです!」

「ジャンプして躱してください!」

 

リーフストームが正面から接近してくるが、マリルはそれをジャンプすることによって躱す。そしてすかさずに反撃を繰り出した。

 

「アクアテールです!」

 

そのまま空中から尻尾を振りかざしアクアテールを放つ。キレイハナはそのアクアテールが生み出した渦に包まれ飛ばされ確実なダメージを受ける。

 

「っ!?マジカルリーフ!」

「バブルこうせん!」

 

そして再びマジカルリーフとバブルこうせんが中央でぶつかり合う。しかし今回は一方的な展開にならず、互いの攻撃は拮抗し相殺された。進化したことにより攻撃力も上昇したようだ。普段は冷静なエリカでさえ焦りを隠しきれていない。

 

「でしたらこれで決めます!ソーラービーム!」

 

キレイハナはソーラービームを発射するために力を溜める。マリルも大技が来ることを警戒するが、戦い慣れていないマリルは今の怒涛の攻撃でかなりのスタミナを消費している。そしてキレイハナのチャージが完了し……

 

「発射です!」

『ハナァァァァァ!!』

 

キレイハナは全力の力でソーラービームを放つ。しかしその瞬間、キレイハナに異変が起きた。先ほどのアクアテールによるダメージが予想以上に大きく、ソーラービームの反動に耐え切れずに僅かに、ほんの僅かだが態勢を崩してしまった。それにより、ソーラービームの軌道が微妙に逸れてしまったのだ。

 

「!?躱してください!」

 

ソーラービームの軌道が逸れた事をリーリエは見逃さず、マリルに回避の指示を出す。マリルは体を少しずらす事によりソーラービームが擦れるように回避する。強大なソーラービームの反動により動けない状態のキレイハナに対し、最後の力を振り絞りマリルは攻撃を仕掛けた。

 

「これで決めます!アクアテールです!」

『リルルゥ!』

 

最大の力と思いを込め放ったアクアテールは再びキレイハナを包み込み、大きく後ろへと吹き飛ばした。キレイハナはあおむけの状態で倒れ、疲労とダメージの蓄積により遂に目を回し戦闘不能となる。

 

「!?キレイハナ!」

『ハ……ナァ……』

「き、キレイハナ戦闘不能!マリルの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

 

そして審判を務めてい生徒のコールにより、激戦のジムバトルは終結した。

 

「勝った……勝ちました!やりました!マリルさん!」

『リルリル!』

 

リーリエは奇跡的な勝利に喜びを隠せず、マリルはリーリエの期待に答えられたことに嬉しさを感じ思わず彼女の元へと飛び込む。

 

「キレイハナ、お疲れさまでした。ゆっくりお休みください。」

 

エリカはキレイハナをモンスターボールへと戻し、ゆっくりとリーリエの元へと近付く。

 

「お見事でした、リーリエさん。」

「エリカさん。」

「ポケモンと信頼しあう心、諦めない気持ち、全て見せていただきました。貴女はこれを受け取るに相応しいトレーナーでしょう。」

 

エリカはそう言い、生徒の持ってきたジムバッジを受け取りリーリエに差し出した。そのジムバッジは花びらの形をしており、それぞれの色が違う色で塗られているためまるで虹のようであった。

 

「これがタマムシジム勝利の証、レインボーバッジです。」

「これがレインボーバッジ……ありがとうございます!」

 

リーリエはエリカから渡されたレインボーバッジを受け取り、マリルと共に掲げて喜んだ。

 

「レインボーバッジ、ゲットです!」

『リルル!』

「おめでとう、リーリエ。素晴らしいバトルだったよ。」

「シンジさん!シンジさんも応援ありがとうございます!」

 

リーリエとマリルがポーズを決め喜んでいると、シンジが拍手をしながら称賛し近づいてきた。リーリエもそんな彼に感謝すると、マリルがシンジに笑顔で飛びついた。ルリリの時は飛びつくようなことはなかったが、これも進化した影響なのかもしれない。進化すると性格の変わるポケモンもいる事例があるため不思議ではないだろう。

 

「次に行くジムは決めていますか?」

「いえ、ヤマブキジムに再挑戦したいとは思っていますが。」

「再挑戦?という事は一度負けてしまったという事ですか?」

「はい、あの時は残念ながら手も足も出ませんでした。」

 

前回の敗北をリーリエは思い返しながらエリカに話す。エリカもヤマブキジムの強さをよく知っているため、自分の事のようにリーリエに同情する。

 

「でしたら一度セキチクシティのセキチクジムに挑まれてはどうですか?」

「セキチクジム……ですか?」

「ヤマブキジムで勝利するには、もっと経験を積んだ方がよろしいでしょう。セキチクシティであればサファリゾーンと呼ばれる施設もあります。そこでは珍しいポケモンがゲットできるので、戦力の増加にも繋がるのではないでしょうか?」

 

リーリエはエリカの話を聞くと、確かに今ヤマブキジムに挑んでも勝算は低い。ならば経験を積み、パーティの強化を優先するべきかもしれないと、エリカの言葉に従うのが最も最適かもしれないと考えた。

 

「シンジさん、エリカさんの言う通りセキチクシティに行ってみたいと思いますがいいですか?」

「勿論いいよ。次の目的地はセキチクシティに決定だね。」

 

シンジもリーリエの意見に快く承諾してくれた。こうしてリーリエたちは次の目的地をセキチクシティに決定し、セキチクシティへと向かうことにした。リーリエは色々とお世話になったエリカに別れを告げ、タマムシジムを後にする。リーリエとシンジの旅はまだまだ続く!




と言うわけでルリリはマリルに進化しました!マリル系はみんな可愛い。ただ最終進化は環境に入れるくらいには強い。つまりリーリエのパーティはガチ……ゲフンゲフン。

意見箱にて再びコメをいただきました。今回は感謝、質問、雑談に近い内容でしたのでそちらにて返答しましたが、質問関連は本編のあとがき辺りでも答えようかと思います。リクエストも意見箱で返答した方がいいですかね?まあ追々考えていこうかと思います。

では今回の質問ですが、4つ以上の技を覚えさせたりはしないのか、と言う内容でした。自分の中では覚えさせないつもりです。理由はルールだけは忠実に再現させたいからです。いくら元が強いからとは言え技を5つ覚えてしまっては少々不公平なので。他の方々が書かれた小説ではオリジナル技であったり、技を5つ覚えていたりするものもあるようですが、自分はアニメ準拠の再現をしたいと思っています。楽しみにしている方がいたら申し訳ないですが、どうかご了承くださいm(_ _)m

そう言えばアニメのピカ様が久しぶりに新技習得しましたね。てっきりボルテッカー復活かと思いきやエレキネットでした。まあボルテッカーは作画的にかなり大変だと思うので無理は言いませんが、やっぱりもう一回見たい気持ちはあったりします。BWエレキボール以来なので7年ぶりだそうです。

因みにかみなりは1億ボルト程あるとかなんとか。つまり1000万ボルトはかみなりに……


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前へ進む人、変わるふたり

はい、無事書き終えました。と言っても今回は珍しく二人の話ではなくアローラでの出来事を書いてみました。書こうとは思っていましたが、いつ書こうか迷った挙句、シオンタウンの話が全く思いつかなかったためここで挟みました。もしかしたらシオンタウンの話を書かない可能性が……。


「……そうか、分かった。ビッケ、引き続き調査を続けてくれ。」

「畏まりました、グラジオ代表。」

 

俺、グラジオは代表である母様の代理としてエーテル財団を率いている。今は俺の側近として働いてくれているビッケにある調査を依頼したところだ。

 

「グラジオ坊ちゃん、少々よろしいですか?」

「……ザオボ―、その呼び方はやめろと言っているだろう。」

「それは申し訳ありません。私にとって坊ちゃんはいつまでも坊ちゃんですから。」

 

この緑色の大きく特徴的なサングラス身に着けている男はザオボ―。正直言って俺はこいつを信用していない。以前エーテル財団での騒動の時、こいつは俺たちの事を平気で裏切っていた。母様がウツロイドの神経毒に侵されていたからと言って許される行為ではない。それに……こいつが過去に、ヌルにやった行いを、俺は許すことは出来ない。

 

「……まあいい。ザオボ―、俺に何の用だ?」

「最近何やら調査をされているようですね?」

「ああ、ウルトラホールの調査の事か。」

 

ザオボ―の言う通り、俺は今ウルトラホールの調査を部下たちに依頼している。あの事件以来UB(ウルトラビースト)が姿を現していないとはいえ、いつまたあいつらがこのアローラにやってくるか分からない。もしもの時のためにも、UBの事は知っておかなくては対処のしようがないしな。

 

それに、いつまでもアイツに頼ってばかりって訳にもいかないからな。

 

「そうですそうです。ウルトラホールの調査をしていることは私もご存知です。」

「それがどうかしたのか?」

「ではなぜ私には声を掛けて下さらなかったのですか?」

 

こいつはどうやらウルトラホールの調査に加われなかったことを根に持っているようだ。そんな小さなことのために俺の元を訪れるとは、相変わらず器の小さな奴だ。

 

「私も調査の一員に入れて下されば、必ずや成果を出して見せます。私の出s……ではなく、エーテル財団のためにも私を調査に加えた方がよいと思われます。」

 

全く、こいつは本当に考えが読みやすいな。こいつの事は気に入らないが、考えがすぐに表に出やすい事に関しては感謝するべきか。

 

「それには及ばない。」

「それはどういうことですか?」

「既に協力者は手配している。ビッケや一部の財団員に含め、ポケモン研究家のククイ博士に加え、空間研究所所長のバーネット博士にも依頼した。お前が心配することではない。」

「ぐぬぬ……。」

 

バーネット博士はククイ博士の妻であり、ウルトラホールやUBを含む空間に関わる研究をしている。彼女もよく財団に顔を出すため、この話を聞いたバーネット博士が自ら志願したのだ。俺自身その申し出には断る理由がなく、過去にリーリエが世話になったことを知っているため彼女の人柄は信用に値するだろう。

 

ザオボ―は悔しそうに歯をギリギリと鳴らしながら代表室を後にした。

 

「……俺もたまには外に出るか。」

 

一通りの仕事を終えた俺は息抜きのために少し外へと出かけようと代表室を出た。代表としての務めは嫌いではないが、ザオボ―のような奴を相手にすると流石の俺でも少し疲れる。ふっ、偶に旅をしているあいつらが羨ましく感じるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エーテル財団の外へと出た俺がやってきたのはメレメレ島だ。偶にはあいつに会うのも一興だろう。

 

「ハリテヤマ!つっぱりです!」

「アシレーヌ!アクアジェット!」

 

メレメレ島のリリィタウンを訪れた俺が初めに目にしたのは、2人のトレーナーがポケモンバトルをしている姿だった。バトルフィールドの中央にてハリテヤマとアシレーヌが正面からぶつかる。左手でハリテヤマがアシレーヌを押さえていると、続けて空いている右手でアシレーヌを押し返す。アシレーヌはその一撃に跳ね返され、戦闘不能となった。

 

「アシレーヌ!?」

「そこまで、のようですな。」

 

どうやら今ので決着がついたようだ。そのタイミングを見た俺は、2人の元へと近付いた。

 

「悪くないバトルだったな、ミヅキ。」

「グラジオ君!?どうしてここに?」

 

俺が声を掛けた相手、ミヅキは目を見開き驚く。人の顔を見て驚くとは相変わらず失礼な奴だ。だが、こいつの事は何故か嫌いになれないな。

 

「偶々立ち寄っただけだ。」

「そうなの?もしかして今の戦い見てた?」

「最後だけだがな。」

「そうなんだ。でもやっぱりおじいちゃんには敵わないや。」

 

ミヅキはそう言い、ハリテヤマと共に歩いてくる人物へと目を移す。

 

「ハッハッハ!まだまだ孫に負けるわけには行きませんですから!」

 

ハリテヤマのトレーナー、ハラさんはそう言いながら大笑いする。ハラさんは四天王の1人であり、その強さは四天王として恥じないほどの実力者だ。俺でも勝てるかどうかは怪しいだろう。

 

「ハラさん、ご無沙汰してます。」

「グラジオ、久しぶりですな。今日はいかがされたかな?」

「いえ、今回はただ立ち寄っただけです。」

「そうですか。ならばゆっくりとしていくといいですぞ。」

 

俺の言葉に納得したようにハラさんが頷いた。その時、今度はミヅキが俺に声を掛けてきた。

 

「そう言えばエーテル財団の調子はどう?グラジオ代表。」

「その呼び方はやめてくれ。俺には合わない。」

 

恥ずかしいからと言う意味ではない。エーテル財団の代表は俺よりも、母様にこそ似合う称号だ。その時が来れば、俺は母様に再び代表について欲しいと考えている。それこそがエーテル財団のためにも、アローラのためにもなるだろう。

 

「あはは、ごめんごめん。」

「……エーテル財団は順調だ。以前に比べ、信頼も活気も戻りつつある。」

「そっか。グラジオ君も頑張ってるんだね。」

「お前こそ、しまクイーンとしての仕事はどうなんだ?」

 

以前メレメレ島のしまキングを務めていたハラさんに代わり、今ではミヅキがしまクイーンとして活動している。エーテル財団の代表を務めている俺が言うのもなんだが、しまクイーンとしての役職も簡単にいくものではないだろう。

 

「うん!こっちは楽しくさせてもらってるよ。島の人たちもよくしてくれるし、おじいちゃんも色々と教えてくれてるからね。」

「ふっ、そうか。」

「グラジオ君、なんだか変わったよね。」

「?そうか?」

 

ミヅキに変わったと言われたが、俺には見当がつかなかった。それほど変わったという自覚なんてない。俺が疑問に感じていると、ミヅキがその疑問に答えるように言葉を続けた。

 

「だって最初に会った時はムスッとしてたのに、今ではよく笑うようになったんだもん。なんだか人が変わったみたい!」

「……ほっとけ。」

 

ミヅキはニヤニヤしながらこちらを見る。俺は何だか気恥ずかしくなり顔をそむけた。

 

だがミヅキの言うように俺は変わったのかもしれない。昔は母様の変わりように戸惑い、ヌルと妹であるリーリエを助けたいがために強くなりたいという思いを抱いて、ただひたすらに孤独と戦ってきた。だが、アイツと出会ってからは違った。

 

アイツは守りたいもののため、助けたいもののため、そして自分が強くなりたいと思い、仲間を信じて戦いつづけていた。どれだけ傷付いても、決して諦めることなく。そんなアイツを見たから、俺も変わることが出来たのかもしれない。ふっ、不思議なやつだよ、アイツは。

 

俺は心の中でそんなことを考えながら空を見上げた。俺の最大のライバルであり、最高の親友の姿を思い浮かべながら。

 

「……リーリエの事を頼むぞ、シンジ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしあんたがこんなことをするなんて想像がつかないね。」

「ほっとけよ。それより、こんなところでなにか用か?プルメリ。」

「なに、あんたのしまキングっぷりを見に来ただけさね。」

「……ふん。」

 

俺様、グズマの元を訪れたのは元スカル団の幹部であるプルメリだ。俺も元はスカル団のボスとして部下たちを率いてきたが、そんなスカル団も今では解散。俺についてきた奴らには悪いが、今では好きなことをやらせてるさ。

 

今俺はしまキングと言う地位についているが正直な話、自分でも俺がしまキングをしているなんて違和感しかねえ。俺もスカル団になる前はしまキングやキャプテンなんて柄でもねえことを目指したりもしていたが、カプ・コケコだけじゃなく、島の人々やしまキングをやっていたハラにも認められなかった。誰にも認められなかった俺はそれが納得できず、師事していたハラの元を飛び出しスカル団を結成するぐらいに昔の俺はぐれていた。

 

だが、アイツと出会ってからはそれも変わった。誰にも認められなかった俺を、ルザミーネ代表に利用されているだけで、彼女にすら認められなかった俺を、アイツは認めてくれたんだ。

 

……そうだあれはアイツがチャンピオンになってからの事だった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

『クッソ!?なぜお前は壊されない!』

『グズマ……』

『今まで俺様に壊せないモノなんて存在しなかった!だがお前だけだ!お前だけは何度やっても壊せない!こんなの納得できねえ!こんなんじゃ、誰も認めてなんてくれねえ!ルザミーネ代表も、結局俺を認めてはくれていなかった!だれも……俺の事を……。』

『……グズマ、僕はあなたの事、本当にすごいって思ってるよ。』

『!?お前、何言って……』

『あなたはスカル団という一つの組織を動かしていた。例えその組織がどんなに悪い集団であったとしても、あれだけ慕われるなんてことは中々出来るものじゃない。』

『だが、あれはアイツらが勝手にやったことだ!』

『そうだったとしても、彼らは心の底からあなたの事を尊敬していた。それに、僕はあなたの事、既に認めているつもりだよ。』

『なに?』

『グズマ、あなたのポケモンバトルは荒っぽくもあるが、同時に力強さを感じる。それにあなたは、ポケモンバトルに負けても決してポケモンの所為にはしないだろう?あなたはそれだけポケモンを大事にしているってことだよ。』

『……負けたのは俺が弱いだけだ。』

『自分の弱さを認められるのも一つの強さだと思うよ。』

『お、お前に俺の何が分かるって』

『それに、僕やスカル団のメンバー以外にも認めている人はいるよ。』

『!?』

『ハラさん。あの人は、僕にこう言ったよ。「もしグズマが改心することが出来たのであれば、もう一度私の元へ連れてきてくれないか。彼には才能がある。」って』

『!?ハラ……』

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

アイツからその話を聞いてから、俺は目を覚ますことが出来た。俺は決して認められてなかったんじゃない。認めてもらおうとしてなかっただけだってな。それから俺はハラの元に戻り、したこともない努力をやったさ。今度こそ誰かに、いや、みんなに認めてもらうためにな。そして俺はアーカラの守り神カプ・テテフに認められ、遂にアーカラのしまキングになることが出来た。

 

「グズマさん!」

「ああ?」

 

俺が昔の事を思い出していると、アーカラ島のコニコシティの子供が俺の元へと走ってきた。

 

「グズマさん!これ!」

「あん?何だよこれ?」

 

子供が差し出してきたのは似顔絵だった。中央には笑顔で笑っている男描かれていた。男に額には歪んだサングラスが掛けてあり、その姿には見覚えがあった。

 

「これ、グズマさんの絵!町の子供たちみんなで書いてみたの!」

「!?これが……俺?」

「うん!」

 

これが俺……はっ、こんなの……

 

「……全然似てねぇじゃねえか。」

「そうかな?」

「あたりめぇだろ。俺様はな、もっと凛々しくて強い、破壊って言葉が最も似合うグズマ様なんだからよ。」

 

俺がその子供にそう言うと、子供は笑顔で手を振りながら走り去っていった。ったく、これだからガキは嫌いなんだ。人を見る目もろくにないでよ。

 

「……ふふ。」

「あ?何だよプルメリ。何笑ってんだよ。」

「わるいわるい。だってあんたが柄にもなくにやけてるからさ。」

「!?う、うっせぇ///」

 

ったく、こんなことで口が歪んじまうとは、流石の俺様も気を緩めすぎちまってるかな。だが、何故だろうな。人から感謝されるのは、存外悪いもんじゃねえ。

 

まさか壊す側である筈のグズマ様が逆に壊されちまうなんてな。

 

「……こうなったのもテメェの所為だぜ、シンジ。」

 

俺は俺が変わるきっかけを与えたムカつく男の顔を思い浮かべながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へクシュ!」

「大丈夫ですか?シンジさん。もしかして風邪ですか?」

「いや、寒気はないから風邪ではないと思うけど。」

「あまり無理はしないでくださいね?」

「うん、ありがとう、リーリエ。」

「お兄様たち、元気にしてますかね?」

「グラジオたちならきっと元気にやってるよ。」

「そうですよね。」

「さ、僕たちも先に進もう!」

「はい!」

 

シンジとリーリエは互いに手を繋ぎ、次なる目的地へと歩みを進めた。彼らのカントーを巡る冒険は、まだまだ続く。




グラジオ君、グズマさんの二人の話でした。何故この二人かって?個人的に好きなキャラだからです。ただそれだけ。でも書いてて楽しかったので満足です!

因みにリーリエとシンジは手を繋ぐまでなら躊躇なく出来るようにはなった感じです。地味なところで少しずつ進展があったりしてます。

どうでもいいことですが、グラジオ君はやせ我慢で苦い物を食べて実は甘いものが好きと言う印象。

一つ質問がありましたが、ウルトラサン・ムーンの設定は反映するのかと言う疑問がありました。自分は設定と言うよりも、のちにウルトラサン・ムーンのストーリーを書こうとは考えています。カントー編が無事終了しなければ話になりませんが……。

それともう一つですが、カントー入りしたリーリエのストーリーも見てみたいとのことでした。元々考えていた話ではあるので、いずれ書く予定ではあります。遠くない内に書くとは思うので、気長に待っていていただけたら幸いです。

では次週までに間に合うように頑張ります。……今度こそ大丈夫なはず……です←自信なし


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怒りのバトル!ポケモンハンターを捕まえろ!

今回はポケモンハンター回です。完全にアニポケにありそうってかありましたね。なんか思いついたので書いてみました。最初はどう書こうか迷いましたが、書いてるうちに楽しくなってきたのはいい思い出です。

バトルと書いてますがそんなにバトル描写はないです。アニポケもこういった回のバトルは控えめ(作画は大抵神)なので大丈夫?だと思います。

俺は今から怒るぜ(空耳ではミカルゲに聞こえなくもないとかかんとか)


無事タマムシジム、エリカとの戦いに勝利しレインボーバッジをゲットすることが出来たリーリエ。次なる目的地、セキチクシティへと向け、シンジと共に旅を続けていた。

 

「これでジムバッジも4つ目です!次のジムも絶対勝って見せます!」

「うん、その意気だよ。だけど次のジムも強敵だよ。気を引き締めてね。」

「はい!」

 

現状順調に勝ち進むことのできているリーリエ。次のジムも絶対に勝とうという強い意志をあらわにしている。だが当然他のジムリーダーも強敵ぞろいなのは言うまでもない。リーリエはシンジの激励を素直に受け取り、決して油断はしないと心に誓う。

 

そんな二人が森の中を歩いていると、茂みの奥から何者かの叫び声のようなものが聞こえてきた。

 

「!?今の声は!」

「行ってみよう!」

 

その叫び声は間違いなくポケモンの声だった。ポケモンが何の理由もなく叫ぶことは滅多にない。ならば何かあったと考える方が妥当である。一大事だと感じたシンジとリーリエは、その声の主の元へと急いで向かう。するとそこにいたのは……

 

「!?ヒメグマ!?」

 

その場に居たのはヒメグマであった。しかし、そのヒメグマの様子は明らかにおかしかった。何故ならそのヒメグマは小さな檻に捕らえられた状態で、弱って気を失っている状態であった。更に檻にはポケモンが気をとられるように木の実がおいてあった。

 

「早く助けなくては!」

「待ってリーリエ!」

 

ヒメグマを助けようと手を伸ばすリーリエに対して、シンジは彼女に制止するように声を掛けた。その理由が分からずリーリエは戸惑うが、シンジは足元にある落ち葉を手にし、檻に触れるようにヒラヒラと落とした。すると……

 

「!?電流……ですか……?」

 

リーリエの言う通り、檻には電流が流れていた。それも中々に強力なもので、落ち葉は檻に触れた瞬間燃えるように消えて散っていった。もし自分が知らずに檻に触れていたらと思うとゾッとする。

 

「……これは誰かが意図的に仕掛けたポケモン用の罠だね。」

「ポケモン用の罠ですか?」

「うん。電流が流れているけど、ポケモンが気絶する程度にとどめていることを考えると、恐らくポケモンを捕まえることを前提としているんだろうね。」

 

シンジは疑問を抱えるリーリエにいつもと変わらない様子で説明をするが、それでも内心では怒りで燃え上がっていることが伝わってくる。ポケモンを家族の様に大切にしている彼としては、このような行いは決して許せる行為ではないのだろう。その上、彼の持つニンフィアやリーリエのマリルの様に、トレーナーに捨てられ非人道的な扱いを受けたポケモンも知っている。そんな彼だからこそ、これだけの感情が芽生えてしまうのだろう。

 

「ではどうやって助けてあげればいいのでしょう。触れることが出来ないとなると……」

 

リーリエはこのヒメグマをどうやって助ければいいのかシンジに尋ねる。触れることが出来ないとなると助けるのは困難だと感じたのだ。しかし心配はいらないと、シンジは一つのモンスターボールを手にした。

 

「でてきて、サンダース。」

『サンダ!』

 

シンジが出したのはサンダースだった。

 

「サンダース、この檻から電気を取り除いてくれるかな?」

『ダース!』

 

シンジはサンダースに電気を取り除くように指示を出した。サンダースはシンジの指示に従い、檻に手を触れる。すると檻に流れていた電流がみるみるとサンダースに吸収されていく。

 

リーリエは以前読んだ本の知識を思い返した。サンダースの特性はちくでん。ちくでんを持ったポケモンはでんきタイプの技を一切受け付けず、逆に体力を回復するのだ。現在もその特性を活かし、サンダースに電気を全て吸収させているのだろう。

 

サンダースが電気をすべて取り除いたことを確認すると、シンジはサンダースに感謝しながら頭を撫でた。サンダースも嬉しそうにシンジに微笑むと、そのままモンスターボールへと戻っていった。

 

「よし、とにかくこの子を早くポケモンセンターに連れて行かないと!」

「そうですね、行きましょう!」

 

そしてシンジは弱っているヒメグマを抱えて、リーリエと共にポケモンセンターへと向かって走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジたちが立ち去ってからしばらくして、一人の男がヒメグマのとらえられていた場所へと訪れた。

 

「チッ、誰かが逃がしやがったか」

 

その男はかなりの巨体でガッチリとした肉体に黒の服、そして赤色の分厚いチョッキを羽織っていた。男は舌打ちをし、捕らえたポケモンが逃げられたことに対していら立ちを覚えていた。

 

そしてその執念深い男は、逃げられたポケモンと愚かにも逃がした人間を絶対に見つけ出そうと動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジたちはヒメグマを抱え、近くのポケモンセンターへと駆け込む。その慌てた様子にただ事ではないとジョーイがすぐに対応をし、ヒメグマを預かり奥の部屋へと担架で運んでいった。

 

シンジとリーリエは心配になる気持ちを抑えながら、ジョーイを信じてヒメグマの回復を待つことにした。

 

それからしばらくして、点灯していた“治療中”の文字が消灯し、奥の部屋からジョーイと担架を運ぶラッキーが出てきた。そして担架の上には、先ほどとは違い元気な笑顔を見せるヒメグマの姿があった。

 

「ヒメグマさん!元気になったんですね!」

『ヒィメ!』

 

元気になったヒメグマは出迎えてくれたリーリエの元に飛び込んだ。ヒメグマは元々人懐っこいポケモンだからか、人への警戒心は他のポケモンに比べ薄いようだ。先ほど罠にかかっていたのも、全く警戒していなかったのが理由だろう。

 

「ヒメグマはすっかり元気になりましたよ。」

「ありがとうございます!ジョーイさん!」

 

リーリエはヒメグマを回復してくれたジョーイに感謝する。そこでシンジは一応と、ジョーイにあることを尋ねてみることにした。

 

「ジョーイさん、一ついいですか?」

「なに?」

「最近この辺りでポケモンを捕まえて悪事を働く、そんな噂を聞いたりしたことはありませんか?」

 

シンジの話を聞いたジョーイが顔を曇らせる。どうやら心当たりがあるようだ。ジョーイによると、最近この近辺でポケモンを捕らえて高値で売りさばくポケモンハンターが暗躍していると言う。ポケモンセンターには様々なトレーナーが立ち寄るため、そう言ったよくない噂もよく耳にするようだ。

 

「シンジさん、ポケモンハンターってなんですか?」

「ポケモンハンターは手段を選ばずにポケモンを捕らえ、商売の道具として利用したりする人たちの事だよ。こういった行為はポケモン保護法によって違反となっているけど、ポケモンハンターたちはそんなことお構いなしに次々とポケモンたちを捕まえているんだ。」

「ひ、酷いです!」

 

シンジの言葉にリーリエも彼と同じく怒りを覚えた。シンジの言った通り、ポケモン保護法によって野生のポケモンを傷つけたり強引に捕らえることは禁止されている。場所によってはモンスターボールのゲットすらも禁止となっている区域も存在している。

 

しかしポケモンハンターは、そんな区域であっても構わずポケモンを捕獲し、依頼主にポケモンを高値で売りつける根っからの悪だ。シンジやリーリエのようなトレーナーとは正反対と言ってもいいだろう。

 

「取り敢えず、先ずはヒメグマを安全な場所まで連れて行こう。」

「そうですね。」

 

2人はヒメグマを連れ、ジョーイとラッキーに見送られながらポケモンセンターを後にした。

 

そして森へと戻り、先ほどの罠があった場所から離れた場所までヒメグマを連れて行こうとする。少し不安がるヒメグマだが、彼の不安を振り払おうとリーリエが優しく頭を撫で声を掛けた。

 

「大丈夫ですよ。私たちがついてますから。」

『ヒメ!』

 

リーリエに撫でられたヒメグマから不安な表情が消え笑顔になった。どうやらリーリエといるとヒメグマも安心するようだ。

 

「はは、すっかり懐かれてるね。まるで母親みたいだよ。」

「母親!?も、もう///なんてこと言うんですか!」

 

ヒメグマと自分を見て笑うシンジに、リーリエは思わず顔を赤くした。突然母親と言う単語を突き付けられて恥ずかしかったようだ。

 

「!?リーリエ!危ない!」

 

シンジとリーリエがそんなやりとりをしていると、シンジが突然リーリエを守るように抱きしめた。リーリエは突然の事で戸惑ったが、その瞬間に大きな衝撃が目の前で起きた。どうやら自分たちの目の前にポケモンの技が飛んできたようだ。

 

「リーリエ、ヒメグマ、大丈夫だった?」

「は、はい、私もヒメグマさんも大丈夫です。シンジさんは……」

「直撃したわけじゃないから大丈夫だよ。」

 

シンジの言葉にリーリエは一安心する。もし自分の所為でシンジが傷ついてしまっては、彼に申し訳が立たない。よく見てみると、自分たちの足元にはクレーターのような穴が開いていた。それだけ強力な技が飛んできたと事を物語っているようだった。

 

『グマァ!』

「あれはリングマ!?」

 

技の飛んできた方に目をやると、そこにはリングマが雄叫びをあげている姿があった。どうやら今の一撃もリングマの仕業のようだ。しかしそのリングマはどこか怒っているようにも見えた。

 

『ヒメ!ヒメヒメ!』

「ひ、ヒメグマさん?」

 

ヒメグマがリングマの姿を見ると、突然リーリエの元を飛び出した。その姿を見たシンジは、ある一つの仮説を立てた。

 

「もしかしたらあのリングマは、ヒメグマの親なのかもしれない。」

「親ですか?」

「うん、僕たちがヒメグマを抱えているのを見て、ヒメグマを連れ去った敵とみなされているのかも……」

「そんな!?」

 

シンジの言う仮説は正しいだろう。リングマは自分の子どもであるヒメグマに愛情を注ぐポケモンとして有名だ。それに縄張り意識も強いポケモンでもあることから推測すると、縄張りに侵入し自分の子供を連れていることを考えると勘違いしても仕方がないだろう。そうであるならば先ほどリーリエに気を許していたことにも納得がいく。

 

それにヒメグマは常にリングマに守られていることもあり警戒心が薄い。子育てで神経を使っているリングマは、子育ての時期になるとピリピリし始め、通常よりも気性が荒くなってしまいがちだ。そんなリングマに襲われるトレーナーたちも決して少なくはないだろう。

 

リングマはまだ勘違いをしているのか攻撃の準備に入る。口元に強大な力を溜めているのを見ると、その攻撃ははかいこうせんと言うとても強力な技だ。

 

「!?まずい!シャワーズ、まもる!」

『シャワー!』

 

シンジは咄嗟にモンスターボールを投げシャワーズを繰り出す。そしてすぐさままもるの指示を出し、リングマのはかいこうせんを防ごうとする。この場で攻撃してしまっては余計にリングマを刺激してしまう可能性もあるし、それにヒメグマの前で親を傷つけるのは避けなければならない。そのため今回は攻撃ではなく、防御に徹しリングマを説得しようと判断したのだ。

 

リングマははかいこうせんを放つが、シャワーズは正面からその攻撃を受け止める。しかしリングマの攻撃は強力で、シャワーズも思わず苦い顔をする。だがそれでもシャワーズはまもるで防ぎきり、はかいこうせんはシャワーズのまもるに吸収されるかのように消えていった。

 

『グ、グマァ!』

『ヒィメ!』

『グマ!?』

 

防がれてしまったのが悔しいのか、リングマは再び雄叫びをあげ続けて攻撃を繰り出そうとしていた。シンジとリーリエも身構えたが、そんな彼らを庇う様にヒメグマが慌てて入り込んだ。リングマは何故ヒメグマが彼らを庇うのか戸惑ったが、ヒメグマの必死の訴えに説得させられ、焦っている様子だった。

 

リングマはヒメグマの説得に納得し落ち着いた様子だ。どうやらリングマも分かってくれたようで、申し訳ないような表情を浮かべている。シンジとリーリエも全然気にしなくていいと言うように首を横に振る。だがお互いに和解できたのも束の間、突然網がミサイルの様に飛んできて、リングマとヒメグマが同時に捕縛されてしまった。

 

「!?いったい何!?」

「まさか親も一緒に捕まえられるとはな。逆に運が良かったか?」

 

影からは大きな体をした男が現れ、リングマとシンジの間に入った。その男は手にミサイルを持っていたため、それを使った捕獲用ミサイルを使用したのだろう。

 

「もしかしてあなたが!?」

「ああそうさ。俺がこいつの元々の持ち主だ。大人しく返してもらおうか。」

「ふざけるな!あなたみたいな人にヒメグマたちを渡してたまるか!」

「ヒメグマさんたちは私たちが助けます!」

「へっ、反吐が出るセリフだな。いけ!ドサイドン!」

『ドサァイ!』

 

男の言葉に更に怒りが増してきたシンジとリーリエ。そんな彼らに対し、そのポケモンハンターは一匹のポケモンを繰り出した。そのポケモンの詳細を確認するために、リーリエはポケモン図鑑を取り出し検索した。

 

『ドサイドン、ドリルポケモン。サイホーン最終進化形。筋肉に力を込め、手のひらから岩を飛ばす。頑丈なプロテクターは火山の噴火に耐えられるほどの強度を持つ。』

 

ポケモンハンターの繰り出したドサイドンは大きく咆哮する。その姿からは強者の風格を感じられ、間違いなく強敵だという事を感じさせるものだった。

 

「シャワーズ!ハイドロポンプ!」

「ドサイドン!まもるだ!」

 

ハイドロポンプを放つシャワーズだが、ドサイドンはまもるによりハイドロポンプを弾き飛ばした。するとドサイドンはすぐさま反撃の行動へと移った。

 

「がんせきほう!」

 

両手を合わせ、手のひらに巨大な岩を生成したドサイドン。そのまま岩を勢いよく放ち、シャワーズへと向かっていく。がんせきほうはいわタイプの技の中でも特に強力で、その威力は計り知れない。シンジはシャワーズに攻撃の指示を出したのだった。

 

「れいとうビーム!」

 

シャワーズはれいとうビームでがんせきほうを凍らせる。動きを止めることは出来ないが、それでも勢いを殺すには充分だった。シャワーズは勢いのなくなったがんせきほうを冷静に躱す。その姿を見届けたシンジは、リーリエにある頼みごとをした。

 

「リーリエ、ここは僕が引き付ける。だから君はリングマたちを。」

「分かりました!」

 

シンジの言葉にリーリエは頷きすぐに行動に出る。バトルに集中しているポケモンハンターの目を盗み、リングマたちを助けようと様子をうかがう。

 

「ドサイドン!ストーンエッジ!」

「ハイドロポンプ!」

 

ドサイドンは地面の両手を叩きつけ、地面から青く輝く尖った岩を次々と突き出し攻撃する。対するシャワーズはハイドロポンプで正面から対抗する。両者の攻撃は中央でぶつかり合い、互いに相殺され大きな爆発が発生した。

 

(今です!)

 

ポケモンハンターが気をとられている内にリーリエはリングマたちを助けようと駆け出す。シンジほどのトレーナーが相手であれば、簡単に気を抜くことは許されない。それがチャンスだと感じたリーリエだったが、ポケモンハンターはプロ中のプロ。そんなバトルの最中でも一切気を緩めることはなかったのだ。

 

「!?させるか!マニューラ!止めろ!」

 

ポケモンハンターはマニューラを繰り出し、リーリエを止めようと仕掛けた。咄嗟にマズいと感じたリーリエだったが、その心配は杞憂に終わった。

 

「ワイルドボルト!」

『ダース!』

 

横から電気を纏ったサンダースが勢いよくマニューラに突撃した。シンジは襲われるリーリエの姿が確認できたため、すぐさまサンダースを繰り出し仲裁に入ったのだ。リーリエを襲うマニューラは確かに素早かったが、サンダースの素早さは更にその上を行く。ポケモンハンターがその道のプロなら、シンジはポケモンバトルのプロだという事だろう。

 

「シンジさん!ありがとうございます!」

 

礼を言うリーリエに、シンジは何も言わずに彼女に微笑んだ。そして再びポケモンハンターを怒りの眼差しで見つめる。

 

「ふっ、お前のポケモン、中々の強さだな。売ったらいい金になりそうだぜ。」

「!?あんたはポケモンをただの道具としてしか見れないのか!」

「ああそうさ。だからどうした?」

「僕はあんたの様に、ポケモンをポケモンとして扱えない人を許すことは出来ない!」

「ほざけ!」

 

シンジはポケモンに対しての扱いと、リーリエに直接手を出したことに対しての怒りを抱く。怒りに燃えるシンジとポケモンハンターはバトルを再開した。

 

「マニューラ!ふぶき!」

「サンダース!10まんボルト!」

 

マニューラとサンダースの攻撃が交じり合い、再び大きな衝撃が発生する。激しい戦いを繰り広げている一方、リーリエはリングマの元へと辿り着いた。

 

「大丈夫です。すぐに助けてあげますからね。」

 

リングマはリーリエの言葉を聞き、彼女の言うことを信じようと心に決めた。自分たちを必死に助けてくれようと戦ってくれる2人の姿、それに彼女の言う言葉にリングマは心を打たれたのかもしれない。

 

「フシギソウさん!お願いします!」

『ソウソウ!』

「はっぱカッターで網を切ってください!」

 

リーリエはフシギソウを繰り出した。そしてはっぱカッターでリングマたちを捕らえていた網を切り裂いた。自由の身となったリングマは、立ち上がると同時に大きく咆哮し気合を入れた。

 

『グマアアアァァ!!』

「!?しまった!折角の獲物が!?」

「あなたの相手は僕だよ!シャワーズ!ハイドロポンプ!サンダース!10まんボルト!」

「!?」

 

捕らえていたリングマを解放されたことに気をとられたポケモンハンターは、シンジのポケモンたちの攻撃に対応することが出来なかった。それに合わせるように、リングマもはかいこうせんを放ち攻撃する。自分とヒメグマが捕らえられたことに我慢しきれなかったようだ。その攻撃はドサイドンとマニューラ、そしてポケモンハンターを巻き込み先ほどの爆風以上の衝撃を発生させた。

 

直撃したポケモンハンターとそのポケモンたちは目を回し、その場で気を失っていた。どうやらこれ以上の継続は不能のようだ。よく頑張ってくれたシャワーズとサンダースを抱き寄せ、2人に感謝すると同時に、これからもよろしくと言葉をかける。2人もその言葉を聞いて安心するように、シンジの気持ちに応え微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くしたら警察、ジュンサーがパートナーポケモンのガーディとともにポケモンハンターを捕まえるべくやってきた。彼女の話からすると、今回捕まったポケモンハンターは警察の追いかけていた指名手配犯で、行方をすぐにくらまして手に負えない状況だったと言う。

 

シンジたちはジュンサーに感謝されたが、それと同時に危ない事はしないようにと注意された。犯人逮捕はよい働きではあるものの、危険を冒してまでする必要はないと念を押されたのだ。シンジとリーリエも、少し熱くなりすぎたと反省した。

 

「取り敢えずこれでこの辺りは安全だよ。」

「はい!良かったですね!リングマさん!ヒメグマさん!」

『ヒメヒメ!』

『グマ!』

 

彼らの働きに、リングマたちも感謝しているようだ。そこでリングマは、彼らにある物を渡した。

 

「これってリンゴ?」

「えっと……私たちにくれるという事でしょうか?」

『グマ』

 

リングマが差し出したのは綺麗な色をしたリンゴだった。恐らく初めに勘違いして襲ってしまったことへのお詫びなのだろう。リングマの気持ちをシンジたちは素直に受け取り、感謝しながらリンゴを口にした。そのリンゴはとても甘く、今まで食べたリンゴの中で一番美味しかった気がした。

 

「ありがとうリングマ!また会おうね!」

「2人ともお元気で!」

『グマァ!』

『ヒメェ!』

 

リングマから貰ったリンゴを食べ終えた2人は別れを告げ、次なる目的地へと旅を続けることにした。リングマたちもそんな彼らを笑顔で最後まで見送ってくれていた。また会えたのならば、今度はゆっくりと一緒に遊べたらいいなと考えながら、リーリエはシンジと共に旅を続けるのだった。




今回は意見箱にて質問があったことをこちらでも返していきたいかと思います。

先ず一つ目ですが、7体以上持ち歩いているトレーナーもいるのか?と言う事でした。端的に言うといません。特に描写していませんが、主人公もルール上一応とっかえひっかえはしています。アニポケでは無印にて描写されていましたが、7個目のボールは自動的に収縮してしまうので7体目を持ち歩くことは出来ません。常にメンバー入りしているのはニンフィア、イーブイですが、その他は入れ替え制。その場その場で都合よくブイズが揃っているのは二次創作御用達のご都合主義です。お察しください。

二点目ですが、ポケモンのニックネームについてです。ニックネームは基本シロン以外はつけない予定です。シロンはリーリエがシンジから貰った大切なポケモンであり、初めてのポケモンでもあるため、思い入れがあって思わず付けたと言う設定があります。その点はいずれ書く予定ですので、楽しみに待っていてください。

最後のポケモンの性別設定についてです。性別に関しては一応設定はあります。カントー編が終わったころに纏めてそれらの設定を書く予定ですが、ブイズに関しては主が実際に使用しているブイズをモデルに性別も決めています。性格、技構成は違いますが……。いや、流石にニンフィアがハイパーボイスだけ撃ってたら全然盛り上がらないでしょ?

話が少しそれましたが、上記で説明した通りです。一部設定については後日挟み込むので、その日まで(小説が続いていれば)待っていただけると幸いです。

また何か意見、質問があればどんどん書き込んで構いませんのでよろしくお願いします!無茶なお願いでなければ大抵聞くと思うので。勿論雑談でも全然okです!主の事は一切気にせず書き込んでください!











……あっ、誹謗中傷は出来る限り避けていただけると……


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懐かしの再会!双子とのタッグバトル!

新しい回が無事出来ました!が、正直言って個人的にはあまりいい出来とは言えない……と思います。書き直しも考えましたが時間が無いのでこのままで……。

やっぱりオリジナルで話を書こうとすると中々難しいですね。今回はある二人のキャラを出したいがために書いた話なので多少強引に話が進みます。しかも眠気MAXで書いてたのも影響します。だったら余裕持ってかけや!とか言われそうですが、主のサボり癖が発動してしまえば仕方のない事なのです。

6/29
誤情報のご指摘があったため一部修正いたしました。
ルリリ→みずタイプ× ノーマル・フェアリー〇

ブイズ以外の知識皆無とかこいつダメだな……。


次なる目的地、セキチクシティへと向かっているシンジとリーリエ。彼らは今、道中の森でしばしの休息をとっていた。

 

「さてと、じゃあそろそろ行こうか。」

「そうですね。充分休みましたので行きましょう!」

 

充分な休息をとった二人は、セキチクシティへ向かう為に立ち上がり旅立ちの準備を進める。しかしその時、近くの茂みがかすかに揺れたのを感じた。

 

 

「あれ?今のは何でしょうか?」

 

リーリエはその正体に警戒する。揺れ方からして風で揺れたわけではなく、人やポケモンがそこにいるのはまず間違いないだろう。彼女が警戒を続けていると、そこから一匹のポケモンが姿を現した。

 

 

「あのポケモンさんは……」

 

そのポケモンは鋭い目つきに立派な爪、尻尾の先端には赤い炎が燃えていて、その姿からかなり鍛えられていることが分かる。恐らくは誰かのポケモンであるだろうが、リーリエにはそのポケモンを見た記憶がある。リーリエはポケモン図鑑を取り出し、そのポケモンの詳細を確認した。

 

『リザード、かえんポケモン。ヒトカゲの進化形。鋭い爪で容赦なく攻撃する。強敵と戦うほど尻尾の炎が熱く燃える。』

 

そうだ、このポケモンの名前はリザード。オーキド博士から貰える初心者用のポケモンの一体だ。ヒトカゲの時は比較的おとなしい性格だが、進化することによって気性が荒くなり少々扱い辛い性格になってしまう事でも有名なポケモンだ。

 

『リザ!』

「?どうしたの?」

 

だがこのリザードは、シンジの姿を見るなりすぐに彼の元へと駆け寄ってきた。その姿はまるで自分の慕っているトレーナーとじゃれついているかのようだった。シンジも近寄ってきたリザードの前で屈み、頭を撫でた。その時、もしかしたらと自分の記憶をたどりこのリザードの記憶を思い返す。

 

「……もしかして君は」

「おーいリザード?どこだー?」

 

このリザードの正体が分かったのか、彼の事を口にしようとした瞬間、再び茂みが動きそこから一人の少年が姿を現した。このタイミングで現れるという事は十中八九、リザードのトレーナなのだろう。

 

その少年はリザードの姿を見るなり、呆れた様子で声を掛ける。その様子を見る限り、彼の行動は日常茶飯事なのかもしれない。

 

「もうリザード、勝手に先に進むなって。探しただろ?」

 

その少年は水色のノースリーブのシャツに、白をベースとし、下の方に青いラインが入っているショートパンツを着用していた。見た目の年齢で言えば、シンジよりも少し年下程度だろうか。

 

「すいません、リザードが迷惑を……!?」

 

そんな彼はリザードの件で謝罪するためにシンジの方へと向きなおす。しかし、シンジの姿を見た彼の顔は驚きの表情へと変化した。対してシンジは、落ち着いた様子で驚いている彼に声を掛けた。

 

「やっぱり君だったね。久しぶり、コウタ。」

「し、シンジさん!?もどってきてたんですね!?」

 

どうやら彼らは以前からの知り合いのようだ。シンジはリザードに触れた時、懐かしい感覚にとらわれ彼のポケモンだという事が分かったのかもしれない。

 

だが、彼らが懐かしの再会を果たしている最中、三度茂みが揺れもう一人の少女が姿を見せる。

 

「あっ、コウタ!やっぱりここにいた!私探してたんだからね!」

 

その少女はコウタと呼ぶ少年を見るなり頬をぷくっと膨らませて怒っている様子を見せる。彼女はオレンジ色のキャミソールに、コウタのように白いショートパンツを着用している。二人ともカントー地方では珍しく涼しげな格好で、どちらかと言えば南国であるアローラ地方に似合いそうな服装であった。

 

「ごめんごめん、だからそう怒るなってコウミ。」

「ふん!」

 

コウミと呼ばれた少女は機嫌悪そうにそっぽを向く。そんな彼女の機嫌を取るため、コウタは慌てて話題を変えた。

 

「そ、そうだ!コウミ、シンジさんが帰ってきてたぞ!」

「えっ!?ほんとに!?」

 

コウミは先ほどまでに態度が嘘のように目を輝かせ上機嫌になる。彼女もシンジの知り合いの人物のようだ。コウミが目の前を見ると、そこには笑顔で挨拶するシンジの姿があった。

 

「コウミも久しぶり。暫く見ない間に大きくなったんじゃない?」

「シンジさん!お久しぶりです!」

 

まるで二人に対して兄の様に接するシンジ。リーリエはイマイチ状況が把握できず困惑している状態だ。シンジはそんなリーリエに、2人の事を彼女に紹介した。

 

「リーリエ、紹介するよ。この2人はコウタとコウミ、マサラタウンにいた頃の僕の親戚のような子たちだよ。」

 

リーリエはシンジの言葉にハッとなり、やっと彼らの事を理解できた。彼らの様子を見る限りでは、昔マサラタウンにいる頃に面倒を見ていた間柄なのだろう。リーリエも彼ら自己紹介をしなければと口を開いた。

 

「あの、はじめまして!リーリエです!今はシンジさんと一緒に旅をさせていただいています。」

「リーリエ?もしかしてこの子……」

 

リーリエの名前を聞き、コウミは聞き覚えのある名前だと思い首を傾げる。そんな彼女に反応し、コウタも間違いないだろうとコウミと顔を見合わせる。

 

「もしかして少し前にマサラタウンに越してきた人?」

「は、はい、そうですが……」

「やっぱり!話には聞いてたけど、すぐにマサラタウンから出て行っちゃったから挨拶できなかったんだよね。でもここで会えて、しかもシンジさんにも再会できたんだから私たち幸運だね!」

 

彼らもシンジと同じマサラタウン出身のようだ。しかしリーリエは当時、色々と事情がありバタバタしていたため、近所に人に顔を合わせる余裕などあるはずもなかった。その時は仕方ない事だと思っていたが、今になって考えてみれば失礼だったかも知れないと考えてしまう。

 

「す、すいません。あの時は私、やらなければならないことがありましたので……。」

「ううん、全然気にしてないよ!それに事情ならオーキド博士から聞いてるしね。」

 

コウミはリーリエに気にしないようにと首を振り答える。そんな彼女の姿にリーリエは、アローラ地方で出会った友人、ミヅキの姿を重ね合わせた。どことなく彼女に似ている、そんな気がするのだ。

 

「ところでお二人はどのような関係なのですか?」

 

リーリエはコウタとコウミに2人の関係性を尋ねた。自分たちが言うのもなんだが、旅をする際の男女二人の組み合わせと言うのは少々珍しいだろう。コウタとコウミは、一部の関係を否定するようにリーリエの質問に答えた。

 

「残念だけど俺たちは君の思っている関係じゃないよ?」

「そうそう、私たちは双子の兄妹なの!今も2人でカントー地方を旅してるところなんだ!」

 

そう笑顔で答える二人。リーリエは最初のコウタの一言に少し顔を赤くする。特にそんな意味で尋ねたわけではないが、そう捉えられてしまうと少々恥ずかしくなってしまうものだ。今度は逆に、コウタとコウミが反撃するかのようにリーリエにある事を尋ねてきた。

 

「じゃあ今度はこっちからの質問ね?」

「シンジさんとリーリエはどんな関係なの?」

 

息の合った質問に思わず顔を赤くするリーリエ。シンジも恥ずかしさで顔を赤くしながら顔を背けている。少しは進展したとは言っても、やはりこの手の質問にはまだ慣れないようだ。

 

「えっと、わ、私たちは///」

 

顔を赤くして戸惑うリーリエ。その先からはまだ自分の口から言えないようだ。コウタとコウミもニヤニヤしながらそんな彼女の様子を眺めているが、このままでは話も進まないので自分から話題を変えることにした。

 

「そう言えば聞きましたよシンジさん!アローラ地方のチャンピオンになったって!」

「え?2人とも知ってたの?」

「勿論ですよ!私たち昔からの付き合いなんですから!」

 

シンジの活躍に、コウタとコウミはまるで自分の様に喜ぶ。リーリエは気を取り直すため、今度はシンジとの関係について尋ねることにした。

 

「と、ところでシンジさんとはどのような関係なんですか?」

「ああ、俺たちはシンジさんにポケモンバトルを教えてもらってたんだ。」

「まだ私たちが旅に出れなかった頃、他の地方の旅から戻ってきたシンジさんに色々と教えてもらってたんだよね!」

 

彼らにとってシンジは兄と言うより、師匠のような存在なのかもしれないとリーリエは心の中で思う。彼らを見る限りでは、まだ旅に出て日も浅いのではないだろうか。そう考えていたリーリエだが、彼らは思いついたようにシンジに一つの提案をしたのだった。

 

「そうだ!シンジさん!もしよければ今から俺たちと戦ってくれませんか?」

「私も久しぶりにシンジさんと戦いたい!」

 

2人の頼みに、シンジは快く承諾した。内心では彼も久しぶりに戦いたかった気持ちもあるのだろう。そこでシンジも彼らにもう一つ提案をした。

 

「だったらタッグバトルにしてみない?普段はタッグバトルなんてできないし、これからに備えてリーリエにもいい経験になると思うから。」

「いいですねそれ!」

「やりましょう!」

「リーリエもそれでいいかな?」

「はい!もちろんです!」

 

2人はシンジの提案に賛同する。リーリエもその提案に異論はないようで、寧ろ普段経験することのできないタッグバトル、それもパートナーがシンジと言うのであれば彼女にとって嬉しくないわけがないだろう。

 

それに彼女も、以前行ったサント・アンヌ号でのタッグバトルも印象に残っており、個人的にも結構気に入っているようだ。4人はポケモンバトルをするため、バトルのための準備を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4人は2人ずつのペアに別れ、それぞれ互いに向かい合う。互いの準備が出来たことを確認したシンジは、コウタとコウミ、それからリーリエにルールの確認を行う。

 

「ルールは各一匹ずつのポケモンを使用したタッグバトル。二人のポケモンが両者戦闘不能になったらバトル終了。それでいいかな?」

 

シンジの言葉を聞いた三人は同時に頷き、ルールの確認を終える。そしてバトルするのが待ちきれないコウタは、迷うことなく目の前のポケモンを選抜したのだった。

 

「リザード!頼むぜ!」

『リザァ!』

 

コウタは相棒であるリザードを繰り出した。それに続き、コウミは懐のモンスターボールを取り出し、同じく自分の相棒であるポケモンを繰り出す。

 

「私はこの子よ!お願い!ワカシャモ!」

『シャモシャ!』

 

コウミが繰り出したのはワカシャモだった。初めてみるポケモンに、リーリエは興味津々でポケモン図鑑を広げ詳細を確認する。

 

『ワカシャモ、わかどりポケモン。アチャモの進化形。戦いになると体内の炎が激しく燃え上がる。強靭な足腰から繰り出されるキックはかなりの破壊力。』

 

ワカシャモの進化前、アチャモはホウエン地方にて貰える初心者用のポケモンだ。ほのおタイプを持っているが、進化したことによってかくとうタイプも習得したため、その近接攻撃には更に磨きが掛かっている。

 

「リザードに続いて今度はワカシャモ。あの時の2匹が立派に進化してるなんてね。でも、僕たちも負けないよ!」

 

シンジは成長した二人の姿に意気込む。そして自分はそんな二人に対し、このポケモンで対応しようとモンスターボールを手にする。対するリーリエも同じく、繰り出すポケモンを決めシンジと共にモンスターボールを同時に投げた。

 

「行くよ!イーブイ!」

「お願いします!マリルさん!」

『イブブイ!』

『リルリル!』

 

シンジはイーブイを、リーリエはマリルを繰り出した。そのイーブイの姿を見たコウタは、もしかしてとシンジに問いかけた。

 

「もしかしてそのイーブイって……」

「うん、アローラに行く前にゲットしたイーブイだよ。あの時と違ってこの子も成長したんだ。」

『イブイ!』

 

シンジはイーブイは成長したのだと自慢気にいい、イーブイの頭を優しくなでた。それほど自分のポケモンを誇りに思っており、同時に大切に思っている心の表れだろう。遠くに行っても変わらないその彼の姿に、コウタとコウミはどこか安心するような感情を抱いた。

 

「さあ、バトルを開始しようか。」

「では此方から行きます!リザード!イーブイにきりさく攻撃!」

 

リザードは鋭い爪を伸ばし、その名の通りイーブイに接近し切り裂くように振り下ろす。動きも素早く、よく鍛えられていることが分かる。シンジもそんなリザードの姿に感心するが、それでも簡単に喰らう訳はいかないと次の行動に移る。

 

「イーブイ!ステップで躱して!」

 

イーブイはバックステップをすることによって回避する。リザードのきりさくは空を切り、イーブイにダメージを与えることは出来なかった。だが、それでもその攻撃からリザードの攻撃力は確かなものだと言う事が伺えることは間違いなかった。

 

リーリエもそんなリザードの姿に感心したが今はバトルの真っ最中。気を取り直し、自分も動き出そうとマリルに指示を出した。

 

「マリルさん!リザードさんにアクアテール!」

 

水を纏ったマリルの尻尾は、リザード目掛けて振り下ろされる。リザードはきりさくを外し現在隙をさらしている状態だ。回避することは少々困難であろう。

 

ほのおタイプのリザードにとって、みずタイプアクアテールは効果は抜群だ。この攻撃が当たればリザードもただでは済まないだろう。だが、不思議とコウタは落ち着いている様子だ。何か作戦があるのだろうかと考えるリーリエだが、既に指示を出してしまっているため攻撃の中断は行えない。

 

「ワカシャモ!ほのおのうず!」

 

次の瞬間、ワカシャモの放ったほのおのうずによりマリルの攻撃ははじき返されてしまう。タイプ相性が悪いにも関わらずいとも容易くマリルの攻撃を阻むワカシャモも相当の手練れであることが分かる。

 

コウタはコウミがほのおのうずで援護してくれることを分かっていたのだろう。双子だからこそできるコンビネーションは見事なものだとリーリエは再び感心するが、それでも自分もシンジとのコンビネーションなら負けないと心の中で対抗心を燃やす。

 

そんな感情を抱くリーリエに対し、シンジも軽く顔を見合わせて頷く。どうやら彼も同じ考えを抱いているようだ。シンジは次はこっちの番だと言うように反撃する。

 

「リザードにスピードスター!」

「リザード!かえんほうしゃ!」

 

尻尾を振り回しスピードスターを無数にリザードに放つイーブイ。対するリザードはかえんほうしゃで迎え撃ち、スピードスターを撃ち落していく。攻撃後の隙を狙い、次にワカシャモがイーブイに狙いを定め攻撃を仕掛けた。

 

「ワカシャモ!ニトロチャージ!」

 

ワカシャモは全身に炎を纏い、勢いよくイーブイに向かって突進していく。ニトロチャージは自らのスピードも上げていく効果もある厄介な技だ。だが、それもシンジたちの作戦の一つでもあった。

 

「マリルさん!バブルこうせんで反撃です!」

 

マリルはバブルこうせんで突進してくるワカシャモに攻撃を加える。炎を纏っているとはいえほのおタイプの技、みずタイプのバブルこうせんには耐え切れずに、当たった瞬間蒸発するように爆発しワカシャモは押し戻される。

 

自分たちのコンビネーションはかなりのものだと自負している二人だが、それでもこの二人も完璧なコンビネーションを見せるものだと認識する。だがタッグバトルにおいて、自分たちが負けるわけには行かないと再び闘志を燃やす。例えそれが尊敬する相手であっても。

 

「イーブイ!ワカシャモにシャドーボール!」

 

反動で怯んでいるワカシャモにシャドーボールで追撃をかけるイーブイ。リザードはワカシャモを助けるため、その場を勢いよく飛び出しシャドーボールの車線上に立ち構える。

 

「ドラゴンクロー!」

 

リザードの爪が緑色に光り、シャドーボールを切り裂く。シャドーボールは綺麗に引き裂かれ、その衝撃により木っ端みじんに爆発する。リザードは反撃するため走り出し、再び攻勢にでる。

 

「もう一度ドラゴンクロー!」

 

再度ドラゴンクローを繰り出しイーブイ目掛けて振り下ろす。イーブイが危険だと判断したマリルは、直ぐにイーブイを助けるために庇うように前に出る。かつてニドキングに襲われた時にイーブイがした事と逆の光景だ。

 

「マリルさん!?」

 

リーリエは突然の事で驚く。マリルはイーブイを庇い正面からリザードのドラゴンクローを受ける。しかし、直撃したのにもかかわらずマリルには一切のダメージがなかった。リーリエはその時、マリルの特徴を思い出した。

 

マリルはみずタイプに加え、もう一つのタイプを保有している。それはフェアリータイプだ。フェアリータイプにはドラゴンタイプの技は効果が全くない。それゆえにマリルには傷一つ付けることは出来なかったという訳だ。

 

そのことを懸念していたコウタは、自らの未熟さを理解し歯をかみしめる。まだまだ状況判断が甘いのだと思い知らされた。とは言え当のリーリエ本人もマリルの予想外の行動に焦っていたことも事実ではあるが。

 

『イブブイ!』

『リルル///』

 

イーブイは守ってくれたマリルに笑顔で感謝する。マリルもそのイーブイの笑顔に照れ臭そうに笑みを返す。その姿から二人は余程仲がいいのだと伝わってくる。バトル中であるのにもかかわらず、その様子はどこか微笑ましく感じたシンジだった。

 

「反撃行くよ!シャドーボール!」

 

戸惑っているリザードにイーブイのシャドーボールが突き刺さる。リザードはその攻撃をまともに受けてしまい後ろに下がってしまった。それを好機だと捉えたリーリエも、すかさずマリルに攻撃の指示を出した。

 

「マリルさん!もう一度バブルこうせんです!」

「危ない!ワカシャモ!ほのおのうず!」

 

ワカシャモはダメージで動けないリザードの前に立ち、ほのおのうずでバブルこうせんに対抗する。拮抗する二人の力だがこれはタッグバトル。パートナー同士のコンビネーションが勝負の鍵を握る。

 

「イーブイ!スピードスター!」

 

それを理解しているシンジは、スピードスターでマリルの援護に回った。押し返す力を強めるため、背後からバブルこうせんに重ねる形でスピードスターを放つイーブイ。その援護は見事成功し、ワカシャモのほのおのうずを押し返す形へとつながった。

 

ワカシャモのほのおのうずはかき消されてしまい、貫通したバブルこうせんがワカシャモを襲う。耐え切れないワカシャモはリザードと共に飛ばされてしまう。そして遂に戦闘不能となってしまい、バトル続行は不可能となった。

 

「ワカシャモ!?」

「リザード!?」

 

ワカシャモとリザードを心配し、コウタとコウミは慌てて近づいた。パートナーポケモンが傷つけば誰でも心配するものである。シンジもそんな二人を案じ、直ぐに回復用の木の実を手渡した。

 

「ほら、オボンのみだよ。」

「はい、ありがとうございます。」

 

シンジの差し出したオボンのみを、二人はありがたく受け取った。そのオボンのみを互いにポケモンに食べさせ、休ませるためにモンスターボールへと戻す。因みにイーブイはマリルに自らオボンのみを分け与えていた。あの一件以降、二人は特に仲良くなることが出来たようだ。

 

「でも流石シンジさんですね。タッグバトルもお手の物とは。」

「それはリーリエがパートナーだからだよ。正直あの時のドラゴンクローはヒヤッとしたからね。」

「リーリエもトレーナーになりたてとは思えないくらいいい動きしてたよ!」

「それはシンジさんがパートナーだからですよ。私一人では戸惑ってばかりで上手く戦えませんから。」

 

その言葉を聞いた二人は、似た者同士なのだなと心の中で思いクスッと笑う。当の本人たちは自分たちの言ったことを理解していないのか、コウタたちの笑みに首を傾げていた。

 

その時、コウミがリーリエにある質問をした。

 

「そう言えばリーリエももしかしてジム巡りとかしてるの?」

「はい!シンジさんにアドバイスをいただきながら、今はセキチクジムに挑戦しようとしているところです!」

「そうなんだ!私たちもジム巡りしてるんだけど、セキチクジムはさっき攻略してきたよ!」

「本当ですか!?すごいです!」

「セキチクジムのジムリーダーはちょっと変わった人だけど、なんというかトリッキーな戦い方だったよ。強敵だけど、応援してるからね!」

 

コウミたちもジムバトルをしており、セキチクジムを二人とも攻略したようだ。これからセキチクジムを挑むリーリエに激励の言葉をかけるコウミ。リーリエもコウミの話を聞き、今までのジムリーダーとは少し違うタイプなのかと緊張する一方、どんなトレーナーなのだろうかという期待感を抱く。

 

「次に会う時はカントーリーグかもな。絶対にジム巡りやりとげろよ?」

「カントーリーグ……はい!がんばります!」

 

コウミに続きコウタも一言激励する。カントーリーグと言う単語に更に緊張感が増すリーリエだが、その場にはコウタとコウミ、その他にも数多くの猛者たちが集うのだろうと期待感も同時に増す。

 

カントーリーグは1年に1度の大きなトレーナーたちの為の祭典。ジム巡りを終えたトレーナーたちが待ち構える場所。トレーナーたちにとっての夢の舞台だ。リーリエもポケモンバトルを重ねていく中、その壮大な舞台に立ちたいと胸に抱くようになっていた。

 

「じゃあ俺たちはそろそろ行くよ。シンジさん、俺たちも必ずカントーリーグに出て見せます。見ていてください!」

「うん、二人の活躍、僕も楽しみにしているよ。」

「じゃあねリーリエ!今度は負けないから!」

 

コウタとコウミは二人に別れを告げ再び旅に出た。リーリエも彼らに負けられないと決意を新たに、次のセキチクジムを必ず突破しようと心に決める。

 

新たなライバルの登場に心躍らせるリーリエ。思いがけぬ再会と彼らの成長に期待感を抱くシンジ。2人の冒険はまだまだ続く!




と言うわけで登場させたのはコウタ、コウミ(USUMの主人公)でした!双子設定は勝手に作りましたが、二次創作だと良くあること。

一応主人公より年下です。パケでも幼い印象があったので違和感はない……はず。口調も勝手な想像で帽子は装備されていませんのであしからず。

話は変わりますが、ヌシは“イーブイとあそぼう”と言う本を買いました。しかしそこに書かれてたクイズで疑問に思ったことがあります。【XY13話のニンフィアがケロマツに放った最後の技はなんでしょう?】と言う問題があったのですが、それの答えがメロメロでした。

しかし、ヌシの記憶ではメロメロ→ドレインキッスのコンボでフィニッシュを決めていたので、これは正確には間違いであることに気付いてしまいました。放つ=遠距離技と言う解釈であれば間違いないのですが、もしそうだとしたら流石に意地悪すぎる問題になりますしちょっと納得いかなかったですね。

あの回は(ニンフィアが可愛すぎたから)30回ほど見てるので流れは完璧に把握しているはずです。これは訴えるしかない!いや、流石にそこまではしませんけど。ブイズの回でヌシの眼を欺くことなど出来ぬ!モブの所持していたブイズのシーンすらも記憶済みなのです!

まあなんやかんやで次回はセキチクになぐりこ……ゲフンゲフン、もとい到着する予定です。ではではまた次回会いましょう!ノシ


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迷子のポケモン!サファリゾーンで捕まえて!

前回ルリリのタイプを間違えて表記していた愚かなヌシです。親切な読者様が教えてくださったので助かりました。ブイズ以外はダメみたいですね。これから気をつけなければ。

気を取り直して今回はサファリゾーンです。タイトル通りあるポケモンをゲットしますがそれは後程。

今度は何も間違ってないはず!そうだと信じたい(願望


「着きました!セキチクシティ!」

 

順調にジム巡りをして旅を続けているリーリエとシンジ。そんな一行は遂に6つ目のジムがあるセキチクシティへと辿り着いた。と言ってもヤマブキジムにはまだ再挑戦していないため、5つ目のジムと言った方が正しいだろうか。

 

「よし!では早速!」

「待ってリーリエ!」

 

ジムに向けて出発しようと意気込み歩き出したリーリエを、シンジは待つようにと呼びかける。リーリエは何故自分を止めたのかとその理由をシンジに尋ねた。

 

「どうしたのですか?シンジさん。」

「ジムに挑む前にサファリゾーンに寄ってみたらどう?」

「サファリゾーン……ですか?」

 

サファリゾーンという言葉を聞いてリーリエは思い出す。以前エリカにこの町へと寄るように奨められた時、彼女も同じようにサファリゾーンと口にしていたのだ。

 

しかしリーリエはサファリゾーンという場所を知らないでいる。疑問符を浮かべるリーリエに、シンジは簡単に説明することにした。

 

「サファリゾーンは色んな野生のポケモンを放し飼いにしている施設なんだ。そこではポケモンをゲットすることも、ポケモンたちと触れ合うことも出来るんだよ。折角セキチクにきたんだったら、試しに立ち寄ってみるのもいいんじゃないかな?」

 

シンジの説明にリーリエも『なるほど』と頷き理解する。サファリゾーンはカントーやジョウトにおいては根強い文化として盛んなものになっている。最近では他の地方でも見かけるようになったが、アローラ地方には未だ見ることのできない施設だ。それゆえに、リーリエが知らないのも無理はないだろう。

 

「そうですね。そのような施設であれば私も興味あります。折角なので行ってみましょう!」

「じゃあ行こっか!」

 

シンジとリーリエはセキチクジムに挑戦する前に、セキチクシティにあるサファリゾーンへと足を運ぶことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?なんだか人だかりが出来ていますよ?」

「ほんとだ。何だろう?」

 

リーリエたちがサファリゾーンを訪れると、そこには多くの人で賑わっていた。確かに人気のある施設ではあるが、だからと言ってここがここまで人で溢れたところはシンジも見たことがない。一体何があったのか近くに人に尋ねてみることにした。

 

「すいません。一体何があったんですか?」

「ん?よそから来た人かい?今からサファリゾーンで一種の大会が催されるんだよ。」

「大会ですか?」

「ああ。」

 

シンジが男性に尋ねると、その男性がこれから大会が行われるのだと答えてくれる。大会と聞いて、リーリエはどこかデジャブのような感覚を覚える。すると大会の詳細を男性が説明してくれた。

 

「ルールはあくまでいつも行われるサファリゾーンのルールと同じ。ポケモンごとにポイントが決められてて、参加者の中で最も高いポイントのポケモンをゲットした人の勝ち。ゲットしたポケモンの数が多くても少なくても関係ない単純なルールさ。参加は誰でも自由みたいだし、君たちも参加してみたらどうだ?」

 

男性はそう説明する。シンジたちもその説明を聞き、この人だかりの理由に納得する。

 

「そうですね。リーリエ、僕たちも参加してみる?」

「はい!もちろんです!」

 

シンジがリーリエに参加の意思を尋ねると、リーリエは手をギュッと握りしめて参加することを決める。シンジも彼女の意思に従い、自分も一緒に参加することにした。

 

男性はシンジたちに説明し終えると、大会ではお手柔らかにと一言伝え去っていく。どうやら彼も大会の参加者のようだ。大会では互いにライバル同士になるのだろうかと、リーリエは気を引き締め大会に参加することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サファリ大会への参加を決めたリーリエたち。サファリゾーンのルールは以下の通りだ。

・手持ちポケモンの持ち込みは禁止

・ポケモンの捕獲は支給されるサファリボールでのみ

・所持しているサファリボールが無くなる、もしくは制限時間経過で終了

・ゲットしたポケモンは大会終了後、手持ちに加えてOK

・初期位置はそれぞれ指定された場所から始まる

 

主なルールはこれくらいである。ルール自体は入り口で会った男性の言った通り、通常時のものとあまり変わらないようだ。ただ、大会という事もあり開始地点は皆バラバラで始めることになる。これは入口付近での混乱やポケモンの争奪を防ぐためだ。それとサファリゾーン自体かなり広く、制限時間内でポケモンを探しながら全部を回ることは不可能だ。そんな彼らにサファリゾーンを満遍なく体験してほしいと言う意図もあるのだろう。

 

シンジとリーリエはサファリゾーンの運営側にポケモンたちを預け、サファリゾーン内へと入ることにした。シンジたちは担当者の人に案内され、指定された場所まで辿り着く。すると担当者の女性が一言シンジとリーリエを含む参加者たちに伝える。

 

「間もなく園内放送により大会参加の合図が出されます。それまでこちらで待機していてください。」

 

女性が一言そう言い暫くすると、キンコンカーンと聞きなれた音がサファリゾーン全体に響く。

 

「これよりサファリ大会を開催いたします。皆さま、決して無茶をすることなく、心おきなくサファリゾーンをお楽しみください。」

 

再びキンコンカーンと音が鳴り響き、園長からの園内放送が終了する。それと同時に参加者のメンバーが一斉に思い思いの場所へと走り始める。手元にあるパンフレットにはサファリゾーン内にいるポケモンの出現しやすい場所も記載されている。勿論その場所に生息していると決まっているわけではないが、時間は有限であるためじっとしているのは時間が惜しいと考えている人も多いのだろう。

 

シンジとリーリエも走り出した参加者たちを見送り、自分たちもそろそろ行こうと歩き出した。

 

「まずはどこから行く?」

「そうですね……。私はどこへ行くかとかは特に拘りません。ポケモンさんを見かけたらゲットしてみる、と言う方針で行きたいと思います。って私が勝手に決めちゃってますけどいいでしょうか?」

「問題ないよ。僕もリーリエに賛成だから。僕たちは僕たちのペースで行こう。」

 

リーリエの意見にシンジも賛同する。初めは勝手に決めてしまい不安に感じたリーリエだが、シンジも同じ考えだという事を聞いて心の中で安心する。

 

リーリエたちが気ままに歩いていると、草むらから突然一匹のポケモンが飛び出してきた。

 

『ストライーク!』

「あ、あのポケモンさんは!」

『ストライク、かまきりポケモン。忍者のように素早い動きで敵を惑わす。その動きから繰り出される鋭いカマの一撃はとても強力。』

 

草むらから出てきたのはストライクだった。ストライクは襲うわけでもなくこちらをじっと見つめている。ポケモンたちへの躾が行き届いているのか、もしくはここのポケモンたちが比較的おとなしいのか。

 

「ストライクはポイント的に言えばかなり高いみたい。折角だしゲットに挑戦してみたら?」

「そうですね、分かりました!やってみます!」

 

リーリエはシンジの言葉に同意し、ストライクのゲットに挑戦してみることにした。

 

ポケモンのポイントは主にゲットの難易度、ポケモンの強さ、出現率の低さが関係している。ストライクは捕獲の難易度から高ポイントに設定されているようだ。

 

リーリエはストライクをゲットしてみようと支給された緑色の限定ボール、サファリボールを手にする。

 

「では行きます!サファリボール!」

 

リーリエは勢いよくサファリボールをストライク目掛けて投げる。しかしストライクはその鋭いカマを振るい、サファリ―ボールを撃ち返した。

 

「ひゃっ!?」

 

リーリエは反射的に頭を押さえながら屈み、跳ね返ってきたサファリボールを避ける。やはり弱っていないポケモンを捕まえるのは一苦労するようだ。ストライクはそのまま興味のない様子でその場を去っていく。

 

「リーリエ、大丈夫?」

「は、はい。でもストライクさんをゲットできませんでした……。」

「ポケモンバトルが出来ない分、工夫しないと捕獲は難しいからね。」

 

手持ちにポケモンがいないためポケモンバトルで弱らせることは出来ない。それ故にその他の手段を用いてゲットするしかない。

 

サファリボールで強引に捕獲するもよし、エサでポケモンの気を引かせるもよし、石を投げて怒らせ捕獲しやすくするのもよし。但しポケモンを怒らせた場合、運営側も補償はしかねるそうだが。

 

「サファリゾーンには色んなポケモンがいるからまたチャンスは来るよ。」

「そうですね。気を取り直して次に行きましょう!」

 

リーリエは今回の失敗を次に活かそうと、再びポケモンを探すために歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~、中々上手くいきません……。」

 

しかしリーリエのポケモンゲットは非常に難航していた。先ほどからニドランを始め、カイロスやコンパン、タマタマにモンジャラなど、様々なポケモンに出会ってはいるもの、どれも捕獲は失敗に終わっている。

 

ポケモンフーズを与え気を逸らしたりはするものの、いざゲットしようとするとポケモンたちが逃げて行ってしまうのだ。ここのポケモンたちは人に慣れているとはいえ、自然に近い環境で飼育しているため警戒心も高いのポケモンが多いのだろう。

 

「サファリゾーンでのゲットは結構難易度が高いからね。他の人たちも苦戦しているみたいだし。」

 

周囲を確認してみると、シンジの言う通り他のトレーナーたちも中々ポケモンゲットに苦戦しているようだ。やはりポケモンバトルでの捕獲が出来ない分、勝手もかなり違ってくるのは仕方がない事であろう。リーリエも今度こそはと、手をグッと握り締める。

 

『リュー!』

「!?今の声は!?」

 

そんな彼らがサファリゾーンを探索しながら歩いていると、奥からポケモンの鳴き声が聞こえた。その声はどこか助けを求めている声に聞こえたため、リーリエとシンジは急いでその声の元へと走っていく。

 

サファリの森を抜けると、そこには一匹の小さなポケモンと、小太りで眼鏡をかけた男性がいた。男はポケモンをゲットしようとしている様子だが、当のポケモンは怯えたように体を震わせ後ろに下がっている。リーリエはこのまま見ているわけにも行かないと思い、すぐにポケモンを庇うように前に出た。

 

「待ってください!この子が怯えているじゃないですか!」

『リュ?』

「誰だい君は?関係ないのだから下がっててくれ!僕はやっとそのミニリュウを見つけたんだ!」

「ミニリュウ?」

 

リーリエはミニリュウと呼ばれたポケモンへと振り返る。そしてポケモン図鑑を開き、ミニリュウの詳細を調べた。

 

『ミニリュウ、ドラゴンポケモン。目撃者が少ないため幻のポケモンと囁かれていたが、水中に密かに暮らしていることが確認された。』

「そのような珍しいポケモンさんがどうしてここに……」

「そのミニリュウは僕がやっとの思いで見つけたんだ。だがゲットしようと近付いたらそのミニリュウに逃げられた。だが、そのミニリュウに取り付けた発信機を辿り、このサファリゾーンに逃げ込んだことが分かった!」

 

男はリーリエの疑問に答えるように言う。男の言うように、ミニリュウの首には小型の発信機が取り付けてあった。だが男の言葉は少し興奮気味で、2人にとって少し聞き取り辛いものだった。

 

「たとえポケモンさんをゲットするためでも、発信機を取り付けるなんて酷いです!」

「君にとやかく言われたくないよ。ミニリュウが手に入れば、僕のポケモンコレクションが完成へと近づくんだ!」

「ポケモンコレクション?」

 

その言葉を聞いて、シンジは彼の正体が何なのか察しがついた。

 

「もしかしてあなたはポケモンコレクター?」

「その通り!」

 

シンジが男の正体を尋ねると、彼は自信満々に胸を張って答えた。リーリエは聞きなれない言葉に首を傾げ、シンジにポケモンコレクターの詳細を尋ねた。

 

「シンジさん、ポケモンコレクターって何ですか?」

「ポケモンコレクターはバトルやお世話をするためにポケモンを集めるのではなく、あくまでポケモンをコレクションの一環として集める人の事だよ。いわゆるポケモンの収集家と言ったところかな。ただ、人によってはポケモンの捕獲の仕方も色々あって、中には感心できないやり方の人もいるみたいだけど。」

「そうなんですか。」

 

シンジの説明を聞き、リーリエは悲しそうな表情で呟く。しかし男はその言葉を聞いて我慢できないように否定的な言葉を告げる。

 

「僕を他のポケモンコレクターと一緒にするな!確かにバトルはしないがポケモンを傷つけるような真似は絶対にしない!」

「それでもポケモンさんを怯えさせている点では同じではないですか!」

「うるさい!絶対にミニリュウはゲットしてやる!」

 

否定的な言葉を並べた男にリーリエも我慢が出来ず声を荒げる。だが男はそんなリーリエに激昂し、懐からロープで繋がれた捕獲用ネットを取り出し投げる準備をする。恐らくミニリュウを捕獲するためでなく、力づくでシンジとリーリエを大人しくさせるつもりなのだろう。先ほどの男の言葉が本心であるならばそう捉えるのが妥当だ。

 

男はロープを持ちながらそのままリーリエたちに向かって捕獲用ネットを投合する。リーリエたちも対抗したいところだが、今は手持ちにポケモンがいないため防衛手段がない。シンジはリーリエを守るように立ち塞がる。だが次の瞬間……。

 

『ミリュー!』

 

ミニリュウが咄嗟に口から青白い炎のような衝撃波、りゅうのいかりを捕獲用ネットにぶつけ焼き尽くした。

 

「!?なんてことを!こうなったらこのプレミアボールで!」

 

男が取り出したのはサファリボールではなく白色の非売品であるプレミアボールだった。ポケモンコレクターはゲットする際のモンスターボールも拘る人が多いと言う。プレミアボールも通常の方法では手に入らずレアであるため、彼も自分のボールには拘りを感じているのだろう。

 

男はプレミアボールをミニリュウに投げる。だが……

 

『ミリュ!』

「いたっ!?」

 

男の投げたプレミアボールはミニリュウの尾に跳ね返され、男の額に当たる。男は痛みに耐えるように頭を押さえプレミアボールを拾いに行く。しかしプレミアボールが落ちる瞬間、何かに当たったようで、茂みがガサゴソと動いた。そしてそこから一匹のポケモンが姿を現す。

 

『サーイ!』

「!?サイホーン!?」

 

そこから姿を現したのはサイホーンだった。サイホーンはボールをぶつけたのがポケモンコレクターの男だと思い、その男へと狙いを定め突進する。その男は慌ててサイホーンから逃げ出した。

 

「ひえ~!たすけてー!」

 

男の声と姿はどんどん小さくなっていき、その姿はみるみる見えなくなっていった。悪さをすると天罰が下るという事だろうか。

 

リーリエは呆気にとられているが、すぐに我に返り助けてくれたミニリュウにお礼を言う為に声を掛けた。

 

「さっきはありがとうございます。おかげで助かりました。あなたを助けるつもりが、逆に助けられてしまいましたね。」

『ミリュ……』

 

リーリエの言葉に、ミニリュウは少し表情を暗くする。だがその表情は先ほどの怯えている時の顔とは明らかに違っていた。何故表情が曇っているのかと考えると、次に聞こえた音でその疑問が消えた。

 

キュルル~

 

どうやらミニリュウの腹の虫が鳴ったようだ。恐らくミニリュウのお腹の音だろう。リーリエは微笑みながらミニリュウに尋ねる。

 

「ふふ、お腹が空いたのですか?」

『ミリュ~』

 

ミニリュウは照れくさそうに頷いて答える。リーリエはそんなミニリュウのお腹を満たすため、リュックサックからポケモンフーズを取り出した。

 

「私が作ったポケモンフーズです。よかったら食べてください。」

『ミリュ!』

 

リーリエはポケモンフーズを手にのせ、ミニリュウに差し出す。ミニリュウは最初にポケモンフーズの匂いを嗅ぎ、警戒しながら口にする。するとすぐにミニリュウから笑顔が零れ、次々とポケモンフーズを口にする。一通りポケモンフーズを食べ終えたミニリュウは、満足したように満面の笑みを見せた。

 

「美味しかったですか?」

『ミニリュ!』

「そうですか?それは良かったです!」

「良かったね、リーリエ。」

「はい!」

 

満足したミニリュウの姿に、リーリエも嬉しさがこみ上げてくる。自分が作ったポケモンフーズを喜んで食べてくれるのがここまで嬉しいものだとは思わなかったようだ。

 

「この子、多分群れからはぐれてしまったんですよね。」

「多分ね。さっきの人の話からすればそうだと思うよ。」

 

シンジのその言葉を聞き、リーリエは意を決したように立ち上がる。

 

「決めました!私、この子を家族の元まで返します!」

 

リーリエの言葉を聞き、ミニリュウは首を傾げて疑問符を浮かべる。リーリエはミニリュウに自分の気持ちを素直に伝えることにした。

 

「ミニリュウさん、暫く私と……私たちと一緒に旅をしませんか?きっと、あなたを家族の元まで返して見せます!」

『ミリュ!?リュー!』

 

どうやらミニリュウもリーリエに賛成したようだ。嬉しそうに喜ぶミニリュウを目にしたリーリエは、サファリボールを手にしてミニリュウに差し出す。

 

「しばらくの間ですが、よろしくお願いします。」

『ミリュ!』

 

ミニリュウは差し出された嬉しそうにしながらサファリボールに自分の額を当てる。そしてサファリボールが開き、ミニリュウはボールの中へと吸い込まれていった。その後何の抵抗もなく、サファリボールの揺れが止まりめでたくリーリエはミニリュウをゲットした。

 

「ミニリュウさん!ゲットです!」

 

ミニリュウをゲットして喜びを露わにするリーリエ。シンジもそんな彼女を祝福していた。

 

「ミニリュウゲットおめでとう!」

「ありがとうございます!シンジさん!ミニリュウさん、出てきてください!」

『ミリュ!』

 

早速リーリエはミニリュウをボールから出した。

 

「改めて、これからよろしくお願いします。ミニリュウさん!」

『ミニリュ!』

 

改めてよろしくと自分の気持ちを再び伝えるリーリエ。ミニリュウもまた嬉しそうにリーリエに頷く。ミニリュウの姿から察するに、彼女も決して人が苦手なわけではないようだ。

 

そんな時、再びキンコンカーンという音が園内に鳴り響く。

 

「まもなく大会終了時間となります。参加者の方は園内から速やかに退場願います。」

 

そしてキンコンカーンとなり園内放送が終了する。リーリエとシンジもその放送を聞き、サファリゾーンから退場しようと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会の結論から言うと、リーリエは優勝を逃した。ミニリュウは確かにレアなポケモンではあるが、このサファリゾーンには生息していないため、ポイントは付かないのだと言う。

 

今回優勝したのはケンタロスをゲットした男性トレーナーであった。ケンタロスは出現率が低く、捕獲率の低さも兼ね備えているためかなりポイントが高いのだとか。しかし、その男性トレーナーにはシンジたちは見覚えがあった。そう、彼ははじめ入り口で出会った親切な男性トレーナーだったのだ。知らない仲ではないシンジたちも、優勝賞品を貰って笑みを浮かべる彼に対し、拍手をして祝福していた。

 

『ミリュ……』

 

そんな中、ミニリュウは落ち込んだ様子を見せていた。自分の所為でリーリエが優勝を逃したと思っているのだろうか。だが、リーリエはそんなミニリュウに優しく声を掛けた。

 

「あなたの所為じゃないですよ。確かに優勝は出来ませんでしたけど、私はあなたに出会えたのでそれだけで満足です。」

 

戦いよりも、一つの出会いを大切にしているリーリエだからこそ言える言葉だ。ミニリュウもそんなリーリエの言葉を聞き、彼女に微笑み返す。シンジもそんな二人の姿を見て、笑顔で見守っていた。

 

こうしてリーリエは新しい仲間、ミニリュウをゲットした。サファリゾーンでの予想外の出会いだったが、リーリエもミニリュウも互いに満足げに微笑んでいた。さあ、次はいよいよセキチクジムに挑戦だ!




と言う訳でゲットしたのはミニリュウでした。確か初代サファリでは釣りでゲットできたはずですが、本作ではいない設定にしました。リーリエにミニリュウ、ハクリューは結構合う思うの。ヨッシーは……まあ……うん……

では今回あった質問返しですが、ミヅキ、コウタ、コウミが出たのであればヨウ君は出るのか?と言う事でした。

正直に言ってしまえばヨウ君の代理として現主人公のシンジを出してます。だってヨウ君はブイズ使うイメージないですし。

ですがもしヨウ君を出してほしいと言うことであれば別に問題なく出せます。言ってしまえばカントー編が終わった辺りでハウ君を出す予定もあるのでその時一緒に出すのもいいかもしれません。結局ハウ君出したかったので出すことに……。今更ながらミヅキちゃんとハウ君を出す順番逆にすればよかったのではと思ってたり……。

それともし出す場合にはシンジとは知り合いと言う設定ではないうえ、残念ながら?ヨウリエにはなりませんのでご注意を。この小説ではあくまでオリ主リエを貫き通しますので。

取り合えず次回はセキチクジムです!また何か質問や希望があれば遠慮なくドウゾ!

ではではまた次回です!ノシ


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VSセキチクジム!決めろ!魂の一撃!

ポケモンの一番くじ引いて1回でC賞引けてキモいぐらいにやけているヌシです。イーブイ可愛い。

ポケモンソーダも1箱で買ったヌシです。ブイズ可愛い。

と言う訳でなんとか間に合わせましたセキチクジム戦!なんかジム戦の時は話長くなってる気がしますが、3対3のバトルであれば仕方ないと思います。満足していただける内容であればヌシも嬉しいです。

少し本音を言うと、小説書くのは楽しいですが毎週書くのって結構疲れますね。でも締め切りを設定しないと三日坊主のヌシはやりきれないと思うのでがんばりますが。


サファリゾーンにて迷子のポケモン、ミニリュウを仲間にしたリーリエ。そしてセキチクジムへと挑戦するため、一行はセキチクジムの前へとやってきていた。

 

「な、なんど体験してもジム戦前の緊張感は慣れませんね。」

「相手の詳細が分からないとなると尚更ね。」

 

リーリエはセキチクジムの前に来ると、ジム戦前に味わう緊張感に不安を感じていた。その不安を忘れるように、リーリエは一度深呼吸で落ち着こうとする。それでも尚緊張の顔色に染まっている彼女に、シンジはセキチクジムのアドバイスを伝える。

 

「セキチクジムはどくタイプのジム。リーリエの手持ちの相性で言えば正直悪いけど、相性だけではバトルの優劣は決まらないよ。」

「は、はい。」

「ここのジムリーダーは素早いポケモンで怒涛の攻撃を仕掛け、テクニカルな戦法で敵を翻弄するバトルスタイル。慎重に動けばただの的になるだけだから、時には大胆に攻めるのも重要になってくるよ。」

「分かりました!ポケモンさんたちを信じて、必ず勝って見せます!」

 

シンジの言葉にリーリエは緊張が解けたようで、手をグッと握り締め決意を固める。シンジもこれなら大丈夫だろうと、セキチクジムの扉をゆっくりと開けた。

 

しかし、扉を開けた先には人影はおろか、人の気配すら感じない。ジムの中は道場のようにバトルフィールドが広がっているが、周囲には何もない内装だ。誰かジムの関係者がいないかと辺りを見渡すリーリエだが、その時どこからか声が聞こえてきた。

 

「セキチクジムへようこそ!あたいはジムリーダーのアンズ!」

 

その声は間違いなく女性の声だった。しかし、再び辺りを見渡してみても人の姿が全く見当たらない。リーリエはその声の主の正体に首を傾げる。

 

その時、リーリエの目の前に突然突風のように何者かが降りてきた。リーリエもたまらず目を瞑るが、目の前を確認するとそこには一人の女性が立っていた。

 

その女性はピッチリとした黒に染まった上下の服に、赤いスカーフを巻いている。その姿はまるで忍者と呼ばれる者たちの姿に酷似していた。

 

「え、えっと、あなたがセキチクジムのジムリーダーさんですか?」

「ああ、そうだよ。」

 

突然姿を現した女性に戸惑うリーリエ。彼女こそがこのセキチクジムのジムリーダーその人だ。

 

「改めて、あたいはセキチクジムジムリーダーのアンズ!よろしく!」

 

アンズと名乗った女性は笑顔でリーリエに挨拶する。リーリエは戸惑いながらも、自分も自己紹介するために再び口を開く。

 

「わ、私はリーリエです!アンズさんに挑戦するために来ました!」

「OK!もちろんジム戦は受けて立つよ!」

 

アンズは快くリーリエの挑戦を受け入れる。その後、アンズはシンジの顔を見て言葉を続けた。

 

「それであなたも挑戦者なの?」

「いや、僕はただの付き添いですよ。それよりキョウさんはどうしたんですか?」

 

シンジは一つの思っていた疑問をアンズに問いかける。リーリエも聞きなれない名前に首を傾げた。

 

「ああ、キョウはあたいの父上だよ。ただ今は四天王に就任したからね。あたいが後任として選ばれたってわけ。あなたは父上の知り合いなの?」

「僕はキョウさんがジムリーダーをしていた時に挑戦したんです。まさか四天王になっているなんで思っていなかったので驚いていますが。」

「そうだったのね。父上はあたいの誇りよ。」

 

シンジは彼女の回答に納得するように頷いた。以前挑戦したジムリーダーが四天王になっていると言う事は初耳だったため驚いたが、キョウの実力は本物だと知っているため違和感は感じなかった。

 

「じゃあ早速始めようか!」

「はい!よろしくお願いします!」

 

アンズとリーリエはバトルを開始しようと互いにバトルフィールド向かい合わせに立つ。互いの体が向き合ったところで、どこからともなく審判が姿を現した。ここのジムは皆が忍者として日々鍛錬しているジムのようだ。リーリエも突然現れた審判に言葉を失っている。

 

「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダーアンズによるジムバトルを開始する!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了です!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーの実認められます!では両者、ポケモンを!」

 

審判の合図でリーリエはハッと我に返る。慣れていない現象にどうしても思考がついて行かないようだが、それでもジム戦に集中しようと意思を強く持つ。

 

すると、先にアンズがモンスターボールを手にしポケモンを繰り出した。

 

「あたいの一番手はこのポケモンだよ!」

『クロッ』

 

アンズが最初に繰り出したのはクロバットだった。クロバットはリーリエも一度対戦経験がある。リーリエはクロバットの姿を見て、最初に出すポケモンを決めた。

 

「私の一番手はこの子です!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが選んだのはフシギソウだった。以前クロバットと対峙した時も当時フシギダネから進化したフシギソウだった。ひこうタイプを併せ持つクロバットに対して相性が悪いが、それでも彼女はフシギソウを信じてフシギソウを選出したのだ。

 

「ではバトルはじめ!」

 

審判の合図とともにバトルが開始される。先手をとろうとするも、なんと先に動き出したのはアンズの方であった。

 

「クロバット!エアスラッシュ!」

 

クロバットは四枚の翼を羽ばたかせ、刃のように鋭い衝撃波で先制攻撃を仕掛けた。予想外の行動にリーリエは慌ててフシギソウに指示を出す。

 

「躱してください!」

 

予想外の攻撃ではあったが、フシギソウは横にステップすることでその攻撃を難なくかわす。しかし、クロバットによる攻撃はこれだけで終わることはなかった。

 

「まだよ!シザークロス!」

 

クロバットは翼を交差させ、絶え間なくフシギソウを攻め立てる。フシギソウも回避行動に移るが捌ききることが出来ず、シザークロスをまともに喰らってしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

フシギソウは確実にダメージを貰ってしまうが、それでもまだ平気なようでダウンを拒み受け身をとる。

 

「まだまだ終わらないよ!エアスラッシュ!」

 

クロバットは再びエアスラッシュで攻撃する。休むことなく攻め続ける彼女とクロバットにどう対処するべきか、頭の中で考えをまとめていた。

 

(これがシンジさんの言っていた怒涛の攻撃。確かにこのままでは一方的に押されてしまいます。ですが押してダメなら引いてみろ、その逆もまたありです!シンジさんに言われた通り、大胆に攻めます!)

 

覚悟を決めたリーリエは、迫りくるクロバットのエアスラッシュに対抗するために攻撃を仕掛けることにした。

 

「行きます!フシギソウさん!とっしんです!」

 

フシギソウはエアスラッシュを次々と避けながらクロバットに接近する。すべて上手く躱すフシギソウだが、アンズは驚いた様子は見せなかった。寧ろそれを待っていたと言わんばかりに嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「シザークロスで迎え撃って!」

 

再びクロバットはシザークロスで攻め立てる。クロバットとフシギソウは中央で交じり合い、互いに後ろまで後退させられる。どちらの攻撃力も五分五分のようだ。

 

「続けてはっぱカッターです!」

 

休んでいる暇はないと、続けてはっぱカッターで攻撃を仕掛けるフシギソウ。その無数に接近してくるはっぱカッターに、アンズは冷静に対処した。

 

「クロバット!かげぶんしん!」

 

クロバットは自らの分身を無数に生み出し、はっぱカッターを華麗に回避する。本物のクロバットがどれか分からなくなり戸惑うリーリエとフシギソウ。その隙をつき、アンズは攻撃を続ける。

 

「今よ!ブレイブバード!」

 

クロバットの分身が一つに重なり、低空を飛行してフシギソウに勢いよく接近する。クロバットは青いオーラを纏っており、どんどん勢いを増してフシギソウへと接近してくる。フシギソウは慌てて回避しようとするが、そのクロバットの素早さに翻弄され回避することができず正面から受けてしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

ブレイブバードを受けたフシギソウは思わずダウンしてしまう。ブレイブバードはひこうタイプの技の中でもトップクラスの威力を持つ技だ。それを正面から受けてしまっては一溜りもないだろう。アンズも勝ちを確信したような表情だ。

 

しかし、フシギソウは負けじと自分の体に鞭をうち立ち上がる。ダメージはかなりのものだが、それでもリーリエの思いに応えるために倒れてはいられなかった。まさかの光景にアンズも驚いている。だがその反面、楽しさのあまり嬉しさがこみ上げてきた。

 

「なら次で終わらせるよ!ブレイブバード!」

 

再びクロバットはブレイブバードでフシギソウに接近する。絶体絶命の危機に、リーリエは一つの賭けに出た。

 

「走って逃げてください!」

 

リーリエの取った行動は、なんとクロバットから走って逃げる指示だった。フシギソウはリーリエを信じてクロバットとは反対の方向へと走り出す。しかし、フシギソウが全力で走っても当然クロバットのスピードには勝てない。徐々にクロバットとの距離が縮まる中、リーリエは今がチャンスだと感じ次の指示を出す。

 

「ジャンプして躱してください!」

 

クロバットが間近まで迫った瞬間、フシギソウはジャンプをしてクロバットの頭上へと回避する。クロバットも突然の事で反応しきれず、ブレイブバードは空を切る結果となった。アンズもまさかの行動に驚くも、その間にフシギソウの攻撃がクロバットを襲った。

 

「今です!つるのムチ!」

 

フシギソウの繰り出したつるのムチが、クロバットを頭上から叩きつけた。ブレイブバードの勢いも仇となり、地面に叩きつけられたクロバットはそのまま目を回して戦闘不能となる。

 

リーリエはクロバットと逆の方向へと走ることによって、接触するまでの時間を延ばし回避するタイミングを見計らっていたのだ。たとえフシギソウからはクロバットの姿を見ることができなくても、リーリエがフシギソウの代わりに目となって伝えることができればタイミングを合わせることは問題ない。これもポケモンとの信頼関係を築けているリーリエだからこそできることだ。

 

「クロバット戦闘不能!フシギソウの勝ち!」

 

アンズはクロバットをモンスターボールへと戻す。そしてリーリエとフシギソウを心から称賛した。

 

「まさかあの状況から逆転するとはね。正直驚いたよ。でも勝負はまだまだこれからだからね!」

 

アンズはそう言い、次のポケモンを繰り出した。

 

「二番手はこの子よ!アリアドス!」

『アリ!』

 

アンズが繰り出したのはアリアドス。むし・どくタイプを持つポケモンで、クロバットと同じようにフシギソウでは相性が悪い相手だ。

 

「二番手はアリアドスさんですか。フシギソウさん、戻って休んでいてください。」

『ソウ!』

 

リーリエはフシギソウをボールへと戻して態勢を整える。今の戦闘でダメージを抱えたままのフシギソウでは勝率が低いと考えたのだ。そしてリーリエも次なるポケモンを出すことにした。

 

「チラーミィさん!お願いします!」

『チラミ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラーミィだ。この交代が吉と出るか凶と出るか。

 

「またこっちから行かせてもらうわよ!ミサイルばり!」

「躱しておうふくびんたです!」

 

無数のミサイルばりを上手く躱しながら、自慢のスピードを活かして接近していくチラーミィ。そのスピードには目を見張るものがあるが、それでもアンズにはまだ余裕の笑みがあった。

 

「アリアドス!こうそくいどう!」

 

チラーミィがおうふくビンタを決めようとすると、そこには既にアリアドスの姿はなかった。何故ならものすごいスピードでチラーミィの逃げ場を無くすように動き回っているのだ。アリアドスのその姿はまるでアリアドスが複数体いるようにも見える光景だった。

 

「チラーミィさん!後ろです!」

「遅いわよ!アリアドス!クロスポイズン!」

 

チラーミィがリーリエの声に反応したものの既に遅く、アリアドスの両手から繰り出されたクロスポイズンでチラーミィは飛ばされてしまう。不意打ちに近いその攻撃は、チラーミィにとってもかなりのダメージとなった。

 

「続けてねばねばネット!」

『チラッ!?チラッ!?』

 

アリアドスは背中の棘から粘液のようなネットをチラーミィの周辺にまき散らす。チラーミィダメージで起き上がるのが遅れたチラーミィは逃げることができず、見事にねばねばネットに囲まれてしまう。

 

「今よ!ミサイルばり!」

 

身動きの取れないチラーミィにミサイルばりが接近する。リーリエもどうにかしてこの状況から脱出しなければと行動にでる。

 

「あなをほるです!」

 

チラーミィはあなをほるで地中へと姿を消した。いや、そうせざるおえなかった。一見打破出来たようにも見えるが、それこそがアンズの狙いだった。

 

チラーミィはねばねばネットの範囲外へとあなをほるで脱出した。しかし、アンズはチラーミィの居場所が分かっていたようにアリアドスに攻撃の指示を出した。

 

「そこよ!クロスポイズン!」

 

チラーミィが姿を現した場所へ瞬時に移動し、アリアドスは強力なクロスポイズンをお見舞いした。二度のクロスポイズンを受けたチラーミィだが、ボロボロになりながらもなんとか立ち上がることができた。だが足元はふらつき、立っているのがやっとと言う状態だ。

 

「チラーミィさん!まだいけますか?」

『チラ……チラミ!』

「これで終わりね。ミサイルばり!」

 

今一度放たれたミサイルばりにチラーミィは窮地に立たされる。この厳しい状況をどう突破するべきか模索するリーリエ。焦る彼女の頭に、以前シンジが言った言葉が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

――『工夫次第で戦術はいくらでも増えるってことは覚えておいた方が良いよ』

 

 

 

 

 

 

(そうです、工夫次第で戦術は無限に存在します。まだ私もチラーミィさんもやれます!)

 

リーリエは諦めた様子は見せなかった。そこで彼女はあるものが目に入り、まだ希望があるかもしれないとチラーミィに呼びかけた。

 

「チラーミィさん!正面に走ってください!」

 

チラーミィはリーリエの言葉を信じ、ミサイルばりを躱しながら駆け抜ける。ダメージがあるのかスピードはさっきよりも落ちているが、それでも攻撃を避けるには充分だった。

 

「!?なにをする気?クロスポイズンで迎え撃って!」

 

目の前まで接近するチラーミィに対し、クロスポイズンで対抗するアリアドス。リーリエはそれを待っていたとチラーミィに次の指示を出した。

 

「チラーミィさん!屈んでください!」

「しまった!?」

 

チラーミィは体勢を低くすることでクロスポイズンを回避する。クロスポイズンを誘導し、回避することで僅かでも隙を作ろうとしたのだ。しかしチラーミィのダメージでは大きく回避するのは当然無理だ。そこでリーリエはチラーミィの柔軟性を利用し、最小限の動きで回避しようと考えた。その思惑は成功し、見事クロスポイズンを空振りさせることに成功する。

 

「今です!おうふくビンタ!」

 

隙をさらしたアリアドスにすかさずおうふくビンタを決める。複数回ヒットしたおうふくビンタにより怯み、後ろへと下がらされる。その時、アリアドスにある異変が起きたのだ。

 

『アリ!?』

「アリアドス!?どうしたの!?」

 

アリアドスの動きが当然止まってしまった。一瞬何が起きたのか分からなかったアンズだが、その後何故動けなくなったのかを理解した。

 

「!?ねばねばネット!?」

 

そう、フィールドにまき散らされたねばねばネットに引っかかってしまったのだ。リーリエの狙いはアリアドス自身をねばねばネットに追い込むことだった。こうして動きを止め、僅かなスキを確実なチャンスに変えることが目的だったのだ。

 

「スピードスターです!」

 

そのチャンスを逃すことなく、スピードスターを正面から喰らってしまうアリアドス。逃れるすべのないアリアドスは、チラーミィの一撃により戦闘不能となる。

 

「アリアドス戦闘不能!チラーミィの勝ち!」

「お疲れ様、アリアドス。」

 

アンズはアリアドスをモンスターボールに戻した。

 

「まさか2回も逆転されるなんて思わなかったよ。」

「ポケモンさんたちが頑張ってくれたからですよ。私も何度かダメだと思いましたし。」

「ポケモンの事、よっぽど信頼しているのね。」

 

アンズはリーリエの心の強さを素直に称賛する。シンジはそんな彼女の姿が昔戦った人物の姿と重なった。

 

(アンズさんの戦い方、間違いなく父親のキョウさんと同じ戦い方だ。それにあの言動、父親の事を心から尊敬しているみたいだね。)

 

かつて戦ったキョウは確かに強敵で、自分も尊敬する人物の一人だと共感する。懐かしの人物の姿を思い出すと同時に、今の戦況を自分なりに分析する。

 

(リーリエの手持ちは3体。対してアンズさんのポケモンは残り1体。だけどリーリエのポケモンは瀕死に近いポケモンが2体、アンズさんはフルに体力を残した最後のポケモン。良くて状況は五分と五分だね。相手の残りがエースと考えるならば寧ろ逆かもしれない。)

 

だがそれでも最後までどうなるかは分からないのがポケモンバトルだと二人の戦いを静かに見守ろうと決意する。

 

(最後までがんばれ、リーリエ。)

 

シンジは心の中でそう呟く。リーリエが勝てるようにと祈りながら。

 

「じゃあ私の最後のポケモン。行け!モルフォン!」

『フォー!』

 

アンズは自らのエース、モルフォンを繰り出した。

 

「あれがモルフォンさん……。」

『モルフォン、どくがポケモン。コンパンの進化形。羽に鱗粉がついており、羽ばたくたびに毒の鱗粉をまき散らす。鱗粉の色によって毒の効果が変わる。』

 

明らかに厄介な相手だとリーリエにも緊張が走る。だがここまできて退くわけには行かないと気を引き締める。

 

「空を飛んでいるモルフォンにさっきみたいなねばねばネットを利用する戦い方は通用しないよ。」

 

アンズの言う通り、空を飛ぶモルフォンにはねばねばネットを利用するのは難しいだろう。ここからはリーリエにとって戦いづらいフィールドで戦うこととなる。

 

「チラーミィさん、続けてお願いします!」

『チラミ!』

 

チラーミィは傷付いているものの、戦闘意欲は失っていなかった。リーリエはペースを握られないように、今度はこっちから手を出すことにした。

 

「スピードスターです!」

 

動きが鈍くなっている今は牽制して様子を見ようとスピードスターを放つ。

 

「モルフォン!ぎんいろのかぜ!」

 

しかしモルフォンは翼を羽ばたかせ、文字通り銀色の風によりスピードスターを容易く撃ち落してしまう。明らかにチラーミィの攻撃力も下がってしまっているのが分かる。

 

「続けてねむりごな!」

 

チラーミィの頭上に緑色の眠り作用がある鱗粉をふさっと覆いかぶせるように振りかける。チラーミィもダメージの所為か対処が遅れ、その場でぐっすりと眠ってしまった。

 

「そんな!?」

「もう一度ぎんいろのかぜ!」

 

再度放ったぎんいろのかぜが、身動きの取れないチラーミィは当然まともにダメージを受けてしまう。ダメージの蓄積していたチラーミィは目を回し、そのまま戦闘不能となってしまった。

 

「チラーミィ戦闘不能!モルフォンの勝ち!」

「チラーミィさん!?」

 

リーリエはチラーミィの状態が心配になり、チラーミィに駆け寄り抱きかかえる。

 

「チラーミィさん、大丈夫ですか?」

『チラ……ミ』

「ありがとうございました。後はゆっくり休んでください。」

 

リーリエはチラーミィをモンスターボールへと戻す。そして元の位置に戻り、次のモンスターボールを手にする。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

リーリエが次に繰り出したのはマリルだ。フルに体力を残しているのはマリルだけであり、残りはダメージを残したフシギソウのみ。この戦いはより重要なものとなるだろう。

 

「行きます!バブルこうせんです!」

 

マリルは無数の泡を勢いよく放ち、先制攻撃を仕掛ける。しかし、この状況は先ほどのチラーミィと同じ状況だ。

 

「ぎんいろのかぜ!」

 

スピードスターと同じようにぎんいろのかぜであっさりと防がれる。だが、リーリエもそんなことは分かっていたと続けて畳みかける。

 

「ねむりごなを使わせるわけには行きません!アクアテールです!」

 

ねむりごなを撃たせる暇を与えないために続けてアクアテールで攻撃する。モルフォンもアクアテールは防ぎきれずに正面からダメージを受けてしまう。

 

「なるほど、それが目的だったのね。」

 

アンズが納得するようにそう呟く。リーリエの真の目的はダメージを与える事ではなく、周囲のねばねばネットを引き剥がして動きやすくする事だったのだ。アクアテールは攻撃範囲も広いため、ねばねばネットを引き剥がすのには最適だった。

 

「これで動きやすくなりました!もう一度バブルこうせんです!」

「こっちももう一度ぎんいろのかぜで反撃!」

 

マリルは再びバブルこうせんで攻撃する。だがモルフォンもバブルこうせんをぎんいろのかぜで同じように撃ち落す。

 

「マリルさん!ころがるです!」

 

マリルは丸くなり勢いよくモルフォン目掛けて一直線に転がっていく。ころがるはいわタイプのわざ。虫タイプのモルフォンには効果抜群だ。だが、そう簡単にはいかなかった。

 

「サイコキネシス!」

「サイコキネシス!?」

 

ころがるでダメージを与えるどころか、サイコキネシスで攻撃が当たる直前にマリルを宙に浮かせ防がれてしまう。そのままマリルは飛ばされ、壁に勢いよく当てられてしまう。

 

「マリルさん!?」

「続けてちょうのまい!」

 

マリルを飛ばし距離を離したモルフォンは、すかさずちょうのまいで自身の能力を上げた。ちょうのまいは自身の特殊系の能力と素早さを上げる強力な技だ。これでただでさえ厄介なモルフォンが更に強敵となってしまった。

 

「マリルさん!まだ立てますか!?」

『リル!』

 

マリルはその場で立ち上がった。ダメージはあるものの、まだ致命傷には至らないようだ。

 

「アクアテールです!」

「躱して!」

 

アクアテールが振り下ろされるも、モルフォンは難なくその攻撃を回避する。ちょうのまいによって先ほどよりも素早さが増している。隙をさらしてしまったマリルは、続いてあの技を受けてしまう。

 

「ねむりごな!」

 

モルフォンは再びねむりごなを放ち、マリルを眠りへと誘う。マリルはチラーミィの時と同じようにその場で眠りについてしまう。

 

「マリルさん!?」

「とどめよ!ぎんいろのかぜ!」

 

マリルは眠ってしまったまま抵抗できずにぎんいろのかぜで場外まで吹き飛ばされる。チラーミィの二の舞となってしまったマリルはそのまま戦闘不能となる。

 

「マリル戦闘不能!モルフォンの勝ち!」

「戻ってください!マリルさん!お疲れさまでした。」

 

最後まで頑張ってくれたマリルを労い、リーリエは覚悟を決めて最後のモンスターボールを手にする。

 

「泣いても笑っても次が最後よ。」

「はい。でも、私たちは勝って見せます!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ』

 

最後のポケモン、フシギソウを繰り出したリーリエ。当然休んだだけでは体力は回復せず、未だに疲労の色が伺える。それでもフシギソウはリーリエの思いに応えるために自分を奮い立たせる。

 

だがモルフォンのねむりごなはくさタイプのフシギソウには効果が無い。その点においては有利だが、モルフォンの持つサイコキネシスはどくタイプのフシギソウに効果抜群。一概に有利とはいえない。

 

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

「何度やっても無駄よ!ぎんいろのかぜ!」

 

フシギソウの放つはっぱカッターもむなしく、ぎんいろのかぜによって阻まれてしまう。とは言え迂闊に接近すればサイコキネシスの餌食となってしまう。どうすればいいか悩むリーリエに、フシギソウは軽く振り向いて何かを訴えかけるように見つめる。

 

「フシギソウさん……そうですね。悩んでいても始まりません!全力で行くだけです!とっしんです!」

『ソウ!』

 

フシギソウは真っ直ぐとっしんでモルフォンに接近する。だが、その先にはモルフォンの切り札とも呼べるあの技が待ち構えていた。

 

「サイコキネシス!」

 

やはりフシギソウの攻撃はサイコキネシスによって阻まれてしまう。フシギソウは投げ飛ばされるが、なんとか持ちこたえてダメージを抑える。だが、モルフォンの怒涛の攻撃は収まることはなかった。

 

「ぎんいろのかぜ!」

 

持ちこたえた矢先、休むまもなくぎんいろのかぜがフシギソウへと襲い掛かる。フシギソウは堪えることが出来ずに後ろへと飛ばされる。

 

「フシギソウさん!?」

 

リーリエの声に応えフシギソウは立ち上がる。どこかに突破口が無いかと考えるリーリエだが、その時フシギソウに変化が起きた。

 

『ソウソウ!』

 

フシギソウが苦しい顔をしながら立ち上がるのと同時に、フシギソウの周囲を緑色のオーラが纏った。瀕死に近い状況でのこのオーラは、間違いない。

 

「あれはフシギソウの特性……しんりょくだ。ピンチの時にくさタイプの技の威力が上がる起死回生の特性。」

 

シンジの言う通り、フシギソウの特性、しんりょくが発動したのだ。ピンチの時にくさタイプの技の威力が上がるその特性は、この状況を打破するための鍵となるだろう。

 

「フシギソウさん……。そうですね、私たちはまだあきらめません!勝負はここからです!」

「何をやっても無駄よ!ぎんいろのかぜ!」

『モッフォ!』

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウはしんりょくの状態で威力の上がったはっぱカッターで対抗しようとする。しかし、思いは違う形で実を結び、新たな技を生むきっかけとなった。

 

フシギソウは緑色の丸い球を生成し、ぎんいろのかぜに対し正面から対抗する。その球には自然の力が宿っているように感じ、自然の命そのものにも感じるものだった。

 

フシギソウのその魂をこめた一撃はぎんいろのかぜを押し返し、モルフォンに直撃する。モルフォンはその攻撃に耐えることが出来ず、地上に墜落し目を回していた。いまの強力な一撃で戦闘不能となったようだ。

 

「モルフォン!?」

『モ……フォ』

「モルフォン戦闘不能!フシギソウの勝ち!よって勝者!チャレンジャーリーリエ!」

 

「か、勝てました……それに今の技は……」

「今の技はエナジーボールだね。くさタイプの中でも威力の高い技だよ。」

 

突然覚えた技に困惑しているリーリエを称えるようにシンジが近づき説明する。あの土壇場で覚えたエナジーボールは本人にとっても驚くべきものだった。

 

「エナジーボール……やりました!フシギソウさん!ありがとうございます!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウを抱きかかえ喜ぶと同時に感謝するリーリエ。フシギソウもそんなリーリエの期待に応えることが出来て嬉しいようだ。そんな彼女らの姿を見て、アンズも称賛しながらリーリエ達に歩み寄ってきた。

 

「逆転続きで負けるなんてね。油断したつもりはなかったけど、あたいもまだまだ修行が足りないかな?」

 

アンズはそう言いながら、それでも悔しそうな顔をしていない。思いっきり気持ちの良いバトルが出来て彼女も心から楽しめたようだ。彼女はジムリーダーと言うよりも、一人のトレーナーとしての思いの方がまだ強いのかもしれない。

 

アンズは審判から差し出されたジムバッジを受け取り、それをリーリエへと差し出す。そのジムバッジはピンク色のハート型のジムバッジであった。

 

「これがセキチクジム勝利の証。ピンクバッジだよ。」

「これが……セキチクジムの……。ありがとうございます!」

 

そしてリーリエはピンクバッジを受け取り、共に頑張って勝利を手にしたフシギソウと一緒に喜びをあらわにする。

 

「ピンクバッジ、ゲットです!」

『ソウソウ!』

 

リーリエは受け取ったピンクバッジをバッジケースへと収める。リーリエは今まで取ったジムバッジを確認し、ここまでの道を思い返す。

 

「あなたとのバトル、凄く楽しかったわ。もし今度戦うことがあれば、その時は絶対に負けないから。」

「アンズさん……はい!私もその時にはもっともっと強くなってますから!」

「そうじゃない面白くないわ。あたいももっともっと修行して、いつか父上を超えるトレーナーになって見せるから。」

 

二人とも全力で戦えて満足しているようだ。そんなアンズに感謝し、リーリエたちはセキチクジムを後にする。

 

「さて、次はいよいよ。」

「はい!ヤマブキジムへ再挑戦したいと思います!」

「うん。僕にできることがあれば何でも協力するよ。」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

そうしれ彼らは次なる目的地を決め旅を続ける。さあ、次の目的地はいよいよヤマブキシティ。リーリエは強敵ナツメに勝つことが出来るのか?リーリエの挑戦はまだまだ続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよくるわね。ふふ、なんだか楽しみになってきたわ。」

 

続く!




次回はヤマブキジム戦の前に2話ほど話を挟む予定です。もし何か書いてほしい話があれば内容によってはこちらで対応します。話数稼ぎにもなるし(ボソッ

では質問返しのコーナー?です。

先ず主人公のシンジが今まで旅してきた地方についてです。特に描写はしていませんが、カントー地方は勿論、日本がモチーフの場所は一通り旅をしているつもりです。カントー以外はジョウト、ホウエン、シンオウ辺りですね。他の地方は特に設定しているつもりはありませんが、後々追加していくかもしれません。後付け設定は(ry

次の質問は主人公の父親はどこにいるのか?と言う事でした。父親はポケモン恒例の行方不明(?)です。主人公の父親に関しては特に描写する予定はありません。書きたくなったら少し挟む程度になるかと。リーリエ達の父親、モーンに関しては未だ検討中です。

また何か質問があれば、受け答えしますのでなんでも書いていただいて構いません。勿論感想もお待ちしております!ではではまた次回お会いしましょう!


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ライバルバトル再び!リーリエVSブルー!

間に合ったー!バトル内容が中々浮かばずギリギリの投稿になりましたが、今週も無事間に合いましたー!

というわけでブルーちゃん再登場です。どんなバトルになるか、勝者はどっちかは本編でご確認を。

オバロ三期放送されましたけど、個人的に恐怖公やニューロニストのシーンとかどうするのか気になります。あれって放映できるん?


ヤマブキジムへ再挑戦するため、ヤマブキシティへと旅を続けていたシンジとリーリエ。そんな彼らは偶然にもリーリエのライバルとなったブルーと再会し、3人でランチ休憩をしていた。

 

「へえ~、セキチクジムは攻略できたのね。」

「はい!これからヤマブキジムへと再挑戦しに行くところです!」

「あたしはもうバッジゲットしたわ。確かに強かったけど、あたしにとってはなんてことなかったわね。」

「そうなんですか?あのナツメさんに勝つなんてすごいです!」

 

ブルーはそう言っているが、その表情やナツメの強さを考えると苦戦したことは想像に難くない。負けん気の強い彼女らしい答えだろう。

 

2人は互いに情報交換などをしながら盛り上がっている。そんな彼女たちの鼻をかぐわしい香りがくすぐる。シンジの作った料理が完成したようだ。

 

「はい、2人とも出来たよ。」

「わあ!おいしそう!これ、シンジさんが作ったんですか?」

 

2人の前にシンジの作った特製のシチューが運ばれてくる。その見事な出来栄えにブルーが感嘆の声をあげた。

 

「うん。口に合えばいいけど。」

「じゃあ早速いただきます!」

 

ブルーは早速スプーンを使いシチューを口に運ぶ。すると彼女の表情が一気に明るくなり、まるで目に星が見えるようだった。

 

「これすごく美味しい!こんな美味しいシチュー食べたの初めて!」

「そう?そう言ってもらえて嬉しいよ。」

 

ブルーはシンジの作ったシチューを食べそう感想をもらす。彼女のその言葉にシンジも作った甲斐があると心から嬉しく思う。

 

「シンジさんの料理はいつも美味しいですから。」

「こんな美味しい料理が毎日食べられるなんて羨ましいわね。」

 

ブルーもシンジの料理に絶賛している。リーリエも何故だかそのことを誇っているように自慢げに言う。そんな時、ブルーはある提案をした。

 

「ねえ、折角再会したんだからあたしとひとバトルしない?」

「バトルですか?」

「ええ、あなたがどれだけ強くなったか、ヤマブキジムに通用するか、あたしが見定めてあげるわ。」

「そうですね……。分かりました!折角ですのでそのバトル、受けます!」

 

リーリエはブルーとのバトルを承諾した。あのヤマブキジムに勝利したブルーが相手であるならばこれ以上のバトル相手はいないだろう。

 

そう決めた一行は食事を終え、バトルの準備を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ審判は僕が務めるよ。」

 

シンジが審判となって定位置につく。リーリエとブルーも互いに向かい合い、バトルの準備を終えていた。

 

「ルールは3対3の3本勝負。先に2回勝利したらバトル終了にするよ。それでいいかな?」

『はい!』

「……じゃあ両者ポケモンを!」

 

シンジは2人を見て合図を出した。それと同時に、2人は最初のポケモンが入ったモンスターボールを手にし、2人同時に投げる。

 

「お願いします!ミニリュウさん!」

『リュー!』

「お願い!プリン!」

『プリュ!』

 

リーリエが繰り出したのはミニリュウ、対してブルーが繰り出したのはプリンだった。丸っこく愛らしいその姿は、とてもバトルをするようには見えなかった。

 

『プリン、ふうせんポケモン。丸くて大きい瞳で相手を見つめ、心地よい歌を歌い眠らせる。』

「プリンさんですか……可愛らしい見た目ですが油断は禁物ですね。」

 

例え見た目が可愛くても、内に秘めた強さは想像を超えることは既に経験済みだ。リーリエはそう考え、決して油断せずに挑もうと気を引き締める。

 

「ミニリュウさん!これがあなたのデビュー戦です!頑張りましょう!」

『リュウ!』

「それでは、バトル開始!」

 

シンジのバトル開始の合図が響く。それと同時に動き出したのはブルーだった。

 

「こっちから行くわよ!プリン!おうふくビンタ!」

 

プリンはミニリュウ目掛けて走りはじめる。その勢いは見た目と違って勢いも迫力もあり、よく育てていることが分かる動きだった。

 

「ミニリュウさん!避けてください!」

 

ミニリュウはプリンの攻撃をジャンプして躱す。

 

「アクアテールです!」

「チャームボイス!」

 

尾に水を纏い攻撃を仕掛けようとするミニリュウだが、プリンが魅惑の声を発し反撃してくる。チャームボイスがミニリュウに命中し、ミニリュウの攻撃が中断され弾き返された。

 

「ミニリュウさん!大丈夫ですか!?」

『ミリュウ!』

 

ミニリュウはリーリエの声に大丈夫だと答える。ドラゴンタイプのミニリュウはフェアリータイプを持つプリンに対して相性が悪い。この戦いはリーリエとミニリュウにとってかなり分が悪い勝負となるだろう。

 

「続けてマジカルシャイン!」

 

プリンは強く輝く光を無数に放ち、ミニリュウを怒涛に攻め立て追い詰める。戦闘に不慣れなミニリュウも防戦一方といった様子だ。リーリエもこの状況を打破しなくてはと突破口を考える。

 

(ドラゴンタイプの技はフェアリータイプに効果はありません。……ですがこれなら!)

 

何か思いついたようで、リーリエはミニリュウにある技の指示を出す。

 

「ミニリュウさん!たつまきです!」

 

マジカルシャインを受け切ったミニリュウは再びジャンプし、尻尾を回転させることで大きな竜巻を発生させる。

 

「くっ、視界を奪いに来たわね……。マジカルシャインで打ち消して!」

 

プリンは再度マジカルシャインを放ち迫ってくる竜巻を迎え撃つことで相殺しようとする。その思惑は見事成功し、竜巻は綺麗に打ち消された。しかし、正面には既にミニリュウの姿は見えなかった。

 

「っ!?上ね!」

 

竜巻で視界を奪っている間に、ミニリュウは大きくジャンプしプリンの上空へと飛んでいた。

 

「アクアテールです!」

 

そのまま水を纏ったアクアテールをプリン目掛けて振り下ろす。しかしブルーもこのまま黙っているはずがなく、すぐさまアクアテールに対抗する。

 

「おうふくビンタ!」

 

ミニリュウが最大までアクアテールを振りかぶる前に止めようとブルーは判断し、おうふくビンタで近接戦闘を仕掛ける。互いの技が空中でぶつかり、そのまま共に地上まで落ちてくる。お互いの攻撃が弾かれ、どちらも無事なことが確認できる。

 

だがそれでもお互いのダメージが大きい事には変わりない。特に弱点であるフェアリータイプの技をまともに受けてしまっているミニリュウの方がダメージがある。そのためかアクアテールの威力も落ちている印象だ。

 

「チャームボイス!」

「れいとうビームです!」

 

チャームボイスに対し、リーリエはれいとうビームで対抗する。さすがに音技であるチャームボイスではれいとうビームに勝つことが出来ないのか、チャームボイスは打ち破られてしまいれいとうビームがプリンを直撃する。そのれいとうビームが会心の一撃であり、プリンは目を回し戦闘不能となる。

 

「プリン!?」

『ぷ、プリュ……』

「プリン戦闘不能!ミニリュウの勝ち!」

 

ミニリュウ対プリンの戦いはミニリュウの勝ちに終わった。相性が最悪といってもいい相手に健闘するだけでなく、勝利を手にすることが出来たミニリュウにリーリエは心から嬉しそうに褒める。

 

「ミニリュウさん、お疲れ様です。よく頑張りましたね。」

『ミリュ!』

 

ミニリュウも嬉しそうに笑顔を見せる。ブルーも頑張って戦ってくれたプリンに労いの言葉をかけてモンスターボールへと戻す。

 

「やるわね。でも次はこうは行かないわよ!」

 

ブルーは悔しそうにしながら次のモンスターボールを手にする。

 

「次はこの子よ!グランブル!」

『バウ!』

 

ブルーが次に出したのはグランブルだった。以前戦ったブルーがグランブルに進化したのかと、リーリエはその姿をポケモン図鑑へとしっかり記録する。

 

『グランブル、ようせいポケモン。ブルーの進化形。見た目と違い臆病な性格。争いを好まないが顎による一撃は非常に危険。』

「ブルーさんの進化形ですか……。より一層強くなっているでしょうね。ですが負けません!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギソウだ。フェアリータイプのグランブルにどくタイプを持つフシギソウをぶつけるのはセオリー通りの戦術といえる。

 

だが前回と同様、対面した瞬間にグランブルのいかくがフシギソウの攻撃力を下げた。相性の事を考えてもこの状況は逆に不利になったかもしれない。

 

「グランブル!ストーンエッジ!」

 

早速ブルーが先制攻撃を仕掛けてきた。グランブルは右手で地面を思いっきり殴り、地面から尖った岩を次々と生み出す。その岩はフシギソウを容赦なく襲った。

 

「フシギソウさん!まだいけますか?」

『ソウ!』

 

フシギソウはまだまだ大丈夫だという意思を表す。リーリエもその姿に安心し、今度はこっちの番だと攻撃の指示を出した。

 

「エナジーボールです!」

「かみくだく!」

 

エナジーボールで反撃するフシギソウだが、そのエナジーボールはかみくだくによって文字通り粉々に噛み砕かれた。その強力な一撃に、リーリエとフシギソウは驚かずにはいられなかった。

 

「続けてこおりのキバ!」

「つるのムチで押さえてください!」

 

氷の力が宿った鋭い牙をむき出しにし、グランブルがフシギソウへと襲い掛かる。フシギソウはその攻撃をつるのムチで遮ろうとするが、いかくによって攻撃力を下げられていることもありいとも簡単に弾かれてしまう。勿論いかくだけでなく、グランブルが進化して攻撃力をあげていることも関係しているだろう。

 

フシギソウはそのままなすすべもなくグランブルのこおりのキバに直撃し飛ばされてしまう。弱点であるこおりタイプの技を正面からまともに貰ってしまえば、タフなフシギソウとてただでは済まない。現に今も立ち上がるが、それが限界と言った様子だ。

 

「とどめよ!ストーンエッジ!」

「エナジーボールです!」

 

ストーンエッジでの攻撃をエナジーボールで反撃するフシギソウだが、ダメージが相当溜まっているフシギソウには力が残っておらず、グランブルの攻撃に全く敵わずストーンエッジが直撃して吹き飛ばされてしまう。さしものフシギソウでも、今のダメージで戦闘不能となってしまった。

 

「フシギソウ戦闘不能!グランブルの勝ち!」

「フシギソウさん!?大丈夫ですか!?」

『ソウ……』

 

フシギソウが心配になったリーリエは、すぐにフシギソウの元へと駆け寄る。フシギソウもリーリエの言葉に反応したため、意識ははっきりとしているようだ。

 

「お疲れさまでした。ゆっくりと休んでいてください。」

 

今のバトルで瀕死となったフシギソウをモンスターボールへと戻す。そして元の位置へと戻り、再びブルーの姿を見つめる。

 

「おつかれ、グランブル。いいバトルだったわよ。」

『ブルッ!』

 

ブルーも同じくブランブルをモンスターボールへと戻した。互いに残りポケモンは後一体。2人はそのポケモンへと思いを託す。

 

「あたしの3体目はもちろんこの子よ!カメックス!」

『ガメェ!』

「!?カメックスさん!」

 

ブルーに引き続き、彼女の持っているカメールが進化していたようだ。進化前のカメールと違い、大きさが桁違いで迫力が前回に比べまるで違う。以前は自分で戦ったわけではないが、カメールの動きは見ているだけでもよく育てられていることが充分分かるものだった。

 

『カメックス、こうらポケモン。カメールの進化形。背中の噴射口から放たれる水流は強力で、分厚い鉄板すらも貫くほどの破壊力を持っている。』

 

図鑑説明を聞いたリーリエは思わず喉を鳴らした。鉄板を簡単に貫くほどの破壊力と聞けば、どれだけ危険かというのは誰でもすぐに分かるだろう。それほどまでのパワーを持つ相手と戦うとなると、緊張しないのも無理はない。

 

「でしたら、私の最後は……この子です!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのはシロンだ。前回ヤマブキで負けてしまったため、今回もヤマブキジムでシロンを再び戦わせるつもりなのだ。この戦いでヤマブキジムの前の特訓も兼ねるという訳だろう。

 

「白いロコンね。それがあなたの相棒みたいね。」

「はい!絶対負けませんよ!」

『コォン!』

『ガメェ!』

 

両者ともやる気は充分のようだ。その様子を見たシンジも、2人はいいライバルなのだと心の中で頷く。

 

「カメックス!みずでっぽう!」

「躱してください!」

 

カメックスは背中の砲台から強力なみずでっぽうを放つ。その攻撃は明らかに前回の戦いで見た時よりも威力が上がっていた。しかしシロンもリーリエの指示に従い上手くステップで回避することに成功する。

 

「シロン!こなゆきです!」

「こうそくスピン!」

 

シロンはこなゆきで反撃するが、驚くべきことにカメックスは甲羅に籠りこうそくスピンでこなゆきの中を平然と飛んでくる。甲羅に入ることで防御力をあげ、こなゆきのダメージを最小限に抑えているのだ。そのこうそくスピンはシロンに直撃し、シロンは少し後退した。

 

「続けて行くわよ!れいとうビーム!」

「シロン!オーロラビームです!」

 

シロンにこうそくスピンをぶつけた反動で元の位置まで戻ったカメックスは、口かられいとうビームを放ちシロンへ追い打ちをかける。シロンも負けじとオーロラビームで応戦するが、やはりパワー負けしているようでカメックスの攻撃に押し返されてしまう。

 

「シロン!?」

『コォン……コォン!』

 

れいとうビームによりダメージが蓄積したが、それでもシロンは立ち上がった。その根性にブルーも称賛するが、決して攻撃の手を緩めることはない。

 

「追撃よ!こうそくスピン!」

 

ダメージが目立つシロンにこうそくスピンで畳みかけるカメックス。だがこのまま黙ってやられるリーリエたちではなかった。

 

「シロン!カメックスさんに飛び乗ってください!」

「なっ!?」

 

シロンはカメックスの背に飛び乗り、必死でしがみつく。正面から受ければ致命傷だが、飛び乗ってしまえばダメージは回避できる。カメックスも必死にシロンを振りほどこうとするが、シロンも振り落とされることなくカメックスの甲羅にしがみついている。

 

「今です!こおりのつぶて!」

 

シロンは至近距離からこおりのつぶてで攻撃した。カメックスの甲羅の上から攻撃したため、技によるダメージは少ないかもしれないが、飛んでいるところを地面に叩きつけられたため物理的なダメージは充分にあるだろう。

 

「中々やるわね。そうでなくちゃ面白くないわ!」

 

ブルーも気持ちが昂ってきたようで、闘志をむき出しにしている。リーリエもブルーに触発され、自分も熱くなってきていることが分かる。

 

「みずでっぽうよ!」

「オーロラビームです!」

 

今度は正面からオーロラビームとみずでっぽうがぶつかる。互いの技は互角で中央で大きく爆発した。

 

「こおりのつぶてです!」

「こうそくスピン!」

 

こおりのつぶてを次々と潰しながらカメックスはこうそくスピンで接近してくる。シロンはその攻撃を横に躱し、こうそくスピンをやり過ごす。

 

「こなゆきです!」

 

すれ違いざまにこなゆきで攻撃を仕掛ける。だがカメックスはその巨体に似合わず軽い身のこなしで、すぐに態勢を整え既に反撃の準備をしていた。

 

「これで決めるわ!ハイドロポンプ!」

 

カメックスはとっておきの技、ハイドロポンプで反撃する。その二つの噴射口から放たれるハイドロポンプは、みずてっぽうよりも強力で、こなゆきをあっさりと掻き消しシロンを襲う。ハイドロポンプはシロンに直撃し、シロンは耐えきれるはずもなく戦闘不能となった。

 

「シロン!?」

『コォン……』

「シロン戦闘不能!カメックスの勝ち!2対1により勝者ブルー!」

 

シンジの宣告によりブルーの勝利が確定した。リーリエは慌ててシロンの元へと駆けつけ抱き寄せる。

 

「シロン、大丈夫ですか?」

『コォン……』

 

体はボロボロだが、シロンはリーリエの言葉に笑顔で返事をする。声には力がこもっていないが、それでもリーリエに心配をかけないようになるべくいつものように返答する。

 

「ありがとうございました。ゆっくり休んでください。」

 

リーリエはシロンをモンスターボールへと戻す。ブルーもバトルで活躍したカメックスを撫でてモンスターボールへと戻す。

 

「どっちもいいバトルだったね。」

「シンジさん……。」

「今回は負けちゃったけど、このバトルは絶対に無駄にならないよ。」

「っ!?はい!」

 

シンジはリーリエにそう言葉をかけ励ます。リーリエもシンジの言葉に元気を取り戻し、いつまでも落ち込んでいられないと胸を張る。

 

「あなたもポケモンたちもいい動きしてたわね。ま、そうでないとあたしも張り合いがないからね。」

「ブルーさん。」

 

ブルーもリーリエにそう声を掛ける。ライバルと認めたのだからもっともっと強くなってもらわないと困る、という彼女の気持ちの表れなのかもしれない。

 

「今回は負けましたが、次はそうはいきません!」

「あたしだって負けるつもりなんてないわよ。次に戦うとしたらカントーリーグかしら?あなたも当然目指しているのよね?」

「はい。シンジさんに一歩でも近づきたいので、カントーリーグに必ず出場してみせます。」

 

リーリエのその言葉をきき、そうこなくちゃとブルーも微笑む。

 

「今のところ1勝1敗。カントーリーグという大きな舞台で、必ず決着をつけましょう!」

「!?はい!もちろんです!」

 

夢の祭典、カントーリーグでの最終対決を約束する二人。その光景は自分も一度は経験したものだとシンジも心の中で感慨深く思う。

 

「ところでブルーはこれからどうするの?」

「そうね……折角だし、リーリエのジム戦でも見学しようかしら?」

 

ブルーノ唐突の提案に驚くリーリエだが、人数は多ければ楽しくなるためそれも悪くないと思い賛同した。シンジも同じ思いだそうで、リーリエと視線を合わせ小さく頷く。

 

「はい!もちろんです!一緒に行きましょう!」

「下手な試合見せたら承知しないからね?」

「は、ははは、頑張ります……。」

 

ブルーの冗談交じりのプレッシャーに思わず苦笑いするリーリエ。ヤマブキシティまでの間ではあるが、ブルーとの旅も楽しそうだと感じている。そこでブルーが一言言葉を発する。

 

「今夜はシンジさんと一緒に寝ちゃおうかな~♪」

「そ、それはダメです~!」

「はははは……」

 

最後に苦笑いを残すシンジをよそに、リーリエとブルーはガールズトーク?を繰り返していた。この先、少々不安が残るが、彼らはヤマブキシティへと目指し旅を続けるのだった。シンジとリーリエの旅は、まだまだ続く!




今回はブルーちゃんに軍配があがりました。リーリエは残念ながら負け(イベント)です。よくある話ですが……。

ミニリュウも戦わせたかったのでここで一戦交えていただきました。無事勝利です。初戦のミニリュウが勝利して古参者が負けるのは違和感あるかもしれませんが、仕方ありません。そういうものです。

一つ質問があったのでこちらでもお返ししておきます。リーリエのエースポケモンはなんなのかという質問でした。

エースと一言で言えば勿論シロンです。しかしアニポケで言えばサトピカポジなのでどちらかと言えば相棒と言うのが正しいかもしれません。サトシ御三家という形であれば、マリルもしくはフシギソウになります。元々マリル=サトゲコの予定でしたが、(作りやすさ的に)フシギソウに変更する可能性が浮上。まあどっちになるかはいずれ分かるさ、いずれな。

では次週(間に合えば)お会いしましょう!ではでは!ノシ


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特訓、見つけろ!ヤマブキ攻略法!

うーん……やっぱり1人称視点難しい。3人称視点の方が書きやすい感があります。とは言え特訓回なので1人称じゃないと感情の表現も厳しいので仕方ないです。これから精進ですね。


旅の途中、ブルーと再会したリーリエたちは、彼女と共にヤマブキシティへと旅を続けていた。しかしその時、リーリエが立ち止まり考え事をする。

 

「?リーリエ?どうかした?」

「あ、いえ、その……」

 

リーリエの様子の異変に気付いたのか、シンジが彼女にどうしたのか問いかける。リーリエは心配してくるシンジに戸惑いながらも、答えることを躊躇しているようだ。

 

「あんたって隠し事苦手なタイプね?悩んでるって顔に出てるわよ?」

「そ、そうですか?」

「何か悩みがあるなら相談に乗るよ?」

「……聞いていただけますか?」

 

ブルーの言う通り、リーリエの表情には少々曇りが見える。その様子はどこか不安な感情を抱いているように見えた。

 

シンジは彼女に悩みを打ち明けるように促す。リーリエはそんなシンジの優しさに甘え、自らの悩みを伝えることにした。シンジもリーリエの言葉に頷き、彼女の悩みをしっかりと聞くことにした。

 

「次のヤマブキジム戦……正直不安なんです。シロンたちは確かに強くなったとは思いますけど、それでもあの時、私は手も足も出ませんでした。このままでナツメさんに勝てるのか……。」

 

リーリエは以前の敗北から立ち直ったとはいえ、それでも不安は消えない。それほどまでにあの圧倒的な敗戦は彼女の脳裏に深く刻まれてしまっている。そんなリーリエの姿を見たシンジは、彼女にある提案をした。

 

「……だったら僕とバトルしてみる?」

「シンジさんと?」

「うん。少なくともナツメさんとの戦いに関してのヒントなら与えられると思うよ。」

 

ナツメはポケモンと言葉を交わさなくても自分の思いを伝えることが出来ていた。今のままで戦ってもリーリエの勝ち目はどうしても薄いだろう。シンジと戦うことで、その攻略法を少しでも知ることが出来るならヤマブキジムの攻略にも繋がることになる。リーリエは覚悟を決め、自分の意思をシンジに伝えた。

 

「……お願いします。私とバトルしてください!」

「分かった、相手になるよ。」

「ちょっと、本気なの!?」

 

シンジはリーリエの意思を確認し、バトルを承諾する。しかしブルーは二人の言葉に慌てる様子を見せる。

 

「シンジさんの強さは知ってるでしょ!?自信つけるどころか自信無くしたらどうするの!?」

 

実際に手合わせしたことのあるブルーはシンジの強さを知っている。だからこその忠告だろう。

 

「全力でバトルするわけじゃないから大丈夫だよ。それに、ナツメさんの攻略法は知っておいて損は無いと思うよ。」

「……はあ、もうどうなっても知らないわよ。」

 

それでもシンジはこのバトルには大きな意味があるのだと言う。ブルーも彼の言葉を聞き諦めて引き下がった。

 

「じゃあ早速始めよっか。」

「はい!よろしくお願いします!」

 

こうしてシンジとリーリエは再び特訓を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とシンジさんはお互い距離を離し向かい合います。先ほどブルーさんも言っていましたが、シンジさんの強さは私もよく知っています。でも、それでもシンジさんと戦うことでナツメさんと戦う力をつけられる気がします。以前シンジさんと戦った時も学べることは多くありました。今回もきっと参考になるはずです。

 

「リーリエ今回は1対3のバトルで行くよ?」

「1対3……ですか?」

「うん。僕のポケモンはこの子だよ!」

 

シンジさんの提案に私は疑問を思いました。そこでシンジさんはあるポケモンさんを繰り出しました。

 

『エフィ!』

「エーフィさんですか。」

 

エーフィさんはエスパータイプのポケモンさんです。ナツメさんの使うポケモンさんたちもエスパータイプのポケモンさんです。この上ない練習相手です。ですが、先ほど私が疑問に抱いたことをシンジさんに尋ねてみることにしました。

 

「でもシンジさん。なぜ1対3なのですか?」

「ナツメさんとの戦いはエスパータイプとの戦い方を知っておく必要がある。だからこそ、僕のエーフィとの戦いでそれを掴むことが出来ればナツメさんとの戦いでも充分活かせると思うよ。」

 

私はシンジさんの言葉に納得して頷きました。確かにエスパータイプのポケモンさんは他のタイプにはない特徴を持っています。強敵であるナツメさんに勝つには、エスパータイプの特徴を深く理解することが最も重要かもしれません。

 

「では私の最初の1体目はこの子です!」

『ミリュ!』

 

私が初めに選んだのはミニリュウさんです。ミニリュウさんはゲットしたばかりですが、シンジさんとの戦いで経験を積ませるのと同時に、ミニリュウさんの強さを知っておきたいのです。

 

それにブルーさんとの戦いのとき、ミニリュウさんはバトルのセンスがあるのだと感じました。きっとこれからの戦いでも活躍してくれるはずです。

 

「どこからでもかかってきていいよ。」

「では行きます!」

 

シンジさんの挑発に乗る形で、私は先に攻撃を仕掛けることにしました。とは言えエスパータイプに迂闊に手を出しては返り討ちになる可能性があります。まずは様子見をするべきでしょうか。

 

「ミニリュウさん!れいとうビームです!」

 

初めはれいとうビームの直線的な攻撃でエーフィさんの動きを確認することにしてみました。しかしそこには、私が以前にも味わった驚きの光景がありました。

 

『エフィ!』

 

なんとエーフィさんはシンジさんの指示もなしにサイケこうせんで反撃をしました。そのサイケこうせんはれいとうビームと正面からぶつかり、あっさりと相殺されました。

 

「こ、これは……」

「ナツメさんもやってたことだよ。エスパータイプだからこそできる技と言ってもいいけどね。」

 

でもやっぱり少し難しいね、とシンジさんは一言付け加えました。エスパータイプだからこそ……恐らくエーフィさんがテレパシーでシンジさんの考えを読んでいるのではないかと思います。

 

とは言えこれは並大抵のことではありません。ポケモンさんとの繋がりが深いシンジさんだからこそできる事なのでしょうか。

 

「続けていくよ!」

 

シンジさんは再びエーフィさんに指示を出しました。いえ、正確には指示を出したように見えたと言った方が正しいです。先ほどと同じように、一切言葉にはしていません。どの技がくるか予想ができないのです。

 

「!?躱してください!」

 

エーフィさんの動きを観察していると、エーフィさんはシャドーボールを撃ってきました。ミニリュウさんはジャンプすることにより回避に成功しましたが、それこそがシンジさんの狙いだったようです。

 

『エフィ』

 

エーフィさんは目を怪しく光らせ、自身の持つサイコパワーを集中させます。これはエスパータイプの代名詞、サイコキネシスです。ジャンプして回避したミニリュウは無防備の状態でそれを受けてしまい、そのまま地面に叩きつけられてしまいました。

 

かなりの上空から叩きつけられてしまったため、ダメージはかなりあります。シンジさんの目的は恐らく、シャドーボールで上空へと誘導し、サイコキネシスの威力を高めることにあるのでしょう。やはり相手を利用する事にも長けています。

 

エーフィさんは再びシャドーボールで畳み掛けてきます。ミニリュウさんは多大なダメージを受けてしまい、立ち上がることが出来てもうまく動くことが出来ませんでした。故にシャドーボールを避けることが出来ず、正面から受けてしまう結果となってしまいました。

 

「ミニリュウさん!?」

『ミリュウ……』

「ミニリュウ、戦闘不能ね。」

 

その結果、エーフィさんの技の威力が高いこともあり、ミニリュウさんは目を回して戦闘不能となってしまいました。

 

「戻ってください!お疲れさまでした。」

 

分かってはいたことですが、やはり一筋縄ではいきません。ですが、シンジさんがナツメさんと同じような戦法をとっていただけるのであれば、この先に必ず突破口があるはずです。

 

「次はこの子です!マリルさん!」

『リル!』

 

私が次に選んだのはマリルさんです。マリルさんは気合十分といった様子で身構えました。

 

「マリルさん!バブルこうせん!」

 

バブルこうせんで先制攻撃を仕掛けるマリルさん。しかし、当然エーフィさんが素直に攻撃を受けてくれるはずもなく薄く虹色に輝く壁を張りバブルこうせんを防ぎました。恐らく見たところひかりのかべでしょう。特殊技のダメージを軽減する厄介な技だと記憶しています。

 

そして再びエーフィさんは反撃してきました。エーフィさんの繰り出してきた技はサイケこうせんです。当たったらダメージだけでなく、混乱して攻撃を出すことが困難になってしまう可能性もある危険な技です。

 

「アクアテールで弾いてください!」

 

正面からくるサイケこうせんにアクアテールで対抗します。無事にアクアテールでサイケこうせんを防ぐことは出来ました。ですが、その撃ち終わりを狙われ、エーフィさんが追撃を狙います。

 

サイコキネシスによりマリルさんは宙へと浮かばされてしまいます。そしてそのまま地面を転がる様に放り投げられます。このままではさっきの二の舞です。どうすれば……。

 

私が悩んでいるところに、ふとシンジさんの方へと視線を移しました。すると、シンジさんはエーフィさんの方を見ながら何やら頷いているように見えました。私の見間違いかもしれませんが、それでももしかしたらという期待感があります。今一度確認してみましょう。

 

「マリルさん!まだいけますか?」

『リルル!』

 

マリルさんは立ち上がってまだまだ行けると意思表示をしてくれました。

 

「マリルさん!もう一度バブルこうせんです!」

 

この攻撃で確認しなければなりません。必ず何か突破口があるはずです。エーフィさんの動きだけでなく、シンジさんの動きにも……。

 

私がシンジさんの動きを観察していると、シンジさんは顔を軽く下に傾ける動作をしていました。その姿をみて私は確信しました。

 

ですがエーフィさんはそれと同時にシャドーボールを放ち、バブルこうせんを打ち破ってマリルさんの直撃してしまいました。マリルさんも今の攻撃で力尽き、戦闘不能となってしまいます。

 

「マリルさん!大丈夫ですか!?」

 

私はマリルさんに駆け寄り、マリルさんを抱きかかえモンスターボールに戻しました。流石に威力もスピードも桁違いです。これで本気でないというのですから、本気になった時のことを考えるとゾッとします。

 

ですがこれで希望は見えました。後はタイミングと集中です。

 

「私の最後の一体……お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

私は最後のポケモン、シロンに思いを託しました。シンジさんのエーフィさんにことごとくやられてしまっていますが、せめて一矢報えるように最後まで頑張ります!

 

「あのリーリエの目、何か見つけたのかな?気を引き締めていこう!」

『エーフィー!』

 

エーフィさんとシンジさんも気合を入れ直しています。そして今度先に動き出したのはエーフィさんでした。勿論、私はシンジさんの行動を見逃すことはありませんでした。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

エーフィさんのサイケこうせんに合わせてこなゆきを放ち、フィールド中央にて相殺することに成功しました。どの攻撃がくるのか分からなくとも、いつ攻撃がくるのか分かれば対処のしようはあります。

 

シンジさんは再び頷いてエーフィさんに合図を出します。その直後、エーフィさんの目が薄っすらと光るのが確認できました。サイコキネシスがくる合図です。

 

「シロン!走って撹乱してください!」

 

シロンは自慢の素早さでフィールドを駆け抜け、エーフィさんに捉えられないように走り回ります。エーフィさんも戸惑っている様子でサイコキネシスを上手く決めることが出来ません。

 

(なるほど、そう来たか。)

「こおりのつぶてです!」

 

戸惑っているエーフィさんに至近距離からのこおりのつぶてが命中します。エーフィさんは後退し、首を横に振ってダメージを抜き取ります。ですが確実にダメージは与えたはずです。それに今回ダメージを一回でも与えたと言う事に大きく意味があります。

 

「もう一度走ってください!」

 

サイコキネシスを警戒し、再び走り出して撹乱します。ですが今度はエーフィさんが動くことなくシロンの動きをじっくりと観察しています。どう見ても怪しいですが、今の私には攻撃を仕掛ける以外に方法がありません。

 

「今です!オーロラビーム!」

 

今度はオーロラビームで攻め立てます。しかしその攻撃は虚しくも地面に当たっただけでエーフィさんはその場にはいませんでした。

 

「!?まさか!」

 

私は上空を確認しました。するとそこにはエーフィさんが浮いている姿を確認できました。その光景は不思議な光景でしたが、ヤマブキジムでも似たような光景を目にした記憶があります。

 

そうです。あの時に味わったのはテレポートと呼ばれる最も警戒すべき技です。エーフィさんはテレポートを覚えませんが、あの姿を見る限り自らにサイコキネシスを掛けて宙へと浮いているのでしょう。シロンの攻撃を引きつけ、それもかなりのスピードで上昇したため、その場から消えたように見えたのだと思います。

 

「サイケこうせん!」

 

そして遂にシンジさんが言葉を発して指示を出し、サイケこうせんでシロンを攻撃しました。そのサイケこうせんは美しく、思わず見とれてしまうほどでした。シロンも今の一撃で目を回し、戦闘不能となりました。

 

「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。」

 

私はシロンをモンスターボールへと戻し、労いの言葉を掛けます。シンジさんはそんな私の元へと近寄り、言葉をかけてきました。

 

「最後の方は何か掴めたみたいだったね。」

「はい!ありがとうございました!」

「ポケモンとトレーナーは一心同体。たとえ言葉は交わさなくても、互いに伝わることはあるよ。」

 

ポケモンさんとトレーナーは一心同体。確かにシンジさんはいつもポケモンさんと心を通わせ、今まで勝ち抜いてきました。ポケモンさんの特徴を活かす事だけでなく、精神的な面でも重要なことが多いのですね。

 

今回も色々と学べた気がします。ポケモンさんだけでなく、お相手も注意深く観察することで突破口が見える。これも大事なことの一つですね。

 

「やっぱり一方的にやられちゃったわね。で、どうだったの?」

「はい!エスパータイプとの戦い方、ポケモンさんとの一体感、ポケモンバトルは奥が深いと言う事をまた思い知らされました。」

「ふーん、それなら大丈夫そうね。少し安心したわ。」

 

ブルーさんはどこか満足そうに頷きました。戦う前に言っていた結果にならなくて一安心したのでしょうか。

 

「ところで、テレポート対策は大丈夫?多分一番の要になるポイントだよ?」

 

シンジさんがテレポートに関しての対策は大丈夫かと尋ねてきました。最もな疑問ですが、私は自信満々にこう答えました。

 

「大丈夫です。今回の戦いでテレポートへの対策も思いつきましたので。」

「……そっか、じゃあ僕も本番を楽しみにしてるよ。」

 

今回の戦いで何度もシンジさんやポケモンさんたちを観察していました。そこからテレポートに関してのヒントも得ることが出来ました。実際に本番で通用するかはわかりませんが、心の中では行けるのだと確信しています。私は自分のポケモンさんたちを信じていますから。

 

ヤマブキシティまでもうすぐです。今度は前のようにはいきません!がんばリーリエです!私!




みなさんは劇場版見ましたか?ヌシは当然見に行きましたが面白かったです。
劇中にはイーブイの他にブースター、シャワーズ、サンダース、ブラッキー、エーフィは確認できました。恐らくジョウトの話だと思われるので他のブイズは出ていないのではないかと思われます。え?他のポケモン?野沢さんのパートナーのブルーくらいしか記憶にないです。

正直今回の話はもうちょっと上手く書けたかな?と思っているので個人的には満足には足りてません。勿論ヤマブキジム戦はもっと頑張ります。

そう言えば後1ヵ月でこの小説も1周年ですね。まさかここまで続けられるとは自分でも驚きです……。


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再戦!ヤマブキジム!過去の自分を越えろ!

大満足です!個人的に楽しみにしていた回なので楽しかったのです。皆さんにも楽しんでいただけたら幸いです!誤字・脱字に関してはお許しください……。


ヤマブキジムへの再戦のため旅を続けているリーリエ、シンジ、ブルーの3人。そして今、遂にヤマブキジムの前へと戻ってきたのだった。

 

「いよいよ……ですね……。」

 

緊張のあまり思わずグッと手に力がこもってしまうリーリエ。やはり立ち直ったとはいえ、以前の敗北は本人にとってどうしても忘れることは出来ない過去なのだろう。そんなリーリエの姿を見たシンジとブルーが彼女に声を掛ける。

 

「大丈夫だよ。これまで経験した事を活かして戦えば絶対に勝てるよ。」

「そうよ。あんたは私のライバルなんだから、こんなところで躓くなんて許さないからね!」

「シンジさん……ブルーさん……。」

 

2人の激励を聞き、リーリエは今までの事を思い返す。幾度も苦戦しつつも困難を乗り越え手に入れたジムバッジ、自分の大切なポケモンたちとの出会い、シンジやブルーとの対戦。それぞれが彼女の大切な思い出であり、これまで培ってきた旅の全てだ。リーリエはその思いを胸に、決意を新たにする。

 

「リーリエは1人じゃない。ポケモンたちに僕たちもいる。」

「……はい!私、必ず勝って、あの時の私を超えて見せます!」

 

リーリエは手をグッと握り締め、笑顔でそう答える。それは先ほどの緊張とは裏腹に、不安を抱く気持ちは感じられなかった。今のリーリエなら大丈夫だろうと、シンジも彼女に優しく微笑む。

 

「じゃあ行こう!ナツメさんの元へ!」

「はい!」

 

シンジの声に続き、3人はヤマブキジムの中へと足を踏み入れる。ジムの内部は暗く電気も付いていない状態で前が見えない。だがその時、突然照明が点き、辺りが眩しく照らされた。

 

一行が正面を見ると、フィールドには既にナツメが腕を組みスタンバイしていた。彼女は眼を瞑っており、まるで今彼らが着くことを前もって知っていたかのようだ。実際彼女は未来が見えるため、訪れるタイミングを知っていても可笑しくないが。

 

「ナツメさん……。」

 

リーリエがそう呟く。その声に反応したナツメは眼を開き、「待っていたわ」と口を開く。

 

「貴女が今までどれだけの経験をしたかは知っているわ。でもどれだけ成長したかは別。」

 

ナツメはそう言いながら懐からモンスターボールをサイコパワーによって浮かせる。

 

「貴女があの時とどう違うのか……それは私の眼で確かめることにします。」

 

リーリエはナツメの言葉を聞き、覚悟を決めて一歩前に出る。シンジも彼女を心の中で応援しながら、ブルーと共に観客席へと移動する。そして例の如く、審判が所定の位置につき試合の説明を開始する。

 

「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダーナツメによるジムバトルを開始します!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になればバトル終了です!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!」

「今回は3体ですか……。」

 

前回は2対2でのバトルであったが、今回は3対3のスタンダードバトルだ。以前は手も足も出ずに2匹とも倒されてしまったが、今回はどんな結果となるのか。

 

「私の一体目はこの子よ。」

 

そう言いナツメは手にしたモンスターボール――実際には浮いているが――をフィールドに投げると、中からポケモンが解き放たれる。ナツメが選んだ一体目は……。

 

『バリバリ!』

 

「!?あのポケモンさんは……」

 

リーリエはナツメが繰り出したポケモンを調べるためポケモン図鑑を開く。

 

『バリヤード、バリアーポケモン。生まれつきパントマイムが上手く、不思議な波動を使い空気を固めることで人には見えない壁を作り出す。』

 

そう、ナツメが繰り出したのはバリヤードだった。前回のように最初からフーディンではない事を少し意外だと感じるリーリエだが、ナツメはそんな彼女の疑問に答えるように口を開く。

 

「言ったでしょう?貴女の成長を私の眼で確かめるって。チャレンジャーの本気を引き出すのもジムリーダーの務め。だからこそ私はこのバリヤードを選んだの。今の貴女には私の全てを見せるのが一番だと思ったからよ。」

 

リーリエは彼女の言葉を聞き納得する。ならナツメの望み通り、自分もあの時の自分とは違うのだという事を証明しようと、モンスターボールを手にする。

 

「だったら私も……私の全力の姿をナツメさんに見せます!お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

最初にリーリエが繰り出したのはマリルだった。互いの準備が出来たと確認したところで、審判が試合開始の合図をする。

 

「ではバトル開始!」

 

審判の合図でバトルが開始される。それと同時に先に動き出したのはバリヤードの方だった。以前と同様、ナツメは声に出して指示を出していない。フーディン以外でも言葉にせず意思疎通ができることを考えると、彼女の持つサイコパワーと実力は間違いなく本物だという事だ。

 

だがリーリエもあの時とは違う。バリヤードはサイケこうせんでマリルに先制攻撃を仕掛けるも、タイミングが分かっていたかのようにリーリエはマリルに指示を出した。

 

「ジャンプして躱してください!」

 

マリルはリーリエの指示に従いジャンプすることで攻撃を回避する。その行動にナツメも驚きはしないが感心する。

 

リーリエが考えたのは、自分がポケモンたちの眼となり的確な指示を出す、という極めて単純なものだった。ポケモンたちが咄嗟に動けないような動きでも、自分が状況に応じて判断し指示を出すことで、ポケモンたちも安心して行動に移すことができる。リーリエはそう考えたのだ。もしかしたらシンジの言った『1人じゃない』という言葉で思いついた作戦かもしれない。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

 

マリルは空中から無数のバブルこうせんでバリヤード目掛けて反撃を仕掛ける。バブルこうせんはバリヤードを捉え勢いよく迫るが、バリヤードもナツメも慌てる様子は見せなかった。

 

次にバリヤードが取った行動は虹色の壁を作り出すことだった。以前見たリーリエにはその行動がひかりのかべなのだとすぐに分かった。特殊攻撃を半減させるひかりのかべはかなり厄介な技だが、それでもまだ策はあると続けて攻撃を仕掛ける。

 

「続けてアクアテールです!」

 

バブルこうせんに続き、アクアテールで怒涛の攻めを見せるリーリエ。マリルはアクアテールは物理技であるためひかりのかべの影響を受けない。故に決まればダメージも期待できる。しかし、ナツメもそう簡単にその攻撃を通してくれるはずもなかった。

 

次にバリヤードはひかりのかべを張った時のように何か見えない壁を作り出す。ひかりのかべではないその技も、リーリエには見覚えがあった。自身の防御力を高める技、バリアーだ。バリアーはマリルのアクアテールを弾き返し、バリヤードに傷をつけることを許さなかった。

 

「特殊技はひかりのかべで防ぎ、物理技はバリアーで固め守る。鉄壁の布陣だね。流石はナツメさんだ。」

「ええ。リーリエはこの状況、どう対処するのかしら?」

「どうだろうね。でも、すぐに結果は分かると思うよ?」

 

シンジの意味深な言葉に、ブルーは首を傾げる。まるでシンジにはリーリエの考えが読めているような物言いだったからだ。だがシンジの実力を知るブルーは、彼の言葉を信じリーリエの次の行動を見守ることにした。

 

(アクアテールはバリアーで、バブルこうせんはひかりのかべで防がれる。まさに鉄壁です。ですが、完璧は存在しません!)

「必ず突破口はあります!マリルさん!走ってください!」

『リル!』

 

リーリエはマリルに走るように指示を出す。マリルもリーリエを信じ、ただひたすらに全力で走り出す。

 

ナツメは再度テレパシーでバリヤードに指示を出す。バリヤードはエナジーボールを乱れ打ち、マリルの進行を阻害しようとする。マリルはそれを次々と躱していき、徐々にバリヤードとの距離を縮めていく。

 

「今です!ジャンプして躱してください!」

 

最後のエナジーボールを高くジャンプすることにより躱し、バリヤードの頭上へと跳ぶマリル。

 

「バブルこうせんです!」

 

マリルは上空からバブルこうせんでバリヤードに攻撃を仕掛ける。対するバリヤードもサイケこうせんで反撃する。互いの攻撃は中央でぶつかり合い、大きな爆風が発生する。その爆風はかなり大きく、地上にいるバリヤードはその衝撃で身動きが取れない状態だ。それこそがリーリエの狙いだ。

 

「全力でアクアテールです!」

 

爆風を振り払うように薙ぎ払われたアクアテールは、対抗できないバリヤードに見事ヒットする。バリヤードは今の奇襲にも似た攻撃でダウンし、戦闘不能となった。その出来事に、初めてナツメは驚きの表情を浮かべる。彼女にとっても今の戦いぶりは予想外だったのかもしれない。

 

『バリ……』

「バリヤード、戦闘不能!マリルの勝ち!」

 

ナツメはバリヤードをモンスターボールへと戻す。

 

リーリエの狙いは、バリヤードの動きにあった。バリヤードは防御こそ完璧なものの、その分自らの俊敏性にはどうしても難がある。その弱点を見事見抜き、バリヤードから勝利をもぎ取ることができたのだ。相手は違うが、前回とは裏腹にダメージを与え、初めて勝利できたことはリーリエにとって大きな意味を持つことになるだろう。

 

「やっぱり人とポケモンの強さは自分の眼で見ないと分からないわね。今のは流石に驚いたわ。」

「!?あ、ありがとうございます!」

 

初めてナツメの心を動かすことができたと、リーリエは思わず彼女に感謝する。基本的に素直なリーリエは、成長を褒められて嬉しさが先に来てしまうのだろう。だがナツメは、「次も上手くいくとは限らないわよ?」と次のポケモンを繰り出す。そのポケモンは……

 

『エーフィー!』

「!?エーフィさん……」

 

次に出てきたのはリーリエもよく知るエーフィだった。だがシンジのエーフィと戦ったことがあるとはいえ、油断できる相手ではないのは重々承知している。リーリエとマリルは再び気を引き締めてバトルに臨む。

 

そして再びバトルが再開される。ペースを乱される前に前に出ようと、先に攻撃を仕掛けることにした。

 

「バブルこうせんです!」

 

バブルこうせんがエーフィを目掛け一直線に飛ぶ。しかし、エーフィに直撃したかに見えた攻撃は、虹色の見えない壁に阻まれる結果となった。

 

「っ!?ひかりのかべですか……」

 

バリヤードの発動したひかりのかべがエーフィを守ったのだ。バリヤーの効果は自身にしか影響を及ぼさないため効果が消えてしまうが、ひかりのかべは味方にも影響する技。ここにきてバリヤードがエーフィを守っているとは、仲間同士の絆が深いようにリーリエには見えた。だが、それならば私たちも負けていないとリーリエは更に攻勢に出る。

 

「なら今度はアクアテールです!」

 

アクアテールがエーフィに迫りくる。物理のアクアテールならばひかりのかべの影響は受けない。だが、エーフィはその攻撃を自慢の身のこなしで優雅にジャンプし、あっさりと躱す。

 

エーフィは着地と同時に、サイコパワーを高め周囲に複数の球体を発生させる。しかしその攻撃はマリルに向かうのではなく、空中に現れた謎の空間に吸い込まれ消えて行った。何が起きたか分からないリーリエは戸惑うが、現状他に手がない以上攻撃するしかないと判断する。

 

「バブルこうせんです!」

 

マリルはバブルこうせんでエーフィに攻撃する。対してエーフィはスピードスターでバブルこうせんを次々と打ち消していった。だがその行動は不思議と攻撃を加えるというよりも、時間を稼いでるように見える。リーリエはそのことに気付いておらず、必死になって攻撃の手を緩めなかった。

 

「走って撹乱してください!」

 

リーリエはシンジとの戦いと同じように、走り回ることでサイコキネシスの餌食にならないようにする。だが、サイコキネシスを警戒するあまり、他の行動に対しての反応が遅れてしまうことがある。

 

マリルは走り回りエーフィに近づいていく。しかし、エーフィは一切微動だにしない。マリルがエーフィの目の前に近づいたとき、ナツメは自身の眼を少しだけ細めた。その瞬間、エーフィはバックステップすることでマリルとの距離を一瞬だけ離す。

 

その時、マリルの周囲には先ほどと同じ空間が出現した。マリルはその空間から飛び出してきた球体に襲われ、吹き飛ばされる。距離を離したエーフィは一切のダメージを負っていない。

 

「マリルさん!?」

『リル……』

「マリル、戦闘不能!エーフィの勝ち!」

 

今の一撃はとてつもない威力で、マリルは一撃で倒されてしまった。そしてマリルがダウンしたのとほぼ同時にひかりのかべの効力が消える。

 

今の攻撃の威力、特徴により、リーリエは今の技の正体が何なのか理解した。

 

「みらいよち……」

 

リーリエの呟いた通り、今の技はみらいよちだ。名前の通り、未来に攻撃を予知することで、時間をずらして相手を攻撃する厄介な技だ。ナツメの真の狙いはこれであり、エーフィは相手の気を逸らしつつみらいよちに集中するため、本気で攻撃を仕掛けなかったというわけだ。

 

「戻ってください、マリルさん!お疲れさまでした。」

 

リーリエは戦闘不能となったマリルをモンスターボールへと戻す。その後、次のポケモンが控えるモンスターボールを手にし、フィールドに投げた。

 

「お願いします!ミニリュウさん!」

『ミリュウ!』

 

次にリーリエが繰り出したポケモンはミニリュウだ。強力なみらいよちにどう対応するのか、シンジたちにも緊張が走る。

 

そして開幕早々、エーフィはみらいよちで未来に攻撃を予知する。リーリエはみらいよちが来る前に決着を急ごうと早速攻撃態勢に入る。

 

「ミニリュウさん!れいとうビームです!」

 

ミニリュウはれいとうビームで攻撃を仕掛ける。しかしエーフィはその攻撃を宙返りして難なく回避する。

 

「たつまきです!」

 

次にミニリュウは大きな竜巻を発生させてエーフィを攻撃する。だがその攻撃も、エーフィはサイコキネシスであっさりと弾き飛ばしフィールドから消し去る。

 

「それならアクアテールです!」

 

ならば今度はとジャンプをしてアクアテールで攻めるミニリュウ。だがその瞬間、再びナツメが眼を細め、ジャンプしたミニリュウの周辺に空間が開かれ、そこからみらいよちによる攻撃が降り注ぐ。四方から降り注ぐみらいよちを回避できるはずもなく、その攻撃がミニリュウに直撃する。

 

みらいよちをまともに受けたミニリュウは吹き飛ばされダウンするも、戦闘不能とまでは行かなかった。だが現在は立ち上がることが精一杯で、戦闘続行は困難と言った様子だ。そう判断したリーリエは、一旦ミニリュウを戻そうとモンスターボールを手にする。

 

 

 

「ミニリュウさん!戻ってください!」

 

リーリエはミニリュウに「必ずチャンスはあります」声を掛け、その時が来るのを待つことにした。

 

だが、今度はリーリエはナツメの動きを見逃すことはなかった。

 

(シンジさんと戦っていなかったら恐らく分かりませんでした。これならチャンスは必ずあります!)

 

そして次のポケモン、3体目のポケモンを繰り出した。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが最後に選出したのはシロンだ。まだまだバトルはこれからだという事を証明するように、シロンは力強く咆哮する。

 

だがまたしても開始早々、エーフィはみらいよちにより下準備をする。リーリエも「来た!」と内心で思いながらその時を待つことにした。

 

みらいよちを発動させたエーフィは、次にスピードスターでシロンを攻撃する。

 

「こおりのつぶてです!」

 

スピードスターはこおりのつぶてにより行く手を遮られる。先ほどのバブルこうせんの時のお返しという事だろうか。

 

「続いてこなゆきです!」

 

更にこなゆきで攻撃を仕掛けるシロン。こなゆきは床を凍らせながらエーフィへと迫る。エーフィはバックステップで距離を離しこなゆきを回避する。そしてそのままサイケこうせんで反撃しこなゆきを相殺する。

 

(防がれてしまいましたがこれで準備は万端です。後は……)

 

その時が来るまで待つのみ、とリーリエが思った矢先、その瞬間が訪れたナツメが三度眼を細める。それこそがみらいよちが来る合図だと判断したリーリエは、シロンにある指示を出す。

 

「床を滑って前に出てください!」

『コン!』

 

そのリーリエの指示と同時に、空間が開かれみらいよちが発動する。だが、シロンはリーリエの指示通りに先ほどのこなゆきにより凍った床を滑り前に出る。すると四方から出るみらいよちはシロンに当たることなく、シロンの背後でぶつかり合い爆発する。リーリエが待っていたのはこの瞬間だった。

 

その激しい爆風により、滑って前方に出たシロンは一気に加速する。爆風の勢いを利用し、回避と同時に最大の攻撃チャンスを作り出したのだ。これにはナツメも表情を曇らせ、焦りを伺える様子だった。

 

『エフィ!?』

 

すぐさまエーフィの目の前へと近付いたシロン。エーフィも突然の事で対処が遅れ、防御行動に移れなかった。自慢のサイコキネシスすらも撃つ余裕がないほどに焦っているのだ。

 

「こおりのつぶてです!」

 

この状況でも素早く繰り出せるこおりのつぶてでダメージを与える。エーフィは近距離で放たれるこおりのつぶてを避けられるはずもなく、直撃して確実なダメージを受ける。その攻撃により、エーフィは怯んで次の行動に移ることができなかったが、衝撃によって距離が離れたシロンには余裕があり、続けて攻撃してエーフィを攻め立てた。

 

「オーロラビームです!」

 

虹色の光線、オーロラビームにより怯んだエーフィは態勢を整える間もなくオーロラビームの直撃を受けダウンする。そしてそのダメージが決定打となり、目を回して戦闘不能状態となった。

 

『エフィ……』

「エーフィ、戦闘不能!ロコンの勝ち!」

 

戦闘不能となったエーフィをモンスターボールへと戻すナツメ。予想外と言った様子だが、それでも結果だけは自分も知っていたようだ。

 

「こうなる未来は充分予想できていた。でも、彼女の成長ぶりは想定外ね。ふふ、これだからポケモンバトルはやめられないのよ。」

 

そう誰にも聞こえない声でナツメは呟く。未来を見通せる彼女だが、その能力も決して万能ではない。だからこそ、彼女はポケモンバトルと言うものを心から楽しむことができているのだろう。現に、今もいつもの冷静な彼女とは違い、小さく口角が上がっていた。彼女が今こそポケモンバトルを楽しんでいる証なのだろう。

 

(正直言って賭けでした。ですが、シロンを信じているからこそ成功したことなのだと思います。シンジさんの言っていたポケモンとは一心同体……今ならその言葉の意味が分かる気がします!)

 

先ほどの行動はリーリエがポケモンを信じ、ポケモンがリーリエを信じているからこそ成せた技だろう。ナツメもポケモンとの絆は当然深いだろうが、リーリエもポケモンとの絆であれば負けているなどはこれっぽちも思っていないのだから。

 

ナツメは最後のモンスターボールをサイコパワーで前に出す。そこから出てきたポケモンは……

 

『フディー!』

 

当然彼女のエースポケモン、フーディンであった。再び向かい合ったリーリエはフーディン威圧感に押されてしまう。これほど強力なプレッシャーを放つポケモンであれば、思わず怯んでしまうのも無理はない。

 

だが、それでも過去の自分を乗り越えるために踏みとどまった。これが今の自分に課せられた大試練なのだと、自分自身に言い聞かせながら。

 

「遂にナツメさんのフーディンが登場だね。前回は手も足も出なかったけど……」

「前回リーリエは何もできずに負けたんですか?」

「うん。正直言ってボロボロだったよ。」

 

シンジはその後、「でも」と付け加えて言葉を続ける。

 

「リーリエはあの時とは違うからね。結果はどうなるか分からないよ。」

 

ブルーはその言葉を聞き、彼のリーリエに対する信頼はこれほどまでに厚いのかと改めて感じる。羨ましい反面、リーリエのこの戦いにおける成長ぶりが楽しみだと期待している。

 

フーディンはその場から一切動こうとしない。こちらの動きを待っているのだろうか、と判断したリーリエは、ならば望み通りにと言わんばかりに先制攻撃を仕掛けた。

 

「こおりのつぶてです!」

 

こおりのつぶてをフーディン目掛けて放つシロン。しかしその攻撃は、フーディンのサイケこうせんによって阻まれる。サイケこうせんはこおりのつぶてを貫き、シロンに接近する。スピードが速いとはいえ、距離が離れているため回避するのは決して難しくなかった。

 

「今度はオーロラビームです!」

 

オーロラビームがフーディンに迫るが、直撃するかに思えた瞬間、フーディンの姿が消える。テレポートだ。そのテレポートにリーリエが反応する前に、フーディンは攻撃を放つ。

 

フーディンのサイコキネシスが発動し、シロンを壁まで吹き飛ばした。シロンは叩きつけられダメージを負ってしまうも、再び立ち上がり態勢を整える。

 

(少し油断していました。ですが今度こそは!)

「シロン!こなゆき!」

 

シロンはこなゆきでフーディンに果敢に攻めていく。範囲の広いこなゆきを避けるのは中々に難しい。だが、フーディンは自慢のテレポートにより再び姿を消す。

 

(姿を消してもそれはほんの一瞬です。必ず弱点は存在します。)

 

シンジの言葉を思い出しながら、自分の神経を集中させる。その瞬間……。

 

(!?今です!)

「シロン!後ろにこおりのつぶてです!」

『コン!コォン!』

『フディ!?』

 

シロンはすぐに後ろを振り向きこおりのつぶてを放つ。するとそこには、こおりのつぶてでダメージを負ったフーディンの姿があった。フーディンは驚いた表情を浮かべながら、こおりのつぶてにより吹き飛ぶが、受け身をとってダメージを抑える。

 

リーリエはテレポートで消え相手の姿が見えないのならば、自分が自らポケモンの代わりに目となり、フーディンの居場所を特定すれば行けると考えたのだ。ヤマブキジム戦で最初に見せた戦術の応用という事だ。

 

しかしフーディンは受け身をとるとすぐさま反撃の態勢に入る。その姿はダメージを負った者の動きには見えず、サイケこうせんによりシロンを攻撃する。シロンはサイケこうせんが直撃し、今まで溜まっていたダメージもあり限界を迎え、遂に戦闘不能となってしまった。

 

「シロン!?」

『コォン……』

「ロコン、戦闘不能!フーディンの勝ち!」

 

リーリエはシロンを労いながらモンスターボールへと戻す。だが、今の状況はリーリエの方が不利と言える。

 

「フーディンにダメージを与えたとはいえ、それはあくまで少量。リーリエには手負いのミニリュウが一体。」

「大丈夫ですかね?このままじゃヤバイ気が……」

「リーリエは逆境に強いからね。それに、彼女の眼は諦めてないよ。」

 

シンジの言葉にブルーはリーリエの眼をじっと観察する。そのリーリエの眼に灯る輝きは消えておらず、寧ろ更に輝きが増しているようにも見えた。

 

「これが最後です……お願いします!ミニリュウさん!」

『リュウ!』

 

最後となったポケモン、ミニリュウに全ての思いを託すリーリエ。その姿を見たナツメは、懐かしさに以前出会った挑戦者の姿を思い出す。

 

 

 

 

 

 

――『これで最後……お願い!』

 

 

 

 

 

 

(あの時の彼も今の挑戦者に似た眼をしていたわね。印象的だったから、忘れることはないわよ。)

 

そう言いながら、目の前の挑戦者の姿を見据える。かつての挑戦者の姿を重ね合わせながら、最後の戦いを開始する。

 

フーディンはサイケこうせんでミニリュウを攻撃する。休んだとはいえダメージを回復しきることは出来ていないミニリュウに回避することは困難だろう。リーリエはそのため、攻勢に出ることが最も妥当だろうと判断し攻撃の指示を出す。

 

「たつまきです!」

 

たつまきによりサイケこうせんを防ぐミニリュウ。だがたつまきが弾けた時、そこには既にフーディンの姿がなかった。

 

「!?上です!アクアテール!」

 

視界の悪さを利用し、テレポートで奇襲攻撃を仕掛けるフーディン。そのフーディンを薙ぎ払うようにアクアテールが放たれる。だがその瞬間、なんと再びフーディンの姿が消えたのだ。

 

アクアテールが空を切り、隙をさらしてしまったミニリュウの背後にフーディンの姿があった。フーディンはサイケこうせんで至近距離からミニリュウを吹き飛ばす。元よりダメージの溜まっていたミニリュウにこれは致命的なダメージだ。

 

「ミニリュウさん!?」

『み……リュ……ミニリュ!』

 

ミニリュウはリーリエの声に反応して立ち上がる。絶対に彼女の思いを裏切らないと心に消えない炎を灯しながら。

 

「ミニリュウさん!私は……あなたを信じています!だから、ミニリュウさんも私を信じてください!」

『ミリュ!』

 

リーリエの言葉に反応し、ミニリュウの心の炎はどんどん燃え上がっていく。やがてその炎は青白い光となり、ミニリュウの姿を包み込んだ。

 

「!?これって!?」

「この光は……この未来は、私が見た未来とはまるで違う……」

 

ミニリュウの姿が光り輝きみるみると大きくなっていく。その場に居た全員がその現象に驚く。そしてその光から放たれた時、その場には美しく輝くドラゴンポケモンの姿があった。

 

『クリュー!』

 

「あ、あの姿は……」

『ハクリュー、ドラゴンポケモン。ミニリュウの進化形。神聖なポケモンとして崇められ、胸の水晶のようなタマには天候を操る力があると言われている。』

 

そう、ミニリュウはハクリューへと進化を遂げたのだ。リーリエの強い思いがミニリュウをハクリューへと進化させるキッカケとなったのだ。ハクリューはミニリュウの時の可愛らしさとは裏腹に、美しさが備えられ、その背中には以前よりも大きな頼もしさが感じられた。

 

「進化……進化したんですね!ハクリューさん!」

『クリュ!ハクリュ!』

 

リーリエもハクリューもその進化に喜びを分かち合う。だが、今は油断できる時ではない。進化したハクリューに警戒し、フーディンも気を引き締める。

 

フーディンはサイケこうせんで牽制を含めた攻撃を仕掛ける。

 

「!?来ますよ!ハクリューさん!」

 

リーリエの声にハクリューは頷く。するとハクリューの尾が緑色の鱗に纏われ、一振りするだけでサイケこうせんを防いだ。今のはまさしくドラゴンテールと言う技だ。

 

「ハクリューさん!新しい技を覚えたのですね!」

 

ハクリューは見事ドラゴンテールを覚えた。フーディンもナツメもこの状況に珍しく心の底からワクワクした感情を感じ、それが表情に浮かんでいる。

 

フーディンは再びテレポートで姿を消す。先ほどのように二度も消えられてしまっては流石のハクリューも打つ手はない。だが、今の力ならばとリーリエはある指示を出す。

 

「ジャンプしてください!」

 

ハクリューは床を尾で叩きつけ、空高く飛び上がる。進化したことで力が増し、翼が無くても飛行能力のあるハクリューならではの行動だ。テレポートで姿を消したフーディンはハクリューの元居た場所へと姿を現す。

 

「れいとうビームです!」

「!?サイケこうせん!」

 

上空かられいとうビームでフーディンの攻撃を仕掛けるハクリューに対し、ナツメは気分が高まるのと同時に焦りから思わず声に出して指示を出した。ナツメにとってもかなり追い詰められている証拠だ。

 

れいとうビームとサイケこうせんは両者の中央でぶつかり大きく爆発する。フーディンは爆発による煙が邪魔で視界が悪くなったため、それをサイコキネシスで振り払う。しかしその場には既に攻撃の準備をしていたハクリューがいた。

 

「ドラゴンテールです!」

 

高度の高い上空から一気にドラゴンテールを振り下ろしフーディン攻撃する。フーディンは咄嗟にサイコパワーで自らの持つスプーンを強化してクロスすることで防御する。その両者の威力は凄まじく、フィールド全体を爆発が覆う状況だった。リーリエとナツメも思わず頭を押さえるほどだった。

 

煙が晴れると、そこには距離を離した状態で立っていた2人がいた。しかし互いにボロボロの状態であり、これ以上の戦いは不可能にも見える。リーリエとナツメも喉を鳴らし心臓をバクバクと鳴らしている。

 

一瞬ハクリューがふらつき倒れそうになるが、なんとか踏みとどまり倒れることを拒絶する。それを見たフーディンは僅かに微笑んだのち、糸が切れた人形のようにその場で崩れ落ちた。

 

「フーディン、戦闘不能!ハクリューの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

「かて……た……?やったー!勝てました!」

『クリュー!』

 

リーリエはその場で飛び上がり、ハクリューはリーリエの元へと駆けつけ抱き合う。それほどまでに接戦であり、リーリエにとっては大きな大きな試練を乗り越え、喜びを表せないほどだったのだろう。

 

「……フーディン、私たちの負けね。ゆっくり休みなさい。」

 

フーディンをモンスターボールへと戻すナツメ。だが、そんな彼女の様子は悔しさよりも、楽しかったと思わせる表情の方が強かった。彼女も一人のポケモントレーナーであり人間だ。もしかしたら、普段の彼女よりも今の彼女の方が本当の姿なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、これがヤマブキジム勝利の証、ゴールドバッジよ。」

「これがゴールドバッジ……」

 

リーリエはナツメからゴールドバッジを受け取る。ゴールドバッジはその名の通り金色をしていて、シンプルな二重丸というデザインだった。リーリエはそのバッジを掲げ、自分のポケモンたちと喜びを共にする。

 

「ゴールドバッジ!ゲットです!」

『クリュー!』

『コォン!』

『リルル!』

 

今回活躍してくれたポケモンたちも一緒に喜ぶ。そしてリーリエはゴールドバッジをバッジケースにしまった。これで彼女の持つバッジは6個となった。

 

「いや~、ひやひやしたわよ。もう何回ダメかと思ったことか……」

 

ブルーはそう言いながらも、その眼には負けられない気持ちから対抗心を燃やしていることがよく分かる。リーリエは応援してくれたシンジとブルーに感謝の言葉を伝えた。

 

「いいバトルをしてくれたお礼に、貴女の次にいくべき場所を示してあげるわ。」

「本当ですか!?」

 

ナツメは眼を瞑り精神統一をしてサイコパワーを集中する。リーリエたちが静かにその様子を見守っていると、ナツメは眼を見開き口を開いた。

 

「次はグレンタウンに行くといい。そこには今までよりも熱いバトルをしてくれるジムがあることでしょう。」

「グレンタウン……ですか?」

 

グレンタウンはカントー地方のはずれにある小さな火山からできた島だ。当然、そこにもポケモンジムは存在する。

 

「それに、グレンタウン後にした貴女には、他にも良いことが待っているわ。」

「良い事ですか?」

「ええ、それは行ってからのお楽しみってところね。詳しい事は、その時の楽しみに取っておくのがいいと思うわ。」

 

ナツメの見た未来を信じ、リーリエは次の目的地をグレンタウンへと決定する。シンジもその意見には賛同し、ナツメに感謝しながらヤマブキジムを後にした。

 

「これからブルーはどうするの?」

「あたしは勿論セキチクに向かいます。リーリエには負けてられないから。」

 

シンジの質問に答えたブルーは、リーリエの姿を見つめて握手を求める。リーリエもブルーの握手を快く受ける。

 

「次会うときはもっと強くなってなさいよ?あたしも絶対に負けないから!」

「はい!もちろんです!また、バトルしましょう!」

 

こうしてブルーはシンジ、リーリエとは別の道を歩き出す。次に会うとき、彼女は更に強くなっているだろうが、それは自分も同じだと心の中で強い思いを抱く。

 

「さあ、僕たちも出発しようか。」

「はい!」

 

こうして無事にヤマブキジムの再戦で勝利を手にし、過去の自分を乗り越えたリーリエ。ナツメの見た未来がどんなものか分からないが、それでも前に進もうと決意を新たにする。リーリエとシンジのカントーを巡る冒険は、まだまだ続く!




いかがでしたか?予想していた人もいるかもしれませんが、ハクリュー進化回でもあります。

ジム戦は楽しいのですが仕様上どうしても長くなってしまって6時間ほどかけて書いているんですよね。まあ苦になるというわけではありませんが。

感想も意見箱もいつでもお待ちしていますので気軽のどうぞです。ヌシもレッツゴーイーブイを全裸待機しながら次話に取り組みます。ではでは!ノシ

あっ、因みにレッツゴーイーブイは2つ予約しました。ピカチュウ?知らない子ですね。


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タマムシシティ再び!ポケモン感謝祭!

はい、今回はちゃんと投稿できました!

と言う訳でリクエストに2人のイチャイチャデート回を作ってほしいというものがありましたので以前から作ろうかと考えていた回にぶっこみました。……のですが、自分にはこれが限界です。ちょっとデートとは違いますが。デートだと予定と違ってしまいますし、そもそもデートする場所が思い浮かばない……。決して書いてる途中にデートの事が頭から飛んで行って忘れたとかそんなことはない(汗

イチャイチャ回簡単そうに見えて結構難しいですの。どんな展開にしようか中々思いつかないというか……。名前的にはポケモン主体?ですが後半にイチャイチャします。どんなレベルのイチャイチャかは見てからのお楽しみと言う事で。当然R18展開はヌシが好みでない(とゆうか書ける自信がない)ので入れることはまずないでしょう。……キスとか抱きしめるくらいならR18に入らないよ……ね?


ヤマブキジムで6個目のバッジを手に入れたリーリエ。次のジムのあるグレンタウンへと向かうため、道中のタマムシシティへと立ち寄っていた。すると……

 

「?シンジさん、あの看板はなんでしょうか?」

 

リーリエが指を指した方角には一枚の看板が立っていた。以前来た時には看板など立っていた記憶など2人にはないが、内容が気になったため2人は看板の元へと歩み寄る。

 

「えっと……」

『今日はタマムシデパート主催のポケモン感謝祭!いつもお世話になっているパートナーたちに素敵な贈り物をして、より一層の絆を深めよう!』

 

シンジが看板の内容を読むと、そんなことが書いてあった。どうやら今日はタマムシシティで行われる特殊な日のようだ。確かに周囲を見渡すと、前回来た時よりも多くの人で賑わっていた。すると詳細がよく分からないシンジとリーリエの元に、ある人物が近づいてきた。

 

「今日は一年に一度タマムシシティで行われる特別な日。ポケモン感謝祭の日ですのよ。」

『エリカさん!?』

 

2人の元へとやってきたのはタマムシジムのジムリーダー、エリカだった。

 

「ポケモン感謝祭ってなんですか?」

 

リーリエがエリカにポケモン感謝祭とは何なのか詳細を尋ねる。エリカは疑問を抱いている2人に笑顔でポケモン感謝祭について説明する。

 

「ポケモン感謝祭は年に一度の祭典です。共に歩むパートナーであるポケモンに感謝の気持ちを込めてプレゼントを用意する日なのですわ。タマムシデパートでも、この日は特別価格でプレゼント用のアイテムを売って下さるのです。」

 

なるほど、とシンジとリーリエは納得する。確かに自分のポケモンたちにはいつもお世話になっている。こういう日くらいはポケモンたちに対して感謝の気持ちを形にして伝えてもいいかもしれないと2人は考えた。

 

「それって僕たちも参加できますか?」

「勿論、誰でも参加自由です。」

 

エリカの言葉を聞き、シンジとリーリエは顔を見合わせて頷き、ポケモン感謝祭に参加する事を決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、ポケモンたちをお預かりいたします。」

『お願いします!』

 

私達は自分のポケモンさんをタマムシデパートに預けることにしました。ポケモンさんに渡すプレゼントである為、ポケモンさんにプレゼントの内容を知られるわけにはいきません。主催と言う事もあり、タマムシデパートが責任を持ってポケモンさんたちを大切に預かってくれるのだそうです。

 

「じゃあ僕たちも行こうか。」

「はい!」

 

私とシンジさんは、ポケモンさんに渡すプレゼントを購入するためにプレゼントコーナーに向かいました。

 

(……よく考えたらポケモンさんたちがいない今、私とシンジさんの2人きり?……!?///ま、まるでデートみたいです!?)

 

そう思うと私は段々緊張して顔が熱くなってきました。今まではポケモンさんと一緒に旅しているという意識があったのでデートなどと思ったことはありませんでした。ですが意識し始めるとどうしても緊張してしまいます///

 

「?リーリエ、どうかした?」

「い、いえ!なんでもありましぇん!///」

「そ、そう?」

 

う~、緊張のあまり噛んでしまいました。以前ヤマブキシティでもデートみたいに2人で歩き回ったことはありましたが、正直あの時はジム戦に負けたショックで楽しむ余裕がありませんでした。そのせいか今回は余計意識してしまいます。こ、こんな状態でプレゼントなんて決められるのでしょうか……。

 

私とシンジさんはプレゼントコーナーまで辿り着きました。この日の為か、プレゼントコーナーは他のエリアに比べてかなり広く設置されていました。年に一度のポケモン感謝祭と言う事もあり、多くの人たちで賑わっています。人が多いから少しは緊張も解けるでしょうか。いや、寧ろ他の人の目が気になって余計に緊張してしまうかも……。か、かかかカップルに見られたり……とか///

 

「リーリエ?」

「は、はい!な、なんですか?」

「本当に大丈夫?声かけても返事ないから……。体調悪いなら一旦出直す?」

 

シンジさんは私の事を心配してくださっているようです。優しいシンジさんにこれ以上心配させるわけにはいきませんよね。正直まだ緊張が解けたわけではありませんが、緊張してばかりでは楽しめないので一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせました。

 

「……ふう、もう大丈夫です!問題ありません!」

「……そっか。リーリエはポケモンたちに渡すプレゼントって決めてる?」

「いえ、まだです。プレゼントを渡すのは初めてなので何を渡せばいいのか……。」

「そうなんだ。」

 

私は今までプレゼントを渡したことはありません。寧ろ私は幼い頃にお母様から(半ば強制的に)貰っていたことばかりでした。ですのでプレゼントとはどのように渡せばいいのか戸惑っているところです。

 

そんな困惑している私に、シンジさんがアドバイスを与えてくれました。

 

「僕はリーリエから貰ったものならポケモンたちはなんでも喜んでくれると思うけどなあ。」

「そう……でしょうか?」

「うん。ポケモンたちはリーリエの事が大好きみたいだからね。大好きな人から貰えるものなら、なんでも嬉しいと思うよ。」

 

大切なのは気持ちだからさ、とシンジさんは一言付け加えてそう言います。大好きな人から……プレゼントとはそういうものなのでしょうか。何を渡すかは迷いますが、それでも少しは気持ちが楽になりました。

 

「ありがとうございます。」

「じゃあ色々見て回ってみようか。」

「はい!」

 

私はシンジさんと見て回ってゆっくりとプレゼントを探すことにしました。時間は充分にあるのでゆっくり探しても問題ないと思います。

 

プレゼントコーナーには他の店で見る事のできないポケモンさん用のアイテムが多く置いてありました。ポケモンさん用の服だけでなくゴツゴツメットやこだわりハチマキなどのアイテム。……服は分かるのですが他のアイテムはどう使うのでしょうか?

 

「シンジさんは何をプレゼントするかは決めているのですか?」

「うん。僕は連れてるポケモンの種類も偏ってるからね。それぞれに同じだけど違うものを渡すつもりだよ。」

「同じだけど違うもの……ですか?」

 

シンジさんは微笑みながらそう答えました。シンジさんの事だからきっと素敵なプレゼントなのでしょうが、何をあげるつもりなのかは検討がつきません。ですが、今の言葉で少しヒントは頂けた気がします。

 

「……あのさ、ちょっと提案があるんだけど。」

「?なんですか?」

 

シンジさんは少し悩んだ素振りを見せながら提案をしました。

 

「一旦別れてプレゼントを探してみない?」

「別れてですか?」

 

シンジさんは小さく頷きました。何だか理由は言えない雰囲気です。個人的には名残惜しいですが、シンジさんがそう言うのであれば仕方ありません。

 

「分かりました。きっと私、シロンたちの喜ぶ素敵なプレゼントを用意して見せます!」

「僕も楽しみにしてるよ。じゃあ、また後でね!」

 

シンジさんはそう言って私に手を振りながらその場を去っていきました。私も気を取り直してプレゼントを探すことにしました。

 

とは言え、その場には色んなものが並んでいるのでどれを選ぼうか目移りしてしまいます。そんな時、私の目にあるものが入ってきました。

 

「お花……ですか……。」

 

そこには色とりどりのお花が並んでいます。お花といえばプレゼントの定番、という話を聞いたことがあります。それに、お花であればフシギソウさんに似合いそうな気がします。

 

「お客様!」

「は、はい?」

 

私がお花を眺めていると、突然店員さんが話かけてきました。突然の事でビックリしましたが、店員さんは困っている私に商品の紹介をしてきました。

 

「ポケモンたちのプレゼントに悩んでいるのでしたら、こういったのもあるのですが?」

 

そう言って店員さんが差し出してきたのはお花を使った装飾品でした。ポケモンさん用にお花で作った冠や、小さく束ねられた花束等がありました。他にもお花をモチーフにした商品に、お花の香りを使ったポケモンさん用の香水、様々なものが売られていました。

 

私が並べられた商品を見ていると、あるものを見てピンときました。

 

「これは……これなら喜んでくれるでしょうか。」

 

その時私は、シンジさんの言っていた『同じだけど違うもの』を思い出しました。我ながらこれはいい案かもしれないと感じ、ポケモンさんたちに渡すプレゼントを決めました。

 

「こ、これを下さい!」

「はい、ありがとうございます!」

 

私はお金を支払い、店員さんからポケモンさんへのプレゼントを買いました。感謝祭の特別セールというだけあり、値段も格安で売っていただけました。これが出血大サービスというものでしょうか。お金自体はお母様から少しいただいているため問題ありません。それよりも、他のポケモンさんにも買わないといけませんね。

 

……そういえばポケモンさんにあげるプレゼントばかりを考えてましたけど、シンジさんにもプレゼントを買うべきでしょうか。何時も私はシンジさんにお世話になってばかりです。この機会にシンジさんにもプレゼントを渡すべきなのかもしれません。

 

「そうと決まればシンジさんに渡すプレゼントも買いましょう!」

 

そうして私はポケモンさんとシンジさんに渡すプレゼントを探すことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか買うことができました!」

 

私はシンジさんとポケモンさんにプレゼントする物を買い揃えることができました。本当にあるかは不安でしたが、流石カントー1のお店と言うだけはあり品数は豊富でした。シンジさんへのプレゼントも喜んでいただけるとよいのですが。

 

「あっ、リーリエ!」

「シンジさん!」

 

私がシンジさんと合流するためにお店の中を歩いていると、偶然にもシンジさんが私を見つけて駆け寄ってきました。シンジさんの両手は2種類の買い物袋で塞がれており、どれだけ買い込んでいたのかと思わせる程でした。

 

「リーリエはポケモンたちに渡すプレゼントは見つけられた?」

「はい!シンジさんはどうでしたか?」

「僕もバッチリだよ。」

 

どうやらシンジさんもお望みのものが見つかったようです。それなら良かったです、と私たちは互いに笑いあいながら預けているポケモンさんたちを受け取りに行きました。

 

その後、ポケモンさんたちを受け取った私たちは、タマムシデパートを後にして外に出ました。外では既にポケモンたちにプレゼントを渡している人たちが数多くいました。

 

そのプレゼントは人によってさまざまで、自分で作った自作のものをあげる人や食べ物を一杯あげる人、中には丁寧に手入れをして形ではない気持ちをプレゼントする素敵な人もいました。その誰もが渡すものは違えど、ポケモンさんへの感謝の気持ちには違いがないのだと思わせる程笑顔を浮かべている人ばかりでした。

 

「じゃあ僕たちもそろそろ始めようか。」

「はい!皆さん!出てきてください!」

 

シンジさんの合図に合わせて、私たちは手持ちのポケモンさんたちを外に出しました。シンジさんのポケモンさんは普段9匹使われていますが、原則として6匹までしか手持ちとして連れ歩けないので、今いるポケモンさんはニンフィアさん、イーブイさんに加え、ブースターさん、サンダースさん、ブラッキーさん、エーフィさんでした。残りのリーフィアさん、グレイシアさん、シャワーズさんには後で改めて渡すのだそうです。

 

「さあ、今日はみんなにプレゼントがあるんだ。」

 

そう言いながら、シンジさんは手元の袋から複数の小さな箱を取り出しました。そのプレゼントはポケモンさんと同じ数の6つで、それぞれ色とりどりのカラフルな色をしていました。その色は、順番にピンク、白、赤、黄、黒、薄紫色となっていました。その色を見た私は、シンジさんのプレゼントを察することができました。

 

「じゃあ先ずはニンフィア!」

『フィア!』

 

ニンフィアさんを目の前に呼び、ニンフィアさんの前でピンク色の箱を差し出し箱を開けました。すると中には箱と同じ素敵なピンク色の蝶ネクタイ型のリボンが入っていました。そのリボンを取り出し、シンジさんはニンフィアさんの右耳に付けてあげました。

 

「うん、良く似合ってるよ!」

『フィーア!』

 

ニンフィアさんは頬を少し赤く染めながらシンジさんに飛び込みました。それだけシンジさんの事が大好きなのでしょう。シンジさんも嬉しそうにしてニンフィアさんの頭を撫でてあげました。ニンフィアさんが喜んでくれたのが嬉しいのでしょう。

 

「じゃあイーブイにはこれだよ。」

『イブイ!』

 

次はイーブイさんに白い箱を差し出し、その箱を開けると同じく白色のリボンが入っていました。そのリボンをイーブイさんの耳にも付けてあげました。ニンフィアさんもそうでしたが、イーブイさんにもとてもよく似合っていて可愛らしいです。イーブイさんも喜んで飛び跳ねるようにして走り回っています。

 

「ほら、みんなもこっちに来て。」

『ブスタ!』

『ダース!』

『ブラッキ』

『エーフィ』

 

ブースターさんには赤色のリボン、サンダースさんには黄色のリボン、ブラッキーさんには黒色のリボン、エーフィさんには薄紫色のリボンをそれぞれ渡していました。他のポケモンさんたちも全員喜んでいましたが、ブラッキーさんだけは反応が薄いように見えました。リボンを付けてあげた時、そっぽを向いていたブラッキーさんですが、シンジさん曰く、ブラッキーさんなりの最大の感情表現で本人は照れているのだそうです。ブラッキーさん以外のポケモンさんは全てシンジさんに飛び込んでいたため、シンジさんが自分のポケモンさんに押しつぶされてしまいそうになっていましたが……。

 

シンジさんがポケモンさんたちにプレゼントを渡し終えるのを見届けると、次は私の番という事でポケモンさんたちを傍に呼び寄せました。

 

「私からも、皆さんにプレゼントがあります!気に入っていただけるといいのですが……。」

 

そう言って私が最初に取り出したのは小さな三色のお花で作られた髪飾りです。その髪飾りをフシギソウさんの額に付けてあげると、フシギソウさんは微笑んで喜んでくれました。その姿に嬉しくなった私は、次にシロンへとプレゼントを渡しました。

 

「シロンにはこれです。」

『コォン!』

 

私がシロンに渡したものは雪の結晶を模して作られた髪飾りです。その髪飾りをシロンに付けてあげると、シロンも喜んで私に飛びついてきました。飛びつかれてバランスを崩した私ですが、髪飾りを付けたシロンはいつも以上にとても可愛らしかったです。

 

「チラーミィさんにはこれです。」

『ち、チラミ///』

 

チラーミィさんには大中小の星が施された髪飾りをプレゼントしました。チラーミィさんはブラッキーさんのようにそっぽを向いてしまいましたが、私にはそれが照れ隠しなのだと言う事が分かりました。自分のポケモンさんの事であれば勿論よくわかります。トレーナーになってそのことがよく理解できるようになりました。

 

「マリルさんにはこちらです。」

『リルル!』

 

マリルさんに用意したのは大きな水玉と小さな水玉を重ね合わせた模様の髪飾りです。マリルさんは私の渡したプレゼントに飛び跳ねるように喜んでくれました。その姿を見ると、進化前のルリリさんの姿が思い出されます。

 

「最後にハクリューさんです。」

『リュウ!』

 

ハクリューさんへのプレゼントは、左右の華麗な翼が模された髪飾りです。その髪飾りを額に付けると、ハクリューさんは優しく微笑んで喜んでくれました。優雅なハクリューさんには似合うのではないかと感じこの髪飾りを選びましたが、正解したようでとてもよく似合っています。進化して性格が変わったのか、以前より大人びた印象を感じます。

 

「どうでしたでしょうか。私からの贈り物……喜んでいただけましたか?」

『ソウ!』

『コン!』

『チラ!』

『リルリル!』

『ハクリュ!』

 

私の言葉に全員が順番にそう答えてくれました。その言葉にはポケモンさんたちの嬉しそうな感情が伝わってくるように私には感じました。ポケモンさんたちが喜んでいただけたのであれば、私も一生懸命探した甲斐がありました。

 

「リーリエ。」

「は、はい?なんでしょうか?」

 

シンジさんは私に声をかけてきました。突然声を掛けられ戸惑った私ですが、シンジさんは私を真っ直ぐと見つめていました。ですがシンジさんの頬は少し赤くなっている気がします。決して夕暮れでそう見えるわけではないと思います。

 

「リーリエ、これを受け取って欲しいんだけど///」

「えっ?」

 

シンジさんはポケモンさんたちに渡した買い物袋とは逆の買い物袋を私に差し出しました。どうやらシンジさんも私にプレゼントを用意してくれたようです。照れますけど、それでも私と同じ気持ちでいてくれたことはとてもうれしく思います。シンジさんが一度別れようと言った理由は、このプレゼントを用意して頂けたからなのでしょう。

 

「あ、ありがとうございます。あ、あけてもいいですか///」

 

シンジさんは顔を逸らて黙って頷きました。プレゼントされる側も照れますが、プレゼントする側にも恥ずかしさがあるのでしょう。実際、私もいつプレゼントの件を切り出そうか迷っていましたし……。

 

シンジさんからのプレゼントを取り出すと、中には白と薄いピンク色のお花で飾られた花束が入っていました。本で読んだ記憶がありますが、確かこれは胡蝶蘭と呼ばれるお花だったはずです。

 

「し、シンジさん。これって……」

「り、リーリエには似合うかなって思ってさ。正直僕もこうゆうのはよく分からないから店員さんにおすすめを聞いて選んだんだけど……。ど、どうだったかな///」

「は、はい!私とっても嬉しいです!最高のプレゼントです!」

 

私の言葉にシンジさんは照れ臭そうにして頬を掻きました。私も自分で言ってて恥ずかしくなってきましたが、シンジさんが勇気を出して私にプレゼントをくれたので、今度は私の番です。

 

「じ、実は……私からもプレゼントがあるんです///」

「えっ?ほ、ホントに?」

 

私はシンジさんの言葉にコクリと頷き、プレゼントの入った袋を渡します。シンジさんは先ほどの私のように中身を出しても良いか確認をとられました。私は勿論頷いて答えましたが、心臓がバクバクと鳴っているのが自分でも分かるくらいに緊張しています。さっきシンジさんがどれだけ勇気を振り絞ってプレゼントを頂けたのか分かった気がします。

 

「これは……帽子?」

 

シンジさんにプレゼントしたのは1つの帽子でした。その帽子の形は今シンジさんが被っている帽子と同じ、ツバのついた一般的なキャップ型の帽子ですが、これにはイーブイさんの小さなプリントが入っています。カントー地方で有名なイーブイさん、ピカチュウさん、ピッピさんなどのポケモンさんがプリントされた帽子は色々と置いてありました。

 

イーブイさんが大好きなシンジさんであればこれはピッタリなのではないかと思いこれにしてみました。ですが初めて自分で選んだプレゼントである為、正直センスには自信が無かったのでこれにしたというのもありますが。

 

「は、はい///シンジさん、いつも同じ帽子を被ってらっしゃるので、偶には別の帽子をと思ったのですが……。迷惑だったでしょうか?」

「ううん、そんなことないよ。凄く嬉しい。ありがとう、大切にするよ!」

「!?は、はい///」

 

シンジさんの大切にするという言葉、明るい笑みに私は思わず見とれてしまいました。それだけ私は嬉しくて、この人のことがとても大切なのだと実感することが出来ました。

 

シンジさんは早速帽子を被ってくれて、イーブイさんも自分がプリントされている帽子を被っているシンジさんを見て尻尾を振り笑みを浮かべてくれました。その姿を見た私は、心からプレゼントを無事に渡すことができて嬉しかったと感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、あのお二人は本当に仲が良いですね。」

 

シンジとリーリエがプレゼントを渡し合うさまを遠くから見届けるエリカ。その2人の姿を見て、エリカは微笑みそう呟いた。

 

「それにしてもシンジさん……あのプレゼントは知っていて渡したのでしょうか?それとも無意識なのでしょうか?」

 

くさタイプのジムリーダーであり生け花教室の先生をしているエリカはシンジの渡した花、胡蝶蘭の花言葉を思い返す。

 

白色の胡蝶蘭は“清純”。そしてピンク色の胡蝶蘭の花言葉は……

 

「“あなたを愛してます”……ですよ。うふふ」

 

エリカはそう言って再び微笑み、幸せそうな2人の姿を見つめた。

 

シンジとリーリエ、2人の旅はまだまだ続く……。




プレゼントなんか渡したことも貰ったこともないので何となくの気分で作りました(´・ω・`)

自分のポケモンたちにならいくらでも渡しているとは思いますが。次回のレッツゴーイーブイでイーブイをおめかしできるそうなので滅茶苦茶楽しみにしています。一日中イーブイに構ってそう。

定番の花言葉プレゼントですが、花言葉も全く無知なので調べて良さそうなのを選びました。リーリエ=百合にしようかと考えましたが、恋愛系の花言葉じゃなかったのでやめました。威厳だとか純潔だとかそういった意味が多いみたいです。残念……。調べてみたら胡蝶蘭って結構可愛かったです。

さ、そんなこんなで書き終えた(半)リクエスト回ですが、ご希望に添えられたかどうかは不安です。うん、ヌシなりに努力はしました。やっぱりなんか違う感あれば言ってくれればまた別に書きますとも!(開き直り)

いっその事番外編でアローラデートさせてもいいけど……。

他にもリクエスト回は溜まっています。
1、リーリエInカントー回
2、シンジ理念などの説明回(トレーナーズスクール回)
3、サトシとの再戦コラボ回(サトピカZ習得後)

2はアローラに戻ってからになると思います。そろそろ1と3の回を作りはじめなければ……。来週で遂に1周年になるわけですし……。

それにしてもなんだかんだ言ってアニポケコラボ回って結構人気なんですかね?個人的には気に入っているのですがもし好評だったらヌシ的にも嬉しいんですけど。


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ふたごじま上陸!フリーザーをとめろ!

ニンフィアにドレインキッスされたい


次なる目的地、グレンタウンへと向かうリーリエとシンジ。2人は今、グレンタウンへと続く道、海を渡るために再びセキチクシティへと立ち寄っていた。

 

「グレンタウンとは島の上にあったのですね。知らなかったです。」

「うん。グレンタウンはグレンじまとも呼ばれている町だよ。昔、一度火山の噴火に巻き込まれて壊滅的な被害を受けたこともあったけど、今では既に復興して昔の姿が戻ったらしいよ。」

「噴火……ですか?」

「噴火と言っても数百年に一度の確率でしか起こらないらしいから安心していいよ。」

 

噴火と聞いて焦るリーリエだが、シンジの言葉を聞いてホッと一安心する。ジムがあるとはいえ、いつ噴火が起こるか分からない場所に行くのはどうしても恐怖が付きまとってしまうだろう。

 

「ですがどうやって海を渡るのですか?ハクリューさんなら海を渡れるかもしれませんが、私たち2人のを乗せるのは難しいと思いますが……。」

 

リーリエの言葉にシンジは大丈夫だと答える。どうやら彼には何か考えがあるようだ。リーリエは彼を信じ、彼の後をついて行くことにした。

 

シンジの後をついて行くと、セキチクシティの南にある海へと出た。しかし、そこには複数のラプラスが並んでおり、そのラプラスを一人の女性がお世話していた。

 

「すみません、ラプラスをお借りしたいのですが。」

「あっ、ラプラスですね。何匹用意しましょうか?」

「一匹で大丈夫です。」

 

リーリエはどうゆう事か理解できずに困惑している。シンジはそんな彼女に簡単な説明をした。

 

「グレンタウンはジムのあるところでもあるけど、同時に有名な観光地でもあるんだ。だからこうしてラプラスの貸し出しを行っていて、誰でも気軽にグレンタウンへと行けるようにしてあるんだよ。」

「なるほど、そうだったのですね。」

 

シンジの言葉にリーリエも理解して頷く。

 

のりものポケモンのラプラスは、人懐こい性格で背中に人を乗せることが好きな珍しいポケモン。だがその人懐こい性格が利用されてしまい、乱獲や密猟等の被害が多発してしまい絶滅の危機にあってしまったこともある。それ故に大切に保護された結果、近年ではラプラスは増加気味の傾向にあり、この様に人を運ぶために活躍したり、アローラではライドポケモンとして利用されたりと、人間と上手く共存しているのが現状だ。

 

「では、こちらのラプラスをご利用ください。グレンタウンの先へと行ったところにラプラスを預けていただければ大丈夫ですので。」

「はい、ありがとうございます。」

 

女性のラプラスを借りたシンジは、彼女に一礼してお礼を言う。リーリエもシンジに続き感謝した。

 

「よろしく、ラプラス。」

「よろしくお願いします!ラプラスさん!」

 

シンジたちの言葉にラプラスは甲高い声で返事をした。まるで超音波のような声だが、どことなく安心する鳴き声であった。もしかしたらラプラスの鳴き声には人間を癒す効果があるのかもしれない。

 

リーリエがラプラスの頭を撫でると、ラプラスも嬉しそうに笑顔を浮かべながら再び鳴き声をだす。やはりラプラスは人間に対しての警戒心は全くないようだ。

 

シンジとリーリエはラプラスの背に乗り、早速グレンタウンへと向かうことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとリーリエは今、ラプラスの背に乗ってグレンタウンへと向かっている。シンジが前に乗り、リーリエが彼に掴まっている形だ。最初はリーリエもポケモンに乗って初めて渡る海と、シンジに密着する意味で緊張気味だったが、だんだん慣れてきたのか今ではそんな様子はない。

 

「ふたごじま?」

「うん。ふたごじまはグレンタウンよりも離れた場所にあるんだけど、そこでは珍しいポケモンが多く生息しているんだ。しかもそこでは伝説のポケモン、フリーザーが目撃されたという情報もあるんだよ。」

「ふ、フリーザーさんが!?」

 

シンジから聞いた事実にリーリエは驚く。れいとうポケモンのフリーザーと言えば、カントー地方で有名なかえんポケモンのファイヤー、でんげきポケモンのサンダーと並び、伝説の三大鳥ポケモンと呼ばれるとても希少なポケモンだ。

 

当然目撃例も少なく、トレーナーたちが血眼になって探しても発見できなかったという報告もある。伝説のポケモンでは珍しい事ではないが、ふたごじまが住処だと言われているフリーザーが見つからないのはよっぽどである。

 

「シンジさんは見たことあるんですか?」

「いや、僕も見たことはないよ。ただ、それらしい影なら見たことあるけどね。」

 

どうやらシンジも直接見たことはないようだ。シンジは昔あったことを思い出しながら話した。

 

過去に彼もふたごじまの洞窟を探索していたそうだが、その際に迷ってしまったそうだ。だがその時上から雪のように冷たい光が降り注ぎ、気になって上を見上げてみた。するとそこには一匹の鳥ポケモンが飛んでいた。その姿はハッキリと確認できなかったが、それでもあれはフリーザーなのだと確信できたそうだ。

 

フリーザーは伝説のポケモンと言うだけはあり、他の鳥ポケモンにはない特徴がある。それにその時シンジは、そのポケモンに神秘的なものを感じたのだという。通常のポケモンでは感じない特別なもの。紛れもなく伝説のポケモンだと感じてもなんら不思議はないだろう。

 

「伝説のポケモン……フリーザーさん。私も会ってみたいです!」

「じゃあ折角だし寄ってみようか。他にも色んなポケモンは見られるかもしれないし。」

「はい!」

 

2人はそう決意し、ラプラスにふたごじまへと立ち寄るように指示を出す。ラプラスも2人の意思に快く従い、ふたごじまへと向かった。人を乗せることが好きなラプラスにとっては、どこによるかなどは些細なことに過ぎないのかもしれない。

 

ラプラスに揺られながら広大な海を堪能していると、そうこうしているうちにふたごじまへと辿り着いた。2人はふたごじまへと降りると、ラプラスに少しだけ待っているようにと頼む。ラプラスも名残惜しそうではあるが、2人の言葉に頷いて暫く待っていることにした。

 

「ここがふたごじまですか。島全体は大きくないのですね。」

「どちらかと言えば島と言うよりも洞窟だからね。」

 

ふたごじまには洞窟の入り口が二つあった。このふたごじまは、似たような洞窟が二つあることから“ふたごじま”と名付けられたのだ。このような小さな島にフリーザーが住んでいるとは、なんとも信じがたい事である。

 

「じゃあ早速行こうか!」

「はい!」

 

シンジははぐれない様にリーリエと手を繋ぐ。オツキミやまほどではないにしても、洞窟の中はどうしても薄暗く視界が悪い。また、内部も入り組んでいて複雑であるため、はぐれてしまっては一大事だ。

 

シンジたちは手を繋ぎながら洞窟内部へと入っていく。中は薄暗いものの、足元はハッキリと見えていて、前方も確認できる程度ではあるため、以前のようにブラッキーの力を借りる程ではない。

 

「すごいですね……中はこんなに広いんですか……。」

 

リーリエは洞窟内部に入るなり、周囲を見渡しそう呟いて感心する。外から見たらそれほどまでに大きく感じはしなかったが、中身は外見よりも遥かに広く感じた。洞窟は地下にも続いているため、更に広く感じてしまう事だろう。例え方向音痴でなくとも、1人で入れば迷ってしまいかねない場所だ。

 

リーリエはそう考えながら、はぐれないようにシンジの手をしっかりと握り返した。

 

「あ、これは……」

 

洞窟を暫く進むと、シンジが何かを発見したようでその場に立ち止まる。なにかあったのかとリーリエもそれを確認する。するとそこには大きな岩が道を塞いでいた。戻って別の道を探そうにも、一本道だったためそれでは一旦外に出て、もう一つの道を進むしかなくなってしまう。結構な距離を歩いたため、引き返すだけでも骨が折れる。

 

「仕方ない、ここは!」

「そうですね。やるしかありません!」

 

2人の考えは一致したようで、自分のモンスターボールを手に取る。

 

「お願い!イーブイ!ニンフィア!」

「力を貸してください!シロン!マリルさん」

 

シンジはイーブイとニンフィアを、リーリエはシロンとマリルを繰り出した。

 

「一斉に攻撃してあの岩を壊す。行くよ!イーブイ!ニンフィア!シャドーボール!」

「シロンはオーロラビーム!マリルさんはバブルこうせんです!」

 

トレーナーのの合図に合わせ、全員が一斉に攻撃を繰り出す。同時に放たれた技は色鮮やかに交わり、道を塞いでいた岩を粉々に粉砕した。

 

「やりました!」

 

リーリエはそう言いガッツポーズをとる。しかしその時、周囲に異変が起こりはじめた。

 

「っ!?いったい何!?」

 

突然周囲が揺れだしたのだ。何が起きたのか分からなかった二人は困惑するが、次の瞬間に足元に浮遊感を感じた。今の技の衝撃で足場が崩れてしまったのだ。状況を理解した二人だが時は既に遅く、ポケモンたちと共に地下に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか助かったね……。」

「はい、ですが少し濡れてしまいましたね……。」

 

かなり上から落ちてしまったが、下が流水であったため無傷で済んだ。だが、一つだけ無事では済んでいないことがあった。

 

「シロンも……あれ?シロンとマリルさんがいません!」

「ニンフィアとイーブイもいない!?」

 

彼らの手持ちのポケモンとはぐれてしまったのだ。落ちた流水の中で別の場所に流れてしまったのだろう。

 

「この階層にいることは間違いないと思う。急いで探さなきゃ!」

 

リーリエはシンジの言葉に頷き、早くポケモンたちと合流するために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーたちとはぐれてしまったポケモンたちは体をブルブルと振るわせて体から水を払っていた。マリルだけはみずタイプであるため、特に影響はなさそうだった。

 

『イブイ……』

『リル……』

 

イーブイとマリルは自分のトレーナーとはぐれてしまって彼らが無事か心配になり俯く。普段から一緒にいるため、このようなトラブルにはあまり慣れていない。

 

『フィア!フフィアフィ!』

 

そんな2人をニンフィアは励ました。シンジたちなら大丈夫だと言っているようだ。ニンフィアも不安や心配がないわけではないだろうが、一番シンジと共に旅をしている自分がしっかりしなくてはとみんなを引っ張ろうとしているのだ。シロンもそんなニンフィアに続き、マリルとイーブイに声を掛けた。

 

『コォン!コンコォン!』

『イブ……イブイ!イブブイブイ!』

『リルル……リル!』

 

シロンの言葉に目が覚めたように、イーブイも二人に続いてマリルを励ます。マリルはイーブイの言葉を聞き、2人を探し出そうと決意する。仲の良いイーブイとマリルは、互いに安心したのか共に微笑み合う。

 

そして、ニンフィアはみんなを誘導して歩き出す。みんなもニンフィアについていく形で歩き出した。

 

『フィア?』

 

洞窟特有の薄暗さで前が見づらいが、ニンフィアは何かに気付き立ち止まる。イーブイたちもニンフィアに続き警戒しながら立ち止まる。

 

警戒して静かに待機していると、何者かの物音が聞こえた。暫くすると、物音がハッキリと聞こえてきた。その物音はポケモンの羽音で、上を見上げると無数のゴルバットとズバットが飛んでいくのが確認できた。しかし彼らの様子は明らかにおかしく、何かから逃げている印象が見て取れた。

 

また、地上からもクラブやキングラー、水中でもヒトデマンにパウワウなど、多くのポケモンたちがざわついていた。

 

そんなポケモンたちの様子を何があったのかと困惑しながら眺めていると、突然異様な冷気がポケモンたちを襲った。その冷気はまるで吹雪のように勢いよく、地面や水流すらも氷漬けにしてしまうほどのものだった。

 

ポケモンたちはその冷気に耐えていると、洞窟の奥からその冷気の正体が姿を現した。

 

その正体は全体的に水色の姿で、長く大きくも美しく輝く翼、しなやかになびく尾、鋭い鉤爪。その姿はまさに、伝説の鳥ポケモンであるフリーザーそのものであった。

 

『イブ……イブイ!』

 

イーブイは少し恐怖を抱きながらも、マリルを守るために勇気を振り絞って一歩前に出る。ニンフィアもみんなを守るために戦闘態勢に入る。

 

だが、フリーザーの様子は明らかにおかしい。決して温厚な性格、と言う訳ではないが、意味もなく暴れるようなポケモンじゃない。もしかしたら何かが原因で怒りの感情が溢れ、フリーザーを暴走させてしまっているのかもしれない。

 

フリーザーはニンフィアたちを見るや、直ぐに攻勢に出た。口から冷気を纏ったビーム、れいとうビームを放つ。ニンフィアとイーブイはみんなをシロンとマリルを守るためにシャドーボールの同時撃ちで対抗した。

 

しかし、フリーザーのれいとうビームはあまりに強力で、2人の力を合わせても完璧に防ぎきれず、シャドーボールを貫通されてしまった。ポケモンたちは間一髪避けることができたが、流石は伝説のポケモンと言うだけはあり、力の差が明確に表れてしまっている。やはりトレーナーがいなければポケモンもいつもの力が出せないのだろう。それだけトレーナーの存在は大きいものなのだ。

 

続いてフリーザーは、先ほどのれいとうビームよりも強烈な冷気を放つ。その冷気はれいとうビーム以上に威力の高いふぶきで、伝説のポケモンの攻撃ともなると当たれば一溜りもないだろう。

 

その攻撃はイーブイを対象に放たれる。だがフリーザーの放つ威圧感に圧倒されてしまい、頼れるトレーナーが側にいないイーブイは恐怖で動けなくなってしまっている。

 

『フィア!?』

 

ニンフィアはそんなイーブイを庇い、自ら前に出て盾になる。イーブイを含め、他のポケモンたちも慌てるがフリーザーのふぶきは直前まで迫っている。もうだめかと思った時、一つの影が飛び出してきてニンフィアとイーブイを抱えて二匹を守った。

 

何が起きたのか分からなかったイーブイとニンフィアはゆっくりと目を開ける。するとそこには、自分たちが最も信頼し、大好きな人の姿が目に映った。

 

「2人とも、大丈夫だった?」

『フィア!』

『イブイ!』

 

その人物は紛れもなく自分たちのトレーナーであるシンジだった。ニンフィアとイーブイがピンチだと感じた彼は、すぐに飛び出して2人をギリギリのところで救出したのである。このポケモンのためなら後先考えないところは彼の悪いところだが、同時にいいところでもあるのかもしれない。

 

「シンジさん!?大丈夫ですか!?」

 

リーリエが心配しながら駆け寄ってくる。彼女にとってはいつも無茶をする彼の姿を見るのはハラハラものである。だが、それでも彼のその姿を見ると、何一つ変わっていないと感じられるため彼女にとっては反対に安心でもあるのだが。

 

「大丈夫だよ。飛び込んだ時に少し擦りむいた程度だから。」

「そ、そうですか。もう、心配させないで下さいよ……。」

 

シンジもリーリエの言葉に対し、ごめんと素直に謝る。

 

『コォン!』

『リルル!』

「シロン!マリルさん!二人とも無事でよかったです!」

 

シロンとマリルも、リーリエの姿を見てすぐに彼女に飛びつく。リーリエも2人を優しく受け止め、心の中で安堵する。ニンフィアとイーブイも、シンジに会えて安心したのか彼の顔を舐めて歓迎した。シンジもくすぐったがっているものの、その表情はどこか嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

戯れはそこまでにして、シンジとリーリエは目の前にいるフリーザーの姿を見据えた。

 

「あれが伝説のポケモン……フリーザーさん。」

「間違いないね。でも、なんだか様子がおかしい気がする。」

「!?シンジさん!あれを見てください!」

 

シンジが異変に気付いて呟くと、今度はリーリエがフリーザーを指さした。フリーザーの首元を注意深く見てみると、薄っすらと赤い光が灯っているように見えた。見えづらいが、何か首輪の様なものがフリーザーの首に取り付けられてしまっているようだ。

 

「もしかしてあれが原因で暴れている?」

「その可能性はありますね。だったら!」

「うん、僕らのやることは一つだね!」

 

フリーザーを助ける!

 

2人は同時にそう口にして決意をする。今はフリーザーは恐らく首輪の効果によって暴走状態に陥ってしまっている。自我を失っているフリーザーは我を忘れ、自分の攻撃が躱されてしまったのが悔しいかのように再び全力で襲い掛かってきた。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『フィーア!』

 

フリーザーは翼を大きく羽ばたかせ、ひこうタイプの大技であるぼうふうを繰り出す。対してニンフィアはようせいのかぜでぼうふうに対抗した。先ほどは拮抗することすら難しく、あっさりと攻撃を弾き返されてしまったが、今度はシンジが傍にいてくれるからか、拮抗どころかぼうふうを打ち破ることに成功した。

 

だがフリーザーも伝説のポケモン。とっさに翼を盾にしてようせいのかぜを防御し、直撃を免れる。技の威力やキレもさることながら、自我を失っているのにも関わらず判断能力は大したものである。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!』

 

マリルはバブルこうせんをフリーザー目掛けて撃つも、フリーザーは優雅に飛び回りバブルこうせんを全弾回避する。だが、それでも攻撃をやめることはなかった。

 

「シロン!連続でオーロラビームです!」

『コォン!』

 

連続でオーロラビームを放つも、その攻撃全てが簡単に避けられてしまう。フリーザーは我を忘れてもなお、相手の攻撃を冷静に対処している。

 

攻撃を全て躱され焦るリーリエに対し、シンジは一つの提案を伝える。

 

「リーリエ、フリーザーは僕が引き付ける!だからその隙にあの首輪を壊すんだ!」

「は、はい!分かりました!」

 

シンジの言葉にリーリエはそう返事をする。言葉にするのは簡単だが、あの首輪をピンポイントで狙うのは難しいだろう。それでもシンジがリーリエにその仕事を任せたのは、それだけ彼女の事を信頼しているからであり、リーリエも彼の期待に応えたいという強い思いがあるからこそだ。

 

攻撃が落ち着いたのを確認したフリーザーは、再びれいとうビームで襲い掛かる。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

 

フリーザーが強力なこおりタイプの技で攻めてくるなら、こちらも全力で攻撃を仕掛けようと大技のムーンフォースで対抗する。

 

中央でムーンフォースとれいとうビームが交じり合い、その場で爆発してフリーザーの視界を奪う。それを確認したシンジは、すかさず追撃を仕掛ける。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『イブイ!』

 

スピードスターはフリーザーを捉え、確実なダメージを与える。極めて命中率の高いスピードスターであれば、視界の悪い状況でも当てることは容易だ。適確な判断と言えるだろう。

 

スピードスターを受けたフリーザーは煙から姿を現し、そのまま墜落していく。今だと判断したリーリエは、すかさず攻撃の指示を出した。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

シロンはこおりのつぶてで首輪を狙い破壊を試みる。狙いもタイミングもバッチリ、と思いきや、フリーザーは目をかッと見開き、覚醒して再び飛び立つ。こおりのつぶては外れてしまい、首輪を壊すことはかなわなかった。

 

フリーザーは次の攻撃対象をシロンに定めて、三度れいとうビームを放つ。このままではマズいと判断し、リーリエはシロンに攻撃の指示を出す。

 

「シロン!オーロラビームです!」

 

オーロラビームでれいとうビームに対抗するシロン。しかし攻撃力の差は歴然。シロンのオーロラビームは徐々にフリーザーに押されてしまう。このままではシロンにフリーザーの攻撃が直撃してしまう。

 

「シロン!?」

 

リーリエは心配そうにシロンの名を口にする。その言葉に反応し、シロンはハッとなり以前味わった悔しさを思い出す。

 

その記憶はヤマブキジムでの敗北の事だった。あの時、負けたことによってリーリエには辛い思いをさせてしまった。もう二度と、信頼するパートナーに心配を掛けたくない、辛い思いをさせたくない。そう思ったシロンの攻撃に、突如として変化が起きた。

 

「!?あれは!」

 

リーリエが驚く。それもそうだ。先ほどまでは虹色のオーロラが描かれ、それでも押されていたにも関わらず、今ではフリーザーの攻撃と全く同じ攻撃がシロンから放たれたのだ。まるで技がレベルアップでもしたかのように。

 

その攻撃はフリーザーの攻撃を僅かに押し返す。するとその場で爆風が発生し、互いの鍔迫り合いのような戦いは終了した。リーリエはその後、シロンが新しい技を覚えたのだと確認し、喜びにあふれる。

 

「シロン!れいとうビームを覚えたのですね!」

『コォン!』

 

あれは紛れもなくれいとうビームだった。オーロラビームよりも更に強力なこおりタイプの技で、威力に関しては今見た通りの威力である。だが、シロンにも疲労の色が伺える

 

フリーザーは煙を振り払うように、続けてぼうふうを放つ。範囲の広いぼうふうを今のシロンでは避けられないと感じたリーリエだが、横からもう一つの優しくも力強い風に遮られ、その攻撃は相殺された。

 

「リーリエ!シロン!大丈夫?」

『フィア!』

 

その攻撃はニンフィアのようせいのかぜだった。リーリエはシンジに助けてもらったことに感謝をし、フリーザに視線を送る。

 

攻撃を二度も防がれ、驚きを隠せないフリーザーの隙を見計らい、シンジはチャンスだと感じ攻撃を加えた。

 

「ニンフィア!イーブイ!シャドーボール!」

 

二匹同時に繰り出すシャドーボールは、見事にフリーザーを捉えダメージを与える。防御が間に合わずにその攻撃を受けてしまったフリーザーは、致命傷とはいかないまでもダメージは確実に溜まっていた。今こそがチャンスだと感じたリーリエは、再び首輪を壊すための指示を出した。

 

「シロン!こおりのつぶて!マリルさん!バブルこうせんです!」

 

無数に放たれるこおりのつぶてとバブルこうせんは、首輪を破壊することに成功し、フリーザーはその影響で暴走状態から解放され、態勢を立て直し飛び上がる。

 

ゆっくりと飛び上がったフリーザーは、シンジとリーリエの姿を見つめた。暫く見つめた後、僅かに頷き、その場から飛び去って行った。

 

「ありがとう……と言っていたのでしょうか?」

「多分、そうだと思うよ。」

 

フリーザーの言った言葉を推察している2人の前に、ある物が落ちてきた。そのかすかに光っているものをリーリエは拾い上げる。するとそれは驚くべきものだった。

 

「!?これって……」

「中央に雪結晶のマーク……間違いなく氷の石だよ!」

 

そう、彼らの目の前に落ちてきたのは紛れもなく氷の石だ。氷の石は特定のポケモンを進化させるために必要な石。そのポケモンとは……

 

「シロンの進化に必要な石だね。」

「フリーザーさんのお礼……という事でしょうか?」

「そうなのかもしれないね。」

 

シンジの言う通り、氷の石はシロンの進化に必要な石だ。伝説のポケモンに関してはまだまだ謎な点が多く存在する。これもフリーザーの気まぐれか、それともフリーザーの意思なのか、それは永遠の謎だろう。

 

「……シロン。あなたはどうしますか?進化……」

『コォン……』

 

リーリエがシロンにそう尋ねると、シロンは震えながらリーリエの後ろに隠れた。どうやら何かは理解しているが、正直怖いと言った様子だ。

 

進化するという事は別の自分に生まれ変わるという事でもある。初めての進化に怯えるのは仕方のない事である。

 

「……そうですね。慌てる必要ありませんよね。」

 

リーリエはそう言い、氷の石を持った手を引く。

 

「シンジさん。この石、私が頂いてもいいでしょうか?」

「もちろんだよ。時間はたくさんあるんだし、一度だけだからシロンとゆっくり決めるといいよ。」

 

シンジは優しくリーリエにそう伝える。リーリエもそんな彼に感謝して、氷の石をバッグにしまった。

 

「それにしても伝説のポケモンフリーザー……すごいプレッシャーだったね。」

「はい、あれほどとは思いもしませんでした。」

「フリーザーが我を保っていたら、本当に勝ててたかどうか、怪しい気がするよ。」

「そうですね。でも、またいつか会えるといいですね。」

「……うん、そうだね。」

 

伝説のポケモンの凄さを目の当たりにしたシンジとリーリエは、ふたごじまを後にすることにした。

 

2人は今日経験した事を深く胸に刻み、次なる目的地であるグレンタウンへと目指すのであった。シンジとリーリエのカントーを巡る旅は、まだまだ続く!




ミュウツーを除いて初代最強を誇ったフリーザーさんです。現環境ではまあ、うん。そもそもこおりタイプ自体が不遇になりつつあるよね。フェアリーの登場、はがねやほのおタイプの使用率増加、あられが他の天候に比べしょっぱい等。もう少しすくいを与えてあげてもいいのよ?(グレイシア強化してくださいお願いします)

まずリーフィアの夢特性をひでりにしてとんぼ返りとソーラーブレードの習得、グレイシアの夢特性をゆきふらしにして黒い霧の習得させればかなり強化されるのでは?つうか普通に強い気がする。

そんな願望はともかく、この前ポケモンセンターに行ったらイーブイ(とついでにピカチュウ)に会いました。イーブイ可愛すぎて何度も写真撮ってました。動画もとれて、遂にグレイシアとリーフィアの縫いぐるみも見つけたので言うことなしです。可愛い。

(また)ブイズの厳選にハマりだしてしまったのでもしかしたら次回の投稿遅れるかも?来週投稿できるか分かりませんががんばリーリエで頑張ります。

てなわけで?また次回お会いしましょう!感想や意見があればお気軽にどうぞです!


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情熱の色グレンタウン!ハチャメチャクイズ大会!?

珍しくおちゃらけと言うか、ネタ回です。いつものシリアス?はどこへ行ったのかという感じですね。

この間の火曜日の台風は酷かったです。ヌシは愛知県在住なのですが、7時間ほど停電してしまいました。そのせいでリアルフレとSkype繋いでモンハンフロンティアをしていたのに突然消えて災難です……。

みなさんは大丈夫でしたか?被害が酷いそうで北海道では地震もあったそうなのでどうか気を付けてください。

では本編です!どぞ!





















ばか、はずれです


「見えてきたね。あれがグレンタウンだよ!」

「あれが7個目のジムがあるグレンタウンですか……」

 

ふたごじまにて伝説のポケモン、フリーザーを目にしたシンジとリーリエ。2人は今、7個目のジムがあるグレンタウンへと上陸しようとしていた。

 

2人はグレンタウンへと辿り着き、ラプラスの背から降りグレンタウンへと上陸する。ここまで運んでくれたラプラスに感謝し、暫く待っていて欲しいと頭を撫でる。ラプラスもその言葉に承諾し、2人の言葉に笑顔で頷いてくれた。

 

「ここがグレンタウン。一度火山で崩壊してしまったとは思えないぐらい活気がありますね。」

 

このグレンタウンは一度火山の噴火に巻き込まれ崩壊してしまった過去がある。だが、そんな悲惨な過去を思わせないほど、今のグレンタウンには活力のようなものが感じられる。

 

その時、グレンタウンへと上陸した彼らの元に、1人の老人が歩み寄ってきた。しかし、その老人は年老いた印象はまるで感じさせず、背筋を伸ばし紳士的な印象を持つことのできる印象であった。

 

「なんだおぬし、グレンに来ておったのか!久しぶりだな!」

 

シンジを見つけ、元気よく挨拶する老人。シンジもそんな老人に対し、同じく元気に挨拶をして返答する。

 

「カツラさん!お久しぶりです!」

「うむ!おぬしの笑顔は衰えていないようで何よりだ!」

 

シンジがカツラと呼んだ老人は、ハッハッハと笑う。初対面のリーリエは、シンジにこの老人は誰なのかと尋ねた。

 

「シンジさんのお知り合いですか?」

「この人はカツラさん。このグレンタウンのジムリーダーだよ。」

 

まさかグレンタウンに辿り着いて直ぐにジムリーダーに会えるとは思わず驚くリーリエ。カツラに名前を尋ねられ、リーリエは彼に自己紹介をした。

 

「は、初めまして!シンジさんと一緒に旅をしているリーリエです!グレンジムに挑戦するためにやってきました!」

「そうか、ジムの挑戦者か。いいだろう、その勝負を受けよう!……と言いたいところだが……」

 

快くジム戦を受けてくれる、かと思いきや、どこか思いつめた表情を浮かべるカツラ。どうやらすぐにはジム戦ができる状況ではないようだ。何か重大なことでもあったのかと、リーリエはその事情をカツラに尋ねることにした。

 

「何かあったのですか?」

「うむ。実はな……」

 

その深刻そうな表情と意味深な間に、シンジとリーリエに緊張が走る。しかし、カツラの口から出たのは予想を斜め上を行く答えであった。

 

「……今からワシが主催するクイズ大会が始まるのだよ。」

「……え?クイズ大会?」

 

深刻な表情を浮かべながら言った言葉がまさかのクイズ大会である。これにはリーリエも戸惑わずにはいられない。対してシンジは、その答えを聞いたときにカツラの性格を思い出したのだ。

 

「そう言えばカツラさんって大のクイズ好きでしたね。今まで忘れてましたよ……」

 

カツラは呆れるように呟くシンジに、自慢げにうむ!と答えた。何故そんなに自慢げに頷けるのかは少々疑問の残るところではあるが。

 

「そうだ!良かったらおぬしも参加してはもらえないか?」

「え?私ですか?」

「うむ。トレーナーたるもの、バトルの腕だけでなく、知識を蓄えることも重要だ。ワシのクイズが役に立つこともあるやもしれんぞ?」

 

さっきの回答から一変、カツラは真面目な表情でリーリエにそう告げる。リーリエも確かにそうかもしれないと頷き悩む素振りを見せる。挑戦者に前もって助言をするというのはジムリーダーらしい言動だ。カツラがただクイズ大会を盛り上げたい、という純粋な気持ちがある可能性もないわけではないだろうが……。

 

「……分かりました!折角のお誘いですのでお受けします!」

 

リーリエはカツラの誘いを謹んで受けた。カツラの一言も一理ありだが、リーリエ自信が興味があると言うのも理由の一つだ。トレーナー出なかったころも、本を読むことで知識を得ていた自分の知識がどれほどのものか確かめたいと思ったのだ。

 

「シンジさんはどうしますか?」

「えっと……今回僕はパスするかな……。」

 

意外だった。彼の事だから今回のクイズ大会にも率先して参加する者かと思っていたが、返ってきた言葉は意外にも否定の言葉であった。

 

リーリエがシンジに理由は尋ねるも、シンジは渋って答えを言うのを躊躇っていた。何か裏があるのかもしれないが、一先ずあまり深くは追及しないでおこうとリーリエは心の中にしまっておいた。

 

そしてリーリエとシンジはカツラの後をついていき、クイズ大会の行われる会場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより!我がグレンタウンが誇るジムリーダー、カツラさん主催のクイズ大会を開催します!」

 

クイズ大会の会場に辿り着いたシンジはリーリエと別れ、観客席にてカツラと共に見守っている。

 

クイズ大会の始まりの合図を、サングラスをかけた如何にもな男性の司会者(CV.タケシ)が宣言した。

 

「あれ?カツラさんが司会するんじゃないんですか?」

「ワシはあくまでクイズを考え、この大会を提案しただけだ。司会はワシの性に合わないからの!」

「そ、そうなんですね……」

 

開催したのに大会に関わらなかったら主催とは言わないのではないか、と心の中で問いかけるシンジだが、彼に言えば何故か怒られてしまう気がしたので心の中で留めることにした。

 

「それではルールを説明させていただきます!」

 

司会者が順番にルールを解説していく。クイズ大会のルールに関しては以下の通りだ。

・トーナメント方式の勝ち抜き制

・1試合3組

・ボタンを最初に押した人に回答する権利が与えられる

・間違えたら次の問題を回答する権利が強制的になくなる

・3回正解した組が勝利

・二回勝ち抜いた組が決勝進出

・最後に残った2組で決勝を争う

 

以上だ。早い話が早押しクイズ大会ということだ。別段難しそうなルールではないが……。

 

(カツラさんのことだからなあ……)

 

シンジが問題視しているのはカツラの性格の事だ。始まればわかることだが、彼の出す問題は少々意地悪な問題が混じっていることもある。だからこそ、シンジはあまり気乗りではなかったのだ。その分リーリエが大丈夫か不安な面もあるが。

 

「……リーリエなら大丈夫かな?」

「では!早速最初の三組の挑戦者たちに登場していただきましょう!」

 

司会者の言葉と同時に舞台の奥から三組のグループが登場した。その中にはリーリエの姿もあったがどこか

たどたどしいと言うか緊張している様子が見られる。

 

「リーリエ、ガチガチに緊張してるみたい……。」

「おぬしが一声かけたらどうだ?少しは緊張が解れるかもしれぬぞ?」

「……いえ、やめておきます。余計な口出しは必要ないでしょうから。」

「ハッハッハ!おぬしも立派になったものだ!」

 

シンジはリーリエなら大丈夫だろうと信じ、彼女のことを静かに見守ろうと判断する。カツラもそんなシンジの姿を見て、大きく笑いながら彼の成長を心の底から感じ取る。

 

一方、リーリエはというと……

 

(け、結構大きな舞台ですね。人も集まっていますし、緊張してしまいます……)

 

彼女自身ここまで大きな舞台だとは思わなかったため、どうしても緊張してしまう。だが、こんなところで緊張してしまっては、いずれ挑戦するであろうカントー大会に参加する事など夢のまた夢となってしまう。大きな舞台では緊張のあまり実力を出し切れず、一回戦で敗退してしまう話も決して珍しくない。

 

リーリエは自らを奮い立たせ、クイズ大会でも全力で挑もうと決意をする。

 

リーリエを含む三組はあらかじめ用意された机の後ろに立つ。机には既に青色のボタンが設置してあり、それを先に押したものが回答権を得る仕組みだ。

 

因みに今回の挑戦者はリーリエの他に、男性一人の組と女性一人の組だ。男性は黒いスーツを着た知的そうな男性で、女性は少し気弱そうな華奢な少女であった。

 

「では早速第一問!」

 

参加者が所定の位置につき準備が出来たと確認した司会者は、早速一問目の問題を出題した。

 

「ノーマルタイプの技の中でも威力が高い事で有名なはかいこうせんですが、はかいこうせんと対になる技は一体何?」

 

(はかいこうせんの対…‥はかいこうせんは確か特殊技だったはずです。ですから対となれば……)

 

物理技のあの技しかない、そう考えたリーリエはボタンへと手を伸ばす。しかし、リーリエがボタンに触れる直前に、隣からピコンと音が鳴りボタンが赤色に光った。そうこうしている内に隣の男性がボタンを押し、回答権を得てしまったようだ。

 

「答えはギガインパクトですね。」

「正解!」

 

一問目は男性にとられてしまった。ギガインパクトははかいこうせんと同威力かつ同じノーマルタイプであり、物理技と特殊技という点で対として存在している。

 

(これは早押し大会……少しでも遅れてしまえば答えが当たっていても意味がないってことですね。)

 

改めてこの大会のルールを理解したリーリエ。たとえ正解が分かっても、先に答えられてしまっては意味がないのだ。故に、この大会には判断力、決断力、反射速度などの様々な点も必要となってくる。どれもトレーナーにとっては必要な事であろう。

 

男性の机には1つの明かりが点いた。その明かりが3つになった時、その人が次に進むことができるのだ。

 

「では第二問です!」

 

次こそは正解すると、リーリエは身構えて問題に集中する。

 

「キャタピーは進化するとバタフリーになる?はいかいいえか!」

「……え?」

 

突然すぎる2択クイズであった。だがリーリエが驚いたのはそこではない。キャタピーは進化すればトランセルに進化するのだが、最終進化形はバタフリーだ。捉えようによってはキャタピーはバタフリーに進化するとも考えられる。ハッキリ言っていやらしい引っ掻け問題だ。

 

リーリエは本当の答えはどちらなのかと悩む。すると、再び隣の男性がボタンを押し、回答権を獲得する。

 

「分かり切った答えですね。答えはいいえ!キャタピーは進化するとトランセルになる!」

「……残念!」

「何!?」

 

――ばか、はずれです

 

答えはなんとはずれであった。バックモニターに謎の煽り文が浮かび上がり、男性の頭の上から多量の水が降りかかった。

 

「言い忘れていましたが、もし回答が不正解であれば、なにかしらの災難が待ち受けていますのでご注意を!」

 

司会者の言葉に会場にいるみんなが「言うのが遅いよ!」と突っ込みそうになる。だが、これで男性は次の回答権をはく奪されたことになる。

 

しかし司会者から次の問題が出題されず、まだ続いているような雰囲気を出している。リーリエはもしかしてと思い、慌ててボタンを押した。

 

「え、えっと……答えははいです!キャタピーさんは最終的にバタフリーさんに進化します!」

「……正解です!最終的にバタフリーに進化するため、答えは【はい】です!」

 

どうやら本当に続いていたようだ。少しの間にリーリエはドキッとするが、正解だと知って一先ず安心する。それにしてもあまりにもな問題である。シンジが参加しなかったのがなんとなく分かったリーリエだった。

 

(な、なんだかごめんなさい……)

 

リーリエは心の中で男性に謝罪する。横から正解を奪ったみたいでなんだか罪悪感を感じてしまったのだ。しかしこれも勝負であるため、そういった競争は仕方がない事ではある。

 

そうして問題は次々と出題されていった。リーリエはそれらの問題を無事突破することができ、2戦とも勝ち上がり決勝まで進むことができた。

 

問題の中には他にもいやらしい問題や、逆に問いたくなる意味不明な問題があった。

 

その中でも筆頭なのが、【数多あるポケモンの技の中で最高威力を持つ技は、しねしねこうせんである?】だ。

 

もちろんそんな技は存在しないため、答えはいいえに決まっている。だが、2戦目にあった男性は躊躇なく【はい】と答えていた。当然不正解なわけで、その男性はどこからともなくやってきた炎に燃やされていた。だが、その男性はどこかご満悦な顔をしており、会場も大爆笑で包まれていた。

 

(いつからここは漫才会場になったのでしょうか……)

 

リーリエは心の中で思わずそう突っ込む。この状況であれば彼女がそう突っ込みたくなるのも分かる。

 

他にも様々な問題があり、【でんこうせっかを漢字で書け!】のような突然難易度が上がった漢字検定にも似た問題であったり、【ポケモンの体重はどちらが重い?】等のマニアックな問題、【カツラの好きなポケモンは?】等の(ふざけた)問題等、様々であった。もちろん間違えた人も多数存在し、その度に電気に撃たれる人、氷漬けになる人、草に覆われる人など、災難な目にあう人が大勢いた。

 

最後の問題は誰も答えられなかったため、リーリエが賭けで「ほのおタイプのポケモンさん……です」と自信なさげに答えたら、まさかの正解を貰えた。これにはカツラさんもご満悦の様子。リーリエも、前もってグレンジムの情報をシンジから聞いておいてよかったと安堵した。

 

そのころ、シンジたちはと言うと……

 

「……こんなことに僕のポケモンたちを使わないで下さいよ。」

「まあいいではないか。偶には協力してくれても罰は当たらんよ。」

「罰が当たるのはカツラさんだと思いますが……。」

 

どうやら今まで参加者に様々な災難を与えていたのはシンジのポケモン達だったようだ。人間の身でこれらの仕掛けを用意するのは流石に難しい。シンジを見かけた瞬間、カツラが思いついたサプライズなのだそうだ。

 

(リーリエ……みんな……ごめん……)

 

シンジは心の中で謎の罪悪感に襲われ、リーリエと自分のポケモンたちに謝罪した。

 

「ではこれより!カツラさん主催クイズ大会!決勝戦を行います!」

 

司会者が裏返りながら声を張り上げ、決勝戦の開始を宣言した。これだけ長時間大声を出していれば声が枯れてきても仕方ないだろう。この大会一番の功労者は、もしかしたら司会者の男性かもしれない。

 

「先ずは一組目!今大会飛び入り参加のリーリエ選手!」

 

司会者の言葉に続き、リーリエが奥から登場する。決勝まで辿り着き、すっかり緊張は解れたようだ。

 

「続いてクイズならだれにも負けない!優勝候補のワルター選手だ!」

 

続いてワルターと呼ばれる男性が姿を現す。その男性は眼鏡をかけ、スラッとした外見にかなりの高身長。ここまで勝ち上がってくる知識から考えると、女性からすれば憧れの的であるだろう。リーリエ的には特に異性としての意識は全くないが、会場の女性陣の多くは彼にメロメロ状態だ。

 

「お嬢さん?」

「は、はい?なんでしょうか?」

「私が勝てば、私と付き合ってもらえないでしょうか?」

 

ワルターはそんな事を言いながらどこからともなく薔薇を出した。どうやら彼はリーリエに気があるようだ。リーリエは困惑したが、それでも自分は微塵も興味がないと彼に伝える。

 

「あ、あの……すいません。私は特にそういうのは……。」

 

ワルターはリーリエの一言であえなく撃沈する。初めて女性に見向きもされなかったため相当ショックを受けたようだ。

 

正直リーリエは色恋沙汰には鈍感だ。彼女は自覚していないかもしれないが、周りから見れば高嶺の花であり、一度は近づくことを憧れる容姿をしているだろう。だが、幼いころの彼女は異性と関わったことが兄以外になく、恋についてもよく分からないため仕方がなかった。それを言えばシンジも同じなのだが……。やはり2人は自覚がない分、似た者同士なのだろう。

 

「ふ、ふふ、この勝負が終われば、君も気持ちが変わるさ。」

「は、はあ……。」

 

未だに理解していないリーリエはそう答えるしかなかった。

 

「では第一問です!」

 

そうこうしている内に、司会者が第一問を出題した。

 

「フェアリータイプの弱点ははがねタイプと何?」

 

至って基礎的な問題であった。決勝戦という事もありイタズラ問題は程々という事なのだろうか。リーリエも答えが分かったためボタンに手を掛けようとするが、一歩先にワルターがボタンを押してしまっていた。

 

「答えはどくタイプだ!」

「正解です!」

 

先に答えられてしまい、ワルターの机に明かりが一つ点く。これが3個点滅してしまえばワルターの勝利となってしまう。

 

「ふっ、どうだい?」

「まだ始まったばかりですよ?勝負はこれからです!」

 

正直リーリエはこういったキザなタイプ、自分に自信過剰なタイプの人間は苦手だ。だが勝負に負けるのは何だか嫌だと、いつもと違い本能に従い勝負に挑むことにした。

 

「続いて第二問!」

 

更に二問目を司会者が出題する。すると同時に、バックスクリーンに真っ黒なポケモンのシルエットが浮かび上がった。

 

「ポケモンには通常の姿とアローラの姿がいます。このシルエットのポケモンはなんのポケモンのどちらの姿か、答えてください!」

 

シルエットだけが浮かびあがり、ワルターは悩み始める。アローラ地方は他の地方に比べ知名度が少ない。その上、アローラの姿となれば見たことのある人物でなければこの問いに答えるのは難しいだろう。

 

だが、リーリエはそのポケモンをよく知っている。これならば自信満々に答える自信があった。間違える要素なんかないと、堂々とボタンを押し正解を告げる。

 

「答えはアローラの姿のロコンさんです!」

「正解です!」

 

正解と同時にリーリエの机に明かりが点灯する。ワルターもそんな彼女の姿を見て、心から感心していた。それと同時に惚れ直してもいたが、彼女自身そのことには全く気付いていない様子だが。

 

そんなこんなで問題は続いた。三問目はワルターが、四問目はリーリエが制しお互いに2勝ずつとなり互いの実力は拮抗していた。

 

だが、そんな彼女の姿を見ていたシンジは……

 

(な、なんだかいつものリーリエと違う……)

 

彼女の変わりように若干引き気味の様子だ。いつもの可愛らしくお淑やかでかつ元気いっぱいな彼女とは裏腹に、今は真剣な表情で集中している。いつもの彼女と比べると、少し怖くなるほどだ。

 

(ま、まあリーリエが楽しければいいかな?)

 

本当に楽しんでいるのか定かではないが、彼女がよければいいのではないだろうかと特に触れない様にした。

 

そして互いに二問ずつ正解したところで、遂に最終問題を迎えようとしていた。

 

「では最後の問題です!」

 

最後の問題はどのような問題が来るのだろうかと身構える2人。そして司会者の言葉と同時に、再びバックスクリーンにあるポケモンのイラストが映し出される。

 

「イーブイには8通りの進化が確認されています。その中でもエスパータイプの進化形は……」

 

この時点で分かったとすぐさまボタンを押しに行くリーリエとワルター。だが、僅かコンマ数秒の差で、ワルターが先に回答する権利を得てしまった。

 

「ふふ、これで私の勝ちですね。」

 

リーリエはここで確実に敗北すると悟った。そしてワルターから自分の答えようとしていた回答が口にされる。

 

「答えはエーフィだ!」

 

会場全体が静まり返る。だが、カツラだけはニヤリと微笑み、司会者からは意外な答えが返ってきた。

 

「残念!はずれです!」

「なっ!?」

 

――ばか、はずれです

 

まさかのはずれであった。それと同時にバックスクリーンにそう言葉が映し出され、ワルターに災難が訪れた。

 

だがその災難は今までの比ではなく、氷漬けにされ、炎に焼かれ、水に冷やされ、草に覆われ、電気に撃たれてしまったのだ。普通の人間なら死んでもおかしくないきはするが、彼は黒焦げになっても一命を取り留めていた。いや、それよりも大きなダメージを受けているようには見られなかった。

 

「問題は最後まできいて下さい。」

 

そう笑顔で司会者は言い、問題の続きを口にした。

 

「……エーフィですが、フェアリータイプの進化形と言えばなに?」

 

リーリエは司会者が言い終わるのと同時に、慌ててボタンを押した。そして回答権を獲得したリーリエは、本当の答えを言ったのだった。

 

「え、えっと……答えはニンフィアさんです。」

「その通り!大正解です!」

 

この瞬間、リーリエの優勝が確定した。

 

クイズではよくある【~ですが】問題だ。自分がもし先に押していれば、ワルターの二の前になっていたかもしれないと、リーリエは身震いした。もしかしたら、シンジのポケモンたちがリーリエを口説いたワルターに対しての報復かもしれないが、リーリエはそのことに気付くことはなかった。

 

リーリエは、横で伸びているワルターを心配しながら、舞台を降りたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、リーリエ。」

「はい!なんとか優勝できました!」

 

優勝できたことを嬉しく感じ、シンジの元へと駆け寄ったリーリエ。そんな彼女に、シンジは一言謝ることにした。

 

「ごめんね、リーリエ。」

「え?どうしたんですか?」

「いや、カツラさんの考えるクイズがああいうのだってわかってたんだ。分かってたなら、リーリエを素直に止めた方がよかったかなって罪悪感があって。」

 

シンジは心から悪いと感じ、リーリエにそう謝罪する。しかし、リーリエは笑顔でこう答えた。

 

「そんなことだったら全然いいですよ。なんだかんだ言って私、最後まで楽しめましたし!」

「リーリエ……」

 

リーリエのそんな無邪気な笑顔に、シンジはこれ以上何も言えなかった。リーリエが楽しかったのならいいか、と心の奥にしまい、この罪悪感を忘れることにした。

 

そんな彼女の姿を確認したカツラが、彼らに歩み寄ってきた。

 

「そうかそうか!楽しんでくれたのなら何よりだ!」

 

彼は心底嬉しそうだ。余程クイズが大好きなのだろう。シンジは相変わらず変わったクイズを出すな、と心の中で呆れていた。

 

「おぬしは知識もあるようだ。ワシはグレンジムで待つ。だがワシのバトルは決して甘くないぞ?心してかかってこい!」

「は、はい!」

 

先ほどの陽気な老人とは打って変わり、ジムリーダーらしい凛々しい姿へと変貌を遂げた。これがカツラのジムリーダーとしての姿だ。普段は親しみやすい老人であり、ジムリーダーとしては魂を燃やすほどの熱血男としても知られ、ポケモン界の研究者の一人でもある。その変わりように、リーリエも先ほどの緩みが消え、改めてこの人はジムリーダーなのだと実感した。

 

カツラは振り向き、戦いの舞台となるグレンジムへと向かっていた。

 

「変わった人だけど、カツラさんの実力は本物だよ。」

「はい、私にも伝わってきます。あの人の情熱が……。」

 

リーリエは今から始まる激闘に挑むため、グレンジムへと向かう事にした。

 

熱く燃え盛るほのおタイプを自在に操るカツラに、リーリエはどう対抗するのか。7個目のジムバッジをかけた熱き戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。




なんでこんな回を作ったのか。後悔はしていない。今は反省している。

正直間に合うか不安でした。(いつも通り)慌てて書いたので不備がないか不安です。ソシャゲやモンハンのイベが忙しくて時間が……。

次回はVSグレンジムになります。熱い戦い……を書けたらいいなと淡い期待を胸に書かせていただきます。

そう言えばアニポケの放送時間が10月から変わるそうですね。確か日曜の5時30だったか6時だったか。ちびまる子ちゃんに対抗?でも最近は録画する人が多いと思うので視聴率はたいして変わらない気が……。

最後に質問が返しをします。

先ず一つですが、ポケモンのレベルの概念はあるのか?という事でした。ハッキリ言ってレベルはありません。その点もアニポケ準拠で、ポケモン自身の戦闘センス(個体値的なものだと思っていただければ構いません)なども関係しており、鍛え上げたポケモンに勝つことも稀に良くあります。また、レベルは関係なしで技を習得することもあります。
フシギソウのエナジーボールがいい例ですね。フシギソウ見たく技マシン技も覚えることもあります。サトシのニャヒートも遺伝技のリベンジ覚えてたし……。

次は主人公の年齢についてですが、正直特には決めておりません。強いて言えばリーリエと同じ年齢だという事です。妥当なのは11歳でアローラに行った原作の設定を流用すると、その2年後なので2人はプリキュ……じゃなくて13歳という事になります。つまりグラジオは13より少し上という事になりますね。因みにミヅキとこれから登場予定のハウ、ヨウも同じ年齢です。

最後に主人公の容姿についての質問もありましたが、そう言えば作中で触れてませんでしたね。特筆したイケメンと言うわけではありませんが、取りあえずは優しくて頼りがいのある人物像ではあります。それを元に読者の方々で自由に妄想していただいて構いません。ヨウ君の帽子を被っていること以外は外見は違う……はずです。
これからリメイクする予定のアローラ編ではもしかしたら書き直すかもしれません。いつ書くのか全く分かりませんが……。そもそも失踪しないかどうかが不安よね(他人事

ではでは、また次回お会いしましょう!ノシ


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VSグレンジム!燃え上がれ!炎の熱戦!

正直ヤマブキジム戦を超えられるジム戦を書ける気がしない(自画自賛)

とりあえずこれだけは言っておきます。ニンフィアはヌシの嫁(キリッ


遂に7つ目のジムバッジをかけ、グレンジムのジムリーダーカツラと対峙するリーリエ。今、熱き戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 

「それでは!これよりジムリーダーカツラ対チャレンジャーリーリエによるジムバトルを開始します!」

 

グレンジムの審判が所定の位置につき、ルールの確認を行う。

 

「使用ポケモンは3体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になればバトル終了です!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!それでは、ジムリーダーからポケモンを!」

「ワシの一体目はこいつだ!」

 

審判の合図に合わせ、カツラはモンスターボールを投げる。そして、モンスターボールから解放された一体目のポケモンは……。

 

『コォン!』

「!?あのポケモンさんは……」

『キュウコン、きつねポケモン。ロコンの進化形。9人の聖者が合体して生まれたとされているポケモン。9本の尻尾には神通力が込められており、1000年は生きると言われる。』

 

カツラが最初に繰り出したのはキュウコンだ。そう、リーリエの持つシロン……ロコンの進化形だ。最も、姿はアローラではなく通常の姿ではあるが。

 

カツラはほのおタイプの使い手。リーリエのパーティで考えればあまり相性がいいとは言えない。それに、ジムリーダーであるがゆえに、苦手タイプの対策は怠っていないだろう。リーリエにとって、これは彼女の実力が問われる大事な一戦となるだろう。

 

「では最初はあなたで行きます!お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのは、なんと相性の悪いシロンであった。ほのおタイプのキュウコンに対して、こおりタイプのシロンはかなり相性が悪い。苦戦は必至となるだろう。

 

「だけど、それでも敢えてリーリエはシロンを選んだ。この選択が吉と出るか凶と出るか。」

 

リーリエの選択がどう転ぶか、シンジは彼女の戦いを静かに見守ることにした。

 

「それでは、バトル開始!」

 

審判が手をあげるのと同時にバトルが開始され、カツラが口を開く。

 

「さあ、どこからでもかかってきなさい。」

 

カツラは手を広げ、リーリエにかかってこいと挑発に近い行動をとる。リーリエの力を試そうとしているのだ。

 

リーリエもその挑発に乗り、先手を取ることにした。

 

「それでは行きます!シロン!こなゆきです!」

 

範囲の広いこなゆきで先制攻撃を仕掛けるシロン。こなゆきはフィールドを凍らせながらキュウコンに接近していく。しかし、その攻撃は虚しくもキュウコンの攻撃に簡単に阻まれてしまった。

 

「キュウコン!ねっぷう!」

 

キュウコンの放つ熱い吐息、ねっぷうによってこなゆきは押し返されてしまい、凍らせたフィールドもあっさりと溶かされてしまう。そのねっぷうはシロンを直撃してしまい、大きなダメージを負ってしまう。

 

「シロン!大丈夫ですか!?」

『コォン!』

 

ねっぷうを正面から受けても尚シロンは立ち上がる。今までの戦いで鍛え上げられたからだろうか、弱点の技を受けても致命的なダメージには至らなかったようだ。

 

「今度はワシらから行くぞ!エナジーボール!」

 

続いてキュウコンが放ったのはくさタイプの技、エナジーボールだ。苦手なタイプであるみず、いわタイプなどの対策として覚えさせたのだろう。

 

エナジーボールは一直線にシロンへと向かう。しかし、シロンはその攻撃を冷静にジャンプすることで回避する。

 

「れいとうビームです!」

「サイコショック!」

 

エナジーボールの撃ち終わりを狙い、れいとうビームで攻撃を仕掛けたシロン。対するキュウコンは、不思議な念波を実体化させることによる攻撃、サイコショックで正面から対抗する。くさタイプの技の次はエスパータイプの技と、豊富な技のレパートリーである。

 

サイコショックとれいとうビームは中央でぶつかる。しかし、僅かながられいとうビームの力が勝り、サイコショックを打ち破った。そのままキュウコンに直撃……するかに思えたが。

 

「まもるだ!」

 

キュウコンはまもるによってれいとうビームを完璧に防いだ。攻撃だけでなく、防御面においても隙が無いその戦術に、リーリエは流石ジムリーダーだと改めて感心する。

 

「ワシの炎はそう簡単に消せるものではないぞ?キュウコン!ねっぷう!」

 

キュウコンのねっぷうが再びシロンを襲う。シロンは直撃を受けてしまうも、なんとか耐えしのいだ。だが、次に直撃を受けてしまえば流石にシロンと言えど耐えられないだろう。

 

(あのねっぷうは威力もさることながら、範囲も広く隙が少ない厄介な技です。あれをなんとかしなければ……)

 

リーリエは心の中で厄介なねっぷうにどう対応すべきかを分析する。

 

(先ほどはこなゆきで出来た氷をあっさりと溶かされてしまいました。)

 

さっきの状況を思い返す。初手にはなったこなゆきを、ねっぷうによって簡単に防がれてしまった。それだけでなく、凍らせたフィールドも熱のこもった風によって溶かされてしまった。

 

(……?氷と熱?そうです!それならまだチャンスはあるかもしれません!)

 

リーリエはねっぷうになにか閃きを思いついたようだ。カツラもその事に気付いたのか、気を引き締めるようにキュウコンに伝える。

 

「手加減はせんぞ!もう一度ねっぷうだ!」

 

早速来たと、リーリエは身構える。そしてリーリエの取った行動は……。

 

「シロン!れいとうビームです!フィールドに薙ぎ払ってください!」

 

なんと、驚くべきことに攻撃の指示ではなくフィールドをれいとうビームで薙ぎ払う指示であった。カツラもこれには驚くほかなかった。

 

シロンの薙ぎ払ったれいとうビームは、フィールドを凍らせ、次第にねっぷうを防ぐ氷の壁となってそびえたった。遮られたねっぷうは氷を溶かしていくものの、熱と氷が相反反応を引き起こし、蒸発してドライアイスのようにフィールドを包み込んだ。

 

「くっ、キュウコン!ねっぷうで振り払うのだ!」

 

視界を奪われたキュウコンは、ねっぷうで視界を取り戻すべく振り払う。しかし、その場にシロンの姿はなく、キュウコンは戸惑った。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

リーリエの指示に反応し、カツラは上を見上げる。そこにはジャンプをして回避していたシロンの姿があり、シロンはこおりのつぶてでキュウコンに奇襲を仕掛けた。

 

カツラはまもるの指示を出そうとするも、素早く鋭いこおりのつぶてに対してその指示は間に合わず、キュウコンはこおりのつぶての直撃を受け怯んでしまう。

 

「れいとうビームです!」

「サイコショック!」

 

再びれいとうビームとサイコショックが中央で激突する。互いにダメージを抱えているため、先ほどとは違い互角のようだ。拮抗していた互いの力は、激しい技のぶつかり合いが次第に大きくなり爆風となって消滅する。

 

大きな爆風は互いの姿を隠してしまうが、次第に煙が晴れると二匹の姿が少しずつ確認できた。どうなったのかと緊張のあまり息を呑む二人。しかし、そこで起きていたのは衝撃の事実であった。

 

『コォン……』

『こ、コォン……』

 

なんと、キュウコンとシロン、共に戦闘不能となってしまっていたのだ。俗に言うダブルノックダウンと言うやつだ。爆風の衝撃に飲み込まれ、互いにダメージもスタミナもピークになってしまっていたのかもしれない。

 

「キュウコン!ロコン!共に戦闘不能!」

 

審判のジャッジが下され、2人は頑張ってくれたパートナーをモンスターボールへと戻す。

 

「よく頑張ったな、キュウコン。」

「お疲れさまでした、シロン。後はゆっくり休んでください。」

 

まさかの結末に驚いた二人だが、それでもパートナーたちへの労いは忘れない。そう言わずにはいられないくらい、両者とも熱く厳しい戦いを繰り広げたのだ。

 

「驚いたよ。まさかあのような方法でワシの攻撃を防いでくるとは。」

 

カツラは『だが』と言って次のモンスターボールを手にした。

 

「こいつも同じように倒せるか?頼むぞ!ウインディ!」

『バウ!』

 

カツラが次に繰り出してきたのはウインディだ。その大きくも逞しい体に一瞬怯みそうになるリーリエだが、意思を強く持ち、ポケモン図鑑で冷静に相手の詳細を確認する。

 

『ウインディ、でんせつポケモン。ガーディの進化形。一昼夜で10,000キロを駆けると言われるポケモン。体内で燃え盛る炎がウインディのエネルギーとなっている。』

 

でんせつポケモンと呼ばれるウインディだが、決して伝説のポケモンと言う訳ではない。まるで伝説のように云い伝えられ、目にもとまらぬ速さで駆け抜けるためそう呼ばれている。だが、その素早さはその名に恥じないものであるため、当然だが決して油断などできない。

 

リーリエはほのおタイプにはやはりこのポケモンだと、2体目のポケモンが入るモンスターボールを手にし、そのボールをフィールドに投げた。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

リーリエが選んだのはマリルだ。みずタイプのマリルはほのおタイプのウインディに相性がよい。まさにセオリー通りの選択だ。

 

しかしカツラは例え相性が悪い相手だと分かっても表情を崩そうとしない。それだけ余裕があるのか、それともなにか手があるのか。だが、それでも手を出すしかないとリーリエはカツラよりも先に動くことにした。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

 

マリルはバブルこうせんにより牽制攻撃を仕掛ける。

 

「しんそくだ!」

 

しかし、ウインディは異常なほど素早い動きでバブルこうせんを横に回避し、その速度をさらに加速させてマリルに接近する。マリルはその速度に対応できるわけもなく直撃してしまう。リーリエもこのスピードにはただ戸惑うしかなかった。

 

ウインディの巨体に、その異常な速度が加算されることによりしんそくの威力は跳ね上がる。マリルも今の一撃でかなり体力を持っていかれてしまったようだ。

 

「ほのおのうず!」

「アクアテールで防いでください!」

 

正面から迫ってくるほのおのうずを、アクアテールで真っ向から防いだ。ほのおのうずは喰らってしまうと文字通り炎の渦につつまれ、脱出は困難になり苦しんでしまう非常に厄介な技だ。それを防ぐことができたのは大きいだろう。だが……

 

「もう一度バブルこうせんです!」

「フレアドライブ!」

 

再びバブルこうせんで攻め立てるも、炎を纏ったウインディがフレアドライブで正面からバブルこうせんを打ち破りながら急接近してくる。まるでみずタイプの技が全く通用しないようだ。

 

「っ!?アクアテールです!」

 

マリルは慌ててバブルこうせんを中断し、アクアテールで反撃する。フレアドライブを正面から止めるが、それでも力の差が明らかとなり押し返され、マリルは最終的に飛ばされて地面に叩きつけられてしまった。

 

「ま、マリルさん!」

『リ、ル……』

 

マリルは戦闘不能となってしまった。素早さだけでなく、攻撃力の差が明らかとなってしまった。この明確な差による敗北はかなり大きいものとなってしまうだろう。

 

「マリル戦闘不能!ウインディの勝ち!」

「マリルさん、戻ってください。よく頑張ってくれました。ありがとうございます。」

 

最後までよく頑張ってくれたマリルをモンスターボールへと戻す。そして遂に最後の一体の入ったモンスターボールを手にし、そのボールに入ったポケモンに思いを託す。

 

「これで最後です!お願いします!ハクリューさん!」

『クリュー!』

 

最後にリーリエが選んだのはハクリューだ。ハクリューはドラゴンタイプのポケモン。ほのおタイプの技は効果が薄いため、相性として考えれば有利だろう。力強さでも引けをとることはない。だが、ウインディの素早さにどれだけついていけるかが問題だ。

 

「ほのおのうず!」

「たつまきで防いでください!」

 

ハクリューはたつまきを起こし、ウインディのほのおのうずを防ぐ。それだけでなく、巨大な竜巻はウインディの視界をも奪った。シンジから教わった、リーリエお得意の戦術だ。

 

「アクアテールです!」

 

アクアテールで自ら発生させたたつまきを振り払い、水を纏った尾をウインディ目掛けて薙ぎ払った。ウインディは回避が間に合わずアクアテールの薙ぎ払いを真面に受けてしまうが、受け身をとりダメージを抑え態勢を立て直す。

 

「中々やるではないか。だがまだまだこれからだ!フレアドライブ!」

「ジャンプして躱してください!」

 

フレアドライブを冷静に高くジャンプすることによって躱したハクリュー。反撃のチャンスが訪れ、再度攻撃を仕掛けた。

 

「ドラゴンテール!」

「っ!?しんそく!」

 

緑の鱗を尾に纏い、そのまま振り下ろそうとするハクリュー。これだけの高度からの一撃であればダメージも最大限高まるだろう。しかし、ウインディは素早く宙を駆け抜け、ハクリューがトップスビードになる前に押さえつける。この対応速度の速さは流石としか言いようがない。

 

ドラゴンテールとしんそくがぶつかり合い、互いに弾かれ元の位置まで戻される。威力もほぼ五分といった感じで、それほど力量に大差はない。だが、僅かにウインディが押し負けていると言った様子だ。先ほどのアクアテールによるダメージが多少なりとも効いていると考えるべきだろう。

 

だが、そんなことで終わるジムリーダーカツラではない。彼の内に秘めた炎は、決して消えることを知らない。

 

「もっともっと燃え上がれ!オーバーヒート!」

「オーバーヒート!?」

 

オーバーヒートは威力の高いほのおタイプの技だが、使えば使うほど威力が下がってしまう技だ。しかし当然その破壊力は絶大で、油断のできない大技であるのは確かだ。

 

ウインディの放ったオーバーヒートを躱しきれなかったハクリューは、その強烈な炎に包まれてしまう。だが、ハクリューはその攻撃を耐え凌いだ。

 

「ハクリューさん!まだまだ行けますか!」

『ハクリュ!』

 

ハクリューはリーリエの言葉に合わせ、まだまだ行けると意思表示をする。

 

「あれを受けてなお立ち上がるとは。中々やりおる。だがこれで終わらせる!フレアドライブ!」

 

ダメージを受けハクリューの動きが鈍ったところで、更に畳みかけるウインディ。しかし、カツラたちの炎が消えていないのと同様に、ハクリューとリーリエの秘めたる炎もまだまだ燃え上がっていた。

 

「アクアテールです!地面に叩きつけてください!」

 

ハクリューはアクアテールで地面を叩きつけ、先ほどよりも更に高くジャンプした。その際地面のくぼみができ、ウインディは勢い余って躓き倒れこむ。ウインディの素早さが逆に仇となってしまったのだ。

 

「!?ウインディ!」

「今です!ドラゴンテール!」

 

ドラゴンテールにより超上空から動きの止まったウインディに最後の一撃を叩きこんだハクリュー。この攻撃にはウインディも溜まらずダウンし、戦闘不能となった。

 

「ウインディ戦闘不能!ハクリューの勝ち!」

 

ウインディは戦闘不能となり、この戦いはハクリューに軍配が上がった。ウインディに感謝し、モンスターボールに戻すカツラ。だがしかし、この戦いによって受けてしまった代償は大きいものだった。

 

「これで残り一対一だな。だが、ワシ最後の一体はまだ無傷。対しておぬしのポケモンは傷付いたハクリューのみ。この状況でどう戦うか、おぬしの熱い魂をしかと見させてもらうぞ!」

「はい!ですが、私たちは負けませんから!」

「その心意気やよし。行くぞ!ブーバーン!」

『ブーバァ!』

「!?あのポケモンさんは……。」

『ブーバーン、ばくえんポケモン。腕から摂氏2000度の火の玉を発射する。体の熱が熱いため、触れる際にも注意が必要。』

 

大きな咆哮と共に現れたのはカツラのエース、ブーバーンだ。その大きな体つきに鋭い目つき、強者の風格。一筋縄ではいかないのは明白だ。だがそれでも、リーリエもハクリューも諦めることはない。

 

「先手先手で行きます!アクアテールです!」

 

早速弱点のアクアテールで怒涛の攻めを見せるハクリュー。だが、ブーバーンのパワーは恐るべきものであった。

 

「ブーバーン!だいもんじ!」

 

ブーバーンは右腕の先から大の字を描いた炎、だいもんじを放ち、アクアテールを迎え撃つ。すると驚くべきことに、そのだいもんじはアクアテールとぶつかるとその水を蒸発させ、簡単に消し去ってしまったのだ。これにはリーリエも驚きを隠せない。

 

「言ったであろう。ワシの炎は消せないと。続けてきあいだま!」

 

今度はカツラが怒涛の攻めを見せつける。次は左腕の先から強大な弾丸、きあいだまを一直線に放つ。その一撃は地面を抉りながらハクリューへと接近する。それだけでも威力がどれだけ強力か分かるが、どれだけ強力であろうと当たらなければ意味がない。

 

「躱してください!」

 

ハクリューは再びジャンプすることにより回避する。だが、それこそがカツラの狙いであった。

 

「かみなりパンチだ!」

 

今度はジャンプしたハクリューに接近し、電気を纏った腕をハクリューに全力で振り下ろす。そのスピードはウインディ程ではないにしろ、その大きな体からは想像できないくらいには速く、更に力強い一撃であった。

 

その一撃でハクリューは地面へと叩きつけられ更にダメージを負ってしまう。ハクリューもそろそろ限界が近づいてきたのか、流石に体がボロボロになりつつある。恐らく、次にダメージを受けてしまえば危険だろう。だが、それでも決して倒れることはない。彼の内にはそれだけ大きく熱き炎が燃え上がっているのだ。

 

(カツラさんは強いです。その消えることのない熱い魂は、私にも伝わってきます。ですが……)

「私たちは負けません!全力で行きます!」

『クリュー!』

 

リーリエとハクリューの心にも更に熱い炎が灯る。それを感じ取ったカツラは、まだまだ終わらないなとブーバーンと共に自分たちのの炎も燃え上がらせる。

 

「ハクリューさん!れいとうビーム!」

「ブーバーン!だいもんじ!」

 

ボロボロになったハクリューだが、れいとうビームの威力は未だに衰えていない。だいもんじとれいとうビームが中央で相殺し合い、再び蒸発したように衝撃がフィールドを包み込む。

 

「かみなりパンチだ!」

 

フィールドを包み込んだ煙を掻い潜り、勢いよく突撃するブーバーン。しかしその攻撃は空振りに終わり、煙を振り払うもハクリューの姿は見当たらない!

 

「上か!」

 

カツラとブーバーンが共に上を見上げると、そこにはハクリューが先ほどと同様に飛び上がっていた。ボロボロな状態でありながら飛び上がるその様は、感嘆に値するほかないだろう。

 

「ドラゴンテールです!」

「きあいだま!」

 

ブーバーンの左腕から放たれたきあいだまに、ハクリューのドラゴンテールがぶつかる。下から放ったきあいだまは、上空からのドラゴンテールの威力に負け、ブーバーンの元へと打ち返される。ブーバーンは咄嗟の判断によりバックステップをすることによりそのきあいだまを回避する。

 

「アクアテールで薙ぎ払ってください!」

 

ハクリューはブーバーンの回避後の隙を狙い、アクアテールで薙ぎ払った。ブーバーンは当然回避行動が間に合わずにアクアテールの直撃を受ける。倒れることはなかったものの、みずタイプの技を受けたブーバーンには確かなダメージがみられる。

 

「ドラゴンテールです!」

「かみなりパンチで迎え撃て!」

 

着地したハクリューは、ドラゴンテールで正面から攻撃を仕掛けた。ブーバーンも一切退こうとはせず、かみなりパンチにより正面から迎え撃つ。

 

互いの技がぶつかり合い、反動により互いに弾かれノックバックする。ブーバーンもそろそろ厳しくなってきた色が見え始めた。

 

「これで決着をつける!だいもんじ!」

「絶対負けません!れいとうビーム!」

 

だいもんじとれいとうビームが三度(みたび)ぶつかる。その衝撃がフィールドを包み、互いの姿をまたもや隠してしまう。その瞬間に、ブーバーンは先ほどの直前に受けたダメージが響き、足をふらつかせる。

 

「!?」

 

その状況に気付いたカツラが一瞬焦りを見せる。その時、迷いのない一撃がブーバーンに迫りくる。

 

「ドラゴンテールです!」

 

ドラゴンテールにより正面の煙を掻い潜り接近する。

 

「っ!?かみなりパンチ!」

 

咄嗟にかみなりパンチで応戦するブーバーン。しかし反応が一瞬遅れたこともあり、最大威力になる前にドラゴンテールとかみなりパンチが交じり合う。対してハクリューは勢いある状態からの攻撃であるため、威力は十二分に出せている。

 

更に、ハクリューのドラゴンテールはブーバーンの頭上から襲い掛かっていた。当然下からの攻撃より、上からの攻撃の方が威力が出やすい。そのこともあり、ブーバーンの攻撃はハクリューの一撃に押し返された。

 

かみなりパンチを弾かれ、そのままドラゴンテールに飛ばされてしまったブーバーン。ブーバーンはその勢いで壁に叩きつけられ、その衝撃で遂に戦闘不能になる。

 

「ブーバーン戦闘不能!ハクリューの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

「か、勝てました!でも、すっごい疲れました……。」

『クリュ~』

 

ハクリューとリーリエは、まるで燃え尽きたようにその場にへたり込んだ。それだけ緊張感があり、熱い戦いを繰り広げたのだ。力尽きても無理はないだろう。

 

「ふっ、ブーバーン。ご苦労だったな。ゆっくり休むといい。」

 

戦闘不能となって動けなくなってしまったブーバーンに優しく声を掛けモンスターボールへと戻したカツラ。負けはしたが、普段味わうことのできないほど燃え上がるバトルをすることができて満足したのか、その顔には笑顔が見えていた。

 

こうして、2人の炎のような熱き戦いは遂に幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、これがグレンジムに勝利した証、クリムゾンバッジだ。」

 

カツラの差し出した炎をモチーフにしたジムバッジ、クリムゾンバッジをリーリエは受け取る。

 

「これが7つ目のジムバッジ。クリムゾンバッジ!ゲットです!」

「おめでとう、リーリエ!」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

喜びを露わにするリーリエに、シンジはおめでとうと伝え、そんな彼にリーリエは感謝の言葉を伝える。そしてその7つ目のジムバッジ、クリムゾンバッジをバッジケースにしまった。

 

「これで7つ目が揃ったか。では、次はいよいよ最後のバッジだな。という事はトキワシティのトキワジムか……。」

「どうかしたのですか?」

 

しかし、カツラはどこかバツが悪そうな顔をしている。何か問題があるのだろうか、とリーリエはその理由を尋ねた。

 

「実は今、トキワジムのジムリーダーは留守にしておるのだ。」

「えっ!?そうなんですか!?」

 

驚きの事実にリーリエは驚く。ここから最も近いトキワジムに挑戦できないのであれば、次のジムバッジはどこへいけばいいのであろうかと。シンジは、『またあの人は留守にしているのか……』と呆れた様子で呟いている。とはいえ、自分も人の事は言えないなとも呟いた。

 

「……ならばあそこしかないな。」

「あそこ?」

「最近できた町なのだが、その新しい町にも新たなジムリーダーが現れたのだ。ワシは出会ったことがないのだが……。」

 

とそこでカツラは言葉を詰まらせる。なにか言いづらいことがあるのかと尋ねようとするが、カツラは覚悟を決めてそのジムリーダの詳細を伝える。

 

「人柄は接しやすくていい奴らしいのだが、そのジムリーダーはとてつもなく強く、他のカントーのジムリーダーが使ってこない戦術をやってくるのだそうだ。」

「他のジムリーダーが使ってこない戦術ですか?それは一体……」

「ワシも詳しい事は分からないが、とにかく強いジムリーダーだそうだ。気を引き締めてかかるといい。」

 

カツラが言うのだから、それだけ強敵であるのは間違いないだろう。だが、悩んでも仕方がないと、カツラにそのジムのある場所を尋ねた。

 

「そのジムはどこにあるのですか?」

「……トキワシティに隣接した小さな町、アザリアタウンだ。」

 

リーリエがシンジと視線を合わせると、シンジも彼女に頷き、そのアザリアタウンへと向かおうと次の目的地に定めた。シンジも聞いたことがない相手で情報不足な現状だが、それでも、前に進まなければ始まらない。そう決意を固めたリーリエとシンジは、グレンタウンを後にし、ラプラスの背に乗って中間地点でもあり、故郷でもあるマサラタウンへと向かうのであった。

 

2人の冒険は、まだまだ続く!




というわけで、次のジムはなんと(?)オリジナルジムを書くことになりました!ワー!(8888

トキワのジムリーダーであるあの人は、現在あの人とあの場所に行っているので留守です。恐らくこれから先もシルエット的な感じでしか出てきません。生ける伝説的な?

ジムリーダーの名前と見た目は今考え中。ヌシに絵を描く才能さえあればオリジナルキャラの見た目や、リーリエがポケモンと戯れるイラストを挿絵として投稿できるのに……。ヌシは全く絵が描けないので勘弁です(´・ω・`)

それにしてもヤマブキからハクリューさん大活躍ね。公式戦では現在負けなしという素晴らしい戦績。あれ?もしかしてゲッコウガやリザードンポジってハクリュー?もうわっかんねえや。

アニポケの放送時間が変わっても、この小説は木曜の7時に投稿するのは変わりませんのであしからず。

それではまた次回お会いしましょう!ではではノシ


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海のポケモンを守れ!ハクリュー、重なる思い!

最後まで書き終えて保存しようと思ったらネットワークが切れて書いてたデータが全て吹き飛んでしまうところでした。常設の自動保存システムのおかげで助かりましたが、あわやと思って冷や汗掻きました…‥。

という訳で今回はタイトルから予想できる通りのあの回です。最後まで楽しんでいただけたら幸いです。

どうでもいいことですが、ついこの前レッツゴーイーブイをプレイする夢を見ました。これってなにかの末期症状ですかね?


グレンジムにて7つ目のジムバッジを手に入れることができたリーリエ。最後のジムがあるアザリアタウンへと向かうべく、マサラタウンへと繋がる海を渡っていた。

 

「気持ちいい風ですね。」

「そうだね。すごく爽やかな風だ。」

 

リーリエとシンジは海を吹き渡る風を心地よく感じていた。海には一切の障害物がなく、風通しが良いうえに潮風が全身に優しく触れるため、普段の風よりも気持ちいいものである。それは人間もポケモンも変わらず、彼らを背に乗せているラプラスも気持ちよさそうに笑顔を浮かべていた。

 

そんな中、突然周辺のポケモンたちが騒ぎ始めた。その様子を見ると、何者から逃げているかのようにも感じる。

 

「どうしたのでしょうか。ポケモンさんたちの様子がおかしいです。」

「リーリエ!あれを見て!」

 

すぐにポケモン達の異変に気付いたリーリエ。そんな彼女に、シンジが前方で起こっている出来事に注意を向ける。そこでは、大きな網を海へと投げ込んでいるボートの姿が見えた。

 

「シンジさん、あれってもしかして。」

「うん。恐らく、ポケモンハンターかポケモンコレクターの仕業が高いね。」

 

シンジの言う通り、あれはポケモンハンター、またはポケモンコレクターの仕業であろう。俗に言う密猟と言うやつだ。密猟のためにあえて起動性の高いボートで作業しているのだろう。いざという時には逃げることも可能で、小回りが良いため融通が効くからだ。

 

この世界においてみずタイプのポケモンは複合タイプも含め最も多いとされている。その上、これだけ広大な海には水タイプ以外のポケモンも当然生息している。コレクション、商売をするには充分な標的なのだろう。だからこそ、シンジとリーリエにとっては許せる行為ではなかった。

 

「少なくともポケモンが逃げ出すという事は荒っぽい手段をとっている可能性が高いね。一刻も早く止めないと。」

「はい!すぐに止めましょう!」

 

その時、その船からあるポケモン達の群れが逃げている姿が確認できた。そのポケモンたちの姿を見て、シンジたちは驚かずにはいられなかった。

 

「!?あれはミニリュウにハクリュー……。」

 

そうだ、そのポケモンたちはミニリュウとハクリューたちの群れだったのだ。ミニリュウとハクリューはどちらも珍しいポケモンで、ポケモンコレクターやポケモンハンターからしたら喉から手が出る程欲しいポケモン達だろう。

 

「今すぐ助けます!お願いします!ハクリューさん!」

「お願い!シャワーズ!」

 

ハクリューとシャワーズは素早い動きで泳いで密猟船へと接近する。充分に接近し距離を詰めた時、密漁船へと攻撃することで彼らの動きを止めた。

 

「ハイドロポンプ!」

「アクアテールです!」

 

シャワーズはハイドロポンプ、ハクリューはアクアテールで密漁船の後尾へと攻撃を加えた。その攻撃で船の一部は破損し、彼らは撤退せざるおえなかった。船が去っていくのを確認したシンジたちは、襲われていたハクリューたちが無事だったかを確認する。

 

「みんな、大丈夫だった?」

「怪我はありませんか?」

 

ミニリュウとハクリューたちはシンジたちに笑顔で答える。助けてくれたことに感謝しているようだ。だがその時、リーリエのハクリューが彼らに笑顔で近づく。

 

『リュー!』

『クリュ!?ハクリュ!』

「もしかして、この子たち……」

「うん。かつてのハクリューの仲間たちみたいだね。」

 

ハクリューは助けたハクリューたちに笑顔で迎えられている。その様子を見るに、彼らはリーリエのハクリューの仲間たちだという事が分かる。ハクリューも襲われていた仲間たちが無事で嬉しそうな表情をしている。

 

「だけど、これからどうしよう。」

「どうゆう事ですか?」

「あの人たちがあれだけの事で諦めるとは思えない。最悪、今回の報復に来る可能性だってある。」

「そんな!?」

「暫くはここで様子を見た方がいいかもしれないね。ポケモン達をこのままにしておくわけには行かない。」

 

リーリエもシンジの言葉に納得して頷く。ポケモンたちが目の前で傷付いているのに、それを黙って見過ごすことは彼らにはできなかった。

 

そんな彼らに、一隻の船が近づいてきた。しかし、その船は先ほどの船とは明らかに違い、ボートではなかった。

 

その船は中型船で、男性が運転している姿が確認できた。そして一人の女性が身を乗り出し、シンジたちに話しかけてきた。その人物たちに見覚えはないが、シンジたちは彼女らは悪い人ではないという事が一目でわかった。

 

「あなた達!大丈夫だった?」

「僕たちは大丈夫です。貴女たちは一体?」

 

女性はシンジたちの安否を確認してきた。シンジはそんな彼女に大丈夫だと伝え、彼女らが何者なのかを尋ねる。

 

「私はカエデ。そして今船を運転している人が私の旦那のナオキよ。」

 

黄色のパーカーに白のハーフパンツを着用した茶髪でショートヘアーの女性、カエデはそう言って自己紹介をした。さらにナオキと呼ばれた白の無地のTシャツに青のジーパンを着用した黒髪の男性は、笑顔でこちらに手を振る。

 

「ここで話をするのもなんだし、私たちの家に案内するわ。」

 

シンジたちはカエデたちに案内され、彼女たちの住むという家までついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジたちが辿り着いたのは海に浮かぶ一軒の二階建ての家であった。その家は丸太を組んで作られており、山でよく見るペンションに近いイメージであった。

 

だがその家は、住居と言うよりも機材が多く設置してあるため、どこか作業場のような雰囲気であった。

 

家の外ではハクリューたちがラプラスと共に仲良く遊びながら待機している。

 

「改めて自己紹介するわ。私はカエデそれからこっちが……。」

「夫のナオキです。」

「僕はシンジです。」

「私はリーリエと言います。」

 

改めて自己紹介をするカエデたちに、シンジたちも自己紹介をした。

 

「私たち夫婦はこの近辺の海を管理しているの。」

「管理ですか?」

「ああ、海のポケモンたちを強引に捕獲したり、コレクションと称して乱獲したりするものも増えてきている。そんな人たちからポケモンたちを守るため、俺たちはここで海の管理を行っている、と言う訳だ。」

 

ナオキの言葉にシンジとリーリエはなるほど、と頷く。実際に自分たちもかつてポケモンハンターとポケモンコレクターに出会っているため、そう言った人物がいることは把握済みだ。彼らの行っている行為にもすぐに理解できた。

 

「最近、この近辺でポケモンハンターやコレクターたちが無断でポケモンたちを密漁しているの。」

「それで俺たちは奴らが現れたと聞いて現場に急行したら君たちがいた、と言う訳だよ。」

「そうだったのですね。」

 

カエデたちの言葉にリーリエは納得する。推察通り、先ほどの彼らはポケモンハンター、ポケモンコレクターで間違いはない。

 

「それに、私たちはふたごじまも一緒に管理しているのだけど。」

「ふたごじまも?」

「ああ。」

 

シンジの言葉にナオキが頷き、話をつづけた。

 

「ふたごじまに生息しているポケモンたちの様子が最近おかしいと聞いたんだ。調査によると、何者かがふたごじまに生息している伝説のポケモン、フリーザーに手を出してしまったそうなんだ。」

「フリーザーに?」

「シンジさん……もしかしてそれって……。」

「うん。間違いないね。」

「?何か知ってるの?」

 

シンジたちの何か知っているような口調が気になり、カエデは彼らに問いかける。シンジとリーリエは、自分たちがふたごじまで経験した出来事を全て彼女たちに話した。

 

「まさかフリーザーに出会っていたなんて。」

「それにフリーザーの暴走を止めてくれたとは。君たちには感謝してもしきれないね。」

「いえ、ただ僕たちはフリーザーを何とかして助けたかっただけですから。」

「そうですよ!感謝されるほどでは……。」

 

シンジたちが謙遜する中、それでも変わらず感謝してくるカエデたちに困惑する。それと同時に、シンジたちは少し照れ臭く感じる。感謝されると言うのはどうしても慣れないものである。

 

「それにしてもポケモンハンターたち……フリーザーをも狙っていたなんて。」

「フリーザーを制御できなかったからハクリューたちを狙った、というところだろうか?」

「いずれにしても、早急に対策を講じる必要があるわね。」

 

ポケモンハンターたちの対策を考えるカエデとナオキ。しかしその時、外からポケモンの悲鳴が聞こえた。

 

『クリュー!?』

『クゥン!?』

「今の声は!?」

「ハクリューさん!ミニリュウさん!ラプラスさん!」

 

そこに響いた悲鳴はラプラスにハクリュー、ミニリュウの鳴き声であった。リーリエ達は即座に反応し、慌てて家から外に出た。

 

「!?これは!」

 

外に出たとき、目に映った光景にナオキが驚いた声をあげる。そこには捕獲用ネットに捕らわれているハクリューやミニリュウ、ラプラスの姿があった。そこにはリーリエのハクリューの姿もあった。

 

「へへ、今回は大漁だな!」

「ああ、これだけいれば報酬はたんまり貰えるだろうな。」

 

ポケモンたちを捕獲しているのは男たち二人組であった。その男たちは捕獲したポケモンたちを眺め、満足したように微笑んでいる。しかしその微笑みは決して光のあるものではなく、悪人によく見られる黒い笑みであった。

 

「ハクリューさんたちを離してあげてください!」

「はっ、離してと言って離してたら商売にならないだろ?さっきは不意打ちを喰らってやられちまったからな。すぐに撤収だ!」

 

ポケモンハンターたちは直ぐさま逃げ出す。リーリエが待ってと抑止するが、ボートのスピードが速くとてもじゃないがラプラスやハクリューがいないこの状況では追いつくことができない。

 

だが、シンジは大丈夫だとリーリエを落ち着かせ、モンスターボールを手にする。

 

「お願い!シャワーズ!」

『シャワ!』

 

シンジがモンスターボールを手にし、そこから解放されたのはシャワーズだった。

 

「シャワーズ、目の前のボートを見失う前に急いで追いかけて!場所が分かったら僕たちに知らせて!」

 

シャワーズは直ぐに目の前のボートを追いかける。流石みずタイプのポケモンと言うべきか、その動きは素早く、海を潜っているためポケモンハンターたちにバレることなく近付けるだろう。

 

「私達も急いで追いかけましょう!」

 

カエデの言葉に全員が頷き、彼女たちの所有する船に乗り込みポケモンハンターたちを追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、これがお前の望んでいたポケモンだろう?」

 

ポケモンハンターの二人組は、目の前にいる依頼主である眼鏡をかけた小太りな男性に捕獲したポケモンたちを渡す。依頼主の男も満足そうに感激の笑みを浮かべて感謝を述べる。

 

「おお!これがまさに私の求めていたハクリューとミニリュウです!しかもラプラスのおまけ付とは……素晴らしい!」

 

男はポケモンハンターたちに謝礼を払う。予想以上の働きであったため、予定よりも多く謝礼を支払っていた。その金額を見て、ポケモンハンターたちも満足している。互いに利益があるからこそ、この人物たちは手を組んだのだ。

 

だがその時、背後から接近してくる気配に気づく。背後を確認すると、そこには見覚えのある船の姿があった。

 

「ん?あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボートを追いかけるためにカエデたちと共に飛び出したシンジとリーリエ。だが、一向にボートの姿は見えない。それだけのスピードで逃げていたため仕方がないことだが、リーリエは連れ去られてしまったハクリューが心配で落ち着かない様子だ。

 

そんなリーリエに、シンジは優しく声をかける。

 

「大丈夫だよ。ハクリューもラプラスたちも、絶対に助け出す。」

「シンジさん……。」

「それに、リーリエもハクリューの強さは知ってるでしょ?心配はいらないよ。」

「……そうですね。ハクリューさんは強いです!きっと助け出して見せます!」

 

シンジの言葉で多少不安が消えたリーリエ。そんな彼らの船に、一匹のポケモンが近づいてきた。ポケモンハンターたちを追いかけていたシンジのシャワーズが帰ってきたようだ。

 

「シャワーズ!ポケモンハンターたちの場所は分かった?」

『シャワ!』

 

シャワーズはシンジの言葉に答え、ついてこいと言うように再び真っ直ぐ泳ぎ始める。ナオキは舵を切り、シャワーズの向かう場所へと進路を変更する。

 

暫く進むと、そこには岸にボートが停泊していた。その岸にはポケモンハンターの二人組に加え、一人の男が立っていた。

 

ナオキは岸に船をつけ、シンジたちが船を降りる。先ほどは遠目で分からなかったが、近づいた時そのもう一人の男の正体が分かった。その男は、シンジとリーリエにとっても見覚えのある人物であった。

 

「あっ!あなたはあの時の!?」

「!?あの時邪魔した!」

 

そうだ、彼は以前、リーリエ達が当時ミニリュウだったハクリューと出会った時、ミニリュウを捕まえようとしていたポケモンコレクターだ。どうやらポケモンコレクターの男はポケモンハンターに依頼し、念願のハクリューをゲットしようとしていたようだ。

 

『クリュー!』

「!?ハクリューさん!」

 

男の目の前にドンと置かれているネットの中には、リーリエのハクリューの姿があった。リーリエの姿を見たハクリューは、彼女に助けを求める。ハクリューが強いと言っても、網に捕らわれた状態ではどうしようもない。リーリエはハクリューを助け出すために走り出そうとする。

 

「おっと、そうはさせないぜ?」

「大事な依頼主だからな。商談の邪魔はさせない。」

 

ポケモンハンターたちはポケモンコレクターを守るため、リーリエの行く手を遮る。

 

「どいてください!」

「だからどけと言われて大人しく言うことを聞くわけないだろう?いけ!シビルドン!」

「おまえもだ!ボスゴドラ!」

『シィビ!』

『ゴドォ!』

『シビルドン、でんきうおポケモン。吸盤になっている口で獲物に吸い付き電気を流して感電させる。腕の力が強く、獲物を一瞬で海へと引きずり込む。』

『ボスゴドラ、てつヨロイポケモン。山一つを縄張りとしており、侵入してきたものは容赦なく叩きのめす。ツノの長いボスゴドラは長く生きた証である。』

 

ポケモンハンターはボスゴドラとシビルドンを繰り出した。その強大な咆哮をする二体は間違いなく強い。だが、それでも大切なポケモンたちを助けるために、リーリエは退くわけにはいかなかった。

 

『クリュー……。』

「ハクリューさん……。絶対に助け出します!お願いします!マリルさん!チラーミィさん!」

『リルル!』

『チラ!』

 

リーリエは覚悟を決め、ポケモンを繰り出した。リーリエが選抜したのはマリルとチラーミィの二体だった。相手のポケモンの強さを考えると、一体で戦うなどの出し惜しみなどしていられない。それなか相手は犯罪を犯すほどの人物であるため、律義に戦う必要はないだろう。かと言って数多く出しても指示を出すのが困難となり、状況判断が上手くいかない可能性がある。そのため、リーリエは二体のポケモンを選抜して戦うことにしたのだ。

 

「カエデさん、ナオキさん、ここは僕たちに任せてもらえませんか?」

「シンジ君……。分かったわ。気を付けて。」

 

シンジの言葉にカエデが了承する。彼の目を見て、彼らなら大丈夫な気がすると判断したのだ。ナオキもカエデの判断に納得し頷いた。そしてシンジはポケモンハンターたちの繰り出したポケモンたちを見据え、自分のポケモンの名前を呼び前に出す。

 

「頼むよ!シャワーズ!」

『シャワー!』

 

シャワーズはシンジの言葉に答え一歩前に出る。シャワーズも彼らの行為が許せないのか彼らのポケモンを睨みつける。

 

「シビルドン!チャージビーム!」

「ボスゴドラ!ストーンエッジ!」

 

シビルドンは細めの電撃であるチャージビームを放つ。チャージビームは攻撃を加えると、稀に自身の技の威力を高める追加効果が発動する。長期戦になればなるほど厄介な技だ。

 

そしてボスゴドラは地面を殴り、青く鋭い岩を次々に生み出した。ストーンエッジは強力ないわタイプの技だ。直撃すれば一溜まりもないだろう。

 

しかし、マリルとチラーミィ、シャワーズの三体はどちらの攻撃も冷静に対処して回避する。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!」

 

牽制には牽制を。チラーミィはスピードスターでボスゴドラとシビルドンを攻撃する。シビルドンとボスゴドラは動きが鈍いため、回避行動はとらずに腕でガードすることでダメージを抑える。

 

二体の様子を見るに、ダメージの通りはあまり良いとは言えないようだ。特にはがね、いわタイプのボスゴドラにはノーマルタイプの技は効果が薄い。それでもここは攻めてチャンスを作るしかないとさらに攻撃を仕掛ける。

 

「チラーミィさんはシビルドンさんにおうふくビンタ!マリルさんはバブルこうせんで援護です!」

「ボスゴドラ!ラスターカノン!」

 

チラーミィは素早さを活かし、シビルドンに接近戦を仕掛ける。マリルは接近するチラーミィを援護するため、ボスゴドラを足止めしようとバブルこうせんを放つ。いわタイプを持つボスゴドラにみずタイプのバブルこうせんは効果抜群だ。決まればダメージを奪うことは出来るだろう。

 

しかし、ボスゴドラが黙って攻撃を受けるはずがない。ボスゴドラは迫りくるバブルこうせんに対し、ラスターカノンで反撃する。バブルこうせんはボスゴドラのラスターカノンに相殺されてしまった。

 

「シビルドン!ワイルドボルト!」

 

シビルドンは電撃を纏い、勢いよく接近するチラーミィに対抗した。チラーミィもパワー負けをしてしまい、吹き飛ばされてしまうが、自らの身軽さのため受け身をとりダメージを抑えることができた。

 

「メタルクロー!」

 

メタルクローでマリルに対し反撃を仕掛けるボスゴドラ。マリルも攻撃の反動で回避行動が遅れてしまい、ボスゴドラが目の前まで迫ってくる。しかし、その時ボスゴドラのサイドから第三者の攻撃によって阻害された。

 

「ハイドロポンプ!」

 

シャワーズのハイドロポンプがボスゴドラの腹部に直撃し、妨害することに成功したのだ。ボスゴドラは倒れることを拒絶するが、それでも明らかにダメージは受けている様子だ。

 

「僕がいることも忘れないでよ?」

「くっ、もう一人いたか……。」

「シンジさん!」

 

もう一人のトレーナーがいたことを懸念していたポケモンハンターが悔しがる。シンジはリーリエに「2人でみんなを助け出そう」と呼びかける。リーリエもその言葉に元気よく頷き「はい!」と返事をする。シンジがいれば心強いと感じるリーリエは、マリルとチラーミィに呼びかけた。

 

「2人とも!まだいけますか!」

『リルル!』

『チラァ!』

 

どうやら二匹ともまだまだやる気十分なようだ。ボスゴドラのトレーナーがそんな二人の姿を見て痺れを切らし、苛立ちを覚えたまま攻撃を仕掛けてきた。

 

「ボスゴドラ!ストーンエッジ!」

「シャワーズ!まもる!」

 

シャワーズはまもるでストーンエッジを正面から防ぎ、文字通りリーリエのポケモンたちを守った。シンジがリーリエの方へと振り向き頷くと、リーリエもシンジの意図を理解したのか次の行動に移った。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

「シビルドン!ドラゴンクロー!」

 

マリルはアクアテールで攻撃する。シビルドンはドラゴンクローで反撃し、互いに技の威力が拮抗して弾き合う。だが、リーリエにとってこれは充分に時間が稼げたため問題なかった。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!あの網を切ってください!」

「やらせねぇ!ラスターカノン!」

 

チラーミィはスピードスターで防御の手薄となった網を切ろうと試みる。そんなチラーミィの攻撃を妨害しようと、ボスゴドラはラスターカノンで反撃する。だが、そんなことはシンジとシャワーズが許すはずもなかった。

 

「シャワーズ!れいとうビーム!」

 

シャワーズのれいとうビームがラスターカノンを正面から打ち破り相殺することに成功する。これにより彼らの妨害はなく、チラーミィのスピードスターで網を切りハクリューたちの救出に成功した。

 

「っ!?しまった!」

 

網から解放され、自由の身となったリーリエのハクリューが前に出た。仲間たちをひどい目に合わせたのが許せないのだろう。リーリエもハクリューの覚悟を買い、共に戦うことにした。

 

「……ハクリューさん!行きますよ!」

『ハクリュ!』

 

ハクリューも力強く頷いた。そんなハクリューの体を緑色のオーラが包み込む。

 

「!?あの光は!?」

「あのオーラ……もしかすると新しい技を覚えたのかも。」

「新しい技?」

「あの光から察するに、恐らくりゅうのはどうだと思う。仲間を攻撃された怒りで生まれた技なのかもしれない。」

「りゅうのはどう……ハクリューさん!新しい技を覚えたのですね!」

『クリュー!』

 

ハクリューは嬉しそうに言うリーリエに振り向き返事をして軽く頷く。ならばやるしかないと、リーリエはハクリューの指示を出した。

 

「ハクリューさん!りゅうのはどうです!」

『ハクリュ!』

「僕たちも行くよ!ハイドロポンプ!」

『シャワ!』

 

ハクリューの強力なりゅうのはどうがハクリューの口から放出される。ハクリューのりゅうのはどうはシビルドンを捉え、シビルドンは成すすべもなく飛ばされ戦闘不能となる。

 

更にシャワーズのハイドロポンプもボスゴドラに命中し、ボスゴドラもシビルドン同様戦闘不能となる。

 

ポケモンハンターの二人は、戦闘不能となってしまった二体をモンスターボールへと戻した。

 

「くそ!まだ終わらないぞ!」

 

そう言って二人はさらに別のモンスターボールを取り出し戦闘継続の意思を見せる。その行動にシンジとリーリエも身構えるが、その時、別の異変が彼らを襲った。

 

空から異様な冷気がポケモンハンターたちを襲ったのだ。シンジたちにはその攻撃に見覚えがあり、確認するために空を見上げる。するとそこにはあの伝説のポケモンの姿があった。

 

「!?フリーザー!」

 

そう、そこにいたのは伝説の鳥ポケモン、フリーザーだった。フリーザーはシンジたちを見つめ頷くが、その瞳は続いてポケモンハンターたちを狙っていた。

 

「あ、あれはフリーザー!?くっ、あの時失敗して暴走していたはずでは!?」

 

ポケモンハンターの一人がそう言った。やはり彼らがフリーザーを暴走させた元凶だったようだ。恐らくフリーザーはそんな彼らに報復をしにやってきたのだろう。

 

フリーザーは再びれいとうビームを放ち、ポケモンハンターを攻撃する。ポケモンハンターはその一撃をまともに受けてしまい、その場で倒れこんだ。これ以上の行動は不可能のようで、ポケモンで言う戦闘不能状態となった。

 

ポケモンハンターたちは倒したが、まだ悪事を働いていたポケモンコレクターが残っているとリーリエとシンジが彼のいた場所を見る。しかし、彼の姿はなく、既にボートに乗り込んだ後であった。

 

その後、ポケモンコレクターはボートを走らせ全力で逃げ出した。それを見たナオキが、急いでモンスターボールを投げて対処する。

 

「逃がすか!追え!サメハダー!」

『サッダ!』

 

ナオキが繰り出したのはサメハダーだ。サメハダーのスピードは凄まじく、一瞬でボートに近づく。当然逃げられるはずもなく、サメハダーの強力なかみくだくでボートが砕け散った。

 

ボートから落とされたポケモンコレクターは、慌てて岸に戻ろうとするが、その時、あるポケモンが水中から姿を現した。

 

『ギャーオ!』

「!?ぎゃ、ギャラドス!?」

 

そのポケモンの正体はギャラドスであった。きょうあくポケモンのギャラドスは、ポケモンコレクターがこの場を荒らしたと判断し、彼に襲い掛かる。ポケモンコレクターも大人しくやられるわけにはいかないと、慌ててその場から逃げ出した。悪い人ではあるが、それでも彼の不遇っぷりには同情するほかなかった。

 

そしてその状況を見届けたフリーザーは、再びシンジたちと視線を交わした後、どこか遠くへと飛び去って行った。彼はこれからどこへ向かうのだろうか。彼の行く先は、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

「2人とも、昨日は本当にありがとう。ゆっくり眠れた?」

「はい!」

 

ポケモンコレクターとポケモンハンターからこの海を守ったシンジとリーリエは、カエデたちの家に一日泊めてもらっていた。カエデとナオキも、彼らの活躍に深く感謝していた。

 

因みに、昨日のポケモンハンターたちはカエデたちがジュンサーに通報し、無事引き渡したためこの問題は解決しているので安心できるだろう。

 

「リーリエちゃんはジム巡りをしているのよね?次のジムも頑張ってね。」

「はい!ありがとうございます!」

 

そう言ってリーリエとシンジはこの場を後にしようとする。ハクリューも仲間たちとの別れを惜しそうにリーリエの元へとやってくる。

 

そんなハクリューの姿を見たリーリエは、ある決断をしてハクリューに今の気持ちを伝える。

 

「……ハクリューさん。あなたはここに残ってください。」

『クリュ!?』

 

衝撃の発言にハクリューは驚かずにはいられなかった。シンジもリーリエのその言葉に驚きはするが、黙って彼女の動向を見守っていた。

 

「ここにいるハクリューさんたちには、また同じような危険が襲ってくるかもしれません。みんなを守るため、彼らを統率するリーダーが必要になると思います。……彼らにはあなたが必要なんですよ。」

『クリュ……。』

 

リーリエの言葉にハクリューが悲し気な声を出して仲間たちの方へと振り向く。ハクリューも迷っている。本当に仲間たちの元へと戻るべきなのか。だが、次のリーリエの言葉でハクリューの決意は固まった。

 

「大丈夫ですよ。私たちはたとえ場所が離れ離れになってしまっても、決して離れることはありません。あなたと出会ったことも、思い出も、それに絆も……。」

『……クリュ!』

 

2人は出会ってから今までの事をまるで昨日の出来事のように思い返す。ハクリューの目には僅かに涙が浮かんでいた。リーリエもそんなハクリューの姿をハクリューに優しく抱き着いた。リーリエの頬には、一粒の涙が零れ落ちた。

 

「あなたに出会えて……良かったです……。」

『クリュ!ハクリュ!』

 

思いは一つ。そんな彼女たちの姿を見たカエデは、リーリエに一言約束をしてくれた。

 

「ハクリューたちのことなら任せて。私たちが責任を持って面倒を見るから。」

「ああ。せめてもの恩返しさ。俺たちが必ず守って見せるから。」

 

リーリエは涙を流したまま、カエデとナオキの言葉に頷き、小さい声でありがとうございます、と告げた。本心では別れたくないのであろうが、それでも彼らの事を考えればそれが一番の答えであると判断した。それに、リーリエもいつか仲間の元へと返すと約束したのだ。その約束は果たすべきだろうと、リーリエは決意した。

 

「ハクリュー。僕の事も忘れないでね。」

『クリュー!』

 

ハクリューはシンジの事も決して忘れないと、彼と額を合わせて約束する。決して忘れることはない、そう心に誓いながら。

 

「皆さん!お元気で!」

「ハクリューさん!また必ず会いましょう!」

 

リーリエとシンジはラプラスの背に乗り、カエデとナオキ、それからハクリューと別れを告げた。ハクリューも終始涙を流していたが、それでも笑顔でリーリエと別れた。ハクリュー自身もまた必ず会えると信じているし、それにリーリエの言った言葉も信じているからだ。2人の思い出も、絆も永遠だという事を……。

 

こうしてシンジとリーリエは大切な仲間、ハクリューと別れ、次なる目的地であるアザリアタウンへと向かった。彼らのカントーを巡る冒険はまだまだ続く!




当初の目的では本当はハクリューはもうしばらく旅に付き合う予定でした。ですが、アニポケのようにここで別れることにしました。一応会うフラグは建てたので再登場の予定はあります。その時をどうかお楽しみに!

もしかしたら次回は休むかもしれませぬ。理由はリクエストのアニポケコラボ回(1000万ボルト習得後のサトシと再戦)を書くためです。間に合わすように頑張りますが、どれくらいの話になるか予想していないため分かりません。そもそも次回本当にアニポケコラボ回を書くのかすらあやし……ゲフンゲフン

一つ質問があったのでこちらでも返答をば

ポケモンの知能に関してですが、知能は全体手に良いが個体差があると言ったところです。人間の道具も扱えるものもあれば扱いが分からないものもある。ペットが飼い主の使っているところを見て扱い方を覚えるといえば分かりやすいかもしれません。
また、思考能力に関しても人間並みと考えてもらって結構です。信頼しているトレーナーであれば何となく理解できる程度です。中には信頼を超え、目を合わせただけでも理解できるポケモンもいます。ピカチュウとサトシ、ニンフィアとシンジがその例です。
リーリエとシロンも徐々にそう言った関係に近づいてはいますが、まだその段階には届かないと言ったのが現状です。ですが、遠くない未来にはそんな関係にもなるかもしれませんね。

ではでは、次回またお会いしましょう!ノシ


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帰ってきたマサラタウン!しばしの休息!

今日はちょっと短め(?)です。バトルが無いので仕方ないですね。
とりあえず2人がいちゃつく回です。///をつければ大体いちゃついている感出せるかなという甘い考えの元作りました。

そう言えばアニポケの新OPは映像も歌も神でした。岡崎体育とサン&ムーンのマッチ感は最高。OPでハウ君がフクスローと一緒に一瞬登場していたので本編にも期待です!

こちらでもハウ君はいずれヨウ君と共に登場させる予定ですが。


大切な仲間、ハクリューとの別れを告げたシンジとリーリエ。ラプラスの背に乗り海を渡りきった彼らは、その先で待機していたお姉さんにラプラスを預けたのだった。

 

「ありがと、ラプラス。」

「またいつかお願いしますね!」

『クゥン!』

 

シンジとリーリエはラプラスの頭を撫でて別れを告げる。ラプラスも名残惜しそうではあるが、それでも彼らに頭を撫でられ嬉しいのか頬を擦り合わせてきた。人間に対して友好的なラプラスらしい行動だ。

 

ラプラスと別れたリーリエたちは次の目的地であるアザリアタウンへと向かおうと歩き出す。だが、シンジはその前にある提案をリーリエにする。

 

「折角だからマサラタウンに寄ろうか。」

「確かグレンタウンを抜けた先にはマサラタウンがあるんでしたっけ?」

「うん、どうせならみんなに顔を出しておいた方がいいと思う。それに、ルザミーネさんもきっと心配しているだろうし。」

「そうですね。私もお母様にお会いしたいです。それに旅ばかりで疲労も溜まっているかもしれませんし、休むには丁度いいかもしれませんね。」

 

グレンタウンの海を超えた先の近くにはマサラタウンがある。シンジは折角なのでマサラタウンへと立ち寄ろうと提案したのだ。リーリエもその提案に異論はなく、休息も兼ねて故郷へと顔を出すことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってきましたね。マサラタウン!」

 

リーリエたちはマサラタウンへと戻ってきた。旅に出てからそれほど日が経っている訳ではないが、不思議と長い間マサラタウンを離れていたように感じる。それだけ彼女も多くの経験をしてきたという事である。

 

「僕は先にオーキド博士に挨拶してくるよ。」

「では私はお母様に挨拶してからオーキド研究所に向かいます。」

「分かった。じゃあまた後でね。」

「はい!」

 

マサラタウンに足を踏み入れた2人は、一度それぞれに別れて別々に行動することにした。リーリエは母親に挨拶するため、真っ直ぐと自宅へ向かった。

 

「なんだか随分と久しぶりに帰ってきた気がします。お母様は元気でしょうか?」

 

リーリエは自分の家だというのにも関わらず、ドキドキしながら一呼吸おいてインターホンを鳴らす。すると家の奥から聞きなれた女性の声が聞こえドタドタと慌てている音が聞こえた。暫くすると家の鍵がガチャリと開けられ、中から一人の女性が姿を現す。

 

「お久しぶりです!お母様!」

「!?リーリエ!」

 

その女性の姿は、紛れもなくリーリエの母親であるルザミーネその人であった。ルザミーネはリーリエの姿を見るや、驚きの表情を浮かべる。彼女からしたら予想外の訪問であったのだろう。

 

「おかえりなさい!取り敢えず中に入って。すぐにお茶入れるから。」

「はい!ただいまです!」

 

成長して帰ってきた娘を歓迎し、ルザミーネをお茶を入れる。旅に出る前に味わっていた幸せなひと時を再び感じる事ができ、リーリエは懐かしい気持ちで一杯であった。

 

「旅の調子はどう?シンジ君に迷惑かけてない?」

「旅はとても楽しいですよ。シンジさんにも色々と教えてもらえますし、それに仲間のポケモンさんも増えたんです!」

 

リーリエは早速自分の自慢のポケモンたちを見せようとモンスターボールを取り出しポケモンたちを外へと解放した。

 

「みなさん!出てきてください!」

『コォン!』

『ソウソウ!』

『リルル!』

『チラミ!』

 

リーリエが自慢のポケモンたちを出すと、ルザミーネはそのポケモンたちを見渡した。そのポケモンたちどれもが目を輝かせ、リーリエに信頼を置いているかが見ているだけで伝わってきた。

 

「久しぶりね、シロン、フシギソウも。」

『コォン!』

『ソウソウ!』

 

ルザミーネがシロンとフシギソウに声をかけ頭を撫でようと屈む。二匹とも警戒する様子は全く見せず、ルザミーネの元へと歩み寄る。旅に出る前に顔を合わせているためルザミーネに対して警戒心は持っていないのだ。旅をして逞しく成長したシロンと、進化して一回り大きくなったフシギソウを感慨深く感じながら彼らの頭を撫でる。

 

「それからこっちの子たちは初めてみるわね。」

「はい!紹介しますね。マリルさんとチラーミィさんです!」

「そう。よろしくね、2人とも。」

『リル!』

『チラ///』

 

抱きしめるようにしながら頭を撫でてマリルとチラーミィの事を歓迎するルザミーネ。マリルはかつての怯えていたころの警戒心はなく、笑顔でルザミーネの元に擦り寄る。チラーミィは頬を赤くして照れている様子だが、それでも嫌がっている様子は見せない。照れ屋でイタズラ好きな彼女だが、まんざらでもないのかもしれない。

 

ポケモン達の紹介を終えたリーリエは、今までの旅で経験したことをルザミーネに話した。挑戦しているジムの事や出会ったライバルたちの事、シンジと共に経験した数々の出来事。全てが良い思い出になり、自分を成長させているのだとリーリエは改めて感じながら話す。

 

「そう。旅はあなたにとっていい方向に進んだみたいね。」

「はい。旅を勧めてくれたお母様にはとても感謝しています。旅に出るまでの私は、旅がこれだけ素敵なものだとは思いませんでしたから。」

 

ルザミーネもリーリエにとっていい経験が出来たのならそれだけで嬉しいと伝える。リーリエもその言葉を聞いて嬉しくなったのか、それとも照れくさくなったのか頬を赤く染めた。

 

「そう言えばシンジ君はどうしたの?」

「シンジさんはオーキド博士に挨拶をするって言ってオーキド研究所に向かいました。ですので今から私もオーキド研究所に向かうつもりです。」

「そうなの。だったらシンジ君を家に泊めたら?」

「え?いいんですか?」

「リーリエの事で世話になっているのだから是非歓迎するわよ。」

 

突然のルザミーネの提案に困惑するリーリエだが、母親が許してくれるのであれば自分も日頃の感謝がしたいと母親の提案に賛同する。だが、その後「それと」とルザミーネは言葉を続けた。

 

「折角だからあなたの部屋で仲良く泊まるといいわ。」

「え?………………!?///」

 

ルザミーネが微笑みながらそんなことを言うと、リーリエの思考が一瞬停止した。まさかの発言にリーリエも困惑せざるおえないようだ。やはりお母様には勝てないと心の中で思うリーリエであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、お母様には困ります。」

 

シンジの待つオーキド研究所に向かうリーリエ。その道中、リーリエは母親の発言を再度思い返し再び頬を赤くする。

 

「う、嬉しくないわけではないですけど……。私たちにはまだ早いですよ///」

 

頭の中を整理できずに、リーリエは頭を悩ませる。だがそうこう考えている内にリーリエはオーキド研究所の前まで辿り着いてしまった。

 

マサラタウンはたいして大きい場所ではなく、どちらかと言えば田舎と言われても仕方のない土地であるため、リーリエの家からオーキド研究所までの道のりは大したものではない。それゆえ、少しでも考え事をしていればあっという間に辿り着いてしまうのだ。

 

リーリエは考えも纏まらないまま、仕方がないと割り切ってオーキド研究所へと入っていった。

 

「えっと、オーキド博士は……」

 

シンジならばオーキドの元にいるだろうと考えて、いつもオーキドがいる研究室へと向かう。その部屋の扉を開けると、その奥にはシンジとオーキド博士が話している姿が確認できた。

 

「おー、リーリエ君!よく来たのお!」

「あっ、リーリエ。ルザミーネさんは元気にしてた?」

「はい、相変わらずのご様子で安心しました。」

「そっか、僕も後で挨拶しに行くよ。」

「はい!お母様も喜ぶと思います。」

 

リーリエはシンジと合流する。シンジはリーリエの話を聞いて安心した。神経毒が治ったとはいえ、後遺症が無いとは限らないためどうしても不安はついてきてしまうものである。

 

「そうじゃ、リーリエ君のポケモンも預からせて貰っていいかの?」

「ポケモンさんをですか?」

「うむ。シンジのポケモンたちも預かったが、折角じゃしリーリエ君のポケモンも健康チェックをしておいた方がいいじゃろう。」

「そういうことですか。でしたらお願いしてもいいですか?」

「お安い御用じゃよ。」

 

リーリエはそう言ってオーキドにポケモンたちの入ったモンスターボールを預ける。ポケモンの健康は自分ではどうしても分からないため、専門家に任せた方がいいだろう。ポケモンの体調が突然悪くなることも決してないとは言い切れない。もしもの時に備えてのポケモンの健康管理もトレーナーの大事な役割の一つと言えるだろう。

 

その後、リーリエはこれまでの旅での経験をオーキドに報告する。カントーの新人トレーナーが冒険の記録をオーキドに報告するのはもはや定例のようなものだ。リーリエもそれに従いオーキドに全てを報告する。

 

オーキド自身もトレーナーたちが経験したことには興味があり、これも楽しみの一つとなっている。リーリエが経験したことに関しても興味深そうに聞いている。特にフリーザーの件は大変珍しい事であるため、その辺りも掘り下げて尋ねていた。

 

とはいえオーキドも研究者の一人。オーキドは忙しいのか一通りリーリエとシンジの話を聞き終えると助手と共にその場を離れることとなった。オーキドへの用事も終わったリーリエは、緊張した様子でシンジに例の事を話すのだった。

 

「あ、あの……シンジさん///」

「ん?リーリエ、どうかした?」

「あの……よ、よければ私の家に泊まりにきませんか?///」

 

顔が赤くなり俯きながら話すリーリエにシンジは疑問符を浮かべて聞き返す。その疑問に答えたリーリエの言葉に、シンジは驚いた。それと同時に、その言葉の意味を知ったシンジも同じように顔を赤くする。

 

「え、えっと……いいの?///」

 

リーリエはシンジの問いに小さく頷く。シンジもリーリエがそう言うならと終始照れながらその誘いに乗っかった。第三者から見たらバカップルと言われてもおかしくない光景である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お待たせしました。」

「ごめんね、晩御飯任せちゃって。」

 

今日はリーリエの家に泊まることとなったシンジ。それならばご飯を振舞おうとするシンジだったが、リーリエはそれを拒否して自分が作ると言い出した。彼女もシンジに少しではあるが料理を教わっているため料理の要領は知っている。だが、それでもまだ初心者であるため母親に教わりながら頑張って作りシンジの前に運んできたのである。

 

「いえ、シンジさんはお客様なのでゆっくりしていてください。いつものお礼も兼ねて今日はご馳走させてください。」

 

でも簡単なものしか作れませんが、と言いながらリーリエはテーブルに料理を並べていく。

 

リーリエが作ったものはシチューに肉じゃがと言った簡単な家庭料理であった。しかし、それでもリーリエの作った料理は見栄えが良く、初心者とは思えないほど綺麗に出来ていた。その料理は几帳面で丁寧な彼女の性格を表しているようでもあった。

 

「私も味見したけど中々美味しくできてたわよ。これは将来有望ね。」

「///ちょ、ちょっとお母様!///」

 

ルザミーネの“将来”という単語に反応したリーリエは再び顔を赤くする。シンジも少し赤くなるが、話を戻そうと美味しそうと口を開く。

 

「ど、どうぞ食べてください!///」

「じゃあ早速、いただきます。」

 

シンジは手を合わせてリーリエの作った料理を口に運んだ。リーリエはシンジが自分の作った料理に手を付けた瞬間からドキドキして落ち着かない様子だ。彼の口に合うかどうかが不安で仕方ないようだ。

 

シンジはリーリエの作った料理を口にする。リーリエが緊張のあまりゴクリと喉を鳴らすと、シンジの顔に笑顔が零れる。

 

「うん、これすっごく美味しいよリーリエ!」

「ほ、本当ですか?お世辞じゃなくて?」

「お世辞なんかじゃないよ。本当に美味しいんだ!」

 

お世辞じゃないと断言するシンジに、リーリエも釣られて自然と笑顔が零れる。彼の本心からの言葉にリーリエも嬉しくなったのだ。

 

その後もシンジは次々とリーリエの作った料理に手を付け食していく。それほど彼女の料理が美味しかったようだ。料理は愛情と言うが、彼の姿をみればそれも納得するだろう。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした。」

「はい、お粗末様でした。」

 

シンジはご飯を残さずに食した。それを見たリーリエは心の中でよかったと安堵する反面、彼が美味しそうに完食してくれたことに心から嬉しいと幸せを感じていた。

 

「シンジ君、良かったら今日はリーリエの部屋に泊まったら?」

「えっ?///」

「お、お母様!?///」

 

頃合いだと見計らったルザミーネがシンジにそう問いかける。シンジもリーリエも突然のその発言に戸惑うが、ルザミーネ自身は彼らの事を笑顔で見ている。すでに親公認である。

 

「で、でもそれだとリーリエに迷惑が……。」

「そんなことないわよ?ね、リーリエ。」

「そ、それはそうですけど……まだ心の準備が///」

 

リーリエの最後の言葉は声が小さくなってしまい聞き取れなかったが、明らかに戸惑っているのは間違いない。シンジもリーリエが良いのであれば自分は嬉しいと小さな声で言い、今日はリーリエの部屋で泊まることとなった。

 

ルザミーネはそんな二人を最後まで笑顔で眺めているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは現在リーリエの部屋にやってきている。彼女の部屋にはポケモンの縫いぐるみが多数おいてあり、アローラで撮ったシンジやミヅキ、グラジオとの写真などが額縁に入れて飾られていた。実にリーリエらしい部屋である。

 

しかし、シンジはリーリエの部屋に入って以降緊張した様子で座っている。彼自身意識して女性の部屋を訪れたのは今日が初めてであり、それに加えてその相手がリーリエであれば尚更だろう。

 

「え、えっと……ベッドはどうしましょうか?」

 

とはいえリーリエも緊張した様子でシンジに声をかける。初めて女性の部屋を訪れたシンジに対し、リーリエも男性を部屋に招き入れたのは初めてであるため仕方のない事だ。普段は仲良く話している2人だが、意識し始めると中々いつものように言葉が出てこない。

 

「ぼ、僕は床でいいよ。最悪寝袋もあるから充分寝れるし。」

 

ここはリーリエの部屋であり、普段誰かを招き入れることなど想定していないため部屋にはシングルサイズより少し大きい程度のベッドがあるだけだ。それを確認したリーリエは、シンジをそんなところで寝かせるわけには行かないと勇気を振り絞ってある提案をする。

 

「よ、よろしかったらその……私のベッドで一緒に……寝ませんか?///」

「え?///」

 

リーリエのまさかの発言にシンジは顔が熱くなる。流石のシンジも想定していなかったため戸惑ってしまうが、リーリエが顔を赤くして俯いているところを見ると彼女も余程勇気を振り絞って言った言葉なのだろうと分かるため、シンジには断ることができなかった。

 

「え、えっと……いいの?///」

 

リーリエは小さく頷く。先ほどの自分の大胆発言を思い出したのか更に顔が赤くなる。

 

そうしてリーリエとシンジは一緒のベッドに潜り眠ることにした。

 

「え、えっと、狭くないですか?///」

「う、うん、大丈夫だよ///リーリエは?」

「わ、私も大丈夫です///」

 

正直言えば二人ともベッドで寝るには少々狭さを感じている。だが、この状況を考えるとそんな余裕はなさそうである。なるべく意識しないように、互いに反対を向いて背中合わせで寝ているが、ベッドのサイズを考えるとどうしても密着する必要があるため自然と意識してしまう。

 

その後、彼らはこの状況に落ち着かず交わす言葉がなくなってしまう。そんな二人は心の中で一緒に同じことを考えていた。

 

(僕、今日寝られるかな……)

(私、今日寝られるでしょうか……)

 

やはり似た者同士の2人であった。

 

当然、彼らは翌朝までぐっすりと寝ることができなかったのは言うまでもない。




ヌシもニンフィアと一緒に添い寝したい(切実

添い寝ならR18には引っかからないのでセーフです。いざとなると押せない男女が王道っぽくて個人的にすごい好きです。みなさんはどういったカップルが好みでしょうか?

次回の内容はざっくりとは決まっていますので待っていてください。

ではではまたお会いしましょう!ノシ

口内炎痛いです


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乗り越えるべき過去、2人で歩む道!

今回は過去回ですが、短めです。中途半端なところで終わりますが次回に続きます。



レッツゴーイーブイの体験会が開かれたので行ってきました。プレイできるのはランダムだったのでピカが当たったらどうしようかと思いましたが、問題なくイーブイが当たりました。イーブイ可愛い。
感想としてはイーブイが可愛かったです。可愛い。あと専用技のメラメラバーンを検証したところ、Z技とは違い普通の技と同様何度も発動でき、やけど確定技っぽいです。恐らく命中100。可愛い。でんきだとまひ確定とかなのかな?それだったら普通に強い……というか強すぎる気がする……。可愛い。

それ以降はポケモンゲットを一切無視して5分間ずっとイーブイを撫でまわしてました。可愛い。食べ物あげたり突っついてあげたりと色々試してみました。可愛い。前もって情報は徹底的に調べ上げたので体験の5分間を有意義に使えた気がします。可愛い。

それとやってきたイーブイ(の着ぐるみ)とツーショット撮影できたので満足です。可愛い。もうラインの背景に設定してずっとにやけてます。キモい。貰えたイーブイのサンバイザーも気に入って良く装備してます。は~、もうなんか幸せよ~。

ちょっと浮かれすぎて文に違和感感じるかもしれないです……。


故郷のマサラタウンにてしばしの休息をすることになったリーリエとシンジ。だがそのリーリエは今、自室にてある物をじっと見つめて考えにふけっていた。

 

「……進化の石。これを使えばシロンは進化することができます。ですが……」

 

リーリエは以前フリーザーから貰った進化の石、こおりのいしを見つめていた。こおりのいしはシロンがアローラのキュウコンに進化するために必要な石だ。進化すれば当然強くなることは出来る。だが……

 

「進化することをシロンは望んでいません。」

 

シロンはこおりのいしで進化することを拒んでいる。進化というものは新たな自分に変わってしまう事でもある。その未知の感覚に怯えてしまうのは生物としては無理もないだろう。リーリエもシロンが嫌う事を強制したいなどとは思っていない。

 

リーリエが悩んでいるとき自室の扉が開いた。そこからはシンジが相棒のニンフィアと共に入ってきた。

 

「あれ?リーリエ、どうかした?」

『フィア?』

 

シンジはリーリエが深刻そうな顔をしていると思い何があったのか尋ねる。ニンフィアもシンジの手にリボンを絡めたまま首を傾げた。リーリエは自分の疑問に思っていることを聞いてみようとシンジたちに尋ねることにした。

 

「シンジさんとニンフィアさんは、イーブイさんの時からずっと一緒に過ごしていたんですよね?」

「え?うん、そうだよ。僕たちは出会ってからずっと一緒だったから。」

『フィア!』

 

そう言ってシンジは屈みながらニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアもシンジに頭を撫でられ笑みを零し嬉しそうにしている。そんな二人を見ていると、余程互いの事を理解し合えているパートナーなのだという事が伝わってくる。

 

リーリエは、そんな二人だからこそ聞きたいことがあると口を開いた。

 

「もし差支えがなければ、ニンフィアさんが進化した時の事を教えてくださいませんか?」

「ニンフィアが進化した時の事?」

 

首を傾げ、なんでそのことを聞きたいのかと聞きたそうな顔をしているシンジにリーリエが自分の考えを打ち明けた。

 

「以前フリーザーさんからいただいたこおりのいしなのですが、これを使えばシロンは進化することが可能です。ですが、ご存知の通りシロンは進化することを嫌がっています。」

 

伝説のポケモン、フリーザーがくれたのだから何か深い意味があるのではないかとリーリエは語る。伝説のポケモンは基本的に人前に姿を現すことはない。あの時フリーザーを助けたとは言え、それでも自分にこおりのいしを無意味に渡すのはおかしいのではとリーリエは考えているのだ。

 

リーリエのポケモンたちは進化したことがあるが、いずれも自分が望んで進化したわけではない。もちろんリーリエの役にたちたい、負けたくないという精神的な面での進化という事も考えられるが、それでもシロンの進化は本人が嫌がっているだけでなく、一度進化してしまえば後戻りはできない。そんな大切な事であれば後悔はしたくないし、ましてやシロンに嫌われてしまうなどあってはならないと彼女は思っている。

 

シンジはリーリエの話を聞いて彼女の意図を理解した。

 

「そっか。ニンフィア、あの時の事、話してもいいかな?」

『フィア!』

 

シンジの事にニンフィアも頷いて答える。リーリエはそんな二人に感謝しながらシンジの話に耳を傾ける。

 

「あれは僕が丁度10歳になって旅に出た時の事だったかな……。」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

10歳の頃に旅に出たシンジは、相棒のイーブイと共にトキワの森へと入り旅を満喫していた。

 

「どう?美味しい?」

『イブイ!』

 

旅の道中にイーブイにポケモンフーズをあげるシンジ。旅はまだまだ長いため、2人でゆっくりと進もうと笑いかける。イーブイもシンジの意見に賛同しお互いに笑いあう。

 

そんな時、近くの茂みが軽く動いた。ポケモンかなと期待するシンジだが、そこからは1人の少年が姿を現した。

 

「あん?」

 

その少年はシンジを見つけ次第彼を睨みつけた。その少年の容姿は黒と赤が混じったシャツに青のダメージジーンズ。髪は茶色のロン毛といった不良に近い見た目をしていた。見るからに目つきも態度も悪く、まるで喧嘩腰のようでもあった。

 

「なんだお前?トレーナーか?」

「あ、はい。最近旅に出たばかりです。」

 

見た感じではその少年はシンジよりも2歳か3歳ほど年上だろう。そのためシンジも敬語で彼の質問に答えた。

 

「ふーん。ん?こいつは……。」

 

少年はシンジのイーブイを見つめて何か考えている様子だ。だが、その一方でイーブイはこの少年に怯えた様子で小さく震えている。シンジはそんなイーブイを心配して優しく抱きかかえ安心させる。

 

「……そうか、そのイーブイはあの時の……。」

「あの時の?」

 

少年はイーブイを見て思い出したかのようにそう呟く。シンジはこのイーブイを知っているのかと疑問に思ったが、その瞬間に彼が呟いた理由を把握した。

 

「!?もしかしてあなたは!?」

「ああ、そいつのトレーナーだよ。ま、元だけどな。」

 

シンジはその言葉を聞いて自分の中でふつふつと慣れない感情が湧き上がってくるのを感じた。だが、その感情が彼に対する怒りの感情だという事が分かった。それと同時にイーブイの震えている理由も理解した。

 

「どうして迎えに来てあげなかったんですか!イーブイはあなたが迎えに来るのをずっと待ってたんですよ!」

「それで?」

「!?」

「それでコイツを迎えに来て俺に何のメリットがある?バトルで使えるポケモンなら他にもいくらでもいる。それなのに弱くて使えないって理由で捨てたコイツを俺が迎えにくるメリットがあるとでも?」

 

その言葉を聞き、シンジは更に怒りの感情が膨れ上がった。

 

「弱くて使えないって……あなたはそれでもトレーナーですか!自分のポケモンも大切に出来ず、信頼することもできないあなたはトレーナーなんかじゃない!」

「信頼ならしてるさ。俺の持つ強いポケモンならな。」

「強くなくちゃ信頼できないって?」

「ああそうさ。俺は最強のポケモントレーナーになる。だが、そのイーブイでは役不足だった。だから嘘をついてそいつを見限ってやったんだ。これ以上無駄な旅に付き合わせるよりはよっぽど有意義だろう?」

「でもイーブイはあなたの事を信じて待ってくれてたんですよ!あのまま放っておいたら、最悪死んでたかもしれない「それがどうした?」!?」

 

シンジの言葉を遮り少年が呆れたようにそう言う。その言葉でシンジの理性が一気に吹き飛ぶ。彼は一切ポケモンの事を考えていないのだと思うとシンジも我慢が出来ない。ポケモンの事を第一に考えているシンジと、ポケモンを勝つための道具としてしか思っていない少年では全く性格があっていない。寧ろ真逆だ。

 

「あなたって人は!?」

「そいつがどうなろうと俺の知ったことじゃない。俺の考えを否定したかったら、バトルで勝って見せろ。その弱いイーブイでな。」

「!?」

 

イーブイの事を弱いと言われて我慢の限界がきたシンジ。だが、悔しい事にイーブイはまだバトル経験がない。そんなイーブイをいきなりトレーナーと戦わせてもいいのだろうかと悩む。だが、そんなときイーブイがシンジの顔を見て強く頷く。

 

『イブイ!イブブ!イーブイ!』

「イーブイ、戦うっていうの?」

『イブイ!』

 

イーブイは戦う意思があるようだ。どうやらイーブイもここまで言われてしまっては悔しいようだ。自分のトレーナーだった人物に自分の考えは間違っていると伝えたいのかもしれない。

 

シンジはそんなイーブイのやる気を買い、少年とのバトルを受けることにした。

 

「そのバトル、受けます!」

 

少年はその瞬間、ニヤリと笑みを浮かべてバトルを承諾した。

 

「ルールは当然一対一。どちらかのポケモンが戦闘不能になればバトル終了だ。」

 

少年が告げたルールを確認したシンジは小さく頷き了解と意思表示をする。それを確認した少年はモンスターボールを手に取る。

 

「俺の名はタケル。そしてこれが俺の最強のポケモン!」

『バンギィ!』

 

タケルと名乗った少年が繰り出したのはなんとバンギラスだった。数多くいるポケモンの中でもバンギラスはタフで強いポケモンであり、彼が最強と言うのだから余程強いポケモンなのだろうとシンジにも緊張が走る。だが、ここまで来たら後戻りはできないと覚悟を決める。

 

「行くよ!イーブイ!」

『イブイ!』

「どこからでもかかってこい。」

 

シンジは怒りのあまりに我を忘れているのか、タケルの挑発に乗り先に攻撃を仕掛けた。

 

「イーブイ!スピードスター!」

 

イーブイはスピードスターで先手を仕掛ける。だが、その攻撃もバンギラスの前では無意味であった。

 

「バンギラス!りゅうのはどう!」

 

バンギラスはりゅうのはどうでスピードスターをあっさりとかき消した。りゅうのはどうはスピードスターを貫通してそのままイーブイに直撃してしまう。

 

「イーブイ!?」

『イブ……』

「ストーンエッジ!」

 

バンギラスが地面を殴って隆起したストーンエッジがイーブイを襲う。イーブイはかなりのダメージを受けてしまい立ち上がることが困難となってしまった。

 

「やはり弱いな。その程度のイーブイならばいくらでもいる。」

「!?」

 

イーブイの事を再び弱いと言われたが、一方的にやられてしまっているため言い返したくても言い返せない。このままではイーブイが侮辱されたままやられてしまうと感じる。シンジがそう思っている中、イーブイは辛うじて立ち上がった。

 

「イーブイ!大丈夫!?」

『イブイ!』

 

このバトルに負けたくはないが、それでも第一にイーブイの身を優先したいと考えているシンジ。イーブイに無理はしてほしくない。それでもイーブイが戦う意思を見せるのであれば自分もイーブイの考えを尊重したいと思ってしまう。イーブイ自身も、自分を大切に思ってくれているシンジの期待に応えたいと自らを奮い立たせる。

 

「イーブイ……。うん、でんこうせっか!」

 

イーブイは素早い動きでバンギラスに接近戦を仕掛ける。確かに力は全く及ばないかもしれないが、イーブイはその小ささがゆえの身軽さがある。それを利用してバンギラスを撹乱させようというのだ。

 

「甘いな。バンギラス!躱してほのおのパンチ!」

 

しかしバンギラスの動きには無駄がなかった。軽く体の位置をずらす事で、イーブイの攻撃を受け流す形で躱し流れるように炎を纏った拳で反撃する。ほのおのパンチの直撃したイーブイは当然飛ばされてしまい、今度こそ立ち上がれない状態まで追い込まれてしまった。

 

「これで最後だな。はかいこうせん!」

「!?イーブイ!」

 

イーブイにはかいこうせんが接近する。これ以上はマズイと感じたシンジはイーブイを助けるために走り出した。

 

バンギラスのはかいこうせんが着弾し大きく爆発が発生する。だがその際に発生した爆風が晴れると、そこにはイーブイの姿はなかった。

 

少し離れたところにはシンジの姿があり、彼がイーブイを抱えていた。はかいこうせんが当たる前に、シンジが飛び込んでイーブイを助け出していたのだ。

 

「イーブイ、大丈夫だった?」

『イブイ……』

「ううん。僕は君がいてくれたらそれでいいよ。」

 

シンジは心配そうにイーブイに話しかけると、イーブイは弱弱しい声で申し訳なさそうに謝る。だが、シンジはそんなイーブイを咎めることをしなかった。大切なイーブイの意識があることに安堵しながら立ち上がった。

 

「ふん、甘いな。ポケモンもトレーナーも。ポケモンだけでなく、トレーナーも弱いんじゃ話にならんな。」

 

タケルの言葉に返す言葉もないとシンジは悔しさを噛み締めながら俯く。だが、それよりも一刻も早くポケモンセンターへと連れて行かなくてはと振り返って走り出した。その彼の姿をタケルは静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。あなたのイーブイはすっかり元気になりましたよ!」

「イーブイ!」

『イブイ!』

 

ジョーイが奥の部屋からラッキーと共にイーブイの乗った担架を運んで出てきた。元気になったイーブイを見て安心したシンジに、イーブイが勢いよく飛び込んだ。先ほどまではかなり致命傷を受けていたのにも関わらず、それを簡単に治してしまうあたり流石というべきだろうか。

 

「ありがとうございます、ジョーイさん!」

「どういたしまして。また何かあったら来てくださいね。」

 

ジョーイはそう言って頭を下げ、自分の仕事へと戻る。ラッキーが一緒にいるとはいえ、実質的に一人でポケモンセンターを任されているのだから大変だろう。

 

シンジは再びジョーイにお礼を言う。そしてイーブイと共にソファへと座った。

 

「……僕は何もできなかった。イーブイを助けるのが精一杯だった。」

『イブイ……』

 

イーブイが無事でよかったとはいえ、やはりバトルに負ければ悔しさが残ってしまう。更に認めたくないトレーナーに手も足も出ずに負けてしまえばなおさらだ。そんな彼を見て、イーブイも落ち込んだ様子を見せてしまう。

 

「イーブイは何も悪くないよ。僕が後先考えずに突っ走っちゃっただけだから。」

 

あの時もっと冷静に立ち回っていれば他にも戦い様はあっただろう。だがあの時は怒りに任せて戦ってしまって冷静な判断ができなかった。

 

しかしそれも今では言い訳に過ぎないだろうと首を横に振る。ただ自分が未熟過ぎただけなのだと。戦闘経験のないイーブイと自分で戦うべきではなかったと。

 

『イブブイ!』

「イーブイ?」

 

落ち込むシンジにイーブイは眼を輝かせて声を掛けた。

 

『イブイ!イブブ、イーブイ!』

「え?僕らしくない?一緒に強くなろうって?」

『イブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイは強く頷く。どうやらイーブイも今回の件で自分の未熟さを体感し、悔しい思いをしていたようだ。だからこそ今度は負けないように、もっともっと力をつけようと決めたのだ。イーブイの表情はそういった覚悟を感じさせるものであった。

 

『イーブイ!』

「そう……だよね。考えていても仕方ないよね。うん、ありがとね、イーブイ。」

『イブイ♪』

 

シンジはイーブイに感謝しながら頭を撫でる。イーブイも嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。シンジが元気を取り戻したことと、彼に撫でられたことが同時に嬉しかったのだろう。

 

「僕もイーブイと一緒に強くなるよ。そしていつか……必ずあの人に勝って見せる!」

『イーブイ!』

 

シンジはイーブイと共に強くなることを決意する。イーブイもシンジと共に力をつけ、必ずタケルに勝つのだと覚悟を決めた。

 

そして彼らが最初に目標として決めたのがポケモンジムだ。カントー地方のあちこちにあるポケモンジムを巡ることで成長し、トレーナーとして磨きをかけようと決めた。

 

しかし、そんな彼らを眺めている者の目があった。

 

「ポケモンと一緒にか。ふん、甘いな。」

 

その少年はそう呟くと、その場を立ち去って行ったのだった。




ニンフィアの進化の経緯を書くために強引に話を繋げました。こんな感じで前後編に分かれます。他のブイズとの出会いはいずれ番外編かで書く予定です。

今回のオリキャラは次回以降恐らく出ないかと思います。まあ過去キャラでよくある強さに執着したライバル的なキャラ作っただけなので……。

それにしてもジム戦書かない時は短くなりがちよね。中々書く内容が思いつかないので許してください(´・ω・`)

ではでは次回はニンフィア進化回です。次回はもっと頑張ります!


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進化のキセキ!高みを目指して!

ヌシ「レッツゴーニンフィアは出ないんですか?」
増田「出ません」
ヌシ「増田ァ!」


イーブイと共に強くなってみせると誓ったシンジは、次々とカントー各地にあるジムに挑戦し腕を磨き続けていた。今もタマムシジムのエリカとジム戦の真っ最中だ。

 

「イーブイ!でんこうせっか!」

『イブイ!』

「キレイハナ!マジカルリーフです!」

『ハァナ!』

 

イーブイはでんこうせっかで素早く接近する。しかし、キレイハナの無数のマジカルリーフによる抵抗によりその攻撃は遮られてしまった。イーブイはダウンを拒否しこらえるものの、やはりダメージはあるようで疲労の色が伺えた。

 

「イーブイ!大丈夫!?」

『イブ、イブイ!』

 

イーブイはシンジの声に答え、まだまだ行けると意思表示をする。まだまだ発展途上とは言えイーブイもここまで勝ち抜いてきたのだ。自分を信じてくれるシンジの期待に応えたい、強くなってタケルの考えを訂正させたい気持ちが彼女にはある。だからこそ、ここで簡単に負けるわけには行かないと自分を奮い立たせる。

 

「イーブイ!スピードスター!」

 

イーブイは飛び上がり回転してスピードスターを放つ。エリカとキレイハナもシンジたちの心の強さに驚きながらも、その攻撃に対して冷静に対処した。

 

「優雅に美しく、キレイハナ!リーフストーム!」

 

キレイハナはリーフストームでスピードスターを正面から破っていく。やはり力の差がもろに出てしまい、イーブイの攻撃も虚しく反撃を受けてしまう。イーブイも戦闘不能にこそならなかったが、先ほどよりもダメージが大きくなってしまっており、立ち上がるのも困難といった状況だ。

 

このままではマズいと焦りを感じてしまうシンジ。ここで躓いてしまってはタケルに勝つことはほぼ不可能だろう。なんとか打開策を見つけようと模索するも、いい考えが浮かばない。絶望的な状況の中、イーブイは立ち上がり再び戦う意思を見せる。

 

「!?イーブイ……」

『イブ!イブブイ!イーブイ!』

 

どうやらイーブイは諦めていないようだ。イーブイの眼には一切の曇りが見えず、その眼は純粋にシンジの姿を見据えていた。そのイーブイの眼を見て、シンジはあることに気付いた。

 

「……そうだよね。イーブイが諦めてないのに、僕が諦めたらダメだよね。うん、一緒に成長するって決めたんだ。僕も最後まで絶対に諦めない。必ず勝つよ!イーブイ!」

『イブイ!』

 

シンジも再び戦う意思を見せ立ち上がる。イーブイも迷いの晴れたシンジを見て安心し、今一度キレイハナの姿を捉えた。

 

「この絶体絶命の状況になっても諦めない。あなたもイーブイもとてもお強いのですね。」

「一緒に強くなろうって決めたんです。だから僕もイーブイに負けていられません。この勝負、必ず勝たせてもらいます。」

「ジムリーダーとして……いえ、1人のトレーナーとして簡単に勝負を譲るわけにはまいりません。キレイハナ、エナジーボールです!」

「イーブイ!スピードスター!」

 

キレイハナはエナジーボールを一直線に勢いよく放つ。今のイーブイでは回避するのは困難だろうと考えたシンジは、一か八かスピードスターで対抗しようとする。しかし、その攻撃は思わぬ方向で結果に表れたのだった。

 

まず結果から言うと、イーブイが放ったのはスピードスターではなかった。イーブイは自らの正面で力を溜め、強力な力を込めた黒い塊を放ったのだ。その技はエナジーボールと相殺するどころか、その攻撃を打ち破った。

 

突然の出来事で対応することのできなかったキレイハナは、回避することができずにその攻撃をまともに受けてしまい後方に飛ばされてダウンしてしまう。

 

「!?キレイハナ!」

「今のって……イーブイ、もしかしてシャドーボールを覚えたの?」

『イブイ!』

 

シンジもイーブイも自分たちですら驚き言葉を失いかけるが、それよりも先に新しい技を覚え、反撃のきっかけを得る事ができたことに一番の喜びを覚える。今がチャンスだと直感したシンジは、続けて攻撃を仕掛けたのだった。

 

「イーブイ!でんこうせっか!」

 

キレイハナはシャドーボールのダメージが抜けきれておらず、不意打ちに近いこともあり先ほどのダメージは想像以上のようだ。態勢を整えることのできないキレイハナに、イーブイの怒涛の反撃が炸裂する。

 

キレイハナはでんこうせっかの直撃を貰ってしまい更に後退した。今度はダウンすることはなかったものの、確実にダメージは貰ってしまっている。さすがのエリカにも徐々に焦りが見え始めていた。

 

「このままではマズいですね。こうなったらあれで行きましょう。マジカルリーフ!」

「スピードスターで撃ち落として!」

 

キレイハナはマジカルリーフで反撃するも、イーブイのスピードスターに阻まれる。今度はキレイハナにもダメージが溜まってしまっているため力の差も縮まってしまったのだろう。だが、エリカの狙いは別にあったのだ。

 

「ソーラービームスタンバイです!」

『ハナ!』

 

キレイハナは頭部の赤い花に光を吸収していく。くさタイプの大技、ソーラービームの準備をしているのだ。ソーラービームは光を吸収し力を溜めなければ放つことのできない強力な技だ。その間に大きな隙が生じてしまうが、その分威力も計り知れない。相手にとってもプレッシャーの大きい技である。

 

エリカはその隙を少しでも減らすため、マジカルリーフをおとりにしたというわけだ。マジカルリーフに少しでも気を逸らすことができれば準備に入るのは多少とはいえ容易になる。この大技にどう対抗するべきかシンジは頭の中で必死に考える。

 

(どうする……この状況をどう切り抜ける……。)

 

そんな時、シンジの脳内で一つの作戦が思い浮かんだ。正面から攻撃してもエリカほどのトレーナーであればあっさりと対処されてしまうかもしれない。ならば不意を突けばいいと別の作戦を試すことにした。

 

イーブイもシンジの考えが分かったのか、一瞬シンジの方を振り返り頷いた。シンジもそんなイーブイに頷き返し、その作戦を実行に移した。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

『イブイ!』

 

シンジの指示に合わせてシャドーボールを放つイーブイ。その攻撃は力を溜めているキレイハナに一直線に向かっていったように思えた。エリカとキレイハナもその攻撃に備え身構えるも、彼女たちの予想は外れた。

 

なんとそのシャドーボールはキレイハナではなく、キレイハナの目の前の地面に着弾し爆発したのだ。キレイハナに対してのダメージは一切ない。しかしキレイハナの視界はその際に発生した爆風により奪われてしまった。それでも、一直線上にいたイーブイの位置は把握済みであるため狙う事は容易い。僅かに見えたイーブイの影を頼りに、キレイハナはソーラービームの準備をした。

 

「キレイハナ!ソーラービーム発射です!」

『ハァナァ!』

 

ソーラービームを発射し、その衝撃で視界を奪っていた土煙は一気に払われイーブイのいた位置を捉える。これは決まったと確信した2人だがその攻撃が晴れたところにはイーブイの姿はなかった。

 

「!?まさか!?」

 

エリカはもしかしてと上空は見上げる。そこにはイーブイが高く飛び上がっている姿が見えた。どうやら先ほどのソーラービームの隙にキレイハナの頭上にジャンプしたようだ。

 

シンジの考えた作戦はこうだ。シャドーボールによりキレイハナの視界を奪い、その間に自分は態勢を整える。そして自分の位置を曖昧にし、ソーラービーム発射と同時に飛び上がることでソーラービームを回避してキレイハナの頭上に飛び上がるといった寸法だ。

 

土煙が舞い上がって視界が定かではないとはいえ、直ぐに飛び上がってしまったは動いた影で作戦がバレてしまうかもしれない。だからこそ相手の攻撃を引き付けキレイハナのソーラービームにより完全に視界が失われる瞬間を見計らって回避したのだ。信頼し合っている二人だからこそなせる業である。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

 

イーブイは上空からシャドーボールによって奇襲を仕掛ける。高所からの攻撃という事もあり通常のシャドーボールよりも威力は増している。そのシャドーボールを躱すことができずに受けてしまったキレイハナはその場で目を回し戦闘不能となった。

 

「き、キレイハナ戦闘不能!イーブイの勝ち!よって勝者!チャレンジャーシンジ!」

 

エリカも悔しい気持ちはあるものの、どこか嬉しいのか自然と小さく笑みが零れた。今回の戦いに関しては、彼女自身納得の敗北であり心から楽しめたバトルだったのだろう。

 

今の緊張感あふれる戦いを制したイーブイも、緊張が一気に解けたためその場にへたり込んだ。シンジはそんなイーブイに駆け寄って抱きかかえた。

 

「お疲れ様、イーブイ。後で美味しいご飯を食べさせてあげるからね。」

『イブ……♪』

 

イーブイもボロボロの体ではあるが、そのシンジの言葉を聞いて少し元気が戻ったようだ。どんな状況でもやはり誘惑には勝てないものである。

 

「お疲れ様です、キレイハナ。ゆっくり休んでください。」

 

エリカは最後まで戦ってくれたキレイハナをモンスターボールへと戻す。その後挑戦者であるシンジたちに近付き声をかけた。

 

「素晴らしいバトルでした、シンジさん。ポケモンと共に歩むその姿勢、強い心。あなた達はこのバッジを受けといるに相応しいでしょう。」

 

そう言いながら、エリカはタマムシジムの勝利した証を差し出した。

 

「これがタマムシジム勝利の証、レインボーバッジです。どうぞお受け取り下さい。」

「これがレインボーバッジ……。ありがとうございます!」

 

シンジはレインボーバッジを受け取りそれを大切に保管するためにバッジケースへとしまった。

 

「次のジムも頑張ってください。あなた達ならもっと強くなることが出来るはずです。応援してますよ。」

「はい!ありがとうございました!」

 

シンジは激励をしてくれるエリカに対し、よきバトルをしてくれたことも含め感謝しタマムシジムを後にする。その後、ポケモンたちを回復させるためにポケモンセンターへと向かった。しかし、そんな彼らを見ていた者の眼があった。その者はふっ、と鼻を鳴らしてその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、シンジたちはとある森で休憩を挟んでいた。その森でシンジは先日手に入れたレインボーバッジの入ったバッジケースを眺めていた。

 

「ジムバッジもこれで4つだね。」

『イブイ。』

 

ここまでどのジムリーダーも強敵ばかりであったと感傷に浸るシンジとイーブイ。だが、これからはもっともっと強力な相手が出てくるかもしれないと覚悟する。それでもどれだけ強い相手が来ても全力で戦って勝つと心に誓う。

 

そんな彼らの元に、1つの影がゆっくりと近付いてきたのだった。

 

「まさかあの程度で強くなったと思っているんじゃないだろうな?」

「!?」

 

その傲慢な態度、声はシンジにとっても、イーブイにとっても忘れることのできないものであった。まさかとシンジはゆっくりと顔を見上げると、そこには一人の少年の姿があった。

 

「!?タケル!」

「ふん、久しぶりだな。」

 

そうだ、彼は以前出会ったイーブイの元トレーナーだ。2人にとっては因縁深い相手であり、あの時以降、シンジたちは彼に勝つために強くなってきたのだ。だがこのタイミングで会うとは2人も思っていなかったため驚いている。

 

「……何しに来たの?」

「昨日のタマムシでのジム戦を見ていたからな。挨拶がてら寄っただけだ。」

「タマムシでのバトル……見てたんだ。」

「ああ、正直予想通りの戦いだった。最後まで甘い戦いぶりだな。」

 

タケルは相変わらずあざ笑うかのような口ぶりでそう告げた。だが、その挑発めいた言動にシンジが乗ることはなかった。

 

「……君と僕のやり方は違う。」

「言うようになったな。ま、今のままでは俺に勝てないがな。」

 

シンジも悔しい気持ちでいっぱいだが、現状は彼の言う通りだと歯を食いしばって耐える。だが、自分が強くなっているのは確実だと自覚しているため、タケルのある約束事をする。

 

「約束してほしい。僕がもっと強くなったら、もう一度再戦してほしい。僕のイーブイと君のバンギラスで。」

「再戦だと?俺に勝つことは出来ないだろうが、まあいいさ。ジムバッジを8つ全てゲットしたら考えてやるさ。」

 

タケルはそのままその場を後にして立ち去った。シンジはその場で屈み足元で怯えるイーブイの頭を撫で気持ちを落ち着かせる。

 

「大丈夫、僕たちならきっと勝てるよ。」

『イブ……』

「これからもっともっと強くなっていけばいいんだ。慌てる必要はないよ。勝ってタケルを見返してやろう!」

『……イブイ!』

 

イーブイも覚悟を決めて俯いていた顔を上げる。シンジと一緒なら自分も強くなれるだろうと判断したようだ。シンジもイーブイと共に強くなっていこうと今一度誓い合う。そして二人は次のジムに向かって旅を続けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もシンジとイーブイはジムを勝ち抜いていった。どの相手も強敵で苦戦は当たり前であったが、それでも最後まで諦めずに次々とジムを制していったのだ。

 

途中負けることもありはしたが、その度に彼らは更に高みを目指して力をつけて行った。タマムシジムに続きヤマブキジム、セキチクジム、更にグレンジムにトキワジムと勝ち進み8つのジムバッジを集めることに成功した。

 

「遂に集めきれたね。」

『イブイ!』

「これでやっと……」

「俺との再戦だな。」

 

ジムバッジを全て集めある人物の姿を思い返していると、背後から少年の声が聞こえてきた。シンジが振り返ると

そこには彼の脳内に浮かんでいた人物の声が聞こえてきた。

 

「……タケル。」

「少しは強くなったのか?いや、ジムバッジを8つ集めた奴に聞いても無駄か。」

 

そう言ってタケルはモンスターボールを手に取り言葉を続けた。

 

「さっさと始めるぞ。バトルをするのが一番手っ取り早い。」

『バンギィ!』

 

タケルはそう言いながらモンスターボールを投げ、中から彼のパートナーであるバンギラスが出てきた。バンギラスの強大な咆哮に怯みそうになるイーブイだが、グッとこらえてバンギラスの姿を見据えた。

 

「精々ガッカリさせないでくれよ?」

 

その言葉と同時に、タケルとバンギラスが動き出す。

 

「ストーンエッジ!」

「躱してでんこうせっか!」

 

バンギラスが地面を殴り青く輝く岩を隆起させる。イーブイは横に回避しでんこうせっかで接近する。

 

「回避してほのおのパンチ!」

 

体を逸らしてでんこうせっかを回避したバンギラスは、ほのおのパンチでイーブイの腹部を狙う。このままでは以前と何も変わらない。だが、シンジもイーブイも負けたあの時のままではない。

 

「スピードスター!」

 

イーブイはほのおのパンチが当たる直前に振り向きスピードスターで対抗した。確実に力をつけたイーブイの不意打ちに思わずバンギラスは怯み動きが止まった。

 

「ふん。」

 

タケルは予想よりも成長しているシンジたちに対して鼻を鳴らした。技の威力もそうだが、前回と同じ状況で冷静に対処し、空中で態勢を整えつつ反撃をするのは簡単にできる事ではない。それは彼らが成長している証拠でもある。

 

「少しは成長しているようだな。だがやはり甘いな。」

「!?」

 

スピードスターで怯んだバンギラスだが、その後すぐに持ち直してその大きな尻尾でイーブイを振り払った。トレーナーの指示無くしてこういった行動を取るのは、どんな状況でも対応できるようにあらかじめ仕込まれていたのだろう。傲慢な態度をとるタケルだが、トレーナーとしての腕前は一人前ということだ。

 

「もう一度ストーンエッジ!」

『バギィ!』

 

バンギラスは再びストーンエッジを放ち追撃を仕掛ける。イーブイはその攻撃を辛うじて回避する。だが、バンギラスの怒涛の攻めが止むことはなかった。

 

「りゅうのはどう!」

「!?」

 

続いてバンギラスから放たれたりゅうのはどうを躱せずにイーブイに直撃してしまい後方に吹き飛ばされてしまう。強くなったシンジとイーブイだが、それでもやはり力には差があるようだ。戦闘不能には至っていないが、イーブイも体力の限界が近づいてしまっている。

 

「ふん。結局はこのざまか。りゅうのはどうでトドメだ。」

 

バンギラスはもう一度力を溜めりゅうのはどうの準備に入った。このままではあの時と結果が変わらない。

 

『イ……ブ……』

 

イーブイも立とうとするが上手く足に力が入らず立ち上がることができない。イーブイ本人も諦めかけているが、そんな時に大切なパートナーの声が耳に届いた。

 

「イーブイ!」

『イ……ブイ?』

「イーブイ。僕は君を信じてる。だから……勝とう!」

『!?イブ!』

 

イーブイはシンジの言葉に反応し必死に意識を保ち立ち上がる。風前の灯火とも言える状況だが、今まで苦楽を共にしたパートナーから“信じている”と言われれば自分も信じるしかない。イーブイはバンギラスから目を離すことはなかった。

 

力を溜め終えたバンギラスは全力のりゅうのはどうを放った。立ち上がったとは言え動く体力の残っていないイーブイは、抵抗できずにりゅうのはどうに包み込まれてしまう。だが、それでもシンジはイーブイの事を信じていた。

 

そんな時、りゅうのはどうに包まれたイーブイから青白い光が放たれた。イーブイの放ったその光は次第に大きくなり、りゅうのはどうを弾いたのだった。

 

「なっ!?この光は!?」

「イーブイ……もしかして……。」

 

大きくなったその光からイーブイが解放された時、その場にいたのはイーブイではなかった。ピンク色と白色の体に先端が青いリボンの触覚。そこには体も一回り大きくなった可愛らしいポケモンの姿があった。

 

『フィーア!』

「ニン……フィア?」

 

そこにいたのはイーブイではなく、その進化形であるニンフィアであった。タケルはこの状況に対し驚き開いた口が塞がらない様子だが、一番驚いているのはシンジだ。

 

複数の進化の可能性を持っているイーブイだが、その中でもニンフィアはトレーナーによりよく懐かなければ進化できない珍しいポケモンだ。最後の力を振り絞り、シンジの期待に応えようとした思いがニンフィアへの進化という結果に繋がったのだろう。

 

「ニンフィアはフェアリータイプ。ドラゴン技のりゅうのはどうは効果が無い。」

 

タケルの言う通りフェアリータイプのニンフィアにはりゅうのはどうが効果が全くない。ニンフィアが無事であったのも、りゅうのはどうを受けている途中で進化したのも一つの要因だろう。だが、タケルは決して甘いトレーナーではない。

 

「あくのはどう!」

「!?ニンフィア!スピードスター!」

 

反撃の隙は与えないと、あくのはどうで攻撃を加える。その攻撃はニンフィアを確実に捉えていた。シンジはスピードスターで対抗しようと指示を出したが、ニンフィアから放たれたのは別の技であった。

 

ニンフィアは目の前でリボンを交差させ思いっきり力を解き放った。するとそこからはキラキラと輝く風が吹き、バンギラスのあくのはどうをはじき返したのだった。

 

「今のはようせいのかぜ?ニンフィア、新しい技を覚えたんだね!」

『フィア!』

 

ここに来て新しい技を覚えたことに対し、タケルも初めて焦りの表情を見せた。しかもそれがフェアリータイプの技であればバンギラスにとって特に相性の悪い技である。だが負ける気は毛頭ないと攻勢に出る。

 

「ストーンエッジ!」

『バンギ!』

 

バンギラスはストーンエッジで再度ニンフィアを攻撃する。このままでは直接攻撃を喰らってしまうところだが、シンジが取った行動は驚くべきものであった。

 

「ニンフィア!ジャンプ!」

『フィア!』

 

なんとニンフィアは迫りくるストーエッジに向かっていったのだ。そしてそのままジャンプし、ストーンエッジの上へと飛び出る。何をする気だと疑問に感じたタケルだが、次の瞬間驚かずにはいられなかった。

 

「なにっ!?」

 

ニンフィアは次々とストーンエッジを踏み台にして華麗に躱していく。イーブイの時には見られなかった華麗な優雅さに驚くタケル。ニンフィアはバトルの中で確実に成長しつつあったのだ。

 

そのままストーンエッジを躱していく。そして遂にはバンギラスの頭上をとりチャンスを生み出した。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

「くっ!ほのおのパンチ!」

 

ニンフィアの放ったシャドーボールをほのおのパンチで防ぐバンギラス。しかしその衝撃で爆風が発生し、視界が悪くなってしまった。その衝撃が収まった時、バンギラスの下には着地して見上げていたニンフィアの姿があった。

 

「っ!?しまった!」

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

 

マズイと感じるタケルだったが、時既に遅し。ニンフィアのようせいのかぜが見事直撃し、バンギラスは空中へと舞い上がる。そしてそのままバタリと地面に落ち戦闘不能となった。さしものバンギラスも効果抜群のようせいのかぜを至近距離で受けてしまっては耐え切れなかったようだ。

 

「……戻れ、バンギラス。」

 

タケルはバンギラスをモンスターボールへと戻す。だが、その表情は悔しいというよりも僅かだが笑みを浮かべているようにも感じた。

 

「ありがとう、ニンフィア。お疲れ様。」

『フィーア!』

 

シンジは最後まで戦い抜いてくれたニンフィアの頭を優しく撫でる。ニンフィアは嬉しいのか、シンジの手に頬をこすり寄せた。甘えん坊な性格は進化しても変わらずなようだ。

 

「……俺の負けか。」

「タケル……」

 

ギリギリのところで勝つことは出来たが、声を掛け辛くなってしまう。絶対的な自信を持っていたタケルは負けると考えていなかっただろう。だが、そんなタケルから発せられた言葉は意外なものであった。

 

「……ふっ、そんな顔をするな。」

「え?」

「確かに負けることは考えていなかった。だが、お前たちの強さを感じることができて俺にとっても悪い事ばかりではなかった。そうか、そんな強さもあったんだな。」

「タケル……」

 

タケルは振り向きその場を去ろうとする。そんなタケルに、シンジは一言伝える。

 

「……また、いつかバトルしてください!」

「!?……相変わらず甘い奴だな。」

 

タケルは「だが」と言葉を続けた。

 

「……今度やる時は負けないさ。」

 

タケルはその時、背を向けながらニンフィアに声を掛けた。

 

「ニンフィア。」

『フィア?』

「……悪かったな。」

『!?フィア!』

 

タケルの言葉にニンフィアは驚きつつも、彼に笑顔を向けた。タケルも後ろからではあるが、確かに彼の顔には笑みが見えていた。彼もポケモンの存在について考えを改めてくれたようだ。

 

「……ニンフィア。」

『フフィ?』

「これからもよろしくね。」

『フィア!』

 

シンジの言葉に、ニンフィアも満面の笑みでそう答えた。これからも大切なパートナーと共に成長し続けようと心に決めて。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

シンジはリーリエにかつての経験を語った。リーリエもシンジの話を真剣に聞き、涙が頬を伝っていた。

 

「そんな過去があったんですね。シンジさんとニンフィアさんの強さが分かった気がします。」

「最初、タケルは最低な人だとしか思っていなかったけど、今思えばタケルがいなかったら今の僕はいなかったし、それに原因はどうあれ僕とニンフィアが出会うこともなかったかもしれないって少し感謝してるんだ。」

『フィーア!』

 

シンジはニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアも笑顔を零し、あの時のように頬をこすり寄せる。

 

「確かに進化は可能性を格段に引き上げる。でもそれだけが全てじゃないって僕は思うんだ。」

「進化が全てじゃない……ですか?」

 

シンジの言葉にリーリエは疑問符を浮かべる。疑問を感じているリーリエにシンジは彼女の瞳を真っ直ぐ見て答えた。

 

「確かに力や強さも必要かもしれない。でも、それ以上にポケモンとの信頼関係が一番の武器になるんじゃないかって僕は思ってる。」

「信頼関係……」

 

リーリエは心のどこかでその言葉の意味が何となくだが分かる気がした。今までシンジの強さを近くで見てきたのだから。

 

「人それぞれに強さの定義に違いがある。旅を続けている中でそう思うようになってきたんだ。僕には僕の強さがあり、タケルにはタケルの強さがある。リーリエにもリーリエの強さがある。それはトレーナーだけでなくポケモンも同じだよ。」

 

シンジの言葉をリーリエは黙って聞いている。シンジはそのまま言葉を続けた。

 

「あくまで個人的な意見だけど、シロンを無理に急いで進化させる必要はないんじゃないかな?フリーザーにこおりのいしを渡されそれに意味があったとしても、リーリエにはリーリエの、シロンにはシロンの強さがある。それを考えてからでも遅くはないと思うよ。」

 

でも最後に決めるのはリーリエ自身だよ、と最後の判断をリーリエに委ねる。リーリエはシンジの話を聞き、どうするべきか悩む。そして結論が出たのか、シンジの顔を見上げた。

 

「そうですね。もう少しゆっくり考えてみます。私だけでなく、大切なパートナーのシロンと一緒に。」

「……うん。」

 

リーリエはそう決意を口にした。シンジもこれ以上の口を出すことはなく、リーリエの気持ちを尊重することにした。トレーナーとポケモンは共に成長することで、更に高みへと昇ることができるのだから。




また予想以上に長くなってしまった。書いてる途中に楽しくなってきたので致し方なし。

というわけで質問が一つあったのでこちらでもお答えしておきます。

シロンはタマゴの時に持って行った、親はいるのか?といった質問ですが、端的に言えば細かな設定はしておりません。アニポケでもタマゴの時に持ち去る、親が不明といった描写は複数あります。そのため、公式での設定も曖昧か、もしくはポケモンという存在が子育てをあまりしないと言った可能性があります。もちろんこれは勝手な解釈ですが……。

また、シロンの親を出した場合リーリエの性格上泣きながら別れを告げてしまう可能性も出てきてしまいます。流石に相棒と別れる話は難しく、個人的には書き辛くもあるためシロンの親は登場させないものと思われます。ですのでその辺りも考慮してご理解いただけるとありがたいです。シロンの親が登場することを期待していた方には申し訳ありません。

また何か質問やリクエストなどがあれば遠慮なく言ってください。可能な限りお答えいたします。もちろん感想もお待ちしております。

ではではまた次回お会いしましょう!ノシ













































あっ、因みに次回は最後の手持ちポケモンが登場します(予定


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親子対決!リーリエVSルザミーネ!

一度書いてみたかった回です。特に思いつかなかったので繋ぎとしてぶっこんでみました。

追記
ピクシーの使用技が5つになっていたと指摘されたため、一部技を削除し修正しました。
もうダメだ……おしまいだぁ……


「さあ、リーリエ。準備はいい?」

「はい!いつでもいいです!お母さま!」

 

今、リーリエとルザミーネがオーキド研究所にあるバトルフィールドにて対面し立っている。見ての通り、彼女たちは今ポケモンバトルをしようとしているのだ。なぜ二人がバトルをするのかというと理由は単純。ルザミーネがリーリエの成長を確認したいとバトルを提案したからだ。母親として、旅の中で成長した娘の姿を見てみたいのだろう。

 

リーリエも母親の提案を受け入れバトルを承諾した。リーリエ自身も、心のどこかで母親に自分の成長を見て欲しいと考えていたため、寧ろ彼女にとっても好都合であった。

 

だが、ルザミーネの実力は本物である。そのバトルの腕は、かつてシンジと接戦をするほどのものだ。リーリエも実際に目の当たりにしているため母親の実力は知っている。だが、それでもルザミーネと戦う事は彼女にとっても大きな意味を持つことになるのは確かであろう。

 

リーリエは向かいに立っているルザミーネの眼を見つめる。ルザミーネも真剣な眼差しでリーリエを見返した。その姿は母と娘ではなく、明らかに戦う前のポケモントレーナーのそれであった。

 

「審判は僕が務めます。」

 

2人の戦う準備が整ったと確認したシンジが定位置につく。

 

「ルールは3対3の3本勝負!先に2本とった方が勝ちとなります!では両者ポケモンを!」

 

シンジの合図を確認し先にポケモンを繰り出したのはルザミーネであった。

 

「私の最初のポケモンはこの子よ!」

『ディア!』

 

ルザミーネが繰り出したのははなかざりポケモンのドレディアだ。そのお嬢様にも見える可憐な姿をしたポケモンは、ルザミーネの印象にも非常にあったポケモンであるだろう。

 

「お母様の一体目はドレディアさんですか。では私はこの子です!」

 

どのポケモンで戦うかを決めたリーリエは、そのポケモンが入ったモンスターボールをフィールドに投げる。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギソウだ。フシギソウもドレディアも共にくさタイプだが、どくタイプを持つフシギソウの方がタイプ相性的には有利だ。だがバトルの優劣がタイプ相性だけでないことを知っているリーリエは、決して油断しないようにとフシギソウに伝えた。

 

「それでは……バトル開始!」

 

シンジがバトル開始の合図をする。しかし、それと同時に動き出したのは意外にもルザミーネであった。

 

「ドレディア!ちょうのまい!」

『ディーアー!』

 

ドレディアは可憐な蝶のように美しく舞う。その姿はまるで舞踏会でダンスするお嬢様のようだ。

 

ちょうのまいの効果により、ドレディアの能力は飛躍的に上昇する。ちょうのまいは自身の素早さ、攻撃力、防御力を上げる効果がある。これで開始早々、ドレディアが優位に立ったと言えるだろう。

 

「ドレディア!エナジーボール!」

「フシギソウさん!こちらもエナジーボールです!」

 

ドレディアのエナジーボールに対し、フシギソウも同じくエナジーボールで対抗する。互いのエナジーボールが中央でぶつかるが、ちょうのまいで強化されたドレディアの攻撃に勝てるはずもなく簡単に打ち破られ、その攻撃はフシギソウに命中した。

 

フシギソウは吹き飛ばされ後ろに後退するも、倒れることを拒み耐えた。だが、それでもドレディアの攻撃はやまない。

 

「続けてはなびらのまい!」

 

ドレディアは力強くかつ美しく舞い踊る。花びらをまき散らし舞い踊るドレディアの攻撃に、フシギソウは成すすべもなく押されてしまう。ルザミーネのポケモンの戦術は間違いなく完成されていた。フシギソウは今の攻撃が大ダメージとなってしまい、ダウンしてしまう。

 

「フシギソウさん!?」

『ソウ……』

 

フシギソウは大きなダメージを受けてしまい立ち上がることができない状態だ。チャンスだとルザミーネは攻撃を止めることはなかった。

 

「もう一度はなびらのまい!」

 

はなびらのまいは強力な技であると同時に、一度発動すると少しの間連続で出さなくてはならない技だ。

 

ドレディアははなびらを纏いそれらを弾幕として周囲にまき散らす。無差別に放たれるその攻撃には一切の隙間がない。しかもちょうのまいによって威力だけでなくスピードも上がっている。並大抵の攻めでは突破できないだろう。

 

「フシギソウさん!」

 

リーリエの声も虚しく、その攻撃は無慈悲にもフシギソウを包み込んだ。はなびらのまいから解放されたフシギソウは、残念ながら目を回し戦闘不能状態となってしまう。

 

「フシギソウ戦闘不能!ドレディアの勝ち!」

「フシギソウさん……。お疲れさまでした。ゆっくり休んでいてください。」

 

リーリエはフシギソウの元へと駆け寄りモンスターボールへと戻す。ルザミーネも自身に笑みを浮かべるドレディアの頭を撫でモンスターボールへと戻した。

 

「フシギソウは中々いい目をしていたけど、まだまだ甘いわね。」

「甘いのはトレーナーである私自身に原因があります。ですが、戦いはまだまだこれからです!」

 

自分自身に油断があったために招いた結果だ、そう言い放ったリーリエは次のモンスターボールを手に取る。

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラミッ!』

「私はこの子よ!ミロカロス!」

『ミロ~!』

 

チラーミィを出したリーリエに対し、ルザミーネが繰り出したのはいつくしみポケモンのミロカロスだ。世界一美しいポケモンと称されるミロカロスは、その名に恥じぬ煌びやかさを持っている。だがもちろんそれだけではなく、強さも侮れないものである。ましてやそのトレーナーがルザミーネであるならなおさらだ。

 

「今度はこっちから行きます!」

 

一戦目と違い、最初に動き出したのはリーリエであった。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!」

 

チラーミィは尻尾を勢いよく振りスピードスターを放った。だがルザミーネは決して慌てることなく冷静に指示を出した。

 

「れいとうビーム!」

 

ミロカロスはれいとうビームにより向かってくる無数の弾幕をあっさりと撃ち落とした。スピードスターをれいとうビームによって撃ち落としたことによってキラキラと舞い落ちる輝きは、ミロカロスの美しさをより引き出しているように見える。

 

「ハイドロポンプ!」

 

最強クラスのみず技、ハイドロポンプがまるで鉄でも切り裂くかの如く勢いよくチラーミィに接近してくる。

 

「あなをほるです!」

 

チラーミィはあなをほるで地中に逃げる。それによりミロカロスのハイドロポンプは空を切った。例えどれだけ強力な攻撃であろうと当たらなければ意味をなさない。

 

「今です!おうふくビンタ!」

 

リーリエの合図と同時にミロカロスの足元から飛び出したチラーミィ。そしてそのままミロカロスの顔を捉えおうふくビンタが数回炸裂する。ミロカロスも不意打ちに近い攻撃を喰らってしまい怯んだ。小さく素早いチラーミィに比べ、ミロカロスはサイズが大きく鈍重だ。気付いてから反応するのは難しいだろう。

 

「ミロカロス!ドラゴンテール!」

「躱してもう一度おうふくビンタです!」

 

ミロカロスは緑色の鱗を纏った尻尾でチラーミィを振り払おうとする。しかし、チラーミィはそれを軽快な身のこなしで回避し、再びおうふくビンタで追加攻撃する。この攻撃には溜まらずミロカロスも怯みダウンする。

 

この調子なら行けると感じるリーリエであったが、そう簡単には行かないとルザミーネが僅かに笑みを見せる。

 

「じこさいせいよ!」

「!?じこさいせい!?」

 

ミロカロスの体が薄緑色に一瞬輝き光に包まれる。じこさいせいは自身の体力を回復させる強力かつ厄介な技だ。長期戦になれば不利になってしまうのは確実だとリーリエも焦る。

 

「ハイドロポンプ!」

「!?あなをほる!」

 

じこさいせいをどう攻略するかを考えていたリーリエだが、ルザミーネは考える暇を与えず攻撃を続ける。咄嗟にあなをほるで先ほどと同じように回避するが、そう何度も同じ手が通じる相手ではない。

 

「地面にドラゴンテール!」

『ミロ!』

 

ミロカロスはその美しい尾を荒々しく地面に叩きつける。すると地面がひび割れ、潜っていたチラーミィがその衝撃によって引きずり出されてしまう。

 

「れいとうビーム!」

 

抵抗できないチラーミィをミロカロスのれいとうビームが襲う。

 

「チラーミィさん!大丈夫ですか!?」

『チラッ!』

 

チラーミィはれいとうビームによりダメージを受けてしまうも、ダメージはそこまでではかなかったようでスッと立ち上がることができた。チラーミィの体が柔軟だからこそであろう。

 

「やるわね。ミロカロス!もう一度れいとうビーム!」

「躱して接近してください!」

 

先ほどのダメージを感じさせない動きでミロカロスのれいとうビームを回避して接近するチラーミィ。

 

「ドラゴンテール!」

 

接近してきたチラーミィに対してドラゴンテールで迎え撃つ。遠距離攻撃のハイドロポンプやれいとうビームで畳みかけ、近づいてきた相手に対してはドラゴンテールで反撃。ルザミーネの得意戦法であるが、リーリエが狙っていたのはまさにその行動であった。

 

「あなをほるです!」

 

チラーミィはドラゴンテールが当たる直前に地中に姿を消した。長い間潜ってしまっては先ほどと同じ展開になってしまうため、すぐさま移動しミロカロスの背後に飛び出す。気付くのが遅れたわけではないが、技が外れてしまった勢いによってミロカロスは反応することができなかった。

 

「スピードスター!」

 

背後をとりスピードスターで奇襲を仕掛ける。背後からの攻撃はミロカロスの急所をキレイに捉え、確実なダメージと共に怯ませることにも成功する。

 

「おうふくビンタです!」

「っ!?」

 

衝撃によって動くことのできないミロカロスは防御の態勢に取ることができずにおうふくビンタによってダメージが重ねられる。

 

さすがのミロカロスも奇襲に加えこれだけのダメージを態勢が整っていない状態で受けてしまっては一溜りもなかったのであろう。今の攻撃で目を回し戦闘不能となったのだった。

 

『ミロ……』

「ミロカロス戦闘不能!チラーミィの勝ち!」

 

戦闘不能となったミロカロスを労い、ルザミーネはモンスターボールへと戻した。チラーミィも激しい動きをしていたためかどこかぐったりとした様子で座り込む。そんなチラーミィを労い、リーリエもモンスターボールへと戻した。

 

「スピードでの撹乱戦術、見事だったわ。これはしてやられたわね。」

「チラーミィさんが頑張ってくれたからです。」

 

これも誰かの影響か、とルザミーネはシンジの方を見る。シンジもそんなルザミーネに気付き返事をするかのように微笑んだ。

 

「私の最後のポケモンはこの子!ピクシー!出番よ!」

『ピィクシー!』

「ピクシーさん……」

 

ルザミーネが最後に出したのはようせいポケモンのピクシーだ。ようせいポケモンと言われている通りピクシーはフェアリータイプであり、リーリエの大好きなピッピの進化形である。そしてルザミーネの大切なパートナーでもある。

 

リーリエは幼い頃に当時ピッピだったピクシーと共に遊んでいた記憶がある。だからこそ、やはり来たという予感と、あまり戦いたくないという感情が出てきてしまう。

 

だが、ポケモントレーナーとしては正面から対峙しなければいけないだろうとピクシーを見据えた。そしてこちらもと、リーリエは自分のパートナーが入ったモンスターボールを投げた。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが選出したのはパートナーであるシロンだ。ルザミーネもやはりと心の中で感じていた。そして再びバトルが再開される。それと同時にリーリエが動き出したのだった。

 

「シロン!こなゆきです!」

 

シロンはこなゆきによって牽制する。初めて戦う相手であるため、いつも通り堅実に攻めていくスタイルをとる。

 

「ピクシー!まねっこよ!」

『ピィ!』

 

ピクシーはまねっこを発動する。まねっこは相手が最後に使った技を真似して出す変わった技だ。まねっこにより

ピクシーはシロンの放ったこなゆきをそっくりそのまま使った。これにはリーリエもシロンも驚かずにはいられない。

 

ピクシーとシロンの放ったこなゆきは中央でぶつかり合う。驚くべきことに、互いの技は威力まで同じであった。それだけでピクシーがどれだけ育てられているのかがよく分かる。

 

「今度はれいとうビームです!」

「もう一度まねっこ!」

 

続けてれいとうビームを放つシロン。しかし、ピクシーも再びまねっこによりれいとうビームを返した。やはり互いの威力は互角であり、あっさりと相殺されてしまった。

 

「まるで自分自身と戦っている気分ですね……。」

 

リーリエはそう感じた。全く同じ技を同じタイミングで正面から撃たれれば誰でもそう思ってしまうだろう。だが、だからこそこの上ない練習になり自分を見つめ直すいい機会でもある。

 

「マジカルシャイン!」

「!?躱してください!」

 

次に動き出したのはピクシーであった。ピクシーの体が光り輝き、無数の光がシロンに降り注ぐ。リーリエの指示が間に合い、シロンはジャンプすることで回避に成功した。

 

「こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

こおりのつぶてがピクシーの隙をつき見事決まる。ピクシーも今の一撃でダメージを負うが、それでも微量なようで大したダメージを見せていない。さすがの耐久力といったところだろうか。

 

「やるわね。でもまだまだこれからよ。」

「望むところです!シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

 

シロンはこなゆきで攻撃を仕掛け。先ほどよりも距離を詰めている現状ではまねっこでの反撃は間に合いそうもない。そう判断したルザミーネは別の行動へと移った。

 

「ピクシー!かえんほうしゃ!」

『ピッシィ!』

 

ピクシーが放ったのはなんとほのお技の代名詞であるかえんほうしゃであった。こおりタイプのこなゆきでは相手にならず、正面から溶かされシロンに直撃する。

 

「シロン!?」

 

流石にこおりタイプのシロンにはほのおタイプの技は良く効いたようだ。立ち上がることは出来るものの、ダメージを隠し切れない様子だ。

 

ピクシーはかえんほうしゃの他にも多彩な種類の技を覚える珍しいポケモンだ。リーリエにとってもこれはさすがに予想外であった。ルザミーネもこれには軽く笑みを浮かべるほかない。

 

「まだまだです!シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンはれいとうビームで更に攻撃を加えた。先ほどのダメージは残っているが、技の勢いは衰えていない。ルザミーネはそのことに感心しながら、次なる一手を打つ。

 

「ひかりのかべ!」

 

ピクシーはひかりのかべでれいとうビームのダメージを抑える。動きの遅いピクシーにとっては最良の技と言えるだろう。だが、リーリエもピクシーの技の一部は見たことがあるため、この展開は読んでいた。

 

「走ってかく乱しながら接近してください!」

 

シロンはピクシー目掛けてジグザグに走る。シロンの素早い動きを捉えることは中々難しい。ピクシーが戸惑っているなか、シロンはピクシーに接近することに成功する。

 

「マジカルシャイン!」

「躱してください!」

 

近付いてきたシロンに対し、ピクシーはマジカルシャインで反撃する。しかし、シロンの軽やかなジャンプであっさりと躱され背後をとられてしまった。

 

「こおりのつぶてです!」

 

背後からこおりのつぶてが放たれピクシーに直撃する。先ほどのミロカロス戦が活きたのか、リーリエは接近することで相手の攻撃を誘発し直前で回避し反撃することを狙っていた。

 

ピクシーも今の攻撃で動きが鈍る。チャンスだと感じたリーリエも続けざまに攻撃した。

 

「こなゆきです!」

 

こおりのつぶてに続きこなゆきも炸裂する。ピクシーは腕を前でクロスさせることで急所への直撃を防いでいた。

 

「今です!れいとうビーム!」

 

こなゆきでダメージを与え続けたシロンは攻撃を中断し、れいとうビームへと切り替えた。リーリエはその瞬間に勝利を確信したが、これこそがルザミーネの狙いであった。

 

「体を逸らして躱すのよ!」

 

ピクシーは体は左の逸らすことでれいとうビームを回避する。それにはシロンとリーリエも驚いていた。

 

ルザミーネが狙っていたのは反撃のチャンスだ。ピクシーの耐久力を活かし、シロンの動きを観察することで反撃する僅かなスキを伺っていたのだ。

 

ポケモンの動作にはどうしても癖と言うものがある。それを意識して変えることは非常に困難だ。ルザミーネとピクシーはシロンの動きを数回見てそれぞれの動きの癖を把握していたのだ。それによりれいとうビームの僅かなスキをついて回避した。

 

範囲技であるこなゆきと違い、れいとうビームは直線的な攻撃だ。その上強力であるため、こなゆきに比べて僅かではあるが発射までの時間が違う。タイミングを掴みさえすれば回避することも容易という事だ。

 

「ピクシー!かえんほうしゃ!」

 

ピクシーのかえんほうしゃが、躱されてしまった衝撃で隙をさらしてしまったシロンに直撃する。二度目の弱点となるかえんほうしゃが直撃してしまったことにより、ダメージが蓄積しシロンは吹き飛ばされてダウンした。

 

「シロン!?」

 

立ち上がろうとするシロンだが、ダメージが大きいためか立ち上がることができない。相手のかっこうの的となってしまっている。

 

「これで最後よ。まねっこ!」

 

最後はまねっこによりシロンの放ったれいとうビームがそっくりと返される。立ち上がれないシロンに直撃してしまい、その強力なれいとうビームによって健闘も虚しくシロンは遂に戦闘不能となってしまった。

 

『コォン……』

「シロン戦闘不能!ピクシーの勝ち!2対1によりルザミーネさんの勝利!」

 

シンジの宣言によりこの戦いに決着がついた。リーリエはシロンの身を案じ、すぐに駆け寄った。

 

「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。」

 

シロンをモンスターボールへと戻したリーリエ。そんなリーリエの元にルザミーネがピクシーと共にゆっくりと歩み寄った。

 

「リーリエもお疲れ様。やっぱり以前に比べて成長しているわね。」

「お母様……」

 

自身の母親に成長していると言われ、どこか嬉しそうな笑みを浮かべるリーリエ。だが、心の中ではいいところまで追い詰めたのにと悔しい気持ちを感じていた。これもトレーナーとしての成長の一つなのかもしれない。

 

「今回の負けた理由は分かってる?」

「はい。私は最後の最後で勝利を確信してしまいました。私の油断が招いてしまった結果ですね。」

「そうね。分かっているなら、これからあなたはもっと強くなれると思うわ。応援してるわ。」

 

リーリエの言葉にルザミーネも満足そうに微笑みリーリエの頭を撫でた。娘の成長が見れて母親としてはこれ以上喜ばしい事はないだろう。リーリエも母親に頭を撫でられ、恥ずかしそうにしてはいるもののどこか嬉しそうであった。

 

そんな二人の様子を見て、本当の意味での親子になれたのだなと心の中で思うシンジであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~翌日~~~

 

「そろそろ出発するのね?」

「はい!次のジム戦もありますから。」

 

がんばってねと激励の言葉をかけると同時に、そうだと思い出したようにリーリエに声をかけるルザミーネは一つのモンスターボールを取り出した。

 

「あなたにプレゼントがあるのよ。」

「プレゼント……ですか?」

 

ルザミーネはそう言ってモンスターボールの中からポケモンを出した。そしてモンスターボールから出てきたポケモンは……

 

『ピッピ!』

「!?このポケモンさんって……」

「ええ。あなたの大好きなピッピよ。」

 

そこにいたのはリーリエがかつて大事にしていた人形と同じピッピであった。

 

「あなた、以前ピッピのまま育てたかったって言ってたでしょう?だからあなたのために用意したのよ。」

「お母様……」

 

どうやらこれはルザミーネからのサプライズプレゼントだそうだ。リーリエは母親から初めて貰った素敵なプレゼントに感動し、涙をこぼした。

 

「ありがとうございますお母様!一生大切にします!」

「あなたに喜んでもらえてよかったわ。」

 

ルザミーネに感謝したリーリエは、ピッピの目線に合わせて屈む。

 

「ピッピさん。」

『ピィ?』

「私と一緒に来てくれますか?」

『ピィ……ピッピ!』

 

リーリエの言葉にピッピは頷き、リーリエの足に抱き着いた。どうやらピッピもリーリエの目をみて彼女の事を気に入ったようだ。リーリエはルザミーネから受け取ったモンスターボールを手に取った。

 

「これからよろしくお願いします。ピッピさん!」

『ピッ!』

 

元々ゲットされていたポケモンであるため、数回揺れることはなくモンスターボールへと入った。

 

「ピッピさん!ゲットです!」

「おめでとう、リーリエ!」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

祝福してくれるシンジに、リーリエは笑顔で感謝する。それほどピッピのゲットが嬉しかったのだろう。

 

「それではルザミーネさん。色々とお世話になりました。」

「ええ。リーリエの事よろしくお願いするわね。」

「はい!」

 

シンジはルザミーネに返事を返す。第三者から見れば親に見送られる夫婦だが、2人はそのことに気付いてないであろう。ルザミーネも彼らの様子にクスクスと微笑み見送った。

 

シンジたちもルザミーネに見送られマサラタウンを後にした。次に目指すは最後のジムがあるアザリアタウンだ。2人の冒険はまだまだ続く!




親子対決の結果はルザミーネさんの勝利に終わりました。未だにバトル描写は難しいです。書いてて楽しいのは事実ですけど。

というわけでプロデューサーさん!来週はいよいよあれの発売日ですよ!発売日!すでに待ちきれずに興奮状態がやみませぬ。

それとアニポケに出てた前髪イーブイ(仮)可愛すぎてもうヤバいんですが。膝の上に乗せたいです。

そんなわけでこの間の質問返しです

ヌシにブイズ以外に好きなポケモンはいるのかと聞かれました。ブイズが一番好きなのは揺るぎありませんが、他にも好きなポケモンは当然います。定番ですがルカリオとか凄い大好きですね。
後全体的にむしタイプとかも好きです。スピアーとかハッサムとかカッコいいですよね。グソクムシャとかドストライクです。リアル虫は超絶嫌いですけど虫ポケモンなら触れる気しかしない。
他にもサーナイトとかチラチーノとかクチートとかかわいい系も大好きです。それでもヌシの一番は断トツでニンフィアですが。もう嫁ポケどころか嫁ですよ。これだけは譲れません(真顔

熱く語ったところで今日はこの辺りで失礼いたします。ではではノシ


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シンジVS少女ルナ!実力比べの真剣勝負!

イーブイうああああああああああああああああああああああ!!

今のヌシはテンション高いです。理由は後で説明します。

と言う訳で注意事項
・開始早々2人がイチャイチャします
・ヌシのテンションがおかしいです
・相棒イーブイ可愛いです


次のジムがある町、アザリアタウンへと向かうシンジとリーリエ。カツラからジムリーダーは不在だと知らされていた彼らだが、念のためにトキワジムへと立ち寄った。

 

しかしジムリーダーは当然不在で、ジムリーダーは暫く留守にしていると伝えられた。どうやら別件の仕事で別地方に行っているそうだ。知っていたことではあるが、仕方がないと諦め一行はアザリアタウンへと向かうことにした。

 

アザリアタウンはトキワの森を抜けた先にある小さな町のようだ。ニビジムとは違う方角に開拓され、最近リーグ公認のジムが開設されたそうだ。その情報を聞いた2人は、トキワの森へと入っていった。

 

「そう言えばここだよね。僕とリーリエが再会したのって。」

「そうですね。あの時は旅に出たばかりの私がスピアーさんに追われていて……」

 

そう、ここトキワの森は2人がアローラで別れ、2年の時が経った日に再会したある意味思い出深い場所である。当時旅に出たばかりのリーリエは、右も左もわからずに戸惑っていた。うっかりと進入してしまったスピアーの巣。そこでスピアーの群れに襲われたが、そこを駆けつけたシンジとサンダースによって助けられたのだ。

 

2人はその日の出来事を懐かしみ思い出していた。

 

「あの時はビックリしましたが、でも同時に嬉しくもありました。」

「約束したからね。一緒に旅をするって。」

 

かつてナッシーアイランド、そしてアローラを発つ時に交わした約束。それを守るためにシンジはここまで来た。それがとても嬉しく感じたリーリエだが、それとはまた別にもう一つ、彼女にとって嬉しいことがあったのだ。

 

「それもですが、もう一つ嬉しかったと思えることがあったんです。」

「もう一つ?」

 

リーリエはその時の感情を眼を瞑って呟いた。

 

「……シンジさんの事を考えている時に、シンジさんが本当に来てくれたのが、とても嬉しかったんです。」

 

その言葉を聞いたシンジは顔を赤くして顔を逸らす。リーリエも自分の言葉を思い出し思わず顔を赤らめた。

 

そんなリーリエに、シンジは手を伸ばして彼女の手を握った。

 

「シンジさん?」

「僕もさ、別れてからリーリエの事、ずっと考えてたんだ。マサラタウンでルザミーネさんがいつも僕の話をしてくれているって聞いたとき、すごく嬉しかった。それにトキワの森で再会した時、あの時と変わってないんだなって思えて安心したんだ。」

「私もですよ。シンジさんが真っ先に私の元に駆けつけてくれて、私の事を思ってくれてるんだなって思えて嬉しかったんです。その後にき、キスされたのには驚きましたが///」

「ご、ごめんね///」

 

リーリエの最後の言葉で当時の光景を思い出し、さらに顔を赤くする2人。あの行動は軽率であったか、と思い反省するシンジに、リーリエは寧ろ嬉しかったのだと伝える。同じことを考えている辺り、やはり似た者同士の2人である。

 

2人はそんな会話をしながらトキワの森を進む。するとどこからか物音が聞こえる。なんの音だろうかと警戒しながら耳を澄ませる2人。それと同時に念のためにモンスターボールを構えるシンジ。トキワの森に出現するポケモンであれば、戦闘は避けれない場合もあるためだ。

 

「みーつけた♪」

 

だがそんな2人の前に現れたのは1人の少女である。少女は長いツインテールの黒髪で、気候の涼しいカントーでは珍しい水色のタンクトップに、白いハーフパンツだ。見た感じでは2人と同じくらいか少し若いくらいの年齢だろうか。

 

シンジたちを見つけた少女は、彼らの元へと走ってきて彼らの前にジャンプして着地する。その後、クルリと回りシンジたちの方へと振り向いた。シンジはその彼女の姿を見た瞬間、目を見開いた。

 

「久しぶり!シンちゃん♪」

「る、ルナ!?」

 

シンジの事を気軽にシンちゃんとよぶ少女。シンジはその少女のことをルナと呼んだ。詳しい関係は分からないが、その様子から2人は親しい関係なのだという事はリーリエにも分かった。

 

「その呼び方はやめてって言ってるでしょ……」

「シンちゃんはシンちゃんじゃん。」

 

少女、ルナにシンちゃんと呼ばれることをシンジは快く思っていないようだが、ルナはそんな彼の事をお構いなしにその愛称で呼ぶ。シンジはいつものことだから仕方ないかと諦めた。

 

そして、ルナはそれより、と言葉を続けた。

 

「手なんか繋いじゃって。もしかしてシンちゃんの彼女?」

『!?///』

 

ルナの言葉にシンジとリーリエは思い出し咄嗟に手を離した。2人きりであり、先ほどの会話中に手を繋いでいたのを忘れていた2人は顔を赤くして慌てて否定する。

 

「ち、ちちち違うよ!僕とリーリエはまだそんな関係じゃ!///」

「そ、そうです!私たちはまだ付き合ってません!///」

「まだってことはどうせ付き合うって事でしょ?」

 

しまった、と2人はさらに顔を赤くする。ルナはニヤニヤと笑みを浮かべながら満足したのか話題を変えることにした。

 

「っと、紹介が遅れたね。私はルナ!よろしくね♪」

「えっと、私はリーリエです。シンジさんと一緒に旅をしています。」

 

明るくポーズを決め自己紹介するルナ。そんなルナに対しリーリエは、顔の熱が冷めないまま自己紹介をする。その後、気になることをルナに問いかけたのだった。

 

「し、失礼ですがシンジさんとはどんな関係なんですか?」

「ああ、シンちゃんとは同じマサラタウンで育った幼馴染だよ。リーリエの思っている関係ではないから安心して!」

 

ルナの一言で安心するのと同時に、また顔が熱くなっていくのが分かるリーリエ。そんなリーリエを見て楽しんでいるルナは、続けてシンジに声をかけた。

 

「シンちゃん聞いたよ?アローラ地方のチャンピオンになったんだって?」

「知ってたの?」

「もちろん!」

 

どうやらルナもシンジがアローラ地方のチャンピオンになった事実を知っているようだ。ルナはそんなシンジにある提案をした。

 

「私もあれから色んな地方を旅して強くなったんだ!久しぶりにバトルしてよ!」

 

シンジにバトルを申し込むルナ。チャンピオンになったシンジと実力差が離れてしまったのか、それとも縮まったのか確かめたいのだろう。当然その申し出をシンジが断るはずもなく。

 

「分かった。その勝負受けるよ!」

 

シンジは快く承諾した。そんな2人の戦いを、リーリエは静かに見守ることにした。

 

「ルールは1対1の1本勝負でお願い!」

「分かった。じゃあ僕のポケモンはもちろん!」

 

1本勝負の1対1の戦いは単純に実力を測るにはもってこいのルールだ。シンジはそれを承諾しモンスターボールを手にする。そしてシンジが繰り出したのは……

 

『フィーア!』

 

相棒でもあるニンフィアであった。

 

「やっぱりニンフィアで来たね。でもそれは私が望んでいたこと!」

 

そう言ってルナは自分のモンスターボールを握り締めポケモンを繰り出す。

 

「行くよ!フラージェス!」

『ラジェ!』

 

ルナが繰り出したのは同じフェアリータイプのフラージェスだ。それをみたシンジは、やっぱりと確信した。

 

「相変わらずフェアリータイプのポケモンを使うんだね。」

「まあね。でもそれはシンちゃんも同じでしょ?」

 

シンジはルナの回答に微笑むことで答え、バトルを開始したのであった。

 

「こっちから行くよ!でんこうせっか!」

『フィア!』

 

あいさつ代わりにでんこうせっかで攻撃を仕掛けるニンフィア。だがそれは読めていたと、ルナはフラージェスに指示を出した。

 

「くさむすび!」

 

フラージェスはニンフィアの進行先を阻害するようにねんりきで文字通り地中から出した草を結ぶ。それに躓き転びそうになるニンフィアだが、咄嗟に受け身をとり転倒を拒絶する。そして態勢を整えるため、シンジはすぐさま指示を出す。

 

「シャドーボール!」

「めざめるパワー!」

 

シャドーボールを放つニンフィアに対し、フラージェスはめざめるパワーで対抗する。だがパワーではニンフィアの方が明らかに勝っており、シャドーボールはめざめるパワーを打ち破って貫通しフラージェスに命中する。

 

フラージェスは直撃を回避するために手を使って守るが、それでもダメージがあるのは明白だった。

 

「さすがにやるね……。でもこんなのはどう!」

 

ルナはそう言って、戦術をシフトする。

 

「めいそう!」

『ラージェ』

 

フラージェスは目を閉じ心を落ち着かせる。めいそうは自身の特殊攻撃と特殊防御を上げる技だ。先ほどの威力の差も充分に埋める事ができるだろう。それを見る限り、ルナは自身の弱点を知りそれを補う術を持っている。紛れもなく成長していると、シンジは心の中で実感する。

 

「もう一度めざめるパワー!」

「ようせいのかぜ!」

 

フラージェスのめざめるパワーをようせいのかぜによって防ぐ。しかし、威力の上がっているめざめるパワーを完全に防ぐことができず、ようせいのかぜを強引に押し切られてしまう。その際に発生した爆風にニンフィアは飛ばされ、微量ではあるがダメージを受けた。

 

「やっぱりめいそうの差はでかいね。」

『フィア』

 

めいそうの能力の補助がかなり効いていると実感するシンジとニンフィア。だがそれでも突破できないわけではないと諦めることはなかった。

 

それを見ていたリーリエは思わず小さな声ですごいと呟いた。

 

「シンジさんが強いのはもちろん知っていました。ですが、ルナさんがこれほどとは思いませんでした。」

 

あのシンジと善戦しているどころか互角の戦いを繰り広げている。互いの手の内を知っているとは言え、それでも実力は別だ。相手の動きに対応できるかはトレーナーの判断力とポケモンの能力次第。それをルナは的確にこなしている。

 

ルナはシンジとニンフィアの行動に対応し、その場面に適した選択をしている。それはトレーナーとして優れている証拠だ。その上ポケモンもルナの期待に応えている。ポケモンとの絆も深い事がよく伝わってくる。

 

リーリエはそんな2人の高度な戦いを静かに見守るのであった。

 

「連続でめざめるパワー!」

「でんこうせっか!」

 

めざめるパワーを連続で放つフラージェス。だが、それをニンフィアはでんこうせっかで素早く回避しながら接近していく。

 

めいそうに疑似的な技でルザミーネのドレディアが使ってきたちょうのまいがあるが、ちょうのまいは素早さが上がるのに対しめいそうは素早さを補うことは出来ない。元々素早さの高くないフラージェスにとって、それは大きな穴でもある。

 

でんこうせっかで正面に接近することに成功したニンフィア。フラージェスは慌ててめざめるパワーで撃墜しようとするが間に合わず、でんこうせっかを腹部に直撃してしまう。

 

今の一撃で形勢逆転したニンフィアはダメージの抜け切れていないフラージェスにチャンスだと追撃を仕掛ける。

 

「シャドーボール!」

 

フラージェスは躱すことができずにシャドーボールの直撃を受け後退する。だがフラージェスの耐久力が元々高く、それに加えめいそうによる強化もあるためそれほど大きなダメージがあるようには見えない。フラージェスも顔をブルブルと振ることにより、ダメージを誤魔化した。

 

「まだまだ行けるよ!」

『ラッジェ!』

 

ルナの言葉に合わせてフラージェスも再び気合を入れる。

 

「ムーンフォース!」

「かわして!」

 

フラージェスが自身の大技、ムーンフォースを繰り出した。これが命中すれば流石にマズいと判断し、ニンフィアはジャンプして空中に回避する。だが、それこそがルナの狙いでもあったのだ。

 

「今よ!くさむすび!」

『フィア!?』

 

地面から生え、大きく伸びるくさむすびはニンフィアの足を捉える。これにはさすがのニンフィアも対応できず、そのまま地面に勢いよく叩きつけられる。立ち上がることはできるが、それでも今の攻撃はかなり効いたようで少し足にきているのが見られる。

 

「めざめるパワーで追撃!」

「ようせいのかぜ!」

 

チャンスと見たルナはめざめるパワーにより更なる追撃を仕掛ける。その攻撃は確実にニンフィアを捉えている。だが、シンジはそれでも自分たちのバトルスタイルを貫き通し、ようせいのかぜで対抗する。

 

先ほどは打ち破られてしまったようせいのかぜだが、今度はめざめるパワーを相殺することに成功する。ダメージが溜まり先ほどよりも威力が劣るかに思えた技も寧ろ逆に増していた。それは彼らの不屈の心が精神的な支えとなり、技の威力にあらわれたのだ。

 

その強い心と絆の力が彼らの最大の武器であり、相手にとっての脅威でもある。ルナはここはもう勝負に出るしかないと覚悟を決め、これ以上長引かせるのは危険だと感じ大技を放つのだった。

 

「フラージェス!ムーンフォース!」

『ラージェ!』

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーア!』

 

フラージェスはムーンフォースで一気に勝負を仕掛ける。ニンフィアもそれに応えるかのように同じく空中からムーンフォースを放った。

 

互いのムーンフォースは拮抗するも、互いの強力な力に耐え切れずに中央で爆発する。互いに視界が奪われるが、その時に一つの影が動き出す。

 

「でんこうせっか!」

『ラジェ!?』

 

ニンフィアは爆風の中をでんこうせっかで駆け抜ける。そのでんこうせっかは爆風によって発生した煙を突き破り、フラージェスを貫通する。結果、その一撃が決め手となり、大きな衝撃がフラージェスを貫き戦闘不能となり勝負が決まった。

 

「負けちゃったか。フラージェス、お疲れ様。」

 

ルナは悔しそうにしながらフラージェスをモンスターボールに戻す。対してニンフィアもシンジの元に駆け寄ると、彼にもたれかかるようにして倒れ込んだ。

 

「今回はかなり厳しかったね。」

『フィア……』

 

ニンフィアはシンジに微笑む。シンジはそんなニンフィアにオボンのみを与えて体力を回復させる。後は休ませるためにニンフィアをモンスターボールへと戻した。

 

「結構いいところまで行ったと思ったんだけどなー。」

「僕も少し冷や冷やしたけど、そう易々と負けるわけには行かないからね。」

「悔しいけど、次にやる時は負けないから!いつかチャンピオンの座を奪うくらい強くなるよ!」

「僕だって同じだよ。簡単にチャンピオンの座は譲るつもりはないけどね。」

 

シンジとルナはお互いに意気込みを話したのち握手を交わす。その光景を見ていたリーリエは、シンジたちに一つ気になることを尋ねることにした。

 

「シンジさんとルナさんって、昔からのライバルだったんですか?」

「うん。私たちは幼馴染で、同時にライバルとして競い合ってたんだ。」

「昔はお互いに勝ち負けを繰り返して切磋琢磨してたけど、旅に出た時にお互い別々の道を歩むことにしてね。それ以降、偶に出会ったらバトルしてたんだ。」

 

旅に出て以降は出会う事の少なかった二人だが、それでも交わった際には全力でバトルをして実力を確かめ合ったそうだ。そのたびに互いの実力差はあまりなく、拮抗するバトルが繰り返されたのだと言う。

 

「そう言えばシンちゃんたちはどこに向かっているところだったの?」

「僕たちはアザリアタウンに行くところなんだ。」

「はい。最初はトキワジムに挑戦するつもりだったのですが留守のようで。そこで話で聞いたアザリアジムに挑戦しようと思ってアザリアタウンへと向かっているところです。」

「そうだったんだ!実は私もアザリアタウンに行くところだったんだよね♪」

 

ルナは意味深な笑みを浮かべて2人にある提案をした。

 

「じゃあ一緒に行こうよ!どうせもうすぐ着くところだし、少しでもお話ししたいからさ!」

 

2人はルナの提案に賛同し、頷いて快く承諾した。こうして3人は一緒にアザリアタウンへと向かうことにした。

 

アザリアタウンへと向かう道中、シンジとリーリエはこれまでの経緯を軽く説明していた。リーリエがカントーリーグを挑戦するために努力していると聞いたルナはニヤニヤとしてどこか感情を隠しきれていない様子であった。

 

そうこうしている内に、トキワの森を抜ける。するとそこに小さな町、アザリアタウンが見えた。開拓して間もないと言うだけあり、マサラタウンよりも小さな町であった。どちらかと言うと村に近いと言った方がいいかもしれない。

 

だが、それでもそこに住む人たちはみな笑顔で、ポケモンたちと共に畑を耕したりと協力して暮らしている。やはりどのような場所でも、人とポケモンは切れない絆で結ばれているのは変わりないようだ。

 

その時、1人のおばあさんがルナを見かけると作業をやめ声をかけてきたのだった。

 

「やあルナちゃんおかえり!そちらはお友達?」

「うん!ただいま!私の幼馴染と、さっき知り合ったお友達!暫くは私もここにいるからよろしくね!」

「そうなの?それじゃあこれからまたよろしくね。アザリアタウンが誇る可愛らしいジムリーダーさん!」

 

おばちゃんの言葉にてへへと照れるルナ。そんな彼女とは別に、シンジとリーリエは驚きを隠せない様子でルナに問いかけた。

 

「えっと……ルナさん?ジムリーダーって……」

「あっ、ごめん。言ってなかったね。」

 

ルナはドヤ顔でリーリエたちの方を振り向き胸を張って答えた。

 

「私はアザリアタウンのジムリーダー、フェアリータイプ使いのルナだよ!」

 

その時、アザリアタウンに2名の驚きの声が響いたのであった。




そんなこんなで唐突な後付け設定+オリジムリーダーでした。こうやって強引な設定でも付けないとシンジのバトルが書けないので。一応主人公なのでちょくちょく書いていきたいです。

どうでもいい事ですがヌシのテンションがおかしい理由です
・色違いのブースター、サンダース、シャワーズの厳選に成功
・コーディネートをレッツゴー未登場の各ブイズ服で組み合わせた
・イーブイとブイズ御三家の能力をアメで最大まで上げた
・リーリエの可変式フィギュアが届いた
・イーブイがかわいすぎる
以上です。ただそれだけ




それと他作品を書いている読者様とコラボをすることになりました!ワー!(セルフ拍手888888
コラボすることは大分前に決まっていましたが、詳細については追々お知らせしたいと思います。
暫くはヌシも本編を進めるつもりです。最近番外編ばかり書いてサボってたので少しは進めなくてはと……。なので詳細はしばしお待ちくだされ。

ではではまた次回お会いしましょう!


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VSアザリアジム!最後のジム戦!

ピカブイやりすぎてワッチャワッチャしてるからか文章に変なところがないか不安。

因みにピカブイでのヌシのファッションは
帽子→リーフィア
上着→エーフィ
ズボン→ブラッキー
靴→ニンフィア
バッグ→グレイシア
となっております。出ないブイズの分は着せ替えでカバーよ。


ようやくトキワの森を抜けアザリアタウンに辿り着いたシンジとリーリエ。その道中に出会ったシンジの幼馴染、ルナ。彼女こそがアザリアタウンのジムリーダーだったのである。

 

その事実を聞いて驚いたシンジとリーリエだが、彼女の実力を目の当たりにしたリーリエは彼女なら適任なのかもしれないと感じた。シンジと接戦を繰り広げる程の実力を持つ彼女に勝てるのか、リーリエの心の中に不安が募る。

 

そして今、アザリアジムにて遂に最後のバッジを巡るジム戦が始まろうとしていた。

 

「準備はいい?リーリエ!」

「は、はい!私はいつでも構いません!」

 

ルナの問いにリーリエも緊張した様子で答える。2人の準備が完了したと確認した審判の女性がルールの説明を開始した。

 

「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダールナのジム戦を開始します!」

 

その後、審判から提示されたルールはリーリエにとって驚くべきものだった。

 

「使用ポケモンはジムリーダーが1体!対してチャレンジャーの使用ポケモンは3体です!」

「3対1……ですか?」

「アザリアジム独自のルールだよ。私の全力に、チャレンジャーがどれだけついてこれるか。それを確かめるために、このルールを作ったんだ。」

 

どうやらルナはチャレンジャーの力を試すのと同時に、自身を追い込み高みを目指すために独自のルールを作ったようだ。

 

各ジムにはそれぞれ違うルールが設けられている。それはチャレンジャーの実力に合わせたもの、ジムリーダーの考えに沿ったもの様々だ。今回ルナが提示したルールは極めて稀なルールである。

 

だが、それでも彼女の実力は底知れない。もしかしたらシンジと匹敵する実力の持ち主かもしれない。そんな彼女の使用ポケモンが例え1体でも、油断できる相手ではないのは明白だ。恐らくそれだけの自信があると言う事は、フラージェス以上の強さを持つポケモンである可能性が高いだろう。

 

「そして私の使うポケモンはこの子だよ!」

 

アザリアジムジムリーダーのルナが使用するポケモンはフェアリータイプのポケモン。一体どんなポケモンがくるのだろうかと考えるリーリエだが、ルナが繰り出したのはリーリエの予想とは全く違うポケモンであった。

 

「お願い!チルタリス!」

『チィル!』

 

ルナの出したポケモンはチルタリスだ。だがチルタリスはドラゴン・ひこうの複合タイプ。フェアリータイプのポケモンでないのが意外だった。

 

しかしそのチルタリスのは普通のポケモンとは違う特徴があった。それは首に巻かれているスカーフであった。

 

「あれって、もしかして……」

 

シンジはそれが何なのかは何となく察しがついた。それがなんなのか分からないリーリエは、チルタリスがフェアリータイプでないことを彼女に指摘した。

 

「チルタリスさんはフェアリータイプではなかったはずですが……」

「うん、そうだよ。だからこうするの!」

 

そう言ってルナが左手を前に出す。すると彼女の腕には黒の腕輪がついており、その中心には虹色に光る石がはめ込まれていた。

 

ルナはそれに右手をかざすと、その石が眩く輝きだし、チルタリスのスカーフと共鳴する。

 

そのスカーフをよく見てみると、ルナが持っている石にそっくりの石がはめられていた。互いの持つ石が共鳴し光で結ばれた時、その光はチルタリスを包み込んだ。その光から解放された時、驚くべき光景を目の当たりにしたのだった。

 

『チルゥ~!』

「チルタリスさんの姿が……変わった?」

 

そこにはまるで進化したような容姿をしたチルタリスの姿があった。未だに驚き目が点になっているリーリエにその現象について説明した。

 

「これはメガシンカだよ。トレーナーの持つキーストーンとポケモンの持つメガストーン。この2つが共鳴した時、ポケモンの姿が変わり能力が格段に上昇するんだ。チルタリスの場合はメガチルタリスになって、ひこうタイプがフェアリータイプに変わるんだよ。」

 

ルナの説明を聞いてリーリエは以前本で読んだ知識を思い出した。メガシンカは近年発見された進化を超えた進化。バトルが終われば元の姿に戻ってしまうが、その間はメガシンカ前とは比較にならない力を得ると言われている。カツラの言っていた他で見る事のできない戦いとは間違いなくメガシンカの事であろう。

 

メガシンカをしたチルタリスは、先ほどとは比べ物にならない威圧感を放っている。その威圧感に怯みそうになるリーリエだが、それでも必ず勝つのだと意思を強く持ってバトルに挑む。

 

「私の一体目……お願いします!チラーミィさん!」

「チラミ!」

 

リーリエが先発で繰り出したのはチラーミィだ。チラーミィはチルタリスを目にすると、今まで見たことのない威圧感に怯み冷や汗を出す。それでもチラーミィは踏みとどまり、リーリエの期待に応えるために戦う事を決意する。

 

「それでは、バトルはじめ!」

 

審判の合図と同時に動き出したのは、意外にもジムリーダーであるルナの方であった。

 

「りゅうのはどう!」

「!?躱してください!」

 

チルタリスは口を大きく開き、そこから勢いよく衝撃波を放つ。その衝撃波、りゅうのはどうはパワーとスピード、共に強力であることが見るだけで伝わってくる。チラーミィはリーリエの指示に従い、辛うじて避ける事ができた。

 

「接近しておうふくビンタです!」

 

チラーミィは躱した際の勢いに乗りチルタリスとの距離を縮める。そして手が届く距離まで近づき、おうふくビンタで攻撃を仕掛けた。しかし、チルタリスとルナもそう簡単に攻撃を通してくれるはずもなかった。

 

「コットンガード!」

 

チルタリスは攻撃が当たる直前、コットンガードによりチラーミィの攻撃を防いだ。コットンガードは自身の防御力を格段に上昇させる効果を持っている。これにより物理技であるおうふくビンタのダメージはかなり軽減されている。生半可な攻撃ではチルタリスに攻撃を通すことは出来ないだろう。

 

「でしたら今度はスピードスターです。」

『チラッ!』

 

チラーミィはコトンガードで攻撃を弾かれてしまうが、反動を利用して飛び上がりスピードスターを繰り出した。

 

「チルタリス!はがねのつばさで防いで!」

『チィル!』

 

チルタリスはその柔らかくモフモフな翼を鋼鉄のように硬化させ、その翼を盾にしてスピードスターは容易く防いだ。これにはチラーミィとリーリエも驚かずにはいられない。そしてその隙を見逃さず、ルナは反撃にでる。

 

「りゅうのはどう!」

『チラ!?』

「チラーミィさん!?」

 

チラーミィは対応が遅れたのと同時に、空中で態勢が整えられていないこともあり回避行動に移れずりゅうのはどうが直撃する。

 

りゅうのはどうの威力は高く、チラーミィは立ち上がるが足元がふらついてしまう。その姿を確認したルナは更に畳みかけた。

 

「もう一度はがねのつばさ!」

 

今度ははがねのつばさで低空飛行で接近し攻撃を仕掛けた。ダメージで動けないチラーミィは当然避けることができずに直撃する。そして限界が訪れ、無念にも戦闘不能となってしまう。

 

「チラーミィ戦闘不能!チルタリスの勝ち!」

 

チラーミィをモンスターボールへと戻す。素早い動きのチラーミィを容易く捉え、隙の無い攻防をするルナとチルタリスを見て、リーリエも彼女の底知れぬ強さを体感する。

 

「さあ、次はどの子で来るのかな?」

 

まだチルタリスにはダメージをまともに与えることができていない。ルナもまだまだ余裕があると言った様子だ。緊張の中、リーリエは2体目のポケモンを繰り出したのだった。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

リーリエが次に選んだのはマリルだ。

 

マリルのタイプはみず・フェアリータイプ。対してチルタリスはドラゴン・フェアリータイプだ。相性としてはマリルの方が有利であろう。だが相手はメガシンカポケモン。そんな簡単に行くわけはない。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

「チルタリス!りゅうのはどう!」

 

バブルこうせんで牽制するマリルだが、チルタリスのりゅうのはどうがバブルこうせんを容易に貫く。フェアリータイプのマリルにドラゴン技は効果がないとはいえ、一手が防がれてしまうのはリーリエ達にとっても痛手だ。

 

「では今度はころがるです!」

『リル!』

 

マリルは丸くなり勢いをつけころがるで接近する。マリルも勢いに乗っていて、中々捉えるのが難しく思える。しかし、それでもルナは笑顔で冷静な判断をして見極めている。

 

「もう一度りゅうのはどう!」

 

ルナが選択したのはりゅうのはどうだ。しかしりゅうのはどうは当然マリルに効果はない。ならばルナの狙いはなんなのか?

 

答えは簡単であった。ルナの狙いは単純にマリルの行く手を阻むことであった。マリルが転がっている先にりゅうのはどうを着弾させくぼみを作ることにより、マリルの進行を妨げたのだ。

 

マリルはそのくぼみにハマると、上に跳ねて軌道が大きく逸れてしまった。それにより大きな隙ができてしまい、格好の的となった。

 

「今だよ!はがねのつばさ!」

『チル!』

 

チルタリスははがねのつばさでマリルを狙い撃ちする。隙をさらしてしまったマリルは当然対応することができずにはがねのつばさに弾かれてしまう。

 

「もう一度バブルこうせんです!」

 

受け身をとったマリルはバブルこうせんで反撃をする。だがチルタリスは自身の翼を盾にして防いだ。その様子から、ダメージは全くと言っていいほど効いていないだろう。チルタリスからはそんな雰囲気を感じさせるほどの余裕が感じ取れた。リーリエとマリルもその姿には驚くしかなかった。

 

「ムーンフォース!」

 

ルナが指をパチンッと鳴らすのと同時にチルタリスはムーンフォースの態勢に入り力を解き放つ。そのムーンフォースは確実にマリルを捉え、マリルにその攻撃が直撃する。マリルはその場で力尽き、目を回して戦闘不能となってしまう。

 

「マリルさん!」

「マリル戦闘不能!チルタリスの勝ち!」

 

一矢報いることもできずにマリルは敗れてしまう。リーリエは労いの言葉をかけ、マリルをモンスターボールへと戻した。

 

ルナはやはり強い。間違いなくこれまで戦ってきたトレーナーの中でもトップクラスの実力者であろう。メガシンカによる能力の上昇を加味したとしても、判断力、戦術、技、どれをとっても一級品であろう。

 

「ここはあなたに託します。」

 

リーリエは最後のモンスターボールを手にし、相棒にバトルの行く末を託すことにした。

 

「お願い!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのはシロンだ。こおりタイプのシロンはドラゴンタイプのチルタリスに対して相性が抜群だ。リーリエも3体目のポケモンであるため、これが最後のバトルになるだろう。

 

「アローラのロコン?珍しいポケモン持ってるね!」

「私のパートナーです!まだまだ諦めたりしません!」

 

リーリエのその言葉を聞き、面白いバトルになるかもと期待感を膨らませニヤリと口角を上げるルナ。そして今度は、その意気込みと同時にリーリエが攻撃を仕掛けた。

 

「シロン!れいとうビーム!」

『コオォォン!』

「はがねのつばさで弾いて!」

『チル!』

 

シロンはれいとうビームで攻撃を仕掛けるも、チルタリスははがねのつばさを振るいれいとうビームを弾いて防いだ。

 

「もう一度はがねのつばさ!」

「躱してください!」

 

続いてはがねのつばさで追撃を仕掛ける。その攻撃をシロンはジャンプすることによって回避する。はがねのつばさが空を切ったチルタリスだが、すぐさま振り向き態勢を整える。

 

「こおりのつぶてです!」

「りゅうのはどう!」

 

こおりのつぶてで素早く反撃するシロン。しかしチルタリスの対応もそれ以上に早く、自らの隙をすぐになくしりゅうのはどうで反撃する。りゅうのはどうはこおりのつぶてを貫通し、シロンに命中する。直撃を受けてしまったシロンはそのダメージで後退する。

 

「はがねのつばさ!」

 

りゅうのはどうで怯んだシロンにはがねのつばさで追撃する。こおりタイプのシロンにはがねタイプの攻撃は効果抜群だ。的確に弱点を突かれてしまい、かなりのダメージをシロンは負ってしまった。

 

しかしシロンは首を横に振りダメージを少しでも抜き取る。それを確認したルナは回復の暇を与えないと、休む間もなく怒涛の攻めを繰り返す。

 

「ムーンフォース!」

「れいとうビームです!」

『チィル!』

『コォン!』

 

チルタリスがムーンフォースを放ち、シロンはれいとうビームで対抗する。だが威力の差は歴然。拮抗するかに見えた技のぶつかり合いは、れいとうビームが破られる形で決した。

 

ムーンフォースはれいとうビームを押し切り、シロンとの距離を縮める。シロンは咄嗟に回避行動をとろうとするが、先ほどのダメージもあり間に合わず直撃を受けてしまう。ムーンフォースの直撃を受け、その衝撃が晴れると、そこには目を回しているシロンの姿があった。奮戦も虚しく、リーリエの敗北という形で終わってしまったのだ。

 

「ロコン、戦闘不能!チルタリスの勝ち!よって勝者、 ジムリーダールナ!」

「シロン!」

 

リーリエはすぐにシロンの元へと駆け寄り、シロンを抱きかかえる。リーリエに気付いたシロンはゆっくりと目を開け、リーリエの姿を確認する。

 

『コォン……』

「いえ、シロンもマリルさんもチラーミィさんも充分やってくれました。今回の落度は私にあります。」

 

申し訳なさそうに謝るシロン。そんなシロンにリーリエは咎めることはなく、非は自分にあると責任を負う。そんなリーリエに、ルナはメガシンカが解除されたチルタリスと共に近づいてきた。

 

「今回は私の勝ちだね。」

「ルナさん……。」

「でも、これで終わりじゃないよね?」

 

リーリエはルナの言葉を聞き目を見開く。

 

「リーリエもリーリエのポケモンも、すっごい輝いてた!次に挑戦するとき、どれだけみんなが成長するか楽しみになってきたよ!」

『チ~ル!』

 

リーリエはそのルナの言葉を聞いて気付く。この敗北は挑戦の終わりではなく、次のステップへ上がるための段階にすぎないのだと。確かにチルタリスのメガシンカはとても強力ではあるが、勝てないと決まったわけではない。必ずなにか突破口はあるだろう。

 

そう決断したリーリエは立ち上がり、ルナを見つめて口にした。

 

「今回は負けましたが、また挑戦しに来ます。その時は必ずバッジをゲットしてみせます!」

「私とチルタリスも簡単には負けないよ?いつでも待ってるから!」

 

そう言ってルナと握手を交わしたリーリエは、アザリアジムを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました!お預かりしたポケモンたちはみんな元気になりましたよ。」

「ありがとうございます!ジョーイさん!」

 

ポケモンセンターで傷付いたポケモンたちを回復させたリーリエ。そんなリーリエは振り向いてシンジにあるお願いごとをする。

 

「シンジさん、お願いがあります。」

「なに?」

「ルナさんに勝つために、私とバトルしてください!」

 

リーリエがシンジに頼んだのはジムバトルで勝つための特訓であった。メガチルタリスを倒すためには、その突破口を見つけるのが必須条件だ。だが一人でがむしゃらに練習するだけでは勝つことは不可能だろう。

 

だが、そうそうメガチルタリスに匹敵する猛者と戦うことなどできない。だがシンジであれば適任だ。チャンピオンであるシンジを相手にすれば申し分ない。それに以前ヤマブキジムを攻略した際も、シンジと特訓したことが鍵となったのが一つの要因だ。シンジと学べることは多くあるだろう。

 

それにルナのチルタリスが使う強力なムーンフォース。シンジのニンフィアであれば同等の威力を持つムーンフォースが使える。模擬戦として相手をすればなにか掴めることはあるだろう。

 

当然、その言葉を聞いたシンジの答えは決まっていた。

 

「もちろんだよ。僕でよければ、出来る限り力になるよ!」

 

シンジは肯定の意を示し、リーリエもそんな彼に笑顔を浮かべる。

 

強力なジムリーダールナ。そんな彼女の使うチルタリスのメガシンカ。ムーンフォース、コットンガード、他にも課題は山積みだが、それらを少しずつでも埋めていき彼女に勝ち最後のジムバッジをゲットする。そう心に決めたリーリエは、手をギュッと握りしめシンジとの特訓に励むのであった。




メガシンカ初登場!

初めは5体1にでもしようかと思いましたがグタリそうなのでやめました。あとこんな場面でピッピを出したくなかった。マスコットだもんね。

ジム戦の時はシンジ君は大体空気ですが、その辺りはヌシの文才がなくセリフ回しが出来ないためご了承ください。ジム戦中だと喋らせるタイミングががが……。

アプデで前髪イーブイの髪型がでないかなと思ったり。


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アザリアジム攻略の鍵!新たな力の兆し!

迷った挙句スマブラSP買いました。カムイちゃんが使いたかっただけですが、X振りの復帰なため腕が大分落ちててCPUで修練中。カムイ楽しすぎ。

ピカブイはやること無くなってきたので対戦に潜ってみたのですが、会う人全てが海外勢で制限無しだと断られるため対戦が中々成立しません。上手くマッチングは2回程しましたがなんとか勝てました。ステロプテラ率が異常に高いけど……。

元のシステム的に考えても対戦向きじゃないのは分かってたしマッチングの方法もちとあれだから、大人しく周回してイーブイとの冒険を楽しんだ方がいいかも。

制限ありでやればいい?正直ブイズだけの性能じゃ4vs6はキツイッスよ。アメで性能差付けてなんとか勝てるレベルなので(´・ω・`)

お友達さえいればねえ……


8つ目のジムバッジを手に入れるためアザリアジムに挑戦したリーリエであったが、ルナの持つメガチルタリスの前に成すすべもなく敗れてしまう。

 

だが、リーリエはその悔しさをバネに更に強くなろうと、シンジとの特訓を開始しようとしていた。

 

「じゃあ今回はバトルよりも、対策を練るための特訓にしようか。」

「対策……ですか?」

 

リーリエはシンジの言葉に疑問符を浮かべる。彼女が今までにやってきた特訓は精々バトルをして経験を積むことだけであった。よくてもシンジに仮想相手として戦ってもらい、イメージを掴む程度だ。そのため普通のバトル以外の特訓と言うのがどういうものか分からなかった。

 

シンジは未だに疑問を抱いているリーリエに答えるようにモンスターボールを投げあるポケモンを繰り出した。

 

「お願い!グレイシア!」

『グレイ!』

 

シンジが繰り出したのはグレイシアであった。シンジは今からグレイシアを相手に何をするのかをリーリエに説明する。

 

「一つ目の課題がチルタリスのコットンガード。僕のポケモンにはコットンガードを使えるポケモンはいないけど、グレイシアなら疑似的なバリアーが使える。グレイシアを相手にコットンガードに対しての対策を取ることで、チラーミィの立ち回りも変わってくると思うよ。」

 

リーリエはシンジの言葉になるほど、と答える。チラーミィはコットンガードにより物理技が防がれてしまったのが敗因の一つだ。コットンガードへの対処さえ分かれば前回のような結果になることはないだろう。

 

リーリエはモンスターボールを手にし、それを正面へと投げチラーミィを出す。

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラミィ!』

 

早速特訓を始めようか、というシンジの言葉に従い、リーリエは頷いて答え動きだした。

 

「チラーミィさん!おうふくビンタです!」

『チラ!』

 

初めは正面から接近戦を仕掛けるスタイルで攻める。チラーミィはグレイシアに接近して得意の近接戦に持ち込もうとする。

 

チラーミィの素早さは以前にも増して早くなっており避けるのは厳しいであろう。しかし、今回の目的は攻撃を躱すことではないためそのことは問題ではない。

 

「グレイシア!バリアー!」

 

グレイシアは正面に頑丈な壁を張りチラーミィの攻撃を防ぐ。チラーミィはおうふくビンタを弾かれてしまい後退させられる。コットンガードに比べ効果は低いとはいえ、やはりこれを突破するのは難しい。

 

「やっぱり正面からでは簡単に防がれてしまい攻撃が届きませんね。」

 

リーリエはどう突破すべきかを考える。

 

正面から素直に近接戦を仕掛けるとコットンガードによって防がれる。スピードスターで遠距離戦を仕掛けようにもメガシンカをしたチルタリスに競り勝てるとは思えない。ならばどうすればいいのかと悩むリーリエに、シンジは一つアドバイスをした。

 

「1つ攻略のヒントを出すよ。」

「ヒントですか?」

「正面から素直に攻めるとバリアーやコットンガードであっさりと防がれてしまう。これはひかりのかべやリフレクターにも言えることだけど、その隙を突くのが1つの攻略の鍵だよ。」

「正面……隙……。技の隙?……そうです!」

 

リーリエはシンジの一言である作戦を思いつき行動に移す。

 

「チラーミィさん!まずはスピードスターです!」

「れいとうビーム!」

 

チラーミィはスピードスターで攻撃を仕掛けるが、その攻撃は見事にれいとうビームで撃ち落とされ貫通しチラーミィに接近する。だが、そうなることはリーリエも読めていた。

 

「あなをほるです!」

 

チラーミィはあなをほるで地中に潜りれいとうビームを回避する。あなをほるで回避されれば、相手は一時的に戸惑い隙が生じる。

 

「今です!スピードスター!」

 

チラーミィはグレイシアの背後に飛び出し奇襲を狙う。そしてそのままスピードスターを素早く撃ち攻撃する。

 

「こおりのつぶて!」

 

すぐさまグレイシアは振り向きこおりのつぶてでスピードスターを撃ち落とす。そこですかさずチラーミィは追撃を仕掛ける。

 

「おうふくビンタ!」

 

チラーミィの素早く軽やかな身のこなしすぐにおうふくビンタへと行動を移す。グレイシアもこれには反応することができずに直撃を受ける。今の動きこそ、見事に相手の動きを封じ隙を突いた怒涛の攻めであった。

 

「今の動きは中々よかったね。」

「はい!ありがとうございます!」

「あなをほるは回避と攻撃が同時にできる便利な技だよ。使い方、用途も様々だから戦術も広がるし、色々試す価値はあると思うよ。」

 

シンジのアドバイスにリーリエは頷き答える。そしてコットンガードへの対策は大丈夫だと判断したシンジは次の特訓へと移ろうとグレイシアを戻す。

 

「次のポケモンはこの子だよ!シャワーズ!」

『シャワ!』

 

グレイシアを戻したシンジは続けてシャワーズを繰り出した。するとシンジは次にやるべきことをリーリエに伝える。

 

「次はルナと戦った時のマリルの戦いを再現するよ。」

「マリルさんの戦いですか?」

「マリルの敗因は一つだけ。その一つの弱点を補うことができればそれだけでだいぶ変わると思うよ。」

「分かりました!マリルさん!お願いします!」

『リル!』

 

リーリエはシンジの指示に従いマリルを繰り出す。だが今度は前回の弱点を見つけることにある。そのため、リーリエは前回の戦いと同じ戦術をとった。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

「シャワーズ!ハイドロポンプ!」

 

マリルのバブルこうせんとハイドロポンプがぶつかり合う。しかし攻撃力の差は歴然で、バブルこうせんは簡単に押し返されハイドロポンプがマリルに命中する。

 

みずタイプのマリルに同じみずタイプのハイドロポンプはさすがにダメージが低い。そのためマリルも大したダメージを受けていない。

 

リーリエはてっきりパワー不足が欠点なのかと感じたが、シンジはなんの反応も示していない。恐らく弱点は別にあるのだろうと判断し、バトルを続行した。

 

「続いてころがるです!」

 

マリルは丸くなりころがるでシャワーズに接近する。ころがるは早く勢いもあるため簡単にとらえることは出来ないだろう。しかしシンジはルナがしたのと同じ方法でころがるを対処する。

 

「ハイドロポンプ!」

 

シャワーズはハイドロポンプでマリルの動きを止めようとする。その攻撃はマリルに直撃したのではなく、マリルの進行方向である地面に撃ったのだ。

 

そこには小さなくぼみができ、マリルはそこに引っ掛かり勢いよくくぼみを段差のようにして飛び上がった。それと同時にリーリエはハッとなりある事に気付いた。

 

「シャドーボール!」

 

シャドーボールが隙をさらしたマリルにヒットしてしまう。マリルは空中で撃墜されてしまいその場に墜落する。シャワーズが手加減したからかダメージは少なく、マリルもスクッと立ち上がった。

 

「気が付いた?」

「なんとなく……ですが」

 

シンジの言葉にリーリエはそう答えた。そしてリーリエは自分の気付いた弱点をシンジに説明した。

 

「ころがるの時、地面にくぼみをあけられてしまうと動きを止められてしまい反撃のチャンスとなってしまいます。前回もそれがキッカケで攻め込まれてしまい負けてしまいました。シンジさんの言っていた弱点は多分これかと……。」

 

シンジはリーリエの気付いたことに頷くことで答える。そしてもう一度やってみようかというシンジの言葉に、リーリエも頷いて答えマリルに指示を出した!

 

「マリルさん!もう一度ころがるです!」

『リルル!』

「シャワーズ!こっちもハイドロポンプ!」

『シャワ!』

 

マリルは再びころがるで接近する。シンジもタイミングを見てハイドロポンプで先ほどと同じように進行を阻害する。しかし今度は先ほどの結果とは違った。

 

「避けてください!」

 

マリルは転がりながら避けに位置をずらすことで回避に成功する。ころがるの最中でも多少の小回り程度であれば融通が効く。そのため前もって知っていればこの程度の回避は問題ない。

 

そのままころがるが成功しシャワーズを捉える。だがシャワーズもそう来ることが分かっていたためまもるでダメージを防いだ。

 

「やりました!」

「上手く対処できたね。でも、完璧に対策できたわけではないよ?」

「え?それってどうゆう……」

 

リーリエはシンジの言っている意図が分からず首を傾げる。そんなリーリエに分かるよう、もう一度やってみてと頼む。

 

「ではもう一度ころがるです!」

 

シンジの指示通り三度ころがるで攻撃を仕掛ける。当然シンジも先ほどと同様にハイドロポンプで防ごうとする。だがその技は先ほどと少し違う点があったのだった。

 

「ハイドロポンプ!」

 

ハイドロポンプで先ほどのようにくぼみをあけマリルの進行を阻害しようとするシャワーズ。しかし先ほどと違うのは、その攻撃を一点に集中させるのではなく、薙ぎ払った点であった。

 

前回の小さなくぼみではなく、薙ぎ払い一直線につくられたくぼみを回避することができずにハマってしまい勢いあまって大きく飛び跳ねる。その隙を再びシャドーボールが捉え確実に攻撃を当てられる。

 

「今のは……」

「回避されるのであれば回避されないように工夫すればいいだけだからね。」

「ではどうすれば……」

 

あそこまで完璧に対処されてしまえばどうやって対応すればいいのか分からなくなってしまう。リーリエも悩み、思わずシンジに尋ねた。シンジは、そんなリーリエにこう説明した。

 

「どれだけ柔軟な対応をされても、分かっていれば対処は難しくないよ。」

「分かっていれば……。」

 

リーリエはシンジの遠回しの言葉に頭を悩ませる。暫く考えると、そうかとある考えが思いつく。

 

そのことに気付いたリーリエの姿を見たシンジは、マリルの特訓はここまでにしようと次のステップに移る。あまり深くやりすぎても逆効果だし、チーム戦である以上マリルだけに時間を費やしても勝つことは出来ない。

 

「次が最も重要なことだと僕は思っているよ。」

「最も重要なこと?」

 

シンジはそう言ってモンスターボールを取り出し、それを上空に投げる。

 

『フィーア!』

 

するとそこからは彼の相棒のニンフィアが出てきた。その姿を見たリーリエはその重要なことがなんとなく察しがついた。

 

シンジは近づいてくるニンフィアの頭を撫でよろしくねと言う。その言葉にニンフィアも笑みを浮かべる。

 

「ルナとの戦いで最も重要なこと。それはチルタリスのムーンフォースだよ。」

 

やっぱりとリーリエは心の中で思った。シンジはそのまま彼女に説明を続ける。

 

「チルタリスの切り札と言ってもいいムーンフォースはとても強力な技だ。ムーンフォースをどうにかしない限りはバトルに勝つことは難しいよ。」

 

リーリエはシンジの言葉に頷く。戦った時、そのことには気づいていたため別段驚くことはなかった。だが、シンジのその後の言葉にリーリエは驚かずにはいられなかった。

 

「ムーンフォースへの対処法。それはシロンのムーンフォースしかないよ。」

「!?シロンが……ムーンフォースを……」

 

シンジの考えた対策とはなんとムーンフォースで対抗するという事であった。しかしシロンは当然ムーンフォースを覚えていない。そこでリーリエは以前起こった出来事を思い出す。

 

以前シロンはシンジとの特訓中にある変化が起こった。成功こそしなかったが、シロンはムーンフォースを習得する片鱗を見せたのだ。シロンのバトルの素質と経験であればムーンフォースを覚えるのも時間の問題だろうとシンジは考えている。

 

「ですが……そう簡単に覚えられるでしょうか……。」

「確かに技を覚えることは簡単じゃ無いよ。でも、そのための努力を怠らなければ決して不可能じゃない。もしリーリエとシロンがやると言うのであれば、僕もニンフィアも2人の特訓に付き合うよ。」

『フィア!』

 

リーリエはシンジの言葉を聞きシロンのモンスターボールを手に取り見つめる。するとシロンのモンスターボールが小さく揺れる。

 

「やってみたい……のですか?」

 

リーリエの言葉に再びシロンのモンスターボールが揺れる。それはシロンがやるのだと意思表示を示しているようでもあった。リーリエはシロンの意思を受け取り、やってみようと強く頷いた。

 

「では行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

そしてリーリエはシロンを繰り出す。その後、シンジが出した課題は単純明快なものであった。

 

「最後は僕とニンフィアを相手に戦ってもらうよ。」

「普通のバトルってことですか?」

「うん。だけどただバトルするだけじゃないよ。今回の目的はムーンフォースを覚えること。だからなるべくムーンフォースを意識して戦ってみて。」

 

シンジが最後に提示したことはニンフィアとバトルすることであった。シロンにはそれが一番最適だと言うシンジ。リーリエもシンジの出した内容に頷いて納得し承諾した。

 

そしてシンジの攻撃指示がバトル開始の合図となり最後の特訓が始まった。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

「躱してください!」

 

開幕のシャドーボールをシロンはジャンプして回避する。パワーで勝つことは出来ないと理解しているからこそ回避行動を取ったのだ。

 

回避後、シロンはすかさず反撃をとる。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

れいとうビームで流れるように反撃をするシロン。その動きからは今までのバトル経験で確実にバトル慣れをしているのが分かる。

 

「ようせいのかぜ!」

『フィーアー!』

 

ニンフィアはようせいのかぜで確実にれいとうビームを防ぐ。着地したシロンにチャンスだと見たシンジはあの技の指示を出した。

 

「ムーンフォース!」

 

自身の大技であるムーンフォースを放つニンフィア。タイミングよく着地を狙われたことで回避することができずムーンフォースが直撃する。

 

「シロン!大丈夫ですか?」

『コォン!』

 

リーリエの問いかけにシロンも元気に答える。直撃は受けたがダメージは浅くまだまだ行けるようだ。

 

「もう一度ムーンフォース!」

 

ニンフィアは繰り返しムーンフォースを放つ。

 

シンジがムーンフォースを乱発するのは珍しいことだ。普段は確実なチャンスにしか撃つことはないが、今回に限っては連続で撃っている。理由はシロンにムーンフォースを扱うコツを掴ませるためであろう。

 

そう考えたリーリエはシロンに次の指示を出した。

 

「シロン!よく観察しながら躱してください!」

 

シロンはリーリエの言葉に小さく頷く。そしてシロンはムーンフォースをじっくりと観察し、引き付けたうえで回避する。

 

自身がポケモンのように技を使えないためシロンに助言をすることができない。それゆえどこかもどかしさを感じるリーリエ。だがそれならば自分ができる事はシロンを信じることだ。そう思ったリーリエはあの技の指示を出してみる。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コン!』

 

シロンは飛び上がりムーンフォースの態勢に入る。シンジも遂に来たかと身構える。

 

だが使ったことの無いフェアリー技。それも強力なムーンフォースであるため上手く発動することができない。いい線までは行くが集中力が続かずせき込み技が中断されてしまう。

 

「っ!?まだだめですか……」

 

だがこれだけで諦めてしまっては確実にルナに勝つことは出来ない。それだけ彼女は強大な壁なのだ。リーリエは覚悟を捨てることなくバトルを継続する。

 

「こおりのつぶてです!」

「ムーンフォース!」

 

こおりのつぶてを貫通しムーンフォースを三度放つニンフィア。シロンはもう一度ムーンフォースをよく観察して回避する。そこで一つリーリエは疑問に思うことがあった。

 

(ニンフィアさんはムーンフォースを連続で使用しているのにもかかわらず疲労の色を全く見せません……)

 

対してシロンは一度目で疲労している様子であった。慣れているからだと言ってしまえばそれだけで終わりだが、リーリエにはそうは感じなかった。

 

(シンジさんが普段多用しないのは隙が大きく、力の消耗もあるからだと思います。ですがもしかしたらそこにヒントが……)

「ニンフィア!もう一度ムーンフォース!」

 

そうこう考えている内にニンフィアのムーンフォースが放たれる。シロンはムーンフォースを冷静に回避するが、それを見たリーリエはふと感じることがあった。

 

(!?もしかしたら……)

「シロン!」

『コォン?』

 

合っているかどうかは分からないが試してみる価値はあるかもしれないとシロンを自分の元へと呼び寄せる。リーリエはその場でしゃがみ、自身の気付いたことをシロンに伝える。シンジはそんな2人の様子をじっと観察していた。

 

「似てるよね。昔の僕たちに……」

『フィア』

 

シンジの言葉にニンフィアも頷く。リーリエ達の姿を見ていると昔の自分を見ているような感覚になるのだ。まるでかつて同じように悩んでいた過去の自分たちのようだと。

 

「一つ貴女に試してみてほしいことがあるんです。」

『コォン?』

「ニンフィアさんのムーンフォース。あれを見て思ったんです。ただ想像や思い付きなどでは撃てないんだって。」

 

シロンはリーリエの言葉に首を傾げながらも彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「まず大事なのは集中力です。集中力を切らさず、体の中心に力を込めて下さい。慌てなくていいです。ゆっくりと力を溜め、最大になったタイミングで放ってください。」

 

シロンはリーリエの言葉に強く頷いた。彼女が考えたのはムーンフォースに関してではなくもっと重要なこと。それはいたって単純で基礎的な事だ。

 

彼女が言ったことは冷静に最後まで集中力を保つこと。焦って撃とうとすればどうしても集中力が続かずに不発に終わってしまう。

 

シンジのニンフィアを見て思ったことは、ムーンフォースを撃つ際に例えチャンスだろうとピンチだろうと冷静に撃っていたことが不思議に感じたのだ。それだけでムーンフォースが完成するとは思えないが、それでもなにも試さないよりは遥かにいいだろうとリーリエはこの手にかけることにした。

 

「行きますよ!シロン!ムーンフォース!」

『コォン!』

 

シロンは覚悟を決め飛び上がる。そしてリーリエに言われた通り、集中して力をゆっくりと溜めていく。シロンも小さなオーラを纏い、そのオーラが少しずつだが大きくなっていく。

 

シロンの様子をじっと見守るリーリエ。その緊張が解放され、遂にシロンは力を解き放とうとしていた。

 

シロンが力を解き放つと、そこには小さくも月の力を感じられる球が放たれていた。その球は小さく、力強さは感じられるものではないがムーンフォースそっくりであった。

 

ニンフィアはそのムーンフォースを回避することなくリボンを盾にして受け止める。威力も大きくはないが、ニンフィアとシンジも確かに自分たちの使うムーンフォースと同じ力を感じた。

 

「……うん。今のは確かにムーンフォースだったね。」

「で、ではシロンは!」

「覚えた……と言う訳ではないけど充分やれるところまではやったと思うよ。」

『コォン!』

 

シンジの言葉にリーリエは嬉しさを覚え自分の元へと駆けてくるシロンを抱きしめる。強力なムーンフォースのコツをこの短期間で掴めたのは充分すぎるくらいだ。

 

「僕ができるのはこれまでだよ。後は、実戦で感覚を体に染み込ませていけば自然とできるようになる。」

「実戦でですか?」

「うん。ルナたちは確かに強いけど、つけ入る隙は必ずあるよ。」

 

シンジはそれに、と付け加えて言葉を続けた。

 

「リーリエ達は気付いていないかもしれないけど、シロンは実戦を重ねるごとに確実に強くなっているよ。」

「え?それは本当ですか?」

 

シンジに言われたことにリーリエはあまり実感がわかない。それはシロンも同じだ。実際、自身の成長は自分たちで気づくことはない。シンジたちも同じ経験をしているためよくわかる。他のトレーナーたちもきっと同じであろう。

 

リーリエ達は本当に実戦で上手くいくのか不安を感じるが、シンジの言葉を信じて覚悟を決めた。

 

「明日、ルナさんに再戦を挑んでみます!勝てるかどうか……いえ、必ず勝ってバッジをゲットして見せます。」

 

リーリエのその心意気にシンジも小さく頷いた。勝てるかどうかではなく、必ず勝つと言い放ったリーリエは確実に実力だけでなく心も成長している証だ。

 

こうして明日ルナとの再戦を決意する。正直勝算で言えば低いかもしれないが、それを覆すほどの可能性をリーリエ達は持っている。本人たちは自覚していないが、それを実戦でどれだけ発揮できるかが勝敗の鍵だ。

 

そうしてリーリエのアザリアジム攻略のための特訓は良い結果となって終了し、明日の再戦を迎えるだけとなった。リーリエたちの挑戦はまだまだ続く!




次回再戦なり!上手く描けるか不安ですが、最後のジムなので納得できるように仕上げたいですね。余り期待を持つとガッカリするかも?(;-ω-)

とりあえず他作品様とのコラボについての詳細を一部公開いたします!

本日コラボさせていただくのはパラドファンさんの書かれている“ポケットモンスターもう一つのサン&ムーン”です!コラボを書くのが今から楽しみです。

ただ恐らく書くタイミングとしてはカントーリーグ開催直前辺りになると思います。それまでサボっていた分本編進めて行きたいかと思っております。どうかご了承くださいm(__)m

ではではまた次回お会いしましょう!ノシ


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再戦!アザリアジム!限界を超えて!

スマブラでピカニキにハマり始めたヌシです。でんきショックが強い

どうでもいいことですが前回で全体文字数がフリーザ様の戦闘力を超えてました。だからどうしたというわけではない。

ニンフィアかわいい


ルナとの再戦に備えシンジと特訓をしたリーリエとポケモンたち。今、最後のバッジをかけたリーリエのリベンジが始まろうとしていた。

 

「リーリエ、もう再挑戦の準備は出来たってことでいいの?」

「はい!今度こそ絶対に勝って、バッジをゲットしてみせます!」

 

リーリエの決意溢れる表情にルナもニヤリと笑みを浮かべる。それだけルナもリーリエの成長を感じ取り、この再戦を楽しみにしていたのだ。

 

そんな彼女たちの姿を、シンジは観客席にて眺めていた。

 

「リーリエ、いい顔になってきたね。ただ問題は、リーリエが本来以上の力を発揮できるかどうか、だね。」

 

ハッキリ言えば特訓の段階ではルナに勝てる確率はゼロに近い。あのままでは再び負ける可能性が高いのは明白だろう。

 

しかし、短期間で強くなるのは不可能だという事もまた事実。望みの薄い特訓に時間を費やすよりも、実戦で自身の力を限界以上に引き出すことの方が確立が高い。

 

特にリーリエは本番に強いタイプのトレーナーだ。そう言ったトレーナーの方が強くなる可能性も高く、予想外の結果を招くという事も多い。シンジはそう考え、彼女をこの戦いの舞台へと送り出したのだ。

 

「……いつか僕の前に立つと考えると、楽しみである反面ちょっと怖いね。」

 

シンジはありえる未来を想像し、僅かに口角が上がり微笑んだ。

 

「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダールナによるジム戦を始めます!使用ポケモンはジムリーダーが1体。対してチャレンジャーは3体のポケモンを使用していただきます!それでは両者、ポケモンを!」

「私のポケモンは当然この子!行くよ!チルタリス!」

『チィルゥ!』

 

審判の合図と同時にルナは生き生きとした様子でチルタリスを繰り出した。そしてすぐに腕のメガリングに手をかけた。

 

「さっそく全力で行くよ!チルタリス!メガシンカ!」

『チルゥ~!』

 

チルタリスのスカーフについているメガストーンとルナのキーストーンが共鳴を開始する。互いの持つ石から光が交差し、その光に包まれたチルタリスの力が膨大に膨れ上がりチルタリスはその光から解き放たれた。

 

『チィル!』

 

そこにいたのはかつてリーリエが成すすべもなく敗北してしまったメガチルタリスの姿であった。以前と同じで、チルタリスから放たれる威圧感はただものではない。リーリエにも緊張が走り、僅かに手が汗ばんでくる。

 

だが、それでも彼女とメガチルタリスに勝つのだと強い意思を持ちモンスターボールを手にした。

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラーミィだ。リーリエが最初にルナと戦った時に最初に繰り出したのも同じくチラーミィであった。彼女はあの時と同じメンバーでリベンジを果たすつもりのようだ。

 

「それでは、バトル開始!」

 

審判の合図によりジムバトルが開始される。先に動いたのはリーリエであった。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!」

 

先ずはスピードスターによる牽制を仕掛ける。堅実かつ高速なこの一手はいつものチラーミィの戦い方だ。だがその手はルナも当然読んでいた。

 

「りゅうのはどう!」

 

チルタリスはりゅうのはどうでスピードスターを正面から蹴散らす。チラーミィはその攻撃を難なく回避する。互いにダメージを与えるのが目的の攻撃でなかったため攻撃を凌ぐのは容易であった。

 

そしてお互いに挨拶が済んだのか、チラーミィは本格的な攻勢へと入った。

 

「チラーミィさん!走って撹乱してください!」

 

チラーミィは自身の素早さを活かしチルタリスに捉えられないように接近する。さすがのチルタリスも簡単に攻撃を加えることは出来ないが、この状況でも慌てず冷静にチラーミィを観察している。

 

「おうふくビンタです!」

『チラッミ!』

 

チラーミィはチルタリスの懐の潜り込みおうふくビンタにより近接戦を仕掛けた。しかし、当然と言わんばかりにチラーミィの攻撃はあの技によって防がれたのであった。

 

「コットンガード!」

『チィル!』

 

チラーミィの果敢な攻撃はコットンガードによって防がれてしまう。コットンガードによって弾き返されたチラーミィは空中で態勢を立て直し反撃する。

 

「続けてスピードスターです!」

「はがねのつばさで防いで!」

 

チラーミィはスピードスターによる怒涛の攻めを見せるチラーミィ。しかしチルタリスははがねのつばさを盾にして攻撃を完全に防ぐ。そしてダメージを殺したチルタリスはすかさず反撃の態勢に入る。

 

「りゅうのはどう!」

 

チラーミィの着地の隙を狙ってりゅうのはどうで攻撃を仕掛けたチルタリス。このままでは以前戦った時と同じ結果となってしまう。しかしリーリエもこうなることは読めていたと、すぐにチラーミィに指示を出した。

 

「チラーミィさん!あなをほるです!」

『チラミ!』

 

チラーミィはあなをほるでりゅうのはどうを回避し地中へと潜る。攻撃後の着地によってできる隙をあなをほるで上手く無くしたのだ。前回と違いはがねのつばさによる防御をしてくると充分に予測で来ていたからこそリーリエも反応出来たのだ。

 

これにはルナとチルタリスも驚かずにはいられない。あなをほるは前回の戦いで見せていない。知らない技を見せられれば咄嗟に対応するのは例え強者であっても難しい。それにあなをほるは地中に潜り姿を隠し、どこからでてくるか分からない技であるため相手にとっては厄介な技である。

 

「今です!」

 

リーリエの合図と同時にチラーミィは地中から飛び出して姿を現した。チラーミィはチルタリスの足元から飛び出し、直接攻撃を加える選択をした。

 

ひこうタイプを失ったチルタリスにあなをほるが直撃し、チルタリスは今の一撃で大きく怯む。どれだけ鍛えていたとしても、地中からの不意打ちであればダメージはあるだろう。

 

「続けておうふくビンタです!」

 

あなをほるで怯んだチルタリスにおうふくビンタが炸裂する。チルタリスにおうふくビンタが複数ヒットし、チルタリスは叩きつけられる。このダメージはどちらにとっても大きい意味があるだろう。

 

しかし、チルタリスは今のダメージを耐え再び空へと浮かび上がる。メガシンカともなれば攻撃力だけでなく耐久力も一級品だ。チルタリスにもまだまだ余力がある様子である。

 

「中々やるじゃん。でもまだまだ!チルタリス!りゅうのはどう!」

「っ!?躱してください!」

 

チルタリスのりゅうのはどうをジャンプすることで回避するチラーミィ。だがチルタリスとルナの怒涛の反撃は休むことはなかった。

 

「はがねのつばさ!」

『チィル!』

『チラ!?』

 

ジャンプして回避したチラーミィにはがねのつばさが直撃する。今度は逆にチラーミィが地面に叩きつけられてしまい大きなダメージを負う。

 

「今だよ!ムーンフォース!」

「スピードスター!」

 

高所からムーンフォースを放つチルタリス。それに対しチラーミィはスピードスターで反撃するも、明らかにダメージとパワーによる差があり押し負け、ムーンフォースがチラーミィに直撃する。

 

砂埃が晴れると、そこにはチラーミィが目を回して倒れている姿が映った。前回に比べかなり健闘したが、それでも虚しく倒れてしまった。

 

「チラーミィ、戦闘不能!チルタリスの勝ち!」

「……お疲れさまでした、チラーミィさん。あなたの努力は無駄にはしません。」

 

リーリエはチラーミィをモンスターボールへと戻す。敗北こそしてしまったが、チラーミィの戦いは決して無駄ではない。そう思ったリーリエは次に繰り出すポケモンの入ったモンスターボールを握り締める。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

次に繰り出したのはマリルだ。前回でも2番手を務めていたため、ルナもマリルが来ることは分かっていた。

 

その時、シンジの持つモンスターボールの一つが揺れ、そこから一匹のポケモンが飛び出した。

 

『イブイ!』

「イーブイ?君も応援したいの?」

『イブブイ!』

「じゃあ一緒に応援しよっか。」

 

イーブイはモンスターボールから自分で飛び出し、自分も応援したいと頷いた。シンジもイーブイと応援しようと、イーブイを抱きかかえた。

 

『イブブーイ!』

『リル?リルルー!』

 

イーブイの声に反応し、マリルも元気よく手を振って答える。もしかしたら、仲の良いマリルを応援したくてイーブイはモンスターボールから出てきたのだろうか。

 

だが、マリルもイーブイが見てくれているのに気付くとどこかやる気に満ちている様子である。それだけイーブイに見られていることが嬉しいのかもしれない。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

「はがねのつばさ!」

 

マリルがバブルこうせんで先制攻撃を仕掛ける。しかしチルタリスはバブルこうせんをはがねのつばさを振るって正面から打ち消した。それでも怯むことなく、マリルはチルタリスを攻め立てる。

 

「ころがるです!」

『リル!』

 

マリルはころがるで一直線にチルタリスへと向かう。だが当然その動きはルナたちにも読めていた。

 

「りゅうのはどう!」

 

りゅうのはどうによりマリルの行く手に一点のくぼみをつくり進行を遮る。しかしリーリエもそうなることは予測済みだ。

 

「横に回避してください!」

 

マリルは転がりながら横に回避してくぼみを避ける。それでもチルタリスとの距離はまだかなりある。チルタリスは冷静に次の妨害行動へと移る。

 

「もう一度りゅうのはどう!」

『チィル!』

 

チルタリスは再びりゅうのはどうを放つ。しかしそのりゅうのはどうは先ほどと違い一点ではなく、薙ぎ払う形で放たれた。そのりゅうのはどうにより今度は長いくぼみができ避けることは難しい状況になってしまった。

 

マリルも勢い余りそのくぼみに嵌り大きく飛び跳ねる。このままでは前回と同じ結果となり終わってしまう。だがマリルもリーリエも、あの時のまま終わるはずもなかった。

 

「今だよ!はがねのつばさ!」

「その勢いを利用してください!アクアテールです!」

 

隙を見つけたとはがねのつばさで近接攻撃を仕掛けるチルタリス。しかしリーリエはこの瞬間を待っていた。

 

飛び跳ねてしまったが、マリルは現在勢いがついている状態だ。その勢いを利用し、ころがるを解除して空中から尻尾に力を込めアクアテールを放つ。咄嗟の事にチルタリスははがねのつばさを盾にしてアクアテールを防いだ。

 

しかしマリルの放ったアクアテールはガードしたチルタリスを弾き返して地上に叩き落とすことに成功する。上空から落とされたチルタリスは空中で態勢をなんとか立て直す。

 

「まだまだ!チルタリス!ムーンフォース!」

『チィル~!』

 

チルタリスはムーンフォースで攻撃後の隙をさらしたマリルに攻撃する。空中にいるマリルは当然回避することができずに直撃を受けてしまう。

 

「マリルさん!大丈夫ですか!?」

『イブ!?』

『リルル!』

 

なんとか受け身をとりダメージを抑えるマリル。リーリエとイーブイはマリルが心配になり呼びかけると、マリルもそんな2人の声に答えまだまだ行けると言う意思表示をする。

 

「バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

「来たね。回転しながらはがねのつばさ!」

 

マリルはバブルこうせんで反撃する。だがチルタリスははがねのつばさで迎え撃つ。

 

チルタリスはそこに回転を加えることで勢いをつけ、バブルこうせんを無効化する。さらに回転することで通常のはがねのつばさよりも範囲が格段に広がる。それによりマリルは回避が間に合わずに直撃を受ける。鋭さも増し、これはただでは済まないダメージとなるだろう。

 

マリルは諦めずに立ち上がるが、それでも虫の息と言った様子だ。倒れてしまうのも時間の問題だ。

 

「ムーンフォース!」

 

チルタリスはムーンフォースでフィニッシュに入る。その時、リーリエは1つの作戦を思いついた。

 

(少し危険かもしれませんが、試してみるしかないですね。)

「マリルさん!私が合図したらムーンフォースにアクアテールを!」

『!?リル!』

 

リーリエの言葉にマリルも一瞬驚くが、彼女の言葉を疑うことなく実行に移す。一歩間違えればただでは済まないが、このまま待っていても結局やられてしまうだけだ。ならばいっその事こちらから攻撃を仕掛ける方がいい。

 

そしてチルタリスはムーンフォースを放つ。マリルもギリギリまで待機する。

 

「今です!アクアテール!」

 

リーリエの合図にマリルは小さく頷きジャンプする。そしてリーリエの指示通り、アクアテールでムーンフォースに攻撃を加えた。するとマリルはムーンフォースの反動を活かし、更に高くジャンプした。

 

『チル!?』

「うそ!?」

 

この光景にはチルタリスとルナも驚く。まさか自分の自慢の技のムーンフォースが逆に利用されるとは思わなかったのだ。そしてその高くジャンプした勢いを利用し再び攻撃を加える。

 

「もう一度アクアテールです!」

 

マリルは上空からアクアテールを振り下ろす。チルタリスも咄嗟のことでガードも回避も出来ず直撃する。チルタリスにとってもこれはかなりのダメージとなっただろう。

 

だが、それでもチルタリスは倒れない。ルナも驚きはしたが、すぐに態勢を立て直し反撃した。

 

「はがねのつばさ!」

 

ダメージは蓄積しているが、それでもチルタリスの素早さは決して衰えていない。チルタリスの攻撃がマリル迫る。マリルも回避しようとするが、今の攻撃と今までの疲労により膝が崩れる。そのまま限界が訪れてしまい、回避ができずにはがねのつばさの直撃で倒れてしまう。

 

「マリルさん!」

「マリル戦闘不能!チルタリスの勝ち!」

 

マリルは今の一撃で戦闘不能に陥る。チルタリスに大健闘したものの、一歩及ばず破れてしまった。だが、それでも以前に比べて充分に渡り合えている。リーリエはマリルに感謝してモンスターボールへと戻す。

 

「マリルも頑張ったけど、チルタリスを倒すことはできなかったね。」

『イブ……。』

 

マリルが負けてしまって残念だと言う表情で落ち込むイーブイ。だが、そんな中シンジは一つ彼女の事で思うことがあった。

 

「でもリーリエは確実にバトルの中で強くなっている。」

 

リーリエは相手の動きを上手く利用する戦法を得意としている。本人は気付いていないが、その戦術をこなすのは決して簡単ではない。洞察力の高いリーリエだからこそできる技だ。

 

そんな中、瞬時に相手の動きを利用して裏をかくのは彼女自身が成長している証拠だ。むしろここからが本当の戦いだろうと、シンジは彼女の戦いを静かに見守ることにした。

 

(最後までがんばれ、リーリエ)

「これで最後です……。お願いします。」

 

そう言ってリーリエは最後のポケモンが入ったモンスターボールを手にする。

 

「シロン!」

『コォン!』

 

リーリエは最後となったポケモン、シロンを繰り出した。彼女が強くなっていることを実感したルナは、決して油断するなとチルタリスに呼びかけた。チルタリスもルナの言葉に頷いて答える。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

「コットンガード!」

 

まずはこおりのつぶてでの先制攻撃を仕掛ける。チルタリスはコットンガードにより防御力を高めてダメージを抑えるが、弱点のこおりタイプでもあるため多少はダメージがある様子だ。今までの疲労も相まってダメージも確実に蓄積している。

 

「走ってください!」

「近付けさせないで!りゅうのはどう!」

 

捉えられないように動き回るシロンに対し、チルタリスはりゅうのはどうを連発する。次々と攻撃を躱していくシロンだが、怒涛の攻撃により最後まで回避しきれずにりゅうのはどうが命中してしまい後ろに下がらされる。

 

シロンは今の攻撃でダメージを受けてしまうも、なんとか耐える。疲労が溜まりチルタリスの攻撃力が落ちてきたのか、以前ほどのダメージはみられなかった。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

「はがねのつばさ!」

『チル!』

 

シロンのれいとうビームをはがねのつばさによって弾き防いだチルタリス。チルタリスには効果抜群なれいとうビームも、鋼のように硬化した翼には効果は薄い。

 

チルタリスはそのまま硬化した翼を維持し、はがねのつばさで近接戦に移る。だがシロンはその攻撃をジャンプして回避した。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

「躱して!」

 

そのままチルタリスの背後からこおりのつぶてで反撃するシロン。しかしチルタリスはそれを次々と回避し再び特異な上空へと上昇した。やはり疲労が溜まっていても機動力では空を自由に飛べるチルタリスに分がある。

 

「ムーンフォース!」

 

出し惜しみができないと判断したルナはムーンフォースを指示する。きた、と感じたリーリエも、シロンにあの技の指示を出し対抗した。

 

「こっちもムーンフォースです!」

『コォン!』

 

チルタリスのムーンフォースに対し同じくムーンフォースで対抗するシロン。互いの体内の月の力が宿され、徐々に力が溜まっていくのを感じる。

 

そしてチルタリスとシロンは同時に力を解き放つ。互いのムーンフォースは中央でぶつかりあう。だが結果は直ぐに出た。

 

チルタリスのムーンフォースがシロンのムーンフォースを破ったのだ。シロンも反応が遅れてしまい、回避することができずにダメージを受けてしまう。流石にムーンフォースともなればかなりのダメージだ。

 

「シロン!」

『こ……ん……。コン!』

 

シロンはリーリエの言葉に反応し立ち上がる。慣れないムーンフォースの反動、そしてムーンフォースの直撃によるダメージはシロンにとってもかなり負担が大きい。

 

だが、それでもシロンは諦めていなかった。同時にリーリエも諦めていなかった。お互いの事を、パートナーの事を信じているからだ。

 

「これで終わらせるよ!ムーンフォース!」

 

再びチルタリスは力を溜める。このまま次に直撃を受けてしまえば一溜りもないだろう。

 

その時、リーリエに一つの考えが浮かぶ。上手くいくかどうかは分からない。だけど、それでもシロンなら大丈夫だと彼女の中で確信があった。その一つの思い付きに彼女は賭けることにした。

 

「シロン!私の事、信用してくれますか?」

『コォン!』

 

シロンはリーリエの方へと振り向くことなく、迷わずに頷き答えた。その答えを聞いたリーリエは、私達なら奇跡だって起こせると信じることができた。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コン!』

 

シロンは再びムーンフォースで対抗する。先ほどあっさりと破られてしまったためムーンフォースの競り合いに勝てるとは思えない。だが、それでもリーリエはこの技にかけたのだ。

 

再び同時に放たれるムーンフォースが激突する。すぐに破られるかに思えたムーンフォースは、先ほどと違い僅かに拮抗していた。それにはルナたちも驚き声を出せない。

 

その時間は僅かに一瞬であったが、リーリエにとってはその一瞬だけでも充分であった。

 

「こおりのつぶてです!」

 

シロンはこおりのつぶてを放ち、それを中央でぶつかり合っているムーンフォースにぶつける。すると互いのムーンフォースが弾きとび大きな衝撃と共に消滅した。

 

「っ!?ムーンフォースが!チルタリス!りゅうのはどう!」

『チィル!』

 

視界を奪われチルタリスだが、その衝撃を晴らすためにりゅうのはどうで薙ぎ払い視界を回復させる。しかし……

 

『チル!?』

「!?シロンがいない!?」

 

そこにはシロンの姿が見当たらなかった。もしかしたらと見上げるルナであったが、その時にはすでに遅く対応することができなかった。

 

「シロン!れいとうビームです!」

 

シロンは空中にジャンプしチルタリスの死角かられいとうビームで奇襲をかける。チルタリスもその攻撃を受け、地面に勢いよく叩きつけられる。その瞬間にも大きな衝撃波が発生しその衝撃が晴れると、そこにはメガシンカの解けたチルタリスが目を回して倒れている姿が映った。

 

『チル~……』

「チルタリス、戦闘不能!ロコンの勝ち!よって勝者!チャレンジャーリーリエ!」

 

その瞬間、リーリエの勝ちが決定した。無我夢中で戦っていたリーリエは、自分でも勝ったのだという事実が信じられない様子でその場に座り込む。そんな彼女の元に、シロンが笑顔で飛び込んだ。

 

「かった……のですか……?ルナさんに?あのメガチルタリスさんに?」

『コォン!』

 

ボロボロになりながらも喜ぶシロンを見て、リーリエはやっとこれは現実なのだと言う事に気付く。リーリエはシロンを強く抱きしめ、涙を浮かべて笑みを零す。

 

「……お疲れ様、チルタリス。後はゆっくり休んでね。」

 

ルナはチルタリスをモンスターボールに戻す。だがルナは一切悔しさを感じてはいない。むしろどこか清々しい感情が溢れていた。ルナはリーリエの元へと歩み寄り声を掛けた。

 

「完敗だよ完敗。まさか私とチルタリスが負けるなんてね。」

「ルナさん……。」

「正直負けるなんて思ってなかったよ。私も思わず本気で倒しにいっちゃったし。」

 

ルナは一呼吸おいてリーリエに向き直る。

 

「チャレンジャーと戦って、こんなにも熱くなったことはなかったよ。こんな気持ちになったの、シンちゃんとの戦い以来かな。」

「シンジさんとの?」

「うん。リーリエのバトル、シンちゃんによく似てるんだ。夢中になると無鉄砲なところとか、ポケモンと信じあっているところとかさ。」

 

そしてルナは審判から渡された物を受け取り、それをリーリエに差し出した。

 

「バトルの勝敗以上に、私はリーリエに敬意を表したい。ほら!これがアザリアジムに勝利した証、バイオレットバッジだよ!受け取って!」

「これが……アザリアジムのジムバッジ……!」

 

天使の片翼のような、上から濃い紫色が徐々に薄くなり白色に染まっていくデザインをしたバッジ、バイオレットバッジをルナから受け取る。その時、本当にあのルナに勝てたのだと実感し喜びをあらわにした。

 

「バイオレットバッジ!ゲットです!」

『コォン!』

『リルル!』

『チラチ!』

 

そして8つ目のバッジゲットをシロン、マリル、チラーミィと共に喜び、バイオレットバッジを丁寧にバッジケースへと保管した。

 

「リーリエ、おめでとう!」

「ありがとうございます!シンジさん!」

『イブブイ!』

『リル!?』

 

シンジはリーリエの勝利を祝福する。イーブイも感極まってマリルに飛びついた。マリルも急なことで驚き顔を赤くするが、それでもイーブイが喜んでくれていることに嬉しさを感じている。

 

「これでジムバッジが8つ揃ったね。じゃあ次はいよいよ……」

「はい!カントーリーグ出場です!」

 

シンジの言葉に続いてリーリエは次なる目標を告げる。リーグ公認のジムバッジを8つ手に入れたリーリエは、遂にカントーリーグ出場の資格を得たのだ。

 

カントーリーグには自分と同じく数多の試練を抜けてきた強者(つわもの)たちが(つど)っている。間違いなく強豪ばかりで、厳しい戦いになることだろう。

 

「今年もカントーリーグはセキエイこうげんで行われるよ。強敵ばかりだと思うけど、自分の力を全て出し切れば必ず勝てるから。何よりバトルは楽しんでいこう!」

「バトルは……楽しむ?はい!ありがとうございます!ルナさん!」

 

ルナの激励を受け、より一層気合の入るリーリエ。どれだけの強敵が待ち受けていても、自分たちならどこへだって行けると思える。何故なら、自分には今まで戦ってきた仲間たちがいるんだから。

 

そうしてリーリエとシンジはルナと別れを告げ、アザリアタウンを後にした。リーリエはこれから待ち受ける最大の試練の向け歩みだした。さあ、次に彼女たちが目指す場所は強者の集う地、セキエイこうげんだ!




アザリアジム突破です!
バイオレットバッジなるものは確かなかったはずです。調べても出てこなかったのでそのはずです。既存であればにわか晒して申し訳ありません。

カントー編完結が見えてきた……気がします。
当小説のポケモンカップリングがイブマリとなっております。理由はなんか組み合わせが好きだったからです。なおタマゴグループは全く異なります。

カントーリーグまではあと少しです。カントーリーグ直前にコラボ書くと思いますのでご了承下さいませ。アローラ地方の話も書きたい(切実

1週間で10話書き上げればいけるか?(マルス理論)


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迷子を探せ!無邪気なピッピ!

結局メインデータのイーブイに予想以上の愛情というか愛着がついた所為でサブでメインストーリーを周回する予定が無くなってしまったヌシです。

うちの子が一番かわいい(キリッ

というわけで今回は短めです。ピッピの詳細を明かした回を書きたかっただけです。

これが今年最後の投稿になりまする


アザリアジムのジムリーダー、ルナに勝利し見事最後のバッジであるバイオレットバッジを手に入れたリーリエ。次なる目的地、カントーリーグが開かれるセキエイこうげんへと向かい旅を続けている道中、シンジとバトルをし特訓している最中だ。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

 

シロンはムーンフォースを放ち攻撃するが、ニンフィアのようせいのかぜに阻まれる。大分形にはなってきたが、それでも威力がまだまだ未熟だ。だが短期間にこれだけ成長できているため、完成までは時間の問題だろう。

 

「とりあえず今日の訓練はこれまでにしようか。根を詰めても逆効果になるだけだしね。」

「そうですね。シンジさん、特訓に付き合ってくれてありがとうございます!」

「うん、特訓だったらいくらでも付き合うよ。」

 

リーリエが礼を言うと、シンジも気にしなくといいと言葉をかける。そして休憩のため、この場で暫く休むことにしたのだった。

 

「みなさん!出てきてください!」

『チラ!』

『リルル!』

『ソウソウ!』

『ピッピ!』

 

「みんなも出てきて!」

『リーフ!』

『グレイ!』

『ブラッキ!』

『エーフィ!』

『イブブイ!』

 

リーリエはシロン以外の手持ちを、シンジはニンフィア以外の現在所持している手持ちを外に出した。今からみんなで昼食の時間だ。

 

食事は主にシンジが担当している。その間にリーリエは皿を並べたり飾りつけをするなど、自身に出来ることをやっている。少しでも装飾があった方が気分も良いし、大勢で食べた方が食事は楽しくなるものだ。

 

暫くすると食事の準備が出来上がった。

 

「ほら、みんなの分はここにあるよ。」

「たくさんあるので一杯食べてくださいね。」

 

シンジが器に入ったポケモンフーズを持ってくると、みんな食らいつく様に飛びついた。それほどお腹が空いていたという事だろうか。

 

ポケモン達が美味しそうに食べるのを確認してから、シンジたちも自分たちの食事に移る。

 

「今日のご飯も美味しいです!」

「ありがと。そう言って貰えると僕も作る甲斐があるよ。」

 

リーリエもシンジの作るご飯は大好きなようだ。シンジもリーリエの言葉に嬉しそうに微笑む。

 

そんな中、一匹のポケモンが周囲をチラチラと確認している姿があった。

 

『ピィ?』

 

そのポケモンはリーリエのピッピであった。ピッピは初めてみんなと食する食事でどうすればいいのか戸惑っているのか周りを確認する。隣ではチラーミィやマリルたちが美味しそうにポケモンフーズを食べている。

 

『ソウ?』

 

戸惑っているピッピにフシギソウがゆっくりと近付く。面倒見のいいフシギソウは、ピッピにどうしたのかと尋ねた。ピッピも彼に食べていいのかと聞くと、フシギソウも遠慮なく食べればいいと笑顔で答える。

 

ピッピはフシギソウの言葉に従いポケモンフーズを食する。すると途端に満面の笑みを浮かべた。どうやら彼女も気に入ってくれたようだ。

 

『ピッピ!』

『ソウソウ』

 

ピッピは次々とポケモンフーズを食していく。彼女が美味しそうに食べる姿に満足したフシギソウは、自分の食事へと戻る。

 

暫くし、みんなの食事が終わる。シンジとリーリエは後片付けをしており、フシギソウとニンフィアもその手伝いをしている。

 

しばしの休息という事で、それぞれが自分の好きな時間を過ごしている。一人で静かに過ごしていたり、日向ぼっこをして気分を落ち着かせたり、ポケモン同士仲良く遊んでいたりと様々だ。

 

『ピィ?』

 

一方、ピッピは何かを見つけたのかそれを目で追う。その視線の先には一匹のポケモンの姿があった。そのポケモンはバタフリーで、この辺りでは見かけることも特に珍しくないポケモンだ。

 

だがピッピにとっては新鮮で、見るもの聞くものの殆どが初めてのものだ。彼女は無意識の内にバタフリーを追いかけた。

 

『ピッピ!』

 

バタフリーはそのまま森の奥へと入っていく。ピッピもバタフリーを追って入っていってしまう。

 

『ピィ?』

 

しかしバタフリーを追いかけているつもりが、バタフリーの姿を見失ってしまったピッピ。ピッピが周りを見渡すがそこには誰の姿もない。その時に自分がリーリエたちから離れてしまったことに気付く。

 

『ピィ?ピィ!』

 

その時ピッピの視線に木の実の姿が映る。その木の実はナナのみで、多くのポケモンに人気のある木の実であった。

 

ピッピはすぐにナナのみがなっている木の元へと近付く。自分では登ることができないと判断したピッピは、木を軽く揺らして木の実を落とすことにする。幸いにも木は比較的細いため揺らすことは決して難しくなかった。

 

ピッピが木を揺らすと、暫くしてから木の実がピッピの元へと落ちてきた。ピッピはそれを嬉しそうにして頬張る。幸せそうに笑みを浮かべてナナのみを食べるピッピ。先ほどあれだけのポケモンフーズを食べてもなお木の実を食べるところを見ると、彼女は余程の食いしん坊なのかもしれない。

 

ナナのみを食べ終わったピッピ。だが今度は彼女の前にマダツボミたちの群れが歩いてきた。

 

『ピィ!』

 

ピッピもマダツボミたちの姿を見ると目を輝かせてその群れに混じる。マダツボミもピッピの事を気にする様子もなく歩いていく。

 

しかし彼女たちが歩いていると、草むらから彼女たちの目の前に一匹のポケモンが姿を現した。

 

『カーイ!』

 

そのポケモンはくわがたポケモンのカイロスだ。カイロスは好戦的な性格で、野生のカイロスは力試しをするためによく戦いを挑んでくることがある。今回出会ったカイロスも、マダツボミたちを見た際に2本の角を交差させカチカチと鳴らし、既に戦闘態勢へと入っている。

 

マダツボミは危険を察知し一斉に逃げ出す。自分よりも明らかに強い相手に出会ったら逃げるのは、野生のポケモンの本能だ。しかし、ピッピは一切逃げようとしない。それどころかカイロスの事をキラキラとした目で見つめている。

 

カイロスは逃げようとしないピッピを強い相手だと判断したのかすぐさま襲い掛かる。ピッピはカイロスの角によるはさむ攻撃を綺麗に回避する。

 

『ピッピ♪』

 

ピッピは笑顔でなんども飛びはねる。彼女にとっては遊んでいるつもりなのだろうか。

 

しかしカイロスは当然顔が赤くなるくらいに怒っている。これだけ攻撃を躱されてしまったうえに、ピッピの行動がカイロスにとって挑発的行動にも見えるので怒るのも無理はない。もちろんピッピには悪気がないためカイロスの心情を察することはないが。

 

『カーイ!』

『ピィ?』

 

カイロスが再びピッピに襲い掛かる。だがピッピはカイロスの攻撃を次々と躱していく。見た目とは裏腹にかなり身軽で柔軟な動きをしているピッピ。無邪気な性格だからか、遊び感覚でも避ける姿はある意味で芸術的だ。

 

結局カイロスはピッピと暫くの間たわむれることになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事の後片付けを済ませた後、ピッピだけがその場からいなくなってしまったのに気付いたリーリエたち。現在はピッピを捜すために森の中をフシギソウと共に探しているところだ。

 

「ピッピさーん!どこいったんですかー!」

『ソウソーウ!』

 

リーリエとフシギソウの呼びかける声に反応する気配はない。少なくともこの近くにはいないようだ。

 

「リーリエ、ピッピは見つかった?」

 

別行動で探していたシンジと合流するリーリエ。こっちは全然見つからないとシンジに伝える。

 

「そっか。こっちも見つからなかったよ。森の奥まで行っちゃったのかも。」

「そうですね……。少し範囲を広げて捜してみましょう!」

 

リーリエの言葉に同意して一緒に森の奥に進む二人。一向に見つからないピッピが無事かどうかリーリエは不安になる。

 

「ピッピさん、大丈夫でしょうか。」

「ピッピの無事を確認するために、早く見つけなきゃね。」

 

シンジの言葉にリーリエは頷く。リーリエはピッピの無事を祈りながら捜索を続けた。

 

シンジとリーリエは森の中を進んでいく。だが一向にピッピが見つかる気配がしない。どうするべきかと悩んでいた時、フシギソウが何かに気付いたのか走り出した。

 

『ソウ?ソウ!』

「あっ!?フシギソウさん!」

「なにか見つけたのかも。取り敢えずフシギソウのあとを追おう!」

「は、はいっ!」

 

走り出したフシギソウをシンジとリーリエは後ろから追いかける。しばらく進んでいると何か物音が聞こえる。2人がその音のする場所へと辿り着くと、そこには驚きの光景があった。

 

「ピッピさん!」

 

そこには間違いなくピッピの姿があった。だがピッピの前には野生のカイロスの姿もあった。

 

しかしピッピはなにやら喜んでいる様子だ。嬉しそうにその場を飛び跳ねている姿が確認できる。対してカイロスはピッピに苛立ち無闇に襲い掛かっている。

 

だが驚くべきはピッピが先ほどからカイロスの攻撃を回避しているところだ。ピッピにとっては遊んでいるつもりにも見えるが、カイロスは本気で攻撃を仕掛けてきている。それを無意識とは言え回避しているため、ある意味でピッピは大物かもしれない。

 

しかしそんなことを分析する余裕のないリーリエは、このままではマズイと思いフシギソウと共に飛び出した。フシギソウはすぐにはっぱカッターでカイロスをピッピから引き剥がす。

 

「ピッピさん!下がっていてください!」

『ピィ?ピッピ!』

 

自分の前にでて庇うリーリエの姿に気付いたピッピ。その姿を見たピッピはまた嬉しそうに飛び跳ねている。シンジはピッピの傍に近づきまた勝手にどこかへ行かないように抱きかかえた。

 

『カイロ!』

 

フシギソウに攻撃を加えられ更に怒りが増すカイロスは次にフシギソウ標的とした。

 

「リーリエ、ピッピの事は僕が見てるから。」

「はい!お願いします!」

 

リーリエはシンジにピッピの事を任せフシギソウとカイロスの相手をすることにした。準備のできたカイロスはフシギソウに襲い掛かった。

 

「躱してください!」

『ソウ!』

 

カイロスの直線的な攻撃をフシギソウはジャンプして躱す。この程度を回避するくらい今のリーリエ達にとっては造作もないことだ。

 

「エナジーボールです!」

 

エナジーボールが振り向いたカイロスの顔に直撃する。カイロスはその攻撃で怯み隙をさらした。

 

「今です!つるのムチ!」

 

着地したフシギソウは続いてつるのムチで左右から攻撃する。カイロスもその攻撃で諦めたのか、その場を立ち去り森の奥へと姿を消したのだった。

 

「ふぅ……。あっ、ピッピさん!大丈夫でしたか?」

『ピッピ!』

「ピッピなら大丈夫だよ。怪我とかもないみたいだし。」

 

リーリエはピッピが無事かを確認するために駆け寄る。シンジはピッピをリーリエに渡し、リーリエはピッピを受け取った。

 

「もう、心配したんですよ。次からは勝手にいなくならないでくださいね?」

『ピィ?』

『ソウソウ』

 

リーリエの忠告を聞いたピッピだが、理解できていないのか首を傾げる。その後安心した表情をしながら呆れたように溜息を吐いたリーリエがシンジの方を向き声を掛けた。

 

「シンジさん、ピッピさんが迷惑かけてしまってごめんなさい……。」

「別に気にしなくていいよ。それよりピッピが無事で安心したよ。」

 

謝るリーリエにそう伝えたシンジ。その後、ピッピに「リーリエに心配かけたらダメだよ」と伝えて頭を撫でる。ピッピはその言葉の意味を理解しているのか分からないが、頭を撫でられてピッピは喜んでいるようだ。

 

「ピッピも見つかったし、そろそろ出発しよっか。」

「はい!」

 

無事にピッピを見つけ一安心した2人はそのまま冒険を続けようと歩き出した。無邪気で好奇心旺盛なピッピで困ってしまうリーリエだが、それでもピッピの事を可愛く愛しいと心から感じる。

 

次に目指す場所はカントーリーグが開かれるセキエイこうげん。リーリエとシンジの冒険はまだまだ続く!




両刀じゃないのに無邪気なピッピちゃんでした

カントーリーグまであと2話くらい挟もっかなとも思いましたが、もう一つが思いつきません。もし何か書いてほしい回があれば言ってくれれば(多分)書きます。無ければ突然カントーリーグについてるかも。

こうして見るとロケット団って便利なんやなと思いますね。適当に出しておけばトラブルから勝手に話が完成しますし、(長い)セリフで尺潰せますし。

なんかリーリエにポケモンの夢でも見せる?いや、難しそうだしやめとこ……。

ではではまた来年も未熟なヌシ共々よろしくお願い致します!

2017年半ばに投稿して2019年まで続くなんて驚きよね(´・ω・`)←自分が一番驚いてる


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ひかりのいしを求めて!目覚める奇跡の力!

Happy New Year!

というわけで新年の一話目です。新年早々休むと思った?残念だったな!(クロム感

なんと今回は豪華(でもないけど)2本立てでお送りします。一話目は長く2話目は短めです。

基本この小説は4,000から10,000字を目安に書いていますので話の長さは結構バラバラです。今頃になって公開する情報です。

読者様に意見を出していただきなんとかカントーリーグまでつなげることができましたのでお礼申し上げます。

そして自分の考えてた話は書いてる途中無理があったのでやめると言う緊急事態に。解せぬwww


カントーリーグが開催されるセキエイこうげんへと向かい旅を続けているリーリエたち。そんな彼女たちは今旅の道中の森で休憩中だ。

 

リーリエは今自分のポケモンのお手入れをしている。綺麗好きなリーリエはいつも自分と一緒に戦ってくれているポケモンに少しでもお礼がしたいと、定期的にお手入れをして綺麗にしてあげているのだ。

 

「はい!チラーミィさん、綺麗になりましたよ。」

『チラミィ!』

 

チラーミィは綺麗になった自分の尻尾や体に満足しながらリーリエの腕から降りる。特に尻尾の汚れを気にするチラーミィは自慢の尻尾がピカピカになって嬉しいようだ。普段は照れて素直になれないチラーミィも今は見るからに喜んでいる様子だ。

 

「チラーミィ、凄い綺麗になったね。」

「はい!チラーミィさんにも喜んでいただけたようでよかったです!」

 

リーリエがその場で立ち上がると、草むらから一匹のポケモンが姿を現した。そのポケモンは両腕に赤と青の薔薇をつけている小さなポケモンだ。そのポケモンを見たリーリエには以前見たことがあるため見覚えがあった。

 

「このポケモンさんって……」

「ロゼリアー?ロゼリアどこー?」

 

そこに一人の女性が姿を現す。その女性はシンジやリーリエよりも少し年上なのか、どこか大人びた雰囲気を出している。髪は肩まである短めの緑髪で、黒色の長ズボンに薄緑色のシャツ。その上に水色の上着を着用していた。

 

「あ、ロゼリア!ここにいたのね?探したんだから。」

『ローゼ!』

 

ロゼリアは自分の名を呼んだ女性の方へと振り向く。その後、目の前にいたシンジたちへと意識を向ける。

 

「あら?あなたたちは?」

「僕はシンジです。」

「リーリエです。それと私の仲間のチラーミィさんです。」

『チラ///』

 

2人はロゼリアのトレーナーと思わしき女性に自己紹介をする。リーリエはチラーミィを抱きかかえながら自己紹介するが、チラーミィは照れて顔を赤くしながら背けた。やはり素直になれないチラーミィには少々照れくさいのかもしれない。

 

「このロゼリアはあなたのですか?」

「ええそうよ。あ、紹介が遅れたわね!わたしはサナエ!それとわたしのパートナーのロゼリアよ。」

『ロォゼ!』

 

サナエに続きロゼリアも自己紹介をする。ロゼリアはサナエの紹介に合わせまるで令嬢のように礼儀正しいお辞儀をする。活発的な印象を持つサナエに比べ、ロゼリアはお淑やかなお嬢様に近い印象だろうか。

 

「あなたのチラーミィ、すごく可愛らしいわね。」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

自分のポケモンが褒められて嬉しくなり思わず表情に出るリーリエ。そんな彼女にサナエは1つ気になることを尋ねた。

 

「もしかしてあなた達もひかりのいしを探しに来たの?」

「ひかりのいし?それってどういうことですか?」

「あら違ったの?チラーミィを連れてるからてっきりひかりのいしが目的なのかと思ったのだけど。」

 

どういうことなのかと疑問に思うリーリエたちに、サナエは自分の目的を一から説明する。

 

「実はこの近くの洞窟に、ポケモンの進化に必要なひかりのいしが眠っているって噂を聞いたの。」

「ひかりのいしってサナエさんのロゼリアさんの進化にも必要な進化の石ですよね?」

「そうよ。だから私はロゼリアを進化させるためにここまで来たの。」

 

サナエの説明にリーリエもなるほどと納得する。進化の石そのものは希少性が高く入手するのは非常に困難な代物だ。その上ひかりのいしは進化の石の中でもレア中のレアで、コレクターも喉から手が出る程欲しいとされるものだ。

 

「そんなに貴重なものがこの近くに?」

「ええ。よかったらあなたたちも一緒に来る?」

「え?いいんですか?」

 

サナエの誘いにリーリエは疑問符を浮かべ尋ねる。サナエはそんなリーリエの疑問に笑顔で答えた。

 

「もちろんよ!それに正直な話、そのひかりのいしを守っているっていわれているポケモンがいるらしいの。」

「ポケモンがひかりのいしを?」

「ええ。実はそのポケモン、噂によるととても強いらしく、ひかりのいしを手に入れるためにそのポケモンに返り討ちにあったって人も多いらしいの。だから寧ろ一緒に来てくれると嬉しいかなって思って。」

 

サナエの誘いの理由を聞いたリーリエはシンジと目を合わす。本音で言えばそんな話を聞いて放ってはおけず、心配であるためついて行きたいが自分で勝手に判断するわけには行かない。そのためシンジにどうするべきか尋ねようとする。

 

しかしシンジはリーリエの顔を見ると、無言で首を縦に振る。どうやらシンジも了承したようだ。シンジの了承を得たリーリエは、サナエに誘いの返事をする。

 

「はい!私たちも是非連れて行ってください!」

「決まりね!早速行きましょう!」

 

こうしてリーリエとシンジは、サナエと共にひかりのいしを求めて近くの洞窟へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、サナエさんはシンオウ地方から来たんですね?」

「ええ。色々な地方を旅して強くなりたいからね。あなたたちはどうしてここに?」

「私はカントーリーグに挑戦するためにここまで来たんです。」

「僕はリーリエと一緒に旅がしたくて2人で旅を。」

「ふ~ん、そうなんだ。2人とも仲がいいのね?」

 

サナエの言葉に2人は照れて顔を赤くする。彼女たちがそんな雑談をしていると、目の前に怪しげな洞窟が現れた。その洞窟を見たサナエが洞窟を指差し口を開いた。

 

「あそこが例の洞窟よ。」

「あれが……?な、なんだか不気味ですね。」

 

その洞窟は見るからに真っ暗で何かが現れそうな雰囲気があった。だがここまで来たからには行くしかないと、サナエが先陣を切って前に出た。

 

「お願い!ジバコイル!」

『ジバァ!』

 

懐からモンスターボールを取り出したサナエはジバコイルを繰り出した。リーリエはジバコイルの詳細を知るためにポケモン図鑑を取り出す。

 

『ジバコイル、ジバポケモン。コイルの最終進化形。特殊な磁場の影響でレアコイルが進化したと言われている。強力な磁力を放ち、レーダーとしても使える。』

「ジバコイル。私たちの足元を照らしてくれる?」

 

ジバコイルはサナエの言葉に頷き、中央の目のような部分で足元を照らす。厳密に言えばジバコイルの中央は目ではなく、ジバコイルの目は左右についている黒い点であり、中央の赤い模様は謎に包まれている。主に攻撃技などを放ったりするときに使うものと考えられているが、真意は未だに不明だ。

 

「じゃあブラッキー!君もお願い!」

『ブラッキ』

 

シンジは続いてブラッキーを繰り出す。ブラッキーは出てきてすぐに額の模様を光らせ足元を照らす。

 

「僕が先に行くからリーリエは後ろからついてきて。」

「は、はい。分かりました。」

『チラ』

 

サナエに続きシンジ、リーリエの順で並ぶ。暗い洞窟の中を3人は慎重に進んでいく。

 

「この先何が起こるか分からないわ。2人とも、慎重にね。」

 

サナエの忠告にシンジとリーリエは“はい”、と答える。暫く進んでいくと、奥には大きな扉で閉じられていた。もしかするとこの先に例のポケモンがいるかもしれないと、一行はより一層緊張感の高まりを感じながらその扉を開けた。

 

するとその奥には祭壇のようなものがあり、そこには光り輝くなにかが置かれていた。間違いなくそれはサナエが探しているひかりのいしそのものであった。

 

「やっと見つけた!ひかりのいし!」

 

念願のひかりのいしを見つけたサナエはすぐさま駆け出した。探していたひかりのいしが目の前にあるという現実に興奮したようだ。シンジとリーリエはそんな彼女を抑制しようと声をかけるが彼女には届かなかった。

 

そんなサナエの前に一匹のポケモンが降り立ちサナエの行く手を遮る。サナエは立ち止まると、目の前に降り立ったポケモンの名を口にしたのだった。

 

「!?エルレイド!」

「エルレイド……さん?」

『エルレイド、やいばポケモン。ラルトスの最終進化形。肘の刀は強力で、居合の名手として知られている。相手の考えを敏感に察知し、敵よりも素早く動き敵を切り裂く。』

 

そのポケモンはエルレイド。ラルトスの進化形であるキルリアの♂がめざめいしを使うことによって進化する珍しいポケモンだ。恐らく彼が例のひかりのいしを守っているポケモンだろう。

 

エルレイドはゆっくりと構えをとる。すでにエルレイドはやる気のようだ。エルレイドの戦闘の意思を感じ取ったサナエも、自分のポケモンたちと共にバトルの意思を示す。

 

「ひかりのいしは必ず貰うわよ!ロゼリア!エナジーボール!」

『ロォゼ!』

 

ロゼリアはエルレイドにエナジーボールを放つ。しかしエルレイドはジャンプして華麗にロゼリアの攻撃を回避する。

 

「だけど空中なら躱せない!ジバコイル!10まんボルト!」

『ジバ!』

 

ジバコイルは両腕の磁石から10まんボルトを放ちエルレイドに攻撃する。だがエルレイドはその攻撃を腕を強く振るうことであっさりと掻き消した。この光景には思わずサナエも驚かずにはいられなかった。

 

『エルッ!』

 

エルレイドは着地と同時に駆け出す。その動きは風のように素早く、一瞬でジバコイルとの距離を詰める。そしてその一瞬のうちにジバコイルはエルレイドに突き飛ばされる。相手の懐に飛び込み怒涛の近接攻撃を加えるこの技は、かくとうタイプの中でも強力な技、インファイトだ。

 

はがねタイプのジバコイルにかくとうタイプのインファイトは効果が抜群だ。その上このスピードとパワーから繰り出されるインファイトの威力は計り知れない。ジバコイルはこの一撃で目を回し戦闘不能となってしまった。

 

「くっ!戻って!ジバコイル!」

 

無念にも一撃で敗れてしまったジバコイルをモンスターボールへと戻す。しかし休む暇も与えずエルレイドは容赦なく攻撃を仕掛けてきた。僅かに気を抜いてしまったサナエとロゼリアも隙を突かれ対応できなかった。

 

だがその時、エルレイドの攻撃は何者かによって弾かれた。サナエはその正体を確認する。

 

「僕たちもいること、忘れないでよ?」

 

自分の目の前に立っていたのはシンジであった。そしてロゼリアを守っていた正体はブラッキーだ。ブラッキーのまもるによってエルレイドの攻撃は完璧に防がれたのだ。

 

「そうです!私たちも協力します!」

『チラミ!』

 

続いてリーリエとチラーミィが前に出る。サナエも2人の姿を見て口を開いた。

 

「ありがとう、2人とも!」

『ロゼ!』

 

覚悟を新たにするサナエとロゼリア。そんな彼女たちの姿を見たエルレイドは再び戦闘の構えをとる。

 

「チラーミィさん!スピードスター!」

 

チラーミィのスピードスターをジャンプして躱すエルレイド。隙を作らないために、シンジとサナエも続けて攻撃する。

 

「ブラッキー!シャドーボール!」

「ロゼリア!エナジーボール!」

 

ブラッキーとロゼリアはシャドーボールとエナジーボールを同時に放つ。しかしエルレイドはそれをも空中でジャンプし回避する。

 

「躱された!?」

 

エルレイドの軽快な身のこなしにシンジも驚く。その驚きも束の間、エルレイドは再び攻めの態勢へと入る。

 

『エル!』

 

エルレイドは両腕を上から下に振るい、両腕から実体化した刃を放つ。エスパータイプの技、サイコカッターだ。サイコカッターは同時にロゼリアとチラーミィに一直線に向かう。

 

その鋭く素早いサイコカッターの一撃を避けることができず、咄嗟に腕で防御するも強力な一撃で吹き飛ばされてしまう。高威力のその攻撃はどちらにも致命的なダメージを与えた。特にどくタイプを持つロゼリアは弱点であるエスパー技を受けてチラーミィ以上のダメージを受けている。チラーミィはゆっくりと立ち上がるが、それでもこのままでの戦闘は難しいだろう。

 

「チラーミィさん!」

「ロゼリア!」

 

リーリエとサナエはパートナーの事が心配になり呼びかける。駆けつけようにもエルレイドの攻撃が激しく中々近づくことができない。

 

シンジも2人のことが心配になるが、エルレイドはシンジとて決して油断のできる相手ではない。シンジはなるべく被害を抑えるためにバトルへと集中する。

 

「ブラッキー!連続でシャドーボール!」

『ブラキ!』

 

シャドーボールを連続で放つブラッキー。エルレイドは走って回避し続けるも全てを回避しきることは出来ずシャドーボールをその身に受ける。だがエルレイドは咄嗟にガードしてダメージを軽減させた。

 

エルレイドはシャドーボールを受けて発生した爆風の中をジャンプして飛び出す。そして刃に力を込め腕を交差させブラッキー目掛けて突撃する。その技はむしタイプの技のシザークロスだ。

 

「ブラッキー!まもる!」

 

ブラッキーはまもるを発動させる。さすがにエルレイドでもまもるを破ることは出来ずにはじき返され隙が出来る。

 

「イカサマ!」

『ラッキ!』

 

ブラッキーは前足と後ろ脚を巧みに使いエルレイドを地上に投げ飛ばす。イカサマは相手の攻撃力を利用して攻撃する技だ。エルレイドもさすがにダメージの色が見えるが、それでも受け身をとりダウンを拒否する。

 

『エル!』

『ブラッキ!?』

 

エルレイドは再び飛び上がりブラッキーへと一直線に向かう。ブラッキーは対応に遅れてしまい、エルレイドのインファイトの直撃を受けてしまう。

 

あくタイプのブラッキーにかくとう技のインファイトは効果は抜群。さすがのブラッキーもこのダメージには苦い顔をする。そのまま殴り飛ばされたブラッキーは地面で跳ねながらもなんとか受け身をとる。

 

「シャドーボール!」

 

ブラッキーはシャドーボールを放つ。空中で回避行動のとれないエルレイドはそのシャドーボールを腕を振るって弾き飛ばす。だがその弾かれた攻撃はひかりのいしが置かれている祭壇へと直撃する。

 

すると祭壇からなにかが飛ばされ、サナエの足元へと降ってきた。サナエはそれが何かを確認するために拾い上げると、その正体に驚く。

 

「!?これってひかりのいし!?」

 

そうだ。サナエの元へと落ちたのはひかりのいしであった。ひかりのいしを守っていたエルレイドであったが、シンジとブラッキーを相手にしていて気付いている様子はない。そのひかりのいしを見て思いつき、サナエはリーリエにあるお願いごとをする。

 

「リーリエ、お願いがあるの。」

「お願い……ですか?」

 

サナエは疑問符を浮かべるリーリエに、覚悟を決めて口を開く。そしてサナエから伝えられたことはリーリエにとっても驚くべきものであった。

 

「このひかりのいしを……あなたのチラーミィに渡してほしいの。」

「!?で、でもそんなことをしたら!」

 

サナエはひかりのいしをチラーミィに渡してほしいのだと言う。リーリエが驚くのも無理はないだろう。

 

なぜなら進化の石が効果があるのは一度きりで、ポケモンの進化に使用してしまえば進化の石も消失してしまうのだ。

 

ロゼリアがひかりのいしでロズレイドに進化するように、チラーミィもまたひかりのいしで進化することが出来るポケモンだ。チラーミィにひかりのいしを渡すという事は、同時にロゼリアの進化を諦めるという事にも繋がる。

 

「分かってる。でも、わたしのロゼリアはダメージが大きすぎて今進化しても戦力にならないわ。だけどあなたのチラーミィなら違う。新しい力を得ればきっと戦える。」

 

サナエは戦っているシンジとブラッキー、それにエルレイドの方へと視線を向ける。

 

「シンジたちは強い。それはわたしにも分かる。でもそれはエルレイドも同じよ。このままではどちらが勝つか分からないわ。」

 

サナエは再びリーリエの方へと視線を向け言葉を続けた。

 

「だからお願い。あなたのチラーミィにこのひかりのいしを。手遅れにならない内に!」

「で、でも私は……。」

 

リーリエは悩む。現在もシロンの進化でこおりのいしを使うべきかどうかを悩んでいるのだ。ポケモンの意思もあるためそう簡単に決断できることではない。

 

『チラ!』

「ち、チラーミィさん?」

 

その時、チラーミィはリーリエへと呼びかけた。リーリエはチラーミィの方へと振り向くと、チラーミィはリーリエを見て笑みを浮かべて頷いた。チラーミィにも今の会話が聞こえていたようだ。

 

「チラーミィさん……。」

 

リーリエはチラーミィの覚悟を受け取り、サナエからひかりのいしを預かった。

 

「サナエさん、ありがとうございます。それと……ごめんなさい。」

 

サナエからひかりのいし受け取ったリーリエは、感謝と同時にサナエに小さく謝罪をする。サナエもその言葉を受け取り、口角を僅かに上げて無言で首を小さく横に振る。

 

「チラーミィさん!受け取ってください!」

『チラミ!』

 

リーリエから投げられたひかりのいしを、チラーミィは尻尾を上手く使い受け取る。するとその瞬間、チラーミィは青白い光に全身を包み込まれる。それに気付いたシンジとエルレイドも振り返った。

 

「この光は!?」

 

その光はチラーミィの姿を徐々に徐々にと変えていく。次第に大きくなったその光が解き放たれ、そこにいたのはチラーミィに白い体毛が生え、それをマフラーのように巻いている優美さを感じさせるポケモンの姿であった。

 

リーリエは直ぐにそのポケモンの詳細をポケモン図鑑で確認する。

 

『チラチーノ、スカーフポケモン。チラーミィの進化形。白い体毛は特殊な油でコーティングされており、ほこりや静電気も寄せ付けず、敵の攻撃を受け流すことも出来る。』

 

チラーミィの進化した姿、チラチーノの説明を確認したリーリエは、ポケモン図鑑をしまいチラチーノと共にシンジの隣に立った。

 

「シンジさん、すいません。お待たせしてしまいました。」

「気にしなくていいよ。それより……」

 

シンジとリーリエは目の前にいるエルレイドへと向き合う。ひかりのいしを失った今でも、エルレイドは決して戦闘態勢を解くことはなかった。

 

「行くよ!」

「はい!」

『ブラッキ!』

『チラチ!』

 

「ブラッキー!シャドーボール!」

 

最初に動いたのはブラッキーだ。ブラッキーはシャドーボールでエルレイドに牽制攻撃を仕掛ける。エルレイドは避ける動作をとることなく、正面からシャドーボールを受け止める。

 

その後、発生した衝撃を打ち破り正面から勢いよく突撃してくる。それをチラチーノは正面から受け止める態勢に入った。

 

「チラチーノさん!」

 

チラチーノに呼びかけるリーリエ。チラチーノはそのまま待機してエルレイドの攻撃を待ち構える。エルレイドがインファイトの構えに入ると、チラチーノはなんと自らエルレイドに向かっていった。

 

エルレイドはチラチーノに向けてインファイトを繰り出した。このままではチラチーノに直撃してしまう。しかしチラチーノは驚くべきことにその攻撃を受け流したのだ。

 

その動きは華麗で、今までの軽快な身のこなしだけではない気がした。リーリエはその時、ポケモン図鑑による説明を思い出す。

 

チラチーノの体毛は特殊なコーティングによってできており、相手の攻撃を受け流すことが出来るのだと言う。今回華麗に避ける事ができたのもその特徴を上手く生かすことができたのも一つの要因であろう。

 

この現象にはさすがのエルレイドも驚きの表情を浮かべる。

 

「チラチーノさん!おうふくビンタです!」

『チラー!』

『エル!?』

 

隙をさらしたエルレイドにすかさずおうふくビンタによる近接戦を仕掛けようとする。しかし、チラチーノが使用したのはおうふくビンタではなかった。

 

攻撃する瞬間、チラチーノの尻尾が白く光りだした。チラチーノはその尻尾をエルレイドに向けて勢いよく振り攻撃した。その攻撃がクリーンヒットしたエルレイドは壁際まで飛ばされるが、受け身をとることで壁に直撃することを避けた。

 

「あれはスイープビンタだ!」

「スイープビンタ?」

「うん。おうふくビンタよりも攻撃力の高くて、覚えることの出来るポケモンも少ない珍しい技だよ。」

「チラチーノさん!新しい技を覚えたのですね!」

『チラチー!』

 

新しい技を覚えたことに喜ぶ2人。だが、いつまでも喜んでいる場合ではない。立ち上がり態勢を整えたエルレイドが再び突っ込んでくる。

 

『チラ!?』

 

エルレイドは突っ込みながら両腕を振り下ろしサイコカッターを放つ。その攻撃がチラチーノ目掛けて接近してくる。

 

「ブラッキー!」

『ブラッキ!』

 

シンジの呼びかけにブラッキーは答え、チラチーノの前に立つ。サイコカッターがブラッキーに直撃するが、ブラッキーには一切ダメージがない。

 

理由は簡単だ。あくタイプのブラッキーにエスパータイプの技は効果がない。故にブラッキーはエルレイドの攻撃で傷がつかなかったのだ。

 

「助かりました!ありがとうございます、シンジさん!ブラッキーさん!」

「まだ油断しないで。エルレイドはまだ戦えるみたいだよ。」

 

シンジの忠告にリーリエも気を引き締めてコクリと頷く。そして反撃するためにリーリエはチラチーノに指示を出した。

 

「チラチーノさん!走ってください!」

『チラ!』

 

チラチーノは走ってエルレイドに接近する。素早いエルレイドにこちらも素早さで対抗しようと言うわけだ。進化したことによりチラチーノの素早さも間違いなく速くなっている。

 

「僕たちは援護だよ!ブラッキー!シャドーボール!」

『ブラッ!』

 

ブラッキーはシャドーボールによりチラチーノの援護に回る。シャドーボールを複数放ち、エルレイドはその攻撃を次々と弾いていく。だが、それでもチラチーノが接近するには充分の時間稼ぎとなった。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

 

懐まで潜り込んだチラチーノは飛びかかって尻尾を振りかざしスイープビンタで攻撃する。エルレイドは上体を逸らしてその攻撃を躱し、インファイトで反撃する。

 

だがチラチーノも負けていない。自慢の柔軟性と身のこなし、それに進化したことで新たに得た体毛を上手く利用して回避し反撃する。インファイトとスイープビンタの応酬が繰り広げられる。

 

パワーでは圧倒的にエルレイドに分があるだろう。しかしチラチーノは小さい分小回りが利き、手数でも勝っている。パワーの差を埋めるには充分な要素だ。

 

インファイトとスイープビンタの応酬は長く続かない内に崩れ始める。小さく小回りの利くチラチーノに次第に追いついていくことができなくなってきたエルレイドが攻撃を食らい始める。そして遂に拮抗が崩れ、エルレイドは膝をついた。

 

「これで勝負あり、かな。」

 

勝負がついたと判断したシンジはエルレイドにゆっくりと近付く。エルレイドは身構えることなくそのままシンジの顔を見ていた。

 

「ほら、オボンのみ。食べれば体力も回復するよ。」

 

オボンのみに視線を移したエルレイドは再びシンジの顔を見る。その後、躊躇なくエルレイドはオボンのみを食べた。

 

オボンのみを食べ体力を戻したエルレイドはスクッと立ち上がる。その姿を確認したリーリエがエルレイドに近づいた。

 

「あの……エルレイドさん。あなたの守ってきたひかりのいし……」

『エルエル』

「エルレイドさん?」

 

俯くリーリエにエルレイドは一言言葉をかける。リーリエがエルレイドへと視線を向けると、エルレイドは軽く微笑み返した。

 

その後、エルレイドはその場を後にし立ち去って行った。エルレイドの姿を見たサナエが一言呟いた。

 

「エルレイド……これからどこに行くのかしら。」

「僕にも分からない。でも……」

 

エルレイドの行く先は誰にも分からない。だが、それでもシンジにはなんとなくわかることがあった。

 

「もしかしたらエルレイドも……強くなりたいだけなのかもしれない。」

「え?」

「そんな……眼をしている気がしたから。」

 

真実は分からないが、リーリエもシンジが言っている意味がなんとなく分かる気がしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サナエさん……ひかりのいしですが……。」

「そんなこと気にしなくていいわ。あれはわたしが頼んだことなんだから。」

 

未だに罪悪感を感じているリーリエにサナエはそう言って励ます。それでも気分が晴れないリーリエに、サナエはこう伝えた。

 

「後悔してないって言ったら嘘になるけど、今回のことで私がまだまだ未熟だって思い知らされたわ。また一から修行のし直しよ!」

『ロゼ!』

「サナエさん……。」

「もし、また会うことがあれば、その時はバトルしましょ。今度会うときは今よりも強くなって、必ずわたしのロゼリアをロズレイドに進化させてみせるから!」

「……はい!必ずバトルしましょう!私も負けませんから!」

 

サナエとリーリエはガッチリと握手を交わす。お互いのライバルと認め合い、再会の約束を交わしたのだからこれ以上の言い合いは無しだ。トレーナーならばバトルの中で語り合えるのだから。

 

「シンジも、今度会った時に戦いましょう。あなたにも負けるわけにはいかないからね。」

「僕も負けるつもりはありませんよ。戦える時を楽しみにしています。」

 

シンジもサナエと握手を交わす。その後、サナエはシンジたちと別れまた修行の旅へと向かったのだった。

 

リーリエはそんなサナエを見送り、もう一つの心残りと向き合う。

 

「チラチーノさん……。」

『チラチ?』

「進化して……よかったですか?後悔とか……。」

 

チラチーノはそんなリーリエの暗い表情を見ると、リーリエの頭まで上った。

 

『チラチー!』

「チラチーノさん?」

 

チラチーノは明るくリーリエに向かって微笑む。その笑みはリーリエに大丈夫だと言っているようであった。

 

「チラチーノさん……。ありがとうございます。」

『チラ!』

 

自分のポケモンに励まされ、自分が後悔していてはダメだなと自身に渇を入れるリーリエ。そんなリーリエはチラチーノを抱きかかえて彼女に感謝の言葉を伝えた。

 

「チラチーノ、進化してだいぶ素直になったみたいだね。」

「そうですね。少し寂しい気もしますが、素直なチラチーノさんも可愛くて大好きです!」

 

リーリエはチラチーノを抱きしめて笑顔でそう答えた。そこにはさっきまで後悔で落ち込んでいた彼女の姿はない。チラチーノが進化して成長したのと同様に、リーリエも一歩先へと成長したようだ。

 

こうしてリーリエのチラーミィはチラチーノへと進化を遂げた。チラチーノや仲間たちと歩んでいくリーリエの冒険はこれからどうなっていくのか?シンジとリーリエの冒険はまだまだ続く!




チラーミィの進化は正直悩みました。進化させずに進もうかなとも思ってましたが、いっそのことと思い切ってここで進化させました。

サナエの再登場予定はありません。ひかりのいしを出すための強引な設定のために作ったモブちゃんです。希望があれば再登場する……かもしれませんが、登場キャラが多いとヌシの頭がパンクする可能性があるので望みは薄いです。

今でさえ結構パンク気味なのに(ボソッ


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ジムバッジを賭けろ!?カントーリーグまでの道のり!

こちらはアニポケ無印であった『ガラガラのホネこんぼう』の話を参考に書きました。ただし内容は全くの別物となっております。

アニポケの内容は
サイゾウがジムバッジをロケット団に奪われる

サトシにバッジを賭けたバトルを挑む

ガラガラでサトシのフシギダネに勝つがピカチュウに敗北する(なぜかでんきショックでやられる

サイゾウの事情を聞き協力してロケット団からジムバッジを取り返す
という内容です

しかしこの小説にはロケット団はいませんので内容はガラリと変えさせていただきました。リーリエの成長も書きたかったと言えば書きたかったので問題なし?


カントーリーグの開催される場所、セキエイこうげんへと向け旅を続けているシンジとリーリエ。

 

「セキエイこうげんまであと少しだよ。がんばろう!」

「はい!ラストスパートです!」

 

シンジの言葉にもうすぐで大舞台のカントーリーグに着くのだと思うと、リーリエにも自然と緊張が走る。しかしその時であった。

 

「っ!?リーリエ!」

「ひゃっ!?」

 

シンジたちがセキエイこうげんまでの道のりを話していると、どこからともなくかえんほうしゃが飛んできた。その攻撃にいち早く気付いたシンジは、リーリエを自分の元へと引き寄せて彼女を守った。

 

「リーリエ、大丈夫だった?」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

何が起きたか分からないリーリエはキョトンとした顔をする。その時、そのかえんほうしゃを放ったポケモンとそのトレーナーの少年が姿を現したのだった。

 

「お前たち、少し待ってもらおうか。」

 

そこに現れたのは長い黒髪をポニーテールに結った少年とかえんほうしゃを放ったポケモン、ヘルガーであった。その少年はシンジとリーリエを見つけると、すぐに口を開いた。

 

「お前たち、ジムバッジを持っているんだろ?だったら今すぐそれを賭けて俺と戦いな。」

「!?そ、そんな戦いは受けられません!」

「負けるのが怖いって?」

 

当然リーリエはそんな勝負を受けるようなことはしない。だが少年はそんな彼女に挑発的な言葉を投げかける。

 

だがリーリエは挑発に乗るようなトレーナーではない。リーリエは冷静にその少年にバトルを断るという意思を伝える。

 

「なんと言われようと私はそんな勝負受けません!」

 

リーリエにそう否定され、その少年はどうやって彼女を戦う状況に持っていくかを考える。その時、シンジは1つ気になることを彼に尋ねた。

 

「どうして君はこんなバトルを申し込むの?」

「シンジさん?」

 

シンジの質問をリーリエは疑問に感じる。彼の言葉にはなにか意味が込められているように思えたからだ。シンジの質問に対し、少年は一切表情を崩さずに答える。

 

「……俺はリーグに挑戦しようとしている奴を見るとイラつくんだよ。だからそいつらに、俺の強さを証明してやるだけだ。」

「それが君の戦う理由か……。」

 

シンジは少年の言葉を聞いて、ある確証を得てリーリエの方へと振り向いた。

 

「リーリエ、悪いんだけど彼とバトルしてもらえるかな?」

「え?」

 

リーリエはシンジの意図が分からずに疑問符を浮かべる。疑問を感じているリーリエにシンジは言葉を続ける。

 

「無責任かもしれないけど、リーリエなら絶対に勝てるよ。僕が戦ってもいいんだけど、ジムバッジを持っていない僕との対戦は多分受け入れてくれないと思う。それに、リーリエが戦った方がきっと説得力もあるから。」

「……分かりました。シンジさんがそう言うのであれば、私やってみます!」

 

シンジの言葉を聞きリーリエは考える。だが彼がそこまで言うなら何か彼にも考えがあるのだろうと思い、リーリエはバトルすることを決意した。第一シンジが意味のない事をする人間ではないと信用しているからこその判断である。

 

「やっと戦う気になったみたいだな。」

「はい。ですが私は絶対に負けません!」

「俺はカズキ。そして俺のポケモンは当然ヘルガーだ!」

『ガウッ!』

『ヘルガー、ダークポケモン。口から出した炎は体内の毒素を燃やしたもの。昔は地獄からの使いと考え恐れられていた。』

 

その少年、カズキが繰り出したのはヘルガーだ。対してリーリエも覚悟を決め、自身のモンスターボールを手にしたのだった。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギソウだ。くさタイプのフシギソウにほのおタイプのヘルガーは相性としては最悪の相手だ。だがそんなことはリーリエには関係なかった。

 

「くさタイプか。だが手加減はしない!」

 

カズキのその言葉と同時にバトルが開始される。

 

「ヘルガー!かえんほうしゃ!」

『バウッ!』

「躱してください!」

『ソウ!』

 

ヘルガーは挨拶代わりにかえんほうしゃを放つ。ほのおタイプのかえんほうしゃには対抗策がないため、フシギソウはその攻撃をステップすることで回避した。

 

「そのままはっぱカッターです!」

「ヘルガー!ねっぷうだ!」

 

フシギソウははっぱカッターで反撃する。そのはっぱカッターをヘルガーはねっぷうで阻んだ。

 

「シャドーボール!」

「つるのムチで防いでください!」

 

続けてヘルガーはシャドーボールを乱れ撃つ。フシギソウは迫ってくるシャドーボールをつるのムチで次々と弾き飛ばした。それを見たヘルガーはチャンスと見てフシギソウ目掛けて走ってきた。

 

「ヘルガー!かみくだく!」

『ガウッ!』

 

ヘルガーはフシギソウに接近すると、かみくだくで追撃をしてきた。シャドーボールを防ぐことに集中していたフシギソウは対応が間に合わずにその攻撃を正面から受けてしまう。

 

「フシギソウさん!」

『ソウソウ』

 

リーリエの声にフシギソウはまだまだ平気だと答える。休む暇を与えるわけには行かないと、カズキは追撃の指示を出した。

 

「ヘルガー!シャドーボール!」

「フシギソウさん!エナジーボールです!」

 

ヘルガーのシャドーボールとフシギソウのエナジーボールが中央でぶつかり合う。互いの技の威力は互角で交じり合った衝撃で互いに消滅し爆風が発生する。

 

「はっぱカッターです!」

『ソウ!』

『ガウッ!?』

 

爆風を振り払いはっぱカッターがヘルガーに接近する。ヘルガーはその攻撃を回避しようとするも間に合わずに直撃を受ける。効果はいまひとつだが、それでも確かなダメージが入り怯んでいるのが確認できる。

 

「続けてとっしんです!」

「くっ!?かえんほうしゃ!」

 

隙を見つけたリーリエがフシギソウにとっしんの指示を出す。フシギソウは勢いよくとっしんでヘルガーとの距離を縮める。

 

一方、焦ったカズキはかえんほうしゃで迎え撃とうとする。しかしその攻撃はあまりに単調な攻撃で、フシギソウに軽く躱されてしまう。そのまま隙を晒してしまったヘルガーはとっしんを正面から受ける。

 

「ちっ!」

 

カズキは思わず舌打ちをする。ヘルガー立ち上がるが、それでも足元がふら付いておりこれ以上戦える状況ではない。

 

「もうやめましょう!これ以上は……」

「まだだ!まだ俺は……」

 

リーリエはヘルガーの身を案じカズキに呼びかける。それでもカズキはまだ戦えると言い張るが、ヘルガーはだいぶ疲れている様子だ。

 

「いや、もう勝負はついたよ。」

「なに!?」

「シンジさん……」

 

リーリエに代わりシンジがカズキにそう告げる。なぜシンジがそう言ったのか分からなかったカズキは理由をシンジに尋ねた。

 

「キミのヘルガーはよく鍛えられている。だけどそれだけじゃ意味がないんだ。」

「意味がない……だと?」

「ポケモンだけじゃなく、トレーナーも一緒に強くならなきゃ、本当に強いとは言えないんだよ。」

 

シンジは一呼吸おき、自分がカズキの言葉を聞いて確証を得たことを確認するために彼に問いかける。

 

「キミは以前、ポケモンジムに挑戦してたことがあるんじゃない?」

「っ!?なぜそれを!?」

 

核心を突かれカズキはドキッとし思わず口を滑らせる。観念したカズキは自身の思いを打ち明けた。

 

彼は以前ジム戦に挑戦していたことがあったそうだ。だがとあるジムにて一方的に負けてしまいショックを受けてしまったのだと言う。バトルには自信があったため余計にショックが大きかったのだ。

 

それ以降次第に負けが込んでしまい、勝つことができなくなってしまった。いわゆるスランプ状態に陥ってしまったのだ。

 

そんな時にリーグへと出場しようとしているトレーナーを見つけ挑戦しようと挑んだ。しかし誰も相手にしてくれず、次第に彼に怒りの感情がこみ上げてくる。ジムバッジを持っていないことが馬鹿にされている気がして苛立っていたのだ。

 

そして彼は現在リーリエと戦ったが、敗北と言う結果に終わってしまったのだ。

 

トレーナーには敗北が原因で彼のように誤った道へと歩んでしまう事は決して珍しい事ではない。悲しい事だが世の中には敗北のショックで犯罪に手を染めてしまう、そんなトレーナーも存在している。

 

シンジはそんな彼を諭すために、ある話をするのだった。

 

「ジムバッジには、トレーナーの数々のドラマが詰まってるんだ。バッジをとるためにポケモンと共に苦労した思い出。例え負けたとしても、諦めずに努力して勝ち取った思い出。トレーナーたちはそんなドラマを重ねてカントーリーグに挑むんだ。」

「トレーナーとポケモンさんの……思い出……。」

 

リーリエはシンジの話を聞いて何故彼が自分にバトルを受けるように言ったのかが察しがついた。シンジは以前にジムバッジを集めていてトレーナーとして同じ経験をしている。だからこそ彼の悩みを察することが出来たのだ。

 

今では自分もトレーナーとして旅をし、ジムバッジを集めてカントーリーグに出場しようとしている。それまでの道のりは決して簡単なものではなく、時には挫けそうになったこともあった。だから彼の気持ちもなんとなく分かる。

 

「私、あなたの気持ちが分かります。」

「くっ!?同情なんか!」

「同情なんかじゃありません。私もジム戦で負けたことはあります。」

「っ!?お前も?」

 

リーリエはかつて自分の経験したことをカズキに話し始める。

 

「私も圧倒的な力の差を見せつけられ、何もできずに負けてしまったことがあります。正直に言えば凄いショックで落ち込んでしまいました。」

 

リーリエは以前味わった経験を思い出しながら語り、シンジの方を見て一呼吸おき再び口を開いた。

 

「ですが、私はシンジさんに色々と教わりました。トレーナーとポケモンさんは一心同体。トレーナーとポケモンさんが一緒に努力して強くなることで、トレーナとして成長できるのだと。」

 

リーリエは再びカズキの目を真っ直ぐと見つめる。

 

「ポケモンさんと一緒に努力するからこそ、手にするジムバッジもより大きいものになるはずです。もしあなたにトレーナーとしての誇りがあるなら、諦めずにもう一度やり直してはもらえませんか?」

「トレーナーとしての……誇り……。」

 

リーリエの言葉を聞いたカズキは、ゆっくりとヘルガーに近付いた。そして彼は自分のパートナーであるヘルガーの頭を撫でて語り掛けた。

 

「……ごめんなヘルガー。こんなに無茶させて。」

『ガウッ……』

 

そう語り掛けてくる自分のトレーナーに、ヘルガーは笑顔で答えた。例え道を間違えてしまっても、ヘルガーにとって彼は大切なパートナーであり相棒なのだ。裏切ることも咎めることも出来ない。

 

「あんたたちの言葉を聞いて思いだしたよ。コイツと初めてジムに勝った時の事。俺、もう一度ヘルガーと初めからやり直してみるよ。」

 

カズキの言葉を聞き、シンジとリーリエは首を縦に振って頷いた。それを見たカズキは、笑みを浮かべてシンジたちに頭を下げる。その後、カズキはパートナーのヘルガーと共に歩いてその場を立ち去っていったのだった。

 

「……なんだか偉そうなこと言っちゃいましたかね。ハッキリ言ってちょっと照れくさいです。」

「ううん。そんなことないと思うよ。それに、リーリエもここまでトレーナーとして経験してるんだから、少しくらい胸張っていいよ。」

 

シンジの言葉にリーリエは顔を赤くして照れながら頬を掻く。だが、彼女自身その言葉は悪い気はしなかった。

 

「さ、セキエイこうげんはもうすぐだよ!」

「はい!もう一息頑張りましょう!」

 

そうしてシンジとリーリエはセキエイこうげんへと向け、歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えてきたよ!あれがセキエイこうげんだ!」

「あれがセキエイこうげん……。トレーナーが目指す夢の舞台!」

 

最後の目的地であるセキエイこうげんに辿り着いたリーリエたち。だがこの舞台は決して終わりではなく、始まりの試練に過ぎない。彼女を待っているのは一体どんなトレーナーたちなのか?彼女を待ち受ける試練とは?

 

遂にリーリエのトレーナーとしての試練、カントーリーグが幕を開ける!




遂にセキエイこうげん到着です。

後2話か3話くらい挟んでからコラボに移りたいと思います。

ではでは!ノシ


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集うライバルたち!眠れない決戦前夜!

カントーリーグ編(仮)突入!

そしてヌシは記念(?)としてUSUMのサブROMにてリーリエのパーティを厳選してみようと思います。実はひそかにサブROMデータ削除して名前と見た目をリーリエにして準備していたりしました。

予定として襷ベールキュウコン、メガバナ(特殊型)、鉢巻チラチーノ、チョッキマリルリ、輝石ピッピ、そして不意打ちの特殊型飛行Zカイリュー

……なにこのガチパ?


トレーナーたちが一度は夢見る舞台、カントーリーグの開かれるセキエイこうげんへと辿り着いたリーリエたち。セキエイこうげんに到着した彼女は、カントーリーグへの出場登録をしているところだ。

 

「ではこちらの画面にあなたのポケモン図鑑をかざしてください。」

「はい!」

 

リーリエはジョーイの誘導に従い示された機械の画面にポケモン図鑑をかざす。カントーリーグへの受付はジョーイが担当してくれている。これはトレーナーのみんなが余計な緊張をしないようにと全員が慣れ親しんだジョーイを配置した運営側の計らいだ。

 

『ポケモントレーナーリーリエ。ゲットしたバッジの数8個。カントーリーグへの出場資格あり。登録完了。優勝目指して頑張ってください。』

 

指示に従い図鑑をかざすと、その機械の画面にリーリエの詳細と所持バッジが表示され、出場選手として登録される。そしてその機械から激励の言葉が送られる。

 

「はい、これでカントーリーグへの登録は完了しました。頑張ってくださいね!」

「はい!ありがとうございます!」

 

リーリエはジョーイからの激励も受け取り、深く頭を下げて礼を言いその場を立ち去る。リーリエは外で待つシンジの元へと軽く駆け足で向かっていった。

 

「シンジさん!お待たせしました!」

「カントーリーグの登録はできた?」

「はい!ばっちりです!」

「そっか。じゃあいこっか。」

 

シンジとリーリエはそのまま受付エリアから別の場所へと向かう。受付が無事終わった後はどうすればいいのか分からないリーリエはシンジに次の目的を尋ねた。

 

「シンジさん。次は何をすればいいんですか?」

「午後から参加者全員が集まって顔合わせをするんだ。リーリエはそこに参加するといいよ。」

「シンジさんはどうするんですか?」

「僕は……」

 

シンジがリーリエの質問に答えようとするが、その時彼らの背後から予想外の人物が声をかけてきた。

 

「リーリエ!シンジ君!」

「る、ルザミーネさん!?」「お、お母様!?」

 

その人物とはリーリエの母、ルザミーネであった。突然のルザミーネの登場に驚く2人。ルザミーネは驚く2人に笑顔で手を振りながら近づいた来た。

 

「お、お母様。な、なんでここに?」

「なんでって、娘の折角の晴れ舞台なんだもの。私も母親なんだから娘の晴れ舞台ぐらいは見たいじゃない?」

「もう……それなら一言言って下さってもよかったのに///」

 

リーリエは母親の言葉に呆れたような言葉を口にする。しかし彼女の顔は少しばかり赤くなっており、どこか満更でもないようすであった。

 

「私は一旦自分の宿舎に戻るわね。ねえ、リーリエ。」

「なんでしょうか?お母様?」

「……頑張りなさいね。」

「!?はい!頑張ります!」

 

ルザミーネはそう笑顔で激励の言葉を送りその場を手を振って立ち去る。リーリエもこれには嬉しくなり笑顔で元気よく答えた。母親が見に来ていると知った以上、恥ずかしい戦いは出来ないとより一層気合を入れる。

 

「まさかルザミーネさんが来てるとはね。」

「はい。私も驚きました。シンジさんも知らなかったんですか?」

「うん。僕にも知らされてなかったよ。」

 

シンジはそう言い、先ほどの質問を思い出しその答えを口にした。

 

「そうそう。僕は少し挨拶したい人がいるから一緒には参加できないんだ。」

「挨拶したい人ですか?」

「うん。昔お世話になった人だよ。この会場にいると思うから探そうと思うんだ。」

「そうですか。少し残念ですが分かりました!私は1人でも大丈夫です!」

 

そう言ってシンジとリーリエはその場で分かれ、午後のイベントが終わってから再会しようと約束したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の親睦パーティが開かれる直前。ある場所にて男性が一人外を眺めていた。

 

「ワタル様。お客様がお見えになられています。」

「客?誰だ?」

 

スーツ服姿の男性が大きなガラス張りの窓際で外を眺めている男性に声をかける。

 

その男性はワタルと呼ばれ、赤いツンツンとした髪をしており紺色にオレンジのラインがいくつか入った服。そして背中には内側が赤く外側が黒色のマントを着用している。そしてワタルは、カントー地方のチャンピオンも務めている。

 

「シンジと名乗る少年です。」

「!?そうか。構わない。通してくれ。」

 

ワタルのその言葉にスーツの男性は一礼し客として訪ねてきた人物を部屋の中に入れる。ワタルはその少年、シンジの姿を見るとすぐに笑顔で声をかけたのだった。

 

「久しぶりだね、シンジ君。」

「お久しぶりです。ワタルさん。」

 

ワタルの言葉にすぐに頭を下げて挨拶を交わすシンジ。そんなシンジにワタルはゆっくりと近付いた。

 

「そうかしこまることはないよ。本当に久しぶりだね。」

「はい。3年ぶりくらいでしょうか?」

「ああそうだったね。あの時はまだ君が駆け出しのトレーナーだった時だね。」

 

彼らが出会ったのは3年前、かつてシンジが旅に出たばかりで右も左も分からないときであった。偶然にも出会ったワタルに色々と基礎的なことを教わったのだ。シンジにとって、ワタルはもう一人の兄的な存在だ。ワタルにとっても大切な弟のような存在である。

 

「今ではアローラ地方のチャンピオンになったんだろう?風の噂で聞いているよ。」

「知っていたんですか?」

「もちろんだよ。それで今日はどうしたんだい?アローラチャンピオンとしての仕事……ってわけでもなさそうだが。」

「はい、ただ折角なのでワタルさんに挨拶しようと訪ねてきただけです。今はある人とカントーをもう一度見て回っているところなので。」

 

ワタルはシンジがなぜ自分の元を訪れたのかを尋ねる。シンジはワタルに挨拶に来ただけだと伝えると、ある事を思いつきそれをシンジに尋ねてみた。

 

「一つ君に頼みごとをしてもいいかな?」

「?なんでしょうか?」

「明日の開会式のことなのだが……」

 

シンジはワタルの頼みごとを聞き、内容を理解して快く承諾する。その心意気にワタルは感謝し、当日に会おうと約束を交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか迷うことなくたどり着けました……。」

 

リーリエは親睦パーティの行われる会場へと辿り着く。シンジがいないため迷うかと不安になった彼女だが、リーグ会場が大きいこともありあちらこちらに案内標識があったためパーティの会場に辿り着くことが出来たのだ。

 

その場には多くのトレーナーたちが集まっており、食事をしている人、他のトレーナーと会話している人、ポケモンの管理をしている人と様々だ。中にはリーリエの見知った顔もあり、彼女を見つけたあるトレーナーが手を振って駆け足で近づいてきた。

 

「リーリエー!」

「ブルーさん!」

 

その人物はリーリエ最大のライバルと言ってもいいブルーであった。

 

「やっぱりあなたも来たのね。」

「はい!ジムバッジを8個集める事ができました!」

「そう来なくちゃ面白くないわ。張り合いがなくなっちゃうからね。」

 

ブルーはそう言った後、ある事に気付きそれをリーリエに尋ねた。

 

「あれ?シンジさんは?いつも一緒にいるのに珍しいわね。」

「シンジさんは昔お世話になった人に挨拶がしたいと言って一度別れました。後でまた合流する予定です。」

「ふ~ん、そうなの。」

 

ブルーはそう言ってリーリエの言葉に納得する。するとその後、リーリエに気付いたトレーナーたちが続々と彼女の元に集結していった。

 

「よ!リーリエ!」

「久しぶり!リーリエ!」

「コウタさん!コウミさん!」

 

その人物は双子の兄妹であるコウタとコウミであった。コウタとコウミはお互いに軽く手をあげリーリエと再会の挨拶を交わす。

 

「なに?リーリエの知り合い。」

「ああ。俺はコウタ!そしてこっちが双子の妹の……」

「コウミです!」

「そうなの。あたしはブルー!みんないいライバルになりそうね。」

 

すでに勝負が始まっているとばかりに彼らの熱い視線が交じり合う。彼らも厳しい試練を勝ち抜いてきた猛者たちだ。簡単に勝ち進むことは出来ないだろう。

 

リーリエがそう思っている時、彼女の肩を軽く叩き呼びかける人物がいた。リーリエはその人物の方へと振り向くと、その人物は彼女も知っている男性であった。

 

「久しぶりだな、リーリエ。」

「!?ハジメさん!」

 

その男はなんと以前リーリエと戦った元ロケット団用心棒のハジメであった。予想外の人物の姿に思わずリーリエも驚きの声をあげる。

 

「ハジメさんもカントーリーグに参加してたんですね!」

「ああ。強い奴が集まるんだ。参加しない理由がない。」

 

久しぶりに再会したハジメとも挨拶を交わすリーリエ。今まで出会ったライバルたちに加え、これだけ多くのトレーナーたちがいれば、リーリエにも自然と緊張が走る。

 

彼女たちがそんな話をしていると、一人の男性が舞台に上がりマイクを持った。その男性こそこのカントーリーグの主催者であり、ポケモンリーグの最高責任者である。

 

「みなさん!長い旅の中で様々なことを学び、成長し、この場に集まってくれたこと、私は嬉しく思います!」

 

主催者の言葉と同時に会場のみんなが静まり返る。この場にいる全員が覚悟を持ってこのカントーリーグへと目指してきたのかがよく分かる光景だ。

 

「今日はこの場に集まったトレーナー全員が悔いのない良きバトルができるよう、親睦会としてこの会場に集まっていただきました。明日のリーグ開催に備え、今日は思う存分語り合って下さい!」

『おー!』

 

主催者のありがたい言葉を聞いた参加者のトレーナーたちは一斉に雄叫びに近い声をあげる。

 

リーリエたちも親睦会であるため、今日はライバルといった関係であることを忘れ楽しく語り合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夜。外は暗く綺麗な星と満月が暗闇を明るく照らしている時間帯だ。

 

そんな中、リーリエは眠ることができずにベランダで外を眺めていた。

 

「明日は遂にカントーリーグが開催されます。私……上手く戦えるでしょうか……。」

 

初めての大舞台で緊張の色を隠せないリーリエ。そんな彼女の元に、彼女のポケモンたちが近づいてきたのだった。

 

『コォン!』

『チラチチラ!』

『ソウ!』

『リル!』

『ピィ?』

「あっ、みなさん。すいません。起こしてしまいましたか?」

 

起こしてしまったかと謝るリーリエに、彼女のポケモンたちは首を横に振って否定する。どうやら眠れないのは彼女たちだけでなく、ポケモンたちも同じようだ。もしかしたら参加者のトレーナーたちも同じ気持ちなのかもしれないとリーリエはふと思った。

 

そんな時、1人の少年が彼女に静かに声をかけた。

 

「眠れないの?」

「!?シンジさん……」

 

リーリエはシンジの言葉に小さく頷き答える。シンジもそんな彼女の横に立ち一緒に外を眺める。

 

「僕もね、リーグに参加するときの夜は毎回眠れなかったんだ。」

「え?シンジさんもですか?」

 

シンジが緊張で眠れなかったと言うのは意外だと感じるリーリエ。シンジは彼女に自分が当時思っていたことを少し語った。

 

「リーグの前日、いつも不安でいっぱいだったんだ。上手く戦えるかなとか、勝てるかなとか。でも、戦ってるたびに不思議な感覚になって気付いたんだ。自分は1人で戦ってるんじゃない。自分には今まで戦ってきたポケモンがいるんだって。それになにより……」

 

シンジはリーリエの方へと振り向き、その言葉の続きを告げた。

 

「ジム戦であってもリーグ戦であっても、自分らしく楽しく戦うのが一番だって思ったんだ。」

「自分らしく……楽しく……。」

 

リーリエはシンジの言葉を聞き頭の中で考える。彼女の髪を静かな夜の風がなびかせる。リーリエは今の自分の考えをシンジに伝えた。

 

「正直、私は今でもポケモンさんが傷つくのを見るのは心苦しいです。」

 

リーリエは自分の感じている感情をシンジに打ち明けていく。

 

「ですが、ポケモンさんたちが私のために戦ってくれて、負けることもあるけど、勝った時の凄い充実感を感じられて。なにより……」

 

リーリエはそう言ってシンジの方へと振り向き笑顔で答えた。

 

「なによりバトルがすごい楽しいって思えるようになれたんです!」

「……そっか。」

 

リーリエは再び外を眺め、笑みを浮かべながら言葉の続きを口にした。

 

「間違いなく明日から戦うトレーナーは全員強敵です。ですが……シンジさんの言ったように、私は私らしく、全力でぶつかります!」

「うん。がんばリーリエ!だよ!」

「はい!がんばリーリエ!です!」

 

リーリエはそうして明日から始まるリーグ戦の覚悟を決めた。

 

彼女の言う通り、リーグに参加するトレーナーたちは全員が強豪ぞろいだろう。だが彼女も8個のジムバッジを集めたトレーナーだ。例え未熟な部分があろうとも、それは参加者全員にも言えることだ。

 

シンジの助言で多少気が楽になったリーリエは、明日に疲れを残さないために今日は休むことにしたのだった。

 

明日からのリーグ戦。リーリエはどんなトレーナーと、どんな戦いを繰り広げるのか。激戦を勝ち抜き、優勝を手にするのは誰なのか?がんばれ!リーリエ!いや、がんばリーリエ!




実はリーリエが一番書きやすくて楽しかったりする

よーし!厳選するぞー!


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ポケモンリーグ開会式!ぶつかり合う最強VS最強!

間に合いました。ただし短めです。

ニンフィア無しの新しいブイズパでも作ろうかなと思ってたりします。とりあえず勝つことよりもひたすら嫌がらせするパーティでも作ってみようかと。


カントーリーグが開催されるセキエイこうげんへと辿り着いたリーリエたち。今日はついにトレーナーたちの夢の舞台、カントーリーグ開幕当日だ。

 

リーリエ含む参加者のトレーナーたち、そして彼らの激しい戦いを観戦しようと多くの人たちがこのカントーリーグの会場に集まっている。いつものジム戦と違う雰囲気にリーリエは思わず緊張する。だがそれはリーリエだけでなく、他のトレーナーたちも同じ様子だ。

 

普段は緊張することの無いブルーでさえも落ち着かない様子で周囲を見渡している。リーグとはそれだけの緊張感で包まれる場所であり、それこそがリーグ最大の敵と言っても過言ではないだろう。

 

「それではこれより、ポケモンリーグセキエイ大会開会式を行います!」

 

ポケモンリーグの最高責任者である男性が台の上に立ちマイクを使ってみんなに呼びかける。それと同時に、マントをつけた一人の男が姿を現した。

 

その男はカントー地方のトレーナーならば誰でも知っている人物で、責任者の男性がその男を紹介してその男は一歩前に出る。

 

「開会の挨拶は、この人にお願いしたいと思います!」

「俺はカントー地方チャンピオン、ワタルだ!」

 

チャンピオンであるワタルが口を開くと、会場の全てのトレーナーからの歓声が響く。カントー地方のトレーナー全員が憧れ、目標とする人物が目の前にいるのだから興奮しない方が嘘というものだろう。

 

「様々な試練を乗り越え、ここに集ったこと、心から嬉しく思う。そんな君たちに俺から、ささやかながらプレゼントを用意した!」

 

この場に集ったトレーナーたちの顔を見渡しながらワタルがそう言うと、トレーナーたちがざわざわとざわつき始める。ささやかとは言えチャンピオンが用意したプレゼントだ。どんなものであったとしても嬉しくないわけがないだろう。

 

「さあ!こっちに来てくれ!」

 

ワタルがそう言うと、奥の影から一人の少年が姿を現す。知る人は少ないが、それでも一部の人は知っている人物。そしてその少年の姿を見たリーリエが真っ先に驚き口を開いた。

 

「え?シンジ……さん?」

 

そう、その少年はリーリエのよく知る人物、シンジであった。その驚きはブルーやハジメ、コウタにコウミも同じであった。

 

「彼は俺と同じでアローラ地方のチャンピオンを務めているシンジ君だ。今から彼には俺とバトルをしてもらう。そしてそれをポケモンリーグ開会の合図とする!」

 

その言葉を聞いた瞬間、会場の盛り上がりはピークに達し、会場全体が揺れているのではないかと錯覚するほどの大歓声が轟く。シンジにも思わず笑みが零れる。

 

チャンピオン同士の戦い。それを目の前で……しかもポケモンリーグと言う大舞台で見れるのに嬉しくないトレーナーはいるだろうか?いや、いるはずないだろう。トレーナーとして、まして一人前を目指すトレーナーであればこれほど見てみたい対戦カードはない。誰でも一度は夢見る対戦が今実現するのだ。

 

「ではシンジ君。今日は1つお手柔らかに頼むよ。」

「はい!でも、僕は手加減するつもりはありませんから。全力でぶつかりますよ!ワタルさん!」

「それは楽しみだ。俺も君とのバトルは楽しみにしていたんだ。お互いにベストを尽くそう。」

 

2人のチャンピオンは握手を交わしお互い用意されたポケモンフィールドの端で向かい合い立つ。そして審判がポケモンリーグの特殊なルールを説明する。これはポケモンリーグ限定のルールをトレーナーたちに説明するチュートリアルも兼ねているのだ。

 

「それではこれより、ポケモンリーグの対戦ルールは3対3!しかし今回は特別に両者1体ずつのバトルとさせていただきます!また、5分が経過したら強制的にバトルは終了とさせていただきます!」

 

これはあくまで模擬戦と言う名目で行われる試合だ。チャンピオン同士の戦いなのだから激しいバトルが行われるのは明白。ゆえにこのようなバトルの結果を問わないタイム制にしたのだ。

 

「さらにここではバトルごとに様々なフィールドを用意させていただきます!」

 

審判の説明と同時に、背後にある巨大なバックスクリーンに映像が映し出される。そこには水、砂、森などといったフィールドが映っていた。まさに多種多様なフィールドだが、それらをどう活かすかも重要な要素であり、トレーナーとしての真価が試されると言っても過言ではないだろう。

 

するとポケモンフィールドが突然半分に割れ、みるみると姿を変えていった。そしてそこに現れたのは、一面が草で覆われたフィールドであった。そのフィールドは何の変哲もないフィールドで、風が吹きフィールドの草が風で揺れている平和なフィールドだ。小細工も何もない真剣勝負。まさにシンプルイズベストを体現したフィールドである。

 

「では両者!ポケモンを!」

 

審判の合図と同時に2人はモンスターボールを手にする。そしてお互いにそのモンスターボールをフィールドの中央に投げた。

 

「行くよ!ニンフィア!」

「頼むぞ!カイリュー!」

『フィーア!』

『バウッ!』

 

シンジはニンフィアを、ワタルはカイリューを繰り出した。

 

ワタルが使用するポケモンはドラゴンポケモンばかりだ。シンジの相棒であるニンフィアはワタルにとって最悪に相性が悪いだろう。だがワタルはそれでも笑みを崩すことはない。強敵と戦えることにワクワクを隠し切れないのだ。彼もまた、バトルが大好きな一人のトレーナーだという事だ。

 

「それでは……バトル開始!」

「ニンフィア!でんこうせっか!」

「カイリュー!しんそくだ!」

 

バトルの合図と同時にお互いが動き出す。挨拶代わりにお互いは正面からぶつかり合う。しかしただ正面からぶつかっただけだと言うのに、それだけでも衝撃は凄まじいものであった。まるで互いの力が共鳴しているのではないかと思わせる程の力の交じり合いだ。

 

互いの力が拮抗し、ニンフィアとカイリューは元の位置まで戻らされる。相手の力を確認し、挨拶が終わったと判断した2人は本格的に攻めの態勢へと移行した。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

「カイリュー!りゅうのはどう!」

 

ニンフィアはシャドーボールを、カイリューはりゅうのはどうを放つ。互いの技はフィールドの中央でぶつかり合い爆発する。するとすぐさまカイリューは手を休めることなく動きを見せたのだった。

 

「しんそくだ!」

『バウッ!』

 

カイリューは爆風を勢いよく突っ切りニンフィア目掛けて突撃する。ニンフィアも一瞬反応が遅れてしまい直撃を受ける。カイリューは空を自由に飛べる分相性の不利を補える要素は充分兼ね備えている。勝負はどちらに転ぶか分からない。

 

しんそくの直撃を受けたニンフィアだが、ダメージは浅いようで踏ん張り耐え切る。追撃を許さないよう反撃を開始した。

 

「シャドーボール!」

『フィア!』

 

ニンフィアはシャドーボールを連続で放ち空を飛び距離を離していくカイリューを乱れ撃つ。しかしカイリューはその攻撃を次々と躱していき中々とらえることができない。

 

「カイリュー!れいとうビーム!」

「ようせいのかぜ!」

 

カイリューは最後のシャドーボールを躱しれいとうビームで反撃する。だがニンフィアはその攻撃をようせいのかぜにより少ない隙で阻むことに成功する。まさに互いに一歩も引かない接戦となっている。

 

「す、すごい……。」

 

その戦いを離れてみていたブルーがそう呟いた。この場にいる誰もがそう思っているだろう。互いにいつ倒れてもおかしくない攻撃が交じり合っているのにもかかわらず、その攻撃をどちらも許すことがない。自分たちとはレベルが違う事を改めて感じさせるものだ。

 

「これが頂点同士の戦いか……。」

「正直言葉も出ないね。」

 

コウタとコウミもそう呟く。全てのトレーナーや会場にいるものたちが開いた口が塞がらない状態だ。これほどのバトルを繰り広げられれば無理もない。互いに無駄な動きがなく、技の完成度も高い。これほどのトレーナーの戦いを目の前で見れること自体が奇跡のようなものだ。

 

「……ですが、彼らが私たちの目指す目標なんですよね。」

 

リーリエの言葉に全員が頷く。これだけの戦いを見せられ、彼女たちは戦意を失っていないどころかむしろ輝くほどに増していた。それは、彼女たちが真のポケモントレーナーである証だ。

 

ポケモントレーナーは自分よりも強い存在に会うと、その存在に追いつこう、次は勝とう、超えようと思うものだ。8つのポケモンジムを勝ち抜き、数多のポケモントレーナーと戦ってきて、勝利し、敗北し、このポケモンリーグを目指して様々な経験をしてきている。この場にいるポケモントレーナーたちは数多くの試練を乗り越えこの場に集ったのだ。そんなやわな精神を持った者はいないだろう。

 

「目標か……。そうだな。俺も強くなって……いつかアイツに……。」

 

ハジメは拳を強く握りしめ、かつて敗北を味合わされた人物の姿を思い出す。いつか追いつくべき相手の背中を必死で追いかけているのだ。それはこの場の全員が同じだ。

 

彼らが覚悟と目標を再確認し改めている間も激しいバトルは継続していた。再びニンフィアとカイリューの強力な技がぶつかり合う。すでに時間は3分が経過しようとしているところだ。

 

だが、生き詰まる攻防を繰り返しているため本当は何十分、何時間とバトルが続いているのではないかと錯覚する。全てのトレーナーたちは既に見入ってしまい、息をすることすらも忘れている様子だ。

 

しかし、それでもこの戦いを最も楽しんでいるのはシンジとワタル、他の誰でもない本人たちであろう。その二人からは自然と笑みが零れ、誰が見ても楽しんでいることが伝わってくる。この戦いが永遠に続けばいいのにと心の中で思いながら、彼らはバトルを続ける。

 

「カイリュー!れいとうビーム!」

「ニンフィア!でんこうせっか!」

 

れいとうビームを放つカイリュー。しかしそれを華麗に回避しニンフィアはカイリューの腹部にでんこうせっかの直撃を受けてしまう。そのダメージに顔を歪めるカイリューだが、それでもこらえ自らに喝を入れ気合いを入れる。

 

もうすぐ終わってしまう。だが終わらせたくない。そんな感情が2人の心の中を駆け巡る。時間は刻一刻と迫っており、残り時間が1分となってしまう。

 

「しんそく!」

「でんこうせっか!」

 

しんそくとでんこうせっかが中央で再びぶつかる。

 

「シャドーボール!」

「りゅうのはどう!」

 

シャドーボールとりゅうのはどうが交じり合う。

 

「れいとうビーム!」

「ようせいのかぜ!」

 

れいとうビームをようせいのかぜで防ぐ。

 

どれだけ強力な技を交えても互いの技が届かない。どちらの力も強大で、どちらの絆も深い。それはチャンピオンだからではなく、2人がそれほどの実力を持つ一流のトレーナーである証だ。

 

そして残り時間は僅かに10秒。次の攻撃がラストとなるだろう。

 

「ならば最後は!」

「お互いに最高の技で!」

『決める!』

 

ワタルとシンジがそう決意し、遂に最後の技がぶつかり合おうとしていた。互いにお気に入りの技。そして自身の持つ最大最高の技で。

 

「カイリュー!はかいこうせん!」

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『バウッ!』

『フィア!』

 

カイリューとニンフィアはお互いに体内から力を集め溜め込む。技を溜める間にも時間は進んでいく。

 

10、9、8、7……

 

力を溜め込んだ2人はその力を一気に解き放つ。

 

6、5……

 

そしてフィールドの中央でぶつかり合う。

 

4、3……

 

互いの力が拮抗し、押しては押し返しを繰り返していた。

 

2、1……

 

そして遂にはかいこうせんとムーンフォースは交じり合い空へと舞い上がる。

 

0……

 

そして時間が0となりタイムアップの笛と同時に互いの技が空で四散し、その光の粒子が会場全体を包み込む。あまりに強力すぎる技のぶつかり合いであったため、力を抑えきれずに押し合った結果空へと舞い上がってしまったのだ。

 

その花火のように舞い散った光の粒子と会場に鳴り響いた笛は、まるでポケモンリーグの開催を意味しているようでもあった。

 

そしてタイムアップとなり戦いが終わった二人は、フィールドの中央まで歩き距離を縮めた。

 

「良いバトルだったよ。俺も遂最後まで熱くなってしまった。」

 

ワタルはそう笑顔で言いながら手を差し出す。シンジはそのワタルの手をしっかりと握り返し口を開き答えた。

 

「僕もですよ。決着はつかなかったですが、もし次があるなら僕は……僕たちは負けませんから!」

「それは俺も同じだ。俺もカイリューと共に更に強くなる。そして次は君たちにだって勝って見せる。」

 

ワタルとシンジの2人のその姿は、紛れもなくトレーナーたちのそれだ。激しいバトルを繰り広げた彼らだが、バトルが終われば勝ち負け問わず、互いの実力を認め合い次の目標として高みを目指す。彼らもまた真のポケモントレーナーなのだ。

 

そんな彼らの素晴らしい戦いを称え、会場を揺らすかのような拍手の雨が鳴り響いた。皆が彼らの戦いと絆に感動し、感銘を受けた証拠だ。昨日の敵は今日の友と言う言葉が相応しい光景だろう。

 

『ファーイ!』

 

そんな会場に、一匹のポケモンの咆哮が響いた。一体何なのかと全員が一斉に見上げると、そこには炎に包まれたポケモンの姿があった。

 

「っ!?ファイヤー!」

 

ワタルがそのポケモンの名前を告げる。ファイヤーはれいとうポケモンのフリーザー、そしてでんげきポケモンのサンダーと並び、カントーの三大鳥ポケモンとして有名な幻のポケモンだ。だがその発見例、報告例は少なく個体数も数少ない。ファイヤーが人前に姿を現すのは極めて異例である。もしかすると、ファイヤーはずっと彼らの戦いを見届けていたのかもしれない。

 

ファイヤーは暫く彼らの目を見つめていると、その後聖火台に炎を吐き聖火を灯した。カントーリーグでは一生消えることがないと言われるファイヤーの聖火をランナーが灯し開催するのが決まりであるが、今回の出来事は初の事例だ。ファイヤーが一体何を思って姿を現したのかは分からないが、気まぐれな彼らのことだからただ単にワタルとシンジに興味を示しただけなのかもしれない。

 

初めての出来事に困惑する者たちだが、何事もなく過ぎ去ったため無事大会を開けると判断し……。

 

「それではこれより!ポケモンリーグカントー大会を開幕いたします!」

 

ポケモンリーグの開催を宣言したのだった。

 

こうしてポケモンリーグカントー大会が開幕し、トレーナーたちの熱き戦いが遂に幕を開けるのだった。




ちょっと真面目な話をします。一つリクエストがあったので返答しましたがこちらにも書いておきます。長くなってしまいますが申し訳ございません。別にリクエストしねえわという方がいたら飛ばしてください。

読者様が考案したオリキャラを出してほしいとのことでしたが、申し訳ありませんがそれはできません。理由はいくつかあり、その理由を語りたいと思います。
まず一つは、これ以上追加でメインキャラを出すつもりはないという事です。なぜなら、カントーでのライバルにブルー、ハジメ、コウタ、コウミ、それからルナが存在します。それに加えミヅキ、グラジオやその他原作キャラ+登場予定のハウとヨウもいるため正直ヌシの脳内はパンク気味です。ただでさえ人の名前も覚えられない記憶力なのに無茶しやがって……。ですのでこれ以上メインキャラやライバルキャラは追加する予定はございません。
二つ目は、これからの展開をザックリとではありますが考えているからです。もしオリキャラを追加で出してしまえば、場合によっては話の内容を大きく変更しなくてはなりません。例えばリーリエ以上の実力者が出てしまった場合、ヨウとハウの立場が薄れてしまう可能性がある出す意味がなくなってしまいます。また、シンジと同等の実力者が登場してしまえばバランスが崩壊し、シンジが一部のトレーナー意外に敗北、引き分けなどの現象が起きてしまえばその分の話を修正しシンジを前面に出さなくてはいけなくなります。
ヌシの考えているコンセプトとしては、リーリエの成長をメインで書き、シンジは彼女を含む島巡りで成長していくトレーナーたちを見守りながらチャンピオンとしての務めを果たしていくと考えています。また、ヌシの個人的な考えとしてはチャンピオン=トレーナーの模範、最強トレーナーの肩書、ですので彼のキャラクター性も守っていきたいと思っております。ですのでそれぞれのキャラクター性を守るために原作以外のライバルキャラを出す気はありません。
また、自分の書いている小説を本編に出してほしいと言う意見であれば却下させていただきます。例え合意、リクエストの上であったとしてもさすがに他作品様のキャラクターを本編に出すのはよくないのではと思うからです。コラボしたいと言う話であれば番外編で承諾させていただきます。ただしコラボさせていただくのは、ヌシが言うのもなんですがある程度お気に入り件数などがあり一部の人からでも知られている作品、純粋なポケモン小説のみです。クロスオーバー作品とコラボしてしまいますと番外編とは言えファンタジー的な話になってしまえば乗り気になりませんし、なによりヌシの好みではありません。このあたりは勝手な意見で申し訳ございません。
最後はメルタン、メルメタンに関してですが、この二体に関しては出す予定はございません。公式での設定も明確にされておらず、今更出すのも正直難しいです。メルタンを出してしまうと結局オリキャラと出すはめになってしまいそうなので……。ついでに言うと幻ポケモンを使うキャラも出す予定はございません。DPの伝説t……じゃなくてタクトさんの二の舞になってしまいそうなので

これらの事はヌシが説明不足であったため非はヌシにあります。次のオリキャラを楽しみにしていた方、オリキャラを考えていた方がいたら申し訳ございません。
ただリクエストに関しては可能な限り答えたいとは考えていますので、一話限りのモブキャラ(以前出たサナエやカズキのようなキャラ)であれば問題なく出せます。なのでこんなモブキャラを出して欲しいという事であれば喜んでお引き受けいたします。先ほど説明したように、シンジより強いキャラといったことには残念ながらお答えできませんのでご了承ください。

それとリクエストは可能な限り活動報告の意見箱に記入してください。理由はただ単にヌシが覚えやすいようにしたいだけです……。

実は自分の書いているキャラたちはモブであっても全員愛着がありますのでこういった形式を取らせていただきます。なので例え大嫌いなキャラであっても誹謗中傷はお控えください。それをされるくらいなら豆腐メンタルのヌシが全ての罵倒を引き受けます。

重ね重ね申し訳ございませんが、以上の事をご了承の上これからもヌシと当小説をよろしくお願いいたします。

多分次回はパラドファンさんとのコラボ回となります。














































………………真面目に書きすぎて疲れたよパトラッシュ


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カントーリーグ開幕!緊張の一回戦!

今日は丁度バレンタインですね。まあヌシには相手がいないので貰うことないですし、現在ダイエット中ですので食べませんが。ブイズがいればなんだっていいよ(無関心)

というわけで今回はいよいよリーグ戦開幕です!ただ前回のコラボで力尽きたのか少々頭の回転が……。日本語おかしかったらすいません。

なんとなくですが自分の使うメインのブイズパをQRレンタルとしてうpしておきました。ブイズパに興味がある人は使ってください。

詳細が知りたい人は個別にメッセージをば


ポケモンリーグ開幕式となるチャンピオン同士のバトルが終了し、参加者たちに緊張の瞬間が訪れる。

 

「それではこれより、第一試合の対戦カードを決めさせていただきます!」

 

そう、それは一回戦目の相手を決める抽選である。ある意味で参加者にとって一番緊張する瞬間であろう。

 

第一回戦の相手によって勝ち上がれるかどうかの確率が変わると言っても過言ではない。そして全ての参加者はポケモンリーグと言う大舞台に慣れてないトレーナーが殆どだ。第一回戦ともなれば全員が緊張していても不思議ではない。

 

トレーナーたちが緊張する中、一回戦の第一試合に選出されればさらに緊張感が増す。最悪実力を出し切れない場合もあるだろう。気になる一回戦目の相手、自分の戦う順番、それらが気になってしまい全員が落ち着かない様子である。

 

そしてみんなが巨大なバックスクリーンに注目する。バックスクリーンには参加者たちの正面から撮影した画像が映し出されており、それらがカード化してランダムで散らばり裏側になる。

 

対戦カードは機械が自動的に抽選で決める。リーリエやブルーたち、参加者全員が喉をゴクリと鳴らしバトル相手が決まる瞬間を待つ。

 

「気になる一回戦目の相手は……これだ!」

 

司会者の言葉と同時に、全てのカードが表側となり対戦カードが公開される。すると奇跡的にと言うべきか、リーリエたちライバルは見事にマッチングしていなかった。これにはライバル全員が喜んでいた。

 

一回戦目からライバル同士がぶつかり合ってしまえば、実力を出し切れないままどちらかが退場してしまう。この世界は勝者と敗者、どちらかしか存在できない残酷な世界だ。そうなれば彼らは後悔してもしきれないだろう。

 

しかし対戦カードが決まり、その結果を見ていたブルーが口を開いた。

 

「……私が初めの一戦目……ね。面白いじゃない!」

 

ブルーはそう言いながら手をグッと握り締める。開会式のさい緊張を隠し切れなかったブルーだが、今ではその緊張の様子は微塵も感じさせない。先ほどの熱いバトルを見せられて血が滾ったのか、その眼には炎が宿っている気さえ感じさえさせる。

 

「ブルーさん……初戦がんばってください!」

「頑張るじゃなくて勝つのよ!あんたもあたしと戦うまで負けるんじゃないわよ!」

 

リーリエの激励にそう答えるブルー。普段から強気なブルーだが、これは彼女なりのリーリエに対する激励の意味も込められている。

 

カントーリーグにて決着をつけると約束した2人。その約束を果たすために2人はこのバトルを勝ち続けることを誓い合う。リーリエも強く頷くことでブルーの言葉に答えた。

 

「それでは早速第一試合!ブルー選手対ハルト選手!」

 

司会者に呼ばれたブルーが余裕の表情でフィールドに立つ。向かいには対戦相手である若く小柄な少年、ハルトが立った。

 

そしてフィールドが割れ、今回の戦いのステージが姿を現す。そのステージは水。いくつかの丸い足場が水面に浮いており、それ以外は一面水場である。そのステージはハナダジムそっくりのフィールドだ。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

「最初はもちろんあなたでいくわよ!カメックス!」

「お願い!ピジョット!」

『ガメェ!』

『ピジョットォ!』

 

ブルーは初手から相棒であるカメックス。対してハルトが繰り出したのはひこうタイプのピジョットだ。バックスクリーンにはカメックス、ピジョットに加え互いの不明な手持ち2体と、2人の手持ちポケモンが映し出される。

 

ひこうタイプのポケモンであれば水場のデメリットは殆ど少ない。ブルーのカメックスはみずタイプであるため影響は少ないが、カメックスほどの巨体であればあまり有利なフィールドではない。どちらかと言えばブルーの方が不利だろう。

 

このバトル、ブルーがどう戦うのかリーリエはじっくりと観察することにした。

 

「バトル……はじめ!」

 

審判の合図によりバトル開始が宣言される。最初のバトル、勝利するのはどちらなのか。どのようなバトルが展開されるのか。会場にいる全員が注目していた。

 

「ピジョット!エアスラッシュ!」

 

ピジョットはエアスラッシュで先制攻撃を仕掛ける。さすがはカントーリーグに出場するトレーナーだけはあり、技の精度はかなりのものであった。だが逆に言えばそれは分かっていたことであり、ブルーもここまで戦い抜いてきたトレーナーだ。そう易々とやられるわけがなかった。

 

「カメックス!こうそくスピン!」

 

カメックスは甲羅の中に身を隠し、こうそくスピンでピジョットのエアスラッシュを容易く掻き消した。まるでパフォーマンスのような芸当に会場から歓声が沸く。

 

『なんとブルー選手!カメックスの特徴を活かした見事な防御だ!ここからどのようなバトルが展開されるのか!?』

「カメックス!ハイドロポンプ!」

「躱して!」

 

カメックスはハイドロポンプを連続で放つも、ピジョットのスピードに追い付けず中々とらえることができない。

 

「ピジョット!でんこうせっか!」

 

ピジョットはでんこうせっかで接近しカメックスとの距離を詰める。カメックスはその攻撃の直撃を受けない様に腕をクロスさせて咄嗟に防御する。

 

小さいがダメージを貰ってしまったカメックス。だがそれでもブルーの表情に変化はない。それどころか彼女の口角が僅かに上がり、先ほどよりも余裕の笑みを浮かべていた。

 

「続けてはがねのつばさ!」

 

ピジョットの翼が文字通り鋼のように硬くなりカメックス目掛けて降下してくる。スピードも申し分なく、攻めるチャンスであったため判断としては正しいだろう。だが、それこそがブルーの狙いであった。

 

「カメックス!ピジョットを受け止めなさい!」

『ガメ!』

 

カメックスは受け身の態勢で身構える。ピジョットのはがねのつばさが直撃したかに思えたが、それをカメックスは後ろに下がりながら難なく受け止める。それにはハルトとピジョットも驚かずにはいられない。

 

「どれだけ素早くても、捕まえればこっちのものよ!そのまま投げ飛ばして!」

『カメックス!ピジョットを上手く捕まえそのまま投げ飛ばしたぞ!』

 

カメックスは捕らえたピジョットを後ろに投げ飛ばす。そのチャンスを逃すことなく、ブルーはピジョットに追撃を加えた。

 

「今よ!ハイドロポンプ!」

「ピジョット!?」

 

カメックスは背中の砲台を構え、正確にピジョットを狙い撃つ。ピジョットも急いで態勢を整えるが、その時には既に遅くハイドロポンプが目の前まで迫っていた。

 

当然ピジョットは回避することができず、ハイドロポンプの直撃を浴びてしまう。あまりに強力な一撃であったため、堪らずピジョットは水面に落ちる。そしてそのまま浮かび上がり、そこには目を回して戦闘不能となっているピジョットの姿があった。

 

そしてバックスクリーンに映っていたピジョットの映像が黒くなり戦闘不能を現す表記となったのだった。

 

「ピジョット!戦闘不能!カメックスの勝ち!」

「ピジョット!戻れ!」

『カメックス、まさかの一撃でピジョットを倒してしまいました!まず一勝をあげたのはブルー選手!さあ、ハルト選手の次のポケモンは!?』

 

その時リーリエは、ブルーの戦いを見て感想を呟いていた。

 

「ブルーさん……以前戦った時より確実に強くなってます。」

 

以前リーリエと戦った時もブルーは確かに強かった。しかし、今のブルーにはハルトとの戦いに圧倒的な余裕が感じられる。絶対に勝つのだと言う強い意思。それは強いトレーナーから自然と放たれるオーラのようなものだ。

 

それを感じ取ったリーリエは、ブルーは間違いなくこの大会のトップクラスの実力者だろうと考える。それだけ彼女は力をつけ、リーリエにとってもライバル以上の存在、勝たなくてはならない存在にまで成りあがっていた。彼女もリーリエとの約束を守った、という事だ。

 

「だったら……私も……。」

 

強くなったのはブルーだけじゃない。今度は自分が彼女に成長を見せつける番だと拳を強く握りしめる。自身の目指す最大のライバルの姿を目に焼き付けながら。

 

その後もブルーはハルトの繰り出す2体のポケモンを、カメックス一体のみでストレート勝ちをしてしまう。これには司会者も驚き感嘆の声をあげる。

 

一回戦目から対戦者に力の差を見せつけるブルー。そして二回戦、三回戦とバトルが続き次々と勝者が決して行く。数多の強者がいるため、様々な戦術をとるトレーナーがおり見ていて飽きることはなく、他のトレーナーにとってもよい勉強になる。

 

そして遂に、待ちに待ったリーリエの出番がやってきたのだった。

 

「続きまして、リーリエ選手対ワルター選手!」

 

名前を呼ばれ、スタンバイしていたリーリエが緊張した様子でフィールドに立った。しかし向かいに立っている人物は、彼女にとってどこかで見た顔であった。

 

「やあリーリエさん!私はこの時をずっと待っていました!」

「あなたは!?…………えっと……どちら様でしたっけ?」

 

リーリエの予想外の反応にワルターはずっこける。気を取り直し立ち上がったワルターは髪をかき上げ、改めて自己紹介をしたのだった。

 

「お、おやおや……でしたら思い出していただきましょう。私はワルターですよ。以前グレンタウンでお会いしたでしょう?」

「……あ、あの時の方ですか。」

 

その言葉でリーリエは思い出すことができた。

 

皆は覚えているだろうか?かつてリーリエが参加したカツラ主催のグレンタウンで行われたクイズ大会。その時のリーリエと決勝を争ったワルターである。一度しか会っておらず、彼女にとってもそれほど印象に残る人物でもなかったため残念ながら記憶になかったのだ。

 

ある意味では印象に残りやすいかもしれないが、心の中ではリーリエもあまり彼に対してよい印象を持っていなかったのかもしれない。だから彼女の記憶から除かれていた可能性もあるのだが……。

 

だがそんなことはお構いなしに、ワルターは一方的にリーリエに話しかけていた。

 

「あの時確かに私は負けてしまった。だが不思議と屈辱的な気分にはならなかった。何故ならあなたが私の屈辱が霞むほど美しいから!」

「は、はあ……。」

 

どこからともなく赤い薔薇を取り出しまるで告白のように熱く語るワルターだが、どう反応していいか困るリーリエはただただ彼を見ているしかない。そもそも彼女は恋愛自体に少々疎いところがあるため告白されても理解していない可能性すらある。

 

「あなたともう一度バトルすることをどれだけ待ち望んでいたことか。この勝負に勝てば、私とどうかお付き合い願います!」

「すいません。お断りいたします。」

 

容赦なくワルターの告白をバッサリと切り捨てるリーリエ。当然の結果ではあるが、予想外だと感じていたのかワルターはその場でガクッと落ち込む。だがすぐにすくっと立ち上がり口を開いた。

 

「ふ、ふふふ、このバトルが終わればあなたも気が変わると思いますよ?」

「はあ……」

 

まるでデジャブのような展開だが、どう反応すればいいか分からないリーリエは困惑のあまり同じ反応しか返すことができない。彼女的には、グイグイとせめてくる相手は苦手なのだろう。

 

だがここまで来たという事は実力があるのは確かであろう。リーリエにとっても大舞台での初陣。困惑したとはいえ、ワルターの言動で程よく緊張が解けたリーリエ。そして彼女はシンジの語ったある言葉を思い出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――『ジム戦であってもリーグ戦であっても、自分らしく楽しく戦うのが一番だって思ったんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうです。例え誰が相手でも、どんな舞台であっても私は私です。私は私自身のバトルをするだけです!)

 

リーリエが覚悟を決めると、リーリエたちの戦うフィールドが姿を現す。今回のフィールドは木々が生い茂っているフィールド、森であった。だったら自分はこのポケモンしかいないとモンスターボールを握り締める。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウ!』

「優雅に行きますよ!キングドラ!」

『ドォラ!』

 

リーリエが出したのはフシギソウだ。くさタイプのフシギソウであれば森のフィールドとも相性はいいだろう。対してワルターの繰り出したのはキングドラだ。

 

『キングドラ、ドラゴンポケモン。タッツーの最終進化形。生物のいない深い海底に住んでいる。うず潮はキングドラの欠伸が原因で発生しているのではないかと言われている。』

 

みずタイプに加えドラゴンタイプを併せ持つキングドラ。現在水場ではないため宙に浮いた状態となっており、本来の力を発揮しきることができない。だがそれでも油断できないことに変わりはなく、強敵であることに間違いはないだろう。

 

「それでは……はじめ!」

「キングドラ!ハイドロポンプ!」

「躱してください!」

 

キングドラは最初から大技であるハイドロポンプを放つ。フシギソウはその攻撃をジャンプして難なく回避する。しかしそのことはワルター自身も読めていた。

 

「続けてりゅうのはどう!」

 

すかさずキングドラはりゅうのはどうで狙いを定め的確にフシギソウを射抜いた。その様はまるでスナイパーと呼ぶに相応しい精度であり、威力も申し分なかった。

 

「フシギソウさん!」

『おぉっとワルター選手!見事フシギソウの行動を読みりゅうのはどうを決めてきた!リーリエ選手はどう対抗するのか!』

 

フシギソウはダメージを受けるも受け身を取りダメージを最小限に抑える。だがその後も絶え間なくキングドラの攻撃は続いた。

 

「もう一度りゅうのはどう!」

「とっしんです!」

『ソウ!』

 

りゅうのはどうで怒涛のラッシュをかけ攻めるワルター。その攻撃にリーリエは自ら突っ込む形で対応した。

 

本来であればこれだけ強力な攻撃に自ら向かっていくのは嵐の中に身を投げ出すようなものだ。しかし一部の者にはリーリエの考えが分かった。

 

「っ!?こうそくいどう!」

 

フシギソウ突進力に焦り、ワルターはこうそくいどうで距離を離そうとする。しかし、そうなることはリーリエにとっても好都合だった。

 

たとえ怒涛の攻めを見せ有利に見えても、ポケモンによって有利な状況、得意な距離というものがある。キングドラの場合、遠距離で射撃がそれにあたる。

 

だがフシギソウはどちらでも対応が可能であるため融通が利く。キングドラの攻撃を避け接近することで、立場だけでなく精神的にも追い詰めることに成功したのだ。

 

「追い詰めますよ!連続でエナジーボールです!」

 

エナジーボールで連続攻撃を仕掛け反撃に出るフシギソウ。先ほどの状況から形勢逆転し、今度はリーリエが優勢となる。こうなってしまえば状況を覆すことは一気に難しくなる。

 

こうそくいどうを使い距離を離すキングドラ。しかしいつまでも逃げきることは出来ず、木々が邪魔となってしまい最終的にはエナジーボールを浴びてダメージを受けてしまった。フィールドが狭い事も相まってキングドラの素早さを活かしきれていないのだ。これがこのリーグでの難しい部分であり、一つの醍醐味でもある。

 

『ここでフシギソウのエナジーボールが炸裂!キングドラ、これは相当効いているようだぞ!』

「くっ、こうなったら攻撃あるのみ!キングドラ!ハイドロポンプ!」

「フシギソウさん!はっぱカッターで木を切り倒してください!」

 

ワルターは焦りからハイドロポンプで早々にケリをつけようとする。優雅さとは全くかけ離れてしまっているが、リーリエは一切慌てることがなかった。

 

パワーで言えばキングドラの方が上であるためハイドロポンプを正面から止めることは出来ないだろう。そのためリーリエは自身の得意な戦法であるフィールドを利用しようと考えたのだ。フシギソウははっぱカッターで木を切り倒す。するとキングドラのハイドロポンプは切り倒された木にあっさりと阻まれてしまう。

 

「なっ!?」

『なんとリーリエ選手!フィールドの木を切り倒してキングドラのハイドロポンプを防いだ!気転の利いた見事な戦術だ!』

 

その予想外の現象に驚くワルター。だがそんな隙も与えず、リーリエは攻撃の手を緩めない。

 

「今です!つるのムチ!」

『ソウ!』

 

フシギソウは切り倒した木から飛び出し、つるのムチでキングドラを叩き伏せる。キングドラは今の一撃に耐え切れず戦闘不能となった。

 

「キングドラ!戦闘不能!フシギソウの勝ち!」

 

キングドラとの力の差を見事埋めたリーリエとフシギソウ。これには客も盛り上がり司会者も大絶賛だ。

 

その初勝利に勢いづいたリーリエ。ワルターも必至の抵抗を見せるがリーリエの臨機応変な対応について行くことができず防戦一方の状態が続く。

 

力に差があっても様々な戦術で戦えば差を埋める事ができる。その証明となるバトルを見せつけ、リーリエはワルターにフシギソウのみで見事完全勝利をした。

 

一瞬落ち込むワルターであったが、すぐに立ち直り逆にリーリエにますます惚れ込んでいる様子であった。当の本人は全く気付いていないため一方的に届かぬ愛なのだが。

 

だがその様子を見ていたブルーは……

 

「ふぅん。やるじゃないの。でも、そうでなくては面白くないわ。」

 

ライバルの成長を見届け、ブルーはその場を後にする。そしていずれ来るであろうバトルの時を、うずうずと楽しみにしながら待つことにしたのだった。

 

(リーリエ……あなたには絶対に負けられないわ。待ってなさい。勝つのはこのあたしよ!)

 

こうしてリーリエは無事一回戦を突破し、次のバトルへと弾みをつけたのであった。強者たちが集うカントーリーグ。彼女たちの戦いはまだ始まったばかりだ。次に待ち受けるのはどんなトレーナーたちなのか。リーリエの戦いはまだまだ続く!




ハルトオオオオオオオ!!

はい、結構はしょりました。一回戦目からグダグダ戦っても仕方ないからね(適当

この小説もなんだかんだ言いながら長く続いています。これも読者の皆様のお陰であるのは言うまでもありませんが、皆さん的にお気に入りの話ってあるんですかね?別に質問とかアンケートって訳ではないので答える必要はありませんが、ただ気になったのでちょっと呟いただけです。

因みに感想欄にはアンケートの回答、内容の改変や強要などは書いてはいけないそうです。リクエストはどうかは分かりませんが、それらは全て活動報告の意見箱にて書いていただけるといいかと思われます。一応小説情報のあらすじに載せといた方がいいですかね?気が向いたら更新しておきます。

それよりこの前僕のニンフィアが伝説ポケモンを3タテして、さらに(ry

※嫁自慢が長く続くためカット


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カントーリーグ二回戦!ピッピ、デビュー戦!

タイトル通りピッピのバトルです。ピッピの潜在能力を書きたかったので挟みました。

さあここでヌシからの問題!カントーリーグで優勝するのは次の内誰でしょう!
1、リーリエ
2、ブルー
3、ハジメ
4、コウタ
5、コウミ
6、モブ
7、伝説ty…タクト
8、ロイヤルマスク
9、ブイズ使い

答えはCMの後!(大嘘


ポケモンリーグカントー大会。リーリエとブルーが無事に一回戦を勝利するという結果で一日目が終了した。

 

当然と言うべきか、コウタとコウミ、それからハジメも難なく一回戦を勝ち上がった。3人ともかつてバトルした時とは明らかにレベルが違い、スピードやパワーが格段に上昇していた。その上コウタとコウミのパートナーたちがそれぞれ進化し、リザードンとバシャーモへと成長を遂げていた。紛れもなく彼らはこの大会での最大の壁となることだろう。

 

そして翌日。今日は第2回戦が行われる予定だ。リーリエの2戦目の対戦相手は女性トレーナーだ。他のライバルたちの対戦相手も決まっており、前日に既に発表されている。この場にいる誰もが1回戦を勝ち残ったため、強敵であることは間違いないだろう。決して油断はできない。

 

シンジもリーリエのバトルを見守るため、今日は観客席にてルザミーネと観戦している。

 

「それにしてもいいの?チャンピオンがこんなところにいて。」

「大丈夫ですよ。それにバトルが始まればみんな集中して気にしなくなると思います。」

「そんなものかしらね。」

 

実際、チャンピオンが近くにいても人混みの中であれば存外気付かないものである。特に一度バトルが始まってしまえば、観客の意識はバトルの方へと集中し周りのことなど気にする余裕はなくなるだろう。

 

シンジだけではないが、一部の強者はバトルの時と通常の雰囲気がまるで別人のように感じる事がある。ワタルほどの威厳がある存在感があれば別だが、シンジの場合はバトルの際に自然と威圧感を放つタイプのトレーナーだ。人ごみに紛れてもなんだか似ている程度で済んでもおかしくないだろう。

 

「今日はリーリエの二戦目ね。あの子、大丈夫かしら?」

 

一回戦目は難なく突破できたが、勝ち進むごとに相手も強くなっていくのは当然だ。その分負けられないというプレッシャーが重くのしかかってくるだろう。ルザミーネはそのことが一つの気がかりなのである。

 

「リーリエなら大丈夫ですよ。それに、本番はまだまだ先ですから。」

「……ブルーちゃんね?」

 

シンジはルザミーネの言葉に小さく頷く。

 

リーリエはブルーと戦い決着をつけると約束をしてここまで来た。その約束を果たすまで、2人は意地でも勝ちに行くだろう。それがライバルというものであり、今のリーリエとブルー、2人の関係だからだ。

 

「心配だけど、同時に楽しみね。自分の娘がこんな大舞台に立って、大勢の人の前でバトルをするところを見れるなんて。」

「僕もですよ。リーリエは最初の頃よりも強くなりました。僕も……負けてられないですね。」

「?シンジ君?」

「いえ、何でもないです。」

 

シンジは最後、どこか思うところがあり誰にも聞こえない声で呟いた。

 

シンジとルザミーネがそんな話をしている間にもバトルは次々と行われている。流石に一回戦目を勝ち抜いた者たちばかりであるため、誰もが強敵ぞろいであった。当然ライバルたちも順当に勝ち上がり力の差を見せつけている。

 

そして遂に、リーリエの出番がやってきたのだった。

 

「続きまして、リーリエ選手対アカリ選手です!」

 

審判の言葉と同時にリーリエが登場する。一回戦の頃に比べれば多少緊張が解れたのか硬くなっている様子はない。シンジとルザミーネもそんな彼女の姿にホッとし、安心して見ていられそうだと感じた。

 

今度のフィールドは岩場だ。岩にある障害があること以外、通常のステージと大差はない。フィールドギミックとして利用することも可能だろうが、大きな岩で強度も高いため少々難しいかもしれない。一部のいわ、じめんタイプのポケモンが有利をとれるかもしれないと言ったところだろうか。

 

審判は2人のトレーナーを交互に見て、準備が出来たのだと判断し両手を上げる。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

「行くよ!ニドクイン!」

『ニッド!』

 

リーリエが繰り出したのはマリル。そして対戦相手のアカリが繰り出したのがニドクインだ。マリルがみず・フェアリータイプなのに対しニドクインはどく・じめんタイプだ。相性で言えばどちらが有利とは言えない。

 

だがこの場に立っているトレーナーにタイプ相性での優劣は関係ない。どちらが強いか、どれだけの経験を積んでいるかで勝敗が分かれると言ってもいいだろう。リーリエもそのことを理解しているため、決して油断をせずに勝負に挑む。

 

「それでは……はじめ!」

「ニドクイン!がんせきふうじ!」

「マリルさん!アクアテールで撃ち返してください!」

 

ニドクインは早速がんせきふうじで動きに制限をかけてきた。だがリーリエはがんせきふうじに冷静に対処し撃ち返すことに成功する。

 

「かわらわり!」

『なんとマリル!ニドクインのがんせきふうじを跳ね返したぞ!しかしニドクインも負けていない!かわらわりでがんせきふうじを打ち砕いた!』

 

アカリのニドクインも負けておらず、ニドクインはかわらわりで撃ち返されたがんせきふうじをいとも容易く叩き割る。マリルの攻撃で跳ね返されたがんせきふうじは通常よりも威力が上昇している。それを簡単に一撃で割ってしまうところを見ると、ニドクインがどれだけよく育てられているかがよく分かる。

 

『両者凄まじい威力の技だ!次に動くのはどちらだ!?』

「続けてどくづきよ!」

「躱してバブルこうせんです!」

『リル!』

 

ニドクインは接近し毒を纏った腕を突き出して攻撃する。マリルはニドクインのどくづきを回避しながらバブルこうせんで即座に反撃する。マリルのバブルこうせんはニドクインに綺麗にヒットし、ニドクインはその攻撃で堪らず怯む。

 

じめんタイプのニドクインにみずタイプのバブルこうせんは効果抜群だ。ニドクインはその攻撃で動きが止まり、ダメージは確実にたまっている様子である。その隙を狙い、リーリエは確実に攻め込んだ。

 

「今です!アクアテール!」

『マリルの強力な連続攻撃が炸裂!これはかなり効いているぞ!』

 

マリルは怯んで抵抗できないニドクインにアクアテールを叩きこむ。その攻撃にニドクインは飛ばされてしまうが、なんとか踏みとどまることが出来た。だがそれでも連続でみず技を受けてしまえば限界に近い体力となってしまう。

 

追い詰められたことでアカリとニドクインも焦りを見せ始める。

 

「がんせきふうじ!」

「ころがるです!」

 

再びがんせきふうじを放ったニドクイン。マリルはころがるで回避しながらニドクインに接近する。しかし、ニドクインもただでやられることはなかった。

 

「今よ!かわらわり!」

『ニドォ!』

 

ニドクインはころがる状態のマリルにかわらわりで反撃する。ころがる状態とは言え、ニドクインの強力なかわらわりの直撃を受けてしまったマリルは逆に跳ね返されてしまう。

 

『ニドクインのかわらわりがカウンターで決まったあ!これは形勢逆転か?』

「マリルさん!」

「どくづき!」

 

今の一撃でダメージを抱え動きが鈍くなったマリルに、アカリも反撃のチャンスだと感じどくづきで一気に勝負を決めにかかる。

 

「っ!?アクアテールです!」

『リル……ル!』

 

マリルはリーリエの言葉に反応し、咄嗟にアクアテールで迎撃の態勢に入る。どくづきとアクアテールが中央でぶつかり合い衝撃が発生する。だがその衝撃が発生すると、そこには驚きの光景があった。

 

『リル……』

『ニドォ……』

『おおっと!?これはダブルノックダウンだ!』

「マリル、ニドクイン!共に戦闘不能!」

 

なんとニドクインとマリルのダブルノックダウンという結果に終わった。最初からこのような展開になるとは予想外だが、観客も見事な技の応酬に興奮状態となっている。

 

『これはまさかの展開になったぞ!ここから先、どのようなバトルが繰り広げられるのか、目が離せません!』

 

最初のバトルは相打ちに終わり、次はどのポケモンを出そうか悩むリーリエ。そんな時一つのモンスターボールが揺れ動き、リーリエが触っていないにも関わらず勝手にボールが開いた。

 

『ピッピ!』

「え?ピッピさん!?」

 

なんとそのポケモンはピッピであった。突然出てきたピッピの姿に、リーリエも思わず驚きの声をあげた。

 

『リーリエ選手の2体目はピッピだ!』

「あ、いえ、その……」

 

元々ピッピを出すつもりのなかったリーリエはどうしようかと戸惑う。正直自分のお気に入りであるピッピをあまりバトルに参加させたくはない気持ちが強い。

 

『ピッピ?ピィ!ピィ!』

 

ピッピは満面の笑みでリーリエの方を見ながら飛び跳ねている。緊張感どころかバトルの実感すらないように思える。恐らくピッピはバトルのために出てきたと言うよりも、興味半分で外に出ただけだろう。

 

こうなってしまっては仕方ないと割り切り、リーリエはピッピに任せることにした。これ以上ピッピに何を言っても理解はしてくれないだろう。

 

 

 

「ピッピ、自分から外に出たみたいだけど大丈夫かな?」

「あの子、バトルの経験はないから心配ね。」

 

シンジとルザミーネもピッピがバトルできるのかどうか不安を抱く。とは言えリーリエが決めたことなので、自分たちは静かに見守ることしかできない。

 

「行くわよ!マニューラ!」

『マニュ!』

 

アカリが繰り出したのはマニューラだ。あくタイプのマニューラであればフェアリータイプのピッピの方が有利だ。しかし相手は明らかに戦いなれている雰囲気をしているのに対し、ピッピは今回がデビュー戦だ。勝ち目としては誰が考えても薄い。

 

どうするべきかリーリエが悩んでいると、そんな暇も与えないと言わんばかりにマニューラが先手を仕掛けてくる。

 

「マニューラ!メタルクロー!」

『ニュラ!』

「!?かわしてください!」

『マニューラの鋭いメタルクローだ!しかしピッピ、これを上手く躱したぞ!』

 

マニューラは自身の爪を硬化させ、速攻で奇襲を仕掛けてきた。どうすべきか悩む暇すらないリーリエは慌てて回避の指示を出した。

 

マニューラはかなり素早く、ピッピでは躱せるかどうか不明であったがなんとか躱すことが出来た。しかし、当のピッピ本人はと言うと……。

 

『ピッピ!ピッピ!』

 

何故か笑顔で飛びはねている。その笑顔の理由は余裕だから、という事ではなく、恐らく彼女的には遊んでいるつもりなのだろう。なんにでも興味を持つピッピらしいと言えばそれまでなのだが、なんとも緊張感の欠片もない姿である。

 

しかし一方のマニューラからすれば、挑発されているように見えてイライラしている様子だ。自分の自慢のスピードから繰り出される攻撃を避けられてしまった挙句、それを笑顔で行われてしまえば無理もない。最もピッピにはそんなつもりは一切ないのだが。

 

「マニューラ!連続でれいとうパンチ!」

 

マニューラはれいとうパンチを連続で放ち、ピッピを捉えようとする。しかしピッピはその攻撃を飛び跳ねながら次々と回避していく。その動きにはリーリエも驚かずにはいられない。

 

『なんと言うことだ!マニューラの怒涛の連続攻撃をピッピは綺麗に躱しているぞ!』

 

ピッピ自身回避行動を意識しているのではなく、ただただ相手と遊んでいると言う感覚で自然に回避につながっているのだ。驚くべき光景ではあるが、これも一種の才能なのだろう。

 

だが次第にマニューラはストレスが溜まってしまい、徐々に攻撃が大振りになってしまい意識せずに隙が生まれてしまう。それを見つけたリーリエは、すぐさまチャンスと捉えた。

 

「ピッピさん!めざましビンタです!」

『ピィ!』

 

マニューラの大振りした隙を逃さず、ピッピのめざましビンタがマニューラに決まる。マニューラもこの一撃には堪らず頬を抑える。

 

『ピッピのめざましビンタがカウンターで炸裂!これはかなり強烈だ!』

「ムーンフォースです!」

『ピッピィ!』

 

ピッピはムーンフォースで追撃をする。マニューラは対応が間に合わず、成すすべもなくムーンフォースの直撃を受ける。めざましビンタの直後に効果抜群の強力なフェアリー技を受けてしまい、マニューラも耐え切れずに戦闘不能となってしまう。

 

「マニューラ!戦闘不能!ピッピの勝ち!」

『なんと!ピッピが無傷でマニューラを倒してしまいました!』

 

驚くべきことに、ピッピはマニューラを倒してしまったのだ。これにはリーリエだけでなく、対戦相手のアカリでさえ予想外の結果だと驚きを隠せない。

 

『さあ、アカリ選手の残るポケモンは一体!次は何を出してくるのか!』

「お願い!アブソル!」

『アブソッ!』

『アカリ選手の最後のポケモンはアブソルだ!』

 

アカリが繰り出したのはアブソルだ。マニューラと同じでアブソルもあくタイプ。このバトルはどのような結果に転ぶのだろうか。

 

「アブソル!サイコカッター!」

 

アブソルは額の角から衝撃波を発生させ遠距離から牽制する。そのサイコカッターはフィールドにある頑丈な岩場を切り裂くほどの強力な一撃であった。

 

だがピッピはそれを回避し、笑顔でぴょんぴょんと飛び跳ねている。未だにピッピは遊びだと思っているようだ。それでも戦えるのであれば問題はないのだろうが、一撃でも喰らってしまえば致命傷なのは間違いないためリーリエ的には心配が尽きない。

 

「それならでんこうせっか!」

『アッソ!』

『ピッ?』

 

アブソルはでんこうせっかで素早く接近し近接戦に持ち込む。ピッピは何故か回避することなく、その攻撃を受け飛ばされてしまう。

 

「ピッピさん!」

 

リーリエは心配でピッピの名を呼ぶ。しかしピッピは綺麗に着地し、再び笑顔で飛びはねる。アブソルの強力な一撃でダメージはないわけではないだろうが、それでも彼女は遊びなのだと勘違いしているようだ。ここまでくるとさすがに大物だと言わざるを得ない。

 

「アブソル!連続ででんこうせっか!」

 

アブソルはでんこうせっかでピッピに再び接近する。ピッピは横に飛び跳ねて回避するが、アブソルは交差するように次々とでんこうせっかで攻め立ててくる。ピッピは完全に防戦一方状態だ。

 

「ピッピさん!一旦距離を離してください!」

 

ピッピはリーリエの言う通り、ふわりと飛び上がりアブソルから距離を離す。だが、アカリも手を休めることはなかった。

 

「サイコカッター!」

「もう一度躱してください!」

 

ピッピはサイコカッターを回避する。すると、続いてピッピは不思議な行動に出たのであった。

 

『ピッピッピッピッピッピ』

『おぉーと!これはピッピの得意技!ゆびをふるだ!何の技が起こるか分からないぞ!』

 

そう、ピッピの得意技であるゆびをふる。この技は一部を除く技からランダムで選ばれた技を使用者が使うと言う不思議な技だ。ピッピの代名詞であるのと同時に、博打にも近い技であるため本当に何が起こるか分からないのだ。

 

「なにが来るか分からないわ。アブソル、でんこうせっか!」

『アブソ!』

 

どこから何が来るか分からないため、アカリとアブソルは技が発動する前に一気に決めようと判断し攻撃を続ける。しかし予想以上にピッピのゆびをふるが早く完了し、技が放たれようとしていた。

 

『ピィ!』

 

すると突然、ピッピが白く輝きだした。アカリは一体何が起こるのかと警戒すると、その時には既に手遅れであった。

 

ピッピが放ったのは強力な一直線の光線、はかいこうせんであった。ノーマルタイプ最強クラスの技であるはかいこうせんは止まることのできないアブソルを容赦なく包み込み、アブソルはその光に飲み込まれ吹き飛ばされた。衝撃が鳴りやむと、そこには目を回し戦闘不能となっているアブソルの姿があった。

 

『アブソ……』

「あ、アブソル!戦闘不能!ピッピの勝ち!よって勝者!リーリエ選手!」

『なんと!アブソル一撃でノックダウン!ゆびをふるから放たれたはかいこうせんに成すすべなく倒れてしまった!勝者はリーリエ選手です!』

 

ピッピの驚くべきポテンシャルの高さにリーリエは言葉が出てこない。本人には全く自覚はないのか、ピッピは嬉しそうに飛びはねている。遊び気分でこんな戦いぶりをされては、対戦相手としては複雑な気持ちになることだろう。

 

しかしどのような勝ち方であれ勝利は勝利だ。今は素直に喜ぶべきだろうとリーリエはピッピを抱きかかえて一緒に喜びを分かち合う。リーリエ的にはどちらかと言うとピッピが無事で安心したという方が正しいかもしれないが。

 

 

 

「心配は杞憂でしたね。あのピッピってどこでゲットしてきたんですか?」

「リーリエに喜んで貰おうと思ってオツキミやまでゲットしてきたんだけど……。正直こんなすごい子だとは思わなかったわね。」

 

元々所持していたルザミーネでさえもこの結果は意外だったようだ。予想外の結果とは言え、これは嬉しい誤算かもしれない。その無邪気さ故にリーリエからすれば心配の種が尽きないだろうが。

 

なにはともあれ、リーリエはピッピの予想外の活躍により第二回戦を制することができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もバトルは続いた。三回戦、四回戦とリーリエは順調にバトルを制し勝ち抜くことができていた。ライバルたちもリーリエに負けじと勝利を収めていく。

 

そして遂に、リーリエ、ブルー、ハジメ、コウタ、コウミはベスト8まで勝ち進んだのであった。

 

「さあ!遂にベスト8が出揃いました!そして準々決勝の対戦カードは……これだ!」

 

遂に始まる準々決勝。ベスト8ともなれば選ばれしトレーナーのみが集う場所。間違いなく今まで出会ったどのトレーナーよりも強い相手しかいないだろう。

 

リーリエは遂にここまで来たのかと緊張のあまり拳をギュッと握り対戦相手が選ばれるのを待つ。すると、対戦相手は驚くべき相手であった。

 

「第一試合!リーリエ選手対ブルー選手!」

『っ!?』

 

なんと、準々決勝の相手はリーリエにとっての因縁のライバル、ブルーだった。遂に2人の約束が、今果たされようとしていた!




大波乱を巻き起こすピッピのゆびをふる

モブの名前と使用ポケモンはヌシの気分で適当に設定してます

ではまた次回!ノシ


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決意を新たに、約束の舞台へ!

半分ふざけた前回の話から一転してシリアス展開です。
正直ヌシはブルーを最大のライバルという位置付けにするつもりはなかったのですが、気付いたらこうなってました。なんだかんだいって個人的に満足しているので結果オーライかなと。


カントーリーグベスト8が出揃い、準々決勝の相手がそれぞれ発表された。そしてリーリエの対戦相手は……

 

「準々決勝第一試合は……リーリエ選手対ブルー選手です!」

 

リーリエの対戦相手は彼女の最大のライバルと言ってもいい存在、ブルーであった。その対戦カードを聞いたブルーは「やっと来たわね」とこの時を楽しみにしていた様子だ。

 

「リーリエ」

「ブルーさん……」

 

ブルーは次の対戦相手であるリーリエの元へと近づき話しかける。リーリエも覚悟を決めてブルーの目をまっすぐ見つめる。

 

「遂にこの時が来たわね。」

「はい。約束の時です。」

 

約束。リーリエとブルーは今までで2度対戦してきた。そして戦績は1勝1敗と五分だ。今度決着をつける時はこのカントーリーグでと約束を交わした。その約束を果たす時が遂に訪れたのだ。

 

「……ここまで来たんだもの。もう何も言わない。ただ、あえて一つだけ言わせてもらうわ。」

 

ブルーはビシッと右手の人差し指をリーリエに突きつけ、ハッキリとした声で宣言した。

 

「勝つのはあたしよ!」

「!?」

 

ブルーの一喝にリーリエは目を見開く。以前のリーリエであればその言葉に精神的動揺を表していたところだろう。

 

しかし今のリーリエは違う。リーリエはブルーの言葉にこう告げたのだった。

 

「……私も負けるつもりはありません。絶対に勝ってみせます!」

 

リーリエはブルーに堂々と勝利宣言をする。ブルーもその言葉を聞き、ニヤリと口角を上げその場を後にした。リーリエもそんなブルーの後ろ姿を見届けて呟いた。

 

「……絶対に負けませんから。」

 

そんな彼女の顔は、決意の表情に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーとの対戦が決まったその日、リーリエは彼女にどう対抗しようか悩んでいた。強気に啖呵を切ったとは言え、相手はあのブルー。カントーリーグでの戦いを見ている限り、前回と同じ感覚で戦っていては必ず痛い目にあってしまうだろう。

 

自分でも分かっている。ブルーは間違いなく強敵だ。全力でぶつかっても勝ち目があるかといえば正直五分と五分。いや、もしかすればそれより低いかもしれない。

 

リーリエの戦い方は特殊で、相手のポケモンを逆に利用する、変則的な戦法で奇襲を仕掛けるなど、他には中々類を見ない戦術をとる。臨機応変に立ち回れると言えば聞こえはいいが、その分何度か交えたことのある相手であれば予測されやすく、対策も取られやすい。ブルーもそのことを充分理解しているだろう。

 

特にブルーはリーリエの事をライバル視している。彼女がリーリエの対策を怠るとは到底思えない。だからこそ、リーリエは彼女に対しどう立ち向かえばいいかを悩んでいる。

 

リーリエは今、珍しく心の底から勝ちたいと願っている。以前の彼女ではそんなことは考えなかっただろうが、旅の中で様々な経験をし、数多くのトレーナーと戦い試練を乗り越え、そして今、このカントーリーグという舞台で絶対に負けたくないと思える相手と戦おうとしているの。決して中途半端にはしたくない。自分を信じてくれるポケモンのため、そして自分と戦うために約束通り目の前に立ってくれているブルー(ライバル)のためにも。

 

そんな悩みを抱える彼女の前に、1人の女性が姿を現した。

 

「リーリエ」

「!?お母様……」

 

その女性はリーリエの母親であるルザミーネであった。大会が始まる前に出会って以来の再会だが、ルザミーネはリーリエの姿を見かけ心配になり様子を見に来たのだ。母親として、大舞台に立つリーリエに期待している反面、心のどこかでは不安で一杯なのだろう。

 

「リーリエ。いよいよ準々決勝ね。」

「はい。ですが……」

「次のブルーちゃんとの対戦が不安……そうよね?」

「はい……」

 

本来であればルザミーネも母親として彼女に、「よくここまで勝ち上がったわね」などの言葉をかけて褒めるつもりであった。しかし、今のリーリエを見て考えが変わった。

 

彼女にとって重要なのはリーグで良い成績を収めることでも、優勝することでもない。彼女の目的は約束を果たすこと。ブルーともう一度戦い決着をつけることだ。勿論リーリエも優勝を目指していないわけではない。寧ろこのカントーリーグに出場した以上、決勝まで勝ち進み優勝したいという願望はある。

 

しかしそれ以上に、彼女はブルーとの再戦を望んでいる。ブルーとの対戦こそが、リーリエにとっての事実上の決勝戦と言ってもいい。ルザミーネも娘の顔を見てそのことを理解したのだ。

 

ならば自分に出来ることは娘を褒めることではなく、前に踏み出すことが出来るように背中を後押しすることだ。そう考えたルザミーネはリーリエにある言葉をかける。

 

「リーリエ、ちょっと話を聞いてくれる?」

「何でしょうか?お母様。」

「シンジ君から聞いたわ。あなたとブルーちゃんの関係。それにこれまでに2度戦って約束を交わしたこともね。」

 

リーリエはルザミーネの言葉に多分そうだろうと納得し頷いた。リーリエは真剣な表情でルザミーネの言葉に耳を傾ける。

 

「ブルーちゃんはあなたから見ても以前に比べて強くなっていた。だからこそ勝てるかどうかの不安要素が溢れてきちゃう。」

「ど、どうしてそれを?」

「分かるわよ。だってあなたの母親だもの。」

 

リーリエは不安な気持ちを押し殺し、表には出していないつもりでいた。しかし母親であるルザミーネには隠し通すことはできなかった。ルザミーネはリーリエに近づき、彼女の肩に手をポンッと置き語り掛ける。

 

「あなたは深く考えすぎよ。もう少し気楽に考えなさい。」

「で、でも……」

 

それでもやはり不安は消えない。今までの戦いも緊張しなかったわけではない。しかし心の中では理解しているつもりでも今回の戦いばかりはどうしても緊張が解れることはない。相手が強いから、ではなくあのブルーなのだから。

 

「リーリエ」

 

不安を抱えるリーリエの肩から手を離し、彼女の眼を見つめてルザミーネは真剣に答えた。

 

「あなたのそんな姿、ブルーちゃんも望んでいないと思うわよ。」

「え?」

「ブルーちゃんはきっと、普段のあなたと全力で戦いたいと思っているはず。ライバルって言うのは、お互いに競い合い、切磋琢磨して腕を磨き合う関係のはずよ。」

「お互いに……切磋琢磨……っ!?」

 

その時、リーリエは思い出した。かつて目にした最大のライバル同士の姿。そう、シンジとグラジオの姿だ。あの2人は最初は決して交じり合う事のない関係であったが、次第に戦いを重ね合う中共に成長し、お互いに認め合い、ライバルとして自分らしく正々堂々とぶつかり合った。

 

彼女自身2人の戦いを目にしたわけではないが、あの2人の姿を見れば誰でも分かる。2人にはライバルとしての出会いがあり、それぞれがお互いの限界を高め合い、ライバルとしてお互いの実力を認め合う。強くなるために孤独の中を歩み、普段誰かと関係性を持つことのない兄が、シンジに対しては明らかに違う対応をしていた。

 

それに、彼は大切なものを守るため、リーリエを守るために強くなる決意をした。そんな彼が以前シンジに言った言葉。それが「リーリエの事を任せた」だ。あれだけ自分が強くなって守ると決めたリーリエを、シンジにだけは任せることが出来た。それは彼がライバルとして、そして親友としてシンジの事を認めた証だ。

 

「あなたは、あなたのまま彼女と正面からぶつかればいいの。それこそがブルーちゃんの思いに、約束に答える唯一の方法だと私は思うわよ。」

「私は、私のまま。私らしく……」

 

リーリエは大会の前にシンジに言われた言葉を思い出す。自分らしく楽しく戦うのが一番だと。

 

何故自分はこんな簡単なことで悩んでいたのだろうと先ほどまでの不安な気持ちを振り払う。母の言った通り、自分は自分。例えブルーがどれだけ強くなっていたとしても、正面からぶつかればいいだけだ。それに、強くなったのは何もブルーだけではない。

 

自分には、今まで共に歩んできたポケモン達がいるのだから。

 

「……覚悟は決まったみたいね。」

「はい!お母様のお陰で気付くことができました。ありがとうございます!」

 

母親であり、トレーナーとしても先輩であるルザミーネから貰った助言を胸に刻む。その彼女の顔には先ほどまでの不安な表情は一つもない。決意の表情に満ちた強き者の顔だ。その顔を見たルザミーネは心から安心し、最後に伝えるべきことを伝えた。

 

「最後に一つだけ、あなたに伝言があるわ。」

「伝言……ですか?」

「『練習用のバトルフィールドで待ってるよ』だそうよ。」

「!?は、はい!行ってきます!」

 

リーリエはルザミーネの伝言を聞き、即座に駆け出した。ルザミーネもそんな彼女の背中を見て、微笑みながら呟いた。

 

「ふふ、あんなに嬉しそうな顔しちゃって。あの子にとって、一番大切な人は誰なのかしらね。」

 

母親のその瞳は、温かく娘を見守っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕方。現在賑わっていた人だかりも数が減り、今では数えられるほどの人数しか見られない。多くの人がバトルの興奮で疲れ果て、休息をとっているのだろう。

 

そんな中、リーリエは息を切らしてバトルフィールドに辿り着く。普段はこのバトルフィールドも一般の人が交流のために利用し賑わっているが、時間も時間であるため人影が全くいない。

 

しかし、バトルフィールドの中央に一人の人物の後ろ姿が確認できた。彼は自分のパートナーポケモンの頭を撫で、誰かの事を静かに待っている様子だ。その人物の正体がすぐに分かったリーリエは、彼にゆっくりと近付き名前を呼んだ。

 

「シンジさん……。」

「……来たね、リーリエ。」

 

その人物は彼女にとって特別な存在、シンジであった。シンジはパートナーであるニンフィアの頭を撫でながら彼女の到着を待っていた。そして彼女の姿を確認し、彼はその場でクルリと振り返り声をかける。

 

「ブルーとの戦い、いよいよ明日だね。」

「はい。正直まだ緊張はしていますが、もう覚悟は決まりました。」

「うん。君の顔を見れば分かるよ。」

 

シンジはそんなリーリエに、一つとある提案をした。その内容を聞いたリーリエは、驚きのあまり目を見開いた。

 

「リーリエ。僕とバトルしよう。」

「っ!?」

 

衝撃的であった。まさかこのタイミングでバトルを申し込まれるとは思っていなかった。だが誤解しない様にと、シンジはリーリエにその対戦形式を伝える。

 

「と言っても明日は本戦だから、本格的なバトルじゃないよ。リーリエのシロンと僕のニンフィア、1対1で軽く模擬戦をするだけだよ。」

「……理由を聞いてもいいでしょうか?」

 

シンジのことだから戦う事に意味がないわけがない。リーリエの質問に、シンジは端的に答える。

 

「単純な話だよ。君がライバルと、ブルーと戦う覚悟があるか確かめたい。バトルじゃなきゃ、分からないこともあるからね。」

 

シンジの言葉にリーリエも納得する。トレーナーになる前であれば理解が及ばなかったかもしれないが、トレーナーとして経験を積んだ今であれば理解できる。

 

ポケモントレーナーはバトルを通じて語り合う事ができる。今までの経験、成長、思い、全てをポケモンに、バトルに乗せて戦う。シンジはそれを通じてリーリエの覚悟を確かめるつもりだ。

 

リーリエにとってもこれはチャンスだ。カントーリーグが終わってから、シンジと戦う機会がいつになるか分からない。もしかすると永遠に訪れない可能性すらもある。自分の成長を、シンジに見てもらうことが出来る最後のチャンスかもしれない。

 

リーリエはシンジの提案を承諾し、早速バトルの準備をする。

 

「この時間帯なら人もいないし、僕も心おきなくバトルが出来る。リーリエの成長……見せて貰うよ!」

「はい!全力で行きますよ!シンジさん!」

 

形式は模擬戦。だが、あくまでそれは表向きの口実に過ぎない。リーリエにとって、彼との戦いは特別な時間だ。自分の憧れの存在、目標、そんな人物と戦う事は何よりも嬉しい。自分の今までの思いを、成長を、リーリエはこのバトルに込める。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

そして誰にも知られないバトルが、幕を開けた。

 

「こちらから行きます!シロン!こなゆきです!」

 

シロンはこなゆきで先制攻撃をする。だがこの攻撃はリーリエの常套手段。シンジもそのことを理解し、冷静に対応する。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ニンフィアはようせいのかぜでこなゆきを相殺する。しかし相殺と言っても、明らかに威力はニンフィアの方が上だ。リーリエはこうなることは充分に予測していたため次の行動に移る。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

「でんこうせっか!」

 

シロンはこおりのつぶてで鋭い攻撃を加えるが、ニンフィアはその攻撃を次々と躱し素早いスピードでシロンとの距離をみるみると縮める。だが、リーリエもその行動は読めており……。

 

「ジャンプしてこおりのつぶてです!」

 

ニンフィアのでんこうせっかをシロンはジャンプして躱した。リーリエはニンフィアのでんこうせっかを誘発し、逆に隙を晒すように誘導したのだ。

 

でんこうせっかを回避したシロンは、こおりのつぶてで上空から奇襲を仕掛ける。しかし……

 

「ニンフィア!リボンで弾いて!」

『フィア!』

 

ニンフィアは自身のリボンを素早く振るい、こおりのつぶてをいとも容易く掻き消していく。これにはリーリエも驚かずにはいられない。

 

リーリエは確実に今の攻撃は決まったと確信していた。しかしその考えは甘かった。咄嗟のピンチにも対応するシンジとパートナーのニンフィア、2人の心がどれだけ通い合っているかがよく伝わるし、どれだけ鍛えられているかもわかる。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

ニンフィアはシロンの着地を的確に狙い撃つ。シャドーボールを受けたシロンはダメージを抱えるが、それでも耐えしのぎまだまだ行けると言った表情だ。ならばリーリエも自分のパートナー、シロンの事を信じ、自分の思いをバトルの中でシンジに全て伝えようとバトルを続行する。

 

「シロン!走ってください!」

『コォン!』

 

シロンはニンフィア目掛けて駆け出した。普段であれば無謀な選択だが、リーリエのことだから何か考えがある。そう踏んだシンジは、先ほどと同様に冷静に対応することにした。

 

「ニンフィア!連続でシャドーボール!」

『フィーア!』

 

ニンフィアは連続でシャドーボールを放つ。だがシロンを簡単には捉える事ができず、シロンもその攻撃を次々と回避していく。シンジもその動きは読めていたため、更に畳みかけに出た。

 

「ようせいのかぜ!」

「こなゆきです!」

 

かなり距離を詰められたため、今度は範囲の広いようせいのかぜで動きを止めようとする。シロンはその攻撃に対しこなゆきで反撃した。

 

確かにニンフィアのようせいのかぜの方が威力で言えば高いが、リーリエにとってそれを打ち破ることが目的ではない。少しだけでも時間を稼ぐことさえできればそれでいいのだ。

 

こなゆきとようせいのかぜの衝撃によって爆風が発生する。これはリーリエとシロンにとってチャンスである。そのまま勢いを殺さず、シロンはニンフィアの目の前まで飛び込むことに成功する。ニンフィアもさすがに攻撃の反動もあり対応が追い付かずに驚きの表情を浮かべる。

 

「今です!こおりのつぶて!」

 

至近距離にてこおりのつぶてがニンフィアに炸裂する。至近距離でのこおりのつぶては威力も高く、先ほどのような手段では防ぎようがない。リーリエが狙っていたのはこの瞬間であった。

 

シンジもそんな彼女の戦術に、彼女は間違いなく戦いの中で成長し続けているのだと改めて感じさせられる。だからこそ、自分も彼女には負けていられないのだと強く感じる事ができた。シンジにとってリーリエは、大切な存在であるのと同時に、追いかけてくる存在、ライバルにも近い存在なのだから。

 

「追撃です!れいとうビーム!」

「ジャンプして躱して!」

 

シロンのれいとうビームをジャンプすることで回避するニンフィア。そしてこうなったら自身の最大の技で迎え撃つのが最大限の答えだろうと、シンジはニンフィアに指示を出した。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーアー!』

「っ!?シロン!こちらもムーンフォースです!」

『コォン!』

 

ニンフィアは空中にてムーンフォースの態勢に入る。対するシロンも、鏡合わせのようにムーンフォースの準備をする。互いに力を最大まで溜め、同時にその力を解き放つ。

 

互いのムーンフォースはフィールドの中央でぶつかり合う。どちらの力も強いが、それでもやはり次第に力の差が明確に表れる。

 

シロンのムーンフォースはニンフィアのムーンフォースに押され、その力を次第に失い始める。そしてニンフィアのムーンフォースが最終的に競り勝ち、シロンの足元に被弾した。シロンはその爆風により後方に吹き飛ばされる。思いの外シロンのムーンフォースの威力も高く、ニンフィアのムーンフォースの軌道が僅かだが逸れ、シロンへの直撃は免れたのだ。

 

「……うん、今回はここまでにしようか。」

 

シンジはリーリエの覚悟を充分に見ることができたと判断し、バトルを中断させる。それに明日は準々決勝当日だ。そんな大事な日の前に疲労を溜め込んでしまい、当日に勝てませんでしたでは話にならない。

 

リーリエもそんなシンジの判断に同意し、シロンを抱きかかえる。シロンもダメージは見受けられるものの、直接の被弾は少なかったため大したダメージには至っていない。

 

「シンジさん。私の思い、伝わったでしょうか?」

「うん。確かに感じたよ。リーリエの成長、思い、それから覚悟も。これなら僕も安心して見ていられるよ。」

 

バトルの内容だけ見れば力の差は大きく圧倒的な敗北で終わってしまっている。しかし、今までのシンジとのバトルを振り返るとその差は明白だ。確実にリーリエも成長を遂げていることがシンジもバトルを通して肌で感じる事ができた。だからこそ、明日のバトルも安心して見ていられると告げたのだ。

 

彼女にはもう、不安の感情は感じられない。あるのはただ勝つのだと言う強い意思、トレーナーとしての覚悟だけだ。

 

だが、もう一つだけ別の問題がある。その問題をどうするべきか、シンジはリーリエに尋ねた。

 

「リーリエ、知ってるとは思うけど準々決勝からは6対6のフルバトルだよ。」

 

そうだ。準々決勝以降の戦いは6対6のフルバトル。数多いるトレーナーの中でも選ばれた者のみが勝ち上がることのできるカントーリーグ。そしてその中でより力があることを見せつけ上位に食い込んだベスト8のトレーナーたち。そんなトレーナーたちには全力で戦ってもらいたいと言うポケモンリーグ側の意向なのだ。

 

だがリーリエの手持ちは現在5体。フルバトルをするには後1体だけ足りていない。ルール上別に6体所持している必要はないが、それでは5対6になってしまうため数の差で圧倒的に不利になってしまうだろう。

 

「それなら大丈夫です。私に考えがありますから!」

 

リーリエはシンジの問いに笑顔で答えた。シンジはどうするつもりだろうかと考えるが、リーリエが大丈夫だと言うのであれば彼女の事を信じようとこれ以上問いかけることはしなかった。

 

「リーリエ。これ以上、僕が君にしてあげられることはもう何もないよ。」

「……はい。」

「最後に一言だけ。……折角の夢の舞台、楽しんできてね。」

「!?はい!」

 

リーリエは微笑みながらそう言ってくれたシンジの言葉をしっかりと噛み締め、明日の約束の舞台を迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。遂にやってきた準々決勝の舞台。リーリエとブルーの約束が果たされる日が訪れた。

 

背中は押した。後は彼女次第だと、シンジとルザミーネもリーリエがこの約束の舞台でどのような戦いを繰り広げるのかを静かに見守っていた。

 

「それではこれより!カントーリーグ準々決勝第一試合を行います!対戦するのは、リーリエ選手対ブルー選手!」

 

審判の言葉と同時に、リーリエとブルーはこのカントーリーグという舞台で遂に戦う為に向かい合った。

 

勝利を手にするのは果たしてリーリエか?それともブルーか?

 

2人の約束のバトルが今、始まろうとしていた!




話の内容的に少し告白っぽいですが違います。いや、既に告白的な話があった気もしなくもなくもなくないですが。

予定より長くなりました。本当は4000字くらいに収めて次回に取っておこうと思ってたんですけどね。気付いたら入れる予定の無かった2人のバトルも書いてました。どうしてこうなった……。

最近ニンフィアのスマホカバーの尻尾の部分がヨレヨレになって千切れそうになってしまったので、かなり凹みながら新しいスマホカバーを買いにポケモンセンターに行きました。お気に入りだったのになあ。常に使ってるとガタが来てしまうのは仕方のない事ですが。

とりあえず少し大きめですが、ブイズのドット絵が書いてあるスマホカバーがあったので一安心です。さすがにカバー無しではスマホは扱えません。可愛かったのでまあよしとします。

それではまた次回お会いしましょう!ノシ


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全力ライバルフルバトル!リーリエVSブルー!

遂にやってきたリーリエVSブルーの話です。

正直な話フィールドの切り替えシステムがこれ以上思いつかない上にギミックを利用した戦法が他に思いつかないため以降は適当な理由をつけて中止します。申し訳ありません。無謀なことはするもんじゃない(戒め

今回はちょっとしたサプライズ?があります。


強者たちの集うカントーリーグを見事勝ち進んできたリーリエ。そして今日は遂に因縁のライバル、ブルーとの準々決勝だ。

 

「それではこれより!カントーリーグ準々決勝第一試合を行います!対戦するのは、リーリエ選手対ブルー選手!」

 

審判の言葉と同時に両者がカントーリーグと言う大舞台で向かい合う。その両者の瞳には既に迷いの感情が一切見られず、ポケモントレーナーとして、ライバルとしてこのバトルに絶対に勝つのだと言う強い意思が感じ取れる。

 

その両者の強い意思が籠った瞳を見たシンジとルザミーネ、そしてこの場に集ったトレーナーや観客たちはこれからどのようなバトルが繰り広げられるのだろうかと言う期待で胸を膨らませていた。

 

(遂にこの時が来たわね。昨日の間に何があったかは知らないけれど、あなたも覚悟は決まったようね。このあたしがライバルとして認めたのだから、そうでなくては困るわ。でも……)

(遂にこの時が来ました。ブルーさんは間違いなく手強いです。私の事をライバルとして認めてくれたあなただからこそ私はここまで目標にして勝ち上がってこれました。ですが……)

(勝つのはあたしよ!)

(勝つのは私です!)

 

準々決勝以降は6対6のフルバトル。どちらか全てのポケモンが戦闘不能になればその時点で勝者が決定する。また、今までは様々なフィールドでバトルを繰り広げていたが、ここから先は通常のフィールドでバトルが行われる。ここまで勝ち上がってきた者たちにこれ以上の腕試しは必要ないだろうと言う考えから、準々決勝からはフィールドの変更を無くしたのだ。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

 

2人は最初の一体であるポケモンが入ったモンスターボールを手に取り、そのボールをフィールド中央に投げる。

 

「行くわよ!グランブル!」

「お願いします!チラチーノさん!」

『ブルッ!』

『チラチ!』

 

ブルーが繰り出したのは彼女のフェイバリットポケモンであるグランブル、対してリーリエが繰り出しのはチラチーノだ。

 

「それでは準々決勝第一試合……はじめ!」

 

審判は両者の準備ができたことを確認し、両手をあげ試合開始の合図を宣言する。それと同時に、以前と同様にグランブルの特性、いかくが発動する。

 

グランブルのいかくによりチラチーノは僅かに怯み攻撃力が低下する。チラチーノの技の殆どは物理技であるため、この特性による影響はチラチーノにとって痛手だろう。だが、力や相性だけが全てではない。

 

「先手を取るわよ!グランブル!ストーンエッジ!」

 

先に動いたのはブルーの方だった。グランブルは腕で地面を力強く殴りストーンエッジを繰り出す。鋭く次々と生成されるストーンエッジはチラチーノに向かうが、チラチーノはその攻撃を華麗に走って回避した。

 

例えいかくで攻撃力が下がったとしても、チラチーノの最大の武器であるスピードは変わらない。グランブルが剛ならチラチーノは柔だ。決して一方的に不利な状況と言うわけではない。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラ!』

 

チラチーノは自身の尻尾をグランブル目掛けて勢いよく振り払う。スイープビンタは複数回連続でヒットさせることでダメージを重ねる技だ。素早く勢いにも乗っているため決まればかなりのダメージが期待できるだろう。

 

「躱して!」

『ブル!』

 

しかしグランブルはその攻撃を僅かながら素早い動きで冷静に回避する。これは最小限の動きで回避することにより隙を減らし、すぐに反撃できるようにするためだ。力だけでなく、こういった基本に忠実なテクニックもブルーの強みの一つだ。

 

「今よ!こおりのキバ!」

「あなをほるです!」

 

グランブルはこおりのキバですぐさま反撃の態勢に入る。チラチーノは攻撃を躱され態勢が一瞬崩れるが、持ち前の身のこなしで態勢を立て直しあなをほるで地中に回避する。

 

『グランブルとチラチーノの激しい技の応酬!しかしどちらも相手の攻撃を許しません!バトル開始早々からなんという攻防だぁ!』

 

2人のバトルに会場もどんどんヒートアップする。ライバル同士負けられない相手だからこそ、互いに全力でぶつかり合い、普段以上の実力が出せているのだ。2人も現在は周りの声を一切気にすることなくバトルを進めていく。

 

「どこから来るか分からないわ。注意して!」

『ブルッ!』

 

 

ブルーの呼びかけに答えグランブルは周囲を警戒する。地中に潜ったチラチーノの気配を感じ取ることは難しい。どこから飛び出して来るか分からない以上、無暗に動いて相手の思惑通りに動く方が危険だ。

 

「今です!」

『チラ!』

「っ!?後ろ!?」

 

チラチーノが飛び出したのはグランブルの背後であった。ブルーは足元から飛び出し直接攻撃をしてくると考えていたため、咄嗟のことで対応が遅れる。その隙をリーリエは逃さなかった。

 

「スピードスターです!」

 

チラチーノのスピードスターによる奇襲攻撃がグランブルを襲う。グランブルは咄嗟の判断で腕をクロスして急所への被弾を防ぐ。

 

『おっと!ここでチラチーノのスピードスターがヒット!先に攻撃を決めたのはリーリエ選手だ!』

 

「畳みかけます!チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラッ!』

 

チラチーノは自慢のスピードを活かし自身の得意な距離に持ち込もうと急接近する。

 

「甘く見ないことね!グランブル!ワイルドボルト!」

『ブルゥ!』

 

グランブルは全身に電気を纏い、接近してくるチラチーノ目掛けて勢いよく突撃する。当然スイープビンタの態勢に入っているチラチーノは防御も回避もすることができず、グランブルのワイルドボルトがチラチーノに直撃する。

 

「チラチーノさん!」

 

『ここでグランブルの強力なワイルドボルトが炸裂!これは凄まじい威力だぞ!』

 

グランブルのワイルドボルトを受けてかなりのダメージを負ったチラチーノ。チラチーノが身軽だったことが幸いし、ダウンを拒絶してダメージを最小限に抑えることができた。しかしそれでもダメージが大きいことに変わりはない。

 

だがそれはグランブルにも言えることだ。グランブルの使ったワイルドボルトは大きなダメージを与えるのと引き換えに、自身も反動ダメージを負ってしまう諸刃の剣だ。チラチーノを追い詰めた半面、反動ダメージが足を引っ張りチャンスにもかかわらず追撃を仕掛ける事ができない。

 

「まだいけますか?チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

リーリエの言葉にチラチーノは強く頷いて答える。動けるのであればダメージがあろうとも勝機は充分にある。

 

「来るわよ!」

『グラブッ!』

 

リーリエであればこのタイミングでも仕掛けてくるだろうと踏んだブルーはグランブルと共に身構え迎撃の態勢をとる。グランブル自身もダメージは少なくないため、相手から近づいてきてくれるならば逆に助かる。

 

「チラチーノさん!走ってください!」

『チラッ!』

 

チラチーノは地面を蹴りグランブルに向かい撹乱しながら走る。ダメージがあるにも関わらず、チラチーノのスピードは衰えていない。

 

だが、ブルーとグランブルもただチラチーノが近づいてくるのを黙ってみていることはなかった。

 

「グランブル!ストーンエッジ!」

『ブル!』

 

『グランブルの強力なストーンエッジだ!チラチーノはどうする!』

 

グランブルのストーンエッジがチラチーノの進行を遮るように立ち塞がった。しかし、リーリエもそう来ることは読めていた。

 

「ジャンプしてください!ストーンエッジの上をとるんです!」

 

チラチーノは突き出す岩よりも高く飛び上がった。すると驚くべきことにストーンエッジに乗り、その上を走り始めた。これには会場の全員が驚く。ただ一人を除いて。

 

ストーンエッジを最後まで渡り切りグランブル目掛けて飛び降りるチラチーノ。その瞬間、ブルーはニヤリと口角を上げた。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

「その程度で不意を突いたなんて思わないことね!グランブル!噛み付いて捕まえて!」

 

上空から尻尾を振り下ろして奇襲を仕掛けるチラチーノだが、グランブルはチラチーノの尻尾に噛み付いてその攻撃を止めた。力強いグランブルの顎から、チラチーノは抜け出すことができない。

 

「今よ!投げ飛ばして!」

 

グランブルは捕らえたチラチーノを思いっきり振り上げ上空に投げ飛ばした。上空へと飛ばされたチラチーノは再び無防備状態となる。

 

「とどめよ!ワイルドボルト!」

 

グランブルはワイルドボルトで飛び上がり、空中にいるチラチーノに突進する。チラチーノは絶体絶命のピンチに追いやられる。しかし……

 

「ブルーさんなら絶対に対処してくると思ってました!チラチーノさん!躱してください!」

「なっ!?」

 

ブルーは空中のあの状態で躱せるわけがない、そう思った。しかし、驚くべきことにグランブルの攻撃は空を切る。突然の出来事でブルーもグランブルも状況が飲み込めなかった

 

チラチーノがあの状況でもかわすことができた理由。それはチラチーノの特徴であるあぶらによるコーティングだ。

 

チラチーノはグランブルの攻撃を受ける寸前、ほんの僅かだけ体を逸らしたのだ。ただほんの少しだけ、それだけでグランブルの攻撃は直撃コースから外れる。そしてチラチーノのあぶらコーティングでダメージを外へと逃がし、グランブルの攻撃は空を切ると言う結果に終わったのだ。

 

「今です!スイープビンタ!」

『チラッ!チラチ!』

 

チラチーノのスイープビンタが2回、3回とグランブルにヒットする。グランブルはスイープビンタのフィニッシュにより地上に叩きおとされ地面に叩きつけられた。

 

「グランブル!?」

『グラ……ブ……』

「グランブル戦闘不能!チラチーノの勝ち!」

 

流石にグランブルも叩きつけられたダメージも含め耐え切れずに戦闘不能となってしまう。ブルーはグランブルに「お疲れ様」と声をかけモンスターボールに戻した。

 

「やりました!」

『チラチ!』

 

最初から繰り広げられた激戦を制し、チラチーノと共に喜びをあらわにするリーリエ。しかし、その時チラチーノが膝から崩れ落ちてしまった。

 

「ッ!?チラチーノさん!」

 

よく確認してみると、チラチーノは目を回しているのが分かった。どうやら今の戦闘によるダメージに耐え切れず、バトルが終わった瞬間に気が抜けてしまい倒れてしまったようだ。

 

「チラチーノ戦闘不能!」

 

「チラチーノさん……ありがとうございました。ゆっくり休んでください。」

 

チラチーノは倒れてしまったが、それでも充分と言う言葉では足りないほど頑張ってくれたため、そんなチラチーノに優しく言葉をかけモンスターボールへと戻した。

 

『強敵グランブルを倒したチラチーノだが、力尽きてしまったぁ!準々決勝第一試合!初めから波乱の展開だぞ!』

 

「あたしはこの子よ!トゲキッス!」

『キッス!』

 

ブルーが出したのはトゲキッスだ。ひこう・フェアリーを持つポケモンで、トゲピーの最終進化形だ。

 

ブルーが繰り出したトゲキッスは間違いなく強敵だ。そんなトゲキッスを見たリーリエは、早速あのポケモンを出そうとモンスターボールを手にする。

 

「ここはあなたに任せます。お願いします!ハクリューさん!」

『クリュー!』

 

 

 

「っ!?なるほど、そういう事だったんだね。」

 

リーリエが繰り出したのはまさかのハクリューであった。シンジはその姿を見て目を見開き驚いたが、昨日の言葉を思い返しリーリエが取った行動を理解した。

 

「ねえ、もしかしてあのハクリューって……。」

「はい、以前リーリエがゲットしていたハクリューです。」

 

そう、あのハクリューは以前リーリエがゲットし保護していたハクリューだ。しかし仲間のハクリューを守るために海のポケモン達を管理しているカエデたちに託したのだ。

 

「多分この日のために、リーリエはカエデさんたちにハクリューを送ってもらえるように頼んだんだと思います。」

「そう、あの子がリーリエの言っていたハクリューなのね。」

 

ルザミーネは直感であのハクリューは強いと感じる事ができた。これなら面白いバトルが見ることができるだろうと、ハクリューの戦いぶりを見守ることにしたのだった。

 

 

 

しかしハクリューはドラゴンタイプだ。フェアリータイプとの相性は最悪。その上威力の高いドラゴン技は全て無効化されてしまう。そんな相手に、リーリエはどう立ち回るのだろうか。

 

「トゲキッス!はどうだん!」

 

トゲキッスが先手をとり、はどうだんでハクリューを狙い撃ちにする。はどうだんは必ず命中する厄介な技だ。だからこそ、リーリエは迷いなくハクリューに指示を出した。

 

「ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

 

ハクリューはドラゴンテールではどうだんを踏み台にし高く飛び上がる。ブルーは飛び上がったハクリューの姿を追いかけ、トゲキッスに次の指示を出す。

 

「逃がさないわ!エアスラッシュ!」

 

トゲキッスのエアスラッシュがハクリューの姿を捉える。ハクリューは自身に向かってくるエアスラッシュから眼を離さずに身構える。

 

「アクアテールです!」

 

ハクリューはアクアテールでエアスラッシュを一気に薙ぎ払う。そしてそのまま勢いに乗り、トゲキッス目掛けて降下する。

 

「そのままもう一度アクアテールです!」

「しんそくで迎え撃つのよ!」

 

ハクリューがアクアテールで空中から攻撃を仕掛けると、トゲキッスはしんそくで正面から迎え撃った。どちらの攻撃も強力で、互いに弾き合い再び元の位置に戻った。

 

『ハクリューとトゲキッス、どちらの技のキレも抜群だ!』

 

ハクリューとトゲキッスがぶつかり合い一転、静寂が会場全体を包み込む。どちらの技の威力も強力であるため、互いに失敗することは出来ない。それ故に慎重に動いているのだ。

 

そしてその静寂に痺れを切らし、動いたのはブルーであった。

 

「エアスラッシュ!」

『キッス!』

 

トゲキッスはエアスラッシュで静寂を破った。エアスラッシュは空気を切り裂き、鋭くハクリューに迫りくる。

 

「躱してください!」

『クリュ!』

 

ハクリューは尻尾を使ってジャンプし、エアスラッシュを回避する。だが、それはブルーによる作戦であった。

 

「今よ!はどうだん!」

 

トゲキッスは空中に逃げたハクリューにはどうだんを放ち狙い撃つ。躱した直後という事もあり、一瞬だけ対応が遅れてしまいはどうだんが直撃する。

 

「ハクリューさん!」

 

『トゲキッスのはどうだんが決まったぁ!しかしハクリュー、あまりダメージを見せていないぞ!』

 

ハクリューははどうだんに飛ばされるが、ダウンすることなく地面に着地する。

 

ハクリューはダメージを受ける直前、咄嗟に自らの尻尾を縦にして直撃から免れていたのだ。今までリーリエと共に強敵を倒してきた経験がここで間違いなくバトルに活きている。

 

「なら続けて行くわよ!しんそく!」

 

トゲキッスはハクリューの目の前から一瞬で姿を消す。それとほぼ同時のタイミングでハクリューは怯んだ。

 

しんそくは目に見えない速度で相手に攻撃する技だ。乱発されたら手が出せずに一溜りもないだろう。

 

「ハクリューさん!目で追いかけないでください!トゲキッスさんの気配を感じてください!」

『!?クリュ!』

 

『おっとハクリュー!突然目を瞑ったぞ!一体何をするつもりなのか!?』

 

ハクリューは姿の見えないトゲキッスを捉えるため、リーリエの言葉を信じて眼を瞑る。その間もチクチクとダメージを受けているが、ハクリューはその攻撃に耐え続けトゲキッスの気配を探る。

 

トゲキッスによるしんそくの嵐がハクリューを襲い続ける。だが、その動きにも一定のリズムが存在していた。それさえ分かれば対処するのは容易いことだ。

 

「!?今です!アクアテール!」

『クリュ!』

 

ハクリューが気配を察知して目を見開くのと同時に、リーリエはアクアテールの指示を出す。ハクリューは迷わずアクアテールを正面に放つと、アクアテールが何かにぶつかる音がした。

 

そこにいたのはなんとトゲキッスであった。トゲキッスはしんそくの勢いを逆に利用され、ダメージが倍増した状態でアクアテールによって壁まで吹き飛ばされる。

 

「トゲキッス!」

『キッ……ス……』

 

そこには目を回し、戦闘不能状態となってしまったトゲキッスの姿があった。ハクリューの攻撃力に加えトゲキッスの攻撃力とスピードが加わり、ハクリューの攻撃がカウンターとしてクリーンヒットしてしまったことでダメージ量が大幅に許容量を超えてしまったのだ。

 

「トゲキッス戦闘不能!ハクリューの勝ち!」

「戻って、トゲキッス。ありがとう。ゆっくり休んでね。」

 

『なんとハクリュー!あの状況から一撃でひっくり返した!しかしその代償は決して安いものではないぞぉ!』

 

ハクリューはなんとか逆転してトゲキッスを倒すことができた。しかしその代償としてハクリューはかなりのダメージを負う結果となってしまった。この勝利は大きいものだが、それでも致命傷を負っているため安心はできない。

 

「ハクリューさん、戻ってください!」

 

『おっとリーリエ選手!ここでハクリューを戻したぞ!次に繰り出すのはどのポケモンか!』

 

リーリエは冷静にハクリューを交代する判断を下す。ハクリューは大きなダメージを負ってしまったためこのまま続けても勝てる見込みは少ない。ならばここは少しでも体力を回復させ後続につなげた方がいいだろうと考えたのだ。

 

ブルーはトゲキッスをモンスターボールへと戻すと次のモンスターボールを手にする。ブルーが次に繰り出したポケモンは……。

 

「まだまだこれからよ!次のポケモンはこの子!行くわよ、キュウコン!」

『コォン!』

「行きます!マリルさん!」

『リルル!』

 

ブルーの繰り出したのは通常の姿をしたキュウコンだ。対してリーリエはマリルを繰り出した。この状況からどうバトルが展開していくのか、会場の全員が目を離せない。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

 

今度はリーリエが先手をとり、マリルはバブルこうせんで先制攻撃を仕掛ける。みずタイプの技はほのおタイプに効果は抜群だ。この攻撃が通れば大きなダメージを与えられるが、そう簡単に行くはずもなかった。

 

「キュウコン!かえんほうしゃ!」

 

キュウコンが使用したのはかえんほうしゃだ。かえんほうしゃは一直線にバブルこうせんを容易く貫きマリルに接近する。マリルは慌ててかえんほうしゃを回避する。

 

リーリエもこの攻撃が簡単に決まるとは考えてなかった。しかし、それをほのお技で、それも容易く打ち破るとはさすがに思っていなかった。その技を見ただけで、キュウコンがどれだけよく育てられているかが分かる状況であった。

 

『なんとキュウコン!マリルの攻撃を正面から打ち破った!』

 

「畳みかけるわよ!フレアドライブ!」

 

キュウコンは炎を纏い、フィールドを素早く駆け抜けマリルに接近する。マリルも大人しくやられるわけにはいかず、反撃の態勢に入った。

 

「アクアテールで迎え撃ってください!」

『リル!』

 

アクアテールがキュウコンのフレアドライブと中央でぶつかり火花を散らす。さすがにタイプ相性の関係もあり、技の威力に差があっても互いの技が打ち消し合い弾く結果となった。

 

「かえんほうしゃ!」

「躱してころがるです!」

 

マリルはかえんほうしゃを回避しころがるで勢いをつけ接近する。マリルとキュウコンの距離がみるみると縮まっていくが、ブルーはそれを逆に利用した。

 

「今よ!アイアンテール!」

『コォン!』

 

キュウコンは充分にマリルを引き付け、そのままアイアンテールで迎撃する。ころがるはいわタイプでアイアンテールははがねタイプ。マリルのころがるは容易く砕かれ弾き返される。

 

「っ!?まだです!バブルこうせん!」

『リル!』

 

『マリルの見事な反撃!キュウコンは対応が遅れてしまい直撃してしまった!』

 

マリルは空中で態勢を整え、バブルこうせんで反撃する。キュウコンはそのバブルこうせんの直撃を受けダメージを負った。しかし効果抜群とは言え、まだまだ戦える元気は充分ある様子であった。

 

「甘いわよ!かえんほうしゃ!」

 

キュウコンは隙を晒したマリルにすかさずかえんほうしゃで反撃する。空中で無防備状態のマリルに避ける術はなく、かえんほうしゃの直撃でダウンする。

 

「今がチャンスよ!とどめのソーラービーム!」

『コォン!』

 

キュウコンはソーラービームの態勢に入り力を溜め込む。ソーラービームは強力なくさタイプの技だ。みずタイプのマリルに直撃すれば一溜りもない。

 

「!?危険です!マリルさん!逃げてください!」

『リ……リル……』

 

マリルは必死に立ち上がろうと抵抗するが、思った以上にダメージが大きく足が言うことを聞かない。

 

時間は刻一刻と過ぎ、キュウコンのソーラービームのチャージが完了する。

 

「ソーラービーム!発射!」

『コオォン!』

 

「っ!?マリルさん!」

 

キュウコンの渾身のソーラービームが発射されマリルに迫る。リーリエは必死にマリルの名前を叫んだ。そしてソーラービームの光がマリルを包み込み爆発をした。

 

序盤から波乱の続く準々決勝第一試合。勝利の女神が微笑むのは果たしてどちらか?そしてマリルの運命は?リーリエとブルー、魂をかけた全力のバトルはまだまだ始まったばかりだ!




ここでサプライズとしてハクリュー再登場です。リーリエのパーティの中で驚異的な勝率を誇っている恐ろしい子です。アニポケでも同じ展開があったりしたのでここでの再登場は予想していた人もいるかもしれませんが。

今回は途中までですが、恐らく次回で決着がつくのではと思います。

とは言え最近お仕事が忙しくて中々書く時間がないんですよね。この話も木曜日になった夜中5時までに急いで書き上げたものですので……。最近小説も休むことが増えた気がするので流石にマズいと感じて必死に書きました。

そしてポケモンの次回作は大人気のギルガルド先輩ですね。第八世代になるので新規のブイズを期待してます。なにせ新規ブイズは二世代毎に登場してますからね。個人的には鋼、ゴースト、格闘タイプ辺りが欲しいです。後サンダース以外の130族が欲しい(切実

多分第八世代ではDPのリメイクが出ると予想しています。第五世代がBWのマイチェンで第六世代がRSのリメイク、第七世代がSMのマイチェン+ピカブイだったので順番的には妥当かなと。ピカブイが出たのでカントー地方は暫く出ないでしょうし。

因みにガラル地方はイギリスが舞台ではと言われています。ヌシとしてはイーブイが出てくれればそれでいいんですが、今から楽しみですね。それまで気長にブイズの厳選でもやってます。

それではまた次回お会いしましょう!できたら来週にあげますが、確定ではないのでどうかご了承を。ノシ


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全力ライバルフルバトル!繰り広げられる熱き戦い!

残念ながら今回では決着がつきませんでした。フルバトルって意外と長くなるね(´・ω・`)

前回休んだ理由ですが、正直に言えばイーブイの厳選してました。エーフィ、ニンフィア、グレイシア、リーフィアの新しい型が思いついたのでそれらの♀を厳選したくて2週間ほどケンタロスを走らせてました……。そのせいで(?)1日2時間しか寝られず眠たいです。まあ自業自得なんですが……。

因みに厳選途中に副産物としてイーブイの色違いが出ました。♀でずぶといで厳選をしていたあげくに通常特性だったので、ブラッキーのシンクロ型かグレイシアかシャワーズ辺りにしようかと思いましたが折角の♀なので、やっぱりバトン、あくび、両壁の起点役ニンフィアにすることにしました。本来はあまり色違いが好きではないヌシですが、ブイズに関しては別腹です。

ただ正直に言えばエーフィとサンダースに関してはもう少し薄黄緑的な色の方がよかったと考えています。シャワーズの色違いもどちらかと言えば少しピンク寄りの方が可愛かったのではと思っていたり……。

そしてヌシのボックスにいる孵化余りイーブイの数はポケバンク含めて2,060匹です。1ボックス30なので換算すると68ボックスに…


カントーリーグ準々決勝第一試合。リーリエとブルー、ライバル同士の熱い激闘が幕を開き、両者一歩も引かないバトルを繰り広げていた。

 

リーリエのチラチーノ対ブルーのグランブルの戦いはチラチーノが制したものの、激しいバトルの末チラチーノも倒れてしまい結果的にダブルノックダウンに終わった。

 

続くハクリュー対トゲキッスでは、トゲキッスのしんそくに翻弄されピンチに陥るものの、ハクリューに秘められたバトルセンスが光り奇跡的な逆転劇を見せハクリューが勝利した。

 

そして続いたマリル対キュウコンの戦い。相性の差を覆すかの如くブルーとキュウコンの怒涛の攻撃、巧みな攻防一体の戦術に押されてしまい、今度はリーリエたちが追い詰められてしまったのだ。そしてキュウコンの放ったソーラービームの光がマリルを包み込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

「マリルさん!」

 

明らかにソーラービームの直撃を受けてしまったマリルを心配して大声で呼びかけるリーリエ。しかしその攻撃によって発生した衝撃が晴れた時、そこにはマリルの姿はなかった。

 

「な!?マリルがいない!?」

 

ポケモンがポケモンの技で消滅、などとそのようなことが起こるはずがない。しかしあれほどのダメージを受けていれば即座に回避することなどできるはずがない。立ち上がることすら困難だったマリルがソーラービームを躱すために動けるとは到底思えない。ならばどこへ消えたのかと周囲を見渡すブルー。

 

しかしどこを見てもマリルの姿はない。現在は通常のフィールドで戦っているため見渡しがよく隠れられるような場所もない。ならばどこへ消えたのだろうか?

 

「!?まさか!」

 

ブルーはその時ハッとなって気付いた。周囲にいないのであれば残る答えはただ一つ。ブルーはその答えを確認するために空を見あげた。リーリエもそのことに気付き、ブルーと同時に空を見上げる。

 

そこには一つの影があった。晴れ渡る青空から一匹のポケモンがゆっくりと降下してくるのが確認できる。その正体を確認するために目を凝らすと、そのポケモンの正体にいち早く気付いたのがリーリエだった。

 

「あれは……マリルさん!」

 

なんとそこにいたのはソーラービームでやられたかに見えたマリルであった。リーリエの言葉でブルーもその正体がマリルなのだと気付いたが、一体なぜマリルが助かったのかと疑問に思う。動くことのできないマリルが空に飛んで助かる方法。答えを出すのにはそこまで時間はかからなかった。

 

「!?まさか自分の技とソーラービームの衝撃で飛んだってこと!?」

 

そう、マリルはソーラービームが当たる直前、自分がすぐには動けないのを悟り地面にバブルこうせんを放ったのだ。そしてバブルこうせんで宙に浮きソーラービームの直撃を回避すると同時に、その着弾時に発生した爆風を利用して空高く舞い上がり窮地を脱したのだ。

 

言葉にするだけであれば容易い事だが、実際にやろうと思っても簡単に出来ることではない。マリルのリーリエの気持ちに応えたいという思いと、諦めない心が生み出した奇跡だ。

 

『なんと言うことだ!ソーラービームに包まれたかに見えたマリルだったが、なんとフィールドの遥か空高くに逃げピンチを逃れたぞぉ!』

 

ブルーは未だに信じられない。だがそれ以上に驚いているのはリーリエだ。流石に自分も今のはただでは済んでいないだろうと思っていたが、結果はご覧の通りだ。考えてみれば自分のポケモンたちはこれまで自分の期待に応えなかったことは一度もなかった。

 

そして今回もマリルは自分の期待に応えようとピンチをチャンスに変えてくれた。ならば自分のできることはただ一つ。今一度ポケモンたちを信じて勝つだけなのだと真っ直ぐ前を見つめる。

 

「行きますよ!マリルさん!」

『リルル!』

 

リーリエの言葉にブルーも我を取り戻す。まだバトルは終わっていないのだ。絶体絶命のピンチを脱したからと言ってこのバトルでは自分が有利なことに変わりはない。ブルーはバトルを継続するため、キュウコンに次の攻撃の指示を出す。

 

「キュウコン!かえんほうしゃ!」

「マリルさん!アクアテールで弾いて下さい!」

 

空から徐々に降りてきて、距離も近付いて来たマリルに対しキュウコンはかえんほうしゃで狙い撃つ。だが上から攻撃するマリルの方が技の威力が高くなりかえんほうしゃをアクアテールで打ち消した。そしてその反動を利用し、更に加速してキュウコンの姿を目と鼻の先まで捉えた。

 

「今です!バブルこうせん!」

『リル!』

 

キュウコンの間近に接近し、零距離にも近い位置でバブルこうせんを放つマリル。当然キュウコンをそのバブルこうせんを回避することができず直撃を受けてしまう。ほのおタイプであるキュウコンにみずタイプのバブルこうせんは効果抜群で、キュウコンはその場で大きく怯んだ。

 

「今度は私たちが攻めます!アクアテールです!」

「返り討ちよ!アイアンテール!」

 

怯んだキュウコンに対してアクアテールを叩きこむマリル。しかしキュウコンもただでやられるはずもなくすぐに態勢を整えアイアンテールで反撃した。両者の尻尾がフィールド中央でぶつかり合い、その反発した力の衝撃で互いに弾かれ距離が離れる。

 

互いにダメージを抱え呼吸が乱れているが、それでも技のキレは決して衰えていない。それどころかそのどちらの瞳からもまだ倒れるわけにはいかないと、強い意思が感じ取れる。

 

しかし状況から察して劣勢なのはマリルだ。序盤でのダメージが大きすぎたためいつものように素早く動くことができない。例えパワー負けしていなかったとしても、スピードで圧倒されてしまえばその時点で勝ち目は無くなる。

 

『両者一歩も引かない攻防が続いている!しかしどちらも体力が残り少ないぞ!』

 

とは言えマリルだけでなく、キュウコンが追い詰められている事もまた事実。どちらかの技が決まれば勝負がつくと言ってもいいくらいに両者の疲労はピークに達している。

 

「キュウコン!ソーラービームスタンバイ!」

『コオォン!』

 

ここで先に動いたのはブルーであった。ブルーはキュウコンの持つ最大の大技、ソーラービームで一気にケリをつけようと判断したようだ。

 

ソーラービームは威力が高い分力を溜める必要があるため隙の大きい技だ。通常であればこのような状況で撃てる余裕は皆無だろう。しかし、今のマリル程体力が削れており、動きも鈍くなっている相手であれば捉えることは容易だ。このまま長引かせてもどちらかが倒れるまでジリ貧になりかねない。だからこそのソーラービームで早期に決着をつけると判断したのだ。

 

「来ますよ!マリルさん!」

『リル!』

 

リーリエの言葉にマリルは頷いて答え身構える。しかし今のマリルでは技を見てから回避することは困難だ。だからと言って今から攻撃を仕掛けてもソーラービームの発射までには間に合うとは思えない。

 

先ほどのようにバブルこうせんで回避する?いや、それが上手くいく保証はないしブルーのことだから二度目は確実に対策をとってくるだろう。同じ手が通用する相手ではない。

 

ならばどうするかとリーリエは頭を捻らせ考える。この状況を打開する方法があるはず。どうすればよいのだろうか。

 

(マリルさんの力ではさすがにキュウコンさんのソーラービームには勝てません。かといって今のマリルさんではスピードで撹乱する作戦も使えないでしょう。だとしたらどうすれば……)

 

「今度こそ決めるわよ!ソーラービーム!発射!」

『コォン!』

 

キュウコンから最大まで力を溜め込んだソーラービームが放たれようとしていた。再び万事休すのこの状況で、リーリエはある作戦を思いついた

 

「!?マリルさん!バブルこうせんです!その後にころがるです!」

『リル!』

 

マリルはバブルこうせんを正面に放ち、その後すぐにころがるの態勢に入ってキュウコンに向かっていく。しかしそのバブルこうせんはキュウコンに届くことなく地面に着弾し、最後の反撃も悪あがきとなってしまった。

 

「今更遅いわよ!」

 

すでにソーラービームの発射体制に入っているキュウコンからソーラービームが放たれる。マリルはころがるでソーラービームに一直線に向かっているため、誰もがこれで決まるのだと確信していた。しかし……

 

「なっ!?」

『な!?ななななんと言うことだ!マリルがころがるの状態から空中に飛び上がったぞ!』

 

そうだ、マリルはソーラービームが当たる直前にころがるの状態を維持したまま空中に飛び上がりソーラービームを回避したのだ。ブルーも一瞬何が起きたのか分からなかったが、先ほどの行動を思い出しその理由が分かった。

 

「!?まさかさっきのバブルこうせんが!」

 

先ほどマリルの放ったバブルこうせん。あれは決して彼女たちの悪あがきなどではなかった。バブルこうせんによって地面に僅かなくぼみができ、そこにころがる状態のマリルを突っ込ませることで勢いよく跳ね飛ぶことができたのだ。

 

自ら動くことのできないマリルでは回避するのは困難だが、であれば別の方法で回避すればいい。そう考えて思いついたのがこの作戦だ。

 

この考えに至った理由はただ一つ。アザリアジムでのジム戦だ。アザリアジムでマリルはころがるをしたがルナにくぼみを作ることで止められてしまった。その失敗を今度は逆に活用し、回避と言う手段で形にしたのだ。

 

「今です!アクアテール!」

『リィル!』

 

飛び上がったマリルはころがるの状態を解除しアクアテールで薙ぎ払う。技が届くぐらいにはキュウコンとの距離も縮まったため今のマリルでも充分に攻撃が届く。その上、キュウコンは呆気にとられてしまい反応が僅かに遅れた。

 

マリルのアクアテールはキュウコンにクリーンヒットし、キュウコンはそのアクアテールで吹き飛ばされる。ブルーはその先を慌てて見るが、そこには戦闘不能となったキュウコンの姿があったのだった。

 

「キュウコン!」

『コォ……ん……』

「キュウコン戦闘不能!マリルの勝ち!」

 

絶体絶命にピンチを潜り抜けなんとか勝利をもぎ取ったマリル。その瞬間に自分のダメージによる痛みを忘れリーリエに飛び移る。リーリエもダメかと思う事もあったが、最後まで頑張って戦って勝利を手にしてくれたマリルの頭を撫でて喜びを分かち合った。

 

「お疲れ様、キュウコン。ゆっくり休んでね。」

 

ブルーはキュウコンをボールに戻す。するとそのままリーリエの方へと目を移し言葉を投げかけた。

 

「やってくれるじゃない!まさかあたしが先に3体倒されるなんてね。」

 

ブルーのその表情は悔しさという感情よりも、寧ろ燃えてきたといったほうが正しいくらいに笑みを浮かべていた。予想以上に成長したリーリエの姿に、自分もこれだけ熱く戦える相手と戦うことができることに嬉しさを感じているのだろう。だからこそ負けられない、絶対に勝ちたいと言う感情がこみ上げてくる。

 

「まだまだ勝負はこれからよ!」

『準々決勝第一試合!残りポケモンはリーリエ選手が5体、ブルー選手が3体!現在はリーリエ選手が僅かにリードだ!』

 

 

 

 

「確かに数の上ではリーリエが有利。でも……」

「ええ。リーリエのポケモンはハクリューが大きなダメージを抱え、マリルは限界に近い程削られています。正直、それほど差はあるとは思えません。」

「そうね。それに、ブルーちゃんにはまだエースのカメックスがいるわ。勝敗はまだ分からないわね。」

 

ルザミーネとシンジの言う通り、数だけで言えばリーリエに分がある。しかし体力的に考えればそれほど差が開いているわけではない。それに勝負は最後まで何が起こるか分からないものだ。

 

2人はリーリエとブルー、ライバル同士の決着がどうなるのかを静かに見届けることにした。

 

 

 

 

「さあ行くわよ!ライチュウ!」

『ライラーイ!』

 

ブルー4番手はライチュウだ。ピカチュウの進化形であり素早さもさることながらパワーもかなりのものを持っている。タイプ相性を除いても今のマリルでは相手にするのは厳しい相手だろう。

 

『リルル!』

「!?……分かりました。マリルさん、お願いします!」

 

マリルはそれでも自分が戦うとリーリエの元を飛び出し前に出る。リーリエもそのやる気を買いここはマリルに任せることにした。

 

「さっきのお礼はたっぷりとさせてもらうわよ。ライチュウ!でんこうせっか!」

『ライ!』

 

ライチュウははじめからでんこうせっかで素早い動きを活かした近接戦闘を仕掛けてきた。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

『リル!』

 

対してマリルはアクアテールによる反撃を選択した。現在のマリルの体力では回避行動に回るのは難しい。ならばここは迎え撃つしかないだろうと判断したのだ。

 

でんこうせっかで正面から勢いよく突っ込んでくるライチュウに、マリルはアクアテールを振り下ろし対抗する。ライチュウに直撃すると思った瞬間、ライチュウの姿がマリルの目の前から一瞬にして消えたのだった。

 

「っ!?マリルさん!後ろです!」

『リル!?』

 

リーリエの声に反応し、マリルはすぐさま後ろを振り返る。そこには先ほどで目の前にいたはずのライチュウが体を捻り攻撃態勢をとっていた。

 

「今よ!アイアンテール!」

『ラーイ!』

 

ライチュウは尻尾を振りかぶりそのまま勢いよくマリル目掛けて振り下ろす。不意を突かれ対応が遅れたマリルにはその攻撃を防ぐ手段はなく、ライチュウのアイアンテールがマリルにクリーンヒットする。

 

「マリルさん!」

『りる……る……』

「マリル戦闘不能!ライチュウの勝ち!」

 

『マリルここでダウンだ!先ほどのダメージが大きかったのでしょう!ライチュウの重い一撃により倒れてしまったあ!』

 

やはりキュウコンとの戦いがマリルの体力をかなり削ってしまったため負担が大きかったのだろう。マリルはアイアンテールによって吹き飛ばされた先で目を回し戦闘不能となってしまった。

 

しかしそれでも強敵であるキュウコンを倒したためマリルの功績は充分すぎると言ってもいいぐらいだろう。

 

「お疲れさまでした、マリルさん。ありがとうございます。あとはゆっくり休んでください。」

 

マリルをモンスターボールへと戻したリーリエは、次にどのポケモンを出すか考える。スピードがあるライチュウに対抗できるリーリエの手持ちポケモンはあまり多くない。ならばここはと、リーリエはモンスターボールを構えフィールドに投げた。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

次にリーリエが繰り出したポケモンはフシギソウだ。フシギソウはモンスターボールから出た時に相手となるライチュウの姿を視界に捉え身構える。

 

「先手必勝よ!ライチュウ!でんこうせっか!」

「躱してください!」

 

ライチュウは目にも止まらない速さでフシギソウへと接近する。フシギソウはその攻撃を冷静に回避するが、その行動をブルーたちは既に読めていた。

 

「そのくらいお見通しよ!ライチュウ!10まんボルト!」

『ラーイ!』

 

ライチュウは回避された直後に即座に振り向き、フシギソウの回避先に向かって10まんボルトを放つ。ライチュウの反応速度について行けず、フシギソウは10まんボルトの直撃を受け吹き飛ばされダメージを受けてしまう。

 

「フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

フシギソウは10まんボルトを受けてしまうも、その先で踏みとどまりこらえた。ダメージはあるものの効果はいまひとつであるためそれほど大きなダメージにはならなかった。

 

「続けて行くわよ!きあいだま!」

『ライライラーイ!』

 

ライチュウは両手に力を込め集中することで強力なかくとうタイプの技、きあいだまの態勢に入る。だがきあいだまは強力な技であるがゆえに溜めなけらばならないため隙も大きい技だ。

 

ピンチの後には必ずチャンスは生まれる。そう考えたリーリエはフシギソウに指示を出し攻勢に出る。

 

「フシギソウさん!とっしんです!」

『ソウ!』

 

フシギソウはとっしんのダッシュ力を活かしライチュウとの距離を縮める。フシギソウが自分との距離を縮めある程度近付いてきた時、ライチュウはきあいだまの力を解き放った。

 

「ジャンプしてエナジーボールです!」

 

ライチュウの放ったきあいだまをフシギソウはジャンプすることによって回避する。そして回避後、フシギソウはエナジーボールをライチュウ目掛け狙い撃つ。

 

「アイアンテールで撃ち返して!」

 

ライチュウは自身に向かってきたエナジーボールをアイアンテールによって撃ち返す。撃ち返されたことによって威力が増したエナジーボールはフシギソウに向かうが、フシギソウはその攻撃を辛うじて回避する。

 

しかしそれこそがブルーの狙いであった。

 

「今よライチュウ!10まんボルト!」

『ライチュ!』

 

ライチュウは態勢を崩した隙を狙い10まんボルトで追撃を放つ。フシギソウも続けて回避しようとするが、エナジーボールの回避のために態勢を崩してしまったため、回避行動が間に合わずに再び10まんボルト直撃を受け撃ち落とされてしまった。

 

「!?フシギソウさん!」

『そう……ソウ!』

 

リーリエの声に反応しフシギソウはゆっくりと立ち上がる。立て続けに10まんボルトを受けてしまったためダメージは確実に蓄積してしまっている。

 

「ライチュウ!でんこうせっか!」

 

ダメージが抜け切れていないフシギソウに回復の隙を与えないとライチュウは速攻で追撃を仕掛ける。だがこれはチャンスだとリーリエは冷静に分析した。

 

ライチュウとの距離はみるみる内に縮まる。そしてフシギソウの目の前まで近づいたとき、リーリエは今だと判断し反撃に移った。

 

「今です!横に避けてつるのムチです!」

『ソウ!』

 

フシギソウは近づいてきたライチュウの攻撃を僅かだけ横に避けて回避し、つるのムチで即座に反撃する。ライチュウはでんこうせっかの勢いを止める事ができず、逆に利用されて想像以上のダメージを受け跳ね返される。

 

ライチュウのでんこうせっかは素早く捉えることは難しいが、直線的に攻めてきた場合は読みやすくもある。そのため最低限の回避行動で隙を抑えればカウンターのチャンスにもなるとリーリエは判断したのだ。その判断は正しかったようで、ライチュウにも大きなダメージを与えることに成功した。

 

吹き飛ばされたライチュウは地面で跳ね返りながらも両手をつきなんとか持ちこたえダウンを拒否した。さすがの対応力だと感心するブルーだが、それでもまだまだこれからだと攻撃の手を休めない。

 

『怒涛のライチュウの攻撃を見切りフシギソウの反撃が直撃!しかしライチュウ、この攻撃を耐えた!ライチュウは次にどう攻めるのかあ!?』

 

「ライチュウ!10まんボルト!」

「フシギソウさん!エナジーボールです!」

 

ライチュウの10まんボルトに対し、フシギソウはエナジーボールで対抗する。互いの技はフィールドの中央でぶつかり合い大きな衝撃を発生させる。

 

「きあいだま!」

『ライラーイ!』

 

発生した衝撃により視界が悪い中、ライチュウはお構いなしに集中力を高めきあいだまを放つ。きあいだまは衝撃による爆風を振り払い的確にフシギソウを狙っていた。

 

「かわしてはっぱカッターです!」

『ソウ!』

 

しかしブルーであればそんな状況であっても攻撃してくるだろうと読んだリーリエは回避の指示を出し、フシギソウはそのきあいだまをジャンプして躱しはっぱカッターを放つ。

 

無数に放たれたはっぱカッターはライチュウに接近する。だがライチュウはその攻撃をギリギリまで引き付け次の行動に移った。

 

「でんこうせっか!」

 

ライチュウはでんこうせっかではっぱカッターを回避しつつ素早い動きで翻弄しながら接近する。フシギソウは先ほどと同様にギリギリまで引き付けライチュウの攻撃を誘う。

 

「つるのムチです!」

 

先ほどのようにライチュウのでんこうせっかにカウンターの形でつるのムチで迎え撃つ。しかしそう何度も同じ手が通用するはずもなかった。

 

「ブレーキよ!」

 

ライチュウはでんこうせっか中に急ブレーキをかけその場でジャンプし軌道を変更する。その素早い対応にフシギソウは驚きながらも止まることができずにつるのムチは空を切ってしまい隙が生じてしまった。

 

「!?」

「アイアンテールよ!」

 

ライチュウはその勢いを利用し隙を逃さず頭上からアイアンテールを振り下ろす。アイアンテールはフシギソウの頭部にクリーンヒットし、地面に叩き伏せられた。

 

「フシギソウさん!」

『ソウ……』

「フシギソウ戦闘不能!ライチュウの勝ち!」

 

ライチュウのスピードを活かした重い一撃によりフシギソウは戦闘不能となってしまう。スピードを利用すれば時に単純なパワー以上の攻撃力となり威力が増す。今回のバトルもライチュウのスピードを上手く活かしたブルーの戦術が決まったというわけだ。

 

『遂にフシギソウダウンだ!フシギソウが見せたと思った矢先、今度はライチュウが逆手にとる!素晴らしい攻防だ!』

 

リーリエが優位に立ったかと思いきや、ブルーも負けじと巻き返す。どちらが勝つか予想できないデッドヒートに観客も大いに盛り上がる。

 

「お疲れさまでした、フシギソウさん。後は任せてください。」

 

リーリエはフシギソウをモンスターボールへと戻す。そして次に出すどのポケモンで戦おうかと考えた時、モンスターボールが勝手に開きあるポケモンが自ら姿を現した。

 

『ピッピ!』

「えっ?ピッピさん?」

 

以前と同様、ピッピが再びボールから勝手に飛び出した。理解しているのかは不明だが、彼女はまた自分が戦うつもりで飛び出したようだ。もうこうなってしまっては引き下がることはないだろうと、リーリエも半ば諦めピッピに任せることにした。

 

「次の相手はピッピね。油断ならない相手よ。気を引き締めてね!ライチュウ!」

『ライライ!』

 

前回のバトルを見ていたブルーはライチュウに注意するようにと促す。ピッピのバトルは少々変則的で相手からしたら読み辛い戦い方だ。正直対策の仕様がないだろう。

 

『リーリエ選手のポケモンはピッピだ!まだまだその力は未知数のピッピ!今度はどんな戦いを見せてくれるのか!?』

 

「ライチュウ!でんこうせっかよ!」

 

ライチュウは自身の得意な距離に持ち込もうとでんこうせっかで接近する。ピッピはその攻撃を飛び跳ねるように軽やかに回避する。

 

 

「アイアンテール!」

 

ライチュウはすぐに振り向きアイアンテールで追撃する。ピッピはその攻撃も上手く回避し、反撃の態勢に入った。

 

「めざましビンタです!」

『ピィ!』

『ライッ!?』

 

ピッピはリーリエの指示通り、めざましビンタで攻撃する。アイアンテールを空振りしてしまったライチュウは当然避けることができずにめざましビンタがクリーンヒットし叩きつけられる。

 

「ムーンフォースです!」

「きあいだま!」

 

ムーンフォースで追撃を仕掛けるピッピに対し、ライチュウは受け身をとった状態からすぐさまきあいだまで反撃する。ムーンフォースときあいだまがフィールド中央でぶつかり合い衝撃が発生し再び視界が悪くなる。

 

しかし今度はダメージの蓄積と技の反動が大きく影響しライチュウは攻めることができない。その姿には疲労の色が伺え、肩で息をしていた。

 

一方ピッピは視界が見えない状況も慌てること様子はない。ピッピは慌てる様子は一切見せず、ゆびをふるですでに次の行動に移っていた。

 

何が出るか分からないピッピの得意技、ゆびをふる。この状況である意味では最も相応しいかもしれない技である。

 

『ピッ!』

 

ピッピのゆびをふるが止まりピッピの指が怪しく青色にひかり出す。何が起こるのかと皆が息を呑む瞬間、ピッピからある技が放たれた。

 

『ピィ!』

 

ピッピの指が光りだすと、今度は虹色の光が爆風を吹き飛ばし空からライチュウ目掛けて降り注ぐ。フェアリータイプの技であるマジカルシャインだ。

 

ダメージと疲労が蓄積したライチュウにマジカルシャインを回避する術はなく、ライチュウはその攻撃に直撃してしまう。ライチュウは健闘したが、遂にその攻撃で戦闘不能となってしまった。

 

「ライチュウ!」

『らい……ライ』

「ライチュウ戦闘不能!ピッピの勝ち!」

 

戦闘不能となったライチュウをモンスターボールへと戻したブルー。しかしそれでもリーリエのマリル、そしてフシギソウを倒した功績は大きい。先ほどの不利な状況から一気に覆すことができたと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

準々決勝第一試合。リーリエ対ブルーの対戦は現状五分五分。どちらも一歩も引かない攻防が続いている。

 

果たして勝利を手にするのはどちらか!?次回!いよいよライバルバトルクライマックスに突入だ!




本来はマリルはあのまま負ける予定でしたが、なんか釈然とせず前回の不憫な展開もあったためこの様な(無理矢理感溢れる)展開になりました。ただしそのせいか思いの外話が長くなってしまい今回で終わらないと言う結果に……。何も考えずに作るからこうなるんだよ(呆れ

兎にも角にも流石に次回には決着がつくかと思いますのでどうか2人のバトルを見届けて下されば幸いです。誰が優勝するかとか他のライバルメンバーのパーティは何なのかとか色々と予想しながらお待ちください。

現在のリーリエとブルーの手持ち状況
リーリエ     ブルー
チラチーノ ×  グランブル ×
ハクリュー ○  トゲキッス ×
マリル   ×  キュウコン ×
フシギソウ ×  ライチュウ ×
ピッピ   ○  プリン   ○
シロン   ○  カメックス ○

因みにブルーの手持ちはポケスペからグランブルとプリン(リーリエ対ブルー2戦目にて登場済)、ピカブイからキュウコン、両方からカメックスでライチュウとトゲキッスは個人的なイメージです。彼女のパーティは主に第一世代から第二世代での構築で、トゲキッスは第二世代のトゲピーの進化形だからです。


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決着!ライバルフルバトル!激闘の果てに!

遂にリーリエVSブルー完結です。

どのような結末かは本編でお確かめください。

補足ですがシロンが習得するのに苦労したムーンフォースを何故ピッピが普通に使えるのか理由を書いておきます。

先ず作中でも説明した通り、アローラのロコンはフェアリータイプを所持していません。ですので原作で言うタイプ不一致であるため相性がいいとは言えません。(メタ発言をすればムーンフォースは遺伝技だからと言ってしまえば終わりなのですが……)
対してピッピは自身がフェアリータイプを所持しているため相性がいいです。それに加えピッピは月に関するポケモンであるため、月から力を借りるムーンフォースは更に相性抜群です。
ですのでシロンとは違い苦労せず習得しているのはそのためです。また、シロンのムーンフォースは形にはなったものの、未だ完全体ではありません。ただ遺伝技を努力で習得できる辺り、シロンにはバトルの才能があるのだと解釈してください。

以上、作中では描かれていない裏設定でした。


約束の舞台、カントーリーグでのライバル対決が実現し両者白熱したバトルを繰り広げるリーリエとブルー。どちらも一歩も引かず、観客全員が魅了するほどの激闘となっていた。

 

リーリエのマリルが辛くも強敵キュウコンを倒したかと思えば、ブルーのライチュウがマリルに続いてフシギソウに勝利。しかしその後のピッピの変則的な戦い方に翻弄されライチュウが倒される波乱の展開となっていた。

 

そして遂に2人の対決はクライマックスへと向かっていた。

 

ブルーの残り手持ちポケモンは2体。続けて彼女が繰り出したポケモンは……。

 

「行くわよ!プクリン!」

『プクプク!』

 

ブルーが繰り出したのはふうせんポケモンのプクリンだ。プクリンはプリンの進化形であるため、以前戦ったプリンをつきのいしで進化させたのだろう。

 

「プクリン!マジカルシャイン!」

 

プクリンは開始早々、マジカルシャインの空から降り注ぐ虹色の光によって攻撃する。ピッピは回避が間に合わずに直撃を受けるが、それでも咄嗟に防御していたため急所へのダメージは免れた。

 

「ピッピさん!大丈夫ですか!?」

『ピィ!』

 

リーリエはダメージを受けたピッピが心配になり声をかけるが、防御によりダメージを減らすことに成功していたため大きな被害は見受けられない。最もピッピ自身遊んでいると思いこんでいるためいつものように元気が有り余っている様子で、ダメージがあるのかどうか判別がつかない状態だが。

 

「まだまだ行くわよ!プクリン!おうふくビンタ!」

『プクッ!』

 

プクリンはおうふくビンタを決めるためにピッピに走って接近する。だがプクリンのスピードは他のポケモンに比べれば遅く、距離もあるため充分に見てから対応できる動きであった。

 

「ピッピさん!飛び跳ねて躱してください!」

『ピッピ!』

 

プクリンのおうふくビンタは大きく飛び上がって回避したピッピ。ピッピ得意の変則的な動きでプクリンを翻弄するが、ブルーはピッピのその動きをすでに見切っていた。

 

「今よ!うたう!」

『プクゥ~』

「!?しまった!」

『ピ?ピィ……』

 

回避に成功したと油断していたのか、プクリンのうたうが着地したピッピに決まる。その心地よい歌声にピッピも段々と眠気に襲われてしまい次第に眠り状態となってしまった。

 

『プクリンの攻撃を軽々と避けたかに思えた最中、プクリンのうたうが決まりピッピは眠り状態になってしまったぞ!これはピッピ!絶体絶命のピンチか!?』

 

眠り状態はちょっとやそっとのことでは起きることはなく、その間完全な無防備状態となってしまう。どれだけ変則的であろうと、素早く立ち回ろうとも攻撃力が高かろうとも眠ってしまえば全て意味がないものとなってしまう。

 

「プクリン!おうふくビンタ!」

『プク!』

 

プクリンはおうふくビンタで怒涛の攻めを見せる。眠り状態のピッピは成すすべもなく無抵抗のままおうふくビンタを受けてしまう。

 

無抵抗の状態で攻撃を浴びてしまったためダメージは大きいものとなったがそれでもピッピは目覚めない。例え攻撃を受けてしまっても眠り状態が解除されることはない。それこそが眠り状態の最大に厄介な部分だ。

 

「ピッピさん!起きてください!」

 

リーリエはピッピにそう呼びかけるも、ピッピは気持ちよさそうに眠ってしまっている。その寝顔はまるで遊び疲れた子供のようで、普段であれば微笑ましい光景のはずではあるのだが状況が状況であるためそう思う余裕などない。

 

このままでは確実にピッピが負けてしまうと次第に焦りを見せるリーリエ。どうすればいいのかと頭を悩ませている間も、プクリンの更なる攻撃がピッピを襲ってしまう。

 

「続けてマジカルシャイン!」

 

プクリンのマジカルシャインが連続してピッピに直撃する。更なる攻撃によりピッピも流石にダメージが見られる状態となってきた。だが、それでも眠り状態は一向に解ける気配はない。

 

(このままではピッピさんが何もできずに負けてしまいます……。ど、どうすれば……)

 

攻撃を受けてもピッピは目覚めることはない。ならばどうすればピッピは起きるのかとリーリエは模索する。

 

(ピッピさんが起きてくれる方法……ピッピさんが……。!?そうです!)

 

そこでリーリエはある手段を思いつき、ピッピの目を覚まさせるために一歩前に出てその手段を実行に移す。

 

リーリエは大きく息を吸い、ピッピに呼びかけた。

 

「ピッピさーん!ごはんの時間ですよー!」

 

ブルーはそんなことをしたって起きるわけがないと心の中で思うが、その瞬間に不思議とピッピの動きに変化が起きたのだった。

 

『……ピィ?ピッピ!?』

「うそ!?」

 

なんと驚くべきことにピッピが目を覚ましたのだった。攻撃しても目覚めることがなかったピッピがまさかのリーリエの呼びかけによって目を覚ましたのだった。まるで子どものようにはしゃぎながら起きるピッピにブルーは驚きを隠せない。

 

『な、なんとピッピ!リーリエ選手の呼びかけに反応して目を覚ましたぞ!これはなんとも驚くべき光景でしょう!このような方法で目覚めるとはだれが予想できたでしょうか!?』

 

恐らくこのような結果は誰も予想しえなかっただろう。絶対にないと言い切れることではないが、少なくとも公式にこのような状況は例外がない。実際にこの光景を見ていたシンジやワタルもこうなるとは予想できていなかったようで目を見開いている。

 

「反撃行きますよ!ピッピさん!」

『ピィ?ピッピ!』

 

リーリエの言葉に従い、ピッピも笑顔のまま身構えた。あまりの衝撃に言葉が出なかったブルーだが、それでもまだ自分たちが優勢なのに変わりはないと気持ちを切り替える。

 

「ピッピさん!うたうには注意してください。」

『ピッピ!』

「ムーンフォースです!」

「プクリン!マジカルシャイン!」

『プクリン!』

 

ピッピはムーンフォースを放ち反撃を開始する。プクリンはムーンフォースに対しマジカルシャインで対抗する。しかしムーンフォースの方が僅かに威力が高く、マジカルシャインは次第に押し返されてしまいプクリンはムーンフォースの直撃を受けてしまう。

 

「プクリン!?」

「畳みかけますよ!めざましビンタです!」

『ピィ!』

 

ムーンフォースによって怯んだプクリンに隙だと、ピッピはめざましビンタで追撃を仕掛ける。プクリンにはそれを防ぐ手段がなく、めざましビンタの直撃を受け後退する。体力が減っているピッピの攻撃とはいえ、プクリンも着実にダメージは溜まっている様子だ。その表情からは先ほどまで余裕から焦りへと変わりつつある。

 

ピッピはめざましビンタによって怯んだプクリンに対し、ゆびをふるを開始した。何が出るか分からない博打にも近い技だが、ピッピにとっては決定打になりえるかもしれない技だ。特に相手からすれば何が出るか予想できないため追い詰められた状況で使われれば、その焦りからミスに繋がることにもなりかねない。

 

ピッピは振り子のように左右に規則正しくゆびをふる。なにが起きるか分からない緊張感に包まれる中、ピッピの振り子が動きを止めた。

 

『ピィ!』

 

ピッピはゆびをふるによって決定した技を放つ。ピッピの体を白い光が包み込む。その技には見覚えがあるとブルーはその技の名を口にした。

 

「!?ソーラービーム!」

 

そう、その技はくさタイプの中でも最強クラスの大技、ソーラービームだ。ソーラービームは先ほどブルーのキュウコンも使用した技だ。だが日の光から力を集める必要があるため発射までのタイムラグはある。

 

「ならこっちも!プクリン!れいとうビーム!」

『プクゥ!』

 

プクリンは力を溜めれいとうビームをピッピ目掛けて放つ。しかしそれとほぼ同時のタイミングでピッピはソーラービームを放ち対抗した。

 

フィールド中央でソーラービームとれいとうビームがぶつかる。互いに強力な技で競り合うが、強力すぎる技であるため互いの技が力に耐え切れずに大きな衝撃を発生させ爆発する。

 

「プクリン!」

「ピッピさん!」

 

衝撃の中自分のポケモンの名前を呼ぶブルーとリーリエ。次第にその衝撃は晴れていき視界が蘇る。するとそこに広がっていた光景は……。

 

『ぷくぅ……』

『ぴ、ピィ……』

「プクリン!ピッピ!共に戦闘不能!」

 

目を回し戦闘不能状態となってしまっていたプクリンとピッピの姿であった。どちらの体力も限界に近かったのが原因だろう。2人は慌てて自分のポケモンをモンスターボールへと戻す。

 

「プクリン、よく頑張ったわね。お疲れ様。」

「ピッピさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」

 

『なんと両者ダブルノックダウンだぁ!これでブルー選手のポケモンは残り1体!もう後がないぞ!』

 

ブルーの残り手持ちポケモンは相棒であるあのポケモンを残すのみ。対してリーリエはシロンと傷付いたハクリューだ。ハクリューのダメージを考えればそれほど差はないが、それでもブルーが追い詰められていることには間違いはない。

 

だがそれでも、ブルーはニヤリと微笑み寧ろ燃えてきたと口にした。そして自分の相棒に最後のバトルを託し、相棒のモンスターボールをフィールドに投げた。

 

「頼むわよ!カメックス!」

『ガメェ!』

 

ブルーの相棒、カメックスがフィールドに姿を現す。ブルーの手持ちは全て強かったが、それでもこうして対峙するとカメックスからは並々ならぬプレッシャーが放たれているのがリーリエにも伝わってくる。間違いなく彼女の最強ポケモンであると分かる瞬間だ。

 

だがそれでもリーリエは彼女にだけは負けられないと、自分のモンスターボールを手にしブルーの気持ちに応えるかのようにフィールドに投げた。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのは同じく彼女の相棒であるシロンだ。以前戦った時は力の差があり負けてしまったが、今度は絶対に勝つとカメックスの姿を見据える。

 

「行くわよカメックス!ハイドロポンプ!」

『ガメ!』

 

初っ端から大技で攻撃してくるカメックス。だがどれだけ強力な技でもこれだけ距離が離れていれば回避するのはそう難しくはない。

 

「躱してください!」

 

シロンはカメックスのハイドロポンプをジャンプして回避する。シロンの元いた場所は地面が軽くえぐり取られ、その惨状を見るとどれだけカメックスの攻撃が重く鋭いかが伝わる。当たったら一溜りもないだろう。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

 

シロンはハイドロポンプを躱した直後、こなゆきで牽制の意味も含めた攻撃を仕掛ける。

 

「カメックス!こうそくスピンよ!」

 

カメックスは自身の甲羅に籠りこうそくスピンでこなゆきを完全に防ぐ。攻防一体のカメックスの戦術にリーリエは感心するが、この一手を防がれてしまったのは痛い。うまく隙を見つけなければカメックスに一太刀入れる事すら難しいだろう。

 

「れいとうビーム!」

「シロン!こっちもれいとうビームです!」

 

両者同時にれいとうビームを放ちフィールド中央で再び技が交じり合う。ほぼ互角の勝負で、その技により発生した衝撃により互いの視界が奪われる。

 

「カメックス!みずでっぽうで薙ぎ払って!」

『ガメェ!』

 

カメックスはみずでっぽうを薙ぎ払う事で技の衝突により発生した衝撃を打ち消した。これにより視界は復活したものの、そこにはシロンの姿はなかった。

 

「こおりのつぶてです!」

「っ!?後ろよ!」

 

シロンはカメックスの背後からこおりのつぶてを放ち奇襲を仕掛けるが、カメックスはブルーの声に反応しこおりのつぶてを腕で防ぎ直撃弾を回避した。

 

シロンは自身の方が体が小さく小回りが利くため、その利点を活かし素早い動きで気付かれないように接近した。しかし素早さで下回っていようとも、カメックスはブルーの声に咄嗟に反応しその攻撃を受け流したのだ。

 

その行為は一見簡単そうに見えるが、ポケモンとトレーナーの絆、そしてすぐに反応できる反射神経、バトルの経験がなければ決して熟せない。それはブルーとパートナーのカメックスだからできた業だ。

 

「ハイドロポンプ!」

『ガメ!』

 

攻撃を防いだ瞬間、一瞬だけだが攻撃後の隙を見逃さなかったブルーはチャンスだと攻撃の指示を出した。カメックスもその指示通りに背中の砲台を構え狙いを定め即座に放つ。

 

シロンもその隙を狙われてしまい回避行動をとる前に被弾してしまった。先ほども見たため分かってはいたが、カメックスのハイドロポンプは強力でシロンのダメージもたったの一撃で甚大な被害となったのが分かる。

 

「シロン!?」

『こん……コォン!』

 

リーリエの声に反応し立ち上がるシロン。しかしそれでもダメージは目に見えて明らかだ。まず次の一撃を食らってしまえば耐えられないだろう。

 

「もう一度こなゆきです!」

「こうそくスピンよ!」

 

再びこなゆきを放つシロンだが、先ほどと同様にこうそくスピンによってあっさりと阻まれてしまう。攻撃を完全にしのぎ切ったと判断したカメックスは甲羅から体を出し正面を見る。

 

しかしそこにはシロンの姿はなかった。周囲をチラチラと見渡すがどこにも姿は見当たらない。ならばどこに行ったのかと考えるが、その時ブルーの声が耳に入り我に返った。

 

「カメックス!上よ!」

『ガメ!?』

 

カメックスが上を見上げると、そこには飛び上がり既にムーンフォースによる攻撃態勢に入っているシロンの姿があった。

 

カメックスのこうそくスピンは一見隙の無い防御技に見えるが、自分の体を甲羅の中に隠す関係上視界は殆ど見えていない。そのためそこに一瞬の隙が生まれ、カメックスの目を欺くことができたのだ。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

 

シロンはムーンフォースを放ちカメックスに渾身の一撃を浴びせる。カメックスも焦りからか防御も回避も間に合わずその直撃を受け怯んでしまう。だが即座に立ち直り、反撃を開始した。

 

「甘いわよ!れいとうビーム!」

 

カメックスは攻撃後の隙を晒したシロンにれいとうビームを放ち反撃する。

 

「!?かわしてください!」

 

シロンに躱すように指示を出すリーリエ。しかし先ほどの重い一撃がここにきて響き、シロンは一瞬膝を崩してしまい回避行動が遅れる。

 

咄嗟にれいとうビームで反撃しようと試みるが、自分が技を撃つ前にカメックスのれいとうビームが被弾し飛ばされてしまった。

 

「!?シロン!」

『コォン……』

 

「ロコン!戦闘不能!カメックスの勝ち!」

 

『おおっと!ここにきてロコンが倒れてしまった!これでリーリエ選手のポケモンはハクリューのみ!いよいよ最後のバトルとなります!』

 

「……シロン、お疲れさまでした。あなたの戦いは無駄にはしません。ゆっくり休んでください。」

 

リーリエは健闘してくれたシロンをモンスターボールへと戻す。相手はあのブルーのカメックスだ。負けてしまうのも無理はない。だがそれでもカメックスからしても決してこの勝利は簡単なものではなかった。

 

実際、シロンの攻撃を浴びてカメックスも傷付いている。少なからずシロンの活躍は眼に見えて明らかだ。これで条件はほぼ互角だろう。

 

「……最後はあなたに託します!ハクリューさん!」

『クリュー!』

 

そしてリーリエの最後のポケモン、ハクリューが姿を現す。先ほどのトゲキッスとの戦いによるダメージは決してなくなっていないが、それでもモンスターボールにて待機していたからか多少はダメージも回復しマシになっているようだ。これならば今のカメックスとも充分渡り合えるであろう。

 

「泣いても笑ってもこれがラスト……最後まで全力で行くわよ!リーリエ!」

「はい!私も全力でぶつかります!ブルーさん!」

 

ブルーの言葉に同意し意気込むリーリエ。そんなトレーナーたちの思いに応えるように、ハクリューとカメックスも再び気を引き締める。正真正銘、ライバルバトルのラストバトルが開始された。

 

「カメックス!ハイドロポンプ!」

『ガメェ!』

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『クリュ!』

 

カメックスのハイドロポンプをアクアテールで防ぐハクリュー。しかしカメックスに連続で攻め込まれてしまえば防戦一方となりジリ貧だ。

 

そのためペースを握られないために今度はこちらからとリーリエは攻勢にでることにした。

 

「ハクリューさん!たつまきです!」

「みずでっぽうよ!」

 

ハクリューは文字通り竜巻を発生させる。カメックスはみずでっぽうで竜巻の接近を許さず阻害する。

 

「ドラゴンテールです!」

『クリュー!』

 

ハクリューはその攻撃の隙を狙い飛び上がり接近することでドラゴンテールにより攻め立てる。

 

「こうそくスピンよ!」

『ガメ!』

 

しかしその攻撃はこうそくスピンにより防がれてしまい容易く弾かれる。そして今度はハクリューが隙を晒しカメックスが反撃に出る。

 

「れいとうビーム!」

「!?こちらもれいとうビームです!」

 

カメックスはこおりタイプのれいとうビームで攻撃するがハクリューのれいとうビームがフィールド中央で炸裂し合う。こうそくスピンによって弾かれ態勢を崩してしまったハクリューだったが、何とか空中で態勢を立て直すことに成功した。これは柔軟で空中戦も可能なハクリューだからこそうまくいったのだ。

 

さすがにこおりタイプの技を直撃でもらうわけにはいかないと焦ったリーリエ。もし今のれいとうビームを食らってしまったらドラゴンタイプのハクリューはただでは済まなかっただろう。

 

「カメックス!ハイドロポンプ!」

「躱してください!」

 

着地を狙いカメックスはハイドロポンプを放つが、ハクリューは細く柔軟な身体を利用しするりと回避しその勢いでカメックスに接近する。

 

「ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

 

ハクリューは手の届く距離まで接近しドラゴンテールで攻撃する。これだけ距離を縮めれば間違いなく直撃すると確信していた。しかし、それこそがブルーの狙いだった。

 

「カメックス!ハクリューを捕まえて!」

『ガメェ!』

 

カメックスは振り払われるドラゴンテールをがっしりと掴み受け止め捉えた。ハクリューはカメックスの拘束から逃れようともがくがパワフルなカメックスから逃れることが出来ず振りほどけない。

 

「投げ飛ばして!」

 

カメックスは捉えたハクリューを空中に投げ飛ばした。その反動によりハクリューは自由が利かずいい的となってしまった。

 

「今よ!れいとうビーム!」

『ガァメェ!』

 

カメックスは弱点であるれいとうビームで確実にダメージを狙ってくる。投げ飛ばされ身動きが取れないハクリューは抵抗することが出来ずにれいとうビームの直撃を受けてしまう。

 

「ハクリューさん!?」

『く……リュー!』

 

ハクリューはリーリエの声に反応し何とか立ち上がる。それでも弱点であるこおりタイプの技を受けてしまったためダメージは相当きている。現に今も足取りがおぼつかない様子で体力も限界が近づいているのが見て取れる。

 

(ハクリューさんの体力もそろそろ限界です。おそらく次の一撃を受けてしまえば……)

 

倒れてしまう。そう最悪の結果をリーリエは想像する。しかし、それでも自分が負けることは一切考えなかった。絶対負けられない戦い。そして何よりトレーナーとして、自分のポケモンを信じているから。

 

ならば自分のできることはただ一つだ。

 

「ハクリューさん!」

『クリュ?』

「絶対勝ちましょう!私たちの全力で!」

『……クリュ!』

 

リーリエの眼を真っ直ぐと見つめ、ハクリューも自分のトレーナーと思いを重ねる。

 

ブルーはリーリエの眼を見て、まだ諦めていないのだと感じ取る。諦めが悪く、ポケモンとの絆が深いトレーナーほど怖いものはない。それを理解しているからこそ、ブルーは決して油断はしないとカメックスと意思を通わせる。

 

「全力で叩き潰すわよ!ハイドロポンプ!」

『ガメェ!』

 

最後の最後まで全力で戦う。そう決めたブルーはとどめと言わんばかりにハイドロポンプで仕留めにかかる。

 

「ハクリューさん!ジャンプです!」

『クリュ!』

 

ハクリューは尾を使い高くジャンプすることでハイドロポンプを回避する。

 

「みずでっぽうよ!」

 

カメックスはハイドロポンプよりも隙の少ないみずでっぽうで追撃する。この状況でもブルーは慌てることなく冷静に立ち回る。

 

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『クリュー!』

 

ハクリューはアクアテールでみずでっぽうを振り払う。打ち消されたみずでっぽうはその場で水しぶきを上げ美しく散っていった。

 

「ドラゴンテールです!」

 

ハクリューはアクアテールによる反動を利用し更に大きく振りかぶってドラゴンテールを振り下ろす。

 

「何度やっても無駄よ!もう一度受け止めてあげるわ!」

『ガメ!』

 

先ほどと同様、振りかざしてくるドラゴンテールを正面から受け止める態勢に入るカメックス。このままでは先ほどの二の舞となりリーリエとハクリューは確実に負けてしまう。誰もがそう思った。

 

「無駄ではありません!ハクリューさん!地面に叩きつけてください!」

「なっ!?」

 

正面から来るかに思われたドラゴンテールはブルーの予想を大きくはずし、カメックスに届く寸前の地面に叩きつけられた。その高度から叩きつけられたドラゴンテールにより地面はひび割れ、大きな衝撃が発生しカメックスは態勢を崩した。

 

「しまった!?リーリエの狙いは!」

 

ブルーはそこでようやくリーリエの狙いに気付く。しかしその時には既に遅く、ハクリューは最後の一撃を決める態勢へと移っていた。

 

「これが私たちの全力です!ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

『クリュウ!』

 

ハクリューは自分の持つ最大限の力でドラゴンテールをカメックスの懐に振り切った。カメックスは先ほどの衝撃によりうまく受け身の態勢に入れず、不安定な状態で懐に潜り込んだハクリューの全力のドラゴンテールを浴びてしまう。

 

そのハクリューの一撃は今までの攻撃を凌駕するほど重く、カメックスの巨体は宙に浮かび大きく吹き飛ばされる。

 

「!?カメックス!」

『ガメ……』

 

「カメックス戦闘不能!ハクリューの勝ち!よって勝者!リーリエ選手!」

 

カメックスは目を回し戦闘不能状態となり、遂に激闘だった因縁のライバルバトルに終止符が打たれたと同時に、まるで大雨のように会場全体を大歓声が包み込み鳴り響いたのだった。




ライバルバトルはリーリエの勝利に終わりました。結構予想より長引きましたが、個人的に書きごたえがあったので満足です。もうこれが最終回でいい?ダメ?さいですか(´・ω・`)

感想や個別メッセージで時たま応援メッセージが届いたりしてるのでヌシも頑張れています。なのでこれからもこの調子で気長かつ自由気ままに書き進めていきたいと思います。

ヌシの戦いはこれからだ!

ご愛読ありがとうございました。作者の次回作にご期待ください。


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準々決勝第二試合!圧倒する力と業!

今日が水曜日だと勘違いしていたヌシです。慌てて書き上げたため駄文注意

今回のモブ君は名無し君です。理由→めんどくさかったから
サブタイトルの理由→めんどくさかったから


リーリエ対ブルー。ライバル同士の激闘に終止符が打たれ決着がついた。

 

「カメックス戦闘不能!ハクリューの勝ち!よって勝者!リーリエ選手!」

 

審判の口からバトルの勝者の名が告げられる。長く続いたバトルの勝者はリーリエ。そして会場からは地響きが発生していると思わせるほどの大歓声が沸き上がった。

 

それほど息の詰まる攻防を繰り返した両者で、会場にいる全ての者たちを魅了させるには充分であった。しかし現在の彼女たちにはそんなことを気にするような余裕はなかった。

 

リーリエもブルーも、どちらも今起きている状況を把握できていない様子だ。バトルに熱くなりすぎ集中しすぎていたために、状況の理解が追い付いていないのだ。

 

そんな中先に動いたのはブルーだった。ブルーは負けた瞬間に目を見開き思考が一瞬停止してしまったが、ハッと気づくとすぐにカメックスをモンスターボールへと戻した。

 

「……ありがとね、カメックス。ゆっくり休みなさい。」

 

カメックスをモンスターボールへと戻したブルーはリーリエの方へと振り向く。その視線に気づいたリーリエも同じくハッとなり、今の状況をようやく呑み込むことができた。

 

「私たち……勝ったのですか?ブルーさんとカメックスさんに?」

『クリュー!』

 

状況を呑み込むことができても未だ夢なのではないかと唇が震えているリーリエ。しかしそんなリーリエにハクリューはボロボロの体で飛び込み、リーリエは驚きながらも咄嗟にハクリューを抱きしめ受け止める。その時にリーリエはこれが夢ではなく現実なのだとようやく気付く事ができ、喜びをあらわにした。

 

「ハクリューさん!私たち勝ったんですね!」

『ハクリュ!』

 

嬉しそうに微笑むハクリューにリーリエは感謝の言葉を伝える。ハクリューもその言葉を受け取り、再び大好きなリーリエと共に戦い抜くことができたこと、そして彼女の役に立つ事ができたことに心の底から喜びを感じる。

 

そうやってパートナーと共に喜びを分かち合っていると、ブルーがゆっくりと2人に近寄ってきた。

 

「リーリエ」

「!?ブルーさん……」

 

ブルーはリーリエの元まで近寄り口を開く。勝てたことが信じられず嬉しさを感じていたリーリエだが、近寄ってきたブルーの顔を見て少々気まずい空気を感じ取る。

 

勝者であるリーリエはその気まずさ故にブルーに対して声をかけることができない。その気まずさから俯くリーリエに、ブルーは呆れながら語り掛けた。

 

「なに湿っぽい顔してるのよ!」

「えっ?」

「このあたしに勝ったんだからしゃんとしなさい。これじゃあまるで負けたあたしが惨めみたいじゃない。」

「そ、そんなことは!?」

「だったら堂々と胸を張ることね。あたしに勝ったんだったらそれを誇りに思いなさい。」

「ブルーさん……」

 

リーリエに胸にブルーの言葉が重く突き刺さる。ブルーも負けて悔しくないわけがない。だが、それでもこの勝負に悔いも未練も微塵もない。

 

ブルーはこのバトルはリーリエだけでなく、自分に対しても大きな意味を持っているのだと考えている。これは決して敗北ではなく、自分がさらに強くなるための戦いだったのだと。

 

「今回のバトルは確かにあたしの負けよ。……でも次にバトルするときは負けないから。絶対に勝ち進みなさいよ!」

「!?は、はい!私ももっともっと強くなって見せます!ありがとうございました!」

 

ブルーは手を差し出し、リーリエはブルーの手を強く握り返す。昨日の敵は今日の友。彼女たちはこれからもライバルとして共に高みを目指し切磋琢磨することだろう。次に会った時はお互いに今以上に強くなっているのだと思いを馳せながら、今日の戦いを称賛し合う。

 

『激しいバトルを戦い抜いた両者が今!お互いの健闘を称え合っています!今一度激闘を繰り広げた両者に盛大な拍手を!』

 

司会の言葉と同時に、観客の皆が立ち上がり2人に再び拍手の雨を降らせる。2人もようやく周囲の熱気に気が付いたのか、少し照れくさくなり頬を染める。

 

「まあともかく次のバトル、負けたら承知しないわよ!」

「はい!」

 

リーリエとブルーはもう一度必ずバトルすると約束を交わしフィールドを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ごたえのあるバトルでしたね。」

「そうね。リーリエの成長が見れて嬉しいわ。」

 

シンジとルザミーネは今のリーリエとブルーの戦いを見てそう感想を漏らす。2人にとってもこのバトルは少々予想外だったようで、終始驚きの連続であった。その分駆け出しだった頃に比べて成長振りが明らかであったため感慨深く感じた。

 

「リーリエのところには行かなくていいの?」

「……やめておきます。今のリーリエにはその必要はないと思いますので。それに……」

「それに?」

「……いえ、なんでもありません。」

「……そう。」

 

どこか思うところがあったのか俯いたシンジ。ルザミーネはどうしたのか尋ねようとするが、話をはぐらかしたシンジに無用だろうとこれ以上問いかけることはなかった。

 

『さあ盛り上がってきたところで、準々決勝第二試合を開始したいと思います!』

 

司会者の言葉に続いて姿を現したのはコウタだ。コウタはこれまでリザードンによる圧倒的な力で相手をねじ伏せてきた。リーリエやシンジと違い、豪快なパワーファイターと言えるバトルスタイルだ。

 

当然力だけではここまで勝ち上がることは困難だ。彼はその上に努力と言う最強の武器も兼ね備えている。誰よりも努力家な彼はそれを知られることを嫌っているが、ポケモンたちと共に高みを目指すため、憧れの人に追いつくために日々努力を重ねてここまで上り詰めてきた。そう真似できることではない。

 

コウタは正面に立つ対戦相手と対峙する。コウタの表情は自身に満ち溢れ、威圧感さえ覚える。対戦相手もそのプレッシャーを感じたのか少し怯んでしまう。

 

「それではこれより!準々決勝第二試合を開始します!それでは両者!ポケモンを!」

 

審判の言葉に両者同時にモンスターボールを手に取り投げる。

 

「行け!バクフーン!」

『バッフ!』

 

対戦相手が繰り出したのはほのおタイプのバクフーンだ。バクフーンはジョウト地方の初心者用ポケモンの一体として知られているが、その体つきを見るによく育てられていることはすぐに分かる。

 

そのバクフーンに対してコウタが繰り出すのはリザードン、かに思えたがモンスターボールから解放されたポケモンは……。

 

「行くぞ!ヘラクロス!」

『ヘラクロ!』

 

なんとむし・かくとうタイプのヘラクロスだ。同時にポケモンを繰り出したため選出する余地はないが、それでもリザードン一体で勝ち上がってきたことを考えると意外な選出だった。

 

コウタがなぜリザードン以外を選出したのか。それは他のポケモンたちもこの舞台に慣らすためだ。

 

確かに彼のリザードンは頭一つ抜きんでて強い。しかし次に戦う相手は間違いなくリーリエ、コウミ、ハジメの3人の内誰かだろうとコウタは考えている。そんな3人を相手にリザードン一匹で勝てるはずがない。であればここで別のポケモンのウォーミングアップも必要だろうと考えたのだ。

 

この際に一つデメリットがあるとすれば手持ちポケモンの情報源を他のライバルたちにも与えてしまうことだろうか。しかしライバルたちは手持ちを温存しておいたからと言って勝てるほど甘い相手ではないのは彼も理解している。ここまで来たら出し惜しみなど必要はない。

 

対戦相手の少年もコウタの意思を感じ取ったのか、真剣な表情に変わる。今までリザードンだけで戦ってきたため他のポケモンがあまり強くないという可能性もないわけではないが、ここまで勝ち上がったトレーナーが一体のポケモンを育てていることなどまず有り得ない。であれば今対面しているヘラクロスやその他のポケモンも強敵であることに違いない。

 

少年は相性がいいからと言って決して油断するなと自分のパートナーであるバクフーンとともに気合を入れる。

 

「バクフーン!かえんほうしゃ!」

 

先に動いたのはバクフーンだ。バクフーンは堅実にかつセオリー通りにかえんほうしゃで牽制の意味も込めたかえんほうしゃを放つ。態勢を低く構えたバクフーンが放ったかえんほうしゃがヘラクロスに接近する。

 

むしタイプのヘラクロスにかえんほうしゃは致命的なダメージとなってしまう。だが躱せない攻撃ではないため問題ないだろうと皆が思う。しかしコウタのとった行動は驚くべきものであった。

 

「受け止めろ!」

『クロッ!』

 

『ヘラクロスにバクフーンのかえんほうしゃが直撃!これは効果抜群だぞ!』

 

ヘラクロスにかえんほうしゃが直撃するが、明らかにヘラクロスは回避できるはずの攻撃を回避しようとしなかった。それどころか自らかえんほうしゃを正面から受け止める態勢に入っていた。

 

当然かえんほうしゃはヘラクロスに効果抜群であるためただでは済まない。たとえ受け身に入っていたとしてもダメージは甚大なものだ。

 

『ヘラクロッ!』

『!?なんとヘラクロス!バクフーンのかえんほうしゃを耐えきったぞ!』

 

しかし驚くべきことにヘラクロスはバクフーンの攻撃を耐えきる。それどころかヘラクロスはそのかえんほうしゃを受け流し完全に打ち消したのだ。ダメージこそ見られるものの、弱点であるほのお技をかき消すのは並大抵のことではない。

 

「くっ!なら今度はかえんぐるまだ!」

『バクッ!』

 

続いてバクフーンはかえんぐるまで近接戦に移行する。バクフーンのかえんぐるまはキレもスピードも抜群でヘラクロスを捉えるには充分であった。だがそれでもコウタとヘラクロスは受け止める姿勢をやめることはなかった。

 

「今だ!カウンター!」

『ヘラッ!』

 

ヘラクロスはギリギリの距離までバクフーンを引き付け僅かに横に移動し回避する。そしてバクフーンが手の届く位置に入った瞬間、ヘラクロスの拳がバクフーンを逆に捉え弾き返し吹き飛ばした。

 

カウンターは相手の攻撃を利用して、倍の威力で相手にダメージを与える技だ。バクフーンはヘラクロスのたった一撃のカウンターにより大きく宙に浮かび上がり地面に叩きつけられ戦闘不能となった。

 

「バクフーン!?」

『バク……』

「バクフーン!戦闘不能!ヘラクロスの勝ち!」

 

ヘラクロスの強力なカウンターは想像を絶する威力だった。鍛え上げられたであろうバクフーンを一撃で仕留める程の攻撃力はまさに驚異的と言わざるおえない。

 

「あのヘラクロス、凄いパワーだ。」

「ええ。バクフーンのパワーを物ともせずに跳ね返すなんて、簡単に出来ることではないわね。」

 

シンジとルザミーネもそのヘラクロスの強さに驚愕する。相性の差を覆したのももちろんだが、それ以上にバクフーンのパワーを上回り正面から打ち勝ったことも一つの要因だ

 

「戻れ、ヘラクロス!」

 

『おっとここでコウタ選手、ヘラクロスを戻したぞ!次はどんなポケモンを出すのか?』

 

ここで一度ヘラクロスを手元に戻すコウタ。そして次に出すポケモンは決めているようで、迷う事なくそのポケモンの入ったモンスターボールを取り出した。

 

「次はこいつだ!エレキブル!」

『エッキ!』

 

コウタが次に繰り出したのはエレキブルだ。エレキブルはエレブーの進化形で見た目に違わずパワフルな戦術をとることが多い。コウタのバトルスタイルにはピッタリのポケモンだろう。

 

「頼む!ハガネール!」

『ガッネール!』

 

対して少年が繰り出したのははがね・じめんタイプのハガネールだ。ハガネールは動きが鈍足である分かなりの耐久力を誇っている頑丈なポケモンだ。エレキブルの攻撃力が上回るか、ハガネールの耐久力が上回るか見ものである。

 

しかしハガネールはじめんタイプを有しているためでんきタイプのエレキブルでは相性が最悪だ。しかし先ほどの圧倒的な勝利を見ているためそれだけでは判断材料にならないのは明白。このバトルがどう転ぶかは誰にも予想できない。

 

「ハガネール!がんせきふうじ!」

 

ハガネールはがんせきふうじでエレキブルの四方八方を防ぎ行く手を阻む。そして逃げ場がなくなったエレキブルに頭上から最後の一発が降り注ぐ。

 

「エレキブル!かみなりだ!」

『ブル!』

 

エレキブルは肩まで伸びた二本の尻尾から強力なかみなりを放つ。そのかみなりはいとも容易くがんせきふうじを破砕し抜け出した。

 

「今度はこちらから行くぜ!かみなりパンチ!地面に叩きつけろ!」

 

エレキブルはハガネールに効果のないかみなりパンチを地面に叩きつける。エレキブルの剛腕から放たれるかみなりパンチはすさまじい衝撃を発生させ地面を揺らす。そしてその攻撃によって発生した衝撃波がハガネールに向かっていった。

 

「ジャイロボールで防ぐんだ!」

 

ハガネールは負けじとその場でジャイロボールをし衝撃波を打ち消した。

 

「エレキブル!かわらわりだ!」

『エッブ!』

 

エレキブルは攻撃後の隙を見て接近しかわらわりを仕掛ける。かわらわりはかくとうタイプの技であるためハガネールの弱点を突くことができる。

 

「アイアンテールで迎え撃て!」

『ハッガネ!』

 

ハガネールは正面からかわらかりで攻めてくるエレキブルに対し、アイアンテールで真っ向から迎え撃つ。互いの技は交じり合い威力も互角であるため微動だにしない。しかし、これこそがコウタの狙いであった。

 

「エレキブルにはもう片方の腕がある!ほのおのパンチ!」

『キッブ!』

 

エレキブルはかわらわりとは反対の腕でほのおのパンチを放ちハガネールに強襲する。ハガネールもこの攻撃には溜まらずダウンし大きく怯んだ。

 

手数で圧倒的に勝っているエレキブルが優位に立ち、更に攻撃のチャンスが生まれる。このチャンスを逃す手はなく、エレキブルは迷わず追撃を放った。

 

「もう一度かわらわり!」

『エッキ!』

 

エレキブルはすかさずかわらわりをハガネールに向かって振り下ろす。鈍足なハガネールではエレキブルのスピードに対応が追いつかず受け身をとることすら許されぬままかわらわりの直撃を受けてしまう。

 

その際に発生した衝撃が晴れると、そこには戦闘不能となっていたハガネールの姿があった。ハガネールの耐久力は相当なものだが、それすらものともしない攻撃力を持っているエレキブルには驚愕を禁じ得ない。

 

「ハガネール戦闘不能!エレキブルの勝ち!」

 

少年慌ててハガネールをモンスターボールへと戻す。タイプ相性など関係ないと言わんばかりに正面からの力押しで勝っているコウタだが、細かいところをチェックすると力押しだけでないのが分かる。

 

先ほどの攻防、エレキブルのかわらわりをアイアンテールで防いだハガネールだが、コウタは相手がそう来ることを読んでかわらわりを選択した。その上かわらわりが防がれてもアイアンテールで他に防ぐ手段がなくなってしまったハガネールに対し、エレキブルはもう片方の腕でほのおのパンチを当てるのはたやすい。コウタはその隙を狙ったに他ならない。

 

この一連の流れは相手の行動を先読みする、対抗手段を用意しておくと言った一見簡単なようで高度なテクニックが使われているのだ。これらの行動は前もって対策を準備し、日々努力をしているものにしか熟せない芸当だろう。それを熟すコウタがパワーだけのトレーナーでないことはすぐに分かることだ。

 

「よくやったな。エレキブル、戻って休んでいてくれ。」

 

『コウタ選手、再びエレキブルをボールへと戻したぞ!』

 

コウタはヘラクロスと同様にモンスターボールへとエレキブルを戻す。そしてそろそろいいかとある判断を下し、あるポケモンの入ったモンスターボールを手にしたのだった。

 

「行くぞ!リザードン!」

『リザァ!』

 

コウタが次に出したのは彼の相棒であるリザードンだ。ウォーミングアップを済ませたのか、遂にリザードンで一気に決める態勢へとシフトしたようだ。

 

「行け!プテラ!」

『テェラ!』

 

少年の繰り出したポケモンはプテラ。立て続けに有利な相性のポケモンを繰り出してくるため少年はセオリー通りの戦術をとってくる。だが相手はあのコウタとリザードン。果たして彼はどこまでついて行くことができるのだろうか。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

 

今度はリザードンがドラゴンクローで先手をとる。どちらもひこうタイプであるため激しい空中戦が余儀なくされる。

 

「プテラ!こっちもドラゴンクロー!」

『プテェ!』

 

プテラも同じくドラゴンクローで対抗する。フィールド上空で何度も交じり合いぶつかるが、次第に力の差が現れプテラが押し負ける結果となった。

 

「くっ!プテラ!アイアンヘッド!」

 

プテラは頭部を硬化させアイアンヘッドで再び接近する。しかし……

 

「リザードン!受け止めろ!」

『ザァド!』

 

リザードンはがっしりと正面からプテラの翼を抑え込み受け止めてみせた。その光景には少年も目を見開き絶句する。何故ならプテラがピクリとも動く気配がないのだ。

 

「リザードン!ちきゅうなげだ!」

 

リザードンはプテラを抱え空中を数回周り勢いをつける。その勢いを利用し地上まで急降下し、抱えたプテラを地面に叩きおとした。

 

その破壊力はすさまじく、プテラを戦闘不能に追い込むには充分すぎる一撃であった。

 

「プテラ戦闘不能!リザードンの勝ち!」

 

リザードンは勝利の雄叫びをあげ炎を吐く。まだまだこれからだと言わんばかりの気迫に少年は気圧される。

 

それからはこれまで以上に力の差が明確にあらわれた試合運びで、リザードンはほぼ無傷の状態で少年のポケモンを全て倒してしまった。そのリザードンの気迫は見るもの全てに伝わるほど凄まじいものであった。

 

その試合を見ていたリーリエも一言凄いと呟く。正直言ってそれ以上の言葉が出てこない。

 

殆ど回避を行わず、真っ向からの撃ち合いを好むコウタの戦術は他で類を見ないと言ってもいい戦い方だ。少なくともシンジやリーリエとは真逆で、ブルー以上に力でグイグイと押してくるタイプだ。小手先の技ほど彼には通用しないかもしれない。

 

準々決勝第二試合は当然と言うべきかコウタが圧倒的な力の差を見せつけ勝利した。続く第三試合、第四試合もコウミ、ハジメが勝ち準決勝進出を決める。

 

そして遂に、運命の準決勝の対戦相手を決める抽選の時間がやってきた。

 

『それではただいまより、準決勝の第一試合、第二試合の対戦カードを決めたいと思います!』

 

ここまで勝ち上がったのはリーリエに加えコウタ、コウミ、そしてハジメの4人だ。彼女たち今大会のベスト4として勝ち残り、優勝を目指して争うと考えると会場全体が緊張に包まれる。どのトレーナーも驚くべき戦果を挙げているため無理もない

 

『それでは発表します!準決勝、第一試合は!』

 

司会者のその言葉と同時にバックスクリーンに映る参加者のカードが裏側となりシャッフルされる。リーリエにも緊張が走るが、誰と戦うかを考える間もなく対戦カードが決定した。

 

『決定いたしました!準決勝、第一試合は!』

 

準決勝第一試合、その対戦カードを確認するためにリーリエはバックスクリーンに目を向ける。するとそこに映っていたのは。

 

自分とコウタの姿が映ったカードであった。

 

こうして準決勝はリーリエ対コウタ、コウミ対ハジメで争われることが決定したのだった。




本来バトルシーンは書かない予定でしたがあまりに短くなってしまったため繋ぎのために追加で書きました。まあコウタがこんな戦い方しますよ程度の紹介に。強敵の次に更なる強敵が出てくるのはアニメでもよくあることですから(適当

使用率低いからどうかと思いながら格闘Zブースター作ってみましたけど意外とハマってヤバいんですけど。仮想敵のバンギ、ドランを一撃で粉砕できた時の気持ちよさよぉ。

そういえば新たなデュエルディスクがプレミアムバンダイにて予約受付中ですぞ。決闘者なら買うしかない!

と言うわけで次回またお会いしましょう。仕事忙しくてもこの作品は続けていければと思っているので投稿が遅れてでも書いて行きます。ではでは!ノシ


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激闘!準決勝、リーリエVSコウタ!

難しい言葉を並べてカッコいい事を言わせようとすると逆に意味不明なことを言っていることに気付く。

脳内ピンクのヌシでは無理のようです


リーリエとブルーの激しい激闘から一夜明けた翌日、今日は次なる強敵であるコウタとの対戦当日だ。

 

間もなくリーリエとコウタによる準決勝第一試合が始まる時間だ。しかしその前に、強敵との戦いを前に緊張しているであろう彼女の元に母親であるルザミーネを始め、シンジとブルーも激励にやってきていた。

 

「いよいよ準決勝ね、リーリエ。」

「……はい、お母様。」

 

準決勝を前に母親に声をかけられ緊張の色が隠し切れないリーリエにルザミーネは苦笑する。そんな娘にルザミーネは激励の言葉をかける。

 

「そんなに緊張してると後が持たないわよ?少しは深呼吸してリラックスしなさい。」

「は、はい!」

 

ルザミーネの言った通りに深呼吸して気持ちを落ち着かせるリーリエ。少しは表情が和らいだようだが、それでも完全に解れたとは言えない様子だ。そんな彼女に今度はブルーが口を開きため息交じりに声をかける。

 

「……はぁ、これじゃあ最後まで戦い抜けるかどうかすら怪しいわね。」

「も、申し訳ありません……。」

「いい?あんたはあたしに勝ったんだからもっと自信を持ちなさい。あたしに勝った勢いで次も勝つのよ!無様な負け方したら承知しないからね!」

「ブルーさん……」

 

ふんっ、と頬を僅かに赤くしてそっぽを向くブルー。彼女に言い方は少しキツイように思えるかもしれないが、その言葉は彼女なりの激励なのだとリーリエは理解できた。素直になれないブルーらしいとリーリエは笑みを零した。

 

リーリエの緊張が少しずつ解れていくのを察したシンジは、最後に一言だけリーリエの眼を真っ直ぐと見つめ彼女に言葉をかける。

 

「リーリエ。」

「!?はい、シンジさん。」

「……頑張ってね。」

「……はい!」

 

ここまで駆け上がってきた彼女にこれ以上言葉を伝える必要はないだろうとシンジはその言葉だけを口にした。たったその一言だけの言葉ではあったが、その言葉には色々な意味が込められているのだとリーリエは感じ取ることができた。

 

例え誰が相手でも今まで経験したことを活かして戦うこと、ポケモンバトルを楽しむこと、そして自分とポケモンのことを信じること。それらの意味も同時にそのたった一言に込められているのだとリーリエは悟ることができた。だからこそリーリエはシンジの言葉に対して「はい」と返答したのだ。

 

間違いなくコウタは強敵だ。それもリーリエにとっては最大の天敵と言ってもいい相手。テクニックとスピードで相手を翻弄しながら戦うリーリエに対し、コウタは正面から圧倒的な力を有して攻めるパワータイプ。パワー不足がどうしても目立つリーリエにとってはブルー以上に苦手な相手であろう。

 

しかし、それでも勝てる確率はゼロではない。リーリエは自分がみんなに支えられてここまでこれたのだということを改めて感じ、みんなに心の中で深く感謝する。

 

そして遂に準決勝が開かれる時間となり、リーリエは席を立ちあがりみんなに告げた。

 

「では行ってきます!」

 

リーリエはそう言って覚悟を決めた顔でその場を去り、コウタの待つ戦いの舞台へと向かっていく。シンジたちはリーリエの背中を見送り、自分たちもと会場へ向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遂にリーリエと戦う時がきたな……」

 

コウタは自分の控室でそう呟く。普段は楽観的な態度をとる彼だが、今日は珍しく緊張の色が伺える様子で俯いている。

 

「……緊張するなんて俺らしくないな」

 

自分ですら緊張していることがすぐ分かるぐらいには手が自分の汗で滲んでいた。

 

普段なら緊張することのないコウタだが、相手はリーリエ。類を見ることのない戦術を繰り出し予想不可能の戦いぶりを見せてきた彼女と戦うのに緊張しない方が不思議な相手だ。そして何より彼が気にしていることは……。

 

「俺がこれまで目標としてきた人に戦い方が似てるからか?憧れだったあの人と旅をしてきた相手だから?」

 

どちらにせよ、一筋縄でいく相手であるのは明白。いつも以上に緊張感をもって挑むのは間違いではない。寧ろ警戒心を強く持って戦った方がいいだろう。

 

何故なら他では類を見ない戦い方をするという事は常識が通用しない相手でもある。それは自分にも言えることではあるが、自分とは真逆の戦術を使う分余計に理解の及ばない戦いになるだろう。

 

自分はあの時以来強くなったと自覚している。以前戦った時はタッグバトルとは言え敗北してしまった。その時はまだまだ駆け出しでお互いに未熟だった。だが今は互いに成長を重ね夢の舞台に立ち、今再び相まみえようとしている。

 

彼女も今頃準決勝に向けて集中力を高めているだろう。自分との戦いのために対策を考え作戦を練っているかもしれない。

 

だが自分は頭で考えるのは苦手だ。どんな相手でも自分の戦い方を貫き通し真っ向からぶつかって勝つ。それこそが自分の信念だ。

 

「……ふぅ、よし、そろそろ行こう!今日も頼むぜ?相棒!」

 

コウタは立ち上がり自身の持つ最大の相棒に呼びかける。その言葉に反応するかのように、彼の腰にあるモンスターボールが僅かに揺れ、それを確認したコウタは控室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではただいまより、準決勝第一試合!リーリエ選手対コウタ選手のバトルを開始いたします!」

 

審判の合図と同時に両者共に姿を現す。両トレーナーの登場により会場の観客たちの歓声は大いに盛り上がり最高潮に達する。

 

準決勝まで勝ち上がった両者。そのどちらもが凄まじいバトルを繰り広げているのだ。バトル好きのトレーナーであれば期待しない方が無理な話である。

 

「シンジさんはどっちが勝つと思いますか?」

「僕にも正直分からない。」

 

ブルーの質問にシンジはきっぱりとそう答える。心の中ではリーリエを応援したいと言う気持ちはあるものの、チャンピオンとしての性かそれを許すことのできない自分がいる。自らの感情で特定のトレーナーを贔屓することは出来ない。

 

「リーリエは確かに強くなった。だけどそれはコウタにも言えること。」

「以前2人は戦ったことがあるんですか?」

 

ブルーの言葉にシンジは頷く。

 

「でもその時は僕とのタッグでの勝敗。シングルバトルとタッグバトルでは勝手が違うからね。」

 

タッグバトルは相方とのコンビネーションが重要になってくる。お互いの欠点や相性をお互いにカバーし合えばいつも以上に力を発揮することは可能だ。

 

だが一般的なルールであるシングルバトルでは話が変わってくる。当然自らの力やポケモンの力、それに咄嗟の判断など頼れるのは全て自分と自分のポケモンのみだ。誰かが助けてくれることはない。

 

今回リーリエは1人の力でコウタと戦うことになる。コウタのポケモンはパワーが備わっているため1人で戦う事にも当然長けている。寧ろ彼のバトルスタイルを考えるとタッグよりもシングルの方が適正が高いだろう。

 

逆にリーリエは視野が広くサポートをする戦術が得意であるためどちらかと言えばタッグ向けのバトルスタイルだ。その点で考えればコウタの方に分がある。

 

しかしあながちリーリエが一方的に不利なのかと言えば違う。リーリエの独特な戦い方にはコウタもあまり経験があるとは言えない。リーリエがコウタを追い詰める可能性も十二分にある。それらを考慮するとこのバトルがどちらに転ぶかは判断に悩むところだ。

 

「……結果はすぐに出ると思うよ。」

「……そうですね。」

「リーリエ……最後まで頑張りなさい。」

 

ルザミーネはそう呟いて自分の娘の健闘を祈った。

 

「ルールは準々決勝と同じくフルバトルとなります!どちらかのポケモンが6体全て戦闘不能となったらバトル終了です!」

 

審判のルール確認を聞き両者が小さく頷く。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

 

そして2人は同時にモンスターボールを手にしフィールドに投げた。

 

「行くぞ!エアームド!」

『エアー!』

「お願いします!フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

コウタが繰り出したのははがね・ひこうタイプのエアームド。対してリーリエの繰り出したのはくさ・どくタイプフシギソウだ。相性を見れば圧倒的にフシギソウが不利だ。しかし今まで様々な窮地を脱してきたのを目の当たりにしているため、この局面をどうやって突破するかに注目が集まっている。

 

例え相性がいい相手でも、コウタは油断するような素振りは見せない。コウタはエアームドと共に絶対に勝つのだと気合を入れる。

 

「バトル開始!」

 

そしてバトル開始の合図が宣言される。それと同時に動き出したのはコウタとエアームドであった。

 

「エアームド!スピードスター!」

『エア!』

 

エアームドが繰り出したのは命中率が極めて高いスピードスターだ。昨日とは打って変わって堅実な立ち回りにシフトしたのか、予想とは大きく外れ困惑するリーリエだったがそれでも対処するのは難しくなかった。

 

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

『ソウソウ!』

 

『エアームドの攻撃をフシギソウがはっぱカッターで防いだぁ!最初から技の応酬が炸裂!』

 

フシギソウは無数のはっぱカッターを放ちエアームドのスピードスターを撃ち落とす。威力にほぼ差はなく互いの技が相殺し合う光景がそこにはあった。

 

「続けてラスターカノン!」

「躱してください!」

 

エアームドはラスターカノンを直線上に放ち、フシギソウはその攻撃をジャンプすることで回避する。しかしその回避が逆に仇となり隙を晒してしまう結果となった。

 

「はがねのつばさ!」

『エアー!』

『ソッ!?』

 

エアームドはラスターカノンを放ちながら接近しており、ジャンプして回避したフシギソウの隙を狙ってはがねのつばさを直撃させる。

 

『フシギソウにはがねのつばさが炸裂!見事な連続攻撃に翻弄される!』

 

はがねのつばさを受けてしまったフシギソウは大きく飛ばされるが、それでも受け身をとり態勢を立て直すことに成功する。思った以上のダメージもなく、フシギソウからはまだまだ行けると言う意思を感じ取ることができた。

 

「畳みかける!ラスターカノン!」

 

さらにラスターカノンで追撃の一手を加えるエアームド。しかしそう何度も同じ手を喰うほどリーリエは甘くなかった。

 

「エナジーボールで迎え撃ってください!」

『ソウ!』

 

エナジーボールを放ちラスターカノンを正面から打ち崩す。互いの威力は互角であり、互いに技が相殺し合い衝撃が発生する。

 

これはいつものリーリエの必勝パターンだと焦り、コウタは慌てて行動に移った。

 

「エアームド!はがねのつばさで振り払え!」

 

エアームドは元々硬い翼をさらに硬化させ、その翼を勢いよく振り払うことで衝撃による煙の障害を排除する。しかしそこには既にフシギソウの姿はなかった。

 

「っ!?しまった!」

「フシギソウさん!つるのムチです!」

『ソウ!』

 

ハッとなり上を見るコウタとエアームド。その2人の目に映ったのはつるのムチを構えているフシギソウであった。

 

フシギソウのつるのムチは見事エアームドの背中にヒットし、エアームドは勢いよく地面に叩きつけられる。はがね・ひこうタイプのエアームドに対しフシギソウの攻撃は効果が薄いが、地面に叩きつけた衝撃はエアームドの体力をを確実に奪っていた。それでもエアームドは即座に再度飛び上がり態勢を整えた。

 

『おっと!今度はフシギソウの反撃だ!序盤からどちらも一歩も引かない攻防が繰り広げられております!』

 

「さすがに今のは効いたぜ。なら一気に決めるぞ!エアームド!ブレイブバード!」

『エアァ!』

 

エアームドは急上昇したのちすぐに急降下し地面すれすれをもの凄いスピードで飛行し接近してくる。ひこうタイプ最強クラスの技であるブレイブバードだ。威力は見て分かる通り壮絶なもので当たればくさタイプのフシギソウであれば一溜りもない。

 

エアームドのブレイブバードはスピードもキレも抜群で受けることはほぼ不可能と言ってもいいだろう。躱すにしてもあの機動力では追いかけられて直撃を受けるのが関の山だ。

 

「フシギソウさん!走ってください!」

『ソウ!』

 

『なんとフシギソウ!エアームドとは逆の方向に走り出したぞ?いったい何をするつもりなのか!?』

 

フシギソウはエアームドとは逆の方向、つまりエアームドの進行方向に向かって走り始めた。一見無謀な行動で、スピード差は歴然としてエアームドの方が圧倒的に早い。このままでは追いつかれるのも時間の問題だろう。

 

だがあのリーリエがこのまま何もなしにやられるとは思えない。しかしコウタには彼女の思考を読むことができない。コウタが頭を悩ませる中、その時リーリエは逆転の一手へと移る。

 

「フシギソウさん!ジャンプです!エアームドさんに乗ってください!」

『ソウソウ!』

『エア!?』

 

フシギソウは接近してくるエアームドは受け流すようにジャンプし、エアームドの背中へとジャンプして飛び移る。これにはエアームドも驚き思わずブレイブバードが解除され動きを止めてしまう。

 

「なっ!?くっ!エアームド!振り落とせ!」

『エアッ!エアー!』

 

エアームドはフシギソウを振り落とそうと必死にもがくが、フシギソウもエアームドをガッチリと掴んで離そうとしない。動きの止まったエアームドには隙が生じ、リーリエとフシギソウに最大の反撃のチャンスが生まれた。

 

「今です!フシギソウさん!エナジーボール!」

『ソウ!』

『エア!?』

 

フシギソウはエアームドの背中にしがみついた状態でエナジーボールを放つ。無防備状態のエアームドには当然防ぐ手立てがなく、それも背中に零距離で直接エナジーボールを受けてしまったため大きなダメージとなりその場で墜落し、戦闘不能となった。

 

『エアァ……』

「エアームド戦闘不能!フシギソウの勝ち!」

 

力尽きてしまったエアームドを労いながらモンスターボールへと戻したコウタ。結果はフシギソウの勝利に終わったがこの勝利は決して簡単なものではなかった。

 

一見ダメージも少なくフシギソウには余裕が残っているように見える。しかし最後にエアームドにしがみついた際に体力を消耗してしまったのだ。しがみついている最中に暴れられてしまってはダメージはなくとも自然とスタミナが奪われてしまう。結果は勝利だったが、現状を考えると差は全く広がってないと言ってもいい。

 

「フシギソウ!驚くべき方法でエアームドを撃破だ!さあ、続いてのコウタ選手のポケモンは?」

 

「頼むぞ!ヨノワール!」

『ヨノワ!』

 

コウタが二番手として繰り出したのはてづかみポケモンであるゴーストタイプのヨノワールだ。ゴーストタイプという独特のタイプから繰り出される技は非常に厄介かつ強力だ。この相手にリーリエはどう立ち向かうのだろうか?

 

「フシギソウさん!このまま行きますよ!」

『ソウ!』

 

リーリエはフシギソウの『まだまだ行ける』という意思を感じ取り、その意思を尊重してフシギソウの続投を宣言した。

 

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

 

最初は堅実にはっぱカッターから入るフシギソウ。ゴーストタイプ相手であれば正しい判断かもしれないが、その牽制も意味を成さなかった。

 

「シャドーパンチ!」

 

『おっとヨノワールの姿が消えてしまったぞ!一体どこに行ってしまったのか!?』

 

ヨノワールはその場からスッと姿を消しはっぱカッターを回避する。周囲を見渡しても全く姿が見えずにキョロキョロとするフシギソウだが、その背後には怪しげな影が存在していた。

 

「!?フシギソウさん!後ろです!」

『ソウ!?』

 

ヨノワールの存在に気付いたリーリエは咄嗟にフシギソウに伝えるが、時は既に遅くヨノワールの振りかぶった腕に反応できず吹き飛ばされてしまう。

 

「おにびだ!」

『ヨノッ!』

 

ヨノワールは怪しげな炎を放ちフシギソウを襲う。体力を消耗してしまったフシギソウはその攻撃を耐えられるはずもなく力尽きその場で倒れてしまう。

 

「フシギソウさん!」

『そ、ソウ……』

「フシギソウ戦闘不能!ヨノワールの勝ち!」

 

ヨノワールの攻撃に手が出せず負けてしまったフシギソウ。しかしフシギソウは不利な相手であるエアームドを倒すことができたため功績は充分。リーリエはそんなフシギソウをモンスターボールへと戻し感謝の言葉を伝えゆっくり休むように言った。

 

『ヨノワールの動きに全くついて行くことができずフシギソウダウン!リーリエ選手の次のポケモンは一体どのポケモンか?』

 

「お願いします!マリルさん!」

『リル!』

 

リーリエが次に繰り出したのはマリルだ。タイプ相性では優劣をつけることは出来ないが、ヨノワールにはダメージが一切ないため条件はほぼ五分と五。どちらに軍配が上がるかは検討がつかない。

 

そんな状況で先に動いたのは意外にもリーリエであった。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルル!』

 

マリルはバブルこうせんで先制攻撃をする。マリルの常套手段であるが、ヨノワールは再び同じ方法で動き出した。

 

「シャドーパンチ!」

 

ヨノワールは再び静かに姿を闇に潜めた。どこからくるかは不明だがこのままでは間違いなくいい的となってしまう。

 

「完全に消えてしまったわけではないはずです!マリルさん!周囲全体にバブルこうせんです!」

『リル!』

 

マリルはその場で回転しながらバブルこうせんを放つ。もはや無差別に放たれるバブルこうせんはヨノワールを捉えてなどいないが、それでも間違いなくその行動に意味はあった。

 

マリルのバブルこうせんは放った後も持続し、無数の泡が空中に浮いたままであった。何が目的なのだろうかと考えるコウタだが、その時フィールドに異変が起こった。

 

「!?見えました!」

 

リーリエがそう言った瞬間、フィールドに散らばった泡が一部弾けた。それはまさしくヨノワールがその場にいるという証拠であった。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

『リルゥ!』

『ノワッ!?』

 

マリルはアクアテールを薙ぎ払うことでヨノワールに攻撃する。気付かれたと悟ったヨノワールは咄嗟に姿を現し急いでその攻撃を回避し直撃を免れた。

 

「ふぅ、あっぶね。もうこの手は通用しないか。」

 

だったら今度はいつも通りの正攻法で行くべきだと、コウタはヨノワールと共に攻勢へと移った。

 

「ヨノワール!あくのはどう!」

『ノワ!』

 

ヨノワールは両腕からどす黒い波動、あくのはどうを放つ。先ほどのような丁寧な立ち回りから一転し、正面突破の戦術に切り替えたようだ。

 

「マリルさん!アクアテールで弾いてください!」

 

正面から迫ってくるあくのはどうをアクアテールで弾き飛ばすマリル。そのあと隙を狙いヨノワールは休む暇を与えることなく追撃する。

 

「シャドーパンチ!」

 

ヨノワールは今度は一瞬のみ姿を消し、その僅かな時間でマリルとの距離を縮め目の前に姿を現す。そのスピードに驚きマリルはシャドーパンチによる手痛い一撃を受けてしまう。

 

「マリルさん!」

「おにび!」

「バブルこうせんです!」

 

ヨノワールのおにびを上手くバブルこうせんで妨害するマリルだが、それでもヨノワールの怒涛の攻撃は収まらない。

 

「もう一度シャドーパンチ!」

「アクアテールです!」

 

再びシャドーパンチにより急接近し近接攻撃を仕掛けるヨノワールの攻撃をマリルはアクアテールで弾く。それでもヨノワールは手を緩めることはなかった。

 

「連続でシャドーパンチだ!」

「こちらも連続でアクアテールです!」

 

フィールドの中央でシャドーパンチとアクアテールの応酬が繰り広げられる。刀を交えるかのように互いの技がぶつかる音が会場全体に響き渡る。

 

シャドーパンチとアクアテールの応酬が繰り返される内にどちらの体力も限界が近くなり勢いが弱まりつつある。その瞬間にヨノワールは僅かに距離を離した。

 

「っ、おにび!」

「バブルこうせんです!」

『ノワッ!』

『リィル!』

 

そして両者同時におにびとバブルこうせんを放ち技が中央でぶつかる。どちらの攻撃も強力かつ距離もそれほど離れていないため衝撃は自然と大きくなり、ヨノワールとマリルの両者を包み込むように広がった。

 

「くっ、ヨノワール!」

「マリルさん!」

 

2人はポケモンの安否が心配になり大声で呼びかける。しかし一切の返事はなく徐々にその衝撃が晴れ現状が明らかになっていく。

 

するとそこにはヨノワールとマリルの姿があった。しかしどちらも仰向けで倒れており、目を回した状態であった。互いに体力の限界が訪れ相打ちになりダブルノックダウンとなってしまったのだ。

 

『リル……』

『ノワ……』

「マリルとヨノワール!共に戦闘不能!」

 

『なんと!?マリルとヨノワール!両者ダブルノックダウンだ!準決勝第一試合!序盤から激しい攻防が繰り広げられております!これはどちらが勝つか予想がつきません!』

 

どちらも一歩も引かないバトルが展開される準決勝第一試合。ほぼ互角の戦いに観客も魅了されている。

 

リーリエはマリルとフシギソウ、コウタはエアームドとヨノワール、共に二体のポケモンを失った。果たしてこのバトル、勝利の女神はどちらに微笑むのか?準決勝の舞台はまだまだ始まったばかりだ!




アニポケの鬼火は何故か攻撃技扱いになっているのでこの小説でも攻撃技です。火傷効果なんてなかった……。

前にも言った気がしますがバトルの内容は全く考え無しに書いているので書いてる最中にちょくちょく内容は変更されていたりします。元々はヨノワールがフシギソウとマリルを倒してリーリエ不利の状況になる予定でしたがこうゆう結果に。

にしても次回で終わるか不安です。もしかしたらまた3話続く可能性……。今回はスピーディーな展開にしようとしたのに結局こうなる始末ですよ。なにやってんだよ団長!

兎に角また次回です!ノシ


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白熱!力と技の攻防戦!

案の定決着はつきませんですはい。


白熱するカントー大会準決勝第一試合、リーリエとコウタの対決。どちらも一歩も引かない攻防が繰り広げられ、互いに2匹のポケモンを失い戦況は拮抗している状態だ。

 

『同時に2匹のポケモンを失った両者!次に繰り出すポケモンは?』

 

「俺の次のポケモンはこいつだ!ヘラクロス!」

『ヘラクロ!』

「コウタさんはヘラクロスさんですか……。」

 

コウタが繰り出したのはヘラクロスだ。リーリエは準々決勝の試合を目の当たりにしているためヘラクロスの計り知れないパワーを知っている。ここはどのポケモンで対抗するべきか頭を悩ませる。

 

「……お願いします!チラチーノさん!」

『チラチ!』

 

コウタのヘラクロスに対してリーリエが選出したのはノーマルタイプのチラチーノだ。パワータイプであるヘラクロスに対して同じパワーで押し勝てるポケモンは数少ない。ならばここはスピードで対抗するほかないと考えたのだろう。

 

「チラチーノさん!走ってください!」

『チラ!』

 

リーリエの指示通りチラチーノはその素早い動きを利用し走ってヘラクロスとの距離を縮めていく。しかしヘラクロスは一切動きを見せず、チラチーノの動きをじっくりと観察し出方を伺っている。

 

「スピードスターです!」

 

チラチーノはヘラクロスの前で大きくジャンプし、スピードスターで先制する。ヘラクロスはその攻撃に対し真っ向から挑むことを決め動いた。

 

「ヘラクロス!インファイトで打ち消せ!」

『ヘラッ!』

 

ヘラクロスは目にも止まらぬ速さのインファイトでスピードスターを次々と掻き消していく。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラッ!』

 

チラチーノは空中からヘラクロス目掛けて急降下し、自身の得意な距離である近接戦闘に持ち込もうとする。しかし、それはヘラクロスにも言えることで既にヘラクロスは迎撃の態勢を身構えていた。

 

「ヘラクロス!カウンター!」

『クッロ!』

 

ヘラクロスはスイープビンタが当たる直前で体を横に逸らし見事回避したのち、溜め込んだ力をカウンターとしてチラチーノ目掛けて解き放つ。

 

「今です!躱してください!」

『チィラ!』

『ヘラッ!?』

 

チラチーノはヘラクロスのカウンターを逆に回避する。その驚きの対応にコウタとヘラクロスも目を見開く。

 

チラチーノは自身の特徴であるあぶらのコーティングを利用し、ヘラクロスのカウンターによる一撃を受け流したのだ。それに加え体が柔軟で身軽なチラチーノだからこそヘラクロスの攻撃を回避することができたのだ。最もヘラクロスの強力なカウンターを前にしているため伝わる緊張感はただものではない。それだけでなく自ら死地に飛び込むほどの勇気がなくては出来ない行為だ。

 

『ヘラクロスの渾身のカウンターを素晴らしい身のこなしで回避したチラチーノのスイープビンタがヘラクロスに直撃!これは効いたか!?』

 

スイープビンタの直撃を受けダメージを負うヘラクロス。自身がカウンターを決めるつもりが逆にカウンターとして貰ってしまったためダメージを大きいが、それでもヘラクロスは持ちこたえダウンを拒否する。

 

「ヘラクロス!メガホーン!」

『ヘラ!』

「チラチーノさん!あなをほる!」

『チラッ!』

 

ヘラクロスは即座に態勢を立て直しメガホーンで反撃する。その攻撃をチラチーノはあなをほるで地中に逃げる。

 

「ヘラクロス!地面を思い切り殴れ!」

『ヘラ!』

 

だがヘラクロスは驚くべきことに力を溜め込み腕を地面に力いっぱい殴り押し込んだ。すると地面に亀裂が入り地中に逃げ込んだチラチーノがその衝撃で姿を現した。

 

「行け!メガホーン!」

『ヘラクロッ!』

 

ヘラクロスは飛び出してきたチラチーノにメガホーンで追撃を加える。当然チラチーノは対応することができずメガホーンが突き刺さり吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。

 

「!?チラチーノさん!」

 

まさに力押しで突破され驚きを隠せないリーリエ。チラチーノはなんとか立ち上がるもその攻撃でのダメージが大きく足元がおぼつかない様子だ。たったの一撃で戦況をひっくり返すほどの威力にリーリエは驚愕せざるおえない。

 

「畳みかける!インファイト!」

『ヘラ!』

 

一気に決めるためにヘラクロスはインファイトで近接攻撃を仕掛ける。怒涛に放たれるインファイトにチラチーノは避けるので手一杯だ。このままではインファイトが直撃しやられてしまうのも時間の問題だ。

 

「チラチーノさん!スピードスターで距離をとってください!」

『チラッチィ!』

 

チラチーノは咄嗟にスピードスターを放ち距離をとる。ヘラクロスはチラチーノのスピードスターを再びインファイトで打ち消し、距離を離したチラチーノに再度接近し距離を詰める。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラ!』

「ヘラクロス!つばめがえしだ!」

『ヘラクロ!』

 

チラチーノはスイープビンタ、ヘラクロスはつばめがえしですれ違い様に互いの攻撃を交える。両者がその結果がどうなったのかと喉を鳴らし緊張しながら見届ける。その鋭い一太刀は少しの静寂がすぎると、チラチーノがその場で倒れると言う結果で終わったのだった。

 

「チラチーノさん!」

『チラァ……』

「チラチーノ!戦闘不能!ヘラクロスの勝ち!」

『ヘラァ!』

 

チラチーノは負けてしまったが、リーリエはそんなチラチーノをモンスターボールへと戻し優しい言葉をかける。今の戦いでヘラクロスのパワーが驚異的だという事はよく理解した。

 

だがどれだけパワーがあろうとも弱点は必ず存在する。リーリエは次のポケモンに思いを託しフィールドにモンスターボールを投げた。

 

「お願いします!ピッピさん!」

『ピッピィ!』

 

リーリエが繰り出したのはなんとピッピであった。ピッピはフェアリータイプであり、かくとう・むしタイプのヘラクロスには相性がこの上なく良い。しかしリーリエが自らの意思でピッピを繰り出すのは予想外であった。

 

リーリエはピッピに何かしらの秘策を考え付いたに違いない。そう踏んだコウタは充分に注意するようにヘラクロスに呼びかけた。有利な時ほど油断以上に恐ろしい敵は存在しない。

 

「やられる前に一気に攻めるまで!ヘラクロス!メガホーン!」

 

ヘラクロスはメガホーンで一直線にピッピ目掛けて飛びかかる。ヘラクロスはパワーだけでなくスピードの申し分ない。

 

『ピィ♪』

『ヘラッ!?』

 

ピッピはヘラクロスの攻撃を難なく回避した。前回と同様に遊んでいる子供のような感覚で軽くジャンプしたのだ。

 

「ピッピさん!めざましビンタです!」

 

ピッピはめざましビンタでヘラクロスにすかさず反撃する。メガホーンを外し態勢の崩れたヘラクロスはピッピの攻撃をそのまま浴びてしまい大きく怯み仰け反った。

 

「ムーンフォースです!」

『ピィ!』

 

ピッピはムーンフォースで即座に追撃を仕掛ける。怯んでしまったヘラクロスは攻撃を避ける事ができずにムーンフォースの直撃を綺麗に貰ってしまう。

 

『ヘラクロスにムーンフォースが炸裂!これにはたまらずヘラクロスも膝をつく!』

 

大きなダメージにヘラクロスに思わず膝をつきダメージを隠すことができない状況に陥る。その隙を見たピッピは自らの判断であの行動へと移った。

 

『ピィ!ピィ!ピィ!ピィ』

 

ピッピの代名詞でもあるゆびをふるだ。今まで結果を出してきた技であるため例え博打技でも油断することができない。

 

「発動する前に止めるんだ!ヘラクロス!インファイト!」

『ヘラクロ!』

 

ヘラクロスは慌てて立ち上がり防御を捨て、正面から捨て身の覚悟でインファイトによる近接戦へと移行する。強引にでも自分の有利な間合いにもっていかなくては間違いなくやられてしまうと考えたのだ。

 

ヘラクロスの勢いは凄まじく見る見ると互いの距離は縮まっていく。次第にヘラクロスの攻撃が届く程度まで近づきインファイトが決まるかに思えた。しかしその瞬間、ヘラクロスの攻撃がピタリと止まってしまった。

 

「どうした!?ヘラクロス!」

 

ヘラクロスは必死に抵抗するがピクリとも動けずに困惑する。すると徐々にヘラクロスの体が宙に浮かび上がった。何が起きたのかと焦るコウタだが、その時ピッピの目を見て何が起きたのかを理解することができた。

 

「!?まさかサイコキネシス!?」

 

そう、ピッピがゆびをふるで放った技はサイコキネシスだ。サイコキネシスはエスパータイプの技であり、敵の行動を封じつつ攻撃ができる優秀な技である。その上かくとうタイプのヘラクロスには効果抜群の技でもあるため、この状況で出るには最適の技と言えるだろう。

 

『ピィ!』

ピッピが両手の指で遠くに振りかざす仕草をとると、ヘラクロスも重力に逆らうかのように飛ばされる。ヘラクロスはそのまま壁まで飛ばされ思いっきり叩きつけられ、遂にダメージに耐え切れずに目を回し戦闘不能となった。

 

「ヘラクロス!」

『ヘラクロォ……』

「ヘラクロス!戦闘不能!ピッピの勝ち!」

 

ピッピは勝ったのが嬉しいのか楽しかったからなのか、その場で笑顔で跳ねて喜びをあらわす。

 

ヘラクロスのパワーが如何にあり勢いがあろうとも、ピッピの奇想天外な動きについて行くのは難しかったようだ。タイプだけでなくバトルスタイルでも相性は最悪だったということだろう。

 

コウタはヘラクロスをモンスターボールへと戻す。ピッピは一風変わった動きをするが強敵であることには違いない。ピッピとリーリエの評価を改めて再認識したコウタは、次に繰り出すポケモンを決めフィールドに投げた。

 

「頼むぞ!エレキブル!」

『エッキィ!』

 

コウタの次なるポケモンはヘラクロスと同じく準々決勝で目にしたエレキブルだ。エレキブルもまたヘラクロスと同じでパワータイプ。一発一発が重いため一つの被弾だけでも命取りとなるだろう。

 

「エレキブル!かみなりパンチ!」

『エッブゥ!』

 

エレキブルは左腕にかみなりパンチを宿し接近し近接戦闘に移る。ピッピはその攻撃を先ほどと同様にジャンプして回避するが、その攻撃は空振りに終わったものの左腕は地面に突き刺さり大きな衝撃による振動を発生させた。その衝撃はエレキブルの攻撃力がどれだけ驚異的かを物語っているのは明白であった。

 

しかし空振りに終わったためエレキブルの背後はがら空きとなっている。リーリエはその隙を逃すことはなく、ピッピに反撃の指示を出した。

 

「ピッピさん!めざましビンタ!」

『ピッピ!』

 

ピッピは隙の生じたエレキブルの背後からめざましビンタで反撃する。だがその攻撃は意外な方法で防がれるのであった。

 

『エキブ!』

『ピッ!?』

 

『なんとエレキブル!自らの尻尾を上手く活用しめざましビンタを防いだぞ!これは冷静かつ的確な対応だぁ!』

 

エレキブルは二つに分かれている自分の尻尾を使いめざましビンタをガードしたのだ。当然エレキブル本体にめざましビンタがヒットしたわけではないためエレキブルにダメージは皆無だ。

 

「エレキブル!ほのおのパンチ!」

『エッキ!』

 

エレキブルは即座に振り向きかみなりパンチとは逆の右腕でほのおのパンチを振りかざした。ピッピはその攻撃を回避することは出来ず宙に浮かされてしまう。

 

「ピッピさん!」

『ピィ……ピッ!』

 

ピッピはリーリエの声に反応し持ち直しなんとか着地をしてダメージを抑えた。だがそれでもエレキブルの怒涛の攻撃は止まることを知らない。

 

「一気に攻めるぞ!かみなりパンチ!」

 

再びかみなりパンチで攻勢に出るエレキブル。その攻撃をピッピは上手く回避する。

 

「まだだ!ほのおのパンチ!」

 

かみなりパンチを躱されても止まることなくほのおのパンチを繰り出すエレキブル。二種類のパンチを両腕で巧みに操りピッピを徐々に追い詰めていく。上手く回避は出来ているが、それでもこのままではやられてしまうのは時間の問題である。

 

「こうなったら一か八かです!ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピッピ!』

 

ピッピは大きく飛び上がりエレキブルの攻撃を躱しながらムーンフォースの態勢に移る。

 

「エレキブル!かみなりだ!」

『キッブ!』

 

力を溜め放たれたムーンフォースはエレキブルのかみなりと衝突し大きな衝撃を発生させる。エレキブルはその衝撃に怯み僅かだがその行動に隙ができる。

 

『おおっとピッピ!ここでゆびをふるの態勢に入ったぞ!』

 

ピッピはここでゆびをふり始める。この土壇場でどのような技が出るか不明だがそれでも油断ならないのがゆびをふるの怖いところだ。ピッピの規則正しい振り子運動だけがこの静寂に響く。

 

下手に動いてしまえば先ほどのヘラクロスの二の舞となってしまう。そのためコウタは最大限の警戒をしピッピの行動をじっくりと観察する。

 

『ピッ!ピッ!ピィ!』

 

そしてピッピのゆびをふるが発動し、技の力が解き放たれる。

 

『これはこおりタイプの技!れいとうビームだ!強力なれいとうビームがエレキブルに接近するぞぉ!』

 

ピッピのゆびをふるから放たれたのはれいとうビームだ。こおりタイプの中でも優秀なこの技はエレキブルにとっても直撃を受ければ相当痛いものとなってしまう。

 

「エレキブル!ガードだ!」

『キッブ!』

 

エレキブルは両腕を使い防御の態勢に入る。地面を凍らせながら接近したピッピのれいとうビームがエレキブルを捉えた。

 

れいとうビームが終わると、エレキブルの腕は氷漬けとなり動かせない状態であった。これで勝負は決まったかに思えた。しかしそう簡単にいくほど甘くはなかった。

 

「エレキブル!」

『キッブルゥ!』

 

エレキブルはコウタの合図とともに腕に力を込め始める。すると少しずつエレキブルの腕が僅かながら動き始め、鼓動を感じさせるかの如く光り始めた。

 

そしてエレキブルが雄叫びをあげた瞬間、エレキブルの両腕が氷漬け状態から解放された。そのエレキブルの腕には炎が纏われており、ほのおのパンチで力づくに氷を溶かしたのが見て取れた。

 

『なんとエレキブル!凍ってしまった自分の腕を力づくで解き放った!これにはリーリエ選手も言葉を失っている様子だ!』

 

この現象にはリーリエも驚き目を見開いた。力づくとは言え体の一部がこおり状態になったにも関わらず、それをあっさりと解除し抜け出したのだから驚くのも無理はない。

 

「エレキブル!かわらわり!」

『エッキ!』

 

エレキブルは先ほどよりもスピードを上げ、ピッピの目の前まで駆け抜ける。そしてピッピの前で腕を振り上げ力強く振りかぶり一気に振り払った。

 

ピッピはその攻撃で大きく吹き飛ばされる。効果がいまひとつとは言えその威力は凄まじく、ピッピも攻撃を耐え切れずに力尽きて戦闘不能となった。

 

『ピィ……』

「ピッピ戦闘不能!エレキブルの勝ち!」

「ピッピさん!」

 

リーリエはピッピのことが心配になり思わず駆け寄り抱きかかえる。ピッピは傷付いているものの、意識はハッキリとしているようで目をゆっくりと開いた。

 

「ピッピさん、お疲れさまでした。あとはゆっくりと休んでください。」

『ピィ……』

 

ピッピは安心したように僅かに微笑みながらモンスターボールへと戻っていった。ピッピの頑張りを無駄にしないためにも、必ずエレキブルを倒すと心に決めリーリエは次のポケモンを繰り出した。

 

「シロン!お願いします!」

『コォン!』

 

リーリエが次に繰り出したのはシロンだ。しかしエレキブルは殆どダメージを受けていない。シロンが勝てるかと言えば正直怪しいところではある。この勝負の行方がどうなるか見ものである。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コン!』

「エレキブル!かみなりを地面に放って防御だ!」

『エッブ!』

 

エレキブルは地面に尻尾を突き刺しかみなりを放つ。そのかみなりは一直線に衝撃を放ちこなゆきを相殺した。巧みに技を使いこなすエレキブルにリーリエは驚愕すると同時に感心する。

 

「エレキブル!ほのおのパンチ!」

『キブルゥ!』

 

エレキブルはほのおのパンチを纏わせシロンに急接近する。シロンは負けじと技を放ちエレキブルの接近を防ぐ。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

シロンはこおりのつぶてを無数に放つ。しかしその攻撃はエレキブルのほのおのパンチに次々と掻き消されていき、最後にはほのおのパンチがシロンに炸裂する。

 

『強力なほのおのパンチがロコンにヒットぉ!これは効果抜群だぁ!』

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コン!コォン!』

 

シロンは吹き飛ばされたまま態勢を立て直しムーンフォースで即座に反撃に出る。その反撃を予想していなかったのか、エレキブルは対応が遅れてしまいムーンフォースの直撃を受けてしまう。

 

「っ!?まさかあの状態から反撃してくるとはな……。エレキブル!かみなりだ!」

『エッブル!』

 

エレキブルは力を溜め込み、今度は正面のシロン目掛けかみなりを放つ。シロンはその攻撃をジャンプすることで回避した。

 

「エレキブル!かみなりパンチだ!」

 

ジャンプして躱したシロンの行く先にエレキブルは同じくジャンプして飛びかかり接近する。逃げ場はなくシロンもこれ以上回避行動に移ることは出来ない。

 

しかしこれはリーリエによる作戦でもあったのだ。

 

「シロン!こおりのつぶてです!エレキブルさんの後ろに撃ってください!」

『コン!』

 

シロンはリーリエの指示を信じ、エレキブルの背後に向かってこおりのつぶてを放った。どうゆうことかと戸惑うコウタとエレキブルだが、その直後に起きた出来事に驚きを隠せなかった。

 

『キブ!?』

「なにっ!?」

 

シロンの放ったこおりのつぶてがエレキブルの背後で衝突し衝撃を発生させ、エレキブルを逆に加速させる結果になったのだ。リーリエが狙っていたのはこの瞬間だ。

 

こおりのつぶてをエレキブルの背後で爆発させることによってエレキブルを加速させる。それは一見危険な行為だが、エレキブルはその予想外な加速により逆に攻撃の態勢を崩すとリーリエは考えたのだ。その考えは見事的中し、現在エレキブルは行動不能状態へと陥った。

 

「今です!シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

態勢を崩したエレキブルにシロンのれいとうビームが炸裂する。先ほどと違い回避はおろか防御や反撃の態勢にも移行できないためエレキブルは無抵抗の状態でれいとうビームを浴びてしまい地面に叩きつけられる。

 

シロンの強力なれいとうビームと、その攻撃により高度から地面に叩きつけられた衝撃によりダメージが蓄積し、さすがのエレキブルも耐えることができずにダウンしていた。

 

「エレキブル!」

『キブル……』

「エレキブル!戦闘不能!ロコンの勝ち!」

 

『エレキブル!健闘するもリーリエ選手の巧みな戦術にハマってしまい敢え無くダウン!押したと思いきや押され、互いに譲らない力と技のぶつかり合いが繰り広げられております!これはますます目が離せない展開だ!』

 

会場もすでに温まりピークを越え最高潮になっている。コウタが優勢かと思いきやリーリエが押し返し五分に戻す。これほど白熱した戦いはリーグならではと言えるだろう。

 

ますます勝敗の行方が分からなくなってきた準決勝第一試合。勝つのはパワーのコウタか、それともテクニックのリーリエか。勝利の女神が微笑むのはどちらか!次回!勝負の行方は!?




ゆびをふるはご都合主義の展開にできる代わりに無数にある技から選ぶ必要があるため便利な反面結構悩ましい技です。割と裏で頭を抱えていたりします。

どちらが勝つかを予想しながら次回を待っていただけると幸いです。今度こそ間に合わせてみせますとも!

それはそうとパラドファンさんがヌシとのコラボ回を書いて下さいましたのでそちらの方も興味のある方は是非読んでいただけると。ヌシも読みましたが面白かったのでオススメです(媚王ウル)

ではでは残りのGWも皆さん楽しんでくださいませ!ヌシはただひたすらポケモンをやってモンハンやっての毎日ですが。


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ハクリューVSリザードン!勝利をその手に!

リーリエVSコウタのラストバトルです。どちらが勝つか予想しながら最後まで優しく見守ってあげてください。


準決勝第一試合。リーリエ対コウタの息も詰まるような攻防戦は遂に終盤を迎えようとしていた。

 

その攻防戦は互いの精神力にも大きな影響を与え、2人の額には数滴の汗が浮かび頬を伝って滴り落ちる。2人の感じている緊張感は観客たちにも伝わるほどで、その戦いの結末を見届けている人たちも熱気がピークに達していると同時に同じ緊張感に包み込まれている。

 

「リーリエもコウタ、どっちも一歩も引きませんね。」

「意外だった?」

 

呟くブルーにシンジがそう聞き返すとブルーは静かにうなずき言葉を続けた。

 

「正直、あたしはリーリエがここまでやるとは思っていませんでした。」

 

ブルーがそう思った理由はバトルスタイルの相性にある。

 

リーリエが得意とする戦術は相手の動きを逆に利用し誘導したうえで隙を見つけ攻撃する、という珍しい戦法だ。相手からしても咄嗟に対応するのは難しく、勝負を焦ってしまえばリーリエの作戦にまんまと引っ掛かってしまう。

 

一見隙の少なそうなリーリエの戦術だが、それでもやはり弱点はある。それは通常のポケモンに比べ力が僅かに劣ってしまう事だ。リーリエの場合、特にコウタのようなパワーファイターに対しては相性が最悪と言ってもいい。

 

コウタとの戦いを見ているとそれほどパワー負けをしている印象は見られない。だがそれはリーリエの巧みな戦術で強引に補っているに過ぎない。単純な殴り合いであれば確実に負けている。コウタの力で圧倒する戦術は一度ペースを掴むと一方的に手を出すことができず、相手側が敗北に直結してしまうからだ。その分自分もペースを掴めない場合は負けてしまうこともあるため諸刃の剣と言える戦術なのだが。

 

「本来であればブルーの言う通り、リーリエはコウタに既に負けていても不思議ではないよ。」

「え?」

 

シンジから出た意外な言葉にブルーは思わず素っ頓狂な声をあげる。リーリエを信頼し、成長を促してきた張本人と言ってもいい人物から出る言葉とは思えなかったのだ。そんなブルーに、シンジは一つの質問を返した。

 

「じゃあ一つ聞くけどどうしてリーリエはコウタについて行けてると思う?」

「それは……」

 

自分もリーリエと戦ったためにリーリエの強さは分かっている。だが自分はリーリエの強さも戦い方も知っているため勝てる自信があった。しかし結果は敗北。

 

コウタは自分以上にリーリエにとって相性が悪い相手だ。それでも彼女はコウタについて行くどころか追い詰めることにも成功している。実力がほぼ拮抗しているのだ。

 

力がやや不足気味なリーリエがコウタと互角の勝負を繰り広げている理由をブルーは考える。コウタがリーリエの戦い方に慣れていないから?いや、シンジの戦術に似ているリーリエに対しそのようなことは起こりえないだろう。

 

では彼女とポケモンの信頼関係?それであれ自分やコウタも負けていないと自負できる。他に思いつくことと言えばその原因はリーリエ自身にあるんだろうが、自分では全く検討がつかない。

 

頭を抱え悩ませるブルーにシンジは自分の考えを伝えた。

 

「これは僕の勝手な推測だけど、リーリエの驚異的な成長力にあるんだと思う。」

「成長力……ですか?」

 

意味を理解できず未だに疑問符を浮かべているブルーにシンジはその言葉の意味を説明した。

 

「恐らくリーリエは自分でも気づいていないと思うけれど、相手の戦い方を分析する能力にかなり長けている。だけどそれだけでなく、相手の戦術を理解し分析を繰り返すことで、自分の中でそれらを吸収し成長に繋げているんだよ。」

 

バトルにおいて重要なことは努力だが、それと同じくらい重要なのが成長である。成長とは才能にも近いものだが、才能があるからといって成長するとは限らない。成長は自分では気づくことができない要素だ。

 

「リーリエの戦い方は間違いなく僕に似ている。それは彼女が僕の近くでバトルを見届け、自分自身の能力として自然と吸収していたからに他ならない。」

 

ブルーはシンジの言葉の意味を理解しつつ、続けて彼の話に耳を傾ける。

 

「コウタとの戦いの中でもリーリエは成長している。コウタの戦術や癖を無意識の内に理解し、その対策を自然と頭の中で組み立てて実行している。リーリエ自身は気付いていなくても、それは簡単には出来ないことだよ。」

 

その言葉でブルーはようやく理解した。リーリエがこれまで自分よりも手強い強敵にも劣勢になりながらも勝つ事ができたのかを。

 

ブルーが以前に見たヤマブキのジム戦によるナツメとの戦い。能力を加味しなくともナツメの実力はリーリエ以上。寧ろ彼女に勝てるトレーナー自体が少ないだろう。しかしリーリエは苦戦しながらも勝つ事ができた。それは前回に味わった敗北、そしてシンジとの練習試合によってナツメの戦い方を自然と体に染み込ませ一つの成長を遂げたからだ。

 

ルナとのジム戦に関してもそうだ。リーリエは戦いを繰り返すことでその経験を知らず知らずの内に自分の中に取り込んでいっているからこそ、明らかな格上であるルナにも勝つことができたのだ。

 

もっと身近なもので言うならばシンジとの戦いだ。彼女は初め全くシンジに手も足も出なかった。しかし彼との対戦を重ねていくたびに少しずつではあるものの追いつけるようになってきている。これに関しては彼女にとってシンジが憧れの存在であり、ポケモンバトルに関して特に意識している人物であるのも一つの要因だが、彼女の成長が関係しているのは言うまでもない。

 

「……強くなったわね、リーリエ。」

 

ルザミーネは娘の成長した姿を誰にも聞こえない声で嬉しそうに呟いた。

 

 

 

 

 

彼らがそんな話をしていると、残りが2体と追い詰められたコウタは5体目のポケモンが入ったモンスターボールを手にしフィールドに投げたのだった。

 

「頼むぜ、相棒!リザードン!」

『リザァ!』

 

『なんとコウタ選手が繰り出したのはエースであるリザードンだぁ!』

 

するとモンスターボールから出てきたのは彼のエースポケモンであるリザードンであった。最後ではなく5体目として出てきたことに会場からはどよめきの声が聴こえる。しかしそれと同時に彼のリザードンの強さを全員が目の当たりにしているためエースの登場に歓声が響き渡る。まさにこの戦いも最終局面を迎えたのだと実感させる瞬間であった。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「っ!?かわしてください!」

 

リザードンはシロン目掛けて一直線にかえんほうしゃを放つ。こおりタイプのシロンにほのおタイプのかえんほうしゃが当たってしまっては一溜りもない。シロンはジャンプすることで上空に逃げかえんほうしゃを回避した。

 

「ドラゴンクローだ!」

『ザァ!』

 

リザードンは竜の鱗を爪に纏わせドラゴンクローによりすかさず近接戦に移る。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

近接戦に持ち込まれては明らかにシロンが不利になる。そのためシロンはこおりのつぶてを無数に放ち近づかせないように弾幕を張る。

 

しかしリザードンは翼がある分空を自由に飛べるため、空中戦では圧倒的有利な立場にある。リザードンはシロンのこおりのつぶてを物ともせず次々と切り裂き、強引に自分の得意な距離に潜り込んだ。

 

リザードンの鋭く素早い動きから繰り出されるドラゴンクローにシロンは直撃してしまい、真下に吹き飛ばされてしまった。

 

「シロン!?」

『コォン!』

 

シロンは地面に叩きつけられながらもなんとか耐えしのぎ立ち上がる。だがそれでもリザードンの強力なドラゴンクローと叩きつけられた際の衝撃、更にはエレキブル戦でのダメージも蓄積しているため、いつ倒れてもおかしくない様子だ。

 

「シロン!れいとうビーム!」

「リザードン!かえんほうしゃ!」

 

シロンのれいとうビームとリザードンのかえんほうしゃが中央で激突する。しかし互いの力だけでなくタイプ相性でもその差は歴然。シロンのれいとうビーム次第にリザードンのかえんほうしゃに押し戻されていく。

 

「シロン!」

『コン!』

 

だがリーリエはれいとうビームが押し負けてしまう事を読んでいた。シロンはリーリエの合図に合わせリザードンのかえんほうしゃが自分に当たる直前に高くジャンプして回避する。そして即座に反撃の態勢に入った。

 

「今です!ムーンフォース!」

 

シロンは集中力を高め力を溜め込む。リザードンの一瞬の隙を突き攻撃を叩きこむ絶好のチャンスだ。

 

『コォン!』

 

シロンは溜め込んだ力を一気に解き放ちリザードン目掛けて放出する。その渾身のムーンフォースはは勢いよくリザードンに接近する。

 

「リザードン!はがねのつばさで切り裂け!」

『リザァ!』

 

しかしリザードンは鋼化させた翼を展開させ、はがねのつばさによりムーンフォースに向かって突撃することでいとも容易く切り裂いた。

 

その衝撃の威力に驚いたのも束の間、ムーンフォースを切り裂いたリザードンはそのままの勢いを維持し、シロンに接近しはがねのつばさで貫いた。

 

シロンは今までのダメージの蓄積もあり、今のはがねのつばさによる一閃により力尽き戦闘不能となってしまった。

 

「シロン!」

『コォ……ン……』

「ロコン戦闘不能!リザードンの勝ち!」

 

リーリエはシロンをモンスターボールへと戻す。

 

『リザードンの怒涛の攻撃に耐え切れず遂にロコンダウンだぁ!これでリーリエ選手の残りポケモンは最後の一体を残すのみです!』

 

そしてリーリエのポケモンは最後の一体となり後がなくなる。リーリエは覚悟を決め、最後のポケモンに思いを託し強く握りしめフィールドに投げた。

 

「お願いします……ハクリューさん!」

『クリュー!』

 

リーリエの残る最後の一体は当然ハクリューだ。ハクリューのしなやかな体が太陽の光で美しく煌めき、満を持してフィールドに舞い降りる。その姿には観客すらも魅了されていた。

 

「リザードン、戻れ!」

 

『おっと!ここでコウタ選手がリザードンを戻したぞ!コウタ選手の最後の一体はなんだぁ?』

 

コウタはエースのリザードンを戻し、今までの対戦でも見せていない最後の一体が入ったモンスターボールを手にした。

 

「行くぞ!リングマ!」

『グマァ!』

 

コウタが最後に選出したのはリングマだ。見るからにパワータイプのリングマは一撃が命取りとなってしまう。現在後がないリーリエにとってはここが正念場と言ったところだ。

 

「リングマ!きあいだま!」

『グマァ!』

「躱してください!」

『クリュ!』

 

最初からきあいだまで全力の攻撃を仕掛けるリングマだが、その攻撃をハクリューは飛び跳ねる形で上手く回避する。その勢いを利用しハクリューは反撃の態勢に入った。

 

「ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

『クッリュ!』

 

ハクリューは高度から勢いよく降下しドラゴンテールをリングマに叩きつける。リングマは即座に腕をクロスさせ防御に入りドラゴンテールの直撃を免れる。

 

「アームハンマーだ!」

『グマ!』

 

リングマは自分の両手を合わせ握りこぶしをつくり、アームハンマーでハクリューの頭上から叩きつける。大振りであるためハクリューの柔軟な動きを捉えることができずにするりと躱される。

 

しかし結果は空振りに終わったものの、リングマのアームハンマーは地面に突き刺さり大きな衝撃を発生させた。間違いなく一発でも当たったらただでは済まないであろうその攻撃は、ハクリューに大きなプレッシャーを与えるには充分であった。

 

「アクアテールです!」

「きりさくだ!」

 

ハクリューはアクアテール、リングマはきりさくで攻撃を交える。互いの技の威力はほぼ互角で、衝撃の余波を発生させながら弾き合う。

 

「きあいだま!」

『グマ!』

 

リングマはすぐさまきあいだまで追撃を仕掛ける。突然のきあいだまに冷やりとするが、ハクリューはその攻撃を間一髪のところで避けた。

 

「ドラゴンテールです!」

『クリュー!』

 

攻撃を回避しチャンスだと感じたリーリエはドラゴンテールで反撃する。

 

「受け止めろ!」

『グマ!』

 

リングマはその攻撃を自身の体を盾に受け止める。ハクリューの一撃を体で受け止めるとは思わずリーリエとハクリューも驚きのあまり隙を晒してしまう。

 

「リングマ!きりさくだ!」

『グマァ!』

『クリュ!?』

 

リングマは隙を晒したハクリューにきりさくを確実に決めていく。ハクリューはきりさくの直撃を受けるも痛みに耐えつつ踏ん張り堪える。

 

「リングマ!はかいこうせん!」

『グゥマァ!』

 

リングマは最大パワーではかいこうせんを解き放った。この直撃を受けてしまえばハクリューと言えどただでは済まないだろう。

 

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『ハクリュ!』

 

ハクリューはアクアテールをリングマのはかいこうせんにぶつける。このままではパワー負けしていずれはかいこうせんに飲み込まれやられてしまうだろう。

 

「今です!ハクリューさん!」

『クリュウ!』

 

ハクリューはリーリエの合図と同時に一瞬だけ力を込める。するとはかいこうせんをまるで踏み台にするかのように飛び上がった。

 

「なっ!?」

『グマッ!?』

 

まさか自分の最大の技が利用され驚きのあまり言葉を失うコウタ。そして強力なはかいこうせんを放ったリングマはその行動の反動により動きが止まってしまい逆に隙を晒す結果となった。

 

「ハクリューさん!れいとうビームです!」

『クリュー!』

 

ハクリューは上空から無防備状態のリングマにれいとうビームを放つ。リングマも反動により動けないため防御態勢に移ることができずれいとうビームを浴びてしまう。

 

大きな隙に強力な一撃を受けてしまったリングマは耐える事ができずにその場で仰向けに倒れ戦闘不能となったのだった。

 

「リングマ!?」

『グマァ……』

「リングマ戦闘不能!ハクリューの勝ち!」

 

『リーリエ選手の反撃によりコウタ選手も残り一体となったぁ!これはいよいよどちらが勝利を手にするか分からなくなったぞぉ!』

 

リーリエに続きコウタも残り一体と追い詰められた。コウタはリングマをモンスターボールに戻し、最後のポケモンを繰り出した。

 

「……行くぜ!リザードン!」

『ザァド!』

 

大きな咆哮と共に出てきたのはコウタのエースであるリザードン。ここまで驚くほどの戦績を上げたリザードンとハクリューのぶつかり合いに観客もヒートアップする。

 

これで互いに最後の一体のみ。泣いても笑っても最後の戦いとなる。長く感じた激戦のラストに2人は覚悟を決め向き合った。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

 

バトル開始のゴングが鳴るように、リザードンとハクリューの攻撃が衝突する。互いの攻撃は反発し合い、再び元の位置まで弾かれる。

 

「かえんほうしゃ!」

「アクアテールで弾いて下さい!」

 

かえんほうしゃを放つリザードンに対し、ハクリューはアクアテールを振りかざし防御する。タイプ相性もありリザードンの強力なかえんほうしゃはハクリューのアクアテールに阻まれ、輝きながら散っていった。

 

「れいとうビームです!」

『クリュー!』

「飛べ!リザードン!」

『ザァ!』

 

ハクリューのれいとうビームをリザードンは空高く舞い上がり回避した。

 

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『クリュ!』

 

ハクリューはリザードンを追いかけアクアテールで追撃の態勢に入る。ハクリューは翼はなくともシロンに比べれば空での自由が多少なりとも利く。それゆえに空中戦でも一方的に不利と言うわけではない。

 

「ドラゴンクロー!」

『リザァ!』

 

リザードンはドラゴンクローで反撃する。ハクリューは反撃してきたリザードンにアクアテールを振り下ろす。

 

互いの攻撃は空中で何度も行きかい交じり合う。ドラゴンクローがハクリューに当たったかと思えば、ハクリューのアクアテールがリザードンを捉えどちらにも確実にダメージが蓄積されつつあった。

 

だが次第に拮抗が破られ、ハクリューが大きく弾き返されてしまった。

 

「ハクリューさん!」

『ハクリュ!』

 

『な、なんという攻防だ!どちらも衰えを知らない技の応酬が繰り広げられております!これは目が離せません!』

 

この場にいるトレーナーだけでなく全ての者がこの試合に釘付けとなり言葉を失うほどに集中している。リーリエとコウタも張り裂けそうなほどの緊張の中、この壮絶なバトルを継続していく。

 

「畳みかけろ!ドラゴンクロー!」

「ドラゴンテールです!」

 

チャンスと見たリザードンはドラゴンクローで急降下し追撃する。対するリーリエは回避が間に合わないと判断しドラゴンテールで反撃の指示を出した。

 

ドラゴンクローを正面から受け止めるハクリュー。その互いの攻撃は凄まじく、発生した衝撃で彼らの足元の地形を崩すほどであった。

 

「今だ!ちきゅうなげ!」

『ザァ!』

 

リザードンは即座にハクリューの体を掴みちきゅうなげの態勢に移行する。流れるような動きに皆が魅了されるが、リーリエ相手にそう簡単に上手く決まることはなかった。

 

「ハクリューさん!れいとうビームです!」

『っ!?クリュ!』

 

ハクリューはリザードンにがっしりと掴まれながらも、れいとうビームで抵抗する。リザードンは完全に攻撃の態勢であったため無防備の状態であり、れいとうビームが顔に直撃し怯み力が緩んでしまう。その隙にハクリューはリザードンの手から脱することに成功し、リザードンはそのままちきゅうなげが失敗に終わってしまい墜落してしまう。

 

「アクアテールです!」

『クッリュ!』

 

墜落した隙を狙いハクリューはアクアテールを確実に決めていく。アクアテールを受けたリザードンは苦い顔をしながらも踏んばり堪えた。

 

「かえんほうしゃ!」

「れいとうビームです!」

 

炎のかえんほうしゃと氷のれいとうビームがぶつかり相反作用によって蒸発する。

 

「ドラゴンテールです!」

「ドラゴンクローで受け止めろ!」

 

今度は形勢が逆転し、蒸発した衝撃からハクリューが飛び出しドラゴンテールを叩きつける。その攻撃をリザードンはドラゴンクローで受け止めた。

 

その際に弾かれた反動でハクリューは空へと飛びあがり、反動に勢いを利用して次なる攻撃へと移る。

 

「ハクリューさん!アクアテールです!」

「かえんほうしゃだ!」

 

ハクリューは今度は水を纏いアクアテールで攻撃するも、その攻撃はかえんほうしゃによって弾かれ再び相殺し合う。

 

「れいとうビームです!」

『クリュ!』

 

れいとうビームを一直線に放つハクリュー。攻撃の後隙によりこれは決まったと誰もが思ったが、リザードンは咄嗟の機転を利かせその攻撃を回避した。

 

「そ、そんな!?」

『クリュ!?』

 

『なんとリザードン!咄嗟にはがねのつばさを利用しれいとうビームを防いだぞぉ!』

 

リザードンははがねのつばさを盾にし、れいとうビームの直撃を回避したのだ。これには思わずリーリエも驚きのあまり声をあげるが、このチャンスをコウタが逃すはずがなかった。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

『ザァド!』

『ハクリュ!?』

 

リザードンのかえんほうしゃがハクリューを正面から捉え直撃する。その一撃による再び形勢は逆転しハクリューは空中から脱力したかのように落ちてくる。

 

「これで終わりだ!ちきゅうなげ!」

「!?ハクリューさん!」

『ハクッ!?』

 

リーリエの声に反応するハクリューだが、すでに消耗してしまっているハクリューでは遅くリザードンに捕まってしまう。リザードンはハクリューを捕らえ、地球を回るかのように空中を回転し地面にハクリューを投げつけた。

 

発生した衝撃によりハクリューの姿が見えなくなる。勝負はどうなったのかと会場に緊張が走る中、次第にその結果が見えてきた。

 

『く……りゅ……』

「!?ハクリューさん!」

 

そこには目を回して倒れているハクリューの姿があった。この瞬間、この試合の勝者が決定したのであった。

 

「ハクリュー!戦闘不能!リザードンの勝ち!よって準決勝第一試合!勝者、コウタ選手!」

 

長きにわたる激戦に終止符が打たれ、コウタに軍配が上がった。リーリエはすぐにハクリューが心配になり急いで駆け寄った。

 

「ハクリューさん!?大丈夫ですか!?」

『クリュ……』

 

目を覚ましたハクリューは申し訳なさそうな表情を浮かべリーリエに謝る。しかしリーリエは首を横に振りハクリューに励ましの言葉を伝えた。

 

「いえ、あなたはよくがんばりました。寧ろ私はあなたに感謝しています。お疲れさまでした。」

『クリュ……ハクリュ!』

 

リーリエの笑みに元気づけられ、ハクリューにもまた笑顔が戻る。結末はどうあれ、2人には間違いなくいい結果に繋がっただろう。

 

「よくやったなリザードン。」

『リザァ!』

 

コウタは最後まで戦ってくれたリザードンの頬を優しく撫でる。先ほどまで威圧感を放っていたリザードンも、今では可愛らしく微笑み嬉しそうに空へ向かって炎を吐いていた。

 

コウタはそんなリザードンをモンスターボールへと戻し、リーリエとハクリューの元へと歩み寄った。

 

「リーリエ。」

「コウタさん……。」

 

気まずさからか暫くの沈黙が続く。そしてその静寂を破ったのはコウタであり、すっと手を差し伸べた。

 

「いいバトルだったよ。全力のバトル、ありがとな。」

 

リーリエはその言葉を聞き、ライバルとして自分も相手の期待に応えられるようなバトルが出来たのだと実感できた。それと同時に、コウタの手をギュッと握りしめ、自分の感じた思いもコウタに伝えた。

 

「私の方こそ、対戦ありがとうございました!ですが、次に戦うときは負けませんから!」

『ハクリュ!』

「俺たちだってそうさ!今度やる時も勝たせてもらうぜ!」

 

コウタはリーリエの手を強く握り返す。その2人の姿はまさにライバルそのものであった。

 

熱いバトルを終え、互いの健闘を称え合う両者に拍手の雨が降り注いだ。それだけこの場にいる者に感動を与え、同時に心から熱くさせたバトルであったのだ。2人は今回の戦いの事を忘れることは決してないだろう。

 

今回は準決勝敗退という結果に終わってしまったリーリエだが。今回の経験は決して無駄になることはないだろう。このカントーリーグは彼女をより高みへ成長させたことは言うまでもない。

 

しかし、カントーリーグはまだ終わっていない。次なる戦い、もう一つの準決勝が幕を開こうとしていた!




本来最初の会話シーンはありませんでしたが、話が少し短かったため急遽追加しました。
特にフラグとか伏線って訳ではないので“なるほど”程度に深く考えず理解していただければよいかと。二次創作によくある後付け設定です。

と言うわけで準決勝にてリーリエ敗退です。でも自分で書いといてなんですがリーグ初出場でこれだけの成績を収めたのは相当だよね。

最後に作中でのリーリエのポケモンのリーグ戦績を書いておきます。

○・・・勝利
△・・・引き分け
×・・・敗北

シロン
カメックス・・・×
エレキブル・・・○
リザードン・・・×

フシギソウ
キングドラ・・・○
ライチュウ・・・×
エアームド・・・○
ヨノワール・・・×

マリル
ニドクイン・・・△
キュウコン・・・○
ライチュウ・・・×
ヨノワール・・・△

チラチーノ
グランブル・・・△
ヘラクロス・・・×

ピッピ
マニューラ・・・○
アブソル・・・・○
ライチュウ・・・○
プクリン・・・・△
ヘラクロス・・・○
エレキブル・・・×

ハクリュー
トゲキッス・・・○
カメックス・・・○
リングマ・・・・○
リザードン・・・×

こうしてみるとピッピがヤバイ……。意外とチラチーノちゃんの活躍が少なかったのが心残りです。リーグ編後にでもなんとかして活躍させたいです。
シロンに関しては進化してからが本番……だと思います。


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もう一つの準決勝!コウミVSハジメ!

先週は忙しくて書く時間なかったですが、今週はなんとか間に合わせました。

と言うわけで早速コウミVSハジメの試合です。今回は2話で終わらせる予定です。

最近Amazonプライムで昔のポケモンを見直していますが、今はDPを見てたりします。久しぶりに見てたらポッチャマとかミミロルとかニャルマーとかピンプクとか、やっぱり可愛いなと思いつつ、タケシのグレッグルの可愛さに気付きました。あいつ可愛すぎじゃね?有能で可愛いとかもうね……。

にしても久しぶりに見るとボルテッカーって本当に作画陣泣かせの技よね。あんな作画連発されたらそりゃエレキボールに変更されますわ。


「負けてしまいました。」

 

準決勝にてコウタと対戦し後一歩のところまで追い詰めるものの、僅かに届かず敗れてしまったリーリエ。ルザミーネ、ブルー、シンジはそんなリーリエの元を尋ね控室へとやってきていた。

 

「すいません……折角応援してくださったのに……」

「謝る必要なんてないわ。いいバトルだったわよ、リーリエ。」

 

頭を下げて謝るリーリエにルザミーネはそう言葉を返す。ルザミーネのその励ましの言葉にリーリエも一安心し表情を緩める。

 

「リーリエ」

「ブルーさん……すいません、ブルーさんに託されたのに負けてしまって……。」

 

一言呼びかけて近づいてくるブルーにリーリエは再び謝る。そんなリーリエにブルーは呆れたように溜息を吐き言葉を続けた。

 

「……はぁ、別に怒ったりなんてしてないわよ。」

「え?」

 

ブルーの予想外の返答にリーリエは戸惑いを隠せずキョトンとした表情を浮かべる。

 

「あんないいバトル見せられて、咎める事なんてできるわけないでしょ。ま、まあ、あんたも少しは出来るようになったんじゃない?」

「ブルーさん……」

「勘違いしないでよ!あくまでちょっとだけ!ちょっとだけ認めただけなんですからね!今に追いついて見せるから覚悟なさい!」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

彼女なりの励ましの言葉を受け取り、リーリエは笑顔でお礼を言う。その後ブルーは“ふんっ”と頬を少し赤くしてそっぽを向いたのだった。

 

「リーリエ。」

「あっ、シンジさん。」

 

リーリエはブルーと立ち替わりリーリエの前に立った。リーリエはシンジに何を言われるのかと緊張しながら彼の言葉を待つ。すると彼から伝えられたのは至ってシンプルな質問であった。

 

「バトルは楽しめた?」

「!?はい!とても楽しかったです!」

「……そっか。」

 

リーリエはシンジの言葉に元気よくそう答えた。シンジもその解答に満足したのか、僅かに笑みを零した。

 

「だったら君はもう立派なポケモントレーナーだよ。」

「あ、ありがとうございます!」

 

リーリエはシンジに深く頭を下げて感謝の言葉を伝える。その言葉だけでシンジに認められたような、彼に少しでも近づくことができたような気がしたからだ。トレーナーとしての彼女にとって、これ以上嬉しい言葉はないだろう。

 

その時放送が流れ、会場全体に司会のアナウンスの声が響き渡った。

 

『それではこれより!カントーリーグ準決勝第二試合を開始したいと思います!』

 

その内容は休憩時間が終了し、準決勝を再開するというアナウンスであった。対戦カードはあのコウタの双子の妹であるコウミと、ロケット団の元用心棒ハジメだ。ポケモントレーナーとして、このような好カードを見逃せるわけがない。

 

「コウミさんとハジメさんの試合ですね……。」

 

リーリエはどちらとも対戦経験があるが、両者とも以前に比べ格段に強くなっている。どちらが勝つかなど予想できない。それゆえか2人の対戦が心の中でどんな試合になるのかとワクワクしている自分がいたのだった。

 

一行はこのバトルを一瞬たりとも見逃すわけにはいかないと、急いで会場に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました!それでは只今より、コウミ選手VSハジメ選手による準決勝第二試合を行いたいと思います!」

 

これに勝った方が決勝進出を果たし、コウタと対戦する資格を得る。コウタの実力は勿論だが、会場全員が今までのバトルを見届けてきたためコウミとハジメ、両者の実力も知っている。誰もがこの試合に興味津々である。

 

観客たちの盛大な歓声を浴び、コウミとハジメが同時に登場し姿を現した。

 

「コウミさんとハジメさんです!」

「第2試合だからか、2人とも少しは落ち着いているみたいね。」

 

第2試合目ということもあるのか、バトルをする両者の顔は緊張の色を一切見せず、それどころか第三者から見てもすぐに分かるほど笑顔を浮かべている。このバトルが余程楽しみだったのか、勝つ自信があるのかは不明だが、間違いなく激闘になることは誰の目にも明らかであった。どちらの目にも勝利のビジョンしか映っていないのだろう。

 

「シンジさんはどちらに分があると思いますか?」

「……コウミもハジメさんも、互いにポケモンのスピードを活かした戦術をとるからね。この段階ではどちらが優勢かは分からないよ。」

「どちらにもチャンスはある……ってことね。」

 

リーリエの質問にシンジはそう答え、ルザミーネが呟いた。コウミとハジメ、両者の得意戦術はどちらも素早い動きにより相手を追い詰めるものだ。互いのバトルが似ているためこれだけの情報で優劣を決めるのは難しいだろう。

 

コウミとハジメは共にフィールドで向かい合い互いの顔を見据える。目を逸らした方が気持ち的に負けてしまう事を知っているからこそ相手の表情を伺っているのだ。すでに勝負は始まっているという事だ。

 

ルールは当然準決勝一回戦目と同様に6対6のフルバトルだ。どちらかのポケモンが全て戦闘不能となればバトル終了。互いに死力を尽くさなければ勝つことは出来ないだろう。だからこそ両者は……

 

(絶対に勝つ!)

 

心の奥で勝利に対する熱い思いを燃やしていたのだった。

 

そしてコウミとハジメは同時にモンスターボールを手にし、全く同じタイミングでフィールドに投げたのだった。

 

「それでは両者!ポケモンを!」

 

「行くよ!ライボルト!」

『ライボッ!』

「行くぞ!ハッサム!」

『ハッサム!』

 

コウミの先発はでんきタイプのライボルト、対してハジメの先発ははがね・むしタイプのハッサムだ。タイプ相性だけで勝敗は決しないが、どちらも十二分に鍛えられていることは見ただけですぐに分かった。

 

「それでは……はじめ!」

 

審判の合図によりバトルが開始される。それと同時に動いたのはコウミの方であった。

 

「先手必勝だよ!ライボルト!ワイルドボルト!」

『ライボ!』

 

ライボルトは初手から大技のワイルドボルトを使用し接近する。電気を纏ったその技は強力である分自身にも反動がある諸刃の剣ともいえる危険な技だ。そのような技をはじめから使ってくるとは相当の自身なのだろうか。

 

「こうそくいどうだ!」

『ハッサッ!』

 

ハッサムはこうそくいどうにより素早い動きで撹乱する。ライボルトもその動きに戸惑いワイルドボルトを中断し動きを止めてしまった。

 

「ハッサム!メタルクロー!」

『ラボッ!?』

 

ハッサムは動きを止めたライボルトにメタルクローを確実に決める。素早い動きから繰り出されたメタルクローはかなりのダメージで、ライボルトは大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「ライボルト!大丈夫?」

『ライボッ!』

 

コウミの声にライボルトは“まだまだ行ける”と余裕の笑みを浮かべる。攻撃力が高いとは言えいまひとつのメタルクローであれば問題ないという事だろうか。

 

『開幕からハッサムのメタルクローがクリーンヒット!オープニングヒットを決めたのはハジメ選手だぁ!』

 

「ライボルト!10まんボルト!」

「ハッサム!もう一度こうそくいどうだ!」

 

ライボルトは10まんボルトにより遠距離攻撃を仕掛ける。しかしハッサムは再びこうそくいどうにより10まんボルトを躱しつつ距離を詰めていく。ライボルトの10まんボルトは間違いなく一流クラスであるがハッサムを捉える事ができない。

 

ライボルトの10まんボルトの攻撃を上手く躱しながら接近するハッサム。ハッサムの動きに翻弄されつつ、遂にハッサムの攻撃が届くほど距離を縮められた。

 

「メタルクロー!」

 

ライボルトの目の前まで接近し、メタルクローで再び攻勢に出るハジメ。しかし、コウミはその動きを読んでいたのか即座に動きを切り替えたのだった。

 

「ライボルト!ほのおのキバ!」

『ライボ!』

 

接近してくるメタルクローを、ライボルトは躱さずにほのおのキバで対抗した。ライボルトのキバが炎の力で燃え上がり、ハッサムのメタルクローを正面から抑えつける。

 

『ハッサッ!?』

 

ハッサムはむし・はがねタイプであるためほのお技は効果が抜群だ。ゆえにハッサムは苦い顔をし、ダメージを隠し切れず苦しんでいるのが見て取れる。

 

先ほどまでの有利な状況から一転、ライボルトの一撃により形成が逆転したのだった。

 

ライボルトのほのおのキバが炸裂し、ハッサムはその衝撃により大きく怯み後退した。ライボルトにとってこれは間違いなく反撃のチャンスであったためコウミは逃すことなく反撃の態勢に移った。

 

「今よ!ワイルドボルト!」

『ライボッ!』

『ハサッ!?』

「ハッサム!」

 

ライボルトは怯んだハッサムにすかさずワイルドボルトを決める。ワイルドボルトにより大きく吹き飛ぶハッサム。ワイルドボルトの反動がライボルトを襲うが、それ以上にハッサムのダメージは大きいのは明らかであった。

 

『ライボルトのワイルドボルトが直撃ィ!これは効いたか!?』

 

ハッサムは膝をつき隙を晒す。それを見たコウミはライボルトに追撃の指示を出す。

 

「これで決めるよ!ほのおのキバ!」

 

ライボルトは再びキバに炎を纏い、素早い動きで接近して近接攻撃を仕掛ける。先ほどと同様にほのおのキバが決まればハッサムは一溜りもないだろう。しかし、ハジメはこの瞬間を待っていたのだ。

 

「ハッサム!つじぎり!」

『ハサ!』

 

ハッサムは目を開き、瞬時に立ち上がって腕を構える。そして次の瞬間、接近してくるライボルトと目にも止まらぬ速さですれ違った。

 

何が起こったのか理解できなかったが、次の瞬間にライボルトはその場で力尽きたように倒れる。

 

「っ!?ライボルト!」

『ライボ……』

「ライボルト戦闘不能!ハッサムの勝ち!」

 

なんとライボルトが優勢かに思えた状況であったにも関わらず、一瞬の隙を突きハッサムが逆転をしライボルトを沈めたのだった。バトル前の予想通り、まさにスピード勝負に間違いのないバトルである。

 

「戻って、ライボルト。お疲れ様。」

 

『なんとライボルトが押していたかに思われた初戦はハッサムの逆転勝利という形で終了しました!さあ、コウミ選手の次のポケモンは?』

 

「行くわよ!ムクホーク!」

『ムクホー!』

 

次にコウミが繰り出したのはひこうタイプのムクホークだ。

 

「よくやったハッサム。戻って休んでくれ。」

 

『おっとハジメ選手!ここでハッサムを戻したぞぉ!コウミ選手のムクホークに対して、一体何を繰り出すのか?』

 

「行くぞ!ファイアロー!」

『ファロー!』

 

ハジメの2体目は同じくひこうタイプのファイアローだ。お互いにひこうタイプ同士であるため、熱い空中戦が見られると皆期待に胸を膨らませる。

 

「ムクホーク!でんこうせっか!」

「ファイアロー!ニトロチャージ!」

 

ムクホークは目にも止まらぬ速さで空を駆け、ファイアローはニトロチャージにより正面から対抗する。互いの技はフィールド中央でぶつかり合い、お互いに後退する。威力で言えば五分と五分のようだ。

 

しかしファイアローはニトロチャージの追加効果で自身の素早さが上昇する。これにより素早さだけで言えばファイアローに分があるだろうか。

 

「ムクホーク!空高く飛んで!」

「追いかけろ!ファイアロー!」

 

ムクホークは空高く舞い上がり、その後ろをファイアローがピッタリと追いかける。ニトロチャージで素早さが上がったとはいえスピードにそれほど差が開いたようには見られない。

 

「ファイアロー!かえんほうしゃだ!」

『ファーイ!』

「躱して!」

 

ファイアローはかえんほうしゃを放つが、ムクホークはその攻撃は回避する。その後もファイアローは背後からかえんほうしゃで追撃するが、ことごとくムクホークに回避される。

 

『ムクホークとファイアロー!どちらも我々の遥か上空まで飛んでおります!どちらも素晴らしいスピードだ!』

 

「つばめがえし!」

『ムクホ!』

 

ムクホークは充分上空まで昇り詰めると、ファイアローのかえんほうしゃを回避しUターンしてつばめがえしにより反撃を決める。空を切るムクホークのつばめがえしは、ファイアローに直撃し押し返し遥か上空から下まで叩きおとされた。

 

「ファイアロー!立て直せ!」

『ファイ!』

 

ファイアローはなんとか空中で持ち直し地面に直撃する前に態勢を立て直す。これにより自身のダメージを最小限に抑える事ができた。

 

「ムクホーク!ブレイブバード!」

 

ムクホークはひこうタイプでも最強クラスの技、ブレイブバードで低空飛行をしファイアローを背後から追いかける。形勢が逆転し、一気にコウミが優勢に立ったかに思えた。しかしそう簡単にペースを握らせるほど、ハジメは甘くはなかった。

 

「ファイアロー!ムクホークの後ろをとれ!」

『アロー!』

 

ファイアローは空中を大きくターンし、再びムクホークの背後へと回る。ブレイブバードの勢いを止めることができないムクホークは、簡単にファイアローに背後をとられてしまった。

 

「ファイアロー!かえんほうしゃ!」

 

ファイアローはかえんほうしゃにより反撃する。ムクホークは回避が間に合わず、ファイアローのかえんほうしゃに捉えられる。その攻撃によるダメージでムクホークは上空まで吹き飛ばされてしまった。

 

「今だ!フレアドライブ!」

「負けないで!ブレイブバード!」

 

チャンスと見たファイアローはフレアドライブでとどめに入る。対するムクホークは即座に態勢を立て直しブレイブバードで反撃する。互いの大技がフィールド中央で激突し、会場を大きな衝撃が包み込んだ。

 

その大きな衝撃は両者の姿を隠してしまい全く見えない状態となる。2人は緊張から冷や汗が流れ喉をゴクリと鳴らしその時を待つ。

 

そして衝撃が晴れ姿が明らかになった時、そこには見えたのは倒れている両者の姿であった。

 

『ファイ……』

『ムクホ……』

「!?ファイアロー!」

「!?ムクホーク!」

「ファイアロー!ムクホーク!共に戦闘不能!」

 

『なんと!?両者ダブルノックダウンだ!』

 

ファイアロー、ムクホーク、どちらも戦闘不能となっていたのだ。ハジメとコウミは倒れたファイアローとムクホークをモンスターボールへと戻し労いの言葉をかける。

 

『これでコウミ選手は2体!ハジメ選手は1体のポケモンを失いました!さあ、両者の次のポケモンは?』

 

そして互いに同時にモンスターボールを手に取り、同じタイミングでフィールドに投げた。

 

「行くぞ!ハッサム!」

『ハッサ!』

「お願い!ドリュウズ!」

『ドリュ!』

 

ハジメは再びハッサムを、コウミはじめん・はがねタイプのドリュウズを繰り出した。序盤から熱いスピード勝負が繰り広げられているため、会場もこれでもかと言わんばかりに盛り上がっている。

 

「ハッサム!メタルクロー!」

「ドリュウズ!こっちもメタルクロー!」

『ハッサム!』

『ドリュウ!』

 

お互いにメタルクローで技を交える。しかし威力はほぼ互角であり、その衝撃により互いに再び同じ位置まで後退させられる。

 

「こうそくいどう!」

 

ハッサムはこうそくいどうによる素早い動きにより翻弄しつつ接近する。しかしそう同じ手が何度も通用するほどコウミも甘くはない。

 

「あなをほる!」

『ドリュウ!』

 

ドリュウズはあなをほるで地中に回避する。ハッサムは姿が見えなくなったドリュウズに困惑し、動きを止めた!

 

「今よ!ドリルライナー!」

『ドリュ!』

 

ドリュウズはハッサムの背後から飛び出し、ドリル形態に変形しドリルライナーで不意打ちを仕掛ける。

 

「ハッサム!メタルクロー!」

『ハッサッ!』

 

ハッサムは両手を硬化させたメタルクローで正面からドリルライナーを防ぐために対抗する。しかし次第に力の差があらわれてしまい、ハッサムは押し負け飛ばされてしまった。

 

「ハッサム!?」

『ハッサ……』

「ハッサム戦闘不能!ドリュウズの勝ち!」

 

『蓄積したダメージに堪えきれずここでハッサムダウンだぁ!』

 

先ほどの戦いでのダメージが溜まっていたこともあり、ドリュウズに力負けしてしまいハッサムは戦闘不能となった。これで両者の手持ちの数は同じであるため振出しに戻ったことになる。

 

ハジメはハッサムをモンスターボールへと戻す。そしてハジメはドリュウズに対抗すべく、3体目のポケモンが入ったモンスターボールを手にし、フィールドに繰り出したのだった。

 

「いくぞ!メタグロス!」

『メッタァ!』

 

ハジメが3体目に選出したのははがね・エスパータイプのメタグロスだ。ほぼ無傷に近い状態のドリュウズにどう立ち回るのか、観客たちも目が離せない。

 

「ドリュウズ!メタルクロー!」

『ドリュ!』

「メタグロス!コメットパンチ!」

『メタ!』

 

ドリュウズは早速メタルクローによる近接戦闘を仕掛ける。それに対しメタグロスは彗星のような勢いから繰り出されるコメットパンチで正面から対抗する。僅かにメタグロスの方が威力は上のようで、ドリュウズはメタルクローを弾き返され大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「あなをほる!」

 

続いてあなをほるにより地中に潜ることで先ほどの攻撃による反動を最小限に抑えると同時に攻撃の態勢を整える。しかしハジメはそのことをよんでおり、あなをほるに対し冷静に対処した。

 

「アームハンマー!」

『メッタ!』

 

メタグロスを大きく腕を振り上げ地面に叩きつける。その際に発生した衝撃波凄まじく、地面に姿を隠れていたドリュウズもその衝撃により思わず外に飛び出してしまった。

 

「しまった!?」

「メタグロス!ラスターカノン!」

 

続いて空中に飛び出したドリュウズをラスターカノンによって狙い撃つ。その攻撃の威力は当然凄まじく、ドリュウズもラスターカノンにより迎撃され地面に思い切り叩きつけられた。

 

「コメットパンチ!」

「っ!?ドリルライナー!」

 

メタグロスはコメットパンチにより追撃を仕掛ける。ドリュウズはドリルライナーで正面から迎え撃つ。フィールド中央でお互いにぶつかり合うが、ダメージの差も明確にあらわれてしまいドリュウズは次第に押し負けてしまい弾き返される。

 

「ドリュウズ!?」

『ドリュウ……』

「ドリュウズ戦闘不能!メタグロスの勝ち!」

 

『ドリュウズダウンだぁ!メタグロスの猛攻に成すすべ無し!』

 

メタグロスの怒涛の攻撃に成すすべなく倒されてしまったドリュウズ。まさに力の差が影響を受けてしまったバトルとなった。

 

しかしメタグロスは最後のドリュウズとのぶつかり合いにより少なからずダメージはある様子だ。ドリュウズのドリルライナーの威力も相当であるため、互いの技による衝撃によるダメージはただでは済まないものだろう。

 

コウミはドリュウズを戻し、次に繰り出すポケモンに思いを託しそのポケモンをフィールドに繰り出した。

 

「行くわよ!ミミロップ!」

『ミミロ!』

 

次にコウミが繰り出したのはミミロップだ。ミミロップはノーマルタイプであるためメタグロスに対する有効打は少ない。コウミはそんなミミロップでどうメタグロスに対抗するのだろうか。

 

「メタグロス!コメットパンチ!」

『メッタ!』

「ミミロップ!とびひざげり!」

『ミッロ!』

 

メタグロスは開幕コメットパンチによる強気に攻め込む。しかしミミロップはその攻撃をジャンプして躱し、その状態からとびひざげりに移行し上空からメタグロスに向かって降下した。

 

「もう一度コメットパンチ!」

『メタ!』

 

メタグロスは勢いよく向かってくるミミロップに再びコメットパンチを放って対抗する。

 

両者の大技が空中でぶつかるが、ミミロップのとびひざげりは空から下に向かって放っている。重力も味方し、メタグロスはミミロップにパワー負けをして弾き返されてしまう。

 

『メッタァ!?』

 

メタグロスは地面に叩きつけられ大きくダメージを負ってしまう。ミミロップは地面に華麗に着地し髪をかき上げ優雅さを見せる。

 

『ミミロップのとびひざげりが炸裂ぅ!これは凄まじい威力だ!』

 

ダメージの少なかったメタグロスだが、今の一撃によりダメージの色は隠せない。間違いなくこの一撃はメタグロスにとってかなりの痛手となっただろう。

 

「ラスターカノン!」

「れいとうビーム!」

 

続けてラスターカノンとれいとうビームが中央で炸裂する。その威力はほぼ互角で、互いの技による衝撃がフィールド全体を包み込み互いの視界を奪う。

 

「ミミロップ!シャドーボール!」

『ミミロ!』

 

ミミロップはシャドーボールを放ち煙ごと吹き飛ばす。しかしその場にメタグロスはおらず、シャドーボールが地面に着弾しただけで終わってしまった。

 

コウミが即座に上を見上げると、そこには既に技の態勢に入っていたメタグロスの姿があった。

 

「メタグロス!コメットパンチ!」

『メタ!』

 

メタグロスはコメットパンチで空中からミミロップ目掛けて狙い撃つ。空中からの攻撃であればとびひざげりによる回避も難しくなる。その一瞬の隙を突いた判断による攻撃だ。

 

だがその行動はコウミも充分読んでおり、ニヤリと笑みを浮かべミミロップに指示を出した。

 

「ミミロップ!かげぶんしん!」

『ミロ!』

『メタッ!?』

「なっ!?かげぶんしん!?」

 

ミミロップはかげぶんしんにより自分にそっくりの分身を無数に作り出す。その動きに困惑したメタグロスには一瞬の迷いが生じ、判断が遅れ地面に衝突してしまう。

 

メタグロスは自らの攻撃で地面に激突してしまったためダメージを負ってしまう。その隙を逃さずに追撃を仕掛けた。

 

「今よ!とびひざげり!」

『ミミロ!』

 

ミミロップはかげぶんしんを1つに纏め元の状態に戻り、空中から渾身のとびひざげりを繰り出した。とびひざげりがメタグロスにクリーンヒットする。

 

ミミロップの強力なとびひざげりが見事炸裂し、メタグロスは遂に耐え切れずに力尽き戦闘不能となった。

 

「メタグロス!」

『メ……タァ……』

「メタグロス戦闘不能!ミミロップの勝ち!」

 

『ミミロップの巧みな戦術にメタグロス堪らずダウンだぁ!これで再び戦況は五分になり、勝敗の行方がますますわからなくなりました!』

 

メタグロスが負けてしまい再び戦況を戻されたハジメ。互いに一歩も譲らないバトルが繰り広げられており、観客たちの熱もどんどん熱くなっていく。

 

カントーリーグ準決勝第二試合。コウミ対ハジメのバトルは序盤からクライマックスと言わんばかりに互いの実力が拮抗している。

 

お互いの手持ちはこれで3対3。最後に決勝の舞台に上がるのはどちらなのだろうか?




ライバルたちの手持ちは世代毎で一覧を見て割と感覚で選んでます。時間ある時にキャラ設定資料を更新する予定です。

感想や意見などはいつでもお待ちしているのでどうぞお気軽に。ではではまた次回お会いしましょう!

来週こそ間に合わせなければ(使命感


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準決勝決着!バシャーモVSクロバット!

(小説の投稿)止まるんじゃねぇぞ…


『準決勝第二試合!両者、現在一歩も譲らないバトルが繰り広げられております!』

 

準決勝第二試合、コウミ対ハジメの戦いはどちらも残り3体と拮抗状態が続いている。両者ともにここまで勝ち上がってきたことに恥じない程の戦いぶりに、会場中が歓声の声をあげている。

 

『ミミロップに敗れてしまったハジメ選手のメタグロス!ハジメ選手の次なるポケモンは果たして?』

 

「行くぞ!キリキザン!」

『キッザ!』

 

ハジメの四番手はキリキザンだ。ここまではがねタイプのポケモンを多く使用してきたためまさにハジメらしいポケモンであるともいえるだろう。

 

互いに残り3体となり、ここから先にペースを握ることができるのはどちらだろうか。この先も目が離せない展開が期待される。

 

「キリキザン!アイアンヘッド!」

『キザッ!』

「躱してとびひざげり!」

『ミロ!』

 

キリキザンはアイアンヘッドで先に攻撃を仕掛けるも、ミミロップはその身軽な動きで軽くキリキザンの頭上を飛び越える。そしてその態勢を維持し、キリキザンに狙いを定めてとびひざげりを放った。

 

キリキザンははがね・あくタイプのポケモンだ。かくとうタイプの技でもあるとびひざげりを受けてしまえば一溜まりもないだろう。

 

「キリキザン!ふいうちだ!」

 

キリキザンはミミロップの攻撃を紙一重のところで回避し、文字通り不意打ちの一撃をミミロップに浴びせた。とびひざげりで勢いにのっているミミロップは当然対応することができず、実質カウンターという形でダメージを受けてしまった。

 

とびひざげりによる勢いは相当なもので、上空から手加減無く全力で全体重を乗せて攻撃する技だ。外せば地面に激突してしまい自身も相当なダメージを受けてしまう諸刃の剣で、リスクも大きい代わりに威力も申し分ない。

 

ふいうちは相手の攻撃に合わせて相手より先に攻撃を仕掛ける技だが、相手が攻撃技をしてこなかった場合は失敗してしまう特殊な技だ。タイミングさえ見極めれば強力な技となり相手を襲う。

 

ハジメはその大技を逆に利用し、攻撃の瞬間を狙ってカウンターと言う形で好機を狙ったのだ。これで形勢はハジメが圧倒的有利な状況になったと言える。

 

「ミミロップ!?」

『み……み……』

 

ミミロップはなんとか立ち上がろうとするが、それでも今の一撃が相当堪えたのか足が言うことを聞かず立ち上がることができない。それはハジメにとって最大の好機となった。

 

「キリキザン!バークアウト!」

『キッザ!』

 

キリキザンのバークアウトが膝をついて隙だらけのミミロップに接近する。ミミロップも必至に立ち上がり躱そうとするが膝が震え、躱すことができずにバークアウトの直撃を受け吹き飛ばされる。

 

「ミミロップ!」

『み……ろ……』

「ミミロップ戦闘不能!キリキザンの勝ち!」

『キッザァ!』

 

『ミミロップ!自身の大技が仇となってしまいここでダウン!優勢に立ったのはハジメ選手だ!』

 

ハジメの作戦が上手く決まり、拮抗状態から先に優位に立ったのはハジメとキリキザンだ。コウミは勇敢に戦ってくれたミミロップをモンスターボールへと戻し優しく言葉をかける。

 

「ありがとうミミロップ。後は任せて。」

 

ミミロップを戻したコウミは次のポケモンを決めそのモンスターボールをフィールドに投げる。果たしてコウミの五番手は?

 

「行くよ!ムウマージ!」

『マージ』

 

コウミが繰り出したのはムウマージだ。ゴーストタイプのムウマージではあくタイプを持つキリキザンには相性が悪い。不利なこの状況でコウミはどのような戦術で攻めてくるのだろうか。

 

「バークアウト!」

『キザァ!』

 

キリキザンはバークアウトで先制攻撃を仕掛ける。何をしてくるか分からない相手に遠距離技でかつ相性の良い技を放つのは堅実で最も無難な正攻法である。

 

「ムウマージ!シャドーボール!」

『マージ!』

 

ムウマージはシャドーボールで正面から反撃する。ムウマージのシャドーボールとキリキザンのバークアウトが激突するが、どちらの攻撃もほぼ互角でありフィールド中央で爆発四散した。

 

「続けてマジカルシャイン!」

『マァ!』

 

ムウマージの体が光り輝き、空から虹色の光がキリキザンを襲い掛かる。ムウマージのマジカルシャインはキリキザンに確実なダメージを与え、キリキザンは苦い顔をしながらも耐えしのぎ、その光の中から飛び出した。

 

「アイアンヘッド!」

『キザァ!』

 

キリキザンは光の中から空中へと脱し、アイアンヘッドで強襲を仕掛ける。コウミもその行動は想定内だったようで、冷静に対処を開始する。

 

「ムウマージ!まもる!」

『ムーマ!』

 

ムウマージは冷静にまもるを使用しアイアンヘッドを上手く防ぐ。まもるに防がれたキリキザンはその反動で飛ばされ態勢を崩してしまう。

 

「シャドーボール!」

 

ムウマージはすかさずシャドーボールで反撃する。シャドーボールは態勢を崩したキリキザンを正確に捉えダメージを与える。

 

ゴーストタイプの技はあくタイプのキリキザンには効果は薄いが、それでも受け身の態勢をとれていない相手であれば充分にダメージが通る。キリキザンはなんとか持ちこたえ着地し態勢を整える。

 

「キリキザン!まだ行けるか?」

『キザ!』

 

キリキザンはハジメの言葉に腕を振るいまだ行けるのだという意思を伝える。

 

「キリキザン!バークアウト!」

『キザァ!』

「ムウマージ!シャドーボール!」

『マージ!』

 

キリキザンはバークアウトで再び攻撃する。ムウマージはキリキザンの攻撃に対してシャドーボールで対抗し、先ほどと同様にフィールド中央で爆発する。

 

「キリキザン!つじぎりだ!」

『キザ!』

『ムマ!?』

 

キリキザンは間を開けることなくつじぎりで爆風を切り裂き接近する。ムウマージもその奇襲に目を見開き驚き対応が遅れ、つじぎりで斬り抜かれる。

 

「続けてアイアンヘッド!」

「シャドーボール!」

 

キリキザンはアイアンヘッドで追撃を仕掛ける。ムウマージはシャドーボールで対抗するが、キリキザンの動きが予想以上に早くシャドーボールが放たれる前に目の前まで接近される。

 

キリキザンのアイアンヘッドがムウマージに接触する瞬間にシャドーボールが完成し、両者の目の前で互いの攻撃が激突し両者が発生した爆風に巻き込まれ姿が見えなくなった。

 

「キリキザン!」

「ムウマージ!」

 

キリキザンとムウマージの姿が見えなくなりポケモンたちの名前を叫ぶハジメとコウミ。

 

会場が静まり返る中、次第に両者の姿がハッキリとしてきた。そこにいたのは目を回して倒れているキリキザンとムウマージの姿であった。

 

『キザ……』

『まぁ……じ……』

「キリキザン!ムウマージ!共に戦闘不能!」

 

『ムウマージの攻撃に巻き込まれ、両者ダブルノックダウンだぁ!』

 

ハジメとコウミは倒れたポケモンをモンスターボールへと戻す。

 

これでムウマージが倒れたことでコウミはラスト1体を残すのみ。対してハジメは無傷のポケモンが2体。先に追い詰められたのはコウミであった。

 

『さあコウミ選手のポケモンは残り一体!もちろんそのポケモンは!』

 

コウミのラストポケモン。それはこの場の誰もが知っているポケモンで、皆が期待している実力を持ったポケモンだ。

 

「……これでラスト。行くよ!バシャーモ!」

『バッシャ!』

 

コウミが繰り出したのはバシャーモだ。彼女のエースポケモンの登場に会場の全員が大きな歓声を上げる。彼女のバシャーモの実力は誰もがよく知っている。この展開こそ皆が望んでいたものである。

 

「ならば俺はこいつだ!ワルビアル!」

『ワッビィ!』

 

ハジメが繰り出したのはじめん・あくタイプのワルビアルだ。ほのお・かくとうタイプのバシャーモに対して相性がいいが、逆にバシャーモのかくとう技が弱点でもある。どちらが有利と言えるわけでもない対面だ。

 

「ワルビアル!あくのはどう!」

「バシャーモ!かえんほうしゃ!」

 

ワルビアルのあくのはどうとバシャーモのかえんほうしゃが衝突する。しかしコウミのエースでもあるバシャーモのほうが攻撃力が高く、ワルビアルのあくのはどうを貫通した。

 

ワルビアルはバシャーモの攻撃を防御し防ぐも、完全にダメージを逃がすことは出来ず顔を歪めた。

 

「ストーエッジだ!」

『ワッビ!』

 

ワルビアルはストーンエッジを繰り出す。地から突き出されるストーンエッジはバシャーモに接近し襲い掛かる。

 

「ジャンプして!」

『シャモ!』

 

バシャーモはジャンプすることでストーンエッジから逃れる。バシャーモはそのままストーンエッジへと飛び移りワルビアルの上をとる。

 

「バシャーモ!ブレイズキック!」

「ワルビアル!ドラゴンクロー!」

 

バシャーモはブレイズキックで攻撃し、ワルビアルはドラゴンクローで反撃する。どちらの威力も凄まじく、互いの体はその衝撃により後退する。

 

威力は互角かに思えたが、ワルビアルが今の攻撃で怯み膝をついた。バシャーモの攻撃力の方が僅かに上だったようだ。

 

「今だよ!かえんほうしゃ!」

『バッシャァ!』

 

バシャーモはかえんほうしゃにより追撃を仕掛ける。ワルビアルも対抗しようとするも、先ほどのように体が思うように動かず防御に入ることができなかった。

 

「っ!?ワルビアル!」

 

バシャーモの攻撃に包み込まれ、ワルビアルの巨体は後方まで飛ばされてしまった。

 

『わ……びぃ……』

「ワルビアル戦闘不能!バシャーモの勝ち!」

 

バシャーモの嵐のような攻撃に耐え切れずワルビアルは倒れた。ハジメはワルビアルを戻し、バシャーモの強さを改めて実感させられた。それと同時に、だからこそ負けられないと言う思いがより一層強くなった。

 

『これで両者共に残り一体!ハジメ選手のラストはあのポケモンだ!』

 

そしてハジメのポケモンもコウミ同様ラスト一体。そのポケモンは……。

 

「……頼むぞ!クロバット!」

『クロッ!』

 

ハジメの最後のポケモンは彼の相棒のクロバット。そしてコウミのポケモンはエースのバシャーモ。最後に互いの切り札がぶつかることに、会場の興奮は鳴りやまない。

 

そして遂にこのバトルも最終局面。今、準決勝最後の戦いが始まるのであった。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

 

クロバットは遠距離から翼を交差し、クロスポイズンで牽制攻撃を仕掛ける。バシャーモはその攻撃をブレイズキックにより打ち消すことに成功する。

 

「ヘドロばくだんだ!」

「かわして!」

 

クロバットの放つ無数のヘドロばくだんを、バシャーモは次々と躱しつつ接近する。

 

「バシャーモ!かえんほうしゃ!」

『シャア!』

 

バシャーモはヘドロばくだんを凌ぎきると、かえんほうしゃで反撃を仕掛ける。しかしそう簡単に反撃を許すほど、ハジメとクロバットは甘くない。

 

「ブレイブバード!」

『クロ!』

 

クロバットはブレイブバードで急降下しかえんほうしゃを回避する。そしてその勢いに乗り、バシャーモに強襲する。

 

かえんほうしゃと躱されたことによる衝撃により隙を晒してしまったバシャーモは、ブレイブバードを受ける事ができず直撃を浴びてしまう。

 

クロバットの洗礼されたブレイブバードはスピードだけでなく威力もすさまじく、バシャーモは顔を歪ませて大きく飛ばされてしまった。

 

「バシャーモ!?」

『シャモ!』

 

バシャーモはコウミの声に反応し態勢を立て直し受け身をとりダメージを抑える。それでも効果抜群なひこうタイプ、それも最強クラスのブレイブバードの直撃を受けてしまったためダメージは相当なものだ。バシャーモにも僅かながら疲労の色が伺える。

 

「もう一度ヘドロばくだん!」

「バシャーモ走って!」

 

再びヘドロばくだんで怒涛の攻撃を仕掛けるクロバット。先ほどとは違い地上を駆けることで回避し接近するバシャーモ。空中ではクロバットに分があるが、地上ではバシャーモの方が分があるだろう。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

『クロ!』

 

ヘドロばくだんでバシャーモを誘い、充分に近づいたバシャーモにクロスポイズンで攻撃するクロバット。しかしバシャーモはクロスポイズンが直撃する直前に飛び上がりその攻撃を回避する。

 

「なに!?」

『カッ!?』

「そのままスカイアッパー!」

『シャモシャ!』

 

バシャーモはそのスピードを活かし、スカイアッパーで反撃する。その反撃はクロバットを正確に捉え打ち上げる。ひこう・どくタイプであるクロバットに効果は薄いとはいえ、バシャーモの強力な一撃にクロバットも流石にダメージを隠し切れない。

 

「続けてかえんほうしゃ!」

『シャア!』

「かわせ!」

『!?クロ!』

 

かえんほうしゃで追撃を仕掛けるが、クロバットは即座に態勢を立て直しかえんほうしゃを回避する。

 

「クロスポイズン!」

「ブレイズキック!」

 

かえんほうしゃを回避したクロバットはクロスポイズンで攻撃する。バシャーモはその攻撃をブレイズキックで防ぐことで安全に着地することに成功した。

 

「ブレイブバード!」

「もう一度ブレイズキック!」

 

互いが備える大技のブレイブバードとブレイズキックが炸裂する。だがどちらの攻撃も威力があるためただでは済まず、衝撃がフィールド全体を包み込むほどであった。

 

両者の体はボロボロになりバシャーモは膝をつく。そしてクロバットは地上に落ち、再び飛び立とうと踏ん張っている。どちらも後一撃で倒れてしまいそうな様子であった。

 

『バシャーモとクロバット!両者ともに風前の灯火!しかしながら両者の実力はほぼ互角!このバトルも終わりが近づいてきたことを感じさせます!』

 

間違いなく次の攻撃がラストになる。そう覚悟を決めた両者はお互い同時に指示を出すのであった。

 

「クロバット!ブレイブバード!」

『クロッ!』

「バシャーモ!引き付けて!」

『シャモ!』

 

クロバットは自身にも反動ダメージが発生してしまうが、最も威力の高いブレイブバードで勝負に出る。対してバシャーモはコウミの指示に従い身構えた状態で待機する。

 

クロバットとバシャーモの距離がみるみるうちに縮まり、気が付けばクロバットがバシャーモの目と鼻の先にまで接近していた。バシャーモが動いたのはその瞬間であった。

 

「今よ!屈んでスカイアッパー!」

『バシャ!』

「なっ!?」

『カッ!?』

 

バシャーモはブレイブバードで接近してきたクロバットを間一髪のタイミングで屈むことで、僅かな地面すれすれの僅かなスキマで回避する。その行動はあまりにも危険で、一歩間違えればブレイブバードの直撃を無抵抗に浴びてしまい即座に瀕死状態へと陥ってしまいかねない。

 

この行為が成功したのはコウミとバシャーモの絶大な信頼関係と、バシャーモの実力がそれほどのものであったゆえである。いずれにしても簡単に出来ることではないと言うのは言葉にしなくても明らかであろう。

 

バシャーモは回避しながら腕に最大限の力を込める。そして一気にその力を解放し振り上げクロバットを捉えた。スカイアッパーが直撃したクロバットはブレイブバードの勢いも相まってしまい、反動によって通常よりも大きなダメージを受けてしまう。

 

クロバットは吹き飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられる。今までのダメージの合わせクロバットは耐える事ができず、その場で目を回して戦闘不能となってしまったのだった。

 

「クロバット!?」

『クロォ……』

「クロバット戦闘不能!バシャーモの勝ち!よって勝者、コウミ選手!」

 

『遂に決着!準決勝第二試合!激戦を制し決勝の舞台に勝ち上がったのは、コウミ選手だ!』

 

その瞬間、準決勝の勝者がコウミと決定し会場全体が称賛の拍手を両者に送る。

 

「……ふっ、クロバット、よくやったな。ご苦労さん。」

 

ハジメは力尽きて動かないクロバットをモンスターボールへと戻した。そんな彼の姿は負けてしまったが、決して敗者の者ではなかった。彼にとっても、これは一つの大きな変化をもたらす戦いだったのかもしれない。

 

「バシャーモ、よくやったね。お疲れ様。」

『シャモシャ!』

 

コウミはバシャーモに近づき労いの言葉をかける。バシャーモもコウミの言葉に嬉しくなり笑顔で答えた。その様子からも二人の仲の良さ、信頼関係が伝わる光景であった。

 

「コウミ」

「あっ、ハジメさん」

 

ハジメはコウミにゆっくりと近付く。緊張の中、ハジメはコウミに伝えたい事だけを伝える。

 

「……いいバトルだった。決勝も頑張れよ。」

「はい!ありがとうございました!」

『バッシャ!』

 

『激戦を繰り広げた両者がお互いの健闘を称え握手を交わしています!今一度、良きバトルを見せてくれた両者に盛大な拍手を!』

 

バトルを終え握手を交わす両者に、再び拍手の雨が降り注ぐ。その歓声は、ハジメにとって決して悪い気のするものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメさん!」

「……リーリエか」

「……もう行っちゃうんですか?」

 

ハジメは荷物を背に持ち、ポケモンリーグの会場を去ろうとしていた。そんな彼の元にリーリエは息を切らしながら追いかけてきたのだ。

 

「負けたからな。もうこれ以上俺がここにいる理由はない。」

「ハジメさん……」

「だけどな……俺は後悔していない。」

 

ハジメはそう言い、自分の心境を語り始める。

 

「初めは優勝する気満々でカントーリーグに参加した。リーリエ、お前へのリベンジも果たす予定だった。」

 

ハジメは目を瞑りリーリエと出会い初めて戦った時のことを思い出していた。そしてかつて敗北を喫してしまったトレーナーのことも。

 

「だけどこの世にはもっと強いトレーナーがいるんだって思い知らされた。また一から修行のし直しだよ。これからはジョウト、ホウエン、シンオウと全国を見て回るつもりだ。」

 

ハジメはまた一から鍛えなおすために全国を回ると宣言する。それはどれだけ過酷で長い旅になるかはリーリエの想像にも難くない。だが彼女はハジメを止めることなく、笑顔で見送ってあげようと思う事ができた。かつて、自分がシンジに見送られたときのように。

 

「また……また会った時はバトルしましょう!私も今度はもっともっと腕を上げ、絶対に勝ちますから!」

「……ああ。だがその時は俺も負けないさ。」

 

ハジメはそう言って一瞬だけ振り返り、リーリエに手を振って別れを告げた。次に会った時は、絶対今以上に更に腕を上げて自分の目の前に現れるのだろうとリーリエは確信した。しかし、その気持ちは決して後ろ向きなものではなく、寧ろその時が楽しみだと感じられるトレーナー特有のものであった。

 

こうして準決勝の戦いはすべて終え、決勝のカードが決定した。次はいよいよ、コウタ対コウミ、双子による頂上決戦だ!2人の決勝戦は、一体どのように繰り広げられるのだろうか!




全体的にハジメのパーティは鋼タイプが大半になりましたが特に理由はありません。

ブイズによく選出される上に辛いのはリザードン、バシャーモ、ヒードラン、ランドロス、カプ・テテフ、カプ・レヒレ、ボーマンダ辺りです。特にリザYとか対抗手段が分かりません。ブイズにめざパ以外の岩技が無いので仕方なし。特殊アタッカーばっかなのにパワージェムすら貰えない。

あいつサンダースはニトチャで追い抜くしシャワーズの水技は等倍で受けるしソラビで焼き払ってくるしでもう辛い。ガモスとかも狩れるしリザXでも対面有利なアクセルロック搭載の岩ブイズはよ……。


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カントーリーグファイナル!コウタVSコウミ!

前回休んだ理由
本来であればここに何かしらの話をぶっこんで繋ぎにするつもりでしたが、結果何も話が思い浮かばず休んでしまった次第でございます。

結局突然の決勝戦に突入というわけでどうかご容赦下さい。

リーリエの戦いではないためなるべくスピーディにお送りさせていただきます。


準決勝第一試合、第二試合が終了し、カントーリーグ決勝に出場するトレーナーが決定した。

 

準決勝第一試合、リーリエVSコウタではコウタが勝利。準決勝第二試合、コウミVSハジメではコウミが勝利と言う結果に終わり、決勝戦はコウタVSコウミという双子による熱い戦いが期待される。

 

そして決勝戦当日、遂にこの2人がこのポケモンリーグと言う大きな舞台で戦う時がやってきたのだ。

 

それぞれが控室で気持ちを落ち着かせ集中している。相手が自分のよく知る相手であるためその緊張感は通常よりも大きいものとなっている。互いに相手の手は知り尽くしているからこそだ。

 

どう攻めるか、ポケモンの順番はどうするか、相手はどう出てくるか、それらは別々に対策を練って考える2人だが、どちらも一つのことだけは同じ考えに至っていた。

 

(勝つのは俺だ!)

(勝つのは私よ!)

 

そう決意した2人は強い思いを胸に秘め立ち上がり、決戦の舞台へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大変長らくお待たせいたしました!それでは只今より、ポケモンリーグカントー大会ファイナル!決勝戦を開始したいと思います!』

 

皆が待ち望んでいた試合が遂に始まるのだと分かった瞬間、会場全体が揺れていると錯覚させるほどの歓声が全体に鳴り響いた。その歓声に応えるかのように、サイドから2人の影が次第に近づいてきたのだった。

 

『それでは決勝の舞台に上がった選手二人を紹介したいと思います!』

 

2人の影がハッキリと見え姿が確認できると、司会者が決勝の舞台へと昇り詰めた2人の詳細を解説した。

 

『先ずはこの人!相棒のリザードンと共に自慢のパワーでライバルたちをなぎ倒し、準決勝にて行われた激しいバトルを勝ち抜いたトレーナー!コウタ選手です!』

 

その紹介と共にコウタが腕を上にあげると、観客からコウタに対して盛大な拍手が送られる。

 

『続いてはこの人!相棒のバシャーモと共にスピードを活かしたバトルを披露!準決勝ではスピードバトルに恥じぬ戦いを見せつけ見事制したトレーナー!コウミ選手です!』

 

今度はコウミが紹介に合わせて両手を振ると、コウミに対しても盛大な拍手が送られた。

 

『それでは改めましてポケモンリーグカントー大会決勝戦を開始いたします!どのような熱い展開が繰り広げられるのか、目が離せません!』

 

「それではこれより、カントーリーグ決勝戦を開始します!使用ポケモンは6体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了です!」

 

2人は遂にここまで来たのだという感情の昂りを抑え、互いの顔を見据える。ここからは少しのミスすら許されない戦いであるため、2人の顔は真剣そのもの。一流のトレーナーのそれであった。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

 

「行くぞ!ヘラクロス!」

『ヘラクロ!』

「行くよ!ミミロップ!」

『ミミロ!』

 

コウタはヘラクロスを繰り出し、コウミはミミロップを繰り出した。もはやここまで勝ち上がった彼らにとって相性などと言うものは全く意味がないものだ。タイプ相性など関係の無いものと言っていいだろう。この戦いがどうなるか、観客だけでなくリーリエたちも目が離せないものとなるのは違いない。

 

「それでは……バトル始め!」

 

そして遂に、カントーリーグ最後を締めくくる戦いが幕を開けたのだった。

 

「ミミロップ!シャドーボール!」

『ミロ!』

 

開幕から先に先手を出したのはコウミとミミロップであった。コウタのヘラクロスが覚えている技は全て物理技だ。特殊技で牽制して先にペースを掴もうという狙いだろう。

 

「ヘラクロス!メガホーン!」

『ヘラクロ!』

 

コウタもそう出るのは分かっていたのか、ヘラクロスのメガホーンでシャドーボールを正面から受け止める。ヘラクロスの強力なメガホーンはいとも容易くシャドーボールを粉々に粉砕し、ミミロップに接近する。

 

「ミミロップ!かげぶんしん!」

『ミミロ!』

 

ミミロップはかげぶんしんで複数の実態に見える影を作り出しヘラクロスのメガホーンを回避する。かげぶんしんに戸惑ったヘラクロスは動きが止まってしまう。

 

「ミミロップ!もう一度シャドーボール!」

『ミロ!』

 

ミミロップはヘラクロスの周囲をかげぶんしんで包囲し、シャドーボールで集中攻撃をする。ヘラクロスはその攻撃を受け止めることができず直撃を受けてしまう。

 

『おおっと!ミミロップのシャドーボールが決まったぁ!最初の攻撃を決めたのはコウミ選手だ!』

 

初めにダメージを与えペースを握るのはバトルにおいて重要なことの一つだ。その攻撃で流れに乗ることができればバトルを優位に運ぶことができる。だが、コウタはそう簡単に流れを掴ませてくれるほど甘い相手ではない。

 

「ヘラクロス!目で相手を探ろうとするな!気配を感じ取るんだ!」

『クロッ!?ヘラクロ!』

 

ヘラクロスはコウタの言葉を聞き彼に頷くと、目を瞑り集中力を高める。一見無謀なことのように思えるが、追い詰められた時こそ感覚が一番のぶきになるトレーナーも存在する。コウタはそれを大きな武器にすることのできるトレーナーなのだ。

 

「ミミロップ!とびひざげり!」

『ミロォ!』

 

ミミロップはかげぶんしんを途切れさせることなくとびひざげりで容赦なくヘラクロスに襲い掛かる。どれが本物か分からない以上どこから襲い掛かってくるのか不明だ。

 

しかしミミロップの気配が近づいたその瞬間、ヘラクロスは目を見開きコウタもそれを感じ取った。そしてコウタはヘラクロスの技の指示を出した。

 

「今だ!ヘラクロス!カウンター!」

『クロ!』

『ミミロ!?』

 

ヘラクロスは屈んで背後から襲い掛かってきたミミロップのとびひざげりを回避する。そして躱されたことに衝撃を受けたミミロップに対し、ヘラクロスは下から腕を突き上げミミロップにカウンターを決める。

 

ミミロップはそのまま大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。とびひざげりの勢いも相まってその威力は計り知れない。カウンターは相手の物理攻撃を二倍にして跳ね返す技だ。

 

「ミミロップ!?」

『みろ……』

「ミミロップ戦闘不能!ヘラクロスの勝ち!」

 

『ヘラクロスの渾身のカウンターによりミミロップダウン!コウミ選手が優勢かに思えた矢先、ヘラクロスがたったの一撃で逆転したぞぉ!』

 

ミミロップはその一撃に耐える事ができずかげぶんしんの効果が切れた状態で力尽きていた。最初はミミロップが優勢かに思えたが、ヘラクロスが渾身の一撃により逆転した結果となった。

 

かげぶんしんとはいえ結局本物はどれか一体のみ。完全に気配を殺すことはほぼ不可能と言ってもいい。コウタはその僅かな技の隙を見つけ、大きな一撃を浴びせることを狙ったのだ。

 

コウミはミミロップをモンスターボールへと戻す。そして次に出すポケモンの入ったモンスターボールを手に取りフィールドに投げる。

 

「お願い!ムウマージ!」

『マージ!』

 

次にコウミが繰り出したのはムウマージだった。コウタは「ムウマージか……」と苦い顔をする。

 

ヘラクロスは物理技で仕掛けてくる相手にはめっぽう強いが、その分特殊技をメインに戦う相手には弱い。特にムウマージはゴーストタイプであるためヘラクロスの決め技であるカウンターはおろか、インファイトも通用しない。

 

しかしコウタはヘラクロスを戻さず続行する意思を示した。この不利な状況でどれだけ抵抗できるのか注目である。

 

「ムウマージ!シャドーボール!」

『マァジ!』

「ヘラクロス!メガホーンだ!」

『ヘラクロ!』

 

ヘラクロスはミミロップの時と同様にメガホーンでシャドーボールを貫く。そしてそのままムウマージに接近するが、コウミはコウタなら必ずそう来るだろうと読みその攻撃を冷静に対処した。

 

「ムウマージ!まもる!」

『マジ!』

 

ムウマージはまもるでヘラクロスのメガホーンを完全に防いだ。正面から衝突しにいったヘラクロスはまもるによる反射で少しばかりダメージを負いつつ跳ね返される。その隙を見てムウマージは反撃に出た。

 

「ムウマージ!マジカルシャイン!」

「っ!?かわせ!」

 

ヘラクロスは飛ばされながらも態勢を立て直し、空から降り注ぐ光を間一髪で回避する。しかしこの切羽詰まった状況でコウタがそうすることはコウミは完全に読んでいた。

 

「ムウマージ!マジカルフレイム!」

『マージ!』

『ヘラッ!?』

「ヘラクロス!?」

 

ヘラクロスの回避先にムウマージはマジカルフレイムを設置し正確に狙い撃つ。当然むしタイプのヘラクロスにはほのおタイプのマジカルフレイムは効果抜群で一溜りもない一撃だろう。

 

『ヘラクロ……』

「ヘラクロス戦闘不能!ムウマージの勝ち!」

 

マジカルフレイムの直撃を受けヘラクロスは成すすべもなく敗北してしまった。これだけ相性最悪の相手であればさすがのヘラクロスも太刀打ちできなかったようだ。

 

コウタはヘラクロスをモンスターボールに戻す。悔しかったのか歯を噛み締めるが、いつまでも悔やんではいられない。コウタは次に出すポケモンを決めフィールドに投げた。

 

「頼んだぞ!ヨノワール!」

『ノワ!』

 

次にコウタが繰り出したのはヨノワールだ。ムウマージと共に互いにゴーストタイプ。怪しげな雰囲気を出す両者がどんなバトルを繰り広げるのか見当がつかない。

 

「ヨノワール!シャドーパンチ!」

『ヨノワ!』

 

『おおっと!ヨノワールの姿が消えたぞ!一体どこから攻撃を仕掛けてくるのか?』

 

ヨノワールは一瞬にして姿を消す。影と一体となりシャドーパンチによる不意打ちを狙っているのだ。

 

シャドーパンチは極めて命中精度の高い技だ。ムウマージにとって避けるのは至難の業だろう。しかし対処法はあると、コウミはヨノワールが姿を現すのを待ち構える。

 

コウミが注意深く観察していると、ムウマージの背後から影が実体化して現れた。その姿は紛れもなくヨノワールであり、コウミはこの瞬間を待っていた。

 

「ムウマージ!後ろにシャドーボールよ!」

『マァジ!』

 

ムウマージは即座に背後に振り向きシャドーボールを放つ。シャドーボールはヨノワールの腕に直撃し、互いの体をその衝撃により突き放した。

 

ヨノワールのシャドーパンチは回避が困難な技であるため回避行動に出るのは愚策だろう。であれば正面から技をぶつけ強引にでも止める事ができれば相打ちにしてヨノワールにもダメージを通すことができる。コウミが考えたのはそういう作戦だ。

 

結果、コウミの作戦は見事的中しヨノワールにもダメージを与えることに成功する。勿論自身もダメージは少なからずあるが、それでもヨノワールにもしっかりとダメージが入っているため作戦としては最も得策だろう。

 

「くっ、そう来たか。だったらおにび!」

「マジカルフレイム!」

 

ヨノワールのおにびとムウマージのマジカルフレイム。互いのほのお技が激突し大きな衝撃を発生させる。互いの威力は互角でどちらの攻撃も強力であることを確認するには充分であった。

 

「ヨノワール!あくのはどう!」

「ムウマージ!まもる!」

 

ヨノワールがあくのはどうを放つとムウマージはまもるでその攻撃をシャットアウトする。あくタイプのあくのはどうが直撃してしまえばゴーストタイプのムウマージは間違いなく大ダメージを受けてしまう。そのためこのまもるは賢明な判断だろう。

 

しかしコウミがコウタの行動を先読みしていたように、コウタもコウミの行動は読めていた。コウミがまもるによる防御をしたのと同時に、コウタはヨノワールに攻撃の指示を出したのだ。

 

「続けてシャドーパンチ!」

『ノワ!』

 

ヨノワールは再び姿を消す。しかし先ほどとは違い態勢を立て直す暇もなくムウマージの正面に姿を現し攻撃を仕掛ける。

 

ムウマージはギリギリのところで回避するが、未だ態勢は不安定なままだ。そこにコウタはさらに畳みかけるよう指示をする。

 

「一気に攻めるぞ!連続でシャドーパンチ!」

 

ヨノワールはシャドーパンチを連続で放ちムウマージを追い詰める。ムウマージは必死に回避し続けるも次第に余裕がなくなり追い詰められ、シャドーパンチの直撃を受けダメージを負ってしまう。これにはコウミも顔を歪め先ほどまでの余裕がなくなる。

 

「あくのはどう!」

「マジカルフレイム!」

 

こんどはヨノワールのあくのはどうとムウマージのマジカルフレイムが衝突する。再び衝撃が発生し互いの視界を奪うが、今度はそれをチャンスだと踏んだコウタが動き出した。

 

「シャドーパンチ!」

『ノワ!』

 

ヨノワールはシャドーパンチで影を利用し接近してムウマージを仕留めにかかる。ムウマージとコウミもその攻撃には焦りを感じ咄嗟に技の指示を出した。

 

「っ!?シャドーボール!」

『マジ!』

 

ムウマージは咄嗟にシャドーボールを繰り出した。シャドーボールは完全とまでは行かないが、威力は充分なほどの大きさで放たれヨノワールとの距離がゼロの状態で発射される。

 

『ノワッ!?』

『マージ!?』

「ヨノワール!?」

「ムウマージ!?」

 

お互いの体はシャドーパンチとシャドーボールのぶつかり合いにより吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。そしてそこには互いに目を回し倒れていた両者の姿があったのだった。

 

「ヨノワール!ムウマージ!共に戦闘不能!」

 

『ダブルノックダウンだぁ!ゴーストタイプ同士の予想不可能な戦いは両者引き分けと言う結果に終わったぞぉ!』

 

ヨノワールが優位に立っていた状態ではあったが、ラストのコウミの機転によりなんとか引き分けに持ち込むことができた。これはコウタにとっては痛い結果となり、ある意味コウミにとっては不幸中の幸いともいえる結果となった。

 

しかしまだバトルは始まったばかりだ。今のところ五分と五分の戦いではあるが、それでも互いの手持ちは残り4体。まだまだ勝負の行く末は分からない。

 

ここまで五分と五分の試合だが、ここからどちらに流れが傾くかで試合の結果が決まると言ってもいい状況だ。決して油断のできない試合展開に会場中に緊張が走る。

 

「リングマ!頼んだ!」

『グマァ!』

「お願い!ライボルト!」

『ラッボ!』

 

コウタはリングマ、そしてコウミはライボルトを繰り出した。パワー対スピードを代表するかのような対面に会場も更に盛り上がりが加速していく。

 

「リングマ!きあいだま!」

『グマァ!』

「避けてワイルドボルト!」

『ライボッ!』

 

強大な咆哮と共にリングマは開幕から大技であるきあいだまを繰り出す。ライボルトはその攻撃を横に避けてワイルドボルトで接近戦に持ち込もうとする。

 

「受け止めろ!」

『グマ!』

『ラボッ!?』

 

リングマは両手で電気を纏った状態のライボルトの頭部を掴み動きを止める。そしてその状態を維持したまま左腕を振り上げて構える。

 

「きりさく!」

『グマッ!』

『ライボ!』

 

リングマは振り上げた左腕の爪を立て振り下ろす。しかしライボルトはその攻撃をバックステップすることで回避する。

 

「地面にアームハンマーだ!」

『グッマァ!』

 

リングマは両腕で地面を思いっきり殴りつける。するとその衝撃で発生した地面を引き裂くほどの衝撃波がライボルトに向かっていった。

 

「ジャンプしてスピードスター!」

 

ライボルトはジャンプをすることでその衝撃波を回避しスピードスターをリングマ目掛けて放つ。リングマはその攻撃が急所に当たらないように腕を交差させて防御する。

 

しかしダメージはあるのか僅かながら顔を歪める。防御してもライボルトの攻撃は確実にリングマの体力を削っていた。

 

「リングマ!はかいこうせんだ!」

『グマァ!』

 

リングマは再び咆哮を発したと同時にスピードスターを掻き消す。そしてきあいだまよりもさらに強力なはかいこうせんを放ちライボルトに襲い掛かる。

 

「身体を逸らして躱して!」

『ライボ!』

 

『ライボルト!あわや当たるかと思ったはかいこうせんを回避したぞ!リングマははかいこうせんによる反動で動く事ができない!』

 

ライボルトはその柔軟な体を活かし身体をねじるようにしてはかいこうせんをギリギリのところで回避する。そしてその瞬間、強力なはかいこうせんによる反動によって動けなくなったリングマには大きな隙が生まれる。

 

「今よ!ワイルドボルト!」

『ライボ!』

 

そのまま華麗に着地したライボルトはワイルドボルトで急速に接近する。そのスピードもさることながら技のキレも申し分ない。その攻撃がリングマにヒットし、リングマはライボルトに押され後ろに下がらされてしまう。

 

しかしその瞬間、コウタとリングマは口角を上げてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「リングマ!ライボルトを抑えこめ!」

『グマ!』

『ライボッ!?』

「なっ!?」

 

リングマは今度は両腕でライボルトの胴体を掴み逃げられないように抑え込んだ。これにはたまらずコウミとライボルトも表情が崩れる。

 

『なんとリングマ!ライボルトの動きを完全に封じたぞぉ!ワイルドボルトによるダメージが見受けられません!』

 

はかいこうせんで動く事ができなかったリングマだが、それこそが逆にコウタの狙い通りであった。

 

はかいこうせんは大技であるが故その後の反動で自身も動けなくなってしまう。それは誰もが知っている基本的な知識だ。

 

だからこそはかいこうせんの隙ではコウミがすかさず反撃をすると読んでいた。故にその後の攻撃をレジストして耐えることで、逆に攻撃後に隙が出来たライボルトを捕らえることに成功したのだ。単純な作戦ではあるが、これはポケモンとの信頼関係がなければできず、成功することのない危険な戦法である。

 

「そのまま放り投げろ!」

『グマ!』

 

リングマは捕まえたライボルトを上空に放り投げる。そして動きを抑えられてしまっていたライボルトは当然態勢を整えることなどできずに格好の的となってしまっている。

 

「もう一度はかいこうせんだ!」

『グマァ!』

 

身動きの取れないライボルトに最大パワーのはかいこうせんが襲い掛かる。ライボルトはその攻撃を避ける事ができずに直撃を受け撃ち落とされてしまう。

 

あまりにも強力な一撃にライボルトはその場で力尽き、戦闘不能状態へと陥ってしまった。

 

「ライボルト!?」

『らい……ボ……』

「ライボルト戦闘不能!リングマの勝ち!」

 

『リングマ!強力なはかいこうせんによりライボルトを一撃で仕留めました!恐ろしい破壊力です!』

 

そのリングマの攻撃は誰もが見てわかるほどの威力であった。コウミはライボルトに感謝しながらモンスターボールへと戻す。そしてコウミが次に繰り出すポケモンは……。

 

「ドリュウズ!お願い!」

『ドリュウ!』

 

次にコウミが繰り出したのはドリュウズであった。次に繰り出される展開にも目が離せないだろう。

 

「ドリュウズ!メタルクロー!」

「リングマ!きりさく!」

 

ドリュウズはメタルクロー、リングマはきりさくをフィールド中央で交える。互いの技の威力は非常に高く、その場から火花が散っているのが確認できるほどであった。

 

互いに技の反動により後退させられ距離が離れる。

 

「ドリュウズ!あなをほる!」

『ドリュ!』

 

ドリュウズはその反動を打ち消すためにあなをほるで地中に姿を消し回避する。しかしそれはコウタの想定の範囲内であった。

 

「アームハンマーでたたきだせ!」

『グマ!』

 

リングマはアームハンマーを再び地面に叩きつける。するとその衝撃により地面が割れ、ドリュウズが地中から強引に叩きだされ姿を現す。これでは準決勝で味わったことの二の舞である。

 

「リングマ!もう一度アームハンマー!」

 

リングマはジャンプして飛び出してきたドリュウズにアームハンマーを叩きつける。万事休すかに思えたが、それこそがコウミにとっての最大の狙いでもあったのだ。

 

「ドリュウズ!ドリルライナーで躱して!」

『ドリュ!』

 

ドリュウズは即座にドリル形態に移行しドリルライナーでリングマのアームハンマーを回避する。大振りであるアームハンマーであればドリル形態に移行してからでも充分に回避可能だ。それもその行動が既に予測済みであればなおさらである。

 

リングマのアームハンマーは空を切り、ドリュウズは既にリングマの背後に回っていた。その動きにもリングマだけでなくコウタも目を見開き焦っていた。そしてその後隙はコウミにとって最大のチャンスとなっていた。

 

「ドリュウズ!メタルクロー!」

『ドリュウ!』

 

ドリュウズはメタルクローでリングマを背後から切り裂いた。リングマは攻撃後の隙を狙われ無抵抗の状態でそのまま地面に叩きつけられる。これは相当なダメージが溜まっていることだろう。

 

リングマはなんとか立ち上がるが、先ほどの戦闘でのダメージも溜まっていたため再びその場で倒れ込んでしまう。リングマは目を回しており、ドリュウズのメタルクローにより戦闘不能となってしまったのだ。

 

「なっ!?リングマ!」

『ぐ……まぁ……』

「リングマ戦闘不能!ドリュウズの勝ち!」

『ドリュウ!』

 

ドリュウズの咆哮と共にドリュウズの勝利が宣言される。リングマの圧倒的なパワーの前にドリュウズは臆することなく勝利を手にしたのだ。

 

『リングマここでダウン!これで再び五分の状態へと戻りました!互いに流れを譲らない五分の試合が繰り広げられております!』

 

これで再び同じ状況となり3対3。お互いに一歩も譲ることのない決勝戦に相応しい戦いが繰り広げられている。

 

遂に始まったカントーリーグ決勝戦。コウタ対コウミの戦いは佳境を迎え、いよいよ大会も最後の展開へと突入しようとしていた。果たして優勝するのはコウタか?それともコウミか?勝負の行方は果たして?勝利の女神が微笑むのはどちらか?次回、ポケモンリーグカントー大会フィナーレだ!




これだけ早く進めば次回には決着がつくと思われます。優勝するのはどちらか予想しながらお待ちくださいませ。

もうすぐこの小説も2周年なのでこれ以上休むわけには……。頑張らなきゃ(使命感

ポケモン剣盾では海外からのリークによると鋼、地面のブイズが出るのではないかと言う噂。信憑性は無いので信用はしていませんが、タイプ的にはどちらも出てくれると嬉しいです。ブイズで毒や鋼タイプ相手にするのしんどいんっすわ……。


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カントーリーグ終幕!リザードンVSバシャーモ!

カントーリーグ最終バトル決着いたしました。最後まで楽しんで読んでいただけたら幸いです。


遂に迎えたポケモンリーグカントー大会決勝戦。コウタ対コウミの双子対決は開始早々、壮絶なバトルを繰り広げ互いに互角の試合を続けている。

 

コウタはヘラクロス、ヨノワール、リングマを、コウミはミミロップ、ムウマージ、ライボルトを失いどちらも一歩も譲ることのないバトルが展開されている。

 

コウタのリングマを破ったコウミのドリュウズ。次にコウタが繰り出すポケモンは……?

 

『さあ盛り上がってまいりましたカントーリーグ決勝戦も遂に後半戦に突入!コウタ選手が次に繰り出すポケモンは?』

 

「頼んだぞ!エレキブル!」

『エッキブ!』

 

次にコウタが繰り出したのはエレキブルだ。しかしでんきタイプのエレキブルではじめんタイプのドリュウズには相性が悪い。そんな相手にコウタはどう立ち向かうのか見ものである。

 

「エレキブル!じめんにかみなりだ!」

『エキブ!』

 

エレキブルは尻尾を地面に突き刺しそのままかみなりを放つ。エレキブルのかみなりは大きな轟音と共に地面を裂くほどの衝撃を発生させた。

 

そしてその発生させた衝撃がドリュウズに迫る。でんきタイプのかみなりが効果がなくともその技で発生させた衝撃であれば十分なダメージが入るだろう。

 

「ドリュウズ!ドリルライナー!」

『ドリュ!』

 

しかしドリュウズはドリル形態に移行しドリルライナーでその衝撃を回避しつつエレキブルに接近し距離を縮める。エレキブルもドリュウズが避けることを読んでいたのかすぐにドリュウズを迎え撃つ態勢を整え待機していた。

 

「かわらわりで迎え撃て!」

『エッブ!』

 

エレキブルは構えた腕を大きく振りかぶり接近してくるドリュウズに対して振り下ろす。本来苦手な筈のじめん技であるドリルライナーをエレキブルは腕一本で受け止めドリュウズの動きを止めたのだった。これにはコウミも苦い顔を浮かべるが、即座にドリュウズに次の指示を出した。

 

「ドリュウズ!あなをほる!」

『ドリュウ!』

 

ドリュウズはドリルライナーを止められ弾かれた反動を逆に利用し、あなをほるで再び地中に姿を消した。

 

「くっ!どこからくる?エレキブル!注意しろ!」

『エッキ!』

 

エレキブルはコウタの声に反応し頷いて返答する。ドリュウズがどこからくるのか警戒しつつ待機していると、次に瞬間に地面に僅かながら反応があった。

 

「!?エレキブル!後ろだ!」

『エッブ!?』

「今よ!ドリュウズ!メタルクロー!」

 

僅かに地面が揺れ反応を見せた背後にエレキブルは振り向く。ドリュウズはすぐさまエレキブルの背後から飛び出しメタルクローを仕掛けてくる。

 

メタルクローはエレキブルの顔にヒットする。効果はいまひとつであるが、それでもエレキブルには確実にダメージが入った。しかしエレキブルもただでやられることはなかった。

 

「今だエレキブル!」

『!?エッブ!』

『ドリュ!?』

「!?」

 

『なんとエレキブル!自分の尻尾を利用してドリュウズを捕らえたぞ!』

 

エレキブルはダメージを食らいつつもその攻撃を耐えしのぎドリュウズの腕を尻尾で捕まえ動きを封じた。ドリュウズも必至に振りほどこうとするがエレキブルの力は強く、まるでビクともしていない。

 

「かわらわり!」

『エッキブ!』

 

尻尾で抑えながらエレキブルはかわらわりをドリュウズの脳天目掛けて振り下ろす。防御すらとることのできないドリュウズはその攻撃を防ぐ手立てはなく、かわらわりで思いっきり地面に叩きつけられる。

 

エレキブルはドリュウズを地面に叩き伏せたあと自分の尻尾をゆっくりと離す。そして叩き伏せた際に発生した衝撃により舞い上がった砂が晴れると、そこには目を回し倒れていたドリュウズの姿があった。さすがに無防備なあの態勢でかくとうタイプのかわらわりをまともに喰らってしまっては一溜りもなかったようだ。

 

「ドリュウズ!」

『どりゅ……』

「ドリュウズ戦闘不能!エレキブルの勝ち!」

 

戦闘不能となったドリュウズを確認したエレキブルは大きく雄叫びをあげる。そしてコウミは悔しそうにしながらも「お疲れ様」と声をかけドリュウズをモンスターボールへと戻した。

 

『エレキブルのパワーの前にドリュウズダウン!コウミ選手の残りポケモンは2体!コウミ選手の5体目は?』

 

「行くよ!ムクホーク!」

『ムクホー!』

 

次にコウミが繰り出したのは立派なトサカが特徴のもうきんポケモン、ムクホークだ。ムクホークはひこうタイプであるため先ほどと逆転してエレキブルとの相性は最悪。だがそれはあくまでタイプとしての観点で言えることだ。

 

「エレキブル!フィールド全体にかみなりだ!」

『エッキ!』

 

エレキブルはフィールド全域に向かってかみなりを放つ。全体に拡散している分一発ごとの威力は分散されてしまうが、その分相手にかかるプレッシャーは大きくなる。特にでんきタイプが弱点のポケモンであればなおさらだ。

 

「懐に潜り込むよ!でんこうせっか!」

『ムクホ!』

 

ムクホークは目にも止まらぬ速さでかみなりの中を駆け抜ける。嵐のように降り注ぐかみなりに向かって正面から向かっていくには相当の勇気がいる。それも素早く駆け抜けるとなれば並大抵のことではない。それはムクホークの勇敢さとコウミのポケモンたちに対する信頼の表れにもなっていた。

 

かみなりを避けつつ接近するムクホークのでんこうせっかがエレキブルの腹部を直撃する。しかしこれは逆にチャンスだとコウタはエレキブルに指示を出した。

 

「エレキブル!ムクホークを捕まえるんだ!」

『エブ!』

 

エレキブルは先ほどと同様にムクホークを捕まえるため尻尾を伸ばした。しかし何度も同じ手に引っ掛かるほどコウミも甘いトレーナーではない。

 

「つばめがえしで振り払って!」

『ムクホー!』

 

ムクホークはつばめがえしによる急上昇でエレキブルの尻尾を強引に引きはがす。先ほどは不意を突かれる形で油断してしまっていたため捕まってしまったが、今度はエレキブルの行動を読むことができていたため容易に対応することができた。

 

「くっ!」

 

エレキブルの尻尾を避けられ今度はコウタが苦い顔をする。そしてムクホークはそのつばめがえしによる勢いを活かし、次の大技へとつなげた。

 

「ムクホーク!そのままブレイブバード!」

『ムクホー!』

 

ムクホークは急上昇から急下降し、ひこうタイプ最大の技であるブレイブバードに移行する。地面すれすれまで下降したムクホークは翼を大きく広げさらにスピードを上げエレキブルに迫る。

 

「エレキブル!かみなりパンチ!」

『エッキブル!』

 

エレキブルは正面からかみなりパンチで迎え撃つ態勢に入る。いくらブレイブバードが強力と言えど正面から弱点であるかみなりパンチと、自身による反動が重なれば一溜りもないだろう。

 

しかしその時、コウミは僅かにニヤリと口角を上げ微笑んだ。そして次の瞬間、ムクホークは勢いを弱めかみなりパンチをギリギリのタイミングで回避したのだった。

 

『エッブ!?』

「なっ!?」

 

『おおっとムクホーク!まさかのブレイブバードを囮にエレキブルの攻撃を躱したぞぉ!』

 

この行動には思わず会場全体から騒然の声が上がる。まさか最大のチャンスだと思われていたタイミングで大技をフェイントとして利用するなど考えていなかったからだ。しかしこれはコウミの狙い通りの展開であった。

 

「今よ!インファイト!」

『ムークホー!』

 

ムクホークは攻撃の後隙を狙い、エレキブルの懐へと潜り込む。そしてそのまま超至近距離で翼と足を巧みに利用したインファイトでエレキブルに連続攻撃を浴びせる。その怒涛のラッシュによりエレキブルは反撃する暇もなく嵐のような攻撃を浴びせられ、インファイトのフィニッシュが炸裂してしまい上空に吹き飛ばされ地面に墜落する。

 

エレキブルはムクホークの攻撃に耐え切れずにそのままダウンし目を回し戦闘不能状態となってしまったのだった。

 

「エレキブル!?」

『えっきぶ……』

「エレキブル戦闘不能!ムクホークの勝ち!」

 

エレキブルのパワーにも臆することなく相性の優劣をひっくり返しムクホークが勝利を掴んだ。相性の不利を巧みな戦術とムクホークの利点である大空を自由に動けることを上手く活用した戦いであった。

 

互いに相性など関係ないと言わんばかりの攻防に会場からも歓声が鳴りやまない。コウタもコウミも、心の中で流石だと称賛の声を贈りつつも互いに追い詰められていることを実感していた。しかし一方で、普段することのない本気でのバトルが今この場で繰り広げる事ができていることに2人は感情の昂りを抑えきれない。

 

再びコウタの手持ちの数がコウミと並ぶ。コウタの次なるポケモンは既に決まっており、エレキブルを戻したコウタは次のポケモンが入ったモンスターボールを手にした。

 

「行くぞ!エアームド!」

『エアー!』

 

『コウタ選手の5体目はエアームドだぁ!ムクホーク対エアームド!これは熱い空中戦に期待がかかります!』

 

コウタの次のポケモンはエアームドだ。同じひこうタイプ同士、熱い空中戦が繰り広げられるであろうと期待に胸を膨らませる観客たち。そしてその期待は、すぐに現実のものとなるのだった。

 

「ムクホーク!でんこうせっか!」

『ムクホー!』

「エアームド!スピードスター!」

『エアー!』

 

素早い動きのでんこうせっかで接近してくるムクホーク。エアームドはムクホークに対してスピードスターを的確に狙い撃つ。しかしムクホークの動きも鋭く、その素早さを維持したままスピードスターを次々と躱し接近していた。

 

でんこうせっかはエアームドに見事命中する。効果はいまひとつだがそれでもエアームドには確かなダメージが確認できた。いまひとつの上からでも明確なダメージが見えることから、ムクホークの攻撃力は相当なものだというのが伝わってくる。

 

「ムクホーク!つばめがえし!」

「怯むなエアームド!はがねのつばさ!」

 

続けてつばめがえしにより畳みかけてくるムクホークに対しエアームドははがねのつばさで反撃する。お互いの代名詞ともいえる技が正面からぶつかり合い、その衝撃により両者共に弾き返される。

 

どちらも相当な威力を誇っているため間違いなくダメージは蓄積されている。一瞬の油断が命取りとなる攻防に会場中が熱気に包まれる。

 

「エアームド!上昇だ!」

「ムクホーク!こっちも上昇よ!」

 

エアームドは大空に向かって急上昇し、ムクホークもエアームドに続いて急上昇する。その姿はまるでどちらのスピードが上かを競い合っているようにも見える程の迫力があった。

 

『両者の姿がぐんぐんと上昇しております!どちらも負けじと高度を上げている!』

 

エアームドとムクホークはどちらも会場より遥か上の上空まで上昇した。そして互いに同時に翼を大きく広げ、空を覆う雲を一斉に振り払ったのだった。その場にはもはや両者を邪魔するようなものは何一つとしてなかった。

 

「ラスターカノン!」

『エアー!』

「躱してつばめがえし!」

『ムクホ!』

 

直線上に放たれるラスターカノンをムクホークは回避しつばめがえしで反撃する。しかしそれはコウタの狙い通りの行動でもあったのだ。

 

「はがねのつばさで防御だ!」

 

エアームドは即座にはがねのつばさを盾にしてムクホークのつばめがえしを防いだ。強固なはがねのつばさはムクホークをあっさりと弾き返し、ムクホークはその反動で逆にダメージを受け態勢を崩してしまう。

 

「今だ!スピードスター!」

『エア!』

 

エアームドはスピードスターで態勢を崩したムクホークに対して精密射撃をする。その攻撃は正確にムクホークを捉え大きなダメージを与えることに成功する。

 

『おおっと!上空から何かが落ちてきたぞ?あれは……ムクホークだぁ!』

 

「追撃だ!エアームド!」

 

スピードスターによってダメージを負ったムクホークはそのまま地面に向かって墜落していく。そんなムクホークに対してエアームドは容赦なく追撃を仕掛けるために急降下して追いかける。

 

「ムクホーク!後ろよ!」

『!?ムクホー!』

 

ムクホークは急いで態勢を立て直し翼を広げる。コウタは完全に態勢を立て直す前に畳みかけるべきだと判断し攻撃の指示を出した。

 

「エアームド!スピードスター!」

『エアー!』

 

隙も少なく命中精度の高いスピードスターで追撃を仕掛けるエアームド。しかしムクホークは地面すれすれで急カーブし、超低空を飛行していた。

 

「連続でラスターカノン!」

 

このチャンスを逃すわけにはいかないとラスターカノンで怒涛の攻めを見せるエアームド。ムクホークはエアームドの攻撃を避けながら低空飛行を続け反撃のチャンスを待つ。

 

「はがねのつばさ!」

『エア!』

 

エアームドはスピードを上げムクホークの背後から接近しはがねのつばさで襲い掛かる。どんどんスピードが上がるエアームドの速度に対し、逆にコウミはこれはチャンスだと行動を切り替えた。

 

「ムクホーク!そのまま急上昇!」

『ムクホ!』

 

ムクホークは急上昇してエアームドの攻撃の手から逃れる。突然の動きにエアームドは追いつく事ができずムクホークを逃してしまう。スピードを上げてしまえば急激に動きを変化させることは難しくなってしまうからだ。コウミはその瞬間を狙っていたのだ。

 

「そのままつばめがえし!」

『ムクホー!』

 

ムクホークは風を切るほどの勢いをつけたつばめがえしをエアームドの背中目掛けて浴びせる。エアームドもその動きに対応できず地面に叩きつけられてしまう。

 

「エアームド!?」

『!?エアー!』

 

エアームドはなんとかその攻撃を耐えて再び空中へと舞い上がる。さすがの耐久力だとコウミは感心する一方、これで決めると小細工無しの大技に移行した。それと同時に、コウタも同じ考えに至り同じタイミングで指示を出したのだった。

 

『ブレイブバード!』

 

エアームドとムクホークは互いに抵空飛行で最大の大技、ブレイブバードを繰り出した。どちらのブレイブバードも完成度が高く、猛々しく翼を広げた両者がフィールド中央で交差する。

 

ブレイブバードによる威力は凄まじく、フィールド全体を衝撃の波で包み込むほどであった。緊張が走る中、両者の姿が確認できたが、そこには目を回しているエアームドとムクホークの姿があったのだった。

 

「エアームド!?」

「ムクホーク!?」

『えあー……』

『ムクホー……』

 

「エアームド!ムクホーク!共に戦闘不能!」

 

『激しい空中戦の末、両者ダブルノックダウンだぁ!これは意外な展開だぞぉ!』

 

エアームドとムクホーク、どちらも激戦を繰り広げた末にダブルノックダウンという結果に終わることとなった。まさに大波乱となったがこれで両者共にラスト一体を残すのみとなった。

 

エアームド、ムクホーク、互いに健闘したポケモンたちをモンスターボールへと戻す2人。遂に迎えたラスト一体のポケモンに、文字通り最後の戦いを託すこととなった。

 

『さあ長く続いたポケモンリーグカントー大会も遂に大詰め!コウタ選手!コウミ選手!両者共にラストの一体を残すのみとなりました!』

 

そしてコウタとコウミは最後のポケモンが入ったモンスターボールを手に取り、そのボールを全く同じタイミングでフィールドに投げ入れた。

 

「行くぞ!リザードン!」「行くよ!バシャーモ!」

『リザァ!』『バッシャ!』

 

リザードンとバシャーモが同時にモンスターボールから解き放たれ飛び出した。そしてお互い迷いなくフィールド中央まで飛びリザードンはドラゴンクロー、バシャーモはブレイズキックを繰り出す。

 

リザードンのドラゴンクローとバシャーモのブレイズキックが同時に炸裂し、フィールド中央でバチバチと火花が発生する。その衝撃は周囲にも影響を及ぼし、フィールドの石が宙に浮かぶほどのものであった。

 

『開幕から両者激突ぅ!これは熱い展開だぁ!』

 

リザードンとバシャーモは互いの技をぶつけ合うと同時に互いの熱い気持ちを確かめ合った。本気で最高のバトルができるだろうと確信した両者は、技の反動で弾きあい定位置へと戻った。

 

バトル開幕の激しい展開から一転、静かな時が流れる。緊張感からかまるで時間の流れが緩やかになっているのではないかと錯覚させるものであった。

 

誰かの喉が緊張感からゴクリと鳴った気がした。それがバトル開始の合図となり、リザードンとバシャーモが同時に動き出す。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「バシャーモ!かえんほうしゃ!」

 

リザードンとバシャーモのかえんほうしゃがフィールド中央でぶつかる。お互い威力は互角で、かえんほうしゃは相殺しあい弾け飛び消滅した。

 

「ブレイズキック!」

『バシャ!』

「リザードン!受け止めろ!」

『ザァ!』

 

バシャーモは走って勢いをつけ、自身の炎で燃え上がる足をリザードンめがけて振り払う。リザードンはその攻撃を正面から両腕でがっしりと受け止める。

 

「ドラゴンクローだ!」

「かえんほうしゃで振り払って!」

 

リザードンは受け止めたバシャーモに片方の腕を離してドラゴンクローで襲い掛かった。バシャーモは脱出するためにかえんほうしゃで反撃する。

 

しかしリザードンのドラゴンクローはバシャーモのかえんほうしゃを引き裂いた。その後勢いを殺すことなくバシャーモに命中する。寧ろバシャーモのかえんほうしゃを逆に利用し、その炎を爪に纏い威力がさらに向上していた。

 

大きなダメージを受けたバシャーモだが、膝をつくことなく倒れることを拒否してダメージを耐える。リザードンはバシャーモのダメージが回復する前に追撃を仕掛けるため翼を大きく開いて空中へと浮かび上がる。

 

「リザードン!はがねのつばさ!」

『ザァド!』

 

リザードンは低空飛行で翼を硬化させはがねのつばさにより接近する。その攻撃はバシャーモに決まったかに見えたが、バシャーモは後退させられながらも翼を抑え込みリザードンを捕まえる。

 

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『シャモシャ!』

 

バシャーモはリザードンを抑えたまま宙がえりをしてブレイズキックを放つ。ブレイズキックはリザードンの顔を捉えクリーンヒットする。リザードンもこのダメージには溜まらず顔を歪ませ怯んだ。

 

「バシャーモ!スカイアッパー!」

『バッシャ!』

「はがねのつばさで防御だ!」

『ザァ!』

 

バシャーモはブレイズキックの勢いを利用し屈んでからスカイアッパーを繰り出す。リザードンははがねのつばさを利用して盾にするが、はがねのつばさ越しにも分かるその威力に押され大きくノックバックする。

 

しかしそれでもリザードンは倒れることなく地上に着地し態勢を立て直す。

 

『こ、これは凄まじい攻防だ!どちらも倒れることを拒み強力な技の応酬が繰り広げられております!』

 

観客の全員が2人のバトルに見入り開いた口が塞がらないといった状態だ。どちらが倒れるか分からないほどの技をぶつけ合っているため緊迫感が会場中を包み込んでいる。もはやどちらかが倒れるまでこの戦いは終わらないだろう。

 

「リザードン!地面にドラゴンクロー!」

『リザァ!』

 

リザードンは自慢の鋭い爪を地面に突き刺す。地面を貫いたその攻撃は地形をも隆起させ、まるでストーンエッジのような攻撃となってバシャーモに迫る。

 

「バシャーモ!」

『バッシャ!』

 

バシャーモはコウミの合図とともに後頭部を翼のように広げ地面を蹴り上げる。その勢いでまるでひこうタイプと思わせるような軌道でリザードンの攻撃を躱していく。互いに軽々と熟していく離れ業に会場中が唖然としている。

 

バシャーモはリザードンの目の前まで飛ぶと、互いに両腕をガシッと掴み取っ組み合う。相手の息が届く程の至近距離で顔を突き合わせ力を込める。

 

『かえんほうしゃ!』

 

ほぼ零距離といってもいい位置で同時にかえんほうしゃを放つ。その攻撃がぶつかり爆発を引き起こし両者ともに後退する。

 

今までのダメージを含み今の攻撃の反動で更にダメージが蓄積したリザードンとバシャーモ。お互いに倒れることはないが、それでも肩で息をしておりいつ倒れてもおかしくない状態だ。これは次の攻撃でケリがつくだろうとコウタとコウミは覚悟を決める。

 

(だったらここは!)

(最高の技で決めるよ!)

 

トレーナーの気持ちに応えるようにリザードンとバシャーモも構えをとる。体の奥から湧き上がる闘志をさらに燃え上がらせ、決着をつけるために最後となる渾身の力を、最大パワーを込める

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

 

開幕と同じようにリザードンはドラゴンクロー、バシャーモはブレイズキックを繰り出す。リザードンは鋭い爪を大きく伸ばし、バシャーモは自身の足を炎によって燃え上がらせる。

 

リザードンとバシャーモは残る力の全てをこの技に詰め込む。両者の技が開幕とは比較にならない程の衝撃を巻き起こしフィールド中央でぶつかった。

 

『ザアァァァド!』

『バシャアァァ!』

 

リザードンとバシャーモの咆哮が会場全体に轟く。その後、大きな爆発が発生しフィールドを包み込んだ。

 

両者の姿が見えなくなり会場中が静まり返る。どちらが勝ったのか、どちらが立っているのか、結果を皆が緊張の中待つ。

 

『おおっと!リザードンとバシャーモの姿が見えてきたぞ!結果は……?』

 

次第に二体の姿が見えてくる。そこに映った光景は……。

 

『な、なんと!?どちらも立っています!』

 

驚くべきことにどちらも倒れるどころかその場で立って相手の姿を見据えている。これでもまだ決着がつかないのかと驚愕の声が聴こえる。

 

しかし次の瞬間、その光景に僅かながら変化が起きた。

 

リザードンの顔が僅かに歪み膝を崩す。この瞬間に倒れるのはリザードンかと誰もが思った。

 

しかしその時、バシャーモは笑みを浮かべ勝ちを確信する。だが力を使い果たしたのか、次の瞬間にリザードンより先に膝を折り地に伏せてしまう。

 

「!?バシャーモ!」

『ば……しゃ……』

 

バシャーモは目を回し力尽きていた。そしてこの瞬間……

 

「バシャーモ戦闘不能!リザードンの勝ち!よってポケモンリーグカントー大会優勝は、コウタ選手!」

 

この瞬間、激戦を勝ち抜いた勝者の名がコールされたのであった。




遂にカントーリーグ終結です。これでカントー編も終わりが見えてきましたね。まさかここまで続くとは思っていませんでしたが、まだまだこれから感はありますのでどうか温かい目で見守って下さい。

にしてもモンハンフロンティアがサービス終了か……。そろそろやろなとは予想していたけどいざその時がくると辛い。


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旅の終わり、そして旅の始まり

これでカントーリーグ編は完結です。後日談に近い話で久しぶりにバトルから離れた回です。バトル回の半分程度の短めな回ですが楽しんでいただけたら幸いです。


「バシャーモ戦闘不能!リザードンの勝ち!よってポケモンリーグカントー大会優勝は、コウタ選手!」

 

『ポケモンリーグカントー大会!激戦に次ぐ激戦!数々の死闘を勝ち抜き見事優勝に輝いたのは、コウタ選手だぁ!』

 

決勝戦の激闘の末、優勝と言う名の栄光を勝ち取ったのはコウタであった。コウタ本人は今までの緊張が一気に解放されたからかその場にドサッと座り込んだ。

 

「優勝……したのか?」

 

あまりにも現実味の無い事にコウタは自分自身にそう問いかける。その疑問を晴らすかのように相棒であるリザードンは彼の元まで戻り咆哮を上げる。

 

『ザァ!』

「リザードン……。そうか……俺は……俺たちは勝ったんだな!」

 

リザードンの嬉しそうな雄叫びにこれは夢ではなく現実のものだと言う確証を得る事ができた。そう、自分はこの大きな舞台に立ち、自分と同じように数々の試練を戦い抜いた猛者たちを破り、その上に立つことができたのだと。

 

「おっしゃぁぁぁぁ!」

 

コウタは感極まって会場中に響き渡るほどの大声を張り上げてガッツポーズをとる。それと同時にリザードンも空に向かって炎を吐き共に喜びをあらわにする。

 

「バシャーモ、お疲れ様。」

『バッシャ……。』

 

コウミがバシャーモに近づいて呼びかけると、バシャーモは顔を俯かせコウミに謝る。一緒に戦ったパートナーの力になることができなくて申し訳なく感じているのだろう。

 

「そんなに落ち込まないでよ。悔しくないって言ったら嘘になるけど、後悔はしてないんだ。」

『バシャ?』

「あなたと一緒にここまでくることができた。そしてコウタと全力でバトルすることができたんだ。」

 

コウミは手をギュッと強く握りしめ、真っ直ぐとバシャーモの目を見つめて言葉を続けた。

 

「今回は負けたけど、それでも新しい目標ができた。私たち、もっともっと強くなって、いつか必ずコウタたちに勝とう!そして、シンジさんやワタルさん、チャンピオンみたいに凄いトレーナーたちにも負けないくらい強くなろうよ!」

『……バッシャ!』

 

バシャーモもコウミが抱いている想いを感じ取り、力強く頷いた。そうだ、これは決して終わりなんかではない。それぞれのトレーナーが一つの通過点を通過しただけに過ぎない。

 

バシャーモは今回の敗北を糧に、更に強くなることを誓ってコウミと共に立ち上がった。

 

「コウタ」

「コウミ……」

 

コウミはコウタに近づき手を差し出した。

 

「優勝おめでとう。でも、次本気で戦うときは絶対に負けないからね!覚悟しててよ?お兄ちゃん!」

「……ああ!だけど、俺も負ける気はないぜ?まだまだ妹には負けられないからな!」

『バッシャ!』

『ザァド!』

 

コウタとコウミは互いに握手を交わし再戦を誓い合う。トレーナーたちと同様、バシャーモの差し出した手をリザードンは強く握りしめ健闘を称え合った。

 

『激しい戦いでしたが、バトルが終わり両者共に互いに実力を認め合っております!今一度、素晴らしいバトルを見せてくれたトレーナーとポケモンたちに盛大な拍手を!』

 

健闘を称え合う両者に拍手の雨が降り注ぐ。その拍手を聞いた2人は、これだけの人が見ているなかでこれだけに人の心を動かすほどのバトルが出来たのだと実感することができた。

 

そしてその後、コウタは多くの観客、トレーナーたちに見守られながら、チャンピオンワタルから優勝記念トロフィーを授与し正式にポケモンリーグカントー大会の優勝者となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウタがワタルから優勝記念トロフィーを受け取ったころ、リーリエたちは観客席にて他の人たち共に拍手を送り感銘を受けていた。

 

「素晴らしいバトルでしたね。私感動しました!」

 

リーリエが感動のあまり強くそう訴えた。決勝戦に残った2人のバトルと言うだけはあり、まさに優勝を争うのに相応しいバトルと言えただろう。こんなバトルを見せつけられて、燃え上がらないトレーナーはいない。

 

「2人とも強くなったね。なんだか僕も嬉しいよ。」

 

2人にとって兄にも近い存在であるシンジも心から2人の成長を嬉しく思う。顔には出していないが柄にもなく熱くなり、最後まで興奮が冷めない様子であったのは言うまでもない。

 

「確かに良いバトルだったわ。でもあたしはこのまま終わるトレーナーじゃないわよ。」

 

ブルーは今よりももっと強くなり、必ず今度は自分があの場所に立って見せると決心する。リーグにて優勝してこそ、トレーナーとして強くなることができた証となるからだ。

 

ルザミーネはそんな3人を、まるで自分の子どもの成長を喜ぶ親のように温かく見守っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優勝トロフィーの授与が終わると、私、リーリエを含むリーグに参加したトレーナーやお客さんたちみなさんが一堂に会して閉会式と言う名の一夜限りのパーティが開かれました。そこには先日まで殺伐としており、全員がライバルとして戦っていたことが嘘のような光景が広がっておりました。

 

みなさん思い思いに語り合っており、今まで経験した旅の思い出、自分のポケモンさんたちの自慢、ポケモンさんを育てるコツなど、まるで友人と話をするかのように情報交換をしておりました。

 

その場にハジメさんがいなかったのは残念ですが、今も高みを目指して早速修行に明け暮れている事でしょう。次に会った時、私が勝てるかどうかが不安です。

 

お母様は自宅にポケモンさんたちを留守番させているとのことで心配だから帰ると言い先に帰られました。私もマサラタウンに帰ったらお母様のポケモンさん達と話をしたいです。

 

ブルーさんは夜が明け次第すぐに旅立つとのことでした。今日のバトルに刺激を受けいてもたってもいられなくなったのでしょうか。でも、私もトレーナーとしてここまできたのでその気持ちは何だかわかる気がします。今度再会した時、私も負けないようにもっともっと強くならなくてはいけませんね。

 

コウタさんとコウミさんは私たちと一度マサラタウンに戻るのだそうです。そして一度休息をとり次第、他の地方に旅にでるのだそうです。優勝者、準優勝者ではありますが、ここがトレーナーとしての終点ではないという事でしょうか。

 

それに旅を続けて、それぞれ探しているものがあると言っていました。それが何なのかは分かりませんが、2人にとってそれはとても重要なことのようです。私もその探し物がみつかるように祈っております。

 

ワタルさんはチャンピオンとして多くのトレーナーにアドバイスを送っておりました。王者の風格、というのでしょうか。その姿はどこか様になっておりチャンピオン特有の雰囲気を感じました。まだまだシンジさんの背中は遠そうです。

 

皆さん、全員が次の目標をもって凄いと私は心の中で感じました。しかし肝心の私は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は多くのトレーナーたちがいるパーティから抜け出し、1人風に当たっています。少々人混みに当てられてしまったためゆっくりと休みたかったからです。

 

私が座って休んでいると、後ろから誰かがゆっくりと近付いてくる気配がしました。私がその人物の正体を確認するために振り向きました。外は暗いため顔は確認できませんでしたが、その人物の声は私もよく知っているものであったため誰なのかはすぐに分かりました。

 

「リーリエ、ここにいたんだ。」

「シンジさん?」

「となり、いいかな?」

「はい、もちろんです。」

 

私の許可を確認すると、シンジさんは私の隣に腰を下ろしました。そこには一時の静寂が流れ、聞こえるのは水の上を吹き抜ける風の音だけでした。

 

「カントーリーグお疲れ様。」

「ありがとうございます。でも、優勝はできませんでした。」

 

私がぎこちない笑顔で笑いかけると、シンジさんはそのまま言葉を続けました。

 

「でも初参加でベスト4は相当な成績だよ。もっと自信もっていいんだよ。」

「シンジさん、ありがとうございます。」

 

そう言ってくれるシンジさんの言葉が嬉しくて、私は改めて感謝の言葉を贈りました。

 

「……リーリエ。」

「?なんでしょうか?」

「もしかして悩み事でもあるの?」

「え?」

「さっきから元気がないから、もしかしたら何か悩んでるのかなと思ってさ。もし何かあったら相談に乗るよ?」

 

シンジさんは私の顔を覗き込みながらそう言いました。思わずその姿にドキッとしてしまいましたが、それ以上に私の考えが見透かされているようで驚きました。やっぱりシンジさんに隠し事は出来ないみたいです。

 

「……やっぱり凄いですね、シンジさんは。聞いていただいてもいいでしょうか?」

 

私の言葉にシンジさんは「うん」と小さく頷きました。私はそんなシンジさんの優しさに甘え、気が付けば自分の悩みを打ち明けていました。

 

「私、今回初めて大きな目標に向かって頑張ることができたんです。これもシンジさんやお母様、ブルーさん、それに他にも多くの方々に支えられてここまできました。」

 

シンジさんは私の話を静かに聞いて下さってます。私はそのまま話を続けました。

 

「皆さん、これからも大きな目標を持っていることを私は羨ましく感じ同時に凄いと感じました。ですが私はカントーリーグが終わってからの事を一切考えてませんでした。」

 

私はこのカントーリーグを目標に必死で頑張ってきました。以前まではお母様の着せ替え人形のように言いなりになるだけだった私が、初めて大きな目標を持ちそれを目指して戦う事ができました。ですがそれが終わった今、次に目指す目標が思い浮かびません。

 

シンジさんはそんな私に、一つの質問を問いかけてきました。

 

「……リーリエの夢って何かな?」

「私の夢……ですか?」

 

私の夢……そう言えば私はなんでカントーリーグを目指していたのでしょうか。

 

「ニビシティでリーリエが言ってたこと、覚えてる?」

「私の言っていたこと?」

「うん。僕が君にこの旅でやりたいことはあるかって聞いた時だよ。」

 

確か私はニビシティでシンジさんにアドバイスを頂きポケモンジムに挑戦することを決意しました。確かあの時の言葉は……

 

 

 

 

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「リーリエはこの旅で何かやりたい事でもある?」

 

「やりたい事……ですか?そうですね、やっぱりシンジさんみたいに強いトレーナーになってみたいです。」

 

「僕みたいに?」

 

「はい、シンジさんはすごく強くて、お母様の野望を止めただけでなく、アローラのチャンピオンにまでなって、そしてあの守り神であるカプ・コケコさんに勝ってしまうほどのトレーナーです。私はそんなシンジさんに憧れて、そして今まで守っていただきました。ですから今度は私もなにかを守ってあげれるようになりたいんです!」

 

 

 

 

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!?そうでした。私はシンジさんのように強くなりたくて、大切なものを守れるようになりたくてジム巡りを始めたんでした。今まで目の前に事ばかりに集中しすぎて、大切なことを忘れていたみたいです。でしたら私のやるべきことはただ一つです!

 

「……どうやら吹っ切れたみたいだね。」

「はい!シンジさん、ありがとうございました!私、もっともっと強くなって……いつかシンジさんみたいに強くなって見せます。」

 

シンジさんは最後に私に笑みを浮かべ、大丈夫だと判断したのか立ち上がりその場を後にしようと立ち去ろうとしました。

 

しかしその時シンジさんは立ち止まりました。私はどうしたのかと気になり立ち上がると、シンジさんはゆっくりと口を開きました。

 

「……島巡りを達成したトレーナーはジム巡りと同じでアローラリーグに挑戦することができるんだ。」

「シンジさん?」

 

私はシンジさんがどうしてそのことを話し出したのか疑問に感じました。しかしシンジさんのその後の言葉に、私は思わず言葉を失いました。

 

「そのアローラリーグで優勝すると、アローラ地方最強のトレーナー…………チャンピオンと戦う事ができるんだ。」

「え?それって……」

 

私は衝撃のあまり言葉を詰まらせました。その時シンジさんは私の方へと顔だけ振り返り、真剣な眼差しで見つめこう答えました。

 

「……アローラの最高の舞台で待ってるよ。」

 

シンジさんはそう一言だけ残し、私の元を立ち去りました。私はその時、シンジさんの後ろ姿が闇に溶け込むまで開いた口が塞がらない状態で見続けていました。

 

だってその言葉は私にとって、最大の目標であり、終着地点でもあり、憧れの人に認められたようにも感じる言葉だったのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、私はブルーさんと別れ、ブルーさんは新たな旅路につきました。私はシンジさん、コウタさん、コウミさんと共に故郷同然のマサラタウンに帰還しました。シンジさんの言葉で次の目標を決めた私ですが、少しの間マサラタウンで休息をとる予定です。

 

しかし私はシンジさんに言われた言葉が頭から離れませんでした。大きな目標が再びできたのと同時に、少しだけでもシンジさんの背中に近づくことができるチャンスが生まれたからです。

 

私はこの大きな目標を目指して、決意を新たに旅をすることを誓うのでした。




当小説ラストの展開まで取り敢えずの伏線は張りました。あとは突き進むだけです。

リクエスト回としてデート回が注文されたので、次回はそれを書こうかと思います。もし何かカントーにいる間にやって欲しい回があれば次回投稿までに活動報告の意見箱にて書き込んでください。可能な限り要望にお応えいたします。

特にリクエストがないようでしたら、早速次の章に進む準備をしたいと思います。

また、恐らく逆襲のミュウツー放送直前スペシャルでみんなの物語がテレビ放送されると思うので、その時が来たら2周年記念辺りを境に2話に渡り一部アレンジして書く予定です。内容は以前書いたキミの物語の続きです。


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過去の過ち、知られざる伝説

リクエスト回であるポケモンの回を書いて欲しいとあったので書きました。

番外編でもないのに長くなってしまいました。それに加え色々とオリジナル設定も付け加えています。原作の設定も入れているつもりですがご了承くださいませ。


――数年前――

 

 

 

 

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

とある地域のジャングルにて科学者たちがあるポケモンについて研究を重ねていた。

 

そこにいたのはフジ博士と呼ばれている一人の科学者。彼はポケモンの遺伝子について研究しており、ここには全てのポケモンのDNAを持ち合わせていると言われる非常に珍しいポケモンが存在していた。

 

そのポケモンは世界に一匹しか存在せず、人前に現れることも非常に稀であるため存在を知っている人すら少ない希少なポケモンである。

 

フジ博士はそのポケモンと親交を交わすことに成功する。そのポケモンは意外にも友好的で、姿を現すことが少なくとも研究をするには充分であった。

 

ある日、そのポケモンは子どもを産んだ。世界を探しても番のいないそのポケモンが何故子どもを産むことが出来たのかは不明であったが、そのポケモンの子どもと言うだけで彼にとっては朗報であった。

 

子どもとして産まれたポケモンは非常に興味深いポケモンであった。親の遺伝子を引き継ぎ、潜在能力が非常に高いことが分かった。戦闘能力だけで言えば親すらも超えていた。

 

しかしその研究の最中、彼の研究成果を知ったある組織が彼とそのポケモンたちを利用しようと企んだ。その組織は彼を自分の組織に取り込もうと交渉する。

 

怪しい組織ではあったが、研究者のフジ博士からすれば高い技術力を所有する彼らの申し出は魅力的であった。故に彼らの誘いを断ることなどフジ博士にはできなかった。

 

フジ博士は彼らの申し入れを受け取り彼らのために研究することを決意する。だがその決断が、のちに数多くの悲劇を生み出すことになるとはこの頃の彼には想像できなかった。

 

最初の悲劇は研究していたポケモンとの別れであった。フジ博士と交流を深めたそのポケモンは、欲望に負けてしまった彼に絶望したのか、彼の前から姿を消してしまう。フジ博士は当時気に留めることはなかったが、いずれこの別れを深く後悔することとなる。

 

親がいなくなってしまったものの、研究対象としている子どもはまだ存在している。彼はそのポケモンを組織の元に連れて行き研究を続けることにする。

 

フジ博士はそのポケモンの研究を組織と共に続ける。そのポケモンの研究は組織の科学力が極めて高かったこともあり順調に進んでいた。彼はそのポケモンの研究に没頭してしまい、遂にはマッド・サイエンティストとしての道を突き進んでしまう。

 

その結果、フジ博士はそのポケモンにある細工を組み込んでしまった。神にすら許されない行為、そう、遺伝子の改造だ。フジ博士はそのポケモンの特殊な遺伝子を自ら改造してしまい、ポケモンの潜在能力を引き出しさらに顕界を超えた強さを与えようとしたのだ。

 

その実験は見事成功。ポケモンの力は通常のポケモンを遥かに超越した力を得た。そのポケモンに特殊なアーマーを装備させ、組織はそのポケモンを制御することにも成功した。

 

そしてそのポケモンの研究が約7か月が経過したとき、新たな悲劇が彼に襲い掛かる。

 

産まれてから研究対象として生きてきたそのポケモンは、ある日疑問に感じるようになる。何故自分は生まれたのか?自分は何者なのか?自分は何のために存在するのか?しかし、その疑問に答えられるものはいない。

 

研究内容を聞いて入れば自然と自分にも伝わり知識として蓄えられる。そうしてそのポケモンは自ら成長し賢くなっていった。

 

そんなある日、フジ博士を第二の悲劇が襲う。今まで組織はそのポケモンを制御していた。しかしそのポケモンは強すぎる力が故に遂に暴走し、自らの意思で研究所から抜け出してしまった。

 

そのポケモンの力はあまりにも強力で、フジ博士や組織の想像すら遥かに超えていた。フジ博士はそのポケモンの力を目の当たりにし、今までの自分の行動に激しく後悔した。もし彼が外の世界で暴れてしまえば全てを破壊しつくしてしまう可能性すら存在する。

 

何故自分は組織に協力してしまったのか?何故自分はこのような取り返しのつかない過ちを犯してしまったのか?何故自分は仲の良かったポケモンを裏切ってしまったのか?

 

しかし、過去に行った行動を悔やんだところで時間が戻ることはない。彼は一生自分が犯してしまった過ちを背負う事となる。

 

幸いにもそのポケモンが暴れたと言うニュースをフジ博士は聞かなかった。不幸中の幸いだが、彼はそのことに安堵し、組織を離れることを決断する。二度と彼らに狙われることが無いよう、彼らの目が届かない場所に身を潜めるのだった。

 

だがそれ以降そのポケモンが一体どこに行ってしまったのか、それを知る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

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カントーリーグが終わり数日が経過した。シンジとリーリエは平穏な時を過ごし、コウタとコウミは更なる高みを目指し各々特訓を繰り返している。

 

そんな時、リーリエは研究所にてある書物に興味を示していた。その書物は決して分厚くなく、内容も少なかった。本を読むことが好きなリーリエにしては珍しかった。

 

その本に夢中になっているリーリエの姿を目にしたシンジは気になり彼女に声をかけることにした。

 

「リーリエ、なに読んでるの?」

「あっ、シンジさん。ちょっと気になる本があったので……」

 

そう言いリーリエはシンジにその本を差し出してきた。その本はどちらかと言うと日記と言った方がいいだろう。どうやらとあるポケモンに関しての観察日記のようだ。

 

「観察日記?オーキド博士が書いたのかな?」

「それが著者は不明みたいです。内容もところどころ掠れているので、一部の記録しか読めませんし……。」

 

中身を確認してみると、確かに内容が掠れてしまっていてとても日記と呼べるものではない。

 

「ちょっと読んでみますね。」

 

リーリエはそう言ってシンジにその日記の内容を読んで聞かせた。

 

『7月5日。ここは南アメリカのギアナ。ジャングルの奥地で新種のポケモンを発見。』

 

新種のポケモン。それだけでトレーナーにとってはとても魅力的なものに感じる。しかし日付だけで年が表記されていないためいつ書かれたのかは不明だ。

 

リーリエは続けて日記の内容を読み上げる。

 

『7月10日。新発見のポケモンをわたしはミュウと名付けた。』

 

日記に記載されていたのはミュウという名前のポケモンだ。だがシンジはその名前を聞いてもそのポケモンに心当たりがない。いつ書かれたかは分からないが、もしかしたらこれは世紀の大発見とも言えるべきものなのかもしれない。

 

だが次に書かれている内容に、2人は疑問に感じる事があった。

 

『2月6日。ミュウが子供を産む。産まれたばかりのジュニアをミュウツーと呼ぶことに…』

 

そこに書かれていたのは聞いたことのないミュウツーと言う名前のポケモンであった。ミュウに加えミュウツー。2人はそのポケモンの名前を聞いて興味を抱いたのだった。

 

だがそれ以上に一つ気になる点がある。それは日記に記載されている日付である。掠れて読めない部分が多く、7月から飛んで2月となってしまっている。一体何が原因でここまで飛んでしまったのだろうか。

 

そして最後の内容には、短くも衝撃的な内容が記載されていたのだった。

 

『9月1日。ポケモンミュウツーは強すぎる。ダメだ…私の手には負えない!』

 

それがこの日記の最後の内容であった。それ以降は空白のページが続いているだけである。

 

この日記を書いたのは誰か分からず仕舞いであり、最後の内容以降本人がどうなったか安否も分からない。間違いなくオーキドが書いたものではないだろう。

 

ならば誰が書いたのか疑問に思う。その時、その日記の最後のページから一枚の写真が落ちる。

 

その写真は古く傷だらけで、昔の写真故に色褪せていた。そこに映っていたのは研究服を着ている一人の男性と、一匹の不思議なポケモンであった。

 

そのポケモンは小さく、不思議なバリアのような球体を身に纏い宙に浮いていた。もしかしたらこのポケモンがここに記載されているミュウと言うポケモンなのかもしれない。

 

とすると一緒に写っている男性は恐らくこの日記の記載者なのだろう。その男性はとても楽しそうに笑顔を浮かべており、写真から見てもそのポケモンと仲がいいように思える。

 

2人がその写真を眺めていると、背後から足音が聞こえてきた。オーキド博士かと思い振り向いていると。オーキド博士とは違う見覚えのある人物がそこに立っていた。

 

「それはワシの友人だよ。」

『カツラさん!?』

 

そこに立っていたのはグレンジムのジムリーダーであるカツラだった。カツラは写真を手に取り、懐かしそうにその写真を見つめていた。

 

「こやつはワシの友人のフジ。昔は研究者として仲良くやっていたのだがな。」

 

そのカツラの目はサングラスで見えなかったが、シンジとリーリエにはカツラが遠い過去の事を思い返しているのだというのだけは伝わった。

 

「ある日突然姿を消して以来、ワシも今フジがどこで何をしているのかは分からない。噂では死んだという話も聞く。」

 

熱血クイズ親父として有名なカツラにしては珍しく、声のトーンが低く感じた。少し気まずい雰囲気ではあったが、フジが残したであろう日記の内容が気になったのもまた事実であるため、シンジはカツラに問いかけることにした。

 

「カツラさん。一つ聞いてもいいですか?」

「むっ?なんだ?」

「これ、多分フジさんが残した日記だと思うのですが、ここに気になるポケモンの名前が書いてあったんです。」

「どれ、見せてみなさい。」

 

カツラはシンジから日記を受け取り中身を確認する。しかしカツラもその内容には首を傾げるばかりであった。

 

「ミュウにミュウツー?聞いたことないな。だがこれは間違いなくフジの字だ。」

 

どうやら予想通りこれはフジの日記に間違いないようだ。しかしそのポケモンの詳細は結局不明なままだ。謎は深まっているばかりである。

 

「むっ、そう言えば……」

「何か心当たりがあるのですか?」

 

なにか思い出した様子のカツラにリーリエが問いかける。カツラはリーリエの質問に答えた。

 

「ハナダにある洞窟から最近妙な音が聞こえてくると話題になっておる。関係しているかは分からんが、そこには昔から強力なポケモンが隠れているのではないかと噂がある。」

 

それはカントーの住人からすればとても有名な話だ。しかしその洞窟の中のポケモンたちは非常に強敵で、探索するには危険が伴ってしまうため認められた者しか入ることを許されていない。それ故にその真実を知る者はいない。

 

「実は今日ここに立ち寄ったのは、その洞窟の件でオーキド君に相談しようと思ったからなのだ。しかし肝心のオーキド君は留守のようだな。」

 

オーキド博士はフィールドワークで外に出てしまっている。そのことをカツラに伝えると、仕方がないと再び出直すことにしたのだった。カツラはシンジたちに、「おぬし等はまだ若いのだから無茶だけはするなよ」とだけ伝え研究所を後にした。

 

その後ろ姿を見届けたシンジは、顎に手を当てて考え事をする。

 

「シンジさん、さっきの件気になりますか?」

「うん。ハナダの洞窟の話は僕もカスミさんから聞いたことがあるんだ。でも今までに変な音が聞こえたなんて話は聞いたことないんだ。」

 

シンジはカツラから聞いた話を思い返す。もしカツラの話とフジ博士の件に繋がりがあるのならば、放置しておくのは危険かもしれない。しかし、もし自分たちが関わったことが引き金となりハナダシティだけでなくカントー全域を危険に晒してしまう可能性もないとは言い切れない。これは判断に悩む問題だ。

 

「っ!?」

 

その時、シンジの頭に激痛が走る。シンジはあまりの痛みにその場で頭を抱えて倒れ込む。

 

「し、シンジさん!?どうしたんですか!?」

「くっ、あ、頭がっ!?」

 

シンジはその瞬間、脳内に映像のようなものが流れ込むのを感じた。まるで時間が止まったかのような瞬間だったが、自然と痛みは無くなり先ほどの痛みが嘘のように冷静さを取り戻した。

 

『こ、これは?』

 

シンジの脳内に流れ込んでくる映像。その中で見たことのないポケモンの存在が確認できた。そのポケモンに拘束具が装備されており、捕らえられているということが分かった。

 

『あのポケモン……それにあの人は……フジ博士?』

 

捕らえられているポケモンの周りには研究員が数人。その中心には先ほどの写真の人物、フジ博士が映っていた。

 

『私は誰だ……』

 

そのポケモンは確かにそう言葉を発した。

 

『誰が生んでくれと頼んだ?誰が造ってくれと願った?』

 

そのポケモンは拘束具越しにも伝わるほど力を増大させていく。どの力は周囲一帯の機械にすら影響を与える程増幅され、次第にそのポケモンを制御していた拘束具すらも破壊する。そしてそのポケモンの姿が露わになった。

 

その見たことのないポケモンは、先ほどの写真に映っていたミュウというポケモンによく似ていた。ただしミュウよりも大柄であり、ミュウの穏やかな印象に比べこちらは見て分かるほど圧倒的なプレッシャーを放っており簡単に近づけるような雰囲気ではない。恐らく彼が、フジ博士の日記にも載っていたミュウツーというポケモンだろう。

 

『……私は、私を生んだ全てを恨む。お前たち人類に、人間に操られる気などない。』

 

その強大なポケモンは空へと飛び出し組織から抜け出した。そこにはガックリと項垂れるフジ博士とその他の研究員たちが取り残され、シンジの脳内に流れてきた映像はそこで途切れたのだった。

 

「っ!?今のは?」

「シンジさん、大丈夫ですか?」

 

シンジがハッと意識を覚醒させると、そこには心配そうに顔を覗き込ませるリーリエの姿があった。

 

「リーリエ……今のは一体?」

「今の?どういうことですか?」

 

リーリエは不思議そうに首を傾げる。どうやら今の不思議な映像は自分だけが見えていたもののようだ。シンジはこれ以上心配をかけないように何でもない、大丈夫だと伝えた。

 

「僕、ハナダの洞窟に行ってみるよ。」

「え?でもハナダの洞窟は……。」

「うん。間違いなく危険な場所だよ。でも、何故か無視できないんだ。だからリーリエはここでまってて。」

「そ、そんな!シンジさんがいくなら私も一緒に行きます!絶対に足手まといにはなりません!」

「い、いや、でも……」

 

シンジの言葉に対しリーリエは珍しく反対しシンジの眼を真っ直ぐ見つめた。その瞳には一切の迷いは感じられず、なにがなんでもついて行くのだと言う強い意思を感じた。

 

「……言っても聞かないよね。じゃあ僕が言うのもなんだけど、君は無茶なことはしないでね。リーリエに怪我だけはして欲しくないから。」

「むっ、それはシンジさんもですよ!そう言いながらいつも自分ばかり無茶するんですから!」

 

事実を突きつけられ反論できないシンジ。その様子になんだかおかしくなりお互いには笑いだしてしまう。なんだかんだで似た者同士な2人は、共にハナダの洞窟へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがハナダの洞窟よ。」

 

ハナダシティに辿り着いたシンジとリーリエは、ハナダの洞窟の場所を聞くためにカスミの元へと訪れた。カスミも最初は渋っていたのだが、2人の意思は本物だと感じ取ったため仕方なく案内したのだ。

 

「いい?ここからは私も把握していない場所よ。何があるか分からないから、細心の注意を払って行動してよね。あんたたちに何かあったら、攻められるのは私なんだからね。」

 

カスミの言葉にシンジとリーリエは「はい」と答え頷く。2人は同時に洞窟へと入っていき、暗闇の中へと溶け込んでいった。

 

「……急にハナダの洞窟に行きたいなんて、物好きな子たちよね。ま、シンジがそんなことを言い出すのは今に始まったことじゃないけど。」

 

カスミはそう言って、彼らが無事に帰ってくるようにと心の中で祈りながらその場を去っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「洞窟の中なのに明るいですね。」

 

リーリエの言った通り、この洞窟の中は視界が確保できるくらいに明るい。オツキミやまと違ってポケモンの力を借りる必要もなかった。

 

「この洞窟は水で潤っているみたいだからね。岩についたコケが水を栄養分として吸い取って、それを光と同じように反射させることで光って見えるから明るくなっているんだよ。」

 

シンジの言葉になるほどと頷くリーリエ。確かにここは水の町と言われているハナダシティの近隣だ。みずポケモンが多く生息し、活き活きと過ごしている環境の水がこれだけ流れていれば洞窟内であっても自然も潤うと言うものか。

 

しかしシンジには一つ疑問に思っていることがあった。

 

「ポケモンの姿が見当たらない。」

「シンジさんも変だと思ってたんですね。」

 

どうやらリーリエもシンジと同じ疑問を抱いていたようだ。そう、2人の言ったようにここにはポケモンの姿が見当たらない。

 

これだけ潤っていて環境の整った場所であればポケモンが生息していてもおかしくはない。それどころかここは一部のポケモンが暮らす環境としては最適と言ってもいいくらいだ。

 

いわタイプのポケモンやみずタイプのポケモン、暗闇を好むポケモンに鉱石を食べるポケモン。それらのポケモンがいても何ら不思議はない。

 

「間違いなく様子がおかしいことに変わりはない。注意していこう。」

「はい、分かりました。」

 

シンジの忠告にリーリエも強く頷いた。警戒はしないに越したことはない。特に未知の場所であれば寧ろ警戒し過ぎてもいいくらいである。

 

シンジとリーリエも周囲の様子に注意しながら先に進む。だがやはりと言うべきかポケモンの姿は一匹も見当たらない。2人はそのまま最深部に向かって歩みを進める。

 

すると突然モンスターボールが揺れ、中からポケモンが飛び出した。そのポケモンは、シンジの相棒であるニンフィアであった。

 

『フィア……』

「ニンフィア?どうしたの?」

 

ニンフィアは身体を震わせながら心配そうにシンジの顔を見上げる。ニンフィアの珍しい姿に戸惑うシンジだが、もしかしたらニンフィアはこの先に強大な何かがいるのだと感じ取ったのかもしれない。

 

得体のしれないその存在は、ニンフィアすらも怯えさせるものを持っているのだろうか。いずれにしても言って確かめなければならないのは変わりない。ここまできたら引き返すことはできない。

 

「ニンフィア、大丈夫だよ。僕がついてるから。」

『フィア……フィア!』

 

シンジはニンフィアの頭を撫でて気持ちを落ち着かせる。ニンフィアも自分のトレーナーにこれ以上心配をかけるわけにはいかないと感じ、自分が守るのだと決意して気を引き締めた。

 

シンジとリーリエは更に奥へと進んでいく。するとそこには、背を向けて立っている何かがいた。

 

そのなにかは人間のような形状をしていたが、シンジにはその正体がなんなのかすぐに理解した。何故ならそのポケモンは、シンジにとって最近見た記憶のある存在なのだから。

 

そのポケモンはゆっくりとこちらに振り返る。ポケモンが自然と放つ威圧感に押されるシンジとリーリエだが、グッとこらえてそのポケモンを見つめ口を開いた。

 

「君がミュウツー……だね?」

「あれがミュウツーさん……ですか?」

『何故私の名を知っている?お前たちは何者だ?あの人間たちの仲間か?』

 

シンジがミュウツーに呼びかけると、ミュウツーはシンジにそう質問を返した。ポケモンが喋ると言う衝撃の事態に驚くリーリエだが、シンジは冷静にその質問に答えた。

 

「あの人間たちって言うのはよく分からないけど、少なくとも僕たちは君の敵じゃないよ。」

 

シンジはそう言って自分はミュウツーに対して敵対心を持っていないことを伝える。

 

『私は人間を信用しない。人類は私たちポケモンの敵だ!』

 

ミュウツーは声を荒げ強く答えた。どうやら人間のことは全く信用してはくれなさそうだ。

 

ミュウツーはその後、シンジの足元にいる存在に目をやり質問を投げかける。

 

『何故お前はそこにいる?』

『フィア?』

 

質問を投げかけられた存在、ニンフィアは首を傾げる。イマイチミュウツーの言っている質問の意味が分からないようだ。

 

『何故お前は人間と共にいると聞いているのだ。』

『フフィア』

 

ニンフィアはその質問に対してシンジに擦り寄る形で答える。このポケモンが目の前の人間の事を信頼していることは理解したが、何故人間の事をそこまで理解できるのかが分からなかった。なにせ自分は過去に行われた実験により人間の事を全く信用しなくなったのだから。

 

『人間はすぐに裏切る。自分の欲望だけを優先し、ポケモンを傷つけ、罪を犯す。あのフジと呼ばれていた人間もそうであった。』

 

ミュウツーは自分が最も憎いと思う人間の名前を挙げる。

 

『この場所にいるポケモンたちは皆、人間に捨てられ行き場を失ったモノたちだ。皆心も身体も傷付いている。それも身勝手な人間たちの行いが原因だ。』

 

ミュウツーの言葉がシンジたちの胸に突き刺さる。確かに人間たちはポケモンと共に苦楽をするトレーナーばかりではない。

 

中にはポケモンを悪用するもの、悪事に利用するもの、金儲けの道具としてしか見ないもの、弱いという理由で見限るものたちもいる。人間全員が善人というわけではない。

 

恐らくそういった目にあってきたポケモンたちがこの洞窟内に住んでいるのだ。だからこそシンジたちが入ってきたことにより警戒して身を潜めたため姿が見えなかったのだろう。

 

『ここのモノたちはこんな私を受け入れてくれた。私に正しい居場所を与えてくれた。ならば私のするべきことはただ一つ。』

 

ミュウツーはそう言ってシンジたちに向かって構える。

 

『私はここのポケモンたちを守る!私に存在する理由を与えてくれたモノたちに害を成すモノは……排除する!』

 

ミュウツーは完全に戦闘態勢をとる。しかしシンジとリーリエはミュウツーとバトルなどするつもりもなければしたいとも思わない。なんとかして彼と分かり合いたいと考えるが、もはや話し合いの余地はないのだろうかと悩む。

 

するとその時、誰かが走って近づいてくる音が聞こえる。ふと振り向くと、そこには見覚えのあるRのマークがついた黒服を着た集団がシンジとリーリエ、そしてミュウツーを取り囲んでいた。

 

『またお前たちか。』

「ミュウツー!今日こそ貴様を捕らえてやる!」

 

「シンジさん!この人たちって!」

「ロケット団!」

 

その集団はかつてカントー地方を裏で牛耳っていたロケット団だ。恐らく解散したはずのロケット団の残党だろう。ミュウツーの言っていた人間たちはロケット団のことだったようだ。

 

完全に彼らを包囲したロケット団員たちの背後から、もう一人の影が姿を現した。その人物は黒服の団員たちとは違い白の服を着用しており、薄い水色の短髪の男性であった。

 

ロケット団としては規則正しく歩き紳士的な印象を与える男性だ。

 

「おや、ミュウツー以外にも誰かいますね。お初にお目にかかります。私はロケット団の幹部、アポロと申します。」

 

そうロケット団とは思えない丁寧な対応をするアポロ。そんな彼は深く礼をして自己紹介をするが、すぐに顔をあげて言葉を続けた。

 

「おっと、自己紹介をしていただく必要はありません。何故なら……あなたたちにはここで消えてもらうからです。」

 

そう言ってアポロは黒い笑みを浮かべる。

 

「ミュウツーは当時サカキ様がいた頃にロケット団が生み出した最強のポケモン。しかし、そんなミュウツーまで辿り着いたあなた方は知りすぎてしまった。よって、この場で消えてもらうというわけです。」

 

アポロ達ロケット団がミュウツーを生むだのだと語る。彼らはミュウツーを手に入れてサカキを見つけ出しロケット団の再建を企てているに違いない。

 

シンジとリーリエはそんなことさせるわけにはいかないとモンスターボールを手にし、対抗する意思を見せる。

 

「そんなこと、絶対にさせません!」

「うん!ミュウツーは僕たちが守る!」

『なに?』

 

シンジとリーリエの言葉にミュウツーは疑問を感じた。シンジたちはモンスターボールを投げ、ポケモンをボールから解き放った。

 

「お願いします!シロン!フシギソウさん!ハクリューさん!」

『コォン!』

『ソウ!』

『クリュー!』

 

「行くよ!イーブイ!ブラッキー!」

『イブイ!』

『ブラッキ』

 

「抵抗する気か。ならばお前たち!行け!」

 

アポロの合図とともにロケット団員たちもポケモンを繰り出した。そのポケモンは大量のゴルバットたちであった。個々の能力はそれほど高くないだろうが、それでも数が多く苦戦することは間違いない。

 

ロケット団員たちからミュウツーを守る戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シロン!こおりのつぶて!フシギソウさんははっぱカッター!ハクリューさんはアクアテールです!」

「イーブイ!スピードスター!ニンフィア!ようせいのかぜ!ブラッキー!シャドーボール!」

 

シンジとリーリエのポケモンたちのがゴルバットを次々と撃ち落とす。しかしまだまだ相当数のゴルバットが残っており、ポケモンたちの体力もそろそろ限界まで近づいていた。

 

「くっ、さすがにこれ以上は厳しいね。」

「はい、ポケモンさんたちにも疲れが見えてます。」

 

よく見ると彼らのポケモンたちは肩で息をして疲れているのが分かる。さすがに数が多すぎて疲労も溜まってしまっている。ニンフィアとハクリューはまだ少し余力があるようだが、これ以上戦わせるのは難しいだろう。

 

「イーブイ!ブラッキー!戻って!」

「シロンとフシギソウさんも戻ってください!」

 

シンジとリーリエはそれぞれのポケモンを戻し休ませることにする。しかしこれ以上戦いを続けるのはジリ貧だろう。それにこれらのゴルバットを撃退しても、まだアポロのポケモンが残っている。

 

「ふっ、さっきまでの勢いはどうしましたか?」

 

ならばこのタイミングで畳みかけてやろうとアポロは自身のモンスターボールを手にした。

 

「行きますよ!ヘルガー!」

『ガウッ!』

 

するとアポロはモンスターボールを投げ、中からヘルガーを放つ。このタイミングで彼のポケモンを出されるのは非常にマズイ。

 

「私はヘルガーはただのヘルガーではありませんよ。これを見なさい!」

 

そう言ってアポロは袖を捲る。すると腕には大きなリングとそのリングにはめ込まれている石があった。それは紛れもなくリーリエとシンジにも見覚えのある物であった。

 

「あれは……メガリング!?」

「ということはもしかして!?」

「そうです!さあヘルガーよ!解き放ちなさい!メガシンカ!」

 

そう言ってアポロの持つメガリングとヘルガーの角に備え付けられていたメガストーンが共鳴する。するとヘルガーは光に包み込まれ、次第に姿を変えていった。

 

その光から解き放たれたヘルガーは、体が一回り大きくなり鎧を纏ったかのように体の一部分も本体に合わせ大きくなっていた。より地獄の番犬感が増した姿だ。

 

「さあ、君たちには私のヘルガーの餌食となってもらいます。だいもんじ!」

 

ヘルガーはだいもんじを放つ。その威力はすさまじく、メガシンカをしたことで威力だけでなく範囲も通常より広くなっている。躱すことは困難であるため、ここは2人で対抗するべきだと判断した。

 

「ハクリューさん!れいとうビームです!」

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『クリュウ!』

『フィア!』

 

ハクリューとニンフィアは同時に渾身の一撃を放つ。しかし体力も残り少なく、威力は通常よりも遥かに劣ってしまっていた。先ほどの戦いで体力が削れてしまったのが原因だ。

 

その上ヘルガーはメガシンカをしてより強大な力を手に入れてしまった。ハクリューとニンフィアの合わせ技も虚しく、ヘルガーの攻撃に打ち消されてしまった。

 

「マズいです!このままじゃ!?」

「くっ!?」

 

迫りくるだいもんじの中、シンジは必死に対抗策を考える。しかし考える時間もなく、だいもんじは目の前まで迫っていた。

 

ニンフィアとハクリューは大切なトレーナーを守ろうと前に出る。万事休すかに思われたその時、横からシャドーボールが飛んできてヘルガーのだいもんじを相殺した。

 

「なんだ!?」

 

アポロが慌てた様子を見せると、シンジとリーリエの目の前にあるポケモンがテレポートで姿を現した。

 

『……』

「!?ミュウツー!?」

 

そのポケモンはミュウツーであった。ミュウツーは僅かに振り返り、シンジに語り掛けた。

 

『私は人間は信用しない。だがお前たちの言葉が嘘ではないことは伝わった。』

 

ミュウツーはそう言いながら前をみてアポロとヘルガーの姿を見据える。

 

『それに、どうやらお互いの敵は同じようだ。今回だけは協力してやろう。』

「ミュウツー!」

「ミュウツーさん!」

 

自分たちの思いが伝わり分かりあえたのだと嬉しく感じたシンジとリーリエ。そんなミュウツーから、シンジはある物を渡された。

 

「ミュウツー、これって!?」

『偶然拾ったものだ。私では使いこなすことは出来ないが、お前たち人間ならばこれの使い道も分かるだろう。』

「!?ま、まさかそれは!?」

 

ミュウツーの言葉にシンジは一呼吸おき頷いて答えた。自分を信じてくれたミュウツーを裏切らないために、覚悟を決めてミュウツーから渡されたものを掲げた。

 

「行くよミュウツー!メガシンカ!」

 

次の瞬間、ミュウツーは光に包み込まれヘルガーと同様に姿を変えていく。尻尾の部分がなくなり逆に頭部が尻尾のように長く伸びた。更に体は以前に比べ少し小柄になった。これは紛れもなくメガシンカだ。

 

ミュウツーから渡されたものはミュウツーをメガシンカさせるためのメガストーン、ミュウツナイトだ。

 

本来メガシンカをする場合、トレーナー側がキーストーンと呼ばれる石を所持し、ポケモンにそれぞれ対応するメガストーンを持たせることにより初めてメガシンカをすることができる。

 

しかし今はシンジがミュウツナイトを受け取り、メガシンカに必要なキーストーンを所持していないチグハグな状態だ。ではなぜミュウツーがメガシンカできたのだろうか。

 

理由は単純だ。ミュウツーを思うシンジの祈りがキーストーンを通じてミュウツー自身に伝わり、メガシンカを可能にさせたのだ。メガシンカに重要なのはポケモンとの絆。それを得ることが出来たミュウツーとシンジの信頼関係が不可能を可能にしたのだ。

 

「馬鹿な!?メガシンカだと!?だ、だが今更そんなもの!ヘルガー!あくのはどう!」

 

エスパータイプの弱点であるあくのはどうで的確にダメージを狙うヘルガー。しかしミュウツーの元々高かったサイコパワーが更に増幅されたミュウツーは、腕を振るうだけで放った衝撃波によりあっさりとあくのはどうを掻き消した。

 

「ミュウツー!シャドーボール!」

 

シンジの指示に従い、ミュウツーはシャドーボールを放つ。そのシャドーボールはとてつもなく強力で、あくタイプのヘルガーを問答無用で吹き飛ばし、一瞬で戦闘不能に追いやった。

 

「なっ!?ヘルガー!?」

 

戦闘不能になったヘルガーはメガシンカが解除され、通常の姿に戻っていた。アポロはそのヘルガーをモンスターボールに戻した。

 

『あとはお前だけだ』

「なに!?」

 

ミュウツーはサイコパワーを利用し、アポロを含むロケット団員たちを全員気絶させた。それと同時に周囲にいたゴルバットたちも異常なサイコパワーに当てられ次々と墜落していく。比べ物にならないほどの力を持つミュウツーに、シンジとリーリエは少し肝を冷やす。

 

そしてバトルが終わったことによりミュウツーのメガシンカが解除された。

 

「……ロケット団たちはどうするの?」

『私に関する記憶を消す。そうすれば二度と私に近づくことはないだろう。』

 

ミュウツーはロケット団たちの自分に関する記憶を抹消することを決意する。それこそが自分のためにも、そして自分の周りにいるポケモンたちのためにも良い事だろうと判断したのだ。

 

そうして、この場にいるロケット団たちのミュウツーというポケモンがいたという記憶は全て消され、起きた時には自分たちが何をしていたのかさえ忘れてしまっていたのだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミュウツーさん。これからどうするのですか?」

『私はここは去る。この場にいても安全ではないという事が分かった。』

「ごめん、僕たちが来たせいで……」

『お前たちのせいではない。どうせいずれは人間たちにバレていただろう。……寧ろ感謝している。人間にはお前たちのように純粋な心を持ったモノもいるのだと知れて、私はまた一つ知識を身に着けることが出来た。』

 

ミュウツーはそう言って振り返りその場を後にしようとする。

 

『その石はお前が持っているといい。私には不要だ。』

「うん。ミュウツー、また会えるかな?」

『分からない。だが、もしまた会うとしたら……』

 

『協力するのも悪くないかもしれない』

 

ミュウツーはそう誰にも聞こえない小さな声で呟き飛び去って行った。彼が今後どこに向かうのかシンジたちには分からないが、きっと自分の居場所を平和に暮らすことが出来るのだろうと願った。

 

その時、シンジたちの目の前に小さな光が忽然と現れた。

 

「え?これって?」

 

リーリエが疑問に思いそう呟いたとき、その光がハッキリとしたものになり姿をハッキリと現した。そのポケモンにはシンジもリーリエも見覚えがある。そう、そのポケモンは……

 

「ミュウ!?」

「ミュウさん!?」

『ミュミュ』

 

フジ博士と一緒に写真に映っていたミュウであった。2人は突然現れたミュウに驚き一歩後ずさるが、ミュウは彼らに笑顔で声をかけた。

 

『ミュウ!ミュミュミュウ!』

 

ミュウはそのままその場を飛び去りすぐに姿を消した。

 

「なんて言っていたのでしょう?」

 

リーリエはミュウが最後になんと言ったのか気になった。しかしシンジにはその言葉に意味がなんとなくだが理解した。

 

「ありがとうって、そう言ったんだと思う。」

「え?シンジさん、ミュウさんの言葉が分かったんですか?」

「なんとなくだけど、そんな気がするんだ。」

 

もしかしたら過去の映像を見せたのはミュウなのかもしれないと直感的に感じ取るシンジ。彼はもしかすると自分の子ども同様のミュウツーを助けたかったのかもしれない。だからこそシンジたちの目の前に一瞬だけでも姿を現したのだろう。

 

「……僕の方こそありがとう。ミュウ、ミュウツー」

「ありがとうございました、ミュウさん、ミュウツーさん」

 

シンジとリーリエはミュウとミュウツーに感謝しながら、彼らが飛び立った空を見上げたのだった。




というわけでミュウツー回でした。劇場版も近いので大人気のミュウツー様の登場も望む方も多そうです。

ミュウツー様思った以上に書くの凄い難しいです。特にミュウツーの逆襲や我ハココニ在リとかが神だったので少し書くの怖かったです。ですがリクエストとして頂いた以上はなんとか書き上げました。色々とご都合主義な場所とかも多くてすいません。アポロさんは都合のいいロケット団の登場の仕方が思いつかずここで出演していただき(退場してもらい)ました。

他にもデート回と過去回がリクエストされたので次回以降はそれらを書きたいと思います。その後は次のシナリオに進む予定なので一応カントーでの話はこれでリクエスト終了という事で。その他のリクエストは常に受け付けていますので遠慮なく書いて下さい。

ではまた次回お会いしましょう!ノシ


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シンジとイーブイ!初めての冒険!

リクエスト回その2です

要望されていた内容と若干違う気もしますが申し訳ない……。


これはシンジが旅に出る前日の話。まだニンフィアがイーブイだった頃に2人がマサラタウンで過ごしていた時の話である。

 

シンジはこの日、珍しく朝早くに目が覚め着替えを済ませ外出の準備をした。

 

「じゃあ母さん!行ってきます!」

「ええ、気を付けて行ってくるのよ」

「行こう!イーブイ!」

『イブイ!』

 

シンジはそう言ってパートナーのイーブイと共に家を出た。目指すはマサラタウンにあるオーキド研究所である。

 

シンジはまだポケモントレーナーになっていないため、モンスターボールを所持していない。故にイーブイは走るシンジの後ろを同じように走ってついてきている。その様子からは互いにとても仲が良いのだという事が伝わってくる。

 

「あらシンジ君!おはよう」

「おばあちゃん!おはようございます!」

 

シンジはマサラタウンにいる間、小さいころからお世話になっているおばあさんに声をかけられ足を止めた。彼にとっては本当のおばあちゃんのようであり、おばあちゃんにとってもシンジは本当の孫のように可愛がっている。

 

「今日もオーキド研究所に行くのかい?」

「はい、旅に出る前に色々教えてもらいたいことがあるので!」

「そうだねー。シンジ君ももう旅にでる年になったのよね。なんだか寂しくなるね。」

 

おばあさんはまるで自分の子どもが旅に出るような感覚に寂しさを感じ涙を拭った。

 

マサラタウンは他の町に比べれば小さな町だ。住んでいる人が少ないため自然と接する機会も多く顔も覚えやすい。特に子どもたちは数も少ないため、マサラタウンで暮らす子どもたちは周囲の大人たちからはよく可愛がられている。

 

『イブブイ!』

「あらイーブイちゃん!今日も元気そうね!」

『イブイ!』

 

イーブイがシンジの肩からひょこっと顔を出す。そんなイーブイをおばあさんは優しく撫でた。イーブイもおばあさんに撫でられ気持ちよさそうに微笑んでいた。

 

「今日も2人仲がよさそうね。そうだ!」

 

おばあさんは思い出したようにポンッと手を叩き懐から1つの袋を取り出した。

 

「ほら、今朝焼いたクッキーだよ。イーブイちゃんと仲良く食べな。」

「ありがとう!僕おばあちゃんの焼いたクッキー大好きだから嬉しいよ!」

 

シンジはそう言っておばあさんから貰ったクッキーをポケットにしまう。そしてクッキーをくれた優しいおばあさんに感謝して、イーブイと共に手を振りオーキド研究所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーキド博士!」

「おおシンジ君!今日もよく来たのお!」

 

シンジはオーキド研究所へと辿り着き、真っ先にオーキドの元へと走っていった。オーキドはシンジの顔を見るとすぐに笑顔で応対する。しかしそこにはもう一人見覚えのある人物がいたのであった。

 

「シンちゃん!おはよう!」

「ルナ!おはよう!でもその呼び方はやめて欲しいんだけど……」

 

そこにいたのはシンジの幼馴染であるルナであった。さすがにこの年になっていつまでも幼少期時代の呼び名で呼ばれるのは男として恥ずかしさがある。だがルナは「シンちゃんはシンちゃんだもん」と言って一向にやめる気配がない。これ以上言っても無駄だと悟ったシンジはこの件については諦めることにした。

 

「オーキド博士!今日の課題は何ですか?」

 

シンジはオーキドの今日の課題について尋ねる。

 

翌日ようやく10歳となってポケモントレーナーとして旅に出ることのできることを許されるシンジは、オーキドに毎日のように課題を与えてもらっている。ポケモントレーナーとして様々な知識をつけることは重要なことであり、自分のためだけでなくポケモンのためにも必要なことだ。

 

オーキドはそんなシンジに、ポケモントレーナーとして旅立つ前の最後の課題を与えた。

 

「うむ。今日の課題は至ってシンプル。この近くにある森に向かい多くのポケモンたちと触れ合ってくるのじゃ。」

「ポケモンと触れ合う……ですか?」

 

その課題はシンプルなものではあったが、イマイチオーキドの出した課題の意図が掴めなかったシンジ。そんな彼にオーキドは今回の課題について詳しく説明を始める。

 

「今回の課題はポケモントレーナーとしての適性力を試すもの、いわばテストみたいなものじゃな。」

「テスト……ですか?」

「そうじゃ。ポケモントレーナーたるもの、多くのポケモンとの触れ合い方を知っていなければならない。数多いるポケモンたちによっても触れ合い方や生態だけでなく、状況に応じての対処なども変化する。それらを自分の目で見て、自分の肌で感じ、自分の頭で考える。それがこの課題の目的じゃよ。」

 

オーキドの言葉にシンジは成程と納得する。確かに自分は今までイーブイとしか接する機会がなく他のポケモンとはあまり関わった記憶がない。旅に出る以上、他のポケモンのことも知っておく必要はあるだろう。

 

「分かりました!じゃあ早速行ってきます!」

「うむ。気を付けていくのじゃぞ!」

「シンちゃん!頑張ってね!」

 

オーキドとルナに見送られ、シンジはイーブイと共にオーキド研究所を飛び出し近くの森に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがオーキド博士の言っていた森かあ……」

『イブ』

 

オーキド博士が言っていた森に辿り着いたシンジとイーブイ。普段は野生のポケモンが生息していて危険がないとは言い切れなかったため入ることはなかったが、いざ入ってみると多くのポケモンたちの姿が確認できてとても新鮮だ。

 

その森にはカントー地方でよく見かけるポッポをはじめキャタピーなどの虫ポケモンやニドラン、ナゾノクサにマダツボミなどの草ポケモンも多く生息していた。ポケモンたちにとってここは楽園にも近い環境なのだろう。

 

「色んなポケモンがいて楽しいね!イーブイ!」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも嬉しそうに微笑み返事する。これだけのポケモンを目にすることが出来れば、ポケモントレーナーとなる前の彼らにとっては全てが新しいものに感じ嬉しさが込み上げてくるものだろう。

 

『イブ?』

「イーブイ?どうしたの?」

 

その時、イーブイの耳がピクピクッと反応し、イーブイはシンジの肩から飛び降りて走り出した。シンジはイーブイがどうしたのか分からなかったが、何かを見つけたのかもしれないととりあえずイーブイの後を着いて行くことにした。

 

暫く走っていくと、そこには一匹のポケモンがうめき声を倒れているのが確認できた。

 

そのポケモンは誰もがよく知っているポケモンで、紫色の体色に特徴的な飛び出した前歯。間違いなくこのポケモンはコラッタである。

 

しかしそのコラッタは様子がおかしく、よく見てみると後ろ足にケガを負っている状態であった。足掻いてはいるものの、ケガの痛みで動きたくても動けないのだろう。

 

「待って!その状態で動いたら危ないよ!今応急処置をするから!」

 

シンジは自分の持っているバッグの中からポケモン用のキズぐすりを取り出した。オーキドからトレーナーにとっては必需品だと言われ、それ以降いざという時のために持ち歩くようにしていたのだ。まさかこんなところで役に立つとは思っていなかったが、アドバイスは素直に受け取るものだと感じた。

 

『ラッタ!』

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。君を傷つけたりはしないから。」

『イブ!イブブイブイ!』

『コラッタ……』

 

シンジとイーブイの説得に観念したのか、コラッタは少し警戒を解き抵抗することは無くなった。

 

「ちょっと沁みるけど我慢してね。」

『ラッタ!?』

 

シンジはコラッタの傷口にキズぐすりを吹きかける。コラッタは痛みから顔を歪ませるが、しばらくするとケガの痛みは徐々に引いて行き、後ろ足で立つことが出来るようになった。

 

シンジはその後、傷口から菌が入り込まないように絆創膏を貼る。これで一先ずの応急処置は完了だ。

 

「うん。これで大丈夫。後は無茶さえしなければ問題ないよ。」

『コラッタ!』

『イブブイ!』

「そうだ!お腹空いてるよね?これ食べてみる?」

 

シンジはそう言ってポケットから先ほどおばあさんに貰ったクッキーの袋を取り出した。その袋からクッキーを取り出し、コラッタに差し出す。

 

しかしコラッタは、みたことの無いものに警戒心を抱き匂いを嗅ぎ始める。さすがに初めて見るものを口に入れるのは少々躊躇してしまうものか。

 

「大丈夫だよ、ほら。」

『イブ♪』

 

そう言ってシンジはイーブイにクッキーを差し出した。イーブイはそのクッキーを嬉しそうに頬張り美味しそうに口にする。その様子を見たコラッタは警戒する素振りを見せず、もう一枚差し出したシンジのクッキーを小さく口にした。

 

『!?コラッタ!』

「美味しい?よかった!」

 

コラッタは口にした瞬間先ほどの警戒心が嘘のように微笑んでクッキーを平らげる。やはりお腹を空かしていたようで一瞬の内にクッキーを食した。シンジもその様子を笑顔で見守っていた。

 

「もうケガしたらダメだよ?」

『ラッタ!』

『イブブーイ!』

 

コラッタはシンジの言葉に頷いてその場を去っていく。改めてオーキドから色々な知識を教えてもらってよかったと思うのであった。

 

「ありがとう、イーブイ。君が教えてくれなかったらコラッタを助けられなかったよ。」

『イブイブ♪』

 

イーブイが真っ先にコラッタの存在に気付いたのはやはりポケモンだからであろう。

 

人間に比べポケモンの聴覚や嗅覚と言った感覚はより優れたできになっている。それは野生として生きることに必要であるため当然だ。だからこそシンジの気付くことが無かったコラッタの小さな声にも反応したのだ。

 

シンジはイーブイの頭を優しく撫でる。イーブイはシンジに撫でられて気持ちよさそうな声を出して喜んでいる。

 

その後も森の中の散策を続けるシンジとイーブイ。特に珍しいポケモンがいたというわけではないが、それでも他のポケモンと触れ合ったことのない彼らにとっては、どの出会いも新鮮なものばかりであった。

 

森のポケモンたちも最初は警戒していたが、シンジがイーブイや一部のポケモンたちと遊んでいるのを見て興味を持ったのか、次々と警戒を解きポケモンたちが彼らの元へと集まった。

 

シンジはポケモンたちと遊ぶのが楽しくて時間が経つのを忘れていた。気が付けばすでに日が暮れる時間となっていた。

 

そろそろ帰らなきゃ、と立ち上がるシンジ。その時、ポケモンたちがシンジとイーブイを誘っているかのように誘導し始めた。

 

「みんなどうしたの?」

『イブ?』

 

ポケモン達が自分をどこに連れて行こうとしているのか分からず尋ねるが、ポケモン達は笑顔でシンジを「こっちこっち」と誘導する。ポケモン達の目的が分からなかったシンジだが、なにか自分たちに見せたいものでもあるのだろうかと推測しついて行くこととする。

 

シンジとイーブイはポケモン達に誘われるまま森の奥へと入っていく。暫くすると奥から光が差し込み、大きく開けた場所に出た。

 

「!?ここって……」

『イブイ……』

 

そこには先ほどまでいた森とは思えない程キレイな花畑が広がっていた。周囲には様々なポケモンたちがのんびりと平和に暮らしているのが見られ、どうやらここは文字通りポケモン達の楽園としてみんな過ごしているようだ。

 

「もしかして、みんなは僕たちをここに案内したかったの?」

 

ポケモン達は笑顔で一斉に頷いた。彼らは仲良くなったシンジたちを自分たちのお気に入りの場所を見せたかったようだ。

 

その時、彼らの元に一匹のポケモンが近付いてきた。そのポケモンの正体を確認すると、後ろ足に目立つ絆創膏が貼ってあったため先ほど助けたコラッタであることが分かった。

 

「さっきのコラッタ?どうしたの?」

『コラッタ!』

 

近付いてくるコラッタに対して屈みこんだシンジ。するとコラッタがあるもの咥えたままそれを差し出してきた。

 

それは一本の小さな白い花であった。恐らく先ほどケガを治したお礼のつもりなのだろう。シンジはコラッタの気持ちを察し、その小さな花を受け取り礼を言う。

 

「ありがとう、コラッタ。」

『コラッタ!』

 

シンジに撫でられ嬉しそうに微笑んだコラッタはシンジの元を去っていった。野生のポケモン達に好かれる彼は、ポケモントレーナーとしての才能があるという証明だろう。当の本人は全く意識していないので自覚はないだろうが。

 

「それにしても、この森にこんなに綺麗な場所があったなんてね。」

『イブイ♪』

 

シンジとイーブイは予想外の展開に驚くと同時に感動する。特にイーブイは女の子でもあるためこういった綺麗な場所は好むであろう。

 

「またいつかここにこようか、イーブイ。」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも賛同して笑顔で頷く。

 

これから自分たちも長い旅をする中でこのような綺麗な場所を見つけることもあるだろう。そういった場所を見つける度に記憶に残し、この場所を思い出してマサラタウンに戻ってきた時にまたここに立ち寄ろうと誓った。

 

シンジたちは2人で初めて冒険したこの場所を記憶の中へと刻み込み、翌日から始まる旅に胸を躍らせポケモン達に別れを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、遂に10歳となったシンジがイーブイと共に旅に出る日がやってきたのであった。

 

「シンジ、本当に1人で旅なんて大丈夫?」

「心配しなくても大丈夫だよ、母さん。それにイーブイもいるから一人じゃないって。」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも元気よく答える。その様子をみて、彼の母親も大丈夫なんだろうと不思議と安心感を抱くことが出来た。

 

「そうね。イーブイ、シンジのことよろしくね。」

『イブイ♪』

 

イーブイも任せてと言わんばかりに胸を張って答えた。彼らはきっといいパートナーとして成長できるのだろうなと心の中から思うことが出来てホッとする母親であった。

 

「シンちゃん。」

「ルナ?」

「私が旅に出るのはもう少し先になるけど、すぐに追いかけて追い抜くから!覚悟しててよね!」

「旅先でルナと会うの、楽しみにしてるよ!でも、トレーナーとしてルナには絶対に負けないからね!」

 

シンジは幼馴染のルナと一時の別れを交わす。しかしトレーナーとして負けないと誓い、旅先での再会を約束した。

 

「シンジさん!」

「戻ってきたら必ず話聞かせてね!」

「コウタ、コウミ。もちろんだよ!必ずいい土産話を持ってくるから!」

 

彼の兄弟にも近いコウタ、コウミとも別れを告げる。彼らはまだ幼いためシンジのようにポケモンを持って旅に出ることが出来ない。そのためシンジは彼らのために旅で学んだこと、経験したことを戻ってきた時にいっぱい話すと約束した。

 

「シンジ君。」

「おばあちゃん?」

「ほらこれ。今朝またクッキー焼いたから、イーブイちゃんとお食べ。」

「ありがとう!おばあちゃん!」

『イブブイ♪』

 

シンジは先日のようにおばあさんからクッキーをいただきポケットにしまう。大好きなクッキーを貰えてシンジとイーブイは笑顔で感謝する。

 

「それとこれ、持っていきな。」

「え?これって……。」

 

おばあさんはシンジにクッキーとは違う何かが入った袋を渡す。その袋は見た目の割に結構重量があり、中身が気になったシンジはその中身を尋ねる。

 

「それはみんなからシンジ君のために集めたお金だよ。お小遣いとして使っておくれ。」

「え!?そんなの貰えないよ!」

「いいからいいから。私たちはシンジ君に旅を満喫してもらえればそれだけで満足なんだから。」

「おばあちゃん……みんな……」

 

見送ってくれたみんなを見渡すシンジ。みんなはそんな彼に微笑みかける。それを見たシンジは、みんな自分のためにここまでしてくれたのならタダで戻ってくるわけにはいかないなと決意を新たにする。

 

「僕、必ず一人前のトレーナーになって帰ってくる!イーブイと一緒に誰よりも強くなって帰ってくる!」

 

そんなシンジの姿を町のみんなは笑顔で見つめる。そして彼はその決意とみんなの温かい心を胸にしまい込み長い旅の一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼らは多くの事を経験することになる。共に旅をする多くの仲間たちとの出会い、因縁の相手との戦い、様々な地方での未知なる冒険、大切な人との出会い、未知の存在との遭遇、そしてまだ見ぬ高みの世界。

 

彼らは常に共に歩み、苦楽を共にし、成長することとなる。この話は、彼らがそんな旅をする前に経験した記憶の1ページである。

 

彼らが歩む未来は、まだ始まったばかりなのである。




次回実質的なカントーラストになります(タブンネ)

遂に明日はミュウツーの逆襲公開ですぞ!ヌシは15日の月曜に見に行く予定です。当時を懐かしみながら涙腺崩壊してきます。

そして今日はみんなの物語放送日!去年は最高級に面白かったので個人的にも楽しみです。
自己満足で始めたこの小説も、読者の皆に楽しみにしていると思っていただけたら嬉しいです。これからもヌシも頑張るので応援よろしくです!


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シンジとリーリエ、マサラデート!

リクエスト回その3です。サブタイトルは思いつきませんでした……。

とりあえず自分なりに頑張っていちゃつかせました。むむむ、やはりこういう回は難しいですな……。


カントー地方の旅が終わり、マサラタウンへと帰ってきたシンジとリーリエ。旅の疲れを癒すため、彼らは今日もマサラタウンでのんびりと過ごしていた。

 

そんなある日の朝、リーリエは1人ルザミーネに呼び出されある話を持ち掛けられた。

 

「お母様、私に用とは何かあったんですか?」

「ええ、あなたにちょっと用件……と言うか頼み事みたいなことがあってね。」

「頼み事ですか?」

 

リーリエは母親が自分に頼み事とは珍しいと思いながらルザミーネに用件を尋ねる。ルザミーネはその質問に頷いて率直に答えた。

 

「あなた、シンジ君とデートしてきなさい。」

「…………え!?」

 

予想外の回答にリーリエは思考停止気味に困惑しながら驚きの声をあげる。その単語を聞いただけでリーリエは自分でも分かるほど顔に熱を持った。

 

リーリエはルザミーネの突然な発言に困惑しながらも疑問を抱いていると、その疑問に答えるかのようにルザミーネが口を開いた。

 

「たまにはそういう日があってもいいでしょう。それに、あんまりのんびりしてると誰かに取られてしまうわよ?」

「!?お、お母様!何言ってるんですか!」

 

ルザミーネは意地の悪い顔でリーリエにそう告げる。その言葉を聞いたリーリエは慌てて声を荒げて返答してしまう。もはや母親の思惑通りの反応をしてしまっているリーリエである。

 

「冗談はさておき、偶にはシンジ君と2人で出かけるのも大切よ。カントーを旅してた時はゆっくり観光する余裕なんかなかったでしょう?アローラに戻ったらシンジ君、中々時間が取れなくなると思うわよ?」

 

ルザミーネの言葉にリーリエもハッとなり冷静に考える。

 

確かに自分は今までカントーを旅していた時は目先のジム戦やライバルとの戦いに集中していて二人きりの時間を楽しむ余裕はあまりなかったかもしれない。

 

それにこれからは島巡りに挑戦すると決めたためアローラにまた戻る予定だ。今までとは違い、シンジもアローラではチャンピオンとしての務めがあるためこれまでのような関係は難しくなるだろう。そうなれば会える時間も間違いなく今までより少なくなってしまう。

 

先ほどは意地の悪い様子でからかっていたルザミーネだが、この件は彼女なりに気を遣っての提案だったのかもしれない。

 

「……そうですね。確かにお母様の言うことにも一理あります。分かりました!私、頑張ってシンジさんを誘ってみようと思います!」

 

そう言ってリーリエは手をギュッと握りしめて決意する。ルザミーネもそんな娘の姿を見て優しい顔に切り替わる。

 

「ええ。頑張りなさい、リーリエ。」

「はい!ありがとうございます!お母様!」

 

応援してくれる母親に感謝の言葉を告げ早速シンジの元へと向かいリーリエは家を出る。娘の後ろ姿を見届けたルザミーネは心の中で思っていたことを口にした。

 

「こうでもしないと、積極的になりきれない2人じゃこの先進展しなさそうなのよね。」

 

そう言って第三者から見たらじれったい2人の様子を見て呆れて溜息を漏らすルザミーネなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母様にシンジさんをデートに誘うよう言われ家を出ましたけど……いざ誘うとなるとどう切り出していいかわかりません。普段であれば普通に会話できるのですが、一度意識し始めると緊張して会話すらできない気がします……。

 

恐らく今シンジさんはオーキド博士の研究所にいると思います。とりあえず一先ずはシンジさんの元に向かいましょう。

 

私がそう決めオーキド研究所に向かうことにしました。しかしその道中、見覚えのある人物たちの姿が見えました。その人物たちは私の姿を確認すると、女性の方が手を振りながら私の元へと走ってきました。

 

「リーリエ!」

「コウミさん!」

 

その人物とはコウミさんでした。もう一人の方は当然コウタさんです。

 

「コウミさんとコウタさんは今日も特訓してたんですか?」

「ううん。私たちはオーキド博士に用事があったからその帰り!」

「リーリエもオーキド博士に用でもあるのか?」

 

私はコウタさんにそう尋ねられたので、これまでの経緯を説明しました。

 

「そうなんだ。シンジさんならオーキド研究所の庭でポケモンのお世話をしてたよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「頑張ってねー♪」

 

コウミさんが私に声援を送りながらお母様のような笑顔で手を振られました。私はそんなコウミさんに顔を赤くしながら頷きました。

 

……それにしてもなぜお母様といい皆さんニヤニヤと笑うのでしょうか?

 

「?なんで頑張ってなんて言ったんだ?」

「……コウタには一生分かんないと思うよ。」

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウミさんに言われた通り私は研究所の庭にやってきました。ここには多くのポケモンさんが元気に遊んでいる姿が確認できます。殆どのポケモンさんがトレーナーの預けたポケモンさんだそうです。

 

「シンジさんは……」

 

私はシンジさんを探すために辺りを見渡します。するとそこには屈んでポケモンさんの頭を撫でている姿がありました。私は声を掛けるためにシンジさんに近づきました。

 

「シンジさん」

「リーリエ?どうしたの?」

 

私が声を掛けるとポケモンさんから手を離しシンジさんは立ち上がりました。頭を撫でられていたポケモンさん……ナゾノクサさんは笑顔のままその場を離れていきました。

 

「ごめんなさい、お邪魔してしまいましたか?」

「ううん、大丈夫だよ。それより僕に何か用事?」

 

シンジさんはそう言って心優しく私に用件を尋ねられました。

 

「えっと……その///」

「?どうしたの?」

 

肝心の用件を言おうとして緊張してしまい口籠ってしまう私に、シンジさんは首を傾げて疑問符を浮かべました。い、いつもと違って顔を見て話すことができません///

 

「あ、あの……もしよかったら、なんですけど……私と一緒に……その///」

 

私が重要な部分を告げようと――俯きながら――必死に声を絞り出そうとすると、シンジさんは疑問符を浮かべるのをやめ、先に声を掛けてくださいました。

 

「お出かけ?」

「え、えっと……はい///」

 

私はシンジさんの回答に赤面状態で頷いて答えました。シンジさんの優しさに救われましたが、自分から言い出せない自分自身が不甲斐ないです。

 

いや、それもこれもお母様がで、デートと言ったのが原因な気もしますけど……。

 

「うん、もちろんいいよ。僕も丁度リーリエと出かけたいと思ってたところだし。」

「え///そ、そうなんですか?」

 

シンジさんの想定外の返答に思わず一瞬だけ上ずった声をあげてしまいましたが、シンジさんにそう言われて私は少しうれしくなりました。

 

「早速出かける?」

「あっ、ちょっとだけ待っていただいてもいいですか?少し準備したいことがありますので……」

「うん、分かった。じゃあまた後で集合しようか。」

 

折角気遣ってくれたシンジさんのために、私もなにかしたいと感じたのでシンジさんに待っていただくことにしました。しばらくしたらまたここに集合ということになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジさん!お待たせしました!」

「うん、じゃあ行こうか。」

 

数時間後、丁度お昼前の時間帯にシンジさんと研究所にて集合いたしました。お出かけする準備は整えてきましたので準備万端です。……と思っていたのですが、シンジさんの次の言葉で焦ることになってしまいました。

 

「そういえばこれから行く場所は決めてる?」

「あっ……。その……ご、ごめんなさい……。」

 

そういえばシンジさんとお出かけできることで頭いっぱいだったので出かける場所まで考えていませんでした……。

 

言い訳になってしまいそうですが、私は男性と二人で出かける経験が一切なかったので肝心な部分を失念していました。

 

「だったら僕のおススメの場所に行ってもいいかな?」

「おススメの場所ですか?」

「折角だからリーリエにも見てほしいからさ。」

 

非は行く場所を考えてなかった私にありますので断る理由はありません。それにシンジさんの選ぶ場所であれば間違いはないと思います。なので私の答えは決まってます。

 

私はシンジさんの提案に賛成し、シンジさんの言うおススメの場所へと向かうことにしました。

 

「すみません。私から出かけましょうと誘ったのに……。」

「別に気にしなくていいよ。僕はリーリエと出かけられるだけで楽しいし。」

 

シンジさんはその後、「それに」と付け加えて照れくさそうにしながら言葉を続けました。

 

「その……男は好きな女の子をエスコートするものだって聞いたことあるからさ///」

 

私はその言葉を聞いて体の体温が上がっていくのがハッキリと分かりました。女の子は好きな人からそう言われるのに弱いものだと思います。

 

「そ、その///ありがとうございます///」

 

まさかシンジさんから直接そんな言葉を聞くとは思いませんでした。あまりの展開になんだかデートどころではなくなってしまいそうです。

 

「つ、ついたよ!」

 

シンジさんがそう言って案内してくださったのは、研究所の近くにある森でした。研究所の近くにこのような森があるのは知ってはいましたが、自分が立ち寄る機会はありませんでした。

 

聞いた話ではここには野生のポケモンさんも生息しているのだそうです。この森はポケモンさんが生活するには充分な環境が揃っているようで、カントー地方で見ることのできるポケモンさんの自然な姿が観察できるそうです。

 

「じゃあ行こうか、リーリエ。」

「はい!」

 

私はシンジさんの後についていき、一緒に森の中へと入っていきました。

 

話で聞いた通り、ここには色んな種類のポケモンさんを見ることが出来ました。今まで旅をしてきてあらゆるところで確認できるポケモンさんから、あまり見ることのできない珍しいポケモンさんまで、その種類は様々でした。あまり広い森には見えないのに、これだけの種類のポケモンさんがいるのはここの環境がどれだけ適しているかがよく分かります。

 

シンジさんの話ではもう少し先に見せたい場所があるのだそうです。これだけ多くのポケモンさんが見られるのに、それとはまた別に見せたいものがあるというのは一体何なんでしょうか。

 

私はシンジさんの見せたいものの正体を考えながら歩いていると、その先に木々の間から光が差し込んでいるのが分かりました。それは森の終わりを意味しています。

 

そしてその先を抜けると、驚くべき光景が私の目の前に広がっていました。

 

「こ、これは……」

「うん。ここがリーリエに見せたかった場所だよ。」

 

私の目に映った光景は、綺麗な白い花が辺り一面に広がっているお花畑でした。その光景はまるで現実とは思えないような光景で、まさに幻想的という言葉が相応しい場所でした。

 

特に先ほどの森と雰囲気がまるで違い、お花畑中央に木漏れ日のように光が差し込んでいるのがより一層美しさを際立たせているように思えます。

 

また、森で見たポケモンさんたち以外もこのお花畑で確認できました。ここにいるポケモンさんたちは誰もが笑顔で、活き活きとしている様子を見るとまさらにポケモンさんたち的には楽園に相応しい場所なのだと感じました。

 

「すごい……綺麗です……」

 

正直それしか言葉が浮かびません。マサラタウンの近くにこんなに綺麗な場所があるなんて思いもしませんでした。

 

「シンジさん、ありがとうございます。こんな素敵な場所を紹介していただいて、私嬉しいです!」

「リーリエが喜んでくれて僕も嬉しいよ。」

 

シンジさんはそう言って私を見ながら微笑んでくれました。私はこの人の優しさにどれだけ救われているんだろうと改めて感じ、心の中でもう一度深く感謝しました。

 

私はこの幻想的な光景に見入っていると、奥から大きな体のポケモンさんがこちら目掛けて走ってきました。そのポケモンさんはカントー地方ではよく見かけることのできるラッタさんでした。

 

しかしそのラッタさんは止まる気配がありません。どうしようと戸惑っていると、そのラッタさんはシンジさん目掛けて飛び込んできました。

 

「シンジさん!?」

「ははは!ラッタ!もう、くすぐったいってば!」

『ラッタ!ラッタ!』

 

シンジさんはそのラッタさんを受け止め、ラッタさんは嬉しそうにしながらシンジさんに頬ずりをしています。イマイチ状況を掴めていない私に、シンジさんは説明をしてくれました。

 

「このラッタはね、僕が旅に出る前に怪我しているのを助けたことがあるんだ。あの時はまだコラッタだったけど、またここに立ち寄った時にいつの間にか進化してたんだ。」

 

その時に助けたコラッタさんは未だにシンジさんの事を覚えていて、ここに来るたびにこうやって熱いスキンシップをされるのだそうです。野生のポケモンさんにもこれだけ懐かれるシンジさんは、元からポケモントレーナーとしての素質があったという事なのでしょう。

 

ラッタさんはシンジさんへの久しぶりの挨拶を終えると、シンジさんから離れその場を後にしました。どこか名残惜しそうにしている印象でしたが、それだけシンジさんの事が好きだという事でしょう。

 

「あの……シンジさん!」

「ん?どうしたの?」

 

私は言い出すなら今しかないと思い、家に戻って準備してきたものをシンジさんに差し出しました。

 

「そ、その……お弁当を作ってきたのでよかったら///あの……その///」

「え?リーリエ、お弁当作ってくれたの?」

 

シンジさんの返答に私は俯きながら頷き返事をしました。シンジさんの顔を確認すると、シンジさんも顔を赤くしているのが分かりましたが、シンジさんは私の作ってきたお弁当を受け取り笑顔で答えてくれました。

 

「ありがとう。とっても嬉しいよ。じゃあ折角だからここで一緒に食べようか。」

「は、はい!」

 

私たちはこの綺麗なお花畑をバックに、お弁当を食べることにしました。

 

最初シンジさんに喜んでいただけるのか不安でしたが、シンジさんは笑顔で「とても美味しいよ」と言っていただけました。その言葉は私にとってなによりも嬉しく、そして何よりも心に残る言葉でした。

 

最初はデートと言われて緊張から頭の中が真っ白になってしまいましたが、いざシンジさんとお出かけしてみるといつもと変わらず2人で楽しい時間が過ごせました。

 

シンジさんに案内していただいたこのお花畑はとても美しく、私の脳内にしっかりと刻み込まれました。でももう一度来るとしたら、やっぱりその時もシンジさんと一緒がいいです。私が方向音痴、というのも確かに理由の一つかもしれませんが、シンジさんと一緒だと絶対に何倍も楽しむことが出来そうだからです。

 

私たちはお花畑で長くも短くも感じる楽しいひと時を過ごし、家に帰ることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はシンジさんと共に私の家まで帰ってきました。ただいま、と挨拶をしようとする私ですが、その時慌てた様子でお母様が玄関までやってきました。

 

「リーリエ!大変よ!」

「どうかしたんですか?お母様」

 

私は慌てている様子のお母様にそう尋ねると、お母様は早くこっちにきて私たちを誘導しました。その様子からただ事ではないと思い、シンジさんと共に急いでお母様が誘導している場所までやってきました。

 

するとそこはテレビ電話の置いてある部屋でした。誰かと電話しているのかと思い覗き込むと、そこには私のよく知る人物が映っていました。

 

「お兄様!?」

『リーリエ、久しぶりだな。』

 

そこには私のお兄様……グラジオお兄様の姿が映っていました。しかしお兄様は喜んでいる場合ではないなと、慌てた様子で語り掛けてきました。

 

『シンジ、リーリエ、マズい事になったかもしれない。』

「どうしたの?」

 

シンジさんがお兄様にそう尋ねます。するとグラジオお兄様から、衝撃の事実が告げられました。

 

『あいつらが……UBがまた来るかもしれない……』




カントーでの話も終わり、次からいよいよ新しい章へと入っていく準備に取り掛かります。後2話ほどはカントー編扱いですが、間もなくハウ君やヨウ君も出す予定です。その辺りは後付け設定も含みますのでご了承願います。

直前までもう一つの案と展開をどちらにするか悩みましたが折角なので前回のリクエスト回と繋げる形にしました。もう一つの案はなんか祭でも開いてデートさせようかと思いましたが、話を持っていく展開が思いつかず断念しました。

ミュウツーの逆襲はやっぱり最高です。初期からポケモンの劇場版は見てるので懐かしさを含め感動しました。もう懐かしさを感じる年なんだなぁってつくづく思いますね……。
ただ一つ心残りがあると言えば……子どもたちがやかましかったです。それは毎年のことなんですけども……。来年テレビ放送した際に家でゆっくりと見れる時を楽しみに待ちます、はい。


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アローラの危機再び!迫り来る脅威の影!

今回は普段より少し短めですが、アローラであった話を少し書いて次章の準備をしたいと思います。アニメのグラジオは原作に比べればまだ大人しいきがします(言動的な意味で)

二次創作なので当然ながら(?)オリジナル設定を組み込んでおります。またなんか設定も無理やりすぎる気がしますが、その辺りもご了承願いたく思います。

(´・ω・`)「こいついつも読者様にお願いしてるな」


アローラにおいて最も経済力を持ち支えとなっている組織、エーテル財団。かつてはとある事件にて信頼性が失いかけてしまったが、元代表を務めていたルザミーネ代表の息子であるグラジオが後継となりかつての繁栄を取り戻していた。

 

現在は裏で資金源としても利用していたポケモンの保護を真っ当に行う様になり、ポケモンに対する非道な実験も行わなくなった。

 

そして現在はある存在について詳しい研究を行っている。その存在とはこの世界に突如姿を現した謎の生命体、UBのことである。

 

UBはかつて人間の脅威となりえる存在であり、元代表のルザミーネもそのUBの一体であるウツロイドに魅了され理性を失ってしまったことがある。再びその悲劇が繰り返されないためにも、彼らの事詳しく知る必要があった。

 

あの事件以来UBの住む世界と繋がっている空間、ウルトラホールが開くことはないが、それでもまたいつUBがこの世界にやってこないとも限らない。いつ起こるか分からない非常事態のためにも、彼らのことを知っておくのはアローラにとっても必要なことだ。

 

そしてグラジオはウルトラホールの研究に協力してもらっているアーカラ島の空間研究所に勤めているバーネット博士の元を訪れていた。

 

「バーネット博士」

「来たわね、グラジオ」

 

グラジオを出迎えてくれたバーネットへと近寄り、2人は握手を交わす。空間研究所は元よりウルトラホールについての研究を進めていた。その中でも彼にとっても信頼のおける人物でもあるバーネットに協力を仰いだところ、彼女は快く承諾してくれた。

 

「研究の調子はどうですか?」

「そうね。まだ分からないことは多いけど、彼らについていくつか分かったことはあるね。」

 

そう言ってバーネットは研究の成果の一部をグラジオに伝えた。

 

まず第一に分かったことは、彼らは自分の意思からこの世界に来たわけではないという事だ。かつてルザミーネを精神支配してしまったウツロイドだが、彼らはその事件以降に姿を現そうとはしていない。それどころかウルトラオーラ――UB達から探知できるオーラの事――を感知できない。

 

もし彼らが意図的にアローラにやってきて人間たちに害を成そうとする存在であるのならば、彼らは頻繁にこの世界に姿を現しているだろう。なぜなら彼らは自らの力でウルトラホールを通ることのできる数少ない存在だ。そんな彼らがこの世界に危害を加えようとするならば、これまで何度もアローラを襲撃しているに違いない。

 

以前はアローラにウルトラホールが稀に開かれそこからUBがやってきていた。その際に島の守り神たちと激戦を繰り広げたという記録が残っている。激戦の結果決着は着かなかったものの、UBたちはそれ以上の危害を加えることなく自分たちの世界に戻っていったと伝えられている。目的は不明だが大人しく帰ったことを考えると、彼らはアローラへの侵略が目的ではなかったのかもしれない。

 

それらの記録も含め推測するに、彼らは自らの意思でこの世界にやってきたわけではないのだと考えられる。その辺りについてはこれからも詳しく調べていきたいとのことだった。

 

第二に、UBはポケモンの一種であるという事だ。

 

異質で異形な姿をしたUBたち。事件の際に彼らはウツロイドの他にもこちらの世界に突如として侵攻していた。

 

今回の目的も現在不明だが、彼らはアローラ各島のしまキングたちや守り神と激しい交戦を行っていた。その際に彼らの僅かに残したウルトラオーラや体の一部から、彼らの遺伝子を研究することが出来た。

 

そして彼らの遺伝子を研究し分かったことは、彼らも我々の知るポケモンと同一の存在であるという事だ。

 

厳密には我々の知るポケモンと全く同じ存在と言うわけではなく、別の世界に住むポケモンであるという事だ。

 

色々仮説を立てると全く別の独自の進化をしたポケモン、誤った方向へと進化してしまったポケモン、別の世界線を辿り環境の異なる場所で進化したポケモンなどが挙げられるが、詳しい事は未だ不明だ。これからも彼らの事を研究する必要が大いにあるだろう。

 

彼らは我々にとって脅威となりえる対象ではある。しかし少なくとも彼らも我々人類やポケモンと同じように考え、生きている生き物なのだ。一概に敵として認識するのは間違いなのかもしれない。

 

そしてもう一つ重要なことがあるとバーネットが説明する。

 

UBの存在について追っていると、かつてアローラにて起きたある伝説の文献に辿り着いたのだ。バーネットはその文献に書かれていたことをグラジオに伝えた。

 

 

 

―――

 

 

 

かつてアローラと対となる世界にかがやきさまと呼ばれる光の神が存在していた

 

そのかがやきさまの放つ光はウルトラホールを通じアローラ全土にもその光をもたらし生きとし生けるものに更なる力を与えていた

 

しかし先人たちの犯した過ちによりかがやきさまから光は失われて荒神となってしまった

 

その世界の住人たちは自分たちの持つ科学力によりかがやきさまの力を抑え沈静化するも闇の世界となり長い時を光のない世界で過ごすこととなった

 

それ以降アローラは光の世界として存在することとなり、知られざる闇の世界が存在することは誰にも知られることはなかった

 

 

 

―――

 

 

 

残された伝承にはこの様な内容が記述されていたようだ。

 

UB達が守り神たちに匹敵する力を得ているのは、もしかするとそのかがやきさまの力が関係しているのではないかとバーネットは推測している。もしそうであるならば、再びアローラに2年前の悲劇が訪れる可能性は十分ある。今の内にUBたちの対策を練る必要があるだろう。

 

「グラジオ。エーテル財団の例の開発はどうなってるの?」

「あの開発はもう間もなく完成です。お望みであるならばお見せしますが」

 

バーネットはグラジオの言葉に頷きエーテル財団へと赴くことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってエーテル財団が活動しているエーテルパラダイス。そしてここはエーテルパラダイスの地下だ。

 

グラジオに案内され、バーネットは例の開発が行われているという地下のある部屋に向かう。何度かエーテルパラダイスには顔を出している彼女だが、ここの開発に立ち入るのは今回が初めてである。本来関係者以外の立ち入りを禁じているため仕方のない事だ。

 

「ここです。」

 

グラジオは案内した部屋の扉に近づく。するとその部屋の扉が自動で開き、中には複雑な機械と資料が乱雑に置かれていた。その部屋の様子から誰しもが研究室と見て分かる部屋であった。

 

「これが例のものね」

「はい」

 

バーネットが見つけたのはモンスターボールにも似た球体のカプセルであった。しかしそのボールがモンスターボールと違うのは、青くネットのような模様が描かれていた。それはまるで、UBたちの世界に繋がっていると言われているウルトラホールのようでもあった。

 

「これがUBたちを捕まえるために開発した新型のモンスターボール。名づけるならウルトラボールです。」

 

そう、これこそがUBたちを唯一制御することのできるアイテム、ウルトラボールである。エーテル財団が開発していた例のものとは、このウルトラボールのことだったのだ。

 

ウルトラボールは通常のポケモンを捕まえるには向かず、モンスターボールに比べ捕獲が難しい。しかしその分、UBたちの遺伝子などを解析し、彼らの構造をボール内部に組み込みUBを捕らえることにのみ特化した最新のモンスターボールだ。

 

UBはとてつもなく強力な存在だ。彼らに悪意はないとしても、この世界に害を及ぼしてしまう可能性は否定できない。であればUBによる被害が拡大する前に、彼らの力を制御する必要があったのだ。その回答こそこのウルトラボールなのである。

 

「大量生産することは出来る?」

「可能です。ただ、一つだけ問題点があります。」

 

バーネットの質問に肯定で答えるものの、グラジオは難しい顔をし唯一の問題点を挙げた。

 

「UBは未だ謎の多い未知の存在です。しかも俺たちには想像がつかないほどの驚異的な力があります。」

 

グラジオの物言いに、バーネットもその問題点がなんとなく察しがつき彼より先に答える。

 

「つまりウルトラボールの能力を検証するにはUBと戦うしかなく、実際に機能するかどうか試すことができない。そういいたいのね?」

 

バーネットの回答にグラジオも頷くことで答える。だがその事であれば心配はいらないとバーネットは明るく答えた。

 

「その点であれば心配いらないわ。」

「バーネット博士?」

「これはあくまでUB出現時の緊急手段にしかすぎない。一時的にでもUBを無力化できれば私たちにも猶予が生まれる。必要なことはUBの力量を把握し、UBたちの脅威を抑えること。」

 

バーネットはその後「それに」と言葉をグラジオを見つめた。

 

「私たちには、頼りになるポケモンたちがいてくれるでしょう?」

「……ふっ、そうですね」

 

グラジオはバーネットの言葉で悩みが吹っ切れいつものキザなポーズをとり自分の相棒が入ったモンスターボールを取り出し見つめた。悩むなどいつもの自分らしくないなと感じ、相棒と共に強くなるために歩んでいたかつての自分を思い出した。

 

そんな時、エーテルパラダイスに警報が鳴り響く。

 

「!?一体なんだ!」

「大変です!グラジオ代表!」

 

慌てた様子を見せるグラジオの元に無線が届く。グラジオがその無線を出ると、無線から出た相手は秘書のビッケであった。

 

グラジオがビッケに何があったのか尋ねると、彼女の口から驚きの事実が告げられた。

 

「ウルトラオーラの反応を検知!ウルトラホールの出現を確認しました!」

「何だと!?」

 

いつかは来るかも知れないと不安を抱いていた事態が最悪のタイミングで起きてしまった。予期していたとはいえ、まさかUBの対策をとっている間にこの様な事態が起きるとは思わなかった。

 

グラジオは緊急の事態に対応するため、ビッケにそのウルトラホールがどこに現れたのかと尋ねる。

 

「場所はアーカラ島!ハウオリシティの上空です!」

 

グラジオとバーネットは、急ぎエーテルパラダイスを出立しハウオリシティの空間研究所へと帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如ハウオリシティへと出現してしまったウルトラホール。グラジオとバーネットは状況を確認するためにハウオリシティの空間研究所に戻った。

 

「状況は?」

「バーネット博士!出現したウルトラホールに未だ動きはありません。ウルトラオーラにも動きはなく一定数を保ったままです。」

 

ハウオリシティにウルトラホールが出現してしまい焦ったバーネットであったが、研究員のその報告を聞き一先ずは安心する。

 

ウルトラオーラは大きくなればなるほどUBに近づいているという証明になる。その数値が大きくなればそれはUBがこの世界へとやってくる前兆となる。

 

しかし現在そのような動きは見えない。であるならば少しでも対策する時間はとれるだろう。

 

だが当然ながらウルトラホールが現れた以上油断することは出来ない。ウルトラホールの出現=UBの襲来にも繋がる。いつ彼らがこの世界に姿を現すかは予想できない。彼らの脅威を身をもって知っているため、なにが起きてもいいように今の内にすぐにでも手を打つべきであろう。

 

「……背に腹は変えられないわね。グラジオ、すぐに彼らに連絡して。」

「……あいつの力を借りるんですか?」

「この際仕方ないわ。彼らには悪いけど、アローラに再び危機が訪れているなら最善の策をとるべきよ。」

 

バーネットの言葉にグラジオは不本意ながらも同意する。アローラ全土に関わる危機ともなれば自分の感情だけで物事を判断するのは愚かだ。強力なUBに立ち向かうためには1人でも強いトレーナーがいる方がいいだろう。

 

特に彼はこのアローラ地方最強と言われるトレーナー、チャンピオンである。多くの人が目標としている彼がいれば、戦力だけでなくトレーナーたちの士気も自然と高まるだろう。UBとのバトル経験もある彼や現在の四天王たちがいれば戦力として充分すぎるぐらいだ。

 

「……分かりました。今すぐあいつらに連絡をとります。」

「お願い。私はククイ君や四天王、しまキングたちに協力を要請しておくわ。一度対策を練りましょう。」

 

バーネットはそう言ってすぐに研究所のみんなに指示を出した。自分も早くしなくてはと彼らに連絡をとるために行動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラジオはすぐにカントー地方にいるシンジ、リーリエに連絡をとった。グラジオから伝えられた事実に2人は冷や汗を出し慌てた様子を見せる。

 

「グラジオ!それって本当!?」

『ああ。今のところ奴らは姿を見せていないが、ウルトラホールが消えないことを考えると恐らく遠くない内に現れるだろう。』

「そ、そんな……。またウツロイドさんたちが?」

 

リーリエは過去にトラウマとなってしまった悲劇を思い出す。再びウツロイドたちUBが現れてしまえば彼の神経毒にやられかつての母みたいに自らの欲望に囚われるものも出てきてしまう可能性がある。状況によっては一刻の猶予もないだろう。

 

グラジオは自分たちが想定していた周期よりも早いと語る。昔彼らが襲撃してきた時からは大分年月が経過している。ウルトラホールの奥で何か良からぬ事態が発生しているのか、それともアローラに大きな何かが起きようとしているのか。

 

いずれにしても今回の事態を放置しておくのはあまりにも危険すぎる。すぐにこの状況を打破するための戦線を整える必要がある。

 

「分かった。。僕たちもすぐにアローラに戻るよ。」

『すまない。頼んだぞ。』

「はい!任せてください!お兄様!」

『……ふっ。逞しくなったな、リーリエ。』

 

グラジオはビシッとポーズを決め、どこか嬉しそうにビデオ電話を切った。状況はどうあれ親友や妹に久しぶりに会えるからか、それとも妹の成長が嬉しいからか。彼の場合恐らくその両者であろう。

 

「僕たちもすぐアローラに向かおう!」

「はい!」

 

想定とは違う形ではあるものの、彼らは自分たちが出会った土地、アローラに再び帰還することにしたのだった。




バーネット博士は原作だとダーリンとか言っていた気がしますが、ここではアニメのように基本的にはククイ君やククイ博士呼びで行きたいと思います。グラジオは年上に対しては割と敬語使うようなイメージ。

それにしてもまさかシャワーズが対面で苦手なアマージョとバックの珠フェローチェに勝てるとは思いませんでした。熱湯の火傷率3割は絶対7割から9割よね。外す鬼火より信頼できます。

個人的にはスカーフエーフィの素晴らしさを皆さんに伝えていきたいです。
ブイズの苦手なメガバシャやメガミミロップ、フェローチェ(襷は知らん)に対面で勝て、臆病最速にすることで初手竜舞で甘えてきたメガリザXや意地っ張りメガマンダに勝てます。少なくともヌシが相手したメガマンダは6体中5体がノータイムで初手竜舞してきたうえに全て準速でした。

くさむすびを持たせると初手脳死竜舞のメガギャラやカバも2ターン使って倒せますし、稀にスぺレで見るメガスピアーの上をとれる貴重なポケモンです。当然スカーフヘラクロスやメガゲンガーも上から叩けて、ジャラランガもマジカルシャインでD無振りジャラランガを高乱数1発で持っていけます。多分ニンフィア見てるので無暗にZは撃てないのではないかと思いますので万一耐えられても自ターンで返り討ちにできます。交代されたり惜しまずZ撃たれてもニンフィアの石火で縛れます。いざ最速スカーフエーフィは使ってみるとハマりますのでオススメです。技スペースが厳しいですが、トリックを採用するとラッキーやハピナスにも有利になれます。ヌシは挑発ブラッキーに任せてエーフィはフルアタにしてますが。

最近やっているスぺレでは初手カプ・ブルル(鉢巻や草Zブルルのウッドハンマーは物理特化ブラッキーでも受けきれません)で詰むので大半はスカーフブースターで採用してます。もしピンクのピースしてる変態ブイズ使いに出会ったらお手柔らかにお願いします。ヌシは意図的な切断は絶対しませんが、長考することは多いのでその辺はお許しください。

ブイズのことになると遂熱く語ってしまうヌシですが、これからもよろしくしていただけると幸いです。

次回はハウ、ヨウの登場を予定しております。いつぞやも言ったようにまた後付け設定ですが楽しみにしていただけると嬉しいです。

ではでは!ノシ


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新しい出会い、次なる舞台へ!

暑くてしんどいよ、パトラッシュ

パト「知らんがな……」



ヌシは常日頃ブイズの全タイプ追加が来ないかと願ってはいます。しかし、最近になって重要なことに気が付いてしまったのです。

もしブイズが全タイプ追加されれば…………ブイズの厳選が一向に終わらずヌシは厳選に時間を割きすぎて過労死するのではないだろうか?


グラジオから緊急の連絡が届き急ぎアローラ地方へと戻ることとなったシンジとリーリエ。マサラタウンでお世話になったオーキド博士を含む人々たちと別れの挨拶を交わし、カントー地方の港であるクチバシティにやってきていた。

 

ルザミーネは荷物を纏めてからアローラに向かうためシンジたちとは別行動だ。今回は突然の出来事であったためシンジとリーリエを先に行かせるべきだと判断したのだ。

 

「もう行くんですね」

「寂しくなっちゃうなー」

 

2人の船出にコウタとコウミ、それから海の管理をしているカエデが立ち会ってくれた。コウタとコウミは名残惜しそうに2人に別れを告げる。

 

「うん。このままじゃアローラが危ないからね。」

 

コウタとコウミもシンジたちの事情は聞いているため2人を引き留めることが出来ない。ならば寧ろこんな時こそ2人の事を笑顔で見送り勇気づけてあげようと僅かに零れた涙を拭った。

 

「カエデさん、態々すいません。私たちのお見送りなんて」

「そのくらいいいのよ。あなたたちにはお世話になったんだもの。」

 

カエデは気遣うリーリエの言葉に気にしなくていいと首を振る。そしてカエデはリーリエから預かったモンスターボールを手にして言葉を続けた。

 

「リーリエちゃん。ハクリューは私が責任を持って預かるわ。だから安心して。」

 

カエデの言葉にリーリエは「ありがとうございます」と頭を下げて感謝する。カントーリーグのためにハクリューを再び仲間にしたリーリエだが、まだ仲間のハクリューやミニリュウたちが心配だという事でもう一度預けることにしたのだ。

 

その件についてはハクリューも同意し、もう一度いつか必ず会おうと約束したので成長した彼に再会する日を夢見てリーリエとハクリューは別れることを決意した。

 

「シンジくん、リーリエちゃん。向こうに戻っても元気でね。」

『はい!お世話になりました!』

 

シンジとリーリエは同時にカエデに感謝の言葉を伝える。その後、コウタとコウミも続いてシンジ、リーリエに再び別れの言葉を伝えた。

 

「シンジさん、リーリエ。何かあったらいつでも呼んでください!」

「私たちはこれからも旅を続けるけど、2人に呼ばれたらすぐに助けに行くから!」

「ありがとう、2人とも。」

「また必ずお会いしましょう!」

 

4人はまた再会しようと誓いあいそれぞれ交わす。お互いまた会った時には全力でバトルしようと約束をして。

 

そして見送ってくれた3人に手を振りシンジとリーリエは船へと乗り込む。もう間もなく出航のためクチバに船の汽笛の音が鳴り響く。

 

そんな時、声を荒げながら船に向かって走ってくる2人の少年の声がした。

 

「あー!もう船出ちまうじゃねえか!ハウ!お前がのんびりマラサダ買ってるから!」

「だってー、カントーでマラサダ売ってるところなんて滅多にないからー、どんな味なのか気になるじゃん?」

 

ハウと呼ばれた少年は後ろで結った緑の髪に浅黒い肌。黒色のTシャツを着用しており、ズボンはオレンジ色の花柄模様がついた黄色い短パンを履いている。

 

もう一人の少年は、黒のベースボールキャップ同じ黒の短めの髪。白と青のボーダーシャツ、赤いリブのついたハーフパンツを着用している。。

 

「だからってマラサダ選ぶのに1時間もかかんなよ!出航の時間に間に合わなかったらどうすんだよ!」

「大丈夫だよー。あっ、ヨウもマラサダ食べるー?」

「後でいただきます!」

 

ヨウと呼ばれた少年が船の出航の時間に間に合うかどうかという瀬戸際で焦っている一方、ハウと呼ばれた少年はその真逆で一向に焦る気配を見せない。対照的な2人の姿にコウタたちも唖然と見つめているしかなかった。

 

船の汽笛の音が徐々に大きくなり、出航間際となる。ヨウとハウは徐々にスピードを上げて船に乗り込む。この2人の姿には流石の船員も開いた口が塞がらないといった様子だ。

 

2人が乗り込んだすぐ後に船は出航した。間一髪の状況にヨウは安心したのと同時に疲れがどっと溢れかえる。

 

「はぁ……はぁ……なんとか間に合った……」

「ね?言ったとおりでしょー?」

「お前は黙ってろ……」

 

未だに緊張感を感じられずのほほんとしているハウに対し、ヨウは肩で息をして両手を床につけ息を整える。間に合うかという焦りと走ってきた疲労で体力も限界に近いため仕方がないだろうが。

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

「ぜぇ……はぁ……だ、大丈夫です。」

 

リーリエはヨウの事が心配になり声をかける。どう見ても大丈夫ではないが、ヨウは心配そうに見ているリーリエに対し大丈夫だと告げる。息が絶え絶えで他者から見れば死にかけているようにも見えるのだが。

 

「あ、あの。水貰ってきたのでよかったらどうぞ。」

「あ、ありがとう……ございます……。」

 

あまりの姿に心配になったシンジは船員から水を貰いヨウに手渡した。ヨウもシンジからその水の入った容器を受け取り水を飲み干す。

 

「……はぁ。だ、大分落ち着いてきました。ありがとうございます。」

 

水を飲み落ち着きを取り戻したヨウは立ち上がり2人に礼を言う。2人もそんなヨウに気にしなくていいと伝える。

 

「良かったねー、ヨウ」

「誰のせいだ誰の!」

 

この状況を作り出したものの自覚をしていないハウにヨウは怒鳴る。しかしハウはそれでも笑顔を絶やすことはなかった。何を考えているのか全く分からないが、ある意味ただものではないかもしれないとシンジたちは感じるのであった。

 

「……あー!?」

「っ!?どうした!ハウ!」

 

突然大きな声を出すハウにビクッと驚きながらヨウは何事かと尋ねた。しかし、そんなハウから予想外の言葉が返ってきた。

 

「ごめーん、ヨウ。マラサダ全部食べちゃったー」

 

突然大声を出したから大事かと思ったシンジとリーリエだが、ハウの発言になんだと溜息をつく。しかしヨウは2人と違うようで……。

 

「なっ!?ハウ!お前、さっき俺にもくれるって言ったじゃないか!」

「ごめんごめん。アローラでまた買ったらすぐあげるからさー」

 

ヨウにとってはとても重要なことであったようだが、2人にとっては別に気にすることでもない気はすると半分置いてけぼり状態で漫才のようなやり取りを繰り返す2人の姿を見つめている。

 

その様子からなんだかんだいいつつも仲は良いのではないかと思うシンジたちであったが、2人から気になる単語が出てきたためそのことについて尋ねることにした。

 

「ねぇ、一ついいかな?」

「なーにー?」

「君たちはもしかしてアローラに向かう予定なの?」

「うん、そーだよー」

 

少々ずれたハウに突っ込みつかれたのかヨウは少し息を整えている。その横でハウが未だにニコニコと笑顔を絶やさない状態で腕を後頭部で組みながら軽い感じで答える。

 

「……すみません。今はアローラには近づかない方がいいと思います。」

「どうしてー?」

 

リーリエが2人に忠告すると、ハウは何故なのかと尋ね返した。シンジとリーリエは、現在アローラで起こっている現象をハウとヨウに包み隠さず答える。

 

現在アローラにてウルトラホールが出現してしまっていること。自分たちがその事件収集に向かいアローラに赴こうとしていること。ハウとヨウはさっきまでの軽い様子は見られず2人の話を真剣に聞いていた。最もハウは笑顔を絶やすことはなかったが、それでも今回の出来事はただ事ではないというのは理解しているようだ。

 

2人も2年前にアローラで起こった出来事を部分的にではあるが知っていたそうだ。

 

「君ってハラさんの孫だったんだね。」

「うん。ミヅキとは兄妹みたいなものなんだー。まあ親は違うんだけどねー」

 

どうやらハウはミヅキと同じで元しまキングのハラの孫だそうだ。親が違うというハウだが事情は人それぞれあるため深くは聞かないようにしたが、そのことに関してはミヅキもハウ自身まったく気にしていないようだ。

 

ヨウはハウとミヅキの幼馴染のようだ。小さいころから3人一緒にいたが、ハウがカントーやジョウトに旅に出ると言い出したため自分もついて行きトレーナーとしての腕を磨いていたそうだ。

 

「そんな話聞いたら余計アローラに帰らないわけには行かないよー。」

「そうだな。俺たちも伊達に修行してたわけじゃないし。」

「ウツロイド達UBは危険な存在なんだよ。それでも行く?」

 

シンジの質問に2人は頷いて答える。本来彼らは止めるべきなのかもしれないが、戦う意思のあるトレーナーを止めることは出来るはずもなく、2人のアローラへの同行を共にしてくれる2人の存在はシンジとリーリエにとっても頼もしいものである。

 

話がまとまったところで、ハウが「あっ」と思い出し自己紹介をはじめた。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったねー。おれねー、ハウっていうんだー。」

「さっきも言ったけど俺はヨウ。よろしくな。」

「僕はシンジ。よろしくね。」

「私はリーリエです!よろしくお願いします、ハウさん!ヨウさん!」

 

お互いに自己紹介を終えると、今度は2人の名前を聞いたヨウが思い出したことを口にした。

 

「シンジとリーリエ?もしかしてミヅキが言ってた2人って……」

「多分僕たちの事だと思うよ。」

 

ヨウと幼馴染であり、ハウとは兄妹にも近い関係であるハウは定期的にミヅキと連絡をとっていたらしく2人の事も知っていたようだ。

 

「ってことはシンジはアローラ初代チャンピオン?すっごーい!」

 

シンジの正体を知ったハウがテンションをさらにあげてはしゃぎ始める。やっぱりトレーナーであるため憧れのチャンピオンに会えれば誰しも嬉しいものであろう。

 

その時あることを思いついたハウが、シンジに一つの提案をしたのであった。

 

「じゃあさじゃあさー!おれとバトルしてよー!チャンピオンに会ったらバトルがしたいって思ってたんだー!」

 

ハウが船に当然のように設備されているバトルフィールドを指差してそういった。アローラの危機のこのような呑気な考えは少々問題かもしれないが、カントーの反対側に位置しているアローラに着くまでにはまだまだ時間がかかる。早くても後日の朝に到着する予定だ。

 

それにUBと戦う以上、間違いなく苦戦は免れない。広いアローラで戦うことになるため常に彼らの事を守ることなどできない。この戦いに参加する以上自分の身は自分で守るしかないのだ。そんな戦いに参加する彼らの力量は知っておくに越したことはない。

 

チャンピオンと知ってのバトルの申し出は断るべきなのだろうが、今回は事情が事情であるため寧ろバトルする必要があるだろう。故にシンジはこのバトルの申し出を断ることはせず、あえて受けることにしたのだった。

 

「いいよ。だけど条件があるよ。」

「条件ー?」

「僕とリーリエ、ハウとヨウのタッグでバトルするんだ。この先のために2人の腕前は知っておきたいし、UBと戦う際にタッグバトルでの経験は必ず役に立つからね。」

 

強力なUBとの戦いでは協力して戦う事も必ず出てくる。その際にパートナーと息を合わせることは間違いなく必須事項だ。そのためにここで普段できないタッグバトルは経験しておくべきだと説明し、2人もその条件を呑みリーリエも承諾した。

 

そして4人は用意されていたバトルフィールドへと移動し、タッグバトルを開始するのだった。

 

「ルールは1匹ずつのタッグバトル。戦闘不能にならなくても、僕が判断したら強制的にバトルは終了。いいね?」

 

シンジの説明したルールに3人は頷く。

 

シンジが何故戦闘不能までバトルをするつもりがないのかと言うと、理由は船の設備に関係している。

 

ここは他の地方へ移動するための連絡船であり、豪華客船のように充実した設備にはなっていない。そのため、緊急時のポケモンセンターは配備されていないのだ。そんなタイミングでポケモンたちが深手を負ってしまうと対処ができない事態に陥ってしまう可能性がある。

 

ヨウ、ハウ、リーリエもシンジの意図を理解したうえでこのルールに承諾してくれたのだ。

 

「じゃあ僕のポケモンはこの子だよ!」

『ブスタ!』

 

シンジが出したのはほのおタイプのブースターだ。それを見てハウとヨウも自分のパートナーポケモンを繰り出すのだった。

「じゃあおれのポケモンはー、フクスローだよー!」

『フクス』

「俺はこいつだ!行くぞ!ニャヒート!」

『ニャッヒー!』

 

ハウはアローラ初心者用ポケモン、モクローの進化形のフクスロー。ヨウが繰り出したのが同じくアローラ初心者用ポケモン、ニャビーの進化形のニャヒートだ。どちらも体つきが良く威圧感を放っており、とてもよく育てられていることが見ているだけでも伝わる。

 

「では私はこの子です!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギソウだ。フシギソウはカントー初心者ポケモンの一体、フシギダネの進化系だ。

 

ほのおタイプのニャヒートとくさタイプのフクスロー、同じくほのおタイプのブースターとくさタイプのフシギソウの対決。通称御三家と呼ばれるポケモン3体の対決となり、両チーム同じタイプであるため条件も五分である。

 

「おれからいくよー!フクスロー!このは!」

『スロー』

 

フクスローはこのはによりブースターとフシギソウを同時に狙い撃つ。相手を同時に攻撃することは決して簡単なことではなく、その動きだけでフクスローが鍛えられていることがよく分かる。

 

「ブースター!かえんほうしゃ!」

『ブースタ!』

 

ブースターはかえんほうしゃを放ち全てのこのはを迎撃する。くさタイプに対してほのおタイプは効果抜群であるため適切な判断だ。

 

「フシギソウさん!エナジーボールです!」

『ソウソウ!』

「ニャヒート!こっちもかえんほうしゃで応戦だ!」

『ニャヒ!』

 

リーリエはこのはを完全に迎撃したことを確認すると、すかさずエナジーボールによる反撃の指示を出す。それに対しニャヒートは先ほどブースターが行った方法と同じようにかえんほうしゃでエナジーボールを相殺する。

 

「今だ!ニトロチャージ!」

『ニャット!』

『ソウ!?』

 

エナジーボールを見事迎撃したニャヒートは、ニトロチャージで発生した煙の中を飛び出しフシギソウに攻撃する。フシギソウは僅かに対応が遅れてしまい、ニャヒートのニトロチャージを受けてしまう。

 

さらにニトロチャージの追加効果により、ニャヒートは素早さが上昇し調子を上げていく。

 

「フシギソウさん!大丈夫ですか?」

『ソウ!』

 

リーリエの声に反応しフシギソウは頷き元気に答えた。まだまだ余力はあるようだが、弱点であるほのおタイプの技を受けてダメージは少なくないだろう。あまり攻撃を受け続けては危険だ。

 

「ブースター!シャドーっ!?」

 

ニトロチャージの反動の隙を狙いシャドーボールで狙い撃とうとするシンジであったが、その瞬間にブースターに静かに忍び寄る影の存在に気付いた

 

しかしその影のスピードは素早く、気付いたときには既に遅く対応が遅れてしまう。

 

「フクスロー!ふいうちー!」

 

フクスローは気配を完全に消し背後からブースターに蹴りの一撃を浴びせる。それに気付くのが遅れてしまったブースターは対応することが出来ずにその一撃の直撃を受けてしまう。

 

ブースターはなんとか受け身をすることに成功しダメージを抑えることが出来たものの、ふいうちによるダメージは確認することが出来た。

 

モクローとその進化形は獲物を捕らえるために羽音と気配を消して接近することが得意だ。その上足の力も強く、その一撃による攻撃力はかなりのものである。フクスローの特徴を上手く活かしたふいうちは見事なものである。

 

これはタッグバトルだ。片方に集中し注意力が散漫になったところに攻撃を仕掛けるのは常套手段ともいえる。彼らはタッグバトルの特徴までも理解し、的確な指示をポケモン達に出している。これは彼らがポケモントレーナーとしても優秀な証拠だと、シンジは彼らに対する評価を改める。油断していたら逆に返り討ちにあってしまうだろう。

 

しかしタッグバトルであるならば自分とリーリエも負けてはいないと彼女の顔をチラッと見る。リーリエもシンジの視線に気づき、彼の考えが分かったのか頷き答えるのであった。

 

「フシギソウさん!全体に向かってはっぱカッターです!」

『ソウ!』

 

フシギソウははっぱカッターで再び攻勢に出る。そのはっぱカッターはいつもの一点への集中攻撃と違い、満遍なく放たれた。これでは威力が半減してしまうであろう。

 

「フクスロー!フェザーダンス!」

「ニャヒート!かえんほうしゃ!」

 

フクスローはフェザーダンス、ニャヒートはかえんほうしゃではっぱカッターの攻撃から身を守る。

 

通常フェアーダンスは相手の攻撃力を下げるという技だが、フクスローは正面にフェザーダンスによって発生する羽をばら撒くことで防御として使用した。状況に応じての対応が見事である。

 

しかしその状況はシンジの待ち望んでいた状況でもあり、ブースターに攻撃の指示を出したのだった。

 

「ブースター!オーバーヒート!」

『ブースター!』

『ニャヒ!?』

『スロ!?』

 

ブースターは力を溜め込みほのおタイプ最強クラスの技、オーバーヒートを放つ。先ほどニャヒートがかえんほうしゃを放ったことで燃え散ったはっぱカッターが彼らの視界を遮ってしまい、ブースターの姿が見えなくなってしまったのだ。

 

ブースターはフシギソウのはっぱカッターが彼らを妨害している間に体内の熱を最大限に引き上げ、力を溜め込んでいたのだ。オーバーヒートは自身の炎を限界まで上昇させ放つ高威力の技だが、その分隙も大きく力の消費も大きい。しかも使うほどに威力が下がってしまうというデメリットもある。それ故に頻繁に使用することは出来ず、失敗するとその反動は大きく自分に返ってきてしまう。

 

だからこそシンジはリーリエの得意戦術を上手く活用し、ブースターの力を引き出したのだ。

 

その作戦は見事に成功し、フクスローとニャヒートは避けることが出来ない。フクスローは今の一撃で戦闘不能にはならなかったものの、かなり体力を奪われている様子だ。効果いまひとつのニャヒートでさえかなりの疲労を感じ取れる。

 

その様子を見たシンジは「それまで!」と言いバトルを中断する。これ以上バトルを継続してしまえばニャヒートはまだ大丈夫にしても相性の悪いフクスローはかなり危険な状態になるに違いない。

 

「フクスロー、おつかれさまー。よく頑張ったねー。」

『スロー』

「ニャヒート、よくやったな。今はゆっくり休んでくれ。」

『ニャット』

 

ハウとヨウは頑張って戦ってくれたパートナーに歩み寄り頭を撫でる。フクスローとニャヒートもこれには思わず嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

シンジは戦ってくれたブースターに感謝し、バッグの中からきのみを取り出して2人に渡した。

 

「オボンのみだよ。消耗した体力はこれで戻るから食べさせてあげて。」

「ありがとー!」

「ありがとな。」

 

オボンのみを分けてくれたシンジに感謝し、ハウとヨウは傷付いたポケモンにオボンのみを食べさせ体力が回復したことを確認しモンスターボールに戻してゆっくりと休むように言う。リーリエも同じようにオボンのみをフシギソウに与えモンスターボールに戻し休ませる。

 

「いやー、チャンピオンってやっぱり強いねー!でも楽しかったからおれは満足かなー」

「そうだな。リーリエとの息も合ってたし、俺たちもまだまだ頑張らないとな。」

 

そう言って今日の戦いを反省する2人にシンジとリーリエは、この2人であればとても心強いと感じて一安心する。

 

それに加えUBの件では頼れる仲間となるだろうが、UBの件が解決したら自分の強力なライバルになりそうだと心の中でドキドキしながらもワクワクした感情をリーリエは募らせる。

 

こうしてシンジとリーリエは、ヨウとハウという有望なポケモントレーナーを仲間にしグラジオたちの待つアローラ地方への到着を待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

「見えてきた!アローラ地方!」

 

4人がバトルした翌日、ヨウの言葉に反応した一同は船の甲板にてアローラ地方が見えてきたことを確認する。

 

待っているUBとの戦いに対しての緊張感に加え、ハウとヨウは久しぶりに見た故郷に帰ってきた懐かしさや喜びで胸がいっぱいになる。シンジとリーリエも久しぶりにグラジオやミヅキたちに会えるのだというワクワクも心の中で感じ胸を躍らせていた。

 

起きてしまうであろうUBとの戦い。熾烈な戦いが待っているのは間違いないだろうが、それでも周りにいる頼もしい仲間たち、なにより共に戦ってくれるポケモンたちがいれば怖くないだろうと彼らは感じる事ができた。

 

いよいよ彼らの新しい冒険が幕を開ける!




最近になって暑い日が続きますが、兎にも角にも宣言通りハウとヨウの登場です。今回でカントー編は無事完結となります。

キャラ設定的にはハウがボケでヨウがツッコミです。以上

恐らく来週は休みます。理由としてはポケモンの厳選に集中したいというのもあるのですが、もう一つの理由としてそろそろみんなの物語を書き始めるつもりだからです。

と言っても暑い時はヌシの気分ややる気にもよるので本当に書くかは不明です。出来たら次回アローラ編のキャラ設定資料を追加するかもしれませんが、まあ気長に待っていただけたらと思います。

ハウはリーリエに次ぐ癒し系キャラだと思ってたりします。


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UB再来編
アローラ!懐かしの地、懐かしき仲間!


久しぶりに本編の進行。新章、UB編のプロローグ的回です。

リーリエを書きたいといいながらリーリエの出番は少ないというジレンマ。流れ的に話の内容を変えず3パターン程ありましたが今回のような展開にしました。

ククイ博士の口調がアニメと違って丁寧だったりするから難しいのはいい思い出。
因みに今更ですがリーリエのグラジオ、ルザミーネ呼びはアニメと同じお兄様、お母様です。原作では兄さまや母さまですが気付いたときにはこれで統一されてて今更戻すのも面倒なので……。


カントーから出た船に乗り遠き地、アローラにたどり着いたシンジたち。船着き場には、前もって連絡を貰っていたククイが彼らのために出迎えてくれたのだった。

 

「やあ!シンジ!リーリエ!久しぶり!」

「ククイ博士!お久しぶりです!」

「お久しぶりです、ククイ博士!」

 

久しぶりに会うククイと挨拶を交わすシンジとリーリエ。そんな2人にククイも久しぶりだと嬉しそうに微笑んだ。

 

そんなククイは2人の後ろにいるもう2人の少年、ヨウとハウに気付いた。

 

「おっ、ヨウとハウも一緒だったのか!立派に成長したみたいだね!」

「はい!修行から戻ってきた帰りにシンジたちと会ったんです!」

「ククイ博士ひさしぶりー!聞いてた通りシンジたちはすっごく強かったよー!」

 

ヨウとハウも含み旅先での話や思い出話で盛り上がりたいところではあるが、今はそれどころではないためククイは気持ちを切り替え早速本題の入るのであった。

 

「ヨウとハウも聞いていると思うが、先日UBたちの世界へと繋がっているウルトラホールが現れた。今グラジオが協力者となるトレーナーたちをエーテルパラダイスに召集しているそうだ。急いで向かってほしい。」

 

ククイのその言葉に返事をしエーテル財団へと向かおうとするシンジたち。しかしそんな時、ククイの持つ電話が鳴りククイは彼らに一言断りを入れて電話に出る。

 

「もしもし、ククイですが」

『ククイ博士。俺です。グラジオです。』

 

その通話の相手は現在エーテル財団の代表を代理として務めているグラジオであった。ククイはグラジオから電話があった=何かあったと判断しグラジオに用件を尋ねる。

 

グラジオの口調はいつも通り冷静な印象であったが、どことなく焦っているようにも感じさせるものだった。グラジオはククイの質問に答える。

 

『……ウルトラオーラの反応が強くなってきました。もうすぐUBがウルトラホールから姿を現してしまう可能性があります。』

「!?それは本当か?」

 

グラジオは肯定の言葉をククイに返す。その後、グラジオはある頼みごとをククイにする。ククイも背に腹は代えられないと彼の頼みを承諾し通話を終了した。

 

「ククイ博士、何かあったんですか?」

「ああ、グラジオからね。」

「お兄様から!?」

 

もしかして兄の身に何かあったのではないかと焦るリーリエであったが、ククイは心配する彼女にその心配はないと安堵の言葉をかける。

 

「まもなくウルトラビーストがこちらの世界にやってくる可能性があるらしい。」

 

ククイの言葉に4人が驚愕する。グラジオに言われていた予定よりも遥かに早くまだ対策もできていないためだ。戻ってきて早々ですまないと思いつつも、ククイは彼らに今からするべき行動を伝える。

 

「先ほども言ったようにグラジオがエーテルパラダイスにアローラ中のトレーナーを招集している。君たちには予定と変わらずエーテルパラダイスに向かってほしい。」

 

ククイの言葉に全員が頷いて承諾する。なにはともあれ強大な存在でもあるUBには無策で挑むことは非常に危険だ。例え非常事態であっても慌てて行動することは得策とは言えない。

 

皆はエーテルパラダイスから迎えの船が来ているときき急いで目的地へと向かおうと乗り込もうとする。だがククイがシンジだけを呼び止め、ある頼みごとをする。

 

「シンジ、頼みがあるんだけどいいかな?」

「僕ですか?」

 

ククイはグラジオから頼まれたことをそのままシンジに伝える。シンジはその頼みごとに躊躇することなく『分かりました』と一言だけ答え一人別のボートへと乗り込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはアーカラ島に存在するカンタイシティ。そのカンタイシティにあるポケモンセンターには多くのトレーナーたちが集まり情報交換などを行っていた。

 

カンタイシティは島巡りをするトレーナーたちが最初に訪れ、新米トレーナーたちが情報交換をすることが多い。今まさに旅立ったばかりのトレーナーたちがポケモンセンターに集結し会話をしているところだ。

 

そんな平和な時間が過ぎていたポケモンセンターであったが、1人の少年が傷ついたポケモンを抱え青ざめた様子で駆け込んできたため室内には一時の静寂が訪れた。

 

「ジョーイさん!僕のヤングースを診てください!」

「酷い傷!すぐに集中治療室へ運んで!」

『ハピナッ!』

 

少年の抱えていたポケモン、ヤングースは通常のバトルで傷付いたとは思えない程の重傷を負っていた。その姿を見たジョーイは至急助手であるハピナスに指示を出す。ハピナスはヤングースを担架に乗せて奥の部屋へと運んでいった。

 

その様子に気になった他のトレーナーが、会話を切り上げヤングースのトレーナーに話しかける。

 

「一体何があったの?」

「……僕とヤングースが新しくポケモンを捕まえようとすぐ近くの森に入ったんだ。その時、空からみたことないポケモンが現れたんだけど……」

 

そのトレーナーが辛そうに話す姿を見ると新米のトレーナーでもその後に何があったのかを察することができた。しかし謎のポケモンの正体も気になりもしかしたら新発見のポケモンの可能性もあるため、ここにいるトレーナーたちは続々と集まり彼の話を喉の鳴る音が聞こえる程静かに聞いていた。

 

「でもそのポケモン、とんでもない強さで僕のヤングースが一方的にやられちゃったんだ。」

「その見たことのないポケモンのトレーナーはいなかったの?」

「ううん。多分いないと思う。あのポケモン、抵抗できない僕のヤングースに容赦なかったし、そもそもあんなポケモン聞いたこともないから。」

 

もしかしたらまだ誰も見たことの無い未知のポケモンかもしれない。そう考えたトレーナーたちは一斉にポケモンセンターを飛び出す。『そのポケモンは自分が捕まえる』や『まだ近くにいるはずだ』などの強気のセリフを吐きながら。それは新米であっても自分のポケモンが負けるはずないと自信を持ち、ポケモンの事を信頼しているからだ。だが間違いなくそれは無謀な行為、ベテランのトレーナーがいれば無理をしてでも止めるであろう。

 

トレーナーのいないポケモンとの戦闘は当然危険が伴う。何故なら公式の試合ではない上に止める者が誰もいないからだ。それが未知のポケモンであればなおさらだ。

 

しかしここにいるトレーナーたちはそれを知らない者たち、言ってしまえば小童同然の経験が浅すぎる子どもたちだ。危険知らずの彼らはジョーイの抑制を聞く由もなく未知のポケモンを捕まえるために意気揚々と飛び出してしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「探すはいいものの、みたことの無いポケモンってどこにいるんだろう?」

『ワン……』

「絶対僕たちが先に見つけてゲットしようね!」

『ワン!』

 

先ほどポケモンセンターに駆け込んできたトレーナーの話を聞いた少年とそのパートナーであるイワンコ。彼らは誰よりも早くゲットしようとイワンコと共に張り切って探索を続ける。

 

しかしいくら探しても未知のポケモンらしい姿は一匹もいない。いるのはどこにでもいるような野生のポケモンばかりである。今はそれらのポケモンを捕まえ無駄に体力を消耗させるよりも、お目当てのポケモンゲットまで体力を温存しておくべきだと判断しゲットしたい気持ちを抑える。

 

「キャアアアアアア!!」

「!?悲鳴!」

 

その時、森の奥から誰か女性の叫び声が聞こえる。誰かの悲鳴が聞こえ少年はそちらの方まで走っていく。すると正面から一人の少女が傷ついたポケモン、アママイコを抱えて走ってくる。

 

「どうしたの!?」

「どうしたもこうしたもないよ!私たちの手に負える相手ではないわ!悪い事は言わないからあなたも逃げなさい!」

 

少女はそう言い残しポケモンセンターの方へと走っていく。少年はその少女の慌てぶりに恐怖を感じながら彼女の走っていく姿を見つめる。

 

少年の額には冷や汗が流れ、手汗で掌は湿っていた。少年の不安な気持ちが伝わり、イワンコの声も自然と小さくなる。

 

その時、彼の背後から何か寒気のするような気配が感じられた。恐る恐る彼はゆっくりと振り向く。その心臓はバクバクと鳴り、静かな森に響き渡る錯覚さえ覚えさせるほどであった。

 

少年が背後を見ると、少し上の方に白い触手が見えた。そのまま視線を変えず上の方を見上げると、そこには得体のしれない異形なポケモンの姿があった。

 

だがこれをポケモンと判別してもいいかは少々疑問に思う姿であった。そのポケモンは異形すぎる程であり、ドククラゲにも近いがポケモンとは全く別の雰囲気を出している気さえした。あの少年の言った通り、こんな姿をしたポケモンは見たことが無い。

 

そのポケモンの姿を見た瞬間、少年には鳥肌が立つほどの寒気が走った。恐怖から頭が真っ白になり、足が震えてしまうほどである。少年は訳が分からなくなってしまい、気付けばイワンコに攻撃の指示を出していた。

 

「い、イワンコ!かみつく!」

『ワン!』

 

イワンコはトレーナーの指示に従いかみつくで攻撃を仕掛ける。しかしこの判断は素人目から見ても悪手だ。

 

自分の知らないポケモンが相手となると何をしてくるのか不明なのは明白。そんな相手になんの手も打たずに近接攻撃を仕掛ければ返り討ちに会ってしまう可能性が高い。それも実力が上の相手であればなおさらである。

 

結果はその通り、イワンコの攻撃は触手にあっさりと弾返され近くに木にぶつけられてしまう。背を思いっきり打ち付けてしまったイワンコはダメージを負い、立つことが困難となってしまう。

 

未知のポケモンは動けないイワンコに対し容赦なく追撃を仕掛ける。そのポケモンの周囲には細かい岩が複数浮かび上がり、イワンコ目掛けて飛んでいく。いわタイプの特殊技であるパワージェムだ。

 

イワンコは当然避けることが出来ず、パワージェムの直撃を受けてしまう。その直撃によりイワンコは先ほどのヤングースやアママイコの様に傷ついてしまい立ち上がることが出来ない状態となってしまう。

 

対象のポケモンの想像以上の強さに少年は震えが止まらず腰を抜かして動けなくなってしまう。そのポケモンは動けなくなったイワンコを見て次は少年にターゲットを向けてゆっくりと近付いてきた。

 

少年は近付いてくるポケモンに怯えるもの尻餅をついた状態から動けないでいる。そのポケモンが触手を伸ばしながら近づいてくるのを見て死すら覚悟した少年は、涙を流して眼を瞑り誰かが助けてくれないかという最後の希望を胸にする。

 

「ようせいのかぜ!」

 

少年の願いが届いたのか、目の前をヒラヒラと温かな風が通り過ぎそのポケモンを妨害する。その技はフェアリータイプの技であるようせいのかぜだ。一体だれが助けてくれたのかとゆっくりと目を開ける。

 

すると少年の目の前には1人の男性がピンク色の体色をしたポケモンと共に自分を守るように立っていた。その男性の姿を見た少年は、あまりの衝撃に驚き目を見開いた。

 

「ちゃ、チャンピオン!?」

 

そう、その男性の正体はアローラ初代チャンピオンであるシンジ。そして隣にいるのは彼の相棒であるニンフィアだ。トレーナーたちの憧れでもあり雲の上にいるような存在のチャンピオンが目の前にいればどのような状況でも驚かずにはいられないだろう。

 

「ウツロイド……やっぱり君だったか……」

「えっ?ウツロイド?」

 

シンジが口にしたウツロイドという名前が気になり少年は呟くように聞き返す。見たこともなければ聞いたこともないその名前に興味を引かれたからだ。しかし今の状況を考えれば少年の質問に答えている余裕はない。

 

「君、そこの傷付いているイワンコを連れて早くここから離れるんだ。」

「え?で、でも……」

「いいから早く行くんだ!」

「は、はいっ!?」

 

例えチャンピオンとは言え一人でこの場に残すのはさすがに危険ではないかと渋る少年だが、そんな少年にシンジは珍しく声を荒げこの場を離れるように警告を促す。少年はそんなチャンピオンの形相に慌ててイワンコを回収しその場を立ち去っていく。

 

間違いなく新人の彼がここにいても正直足手まといになるだけだろう。それに彼を守りながら戦うのはさすがのシンジでも厳しい状況になるのは想像に難くない。それに傷付いたイワンコをそのまま放置してしまってはより危険な状況になることは明白だ。だからこそ怒鳴ってでも彼をこの場から離れさせたのである。

 

「ククイ博士には倒す必要はなく時間を稼ぐだけでいいって言われたけど、こういう事だったんだね。」

 

未知のポケモンがいればゲットしたくなるのはトレーナーとしての性。それも新人トレーナーであればよりその感情は大きいものとなる。そのことになんとなく予想がついていたククイは一大事となる前にシンジに時間稼ぎのお願いをしたのだ。最も、これは彼の親友でもあるグラジオの願いでもあるのだが。

 

「ウツロイドを一人で相手するのは厳しいけど、やるしかないね。行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

『ジェルップ!』

 

ウツロイドは次にニンフィアを攻撃対象として定め、先ほどの様にパワージェムで攻撃を仕掛けてくる。

 

「ニンフィア!躱してシャドーボール!」

『フィーア!』

 

ニンフィアはそのパワージェムを回避しシャドーボールを放つ。しかしそのシャドーボールはウツロイドに直撃するも、ウツロイドはビクともしていない。全く効いていないわけではないだろうが、ウツロイドが頑丈であるのはまず間違いない。

 

よく見るとウツロイドは周囲にオーラを纏っているのが確認できた。まるでぬしポケモンのようなそのオーラは、ウツロイドの能力を上げるものであろう。ウツロイドが予想よりも頑丈なのはそのためだとシンジは予想する。

 

そう考えている間もウツロイドの攻撃は容赦なくニンフィアを襲う。油断していたわけではないが、推察していたために判断が遅れてしまいウツロイドの放ったパワージェムがニンフィアに接近する。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァ!』

 

危ないと慌ててニンフィアの名を呼ぶシンジの横から、聞き覚えのある声が聞こえた。そこには白い体のポケモンが頭部から衝撃波を放ちウツロイドの攻撃を妨害する姿があり、その方角を見ると服の中央にファスナーの着いた黒服を来た少年が彼の傍に近づいてきた。

 

「ふっ、少し腕が鈍ったんじゃないか?」

「ぐ、グラジオ!?」

 

そこには自分の親友でもありかつて腕を競い合ったライバルのグラジオの姿があった。グラジオはいつもの左手でシュバッと眼を隠すようなキザなポーズをとり久しぶりにあった親友にそう問いかける。

 

「ははっ、そんなわけないでしょ。僕は君に負けるわけには行かないんだから。」

「言ってくれるな。」

 

相変わらず見た目とは裏腹に口の減らない奴だなと心の中で思うグラジオ。久しぶりの再会に思わず握手を交わす2人だが、妨害したとは言えウツロイドは未だ戦闘態勢を解くことなくこちらを凝視している。

 

「……思い出話をしている場合ではなさそうだな。」

「うん。今はこの状況を打開しよう。」

「ふっ、さっきみたいにボーっとして足を引っ張るんじゃないぞ?」

「ふふ、それはこちらのセリフだよ!」

 

お互い積もる話もあるだろうが、今は目の前の脅威に対抗するほかないだろうと考え、両者ともウツロイドと戦う態勢をとる。

 

強力な助っ人の加入により形成を逆転するチャンスを掴んだシンジ。2人は横に並び、UBのウツロイドと対峙する。

 

『よし!行くぞ!』

 

2人は息と声を合わせウツロイドとの戦闘を再開する。今、アローラにおける最強タッグと未知の敵であるウツロイドとの戦いが幕を開けたのであった。




というわけでシンジとグラジオの共闘という展開にしました。実際この流れ自体はカントー編を書いている途中でなんとなく考えていたので比較的楽に書けましたが、それでも予想よりは長くなりました。本来モブの話は入れる予定なくあくまでプロローグ的展開で終わらせようとしたのですが……。

戦闘シーンを少しとリーリエサイドの話を書く予定ですのでお楽しみに!ではではノシ


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結成!ウルトラガーディアンズ!

※アニポケのウルトラガーディアンズとは関係ありません


UBの出現と同時にアローラの地へと戻ってきたシンジ。ウツロイドとの交戦中、親友でありライバルでもあるグラジオと合流し、共闘してウツロイドとのバトルを再開していた。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィーア!』

『ジェップ!』

 

ニンフィアはシャドーボールで攻撃するも、ウツロイドはミラーコートでその攻撃を反射する。ミラーコートは相手の使った特殊技の威力を2倍にして相手に跳ね返す強力な技だ。

 

凄まじい勢いで反射されたシャドーボールはニンフィアに直接向かっていく。ニンフィアはその攻撃を当たる寸前のところで回避する。

 

しかしその行動はこちらにとってピンチからチャンスへと変わる瞬間でもあった。

 

「隙だらけだ!シルヴァディ!ブレイククロー!」

『シィヴァ!』

 

ミラーコートが終わった瞬間の隙を狙い、シルヴァディは自慢の鋭い爪による一撃、ブレイククローを放つ。これは直撃したと思ったグラジオだが、ウツロイドはその特徴的なふわりとした動きでシルヴァディの攻撃を後ろに回避する。

 

「なに!?」

 

まさかあの状況で避けられると思わなかったグラジオは驚きの声をあげる。そして今度は逆にシルヴァディの攻撃の後隙を狙いウツロイドはパワージェムを放つ。

 

当然空中で自由の利かないシルヴァディに避けるのは難しく、パワージェムの直撃を受けてしまう。

 

「シルヴァディ!?大丈夫か!」

『シヴァ!』

 

シルヴァディはウツロイドの攻撃の直撃を受けるも、グラジオの声に答え立ち上がる。ダメージは見られるがまだ戦いに支障はない程度のようである。

 

その後もウツロイドの容赦ない攻撃が続く。ウツロイドは溶解力の高い毒液、アシッドボムで追撃を仕掛ける。アシッドボムは威力は低いものの直撃した相手の特殊防御を下げる効果のある危険な技だ。

 

シンジとグラジオはパートナーに回避の指示を出し、ニンフィアとシルヴァディはその攻撃を同時にバックジャンプして回避する。さすがに今の攻撃をまともに喰らうわけにはいかない。

 

『ジェルプ!』

 

ウツロイドは続けてパワージェムで再度追撃する。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『フィアー!』

『シヴァヴァヴァ!』

 

ニンフィアはようせいのかぜ、シルヴァディはエアスラッシュでパワージェムに対抗する。パワージェムは2人の攻撃で上手く相殺することが出来たが、このままでは間違いなく体力的にこちらが持ちそうにない。

 

とはいえウツロイドは未知の力によって能力が本来よりも上昇している。普通に攻撃してもダメージはあまり期待できないだろう。

 

「グラジオ!」

「……ああ、分かった!」

 

シンジはグラジオと視線を合わせ、グラジオはシンジの意図を理解し頷きながら答える。いかにしてこの状況を打破するつもりなのだろうか。

 

「ニンフィア!もう一度シャドーボール!」

『フィア!』

『ジェップ!』

 

ニンフィアはシャドーボールで攻撃を仕掛けるが、ウツロイドはその攻撃を先ほどと同様にミラーコートで反射する。だがその攻撃をニンフィアはジャンプすることで回避する。来ることが分かっていればどれだけ強力な攻撃でも回避することは容易である。

 

「今だ!ムーンフォース!」

 

ジャンプしたニンフィアは力を体内に溜め込み、一気に解放することで自身最大の技、ムーンフォースを放つ。ムーンフォースはウツロイドに接近するも、ウツロイドはふわりと浮かび上がり空中へと回避する。

 

「ふっ、甘い!シルヴァディ!マルチアタック!」

『シヴァア!』

 

シルヴァディはマルチアタックで攻撃する。しかしその攻撃対象はウツロイドではなく、ウツロイドが回避したニンフィアのムーンフォースであった。シルヴァディは隙を見てウツロイドの背後へと周り、この瞬間を待っていたのだ。

 

さらにシルヴァディの尾の色は赤色へと変化していた。シルヴァディは自身の特性“ARシステム”により通常のノーマルタイプからほのおタイプに変更していたのだ。

 

シルヴァディの特性であるARシステムは、専用のメモリーをシルヴァディの頭部にインプットさせることで、シルヴァディのタイプを特定のタイプに変更させることが出来る特性だ。UBに対抗するために生み出されたシルヴァディだからこそ所有している専用の特性である。

 

ほのおタイプになったシルヴァディにフェアリー技は効果が薄い。それに加えシルヴァディ専用の技、マルチアタックもARシステムによって変更したタイプに変わる特徴を有している。これによりニンフィアの強力なフェアリー技のムーンフォースも少ないデメリットで受けられるというわけだ。

 

シルヴァディはムーンフォースにマルチアタックをぶつける。するとマルチアタックはムーンフォースを反射し、更なる勢いをつけてウツロイド目掛けて発射される。

 

『ジェップ!?』

 

さすがのウツロイドもこの攻撃に対応することが出来ず、ムーンフォースの直撃を受ける。通常のムーンフォースに加えシルヴァディのマルチアタックにより威力の増した攻撃には流石にダメージの色を隠せない。ウツロイドの表情は全く分からないが、それでも少しずつ高度を下げ不安定にゆらゆらとしているところを見ると、今の攻撃が通ったことはすぐに分かった。

 

「今だ!ブレイククロー!」

『シルヴァ!』

 

シルヴァディはその隙を見逃さず、勢いよく飛びかかりブレイククローで追撃する。ニンフィアとの連携攻撃により怯んだウツロイドは無抵抗のままシルヴァディのブレイククローを受ける。さしものウツロイドも無抵抗で立て続けに強力な攻撃を受けてしまっては一溜りもない。

 

『ジェップ……』

「よし、ダメージはあるみたいだな。このまま……!?」

「あ、あれって……ウルトラホール!?」

 

更に畳みかけて追い込もうとするグラジオだが、その瞬間に重傷を負ったウツロイドの背後から見覚えのある空間が姿を現した。それは紛れもなくUBたちの世界へと繋がっているウルトラホールであった。

 

ウツロイドは突如として現れたウルトラホールに姿を消した。追いかけたいところだが、自分たちだけの力ではウルトラホールに侵入することは不可能であるため断念することにする。

 

「逃がしてしまったが奴も重傷を負っている。暫く姿を現すこともないだろう。」

「うん……」

 

彼らが何を目的でこの世界にやってきたのかは分からないが、何故か彼らから悪意は感じられなかったどころかどことなく悲しい感情を感じたシンジは思い悩む。しかし放置してしまえば先ほど助けた新人トレーナーの様に被害者が出ないとも限らないため戦わないわけにもいかない。複雑な感情が彼の中で蠢いていた。

 

「ところでグラジオ、どうして君はここに。」

「ああ、お前にウツロイドと戦うの頼んだのはオレだからな。UBと戦うのに一人で戦うのは難しいと思って駆けつけたんだ。」

 

シンジの質問に対しグラジオはそう答えた。グラジオの言う通り、あのままではシンジもただでは済まなかったかもしれない。現にグラジオがいたおかげでウツロイドの撃退に成功したのだ。シンジはグラジオに感謝し、グラジオもシンジの言葉に『気にするな』と一言だけ答える。

 

「これからどうするの?」

「知っていると思うが今アローラ中の腕利きのトレーナーたちをエーテルパラダイスに招集しているところだ。リーリエも向かっていると思うが、合流次第UBたちの対策やこれからの対応を伝えるように信頼のおける秘書に任せている。」

 

グラジオの言う信頼できる秘書とは間違いなくビッケの事であろう。彼女ならば自分も信頼できるだろうと安心して任せることが出来る。エーテル財団には一部信頼することのできない人物が約一名存在するが。

 

「そこでお前には別の役目を頼みたい。」

「別の役目?」

「ああ。ウツロイドを始めとしてウルトラホールが各地に出現し始めている。その噂を聞いたアローラの人々は現在パニック状態だ。アローラの混乱を解くにはお前の力が必要だ。」

「僕の力?僕はなにをすればいいの?」

 

シンジの力が必要だと語るグラジオは、彼がこれから何をすべきなのかを説明する。

 

「まず今までアローラのチャンピオンであるお前は少しの間不在だった。それはニュースを通じてアローラの人々が知っている。だから今度はお前がアローラに戻ってきたことを伝えるんだ。チャンピオンが戻ってきたことがアローラに広がれば、みんな安心して自ずと混乱は鎮まるだろう。」

 

シンジはグラジオの言葉に納得する。みんなが現在混乱している原因の一つとして最強のトレーナーであるチャンピオンが不在の中、アローラに未知の危険が迫っているかもしれないと考えパニックに陥ってしまう。だが逆に、チャンピオンが帰ってきたと伝え現在起きている状況を説明することで彼らの不安は次第に和らぐだろう。それだけチャンピオンの存在は多くの人たちに勇気や力を与え程大きなものなのだ。

 

「テレビ局には既に連絡がついている。お前はこれからハウオリシティに向かってくれ。オレはもう一度空間研究所に戻り、バーネット博士とこれからの事を話し合うつもりだ。」

「うん、分かった」

「あとこれを持っていくといい」

 

グラジオはシンジに腕時計に似た何かを手渡す。シンジがそれが何なのかを尋ねると、グラジオは簡易的な連絡用の通話機なのだと説明する。

 

「それがあれば同じ通話機を持っている者同士で連絡を取り合うことが出来る。使えるのは今回の様な非常事態時のみだが、連絡が取れるに越したことはないだろう。」

「ありがとう。じゃあ僕は先に行くよ!」

 

シンジはグラジオから受け取った通話機を腕につけると、早速ハウオリシティに向かって走り出した。自分もやるべきことをやるかと、グラジオはバーネットが待つ空間研究所へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジたちがウツロイドと戦っている一方、リーリエ、ハウ、ヨウの3人は案内されたエーテルパラダイスにやってきていた。

 

グラジオが招集しているという部屋までやってくると、そこには見覚えのあるトレーナーたちの顔ぶれが揃っていた。その中の一人、ミヅキはリーリエの顔を見るとすぐさま笑顔で手を振り小走りで近寄ってきた。

 

「リーリエ~!」

「ミヅキさん!」

「久しぶり!元気にしてた!」

「はい!ミヅキさんもお元気そうで安心しました!」

「おいおい、俺たちもいるんだけど?」

「久しぶりー!ミヅキー!」

「あっ!ヨウとハウもいたんだ!おかえりー!」

 

久しぶりに帰還したリーリエを笑顔で迎えるミヅキ。その後後ろから顔を出したヨウとハウの事も向かえ4人で久しぶりの再会を喜ぶ。そんな彼女たちの姿を見たある人物も、ゆっくりと近付き声をかけてきた。

 

「よう、久しぶりじゃねえか。ハウ。」

「?あっ、グズマさん」

 

その正体は元スカル団のボスであるグズマであった。元々ハウの祖父であるハラの元で修行していたグズマとは顔見知りのようで、ハウともいくらか面識があるようだ。

 

だがハウの様子はいつもと違い、笑顔を崩してはいないもののどこか緊張した様子を見せている。ハウ自身グズマの事は苦手なようだ。彼の今までの素行を知っていれば当然かもしれないが。

 

「……ハッ!相変わらず何考えてるかわからねぇ面だな。」

 

ハウの緊張を吹き飛ばすかのようにグズマは笑い飛ばした。

 

「安心しな。今の俺はお前の知っている俺じゃねえよ。」

「え?」

「ここに集まったトレーナーの面をよく見てみな。」

 

グズマの言葉に従いハウたちはここに集まったトレーナーを見渡す。そこにいたのはミヅキ、グズマを始めイリマ、カキ、マオ、スイレン、マーマネ、マーレインだ。逆にこの場にいないのは四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリ、ウラウラ島のしまキングクチナシ、ポニ島のしまクイーンハプウ、それとチャンピオンのシンジである。

 

殆どの人が見覚えのある顔で、そのトレーナーたちにはとある共通点があった。それは全てのトレーナーが各島のキャプテン、及びしまキングとしまクイーンを務めているのである。間違いなくアローラでは名前が知られている強者たちばかりだ。

 

「あたいのことも忘れて貰っちゃ困るね」

 

リーリエたちがトレーナーたちの顔ぶれを確認し終えた頃に、彼女の背後から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。ふと振り向くと、そこには見覚えのある濃いアイラインのメイクをした女性の姿があった。

 

「ぷ、プルメリさん!?」

「久しぶりだねお姫様。随分見ない間に成長したみたいじゃないか。」

 

その人物はグズマと同じ元スカル団の幹部を務めていた女性、プルメリであった。ウラウラ島でリーリエをさらう手筈を踏んだものの、ルザミーネを助けに行く際にスカル団の下っ端たちに囲まれたとき、助けてくれたのがこのプルメリだ。そのためリーリエも少しではあるが面識はあった。

 

「なんだ、お前も来たのか。」

「なんだはないんじゃないか?グズマ。あたいはグラジオの坊やに頼まれたから来てやっただけさ。それよりあんたこそここにいるなんてどういう風の吹き回しだい?」

「……チッ、俺はただ目障りな奴をぶっ壊しにきただけだ。」

「そうかい。あたいはてっきりアローラを救う手伝いにでも来たのかと思ったよ。」

 

グズマは『勝手に言ってろ』と言うが、その言葉からは以前のような怖さは感じられず、どことなく彼なりの照れ隠しの様に感じられた。久しぶりに会ったハウは、あの人も変わったのかなと先ほどの緊張が嘘のように飛んでいったのであった。

 

全員が室内に集合すると、グラジオに代理として頼まれたビッケがその場に姿を現す。

 

「皆さん集まりましたね。ではこれより、グラジオ代表より代理として仰せつかった私、ビッケが対UBのための作戦を皆さんにお伝えいたします。」

 

ビッケはそう言って話を進める。はじめクチナシやもう一人のキャプテン、マツリカにも声をかけたが、クチナシは面倒だからと言って集会をパス、マツリカは連絡がつかなかったためこの場にはいないようだ。

 

四天王たちはそれぞれアローラの中心部でもあるポケモンリーグにて待機。シンジはチャンピオンとしての別行動に出て貰っているようである。

 

「現在アローラ各地にてウルトラホールが出現し始めています。その中でも、特にウルトラオーラの反応が強い場所が地図に示してある場所です。」

 

そう言ってビッケは地図のデータを投影し、地図の至る所に赤い点が表記される。その赤い点が表記されている部分にUBが出現する可能性が高いようだ。

 

メレメレ島ではメレメレの花園、茂みの洞窟、アーカラ島ではジェードジャングル、ウラウラ島ではマリエ庭園、ハイナ砂漠となっている。

 

「彼らの力は未だ未知数。皆さんにはそれぞれ協力し合いながら分担して交戦していただきます。」

 

どの場所に誰を配置するかは決めているそうだ。ビッケはその配置を発表する。

 

まずはメレメレ島。花園にはヨウとハウの2人、茂みの洞窟にはイリマ、リーリエ、ミヅキの3人だ。ヨウとハウは持ち前のコンビネーションが信頼に値し、実力も申し分ないだろうという判断で任せ、イリマは茂みの洞窟を担当しているキャプテンであり、リーリエとミヅキはその仲の良さからバトルでも充分活かすことが出来るだろうという事だそうだ。

 

次にアーカラ島のジェードジャングルは、同じアーカラ島のキャプテンであるカキ、スイレン、マオである。この3人の組み合わせは言わずもがな。

 

そしてウラウラ島のマリエ庭園にはグズマとプルメリの2人。そしてハイナ砂漠にはマーレインとマーマネである。グズマとプルメリは元スカル団の組み合わせという事で認知され、マーマネとマーレインは家族も同じ関係であるため心配ないだろう。

 

「それと、皆さんにはこちらの二つをお渡ししておきます。」

 

ビッケはこの場にいる全員に同じアイテムセットを手渡す。一つはシンジに渡した通話機と同じもの。もう一つは見たことの無い青いモンスターボールであった。

 

「それはウルトラボール。ウルトラビーストをゲットするために作った専用のモンスターボールです。」

「という事はUBさんたちをゲットするってことですか?」

 

リーリエの質問にビッケは頷き回答を続けた。

 

「ですがUBたちはその後元の世界に返すつもりです。彼らは決して自分たちから害を成すためにこの地にやってきたわけではありまんせんので。」

 

それを聞きこの場にいる全員が納得する。

 

「UBたちからアローラを救うための精鋭部隊……差し詰めウルトラガーディアンズとでも名付けましょうか。」

 

選りすぐりの精鋭部隊の呼び名がないのは少々不便だと感じたビッケは端的にそう名付ける。そして遂に、ウルトラガーディアンズ最初の指令が下されるのであった。

 

「ウルトラガーディアンズ、出撃してください!」

『おー!』

 

皆、それぞれに与えられた使命を熟すためにエーテルパラダイスを後にする。アローラの命運は、ウルトラガーディアンズの肩にかかっているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラガーディアンズが結成され、彼らが出撃した一方、エーテルパラダイスの地下では――

 

「この機を逃すわけには参りません。この機を逃せば、私は永遠に出世できません。」

 

1人の男はぶつぶつとそう呟きながら目の前にある機会を弄る。立派な機械だが、みただけでは何をするものなのかは見当もつかない。

 

だがその機械の頭部からは、小さく火花が出ており何か嫌な雰囲気を与えるものであった。

 

「UBたちの力……ウルトラオーラを扱うことが出来れば、必ず私の目的は成功します。」

 

お構いなしにそう言いながら作業を続ける男性。そして彼は最後にニヤッと笑いながらこう告げた。

 

「精々頑張ってください。ウルトラガーディアンズの諸君……。」

 

カメラにはウルトラガーディアンズの面々がそれぞれエーテルパラダイスから出撃している様子が映っていた。この男性の目的とは一体何なのだろうか?謎が謎を呼ぶ新章、UBとの戦いが遂に開幕だ!




次回からウルトラビーストの本格的なバトルに入っていくことになると思います。順番に消化していくので少々時間かかりそうですがUB編自体はプロローグみたいな話のつもりなのであまり長引かない予定です。まだどうなるかは不明ですが……。

USUMにてフェアリー♀統一パとレッド様パ作りました。次は原作のグラジオパでも作ろうかなと思ってたりします。

遂に明日ポケモン剣盾のポケモンライブカメラが放送される日ですね。今から楽しみですが、新ポケの発表とかはされるんですかね?


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花園での戦い!UB襲来!

UBのアイドル


対ウルトラビーストのために結成されたウルトラガーディアンズ。アローラ各地に出現したウルトラビーストを捕獲するためにガーディアンズの面々が動き出す。

 

ここはメレメレ島のとある花畑。島の人々からはメレメレの花園と呼ばれており、周囲には黄色の花が咲き誇っており穏やかな時が過ぎている。

 

この花はアローラでも有名な珍しいポケモン、オドリドリがパチパチスタイルへと姿を変える特殊な蜜を出すポケモンで、その他のポケモン達や人間用の食事に使われる食材としても重宝される貴重な花だ。

 

だがこの様な穏やかな場所にもウルトラオーラの反応が検知されている。紛れもなくUBが出現する兆しの証明である。そのUBに対抗するためにウルトラガーディアンズのメンバー、ヨウとハウが赴いていた。

 

「さてと、UBはどこだ?」

「ウルトラビーストー!出ておいで―!」

「ハウ、お前な……。そんな簡単に出てくるわけ……。」

 

まるで珍獣でも探すかのように楽観的に呼びかけるハウに対しヨウはそう指摘する。だがその瞬間、上空に何か違和感を感じた2人は空を見上げた。

 

するとそこには異空間へと繋がる穴が開いていた。間違いなく話に聞いていたウルトラホールと呼ばれる空間である。

 

「え?マジで?」

「あー!でてきたでてきたー!」

 

その空間から少しずつ何者かの姿があらわになる。

 

その姿は赤く逞しい筋肉に四本の脚、頭部には細い口とも言える部分に2本の触角。その見た目はまさに異形で、ポケモンとは少し違う印象を抱かせるものであった。

 

「あれがUB?」

「うわー、ホントに変わった見た目してるんだねー!」

 

初めてみるUBに不思議な感想を抱く2人。そんな2人は初めて見るUBの様子を暫く隠れて観察することにする。初見の相手に無暗に手を出すのはあまり得策ではないためだ。

 

幸いにもここは花園という事もあり姿を隠すには打ってつけだ。正体不明のUBを暫く観察するため、ヨウとハウは花畑の中に身を潜める。

 

アローラに姿を現したUBは、キョロキョロと辺りを見渡す。何かを探しているのだろうかと気になる2人だが、突如姿を現したUBに戸惑う花園のポケモンたちはゆっくりと近付く。

 

このままではポケモンたちが危ないと焦る2人だが、そのUBの様子はどこか違った。

 

『……!?マブシ!』

 

周りのポケモン達を見渡すと、突然そのUBはポージングをとり始める。突然の行動に戸惑うヨウとハウだが、その時通信機にビッケからの連絡が入る。

 

『ヨウさん、ハウさん。メレメレの花園に出現したUBの詳細が分かりました』

「ホントですか?」

『コードネーム“UB02EXPANSION”。我々は“マッシブーン”と名付けました。』

「マッシブーン?」

『はい。データはそちらに送りますので、準備ができ次第捕獲をお願いします』

 

ビッケから花園に出現したUB、マッシブーンの詳細が送られてきた。ヨウとハウはマッシブーンの判明したデータを読み上げる。

 

送られてきたデータではマッシブーンのタイプはむし・かくとうタイプ。見た目と同じで攻撃力がかなり高く、強力な一撃が必要。彼が良くとるポージングは威嚇なのか自慢なのかは不明だそうだ。未だに花園でポージングしている辺り、恐らく後者だと思われる。 

 

「見た目と違わず攻撃力が高いみたいだ。戦う際には注意が必要だな。」

「そうだねー。」

「お前……緊張感なさすぎじゃないか?」

「そうかなー?でもー、おれとヨウなら意外となんとかなる気がするんだよねー!」

「……たく、その自信はどこから来るんだか」

 

ヨウの呆れた言葉に「えへへー」と照れたように微笑むハウ。褒めたわけではないのだが、今回は大目に見ようと特に何も言うことはなかった。そもそもこれまでハウ持ち前の明るさに助けられてきた記憶も幾つかあるため今更何かを言うつもりもさらさらないのだが。

 

覚悟を決めた2人は隠れていた花園から飛び出しマッシブーンと対峙する。

 

「マッシブーン!」

『!?』

「悪いんだけどー、今から君のこと捕まえさせてもらうよー」

『…………』

 

ヨウとハウの言葉にマッシブーンはポージングをとるのをやめた。それを見たポケモンたちは危険を感じたのか焦ってその場を後にし、ここにいるのはヨウとハウ、そしてマッシブーンの3人となった。

 

「頼むぞ!ニャヒート!」

『ニャブ!』

「行くよー!フクスロー!」

『スロー!』

 

ヨウはニャヒートを、ハウはフクスローと互いに相棒を繰り出し戦闘態勢に入る。準備が完了したと判断したのか、マッシブーンは再びいくつかポージングをとる。その後、明らかに走り出す構えに移行した。

 

『……マッシ!』

 

マッシブーンはレースが始まる際に鳴らす銃声でも鳴ったかのようなタイミングで走り始める。そのスピードは見た目からは想像できないぐらい早く、すでにニャヒートの目の前まで迫ってきていた。

 

「ニャヒート!かわせ!」

『ニャブ!』

 

マッシブーンはニャヒートに向かって自慢の拳を突き出し攻撃する。ノーマルタイプの技であるメガトンパンチだ。ニャヒートはその攻撃をバックステップすることで回避するが、ニャヒートが元居た場所には軽くクレーターが出来ていた。間違いなく直撃を受けてしまっては一溜りもないだろう。

 

「スピードもパワーもすごいねー」

「ああ、これは油断したらやられるな」

 

ヨウとハウはマッシブーン、UBの桁外れな能力を再認識し改める。聞いていた話以上に厄介な相手であるのは間違いない。これだけ強力な相手であれば2人の連携が鍵となるだろう。

 

「だったらこっちはスピードで対抗だ!ニャヒート!ニトロチャージ!」

『ニャット!』

 

ニャヒートはニトロチャージでマッシブーンに一直線に向かっていく。ニトロチャージは相手に当てるたびに自信の素早さを上昇させる技だ。マッシブーンはスピードも充分に速いがその上にパワーが重なり異常な技の威力を発揮している。ならばこちらもスピードを上げ撹乱する作戦だ。

 

その上マッシブーンはむしタイプも併せ持っている。ほのおタイプのニトロチャージが当たればどれだけ強力なウルトラビーストと言えどただでは済まないだろう。

 

『マブシ!』

 

マッシブーンは向かってくるニャヒートに対し今度は左拳を突き出し対抗する。かくとうタイプの大技、ばかぢからだ。

 

その威力は凄まじく、マッシブーンに有効なはずのニトロチャージをいとも容易く弾き返した。ニャヒートは大きく吹き飛ばされ、ダメージを負ってしまう。

 

「ニャヒート!?大丈夫か!」

『ニャット!』

 

ニャヒートはヨウの声に返事をし立ち上がる。ダメージは受けてしまったものの、まだまだ戦う余力はあるようだ。

 

ばかぢからは強力な分使うほど自身の攻撃力と防御力を下げてしまうデメリットもある。強大な力を誇るマッシブーンだが、ばかぢからを使った分こちらにもまだ勝機はある。

 

「ヨウー!おれたちが援護するよー!」

「ああ!任せた!」

「フクスロー!このは!」

『スロー!』

 

フクスローはこのはでマッシブーンに牽制攻撃を仕掛ける。むしタイプであるマッシブーンにくさタイプの技は効果が薄いが、それでもこれはハウの判断が正しかった。

 

筋肉を自慢すると言われているマッシブーン。そんな彼が相手の攻撃を自ら躱すなどという事はするはずもなく、逆にこのはを全て撃ち落としている。これは彼が自分の筋肉に自信を持っており、相手の攻撃を真っ向から受けることでより筋肉の存在を誇張しているからに他ならない。

 

だが今回の相手は1人ではない。本来自慢の筋肉が彼の強さを引き出しているが、今回に限ってはそのプライドが仇となってしまう。

 

「今だ!ニャヒート!ニトロチャージ!」

『ニャヒト!』

『!?』

 

無数のこのはに集中して抵抗しているマッシブーンにニャヒートはそのこのはの間から急接近しニトロチャージで攻撃する。このはに集中していたマッシブーンはその攻撃に対応できず、ニトロチャージの直撃を受けてしまう。

 

しかし流石はUB。ニトロチャージを自慢に筋肉で受け止めダメージを最小限に抑えている。その様子から物理攻撃に対しての耐性はかなり高いようだ。

 

マッシブーンはニトロチャージの攻撃を耐えしのぎ、近接攻撃を仕掛けてきたニャヒートを両手で逃げられない様に捕まえる。

 

『マブシ!』

『ニャット!?』

「ニャヒート!?」

 

このままではマッシブーンの攻撃を避けれないと焦るヨウ。マッシブーンの次の攻撃を受けてしまえばさすがのニャヒートもただでは済まない。

 

絶体絶命かに思われたその瞬間、マッシブーンの背後に何者かの気配がした。その姿は紛れもなくハウのパートナーであるフクスローであった。

 

「フクスロー!ふいうち!」

『クスロ!』

 

気配を消してマッシブーンの背後に現れたフクスローは、マッシブーンの背中に渾身の蹴りを浴びせる。マッシブーンもその気配に気付けなかったため、フクスローの一撃で大きく怯みニャヒートを離した。

 

「助かった、ハウ。借りができたな。」

「へへへ~、今度マラサダ奢ってよねー!」

 

分かってるよ、と言わんばかりにヨウはハウの言葉に苦笑する。気を取り直し2人はマッシブーンと再び対峙する。

 

だが今回はあくまでマッシブーンの捕獲が目的だ。倒す必要はなく、ある程度のダメージを与えマッシブーンのゲットが出来れば任務達成である。マッシブーンの隙をどうにか作るため、再びマッシブーンに攻撃を仕掛ける。

 

『マッシ!』

「くるよー!」

「ああ、分かってる!」

 

マッシブーンがこちらに直線上に接近してくると、ニャヒートとフクスローは同時に左右別々に分散する。その行動にマッシブーンは戸惑い動きが止まってしまう。

 

「ニャヒート!かえんほうしゃ!」

『ニャトー!』

『!?』

 

マッシブーン左から攻撃してくるニャヒートのかえんほうしゃを左腕で防御し受け止める。効果抜群の攻撃であるため、防御しようともダメージがあるのが伝わってくる。

 

「フクスロー!はっぱカッター!」

『スロー!』

 

フクスローははっぱカッターで追撃を仕掛ける。かえんほうしゃに気をとられていたマッシブーンは背後からはっぱカッターの一撃を受けてしまう。その攻撃からマッシブーンの対象がニャヒートからフクスローに変更する。

 

「やっぱり。マッシブーンは2人を相手にするのに慣れていないみたいだな。」

 

パワー自慢のマッシブーンだが、ヨウの言う通り複数人を相手にするのに慣れていない様子だ。その証拠に2人の連携攻撃に見事翻弄されてしまいどちらに集中していいか分からない様子だ。

 

フクスローに対象が向いたことでマッシブーンはフクスローに接近しメガトンパンチを放とうとする。しかしすかさずニャヒートがマッシブーンの横まで走り、気付かぬうちに横まで接近していたニャヒートに驚き一瞬動きが止まってしまう。

 

ニャヒートは先ほどニトロチャージを使い素早さを上げていた。それによりマッシブーンのスピードを超え簡単にマッシブーンに近づくことが出来たというわけだ。

 

「ニャヒート!ほのおのキバ!」

『ニャヒト!』

『マブシ!?』

 

ニャヒートの攻撃がマッシブーンの振り上げていた腕にヒットし、マッシブーンは断末魔を上げる。ほのお技の攻撃が立て続けに当たり、今度は直撃を受けてしまったためにさしものマッシブーンも致命傷を負ってしまったようだ。

 

マッシブーンはニャヒートのほのお技を受けてその場で動きを停止しあまりのダメージに拳を地面につき倒れる。ダメージが大きいからか筋肉を自慢するポージングをとる余裕すら見られないように感じる。

 

「ヨウー!今だよー!」

「分かってる!頼む!ウルトラボール!」

 

ヨウはウルトラボールをマッシブーンに投げる。ウルトラボールはマッシブーンにヒットし、マッシブーンの巨体は小さなウルトラボールの中に入っていった。

 

マッシブーンの入ったウルトラボールは中央に光りを灯しながら揺れる。ヨウとハウに無事ゲットできるかどうかという緊張感が走る。

 

緊張感に包まれる中、ウルトラボールの揺れは収まりピコンッという音と共に点滅も収まる。その瞬間、マッシブーンのゲットに成功したという証である。

 

「やったー!マッシブーンゲットしたよー!」

「ふう、なんとかなったな」

 

子どものようにはしゃぐハウに無事ゲットできたことに安心し一息つくヨウ。ヨウはマッシブーンの入ったウルトラボールを拾い上げる。

 

それと同時に通信機から音が鳴り再びビッケと繋がった。ヨウとハウはその通信機に応答すると、画面にビッケの姿が浮かび上がった。

 

『ウルトラオーラの消失を確認しました。お二人とも、お疲れ様です。至急、マッシブーンの入ったウルトラボールをアーカラ島の空間研究所にいるバーネット博士の元まで届けてください。』

 

マッシブーンを捕獲することに成功した2人は、ビッケの指示に頷き次の任務先であるアーカラ島に向かうためハウオリシティへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB02EXPANSION”捕獲完了―




最近色んなポケモンの厳選に勤しんでおります。次はラグ、ナット、グロス辺りでも厳選しようかと。マンダ含めてチョッキニンフィアと組みやすいですし。ガチパでもニンフィアは入れます。ヒトムミトムとか他にも育てたいポケモンが多々おります。

にしても使って思ったけどガッサって超強いよね。ブイズパだとエーフィで封殺できますが。


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超速のUB!強き絆の証明!

今回はウルトラビースト回であると同時に重要回でもあります


メレメレの花園に出現したUB、マッシブーンの捕獲に成功したヨウとハウ。彼らが花園にてマッシブーンと交戦している時、リーリエとミヅキはキャプテンであるイリマの案内で茂みの洞窟へと向かっていた。

 

「へえ~、リーリエはカントーでトレーナーとして頑張ってきたんだね。久しぶりに見たら見違えたもんね!」

「はい!今では皆さんに守ってもらっていた時とは違って自分でも戦えるようになりました!」

「カントーリーグでベスト4に入るくらいだもんね。もう立派なポケモントレーナーって訳だね!」

「お二人とも。久しぶりの再会で話したいことがあるのは分かりますが、これからUBとの戦いが待っています。気を引き締めて挑んで下さいね。」

 

リーリエとミヅキが懐かしの再会からそのような会話をしていると、イリマが2人にそう忠告した。2人もイリマの言葉にハッとなり、心でこれからの戦いに向けて気を引き締め心構えを新たにする。

 

「さて、着きましたよ。私が管理する試練の場、茂みの洞窟です。」

 

イリマの案内で辿り着いたメレメレ島の試練の舞台となっている茂みの洞窟。イリマは2人を先導し、3人で洞窟の奥へと入っていく。

 

ミヅキは2年前に島巡りの際に試練を受けるために立ち寄ったことがあるが、リーリエは茂みの洞窟内部へと入るのは初めてである。洞窟と言うだけあり、光が差し込んでいるものの薄暗く、外に比べ当然視界はあまりいいとは言えない。UBがいつどこから襲ってくるか分からないため警戒が必要である。

 

「……?なんだか少し様子が変ですね。」

「イリマさん?どうしましたか?」

「いえ、ただ茂みの洞窟の雰囲気がいつもと違う気がしたので。気のせいかもしれませんが。」

 

イリマがそう呟くと、リーリエはどうしたのかと彼に尋ねる。イリマは茂みの洞窟の異変に気が付いたようだが、確証はまだ得られていないので強くそうだとは言い切れない。

 

異変を感じるものの、イリマの後について行き3人は洞窟の奥へと進んでいく。すると目の前に何者かが倒れている姿があった。

 

「ん?あれは!?」

 

イリマはその正体に気が付くと傍まで駆け寄る。本来落ち着いている彼が慌てる様子が珍しいと思ったリーリエとミヅキは彼について行く。

 

「ラッタ!デカグース!」

 

近くによって確認すると、その正体は通常よりもサイズの大きいアローラの姿をしたラッタとデカグースであった。試練の場である茂みの洞窟に存在する大きなポケモンという事は、詰まるところ彼らは試練に挑戦するトレーナーを迎え撃つために鍛えられたぬしポケモンという存在である。

 

島巡りのトレーナーに与える試練。その相手となるぬしポケモンは通常のポケモンよりも強力で、並のポケモンでは歯が立たないことさえある。

 

しかし彼らの容態は酷く、普通のバトルに負けたとは思えない程傷付いている。幸い命に別状はなく、気絶しているだけのようでイリマは溜息をつき安心する。

 

イリマはこの場に置いておくわけには行かないとすぐに彼ら専用のモンスターボールに戻した。

 

「ラッタさんとデカグースさん……酷く傷ついてましたね。」

「うん。あれだけの怪我をするってことは、間違いなくUBが近くにいるってことだよ。」

「そうですね。早く探して捕獲しなくては、他のポケモン達もラッタやデカグースの二の舞となってしまいます。」

 

イリマの言葉にリーリエとミヅキは頷き周辺の探索を開始する。しかし茂みの洞窟内部を探してもそれらしいポケモンの姿は全く確認できない。

 

「UBさん、どこにいるんでしょうか?」

「まさかもうこの辺りにはいないとか?」

「いや、ラッタとデカグースの傷は比較的新しいものでした。こんな短時間で僕たちの眼を盗み洞窟を出たとは思えません。」

 

UBを見つけることが出来ず路頭に迷う一行。どうするべきかと悩んでいると、彼らの腕についている通信機に着信があった。3人がその通信に応答すると、エーテル財団代表の秘書であるビッケが通信に出た。

 

『皆さん、茂みの洞窟に出現したUBの詳細が判明しました!今データを転送します!』

 

通信機を通してビッケからUBの詳細なデータが送られてくる。そのUBの正体を3人は読み上げる。

 

コードネームは“UB02 BEAUTY”。ビッケたちはこのUBの名をフェローチェと呼んでいるようだ。

 

フェローチェはむし・かくとうタイプ。姿がほとんど白で統一されており、全体的に細い容姿をしている。まるで人類の天敵が2足歩行で歩いているような姿をしているようである。

 

だが重要なのはそこではなく、フェローチェの身体能力に関する詳細である。耐久力は低いが、フェローチェ自身のスピードが異常で肉眼で追う事がほぼ不可能だそうだ。捉えてしまえば楽になるだろうが、そこまでが苦難の道であるのは言うまでもないだろう。

 

3人がどうやってフェローチェを捕まえるかと考えていると、彼女たちの横を一閃の激しい風が吹き抜ける。一体洞窟内で吹き抜けたあまりに不自然な突風に一つの答えに辿り着く。

 

「!?今のはもしかして!?」

 

イリマの言葉と同時に全員が風の吹き抜けた方向へと目を移す。するとそこには先ほど送られてきたデータに載っていた特徴と合致するポケモンの姿があった。紛れもなくこのポケモンが今回のターゲットであるフェローチェである。

 

フェローチェは立ち止まりすれ違ったリーリエたちへとゆっくり視線を移す。その眼はどこか冷たく、まるで彼女たちのことを見下しているようであった。

 

「あのスピードは非常に驚異的です。充分に注意してください!」

『はい!』

 

イリマの忠告にリーリエとミヅキは答えモンスターボールを手にする。現在のターゲットが戦闘態勢に入ったのだと判断したフェローチェは振り返り、自身も戦闘態勢が万端なのだという意思を明確にする。

 

「はい!行きますよ!ドーブル!」

『ドブッ!』

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「行くよ!アシレーヌ!」

『シレーヌ!』

 

イリマはドーブルを、リーリエはシロンを、ミヅキはアシレーヌを繰り出した。

 

3体で挑むとは言え相手はあの未知の敵であるUB。決して油断のできない相手であり、リーリエにとっては過去に因縁をもつウツロイドと同種でもあるため手に汗を握り緊張しているのが分かる。

 

誰かがゴクリと唾をのみ込む。それがバトルの合図になるかのようにフェローチェがピクリと動き出す。そして一瞬の内に彼女たちの目の前から姿を消した。

 

「!?消えた!?」

「一体どこに!?」

 

完全に姿を消してしまったフェローチェ。どこに行ったのかと周囲を見渡すもののフェローチェの姿が一切確認できない。

 

フェローチェが近くにいるのだという気配だけは感じ取れる。現に足音自体も少なからず聞き取ることが出来ている。だが与えられた情報と同様にフェローチェの姿を肉眼でとらえることができない。

 

『ドッブ!?』

「!?ドーブル!」

 

突然ドーブルが突き飛ばされ壁に激突してしまう。それを見たイリマがドーブルの身を案じ駆け寄る。幸いまだダメージは浅いが、今のは間違いなくフェローチェの攻撃である。

 

ドーブルが突き飛ばされたのとほぼ同時にフェローチェも再び姿を現す。やっと見つけることができたと、リーリエたちはこの機を逃すわけには行かないと即座に一斉攻撃を仕掛ける。

 

「シロン!れいとうビームです!」

「アシレーヌ!バブルこうせん!」

「ドーブル!れいとうビームをスケッチしてください!」

 

ドーブルは専用技であるスケッチを使いシロンと同時にれいとうビームを、アシレーヌはバブルこうせんで同時攻撃をする。3匹の攻撃はフェローチェに着弾したかに見えたが、不思議と全く手ごたえが感じられなかった。

 

『!?コォン!』

『シレ!?』

「!?シロン!」

「アシレーヌ!」

 

今度はシロンとアシレーヌが同時に吹き飛ばされる。再びフェローチェによる奇襲にやられてしまったのだ。つまり先ほどの攻撃は全くの空振りである。

 

「こ、このままではゲットどころの話じゃありませんね……。」

「うん、それどころか……」

「はい……全滅してしまう恐れもあります……」

 

それだけフェローチェのスピードは驚異的で戦うものの戦意すらも削いでしまいかねない程恐ろしいものであった。実力に差がありすぎるのである。

 

次の瞬間、三度フェローチェは姿を消す。目を凝らして警戒するものの、フェローチェの姿が確認することができない。ならばとリーリエはある作戦を思いつく。

 

「見えないならば動きを制限すれば!」

「でもどうやって?」

 

ミヅキが疑問符を浮かべその方法をリーリエ本人に尋ねる。リーリエはその疑問に行動で示すのであった。

 

「シロン!周りにこなゆきです!」

『コォン!』

 

シロンは自分たちの周囲をこなゆきで凍らせはじめた。リーリエの考えは地面を凍らせることによりフェローチェの行く手を遮り足場を少なくすることでフェローチェ自身の足場を無くすことであった。

 

スピードが速いといえど自身の足で動いている生物に過ぎない。特に2足歩行の生物は少しでも滑る足場に立ってしまうとそれだけでバランスを崩してしまいがちである。例えUBであっても例外ではないだろうと踏んでの作戦だ。

 

だが結果は予想とは大きく違っていた。シロンのこなゆきに反応したフェローチェは動きを止め、シロンのこなゆきを正面から受け止めに行く。

 

耐久の低いはずのフェローチェだが、シロンのこなゆきに向かって正面からジャンプして飛びかかってくる。むしタイプの技でもあるとびかかるだ。シロンは攻撃を避けるために攻撃を中断しバックジャンプで回避するも、フェローチェの攻撃は止まらなかった。

 

フェローチェは続いて着地の反動を利用し、今度は着地した足とは逆の右足でシロンの向かって一蹴り浴びせる。かくとうタイプの技であるとびげりだ。

 

俊敏に動くフェローチェの攻撃に対応しきれず、シロンは腹部にとびげりの直撃を浴びてしまう。シロンの身が心配となり、リーリエはシロンの名を呼びながら吹き飛ばされるシロンを受け止めるために飛びつく。

 

しかしシロンが勢いよく飛ばされてしまったため、リーリエもただでは済まなかった。シロンを受け止めた衝撃でリーリエも同時に後退し体を地面に打ってしまう。その衝撃でリーリエのリュックサックが開き、彼女の所持しているアイテムが散乱してしまう。

 

「リーリエ!」

「リーリエさん!」

 

ミヅキとイリマが心配そうに彼女に呼びかける。リーリエは大丈夫だと答えるものの、腕を擦りむいてしまい見るからに大丈夫そうではない。シロンも自分の身に何が起こったのか気が付き、自分を支えてくれたリーリエの身を案じる。

 

「私なら大丈夫です、シロン。それよりあなたが無事でよかったです。」

『コォン……』

 

自分が守るはずである大切なパートナーを傷つけてしまったと後悔するシロン。そんなシロンの耳に、ミヅキたちが戦っている声が入ってきた。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレーヌ!』

「サポートしますよ!ドーブル!もう一度スケッチです!」

『ドッブ!』

 

アシレーヌを素早く接近し攻撃を仕掛けることのできるアクアジェットで攻撃する。その攻撃をサポートするためにドーブルは先ほどのシロンが使用したこなゆきをスケッチしフェローチェに牽制を仕掛ける。

 

当然と言わんばかりにドーブルの攻撃をフェローチェは華麗に回避する。その回避先にアシレーヌがアクアジェットで攻撃するも、その攻撃すらもフェローチェはジャンプして回避してしまう。

 

上空に回避したフェローチェは、回避行動中に切り返しとびげりを繰り出す。とびげりはアシレーヌの腹部に狙いを済まし、アシレーヌもシロンと同様に飛ばされてしまう。

 

「アシレーヌ!?」

 

アシレーヌが心配となり駆け寄るミヅキ。アシレーヌもミヅキに応えるために大丈夫だと答え立ち上がる。その光景を見たリーリエはギュッと手を握り締め悔しそうな表情を見せる。

 

力のこもった手に気付き主の表情確認したシロンは、自分ものんびりしている場合ではないと心の中で考える。すると彼女の視界に、とあるアイテムが映り込んだ。そのアイテムを見たシロンはリーリエの腕から抜け出し、そのアイテムの元へと駆け寄った。

 

「シロン!どこに……!?」

 

シロンがどうして駆け出したのか気になったリーリエは、シロンの行く先を確認してみる。するとその先には、かつてカントー地方にて助けたフリーザーから授かった氷の石が転がっていた。

 

「シロン……あなたまさか!?」

『……コォン!』

 

かつて進化することに躊躇し、不安を抱いていたシロンであったが、そのころとは裏腹に今は覚悟を決め自身に満ちた表情で氷の石に触れる。

 

その瞬間、シロンの体が青白く輝きだす。その光に反応し、ミヅキとイリマ、そしてフェローチェさえも目を奪われる。

 

シロンの姿は見る見ると変化していき、小さかった体も次第に大きくなり遂に光を解き放った。するとそこにいたのは、さっきまでのシロンとは別のものであった。

 

優雅に佇む美しい容姿、周囲に氷の結晶が舞っているかに思わせる涼やかな雰囲気、その姿には誰もが魅了されること間違いなしだ。

 

「シロンが……進化?」

 

シロンが大きな変貌を遂げついに進化を果たしたのだ。以前は可愛らしい姿をしたロコンであったが、今は違う。優雅で美しいその姿、アローラのキュウコンへと進化したのである。

 

突然の出来事にミヅキとイリマも唖然とする。暫くするとシロンがゆっくりと目を開き、リーリエと目を合わせる。

 

「シロン……どうして?」

『…………』

 

あれだけ嫌がっていた進化をどうして自ら受け入れたのかと疑問に感じシロンに尋ねる。シロンはその問いに応えるようにリーリエに近づき顔をペロッと舐める。それだけで、リーリエはシロンがどのような覚悟を持って進化を受け入れたのか分かった気がした。

 

「……ありがとうございます、シロン」

『コォン!』

 

シロンはリーリエの感謝に一言返事をし前に出る。そしてフェローチェと対峙する。

 

「行きますよシロン!進化したあなたの力、見せてください!」

『コン!』

 

シロンはリーリエの合図に返答し戦闘態勢へと移行し身構える。その姿を確認したフェローチェもまた再び戦闘態勢をとった。

 

「すみません、ミヅキさん、イリマさん!私たちももう一度戦います!」

「うん!必ずフェローチェを捕まえよう!」

「はい!私イリマも全力で参ります!」

 

覚悟を新たにリーリエ、ミヅキ、イリマがフェローチェと向き合う。フェローチェはそんな三人の姿を見て、またもや姿を一瞬にして消してしまう。このスピードをどうにかしなくては勝ち目はない。

 

「……もう一度さっきの作戦を試してみたいと思います!」

「え?でもさっきのは……」

 

リーリエが先ほど発案した作戦、フェローチェの足場を封じるという作戦は失敗に終わってしまった。失敗してしまった作戦が成功するとは到底思えないが、リーリエの眼は決して諦めてはいなかった。それどころかどこか確信を持った力強い目つきをしていた。

 

その眼を見たミヅキは、彼女に任せても問題ないだろうと感じる事ができた。それと同時に、彼女の諦めないその姿は、2年前に見たある少年と重なったのである。その姿こそが彼女を信じてもいいのだという確信に至った最大の要因だ。

 

「シロン!行きますよ!」

『コン!』

「こなゆきです!」

 

シロンは範囲の広いこなゆきで攻撃する。その攻撃は周囲の地面だけでなく壁すらも見る見る内に氷漬けにしていく。その勢いは先ほどのこなゆきとは全く異なり、威力も範囲も明らかに向上していた。

 

『フェッチェ!?』

 

フェローチェはそのこなゆきの威力に焦り、先ほどと違ってシロンと距離を離し動きを止めてしまう。そしてフェローチェの周辺も氷で染まっていき、次第のフェローチェの足場が無くなり動きが完全に止まった。

 

「今です!れいとうビーム!」

『コォン!』

『フェロ!?』

 

シロンは動きを止めたフェローチェに対してれいとうビームで追撃を仕掛ける。動きを封じられているフェローチェに残されたのはジャンプしてれいとうビームを回避することのみ。フェローチェはシロンの攻撃をジャンプし、攻撃の隙ができたシロンに向かってとびげりを放つ。

 

「させませんよ!ドーブル!フェローチェのとびげりをスケッチしてください!」

『ドブッ!』

 

今度はフェローチェの攻撃をスケッチしたドーブルは、小さな体を利用してフェローチェの懐へと潜り逆にとびげりをカウンターとして浴びせる。

 

『フェチェ!?』

 

フェローチェの腹部にドーブルのとびげりが直撃する。勢いよくその攻撃を受けてしまったフェローチェは顔を歪め弾き返されてしまう。なんとか着地するものの、耐久力が低いと言われているフェローチェにはそのダメージが大きかったようで膝をつき怯んだ様子を見せる。

 

「行くよ!リーリエ!」

「はい!ミヅキさん!」

「アシレーヌ!」

「シロン!」

『ムーンフォース!』

 

ミヅキのアシレーヌとリーリエのシロンが同時に力を溜め込む。そして体の中央に溜め込んだ力を解放しムーンフォースを放った。

 

2人のムーンフォースが重なり威力が倍増する。そのムーンフォースの合体技が怯んだフェローチェに向かっていく。先ほどのダメージが影響してしまいフェローチェは動くことができない。アシレーヌとシロンのムーンフォースがフェローチェにヒットしフェローチェはダウンし戦闘不能となった。

 

アシレーヌは当然として、シロンのムーンフォースは明らかに進化前と違い威力も桁違いに上がっていた。進化前のロコンと違ってキュウコンにはフェアリータイプが追加されている。それに加えシロン自身の能力が上がっているため進化前以上に簡単に使いこなすことができたのだろう。

 

そのことに気付き感動を覚えるリーリエだが、今はそれより先にやるべきことがあるとハッとなりミヅキの名を呼んだ。

 

「ミヅキさん!今がチャンスです!」

「りょーかい!行くよ!ウルトラボール!」

 

ミヅキはウルトラボールを投げる。ウルトラボールはダウンしているフェローチェに命中しフェローチェはウルトラボールの中に入っていく。

 

ウルトラボールが数回揺れる。これで決まってくれと願うみんなの想いが届いたのか。ウルトラボールがピコンッと鳴りフェローチェの捕獲に成功する。

 

「やった!フェローチェ、ゲットだよ!」

 

ミヅキはフェローチェのゲットに成功したことに喜びをあらわにしてフェローチェの入ったウルトラボールを手にする。

 

「やりましたね!ミヅキさん!」

「うん!リーリエもお疲れ様!」

 

リーリエもフェローチェのゲットに成功したことに興奮しミヅキに近づき今回の作戦成功の喜びを分かち合う。

 

「2人とも、お疲れ様です。」

「イリマさん!イリマさんもありがとうございました!」

「いえ、今回はリーリエさんとシロンの力があったからこその成功です。お二人にはとても感謝しておりますよ。」

 

イリマの真っ直ぐな感謝の気持ちにリーリエも思わず頬を赤らめ照れる。さすがにそこまで正面から褒められては照れてしまうものである。

 

互いに今回の仕事ぶりを称賛し合っている時、3人の通信機に通信が入りそれを起動して繋げる。すると再びビッケとの通信が繋がる。

 

『ウルトラオーラの消失を確認しました。皆さん、お疲れ様でした。ではこれよりアーカラ島のバーネット博士が待つ空間研究所に向かってください。』

 

ビッケがそう伝えると3人が了解と答える。その後、ビッケとの通信は切れ、イリマは2人にこれからの事を伝える。

 

「リーリエさん、ミヅキさん。私はこれからラッタとデカグースをポケモンセンターに連れて行きます。申し訳ありませんが、空間研究所にはお二人で向かって言っても構わないでしょうか?」

 

イリマの問いに2人はもちろんと答え再度感謝の言葉を伝える。イリマはそんな2人に笑顔で別れを告げ、1人ポケモンセンターへと向かっていった。

 

「じゃあ私たちも行こっか。」

「あっ、すいません。私少しやることがあるので先に外で待っててください。」

「そっか。分かった。早く来てねー!」

 

ミヅキはリーリエに手を振って一足先に洞窟の外へと出る。ミヅキの姿が見えなくなったことを確認したリーリエは自分のパートナーの目の前へと近寄り屈んだ。

 

「シロン」

『コォン?』

「先ほどはありがとうござました。私を守るために進化する覚悟を決めてくれたんですよね?」

 

シロンは黙ってリーリエの話を聞いている。

 

「でも……良かったんですか?進化してしまって?あなたは……」

 

シロンはリーリエの話を聞いて先ほどと同様にシロンはリーリエの顔を軽く舐める。その感触は冷たいはずなのにどこか温かかったのだとリーリエは感じた。

 

「シロン?」

『……コォン!』

 

シロンは笑顔でリーリエに一言だけそう答えた。リーリエはシロンのその声にはシロンの感情全てが込められているように感じる事ができた。

 

「ありがとうございます、シロン。これからもよろしくお願いしますね!」

『コォン♪』

 

リーリエとシロンは互いに笑みを浮かべてこれからも一緒に歩もうと誓い合う。こうして2人は共に進化という一つの困難を乗り越え、互いの絆を確かめ合う事ができたのであった。

 

その後、捕獲したUBの入ったモンスターボールを届けるために空間研究所へと届けるリーリエとミヅキは、空間研究所にて同じく任務を完了していたヨウとハウに合流する。4人は空間研究所へと赴き、ウルトラボールをバーネット博士に預け任務を完遂したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB02 BEAUTY”捕獲完了―




遂にシロン進化でございます。

昨日は新しいキョダイマックスの情報が解禁されましたね。専用Z撤廃の代わりにイーブイちゃんもキョダイマックスして可愛さもキョダイマックスするようです。ここまでくると新規ブイズは怪しくなってきますが、これからの追加情報も期待しています。

ではではまた次回お会いしましょう!


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森林のバトル!見せろ、3人のコンビネーション!

先週投稿できず申し訳ないです。バトルツリーに熱中してました。

ようやくシングル200連勝達成とマルチクリアしました

後は剣盾までにずっとさぼってたポケファインダーとアローラ図鑑完成でスタンプ集めようかなと思ってます

もうすぐ剣盾発売したら間違いなくやり込むのでそれまで投稿さぼらないようにしなければ……


メレメレ島に出現したUB、マッシブーンとフェローチェの捕獲任務を無事達成したウルトラガーディアンズ。続いてはアーカラ島、ジェードジャングルに出現したUBだ。

 

このエリアに派遣されたのはジェードジャングルの試練を担当するキャプテン、マオと同じくアーカラ島のキャプテンであるカキ、スイレンの3人だ。

 

同じ島のキャプテンという事もあり、この3人は仲もよく普段接する機会も多い。同じUBの対処に当てられたのはそのためだ。

 

現在彼らはジェードジャングルに辿り着き、目の前にいる異形な姿をしたポケモン、UBと対峙していたのだった。

 

「こ、これがUB!?」

「確かに普通のポケモンとはどこか違いますね……。」

 

カキ、スイレンは目の前に突然姿を現したUBに驚きの声をあげる。

 

そのUBはまるで千切れたコンセントを人型になるように繋ぎ合わせ作られたかのような姿をしており、その頭部と思われる部分はトゲトゲしており、そのUBは何かしらの言葉を発しているのかもしれないが、人間の耳ではうまく聞き取ることができない。

 

UBの指先と思われる部分からはバチバチと火花が飛び散っているのが見える。そのコンセントにも似た容姿とそのエフェクトから推測すると、このUBは恐らくでんきタイプと見て間違いないであろう。

 

3人はこのUBに対してどのように対処するかを考える。しかしその時、3人の腕に装着されている通信機に通信が入る。例の如くビッケからの通信であった。

 

『皆さん!ジェードジャングルに出現したUBの詳細が判明しました!我々はそのUBの名をデンジュモクと名付けました!今そちらにデータを転送します!』

 

ビッケからUBの詳細なデータが送られてくる。そこに載っていたUBのデータを3人は確認した。

 

UBコードネームは“UB03 LIGHTNING”。デンジュモクは彼らの想像通りでんきタイプ。彼の体は電気を効率よく通すことができるように作られており、放電して電力が足りなくなると電気を主食として蓄えるそうだ。その説明から察するに、彼は電気を食さなければ本来の力をフルに発揮することは出来ないだろう。

 

幸いにもこのアーカラ島、特に今いるジェードジャングルの近くには発電所の様に電気が通っている場所ない。その分デンジュモクも本来の力を活かしきることはできないであろう。この場はデンジュモクにとってかなり不利な環境のはずだ。

 

しかし相手は未知の生命体UB。少しの油断は命取りとなってしまうのは3人も理解している。ここは協力してなんとしてでもデンジュモクを捕獲しようと自身のポケモンが入っているモンスターボールを取り出した。

 

「行くぞ!ガラガラ!」

『ガッラ!』

「お願い!ラランテス!」

『ララン!』

「出番ですよ!オニシズクモ!」

『オッズ!』

 

カキはほのお・ゴーストタイプのガラガラ、マオはくさタイプのラランテス、そしてスイレンはみず・むしタイプのオニシズグモである。それぞれキャプテンとして得意なタイプのポケモンで勝負に出る。

 

「来るぞっ!注意しろ!」

 

カキがデンジュモクの動きに気付き注意を促す。その言葉にマオとスイレンが頷くと当時にUBの動きに変化がみられる。

 

デンジュモクの手と思われる部位が先ほどに比べさらにウネウネと脈を打つように動き始める。すると突然、デンジュモクは高くジャンプしカキたちのポケモンの上を取る。

 

「っ!ガラガラ!ホネブーメラン!」

『ガラッ!』

 

ガラガラはホネブーメランをジャンプしたデンジュモク目掛けて投げ飛ばす。しかしその攻撃はデンジュモクの腕足を蔦のように具現化させて叩きつける攻撃、パワーウィップによりあっさりと阻まれる。

 

弾き返されたホネブーメランをガラガラがキャッチすると、その後目の前にデンジュモクが着地する。

 

『っ!』

「あれはさいみんじゅつ!?ガラガラ躱せ!」

 

デンジュモクの奇襲に慌てて回避の指示を出すカキ。しかしガラガラは突然のことで回避までの行動が間に合わずデンジュモクのさいみんじゅつにかかってしまいその場にうつ伏せで倒れてしまう。

 

さいみんじゅつは隙こそ大きいが、当たってしまえば眠り状態となり暫く動けなくなってしまう厄介な技だ。

 

「ガラガラ!?」

「ラランテス!ガラガラを助けるよ!リーフブレード!」

『ラテ!』

「私たちも行きますよ!オニシズクモ!アクアブレイク!」

『シズグッ!』

 

さいみんじゅつにより倒れてしまい襲われてしまいそうになっているガラガラを助けるべく、ラランテスは鎌状の腕を鋭くとがらせて切り裂くリーフブレード、オニシズクモは自らの前足を居合斬りのように懐から繰り出すアクアブレイクによりデンジュモクを攻撃する。

 

デンジュモクはラランテスとオニシズクモの攻撃に気付きジャンプして躱す。2体はガラガラを守るようにデンジュモクと位置を入れ替える。

 

『ガ?ガララ!』

「ガラガラ!大丈夫か!?」

『ガラーラ!』

 

今の騒動が原因がガラガラはさいみんじゅつによる睡眠から目を覚ます。カキの声に応答し、ガラガラは骨を持った拳を天に突き上げ自らを鼓舞する。

 

しかし状況的には3対1であろうとも分がいいとはとても言えない。デンジュモクはさいみんじゅつという厄介な技を所持しているうえに、先ほどのガラガラの攻撃を容易く跳ね返したパワーウィップの威力。相手にとっては間違いなく不利な環境であるだろうが、それでも戦力差的にはほぼ違いはないといってもいい。

 

「これだと単純に攻めても駄目だよね。」

「ああ。最悪あいつをゲットする隙さえ作ることができればいいんだが。」

「そうですね……。それでしたら私に任せてください!」

 

どうするべきか悩むカキとマオだが、スイレンには何かしらの策があるようで2人にある提案をする。

 

「先ずはお2人でデンジュモクの注意を引き付けてください。その後に私がデンジュモクの動きを封じます!」

 

カキとマオはスイレンの考えを疑うことなく、彼女のことを信じて頷いて答える。その後ガラガラとラランテスに攻撃の指示を出した。

 

「ラランテス!はっぱカッター!」

『ランテ!』

 

ラランテスははっぱカッターによる遠距離攻撃を仕掛ける。しかしデンジュモクからしたらその攻撃は見え見えであり、少し軸をずらすだけで簡単に避けられてしまう。

 

「ガラガラ!走りながらホネブーメラン!」

『ガッラ!』

 

続いてカキのガラガラが地面を思いっきり蹴り勢いよくダッシュする。その勢いを維持しつつガラガラはホネブーメランをデンジュモク目掛けて投げる。

 

デンジュモクはガラガラのホネブーメランを先ほどと同様にパワーウィップではじき返す。ガラガラは弾き返されたホネブーメランをキャッチし、そのままデンジュモクに向かって飛びかかった。

 

「そのままシャドーボーン!」

『ガラッ!』

 

ガラガラは掴みとった骨でデンジュモクに殴りかかる。デンジュモクはパワーウィップでガラガラのシャドーボーンを防ぎ弾く。その後、ガラガラは弾き返された反動を利用しシャドーボーンをもう一度振りかざす。

 

しかしデンジュモクはガラガラの攻撃を予想していたようでシャドーボーンによる一撃をバックステップで回避する。その回避先に向かって、ラランテスが既に走り出していた。

 

「ラランテス!リーフブレード!」

『ララン!』

 

ラランテスはリーフブレードで攻撃する。デンジュモクは危険を察知し、今度は強力な電撃攻撃、10まんボルトで反撃する。ラランテスは10まんボルトをリーフブレードで切り裂きデンジュモクに切りかかる。

 

デンジュモクはラランテスの攻撃をパワーウィップで防御する。その隙を突きカキはガラガラに追撃の指示を出し、ガラガラはその指示に従って追撃する。

 

「ガラガラ!もう一度シャドーボーンだ!」

『ガラァ!』

 

デンジュモクはラランテスのリーフブレードをパワーウィップで防いでいて隙だらけだ。今であれば強力な一撃を与えることが可能だろうと考えての攻撃であったが、デンジュモクは予想外の行動を繰り出してきた。

 

なんとデンジュモクはパワーウィップを使用しながら頭部から10まんボルトを放ちガラガラを迎撃したのだ。ガラガラは10まんボルトの電撃に痺れてしまい吹き飛ばされてしまう。

 

ラランテスは吹き飛ばされてしまったガラガラに気を取られてしまい力が緩んでしまう。その隙をついてデンジュモクはパワーウィップの威力を高めラランテスのリーフブレードを弾き返し反撃の一撃を加える。

 

「ガラガラッ!?」

「ラランテス!」

 

ガラガラとラランテスはデンジュモクの攻撃によって大きなダメージを負ってしまう。そんな2体を見て慢心したのか、デンジュモクは自慢気にこちらを見下ろしている。

 

だがそれこそが最大の隙だと遂にスイレンとオニシズクモが動き出す。油断したデンジュモクの背後に、オニシズクモは気配を消して歩み寄っていたのだ。

 

「今です!オニシズクモ!アクアブレイク!」

『オッズ!』

『ッ!?』

 

オニシズクモの気配に気づくことができなかったデンジュモクは振り向くも間に合わずアクアブレイクの一撃を浴びてしまい遂にダメージを負い大きく怯んだ。

 

「続いてクモのす!」

 

オニシズクモは怯んだデンジュモクの周囲にクモのすを張り巡らせる。クモのすは本来相手の交換などを防ぐ類の技だが、今回は相手の逃走経路を塞ぐ手段として使われた。これによりデンジュモクの行動は大幅に減少したと言っていいだろう。

 

「カキ!マオ!」

 

スイレンは今だと言わんばかりに2人に対して呼びかける。カキとマオもスイレンの合図に答え、ガラガラとラランテスは再び立ち上がり行動に移った。

 

「ガラガラ!ホネブーメランだ!」

『ガラガァラ!』

 

ガラガラはホネブーメランを投げ飛ばす。その攻撃はデンジュモクの元まで弧を描いて飛んでいく。その間、ラランテスは自身の腕に自然の力を溜め込みある攻撃の準備をしていた。

 

デンジュモクはガラガラの攻撃を再びパワーウィップではじき返す。そして近づいてくるガラガラを迎撃するために頭部から10まんボルトにより阻止しようとする。その攻撃をガラガラはジャンプして回避した。

 

「何度も同じ手を喰うわけには行かないからな。ガラガラ!シャドーボーン!」

『ガラ!』

 

戻ってきたホネブーメランをキャッチし、力強くシャドーボーンを振り下ろす。デンジュモクはその攻撃をジャンプして上空に逃げる。

 

回避したことによりガラガラに隙ができ、今の内に反撃を仕掛けようとするデンジュモク。しかしデンジュモクの体は動くことはなく、自身に何かしらの異変を感じていた。デンジュモクは背後を振り向くと、そこには地上に張り巡らされているクモのすと同じものが木に張られていたのだ。

 

自分の周りに罠が張っている状況で自分が動けなければジャンプして回避するしかない。であれば最終的に残った回避ルートは自然と上空のみとなっている。

 

しかしここはジェードジャングル。所謂木々が生い茂った森の中だ。森の中であればポケモンたちにとってはテリトリーも同然。地の利を活かし、デンジュモクを罠に誘導したのである。

 

デンジュモクは抜け出そうとするも自分の複雑な体の構造に絡みついてしまい逆効果となってしまっている。そんなデンジュモクは攻防共に隙だらけとなってしまい、格好の的となっている。

 

デンジュモクが足掻いている間にラランテスのチャージは完了した。そこにはジェードジャングルに生えている木の高さを超える程のエネルギーが差し込んでいた。

 

「いっけー!ラランテス!ソーラーブレード!」

『ララァァァン!』

 

ラランテスは強大なソーラーブレードを振り下ろす。当然デンジュモクには避けるすべはなくそのまま直撃を浴び地面に叩きつけられる。

 

デンジュモクはピクピクと僅かに動いてはいるが、それでも先ほどまでの動きをすることはおろか立ち上がることすら困難になっているようだ。

 

「行くよ!ウルトラボール!」

 

マオはデンジュモクをゲットすべくウルトラボールを投げる。ウルトラボールはデンジュモクにヒットし、デンジュモクをボール内部に収納する。

 

デンジュモクは今の一撃により相当弱っていたのか、少しボールが揺れただけで簡単にゲットすることができた。どうやらもう抵抗する元気も残っていなかったようである。

 

マオはデンジュモクが入ったウルトラボールを拾い上げる。これで自分たちの与えられた任務は達成である。

 

スイレンがデンジュモクを誘うよう罠をはり、カキが牽制も含めたラッシュで攻め、マオが強力な一撃を叩きこむ。見事な連携攻撃で見事ウルトラビースト捕獲完了だ。

 

『ウルトラオーラの消失、確認いたしました。3人ともお疲れ様です。ではゲットしたデンジュモクの入ったウルトラボールをバーネット博士の元まで届けてください。』

 

例の如くビッケからの通信が入る。それを聞いた3人はビッケの指示通りにジェードジャングルを後にし、バーネット博士の待つ空間研究所へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB03 LIGHTNING”捕獲完了―

 

 




前回のリーリエと違って重要な回ではないのでサクッと短めです

一応シングル200連勝パーティだけ載せておきますので目指している人は参考までに
比較的安定してクリアできました

臆病カプ・コケコ@拘り眼鏡 CS極振り
10万/ボルチェン/草結び/マジカルシャイン

腕白テッカグヤ@食べ残し HBベース
ヘビボン/宿木/守る/毒毒

意地バシャーモ@メガ石 AS極振り
フレドラ/飛膝蹴り/守る/地震


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鋭いヤイバ!切り裂くツルギ!

ブイズにとってあまりに重すぎるカミツルギ先輩です。スカーフカミツルギとかお手上げです。

一応この間非ログインでも感想できるようにしておいたので気軽にコメントしてくださいませ。誹謗中傷などでなければなんでもお受けいたします。



……ん?今なんでもって?


メレメレ島に続きアーカラ島に出現したUBの捕獲に成功したウルトラガーディアンズたち。残るはウラウラ島のマリエ庭園とハイナ砂漠を残すのみである。

 

マリエ庭園はウラウラ島にあるマリエシティの中に存在し、庭園という名の通り大きな庭である。元々観光地としても有名なマリエシティだが、現在はUBの存在が危険であると判断され一般人の立ち入りは禁止されており住民たちも街からは避難している。そのため普段賑やかなマリエシティも今では人がいないため静かである。

 

そこにやってきたのはウルトラガーディアンズのメンバーであり元スカル団のボスと幹部であるグズマとプルメリである。

 

「……チッ、俺一人でも充分だっていうのに、なんでお前までいるんだよ。」

「まぁそう言うなってグズマ。これはエーテル財団で決まったことなんだから仕方ないさね。さっさと終わらせちまえばなんてことないだろう?」

 

文句を言うグズマにそう言い聞かせ宥めるプルメリ。このやり取りを見ればお互い仲が悪いように思えるかもしれないが、彼らにとってはいつも通りのやり取りである。喧嘩するほど仲がいい、ということである。

 

先ほどは舌打ちをしながら軽口を叩いたグズマだが、その表情は柔らかくどことなく緩んでいるようにも思えた。口にしたこととは裏腹に彼自身も久しぶりにプルメリと戦えることが嬉しいのかもしれない。それはプルメリも同じようである。

 

「ところでよ。例のUBはどこにいんだよ。」

 

しかしマリエ庭園にやってきたはいいものの、見渡してもUBの姿は見当たらない。UBは異形な姿をしており、グズマはかつてウツロイドの姿を目の当たりにしているためどのような存在なのかは知っている。

 

しかもマリエ庭園は建物はあるものの障害物自体はほとんどなく隠れられる場所もない。見渡しもいいためそのような目立つ姿をしたポケモンであればすぐ目に入るはずである。それでも見つからないというのであれば、考えられる理由は水中に身を潜めているか、それとも既にここにはいないか、そもそもここにUBは出現していないかであろう。

 

UBをどうやって炙り出そうかとグズマが考えていると、静かなマリエ庭園に通信機が鳴り響きビッケからの通信が入る。

 

「あぁ?」

『グズマさん、プルメリさん。マリエ庭園に現れたUBに関するデータをそちらに転送しました。確認してくれぐれも注意して対処してください。』

 

ビッケからデータが送られてくるものの、そういったデータや資料を読むことが嫌いなグズマは、それらの確認をプルメリに押し付ける。プルメリも『仕方ないね』と半ば分かっていたかのように溜息を吐き自分が資料を確認する。

 

「……これはちょっと厄介かもしれないね」

「あぁ?どうしたんだよ」

 

プルメリがそう呟くとグズマが何があったのかと尋ねる。プルメリはマリエ庭園に出現したUBの詳細を読み上げた。

 

そのUBのコードネームは“UB04 SLASH”。エーテル財団に付けられた呼称はカミツルギである。タイプははがね・くさタイプで、素早い動きからの強力な近接攻撃、特にその鋭い刀を思わせるような手足から繰り出される斬撃には注意が必要だそうだ。

 

しかしプルメリが驚いた点は他にある。それはカミツルギにサイズであった。

 

「……チッ、なんだよこいつぁ」

 

グズマが確認すると、そこに書かれていたのは驚くべき表記であった。それはカミツルギの高さが0.3mなのである。一般的なポケモンと比較するとあのキャタピーとほぼ同サイズであるといえば分かりやすいだろうか。

 

それだけ小さなポケモンであればマリエ庭園をいくら見渡しても見つからないのも仕方ないであろう。

 

だがその時であった……

 

「っ!?」

 

グズマの所持しているモンスターボールの一つが勝手に揺れ、その中から彼の相棒であるポケモンが勝手に飛び出してきた。

 

『シャ……』

「……グソクムシャ、どうしたんだよ?」

 

突然出てきたグソクムシャに困惑するグズマだが、グソクムシャはある一点だけを見つめゆっくりと歩きだす。その場所にはぱっと見草むらしかなく、他には何もない。グソクムシャはそんな草むらをアクアブレイクで切り裂いた。

 

「ハッ、ようやくおでましかよ!」

 

グソクムシャが切り裂いた草むらから小さな影が飛び出してくる。その容姿は紛れもなく送られてきた資料に載っていた情報と一致しており、小さいながらも異質な威圧感を感じさせるものであった。

 

「あんなところに隠れてたとはね。全く、よく見つけたねぇ。」

 

ようやく姿を現したカミツルギを確認したプルメリはモンスターボールを構え、自身も戦うために相棒ポケモンを繰り出した。

 

「行ってきな!エンニュート!」

『ニュート!』

 

プルメリの相棒、エンニュートはほのお・どくタイプ。どくタイプの技は全く効果がないものの、ほのおタイプの技であれば効果抜群である。

 

対してグズマのグソクムシャはみず・むしタイプ。くさ・はがねタイプのカミツルギに対してはほぼ五分五分の相性である。しかし相手はUB、油断などできるはずもない。

 

「カミツルギ……てめぇをぶっ壊してさっさと終わらせてやる!」

「グズマ、カミツルギを捕まえることが本来の目的ってことも忘れてない?」

 

プルメリの小言に『分かってる!』とだけ答えグズマはグソクムシャに攻撃の指示を出す。しまキングになっても相変わらず荒っぽいねぇ、と思うプルメリはグズマがやりすぎないようにサポートしようと自分たちも動き出す。

 

「グソクムシャ!であいがしら!」

『ムッシャ!』

 

グソクムシャはであいがしらを繰り出す。であいがしらは戦闘に出てすぐにしか使用できないが、その分素早い動きで相手より先に攻撃することのできる技だ。

 

カミツルギはグソクムシャの一撃を鋭い刀に似た腕で防御する。見た目が紙のようにペラペラでその小さな体から非力にも見えるが、カミツルギは大きな体を持ち太い腕から繰り出されるグソクムシャの強力な一撃を悠々と耐える。

 

「エンニュート!はじけるほのお!」

『ニュット!』

 

エンニュートははじけるほのおでふわふわと浮かんでいるカミツルギに追撃を仕掛け狙い撃つ。カミツルギはその攻撃を更にふわりと浮かび上がり回避するも、着弾した炎が周囲に飛火しカミツルギにも僅かにヒットする。

 

はじけるほのおは着弾地点から周囲にも僅かながらダメージを与えることができる追加効果を持っている。ほのおタイプが弱点であるカミツルギに対して確実にダメージを与えられるためこれは的確な判断であろう。

 

その攻撃を受けたカミツルギは攻撃対象をエンニュートに向け、横に体を傾けて回転しながら突進してくる。マリエ庭園にある小さなオブジェクトすらも切り裂きながら接近してくるその姿から、カミツルギの切れ味が相当なものだということが伺える。間違いなく食らったらただでは済まないだろう。

 

カミツルギの腕が緑色に光りだす。これはくさタイプの技であるリーフブレードだ。

 

「躱しな!」

 

エンニュートはそのしなやかな体と素早い動きを活かしカミツルギの攻撃を回避する。しかしカミツルギの攻撃はそれで終わりではなかった。

 

カミツルギは一切勢いを落とさず、まるでブーメランのようにUターンして戻ってくる。その攻撃にエンニュートは反応しきることができず、背中に直撃してしまう。

 

「!?なるほどねぇ、中々やるじゃないか。」

 

油断していたつもりはないが、さすがはUBとプルメリは認識を改める。そんなプルメリをよそに、グズマはグソクムシャと共に前に歩み出る。

 

「グソクムシャ、アクアブレイク!」

 

グソクムシャは懐から水でできた刀で居合斬りをする。グソクムシャのアクアブレイクに対抗し、カミツルギは再び横回転し手足の先端を伸ばして切りかかってくる。今度はかくとうタイプの技、せいなるつるぎだ。

 

グソクムシャのアクアブレイクとカミツルギのせいなるつるぎがぶつかり合う。どちらも強力な一撃で、互いの全力と言ってもいい攻撃が交じり合い金属音のような甲高い音が庭園内に鳴り響く。まるで本物の刀で鍔迫り合いでもしているような感覚だ。

 

「そのまま弾き飛ばせ!」

 

グソクムシャは強引にアクアブレイクを振り切りカミツルギを振り払った。カミツルギはその反動で飛ばされ、上手く態勢を立て直せずに空中で浮遊していた。

 

「ミサイルばり!」

『ムッシャ!』

 

グソクムシャはそのまま背中から無数の針をカミツルギに向かって撃ち放った。グソクムシャのミサイルばりはカミツルギに命中し、カミツルギはその勢いで地面にミサイルばりごと打ち付けられた。

 

「油断するんじゃないよ。相手はUBなんだからね。」

「分かってる。」

 

プルメリの忠告にそう答えるグズマ。ミサイルばりの衝撃で発生した土煙でカミツルギの姿が見えないが、それでも今の連続攻撃を浴びてしまえばさすがのUBと言えどただでは済まないだろう。

 

しかし次の瞬間、土煙から1つの影が勢いよく飛び出してきた。紛れもなくカミツルギである。

 

カミツルギは一瞬でグソクムシャの背後を取り、上空から叩き伏せるように切りかかった。

 

「チッ!グソクムシャ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャはグズマの呼びかけに答え、カミツルギの攻撃に反応してその太い腕を盾にし防ぐ。カミツルギの攻撃も強力ではあるが、グソクムシャの耐久力もまた一級品。かなり手痛い一撃ではあったが、それでもグソクムシャは踏ん張り耐えしのいだ。

 

「隙だらけだよ!エンニュート!りゅうのはどう!」

『ニュトォ!』

 

エンニュートのりゅうのはどうがカミツルギを襲う。カミツルギの攻撃対象は完全にグソクムシャに向いていたが、エンニュートの技に反応しすぐさまその攻撃を避けエンニュートの元へと飛びかかった。

 

カミツルギはエンニュートとの間合いを詰め切りかかる。しかしその時、プルメリは口角を上げてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「エンニュート!ジャンプして躱しな!」

 

エンニュートは柔軟な体つきを利用した跳躍力でカミツルギの遥か頭上までジャンプする。一瞬の出来事でエンニュートの姿を見失ってしまったカミツルギは辺りを見渡しエンニュートの姿を慌てて探す。

 

「今だよ!はじけるほのお!」

『ニュート!』

『!?』

 

はじけるほのおが放たれた直後に上空にいたエンニュートの姿を察知したカミツルギははじけるほのおの直撃を寸でのところで回避する。しかし先ほどよりも反応が遅れてしまったため、はじけるほのおでの追加効果を多く被弾する。

 

その影響でカミツルギの動きが鈍り、その場で動きを停止してしまう。その隙を狙ったグズマとグソクムシャがすかさず最後の追撃にはいった。

 

「グソクムシャ!アクアブレイク!」

『ムッシャ!』

 

グソクムシャはアクアブレイクでカミツルギに追撃する。今度ははじけるほのおによる追加ダメージが予想以上に大きく防御の態勢に入れなかったため、カミツルギはグソクムシャのアクアブレイクでマリエ庭園の池まで吹き飛ばされてしまう。

 

カミツルギは見た目と同じく体重も非常に軽いため戦闘不能状態となったまま水面まで浮かんできた。それを確認したグズマがウルトラボールをカミツルギに投げつける。

 

カミツルギはウルトラボールの中に収納され、水面に浮かびながら赤い光を点滅させ僅かに揺れる。そしてウルトラボールの揺れは収まり、UBであるカミツルギの捕獲に成功したのであった。

 

「グソクムシャ」

『ムシャ』

 

グズマの指示に従いグソクムシャは池まで歩き出し水面に浮かんだウルトラボールを回収する。それを確認したプルメリはエンニュートをモンスターボールへと戻しグズマに近づいた。

 

「なんとかなったみたいだねぇ。」

「……ハッ、UBと言っても大したことなかったな。」

「あたいとあんたが組んだんだ。このくらい当然だろう?」

「……ふんっ、違いねぇな」

 

グソクムシャからカミツルギの入ったウルトラボールを受け取るグズマ。するとタイミングを計ったかのようにビッケからの通信が入った。

 

『ウルトラオーラの消失を確認。お疲れ様です。捕獲したUBはバーネット博士の元まで届けてください。』

 

最後の任務だけを伝えビッケは通信を切る。

 

人に頼まれて行動するのはあまり趣味じゃないと初めは僅かながら嫌がっていたグズマであったが、偶にはこういうのも悪くないかもしれないと心のどこかで思い、最後に鼻を鳴らしてプルメリとマリエ庭園を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB04 SLASH”捕獲完了―

 

 

 

 




アニポケサン&ムーンも完結おめでとうの意味も込めてか最近アニポケDPに続きAGも見直しました。今はXY見てます。BWも見直さなきゃ(使命感)

ポケモン剣盾発売まであと一週間です!アローラ図鑑も完成したしトレーナーパスのスタンプも集め終わったので後は発売を待つばかり。間違いなく神ゲーなので原作をやめてしまった方も復帰待ったなし。

多分次回作ではダイマックスはあるもののメガシンカ、Z技や過去の準伝が無くなる関係上恐らく現在のようなインフレは収まると思うので丁度いい環境にはなると思います。ブイズにとってゲロ重だったレヒレとかUB勢、メガリザードンがいなくなるのは救いだと思いたいです。


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巨大!要塞!テッカグヤ!

剣盾発売が明日に迫りました。そんな中新ポケモンやキョダイマックス等のリーク情報なども飛び交っておりますね。

初代ブイズ御三家のキョダイマックスも出ると聞いてますがそれに関してはホントかウソかは分かりません。

皆さんの嫁ポケは出ますでしょうか?私はブイズが出るだけで満足なんですけど。個人的にポケモンキャンプが楽しみだったりします。


突如として出現したUBに対抗すべく結成された精鋭部隊、ウルトラガーディアンズ。メレメレ島に現れた強靭な肉体を持つマシブーン、最速の足を持つフェローチェに続き、近接攻撃と遠距離攻撃を上手く使い分けるデンジュモク、鋭い切れ味で敵を切り裂くカミツルギの捕獲に成功した。

 

残るは最後に確認されたUBを残すのみである。出現した場所はウラウラ島の守り神、カプ・ブルルが祀られている場所の近くに広がる迷宮ともいえる砂漠、ハイナ砂漠である。

 

ハイナ砂漠。知らずに入った者は気付かぬうちに入り口まで戻されてしまう事で有名な地だ。カプ・ブルルが人間が砂漠の中で倒れる前に助けている、侵入者を気付かれない様に排除しているなど色々な説があるが原因は判明されていない。

 

「うー……あっついよマーさん……」

「そうだね。ハイナ砂漠は昼には日差しが強くなってしまうからね。水分補給は忘れないようにしないとね。」

 

そう言って水の入った水筒を渡した人物はマーレイン。ホクラニ天文台の所長であり、元キャプテンとしても務めていた経歴を持つ実力者だ。そんな人物であればハイナ砂漠に入っても迷ってしまう事はないであろう。

 

「ありがとう、マーさん」と言って水筒を受け取りガブガブと飲み始めた小太りの少年はマーマネ。マーレインの従弟であり、ウラウラ島の現キャプテンを務めている。元々人見知りで人と話すことが苦手な彼だが、従兄弟関係であるマーレインに対しては、“マーさん”“マーくん”と呼び合う間柄で、気にせず接することのできる数少ない人物である。

 

「それにしてもどこにいるんだろうね?UBって」

 

ハイナ砂漠に入って結構な時間経過したが探しているUBが一向に見つかる気配がない。これだけ広大な砂漠であれば異形な姿をしたUBとはいえ見つけるのも一苦労であろう。

 

もうここにはいないのかもしれないと思いはじめ諦めかけたマーマネだが、そんな時晴れ渡っていたハイナ砂漠に突然砂嵐が吹き荒れた。

 

「うわっ!?こんな時に砂嵐!?」

 

砂嵐に驚き目に入らない様に目を守るマーマネとは対照的に、メガネをかけているからかマーマネほどの被害はないマーレイン。そんなマーレインは目を細め、目の前に感じた違和感に目を凝視させる。

 

「……どうやらそうでもないみたいだよ。」

「マーさん?」

 

マーレインの言葉に疑問を抱くマーマネ。その直後、今度はゴォー!というロケットから発せられるエンジン音のような音が響き渡る。一体何事かと思うマーマネだが、先ほど発生したはずの砂嵐が今度は突如として止み始める。

 

「あれ?砂嵐が……」

 

砂嵐が収まり再び暑い日差しが砂漠に降り注ぐ。砂嵐が収まったことで視界が良好になり、マーマネはようやく前に目を向けることができた。しかしそこには驚くべきポケモンの姿があったのである。

 

「!?こ、これって!?」

「……どうやら僕たちの想像をはるかに超えていた存在のようだね、UBっていうのは」

 

そこにいたのは一目で分かるUBの存在であった。しかしそのUBの姿は、まさに絶句してしまうほどの巨大さであった。

 

暑い日差しが目に入ってしまうほど見上げなければ見えない全長、飛行タイプのポケモンの翼を込みして比べても届かないレベルの横幅、どう表現していいか分からない程の光景であった。

 

あまりの衝撃に困惑していると、腕に装着している通信機に通信が繋がる。相手は当然ウルトラガーディアンズをサポートしているビッケであり、ビッケからそのUBの情報が送られてくる。

 

『ハイナ砂漠に出現したUBの情報を転送いたしました。我々はそのUBを“テッカグヤ”と名付けました。お気をつけて捕獲の方をよろしくお願いします。』

 

マーマネとマーレインはテッカグヤの情報を確認する。するとそこにはどれもが規格外とも言うべき情報が載っていた。

 

コードネームはUB04 BLASTER。分類はうちあげポケモンでタイプははがね・ひこうタイプとここまではまだ通常のポケモンとあまり変わりない。

 

驚くべきはその体重である。全長から察するに間違いなく重いというのは分かっていたが、なんとその体重は999.9㎏とほぼほぼ測定不能の数値なのである。

 

見た目は門松であるが、頭部と思われる部分ははどことなく女性っぽさがある。だがその見た目とは裏腹に、図鑑説明は更なる驚愕な事実が発覚するのである。

 

なんとテッカグヤは大量の可燃性ガスを体内に有しており、その大きな腕から噴出して森一つを焼き払ってしまうほどのエネルギーを持っているのである。それだけでなく、計算上では宇宙空間にすら吹っ飛んでいけるほどのパワーを持っている可能性すらも浮上してきた。

 

このような驚異的な力を持っているUBを放置してしまってはウラウラ島はおろかこの星すらも危ういかもしれない。そう感じたマーマネとマーレインは、なんとしてでも捕獲しなくてはならないと決意し、モンスターボールを手にしてテッカグヤの前に投げた。

 

「ここは君の出番だ。メタグロス!」

『メッタ!』

「行くよ!クワガノン!」

『クッワ!』

 

マーレインははがね・エスパータイプのメタグロス。マーマネはむし・でんきタイプのクワガノンである。でんきタイプを持つクワガノンはひこうタイプに対して有利をとることができる。主にでんきタイプを使用するマーマネにとっては相性のいい相手と言えるが、威圧感を放つUBの前にどれだけ戦えるか。

 

『っ!』

 

何を言っているのか聞き取ることができないが、テッカグヤはメタグロスとクワガノンを敵とみなしたのか臨戦態勢をとった。驚異的な力を使われる前に捕獲するしかないであろう。

 

「まずは僕から行くよ!メタグロス!バレットパンチ!」

 

メタグロスは文字通り弾丸のように素早く一直線にテッカグヤに近づきバレットパンチを繰り出した。テッカグヤはその巨体のためか動きが鈍く、バレットパンチに対応することができず直撃を受けてしまう。

 

しかしテッカグヤは少しバランスを崩した程度でビクともしていない。それどころかすぐさま攻撃してきたメタグロスに対して反撃をする。

 

『っ!』

『メタッ!?』

 

テッカグヤはその巨大な腕を振りかぶり、力いっぱいに振り下ろした。メタグロスは腕をクロスさせてその攻撃を防ぐが、テッカグヤの重量をも相まって強力になっているテッカグヤの攻撃に成すすべなくふっとぱされてしまう。

 

「メタグロス!?」

 

吹っ飛ばされたメタグロスを確認したテッカグヤは更に追撃を加える。両腕を前に出し中央から細く鋭い光線を出す。はがねタイプの技であるラスターカノンだ。

 

「クワガノン!こっちもラスターカノンだ!」

 

クワガノンはメタグロスの前に出てラスターカノンを繰り出す。なんとか相殺することに成功するも、爆風が予想よりも大きくクワガノンも多少後退してしまう。テッカグヤは当然と言わんばかりに全く微動だにしていないところを見ると一筋縄ではいかない相手だというのは明白である。

 

「ありがとう、マーくん。」

「マーさん、僕も戦う!クワガノン!ワイルドボルト!」

『クッワ!』

 

クワガノンは自身の身体に電撃を纏いテッカグヤに直進していく。しかしテッカグヤはまもるを展開しクワガノンの攻撃を防ぎ、クワガノンは弾き返されてしまう。その見た目も相まってまるで要塞のような恐るべき耐久力である。

 

「僕たちも行くよ!コメットパンチ!」

『メタ!』

 

メタグロスは腕を振りかぶり、彗星のような一撃をテッカグヤに向かって振り下ろす。

 

テッカグヤは咄嗟に再びまもるで対抗する。しかしまもるには大きな欠点があり、連続で使用すると失敗してしまうのである。案の定テッカグヤのまもるは失敗してしまい、メタグロスの重い一撃がテッカグヤの装甲に突き刺さる。

 

テッカグヤは今の一撃で軽くのけぞる。先ほどのやり取りでテッカグヤは並大抵の攻撃ではビクともしないというのはすでに確認済みだ。

 

「マーくん!」

 

マーレインはすかさずマーマネに呼びかけ合図を送る。マーマネはマーレインの声に頷き、クワガノンに追撃の指示を出した。

 

「クワガノン!10まんボルト!」

 

テッカグヤの怯んだ隙を狙いクワガノンは10まんボルトを撃ち込む。ひこうタイプを持つテッカグヤにでんきタイプの10まんボルトは効果が抜群だ。これはいくらテッカグヤの耐久力が驚異的と言えどダメージは与えられているだろう。

 

しかし効果抜群の10まんボルトを受けたテッカグヤは体にその細い首を引っ込める。防御を固める態勢に入ったのかと思ったがどうやら様子が違う。一体何をする気なのかと考える2人だが、その時テッカグヤの様子が変化する。

 

「っ!?もしかしてこれって!」

 

次の瞬間、テッカグヤは頭部をこちらに傾けた。その態勢からテッカグヤが何をしようとしているのか察しがついた。首を引っ込め敵に体ごと突進する技、ロケットずつきである。

 

ロケットずつき自体は攻撃力が高い技というわけではなく、自身の防御を高めつつ相手に突撃し攻撃するという攻防一体の技だ。しかしテッカグヤの場合はその常識とは全く異なり、あの巨体のままエネルギーを最大にして突撃されてしまっては自分たちだけでなくこのハイナ砂漠全域すら致命的な被害を受けかねない。

 

どうするべきかマーレインは対策法を頭の中で考える。

 

メタグロスのサイコキネシスで動きを封じるか?いや、それでもエネルギーの放出を免れることはできない。

 

ならば再び弱点であるでんきタイプの技で攻めるか?いや、先ほどのダメージからすればテッカグヤの耐久力を突破するのは難しい。

 

正面から力ずくで押さえつけるか?いや、まずテッカグヤに力押しで勝てるわけがない。ポケモンたちが大きな痛手を受け最悪の結果になってしまう可能性すらある。

 

もはや絶体絶命だろうか、と自らの危機を感じるマーレインとマーマネ。そんな時、黒い一つの影がテッカグヤに向かって突っ込んでいった。

 

「ペルシアン、ねこだまし」

『ペェル!』

 

その影の正体、ペルシアンは両手をテッカグヤの前でパチンッ!と叩いた。その音に驚いたテッカグヤは怯み引っ込めていた首を元に戻し顔を出した。

 

「よっと」

 

すると上から一人の男性が飛び降りマーレインたちの前に姿を見せる。その人物は2人もよく知っており、ウラウラ島において知らない人はいないであろう人物であった。

 

「クチナシくん!」

「クチナシさん!」

「……なんだか煩いと思ってきてみれば、中々厄介なのを相手にしているじゃないか。」

 

その人物の名はクチナシ。このウラウラ島のしまキングであり警察官としても勤めている。主にあくタイプのポケモンを好んで使用し、見た目とは裏腹に実力は四天王にも通じるレベルだと称される実力者だ。

 

「めんどうだしさっさと終わらせちまおう。あんちゃんたち、あのデカブツの動き抑えられるか?」

 

マーレインとマーマネはクチナシの言葉に対し顔を合わせ、もちろんだと答え行動に移った。

 

「メタグロス!サイコキネシス!」

『メタ!』

 

メタグロスはサイコキネシスでテッカグヤの動きを制限する。これだけではテッカグヤの力に負け反撃を食らってしまう可能性がある。そのため今度はマーマネが動いたのであった。

 

「クワガノン!エレキネット!」

『クワ!』

 

クワガノンはエレキネットを使いテッカグヤの上から抑えつける。エレキネットはでんきタイプの技でもあるためテッカグヤにダメージを与えつつ、テッカグヤから自由を奪うことができた。それを見たクチナシは最後の仕上げと言わんばかりにポーズをとる。

 

「手っ取り早くこれで終わらせる。行くぞ、ペルシアン」

『ペル!』

 

クチナシがとったのはあくタイプのZ技のポーズだ。相棒であるペルシアンと共にタイミングを合わせる。

 

Z技は強力な分ポーズをとる際に少し隙ができてしまう。そのうえ力の消耗もポケモン、トレーナー共に激しくバトル中一度しか使用できない大技だ。失敗することが許されないため確実に決めなければならないため鈍重なテッカグヤとはいえ動きを止めてもらったのだ。

 

 

 

 

――――ブラックホールイクリプス!

 

 

 

 

ペルシアンはあくタイプのZ技、ブラックホールイクリプスを放つ。するとテッカグヤの背後に大きく強力な闇のエネルギーが発生する。

 

闇のエネルギーはエレキネットごとテッカグヤの巨体を吸い寄せる。必死に抗うテッカグヤだが、じわじわと体が宙に浮かび上がり、終いにはエネルギーの内部まで取り込まれてしまう。

 

テッカグヤを吸い込んだエネルギーはその力を収縮させる。その後力を解放させテッカグヤを放り出した。テッカグヤは闇のエネルギーにより多大なダメージを受けてしまい、あれほどの耐久力を見せつけた巨体は地面に倒れ込み動きを完全に停止させていた。

 

「今だあんちゃん。さっさとやることやっちまいな。」

「は、はい!いけ、ウルトラボール!」

 

マーマネは倒れたテッカグヤに向かってウルトラボールを投げる。ウルトラボールはあの巨大なテッカグヤを収納すると数回揺れ、ピコンッという音と共に停止する。テッカグヤのゲットに成功した合図であった。

 

それを確認したマーレインはウルトラボールを回収する。その後協力してくれたクチナシにお礼を言うために振り向いた。

 

「あれ?クチナシくんは?」

「さっきまでいたんだけど……」

 

気づかぬうちにクチナシがその場から姿を消してしまっていた。そんな彼の姿にマーレインは相変わらずだね、と呟いた。

 

それと同時に再び通信機が鳴りだした。恐らくUBの捕獲を確認したという通信であろうと思い通信に応答する。しかしその通信に出たのは慌てた様子のビッケであった。

 

『ウルトラガーディアンズの皆さん!大変です!新たなウルトラオーラがポニ島にて確認されました!』

 

それはまだ事態は終わっていないという知らせであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB04 BLASTER”捕獲完了―

 

 

 

 




クチナシおじさん、大好きです。

UB騒動はもうしばらく続きます。剣盾発売するから来週投稿できるかが不安……。

今作のチャンピオンは怪しいのでは?と世間から言われてますが、個人的にはローズ社長の方が怪しい気がします。

理由として
・ダンデをジムチャレンジに推薦した本人←(企みがありそう)
・ビートをジムチャレンジに推薦
・副社長が幹部クサイ
・喋り方が胡散臭い
・他に悪の組織らしい人物が公表されていない
・発売前に怪しいと言われていたプラターヌ博士は結局善人だった
・発売前に善人と言われていたグズマさんはスカル団ボスだった

某カードゲームアニメの転倒王者は本人が知らない裏で八百長があったりもしたし、態々無敗と記載したのもその辺りの伏線だったりと妄想していたりします。

どうあれストーリー攻略すれば分かるのでゲーフリの闇諸々楽しみにしながら全裸待機します。


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対策!新たなUB!?

剣盾で忙しく書いてる暇がなかったため、今回かなりは短い話を挟ませていただきます。最近休んでいたので適当な話で誤魔化していくスタイル。

これから今のヌシの剣盾の進行状況を毎度伝えていこうかなと思います。

ストーリーは1日で終わらせたのでイーブイの厳選をしております。マックスレイドを一人で回し夢イーブイは確保しました。現在は最初のブイズの厳選がようやく終わり努力値を振っているところです。

ただボックスがほぼ全てイーブイで埋まってしまい空きが無い状況に……。ボックスが全然足りねぇぞ増田ァ!

夢イーブイを自力でゲットしようとするとあまりに難易度が高く確立が低いので、夢イーブイが欲しい方は個人メッセージで言っていただければお渡しします。

あとがきには今作のブイズ変更点を載せたいと思います。


捕獲したUBをバーネットに渡すべくアーカラ島の空間研究所を訪れていたリーリエ、ミヅキ、ハウ、ヨウの4人だが、バーネットにウルトラボールを預けた直後にビッケからの緊急の通信が入ったのだった。

 

『ウルトラガーディアンズの皆さん!大変です!新たなウルトラオーラがポニ島にて確認されました!』

 

ビッケから伝えられたのは更なるUBがポニ島に出現したという情報であった。そのまさかの事実を伝えられ動揺するリーリエ達。すぐに急行したところではあるが、アーカラ島からポニ島までにはかなりの距離があるため今すぐに現地へと赴くことは無理である。

 

どうすればいいのかと最善策を考える4人だが、そんな4人の背後から1人の男の言葉が耳に入る。

 

「心配するな、すでに手は打ってある。」

「お、お兄さま!?」

 

背後から声を掛けてきたのはリーリエの兄、グラジオであった。グラジオはバーネットの横に立ち、今の言葉はどういう意味なのかを伝える。

 

「日輪の祭壇があるにも関わらずポニ島にのみUBが現れないのがどうしても気がかりでな。四天王に様子を見に行ってほしいと依頼してある。もうすぐポニ島に到着する頃だろう。」

「へぇ~、ってことはじーちゃんもポニ島に言ってるんだねー」

 

グラジオの言葉に「だったら安心だね」といった様子でハウが答える。リーリエも「さすがお兄様」と自慢の兄の行動力に感嘆する。

 

「この人ってリーリエのお兄さんなんだ~。…………お兄様!?」

 

ハウはグラジオがリーリエの兄だと聞いて驚きを隠せない。ヨウも「言われてみれば確かに似ている」と同意の声をあげた。

 

初対面でも分かるほどこの2人は性格は全くの逆といってもいいほど違いがある。だが髪、瞳の色など、性格を総合的に重ね合わせれば兄妹なのだということは分かるだろう。

 

「改めて自己紹介する。俺はグラジオ。訳あって今はエーテル財団の代表代理をしている。」

「俺はヨウだ。よろしくな」

「おれハウー!よろしくねー!」

 

グラジオは互いの自己紹介を終えると、まずは皆に伝えたいことがあるといい改めて口を開いた。

 

「俺はお前たちがUBと戦う前に一度、シンジと一緒にUBと交戦した。」

「え?シンジさんとですか?」

 

シンジの名前が出てきてリーリエは咄嗟に反応する。グラジオはリーリエの言葉に反応して頷き、そのまま話を続ける。

 

「奴のコードネームは“UB01 PARASITE”」

「!?そのコードネームって確か……」

「はい、2年前の……お母様の……」

「ああ。俺たちがウツロイドと呼んでいる存在……因縁の相手だ。」

 

2年前の忌まわしい事件。ルザミーネが欲望のままに操られてしまった事件の主犯ともいえる存在だ。2年前にアローラにいなかったハウとヨウもある程度の話は聞いていたため、話を理解することができている。

 

「残念だが捕獲をすることはできず逃げられてしまった。しかし痛手を与えることはできた。少しの間は姿を現すことはないだろう。」

 

現れたとしてもビッケに探索を続けているため問題ないとみんなに諭す。

 

四天王の強さはここにいる全員が知っている。ポニ島に出現したUBであれば四天王たちに任せておけば問題ないだろう。チャンピオン、シンジの呼びかけによりアローラ中の人々の混乱は収まりつつあるということも伝えられた。

 

「おじいちゃんたちがUBと戦うってことは、私たちはこれから何をすればいいの?」

「今はポニ島が片付くまで待機だ。ウラウラ島の方も捕獲に成功したようだしな。」

「現状ポニ島を除けばウルトラオーラの反応は極めて低いの。恐らくこれ以上のUBは訪れないでしょうね。」

「逃げたウルロイドが再び出現する場所はこのアーカラ島の可能性が高い。奴らはウルトラホール間を移動する能力はあっても、アローラ中を一瞬で飛び回るほど万能な力は備わっていない。だからこそここでの待機が一番無難だろう。」

 

ミヅキの質問にグラジオが答え、バーネットの言葉にグラジオがそう補足する。であるならば自分たちはその指示に従うしかない。

 

その時、グラジオの通信機にビッケからの通信が届く。グラジオは通信機のボタンを押し、ビッケとの通信を繋げた。

 

「どうかしたのか?ビッケ。」

『グラジオ代表。ウツロイドの件で一応お伝えしたいことが。』

「何かわかったのか?」

『現在アーカラ島にてウルトラオーラを感知しております。恐らくウツロイドのものと見て間違いないものと思われます。』

「やはりまだここにいたか。それでウツロイドの状況は?」

『はい。シンジさんとグラジオ代表と交戦したウツロイドのウルトラオーラは微量ながら回復しております。ですがかなりのダメージを負っているようで、すぐには現れることはないと予想されます。』

「そうか。分かった。引き続きウツロイドとポニ島に出現したUBの調査を頼む。」

『了解しました!』

 

そう言ってビッケは笑顔で通信を切る。大変な仕事を一任してしまっているという自覚はあるが、それでもビッケは一切文句を言うことなく請け負ってくれている。そんな優秀な秘書である彼女にグラジオは心の中で深く感謝する。

 

……約一名役に立たず気に入らない部下もいるが目を瞑っていてもさほど問題はおきないだろう。

 

「というわけだ。暫くはここで休息し体力を温存しておいてくれ。」

「ここにいる間、研究所の中を自由に見学しても構わないわ。好きに使ってちょうだい。」

 

4人はグラジオとバーネットの言葉に甘えて暫く空間研究所の中で気を休めることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはポニ島にあるポニの原野と呼ばれる場所だ。ポニの原野にウルトラオーラの反応があると聞き、四天王である2人が足を運んだのであった。

 

「しまキングは やるキング♪」

「今はしまキングじゃないでしょ?」

「なぁに、四天王になっても私の心はいつまでもしまキングですぞ。」

「なにそれ」

 

機嫌よく歌を歌っていた男性はかくとうタイプの使い手ハラ、もう一人の女性はいわタイプの使い手であるライチ。

 

ハラの言葉に呆れ気味な反応をするライチだが、元しまクイーンの彼女もハラの言葉が何となく理解できた気がした。

 

こう見えてこの2人は四天王と呼ばれているだけはあり、実力はアローラにおいてトップクラスである。特にハラはメレメレ島の元しまキング、ライチはアーカラ島の元しまクイーンでもあるため、各島からの信頼は誰よりも厚いだろう。

 

「さて、それよりそろそろ来たようですぞ」

「ええ、そうみたいね」

 

そんな2人の前に上空から巨大な物体が降ってくる。台形のような形状をしたその物体は着地する直前にブロックが連なったかのような形をした足を生やして地に降り立つ。

 

その生物はいくつかのブロックでできているのか、一部が裏返り複数の青い目がこちらを見つめている異形すぎるほどの姿であった。見ただけでもUBと判断できる姿である。

 

「じゃあ早速行きましょうか!」

「ハラハラさせますぞ!」

 

そうして四天王ハラ、ライチのタッグによるUBとの戦いが始まるのであった。




今作のブイズ変更点
強化された部分
・ニンフィア、ブースターがマジカルフレイムを習得
・グレイシアがフリーズドライをレベルで習得
・リーフィアが宿木の種、ソーラーブレード、にどげり、リーフストームを習得
・ダイマックスによりフィールド、及び天候の操作が比較的簡単に操れる
・ブイズ全体がウェザーボールを習得可能
・ブラッキーの特性“精神力”が威嚇の効果を無効にできるように変更された

弱体化された部分
・毒毒が習得できずブラッキー、シャワーズが大きな痛手
・めざパが撤廃されブイズの貴重なサブウェポンが減少
・影響は少ないがおんがえし、ほえる等も習得不可

その他の変更点
・リーフィア、グレイシアの進化条件がそれぞれリーフの石、氷の石に変更
・ニンフィアの進化条件がなかよし度2からなかよし度3に変更
・めざパの撤廃により厳選が比較的楽に

強化された部分も多いですが弱体化点があまりに痛すぎるので中々難しいところではあります。
ですがリーフィア、ニンフィアの強化点が非常に大きく、グレイシアでギャラを相手できるのは大きいのではないかと思います。寧ろ今作ではダイマックスとマジカルフレイムの習得によりブイズ最強まであります。ダイバーンでナットレイ飛ばせますし。
ダイマックスシステムも面白そうなので早く対戦したいでござる


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出現!ポニ島のUB!

最近タイトルが思いつかなくなってきた……。


ポニ島にてウルトラオーラが検知されたとの知らせを聞き訪れていた四天王のハラとライチ。その発生源と思われるポニの原野を歩いていると、目の前にUBと思わしきポケモンが姿を現したのだった。

 

『ハラさん、ライチさん』

「おお!その声はビッケ君ですな?」

『そちらに出現したUBの詳細を転送しました!確認して捕獲をよろしくお願いします!』

 

2人の耳に入ってきた声はエーテル財団代表秘書のビッケであった。ビッケの言う通りそのUBの詳細が転送されており、2人はそのUBの詳細を確認する。

 

コードネームは“UB06:LAY”。通称ツンデツンデとエーテル財団は名付けたようだ。

 

タイプはいわ・はがねタイプと聞いただけでもいかにもと言わんばかりの丈夫そうなタイプだ。だがツンデツンデは厳密に言えば一匹ではなく、複数の個体が自らの身を守るために集結し形成された姿なのだそうだ。

 

本来は大人しい性格だそうだが、今はツンデツンデの複数の目が青色から赤色に変化し、まるでケンタロスのように踏み荒らして暴れている。

 

「とりあえず、早めに止めなければなりませんな!」

「ええ!いわタイプのポケモンにこれ以上悪気のない悪事を働かせるわけにはいかないわ!」

 

ライチはいわタイプの使い手でもあるためいわタイプに対しての思い入れは人一倍強い。だからかいわタイプを持つツンデツンデの心情を察し、彼を止めるために自らの相棒が入ったモンスターボールを投げた。

 

「行くわよ!ルガルガン!」

『ガウゥ!』

「行きますよ!ハリテヤマ!」

『ハァリィ!』

 

ライチはいわタイプのルガルガン、ハラはかくとうタイプのハリテヤマを繰り出した。はがねタイプを持つツンデツンデに対しては相性が悪いが、かくとうタイプのハリテヤマであればツンデツンデに対しての相性はかなりいい。

 

それに彼らは四天王と呼ばれる人物だ。たとえ相手がUBであり相性が悪くとも、必ず何とかしてくれるという期待感がある。

 

「行くわよ!ツンデツンデ!」

『っ!?』

 

ライチの声に反応し、敵として認識したのかツンデツンデは視線に入ったルガルガンとハリテヤマに対して複数に岩を直線的に飛ばしてくる。いわタイプの技であるロックブラストだ。

 

ルガルガンとハリテヤマはバックステップをすることでその攻撃を回避する。しかし彼らが元居た場所にはロックブラスの衝撃により大きくクレーターができていた。その光景からツンデツンデの攻撃力は相当なものだということが伝わってくる。

 

「ルガルガン!ストーンエッジ!」

『ガルゥ!』

 

ルガルガンは拳を強く握り地面を思いきり殴りつけ岩の刃を発生させる。岩の刃が勢いよく接近しツンデツンデに突き刺さる。

 

ツンデツンデにストーンエッジが刺さり爆発するが、その衝撃が消えるとツンデツンデはビクともしていない。はがねタイプを所持しているというのも関係するかもしれないが、それ以上に物理攻撃に対する耐久力が凄まじいのだろう。

 

『っ!!!』

 

ツンデツンデは大きく咆哮をあげ、今度は光を一点に集中させ照射する。はがねタイプの技であるラスターカノンだ。

 

「ハリテヤマ!」

『ハリィ!』

 

ラスターカノンはルガルガンに鋭く迫る。ハリテヤマはルガルガンのカバーに入りラスターカノンをその大きな手で防ぐ。これは逆にチャンスだと感じたライチはルガルガンに反撃の指示を出す。

 

「ルガルガン!かみくだく!」

『ガウ!』

 

ルガルガンはハリテヤマの背後からジャンプして飛び出し、ツンデツンデに接近しかみくだくで攻撃する。かみくだくはツンデツンデにヒットし、今の一撃でツンデツンデは大きく怯んで後退しラスターカノンの攻撃が中断される。

 

その隙を狙い、ハリテヤマは今度は自分の番だというようにツンデツンデに突進していく。

 

「今です!ツッパリ!」

『ハリ!』

 

ハリテヤマは怯んだツンデツンデにツッパリで追撃する。しかしツンデツンデはその攻撃が当たる直前、体を更に硬化させ防御の態勢に入る。自身の防御力を上昇させるてっぺきである。

 

はがね・いわタイプのツンデツンデに対しかくとうタイプの技の効果は高いが、防御力を上げるてっぺきによりハリテヤマの攻撃をツンデツンデは耐えしのいでいる。

 

「連続でツッパリです!」

『ハリ!ハリ!ハリ!』

 

ハリテヤマは怒涛のツッパリによる連続攻撃で反撃の隙を与えないと言わんばかりの攻撃を浴びせる。いくらてっぺきで耐久力を上げているとはいえ、それでも効果抜群の技を連続で浴びてしまえばさすがのツンデツンデあっても限界は近くなるだろう。

 

順調に攻め込んでいるハリテヤマであったが、そう簡単に追い込めるほどツンデツンデも甘い相手ではなかった。

 

ツンデツンデは自身の四本の足を体の中に収納する。さらに防御力を高めようとしているのかと思いハリテヤマは攻撃の手を緩めることはなかった。しかしツンデツンデのしようとしていることは全くの逆であったのだ。

 

ツンデツンデはそのまま体を丸め勢いよく回転する。その遠心力にハリテヤマは巻き込まれてしまい、ツッパリを強制的に中断させられてしまう。それだけではなく、ツンデツンデはその回転を利用しハリテヤマを吹き飛ばし転がり始めたのだ。これはラスターカノンと同じくはがねタイプ技で自身の素早さが遅いほど威力の高くなるジャイロボールだ。

 

『ハリィ!?』

「!?ハリテヤマ!」

 

ハリテヤマを吹き飛ばしたツンデツンデはそのままの勢いで真っ直ぐルガルガンに突進する。ルガルガンはツンデツンデを止めるべくツンデツンデの頭上まで飛び上がる。

 

「ルガルガン!かわらわりよ!」

『ガルゥ!』

 

ルガルガンはツンデツンデに渾身の力を込めた手刀、かわらわりを振り下ろす。ルガルガンのかわらわりとツンデツンデのジャイロボールが激突する。

 

しかしルガルガンのかわらわりはツンデツンデの高威力を誇るジャイロボールに次第に押されてしまい弾き返されてしまう。

 

「ルガルガン!?くっ、防御力だけでなく攻撃力もかなりのものね。」

 

ツンデツンデはジャイロボールの勢いを利用し、その巨体には見合わない跳躍力を見せつけ飛び跳ねる。

 

ツンデツンデはルガルガンたちの上空まで飛び上がると、再び足を体の外へと出現させ、上空からの攻撃態勢に入った。

 

ツンデツンデは上空からロックブラストを複数発射する。落下の勢いも相まって先ほどよりもロックブラストの威力は上がってしまっている。ルガルガンの盾となるようにハリテヤマが前へと出て構えをとる。

 

「ハリテヤマ!インファイトです!」

『ハリ』

 

ハリテヤマは目を瞑り精神統一して集中力を高める。ロックブラストは勢いよくハリテヤマに接近し、自身の目の前までやってきた瞬間に開眼し拳を握る。

 

そして素早く拳を連続で突き出しロックブラストを次々と撃墜していく。インファイトは自身の防御を捨てる代わりに攻撃力の高い連続攻撃を相手に素早く浴びせる、文字通り捨て身の攻撃だ。ハリテヤマの攻撃でツンデツンデのロックブラストは全て迎撃された。

 

ツンデツンデはその後地面に着地すると、再び体を丸くしてハリテヤマに突進していく。ツンデツンデのジャイロボールにハリテヤマは今度は攻撃ではなく、防御の態勢へと移行した。

 

ハリテヤマはその大きな両手を前に構え受け身の態勢をとる。ツンデツンデのジャイロボールを正面から受け止める。

 

しかしそれでも完全に止めることはできず、ハリテヤマは徐々に徐々に後ろへと後退させられてしまう。しかしその瞬間こそがハラたちの狙いでもあったのだ。

 

「ライチ君!今です!」

「任せて!」

 

ライチはこの瞬間を待っていたとハラの合図に合わせて構えをとる。アローラに伝わる魂を込めた全力の大技、Z技のポーズだ。

 

「アーカラの守り神カプ・テテフよ。アローラを守るため、私に力を……」

 

ライチは祈りを込めながらいわタイプのZ技のポーズをとる。

 

「ルガルガン!」

『ワオォン!!』

「これが私たちの全力!」

 

 

 

――――ワールズエンドフォール!!

 

 

 

ルガルガンが飛び上がると、その頭上に巨大な岩の塊が生成される。それをルガルガンは上空からツンデツンデに投げつけた。

 

「ハリテヤマ!はっけい!」

『ハリィ!』

『っ!?!?』

 

ハリテヤマはジャイロボールを受け流しながらはっけいを放つ。はっけいはかくとうタイプの技であり威力は高くないが相手の体の芯にまで貫く衝撃を与え、麻痺させる追加効果を持っている。その効果によるツンデツンデの動きが一時的に止まってしまった。

 

ツンデツンデは何が起こったのかわからない様子で戸惑っている。そして彼には防御手段が一切なく、そのままルガルガンのZ技に押しつぶされる形となってしまうのだった。

 

ルガルガンの強力なZ技が炸裂し、その衝撃が辺り一帯を包み込む。その後その衝撃が晴れるとツンデツンデは複数の目を回しており戦闘不能と言える状態になっていた。

 

「今よ!ウルトラボール!」

 

ライチの投げたウルトラボールがツンデツンデを捕らえる。ツンデツンデの入ったウルトラボールが数回揺れると、限界まで弱っていたツンデツンデは出てこられるはずもなくそのまま捕獲された。ツンデツンデの捕獲成功である。

 

ライチはツンデツンデの入ったウルトラボールを拾い上げる。それと同時にビッケから再度通信が入る。

 

『ウルトラオーラの消失を確認しました。お疲れ様です。あとは我々にお任せください。』

 

そういってビッケからの通信が切れる。残るはもう一方のUBだが、そちらは2人に任せてしまえば大丈夫だろうと判断し互いに頷き合い、自分たちは捕獲したUBを送り届けるべくその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ポニの樹林では……

 

「ありゃりゃ、これまた変わったUBだね。」

「強敵に違いありません。油断なきように。」

『ズガドーン!』

 

そこではもう二人の四天王、アセロラとカヒリが新たに出現したUBと対峙していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB06:LAY”捕獲完了―

 

 

 

 

 




次回はツンデツンデに続きズガドーンの出番となります。流れ的にアクジキングの出番がない可能性が浮上してしまい焦っております。お前はここでも不憫な扱いを受けるのか?


剣盾の現在の状況報告でございます
ランクマでは取り敢えずブイズでマスターボール級まで行きました。それまでの戦績は27戦22勝5敗とかなりの好成績でした。

現環境的にミミッキュ、ドラパルト、ギャラドスが非常に多くテンプレ型のシャワーズやブラッキーが扱いやすかった印象です。ロトムやナットレイもいるのでチョッキニンフィアと組ませるとかなり広い範囲が見れました。

逆にアタッカー型のブースターやサンダースは少々選出しにくかったです。どうしてもドラパルトに上をとられてしまい襷貫通のドラゴンアローが重く、襷よりも他のアイテムで運用した方がいいかもしれません。

それでも前作使いずらかったリーフィアやグレイシアが今作では寧ろ活躍の場が多かったのは嬉しかったです。物理環境で環境に炎がいないだけでリーフィアが動きやすく、グレイシアはフリーズドライでトリトドンやギャラドス、カセキメラことウオノラゴンを倒せるので保険での襷運用が使いやすい印象でした。

ブラッキーにゴツメ持たせてますがダイマックス技が接触技じゃなく発動しずらかったので、イアのみとかの回復木の実の方がいいかも?

少なくともメガシンカが撤廃されたことでブイズが遥かに戦いやすかったのは間違いありません。正直ブイズだとドラパルトは鉢巻じゃなければ大して怖くありません。何してくるか分からないガブリアス様に比べたらねぇ。やっぱガブリアス様って最強なんやなって。

ドラパルト、ミミッキュ、ギャラ、ロトム、ナット辺りの入ったテンプレ型のパーティにもかなり勝率がよかったのである程度アドバイスが出来るのでもし【ブイズ】で困ったことがあれば教えられます。多分ガチパ使った方が勝率下がるのでブイズ限定ですが……。


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曲芸披露!ビックリドッキリズガドーン!

もうヤケクソじみたタイトルで申し訳ない……。

実質最後のUBズガドーンです。もうドカグイなんていなかったんや……。

ところで私のマイページの自動推薦システムの中にこの小説が入ってたのは何故です?自分の小説をお気に入り登録しろという事なのだろうか。


四天王ハラ、ライチのタッグの活躍により“UB06:LAY”通称ツンデツンデの捕獲に成功した。それに続くように、今度はもう二人の四天王であるアセロラとカヒリのタッグがポニ島、ポニの樹林にて出現したもう一体のUBと対峙していたのだった。

 

「驚きの姿にアセロラちゃんおくちあんぐり!」

 

四天王の一人、アセロラがそう口にし一時的に硬直する。アセロラの言う通り、そのUBは他のUB同様に生物とは思えない姿をしている。

 

頭部と思われる部分は風船のような球体だが首がなく、不安定に乗っかっているだけのようであり、対して体はカラフルな配色にサーカス団を思わせるようなピエロ服に近い見た目である。一件でポケモンと判断するのは難しい容姿だ。

 

そんな時、毎度見計らったかのようなタイミングでの通信機が鳴り響いた。アセロラとカヒリはその通信に出ると、当然相手はビッケからの通信であった。

 

『アセロラさん!カヒリさん!ポニの樹林に現れたUBの詳細が判明しました!今データを送信しましたのでそちらを確認してください!』

 

ビッケの言う通りにしアセロラとカヒリはそのデータを確認する。

 

そこに載っていた名前はコードネーム“UB05:BURST”。通称ズガドーンと名付けられたらしい。

 

タイプはほのお・ゴーストタイプと非常に珍しいタイプであり、能力的にはハラとライチが捕獲したツンデツンデとは真逆の攻撃的な性能をしているようだ。

 

彼の頭部は実は浮いており、武器として使用できるほどの熱源反応を感知したそうだ。もしこの情報が本当であれば、その攻撃には細心の注意を払って挑むべきであろう。

 

だが一方、ゴーストタイプの使い手でもあるアセロラは目をキラキラとさせながら目の前にいるズガドーンのことを見つめていた。

 

「あなたってゴーストタイプなんだ!すっごーい!」

 

ゴーストタイプのポケモンを愛して使っているアセロラは、同じゴーストタイプに感無量と言った様子で語り掛ける。なんとなく予想してはいたが、カヒリは想像通りのアセロラの行動に少し呆れた様子で頭を抱えていた。

 

「……アセロラさん。気持ちは分かりますが早いところズガドーンを捕獲してしまいましょう。」

「あっと、そうだったそうだった。」

 

カヒリも大空を自由に舞うひこうタイプのポケモンを愛し使っているためアセロラの気持ちは分かるのだが、それでも今は非常事態である。カヒリはアセロラにそう言って被害が出る前にやるべきことをやってしまおうと忠告する。

 

対するアセロラはうっかり反応してしまったと反省し気持ちを切り替える。四天王とは言ってもまだ彼女の年齢は幼いため仕方のない部分もあるのだろうが。

 

「じゃあ行くよ!シロデスナ!」

「行きますよ!ドデカバシ!」

『スナァ!』

『カバシ!』

 

アセロラの繰り出したポケモンは砂で作った城の姿をしたゴースト・じめんタイプのポケモンであるシロデスナ。カヒリが繰り出したのは初心者のトレーナーが最初の方に捕まえることが多いと言われているツツケラの最終進化形、ノーマル・ひこうタイプのドデカバシだ。

 

ノーマル・ひこうタイプのドデカバシはほのお・ゴーストタイプであるズガドーンに対して五分と五分。一方でゴーストタイプのシロデスナは同じゴーストタイプのズガドーンとは互いの弱点を突けるものの、ズガドーンはほのおタイプも併せ持っているためじめんタイプを持つズガドーンには範囲的にも有利をとれている。相性としては上々と言ったところか。

 

「ですが油断はしません!」

 

カヒリはそう言って気を引き締める。そしてまずは様子を見るために、小回りの利き易い自分たちが先発するべきだろうと判断しアセロラ立ちより先行する。

 

「ドデカバシ!タネマシンガン!」

『カッバシ!』

 

ドデカバシは初め上空に飛び上がると遠距離から手堅くタネマシンガンで先制を仕掛ける。タネマシンガンはくさタイプの技はほのおタイプに効果はいまひとつだ。

 

しかしズガドーンのデータには目を通したとはいえ、未だに情報は不足している。相手が何をしてくるか分からない以上無暗に接近して速攻を決めるのは誤りである。彼女の判断はこの状況においては最適解と言ってもいいだろう。

 

ドデカバシの口から一直線に発射されたタネマシンガンはズガドーンに接近する。ズガドーンはその場から動かずじっとタネマシンガンを見つめている。

 

なにも抵抗する気がないのだろうか?と思った矢先、ズガドーンは遂に行動に移す。

 

ドデカバシのタネマシンガンは間違いなくズガドーンの頭部を捕らえていた。しかしその攻撃はズガドーンに命中することなく地面に着弾したのだった。

 

「っ!?」

「ど、どういうこと?」

 

何が起きたのかと一瞬理解に遅れてしまった2人だが、ズガドーンの姿を見た時理解しがたい光景が目に飛び込んできた。

 

なんとズガドーンは自分の頭部を手に持ちタネマシンガンを躱したのだ。頭部が胴体から外れるといった現象は現状他に類を見ない驚くべきことだ。興味深いことではあるが、同時に寒気すらも感じさせるような現象である。表情が出ていないため分からないが、どことなくズガドーンも驚くこちらを見て笑っているように感じられる。

 

ゴーストタイプのポケモンは人間を驚かすことにより快感を感じているものも多く存在する。ズガドーンもUBとは言え、我々の知っているポケモンと同種なのであればそう言った感情を抱いていても何ら不思議ではないだろう。

 

手にした自身の頭部を今度はお手玉の様に回し始めた。何をする気かは分からないが、嫌な予感がすると判断したアセロラはすぐさま攻撃に転じた。

 

「なにをする気か知らないけど、好き勝手にはさせないよ!シロデスナ!だいちのちから!」

『ッ!スッナァ!』

 

シロデスナは密着している大地に自身の力を集中させ、ズガドーンの足元でその力を解き放つ。ズガドーンの足元が次第に膨れ上がり、その場で爆発が発生する。

 

しかしズガドーンはその攻撃を即座に察知し、まるで曲芸師の様に頭部を手から落とすことなく華麗に回避する。その後、宙返りした状態から自身の頭部を投げつけてきた。

 

まさかの芸当にカヒリとアセロラは驚きを隠せず反応が遅れてしまい、ドデカバシとシロデスナがお互いその攻撃に巻き込まれてしまう。ズガドーンの頭部は両者に直撃すると、まるで花火にような爆発を巻き起こした。

 

「っ!し、しまった!」

「シロデスナ!?」

 

油断していたわけではないが、予想外の動きに困惑してしまうカヒリとアセロラ。ズガドーンの一撃、ビックリヘッドを受けてしまいかなりのダメージを負ってしまうドデカバシとシロデスナだが、倒れることはなく立ち上がりズガドーンに視線を戻す。

 

ズガドーンの頭部は気付けば再生し元に戻っていた。どうやらあの頭部はどちらかと言うと、攻撃手段の一つであるパーツの一部でしかないという事なのかもしれない。

 

「あの動き、厄介ですね。」

 

ズガドーンの予想外の動きに困惑してしまうカヒリ。その動きを見て何かを思いついたのか、アセロラは自分の手をポンっと叩き口を開いた。

 

「アセロラさん?なにかいい考えでも思いついたんですか?」

「うん!カヒリさんはズガドーンの気を引いて!私は何とかしてズガドーンの動きを抑えるから!」

「分かりました。ドデカバシ!行きますよ!」

『カバシ!』

 

カヒリはアセロラの答えに疑う余地もなく頷きそう答えた。幼いとはいえ彼女もまた自分と同じ四天王の一人。カヒリもアセロラの事を信頼するに相応しい人物だと感じているのだろう。

 

「ドデカバシ!もう一度タネマシンガン!」

 

ドデカバシは今一度タネマシンガンで攻撃する。今度はタネマシンガンを複数回に分けて連続で攻撃をしつつ接近していく作戦だ。

 

ズガドーンは既にその攻撃を見切っていると言わんばかりに次々と華麗に回避し続けている。まるでこれは彼の演技を共に演じているかのようである。

 

「続いてくちばしキャノン!」

『カバシッ!』

 

ズガドーンの回避した隙を狙い今度はドデカバシの大きな口が高温の熱を持つ。エネルギーを溜め込み、そのエネルギーを最大限まで集約させてズガドーン目掛けて放つ。

 

これはドデカバシのみが習得できる技、ドデカバシの代名詞と言ってもいい技であるくちばしキャノンだ。くちばしキャノンは強力な分少し隙を作ってしまうものの、ドデカバシのくちばし部分の高熱のエネルギーを持つため触れた相手は火傷を負ってしまうほどの高エネルギーを纏う。

 

そのエネルギーを一気に集約して放つことで、相手に強烈な一撃を浴びせる技だ。この技はカヒリのお気に入りの技でもあり、ドデカバシにとっても思い入れの深い技である。

 

だがその攻撃はズガドーンが大きく跳躍することによってあっさりと回避されてしまう。しかし自身の大技を回避されてしまったものの、カヒリは少し口角を緩めた。

 

 

『ズガッ!っ!?』

 

ズガドーンは自分の頭部を再び手に持ちビックリヘッドの態勢に入る。しかし、自身の置かれている状況に気付き焦ってしまったためその攻撃を躊躇することとなってしまう。

 

なんとズガドーンの周囲が全て砂地獄で埋まってしまい身動きが取れない状況となってしまったのだ。これには思わずズガドーンもタジタジである。

 

「どう?私のシロデスナのすなじごくの味は?」

 

そう、これはシロデスナの技である文字通りのすなじごくだ。本来は相手を砂地獄にハメることで相手の交代を封じ、継続してダメージを与えていく技だ。

 

しかし今回はズガドーンが気を取られている内に複数の砂地獄を作成しておくことにより、ズガドーンの身動きを封じてしまったのだ。タッグでの戦いで味方にも影響が出てしまうため普段使用することは出来ないが、今のタッグはひこうタイプのドデカバシだ。空中にいるポケモンはすなじごくの影響を受けないため、この作戦をするには持って来いのパートナーというわけだ。

 

ズガドーンの動きは曲芸師の様に鮮やかではあるものの、その分彼はこの動きに自分なりの誇りを持っているようにアセロラには感じられた。もしかしたら彼なりに他者を楽しませたいという感情もあるのかもしれない。

 

「もう一度くちばしキャノン!」

『カバッ!』

『ズガドッ!?』

 

再びドデカバシは高エネルギーを溜め込み放出することでズガドーンを追い詰める。知らない間に追い詰められていることを悟ったズガドーンは焦りを感じビックリヘッドを投げ飛ばして対抗する。

 

ビックリヘッドの威力は見た目に反して強力で、ドデカバシの強力なくちばしキャノンをもってしても相殺が限界である。しかし、カヒリの狙いは別にあったのだ。

 

「今です!アセロラさん!」

『ッ!?』

 

アセロラは既にZ技の態勢へと移行していた。カヒリは自身の大技を囮にすることでズガドーンに隙を作り、その後に更なる大技を叩きこもうという作戦だったのだ。

 

アセロラはZ技のポーズをとっていく。当然発動するのは自分の大好きなタイプでありズガドーンにも効果抜群を取ることができるゴーストZだ。

 

「私たちの全力のZ技……あなたにも見せてあげる!」

『スナッ!』

 

Zパワーがシロデスナに集約する。するとこの樹林全域が闇に包まれ、アセロラとシロデスナの全力のZが放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

――――むげんあんやへのいざない!!

 

 

 

 

 

 

 

ゴーストタイプのZ技、むげんあんやへのいざないが放たれる。発動と同時に更に深い闇へとズガドーンを誘い、彼の周囲の砂地獄から無数の暗黒に染まった手が出現する。

 

その闇からズガドーンが逃れるすべはなく、ズガドーンを文字通り闇へと誘うかの如く包み込む。そのZ技はズガドーンを闇から解放すると、そこには力尽きて動けなくなっているズガドーンの姿があった。

 

戦闘不能になったのだと確認したアセロラは、ウルトラボールを手にしズガドーンに向かって投げる。ズガドーンはウルトラボールへと入るとウルトラボールが数回揺れる。力尽きてしまったズガドーンが抵抗できるわけもなく、ウルトラボールの揺れが収まり捕獲されたのだった。

 

「傷つけちゃってごめんね?あなたのこと、必ず元の世界に返してあげるから。」

 

ズガドーンの入ったウルトラボールを手に取り、アセロラはそう言葉を語り掛ける。年相応の少女として、心優しいのだなとカヒリは彼女の事を優しい眼差しで見つめていた。

 

その後、状況を管理しているビッケから最後の通信が入るのであった。

 

『ウルトラガーディアンズの皆さん!最後のウルトラオーラの反応を感知しました!』

 

そしてビッケからそのウルトラオーラの出現場所と詳細を伝えられる。

 

『場所は最初と同じアーカラ島のカンタイシティ!コードネーム“UB01 PARASITE”。ウツロイドです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―コードネーム“UB05:BURST”捕獲完了―

 

 

 

 

 




もうすぐUB再来編は終わりそうかな?多分だけど

現在ヌシの剣盾はマスター級1,000位台でウロウロしています。数万人以上はいるであろうマスター級の中で1,000位台は割と頑張っている方なのではと自画自賛しております。

個人的にオススメなのは残飯シャワーズとチョッキニンフィアの組み合わせです。シャワの苦手なサザン、ロトムなどをニンフィアで見て、その他の物理アタッカーをシャワーズで受ける単純な形です。ヌシは基本9割程度はこの二匹の選出で勝ってるのでいい並びなのではと思ってます。ブイズの苦手なナットもニンフィアのダイバーンが刺さって相手にしやすいのでかなり幅広く対応できるようになりました。

ブイズに選出されやすいバンドリの並びはリーフィアが刺さることが多いですね。特にバンギはブイズに出してくる場合ほぼ確実に弱保持ちなので竜舞してきたら、リーフィアの甘える、宿木やシャワの欠伸で流せます。

ドラパが邪魔なせいでブースターの選出がほぼできないに等しいですがサンダースは身代わり運用にしたら使いやすくなりました。持ち物はダイマックスで火力補強できるので個人的にヤタピよりリュガ、次点でカムラの方がいいかなと思ってます。すり抜けドラパは勘弁願いたいです……。


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ラストミッション!最後のUB、ウツロイド!

今回でUB再来編は終了となります。かなりテンポよく進めたので人によっては物足りなかったりよく分かんない部分も多々あると思いますが、話が長引くのがあまり好きではないヌシなのでどうかご容赦願いたく……。

ではあとがきでは恒例?となりつつある剣盾の現状報告を先週投稿できなかった理由も含め書いていきます。興味なかったら飛ばしてね♪


『繰り返します!コードネーム“UB01 PARASITE”。通称ウツロイドがカンタイシティ付近にて感知されました!ウルトラガーディアンズの皆さんは速やかに対処してください!』

 

「遂に現れたか、ウツロイド」

 

空間研究所にて待機していたグラジオたちの耳にもウツロイド再出現のニュースが飛び込んできた。

 

以前体験した事件から、ウツロイドの恐怖を知っているリーリエの額には僅かだけ汗がにじみ出ており、体も少しばかり震えているのが分かる。そんなリーリエの事が心配になり、友人でもあるミヅキが彼女に一言声をかける。

 

「リーリエ、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。怖くないって言ったら嘘になりますが、今の私は黙って見ていただけの私じゃありません。」

 

リーリエはそれに、と付け加え言葉を続ける。

 

「今は皆さんが一緒にいてくれますから!」

 

そう言ってリーリエはギュッと拳を強く握りしめ真っ直ぐな瞳でみんなを見渡しそう口にした。その言葉から、リーリエ過去の記憶と向き合う覚悟ができているのだという事が分かったため、ミヅキたちはそれ以上何も言うことはなかった。

 

グラジオも兄として、成長した妹の姿を見て口を緩めてフッ、と微笑んでいた。

 

「よし、他のメンバーは恐らくここにたどり着くまでには時間がかかる。俺たちでなんとしてでもウツロイドの捕獲を成功させるんだ。」

 

グラジオの呼びかけにみんな一斉に頷きウツロイドと戦う意思を見せる。グラジオ、リーリエ、ミヅキ、ヨウ、ハウの5人は決意を決めた表情で空間研究所を後にする。そんな子どもたちを、バーネットは母親のような眼差しで見つめ、全員の無事を祈り見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビッケからの通信によりウツロイドの出現を早急に察知することができたグラジオたちは空間研究所の外へと出て、ビッケより送信された情報の場所、最初にグラジオとシンジがウツロイドと交戦した森の中へと向かった。

 

先ほどの騒ぎと前もって非難を要請していたためこの森には人の気配が全くしない。何か変わったものがあるとすれば、上空に見覚えのある裂けた空間があることだ。間違いなくそれは、ウツロイドたちUBたちが自分たちの世界から経由してやってきたウルトラホールそのものだ。

 

それを見つけた5人はいつでも向かい打てるようにモンスターボールを手に取り待機する。暫くすると、ウルトラホールの裂け目が徐々に広がり中からある生物の触手の先端が姿を現す。紛れもなくウツロイドのそれである。

 

ウルトラホールの割れる演出と共にウツロイドが完全に姿を現す。それを見たリーリエは少し怯んでしまうものの、ここで逃げては駄目だと自身に渇を入れ、その場に踏み止まる。

 

「行くぞ!ウツロイド!今度こそお前を元の世界に戻してやる!」

『ジェルププ!』

 

グラジオの掛け声とともに、全員がモンスターボールを空中に投げる。

 

シルヴァディ、シロン、アシレーヌ、ニャヒート、フクスロー、それぞれが愛用しているポケモンたちによるUBとの最後の戦いに挑む。

 

しかし、意外にも先に行動をとったのはUBであるウツロイドであった。ウツロイドは以前戦った記憶のあるグラジオ、シルヴァディの姿を見て、敵として認識したようだ。

 

ウツロイドの周囲に複数の石が浮かび上がる。以前グラジオたちとの戦いでも披露したいわタイプの技、パワージェムである。

 

「みんな!かわすんだ!」

 

それを一度は目にしていたことのあるグラジオがすぐさま攻撃の回避を指示する。その指示に合わせシルヴァディを含むポケモン全員がパワージェムを回避する。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

「シロン!こなゆきです!」

『シヴァヴァ!!』

『コォン!』

 

シルヴァディのエアスラッシュ、シロンのこなゆきによる同時攻撃によりウツロイドに対して牽制射撃をする。ウツロイドはその攻撃をふわりと空に舞い上がり何事もなかったかのように回避する。

 

「ニャヒート!かえんほうしゃ!」

「フクスロー!このは!」

「アシレーヌ!バブルこうせん!」

『ニャット!』

『スロー!』

『シレーヌ!』

 

続いてニャヒート、フクスロー、アシレーヌによる合体技がウツロイドに迫る。だがその時、ウツロイドの体が虹色に光り始める。特殊技を跳ね返すミラーコートだ。3体の合体技がそれぞれミラーコートにより跳ね返されてしまい、ニャヒートたちは自身の攻撃で大きく飛ばされてしまう。

 

「ニャヒート!大丈夫か!?」

「フクスロー!」

「アシレーヌ!」

 

3人はそれぞれダメージを負ってしまった自分のパートナーたちに呼びかける。ミラーコートは相手の特殊攻撃を倍のダメージにして相手に跳ね返す技だ。そのため、この一撃によるダメージは予想以上のダメージであり、アシレーヌ以外は足が覚束ない様子だ。

 

ヨウはまさかの事態に焦りを感じ舌打ちをする。決して油断していたわけではないが、それでもある程度は戦える自信があったのだ。だがウツロイドは想定していたUBよりも格上かもしれない。

 

ウツロイドは再びパワージェムの態勢に入る。傷付き動きが遅くなったニャヒートとフクスローにとどめを刺すつもりだ。

 

そんなニャヒートたちを庇う様に、ヨウとハウも自分のパートナーを守るために慌てて抱きしめる。いつもは楽観的なハウでさえいつもの余裕がなくなってきている。

 

だがそんな彼らを庇い前に出た人物がいた。

 

「ウツロイドさん!」

「なっ!?リーリエ!」

「前に出たら危ないよー!リーリエは下がって!」

 

前に出たリーリエに危険だと慌てて呼びかけるヨウとハウ。だがそんな2人の言葉を遮るように、リーリエはウツロイドに呼びかける。

 

「ウツロイドさん!もうやめてください!あなたが何故私たちを敵視しているのか分かりません!ですが、私たちはあなたと争いたいわけではないんです!どうか……どうかあなたの気持ちを聞かせてください!」

『!?ジェル……ジェッププ!』

 

リーリエは必死にウツロイドへと呼びかける。ウツロイドは少し躊躇する素振りを見せるが、それでも悩みながら攻撃を止めることはなかった。

 

「っ!?くっ、シルヴァディ!」

「アシレーヌもお願い!」

『シヴァ!』

『アシレー!』

『コォン!』

 

グラジオ、ミヅキの指示に従いシルヴァディとアシレーヌ、それにシロンもリーリエを守るために彼女の前に立つ。リーリエはその光景から過去のウツロイドの記憶がよみがえってしまい、恐怖から思わず目を強く瞑ってしまう。

 

だがそれと同時に、心の中である人物の名前を呼びかけていたのだった。

 

(シンジさん……助けてください!)

 

リーリエは思い人の名をその姿を思い浮かべながら心の中で呼ぶ。困っていたらいつも何も言わずに手を指し伸ばしてくれた人、ピンチになるとすぐに自分の身を顧みず駆けつけてくれた人、自分も彼の事を助けてあげたいと思った大切な人のことを。

 

ウツロイドのパワージェムが容赦なくリーリエたちを包み込もうとした次の瞬間、リーリエにとって聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

 

リーリエたちを暖かな風が包み込みパワージェムを容易く吹き飛ばした。その風を見てグラジオは「ようやく来たか」と小さく呟き、ミヅキは「やっと来てくれたんだね!」と希望を再び持った目を見せる。

 

ヨウとハウも、付き合いは短いものの、その声にどことなく安心感を抱くことができた。

 

そしてリーリエは、その声を聞いて先ほどまで感じていた不安と恐怖が吹き飛ばされ、勇気をもって目を開ける。すると目の前には、自分が今心の中で思い描いていた人物の暖かな背中が目に映った。

 

「リーリエ、大丈夫だった?」

「!?シンジさん!」

 

恐怖から解放されたリーリエは思わず目の前にいる人物、シンジに抱き着いた。覚悟は決めたとはいえ、やはり以前の事件から約2年ほどしか経っていないため未だトラウマ的記憶が脳に焼き付いてしまっているのだろう。

 

シンジはそんなリーリエを抱きしめ、彼女が無事だったことに一時の安心を感じる。

 

「遅くなってごめん。」

「全くだ。リーリエはお前が来るのをずっと待っていたんだぞ?」

「ちょ、ちょっとお兄様!?そんなこと直接言わないでください!」

「リーリエ顔真っ赤だよー?」

「リーリエも否定はしないんだな」

「暫く合わなくても相変わらずだね、お二人さんは!」

 

皆の冷やかしに顔を赤くしてまくし立てるリーリエ。そんなみんなの言葉に苦笑いをしながらどこか懐かしさを感じるシンジは、やっぱり相変わらずなんだなと心の中で呟く。

 

だが今はそれどころではないと皆に呼びかけ、再びウツロイドに視線を移す。ウツロイドは先ほどまで行っていた攻撃を止め、シンジの顔をじっと見つめている。シンジもそんなウツロイドの事を見つめながら、一歩ずつ歩みを進め近づいていく。

 

「あっ、シンジさ…」

「まて、リーリエ」

 

シンジに呼びかけようとするリーリエを、グラジオは彼女の肩に手を置き抑止した。

 

「シンジの事だ、何か考えがあるんだろう。」

「暫く様子を見よう?」

「は、はい……」

 

リーリエは不安そうな眼差しで歩みを進めるシンジを見つめる。

 

シンジの事を信用していないわけではない。寧ろ誰よりも彼の事を信用しているのはリーリエだろう。だがやはり彼女の脳裏にはかつてウツロイドにより神経毒により母親を支配されてしまった記憶がある。その記憶が彼女の恐怖心を煽り、不安を掻き立ててしまうのだ。

 

シンジはウツロイドにまた一歩、また一歩と近付き手を広げる。自分は敵ではないとウツロイドにアピールしているのだ。

 

「ウツロイド。君はどうしてこのアローラに来たの?」

『ジェル?』

 

ウツロイドはシンジの問いかけに首を傾げる。通常のポケモンとは違うUBは人間の言葉を理解していないのかもしれない。

 

だがそれでも、シンジはウツロイドに対して問いかけることをやめない。

 

「怯えているの?怖いの?」

『ジェル……』

「大丈夫。僕は君の敵じゃない。君の心の声、僕に聞かせて欲しい。君の全てを、僕は受け入れるから」

『…………』

 

ウツロイドは語り掛けてくるシンジにふわりふわりと近付く。その行動がリーリエにさらなる不安を掻き立てる。

 

次の瞬間、ウツロイドの触手がシンジをゆっくりと包み込んだ。それを見たリーリエの不安は最高潮に達し、駆け出そうとする。

 

「待てリーリエ!」

「離してくださいお兄様!このままじゃシンジさんが!」

 

手を引っ張り抑止してくる兄を振り払おうとするリーリエ。だが華奢なリーリエがグラジオの力に勝てるわけもなく、手が離れることはない。

 

そんな時、不安を抱いているリーリエの手に、柔らかな感触が伝わってきた。

 

『フィーア』

「えっ?ニンフィア……さん?」

『フィア!』

 

リーリエの手に触れていたのはシンジの相棒であるニンフィアのリボンのような触手であった。その触手は温かく、自分の抱いていた不安が徐々に薄れていくのを感じた。

 

ニンフィアはリーリエに、フェアリータイプ特有の癒しの波動を送ったのだ。この癒しの波動には相手の感じている不安を和らげたり、邪な感情を打ち消す力が備わっている。ニンフィアはその波動を利用し、リーリエの感情は少しずつ落ち着きを取り戻していったのだ。

 

『フィーア。フフィーア』

「シンジさんなら大丈夫……って言ってるんですか?」

『フィーア!』

 

リーリエの問いにニンフィアは笑顔で頷く。彼女はそのニンフィアの言葉で気付いた。

 

いつも助けてくれたあの人は、例え無茶なことであっても必ず解決に導いてくれていたのだと。自分が最も信頼する人物を、自分が信じないでどうするのだと。

 

「……そうですよね。私がシンジさんの事を見守らなくちゃ、ですよね!」

『フィア!』

 

落ち着きを取り戻したリーリエに、もう大丈夫かと感じたグラジオは彼女の手を離し、共にシンジの事を見守る。

 

シンジの体を複数の触手で包み込むウツロイド。次第に彼の体はウツロイドの影に飲み込まれ、姿が見えなくなってしまう。

 

それでもリーリエは、シンジが無事に戻ってくることを信じて待つことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……?ここは?』

 

目を覚ますと、そこは何もない空間だった。

 

さっきまではリーリエたちと一緒にカンタイシティの近くにある森にいたはずである。だが今いるのはただ岩や崖があるだけの何もない空間。

 

しかし自分はこの場所を知っている。2年前に同じ場所へと訪れた記憶がある。

 

頭の記憶を呼び起こしていると、目の前に一匹のポケモンが姿を見せた。そのポケモンは自分に語り掛けてくる。

 

『ジェルップ』

『ウツロイド、やっぱりここは君のいた世界なんだね?』

 

自分の前に姿を見せたポケモン、ウツロイドは頷いてそうだと答えた。だが、この世界には少し違和感を覚えた。

 

その違和感とは、どことなく現実味を感じないのである。説明するのは難しいが、自分の体がまるで実態ではないような、なんというか独特な浮遊感を得ているような感じがするのだ。

 

まるで今見ているものは現実ではないのではないかと思えるほどに。

 

『もしかしてここは、君の作り出した空間?』

『ジェルップ』

 

シンジの問いにウツロイドは再び肯定で返す。だからなのかこの空間ではウツロイドと言葉を交わすことができるようになっているみたいだ。

 

周りをよく見渡してみると、上空には無数のウツロイドの姿が浮かんでいた。だがそのウツロイド達は自分たちのことに気付いていない様子だ。

 

恐らくここにいるウツロイド達は目の前のウツロイドの記憶にある仲間たちなのであろう。あくまで現実として実体化しているのは、自分と目の前のウツロイドのみだ。

 

暫くするとウツロイド達の様子に変化が起きざわつき始める。どうしたのかとウツロイド達の姿を見上げてみると、彼らの前に見覚えのあるものが浮かび上がっていた。

 

『!?あれって……』

 

そこに映っていたのは、UBたちの住む世界とは離れているはずのアローラの光景であった。そこには多くのポケモンたちが人間たちと暮らし、遊び、笑顔で過ごしている姿ばかりが映っていた。その様子をウツロイド達はただただ眺めているだけであった。

 

顔のない彼らからは感情を読み取ることは出来ないが、今の彼らを見れば何を考えているのか自分でもなんとなく察しがついた。

 

『もしかしたら君たち、僕たちと一緒に遊びたいだけだった……とか?』

『!?ジェルジェル!』

 

自分の言葉にウツロイドは強く頷く。そしてそんな彼らの思いに共鳴するかのように、彼らの背後にウルトラホールが出現する。そのウルトラホールに一体のウツロイドが警戒しながら入り込む。あれが恐らく自分たちと戦った目の前にいる過去のウツロイド自身であろう。

 

そしてそのウルトラホールを潜ると、場所が変わりそこはエーテルパラダイスのポケモン保護区であった。そう、自分がミヅキたちと共に初めてウツロイドと対峙した場所だ。

 

ここでウツロイドの記憶映像が途切れる。どうやらウツロイドは伝えるべきことは伝えきったようだ。

 

『そう、だったんだ。君たちが僕たちの世界に来たのは、ただ友達が欲しくて……』

 

ウツロイドは自分の気持ちを理解してくれた自分の事をただただじっと見つめ続ける。

 

恐らくウツロイドは同族である自分たち以外にも友達と呼べる存在が欲しかったのだろう。その感情に何かが応えたのか、アローラへと空間が繋がってしまい、初めて訪れた知らない場所で困惑し、不安を抱いてしまったのだろう。

 

目の前には見たことの無い植物、見たことの無い空間、見たことの無い生物、ポケモンとは言えど自分たちとは姿かたちが全く異なる。同族以外の者と接したことが無い彼はただただ不安で仕方がなく、どう接していいのかも分からなかったのだ。

 

だからだろう。ルザミーネの感情に反応するかのように、彼女の欲望を神経毒で増大させ夢をかなえさせる。そうすることでしかコミュニケーションをとることができなかったのである。

 

でもこれからは違う、とシンジはウツロイドに語り掛ける。

 

『僕たちは友達だよ』

『ジェル?』

『君は友達が欲しかっただけなんでしょ?だったら、僕は喜んで友達になるよ。』

『っ!?ジェル!』

 

自分はウツロイドに手を指し伸ばす。ウツロイドは触手で優しく自分の手に絡みつけた。彼なりの握手なのであろう。自分もそんなウツロイドの手を優しく握り返した。

 

その次の瞬間、不思議な空間に亀裂が入り、次第にパリンッという音と共に世界は崩れ去ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ……さん?」

 

リーリエは呟く。目の前にはシンジを包み込んだウツロイド。そしてもう一人、シンジがウツロイドの顔をじっと笑顔で見つめている姿があった。

 

シンジはウツロイドの顔に手をゆっくりと伸ばす。リーリエは緊張のあまり喉をゴクリと鳴らす。まさか自分の母親のような結末が訪れてしまうのではないかと。しかしその心配は杞憂に終わる。

 

ウツロイドの頬を撫でたシンジはゆっくりとこちらを振り向き、口を開いて驚きの事実を口にした。

 

「もうウツロイドは僕たちと敵対しないよ。」

「え?それってどういう……」

 

リーリエがシンジの答えの意味が分からず聞き返そうとする。しかしそのとき、ウツロイドがシンジに抱き着きはじめたのだ。

 

「こらウツロイド!そんなにくっついたらダメだって!」

『ジェップ♪』

 

そこにはまるで友人の様にじゃれつくシンジとウツロイドの姿があった。状況がよく呑み込めない彼らに、シンジはありのままの事を説明した。

 

するとグラジオは「相変わらず常識の通じない奴だな」と半分呆れた様子で答えていた。ミヅキもそれに関しては同意見なようで頷いていた。ハウに関しては「さっすがチャンピオンー!」と感動をあらわにしていた。ヨウはヨウで結局何も変わらない親友の姿にただただ呆れていた。

 

一方リーリエは、シンジは相変わらず無茶はするがとてもすごい人なのだと改めて思う。だからこそ自分は、この人に惹かれ、いつしかその背中を追いかけるようになっていたのだとも……。

 

その時、ウルトラホールが徐々に徐々にとサイズを小さくしている。どうやらあのウルトラホールの維持も限界に近いようだ。

 

「ほら、君は元の世界に戻らなきゃ」

『ジェル……』

 

折角友達になったのに別れたくないと思っているのか、ウツロイドはシンジの傍を離れようとしない。そんなウツロイドに、シンジは先ほど見た記憶の事を語り掛ける。

 

「君には昔からいる大切な仲間がいるはずだよ。彼らも、きっと君の帰りを待っているはずだ。」

『ジェルプ……』

「大丈夫だよ。僕たちはもう友達だ。例え離れていても、必ずまた会えるから。」

『……ジェップ!』

 

シンジはウツロイドを撫でながらそう言うと、ウツロイドは安心したのかシンジの言葉に頷き、ウルトラホールへと戻っていく。ウツロイドが名残惜しそうにウルトラホールへと姿を消すと同時にウルトラホールも瞬時に消え失せた。

 

「よかった、これで終わったね。」

「よかった、じゃないですよ!」

 

シンジが一息つくと、リーリエが彼に対し一喝する。

 

「もう……心配したんですから……。」

「ご、ごめん、リーリエ」

 

リーリエは涙を浮かべてシンジに心の底から心配していたことを訴えかける。そんな彼女の姿に弱いシンジはタジタジになりながら謝る。l

 

「ったく、ホントに常識の通用しないやつだ。」

「ホントだよ、まさかウツロイドと友達になるなんて思わなかったよ!」

「やっぱりチャンピオンってすごいんだねー!」

「いや、こればっかりはすごいとはベクトルが違うと思うが……」

 

皆思い思いのことを口にし、シンジはなんだか申し訳ないなと心から反省する。最も、だからといって彼がこれから今回のような行動を控えるとは思えないが。

 

ウツロイドが帰還したことで、再びビッケからの通信が入る。今ので最後のウルトラオーラの消失が確認されたとのことだ。これでUBの件は一先ず解決したと言っていいだろう。

 

こうしてアローラに再び訪れたUBたちとの戦いは幕を閉じた。だが、これからさらなる冒険、新たな脅威がやって来ようとしていたことはまだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダルス!もうすぐ目的地に到着するよ♪」

「そうか」

「ねぇねぇ!光の世界って一体どんな場所なんだろうね!」

「はしゃぐなアマモ。我々は……」

「私達の世界を救うために任務で行くって言うんでしょ?わかってまーす♪」

 

仮面をつけた二人組。長身の男性、ダルスに小柄な少女、アマモ。アマモの相変わらずな天真爛漫っぷりにダルスも思わずため息を吐く。

 

そうしてもう一人、二人の側を浮遊している紫色の小さな生物と二人が騎乗している翼の生えた神秘的な生物の鳴き声がここ、ウルトラホールに響き渡った。

 

『ベベェ♪』

『マヒナペ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ではまず先週投稿できなかった理由ですが、色違い厳選のためにガラル図鑑埋めをしておりました。

結果は、ニンフィアとブラッキーの色違いに見事成功いたしました!やったぜ。

特にニンフィアは♀、夢、ラブラブボールでしかも偶然にも孵化では1/16の確率生まれると言われているレアエフェクトのイーブイが奇跡的に生まれて当時狂喜乱舞しておりました。未だ興奮が冷めやりませぬ。

因みに色の孵化余りは4体ほどおり、夜に見る色ブラッキー尋常じゃないくらいにカッコいいです。

というわけで次回からまた別の話(多分リーリエの島巡り)になりますが、これからも応援よろしくお願いいたします。俺たちの戦いはこれからだ!


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アローラ編 〜L〜
始まりの時と新たなる挑戦!


前回言っていた♀の色グレイシアも無事生まれやっとブイズの色違いを揃えることができました。

そして今回の話は新章のプロローグ的な回という事もあり少々短め?です。次回からはシンジの出番はかなり減少します。当然といえば当然ですが。


UBの事件が解決した日、暫く各自疲れを癒すために休息をとることとなりました。

 

シンジさんは久しぶりのアローラへの帰国のため街はずれにある自宅に戻り、シンジさんのお母様と再会しておりました。相変わらず親子仲がよさそうでした。

 

ヨウさんとハウさんは、数年ぶりの帰国のためミヅキさんと共に故郷でもあるリリィタウンへと戻りハラさんと再会したようです。ハウさんとミヅキさんの叔父でもあるハラさんの事はヨウさんも慕っており尊敬しているようで、成長した自分たちのことを嬉しそうに話していたそうです。

 

お兄様は代表としての残り仕事があると言いながらエーテルパラダイスに戻られました。なんだかんだでお兄様もお母様の代理として責任を感じているのかもしれません。お兄様はああ見えて真面目な方ですから仕方ないかもしれません。

 

ウルトラガーディアンズとして活動していた他の方々も、今回の一件が終わり溜まっていた疲労を取るために自宅へと戻ったそうです。グズマさんだけは自宅に戻りたくないと言って元スカル団の本拠地でもある屋敷に戻られたそうですが。

 

私はククイ博士にお世話になっていたこともあり、また博士の研究所のロフトは貸していただけることになりました。当然その間はお礼の意味も込めて再び博士のお手伝いをするつもりです。

 

そしてその日の夜、なんだかUBの一件が解決し安心しきってしまった私は中々寝付くことができず、博士の許可を取り夜空の下の海岸沿いをぶらぶらと散歩することにしました。

 

「風が気持ちいです……」

 

海岸沿いの風は海の塩水も混じりアローラの新鮮な空気と共に、自然と爽やかな風が肌に触れてきます。その風が気持ちよく、私は以前からこの心地よい風が大好きでした。なんだか心が安らぐ感じがします。

 

そんな時、海岸沿いに腰を落ち着けて座っている人影が見えました。夜という事もあり暗闇で分かり辛かったですが、少しずつ近付くと砂浜の音で気付いたその人物がこちらを振り向いたことで正体が分かりました。

 

「リーリエ?どうしたの?こんな時間に」

「シンジさんこそ、どうしたんですか?こんな夜更けに」

 

その人物は私が最もよく知る人物、シンジさんでした。

 

「僕はなんだかちょっと寝付けなくて。もしかしてリーリエも?」

「はい、今日一日だけで色々ありましたから。」

 

シンジさんの返答に私も同じような回答で答えました。本当に今日一日だけで色々ありました。寧ろありすぎたぐらいですが、シンジさんや皆さんのおかげで無事解決することができました。

 

とは言えシンジさんがウツロイドさんに包みこまれた時は肝が冷えました。相変わらず無茶する方ですが、いつもそんな不安すら乗り越えてしまう不思議な方です。心臓には悪いですが……。

 

「隣、いいですか?」

「うん、もちろん。」

 

シンジさんの許可を取り私はシンジさんの隣に座りました。夜間ですがアローラはカントーに比べて暑いくらいで、海の爽やかな風も相まって冷えない程度の丁度いい気温です。

 

「……ねぇ、リーリエ。」

「なんですか?」

「分かってると思うけど、僕は君の島巡りについて行くことはできない。」

「はい、分かっています。」

 

シンジさんの言葉に私は頷きながら答えました。

 

シンジさんは私のカントー地方での旅に最後まで付き合ってくれて助言までしていただきました。しかしそれはあくまでカントー地方での話です。

 

シンジさんはこのアローラ地方のチャンピオンです。そんな方が島巡りのトレーナーと一緒に旅できるはずがありません。分かってはいましたが、いざ一人で旅をするとなると少々不安です。

 

「やっぱり不安?」

「まあ……そうですね。カントー地方ではシンジさんに色々とアドバイスを頂きながら安心して旅することができましたけど……。」

 

カントー地方に比べればこちらの地理はある程度知っているので多少はマシかも知れません。ただ一番の不安材料は私が方向音痴な部分、でしょうか。

 

「……リーリエ、僕の代わりと言っては何だけど、この子を君に預けるよ。」

「あっ、シンジさん、これは……」

 

私はシンジさんからある物を手渡されました。そのある物は私が受け取ったすぐに電源がつき、自動的に起動して浮かび上がりました。

 

『ビビビッ!シンジ、ボクの事呼んだロト?』

 

起動したのはポケモン図鑑に憑依したロトムさん、通称ロトム図鑑さんです。アローラでは島巡りをしていたシンジさんのサポートをしていたそうです。

 

「ロトム、これからはリーリエの島巡りのサポートをしてあげてくれるかな?」

『シンジに頼まれたら断るわけにはいかないロ!任せるロ!』

「シンジさん、いいんですか?」

「うん、リーリエのサポートのことでもそうだけど、ロトムはやっぱり図鑑として旅をしてる人について行った方がいいと思うんだ。」

『ボクもまだまだ色んなポケモンが見てみたいロ!リーリエ、よろしく頼むロ!』

「はい、よろしくお願いします、ロトム図鑑さん。」

 

そうして私とロトム図鑑さんは一緒に島巡りをすることになりました。

 

「さてと……」

「どこか行くんですか?」

 

一安心した私の顔を見て笑みを浮かべたシンジさんは立ち上がり、私はそんなシンジさんにどこへ行くのかと問いかけました。

 

「ちょっと寄りたいところができたからね。」

「あの……私も一緒に行っていいですか?なんだかまだ眠れる気がしないので……。」

「うん、いいよ。」

 

そう言って私はシンジさんについて行くことにしました。ロトム図鑑さんは邪魔をしない様にとのことでポケットの中に隠れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよ」

「あっ、ここって……」

 

シンジさんの後ろについて行き辿り着いたのは、私たちが初めて出会った場所、マハロ山道の桟橋でした。

 

「でも、どうしてこの場所に?」

「UBとの戦いの最中、ちょっとあの時のこと思い出してね。」

 

シンジさんは私たちが出会った時の事を思い出す様子で眼を瞑りそういいました。

 

確かに私たちはあの時出会い、その後から色々なことがありました。シンジさんとミヅキさんの島巡り、試練から始まり、お兄様やスカル団との戦い、UBとの出会い、そしてお母様との……。思えばあの時出会った時から全ての物語が始まっていたのかもしれませんね。

 

「……本当に色々なことがありましたよね。」

「うん。ナッシーアイランドで一緒に旅をしようって約束したのもあの時だったよね。」

「はい!私はお母様の神経毒を治すためにカントー地方へと向かいました。それから2年の月日が経った時、シンジさんは私との約束を守ってくれましたよね。」

「あの時はリーリエがスピアーに襲われてて焦ったよ。」

「あはは、私も自分で焦りました。でも……なんだか私が危ない時、シンジさんがいつでも助けに来てくれるんじゃないかって、不思議とそんな気がしたんです。今日のウツロイドの時も、シンジさんが助けに来てくれるって信じてましたから。」

「そ、そこまで言われると流石に照れるよ///」

 

私の言葉にシンジさんは顔を逸らして恥ずかしそうに頬を掻きました。私もその姿を見て思わず自分が恥ずかしい台詞を言っていることに気付き、シンジさんに謝りながら目を逸らしました。

 

「リーリエ」

「は、はい?なんでしょうか?」

 

シンジさんに突然名前を呼ばれて驚きながらも私はシンジさんと目を合わせました。シンジさんは真っ直ぐに私の目を見つめて口を開きました。

 

「最後に、チャンピオンとしてではなく、1人のトレーナーとしてアドバイスするよ。」

「アドバイス、ですか?」

「うん。多分、個人的にアドバイスできるのはこれが最後だと思う。聞いてくれるかな?」

 

私はシンジさんの真剣な眼差しに頷き、私はシンジさんの言葉に耳を傾けました。

 

「……島巡りは間違いなく厳しいものになる。しまキングやしまクイーンが強敵なのは言うまでもないけど、ライバルになるハウやヨウも強敵だ。」

 

私はシンジさんの言葉に頷き黙って話を聞き続けました。

 

「これから先、他にも様々な試練がリーリエを待っている。それが何かは僕にも分からない。時には挫けそうなこともあるかもしれない。でも、それでも君の傍にはずっとポケモンたちがいてくれる。」

「はい」

「そのことだけ忘れなければ、必ず島巡りを突破できる。……島巡りの先で待ってるよ、リーリエ。」

「っ!?はい!」

 

シンジさんはその言葉だけを私に伝えてくれました。島巡りの先……。その先が何なのかは口にしませんでしたが、私にはなんとなく見えています。

 

……必ず島巡りを突破してみせます。そして、必ず私の最も目指すべきもの、目標の場所まで辿り着いて見せます!

 

こうして私の眠れない夜は過ぎ、シンジさんのお陰で改めて目標を見据えることができました。必ず辿り着いて見せますから……待っていてください、シンジさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして一週間後――

 

 

 

 

「リーリエ、忘れ物はない?」

「はい!荷物や旅に必要なアイテムもちゃんと持ちましたし、モンスターボール、それからロトム図鑑さんも!」

『リーリエのサポートならボクに任せるロ!』

 

UBの事件から一週間が経過し、疲れも充分に癒した私は、遂に島巡りの冒険に出発することにしました。

 

シンジさんは事件の翌日からすぐにチャンピオンとしての仕事で忙しいとのことであれ以来会ってはいません。その代わりククイ博士と奥さんのバーネット博士が私の見送りをしてくださっています。

 

その時、辺りが一瞬だけ真っ暗になってしまいました。恐らく、これは日食と呼ばれる現象でしょう。

 

「変ね……日食なんて予報されてたかしら?」

「まあ、これも吉兆ってやつだぜ」

「吉兆ですか?」

 

ククイ博士の話によると、その昔にアローラが闇に包まれた時、アローラのポケモンと人々が光で闇を打ち消した、と言われ、それが起源となり島巡りがアローラでの伝統となったのだそうです。

 

「リーリエ!旅の門出にこれを君にプレゼントするぜ!」

「あっ、これって!」

 

ククイ博士から私が渡されたもの、それは紛れもなくZリングそのものでした。

 

「ZリングはZクリスタルと組み合わせることでポケモンと共に強力なZ技を発動することができる。知っていると思うが、これは強力すぎるが故にポケモンとトレーナー、共に負荷がかかるためバトル中に一度しか発動できない諸刃の剣の様な技だ。だが、カントー地方での旅をしてきた君ならば使いこなせるはずだ!」

「はい!ありがとうございます!ククイ博士!」

 

私はククイ博士に感謝しながらZリングを左腕に装着しました。

 

「じゃあ私からはこれをプレゼントするわね。」

「あっ、これは……」

「島巡りの証よ。これで貴女も立派な島巡りのトレーナーってこと。お守りだと思って頑張りなさい、応援してるから。」

「はい!バーネット博士もありがとうございます!」

 

島巡りの証をいただいたバーネット博士にも感謝し、私はリュックサックに島巡りの証をつけました。なんだか島の守り神たちに見守っていただけているようで安心します。

 

「それからこれ、シンジからのプレゼントだそうだ。」

「シンジさんから?っ!?」

 

シンジさんからのプレゼントと聞いて受け取ったそれは驚くべきものでした。それは綺麗な透き通る水色をしたひし形のクリスタル、氷のZクリスタルそのものでした。

 

「これからは手伝う事ができないけど、君の島巡りを見守ってるって言ってたぜ?……頑張っていってきな、リーリエ。いや、チャレンジャー!」

「はい!頑張ります!」

「ええ、気を付けてね。カンタイシティに来たら空間研究所に寄りなさい、歓迎するわ!」

「はい!必ず!では行ってきます!」

 

私はククイ博士とバーネット博士に見送られ、島巡りの旅に出発しました。

 

これから私の新しい旅が始まろうとしています。新しい挑戦、そして私たちを待ち受ける試練。どんなことがあったとしても、必ず乗り越えて見せます!がんばリーリエ、です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがアローラ地方、か。」

「あっちの方に例の痕跡があったみたいだよ?」

「よし、行ってみるか」

「何があるか楽しみだね♪」

「…………」

「分かってるって、もう、ダルスは相変わらず真面目なんだから」

「お前が不真面目すぎるだけだ、アマモ」

 

リーリエの新たな挑戦が始まった一方、ダルスとアマモはアローラに辿り着き、調査を開始する。この怪しげな二人組は一体何者なのだろうか?アローラに新たな何かが訪れようとしているのか?

 

なにかが蠢く中、新たな冒険の章が幕を開ける!

 

 

 




剣盾のシーズン1も終わり、ヌシの最終戦績は12,212位の100戦62勝38敗と言う悪くない結果に終わりました。色厳選に集中してたせいもあり4桁から一気に3万位まで落ちてた時は草生えましたが。

ヌシは読みは強い方ですが運は非常に悪いので、大体の敗因が一撃必殺と麻痺と言うのが悩みどころです。ダイマックス時には麻痺で行動不能になることだけでもいいので撤廃してほしいです。

シーズン2はキョダイマックスが使えるようになるそうなのでバタフリーとかは警戒したいですね。リザードンは基本通常のダイマックスがヤバいのであれですが。

Q、ブイズでリザードンの対策はどうするの?
A、対面でグレイシアに任せるかサンダースが欠伸→ダイウォールで対処する


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冒険の始まり、約束の場所!

タイトルが思いつかなかったからありきたりなタイトルで代用


新たな挑戦として島巡りの冒険に出ることになった私、リーリエですが、最初は何をするべきでしょうか。

 

『あまり深く考えず、リーリエの好きなように旅をするといいロ!シンジもそうしてたロ!』

 

私の悩みに答えるようにロトム図鑑さんがそう言ってくれました。私はロトム図鑑さんの言う通り、私の好きなようにしようと思います。

 

最初の目的と言えばやはりメレメレ島のしまクイーンでもあるミヅキさんの大試練を受けるためにイリマさんの試練を突破することでしょうか。ですがその前に、少しリリィタウンに立ち寄りたいと思います。

 

そう思い私はリリィタウンへと向かいました。リリィタウンは博士の研究所から少し北に行った所、シンジさんの家がある更に少し北に行けば見えてきます。

 

リリィタウンへと続く道、1番道路はさほど長い道のりではないのでリリィタウンに辿り着くまで時間はかかりませんでした。しかし、リリィタウン目前まで差し掛かると、2人の人影が見えました。どうやら何か話しているようですが……。

 

「……この近辺に反応はあるが、どうやら違うようだな」

「そうだねぇ。じゃあもう一つの島でも行ってみる?」

 

その人物は高身長の男性と小柄な女の子でした。ですがアローラでは見たことの無い服装をしています。なんと言うか、宇宙服を思わせるような見た目の服装です。

 

私が彼らの事を考えていると、私に気付いた様子でこちらに近づいてきました。

 

「失礼、君はもしかして島巡りのトレーナーか?」

「あっ、はい、そうですけど……。」

 

私は男性の質問に戸惑いながらそう答えました。

 

「そうか、一つ聞いてもいいだろうか?」

「は、はい、なんでしょうか?」

「UB……という存在を知っているだろうか?」

「っ!?」

 

私はその人の言葉に驚きを隠せませんでした。まず一般のトレーナーにはUBの事は知らされていないはずです。余計な混乱を招くため関係者以外には伏せておくとお兄様やシンジさんは言っていました。

 

何故UBのことを知っているのか頭の中で考えていると、女の子が口を開き男性の方は頭を下げてきました。

 

「ねえ、お姉ちゃんも困ってるみたいだよ?」

「すまない、変なことを聞いたようだ。」

「あっ、いえ、そういう訳ではありませんが。」

 

本来UBの事はあまり公言すべきではないでしょう。ですが彼らはなんだか悪い人には見えません。ですので私はUBの事を彼らに話すことにしました。

 

「あの、UBのことであれば少しは知っています。」

「本当か?」

 

私は男性の言葉に頷き先日あった出来事を伝えました。私の話を聞いたその男性は「なるほど」と興味深そうに頷きました。

 

「ふむ、トレーナーと言うものは興味深いな。ポケモンを捕獲するモンスターボールと言うのも実に興味深い。」

「確かにねー。まさかUBまで捕獲しちゃうなんて驚きだよね。」

「え?それってどういう……」

「いや、気にしないでくれ。貴重な情報、感謝する。」

「またね!お姉ちゃん!」

 

男性の方が頭を下げ感謝し、女の子は手を振ってその場を離れていきました。

 

『彼らは何者だロ?』

「分かりませんけど……不思議と悪い人じゃない気がします。」

『どこかの誰かさんみたいなこと言うロネ?でもそこがリーリエのいいところだと思うロ。』

「ふふ、ありがとうございます。ロトム図鑑さん。」

 

そう言って私たちは気を取り直して改めてリリィタウンへと入っていきました。大きな街であるハウオリシティの近くにあるとは思えない小さな村ですが、四天王のハラさん、そしてしまクイーンでもあるミヅキさんの故郷だからか、意外と賑わっている村です。

 

村の中心にある台、主にポケモンバトルに使用されている舞台ですが、その上にしまクイーンのミヅキさん、それから彼女の家族にも近いハウさん、ヨウさんが集まって話をしていました。

 

「あっ、ヤッホー!リーリエー!」

 

私を見つけたミヅキさんは舞台から降りてきて、手を振りながら私の元に走って駆け寄ってきました。

 

「リーリエも今日から島巡りに出発するの?」

「はい!でも私もって?」

 

私がミヅキさんの言葉に首を傾げていると、ハウさん、ヨウさんも舞台から降りてきて近寄り声をかけてきました。

 

「おれたちも今日から島巡りにでるんだー」

「UBとの戦いや旅の疲れもとれたし、丁度いい頃合いだからな。」

 

ヨウさんが「これからはライバルだな」と手を差し出してきたので、私もその言葉に答える形で握手に応じました。ハウさんも同じように握手をしてくださいました。まさにライバルという感じがしてなんだか嬉しいです。

 

「まっ、第一の関門!このミヅキさんの大試練を突破できればの話だけど?」

「昔、俺とのポケモンバトルで負けて泣いてたのはどこの誰だったかなー?」

「あははー、そんなこともあったねー」

「ちょ!?そんな昔のことはいいでしょ!?」

 

そう言えば三人は幼馴染と言う関係なのでお互いに昔の事をご存じなんでしたね。

 

……昔のミヅキさんの話は気になりますが、あまり触れるとミヅキさんに悪そうなのでここは触れないようにしておきます。

 

「と、ところでリーリエはこれからハウオリシティに向かうんだよね?」

「え?あっ、はい。まずはイリマさんの試練をクリアしないといけないので。」

「じゃあさ!私も一緒に行くよ!久しぶりにショッピングとかしたいんだぁ!」

「いいんですか?しまクイーンの仕事は……」

「いいのいいの!ほらほら!早く行こっ!」

「えっ!?ちょ、ミヅキさん!?」

『やれやれ、相変わらずせわしのない子だロ』

 

私はそうしてミヅキさんに引っ張られる形でハウオリシティに向かうことになりました。その姿を見てハウさんとヨウさんが少し呆れ気味になっていたのは言うまでもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……買っちゃった買っちゃった♪」

 

私は今ハウオリシティにある喫茶店にてミヅキさんと一息ついているところです。先ほどまでミヅキさんと一緒に(半ば強引に)ショッピングをしていました。

 

ミヅキさんはその時に気に入った服やアクセサリーなどを購入していました。私はその辺りのセンスはイマイチよく分からないですが、色々な商品が見れただけでも結構楽しいと感じる事ができました。

 

そう言えば私はシンジさん以外とお出かけしたのは今回が初めてかもしれません。お母様とも普段ショッピングなどしたことないですし……。

 

「楽しかった♪リーリエはどうだった?ショッピング」

「私ですか?はい、ミヅキさんと出かけられて私も楽しかったです。」

「そっかー!よかった。やっぱ女の子同士って言ったらショッピングが一番だよねー♪」

 

ミヅキさんは笑顔でそう言った後「あっ、そうそう!」と思い出したように再び口を開きました。

 

「今日はリーリエに見せたいものがあったんだ!」

「私にですか?」

「もうそろそろだと思うんだけどね……あっ、始まったよ!」

 

そう言ってミヅキさんは指をさし、私はミヅキさんの示した方向へと視線を映します。そこには喫茶店のテレビが設置されており、とある場所の映像が流れていました。

 

なんだかどこかで見たことあるような光景だな、とぼんやり眺めていると、テレビから流れてくる音声が私の耳に入ってきました。

 

『さあ始まりました!本日のエキシビションマッチ!』

 

エキシビションマッチ。確か公式戦とは違い記録にはのらないものの、お客さんの前で模範試合が行われることだと聞いています。

 

という事は誰かがポケモンバトルをするのでしょうか?一体誰がこの様な大舞台で試合をするのだろうか、と頭の中で考えていると、再び私の耳に入ってきた内容に驚きを隠せませんでした。

 

『では早速登場していただきましょう!アローラ初代にして我らがチャンピオン!シンジの登場だ!』

「えっ?」

 

その声と共に登場したのは紛れもなく私がよく知る人物、シンジさんでした。つまりテレビで放送しているものは、シンジさんが今から行うエキシビションマッチのライブ中継という事になります。

 

「驚いた?今日は久しぶりにアローラに戻ってきたチャンピオンが行うエキシビションの日なんだ。リーリエはシンジ君がチャンピオンになってすぐにアローラを離れちゃったから知らないかもしれないけど、あれ以降定期的にチャンピオンの非公式戦でもあるエキシビションバトルが行われるようになったんだ。」

「そ、そうだったんですね。全然知りませんでした。」

「エキシビションをやる理由としては、チャンピオンとしての力をトレーナーたちに誇示するためであったり、パフォーマンスの一環だったりするみたいだね。」

『それでは続いて挑戦者!リュウ選手の登場です』

 

ミヅキさんがエキシビションについての説明を終えると、続いて挑戦者のリュウさんと言うトレーナーが入場しました。

 

挑戦者のトレーナーは身体つきがかなりごつく、顔の形状もかなり厳ついため雰囲気だけでも強そうなオーラを発しています。

 

解説によればかなり実績のあるトレーナーらしく、多くのトーナメントで負け知らずとして恐れられるほどの戦績を上げているのだそうです。

 

『両者、準備はよろしいでしょうか!?それではポケモンを!』

『行くぞ!ボスゴドラ!』

『ゴドォ!』

 

審判の合図と同時にリュウさんはボスゴドラさんを繰り出しました。そのボスゴドラを見て、ロトム図鑑さんが自動で起動しポケモンさんの解説を始めました。

 

『ボスゴドラ、てつヨロイポケモン。はがね・いわタイプ。山一つを縄張りとしており、進入したものは容赦なく排除する。硬い鋼の角は岩盤をも突き崩す破壊力を持っている。』

 

ロトム図鑑さんの解説だけでもボスゴドラさんがどれほどの強敵かが伝わります。それだけでなく、挑戦者のボスゴドラさんは強いのだということがテレビ越しでさえ伝わるほどの威圧感を放っていました。

 

はがね・いわタイプであればみずタイプ弱いです。シンジさんのパーティで言えばシャワーズさんが当てはまりますが、恐らくシンジさんが繰り出すポケモンは……。

 

『行くよ!ニンフィア!』

『フィーア!』

 

やはりと言うべきか、私の想像通りニンフィアさんでした。ニンフィアさんはフェアリータイプ故にはがねタイプを持つボスゴドラには圧倒的に不利です。

 

ですがニンフィアさんはシンジさんの旅を始めた時からの相棒です。恐らくこういう場面だからこそニンフィアさんを選んだのではないでしょうか。シンジさんはそれだけ自分のポケモンさんの事を信頼しているのでしょう。

 

『例え誰が、どんな奴が相手でも手加減はしねぇ!ボスゴドラ!アイアンヘッド!』

『ゴドッ!』

『ジャンプして躱して!』

『フィア!』

 

ボスゴドラさんは自身の頭部を硬化させニンフィアさんに向かって突撃します。その姿をじっくり見たシンジさんは、回避の指示を出しニンフィアさんはジャンプします。

 

ニンフィアさんはボスゴドラさんの攻撃を当たる寸前のところで回避します。しかし先ほどニンフィアさんがいたところには大きなクレーターができており、強い風圧がフィールド外へと突き抜けました。その光景だけでボスゴドラさんの攻撃力がどれだけ強力かが分かります。当たったら間違いなく一溜りもないでしょう。

 

『ボスゴドラ!かえんほうしゃ!』

『もう一度躱して!』

 

ボスゴドラさんは振り向いてニンフィアさんの姿を捉え、かえんほうしゃで追撃します。フィールドに着地したニンフィアさんはすぐにバックステップをして回避します。

 

その動きには私の目から見ても優雅で、一切の無駄を感じません。その場にいるお客さんや私の様にテレビを見ている人たちも見入っているようです。

 

『チィッ!ボスゴドラ!がんせきふうじだ!』

『ゴッドォ!』

 

ボスゴドラさんの周囲に複数の岩が生成されます。がんせきふうじは相手の行く手を阻み、動きを封じる技だったはずです。シンジさんはどうでるのでしょうか。

 

『でんこうせっか!』

 

ボスゴドラさんががんせきふうじを放ったのと同時にニンフィアさんはでんこうせっかを使用しました。

 

次々と迫りくるがんせきふうじですが、それをニンフィアさんは軽々と躱し徐々にスピードのギアを上げていきます。そして全ての攻撃を凌ぎきると、すでにボスゴドラさんの目前まで迫っていました。

 

ニンフィアさんはその勢いを利用し、ボスゴドラさんにでんこうせっかを直撃させます。効果はいまひとつですが、それでもボスゴドラさんはダメージを隠しきれておらず、顔を歪ませているのが確認できます。

 

『くっ!だが隙だらけだ!ボスゴドラ!アイアンヘッド!』

『ゴドォ!』

 

ボスゴドラさんは態勢を持ち直し、でんこうせっかの後隙を狙いニンフィアさんにアイアンヘッドで襲い掛かりました。このままでは直撃してしまう、と焦った私ですがそんなことは杞憂に終わりました。

 

『ニンフィア!』

『フィーアァ!』

『なにっ!?』

『ゴド!?』

 

なんとニンフィアさんはボスゴドラさんに軽く触れ、攻撃を受け流すように踏み台にして回避してしまいました。その動きは私の目に軽やかで美しく、柔軟で無駄のない動きに映っていました。

 

その動きに挑戦者とボスゴドラさんは驚きを隠せませんでした。その後、次の攻撃に対応するために態勢を整えようとしますが、思いがけないアクシデントと受け流されてしまった衝撃により大きく態勢を崩してしまいます。

 

『これで決めるよ、ムーンフォース!』

『フィア!』

 

ニンフィアさんは月の力を借りる自身の大技、ムーンフォースの力を解き放ちます。なんとか態勢を戻したボスゴドラさんでしたが、振り向いたときには時すでに遅し。目前までムーンフォースが既に迫っており、驚きと同時にムーンフォースの直撃を受けてしまいました。

 

『ボスゴドラ!?』

『ご……どぉ……』

『ボスゴドラ戦闘不能!ニンフィアの勝ち!よって勝者、チャンピオンシンジ!』

 

ボスゴドラさんはその攻撃に耐え切れず目を回して戦闘不能となってしまいました。それと同時に、シンジさんのバトルを称賛するように会場からは嵐のような拍手喝さいが降り注ぎました。

 

本来では相性が悪く、その上高い耐久力を誇るボスゴドラさんを完封してしまったシンジさんとニンフィアさん。お二人の力は知っていましたが、改めてみると驚異的とまで言えるほどの強さです。

 

その後、勝者であるシンジさんにレポーターさんたちが勝利者インタビューを開始しました。

 

『素晴らしい勝利でしたね!チャンピオン!』

『ありがとうございます。』

 

それからレポーターさんたちのインタビューが続いていきます。シンジさんもその質問に次々と答えていきます。

 

しかしその中で、私は一つの質問に釘付けになりました。

 

『では最後の質問ですが、アローラを離れてどちらに行っておられたのですか?』

『カントーでちょっと旅をしていました。今回はある約束を守るためにアローラまで戻ってきたんです。』

「っ!?」

 

その質問を聞いて私は心の中で衝撃が走りました。間違いなくこの約束は私の事を指しています。

 

『約束……といいますと?』

『……この島巡りを達成し、必ずチャンピオンに挑戦する。僕は目標にされているのだと実感しました。だからこそ、僕はチャンピオンとして、トレーナーたちの目標であり続ける必要があります。僕は、そのトレーナーの挑戦を受けるため、この舞台に戻ってきました。』

『それほど注目しているトレーナーなのですか?』

『もちろん島巡りに挑戦しているトレーナー一人一人に注目しています。誰かを贔屓するようなこともしません。……ですが、そのトレーナーには是非この舞台まで昇り詰めてほしい。そう思います。』

『なるほど。チャンピオン直々に注目しているトレーナーがいるとは……これは今シーズンのアローラリーグは素晴らしい盛り上がりを見せてくれること間違いないでしょう!以上!チャンピオンへの勝利者インタビューでした!』

 

インタビュー終了と同時にライブ中継が終了し番組が終わりました。シンジさんの言葉に対して色々と考え込んでいると、ミヅキさんが私に口を開きました。

 

「さあ、挑戦者さんはどうするのかな?」

「えっ?」

「チャンピオンに公の場であんなこと言われたんだよ?その思いに指名された挑戦者さんはどうするのかなってね♪」

 

シンジさんの思い……そうです。私は約束しました。必ず島巡りを達成して、シンジさんのいる舞台まで進むのだと……。ミヅキさんに言われるまでもなく、私の答えは一つしかありません!

 

「その顔だと、迷いなんて元からなかったみたいだね♪」

 

ミヅキさんは「さてと」と呟く席を立ちあがりました。

 

「私は私のやるべきことのために、一旦リリィタウンに戻ろうかな?」

 

今回はミヅキさんの奢り、という事でミヅキさんは机に飲み物のお代を置いて手を振りその場を後にしました。

 

さすがに奢りは悪いのでは、と感じましたが、すでにミヅキさんも退出しており、断るのも奢ってくれた相手に悪いと感じたのでここは素直にミヅキさんの心遣いに感謝しました。

 

そして私は、ミヅキさんに渡されたお代を支払い、喫茶店を後にすることにしました。




多分この後暫くシンジの出番なしだと思います。まだ先の話書いてないから分かりませんが……。



ところでシーズン2始まりましたけどルールが酷いです。TODどうにかしろ増田ぁ!

元々マスターランクだったからか開始時点ではランク9のスパボ級でした。ただスパボ級が(別の意味で)魔鏡と言われているせいか個人的に一番勝率の悪いランク帯でした。シーズン2だとマスボ級で全然対戦してませんが……。

なんか印象ではカバが増えてきてる感じします。ただダイマックスで五里霧中や拘りアイテムは非適応なのに特性“はりきり”だけ適応されるのはどうにかならないんですか?フェアリースキンも火力補正乗るようにしろ増田ぁ!後第六世代のように1.2倍から1.3倍に戻せ増田ぁ!


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挑戦!イリマの試練、参ります!

楽しみにしてたリーリエ島巡り編ですけど、いざ書いてみると中々ストーリーが思いつかないです。アニメスタッフってすごいんやなって改めて思いました。


「アローラ、リーリエさん、お待ちしておりました」

「あっ、イリマさん!アローラ、です!」

 

お勘定を済ませて喫茶店を出ると、そこに立っていたのはメレメレ島のキャプテンをしているイリマさんでした。

 

「でもなぜイリマさんがここに?」

「先ほど偶然ミヅキさんと会いまして、リーリエさんがこちらにいると伺ったので直接お迎えに来たのです。」

 

私はイリマさんの言葉になるほどと頷き納得しました。その後、イリマさんはではと一度咳ばらいをし、私の眼を見て問いかけてきました。

 

「リーリエさん、私の試練を受ける準備はできていますか?」

 

イリマさんの質問に、私は頷くことで肯定の意思を示しました。するとイリマさんは笑顔で私を試練の場所へと案内し始めます。私も覚悟を決めてイリマさんの後をついていきます。

 

私が案内されたのは茂みの洞窟。そう、先日UBであるフェローチェさんを捕獲した場所です。ここがイリマさんの担当している試練の場所です。

 

案内が終わるとイリマさんは私の方へと振り向き自分の試練では何をするべきなのかを教えてくれました。

 

やるべきことは至ってシンプルで、イリマさんの育てたぬしポケモンさんを倒すだけ、だそうです。ポケモンの使用数は何体でも構わず、同時に2体出しても問題ないのだそうです。

 

ですが以前シンジさんから聞いた話ですが、ぬしポケモンさんは簡単に倒せる相手ではないでしょう。試練、というだけはあり私の中にもジム戦とはまた違った緊張感が走ります。

 

「では早速始めましょう。」

 

イリマさんのその声と同時に、洞窟内全体に響き渡るほどの音が鳴り響きます。それと同時に地面が揺れ、立っているのがやっとと言った状態です。

 

暫くするとその音が段々と近付いてきて、目の前にはアローラの姿をしたコラッタさんとラッタさん、そしてその中央にはとてつもなく大きく、また強烈な威圧感を持つラッタさんの姿がありました。

 

「っ!?こ、これがぬしポケモンさん!?」

 

私はそのラッタさんの姿に驚きを隠せませんでした。ぬしポケモンさんは通常よりも遥かにデカい、ということはシンジさんから聞いていました。しかしまさかこれほどのものだとは思っていませんでした。

 

その威圧感は通常の野生のポケモンさんたちが持つものとは全く違い、まるでジムリーダーさんたちの育てた自慢のポケモンたちと同等と言えるほどのプレッシャーを放っています。

 

『ラッタ、ねずみポケモン。あく・ノーマルタイプ。コラッタたちを率いて群れを作ると言われているが、群れ同士は仲が悪く餌を巡って激しく争う。』

 

ラッタさんの解説を終えたロトム図鑑さんが、私に『ぬしポケモンは想像以上に強敵だから注意するロ』と忠告をしてくれます。

 

「どうやらぬしポケモンもやる気のようですね。いつも以上に張り切っていますよ。」

「そうなんですか?」

「ええ。その証拠にほら」

『ラッタァ!!!!』

 

私が再びぬしポケモンさん、ラッタさんの姿を捉えると同時に、ラッタさんは大きく咆哮しました。その咆哮は通常のポケモンさんのとは全く違い、洞窟全体が揺れているのではと錯覚するほどでした。間違いなく昔の私であれば怯んで怯えていたことでしょう。

 

ですが今は違います。今まで多くの試練を乗り越えここまでやってきました。この試練は私が今までの旅を無駄ではないということを証明するための試練。そして何より、約束のあの場所まで辿り着く資格があるかどうかを試すための試練です。

 

私は自分が追いかけるべき人の後ろ姿を頭の中で巡らせ、ぬしポケモンさんの正面に立ち向かい合います。そんな私を見て準備ができたのだと判断したのか、イリマさんは公式戦の審判の人と同じように定位置につきました。

 

「ではこれより、イリマの試練を開始いたします。ではリーリエさん、ポケモンを」

「はい!お願いします!チラチーノさん!マリルさん!」

『チラァ!』

『リルル!』

 

私が選んだのはチラチーノさんとマリルさんです。ぬしポケモンさんの力は私にとって全く未知数です。油断することなく、ここは確実性を上げるためにもチラチーノさんとマリルさんのコンビネーションで戦うことにします。

 

チラチーノさんとマリルさんを見て、ラッタさんは腰を低く構え戦闘態勢に入ります。それを見たイリマさんは私とラッタさんを交互に確認しました。

 

「では、参ります。試練、開始!」

 

イリマさんが試練開始の合図をし、それと同時にラッタさんは駆け出します。その巨体からは想像もできないほどのスピードで迫ってきており、プレッシャーもかなりのものです。

 

『チラッ!?』

『リル!?』

 

気付けば既にラッタさんは私たちの目の前まで詰めてきていました。そしてすぐさま攻撃の態勢をとっています。ロトム図鑑さんによるとひっさつまえばだそうです。

 

「躱してください!」

『チラ!』

『リル!』

 

私の指示を聞いた2人はラッタさんのスピードに驚きながらも回避行動をとり、自慢のスピードで難なく回避しました。

 

しかし、ラッタさんのひっさつまえばの威力は高く、空振りしたものの大きな風圧が私の元まで届きました。これは当たれば一溜りもありません。

 

「マリルさんはバブルこうせん!チラチーノさんはあなをほるです!」

『リルルルルル!』

『チラァ!』

 

マリルさんはバブルこうせんで遠距離からの牽制攻撃を、チラチーノさんはあなをほるでその間に視界外からの奇襲の準備を行います。しかし……。

 

『ラァタァ!』

『リル!?』

 

ラッタさんは巨体に見合った大きく鋭い前歯でマリルさんのバブルこうせんを防ぎます。その後、ジャンプをして地面を揺らしました。その反動に耐えられなかったチラチーノさんは地中から追い出され空中に放り出されてしまいました。

 

「チラチーノさん!スピードスターです!」

『っ!?チラッ!』

 

チラチーノさんはその柔軟な体を活かし空中ですぐに態勢を整えてスピードスターによる反撃を行います。その思わぬ反撃にラッタさんは対応が遅れ、スピードスターが直撃します。ダメージが通っているのは間違いないようです。

 

「畳みかけます!マリルさん!アクアテールです!」

『リルゥ!』

 

今度はマリルさんはアクアテールでラッタさんの頭上へと振り下ろします。スピードスターにより怯んでいる今なら決まるはず、と確信していた私ですが、そう甘くはありませんでした。

 

『ッ!?ラッタァ!』

 

ラッタさんが咆哮をすると、一瞬の内にスピードスターが掻き消されてしまいました。その後、マリルさんのアクアテールに合わせてラッタさんは腕を突き出して反撃してきました。あくタイプの技であるじごくづきです。

 

マリルさんのアクアテールとラッタさんのじごくづきが激突しますが、威力の違いがすぐに現れてしまいマリルさんは弾き返されてしまいます。

 

「マリルさん!?」

 

その攻撃によるダメージが大きかったのか、マリルさんは顔を歪めてゆっくりと立ち上がります。自分の技にカウンターを受けたことでよりダメージが増してしまったようです。

 

そのマリルさんを見て好機と判断したラッタさんは再び駆け出し、前歯を伸ばして攻撃態勢に入りました。間違いなく先ほどと同じひっさつまえばです。次受けてしまえばマリルさんは立ち上がることは出来ないでしょう。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラァ!』

 

チラチーノさんはマリルさんの前に立ちスイープビンタでラッタさんの顔に一撃を浴びせて動きを止めます。

 

しかしラッタさんはすぐに動きを変えて自身の尻尾を硬化させて振りかざし対抗してきました。はがねタイプの技であるアイアンテールです。アイアンテールとスイープビンタが数回にわたり激突しますが、徐々にパワーの差が出てしまいチラチーノさんが押されてしまいます。

 

「マリルさん!チラチーノさんを援護です!アクアテール!」

『リル!』

 

チラチーノさんはこれ以上は厳しいと判断しすぐにラッタさんから離れます。それと同じタイミングで入れ替わるように今度はラッタさんの頭上にマリルさんが迫ります。

 

ラッタさんは驚いた表情を浮かべるも、再びアイアンテールを振りかざしマリルさんと衝突します。先ほどの結果に比べてラッタさんのスタミナも低下しているのか結果はすぐには出ませんでした。

 

ですがマリルさんのパワーが僅かに届かず、ラッタさんは更に力を込めマリルさんのアクアテールを弾き飛ばしました。

 

『リル!?』

「あっ!マリルさん!」

 

私がマリルさんを受け止めると、マリルさんは今のバトルで力を使い果たし戦闘不能になってしまいました。

 

「マリル、戦闘不能です!」

「お疲れ様でした、マリルさん。後はゆっくり休んでください。」

 

最後まで全力を尽くしてくれたマリルさんを私はモンスターボールへと戻し、戦闘へと復帰します。ラッタさんも先ほどの攻撃態勢から着地し、チラチーノさんの姿を探します。

 

しかしチラチーノさんの姿は見当たりません。ラッタさんはチラチーノさんがどこに行ったのか分からず見渡しますが、地上はおろか空中にも姿が見えません。

 

私もチラチーノさんがどこに行ったのか分からず探しますが、一か所だけの変化を見つけてチラチーノさんがどこに行ったのかを確信することができました。それが分かった私は、チラチーノさんに攻撃の指示を出しました。

 

「チラチーノさん今です!」

『チラァ!』

『ラッ!?』

 

チラチーノさんはラッタさんの足元から飛び出しラッタさんの顔に攻撃を直撃させます。その襲撃による一撃で、ラッタさんは大きく怯みました。

 

チラチーノさんはマリルさんがアクアテールでラッタさんと競り合っている最中にあなをほるで地中に姿を隠していました。マリルさんとの接戦に集中していたラッタさんはチラチーノさんからの意識が離れてしまい隙を晒してしまったというわけです。

 

「行きますよ!スイープビンタです!」

『チラチィ!』

『タタァ!?』

 

チラチーノさんはすかさずスイープビンタで追撃を重ねました。先ほどのダメージから回復しきっていないラッタさんには防ぐ手段がなく、チラチーノさんのスイープビンタによる連続攻撃を浴びてしまいます。

 

ラッタさんはぬしポケモンの意地か、ダメージに耐えようと必死にこらえます。そして自慢のひっさつまえばにより反撃をします。

 

しかしダメージの少ないチラチーノさんでは今のラッタさんの攻撃を躱すことは容易であり、ラッタさんの背後に回ることができました。

 

「これで決めます!スピードスターです!」

『チラァ!』

 

ラッタさんは振り向いてもう一度反撃をしようと構えるものの、体が言うことを聞かないのか防御することすらできずスピードスターの直撃を受けて飛ばされ、そのままダウンしました。

 

「……ぬしポケモンラッタ、戦闘不能!リーリエさんの勝利です!」

 

イリマさんのその宣言を聞き、無事ぬしポケモンさんに勝つことができたんだと理解した私はどっと疲れがあふれ出てその場に座り込みました。そんな私を見たチラチーノさんが傍まで近寄ってきてくれました。

 

『チラチ!』

「ありがとうございます、チラチーノさん。マリルさんも、ありがとうございました。」

 

私はチラチーノさんの頭を撫で、再び戦ってくれた二人に感謝の言葉を告げます。

 

少しするとぬしポケモンのラッタさんが気が付いたようで体を起こします。その後私の顔をじっと見つめ、どこか満足気な表情を浮かべて洞窟の奥へと姿を消しました。

 

「どうやらぬしポケモンもあなたの力を認めたみたいですね。」

「そう……なんでしょうか?」

「ええ。アローラ伝統の島巡り。そこで行われる試練は勝ち負けやキャプテン以上に、ぬしポケモンから力を認められるかどうかが重要となります。あなたはそんなぬしポケモンを認めされることができました。試練、見事突破ですよ。」

「っ!?ありがとうございます!イリマさん!」

 

その言葉を聞いて試練の突破を再度実感した私はイリマさんに感謝しました。するとイリマさんは私に何かを差し出してきて、私はそれを受け取りました。

 

「それはノーマルタイプのZ技を使用することができるようになるZクリスタル、ノーマルZです。カントー地方を旅したリーリエさんに分かりやすく言うなら、ジムバッジのようなものです。改めて、試練突破、おめでとうございます。」

「ありがとうございます!ノーマルZ、ゲットです!」

『おめでとうロ!リーリエ!』

 

私はロトム図鑑さんからの祝福も受け、記念として一枚撮影していただきました。少々恥ずかしかったですが、それでも旅の思い出として、そして何より約束への第一歩を歩みだせたことへの嬉しさがそれを超えました。

 

「次はミヅキさんの大試練ですね。彼女は強いですが、自分のポケモンを信じれば必ず良い結果になります。これからも頑張ってくださいね。」

「はい!」

 

島巡り最初の試練を無事に突破することが私。ぬしポケモンのラッタさんは強敵でしたが、これで約束への一歩を踏み出すことができました。

 

次に待ち受けるのはあのミヅキさん。シンジさんの島巡りでのライバルであり、現在メレメレ島を代表するしまクイーン。強敵であることは考えるまでもありません。

 

ですが私もこれまで数多くの事を経験し、ここまでやってきました。私の持てる力全てを出して、ミヅキさん、あなたに挑みます。待っていてください!

 

がんばリーリエです!私!




ポケモンダイレクトにて色々公表されましたが、個人的には新しいDLC以上にポケダンリメイクが楽しみです。

体験版でプレイしていて昔は出来なかったパートナーをパートナーに選択することができたので、迷わずにパートナーをイーブイに選択しました。実はポケダンイーブイは♀しか存在せず、昔は主人公限定だったという悲しい過去が……。やっぱイーブイは自分がなるよりパートナーにしないと。しかもイーブイちゃんは剣盾同様♀だと尻尾がハートマークになるという神仕様。かわいい(確信)

因みに自分は分かりやすいようにピカチュウにしました。実質ピカブイ


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花園の秘密、ウルトラ調査隊再び!

最近スカイリムやフォールアウトのMOD入れたり久しぶりにユメノカケラしたり風花雪月やったり昨日先生がスマブラ参戦したりと色々やりたいことが多くて困っているヌシです。

多分あとがきでアンケート取ります。その結果によって後半の展開が少し変わる可能性があったりなかったり。


イリマさんの試練を無事突破し、私はイリマさんと共に茂みの洞窟の外に出ます。するとそこには同じく島巡りをしているハウさんとヨウさんの姿がありました。

 

ハウさんは私の姿を見つけるとすぐに駆け付けて話しかけてきました。

 

「リーリエ!試練どうだったー?」

「はい!苦戦はしましたが無事に突破できました!」

「わー、すごいねー!」

「流石だな、リーリエ。」

「お二人もこれから試練を受けるのですか?」

 

私の質問にハウさんとヨウさんは私の言葉を聞いて互いに顔を見合わせてから私の方へと向き直り再び口を開きました。

 

「うん、おれたちもこれから試練を受けるんだー」

「と言ってもどっちが先に試練を受けるかまだ決めていないんだけどな。」

 

どうやらどちらが先に試練を受けるか悩んでいるようです。やっぱりポケモントレーナーだからか早く試練を受けたくてうずうずしているようです。

 

とは言え私もポケモントレーナーになった身なのでお二人の気持ちは分かるのですが。

 

そんな二人の話を聞いていたイリマさんが一歩前に出てある提案をしました。

 

「でしたらお二人で一緒に試練を受けてみたらどうでしょうか?」

「え?」

「二人で?」

「いいんですか?二人で試練を受けさせてしまっても?」

 

イリマさんは私の問いかけ頷いてそのまま話を続けました。

 

「ええ。試練とは単にクリアすることだけが目的ではありません。先ほどリーリエさんに二体以上のポケモンを使用することを勧めたのもそれが理由です。」

「どういうことですか?」

「私たちキャプテンが見たいものは単なるバトルの強さではありません。あらゆる敵や状況に応じての判断力、島巡りで経験したこと、ポケモンとの絆、それら全てを試練の場にて出し尽くした上で勝利してほしいのです。」

「そう言えばククイ博士が言ってたな。島巡りは子どもたちの成長を願う為に始めた伝統だって。」

「その通りです。ポケモンを二体使うことだって簡単なことではありません。それぞれのポケモンの特徴を知り、互いの弱点を補い戦う。コンビネーションが上手く決まっていなければ勝てません。先ほどのチラチーノのあなをほるもそうです。」

「あっ、あれはただ夢我夢中で……」

「それでも、リーリエさんはチラチーノの考えを即座に理解し、咄嗟の判断を下し勝利することができました。それはポケモンが貴女を信頼しているから、そして貴女自身もポケモンを信頼しているからこそできたことですよ。実力が伴ってきている何よりの証拠ですよ。」

 

私の方を見てそう告げたイリマさんは、次にヨウさんとハウさんの方へと向きなおし再び口を開きました。

 

「二人で戦う事も同じです。トレーナー同士が如何に理解し合い、お互いに助け合いピンチを切り抜け勝利を掴む。寧ろシングルバトル以上の奥深さがあり難しくもあります。見ず知らずの人とタッグを組んだ場合更に難しさは増すことでしょう。二人だからと言って、試練が簡単になるとは限りませんよ。」

 

イリマさんの話を聞き私は改めてポケモンバトルの奥深さを学ぶことができた気がします。ポケモンの数が多いからと言って必ず有利になるとは限りません。

 

例えばの話ですが、私がポケモンを二体使用したからと言って、シンジさんのポケモンさんに勝てる気がしません。今の私では間違いなく返り討ちに会ってしまうのが落ちでしょう。

 

UBさんたちとの戦いもいい例です。私たちはなんとか勝利することができましたが、三人がかりでもフェローチェさんをゲットするだけでかなり苦戦を強いられました。あれはマルチバトルならではの難しさがあることも一つの要因と言えるでしょう。

 

「……よし!ハウ、一緒に試練受けてみようぜ!」

「そうだねー、二人でぬしポケモンと戦うのもなんだか面白そうだしー!」

 

そう言ってハウさんとヨウさんは二人で試練を挑戦するとイリマさんに告げました。イリマさんは二人の言葉に笑顔で頷き、茂みの洞窟内部へと案内します。

 

私は二人に激励の言葉を送ると、二人は私に手を振って下さいました。二人に負けない様に私も頑張ろうと拳をグッと握り締め、旅を続けるためにリリィタウンへと直接繋がっている3番道路へと足を進めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『前から思ってたけど、リーリエって結構体力あろロネ?』

「そうですね、小さい頃は結構外を走り回ったりしてたので、その時に体力がついたのかもしれません。」

 

私はロトム図鑑さんと他愛もない話をしながら3番道路を歩いていきます。初めは1人で島巡りをするということに不安を感じていましたが、ロトム図鑑さんが道中にカントーでは見ることの無かったポケモンさんの説明や、話題を振って盛り上げてくれたりしているので今では不安はありません。

 

リリィタウンへと向かっている道中、私は見覚えのある開けた場所に辿り着き足を止めました。

 

「ここは……」

『メレメレの花園だロ。アブリーみたいなむしやフェアリータイプのポケモンが多く生息しているんだロ!』

 

メレメレの花園。確かにロトム図鑑さんの言う通りむしタイプやフェアリータイプのポケモンさんがたくさん目に入ります。

 

でも、それとは別に私の頭にはあの子の姿が過りました。

 

「……なんだか2年前のことを思い出しました。」

『ああ、ほしぐもが勝手に花畑に入っていった時のことロ?』

 

ロトム図鑑さんの言葉に私は頷き当時の事を思い返しました。

 

『代わりと言っては何だけロ、今は僕が一緒にいるロ!元気出すロ!』

「ロトム図鑑さん、私なら大丈夫ですよ。なんだか懐かしい気分になっただけですから。」

 

ほしぐもちゃんとの思い出は大切なものです。でも今ではほしぐもちゃん以外にも大切な人がたくさんいます。だからなのか、不思議と寂しくありません。

 

『べべッ?』

「あれ?今のは?」

 

私がほしぐもちゃんの事を懐かしんでいると、花畑の奥の方に何かポケモンさんのような影が動いた気がしました。

 

『リーリエ?どうしたロ?』

「い、いえ、何かあそこにポケモンさんが……」

『ビビッ?ここにはたくさんポケモンがいるロ?』

 

ロトム図鑑さんの言う通り、この花畑には多くのポケモンさんの姿が見えます。私の知らないポケモンさんがいてもおかしくはありません。ですが、私は不思議とそのポケモンさんに目を引かれてしまいました。

 

言葉にはしにくいのですが、なんだかほしぐもちゃんと雰囲気が似ている気がしたのです。その時、私の耳にもう一度あの声が入ってきました。

 

『ベベッ!』

「っ!?やっぱり今のポケモンさん……」

『リーリエ?どこへ行くロ?』

 

私は次の瞬間には花畑の方へと歩みを進めていました。不思議なポケモンが見えた場所へとたどり着くと、そこには人一人がようやく入れそうな穴が開いていました。

 

『ビビッ?この奥、なにか繋がっているみたいだロ?』

「……入ってみましょう。」

『リーリエ勇気あるロ。少し怖いけロ、僕も付き合うロ!』

「ありがとうございます、ロトム図鑑さん。」

 

正直私も一人でこの穴の中に入るのは少し不安だったので、ロトム図鑑さんが一緒に付いてくれると言ってくれて嬉しいです。

 

私は先に穴の中に潜り、その後ろにロトム図鑑さんがついてくる形で入っていきました。その穴はそれほど深くなく、少し進むと広い洞窟へと出ました。

 

「花畑からこんな場所につながっていたなんて……」

『これはすごいロ!ここにもポケモンがいるみたいだロ!』

 

ロトム図鑑さんの言葉に私も驚き周囲を見渡すと、花畑ほどではないとはいえ数匹のポケモンさんが暮らしているのが分かりました。

 

洞窟の中はひんやりとしており、中にはいくつかの水辺がありました。また、花畑とは違って洞窟内にはみずタイプのポケモンさんが多い印象です。ウパーさんとかは湿原などを好むポケモンさんなので納得できました。

 

その後少し洞窟の奥へと進んでみると、そこには見覚えのある二人組の後ろ姿が見えました。私の存在に気付いた二人は私の方へと振り向き声を掛けてきました。ロトム図鑑さんは2人の姿を見ると私のポケットの中に入ってしまいましたが。

 

「むっ?あの時の少女か。」

「お姉ちゃんさっきぶりー♪」

「あっ、あなた方はリリィタウンで会った……」

「そうか、自己紹介がまだだったな。私はダルス、ウルトラ調査隊として活動している。」

「私はアマモ!ダルスと同じウルトラ調査隊の一員だよー♪」

「私はリーリエです。よろしくお願いします、ダルスさん、アマモさん。」

 

私はダルスさん、アマモさんに頭を下げて挨拶をしました。そのあと、私はなぜ二人がこのような場所にいるのか気になり思わず尋ねました。

 

「ところでお二人はなぜここにいるんですか?」

「ああ、我々はウルトラオーラの反応を追っていたらここにたどり着いただけだ。」

「ウルトラオーラの反応……ですか?」

「そ、お姉ちゃんも知ってるUBの持ってる不思議なオーラのことだよ!」

「外の花園に僅かながらUBがいた形跡が残っていてな。少々調べていたのだよ。」

 

ダルスさんは自分の目的を話すと、そのあとに顎に手を当てて「ふ~む」と口にしました。

 

「それにしてもモンスターボールというものは実に興味深い。ここに来るまでに何度か見てきたが、あのような物にポケモンがサイズや重さ等関係なく入るとは……。」

「ちっちゃいポケモンからおっきなポケモンまで色々入ってたもんね?UBを捕まえられるのもなんだか納得しちゃうよね~。」

 

確かに言われてみれば不思議です。モンスターボールという小さなカプセルにポケモンさんを収納してしまえる構造はきになりますね。普段使っているものなので余り考えたことなかったです。

 

聞いた話ではモンスターボールの中身はポケモンさんにとっては快適な環境になっているそうです。ボールの性能が高くなるほど中身の環境も変わるそうですが、一体どういう仕組みで出来ているのでしょうか……。

 

「あっ、そういえば。」

「ん?どうかしたか?」

「こちらに不思議なポケモンさんが来ませんでしたか?私はそのポケモンさんを追ってここに来たんですけど」

「ああ、たぶんそれはね~」

『ベベッ!』

「きゃ!?」

 

ダルスさんの後ろから突然ポケモンさんが姿を現し、私はそれに驚き尻もちをついてしまいました。そのポケモンさんは全体的に紫色の体をしており、青く光る瞳をしている小さな可愛らしい姿のポケモンさんでした。

 

私を驚かすことに成功したからか、そのポケモンさんはクスクスと笑っています。

 

「こら、ベベノム。いたずらは程々にしておけと言っただろう。」

『ベベベェ!』

 

ダルスさんの言葉にも耳を貸さず、ベベノムと呼ばれたポケモンさんは洞窟内の空中を遊泳しています。

 

「ごめんねお姉ちゃん。あの子、ベベノムって言うんだけど、いたずら好きで私たちも困ってるんだ。一応あの子もUBなんだけどね。」

「え?そうなんですか?」

「安心してくれ。べベノムはいたずらこそするものの、決して害を成すような奴ではない。」

 

べベノムさんはUBだという事実に私は驚きましたが、それ以上にUBなのにも関わらず害がないという事に一番驚きました。これまで出会ってきたUBは安全を保障できるような存在ではありませんでしたし。

 

「あっ、ダルス!そろそろ私たちも行かないと!」

「どこに行くんですか?」

「アーカラ島と呼ばれている場所だ。あそこにもUBの痕跡が残っているようなのでな。」

「それにあそこで人と待ち合わせしてるんだよねー♪」

「そう言うことだ。すまないが失礼する。行くぞ、べベノム。」

『ベベッ?』

 

そう言ってダルスさんとアマモさんはその洞窟を後にし、べベノムさんはそんな彼らの後を追いかけていきました。ダルスさんたちの目的地がアーカラ島なのであれば、これから先また会う可能性もありますね。

 

私がその時を楽しみにしていようと頭の中で考えていると、ロトム図鑑さんがポケットの中から再び外に出てきました。

 

『なんだかあのダルスって人は苦手ロ。少し怖いロ。』

「そうですか?いい人だと思いますけど……」

『それは分かってるロ。でもなんだか慣れないロネ……。』

 

ロトム図鑑さんはどうやらダルスさんに対して苦手意識を持っているそうです。悪い人には見えませんけど、機械としての勘(?)なのでしょうか。

 

『ビッ?』

「どうかしましたか?ロトム図鑑さん?」

『なんだか奥から風を感じるロ。もしかしたらこの洞窟、外に繋がってるかもしれないロ。』

「そうなんですか?」

 

ロトム図鑑さんの言葉に私も折角だから洞窟の奥を見に行ってみようと提案しました。ロトム図鑑さんもその提案に賛同してくれて、私たちは洞窟内部を進むことにしました。

 

「あっ、光が見えてきました!」

 

洞窟を奥まで進んでみると、入り口とは違い大きな出口から光が差し込んでいました。私でも感じる程の風が洞窟の出口まで吹いてきており、私はそこから外に出ました。

 

するとそこにはみずポケモンたちが暮らしている場所へと繋がっていました。海や池とはまた違う水辺でした。

 

『ビビッ!どうやらここはカーラエ湾と呼ばれているところみたいだロ!さっきのところは海繋ぎの洞穴みたいだロ!』

「カーラエ湾、ですか。なんだかすごく綺麗なところですね。」

 

そこはみずポケモンたちの楽園と言っても過言ではないぐらい綺麗で神秘的なところでした。恐らく人の手が殆ど及んでおらず、エーテル財団が環境保護区にでも設定しているからだと思われます。

 

「シンジさんもこの場所をご存じなんですかね?」

『僕と旅した時はこの場所にはこなかったロ。今度一緒に来るといいロ!』

「……ふふっ、そうですね。」

 

私は隠れた名所ともいえるカーラエ湾の美しさを目に焼き付け、必ず島巡りを突破してみせると誓いました。次のミヅキさんとの大試練、必ず勝って見せます!




恐らくサンムーンのストーリーでは殆どの人が気付かなかったのではないかと思われるカーラエ湾です。花園歩き回ったら気付くのかな?せっかちな私は早くクリアすることだけ考えてたので花園すらまともに立ち寄ってませんが。

と言うわけでアンケートになります。この結果によってはもしかしたらリーリエの最後のポケモンが変わる、、、かもしれません。

べベノムにした場合文字通りべベノムが原作の主人公同様仲間に、やっぱりあのポケモンを選択した場合あのポケモンが仲間に(多分みんな気付いていると思うけど一応ネタバレ防止のために名前は伏せておきます)、おまはんに任せるを選択した場合私が勝手に決めます。

あくまでアンケートなので、本当に採用されるかは分かりません。急な設定なので私の気分によって変わる可能性も微粒子レベルで存在します。

どうでもいいですが私個人としては元々伝説系があまり好きではないです。なんか種族値の暴力感が嫌だ。


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リーリエ、初の大試練!VSミヅキ!

最近リアルの仕事が忙しくて間に合うかどうかが不安でしたが、なんとか間に合いました。その分急ぎで書き上げたので内容は少々不安です。初大試練という重要な回なのになにやってんだあぁ!グズマァ!(責任転嫁)


海繋ぎの洞穴でウルトラ調査隊と名乗るダルスさん、アマモさんと再会した私は、島巡りを再開し次なる目的地となるリリィタウンへと向かっていました。

 

『あっ!見えてきたロ!』

 

道の先に見えてきた村をロトム図鑑さんが指し示します。間違いなくミヅキさんの大試練が待つ場所、リリィタウンです。遂に最初の試練の時がやってきて私も緊張してきました。

 

「あっ!リーリエー!こっちこっちー!」

「ミヅキさん!」

 

リリィタウンの中央にある舞台で私の姿を見つけたミヅキさんが手を振り呼びかけてきます。私もその声に答え小走りでミヅキさんの元へと駆け寄ります。

 

舞台の上には旅立つ前に見たようにハウさんとヨウさんの姿もありました。

 

「よ、リーリエ、遅かったな。」

「おれとヨウはもう大試練終わらせたよー」

「えっ?そうなんですか?随分と早いですね。」

 

既に大試練は終わったと告げる二人ですが、冷静になって考えてみれば私はカーラエ湾に寄り道してゆっくりしすぎていたのかもしれません。

 

「いやー、2人とも予想以上に強くなってたよ。本気じゃないとはいえまさか負けるなんて思わなかったなー。」

「いや、お前結構ガチになってたじゃん。」

「そ、そんなことないよ!」

「ホントー?」

「ホントだよ!?」

 

ミヅキさんとハウさん、ヨウさんが言い争っています。喧嘩ではないというのはなんとなく分かりますが、シンジさんと空気が違いすぎるため少し困惑してしまいます。

 

「あっ、ごめんねリーリエ。これいつものヤツだから。」

「そ、そうなんですか。」

「そーそー。ミヅキが弄られてヨウが弄り役。あっ、おれは勿論ツッコミ役ねー」

「えっ?」「えっ?」

 

ヨウさんとミヅキさんの方から呟きの声が聞こえます。私には少しついて行けないのでここは申し訳ありませんが強引に話を進めさせていただきます

 

「と、ところでミヅキさん、私も大試練受けさせていただいてもいいですか?」

「もちろんもちろん!大試練用にポケモンも複数用意してるから連戦でも全然問題ないよー!」

 

ミヅキさんは私の問いに快く承諾してくれて、私は改めてミヅキさんにお礼を言いました。ミヅキさんは『お礼を言うのは私を倒してからにしてほしいかな?』と言い、その瞬間にいつもの明るいミヅキさんから、しまクイーンとしての風格と言うか雰囲気を肌で感じました。当たり前ですが、気を引き締めて掛かる必要がありますね。

 

『リーリエ!バトルのアドバイスはできないロが、応援してるロ!がんばリーリエロ!』

 

私はロトム図鑑さんの声援を受け、大試練へと望むのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とミヅキさんは舞台の両サイドに立ち互いに準備が完了しました。ヨウさんとハウさんは勿論ですが、村の中央でもあるため他の人たちからの注目も浴びてしまってます。なんだかいつも以上に緊張しています。

 

「じゃあリーリエ、簡単にルールを説明するよ?」

「はい!よろしくお願いします!」

「ルールは至ってシンプル。使用ポケモンは2体、どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了。他に面倒なルールは無しの真っ向勝負だよ!」

「分かりました!」

 

ミヅキさん曰く、大試練とは名ばかりで本人はチャレンジャーとの真剣勝負を楽しみたいのだそうです。シンプルと言えばシンプルですが、その分これはジム戦同様に明確な実力が試合の勝敗に影響が出ると言っても過言ではないでしょう。

 

「じゃあ私から、行くよ!ウインディ!」

『グルァア!』

 

大きな咆哮と共に登場したのはでんせつポケモンと言われるウインディさんです。でんせつポケモンは名ばかりでなく、素早い動きにより捉えるのは難しいポケモンさんです。

 

ウインディさんはほのおタイプを持つポケモンさんです。 でしたら私の一番手はこの子です!

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

「みずタイプ、セオリー通りで来たね。でもそう簡単には行かないよ!」

『ガウッ!』

『リルッ!?』

 

ウインディさんが今一度短く咆哮しました。それと同時にマリルさんがひるむ様子を見せました。これは間違いなく……

 

「そっ、ウインディの特性“いかく”だよ。」

 

いかく。ブルーさんのグランブルさんも持っていた特性で、バトルに出た時に相手の攻撃力を下げる効果がある特性です。これでは相性の差が縮められてしまったかもしれませんね。

 

「じゃあ早速始めるよ?……ミヅキの大試練、乗り越えて見せて!」

 

ミヅキさんのその掛け声とともに大試練のゴングが鳴りました。そして最初に動き出したのはミヅキさんでした。

 

「ウインディ!まずは挨拶代わりのかえんほうしゃ!」

『ガウゥ!』

 

ウインディさんは初めほのおタイプ定番と言ってもいいかえんほうしゃで牽制攻撃を仕掛けてきました。流石に分かりやすい攻撃でしたので私はマリルさんに回避の指示を出しジャンプしてかえんほうしゃを避けました。

 

「ウインディ!しんそく!」

『グルァ!』

『リル!?』

 

避けた先にウインディさんが風を切るほどのスピードで駆け抜けマリルさんの突進してきました。その素早さに翻弄されてしまいマリルさんの体へと突き刺さります。

 

「マリルさん!」

『っ!リル!』

 

マリルさんはその攻撃を堪え切り再びウインディさんを見据えました。ウインディさんがしんそくを覚えているのであれば、最大限注意しなければなりません。

 

しんそくは素早さの序列に関係なく先制攻撃を仕掛ける技です。ただでさえ素早さが早いウインディさんにの放つしんそくを直撃してしまえばただでは済まないでしょう。これ以上直撃を受けるわけには行きません。

 

「もう一度かえんほうしゃ!」

『ガウッ!』

「躱しながら前進してください!」

『リル!』

 

しんそくで怯んだマリルさんに再びウインディさんはかえんほうしゃで畳みかけてきます。普通に避けただけではまた同じ目にあってしまうと思った私は、今度はウインディさんの元へと駆けるように指示を出しました。

 

マリルさんはウインディさんの攻撃を回避しそのまま走ります。近づけさせまいとウインディさんは連続でかえんほうしゃを放ちますが、マリルさんはその連続攻撃を躱し徐々に接近していきました。

 

「今です!アクアテール!」

『リル!』

『グルッ!?』

 

充分に距離を詰めたマリルは尻尾に水の渦を纏わせアクアテールをウインディ目掛けて振り下ろします。ウインディも防御の対応が間に合わずにアクアテールの直撃を浴びダメージを負ってしまいました。

 

「まだまだだよ!ウインディ!ワイルドボルト!」

『グルァ!』

「っ!?でんきタイプの技!?」

 

ウインディはアクアテールでのダメージを感じさせないかのように即座に態勢を立て直し、逆にダメージの反動を利用して加速しでんきタイプの技であるワイルドボルトを放ちました。

 

マリルはアクアテールの反動で反応が遅れるもワイルドボルトを僅かのところで回避しました。しかしその攻撃は僅かにマリルを掠めており、その威力による風圧で少なからずダメージがありました。とは言えでんきタイプの技であれほどの威力をまともに喰らっていれば戦闘不能になっていたのは間違いないでしょう。

 

「今よ!ウインディ!しんそく!」

『バウッ!』

 

チャンスだと踏んだミヅキさんとウインディさんはしんそくで決着をつけに来ました。ですがその技は私にとって逆に好機にもなり得る一手でもありました。

 

「マリルさん!ジャンプして躱してください!」

『リルル!』

 

マリルさんは私に指示に従い高くジャンプしてウインディさんの攻撃を回避しました。いくら見えない速度で攻撃してくるとは言え、事前にしんそくの存在を知っていて直線に来ると予想していれば避けること自体は難しくありません。

 

「ウインディ!かえんほうしゃ!」

『ガウッ!』

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

 

ウインディさんは地上からのかえんほうしゃ、マリルさんは上空からのバブルこうせんで対抗しました。ウインディさんのかえんほうしゃの方が明らかに威力は上ですが、相性の差も加味し威力はほぼ互角、フィールド中央で互いの攻撃が相殺されました。

 

「今です!アクアテール!」

『リル!』

「っ!?ウインディ!ワイルドボルト!」

『グルァ!』

 

かえんほうしゃとバブルこうせんが相殺され発生した蒸気を振り払う勢いでアクアテールを上空からウインディ目掛けて振り下ろします。ミヅキさんは目を見開きながらもウインディさんにワイルドボルトの指示を出しました。

 

ウインディさんのワイルドボルトがマリルさんのアクアテールと激突します。互いの攻撃がぶつかりあい火花が散り、次第にマリルさんがウインディさんを押し返しました。

 

そして互いの攻撃がぶつかりあったまま、重力に引かれ地面へと激突しました。その衝撃で発生した煙で二人の姿が見えなくなり、私たちは緊張から喉を鳴らします。

 

次第に煙が晴れてきて姿が見えてきた頃、そこには衝撃の光景がありました。

 

『リルル……』

『ガウ……』

「ありゃりゃ、2人とも戦闘不能だね。」

 

そこには私のマリルさん、そしてミヅキさんのウインディさんが同時に戦闘不能になっていました。恐らくダメージ蓄積で言えばマリルさんの方が上でしたが、上空からの攻撃、それからほのおタイプに対するみずタイプの技という点で打ち勝ったのでしょう。

 

最もウインディさんの技はでんきタイプであったためマリルさんも体力が限界を訪れて戦闘不能となってしまいましたが、最初のいかくを考えると不利だとも言えるこの戦いにこの結果は充分すぎる成果と言えるでしょう。

 

「お疲れ様です、マリルさん。ゆっくり休んでください。」

「よく頑張ったね、ウインディ。ありがとう。」

 

私とミヅキさんはそれぞれ頑張ってくれたポケモンさんたちを労いモンスターボールへと戻しました。そしてミヅキさんは私の方へと視線を向け口を開きました。

 

「やるねリーリエ。いかくの事も考えると寧ろ私の方が有利だと思ったのに!」

「マリルさんが頑張ってくれたからです!」

「フェローチェとの戦いでも思ってたけど、まさかこんなに成長して戻ってくるなんて、私嬉しいよ!」

 

ミヅキさんは感傷に浸りながらそう呟きました。ですがその後『でも』と言い言葉を続けモンスターボールを手にしました。

 

「私もしまクイーンとしてのプライドもあるからね。そう簡単に勝たせるわけには行かないよ!ライチュウ!お願い!」

『ライラーイ!』

 

ミヅキさんの最後のポケモンさんはアローラの姿をしたライチュウさんでした。ミヅキさんにとって相棒であるアシレーヌさんに並ぶパートナーです。間違いなく油断できない相手です。

 

「でしたら私も行きます!フシギソウさん!お願いします!」

『ソウ!』

「フシギソウ?てっきりシロンを出すのかと思ったよ。」

「私にとってシロンの次のパートナーはフシギソウさんでした。この場には相応しいかと思います。」

「あはは、確かにね。でも遠慮はしないからね!」

「もちろんです!全力で行きます!」

『ライライ!』

『ソウソウ!』

 

その掛け声と同時にライチュウさんは自分の尻尾をサーフボードのように乗り空中を泳ぐように突進してきました。

 

アローラの姿をしたライチュウさんはでんきタイプだけでなくエスパータイプも所持しています。ロトム図鑑さん曰く、あれは自身のサイコパワーで浮いているのだそうです。

 

「ライチュウ!エレキボール!」

『ラーイ!』

 

ライチュウさんは自分の尻尾をバネにして高くジャンプし、そのまま尻尾に電気のエネルギーを溜め、球体のエネルギー弾を放ちました。

 

「フシギソウさん!エナジーボールです!」

『ソウッ!』

 

フシギソウさんはエレキボールに対しエナジーボールで正面から対抗しました。エレキボールと共にエナジーボールのエネルギーが爆発し互いの攻撃が相殺されました。

 

「アイアンテール!」

「つるのムチです!」

 

ライチュウさんがアイアンテールで煙を晴らしアイアンテールを振り下ろしてきました。私もよく利用する戦術であるためその行動を先読みし、つるのムチで受ける止める態勢に入っていました。

 

フシギソウさんはつるのムチを眼前でクロスさせ、ライチュウさんのアイアンテールを防ぎました。とは言え攻撃力ではあちらが上、このまま受け続けてしまえば間違いなく押し切られてしまいます。

 

「フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

フシギソウさんは私の考えが理解できたようで私の声に頷きました。するとすぐさま片方のつるのムチを一瞬だけ離し、即座にライチュウさんの頬を叩き振り払いました。

 

上手くライチュウさんを引き剥がすことに成功し先に優勢をとることができました。ですがミヅキさんのライチュウさんはそう簡単に優位を渡してくれる相手ではありませんでした。

 

「ライチュウ!そのまま10まんボルト!」

『ラッイィ!』

 

ライチュウさんは飛ばされた状態のまま10まんボルトを放ちました。まさかあの状態から10まんボルトを撃てるとは思わず、フシギソウさんは無防備な状態で10まんボルトの直撃を受けてしまいました。

 

「フシギソウさん!」

『っ!?ソウ!』

 

フシギソウさんはなんとか持ちこたえました。威力が高くともくさタイプのフシギソウさんにでんきタイプの10まんボルトは効果は薄いです。耐えることは難しくありません。

 

対するライチュウさんはというと、地面に接触して余計なダメージを負ってしまう前に再び尻尾をサーフボード代わりにして受け身をとり空中へと浮かび上がりました。これは一筋縄ではいきませんね。

 

「ライチュウ!サイコショック!」

『ライライ!』

 

今度はライチュウさんのサイコショックです。ライチュウさんの周りには具現化したサイコパワーが浮かんでおり、ライチュウさんの合図とともにフシギソウさんを襲ってきます。

 

どくタイプを持つフシギソウさんがこの攻撃を受けてしまえばさすがにマズいです。

 

「フシギソウさん!走ってください!」

『ソウ!』

 

フシギソウさんのスピードを活かして走ることでサイコショックをやり過ごそうとしました。しかしそこで私の予想を超える出来事が起きました。

 

「そう簡単に逃がさないよ!」

 

サイコショックが地面に当たると思った瞬間、サイコショックが地面スレスレで曲がりフシギソウさんを追尾してきたのです。

 

「っ!?そんなっ!」

『ソウ!?』

 

まさかの現象に私とフシギソウさんは驚き口を開きます。ライチュウさんの強いサイコパワーでサイコショックを自由自在に操っているようです。これは相当鍛えてなければできない芸当です。このままではいずれサイコショックに追いつかれやられてしまいます。

 

「今だよライチュウ!」

『ライラーイ!』

 

そんなフシギソウさんを追い込むようにライチュウさんは正面から突っ込んできて迎撃の態勢に入ります。

 

「10まんボルト!」

『ラァイ!』

 

ライチュウさんは正面から10まんボルトを放ちました。背後にはサイコショック、逃げ道はありません。

 

横に回避しようにも前方に走りながら横に移動するのは難しいです。これはいよいよピンチです。

 

(正面も背後もダメ、横に避けるのも難しい。どうすれば……)

 

私はこの一瞬の内に頭をフル回転させます。なにか必ず穴があるはずです。

 

(……っ!?いえ、これはピンチではなく、逆にチャンスかもしれません!試してみる価値はあると思います!)

 

そう思い私はある作戦を決行する決意をします。正直成功する確率は低いかもしれませんが、それでも私はフシギソウさんを信じています。

 

「フシギソウさん!」

『ソウッ!?……ソウ!』

 

フシギソウさんは最初は驚いた様子で私の声に答えましたが、私の顔を一瞬だけ振り返ると頷いて返してくれました。

 

「あの顔……ホントシンジ君そっくりだよね。一体この状況で何を見せてくれるのかな!?」

 

「フシギソウさん!つるのムチです!地面にぶつけてください!」

『ソウ!』

 

サイコショックと10まんボルトを十分に引き付け、フシギソウさんはサイドのつるのムチを地面に叩きつけました。それと同時にフシギソウさんの体が宙に浮きました。

 

そしてフシギソウさんの下で10まんボルトとサイコショックが激突しました。一瞬フシギソウさんもその攻撃に巻き込まれたかのように思えましたが、すぐにそうではないのだというのが分かりました。

 

「なっ!?そんな!?」

『ライッ!?』

 

その時、フシギソウさんは10まんボルトとサイコショックを間一髪で回避し、背後で衝突した技同士の衝撃で空高く飛び上がったのです。これが最大のチャンスとなりました。

 

「これで決めます!フシギソウさん!つるのムチです!」

『ソォウ!』

 

フシギソウさんは空中で更に回転を加えつるのムチをライチュウさんを上から叩きつけました。ライチュウさんは予想外の出来事に反応することができず、その攻撃を直撃してしまいました。

 

叩きつけられた衝撃は大きく、ライチュウさんとフシギソウさんの姿が見えなくなるほどのものでした。そしてその衝撃が晴れてくると……。

 

「っ!?ライチュウ!」

『らい……らい……』

 

そこには目を回し、戦闘不能となっているライチュウさんの姿がありました。その瞬間、私の最初の大試練は終わりを告げました。




なんか私はアイアンテールが好きなのかよく出てくる気がします。だっていろんなポケモンが覚えるからバトル組みやすくなるんだもん……。

実はウインディはカツラ戦でマリルと戦ってます。当時は負けていたのでこれは成長です(書いた後で思い出したとか口が裂けても言えない)

アンケートは1ヶ月分(4話ぐらい)続けて行おうかと思います。結果もその時公表するので気楽に投票してくだしあ。

そういえば本編だけで遂に100話を超えたぞ!やったね!たえちゃん!


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第二の島、アーカラ島上陸!

ポケモンホームが遂に解禁されたようです。私ももう少ししたら再開しようかなと思ってます。毒毒ブラッキーとかって送れるのかな?

今回は前回の続きと次週への伏線的な回なので短めです。

ん?バレンタインだって?なにそれおいしいの?あっ、ママンから貰ったチョコは美味しかったです。


「はぁ、負けちゃったー」

 

ミヅキさんが肩をガクッとして落ち込みます。その姿はしまクイーンと言うよりも一人のトレーナーとしての姿でした。

 

「まさかこんなにリーリエが強くなってたなんて思わなかったなぁ。でも楽しめたからいいや!」

 

ミヅキさんはそう言って明るい笑顔を見せて、ライチュウさんに『お疲れ様』と言葉をかけてモンスターボールへと戻しました。なんだかジム戦みたいで私も疲れました。

 

「はぁ、フシギソウさん、お疲れ様でした、ゆっくり休んでください。」

『ソウソウ』

 

私はその場でヘタッと力が抜け座り込みフシギソウさんをモンスターボールへと戻しました。本当にお疲れ様でした、フシギソウさん、マリルさんも。

 

私がポケモンさんたちに感謝していると、ミヅキさんがモンスターボールを懐にしまいこちらに歩み寄ってきました。

 

「リーリエもお疲れ様。楽しいバトルだったよ。ほら、立てる?」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

私はミヅキさんの差し伸ばしてくれた手をとり足に力を入れて立ち上がりました。バトルに集中していて忘れてしまっていましたが、私たちのバトルを見ていた村の方々から大きな拍手が送られてきました。今思えば恥ずかしいですが、リーグ戦の時みたいな気分になれてちょっと嬉しいです。

 

「お疲れ様ー、2人とも。いいバトルだったよー」

「ああ、リーリエのバトルも参考になったしな。いいバトルだった。」

「お二人とも、ありがとうございます。」

 

拍手して舞台の上に歩み寄ってくれるハウさんとヨウさんにもお礼を言いました。

 

「ほら、リーリエ。私に勝った証として、これを受け取ってよ。」

「え?これって……」

 

私はミヅキさんが差し出してきたものを受け取りました。そのキラキラと光る物を受け取ると、ミヅキさんがそれについて説明してくれました。

 

「かくとうZだよ。おじいちゃんが挑戦者に渡しなさいって言ってたんだ。ほら、私って他のしまキングとかキャプテンと違って色々なタイプのポケモン使うから。」

 

私はその言葉を聞きミヅキさんの差し出したZクリスタルを受け取りました。

 

「ありがとうございます!ミヅキさん!かくとうZ、ゲットです!」

 

こうして私は無事大試練を突破し、かくとうZをゲットすることができました。

 

「今度戦うときはアローラリーグでのリベンジかな?」

「アローラリーグ……」

「今年も当然開催されるからね。アローラ最強を決める祭典、そしてチャンピオンへの挑戦権をかけた戦いの舞台!そんな熱い舞台で私はリーリエにリベンジする!そのために、もっともっと強くなって見せるから!」

「っ!?はい!私ももっともっと強くなって見せます!」

「おっと、ミヅキだけじゃないぜ?俺もいるからな。」

「おれのことも忘れないでよー?」

 

そうです、シンジさんへの、チャンピオンへの挑戦を目指しているのは私だけじゃないんです。ミヅキさんにヨウさん、ハウさん、それからお兄様や島巡りに挑戦している全てのトレーナー、全員がアローラのトップを目指しているんです。私もうかうかしてはいられません!

 

「あっ、そうだ。リーリエ、この後どうするの?」

「え?この後、ですか?」

 

私が心の中でこれからの意気込みを掲げていると、ミヅキさんが急に私にこの後のことを尋ねてきました。メレメレ島の大試練も無事突破しましたし、その後やることと言えば……。

 

「えーと、やっぱり次の島であるアーカラ島でしょうか。一番近い島ですし……」

 

それにあの島にはバーネット博士の研究所やスイレンさん、マオさん、カキさんの試練、待ってることが山ほどありますから。

 

「だったらさ!みんなで一緒に行こうよ!アーカラ島に!」

「え?でもミヅキさんはしまクイーン……」

「大丈夫大丈夫!少しだけだからさ!それに、ククイ博士が面白いことやるらしいよ?」

「面白い事……ですか?」

「いいからほらほら!早く早く!」

「えっ!?ちょ、ちょっとミヅキさん!?」

 

「やれやれ、相変わらずだねーミヅキは」

「久しぶりにリーリエに会えて嬉しいんだろうな。まっ、俺たちも行こうぜ?」

「そうだねー」

 

私は再び半ば強引な形でミヅキさんに連れられ、リリィタウンを後にしました。強引ではありますが、それでもなんだか嫌な気分にはなりませんでした。

 

以前の私では味わうことの無かった経験。友達と一緒にこのようにして騒げるのは、なんだかとってもいい気分でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククイ博士ー!」

「ん?おお、来たね、ミヅキ、リーリエ。それからヨウにハウも一緒か。」

 

私がミヅキさんについて行くと、そこはハウオリシティの乗船場でした。そこにはククイ博士が待っており、ヨウさんとハウさんも私たちのすぐ後に到着しました。

 

「早速アーカラ島に向かうのか?」

「はい!お願いします!」

「よしきた!僕のヨットを用意してるから、早いところ乗ってくれ!」

 

そう言って博士の指を指した方角を見ると、そこには一艇のなヨットがありました。ですがそのヨットはお世辞にもいいものとは言えず、どちらかと言えば博士の研究所みたいと言いますか……。

 

「なんだかそのヨットボロボロだねー。ホントに大丈夫なのー?」

 

私たちが言いにくい事を平気と口にするハウさん。しかし当人の博士はと言うと。

 

「はっはっは、キツイ事言ってくれるじゃないかハウ。」

 

博士はハウさんの言葉を簡単に笑い飛ばし、自分のヨットをバンバンと叩きながら話しました。

 

「このヨットは僕の自慢のヨットさ。君たちの思っている以上に、ボスゴドラのアイアンヘッド並に丈夫なんだぜ?」

 

そう言って博士はヨットに乗り込みました。博士があれだけ自信満々に言うのであれば心配ないと思います。

 

普段は少しあれな部分もありますが、それでも博士の言葉はいつも信頼できるに値するものだと思っています。ヨットの事も心配する必要はないでしょう。

 

私たちは博士の言葉を信じ、全員でヨットに乗り込みました。大分ふらつきはしますが、それでもヨットは倒れることなく安定しました。これだけの人数を乗せても転倒しないのは、博士の言葉に嘘偽りのない証拠ですね。

 

「じゃあ出発するからしっかり掴まってるんだぞ?」

 

博士のその合図とともに出発しました。見た目とは裏腹に安定した状態で結構なスピードを出すことができています。

 

「あー!キャモメだー!」

「おっ、こっちにはメノクラゲもいるぞ!」

「タマンタさんもいますね!」

「トサキントにアズマオウも!」

 

まるで遊泳するかのように水ポケモンさんたちが私たちの周りに次々と姿を現していきます。このルートはよく船が通るからかこの辺りのポケモンさんたちは人慣れしているみたいですね。

 

気付けばこの辺一帯は水ポケモンたちで溢れていました。これだけの種類のポケモンさんたちがみれれば時間の流れもあっという間な気がします。

 

「おっ、見えてきたぞ!次の君たちの目的地であるアーカラ島だ!」

 

いつの間にかかなりの時間が流れていたようで、気が付けばすでにアーカラ島の姿がはっきりと見えてきました。私たちは荷物を持ちアーカラ島に上陸する準備をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!アーカラ島到着だ!」

 

ククイ博士のお陰で無事アーカラ島へ到着した私たちをそれぞれ荷物を持ち、アーカラ島へと足を踏み入れました。

 

「よっと」

「おい、それってヨットと掛け声をかけてるのか?」

「せいかーい!」

 

ハウさんの行動に『はぁ~』と呆れ気味に息を吐くヨウさん。私はただただ苦い笑い声を出すしかありませんでした。

 

「そう言えばみんなは明日のキャンプに参加するのかい?」

「キャンプ?」

 

ククイ博士の口にしたキャンプと言う単語に疑問を抱き私は博士に何のことかわからず聞き返していました。するとその質問に先に答えたのはククイ博士ではなくミヅキさんでした。

 

「さっきもいったでしょ?ククイ博士が面白い事をやるって。」

「ああ、島巡りを始めたばかりで右も左も分からないトレーナーや、強くなりたいと思うトレーナーもいる。そんなトレーナーたちのためにこのカンタイシティでキャンプを開くって訳さ。キャンプを通じてトレーナー同士交流を深めたり、情報の交換、知らないポケモンと関わることもできるし、一石何鳥ってことだ。まあ簡単に言えば、一時的なポケモンスクールだと思って貰えればいいかな。」

 

そう言えば先ほどミヅキさんがククイ博士が面白いことをやると口にしていましたね。面白いことってこのキャンプのことだったんですね。

 

でもこれは自分自身を成長させるチャンスでもあります。まだ私はZ技のこともよく理解できていません。できれば私も参加したいところです。

 

「あの、それって私も参加できますか?」

「もちろんだ!トレーナーだったら誰だって歓迎さ!」

「じゃあ私、参加してみたいです!」

「俺も参加します!」

「おれも参加するよー」

「よし、全員決まりだな!」

 

こうして後日開催されるククイ博士主催のキャンプ参加することに決定しました。

 

「ん~!私はしまクイーンの仕事あるからねー。折角だしブティック寄ってから帰ろうかなー。あっ、リーリエも折角だしどう?今日は女の子同士で楽しもうよ!」

「あっ……はい!是非!」

 

こうして私は今日の最後をミヅキさんと一緒にお買い物をして楽しむことにしました。今日は試練続きやミヅキさんとのお買い物で疲れました。

 

ですが明日からはククイ博士のキャンプが待っています。スケジュール的にはハードになりそうですが、その分ワクワクしている自分がいます。このキャンプで自分自身を成長させて、アローラリーグへと近付いて見せます!

 

がんばリーリエです!私!




今更感ありますがなんとなくポケモン的な同人ゲーの幻想人形演舞-ユメノカケラ-のフランちゃん戦を投稿しました。本家もあれだけCPUの難易度上げてもいいのよ?


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開催!ポケモンZキャンプ!

ダブルバトル用ブイズの厳選で先週は投稿できませんでした。
私の優先順位はブイズ>>>>>超えられない壁>>>>>>>>>>>その他

アニポケDP、XYにやっていたポケモンサマーキャンプとは違いポイントの競い合いとかはないです。


メレメレ島にてミヅキさんの大試練を乗り越えた私、そしてヨウさんとハウさんの3人。その後、次に挑戦するアーカラ島に上陸いたしました。

 

私たちが最初に立ち寄ることとなったのはアーカラ島の首都ともいえるカンタイシティです。ここには私が長くお世話になったバーネット博士の職場でもある空間研究所があります。

 

そしてその翌日、このカンタイシティにてククイ博士主催のキャンプが開催されることとなりました。ククイ博士曰く、このキャンプはトレーナーとしての基礎を学ぶために通う学校、ポケモンスクールのようなものだそうです。

 

私もそれに参加することが許され、私を含むヨウさんとハウさんも同時に参加することとなりました。ミヅキさんはしまクイーンとしての仕事が忙しいそうで、先日中にメレメレ島に帰ってしまいました。少し残念に思いましたが、ミヅキさんの大切なお仕事でもあるため仕方ありません。

 

そして今日、ククイ博士主催のキャンプ当日。私を含む参加者の皆さんがカンタイビーチに集まり、キャンプの開始を今か今かと待ち望んでいる最中でした。

 

参加者の皆さんはキャンプの開始まで時間があったため思い思いの会話をしていました。多くの参加者はトレーナーになって日も浅い様子でした。

 

暫くするとククイ博士の準備が整い、全員の視界に入りやすいように用意されていた台の上に乗り参加者の方々を見渡しました。

 

「アローラ!トレーナーの諸君!本日は僕の開催するキャンプ、通称ポケモンZキャンプに参加してくれてありがとう!」

 

ポケモンZキャンプ、それがこのキャンプの名前みたいです。恐らくこのZは、Z技からとってきた名前なのでしょう。

 

「このポケモンZキャンプは、トレーナとしてみんなに成長してほしいという願いから開催するものだ。トレーナーズスクールに近いものだが、ここではそれ以上の応用も学んでいってもらいたい。」

 

この場にいる全員がククイ博士の言葉に頷き静かにククイ博士の言葉に耳を傾けています。

 

「このポケモンZキャンプで学ぶことは、将来必ず役に立つと僕が保証しよう!」

 

ククイ博士は再度参加者の皆さんを見渡し、ひと呼吸おいてから『さて』と口にし、言葉を続けました。

 

「今日はポケモンZキャンプの1日目だ。まずは君たちのトレーナーとしての腕前を見せて貰いたいと思っている。」

 

その時、参加者の一人が手をあげて質問をしました。ククイ博士は『しんそくの様に勢いがあっていいねぇ』と評価してその参加者さんの名前を口にして当てました。

 

「それって誰かとポケモンバトルをするってことですか?」

「ははっ、確かにポケモンバトルはトレーナーとしての力量を測るのには打ってつけかもしれない。だけど、トレーナーにとってはそれが全てではないんだよ。」

 

ククイ博士の言葉に全員が首を傾げました。ポケモンバトル=トレーナーの実力と言うのは多くのトレーナーが心の中で自然と結び付けるものでしょうから仕方がありません。実際、私もそれが一番の最適なのかもしれないと思い始めてしまっているのも事実ですから。

 

「バーネット、あれをこっちに持ってきてくれ。」

「了解、ククイ君。」

 

ククイ博士の言葉に反応しバーネット博士と同じ空間研究所で働いている研究者たちがモンスターボールのいっぱい詰まった段ボール箱を持ってきました。どうやらカンタイシティという事もあってか、バーネット博士たちがククイ博士のアシスタントを行っているようです。

 

「このモンスターボールにはそれぞれ様々なポケモンたちが入っている。だがモンスターボールから出してみるまでなんのポケモンが入っているかは分からない。キミたちにはこの数日間、自分の選んだモンスターボールから出たポケモンと過ごしてもらう。当然だが、モンスターボールを開けてからのポケモンの入れ替えは基本禁止だ。」

 

ククイ博士がそう言い切ると、皆さんそれぞれ待ちきれないのか一斉に動き出しモンスターボールを段ボール箱から取り出し始めました。

 

ククイ博士の言った通り、モンスターボールから出てきたポケモンさんたちは様々でした。アローラの姿をしたコラッタさんやニャースさんを始め、見かけることの多いポケモンさんから珍しいポケモンさんまで、多種多様と言った感じでした。

 

「んじゃ、俺はこれにするかな。」

「それじゃあおれはこれー」

 

そう言ってヨウさんとハウさんもモンスターボールを手に取り、空に向かって投げました。すると、ヨウさんのモンスターボールからはピチューさんが、ハウさんのモンスターボールからはイワンコさんが登場しました。

 

「へぇ、ピチューか。俺はヨウ、これから少しの間よろしくな。」

『ピチュ!?ピチュピチュ』

 

ヨウさんは辺りを不思議そうにキョロキョロと見渡しているピチューさんに自己紹介をしました。ですがピチューさんはヨウさんの声に驚いたのか、すぐに距離を置いて物陰に隠れてしまいました。

 

「あ、あれ?」

「ピチューとその進化形のピカチュウは人見知りなことで有名だからな。仲良くなるまで時間かかるかもしれないよ。」

 

ククイ博士がヨウさんに近づきピチューさんの説明をしました。これは間違いなくトレーナーとしての力量が試される、というやつですね。

 

「そうか。だったら仲良くなって見せますよ!」

 

そう言ってヨウさんはギュッと拳を握り締めました。ポケモントレーナーとしての闘志に火が付いたのでしょうか。

 

一方、ハウさんの方はというと……

 

「イワンコかー、おれはハウ!よろしくねー!」

『……ワンッ』

 

ハウさんがヨウさんの様に自己紹介をすると、イワンコさんは小さく吠えてソッポを向きました。『どうしたのー?』と問いかけながらハウさんが手を差し出すと、イワンコさんはハウさんの手にガブッと噛み付きました。

 

「っ!?いったー!」

「ははは、このイワンコは気性が荒くてね。あまり人に懐かないんだよ。だけどそう言ったポケモンと触れ合うこともトレーナーとして必要な経験だよ。」

「へへへ、寧ろその方がおれとしてもやりがいがあるよー。」

 

ハウさんはイワンコさんに噛み付かれ涙目になりながらもそう意気込みを口にしました。

 

「リーリエもそろそろポケモンを選んだらどうだ?」

「あっ、そうですね。そうします。」

 

他のトレーナーの様子を見ているばかりで肝心の自分のポケモンさんを選ぶことを忘れていました。私もポケモンさんを選ぶために段ボール箱の前まで歩み寄りました。

 

『リーリエはどのポケモンを選ぶロ?』

「そうですねー。」

 

とは言えモンスターボールの中にはどんなポケモンさんが入っているかは開けてみるまで分かりません。ここは一つ、目を瞑ってっ!

 

「……えいっ!」

 

目を開けていては選ぶのに悩んでしまうと感じた私は目を瞑り文字通りランダムにモンスターボールを選択し、中から出てきたのは……。

 

『ボーダァ!!』

「……え?」

 

私は思わず絶句してしまい言葉を失ってしまいました。中から出てきたのは背中に生えた大きな赤く煌めく翼、太く立派な四肢、4本の牙、そして獲物を見るような鋭い目つき。紛れもなくそのポケモンさんは……。

 

「ほぉ、まさかボーマンダを引き当てるとは思わなかったよ。」

 

そう、そのポケモンさんはボーマンダさんでした。空を飛びたいと願い続けたタツベイさんが最後の進化を遂げ、願いの叶った姿です。

 

ですがそのボーマンダさんは私ですら知っているほど扱いの難しいポケモンさんです。ボーマンダさんは本来人前に姿を現すことはないそうですが、自分の縄張りに侵入した者には容赦なく攻撃を仕掛ける程の気性の荒さを持っていると聞いたことがあります。

 

その上ドラゴンタイプであることもあり使いこなすのは至難の業だそうです。

 

「えっと、私はリーリエです。よろしくお願いします、ボーマンダさん。」

『……ボォダァ!』

「ひゃっ!?」

 

ボーマンダさんは歩み寄る私に容赦なくかえんほうしゃを放ってきました。私は間一髪避けることに成功しましたが、その威力がかなりのものだというのはかえんほうしゃが直撃した砂場が物語っています。

 

ハウさんのパートナーとなったイワンコさんは最大限の警戒態勢に入り、ヨウさんのピチューさんはさっき以上の恐怖で怯えて震えています。

 

『……ボォ』

 

ボーマンダさんは興味がなさそうにソッポを向き、その場に蹲り眼を瞑り眠ってしまいました。しかし皆さんが怯える中、私はそのボーマンダさんの表情がどこか悲しげに見えてしまいました。

 

「ボーマンダさん……」

「原則ではポケモンの入れ替えは出来ないが、流石にボーマンダは手に余ってしまうだろうな。今回は特別に変えてもいいが、どうする?リーリエ。」

「……いえ、このままでいいです。」

「本当にいいのかい?」

「はい、もちろんです。」

 

私はククイ博士の言葉に肯定の言葉で答えました。

 

「全く、本当に君たちは似てるよ。」

「えっ?」

「いや、なんでもない。ただしやると決めたからにはしっかりと頼むよ?」

「はい!」

 

気難しい性格のボーマンダさんと仲良くなるのは難しいでしょうが、先ほどのボーマンダさんを見ると何か事情があるように思えてなりません。寧ろ、よりあなたの事を知りたくなってきました。

 

「これもポケモントレーナーとしての性、ですかね?シンジさん。」

「……?シンジ、さん?」

 

そう呟いた金髪で髪が肩よりも長く、ブレザー服、と言うのでしょうか?それを着た少々釣り目の女の子が私に歩み寄ってきました。

 

「あなた、私のシンジ様に馴れ馴れしすぎではなくて?」

「えっ?あの、あなたは?」

 

その女性は長い髪を右手で掻き流し再びこちらを向き自分の名を口にしました。

 

「私の名前はナタリア。そしてこの子が私に選ばれた美しきパートナー!」

『ミロォ!』

 

ナタリアさんと名乗った彼女は手に持ったモンスターボールを投げました。すると中からは現れたのは世界で最も美しいと呼ばれているポケモンさん、ミロカロスさんでした。私も本物は初めて見ましたが、ミロカロスさんの潤った鱗が太陽の光で反射され、よりミロカロスさんを美しく見せていました。

 

「どう?私にぴったりのパートナーだと思わない?」

「あっ、えっ……」

 

確かにミロカロスさんは美しく、ナタリアさんもスタイルが良く髪の手入れも行き届いているためお似合いには思えます。とは言え私としては初対面であるため言葉に戸惑ってしまいました。

 

それより私には少し気になったことがあったので、そのことをナタリアさんに尋ねてみました。

 

「えっと、先ほどのシンジ“様”と言うのは……」

「もちろん、アローラ初代チャンピオンのシンジ様に決まってるじゃない。ポケモンの魅力を最大限引き出し、勇ましくも美しく勝利を飾る姿。私はシンジ様のバトルに感銘を受けたの!」

 

ナタリアさんはシンジさんの事をそう熱く語りました。まあ私もシンジさんのバトルには無駄がなく素晴らしいものだとは思っていますが、ここまで熱く語られると反応に困ります。

 

「そう、私の夢はいずれシンジ様の隣に立ち、2人でタッグバトルの頂点を極めること!その第一歩を刻むために私はこのキャンプに参加したのよ!」

「は、はぁ……」

「……ところであなた」

「な、なんでしょう?」

 

戸惑っている私にナタリアさんは横目でチラリと凝視しながらズイズイと寄ってきて口を開きました。

 

「さっきも言ったけど、少しシンジ様に対する呼び方が馴れ馴れしすぎるのではなくて?」

「えっ?そ、そうでしょうか?」

「まるで彼女にでもなった気分じゃなかったかしら?」

「えっ!?」

 

全くそんなつもりではなかったんですけど、第三者からはそう見られていたんでしょうか。

 

「……まぁそんなわけないわよね。だってシンジ様が貴女なんかに引かれるわけないでしょうし。」

「っ!?それはどういう意味ですか?」

「だってそうでしょう?第一、あなたのパートナーになったボーマンダ、言うこと聞かないみたいだし、トレーナーとしてまだまだってことの証明よ。」

「まだ出会ったばかりなので仕方のないことですよ。まだ時間はあります。その中でお互いに分かりあって近づけばいいんです。」

「へぇ~、言うじゃないの。ま、私の敵ではないけどね。」

 

なんだかナタリアさんの言い方にムッと来た私は気付けばそう反論していました。この人には絶対に負けられない、そんな感情が私の中にどんどん溢れてきたんです。

 

「リーリエなんかこわいよー」

「いいねぇ、まるでニトロチャージの様に燃え上がってきたねぇ~」

「い、いいんですか?これ……」

 

目と目で火花をバチバチと鳴らす私たちの間にククイ博士が割って入ってきてこう口を開きました。

 

「その熱い思いはこの課題の最終日にぶつけ合ったらどうだ?」

『最終日に?』

「ああ、最終日にはキミたちにどれだけパートナーの事を理解できたかを知るためにポケモンバトルをしてもらう。どうだい?」

「いいわね、その時に私の実力差を見せつけてあげるわ。」

「私は絶対に負けませんから。絶対に勝って見せます!」

 

そうして私はこのキャンプに参加しているナタリアさんと約束を交わし、ライバルとして競い合う事となりました。ですがそれ以上に、この人に負けられないと感じました。

 

トレーナーとして、と言うよりもこの気持ちは女としてなのかもしれません。必ずボーマンダさんと和解して勝利してみせます!




今回出たオリキャラは恐らく今回だけです。キャンプを盛り上げるためのライバルキャラを仕立て上げたかっただけですので。

そしてまさかのボーマンダ様!みんなのトラウマでもあるメガシンカはしないのでご安心を。

にしてもダブルバトル結構楽しいですね。ダブルバトル用に色々作ってみましたが、スパボ級から負けが込んできたのでシングルバトルで使っている一部のブイズを組み込んでみました。割とそっちの方がやりやすかったりしたのであまり手の込んだ構成にしない方がいいかも。

因みに現在のダブルバトル戦績は21勝10敗です。20戦までは17勝3敗と調子よかったんですけどね……。個人的にダブルバトルでは弱保リーフィアがオススメです。後はランクマでつばめがえし、はたきおとすが解禁されれば言う事なしなんですけど。

今やってるアンケートの結果は次回発表いたします。


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リーリエとボーマンダ!

タイトル通り、全く思いつかなかったので許してください。

バトル回は次回となります。

何故リーリエのパートナーをボーマンダにしたのかの経緯はと言いますと、最初はベトベターとかみたいな嫌われそうな毒タイプにしようと思ったのですが、それだとDPのヒカリと被ってしまうのでやめました。

他だと難しそうなのはと言えば凶暴なポケモンですが、ギャラドスは水ポケモンなので描写が難しいと考えたので、その他で強い、怖い、凶暴の三拍子が揃ったポケモンはと言えばボーマンダが閃いたのでボーマンダ様にしました。おや?向こうから破壊光線がムワアアアァァ!!


ククイ博士主催のポケモンZキャンプに参加した私、リーリエとヨウさん、ハウさん。初日の課題はランダムで選ばれたポケモンさんと仲良くなるという一見簡単なものでした。

 

ヨウさんのパートナーは人見知りで怖がりのピチューさん、ハウさんのパートナーは気難しくて警戒心の高いイワンコさんでした。

 

私も皆さんに続いてポケモンさんを選ばなければ、と思ったのも束の間、選んだモンスターボールから出てきたポケモンさんはあの凶暴なことで有名なボーマンダさんでした。

 

ボーマンダさんは噂に聞いた通りの凶暴さで近付いた私を突然攻撃してきました。ヨウさんのピチューさんも怯え、ハウさんのイワンコさんは警戒した様子でボーマンダさんを見ていました。しかしボーマンダさんはソッポを向き、そのまま眠ってしまいました。

 

興味のなさそうに眠ってしまったボーマンダさんですが、そんな彼の表情には何か理由があるように感じました。ククイ博士の好意でポケモン変更の許可が出ましたが、私はそれを拒否しボーマンダさんと共に今回の課題に挑戦することにしました。

 

そんな時、一人の女性が姿を現し私に声を掛けてきました。その女性の名はナタリアさん。パートナーとなったミロカロスさんと共に自信満々な様子でした。

 

ナタリアさんはシンジさんの事をシンジ様と呼び強く慕っているようでした。しかしその口調はまるでシンジさんの事を何でも知っている、と言っているように聞こえ、私に対してもシンジさんには似合わないと言って来ました。

 

私としてもシンジさんと釣り合いがとれるなどとは思っていませんが、その言葉は私だけでなくシンジさんのことも甘く見ているように聞こえました。

 

私はそれを見逃すことができず、彼女の挑戦に乗りこのキャンプで勝負をつけると約束してしまいました。

 

なんだか挑発に乗ったみたいで情けないですが、それでも私は初めてできた自分のプライドに近いもののために彼女と勝負することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンZキャンプが始まってから早くも一日が経過しました。ナタリアさんとの勝負の約束をした私ですが、一つ困ったことがあります。

 

「リーリエ、まだボーマンダは言うこと聞いてくれないのか?」

「は、はい……」

 

あれから一日経ちましたが、ボーマンダさんは一向に言うことを聞いてくれる気配がありません。何度か話しかけたり、ボーマンダさん自身の事を質問してみたり、私のポケモンさんたちとも会話させてみたりしてみましたが、殆ど反応を示すことはありませんでした。

 

一瞬だけこちらをちらりと見た瞬間がありましたが、それはあくまで一瞬でありすぐに再び眠ってしまいました。思った以上に苦戦しています。

 

「おれはもうイワンコと仲良くなったよー」

「噛みつかれながら言っても説得力無いんだが」

「ははは……」

 

笑顔でそういうハウさんですが、ハウさんの腕にはイワンコさんが険しい顔で噛みついて離れない姿がありました。お世辞にも仲良くなっているとは思えず、私はただ苦笑いをするしかありませんでした。

 

一方ヨウさんは本人曰く、「まだ距離はあるが初日に比べたらマシだと思う」と言っていました。私に比べてヨウさんはピチューさんとの距離を縮めるのも時間の問題みたいですね。

 

「課題が始まったばかりとはいえあまり悠長にしている時間もないしな」

「そう、ですね……」

 

課題の二日目ですが、勝負するのはその5日目、つまり後4日後になります。残り3日でボーマンダさんとの関係をどうにか進展させなければなりません。

 

「今ボーマンダはどうしてるんだ?」

「動いてくれそうにないのでモンスターボールに入ってもらってます。モンスターボールに入ることには抵抗がないようなので。」

「そうか」

「じゃあさ、ボーマンダを散歩に連れて行くのはー?」

「いや、連れて行こうにも自分から動かなけりゃ意味がないだろ。」

「それもそうかー」

 

ハウさんが一つの案を出してくれましたが残念ながら却下されてしまいました。ボーマンダさんはボールから出してもすぐにその場で寝てしまうため連れ歩くことができません。結局振出しに戻ってしまいます。

 

「ロトム図鑑さん、なにかいいアイデアはないでしょうか?」

『いいアイデアロか?』

 

ロトム図鑑さんは悩む素振りを見せながら考えてくれました。暫くすると、アンテナが『ピコンッ』と立ち何か閃いたのか語り始めてくれました。

 

『だったらご飯をあげればいいロ!』

「ご飯、ですか?」

『そうロ!ポケモンフーズに興味を示さないポケモンはいないロ!』

 

『ボクは図鑑だから食べないけロ』と最後に呟いたロトム図鑑さんでしたが、確かにその案はいいかもしれません。

 

まだまだ新米ですが、私もシンジさんからポケモンフーズの作り方は教わっているので少し自信があります。少なくとも自分のポケモンさんたちは喜んで食べてくれました。

 

「では早速試してみます!」

 

私はロトム図鑑さんのアイデアに乗り、ボーマンダさんにポケモンフーズを与えることにしました。ヨウさん、ハウさんと共にキャンプ用のコテージからすぐに外に出て、ボーマンダさんをモンスターボールから出しました。

 

「出てきてください!ボーマンダさん!」

『ボダァ!』

 

ボーマンダさんは大きく咆哮したのち、以前と同じように地面に着地するとそのまま眼を瞑り寝てしまいました。

 

「リーリエがんばれー!」

 

(いまだに腕を噛まれている)ハウさんの応援を受け、私はボーマンダさんにゆっくりと歩み寄りました。

 

ボーマンダさんはチラリと目を開けこちらに興味を示した様子でしたが、それでもすぐに目を閉じて同じ態勢に戻りました。私は溜息を吐くように軽く深呼吸して、ボーマンダさんにポケモンフーズを差し出しました。するともう一度目を開け、興味を示してくれます。

 

「ボーマンダさん、私の作ったポケモンフーズです。食べてみませんか?」

『……』

 

ボーマンダさんはポケモンフーズの匂いを軽く嗅ぎますが、お気に召さなかったのかまた目を閉じて寝る態勢へと入ってしまいました。

 

「これでもダメですか……」

 

以前ハクリューさんのために作ったドラゴンポケモン用のポケモンフーズだったのですが、ボーマンダさんは気に入らなかったようです。ハクリューさんは美味しそうに食べてくれたのでいけると思ったのですが。

 

「気に入らなかったのか?」

「どうなんでしょうか。興味はあると思うのですが……。」

 

ポケモンさんは自分に興味を示した食べ物は先ず匂いを確認する、とシンジさんに教わりました。最初に見た目で気に入れなければ全くの興味を示さないそうです。

 

「美味しくないと思ったのかなー?」

「食べてもいないからそれはないと思うが……」

 

ハウさんとヨウさんも何故ボーマンダさんが食べてくれなかったのか原因を考えてくれます。こんな時シンジさんがいてくれたら分かるかもしれませんが……。

 

……いえ、こんなことではだめです!ポケモンさんの気持ちが分からなければシンジさんの背中どころか、立派なポケモントレーナーにすらなれません。自分で解決策を見出さなければ!

 

私は以前シンジさんに教えていただいた言葉を色々と思い返してみます。その中にボーマンダさんの気持ちを知るヒントがあるかもしれません。

 

……そう言えばシンジさんは、ニンフィアさんやイーブイさんと出会った頃の話を聞かせてくれました。

 

あの二匹は過去に受けた傷が原因でそれを救ってくれたシンジさんと仲良くなったそうです。もしかしたらボーマンダさんも過去に受けた傷が原因でこの様な状態になってしまったのかもしれません。そうであれば私が昨日感じたボーマンダさんの表情に対する違和感も納得がいきます。

 

でしたらここはあなたに少しお願いしてみます。

 

「マリルさん!お願いします!」

『リルル!』

 

私はマリルさんを出してみました。マリルさんは過去にトレーナーさんに捨てられてしまったところを私に拾われて仲間になりました。もしかしたらボーマンダさんの事が何かわかるかもしれません。

 

「マリルを出してどうするつもりだ?」

「少し話をしてもらおうと思います。なにかボーマンダさんの事が分かるかもしれませんから。」

 

私はマリルさんに目線にあうように屈み、マリルさんにお願いしてみました。

 

「マリルさん、ボーマンダさんと話をしてみてくれませんか?」

『リル?』

「もしかしたらボーマンダさん、何か以前に辛いことがあったのかもしれません。お願いできませんか?」

『リル!』

 

私がマリルさんにお願いして見ると、マリルさんは強く頷いて承諾してくれました。マリルさんはボーマンダさんに歩み寄ると、ボーマンダさんに話しかけました。

 

『リル!リルル!』

『マンダァ?』

『リルル!ルリ、リルルリ!』

『……ダァ!』

『リル!?』

「マリルさんっ!」

 

マリルさんはボーマンダさんに話しかけて聞き出そうとしますが、ボーマンダさんは力を溜め込みかえんほうしゃでマリルさんを攻撃しようとします。私は咄嗟にマリルさんを守るために、抱えてボーマンダさんの元を離れました。

 

ボーマンダさんの攻撃はマリルさんに当たることなく、地面に直撃して被害なく終わりました。

 

「マリルさん、大丈夫でしたか?」

『リルルルル……』

「ごめんなさい、マリルさん。怖かったですよね?ゆっくり休んでいてください。」

 

私の腕の中でブルブルと小さく震えて怯えるマリルさんに、私は謝りながらモンスターボールへと戻しました。マリルさんには本当に悪いことをしてしまいましたね。

 

『……ボダァ』

「?ボーマンダさん……」

 

またボーマンダさんは眠りの態勢に入りました。しかしその時の表情は昨日私が感じた時と同じ表情をしていました。

 

私は昨日のその時のことを思い返します。確かあの時もボーマンダさんはかえんほうしゃで私に攻撃をして、その時周りは警戒態勢に入っていたイワンコさんと、ボーマンダさんに怯えていたピチューさん……。

 

「……あっ!?」

 

もしかしたらと思い私は思わず声をあげました。しかしボーマンダさんが殆どの事に興味を示さないのは、これくらいしか理由が考え付きません。

 

「リーリエ、今ボーマンダに近付くと……」

「大丈夫です、私に任せてください。」

「いや、でも……」

『リーリエは一度言い出したら誰かさんと同じで聞かないロ。』

「まあいざとなったらおれたちが助ければ大丈夫だよー」

「……あ、ああ、そうだな」

 

ヨウさんはロトム図鑑さんとハウさんの説得に渋々と言った様子で納得してくれたようです。ヨウさんには心配をかけて申し訳ありませんが、ここはボーマンダさんのパートナーとしてなんとかしてあげたいんです。私の我儘ですいませんが、ここは譲ることはできません。

 

「ボーマンダさん」

『…………』

 

ボーマンダさんはまたチラリと目を開け私の事を見てきました。迫力はありますが、私は怯むことなくボーマンダさんに語り掛けました。

 

「ボーマンダさん、もしかして皆さんが怯えているのが嫌、なんですか?」

『ッ!?…………』

 

ボーマンダさんは一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに普段の顔に戻り、顔だけ起こして私を上から見下ろしてきました。

 

「もしそうなのでしたら、大丈夫ですよ、私はあなたの事を怯えたりしません。」

『…………』

 

ボーマンダさんは私の言葉を聞くと、その後に口を大きく開き攻撃の態勢に入りました。その攻撃は先ほどと同様にかえんほうしゃでした。直撃してしまったら一溜りもないでしょう。

 

「リーリエッ!」

「大丈夫です!大丈夫ですから。」

「り、リーリエ……。」

 

私は慌てて助けようと大声を出すヨウさんにそう呼びかけてストップをかけました。

 

力を溜め終えたボーマンダさんがかえんほうしゃのエネルギーを解放しました。そのかえんほうしゃは私の姿を包み込み飲み込む…………はずでした。

 

かえんほうしゃは私の横を通り過ぎ、そのまま背後の海に着弾しました。誰にも当たることなく、その攻撃による被害はゼロでした。

 

「……ボーマンダさん」

 

ボーマンダさんが私の気持ちを理解してくれたのかもしれないと判断し、再びポケモンフーズを手渡してみます。するとボーマンダさんは先ほどと同様に匂いを嗅ぎ始め、確認をとりました。

 

私はドキドキしながらボーマンダさんの動きを待ちます。そしてボーマンダさんは遂に、私の差し出したポケモンフーズを口にしてくれました。その後、ボーマンダさんは私の渡したポケモンフーズを全部食してくれました。

 

『……ボォダァ』

「ボーマンダさん」

 

私の渡したポケモンフーズを食べてくれたボーマンダさんは、またいつものように眠りについてしまいました。ですがボーマンダさんがポケモンフーズを全部食べてくれた、それだけでも大きく進展したように感じる事ができました。

 

「リーリエ!大丈夫だったか?」

「はい、なんとか。ボーマンダさんもポケモンフーズ食べてくれましたし。」

「いやー、ひやひやしたねー」

「全くだ。にしても一体何が原因だったんだ。」

 

私はボーマンダさんの心の中に秘めていたであろう感情をヨウさんとハウさんに説明しました。

 

ボーマンダさんは恐らく、自分の強すぎる力を怯えられるのが気に入らなかったのでしょう。

 

ドラゴンポケモンさんは成長が遅く、その分進化した後の成長はすさまじく大きいのだそうです。なので夢にまで見た翼を手に入れたが、その後の強大な力に周りのポケモンたちが怯えてしまったことにショックを受けて心を閉ざしてしまったものだと思います。

 

「それにしてもよく分かったな、そんなこと。」

「以前はピチューさんが、今回はマリルさんが怯えた時に違和感を感じたのでそうなのではないかと思っただけですよ。」

「直感ってやつか?」

「リーリエはポケモントレーナーとしての才能があるのかもねー!」

『それは言えてるロ』

「そう、なのでしょうか?」

 

イマイチ私自身ではそのような実感はありません。ただボーマンダさんの気持ちを理解したいがために必死だっただけですので……。

 

それはともかくとして、相変わらずではありますがなんとかボーマンダさんと少しだけでも距離が近付けたのではないかと思う事ができたのは今日の大きな進展です。時間は有限とは言えまだ猶予はあるので、この調子で少しでもボーマンダさんと距離が縮められればと思います。

 

それにしてもマリルさんには悪いことをしてしまいました。後でお詫びも含めてポケモンフーズをあげることにします。




リーリエはサトシやシンジみたいに主人公特有の直感タイプが少なからずあるということでどうかご了承いただきたく

シーズン3は無事にシングル、ダブル両方マスターに行けました。個人的にはマスターにさえ行ければ後は何でもいい程度でやってます。

そして明日は遂にポケダンDX発売日ですぞ!私的に一番楽しみにしていたので今からワクワクしています。ワクワクを思い出すんだ

最後にアンケート結果の発表となります。

やっぱりあのポケモン、が18票により選ばれました!これはつまり公表していないがあのポケモンと言ったらあれだろ、と読者には伝わっていると解釈してよろしいので?

因みにべベノム(アーゴヨン)は3票、ヌシにお任せは5票という結果になりました。投票してくれた方々、ありがとうございました!また機会があればアンケートするかもしれませんが、その時もよろしくお願いします!


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ピカチュウがいっぱい!?ピカチュウの谷!

ポケダンはグレートマスターランクまで行って満足したので今はイーブイの厳選に勤しんでおります。明日からは三連休……つまりイーブイの色違い厳選の時間じゃ!















次回はバトル回と言ったな?あれは嘘だ。(気が付けばこんな話になっていました)


他者に全く興味を示すことのなかったボーマンダと少し近づくことのできたリーリエ。今日はもう一人のパートナーの状況を見てみよう。

 

「ピチュー!でんきショック!」

『ピチュッ!?ピチュピチュ』

 

ヨウがパートナーであるピチューに、自分のポケモンであるニャヒートに攻撃の指示を出す。しかしピチューは攻撃することなく怯えてしまい、近くの物陰に隠れてしまった。

 

「うーん、やっぱりダメか……。」

『ニャット』

 

出会ったときに比べて距離を縮めることはできたと自負しているヨウだが、臆病なピチューは攻撃の指示を一切聞いてくれずにすぐ逃げ出してしまうのだ。

 

「最終日はバトルの日だからなぁ。何とかしてバトルができるところまでもっていかないといけないんだが……。」

 

ヨウの言う通り、この課題の最終日には参加者同士でバトルをしなければならない。それはトレーナーとしてポケモンとどれだけ仲良くなったかを知るには、バトルが最も分かりやすいという単純明快な理由からだ。

 

もちろん、このバトルは強制参加ではない。中にはバトルすることを嫌がるポケモンもいるため参加を強制させるわけにはいかないからだ。臆病なピチューもバトルに積極的になることはできないのだろう。

 

しかしヨウはピチューにバトルをしてほしいと思っている。なぜなら苦手なことから逃げていてはいつまでたっても成長しないからだ。少しでもピチューには積極的になってほしいところではあると思っているのだが。

 

「とりあえず戻ってくれ、ニャヒート。」

『ニャッブ』

 

ヨウは一先ずニャヒートをモンスターボールへと戻す。ピチュー自身ヨウに慣れてきたようだが、ニャヒートの事は少しまだ怯えてしまっている可能性がある。

 

「なぁピチュー。どうしてそんなに怖がっているんだ?」

『ピチュ……』

「もし嫌な事があったら言ってくれないか?力になりたいんだよ。」

『……』

 

ヨウはピチューの目線と合うように屈んで話しかけるも、ヨウの言葉にピチューは俯いてしまう。ピチューが話してくれなければ自分にはもう手詰まりだと頭をガシガシと掻いた。そんな時であった。

 

『ピッカチュ?』

『ピチュ?』

「えっ?あれって……ピカチュウ?」

 

そんな時彼の前に現れたのはピチューの進化系であり、世間的に有名なポケモンであるピカチュウだった。そのピカチュウの尻尾の先端はハート形であり、そのピカチュウがメスだということが分かった。

 

ピカチュウはヨウとピチューを見ると頭を傾げる。ピチューは珍しく怯えることなく、ピカチュウに興味を惹かれている様子であった。

 

「このピカチュウは?」

『ピカッチュ!』

「あっ!ちょっと待ってくれ!」

 

ピカチュウは突然走り始める。ヨウはそのピカチュウの事が気になり、ピチューと共に追いかける。

 

ピカチュウは近くの森の中へと入っていく。森の中は特に危険はないと聞かされているためヨウは迷いなく進んでいった。ピチューもヨウの後に続きピカチュウを追いかける。

 

暫く進んでいくと森の奥から光が見える。ピカチュウがどこへ向かっているのか気になりながらヨウは森の奥の光へと突っ切る。するとそこに広がっていたのは衝撃的な光景であった。

 

「こ、ここって……」

『ピチュ……』

 

驚くべきことに、その場所は一面ピカチュウだらけであった。右を見てもピカチュウ、左を見てもピカチュウ。まさにピカチュウ好きにはたまらないような場所だった。

 

「おや?君は……」

 

ヨウたちに目の前に現れたのは中年くらいの男性だ。男性はピカチュウがプリントされた白色のTシャツと半ズボンを着用しており、見るからにピカチュウ大好きと言う雰囲気であった。

 

「あ、俺は……」

「なるほど!君もピカチュウが大好きなんだね!?」

「え?いや、俺は」

「ふふふ、言わなくてもわかるよ。ピカチュウの進化前であるピチューを連れていることが動かぬ証拠だ!」

 

男性は興奮気味で熱く語る。これは話を聞いてくれなさそうだなと悟ったヨウは、もうこれ以上何も言うまいと突っ込まないようにした。

 

「さぁさぁ!奥のトレーラーに入りたまえ!」

(なんだろう。ハウ以上に手ごわい気がする……)

 

ヨウは半分あきらめ気味に男性の言う通り後をついていきトレーラーの中へと入っていく。そんな彼らを見つめるピカチュウたちの視線が気になるヨウであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆっくりしたまえ、今お茶を淹れるから。」

「は、はぁ、ありがとうございます。」

(まさかトレーラーの中の家具までがピカチュウグッズばかりとは思わなかった。)

 

トレーラーの中にある食器、椅子、机、遊び道具だけでなく、今男性から出されたマグカップまでもがピカチュウを模したものであったため、ヨウは心の中で驚いていた。人の趣味はそれぞれであるため特に何かを言いたいわけではないが、敢えて言うとすれば部屋中が真っ黄色であるため目が痛くなるくらいだろうか。

 

「さあ遠慮なくくつろぎたまえ。何ならピカチュウクッキーも……」

「あっ、いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫です。」

 

ヨウのその言葉に男性はなぜか「そうか……」と少し落ち込んだ様子で呟いた。

 

食べてほしかったのか?となんだか少し悪く感じたヨウは、男性の好意に応じクッキーを頂くことにした。男性は気分を良くしてピカチュウクッキーを取り出しヨウに差し出す。

 

(本当にピカチュウの形してるし……)

 

クッキーの味は申し分なかったのだが、ピカチュウの顔が少しずつ欠けていくところを見ると何だが少し罪悪感というか、そういったものを感じてしまう。さすがにポケモンの顔が欠けるのはトレーナーとして抵抗を感じるところである。

 

「と、ところでここは一体どんなところなんですか?」

「ここはピカチュウの谷だよ。ピカチュウ好きのために私が世界中から各地方のピカチュウを集めて創った、ピカチュウとピカチュウ好きの楽園だよ!」

「……」

 

ヨウはイキイキと語る男性に何も言えなかった。少なくとも彼の熱意と愛情だけは感じることはできたが……。

 

「ここのピカチュウたちはあなたの捕まえたピカチュウってことですか?」

「いや、彼らは私のではないよ。私はピカチュウを好きになるうちにピカチュウにも好かれる体質になったようでね、彼らが勝手に私についてきただけなのだよ。」

 

なるほど、とヨウは納得する。熱意と愛情が伴い、どうやら男性にはピカチュウに対してのみではあるが好かれる才能があるようだ。

 

そうだ、とヨウは思いつき自分の傍で座っているピチューを抱えて男性の前へと差し出した。

 

「このピチュー、見ていただけませんか?」

「む?ピチューをかい?」

「はい。実はこのピチュー、極度の臆病な性格なんです。ただどうしてこうなったか、俺にも分からなく。あなたなら何かわからないかと思ったのですが。」

「どれ、ちょっと見てみようか。」

 

男性は先ほどの熱気はどこに行ったのかと言わんばかりに真剣な表情になりピチューを受け取りじっと見つめる。ピチューもこれには困惑する様子で、少し縮こまってしまっている。だが不思議と怯えている様子はなく、さすがはピカチュウに好かれるというだけはあるとヨウは改めて感心した。

 

『ピカチュ!』

「む?どうしたピカチュウ?」

 

男性に声を掛けたのは先ほどヨウが見かけたメスのピカチュウだ。ピカチュウの話を聞いて男性は「うんうん」と頷いている。本当に理解しているのかは微妙ではあるが。

 

『ピカピカ、ピカチュウ。ピッカチュ!』

「ふむふむ、なるほどなるほど。」

「あ、あの、ピカチュウが何を言っているか分かるんですか?」

「もちろんだ。どうやらこのピチューには一種のトラウマがあるようだ。」

「トラウマですか?」

 

ヨウが聞き返すと、男性は「うむ」とだけ答え話をつづけた。

 

男性の話によると、どうやら以前に凶暴なポケモンに襲われたことがあるそうだ。その出来事が脳裏に焼きついてしまい、次第に性格が臆病になってしまったそうだ。

 

「そんなことがあったのか。」

「その時、このピチューのトレーナーもピチューを置いてどこかへと逃げてしまったらしい。」

「……」

 

男性のその話を聞いてヨウは自然と怒りが溢れてくる。ポケモンを見捨てて逃げるトレーナーが許せなかったからだ。ポケモンの事が好きなトレーナーであれば当然の感情であろう。

 

そんなとき、トレーラーの外で何かしら爆発音が聞こえた。

 

「っ、一体なんだ!?」

 

男性とヨウは慌てて外へと出る。するとそこには一匹のポケモンがピカチュウたちを問答無用で襲っている姿があった。

 

『ドラァ!』

「っ!?あれはドラピオン!?」

 

そこにいたのはどく・あくタイプのドラピオンであった。ドラピオンは一方的にピカチュウたちを襲い、ピカチュウたちは逃げ回るばかりであった。

 

『ピチュッ!?』

 

ピチューはドラピオンの姿を見て動きを止める。よく見るとピチューが小さく小刻みに震えているのが分かる。その様子から、ピチューの過去のトラウマの相手はドラピオンであることが分かった。

 

「行くのだ!我が愛しのピカチュウよ!」

『ピッカ!』

 

そう言って男性の合図と同時に飛び出したのはあのメスピカチュウであった。どうやらこのピカチュウのみは男性のパートナーなのだということがその様子から分かった。

 

「私のピカチュウたちに手を出すものは、私が成敗する!ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピカピッカ!』

 

ピカチュウは素早い動きでドラピオンに接近し一直線に突撃する。ドラピオンはピカチュウの動きを捉えることができずでんこうせっかをマトモに受けて怯んだ。

 

『っ、ドラァ!』

「かげぶんしん!」

『ピッカァ!』

 

ドラピオンは鋭い手から無数のミサイルばりでピカチュウに反撃するが、ピカチュウはそれに負けないくらいの自身の分身を作り出しミサイルばりを回避する。

 

「す、すっげぇ……」

『ピチュウ……』

 

ヨウはただただピカチュウの戦いぶりに感嘆の声をあげるしかできなかった。その姿からただのピカチュウ好きにできるような戦いではないと心の中で驚きの声をあげていた。

 

そしてピカチュウはドラピオンの頭上で全ての分身を集約し、尻尾に力を集中させていた。

 

「アイアンテール!」

『ピッカチュピ!』

 

ピカチュウはアイアンテールでドラピオンの頭上へと振り下ろす。ドラピオンは今の一撃で既に疲労が溜まり反撃も困難な状態となっていた。

 

『……ピチュ!』

「え?ピチュー?」

 

ピチューは何かを決意したかのように頷きヨウを見る。ヨウはそんなピチューの決意に満ち溢れた顔を見て、ピチューが何を考えているのか分かった気がした。

 

「分かった!やるぞ、ピチュー!」

『ピッチュ!』

 

『ピチュ!ピチュピッチュピ!』

『ピカッ?ピカッチュ!』

 

ピチューはヨウのその言葉と共にピカチュウの元へと走り隣に立つ。そう、ピチューの決意とはピカチュウと共にドラピオンを倒すことであった。

 

「ピチュー!でんきショック!」

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『ピッチュウ!』

『ピィカチュウ!』

『ドラッ!?』

 

そして同時にでんきショック、10まんボルトをドラピオンに放つ。ドラピオンはその同時攻撃の直撃を受け、逃げるようにして森の中へと戻っていった。これでもうドラピオンはピカチュウの谷を襲う事はないであろう。

 

周りのピカチュウたちからは歓喜の声が沸いていた。どうやらドラピオンを追い払ったピカチュウとピチューを称賛しているようであった。

 

「ピチュー!よくやったな!」

『ピチュピチュ!』

 

ピチューはヨウの元へと飛びつく。どうやら先ほどの一撃と共に過去に受けたトラウマを振り払う事ができたようだ。ピチューは満面の笑みをヨウへと向けていて、ヨウも釣られてピチューに微笑み返したのだった。

 

「いやぁ、君のピチューのでんきショックは中々に強力だね。いいもの見せて貰ったよ!」

「いえ、あなたのピカチュウこそすごい戦いぶりでした。」

「ハハハ!自慢のピカチュウだからね!」

 

男性は心底嬉しそうに高笑いをする。よっぽどピカチュウの事が好きなのだという事が分かるくらいに笑顔を浮かべている。

 

「君のピチューも無事トラウマを克服したようだし、これからが楽しみだ。」

 

『ピチュピッチュ!』

『ピカッチュ!』

 

ピチューは男性のピカチュと何か話をしている。ヨウにはピカチュウの言葉が分からないが、ピチューが今回の件でピカチュウに感謝していることだけは伝わった。

 

「今日はありがとうございました!色々と勉強になりました!」

「お礼は私ではなく、このピカチュウに言ってほしいな。私はピカチュウの言葉を君に伝えただけなのだから。」

「はい、ピカチュウ、ありがとう。」

『チャア!』

 

ヨウが感謝しながらピカチュウの頭を撫でると、ピカチュウは嬉しそうに可愛らしい高い鳴き声をあげる。手を離すと、少し名残惜しそうにしていたのは恐らく気のせいではないだろう。

 

ヨウは男性の別れを告げ、「また必ず来ます」と伝えてピカチュウの谷を後にした。このピチューは自分のピチューではないが、まるで自分のことのように今回の出来事は嬉しく感じる事ができた。

 

心なしか、ピチューもヨウと一緒にいられることが嬉しいのだと思っているように感じられる。それがピチューの本当の感情なのか、それはピチュー本人にしか分からない。




ポケモンの厳選している時が一番楽しいと思う今日この頃

私はピカチュウが嫌いなのではなく、ポケモン=ピカチュウと結び付ける人が嫌いなだけであってピカチュウは可愛いから好きです。

因みにポケモンオブザイヤーではブラッキーが5位、ニンフィアが6位と大健闘でしたね。ミミカス、ガラル人気にドラパがいる時点でガチ層の投票が多そうな気がしますけども。

今私の中で弱保リーフィアが熱い


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ヨウとピチュー!絆の証明!

2週間サボってしまいました、はい。すいません(土下座

意外とヨウ君のバトルが長引いてリーリエのバトルが書けなかった。元々こんな展開にする予定なく簡易的に終わらせる、又は部分的に終わらせる予定だったんですけど……。どうしてこうなった。


ククイ博士主催のポケモンZキャンプに参加した私たち。約5日間に渡り各自が貸し出されたポケモンさんたちと交流を深め、その最終日が訪れました。

 

この課題の最終日にはトレーナーとポケモンがどれだけ仲良くなったかを確認するためにバトルを行なうことになっています。どのトレーナーの方も準備万端といった様子でバトルの時を今か今かと待ちわびている様子でした。

 

一方、私はというと……

 

「リーリエ、ボーマンダの様子はどう?」

「正直微妙なところです。あの時よりはマシになったと思いますが……。」

 

ヨウさんとハウさんが私の様子を気にして話しかけてくれました。ですが自分自身、私とボーマンダさんの溝はまだまだあるような気がします。

 

もちろんあの時以降、私の渡すポケモンフーズは食べてくれたり、最初は嫌がっていたブラッシングなども拒絶することはなくなっていましたが、それでも未だにそっけない態度をとられたり眠っていたりと大きな進展は見られません。

 

正直言えばこのままバトルをしていい結果が残せるとは思いません。

 

「だいじょーぶだいじょーぶ!なんとかなるってー」

「お前は相変わらず楽観的だよな……。まぁでも、ハウの言う通りかもしれないな。難しく考えずに何とかなるって思っておいた方が結果もついてくるんじゃないか?」

「そう……ですね。分かりました!前向きに考えてみます!」

 

確かにハウさんとヨウさんの言う通りです。不安に考えていたって仕方ありません。それに、シンジさんもお二人と同じことを言うに違いありません。

 

私がボーマンダさんの入ったモンスターボールをギュッと握りしめると、ククイ博士が集合したトレーナーたちの前に立ち挨拶を始めました。

 

「みんな!今日はいよいよ預けたポケモンたちとどれだけ交流を深められたかを確認するため、参加者同士でバトルをしてもらおうと思う。みんなはポケモンたちと仲良くなれたかな?」

『はーい!』

 

参加者の全員がククイ博士の問いに元気よく返事を返す。その声を聞いたククイ博士は笑顔で言葉をつづけた。

 

「よし!いい返事がきけて僕も嬉しいよ!じゃあこれからルールを説明するよ!」

 

ククイ博士はそのままこれから行なうバトルのルール説明を始めました。

 

「ルールは当然一対一のシンプルなバトル。どちらかが戦闘不能、または審判が判断したタイミングで終了。それとこれは参加自由のバトルだ。バトルをしたい人から手を挙げて指名された人からバトルをすることにしようと思う。」

「はいはいはーい!おれやりたーい!」

 

ククイ博士が簡単なルールの説明を終えると、すぐにハウさんが手を挙げて挙手しました。

 

「おっ?メガトンパンチ級にやる気があるじゃないか、ハウ。よし!早速ハウにバトルをしてもらおうか!」

「やったー!」

 

ハウさんの勢いを買いククイ博士は最初の対戦にハウさんを指名しました。そんなハウさんに続き他の人も次々と手を挙げました。その中の一人がハウさんの対戦相手に指名され、他の方々も早速それぞれバトルを開始することになりました。

 

「ではあなたたちのバトルの審判は私、バーネットが担当するわ。2人とも、準備はいいわね?」

『はい!』

 

審判を務めるバーネット博士にハウさんと対戦相手の男の子が同時に返事をし、バーネット博士の指示の元モンスターボールからポケモンを繰り出しました。

 

「いっくよー、イワンコ!」

『ワン!』

「行くよ!ケララッパ!」

『ケラッパ!』

 

ハウさんは通常よりも気性の荒いイワンコさん、そして対戦相手の方はツツケラさんの進化系であるケララッパさんでした。タイプ相性ではイワンコさんの方が有利です。

 

ですが人のことは言えませんが、ハウさんとイワンコさんのことは少し心配です。私ほどではないにしろ、イワンコさんもハウさんに懐いているとは言い難い様子でした。果たしてハウさんの言うことを聞いてくれるかどうかが不安です。

 

しかし私の抱いていたこの不安も、ハウさんの指示によりすぐに杞憂となって消えました。

 

「イワンコ!いわおとしー!」

『ワウ!』

 

ハウさんの指示に従いイワンコさんは自身の周囲に細かい岩を作り出し、ケララッパさんに向かって一斉に飛ばしました。

 

「ケララッパかわせ!」

『ラッパッ!』

「ケララッパにうまい事躱されてしまったけど、イワンコはハウの言うことを聞いたな。」

 

ヨウさんの言う通り、イワンコさんはハウさんの言うことを聞いて攻撃を仕掛けました。どうやら私たちが心配するほどではなかったようです。

 

「ケララッパ!タネマシンガン!」

『ラッパパパパ!』

 

ケララッパさんは口をラッパの様にして、口先から細かいタネを連続でマシンガン状にイワンコさんに向けて放ちました。

 

「イワンコ!かわしながらとつげきー!」

『ワン!』

 

イワンコさんはケララッパさんのタネマシンガンを走りながら回避して段々と距離を縮めていきます。イワンコさんの動きは早く、ケララッパさんの怒涛の攻撃もあっさりと躱され驚きのあまりケララッパさんは攻撃を中断してしまいました。

 

「今だ!たいあたりー!」

『ワウ!』

『ラッパァ!?』

「し、しまった!?」

 

ケララッパさんはそのまま腹部にイワンコさんの重い一撃を受け撃ち落とされました。まだ戦い慣れていないであろう対戦相手のトレーナーさんは、ケララッパさんが傷ついたことで大きく戸惑いを見せてしまいます。

 

それと同時にケララッパさんはその場で倒れ、戦闘不能状態となってしまいました。

 

「そこまで!この勝負、ハウとイワンコの勝ち!」

「やったー!勝ったー!」

 

勝負はハウさんとイワンコさんの快勝です。快勝とは言え、先日出会ったばかりのポケモンさんと息の合わせたバトルができるのは流石ハウさんと言ったところですね。

 

「あーあ、負けちゃった。でもありがとう!おかげで勉強になったよ!」

「こっちこそありがとうねー!今度会ったら自慢のポケモンでバトルしよー!」

 

ハウさんと対戦相手のトレーナーさんはお互いの健闘を称え握手を交わしました。最初はポケモンが傷つくという理由であまりバトルは好みませんでしたが、今ではこういったトレーナー同士の交流も含め、ポケモンバトルにはいいこともあるのだという事がよく分かるようになってきました。

 

「いえーい!勝ってきたよー!」

「しかしハウ、どうして急にイワンコが言うこと聞くようになったんだ?」

「えーっとね、このイワンコ、好戦的だけどただ単にバトルがしたくてストレスが溜まってたみたいでねー?フクスローと戦わせている内に言うこと聞くようになったんだー!おかげでフクスローも強くなったよー!」

「そうだったのか、って、イワンコに後頭部噛まれながら喋っても説得力ないけどな。」

「あ、アハハハ……」

 

以前と同様にイワンコさんに後頭部を噛まれながら笑って語っているハウさんに、私は苦笑を浮かべるしかありませんでした。

 

「っと、次は俺の番だな。ハウには負けられないからな、きっちりと勝ってくるさ。」

「がんばれー!ヨウー!」

「頑張ってくださいね!ヨウさん!」

 

私とハウさんの応援を受けてヨウさんは軽く微笑みフィールドに準備万端と言った様子で立ちました。反対側には同じく準備を終えたであろう対戦相手のトレーナーさんが立ちモンスターボールを構えました。

 

「じゃあ続けてバトルを始めるよ?さあ2人とも、ポケモンを出して!」

『はい!』

「頼むぞ!ピチュー!」

『ピチュピッチュ!』

「行くぞ!ガーディ!」

『ガァウ!』

 

ヨウさんはピチューさん、そして対戦相手のトレーナーさんはウインディさんの進化前であるガーディさんを繰り出しました。

 

ヨウさんは私たちと別で特訓している時に、ピチューさんの臆病な性格が治ったのだと言っていましたが、それが実際にどうなのかこのバトルで確かめたいと思います。

 

「ピチュー!でんきショック!」

『ピッチュゥ!』

 

ピチューさんがヨウさんの指示に従い頬の電気袋からでんきショックを放出しました。ヨウさんの言った通り、ピチューさんの心配は皆無のようでした。

 

「ガーディ!こうそくいどう!」

『ガウ!』

 

しかしガーディさんはこうそくいどうを使い素早い動きでピチューさんの攻撃を躱してピチューさんの目の前まで移動しました。ピチューさんも素早さについていけずに目を見開かせています。

 

「今だ!ひのこ!」

『バウ!』

『ピチュ!?』

「ピチュー!」

 

ピチューさんはガーディさんのひのこを無防備に受けてしまいダメージを負ってしまいます。ヨウさんの呼びかけにピチューさんは応答し、すぐに立ち上がることができました。どうやらダメージ自体はそこまでないみたいです。

 

「続けてかみつく攻撃!」

『ガァウ!』

「ピチュー!躱して!」

『ピチュ!?ピッチュ!』

 

ピチューさんはヨウさんの言葉を聞き、耳をピクリと動かして反応しガーディさんの攻撃を躱しました。

 

「ピチュー!ほっぺすりすり!」

『ピチュ!ピチュピチュピチュ!』

『ガッ!?』

「なっ!?し、しまった!」

 

ピチューさんは自身のほっぺを擦り静電気を強くし、そのほっぺを直接ガーディさんに擦り付けました。

 

その直後、ガーディさんの動きが極端に鈍くなりました。ほっぺすりすりは可愛らしい見た目とは裏腹に、相手に当てると追加効果により相手を麻痺状態にしてしまう強力な技です。

 

先ほどはガーディさんの動きが早かったため攻撃を容易に避けられてしまいました。それ故に動きを制限してしまえば正確に攻撃を加えることができるとヨウさんは判断したのでしょう。

 

「ピチュー!もう一度でんきショック!」

『ピッチュー!』

『ガウッ!?』

 

動きが鈍くなり麻痺の効果で怯んでいるガーディさんに、ピチューさんの攻撃がクリーンヒットしました。どうやらガーディさんは思い通りに動くことができない様子です。

 

「もう一度でんきショックだ!」

『ピィチュー!』

「くっ!負けるなガーディ!ひのこ!」

『ガウ!』

 

ガーディさんは先ほどのダメージを食いしばってひのこにより反撃しました。一瞬互いの威力は互角に思えましたが、すぐのその差が表れてガーディさんのひのこがでんきショックを押し返す結果となりました。

 

『ピチュ!?』

「ピチュー!」

 

ひのこに押されピチューさんは驚き力負けしてしまいガーディさんの反撃を受けてしまいました。今のダメージでかなり傷付いてしまっている様子です。

 

「くっ、ピチュー!大丈夫か!?」

『ピッ……チュ……』

 

ピチューさんはなんとか立ち上がろうとしますが、それでも体はボロボロで立つのがやっとの様です。これ以上の継続は不可能と判断したのか、審判を務めていたバーネット博士が手をあげて口を開きました。

 

「そこまで!この勝負は……」

『ピッ……チュ!ピチュウウウウウ!』

『っ!?』

 

ピチューさんは大きく声を張り上げ、その声に驚いた全員がピチューさんの方へと視線を集めました。

 

その瞬間、ピチューさんの姿が青白く光り輝きました。その姿に誰しもが『まさかっ』と感じたことでしょう。

 

「これは……進化の光!?」

 

ククイ博士の言った通り、この光りは紛れもなく進化の光です。ポケモンさんが条件を満たした際に新たな姿へと変わる進化の光。まさかこのタイミングで進化することになるとは誰も思わなかったことでしょう。

 

ピチューさんの姿が少しずつ変化していき、徐々にその姿が完成へと近づいていきます。そしてその光が解き放たれた時、ピチューさんは別のポケモンさんの姿へと変わっていました。

 

『ピカッチュ!』

「こ……これって……」

 

その姿は説明不要な程誰もが知っているポケモンさんの姿、ピカチュウさんでした。寧ろ知らない人はいないであろう有名なポケモンさんでしょう。ですが本当に驚くべきことは……。

 

「ピカチュウへの進化条件はトレーナーへのなつき度……まさかこの課題中に進化することになるとは……」

 

そう、ピチューさんがピカチュウさんへと進化する条件、それはトレーナーへのなつき具合です。ピチューさんは元々ヨウさんのポケモンさんではありません。それなのに進化したという事は、それだけヨウさんを信用しヨウさんの期待に応えようとピチューさんが努力した結果でしょう。

 

「っ……ピカチュウ!まだ戦えるか!?」

『ピカッピカチュウ!』

 

ピカチュウさんはヨウさんの声に答えると同時に強力な電気を放ちました。先ほど受けたダメージを感じさせないほどの力をその電気から感じ取ることができました。

 

ピチューさんはまだ幼いという事もあり電気を溜め込むのが下手であり、時には自分の電気に驚いてしまう事もあると言います。ですが進化したことでそう言ったこともなくなり、より強力な電気を溜め込むことができるようになったのでしょう。

 

「っ!?ガーディ!ひのこ!」

『ガウッ!』

「ピカチュウ!お前の全力を見せてやれ!10まんボルト!」

『ピッカヂュウウウウ!』

 

進化したことで電撃の威力が強力になり、ピカチュウさんの10まんボルトはガーディさんのひのこを容易く跳ね返しました。ガーディさんもその光景に驚きを隠せず、抵抗できないまま10まんボルトの直撃を浴びてしまいました。

 

「ガーディ!?」

『ガッ……ウ……』

「そこまで!ガーディ戦闘不能により、ヨウとピカチュウの勝ち!」

 

「やったぁ!よくやったぞ!ピカチュウ!」

『ピカチュ!ピッカチュウ!』

 

ピカチュウさんは喜びのあまりヨウさんの元へと飛び込み、対するヨウさんもピカチュウさんの事を抱きしめました。その姿を見ていると、レンタルされているというよりも自分のポケモンさんのように見えてしまいます。

 

「いやぁ、ヨウ!ギガインパクト級に素晴らしいバトルだったぞ!」

「ククイ博士っ!ありがとうございます!あっ、でもすいません、ピチューを進化させてしまって」

「ははっ、なぁに、気にすることはないさ。それだけピチューは君のことを信頼していたということだろう。それだけでこの課題には意味があったという事さ。寧ろ僕は感謝したいくらいだ!」

 

博士は満足した笑みを浮かべてヨウさんの事を称えています。この課題の目的は借りたポケモンとの仲を深めること。ピチューさんの進化はそれを証明するに足りるものだった、という事なのでしょう。

 

「ちょっと!あなたっ!」

「えっ?」

 

他の方々と同じように私もヨウさんの事を称えていると、少し甲高い声が私の耳へと入ってきました。そちらの方へと振り向くと、そこには既にバトルフィールドでスタンバイしているナタリアさんの姿がありました。

 

「何をぼさっとしているの?次は私たちの番でしょう?さっさと準備をしなさい!」

「っ!?は、はい!」

 

そうです、ヨウさんやハウさんのバトルだけではありません。次は私の番ですっ!

 

「リーリエ!頑張れよ!」

「がんばってー!リーリエー!」

「はいっ!行ってきます!」

 

ヨウさんとハウさんの声援を受け、私は一歩前に歩みだしました。今度は私の戦いを見せる番です。

 

がんばリーリエです!私!




投稿期間空きすぎではござらんか?我ながら何をやっているだー!

投稿期間を守れる人は尊敬します

私は基本仕事以外では自室に引きこもっているので世間を騒がせている某ウイルスの心配はほぼないです。やっぱ自分の部屋が一番よね。


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ボーマンダVSミロカロス!覚悟と決意!

だからサボるなとあれほど……。サブ垢用にガチポケを色々厳選していたんですけれども……。ガオガエンホンマつよかっこいい

今回はリーリエVSナタリアの一騎打ちで一話通します。てか1VS1のバトルなのになんでこんな無駄に熱い戦いにしたのか、理解に苦しむね←作者


ハウさんに続きヨウさんのバトルが終わり、その後、とある事情で私をライバル視しているナタリアさんがフィールドにて私に呼びかけてきました。

 

私はハウさん、ヨウさんの応援を背に受けてナタリアさんと対面しフィールドに立ちました。

 

「いよいよこの時がきたわね。あなたを倒して、シンジ様に認めてもらいますわ!」

(な、なぜそんなに話が飛躍してるんですか!?そもそも私に勝ってもシンジさんに認めてもらえるわけでは……)

 

よく分かりませんが、ナタリアさんの話がどんどんエスカレートしている気がします。とは言え、私もバトルをするからにはナタリアさんに負けるつもりはありません。

 

「さて、2人とも準備はいいかい?」

『はい!』

 

私とナタリアさんはバーネット博士の言葉に頷いて返答し、モンスターボールを手に取りました。

 

私は手にしたモンスターボールをじっと見つめ、心の中でモンスターボールの中にいるポケモンさんに語りかけました。

 

(お願いします、ボーマンダさん。私に力を貸してください!)

「ミロカロス!出番ですわ!」

『ミロォ!』

「ボーマンダさん!お願いします!」

『ボダァ!』

 

ナタリアさんのパートナーとなったミロカロスさん、そして私はボーマンダさんを繰り出しました。

 

ミロカロスさんは優雅にかつ華麗に降り立ち、その姿は最も美しいポケモンさんと呼ばれているミロカロスさんに偽り無しと言えます。

 

一方、ボーマンダさんはと言うと……

 

『ボォダァ……』

 

ボーマンダさんは大きく羽ばたきフィールドに着地した後、大きな欠伸をしていつものように眠りについてしまいました。

 

「ぼ、ボーマンダさん!起きてください!」

「あらあら、そんな調子でちゃんと戦えるのかしら?」

「あうぅ……。ボーマンダさん!お願いします!」

『……』

 

ボーマンダさんはチラリとこちらに目を向けましたが、それでも興味は薄そうで再び目を閉じてしまいました。

 

「ボーマンダ、大丈夫か?」

「バトルが始まればだいじょーぶだいじょーぶ!」

「お前のそのお気楽さ、ある意味見習いたいよ」

 

「戦う気が無くても、私は手加減する気ないですわよ?ミロカロス!ハイドロポンプ!」

『ミロォ』

 

ミロカロスさんは美しく綺麗な声とは裏腹に、鉄をも切り裂くような勢いのハイドロポンプで攻撃してきました。

 

「ぼ、ボーマンダさん!」

『……っ、ダァ!』

 

ボーマンダさんはミロカロスさんの攻撃に気付き咆哮をあげ、尻尾を振り払ってハイドロポンプを打ち消しました。

 

「へぇ、やるじゃないの。けど、そんな調子じゃ私とミロカロスには勝てないですわよ?」

『ミロ』

『ッ、ボォダァ!』

 

ナタリアさんとミロカロスさんの挑発に反応したのか、ボーマンダさんは再び大きな咆哮をあげて翼を羽ばたかせ飛び立ちました。

 

「ボーマンダさん!?待ってください!」

「もう遅いわ!ミロカロス!れいとうビームよ!」

『ミロォ!』

『ボダボダァ!ボダァ!?』

 

ボーマンダさんが大きな動きでミロカロスさんのれいとうビームを避けていきますが、次第に動きを読まれるようになってしまい簡単にれいとうビームの直撃を受けてしまいました。

 

れいとうビームはこおりタイプの技。ドラゴン・ひこうタイプなのでこおりタイプの技はかなり効果が高く、ボーマンダさんのダメージも甚大なものでしょう。ボーマンダさんはれいとうビームの直撃で空中から地面に向かって落ちてきました。

 

「ボーマンダさん!大丈夫ですか!」

『ボ……ダァ!』

 

私がボーマンダさんに呼びかけると、ボーマンダさんは翼をバサリッと動かし再び飛び立とうとしました。

 

「ボーマンダさん!待ってください!」

『ボォダ?』

「お願いです!私の話を聞いて下さい!」

『……』

 

私はもう一度ボーマンダさんに呼びかけると、ボーマンダさんは私の方へと目を向けてくれました。

 

「ボーマンダさん、あなたが過去にどのような経験をしたのかは私にはわかりませんし、私はそのことに深く踏み入るつもりはありません。」

『……』

「ですがお願いです。今だけでも構いません。どうか、私のことを信用してください!私と一緒に戦ってください!」

『…………ボォダァ!』

「ボーマンダさん……」

 

ボーマンダさんの大きな咆哮にやっぱりだめなのだろうか、と半ば諦めかけたその時、ボーマンダさんはこちらをチラリとだけ振り向き、小さく首を縦に振って頷きました。

 

「っ!?ボーマンダさん!」

『ボォダ』

 

私に頷いたボーマンダさんは、準備万端と言わんばかりに今一度翼を軽く動かしミロカロスさんを睨みつけました。

 

「ふん、今更やる気になったところで、私たちに勝つことはできませんわよ。ミロカロス!もう一度れいとうビームでとどめよ!」

『ミィロ!』

「ボーマンダさん!飛んで躱してください!」

『ボォダ!』

 

ボーマンダさんは翼を大きく羽ばたかせ自分の得意な大空へと飛び上がりました。ミロカロスさんのれいとうビームはボーマンダさんに当たることなく、そのまま地面を凍らせるだけの結果となりました。

 

「くっ、ちょこまかと。ミロカロス!ハイドロポンプよ!」

『ミロオオォォ!』

「ボーマンダさん!ドラゴンダイブです!」

『ボォダアア!』

 

ボーマンダさんは大きな翼を垂直に畳み、空から勢いよくミロカロスさんに向かって文字通りダイブしていきます。ボーマンダさんのドラゴンダイブはミロカロスさんのハイドロポンプをあっさりと引き裂き、そのままの勢いでミロカロスさんを吹き飛ばしました。

 

『ミロォ!?』

「なっ!?ミロカロス!」

 

「すっげぇ!ボーマンダがリーリエの指示を聞いてるぞ!」

「ねぇー?だからいったでしょー」

「恐らく、ボーマンダはリーリエの眼を見て、何かを感じ取ったんだろうな。」

「ククイ博士。リーリエの眼、ですか?」

「ああ。ほんと、君たち2人はよく似ているよ。」

 

「ミロカロス!大丈夫!?」

『ミィロ』

 

ミロカロスさんはドラゴンダイブの直撃を受けつつも、ナタリアさんの声を聞き立ち上がりました。ダメージはあるものの、それでもまだ戦う事に支障はないように見受けられます。

 

「まだよ!まだ私たちは負けていない!あなたの美しさ、存分に見せつけますわよ!アクアリング!」

『ミロオオオオォォォ』

 

ミロカロスさんは目を瞑り意識を集中させます。するとミロカロスさんの周囲に水の輪が浮かび上がり、ミロカロスさんの体を包み込みます。アクアリングが、ミロカロスさんの美しさをより一層引き立てています。

 

アクアリングは使用者の体力を少しずつ回復させていく技です。長期戦になれば、不利なのは明らかにこちら側です。

 

「でしたら早めに決着を着けます!ボーマンダさん!かえんほうしゃです!」

『ボォダァ!』

 

ボーマンダさんはかえんほうしゃを放ちますが、ミロカロスさんは全く微動だにしません。ボーマンダさんのかえんほうしゃがミロカロスさんにヒットし、ミロカロスさんの体を包み込みダメージが入ったかに見えました。

 

しかし、ミロカロスさんはボーマンダさんのかえんほうしゃを容易く弾き飛ばし消し去ってしまいました。私もボーマンダさんもこれには驚きの表情を隠せません。

 

「あれー?なんでミロカロスはかえんほうしゃのダメージを受けてないのー?」

「恐らくアクアリングの影響だ。ミロカロスを包んでいるアクアリングが回復だけでなく、炎の攻撃を阻む砦の役割も担っているのだろう。」

「つまり、ボーマンダのかえんほうしゃは実質効果がなく、長期戦も許されない。これはかなり厳しくなってきたな。」

 

あのアクアリング、かなり厄介ですね。放置しておけばミロカロスさんの体力も回復しきってしまいます。多少強引でも、攻め込むしかありませんね。

 

「ボーマンダさん!もう一度空高く飛び上がってください!」

『ボッダァ!』

 

ボーマンダさんは再び翼を羽ばたかせて大空に飛び上がりました。

 

「ミロカロス!れいとうビームよ!」

「ボーマンダさん!かえんほうしゃです!」

『ミロォ!』

『ボォダァ!』

 

ミロカロスさんのれいとうビームとボーマンダさんのかえんほうしゃがフィールド中央でぶつかり合い大きな爆発を発生させました。大きな衝撃がフィールド全体を包み込みます。

 

「ハイドロポンプで薙ぎ払って!」

『ミロオオォ!』

 

ミロカロスさんは衝撃により視界が悪いこともあり、爆風ごとハイドロポンプで薙ぎ払います。

 

「っ!?いない!?」

『ミロッ!?』

「今です!ドラゴンダイブ!」

『ボォダアアアアァァ!』

 

ボーマンダさんは更に空高くに舞い上がっており、そこから先ほどよりも勢いをつけたドラゴンダイブで急降下し、ミロカロスさんに襲い掛かります。ボーマンダさんのドラゴンダイブは見事ミロカロスさんにクリーンヒットしました。

 

『ミロォ!?』

「ミロカロス!?くっ、やってくれるわね!」

「追撃です!ドラゴンクロー!」

『ボォダ!』

「ミロカロス!ドラゴンテールで受け止めるのよ!」

『ミィロォ!』

 

ボーマンダさんはドラゴンダイブでダメージを受け吹き飛ばされたミロカロスさんに、追撃のドラゴンクローで攻め込みました。しかしミロカロスさんはドラゴンテールでボーマンダさんのドラゴンクローを正面から受け止めました。

 

「隙ありよ!ミロカロス!れいとうビーム!」

『ミロ!』

『ボダ!?ボォダア!』

「っ!?ボーマンダさん!」

 

ボーマンダさんのドラゴンクローを受け止めていたミロカロスさんは、そのままの態勢で口かられいとうビームを放ち反撃に講じました。ボーマンダさんの攻撃を受け止めながら反撃するとは、やはり簡単には勝たせてくれないようです。

 

「ボーマンダさん!?大丈夫ですか!」

『ボッ……ダ……ボォダ!』

 

ボーマンダさんは大きな咆哮を上げてまだ大丈夫だと言わんばかりに翼を大きく広げます。ですがボーマンダさんは肩で息をしている状態で、限界も近いであろう状況です。

 

それもそうです。ドラゴンタイプが特に苦手としているこおりタイプの技を二回も浴びてしまったのです。それでも立っていられる方が奇跡的とも言えます。

 

ですがそれはミロカロスさんも同じです。ドラゴンダイブをまともに二回受けた上に、ドラゴンクローを受け止めながら強引に反撃をしたのです。アクアリングがあるとは言え、かなり厳しい状態なのは間違いありません。その証拠に、ミロカロスさんも冷や汗を流して、先ほどの優雅さが嘘のように余裕を感じられる状態ではありません。

 

(この状況を覆すには……やはりこれしかありませんっ!)

 

「ボーマンダさん!」

『ボォダ?』

「私は、あなたを信じています!」

『……ボォダァ!』

 

ボーマンダさんは私の声を聞き、大きな咆哮をあげてくれました。その咆哮は、ボーマンダさんを信じている私の事も信じてくれているものなのだという事がわかりました。

 

「結局最後は精神論?全く、理にかなってないわね。」

「確かに、理にかなってないかもしれません。ですが……」

 

これが私の最大の武器であり、とっても大切なことだと私は思っています。そうですよね?シンジさん……。

 

私は私が追いかけるべき人の背中を思い出し、この戦いに決着を着けることにしました。

 

「ボーマンダさん!行きますよ!」

『ボォダァァァ!』

「来なさい!徹底的に叩き潰して差し上げますわ!」

『ミィロォォォ!』

「ボーマンダさん!ドラゴンクローです!」

『ボォダ!』

 

ボーマンダさんは爪の先端をさらに鋭く伸ばし、正面から勢いよく攻め込みました。

 

「正面から来るなんて、血迷ったのかしら?ミロカロス!れいとうビームで終幕ですわ!」

『ミィロ!』

「ボーマンダさん!ドラゴンクローでフィールドを攻撃して砂を巻き上げてください!」

『ボダァ!』

 

ミロカロスさんのれいとうビームを次受けてしまえば間違いなくボーマンダさんは戦闘不能になってしまいます。なのでボーマンダさんはドラゴンクローで地面を切り裂き、砂を巻き上げることでれいとうビームを防ぐことに利用しました。

 

「なっ!?そんな!?」

『ミロ!?』

 

ナタリアさんとミロカロスさんは驚きの声と共に目を見開かせました。これは全くの予想外の行動だったのでしょう。これは間違いなく大きなチャンスに繋がりました。

 

「ボーマンダさん!私たちの全力、見せましょう!」

『ボォダァ!』

「ドラゴンダイブです!」

 

ボーマンダさんは空高く飛び上がり、空から急降下してドラゴンダイブの態勢に入りました。

 

「っ!?ミロカロス!ハイドロポンプ!」

『ミロ!』

 

ミロカロスさんはハイドロポンプを連続で放ちますが、そのどれもがボーマンダさんに簡単に避けられます。先ほどの動揺が仇となり、ハイドロポンプの軌道が単調になってしまっています。これであれば回避するのは簡単です。

 

『ボォダアアアァァ!!』

『ミロォ!?』

 

ボーマンダさんの大空からの強烈な一撃はミロカロスさんにヒットし、その反動でボーマンダさんは再度大空へと舞い上がりました。

 

「み、ミロカロス!?」

『み……ろぉ……』

「ミロカロス、戦闘不能!リーリエとボーマンダの勝ち!」

「はぁ、はぁ、か、勝った……。勝ちましたよ!ボーマンダさん!」

『ボォダ!』

 

ボーマンダさんは私の傍まで降りてきてくれて、私は喜びのあまりボーマンダさんに抱き着いてしまいました。ボーマンダさんも喜び故か、空に向かって咆哮とともにかえんほうしゃを放っています。

 

「すっげぇ!すっげぇバトルだったぜ!」

「よかったよー!リーリエー!ボーマンダー!」

「ああ!まさにギガインパクト級の素晴らしいバトルだったぜ!」

 

ヨウさん、ハウさん、ククイ博士、それから他の参加者の方々から盛大な拍手が送られてきました。バトルに集中して熱くなっていたため気付きませんでしたが、まさかこれほど大勢の方々に注目されていたとは思いもしませんでした。少しばかり恥ずかしさで顔が熱くなってしまいます。

 

「……ふん、これはミロカロスの敗北ではなく、私自身が甘かったせいですわ!勘違いしないでくださいね!次に戦う事があれば、こうは行きませんから!」

「あっ!ナタリアさん!」

 

私が声をかける前に、ナタリアさんはこの場を立ち去ってしまいました。私としては、少しでも仲良くなりたかったのですけれど、ナタリアさん自身あまりよく思っていないみたいですから仕方ありません。女の勝負とはそういうもの……だと思います。

 

「ボーマンダさん、ありがとうございました。もし機会があれば、また私と一緒に戦っていただけますか?」

『……ボォダ』

 

ボーマンダさんはバトル前の時とは違い、少しだけ柔らかい笑みを私に向けてくれました。これで少しでも私の事を、他の人間やポケモンさんのことを信用していただければ嬉しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りのポケモンバトルが終わり、今回私たちに与えられた課題は終了いたしました。

 

「さて!早速だが次に行う課題を説明すぞ!」

 

課題が終わって早々、ククイ博士からポケモンZキャンプで行う次の課題が発表されようとしていました。キャンプはまだまだ始まったばかりなので、課題はまだまだ色々あることでしょう。

 

「次は3人一組でチームを組んでもらう。次に行う課題は、トレーナー同士の交流だ。」

「交流、ですか?」

「ああ!ポケモンバトルにおいても毎回一人で戦うシングルバトルをするわけではない。時には二人、三人、あるいは五人、十人でチームを組んで戦う事もあるだろう。そんな時、仲間同士連携を取れなければ勝てる勝負も勝てない。それに旅先で出会ったトレーナーとコミュニケーションを取れなければトレーナーとして成長することもできないだろう。今回行うのはそれらのための訓練と思ってくれればいい。」

 

ククイ博士の説明にこの場にいる全員が納得する。確かに、時には知らない誰かとタッグを組んでバトルをすることもあるかもしれません。

 

私もシンジさんと組んでバトルしたことはありますが、シンジさんとは気心も知れてて即座にタッグを組んでも問題はなかったです。そもそもシンジさんがチャンピオンだけあって強いから何とかなっていた、と言う部分もあるかもしれませんが……。

 

また、旅先でどんなトレーナーと会うか分かりません。その時のための訓練と言えば、確かに必要不可欠なものとなるでしょう。

 

「ククイ博士!また今回の様にバトルはするんですか?」

 

参加者の一人が手をあげてククイ博士に質問しました。ククイ博士はそんな質問に笑顔で答えました。

 

「君たちが望むのであればバトルするつもりだ。バトルをすることでお互いに触れあった時を実感し、成果を発揮することもできるだろうからね!」

 

ククイ博士の言葉に、私は気を引き締めて挑まなければならないと心から思いました。生半可な気持ちで挑んでしまえば、間違いなく仲間の足を引っ張ってしまいこの先苦労することは間違いありません。

 

「さあ!早速仲間を決め、次にキミたちへと送る課題に是非挑戦してくれ!」

 

「三人で一組か……だったらもう決まってるよな!」

「そうだねー。三人って言ったら、もうこの組み合わせしかないでしょー!」

「っ!?はい!そうですね!」

 

仲間決めが始まった瞬間、早々にヨウさんとハウさんが口を開いて私の方を笑顔で見てきました。その意図を私は察知し、私もお二人の意見に同意しました。

 

「次の課題は!」

「僕たち三人でー!」

「挑戦します!」

 

私たち三人は輪となり、手を重ね合わせて次の課題へと挑戦することにしました。お二人であれば私も全く不安はありません。信頼して全てを預けることができます!

 

次の課題も間違いなく難しいものですが、三人力を合わせて必ず乗り切ってみせます!がんばリーリエです!私!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピィカ?』

 

その時、とあるポケモンが私たちの様子を覗いていたことは、誰も気付きませんでした。




キョダイラプラスって使ってても強いけど、正直ブイズ使ってるときはあまり強いと感じない。寧ろ滅歌ラプラスとかの方がしんどい……。ドラパ君は使ってても強さは感じられないけど、相手に使われるとかなり厄介ですよね。ドラパの一番の強みは型が分からないことだというのがよく分かりました。あいつ出来る範囲で何でも出木杉君では?

……あっ、ミミカスは雑に強いですね、うん(半ギレ)

最近プリコネ始めました。最推しキャラはユイちゃんで、他に好きな子はリノちゃんとシズルお姉ちゃん、ミミちゃんとアカリちゃんです。やっぱり妹属性には弱いです。
あとルカ姉さんもサトリナとマッチしてて好きです。


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ヨウ、再会と始まりと!

最近仕事で残業してるせいで帰ったら即寝て小説書く気がおきなかったので遅れてしまいました。申し訳ございません。GWも仕事だったので許して(懇願)

某ウイルスにはかかってませんのでご安心ください。とりあえずアローラ編Lが完結までは失踪するつもりはない……と思います。なおシンジのアローラ編を書くかどうかは未定となります。どうせ原作と大差ないし(ボソッ


第二にククイ博士から出された課題は、三人一組でチームを組み少しの間共に過ごすこと。なので私はチームメンバーとなったヨウさん、ハウさんと共にキャンプを過ごしています。

 

そして今はと言うと……

 

「ニャヒート!かえんほうしゃ!」

「フクスロー!かわしてこのはー!」

『ニャット!』

『スロー!』

「ニトロチャージで迎え撃て!」

『ニャトォ!』

「フクスロー!ふいうちー!」

『スロォ!』

 

この様にヨウさんとハウさんがバトルをしています。

 

「あのー、なんでバトルをしているのですか?」

「ん?だってバトルした方が互いの事が分かるだろ?」

「いや、でもシングルバトルじゃああまり意味がない気がするのですが」

「でもじっとしてるのはおれたちの性分じゃないしねー」

「折角だからリーリエもバトルしようぜ?」

「は、はぁ……別に構いませんが」

 

私はヨウさんに多少強引な形でバトルする方へと流されてしまいました。なんかシンジさんと旅していた時とはかなり違い、2人とも少し落ち着きがない気がします。いえ、別にお二人の事を否定しているわけではないのですが……。

 

私がヨウさんたちと戦おうと準備すると、突然近くの茂みが少し揺れ動きました。

 

「ん?なんだろー?」

「おいハウ、不用意にあんまり近づかない方が……」

 

ハウさんはその揺れの正体が気になり、少しずつ揺れた茂みへと忍び足で近づいていきます。ハウさんがその茂みのすぐ傍にまで近づいたとき……。

 

『ピッカチュ!』

「あれ?ピカチュウさん?」

「ん?お前って……」

『ピカチュッピ!』

 

茂みからはピカチュウさんが姿を現しました。ですがこのピカチュウさん、どこかで見たことがある気がします。

 

姿を現したピカチュウさんは、私たちの姿を順番に見た後にヨウさんと目を合わせました。ヨウさんもピカチュウさんの目を見て動きを止めました。

 

『ピィカ』

「お前、もしかして……」

「おーい!みんなー!」

「あれ?ククイ博士ー」

『ピカッ!?』

 

大きな声がした方へと振り向くと、そこには手を振りながらククイ博士がこちらに走ってきていました。

 

「はぁはぁ、こっちに一匹のポケモンがこなかったかい?」

「え?ポケモンさんですか?」

 

ククイ博士が肩で息をした状態で私たちにそう問いかけてきました。

 

「あ、ああ。前回みんなに貸し出したポケモン達の様子を見ていたんだが、その最中に一匹のポケモンが逃げ出してしまったみたいなんだ」

「そのポケモンって?」

「ヨウ、君もよく知っているポケモンだよ」

「……やっぱりそうですか」

 

どうやらその逃げ出したポケモンは、ヨウさんがよく知っているポケモンさんのようです。そう聞いた私とハウさんも、そのポケモンさんの正体が分かりました。

 

「そのポケモンってさ、もしかしてもピカチュウだよねー?」

「ピカチュウさんなら、先ほど一瞬だけですが」

「見たのかい?」

 

ククイ博士の疑問符に私たちは頷いて答えました。

 

「そうか、やっぱり……。」

「やっぱりって?」

「……そのことは後で話すよ。それより……」

「はい!分かっています!」

「おれたちもピカチュウ探すの手伝うよー」

「そう、だな。」

「三人とも、ありがとう。ピチューの時からそうだが、あのピカチュウは少し人見知りだから、中々見つからないかもしれないけどね。」

 

ククイ博士の話を聞き、私たちは協力してピカチュウさんを探すことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とは言ったものの、どこから探せばいいのでしょうか。」

「まぁ適当に探せば見つかるよー」

「…………」

「適当と言っても、人見知りのピカチュウさんを探すのは難しいのでは?」

「おれたちに対しては人見知りでもー、ヨウだったら大丈夫だと思うよー」

「確かに、そう言えばそうですね。ヨウさん、心当たりとかありますか?」

「…………」

「ヨウさん?どうかしましたか?」

「あ、わ、悪い。なに?」

 

私がヨウさんに声をかけると、ヨウさんはどこか浮かない顔をしながら歩いていました。ピカチュウさんの事が心配なのでしょうか?

 

「ヨウー、さっきから様子がおかしいけどどうかしたのー?」

「やっぱりピカチュウさんの事が心配なんですか?」

「いや、まぁ、それもあるんだけど……」

 

ヨウさんは少し困ったような素振りを見せてから、自分が何を考えていたのかを話してくれました。

 

「なんでピカチュウは博士のところを飛び出したのかなって思ってさ」

「なんで、ですか?」

「ピカチュウってピチューの頃から臆病で人見知りな性格だったからさ、一人で外に出るなんて想像できないんだよな。」

「そう言われれば確かにそうだよねー。何か目的があるのかなー?」

 

ヨウさんはハウさんのその言葉に「目的……」と呟いて顎に手を当てて考え込みます。

 

暫くすると何か思いついたかのようにハッと正面を見て、駆け出し始めました。

 

「ヨウさん!どこへ行くんですか!?」

「悪い!少し思いついたことがあるから、俺は俺でピカチュウを探すよ!」

 

ヨウさんはそう言って、私とハウさんの元から立ち去り森の奥へと姿を消していきました。

 

「どうしたんでしょう、ヨウさん。」

「どうしたんだろうねー。でも、ヨウのことだからなにか考えがあるんだと思うよー。」

「ハウさん、ヨウさんの事、信頼しているんですね。」

「まぁねー!これでも結構付き合い長いからねー。」

 

ハウさんはいつものように満面の笑みを浮かべながらそう言いました。私もハウさんみたいに、ヨウさんの事を信じて別行動でピカチュウさんの事を探すことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫か?」

 

リーリエ、ハウと別れた俺は肩で息をしながら呼吸を整えていた。さすがにいきなり走ると疲れるな。

 

「おーい!ピカチュウ!いるんだろ?いたら出てきてくれないか!?}

 

俺は森の中、一人大声を出して姿の見えないピカチュウに呼びかける。本当にこの場にピカチュウがいるという保証はないが、俺の想像が正しければ恐らくピカチュウはこの場にいる。

 

俺が大声で呼びかけたその時、近くの茂みが揺れ動いた。俺はピカチュウか、と思いその茂みに近付く。しかしそこから飛び出してきたのは……。

 

『アリアッ!』

「しまった!アリアドスか!?」

 

揺れた茂みから現れたのはピカチュウではなく、野生のアリアドスであった。アリアドスは自分から人間を襲う事はないが、自分の縄張りに入った相手には容赦なく襲い掛かるポケモンだ。

 

「くっ、仕方ない、ここはニャヒートで!」

『アッド!』

「なっ!?しまった!」

 

俺は仕方なくニャヒートで応戦しようとしたが、アリアドスは危険を察知したのか俺の持ったニャヒートのモンスターボールを口から吐き出した糸で取り上げた。

 

『アリアッ!』

「くっ、ま、マズイッ!?」

『ピッカァ!』

 

アリアドスに襲われそうになった俺は咄嗟に腕で顔を守るようにして眼を瞑る。しかしその時、突然目の前が光り輝き俺は驚いて目を開ける。

 

するとそこには電撃で痺れ体が茶色に焦げていたアリアドスの姿があった。アリアドスは突然の電撃に参り、その場を焦って立ち去った。この電撃には俺も身に覚えがあった。

 

「ピカチュウ?もしかしてピカチュウか?」

『ピカッ!?』

 

俺は急いでピカチュウの名前を呼ぶ。すると俺の声に反応して上ずった声をあげる。間違いなくピカチュウの声だと思い、俺は声がした自分の後ろへと振り向く。

 

そこにいたのは紛れもなく以前まで俺と行動を共にしていたピカチュウの姿であった。俺に姿を見られたピカチュは焦って周りに隠れられそうな場所がないかを探し始める。俺はそんなピカチュウにゆっくり近づいて声をかけた。

 

「ピカチュウ、もしかしてお前、俺を探しに来たんじゃないか?」

『ピカッ!?』

 

恐らくピカチュウは俺を探しに来たのだと俺は思った。だからこそ臆病なピカチュウは1人で博士の元を飛び出したのではないかと予想した。

 

だが何度も言うがピカチュウは臆病な性格だ。そんなピカチュウが人前にすぐに出られるはずもなく、俺以外の人間、リーリエとハウ、それからククイ博士の声に驚いたあの場を立ち去ってしまったのだろう。だからこそ俺はリーリエたちの元を離れ、一人になれば姿を見せてくれるのではないかと思ったのだ。

 

「俺が危ないと思って助けてくれたんだろ?ありがとな、ピカチュウ。」

『ピッ!?』

 

俺はピカチュウの頭を撫でてあげようと手を伸ばすと、ピカチュウはその場から走り出して逃げてしまった。俺はまだちゃんとお礼を出来ていないと思っているので、先ほどアリアドスに取られてしまったニャヒートのモンスターボールを回収し、急いでピカチュウを追いかける。

 

「くそっ!?ピカチュウ!待ってくれ!」

 

先ほどもハウたちの元から離れた時に走った影響で俺も既に体力が少なくなっている状態だ。俺は息も絶え絶えになりながらもピカチュウの姿を見失わないように追いかけ続ける。

 

ピカチュウを追いかけていると、森の奥から光が見えてくる。俺はそこへと駆け込むと、森の出口へと辿り着いた。しかし、そこは俺にとって見覚えのある場所であった。

 

「あれ?ここは?」

 

多くのピカチュウが遊んでいる姿があり、奥にはピカチュウを模したトレーラーがあった。こんな特徴的な場所を忘れるわけがない。ここは間違いなく先日立ち寄ったピカチュウの谷だ。

 

「おや、君はヨウ君じゃないか」

「あっ、お、おじさん!こ、こんにちは!」

 

俺の挨拶にピカチュウ好きのおじさんもこんにちは、と挨拶を返してくる。そんなおじさんは、俺にあるポケモンを差し出してきた。

 

「君の探し物は、この子だろう?」

『ピカァ……』

「ピカチュウ!?」

 

そのポケモンは紛れもなく俺が追いかけていたピカチュウであった。どうやらここに迷い込んだピカチュウをすぐに捕まえてくれていたようだ。

 

「でも、どうしてそのピカチュウだと分かったんですか?」

 

俺に疑問は最もだと思う。以前俺がこの人に会った時にはまだピチューのままだった。知らない間に進化していたピカチュウが何故以前会ったピチューだと思ったのかが不思議だった。

 

「はっはっは!私が一度会ったピカチュウを間違えるはずないさ!」

「…………」

 

俺は何故かその言葉で納得してしまった。この人なら理屈無しでピカチュウの違いを見分けてしまえそうな気がしたのだ。

 

男性はピカチュウを俺の目の前へと優しく離した。俺は未だ俯いて顔を見てくれないピカチュウに対して屈み話しかけてみる。

 

「なぁ、ピカチュウ。どうして俺から逃げたんだ?」

『ピカッ……』

「俺のこと、まだ怖いか?」

『ピカッ!?ピカチュピカチュ!』

 

俺の問いにピカチュウは慌てて全力で首を横に振る。ならばどうしてかともう一度尋ねても、ピカチュウは顔を赤くして再び俯いてしまう。

 

『ピッカ!ピカピカチュウ!』

「むっ?どうしたんだい、ピカチュウ」

 

そこに男性のパートナーでもあるメスのピカチュウがやってくる。男性はピカチュウの言葉にふむふむ、と頷いている。

 

『ピカッ!ピカピピカッ!ピカチュッピッピカ!』

「なんと!?そう言うことだったのか!」

「ピカチュウはなんて?」

「ヨウ君、このピカチュウは厳密には君のピカチュウではないみたいだね。」

「えっ?は、はい、そうですけど。」

「どうやらこのピカチュウ君は、君と一緒に旅をしたいと考えているようだ。」

「え?そ、そうなのか?ピカチュウ」

 

俺の言葉にピカチュウは暫く間を開けて頷いた。まさか俺と旅がしたいという理由で飛び出したとは思わなかった。これもピカチュウなりの勇気という事だろうか。

 

それにしてもこの人違和感なくピカチュウと話してたけど、いったい何者なのだろうか。

 

「でも、本当に俺でいいのか?」

『ピッカチュ!ピカチュ!』

 

ピカチュウは今度は首を縦に振り肯定の意思を見せる。ピカチュウから俺を選んでくれるなんて、これ以上に嬉しいことはないな。

 

「よし!それじゃあ早速……」

「おーい!」

「あっ、この声は」

 

俺が声のした方へと振り向く。するとそこにはククイ博士に加え、リーリエとハウも一緒にこっちへと走ってきていた。

 

「ヨウ、ピカチュウは見つかったかい?」

「はい、ピカチュウならここに」

 

博士たちの登場に驚いたのか、俺の後ろにサッと隠れたピカチュウの姿をチラリと見せる。その姿を見た博士はホッとした表情を浮かべるの同時に、俺に微笑みながら声を掛けてきた。

 

「どうやらこのピカチュウは君によく懐いているみたいだね。」

「はい、博士。それで博士にお願いがあるんですけど……。」

「ああ、分かってるよ。そのピカチュウは君に預けよう。その方がピカチュウのためにもなるだろうしね。」

「いいんですか?そんな簡単に決めてしまって。」

「なに、いいんだよ。なによりこのピカチュウが心を開いているのはボクよりもヨウ、君なんだ。君と一緒にいる方がこのピカチュウにとっても幸せだろう。」

 

ククイ博士の心遣いに俺は感謝し、博士からピカチュウのモンスターボールを受け取る。俺はそのモンスターボールを構え、ピカチュウの目の前で屈んだ。

 

「ピカチュウ、これからよろしくな!」

『ピカッ、ピカチュウ!』

 

ピカチュウは静かにモンスターボールの先端をタッチする。するとピカチュウはモンスターボールの中へと吸い込まれていき、ピコンッと音が鳴り正式にヨウのポケモンとしてゲットされた。

 

「ピカチュウ、ゲットだぜ」

「おめでとうございます!ヨウさん!」

「おめでとー!ヨウ!」

「リーリエ、ハウ、二人ともありがとうな!」

 

俺はピカチュウのゲットを祝福してくれた二人に感謝の言葉を伝える。ピカチュウ、改めてよろしくな。

 

俺のそんな気持ちを感じ取ったのか、ピカチュウのモンスターボールは頷くように縦に揺れるのだった。

 

 

 

 

 

「いやー、子どもとピカチュウの成長を見るのは実にいいものですなぁ!」

「あなたは?」

「なに、私はただのピカチュウ好きのおじさんですよ。」

「そうでしたか。ヨウがお世話になったみたいで。」

「いやいや、ただ私はピカチュウが好きなだけで、なにもしていませんよ。全て彼の力です。」

「ははは、そうですか。」

「ヨウ君、ピカチュウ君、これからも仲良く過ごしたまえよ。」

 

新しい仲間、ピカチュウを自分のポケモンとしてゲットしたヨウ。これから先、彼らはどのように成長していくのだろうか。それを楽しみにしながら、二人の大人は子供たちの姿を眺めて微笑んでいた。




当初の予定ではピカチュウのゲットはなかったのですが気付けばこんな話を書いていた。後悔も反省もしていない。


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ダルスとアマモ、光と闇の世界!

今回はタイトルの通り少しストーリーに深く入るお話となっております。もはやキャンプ関係ないですが、主なキャンプ内容とか特に思いつかないので適当につなぎましたですはい。

多少キャンプの話で無理やり島巡りを延ばそうとしましたが、寧ろ長くしすぎた感もあるので少しここから早足で進むかもしれません。ご了承ください


ヨウさんがピカチュウさんをゲットして暫くが過ぎました。今行っているキャンプの課題、三人一組で過ごすという項目も最終日が近付いております。

 

『ピッカチュウ!』

『ニャット!』

 

「ピカチュウとニャヒートも随分打ち解けたみたいだな。」

 

ピカチュウさんは今他のポケモンさんたちと仲良く遊んでいます。

 

本来臆病な性格であったピカチュウさんは、当然初めの頃は怯えてしまっていてヨウさんの傍から離れることがありませんでした。

 

ですが他のポケモンさんたちが仲良く遊んでいるのを見ていて気になりはじめたピカチュウさんは、徐々にニャヒートさんをはじめ、気付けば私たちのポケモンさんとも仲良くなることができていました。ピカチュウさんも、今では明るくポケモンさんたちと遊んでいる姿を見ると、臆病だった彼の姿は中々想像できません。

 

「よかったねー、ピカチュウがみんなと仲良くなれてー!」

「そうですね。私やハウさんのポケモンさんとも仲良くしてくれているみたいですし。」

「ああ。これでピカチュウも色んなポケモンと仲良くなってくれればいいんだけどな。」

「ところでさー、今日は何するー?」

 

ピカチュウさんの話をしている最中、ハウさんが最もな疑問を投げかけてきました。

 

「そうだな……特にこれと言って考え付くことはないんだよな……。」

 

ハウさんの疑問にヨウさんはそう言って頭を抱えます。

 

今回の課題でチーム戦をするのは明日です。実質、三人で過ごすのは今日がラストとなるでしょう。

 

「リーリエは何かやりたいことはないか?」

「私ですか?そうですね……。」

 

と言っても私もすぐに思いつくことはないんですよね。

 

他のチームの方々はチーム内でバトルをしたり、近辺で新しいポケモンさんを仲間にしてみたりと色々と手広く行動しているようです。

 

私たちも他のチームの方々のように過ごすのも悪くはないと思いましたが、それよりも私たちは私たちらしくポケモンさんたちと仲良く過ごす方が性に合っている、という事でどちらかと言えばのんびり過ごすことにしています。

 

それに今回の課題はみんなで強くなる、ではなくてみんなとの交流を深めることが目的、とククイ博士もおっしゃっていました。ククイ博士自身も気負うことなく、気軽にキャンプに参加してくれればそれでいいと言っていました。

 

ですが折角三人でいるのにこのままボッとしている、と言うのも勿体ない気がします。キャンプが終わってしまえば次にいつ会えるか分かりませんし、折角ですので軽くどこかへ……。

 

「あっ、そうです!」

「ん?リーリエ、なにか思いついたのー?」

「ちょっと行ってみたいところがありまして、折角ですので三人で行ってみませんか?」

「そうだなー。特に予定があるわけでもないし、このまま最終日を迎えるのも少し名残惜しい気もするしな。折角だしリーリエの思いついた場所に行ってみるか!」

 

そう言って私たちはとある場所に向かい出かけることにしてみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーリエ、ここって」

「はい!空間研究所です!」

 

そう言って私たちが辿り着いた場所はバーネット博士の職場でもある空間研究所です。

 

「へぇ~、バーネット博士にいつでも立ち寄っていいよ、って言われたんだー」

「はい、キャンプ中も集まりがない時は基本空間研究所にいると言っていましたし。それに私、ここの研究に色々と興味ありまして。」

「確かにUBは興味深いよな。まぁ俺本読むのは少し苦手だけど……。」

「おれもじっとしてるのはあまり得意じゃないかなー。でもUBがどうなったのかも気になるよねー。」

 

空間研究所で行われている研究内容は、主に地球外生命体ともいえるUBの詳細、及びウルトラホールと呼ばれる不思議な空間の研究です。

 

ただ空間研究所での研究はあまり公にされてはいないそうです。UB自体が未だ不明慮な点が多く、そのような謎の生命体の事を公にしてしまえばパニックになってしまう恐れもあります。また、トレーナーによっては興味を持たれてしまい、UBを捕獲しようと奮起してしまうトレーナーも増えてしまう事でしょう。強大なUBの存在に魅了されてしまう人も現れる事でしょう。

 

そうなってしまうと危険な存在でもあるUBの怒りを買い、人間に危害を及ぼしてしまう可能性も出てしまいます。お母様がウツロイドさんの神経毒にやられてしまったのがいい例です。

 

だからこそ、バーネット博士はここで密かに研究を続け、エーテル財団と協力することで事前にUBへの対処法を模索しているのだそうです。二度とお母様のような犠牲者を出さないために。

 

私たちは受付の方にバーネット博士の名前を出し、研究所の内部へと入れてもらいました。私たちはエレベーターへと乗り込み、バーネット博士の仕事場である研究階層へとやってきました。

 

エレベーターの扉が開き、部屋の奥へと足を進めます。するとそこにはバーネット博士と、2人の見覚えのある人物がいました。

 

「なるほど、そんなことがあったのですね。」

「やっぱりすごいねー!この世界の技術って!」

 

長身の男性と小柄な女性、それに他で見ることの無い変わった衣装。間違いなくその二人は……。

 

「ダルスさんにアマモさん?」

「むっ?ああ、君か。また会うとは、奇遇だな。」

「おねーちゃんまた会ったねー!元気―?」

 

その2人は紛れもなくウルトラ調査隊のダルスさんとアマモさんでした。お二人が以前会う約束をしている人、と言うのはどうやらバーネット博士の様です。

 

「やぁ、リーリエいらっしゃい!ウルトラ調査隊の人たちと知り合いだったのね。」

「はい、バーネット博士。以前メレメレ島を巡っていた時に偶然知り合って、UBの事などを少し話したんです。」

「そうなのね。この人たちは決して悪い人たちではないし、エーテル財団の紹介で私の元に訪れたそうなの。私もエーテル財団から連絡を受けて、今UBがこのアローラにやってきた時のことを話していたところだったの。」

 

私はバーネット博士の話を聞きなるほど、と頷きました。その後、ウルトラ調査隊の方々と面識のないヨウさんとハウさんが彼らの事を尋ねてきました。

 

「すまない、君たちとは初対面だったな。私はダルス。ウルトラ調査隊と言う組織で活動している。」

「私はアマモだよー!ダルスと同じでウルトラ調査隊なんだ。おにーさんたちは?」

「俺はヨウ。リーリエと同じで島巡りをしているトレーナーです。」

「おれはハウ!おれも島巡りに挑戦してるんだー!よろしくねー!」

 

ハウさんの挨拶にアマモさんも再びよろしくね、と挨拶を返します。なんだかどことなくハウさんとアマモさんは同じ雰囲気を出している気がします。逆にダルスさんとヨウさんも雰囲気が似ている気がしますが。

 

「ねぇ、ダルス君。もしよかったらあなたの目的、彼女たちにも話したらどう?彼女たちは島巡りをしているトレーナーだし、腕前も私が保証するわよ?」

「……そうだな。我々の世界の事情に他者をあまり巻き込みたくはないが、そうも言っていられないか。」

「ダルスさんたちの目的、ですか?」

 

ダルスさんの表情から察するに、余程深刻な内容なのでしょう。ダルスさんは今まで話さなかった事情を、私たちに話してくださいました。

 

「まず、君たちはこの世界が別の世界が存在しているとしたら信じるだろうか?」

「別の世界?」

「それってどういうことー?」

 

ダルスさんは疑問符で問いかけるハウさんの問いに答えてくれました。

 

「我々はこの世界とは別の世界からやってきた。ウルトラホールの向こう側に存在する世界、そう、君たちがUBと呼ぶ生命体が存在している世界から。」

「っ!?UBの世界からですか!?」

 

私は衝撃の事実に驚きのあまり声をあげてしまいました。それはヨウさんとハウさんも同じようで、目を見開き驚きを隠せない様子でした。

 

「そうなんだー。おねーちゃんたちの過ごすこの世界とは全く違う、別の可能性を辿った世界なんだ。」

「リーリエたちに分かりやすく伝えるなら、平行世界、パラレルワールドと言った方が分かりやすいかしら。」

「パラレル……ワールド……」

「それって漫画とかでよく出てくる?」

 

バーネット博士は分かりやすく補足をし、ヨウさんの質問に頷くことで肯定しました。

 

漫画とかでもよく出てくる単語、平行世界。それはあらゆる可能性の世界。例えば誰かと出会った世界、出会わなかった世界。例えばある出来事が起きた世界、起きなかった世界。例えば何かが失われてしまった世界、失わなかった世界。そう言ったあらゆる可能性が文字通り平行し、無数の可能性が連鎖されてできる世界のこと。

 

平行世界の可能性は無限大。私たちの過ごす世界で何かが起こるたびに、いえ、何かが起こらなくともそれらの可能性が広がり続け、平行世界が生まれ続けて行きます。この世界の私たちは今空間研究所にいますが、別の世界の私たちはもしかしたらこの場所にはいないかもしれません。もしかしたら私はヨウさん、ハウさんとは別の人といるかもしれません。そんな可能性の世界を、私たちは知る由もないので考えてもキリがありませんが。

 

「私たちの世界はウルトラメガロポリス、と呼ばれている。とは言え、こちらの世界には殆ど名が残されていないそうだが……。」

 

ダルスさんたちの世界はウルトラメガロポリスと言う名前の世界だそうです。ダルスさんが最後の方で呟いた言葉は少々聞き取ることができませんでしたが。

 

「こっちの世界に来て驚いたんだー!だって私たちの世界と違って明るいんだもん!」

「そっちの世界だと暗いのー?」

「ああ。太陽なんてものも初めて見た。俺たちの世界は、一言で言えば暗黒で覆われている。」

 

ダルスさんのその言葉は私たちにとって衝撃的なものでした。私たちの暮らすこの世界とは全く別に、そのような世界が存在しているとは想像もしていませんでした。

 

「心配することはない。常に暗黒だからと言って我々の世界が滅びる、と言ったことはない。」

「でも太陽の光もないからこの世界みたいに植物とかは成長しなくなっちゃったんだよねぇ。」

 

アマモさんの話によると、植物だけでなくポケモンさんたちの生活する環境も厳しくポケモンさんの数も大幅に激減してしまったようです。みんなウルトラホールを通り、別の世界で自分に合った生活環境を探し求めているのだそうです。

 

「そんな世界からダルスさんたちはどうやってこの世界に?」

「ああ、我々はとあるポケモンの力を借りてウルトラホールを通ってきたんだ。この世界に、我々の世界を照らす希望の光があると聞いてな。」

 

あるポケモン、私はその言葉を聞いてふと一匹のポケモンさんの姿が思い浮かびました。私にとってとても身近であり、その上とても大切なポケモンさんです。

 

「そのポケモンは我々の世界では“月を誘いし獣”と呼ばれているが、この世界ではこう呼んだ方がいいか。」

 

 

 

 

 

 

 

――――ルナアーラと

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と同時にヨウさんとハウさんは再び驚きの表情を浮かべました。ですが私はなんとなくそんな気がしておりました。ウルトラホールを自在に行き来できるポケモンさんは、UBを除けばソルガレオさん、ルナアーラさん、すなわちほしぐもちゃんしかいません。

 

「我々の世界ではソルガレオ、ルナアーラは崇められる存在だ。彼らの力を借りることで、このアローラの地まで来ることができた。」

 

ダルスさんは自分たちの世界に起きた悲劇的な出来事を話してくださいました。

 

ダルスさんたちの世界では、かがやきさまと呼ばれる存在が世界を照らしてくれていたそうです。

 

ですがある時、悲劇は起こりました。世界を照らす光の神のようなかがやきさまは、突然荒神として暴走を始めてしまったそうなのです。

 

記録によれば、先人たちの過ちによりかがやきさまの身体の一部が欠如してしまい、膨大な光エネルギーの制御はできない状態へと陥ったことが原因とされているようです。それにより、かがやきさま自身に不純物が蓄積してしまった結果、ダルスさんたちの世界は闇の世界となり常に暗黒が支配する世界へと豹変してしまったそうです。

 

「我々ウルトラ調査隊は、かがやきさまを鎮める方法を長年模索し続けた。その結果、この世界、光の世界のポケモンとトレーナー、彼らの力を合わせることで世界は再び光をもたらす。そう記録されていたのだ。」

「ポケモンさんと、トレーナーが?」

「どういうことだろー?」

 

私たちはその言葉に意味がイマイチ分からず頭を悩ませます。トレーナー本人である私たちが分からないのであればこれ以上悩んでいても仕方ない、そうダルスさんは結論づけてある質問を投げかけてきました。

 

「一つ、君たちに尋ねておきたいことがある。」

「なんですか?」

「私たちね、ちょっとある人探しもしてるんだ♪」

「とはいえ自分たちも面識は全くない。だから君たちに尋ねておこうと思ってな。」

「その探している人って誰?」

「おれたちが知ってる人だったら教えられるよー!」

 

ヨウさんとハウさんの返答にダルスさんたちは一呼吸おいて、その人物のこと口にしました。その人物とは……。

 

「このアローラで最強のトレーナーは誰だ?」

「……え?」

 

アローラで最強のポケモントレーナー。そんな人、たった一人しか思いつきません。

 

「えっとねー、記録ではトレーナーとポケモンが力を合わせてって言ったでしょ?だったら最強のポケモントレーナーだったら、何かの手掛かりになるかなぁ~って思ったんだ。」

「我々ではこの世界はおろか、ポケモンの知識すらマトモにないからな。」

「最強のトレーナーって言ったら一人しかいないだろうな。」

「そうだよねー。当然その人はアローラのチャンピオンでしょー!」

「ほう?チャンピオンか。」

「はい、その人の名前は、アローラ地方の初代チャンピオン、シンジさんです。」

 

私はその最強のトレーナーに当てはまる人物の名を口にしました。少なくとも私の中では最強と呼べるトレーナーであることは間違いありません。

 

「へぇ~、そんなすごいトレーナーさんがいるんだぁ♪」

「チャンピオン、か。彼はどこにいるか分かるか?」

「すいません、シンジさんはチャンピオンとしてのお仕事で忙しく、普段連絡が取れないので。」

「ふむ、確かにチャンピオンとなれば当然と言えば当然か。」

「仕方ないね。自分たちの足で探すしかないみたいだね。」

「まぁ時間がないわけではない。この世界の情報も集めつつ探すとするか。」

 

そう言ってダルスさんとアマモさんは気を取り直して、手掛かりとなりえる存在でもあるシンジさんを探すことを次の目的と決めました。

 

私はその時、ふと気になったことがあったのでそのことをダルスさんたちに尋ねることにしてみました。

 

「そういえば、ベベノムさんはどうしたのですか?」

「あぁ、ベベノムは」

「この中だよ♪」

「あっ、これって。」

「うむ、君たちのよく知っている、モンスターボールと呼ばれるものだ。」

 

そう言ってアマモさんが出してきたのは、一つのモンスターボールでした。どうやら、ベベノムさんは今このモンスターボールの中で休んでいるようです。

 

「エーテル財団から支給されたんだ。全面的にバックアップさせていただく、とのことだそうだ。」

「私たちこの世界では異端児だからねぇ。アローラの人たちがみんな優しくて助かるよ♪」

 

アマモさんはいつものように笑顔でそう言ってくれました。その言葉に私も同意です。私もこのアローラの人たちに親切にしていただき、色々と助けられていましたから。

 

「さて、そろそろ私たちは行くとする。と言っても、暫くはこの街に滞在するつもりだが。」

「そうだね。アーカラ島だとここが一番大きな街みたいだしね。」

「何かあったらまたここに来るといいよ。可能な限り私たちもククイ君も協力させてもらうわ。」

「ありがとうございます、バーネット博士。では、我々はこれで。」

「お姉ちゃんたちもバイバーイ♪」

 

そう言って手を振り、アマモさんとダルスさんは空間研究所を去っていきました。この調子だと、また旅先で会いそうな気がしますね。

 

「さて、リーリエたちは私たちの研究所の見学にでも来たのかな?」

「はい、折角カンタイシティにいるのでバーネット博士への挨拶も兼ねて研究所をみてみたいなと思いまして。」

「そう、普段ここを立ち寄る人なんていないしね。好きなだけ見て行っていいわよ!質問があればいくらでも答えるわ。」

 

私たちはバーネット博士の心遣いに感謝し、お言葉に甘えて研究所を見学させていただくことにしました。興味深い研究内容などもあり、私にとっては有意義な時間となりました。

 

ハウさんは意外にも興味津々な部分もありましたが、ヨウさんは暫くすると飽きてしまったのか欠伸をしたりと少々退屈な印象でしたが。それでもUBの話となるとすぐに食いついていましたけど。やっぱりポケモンさんの事となると退屈となることはないみたいです。そればかりはトレーナー共通ですかね。

 

私たちは空間研究所の見学を満喫いたしました。しかし、ここで聞いたダルスさんたちの世界の問題に、私たちが更に深く巻き込まれて行くことになるとは、この時はまだ思いもしませんでした。




既にルザミーネさんは救っており、UBも出てきているので原作とは所々違います。オリジナル設定や独自解釈なども出てくると思うのでご覚悟下さいませ。

ところで最近はガチパを組んでやっていますが、サニーゴが結構気に入っております。
パーティはサニーゴ、ドリュウズ、ギャラドス、ヒートロトム、ブラッキー、ニンフィアとなっております。
最初は対面構築のゴリラパ使ってみたんですけど、あまりにも悲惨な結果だったのでサイクル戦で有利をとりやすい対面操作構築にしたらかなり勝率上がりました。私には交代読みとかの方が性に合ってるみたいです。

最近では動画上げるわけでもないのにゆっくり実況とか作ったりしてます。私の会社に今作から入った初心者の方もいるので色々解説ついでに作ってますけど。

あっ、次回は多分トリプルマルチバトル回となります。XYのサマーキャンプ回的なあれです。


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3対3のマルチバトル!決めろ、三人の連携攻撃!

感想が貰えるだけで私はどこまででも頑張れる気がする


空間研究所でのダルス、アマモの話を聞き、バーネットの案内で研究所の見学を満喫したりーりえ、ヨウ、ハウの3人。その翌日、今日は3人一組という課題の最終日である。

 

「よし!みんな集まってるな!」

 

恒例のククイによる挨拶から始まる。参加しているトレーナーたちも全員集合し、ククイの声に元気よく返事をする。

 

「今日は待ちに待ったマルチバトル当日だ!ボクが見ている限りでは、各チームそれぞれ上手く交流できていたように見えた!」

 

ククイは皆の課題に関しての感想を口にする。ククイ的にはそれだけで充分と言っていい課題の成果を感じ取ることができたようだ。

 

「だがそれだけでは当然自分自身が成果を感じる事ができていないだろう。今日はチーム全員で力を合わせ、思う存分課題の成果を発揮してほしい!ボクも皆の成長、しっかりと目に焼き付けておくよ!」

 

ククイ博士のその言葉にトレーナーたちは盛り上がりを見せる。やはり新人ばかりとは言え、バトルの衝動に駆られるのはトレーナーの性と言うものだろうか。

 

一方そのころ、リーリエたちのチームは……。

 

「はぁ、なんだか緊張してきました」

「だいじょーぶだって!いつも通り楽しくバトルすればなんとかなるよー!」

「それに関してはハウの意見に賛成だな。あまり気負わず、気楽にやろう。俺たちも知らない仲じゃないしな。」

 

リーリエもハウとヨウの言葉を聞き少し安心する。

 

対戦の結果がどうあれ、成績や順位、格付けがされるというわけではない。しかしリーリエはこれまで旅をした中でタッグを組んだ相手がシンジくらいしかいない。

 

シンジとのタッグであれば、自分が多少の失敗をしようと彼が合わせフォローしてくれるのでリーリエ自身安心感がある。しかし今回タッグを組むのはヨウとハウだ。

 

ヨウとハウの事を信頼していないわけではない。寧ろ前回会った時から幾度か交流を交わし、UBとの戦いで協力し、その上今回のキャンプでは共に過ごしている。出会ってから長いわけではないが、ある程度気心が知れるくらいまでは信頼も深まっているだろう。だからこそ余計に迷惑をかけないかなどの不安ができてしまうのだ。

 

ヨウとハウの気遣いにより、リーリエからは不安の要素が和らいでいく。そんな時、少し前に聞いた覚えのある甲高い声が彼女たちの耳に入ってきた。

 

「おーほっほっほっ!ごきげんよう、リーリエさん!」

 

声のした方へと一斉に顔を向けると、そこには案の定リーリエをライバル視しているナタリア、それと彼女のチームメンバーと思える男二人が付き従っていた。一人は日傘を持ちナタリアを日差しからガード、もう一人は大きな葉を団扇代わりに仰いでナタリアに風を送っている。

 

その様子はまるで我儘お嬢様の命令に従う従者そのものである。二人はまるで嫌な顔を一切しておらず、寧ろナタリアに奉仕しているのが嬉しいかのようにニコニコしているが。

 

そんな彼女たちの様子を見て、ヨウは呆れて物も言えないと言わんばかりに大きく溜息を吐き、ハウはいつものように笑い飛ばしていた。肝心のリーリエはと言うと、顔に出さないように心の中で苦笑いをしている。一応リーリエもお嬢様であるのだが、自分と違ってかなりの高飛車なのに少し引いているのかもしれない。

 

とはいうものの、リーリエ的には初めて名前を呼ばれて少々嬉しいような感情もあり複雑な気持ちでもあるのだが。

 

「で、リーリエに負けたあんたが一体何の様なんだ?」

「失礼な殿方ね。まぁいいわ。リーリエとその他の皆さま、前回は負けてしまいましたが、今日のマルチバトルは必ず勝って見せますわ!覚悟していただきますわよ!」

「あははー!わざわざ宣戦布告しにきたんだねー!」

「ええ、もちろんですわ!リーリエさん、あなたにシンジ様は渡しませんことよ!」

 

普段は温厚なリーリエ。しかし今のナタリアの言葉に反応し、彼女は柄にもなく熱くなってしまい……。

 

「ナタリアさん!私たちは絶対に負けません!」

「あら、意外にも大きな物言いをするのね。そのくらいでなくては面白くありませんわ。」

 

リーリエはそう言い返した。ナタリアは精々頑張ってくださいな、とだけ言い残し、リーリエたちの元を立ち去った。

 

「絶対負けません。このバトル、なにがなんでも勝って見せます!」

「お、おう、そ、そうだな。」

「リーリエ、なんか怖いよー」

 

普段と様子が全く違うリーリエの姿に、ヨウとハウもタジタジにならずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルチバトルが開催され、各々のチームがバトルを進めていく。

 

中にはチームの連携を上手く決めることができ拳を突き合わせる人、思わずハグをする人、負けて悔しさを感じ涙を流す人、握手して互いの健闘を称え合う人、その姿は様々であり、新人であってもトレーナーとしての精神に偽りはなかった。その光景にククイを含むスタッフの面々は微笑んで満足気に見守っていた。

 

そして遂にリーリエたちの番がやってきたのであった。

 

「さぁ、リーリエさんとその他の皆さん、準備はいいですわよね?」

「はい、いつでも構いません!」

「あははー、おれたちはあくまでおまけなんだねー」

「まぁ、目の敵にされたりするよりかはよっぽどマシだけどな。」

 

ハウはともかく、ヨウは彼女の事を面倒くさい人物だと捉えているようだ。寧ろその解釈に間違いはないのだが。

 

そんなこんなでリーリエも含む全員の準備が整り、審判を務めるスタッフが今一度確認をとる。

 

「全員、バトルの準備はよろしいですか?」

『はい!』

「それでは、ポケモンをお願いします!」

 

審判のその合図と共に全員がポケモンを一斉に繰り出す。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

「行くよー!フクスロー!」

『スロー!』

「頼むぞ!ピカチュウ!」

『ピッカチュ!』

 

リーリエはマリル、ハウはフクスロー、そしてヨウはピカチュウである。ヨウはピカチュウをゲットした時から、このマルチバトルではピカチュウを選出すると決めていたようだ。対してナタリアたちのポケモンは……。

 

「行きますわよ!ユキメノコ!」

『メッノ!』

「コノハナ!」「ハスブレロ!」

『コッハ!』『ハッロ!』

 

ナタリアのパートナーはユキメノコ、そして取り巻きのポケモンはコノハナとハスブレロである。ユキメノコは見た目と仕草からお嬢様にはお似合いのポケモンの一体であろう。

 

「それでは、バトルはじめ!」

「先手必勝ですわよ!ユキメノコ!こおりのつぶて!」

『メノ!』

 

審判のバトル開始の合図と同時に動き出したのはナタリアのユキメノコであった。ユキメノコはリーリエのマリルにこおりのつぶてで速攻を仕掛ける。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルルル!』

 

マリルはバブルこうせんでこおりのつぶてに対抗する。こおりのつぶてとバブルこうせんは互いにぶつかり合い相殺する結果となった。威力は互いのほぼ互角といったところか。

 

「つづけてシャドーボール!」

『メッノ!』

 

ユキメノコはシャドーボールで更に連続で畳みかける。当然ターゲットはリーリエのマリルだが、これはチーム戦だという事を忘れてはいけない。

 

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『ピィカヂュウウゥ!』

「フクスロー!このは!」

『フッスロォ!』

 

ピカチュウの10まんボルト、フクスローのこのはによる合わせ技でシャドーボールをあっさりと撃ち抜いた。

 

「へへへー、おれたちも忘れちゃいけないよー!」

「ああ、相手はリーリエだけじゃないぜ?」

 

その2人の様子にナタリアは腹立たしさを感じ舌打ちをする。その後、取り巻きである2人に声を荒げて指示を出すのだった。

 

「何してるのあなたたち!早く攻撃なさい!」

『は、はい!』

「ハスブレロ!タネマシンガン!」「コノハナ!タネマシンガン!」

『レッロ!』『コッハ!』

 

ハスブレロとコノハナは同時にタネマシンガンを発射する。しかし三人の様子からして統率が取れておらず、イマイチ息も合っていない。

 

チーム戦に置いて最も重要なのは個々の能力ではなく、それぞれの連携である。例え一人が特質的に強くても、連携が取れていないチームは弱く脆くなってしまう。

 

ナタリアはトレーナーの腕としては申し分ないであろう。しかし他の2人はまだ素人レベルでバトルにあまり追いつけていない様子だ。ナタリアに指示されてから慌てて技を出したことがその証拠。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

『リル!』

 

ハスブレロとコノハナのタネマシンガンはマリルのアクアテールにより簡単に叩きおとされてしまう。その上その後の行動が隙だらけとなってしまう。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカァ!』

「フクスロー!ふいうちー!」

『スロッ!』

 

ピカチュウのでんこうせっかがハスブレロの正面から直撃し、フクスローは静かにかつ素早くコノハナの背後に回り込みコノハナを吹き飛ばす。

 

「ハスブレロ!?」「コノハナ!?」

『れろ……』『はっな……』

「ハスブレロ、コノハナ、戦闘不能!」

 

今の一撃でハスブレロとコノハナは戦闘不能となる。鍛えられているヨウとハウのポケモンの一撃を耐えることは出来なかったようだ。

 

「ったく、だらしないですわね!ユキメノコ!あられですわ!」

『メノォ!』

 

ユキメノコが声をあげると、快晴の空から霰が降ってくる。天候を変え、自分に有利なフィールドに書き換えたようだ。

 

『リルッ』

『ピッカッ』

『スロォ』

 

マリル、ピカチュウ、フクスローは霰による微量のダメージを受けてしまう。霰時はこおりタイプ以外のポケモンは一定間隔で僅かなダメージが入ってしまうのだ。

 

それと同時にユキメノコの姿が霰の中に溶け込む。ユキメノコの特性、ゆきがくれだ。

 

ゆきがくれは霰状態の時に自身の回比率が上昇する特性だ。これによりユキメノコの姿が霰の中へと隠れ、簡単に攻撃を当てることができなくなってしまったというわけだ。

 

「くっ!これじゃあユキメノコの姿がっ!」

「ユキメノコ!こおりのつぶて!」

『メノッ!』

『ピカッ!?』

 

ユキメノコの攻撃がピカチュウに直撃する。一瞬だけ姿を現したものの、それでもまたすぐに姿を消してしまう。攻撃速度が速いため、姿を現した瞬間に狙うのも難しいだろう。

 

次はどこからくる、と警戒し辺りを見渡す三人。しかし……

 

「シャドーボール!」

『メェノ!』

『スロッ!?』

 

今度はシャドーボールがフクスローに突き刺さる。フクスローもその攻撃でピカチュウと同様にダメージを負う。

 

「このままではみんなじわじわとダメージを受けてやられてしまうのも時間の問題です。どうしたら……」

 

リーリエは現在の状況を作り出している空をゆっくりと見上げる。そこにあったのは先ほどの快晴から一変して広がる暗雲と霰。それを見たリーリエはふとあることを思いついた。

 

「暗雲……天候……そうです!ヨウさん!ピカチュウさんの10まんボルトです!」

「ピカチュウの?っ!?そうか!分かった!」

 

ヨウはリーリエの意図を感じ取ることができたのか、リーリエの言葉に従いピカチュウに指示を出した。

 

「ピカチュウ!10まんボルト!空に向かって全力で撃て!」

『ピカッ!?ピッカチュウ!』

 

ピカチュウは一瞬戸惑うも、ヨウを信じて天高く自分の全力の10まんボルトを放つ。ナタリアは彼らの意図がよく分からず笑っているが、その笑いはすぐに驚愕の表情へと変化した。

 

 

「なっ!?嘘!?」

『メノッ!?』

 

ナタリアとユキメノコは思わず驚きの声をあげる。それもそのはずだ。何故なら先ほどまで霰を降らしていた暗雲から、突然雷雨が降り始めたのだ。

 

天候はちょっとしたことで簡単に変化する。先ほどまで霰を降らしていた空に立ち込める暗雲だったが、ピカチュウの強力な電撃を蓄積させられ、その蓄積された電気を放出するために雷雨へと変化したのだ。

 

「さっすがリーリエー!これでユキメノコのゆきがくれも怖くないねー!」

 

ハウの言う通り、霰が止んだことによりユキメノコの姿はハッキリと目に映るようになった。これでユキメノコの脅威もなくなり、三人は一斉に攻撃を仕掛けた。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

「ピカチュウ!10まんボルト!」

「フクスロー!このはー!」

『リルル!』

『ピカッチュウ!』

『スロォ!』

「っ!?ユキメノコ!れいとうビーム!」

『メノッ!』

 

マリル、ピカチュウ、フクスローが同時に合体技として攻撃を放つ。ナタリアは慌ててれいとうビームにより反撃するも、流石に三匹の合わせ技には威力が遠く及ばずあっさりと弾き返され、砕けたれいとうビームと共に飛ばされた。

 

「ユキメノコっ!?」

『めのぉ……』

「ユキメノコ、戦闘不能!よって勝者、リーリエ、ヨウ、ハウチーム!」

 

ユキメノコは三位一体の攻撃で戦闘不能となり、リーリエたちの勝利が確定した。リーリエたちはその勝利に互いに喜び、ハイタッチをして喜びを分かち合う。

 

「くっ、一度ならず二度までも!覚えてなさい!絶対にぎゃふんと言わせてみせるんだから!行くわよ!あんたたち!」

『は、はいっ!』

 

そう言って悔しそうな声を出しながらナタリアと取り巻きたちはその場を立ち去っていく。取り巻きたちは後で説教されるのだろうな、と内心ビクビクしながらナタリアについて行ったのは言うまでもないだろう。

 

「やあ君たち、いい戦いぶりだったよ。」

『ククイ博士!』

 

ククイが戦いを終えた彼らに話しかける。どうやら今の戦いを観戦していたようだ。

 

「君たちの成長速度は素晴らしいね、ボクも嬉しい限りだよ。」

 

そう言って、ククイは三人の成果を褒め称える。その後ククイは、そうそうと続けてあることを口にした。

 

「もうこのキャンプも最終日に近付いているが、ラストにはあるサプライズを用意しているからね。」

「サプライズ、ですか?」

「なになにー?サプライズってなにー?」

 

サプライズの内容が気になりしつこくククイに尋ねるハウだが、ククイは「それはその時までのお楽しみ」とだけ言いそのままその場を立ち去った。

 

もうすぐキャンプも終わり。名残惜しくも充実し自分の成長を感じる事ができた三人は、ラストのサプライズを気になりながらも、残りの課題に勤しむのであった。




今ガチパで3,000帯をウロウロしてます。流石にこの辺りから中々上がんないです。調子がいい時は本当に読み勝てたりするのでかなり調子いいんですけどね。

陽気ドリュウズのA↑1珠アイヘを私のニンフィアちゃんがリリバの実込みで残り6で耐えて勝利して滅茶苦茶嬉しかったのはいい思い出です。B調整が上手く活きました。

因みに私のニンフィアちゃんの努力値調整は上から順に

H164/B92/C212/D4/36

です。ニンフィアミラーの時に制しやすいよう多少Sにも振ってます。
一応アーマーガア意識ならB削ってSを60か68くらい振るといいかもです。珠ニンフィアだったらそれくらいS振るとHD振りガアじゃない限りダイバーンで上から高乱数1発で持ってけると思われます。

いざという時の為のリリバニンフィアはいいぞ!


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最後の課題!ついに始動Z技!

最近色々とやりたいことが多すぎて困ってます。ポケモン剣盾や小説執筆は当然として、スマブラ、遊戯王、ゼノブレ、ゲーム大全、久しぶりの風花雪月、なんとなくで今更始めたスプラ2etc

因みにポケモン剣盾前シーズンの最終レートは約8,000位くらい(詳しくは見てなかった)、最高レートは2,712位でした。

ゲッコウガの再来withエースバーン


先日のチーム課題から数日が経過しました。

 

その間も色々な課題がありました。トレーナーズスクールのようにポケモンさんの基礎知識を学んだり、バトルなどを抜きにして様々なポケモンさんたちと触れ合ったりと、まるで初心の頃に帰ったかのような経験をすることができてある意味で新鮮な体験でした。

 

そしてポケモンZキャンプ最終日が近づいた今日、以前ククイ博士がおっしゃっていたその日がやってきました。

 

「みんなアローラ!今日もなかよくする、をバッチリしてるかい?」

 

ククイ博士の挨拶に、皆さんが元気よく挨拶をしました。

 

朝食を食べ終わったみんなは、現在ククイ博士の指示により、とある一室に呼び集められ集合しています。当然私の他にも、ヨウさんやハウさん、ナタリアさんたちも椅子に座りククイ博士の言葉を聞いております。

 

「さて、ポケモンZキャンプも残すところ後僅か。この間に全員が成長していることを、ボク自身も実感できているよ。」

 

ククイ博士はそう言って、今日行う課題の内容を続けて告げました。

 

「今日行う課題は、みんなお待ちかね!アローラのトレーナーにとって欠かせないもの、Z技だ!」

 

ククイ博士の言葉にみんなが一斉に歓声をあげました。

 

Z技。ポケモンさんと心を一つにし、アローラに伝わる試練を突破したトレーナーのみが扱うことのできる強力な技です。

 

「この中にも既にZ技を使用したことがあるもの、あるいは見たことがあるものもいるだろう。だが、この課題でZ技の強力さ、Z技の奥深さをより知ってほしい、そうボクは思っている。」

 

ククイ博士はその後、「そして」と更に言葉をつづけました。

 

「今まで頑張ってきた君たちに、今日は一つ、ボクからの大きなサプライズを用意したよ!」

 

以前ククイ博士が少しだけ口にしたこと、用意しているサプライズの事でしょう。私たちにも知らされていないそのサプライズは、私たちにとっても文字通りの大きなサプライズとなりました。

 

「さあ、入ってきてくれ!」

 

ククイ博士のその言葉と同時に、一人の人影が私たちの目の前にやってきました。サプライズとは誰かゲストを呼んだことなんだと察した私たちですが、その正体を知った瞬間に驚きのあまり、全員が口を開き唖然とし、一斉に驚愕の声をあげました。

 

「今日の特別ゲストだ!」

 

だってその人物は、アローラのトレーナー全員の目標であり、憧れでもあり……

 

「アローラ初代チャンピオン、シンジだ!」

 

私にとって、とても大切な人なのですから。

 

「初めましての人は初めましてかな?アローラチャンピオンのシンジです。」

 

シンジさんの登場により皆さんがボソボソと慌ただしい様子で話し始めます。

 

「本物のチャンピオン!?」とか、「えっ、嘘っ!?」とか、「後でサイン貰おう!」といった会話が耳に入ってきます。当たり前のように感じていましたが、シンジさんがいつも傍にいて助けていただいてた私はとても恵まれていたのですね。信じられないことが当たり前のように経験していると、なんだか感覚がズレてしまいます。

 

「今日から最後の課題、チャンピオンに色々とアドバイスを貰う予定だ。滅多にない経験だ。みんな、この機会を有効に活用して課題に臨んでほしい!」

 

ククイ博士の最後の挨拶に全員が先ほど以上に大きく元気な返事をしました。チャンピオンに会えたことが余程嬉しいのでしょう。私としても、島巡りをしている段階でシンジさんに会えるとは思ってはいなかったので嬉しい気分もありますが、今は挑戦者としての再会なので、なんだか新鮮な不思議な気分です。

 

「じゃあ早速だけど、みんな外に出てもらってもいいかな?」

 

シンジさんの言葉に全員返事をして頷き、部屋から退室し外の砂浜へと向かうことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジさんの指示に従い、外の砂浜に集合した私たち。そこに用意されていたものは、練習用の頑丈な的でした。剣道の練習で使うような的、と言えば伝わるでしょうか。

 

「百聞は一見に如かず、僕が今からZ技を実際に使ってみせるよ。」

 

そう言ってシンジさんは自分のポケモンさんを出しました。そのポケモンさんは当然……

 

『フィーア!』

 

シンジさんのパートナーでもあるニンフィアさんです。ニンフィアさんの登場によりトレーナーたちはより一層盛り上がりを見せました。なんだか皆さんの目的が変わりつつある気がしますが……。

 

「よし、ニンフィア、準備はいい?」

『フィア!』

 

シンジさんとニンフィアさんは互いに目を合わせ、それを合図にZ技の態勢に入りました。

 

Z技共通の手を目の前でクロスするポーズを取ります。シンジさんの腕にあるZリングにはめ込まれているZクリスタルが輝き、その後に取ったのはノーマルタイプのZ技のポーズでした。

 

シンジさんがそのポーズを取った後、全力のZオーラがニンフィアさんを包み込みます。そしてニンフィアさんは的に向かって勢いよく走り始め、全力の力を解き放ちました。

 

 

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

 

ニンフィアさんの全力は練習用の的に直撃、その衝撃はとてつもなく大きく、離れて見学していた私たちにまでその衝撃が及ぶ程でした。私たちはその衝撃に耐えるので精一杯でした。

 

その衝撃から、ニンフィアさんの全力のZ技がどれほど強力な物かが伝わります。練習用の的が原型を留めていないことがその証拠です。本物のポケモンさんが受ければ一撃で戦闘不能になりそうです。

 

「本物のZ技はこんな感じだよ。どうだったかな?」

 

シンジさんの言葉に全員が口をそろえて凄かった、等の言葉にならない感想を口にしていきます。単純ではありますが、実際にその言葉が最も適切だと私も思ったほどです。

 

「Z技は、自分のパートナーとの絆が最も重要なんだ。自分のポケモンの事を理解し、気持ちを一つにしないと強力なZ技は発動できない。そのことを頭の中に置いておいてほしい。」

 

シンジさんの言葉に全員「はい!」と答えました。チャンピオンの言葉ですから誰の言葉よりも重みを感じられるのでしょう。

 

「みんなにはここに用意した練習用のZクリスタルで練習してもらうよ。本来のZクリスタルに比べれば力も抑え気味だけど、それでもZ技の練習には充分な力を使うことができるから思う存分練習してね。」

 

そう言ってシンジさんの元にある段ボールに詰められていたのは大量のZクリスタルでした。それらは全てZクリスタルのデータを基に練習用として量産されたもの、所謂レプリカと呼ばれるものだそうです。

 

皆さん、シンジさんの合図とともにZクリスタルを受け取りに行きました。私も同じように受け取り、自分のZリングへとはめ込みました。

 

「みんな受け取ったかな?みんな、まずは思うようにZ技を使ってみて。分からなかったり教えてほしいことがあれば、僕から教えるから遠慮なく言ってね。」

 

そして各自、人数分用意されていた練習用の的を相手に、Z技の練習を始めるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジさんの実践を見てから、発動自体は容易なのではないかと思う人も多かったようですが、実際にはそう上手くはいかないものです。多くの人がZ技を発動することができず、Z技のオーラを纏うものの技を出すことができなかったり、技の途中で力が途切れてしまったりと、様々なトラブルに見舞われました。

 

そんなトレーナーたちのところへとシンジさんは近づき、それぞれに最適なアドバイスを送っていました。そのアドバイスを聞いたトレーナーたちは、言われた通りにするとZ技の発動に成功していました。

 

威力は先ほどのシンジさんと比べるとかなり控えめですが、それでもZ技を発動させることができた感動にトレーナーたちは喜びを露わにして、練習を継続していました。

 

「では私たちもやりましょうか!シロン!」

『コォン!』

 

そう言って私たちはシンジさんから預かった練習用のZクリスタルを使い構えました。

 

シンジさんから貰った本物のクリスタルもありますが、流石に練習もなしに本気のZ技を使用するのは無謀でしょう。

 

シロンはノーマルタイプの技を覚えていないので、私が使用するのは氷タイプのZ技です。

 

私は教えていただいた氷タイプのZ技のポーズを取ります。すると、Z技のオーラがシロンを包み込みました。

 

(よし、いい調子です!これなら……)

 

私はそのままZ技のポーズを成功させ、シロンと共に全力のZ技を放ちました。シロンの足元から氷の柱が現れ、シロンを高く持ち上げました。

 

シロンはZ技のオーラを身に纏い力を集約します。しかし、その力を一気に解き放とうとした時でした。

 

『コォン!?』

「あっ!?シロン!」

 

シロンは慣れないZ技の為か、態勢を崩してしまいZ技は不発に終わってしまいました。シロンの足元から出てきた氷の柱も消え去り、シロンは地上まで戻されてしまいました。

 

「シロン!大丈夫ですか!?」

『コォン』

 

心配で近寄る私に、シロンは笑顔を見せて無事だと答えました。どうやらシロン自身には特に影響が及んだわけではなさそうです。

 

「リーリエも苦戦してるみたいだね。」

「あっ、し、シンジさん!」

 

私が苦戦しているのを見かねたシンジさんが声を掛けてくれました。私は突然のことで驚き、少々声が上ずってしまいました。

 

「良ければもう一回リーリエのZ技見せてくれるかな?」

「は、はい、分かりました!」

 

私はシロンと目を合わせ、もう一度Z技に挑戦してみるという合図を出してチャレンジしてみました。

 

ですが結果は先ほどと同じで、シロンのZ技は不発に終わってしまいました。

 

「はぁ、はぁ、やっぱりダメでした。何がいけないんでしょうか?」

『コォン……』

 

Z技の反動による体力と気力の消耗だけが私たちを襲います。そんな私たちに、シンジさんが口を開きアドバイスを与えてくれました。

 

「リーリエ、君はZ技を使おうとするときに何を考えてる?」

「え?」

 

シンジさんの質問に一瞬私は戸惑っていました。私はシンジさんの質問の内容を考え、答えを出して返答しました。

 

「今よりももっと強くなりたい、とかですかね……。すいません、自分でも必死で少し曖昧です。」

「そうだね。多分、リーリエは強くなりたいという気持ちが強すぎて却って焦ってるんじゃないかな。」

「そう……かもしれません。」

 

シンジさんの指摘に私はなんとなくですが納得しました。Z技を発動しようとしている時、私は心の奥からの気持ちが昂ってしまった感じがします。

 

上手く言葉にできませんが、シンジさんに早く追いつきたい、もっともっと強くなりたいという気持ちが心にあることは自分でも理解できます。それがZ技に悪影響を及ぼしているのかもしれません。

 

「Z技を発動するときは、まず自分自身が落ち着かないといけないよ。」

「は、はい。ですが……」

「言われても難しいよね。そんな時は、自分のポケモンのことだけを考えるといいよ。」

「ポケモンさんのことを?」

 

私はシンジさんの言葉に疑問符を浮かべて首を傾げました。シンジさんはそんな私にその理由を教えてくれました。

 

「うん。Z技は確かに強力な技。でもその力の源は、なによりもトレーナーとポケモンの絆なんだ。トレーナーはポケモンの事を考え、ポケモンはトレーナーの事を思う。それこそが何より大切なことだよ。」

「トレーナーはポケモンさんの事を、ポケモンさんはトレーナーの事を……」

『コォン』

 

シンジさんはそう語ると、屈んで足元にいるニンフィアさんの頭を撫でました。

 

「僕もバトルの時、ピンチに追い込まれたりすると気持ちが焦っちゃうときがあるんだ。絶対勝ちたい、負けられないって。でも、戦ってくれてるポケモン達の事を考えると、自然と落ち着くことができるんだよね。」

『フィーアァ♪』

 

シンジさんは優しい笑顔でニンフィアさんの頭を撫で続けます。ニンフィアさんも気持ちよさそうな声を出して微笑んでいました。

 

「これは僕の自論、って思うかもしれないけど、ポケモンの事が本当に大切なトレーナーなら、難しいことじゃないはずだよ。」

「……はい!それなら私、出来る気がします!」

 

シンジさんのアドバイスを受け取り、私は気を取り直してZ技に挑戦することにしました。

 

「行きますよ、シロン!」

『コォン!』

 

私は先ほどと同様に、Z技のポーズをとりました。すると再びシロンの足元から氷の柱が現れ、シロンを多角へと持ち上げました。

 

(トレーナーはポケモンさんの事を考え、ポケモンさんはトレーナーの事を思う。私は、シロンの事を信じています!)

 

私はシロンのことだけを考え、Z技に集中します。Z技のオーラが、シロンに集約されて行きました。

 

シロンは力を溜め込み、その力を一気に解放しようと力を込めました。そして……

 

「これが、私たちの全力です!」

『コォン!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凍てつく氷のブレスがシロンから放たれ、練習用の的に直撃しました。その氷のブレス、氷タイプのZ技であるレイジングジオフリーズが練習用の的を氷漬けにしました。

 

威力はまだまだですが、それは紛れもなくZ技なのだと実感することができました。

 

「できました……Z技、使う事ができました!」

『コォン!』

 

シロンの足元に生えていた氷の柱も姿を消し、シロンは地上へと戻ってきます。その様子は力を使い消耗しているようでしたが、Z技の成功の喜びでお互いに吹き飛んでしまっていました。

 

「おめでとう、無事にZ技を発動することができたね。」

「はい!ありがとうございます!シンジさん!」

 

私はシンジさんに頭を下げてお礼を言いました。シンジさんの的確なアドバイスのお陰で、また一歩前進することができました。

 

「でも、これはあくまで一つの通過点に過ぎないよ。それを忘れずにね。」

「はい!」

「それじゃあ僕は他の子の練習も見てくるから、またね、リーリエ。」

 

シンジさんはそう言って私の元を離れていきました。正直言えば少し寂しいですが、シンジさんのチャンピオンとしての務めでもあるため仕方ありません。

 

親しいからと言って贔屓することはなく、誰にも平等に、優しく接する。やっぱりシンジさんはどんな時でもシンジさんなんですね。

 

私はシンジさんが去ってからも、シロンと共にZ技の練習に励みました。私とシロンの体力も消耗してしまうため、無理をせずに少しずつの範囲で、ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早くも今日一日が終わり、皆さんが就寝についたころ、私は何故だか眠れずに少し夜風に当たるために外に出ていました。

 

するとふと、私の耳にある人物の声が入ってきました。その人物の声はなんとなく聞き覚えがありました。

 

私はゆっくりとその声が聞こえた場所まで近づき、物陰から少しだけ顔を出して覗いてみました。するとそこにいたのは、ナタリアさんとシンジさんでした。

 

(ナタリアさんとシンジさん?一体こんな夜更けに何を……)

 

私は何だか2人の会話が気になり、つい聞き耳を立ててしまいました。

 

そして、ナタリアさんのシンジさんに対するお願いが私の耳まで聞こえてきたのでした。

 

「シンジ様!お願いです!私とバトルをしてください!」




久しぶりに?チャンピオンに登場していただきました。今後もこんな形でちょっとずつ出番を与えていくと思います。

実際チャンピオンの仕事が明確に描写されたことが無いので分からないのでこんな感じでやってるんじゃないかなって感じです。

シンオウのチャンピオンは考古学者だし、カロスのチャンピオンは女優だし、ホウエンのチャンピオンは石マニアだし……。

若干中途半端な感じですが、次回は少しバトルを挟みます。

感想や意見、リクエストなどはいつでも受け付けておりますので気軽にどうぞです!


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シンジVSナタリア!次なる予兆

鎧の孤島が配信されました!

正直あまり期待はしてませんでしたけど、ポケモン連れ歩きシステムが復活したのが最高すぎました!しかもポケモンスナップとかいうかつての超名作が新作として復活するもよう。ヒバニーを確認したので第八世代のポケモンまで実装確定。最高すぎかよ増田ァ!

取り敢えずストーリーは終わったから次は図鑑埋めと新技習得したゴリランダー辺りの厳選かな。


「シンジ様!お願いです!私とバトルをしてください!」

 

眠れない夜、泊っている寮から少し離れた場所でシンジさんとナタリアさんを見かけた私は、悪いと思いながら物陰から2人の会話を聞いていました。

 

すると、ナタリアさんがシンジさんに頭を下げてお願いごとをしていました。

 

(ナタリアさんとシンジさんがバトル……ですか?)

 

いけないこととは分かっていましたが、それでも二人の会話の内容がどうしても気になってしまったので、私は物陰からじっと2人の様子を見届けていました。

 

どうやらナタリアさんはシンジさんとのポケモンバトルが望みだそうです。シンジさんは優しい顔から一転、少し険しい顔をしてナタリアさんにあることを尋ねました。

 

「ナタリアちゃん……だっけ?理由を聞かせて貰ってもいいかな?」

「もちろん!シンジ様と戦って、もっともっと腕を磨きたいからですわ!そして、私の実力をシンジ様に認めていただきますわ!」

 

シンジさんはナタリアさんの話を聞いて少し悩む素振りを見せました。その後、再びナタリアさんの目と視線を合わせると、軽く溜息をついてから答えを出しました。

 

「バトルしないと納得しない、って顔してるね。仕方ない。本当はあまりバトルしないようにしてるんだけど、今回は特別にそのバトル、受けてあげるよ。」

 

ただし、他の人には内緒でね、と言う条件を付け、シンジさんはバトルを承諾しました。ナタリアさんもシンジさんの返答に感謝し、お互いに距離を離してバトルの準備をしました。

 

「ルールは1対1のシングルバトル。どちらかのポケモンが戦闘不能、またはバトル続行不能と判断したら終了。それでいいね?」

「もちろんですわ!」

 

そしてシンジさんはモンスターボールを取り出し、そのモンスターボールを投げてポケモンさんを繰り出しました。そのポケモンさんは……。

 

「行くよ!イーブイ!」

『イッブ!』

 

シンジさんの持っている手持ちの中で唯一進化していないポケモンさんであり、色違いでもあるイーブイさんでした。

 

「イーブイ?ニンフィアではないんですの?」

「うん。でもこの子も僕の自慢のポケモンだからね。油断してると、痛い目に合うよ?」

『イブイ!』

(ニンフィアでなくても、あのシンジ様のポケモンです。決して弱いはずはありませんわ。)

「でしたら私はこの子で行きますわ!ユキメノコ!出番ですわよ!」

『メノォ!』

 

シンジさんのイーブイさんに対し、ナタリアさんの繰り出したポケモンさんはユキメノコさんでした。

 

ユキメノコさんのタイプはゴーストタイプ。イーブイさんのノーマルタイプの技を無効化でき、ユキメノコさんのゴースト技もイーブイさんに効果はありません。

 

ですが、ユキメノコさんは同時にこおりタイプも所持しているため相性としてはユキメノコさんの方に分があるでしょうか。

 

そして早くもシンジさんとナタリアさんのバトルが始まりました。

 

「さあ、いつでもいいよ。」

「それでは遠慮なく攻めさせていただきますわ。ユキメノコ!まずはあられですわ!」

『メノォ!』

 

ユキメノコさんは早速得意のフィールドに変更しました。霰状態にすることで、ユキメノコさんの特性であるゆきがくれが発動し、それを利用する戦術に私たちも苦戦させられました。

 

(シンジさんはどのように対処するのでしょうか?)

 

私はシンジさんがこの戦術をどう打ち破るのか、それに興味が湧いてきました。恐らくシンジさんであればこの厄介な戦術も突破できるでしょう。

 

『イブ!?』

 

イーブイさんは霰の中に姿を消してしまったユキメノコさんに戸惑っています。シンジさんの手持ちの中ではあまり戦い慣れていないそうなので仕方ありません。

 

「落ち着いて、イーブイ。僕がついてるから。」

『イブ?……イブッ!』

 

シンジさんの一声で先ほど戸惑っていた姿が嘘のように、今度はイーブイさんの表情が一変し、凛々しい顔へと変化しました。

 

「目で見ようとしたらダメだよ。冷静に、僕の言うことに従って動けば大丈夫だから。」

 

イーブイさんはシンジさんの言葉に頷き、目を閉じました。相手の姿が見えないとは言え、この状況で目を閉じるのは自殺行為にも近いことでしょう。

 

ですがそれは逆に、イーブイさんがシンジさんの事を心から信頼している証拠であるとも言えます。

 

イーブイさんはその場から動くことなくユキメノコさんの動向を様子見しているようです。今のところ、シンジさんもイーブイさんに指示を出す気配はなさそうです。

 

その時、ナタリアさんの方が先に動き始めました。

 

「ユキメノコ!こおりのつぶて!」

 

ユキメノコさんは静かにこおりのつぶてを放ちました。ですがイーブイさんからは完全に姿が見えず、死角からの攻撃です。これに対しシンジさんたちのとった行動は……。

 

「ジャンプして躱して!」

『イブ!』

 

イーブイさんはユキメノコさんの攻撃をジャンプして回避しました。シンジさんのとった行動はシンプルに相手の攻撃を回避することだけでした。

 

ユキメノコさんの攻撃は地面に着弾し、その衝撃がイーブイさんの周囲を包み込みます。これで更に視界は悪くなってしまったでしょう。

 

しかしイーブイさんは再び先ほどと同様に動きを止めています。耳だけが僅かに動き、目は閉じてシンジさんの指示を待っております。

 

霰がイーブイさんの体に降りかかり、僅かですがイーブイさんの体力を蝕んでいきます。ですがイーブイさんはそのダメージに対して表情一つ変えず、微動だにしていません。

 

「ユキメノコ!れいとうビーム!」

 

ユキメノコさんは続いてれいとうビームを攻撃する。姿が見えないため、再び死角からの攻撃がイーブイさんに襲い掛かります。

 

「もう一度躱して!」

『イッブ!』

 

イーブイさんは再び攻撃を躱しました。れいとうビームが地面に着弾し、更に土煙が舞い視界を悪くしていきます。

 

(これでは結局防戦一方です。霰でダメージも蓄積されてしまいますし、シンジさんの狙いは一体?)

 

シンジさんには何か狙いがあるはずです。攻撃するタイミングを見計らっているのは分かりますが、この状況からどう攻め入るのでしょうか。

 

今もユキメノコさんは品定めでもするかのようにイーブイさんの周囲を回って様子をうかがっている事でしょう。ゆきがくれでその様子は外からでも見えませんが。

 

ですがそんな時、シンジさんとイーブイさんが遂に動き出しました。

 

「そこだよ!イーブイ!シャドーボール!」

『イッブイ!』

『メノオ!?』

 

イーブイさんのシャドーボールが土煙ごと貫き、ユキメノコさんにクリーンヒットしました。ゴーストタイプであるユキメノコさんに対して、同じゴーストタイプのシャドーボールは効果抜群です。ユキメノコさんの様子からも、相当なダメージが見受けられます。

 

「ゆ、ユキメノコ!?」

(どうして的確に攻撃を当てられたの!?しかも今のダメージでユキメノコの体力も大きく削られてしまわれましたわ。これではZ技は……)

 

まさかの展開にナタリアさんは明らかに動揺している様子です。その瞬間、先ほどまで自分のフィールドでもあった霰が静かに消え去ってしまいました。

 

「っ!?しまった!?」

「今だよ!アイアンテール!」

『イブッイ!』

『メノォ!?』

 

絶妙なタイミングで切れてしまった霰に戸惑っているナタリアさんに大きな隙が生じ、イーブイさんのアイアンテールがユキメノコさんに直撃しました。

 

アイアンテールははがねタイプの技。こおりタイプのユキメノコさんに効果抜群です。先ほどのシャドーボールのダメージもあり、今のダメージで戦闘不能となりました。

 

「ユキメノコ!」

「ユキメノコ、戦闘不能。勝負ありだね。」

 

勝負はシンジさんの勝利で終わりました。ナタリアさんは珍しくガックリと膝をつき、ユキメノコさんをモンスターボールへと戻しました。

 

「よく頑張ったね、イーブイ」

『イブー♪』

 

シンジさんはイーブイさんの頭を優しく撫でてあげます。イーブイさんも気持ちよさそうな声を出しています。

 

「どうして、ですか?どうしてユキメノコの場所が分かったんですか?」

「見えるようにした、それだけだよ。」

「見えるように、した?」

 

シンジさんはナタリアさんの質問にそう簡単に答えました。一体どういうことなのかと、ナタリアさんも首を傾げました。

 

「ユキメノコの攻撃で土煙があがる。確かに視界は奪われてしまうけど、ユキメノコの影が少し浮かんで見えるようになるんだ。」

「影?」

 

私もナタリアさんもその言葉で納得しました。

 

霰状態では確かに姿が見えませんが、土煙とユキメノコさんの姿が重なり、影としてイーブイさんから姿が僅かに見えた、という事でしょう。投影みたいなもの、と言うべきでしょうか。

 

「音を聞いてどこから攻撃が飛んでくるかを判断し観察、そしてチャンスがやってきたら反撃、難しいようだけどシンプルな作戦だよ。」

「……はぁ、流石チャンピオンですわ。どんな時でも冷静に、美しく勝利を決める。完敗ですわね。」

 

ナタリアさんは敗北を認め、そのまま立ち上がりました。

 

「やっぱりシンジ様は凄いですわね。ですが、あなたのこと、決して諦めませんから!」

「え?う、うん。」

 

ナタリアさんはシンジさんにお礼を言って頭を下げ、その場から走り去っていきました。一方のシンジさんは頭に疑問符を浮かべて首を傾げていますが。

 

「ふぅ……」

 

その後、シンジさんは息を吐き、私のいる方へと視線を向けてきました。

 

(ん?あれ?シンジさん、こっち見てます?)

「そこに誰かいるんでしょ?出てきても大丈夫だよ。」

(うっ、バレてたみたいです。これは潔く出るしかなさそうです。)

 

まさかシンジさんにバレているとは思いませんでしたが、バレてる以上ここは出るしかありません。

 

「やっぱりリーリエだったんだね。」

「あ、あはは。すいません、シンジさん。盗み見るような真似をしてしまって。」

「いや、いいよ。気にしてないから。」

 

そんな私を咎めることなく、シンジさんは優しくそう言ってくれました。

 

「リーリエ。彼女についてどう思う。」

「え?どうって、どういうことですか?」

「リーリエから見て、ナタリアちゃんはどんなトレーナーに見えた?」

 

シンジさんからそんな問いが返ってきました。シンジさんがそういう質問をする、という事は何か意味があるのでしょうけど。

 

「どんなトレーナー、ですか。ユキメノコさんの特徴を活かして相手を追い詰める、強かな方だと思いましたけど。」

「……そうだね、リーリエの言う通りだ。」

 

シンジさんはそう言っていますが、イマイチその返答には満足していない様にも見えます。一体シンジさんはどんな答えを望んでいたのでしょうか。

 

「あ、ごめん。そんなに深く考えなくていいよ。ただ、一トレーナーとしての見解を聞いておきたかっただけだから。」

「そ、そうなんですか?」

 

どうやら深読みしすぎたようです。ちょっと緊張しすぎているのでしょうか?チャンピオンとしてのシンジさんに会うのは初めてだったので、自然と強張ってしまっていたようです。

 

「力とかの強さよりも、ポケモンを信じる心が一番大事。それを彼女に伝えたかったんだけど、それを言う前に行っちゃったからね……。」

「あ、あははは……。」

 

出会って間もない私でもなんとなく分かりますが、多分ナタリアさんはかなりせっかちな方のように思えます。言い方は悪いかもしれませんが、人の話を聞いて無い節がありますし……。

 

「さあ、リーリエ。今日はもう遅いから早く戻って寝た方がいいよ。明日からまたZ技の講習とかもあるんだから。」

「あっ、そうですね。では失礼します。」

 

私はシンジさんにそう言われ、すぐ寮に戻り眠りにつくことにしました。もう少しだけ、有意義なキャンプの授業は続きそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強か、か。確かに彼女は強いけど、まだトレーナーとして足りないものも多く感じた。それを自分で見つけない限り、僕や四天王のみんなのところまで辿り着くことはできないかな。

 

「ようやく見つけた。君がアローラのチャンピオンか?」

「おにーさん!こんばんはー♪」

「……ふぅ、今夜はお客さんが多いね。」

「君をチャンピオンと見込んで、頼みがある。手を貸してほしい。」

「頼み事?」

 

やっぱり僕、厄介事に巻き込まれやすい体質なのかな?でも、人が困ってたら見過ごすなんてことはできないし、仕方ないよね。

 

『イブ?』




ゲーム大全してて思ったのは、意外とマンカラが面白くて得意だけど、遊戯王以外のカードゲーム(花札、トランプなど)の運が壊滅的に悪いということです。遊戯王だとあんなに運命力あるのに何でやろか……。


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ポケモンZキャンプ終了!次なる冒険に向かって!

正直期待していなかった鎧の孤島が思いの外神過ぎてヤバかったです。復帰ポケモンもそうですが、何よりヨロイ島限定とは言え連れ歩きシステムの復活は素晴らしかったですね。

常にニンフィアちゃん連れ歩いてますが、可愛すぎてヤバいですね☆

あっ、今回はかつて要望があったことを少し触れさせていただきました。もはや忘れているレベルに前に話ですが……。

そして2週間休んだ割に短めで申し訳ないです……。暇なのは困りますが、やりたいことが多いのも大変です。

ちなみに追加ポケモンで私が今気に入っているポケモンは草食滅びの歌マリルリです。読まれないしドヒドナットに強いからオススメです。


ククイ博士が主催するポケモンZキャンプも終盤。チャンピオンであるシンジさんがキャンプのゲストとしてやってきて、キャンプの盛り上がりは最高潮に達しています。

 

カントーと違って、アローラのチャンピオンであるシンジさんは島巡りをするトレーナーたちからすれば憧れ以上の雲の上に立つような存在。そんな人から色々教えてもらえる上に、少しの間とはいえ一緒に過ごせるのですから嬉しくないトレーナーはいないでしょう。

 

本日行われているのはチャンピオンによるZ技の講習会でした。

 

Z技は実技で習得するのも勿論重要ですが、それだけでなく学んで理解を深めるのも必要なことだそうです。確かにどれだけ修練を積んでZ技を極めても、それだけではZ技の真価を発揮できないのは間違いないでしょう。

 

「さあ、ここでもう一度復習だよ。Z技にとって最も大事なものは何かな?」

『ポケモンとの絆です!』

「正解、みんないい答えだね。」

 

シンジさんの問いに殆どの人が一斉に答えました。今まで以上に参加者の皆が張り切っているような気さえ感じられるほどの回答でした。

 

「はははー、やっぱりチャンピオンの影響力ってすごいねー!」

「そうだな。みんなが真剣にシンジの言葉一つ一つに集中して聞いてるもんな。」

 

ヨウさんもハウさんも私と同じことを考えていたようです。カントーを旅していた時は全く意識してませんでしたが、チャンピオンの影響力は本当に凄まじいものです。

 

トレーナーであれば誰もが憧れる存在、チャンピオン。シンジさんは初めてアローラで開催された大規模なトーナメントに優勝してチャンピオンになりました。

 

約2年ほど前に開催されたトーナメントは、アローラのトレーナーであれば誰でも知っていることでしょう。当時の試合を知っている人であれば、シンジさんがどれだけ強いトレーナだと言うのが理解しているはずです。

 

そして私にとって、最も尊敬する最高のポケモントレーナーです。

 

 

 

 

翌日、今日はシンジさんによる別の特別講習が行われていました。

 

今回はZ技についてではなく、ポケモンさんの健康状態に関してでした。シンジさん曰く、島巡りをするトレーナーたるもの、自分のポケモンさんの健康状態を管理するのはトレーナーの仕事、だそうです。

 

「うん、このレントラーは良く育てられてるし、健康状態もいいみたいだね。」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「このゴロンダ、なんだか少し元気ないみたいだね。」

「はい、最近ポケモンフーズもあんまり食べてくれなくて。」

「そういう時は、細かく切ったオレンの実を混ぜてあげるといいよ。誰でも簡単にできるし、食欲のないポケモンも喜んで食べてくれるはずだから。」

「そうなんですね!ありがとうございます!」

 

シンジさんは参加しているトレーナーのポケモンさんの様子を見ながら、的確なアドバイスを与えていました。他にもポケモンさんの体力を回復するオボンの実や、毒状態を治すモモンの実、ポケモンさんの怪我を治すきずぐすりは必ず常備しておくことなど、旅をすることにおいての基礎的な知識から、ポケモンさんの体調が悪い時に誰でも簡単にできるちょっとしたレシピなども教えてくださいました。

 

シンジさんもかつては自分一人で旅していたので、当時自分が経験したことを活かして島巡りのトレーナーが困らないようにある程度の知識を伝えています。この場にいるトレーナーにとってはとても有意義な時間となることでしょう。もちろん、それは私にとっても有意義な時間です。

 

 

 

 

 

その次の日も、また次の日も、シンジさんによる講義は続きました。そして遂に迎えたポケモンZキャンプ最終日。シンジさんの講義が全て終了し、最後の授業が始まり、全員がいつもの一室に集まりました。

 

「みんな、今日までお疲れ様。今日でキャンプも僕の講義も終わりだよ。」

 

シンジさんの挨拶から始まり、みんなはその言葉に対して「え~」と言う少し残念そうな声を出していました。その反応にシンジさんは困ったように苦笑いをし、そのまま言葉を続けました。

 

「ここで学んだことは、将来必ずみんなの役に立つはずだよ。僕やククイ博士から学んだこと、決して忘れずないでね。みんなが僕に挑戦する時を楽しみに待ってるからね。」

 

シンジさんのその言葉に、私も含む全員が元気よく「はい!」と明るい表情で返答しました。チャンピオンに期待されているような言葉をかけられれば、誰でも嬉しくなるものでしょう。

 

「さて、チャンピオンから貴重な体験をさせてもらったが、これもいい機会だ!最後にチャンピオンに質問がある人はここで聞いておくといい。もちろん、一人一回までだからね。」

 

ククイ博士のその言葉を聞いた全員が、一斉に手を挙げてシンジさんに質問を投げかけます。その勢いに圧倒され、シンジさんも少し困惑気味な様子です。

 

「チャンピオンはどんなトレーニングをして強くなったんですか?」

「特別な特訓はしてないよ。自分のパートナーであるポケモン達と一緒に過ごして、遊んで、食事をして。心を通わせることが一番重要だと、僕は考えてるんだ。」

 

「チャンピオンは今までアローラ以外にどんな地方を旅してきたんですか?」

「自分の故郷であるカントーやジョウトはもちろん、ホウエン、シンオウ、イッシュにカロス、様々な地方で色んな経験をしてきたよ。どの地方での経験も、今でも全部役立ってるよ。」

 

トレーナーの皆さんがシンジさんに次々と質問をしていきます。シンジさんはそれらの質問全てに丁寧に答えていきます。他にも慣れていないポケモンさんとの接し方、ポケモンさんと仲良くなるコツ、試練のアドバイスなど、為になることを色々と答えてくださいました。

 

「さあ、他に質問したい子はいるかな?」

「あっ、は、はい!」

 

ククイ博士の問いに、私は慌てて手を挙げて返事をしました。折角の機会なので、私も一緒に過ごしていた時に聞けなかった質問を一つ尋ねておきたいです。

 

「リーリエで最後みたいだな。どんなことが聞きたい?」

「えっと、少し難しい事かもしれないんですけど……。」

「いいよ、僕に答えられる事であれば答えさせてもらうよ。」

 

シンジさんの言葉に私は一呼吸をおいて、気になっている質問を投げかけました。

 

「シン……チャンピオンさんは自分の大切にしている理念……と言いますか、信念といいますか、そう言った大切にしているものはあるのでしょうか?もしそう言ったものがあるのであれば教えてほしいのですけど……。」

 

私の質問にシンジさんは優しい笑顔を向け、少し考える素振りを見せてから答えました。

 

「難しい質問だね。理念や信念かは分からないけど、大切にしている事ならあるよ。それでもいいかな?」

 

私はシンジさんの問いかけに対して頷いて答えました。私にとっては重要なことだと思い、喉をゴクリと鳴らしてシンジさんの返答を待ちました。

 

「僕は何より、自分のポケモンとの時間を大切にしているんだ。」

「時間……ですか?」

 

シンジさんは私の問いに頷き、そのまま口を開いて言葉を続けました。

 

「確かに対戦を重ねることや経験を積むことは重要なこと。それがなければどれだけ強くなっても戦術面で劣ってしまい勝つことは出来ない。」

 

シンジさんは「でも」と続けます。

 

「ポケモンと共に過ごす時間、それが長ければ長いほど、自分のポケモンの事を理解することができるし、絆も深まる。それだけでポケモンとの意思疎通も自然とできるようになるし、強くもなれる。そして何より、毎日が楽しくなるでしょ?」

 

シンジさんは微笑みながらそう言って、自分の懐からモンスターボールを取り出しました。

 

「出てきて、ニンフィア」

『フィア!』

 

シンジさんはニンフィアさんをモンスターボールから出すと、こっちにおいでと合図を出します。するとニンフィアさんは嬉しそうに擦り寄り、シンジさんの腕に自分のリボンを絡みつけました。

 

「僕にとってのポケモンは、自分と苦楽を共にするパートナーであると同時に、大切な家族なんだ。そんな大切なポケモン達と、僕はいつまででも一緒にいたい。例えチャンピオンでなくても、誰になんと言われても、それだけは僕の譲れない大切なものなんだ。」

 

大切な時間、シンジさんが常に一番大切に思っていること。恐らく、シンジさんにとって、勝負の勝ち負けとか以上に大切にしているものがポケモンさんとの時間なのでしょう。

 

シンジさんは今まで、自分のポケモンさんたちと一緒にいる時は必ず笑顔を絶やしませんでした。バトルの時でも、食事の時でも、ポケモンさんのお世話をしている時でも、どんな時でも一つ一つのことに全力を尽くし、一生懸命になり、優しく接していました。

 

「あはは、中々表現するのは難しいね。こんな答えでよかったかな。」

「はい!とても参考になりました!ありがとうございました!」

 

私はシンジさん……チャンピオンさんに頭を下げてお礼を言いました。

 

今の話を聞いて、私も自分のポケモンさんとの時間を一つ一つ大切にしていこうと思いました。それはこの場にいるトレーナー全員が思ってくれていることでしょう。

 

こうして、ククイ博士主催のポケモンZキャンプ最終日を終え、全員が再び島巡りへと旅立つ日が訪れようとしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー!ポケモンZキャンプ、楽しかったねー!」

「ああ、そうだな。このキャンプだけで、色んなことがあったな。」

 

ヨウさんの言葉に、ここで起きた出来事を思い返します。思い返せば、様々なことがありました。

 

最初はレンタルのポケモンさん、ボーマンダさんとの波乱の出会いがあり、ナタリアさんとバトルをし、ヨウさん、ハウさんとチームを組み、ピカチュウさんの騒動があり、そしてチャンピオン、シンジさんの授業を受けました。

 

キャンプの日は長かったですが、終わってみればあっという間の出来事だった気さえします。

 

「だけどこれからは……」

「はい!全員またライバルです!」

「とうぜーん!次に会ったらもっと強くなってるよー!」

 

キャンプで学んでいる間は仲間でした。ですがこれからは友人であり、それ以上にライバルと言うお互いを高め合うライバル。そして、チャンピオンとのバトルを目標にするライバルです!

 

「次に会ったら、バトルしようぜ!」

「うん!でも、おれたちは負けないからねー!」

「私だって負けませんから!」

『コォン!』

『ピカッチュウ!』

『ニャット!』

『スロォ!』

 

そう言って私たちは、それぞれ別の道を歩き出しました。

 

ヨウさんは再びピカチュウさんの谷へ、ハウさんは鍛えるために森の中へ、そして私は先を目指してオハナタウンへ。

 

「ここからはまたハードな試練が待っているでしょう。」

『コォン』

「はい、私にはシロン、そして頼りになるポケモンさんたちがいます。」

『ボクもいるロ!』

「ふふ、はい!もちろん、ロトム図鑑さんも頼りにしてます!」

『おまかせロ!シンジの分まで全力でリーリエをサポートさせてもらうロ!』

 

私にはこんなに頼れるポケモンさんたちがいます。この子たちと一緒に、必ず辿り着いて見せます。

 

(必ず辿り着いて見せますから、待っていてください!シンジさん!)

 

私の目指すべき場所へと辿り着くため、私は自分のポケモンさんたちと共にオハナタウンを目指しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これでここの調査は終了ですね。」

 

アーカラ島のとある場所にて、緑色の変わったサングラスをした男が、手ごろな怪しい装置を所持し何かを収納していた。

 

その何かは肉眼でハッキリとは目に見えないが、薄っすらとだけモヤモヤと煙のように細い小ビンの中で渦巻いていた。

 

「これを持ち帰れば、更に研究が進みますねぇ。」

 

男は薄気味悪い笑みを浮かべ、小ビンに入った“あるもの”を見ていた。

 

「おっと、彼らが来たみたいですね。ここは気付かれない内に早く退散しましょうか。」

 

誰かが近付いてくる気配に気が付いた男は、その場から逃げるようにその場を去っていく。

 

「精々島巡りを頑張ることですね、トレーナーの諸君、そしてリーリエ嬢ちゃん」

 

男は最後にそう呟き、その場から姿を消したのであった。




最近なんと言うか、スランプ気味ですかね。中々話が思い浮かばなかったりで思うように話が書けません。とは言え気ままにやっていくスタンスに特に変わりはありませんが。

ゲーム大全での切断はダメ!絶対!レート無いんだから勝ち負けじゃなくてゲームそのものを楽しもう!

ちなみに私のプレイヤーネームは“こだハチニンフィア”ですのでマッチングしたらその時はよろしくお願いします。


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元スカル団幹部!プルメリ登場!

タイトル通り今回はプルメリ姉さんが少し登場します。USUMでもあったミニイベントを改変したものとなっております。

プルメリ姉さんは初見時に割と苦戦した記憶があります。エンニュートの素早さと高い特攻、毒炎の技範囲が割とメンドイ。


ククイ博士主催、ポケモンZキャンプが終了し、私は一緒に参加したヨウさん、ハウさんと別れ先にオハナタウンへと向かい無事辿り着きました。

 

辿り着いたときには既に夜も遅くなっていたのでその日はポケモンセンターにお泊りすることにしました。

 

そして翌日、私は自分のポケモンさんたちと一緒にポケモンセンターにて朝食をとっていました。

 

「それにしてもシロンやロトム図鑑さんたちがいてくれてよかったです。」

『コォン?』

「私一人でしたら、間違いなく森の中でずっと迷子になっていたでしょうね。」

『コォン♪』

『ナビゲートをするのがボクの役目だロ!気にする必要はないロ!』

 

方向音痴の私は、オハナタウンに来る前の森で迷ってしまっていました。ですがシロンとロトムさんが一緒になって森の出口を探してくれたので、なんとかオハナタウンまで辿り着くことができました。

 

ポケモンさんやロトム図鑑さんがいなければ、私は今頃森の中で一人迷い続けていたでしょう。我ながらお恥ずかしい限りです。

 

「みなさん、どうですか?おいしいですか?」

『コォン!』

『ソウソウ!』

『リルル!』

『チラァ!』

『ピィ!』

 

みなさんには私が作ったポケモンフーズを食べていただいてます。まだまだシンジさんに比べて未熟ですし研究段階ではありますが、シロンたちは私の作ったポケモンフーズをおいしそうに食べてくれています。それだけで私としては嬉しい限りです。

 

これからもシロンたちの好みなどを知っていき、更に喜んでくれるようなポケモンフーズを作ってあげたいですね。

 

しかし、シロンやフシギソウさんたちと一緒に食事をしていたときでした。

 

『コォン!?』

「え?シロン?どこ行くんですか!?」

 

その時、突然シロンが何かに反応したように外へと向かって走り出してしまいました。

 

「皆さん!一旦戻ってください!ご飯はまた後であげます!」

 

私はフシギソウさんたちを急いでモンスターボールへと戻し、シロンの後を追いかけることにしました。

 

『シロンは一体どうしたロ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はシロンの後を追いかけて、ポケモンセンターの外へと出ました。

 

「あ、あれって?」

『コォン!』

 

シロンの後を追いかけてたどり着いたのは、オハナタウンの街角にある小さな滝の前でした。そこには軽く人だかりができており、私はその場にいたお母さんに話を聞いてみました。

 

「すいません、何かあったのですか?」

「ああ、揉め事だと思ってきてみたら、どうやらチンピラがポケモンを虐めてるみたいなんだよね。」

「ポケモンさんを!?」

「助けてあげたいところだけど、この街の人たちはカキ君以外ポケモンバトルなんてからっきしだからねぇ。」

 

アーカラ島のキャプテンでもあるカキさんの故郷でもあるオハナタウンですが、他の住人方はポケモンバトルを全くと言っていいほどしないそうです。それだけ本来であればこの町は平和だということでしょう。

 

私はその言葉を聞き、急いで人込みをかき分けて問題の現場へと駆けつけました。するとそこには男女の二人組と、一匹のポケモンさんがいました。ですがそのポケモンさんの姿は私にとってとても見覚えのある姿でした。

 

「シロン、もしかして貴女はこのことに気付いて?」

『コォン!』

 

ならば迷うことなく私は助けなければと思い、すぐにその二人組へと近寄り呼びかけました。

 

「お二人とも!今すぐそのポケモンさん、ロコンさんから離れてください!」

 

そのポケモンさんの正体はシロンの進化前の姿、アローラのロコンさんです。シロンにはロコンさんの声が聞こえたのか、こうなっていることに気付いて飛び出したようです。

 

「あん?なんだてめぇ?俺はただ野生のポケモンを捕まえようとしているだけだぜ?」

「捕まえるって、ロコンさん怯えてるじゃないですか!無理矢理捕まえるなんてかわいそうですよ!」

『コォン?』

「チッ、うるせぇガキだな!まずてめぇからやっちまうぞ!」

 

必死に止める私に逆上したお二人はモンスターボールを取り出し、自分のポケモンさんを繰り出してきました。

 

「行くぞ!ヤトウモリ!」

「行くよ!ゴルバット!」

『ヤット!』

『カカッ!』

 

男の人はヤトウモリさん、女の人はズバットさんの進化系であるゴルバットさんをそれぞれ繰り出してきました。

 

「シロン!ロコンさんを助けますよ!」

『コォン!』

 

私の合図を聞いたシロンは一歩前に出て戦う準備をしました。シロンも既に準備万端、と言った様子です。

 

「ハッ!一体だけで戦うってのか?後悔しても知らないぜ!ヤトウモリ!ベノムショク!」

「ゴルバット!エアカッター!」

 

ヤトウモリさんとゴルバットさんは同時にシロンに向かって攻撃をしてきました。ですが今のシロンにはそのような単純な攻撃は通用しません!

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンのれいとうビームがベノムショクとエアカッターをいとも容易く突き破り無力化しました。その光景にはお二人も驚いた様子で目を見開いていました。

 

「なっ!?そんなバカな!」

「なんて威力なの!?」

 

「シロン!続けてこなゆきです!」

『コォォォン!』

 

シロンはこなゆきを放ち、ヤトウモリさんとゴルバットさんにヒットしました。ですがそこで少し予想外の結果が起きてしまいました。

 

「なっ!?や、ヤトウモリ!」

「ゴルバット!?そんな、一撃で!?」

「え?あ、あれ?」

 

まさかのシロンのこなゆき一発でヤトウモリさんとゴルバットさんが目を回し戦闘不能状態となってしまったのです。こおりタイプが弱点のゴルバットさんならまだ分かりますが、こおりタイプの効果が薄いヤトウモリさんまで瀕死になるのは、さすがに予想していませんでした。

 

もしかしたらあのお二人よりも私の方が驚いてしまっているかもしれません。

 

「クッソ!こうなったらもう手加減しないぜ!」

 

そう言ってお二人は複数のモンスターボールを同時に取り出しました。手持ちのポケモンさんをフルに使用して挑んでくるつもりでしょう。

 

流石に数が多いと少しばかり厄介かと思い、私とシロンも覚悟を決めて構えました。しかしその時、どこからともなく声が聞こえました。

 

「やめときな!あんた達じゃ束になったってそのお嬢さんに勝てやしないよ。」

 

その声はどこか聞き覚えのある声で、声の聞こえた方へと目を向けました。すると崖の上に、一人の女性の影が見えました。

 

その女性と視線があると、その人は崖の上から飛び出した小さな岩場を渡って少しずつ飛び降りてきました。

 

『なっ!?あ、姉御!?』

「プルメリさん!?」

 

その女性は以前スカル団の幹部として私やシンジさんたちと敵対し、この前UBの件で協力していただいたプルメリさんでした。

 

「ったく、あんたたちはまだこんなことしていたのかい。いい加減にしときな。次同じようなことしたら、ただじゃおかないよ!」

「は、はいっ!すみませんでした姉御!失礼します!」

 

2人組は綺麗に頭を下げると、その場を即座に立ち去っていきました。プルメリさんはそんな彼らを見て「やれやれ」、っと溜息を吐いていました。

 

「あっ、そうでした!」

 

突然のことで戸惑っていた私ですが、一番の目的を思い出しシロンと一緒に先ほど虐められていたロコンさんの元へと駆け寄りました。

 

「ロコンさん!大丈夫でしたか?」

『コォン?』

『コォン……』

 

私とシロンは心配してロコンさんに声をかけますが、ロコンさんは怯えた様子でその場を立ち去ってしまいました。

 

私は「待ってください!」と止めましたが、ロコンさんはそんな静止すら聞かずにオハナタウンを出て行ってしまいました。

 

「よっぽど怖い思いをしたんだろうね、あの子。」

「プルメリさん……」

「心配かい?相変わらず優しいんだね、お姫様は。」

 

プルメリさんの言う通り、私はロコンさんの事が心配です。ですが恐らくロコンさんは先ほどの怖い目にあってから、人間の事を恐怖の対象として見てしまっている可能性もあります。追いかけるのは寧ろ逆効果でしょう。

 

「うちの連中が済まない事をしたね。」

「うちのってことは、もしかしてあのお二人は……。」

「ああ、元スカル団の連中さ。」

 

プルメリさん曰く、先ほどのお二人は元スカル団の下っ端の人たちだったそうです。スカル団は既にシンジさんの活躍のお陰で解散したはずですが。

 

「まあ元々はギャングみたいな集まりだったからねぇ。自分の性分を隠し切れない奴らもいるんだろうね。」

 

プルメリさん曰く、スカル団は解散後、殆どの人がグズマさんやプルメリさんの様に悪さをすることはなくなったようです。

 

しかし元々スカル団とはプルメリさんの言う通りギャングのような集団でした。そんな彼らの中でもより下っ端の立場の人は未だにああ言った迷惑行為などを少なからずやっているそうです。その度にプルメリさんがこうして割って入っているそうですけど。

 

「姫様、アイツらのことを責めないでやって欲しい。あんな馬鹿な連中でも、あたいにとっては弟や妹みたいな奴らだったのさ。どうしようもない馬鹿たちだけど、それでもあたいからすれば可愛い子たちなんだよ。」

「……はい」

 

プルメリさんの優し気な表情に、私はそう答えるしかありませんでした。確かに良い人たちとはいえませんが、プルメリさんにとって大切な人たちだと言う気持ちは伝わりましたから。

 

「ところで姫様はこんなところで何をしてるんだい?島巡りの途中かい?」

「はい、昨日このオハナタウンに着いたんですけど、ポケモンさんたちと朝ごはんを食べていたらこんな騒ぎと遭遇しまして。」

「そうかい、だったらあたいに着いてきな。うちの連中が迷惑かけたお詫びに、次の試練のところまで案内するよ。」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

プルメリさんのご厚意に感謝し、私は頭を下げてお礼を言いました。プルメリさんはそんな私に「気にすることないよ」、と一言いい、オハナタウンの外へと案内されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

「ここはオハナ牧場。見ての通りの牧場さね。」

 

オハナタウンの外には広大な牧場が広がっていました。そこには女性の方々がケンタロスさんやミルタンクさんのお世話をしている姿がありました。

 

それだけではなく、明らかの牧場のポケモンさんとは思えないポケモンさんのお世話をしている姿も見られました。その様子について、プルメリさんが軽く説明してくれました。

 

「ここはポケモンの預り屋も営んでいるらしくてね。有料だが、一時的にポケモンの世話を任されてくれるらしい。」

「そうなんですね。だからここには色んなポケモンさんが見えるんですね。」

 

プルメリさんの説明に私は納得しました。メリープさんやドロバンコさんならまだ分かりますが、虫ポケモンさんや鳥ポケモンさんは流石に牧場のポケモンさんには見えません。

 

「あと、ここでは搾りたてのモーモーミルクを使った食べ物が売ってる。中々に美味いから、また機会があれば食ってみるといい。味は保証するよ。」

「はい、ありがとうございます。そうしてみます。」

 

モーモーミルクを使った食べ物。アイスとかお菓子もあるのでしょうか?アハハ、なんだかお腹が空いてきてしまいました。想像したら涎が垂れてしまいそうです。

 

「さ、この先を真っ直ぐ行けば水タイプの試練があるよ。さっさと行って、早いところクリアしてきな。姫様なら楽に攻略できるだろうさ。」

「ら、楽にクリアできるかは分かりませんが、分かりました。試練、必ず攻略してきます。」

『コォン!』

 

プルメリさんの激励を受け、私は苦笑しながらも手を握り締めてやる気をだしました。そんな私を見て、プルメリさんは微笑み再び口を開きました。

 

「まぁ、今度会った時はあたいとバトルでもしないかい?」

「はい!その時は是非!」

「いい返事だねぇ。ま、それまで精々腕を磨いておくんだね。楽しみにしておくよ。」

 

そう言ってプルメリさんは手を振りその場を去っていきました。少し見た目は怖いですが、プルメリさんは優しくとてもお強い方なのだという事が伝わりました。

 

水タイプの試練という事は十中八九スイレンさんの試練ですね。強敵なのは間違いありませんが、それでも私は自分のポケモン達を信じて必ず突破してみせます。!

 

「っと、その前にポケモンさんたちに先ほどのご飯の続きをあげなければなりませんね。」

 

先ほどポケモンさんたちと約束した食事の続きをしてから、私たちはスイレンさんの試練に挑戦することにしました。




黄昏ルガルガン使ってみましたけど滅茶苦茶強いですね。剣舞さえ舞えば火力アイテム持たずにインファイトでHBポリ2を乱数ですが1発で飛ばせます。ポリ2でも受けきれません。

タスキを持たせて技がインファイト、アクセルロック、剣舞、カウンターで採用してます。努力値はASでダウンロード対策に余りをDに振ってます。先発向けですが雑に強いです。

サザン辺りを抜けるようにしたいので陽気採用。意地だと一応HBポリ2をA↑2インファイトで高乱数1発で落とせます。

あと眼鏡ニンフィア、割と今でも雑に強かったのに気付く私。


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水の試練!強襲、オニシズクモ!

スイレンの試練を書いていて思ったことがあります。

……カキとマーマネの試練どうやって書こう
もういっその事バトルだけ書く?マオの試練ならまだしも、あの二人の試練は……ねぇ?


オハナタウンで野生のロコンさんを巻き込んだ騒動に遭遇した私は、そこで元スカル団幹部のプルメリさんと再会し、彼女の案内で牧場の先にある次の目的地、スイレンさんの待つ水の試練を行うせせらぎの丘に辿り着きました。

 

「水の試練はこの先、ですね」

 

せせらぎの丘には大きな門があり、それは明らかに試練の場所であることを示していました。

 

私はその門の前に立ち、一度深呼吸をしました。ジム戦の時と同じで、この緊張感は未だ慣れることはありません。

 

私が緊張する中門の先へ進もうとすると、その先から小さな人影がこちらへと近付いてきました。その人物の正体が分かった時、その方はにこやかな笑顔で私に呼びかけてきました。

 

「リーリエさん、お待ちしてましたよ。」

 

後ろで小さく跳ねた青いショートヘアに黄色の網のようなカチューシャ、腰紐にぶらさげたキャプテンの証、間違いなく水の試練を担当しているスイレンさんでした。

 

「スイレンさん、お久しぶりです!」

「ええ、UBの騒動の時はゆっくり話せなかったですからね。」

 

普段は優しく温厚なスイレンさん。今も私に呼びかけている時は優しい声色で話しかけてくれています。

 

「そんなに緊張しないでください。試練と言っても、特別難しいことするわけではありませんよ。」

「あはは、なんだかカントーの時の癖が抜けなくて……」

 

アローラでの生活も長かったとはいえ、以前までカントーで過ごしていたのでそちらでの感覚が身についてしまっているようです。どちらかと言えばポケモントレーナーの性、みたいなものかもしれませんが。

 

「では、早速試練を受けますか?一度入れば、試練が終わるまで出ることは出来ませんが。」

「……はい、大丈夫です!」

 

元より私もポケモンさんたちも覚悟はできています。私たちの気持ちをスイレンさんに伝え、私はスイレンさんの案内によりせせらぎの丘へと入っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スイレンさんの案内で連れてこられた場所は、大きな水辺のエリアでした。そこにはラプラスさんが二匹いて、取り付けの椅子がついているところを見るとスイレンさんのライドポケモンのようです。

 

「それではこれより、スイレンの水の試練を始めます。」

 

スイレンさんは私の方へと振り向き、その試練の内容を口にしました。

 

「リーリエさんにはこれより、ここで私、スイレンと一緒に釣りをしてもらいます。」

「つ、釣り、ですか?」

「はい、釣りです。」

 

その内容は私にとって少し予想外のものでした。イリマさんの試練ではシンプルにぬしポケモンさんと戦う事でしたので、てっきりスイレンさんの試練も同じようにぬしポケモンさんとバトルするものかと思っていました。

 

「えっと、スイレンさんと釣りで勝負するってことですか?」

「いえいえ、単に私とのんびり釣りに付き合ってもらうだけです。もちろん試練が無事終われば試練突破の証であるこのみずZを差し上げます。」

 

そう言ってスイレンさんはみずZを私に見せつけます。例え試練がどんな内容であったとしても、ここのキャプテンは紛れもなくスイレンさんです。

 

「わ、分かりました。スイレンさん、それでは一緒に釣りをしましょう!」

「ふふふ、ええ、楽しい釣りをしましょう。もしかしたら、カイオーガが釣れてしまうかもしれませんよ?」

「え?カイオーガさん!?」

 

カイオーガと言えばホウエン地方にて海を広げたと言われる伝説のポケモンさんです。そんなポケモンさんが釣れたら確かにすごいです。あっ、いえっ。

 

「って、スイレンさん、伝説のポケモンさんでもあるカイオーガさんが釣れるなんてありえませんよ。」

「ふふ、さぁ、どうでしょうね?」

「……え?」

 

スイレンさんは含みのある笑顔でそう呟きます。えっと、冗談、ですよね?

 

私はどこか不安な気持ちを抱きながらスイレンさんの水の試練に挑むことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は現在、スイレンさんと共にラプラスさんの背中に座り釣りをしている最中です。ですが……

 

「な、中々釣れませんね」

 

私はハナダシティの釣り大会以外で釣りをしたことがありません。言ってみれば全くの素人です。

 

「ふふ、釣りは焦ったらダメですよ。静かに待てば、自然と釣れるようになります。」

 

スイレンさんはそう言って静かに釣り糸を垂れ下げています。実際、スイレンさんは私と違って少しずつ水ポケモンさんを釣り上げています。

 

水ポケモンさんが釣れるたびに優しく言葉をかけ、軽く食べ物を与えてそのまま逃がしています。その姿から、余程水ポケモンさんが好きなんだという事が伝わってきます。

 

「あの、スイレンさん?」

「なんですか?リーリエさん」

 

スイレンさんと釣りをしている最中ですが、失礼ながらも私は一つ気になったことがあったので尋ねることにしましたた。

 

「すいません、試練はいつ行うのでしょうか?」

 

先ほどから結構時間が経ちますが、ずっとこうして釣り糸を垂らしているだけで一向に試練らしいことが始まる気配がありません。スイレンさんには申し訳ありませんが、流石にこれが試練には思えませんでした。

 

「試練なら、もう始まっていますよ?」

「えっ?」

 

私は驚き、変な声をあげてしまいました。試練の代名詞とも言えるぬしポケモンさんの姿も見えませんし、釣りをするだけでみずZが貰えるとも思えません。それに先ほど、スイレンさんは釣りの勝負をするわけではないともおっしゃっていましたし……。

 

「リーリエさん、釣りにとって一番大事なことは何だか分かりますか?」

 

スイレンさんからそのような問いが返ってきました。私は慌ててその答えを探しますが、答えを見つけることができません。

 

そんな私は見て、スイレンさんは微笑みかけながら答えました。

 

「釣りにとってポイントや道具なども確かに大切なものですが、それ以上に、常に冷静であること、それがとても重要なことです。」

「冷静であること?」

「はい、焦ってしまっては、例え餌に食いついたとしてもすぐ逃げられてしまいます。釣りとは、心を静かにして冷静に数少ないチャンスを待ち続けるものです。それは、ポケモンバトルでも同じですよ?」

「ポケモンバトルでも……」

 

スイレンさんにそう言われて、なんとなくその意味が分かりました。ポケモンバトルで焦ってしまえば状況の判断ができず負けてしまいます。釣りも同じように、常に冷静でなければ釣れるものも釣れなくなってしまいますね。

 

「おや?」

「スイレンさん?どうかしましたか?」

 

スイレンさんが何かを見つけたように声を出し、私はそんなスイレンさんにどうしたのかと尋ねてみました。するとスイレンさんは前の方へと指をさし、私もそちらの方へと目を向けました。

 

「あそこに大きな水しぶきが出ていますね。もしかしたら、あそこに“いきのいいかいパンやろう”が溺れているかもしれません。」

「か、かい……?」

「リーリエさん、早くあそこに向かってその正体を確認してきてください!」

「は、はい!」

 

スイレンさんが何を言っているのか少しわかりませんでしたが、確かにスイレンさんの指差した方には大きな水しぶきがありました。

 

私はラプラスさんに指示を出し、その場所へと向かい釣り糸を垂らそうとします。しかし……

 

「あ、あれ?」

 

傍に近寄った瞬間にその水しぶきは収まってしまいました。私は一体何だったのかと考えますが、その時どんどん辺りが暗くなっていきました。

 

「っ!?もしかしたらこれって!」

 

私はそれが何かを気付き、すぐに後ろを振り向きました。するとそこには目を疑うほど巨大なオニシズクモさんの姿がありました。その姿は紛れもなくぬしポケモンさんの姿でした。

 

『ビビッ!?大きすぎてコワイロ!でも、僕もポケモン図鑑だロ!』

 

そう言って怯えた様子を見せながらも、ロトム図鑑さんはオニシズクモさんの解説をしてくれました。

 

『オニシズクモ、すいほうポケモン。みず・むしタイプ。面倒見がよく、弱い仲間を守る。頭部の水泡は自分の身を守るだけでなく、食事をする時にも利用する。』

 

オニシズクモさんの特性は確かすいほう。水タイプの技の威力を上げ、炎技のダメージを軽減させる特性だったはずです。

 

「ここは水辺。でしたらここはシンプルに!お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

私のポケモンさんたちは主に素早さやフィールドを駆使して戦うことが多いです。ですが水辺ではその能力を存分に発揮することができません。

 

だったら水辺でも本来の力を充分に発揮できるマリルさんが最も適任でしょう。

 

「行きますよ!マリルさん!アクアテールです!」

『リィル!』

『オズっ!』

 

マリルさんは尻尾に力を込めてアクアテールを振り下ろします。しかしオニシズクモさんはその攻撃をあっさりと片腕で弾き飛ばしました。

 

『グモッ!』

「っ!?来ますよマリルさん!」

 

オニシズクモさんが態勢を低くしました。それは間違いなく攻撃の態勢へと移行する合図でした。私はマリルさんに注意するように呼びかけます。

 

次の瞬間、オニシズクモさんは動き出しました。しかし大きく鈍重そうな見た目とは裏腹に、水面を滑るようにしてこちらとの距離をあっさりと縮めていきます。

 

「は、早い!?」

『グモォ!』

『リル!?』

 

その動きの速さに私もマリルさんも驚き怯んでしまい、オニシズクモさんの大きな一撃、アクアブレイクを受けてしまいました。

 

「マリルさん!?」

 

大きく飛ばされたマリルさんは水面に叩きつけられダメージを負ってしまいました。

 

マリルさんはすぐに水面に浮かびあがり、私に大丈夫だと声をかけてくれます。それを見て私は一安心し溜息をつきました。

 

(しかしあのオニシズクモさん、素早いうえに一撃がかなり重いです。あまり長期戦にしてしまうのはかえって不利ですね。)

 

長期戦になればなるほどこちらが不利になってしまうのは明らかです。なるべく接近戦を挑もうにもパワーの差が明確に出てしまいます。

 

「でしたら今度はバブルこうせんです!」

『リル!』

『っ!』

 

今度はバブルこうせんで遠距離戦を仕掛けます。しかし今度はオニシズクモさんが動く気配はありません。

 

どうしたのか、と一瞬思いましたが、次の瞬間にオニシズクモさんが虹色に光り輝きオニシズクモさんの狙いが分かり、慌ててマリルさんに回避の指示を出しました。

 

「マリルさん!すぐに躱してください!」

『リルッ!?』

『っ!』

 

私の指示が間に合い、オニシズクモさんの攻撃を間一髪で回避することができました。

 

今のはオニシズクモさんのミラーコートです。ミラーコートは受けた特殊技のダメージを相手に反射する強力な技です。今のが当たっていたら一溜りもなかったでしょう。

 

ですがこれはいよいよ困りました。近距離戦を挑めばパワー負けをしてしまい、遠距離戦であればミラーコートで反射される。まるで隙がありません。

 

(特に厄介なのはあの素早い動きですね。あの動きをなんとかしなくては……)

 

例えパワーで勝ったとしても、あの素早い動きを捉えることができなければ結果は同じです。

 

私がそう悩んでいると、モンスターボールが揺れ動きました。

 

「え?あなたも手伝ってくれるのですか?」

 

モンスターボールは頷くように今度は縦に揺れ動きました。私はポケモンさんがそう答えてくれているのだと感じ、だったらここはお願いしようとモンスターボールを上に投げました。

 

『チラチ!』

 

そのポケモンさんはチラチーノさんでした。チラチーノさんはラプラスさんの背中に登場し、私の方へ向き微笑みました。

 

「マリルさん、チラチーノさん!行きますよ!」

『リル!』

『チラチ!』

 

マリルさんとチラチーノさんは元気よく頷き返事をしてくれました。オニシズクモさんは静かにこちらを見据えています。

 

「チラチーノさん!スピードスターです!」

『チラッ!』

 

チラチーノさんはスピードスターを繰り出しました。水上では本来の素早さを活かせないため、殆どこの技しかだせないでしょう。

 

スピードスターは特殊技ですが、オニシズクモさんはミラーコートで反射することなく、右腕でその攻撃防ぎました。

 

「今です!アクアテール!」

『リルッ!』

 

アクアテールで逆側から強襲をしかけます。しかしオニシズクモさんは後ろに滑って動きその攻撃を回避しました。

 

アクアテールは空を切り、水面を思い切り叩きつけました。大きな水しぶきが立ち上がりました。それを見た私は……。

 

(水しぶき?波?そうです!これならもしかすれば!)

 

私はあることを思いつき、それを実践しようと考えます。

 

今度はオニシズクモさんが再び態勢を低くくして攻撃の合図を出しています。そして水面を勢いよく滑りマリルさんに突っ込んできました。

 

「チラチーノさん!マリルさんを援護してください!もう一度スピードスターです!オニシズクモさんの目の前を狙ってください!」

『チラッ!』

 

オニシズクモさんに直接当てても効果は薄いと考え、オニシズクモさんの目の前にスピードスターを着弾させました。オニシズクモさんはその攻撃に怯んですぐに後ろに下がり態勢を整えました。流石に状況判断が早いですね。

 

ですがその行動が私にとっては逆に好都合な動きです!

 

「マリルさん!水面に向かって全力でアクアテールです!」

『リィル!』

 

マリルさんは今度はアクアテールで水面に向かって振り下ろしました。先ほどよりも威力を増して放たれたアクアテールは、更に大きな水しぶきを上げて大きな波を引き起こしました。

 

『グモッ!?』

 

その波によりオニシズクモさんは態勢を崩します。

 

オニシズクモさんは水面を滑ることにより本来以上の素早さを得ていました。ですがそれはあくまで静かな水面であったからに他なりません。波によってその状況が覆った今、オニシズクモさんは先ほどのような機動力を得られません!

 

「これで決めます!マリルさん!アクアテール!チラチーノさん!スイープビンタです!」

『リルッ!』

『チラッチ!』

『っ!?グモォ!』

 

マリルさんとチラチーノさんは同時に接近して近接攻撃を仕掛けます。その攻撃に対して、オニシズクモさんは焦りとびかかるで反撃をしてきました。

 

ですが本来の機動力を失い、自分のフィールドでもある水面から離れたことにより攻撃力も大幅な低下を見せ、チラチーノさんのスイープビンタ、マリルさんのアクアテールと交わり、相打ちとなって墜落しました。

 

墜落したオニシズクモさんは、そのまま目を回して戦闘不能状態となりましたが、私はそれ以上に墜落してしまったチラチーノさん、マリルさんの事が心配になり慌てて呼びかけていました。

 

「チラチーノさん!マリルさん!大丈夫ですか!?」

『リル!リルル!』

『チラァ』

 

私が呼びかけると、マリルさんがチラチーノさんは水面に連れ出してくれました。チラチーノさんもまだ元気そうな表情で笑いかけてくれました。その姿を見て、私は一安心することができました。

 

マリルさんはそのままチラチーノさんを私のところまで連れてきてくれて、私はチラチーノさんを引き上げました。

 

「あらら、濡れちゃいましたね。後で体洗わないといけませんね。」

『チラッ♪』

 

私はチラチーノさんの体をタオルで吹きながらそう言うと、チラチーノさんは嬉しそうにそう返事をしました。綺麗好きのチラチーノさんは定期的に洗ってあげているのでいつも綺麗な毛並みを保つことができているのです。それに綺麗にしてあげないと不機嫌になってしまうので注意しないといけませんしね。

 

「おめてとうございます、リーリエさん。まさか私の育てたオニシズクモを倒してしまうとは」

「あっ、スイレンさん!」

 

スイレンさんが拍手をしながらこちらに寄ってきました。キャプテンであるスイレンさんも祝福してくれているようです。

 

「これで私、スイレンの試練は無事達成です。冷静な判断、戦術、コンビネーション、どれもお見事でした。それでは、試練達成の証、このみずZを差し上げます。どうぞお受け取り下さい。」

「ありがとうございます!みずZ、ゲットです!」

『リルル!』

『チラチ!』

 

オニシズクモさんはとても強敵でしたが、マリルさんとチラチーノさんのお陰で無事水の試練を達成することができました。

 

「アーカラ島の試練はここは初めてですか?」

「はい、スイレンさんの試練が最初の試練でした。」

「でしたら次はカキの試練が近いですね。彼の試練はヴェラ火山です。」

「ヴェラ火山、ですか。」

 

カキさんは炎タイプの使い手。炎タイプらしい熱く険しい場所での戦いになりそうですね。

 

「分かりました!次はカキさんの試練を目指します!」

「はい、頑張ってください。あっ、その釣り竿は是非持っていってください。」

「えっ?い、いいんですか?」

「はい、カイオーガがかかっても折れることが無い自慢の釣り竿ですよ。」

 

カイオーガがかかっても折れない……そ、それも冗談、ですよね?

 

最後まで笑顔で冗談(?)を言うスイレンさんに呆気にとられ、私は戸惑いながらも次の目的地となったヴェラ火山へと向かう事にしました。




カキとマーマネの試練は追々考えるとして、今日はガンダムマキブの発売日で早速プレイしましたが、久しぶりにアケコン触ってかなり腕が落ちてました。昔ゲーセンでやってた時よりも下手糞で辛い……。

にしてもダイマ構築強いっすね。カバルドン入れとくと初手で出てきやすくなるゴリランダー誘って狩れるのは気持ちいいです。ただなぜかピカチュウ入れた時のパーティの方が勝率高いのが気になるところですが。しかもピカチュウ絶対選出だと勝てる不思議……。(ピカチュウの避雷針、技範囲知られてない問題)


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しまクイーンハプウとウルトラ調査隊!

ハプウさんを出したかったのですが、話が全く思いつかなかったのでウルトラ調査隊と軽く絡めてみました。ぐぬぬ、そろそろ話が中々思いつかなくなってきました。ブイズとの出会いでもちょくちょく挟むべきでしょうか。

因みに今回の話はかなり短めでございます。


先日、マリルさんとチラチーノさんのお陰でスイレンさんが担当する水の試練を無事突破することができた私、リーリエです。

 

その日、ポケモンセンターにて一日を過ごし疲れを癒し、次の目的地であるカキさんの火の試練が行われるヴェラ火山へと向かっているところです。

 

「ロトム図鑑さん、ヴェラ火山とはどういったところなんですか?」

『ヴェラ火山はその名の通り火山だロ。火山と言うだけあって、ブーバーやヤトウモリのような炎タイプのポケモンが多く生息しているのが特徴なんだロ。今では火山活動も収まってるから、安心してほしいロ!』

 

ロトム図鑑さんの説明に、私は理解しなるほど、と頷きました。

 

カントー地方に行く前は私もアローラ地方で少しは旅をしていましたが、当時は余裕もなくシンジさんの島巡りについて行ってたわけでもないのであまりアローラ地方に詳しいわけではありません。

 

カキさんは炎ポケモンさんの使い手でもあり、火の試練であるため当然ぬしポケモンさんも炎タイプで間違いありません。熱いバトルで苦戦を強いられることは覚悟しておくべきでしょうね。

 

『ビビッ?あそこに誰かいるロ?』

「えっ?誰でしょうか?」

 

私はロトム図鑑さんが指摘した場所に目を向けました。ロトム図鑑さんは私の懐へと戻り、私はその人物の元へと歩みを近づけました。

 

するとその人物の正体は、私も以前お世話になったよく知る人物とそのパートナーのポケモンさんでした。

 

「ハプウさん!」

「む?おお、リーリエではないか!久しぶりじゃのお!」

「はい!お久しぶりです!バンバドロさんも、ご無沙汰しております!」

『バドォ!』

 

その人物とは、ポニ島のしまクイーンを務めているハプウさんでした。

 

ハプウさんは私が以前アローラに滞在していた時に、シンジさんと共に太陽の笛の件でお世話になったことがあります。その際にポニ島の守り神、カプ・レヒレさんに認めてもらい、ハプウさんのお爺様である先代のポニ島しまキングの座の後を継ぎ、しまクイーンとして勤めることとなった方です。

 

その実力はしまクイーンとしてだけでなく、一人のポケモントレーナーとして一流の腕の持ち主です。当時私も成り行きでシンジさんとハプウさんの大試練を見物することになりましたが、その時の戦いは素人である私の眼から見ても素晴らしいものでした。

 

ハプウさんの操るポケモンさんはバンバドロさんを初めとし、地面タイプのポケモンさんで構築されております。

 

地面タイプと言うだけあり、重量感あるポケモンさんのプレッシャーと圧倒的なパワーに、シンジさんも苦戦を余儀なくされておりました。私もいずれしまクイーンとしてのハプウさんと戦う事になるでしょう。

 

その時が楽しみでもありますが、同時に不安でもありますね。それまでに、私ももっともっと腕を磨かなければなりません!

 

「ところでリーリエはどうしてここに来たのじゃ?」

「はい、私は今島巡りの真っ最中でした、つい先日スイレンさんの試練をクリアしてきたところです。」

「ほう、あのスイレンの試練を突破したのか。あそこは島巡りを始めたばかりのトレーナーにとって、最初の難所と言われる程の試練じゃ。それを突破し太という事は、リーリエも立派なトレーナーの仲間入りをしたという事じゃな。」

「い、いえ、そんな大げさな。」

 

謙遜することはない、とハプウさんはカッカッカッと笑い飛ばします。恐縮ではありますが、ハプウさんほどのトレーナーさんに褒められると、私としても悪い気はしません。むしろ嬉しい気持ちでいっぱいです。

 

「ハプウさんは何故このアーカラ島にいるんですか?」

「わしは実家で育てたポニ大根をすぐそこの“スーパーメガやす”に売りに行ったところじゃ。」

 

ハプウさんの実家は農家を営んでいて、その中でもポニ島の名物でもあるポニ大根は絶品なのだそうです。通常の大根よりも大きく、大根なのに甘みが強くみずみずしい食感、そしてどんな食事にも合うことで評判なのだそうです。私も一度食べてみたいものです。

 

「しかし懐かしいのお。以前、わしとシンジが出会ったのもこの辺じゃったぞ。」

「シンジさんとハプウさんが出会ったところなんですか?」

「うむ。あの時、スカル団に虐められておったフワンテを助けるため、何も言わずとも手を貸してくれたのがシンジじゃった。思えば、あの時からシンジからは只者じゃない雰囲気を感じたの。」

 

シンジさんがハプウさんと出会った場所。その場所で今度は私がハプウさんと再会した。なんだか因果と言いますが、なにかしらの縁みたいなものを感じますね。

 

「おっと、それよりリーリエよ。どうやら客人のようじゃ。」

「客人?」

 

私はハプウさんの指差した方角へと目を向けます。するとそちらから、またもや見たことのある2人の人影がこちらへと近付いてくるのが分かりました。

 

「む?またもや君と会うとは、運命の巡り会わせ、と言うやつかな?」

「おねーさんやっほー♪こんなところで合うなんて奇遇だね!」

 

その人物とは、ウルトラ調査隊ののダルスさんとアマモさんでした。

 

「ふむ、なんじゃ、リーリエの知り合いか?」

「はい、紹介しておきますね。こちらはウルトラ調査隊の……」

「ダルスだ」

「私はアマモ!」

「ウルトラ調査隊か。わらわはハプウ!まぁ、リーリエの友人じゃよ。よろしくの。」

「うむ、こちらこそ、よろしく頼む。」

 

ダルスさんとハプウさんは握手を交わし、お互いに自己紹介を終えると、ダルスさんは私の方へと視線を直しました。

 

「先日は有益な情報、感謝する。おかげで調査が捗っているよ。」

「え?えっと……。」

 

私は何のことだか分からず、咄嗟に疑問符を浮かべてしまいました。そんな私に、アマモさんが補足で簡単に説明をしてくれました。

 

「ほら、チャンピオンのおにーさんの事教えてくれたじゃん?あれのお陰で私たちの調査も捗ってるんだよねぇ♪」

「チャンピオンのおにーさん……シンジさんの事ですか?」

「そうだ。キミと別れたあと、我々は彼と接触することができ、事情を説明したら快く調査の協力に乗ってくれたよ。」

「おにーさんすっごく優しくてね?お仕事が無い時だけだけど、私たちの調査に前向きに協力してくれてるんだぁ!」

「そうだったんですか。それは良かったです!」

 

お忙しい中、シンジさんはウルトラ調査隊の皆様のお手伝いを買って出てくれたのですね。私では役不足かもしれませんが、シンジさんであれば心配の必要はないくらい適任でしょう。……過労で倒れないかが少々心配かもしれませんが。

 

「シンジに調査を依頼?いったいどういう事じゃ?」

「ハプウさんは知らなかったですね。実は……」

 

事情を知らないハプウさんに、私は以前空間研究所で聞いた話をお伝えしました。

 

「なるほど、この世界とは対になっている裏の世界、UB、かがやきさま、また厄介なものに巻きこまれてしまったものじゃのぉ。シンジもリーリエも。」

「あ、あははは……」

 

シンジさんだけでなく、私も同じように厄介事に巻きこまれていると判別され、思わず乾いた笑いが出てしまいました。まぁ、否定はできませんけど……。

 

「それと、今我々の他に怪しい動きをしている者がいる可能性がある。」

「え?ダルスさんたちの他にウルトラオーラの調査をしている人がいるってことですか?」

「この前おにーさんと一緒に森の中を調査してたんだけどね?大きなウルトラオーラの発生源を調べてたら、直前まで誰かがその場所にいた形跡があったんだよねぇ。」

「あの量のウルトラオーラが一部回収されていた。本来この世界の人間にとって価値の無いものなのだが、もし悪用するものがいるとすると……いや、考えすぎか。」

「いざとなったらチャンピオンのおにーさんがいるから大丈夫だよ。それに、この世界には他にもすごいトレーナーさんが大勢いるし!」

「それもそうだな。今気にしても仕方ないか。」

 

ウルトラオーラが回収されていた?使い道のないはずのウルトラオーラを集めている人物がいる?……なんでしょう。何故だか心当たりがある気がします。それも身近に……。

 

「ふむ、怪しい人物か。わしの方でも少し調べてみよう。」

「そうか、それは助かる。もし何かあればエーテル財団の方へと知らせてくれ。我々はもう少しこの周辺を調べたら別の場所に行く。」

「またねー、おねーさん♪バイバーイ!」

 

アマモさんが元気よく手を振り、ダルスさんと共にこの場を後にしていきました。この調子だとまたいずれ再会することになるでしょうね。

 

「ではわらわもこの辺で失礼するかの。実家に残してきたポケモン達も待たせているしのぉ。」

「そうですか。分かりました。」

「うむ。リーリエはこのまま島巡りを続けるんじゃろ?」

「はい!次はカキさんの試練に挑むつもりです!」

「そうかそうか。いずれわしにも挑戦するつもりじゃろう。その時を楽しみに待っておるよ。またの!」

『バドッ!』

 

ハプウさんはそう言ってバンバドロさんに跨り、バンバドロさんと共にポニ島へと帰っていきました。

 

『ビビッ、怪しい人ロカ。なんだか怖いロネ。』

「そ、そうですね。私たちも気を付けていきましょうか。」

 

私の心当たりも、気のせいだという事にして心の奥底にしまい、今は自分のやるべきことに集中しようと再び歩き出すことにしました。




次のウルトラ調査隊登場は暫く後かと思われます。多分アーカラ島ではこれがラストかと。

現在行われているピカチュウレイドで雑に色違い夢ピカ様を6体ほどゲットしました。その内の一体はマスターボールで捕まえると言う暴挙に出ました。私は一体何をしているんだ(冷静)

にしてもピカチュウの相方でもあるエアームドは何故おいかぜを没収されてしまったのか


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バトルロイヤル!リーリエVSヨウVSハウVSグラジオ!

今回はバトルロイヤル回でございます。

にしても最近2週間に1回の投稿になってない?……こんなん詐欺や!

因みに今回はリーリエグラジオ兄妹の話を中心に少しだけ動きます。


私は2年前の時にお世話になったハプウさん、そしてウルトラ調査隊のダルスさん、アマモさんと再会し少し会話をして分かれた後、その近くにて大きなドーム状の建物があるのが見えました。

 

なんだろう、と気になった私はその人込みに近づきました。すると突然、まるで地響きのような歓声が沸き上がり、思わず驚いてしまいました。

 

「な、なんなんでしょうか?」

『あれはきっとロイヤルドームでバトルロイヤルをやっているんだロ!』

「ろいやるどーむ?ばとるろいやる?」

『リーリエ、知らないロ?このロイヤルアベニューにあるロイヤルドームでは、バトルロイヤルと呼ばれるポケモンバトルができるんだロ!』

 

ロトム図鑑さんの口(?)から聞きなれない単語が耳に入ってきました。バトルロイヤル、なんだかチラッとだけなら聞いたことがある気がしますが、少し気になる、と言うかなんだか面白そうな響きです。

 

「折角ですし寄ってみましょうか」

『リーリエがそう言うならボクに異論はないロ!』

 

ロトム図鑑さんと話して、私はロイヤルドームへと立ち寄ってみることにしました。しかし、そのロイヤルドームの前に、とても見覚えのある人物の姿がありました。

 

私はその人物の正体が分かり、すぐに近づいて確認しに行きました

 

「やっぱりお兄様!」

「ん?ああ、りーリエか」

 

その人物は紛れもなく私の兄であるグラジオお兄様でした。お兄様は私の存在に気が付くと、振り向いて反応してくださいました。

 

「ここにいる、という事は島巡りは順調のようだな」

「はい!無事にスイレンさんの試練も突破できました!」

「……ふっ、そうか、成長したな。」

 

少し前までのお兄様では見せなかった笑顔を私に向けてくれました。その笑顔は、まるで私とお母様、家族三人で暮らしていたあの頃の無邪気な笑顔に似ていました。

 

「ところでお兄様はどうしてここに?」

「ああ、先日、母様……ルザミーネ代表がエーテル財団に戻ってきてな。」

「お母様が!?」

 

私の驚きの声にお兄様は頷いて返事をしました。後から行く、とは言っていましたが、まさかこんな突然アローラに戻ってくるとは思っていませんでした。

 

「戻ってきた代表が、エーテル財団を再び引き継いでくれるそうだ。昔に比べれば少しやつれてはいるが、あの件を乗り越えることのできた今の……母様なら安心できる。」

「そうだったのですか。それならよかったです!」

「それもこれも、お前のお陰だな。」

「そ、そんな!私は何も!全部……シンジさんのお陰です。お母様を……私たち家族を救ってくれたのですから。」

「……ああ、そうだな。」

 

そうです。シンジさんがアローラに来てくれたから、私たち家族は救われました。

 

シンジさんは私たち家族を救い、アローラの危機を救い、今ではチャンピオンとしてこのアローラに存在しています。

 

私たちやアローラのトレーナーたちにとって、憧れであり、英雄のような存在でもあります。感謝してもしきれない程です。だからこそ、私は……。

 

「それで、俺がここに来た理由だが……」

「おう!来たな!グラジオ君!」

 

お兄様がここに来た理由を話そうとすると、ロイヤルドームから仮面をつけた男性の方が出てきて、お兄様の名前を呼びました。

 

「……このロイヤルマスクに呼ばれてきた。」

「ロイヤルマスクさん……ですか?」

 

そうして私はロイヤルマスクと呼ばれた方に目を向けた。しかし、私的にはどう見ても……。

 

「えっと、ククイ博士……ですよね?」

「違う!私はロイヤルマスクだ!」

「え?で、でも、お鬚とか、体格とか、肌の色とか、どう見てもククイはか――」

「ロイヤルマスクだ!!」

「あっ、はい……」

 

私の指摘も強引に押し切られてしまい、あまりの威圧に私はそう答えるしかありませんでした。

 

「あれー?リーリエ!それにグラジオだー!」

「二人とも、ロイヤルドームに用事なのか?」

 

背後から聞きなれた声が聞こえ、私とお兄様は振り向きました。するとそこには、ハウさんとヨウさん、二人の姿が目に入りました。

 

「ヨウとハウか。また二人一緒なのか。」

「いつも一緒なわけじゃないよー」

「たまたまそこで合流してな。折角だから一緒にロイヤルドームの見学でもしようと思ってな。」

 

どうやらお二人はこのロイヤルドームの見学に来たようです。私もついでなので一緒に見学しようかと思った矢先、くく……ロイヤルマスクさんから1つの提案が出されました。

 

「よし、折角四人が揃ったのだから、全員でロイヤルバトルをしてみないか?」

「おー!それいい考え!さっすがククイ博士ー!」

「ロイヤルマスクだ!!!」

 

ハウさんは無邪気な笑顔を浮かべて容赦なくククイ博士の名前を口にしました。悪気はない、と思います。

 

それにしても、正直その変装ではバレバレです、ククイ博士……。

 

「このメンバーでロイヤルバトルか……なんだか面白そうだな。」

「ふっ、元よりそのつもりできた。誘いに乗るさ。」

 

ハウさんだけでなく、ヨウさん、それにお兄様も乗り気のようです。かく言う私も、正直うずうずしています。トレーナーとしての性は抑えきれないみたいです。

 

「私ももちろん構いません!よろしくお願いします!」

「うむ!では四人とも、ついてきたまえ!」

 

私たちはロイヤルマスクさんの案内により、ロイヤルドームの奥へと進んでいきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんなぁ!ポケモンバトルエンジョイしているかぁ!』

『わああああああああああ!』

 

『ロイヤルバトルが好きかぁ!!』

『わああああああああああああああああ!』

 

『オーバーヒートするほど熱く燃え上がるバトルが見たいかぁ!!!』

『わあああああああああああああああああああああああ!』

 

『今日はこの私、ロイヤルマスクが組んだミラクルマッチ!島巡りのトレーナー四人によるロイヤルバトルを開催する!みんなぁ!滾るバトルを更に盛り上がらせてくれよ!』

 

ロイヤルバトルのバトルフィールドへと続くこの渡り廊下にて、ロイヤルマスクさんに言われ私は待機しています。現在、ロイヤルマスクさんの演説により会場の盛り上がりは最高潮です。

 

聞いた話では、ロイヤルマスクさんはこのロイヤルドームにおいて最も人気のあるトレーナーなのだそうです。チャンピオンであるシンジさんみたいな立ち位置とか言えばいいでしょうか。

 

それにしてもこの廊下にまで聞こえるほど、地響きが鳴るかのような大歓声が響き渡っていると、リーグとはまた違った緊張感が伝わってしまいますね。

 

ですが、不思議と足が震えたりはしていません。今までの経験で慣れてきたから、でしょうか?それとも……

 

(トレーナーだから、ですかね?)

 

私は心の中でそんなことを考えていると、ロイヤルマスクさんの声が耳まで届いてきました。

 

『それでは紹介しよう!今回バトルロイヤルに参加してくれた、トレーナーの諸君の登場だ!』

 

「出番、ですね!」

 

私はそう決意をし、フィールドまで足を進めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちはロイヤルマスクさんの紹介に続き、一斉にバトルロイヤルのフィールド、舞台に上りました。

 

『順番に名前を紹介しよう!赤コーナー、ヨウ!青コーナー、グラジオ!緑コーナー、ハウ!そして黄コーナーは紅一点、リーリエ!さあみんな!リーグ戦にも負けない、燃え滾るバトル!よろしく頼むぜぇ!』

 

ロイヤルマスクさんがそう宣言すると、一気に会場の盛り上がりが爆発し、更に歓声が大きく鳴り響きました。正直耳が痛くなるほどです。

 

「……ロイヤルマスクが折角盛り上げたんだ。俺たちも早速始めよう!行くぞ!ルカリオ!」

『バウ!』

 

お兄様がそう言って繰り出したのは相棒のシルヴァディさんではなく、ルカリオさんでした。ロトム図鑑さんが、ルカリオさんの詳細を説明してくれます。

 

『ルカリオ、はどうポケモン。かくとう・はがねタイプ。相手の波動をキャッチすることで、感情や居場所が分かる。相手の気持ちが分かるため、正しい心のトレーナーにしか懐かない。』

 

「おれは新しく捕まえたこのポケモンだよー!」

『オォン!』

 

『オンバット、おんぱポケモン。ひこう・ドラゴンタイプ。真っ暗な洞窟で暮らし、超音波を大きな耳から放つ。オンバットの超音波は、20万ヘルツと言われている。』

 

ハウさんのポケモンさんはオンバットさんですか。いつの間にかゲットしていたのですね。私の記憶では、結構レアなポケモンさんだったはずですが。

 

「じゃあ俺はこいつだ!頼むぞ!ピカチュウ!」

『ピッカチュウ!』

 

ヨウさんは以前のキャンプの際に仲間にしたピカチュウさんでした。あの時に比べ、ピカチュウさんの顔が凛々しく感じます。実力も相当上がっていることでしょう。

 

「では私は……!」

 

私はモンスターボールを手に取り、フィールドに投げようと構えました。しかしその時、別のモンスターボールが勝手に開き、他のポケモンさんがフィールドに立っていました。

 

『ピィ!』

「えっ!?ピッピさん!?」

『ピッピ!ピィ!』

「ダメですよピッピさん。これは遊びじゃなくて、バトルなんですから。いい子なので、ボールに戻ってください。」

『ピィ!ピィピ!』

「え?自分がやりたい、ですか?」

『ピィ!』

 

私の言葉にピッピさんは頷いて返事をしました。私的にはあまり戦わせたくはありませんが、出てしまった以上仕方ありませんね。

 

「分かりました。でも、無理はしないでくださいね?」

『ピッピ♪』

 

ピッピさんの意思を尊重し、私はピッピさんでそのままバトルロイヤルに挑むことにしました。それを見たロイヤルマスクさんが口元を緩め、準備完了とみなして試合開始の合図を宣言しました。

 

『それではバトルロイヤル!開始!』

 

「先手必勝!ピカチュウ!ルカリオにでんこうせっか!」

『ピッカァ!』

「甘い!バレットパンチで迎え撃て!」

『バウッ!』

 

ピカチュウさんのでんこうせっか、ルカリオさんのバレットパンチがフィールド中央で激突します。その瞬間、ルカリオさんの波動の力が辺りに広がり、ピカチュウさんはパワー負けをして反射されました。

 

「くっ、やっぱり手強い!」

「おっと!おれたちのことも忘れないでよー?オンバット!エアカッター!」

『オォン!』

「忘れてなんかないさ!ピカチュウ!アイアンテール!」

『ピッカ!』

 

オンバットさんのエアカッターがピカチュウさんを切り裂こうとしますが、ピカチュウさんは逆にその攻撃をアイアンテールで防ぎました。

 

「リーリエ!よそ見をしている場合じゃないぞ!はどうだん!」

「っ!躱してください!」

『ピィ!』

 

私はお兄様の声でハッとなり、ルカリオさんのはどうだんを回避しました。

 

これはバトルロイヤル。全員が敵なのですから、相手をじっくり観察している余裕はありませんでした。

 

「バレットパンチ!」

『バウ!』

 

「ムーンフォースです!」

『ピッ!?』

 

ピッピさんはムーンフォースを準備しますが、ルカリオさんの動きがあまりに早すぎて攻撃が間に合わず撃ち落とされてしまいました。

 

「次はピカチュウにはどうだん!」

「でんこうせっかだ!」

『ピッカァ!』

 

ルカリオさんのはどうだんをピカチュウさんはでんこうせっかで回避し、持ち前の素早い動きで急接近しました。

 

しかしその瞬間、ルカリオさんは目を瞑り神経を集中させました。

 

「……かわせ!」

『バウ!』

 

そしてお兄様の指示に従い、ピカチュウさんの攻撃を瞬時に回避しました。その反応に対してピカチュウさんは驚いていましたが、その後……

 

『ピッカァ!?』

「なっ!今の攻撃は!」

 

横から別の攻撃がピカチュウさんに直撃しました。その攻撃の正体は、オンバットさんのエアカッターでした。

 

「へへー、これはバトルロイヤルだからねー。こういう戦術も、有効なんだー!」

「くっ、これはやられたな。ピカチュウ、まだ立てるか?」

『ピカ!』

 

お兄様のルカリオは、横からオンバットさんの攻撃が接近していることを読んで回避したようです。ルカリオさんもオンバットさんの波動を感知し、回避行動に移ったのでしょう。

 

「ふっ、中々悪くない戦いだ。だが、もうそろそろ終わらせる!ビルドアップ!」

『バウッ』

 

ルカリオさんはビルドアップで自身の筋力を増加させ、攻撃力と防御力を上昇させました。すぐに決着させるつもりでしょう。

 

「ですがそうはさせません!ルカリオさんにムーンフォースです!」

『ピィ!』

「ピカチュウも10まんボルトだ!」

『ピカァ!』

「オンバット!かまいたち!」

『オン!』

 

ピッピさんのムーンフォース、ピカチュウさんの10まんボルト、オンバットさんのかまいたち、3つの攻撃が一斉にルカリオさんへと目掛け放たれます。しかし、ルカリオさんは目を瞑った状態で両手に2本の骨を生成しました。

 

「ルカリオ!ボーンラッシュ!」

『……バウッ!』

 

ルカリオさんはボーンラッシュの激しい連撃で、私たちの攻撃をあっさりと解除してしまいました。ビルドアップの能力アップもあって、威力がかなり上がっているようです。

 

「ピッピさん、ここは仕方ありません。ゆびをふるです!」

『ピィ!』

 

ピッピさんは規則正しい振り子運動のように指をふり始めました。どの技が出るか分からないため殆ど博打ですが、この際仕方ありません。

 

「させるか。ルカリオ!バレットパンチ!」

『バウ!』

「ピカチュウ!ルカリオにでんこうせっか!」

『ピッカチュ!』

『バウッ!?』

「くっ!」

 

ピカチュウさんのでんこうせっかがルカリオさんの動きを止めてくれました。その妨害に対し、お兄様は苦い顔をしました。

 

ルカリオさんはピカチュウさんのでんこうせっかを腹部に受けましたが、軽い身のこなしで受け身をとり、ダメージを最小限に抑えました。

 

「でもそうかんたんにさせないよー!ハイパーボイス!」

『オォォォン!』

 

オンバットさんのハイパーボイスが全域に広がります。ハイパーボイスは相手全体に攻撃する技です。ピカチュウさんにルカリオさん、それに私のピッピさんにも影響が現れます。

 

その時、ピッピさんのゆびをふるが完了し、ピッピさんが光り始めました。

 

するとピッピさんから冷え切った風が吹き、フィールド全体を包み込みました。これは氷タイプの技、こごえるかぜです。

 

こごえるかぜがオンバットさんのハイパーボイスと衝突し、フィールドを包み込みました。これで視界も見え辛くなってしまいました。

 

「……ボーンラッシュ」

 

ふとお兄様の方からそう声が聞こえ、気が付いたときには爆風が晴れると同時にピカチュウさんが吹き飛ばされていました。

 

「なっ!?ピカチュウ!」

『ピィカ……』

 

ピカチュウさんは戦闘不能状態となっていました。ですがその後、私は攻撃しなくてはと焦り、ピッピさんに攻撃の指示を出しました。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ!』

 

ピッピさんはムーンフォースでルカリオさんに攻撃しました。しかし……

 

「弾き返せ!」

『バウッ!』

 

ルカリオさんはボーンラッシュを使い、ムーンフォースをあっさりと弾き返しました

 

『ピィ!?』

 

その弾き返されたムーンフォースはピッピさんに直撃し、ピッピさんはその衝撃で吹き飛ばされてしまいました。

 

「ピッピさん!」

 

私は慌ててピッピさんを受け止め、ピッピさんへの衝撃を抑えました。

 

「大丈夫ですか?」

『ピィ……♪』

 

ダメージはあるようですが、笑みを浮かべる程度の余裕はあるようです。どうやら、ピッピさんは充分満足してくれたみたいです。

 

「はどうだん!」

『バウゥ!』

 

そしてルカリオさんのはどうだんが放たれ、その攻撃に直撃したオンバットさんはそのままダメージに耐えられずに墜落しました。

 

「オンバット!」

『オォン……』

 

オンバットさんも戦闘不能になってしまったみたいです。その瞬間、バトルロイヤルの勝者が決定しました。

 

『そこまで!勝者はグラジオとルカリオ!みんなぁ!健闘したトレーナーとポケモン達に、盛大な拍手を!』

 

ロイヤルマスクさんの言葉と同時に、観客の全員が拍手の雨を降らせました。負けはしましたが、その拍手で私は温かい気持ちになることができました。

 

『これにて本日のバトルロイヤルは終了とする!参加してくれたトレーナーたちに、もう一度拍手喝采を送ろう!』

 

そうして私たちはみんなの拍手の雨を浴びながら、バトルロイヤルのフィールドを後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!今日は協力してくれてありがとう!おかげで観客の皆が盛り上がってくれた!」

「いえ、私たちもいい経験ができました。こちらこそ、ありがとうございました!」

 

私はロイヤルマスクさんに頭を下げて感謝の言葉を伝え、またいつか来ますと伝えました。その時、ロイヤルマスクさんは今度は自分とも戦おうと言ってくださいました。

 

「では俺たちもこれで失礼します。」

「またねー!ククイ博士ー!」

「うむ!またな!それと、私はロイヤルマスクだ!!」

 

最後まで相変わらずでしたけど……。

 

「リーリエ。」

「あっ、お兄様!」

 

私はヴェラ火山への道のりを進んでいると、お兄様がその先で待ち構えていました。

 

「今日お前と戦って、分かったことがある。」

「分かったこと、ですか?」

「まだまだ甘い部分も多々あるが、トレーナーとしては確実に成長している。ふっ、あの頃の自分を思い出すようだ。」

「あの頃のお兄様?」

 

あの頃のお兄様とは、恐らくシンジさんと共に島巡りをして腕を磨いていたころのことでしょう。

 

「強さを求めていた頃の俺。アイツに出会わなければ、絶対得ることはできなかっただろうな。」

「お兄様……」

「俺はまた暫くアローラを巡るつもりだ。もしまた会う機会があれば、その時はバトルしよう。もうお前は、俺のライバルだ。」

「っ!?はい!その時はお願いします!」

 

そう言ってお兄様はその場を立ち去っていきました。

 

2年前までは不愛想で他者や私にさえ心の扉を開こうとしなかったお兄様。そんなお兄様が笑顔で、私の事を認めて下さった。それだけで私は、とても充実した気持ちになることができました。

 

私は晴れやかな気持ちと軽い足取りのまま、次の試練の場所であるヴェラ火山に向かうのでした。




先日久しぶりにブイズで対戦していましたが、初手エスバとリーフィアちゃんが対面して正直絶望+たいありの準備もしていました。

どうせジェットだろうと思いながら相手が舐めプでキョダイカキュウ撃ってくれないかな、とか思ってたら撃ってくれたので、そのまま弱点保険+ダイアースでエースバーンを落とせました。少しだけ耐久調整していてよかった。やっぱり自分の使ってきたポケモンが一番なんやなって思いましたね。

そんなわけで折角なので私のお気に入りのリーフィアちゃんの型を紹介します。
(未だに興奮してるので紹介せずにはいられない)

特性:葉緑素
持ち物:弱点保険
性格:陽気
技:リーフブレード、あなをほる、アイアンテール、にどげり
努力値:H148/A148/B4/D4/S204


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ヴェラ火山到着、炎の試練までの道

今回はかなり短いです。試練までの間の話として書きたかったんですが内容が思いつかずかなり薄い話になってしまいました。

ポケモンの新シーズンも早く手つけたいし、手抜きみたいで申し訳ない(´・ω・`)

シンジ君いないとなんか話広げるの難しく感じるのはなんででしょう……。


先日、ロイヤルドームにてお兄様、ヨウさん、ハウさんとロイヤルバトルを経験した私、リーリエ。現在次の目的地であるカキさんの試練の行われるヴェラ火山の麓までやってまいりました。

 

「これがヴェラ火山、ですか。」

 

私はそのヴェラ火山を見上げます。カントー、ジョウトの間に位置するシロガネ山に比べれば険しさはなさそうですが、ここは火山地帯。火山の麓にいるだけでもその熱さが感じてしまうほどです。

 

因みにこのヴェラ火山の麓はヴェラ火山公園、と呼ばれているそうです。公園と言っても一般的な公園みたいにブランコなどの遊具があるわけではなく、どちらかと言うと広場みたいななだらかな場所で、カラカラさんやガルーラさんみたいな炎タイプではないポケモンさん、それからヒノヤコマさんみたいな空を飛ぶ野生のポケモンさんが生息しています。

 

その他にも、島巡りに挑戦していない方々が観光に来ている姿も見られます。ガイド役の方に案内されていたり、カメラで自然の様子やヴェラ火山を撮影している姿も見えます。見たところ、観光に来ている方々のほとんどは別の地方からいらっしゃっている方々だと思われます。

 

『コォン……』

 

シロンも暑さにやられてかいつもより元気のない声を出しています。シロンは氷タイプなので暑さは苦手なのでしょう。

 

「ここまでありがとうございました、シロン。あとはゆっくり休んでください。」

 

自分が方向音痴なためここまで道案内を頼んでいた私ですが、流石にこれ以上無茶させるわけにもいかないので、一度モンスターボールに戻してシロンを休ませてあげることにしました。

 

「ロトム図鑑さんも、暑かったら無理しなくていいですからね?」

『確かに暑いロ。ケド、普通のポケモンに比べればボクは図鑑だから大丈夫だロ!それにリーリエを一人にすると、火山の中に落ちないか心配だロ。』

「いや、さすがにそれは……」

 

……否定したかったですが、ロトム図鑑さんの言葉に私は否定することができませんですが。さすがに私がいくら方向音痴とは言え、火山の中に落ちることはない、と思います。……タブン

 

「すみませーん!」

「え?は、はい。私ですか?」

 

私がロトム図鑑さんとそんな話をしていると、突然男女二人組の方たちに声をかけられました。見たところカップルで観光にきた、というところでしょうか。

 

「島巡りのトレーナーですよね?」

「は、はい、そうですけど……」

「一緒に写真をとってもらってもいいでしょうか!」

 

そう言って私と写真をとることを迫ってきました。突然のことに戸惑った私ですが、写真ぐらいだったら別にいいだろう、と思い承諾しました。

 

島巡りはアローラ地方でのみ行われている独自の文化です。他の地方の方々からすればやはり珍しいのでしょう。私がその二人と写真撮影をしていると、他の観光客の方々からも同じようにお願いをされてしまいました。

 

最初は写真をとるだけならいいだろう、と思っていましたが、さすがにこんなに写真撮影を頼まれてしまうと、疲れる云々の前にどうしても恥ずかしさが沸いてきてしまいます。

 

しばらくして観光客の方々からの写真撮影は治まり、私も一息つくことができました。

 

「お疲れ様です、島巡りのトレーナーさん。」

「あっ、えっと、あなたは?」

 

そんな私に労いの言葉をかけつつ、一人の女性が近付いてきました。見たところ観光客の方とは違うようですが……。

 

「私は島巡りのトレーナーさんを案内する専門のガイド三姉妹の一人です。本日は私が、カキさんの試練の場所に案内させていただきます。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

どうやら専門のガイドさんだったようです。ヴェラ火山は他の試練に比べ道のりが険しく、人によっては迷ってしまったり、火山という事もあり危険も伴ってしまうためこうしてガイド役の方が案内してくれるのだそうです。

 

『ビビッ!専用のガイドさんがいるならボクが案内するより安心ロ!リーリエのお言葉に甘えて、ボクは少し休ませてもらうロ!』

 

そう言ってロトム図鑑さんは私の懐へと潜って休息をとることにしました。

 

「ヴェラ火山はアローラの観光地の中でも人気が高くて、こんな感じで観光客がよく集まるんです。島巡りのトレーナーさんも珍しいみたいで、写真撮影をお願いすることも日常茶飯事なんですよ。」

「そ、そうなんですね。」

「では、早速ヴェラ火山内部に入っていこうと思います。はぐれない様に、しっかりと付いてきてくださいね。」

 

私はガイドさんの指示に従い、ヴェラ火山の中へと入っていくことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、暑いです……」

「火山ですからね。頂上までもうすぐですので、頑張ってください。」

「は、はい……」

 

アローラの気候以上に厳しい暑さの中、私はガイドさんの案内に従いついて行きます。そこまで時間は経っていないはずですが、あまりの暑さのため非常に長い時間ヴェラ火山内部を彷徨っているような錯覚をしています。

 

ガイドさん曰く、出来る限り近道かつ気温が高くない場所を選んで進んでくれているのだそうです。それにしてもガイドさんは慣れているのか、私に比べて殆ど疲れを見せていません。よほどこの道に慣れているのでしょう。さすがというべきでしょうか。

 

「ほら、出口が見えてきましたよ。」

 

私はガイドさんの指さした方角を見てみます。その方角には出口の光が見えました。暑さのあまりいつもの旅以上に疲労が出ている気がします。

 

私はようやく目的地にたどり着いたあまり、思わずため息をついてしまいました。正直別の意味でここまで厳しいものだとは思っていませんでしたし……。

 

「ふぅ……ようやく外に出られました……。」

 

私は外に出た勢いでそのまま大きく息を吸い込みました。外の空気はいつも以上においしく、アローラの温暖な気候も今では逆に涼しく感じてしまうほどでした。

 

「お疲れ様でした。慣れない山道と暑さでお疲れでしょうし、カキさんの試練の前にここでお休みください。」

「はい、そうさせていただきます。」

 

私としても流石にこの調子でぬしポケモンさんと戦うと実力を発揮できずにやられてしまいそうな気がするので、ガイドさんのお言葉に甘えて休ませていただくことにしました。




もう少し話を伸ばすつもりでしたがあまりにグチャグチャになってしまったのでカット。やはりスランプ状態です。折角新しく嬉しい感想いただいたのに、やる気が空回りした感じで不甲斐ない。

しかも次回はあのカキさんの試練だし、どう表現するかまだ決まってないです。でもあれ色んな意味で人気だし、見たい人も多いだろうなぁ……。次回までにどうにかしよう……。

謝罪ついでに現状この小説のトレーナーの強さの並びを公表しておきます


???>????>各地方チャンピオン≧シンジ>四天王(アローラ含む)>グラジオ≧しまキング、クイーン及び各地方ジムリーダー(本気)>リーリエとそのライバル


現状ではこんな感じです。ククイ博士とかキャプテン、プルメリ姉さんみたく明確な対戦描写がない人はまだ含んでません。

リーリエとライバルたちは強さが頻繁に上下するため現状は同じランク帯にしておきます

あっ、プリコネでラビリスタさんゲットしました


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炎の試練!脅威のパワー、ガラガラ!

なんとかカキの試練書けました。頭を捻ってどう表現するか悩みましたが、やっぱり試練なのにネタみたいになってしまわれた……。原作が色々とあれだからしょうがないよね、うん。

最近発売されたキャプテン翼のゲーム買ってみましたけど、普通に神ゲーでした。かなり面白いゲームなのでまだ楽しんでます。試合内容はかなり世紀末ですけど。


厳しい暑さのヴェラ火山を乗り越え、現在私はカキさんの試練が行なわれる門の前に立っています。

 

案内のガイドさんのアドバイスに従い、私はここでひと時の休息を取り、私もポケモンさんたちも体力が充分に回復したのでいよいよカキさんの試練に挑戦することにしました。

 

「それではこれより先にて、キャプテンカキの試練が開始されます。準備はよろしいですか?」

「はい!」

 

ガイドさんの案内により私はカキさんの試練の場へと足を踏み入れました。しばらく奥まで進むと、そこには正方形にできた広い台と、その上にキャプテンであるカキさんの背中が見えました。

 

「……遂に来ましたか。」

 

カキさんはそう言って私の方へとサッと振り向きました。

 

「カキです。と言っても、俺のことは知っていると思いますが。」

「はい、お久しぶりです、カキさん。」

 

私は久しぶりに再会したカキさんに挨拶をしました。カキさんも私の挨拶に対して丁寧な挨拶で返答してくれました。

 

「さて、俺の試練ですが、ルールは至ってシンプル。」

 

これから行われる試練の内容を、カキさんが説明してくれます。

 

「これからガラガラたちにダンスを躍らせます。1回目と2回目で、どこが違うのかを当ててもらうという内容です。簡単に言えば、間違い探し、ですね。」

「ま、間違い探し、ですか?」

 

これまたスイレンさんの試練とは違い、意外な試練の内容でした。そう言えばカキさんは2年前もメレメレ島でのお祭りの際にトーチトワリング?と言うものを披露していました。カキさんはポケモンさん以外にダンスも好きな方の様です。

 

それにしても間違い探し……ガラガラさんたちに躍らせると言っていましたが、一体どんな間違い探しをするのでしょうか。

 

「それでは……ガラガラ!準備はいいか!」

 

カキさんのその掛け声に、3匹のガラガラさんは頷くことで返答しました。ガラガラさんも所定の位置についており、どうやら準備が整ったようです。

 

「それではガラガラの舞、とくとご覧あれ!」

 

そして遂に、カキさんの試練がスタートしました。

 

 

 

例のBGM

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

 

(謎の)音楽が流れ、その間にガラガラさんが踊り始めました。そして音楽な鳴り終わった瞬間、ガラガラさんは一斉にピタリと動きを止め、それぞれポーズをとりました。

 

両サイドのガラガラさんは自身の持っている骨を片手で掲げるポーズをとり、真ん中のガラガラさんは地面に片手をつけてヒーローの登場シーンに似ているポーズをとっています。

 

その動きはとてもきれいで、ガラガラさんたちはピクリとも動きません。まるで時間が止まっているかの様な状態です。

 

「このポーズをよーく覚えておいて下さい」

 

そしてガラガラさんは初期位置へと戻り準備をしました。そしてまた同じ音楽が流れ始めます。音楽と言うよりも合いの手みたいなものですけど。一体誰がやっているのでしょうか……?」

 

 

 

 

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

 

 

再びガラガラさんの動きが止まりました。両サイドのガラガラさんは先ほどとポーズが変わっていない様に見えます。ですが真ん中のガラガラさんは、上を見上げている形となっています。これは一目瞭然、です。

 

「先ほどの踊りとどこが違うだろうか?」

「えっと、真ん中のガラガラさんが上を見上げています。」

「なんと!?正解です!」

 

ふぅ、難しい問題ではなかったのでよかったです。これで次の問題に……

 

「正解ですので……おいでませ!ガラガラ!」

『ガラガァラ!』

 

……えっ?

 

カキさんの呼びかけと共に真ん中のガラガラさんが飛び出し手に持った骨を構えてきました。これって、戦えってことですか?

 

『ガラァ!』

 

ガラガラさんがそのまま勢いよく骨を振り下ろそうとしんばかりに突っ込んできました。って、ちょっ、待ってくださいよ!

 

「えっと!マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!リィルー!』

『ガラ!?ガッ!』

 

私は咄嗟にマリルさんをモンスターボールから出し、バブルこうせんで攻撃される前に反撃しました。

 

バブルこうせんはガラガラさんの顔に直撃し、ガラガラさんはそのまま吹き飛ばされました。

 

ガラガラさんのタイプはほのお・ゴーストタイプ。みずタイプのバブルこうせんは効果抜群です。ガラガラさんはバブルこうせんの一撃で戦闘不能になってしまいました。突進してきた反動もあり今の一撃は耐えられなかったのでしょう。

 

それにしても正解した瞬間に襲われるとは思っていなかったので正直ビックリしました。

 

「ガラガラは正解すると、嬉しくて戦いたくなるのです。」

 

カキさん、すいません。ちょっと意味が分かりません。

 

「それでは次の問題に参ります。」

 

 

 

再度ガラガラさんは同じ初期位置に立ち準備をします。そしてまたも同じ音楽が流れはじめました。

 

 

 

 

 

 

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

 

 

 

そして音楽と同時にガラガラさんたちもピタリと止まる。しかしその時、もの凄くおかしなもの、と言いますか、間違いなく場違いなモノがこちらを見ていました。しかも異様に笑顔で……。

 

「…………」

 

こちらを見ているモノ、登山風の服を着ている男性は

 

私もその光景には思わず目が点になってしまいました。あまりの不意打ちで正直笑ってしまいそうですけど。

 

「このポーズをよーく覚えておいて下さい」

 

にやけ顔になってしまいそうな顔を堪え、次の踊りに移りました。

 

 

 

 

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

 

 

先ほどとガラガラさんのポーズは変わりなさそうです。となるとやはり変化しているのは男性の方でしょうか。……この男性の方も人数に入れていいのか不明ですが。

 

カキさんが何も言わないということは男性の方も含めてなのだとは思いますが、なんだか先ほど以上に笑顔でこちらを、と言うか明後日の方へと視線が向いている気がします。

 

「先ほどの踊りとどこが違うだろうか?」

「えっとぉ……その方が別の場所を向いているかと……」

「なんと!?正解です!」

 

今度の問題もなんとか正解でした。ですがなぜか嫌な予感がするのですが……。

 

「正解ですので……おいでませ!やまおとこ!」

『アローラ!』

 

やっぱり!?と言うかその人と戦うんですか!?

 

 

 

やまおとこの ダイチが

勝負を しかけてきた!

 

 

 

「ブーバー!はじけるほのお!」

『ブバァ!ブゥバァ!』

 

やまおとこさんの投げたモンスターボールから飛び出してきたブーバーさんが即座にはじけるほのおで攻撃してきました。

 

「マリルさん!アクアテールで防いでください!」

『リル!』

 

その攻撃をマリルさんはアクアテールでしっかりと防ぎ打ち消しました。こうなったら速攻で決着をつけに行きます!

 

「続けてころがるです!」

『リルルゥ!』

『ブバァ!?』

 

マリルさんはころがるで接近し、その攻撃がブーバーさんに直撃しました。ブーバーさんはその一撃で怯み、大きくのけぞりチャンスが生まれます。

 

「とどめです!アクアテール!」

『リル!』

 

ころがるに続きアクアテールがブーバーさんにヒットしました。弱点である攻撃を立て続けに受けたことにより、その攻撃でブーバーさんは仰向けに倒れ目を回していました。戦闘不能です。

 

「oh!?ブーバー!」

『ぶ……ばぁ……』

 

やまおとこさんはブーバーさんをモンスターボールへと戻しました。これで第二の問題はクリアでしょうか。

 

「お見事です。正解に喜んだやまおとこはうれしくて戦いたくなるのです。」

 

いえ、もっと意味が分かりません。

 

「それでは次が最後の問題です。」

 

そして3問目の問題が始まりました。まだぬしポケモンさんと戦ってないのに疲れた気がするのはなぜでしょうか。

 

 

 

 

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

 

 

ガラガラさんの動きがピタリと止まります。自然とやまおとこさんが中央に混じってポーズを決めていることにはこれ以上もう突っ込まないことにします。

 

それにしてもこのガラガラさん、記念撮影をしているように見えるのは気のせいでしょうか?

 

「このポーズをよーく覚えておいて下さい」

 

ガラガラさん(とやまおとこさん)が初期位置に戻り、再び音楽とともに踊り始めます。

 

 

 

ハイ!ハイ!ハイハイハイハイハーイ!

 

 

音楽が終わりガラガラさんたちの動きが止まります。しかしそこには奇妙なポケモンさん、と言うか明らかに違うポケモンさんの姿がありました。

 

「先ほどの踊りとどこが違うだろうか?」

「えっと、大きなガラガラさんが……」

「なんと!?正解です!」

 

まだ言い終わっていないのに正解を告げられてしまいました。この流れはもしかして……。

 

「正解ですので……おいでませ!ぬしポケモン!」

『ガラァ!』

 

ですよね!そんな気はしていました!

 

そんなこんなでカキさんの試練も終盤に進み、遂にぬしポケモンさんであるガラガラさんとのバトルに突入しました。

 

「マリルさん!このままお願いできますか?」

『リルル!』

 

ほのお・ゴーストタイプのガラガラさんに対して有利なポケモンさんは、私の持つポケモンさんの中ではマリルさんのみです。なのでここはマリルさんに続投していただきます。

 

ですが相手はあのぬしポケモンさん。いくら相性がいいとはいえ、マリルさんだけで戦うのは厳しいでしょう。なのでここは!

 

「あなたもお願いします!シロン!」

『コォン!』

 

私はマリルさんのパートナーとして、シロンを選出しました。ピッピさんはバトル慣れしておらずフシギソウさんは相性が悪く、チラチーノさんのノーマル技はガラガラさんに効果がありません。なのでここは最も戦闘経験が豊富なシロンが相応しいと判断しました。

 

『ガラガラァ!』

「っ!?シロン!マリルさん!避けてください!」

 

ガラガラさんは骨を両手で構え、そのまま勢いよく振り下ろしてきました。先端が黒く染まっていたため、恐らく、シャドーボーンでしょう。

 

地面に直撃したシャドーボーンは大きな衝撃を放ち、その場に大きくクレーターを作りました。その様子からガラガラさんの攻撃力が如何に高いかがよく伝わってきます。

 

「マリルさん!バブルこうせん!シロンはれいとうビームです!」

『リルゥ!』

『コォン!』

 

マリルさんはバブルこうせん、シロンはれいとうビームでガラガラさんをサイドから挟撃しました。しかし……

 

『ガァラ!』

 

ガラガラさんは、カキさんのやっていたトーチトワリングの様に回すことでシロンとマリルさんの攻撃を防ぎました。カキさんの動きを利用してバトルに活かすとは、やはり簡単には勝たせてくれませんね。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

『リィル!』

『ガラッ!?ガラ!』

 

マリルさんはアクアテールですかさず畳みかけます。しかしその動きに対しガラガラさんは大きな体からは想像のつかない俊敏さと身軽さで、マリルさんのアクアテールをジャンプして回避しました。

 

『ガラッ!』

 

そしてガラガラさんはマリルさんの背後に回り、手に持った骨を強引に振り回して攻撃してきました。マリルさんはその攻撃に思いっきり吹き飛ばされてしまいました。

 

『コォン!?』

 

マリルさんが吹き飛ばされた先にシロンが着地してしまい、そのまま一緒に叩きつけられてしまいました。

 

「シロン!マリルさん!大丈夫ですか!?」

『こぉ……ン!』

『リル、ル!』

 

シロンとマリルさんは立ち上がりましたが、予想よりもダメージは大きいようです。

 

ぬしポケモンさんは通常のポケモンさんよりも一回り二回り体格が大きく、ガラガラさんの骨も通常の個体とは異なりかなり太く大きいものとなっています。さしずめふといホネ、と言うものでしょうか。

 

それ故にマリルさんの受けるダメージが本来以上の威力となってしまい、それによりシロンに対しても大きなダメージが伝わってしまったようです。

 

(あまりバトルを長引かせてしまうと厳しいですね)

 

ガラガラさんの攻撃力は尋常ではありません。これ以上のダメージを受けてしまうと一溜りもないでしょう。

 

かといってガラガラさんの攻撃力だけでなく、防御面でも隙がありません。Z技を撃とうにもチャンスが見つからず、未だ本物のZクリスタルでは成功させていません。いきなり本番で使うのは体力を消耗してしまうだけの可能性もあるので危険でしょう。

 

(なんとかシロンとマリルさんのコンビネーションで隙を作り出すしかありませんね!)

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!リィルルル!』

『ガラガラァ!』

 

ガラガラさんは骨を目の前で回すことにより、バブルこうせんを防ぎます。これは予想通りの動きです。

 

「マリルさん!そのまま撃ち続けてください!」

『リルルル!』

 

マリルさんはそのままバブルこうせんを撃ち続けてくれています。今がチャンスです!

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コン!コォン!』

 

シロンはれいとうビームを放ちました。そのれいとうビームはマリルさんのバブルこうせんと重なり、バブルこうせんを瞬時に凍らせました。

 

『ガラ!?』

 

バブルこうせんが凍ったことにより、その攻撃は急激に鋭さを得てスピードも上がりました。その連続攻撃にガラガラさんは耐えきることができず、遂に直撃を受けて怯み吹き飛ばされて仰向けに転倒しました。

 

「今です!マリルさんはバブルこうせん!シロンはムーンフォースです!」

 

マリルさんとシロンの最大パワーの同時攻撃が一斉に放たれガラガラさんに向かいます。その攻撃に対しガラガラさんは立ち上がろうとしますが間に合わず、バブルこうせんとムーンフォースの合体技が炸裂しました。

 

『が……らぁ……』

 

ガラガラさんに直撃した攻撃によって発生した砂埃が晴れると、そこには目を回したガラガラさんの姿がありました。その姿を確認したカキさんが、手を挙げて合図を出しました。

 

「そこまで!ぬしポケモンガラガラ、戦闘不能!よってこの試練、リーリエの勝利と認める!」

 

そして私の勝利が認められ、試練の突破が決定しました。

 

その宣言を聞いたシロンとマリルさんが喜びをあらわにし、私の元へと飛び込んできました。

 

「お二人ともお疲れ様です!ありがとうございました!」

『コォン!』

『リルル!』

 

私はシロンとマリルさんを抱き留め、感謝の気持ちに頭を撫でました。シロンとマリルさんも嬉しそうにしてくれています。

 

「お見事、まさか鍛え上げたガラガラが負けるとは。」

 

カキさんが称賛の拍手をしながらこちらに歩み寄ってきました。そして私にある物を手渡してきました。

 

「試練突破の証明として、このホノオZを渡します。熱い戦い、お疲れ様でした。」

「ありがとうございます!ホノオZ、ゲットですZ!」

『コォン!』

『リルル!』

 

シロン、マリルさんと共に試練突破の喜びを分かち合います。今回のぬしポケモンさんも強敵でしたが、無事に突破することができてなによりです。

 

それにしても今回の試練は別の意味で疲れた気がします。なるべく早めにポケモンセンターに急いで落ち着いた方がいいかもしれません……。

 

帰りもまた熱い洞窟を通らなければならないかと思いましたが、ガイドの方から別の道を案内され、安全に下山することができました。更なる疲労を感じる事が無くて良かったと、私は心の中で少しホッとしていました。

 




明日はスーパーマリオ3Dの配信日ですぞ!全部やったことあるし持ってるけど、どれも面白いから高画質で復活するのは嬉しいです。特にサンシャインは何回やっても飽きない超神ゲーです。

今シーズンのポケモンも滅茶苦茶面白いし、色々と忙しい月になりそうです。

でも私パッチラゴン全然使いこなせないんですよね。雑に使っても強いはずなんだけど……。

代わりに今シーズンのブラッキーは超強いです。S28振りのゴツメブラッキーが最高です!因みにS調整はS12振りアーマーガアまで意識してます。


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リーリエとシロン、ロコンとの出会い!

最近の私の悩み

アシレーヌを使ってみたいけど役割的にニンフィアちゃんと被ってしまうから使えない


アーカラ島二つ目の試練、カキさんの炎の試練を突破した私は、アーカラ島最後の試練であるマオさんが担当の草の試練、ジェードジャングルを目指して先を進んでいます。

 

ヴェラ火山公園の先にあるトンネルを超えると、その先である人に話しかけられました。

 

「もしもし、そこのトレーナーさん。少しよろしいですか?」

「あっ、はい、私ですか?」

 

その人は襟も高く分厚い白衣、メガネ、金髪、そして腕には大きな腕時計にも似た機械。少し雰囲気にそぐわない怪しげな格好ですが、研究員の方でしょうか。エーテル財団の方でしたら、特徴的な見た目なので忘れないはずですが。

 

「わたくし、アクロマと言う者です。しがないただの科学者ですよ。」

「アクロマさん、ですか。私はリーリエです。島巡りに挑戦中のトレーナーです。」

「島巡り……アローラのトレーナーに伝わる伝統、ジムチャレンジにも似た文化でしたね。」

「はい、その通りです。」

 

このアクロマさん、と言う方はジムチャレンジの事を知っている。このアローラではあまり知られていないジムチャレンジを知っているという事は、アローラの住人ではなさそうです。

 

「ふむ、トレーナー、そしてポケモンと言う存在は実に興味深い。地域によって姿、形、タイプ、生態、さらには文化までもが変わる。そう、“世界”によっても、ですね。」

「アクロマさん?」

「いえ、なんでもありません。ただの独り言です。」

 

最後の方の言葉が聞き取れず、私はアクロマさんに聞き返してみましたがはぐらかされてしまいました。どうしてかその内容が気になってしまいますが、そう言い返されては私はこれ以上尋ねることはできませんでした。

 

「島巡りの邪魔をして申し訳ありません。わたくしはまた調べたいことができてしまったので、ここで失礼させていただきます。貴女とは、また会う気がしますけどね。」

 

そう言ってアクロマさんはその場を去っていきました。恰好もそうでしたが、物言いも含めて怪しげな雰囲気のある方でした。

 

ですが私は不思議とあの方は悪い人ではないのではないかと感じています。アクロマさんはまた会う気がします、と言っていました。次に会った時はあの人の正体も分かるのでしょうか。

 

私はアクロマさん、と言う不思議な科学者の事を見送っていると、再び別の方から声をかけられました。

 

「あれー?リーリエじゃーん!こんなところで奇遇だねー!」

「あっ、ハウさん!ヨウさんは一緒じゃないんですか?」

「ヨウはポケモンを鍛えるってどっかいっちゃったー。グラジオには負けたくないからだってさー。」

 

その方は私と同じ島巡りに挑戦しているハウさんでした。ヨウさんとは別行動の様で、お兄様に負けたくないから試練に挑戦する前にポケモンさんたちを鍛えるだそうです。前回バトルロイヤルで負けたことを気にしているのでしょう。

 

実際、お兄様のポケモンバトルの腕前はかなりのものです。二年前にシンジさんと互角のバトルを繰り広げ、お互いにライバルとして鍛えあったと私は聞いています。今の私が全力で戦っても勝ち目はないでしょう。

 

「ところでさー、気になってたんだけど。」

 

そう言ってハウさんが私の背後にあるものを指差して言いました。

 

「その白い車みたいなのってなにー?」

「あー、これはエーテルベースと呼ばれているものだと思います。」

 

私がハウさんにエーテルベースについて説明をしました。

 

エーテルベースとは、エーテル財団が拠点の様に使用している場所で、その地域のポケモンさんを観察したり保護したりしている、所謂キャンピングカーにも似た役割をしている場所です。

 

と言っても、私もお母様から聞いただけで詳しいわけではありませんが。

 

「へぇー、気になるし中に入ってみようよー!」

「えっ?でも迷惑じゃ……。」

「迷惑だったらすぐに出ればいいしさー、覗くだけだよー!」

「あっ、ハウさん!」

 

私はハウさんに言われるがままにエーテルベースへと入ることになりました。エーテルベースの扉は自動扉で、中は車の割に作業ができるくらいにはそこそこ広め、と言った印象でした。

 

「ごめんくださーい!」

「ハウさん、あまり大きな声を出すと迷惑では……」

「おや、リーリエ様?なぜここに?」

 

エーテルベースに入ると、私の名前を呼ぶ女性の声が聞こえました。その女性の姿を見ると、エーテル財団の衣装を着ている方でした。

 

「いえ、ただ近くを通りかかったので立ち寄らせてもらっただけです。迷惑じゃなかったでしょうか?」

「いえいえ、迷惑だなんてとんでもありません!寧ろこちらからお願いしたいことがあるくらいです。」

「お願いしたいこと、ですか?」

 

そう言ってその女性は私たちを奥へと案内してくれました。するとそこにはいつか助けた覚えのあるポケモンさんの姿がありました。

 

「あっ、この子は……」

「リーリエ様、このロコンをご存知でしたか?」

 

そこには以前オハナタウンで助けたロコンさんの姿がありました。ロコンさんは眠っていたみたいですが、私の存在に気付いたのか目を開けてこちらをゆっくりと見つめてきました。

 

「えっと、お久しぶりです、ロコンさん。」

『コォン……』

 

ロコンさんは私の声に返答し、ゆっくりと近付いてきてくれました。どうやら私の事は覚えてくれているみたいです。

 

「へぇー、ロコンだー。おれハウよろしくねー!」

『!?コォン……』

 

ハウさんが自己紹介をすると、ロコンさんは怯えた様子で後ろに下がってしまいました。

 

「実はこの子、前に2人のトレーナーに虐められていたんです。恐らくその時のことがトラウマで……」

「そうだったんだ。ごめんね、驚かせちゃってー。」

『コン……』

 

ハウさんの気持ちを理解したのか、先ほどに比べれば警戒心が少し解けたみたいです。

 

「実はこのロコン、大分衰弱しているんです。食べ物を食べさせようとしても警戒してしまって食べてくれなくて。」

 

他の人を信用することができず、食べ物を与えられても警戒心から食べる気が起きないのでしょう。あれだけ怖い目にあったので気持ちは分かりますが、このままでは体が弱り切ってしまい最悪の事態になってしまう可能性があります。

 

「なにかお腹が膨れるものを与える必要がありますが、私たちではこれ以上は無理そうです。ですがリーリエ様には心を開いているようなので、どうか力を貸してくれないでしょうか?」

「もちろんです!弱ったロコンさんをこのまま見捨てるわけにはいきませんから!」

「おれも協力するー!」

 

ハウさんがそう言いながら思いついた提案を口にしました。

 

「やっぱりお腹が膨れるものと言ったらマラサダだよー!美味しいし種類もいっぱいあるしー!」

「マラサダ、ですか?」

 

マラサダとはアローラ地方では有名なお菓子です。油で揚げたパン生地はふわふわで、ハウさんの言うように種類も豊富で多くの人に人気のある伝統的なお菓子です。私も食べたことはありますが、とてもおいしく食べやすいものだったと記憶しています。

 

「ですがここからマラサダの売っている店までは少々距離が……」

「でしたら我々がライドポケモンとして利用しているペリッパーをご利用ください。ライドポケモン用に鍛えられているので、スピードも充分ですよ。」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

私がエーテル財団員の方にお礼を言うと、その時モンスターボールが勝手に開いてポケモンさんが外に出てきました。

 

『コォン!』

「シロン?もしかしてロコンさんの事を見ていてくれるんですか?」

『コン!』

 

シロンはロコンさんが心配になってモンスターボールから飛び出してきてくれたようです。私としてもシロンに任せれば安心できるので、とても助かります。

 

そうして私はハウさんと一緒にマラサダを買う為にライドポケモンさんであるペリッパーさんの力を借り、ロコンさんのことをシロンに任せてカンタイシティまで急行しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、いっぱい買っちゃったー!」

 

ハウさんの腕にはマラサダが入った大きな紙袋があります。ハウさんはマラサダが大好物なようで、着いた途端に目の色を変えて買い占めるかのような勢いでレジを済ませていました。

 

マラサダは種類が豊富すぎるためどれを買うべきか悩みましたが、ロコンさんの好みも分からないため無難に大きなマラサダを購入しました。これであればお腹の足しにもなりますし、量が足りないなどという事もないでしょう。

 

「ただいまー!」

「ただいま戻りました。シロン、ロコンさんは変わりないですか?」

『コォン』

 

よく見てみるとロコンさんはシロンの尻尾の中で気持ちよさそうに眠っています。どうやらシロンにも心を開いてくれているようです。

 

『……コォン?』

「ロコンさん、お食事を買ってきましたよ。」

『コォン……』

 

ロコンさんは私の差し出したマラサダの匂いを嗅ぎ始めました。少し心を開いてくれたとしても、やっぱり警戒心はあるみたいです。

 

少し不安でしたが、ロコンさんは暫くするとマラサダの先端を少しかじりました。するとロコンさんは笑顔を浮かべ、次、またその次とどんどん口にしていきました。どうやら気に入ってくれたようです。

 

「よかったー、マラサダ気に入ってくれたみたいだねー!」

「やっぱりリーリエ様には心を開いているみたいですね。ちゃんと食べてくれてるみたいですし、安心しました。」

 

そのまま様子を見ていると、ロコンさんはあの大きなマラサダを完食してしまいました。本当は余程お腹が減っていたのでしょうが、何分警戒心が邪魔をしてしまって食べたくても食事を口にできなかったのでしょう。

 

なにはともあれこれで一安心です。

 

「シロンも、お疲れ様でした。ありがとうございます。」

『コォン!』

 

私はロコンさんの面倒を見てくれたシロンの頭を撫でて感謝をし、モンスターボールへと戻しました。本当にありがとうございます、シロン。

 

「リーリエ様、それからハウさんも、ありがとうございました。」

「いえ、お力になれたみたいでよかったです。」

「うん!ロコンが元気になって良かったよー!」

「とは言えやはりまだ我々にも心を開いてくれるようになるには時間がかかるでしょう。また後日、この子に会いに来てくれますでしょうか?」

 

私はその言葉に対して「もちろんです!」と答え、エーテルベースを後にすることにしました。ロコンさんもどことなく寂しそうにしていましたが、私が「また必ずきますから」と約束して頭を撫でると、笑顔で私を送ってくれました。

 

「リーリエ、お疲れ様ー!」

「ハウさんも、協力してくれてありがとうございました。」

「おれは何もしてないよー!そうだ!頑張ったリーリエに、マラサダあげるー!」

「え?いいんですか?」

「いいよいいよー!リーリエは頑張ってたし、それにマラサダはみんなで食べた方がおいしいからねー!」

 

私がハウさんからマラサダを受け取ると、ハウさんは「またねー!」と言って早々にその場を立ち去っていきました。明るい人ですけど、相変わらず嵐のような人ですね。

 

私はハウさんから貰ったマラサダを食べました。少し甘さが強めのマラサダでしたが、とてもおいしい味でした。今度はシロンや他のポケモンさん達にも買って一緒に食べようと心に決め、次なる目的地のジェードジャングルへと旅を進めることにしました。




ニンフィアちゃんの身代わり強いなと思う今日この頃です。因みに今バトルで気に入っているのはバンバドロ、サニーゴです。

本日は開幕でとあるシナリオの伏線を張っておきました。はい、皆さんの想像通りのシナリオまでは進める予定でございます。自ら逃げ場を塞いでいくスタイルです。


今のアニポケ普通に面白いと思うんだけど評価低いらしいんだよね。個人的にアニポケをシリーズ物として見るのはやめた方がいいと思います。

実際アローラから作画だけじゃなくて内容も違いすぎと言われることがありますが、割と初代からツッコミどころのあるネタは多かったですし。

因みに予備知識ですが、実はサトシのピカチュウはサトシ以上にカスミの方に懐いていたりする。さらに初代のサトシは割と女性に惚れたり(9話“ポケモンひっしょうマニュアル”参照)、カスミの事を異性として意識したり(20話“ゆうれいポケモンとなつまつり”参照)する描写があります。オレンジ諸島かジョウト編辺りからそんな素振りもなくなり始めていたけれども。

割とロケット団と仲良さそうにしてたことも多かったりピカ様も初代とアローラでは割とアホの子っぽかったりしてますし。


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リーリエVSグラジオ!Z技を習得せよ!

タイトル通りの特訓回となります。この兄妹の絡みが描きたかった、と言うのが本音です。


「それでは行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

私は今、シロンと共に誰もいない海岸を見つめ準備をしました。それがなんの準備かと言うと……。

 

「行きます!私たちの全力!」

『コン!』

 

そして私は手を前にクロスさせてポーズをとります。そう、今私たちがやろうとしていることはZ技の練習です。

 

私はこおりタイプのZ技のポーズをとります。そしてZ技のパワーが左腕のZリングを伝わり、全力のパワーを纏ったオーラがシロンを包み込みます。

 

シロンも私からの気持ちを受け取り、全身に力があふれ出るのを感じていき大きく咆哮しました。その咆哮と同時にシロンの足元から氷の柱が立ちシロンを上空へと持ち上げました。

 

シロンも構えをとり、全身の力を一気に解き放つかのように放出しました。

 

「私たちの力を一つに!」

『……コォン!』

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

シロンの解き放った全力の氷のブレスが海を一瞬で氷漬けにします。しかし、それも長くは続かず、一瞬であっさりと割れてしまいました。シロンを持ち上げていた氷の柱も徐々に下がっていき、シロンも疲労からその場で座り込んでしまいました。

 

「はぁ……はぁ……シロン、大丈夫ですか?」

『こぉ……ん……』

 

シロンは返事をするものの、その声にはいつものような元気が見られませんでした。かく言う私も今のZリングに体力を奪われたのではないかと言うぐらい力を消耗してしまっています。

 

キャンプの時に使用した練習用のレプリカと違い、今回使用したのはシンジさんからいただいた本物のZクリスタルです。やはり本物と偽物では込められている力の差が歴然、という事でしょうか。

 

「苦戦しているようだな、リーリエ。」

 

そんな時、私の耳に聞きなれた声が入ってきました。私はハッとなり、その声の方へと振り向いてみると……。

 

「バトルロイヤルの時に会ったばっかだったな。」

「お兄様!?」

 

そこにいたのはグラジオお兄様と、お兄様の相棒のシルヴァディさんでした。今のセリフからすると、先ほどの私のZ技を見ていたのでしょうか。

 

「Z技の練習か。」

「は、はい、やっぱり実際の戦いで使用する前に練習で成功させないとと思いまして。」

「そうか。」

 

少し見っともないところを見られてしまったので少々恥ずかしいです。

 

「と、ところでお兄様はどうしてここに?」

「俺は今、そこのモーテルに宿泊している。2年前にもここに泊まっていたからな。」

「そうだったのですね。」

 

2年前、と言うと私がカントーに行く前の頃ですね。シンジさんもまだ島巡りをしていた頃です。その時もお二人は色々なところでバトルをしてお互いを高め合っていたのでしょうね。

 

「……その様子だと、上手くいっていないようだな。」

「はい、実はそうなんです。Z技発動までは上手くいくのですが、集中力と言うか、力が長続きしないんです。」

『コォン……』

「…………」

 

お兄様は少し考える素振りを見せました。そしてその後、私にある提案をしました。

 

「リーリエ、こっちにこい。」

「え?は、はい。」

 

お兄様は私についてこいと促してとある場所へと案内しました。私はお兄様について行くと、そこには大きなバトルフィールドがありました。

 

「ここは……」

「モーテル側が自由に貸し出しているバトルフィールドだ。ここで俺がお前のバトルの相手をしてやる。」

「え!?お、お兄様がですか!?」

「ふっ、俺では不満か?」

「い、いえ!寧ろ嬉しいです!でもどうして突然?」

 

私は突然の提案に驚いてしまいました。お兄様が相手なのに不服なわけがありません。

 

ですがお兄様が突然私とバトルをするという提案をすることに疑問を感じる事もまた事実です。お兄様は私の疑問に答えてくれました。

 

「Z技を練習するなら戦いの中で実践した方が身になるだろう。」

 

お兄様は「それと」、ともう一つの理由を付け加えました。その理由は、お兄様にしては珍しく至極単純な理由でした。

 

「手強いライバルがいた方が、俺にとっても大きな理になるからな。」

「お兄様……」

 

お兄様にそう言われ、嬉しくないわけがありません。シンジさんはもちろんですが、シンジさんのライバルでもあったお兄様にライバルとして認識されるのは、私にとってとても嬉しい事です。

 

「分かりました!よろしくお願いします!」

「これから戦う相手に律義な挨拶をするとは、相変わらずだな。」

「そう言うお兄様は昔に比べて柔らかくなりましたよね!」

「……ふっ、そうかもな。」

 

お兄様はいつものように左手を顔の前に構えてポーズをとりました。昔に比べて変わられましたが、変わらない部分もあるんだなと思い私はどことなく安心感を感じました。

 

お兄様はシルヴァディさんと向かいの場所に立ち、私とバトルフィールドを挟んで向かい合いました。

 

「準備はいいか、リーリエ。」

「はい!いつでも!」

「行くぞ!シルヴァディ!」

『シヴァ!』

 

私とお兄様は向かい合い、互いに準備ができたことを確認し合います。そして確認が終わると、お兄様の合図と共にシルヴァディさんが一歩前に出ました。

 

「行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

同時に私もシロンに合図を出し、シロンも一歩前にフィールドへと足を踏み入れました。

 

「思えば、俺とお前が面と向かって対面するのは初めてだったか。」

「はい、前回は4人で戦うバトルロイヤルでしたし、トレーナーとしては今回が初めてですね。」

「ふっ、トレーナーか。随分と一人前の事を言うようになったじゃないか。」

「これでもお兄様の妹ですからね。それに……」

 

私にも目指すべきものはありますから!

 

「ならば俺に見せてみろ、お前の覚悟を!」

「はい!行きます!お兄様!」

 

私とお兄様はいくつかの言葉を交わしたのち、次のお兄様のセリフと同時にバトルが開始されました。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァア!』

 

シルヴァディさんは頭部から空気で出来た鋭い刃、エアスラッシュを放つ。その動きには無駄が少なく、鋭くシロンに接近してきます。

 

「躱してれいとうビームです!」

『コン!』

 

シロンはエアスラッシュをジャンプして躱しました。躱した先の地面がエアスラッシュにより軽く切り裂かれています。その様子からシルヴァディさんの攻撃の威力が如何に高いかが伝わってきます。

 

エアスラッシュをジャンプして避けたシロンは、すぐさまれいとうビームで反撃しました。

 

「シルヴァディ走れ!」

 

シルヴァディさんは横に走ることでれいとうビームを回避します。シロンはれいとうビームを撃ち続けて追いかけますが、シルヴァディさんのスピードが速く捉えることができません。

 

「ブレイククロー!」

『シルヴァ!』

『コォン!?』

 

シルヴァディさんは遠回りをしつつシロンに接近し、ブレイククローで近接攻撃を仕掛けてきました。空中という事もあり、シロンは回避も防御も間に合わずにブレイククローの直撃を受けてしまいます。

 

「シロン!大丈夫ですか!?」

『コン!』

「どうした!その程度じゃあまだまだZ技を使いこなすことは出来ないぞ!」

『シルヴァア!』

「くっ!?」

 

シロンはまだまだ戦いに支障はなさそうですが、お兄様の言葉が私の胸に突き刺さりました。

 

シロンとの絆や信頼は自分でも感じられるほと確かなものです。ですがそれ以外になにか必ず足りないものがあるはずです。それを見つけない限り、お兄様に勝つことはおろか、Z技の発動もままならないでしょう。だったら!

 

「このバトルで見つけるまでです!シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

「ふっ、そうこなくてはな!シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァヴァ!』

 

シロンとシルヴァディさんの攻撃が中央でぶつかりました。シロンの無数に放った細かいこおりのつぶてを、シルヴァディさんのエアスラッシュで相殺します。

 

「ブレイククローだ!」

『シルヴァ!』

 

シルヴァディさんはブレイククローで先ほどの技で発生した衝撃ごと切り裂き突進してきました。しかし……。

 

『シヴァ!?』

 

しかしそこにはシロンの姿はありませんでした。

 

「ちっ、上か!」

『シルヴァ!?』

 

シロンの姿はシルヴァディさんの斜め上空にありました。しかし気付いたときには既に準備は整えていました。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォ……コォン!』

 

シロンは力を溜めて最大パワーのムーンフォースを解き放ちました。

 

「シルヴァディ!ラスターカノン!」

『シッヴァ!』

 

シルヴァディさんは即座にラスターカノンで反撃をしました。しかしムーンフォースの勢いも早く、互いの技がぶつかりあったのはシルヴァディさんの目の前でした。

 

ムーンフォースとラスターカノンにより発生した衝撃がシルヴァディさんを襲い、シルヴァディさんはその衝撃で押し戻されると同時に微量ながらダメージを受けている様子でした。

 

そしてそれと同時に、最大のチャンスが訪れていました。

 

「今こそが好機です!シロン!」

『コォン!』

 

私はその瞬間に手を目の前でクロスさせ、すぐさま準備をしました。Z技の態勢です。

 

「今の私たちの全力、全てお兄様にぶつけます!」

『コン!』

 

全力のZ技、こおりZのポーズをとり、シロンは氷の柱に持ち上げられて力を最大限溜め込みます。そしてその力を、一気に解放しました。

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

その全力のZ技、レイジングジオフリーズが解き放たれます。氷のZ技がシルヴァディさんに接近し、これは決まったと思いました。しかし……。

 

「甘いぞリーリエ!そんなZ技で、俺とシルヴァディを貫くことはできない!」

『シルヴァア!!』

「っ!?」

「シルヴァディ!マルチアタック!」

『シィヴァ!』

 

なんとシルヴァディさんは躊躇なくZ技に向かって突進してきました。そしてシルヴァディさんの爪と、シロンのこおりZがぶつかりあいましたが、結果は驚くべきものでした。

 

 

 

 

 

 

――パリンッ!

 

 

 

 

 

互いの攻撃が拮抗したかと思いきや、シルヴァディさんの攻撃がZ技を砕き割ってしまいました。まさかのその光景に、私とシロンは絶句するしかありませんでした。

 

「本物のZ技を見せてやる!シルヴァディ!」

『シルヴァ!』

 

お兄様とシルヴァディは息を合わせ、同じようにポーズを取り始めました。

 

「熱きZよ、今こそ真の能力を解き放ち、全ての敵を蹂躙せよ!」

 

お兄様のその口調と共に、シルヴァディさんに全てのエネルギーが集約されていきます。

 

「これが、俺とシルヴァディの全力だ!」

『シヴァア!!』

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

そしてシルヴァディさんの全力の力が解き放たれました。ノーマルタイプのZ技、ウルトラダッシュアタックです。

 

シルヴァディさんは先ほどよりも凄まじいスピードでフィールドを一直線に駆け抜けます。対抗したいものの、私もシロンも先ほどのZ技で体力を消耗してしまい立つことだけで精いっぱいでした。

 

私もシロンも対抗することができず、シルヴァディさんの全力のZ技で貫かれてしまいました。

 

「っ!?シロン!」

 

シロンはウルトラダッシュアタックで吹き飛ばされてしまい、耐え切ることができずそのまま戦闘不能となってしまいました。私は悔しくも、シロンをモンスターボールへと戻しました。

 

「お疲れ様でした、シロン。ゆっくり休んでください。」

「よくやったな、シルヴァディ」

『シルヴァ!』

「……だから噛み付くなと言っているだろう。」

 

シルヴァディさんはお兄様の頭にガブリと甘噛みでかぶりつきました。その姿からお二人が仲がいいのだということがよく分かります。

 

「……リーリエ」

「お兄様……」

 

お兄様はゆっくりと私に近付き声をかけてきました。

 

「確かにお前は充分力をつけている。その辺のトレーナーでは相手にならないだろうな。」

 

私はお兄様の言葉を静かに聞きます。するとお兄様は私にある質問をしてきました。

 

「リーリエは目指したいもの、もしくは守りたいものはあるか?」

「目指したいもの、守りたいものですか?」

 

お兄様の質問を聞いた瞬間、私はある人物の姿がすぐに思い浮かびました。お兄様の質問に対し、私のその問いの答えをすぐに出すことができました。

 

「はい!もちろんあります!」

「……ふっ、それならばすぐにZ技を使いこなせるようになるさ。焦る必要はないだろう。」

「お兄様……」

 

その言葉は、お兄様に私の実力が認められた気がして心から嬉しくなりました。もう一つ、私の目指すべき目標ができた瞬間でした。

 

「今日は俺の部屋で休んでいくといい。……久しぶりにお前の話も聞きたいしな。」

「!?はい!」

 

私はお兄様の部屋に一日泊めてもらう事になり、その日の夜を明かすことにしました。

 

私はお兄様とまたゆっくり話すことができるのが嬉しくて、その日の夜までお兄様と色々なお話をしてしまいました。

 

カントーでの旅はもちろん、シンジさんと巡った場所、自分のポケモンさんと出会ったキッカケ、戦ったトレーナーのこと、そしれカントーリーグでの戦い。

 

そのどれもが私にとって大切な時間で、お兄様も終始笑顔で私の話を聞いてくれました。それが嬉しくて、眠りにつくまで私の話は止まることがありませんでした。

 

今度は、家族全員でもっともっとお話ししたいです。お兄様とお母様、それから……お父様も一緒に。




先日発表されたポケモン × BUMP OF CHICKENのMVが神過ぎて泣きました。

特にアローラ組のシーンと剣盾のジムリーダーラッシュからのホップ君がダンデさんに切り替わり、エースバーンVSリザードンのシーンで鳥肌が立ちました。

出だしの線路の上を4人の男の子が歩くシーンも初代ポケモンを思い出して泣きましたね。……ぼくももういかなきゃ!

あと細かい点ですけど、ラストのクダリさんが原作ドット絵みたいに少し微笑んだ瞬間もグッときました。色々と再現率が高くシリーズの魅力を全て詰め込んだ神MVだったので、まだ見てない方は是非見るべきです!情報量が遊戯王ゼアルの映像並に多いので忙しいですけど


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新米トレーナーヒナ、登場!

活動報告に書いた通り暫く投稿が滞ると思いますがご了承くださいませ。土下座でも土下寝でもなんでもしますがどんな時でもポケモンはプレイします。表情豊かなバドレックス君可愛い。

次のシーズンランドやレヒレは当然だけどバシャーモとか暴れそうね。以前みたくエスバ一強って言うのは意外と無くなりそう。


お兄様とZ技の練習の為に練習をした私たちは、次なる目的地であるマオさんの試練、ジェードジャングルへと向かっています。

 

そして現在、その道中で休息の為にみんなでお昼ご飯のキャンプをしています。

 

「はい!みなさんのご飯の用意できましたよ!」

『コォン!』

『チラチ!』

『ソウソウ!』

『リルル!』

『ピィ!』

 

私は全員分のポケモンフーズをお皿に盛り、それらをポケモンさんたちに差し出しました。

 

「どうですか?おいしいですか?」

『コン!コォン!』

 

シロンを始めとし、全員が笑顔で返事を返してくれました。どうやらみなさんが満足のいくできに作れたみたいで安心しました。

 

『リーリエは物覚えが早いロネ。』

「シンジさんが色々と丁寧に教えてくれたからですよ。

 

以前カントーを旅していた時、私はシンジさんから料理の作り方だけでなくポケモンフーズの作り方も教わりました。シンジさんの教え方はとても分かりやすく、料理そのものが全く分からない私に一つ一つ丁寧に教えて下さりました。

 

ポケモンさんのタイプ毎におすすめの基礎レシピや、食欲のないポケモンさんにはオレンの実やオボンの実を細かく切って混ぜることで食べやすくなる豆知識、他にも本では学ぶことのできないような応用となる知識も色々と教えてもらうことができました。

 

チャンピオンという役職に戻った今では、他のトレーナーさんにも私に教えたような知識を伝えているそうです。私だけが特別、というわけではなく、優秀なポケモントレーナーを育てることもチャンピオンとしての務め、なのでしょうね。

 

『リーリエみたいないい子なら、いつかシンジを超えられるトレーナーになるかもしれないロ!』

「そ、それは流石にいいすぎですよ!?」

 

確かにシンジさんに追いつきたいと言う気持ちはありますが、それでもチャンピオンであるシンジさんを超えると言うのは私としても恐れ多くて口にできませんよ……。そもそも経験の場数が違いすぎますし。

 

私は心の中でそんなことを考えていると、そこにとあるポケモンさんが草の茂みから飛び出し姿を現しました。

 

『クロー!』

 

「あっとっと、えっと、このポケモンさんは……」

『ポケモンの説明ならボクに任せるロ!』

 

そう言ってロトム図鑑さんが飛び出してきたポケモンさんの詳細を説明してくれました。

 

『モクロー、くさばねポケモン!くさ・ひこうタイプ!一切音を立てずに飛行することができる。足の力も強く、敵の背後から強力な蹴りを浴びせる!』

 

そのポケモンさんはアローラで初心者のトレーナーが受け取ることのできるポケモンさんの一体、モクローさんでした。

 

現在野生のモクローさんがアローラで発見された、という目撃情報はありません。ということはこのモクローさんは、誰かが所有しているポケモンさん、ということでしょうか。

 

「モクローちゃーん!モクローちゃーん!どこいったのー!?」

 

そんな時、茂みの奥から女の子の声がしました。すると先ほどモクローさんが出てきた茂みから小柄で茶髪のショートヘアーをした女の子が出てきました。

 

「あっ!モクローちゃん!もう、心配したんだから!」

『クロー……』

 

どうやらモクローさんはこの女の子のポケモンさんのようです。

 

「すみません、モクローちゃんが迷惑かけちゃったみたいで……。」

「いえ、迷惑だなんて。えっと……」

「あっ、私はヒナです!それとこっちが私のパートナーのモクローちゃん!」

『クロー!』

「私はリーリエと言います。それとこの子たちが私のポケモンさん達です!」

 

『コォン!』

『チラッ!』

『ソウ!』

『リル!』

『ピッピ!』

 

そう言って私は自分のポケモンさんたちを紹介しました。そしてヒナさんは私のポケモンさんたちを見ると、目を輝かせてポケモンさんたちに近寄りました。

 

「すごーい!ポケモンがいっぱーい!」

 

ヒナさんは私のポケモンさんたちを食い入るように見ています。しかし直ぐに我に返ったのか、ヒナさんは立ち上がって私の方へと振り向きました。

 

「あっ、ご、ごめんなさい!実は私、ポケモントレーナーになったばかりで少し興奮してしまって……」

「トレーナーになったばかり、ですか?ということはそのモクローさんも」

「はい、少し前にククイ博士から貰ったばかりなんです。」

 

初めてのポケモンさん、ですか。なんだかとても懐かしく感じます。オーキド博士からフシギダネさんを貰ったのは遂最近のはずなんですけどね。

 

「リーリエさんの最初のポケモンってこのフシギソウ?」

「あっ、いえ、私の最初のパートナーはこのシロン……キュウコンさんですよ。」

『コォン』

「え?でもカントーだと初心者用のポケモンはフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメでは……。」

「実はこのキュウコンさん、私がトレーナーになる前に大切な人から貰ったタマゴから生まれたポケモンさんなんです。」

「大切な人から?」

 

そう、私の大切な人、シンジさんから貰ったタマゴ。カントーに旅立つ際に貰った、大切な家族。思えばあの時から私のトレーナーとしての旅立ちも始まっていたのかもしれませんね。

 

シンジさんとの、そしてシロンとの出会いが私を変えてくれたんですね。

 

「ヒナさんはポケモンさんのこと、大好きですか?」

「うん!大好き!でも……」

 

ヒナさんは明るい笑顔でポケモンさんのことを大好きだと言い切りますが、その後少し俯き暗い顔をしてしまいました。

 

「なにか悩み事でもあるんですか?」

「実は、旅に出てから一回もバトルで勝てないんです。さっきも同じ日に旅立った幼馴染のトレーナーとバトルしたんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャビー!ひっかく!」

『ニャブ!』

「躱して!モクローちゃん!」

『クロー!』

「このはで攻撃!」

「ひのこで反撃だ!」

『クロ!』

『ニャッブ!』

『クロ!?』

 

「あっ!?モクローちゃん!?」

『くろ……』

「なんだよ、何度やっても成長しないな、お前は。」

『ニャブ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでその後すぐにモクローちゃんが飛び出して行ってしまって。私の事を見放したのかな、って思ったりもしたんですけど……。」

「そうだったんですね。でもモクローさんがヒナさんのことを見放したっていうのは無いと思います。」

「え?」

「だってモクローさん、ヒナさんと一緒にいるととても嬉しそうにしていますし、きっと負けて悔しかったんじゃないでしょうか?」

「悔しかった?そうなの?モクローちゃん」

『クロクロー!』

 

モクローさんはヒナさんの問いに強く頷いて答えました。モクローさんは負けた悔しさを感じ、強くなりたいと願っているみたいです。

 

「……なんだ、そうだったんだ。だったら私も同じだよ!これからもっと一緒に強くなっていこう!」

『クロー!』

 

よかった、ヒナさんも元通り元気になったみたいですし、これで解決ですね。

 

と、思いきや、その直後にヒナさんとモクローさんはこちらに振り向き、目をキラキラとさせてズイズイと寄ってきました。

 

「リーリエさん!」

「は、はい!?」

「少しの間だけで構いません!私をリーリエさんの旅に同行させてください!」

「え?た、旅に同行、ですか?」

「はい!トレーナーとして、リーリエさんの旅から少しでも学ばせてもらいたいんです!お願いします!」

『クロクロ!』

「えっと……」

 

正直私はまだ人に教えられるほどの自身はないんですけど。でもヒナさんとモクローさんにこんなに頭を下げられてしまうと断り辛いですし……。ど、どうしましょう……。

 

『コォン』

「し、シロン?」

『コォン、コンコォン!』

「ヒナさんのお願いを聞いてあげて、ですか?」

『コン!』

 

私の質問にシロンが笑顔で答えました。

 

でも確かに、人に教えることは何より自分の成長に繋がるものだと聞いたことがあります。シンジさんのように上手く教えられるかどうかは分かりませんが、やってみましょう!

 

「分かりました!では少しの間、よろしくお願いしますね!ヒナさん、モクローさん!」

「っ!?はい!やったね!モクロー!」

『クロー!』

 

 

そうして、私は少しの間ヒナさんと旅をすることになりました。人に物事を教えるのは初めてですが、何事も経験と挑戦です。がんばリーリエ、です!




今回登場したヒナちゃんは3~4話のゲスト参戦のつもりです。ただ、もし読者の皆様が希望するのであればリーリエのライバルポジション、又はアニポケのように旅同行者となる可能性もあります。一応ヒナちゃんが出る間アンケート取るので投票してくださると嬉しいです。そう、これからの物語を決めるのはあなたたちです!(それっぽいこと言いたかっただけ)

なに?新キャラは出さないんじゃなかったのかって?

知らん、そんなことは俺の管轄外だ


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ヒナとリーリエ、お昼ご飯はご一緒に!

完全な日常短編パートですので名前がサブタイトルが思いつかなかったorz

ただただ二人が雑談するだけの短い回ですので悪しからず

因みに現在のアンケートは3~4話、ライバル参戦、最後まで冒険同行が同率でございます。アンケート内容の補足はこの話の後書きにでも追記します。


私は先日、新米トレーナーであるヒナさんと出会い少しの間一緒に旅をすることになりました。

 

「リーリエさんは島巡りをしているんですよね?もしかして大試練とかも挑戦したことがあったりしますか?」

「はい、メレメレ島のミヅキさんの大試練はクリアしました。」

「そうなんですか!?すごいですね!やっぱり島巡りしている人はすごいなぁ!」

 

そう言えばヒナさんと一晩過ごしましたが、一つ気になることがあったので私はそのことを聞いてみることにしました。

 

「ヒナさん、一つ質問いいですか?」

「はい!なんでしょうか?」

「ヒナさんは、どうして旅に出ることにしたのですか?」

「えっ!?あ、いやあの、それは……」

 

ヒナさんは私の質問を聞いた途端に俯いてしまいました。もしかしたら聞いてはいけないことだったのでしょうか?

 

「あっ、言いにくいことだったら無理に答えなくていいですよ?」

「い、いえ、別に答えにくいということではないんですけど……」

 

どうやらヒナさんには何か事情があるみたいです。無理に聞きたい、というわけではありませんし、ヒナさんが言いにくいと言うのであれば無理に聞くつもりはありません。

 

実際、私も人に聞かれて答え辛いこともありますし、あまり人に根掘り葉掘り質問されるのは正直嫌ですから。ヒナさんが答えてくれるようになるまで、私は気長に待つことにします。

 

ギュルルルル~

 

「……す、すいません///」

 

その時低い音がなったと思ったら、どうやらヒナさんのお腹の音だったみたいです。そう言えばもういい時間になりそうですね。

 

「もうすぐ昼時ですし、そろそろお昼にしましょうか。」

「は、はい!私、正直もうお腹ぺこぺこだったんです///」

 

ヒナさんも我慢できないと言った様子だったので、私たちはここでお昼の準備をすることにしました。シンジさんから色々と教わっているので、今では大分一人でこなすことができるようになってきました。

 

「リーリエさん!私にもなにか手伝えることはありますか!」

「そうですね……。でしたら、お皿を並べていただけますか?ご飯の準備は私がしますので。」

「はーい!」

 

私がご飯の準備をしている間、ヒナさんにはお皿の用意をお願いしました。ご飯の準備ができても、お皿の用意ができていなければその分余計に時間がかかってしまいますからね。一人分増えてしまえば余計にです。

 

ご飯の準備と言っても、お昼は早めに済ますことができるために下ごしらえを終わらせています。後は温めたりするだけなので比較的早く終わります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、お昼ご飯の準備を終えた私は、ヒナさんが並べてくれたお皿に出来たご飯を盛っていきます。

 

「すごーい!おいしそう!」

 

私が用意したのはサラダにシチュー、それからパンと言った定番的なご飯です。お昼は大体こんな感じの軽食で済ませることが多いです。お腹いっぱい食べてしまうと、午後からの旅で動きづらくなってしまいますし、私自身そこまでの量を食べる必要もありませんので。

 

「少し量が少ないかもしれませんが、お代わりもあるのでよかったら食べてください。」

「ありがとうございます!では、いただきます!」

 

手を合わせて挨拶をしたヒナさんは、スプーンでシチューを口に運びます。すると目の色を輝かせ、「おいしい!」と一言言ってくれました。

 

それはなによりです、と思った私は、次にポケモンさんたちにもポケモンフーズを分けていきます。

 

「皆さんもお待たせしました。今日のお昼ご飯ですよ!」

 

シロンを始め、皆さん待ってましたと言わんばかりに自分のお皿に盛られていく食事に飛びついていきました。自分の作ったポケモンフーズにポケモンさんが喜んでくれるのを見ると、とても嬉しくなりますね。

 

『クロクロー!』

「はい!もちろんモクローさんの分もありますよー!」

『クロー!』

 

モクローさんにも私が作ったポケモンフーズを差し出しました。

 

モクローさんは最初、草タイプが好みと言われる味付けのポケモンフーズを食べてもイマイチの反応をしていました。ですがどうやらモクローさんは甘い味が好きらしく、好みに合うように甘さを引き出すと言われるマゴのみを粉末状にしてかけてみたところ、喜んで食べるようになりました。シンジさんに教わったことがとても役に立っています。

 

「モクローちゃんも喜んでいるみたいです!ありがとうございます!リーリエさん!」

「いえ、私も皆さんが喜んでくれるのが嬉しいですから。」

 

そう言った私も、ヒナさんの向かい側に座って挨拶をし、食事を始めることにしました。

 

「リーリエさんってお料理上手ですよね。やっぱりお母さんとかに教えてもらったんですか?」

「あっ、いえ、私が教えてもらったのはお母様ではなく……」

「分かりました!昨日言ってた大切な人ですね!?男の人ですよね!?彼氏ですか!?」

 

ヒナさんが突然テーブルの上に乗り出すように早口でグイグイと迫ってきました。いつもの様子と違うので少し困惑してしまいました。

 

「えっと、彼氏、と言うわけではないのですが……そうですね。一緒にカントーを旅していた大切な人には間違いないです。」

 

戸惑いながらも私はヒナさんの質問に答えました。ヒナさんはどうやら恋愛ごとの話に興味がある様子です。私はその手の話には少々疎いので戸惑ってしまいますが……。

 

「カントーを一緒に旅してたってことは、今はその人何をしているんですか?」

「ええっと、その人は色々と忙しい人でして、今は少し離れたところでお仕事しています。」

 

さすがにその人がアローラのチャンピオン、なんて言う訳にはいきませんよね……。

 

「遠距離恋愛ってやつですか!いいなぁ、そんな人がいて。私も早く彼氏ほしいなぁ。」

「だ、だから彼氏ってわけでは……」

「ポケモンフーズも自分で作ってるんですよね?」

「え?は、はい、そうですけど……。」

「もしかして、そのポケモンフーズの作り方もその人から教えてもらったんですか?」

「はい、その人から冒険に必要な知識を色々と教えてもらいました。」

「それにポケモンバトルも強かったと?」

「は、はい、もちろんバトルも強い方ですね。」

「な、なんですかそのハイスペック彼氏!?」

 

ヒナさんが突然立ち上がり、大声を張り上げました。これには私も驚き、少し引いてしまいました。

 

「料理ができてポケモンフーズも作れて、旅の知識も持っていて更にはポケモンバトルまで強い、羨ましすぎます!」

「えっと……」

 

確かにシンジさんは自分には勿体ないほどの人だとは思ってはいますが、流石にそこまで第三者の方に言われるとは思っていませんでした。尚のことチャンピオンだ、なんて口にできません。

 

「はぁ~、私も誰かいい人に巡り合えないかなぁ~。なーんて、まだ10歳なのでそんな年じゃないですけどね・」

「ヒナさんは可愛いですし、きっといい人が現れますよ。自信持ってください!」

「ありがとうございます、リーリエさん。」

 

私たちはそんな雑談をしながらお昼を過ごしました。なんだかんだありましたが、やっぱり誰かと一緒に旅をすると言うのはいいものですね。

 

戸惑うことも多々ありましたが、お昼の時間がいつも以上に充実した気がしました。誰かと一緒に話し、食事をするだけでもいつもと違い賑やかで、それだけで楽しい気分になります。それが例え他愛のない会話であったとしても、私やポケモンさんたちにとっては一つの経験であり、旅の思い出になりますから!

 

ヒナさんとの旅は短い間かもしれませんが、それでも私はヒナさんとの旅を最大限に楽しみたいと思います。




アンケート内容の補足をここに足しときます

ライバル参戦はライバルとしてリーグ戦に登場しますが、冒険に同行する場合はライバルとしての参戦予定はありません。

ライバルとして成長したヒナちゃんの姿を見たい方はライバル参戦に、逆にリーリエと旅をしてその中で成長していくヒナちゃんを見たい人は旅中同伴に投票してください。

大まかにではありますが、どのパターンを選ばれてもその先の流れは考えてますので特に苦にはならないと思いますので、自分が見たい話であったり、ヒナちゃんに対する評価程度に軽い気持ちで投票していただいて結構です。まぁ私の気まぐれだと思って下さい(・∀・;)

あっ、二体目の色♀夢ニンフィアちゃんできました


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ポケモンハンターに立ち向かえ!ヒナ、頑張る!

俺復活!

実際は少し前に手術は終わって退院もしてたんですけど、入院中に出来なかったことをやりたかったために色々やってたら完全に放置状態でした。すいません。

手術中一度覚醒したヌシですが、なぜかそのまま二度寝してしまった。我ながらよく眠れたものね。


島巡りの途中、新米トレーナーのヒナと暫くの間同行することとなったリーリエ。丁度お昼時になり、二人で協力して食事の準備をしていた。

 

「リーリエさん、お皿並べ終わりました!」

「ありがとうございます。こちらも準備できました!」

 

ヒナは自分で食事を作ったことがないため、基本的に食事の準備はリーリエが担当し、テーブルや食器の準備などはヒナが担当していた。そんなヒナを見て、リーリエはなんだか以前までの自分を見ているようで懐かしさのようなものを感じていた。

 

(シンジさんもこんな気持ちだったんですかね。)

 

比較的簡単なものではあるものの、人に料理を作ると言うのはこんな温かい気持ちなのだと言うことを実感するリーリエ。

 

世の中には料理するのが面倒だと言う人も当然いる。しかしリーリエはどちらかと言うと料理をするのが好きになってきているのだ。

 

確かに簡単な料理などであっても準備に時間がかかり、食事をするのは調理する時間よりも短い。しかし、料理を振舞い喜んでもらえると、自然と心の底から温かい気持ちが溢れて、作ってよかったのだと思う瞬間がある。

 

以前リーリエは慣れないながらもシンジに料理を振舞ったが、その際にシンジはリーリエの料理を美味しいと言って心から喜んでくれていた。その言葉に嘘偽りがなく、シンジは笑顔でリーリエの出した食事を完食してくれた。その時、リーリエは心が温かくなり、自分も嬉しい気持ちで溢れたそうだ。

 

「う~ん!やっぱりリーリエさんの料理美味しいです♪」

 

今もヒナはリーリエの食事を美味しそうに頬張っている。その様子を見たリーリエは、まるで子供を見守る母親のように温かい眼差しをしていた。

 

(ヒナさん、とっても美味しそうに食べてくれてます。やっぱり人に喜んで貰うのっていいですね。自分まで嬉しくなっちゃいます。)

 

純粋な心を持っているリーリエは、心の中でそう思っていたのであった。母親であるルザミーネや、共に旅をしていたシンジも同じ気持ちになっていたのだろうと思いながら。

 

彼女のパートナーであるモクローも、リーリエお手製のポケモンフーズを美味しそうに食べている。ペットは飼い主に似る、と言うが、ポケモンもトレーナーに似るところは同じようである。

 

「リーリエさん?どうかしましたか?」

「ふふ、なんでもありません。おかわりもありますから、いっぱい食べてくださいね!」

 

ヒナはリーリエの言葉に大きな返事をして次々と料理を口にしていく。ここまでおいしそうに食べているのを見ると、見ている側もお腹いっぱいになりそうである。

 

二人がそうやって食事を楽しんでいると、近くの草むらがゴソゴソと動き出した。

 

なんだろうと2人が草むらに目を向けてみると、そこから一匹のポケモンがヒョコッと姿を現した。

 

「このポケモンさんは……」

 

リーリエの言葉と同時に、ロトム図鑑が起動しそのポケモンの詳細を解説し始めた。

 

『チュリネ、ねっこポケモン!くさタイプ!主に綺麗な水や土地を好むポケモン。頭の葉っぱは苦いが、健康によく元気になれるとして有名。』

 

そのポケモンはねっこポケモンのチュリネだ。以前ルザミーネが持っていたドレディアの進化前のポケモンである。

 

因みにドレディアに進化するためには、たいようのいしという特殊なアイテムが必要である。

 

「かわいい~♪」

 

チュリネを見た途端、ヒナは目をキラキラと輝かせる。

 

「でもこのチュリネさん、なんだか様子が変ですね?」

「そう言えばそうですね。」

 

リーリエの言葉にヒナはチュリネの違和感に気付く。チュリネは何かを訴えようとするが、次の瞬間にその場に倒れ伏せてしまった。

 

「あっ!チュリネちゃん!大丈夫!?」

「ひどい傷です!すぐにポケモンセンターに連れていかないと!」

 

よく見るとチュリネの体には複数の傷ができていて、チュリネ自身も弱っている様子だった。ヒナはチュリネを抱え、急いで最寄りのポケモンセンターへと連れて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました!チュリネはすっかり元気になりましたよ!」

「ありがとうございます!ジョーイさん!」

『チュリチュリ♪』

 

チュリネは恩人であるヒナを見つけると、すぐに飛びついて元気であることを証明した。野生のようだが、どうやら人懐っこい性格のようである。

 

「よかったですね!チュリネさん!」

「ところでこのチュリネはあなたの?」

「いえ、たまたまチュリネちゃんが弱っているところに遭遇して……」

「そう、やっぱり……」

 

ジョーイのやっぱり、という言葉が引っ掛かり、2人はなんのことなのかが気になったためジョーイに尋ねてみることにした。

 

「実は最近、この近くの野生のポケモンたちの様子が変なの。」

「変、ですか?」

「つい最近になって、急に野生のポケモンたちがこのポケモンセンターに運ばれることが多くなったのよ。それもそれぞれ状態に違いが大きくてね。」

 

ジョーイの話によると、麻痺や毒、火傷状態になっているポケモン、チュリネのように傷ついて運ばれてくるポケモン、足に縛られた跡がついたポケモンなどもいるそうだ。

 

リーリエはその話を聞いた時、ふとある人物のことが頭に思い浮かんだ。

 

「それって……ポケモンハンター!?」

「その可能性はありえそうね。」

 

リーリエの問いにジョーイも頷いて答える。頭に疑問符を浮かべたヒナは、リーリエにポケモンハンターとはなんなのかを尋ねた。

 

「ポケモンハンターは、違法な手段を使ってポケモンさんたちを捕まえて、高値で売りさばく悪い人たちです。」

「そんな!?ポケモンを売りさばくなんて!ひどい!」

 

心優しくポケモンが大好きなヒナも、流石にポケモンを商品として扱う行為には怒り心頭のようだ。

 

ポケモンハンターはその職業柄、トレーナーとしての実力はかなりのものである。しかし、ハンターとしての力量には大きく差があるようだ。

 

ポケモンを売る関係上、商品としての価値が下がらないように可能な限り傷つけないように捕らえるのが普通だ。しかし中にはハンターとしての実力がないのか、ポケモンに目立つ傷をつけてしまったり、酷い状態異常へと追い込んでしまったりするものもいる。今回のポケモンハンターは、少々荒々しいハンターの可能性があると補足した。

 

「あなたたちも旅をするのであれば、くれぐれも注意してね。」

 

ジョーイの忠告を受け、リーリエとヒナはチュリネを連れてポケモンセンターを後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

『チュリ?』

 

チュリネを抱きかかえてるヒナはどこか表情が暗い。そんな彼女の不安を感じ取ったのか、チュリネはヒナの表情を見上げた。

 

ヒナは少し微笑みながら、チュリネを不安にさせないように頭を優しく撫でた。チュリネも嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

そんなチュリネの表情を見たヒナは、ある決心をするのだった。

 

「……あの、リーリエさん!」

「分かってます、チュリネさんを助けるんですよね?」

「!?はい!」

 

どうやらリーリエも気持ちは同じだったようで、ヒナが言う前にそう答える。そんなリーリエにヒナは感謝し、一緒にチュリネの住処へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュリネの案内の元、リーリエとヒナは現場にたどり着いた。するとそこには一人の少し小太り気味な男がブツブツと何かを口にしている姿があった。

 

「くっそ、また逃げられちまった。全然うまくいかねぇな……。」

 

その男には捕獲ネットと、近くのトラックの荷台には鉄格子があった。間違いなくあの人物が例のポケモンハンターだろう。

 

あの様子を見る限りでは、ポケモンの捕獲は上手くいってないようである。恐らく彼もポケモンハンターとしてはまだまだ新米なのであろう。

 

「あの人がポケモンハンター?」

「どうやらまだポケモンさんは捕まえられていないようです。ですがトレーナーとしての腕は別です。注意していきましょう。」

 

リーリエの言葉にヒナも頷く。そしてポケモンハンターの悪行を止めるべく二人は飛び出しモンスターボールを手に取った。

 

「そこまでですよ!ポケモンハンター!」

『チュリ!』

「なっ!?さっき逃がしたチュリネ!?これはチャンスだ!」

 

ポケモンハンターは好機と見たのか、リーリエとヒナには目もくれずにチュリネをターゲットと捉えてモンスターボールからポケモンを繰り出した。

 

「行け!ホルード!」

『ホッドォ!』

 

ポケモンハンターが繰り出したのはノーマル・じめんタイプのホルードであった。ホルードは手足の様に扱う強靭な耳の力が驚異的なポケモンである。決して油断できる相手ではない。

 

「チュリネちゃんを助けるよ!モクローちゃん!」

『クロー!』

「私もサポートします!フシギソウさん!お願いします!」

『ソウ!』

 

ヒナはモクロー、リーリエはフシギソウを繰り出した。互いにくさタイプのポケモンであるため、じめんタイプを持つホルードに対してはかなり有利だ。

 

「邪魔をするのは容赦しないぞ!マッドショット!」

『ホッド!』

 

「躱して!」

「躱してください!」

 

モクローとフシギソウはホルードのマッドショットをうまいこと回避した。

 

「モクローちゃん!たいあたり!」

『クロクロー!』

 

モクローは高い脚力を活かし素早く接近したいあたりを仕掛ける。しかしポケモンハンターもバトルの腕は高いようで、そう簡単に決めさせてはくれなかった。

 

「ホルード!にどげり!」

『ホッド!』

 

ホルードは一度目のキックでモクローのたいあたりを抑え、二度目のキックでモクローを弾き返した。

 

「ああ!?モクローちゃん!」

『くろぉ……』

 

慌てたヒナはモクローに歩み寄る。まだ新米トレーナーで戦い慣れていないヒナはモクローが傷ついたことに対して慌ててしまう。しかしポケモンハンターはそんなこと気にすることはなく、続けて攻撃を畳みかけてくる。

 

「ワイルドボルトでとどめを刺せ!」

『ホルドォ!』

「あっ!?」

『チュリ!?』

 

ホルードは電気を全身に纏い、ワイルドボルトで全力の攻撃を仕掛けてくる。ヒナは咄嗟にモクローを抱き寄せるが、その場から動くことができない。ヒナはもうダメだと諦めてしまうが、あるポケモンが目の前に立ちはだかり、自分たちを守ってくれたのだった。

 

「フシギソウさん!つるのムチです!」

『ソウソウ!』

 

そのポケモンはリーリエのフシギソウであった。フシギソウは背中から出したつるのムチでワイルドボルトを正面から抑える。

 

しかしワイルドボルトの威力は高く、フシギソウもじりじりと少しずつ押し返されてしまう。そんな時、リーリエが大きな声でヒナに対して呼びかけた。

 

「今ですヒナさん!モクローさんに指示を!」

「っ!?は、はい!モクローちゃん!このは!」

『クロッ!クロォ!』

『ホルッ!?』

 

フシギソウのつるのムチに加え、モクローの咄嗟に出したこのはによる二重の攻撃にホルードは怯んで吹き飛ばされる。ホルードの技の攻撃力がいかに高くとも、二つの攻撃を同時に浴びてしまってはさすがに分が悪い。

 

「ヒナさん!大丈夫ですか!?」

「は、はい、ありがとうございます、助かりました。」

 

なんとか無事に済んだことにホッと胸を撫で下ろすヒナ。助けてくれたフシギソウにもお礼を言い、フシギソウも笑顔でその礼に答えてくれた。

 

「相手の力量が分からない時は不用意に突っ込まない方がいいですよ。慌てずにじっくりと観察をすることが大切です!」

「わ、分かりました!」

 

トレーナーとして先輩であるリーリエの助言にヒナは元気よく返事をする。強いトレーナーを目指すものとして、先輩トレーナーのアドバイスは非常にありがたいものである。

 

「ぐぬぬ!俺の商売の邪魔をするな!ホルード!マッドショット!」

「ポケモンさんを売るなんて、そんなの許せません!フシギソウさん!はっぱカッターです!」

「そうだよ!ポケモンは道具でも売り物でもないんだから!モクローちゃん!このは!」

 

ホルードのマッドショットをフシギソウのはっぱカッター、モクローのこのはで防ぐ。マッドショットは全て撃ち落とされ、ポケモンハンターの怒りもピークに達していた。

 

「くっそ!こうなったら無理やりにでも!」

 

そう言ってポケモンハンターは懐から捕獲用の道具を取り出して強行手段に出ようとする。どんな手をも厭わないポケモンハンターの行動に、リーリエたちも身構える。

 

『っ!?チュリ!』

「なっ!?チュリネちゃん!」

 

突然チュリネが飛び出してポケモンハンターに対して黄色い粉を頭部からばら撒いた。次の瞬間、ポケモンハンターはその場で膝を崩してガクガクと震え始めた。

 

「今のはチュリネさんのしびれごなです!」

「チュリネちゃん、もしかして、私たちと戦ってくれるの?」

『チュリ!』

 

どうやらチュリネは戦うヒナたちの姿を見て後押しされたようだ。戦う彼女たちの背中を見て、自分も戦わなくてはと意を決したらしい。

 

「うっ、ぐぐ、ホルードっ、ワイルドボルトっ」

 

ポケモンハンターは痺れながらもホルードにワイルドボルトの指示を出した。一方ヒナは、威勢よく出たはいいものの、この後どうしたらいいか分からず焦ってしまっていた。

 

「ええっと、ど、どうすれば!?」

「落ち着いて下さいヒナさん!チュリネさんはやどりぎのタネが使えるみたいです!」

「は、はい!チュリネちゃん!やどりぎのタネ!」

『チュリ!』

『ホド!?』

 

チュリネはやどりぎのタネを頭部からホルード目掛けて発射する。一直線に突撃していたホルードは当然避けることができず、ヒットした種から芽が出てホルードの動きを封じた。

 

「ええっと、他の技は……よし!チュリネちゃん!マジカルリーフ!」

『チュリィ!』

 

チュリネは今度はマジカルリーフでホルードをやどりぎのタネごと引き裂いた。ホルードはその一撃でかなりのダメージを受け、動きがかなり鈍くなっていた。

 

「ヒナさん!ラスト行きますよ!」

「はい!リーリエさん!」

「フシギソウさん!エナジーボール!」

「モクローちゃん!このは!」

『ソウソウソウッ!』

『クロォ!』

『チュリィ!』

 

フシギソウはエナジーボール、モクローはこのは、それに合わせてチュリネはマジカルリーフでホルードに一斉攻撃を仕掛ける。その攻撃によりホルードは大きく吹き飛ばされ、主であるポケモンハンターを巻き込んで共に目を回して倒れたのだった。

 

「や……やった?やりました!モクローちゃん!チュリネちゃん!」

『クロー!』

『チュリチュリ!』

 

ヒナは一緒に戦ってくれたモクロー、チュリネと共に喜びを分かち合う。非公式の戦いとは言え、ヒナにとってはこれが初の勝利でもあるため、余計嬉しくなってしまったのだろう。

 

「チュリネさんとヒナさん、とても息が合ってましたね!」

「そう言えば、なんだかチュリネちゃんとは自然と戦うことができましたね。」

『チュリ?』

 

天然な性格をしているのか、チュリネはなんだか不思議そうな表情でヒナを見つめていた。そんなチュリネを見て、リーリエはとある提案をした。

 

「どうでしょうか。チュリネさんと一緒に旅をしてみては。」

「えっ?チュリネちゃんと?」

「ポケモンハンターさんたちのような悪い人たちは他にも大勢いると聞きます。またチュリネさんを一人にするより、トレーナーと一緒にいたほうが安心すると思うんです。それに、チュリネさんはヒナさんに懐いているようですし。」

 

その言葉を聞いてヒナはチュリネを見つめる。そしてチュリネは、先ほどのように不思議そうに首を傾げてヒナを見つめ返す。

 

「……チュリネちゃん……私と、一緒に行く?」

『チュリ?……チュリ♪』

 

どうやらチュリネもヒナの気持ちを理解したようで、笑顔で頷きそう答えた。チュリネも自分と一緒に行きたいと思ってくれてると思うと、心から喜びが溢れ、自然と涙が出てきてしまっていた。

 

「……これからよろしくね!チュリネちゃん!」

『チュリ!』

 

ヒナはチュリネにモンスターボールを軽く当てる。するとモンスターボールがパカッと開き、チュリネはその中へと吸い込まれていった。

 

モンスターボールが数回揺れ、ピコンッという音と共にヒナはチュリネの仲間になったのだった。

 

「っ!初めての新しい仲間!チュリネちゃん!ゲットです!」

『クロォ!』

「おめでとうございます!ヒナさん!」

「ありがとうございます!リーリエさん!」

 

初めての新しい仲間、チュリネを迎え入れたヒナ。その喜びを噛み締め、リーリエと共に再び旅を続けるのであった。

 

因みに、その日の夜、ヒナはあまりの喜びと嬉しさで一睡もできなかったそうである。また、ポケモンハンターもジュンサーに引き渡され、一つの事件は終わりを迎えたのであった。




次の話でヒナちゃんの立ち位置が決まると思います。

なぜチュリネにしたかと言うと、鎧の孤島イベントのチュリネドレディア親子?が可愛すぎたからです。

あっ、ウオノラゴンの色違い厳選成功しました。


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草の試練!ラランテスの猛攻を打ち破れ!

みんなのトラウマ

内容、進行は少々原作と異なります。あと少し長めです。

今回のラストでヒナちゃんの今後が分かれます。どうか見守ってあげてください。


一緒に旅をすることになったリーリエと新米トレーナー、ヒナ。先日ヒナが初めてのポケモン、チュリネを仲間にし今日も上機嫌で旅を続けている。

 

そして今日は遂に、リーリエの次なる試練であるシェードジャングルへと着いたのであった。

 

「えっと、ここがリーリエさんの目的地ですか?」

「はい、私が受けているアーカラ島の第三の試練、シェードジャングルです。」

 

シェードジャングルの入り口は木々で囲まれており薄暗く、試練の場所だということが分かりやすいように門が設置されている。

 

リーリエが意を決してシェードジャングルに入ろうとすると、奥から一人の人影がこちらへと歩み寄ってきた。

 

薄暗さで分かり辛かったが、こちらに近付いてくるにつれてその人物がシェードジャングル担当のキャプテンであるマオの姿だとハッキリした。

 

「ヤッホー!リーリエ!待ってたよー!」

「お久しぶりです!マオさん!」

 

リーリエは久しぶりに会ったマオに挨拶をする。マオが手を上にあげて差し出してきたので、リーリエはそれにこたえる形でハイタッチをした。

 

「あれ?この子は?」

「ああ、この子は最近トレーナーになったばかりのヒナさんです。色々あって、少しの間だけ一緒に旅をすることになったんです。」

「よ、よろしくお願いします!」

 

ヒナは緊張し強張った顔で頭を下げて挨拶をする。人当たりのいいマオは明るい声で「よろしく~」と返事をする。

 

「ヒナちゃんも私の試練受けるの?」

「い、いえ、私はリーリエさんの試練を見学させていただこうかと……」

「そっか、リーリエがいいなら全然大丈夫だよ!」

 

リーリエもヒナの同行には同意しており、マオの言葉に頷くことで承諾した。

 

そしてリーリエとヒナはマオに案内され、シェードジャングルの中へと入っていった。

 

ジャングルと言う名からかなり入り組んだものを想像していたが、ジャングル内は意外と開けていて日差しが差し込んでおりかなり明るく照らされていた。

 

「意外だった?植物にとって太陽の光は必要不可欠だからね。自然とこんな形になったんだ。」

 

マオの言葉に二人はなるほどと納得した。自然の力とは凄いものだと改めて感心する。

 

「さてと!じゃあ早速、マオの試練始めるよ!と言っても、難しいことは要求しないんだけどね。」

 

そう言って、マオは二人をジャングルの更に奥へと案内する。場所は変わって、複数の大木、キノコが生えているエリアにやってきた。

 

「じゃーん!まずはここで、ある素材を二つ探していただきまーす!」

「ある素材、ですか?」

 

マオの意図が分からずにヒナは首を傾げて疑問符を浮かべる。リーリエも同じような表情を浮かべていたので、マオはそんな二人に説明をした。

 

「今からぬしポケモンが好きなスープを作ります!それの素材として、甘い木の実と甘い蜜が必要なので集めてもらうのが私の試練です!」

 

どうやらぬしポケモンを誘い出すのに必要なのがそのスープらしく、その素材を集めることが試練の一つらしい。

 

「もちろんポケモンと協力してもいいし、ヒナちゃんも参加してもいいよ?」

「え?でもこれって試練なんじゃ……」

「試練なんてそんな難しく考えなくていいよ。島巡りはトレーナーの成長が目的だからね。仲間と協力するというのも所謂一つの試練だから!」

 

初めての試練にヒナは呆気にとられる。試練と言うからには厳しいものが待っているものだと思っていたのだ。

 

しかし実際はそれどころかシンプルな内容であり、結構緩いルールであった。試練と言っても、文字通りの試練とはまた違ったものなのかもしれないと少し考えを改める。

 

リーリエはマオの言う通りに甘い木の実と甘い蜜を探そうとこのエリアを探索する。森の中を探索するにはあの子が適任だとリーリエはモンスターボールを投げた。

 

「フシギソウさん!お願いします!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが出したのはフシギソウだ。旅に出た頃もカントーのトキワの森にてフシギソウの力を借り無事抜け出すことができた。その時の経験を活かしたと言うわけだ。

 

「あっ!だったら私も!お願い!チュリネちゃん!」

『チュリ!』

 

リーリエに続いてヒナも先日捕まえたチュリネをモンスターボールから出す。フシギソウと同じくさタイプのチュリネであればこの状況では適切だろう。

 

「リーリエさん!私もお手伝いします!」

「ありがとうございます、ヒナさん!」

 

マオの言葉に甘え、リーリエとヒナは協力してこの試練に挑むことにした。ヒナにとっても、この経験はとても貴重なものだろう。

 

「それにしても、一体何を探せばよいのでしょうか?」

「甘い蜜はその名の通りミツハニーさんのあまいミツでしょう。甘い木の実と言えばマゴのみやモモンのみですが……。」

 

リーリエも今は料理を学んでいるので多少の食材に対する知識は持っている。リーリエはこれから探すべきものをヒナに伝えた。

 

「では私はあまいミツを探しますので、リーリエさんは木の実を探してください!」

「でも一人で大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。いざとなったらチュリネちゃんやモクローちゃんもいますから!」

『チュリチュリ!』

 

チュリネも私に任せてと言わんばかりに胸を張る。その姿を見たリーリエは任せても大丈夫だろうと判断して任せることにした。

 

「分かりました。無茶はしないでくださいね。」

 

ヒナは分かりました、と元気よく返事してチュリネと共にリーリエと別行動をとる。

 

「さて!私たちも探しましょう!」

『ソウ!』

 

ヒナがあまいミツを探してくれている間に、自分も目的の木の実を探そうとフシギソウと共に歩き始める。

 

木の実と言うだけはあり木になっているものだろうと木の周辺を探す。大木の麓で上を見上げると、そこには目的となる木の実がなっていました。

 

「あれは……モモンのみですね!あれなら……」

『ソウソウ』

「どうしましたか?フシギソウさん?」

 

フシギソウに肩をトントンと叩かれ、リーリエはフシギソウの方へと振り向く。するとフシギソウが別の方へをツルで指し示した。

 

「あ、あれは……」

 

フシギソウが指し示した茂みへと目を移すと、そこにはとあるポケモンたちが隠れていた。

 

『カリキリ、かまくさポケモン。くさタイプ。太陽の光が好きで昼間は寝ていることが多い。夜になると活動的になる。』

 

隠れていたのはカリキリであった。カリキリたちは警戒した様子でこちらを覗いている。その様子を見たリーリエはあることを察しフシギソウに尋ねた。

 

「もしかしてこの木の実ってカリキリさんたちの?」

『ソウ』

 

フシギソウはリーリエの問いに頷き答える。そう言うことであればとるわけにはいかないと思いカリキリさんたちに頭を下げてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……なんとか見つかりましたね。」

『ソウ!』

 

少し手間取ったものの、フシギソウの協力のお陰で目的の甘い木の実、マゴのみをいくつか入手することができた。危うくカリキリの縄張りからモモンのみをとってしまうところだったが、もしとってしまっていたらカリキリたちに襲われていたかもしれない。

 

「リーリエさーん!」

『チュリィ!』

 

向こうからはヒナとヒナに抱えられたチュリネがこちらへと向かってくる。チュリネの手には袋が抱えられており、あの表情を見る限りではあまいミツをゲットすることができたようだ

 

「あまいミツ、ゲットできたんですね!」

「はい!チュリネちゃんと一緒に見つけました!」

 

ヒナの話によると、チュリネと一緒にミツハニーたちを説得したら少しだけ譲ってくれたとのこと。彼女にはトレーナーとしての才能があるなと心の中で思った。

 

素材を集めた終えた二人はその素材をマオに届けにいく。マオはその素材を笑顔で受け取り、早速ぬしポケモンをおびき出すための料理を作り始める。

 

(……なんだかものすごく甘ったるい匂いがします)

(なんなんだろう、この匂い……)

 

女の子は甘いものが大好物だとよく言われる。それはリーリエとヒナも当然同じだ。しかしこの匂いは甘い……というより表現できない匂いが森の中を充満する。お世辞にも美味しそうには感じる事ができなかった。

 

「おっ、作ってるな。」

「この匂いは相変わらずですね。」

 

そこにやってきたのは同じアーカラ島のキャプテンをしているカキとスイレンであった。二人はこの匂いを嗅いで渋い顔をするどころか寧ろ呆れている顔をしているように思える。

 

「カキさん、スイレンさん、どうしてここに?」

「マオに呼ばれたからな。」

「島巡りのトレーナーも落ち着いたので、様子を見に来たんですよ。」

 

二人はマオに呼ばれたからこの場にやってきたらしい。マオも笑顔で二人を歓迎している。

 

「えっと、この人たちは?」

「あっ、ヒナさんは初対面ですよね。こちらアーカラ島のキャプテンを務めているカキさんとスイレンさんです。」

「よろしく。」

「ふふ、よろしくお願いします。」

 

リーリエの紹介にカキとスイレンはヒナに挨拶する。ヒナも反射的に慌てて頭を下げて挨拶を返す。やっぱり新米トレーナーとしては他のトレーナーと会うのはまだ慣れないようだ。それがキャプテンやしまキングのような人物であれば尚更だろう。

 

「っと、そんな呑気なことを話している場合ではないようだ。」

 

カキがそのようなことを口にすると、森がざわめき始めた感覚がリーリエに走った。ヒナはまだ気づいていないが、どこどなく肌がピりつくような感覚、間違いなくぬしポケモンが近付いている。

 

「来るよ!」

 

マオのその合図と同時にリーリエは背後を振り向く。するとそこには通常のサイズより一回りも二回りも大きいラランテスの姿があった。このサイズは間違いなくぬしポケモンのそれである。

 

「ヒャッ!?な、なにこのポケモン!?」

『ラランテス、はなかまポケモン。くさタイプ。両腕の鎌状のはなびらは鋭い切れ味を持つ。分厚い鉄板すらも真っ二つにする。』

 

初めて見るぬしポケモンの姿にヒナは驚きの声をあげる。リーリエはそんなヒナを守るように前に出る。

 

「ヒナさんは下がっててください!ここからは私の……私たちの試練です!」

 

リーリエはそう言ってモンスターボールを手にする。ヒナはリーリエの言う通りに後ろへと下がって見守ることにした。

 

「ここからが試練の本番」

「リーリエの実力は知っているが」

「お手並み拝見、ですね」

 

そう言ってキャプテンたちもリーリエの試練の行く末を見守る。

 

「シロン!お願いします!」

『コォン!』

『ソウソウ!』

 

モンスターボールからはシロンが繰り出され、シロンと共にフシギソウも一歩前に出る。目の前に立ちはだかるぬしポケモン、ラランテスと対峙するのであった。

 

『ララァン!』

 

開幕からラランテスは大きい咆哮と共にオーラを全身に纏う。これはぬしポケモン共通と言える不思議な力で強化されている状態だ。ラランテスも例外ではない。

 

『ララァ!』

 

「来ます!躱してください!」

 

ラランテスは初めから大技であるリーフストームで先制攻撃をしてくる。シロンとフシギソウはその攻撃を上手く回避する。

 

「フシギソウさんははっぱカッター!シロンはこおりのつぶてです!」

『コォォン!』

『ソォウ!』

 

フシギソウははっぱカッター、シロンはこおりのつぶてで反撃をする。その攻撃をラランテスは両腕のカマで切り裂き防いだ。

 

(やはりあの両腕のカマ、かなり厄介ですね。なんとかして防がないといけません。)

 

そう言って対抗策を頭の中で考える。しかしその時ラランテスに異変が起こった。

 

『ララァァァ!』

 

ラランテスは大きく高い声を辺りに響かせる。一体なんだと警戒するリーリエの目の前に、あるポケモンが姿を現した。

 

『ポワァ』

 

「あれは、ポワルンさん?」

『ポワルン、てんきポケモン。ノーマルタイプ。湿度や天気によって姿が変化する変わった細胞をもつポケモン。水の分子に似ていると研究によって分かったが未だ謎多きポケモン。』

 

目の前に現れたのはポワルンであった。ラランテスの咆哮と同時に現れた、ということはもしかするとポワルンはラランテスの仲間かもしれない。そう考えたリーリエは、ポワルンも敵と判断し身構える。

 

『ポワァ!』

 

ポワルンが声をあげると、周囲に異変が起きる。リーリエが空を見上げると、先ほどの天気とは明らかに違い、暑い日差しが森の中を眩く照らしていた。

 

「これは……ポワルンさんのにほんばれ?」

 

そう、それはポワルンのにほんばれによる影響であった。にほんばれは天候を晴れ状態にし、日差しを強くする効果のある技だ。それと同時にポワルンの姿が太陽を模した姿に変化した。

 

先ほどのロトム図鑑の説明の通り、ポワルンは天候によって姿を変えるポケモンだ。天候が晴れになったことによりポワルンはたいようの姿へと変化したのだ。

 

さらにそれと同時に、ラランテスは腕に力を集約する。その姿をみたリーリエはマズいと察知し、すぐに回避の指示を出した。

 

「シロン!フシギソウさん!急いで躱してください!」

『コォン!』

『ソウ!』

 

『ララァ!』

 

ラランテスはその掛け声と同時に力を溜めた腕を即座に振り下ろす。シロンとフシギソウは急いで横に回避することに成功したものの、ラランテスの攻撃力はすさまじく、地を抉り切り裂く程の威力であった。

 

今の技はラランテスの得意技、ソーラーブレードである。ソーラーブレードは日の光を一点に集め解き放ち攻撃する隙の多い技だが、日差しが強い時にはチャージ時間を短縮して放つことができる技だ。

 

強力な技であるが故に隙のある技だが、ポワルンのサポートによりその隙が完全に消されている。強力なコンボにリーリエは呆気にとられてしまう。

 

しかし対抗策を考えている暇もなく、ラランテスは次なる攻撃へと移行する。再びラランテスは腕に光りを集中させ、今度は横に薙ぎ払う。

 

隙を完全になくしたソーラーブレードがシロンとフシギソウに迫る。先ほどの回避から殆ど間もなく、対応が間に合わずにそのままダメージを受けてしまう。

 

『コォン!?』

『ソウ!?』

「シロン!フシギソウさん!」

 

シロンとフシギソウはその攻撃を受け吹き飛ばされてしまう。リーリエの声を聞いてシロンとフシギソウは立ち上がるが、かなりのダメージを負ってしまう。

 

「くっ、あのソーラーブレード、とてつもないくらい強力です。」

 

なんとかして対抗策がないかと考えるリーリエだが、その間もソーラーブレードが二人を襲い掛かる。シロンとフシギソウはなんとかして回避し続けるも完全に防戦一方。攻撃する間もなければこのままでは倒れてしまうのも時間の問題、出来レースである。

 

強力なソーラーブレードを回避し続け、かなりの時間が経過したようにも感じる。あれだけの攻撃を回避し続ければ生きた心地がしないだろう。現にシロンとフシギソウもハァハァと肩で息をし、疲労の色が伺える。

 

(このままでは確実にやられてしまいます!なんとかして対抗手段を……)

「リーリエさん……一体どうすれば……」

 

ヒナも心配そうな表情でリーリエの事を見守っている。正直こんな状態では勝つ手段がないのでは、と思えてさえしまう。

 

対抗手段を考えなければ、そう思ったリーリエの目に映ったラランテスの腕に光が集約されていくのが見えた。しかしその光は先ほどよりも遅く感じた。

 

それと同時にポワルンにも異変が起き、姿が太陽の姿から通常の姿へと変化した。空を見上げると先ほどまでの日差しからかなり弱くなったのが分かった。

 

「っ!チャンスなら今しかありません!フシギソウさん!全力で走ってください!」

『ソウ!』

 

フシギソウはリーリエの言葉を信じて全力でラランテスの元へと走り出した。一体何をするのか、とヒナは考えるが、ラランテスは迫りくるフシギソウに集約した光の剣を振り下ろす。

 

ダメだと思ったヒナは目を瞑る。しかしチャンスは今しかないと考えたリーリエは、フシギソウにつるのムチの指示を出したのだった。

 

「フシギソウさん!ラランテスさんの腕の根本につるのムチです!」

『ソウ!』

『ララ!?』

 

フシギソウはラランテスの腕につるのムチを巻き付け、そのままの勢いでラランテスを縛る。先ほどのソーラーブレードとは打って変わって勢いも弱かった。天候が戻ったことによりチャージ速度も遅くなり、慌てて振り下ろしたことにより最大限力を溜めることができなかったようだ。故にフシギソウのツルで簡単に動きを封じることができたのだ。

 

『コォン!』

「シロン……はい!ここはあれで決めるしかありませんね!」

 

今まで上手く成功させることができなかったあの技。しかし今はかなり追い詰められた状況。ここで一撃で決めなければ恐らく勝つことはできない。

 

そう考えたシロンとリーリエは、一か八かあの技にかけるしかないと一緒に構える。

 

 

「私たちの全力、この一撃に込めて見せます!」

『コォン!』

 

手を目の前でクロスさせると同時に、腕に付けたZリングにハメられたZクリスタルが光を放つ。

 

そう、リーリエたちに残された全力全開の大技、Z技である。

 

「これが……私たちの全力です!」

『コォォォン!』

 

シロンの足元から氷の柱があらわれシロンを上空へと持ち上げる。そしてシロンは力を体内に集中させ、Z技の準備が整う。

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

 

リーリエのポーズ、掛け声とともにシロンは集約した力を一気に解き放つ。それを確認したフシギソウは同時にラランテスを縛っていたツルを放す。

 

突然自由になったラランテスは身体が動かず、回避することができる態勢ではなかった。ラランテスに対して氷タイプのZ技、レイジングジオフリーズが襲い掛かる。

 

シロンの一撃がラランテスを包み込む。大きな爆発と音がシェードジャングル全体に響き渡った。

 

爆発が収まり、そこにはラランテスが目を回して横たわっていた。そして一緒にいたポワルンは森の中へと逃げて行った。つまりラランテスは戦闘不能、試練は無事達成ということである。

 

それが分かった瞬間、リーリエは喜びと同時にその場に座り込んだ。あまりにも緊張感のあるバトルであったため、その緊張が一気に抜けたのだろう。

 

そんなリーリエにシロンとフシギソウが一斉と飛び込んだ。二人もこのバトルの喜びを共感してくれているようだ。

 

『……ララ?』

 

暫くするとラランテスは目を開け、体を起こすとそのまま森の中へとゆっくり帰っていった。

 

そしてシェードジャングルのキャプテンであるマオが拍手しながらリーリエに歩み寄ってきた。

 

「おめでとー!リーリエ!無事試練達成だよ!」

 

すごくいいバトルだったと称賛しながらマオは手を指し伸ばしてきた。その手を受け取りリーリエは立ち上がる。

 

「はいこれ!試練達成の証のくさZだよ!」

 

リーリエはマオからくさZを受け取る。リーリエはそれを受け取り、試練を達成したと言う実感を得ることができた。

 

「ありがとうございますマオさん!くさZ!ゲットです!」

『コォン!』

『ソウ!』

 

見守っていた他のキャプテンとヒナもリーリエの勝利を祝福してくれた。こうしてリーリエのアーカラ島の試練は大試練を残すのみとなったのだった。

 

因みにその後、ラランテスが食べることの無かったマオ特性のスープ(スーパーマオスペシャル)を食べるよう勧められたが、カキとスイレンは苦い顔をしながら断っていた。

 

正直リーリエとヒナも食べる気力はしなかったが、折角作ったのに食べないのは悪いと感じたので少しだけ口にした。

 

しかし口にしたのは少しだけのはずなのに、口の中に広がる甘ったるさとドロッとした食感、鼻の奥にツンと香るなんとも言えない匂い、この世のものとは思えない食べ物に、リーリエとヒナは二度とマオの料理を口にしないようにしようと心の中で誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事試練を突破したリーリエとヒナはシェードジャングルを後にする。その時、ヒナはなにかを考える素振りを見せていた。

 

ヒナは暫く考えたあと、口を開いてリーリエに声をかけた。

 

「……リーリエさん!」

「え?どうかしましたか?」

「私、島巡りに挑戦したいと思います!」

 

その発言に一体どうしたのかと尋ねたリーリエ。その問いにヒナは意を決して返答した。

 

「今日の試練、私感動しました!あんなすごいバトル、私もしてみたいって思ったんです。だから!島巡りをしてトレーナーとして実力をつけたいと思いました!」

 

そう言うヒナの目は輝いており、まるで以前までの自分を見ているようだと感じた。かつてシンジの傍で見守り、自分もこの人のように強くなりたいという思いを抱いていた頃の自分に。

 

だからこそ、リーリエがヒナに贈る言葉は決まっていた。

 

「それではこれからはライバルですね!ヒナさん!」

「ライバル!?は、はい!私頑張ります!」

 

次会うのはアローラリーグの会場で、そう約束した二人は握手を交わし、互いに別れを告げたのだった。

 

次会った時、彼女がどれだけ成長するのか。まさか自分がこのような立場になるとは思っていなかったと考えながらも、心の中で嬉しさと楽しみで溢れるリーリエであった。




と言うわけでアンケート結果はライバル枠としての参戦でした!さすがにこれがラストの枠だと思います。アニポケで言うショータ君と同じ枠かな?

色違いイーブイをなにに進化させるか悩んでいる方がいるようですが、意外と進化させないのも手ですぞ。リフレやキャンプで愛でたり連れてあるいているとまるで天使のようです。白イーブイは滅茶苦茶可愛い(断言)

因みに私の色違いブイズはニンフィアが2匹、ブラッキーが2匹、他のブイズが1匹ずつ、イーブイが9匹います。色ニンフィア厳選してたら多くが♂だったので余ったんですよね……。でもキャンプで6匹並べたら殿堂入りしてOP画面に6匹並べると最高です!


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リーリエとロコン、また会う日まで!

ポケモンの映画見に行きましたけど、控えめに言って神でした。

最近ニンフィアちゃんの選出率が下がっていたので、今の環境に刺さっているニンフィアちゃんの構築を考えた結果、初手ダイマニンフィア構築と言う結論に行きついた。

単純だけどまず読まれないし、本来苦手なドランやジバコもどろかけを搭載して珠を持たせることで確1に持っていけるし、何より試合時間が短くて脳死で強いから楽ですよ。


スイレン、カキの試練に続きマオの試練も突破することができたリーリエ。少しの間旅を共にしていたヒナと別れ、次なる目的地であるコニコシティへと向かうため、経由地点でもあるカンタイシティを目指す。

 

だがその前に、とある幼児の為にある場所へと立ち寄っていたのである。その場所とは……

 

「おはようございます!」

「おや?リーリエ様でしたか。またいらっしゃってくれたのですね。」

「はい!ロコンさんの様子はどうですか?」

 

そう、リーリエが立ち寄ったのは以前彼女がオハナタウンで助けたロコンを一時的に預かっているエーテルベースであった。エーテルベースに入ると、エーテルパラダイス研究員の女性が出迎えてくれた。

 

研究員の話によると、ロコンは先日に比べて元気になってきているそうだ。エーテルベースの研究員たちに対する警戒心も少しずつではあるが薄まっているとのことだ。

 

リーリエは研究員にロコンの元へと案内される。そこではロコンは気持ちよさそうに眠っていた。

 

しかしロコンは耳を小さくピクピクと動かし目を開ける。ロコンのつぶらな瞳がリーリエを捉えると、体を起こして笑顔を見せてくれた。

 

「こんにちは、ロコンさん。まだ眠かったら眠ってていいんですよ?」

 

ロコンはリーリエの言葉に首を横に振る。どうやらもう眠る必要はないようだ。

 

「ふふ、どうやらロコンはリーリエ様にお会いできたのが嬉しいみたいですね。いつも以上に元気な顔をしていますよ。」

 

そこでリーリエは研究員に「折角なのでロコンと遊んであげてください」と提案された。あれ以来ずっとここに閉じ込めてしまっているので、偶には外の空気も吸わせてあげたいとのことだ。

 

普段は警戒を強めてしまい迂闊に外へ出すことは出来ないが、心を開いているリーリエが一緒であれば問題ないだろう、という意図によるものらしい。

 

リーリエもその提案に快く承諾し、早速ロコンと共にエーテルベースの外へと出る。

 

「折角なので遊ぶのならみんなと一緒に遊びましょう!」

『コン?』

 

リーリエの言葉に首を傾げるロコン。リーリエは自分の持つモンスターボールを空へと投げた。そしてモンスターボールから彼女のパートナーであるポケモンたちが姿を現した。

 

『コォン!』

『ソウソウ!』

『チラッチ!』

『リルル!』

『ピッピ!』

 

リーリエの持つポケモンたち、シロン、フシギソウ、チラチーノ、マリル、ピッピが飛び出してきた。ロコンは突然のことで驚き、リーリエの後ろへと隠れた。

 

「あっ、ご、ごめんなさいロコンさん。みなさん私の友達ですから大丈夫ですよ!」

『コォン?』

 

ロコンはリーリエの言葉に少し安心する。その中には以前懐いていたキュウコンの姿もあったため、人間たちに比べれば恐怖感をあまり抱いてはいない様子だ。どちらかと言うと突然ボールの中からポケモンが現れたのにビックリしたというべきだろうか。

 

「皆さん!どうかロコンさんと仲良く遊んであげてくださいね?」

 

ポケモン達はリーリエの言葉に対して元気よく返事をして応答する。進化して面倒見がよくなり大人びた性格となったシロンは、ロコンの傍へとさり気なく寄り添う。ロコンもそんなシロンに安心感を抱き、警戒心を薄めていった。

 

『ピィ!』

『……コォン?』

 

シロンの次に真っ先ロコンへと近寄ったのはピッピであった。ピッピは笑顔で気さくにロコンに話しかけると、ロコンは怯えた様子を見せずにピッピの元へと歩み寄ってくる。

 

ピッピは元々天真爛漫で、何も知らない無邪気な子供のような一面がある。今回も特に何も考えず近寄っただけだろうが、今回はそんな純粋な心がロコンに対していい方へと働いているようだ。

 

そしてピッピに続き、チラチーノ、マリル、フシギソウがロコンへと近付く。そんな暖かなポケモン達の歓迎に、ロコンも警戒することなくまるで子どものように遊び始めたのであった。

 

その後、ロコンはリーリエも一緒に遊ぼうと彼女の事も誘いに傍までやってきた。そんなロコンにリーリエも一緒になり、小さい頃に戻ったように遊ぶことにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュルルルル~

 

暫く遊んでいると、どこからともなく低い音が聞こえてきた。どうやら誰かのお腹の虫がなったようである。気が付けば知らない間に昼時にはいい時間になっていた。

 

「そろそろいい時間帯ですし、お昼にしましょうか。」

 

そう言ってリーリエは昼ご飯の準備を始める。彼女のポケモンたちも自分のトレーナーの準備を手伝い始める。

 

一体なんだろうか、とロコンは不思議そうに眺めていると、リーリエはそんなロコンに屈んで声をかける。

 

「今からご飯を食べる準備をしてるんですよ。ロコンさんも手伝ってくれますか?」

『コォン……。コォン!』

 

リーリエのお願いにロコンは元気よく返事をした。どうやらリーリエの意図が伝わったらしく、ロコンもシロンたちと共に食事の準備を手伝い始めた。

 

その様子を見て、エーテルベースの研究員も驚きと同時に温かい目で見守っていた。リーリエが自立している、と言うのも勿論彼女たちにはあったのだろうが、ロコンがあそこまで積極的になっていることがなによりの驚きだろう。

 

ポケモン達の協力もあり、昼の食事の準備もスムーズに進み、みんなで楽しく食事を済ませることができた。ロコンもリーリエの用意したポケモンフーズを気に入ってくれたらしく、綺麗に完食してくれていた。食欲も問題なさそうで、体調の回復はかなり良好に進んでいるようである。

 

リーリエやシロンたちと遊んだことにより心も身体もリフレッシュすることができたロコン。外の空気を吸うだけでも精神的な効果はかなり高く、体調を良好に保つことには必要な行為である。どうやらその効果はてきめんだったようで、ロコンも先ほどに比べて元気になったように見える。

 

「良かったわねロコン」

『コォン!』

 

研究員に対しても元気よく返答するロコン。この調子ならもう大丈夫だろう、とリーリエにこれからのことを打ち明けた。

 

「もうしばらくしたら体調も元に戻るでしょう。そうしたら野生に返すつもりです。」

「そうですか。寂しいですが、それが一番いいでしょうね。」

 

野生に返せば恐らくもう会えなくなってしまうだろう。しかしポケモンにとって、野生で生きることはとても重要なことであるのも事実。

 

アローラの姿をしたロコンの主な生息地はウラウラ島にあるラナキラマウンテン。常に雪が降り積もり、その寒さなどから、厳しい山道となっている。また、アローラリーグはラナキラマウンテンノ山頂に位置しているため、島巡りのトレーナーにとって最後の試練とも言われている場所である。

 

そのため、島巡りのトレーナー以外はほとんど立ち寄ることが無い場所であるため、野生に返したとしても以前ロコンを虐めていたような輩は出ないであろう。

 

「ロコンさん。」

『コォン?』

「もう、あなたとは会えないかもしれませんけど、元気でいてくださいね。」

『コォン……』

 

リーリエの言葉を理解したロコンは、少し寂しそうな声を出す。リーリエに懐いてしまったロコンにとって、やはり別れは辛いものなのだろう。

 

「……また、会いましょうね」

『……コォン!』

 

リーリエのその最後の言葉に、ロコンも悲しみを抑えて元気よく返事をする。確かに会えないかもしれないが、どこにいようと結局は同じアローラにいるのだ。会える可能性も充分にある。

 

「それでは、ロコンさんのこと、よろしくお願いしますね。」

「ええ、任せてください。我々が責任を持って野生に返しますよ。」

 

そしてリーリエは再びロコンと別れを告げて、エーテルベースを後にした。

 

アーカラ島全ての試練を突破したリーリエが次に目指す場所、大試練の行われる町であるコニコシティだ。




最近やりたいことが多すぎる件

伏線は入れたけどロコンちゃん再登場するか未定
多分登場する


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ウルトラ調査隊、この世界で

話が思いつかなかったので短めの話を軽く挟みます。

モンハンライズの体験版が面白くてずっとやってます。一度データ削除すればプレイ回数リセットできるのに、設定する意味あったのだろうか。

そして次回のシーズンは竜王戦ルール。(育成が)しんどいな


島巡りに挑戦し、ついにアーカラ島の試練を3つ突破することができたリーリエ。その一方で時は少し遡り、ウルトラ調査隊の面々はアーカラ島の調査を続けていた。

 

「ふむ、ここにも僅かだがウルトラオーラの痕跡が残っている。」

 

ダルスの持っている特殊な計測器に、微量ではあるが反応が出ているのが見えた。これはここにもウルトラホールが少なからず出現したという証拠である。

 

「ふふとふぁふぃーふとっふぇふぉんふぁとふぉふぉにもふぇるんふぁふぇ」

「……何を言っているかわからん。飲み込んでから話せ。」

「(ゴクン)UBってこんなところにも出るんだね」

「……ちゃんと噛め。」

「もー、いちいちうるさいんだからダルスは。お母さんみたいなこと言わないでよー。」

「お前が下品すぎるだけだ。もう少し真面目に……」

 

ウルトラ調査隊の二名、ダルスとアマモがそんな言い合いをしていると、横からもう一人の少年の声が仲裁に入る。

 

「あはは、まあまあ、そんなに根を詰めても成果はでませんよダルスさん。」

「しかし、忙しい中チャンピオンにも手伝ってもらっているのだ。効率よく進めなければ……。」

 

その少年の正体はアローラのチャンピオン、シンジであった。ククイ博士主催のZキャンプが終わって以降、こうして時間を見つけては2人の調査を手伝っているのだ。

 

実際、“この世界”のアローラに疎い二人では調査するにしても滞りができてしまうだろう。そのため、アローラに詳しく、ポケモンバトルの腕に関しても間違いのないシンジが彼らの調査の助手として抜擢されたというわけだ。

 

チャンピオンとしての仕事もあり忙しい身ではあるが、アローラや彼らの世界の平和を守るためであればシンジにとってこの程度の労力は惜しく感じなかった。

 

「僕の事だったら気にしなくていいよ。ダルスさんもたまには肩の力を抜いたほうがいいと思いますよ。」

「そういうものだろうか。」

 

ダルスは自分の世界を守らなければならないという使命感がゆえに常に緊張感を持っている。しかし過去にもチャンピオンとしての重荷を感じていたシンジも、彼の気持ちを理解することができた。だからこそ彼の緊張を解すためにアドバイスを与える。

 

「ねぇねぇ、(モグモグ)この食べ物って(モグモグ)なんて言うんだっけ?」

「だから食べながら喋るなと……」

「ああ、それはマラサダって食べ物だよ。僕の友人も大好きで、アローラでは定番のおやつだよ。」

「そうそう!変わった名前だけどおいしいね♪(モグモグ)」

 

ダルスの忠告などお構いなしと言わんばかりにマラサダを頬張り続けるアマモ。そんなアマモのことをシンジは笑顔で見守っていた。

 

「チャンピオンはアマモに甘すぎる。」

「シンジでいいですよ。あんまりその呼ばれ方慣れないので……」

「ならば我々に敬語は不要だ。その方が話しやすいだろう。」

「じゃあじゃあ私チャンピオンのことお兄ちゃんって呼ぶ!ダルスと違って優しいし♪」

「……否定はしないが、違っては余計だ。」

 

そんなやり取りをみてシンジは、まるで兄妹のようだと心の中で思っていた。なんだかんだでこの二人は仲が良いのだろう。喧嘩するほど仲がいい、とはよく言ったものである。

 

「あっ、ダルスもマラサダ食べてみる?おいしいよ♪」

 

少し遠慮していたダルスだが、アマモにしつこく言われ仕方ないと言いながらマラサダを受け取り口にする。すると先ほどまで強張っていた表情が少しだけ緩んだ気がした。

 

「ね?おいしいでしょ!」

「……確かに美味いな。外の生地に反し中はふんわりとしていて、甘く香りもいい。アローラでは食べ物も興味深いものだな。」

 

さすがのダルスでも美味しいものを食べれば少しだけでも笑顔を浮かべることができるようだ。先ほどまでとは違い、彼の表情からは喜びの感情を感じることが出来る。食事とは不思議なものだ。

 

「……ねぇ、折角だからここら辺で少し休憩しない?」

「いや、しかし……」

 

シンジの提案に対しダルスは否定しようとするも、彼の意思とは裏腹にギュルギュルと森に音が響く。まぎれもなくこれはダルスのおなかの虫である。

 

「……少し休息するとしよう。」

「私もお腹すいたー!」

 

先ほどあれだけマラサダを食していたアマモも元気よく手を挙げて。見た目は小さいが胃袋はまるでブラックホールのようである。

 

そんな彼らのために、シンジはちょっとまっててっと言って料理の準備にとりかかる。

 

旅慣れしているシンジは手慣れた動きでキャンプの準備を進める。今までの旅で長いこと1人旅をしていたためこういったことにはすでに慣れきってしまっている。

 

「さてと、みんな出てきて!」

『フィア!』

『イブ!』

『エフィー』

『ブラッキ』

『グレイ!』

『ダース!』

 

シンジはモンスターボールをいっぺんに投げる。中から出てきたのはニンフィア、イーブイ、エーフィ、ブラッキー、グレイシア、サンダースの6匹だ。

 

「さあみんな!お手伝いお願いね!」

 

シンジの一声にポケモンたちは大きく返事を返す。いくら手慣れているといっても、やはり一人で準備するのは手間ではあるし、三人分ともなると時間もかかってしまう。

 

とは言え、元々シンジは自分のポケモンたちと一緒に準備をするこの時間も好きなのだ。一人で旅をしていた時もよくポケモンたちとこういった些細なことでも協力していた。かくいう彼のポケモンたちも、自分のトレーナーと一緒に何かするのが好きなようであるが。

 

「ほう、ポケモンと人間が協力して作業をする、か。実に興味深いな。」

「私たちの世界には“もういない”からね~。ポケモンってすごいんだね♪」

 

そんな彼らをダルスとアマモは少し離れた距離から見守っている。ダルスは興味深そうに顎に手を当てて頷き、アマモはシンジの事を羨ましがっている様子で見ている。

 

シンジに促され二人は椅子に座り大人しく待つ。しばらくすると二人の前に完成した料理をニンフィアとエーフィが運んできてくれた。

 

「これは?」

「カレーライスだよ。」

 

二人の前に運ばれてきた料理はみんな大好な一般的家庭料理、カレーライスと呼ばれるものである。子供から大人まで人気があり、嫌いな人は殆どいないであろう料理だ。

 

「ん~!おいしい!」

「こらアマモ、食べる前には」

「ダルスも食べてみてよ!すっごく美味しいよ♪」

 

ダルスはアマモに対して溜息をつきながらも、カレーライスを口に運ぶ。すると表情を変え、マラサダを食べた時と同様に自然と笑みを零した。

 

なんだかんだいいつつも、ダルスは次々とカレーライスを食していく。その姿をみたアマモも、なんだか嬉しそうに笑っていた。

 

「おかわりもあるから、どんどん食べても大丈夫だよ。」

「本当!?やったぁ♪」

「……ありがとう、シンジ。」

 

シンジの言葉にアマモは喜びをあらわにし、ダルスも嬉しそうに感謝の言葉を告げる。二人はこの世界の優しさに触れ、必ず自分の使命を成し遂げようと心の中で誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、エーテルパラダイスの地下ではある人物の計画が着々と進んでいるのであった。

 

「もう少し、もう少しです。あと少し集まれば、私の計画は……」

 

薄ら笑いを浮かべ、その男は自らの計画を画策していく。のちに大きな事件が引き起こされることを、まだ誰も知らない。




普段面倒だと思うことでも、ポケモンと一緒だったらなんでも楽しく感じるんだろうなぁ


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四天王カヒリ登場!

竜王戦ルールが思いの外楽しすぎる。

ホワイトキュレムと日食ネクロズマが気に入って色違い厳選しました。
と言うか珠控えめCSニンフィアが後投げレヒレとカバルドンに強くていい。欠伸されたらミスバで退場できるし、ステロ撒かれたらハイボ2発で倒せるし。


ロコンと別れを告げたリーリエは次なる目的地、アーカラ島大試練の行われる場所コニコシティへと向かうため、その道中のカンタイシティへと戻っていた。

 

リーリエは旅の疲れを癒すため、カンタイシティのポケモンセンターにてポケモンを預け腰を落ち着かせていた。するとそこで偶然にも一緒に旅を始めたヨウ、ハウと再会するのだった。

 

「それにしても同じタイミングでカンタイシティに来ているとは思いませんでした。」

「それは俺たちも同じだよ。俺も偶然ここに来てハウと会ったからな。」

「おれは途中で一回リーリエと会ったけどねー(モグモグ)ヨウとはバトルロイヤル以来かなー?(モグモグ)」

「相変わらずなのは分かったから物を食べながら喋るのはやめろと言っているだろう。」

「だってこの街のマラサダうまいからさー」

 

久しぶりに会っても相変わらずの言い合いをする二人を見てリーリエは苦笑する。すっかり見慣れた光景であるため、二人はなんだかんだで仲がいいのだと言うことは伝わってくるのだが。

 

そんな二人を交えながら、リーリエたちは旅の中で経験したことを語り合う。試練でのこと、旅先で新しく仲間になったポケモンのこと、短い道のりながらも、三人はそれぞれ様々な経験を重ねることができたようだ。

 

そして暫くするとジョーイから呼び出しの声掛けがされる。三人は急いでジョーイの元へと向かうと、彼女から笑顔でモンスターボールを差し出される。

 

「お待たせいたしました!お預かりしたポケモンたちはすっかり元気になりましたよ。」

『ありがとうございます!ジョーイさん!』

 

三人は同時にお礼を言いモンスターボールを受け取る。自分のポケモンたちが元気になったのを確認したヨウは、2人にある提案をした。

 

「なぁ、せっかくここで再会したんだから、軽くバトルしないか?」

「うーん、おれはまだマラサダ食べてるからパスかなー」

「私は構いませんよ。大試練の前に腕試しもしたいですから!」

 

ヨウのバトルと言う提案にハウはちょっとした諸事情によりパスするも、リーリエはその提案を受け入れ同意をする。三人は真っ先にポケモンセンターに用意されているバトルフィールドに向かった。

 

「よし!バトルはシングルバトル一本勝負!そして俺のポケモンはこいつだ!」

『ピッカチュウ!』

 

ヨウが繰り出したのはピカチュウであった。以前ククイ博士が開催したポケモンZキャンプの際にゲットしたピカチュウであろう。

 

初めて出会った際は進化前のピチューであったが、進化前は臆病で人見知りな性格であった。今では当時の彼の姿は見受けられず、以前よりも顔つきが引き締まった印象を感じられる。

 

「あの時から俺もピカチュウもかなり強くなったぜ?甘く見てると痛い目にあうからな!」

「甘くなんて見てませんよ。練習試合とは言え、気を引き締めていきます!お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

ヨウのピカチュウに対してリーリエは相棒であるシロンを繰り出す。大試練の前にエースであるシロンの調整をする、と言う意気込みだろうか。

 

「シロンか、相手にとって不足はないな。ピカチュウ!強くなった俺たちの力を見せつけてやろうぜ!」

『ピッカチュ!』

 

ピカチュウは自分の頬にある電気袋をバチバチと鳴らし自分の意気込みを見せる。どうやらピカチュウもやる気満々なようである。その姿を見て、リーリエとシロンもより一層気が引き締まる。

 

「二人とも頑張れー!」

 

マラサダを食べながらハウがそう2人に呼びかける。暢気な呼びかけではあるが、その言葉を合図にヨウが先手必勝と言いながら動き出した。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウは素早い動きでシロンを翻弄しながら接近する。しかしその攻撃に対してリーリエは冷静に対処する。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

シロンはこおりのつぶてでピカチュウのでんこうせっかを正面から迎え撃つ。ピカチュウもスピードを出してしまっていたため、それが逆効果となってしまいこおりのつぶてが直撃してしまう。

 

『ピカッ!?』

「っ!ピカチュウ!あなをほるだ!」

『ピッカ!』

 

こおりのつぶてによるダメージを逃がすようにピカチュウは地中へと姿を消す。これではこちらから手を出すことは出来ないと、シロンはピカチュウの攻撃に備えて身構える。

 

「今だ!かげぶんしん!」

 

ヨウがそう指示を出すと同時に、地中からピカチュウが姿を現した。しかし現れたのは一体だけではなく、無数のピカチュウであった。かげぶんしんにより生み出された分身と同時に飛び出すことにより、相手の視覚を錯乱させる作戦である。

 

練習試合と言いながら二人は自然とヒートアップしてしまう。これから、と言うタイミングで街中から大きなドゴーンッ、と言う爆発音が聞こえた。

 

「なっ!?今の音は!?」

「街の方から聞こえたねー」

「い、行ってみましょう!」

 

リーリエたちはバトルを中断し、ポケモンたちをモンスターボールへと戻して急ぎ急行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンタイシティ内で大きな爆発音が聞こえたためやってきたリーリエたち。そこではあるポケモンが辺りかまわず攻撃をしていた。

 

『バッジ!』

「あのポケモンさんは……」

『バルジーナ、ほねわしポケモン!あく・ひこうタイプ!骨を集めて巣を作る習性がある。オスにアピールするために着飾ると言われているが、バルジーナのオスはまだ見つかっていない。』

 

街中で暴れているのはバルジーナであった。人々は慌てて逃げまどっているが、バルジーナは攻撃を止めるどころか更に機嫌が悪くなっているようにも思える。

 

「とにかく止めないと!」

 

リーリエの言葉にヨウ、ハウも同意しモンスターボールを取り出す。そのモンスターボールを投げようとした次の瞬間、大きくも落ち着いた三人を制止する声が聞こえた。

 

「待ってください」

「えっ?」

 

その声が聞こえた場所へと振り向くと、そこにはゴルフクラブを手にした一人の女性がいた。この女性は誰だろうかとリーリエたちが考えている間にその女性が再び口を開いた。

 

「ここは私に任せてくれませんか?」

「え?は、はい……」

 

戸惑いながらも、彼女の迷いない瞳を見たリーリエたちはその提案を拒むことができなかった。リーリエはその女性の瞳を見た時、心の奥で彼女は強いのだと確信してしまったからだ。それも、自分が憧れているチャンピオン、シンジにも似ている気がしたほどである。

 

女性はゆっくりとバルジーナの元へと歩いていく。傍から見たら暴れているポケモンに無防備で近づくのは危険な行為であろう。バルジーナも攻撃を中止し、その女性の方へと目を向けた。

 

「バルジーナ、大丈夫です。私に敵意はありませんよ。」

 

バルジーナは女性をじっと見つめたまま動こうとしない。女性の事を認めたのか、それともまだ警戒を続け観察しているのか。

 

「……なるほど、やはりですか」

『……』

「こちらへ来てください、すぐに楽にしてあげますから。」

 

女性はそう言いながら腕を前に差し出す。先ほどまで暴れていたバルジーナは落ち着きを取り戻したのか、彼女の腕に止まった。

 

「少し待っててくださいね。」

 

女性は懐からキズぐすりを取り出す。そのキズぐすりをバルジーナの片翼に吹きかける。その後、包帯を巻き応急処置を手早く終わらせた。

 

「はい、これで大丈夫です。もう暴れてはいけませんよ?」

『バァジ!』

 

バルジーナは彼女の手から離れ大きく羽ばたき飛び去って行った。その様子を見届けたリーリエたちはその女性の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫でしたか?」

「ええ、問題はありません。バルジーナはただ怪我をしてしまっていただけです。」

「どうして怪我だと分かったんですか?」

 

ヨウの質問は最もである。バルジーナは翼を含め全体的に暗い色をしている。パッと見では怪我をしているかどうかが非常に分かりにくいだろう。それなのにバルジーナの暴れている原因を的確に当てたのだからその理由は気になるものだろう。

 

「簡単です。バルジーナの翼の動きに気ごちなさを感じたからです。っと、あくまでそれは近づいてから分かったものなのですけれど。」

「え?では本当の理由は?」

「バルジーナは心優しいポケモン、と言うわけではありません。だからと言って凶暴なポケモンでもありません。バルジーナの気性が荒くなってしまうのは繁殖期に入り、バルチャイの子育てを始める時期からです。」

 

バルジーナと言うポケモンは面倒見がよく、付きっ切りでバルチャイのお世話をすることで有名だ。その時期になると気が立ってしまう近付くものを容赦なく追い払うほど気性が荒くなってしまうため大変危険だ。

 

だが女性曰く、今の時期はバルジーナの繁殖期には程遠く、バルジーナの性格上バルチャイの傍を離れるとは思えない。だからこそ彼女は別の理由があるのだと考えバルジーナにゆっくりと歩み寄ったのだ。

 

それに加え、彼女自身バルジーナを所有しているため、バルジーナの気持ちぐらいは分かるつもりだ、とも豪語していた。

 

リーリエたちも彼女の観察力、推察力に驚きと同時に感心する。正直言ってバルジーナが暴れていたのに気を取られそこまで頭の中で整理する余裕がなかった。

 

そしてその女性はリーリエを見て、何かに気付いたように話しかけてきた。

 

「もしかして貴女、リーリエさんですか?」

「え?ど、どうして私の名前を?」

 

その言葉を聞いて女性はあっ、とした顔をして自己紹介を始めた。

 

「すいません、申し遅れました。私はカヒリ。アローラの四天王を務めております。」

「えっ?」

『ええええええええええええ!?』

 

三人はほぼ同時に驚きの声を発する。まさかの四天王が目の前になんの前触れもなく現れたのだから無理もないだろう。

 

四天王と言えばチャンピオンに次いで強いと称される四人のトレーナーである。アローラにもチャンピオンが生まれたことにより、四天王も決められた。暫くアローラを離れていたリーリエたちは四天王の存在に関して詳しくなかったため、彼女のことを見ても分からなかったのである。

 

「あなたの事はチャンピオン、シンジさんから聞いていますよ。」

「シンジさんから、ですか?」

 

四天王とチャンピオンと言う役職柄、接触することも少なくない。そのため彼女はチャンピオンであるシンジとも関係性が強い。その上、カヒリは以前島巡りチャンピオンにもなったことがある程の実力者である。

 

当時はポケモンリーグが建設されていなかったためシンジのような正式なチャンピオンにはならなかったが、シンジにとってカヒリは先輩のような存在でもある。

 

「実は、あなたには以前から興味を持っていました。この先のビーチにあるホテル、私の実家なんです。もしアーカラ島の冒険が終わったら是非立ち寄ってください。」

 

そう言い残してカヒリはその場を立ち去って行った。思わぬ人物の登場にまだ開いた口が塞がらない状態ではあるが、四天王からの誘いであれば断るわけには行かないと、大試練が終わってから立ち寄ろうと決め自分たちもそれぞれ旅を続けようとカンタイシティを後にし別れるのであった。




プリコネ3周年おめでとう!

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ディグダトンネル!対決、スカル団!

今回は過去話になります。

あとダイパリメイク決定おめでとう!賛否両論あるけど、私はリメイクしてくれるだけで嬉しいです。ダイパは何がいいって、BGMや地下炭鉱にポケッチ、なにより当時イノムーやトゲチックとかの既存ポケモンに追加された新たな進化先が衝撃的でしたからね。それらも懐かしみながらプレイしたいです。

それに追加してレジェンズアルセウスとか、来月はポケスナもあるし、やっぱりポケモンとゲーフリは最高だぜ!

あっ、誤字報告してくださる皆さま、いつもありがとうございます。お優しい読者様ばかりでとても助かってます。


カンタイシティで暴れていたバルジーナに遭遇したリーリエは、四天王カヒリと出会い四天王の凄さを知った。そんな彼女と、大試練が終わった後にカヒリの実家であるホテルでもう一度会うことを約束。そしてリーリエは大試練へと挑戦するため、目的地であるコニコシティに向かっていた。……のだが?

 

『……リーリエ?』

「……なんでしょうか、ロトム図鑑さん」

『迷ったロネ?』

 

ロトムに図星を指摘されてギクッ、と反応してしまうリーリエ。そんなことない、と否定するも説得力がなくロトムには呆れられてしまった。

 

現在彼女たちはディグダが掘ったと言われているディグダトンネルと言う洞窟を通っている。コニコシティに向かうにはこの道しかなく、洞窟であるため視界は少々薄暗い。

 

ディグダの掘ったこの洞窟は中が結構入り組んでおり、ディグダトンネルを通るものは迷う者は少なくない。しかしリーリエの方向音痴は筋金入り。以前にマリエシティに大きく目立つように建てられている図書館でさえ、辿り着くのに時間がかかってしまったほどだ。

 

『仕方ないロ。やっぱりここはボクが案内するロ!』

「い、いえ、しかし」

『このままでは一日中洞窟で彷徨うことになるロ。大人しく言うことを聞いておいた方が身のためロヨ?』

「……はい///」

 

リーリエは大人しくロトムの言うことに従う。彼女はカントーでの旅も含めトレーナーとしての実力も、人間としても大きく成長することができた。しかし、方向音痴だけはどうしても直らない。

 

どうにか方向音痴も直したいと思いロトムの案内を拒否したのだが、結局同じところを何度も何度も行ったり来たりを繰り返してしまっていたため、結局ロトムの案内に従う他なかった。

 

「それにしてもロトム図鑑さんはよく迷いませんね。」

『ボクは図鑑機能だけじゃなくて、地図や記録もデータとして残されているんだロ。一度シンジと歩いた道だから簡単に消えることはないロ!』

 

ロトムは一度シンジと島巡りを体験し、彼の旅を最後までサポートした経歴がある。リーリエも彼の島巡りに少しだけ同行したことはあるが、それはほんの一部分だけにすぎない。だからこそ少し気になる部分があったのでロトムに尋ねてみた。

 

「ロトム図鑑さん、シンジさんとこの場所を旅した時のこと、聞かせてくれませんか?」

『ビビッ?いいケロ、やっぱりシンジの旅が気になるロ?』

 

ロトムの問いにリーリエは頷く。2年前に島巡りをしていたシンジが紡いだ旅路。憧れの存在であり、島巡りを成功させ、その上チャンピオンになった偉大な先輩の旅の話であれば参考にならないわけがない。

 

それにリーリエ自身、ただ純粋にシンジが経験した島巡りの話が気になる、と言うのも理由として大きい。折角当時近くで見てきたロトムとも旅をしているのだから、こういった機会に話を聞いておきたい。

 

『分かったロ!じゃあここであった出来事について少し話すロ!』

 

そうしてロトムは以前シンジと経験した島巡りの話を懐かしみながら話始めたのである。

 

 

 

 

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3つの試練を突破したシンジは、大試練の行われるコニコシティへと向かう為にディグダトンネルを通り抜けようとしていた。

 

「確かここ、ディグダトンネルって言ったっけ?」

『そうだロ。ここはディグダが掘ったと言われている洞窟ロ!」

 

まるでカントーにあるディグダのあなみたいだ、と自分の故郷のことを思い出す。彼の故郷でもあるカントー地方にも、このディグダトンネルと同様、ディグダが掘ったとされているディグダのあなと呼ばれる洞窟がある。あちらはシンプルな一本道だが、こちらはまるでディグダの巣穴のように道が分かれていて下手をすれば迷ってしまいそうな構造だ。

 

『ビビッ?なんだか奥から声が聞こえるロ?』

 

奥から声が聞こえたと言うロトムはシンジの懐へと潜り込む。空洞となっている洞窟内では少しの声でも周囲に響き渡るのでよく聞こえる。どうやら言い争いをしているようだ。

 

2人の男性が文句を言うような口調で、その言葉に1人の女性が声を荒げて反論しているようである。その声の正体に少しずつ近づいていくと、見覚えのある少女と男たちが向かい合っていた。

 

「ミヅキ?それにスカル団、だっけ?」

「あっ!?シンジ君!ちょうどいいところに来てくれた!」

 

シンジに気付いたミヅキがそう言うと、スカル団員の下っ端たちは眉間にしわをよせて渋い顔をする。どうやらまたよからぬことをしようとしているようである。

 

「実はこの人たちがこの洞窟内にいるディグダたちを捕まえて悪さをしようとしているみたいなんだよね。」

「ああ、だから珍しく怒鳴ってたんだね。」

 

普段温厚なミヅキが声を荒げていた理由を知ったシンジは、確かにそういうことなら自分も黙ってはいられないとスカル団に向かい合う。

 

「ちっ、仕方ねぇ。邪魔するならお前ら二人とも始末してやる!行くぞヤトウモリ!」

「カリキリ!出番だ!」

『ヤット!』

『キィリ!』

 

スカル団の下っ端たちはモンスターボールを投げ、ヤトウモリ、カリキリを繰り出した。悪事を働くのであれば容赦しないと、シンジとミヅキも自分のポケモンを繰り出す。

 

「ブラッキー!お願い!」

「ピカチュウ!行くよ!」

『ブラッキ!』

『ピカッチュ!』

 

対してシンジはあくタイプのブラッキー、そしてミヅキはでんきタイプのピカチュウを繰り出す。

 

先手必勝、と言わんばかりにスカル団の下っ端たちは同時に指示を出して動き始め攻撃を仕掛けてきた。

 

「ヤトウモリ!ピカチュウにヘドロばくだん!」

『ヤットォ!』

「カリキリ!ブラッキーにきりさく!」

『カッキィ!』

 

ヤトウモリはヘドロばくだんでピカチュウに、カリキリはブラッキーにきりさくで攻撃してきた。ピカチュウとブラッキーはその攻撃を冷静にジャンプして回避する。

 

「ブラッキー!シャドーボール!」

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『ラッキ!』

『ピィカチュウ!』

 

ブラッキーはシャドーボール、そしてピカチュウは10まんボルトで反撃をする。互いの攻撃はヤトウモリ、カリキリに命中し確実にダメージを与える。

 

「チィ!ヤトウモリ!ピカチュウにはじけるほのお!」

『ヤトゥ!』

『ピカッ!?』

『ブラッキ!?』

 

ヤトウモリははじけるほのおでピカチュウに攻撃する。ピカチュウに命中したはじけるほのおは、文字通りその場で弾けてブラッキーに僅かだが着弾しダメージを与えた。

 

はじけるほのおはダブルバトルの時にこそ効果を発揮する技。命中した相手とは別にポケモンにも僅かだがダメージを与える追加効果を持っている。そのため、ピカチュウの傍にいたブラッキーにもダメージが入ってしまったと言うわけだ。

 

「ご、ごめんシンジ君!」

「気にしなくていいよ。ブラッキー、まだまだ平気だよね!」

『ブラッキ』

 

ブラッキーはダメージを受けながらもシンジの問いに答える。ブラッキーはまだまだ平気、と言う顔をしており、いつものように冷静で落ち着いた表情は一切変わっていない。

 

「カリキリ!ブラッキーにシザークロス!」

『カッキ!』

 

カリキリはブラッキーにシザークロスで狙いをつける。シザークロスはむしタイプの技であるため、ブラッキーに対しては効果抜群である。

 

「ブラッキー!あやしいひかり!」

『ブラッキ』

 

ブラッキーはあやしいひかりを額の模様から発生させる。あやしいひかりを見たカリキリは、シザークロスの構えをしたまま空中で混乱してしまう。

 

あやしいひかりを受けたポケモンは混乱状態となってしまい、混乱状態となったポケモンは我を失い誤って自分を攻撃してしまうことがある。この効果によりカリキリは迂闊に攻撃をすることができない。

 

「今だミヅキ!」

「まっかせて!ピカチュウ!アイアンテール!」

『ピッカチュ!』

『カッ!?』

『ヤット!?』

 

ピカチュウのアイアンテールが混乱中のカリキリにクリーンヒットする。混乱中のカリキリはその攻撃に全く反応することができず、アイアンテールで吹き飛んだカリキリは、後続にいたヤトウモリごと倒れる。

 

今の強力な一撃が決め手となり、下っ端のヤトウモリとカリキリは目を回して戦闘不能となっていた。下っ端たちは慌ててヤトウモリとカリキリをモンスターボールへとしまう。

 

「くっそ!邪魔しやがって!これだから島巡りの奴らは!」

「ただで済むと思うなよ!覚えてやがれー!」

 

そう捨て台詞をはいて下っ端たちは逃げていく。彼らは一瞬のうちに姿が見えなくなり、逃げ足だけは一級品のように速かった。

 

「もう悪さしないでよねー!」

 

逃げ足の速い彼らには届いていないかもしれないが、一応念押しの意味も込めてミヅキはスカル団たちにそう呼びかけた。まぁこれだけでやめるのであれば最初から悪さなどしていないのだろうが。

 

「全く、Z技使うまでもなかったね。っと、シンジ君、ありがとう!加勢してくれて助かったよ!」

「いや、僕としてもスカル団の行為は見過ごせないからね。」

 

シンジとミヅキは戦ってくれたポケモンたちに一声かけてモンスターボールへと戻す。ブラッキーとピカチュウは、どことなく嬉しそうな顔をしながらモンスターボールの中へと戻っていった。

 

「それにしてもスカル団、ディグダたちを乱獲しようとするなんて、どうするつもりだったんだろう?」

「ポケモンたちを捕まえて戦力とするのか、それとも島巡りのトレーナーたちの妨害をしたいのか。イマイチ目的が掴めないね。」

 

今までもスカル団たちの妨害は所々あったが、その度にシンジもミヅキもそれぞれ返り討ちにしていた。彼らは島巡りのトレーナーたちを極端に嫌っているが、その奥でどのような目的を抱いているのかはいまだによく分かっていない。

 

そもそも特に目的もなく自由気ままな行動をとっている可能性も否定できないのだが……。

 

「さて、もうすぐ大試練だね!私は先に行くから、次に会ったらバトルしようね!」

「うん、分かった。その時には僕も腕を上げてるように頑張るよ。」

 

ミヅキは手を振ってディグダトンネルを抜けていく。「僕たちも行こう」、とシンジはロトムと共にコニコシティへと足を進めるのであった。

 

その後、早くもミヅキとコニコシティで再会するのだが、彼女はブティック、ポケモン用のアロマ、レストラン、更には宝石店と、コニコシティに入り浸りであったため、シンジに大試練を先に越されたのであった。

 

 

 

 

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『当時の話はザっとこんな感じロ。』

 

リーリエはその話を聞いてスカル団の存在を思い出していた。そう言えば2年前、彼らが悪事を働いていたなと懐かしむ。彼らの目的がまさか最終的にあのような形で自分に関わってくるとは考えもしなかったが。

 

「ロトム図鑑さん、もしよければこれからも機会があればシンジさんたちの島巡りの話を聞かせてくれませんか?」

『もちろんお安い御用だロ!ボクもあの頃の話、いっぱいいっぱい話したいロ!』

 

リーリエのお願いをロトムは快く承諾する。記録を残すことに特化したフォルムのロトム図鑑であるが故か、過去に経験したことを話すことがなによりも好きなようである。

 

『ビビッ!出口が見えてきたロ!』

 

ロトムが指し示した方角を見ると、そこには光が差し込んでいた。間違いなく洞窟の出口である。

 

洞窟を出ると、晴れ渡る空に飛び回る野生のポケモン達の姿、そしておいしい空気を感じる事ができた。やはりアローラの空気は素晴らしいとリーリエは心の中で感じる。

 

憧れのシンジ、そしてそのライバルであるミヅキも歩いた道。彼らに追いつくため、自分たちも行こうと一歩踏み出すリーリエ。次に目指すは大試練のあるコニコシティ。さぁ、アーカラ島の冒険もいよいよ大詰めだ!




多分シンジの冒険は作り直さず、このようにちょくちょく回想で挟んでいく方針にシフトすると思います。この方が話の内容考えるの楽だし、同時進行できるし、リーリエの島巡りと話も被らないしで書けますから。まだシンジ君の冒険書き直すと私のモチベも続かなさそうですしね……。


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コニコシティ到着!蘇るマオスペシャル!?

結局ガブリアスって強いんやなって思ってます。チョッキガブリアス使いやすくていいっすね。


方向音痴により迷子になってしまったものの、ロトムの案内により無事ディグダトンネルを抜けることができたリーリエ。そしてその視線の先には、次なる目的地が見えてきていた。

 

『リーリエ!見えてきたロ!』

「コニコシティ……なんだか懐かしいです!」

 

アーカラ島の南西部に位置するコニコシティ。この先にある命の遺跡には、アーカラ島の守り神であるカプ・テテフが祀られている。

 

カプ・テテフが振り撒く鱗粉には癒しの効果があり、触れた者の傷を治すほど強力な効果が含まれている。しかしかつてはカプ・テテフの鱗粉を巡り争いがおこり、鱗粉に振れ過ぎた者たちの感情が暴走して多くの人たちの命が失われてしまった、とも伝えられている。

 

2年前、リーリエはほしぐもと共にこの場所を訪れたことがあった。当初の目的であるカプ・テテフに会うことは叶わなかったが、当時しまクイーンをしていた現四天王のライチ、そしてシンジの大試練による熱い戦いは今でも鮮明に思い出すことができる。トレーナーになった今だからこそ、あの戦いがどれだけ凄いものなのかがよく分かる。

 

リーリエ当時の思いを胸にコニコシティへと足を踏み入れる。街に入ると、子供たちが元気よく遊んでいる姿が目に入る。当時はライチがしまクイーンであったが、現在では元スカル団幹部であったグズマがしまキングを務めている。それでも街の雰囲気は全く変わっていない。

 

コニコシティは中華街と言うべき雰囲気の街で、大きな門を潜り抜けると左右にいくつもの店が並んでいる。

 

多くの街にある衣服の店、ブティックはもちろん、ヘアサロン、マッサージ店に御香屋、漢方屋などの珍しい店、そしてライチが経営しているジュエルショップ、マオの親が経営している飲食店等も存在する。

 

更にここはキャプテンであるスイレンの地元でもあり、彼女の実家もこの街にあるらしい。

 

『これからどうするロ?』

「そうですね……大試練を受ける前に、一日休息しようかと思っているのですが。」

 

流石にディグダトンネルを通り抜けてきたばかりなのでリーリエも疲労が残っている。急がずとも大試練が逃げるようなことは無いので直ぐに向かう必要はないだろう。

 

それに相手はしまキング、それも相手はシンジやグラジオを苦戦させたあのグズマである。準備する期間は必要だろう。

 

「折角ですし、マオさんの実家に立ち寄ることにしましょう!」

『ビビッ!?』

「どうかしましたか?ロトム図鑑さん?」

『な、なんでもないロ……。』

 

様子が可笑しいロトム図鑑に首を傾げつつも、リーリエはマオの実家である料理店の扉を開いた。その時に入店の合図を知らせるベルが鳴り、奥からは元気な「いらっしゃいませー!」と言う声が聞こえた。

 

「あれ?リーリエじゃん!来てくれたんだね!」

 

明るく出迎えてくれたのはキャプテンでありこの店の看板娘、マオだ。マオはリーリエの顔を見るなりすぐさま近寄ってくれる。

 

キャプテンと島巡りと言う間柄ではあるが、対象的に思えるものの二人はなんだかんだで気が合う。友好的に接してくれるマオに対してリーリエも話しやすいのであろう。

 

「もしかして今日はお客様?」

「はい、大試練のためにコニコシティに寄ったのですけど、折角ですのでマオさんのお店に立ち寄ろうかと思いまして。」

 

そう言うことなら、とマオはお客としてリーリエを席に案内する。昼を過ぎて結構時間が経っている中途半端な時間なので、現在他の客は少ない。お嬢様育ちのリーリエは店で食事をしたことが殆どないので、少し緊張気味である。

 

「ご注文は何にする?」

「えっと、オススメって何かありますか?」

「だったらこのZ定食ってやつだね!種類も色々あるから、好きなの選んでいいよ!」

 

リーリエがオススメについて質問すると、マオは迷わずにZ定食と呼ばれているものを指定する。種類もいくつかあり、肉、魚、野菜など、それぞれ別の食材を重点に置いた定食のようである。

 

リーリエはどちらかと言うと少食なので、この中でボリュームが一番少ない野菜を選択した。マオはリーリエの注文を承ると、すぐに厨房を担当している男性に伝えに行く。どうやら彼がマオの父親のようである。

 

マオの父親は彼女の注文を聞き受けると、すぐに料理を始める。長年料理をしているはずなので当たり前ではあるが、かなり手際がよく、最近やっと料理に慣れてきたリーリエもその素早い手捌きに圧巻する。

 

暫く待つと、マオが出来立ての料理を運んできた。客も少ないこともあり、料理ができるまでそこまでの時間がかかることはなかった。

 

運ばれてきた料理は白いご飯、味噌汁、そして野菜が多めに揚げ物と言った一般的な定食であった。リーリエは早速「いただきます」と、手を合わせて食べてみることにする。

 

味の方はと言うと、かなり美味しく、流石は自ら料理店を営んでいる程と感心する。シンジからも聞いていたが、彼女の両親の店はかなり評判がよく、時間帯になると席がすぐに満席になるほどだと言う。そう考えると、自分が訪れたのは丁度いい時間帯であったと言えるだろう。

 

おかずの味付けも丁度良く、白いご飯とマッチして箸が進む。リーリエもこの味には満足し、気が付けば既に完食していた。

 

「ごちそうさまでした」と満足そうに手を合わせるリーリエ。その表情にマオも嬉しそうに微笑み返した。

 

その時、マオが「そうだ!」と思い出したように椅子を立ち上がった。

 

「折角だから私の作ったご飯も食べて行ってよ!」

「え?まぁまだ少しだったら食べれますけど」

 

あまり胃袋の大きくないリーリエ的にはこの量でも満足できるぐらいであった。マオは食べきれなかったら全然残してくれても大丈夫、と言いそのまま厨房へと向かった。

 

そう言うことなら、とリーリエも料理を待つが、何故か無性に嫌な予感がした。そう言えば、とリーリエは試練の時の出来事を思い出す。

 

リーリエの集めた食材でマオが作った料理は、かなり、なんと言うか、変わったものであった。匂いも独特で、不思議と食欲も消え失せてしまうものであった。カキとスイレンも遠慮していたため、仕方なくリーリエ、そしてその時一緒にいたヒナは彼女の料理を口にした。

 

「…………」

 

リーリエは思い出すと同時に額から冷や汗を流す。あまりのショックで当時の記憶が抜け落ちていたのか、彼女の料理はかなり悲惨なものであった。お世辞にも美味しいと呼べたものではない。

 

冷静に考えてみればあの時集めた食材は甘い木の実に甘い密。そんなものを同時に加えれば甘さばかりが強くなってしまい癖のある味になってしまう。その上マオが混ぜたのが大きな根っこに小さなキノコである。

 

キノコならまだしも、根っこは食材として使うものではないのでは、と今になって考えてしまう。そうこうしている内に、マオの声がリーリエの耳に入ってきた。その声にリーリエは少しビクッとなってしまう。

 

「おまたせー!名付けて“Z定食マオちゃんスペシャル”だよー!」

 

そう言ってマオは自分の作った料理を持ってくる。Z定食マオちゃんスペシャル、と呼ばれるものは一見特に変わらない普通の定食である。……やたらと鼻を刺激する甘い香りがすること以外はだが……。

 

ああ言った手前今更断ることもできない。残してもいい、と言っていたため少しだけ食べて感想を言うしかないと覚悟を決める。リーリエはマオちゃんスペシャルを口へと運ぶ。

 

味は、以前食べたものよりかは幾分マシである。あの時のような口に残る感じは流石にない。

 

しかしやはりその香りも味も独特であり、なんとも表現できないものであった。辛いのか甘いのか分かり辛く、食感も色々と違うものが混ざっている感じがする微妙なもの。

 

どうどう!?と迫るマオだが、リーリエの反応も微妙なもので反応に困ってしまっている。表現に困っているリーリエを見て、ロトム図鑑は心の中である感想を述べていた。

 

(リーリエの表情、あの時のシンジと同じだロ……)

 

ロトム図鑑から見ても、2年前に見たシンジの表情と完全に一致するようであった。彼女が父親のような料理を作れるようになるまで、どれぐらいかかるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マオの店で食事を終えたリーリエ。また来てね!と明るく見送ってくれるマオだが、可能ならばマオの料理はなるべく控えたいと思うリーリエであった。

 

そんな彼女を店の外で待つ存在があった。その人物は店を出てきたリーリエを見かけ、やっとかと呟き声をかける。

 

「久しぶり、と言うほどでもないか、お姫さん。」

「ぷ、プルメリさん!?どうしてここに?」

 

彼女を待ち受けていたのは元スカル団の幹部、プルメリであった。プルメリとはオハナタウンで会った時以来であり、リーリエもまさかここで再会するとは思っていなかったため驚いた。

 

「なに、偶然立ち寄ったらあんたがこの店で食事しているのが見えたから待っていただけさね。」

 

その後、プルメリはそれより、と言葉を続ける。

 

「以前あんたに言ったこと、覚えてるかい?」

 

プルメリの言葉にリーリエは以前出会った時のことを思い返す。すると心の中であっ、と思い出した。

 

「次に会ったらバトルしよう。トレーナーだったら、当然断りはしないだろう?」

「プルメリさん……勿論です!」

 

手をギュッと握りしめ、バトルの申し入れを受け入れるリーリエ。その言葉を聞き、プルメリはニヤリと微笑み振り返った。

 

「ここじゃあなんだ。あたいに着いてきな、お姫さん。」

 

そう言ってプルメリはコニコシティの外へと向かって歩き出す。リーリエは彼女とバトルをするため、彼女の後に着いて行くことにしたのであった。




次回プルメリ姉さんとのバトルとなります。アーカラ島もようやく終盤となります。


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VSプルメリ!巧妙なる毒の罠!

コジロウとチリーンみたく、実は私もニンフィアちゃんがガチ初恋だったりする。一目惚れではなく、XYで旅をしている時に段々好きになっていったパティーンですけど。

と言うか今回のプルメリ戦、かなり長くなってしまった。プルメリさんは好きなキャラだし、バトル回だから仕方ないとはいえ、こんな頑張ると大試練のバトルがががが……


大試練を受けるためにアーカラ島南西のコニコシティへとやってきたリーリエ。しかしそこで再会したのは元スカル団の幹部であるプルメリであった。

 

リーリエを見かけたプルメリは彼女に話しかけ、2人は大試練の前にバトルをすることとなった。

 

リーリエはプルメリについて行き、コニコシティはずれまで案内された。そこでプルメリは空を見上げ、懐かし気にとあることを呟いた。

 

「懐かしいねぇ。あの時の事を思い出しちまう。」

「あの時……ですか?」

「ああ、姫さんはいなかったね。この場所、あたいが初めてあいつ、シンジと戦った場所なんだよ。」

「シンジさんと、プルメリさんが……」

 

そう、このコニコシティのはずれでシンジとプルメリが出会い、スカル団の因果によりバトルをすることとなった。思えばあの時から、自分の運命の歯車が動き出したのだとプルメリは思いふける。

 

「あたいはグズマ以外にバトルで負けたことがなかった。バトルにも、自分のポケモンたちにも自信があった。そんなあたいを狂わせたのが、現チャンピオンだったってわけさね。」

 

プルメリは2年前のことを思い出しながら語っていく。リーリエはそんな彼女の話を黙って聞いていた。

 

「まったく、今思い出すだけでも腹が立つね。このあたいが、まさかあんな子どもに負けちまうなんてさ。」

 

まるで愚痴るかのようにそう語るプルメリ。しかし彼女の顔には怒りの感情はなく、むしろどこか嬉しそうな声色をしているようにも思える。

 

プルメリはかつての出来事を語り終えると、リーリエの方へと振り返り彼女の眼を見つめた。

 

「ホント、あんたたちは似てるよ。姫さんのその眼、あの時のあの子にそっくりだよ。」

「?」

 

プルメリはリーリエに聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。プルメリの声を聞きとれなかったリーリエは首を傾げるが、そんな彼女をよそにプルメリはモンスターボールを構えた。

 

「細かいことは抜きにしようじゃないか。ポケモントレーナーならバトルで語れ、だろう?」

 

プルメリの言葉の意図を理解し、リーリエも頷いて自分のポケモンが入ったモンスターボールを構える。リーリエのバトルする意思を受け取ったプルメリは、今回のバトルのルールを説明する。

 

「ルールは2対2のシングルバトル。どちらかのポケモンが2対とも戦闘不能になったら負けっていうシンプルなバトルさ。異論はないね?」

「分かりました!私も全力で戦います!」

 

2年前に見た彼女の印象と全く違うリーリエを見て、プルメリは小さく微笑む。これなら楽しいバトルができそうだと、胸を高鳴らせながらモンスターボールを投げた。

 

「行くよ!ゴルバット!」

『カカッ!』

 

プルメリが繰り出したのはリーリエもよく見覚えのあるポケモン、ゴルバットであった。ゴルバットはズバットの進化形であり、各地の洞窟内で生息しているためとてもよく見かけることがあるポケモンだ。特に山や洞窟などが多い関係上、カントー、ジョウト地方では見かけない方が珍しいともいえるポケモンである。

 

「では私は、お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

どく・ひこうタイプのゴルバットに対して、リーリエはみず・フェアリータイプのマリルを選出した。タイプ相性で言えばゴルバットの方が圧倒的に有利であるが、以前のシンジと似ている選出に思わず笑みが浮かぶプルメリ。これはゴルバットの事を舐めているから、と言うわけではなく自分のポケモンを信じているからこその選出である。

 

だからこそプルメリは「これは楽しい戦いになりそうだねぇ」と心の中で呟いた。

 

「ゴルバット!エアスラッシュ!」

『カッ!』

 

ゴルバットは翼を羽ばたかせて空気の刃を生成、エアスラッシュにより先制攻撃を仕掛ける。

 

「躱してください!」

『リル!』

 

マリルはゴルバットの攻撃をジャンプして回避する。攻撃後の隙を狙い、マリルはすかさず反撃に出た。

 

「バブルこうせんです!」

「あんたも躱しな!」

 

マリルはバブルこうせんで反撃するが、ゴルバットは自身の飛んでいるという特徴を活かしふわりと回避する。動きに無駄がなく、プルメリが如何によくポケモンを育てているかがよく分かる。

 

「続けてアクアテールです!」

『リルゥ!』

「どくどくのキバで受け止めな!」

『カカッ!』

 

マリルは尻尾に水を纏わせ振り下ろし追撃に入る。しかしプルメリのゴルバットは鋭い牙でマリルの尻尾を挟んで真っ向から受け止める。これにはリーリエとマリルも驚きの表情を浮かべた。

 

「まだまだ甘いね!そのまま叩きつけな!」

 

ゴルバットはマリルの尻尾をガッチリと掴み、地面に向かって勢いよく叩きつけた。その衝撃によるダメージもあるが、それに加えどくどくのキバによる追加効果、猛毒が入ってしまう。

 

どくどくのキバはヒットした相手に確率で猛毒状態にしてしまう追加効果がある。毒や猛毒は相手の体力を少しずつ削っていく状態異常だが、猛毒は毒と違いダメージ量が徐々に増えていってしまう。長期戦になればなるほど多くの体力が蝕まれ、非常に不利になってしまうだろう。

 

「マリルさん!大丈夫ですか!?」

『リル……リルッ!』

 

立ち上がるだけでも辛そうだが、リーリエに心配をかけまいと自分の体に鞭を撃って立ち上がり気合を入れる。

 

「へぇ~、見た目に似合わず根性あるじゃないかい。私のゴルバットの毒を喰らって立ち上がってくるなんてね。」

 

プルメリは嬉しそうにそう呟いてマリルの評価を自分の中で大きく上げる。これなら退屈はしなさそうだ、と容赦なくマリルに襲い掛かるのであった。

 

「ゴルバット!ベノムショック!」

『カッ!』

 

ベノムショックは毒状態の相手に対して効果が高く、ダメージが2倍となる技だ。現在のマリルは猛毒状態、この攻撃を受けてしまえば猛毒のダメージと合わせてかなり危険だ。

 

「マリルさん!バブルこうせん!」

『リルルル!』

 

マリルはベノムショックをバブルこうせんで防ぐ。その衝撃で互いの姿が隠れてしまい視界が悪くなってしまった。

 

「逃がすんじゃないよ!どくどくのキバ!」

『カッ!』

 

準備を整えさせる前に接近して一気に片づけようとどくどくのキバで畳みかけるゴルバット。しかし、砂埃がはれたそこには、マリルの姿が見当たらなかった。

 

「なに!?いったいどこに……っ!?あれは、まさか!?」

 

プルメリはマリルの元居た場所を凝視する。そこには不自然に濡れているへこみがあった。それを見たプルメリは、まさかと思い上を見上げた。

 

そこには猛毒状態になりながらもゴルバットを見据え、大きくジャンプしているマリルの姿があった。

 

マリルはゴルバットの視界から外れた瞬間、一瞬のスキを突いてアクアテールで地面を叩きつけ、その反動で大きくジャンプしたのである。リーリエとそのポケモンたちがいつも得意とする戦術だ。

 

「マリルさん!今です!バブルこうせん!」

『リィルゥ!』

『カカッ!?』

 

マリルはゴルバットの頭上からバブルこうせんを放つ。バブルこうせんはゴルバットに直撃し、ゴルバットはその勢いで地面にたたきつけられた。先ほどとは逆の光景にプルメリは驚くも、それでも胸の高鳴りを抑えることが出来ずに小さく微笑んでいた。

 

「ゴルバット、よくやったね、ゆっくり休みな。」

 

プルメリはゴルバットにそう優しい言葉をかけてモンスターボールへと戻す。彼女は見た目こそ怖いかもしれないが、根は優しく、自分のポケモンの事をなによりも大事にする立派なトレーナーなのである。

 

リーリエとマリルは追い詰められながらも勝てたことにお互い喜びをあらわにする。しかしマリルの体力もかなり削られてしまい、マリルは毒のダメージで膝をついてしまう。

 

「マリルさん!?」

 

苦しそうにするマリルが心配になりリーリエは急いで駆け寄る。そんな彼女に、プルメリはあるものを放り投げた。

 

「これ、その子に食わせてやりな。」

 

リーリエはプルメリの投げたものを受け取り確認する。するとそれはポケモンの毒状態を回復させるモモンのみであった。

 

「い、いいんですか?」

「気にしなくていいから、早く食わせてやりな。」

 

プルメリのその心遣いに感謝し、リーリエはマリルにモモンのみを食べさせる。モモンのみを食べたマリルの猛毒はみるみると引いていき、すっかり元気を取り戻した。もう毒の影響は全くなくなったようである。

 

『リル?リルル!』

「マリルさん、よかったです。プルメリさん!ありがとうございます!」

「礼を言われることじゃないさね。それに、毒が治った程度であたいの相棒に勝てるなんて思わないことだね!」

 

その言葉と同時にリーリエとマリルに大きな威圧感が襲い掛かる。次に出てくるのは間違いなくプルメリのパートナーであり切り札。そのポケモンの強さは、リーリエもかつて見たことがあった。

 

「出番だよ、エンニュート!」

『エェンニュ!』

 

『エンニュート、どくトカゲポケモン。どく・ほのおタイプ。ヤトウモリの進化形。現在メスしか見つかっておらず、オスのヤトウモリたちを引き連れて群れを作る。エンニュートのフェロモンガスは薄めることで香水としても利用できる。』

 

最後にプルメリが繰り出したのは彼女のパートナーにしてエースでもあるエンニュートだ。エンニュートはどく・ほのおタイプと言う珍しい組み合わせで、タイプの面でもフェアリータイプのマリルに対して有効である。ただしほのおタイプも持っているため、みずタイプのマリルの攻撃も有効となっているのだが。

 

しかし一番の警戒すべき点はタイプ相性ではなく、エンニュート自身の実力にある。以前リーリエはプルメリのエンニュートと、ミヅキがバトルをしているのを見たことがある。その時、エンニュートの素早くも柔軟な動きはとても記憶に染みついている。

 

エンニュートの厄介なスピードをなんとかして抑えつけなければ捉えることもままならないだろう。リーリエはそう考え、早速行動に移った。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

『リルル!』

 

マリルはアクアテールを一点に集中させるのではなく、広範囲に薙ぎ払った。威力は多少分散してしまうが、広範囲に攻撃することでエンニュート側の逃げ場が少なくなりとれる行動が限られてくる。

 

「ジャンプして躱しな!」

『エンット!』

 

エンニュートは横から薙ぎ払われるアクアテールをジャンプすることで回避する。エンニュートにとっては横の逃げ道が防がれてしまったため、このように回避するしか手段がなかった。

 

「今です!バブルこうせん!」

『リルルル!』

 

狙い通り、とマリルはバブルこうせんでエンニュートを一直線に狙い定める。しかし、その狙いはプルメリにとっても同じであり、彼女はニヤリと口角を上げた。

 

「エンニュート!みがわりだよ!」

『ット!』

「なっ!?」

『リル!?』

 

エンニュートの使った技はみがわりであった。みがわりは自身の体力を削る代わりに、分身を生み出して代わりに技を受けさせる技である。エンニュートはみがわりを使い、マリルのバブルこうせんをあっさりと受け流す。

 

「どくづきだ!」

『……ットォ』

『リルルッ!?』

 

気付けばマリルの目の前にエンニュートの姿があった。マリルは衝撃の余り対応することができず、エンニュートのどくづきをもろに受けてしまう。

 

どくづきを受けたマリルは地面に叩き伏せられ、一撃で戦闘不能に陥ってしまう。毒や先ほどまでのバトルによるダメージがあったとはいえ、たった一撃を的確に決める程のスピードに、リーリエはただただ圧倒されるのみであった。

 

「も、戻ってください!マリルさん!」

 

お疲れ様でした、とマリルに一言かけるリーリエ。まさかマリルが全く手も足も出ないとは思わなかったため、動揺を隠し切れない。

 

「さぁ姫さん。次のポケモンを出しな。最も、スピード自慢のエンニュートに勝てる子がいるなら、だけどね?」

 

スピード自慢。確かにエンニュートの強力なみがわり、そしてそれを利用した驚異的なスピード戦術。どちらも一級品のものではあるが、それならこの子も負けてはいない、と最後のポケモンを繰り出すことを決意する。

 

「まだ、まだ負けていません!絶対プルメリさんに勝って、大試練も、グズマさんも突破してみせます!」

 

リーリエが見据えているのはこの戦いの勝利、そしてアーカラ島しまキング、グズマを倒すこと。負けることなど全く考えていない。

 

そんな顔を見たプルメリの中では、以前戦った島巡りのトレーナーの顔と、今のリーリエの顔が完全に一致していた。

 

「やっぱりそっくりだよ、あんたたち。」

 

そう呟いて一呼吸入れたあと、リーリエに向かって大きく叫んだ。

 

「だったら見せてみな!あんたの全力、あたいたちが受け止めてやるよ!」

『エットォ!』

 

プルメリとエンニュートの威圧感に耐え、リーリエは最後のポケモンを繰り出すのであった。

 

「行きますよ!チラチーノさん!」

『チラァ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラチーノであった。チラチーノはノーマルタイプ、エンニュートはどく・ほのおタイプ。タイプ相性での優劣は殆どない。

 

更にエンニュートの持ち味はスピードであり、チラチーノもまたスピードが自慢のポケモン。これは実質、どちらが速いかを競うスピード対決であろう。

 

「さぁ、始めようじゃないか!エンニュート!どくづき!」

『エントッ!』

「躱してください!」

『チラッ!』

 

エンニュートは低い姿勢のはいよる素早い動きで接近し、どくづきを決めようとする。チラチーノはその攻撃を受ける前に回避した。チラチーノのスピードであれば、エンニュートにも互角に渡り合えるようである。

 

「チラチーノさん!スピードスターです!」

『チラチラァ!』

「そんな攻撃、あんたの尻尾でかき消しちまいな!」

『エットォ!トォ!』

 

チラチーノのスピードスターを、エンニュートは尻尾で撃ち返しかき消してしまった。当然ではあるが、スピードだけでなくパワー、テクニックも兼ね備えているようである。

 

「チラチーノさん!続けてあなをほるです!」

『チラッチ!』

 

チラチーノは隙を見て地中の中に姿を消した。しかしプルメリは慌てることなく、冷静にエンニュートに指示を出す。

 

「エンニュート、地面の音を感じ取りな。」

『エント!』

 

エンニュートは再び姿勢を低くして感覚器官を集中させる。地面と体を密着させることにより、地中の僅かな振動も感じ取ろうと言うのである。言うだけなら簡単ではあるが、相当バトルで慣れさせなければ到底できる事ではないだろう。

 

『……エット!』

「見つけたね。ドラゴンクロー!」

『チラァ!』

『エントッ!』

『チラッ!?』

 

エンニュートの足元から飛び出し直接不意打ちをするチラチーノ。しかし前もってチラチーノの気配を感じ取ったエンニュートは、飛び出してくる直前に僅かな動きでチラチーノの攻撃を回避した。これにはチラチーノも驚き、エンニュートのドラゴンクローを浴びてしまう。

 

「チラチーノさん!大丈夫ですか?」

『チラッチ!』

 

リーリエの声に答えチラチーノはすぐさま立ち上がる。どうやらダメージ自体はそこまででもないようである。それを見たプルメリは小さく舌打ちをした。

 

「チッ、浅かったかい。だがそう何度も幸運は続かないよ!エンニュート!はじけるほのお!」

『エットォ!』

 

エンニュートははじけるほのおで遠距離から攻撃する。チラチーノはその攻撃はジャンプして避けるも、地面に着弾し炎が弾け、チラチーノに掠ってしまう。

 

はじけるほのおは着弾点から周囲に対して僅かな炎ダメージが入ってしまう技である。ダメージは微量と言えど、蓄積されてしまえばバトルの結果にも関わってしまう。

 

はじけるほのおの追加ダメージで顔を歪ませるチラチーノだが、この程度では負けられないと力を振り絞る。

 

「負けないでくださいチラチーノさん!スピードスターです!」

『チラチッ!』

『エンット!?』

 

チラチーノはダメージを受けた状態から無理やり攻撃態勢に移行した。まさかの行動にエンニュートは驚き、対応が一手遅れてしまう。

 

「あの態勢から攻撃するとはね。いいねいいねぇ、楽しくなってきたよ!」

「チラチーノさん!スイープビンタ!」

『チラァ!』

 

攻撃で怯ませた隙に一気に接近して攻めに転じるチラチーノ。エンニュートも負けじと態勢をすぐに整え反撃に移る。

 

「エンニュート!みがわりからのどくづき!」

『エットォ!』

「そう来ると思ってました!チラチーノさん!」

『チラァ!』

 

エンニュートがみがわりを使いチラチーノの攻撃を受け流す。そしてチラチーノのサイドに回りどくづきの態勢に入った。だがその行動をリーリエは読んでいた。

 

チラチーノはエンニュートのみがわりを破壊する。その後、流れるようにエンニュートの方へと振り向き体を捻らせたのであった。

 

「なんだって!?」

『エンッ!?』

 

プルメリとエンニュートは目を見開いた。なぜならエンニュートの攻撃が、チラチーノの体を掠めていったのだ。チラチーノの体の油によるコーティングが、エンニュートのどくづきを受け流したのである。

 

そしてチラチーノのスイープビンタは連続技。みがわりに加え、スイープビンタの2撃目がエンニュートにヒットする。その攻撃を受けたエンニュートはカウンターの形となり、大きく後ろへと吹っ飛ばされた。

 

「エンニュート!?」

『え……とぉ……』

 

エンニュートは目を回している。先ほどのスピードスターに加え、みがわりによる体力の削りが大きく影響してしまい、戦闘不能状態となってしまったのである。

 

「……はっ、お疲れ様、エンニュート。あんたはよくやったよ。」

 

優しく微笑んだプルメリは、充分健闘したエンニュートをモンスターボールへと戻した。勝利に喜ぶリーリエは、すぐにチラチーノの元へと駆け寄った。

 

「チラチーノさん!よく頑張りましたね!えらいです!」

『チラァ♪』

 

リーリエは嬉しそうにチラチーノの頭を撫でる。チラチーノもこれには嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。進化前とは違って、かなり素直な性格になったようである。

 

「はぁ、まさかあたいが負けるなんてね。でも不思議だね。姫さんも、それからあの子も、ムカついたりしないんだからさ。」

「プルメリさん……」

「……いいバトルだったよ。姫さん、2年前の時とは見違えたね。全く、うちの馬鹿どもにも見習わせたいもんだよ。」

 

プルメリの言う馬鹿どもとは、かつてスカル団をやっていた時の下っ端たちのことである。どれだけ馬鹿をやったとしても、彼女にとっては大切な部下であり、子供のような存在である。だからこそ、今でも彼らの事は大切の思っているのであろう。

 

「でも気を付けなよ?グズマはあたいより強い。それに、あいつもバトルは少し、いや、かなり荒々しいからね。精々怪我しないようにするんだね。」

 

リーリエはプルメリの言葉に頷くと同時に唾を飲み込む。荒々しいバトル、グズマらしいと言えばらしいのだが、想像できない戦術に自然と緊張してしまう。

 

「まっ、今日はもう疲れたろうし、町に戻って一日ゆっくりと休みな。大試練は明日でも大丈夫だろう。」

「は、はい!私、必ずグズマさんに勝って見せます!」

 

そう言ってリーリエは手をグッと握り締めて決意をあらわし、明日に備えて休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふん、俺に勝つ、か、舐められたもんだな。」

 

そう言って、彼女たちの姿を見ていた影は笑いながら後ろを振り返った。

 

「クククッ、破壊を体現したグズマ様が、たっぷりと可愛がってやる。」

 

その影はその場を離れ、嬉しそうに、かつ不気味な笑みを浮かべながら奥へと去っていったのであった。




次回は恐らく大試練ですね、いよいよアーカラ島もラストスパートです。

そして明日は遂にモンハンライズ配信日ですよ。最近残業ばっかりだったので有休とったので、たっぷり遊ばせていただきます。


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アーカラ島大試練!VSグズマ!

何故こんなに長くなってしまったのか……。私個人がグズマさん好きなので仕方ない


先日、半分成り行きでプルメリさんとバトルをした私、リーリエはコニコシティのポケモンセンターで泊まり一日を過ごしました。

 

そして翌日、遂にアーカラ島の大試練に挑戦する日がやってきました。相手は元スカル団のボスでもあったグズマさん。かつてシンジさんも苦戦させられていた指折りの実力者です。

 

初めて聞いた時はあの人がしまキングを務めていると言う事実に驚きました。実際私やシンジさん、お兄様にミヅキさんとは敵対関係にありました。しかも以前はお母様の味方をしており、お母様の指示で私をエーテルパラダイスまで連れ去ったことがあります。

 

そのような方が現四天王を務めているハラさんやライチさんたちと同じしまキングになっているなど正直信じられないことでした。ですがシンジさんから聞いた話では、私がアローラを去ってからグズマさんとバトルをし、ハラさんと一緒に説得することで改心させることができた、と言っていました。

 

スカル団のボスであったグズマさんは間違いなく強い。それもしまキングとなった彼は以前よりも強くなっている可能性の方が高いです。気を引き締めなければ、あっという間に倒されてしまうことでしょう。ですがどれだけ強い相手であろうと、私は絶対に勝って見せます。約束の場所に立つために、ここで負けるわけには行きません!

 

私がそんな事を考えながらポケモンセンターを後にするため外に出ると、そこには昨日戦ったプルメリさんが立っていました。プルメリさんは私の姿を見ると、軽い笑みを浮かべながら何かを手にし私の元へと歩み寄ってきました。

 

「よう姫さん。昨日はゆっくり眠れたかい?」

「はい!必ずグズマさんに勝って見せます!」

 

言うねぇ、とプルメリさんはニヤリと笑いながら、私に一つの紙切れを渡してきました。

 

読んでみな、と言ってそうなプルメリさんの顔を見た私は、二つ折りされた手紙を開きました。するとそこには、“俺様がぶっ壊してやる ビビッて逃げるんじゃねぇぞ”とだけ書いてありました。

 

「ったく、そんなこと書かなくても姫さんは逃げたりしないだろうに。」

 

そう呆れたように溜息交じりで呟いたあと、プルメリさんは“でも”と付け加えて言葉を続けました。

 

「あいつがそう言ったってことは、相当楽しみにしているみたいだね。姫さんとのバトルをさ。」

「私とのバトルを……ですか?」

 

私の言葉にプルメリさんは頷いて答えました。もしかしたら私とプルメリさんのバトルを見ていたのでしょうか?

 

グズマさんがそう言うなら、私の答えは決まっています。グズマさんの気持ちに応えるため、そしてなにより私自身のため、全力でグズマさんに立ち向かい勝利を手にしてみせます!

 

「その顔を見たら、これ以上余計なことを言う必要はないって分かったよ。行ってきな、そしてグズマの野郎に度肝を抜かしてやりな!」

「はい!」

 

私はプルメリさんに見送られ、グズマさんの待つ命の遺跡へと向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命の遺跡前へとやってきた私は、以前ここを訪れた出来事の事を思い出しました。当時は私はポケモントレーナーではなく、お母様の手から逃れ、ほしぐもちゃんを助けるために精一杯でした。

 

その時、私はシンジさんと当時しまクイーンであったライチさんの大試練バトルを目にし、バトルの凄さを目の当たりにしました。バトルに対して否定的、とまでは言いませんがあまり気乗りしなかった私でしたが、シンジさんのバトルを見ていると自然と鼓動が高鳴っていくのが自分でも分かりました。

 

それだけあの人のバトルは惹かれるものがあり、素人の私からしてもとても魅力を感じる事の出来るものでした。だからこそ私はあの人を目指して、ここまでやってくることができました。

 

(私はシンジさんの背中を見て、トレーナーになり、ここまでやってくることができました。守られるだけじゃなくて、大切な人に背中を預けられるように、一緒に歩むことができるように。)

 

だからこそ私は、グズマさんを倒し、先に進みます。約束の場所に行くために。

 

私は改めて決意を固め、大試練の門をくぐりました。するとその先には、見覚えのある背中が見えました。

 

背中にはスカル団を象徴とするドクロのマークが描かれていますが、それは大きく上から紫色のペンキで×を塗られていました。恐らくスカル団が解散した際、自らのケジメの意味を込めての行為でしょう。間違いなくその背中はグズマさんです。

 

私の気配に気づいたのか、グズマさんはこちらへと振り向きました。そして私は睨みつけてきます。グズマさんの目は鋭く、正直言えば怖いです。ですが覚悟を決めた以上、その程度の事で怯んで何ていられません。

 

私は恐れていないという意思表示のため、出来る限りの眼差しでグズマさんの眼を睨み返しました。するとグズマさんは口角を僅かに上げ、ようやく口を開きました。

 

「ハッ!それで睨んでるつもりかよ。だが、昔の箱入り嬢ちゃんの時とは違うみたいだな。」

 

グズマさんはそう言うと、モンスターボールを手に持ち、私も同じようにモンスターボールを構えました。私がバトルの意思があると確認したのか、グズマさんは言葉を続けました。

 

「ルールは2対2のシングルバトル。ここまで来たら余計な会話は必要ねぇ。大試練だろうが、オレさまの前でまどろっこしい事はなしだ。」

 

私はグズマさんの言葉に同意の意味を込め、頷くことで答えました。そしてグズマさんは大きく息を吸うと……。

 

「……ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めなくて嫌われるグズマがここにいるぜ!簡単に壊れるんじゃねぇぞ!」

 

グズマさんがそう叫ぶと、それがバトルの合図となるようにモンスターボールを同時に投げました。

 

「出番だぁ!グソクムシャ!」

『ムシャァ』

「チラチーノさん!お願いします!」

『チラァ!』

 

『グソクムシャ、そうこうポケモン。むし・みずタイプ。巨大なツメで素早い一閃を繰り出す。体を覆うカラはダイヤモンド並みの強度を誇り、勝つためには手段を選ばない』

 

私は素早さの高いチラチーノさんを先鋒として選出しました。しかしグズマさんのポケモンは、まさかのグソクムシャさんでした。

 

確かグソクムシャさんはグズマさんのエースだったはず。それなのに最初のポケモンとして選出した?何か作戦があるのでしょうか?

 

私がグズマさんの考えを読んでいる内に、グズマさんは小さな声で呟き、グソクムシャさんはその言葉を受け取り行動に移しました。

 

「であいがしら」

『シャ』

『チラッ!?』

 

私とチラチーノさんが反応する前に、グソクムシャさんが気付けばチラチーノさんの目の前まで迫っていました。あまりのスピードに、チラチーノさんも対応することができず、グソクムシャさんの大きなツメにより大きく吹き飛ばされてしまいました。

 

「チラチーノさん!?」

『ちっ……ラァ!』

 

チラチーノさんは一度ダウンしてしまうも、スッと立ち上がりグソクムシャさんを睨みつけました。

 

「ほう?グソクムシャの一撃を受けて立ち上がってくるか。大抵の挑戦者は今の一撃で戦意を失っちまうんだがな。」

 

そう言って嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべるグズマさん。確かに今の一撃は非常に重く、スピードも申し分なかった。ですが、今まで戦ってきた人たちも手練ればかりでした。今のは油断してしまっていた私たちに非があります。

 

「チラチーノさん、まだ行けますか?」

『チラッ!』

 

どうやら無用な心配だったようで、チラチーノさんはすぐに戦闘態勢へと移行しました。それを見たグズマさんは、ハッ、と口にしました。

 

「そうこなくちゃ待っていた甲斐がないってもんだ。グソクムシャ、ミサイルばり!」

「躱して接近してください!」

 

グソクムシャさんはミサイルばりで遠距離から連続で畳みかけてきました。チラチーノさんの得意な戦術は近接戦闘による素早い連続攻撃。自分の距離にするためにミサイルばりを次々と躱していきます。

 

ミサイルばりの制度はかなり高く、チラチーノさんの行く先を的確に狙ってきています。しかしチラチーノさんのスピードはその上を行っているようで、ミサイルばりを寸前のところで回避することに成功しています。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラッ!』

 

充分に距離を詰めたところで、チラチーノさんはスイープビンタで攻勢に出ました。この距離であればこちら側の得意な距離だと確信していました。

 

しかし、その想像は予想外の方法であっさりと崩されてしまいました。

 

「防御しろ!グソクムシャ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんは手を交差させて防御の態勢に入りました。グソクムシャさんの大きな腕によりチラチーノさんの攻撃は防がれ、あっさりと弾き返されてしまいました。

 

「ハッ、今だ!じごくづきぃ!」

『ムシャァ!』

『チッラ!?』

 

グソクムシャさんのじごくづきによる反撃が強力で、チラチーノさんは堪らず飛ばされてしまいます。私は思わず心配になり、すぐにチラチーノさんの元へと駆け寄りました。

 

「チラチーノさん!大丈夫ですか!?」

『ちっ……ラぁ……』

 

戦闘不能とはなっていませんが、今の一撃で最初のダメージよりも大きくなってしまっています。これ以上ダメージを貰ってしまうと厳しいですね。

 

グソクムシャさんのあの太い腕、かなり強固なもののようです。グソクムシャさんのカラはダイヤモンドよりも硬い、攻撃性能だけでなく、防御力も相当なものを備えているみたいですね。

 

ですがどんな強固なものであっても当然弱点はあります。その僅かなスキを狙って的確に弱点を突くしかありません。

 

「チラチーノさん、私の言う通りに動くことができますか?」

『チラ?』

 

私はチラチーノさんに自分の考えと作戦を伝えます。私が再度チラチーノさんに確認すると、彼女は元気よく頷いてくれました。私の事を信頼してくれているようで、嬉しさのあまり自然と笑みが零れてしまいます。

 

「作戦会議は済んだか?まだまだオレさまたちの攻撃は続くぜぇ!」

『ムシャ!』

「チラチーノさん!あなをほるです!」

『チラ!』

 

チラチーノさんはあなをほるで地中に姿を隠しました。グソクムシャさんは先ほどの猛攻と変わり、冷静に状況を確認しています。

 

チラチーノさんはグソクムシャさんの後ろから姿を現しました。グソクムシャさんはすぐさま振り向き、攻撃の態勢へと入ります。

 

「そんな攻撃は見え見えだ!グソクムシャ!アクアブレイク!」

 

グソクムシャさんは懐から水で出来た鋭い刃を生成、それを居合のように振りかざしました。ですがそれは逆に私たちの読み通りでもありました。

 

チラチーノさんはアクアブレイクをギリギリすれすれで回避しました。チラチーノさんの油のコーティングと持ち前のスピードであれば問題なかったようです。

 

「チラチーノさん!スイープビンタ!」

『チラァ!』

「グソクムシャァ!」

『ムッシャ!』

 

すかさず尻尾を縦から振り下ろすチラチーノさんに対して、グソクムシャさんはすぐに防御の態勢に入りチラチーノさんの攻撃を防ぎました。流石はグズマさんのエースなだけはあり、とてもよく育てられています。

 

ですがそれも当然私たちは読んでいて、先ほどチラチーノさんに伝えた作戦を実行に移しました。

 

『チッラァ!』

「っ!?」

『シャ!?』

 

チラチーノさんはグソクムシャさんの腕を使い踏み台にして、グソクムシャさんの頭上へと高くジャンプしました。この行動にはグソクムシャさんも驚いているようです。

 

チラチーノさんは更にジャンプした高さと降下の勢いを利用し、頭上から防御の薄い顔目掛けて尻尾を振り下ろしました。その一撃はグソクムシャさんの顔を捉え、見事命中しました。

 

例えグソクムシャさんのカラが硬くとも、カラのない部位、つまり頭部は無防備であり急所でもあります。一瞬の隙を突き当てることができれば、大きくダメージを与えることができます。

 

私の作戦通りに決まり、グソクムシャさんにダメージが入りグソクムシャさんは一歩後退りました。そして防御が下がった今こそ追撃のチャンスだと、チラチーノさんは更に攻撃を加えました。

 

「続けて行きます!スピードスターです!」

『チラッチラァ!』

 

スイープビンタで引き下がったグソクムシャさんに追撃のスピードスターが炸裂しました。同じように防御の薄い頭部に命中し、グソクムシャさんは更なるダメージによる膝をつきました。

 

(よし!この調子なら行けます!)

 

ダメージが溜まった今ならチラチーノさんのスピードで撹乱しながら倒すことができる。そう確信した私ですが、その瞬間にグズマさんがニヤリと笑いました。

 

一体どうしたのか、と私が考えようとすると、次の瞬間にグソクムシャさんがグズマさんのモンスターボールへと勝手に戻っていってしまいました。

 

思わず私は“えっ”と口にしてしまいましたが、グソクムシャさんと入れ替わりで別のポケモンさんが姿を現しました。

 

『ハッサ!』

 

次に姿を現したのはハッサムさんでした。グソクムシャさんと同じむしタイプ、そしてはがねタイプを所持しているポケモンさんですが、突然の状況に私は思考が追い付きませんでした。

 

「バレットパンチ」

『ハッサム!』

「っ!?か、躱してください!」

『チラッ!?』

 

私はハッとなり慌てて回避の指示を出しましたが時すでに遅し、ハッサムさんの素早い先制攻撃についていくことができず、チラチーノさんにハッサムさんの弾丸の様な一撃が突き刺さってしまいました。

 

私はチラチーノさんの事が心配になり慌てて駆け寄り抱えました。見るからにチラチーノさんはボロボロで、これ以上の戦闘は間違いなくできません。

 

「チラチーノさん、大丈夫ですか?」

『ちら……ちっ……』

 

私の問いかけに辛うじて声を振り絞るチラチーノさん。私は戦ってくれたチラチーノさんに感謝しつつ、後で必ず癒してあげると約束をし、モンスターボールへと戻しました。

 

冷静になって思い返すと、確かグソクムシャさんの特性は“ききかいひ”。危険を感じると手持ちのポケモンさんと入れ替わる特性です。だから突然グソクムシャさんは手持ちに戻り、ハッサムさんと入れ替わったということです。

 

迂闊でした。初めから予想さえしていれば決して対処できない動きではありませんでした。最初のであいがしらの時と言い、私もまだまだ未熟だということを思い知らされます。

 

「さぁ、さっさと次のポケモンを出しな。どんなやつが来てもブッ壊してやるからよ!」

 

グズマさんは手を握り締めてそう言い放ってきましたあの眼は間違いなく本気です。プルメリさんの言った通り、荒々しいバトルに偽りのない実力。今ならシンジさんやお兄様に匹敵する程の実力者だということが分かります。

 

ですが私の手持ちはまだ残っています。正直ハッサムさんに有利なポケモンさんはいませんが、それでも私は自分のポケモンさんを信じます。必ず勝って、前へ進みます!

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「……こおりとフェアリータイプか」

 

こおりタイプとフェアリータイプを持つシロンははがねタイプのハッサムさんとの相性が最悪です。ですが私はシロンを信頼しています。シロンなら、相性の壁も乗り越えてくれます!

 

「速攻で終わらせてやるよ!ハッサム!バレットパンチ!」

『ハサッ!』

 

ハッサムさんは先ほどと同じようにスピードに乗ってバレットパンチで直線的に狙ってきました。ですが、今度はその動きも分かっています。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

「全てブッ壊せ!」

『ハッサ!』

 

シロンはこおりのつぶてを無数に飛ばし対抗します。ハッサムさんは低空飛行の状態を維持しながらこおりのつぶてを迎撃します。しかし、砕け散るこおりのつぶてにより、次第にハッサムさんの動きに変化が出てきました。

 

『ハッサ!?』

「っ!?ハッサムの動きが」

 

ハッサムさんは元々飛行があまり得意なポケモンさんではありません。そのため小さな羽を激しく羽ばたかせてバトルに利用しています。砕け散ったこおりのつぶては次々とハッサムさんの横へと散っていきます。

 

砕けたこおりのつぶてはハッサムさんの羽ばたく羽に吸い寄せられるように少しずつ蓄積され、ハッサムさんの羽は凍りついていきました。それに伴い、ハッサムさんの動きもだんだんと鈍くなり、果てには羽ばたくことができず飛行すること自体が困難となりました。

 

ハッサムさんは戸惑い、今こそが最大のチャンスだとシロンはすかさずに追撃の態勢へと入りました。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォォォン!』

『ハサ!?』

 

シロンのれいとうビームがハッサムさんを直撃しました。シロンの渾身の一撃がハッサムさんを吹き飛ばし、ハッサムさんは今の一撃で戦闘不能となりました。

 

作戦、という程立派なものではありませんでした。正直言って殆どまぐれの様なものです。ですがどんな結果であれ、ハッサムさんを突破することができたのは非常に大きいです。

 

『はっ……さ……』

「……戻れ、ハッサム」

 

戦闘不能となったハッサムさんをモンスターボールへと戻すグズマさん。これで互いに残ったポケモンさんはシロンとグソクムシャさん、お互いのエース対決を残すのみです。

 

「……グソクムシャァ!」

『ムシャ!』

 

グズマさんのエース、グソクムシャさんが再びフィールドに降り立ちました。

 

グソクムシャさんは先ほどの戦闘によるダメージがあるとは言え、グズマさんの絶対的なエース。決して油断することはできません。

 

「グソクムシャ!であいがしらぁ!」

『ムッシャ!』

 

再びグソクムシャさんのであいがしら。であいがしらは戦闘に出た時にしか使えませんが、素早い動きで相手に不意の一撃を与える技です。先ほどは本当の意味で不意を受けてしまったため対応できませんでしたが、今度は違います。

 

「こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

グソクムシャさんがシロンの目の前に現れますが、こおりのつぶてでグソクムシャさんの一撃が当たる前に反撃をしました。零距離でぶつかった技は打ち消し合い、互いにノックバックする結果となりました。

 

「逃がすんじゃねえ!ミサイルばりぃ!」

「れいとうビームで撃ち落としてください!」

 

グソクムシャさんのミサイルばりが上空から襲い掛かってきますが、それらはシロンはれいとうビームで全て薙ぎ払いました。

 

その光景を見たグズマさんは、舌打ちをしながらも嬉しそうに口元を緩めていました。

 

「面白れぇじゃねぇか。だったらお前の全力、オレさまにぶつけてみろ!オレさまのグソクムシャはヤワじゃねぇ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんも“かかってこい”と言わんばかりに構えて挑発してきます。そこまで言われたら私も応えないわけには行きません。

 

「行きますよ!シロン!」

『コン!』

 

私はシロンと合図をとり、Z技のポーズをとります。私とシロンの絆、全力の攻撃です!

 

絶対零度のように全てを凍てつかせる氷の力

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

氷の柱がシロンを高く持ち上げ、シロンは力を溜め込みます。そして一点に集中したその力を解き放ち、Z技としてグソクムシャさんに一直線に向かいました。

 

地面を凍らせながら放たれたその一撃は、グソクムシャさんを完全に捉えていました。しかしグソクムシャさんは動じることなく、態勢を低くして居合の構えをとっていました。

 

「オレさまを……グソクムシャを舐めるなぁ!アクアブレイク!!」

『……ムシャ!』

 

グソクムシャさんは神経を集中させ、直前に迫ってきたレイジングジオフリーズに対してアクアブレイクの一閃を放ちます。するとグソクムシャさんの一撃は、Z技であるレイジングジオフリーズに匹敵する威力で競り合っていました。

 

グソクムシャさんは更に力を解放し、全力でアクアブレイクを振り払いました。すると驚くことに、シロンのZ技、レイジングジオフリーズを切り裂いてしまいました。

 

Z技とグソクムシャさんの一撃という大技のぶつかり合いにより、大きな衝撃が辺り一面に広がります。互いの姿が見えないその状況でしたが、複数の光がシロンに迫ってきているのが分かりました。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

その攻撃は間違いなくグソクムシャさんのミサイルばりで、シロンはこりのつぶてで反撃します。こおりのつぶてはミサイルばりを撃ち落とし、いくつかの流れ弾が衝撃を貫きグソクムシャさんへと向かっていきました。

 

「チィ!弾き返せ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんは大きなツメを振り払い、頑丈なカラを利用してこおりのつぶてを弾き返してきました。バトルは既に最終局面。私も必至にシロンに呼びかけました。

 

「シロン!」

『コォン!』

 

私の呼びかけに応答し、シロンはグソクムシャさんの方へと飛びかかっていきました。今の一声で私の意図を読み取ってくれたようです。

 

シロンは弾き返されたこおりのつぶての破片を口に咥えました。技がぶつかりあった礫は鋭さを増し、その先端はまるで剣のように尖っていました。

 

「っ!?グソクムシャ!アクアブレイク!」

『ムシャ!』

 

シロンは咥えたこおりのつぶてを振りかざし、グソクムシャさんは慌ててアクアブレイク準備をしました。互いに刃を振り、切り裂く音と同時にすれ違いました。

 

その後、暫く静寂が続きました。その後シロンが口からこおりのつぶてを落としてしまったため、もしかしてと不安が過りました。

 

しかし次の瞬間、グソクムシャさんが前のめりに倒れ、大きな音が響きました。どうやらグソクムシャさんは戦闘不能となり、決着がついたようです。

 

「……勝った?やりました!やりましたよシロン!」

『コォン♪』

 

感極まって私は飛び上がり、シロンも私の元へと駆け寄ってくれました。私たちは激戦に勝利し、互いに喜びを分かち合いました。

 

「……グソクムシャ、戻れ。」

 

グズマさんはグソクムシャさんをモンスターボールへと戻しました。すると息を大きく吸い込み……

 

「グズマァ!!なにやってるんだああ!!」

 

そう叫んだのち、ふっと息を吐いて私の元へと歩み寄ってきました。

 

「って、昔のオレさまなら叫んでいただろうな。ったく、誰かさんのせいでブッ壊されたのはオレさまみたいだな。」

「グズマさん……」

「ほらよ、むしZだ、持ってきな。元々オレさまには似合わねぇ代物だ。」

 

グズマさんからむしZを受け取ると、グズマさんは後ろに振り返り、一言だけ呟きました。

 

「……ありがとな、いいバトルだった。」

「っ!?」

「チッ、さっさと行きやがれ!あの野郎と同じで、お前も気に入らねぇ奴の一人なんだからよ!」

「は、はい!」

 

私にはその言葉が照れ隠しであると同時に、グズマさんにとっての最大の激励なのだと感じました。私はグズマさんの言葉を背に受け、命の遺跡を足し去っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、ホントに気に入らねぇ奴らだよ、ったく」

 

グズマはそう呟きながら空を見上げ、どこか嬉しそうな笑みを浮かべたのであった。

 

「……さっさとこいつらを回復させてやるか」




グズマさんはZ技を好まないので基本使いません。剣盾のネズさん的なイメージです。

ライズが面白すぎてずっとやってます。最近ではソロでラスボス周回という作業を。
暇つぶしにあげた百竜夜行のソロ動画が謎に再生数伸びてて驚いてます。こんなに短期間で伸びたのは辿異種ガノトトスをマグスパでやった動画以来だよ。


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エーテルパラダイスにて

もうすぐ竜王戦ルールも終わってしまう。なんだかんだでかなり楽しかったです。ランドカグヤをダイマエースにしたムゲンダイナ構築が非常に使いやすくて強いです。黒バド対策はHD色ブラッキーと、ザシアンに強いスカーフエースバーン採用


リーリエがグズマとの大試練に挑戦している頃、チャンピオンであるシンジはポケモンリーグにて、四天王の一人であるハラと一緒にイーブイの特訓をしていた。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『イブイ!』

「ハリテヤマ!つっぱりで受け止めなさい!」

『ハァリィ!』

 

イーブイのスピードスターをハリテヤマはつっぱりで正面から防ぐ。それを見たシンジは、さすがと一言呟いた。四天王のポケモンともなれば流石のシンジも苦戦は必至である。

 

「さて、本日はここまでにしましょうか。あまり根を詰めすぎても逆効果ですしな。」

「そうですね。イーブイ、お疲れ様。」

『イブイ♪』

 

シンジはイーブイの頭を優しく撫でる。イーブイも嬉しそうにシンジに擦り寄っていた。

 

「ハラさん、いつもイーブイの特訓に付き合ってくれてありがとうございます。」

「はっはっは!なに、気にしなくて構いませんよ。私たちにとってもいい特訓になりますからな!」

 

シンジとイーブイは時間さえあればこうしてハラや他の四天王たちにも特訓に付き合ってもらっている。イーブイはシンジのパーティの中でも新入りであり、旅で経験した数も少なくまだまだ未熟な部分も多いため、四天王である彼らとの戦いは非常に有意義なものである。

 

それにチャンピオンや四天王といえど、挑戦者たちが頻繁にくるというわけではない。島巡りを突破し、ポケモンリーグの結果次第でチャレンジャーと戦うため、普段はバトルをする機会がない。そのため、このようにしてコミュニケーションも兼ねてバトルをして互いに経験を積んでいるのである。

 

島巡りのトレーナーだけでなく四天王やチャンピオンも一人のトレーナーだ。トレーナーである以上、更に強くなりたいという向上心に関しては決して負けていないのである。

 

そんな彼らの元へ一人の女性が駆け足でやってきていた。このポケモンリーグに務めているスタッフのようだ。女性は少しおどおどした様子でシンジに話しかけてきた。

 

「ちゃ、チャンピオン!忙しいところすみません!少しよろしいでしょうか?」

「ん?うん、別に構わないけど、そんなに畏まらなくていいよ。」

「は、はい!す、すみません。」

 

チャンピオンはトレーナーにとって一番の目標とするべき存在であり、ポケモンリーグのトップにも近い存在。研究者の間で言えば一研究員がポケモン研究の第一人者、オーキド博士に話しかけるにも等しい。

 

仕方ないこととは言えシンジとしては気軽に話しかけてもらって構わないと思っているため、そこが最近の悩みの種でもある。

 

「じ、実はエーテル財団様の代表の方から連絡をいただきまして……」

「代表、ルザミーネさんから?」

 

女性スタッフの話によると、ルザミーネがチャンピオンであるシンジにエーテル財団まで顔を出してほしいとのことだった。急用、というわけではないようだが、シンジに直接伝えたいことがあるのだとか。

 

シンジはハラと顔を合わせると、ハラはシンジに頷く形で答えた。シンジはその行動を了承の意図と捉えると、その場を後にしてすぐにエーテル財団へと赴くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルザミーネに呼ばれエーテル財団へとやってきたシンジ。ルザミーネの待っている部屋の前までやってくると、大きな扉をノックし、どうぞという声を確認してから扉を開けて入室する。

 

中には奥の大きな椅子に座ったルザミーネと隣には秘書であるビッケ、そして空間研究所所長のバーネット博士、さらにルザミーネの息子でありシンジのライバルでもあるグラジオがいた。

 

「グラジオ、君も呼ばれたの?」

「ああ、かあさ……代表から連絡があってな、どうやら俺とシンジに伝えたいことがあるらしい。」

 

ルザミーネはシンジとグラジオが揃ったことを確認すると、彼女は立ち上がり話始める。

 

「シンジ君、来てくれてありがとう。それとグラジオも、今までエーテル財団を守ってくれてありがとう。」

「母さん……いや、俺がしたいことをしただけだ。それに、俺がここまでやってこれたのは一緒に支えてくれた財団のみんな、それに秘書のビッケ、バーネット博士たちのおかげだ。俺一人では無理だった。」

「グラジオ……変わったわね、あなた。」

「ふっ、どこかの誰かのせいで、な。」

 

グラジオは自分を変えたという人物に目をやる。当の本人は気付いていないのか首を傾げるが、そんな彼を見てグラジオは「相変わらずだな」と心の中で呟き笑みを浮かべた。

 

「ビッケ、それからバーネットも、色々心配や迷惑をかけたわね。ごめんなさい。」

「代表、お気になさらないで下さい。私たちは自分たちの役割をこなしただけですので。」

「そうだよ。それに、私たちはあんたに謝ってほしかったり、感謝してほしいからやったわけじゃないんだ。私とあんたは親友で、ビッケはあんたの秘書、でしょ?」

「ビッケ……バーネット……」

 

優しく励ましてくれる秘書と親友の姿に涙を流しそうになるも、これ以上彼女たちに情けない姿を見せるわけにはいかないと、ルザミーネは俯くことなく涙をこらえる。そして代表として前を向き、再びシンジとグラジオの方へと向き直った。

 

「二人とも、改めて来てくれてありがとう。」

「いえ、それより話というのは?」

 

ルザミーネはシンジの質問に頷いて答え、二人の目の前にホログラム映像を映し出した。その映像にはゆらゆらと揺れている波打った線が映っており、上下に激しく動いている。一見何かの強弱を表しているようだが……。

 

「代表、これは?」

「これは今朝、バーネットから送られてきたデータよ。」

「バーネット博士から?じゃあもしかして!?」

 

察したグラジオの言葉にルザミーネは頷き、彼女の代わりにバーネットが答える。

 

「あなたたちが察した通り、これはUBたちの発するオーラ、ウルトラオーラの反応だよ。」

「そんな!?確かにUBたちは彼らの世界に返したはずじゃ!?」

「ええ。確かに私たちエーテル財団が彼らを元の世界に送り返しました。それは間違いありません。」

 

慌てるシンジたちにビッケが落ち着いた様子でそう返答する。その後「ですが」、とビッケは言葉を続けた。

 

「これを見てください。」

 

そう言って新たに映し出された映像には、とある石板が映っていた。

 

「これは……ウツロイド?それにカプ・コケコ!?」

「それだけじゃない。他のUBや守り神たちの姿も描かれているわ。」

「それにこの中心にいる巨大なのは……ポケモン?」

 

その石板の中央にはUBや守り神たちとは違う、一際目立つ存在がいた。周りは光で輝く姿が描写されており、非常に神々しい印象を彼らに与えていた。

 

「この石板はつい先日見つかったもので、昔アローラで繰り広げられた戦いを残した記録みたい。」

「ルザミーネさん。このポケモンは?」

「……かがやきさま」

「かがやき……さま……」

「シンジ、知っているのか?」

「以前、ウルトラ調査隊の人達に聞いた話に出てきてたんだ。まさかここで聞くことになるとは思わなかったけど。」

「もう一回この映像を見てもらえるかしら?」

 

そう言ってルザミーネは再び最初に見せた波の映像を見せる。シンジとグラジオもその映像に再び目を向ける。

 

「この映像、ウルトラオーラの反応なんですよね。」

「ええ、でも少し異質でね。ウルトラオーラの反応に間違いはないのだけど……。」

「どうかしたんですか?バーネット博士。」

 

歯切れの悪いバーネットにグラジオは訪ねてみると、彼女は少し悩んだ素振りを見せながらその問いに答える。

 

「実はこのウルトラオーラにはもう一つ、別の反応が感知されたの。」

「別の反応?それって……」

「私たちのよく知る存在、ぬしポケモンと同じオーラの反応よ。」

『っ!?』

 

シンジとグラジオは思わず驚きの表情を浮かべる。

 

ぬしポケモンといえば島巡りのトレーナーたちが挑戦する試練の一つであり、キャプテンに育てられているポケモンである。彼らの特徴といえば通常の個体に比べ一回りか二回り程大きく、能力も非常に優れているポケモンだ。

 

「それにもう一つ、このウルトラオーラ、かなり不安定で反応が強くなったり弱くなったりを繰り返しているの。本来のウルトラオーラであれば近づくごとに存在を感知できるんだけど、このオーラに関しては全く掴めないの。」

「もしかして、このオーラの反応が……?」

「ええ、かがやきさまの可能性が非常に高いわ。」

 

その言葉を聞き、シンジとグラジオは表情を暗くする。一難去ってまた一難。さらなる脅威がアローラに近づいているのである。

 

そんな彼らの様子を見て、ルザミーネは二人の肩に手を置いた。

 

「大丈夫よ、心配しないで。もしもの時のために、これからみんなで対策を考えようと思うの。」

「対策?」

「ええ、グラジオにはこれからマリエ図書館に行ってほしいの。かつてのアローラにまつわる本があれば、その情報を集めてほしいのよ。そこに何かヒントが記されてるかもしれないから。」

「……わかった」

「シンジ君は、ウルトラ調査隊の人たちと調査を進めてくれるかしら?彼らなら何か気付けることがあるかもしれないから。」

「分かりました」

「私たちはバーネット博士たちと共同で研究、及び監視を続行するわ。もし何か分かれば、エーテル財団まで連絡を頂戴。」

 

シンジとグラジオはルザミーネの言葉に頷き、早速自分の役割に取り掛かろうと部屋を後にする。

 

「まさかまたこのアローラに脅威が迫ってるなんてね。」

「ふっ、どこかの誰かさんが厄介ごとを引き付けてるんじゃないか?」

「ははは、なんだか否定できないんだけど……。」

 

グラジオに言葉にシンジは引きつった笑いをする。実際自分がアローラに訪れてから色々と起こりすぎているので、思い当たる節がないわけではない。

 

「なに、ちょっとした冗談だ。それに、俺たちが組めば何も怖いことなんてない……違うか?」

「グラジオ……違いないね。」

 

シンジはグラジオの言葉に同意し、笑顔で拳を突き合わせてそれぞれ別れて役割をこなすことにする。アローラの新たな脅威となり得る可能性のあるかがやきさま……彼らとアローラの運命はどのような結末が待っているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、またあの子たちを頼ることになっちゃったわね。」

「代表……彼らなら心配いりませんよ。彼らは大人たちよりもしっかりしていますから!」

「ええ、それに、彼らを支え導くことが私たち大人の務め。そうでしょう?ルザミーネ代表?」

「……そうね。私たち大人は、彼らの未来のために支えなきゃ。そうよね?モーン……。」

 

ルザミーネは窓の外に果てしなく広がる青空を見上げ、そう呟いたのだった。




何気ないことでも社長に報告するときは毎回緊張するよね?女性スタッフもそんな気持ちなんだよ、うん。

来週ついにポケスナ発売日!みんな!カメラの準備は万全か!


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VS四天王カヒリ!第三の島、ウラウラ島へ!

ポケスナ出るし、ライズの無料アプデきたし、小説書かなければいけないし、ポケモンの対戦もしてるし、最近残業もあるし、全く忙しいぜ!(大歓喜)

因みにラストのシーズンは2944位まで上がりましたが、そこから麻痺、怯み、急所の運負けが3,4回続いて3桁上がり損ねました。結局3000位前後をウロウロする結果に……。やっぱり調子のいい日になるべく連戦した方がいいのかな?


先日グズマのアーカラ島大試練を無事突破したリーリエ。今日はとある用事のためにカンタイシティにて待ち合わせをしている。

 

「おーい!リーリエー!」

 

リーリエの名前を呼んで手を振りながら彼女の元へと走って近づいてくる人影が二人。リーリエの友人でありライバルでもあるハウ、そしてヨウである。

 

「おまたせー!」

「ごめん、待たせたか?」

「いえ、私もついさっき来たばかりですので。」

「ハウがまたマラサダを買うのに時間かけててな……。」

 

どうやらハウのマラサダ選びに付き合っていたら時間をくってしまっていたようだ。二人は島巡りにでても相変わらずなんだなぁ、とリーリエは心の中でそう思いながら微笑んだ。

 

三人は全員が揃ったことを確認するとゆっくりと歩き出した。ハウはマラサダを買いすぎた、とのことで少しリーリエにも分けてくれた。

 

普段マラサダを食べる機会もなかったリーリエだが、ハウから貰ったマラサダを食べるととても美味しいと口にした。外はカリッとしっかり揚げた食感をしていたが、中はふんわりと餅米のような食感。そして砂糖がかかっているのに甘すぎず、中にはクリームも入っていて味付けもよく、とても作り込まれている。

 

今リーリエが食べたのはごく普通の一般的なマラサダだが、他にも色々な味付けがあるようで、今度機会ができたら他の味を試してみるのもいいかもしれないと思った。

 

暫く歩いていると目的の場所が見えてきた。そこには広大なビーチ、目の前に青々と広がる海、そして海を見下ろすかのように建てられた大きな建物。3人はその光景を見て上手く言葉が出てこなかった。

 

「すっごーい!広いしでかいねー!」

 

最初に口を開いたのはハウであった。ハウはシンプルな感想を口にしたが、実際その言葉以外出てこない。

 

ここはハノハノリゾート、そして目の前に広がるビーチがハノハノビーチ。そう、ここは以前出会った四天王カヒリの実家である。今日、カヒリに会う為にここに来たのである。

 

「あ、あそこの集まりはなんでしょうか?」

 

リーリエが指差した先には、ビーチ椅子に寝そべったピカチュウと、数人のマイクやカメラと言った機材を持った人たちが集まっていた。

 

「んー?あー、あれは確かチュウジロウっていうポケモンタレントだねー。」

「チュウジロウ……さん?」

「ああ、話では今映画で大ブレイクしているしているらしいが、俺たちはあまり詳しくないからな。」

 

どうやらオフの日にポケモンタレントのチュウジロウがハノハノホテルに遊びに来たが、どこからか情報が漏れてしまい、マスコミたちがチュウジロウのプライベートを取材しに来てしまった、と言ったところか。

 

とは言えリーリエたちは一般人。可哀想だとは思うが、タレントなどと言った大きな世界に対して口出しをすることなど中々できない。そんな彼女たちの代わりにある人物がその様子を見かねて止めに入ってくれた。

 

「ちょっとあなたたち」

「えっ?あ、あなたはカヒリさん!?」

 

その人物とはリーリエたちがこれから会おうとしていたカヒリであった。その上カヒリは有名なプロゴルファーとしても知られている。二重の意味で有名なカヒリとの対面にマスコミたちは驚きを隠せないでいる。

 

「私のお店、リゾートのお客様に対して失礼なことしないでいただけますか?チュウジロウ様は今貴重なお休みの時間ですので、今日のところはどうかお引き取りをお願いします。」

 

カヒリにそう言われてしまってはマスコミもこれ以上何も言えないようで、そそくさとその場を去っていった。チュウジロウは助けてくれたカヒリに感謝をし、彼女は気にしないでと言いチュウジロウに頭を下げてその場を離れる。

 

その後、リーリエたちの存在に気付いたカヒリは、彼女たちの元へと歩いて近付いてきたのであった。

 

「三人とも、来ていたのですね。」

「は、はい、つい先ほどですけど。」

「カヒリさんカッコよかったー!」

 

カヒリの話曰く、ここのリゾートは全て父が経営しているようで有名な人やチュウジロウの様なポケモンも泊まりに来ることが少なくないそうだ。その度にああいったマスコミやファンが押しかけたりするが、カヒリはそれを見かけるたびに先ほどのようにして追い返しているそうだ。

 

「私たちも接客業ですからね、お客様が第一。お客様にはストレスなく休日を過ごして欲しいので。」

 

そう語るカヒリに対し、リーリエたちはやっぱり凄い人だなぁ、と心の中で感じる事ができたのである。

 

「あっ、私の話はよかったわね。早速なんだけど……」

「あ、あの?」

 

カヒリが何かを言う前に、珍しくリーリエが先に口を出した。カヒリは驚きながらも優しい笑顔でどうしたの、と尋ねてみた。

 

「す、すいません、突然話を止めてしまって……」

「気にしなくていいですよ。それで、リーリエさん、どうしたのですか?」

「……あの、私と、バトルしてくださいませんか?」

 

リーリエの突然の提案にヨウとハウは驚いた。普段のリーリエであれば突然このような提案はしないと思っていたからだ。

 

しかしカヒリは優しいながらも真剣な眼差しでその理由をリーリエに問いかけた。

 

「カヒリさんは前に言ってました。私の事をシンジさんから聞いていたと。」

「ええ、言いましたね。」

「私、シンジさんとの約束を果たすためにこの島巡りに挑戦しました。もちろん、それは簡単な道じゃないってことは分かっています。だから、だからこそ!シンジさんのところに辿り着くために、四天王であるカヒリさんとバトルをして経験を積みたいんです!お願いします!」

 

リーリエは勢いよく頭を下げる。それを見たカヒリは、彼女の想いは本物なんだ、と感じた。

 

「いいでしょう、分かりました。それに元より、私の方からリーリエさんにバトルを申し込むつもりでした。」

「え?」

「シンジさんから、よくあなたの話を聞くんです。その度に彼、とても楽しそうに話しているんです。それであなたに興味を持ったので、是非バトルをしてみたい、と。」

 

そう言って一呼吸おき、カヒリは改めてリーリエに尋ねたのであった。

 

「……是非、私とバトルをしてくださいませんか?」

「!?は、はい!よろしくお願いします!」

 

こうして、四天王カヒリとリーリエによるバトルが決定し、リーリエたちはリゾートの裏手にあるバトルフィールドへと移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルールは1対1のシングルバトル。戦闘不能、または私の判断でバトル終了にします。よろしいですか?」

 

カヒリのルール説明にリーリエは頷く。ハウとヨウが(マラサダを食しながら)見守る中、リーリエの肯定を確認したカヒリが先にポケモンを繰り出した。

 

「では行きますよ!ドデカバシ!」

『カバシ!』

『ドデカバシ、おおづつポケモン!ノーマル・ひこうタイプ!発熱させたクチバシは100度を超え、突かれるだけで大火傷する。番が仲睦まじいことでも知られている。』

 

カヒリのポケモンは、彼女の相棒でもあるドデカバシ。ドデカバシの立派で大きなクチバシ、そして力強く羽ばたかせる翼。普通のドデカバシとはどこか雰囲気が違う。流石は四天王のパートナーである。

 

「では私も、お願いします!シロン!」

『コン!』

 

リーリエのポケモンは同じく彼女のパートナーであるシロン。ひこうタイプであるドデカバシにこおりタイプを持っているシロンは相性が非常にいい。

 

「お先にいいですよ。」

 

カヒリはリーリエに先攻を譲りそう促す。しかしリーリエは喉をゴクリと鳴らしつつ動こうとしない。

 

四天王、それも相棒であるドデカバシが相手だ。迂闊に動いてしまえばそれだけで命取りになりかねない。リーリエは緊張から汗がたらりと落ちてくる。

 

「……そちらからこないのならばこちらから行きますよ!ドデカバシ!タネマシンガン!」

『カバシッ!』

「っ!?シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

警戒するリーリエたちにドデカバシはタネマシンガンで先制攻撃を仕掛けてくる。シロンもこおりのつぶてで反撃し、互いの攻撃が開幕フィールド中央でぶつかりあった。シロンのこおりのつぶてによりドデカバシのタネマシンガンは打ち消された。威力はほぼ互角と見ていいか。

 

「続けてニトロチャージ!」

「なっ!?ほのおタイプの技!?」

 

ドデカバシは体に炎を纏い、シロンに対して速攻を仕掛けてくる。先ほどのフィールド中央で発生した衝撃を正面から突破し、シロンにニトロチャージが炸裂する。

 

こおりタイプのシロンにニトロチャージは効果抜群。更にニトロチャージは追加効果として、自身の素早さを上げる効果がある。

 

ドデカバシは元々あまり早くないポケモン。しかしニトロチャージの効果によりその欠点を補い、更に苦手なこおりタイプの対策にもなっているということだ。

 

「もう一度ニトロチャージ!」

『カバッ!』

「くっ!れいとうビームで反撃してください!」

『ッ!?コォン!』

 

ドデカバシはここぞとばかりに怒涛の追撃を仕掛けてくる。普段冷静なカヒリからは予想できない戦術だ。

 

ドデカバシのニトロチャージに対しシロンはれいとうビームで正面から止めようと反撃する。しかしドデカバシはシロンの攻撃をヒラリと回避し、そのままニトロチャージを確実に決めていく。明らかに先ほどよりも素早さが上がっており、ドデカバシも一手一手を冷静に見極めている。

 

「っ!?シロン!大丈夫ですか!?」

『っ……こぉ、ん……コォン!』

 

シロンはなんとか立ち上がる。ダメージも蓄積していてふらついているが、まだまだ戦う闘志は潰えていないようである。リーリエもまだまだ行ける、と言った様子。

 

「……いい目をしていますね。ドデカバシ!そろそろフィニッシュです!」

『カバァ!』

 

ドデカバシのクチバシが赤く染まっていく。一体何が、と警戒するリーリエだが、第六感が早く止めなければと囁き、シロンに慌てて反撃の指示を出した。

 

「し、シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

 

シロンは急いで力を溜め込む。そして力を解き放ちドデカバシに向かって全力でムーンフォースを放った。

 

しかし対応が僅かに遅れてしまい、ドデカバシの攻撃準備も整い万全の様子。ドデカバシは次の瞬間、全力の一撃を解き放ったのである。

 

「ドデカバシ!くちばしキャノン、発射!」

『カァバアアアァァ!』

 

ドデカバシは発熱した大きなクチバシを開口し、次の瞬間に強力な一撃の光線を発射した。ドデカバシの専用技、くちばしキャノンだ。

 

くちばしキャノンはチャージを必要とするが、チャージ中に触れた相手を火傷状態にする追加効果を持っている。そしてチャージした強力な一撃を相手に叩きこむ技である。

 

くちばしキャノンの威力は非常に高い、そしてその使用者は四天王カヒリのパートナーだ。当然威力も凄まじく、ドデカバシの一撃は体力が落ちてしまっているシロンのムーンフォースをあっさりと打ち破り、シロンに接近する。

 

リーリエはシロンの名前を叫ぶが、シロンも体力がかなり厳しく、咄嗟に回避することができない。万事休すか、と思ったが、ドデカバシの攻撃は僅かにシロンから逸れ、直撃は免れた。

 

カヒリとドデカバシがわざと外れるようにしたのか、それともムーンフォースの一撃によって軌道が逸れたのか、どちらにせよ命拾いをしたシロンであった。

 

「……本日はここまでにしましょう。あなたのポケモンも、体力が限界に近いようですしね。」

 

カヒリのその言葉を聞き、リーリエは慌ててシロンに呼びかけ駆け寄った。

 

「シロン!大丈夫ですか?」

『コォン……』

 

座り込むシロンだが、リーリエに対して笑顔を向けていたため無事だと分かった。単純に緊張とバトルによる疲労が溜まっているだけのようである。

 

「リーリエさん、あなたのキュウコン、シロンでしたか。とてもよく育てられていますね。」

「あ、ありがとうございます。やっぱり四天王は強いですね。」

 

まったく歯が立たなかった、そう評したリーリエに、カヒリは苦笑いをし答えた。

 

「確かにバトルだけ見れば結果はあっさりとしているかもしれません。ですが、あなた方には可能性を感じる事ができました。」

「可能性、ですか?」

「ええ。バトルをしている最中、一瞬ですがまるでチャンピオン、シンジさんと戦っているように感じられましたから。」

「…………」

 

そう言われてリーリエはくすぐったいような、嬉しいような、不思議な感覚になったのである。憧れの人物に似ている、そのようなことを言われればそう感じるのも仕方ないだろう。

 

「今日はありがとうございました!いい経験になりました!」

「こちらこそ、ありがとうございます。私にとってもこれはいい経験になりましたし。」

 

そう言って互いに握手を交わし、その後カヒリが続けて口を開き言葉を続けた。

 

「良ければ私が次の島、ウラウラ島に送っていきますよ。今日バトルしてくれたお礼です。」

「そ、そんなお礼だなんて!悪いですよ!」

「元々は私からバトルを申し込む予定だったのです。それに、もう少しあなたともお話ししたいですし。」

「カヒリさん……」

「それと、今日は是非私たちのホテルで休んでいってください。大切なお客様として、精一杯おもてなしをさせてもらいますよ。」

「ホントに!?やったー!今日は豪華ホテルでお泊りだー!」

「おいおい、子どもみたいにはしゃぐなよ……。」

 

ホテルに泊まれると聞いてはしゃぐハウ、それに呆れるヨウ、いつもの光景にリーリエは笑みが零れた。

 

恐縮な気持ちはあるが、折角のカヒリからの好意を無下にすることはできない。リーリエたちは今日一日カヒリの実家であるホテルで休み、後日、カヒリのプライベートクルーザーで第三の島、ウラウラ島に向かうのであった。




原作本編でもカヒリさんの話もう少し広げて欲しかった。

グソクムシャの特性、交代先に素早さとかのバフが付いたら一気に強くなりそう。


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ウラウラ島上陸!かつてアローラを包んだ闇!

ポケモンたちかわいすぎ問題


四天王、カヒリに送られ、遂に第三の島であるウラウラ島に上陸したリーリエ。送ってくれたカヒリに感謝し、彼女とはすぐに分かれることとなった。なにせカヒリは四天王でありプロゴルファーでもある。彼女のスケジュールも忙しいのであろう。

 

ウラウラ島最初に上陸した街はマリエシティだ。ここはカントーに隣接したジョウト地方をモチーフとして出来た街で、観光地としても非常に有名な街である。野生のポケモンも生息し風情のあるマリエ庭園、カントー地方にあるジムをイメージしたジムオブカントー、アローラの歴史本が数多くあるマリエ図書館、と様々な施設がある。

 

更にウラウラ島にはアローラでも最も高いとされているラナキラマウンテンがそびえ立っている。そこは温暖なアローラで唯一の寒冷地であり、ポケモンリーグが設立された場所でもある。

 

すなわち、リーリエの最終目標地であり、島巡りのトレーナー全員が目指す夢の舞台が、このウラウラ島にあるのである。この島にくるだけで、不思議と緊張してしまうのは気のせいではないだろう。

 

しかし上陸して早々、ハウは観光及びマラサダを求めて駆け出して行った。ヨウはやれやれ、と半ば呆れながら自分も少し見て回るか、とリーリエに別れを告げた。ここからは彼らと別れ、再びリーリエの島巡りが再スタートする。

 

とは言えウラウラ島に到着したばかりでリーリエはどうしたらいいのか分からない。マリエシティを観光、と言っても2年前に軽くではあるが見て回ったので一人で歩き回るのは少し気乗りしない。ならば次の試練の場所の向かうべきだろうか?

 

そう考えたリーリエに、ロトム図鑑はある提案をする。それは「試しにマリエ図書館に立ち寄ってみてはどうロ?」というものであった。

 

確かに以前シンジと共にこの街に来た時もマリエ図書館へ立ち寄っていた。ほしぐものことについて調べるためだ。アローラの歴史が数多く眠るマリエ図書館。もしかしたらウルトラ調査隊のダルス、アマモたちが求めている情報が何かしらあるかもしれない。

 

そう考えたリーリエは早速マリエ図書館へと歩みを進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでどうしてマリエ図書館に行くだけで道を迷うロ?』

「うっ……そ、それは……」

 

ここでもリーリエの方向音痴が当たり前のように発動し、マリエ図書館に真っ直ぐ行ったつもりがマリエシティの先にある外れの岬に出てしまった。そしていざ戻ると、今度は何故かマリエ庭園まで戻ってしまい、ようやくマリエ図書館に辿り着いた、と思いきやジムオブカントーに入ってしまい恥ずかしい思いをしてしまうという、方向音痴にもほどがあると言わんばかりの様子であった。

 

『最初は行ったことある場所だから分かります、って自身満々だったのにロ……』

「そ、それを言わないで下さいよ!///」

 

初めに自分の言ったセリフを思い返し顔を赤くするリーリエ。気を取り直しマリエ図書館に入室する。

 

図書館というだけあり中は広く、本がたくさん並んでいる。当然殆どの人が本を読んでおり、非常に静かな空間がそこには広がっていた。

 

決して私語が厳禁、という場所ではないのだが、やはり興味のある本があるとどうしても集中してしまい、周りの事も見えなくなるのだろう。

 

しかしそんな中、リーリエの視界に見知った顔の人物が入ってきた。その人物は集中して本を読んでおり、リーリエの存在にも気付かない様子であったが、彼女が近付いて静かに声をかけると、読書を中断してリーリエの方へと振り向いた。

 

「お兄様?どうしてここに?」

「リーリエか。ここに来た、ということはグズマの試練も突破したのか。」

 

その人物とはリーリエの実の兄であるグラジオであった。リーリエは兄の質問に笑顔で頷いて答えた。グラジオもその回答には自然で笑みが浮かび嬉しそうな表情であった。

 

「俺は母さんに頼まれて調べ物をしていたんだ。」

「お母様から?」

 

リーリエの母でもあるルザミーネからの頼みで調べ物をしに来たというグラジオ。一体何を調べに来たのかというリーリエの質問に、グラジオは今読んでいる書物のあるページを指差した。

 

リーリエはその書物に目を通す。するとそこにはこの様に書かれていた

 

 

 

 

 

なにもない 空

突如として 穴が開き

一匹の獣 姿を見せる

太陽を 食らいし 獣と 呼ばれ

アローラの 王 歌う

 

太陽を 食らいし獣

獣 光り輝き

持てる すべての 力 放ち

島の守り神を 従える

 

太陽を 食らいし 獣

アローラの 王朝を

明るく 照らし

自然の 恵みを もたらす

 

太陽の獣 月の獣

交わり 新たな いのち よぶ

島の守り神

命 見守ると する……

 

アローラの 王朝

祭壇にて 二本の 笛を吹き

音色 捧げ

太陽の 獣 ソルガレオに

感謝の 気持ちを 表す

 

 

 

 

 

「お兄様、これって……」

「ああ、お前も知っていることだろう」

 

この書物にはリーリエも見覚えがある。2年前にシンジ、それからアセロラと共に調べた書物だ。

 

太陽を食らいし獣、ダルスの話では月を誘いし獣がルナアーラ、そしてそれの対となる存在こそがソルガレオ、つまりほしぐもだと。

 

この書物にはかつてアローラにて実際に起きた出来事が記録されている。本の内容を要約すると、かつて突然ウルトラホールが開き、ソルガレオがアローラに姿を現した。

 

太陽を食らいし獣、ソルガレオがアローラを光で照らし、恵みに光りをもたらした。そして島の守り神たちを従え、ルナアーラと共にアローラの命を見守る。

 

その栄光を称え、感謝の意味も込めて太陽の笛、月の笛を日輪の祭壇にて吹き、その音色をソルガレオに捧げた、ということだ。

 

つまり、かつてリーリエとシンジが行った出来事を、かつてのアローラでも行われた、ということである。

 

「お兄様が調べたい事というのは、このことですか?」

「確かにこの内容も興味深いものではあるが、これとはまた別にもう一つの本を見つけた」

 

グラジオが取り出したのもう一冊の本は、少し古びた本であった。サイズはそこまで厚くはないが、グラジオは軽く目を通したらしく、その中のある一文に注目した。

 

 

 

 

おおぞら より

ひかりのりゃくだつしゃ あらわれ

せかい やみに つつまれる

たいようを くらいし けもの うばい

たそがれの たてがみ となる

 

わかものと まもりがみ

いしを つかい ひかりを はなち

たいようを くらいし けものと

ひかりのりゃくだつしゃを わかちて

アローラの やみを おいはらう

 

 

 

 

そこにはそう綴られていた。

 

全て平仮名で、言葉も片言なため少々解読し辛いが、ここにはアローラでかつて起きたとある出来事の事を描かれているようである。

 

新たな単語、光の略奪者。リーリエに思い当たる節がない、わけではなかった。

 

「……かがやきさま」

 

リーリエはそうボソッと呟いた。グラジオはその単語に反応し思わず「知っているのか」と尋ねた。

 

「い、いえ、ただ、ウルトラ調査隊の人たちからチラリと聞いただけです。詳しいことは……」

「そうか……」

「もしかしてお兄様の調べたい事って」

 

グラジオはリーリエの言葉に頷いて答える。どうやら彼はアローラの歴史というよりも、かがやきさまに関しての情報を集めているようだ。

 

この本を見る限りでは、かつてアローラに現れたソルガレオと、光の略奪者、恐らくかがやきさまは何かしらの関連があるとみて間違いない。ここにかいてある“太陽を食らいし獣奪う”という一文を見れば分かるだろう。

 

若者、は恐らくかつてのポケモントレーナー、またはそれに近しい人物、そして守り神も共に登場している。そして石とその光は紛れもなくZクリスタルとZ技。最後には闇を追い払う、と記載されている。

 

この文章だけではイマイチ状況が掴めないが、リーリエはどこか嫌な予感を感じている。胸の奥に何かが刺さるような、ざわつきが収まらないのである。

 

「かがやきさま、か。」

 

グラジオはそう呟き本を抱える。

 

「取り敢えず俺はこれを借りて一度母さんに報告しに行く。もしかしたらエーテル財団で解読すれば、何かしらの情報が掴めるかもしれない。」

 

そう言ってグラジオはリーリエに背を向ける。しかし少し歩くと立ち止まり、口を開いてリーリエに尋ねた。

 

「……リーリエ」

「は、はい、どうかしましたか?」

「Z技、できるようになったか?」

「……はい、まだまだ未熟ですが、以前よりは形になったかと」

「……そうか」

 

リーリエの回答にグラジオは一言だけそう呟いた。そしてグラジオは再度口を開き……。

 

「……がんばれよ」

「お兄様……」

 

そう激励の言葉をかけグラジオはマリエ図書館を後にする。リーリエもその言葉を聞いて元気をもらうことができ、これなら次の試練にも迷いなく挑むことができると確信することができた。

 

光の略奪者、かがやきさま、そうしてダルスたちが暮らすもう一つの裏の世界。分からないことは多いが今は自分の出来ることをやるしかない。

 

試練を着実にこなしていき、トレーナーとしての実力を上げていく。そして、必ず約束の場所へと辿り着く。それこそが、今彼女が目指すべき目標なのだから。




今回出した本の内容はウルトラサンの殿堂入り後にマリエ図書館のアセロラちゃんに話しかけることで読めます


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ホクラニ天文台!目指せ約束の場所へ!

マーレインと戦わせようと思ったけど、結果会話パートになりました。


マリエシティに到着したリーリエは、折角ということでマリエ図書館へと立ち寄った。そこには兄であるグラジオの姿があり、2人で過去のアローラについて少しだけ知ることができた。

 

かがやきさまやアローラの訪れる災厄など、気になることも多々あるが、今自分に出来ることは島巡りを成功させることだと、リーリエはグラジオと別れて次なる目的地、試練の行われるホクラニ岳頂上にあるホクラニ天文台へと向かうことにした。

 

ホクラニ天文台へはどう行けばいいのかとロトム図鑑に尋ねるリーリエ。ロトム図鑑は『この先にもうすぐ来るバスに乗ればいいロ!』と返答する。どうやらホクラニ岳の道は険しく、歩いて登るのは少々厳しいらしい。リーリエはロトムの助言に従い、指定のバス停に到着し待機する。

 

暫くするとバス停に大型のバスがやってきた。天文台行き、ということもあり乗客はあまり乗っておらず、リーリエはすんなり座ることができた。リーリエは一番後ろの席に腰を下ろし、落ち着くことができると楽にする。バスが出発しようとしたとき、一人の少年が大声で走ってきたのであった。

 

「まってまってー!乗ります乗ります!」

 

少年の言葉が届き、バスは発車するのを一時停止する。それに安堵した少年は息を切らしバスへと乗り込む。その少年は小柄だが、少し小太りしている容姿であった。見た目通り体力はないようで、多くの汗を流して肩で息をしていた。

 

その少年が疲れた様子で後ろの席に座ると、リーリエは安心した少年に対して声をかけてみることにした。

 

「よかったですね、ギリギリで間に合って。」

「っ!?う、うん!」

 

その少年は体をビクッとさせてリーリエに返事をした。声が少し裏返っているところを見ると、どうやら彼は人見知りな性格のようである。

 

「す、すいません。話かけるのはマズかったですか?」

「い、いや、そんなことないよ!ただ、僕が人見知りなだけだから気にしないで。」

 

リーリエの謝罪に慌てて首を振り否定をする少年。リーリエに余計な気を使わせまいと言ってくれた言葉だろう。人見知りではあるが、心はとてもやさしい少年のようである。

 

「ところで、さ。君はホクラニ天文台に行くつもりなの?」

「はい、そうですけど。」

「ってことは、もしかして試練に挑戦するつもり?」

 

少年の問いかけにリーリエは頷いて返答する。少年は「やっぱり……」と少し俯き呟いた。その様子から察するに、おそらくとリーリエは少年に一つ問いかけてみた。

 

「もしかして……あなたがキャプテンの方、ですか?」

 

リーリエの問いに少年はドキッと体が跳ねる。「あはは、バレた?」と頭を掻きながら苦笑して肯定する。

 

「実はそうなんだよね。ホラ、一応UBの事件の時集会で集まった時にもいたんだけどね。」

 

そういえば、とリーリエはその時のことを思い出す。UBが出現した際、アローラのトレーナーたちがエーテルパラダイスへと招集された。その時集まったのはグズマやミヅキ達しまキング、しまクイーンを始めとした、各島のキャプテンたちである。

 

当然キャプテンであるマーマネもその場にいたのだが、その時は久しぶりに戻ってきたアローラ、そして緊急事態だということもあり、直接的な関りを持っていなかったこの少年のことには気付くことはなかったのである。

 

「す、すいません!失礼なことを言ってしまって。」

「いいよいいよ!そんなことは気にしてないから。」

 

そういった少年は、忘れてたと自己紹介を始める。

 

「僕はマーマネ。さっき言った通りホクラニ天文台でキャプテンを務めているんだ。」

「私はリーリエと言います。よろしくお願いします!マーマネさん!」

 

そう言って互いに挨拶を交わす。人見知りのマーマネではあるが、リーリエが優しく接しているからか、少しずつ緊張は解れてきた様子だ。リーリエには彼の表情が先ほどよりも柔らかく見えた。

 

「僕、ね。実はキャプテンって仕事、あんまり好きじゃないんだよね。」

「え?そうなんですか?」

 

意外だった。キャプテンと呼ばれる者たちは、全員が適正があるからや、好きだから、という理由で務めているのだと思っていた。中には推薦されているからという理由からキャプテンになったという話も聞くが、マーマネもその類なのかもしれない。

 

「僕、機械いじりや天体観測が好きでさ。よく天文台のマーさん……あっ、マーさんって言うのは僕の従兄弟で天文台の所長なんだけど、マーさんのところに遊びに行ってたんだよね。マーさんは優しくって、僕とよく遊んでくれてたんだけど、ある時次のキャプテンとして僕が指名されたんだ。」

 

そう言ってマーマネは当時のことを思い出しながら語り始める。リーリエも彼の話を静かに聞いていた。

 

「その時はマーさんに選んでもらえて僕はうれしかった。でもキャプテンとして働いている内に、好きな機械いじりや天体観測の時間がが減っていったんだ。それに僕ってほら、人見知りだからさ。知らない人と話すもの慣れてなくて。僕はそれが正直嫌だったんだ。」

「嫌、“だった”?」

 

リーリエはその言葉に意味が気になり復唱して尋ねる。するとマーマネは、先ほどまで少し暗い顔をしていたものの、次第に明るい表情になりリーリエに笑いながら答えた。

 

「うん、嫌だったんだ。“2年前まで”はね。」

「2年前……」

 

2年前。それを聞いてリーリエはハッとなった。2年前といったら忘れることはない、あの時の出来事なのだから。

 

「そう、2年前。現チャンピオン、シンジが挑戦しに来た時だよ。」

 

やっぱり、とリーリエが想像していたことをマーマネは口にしたのである。それから先はリーリエの想像通りの内容であった。

 

「あの時、彼のバトルを目の前で見たんだ。そしたら僕、なんだか不思議と感動しちゃってさ。戦い方がカッコよくて、綺麗で、何より楽しそうにしてた。目がすごくキラキラ輝いていたんだ。ただ純粋にポケモンたちとバトルを楽しんでるって言うのが伝わってきて、ポケモンたちとの深い繋がりが感じられて、自然と僕まで楽しくなってきちゃったんだ。見てるだけで楽しくなる、こんなバトルもあるんだなって思えたんだ。」

「今でもキャプテンの仕事のことを……?」

「おかげさまで、今はとても楽しくキャプテンやらせてもらっているよ。機械いじりとか天体観測はもちろん楽しいけど、色んなトレーナーのバトルを見るのも、とっても楽しいことなんだって思うことができるようになったから。」

 

一通りの出来事を話し終えたマーマネは、あっ、と口にした後申し訳なさそうに再び口を開いた。

 

「ご、ごめんね?こんなこと初対面の人に話すことじゃなかったよね。」

「いえ!しん……チャンピオンさんの話を聞くことができて嬉しかったです!」

 

リーリエはそう言ってマーマネに感謝する。マーマネも、なんだかスッキリした気持ちになり、最初の時に感じていた緊張も気づけばどこかに去ってしまっていた。

 

「だからさ……」

「?」

「リーリエも、チャンピオンに負けないくらいすごいバトル!試練で僕に見せてよ!」

「はい!もちろんです!」

 

マーマネ、そしてシンジの過去話ですっかり打ち解けた二人。そんな話を交わしていると、気付いた時にはホクラニ岳の頂上、ホクラニ天文台へと到着した。

 

ホクラニ天文台のバス停に停車し、リーリエたちはバスを降車する。そこで二人を待っていたのは、少し猫背で眼鏡をかけた優しそうな細身の男性であった。

 

「マーくん、お疲れ様。おや?この子は?」

「マーさん!この人はリーリエ!島巡りのトレーナーで、僕の試練に挑戦しにきたんだ。」

「初めまして、リーリエです!本日はよろしくお願いします!」

「リーリエ君……そうかい。僕はマーレイン。ここホクラニ天文台の所長を務めているよ。君のことは、ククイ君から聞いているよ。」

「ククイ博士から、ですか?」

 

マーレインの話によると、彼とククイは昔ながらの親友らしい。ククイはちょくちょくここに訪れるのだが、そのたびにリーリエやシンジ、注目するトレーナーたちの話を聞かせてくれるようである。博士であるククイにとって、才能あるトレーナーを見送るというのは生きがいにも等しいことなのかもしれない。

 

「さあマーくん。挑戦者を迎え入れる準備をしてくるといいよ。」

「うん!行ってくるよ!」

 

マーマネは元気よく返事をし、天文台の中へと入っていった。人見知りの彼でも、従兄弟であるマーレインに対しては心を開ききっているようである。

 

そんなマーマネを笑顔で見送ったマーレインは、さて、と言いリーリエの方へと向きなおした。

 

「リーリエ君、試練に挑戦する前に、こっちへ来てご覧。」

 

マーレインはリーリエにそう言うと、ホクラニ岳の端へと誘導した。リーリエも彼の誘導に従い同じ場所に立つ。

 

この日は綺麗な快晴で見晴らしがよく、景色がとてもよく見える。綺麗な景色に見とれるリーリエだが、その先には一際目立つ大きな山があった。

 

その山はこのホクラニ岳よりもさらに高くそびえ立っており、山の上は遠くからでもわかるくらい白い雪で積もっていた。その山を指さし、マーレインは口を開いた。

 

「あの山はアローラで最も高いといわれているラナキラマウンテン。そして、その頂上に設立されたのが、アローラポケモンリーグだよ。」

「アローラ……ポケモンリーグ……」

 

その言葉を聞いて、リーリエの内に緊張が走るのがわかる。手をギュッと握りしめ、喉をゴクリと鳴らした。

 

アローラポケモンリーグ。島巡りのトレーナーが目指すべき最終地点にして、アローラ最強のトレーナー、チャンピオンがいる場所。アローラ中のトレーナーが目指す場所。そして……リーリエにとって約束の場所である。

 

ラナキラマウンテンが目の前にある。届きそうな位置に存在している。遂にここまで来たのかという実感と、まだ遠くにあるのだと感じる不思議な気持ちがリーリエの脳内を巡る。

 

(シンジさんはアローラで最も高いところ、ラナキラマウンテンの頂上で待っています。あそこに辿りつくためには残り二つの大試練を突破する必要があります。まだまだ道のりはありますが、必ず辿り着いて見せます。待っていてください!シンジさん!)

 

高く高くそびえたつラナキラマウンテン、一層気が引き締まるリーリエ。約束の場所を目指して、もっともっとトレーナーとして精進しようと気持ちが高まった。

 

そんな彼女の顔を見たマーレインは、軽く微笑むと……。

 

「そろそろマーくんも準備を終えている頃だろう。さぁ、天文台の中に入ろうか。」

 

そう言ってマーレインはリーリエを天文台へと案内する。残る試練も後少し。約束の場所を目指し、リーリエの次なる試練が始まるのであった。




バルファルク復活おめでとおおおおおおおおおおおおお!!


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電気の試練!電撃弾けるトゲデマル!

最近ポケモン対戦以外頭が回らない
問題考えるのに一番手間取ったよ(割と適当に考えた)
因みにマーマネの試練はSMとUSUMを合わせたような試練にしました


3つ目の島、ウラウラ島にて試練が行われるホクラニ天文台へと訪れたリーリエ。道中のバス内で出会ったキャプテン、マーマネの試練の準備が出来たということなのでマーレインと共に天文台へと足を踏み入れる。

 

「さあ、ここだよ。マーくんも中にいるだろうから、早速入ろうか。」

 

マーレインに案内された一つの大きな扉。彼がその扉を開くと、パソコンを凝視して一生懸命タイピングしているマーマネの姿があった。

 

「マーくん、準備できたかい?」

「あっ、マーさん!それからリーリエも!準備バッチリだよ!」

 

そう言ってマーマネはパソコンを弄っていた手を止め、リーリエたちの方へと振り向く。

 

「えっと、それじゃあ僕の試練の説明、してもいい?」

 

マーマネの言葉にリーリエも「はい」っと言って頷く。彼女の肯定を確認したマーマネは説明を開始した。

 

そしてその姿を見て大丈夫だと判断したマーレインは、静かに部屋を立ち去り、後をマーマネに任せることにした。

 

「僕、マーマネの試練は、クイズ形式です。」

「クイズ……形式ですか?」

「うん。僕がいくつか用意した問題を解いてもらう知識力を試す試練。一つ解くごとに、ここのデンジムシたちが連結していくんだ。」

 

マーマネが指を指した場所を確認すると、テーブルの上に5匹のデンジムシスタンバイしていた。

 

「5匹のデンジムシが連結すると、この大きなクワガノンロボに電気が送電され、ぬしポケモンを呼び寄せる、っていうシステムになってるんだ。」

「なるほど。つまりクイズに5問正解すると、ぬしポケモンさんと戦うことができるってわけですね。」

「そう言うこと。クイズに関しては難しい問題にしているつもりはないから、気軽にやっても大丈夫だと思うよ。」

 

今までリーリエが挑戦してきた試練はそれぞれ異なる内容のものであったが、今回のもまた毛色の変わった内容であった。今回の試練は単純にトレーナーの知識を試すもの、といったところだろうか。

 

「じゃあ早速問題出すよ。」

 

マーマネはそう言いながらパソコンを弄り、用意していたスクリーンに問題を映し出す。

 

スクリーンに映し出されたポケモンはでんき・ゴーストタイプのロトムであった。マーマネは問題の内容を同時に読み上げる。

 

『問題。ロトムはフォルムチェンジすることができます。フォルムチェンジの種類は何種類?ただしポケデックスフォルムは除く。』

 

(ロトムさんのフォルムチェンジ……。ロトムさんは確か家具に入り込むことでフォルムを変えるポケモンさん。冷蔵庫、洗濯機、レンジ、芝刈り機、それからスピンロトムの5種類。つまり答えは……)

 

「答えは5種類です。フロストロトムさん、ウォッシュロトムさん、ヒートロトムさん、カットロトムさん、スピンロトムさんです。」

「さすが!正解です!それもそれぞれの正式名称も言ってくれて。」

 

リーリエは自分の答えがあっていたことに安堵する。本が好きということもあり知識はかなり蓄えている方ではあるが、それでもやはり試練となると少し不安な感情が出てきてしまう。

 

リーリエの問題が正解し、デンジムシが一匹電気元と連結する。これで一匹目である

 

「ではでは、すぐに次の問題に行くよ!」

 

最適な答えをしたリーリエに機嫌をよくしたマーマネが続いて次の問題をスクリーンに映す。

 

そこに映し出されたのはとても見覚えのあるポケモン3匹の姿と、一匹のポケモンのシルエット。マーマネがそのシルエットポケモンの名前と問題を読み上げる。

 

『問題。メレメレ島の守り神、カプ・コケコ。アーカラ島の守り神、カプ・テテフ。ポニ島の守り神、カプ・レヒレ。では、このウラウラ島の守り神の名前はなんでしょう?』

 

今度の問題はアローラに伝わる守り神たちの名前であった。アローラの人たちからしたら常識にも近い内容の問題だが、常識だからこそ重要なものもある。だからこの試練で再確認の意味を込めて問題を出しているのだろう。

 

「答えはもちろん、くさ・フェアリータイプのカプ・ブルルさんです!」

「正解!まぁこれは簡単な問題だったよね。」

 

ロトムの問題に関してはわからない人もいる可能性はあるが、守り神の問題をわからない人はそういないだろう。緊張からの緩和、ということなのかもしれない。

 

二体目のデンジムシが一匹目のデンジムシと連結する。電気の光が強くなり、これで問題の正解は二問目となった。

 

そしてマーマネは次々、と言わんばかりに素早くパソコンを操作していく。次にスクリーンに映し出されたのは、通常のロコンとリーリエもよく知っている、もう一つの姿をしたロコンであった。

 

『問題。姿、タイプなどの異なる二種類のポケモン。通常の姿と、もう一つはアローラの姿。またの名をなんという?』

 

通常の姿とアローラの姿をしている不思議なポケモン。リーリエのパートナーでもあるシロンもアローラの姿をしている。そのため、答えに辿り着くのは非常に容易であった。

 

「アローラの姿の別名、リージョンフォームですね。生息環境に応じて生態が変化したり、最適な環境だったりして姿が変わったポケモンのことです。」

「その通り!リージョンフォームって名前が出てこない人も多いんだけど、さすが勉強してるね。例えばナッシーなんかは、アローラの気候が最適だからあそこまで成長した、って言われているね。」

 

フォルムチェンジと混ざってしまいリージョンフォルム、と間違えてしまう人もいるらしい。名前としては非常に紛らわしいので仕方ないのかもしれないが。

 

三匹目のデンジムシが二匹目に連結し三匹が連なる。電気の勢いも増してきて、残りは早くも二問となった。

 

次の問題は今までと少し違い、シルエットや画像などではなく、一つの映像が流れた。数体のポケモンが光に包まれ、姿が変わっている映像が映っていた。

 

『問題。バトル中にポケモンの姿、能力が変化する特別な現象、メガシンカ。メガシンカに必要なものはトレーナーが身に着けるキーストーン、そしてポケモンに身に着ける何が必要?』

 

次に出題されたのはメガシンカに関する問題であった。メガシンカは主にカロス地方が発祥の地とされていて、ここアローラ地方でも目撃されているもののあまり記録としては残っていない。

 

それゆえこの問題は島巡りのトレーナーにとっては少々難しいものになるかもしれないが、リーリエは違う。以前カントー地方にて実際にメガシンカポケモンと対峙したことがある。当然メガシンカ相手だったため強敵ではあったが、それ故に記憶にも鮮明に焼き付いている。

 

だからこそ、リーリエにとってこの問題は難しくないものであった。

 

「ポケモンさんに見に着けさせるもの……それはメガストーンです。キーストーンとメガストーンが揃うことで、初めてポケモンさんをメガシンカさせることができます。」

「正解だよ!デンリュウの場合はデンリュウナイト、メタグロスの場合はメタグロスナイトと言ったように、メガストーンとトレーナーの持つキーストーンが共鳴してメガシンカをすることができるんだ。」

 

そこにマーマネは補足を入れ、トレーナーとの絆が足りないメガシンカでは、ポケモンが暴走してしまう例もあるらしい。メガシンカに必要なのはメガストーンとキーストーンに加え、ポケモンの絆が必要不可欠なのだと。リーリエはその話を聞き、やはり人間とポケモンの関係は非常に奥深いものなのだと改めて感じさせられたのであった。

 

4問目の問題が正解し、4匹目のデンジムシが電気を伝えるために連結する。これで残る問題は後一問。

 

「さて、次が最終問題なんだけど……」

 

最終問題に差し掛かるにあたって、マーマネが次の問題についてあることを口にする。

 

「次は問題というよりも質問なんだ。だから明確な答えはないんだけど……どんな回答であっても正解になるから、リーリエなりの答えを聞かせてよ。」

「マーマネさん……」

 

マーマネの言葉にリーリエはゆっくりと頷いた。マーマネはリーリエの返答を確認すると、最後の問題の内容を口にする。

 

『あなたにとって、Z技とはなに?』

 

最終問題の内容とは至ってシンプルだった。しかし、答えるのには難しい内容でもある。

 

アローラの島巡りトレーナーにとってとても重要な技であるZ技。非常に強力な反面、ポケモンやトレーナーにかかる負担、反動も大きいものとなってしまう。それは技の威力が上がれば上がるほどより大きいものとなる。

 

しかしZ技を使うには当然条件がある。メガシンカと同様、ZクリスタルとZリングがセットで必要という点だ。それでも誰でも使うことができるというわけでもなく、島巡りでの経験、修練が必要なのである。

 

Z技の難しさをポケモンZキャンプにてリーリエは学んだ。チャンピオンであるシンジに直接教わったあの経験を、リーリエは忘れることはない。アローラのトレーナーにとって、あの授業は非常に有意義で、それぞれの考えを持つことができた出来事なのだろう。

 

リーリエは考える素振りを見せることなく、自分のZリングを見つめて自分の考えを口にした。

 

「……自分たちの成長の証、それとポケモンさん達との絆の結晶、ですかね。」

 

今まで歩いてきた道のりの全て、それがZ技にこもっている。カントーを旅していたリーリエにとって、それはジムバッジにも近いものであった。

 

ポケモン達との今まで歩んできた歴史、成長、旅の記憶、それら全てを込めて、自分たちの全力を解き放つ。それこそがZ技なのだとリーリエは話した。

 

「ははは、なんて、少しくさいセリフでしたね///」

「……いや、そこまで考えてるなんてすごいよ。おめでとう!試練第一段階は合格です!」

 

マーマネは全問正解したリーリエに拍手を送る。それと同時に最後のデンジムシが直列に連結した。それにより電気がクワガノンの装置に集中して伝わっていく。

 

クワガノンの上部に表示されているゲージがみるみると上がっていき、あっさりとMAX地点へと到達する。そしてクワガノン装置から電気が徐々に迸っていった。

 

暫く待ってみると、どこからともなく「ドスンッドスンッ」と地響きに近い音がする。何の音だろうかと見渡すと、クワガノン装置の上には電気を溜め込んだ巨大なトゲデマルがこちらを見下ろしていた。あの大きさは紛れもなくぬしポケモンの姿であった。

 

リーリエは身構えモンスターボールを構えて臨戦態勢をとる。バトルの意思を察知したのか、トゲデマルは上部の足場から飛び降り、リーリエの前に立ちふさがった。トゲデマルは光のオーラを纏い威圧感を放っている。

 

『キュッキュ!』

「っ!?お願いします!フシギソウさん!チラチーノさん!」

『ソウソウ!』

『チラッチ!』

 

リーリエが出したのはフシギソウとチラチーノであった。トゲデマルのタイプはでんき・はがねタイプ。こおりタイプのシロン、みずタイプのマリルでは相性が悪いため、この組み合わせで選出するしかないと考えたのだろう。

 

「フシギソウさんははっぱカッター!チラチーノさんはスピードスターです!」

 

フシギソウのはっぱカッター、チラチーノのスピードスターで攻撃を仕掛ける。先ずは手堅く遠距離攻撃で様子見と、セオリー通りに攻めていくつもりだ。

 

『キュキュ!』

 

トゲデマルは自身の身に電気を纏いその場で体を回転させる。トゲデマルの得意技、びりびりちくちくだ。びりびりちくちくは、フシギソウとチラチーノの攻撃をいとも容易くい焼き払って防御する。

 

「チラチーノさん!あなをほるです!フシギソウさんはエナジーボールで援護を!」

『チラ!』

『ソウソウ!』

 

チラチーノはあなをほるで地中から攻撃を仕掛けようとする。隙を作るためにトゲデマルの気を引くためエナジーボールで連続攻撃をする。

 

『キュ!』

 

対するトゲデマルは身を固め体の棘を突き出し防御の態勢に入る。守ると同様の防御技、ニードルガードである。

 

ニードルガードはフシギソウの攻撃を防ぐが、連続で使用してしまうと失敗してしまうリスクもある。敗れるのも時間の問題である。

 

そしてあなをほるで接近していたチラチーノが姿を現そうとした。しかし次の瞬間、トゲデマルに変化が起きたのである。

 

『マキュ!』

 

なんとトゲデマルの体が宙に浮いたのである。チラチーノはトゲデマルの足元から攻撃を仕掛けるが、その攻撃は空振りに終わった。

 

トゲデマルには周囲の電気が集中し、その磁場の力により体が宙に浮いたのである。地面技を無効化する技、でんじふゆうである。通常よりサイズが大きく体重も思いトゲデマルだが、現在この室内には電気が集中しているためトゲデマルの体も強力な磁場により宙に浮いた、というわけだ。

 

あなをほるは地面タイプの技。でんきタイプに合わせてはがねタイプを持つトゲデマルに対して地面技は非常に有効だが、トゲデマルにとって有利なフィールドで対策も講じられている。やはり試練は一筋縄ではいかないようだ。

 

「ですが、まだまだ手は……っ!?」

 

『キュキュッ!マキュキュ!』

 

まだまだこれから、そう思った矢先にトゲデマルが咆哮する。それと同時にデンジムシたちが動き始め、トゲデマルの周囲に集まり、トゲデマルに電気を送った。

 

デンジムシの特性はバッテリー。別のポケモンの特殊技の威力を上げる特性だ。その特性により、トゲデマルの体内に強力な電気が溜め込まれていくのが分かる。

 

「っ!?流石にこのままでは……。」

 

非常にマズい状況だと悟るリーリエ。エネルギーが溜め込まれた一撃を放たれてばこちらにとっても一溜りもない。そんな時、フシギソウがリーリエの方へと顔を向け頷いた。その時、フシギソウの背中が光り輝いていたのが見えた。

 

それを見たリーリエは、その光がなんなのかを悟った。このタイミングでその光、完璧なタイミングであった。

 

「フシギソウさん!ソーラービームスタンバイです!」

『ソウ!』

 

フシギソウは体の中心に力を溜め込む。フシギソウはくさタイプ最強クラスの技、ソーラービームを覚えたのだ。

 

しかしソーラービームには大きな欠点があり、一撃を放つのにチャージが必要なのだ。それゆえ、その間は無防備となってしまう。

 

しかもここは室内。太陽の光もないため、通常よりもチャージに時間がかかってしまうだろう。

 

「チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

だからこそ、その間チラチーノと一緒にフシギソウを守るのだと顔を合わせる。

 

トゲデマルのチャージが終わり、強力な電気が迫ってくる。この攻撃に対抗するには、やはりあの技しかないのだとポーズの構えに入った。

 

「行きますよ!チラチーノさん!」

『チラッチ!』

「私たちの全力、この技に込めます!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕たちの全力、この技に込める!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーリエの瞳、それにこのセリフ……とっても似てるね。あの人に」

 

リーリエはノーマルZのポーズをとる。Zリングから光がチラチーノに集約し、その力を一点に集中して電気に向かい突撃する。

 

 

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

 

ノーマルタイプのZ技、ウルトラダッシュアタックが発動し、トゲデマルの強力な電撃とぶつかりあった。チラチーノのZ技は強力だが、デンジムシの力を借りたトゲデマルの電撃もまた強力。

 

徐々に徐々に押されてしまい、チラチーノは少しずつ後退してしまう。このままではジリ貧となり、いずれチラチーノとフシギソウは共にやられてしまうだろう。

 

そんな時、フシギソウが一瞬だけリーリエの方へと振り向き、チャージが終わった合図をする。それを確認したリーリエは、遂にその合図を出したのであった。

 

「ソーラービーム!発射です!」

『ソウソウッ!ソウ!』

 

フシギソウは最大の力を解き放ち、ソーラービームを放った。ソーラービームを確認したチラチーノは、お得意の柔軟さとコーティングを利用してすぐさま回避する。チラチーノのZ技と競り合っていたトゲデマルの電撃は先ほどよりも威力を落としていて、勢いも失っていた。

 

『キュ!?』

 

フシギソウのソーラービームはトゲデマルの電撃を切り裂き、一直線にトゲデマルへと向かっていく。トゲデマルは慌ててニードルガードで防ごうとするが間に合わず、ソーラービームの光に包まれた。

 

大きな衝撃が響き渡る。チラチーノとフシギソウ、リーリエに緊張が走る。互いに全力の技を放ったため体力を大きく消耗していた。もしこれで倒れなかった場合、これ以上の戦いは厳しくなる。

 

しかしそんな心配も杞憂に終わり、トゲデマルは衝撃が晴れると共に目を回して倒れていた。今の一撃で戦闘不能になったようだ。

 

この戦いはリーリエたちの勝利。つまり、マーマネの試練は突破したというわけだ。その事実にリーリエ、チラチーノ、フシギソウは喜びを分かち合った。

 

「おめでとうリーリエ!僕の自慢のトゲデマルがこんな形で負けるなんて思わなかったよ!」

「ありがとうございます!マーマネさん!」

「それにしても、やっぱり君って似てるよね。そっくりだよ。」

「えっ?なにとですか?」

 

理解していないリーリエに、マーマネは何でもないと言って誤魔化した。未だに首を傾げるリーリエに、試練突破の証を差し出した。

 

「これ、でんきタイプのZクリスタル。僕の試練を突破した証だよ!」

「ありがとうございます、マーマネさん!」

「それとこれ、マーさんからはがねタイプのZクリスタルも上げる。」

「え?い、いいんですか?」

 

リーリエの問いに頷いて答えたマーマネ。彼によるとかつてマーレインは鋼タイプのキャプテンを務めており、マーマネの試練を突破したトレーナーにはもれなくハガネZも渡しているのだそうだ。

 

リーリエはそう言うことなら、とマーマネから二つのZクリスタルを受け取る。

 

「デンキZとハガネZ!ゲットです!」

『チラッチ!』

『ソウ!』

 

試練を無事突破し、フシギソウは新たな技を習得することができた。これもまた、リーリエとポケモン達が培った絆の証である。

 

マーマネの試練を突破し、彼にお礼を言って別れを告げる。次なる試練へと向かい、リーリエは再び歩き出した。

 

彼女の島巡りもいよいよ折り返し地点。リーリエの島巡りは、まだまだ続くのだ!




ドサイドンに対してHBファイヤー後出しして勝てるんやなって。これはサンダーに無い大きな利点よね。

メタグロスとポリゴン2の色違い厳選できました


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ピッピの看病、リーリエ頑張ります!

最近中々日常ネタが思いつかなくて困ってます。いっその事挟まずに島巡りを進行させるのも手ですけど……


私、リーリエはウラウラ島の試練であるマーマネさんの試練を無地突破することができ、一度マリエシティに戻っている最中です。

 

その道中、お昼時になったので自分のポケモンさんたちはモンスターボールから出し、お昼の時間にすることにしました。

 

いつも私がお昼の準備を始めると、皆さん率先して準備を手伝ってくれます。お皿を並べてくれたり、軽く飾りつけをしてくれたりと、みんなでお昼を彩るのは私にとっても非常に楽しい時間です。

 

とは言え皆さんはポケモンフーズで、用意するお昼ご飯は私のみなので基本的には簡単なものを用意します。なのでそれほどお昼に手間と時間をかけることはありません。

 

私は手早くご飯の準備をすると、皆さんの分のご飯を分け、私も席についていただきますをすることにしました。

 

皆さんが美味しそうにポケモンフーズを食べてくれるのを見ると私も嬉しくなり、安心して自分もお昼ご飯を食べることができました。今日の出来も中々良いと自画自賛しながらも、お昼を食べ終えました。と言ってもまだまだシンジさんには程遠い腕前ですけど。

 

私がご飯を食べ終えると、丁度皆さんも食べ終えるタイミングでした。しかしその様子を見て、私は一つ明らかに可笑しいと感じる事がありました。

 

それはピッピさんの皿のポケモンフーズがあまり減っていないことでした。ピッピさんは食欲旺盛で、見た目は小さいながらも私のポケモンさんたちの中では一番食事をとる子です。多く盛り付けても食べるスピードがとても速いので、これは変だと思いピッピさんの元へと歩み寄りました。

 

「ピッピさん、どうかしたんですか?」

『ピィ……』

 

ピッピさんに話しかけても、俯いたまま元気がありません。普段は好奇心も旺盛で非常に元気があり、正直手を焼くことが多い子なので、明らかに様子が違います。

 

「ピッピさん、少し失礼しますね。」

 

私は恐る恐る手をピッピさんの額に触れました。すると嫌な予想は当たってしまい、ピッピさんの額から熱を感じてしまいました。間違いなくピッピさんは風邪を引いてしまっています。

 

「大変です!ロトム図鑑さん、この近くにポケモンセンターは!?」

『検索したけロ、近くにポケモンセンターはないロ』

「そ、そんな……」

 

緊急事態時にポケモンセンターがないと聞いて私はどうするべきかと焦ってしまいまいます。こういう状況になったことがないので、全く気持ちが落ち着きません。

 

そんな私に、ロトム図鑑さんが声をかけてきてくれました。

 

『しっかりするロ!リーリエが焦るとポケモンたちも心配するロ。見たところ症状は酷くないロから、冷静に適切な処置をすれば大丈夫だロ。』

「ロトム図鑑さん……」

 

私はロトム図鑑さんの言葉を聞いて自分のポケモンさんたちを見渡します。シロンにフシギソウさん、マリルさんとチラチーノさんもこちらを不安そうに見つめてきていました。

 

そうですよね。こんな時だからこそ、私がしっかりしないといけないですよね。

 

ピッピさんのために、と私は意を決し頬を2回程たたいて気合を入れなおしました。

 

「がんばリーリエ、です」

 

私はそう口にしながらピッピさんの頭を優しく撫で、早速行動に移ります。

 

ひとまずピッピさんの体を休ませるために布団を敷いてその上にゆっくりと寝かせます。ピッピさんが肩で息をしているところを見ると、体が疲労しているのが伝わります。見てるだけで心が苦しくなってしまいます。

 

(えっと……こういう時は確か……)

 

私は小さい頃の記憶を思い出します。私が熱を出した時、お母様が看病してくれたことがありました。かなり昔のことですが、その時のことは私の記憶の片隅に残っていました。

 

熱で体が熱くなっているのでまずは体を冷やす必要があります。幸いにも近くに川があったので、バケツに冷たい水を汲んできました。

 

私はタオルを水で濡らし、ピッピさんの額に優しく乗せました。余程体温が熱かったのか、ピッピさんは少しだけ表情が柔らかくなりました。

 

(次は……)

「コォン」

 

次はどうするべきかと考えます。するとその時、シロンが私に声をかけてきました。どうしたのかと尋ねると、シロンはバケツの方に目を向けました。その様子をみて私はシロンが何を言いたいのかが分かりました。

 

「……!?分かりました!シロン!バケツの水にれいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンはバケツの水をれいとうビームで凍らせてくれました。しかしそれだけでは全ての水が凍っただけなのでサイズが大きすぎます。なのでここは!

 

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

『ソウ!』

 

フシギソウさんははっぱカッターで凍った水を細かくサイコロ型に刻んでくれました。これでこの氷も扱いやすくなります。

 

私は氷を別のタオルで包み、枕代わりにピッピさんの下に敷きました。よく見るとピッピさんは熱で汗をかいていたので濡らしたタオルで汗を拭ってあげました。

 

『ピィ……♪』

 

さっきに比べればピッピさんも落ち着いてきたようです。表情も柔らかくなり少しですが笑顔が戻ってきました。

 

『チラチ♪』

「チラチーノさん?」

 

ピッピさんの笑顔を見たチラチーノさんは、ピッピさんの横に寝転がり、自分の柔らかい尻尾を布団代わりにして乗せてくれました。ピッピさんも気持ちよさそうにして安心した顔になりました。

 

「ありがとうございます、チラチーノさん」

『チラッ♪』

『リルリル!』

 

私がチラチーノさんに感謝すると、マリルさんが私の手を引っ張ってきました。どうやら自分も何かお手伝いがしたい、と言っているようです。

 

とは言えこれ以上何を頼もうか、と私が考えていると、ロトム図鑑さんがとある提案をしてくれました。

 

『熱で風邪を引いたポケモンにはオレンのみと火傷に効くチーゴのみを粉末状にしてポケモンフーズに混ぜると効果があるらしいロ!』

「チーゴのみ、ですか。」

 

オレンのみはまだストックがありますが、チーゴのみは持っていないですね。でしたらここはマリルさんにお願いしましょう。

 

「マリルさん、このチーゴのみを探してきてくれますか?」

『リルル?』

 

私はロトム図鑑さんに表示されたチーゴのみの画像をマリルさんに見せました。するとマリルさんは強く頷いて「任せて!」というような表情で探しに行ってくれました。

 

「フシギソウさんもマリルさんに付いていってあげてくれますか?」

『ソウソウ』

 

私の言葉に頷いてフシギソウさんはマリルさんの後を付いていきました。面倒見のいいフシギソウさんが一緒なら問題ないでしょう。

 

「あっ、また汗かいてますね。」

 

気付けばピッピさんがまた汗をかいていたので、タオルで汗を拭います。その様子を見たシロンは、ヒンヤリとした尻尾で軽くピッピさんに触れてあげました。

 

「シロンも、ありがとうございます。」

『コォン』

 

みんながピッピさんの為にと自分から積極的に動いてくれるのが嬉しくて、私は思わず笑みが零れました。

 

ピッピさんの面倒を見ながら暫く待つと、マリルさんとフシギソウさんが戻ってきました。マリルさんの手には間違いなくチーゴのみが握られていました。どうやら無事近くで見つけることができました。

 

「マリルさん、フシギソウさんもありがとうございます」

『リル♪』

『ソウ』

 

私はマリルさんからチーゴのみを受け取り、2人の頭を撫でてあげました。フシギソウさんは恥ずかしそうにしていましたが、マリルさんは嬉しそうに声を出しながら喜んでくれました。

 

私は早速オレンのみとチーゴのみをすり潰し、それをピッピさんのポケモンフーズに振りかけました。

 

「ピッピさん、少しだけいいので食べられますか?」

『ピィ……?』

 

私は一粒だけピッピさんの口元に持っていきました。ピッピさんは目を開けてポケモンフーズを口に入れてくれました。

 

『ピィ……♪』

 

ピッピさんは笑顔でそのポケモンフーズを食べてくれました。

 

「ここに置いておくので、調子がよくなったら食べてくださいね」

 

私はピッピさんの横にポケモンフーズを置きました。今無理やり食べさせるよりも、ピッピさんの体調がよくなってから自分のペースで食べて貰う方がいいでしょう。

 

そして少し元気を取り戻したピッピさんの様子に安心した私は、気付かぬうちに自分のポケモンさんたちと一緒にピッピさんの傍で一緒に眠ってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日一日を私とポケモンさんたちは野宿して過ごし目を覚ましました。眠気で目を擦り、徐々に頭が覚醒していくとハッとなって、ピッピさんはどうなったのかと心配になりピッピさんの姿を確認します。

 

しかし布団の上にはピッピさんの姿はなく、チラチーノさんが眠っているだけでした。どこに行ったのかと辺りを見渡してみると、少し離れた場所で見覚えのあるピンク色の背中が見えました。明らかにそれはピッピさんの姿でした。

 

「ピッピさん?」

『ピィ?』

 

私の声に反応したピッピさんがこちらへと振り返りました。ピッピさんは先日までの体調不良の様子は見受けられず、ピッピさん用に用意したポケモンフーズを食べていました。それもどうやら完食したようで、満面の笑みでこっちに歩み寄ってきました。

 

「もう、ピッピさん、姿が見えないから心配したんですよ?」

『ピッピ♪』

 

小走りで走ってくるピッピさんを受け止めると、ピッピさんは嬉しそうに微笑んでいました。昨日まであれだけ辛そうだったのに、一日だけで風邪が治ってしまうとは驚きです。

 

ですがピッピさんの風邪が長引くことがなくて安心しました。私はその結末に安堵し、ピッピさんの頭を撫でました。

 

ですが風邪が治った反動か、すぐに色んな所へと走りだしてしまいます。元気になったのはいいことですが、毎回好奇心旺盛なピッピさんを止めるのは少し疲れてしまいます。その度にフシギソウさんの力を借りることになるのですが、それでもそんな当たり前の日常が私にとってはとても充実したものに感じる事ができるので内心とても嬉しいです。




ポケモンUNITEテストプレイ配信中!


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シンジVSグズマ!マリエ庭園での戦い!

ポケモンUNITE神ゲーすぎた配信楽しみ

今回はタイトル通りシンジとグズマの過去の戦いです。もう少し簡単に終わらせようと思ったら長くなってしまったの


マーマネさんの試練を突破したリーリエは、マリエシティへと戻ってきた。

 

リーリエがマリエシティに戻ってくると、見覚えのある人物の姿が見えた。不意に振り向いたその人物がリーリエに気付くと、手を振りながら走って近づき抱き着いてきた。

 

「リーリエー!久しぶりー!」

「ひゃう!?み、ミヅキさん……く、苦しいです……。」

 

リーリエに抱き着いてきたのは、現メレメレ島のしまクイーンを務めているミヅキだった。どちらかと言うと今はリーリエの友達、としての触れ合いではあるが。

 

「ごめんごめん、リーリエと会えて嬉しかったからつい。」

「私も嬉しいですけど……どうしてミヅキさんはウラウラ島に?」

「実はしまキングとしまクイーンの招集があってね。まあ招集というよりも定期報告みたいなものだけどね。」

 

ここ、ウラウラ島にはアローラのポケモンリーグが存在している。各島の状況を把握しきることは流石にできない。なのでそれぞれの島を管理するしまキング、しまクイーンが定期的に報告を行うようだ。

 

特に以前UB襲来の件もある。もし何か異変があれば早急に対応する必要がある。こればかりはアローラ全体に関わることなので仕方がない。

 

と言っても、ウラウラ島のしまキングであるクチナシだけは毎回参加を拒否しているそうだが。

 

「あっ!そうだ!リーリエ!」

「え?な、なんですか?」

「折角だからさ、マリエ庭園の団子屋さんで一緒に団子食べない?マリエシティに来たら毎回寄るんだよねぇ。」

「お団子、ですか?」

 

そう言えば自分は以前訪れた際も団子屋どころかマリエ庭園にすら立ち寄ることがなかった、と思い返す。しかし記憶を思い返してみても、そもそも団子を食べたことすら無かった気さえする。

 

現状特に慌てて先を目指す必要もないので、ここは一つミヅキの案に乗っかり、リーリエは団子屋に立ち寄ることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエとミヅキが団子屋で注文を済ませ、暫く待つと数本の三色団子が運ばれてきた。

 

「ここの団子、すっごく美味しいんだ!私も、それからククイ博士もお気に入りなんだよ♪」

「ククイ博士も?そんなに美味しいんですね。」

 

そんな話を聞いてリーリエは楽しみにしながら「いただきます」、と手を合わせて串に刺された団子を口に持っていく。

 

「あっ、これすごく美味しいです!」

「そうでしょ?よかった、リーリエも喜んでくれて!」

 

ミヅキもそう言いながら自分もと団子を口にする。一緒に出されたお茶も飲みながら、2人は疲れを癒しつつまったりと過ごす。

 

「それにしてもここ、なんだか懐かしいなぁ。」

「懐かしい、ですか?」

 

ふと呟いたミヅキの一言が気になり問いかけるリーリエ。ミヅキはそんな彼女の言葉に頷いて、言葉を続けた。

 

「うん、2年前に私が島巡りをしていた時、シンジ君ともここに来たんだ。」

「シンジさんと?」

 

リーリエは彼の名前を聞き、折角なので聞かせてほしいとミヅキに頼む。ミヅキは快くいいよ、と言うと、団子とお茶を食しながら少し昔の話を懐かしみながら語り始めるのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、シンジ君もうウラウラ島の試練一つ突破したんだ。」

「うん、と言ってもかなり苦戦したけどね。」

 

ククイに呼ばれ再びマリエシティに戻ってきたシンジ。同じくククイに呼ばれたミヅキと合流し、互いの近況報告をしながらククイの元へと向かう。

 

2人はククイと集合の約束していた場所、マリエ庭園まで足を運ぶ。しかしそこにはククイではなく、見覚えのあるドクロマークが背中に描かれている服を着た男が、マリエ庭園の橋の上に立っていた。

 

「っ!?あの人……」

「?ミヅキ?」

 

その人物の背中を見た瞬間、ミヅキの顔色が変化し表情が硬直する。シンジはどうしたのかと尋ねようとすると、その男がこちらに振り向き見据えてニヤリと口を歪ませた。

 

「ふん、ミヅキじゃねぇか。相変わらずのマヌケ面だな。」

「グズマさん……」

 

ミヅキはそう一言呟いた。どうやら彼の名前はグズマというらしく、ミヅキの知り合いでもあるらしい。様子が変だと感じたシンジはミヅキとグズマの関係を尋ねると、そのタイミングで二人の背後から男性の声が聞こえた。

 

「彼はグズマ、以前はハラさんの弟子だったけど、今はスカル団のボスをしている男だよ。」

「ちっ、ククイか。」

「久しぶりだね、グズマ。」

 

背後からやってきたのは会う約束をしていたククイであった。ミヅキはしまキングであるハラの孫、その元弟子であったのならばミヅキと知り合いでもおかしくはない。

 

しかし二人のぎこちない会話を見ていると、ミヅキは少しグズマに苦手意識を持っているようだ。シンジはそんな彼女に助け船を出す形で、ククイにあることを尋ねた。

 

「ククイ博士、今日はどうして僕たちを呼んだんですか?」

「……実はね、シンジ。キミにグズマとバトルをして欲しいんだ。」

 

驚きの内容にシンジとミヅキは目を見開く。当のグズマはふんっ、と鼻を鳴らしながら口を開いた。

 

「そんなこったろうと思った。なんで俺様がこんな野郎と……。」

「シンジが最近スカル団の団員たちを倒している、と言ったら?」

「あん?」

 

ククイの意図が読めず、シンジは首を傾げる。そんな彼に、ククイはグズマに聞こえない声でシンジに話をする。

 

「グズマはハラさんの思想と対立してハラさんの元を離れ、スカル団をつくったんだ。でも彼もポケモンが好きで、一人前の腕があるポケモントレーナー。ぼくはそんな彼をもう一度こっちの世界に戻したいんだ。だから、キミと戦うことで彼も……なんて希望を持ってしまったんだ。」

「ククイ博士……。」

「勝手なお願いだけど、彼みたいな腕前のトレーナーを廃らせてしまうのはもったいない。だからこそシンジ、キミの様なトレーナーと戦う事で何か感じるものがあるんじゃないかってね。」

「……分かりました。あの人の気持ちを変えられるかは分かりませんが、ククイ博士がそう言うのなら、僕は僕のバトルで全力で戦います。」

 

ククイの話と事情を聞いてシンジは承諾する。ククイはそんなシンジに感謝して激励の言葉を送った。

 

しかしミヅキはというと、いつもとは様子が違い慌ててシンジの腕を掴んで制止した。

 

「シンジ君待って!」

「ミヅキ?」

「グズマさんのバトルは普通の人とは違うの!それに実力も桁違い……危険すぎるよ!」

 

いつもと様子が違うミヅキの反応に思わず困惑するシンジ。しかしその後、ミヅキの頭を撫でて彼女の気持ちを落ち着かせる。

 

「大丈夫だよ。ただ、僕は自分のバトルをするだけだから。」

 

そう言ってシンジはミヅキを安心させてから前に出る。と言っても、ミヅキはシンジの強さを知っているが、同時にグズマの強さ、そして恐怖も知ってしまっている。それ故にミヅキの不安が完全に晴れることはなかった。

 

シンジが前に出ると、グズマも彼の姿を目に留める。

 

「お前がククイのお気に入りか。ふんっ、ただのガキにしか見えないがな。」

「ただのガキかどうか、やってみれば分かりますよ、グズマさん。」

 

シンジの返答にはんっ、と鼻を鳴らし笑い飛ばすグズマ。そしてグズマはモンスターボールを手に取り、シンジの顔を睨みつける。

 

「面白れぇこと言うじゃねぇか。じゃあ望み通り、てめぇのポケモンごとぶっ壊してやる!」

 

そしてグズマは一呼吸おくと……

 

「破壊という言葉が人の形をしているのがこのオレさまグズマだぜえ!」

 

グズマは大声でそう怒鳴りつけると、自分のパートナーポケモンの入ったモンスターボールを投げる。

 

「いけえ!グソクムシャア!」

『ムッシャ!』

 

グズマが繰り出したのはそうこうポケモンであるグソクムシャだ。

 

大きい腕に鋭いツメ、ダイヤモンドの様に強固なカラを纏った体、相手を怯ませるほどの威圧感を放つ眼光。向かい合うだけでとてつもなく強いというのが伝わってくる。

 

「じゃあ僕は……」

 

そう言ったところでシンジのモンスターボールが一つだけ揺れる。モンスターボールの様子からポケモンの考えがシンジに伝わり、シンジはその意図を受け取り揺れたモンスターボールを手に取った。

 

「……そう言うことなら君に任せるよ。お願い!リーフィア!」

『リーフ!』

 

シンジが繰り出したのはくさタイプのリーフィアだった。そのリーフィアを見たグズマは顔をしかめ、はっと笑う。

 

「むしタイプにくさタイプを出すとはな。何考えてんだ?」

「リーフィアが戦うって言ったんだ。だったら僕はその気持ちに応えるだけだよ。」

「あんっ?そんな理由でか?」

 

グズマの言う通り、むしタイプであるグソクムシャに対してくさタイプであるリーフィアの相性は悪い。そんなことはシンジも当然承知だ。

 

しかしリーフィアは自分が戦いたいとモンスターボール越しにシンジに伝えた。どんな状況であれシンジはポケモンの意思を無視することは出来ない。だからこそ自分のポケモンを信じ、相性の悪い相手でもリーフィアに託すことにしたのだ。

 

「でも……あなたなら分かると思います。」

「……であいがしら」

「っ!?かわして!」

 

開幕、グソクムシャは一瞬でリーフィアとの距離を詰めて強固な腕を振り下ろす。シンジは直感でマズイと察知し、リーフィアに回避の指示を出した。リーフィアは紙一重でその攻撃をかわす。

 

であいがしらはバトル開始時にしか使えない技だが、非常に素早い攻撃で奇襲を仕掛けることのできるむしタイプの技だ。当たってしまえばただでは済まないことは一目瞭然。その一撃だけでグソクムシャがどれだけ鍛えられているかが伝わる攻撃であった。

 

「逃がすな!アクアブレイク!」

『シャ!』

「リーフブレード!」

『リフィ!』

 

グソクムシャは即座にアクアブレイクで追撃を仕掛ける。リーフィアはその攻撃をリーフブレードで防御するが、態勢を崩した状態で反撃したため思ったように威力が出せず、弾かれてしまった。

 

「まだまだあ!ミサイルばりぃ!」

「くっ!でんこうせっか!」

 

距離の離れたリーフィアに対し、グソクムシャは屈んで構えをとり、背中からミサイルばりを無数に飛ばす。リーフィアはでんこうせっかでグソクムシャの攻撃を回避しながら接近する。

 

「じごくづき!」

『シャ』

「かわして!」

『フィ!』

 

グソクムシャはじごくづきで迎撃の態勢をとる。シンジとリーフィアはすぐさま危険を察知し、リーフィアは急ブレーキをかけて止まり、バックステップで回避する。

 

その反応を見たグソクムシャは腕を引っ込め攻撃を中断する。彼らにはリーフィアが止まることが分かっていたのだ。無駄な体力の消費、隙を晒すことを抑えるところを見ると、彼らは相当な実力者であることが伺える。シンジは彼らの事をトレーナーとして心から尊敬する。

 

「エナジーボール!」

『リフィア!』

「はんっ!アクアブレイク!」

『ムッシャ』

 

リーフィアはエナジーボールで反撃に移る。対するグソクムシャはアクアブレイクで迎え撃った。

 

アクアブレイクによる居合斬りは、エナジーボールをいとも容易く切り裂く。その様子にシンジも流石だと感心し呟いた。

 

「すごいですね、あなたも、あなたのグソクムシャも。」

「当たり前だ。破壊の化身であるグズマ様とグソクムシャだ。この程度のことできて当然だ。」

 

その言葉を聞いたシンジが一つ疑問に思い、彼にある質問を問いかけた。

 

「……あなたは、何故ハラさんの元を去ったのですか?」

「なに?」

 

シンジはグズマの顔を真っ直ぐと見つめそう問いかけた。グズマは不愉快な気分を感じたが、シンジの眼を見ると自分の意思とは反対に彼の問いに答える。

 

「……はんっ、あいつは俺のバトルを認めようとせず、いつも甘えたことばかり抜かしやがった。だからあいつの元を去り、スカル団を結成しオレ様の正しさを奴に証明する。バトルは、力こそが正義だってことによ!」

 

彼の言っていることに嘘偽りはない。それはこのバトルを通して見ればすぐに分かる。

 

彼のバトルは攻撃重視の荒々しいバトルスタイル。まさに攻撃こそ最大の防御、彼の言葉をそのまま形にしたバトルだ。しかし、シンジにはもう一つ、彼から感じるものがもう一つあった。

 

それはポケモンに対する愛情だ。彼はグソクムシャの事を信じ、グソクムシャも彼の事を信じている。ただ力だけのトレーナーからは決して感じる事の出来ない感情、それをグズマから感じる事ができた。

 

「チッ、無駄口叩いてる暇があんのかよ?グソクムシャ!ミサイルばり!」

「ジャンプしてかわして!」

『リフィ!』

 

再びグソクムシャはミサイルばりで遠距離から畳みかける。その攻撃をリーフィアは高くジャンプして回避する。

 

「つるぎのまい!」

 

リーフィアはジャンプした態勢のままつるぎのまいで自身の攻撃力を上げる。それを見たグズマは焦ってグソクムシャに指示を出す。

 

「グソクムシャ!アクアブレイク!」

『ムシャ!』

「リーフィア!リーフブレード!」

『リッフ!』

 

グソクムシャは大きくジャンプしアクアブレイクですぐさま攻撃する。リーフィアはリーフブレードで真っ向から迎え撃つ。

 

グソクムシャは水の刃を勢いよく振るう。リーフィアはその攻撃を額の草を鋭くして反撃する。

 

互いの刃が交じり合い火花が散る。お互い拮抗するが、リーフィアの攻撃力はつるぎのまいで大幅に上がっている。更に上から叩きつける形で攻撃しているため、重力も味方し次第にグソクムシャが押されていく。

 

『リフィイ!』

『シャ!?』

 

そして遂にリーフィアが打ち勝ち、グソクムシャは地面まで飛ばされ叩きつけられる。グソクムシャはまだ立ち上がろうとするが、体力的には限界がきている。シンジとリーフィアにとっては絶好の的、最大のチャンスだ。

 

「っ!?グソクムシャ!」

「……リーフィア、もういいよ。戻っておいで。」

『リフ』

 

しかしシンジは追撃することなく、リーフィアを自分の元に呼び寄せる。シンジがリーフィアの頭を撫でると、リーフィアも嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

「……なぜとどめを刺さない?」

「これ以上、あなたのグソクムシャを傷つけたくないからです。」

「あっ?」

「あなたはそのグソクムシャをとても大切にしている。戦ってて、二人の絆の強さが伝わってきた。だからこれ以上こんな戦いはしたくないんだ。」

 

シンジの言葉を聞き、グズマは歯をギリッと鳴らしてかつての師匠と姿が重なってしまう。グズマは怒りと悔しさを胸に秘め、グソクムシャをモンスターボールへと戻す。そしてマリエ庭園を去ろうと彼の横を横切ると、シンジを横目で睨みつけ呟いた。

 

「次に会った時はぜってぇぶっ壊してやる。」

 

後悔するなよと言い残すと、そのままマリエ庭園を去っていった。そんな彼を見つめながらシンジは、また戦うことになるだろうと、心の中で感じていたのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

リーリエとミヅキは団子を食べ終える。リーリエも団子を食べながら聞いていたミヅキの話に興味津々であった。

 

「それで、その後はどうなったんですか?」

「うーん、それから私はあまりグズマさんに会わなくなったんだけど、シンジ君は何回か戦ったみたいだね。私は昔からあの人のことを知ってるから怖かったんだけど、シンジ君は一切そんな様子は見せなかった。グズマさんの事を知らなかったから、じゃなくてトレーナーとしての直感がそうさせたみたい。」

 

ミヅキは俯いていた顔をリーリエの方に向いて続けて語る。

 

「その時から、私もシンジ君がすごいなって改めて思う様になったんだ。トレーナーとして、やっぱりこの人は凄い人なんだなって。ポケモンが大好きなだけじゃなくて、相手の事も考えてリスペクトする。そんなトレーナーに、私もなりたいなって。」

 

リーリエはミヅキの話を聞いて納得する。自分も彼のそう言ったところに憧れ、同じようなトレーナーになりたい、彼の背中に追いつきたいと思いトレーナーになる決心をした。

 

しかし今の話を聞いて彼の背中はまだまだ遠いのだと思い知らされた。今はしまキングとしての使命を果たしているグズマだが、かつてスカル団のボスを務めていた彼はかなり荒れていて、自分だった場合止めることができたのか自信がない。いや、恐らく怖くて戦うことすらできない。

 

それをシンジは何度もグズマに立ち向かい、最終的に説得させることに成功している。それはトレーナーの実力はもちろんだが、相手の事を思いやり、最後まで諦めない心を持った彼だからこそできたことだ。

 

そんな彼は現在チャンピオンとしてアローラに存在し、多くのトレーナーの目標となっている。それは彼が人柄、実力共にチャンピオンとして相応しいと周囲の人々が認めているからに他ならない。

 

だから……だからこそ、リーリエはまだまだ彼の背中を追いかけ続けることができるのだと拳をグッと握り締め立ち上がる。

 

「ミヅキさん!貴重な話ありがとうございます!私、もっともっとトレーナーとして精進します!」

 

そしていつか、彼の背中に立っても笑われないような、一人前のトレーナーになるのだと決意して。

 

「あはは、そっか。リーリエがそう言ってくれたなら私も嬉しいかな。よし!折角だからこのままマリエシティを一緒に回ろうよ!」

「え?でも……」

「だいじょーぶだいじょーぶ!それに、冒険には休憩も大事だってシンジ君言ってたよ!ほらほら!」

 

リーリエはミヅキの勢いに負け、マリエ庭園を含むマリエシティを1日観光した。最初は困惑していたが、気付けばリーリエも観光を楽しんでいた。

 

約束の場所まで残すところあと少し。まだまだ遠くもあるが、それでも着実と近付いているのも確かである。

 

それまでリーリエは実力を今よりももっと上げ、島巡りを達成し、必ず彼の元へと辿り着く。そう心に誓い、島巡りに挑むのであった。




来シーズンからダイマ無し&竜王戦にルール変わるけど、UNITEが配信されるからあまり潜れなさそう。結構面白そうだからタイミング的に少し残念。3か月あるから行けるかな?

実は今週からフォールガイズ始めて2回ほどドン勝できたの
さすが人気出るだけあって楽しいね


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ハプウとバンバドロと発電所!

まさかのUNITEは21日配信と早かったですね。この話の投稿予約日は21日になった夜中なので今から楽しみにしています。配信は16時からだそう。


マリエシティでミヅキと共に観光をしゆったりと過ごしたリーリエ。翌日には彼女と別れ、リーリエは島巡りを続け先を目指していた。

 

マリエシティを出て暫く南の方へと進んでいく。その先には、激しいデコボコ道の続く場所へとやってきた。

 

「どうしましょう……かなり通り辛そうです。」

 

一応通れないことはないだろうが、一歩踏み外してしまえばかなり痛い……下手をすれば大怪我に繋がってしまう恐れがある。

 

戻るにしてもここまでは一本道で他に道は無さそうに思える。ならばこの辺りでデコボコ道も渡ることのできそうな鋼タイプのポケモンでも仲間にするべきか。

 

そう考えていたリーリエの耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「む?リーリエではないか?」

「あっ!?ハプウさん!」

 

振り向くとそこにはバンバドロにライドしているポニ島のしまクイーン、ハプウがいた。ミヅキの話の通りであれば、ハプウもしまキング、しまクイーンの招集に訪れていたのであろう。

 

「その様子を見ると、どうやらこの先に行けなくてこまっているようじゃのう。」

「は、はい、ライドできるポケモンさんも持っていませんし……」

「ふむ、ではわしのバンバドロに乗せてやろう。」

「え?いいんですか?」

 

リーリエの問いかけにハプウは快く頷き答える。

 

「もちろんじゃ。それにわらわもこの先に用事があるのでな。ほれ、遠慮などするな。」

 

リーリエはハプウの言葉に甘え、それではとハプウの後ろに乗ることにする。少しゴツゴツとしているが、流石しまクイーンのポケモン。その逞しい背中は不思議と安心感を覚える頼もしい背中であった。

 

バンバドロはリーリエが乗ったことを確認すると、バンバドロは立ち上がり歩き始めた。

 

「凄いですね、バンバドロさん。」

「わしの相棒じゃからな。このぐらい問題ないぞ。」

 

バンバドロはデコボコ道も気にすることなく平然と進んでいく。バンバドロの泥で固めた立派な四肢は、尖った岩の道など全く問題にはならないようである。

 

「しかし懐かしいのお。以前はシンジも同じように後ろに乗せていたのじゃよ。」

「シンジさんもですか?」

「うむ。シンジもリーリエと同じようにどうするか悩んでおったから、偶然通りかかったわしがバンバドロに乗せたのじゃ。まさかまた同じような状況に出くわすとは思わなかったがの。」

 

2年前の島巡りの時もリーリエと同様、シンジもハプウに助けられたようだ。確かにシンジのポケモン達には彼を乗せられるポケモンは存在しない。エーフィのサイコパワーで運んでもらおうにも、流石にこの距離を一気に運ぶのは難しいだろう。

 

別にすごい事でもなんでもないのだが、なんとなく彼と同じ状況になったことが嬉しいと感じるリーリエだった。

 

「そう言えばハプウさんの用事ってなんなんですか?」

「この先にある地熱発電所と呼ばれる場所があってな。そこに野菜を届ける最中なのじゃよ。」

 

地熱発電所。その名の通り地熱を利用し発電する施設で、核融合エネルギーなどを使用しないことから、大気汚染などの対策手段としても有用だと考えられている。当然発電所であるため注意深く扱う必要はあるのだが。

 

それによく見るとバンバドロのサイドにはいくつかの野菜が積んである。大根など、見るからに重そうな野菜も運んでいるが、それに加え今はハプウとリーリエも背中に乗せて歩いている。改めてバンバドロの持久力とパワーには感心させられる。

 

「すまないが先に地熱発電所によってもかまないかの?」

「はい!もちろんです!」

 

リーリエはハプウの問いにそう返答し、2人はバンバドロに乗ってそのまま地熱発電所へと向かうことにした。

 

暫く進むと、大きな白い建物が見えてきた。あそこが目的の場所である地熱発電所だろう。

 

しかしその前には幾人かの人だかりができていた。その中には作業服を着ている、明らかに発電所の人間だと思われる人物の姿もあった。ハプウは彼らに近付き声をかけることにした。

 

「おぬしたち、どうしたのじゃ?」

「あっ、ハプウさん!丁度良かった!」

 

スタッフの面々はハプウに事のあらましを説明した。どうやら野生のジバコイルが彷徨いこんでしまったようだ。

 

ジバコイルは強力な磁力を発生させているポケモンだ。ここは地熱を利用しているとはいえ発電所。恐らく発電所の磁場に引き寄せられてしまったのだろうとハプウは推測する。

 

「うむ!ならばわらわがなんとかしよう!困っているところを見て放っておくなどできぬしな!」

「では私も協力します!ハプウさん!」

「おお!感謝するぞリーリエ!じゃが無理はするなよ?」

 

二人はそう言うとスタッフたちに頭を下げられ改めてお願いされる。スタッフたちに見送られて発電所の内部へと足を踏み入れる。

 

停電が起きているのか、中は一切電気がついておらず足元の見え辛い暗闇となってしまっている。転ばない様に二人は気を付けて先を進んでいく。

 

暫く進むと、ある一室が異様なまでに明るくビリビリと照らされていた。そこは扉が僅かに開かれ、もしやと思いハプウとリーリエは隙間から内部をこっそりと覗き込む。そこには話に聞いていたジバコイルと、一人の男が笑みを浮かべて立っていた。

 

「いいぞいいぞジバコイル!これだけ電気があれば……」

 

どうやらこの騒動の原因はあの男のようだ。この状況を見る限り、考えられることは一つだけ。ジバコイルは野生のポケモンではなく、あの男のポケモンだということ。そしてあの男は電気泥棒と考えるのが妥当だろう。

 

ジバコイルを野生のポケモンに見せ発電所内部を混乱させる。その後隙を見て自分も発電所内部に侵入。

 

そして誰もいなくなった発電所に侵入した男は、発電所に溜められた電気を手に入れるという寸法だろう。穏やかなアローラであろうと、やはりこのような悪事を働く人物もいるというのは少々悲しいとと感じてしまう。

 

「そこまでじゃ!」

「っ!?誰だ!」

「これ以上の悪事は許しません!」

 

野生のポケモンが起こした騒動でないと分かればこれ以上好き放題させるわけには行かないと、ハプウとリーリエは中に入り男に一喝する。完全に油断していた男には驚きの表情が伺える。

 

「くっ!邪魔されるわけにはいかない!いけ!エレブー!」

『エッブ!』

 

ジバコイルと新たにエレブーも繰り出し、男は臨戦態勢をとる。相手が2体で来るならこちらもと、ハプウとリーリエもモンスターボールを構える。

 

「頼むぞ!バンバドロ!」

『ブルルゥ!』

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

ハプウは一時的に戻したバンバドロを、リーリエはシロンを繰り出した。電気泥棒を止めるため、ハプウとリーリエのタッグバトルが始まる。

 

「ジバコイル!でんじほうだ!」

『ジバババ!』

 

ジバコイルのでんじほうがシロンに向かって襲い掛かる。しかしその攻撃を大きな影が盾となる防いだ。

 

「うむ!よくやったぞ、バンバドロ!」

 

その攻撃を防いだのはバンバドロであった。バンバドロはじめんタイプのポケモン。じめんタイプに対してでんきタイプの技の効果はない。だからこそリスクなくシロンを守るために、バンバドロが自ら盾になったというわけだ。

 

「くっ、ならばジバコイル!ラスターカノン!エレブーはきあいだまだ!」

 

バンバドロに効果のないでんき技は避け、男は別のタイプの技を使い攻撃を仕掛けてきた。その攻撃に対し、今度はリーリエが抵抗を見せる。

 

「シロン!れいとうビームです!」

 

シロンはれいとうビームでラスターカノンを迎え撃つ。シロンのれいとうビームによりラスターカノンは相殺されるが、きあいだまはバンバドロへと向かってしまう。

 

エレブーのきあいだまがバンバドロに直撃する。男はヨシ、と呟くが、ハプウはふふんと鼻を鳴らして笑みを浮かべた。

 

「なっ!?」

 

きあいだまの衝撃が晴れ、そこにいたのは顔色一つ変えずに立っていたバンバドロの姿であった。顔色どころか傷ひとつ付いていないその立ち姿に、流石だと言いつつも仲間であるリーリエですら驚きを隠せない。流石の耐久力と言ったところだ。

 

「ならばエレブー!れいとうパンチ!」

『エッブ!』

 

きあいだまがダメなら弱点であるこおりタイプの技、れいとうパンチならばダメージを与えられると考えた男はバンバドロに接近戦を挑む。しかしそれがかえって仇となってしまうのであった。

 

「バンバドロ!10まんばりきじゃ!」

『ブル』

『エブ!?』

 

バンバドロは走ってくるエレブーに背中を見せる。すると強靭な後ろ足を勢いよく後ろに突き出し、エレブーの攻撃が当たる前に直撃させて迎撃する。10まんばりきはバンバドロの得意技であると同時に、エレブーの弱点でもある地面タイプの技だ。

 

その一撃は素早い上に重く、エレブーは堪らず大きく吹き飛ばされ目を回す。エレブーは耐えることができず、戦闘不能状態となったのだ。

 

「なっ!?エレブー!くそっ、こうなったらジバコイル!でんじほう!」

『ジバババ!』

 

男はまだ諦めることなく、ジバコイルはでんじほうでシロンに再び攻撃をしてきた。

 

「かわしてムーンフォースです!」

『コン!』

 

リーリエも一切油断することなく、ジバコイルのでんじほうをジャンプして回避する。でんじほうは麻痺の追加効果もあり威力も高い技だが、その分命中率も低い。単発では中々当てづらい技筆頭であろう。

 

でんじほうを回避したシロンはムーンフォースで反撃をする。シロンに力を込めたムーンフォースの一撃がジバコイルの急所に直撃し、ジバコイルは吹き飛ばされた。ジバコイルは壁に激突し、技と壁への衝突のダブルパンチで戦闘不能となったのである。

 

手持ちのポケモンであるエレブーとジバコイルが戦闘不能となり、男は遂に戦意喪失となってしまう。その後通報を受けたジュンサーが駆けつけ、男を署へと連行したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハプウさん!それから君も!本日はありがとうございました!」

「なに、気にすることはないのじゃ!野菜も無事に届けることが出来たし、わしもバンバドロも満足じゃよ!」

「私も困っている人を助けたかっただけですので」

 

ハプウは発電所のスタッフたちの感謝を受けながら、再びバンバドロにライドしその場を後にすることにした。

 

「いやぁ……なんだか変な事件に巻き込まれてしまったが、なんとかなったのお。これもバンバドロとリーリエ、シロンのお陰じゃな!」

「そんな……私は何もしていませんよ。」

「謙遜することはないぞ?まぁ、そんなところもリーリエらしいがの。」

 

二人はそんな雑談をしながら、デコボコ道の先を進むのであった。




今回は話にハプウさんを絡ませてみました。こうなんて言うのか……ロケット団がやりそうな話はなんとなく書きやすい気がしますね。モブ戦なので戦闘もシンプルにすませました。

次回は分かんないけど恐らくブイズとの出会い回かな。少なくともアローラリーグまでには全てのブイズ回を書きたいと思っているので。


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ウルトラ調査隊、ウラウラ島にて

実はゴーヤが大好物。トマト以外の夏野菜は大好き。


ハプウのパートナー、バンバドロに跨り険しい道を渡るリーリエ。多少トラブルはあったものの、無事に渡り切り山場を乗り切った彼女は、バンバドロから降りてハプウにお礼の言葉を伝えた。

 

「ハプウさん、おかげで助かりました!ありがとうございます!」

「気にしなくてもよい。結果的にわらわも助けてもらったからの。困ったときはお互い様、じゃからな!」

 

リーリエの言葉にハプウは笑顔でそう答える。見た目が幼いことも相まって、彼女を見ただけではしまクイーンだとは思えないだろう。

 

「むっ?あそこにいる二人組は……」

 

リーリエはハプウの指さした場所を見てみる。するとそこには、見覚えのある二人が何かを見て考え込んでいた。その二人の見た目は、遠目から見ても分かるぐらい特徴的なものなので見間違えるはずはない。一度出会えば忘れることもないだろう。

 

リーリエとハプウは二人の様子が気になり、知らない仲でもないためその二人組に近づいて行った。

 

二人組は近づいてきたリーリエ、ハプウに気づいたようでこちらを振り向く。

 

「む?ああ。リーリエと……ハプウだったか。こちらの世界的な挨拶だとアローラ、でいいのか?」

「アローラ!おねーちゃんたち♪やっほー♪」

「アローラ、です!」

「うむ、アローラ。確か……ダルスとアマモじゃったな。」

 

その二人の正体はウルトラ調査隊のダルスとアマモであった。アローラ式の挨拶で対応するところを見ると、大分このアローラに慣れてきたようである。ハプウはともかく、彼らのことと彼らの住む世界の話を聞いたリーリエにとってはそう感じられた。

 

「ところで、お二人はここで何をしているのですか?」

 

リーリエにそう尋ねられ、ダルスは先ほどまで見ていた資料を二人に見せる。その資料には、あるポケモンたちの画像とその詳細などが載せられていた。

 

「これは……?」

「UBに関する資料だ。エーテル財団のトップ、代表から支給されたのだが、これにはアローラ各地で出現したUBの情報が記録されている。もちろん、UBの出現場所もだ。」

「ということは……」

「ああ、これで我々の目的であるウルトラオーラの調査も捗る。非常に助かっている。」

 

彼らの最大の目的は、自分たちの世界に光を取り戻す方法、光をかがやきさまを救う方法を見つけること。関係性の深いUBのことを調査すれば、解決に繋がるのではないかと考えている。

 

だからこそダルスたちはウルトラオーラの反応を辿りこの世界にやってきた。そのうえこの世界は彼らのいる世界とは裏の世界。彼らの世界が闇の世界なら、この世界は光の世界。UBがやってきた理由の一つにも関係しているのかもしれない。

 

「ウルトラホールが開いた際、このハイナ砂漠と呼ばれている場所にもUBが出現したとのことだ。ウルトラオーラの反応も強く、これから調査するつもりだ。」

 

では私も、とリーリエも手伝おうとするが、彼女の言動をハプウが制止した。

 

「リーリエ、このハイナ砂漠は砂嵐が酷く、道を知らなければ迷子になってしまうのじゃ。おぬしのような方向音痴では……」

「うっ……そ、それは……」

 

ハプウにそう言われてしまうと、リーリエは自信を失くしてしまう。実際彼女自身、自分が方向音痴なのだということを自覚してしまう。街中にある分かりやすいはずの建物に行こうとしたら道に迷ってしまい、以前はポケモンセンターの中でも迷ってしまったことがある。ここまでの方向音痴は、他には中々みないであろう。

 

「気持ちは嬉しいけど、そこまで長い事調査するつもりはないから大丈夫だよ。」

「ああ、我々はあくまでUBが存在した形跡とウルトラオーラの検出、及び回収をするだけだ。すぐに任務は終了する。」

「そ、そうですか。そう言うことでしたら……」

 

自分に出来ることは何もないだろうと感じたリーリエは一歩下がる。しかしそんなダルスたちに、ハプウがある提案を持ち掛けた。

 

「代わりにわらわが案内しよう。」

「む?よいのか?」

「なに、用件は済んだし、多少の寄り道くらいわけでもないからの。それにわしのバンバドロであれば砂漠なぞ全くの問題ではないからな。」

 

確かにそうであれば我々も心強いと、ダルスはハプウの提案に快く承諾した。実際問題、砂漠は素人が入るのは少々危険な場所だ。ポケモンとトレーナーの力を借りることができるのであればそれに越したことはない。

 

では早速、とハプウがバンバドロに乗るようにダルスを誘うが、その前にとリーリエに対してダルスはとある話を持ち掛けた。

 

「……キミはUBのある伝承をしっているか?」

「え?UBさんの伝承……ですか?」

 

リーリエの返答にダルスは頷くと、その様子では知らないのだろうと察し、伝承の一節を語る。

 

「異世界の魔物訪れしとき、新たな災厄の兆しなり」

「新たな災い……それって!?」

 

察しのついたリーリエにダルスは再び頷いて答えた。

 

異世界の魔物、それはアローラにとって紛れもなくUBのことであろう。そしてダルスの口にした新たな災厄。その言葉を聞いたリーリエは、マリエの図書館で読んだ本の内容を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

おおぞら より

 

ひかりのりゃくだつしゃ あらわれ

 

せかい やみに つつまれる

 

たいようを くらいし けもの うばい

 

たそがれの たてがみ となる

 

 

 

わかものと まもりがみ

 

いしを つかい ひかりを はなち

 

たいようを くらいし けものと

 

ひかりのりゃくだつしゃを わかちて

 

アローラの やみを おいはらう

 

 

 

 

 

 

 

太陽を喰らいし獣とはソルガレオのこと。そして光の略奪者、世界を闇に包む、と記載されていた。詳しいことまでは不明な点が多いが、それでもなんとなく察しはつく。

 

その上ダルスのいた世界には一切の光がないと言う。太陽の光に照らされているアローラと比較すると、ゾッとして額から冷や汗が滴り落ちる。

 

UBだけでなく、この後、そう遠くない未来に何か良からぬことがアローラに訪れてしまうのではないか、そう感じてしまう。

 

「我々もどうなるかは分からないが、それでも、一つだけ確信をもって言えることがある。このアローラを、我々と同じような世界に変えるわけにはいかない。」

「このアローラ、みんなすっごく優しくてあったかいもんね♪」

「……出てこい、べベノム。」

『べ~べべ~♪』

 

ダルスはべベノムをモンスターボールから出す。べベノムは上機嫌でモンスターボールから飛び出す。外に出られたのが嬉しいのか、笑顔で空を遊泳している様子がなんとも微笑ましい。見たことのないべベノムに、珍しいポケモンじゃのぉ、とハプウは興味深そうに眺めていた。

 

「べベノムがこれだけ嬉しそうにしているのは久しぶりだ。」

「私たちの世界だと時々悲しそうな顔してるもんね。」

「そうなんですか?」

「ああ。もしかしたらべベノムは我々の世界で何が起きているのか、何が起きようとしているのかを察知しているのかもしれない。全ては憶測にしかすぎないがな。」

 

そう言ってダルスはべベノムを手元に手繰り寄せる。べベノムも嬉しそうにダルスの頭にちょこんと乗っかる。どうやら現在トレーナーとなっている彼にも十分に懐いているようだ。

 

「我々はトレーナーとしての実力は皆無だが、最悪の未来を回避するために出来る限りのことをするつもりだ。」

「自分の世界のためってのもあるけど、このアローラも守りたいからね。」

「幸い我々にはエーテル財団、空間研究所のバーネット博士、それにチャンピオンのシンジも協力してくれている。札は充分に揃っている。」

「だからおねーちゃんも、島巡りだっけ?全力で頑張ってね♪アマモも応援してるから♪」

 

ダルスの決意、アマモの激励を受け取り、リーリエも笑顔になって返事をする。二人はどのような状況に追い詰められようとも、決して折れたりなどしていない。その決意と覚悟の強さは、自分もよく分かっている。その強さは、どんな逆境でも押し返すことができると知っているから。

 

「では我々はそろそろ行く。」

「またね~おねーちゃん♪」

「リーリエも島巡り、頑張るんじゃぞ!」

 

そう言って手を振りハイナ砂漠へと向かうダルスとアマモ、そしてハプウ。リーリエも手を振り、ここから目指す自分の道のりの先を見つめた。

 

アローラの危機が訪れるとして、今自分に出来ることは何もない。ならば今自分に出来ることは、トレーナーとしての腕を磨くこと。今よりももっともっと強く、そして目指す人の背中に追いつけるよう、リーリエは再び歩みを進めるのであった。




ポケモンUNITEにおいてマスターランクに到達しました。ただマスターランクの人も結構カオスっていうかなんと言うか……


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カプの村、そして再会!

今回は久しぶりにまさかのあの子登場!


ウルトラ調査隊のダルスさんとアマモさん、ポニ島しまクイーンのハプウさんと別れた私は、次の試練を目指して旅を続けています。

 

私が先を目指して旅を続けていると、辿り着いた先は荒れ果ててしまっている土地でした。いえ、土地が荒れていると言うよりも、あったはずの建築物が荒れてしまっている、と言った方がいいのでしょうか。元々は村があったのでしょうか……。

 

そんな荒地の中央に、誰か膝をついて屈んでいる人の影がありました。その人物の周辺には、小さなポケモンさんたちが囲んでいる様子が見られます。私は何をしているのかとゆっくりと近付くと、その人物は私のよく知っている方でした。そしてその方が私の存在に気が付くと、立ち上がりこちらへ振り向きました。

 

「リーリエ、もうここまで来たんだね。」

「し、シンジさん?どうしてここに……」

「ここはポケモンリーグのあるラナキラマウンテンの麓だからね。僕も用事があってここによく来るんだ。」

 

そう言えばシンジさんは普段ポケモンリーグで特訓やお仕事をしていることも多いと聞きました。であればラナキラマウンテンの麓まで降りてきても何らおかしなことはありませんでしたね。

 

「シンジさん、ここのポケモンさんたちは……」

 

私と目があったポケモンさんたちは、表情を変えてその場から急いで離れて行ってしまいました。

 

「す、すいません。驚かせてしまいましたか……」

「ああ……ここの子たち、ちょっと訳アリ、なんだよね。」

 

シンジさんは私に、ここの荒地とポケモンさんたちの事情について説明してくれました。

 

ここは元々カプの村、と呼ばれていて、ウラウラ島の守り神、カプ・ブルルさんを始めとしたアローラの守り神さんたちが姿を見せていた村だったそうです。ですがとある事情で守り神さんたちの怒りを買ってしまい、村が崩壊し荒地となってしまったのだそうです。

 

ただ、今では村の名前しか残っていないそうで、記録は残されていないようです。真相は闇の中、と言うことでしょうか。

 

ここにあるポケモンさんたちは、それぞれ色々な事情があるそうです。親を失くしてしまった子、群れからはぐれてしまった子、トレーナーに捨てられてしまった子などが集まっているそうです。よく見ると、ボクレーさん、サンドさん、ヤングースさんにバニプッチさんと、小さなポケモンさんばかりが集まっています。

 

住処の無いこのポケモンさんたちを、ポケモンリーグとエーテル財団が協力してこの付近で保護しているそうです。そう言えばこの近くにエーテル財団のエーテルベースがありました。普段はこの子たちも隠れて過ごしているみたいですが、シンジさんたちが様子を見に来た際には近付いてくれるくらいには懐いてくれたそうです。きっとシンジさんの作ったポケモンフーズを食べて気に入ったのでしょう。実際、今は私に警戒しているのか、壁に隠れてこちらの様子を伺っています。

 

「ここの子たちはまだ子どもだからね。昔の出来事がトラウマで、どうしても警戒心が強くなっちゃったんだよね。」

「そう……だったんですね。」

 

その話を聞いて、私は少し前のあったポケモンさんの事を思い出しました。エーテル財団に保護された、ロコンさんのことです。今頃、どこで何をしているのでしょうか。元気にしているといいのですが……。

 

私が以前出会ったロコンさんの事を思い出していると、私の元に一匹のポケモンさんが近付いてきました。そのポケモンさんの姿を確認すると、私は驚きのあまり「えっ?」と声を漏らしてしまいました。

 

「ロコン……さん?」

 

そこにいたのはアローラの姿をしたロコンさんでした。偶然の一致か、ロコンさんのことを考えている時に出会ったため驚いてしまいましたが、まさかあのロコンさんの訳がないと思いました。

 

しかし、そのロコンさんは私の匂いを嗅いで何かを確認する仕草をとります。ロコンさんの確認が終わると、ロコンさんは先ほどの不安そうな表情から一転し、明るい笑顔を浮かべて私の足に擦り寄ってきました。

 

「もしかして……あの時の、ロコンさんですか?」

『コォン!』

 

まさか、と私は自分の眼を疑いました。ですがロコンさんのこの嬉しそうな顔、間違えるはずがありません。忘れるはずがありません。間違いなくこの子は以前、エーテル財団に保護されていたロコンさんです。ロコンさんも私の事を覚えていてくれたことが、とても嬉しく思えます。

 

「珍しいね、この子が人に懐くなんて。」

「この子、私が以前お世話したことがあるロコンさんなんです。」

 

私がその時のことを説明すると、シンジさんもなるほど、と納得してくれました。

 

「そっか、この子も大変な目にあったみたいだけど、リーリエみたいなトレーナーに会えてよかったね。」

「あはは、偶然ってなんだか不思議ですね。」

 

同じアローラを旅しているとは言え、同じ個体のポケモンと再会する確率などほぼゼロに近いです。まさかの重なった偶然に、私は感動すらも覚えました。

 

ロコンさんが私に擦り寄る姿を見ていた他のポケモンさんたちも、次々と姿を見せて私に歩み寄ってきてくれました。ロコンさんの姿から、私の警戒心を少しは解いてくれたみたいです。

 

私は歩み寄ってくれたポケモンさんの頭を優しく撫でてあげました。するとポケモンさんたちは目を細めて、表情を柔らかくしていました。

 

「この子たちも、少しずつでも心を開いてくれたら嬉しいですね。」

「うん。それに、これで少しはロコンもみんなと打ち解けるかな。」

「え?もしかして……」

「このロコン、中々みんなとの輪に入れなくてね。でも、これで少しはみんなと打ち解ける機会ができたと思うんだ。これもリーリエのおかげだね。」

「そ、そんな、私は何も……」

「何もしてなくても、それが間接的にであっても、リーリエのした行いがポケモンたちの為になってるんだ。もっと誇ってもいいと思うよ。」

 

シンジさんにそう言われて、私は思わず顔が熱くなるのを感じました。恐らく今は恥ずかしさのあまり顔が赤くなってしまっているでしょう。嬉しいのですが、非常に恥ずかしいです。

 

「っと、そろそろ僕も時間が来ちゃったな。」

 

どうやらシンジさんも次のお仕事の時間が来てしまったそうです。久しぶりに話ができてうれしかったですが、シンジさんもチャンピオンとしての務めがあるので仕方ありませんよね。

 

「リーリエ、次はアセロラの試練だよね?」

「は、はい、そうですね。」

 

次に私が挑戦するのはアセロラさんの試練。アセロラさんは四天王と言う立場ではありますが、同時に今でもウラウラ島キャプテンとしても務めているそうです。

 

「アセロラの試練はその……まぁ少し独特だけど、リーリエなら大丈夫……だと思う。」

 

なんだか珍しくシンジさんにしては歯切れが悪い気がします。とは言え試練の内容をチャンピオンの口からは直接言えないでしょうし、仕方がないことなのだと思いますが。

 

「アセロラは今でもすぐそこにあるエーテルハウスで暮らしているから、行けば試練受けさせてもらえると思うよ。」

 

エーテルハウスはエーテル財団が運営している施設で、ポケモンさんや孤児たちを保護する施設として、アセロラさんも暮らしているそうです。

 

「もうすぐ島巡りも終盤……僕の手伝えることはないけど、その先で……僕は待ってるからね。」

「っ!?は、はい!必ず辿り着きますから、待っていてください!」

 

私のその言葉を聞いたシンジさんは、小さく笑みを浮かべてポケモンさんに挨拶し、カプの村を後にしました。そんなシンジさんの背中を見た私は、少しだけポケモンさんに触れ合い、またねと挨拶をして先を目指しました。

 

シンジさんの言う通り島巡りも終盤に差し掛かっています。アセロラさんの試練を突破し、大試練、そして必ずアローラリーグまで辿り着いて見せますから!




久しぶりにポケモン対戦したら、相棒の色ニンフィアちゃんが5戦連続で大活躍したおかげであっさりマスターに上がれました。しかもザシアン相手にも頑張ってくれました。やっぱり相棒は最高やね!UNITEにもニンフィアちゃん実装はよ


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リーリエとプルメリ、エーテルハウスにて

実はリーリエの次に好きなのはプルメリ姐さんかもしれない


現在では廃村となり、野生のポケモンの住処となっているカプの村で一時的に再会したシンジと別れたリーリエ。次の試練を受けるため、担当のキャプテンであるアセロラのいるエーテルハウスの前へと訪れた。

 

試練の直前ということで緊張で彼女の手が汗で少し湿っている。一度深呼吸をし、エーテルハウスの扉を叩こうとする。しかしその時、扉が自動的に開き、中から紫色を基調としたドレスを着た小柄の少女が先に扉を開けて姿を現した。

 

「あっ、アセロラさん。」

「ん?あー!リーリエじゃん!アローラ!久しぶりー!」

 

少女は久しぶりに出会ったリーリエにふにゃっとした明るい笑顔で挨拶を返す。この少女こそが試練のキャプテンであり、アローラ四天王の一人でもあるアセロラだ。リーリエも同じくアローラ、と彼女に挨拶を返す。

 

この見た目から想像もつかないだろうが、四天王であるが故に実力はアローラの中でも非常に高く、他の四天王にも引けを取らない。シンジに負けるまではチャンピオンになるのだという野心を抱いていたのだとか。

 

また、本人曰くアローラ王朝の末裔なのだとか。

 

「もしかしてアセロラの試練受けに来たの?でもごめんね、今からちょっと用事があるんだよねー」

「い、いえ、それは構わないのですが……何かあったんですか?」

「まぁちょっとしたいざこざ、と言うかいつものこと、と言うか……。大した問題じゃないからすぐに終わるよ。」

 

そんなに大したことではないと言うアセロラ。中で寛いで待ってていいよ、と手を振って慌てて走り去っていく。追いかけようにも、気付けばアセロラの背中はすでに見えなくなっていたためどうしようもない。

 

すぐに用事が終わるとのことなのでリーリエはエーテルハウスの中へと移動する。しかし、彼女がエーテルハウスに入ろうとした時、とある女性の声が彼女を呼び止めた。

 

「待ちな、姫様。」

「この声……プルメリさん?」

 

聞き覚えのある声、元スカル団幹部であるプルメリであった。どうしてここにいるのか尋ねると、プルメリは軽く笑った。

 

「なに、少し懐かしくなったからね。この辺りを巡回してたら偶々姫様を見かけただけさね。」

「懐かしい、ですか?」

「なぁ、姫様は覚えてるかい?ここでの出来事のことを……」

「……はい、もちろん覚えています。」

 

プルメリの声にリーリエは頷いてそう答えると、二人は懐かしい出来事を思い出しました。2年前にあった、少し苦い記憶を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2年前のエーテルハウス。子供たちとリーリエが見守る中、ミヅキはアシレーヌを、プルメリはエンニュートを従えて対峙していた。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレーヌ!』

 

アシレーヌは全身に水を纏い、勢いよくエンニュートに突撃する。その攻撃は素早く鋭く、確実にエンニュートを捉えていた。

 

「……遅いね。」

「え?」

 

アシレーヌの攻撃は確かにエンニュートを捉えていた。しかしアシレーヌが貫いたのはエンニュートではなく分身……つまりみがわりによって生み出された幻影だったのだ。その一瞬の隙にエンニュートは自慢の素早さでアシレーヌの背後に回り込む。

 

「どくづきだよ!」

『ニュット!』

「っ!?アシレーヌ!後ろ!」

『シレッ!?』

 

アシレーヌはミヅキの声に反応するが振り向いたときには既に遅く、エンニュートのどくづきが腹部に直撃する。

 

フェアリータイプのアシレーヌに対してどくタイプのどくづきは効果抜群。アシレーヌは大きく突き飛ばされ、壁にぶつかり衝撃が走る。戦闘でのダメージも含めかなり蓄積してしまい、これ以上の戦闘は困難な状態となる。

 

「アシレーヌ!?」

 

パートナーのアシレーヌが心配になりミヅキは急いで駆け寄り状態を確認する。ダメージがかなり溜まっており、その上最後のどくづきで毒状態となってしまってこれ以上動くことも難しい。

 

「勝負ありさね。予定通り、姫様は貰っていくよ。」

「待って!それだけは!?」

 

ミヅキが戦っていた理由。それはスカル団がリーリエを連れ去るために訪れたためだ。シンジはタイミングの悪いことに現在アセロラの試練を受けにいっている最中だ。そのため、自分がリーリエを守るしかないとプルメリと戦うことにした。

 

しかし幹部と言うだけありプルメリの実力は相当なもので、善戦したもののミヅキは彼女に敗北してしまった。普段はバトルを楽しむことに全力を尽くすミヅキだが、今はそんな余裕すらなくなり彼女は悔しさのあまり歯を食いしばってしまう。

 

『し……レヌっ!』

「っ!?アシレーヌ……」

 

アシレーヌは限界近い体力になりながらも自分の体に鞭を打って立ち上がる。そんなアシレーヌを見てプルメリは『へぇ~』と称賛の声を漏らす。

 

「その根性は認めるよ。お望み通り、トドメを指してあげるさ。」

『エット!』

 

そう言ってプルメリとエンニュートはゆっくりと歩み寄る。アシレーヌも立ち上がったはいいものの、毒のダメージを合わさり思う様に体が動かない。もうダメか、と思ったその時、彼女たちを庇う人物の姿があった。

 

「まっ、待ってください!」

「り、リーリエ!?」

 

その人物とはミヅキが守るべき対象、リーリエであった。リーリエは両手を広げ、ミヅキたちを守るようにプルメリの前に立ちはだかる。

 

「わ、私を連れて行ってください。だから、これ以上ミヅキさんやここの子どもたちには手を出さないでください!」

 

子どもたちは揃って「お姉ちゃん!」と心配そうに言う。ミヅキも「それはダメだ」と彼女を止める。

 

リーリエもやはり恐怖があるのか、手足が小さく震えている。ポケモンを持たずトレーナーではない彼女にとって、プルメリとエンニュートの前に立つのは勇気のいる行為だろう。

 

そんなリーリエを見たプルメリは……

 

「姫様……あんた、中々肝が据わってるじゃないか。」

 

「うちの連中にも見習ってほしいもんだね」、と誰にも聞こえない声で呟く。

 

「いいよ。これ以上その子や子どもたちには手を出さないさ。お前たち、姫様を丁重に連れて行き。怖がらせるんじゃないよ。」

『へい!姉御!』

 

プルメリの指示に従い、下っ端たちはリーリエを連れて行こうとする。その姿を見たミヅキは、もう一度リーリエの名前を呼んだ。

 

「リーリエ!!」

「ミヅキさん……」

 

リーリエはミヅキの方へと振り向き、最後に言葉を伝えた。

 

「守って下さって、ありがとうございます。ですが、私なら大丈夫ですから。……シンジさんに、よろしく伝えておいてください。」

 

そう言って、リーリエはいつもの笑顔ではなく、無理に作った笑顔のままスカル団に連れて行かれた。ミヅキはその姿を見て、あまりの悔しさ、自分の弱さに苛立ちを感じて涙を流した。

 

「さて、後はあの子を待つとするかね。あいつとも、決着を着けなくちゃ行けないからね。」

 

そう言ってプルメリは、シンジの試練が終わるまでエーテルハウスの前でエンニュートと共に待機することにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あの時の姫様、正直凄いと思ったよ。」

「すごい……ですか?」

「ああ、あたいらの前に飛び出すバカなんか今までいなかったよ。どいつもこいつもあたいらと目を合わせただけでビビッちまうからね。」

 

独特なメイクのせいもあるだろうが、目を合わせた者たちは誰しもがプルメリたちの威圧感に負けてしまい目を逸らしてしまう。しかしあの時のリーリエは目を逸らすどころか真っ直ぐとプルメリの目を見て立ち向かった。

 

あの時のリーリエは尊敬に値するレベルだったと彼女は素直に告白する。リーリエもそんなことはないと、照れながら謙遜する。

 

「いや、ホントのところさ……あの時あんたを素直に連れて行くの、戸惑ったんだ。」

「え?」

「姫様みたいないい子を連れて行くのは、あたいにとっても苦痛だったのさ。でもあたいはあいつ……グズマの役に立ちたいとも思った。それに、裏で糸を引いてたエーテル財団にもビビっちまってた。結局、あんたよりもあたいの方が弱い臆病者だったってことさね。」

「プルメリさん……」

 

今更だがと、プルメリは当時の心境を告白する。そんな彼女の心境を聞いたリーリエは、首を振り彼女の考えを否定する。

 

「いえ、そんなことはありませんよ。」

「あっ?」

「プルメリさんはトレーナーとしてとてもすごい実力を持っていました。当時トレーナーじゃなかった私でも分かりました。」

 

リーリエは「それに」と話を続ける。プルメリはそんな彼女の話を静かに聞いていた。

 

「プルメリさんはとても優しい方です。」

「はっ?あたいが優しいだって?何言ってんだい……。」

「確かにスカル団は悪いことをしていたかもしれません。ですが、プルメリさんは私に対して決して酷いことをしようとはしませんでした。コニコタウンでの時も、とても優しく接してくれました。それに、優しいことが何よりの強さだって、私は知っていますから。」

「……はっ、ホント、あんたはすごい姫様だよ。」

 

リーリエの言葉を聞いたプルメリが小さくそう呟く。よく聞き取れなかったリーリエはなんと言ったのか聞きなおすが、プルメリは何でもないとはぐらかす。

 

「許してもらおうなんて思ってないよ。でも、さ……もしあたいに出来ることがあればいつでも言いな。罪滅ぼしなんて綺麗なもんじゃないけど、出来る限り手伝ってやるさね。」

「プルメリさん……」

 

言っていたことが気恥ずかしくなったプルメリは、顔を赤くしながらリーリエから目線を逸らす。

 

(……やっぱりあたいはまだまだ弱いね。) 

「……あんたの王子様にもよろしく伝えておいて欲しいね。次やる時は絶対に負けないってね。」

「はい、必ず伝えておきます。」

 

その言葉を聞いたプルメリは彼女に背中を向け、手を軽く上げてその場を去る。その背中を見たリーリエは、「やっぱり優しい人だな」と心の中で思ったのであった。

 

そんな彼女を見届けると、少し離れたところからリーリエの名前を呼ぶ声が聞こえた。そちらの方を振り向くと、先ほど出かけたアセロラが小走りで近付いてくる姿が確認できた。

 

「お待たせ―!って、こんなところで何してるの?」

「いえ、ちょっと知り合いの方と立ち話ししてて……」

「ふーん、そうなんだ。」

「ところで、用事は終わったのですか?」

「うん!ばっちり解決してきたよー!」

 

ブイサインをして柔らかい笑顔を見せるアセロラ。無邪気で子どもっぽい笑顔を見せるアセロラからは、四天王やキャプテンの面影はまるで見えない。寧ろ試練に挑む緊張感が解れて、和やかさすら感じてしまう。

 

「よーし!じゃあ早速試練に向かおうか!」

「えっと、すぐに受けても大丈夫なんですか?」

「さっきも言ったけど大した用事じゃないからね。リーリエがいいなら全然構わないよ。」

 

アセロラの言葉にリーリエは改めて覚悟を決め、試練に挑む決意を決める。

 

「はい!ではよろしくお願いします!」

 

そう決意の秘めた言葉をアセロラに伝えると、アセロラは試練を行うためにリーリエを案内するのであった。




2周年リーリエが出たと聞いて可愛かったのでポケマスを始めた男。

22連でリーリエが出たのでリセマラの必要ないな、と思ったら他11連でマジコスダンデ、11連でN様、更に11連でマジコスグリーン*2&リーフと言う神引きをしてしまいました。ポケマスの排出率神すぎでは?

UNITEにニンフィアが追加されるのはもしかしたらスマホ版配信時にマンムーと同時実装かも?
先日実装されたカメックス君は普通に使いやすくて強かったです


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アセロラの試練!恐怖の跡地とぬしポケモン!

SM最難関と言われるみんなのトラウマ。ラムのみ持っている関係で私的にはウルトラネクロズマよりしんどい説ある


スカル団元幹部であるプルメリと少し懐かしい話をしたリーリエ。とある用事を済ませたというキャプテン、アセロラに案内されたのは、エーテルハウスから少し南に行ったところに広がる小さな浜辺であった。

 

リーリエはアセロラの案内の元、とある建物の前へとたどり着いた。

 

「アセロラさん、ここは……」

 

しかし建物と言っても原形はあまり残っておらず、窓はほとんど割れていて、建物の一部も崩壊していた。むしろ建っているのが不思議なぐらいだ。

 

「ここは昔のスーパーメガやすの跡地。カプの村が無くなったのと同時にここも潰れたんだけど、今では試練の場所として活用させてもらってるんだ。」

「と言うことはもしかして」

「そっ!ここがアセロラの試練の場所、メガやす跡地だよ!」

 

アセロラがリーリエの方へと振り向いて笑顔で答える。リーリエはやっぱり、と思う一方、こんな不気味さを感じる場所に入るのかと少し戸惑う。見た目はまるで事故物件のそれである。普通の人からはあまり近寄りたくない場所であろう。

 

不安そうにするリーリエだが、彼女の懐にある一つのモンスターボールが軽く揺れた。

 

(シロン?)

 

それはシロンの入ったモンスターボールであった。シロンが直接口にしているわけではないが、リーリエにはシロンの考えていることがなんとなく伝わってきた。

 

(私が付いているから大丈夫……ですか?)

 

リーリエがそう心の中で考えると、リーリエに伝わったのと同様にシロンにも伝わった。シロンはリーリエに対しモンスターボールを再度小さく揺らすことで返答する。

 

(……そうですね。私にはシロンが、みんなが付いています。大丈夫、もう大丈夫ですよ。)

 

シロンの勇気づけに、リーリエは不思議と心の中で感じていた恐怖が無くなっていった。トレーナーとポケモンの絆はやはり素晴らしいものだと改めて感じる事ができた。

 

「……アセロラさん。試練の内容教えてもらってもいいですか?」

「試練の内容はね……このメガやすにいるポケモンをポケファインダーで撮影することだよ!その正体を突き止めれば、試練クリアを認めるからね!」

 

ポケファインダーとは、ロトム図鑑に搭載されているカメラ機能である。主にポケモンの生態などを図鑑に記録するために使用する機能だが、今回はその機能を使った試練のようである。

 

『ビビッ、撮影は任せるロ。』

 

ロトムがリーリエに一言そう言うが、どことなく元気がない様子である。彼女もそのことに気付き大丈夫かと一声かけるが、ロトム図鑑は問題ないとだけ言って懐に戻った。

 

「特に危険はないと思うけど、バトルになるとは思うから気をつけてねー。」

 

アセロラに見送られながら、リーリエはモンスターボールを握りしめて試練の場であるメガやす跡地へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アセロラさんの試練を受けるためメガやす跡地(実質廃屋ですが)に入った私は、一度深呼吸して気持ちを落ち着かせます。

 

建物の一部が崩壊していたため察しはついていましたが、内部もスーパーとしての面影は残っているものの、やはりと言うべきかかなりボロボロになっていて文字通りの廃墟となっています。雰囲気的にも、何かが出てきそうな不気味な印象です。

 

「ふぅ……出てきてください、シロン」

『コォン!』

 

深呼吸をして少し落ち着いた私は、モンスターボールからシロンを外に出しました。私が不安に感じていたのを察したシロンは、すぐに私に元へと歩みより擦り寄ってきてくれました。

 

『コォン』

「ありがとう、シロン。私はもう大丈夫ですよ。」

『コォン♪』

 

シロンの頭を撫でながら私はそう伝えました。私の言葉に安心したのか、シロンも私に微笑みかけてくれました。やっぱり、パートナーと気持ちを分かち合うことはとても素晴らしいことですね。

 

私とシロンがそんなやり取りをしていると、ロトム図鑑さんがゆっくりと懐から出てきました。

 

『ビビッ、ではボクを使って色々と撮影してみるロ。』

 

今回の試練内容はロトム図鑑さんに搭載されている機能、ポケファインダーを使って撮影することです。なのでロトム図鑑さんが出てくるのは分かるのですが、何となくロトム図鑑さんが少しブルブルと震えている気がします。

 

「ロトム図鑑さん、もしかして体調が優れないんですか?」

『ち、違うロ!ボクはいつでも体調万全だロ!』

「で、ですが……」

『……リーリエには敵わないロね。』

 

体調は万全だと言うロトムさんですが、やはり心配になり私はもう一度尋ねました。すると諦めたようにロトム図鑑さんは話始めました。

 

『実はボク……お化けとか怖いのが苦手なんだロ。』

「怖いのが苦手……ですか?」

 

図鑑になる前のロトムさんは確かでんき・ゴーストタイプのはずです。自分自身がゴーストタイプでもお化けが怖いと感じるとは……個体差があるのか、フォルムチェンジの影響なのか。ロトム図鑑さんには悪いですが、少し興味深いと感じてしまいます。

 

『リーリエは勇気を出しているのに、ロトムとして情けないロ。』

「そんなことないですよ。私もシロンも、ロトム図鑑さんがいてくれて心強いって思ってますから。」

『ビビッ、リーリエはやっぱりいい子だロ。これはボクも負けていられないロ!早速ポケファインダーでバンバン撮っていくロ!』

「はい!」

『コン!』

 

そうして私はポケファインダーを起動したロトム図鑑さん、シロンと共にメガやす跡地内部の探索を始めました。しかしその時、近くの空のダンボール箱に違和感を感じました。私が恐る恐る確認すると次の瞬間、段ボール箱が不自然に浮かび上がりました。

 

「ひゃ!?」

『ビビビビッ!?』

 

私とロトム図鑑さんは驚きのあまり変な声を出してしまいました。そんな私たちに、シロンは声を張って呼び掛けてくれました。

 

『コン!コォン!』

「!?そ、そうです!ポケファインダーで……」

 

私はハッなりロトム図鑑さんを構えました。シロンのおかげで少し冷静さを取り戻した私がポケファインダーを向けると、そこには一匹のポケモンさんの姿が映し出されました。

 

「これは……ゴースさん?」

 

そこに映っていたのはガスじょうポケモンのゴースさんでした。肉眼では目視できませんが、ポケファインダーにはハッキリとその姿が映っていました。

 

私は試練を果たすためにポケファインダーでゴースさんの姿を撮影しました。するとそれに気づいたゴースさんは姿を現し、こちらへと襲い掛かってきました。正体がポケモンさんだと分かれば、怖くはありません!

 

「シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

『ゴォス!?』

 

こちらを襲ってきたゴースさんにシロンのこなゆきが直撃しました。ゴースさんはその攻撃によって堪らず慌てて撤退しました。

 

「驚かせてしまってごめんなさい。」

 

いえ、驚いたのは私たちの方だとは思いますが……。

 

私たちは改めて探索を続けます。商品棚も倒れていて、メガやす内はかなり散らかってしまっています。そんな中で、一つだけカタカタと何かが動く物音が聞こえました。

 

私はその正体が気になり振り向くと、そこには倒れていたカートがひとりでに起き上がり、こちらに勢いよく突っ込んでくるのが確認できました。

 

『コン!』

 

私の危機を察知したシロンは私の前に飛び出し、こちらに突っ込んでくるカートを尻尾で叩き落としました。

 

「ありがとうございます!シロン!」

『コォン♪』

 

危ないところを助けてもらい私はシロンに感謝しました。それと同時に、私を襲った何者かの正体をポケファインダーで確認します。

 

『ゴスト!』

 

そこに映っていたのは先ほどのゴースさんの進化系、ゴーストさんでした。私がゴーストさんを撮影すると、ゴーストさんは悔しそうな表情を浮かべながらこちらに襲い掛かってきました。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

ゴーストさんにシロンのれいとうビームがヒットしました。ゴーストさんはそのままの勢いで壁にぶつかり、そのままゴースさん同様に撤退していき再び姿を隠しました。これでもうゴーストさんたちは襲ってくることはないでしょう。

 

ですがゴース、ゴーストさんと続けば、次のポケモンは大体想像がつきます。

 

私がそう考えていると、商品棚に残されていたヌイコグマさんを模したぬいぐるみが浮かび上がり、こちらへと向かって飛んできました。

 

「ひゃあ!?」

 

私はまた思わず変な声を出してしまいつつもぬいぐるみをよけることができました。

 

「し、シロン!ムーンフォースです!」

『コン!』

 

シロンはムーンフォースを解き放ち、その攻撃でぬいぐるみを撃墜しました。ぬいぐるみには悪いと思いましたが、現在は試練に挑戦しているため致し方ありません。

 

申し訳なさを感じながら、私はポケファインダーで正体の確認を行います。そこにいたのは……

 

『ゲンガー!』

 

そこにいたのは私の予想通り、ゴーストさんの進化形であるゲンガーさんでした。ゲンガーさんはゲラゲラとこちらを煽るように笑っていました。

 

ゲンガーさんはゴースさん、ゴーストさんに比べてかなりの強敵なはずです。私は警戒し、シロンと共にいつでも戦えるように臨戦態勢をとりました。

 

ゲンガーさんも私たちを敵とみなしたのか戦う構えを取ります。互いに覚悟を決めていざバトルが始まろうとしたその時……。

 

『ゲンガ!?』

 

ゲンガーさんは何かに気付いたのか、驚く表情を見せました。その後、ゲンガーさんは怯えるようにすぐに飛んで姿を消してその場を後にしました。

 

「ゲンガーさん……どうしたのでしょうか?」

 

突然ゲンガーさんが消えたことに私は戸惑うことしかできませんでした。

 

『コォン』

「シロン?どうかしましたか?」

 

シロンも何かに気付いたようで私に声をかけてきました。シロンが奥の方へと歩いて行ったので、私もシロンの後を追いかけて奥へと向かいました。

 

するとそこには一つの扉がありました。スーパーにはよくあるなんの変哲もない普通の扉ですが、私は不思議とその扉に違和感を感じ惹かれてしまいました。

 

私はその違和感に釣られ、そのままシロンと共に中に入っていきました。

 

「ここは……」

 

扉の奥はかなり狭い部屋になっており、荷物などは一切置かれておりません。しかし、壁には複数の写真が貼ってありました。その写真の殆どにはカントー地方の有名なピカチュウさんの姿が映っておりました。時々ピントがぶれていましたが、その特徴的な色と姿は間違えることはありません。

 

その中にあるピカチュウさんと少年の写真も不思議と気になりましたが、じっくりと見る間もなくロトム図鑑さんのポケファインダーが自動的に機能しました。

 

「ロトム図鑑さん?どうかしたんですか?」

『…………』

 

尋ねてみるものの、ロトム図鑑さんは一切返事を返すことがありません。自動的に起動しているため、怖くて気絶しているとは考えにくいです。

 

もしかしたらここにも他のポケモンさんが映るのかもしれない、と考え、私はロトム図鑑さんを構え周囲を確認するためにその場をゆっくりと回りました。

 

すると、そこには一匹のポケモンさんが映り込みました。一瞬ポケファインダーにはピカチュウさんが映ったように見えましたが、ポケファインダーを外して確認してみると別のポケモンさんでした。そのポケモンさんとは……。

 

『ミミッキュ!』

 

ピカチュウさんにそっくりな皮を被ったポケモンさん、ばけのかわポケモンのミミッキュさんでした。しかしそこにいたミミッキュさんは通常のサイズよりも一回りか二回りほど大きく、威圧感もかなり感じられました。間違いなくこの子がぬしポケモンです。

 

『ミミッキュ!』

「ひゃ!?」

 

ミミッキュさんが突然オーラを纏い、私はその圧力に負けて小さな部屋から外に飛ばされてしまいました。ミミッキュさんも私を追いかけ、小部屋から広い場所へと移動しました。

 

「っ!?シロン!」

『コォン!』

 

シロンに合図を出すと、シロンも私の前に出て戦う態勢をとりました。私たちの事を敵と判断したミミッキュさんは、皮の内側から黒い手の様なものを伸ばして攻撃してきました。ゴーストタイプの技、シャドークロ―です。

 

「躱してください!」

 

シロンは私の指示通りに回避しました。ミミッキュさんの手は床に突き刺さり、その衝撃すら私たちに届いてきました。相当な威力を持っていることはすぐに伝わります。

 

『ミミッキュ!』

「シロン!まずは動きを止めます!こなゆきです!」

『コォン!』

 

ミミッキュさんはシロンに向かって一直線に突っ込んできました。私はまずミミッキュさんの動きを抑えるためにこなゆきで攻撃しました。

 

しかし驚くべきことに、ミミッキュさんはシロンのこなゆきを物ともせずにシロンに接近してきました。ミミッキュさんはシロンを怒涛の近接攻撃で攻め込んできました。フェアリータイプの技、じゃれつくでしょう。

 

シロンはじゃれつくのフィニッシュで床に叩きつけられてしまいました。その後ミミッキュさんは着地すると、皮の上部分がポキッと傾きました。

 

その姿を見て私は本で読んだ知識を思い出しました。ミミッキュさんの特性は“ばけのかわ”。相手の攻撃を一度だけ無効化する特性です 。先ほどのこなゆきが効かなかったのもその特性が原因でしょう。

 

「シロン!大丈夫ですか!?」

『こ……ン!』

 

シロンも確実にダメージは貰っている様子ですが、それでも立ち上がり私の声に答えてくれます。そんなシロンに休む暇も与えず、ミミッキュさんは猛スピードで突進してきました。

 

今度はミミッキュさんは自身の尻尾を振りかぶってきました。くさタイプの技、ウッドハンマーです。

 

「シロン!かわしてください!」

『コォン!』

 

シロンは辛うじてミミッキュさんの攻撃をかわし、ミミッキュさんのウッドハンマーは空を切りました。と言ってもシロンのダメージは先ほどのじゃれつくでかなり奪われてしまっています。それだけミミッキュさんの攻撃力は非常に高いと言うことの証明になります。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

シロンは無数のこおりのつぶてで反撃をします。しかしミミッキュさんはシャドークロ―で全て防ぎました。無数に放ったはずのこおりのつぶては一つ残らず割られてしまい、ミミッキュさんにはダメージが入っている様子はありません。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

 

こうなったら自身の最大火力、ムーンフォースで攻めようと判断する。シロンはムーンフォースの力を解き放ちミミッキュに向かって攻撃する。

 

しかしミミッキュさんはウッドハンマーを振りかざしました。その強力なウッドハンマーでムーンフォースすらも弾き返し、威力を上げて反撃してきました。

 

『コォン!?』

 

シロンはギリギリでその反撃をかわし、なんとか大ダメージは逃れました。しかし手数の多いこおりのつぶて、威力の高いムーンフォースすらも通らないとなると、もはや最後に残されたのはあの手しかありません。

 

「ミミッキュさんを倒すには、Z技しかなさそうですね。」

 

しかしZ技は強力な分隙も晒してしまう諸刃の剣です。タイミングを見誤れば反撃を喰らい一溜りもありません。ですが相手のミミッキュさんには全ての技が通用しません。どうやって隙を見つけ出そうかと試行錯誤します。

 

その時私は一瞬思い出しました。あの時、ミミッキュさんの使ったシャドークロ―の威力を。

 

「……ミミッキュさんの隙を突くには、あの手しかありません。」

 

少しリスクはありますが、これしかないと踏んでシロンの名前を呼びました。

 

「シロン!」

『……コォン!』

 

私と目を合わせたシロンは、私の事を信じて頷いてくれました。私とシロンの信頼があれば、必ず成功するはずです!

 

『ミミッキュ!』

 

ミミッキュさんは上空に上がりシャドークロ―で降下しながら攻撃を繰り出してきました。

 

「(一か八かですが……)シロン!れいとうビームです!真下に撃ってください!」

『コン!』

 

シロンは真下にれいとうビームを放ち、その勢いを利用して体を浮かせました。それと同時に床は氷漬けになりました。ミミッキュさんのシャドークロ―は高威力を保ち床の氷を砕きました。

 

『ミミッキュ!?』

 

ミミッキュさんの砕いた氷は、破片となりミミッキュさん自身に降りかかりました。私の狙いはこれにあります。

 

シロンのれいとうビームで凍った床をミミッキュさんの力で砕くことができれば、ミミッキュさんの自滅を誘えるのではないかと考えました。しかしこの作戦には一つ懸念点がありました。

 

もしこの作戦でミミッキュさんが自滅しなかった場合、シロンは大きな隙を晒してしまい恰好の的となってしまい反撃は免れません。失敗していたら、逆にシロンがやられていたことは間違いありません。

 

私はミミッキュさんがひるんだことを確認し、シロンに合図をとりました。

 

「シロン!」

『コォン!』

 

私の合図を受け取ったシロンも構えを取り、私はシロンと心と息を合わせてポーズを取ります。こおりタイプのZ技のポーズです。

 

「これが私の……私たちの全力です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

 

シロンの足元から氷の柱が立ち上がり、シロンを高く持ち上げました。シロンの体内に力が溢れ、シロンはその集中した力を一気に解放しミミッキュさんに向かって解き放ちました。

 

氷の破片で怯んだミミッキュさんは反応に間に合わず、Z技がミミッキュさんに突き刺さりました。Z技がミミッキュさんを凍りつかせ、氷がバラバラに砕け散りました。

 

「っ!?はぁ……はぁ……シロン!大丈夫ですか?」

『こぉ……ん……』

 

シロンの元気もかなり無くなっていますが、まだ戦闘不能には至っていません。

 

しかし体力も限界に近くなり、ほぼ戦闘不能と大差ありません。少なくとも戦闘続行は不可能と思っていいでしょう。

 

この一撃でミミッキュさんを倒すことができていなければ、これ以上シロンは戦うことはできません。爆風が晴れるまで、私はシロンと共に願うことしかできませんでした。

 

しかし晴れると、そこにはもはやミミッキュさんの姿は見当たりませんでした。私たちは驚きのあまり声も出ませんでした。

 

「ミミッキュさんはどこに……」

 

まわりを見渡してみましたがミミッキュさんの姿が見当たりません。一体どこに行ったのかと思いましたが、これ以上襲ってくる様子はないとなると、恐らくミミッキュさんを倒すことができたのでしょう。あれだけ攻撃的なミミッキュさんが戦える状態で攻撃をやめるなんて思えませんから。

 

私はこれ以上ここに長居するわけにはいかないと、シロンと共にメガやす跡地を後にすることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!出てきた出てきた。おーい!」

 

リーリエが外に出ると、アセロラが笑顔でこちらに手を振っている姿が確認できた。リーリエは手を振り返してシロンと共に彼女の元へと近付く。

 

「お疲れ様ー!その様子だとかなり苦戦したみたいだねー。」

「はい。でも写真はとることができました!」

 

「じゃあ早速だけど見せて!」と言うアセロラにリーリエはポケファインダーを起動したロトム図鑑を渡した。アセロラはロトム図鑑を受け取ると、撮った写真を次々と眺めていく。

 

「ふむふむ、ちゃんと撮れてるみたいだね。いいよいいよ!」

 

そう言いながら上機嫌に写真を眺めていくアセロラ。しかしその途中、顔をしかめて少し不思議そうな表情を浮かべた。

 

「あれ?この写真、なんだかブレててよく見えないね。」

「え?」

 

そんなはずは、とリーリエも一緒にポケファインダーを覗き込む。するとそこに映っていたのはリーリエが戦ったミミッキュの僅かな姿だけで、しかも写真のピントは全く合っていなかった。

 

「でも確かに撮影していた時はちゃんと撮れていました!このスーパーの奥の小部屋で!」

「……ん?奥の小部屋?」

 

小部屋と言う言葉にアセロラは目を見開いて首を傾げた。次の言葉にリーリエは唖然とするしかなかった。

 

「いや、このスーパーに小部屋なんてないはず……そもそも奥に部屋なんて……」

「……え?でも確かに私は……」

 

アセロラの話を聞いてリーリエはふと思い出す。そう言えばあの小部屋に入る際、謎の違和感を感じたことを。しかも小部屋に入った後、ロトム図鑑が自動的に起動したことを。そして直前に出会ったゲンガーが突然逃げ出したことを。

 

それらの現象を思い出し、リーリエとアセロラはお互いに背筋に嫌な汗を掻く。自分の体験したことは、現実なのか幻想なのかが分からなくなり、リーリエの頭は真っ白になったのであった。

 

暫く時間が経過し、落ち着いたアセロラは、リーリエに試練突破の証としてゴーストZを渡した。これにより、リーリエは無事アセロラの試練突破を認められたのだった。

 

そんな彼女たちを、あるポケモンが静かに草の茂みから眺めていたのには、誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マタ……アソボウネ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゲーフリの闇……私は大好きです


明日はようやくテイルズの最新作(steam版)配信日。実はテイルズシリーズが大好き


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VSアセロラ!四天王ゴースト使いの実力!

折角なので戦わせたかったため2人を無理やり戦わせました。
ただここまで長くなるとは思ってなかったんだ……。

因みのこの話の投稿時間は18時55分。ギリギリじゃねぇか!


アセロラの試練が終わり、エーテルハウスで休息をとっていたリーリエ。現在はテレビの放送をハウスの子どもたちと一緒に見ている。その放送とは……

 

「いっけー!シンジ兄ちゃん!」

「負けるな―!」

 

そう、アローラチャンピオン、シンジの試合の生放送である。今回も以前リーリエが見た試合同様防衛戦ではなくエキシビションだが、それでもチャンピオンの試合と言うだけはあり視聴率も非常に高い。当然エキシビションと言うだけはあり、対戦相手に選ばれるトレーナーも相当な実力者である。

 

『ハッサム!メタルクロー!』

『ハッサ!』

『でんこうせっか!』

『フィア!』

 

対戦相手のハッサムはメタルクローで襲い掛かってくるが、ニンフィアはその攻撃を華麗に躱しつつ腹部に強力な一撃を与える。カウンターとして受けたその一撃でハッサムは大きく怯み明らかな隙が生まれた。

 

『今だ!ムーンフォース!』

『フィイーア!』

 

ニンフィアはでんこうせっかの反動で距離を離し、すかさずムーンフォースで追撃する。その動きには無駄がなく、観客たちも見惚れている様子であった。

 

『ハッサ!?』

『っ!?ハッサム!』

 

隙を突かれたハッサムはムーンフォースの直撃を受ける。ハッサムはその衝撃によるダメージで膝から崩れ、その場に倒れ伏せる。目を回して戦闘不能状態となったハッサムに、思わずトレーナは駆け寄った。

 

その様子を見て審判が勝負ありの合図を出す。結果はチャンピオンとしての圧倒的な差を見せつけての勝利で終わった。その素晴らしい戦いに、観客やテレビの前にいる子どもたちもたまらず大歓声を上げた。

 

アローラにおいてポケモン達との娯楽は充実しているが、チャンピオンが登場するまでポケモンバトルに関してはそこまでメジャーではなかった。しかしチャンピオンが就任してからは、一般的に楽しむこともできるものとなった。それ故にこういったポケモンバトルの放送は非常に評判がいい。

 

特に今のチャンピオン、シンジのバトルは正面から受けて立ちながらも魅せるバトルをする。真っ向から戦えば相手もいつも以上に力を発揮することができ、魅せるバトルによって観客も同時に楽しませている。だからこそ彼はチャンピオンとしての座を維持し、同時に人気も高いのだ。

 

それに彼は島巡りの際に一度このエーテルハウスに訪れている。優しく人当たりのいい彼は子どもだちにも人気があり、今ではすっかりファンとして彼のことを応援している。面倒見がよく、分け隔てなく平等に接してくれるのも彼が人気の理由なのだろう。

 

「ごめんねー、うちの子たちシンジ君のファンだからうるさくて……」

「いえ、私は別に気にしていませんから。それに私もシンジさんのバトルは見ていてとても参考になりますし。」

 

ある意味でシンジの一番のファンであるリーリエ。彼にそばで戦いをずっと見守ってきたのが原因か、自然と彼の戦いが身に付いている。そんな彼女にとって、チャンピオンの戦い以上に参考になるバトルはないだろう。

 

そしてシンジのバトルが終わり、エキシビションの生放送が終了すると、子どもたちは満足したようにテレビから離れてアセロラの元へと駆け寄った。

 

「ねぇねぇ!アセロラ姉ちゃん!」

「ん?どうしたの?」

「アセロラ姉ちゃんとシンジ兄ちゃんって、どっちが強いの?」

「んー……さすがにシンジお兄ちゃんかな。アセロラも四天王だけど、チャンピオンには勝てないよー。」

 

子どもたちの質問にアセロラはそう答える。実際2年前、アセロラもチャンピオンを目指すと言う野望を抱いていたが、アローラリーグにてシンジと戦いいい線まで行ったものの敗北してしまった。結果、本来しまキングであるクチナシが四天王として誘われたが、クチナシ本人が断りアセロラを推薦したため彼女が四天王になったと言うわけだ。

 

とは言え彼女自身の実力としては四天王として申し分ない。結果的に成りあがりだとしても、他の四天王に全く引けを取らないほどではある。しかしそれでも届かない実力者と言うのがチャンピオンと言うものなのである。

 

「やっぱりアセロラ姉ちゃんでもダメかー。」

「そりゃあシンジお兄ちゃんは強いからねぇ。」

「じゃあさじゃあさ!リーリエお姉ちゃんとアセロラお姉ちゃんは?どっちが強いの?」

「私とアセロラさん……ですか?」

 

子どもたちがそんな疑問を口にする。リーリエ的には四天王であるアセロラの方が強いことは分かり切っている。しかし、トレーナーとしては戦って確かめてみたいと心の中で感じてしまっている。2年前までの自分では考えられないことだが、トレーナーとしての自覚が出てきた今となってはそう言った欲求が強くなってきているのを自分でも感じてきているのが分かる。

 

「それは……面白そうだね!」

「アセロラさん?」

「リーリエ!アセロラとバトルしようよ!」

 

アセロラは子どもたちの疑問から迷うことなくリーリエとバトルしようと提案する。リーリエは突然の提案に驚くが、彼女的には寧ろ願ってもいないチャンスである。リーリエに断る理由はなかった。

 

「はい!私も是非戦ってみたいと思ってました!お願いします!」

 

こうしてリーリエとアセロラはそれぞれ一人のトレーナーとして戦うことになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人はバトルをするために外に出る。子どもたちも観客として見守るためにエーテルハウス前の階段に座る。小さく少ないながらも、まるで先ほどのエキシビションを見守っていた観客のようであった。

 

「ルールはシンプルに2対2。どちらかが先に2体戦闘不能になったらバトル終了、でいいよね?」

「はい!分かりました!」

 

ルールは2体ずつ。互いの実力を図りやすいシンプルなルールでのバトルとなる。試練も終わったあとなため、時間帯的にも長くならなくて丁度いいだろう。

 

「アセロラ姉ちゃんがんばれー!」

「リーリエお姉ちゃんも負けるなー!」

 

子どもたちは無邪気に二人を応援してくれている。そんな小さな観客に応えるように、リーリエとアセロラは1体目のポケモンが入ったモンスターボールを手に取った。互いに準備が整ったことを確認した二人は、同時にモンスターボールを投げた。

 

「行くよ!ダダリン!」

「お願いします!フシギソウさん!」

『ダダ!』

『ソウソウ!』

 

アセロラは船を停泊させる碇に似たシルエットであるダダリン、リーリエはフシギソウを繰り出した。ロトム図鑑はリーリエのために初めて見るダダリンの詳細を説明した。

 

『ダダリン、もくずポケモン。ゴースト、くさタイプ。海に漂うモズクの魂がゴーストポケモンとして生まれ変わった。イカリの一撃はホエルオーさえ一撃と倒してしまうほどのパワーを持つ。』

 

見た目とは裏腹に相当のパワーを持っているそうだ。本では見たことはあるが、発見例も少ないのかあまり詳しくは載っていなかった。もちろん対峙するのも初めてだが、こんな時に戦うことになるとは思わなかった。いい機会にいい経験ができるとリーリエは胸を躍らせる。

 

『ダダッ!ダダ!』

「おっ?ダダリンもやる気だね。じゃあ早速、アセロラたちから仕掛けるよ!」

 

以外にも先手を仕掛けるのはアセロラであった。リーリエもそう宣言したアセロラとダダリンに警戒し、フシギソウと一緒に身構える。

 

「ダダリン!エナジーボール!」

『ダダ!』

「フシギソウさん!こちらもエナジーボールです!」

『ソウ!』

 

ダダリンのエナジーボールに対抗し、フシギソウもエナジーボールで反撃する。互いの技は相殺し合い中央で弾け合う。これは両者にとっては挨拶代わりに等しい。

 

その技のぶつかり合いを合図に、ダダリンは続けて攻撃を仕掛ける。

 

「ダダリン!アンカーショット!」

『ダダ!』

「躱してください!」

『ソウソウ!』

 

ダダリンはイカリを長く伸ばしフシギソウを攻撃する。フシギソウはジャンプして回避するが、アンカーショットはフシギソウのいた地面を軽く抉り取った。さすがはホエルオーを一撃で倒すと言われている程のパワーだと感心する一方、ゾクッと寒気がした。

 

「フシギソウさん!つるのムチです!」

『ソウ!』

 

イカリを戻している最中のダダリンに隙が生じたとフシギソウはつるのムチで反撃する。その反撃が決まると思った刹那、アセロラはニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ゴーストダイブだよ!」

『ダダ』

 

ダダリンは闇の中へと姿を消しフシギソウのつるのムチは空を切る。ゴーストダイブは自らの姿を消し、相手の不意を突いて攻撃する技だ。守る技すら無視するため、どこから攻撃してくるかは分からない。フシギソウは警戒心を上げてより一層身構える。

 

「……アンカーショット!」

「っ!?」

 

どこからともなくダダリンのイカリのみが飛び出し、フシギソウを絡めとった。まさかのゴーストダイブによる攻撃ではなく、ダダリンの特徴を活かした合わせ技にリーリエとフシギソウは戸惑う。

 

「そのまま叩きつけて!」

『ダダ!』

 

ダダリンは姿を現し捉えたフシギソウを叩きつけて追撃を仕掛けた。その衝撃でフシギソウは大きなダメージを負い、早くもかなり追い込まれてしまった。

 

「フシギソウさん!大丈夫ですか!?」

『そ……ウ、ソウ!』

 

フシギソウは立ち上がる。ダメージは見るからに大きいが、まだまだ行けるとフシギソウの顔が語っている。

 

「すごいガッツ……さっすがリーリエのポケモン!アセロラも楽しくなってきた!」

 

アセロラも楽しそうにしながらもふにゃっとした笑顔でそう言った。

 

「もう一度ゴーストダイブ!」

『ダダ』

 

再びダダリンはゴーストダイブで姿を消す。またもやどこから現れるか分からない攻撃にリーリエとフシギソウは一切の緊張を解くことができないでいる。どうするべきかと考えていると、再びアセロラの指示が出る。

 

「今だよ!ダダリン!」

『ダダ!』

 

今度はダダリンが姿を現しフシギソウの背後から体ごと振り下ろすかのように攻撃を仕掛ける。

 

「ジャンプして躱してください!」

『ソウ!』

 

フシギソウは紙一重のタイミングで攻撃を回避する。しかし反撃を加える前に、ダダリンは行動に移した。

 

「もう一回ゴーストダイブ!」

『ダダ』

「フシギソウさん!つるのムチで捕まえてください!」

『ソウ!』

 

ダダリンは改めてゴーストダイブで逃げようとするが、フシギソウはすかさずつるのムチで攻撃する。空間内に逃げようとするダダリンを捕らえ、力づくで表へと引きずり出した。

 

「っ!?ダダリン!」

「今です!ソーラービームです!」

 

フシギソウはダダリンを捕まえたまま最大火力であるソーラービームをチャージする。このままではマズいと焦るアセロラは、ダダリンに攻撃の指示を出した。

 

「ダダリン!アンカーショット!」

『ダッ!』

 

つるのムチで捕らえられたダダリンは何とかしてアンカーショットで反撃しようとする。チャージしながらつるのムチで捉えているため、つるのムチは徐々に緩くなってしまっていた。

 

ダダリンの必死の抵抗にフシギソウのつるのムチは体から引き剥がされてしまう。つるのムチから解放されたダダリンのアンカーショットが遂に解き放たれた。それと同時に、フシギソウのチャージも完了し最大パワーのソーラービームがフシギソウの背中の蕾から放たれた。

 

互いの技は交差し、それぞれが光に包まれ爆ぜる。その衝撃が止むと、フィールドを砂埃が包んでいた。そして砂埃が晴れると、そこには目を回し倒れているフシギソウとダダリンの姿があった。

 

「フシギソウさん!」

「ダダリン!」

『ソウ……ソウ……』

『ダダ……』

 

フシギソウとダダリンは同時に力尽き戦闘不能となっていた。互いのソーラービームとアンカーショットが直撃し、その衝撃の強さで戦闘不能まで陥ったのだろう。

 

二人はフシギソウとダダリンをそれぞれモンスターボールへと戻してお疲れと声をかける。

 

「いやぁー、まさかアセロラのダダリンがこんな形で負けちゃうなんてね。アセロラ、思わずお口あんぐりしちゃったよ。」

「私もです。やっぱり四天王のポケモンさんはすごいですね。」

 

相手が四天王相手とは言え、自分もかなり成長はしてきているとは感じていたリーリエ。しかし結果は必死に戦ってようやく相打ちと言うものであり、あまりにギリギリなものであった。それだけ四天王は強力なトレーナーなのだということが改めて理解させられる。

 

「さて、次でラストだね。アセロラのポケモンは、この子だよ!」

『スナァ!』

 

アセロラは二体目のポケモンを繰り出す。まるまる砂のお城の見た目をしたポケモンを、ロトム図鑑は詳細説明した。

 

『シロデスナ、すなのしろポケモン。ゴースト、じめんタイプ。ポケモンの生気を奪う恐ろしいポケモン。人を操り砂の城を作らせて進化したと言われている。』

 

その図鑑説明にリーリエはゾゾッと寒気がする。ゴーストタイプらしくはあるのだが、それでも生物の生気を吸い取る上に人を操ると言うのは恐ろしい話である。

 

しかしシロデスナはじめんタイプ。ならばぶつけるならばこのポケモンがいいだろうと、リーリエはモンスターボールを投げた。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

続けて繰り出したのはみずタイプのマリルであった。じめんタイプのシロデスナにみずタイプのマリルは相性がいい。しかしアセロラの表情はどちらかと言うと余裕がありそうな笑みであった。

 

「さあ、今度はリーリエからどうぞ。」

「……では遠慮なく。マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!』

 

アセロラの言葉に含みがあるように聞こえるが、それでも先手を許されるのであれば遠慮する必要はないと、バブルこうせんで先制攻撃を仕掛ける。マリルのバブルこうせんが、特に抵抗の見せないシロデスナに直撃した。

 

『スナァ!!!』

 

シロデスナに対してバブルこうせんは効果抜群。明らかにシロデスナは苦しんだ様子を見せるが、それでもなんの抵抗も見せない。

 

しかしシロデスナが苦しんでいるならばこの機を逃すことはないと攻撃を畳みかける。

 

「マリルさん!アクアテールです!」

 

再び弱点であるアクアテールで攻撃するマリル。マリルの水を纏ったアクアテールがシロデスナに直撃する。しかし、やはりと言うかシロデスナは抵抗を見せない。

 

ゴーストタイプということもありどこか不気味さを感じてしまうこの状況。一体何を考えているのかと警戒するリーリエに、ようやくアセロラが動き出した。

 

「シロデスナ!すなあつめ!」

『スナァ』

 

シロデスナは周囲から砂をかき集める。すなあつめはシロデスナの専用技で、じこさいせいと同じく自身の体力を回復させる技だ。シロデスナはそれにより自身の体を新しい砂で構築しなおす。

 

体力を回復されてしまうが、ならばまたダメージを与え続ければいいともう一度攻撃を仕掛けて畳みかける。

 

「もう一度アクアテールです!」

『リルル!』

 

マリルはアクアテールで再び追撃する。弱点であるアクアテールはシロデスナを襲う。しかし、先ほどとは明らかに様子が違っていた。

 

『スナァ!』

 

シロデスナはマリルのアクアテールを弾き返した。何故弾き返されたのかと考えるリーリエだが、よく見てみるとシロデスナの身体に僅かだが変化があった。

 

シロデスナの身体は先ほどに比べ、まるでコーティングでもしたかのようにツヤツヤとしていたのだ。何故そんな変化があったのかと考えるリーリエは、ある情報を思い出した。

 

シロデスナの特性はみずがため。みずタイプの技を受けると耐久力が上がっていく特性だ。だから先ほどから弱点であるみずタイプの技を技と受け止めていたのだ。

 

「くっ!?迂闊でした……」

 

アセロラが抵抗してこない時点から察するべきだったと後悔するリーリエ。こうなったら長期戦になる前に決着を着けるしかないと畳みかけるが、その様子からは明らかに焦りが見えていた。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!』

 

耐久力が上がると言っても上がるのは防御力のみ。特殊技に対して耐久力が上がるわけではないため、バブルこうせんならば効果があると考えバブルこうせんで攻撃する。しかし、遂にアセロラとシロデスナが動き始める。

 

「シロデスナ!シャドーボール!」

『スナァ!』

 

シロデスナはシャドーボールで反撃する。強力なシャドーボールはバブルこうせんをあっさりと打ち消し、その攻撃はマリルに直撃して撃ち落とした。

 

「マリルさん!?」

『リル……』

 

撃ち落とされたマリルは立ち上がろうとするが、シロデスナは手負いのマリルを逃がすことはなかった。

 

「これで終わらせるよ!だいちのちから!」

『スナ!』

『リル!?リルゥ!』

 

文字通り大地の力がマリルを包み込む。マリルは大地の力に飲み込まれ、その断末魔と共に光が消えた瞬間その場でバタリと倒れ込む。

 

「っ!?マリルさん!」

『リル……ル……』

 

リーリエは心配になるマリルの元へと駆け寄る。ダメージは負っているものの、意識はハッキリしているようでリーリエの声に反応してくれた。

 

「勝負あり、だね。」

「はい、私たちの完敗です。」

 

その瞬間、リーリエの敗北が決定した。敗因は知識不足によるものか……。いや、それはあくまで一つの要因でしかないとリーリエは頭を振る。

 

ただ単純にアセロラの方が強かった。それだけの話である。だけど、だからこそ、今回の経験を糧にして更に強くなるしかないのだとリーリエの心に染み込んでいった。そうでなくては、目標までは夢のまた夢なのだから。

 

「アセロラ姉ちゃん強かった!」

「うん!でもリーリエお姉ちゃんもすごく強かった!」

 

子どもたちはキラキラした眼で称賛の言葉を贈る。その純粋な瞳は、まるで自分も早くトレーナーになりたいと物語っているようにリーリエには感じた。トレーナーになった今となっては、彼らの気持ちも分かる気がする。

 

「いいバトルだったけど、今日はもう遅いからエーテルハウスに泊って行って。ポケモンたちも休ませないといけないからね。」

「はい、ありがとうございます。アセロラさん。」

 

改めて四天王の強さを思い知ったリーリエ。だからこそ彼女の向上心は尽きることなく、より高みを目指そうと覚悟を固めることができたのだ。

 

今回の四天王アセロラとのバトルで貴重な経験をしたリーリエは、次なる目標である3つ目の大試練に向けて今は体を休めようと、エーテルハウスの中へと戻っていったのであった。




マンムーが追加されましたね。ニンフィアちゃんまでおよそ3週間ほど待たねばならぬか……。ニンフィアちゃんはよ。

テイルズオブアライズ実績含めて全クリしましたがストーリー、戦闘含めて神ゲーでした。アクション系RPGに興味ある方は是非!


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エーテルパラダイス!ルザミーネを救え!

タイトル通り過去回なり

まさかヨクバリスが実装されるとは思わなかった


アセロラの試練を無事突破し、一日エーテルハウスのお世話になったリーリエ。疲れを癒した翌日、再び旅を続けるためにエーテルハウスを後にすることにしたのであった。

 

そんな彼女を、エーテルハウスの子どもたちやキャプテンであるアセロラが見送るために、西にある小さな浜辺にやってきていた。

 

「さぁ、リーリエ。次はいよいよ大試練だよね?」

「はい!ウラウラ島の大試練に挑もうと思います!ただ……」

 

大試練を担当するしまキング、クチナシが現在どこにいるのか不明なのだ。彼女はクチナシの事自体が余り知らないのだが、聞いた話ではかなり気まぐれかつ面倒くさがりな性格で、普段からどこにいるかが読めない人物なのだ。

 

「クチナシおじさんなら今ポータウンにいると思うよ。」

「ポータウン……ですか?」

 

ポータウンと聞いて、リーリエは脳裏を少し苦い記憶が横切る。ポータウンはかつてスカル団のアジトとして利用されていて、2年前にリーリエが攫われてしまった場所でもある。とは言えスカル団と言っても、彼らはルザミーネの指示に従っていただけなので、リーリエは特別酷いことをされたわけではなくすぐにエーテル財団に引き渡されたのだが。

 

「この水道を渡った先にあるんだけど、そのためのライドポケモンを貸してあげるよ。」

 

そう言ってアセロラは一つのモンスターボールを投げると、そこから出てきたのは青い体にクラゲの様な容姿をしたポケモンであった。

 

『ブルンゲル、ふゆうポケモン。みず・ゴーストタイプ。体の殆どが海水と同じ成分でできている。ブルンゲルの住処に侵入した船は沈められてしまうと恐れられている。』

 

そのポケモンはブルンゲルであった。図鑑説明はその見た目からは想像できないものでありゾッと寒気を感じる。

 

「大丈夫大丈夫。この子は人懐っこくて気のいい子だから。」

「そう、なんですか?」

『ブルゥン』

 

不安そうに感じるリーリエをブルンゲルは柔らかい触手で頭を撫でる。その感触にリーリエは不思議と安らぎ、ブルンゲルはいい子なのだと心で感じる事ができた。

 

「この子の乗り心地は最高なんだー!ふわふわしてて、凄く気持ちいいんだよ!」

「そうなんですね。アセロラさん、ありがとうございます!」

「またこっちに戻ってきた時に返してくれればいいから。はいこれ!ブルンゲルのモンスターボールだよ。」

「はい!大切にお預かりします!」

 

アセロラからブルンゲルのモンスターボールを預かり、リーリエはブルンゲルに跨る。確かにふわふわしてて、感触にも不快感を感じない。寧ろどこか落ち着けて安心できるものであった。

 

「リーリエ姉ちゃん!頑張ってね!」

「また遊びにきてね!」

 

そう言って見送ってくれる子どもたちにも手を振り、リーリエはブルンゲルと一緒にポータウンへと向かう。

 

「んー♪風がとても気持ちいです。」

 

水道を吹き抜ける風が頬を撫でるように触れて心地いい。海水の香りと波の音、そしてブルンゲルの気持ちのよい感触。更には丁度良いゆったりと、ふわふわとしたまるで揺りかごのような乗り心地。

 

気持ちいい船出に、リーリエは気付けば瞼を閉じ、静かな寝息を立てていたのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「リーリエ!」

「シンジさん!それにお兄様にミヅキさんも!」

 

リーリエが振り返ると、そこにはシンジと兄であるグラジオ、それに友人であるミヅキの姿があった。慌てた様子で駆け付けた3人の額からは、汗が滴り落ちていてどれだけ焦っていたのかが伝わってくる。

 

スカル団に攫われたリーリエはエーテル財団に引き渡され、彼女を助けるためにシンジたちはここまでやってきた。正直一人でどうしたらいいか分からなかったリーリエにとって、これほど嬉しいことはない。

 

「この部屋は……」

 

グラジオが周りを見渡すと、その光景に3人は言葉も出ずに絶句するしかなかった。

 

なぜなら周囲にあったカプセルには、ポケモンたちが入れられていたのだ。正確に言えば、ポケモンたちが冷凍保存されている姿が目に映っていた。いわゆるコールドスリープと言うものである。

 

コールドスリープとは簡単に言うと、肉体を低温状態に保つことで老化を防ぐものである。本来であれば宇宙船や空間移動など、主に映画の世界で見ることの多いものではあるのだが、ここはエーテルパラダイス。明らかに別の用途で使用されているのは言うまでもない。

 

そして正面にはリーリエの母であるルザミーネの姿。この部屋に辿り着く前にあったのは寝室。そして奥に隠されていたワープ装置に乗ってこの部屋に移動してきた。間違いなくここはルザミーネのシークレットルームだ。

 

「……来てしまったのね、グラジオ。それにシンジ君とミヅキちゃんも。」

 

3人の存在に気づいたルザミーネは振り返りその姿を確認する。彼女の表情は薄ら笑いを浮かべていて、最初に出会った時の優しそうな大人の女性、と言った印象は微塵も感じられない。むしろ不気味ささえ感じてしまうほど、まるで別人のようであった。

 

「どう?この部屋。美しいでしょ?」

 

ルザミーネは自身気にそう言うが、シンジたちにはこの部屋の何が美しいのかは分からなかった。ポケモンたちが非人道的な状態で保存されているのだ。誰がどうしてこの部屋の状態を美しいと言えるのだろうか。

 

「……お母様」

「……失敗作は黙りなさい」

 

リーリエは一言そう呟く。すると母親であるルザミーネは無常にもそう返答した。

 

「私は、美しいものだけを愛するの。この部屋にあるポケモンたちは全員姿を変えることなく、私の望んだ姿で永遠に存在している。でも……あなたは、あなたたちは私の手から“勝手に”去っていった。そんなあなたたちを愛せるとでも思っているの?」

 

リーリエとグラジオは分かっていた。小さいころは優しい母親であったのだが、いつからか着せ替え人形のように母から与えられた服を着るだけであった。母の言いなりでしかなかった二人は、気付けば彼女の道具でしかないのだと感じるようになった。そこには親子としての愛情など微塵もないのだと。

 

「あなたたちは私が産んだ子ども。だったら私の言うとおりにしていればいい。所詮は私の所有物でしかないのだから。」

「違う……」

「シンジ……さん?」

「リーリエもグラジオも、あなたの所有物なんかじゃない!」

「そうだよ!二人は人間なんだ!親だからって、子どもをモノ扱いしていい訳ないよ!」

「ミヅキ……」

「他人は黙っていなさい!私たち親子の問題に口出ししないでちょうだい!」

 

ルザミーネに対しシンジとミヅキは反論するが、ルザミーネはそんな彼らに怒鳴り散らす。もはや彼女には会話すら通じない状態のようだ。

 

「……あなたたちには私の理想なんて理解できない。なら、やることは一つだけでしょう?」

 

そう言ってルザミーネは複数のモンスターボールを手に取り投げる。中からは彼女に従うポケモンたちが姿を現した。

 

姿を現したのはミロカロス、ドレディア、そしてムウマージであった。リーリエとグラジオは知っているようで、彼女が以前から可愛がっていたパートナーたちのようである。

 

ここに来た時点でこうなることは分かっていた。シンジ、グラジオ、ミヅキはモンスターボールを投げて自分の相棒を出してルザミーネと対峙する。

 

「行くよ!ニンフィア!」

「やるぞ!シルヴァディ!」

「お願い!アシレーヌ!」

『フィア!』

『シヴァア!』

『シレー!』

 

ニンフィア、シルヴァディ、アシレーヌは登場と同時に戦闘態勢に入る。ルザミーネのポケモンたちを見た瞬間、間違いなく強敵だと理解したからこそ油断できないと判断したのだ。

 

「母さん……必ず助けてみせる……」

 

グラジオはそれでもなお母親を信じて誰にも聞こえない声で覚悟を口にする。次の瞬間、ルザミーネのポケモンたちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

「あなたたち!やってしまいなさい!」

 

ルザミーネは特に指示することなく、ミロカロス、ドレディア、ムウマージは前に出る。彼女のポケモンたちは何の違和感も感じることなく、彼女の指示を従順に従っている。その姿はまるで操り人形のように、主のことを疑うことなく……。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『フィア!』

『ミロ!?』

 

ニンフィアはようせいのかぜで近接攻撃を仕掛けてこようとするミロカロスを弾き返す。ミロカロスは堪らずダウンする。

 

『マァジ!』

「シルヴァディ!ブレイククロー!」

『シヴァ!』

 

ムウマージはシャドーボールでニンフィアを攻撃する。シルヴァディはニンフィアの前に出てブレイククローを構え、シャドーボールを正面から切り裂き防いだ。

 

『ディアー』

 

気がそれている間にドレディアはちょうのまいで自身の能力を向上させる。そうさせるわけにはいかないと気付いたミヅキは、すぐさま妨害しようと指示を出す。

 

「アシレーヌ!ハイパーボイス!」

『シレー』

 

アシレーヌは可憐ながらも大きな声で振動を発生させる。その声を聴いたドレディアはちょうのまいを中断し、耳をふさいで怯んでしまう。

 

ハイパーボイスは範囲も広い技だ。相手のミロカロスもダメージを受けている様子だ。ハイパーボイスはノーマル技であるため、ゴーストタイプのムウマージに対してはダメージが入っていない。

 

『マァジ!』

『ディア!』

 

ムウマージとドレディアは反撃に出る。ムウマージは自身の周囲にいくつかの火の玉を生成し飛ばす攻撃、マジカルフレイム。ドレディアは強力な鋭い刃のような葉の嵐、リーフストーム。それらの攻撃が同時にニンフィアたちに襲い掛かる。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

 

ニンフィア、シルヴァディ、アシレーヌは同時に攻撃を放ちマジカルフレイム、リーフストームと対峙し、お互いに打ち消し合う。それを見たミロカロスは後ろからすでに大技の態勢に入っていた。

 

『ミロォ!』

 

ミロカロスの繰り出す水タイプの大技、ハイドロポンプだ。鉄をも切り裂かんとする勢いの水圧を防ぐため、アシレーヌとシルヴァディは前に出る。

 

「シルヴァディ!マルチアタック!」

「アシレーヌ!アクアテール!」

『シヴァアア!』

『シレェヌ!』

 

シルヴァディとアシレーヌは全力の攻撃でハイドロポンプを正面から受け止める。しかしミロカロスのハイドロポンプは非常に強力であり、このままでは押し切られてしまうであろう。

 

「シンジ!今の内だ!」

「アシレーヌたちが止めている間に!」

 

シンジは頷く。二人に相槌を取ったシンジは、相棒のニンフィアと目を合わせて合図を取る。

 

「行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

シンジはその合図と同時に手を目の前でクロスさせてポーズをとる。ノーマルタイプのZ技のゼンリョクポーズで、彼のZリングが光輝く。Zリングから放たれる光が、ニンフィアの体を包み込んだ。

 

ニンフィアの力が高まっていくのを感じる。シンジの思いがニンフィアに伝わり、ニンフィアは駆け出した。ミロカロスの攻撃を耐え凌いでいるシルヴァディとアシレーヌの上に飛び上がる。

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

その後勢いよくミロカロス目掛けて一直線に駆け抜ける。攻撃中のミロカロスは対応することができず、ニンフィアの全力のZ技を正面から受けてしまった。

 

ミロカロスはその衝撃により大きく飛ばされ、直線状にいたムウマージ、ドレディアも同時に巻き込んだ。強力なZ技により飛ばされたミロカロスは戦闘不能。さらにその衝撃に巻き込まれたムウマージとドレディアも戦闘続行不可能な状態となっていた。

 

それを確認したルザミーネは、冷めた表情のままポケモンたちをモンスターボールに戻す。すでに彼女にはトレーナーとしての感情はないように感じられる。

 

「……ふふふ」

 

ルザミーネは小さく怪しい笑みを浮かべる。自分のポケモンが負けたにも関わらず、だ。

 

「準備はすでに整ったわ。」

「準備……だと?どういうことだ母さん!」

 

グラジオが声を荒げて問いかける。ルザミーネは彼の問いに口角を上げながら答えた。

 

「そんなの決まっているわ。」

 

そう答えたルザミーネは指をパチンッと鳴らす。指を鳴らしたと同時に、彼女の持つケージが突如として光出し勝手に宙へと浮かび上がる。

 

「なっ!?こ、これは……!?」

「どうなってるの!?」

 

シンジとミヅキは驚きの声を上げる。それもそのはず。なぜならケージの光と共に、ルザミーネの背後に見覚えのある空間が切り開かれていたのだ。しかもその空間から、ゆっくりとある生物が姿を現したのであった。

 

「そ、そんな……まさか……」

 

リーリエは顔を真っ青にして絶望する。その空間から現れた生物の正体とは……。

 

『ジェップ』

「……ウルトラビースト……だと?」

 

その正体はUBと呼ばれる存在であった。体は白く、クラゲに似た異形な姿をしたポケモンを、シンジとミヅキは見覚えがあった。

 

「このUBはウツロイド。このコスモッグの力を使って呼び出したのよ。」

 

コスモッグ。リーリエが大切にしていたほしぐもの通称である。ルザミーネはリーリエからほしぐもを奪うとケージの中に閉じ込め、彼の特殊な力を無理やり引き出して空間を歪ませ、ウルトラホールとこのアローラを繋げたのだ。

 

現在ルザミーネが手にしているケージの中にコスモッグはいる。コスモッグが力を使うと、ゆっくりと地上に降りてケージから姿を現す。

 

『きゅい……』

「ほしぐもちゃん!?」

 

苦しそうに出てきたほしぐもを心配してリーリエは駆け寄る。すると再びほしぐもを光が包み込み、光が収まるとそこにはコスモッグの姿はなく……。

 

『……』

「ほしぐも……ちゃん?」

 

そこには姿の違う別のポケモンの姿があった。見た目的には星空の様な模様を残しているためコスモッグの進化形であることは分かる。しかし何もしゃべることはなく、ただ眠っているだけのようでリーリエの事も認識していない。それどころか浮いているだけで、動く気配すら感じない。

 

「……どうやら力を使い果たして眠っているようだ。」

「眠っている……ですか。」

 

その言葉を聞いて少しだけ安堵するリーリエ。そんな彼女に、母親から無慈悲な一言が突きつけられる。

 

「その子はもう用済みよ。」

「っ!?」

 

その言葉にリーリエはショックを受ける。自分たちだけでなく、ほしぐもまでもが彼女にとっては道具の一つでしかなかったのだ。どれだけ突き放されようと、リーリエにとってルザミーネはたった一人の母親だ。心の中ではどうしても信じたかった。

 

だがどれだけ信じても、彼女から発せられる言葉は一切心の無い言葉ばかり。リーリエはただただ裏切られ、悔しさと衝撃から口を噛み締めるしかできなかった。

 

「あなたって人は!」

「シンジ君……もう二度とあなたとも会うことはないでしょうね。」

 

ルザミーネはそう言ってウツロイドの方へと振り返る。その時部屋に1人の男の声が響いてきた。

 

「な、なんだよここは……」

 

そこに入ってきたのはスカル団のボス、グズマであった。ルザミーネに指示されリーリエとコスモッグを手に入れたグズマ率いるスカル団だが、さすがにこの部屋の衝撃には絶句するしかないようだ。

 

「グズマ、あなたも来なさい。」

「あ、ああ!」

 

ルザミーネはウツロイドと共にウルトラホールの中に入っていく。グズマはルザミーネにそう言われ、疑うことなく彼女の後を付いていき一緒にウルトラホールの中へと突入した。

 

それと同時にウルトラホールが閉まってしまい、シンジたちは追いかけることは出来なかった。残された彼らは、あまりの衝撃から暫くその場を動くことは出来なかったのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

「う……ん……あれ、私……眠っちゃってたんですね。」

 

気付いたらブルンゲルの上で眠ってしまっていたリーリエ。眼を覚ますと、目の前にはいつの間にかポータウンに続く道が見え始めてきていた。

 

「それにしても、まさかあの時の夢を見るなんて……」

 

リーリエにとってはあまりいい思い出の無い出来事であった。母親が狂ってしまった出来事など、いい思い出だと感じる人間はいないだろう。

 

「……でも、あの時がキッカケだったんですよね。」

 

本来自分に母親と向き合う勇気などなかった。だからほしぐもを連れだして彼女は態々エーテルパラダイスを逃げ出したのだ。

 

そしてククイ博士やシンジたちと出会い、旅をする中で色々な経験をし、母親であるルザミーネと向き合う勇気を得ることができた。そしてルザミーネがウルトラホールへと消えた日の翌日。自分は母親を助けるための覚悟を持つことができるようになったのである。

 

「……あまりいい思い出ではありませんが……それでもいいキッカケではありました……。」

 

自分が覚悟を持ち、母親を助けるキッカケを作った出来事。シンジと一緒に向き合うことのキッカケにもなった出来事なのだから。

 

「……よし!」

 

リーリエはあの時の気持ちを思い出し、気を引き締める。次の大試練も必ず突破し、あの時から変わったのだとシンジに伝えるために、改めてやる気が満ち溢れてくる。

 

リーリエは陸に辿り着くとブルンゲルから降りてブルンゲルをモンスターボールへと戻す。リーリエはブルンゲルに感謝し、次の目的地である大試練の場、ポータウンに向かって歩き出したのだった。




ニンフィアナーフされたけどそれでも充分強いよね。ナーフ前が強すぎただけで


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ウラウラの花園!霧の中の黒き幻影!

※ゾロアークではありません


ポータウンへと向かう為にアセロラから借りたブルンゲルに乗り水道を渡ったリーリエ。そのままクチナシが待つと言うポータウンへと道なりに進んでいると、風景が薄暗くなり周囲には花畑が広がっていた。

 

「ロトム図鑑さん、ここは?」

『ここはウラウラの花園だロ。』

 

ウラウラ島に広がる赤い花が咲いているウラウラの花園。その光景はどこかメレメレの花園を思わせる風景であった。

 

それもそのはず。メレメレの花園の花の蜜はオドリドリをぱちぱちスタイルに変化させるものだが、ウラウラの花園にある花の蜜は、逆にめらめらスタイルへと変化させる。ここに生息しているオドリドリは全てめらめらスタイルなのである。

 

黄色く明るいメレメレの花園と違って、ウラウラの花園は赤く暗い風景である。小さな池には蓮の花が浮いており、どことなく神秘的にも感じる場所だ。

 

『ここは基本一本道ケロ、時々霧が濃くなるから気を付けるロ。』

「は、はい、分かりました。」

 

ロトムがそう忠告した直後、早速段々と霧が濃くなり視界が悪くなってきてしまう。方向音痴である道ははぐれない様にロトムに声をかける。

 

「ロトム図鑑さん。近くにいますか?」

 

しかしロトムからの返信はない。どこに行ったのかと不安になりつつもロトムに呼びかけながら探すリーリエ。暫くすると霧が少しずつ晴れてきて視界が元に戻ってくる。

 

「あれ?ここは……」

 

だがそこには花畑の光景はなく、見知らぬ城の中であった。ところどころ柱が崩れているが、一応建物としての原型はとどめている。しかしその場にはロトムの姿はなかった。

 

どこにいったのかと周りを見渡しても、ロトムどころか人やポケモンの姿もまるで見当たらない。どうするべきかと悩むが、目の前に真っ直ぐ突き抜けた一本の通路があった。

 

これ以上勝手に歩くのは危険かもしれないが、この場で留まっていても状況は進展しない。それに何故かは分からないが、何者かが自分の事を招いている。そんな気がリーリエには感じられた。

 

リーリエは自分の感覚を信じて導かれるままに通路を進む。一切風景の変わらない通路だが、暫くすると奥に僅かな光が見えた。通路を通り抜けると、そこにあったのは祭壇であった。来たことの無い場所ではあるはずなのだが、リーリエにはその祭壇がどこか見覚えのある場所に感じた。

 

「……もしかしてここって……」

 

そう、かつて母親を助けるために立ち寄った日輪の祭壇に似ている雰囲気があった。日輪の祭壇があるのはポニ島だが、どことなく雰囲気が似ていた。それになにより、中央に描かれている文字が日輪の祭壇と酷似していたのだ。

 

一体ここはどこなのだろうと考察していると、突然上空にヒビがはいる。その現象に見覚えのあったリーリエは、恐怖と同時に最大限の警戒をする。

 

ヒビが広がりそこに出現したのは、紛れもなくUBが出現してくることでお馴染みのウルトラホールであった。まさかまた迷い込んでやってきてしまったのかと思うリーリエだが、起きた現象は想定とはまるで違っていた。

 

「なっ、ひ、光が強く!?」

 

ウルトラホールが突然輝きだし、さらに光が強くなる。リーリエは光に包まれ、眩しさのあまりに目を瞑る。

 

次第に光が弱まり、恐る恐るリーリエは目をゆっくりと開ける。するとそこには衝撃の光景が広がっていた。

 

「えっ?こ、ここって……」

 

まるで見覚えのない光景。光が全くなく、街灯による明かりが無ければ前が見えないほどである。

 

夜になるにはまだ早いと思い空を見上げるが、空にもまた違和感があった。何故なら星空はおろか、月の光すら見えなかった。まさに光がなく、闇そのものと言ったような世界であった。

 

その光景と同時にリーリエはとある話を思い出す。以前ウルトラ調査隊に聞いた話、彼らの住む光のない闇の世界の話である。ダルスの話によると、かつてあった光はかがやきさまが力を失ったことにより消えてしまった、とのことであった。

 

周囲には人の住居と思わしき建物と、リーリエの目の前には大きく聳え立つ塔がある。気になることは色々とあるが、やはり目の前にある塔には不思議とひかれてしまう。リーリエは引き寄せられるようにその塔の内部へと侵入していく。

 

塔の内部は果てしなく続く螺旋階段であった。それ以外特に変わったものはなく、ただひたすらに上へと階段が続くだけである。

 

長く続く階段をリーリエは登り続ける。本来であれば登り階段は疲労しやすく足が疲れるはずなのだが、不思議と疲労感や倦怠感は感じない。むしろ浮遊感を感じてしまうほど体が軽く感じていた。まるで自分の身体ではないように。

 

風景が変化せず終わりのないように感じた螺旋階段の先に出口が見えた。ようやく頂上に辿りついたリーリエの目の前に現れたのは、ひざまずいて倒れている黒い巨大なポケモンの姿であった。

 

「こ、このポケモンさんは……」

 

目の前にいるポケモンには一切見覚えがない。書物ですら読んだことのないポケモンの姿に戸惑うリーリエだが、現在はロトム図鑑もいないため尋ねることができない。

 

どうやら力尽きてしまって動けないようだ。助けるべきだろうか、と恐る恐る正体不明のポケモンに近付こうとすると、突然黒いポケモンが強く光りだしてリーリエの視界を奪う。

 

徐々に光が弱まり、リーリエは何があったのかと目の前を確認する。するとそこには黒いポケモンの姿はなく、光り輝く竜のような容姿をした黄金のポケモンであった。

 

黄金色に輝く体に神々しい威圧感。その姿は神様とでも言うべき存在に近しいものだ。その姿を見て、リーリエはこれが例の“かがやきさま”なのではないかと感じてしまう。

 

かがやきさまと思われるポケモンは力を溜め込み、空に向かって光を放つ。見た目の威圧感とは裏腹に、その光はどこか温かさを感じ、まるでZ技にも似た感覚を感じた。

 

光は世界を包み、リーリエをも包み込んだ。あまりの眩しさにリーリエは目を瞑った。

 

光が弱まりリーリエは再び目を開ける。するとそこには先ほどの黒いポケモンと、さらにはソルガレオが対峙している光景があった。

 

周りを見てみるとその場所には見覚えがあり、ポニ島にある日輪の祭壇と全く同じであった。そして加えて、シンジやグラジオ、ハウにヨウ、ミヅキ、しかも何故か自分の姿まであった。それだけでなく、エーテル財団の代表、ルザミーネに秘書のビッケ、空間研究所の所長、バーネット。それにウルトラ調査隊のダルスとアマモもいた。

 

驚きのあまり声を出そうとするが声が出ない。恐怖からとかではなく、声を出そうとしてもなぜか出ないのだ。そんな時、彼女の耳によく知っている声が入ってくる。

 

『ほしぐもちゃん!』

 

その声は明らかに自分であった。目の前にいる自分の声に反応し、ソルガレオは黒いポケモンに突撃する。黒いポケモンもソルガレオに真っ向から立ち向かう。

 

黒いポケモンとソルガレオは空中で火花を散らしてぶつかり合う。互いの戦闘は激しさを増し、どちらも一歩も引かない戦いとなった。互いの力は拮抗している、そう思われた。

 

しかし次第に力の差が開き、黒いポケモンがその巨大な腕でソルガレオの頭を抑えつけ地面に叩きつける。その剛腕にソルガレオは抵抗できず、抗うことができなかった。

 

次の瞬間、黒いポケモンの腕が光り輝き、自分とソルガレオの姿を包み込む。するとそこには黒いポケモンとソルガレオではなく、黒いアーマーを纏ったかのような禍々しい姿のソルガレオがいたのである。

 

その後彼の周囲に多数のウルトラホールが開き、更に一つ大きなウルトラホールが開かれた。黒いソルガレオはそのまま巨大なウルトラホールを通り姿を消す。それと同時に再び光が強く輝き、リーリエを包み込む。

 

リーリエが目をあけると、今度は濃い霧の中に佇んでいた。一体何が、と思っていると、次第に霧が晴れて目の前には見覚えのある景色が広がっていた。

 

そこには赤い花が咲いていた。間違いなくウラウラの花畑である。先ほどまで見ていたのは一体なんなのだろうかと疑問に思う。

 

リーリエが何だったのかと考えていると、彼女に耳に見知った声が聞こえてきた。

 

『リーリエ!ここにいたロ?探してもいないから心配したロ!』

 

その声の主はロトム図鑑であった。どうやら自分が迷子になりロトム図鑑が必死で探してくれたようである。

 

「すいません、ロトム図鑑さん。急に霧が濃くなってはぐれてしまったみたいです。」

『ビビッ?濃い霧なんて出ていないロヨ?』

「え?」

 

ロトム図鑑は濃霧を一切確認していないようである。しかしリーリエは確かに霧の中に迷い込んでしまった。一緒にいたはずのロトムと自分にこれまで差があるのは一体なぜなのだろうか。

 

『リーリエは方向音痴なんだロから気を付けるロ。万が一があったら大変ロ。』

「……す、すみません。気を付けます。」

 

霧の正体は謎に包まれてしまったが、これ以上考えても仕方ないということでリーリエは先に進むことにした。

 

あの時見た光景は幻だったのだろうか?それとも夢だったのだろうか?しかしどちらにしても今回見た光景はどこか現実味を感じられた。

 

考えても答えは出ないのだろうが、それでも今回の出来事は非常に強く印象に残った。あの光景は、リーリエの頭の中をグルグルと回り続けるのであった。




伏線的ななにかです。突然起こるご都合主義の謎現象。

一番好きなポケモンであるニンフィアがUNITEでも原作でも自分にしっくりくるのは奇跡を超えてもはや必然

拘り眼鏡、気合の鉢巻、物知り眼鏡+なんでもなおしが強い
技はマジカルフレイム&ドレインキッス派です


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懐かしの思い出、あの日の約束

今回は初期の頃書いた話の回想、及びリメイク回となります。

ダイパリメイク、ダイアドでの色ディアルガ厳選、ユナイトシーズンリセット、プリコネ動画、小説、残業と色々忙しい日々が続いている。


リーリエはウラウラ島の大試練を受けるため、しまキングであるクチナシの待つポータウンへと向かっていた。

 

ポータウンも目前、かと思いきや、突然天候が悪くなり雨が降り始めてしまった。びしょ濡れになってしまう前にどこか雨宿りのできる場所はないかとロトムと一緒に駆け出した。

 

『すぐそこに交番があるロ!』

「ではそこで少し雨宿りさせてもらいましょう!」

 

ロトムの情報を元にリーリエは走ると交番が見えてきた。急いで中に駆け込むと中は綺麗だったものの電気はついておらず、人の気配もまるで感じなかった。

 

「すみませーん!どなたかいませんかー!」

 

リーリエが大きな声で呼びかける。しかしその声に反応する者はおらず、彼女の声が反射して戻ってくるだけであった。

 

『ここは無人の交番だロ。スカル団が引き上げた後は管理はしてるけロ、人員を配置する意味がないから人がいないんだロ。』

 

ロトムの情報によるとスカル団がポータウンにたむろしたことにより寂れてしまったが、彼らが解散したことによりポータウンこの周辺の治安はよくなった。

 

とはいえこの近辺に近づく者はほとんどおらず、今では改心したスカル団がたまに集まる程度なので危険もないと判断され、管理はするが人員の配備はしないとのことである。今では偶に訪れる旅人の休憩所として利用されているそうだ。リーリエも今日は遅いし雨も降っているのでここで休ませてもらうことにした。

 

「ソファも綺麗ですね。」

 

ソファも綺麗に整っており、座ってみるとふかふかしていて非常に心地よい感覚に包まれる。

 

「なんだか気持ちよくて……だんだん……眠気が……。」

 

横になるとその心地よさから睡魔に襲われてしまい、リーリエは眠気に負けて瞼が自然と閉じて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエとシンジがナッシーアイランドに辿り着き、目の前には島の象徴ともなるアローラの姿をしたナッシーが数体歩いていた。その圧倒的な存在感に二人はただ唖然とするしかなかった。

 

二人がナッシーアイランドに来た目的は月の笛の対となっている太陽の笛を入手するためである。ポニ島の現在は亡きしまキングの孫であるハプウ曰く、ここに太陽の笛が保管されているとのことであった。

 

二人は太陽の笛を探すために歩き出す。しかしそんな二人の意思を阻害するかのように天候が悪くなり、突然大雨が降りだした。

 

「あそこに洞窟がある。一旦あそこで雨宿りしよう!」

「はい!」

 

シンジに従いリーリエは彼と洞窟の中に駆け込んで避難する。少しは濡れてしまったが、急いで近くの洞窟に駆け込んだためびしょ濡れ、とまではならなかった。

 

「急な雨でビックリしましたね。」

 

「そうだね。多分通り雨だと思うからすぐにやむだろうけど……。暫くはここにいた方がいいかもね。」

 

雨が止むまで洞窟の中で雨宿りをすることにしたシンジとリーリエ。しかしなんとなく二人きりと言う状況に意識してしまい、少し気まずい雰囲気になってしまって会話が続かない。

 

さすがにこの状況のまま時間が過ぎるのは気まずいと感じたシンジは、ある話題をリーリエに問いかける。

 

「そ、そう言えば昔のリーリエとルザミーネさんってどんな感じだったの?」

「む、昔の私とお母様、ですか?」

「あっ、あんまり話したくないなら無理しなくても……」

 

咄嗟のこととは言え人の過去に不用意に踏み込むのはマズかったか、と話題を切り上げようとするシンジ。しかしリーリエは首を横に振り、気にしなくてもいいと過去の自分たち家族の事を話し始めた。

 

「私がまだ幼い頃、お母様はあんなに自分勝手な人ではなかったんです。優しくて、私が怖くて眠れない夜も一緒に寝て下さったんです。」

 

シンジは黙って彼女の話を頷きながら聞いている。リーリエは「でも」と昔話を続ける。

 

「ある日を境に、お母様は変わってしまったんです。」

「ある日?」

「エーテルパラダイスの代表であり研究員だった私たちのお父様が突然姿を消してしまったのです。研究中の事故で消息不明となってしまった、と私は聞きました。」

 

リーリエは当時の状況の事を思い出しながら少し目を伏せて語る。

 

「それ以来、エーテルパラダイスの代表となったお母様は人が変わってしまいました。お母様は私の着る服も勝手に決めるようになりました。私がピッピさんのままがいい、と昔から言っていたのに進化させてしまったり、仕事ばかりにかまけるようになって家族の時間が減ったりもしました。私はただ、お母様やお兄様と一緒に過ごしたかっただけなのに……。」

 

リーリエはそう語ると、シンジの方を向いて「あはは」と苦笑いをした。

 

「なんて、これも私の我儘ですね。私の方が自分勝手なのかもしれません。」

「……自分勝手、か。僕も同じかも。」

「え?」

「僕はこれまで色々な地方を旅してきた。別の地方に行くたびに母さんに挨拶して。でもその度、母さんは少し表情を曇らせていたんだ。本当は僕に行ってほしくないって言ってるみたいで、分かってたんだけど。」

「シンジさん……」

 

リーリエの話を聞いたあと、シンジも続けて自分の昔話をする。今度はリーリエがシンジの話に耳を傾ける。

 

「でも僕は旅が好きで、色んな地方の景色やポケモンが見たくて、強くなりたくて僕の我儘を押し通した。今思えば、僕と離れ離れになりたくないからアローラに引っ越したのかなって思ったりもするんだ。やっぱり僕も自分勝手なのかもしれないね。」

「あはは、お互い様ですね、私たち。」

 

リーリエはシンジの話を聞いてふと空を見上げる。外はまだ雨が降っていて、過去の思い出が彼女の頭に流れ込んできた。

 

「そう言えば……あの時も……」

「どうしたの?」

「あの時、私が急な雨に濡れて泣きながら遅く帰ったとき、私の事を探しに行こうとしたお母様と家の前でバッタリ会ったんです。その時お母様は泣いてる私に、優しい声で歌ってくれたんです。その歌を聞いていたら不思議とポカポカしてきて、気付けば私も泣き止んでお母様と一緒に歌っていました。当時の事は今でも鮮明に覚えています。」

 

懐かしの忘れられない思い出を、リーリエは嬉しそうにしながらもどこか切なそうな表情を浮かべながら語った。そんな彼女の顔を見たシンジは、笑顔で彼女に語り掛けた。

 

「じゃあウツロイドの呪縛から大好きだった昔のお母様を助け出さないとね。」

「ありがとうございます、シンジさん。」

 

優しい言葉をかけてくれるシンジにリーリエは感謝する。そんな彼の言葉が嬉しくて、リーリエはふと自分の気持ちを呟いた。

 

「なんだか、私が困っている時はいつもシンジさんが助けてくれている気がします。」

「そんなことないよ。それに、僕だってリーリエに助けられているし。」

「そう……でしょうか?」

 

シンジはそう言うが、リーリエ自身には彼を助けた記憶はなかった。彼が優しいからそう言ってくれただけなのか、それとも本当に自分が知らない間に助けていたのか。

 

「……私が困っていたら、いつでもシンジさんが助けてくれたりして」

「ん?何か言った?」

「い、いえ!?なんでもありません!」

 

小さく呟いた言葉を聞かれていなくて嬉しいような少し残念なような複雑な気持ちになり、気恥ずかしさを覚えるリーリエ。そんな感情を誤魔化すようにリーリエはシンジに質問をする。

 

「し、シンジさんは島巡りが終わったらどうするのですか?」

「島巡りが終わったら……か。考えてなかったなぁ。」

 

シンジは先のことは特に考えてなかった。ククイに誘われアローラに訪れ島巡りに参加し、リーリエと出会い、今では彼女の母親を助けるためにここまで来ている。

 

ルザミーネの件が終われば島巡りも終盤。もしそれが終わればどうするのか。もっと強くなるために旅に出るのか、それともアローラに残るのか。先のことは彼自身にも分からない。

 

先の事を悩むシンジの顔を見て、リーリエは自分のふとした考えを彼に言う。

 

「私、トレーナーになってみたいんです。」

「トレーナーに?」

「はい。今まではポケモンさんが傷ついてしまうバトルがあまり好きではありませんでした。しかし、シンジさんの戦いを見て、その考えも少しずつ変わってきたんです。ポケモンさんたちと楽しそうにバトルをしている、シンジさんの顔が私は好きです。」

 

好きと言われてシンジは反応してしまい思わずビクッとしてしまう。彼女には深い意味はないのだろうと、シンジは気を取り直してリーリエの話を聞いていた。

 

「もし、私がトレーナーになったらどうなるんだろうって、興味を持つようになったんです。だから……もし私がトレーナーになったら……一緒に旅をしてくれませんか?って、迷惑……でしたかね?」

 

不安そうに尋ねるリーリエにシンジは首を振って答えた。

 

「そんなことないよ。僕も嬉しい。いつか必ず、一緒に旅をしよう!」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

二人は、いつか必ず一緒に旅をしようと約束をする。彼らの気持ちに応えるように、空を覆っていた雲は去り大雨も嘘のように止んでいた。

 

雨が止んだことを確認したリーリエは外に飛び出すと、シンジの方へと振り返って満面の笑みで口を開いた。

 

「なにかいいことありそう……いえ、ありますよね♪」

 

リーリエの笑顔が、シンジにはまるで太陽のように輝いて見えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ、あれ?ここは……?」

『ビビッ!リーリエ、目が覚めたロ?』

 

目が覚めるとリーリエはソファの上で横たわっていた。なんだか懐かしい夢を見ていたような気がするが、未だ寝ぼけている様子のリーリエに、ロトムは現状を説明する。

 

『ここは交番ロ。雨宿りするために入ったらソファですぐにグッスリ眠ってしまったロ。きっと疲れていたんだロ。』

 

そう言えば、とリーリエは寝ぼけていた頭を徐々に覚醒させていく。交番に入ったソファが思いの外心地よくて、気が付けばそのまま寝落ちしまっていたのだと。

 

ロトム曰くあのまま夜が明けるまで寝ていたそうだ。それだけ疲れていたのだろうと、とロトムは察してくれる。気遣いのできるよくできた図鑑である。

 

夜が明けた外を見ると、雨はすっかりと止んでいて空も澄みきった青が続いている。どうやら通り雨のようで、その空は懐かしい夢で見たあの時と全く同じ空であった。

 

「……なんだかいいことありそうです。」

『ビビッ?リーリエ、なにか言ったロ?』

「いいえ!なんでもありません♪」

 

澄み渡った青い空と同じように機嫌をよくするリーリエ。この言葉は自分と彼、二人だけの思い出であり約束なのだと心にしまう。

 

晴れやかな気分と共に、ウラウラ島の大試練、クチナシが待つポータウンへと向かう為に再び歩みを進めるのであった。




昔の話を少し掘り下げてこの小説らしく書きました。久しぶりでなんだかすごく楽しかったです。

そう言えば前回グレイシア回でしたけど、翌日のアニポケもグレイシアでしたね。なにも意識していないただの偶然ですけど、これはまさに運命!


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ウラウラ島大試練!VSクチナシ!

遂にクチナシさんの大試練となります

そして今日からUNITEにアマージョ参戦


ウラウラ島の大試練を受けるためにポータウンへと向かって歩いていたリーリエ。現在彼女の目の前には大きな壁がそびえ立っていた。

 

「ロトム図鑑さん。もしかしてここが?」

『ビビッ!間違いなくここがポータウンだロ!』

 

ロトム図鑑によればこの内部にポータウンがあるようだ。以前リーリエも連れてこられたことはあったのだが、正直当時の事はあまり記憶に残っていない。あのような状況では記憶に残せる余裕はないのも仕方ないだろう。

 

試練とは違う大試練の緊張感がリーリエの体に伝わってくる。気持ちを落ち着かせるために一度深呼吸をする。「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせることで心拍数を少しずつ下げていく。

 

「……では、行きます」

 

リーリエはポータウン入り口の扉を開ける。すると内部は外とは違いほぼ廃墟と言ってもいい光景が広がっていた。未だに元スカル団が集会していたりもするため手を加えることができないので仕方がないところでもある。まるで都市伝説にでも出てきそうな場所である。

 

かつてはバリケードが張られていたりもしたのだが、さすがに今では撤廃されている。リーリエが真っ直ぐ進み、奥にはボロボロの大きな屋敷が建っていた。その前には猫背の男性の後ろ姿が見えた。あの特徴的な立ち姿は紛れもなくしまキングのクチナシである。

 

ロトムにそう言われたリーリエは覚悟を決めてクチナシの元へと歩いていく。彼女が近付いた時、気配に気づいたクチナシが口を開いた。

 

「……はぁ、やっと来たか。」

 

クチナシはため息交じりにそう呟いた。するとどことなく気だるそうにゆっくりとこちらへと振り向いてリーリエの顔を見る。

 

「ねえちゃん。ここに来たってことは、大試練を受ける覚悟ができたってことでいいんだよな?」

 

リーリエはクチナシの言葉に「はい」と真っ直ぐな視線で答える。その答えにクチナシは少し口を零す。

 

「……まったく、そんな返答されたら何も言えねぇな。アセロラに言われたんじゃなければ……」

 

クチナシの言葉にリーリエはなるほどと納得する。アセロラが出かけて解決した問題とはクチナシの件のようである。

 

クチナシはしまキングと言う立場ではあるが、何分彼自身が少々面倒くさがりな面もあるため大試練を受ける島巡りのトレーナーにとって意味鬼門と言われている。そのたびにアセロラが説得してしまキングの職を務めさせているわけではあるのだが。

 

「さあねえちゃん。おれの大試練は使用ポケモン2体のシンプルなルールだ。その方が手っ取り早いからな。」

 

クチナシは表情を変えることなくモンスターボールを手に取る。

 

「ここに来ちまった以上あとはねぇ。まぁ、軽くやろうや。」

 

そう言ってクチナシはモンスターボールを投げる。中からは大きな体と突き出た口が特徴的なポケモンが姿を現した。

 

『ビアァ!』

『ワルビアル、いかくポケモン。じめん・あくタイプ。強力な顎で鉄板をも砕く凶暴なポケモン。砂のギャングとも呼ばれ、砂漠ではとても恐れられている。』

 

最初のポケモンはワルビアルであった。クチナシはあくタイプの使い手だが、ワルビアルはじめんタイプも併せ持っている。ならばあのポケモンであれば相性は抜群であろうとリーリエはモンスターボールを手に取る。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのはこおりとフェアリータイプを持つシロンであった。タイプ相性で言えばワルビアルに対して圧倒的有利なため、マニュアル通りのセオリーに従ったチョイスである。

 

『ワッビィ!』

『コン!?』

 

ワルビアルの特性、いかくだ。場に出た時相手の攻撃力を下げる効果が発動する。これによりマリルの攻撃力は下げられてしまったが、シロンのメイン攻撃は特殊攻撃であるためそこまで影響はないだろう。

 

「ねえちゃんから来な。軽く腕前、見てやるよ。」

 

クチナシの言葉にならば遠慮なく、とリーリエは先手で攻撃を仕掛ける。しまキングであるクチナシに出し惜しみや後手に回る行動は悪手だからだ。

 

そしてクチナシのその言葉と同時に、リーリエのウラウラ島大試練が開始されたのであった。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

開幕は牽制としてこおりのつぶてを放つ。シロンも経験を積んでいるため、こおりのつぶてのスピードも明らかに上昇していた。

 

ワルビアルはそこまで素早さの早いポケモンではない。これだけのスピードであれば避けられないだろうと確信するが、クチナシは驚くべき方法でその攻撃を防ぐのであった。

 

「かみくだく」

『ワルビィ!』

 

ワルビアルは突き出た口を大きく開き、鋭い牙で無数のこおりのつぶてを全て噛み砕いて破砕した。その行動にはリーリエも驚かずにはいられなかった。

 

攻撃力が下がっているとはいえこおりのつぶてはじめんタイプに対して効果が抜群である。その攻撃をいとも容易く、それも一撃で全て正面から粉砕したのだ。このような芸当ができるポケモンはそうはいない。彼の態度や見た目とは裏腹に、非常に良く育てられていることがその行動だけで分かる。

 

「……すなじごく」

『ワッビ!』

 

ワルビアルが鋭い爪を地面に突き刺す。するとシロンの足元が急激に崩れ、砂の渦の中へと吸い込まれていった。

 

『コン!?』

「シロン!?」

「これで動きは封じた。さあ、抜け出せるか?」

 

すなじごくは相手の動きを封じて、脱出しようと藻掻く相手の体力を蝕んでいく技だ。砂の渦に巻き込まれてシロンもかなり苦しそうにしている。

 

シロンは必至にもがくが、それでも体力だけが徐々に奪われ息を切らしてしまっている。強力なすなじごくに、シロンはなすすべがなくなってしまっている。

 

「ワルビアル、がんせきふうじ」

『ワッビ』

 

ワルビアルは続けてがんせきふうじで身動きをうまくとれないシロンに畳みかける。

 

シロンの周囲、四方にがんせきふうじを落として文字通り退路を断つ。そして完全に相手の動きを封じたワルビアルはシロンの頭上により大きい岩石を落とす。

 

「っ!シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンはれいとうビームで頭上の岩石を迎え撃つ。シロンのれいとうビームで岩石にヒビが入り、次第に砕け散って大きな衝撃が周りに響き渡る。その衝撃によりシロンの周囲にあった岩石もすべて駆除される。

 

また、その大きな衝撃でシロンの体も辛うじてすなじごくからの脱出に成功する。しかしそれでもかなりの体力を消耗してしまっているようだ。現にシロンは肩で息をして余力があまり残っていないように思える。

 

(もう一度すなじごくを受けてしまえば……)

 

今回は運よく抜け出すことができたが、次に受けてしまえば間違いなく体力の限界が訪れてしまう。それだけワルビアルのすなじごくは強力なものであった。

 

「今度はおれから行かせてもらう。あなをほる」

『ビィア!』

 

ワルビアルは勢いよく穴を掘り地中に姿を消す。リーリエのチラチーノも覚えているから分かることだが、どこから攻めてくるか不明なため非常に厄介な技だ。

 

「どこから……シロン!警戒してください!」

『コォン!』

 

シロンもワルビアルがいつ攻めてきてもいいように眼を瞑って最大限神経を研ぎ澄ませる。ワルビアルの気配を五感を使って感じ取る。

 

長い間静寂に包まれ、フィールドには緊張が走る。次の瞬間、シロンが何かに気付いたように目を見開いた。その時……

 

「……すなじごく」

 

再びシロンの足元が砂の渦に崩れ落ちていく。それに気付いたシロンは咄嗟にジャンプして躱す。

 

「今です!ムーンフォース!」

『コォン!』

 

シロンはムーンフォースを真下のすなじごくに向かって放つ。すなじごくに着弾したムーンフォースによる衝撃で、ワルビアルは無理やり地中から引き釣り出された。

 

「っ!?やるじゃねぇか。」

 

先ほどまでは仏頂面だったクチナシだが、今の対応に感心したのか口元をニヤリと上げ笑みを浮かべた。ようやくやる気が出てきた、ということだろうか。

 

「こおりのつぶてです!」

『コン!』

「尻尾を地面に叩きつけろ!」

『ビア!』

 

シロンはすかさず吹き飛ばされたワルビアルにこおりのつぶてで追撃を仕掛ける。しかしワルビアルは大きく強靭な尻尾を地面に叩きつけ砂を撒きあげ、こおりのつぶてを確実にガードする。どのような状況でも冷静に対処する方法を持っているのはさすがしまキング、と言ったところか。

 

「がんせきふうじ!」

 

こおりのつぶての後隙を狙ってがんせきふうじによる反撃を仕掛ける。すなじごくの時と同様にシロンの動きを塞ぎ退路を断とうとする。

 

「シロン!走ってください!」

『コォン!』

 

シロンは駆け出してワルビアルのがんせきふうじを回避する。シロンの素早い攻撃を捕らえることができずにワルビアルのがんせきふうじは無効化される。

 

(今のシロンでは体力的にも厳しいです。チャンスは一度のみ!)

「シロン!そのままワルビアルさんに近付いて下さい!」

 

シロンはリーリエの指示に従い残りの体力を振り絞ってワルビアルに近付く。ワルビアルはがんせきふうじを連続して放ちシロンを突き離そうとするが、シロンは冷静に躱して止まることはなかった。

 

「なにを考えてる?」

 

遠距離攻撃が得意なキュウコンが接近して何をするのかが分からず考えるクチナシ。必死に抵抗するがそれでもシロンはやはり止まらない。

 

そしてワルビアルのがんせきふうじを交わしきり、遂に目と鼻の先まで接近することに成功する。シロンはそのタイミングを見計らってワルビアルに飛びかかる。

 

「っ!?ワルビアル!かみくだく!」

『ビア!』

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンはほぼゼロ距離でワルビアルにれいとうビームを放つ。クチナシはリーリエの考えに気付きかみくだくで咄嗟に抵抗を見せる。

 

シロンのれいとうビームがワルビアルの目の前で発射する。一方ワルビアルのかみくだくも同時にシロンを襲った。シロンとワルビアルの周囲を包み込む衝撃がフィールド中央で発生する。

 

「シロン!」

「…………」

 

先ほどまでの騒々しさから一変、ポータウン全域が静寂に包まれる。リーリエとクチナシが緊張する中、遂に衝撃が晴れて2匹が姿を現す。

 

そこにはシロンとワルビアル、両者が立っている姿が確認できた。どちらもボロボロで、今のでも駄目なのかとリーリエは歯を噛み締める。

 

その時フィールドに変化が起こる。両者が建っていたかと思いきや、次の瞬間に片方が崩れ落ちた。倒れたのはリーリエのポケモン、シロンであった。

 

「っ!?シロン!」

 

リーリエはシロンに駆け寄る。シロンは目を回しており、戦闘不能状態となってしまっていた。

 

「……お疲れ様ですシロン。ゆっくり休んでください。」

 

健闘したもののシロンが倒せなかったことにショックを受けるリーリエ。手ごたえを感じたため倒せると確信していたため余計にであった。

 

次のポケモンに託すしかない、そう感じた時にクチナシは眼を瞑ってモンスターボールを手にする。

 

一体どうしたのか、とリーリエは思ったが、ワルビアルの姿をよく見たらその理由が分かった。

 

ワルビアルは倒れることなく、立ったまま戦闘不能状態となってしまっていたのだ。つまりこの勝負はドローとなり、お互いに戦闘不能となっていたのである。

 

「……ご苦労だったな、ワルビアル。」

 

失礼かもしれないが普段のクチナシとは思えない優しい言葉をワルビアルに投げかける。少し無茶ではあったがシロンの戦いは無駄ではなかった。

 

「まさかねえちゃんがここまでやるとは思わなかった。年甲斐もなく焦っちまったよ。」

 

クチナシはワルビアルの入ったモンスターボールを懐にしまう。そして次の、最後のポケモンの入ったモンスターボールを手に取った。

 

「だがこいつは一筋縄ではいかねぇぜ?ねぇちゃんの実力、おれに見せてみな。」

 

そう言ってクチナシはニヤリと口角を上げてモンスターボールを投げる。中からは彼のパートナーとも呼べる黒いポケモンが姿を現した。

 

『ペッシ!』

『ペルシアン、アローラのすがた、シャムネコポケモン。あくタイプ。滑らかな毛並みと高い身体能力を持つ。気性が荒く懐かせるのが非常に難しい。鋭いツメによる一撃は深い傷を負ってしまう。』

 

クチナシのパートナー、アローラの姿をしたペルシアンである。その立ち姿は非常に優雅で、見るからに強者の風格が漂っていた。当たり前ではあるが、油断できる相手では毛頭ないだろう。

 

「マリルさん!お願いします!」

『リルル!』

 

リーリエの最後のポケモンはみず・フェアリータイプのマリルである。あくたいぷであるペルシアンにフェアリータイプを持つマリルは無難なチョイスだろう。

 

しかし先ほどのマッチングと同様に、タイプ相性が圧倒的有利だからといって勝負が決まるわけではない。リーリエもそのことは重々承知しているだろう。

 

「パワージェム」

『ペッシ』

 

ペルシアンは煌めく光を無数に発射して攻撃する。いわタイプの技であるパワージェムだ。

 

「マリルさん!躱してバブルこうせんです!」

『リル!』

 

マリルはパワージェムをジャンプして回避する。回避後すかさずバブルこうせんで反撃して、ペルシアンに襲い掛かる。

 

「シャドークロ―!」

『ペルシャ!』

 

ペルシアンは影から作った鋭いツメ、シャドークローによりバブルこうせんを正面から切り裂く。バブルこうせんはシャドークローによって容易く防がれてしまった。

 

「シャドークロ―で攻めたてろ!」

『ぺシャ!』

「マリルさん!アクアテールで迎え撃ってください!」

『リル!』

 

ペルシアンはシャドークロ―で反撃、大してマリルはアクアテールで対抗する。互いの強力な技はガキンッと金属音が出るかのように弾き合い、お互い再び距離が開く。

 

「マリルさん!ころがるです!」

 

マリルはころがるを使い反動による隙をなくす。その戦術にクチナシはなるほどね、と関心の声をあげる。

 

「だけど甘い。いやなおと」

『ペシアァ』

 

ペルシアンはいやなおとを発生させ、その音によりマリルの動きは止まってしまう。いやなおとは威力こそないが、相手の防御力を大きく下げる効果を持っている。より強力ないやなおとほど、相手の動きを止めることにも利用できるのである。

 

「イカサマで投げ飛ばせ」

 

ペルシアンはそのしなやかな体を絡みつけ、マリルを前方に投げ飛ばして叩きつけた。あくタイプの技ゆえ効果はいまひとつだが、いやなおとによる防御力低下によりダメージはかなりあるようだ。

 

「……これで終わりだな」

 

クチナシはそのまま腕をクロスさせてポーズをとりはじめた。あくタイプのZ技のポーズ。つまりこれでこの戦いに決着を着けるつもりのようだ。クチナシの腕に装着されているZリングにハマっているアクZが輝きだした。

 

 

 

 

 

 

 

――ブラックホールイクリプス

 

 

 

 

 

 

周囲は禍々しい雰囲気に包まれる。一面黒く染まり、ポータウンの雰囲気も交わって一段と恐怖感が増してくる。

 

ペルシアンの頭上にはブラックホールが生成されていた。ブラックホールの吸引力が周囲の物を次々と飲み込んでいく。

 

それはマリルも同じであり、マリルは必死に耐えて見せるが、それでもずりずりと引き寄せられてしまっている。このままではブラックホールに飲み込まれるのも時間の問題である。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

 

ならば発動元でもあるペルシアンを直接攻撃しようとバブルこうせんを放つ。しかしバブルこうせん程度の勢いではブラックホールの引力に抗うことは出来ずに吸い込まれてしまう。

 

それと同時にマリルもまたどんどん待機るのが難しくなり少しずつ、また少しずつと引き寄せられている。遂には伏せてもはや限界と言う域にまで達してしまっていた。

 

「っ!マリルさん!」

 

万事休すか、と思いリーリエは思わずマリルのことを心配して名前を呼ぶ。その言葉を聞いたマリルの中で、何かがはじける音が聞こえたのであった。

 

次の瞬間、マリルの中心が青く光る。まるで何か変化を起こす前兆のようであった。その変化に、リーリエはもしかしてと察した。

 

「マリルさん……もしかして新しい技を……?」

『っ!?リル!』

 

マリルは諦めていないと言った表情でペルシアンを睨みつける。その顔を見たさすがのクチナシも驚きの表情を見せざるおえなかった。

 

「マリルさん……私たちの全力、見せましょう!」

『リルル!』

 

マリルは体内に溜め込んだ力をペルシアンに解き放った。明らかにバブルこうせんとは威力が桁違いで、ブラックホールに飲み込まれることなく抗い、ペルシアン直線的に解き放った。その一撃はペルシアンを貫き、集中力の切れたペルシアンのZ技は中断されてしまったのであった。

 

鉄をも切り裂くような勢いによる強烈な水圧の一撃。間違いなく今のはみずタイプの中でもトップクラスの威力を持つハイドロポンプであった。

 

クチナシは予想外の展開に目を見開いた。Z技を抗っただけでなくましてや反撃して中断させてしまうなど思ってもいなかったからだ。

 

今の一撃でペルシアンは予想外の大ダメージを受けて足元がふら付いている。チャンスなら今しかないと、リーリエはマリルに合図を出した。

 

「行きますよ!マリルさん!」

『リル!』

 

リーリエもZ技のポーズをとりマリルと心を一つにする。それと同時にリーリエのZリングに装着されたミズZが輝き力を解き放つ。

 

「これが……私たちの全力です!」

 

 

 

 

 

 

――スーパーアクアトルネード!

 

 

 

 

 

『ペッシ!?』

 

水に包みこまれたマリルがペルシアンに突撃する。その後ペルシアンは巨大な渦潮の中に取り囲まれ、渦の水圧に引き裂かれている。

 

渦潮が終わると、ペルシアンは空中から力なく地面に落ちていく。さしものペルシアンもハイドロポンプからの強力なZ技に耐えることができずそのまま戦闘不能へと陥ってしまった。

 

「……戻りな、ペルシアン。」

 

クチナシはペルシアンをモンスターボールに戻す。表情から彼の心情は中々読み辛いが、次の時には口元を小さくニヤリと上げていた。

 

「……まったく、最近の若いやつは。おじさん、思わず熱くなっちまったぜ。」

 

しまキング、クチナシはどこか満足そうな笑みを浮かべていたが、リーリエがそのことに気付くことはなかったのであった。




ダイパリメイクの難易度明らかに初心者お断りすぎる。正直ポケモンプレイヤーとしてはあまりオススメできません。一週目から持ち物だけじゃなくて努力値まで振られてるのは流石にね……。第5世代以降の持ち物やポケモンが出ないのもマイナス。ORASと違ってストーリーも全く変化ないし、やはり外注じゃなくてゲーフリが作らないとね。

あっ、剣盾でようやく色ディアルガでました。苦行から解放されてようやく一息つけます。


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アローラ最大の危機!?恐怖のプリズム、ネクロズマ!

今回はタイトルの通り大試練から急展開となります。
遂に物語も佳境に入ったということで、終わりが見えてきましたぞ。


ウラウラ島の大試練に挑戦するためにポータウンへと訪れたリーリエ。しまキングクチナシとの激闘を繰り広げ、ついに勝利を手にすることができたのであった。

 

「ふぅ……ガラにもなく熱くなっちまった。おじさん疲れちまったよ。」

「あの……クチナシさん。ありがとうございました!」

「礼を言う必要はないよ。ほら、とっととこっち来な。」

 

リーリエはクチナシに言われるままに近付く。クチナシはしまキングとして、大試練を突破したトレーナーに渡すある物をポケットから取り出す。

 

「こいつを受け取りな、ねえちゃん。あくタイプのZクリスタルだ。と言っても、純粋なねえちゃんには似合わねぇけどな。」

 

そう呟きながらクチナシはあくZをリーリエに渡す。リーリエはそんなことないです、と謙遜しながらクチナシに差し出されたZクリスタルを受け取った。

 

「あくZ、確かに受け取りました。ありがとうございます!」

「だから礼なんて……はぁ、まぁいいか。」

 

クチナシは頭を掻いて呆れながら少し照れくさそうに視線を逸らしてそう言った。

 

「あー、次は最後の島のポニ島だったか。アセロラに頼めばフェリーで連れてってくれると思うからほら、さっさと行きな。」

「は、はい!失礼します!」

 

リーリエは頭を下げ、去り際にもう一度ありがとうございましたとお礼の言葉を言う。その言葉を聞いたクチナシは彼女が去ったのを確認してから溜息を吐く。

 

「ったく、最近の若いやつは。あんちゃんそっくりでやり辛いったらありゃしない……。」

 

クチナシはやれやれ、と頭を掻いてボヤキながら小さく不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事クチナシの大試練を突破したリーリエは、アセロラの待つエーテルハウスへと帰還した。

 

「アセロラさん、ブルンゲルさんを貸していただいてありがとうございました!」

「うん!ブルンゲルの乗り心地よかったでしょー?」

 

アセロラの言う通りブルンゲルは乗り心地がよく、思わず眠ってしまったと話すリーリエ。「あはは、やっぱりー」、と笑うアセロラにリーリエも恥ずかしくなって顔を赤くしたのだった。

 

「それで、クチナシおじさんとの大試練はクリアしたんだよね?ちゃんと真面目にバトルしてくれた?」

「はい、じわじわと攻める戦術に苦戦しましたが、なんとか勝つことができました。」

「そっか。まぁ無事大試練乗り越えられたようでなによりだよ。」

 

アセロラはふにゃっとした笑顔のまま安堵した表情を浮かべる。リーリエが大試練を乗り越えられたことはもちろんだろうが、どちらかと言うとクチナシがちゃんと大試練をしてくれたことに対しての方が大きいだろう。もはやどちらが保護者なのか分からないが……。

 

「あっ、そうそう!リーリエに伝えることがあったんだ!」

「伝えること、ですか?」

 

アセロラは思い出したように手をポンッと叩く。

 

「ついさっきルザミーネさんから連絡があったんだ。」

「お母様から?」

「うん。なんでもリーリエにエーテルパラダイスに来てほしいってさ。」

 

突然エーテルパラダイスに来てほしいと母親からの伝言があったと言うアセロラ。急にリーリエを呼び出すということは緊急の用件でもあるのだろうか。

 

兄であるグラジオは以前“かがやきさま”についての資料を探していた。そしてウルトラ調査隊はUBの痕跡を探し、エーテル財団と空間研究所が協力してウルトラホールの調査も行っていると言う。もしかしたらUBに関して何かわかったのか、それともまた彼らがやってきてしまうのか。いずれにしても、リーリエには何か嫌な予感がしてぞわりと背筋に寒気がきた。

 

「私は長いことここを離れられないけど、エーテルパラダイスまでは送っていけるから。貸出のフェリーで付き添ってあげるよ。」

「……ありがとうございます。」

 

リーリエは緊張のため喉をゴクリと鳴らし、アセロラに連れられてエーテルパラダイスへと足を踏み入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエはアセロラに連れられてエーテルパラダイスに辿り着く。連れてきてくれたアセロラに別れを告げて懐かしのエーテルパラダイス内部に入っていく。

 

「リーリエお嬢様、お待ちしてました。」

「ビッケさん!」

 

ルザミーネ代表の秘書を務めているビッケが出迎えてくれる。ビッケは深々と頭を下げてリーリエを快く迎え入れる。

 

「もう、お嬢様はやめてくださいよ。いつも通り呼んでほしいです。」

「すみません。つい昔の癖でそう呼んでしまいました。」

 

恥ずかしそうにするリーリエに、ビッケも懐かしさを感じながらそう謝る。小さいころからのリーリエを知るビッケにとって、彼女もまた代表と同じく仕える人物なので仕方がないだろう。いわゆる職業病のようなものかもしれない。

 

「お話は代表の元にご案内しながらさせていただきます。」

「は、はい。でも突然呼ばれたので……なにかあったのですか。」

「なにかあった、と言いますか、これから起こるかもしれないと言った方が正しいですね。」

 

起こるかもしれない、と言う言葉にもしかしてUBが、と一番気になる点を尋ねてみる。するとビッケは首を横に振ってそれは違うと否定した。

 

「今回はUB……とは少し違います。とは言え私たちも詳しいことはまだ分かっていないのです。」

 

ビッケはだからこそ、と言葉を続ける。

 

「起こり得るかもしれない事態を、大事になる事前に対処しようと言うことになったのです。」

 

そう言ってビッケは立ち止まる。目の前には見覚えのある大きな扉。ビッケは大きな扉をノックすると、中からは「どうぞ」と女性の声が聞こえた。その言葉を聞いたビッケは「失礼します」、と扉を開ける。

 

「ご苦労様、ビッケ。」

 

そう労いの言葉をかけたのはエーテル財団の代表にしてリーリエの母親、ルザミーネであった。横には空間研究所のバーネット博士、それからルザミーネと対面するようにリーリエの兄であるグラジオや同じく島巡りをしているヨウ、ハウ、それから現メレメレ島しまクイーンを務めているミヅキの姿があった。

 

「お兄様、それにミヅキさん、ヨウさんにハウさんも呼ばれてたんですね。」

「俺は元々協力者だったからな。こいつらもついさっき来たところだ。」

「やっほー!リーリエー!」

「相変わらずだな、ミヅキは。」

「これでみんなそろったねー。」

 

ミヅキは友人であるリーリエに再会でき、いつものようにハグをしてスキンシップをする。リーリエも嫌なわけではないが、苦しいですとリアクションをとる姿はもはや彼らにとっては見慣れた光景である。

 

「と、ところでお母様、今回呼ばれたのは一体……。」

 

リーリエはハグしてくるミヅキと離れると、今回の詳しい用件をルザミーネに尋ねる。彼女の表情を見る限り、今回の件はかなり重大なようである。

 

「まずはこれを見て頂戴。」

 

そう言ってルザミーネはスクリーンにとある写真を映し出す。グラジオはその写真に見覚えがあった。

 

「これは以前にもグラジオに見せたものだけど、最近になってこの石板が見つかったの。」

 

その石板には中央には巨大なポケモンらしき存在。周囲にはアローラの島の守り神とUBの姿があった。リーリエ、ヨウ、ハウには中央の存在がなんとなくなんなのかが分かった。

 

「ウルトラ調査隊の人から話を聞いていたから分かると思うけど、中央に映っているのが“かがやきさま”よ。」

 

バーネットの言葉に3人はやっぱり、と心の中で思う。事情が分からないミヅキはかがやきさまについてルザミーネに尋ねることにした。

 

「かがやきさまってなんですか?」

「ウルトラ調査隊の人たちは知ってるかしら?彼らの世界に存在している、いわば神様みたいな存在と認識してちょうだい。」

 

ミヅキはその説明だけでなんとなく察しはついた。伊達に島巡りの達成やしまクイーンを務めているわけではない。

 

「お母様……もしかして……」

「ええ……UBとは違う存在だと思うのだけど、かがやきさまにもウルトラオーラを検知したわ。そのウルトラオーラが、次第に大きくなってきたの。」

 

ウルトラオーラが大きくなってきた。それはつまりどういうことなのか、5人はやはりと理解する。かつて味わった悪夢と同じ現象が、今起きようとしている可能性があるわけだ。

 

「そのウルトラオーラを俺たちで止めに行く、と言うわけだな。」

「その通りよ。ウルトラオーラが最も強く感じるポイントも把握済み。今からヘリで現地に向かうわ。そこには他の協力者も既にいるから、私たちも合流するわよ。」

 

そう言ってルザミーネは彼らを外のヘリポートへと案内する。用意されていたヘリに全員で乗り込み、協力者がいると言う現地まで向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエたちを乗せたヘリはポニ島の上空にやってきた。更に高度を上げ。向かう先はポニの大渓谷そしてその先にある日輪の祭壇であった。

 

ヘリは日輪の祭壇上空にまで辿り着く。既にここには協力者がやってきているとのことで、リーリエは祭壇の上にいた人影に気付き覗いてみる。するとそこには見覚えのある人影が3名見えた。

 

ヘリは祭壇の上に無事着陸する。着陸したのを確認したリーリエは、現地にいた協力者の元へと駆けだした。そこにいたのは……

 

「シンジさん!」

「リーリエ、君も来たんだね。」

 

そこにいたのはチャンピオンであるシンジであった。そしてその横にはウルトラ調査隊のダルスとアマモの姿があった。

 

「久しぶりだな、リーリエ。」

「久しぶり!おねーちゃん!」

 

ダルスとアマモも久しぶりに出会ったリーリエに挨拶する。リーリエもお久しぶりですと頭を下げて挨拶する。

 

「ルザミーネ代表、お疲れ様です。ご足労いただき感謝します。」

「こちらこそ、ですが問題はこれからですから。」

 

ルザミーネとダルスは業務上の付き合いと言うことで握手を交わす。協力関係にあるエーテル財団とウルトラ調査隊代表の挨拶みたいなものだろう。

 

「リーリエ。」

「は、はい。お母様、なんでしょうか?」

「あなたに来てもらったのは、あなたとシンジ君の協力が必要だからよ。」

「私とシンジさんの……ですか?」

 

リーリエはそんな母親の言葉に疑問を抱く。困惑して理解できていないであろうリーリエに、シンジは歩み寄ってあるものを差し出した。

 

「リーリエ、これに見覚えあるでしょ?」

「っ!?こ、これって……」

 

シンジが差し出したのは月の模様が描かれた青色の笛。リーリエにとって思い出深いその笛は、絶対に忘れることのできない懐かしの笛であった。

 

「月の笛……ですね。」

「うん。これを使って、もう一度ほしぐもちゃんを呼び出す必要がある。」

 

シンジはリーリエに説明をする。ウルトラホールを通ることのできる唯一の存在。当然膨大なウルトラオーラも所持しており、日輪の祭壇に顕現させることによってウルトラオーラをより強くさせて“かがやきさま”のウルトラオーラとの反応を煽ると言う考えだ。

 

「……分かりました。」

「みんなも、万が一にも戦闘が始まってしまう可能性があるから、覚悟と準備だけはしておいて。」

 

シンジの言葉にグラジオを始め、トレーナーたちは頷いて返事をする。いつになく真剣な表情をするシンジの顔を見て、全員から笑顔が少なくなっているのが分かる。

 

リーリエはシンジから月の笛を受け取り、右側にある月の模様が描かれた床へと立つ。対してシンジは太陽の笛を手に、左側の太陽が描かれた床の上に立った。

 

リーリエとシンジは互いに目を合わせて意思を通じ合わせる。他のみんなは二人の様子を見守り無事にいくことを祈るばかりである。

 

シンジとリーリエは同時に笛を吹く。綺麗な二人の奏でるハーモニーが日輪の祭壇を包み込む。久しぶりに吹いたため不安だったリーリエだが、シンジと一緒に吹くことに安心感を覚えてその不安は杞憂となった。

 

二人は笛による演奏を終える。暫くすると、空から太陽がこちらにゆっくりと降りてくる錯覚が見えた。まるで太陽にも思えるそのシルエット、太陽の化身とも呼ばれる伝説のポケモン、ソルガレオの姿であった。

 

初めて見るミヅキ、ヨウ、ハウ、それからグラジオもその姿には感動するばかりである。

 

「……ほしぐもちゃん、お久しぶりです。」

『……グゥ♪』

 

その大きくも逞しい図体からは想像できないであろう仕草をソルガレオはとる。リーリエと額を合わせすりすりと甘えている様子であった。ソルガレオ、もといほしぐもちゃんにとって彼女は母親、または親友のような立ち位置なのかもしれない。

 

そんな和やかな雰囲気を漂わせる彼女たちをよそに、バーネットは慌てた様子で大きな声をあげていた。

 

「ルザミーネ!ウルトラオーラの反応が!」

「っ!?もう来たの!?思っていたより早いわね。」

 

ソルガレオのウルトラオーラに呼応されるかのように、もう一つのウルトラオーラが更に増大していった。想定以上のウルトラオーラが機会を通して感じ取られ、その直後に空が暗くなっていき空間にパリンッとヒビが入ったのが確認できた。

 

ヒビは徐々に割れ目が広がっていき、そのヒビを広げるように大きな手が引き裂いた。ビリビリと感じる緊張感、なにものにも勝る不安と恐怖、紛れもなくあれはUBたちの世界と繋がっているウルトラホールである。

 

『……シカ……リ』

 

「あれがか……かがやきさま?」

「ああ、我々の世界に存在しているはずのかがやきさま。またの名をネクロズマだ。」

 

そこから姿を現したのは禍々しくも巨躯と巨椀を持つ黒い存在、ネクロズマであった。




ようやくUSUMのメインにやってきました。ここまで長かった……。
ここからまた長くなりますが、頑張って完走目指しますのでよろしくお願いします!

あっ、先日プリコネで実装されたクリスマスリノちゃんクッソ可愛かったです。天井覚悟だったけどおはガチャと現在開催中の無料10連で2人出るとは思わなかった。私が実況者だったら間違いなく低評価案件。


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ソルガレオVSネクロズマ!欠けていく太陽!

あけおめことよろ!

前回は投稿場所間違えましたが、番外編の前に投稿設定する関係上仕方がないということでどうか許してください


これから訪れる可能性のある災厄を事前に食い止めるため、シンジとリーリエ一同はポニ島にあるポニの大渓谷頂上、日輪の祭壇に集まった。

 

シンジとリーリエはかつてほしぐもちゃんを目覚めさせた方法、太陽の笛と月の笛を同時に吹くことでこの場にほしぐもちゃんを呼び出した。

 

その後、現れたほしぐもちゃん、ソルガレオに呼応するように漆黒の鎧を纏うかのような禍々しいポケモンが空間を引き裂いて姿を現す。ウルトラホールを潜り抜け、姿を現したそのポケモンの名を、ウルトラ調査隊のダルスが呼んだのだった。

 

「あれがかがやきさま……君たちの世界で言うならば、ネクロズマだ。」

「あれが……かがやきさま?」

「ネクロズマさん……と言うのですね。」

 

かがやきさま……ダルスたちの話ではあちらの世界にとって神様にも近い存在、いわば光の神とも呼ぶべき存在だと聞いている。しかしかがやきさま、ネクロズマからはそのような雰囲気は一切感じない。寧ろ邪悪な、体が震える恐怖のような感覚が全身に伝わってくる。

 

その時リーリエたちはダルスたちの話を思い出す。突然、かがやきさまは光を失ってしまい、荒神として暴走を始めてしまったのだ。それが原因で、ダルスたちの世界からは光が失われ、闇の世界として何年も太陽の光すら届かない世界となってしまったのだ。

 

ネクロズマはウルトラホールを更に広げ、遂には突き破りアローラの世界に顕現する。その禍々しい姿に、この場にいる全員が身震いをしてしまう。UBととは更に異なる別の恐怖、非にならない恐怖が感じ取れる。

 

『っ!?ラリオーナ!』

「!?ほしぐもちゃん!」

 

かがやきさま、ネクロズマを見た瞬間にソルガレオは彼が危険な存在だと察知し、リーリエたちの前に守るように立ち塞がる。ネクロズマは自分を見据えるソルガレオを、空から真っ直ぐと見下ろしていた。

 

次の瞬間、ソルガレオとネクロズマの姿が一瞬で消える。空では白と黒、二つの光がぶつかり合い、ガキンッガキンッと金属音に近い鈍い音が辺り一面に広がる。リーリエやグラジオはおろか、チャンピオンであるシンジにすらも目で追いかけるのがやっとと言うスピードだ。どちらが優勢なのかが全く分からない。

 

刹那、この状況に変化が訪れる。彼らの目に映った光景は驚くべきものであった。

 

なんとソルガレオがネクロズマに叩き伏せられ、身動きが取れない状況となっていた。伝説のポケモンであり、太陽の使者とも言われるソルガレオが負けるなど、彼らにとっては想像もしていなかった状況だ。

 

しかし、リーリエはその状況を見てあることを思い出した。それはウラウラ島の霧の中で見た幻影だ。

 

あの時見た光景、この後に起こる出来事は彼女にとって非常に恐ろしいものであった。もしあの光景が現実のものになってしまうのだとすれば、それはなんとしてでも止めなければならない。

 

気付けばリーリエはモンスターボールを手に取り、ネクロズマの前に投げたのだった。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コン!コォォォン!』

『!?』

 

シロンはモンスターボールから飛び出した瞬間、れいとうビームでネクロズマに攻撃を仕掛ける。ネクロズマはその攻撃を咄嗟に躱し、ソルガレオは彼の手から解放される。

 

「それ以上、ほしぐもちゃんに手出しはさせません!」

『ラリ……っ』

『っ!?シカ……リ……!』

 

ネクロズマは自分の目的を邪魔されたことにより、妨害してきたリーリエ、シロンを敵と認識する。ネクロズマは次の瞬間、シロンに向かって攻撃を放つ。

 

『コン!?』

『ラリ……』

「シロン!?」

 

ネクロズマの攻撃、プリズムの様に光が反射しながら直線的に放たれる光線がシロンに迫る。ソルガレオが反射的に動こうとするも、ネクロズマとの戦いで体力を消耗してしまったためすぐに動くことは出来なかった。今度はネクロズマの攻撃がシロンに襲い掛かろうとしていた。

 

その時、二つの攻撃が交差し、ネクロズマの攻撃を相殺する。シロンの前には、二匹のポケモンが頼もしく彼女を守るように立っていた。

 

『フィア!』

『シヴァア!』

 

そこに立っていたのはシンジの相棒、ニンフィアとグラジオの相棒、シルヴァディであった。先ほどの攻撃はニンフィアのムーンフォースと、シルヴァディのエアスラッシュだったのだ。

 

「リーリエ、僕たちも戦う!」

「これ以上、奴の好きにさせるわけには行かないからな。」

「シンジさん!お兄様!」

「私たちも!アシレーヌ!お願い!」

『シレェヌ!』

「ガオガエン!出番だ!」

『ガオゥ!』

「ジュナイパー!行くよー!」

『ジュッパ!』

 

リーリエ、シンジ、グラジオに続き、ミヅキ、ヨウ、ハウもそれぞれのパートナーポケモンを繰り出す。島巡りの経験を経て、いつの間にかヨウとハウのニャヒートとフクスローも進化を遂げていたようだ。

 

シロン、ニンフィア、シルヴァディ、アシレーヌ、ガオガエン、ジュナイパーが弱ったソルガレオを守るように、強大な敵であるネクロズマに対峙する。ネクロズマはシロンだけでなく、この場にいる全ての存在を敵と認識した。

 

ネクロズマは体を丸め、手をクロスさせて力を溜める。その行動を見て、ダルスはすぐに声をあげる。

 

「皆!来るぞ!注意しろ!」

 

次の瞬間、ネクロズマは先ほどよりも広範囲に光線を放つ。光の屈折を利用しているのか、その軌道はまるで読むことができず祭壇全域に広がっていた。

 

シロンたちも必至に避けながら攻撃をして対抗する。しかし攻撃は一向に弱まることなく、全員が防戦一方と言った状況だ。必死に防御を繰り返すが、遂にはその攻撃がシロンに掠り僅かに被弾してしまう。

 

「っ!?シロン!」

 

被弾し倒れてしまったシロンにリーリエは心配で駆け寄った。そんな二人に、ネクロズマの攻撃が反射して襲い掛かった。

 

「ニンフィア!」

「シルヴァディ!」

『フィーア!』

『シルヴァ!』

 

リーリエはシロンを庇う。そんな二人を守るため、ニンフィアとシルヴァディは立ち塞がりそれぞれ対抗する。ニンフィアたちに続きアシレーヌたちもリーリエたちを守るために動いた。

 

ニンフィアのシャドーボール、シルヴァディのマルチアタック、アシレーヌのうたかたのアリア、ガオガエンのかえんほうしゃ、ジュナイパーのかげぬい、それぞれの攻撃でネクロズマの攻撃を食い止める。しかしそれでもなお、ネクロズマの攻撃は勢いが収まることを知らない。まるでネクロズマ自身が暴走しているかのようであった。これが荒神と言われたネクロズマの所以なのだろう。自分自身でも力を制御していない様に感じられる。

 

どれだけ対抗しても、こちらの体力が消耗していく一方であった。ニンフィアたちも疲労が溜まり、肩で息をしているのが分かるほどだ。そして遂に包囲網が突破されてしまい、一つの攻撃がリーリエたちに向かっていった。

 

『リーリエ!?』

 

全員が慌ててリーリエの名を呼ぶ。急いで守ろうと動くが、ネクロズマの素早く鋭い攻撃には間に合わない。リーリエも恐怖からシロンを守りながら目を瞑る。全域に大きな爆発音が広がった。

 

全員がリーリエの安否を心配する。衝撃が晴れると、そこにはリーリエがシロンを守っている姿がしっかりと映っていた。彼女たちはどうやら無事のようだ。

 

一向に痛みが来ないことをおかしいと感じ、何があったのかとリーリエは目を開ける。するとそこには、リーリエの盾になるソルガレオの姿があった。

 

「ほ、ほしぐもちゃん!」

 

その光景をみたリーリエは一瞬で理解した。自分が守ろうとしていた存在であるソルガレオが、身を挺して自分の事を守ってくれたと言う事実に。

 

ソルガレオはネクロズマの攻撃によるダメージでその場に膝をついてしまう。その様子を見たネクロズマがソルガレオの前に降り立ち、頭部をその巨腕で抑えつける。

 

「ほしぐもちゃん!やめてください!」

「くっ!ニンフィア!」

「シルヴァディ!」

『フィア!』

『シヴァ!』

「アシレーヌ!お願い!」

「ガオガエン!」

「ジュナイパーも!」

『シレヌ!』

『ガオ!』

『ジャパァ!』

 

ソルガレオを助けるためにニンフィアたちも一斉に動き出す。攻撃を繰り出そうとするも、その直前にネクロズマがもう片方の巨腕を振り払う。その巨腕によって風圧が発生し、ニンフィアたちを一斉に吹き飛ばす。先ほどの攻防により体力を失ってしまったニンフィアたちは成すすべもなく倒れてしまう。

 

「ニンフィア!?」

 

シンジも含め、全員がパートナーポケモンに駆け寄る。彼らのポケモンたちとは言え、ネクロズマの攻撃には耐え切れなかったみたいで全員が力尽きてしまっている。

 

「っ、ニンフィア、戻って休んでて。お疲れ様。」

「シルヴァディ、よく頑張ったな。」

「アシレーヌ、ありがとう。」

「ガオガエン、戻って休んでて。」

「ジュナイパー、おつかれさま。」

 

最後まで頑張ってくれたパートナーポケモンをそれぞれのモンスターボールに戻す。戦闘不能になってしまった彼らを、これ以上ネクロズマとの戦闘に出すわけにはいかない。

 

しかしネクロズマは敵がいないと分かった瞬間、意識をソルガレオのみに向ける。ネクロズマの背部から三角柱の形をした白いコアのようなものがゆっくりと飛び出した。

 

そのコアはネクロズマから離れると、今度はソルガレオに近付いていく。そしてコアがゆっくりとソルガレオの頭部に埋め込まれていった。

 

「っ!?ダメ!ダメです!待ってください!」

 

リーリエの叫びも虚しく、無慈悲にソルガレオの内部にネクロズマのコアが埋め込まれた。それと同時に、ソルガレオとネクロズマを眩い光が包み込んでいた。あまりの眩しさに全員が目を塞いだ。

 

「なんだ、この光りは!?」

「くっ、ほしぐもちゃん、ほしぐもちゃんは!?」

 

グラジオとシンジは慌てて状況を確認する。すると目の前には、ソルガレオでもネクロズマでもなく、別の存在がいたのだった。

 

いや、正確にはソルガレオのような何かであった。姿形は確かにソルガレオそっくりだが、その姿は眩く光り輝き、頭部や背中など、一部にはネクロズマを思わせるアーマーのようなものが装備されていた。

 

「っ!あれはまさに、ソルガレオとネクロズマが融合した姿。闇の力を持ったネクロズマが、ソルガレオの太陽の力を取り込んだ姿だ。」

「つまり、あれがかがやきさまってこと、だよ。」

 

ダルスが冷や汗を流し、アマモからも笑顔が消える。リーリエも、以前見た光景を思い出して顔色が絶望に染まってしまう。結局守るべき存在を守れなかったことが、とても悔しく感じていた。それと同時に、ネクロズマの存在がより恐ろしく感じられる。

 

『ラリオーナ!!』

 

ソルガレオの力を取り込んだネクロズマが咆哮する。そして咆哮と同時に額に太陽のマークを浮かび上がらせて、空に飛び上がった。

 

「っ!?まずい!みんな逃げろ!」

 

誰かが危険を察して必死に声を荒げて呼びかける。その声を聞いた全員が避難しようとするが、逃げるにはすでに遅すぎた。

 

太陽の力を手に入れたネクロズマは、かつての力を取り戻しつつあった。故に先ほどまでのような不安定な力ではなく、ソルガレオの太陽の力により制御ができる上さらに強大な力になっていた。

 

ネクロズマは力を溜め込み、その力を解き放つ。まるで流星のように勢いよく一直線に突っ込んできた。ソルガレオのみが覚えるとされているメテオドライブである。

 

もはや成す術はないのか、と思ったその時、横から現れた何かが彼の攻撃を遮った。その何者かは、驚くべきことにネクロズマのメテオドライブを正面から受け止め抗っていた。

 

『っ!?バァウ!』

 

ネクロズマの攻撃を受け止めていた“ポケモン”の全身を赤いオーラが包み込む。そのポケモンの筋肉が隆起し、ネクロズマの攻撃に抗いついには弾き飛ばしたのだった。ドラゴンタイプの強力な技、げきりんだ。

 

「あ、あなたは……。」

 

凄まじい力を見せたポケモンにリーリエは問いかける。リーリエの声を聞いたそのポケモンはゆっくりと振り向く。そのポケモンの正体とは……。

 

『バウ!』

「え?カイリュー……さん?」

 

リーリエの目の前に現れたポケモンはドラゴンポケモンのカイリューであった。なぜこんな場所にカイリューが、なぜカイリューが我々を守ったのか疑問だ。

 

そんなカイリューの姿を見たシンジは、とある違和感を覚えた。このカイリューはどこか懐かしい感じがすると本能的に感じたのだ。

 

「このカイリュー……もしかして……」

「!?もしかして!あなたは、ハクリューさん!?」

『バオゥ♪』

 

シンジの一言でリーリエは察した。このポケモンはかつて自分の仲間であり、故郷の仲間たちを守るために別れたハクリューなのだと。リーリエのその言葉に、カイリューは嬉しそうに頷くのであった。




以前から考えていましたがこのタイミングでカイリューを登場させました。以前のアンケートの段階で分かっていた人は分かっていたと思いますが。

アニポケBWのリザードンもオープニング的にこんな感じで登場して欲しかった願望も反映されてます。


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ほしぐもを救出せよ!いざ闇の世界へ!

アニポケに再登場したポッチャマの露骨なカラコンが気になる。ダイパ時代はもっと目が黒かったのに

UNITEのカイリュー強すぎ


ソルガレオと融合したことで本来に近い力を取り戻したネクロズマ。そんな強大なネクロズマに追い詰められるリーリエたちであったが、彼女たちのピンチを救ったのはかつてリーリエと共に旅をした仲間、ハクリューの進化した姿であるカイリューであった。

 

「カイリューさん……本当にハクリューさんなのですか?」

『バウゥ♪』

 

カイリューは困惑するリーリエにぎゅうっと抱き着いた。手加減してくれているとは言え、カイリューほどの巨体に抱きしめられたらさすがに苦しい。しかしその行動がカイリューがハクリューだという事の証明になった。

 

「カイリューさん、お久しぶりですね。ありがとうございます!」

『バウ!』

「感動的な再会のところ悪いけど、今はそれどころじゃないみたいだよ。」

『ラリオーナ!!』

「っ!?」

 

シンジの言葉にリーリエはハッとなりネクロズマに目を向ける。ネクロズマは再び咆哮をあげる。しかし今度は攻撃の為でなく、ネクロズマが咆哮した瞬間に周囲に変化が訪れた。

 

ネクロズマが開けた大きなウルトラホールの周りに、次々とウルトラホールが出現していく。さらに次第に空が暗くなっていき、太陽の光が薄くなっていった。そしてポニ島周辺だけが、まるで夜のように暗くなってしまった。

 

「代表!大変です!」

「どうしたの!?」

「ウルトラオーラの反応が急激に上がってきているわ!間違いなくウルトラビーストの反応よ!」

「なんですって!?」

 

ビッケとバーネットの報告を聞き、ルザミーネは驚愕の声をあげる。ネクロズマとソルガレオが融合し互いウルトラオーラが調和され、膨れ上がったウルトラオーラに反応したUBが再びこのアローラに現出しようとしているのだ。

 

ネクロズマはソルガレオと言う目的を達成したからなのか、そのまま振り向き自分の通って来たウルトラホールに帰って行った。

 

「ま、待ってください!」

 

当然リーリエの静止も届かず、ネクロズマはウルトラホールの内側へと消えて行った。

 

「そ、そんな、ほしぐもちゃんが……」

「ウルトラオーラ、さらに増大を確認!この世界に現れるのも時間の問題です!」

 

このままではUBたちがこの世界にやってきてしまい、ほしぐもちゃんを助けるどころの話ではなくなってしまう。それどころが、太陽の使者であるソルガレオがこの世界から消えてしまったことで、太陽の光も弱まりつつある。ヘタをすれば、このアローラもダルスの世界と同じ運命を辿ってしまうことになりかねない。

 

この状況を打開する方法はないのだろうか、と考える中、ダルスが自分のモンスターボールを手にした。

 

「……一つだけ方法がある。」

 

そう言ってダルスはモンスターボールを投げた。その中から現れたのは、大きな翼を持ち夜空にも似た模様をしたポケモンであった。

 

『マヒナペェ!』

「このポケモンに乗って行けばいい。」

「このポケモンは……ルナアーラ!?」

 

ルザミーネはそのポケモンの名を口にする。ルナアーラ……ソルガレオの対となる月の使者と呼ばれているポケモン。そう、以前空間研究所でダルスとアマモが話していたポケモンだ。二人がこの世界に来るために乗って来たポケモンである。

 

「なるほど、確かにこいつがいればウルトラホールを通ることができる。」

「ただしこのルナアーラには戦闘能力がほとんどない。この世界で言うライドポケモン的な存在だと思ってくれ。」

 

どうやらほしぐもちゃんのような伝説のポケモンとしての特殊な能力は備わっていないようだ。しかし我々の目標はあくまでネクロズマを追いかけるためなので特に問題はないだろう。

 

「しかし我々の予備の防護スーツは2着までしかない。ウルトラホールを通れるのは二人までだ。」

「男女兼用でサイズもフリーだから、誰でも着られるよ!」

「僕が行くよ、もう一人は……」

「……私が行きます。」

 

シンジが前に出てソルガレオの救出を買って出る。それに続いて名乗りをあげたのはリーリエだった。リーリエの回答に慌ててミヅキが抑止した。

 

「待ってよ!リーリエが行くのは危険すぎるよ!ここはしまクイーンの私が!」

 

親友であるリーリエに危険な目にあわせるわけには行かないと前に出るミヅキ。しかしリーリエは、そんなミヅキに対して静かに首を横に振る。

 

「ミヅキさんのお気持ちは嬉しいです。ですが、ほしぐもちゃんは私の友達です。それにほしぐもちゃんは私を守ってくれました。今度は私が助けたいんです!」

「リーリエ……で、でも!」

 

立場上、そして何より親友としてリーリエを止めたかった。しかし彼女の決意が灯った眼差しを見て、ミヅキはこれ以上の言葉が出てこなかった、

 

「…………」

 

グラジオはそんな妹の顔を見て、何かを思ったように目を瞑る。

 

「……シンジ」

「グラジオ……」

「リーリエを、よろしく頼む。」

「……分かった」

「グラジオ!?」

 

ミヅキは兄であるグラジオの言葉に目を見開いた。この場において誰よりもリーリエを止めるであろうと思っていた人物が言う言葉とは思わなかったからだ。

 

グラジオ、シンジ、リーリエを見たヨウ、ハウも、これ以上自分たちが口を挟むことは何もないと、彼らに激励の言葉を送る。

 

「俺たちも行きたいけど、ネクロズマたちのことは任せた!」

「アローラのことはおれたちに任せてよー!」

「ヨウ……それにハウまで……」

 

リーリエたちとの付き合いは短いが、ヨウとハウまでそう言っては、自分もこれ以上何も言えなくなってしまう。

 

「……分かったよ。シンジ君!必ずリーリエを無事に返してよね!怪我させたらただじゃ済まないんだから!」

「分かってる。リーリエも、ほしぐもちゃんも必ず守ってみせる。今度こそ、必ず。」

 

ミヅキは覚悟を決めてリーリエの事をシンジに託す。シンジもその言葉を受け取り、頷いて互いに拳を突き合わせる。共に島巡りをクリアしたライバルとして、ミヅキもまた彼の事を信じている証であった。

 

「シンジ君」

「ルザミーネさん?」

「行く前にこれを持って行って頂戴。」

 

ルザミーネはシンジにある物を手渡す。それはアローラのトレーナーにとって必要不可欠となるもの、Zリングであった。しかし通常のZリングとは異なり白ではなく黒色で、中央の窪みの形状も少し変化していた。

 

「それは私たちエーテル財団が新しく開発しているZリングよ。本来Z技とは、アローラの太陽や海、自然の恵みから力を授かってより強力なものに変化する。」

 

ルザミーネの説明にシンジは頷く。

 

「だけれどダルスさんたちの世界では自然環境はほとんど失われてしまっているわ。このZリング、Zパワーリングはそんな環境でも強力なZ技を使えるように調整しているわ。まだ未完成だけれど、問題なくZ技を使用することはできた。よければ使ってくれるかしら?」

 

確かにそう言うことであればネクロズマとの戦いで強力な武器になる。それにこれは一つの実験にもなり得る。自然環境が失われてしまったあちらの世界で扱うことができれば、Zパワーリングは次世代のZリングとして活用できるだろう。

 

シンジはルザミーネからZパワーリングを受け取り、感謝の言葉を告げた。

 

「ありがとうございます、ルザミーネさん。」

「あなたに……そしてリーリエに、守り神の御加護があらんことを。」

「お母様……」

 

ルザミーネは両手を合わせて二人の無事をアローラの守り神たちに祈る。リーリエはそんなルザミーネに心の中で感謝し、昔の様な優しい姿が見れてよかったと心の底からそう思う。

 

「では二人とも、このスーツを着てくれ。これがあればウルトラホール内でも問題なく活動可能だろう。」

「さっきも言った通りサイズはフリーだから、誰が着ても大丈夫だよ!」

 

ダルスはシンジとリーリエに自分たちの着ているスーツと同じものを手渡す。

 

ダルスは高身長でアマモはかなり小柄だ。対してシンジとリーリエはダルスより少し低い、平均的な少年少女の身長だ。カントー育ちのシンジの方がやや低いぐらいだろうか。

 

フリーサイズと言うのであれば、成長期の彼らでも問題なく着用することが可能だろう。

 

シンジとリーリエは受け取ったスーツを着用する。アマモの言った通り、着用した瞬間二人のサイズに自然とピッタリ一致した。少しピッチリし過ぎて違和感を感じるが、必要なことなのでこの際仕方がないことである。

 

「カイリューさん、お願いがあります。」

『バウッ?』

「また、私と一緒に戦ってくれませんか?あなたの力が必要なんです。」

『……バウッ♪』

 

リーリエの頼みにカイリューも元気よく頷いてリーリエに抱き着いた。カイリュー自身、久しぶりにリーリエに会えたこと嬉しいのだろう。

 

「あはは、苦しいですよカイリューさん。でも、私も嬉しいです。また、よろしくお願いしますね!」

『バァウ!』

 

リーリエはかつて彼を入れていたモンスターボールを取り出しそれをカイリューに向ける。パカッと開いたモンスターボールにカイリューは入っていき、再びリーリエの手持ちへと加わるのであった。

 

「……ありがとうございます、カイリューさん。」

 

これから一緒に戦ってくれること、そして何よりさっきピンチを助けてくれたこと。その両方に対しての感謝の言葉をカイリューに伝える。カイリューはボール越しに頷き、ボールが揺れることでリーリエに自分の気持ちを伝え返すのであった。

 

「それではルナアーラ、彼らを乗せてくれるか。」

『マヒナぺ!』

 

彼らの準備が整ったと確認したダルスは、ルナアーラにそう頼んだ。ルナアーラもその頼みを承諾すると、彼らを自分の背中に乗り水平態勢になる。

 

しかしその時、慌てた様子でビッケは衝撃の報告を告げたのであった。

 

「ウルトラオーラの反応最大!!UB、来ます!」

 

リーリエたちが出動しようとした刹那、ビッケの報告と同時に無数のウルトラホールから多数のUBたちが一斉に出現した。その数は数えきれないほどで、ウルトラホールまでの道が埋め尽くされていた。

 

「っ!?このままでは!」

「マズいよマズいよ!これじゃあルナアーラが通れないよ!」

 

どうすればいいかとダルスが思案するが、それよりも先にグラジオたちが動いていた。

 

「ルカリオ!クロバット!出番だ!」

『バウッ!』『クロッ!』

「ライチュウ!ウインディもお願い!」

『ライライ!』『ガウッ!』

「ピカチュウ!ウォーグル!行くぞ!」

『ピッカァ!』『ウォー!』

「オンバーン!クワガノン!頼むよー!」

『バオォン!』『クワッ!』

「私も戦うわよ!ピクシー!ムウマージ!」

『ピックシィ!』『マァジ!』

 

グラジオたちだけでなく、ルザミーネも自分のパートナーポケモンたちを出して臨戦態勢をとる。そしてグラジオは、シンジたちに叫びこれからのことを伝える。

 

「シンジ!リーリエ!ここは俺たちが道を切り開く!だからお前たちは俺たちの作った道を突き進め!」

「グラジオ……」

「お兄様!」

「大丈夫だ、ここは俺たちがなんとかするさ。アローラの運命は、お前たちに託したぞ。」

 

グラジオの覚悟の言葉にシンジとリーリエも重く受け止め、必ずほしぐもちゃんも救いアローラの運命も救って見せると頷いて応えて見せた。そんな二人の表情を見て、グラジオたちも僅かに微笑みUBたちのことを見据えた。

 

「ルカリオははどうだん!クロバットはアクロバット!」

「ライチュウ!エレキボール!ウインディ!かえんほうしゃ!」

「ピカチュウ!10まんボルト!ウォーグル!ブレイブバード!」

「オンバーンはばくおんぱー!クワガノンは10まんボルトー!」

「ピクシー!マジカルシャイン!ムウマージはシャドーボール!」

 

全員が一斉にUBを攻撃する。しかしUBたちはその攻撃を次々と避けて行った。しかしその反面、ウルトラホールに続く中央の道が綺麗に開けたのであった。

 

「今だシンジ!リーリエ!」

「うん!行くよ、リーリエ!」

「はい!お願いします!ルナアーラさん!」

『マヒナペェ!』

 

ルナアーラは直後シンジたちを乗せたまま飛び上がり、ウルトラホールまでの道を中央突破して飛び込んでいった。ウルトラホールへと飛び込んだシンジたちの姿は、一瞬で消え失せたのだった。

 

「……頼むぞ、二人とも。」

「アローラを、私たちの世界を、かがやきさまをお願いします。」

 

ダルスとアマモは、ただただ二人の事を信じて祈るしかできなかったのであった……。




カイリューパーティ入り

一部公式設定などは改変


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光なき世界、ウルトラメガロポリス!

オーロット実装日

最近ハイボ瞑想+スピーダーのニンフィアにハマってます


シンジとリーリエがウルトラホールに突入したその後、日輪の祭壇にてUBたちと激しい激闘が繰り広げられていた。

 

「ルカリオ!ボーンラッシュ!クロバットはアクロバット!」

『バウゥ!』

『クロ!』

 

UBの大群にグラジオのルカリオとクロバットの正面から突撃し、ボーンラッシュとアクロバットで迎え撃ち一掃する。二体の連続攻撃によりUBたちは倒れるが、次々と後続のUBたちがウルトラホールから姿を現してくる。

 

「くっ!?倒しても倒してもキリがない!」

『デンショック!』

 

次に前に出てきたのは電気ケーブルにも似た姿をしたUB、デンジュモクだ。デンジュモクは足を地面に突き刺し、周囲に電気を走らせる。エレキフィールドを展開しでんき技の威力を上げたのだ。

 

デンジュモクは自分のフィールドにしたのち、10まんボルトで攻撃を仕掛けてくる。エレキフィールドにより更に威力が上がったでんき技の迫力は凄まじいものであった。

 

「エレキフィールドなら私に任せて!ライチュウ!エレキボール!」

「俺たちも行くぞ!ピカチュウ!10まんボルト!」

『ライチュ!』

『ピッカチュ!』

 

ミヅキのライチュウ、ヨウのピカチュウも同じく威力の上がったでんき技で対抗する。二体の合わせ技によりデンジュモクの攻撃を相殺することに成功した。

 

「ライチュウ!アイアンテール!」

『ライラーイ♪』

『デン!?』

 

ライチュウは凄まじいスピードで駆け抜け、デンジュモクにアイアンテールを叩きつける。その目にも止まらぬスピードにデンジュモクは面食らった様子で、アイアンテールによって吹き飛ばされる。

 

アローラライチュウの特性はサーフテール。エレキフィールド下では素早さが2倍に跳ね上がる特性だ。デンジュモクはエレキフィールドによって、逆に自分に不利な状況を作ってしまったというわけだ。

 

「よし、っ!?みんな!かわせ!」

『っ!?』

 

ヨウの呼びかけに気付き反応した全員はその場から散り散りに撤退する。直後、みんなのいた場所に空から鋼の巨体がドシンッ、と大きな衝撃と共に降り立ってきた。高さ9.2m、重さ999.9㎏と言う巨躯を持つUB、テッカグヤである。

 

重ければ重いほど威力の上がる技、ヘビーボンバーにより祭壇にヒビが入る。しかしいち早く気付くことができたためこちらへの被害はなかった。

 

「今度はおれがー!クワガノン!10まんボルトー!」

『クワッ!』

『かがよふ』

 

ヘビーボンバーの着地隙を狙ってクワガノンが10まんボルトで攻撃する。ひこうタイプのテッカグヤにでんきタイプの10まんボルトは効果が抜群だ。しかしテッカグヤは、まもるを展開してクワガノンの攻撃を防御する。

 

まもるは相手の攻撃を完全に防ぐことのできる防御技だ。如何に弱点技であったとしても攻撃が通らなければ意味がない。しかし……

 

「甘いわよ!ムウマージ!マジカルフレイム!」

『マァジ!』

 

今度はルザミーネのムウマージがマジカルフレイムで追撃をする。

 

まもるは連続で使うと失敗してしまうことがある。テッカグヤは巨体故にスピードがなく回避することができない。そのため、まもるで再びムウマージの攻撃を防ごうとするが、連続で使ったために失敗してしまい防ぐことができなかった。

 

テッカグヤはマジカルフレイムの直撃を受けて怯む。その隙を見て、ハウはチャンスと捉えもう一度クワガノンで攻勢にでる。

 

「続けてワイルドボルトー!」

『クワクワクワ!』

『!?』

 

クワガノンのワイルドボルトがテッカグヤの胴体に突き刺さる。さしものテッカグヤと言えど、弱点技を連続で受ければ一溜りもない。その巨体は後方にゆっくりと倒れ、テッカグヤはダウンした。

 

しかしそれでもまだまだ数は残っている。ウルトラホールが開いている限り、UBの数は衰えることを知らない。

 

それでも今自分たちができることはアローラにUBを進出させないことのみである。グラジオたちはただただUBを必死に止め続ける。

 

「ピクシー!マジカルシャイン!」

『ピックシ!』

「オンバーン!ばくおんぱー!」

『バッオン!』

 

ピクシーのマジカルシャイン、オンバーンのばくおんぱで一斉に攻撃する。どちらの技も範囲が広い攻撃で、大勢のUBにヒットしてダメージを与える。こうやって少しずつでも押し返していくしかない。

 

「っ!?ピクシー!うしろよ!」

『ピッシ!?』

 

ルザミーネの声に反応したピクシーは後ろを振り返る。するとそこには刀の様な腕を振りかぶったUB、カミツルギが接近してきていた。

 

小さな体と素早い動きにより音もなくピクシーに接近したカミツルギは鋭い刃、リーフブレードで切り裂こうと構える。ピクシーのピンチ化と思いきや、その攻撃をあるポケモンが阻止したのだった。

 

「ウォーグル!ブレイククロー!」

『ウォー!』

 

ウォーグルは鋭いツメによる一撃、ブレイククローでピクシーの背後に回り込んでカミツルギのリーフブレードと交える。互いの鋭い一閃はそれぞれの攻撃を止めるには充分であった。

 

「ウインディ!しんそく!」

『ガウ!』

 

ウォーグルのブレイククローにより身動きの取れないカミツルギを、ウインディが横からしんそくで吹き飛ばし妨害する。

 

「かえんほうしゃ!」

 

ウインディはかえんほうしゃでカミツルギに追撃する。カミツルギははがね・くさタイプ。弱点であるほのお技を受けてこれ以上戦えるはずもない。

 

みんなが戦っている中、ビッケとバーネットがウルトラオーラについて調査していた。

 

「このウルトラオーラの数値、あまりにも不可解です。」

「ええ、本来ウルトラオーラは一定の数値を保っているはず。でもこのウルトラオーラの数値はあまりに不安定すぎる。」

 

バーネットが検知されたウルトラオーラの数値を見て考える。

 

従来のUBから検知されるウルトラオーラはUBの強さを示す数値のようなもの。しかし今検知されているウルトラオーラは全く異なり、強くなったり弱くなったりとかなり波があり、正確に判定することができない。まるで催眠にでもかけられているかのように自我がなく、不安定なのである。

 

「恐らくネクロズマが影響しているのだろう。」

「ネクロズマが?」

「ネクロズマはね、かがやきさまとしての力があったときは、膨大な量のウルトラオーラを所持していたんだ。」

「ネクロズマがかつての力を取り戻した。しかし吸収したのはこの世界のソルガレオだった。」

「その力があまりに大きすぎるから、ネクロズマ自身も制御しきれていないんだよ。」

 

ダルスとアマモの説明にビッケとバーネットは納得する。

 

「確かに、そう考えると辻褄が合うわね。」

「膨大すぎるウルトラオーラの影響を受けて、UBたちがこの世界に誘われて暴走している、と言うことですか。」

 

ビッケの言う通り、このUBたちは現在ネクロズマの出すウルトラオーラの影響を受けて暴走中の状態だ。我々の言うことに耳を貸すこともなければ、ウルトラボールで捕まえることも不可能だろう。

 

「彼らを止める唯一の方法……それはネクロズマを止め、かがやきさまとしての本来の力を取り戻してもらうしかない。」

「つまり、お兄ちゃんたち次第、ってことだね。」

「そう、全てはシンジ君とリーリエにかかっているわけね。」

 

戦いながら耳を傾けていたルザミーネが、一瞬娘たちの入っていったウルトラオーラを見つめて呟いた。

 

「みんな!あの二人が戻ってくるまで、全力で止めるわよ!」

『ああ!』

 

ルザミーネの一喝にみんなが呼応して声をあげる。ネクロズマを追い、ソルガレオを助けに行った二人を信じて、UBたちとの戦いを続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、ウルトラオーラに突入したシンジとリーリエは……

 

「ウルトラオーラ、本当に不思議なところだね。」

「はい、まるで先に進んでいる気がしません。」

 

ウルトラオーラ内部は一切風景が変わらず、先に進んでいるのかさえも自覚できない。それどころか、まるで時間が停止しているかのような錯覚さえ覚える程だ。

 

「リーリエ、体調に変化はない?」

「私は問題ないです。シンジさんはどうですか?」

「僕の方も問題ないよ。このスーツのおかげだね。」

 

ダルスたちから借りたスーツのお陰で、シンジたちの体に一切の影響はない。少し息苦しくは感じるが、それはあくまでスーツとヘルメットが少しキツイからであって、ウルトラホールに入ってからなんら変化は感じない。

 

ウルトラホールに入ってからどれほど経っただろうか。10分、20分、1時間、いや、時間の経過を感じられないため何日もの時が経過しているようにさえ思えてしまう。

 

『マヒナペェ!』

「ルナアーラさん?どうかしたんですか?」

「もしかしたら目的地に近付いてきたのかもしれないね。」

「……いよいよ……ですか」

 

ルナアーラの反応からダルスたちの闇の世界に近付いてきたことを察するシンジ。リーリエは喉をゴクリと鳴らし緊張感をあらわにする。

 

自然を失ってしまった闇の世界とはどのようなところなのか、今から行く世界は未知の世界だ。緊張しない方が無理と言うものだ。

 

そしてネクロズマの存在。ソルガレオを吸収し、力を取り戻したネクロズマは更に強力な力を得てしまった。そんな力に対抗することができるのか、ソルガレオを救出することができるのか、リーリエの脳に駆け巡るのは不安ばかりだ。

 

リーリエの不安を悟ったシンジは、彼女に声をかける。

 

「リーリエ。」

「は、はい!」

「強敵であるネクロズマに勝てるか不安、なんだよね?」

「はい……私たちが束になってもあしらわれてしまいました。カイリューさんがいなければ、全滅していた可能性もありました。」

 

あの時、自分のパートナーであるシロンだけでなく、グラジオのシルヴァディ、シンジのニンフィアさえも返り討ちにされてしまった。それほど強大な相手にこれから挑もうと言うのだ。不安を抱くなというほうが無理な話だ。

 

「……僕たちはネクロズマと戦いに行くわけじゃないよ。」

「え?」

「ソルガレオ……ほしぐもちゃんを救出する。そしてネクロズマも助ける。それが僕たちの世界、そしてダルスさんたちの世界を救う方法。だからリーリエは戦うんじゃなくて、ほしぐもちゃんに声を届ける。」

「ほしぐもちゃんに……声を……」

 

リーリエはシンジの言葉で昔のことを思い出す。ほしぐもちゃんと一緒に冒険してきた数々の思い出。大変なこともあったが、その分たくさんの経験をして、楽しい思い出もできて、間違いなく二人の間には切っても切れない絆がある。それだけは何物にも代えられないものであり、ほしぐもちゃんとの絆はだれにも負けないと自負できる。

 

「ありがとうございます、シンジさん。ほしぐもちゃん……必ず助けて見せますから!」

 

リーリエの不安はまだ拭えない。しかしそれでも先ほどの暗い表情よりは明らかによくなった。その眼には不安などよりも、希望の光が灯っているようにシンジには見えた。

 

シンジも彼女に負けられないと改めて覚悟を決める。そんな二人を迎え入れるかのように、ウルトラホールの奥にある光が包み込んだ。ついにダルスたちの世界にやってきたのであった。

 

しかしその奥には光ではなく、辺り一面真っ暗闇であった。街灯や建物の灯りがあるから視界は確保できているが、それでも夜以上に暗さが増している。

 

シンジは空を見上げてみる。しかし月はおろか、星空の光すら見えない。雲で覆われているわけでもないのにこの暗さは異常である。

 

「あっ!シンジさん!あそこに誰かいますよ?」

 

リーリエが二人組の人影に気付き、話しかけてみようと近付く。するとシンジたちの気配に気づいたのか、二人はこちらへとゆっくり振り向く。

 

一人は鼻の下から生えたカイゼル髭が特徴的な青白い肌の年配の男性。もう一人は同じく青白い肌だが、艶やかな髪で右目を隠すようにしている大人っぽい女性。

 

しかし二人の見た目で特に印象的なのはその服だ。その服は紛れもなくダルスたちと同じものであった。つまりはこの二人もまたウルトラ調査隊の人物なのだろう。

 

「容姿、特徴が一致します。隊長、彼らで間違いないでしょう。」

「うむ。キミたちがシンジ君にリーリエ君だね?」

「は、はい、私たちのこと知っているのですか?」

「ダルスたちから報告を受けているよ。もちろん君たちの目的も聞いている。」

 

どうやらシンジたちがウルトラホールへと突入したあと、ダルスたちはこちらの世界と何らかの手段を使って交信していたようだ。自然が失われてしまった分、生きていくために必要な技術力はかなり進んでいる様子だ。

 

「ここはウルトラメガロポリス。光を失い、それでも希望を持って生きている者たちが集う場所だ。」

 

ウルトラメガロポリス。それがこの都市の名前だそうだ。ダルスたちから聞いた話の通り、かがやきさまが力を失い暴走してしまったことが原因でかなり昔から光をなくしてしまった世界だ。

 

以降、技術力を進歩させることでかがやきさまを封印することに成功するも、彼は自ら突然封印を解除しウルトラホールへと姿を消した。そしてアローラの世界に姿を現し、ソルガレオを吸収したのだ。ほしぐもの持つウルトラオーラに呼応し、ネクロズマが再び暴走して力を取り戻した。そして今に至るのである。

 

「私はシオニラ。ウルトラ調査隊の隊長を任されている。」

「私はミリンです。隊長の秘書として勤めています。」

「僕たちも一応自己紹介を。僕はシンジ、アローラのチャンピオンをさせてもらっています。」

「私はリーリエと言います。ポケモントレーナーの一人です。」

「ポケモントレーナー。報告によるとポケモンと呼ばれる生物を従えて戦わせる者、だったか。」

 

少々誤解を生みそうな物言いではあるが、概ね間違ってはいないとシンジたちは頷く。事は急を要するため、早速本題へと移った。

 

「シオニラさん。肝心のネクロズマはどこに……」

「ネクロズマならあの塔の頂上にいる。」

 

シオニラは指を指す方向、都市の中央には大きな塔がそびえ立っていた。空高く伸びている塔は暗闇から頂上が見えない。だがリーリエは、その塔になんとなく見覚えがあった。

 

「あ、あの塔は……」

「リーリエ?どうかした?」

「……以前、夢の中で少し見た記憶がありまして。」

 

以前ウラウラ島で見た塔にそっくりだと感じるリーリエ。もしあの光景と同じなのであれば、あの頂上にネクロズマが倒れ込んで力を蓄えているのだろう。リーリエはその時見た光景をシンジに伝えた。

 

「……そうか。気を引き締めて行った方がいいね。」

「はい。」

 

シンジとリーリエは拳をギュッと握りしめていよいよ来たのだと実感する。自分たちの行動にアローラの、そしてこの世界の運命がかかっている。そう考えると、改めて緊張が走ってしまうのを感じる。

 

「私たちはポケモントレーナーではないので同行できません。申し訳ありませんが……。」

「いえ、分かっています。お二人はここで待機していてください。」

「私たちが必ず食い止めて見せますから。」

 

最悪の未来を避け、ソルガレオを解放する。その上でネクロズマも、この世界も助ける。そんな決意で二人はこの場に立っている。今更引き返すことなんてできない。

 

シンジとリーリエは覚悟を決めて歩き出す。都市の中央にそびえ立つ塔、その頂上のネクロズマの元へと向かって。いよいよ未来を決めるための最終決戦へと突入するのだ!

 




いよいよ最終決戦となります
1話で完結するか2話で完結するかは分かりませんが、楽しみにしていただけると幸いです。


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光臨、かがやきさま!未来を賭けた戦い!

アルセウス発売目前のクライマックス

みんなのトラウマ登場です


闇の世界と呼ばれるもう一つの世界、ウルトラメガロポリスに到着したシンジとリーリエ。ダルス、アマモの仲間であるウルトラ調査隊の隊長、シオニラよ秘書のミリンと出会い、ネクロズマが逃げたという高く聳え立つ塔の頂上を目指し螺旋階段を登っていた。

 

「それにしても長いね、この階段」

「はい。ですがもうそろそろつくと思います。」

「リーリエは以前にもこの光景を見たことがあるんだったよね?」

 

シンジの問いにリーリエはもう一度はい、と頷く。折角の機会なので、とウラウラ島で見た内容をシンジに話した。

 

「……なるほど。ウラウラ島の花園で霧に包まれ、さっきのネクロズマやこの世界の光景を見た、と言うことだね。」

「はい、あまり信じられないことだとは思いますが。」

 

リーリエの説明にシンジは考える。あるとしたら、とたった一つの考察に辿り着いた。

 

「リーリエが迷い込んだのは、恐らく月輪の祭壇だね。」

「月輪の祭壇?」

 

一瞬聞いたことがある気がする、とリーリエは記憶を遡る。そう、先ほどまでいた日輪の祭壇と名前が瓜二つなのである。思い出してみると、あの時見た祭壇は日輪の祭壇にそっくりであった。

 

「月輪の祭壇には色々と噂があるんだ。別の世界に繋がっている、とか、その他にもソルガレオやルナアーラに関係している、とかもね。」

「ソルガレオさんやルナアーラさんに?という事はほしぐもちゃんにも関係が?」

「といっても噂だからね。それに月輪の祭壇は謎が多くて、研究もまだ進んでいないんだ。かつて大きな街があったけど、カプの村同様に守り神の怒りを買って破壊された、と言う言い伝えもあるみたい。」

 

アローラのチャンピオンであるシンジでも曖昧で不可解な情報しか持っていない月輪の祭壇。どことなく不気味で、ある意味ホラースポットのようでリーリエは寒気がした。

 

「……でも、ほしぐもちゃんに関係性の強いリーリエが見たことに、何か意味が?ほしぐもちゃんが何かを伝えたかった?それとも……」

「シンジさん?」

 

シンジはぶつぶつと呟きながら階段を登っていく。どうしたのかと尋ねてみるリーリエに、シンジは首を振ってなんでもないと答える。彼がそう言ったのなら、リーリエは頷くことしかできなかった。

 

「……とにかく、またいづれ調べる必要があるかもしれないね。」

 

シンジは自分の中で何かを結論づけたようで、納得したように頷いた。

 

階段を登り始めてからどれくらい経ったか、疲れが実感してきた頃に上を見上げると、夜空とは違う暗い空が二人の視線に入ってきた。ようやく塔の頂上へと辿り着いたのだった。

 

やっとか、と一息つく彼らの前に広がっていたのは特に何かあるわけでもない塔の頂上。しかしただ一つ、ある物を除いては、だが。どうやら彼らに休む暇などはないようだ。

 

頂上にはソルガレオと融合したネクロズマが疲労のためか座って眠りについていた。不慣れな力のためか、それとも空間移動のために力を使ったためか、ネクロズマは休息している様子だ。

 

ネクロズマはシンジたちの気配に気づき体を起こす。こちらは休息している間もないと、シンジとリーリエは警戒態勢に入る。だがネクロズマは彼らに襲い掛かる様子は見せず、二人を見定めるようにただただ見つめている。

 

「ね、ネクロズマさん、どうしたのでしょうか?」

「分からない……。ただ何か違和感が……。」

 

日輪の祭壇ではあれだけ攻撃的だったにもかかわらず、今は一切攻撃をする素振りを見せない。その姿からどことなく懐かしい気を感じるが、そんな甘い考えは振り払う。今の彼はほしぐもではなく、暴走した驚異の存在、ネクロズマなのだから。

 

二人の間に緊張が走る。以前グラジオたちの力を借りたシンジたちを圧倒した力を持つネクロズマ。そんな彼に対して迂闊に動けば、一瞬の内にやられてしまうのは目に見えている。強敵だからこそ慎重に動かなければ勝ち目はない。

 

しばらく見つめ合うネクロズマとシンジたち。するとその静寂を破ったのは、ネクロズマのほうであった。

 

ネクロズマは太陽の光も月の光もない空を見上げる。次の瞬間、ネクロズマは大きな咆哮をあげたのだった。

 

『ラリオーナ!!』

 

ネクロズマの咆哮がウルトラメガロポリス全域に広がる。咆哮と同時にネクロズマの体を光が包み込んだ。光のない闇の世界をネクロズマの光が照らしていた。

 

闇の世界を照らす光が徐々に大きくなっていく。その光がネクロズマの形状を別のものに変化させていく。

 

ソルガレオだったその姿は見る影もなく、光が解き放たれた時にそこにいたのは別の生命体であった。竜にも似たその姿に全身が光り、闇をも一切寄せ付けることのない輝き。まるで神様のようであった。

 

『シ…シ…シカリ…!!』

 

それもそのはずである。シンジにもリーリエにも、あの姿には見覚えがあった。リーリエが霧の中で見た光景はまさにこの姿であり、シンジがルザミーネに見せられた石板に描かれていた姿が目の前の存在であった。その姿こそがまさに、かがやきさまの真の姿と言うことの証明だ。

 

目の前に存在しているのは紛れもなくネクロズマであり、この世界においての神、かがやきさまだ。その威圧感は尋常ではなく、シンジもリーリエも、あまりに強大すぎる力を前にして汗ばむ手をグっと強く握りしめる。

 

そんな二人の気持ちに気付いたのか、懐にあるモンスターボールがブルブルと揺れ、触れてもいないのに開いて中身からポケモンが飛び出した。飛び出したのは彼らの相棒でもあるニンフィア、そしてシロンであった。

 

『フィア!』

『コォン!』

「シロン!?ど、どうして?」

「ニンフィア!?だ、ダメじゃないか!キミたちは休んでいないと!?」

 

ニンフィアとシロンは先ほどのネクロズマとの戦いで傷付いている。戦える体力など残っているはずもない。二人は相棒の体を気遣い、すぐにモンスターボールに戻るよう促した。しかしニンフィアとシロンはその要求を拒否し、自分のマスターの元へとゆっくりと近付いた。

 

『フィーア♪』

「ニンフィア?」

『コォン♪』

「し、シロン?」

 

ニンフィアはシンジの手にリボンを優しく巻き付け、シロンはリーリエの横に立って頭を擦り付けた。

 

その時、ニンフィアとシロンの気持ちが体を通して伝わってきた。不安を感じている二人の気持ちを察し、安心させるために出てきたのである。マスターは一人じゃない、自分たちも傍にいるのだと勇気づけるために。

 

「……そうだよね。ありがとう、ニンフィア。」

「シロンもありがとうございます。そうですよね。私たちは一人じゃありません。」

 

ここにはシンジとリーリエ、それにニンフィアやシロン、苦楽を共にしてきた仲間たちがいる。そう考えると、不思議と恐怖がなくなってきた。これだけ強大で恐ろしいほどの威圧感を前にしても。

 

「かがやきさま……いざ目の前にしてみるととてつもない存在ですね。」

「でもここまで来た以上、僕たちのやることは決まっているよ。」

「はい!もちろんです!」

 

リーリエは手をギュッと握りしめて気合を入れる。傍に大切な人が、頼れるポケモンたちがいるから怖くない。そう自分に言い聞かせてモンスターボールを手にする。

 

「お願いします!カイリューさん!」

『バウゥ!』

「行くよ!ブラッキー!エーフィ!」

『ブラッキ』

『エフィ!』

 

リーリエはカイリュー、シンジはブラッキーとエーフィを繰り出した。相手がかがやきさまともなれば、こちらも出し惜しみなどしてはいられない。

 

相手はとてつもなく強大な力を持った相手。彼らのポケモンたちはいつも以上に身構え臨戦態勢をとる。間違いなく歴代戦う中でも最強の敵である。

 

そしてかがやきさまもシンジたちの姿を見て、彼らの事を敵なのだと認識した。身を屈め、蓄えた力を一気に解放しかがやきさまの光が遥かに増す。闇をも振り払わんとする光は、ぬしポケモンが纏うオーラと同じものであった。しかし感じられる強さはその比ではなく、背中にぞわりと畏怖を感じるほどのものであった。

 

戦う意思を見せたかがやきさまに対し、いつしかけるべきか様子を見るシンジたち。次の瞬間、最初に動き始めたのはなんとかがやきさまからであった。

 

かがやきさまは大きな両翼で身を屈める。するとかがやきさまの翼に光りが集約し、一層輝きが強くなる。そして翼を広げると、虹色の光が乱反射してシンジたちに襲い掛かった。日輪の祭壇でも見せたネクロズマの技、プリズムレーザーだ。

 

プリズムレーザーは無造作に放たれ、どこを、誰を狙っているのかが全く読めない。ニンフィアやシロンたちは避けるしか対抗策がなかった。

 

「っ!エーフィ!ひかりのかべ!」

『エッフィ!』

 

エーフィはひかりのかべを張って守りの態勢に入った。特殊技の効果を軽減するひかりのかべによりプリズムレーザーの威力は弱まるが、それでも元々途方もないエネルギーであるかがやきさまの放つプリズムレーザー、容易く防げるとは思っていない。

 

「ブラッキー!」

『ブラッキ!』

 

今度はブラッキーが前に出る。プリズムレーザーがブラッキーに直撃するが、ブラッキーは怯むことなく前進する。

 

あくタイプであるブラッキーにエスパータイプの技は効果がない。とは言え相手は常識を超越した存在、かがやきさまだ。無傷で済むはずがない。エーフィのひかりのかべの効果が相まってブラッキーをかがやきさまの攻撃から守ったのだ。これで突破口を少しでも開くことができた。

 

「ブラッキー!あくのはどう!」

『ラッキィ!』

 

ブラッキーは頭部からあくのはどうを放ちかがやきさまに攻撃する。かがやきさまは反撃するでもなく、ブラッキーのあくのはどうの直撃を受ける。

 

『っ!?』

 

ブラッキーの攻撃を受けたネクロズマは少し後退して怯む様子を見せた。それと同時に、プリズムレーザーによる攻撃がピタリと止んだのだった。

 

「攻撃が止みました!カイリューさん!しんそくです!」

『バウ!』

 

カイリューは素早い動きで接近し、巨大な体をしたかがやきさまの腹部に強烈な一撃を叩きこむ。いくらかがやきさまと言えど、連続攻撃はさすがに応えるようで顔色を変えているのが分かる。

 

強力な技だからこそ隙は存在する。かがやきさまのプリズムレーザーは強力であるが故に、使用したら動けなくなるデメリットがある。だからかがやきさまは見え見えの彼らの反撃に対応ができなかったのである。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィア!』

 

シロンはれいとうビーム、ニンフィアはシャドーボールで追撃する。どちらの攻撃も隙を晒したかがやきさまにクリーンヒットする。かがやきさまの姿が爆発で隠れるが、しばらくするとかがやきさまの光により姿を現した。

 

しかしその体には傷ひとつ入っておらず、目に見えてのダメージが分からなかった。顔色を変えたにも関わらず、ニンフィアたちの攻撃が何一つ通用していないかのような錯覚にさえおちてしまう。

 

そんなはずはない……例え神と言われるかがやきさまであろうとも元は同じ生き物、無敵であるはずがない。

 

「っ!?シロン!こおりのつぶて!カイリューさんはれいとうビームです!」

『コォン!』

『バウッ!』

 

シロンのこおりのつぶて、カイリューのれいとうビームがかがやきさまを襲い掛かる。しかしかがやきさまはその攻撃に対抗して反撃する。

 

『シカッ……!』

 

かがやきさまの口はから放たれるその技はりゅうのはどう。シロンとカイリューの技と衝突するが、あっさりと二人の技を打ち消した。

 

こおりのつぶてとれいとうビームを破ったりゅうのはどうは、弾道が僅かに逸れてカイリューとシロンの足元に着弾し爆発する。二人はその強大な威力の余波にやられて吹き飛ばされた。

 

「カイリューさん!シロン!」

 

吹き飛ばされたカイリューとシロンの身を案じるリーリエ。しかしかがやきさまの攻撃の手は一切休むことはなかった。

 

『っ!』

 

かがやきさまは続けてシンジたちにターゲットを絞る。りゅうのはどうとは違い、自分の光の力を体内から口元に伝って集中させる。

 

「こ、これはっ!?」

 

間違いなくこれはまずい、とシンジは嫌な予感を察して攻撃に転じた。

 

「ブラッキーはシャドーボール!エーフィはサイケこうせん!ニンフィアはムーンフォース!」

『ブラッキ!』

『エフィ!』

『フィア!』

 

ブラッキーのシャドーボール、エーフィのサイケこうせん、ニンフィアのムーンフォースを同時に解き放ったかがやきさまの攻撃を止めに入る。しかしニンフィアたちの攻撃が辿り着くよりも早く、かがやきさまは凝縮された光のエネルギーを放った。

 

光のエネルギーは三人の技とぶつかった。しかし相殺や打ち消すどころか、寧ろ三人の技を吸収しさらに大きさが増した。驚くべきことにニンフィアたちの攻撃を吸収し技の威力が高まったのだ。

 

より強大になったかがやきさまの攻撃、フォトンゲイザーは一番前に出ていたエーフィに着弾してしまう。着弾と同時に光の柱が立ち、エーフィは耐えることなどできるはずもなく容易く吹き飛ばされた。

 

そして背後にいるブラッキーをも巻き込み、エーフィとブラッキーは同時に転がって倒れてしまう。ひかりのかべがあったのにも関わらず、それすらも無視して吹き飛ばしてしまうかがやきさまの攻撃力にシンジたちは驚愕する。

 

「ブラッキー!エーフィ!」

『ブラッ……』

『エッフ……』

「……よく頑張ったね、ゆっくり休んで」

『フィアァ……』

 

あんな一撃を喰らってしまっては一溜りもない。これ以上戦う事はできないと判断し、シンジはブラッキーとエーフィをモンスターボールへと戻した。やはりかがやきさまは途方もない存在であるのだと再認識させられる。

 

「…………」

 

ブラッキーとエーフィを失ってしまい、どうするのか打開策を考えるシンジ。たった一撃で自慢のポケモン達を戦闘不能に追い込むとは思ってもいなかった。

 

これだけ強大な敵にどうやって勝てばいいのか。もはや答えは、たった一つしかなかった。

 

「……ほしぐもちゃんに賭けるしかない。」

「し、シンジさん?一体何を?」

 

リーリエはシンジが一体何を言っているのか理解できなかった。シンジの言うほしぐもは現在ネクロズマに吸収され、悲劇的にも彼らの敵として対峙してしまっている。力を借りることなどできるはずもない。

 

「……でもこれしか方法はない。」

「どういう、ことですか?」

「ネクロズマとほしぐもちゃんは融合し、かがやきさまとしての力を得てしまっている。だけど、もしほしぐもちゃんが完全にネクロズマに取り込まれていなかったらまだ間に合うかもしれない。」

「ほしぐもちゃんをネクロズマさんから引き離せば、なんとかなるかもしれない?」

 

リーリエの疑問にシンジは頷いて応えた。

 

「で、ですが一体どうやって?」

「それができる唯一の方法……それはこれしかない。」

 

シンジは自分の腕に装着したあるものをリーリエに見せつける。それを見たリーリエは、彼が何を言いたいのかを理解した。

 

「Z技、ですか。」

「うん」

 

アローラのトレーナーに代々より伝わるZ技。例え光の輝きを纏っていようとも、暴走してしまっているかがやきさまは闇そのもの。アローラの光でもあるZ技をぶつければ可能性はある。

 

それになにより、リーリエは以前見たマリエ図書館での本の1ページを思い出した。

 

 

 

 

 

おおぞら より

 

ひかりのりゃくだつしゃ あらわれ

 

せかい やみに つつまれる

 

たいようを くらいし けもの うばい

 

たそがれの たてがみ となる

 

 

 

わかものと まもりがみ

 

いしを つかい ひかりを はなち

 

たいようを くらいし けものと

 

ひかりのりゃくだつしゃを わかちて

 

アローラの やみを おいはらう

 

 

 

 

 

【いしをつかいひかりをはなつ】それがZ技のことなのであれば、それこそがかがやきさまを止める唯一の手段となり得る。それ以上有効な手段を思いつかない以上、このたった一手に賭けるしかない。

 

「リーリエ、僕を信じて欲しい。」

「……シンジさん」

 

シンジは真っ直ぐリーリエの瞳を見つめる。その真っ直ぐな瞳を見て、リーリエは迷う事も悩む事も一切なかった。

 

「……もちろん、私はシンジさんのことを信じていますから!」

「……ありがとう、リーリエ。」

『バウゥ!』

『コォン!』

『フィア!』

 

シンジは小さくリーリエに感謝する。彼らの残されたポケモン達もトレーナーの決意に背中を押されて立ち上がる。そして二人でかがやきさまを見つめ、紛れもない最終ラウンドに入るのだった。

 

「さあ、最後の戦いだ!」

「全力でまいります!」

『シ…シカリッ!』

 

 

 




遂にウルトラネクロズマ戦となりました。次に決着は着くでしょう。

ポケモンUNITE現在レート1700超えました。シーズン終わるまでに1800は乗りたいね。

因みに次出るのはリーク情報だとギルガルドらしいです。本当かどうか分からないけど、実際出たら難しそうだけど面白そう。


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未来を照らせ!闇を払う一筋の光!

アルセウスが面白すぎるし剣盾、UNITEどっちもシーズン切り替わるし(金曜日ギルガルド実装)、プリコネも4周年だし、来月はカービィの新作でるしで忙しい。しかも今回8000字くらいあるので結構長い。

兎にも角にもネクロズマ戦遂に決着!


かがやきさまと化したネクロズマと対峙したシンジとリーリエ。しかしそのあまりに強大すぎるネクロズマの力に苦戦を強いられていた。

 

シンジのブラッキーとエーフィは倒れ、リーリエのカイリューとシロンもかなりのダメージを負ってしまっている。対してネクロズマに対してこちらの攻撃の効果は低いように思える。二人に残された逆転の手は、もはやZ技しかない。

 

しかし相手はこの世界の神とも言える存在、強大な力を持つかがやきさま。単発のZ技などでは簡単に防がれてしまうだろう。であるならば当然作戦が必要となってくる。

 

「僕とニンフィアのZ技をネクロズマにぶつける。だからその隙を作るために、他のポケモンたちでダメージを与えつつ引き付けよう。」

 

Z技を使うのはこの中でも最も強力なZ技を使用することのできるシンジとニンフィアだ。しかしニンフィアは先ほどの戦いで傷ついてしまっており、一人で決められるほどの体力は残っていない。しかもZ技は自身の全身全霊を込め、体力を大きく消耗してしまう言わば諸刃の剣だ。チャンスはたった一度のみ。

 

ならば他のポケモンたちでかがやきさまの気を引き体力を消耗させ、確実にZ技をぶつける必要がある。この勝負はシンジとニンフィア、二人のタイミングとコンビネーションに全てがかかっている。

 

「行くよ!グレイシア!リーフィア!イーブイ!」

『グレイ!』

『リーフィ!』

『イブイ!』

 

シンジはエーフィ、ブラッキーに続いてグレイシアとリーフィア、それにイーブイを繰り出した。これだけの強大な敵が相手なのだから、こちらも全力を出さなければ勝つことはできない。シンジほどのトレーナーであってもそう思わせる相手なのだ。

 

『シ…シカリ……!』

「っ!?見てください!かがやきさまの様子が!」

 

かがやきさまが空に大きく咆哮する。しかしその声はどこか苦しそうで、かがやきさまの体を眩い光が包み込む。光がどんどん強くなっていき、かがやきさま自身力を制御できていない印象だ。

 

本来のネクロズマの力ではなく、今かがやきさまとして得ているのはこちらの世界のソルガレオの力だ。自分自身の力ではないため、彼自身が制御できていないのかもしれない。もしくはソルガレオ自身の意識がまだ残っており、ネクロズマの力と相反して抵抗しているのか。

 

かがやきさまは暴走した力の苦しみを吐き出すかのようにりゅうのはどうを放った。強力な攻撃だが、シンジとリーリエのポケモンたちは冷静にその攻撃を回避する。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『ブイブイ!』

『……っ!!?』

 

イーブイがスピードスターで反撃すると、かがやきさまは大きな翼で振り払いあっさりと防いだ。やはり単調な攻撃では通用しないようである。

 

「リーリエ!来るよ!注意して!」

「は、はい!」

 

シンジの忠告と同時にかがやきさまは体を丸くして力を溜め込む。その後全身の力を解放し、かがやきさま最大の攻撃を解き放った。最大の脅威であるプリズムレーザーである。力の暴走した今のかがやきさまでは制御が効かず、様々な場所でレーザーが乱反射し不規則に襲い掛かる。

 

「リーフィア!つるぎのまいからのリーフブレード!」

『リフ……リーフィ!』

 

リーフィアはつるぎのまいにより自身の攻撃力を高め、リーフブレード向かってくるプリズムレーザーに迎え撃ち切り裂いた。完成形でないかがやきさまのプリズムレーザーなら、正面から迎え撃っても対抗できるようだ。

 

「グレイシアはれいとうビーム!」

「シロンもれいとうビームです!」

 

グレイシアとシロンは同時にれいとうビームを放つ。二人の同時攻撃によりプリズムレーザーの一部を凍らせて防いだ。対抗する手段があるのならば、少しずつでもかがやきさまの攻撃を鎮めるしかない。

 

イーブイも他のポケモンたちと同じようにシャドーボールやスピードスターで必死に対抗する。しかし体力とパワーが劣るイーブイでは限界があった。嵐のように降り注ぐプリズムレーザーはまだ収まる気配がない。

 

次第に体力が消耗していき、肩から息をしているのがすぐ分かった。その隙を突くかのように、イーブイにプリズムレーザーが襲い掛かった。

 

『イブッ!?』

「っ!?危ない!」

 

シンジは慌てて駆け出し、イーブイに抱えて飛びのけた。プリズムレーザーの光に包まれたかのように思われたが、なんとか二人は無事のようだ。

 

「シンジさん!?大丈夫ですか!?」

「う、うん、僕はなんとか。イーブイは大丈夫?」

『イブ……イブッ!?』

 

イーブイがシンジの腕に目をやると、彼の右ひじが擦りむいているのが分かった。イーブイを守った時に地面に擦って怪我をしてしまったのでしょう。

 

『イブ……』

 

イーブイは自分の無力さが主人に危険を招いてしまったと罪悪感を感じて、心配そうにシンジの肘の傷口をペロペロと舐める。このぐらい気にしなくても大丈夫だよと、シンジはイーブイの頭を優しく撫でて落ち着かせる。

 

「君は少し休んでて、後は僕たちがなんとかするから。」

 

シンジはイーブイをモンスターボールに戻した。

 

「シンジさん、本当に大丈夫ですか?」

「ああ、僕の事は大丈夫だよ。それよりも……」

 

イーブイを含むポケモン達の活躍のお陰で、プリズムレーザーによる攻撃は多少なりとも落ち着いてきた。それでもまだ攻撃は止んでおらず、イーブイ以外のポケモンたちにも体力の消耗が伺える様子だった。しかしそれはかがやきさまも同じで、暴走による苦しみから体力が少しずつ蝕まれているのが分かる。これは逆にチャンスでもあった。

 

「リーリエ!」

「はい!カイリューさん!しんそくです!」

『バウゥ!』

 

今ならば行けるとカイリューは翼を羽ばたかせて勢いよく飛び立った。プリズムレーザーが無意識にカイリューへと向かうが、目にも止まらないカイリューのスピードでプリズムレーザーを回避していく。

 

『っ、シカリッ!』

 

カイリューのしんそくを両翼で丸まり防いで弾き返す。大きくも硬い装甲のような翼を貫くことはできなかったが、プリズムレーザーを掻い潜り接近できたことは大きかった。

 

接近したカイリューに向かい、りゅうのはどうで反撃する。ならばこちらも正面から迎え撃ち、逆に隙を作るチャンスだと踏む。

 

「カイリューさん!げきりんです!」

『バオウゥ!!』

 

カイリューは自身の全身の力を高め、筋肉を隆起させる。げきりんにより解放した力でりゅうのはどうを防ぐ。それだけかがやきさまの体力が消耗し、カイリューがハクリュー時代よりも力をつけている証明である。

 

カイリューはかがやきさまの攻撃を防ぎながらげきりんで強引に突撃する。そしてげきりん状態による強力な一撃がかがやきさまの腹部を捕らえ怯ませることができた。強力な力を持っているとはいえ、巨大化した分素早さが犠牲となったかがやきさまは動きが鈍く、攻撃さえ掻い潜ればこちらの技を命中させることは容易であった。

 

「シンジさん!今です!」

「任せて!行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

今ならば行けると、シンジはニンフィアとタイミングを合わせる。シンジは腕を目の前でクロスさせ、Z技のポーズをとる。そして両手でハートの形を作るそのポーズは、フェアリータイプのZ技、ラブリースターインパクトのポーズであった。

 

「僕たちのこの想い、かがやきさまに届ける!」

『フィーア!』

「これが……僕たちの全力!」

 

 

 

 

 

――ラブリースターインパクト!

 

 

 

 

 

ニンフィアを全力のオーラが包み込む。ルザミーネから与えられたZリングによりアローラの光と大自然の力がなくても問題なく発動した。むしろその力は以前の時以上に感じられた。それはZリングの力なのか、それともシンジたちの想いが強いからなのか。

 

シンジの全力の想いを授かったニンフィアが地面を蹴る。Zパワーに包まれ、空を駆けるニンフィアをプリズムレーザーが襲いかかる。

 

「手出しはさせません!グレイシアさんとリーフィアさんも力を貸してください!」

『グレイ!』

『リフィ!』

 

Z技に集中しているシンジに変わり、リーリエが彼のポケモンであるグレイシアとリーフィアに指示を出す。

 

「シロン!ムーンフォース!グレイシアさん!れいとうビーム!リーフィアさんはリーフブレードです!」

 

シロンはムーンフォース、グレイシアはれいとうビーム、そしてリーフィアはリーフブレードでプリズムレーザーからニンフィアを守る。

 

ムーンフォースで横からプリズムレーザーをシャットアウトし、れいとうビームで相殺し、リーフブレードで切り裂く。少しでもプリズムレーザーを防げばそれだけニンフィアの及ぶ危険は少なくなる。

 

ニンフィアは弧を描くように飛び、空中を蹴ってプリズムレーザーを回避していく。しかし今度は彼女の正面からプリズムレーザーが襲い掛かり次第に回避が困難になっていく。

 

『バウゥ!』

『フィア!?』

 

その時、カイリューがニンフィアの前に立ちプリズムレーザーを正面から受け止める。元々強引に突っ込み傷付いていたカイリューの体力もさすがに限界が近付き、プリズムレーザーの直撃を受けて地面に真っ逆さまに落ちていく。

 

「カイリューさん!?戻ってください!」

 

地面に落ちる前にカイリューをモンスターボールへと戻すリーリエ。咄嗟の判断にリーリエは感謝し、ありがとうと感謝の言葉を伝えた。カイリューの想いを取り受け取ったニンフィアは、全力の力を更に振り絞ってかがやきさま目掛けて駆けていく。

 

皆に協力のおかげでニンフィアはかがやきさまの元まで辿り着く。そしてZパワーを最大まで高め、疲労とダメージで怯んでいるかがやきさまの頭部に接触した。

 

かがやきさま自身の光にニンフィアを包み込んでいたZパワーの光の力が加わり、かがやきさまとニンフィアを包み込む。その光が更に強さを増し、塔の頂上全てを包み込むほど広がっていった。

 

そして次第に光は収まっていき、かがやきさまから放たれていた光が失われていた。すると目の前には光に包まれたソルガレオが空からゆっくりと落ちてきていたのが確認できた。恐らくかがやきさまの中途半端な闇の力に純粋な光の力がぶつかり、中和されたのだろう。

 

「っ!?ほしぐもちゃん!」

 

その姿を確認したリーリエはすぐさま駆け寄る。光に包まれたまま地面に着地したソルガレオはリーリエの存在に気付き、ゆっくりと目を開いた。どうやら意識はハッキリとしているようで、リーリエはソルガレオが無事なのだと分かるとホッと胸を撫で下ろした。

 

『……グルゥ』

「ほしぐもちゃん……あなたが無事でよかったです。」

 

リーリエとソルガレオは互いの額を合わせて気持ちを共有する。その瞬間、リーリエの知らない感情が彼女の中に流れ込んできた。その感情はソルガレオのものではなく、かがやきさまのものなのだとすぐに分かった。

 

かがやきさまの抱いている感情、苦しみ、悲しみ、痛み、ネガティブな感情がほとんどであった。自分自身の力ではなく、ソルガレオの力によって苦しんでしまっているのだ。

 

リーリエは今伝わってきた感情をシンジにも伝えた。するとシンジはかがやきさまの今の状況を考える。

 

「ソルガレオの力を取り込み、寄生することで本来の力を取り戻したはず。いや、闇の力が増大したネクロズマにとって、純度の高い光の力を持ったソルガレオは不純物でしかなかった?それともソルガレオの光の力が大きすぎたか?」

 

シンジは考えられる可能性をいくつか思いつく。しかし可能性は様々考えられるものの、正確な答えには辿り着かない。そんな時、かがやきさまの様子に変化が訪れた。

 

『し……し、シカリ!!』

「っ!?かがやきさま?」

 

かがやきさまは更に大きな咆哮を上げていた。制御コアでもあったソルガレオだけがいなくなり、より光の力に振り回されるだけになってしまったかがやきさまはただただ必死にもがくだけしかできないでいた。

 

「こ、このままではかがやきさまが!?」

 

ソルガレオを救出することには成功した。しかしこのまま放置しておけばかがやきさまは光の力に飲み込まれて崩壊してしまい、ダルスたちと交わした約束、この世界を救う事が不可能になってしまう。ニンフィアは先ほどZ技を使ってしまい、これ以上何かできる体力は残っていない。

 

どうすればいいかと必死に頭を回転させるシンジ。焦りからいつもの落ち着いた様子は一切なく、考えが上手く纏まらない。ただただ時間だけが過ぎていき、状況は悪くなるばかりだ。

 

『……ラリオ』

「ほ、ほしぐもちゃん?どうかした?」

 

そこで声をあげたのはソルガレオであった。ソルガレオはシンジに呼びかけ、彼に手を出すように促した。シンジは言われるままに左手を差し出すと、ソルガレオはシンジの左腕に装着されているZリングにそっと触れた。

 

直後、Zリングから強力な輝きが放たれてシンジたちは眩しさのあまり目を瞑る。光が収まった時に確認すると、シンジのZリングには見覚えのないクリスタルが埋め込まれていた。

 

オレンジ色をしたZクリスタルだが、通常のひし形とは異なり左右に出っ張りがあり変形していた。しかし本来のZリングには嵌らない形状で、ルザミーネから授かった新たなZリングであるからこそ嵌る形であった。

 

そして中央に描かれているのはまるで太陽を模したかのようなマーク。それはどこかで見た覚えがあり、記憶を遡り思い出す。そう、日輪の祭壇に描かれていた太陽の模様に瓜二つなのだ。そこから導き出される答えはただ一つ。このZクリスタルはソルガレオ専用のZ技を放つためのものである。

 

「ほしぐもちゃん……」

『……』

 

シンジの瞳を真っ直ぐ見たソルガレオはコクッ、と無言でゆっくり頷く。ソルガレオの気持ちが伝わり、シンジも覚悟を決めてZリングを握る。

 

「……分かった。やろう、ほしぐもちゃん」

『ラリオーナ!』

「シンジさん!あなたはさっきZ技を使ったばかりなんです!立て続けに使うのは無茶ですよ!」

 

Zリングはポケモンだけでなく、トレーナーの体力も同時に消費してしまう強力なもの。そのため本来であればバトル中に一度しか使用することは出来ないとされている。先ほどZ技を使用し、その上今度はより強力なソルガレオのZ技を使うとなればその消耗は計り知れない。

 

「でも、今はこれしか方法はないんだ。だから、やらせてほしい。」

「シンジさん……」

 

シンジの真っ直ぐな瞳と覚悟の籠った言葉にリーリエは何も言えない。トレーナーとしての実力の劣ってしまう自分では、代理としてZ技を使っても勝ち目は低いと理解してしまっている。

 

シンジはソルガレオの横に立ち心を落ち着かせる。そしてソルガレオと顔を合わせ互いに頷き気持ちを通わせる。

 

互いの気持ちを一つにしたと感じたシンジはZ技のポーズをとる。手を前でクロスさせ、両手の拳をコツコツと突き合わせ、正面に突き出す。はがねタイプのZ技を使用する時のポーズだ。ソルガレオの持つ専用技、メテオドライブを元としたはがねタイプのZ技である。

 

「僕たちの全力、ほしぐもちゃんと共に届ける!」

『ラリオーナ!!』

 

 

 

 

 

 

――サンシャインスマッシャー!

 

 

 

 

 

Z技発動と同時にソルガレオが大きく咆哮を上げる。ソルガレオの額に太陽の模様が浮かび上がり、ソルガレオは駆け出した。

 

ソルガレオの全身を炎にも似たオーラが包み込み、ソルガレオはかがやきさまに向かってジャンプして突撃する。そのままの勢いで体を丸くし、高速回転の力を加えた。

 

『っ、シカリッ!?』

 

かがやきさまは苦しみながらも抵抗の意志を示す。不安定ではあるが残された光の力を全て集約し、ソルガレオにその力を解き放つ。エーフィ―、ブラッキーを一撃で沈めた大技であるフォトンゲイザーだ。

 

高速回転するソルガレオにフォトンゲイザーがぶつかる。ソルガレオのZ技対かがやきさまの大技、フォトンゲイザーの衝撃は凄まじく、どちらの体が壊れてしまっても可笑しくないものであった。

 

しかし力の差は歴然であった。ネクロズマに寄生され体力を蝕まれたソルガレオ、その上Z技を使用し体力を消耗したシンジ、二人の力では限界があった。シンジから伝わるZパワーも弱まってしまい、ソルガレオは徐々に押され始めてしまう。このままでは押し切られてしまうのも時間の問題だ。

 

「っ、うっ、くっ!?」

 

シンジは体力の限界により苦痛の表情を浮かべる。彼の苦しみがソルガレオを伝わり互いの体、心までもが壊れてしまいかねないとソルガレオも苦痛を感じる。

 

これ以上は無理か、そう思いかけたとき、彼の左手に、正確にはZリングに優しい温もりを感じた。その温もりから伝わるのは、全身を包みこむ太陽のような温かさだった。

 

「シンジさん」

「り、リーリエ」

 

その正体はリーリエであった。リーリエは両手をシンジのZリングに優しく添え、自分の残されたZパワーをシンジ、そしてソルガレオに伝えていた。

 

「シンジさんは一人ではありません。ほしぐもちゃん、それに私、他にもアローラに住む人々がついています。」

「リーリエ……」

「だから……帰りましょう!必ず!みんなの元に!私たちやほしぐもちゃんと一緒に、私たちのアローラに!この世界を救って!」

「……そうだね。必ず帰ろう!」

 

シンジはリーリエの言葉と温もりから力を貰い、互いに笑顔で笑いかける。必ず帰る。この戦いに勝ち、かがやきさまとこの世界を救い、グラジオ、ミヅキ、ヨウ、ハウ、ルザミーネ、ビッケ、バーネット、ククイ、みんなの待つアローラに帰る。そう心に誓って。

 

「行くよ!リーリエ!」

「はい!シンジさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これが僕(私)たちの……全力だあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとリーリエ、そしてアローラの光と想いを受け取ったソルガレオの全身に纏わるオーラが増大される。先ほどまで押されていたソルガレオが、今度は逆にかがやきさまのフォトンゲイザーを押し返す。そして遂にフォトンゲイザーを打ち破り、ソルガレオの攻撃がかがやきさまに命中した。

 

『シカッ!?』

 

ソルガレオの体がかがやきさまを貫き、かがやきさまは光に包まれる。光に包まれたかがやきさまは膝から崩れ落ち、上空を見上げた。

 

最後にかがやきさまの口から光が空へと向かって解き放たれ、満面に広がっていた暗闇を突き破った。そして暗闇を突き破った光は世界中に広がり、一筋の輝きが地上に突き刺さる。

 

空を覆っていた暗闇が照らし出され、アローラの様に光が世界を包み込む。まるで抱きしめられているような温かいその光は、紛れもなく太陽の優しい光であった。




無事決着、次回帰還

DMにて久しぶりにリクエストがありました。レジェンドアルセウス、ヒスイ地方の話を書いて欲しいとのことです。展開は追々考えますが、タイミングを見ていづれ番外編として書かせていただく予定です。予定では1話~2話、多くて3話ぐらいを目安にしています。


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ただいま!僕たちのアローラ!

今回は帰還という事で短めです。


シンジとリーリエがかがやきさまとバトルしている時、アローラではグラジオたちがUBと交戦、防衛していた。

 

「ルカリオ!はどうだん!」

『バウゥ!』

「ピクシー!マジカルシャイン!」

『ピッシ!』

 

グラジオたちは長時間に渡る激戦を強いられながらも、協力し合ってなんとかUBたちに対抗することができていた。しかしそれでも、ポケモン達の体力は限界に近付いていた。

 

『かぶっ!』

『クロッ!?』

「クロバットっ!?」

 

疲弊した隙を突かれ、グラジオのクロバットがUBの一体、フェローチェのとびひざげりを受けてダウンしてしまう。その他にもミヅキのウインディ、ヨウのウォーグル、ハウのクワガノン、さらにルザミーネのムウマージまでもがやられてしまった。

 

「うぅ、倒しても倒してもキリがないよー」

「弱音を吐くなっての。って言いたいところだけど、さすがにこの状況は厳しいな。」

 

ハウとヨウも珍しく弱気な姿を見せる。ミヅキの表情からも余裕は感じられず、いつものようにバトルを楽しむことすらできそうにない。

 

『っ!?バウッ……』

「ルカリオ……よく頑張った、戻って休んでくれ。」

 

先ほどのはどうだんを使った反動か、ルカリオは地面に膝をついてしまう。今までの戦いの疲労もあるのだろう。グラジオはこれ以上戦わせることができないと判断し、ルカリオをモンスターボールに戻した。

 

「グラジオ君……どうしよう……」

「あいつらならなんとかする。俺たちはなんとしてでも奴らの進行を阻止するんだ。」

「……うん、そうだね!シンジ君とリーリエを信じないとね!」

 

グラジオの言葉に勇気づけられ、ミヅキはまだまだ戦えるという意思を見せる。クロバットとルカリオが倒れたため、グラジオは新たにモンスターボールを手に取り継続して戦おうとする。しかしその時……

 

「っ!?ビッケ!バーネット!あれをみて!」

「あ、あれは……」

 

ルザミーネの声に反応し、ビッケとバーネット、他のメンバーも確認する。そこにはネクロズマが開いたウルトラホールが稲妻を発生させてバチバチと音を出していた。

 

「こ、これは!?」

「どうしたの!?ビッケ!」

「ウルトラオーラの反応、拡大中!ですがこれは……」

 

ビッケと一緒にバーネットも確認する。するとそこには増大していくウルトラオーラの反応があったが、先ほどとは全く様子が違っていた。

 

増大したウルトラオーラが一定の数値に達すると、それ以上上昇することも下降することもなく、その数値を保ち続けていた。ウルトラホールが発現してから不安定だったのにもかかわらずである。

 

ビッケとバーネットは引き続きウルトラオーラを測定する。しかししばらくすると、ウルトラホールから一筋の光が突然飛び出してきた。グラジオたちは驚きながらも光を眺める。

 

ウルトラホールから飛び出した光はアローラの空に導かれる。光はポニ島を覆っていた暗闇を突き抜け地上に光りをもたらした。

 

「空から……光が……」

 

誰かがそう呟く。アローラに光が戻り、太陽の暖かい輝きが照らされた。その輝きこそが、シンジたちが勝利した証であった。

 

光に照らされ、UBたちは落ち着きを取り戻し一斉に動きを止めた。正気に戻ったのか、各々がウルトラホールに戻っていく。ウルトラオーラが安定したことにより、高まっていたUBの力も収まったのだろう。

 

「……ふっ、ようやく勝ったか。相変わらずヒヤヒヤさせる奴だ。」

 

グラジオは元通りとなったアローラの空を見上げながら、小さく微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソルガレオのZ技、サンシャインスマッシャーが決まり、闇の世界と呼ばれていたこの世界の暗闇を振り払ったシンジとリーリエ。しかし、Z技の連続使用により体力を使いつくしたシンジは両手、両膝を地面について倒れこむ。

 

「シンジさん!大丈夫ですか!?」

「はぁ……はぁ……な、なんとか、と言いたいけど少しキツイかな……」

 

珍しくシンジが素直に弱音を吐く。その表情からはいつもの余裕が見られず、かなりの苦痛から心配させないように無理やり笑顔を作っていると言った様子だ。

 

『フィア……』

『グレイ』

『リフィ……』

「ニンフィア、グレイシア、リーフィアも、僕なら大丈夫だよ。みんなもお疲れ様、ありがとうね。」

 

シンジを心配してニンフィアたちがゆっくりと近付き擦り寄ってくる。シンジはそんな彼女たちの気持ちに応えるように、いつも通り優しく頭をなでて感謝する。ニンフィアたちはその温かい手の温もりが大好きで、自然と笑みが零れて嬉しそうに微笑みながら気持ちよさそうな声を出していた。

 

「シロンもお疲れ様です。ゆっくりと休んでください。」

『コォン♪』

 

シンジとリーリエは自分のポケモンたちを休ませるためにモンスターボールへと戻した。かがやきさまとの死闘を繰り広げたのだから、当然ポケモンたちにも休息は必要だろう。

 

「キミたち!大丈夫か!」

 

そこにウルトラ調査隊の隊長であるシオニラと、その秘書であるミリンが慌てた様子でやってきた。そして塔の頂上で膝を付き大人しくしているかがやきさまを見て、二人は驚きを隠せないでいた。

 

「かがやきさまが大人しくなっている……。隊長、どうやら決着がついたようです。」

「ふむ、そうか。キミたち、何があったのか教えてくれるか?」

「は、はい。実は……」

 

シンジとリーリエはかがやきさまとのバトルで起きた内容をシオニラたちに伝える。自分たちの世界にはほとんど存在しないポケモンの凄さを痛感させられる。

 

「ふむ……ダルスから聞いていたが、ポケモンとは実に興味深い生き物だ。それからポケモントレーナーと言うものも……。同時に少し恐ろしくも感じるが。」

「恐らくかがやきさまはソルガレオの光の力をZ技を通して放出され、ウルトラオーラが安定したことによって暴走状態が抑制されたのでしょう。その結果、私たちの世界にも光が戻ったみたいです。」

「まさかこのような結果が訪れるとは思っていなかった。改めて礼を言う。ありがとう。」

 

シオニラとミリンは同時に頭を下げて感謝の言葉を口にする。

 

「お、お二人とも頭を上げてください!」

「僕たちはただ自分たちの意思でやっただけですので、どうか気になさらないでください。」

 

ダルスとの約束、そしてほしぐもを助けるために行動しただけ、だからお礼を言われることではないと言う二人。しかしこの世界の住人からすれば先祖の犯した過ちの尻拭い、そしてこの世界の再び太陽と言う大いなる光を灯してくれた英雄だ。いくら感謝してもしきれないだろう。二人が自覚していなくとも、それだけのことをやってのけたのだ。

 

本音はすぐにでも宴を開いて英雄である二人をもてなしたいところだが、シンジたちはそう言ってはいられない。

 

「僕たちはすぐにでも戻らないと。」

「そうですね。あまり遅くなってしまうと、お兄様たちが心配してしまいますから。」

「……そうか。ではまた改めてこの世界に来てほしい。」

「その時は是非、私たちが誠心誠意を込めておもてなしをさせていただきますわ。」

『ラリオーナ♪』

 

その時は是非、とシンジたちもまたこの世界に来ることを約束する。シンジとシオニラ、リーリエとミリンが約束と共に握手を交わすと、膝を崩して力尽きていたかがやきさまが体を起こして立ち上がった。

 

「か、かがやきさま……」

 

急に体を起こしたかがやきさまに思わず警戒するリーリエ。先ほどまで敵対し、その上あれだけの苦戦を強いられれば警戒するのも当然だ。しかし、彼女のその心配は杞憂であった。

 

『……シカリ』

 

「ありがとう……かがやきさまはそう言っているみたいだな。」

「かがやきさまも、暴走している自分を止めてくれた二人に感謝しているみたいです。」

「……こちらこそ、ありがとう、かがやきさま。」

「今度はお友達としてお会いしましょう!」

 

そう言って二人はかがシオニラとミリン、かがやきさまに別れを告げる。彼らに別れを告げた二人はソルガレオに跨り、そしてソルガレオが開いたウルトラホールへと姿を消すのであった。

 

「……ありがとう、二人の英雄様。」

「お二人に、太陽のご加護があらんことを。」

 

救われた世界を祝福するかのように、太陽の暖かく眩しい光が、ウルトラメガロポリスにそびえ立つ塔を照らし包み込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!見て!ウルトラホールが!」

 

UBが撤退し、日輪の祭壇で待機していたグラジオたち。ミヅキが新しく開いたウルトラホールを指差すと、そこから一匹のポケモンが姿を現した。その背中には、みんなのよく知る二人の人間が乗っていた。

 

「リーリエ!シンジ!」

「二人はやっぱり無事だったねー!」

「よかった、本当に、よかった……」

 

無事に帰還した二人の姿に安堵し、胸を撫で下ろす一同。ソルガレオはそんな一同の前に着地し、二人はソルガレオの背中から降りた。

 

「全く、一時はどうなるかと思ったぞ。」

「ははは、心配かけたね。」

「すみません、お兄様……」

「……まぁ、今はこう言っておこう。」

 

グラジオは一呼吸置き、小さく微笑んでこう告げた。

 

「……おかえり、シンジ、リーリエ。」

『っ、ただいま!』

 

アローラの友たちから祝福を受け、シンジとリーリエはいつものように元気な笑顔を見せるのであった。

 

 

 

 




プリコネフェスのキャラライブが神過ぎた


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取り戻したアローラ、再開する島巡り!

次回からまた島巡りとなります


かがやきさまの正気を取り戻すことに成功し、無事ウルトラホールからアローラに帰還したシンジとリーリエ。無事に帰ってきた二人を、グラジオたちが明るく出迎えた。

 

ソルガレオがかがやきさま、ネクロズマから解放されたことによりウルトラオーラも安定し、それに触発されていたUBたちも残らずウルトラホールに帰っていった。再び訪れたアローラの危機は、彼らの活躍のお陰で回避することができたのだ。

 

 

「やはり誰かさんが不運を呼び寄せているのかもな」

「うっ、そ、それは……」

「ふっ、なに、ちょっとした冗談だ。それにお前がいなければこの世界を守れていないことぐらい分かっているさ。」

「お兄様……」

 

グラジオは微笑しながら珍しく冗談を言う。彼自身、シンジがいなかったらアローラだけでなく自分の家族も崩壊していた可能性があることを知っている。決して本心などではないのは言うまでもない。リーリエは自分の兄が冗談を言うなんて、と少し心の中で驚いていた。

 

「シンジ、それとリーリエ」

「ダルスさん?」

 

ダルスがアマモと共にシンジとリーリエに呼びかける。すると真面目な彼が普段見せることのない表情を浮かべていた。

 

「ありがとう、私たちの世界を救ってくれて。」

「ありがとうね!おにーちゃんとおねーちゃんがいなかったらこんな気持ちになれなかったよ!」

 

ダルスとアマモは心の底からの感謝の気持ちを二人に伝える。なんだかデジャブのような光景に少し苦笑する二人だが、気にする必要はないとダルスたちに言うのだった。

 

「お二人はこれからどうするんですか?」

「すぐに光を取り戻した我々の世界に戻りたい気持ちはある。だが、折角このアローラにきたのだ。少し観光でもしてから帰ろうと思う。」

「これだけいい気分になったの初めてかもしれないからね!それにベベノムもこの世界が気に入ったみたいだから♪」

『ベベベェ♪』

 

ダルスとアマモだけでなく、モンスターボールから出ているベベノムも楽し気に笑顔を浮かべている。ベベノムも自分の世界が平和になったことを察したのか。同じUBとしてウルトラオーラの反応を感知しているのだろう。

 

「シンジ君、それからリーリエも。本当にお疲れ様。」

「ルザミーネさん」

「お母様」

 

ルザミーネが2年前のあの時とは違う穏やかな表情で二人に話しかける。その後、ルザミーネは娘であるリーリエを抱きしめる。

 

「おかあ……さま……?」

「あなたたちが無事でよかった。ありがとう……本当にありがとう……」

 

ルザミーネの声が僅かに震えているのが伝わってくる。その声から、彼女が娘であるリーリエ、そしてシンジの無事を祈り心配していたのがわかり、感極まって涙を流してしまっているのを感じる。その気持ちが嬉しくて、リーリエも思わず涙を流して母親を強く抱きしめる。

 

みんなの前で、と本来であれば恥ずかしがってあまり快く思わない場面だ。しかしリーリエは母親の心から心配してくれていたその姿が、かつて自分を心配してくれて抱きしめてくれた温かさとその光景が重なっていた。大雨が降った中、帰ってきた自分を抱きしめて慰めてくれた優しかった母親と。その姿を見たシンジは、心の底からよかったと二人のその姿を祝福した。

 

『ラリオーナ』

「ほしぐもちゃん。あなたもありがとうございました。それと……守れなくてごめんなさい。」

 

リーリエはソルガレオに頭を下げて謝罪をする。そんなリーリエの姿を見て、彼女の頭部に自分の額を優しくピタッとくっつける。

 

「ほしぐもちゃん?」

 

リーリエはソルガレオの行動に疑問を持ち問いかける。瞬間、ソルガレオの感情が直接リーリエの脳内に流れ込んできた。

 

『ぼくたちはともだちだから』

 

ソルガレオその気持ちにリーリエは嬉しくなり涙を流した。涙とともに、自分の感情も脳を通してソルガレオに伝える。私たちはいつまでも友達だと。その気持ちは友達と言いながらも、どことなく子どもの成長を喜ぶ母親のようでもあり、リーリエにとって不思議な感情であった。

 

リーリエと挨拶を交わしたソルガレオは、光を取り戻した太陽に向かって帰っていく。リーリエは手を振って太陽の化身、ソルガレオを見送り、シンジたちもまたソルガレオの背中を見送った。必ずまた会いましょうと約束をして。

 

太陽の化身と呼ばれるソルガレオは、これからも太陽のようにこのアローラを、そしてリーリエたちの事を暖かく見守ってくれることだろう。

 

「さてと、さすがに今回は疲れたし、一先ず引き上げて休もうぜ。」

「そうだねー。おれも疲れたし、ポケモンたちも休ませてあげたいしねー。」

「じゃあこの島にある海の民の村に行こう。そこのポケモンセンターで今日は休もうよ。」

 

ヨウ、ハウ、ミヅキの順でこれからのプランを口にする。そのプランには誰も異論はないようで、グラジオ、シンジ、リーリエは賛同する。

 

「私たちは一度エーテルパラダイスに戻るわ。あそこならポケモンの治療設備も揃っているし、ウルトラオーラの研究も進めなくてはならないし。」

「そうね。これからの対策も、オーラとUBの関係も進展しそうだしね。」

「了解しました!皆さんも、麓までお送りしますよ。」

 

ビッケは全員をヘリに誘導する。シンジも乗り込もうとするが、神経にバチッとした刺激がきたかのような感覚を感じ振り返った。しかし、そこには何もない、ただアローラの平和な青い空が広がっているだけであった。

 

「シンジさん?どうかしましたか?」

「……いや、なんでもないよ。」

 

自分の気のせいだろう、とリーリエの問いに首を振り自分もヘリに乗り込んだ。ウルトラオーラも安定し、ウルトラホールも閉じてUBは残らず帰還した。これ以上何かが起こるはずもないだろう。シンジはそう考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、エーテルパラダイスの地下研究所とある一室では……

 

「ウルトラオーラの数値、空間の歪み、世界の繋がり。全ては私の計算通りです。研究データもウルトラエネルギーも充分すぎる程溜まりました。後はこれを完成させるだけ!」

 

そう言ってサングラスをかけた男は資料に目を通しながらニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

「これが成功すれば、私がエーテル財団の代表となれる日も近付く。いや、間違いなくそうなるでしょう。そうすればこのアローラは私のもの。チャンピオンなど恐れることはない!ふふふふ……ハッハッハッハッハァ!」

 

誰もいないエーテルパラダイス地下研究所に、一人の男の高笑いが響き渡る。一難去ってまた一難……遠くない未来に、一人の男の野望が新たな危機をもたらすことは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ポケモンセンターで一夜を過ごし休息をとった一同。朝を迎え、目を覚ましたリーリエが外の空気を吸う為にポケモンセンターを出た。

 

「んーっ、ハァ。やっぱりアローラの空気は気持ちいいです!」

 

太陽の光を取り戻し、アローラの空気の素晴らしさを改めて実感するリーリエ。そんな彼女の元に、一足先に起きていた人物が近付いてきた。

 

「リーリエ、起きたか。」

「お兄様!先に起きていたのですね。」

「ああ、最もあの三バカはまだ寝ているようだからな。」

「三バカ……」

 

三バカと言う言葉でなんとなくその人物のことが分かってしまった。幼馴染であるヨウ、ハウ、ミヅキたちであろう。三バカと称する兄に対してもだが、その言葉だけで分かってしまう自分に対しても大概だなと苦笑してしまう。

 

「あはは、まあ昨日は色々あって疲れたでしょうし、仕方ないですよ。」

「ふっ、一番疲労が溜まってそうな奴は一足先に起きて行っちまったがな。」

「えっ?」

 

一番疲労が溜まっていて、そそくさと出ていく人物など一人しかいない。その彼の姿が頭に浮かび、大丈夫なのかと心配になる。

 

「大丈夫……なのでしょうか?」

「どうだろうな。だがアイツの体の事はアイツが一番よく分かっているだろう。それに、お前もアイツがそんな軟なトレーナーじゃないってことくらい分かっているはずだ。」

「それは……そうですが……。」

「……まぁ、お前の心配も分かるさ。だが今回の件は四天王の人たちも知っているはずだ。あれだけの事があったんだから、気を遣って無茶なことはさせないはずだ。心配することもないだろう。」

「……そうですよね。あの人なら大丈夫です。」

 

誰より彼の強さを知っている自分が信じなくてどうする、とリーリエは気を取り直して拳をギュッと握る。

 

しかしそんな彼女を手に持つ筆越しに、じっくりと観察する女性の姿があった。リーリエはその視線に気づき、彼女に恐る恐ると声をかける。

 

「あ、あのぉ……何かご用でしょうか?」

「ああ、ごめんごめん。いい表情だったからつい観察したくなってね。おおっと、アローラ、アローラ」

 

女性は少しぎこちない印象ではあるが、アローラ特有の挨拶をする。リーリエも戸惑いながらもアローラ、と返答した。

 

「んー、どこかで見たような気がするんだけど……気のせいかなぁ?まあいいや。ねぇ、キミ。キミは島巡りをしているんだよねぇ?」

「は、はい、そうですが。」

「なるほどなるほどぉ。じゃあウチに来てよー。いいもの、見せてあげるからぁ。」

 

そう言って彼女は自分の言えと思われるナマズン型の家に入っていった。独特な雰囲気を見せる女性だが、リーリエは彼女から並々ならぬオーラを感じていた。

 

「あ、あの人は一体……」

「……彼女はマツリカだな。」

「お兄様、知っているのですか?」

「ああ。彼女はポニ島のキャプテンだからな。」

「えっ!?そうなのですか!?」

 

兄からさらりと告げられる衝撃の事実にリーリエは驚きの余り声をあげる。今まで色々なキャプテンと出会ってきたが、その誰とも雰囲気が全く一致しない独特の持ち主だったからだ。

 

それに彼女の手には筆とスケッチブックが握られており、トレーナーと言うよりも画家と言うイメージだ。

 

「気を付けろ。彼女はあんな見た目だが、実力で言えばキャプテンの中でも未知数だそうだ。その本当の実力を知る者はいないという。用心するに越したことはないだろう。」

 

グラジオから語られる情報にリーリエは喉をゴクリと鳴らす。知識がないことほど恐ろしいものはない。彼女の実力が未知数であるのならば、どのような試練が言い渡されるのかも想像がつかない。

 

リーリエはグラジオの忠告を胸にして、覚悟してマツリカの元に向かう。かなりの騒動があったが、島巡りもいよいよ終盤。最後の試練を突破し、ポニ島の大試練をクリアすれば、待つのは遂に約束の場所だ。

 

ここで絶対にコケるわけにはいかない。約束の場所に辿り着くために、リーリエは最後の試練の扉を開くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ……

 

「うへへ~、もう食べられないよ~」

 

「いけ~、そこだ~、ガオガエン~」

 

「負けないぞー、ジュナイパー、ねらいうてー」

 

三バカたちはまだ寝ていたのであった。




マツリカさんの喋り方と性格がわかんなーいのでイメージで書きます。アニメともなんかイメージ違うし、原作だと殆ど出番なかったし……。



今日からUNITEにまさかのフーパ参戦ですぞ!2体目の幻が意外だったけど、この調子で色んなポケモンが続々と参戦してほしいですな。


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マツリカの試練!ダブルバトルと妖精と!

マツリカさんの喋り方は割とオリジナル。本編でもポケマスでも出番少ないから正直分かんないです。


かがやきさまとの激戦が終わり、ポケモンセンターで一時の休息を得たリーリエ。翌日、キャプテンの一人であるマツリカと出会い、彼女の自宅へと招待された。

 

リーリエは彼女の自宅であるナマズン型の家に入る。外見よりも内装は意外と広く、室内には様々なポケモンの絵が飾られていた。そのどれもが笑顔で描かれていて、まるで命でも宿っているかと思わせる躍動感を感じさせるほどのものであった。

 

「す、すごいです……。これ、全部マツリカさんが描いたんですか?」

「そうだよぉ。私はポケモン専門の画家だからねぇ。ってあれ?名前教えたっけ?」

 

自分の名前を知っていたことに疑問を持ったマツリカに、先ほどまで一緒にいた兄でから聞いたのだと伝える。

 

「ああ、さっきの子はお兄さんかぁ。そう、私の名前はマツリカ。一応キャプテンやってます。」

「私はリーリエと言います。ところで、ここに私を呼んだ理由は……」

「そうそう、見ての通りマツリカは色んなポケモンの絵を描いてるんだけどねぇ、最近中々インスピレーション……って言うのかなぁ?ピンッとくるのが思いつかなくて。いわゆるスランプってやつ。」

 

マツリカは「そこで!」とリーリエの間近に迫る。さっきまでのマイペースな雰囲気と変わり、リーリエは少し戸惑っていた。

 

「キミを外で見た時、何か光るものを感じたんだぁ!だから、バトルでキミのポケモンを見せて欲しいんだ!」

「バトルで、ですか?」

「うん。それも普通のバトルじゃなくて、ダブルバトルをお願いしたいなぁ。もちろん、お礼としてフェアリーZもあげちゃうよぉ。」

 

そんな簡単に試練突破の証であるZクリスタルを渡してしまっていいのか、と心の中で思うリーリエ。しかし試練抜きにしても頼まれれば断ることのできない性格であり、それが試練と同じ扱いになるのであれば彼女に断る理由はなかった。

 

「分かりました。私でお役に立てるのであれば。」

「ありがとぉ。じゃあ早速始めようか。あっ、この村の家は見た目より丈夫だから中で暴れても大丈夫だよぉ。」

 

分かりました、とリーリエはマツリカとの距離をとる。ダブルバトルとのことなので、リーリエはモンスターボールを二つ取り出し準備をする。対するマツリカも鏡合わせの様に向かい合いモンスターボールを取り出した。

 

お互いに準備万端、と確認すると、同時に取り出したモンスターボールを正面に投げる。

 

「お願いします!シロン!マリルさん!」

『コォン!』

『リルル!』

「行くよぉ、グランブル、クチートぉ!」

『グルゥ』

『クッチート』

 

リーリエが繰り出したのはシロン、マリルの二体。対してマツリカが繰り出したポケモンはグランブル、クチートの二体である。フェアリー使いであるマツリカは、同じフェアリータイプであるシロン、マリルを見て目の色を輝かせていた。

 

「おお!キュウコンとマリル!いいねいいねぇ。すごくいいよぉ!」

 

対してリーリエはマツリカのポケモンを二体見て対戦相手の分析をする。グランブルとクチート、両者のタイプを見るとマツリカは間違いなくフェアリータイプ使い。その上どちらの特性も相手の攻撃力を下げるいかくである。シロンとマリルは相手の威圧感に怯んでしまい、物理攻撃力が下がってしまった。

 

「でも、バトルでは容赦しないよぉ?スランプ状態を取り戻すためにこのマツリカ、全力でお相手するよ!」

 

先ほどまであまりのマイペースっぷりから気が抜けてしまっていたが、いざバトルに入り対面すると、キャプテンとしての威圧感が半端ではなかった。間違いなくこの人は強いのだと伝わるほどの雰囲気。一瞬の油断が命取りだと気を引き締める。

 

「さあ、どこからでもかかってきていいよぉ。いい絵になりそうなバトル、期待しているからねぇ。」

 

そう言ってマツリカはリーリエを挑発してくる。ならばこちらも期待に沿えなければならないと、マツリカよりも先に動くのであった。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

「グランブル!ほのおのキバ!」

『グラァ』

 

シロンはこおりのつぶてで何時ものように様子見を兼ねた先制攻撃を仕掛ける。しかしその攻撃はグランブルのほのおのキバによって阻まれてしまう。タイプ相性による問題もあるだろうが、それ以上にいかくによるダブル攻撃ダウンも効いているだろう。

 

「っ!?マリルさん!アクアテール!」

『リル!』

「クチート!こごえるかぜ!」

『クチィト!』

 

今度はマリルがアクアテールによる近接戦闘を仕掛ける。しかしクチートのこごえるかぜによりマリルは接近する前に押し返されてしまう。

 

さらにクチートのこごえるかぜの範囲が広く、シロンにも同時に命中してしまう。そしてこごえるかぜによる追加効果により足の一部が凍りついてしまい素早さが低下する。

 

「今だよぉ!グランブル!ビルドアップ!」

『グラッブ!』

 

グランブルは自身の筋肉を増長させ、攻撃力と防御力を上げてくる。相手の動きを止め、その間に能力を確実に上げる戦略は、非常に完成されたものがある。マツリカは恐らくダブルバトルに慣れているのだろう。

 

「グランブル!キュウコンにじゃれつく!」

『グラァ!』

『コォン!?』

 

グランブルはシロン目掛けて走っていきじゃれつくで攻撃する。ビルドアップにより攻撃力が上がっており、文字通りのじゃれつくはシロンの体力を奪っていく。

 

『リルゥ!』

『グッブ!?』

 

マリルは咄嗟にアクアテールでグランブルを弾き飛ばし、シロンをじゃれつくから解放する。グランブルは受け身を取りダメージを軽減するものの、傷を負っているのは確認できる。間違いなくダメージは少なからず入っている。

 

「くっ……マリルさん!ころがるです!シロンはムーンフォースで援護を!」

『リル!』『コォン!』

 

マリルは丸まりころがるで勢いよく突進する。その背後からシロンは力を溜め込み、ムーンフォースでグランブルとクチートを攻撃した。

 

「グランブルはばかぢからでムーンフォースを防いでぇ!クチートはおどろかすだよぉ!」

『グッブゥ!』『……チィト!』

 

グランブルは前に出て全力の殴打でムーンフォースを破砕する。ばかぢからは強烈な威力を誇る分、自身の攻撃力と防御力を下げてしまう。これでビルドアップ分の能力は相殺された。

 

クチートはころがるで接近してきたマリルに背中の大きな口でおどろかす。おどろかすで怯んだマリルのころがる状態が解除されてしまい、マリルは動きを止めてしまった。

 

「そのままぶんまわす!」

『リルッ!?』

 

おどろかすで怯み動きを止めてしまったマリルの足を大きな口で掴み、ブンブンと振り回す。そして勢いついたところでクチートはマリルを投げ飛ばした。

 

『コォン!?』

 

投げ飛ばされたマリルがシロンに直撃し二人とも吹き飛ばされる。マツリカが手強いのはもちろんだが、彼女の雰囲気からは想像できないラフな戦術に驚くと同時に関心させられる。

 

ダブルバトルは様々な戦術があり、ポケモンの組み合わせや役割も重要になってくる。マツリカはクチートによる妨害やサポートで防ぎ、グランブルのパワーで畳みかけている。これほどの連携が簡単に熟せるのは、それだけ彼女の実力が高いという証明である。

 

「っ、マツリカさん、強いです。」

 

マツリカの強さに驚愕するも、リーリエは心のどこかでワクワクした気持ちが湧いてきていた。まだ諦めていない、そんな想いを感じさせるリーリエの瞳を見て、マツリカはいいねぇと嬉しそうに笑っていた。

 

まだまだこれから、と二人が意気込んだ次の瞬間、何かが扉にゴツンッとぶつかる音がした。すると扉が勢いよく開かれ、外から大きなポケモンが飛び込んできた。

 

『アブリボン、ツリアブポケモン。むし・フェアリータイプ。花粉と蜜を集めて団子を作る。雨に濡れることを嫌い、晴天にしか姿を現さない。』

 

そのポケモンの正体はアブリボンであった。しかし通常のアブリボンよりも一回り二回りデカい体をしており、紛れもなくぬしポケモンであることが分かった。

 

「うーん……この子がやってくるなんて珍しいなぁ。キミのバトルに興味を持ったのかな?」

『アブリィ♪』

 

マツリカの問いに呼応するかのようにアブリボンの羽がパタパタと動く。どうやらヌシポケモンのアブリボンはリーリエとバトルがしたいようだ。

 

「オーケーオーケー。じゃあここからは私じゃなくて、マツリカが育てたアブリボンと戦ってもらおうかなぁ。キミもそれでいいかい?」

「は、はい!私はそれで構いません!」

「決まりだね。グランブル、クチート、お疲れ様。ゆっくり休んでねぇ。」

 

マツリカはグランブルとクチートをモンスターボールに戻す。リーリエも傷ついたシロンとマリルをモンスターボールに戻すことにしたが。

 

「シロン、マリルさん、戻って休んでてください。」

『コォン!』『リルル!』

「え?まだやりたい、ですか?」

 

リーリエの問いにシロンとマリルは頷いて答えた。傷ついたシロンたちをこのまま戦わせてもいいものかと悩むが、自分のことをまっすぐ見ているシロンたちの意思を無下にすることができなかった。

 

「……分かりました。ここは二人にお任せします。」

 

これ以上戦わせるのは危険かもしれないが、シロンとマリルの信頼と覚悟の眼差しを彼女は信じることにした。

 

『アブリィ!』

 

アブリボンは宙を踊るように華麗な舞を披露した。特殊攻撃と防御、素早さを上げる技だ。開幕から攻撃的な態勢をとってくるアブリボンにリーリエは警戒する。

 

『ブリィ』

 

続けてアブリボンを両手を上に広げると、空中から光を降り注いできた。フェアリータイプの技であるマジカルシャインである。能力を上げた後に繰り出されるマジカルシャインは、シロンとマリルを同時に包み込むのであった。

 

「っ!?マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

「シロン!マリルさんのバブルこうせんに合わせてれいとうビームです!」

『コォン!』

 

マリルのバブルこうせんでマジカルシャインの衝撃を打ち払い、シロンのれいとうビームでバブルこうせん

と同時に攻撃する。シロンのれいとうビームがバブルこうせんと重なり、バブルこうせんの泡を凍らせ、無数の氷の刃を生成した。

 

シロンとマリルの合わせ技に驚くアブリボンはその攻撃を回避するが、全ての攻撃を回避しきることはできずに一部の氷の刃を掠めていく。

 

『リリリリリリ♪』

 

今度はアブリボンの反撃、触角や羽で不快な音波を発生させてきた。むしタイプの技であるむしのさざめきである。あまりの強烈な音に、思わずシロンとマリルは顔を歪ませている。後ろで指示を出しているリーリエも同じく顔を歪ませ、耳を塞いでいるほどだ。

 

「うっ……シロンっ!こおりのつぶてです!」

『ッ!コォン!』

 

シロンはこおりのつぶてで反撃する。アブリボンはむしのさざめきに集中していたため、こおりのつぶてを避けられずに直撃する。ダメージを受けたアブリボンのむしのさざめきは中断され、シロンとマリルも苦しみから解放される。

 

『ッ!?リボォ!』

 

アブリボンは態勢を整え、体内に力を溜め込む。シロンと同じフェアリータイプの技、ムーンフォースの態勢だろう。それならばと、リーリエも同じくシロンに迎え撃つ指示を出した。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

 

シロンも同じように力を溜め込む。互いに力を溜めると、同時にムーンフォースを全力で解き放った。

 

お互いのムーンフォースがぶつかり合い、拮抗したのちにシロンのムーンフォースが打ち破られる。ちょうのまいによる能力上昇の差がでかいのだろう。アブリボンの攻撃の方が一枚上手だった。

 

シロンとマリルは回避し、床に着弾したムーンフォースによる衝撃で視界を遮る。視界が見えなくなっても、アブリボンは羽と触角の揺れによってシロンたちの動きを感知しようとする。

 

『……リボっ!?』

 

次の瞬間、シロンのこおりのつぶてがとんでくるのを読んでアブリボンは上空に回避した。しかし、その動きはリーリエたちも読んでいたことであった。

 

「マリルさん!ハイドロポンプです!」

『リィルゥ!』

 

マリルは自身の持つ最大威力の技、ハイドロポンプで衝撃ごと突き抜ける。鉄をも裂く勢いのハイドロポンプに、アブリボンは対応しきることができずに直撃してしまう。シロンの誘導に本命のマリル。これもダブルバトル特有の戦術である。

 

アブリボンはマリルのハイドロポンプで大きなダメージを受ける。それだけでなく翼や体が濡れてしまったことにより、先ほどよりも明らかに素早さが低下している。水で濡れて体が重くなり機敏な動きが封じられてしまったのだ。

 

「今です!れいとうビームです!」

『コォン!』

『アブリィ!?』

 

シロンはジャンプして飛び出し、動きの遅くなったアブリボンにれいとうビームで追撃を加える。アブリボンは当然避けることができず、怒涛の連携攻撃をもろに受けてしまい床に撃ち落とされてしまった。

 

『あ……りぃ……』

 

アブリボンは目を回し戦闘不能となる。さすがのぬしポケモンと言えど、これだけのダメージを立て続けに受けてしまえば一溜まりもなかったようだ。

 

「おおぉ……アブリボンに勝ったね。お見事お見事ぉ♪」

 

マツリカは拍手をしながら前に出てくる。キャプテンとしてぬしポケモンに勝利したことを祝福してくれているのだろう。

 

しかしその表情は先ほどよりもどこか嬉しそうで、彼女の顔が笑顔で溢れている。

 

「実はマツリカ、あんまりぬしポケモンをしっかりと育ててるわけじゃなくてね。この子も他のぬしポケモンに比べて鍛えているわけじゃないんだぁ。」

 

確かに言われてみれば、弱いわけでは一切なかったのだが、それでも他のぬしポケモンほど苦戦した印象はなかった。リーリエとポケモンたちが強くなった、と言う要因もあるのだろうが、アブリボン自身が強敵ではなかったというのが一番の要因のようだ。

 

「でもでもぉ、決して弱いわけじゃないからね。それにマツリカと戦ったあとにアブリボンに勝ったんだから、試練突破に文句はないよねぇ。」

 

と言うわけで、と、マツリカは懐からある光る物を取り出した。ピンク色に光るそれは紛れもなくフェアリータイプのZクリスタルであった。

 

「ほら、これがマツリカの試練を突破した証、フェアリーZだよぉ。」

「ありがとうございます、マツリカさん!フェアリーZ、ゲットです!」

『コォン♪』『リルル♪』

 

リーリエと一緒にシロン、マリルも試練の突破を喜ぶ。トレーナーと一緒になって喜びを共有する姿に、マツリカは何かピンッと閃きを感じた。

 

「おおぉ!なにか、なにかマツリカの頭にインスピレーションが沸いてきたぁ!」

「本当ですか?」

「ありがとう!キミ……いや、リーリエのおかげで閃いたよ!新しい絵が描けたら、その時はリーリエに見て欲しい!」

「はい!その時は是非!」

 

マツリカの閃いた絵が完成したら見せて貰うという約束をしたリーリエ。感謝するマツリカに対し、リーリエもダブルバトルの良い経験をさせてもらったと感謝する。

 

これで全ての試練を突破することができたリーリエだが、もう一つ頂に行くために残された戦いが一つある。それはポニ島のしまクイーン、ハプウの大試練である。

 

リーリエは最後の大試練を受けるため、ポニ島にいるはずのしまクイーンハプウを探すため、マツリカの家を後にするのであった。




前回ゼラオラでサーナイトの特殊ホロウェアも販売されたから次きそうだとは思ってたけど、本当にニンフィアのホロウェアがシーズンパスで登場して私は大歓喜。

当然即日解放しました。しかし今まで以上にバグが増えているのがUNITEクオリティ。なぜ過去に修正したはずのバグが復活するのか。


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しまクイーン、ハプウの過去

今回短め。ハプウ戦前の閑話みたいな感じです。明日のカービィが楽しみすぎてあんまり考えが纏まらなかった……。


マツリカの試練を無事突破し、遂に最後の大試練を迎えることとなったリーリエ。ポニ島のしまクイーン、ハプウの元を訪ねるため、村のはずれにある彼女の実家へとやってきていた。

 

リーリエはハプウの名を呼びかけながら家の戸を叩く。すると家から出てきたのは、中年をすぎたと思われる女性であった。

 

「おや?あなたは……」

「あっ、す、すいません。えっと、しまクイーンのハプウさんはいらっしゃいますか?」

「ごめんね。今はいないのよ。でももうすぐ帰ってくると思うから、家に上がって待ってるかい?」

 

ハプウがいつ帰ってくるか分からないため、ここはお言葉に甘えて家にあがらせてもらう事にする。リーリエはリビングにある椅子に腰かけ、女性は客をもてなす準備を始めた。

 

「はいこれ、あったかいお茶と家でとれた自慢のポニ大根。好きなだけ食べていいわよ。」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

大試練を受けるためだけに訪れたつもりだったが、想定していなかったおもてなしを受けて少し戸惑いながらも気を遣わせてしまって申し訳なく思うリーリエ。しかしおもてなししてくれた女性の気持ちを無下にはできないと、素直におもてなしを受けることにした。

 

「あっ……この大根、すごく美味しいです!」

「そうだろそうだろう♪なんたって家で育てた自慢の大根だからねぇ。あの子もようやくいい大根を作れるようになったもんだよ。」

 

あの子、と言うのは恐らくハプウのことだろう。つまりこの大根を作ったのはハプウと言うことになる。

 

そう言えば以前アーカラ島やウラウラ島で出会った際に大根をバンバドロに持たせて出荷していた。彼女はしまクイーンとしてだけでなく、野菜農家を経営して生計を立てているようだ。二つの仕事を同時に熟しているハプウに、リーリエは改めて感心する。

 

「えっと……あなたはハプウさんのお母様……?」

「あらそう見える?私はあの子の祖母だよ。あの子の両親はあの子が幼い頃に事故で亡くなったからね。」

「あっ……す、すいません……」

 

孫であるハプウの親と言うことは祖母であるこの女性の子どもにもあたる。リーリエは余計なことを口走ってしまったと申し訳なさそうに謝った。

 

「別に構わないよ。あの子はそれから私と旦那である先代しまキングが育ててきたんだ。その影響か、ポケモンバトルがとても興味を示すようになってね。あの人に一から十まで教えてもらっていたのさ。」

 

おばあさんは昔のことを思い出しながら語り始めた。リーリエは彼女の話を静かに聞き続けていた。

 

「あの子は人一倍に負けず嫌いでね。負けるたびにおじいちゃんと特訓して、リベンジするのを繰り返していったんだ。そうしていく内に腕を上げていったんだけど、次第に対戦相手がいなくなっちゃってねぇ。昔から友達がポケモンたちしかいなくなっちゃったのよね。バトルへの興味も薄れて、しまクイーンとして守り神、カプ・レヒレに認められようともしなくなっちゃって。」

 

おばあさんは「でもね……」とその後も話を続ける。

 

「今のチャンピオン……シンジ君と出会ってからあの子も変わったのよ。シンジ君としまクイーンとして戦う為にカプ・レヒレに認められ、戦って久しぶりに負けて、悔しいと言いながらもどこか嬉しそうに笑って……あんなに楽しそうにしているあの子を見るのは久しぶりだったよ。」

 

以前、リーリエも彼女がカプ・レヒレに認められに遺跡へと訪れていたのは立ち会っていたために知っている。だからポニ島には長いことしまキング、しまクイーンが不在だったのかと理由が分かった。

 

ハプウは強い。それはシンジとの戦いを2年前に見届けていたため知っている。あれだけの強さを持っている人がしまクイーンとして認められなかったのには違和感があったが、今の話を聞いて合点がいった。彼女の過去が原因だったのである。

 

しかしその現状をシンジが意図していないとはいえ変えた。自分もよく知っていることだが、彼にはそれだけ他人を引き付けるほどのものがある。

 

「ただいまー」

 

そんな考えを頭の中で過らせていると、話の中心となっていた人物が帰ってきた。

 

「おっ?リーリエではないか?アローラ。もしかして大試練を受けにきたのかの?」

「ハプウさん!アローラ、です。はい、お邪魔してます。」

「すまないのぉ、待たせてしまって。わしは今からでも構わないが、リーリエはよいのか?」

 

おもてなしとして出してもらったポニ大根も食し、おばあさんからの話も終わった。リーリエとしても準備を済ませて訪れていたため、答えは既に決まっていた。

 

「はい!大試練!よろしくお願いします!」

「うむ!では行くとしよう!」

 

ハプウは意気揚々と再び家を出る。リーリエも後を付いていこうとすると、おばあさんが彼女のことを呼び止めた。

 

「君、リーリエって言うのね。」

「え、はい、そうですが……。」

「そう、あなたが……。あなたのことも、ハプウから聞いているわ。」

「私のことも、ですか?」

「まだまだ先代には程遠いけれど、あの子も着実に腕を上げているわ。間違いなく苦戦するとは思うけれど、私はあなたのことを応援してるわよ。それが、あの子の成長にも繋がると思うから。」

「……はい!頑張ります!」

 

そう返事をしたリーリエはハプウの実家を後にする。その姿を見届けたおばあさんは、近くにある仏壇を見つめて呟いた。

 

「……おじいさん。あの子があなたに届くのはいつかしらね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエが外に出ると、ハプウのバンバドロが大人しく待機しており、ハプウはバンバドロの背中を優しく撫でていた。

 

「大試練場まで少し歩くからの。このバンバドロに乗って行くぞ。ほれ、リーリエ。掴まるのじゃ。」

「はい。では失礼します。」

 

リーリエはハプウの手を取りバンバドロの後ろに乗る。ハプウがバンバドロに合図をすると、バンバドロはゆっくりと歩き始めた。

 

(ハプウさんは負けるたびに強くなり、しまクイーンになった今でも腕を上げている。負けず嫌いで努力家……より一層気を引き締めなければ、間違いなくあっさりやられてしまいます。)

 

おばあさんの話を聞き、ハプウの強さを改めて感じたリーリエ。先代しまキングの意思を引き継いだ小さなしまクイーンとの戦いを、バンバドロに揺らされながら楽しみにして待つのであった。




アニポケハプウの両親は海の民の村にて健在です。原作では祖母のみが登場して出自など不明なので、この小説でのオリジナル設定+設定の掘り下げみたいなものだと考えていただければ。

海外のリーク情報によると次に出るUNITEのポケモンはマリルリだそう。


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vsハプウとバンバドロ!最後の大試練!

※先行投稿しましたが思ったより話が長く現在執筆中です。申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください。(完成しました)

少し時間オーバーしてしまい申し訳ありませんでした。


「うむ、ついたぞ。ここじゃここじゃ!」

 

ハプウのバンバドロに乗り案内されたのは、隙間なく石を敷き詰めて作られた広い場所だ。四隅には四つのオブジェクトとなっている柱が立てられていて、如何にもバトルフィールドであると象徴しているようであった。

 

「わらわがしまクイーンになった際にバトルする場所に困ったからのぉ。挑戦者と思う存分戦えるようにと、この場所を作ってもらったのじゃ。」

 

2年前、しまクイーンと認められたばかりのハプウはシンジと戦う際、ある程度開けた場所であったポニの渓谷入り口でバトルをした。間違いなくあの場所よりも、このフィールドの方が気兼ねなく激しいバトルを繰り広げることができるであろう。

 

「っと、さて、挑戦者リーリエよ。わらわしまクイーンハプウはそなたの挑戦を正面から受け止める。だからそなたも持てる力の全てを出し切り、全力でわらわに挑むがよい!」

「ハプウさん……」

 

ハプウはバンバドロから降りると、リーリエの眼を真っ直ぐ見つめてそう言い放った。ハプウのその雰囲気は子どもっぽい見た目とは裏腹に、しまクイーンとして成長した彼女の威圧感がリーリエにプレッシャーとして襲い掛かった。

 

リーリエは彼女の雰囲気に一瞬呑まれそうになり喉をゴクリと鳴らす。しかし彼女も今まで多くの経験を積み、ここまで歩んできた一人のトレーナーだ。退くわけには行かないと、自分もバンバドロから降りてハプウの眼を見つめ返す。

 

「もちろんですハプウさん。今私の持てる力の全てを出し切って、あなたに勝って見せます!」

 

リーリエに瞳は、真っ直ぐとハプウを、そしてその先にあるであろう目標の背中がしっかりと映っていた。ハプウはそんな彼女の強い眼差しに、嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべるのだった。

 

「ルールは3対3の一般ルール。どちらかが3体戦闘不能になった時点でバトル終了じゃ。それでよいか?」

 

ハプウのルール説明に、リーリエははい、と頷いて答える。最も互いの実力が分かりやすいと言われている3対3のバトル。最後の大試練に相応しいルールである。

 

お互いにルールを確認し、ハプウとリーリエは距離を離して振り返り対戦相手の姿を見据える。お互い準備万端と分かれば、もうこれ以上語ることは何もない。トレーナーならばバトルの中で会話をすればいい。

 

ハプウとリーリエはそれぞれモンスターボールを手に取る。そしてフィールド中央に投げると、互いの先発であるポケモンが姿を現す。

 

「お願いします!チラチーノさん!」

『チラチ!』

「出番じゃ!ダグトリオ!」

『ダグダッ!』

 

リーリエは先発としてチラチーノ、ハプウはダグトリオを繰り出した。ダグトリオの頭部には髪が生えており、おかっぱ、ウェーブ、ロン毛とそれぞれ特徴が違っていた。

 

『ダグトリオ、もぐらポケモン、アローラの姿。じめん・はがねタイプ。金色の髭はとても頑丈で、センサーの役割も持っている。抜け落ちた髭を持ち帰ると不幸になると言われている。』

 

髪に見えるそれはどうやら髭のようである。その髭こそが、通常とは違うアローラの姿、リージョンフォームの証でもあった。

 

(頑丈な髭……間違いなく強力な武器になりそうですね。注意しなければ……。)

 

頑丈な部位は強固な盾にもなれば、最大の武器にもなり得る。アローラのダグトリオと対峙するにあたり、最も注意するべき点であろうと、リーリエは警戒して気を引き締める。

 

「先行はリーリエからでいいぞ。存分にかかってくるのじゃ!」

「では遠慮なく行かせていただきます!チラチーノさん!スピードスターです!」

『チラ!』

 

チラチーノは尻尾を振るい星型の弾幕、スピードスターを放つ。無数のスピードスターはダグトリオ目掛けて接近していくが、ハプウはその攻撃を冷静に対処した。

 

「ダグトリオ!あなをほるじゃ!」

『ダグッ!』

 

ダグトリオは地中に潜ることでスピードスターを回避する。あなをほるでも一切ビクともしないところを見ると、このフィールドは相当丈夫に作られているようである。

 

「っ、一体どこから……」

 

姿が見えないダグトリオがどこから攻撃してくるか、リーリエとチラチーノは集中して警戒をする。しばらくするとチラチーノの足元が少し揺れ、ダグトリオが姿を現す合図なのだと悟った。

 

ダグトリオが足元から攻撃してくると悟ったチラチーノは、飛び出してくる直前にバックステップで回避した。しかし……

 

「そのままアイアンヘッドじゃ!」

『ダグッ!』

『チラッ!?』

 

ダグトリオはあなをほるで飛び出した勢いを利用し、バックステップで回避したはずのチラチーノをアイアンヘッドで追撃した。届かないと思われたその攻撃は、ダグトリオが穴から飛び出た頭部をさらに伸ばすことで命中した。

 

チラチーノにアイアンヘッドが命中し、その攻撃によってチラチーノは突き飛ばされ怯んでしまい膝を地面につく。

 

「チラチーノさん!」

『チラッチ!』

 

リーリエの声にチラチーノは元気よく返事をしてまだ大丈夫だと意思を示す。しかしハプウの攻撃の手は決して止むことはなかった。

 

「ダグトリオ!ステルスロックじゃ!」

『ダグダァ!』

 

ダグトリオは続けて細かい岩の破片をフィールドにばら撒いた。するとばら撒いた岩の破片はすぐに姿を消し、リーリエとチラチーノは困惑する。

 

「ステルスロックは相手のフィールドに見えない細かい岩をばら撒き、交代した相手にダメージを与える技じゃ。これからおぬしが交代するたびに、どんどん不利になっていくからのぉ。交代するなら考えることじゃの。」

 

交代するたびにこちらのポケモンにダメージが入る。後ろのポケモンに負担がかかり、無暗な交代は自らの身を削る行為に直結してしまう。リーリエの戦略がかなり限られてしまった。

 

「次はトライアタックじゃ!」

『ダグダグダグ!』

「スイープビンタで防いでください!」

『チラ』

 

3つの頭が連携して三属性を纏った攻撃を放った。チラチーノはスイープビンタの三連攻撃で弾き防ぐ。綺麗にコーティングされているチラチーノの毛並みであれば、この程度の反射は容易である。

 

「やるのぉ。じゃが!もう一度あなをほるじゃ!」

 

ダグトリオはもう一度あなをほるで地中に潜り姿を消す。このままでは防戦一方で倒されてしまうのも時間の問題だ。

 

ならばここは防御に回るより、攻撃に転じて反撃するしかないとリーリエはある作戦をとる。

 

「チラチーノさん!ダグトリオさんの潜った穴に入って下さい!」

『っ!?チラ!』

「なんと!?」

 

チラチーノはリーリエの指示通り穴の中に潜り込み、ダグトリオのあとを追いかける。ハプウはリーリエの意外な戦術に目を見開いて驚きの声をあげていた。

 

リーリエの行動は相手の土俵に自ら足を踏み込むのと同じこと。効果的ではあるかもしれないが、その分危険な行為でもあるのだ。しかし彼女にはむしろ最善の策だという確信があった。

 

「スイープビンタです!」

『チラッ!』

 

リーリエたちからは地中の姿は全く見えていない。リーリエの声が穴を通してチラチーノに届き、スイープビンタの準備をする。ダグトリオの背後から近づき、スイープビンタをぶつけて地中から引き釣り出した。背後からであればダグトリオのスピードであっても対応しきるのは難しい。

 

あなをほる中、背後から接近されてしまったダグトリオは対抗することができずに無抵抗で受け溜まらず地上でダウンした。そのままの勢いを維持して、チラチーノは地中から空中まで跳び上がった。

 

「今です!スピードスター!」

『チラッチ!』

『ダグッ!?』

 

チラチーノはスピードスターで倒れているダグトリオに追撃を仕掛ける。不意打ちのスイープビンタがかなり効いていたようで、素早さが早いダグトリオであっても回避できずスピードスターが直撃した。

 

ダグトリオは素早さと攻撃力が高い反面、防御力はかなり低いポケモンだ。チラチーノの素早く鋭い攻撃を連続で浴びてしまい、目を回して戦闘不能状態になってしまったようだ。

 

『だぐだ……』

「よく頑張ったのダグトリオ。ゆっくりと休むがよい。」

 

ハプウは頑張ってくれたダグトリオに優しく声をかけてモンスターボールへと戻す。そしてハプウは、次なるポケモンが入ったモンスターボールを手に取り、フィールドへと投げるのであった。

 

「ゆくぞ!フライゴン!」

『フリャア!』

 

『フライゴン、せいれいポケモン。じめん・ドラゴンタイプ。はばたくことで砂嵐を巻き起こしその中心にいるため滅多に姿を現さない。羽音が歌声に聴こえることから砂漠の精霊と呼ばれた。』

 

ハプウの次なるポケモンはドラゴンタイプも併せ持つフライゴンであった。図鑑説明にもあったように、フライゴンの羽音は優しく心地のいい歌声に聴こえ、その姿から精霊に見えても不思議はないと感じた。

 

「この調子で行きます!チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラチ!チラッ!?』

 

ダグトリオを倒した勢いで一気に攻め立てようと意気込み素早さを活かして突進するチラチーノ。しかし体の調子がおかしいと感じ、驚きの声をあげていた。

 

「っ!?こ、これは……」

 

素早さが自慢のチラチーノだが、フライゴンはスイープビンタをあっさりと回避した。明らかに様子がおかしいことに、リーリエはどうしてなのかと困惑する。

 

「フライゴン!ドラゴンクローじゃ!」

『フリャ!』

 

フライゴンは回避した状態のまま、隙だらけのチラチーノを鋭い竜のツメで切り裂いた。チラチーノは強力なドラゴンクローに吹き飛ばされ、背中を地面に思いっきり打ち付けダメージを抱えた。

 

「ばくおんぱでとどめじゃ!」

『フライ!』

 

フライゴンは上空から翼の羽ばたきを強くし、歌声の様な心地よい音から攻撃的な荒々しい音に変換する。その文字通りの爆音は強い衝撃波となり、動けないチラチーノを上空から襲い掛かった。

 

「チラチーノさん!?」

『ち……ら……』

 

チラチーノは怒涛の連続攻撃と、ダグトリオ戦でのダメージが重なって戦闘不能になってしまう。リーリエは戦ってくれたチラチーノにお礼を言い、モンスターボールへと戻した。

 

リーリエはチラチーノがやられたことで一度冷静になり先ほどの戦闘を思い返す。チラチーノの調子がおかしくなった原因はなんなのか。

 

その時、リーリエの中に一つの特性の名前が思い浮かんだ。アローラの姿をしたダグトリオの特性、カーリーヘアーである。

 

ダグトリオの特性、カーリーヘアーは接触した相手に影響を及ぼす特性で、相手の素早さを低下させる厄介な特性だ。ステルスロックとカーリーヘアー、この二つの特徴を活かすためにハプウはダグトリオを先発として出したのである。

 

(やはりしまクイーンのハプウさん……一筋縄ではいきませんね……)

 

元より手強いことは理解していた。しかし改めて手合わせすると、しまクイーンに恥じない実力を持っていることがよく分かる。より気を引き締める必要があると、深く深呼吸をして気合を入れる。

 

「さぁ、次はどんなポケモンでくるのじゃ?」

「私の2番手は、この子です!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

次に繰り出したのはフシギソウであった。ハプウはフシギソウを見て、いい面構えじゃなと関心する。

 

『ソウッ!?』

 

フシギソウが場に出た瞬間、フシギソウを待機していたステルスロックが一斉に襲い掛かった。場に出たことにより、ステルスロックが自動的に起動してフシギソウの体力を奪う。

 

「じゃが、そう簡単にやらせはせんぞ!フライゴン!マッドショット!」

『フリャ!』

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

『ソウ!』

 

フライゴンは泥の塊を複数投げつける。フシギソウははっぱカッターで反撃し、フライゴンのマッドショットを切り裂いた。

 

「ならばドラゴンクローじゃ!」

『フライ!』

「つるのムチで捕まえて下さい!」

『ソウ!』

 

フライゴンは急降下してドラゴンクローによる攻撃を仕掛けてくる。フシギソウはその攻撃をフライゴンの翼をつるのムチで捕まえることで抑えつけようとする。しかし……

 

「回転して防ぐのじゃ!」

『フラァイ!』

 

フライゴンは回転しながら突進してくることで、フシギソウのつるのムチを弾き返した。ハプウの対応の速さに、リーリエは驚きながらも関心していた。

 

フライゴンのドラゴンクローでフシギソウは切り裂かれる。チラチーノにも致命傷を与えたフライゴンのドラゴンクローは、フシギソウの体力も大きく削る。

 

「フシギソウさん!大丈夫ですか!?」

『ソウ……ソウ!』

 

ダメージはあるが、それでもまだ大丈夫だと意思表示をするフシギソウ。しかしつるのムチを防がれてしまい、その上空中にいる相手では不利かと、仕方ないとフシギソウのモンスターボールを手にとった。

 

「フシギソウさん、戻ってください。」

 

リーリエはフシギソウをモンスターボールへと戻した。まさかの行為にハプウは驚き目を見開いた。

 

「……お願いします!カイリューさん!」

『バウゥ!』

 

カイリューは大きな咆哮と共に登場する。この間の戦いから改めて加入したリーリエの頼もしい仲間である。

 

しかしそんなカイリューにもステルスロックが襲い掛かり突き刺さった。カイリューは咄嗟に防御するも、それでもダメージは確かにある。

 

「カイリューさん……」

『バウ!』

 

この程度問題ないと、カイリューは大きく声を出して自分自身を鼓舞していく。そして自分よりも上空にいるフライゴンに目を移し、彼を敵として認識する。

 

「どのポケモンもいい目をしておる。フライゴン!ばくおんぱじゃ!」

『フリャ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウ!』

 

フライゴンのばくおんぱを、カイリューはしんそくで目にも止まらぬ速度で回避しながら接近する。カイリューの攻撃で、フライゴンは地面に叩きつけられる。

 

「れいとうビームです!」

『バオウ!』

「っ!?かわすのじゃ!」

『フリャ!』

 

カイリューは追撃でれいとうビームを放つが、再び上空に羽ばたいて空を飛び回避する。

 

「こちらも行くぞ!ドラゴンクローじゃ!」

『フリャア!』

「カイリューさん!げきりんです!」

『バウ……バオゥ!!』

 

カイリューはげきりんで荒々しくも力強くフライゴンのドラゴンクローを正面から受け止める。そして受け止めた状態からそのまま地面に投げつけ、フライゴンを再び地面に叩きつけた。

 

 

「くっ……なんてパワーじゃ……」

「そのまま畳みかけてください!」

『バオォウ!』

「かわしてばくおんぱじゃ!」

 

げきりん状態のままフライゴンに畳みかけるカイリュー。フライゴンはその攻撃を辛うじて回避するも、回避したフィールドは凹みクレーターができていた。そのあまりのパワーに、ハプウとフライゴンは冷や汗を流す。

 

回避したフライゴンはばくおんぱですぐさま反撃する。カイリューはまだげきりん状態が続いており、正面から勢いよく突進していく。

 

ばくおんぱをかき分け、ダメージを無視しカイリューは突撃していく。そのあまりの荒々しさと強引さにフライゴンは驚いていた。そしてカイリューの超パワーが炸裂し、フライゴンはげきりんに吹き飛ばされた。

 

「なっ!?フライゴン!」

『ふりゃ……』

 

フライゴンはげきりんの一撃で戦闘不能になってしまった。かなり前線はしたが、それでもカイリューのパワーはすさまじかった。

 

「頑張ったの、フライゴン。あとは任せるのじゃ。」

 

フライゴンを戻したハプウは懐にしまい、隣に顔色一つ変えることなく不動の如く立って待機していたバンバドロの方へと振り向いた。

 

「バンバドロ、あとは任せるぞ?」

『……ブル』

 

バンバドロはハプウに頷いて答える。その後ゆっくりとフィールドに出て、カイリューの眼を見据えていた。

 

「遂に来ましたね……バンバドロさん……」

 

ハプウのエースであるバンバドロ。佇まいや雰囲気からとてつもない力を持っているのだとリーリエにもひしひしと伝わってくる。これは今まで戦った中でもトップクラスに強敵なのではと感じるほどだ。

 

「それでも、負けません!カイリューさん!」

『バウゥ!』

 

カイリューはリーリエの声に大きく返事するが、げきりんの反動により少し足元がふらついている。げきりんは暫く行動を続けると、混乱してしまうデメリットがある技だ。それゆえに、少し足元がおぼつかない。失敗すると自らを攻撃してしまう事もある、

 

「っ!?カイリューさん!れいとうビームです!」

『バオウゥ!』

 

カイリューはれいとうビームで攻撃する。遠距離攻撃であれば多少安全であろうという判断からである。カイリューは無事攻撃に成功するが、バンバドロはその攻撃を冷静に対処する。

 

「バンバドロ!」

『ブル!』

 

バンバドロは地面をその逞しい前足で叩きつけ岩盤の壁を立てて盾にし防御した。苦手なタイプの攻撃を対策しているのは、さすがしまクイーンのエースと言ったところだろうか。

 

「っ!それならばしんそくです!」

『バ……オオウ!』

 

少しふらつきながらも、カイリューはしんそくでバンバドロに突撃していく。バンバドロは微動だにせず、カイリューのしんそくはバンバドロの頭部とぶつかり合う。

 

直撃、それは間違いない。しかしバンバドロにはダメージが見受けられず、バンバドロは顔色を一切変えていない。

 

「カウンターじゃ!」

『ブル』

『バウ!?』

 

バンバドロはカウンターで反撃した。バンバドロのカウンターはカイリューの腹部に直撃し弾き返し、そのダメージからカイリューは地面に叩き伏せられた。

 

「カイリューさん!?」

『ば……うぅ……』

 

カイリューはカウンターの一撃で戦闘不能となってしまう。カウンターは相手の攻撃を倍にして跳ね返す技だ。カイリューの高い攻撃力が仇となり、バンバドロの高い耐久力を活かして上手い事反撃されてしまった。

 

「カイリューさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」

 

ステルスロック、フライゴン戦の疲労、そしてバンバドロのカウンター、強力なカイリューを跳ね返すほどのチームワークに、リーリエは勉強になると関心以外の言葉が思いつかない。

 

「……あとは、あなただけです。フシギソウさん!」

『ソウ!』

 

残るは先ほどのバトルで少しダメージが蓄積してしまっているフシギソウ。その上再びフィールドに出たことによりステルスロックが突き刺さった。フシギソウはステルスロックのダメージで、更に体力を奪われる。

 

「フシギソウさん!」

『ソウ……ソウ!』

 

フシギソウはステルスロックのダメージを耐え抜く。しかしそれでも、かなり体力は蝕まれてしまっており、本来の力を発揮できそうにない。その上相手のバンバドロはほぼ無傷。この状態で勝ち目はかなり薄いと言える。

 

「さて、ここからどのようなバトルを見せてくれるのか……バンバドロ!がんせきふうじじゃ!」

『ブルル!』

「フシギソウさん!つるのムチでジャンプしてください!」

 

 

バンバドロはがんせきふうじでフシギソウの行動を防ぎにかかる。しかしフシギソウはつるのムチを地面に叩きつけ、自らの体を宙に浮かせジャンプした。

 

「エナジーボールです!」

『ソウ!』

「受け止めるのじゃ!」

『ブル』

 

フシギソウはエナジーボールで空中から攻撃する。しかしバンバドロはその攻撃を避けることなく、構えて正面から受け止める。弱点である草技なのにもかかわらず、バンバドロに対してのダメージは低いようである。そのあまりにも高い耐久力に、リーリエもフシギソウも目を見開いていた。

 

「10まんばりきじゃ!」

『ソウ!?』

 

バンバドロはフシギソウの落下地点に走り、後ろ足によって吹き飛ばした。その強靭な脚による攻撃はすさまじく、突き飛ばされたフシギソウは立つことすらままならない。

 

「フシギソウさん!」

 

リーリエはフシギソウに必死に呼びかける。しかしフシギソウは返事をすることができず、フィールドに伏せてしまう。むしろここまで戦えたことの方が奇跡かもしれない。

 

これ以上はダメか、リーリエとハプウ、双方がそう思った矢先の出来事であった。フシギソウの体を青白い光が包み込み、フシギソウの姿を変化させていった。

 

「こ、この光りは……」

 

そう、ポケモンの進化の光である。小柄なフシギソウの体は見る見ると大きさを増していき、光が放たれた時には背中に立派な大きい花が咲いていた。

 

『バナァ!』

 

『フシギバナ、たねポケモン。フシギソウの進化形。くさ・どくタイプ。背中の大きな花は太陽の光を吸収し、エネルギーに変換できる。花の香りは人の心を癒す効果がある。』

 

フシギソウは遂に最終進化形、フシギバナへと進化を遂げた。リーリエはそのことに喜ぶも、この状況をどう打開するかと頭を悩ませる。その時、フシギバナの背中が光を吸収しているのが確認できた。

 

「これは……こうごうせい?フシギバナさん!こうごうせいを覚えたんですね!」

『バナ!』

 

フシギソウはこうごうせいを習得した。こうごうせいは自分の体力を回復させるくさタイプの技だ。これにより今までの蓄積ダメージが嘘のように、フシギバナの体の傷を癒していった。

 

「完全回復はさせはしない!バンバドロ!10まんばりきじゃ!」

『ブルルゥ!』

「フシギバナさん!つるのムチです!」

 

バンバドロは走っていき10まんばりきで攻撃する。しかしその後ろ足による攻撃を、フシギバナはつるのムチを巧みに使って防ぐ。バンバドロのパワーに対抗できるほど、フシギバナの攻撃力も上がっていた。

 

「っ!?ならば、これで一気にケリをつける!」

 

バンバドロはハプウの気合いに呼応するかのようにフシギバナのつるのムチを弾き怯ませる。するとハプウは手を交差させ、一回転して手を地面に突き立てる。地面タイプのZ技のポーズだ。

 

「ゆくぞ!わらわたちの全力の一撃、受け止めてみよ!」

『ブルル!』

「来ますよ!フシギバナさん!」

『バナァ!』

 

バンバドロはハプウからのZパワーを受け取り、体の底から力が込み上がる。その力を糧とし、丈夫なフィールドに地割れを発生させフシギバナを落とした。

 

 

 

 

 

 

――ライジングランドオーバー!

 

 

 

 

 

 

バンバドロはフシギバナを追いかけ地下深くに潜り込む。フシギバナをマグマに押し込み、噴火を巻き込ませて力強い一撃を与えた。その衝撃がフィールド全体を包み込む。

 

自分の持つ全力全開のZ技。これを受けて立っていたものはいないとハプウは勝利を確信した。しかし、衝撃が晴れてそこにいたのは、ハプウとバンバドロのZ技に耐えていたフシギバナであった。

 

「な、なんと!?」

『ブル!?』

 

ハプウとバンバドロは驚きのあまり目を見開いていた。進化したことにより、パワーだけでなく耐久力も大きく跳ね上がっていた。

 

「今度は私たちの番です!行きますよ!」

『バナ!』

 

こうごうせいによる回復も相まって、フシギバナの体力は充分に戻っていた。バンバドロのZ技を耐え、次は自分たちの番だとZ技のポーズをとる。

 

まるで地面から花が咲く姿を印象付けさせるそのポーズは、紛れもなくさタイプのZ技であった。

 

「これが……私たちの全力です!」

『バナアァ!』

 

 

 

 

 

 

――ブルームシャインエクストラ!

 

 

 

 

 

フシギバナは光を吸収し、草花の生命力を活性化させフィールド全体にエネルギーが放出する。そのエネルギーはフィールドに花を咲かせ、バンバドロの周囲を包み込み爆発を引き起こした。

 

バンバドロを包み込み、彼の姿が見えなくなる。リーリエとハプウに緊張が走り、徐々にその姿が見えてくる。

 

「バンバドロ!っ!?」

 

そこにあったのはバンバドロの立ち姿であった。しかしバンバドロはその場から微動だにせず、様子がおかしいとハプウは察した。バンバドロは目を回し、戦闘不能状態となってしまっていたのだ。

 

さしものバンバドロも、効果抜群のZ技を受けてしまっては一溜りもなかったようだ。バンバドロが戦闘不能となり、これでハプウは3体のポケモンを失った。つまりこれは、リーリエの奇跡的な逆転勝利を意味していたのである。




思ったよりかなり長くなってしまいました。途中内容も大幅に変更したりと、色々手を加えたりしていたらこうなりました。

あっ、カービィディスカバリー100%クリアは達成しました。

じゃあ私はポケマスで新衣装のリーリエ引いてきます。


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リーリエ、約束への想い

本当は書く気が無かった回ですが、思いついたので閑話的な感じで

大試練の後の羽休め


フシギバナのZ技、ブルームシャインエクストラがバンバドロに炸裂し、バンバドロは力尽きる。これにより、ポニ島の大試練であるハプウとの戦いはリーリエの勝利と言う結果になった。

 

激戦を制し、リーリエは喜びと同時に今までの疲れがどっと出て力が抜けその場にへたり込む。そんなリーリエを心配し、フシギバナはその巨体と背中の大きな花びらを揺らしながらゆっくりと近付いてきた。

 

「フシギバナさん、ありがとうございました。」

『バァナ♪』

 

フシギバナはリーリエに笑顔で応える。フシギソウの時に比べ声は低く、少し厳つい顔にはなったものの、彼の笑顔はフシギソウ、いや、フシギダネの時から何一つ変わっておらず、リーリエはフシギバナの成長と変化していない笑顔に安心感と喜びを同時に感じていた。

 

「お疲れじゃったな、バンバドロ。ゆっくりと休むがよい。」

 

戦闘不能になったバンバドロを撫でながらハプウはモンスターボールへと戻す。ハプウはバンバドロの入ったモンスターボールを懐にしまうと、リーリエの方へと歩いてくる。

 

「挑戦者リーリエよ、素晴らしいバトルだった。ワシの完敗じゃよ。」

「ハプウさん……」

 

ハプウは健闘を称え、リーリエに手を差し出してきた。リーリエはその手を掴み引っ張られるように立ち上がる。

 

「こちらこそありがとうございました!私の想いに応えてくれたフシギバナさん、カイリューさん、チラチーノさん、それから対戦相手のハプウさん、皆さんがいてくれたから全力でバトルをすることができました!」

「仲間との信頼関係、それから相手を思いやる気持ち、その二つがあるおぬしならこれを受け取るに相応しいじゃろう。ほれ、ジメンZじゃ。受け取るがよい!」

「ありがとうございます!」

 

ハプウが手渡ししてきたじめんタイプのZクリスタル、ジメンZを受け取った。大試練を突破した証、ジメンZを手に入れたと同時に、リーリエは目標の舞台へと立つために必要な全ての条件をクリアしたのであった。

 

「これで遂にあそこに行く条件が揃ったかの、リーリエ。」

「はい!」

 

リーリエはそう返事をして今まで大試練で入手したクリスタル、カクトウZ、ムシZ、アクZ、そしてジメンZを見せる。それを見たハプウも、どこか満足そうに頷いていた。

 

「そうかそうか!では残されているのは……」

「はい!シンジさんの待つ、ラナキラマウンテン……ポケモンリーグです!」

 

遂に目前まで見えてきた目標の舞台。リーリエにとっての最終目標地点であり、約束の舞台。そこに今まで目指していた背中が、彼がリーリエの到着を待っている。

 

(遂に見えてきました……あの人の背中が。ここまで長かったですけど、私は辿り着くことができましたよ、シンジさん。)

 

リーリエはその人物の名を口にする。チャンピオンシンジ……リーリエとリーリエの家族を救い、アローラ初代チャンピオンとして君臨したアローラ最強のトレーナーにしてリーリエの目標。更には幾度となくアローラを救った、アローラの住民からすれば英雄にも等しいトレーナーである。

 

リーリエは彼の姿に憧れ、トレーナーとして旅に出ることを決意した。そして今、目標とする人物のいる場所までくることができたのだ。そう改めて実感すると、リーリエの心臓が今まで以上にバクバクと脳に響いてくるのが分かる。心臓の音が頭から離れず、緊張からか彼女の額を汗が滴り落ちていく。

 

「……リーリエよ。」

「は、はい!」

 

ハプウが声をかけると、先ほどの嬉しそうな表情とは裏腹に緊張から顔が強張ってしまっているのが分かる。その表情から、ハプウにもリーリエの感じている鼓動と緊張が伝わってきた。

 

「リーリエ、ワシについてくるのじゃ。よいところに連れて行ってやろう。」

「よいところ、ですか?」

 

どこだろうか、と思うリーリエだが、ハプウのことなので何か考えがあるのだろうと彼女をついて行くことにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ!ついたぞ!ここじゃ!」

「ここって……」

 

リーリエはハプウに連れられるままに船に乗り込んだ。暫くして辿り着いたのは、見覚えのある小さな島であった。しかしその島には巨大な体と長い首を空高く伸ばしたポケモン、アローラの姿をしたナッシーが何体か生息していた。

 

そして島の入り口にある少し古びた看板に描かれているナッシーのイラストと島の名前、ナッシーアイランド。そう、2年前にリーリエがシンジと共に訪れた島である。

 

「あ、あそこは……」

 

島の中央付近には洞窟にも近い窪みがあり、彼女にとっても思い出深い場所であった。その場所はかつてシンジと共にナッシーアイランドに訪れた際、雨宿りをするために入った窪みである。

 

「シンジから聞いたぞ。おぬし、ここであやつと約束をしたそうじゃな。」

 

ハプウの言葉と共にリーリエの脳内の過去の映像が自然と蘇ってくる。あの時ここに訪れたのは、ほしぐもを目覚めさせるために太陽の笛を取りに来るためであった。

 

その時突然大雨が降り、シンジとリーリエは窪みの中で雨宿りをすることになった。その時話した会話は様々で、過去の母親との思い出、シンジが目指す目標、旅が終わった後どうするのか、そして彼との約束。

 

「はい。シンジさんと共に旅をすること。」

「うむ。そしてそなたらはカントー地方で無事に約束を果たすのじゃったな。」

 

元々は自分一人の力でカントー地方を旅し、成長した姿をシンジに見せる予定であった。しかしシンジは約束を守るため、カントー地方まで態々出向き約束を果たした上にスピアーの群れから自分のことを守ってくれたのだった。

 

「そして次はおぬしの番、と。」

「はい。あの時シンジさんは約束を果たしてくれました。今度は私が果たす番です。」

 

カントーのポケモンリーグにて交わした約束、アローラのポケモンリーグで待っている、と。彼はリーリエに向かってそう告げてくれた。リーリエは無事全ての大試練を突破し、そしてシンジの待つアローラポケモンリーグに向かうのである。

 

「それは緊張もするじゃろうな。じゃがな……」

 

ハプウは話に一区切りつけると歩みを止める。リーリエも同じく足を止めると、ハプウはリーリエの方へと振り向いた。

 

「であるならば、おぬしは堂々としておるとよい。もちろん、緊張だってするじゃろう。じゃが、おぬしには仲間であるポケモンたちがいる。今まで紡いできた経験、思い出がある。堂々とぶつかり、シンジに挑戦するがよい!おぬしは、挑戦者なんじゃからな!」

 

ハプウはニカッ、と笑いながらリーリエにトレーナーの先輩として、しまクイーンとしてアドバイスを送った。リーリエも彼女の言葉に胸を打たれ納得する。

 

そうだ、大試練が終わったとしても自分は挑戦者だ。今までと何も変わらない。ならば挑戦者は挑戦者らしく、堂々と挑戦するまでだ。

 

「ハプウさん、ありがとうございます!私、挑戦者らしくぶつかってみます!」

「うむ!よくいったぞ!」

 

緊張が解けたリーリエはいつもの元気な姿をハプウに見せる。ハプウはそんなリーリエを見て、いつもの彼女に戻ったと明るい笑顔で頷いた。

 

大試練と言う激戦を終えたため、時刻は既に夕暮れ時。島から眺める海の向こうには、アローラの太陽が水平線の向こうへと沈もうとしていた。

 

「ふむ、これをリーリエに見せたかったのじゃ。」

「え?これをですか?」

「うむ。ここから夕陽が沈む瞬間を見た者は、願いが叶うと言われているんじゃ。夕暮れを見たそなたなら、必ず願いを、夢を実現することができるじゃろう。」

 

ハプウのその言葉を聞いたリーリエは、夕陽が沈む瞬間をしっかりと目に焼き付ける。綺麗な夕焼けの空、そしてアローラの綺麗な海に沈む夕陽の神秘的な瞬間は、リーリエの脳内から決して消えることはないであろう。

 

「ハプウさん、ありがとうございます!私、がんばります!」

「うむ!がんばリーリエ、じゃ!」

「はい!がんばリーリエ、です!」

 

改めて手をギュッと握りしめ、リーリエは船へと戻っていく。ハプウはそんな彼女の背中を見つめ、誰にも聞こえない声で呟いていた。

 

「願いが叶う……と言うのは半分嘘じゃ。そんなものはタダの迷信にすぎんのじゃよ。」

 

じゃが、とハプウは続けて言葉を口にする。

 

「ここから海に沈む夕陽を見た者は、大切な者と結ばれる、と言う話は本当じゃと思うがな♪」

 

ハプウはかつて祖父から聞いた話を思い出しながらそう呟いた。そしてポニ島の守り神、カプ・レヒレに願いを込める。

 

「ポニ島の守り神カプ・レヒレよ。あの者に幸があらんことを。」

 

そう願うと、ハプウもリーリエの後をついていき一緒に船へと乗り込むのであった。



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歩んできた道、そして約束

アニポケでセレナ再登場しましたけど、可愛いというよりすっごい美人になってましたね。あとニンフィアかわいい。

今回は軽く振り替える冒険のまとめ回です。長編アニメ(特にジャンプ)ではよくある話。


リーリエは大きく深呼吸をする。今現在、彼女はウラウラ島にあるラナキラマウンテンへとやってきている。

 

「……よし!行きましょう!」

『ビビッ!案内ならボクに任せるロ!』

 

リーリエは深呼吸で最後の試練を前にして昂る気持ちを落ち着かせ、ラナキラマウンテンを登り始める。ラナキラマウンテンは気候が温暖であるアローラの中でも唯一冷えこむ場所であるため、寒さ対策に厚着をしてきているため問題はない。

 

方向音痴である彼女は一人で歩くといつの間にか迷ってしまう特殊能力にも似たものがある。マッピング機能があるロトム図鑑がいれば、方向音痴の彼女であっても安心である。

 

しかし一部に雪が積もっているため、足場は普通の山よりも悪くなってしまっている。そのため滑って転ばないように慎重に歩みを進めていく。

 

「山を登ると、なんだかあの時のことを思い出しますね。」

 

あの時とは、神経毒にかかってしまった母親を救うため、虹色の羽を求めてシロガネ山を登った時のことである。その時は生まれたばかりのシロンが一緒にいたものの、トレーナーとしては旅に出ていなかったため右も左も分からない時期であった。

 

道中なんどもポケモンに襲われたり、迷子になってしまったりと、今思い出しても少し恥ずかしさがある一方で、いい経験でもありいい思い出として彼女の脳内に刻まれている。

 

不思議な現象、不思議な存在に導かれながらもリーリエは無事虹色の羽を入手し、神経毒に侵されてしまった母を助けることに成功する。

 

それからしばらくして、リーリエはトレーナーとしてある程度の知識をオーキド博士の研究所で学んだ。元々本を読むのは好きだったし、知識を取り入れることは彼女にとって何よりも楽しい時間であった。

 

そしてアローラを発ち2年の時が過ぎ、遂に彼女は決意するポケモントレーナーとして旅立つことを決意する。

 

「不思議と、色々なことを思い出しますね。」

 

ラナキラマウンテンを登っていると、リーリエは脳裏に過去に経験した色々な出来事がまるで昨日のようによみがえってくる。旅をしていた期間は決して長くはないが、それでも旅の道中様々な経験をしたのは記憶に新しい。

 

旅に出たのはいいものの、彼女自身の方向音痴によってトキワの森で迷子になってしまう。そんな彼女はスピアーの縄張りに入ってしまい、彼らの怒りを買って襲われてしまう。

 

そんな時、アローラで出会った憧れのトレーナー、恩人、大切な人物に助けて貰い、再会することとなった。彼はリーリエと交わした約束、“いつか一緒に旅をする”と言う約束を果たすために遥々反対側であるアローラからカントーまで来てくれたのだ。

 

リーリエは近くで見てきた彼の姿に憧れた。誰よりも強く、ポケモンたちと心を通わせ、どんな時でも決して諦めない勇気を持った彼は、リーリエにとって何よりも強く輝いていた。そんな彼に少しでも近づくために、一緒に戦えるようになるために、今度は自分が守れるように強くなりたいと願うようになった。

 

元々はポケモン達が傷ついてしまうポケモンバトルが苦手と言っていたリーリエも、彼と、そして自分のポケモン達と関わっていく内にポケモンバトルの良さに惹かれていく。傷付くだけではなく、ポケモンと絆を深め、戦った相手と称賛し分かち合う、それが何よりも素晴らしく心地よいものだと気付くことができたのだ。

 

それからリーリエはカントー地方のジム巡りに挑むことを決意した。ジムリーダーは一つのタイプに特化したエキスパートトレーナーたちで実力もある手練ればかりであったが、共に旅をした彼の助言ととポケモン達、そして彼女自身が成長していき、カントー地方8つのジムを攻略、バッジをゲットすることができた。

 

ジムバッジを8つ揃えたトレーナーが行きつく先、それは強者のみが集うトレーナーたちの夢の舞台、ポケモンリーグである。そこで待ち受けていたのはかつて解散したロケット団の用心棒として雇われていたハジメ、マサラタウンで育った双子のトレーナーであるコウタとコウミ、そしてリーリエの初めてのライバルであるブルー。他にも多くのトレーナーが集まっており、誰もがジム巡りをクリアしてきた猛者ばかりであった。

 

様々な激闘を繰り広げた結果、リーリエ準々決勝にてブルーに勝利するも、準決勝においてコウタに敗北してしまう。内容は非常に白熱し、どちらが勝手もおかしくない戦いであったが、惜しくも敗れ初のリーグ戦はBEST4と言う結果に終わり、彼女のカントーでの旅は幕を閉じることとなる。

 

カントーリーグが終わり、彼女はこれから何をすればいいか迷ってしまう。ただひたすら上を目指すために戦ってきたため、自分のこれからの目標を一時的に見失う。しかし彼に諭され、リーリエはまた次の目標を改めて見つめることができた。そしてリーリエは、彼とある約束を交わすこととなる。

 

『……島巡りを達成したトレーナーはジム巡りと同じでアローラリーグに挑戦することができるんだ。』

 

『そのアローラリーグで優勝すると、アローラ地方最強のトレーナー…………チャンピオンと戦う事ができるんだ。』

 

『……アローラの最高の舞台で待ってるよ。』

 

彼との約束。それが彼女の心に再び火を灯す結果となった。彼は2年前の約束、共に旅をする約束を果たしてくれた。ならば今度は自分の番だ。今度は自分が、彼との約束を果たすために彼の元まで辿り着き、約束を果たすべきなのだと。

 

「そう……その約束があったからこそ、私は……」

 

彼との約束を改めて思い返すリーリエ。彼との約束があったから彼女は頑張れた。彼との約束があったから彼女は様々な苦難を乗り越えることができた。

 

彼女は次の目標ができ、今まで以上に意気込んでいた。しかしそんな彼女たちの元に新たな試練が訪れてしまう。かつてリーリエの母親を苦しめることになったUBの再来だ。

 

リーリエは彼と共にアローラに2年ぶりの帰還をする。その際、新たなライバルであるヨウ、ハウと出会った。以前彼と同じく島巡りをし、現しまクイーンとして活躍しているミヅキの幼馴染。ジョウト地方にトレーナー修行に出ていたため、彼らも久方ぶりの故郷への帰還であった。

 

そして彼らと共に、リーリエは過去に苦しめられたUBたちと対峙する。UBの存在はリーリエにとってもトラウマであったがヨウやハウ、ミヅキ、兄であるグラジオ、そして彼と共に乗り越え、アローラと自分の大切な人たちを守ることができたのだった。それは、彼女自身の精神的、そしてトレーナーとしての成長を示しているようであった。

 

UBを無事に退けた彼女は、本格的に島巡りを始めることとなる。島巡りの日に出会ったウルトラ調査隊の二人。謎の集団ではあるが、彼らとの出会いが後の新たなる危機の前触れでもあった。そして彼女の島巡りはメレメレ島から始まり、最初の試練、イリマの試練が彼女の行く手を阻む壁となった。

 

初めての試練、そしてジム巡りとはまた違う戦いや環境に戸惑いながらも、リーリエは初めての試練を突破する。その先に待ち受けていたのは、新しくしまクイーンへと就任し、友人でもあるミヅキとの大試練バトルだ。

 

ミヅキが使うポケモン達はかつて彼女が島巡りの時から旅をしていたパートナーたちで、リーリエも当然苦戦を強いられるが、リーリエとポケモンたちも過ごしていた時間は決して負けていない。激闘の末、初の大試練バトルは無事勝利と言う結果に終わり、メレメレ島での島巡りは終わり、舞台はアーカラ島、ウラウラ島、そしてポニ島へと移行することとなる。

 

「スイレンさん、カキさん、マオさん、グズマさん、マーマネさん、アセロラさん、クチナシさん……どの試練も、一筋縄でいくものではありませんでした。」

 

リーリエは今まで突破した試練の内容を思い出していく。それぞれの試練の特徴も異なり、独特なものもあったが、彼らが丹精込めて育てたぬしポケモンはどれも協力で。トレーナーとの戦いとは違った経験を積むことができた。そして大試練で対峙したしまキングのグズマ、クチナシは両者共強敵で、何度も追い詰められたがポケモンたちの頑張りのお陰で苦戦しつつも突破することができた。

 

そして最後の大試練が行われるポニ島。しかし大試練を前に、リーリエたちの前に新たなる脅威が姿を現した。

 

ウルトラ調査隊、ダルスとアマモの世界における神にも等しいかがやきさまと呼ばれる存在、その名はネクロズマ。

 

ネクロズマは太陽の化身と呼ばれる伝説のポケモン、ソルガレオのウルトラオーラに呼び寄せられアローラまでやってきた。ソルガレオの強大な光の力を自らの力にするために。

 

彼女たちは必死の抵抗をするものの、ネクロズマの力があまりに強すぎたためまるで歯が立たなかった。リーリエたちのポケモンは傷付き、彼女を守るためにソルガレオが前に出た。ネクロズマはソルガレオの力を吸収し、融合、寄生することで不完全であった力を取り戻し力を解放する。

 

ネクロズマはUBたちを呼び寄せ、アローラに再び災厄を訪れさせる。リーリエと、もう一人の少年が月の化身、ルナアーラと共にネクロズマの後を追いかける。

 

ウルトラ調査隊の故郷にある大都市、ウルトラメガロポリスにてリーリエたちはネクロズマと対峙する。疲労から休んでいたネクロズマは、体を起こして敵と認識したリーリエたちに対して戦闘態勢をとり、アローラの未来を賭けた最後の戦いが幕を開けた。

 

戦いは今までにないぐらい壮絶を極めた。更に真の力を解放したネクロズマは、アローラの時以上の力を持っていて、彼女たちの全力でさえ太刀打ちできないでいた。

 

しかしアローラから伝わる希望の光、Z技が残されていた。アローラから預かった希望、想いを全て乗せてZ技を放ち、遂にネクロズマからソルガレオを引き釣り出すことに成功した。

 

少年は救出したソルガレオと共に再びZ技を使う事を決意する。しかしZ技はトレーナー自身の体力を消耗してしまう諸刃の剣。2度目の、それも伝説のポケモンと使用するZ技には光の力が足りなかった。そんな彼に、リーリエが手を差し伸べる。

 

二人は絆の力を合わせ、全力のZ技を解き放った。ネクロズマの闇に呑まれた力を返り討ちにし、ネクロズマの暴走を止めることができた。そしてネクロズマは、かがやきさまとしての力を取り戻し、ウルトラ調査隊の世界と、アローラの未来を守ることができたのである。

 

アローラへと無事帰還を果たしたリーリエ。残る試練、マツリカの試練に挑戦する。

 

マツリカはフェアリータイプの使い手で、ダブルバトルと言う特殊なルールによる戦いであった。彼女の洗礼された連携攻撃に、リーリエは次第に力の差で押されてしまう。

 

そこに乱入してきたぬしポケモンのアブリボン。通常サイズよりもかなり大きく、他のぬしポケモンと同様強力な力を所持していた。対峙しただけでもその威圧感が伝わるほどに。

 

しかし苦戦しながらもリーリエは勝利を掴み、全ての試練をクリアするのであった。残されたのはポニ島の大試練、ハプウとの戦いのみ。

 

ハプウは前しまキングの孫であり、しまクイーンとしての日は浅いもののトレーナーとしての実力は想像を超えるものであった。それこそ、四天王クラスと言ってもいいほどの強敵だ。

 

じめんタイプを好んで使用するハプウは、巧みな戦術と力強い攻撃に強固な防御、一片の隙もない洗礼されたバトルに、リーリエは翻弄されてしまう。

 

しかし彼女のパートナーでもあるフシギソウが追い詰められたその時、彼の体を光が包み込み姿を変えた。フシギソウがリーリエの願いに答えるために進化し、フシギバナとなったのである。

 

ハプウのエースであるバンバドロに立ち向かうフシギバナ。力と力のぶつかり合いに、戦場には緊張が走り続ける。だが勝負には必ず終わりが来るものである。

 

フシギバナとバンバドロ、両者一歩も引かない攻防であったが、フシギバナのZ技が炸裂し勝敗が決する。結果、フシギバナの勝利となり、リーリエはこの瞬間、全ての大試練を突破したのであった。

 

それはつまり、アローラ最高の舞台へと参加する資格を得たことを意味した。そして今……

 

 

『ビビッ!出口だロ!』

「っ!?」

 

リーリエの目先に光が見え、居ても立っても居られなくなったリーリエは思わず駆け出した。山を登り、洞窟を抜け出したその先には……

 

「あれが……」

『そうだロ。あれこそが、アローラで最も高く、トレーナーたちが憧れる夢の場所だロ!』

 

リーリエの目の前に広がるのは、大きなドーム状の建物。遠くから見るよりもそれは大きく、見ているだけでも緊張してしまう場所であった。

 

アローラポケモンリーグ。ククイ博士が夢にまで見た最高の舞台であり、彼が作り上げたトレーナーたちの夢でもある舞台がそこにはあった。そしてなにより、リーリエにとって約束の場所であり、目標の終着地点でもある。

 

「ようやく……ようやくここまで来ることができました。今度は、私が約束を果たす番です。シンジさん!」

 

リーリエは目標としてきた人物の名を口にし、歩みを進める。手をギュッと握りしめ、約束の舞台へと足を踏み入れた。リーリエの真なる最後の戦いが、ここに始まる。




ようやくアローラリーグまで辿り着きました。もう少しで本編も完結するのでヌシも頑張ります!

レジェンズアルセウスに関しては、私が2周目をクリアしてから書くつもりです。キャラの設定とかその他もろもろ、一度纏めないと書けないので。ただ主人公のポケモンはもしかしたらニンフィアのみになるかも?

理由は色々とありますが、セキさんとカイさんの相棒がリーフィア、グレイシアであること。それとテルショウの二人を出す関係上、片方の相棒がピカチュウならもう片方の相棒はお察し。


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予選開始!夢の舞台、アローラリーグ!

久しぶりにあのキャラが登場!そしてあとがきでは最後となるかもしれないアンケートを実施します。リーグ戦の間は受け付けるつもりなので、是非投票していただけると嬉しいです。その結果により最後の展開が少し変化します。


「……はい、リーリエ様、アローラリーグへの登録が完了致しました。優勝目指して頑張ってください!」

「はい!ありがとうございます!」

 

リーリエはラナキラマウンテンの頂上にあるポケモンリーグの会場に辿り着くと、早速受付にてアローラリーグ登録を完了させていた。

 

カントーリーグではジムバッジを登録することでリーグへの参加が承諾されていたが、このアローラ地方にはジムバッジが存在しない。そのため、図鑑に登録したしまキング、しまクイーンから貰える4つのZクリスタルを見せることで登録が完了する。Zクリスタルこそが島巡り突破の証、として認められるのである。

 

リーリエは受付を済ませると、空いているテレビ電話の元へと小走りで駆けていく。ここまできたのだから報告したい人物がいると、リーリエはその人物の電話番号を入力して通話状態にする。

 

暫くするとテレビ画面が映し出され、その人物の顔が映る。その人物はリーリエの顔を見ると、嬉しそうに手を振って答えた。

 

『リーリエ!どう?元気してる?』

「お母様!はい!この通りです!」

 

その人物とは彼女の母親、ルザミーネであった。少し前にネクロズマの件で会ったばかりだが、折角アローラリーグ参加への切符を手にしてここまで辿り着いたのだ。母親には連絡しておきたいという想いで急いでテレビ電話を繋いだのだ。

 

『ところでリーリエ、急に電話してきてどうしたの?』

「今私、アローラリーグの会場に着いたんです!」

『という事は、大試練は全部突破したってこと?すごいじゃない!さすが私の娘ね!』

「も、もう、お母様ったら……」

 

リーリエは恥ずかしそうに照れているが、どこかまんざらでもない様子である。以前までの状況を考えると、素直に褒められたことがなかったため心の中では嬉しいのだろう。

 

『私も当日はエーテル財団代表として会場にいくのよ。』

「そうなんですか。私たちのバトル、ぜひ見届けてくださいね!」

『ええ、楽しみにしているわ。あっ、それとね。』

「?はい、なんでしょうか。」

『頑張りなさいね。』

「っ!?はい!頑張ります!」

 

二人は軽い会話を交わしたあとに通話を切る。それだけの会話だが、母親に応援の言葉を贈ってくれたことがリーリエには嬉しかった。

 

母親の言葉でリーグ大会もより一層頑張ることができる、そう胸を昂らせた時、彼女の肩に誰かがトントンっと軽く叩いてきた。リーリエは誰だろうと振り返ると、そこには見覚えのある女の子が笑顔で小さく手を振って立っていた。

 

「リーリエさん!お久しぶりです!」

「ヒナさん!」

 

その人物とはかつてリーリエが出会った新米トレーナー、ヒナであった。リーリエがシンジに憧れたのと同じように、ヒナはリーリエに憧れて島巡りに挑戦する決意をした。そして今、アローラリーグにいるという事は……。

 

「ヒナさんも大試練、突破できたんですね!」

「はい!今アローラリーグ参加の受付を済ませてきたところです!」

「という事は、私とヒナさんはもうライバルってことですね!」

「ライバル……はい!リーリエさんと私はライバルです!」

 

ライバル、と言う単語の響きにヒナはトキメキのような何かを感じる。初めて憧れた人物にライバルと認められれば、トレーナーとして嬉しいと感じるのは当然だろう。

 

リーリエとヒナは久しぶりの再会で色々と語り合いたいこともあるだろうが、話し込むならここよりも最適な場所があるだろうと、受付の会場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ……もういっぱいの人が集まっていますね。」

 

リーリエとヒナがやってきた場所には、すでに大勢のトレーナーたちで賑わっていた。そこはバトルの会場でもある大きなフィールド場であった。

 

何故彼女たちを含むトレーナーたちがここに来たのかと言うと、これからここでリーグ大会の説明が行われるのである。どのようなルールで催されるのか、予選はどのように行われるのか、そして大会前のトレーナーたちの交流など。大会前から戦いは既に始まっている、と言うことである。

 

「おっ?リーリエ!」

「リーリエー!久しぶりー!」

「ヨウさん!それからハウさんも!」

 

リーリエを見つけ手を振りながら近づいてきたのは彼女のライバルであるヨウ、ハウの二人であった。リーリエも二人の呼びかけに答えて笑顔で手を振り迎え入れる。

 

「ん?リーリエ、そっちの子は?」

「は、はい!私はヒナと言います!えっと、一応大会参加者のトレーナーです!」

「そっかー。おれはハウ!それとこっちがー」

「ハウの幼馴染のヨウだ。よろしく、ヒナ。」

 

少し緊張気味に答えるヒナに、ヨウは少し苦笑しながら自己紹介する。ハウはいつも通りの朗らかな笑顔であるため何を考えているか分かり辛いが。

 

「ヒナもここまで来たってことは腕利きのトレーナーってことだろ?ライバルとしてお互い全力でがんばろうな。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

ヨウの寛容な言葉にヒナの緊張も程よく解け、優しく微笑むヨウとハウに安心したヒナ。その時リーリエは一つ気になることを彼らに尋ねた。

 

「そう言えば、ミヅキさんはいないのですか?」

「ああ、ミヅキは今回審判として出るらしい。」

「それもしまクイーンの仕事だってー。」

 

彼女の親友でもあるミヅキの姿が見当たらなくて気になったリーリエだが、よく考えてみると今のアローラリーグは島巡りトレーナーたちに与えられた最後の試練。アローラポケモンリーグ協会に所属している扱いとなっているしまキング、しまクイーンにはアローラリーグ参加資格が与えられていないのである。

 

その代わり、しまキング、しまクイーンは公式から四天王への挑戦権が与えられており、四天王にはチャンピオンへの挑戦権が与えられている。アローラポケモンリーグへの申請が通りさえすればいつでも自分より上の存在へと挑戦することができる。そのため、1年に1度行われるアローラリーグ参加資格のあるトレーナーにとって、チャンピオンに挑戦できる数少ないチャンスである。このチャンスをものにするため、全てのトレーナーが死に物狂いで大会に挑むことだろう。

 

実際この場にいるトレーナーたちは誰もが緊張などから引き締まった顔立ちで、この大会に対しての意気込みが感じられる。

 

「さて、そろそろ始まりそうだな。」

 

時刻は間もなく夕暮れ時に差し掛かってきた。大会への受付も終了し、いよいよリーグ戦の詳細に関する説明が開始されようとしていた。

 

壇上に立ったのはカントーリーグ設立に貢献し、主に主催としても活躍しているククイ博士であった。ククイはマイクを手に取り、大きな声でトレーナーたちに呼びかける。

 

「みんなー!アローラ!!」

『アローラ!』

 

アローラ地方特有の挨拶から始まり、トレーナーたちはその声に返事をする。アローラには“分かち合う”と言う意味が込められており、トレーナーやポケモン、様々な生き物と生命や自然の恵みを文字通り分かち合うアローラ地方にとって、これ以上ぴったりな挨拶はない。

 

「今日はこの場に集まってくれて、ボクはとても嬉しく思う。島巡りを経て、様々なトレーナーと出会い、ポケモンと出会い、経験を積み、試練を乗り越え、そして今、色々な想いを重ねてこの夢の舞台に立っていることだろう。」

 

ククイの言葉に、島巡りを突破したトレーナーたちは今までの思い出が昨日の出来事であるかのように脳裏に過っていく。

 

「このアローラリーグに参加し、優勝することがみんなの願いであるのは確かなことだろう。しかし!その上で優勝したトレーナーは、アローラ初代チャンピオンへの挑戦権を得ることができる!」

 

その言葉にトレーナーたちの心はヒートアップしていく。アローラにおいて最も強いトレーナーであるチャンピオンに挑戦することはトレーナーとして夢見ることは当然のこと。この場にいるトレーナーは、誰もがチャンピオンへの挑戦権を目指してこの場に立っている。どんな試練であっても乗り越えて見せる覚悟が彼らにはある。

 

「ではアローラリーグ予選方法を発表する!」

 

ポケモンリーグ本部であり、最も施設が大きいとされているカントーリーグでは予選がなかったが、本来ポケモンリーグは参加人数が多すぎるため、地方によっては予選がありその予選方法が異なる場合がある。他の地方では1対1でのバトルで本戦出場を決めるリーグもあるそうだ。

 

「アローラリーグでは、バトルロイヤル形式を採用する!」

 

バトルロイヤル。他の地方では殆ど見ることの無いバトル形式で、ロイヤルドームにて行われているアローラ特有のバトルである。本来4人で行われるバトルロイヤルだが、アローラリーグではそのバトル形式を応用する形となる。

 

「ルールは簡単。1匹のポケモンのみを使用し、この大会に参加する全てのトレーナーでバトルをしてもらう。Z技の使用、他のトレーナーとの共闘、卑劣な手でなければどのような戦術を使っても構わない。そして16人になった時点で予選終了だ!」

 

現在は100人を優に超える大人数が参加している。これだけの人数が本戦で争ってしまえば出来立てでバトル会場の少ないアローラリーグでは時間がいくらあっても足りなくなってしまう。そこでアローラでも人気の高いバトルロイヤル形式を使い、一気に本戦参加の人数を絞り込もうという算段である。

 

「大会予選日は明日。それまではバトル前にトレーナー同士交流を深めるもよし、明日に備えて休むもよし、明日は万全の状態で大会に臨んでほしい!ボクからは以上だ!みんなの島巡りでの経験をフルに活かし、もえつきるほどのオーバーヒート級のバトルを期待しているぜ!」

『おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!』

 

ククイの熱い演説に熱が入ったトレーナーたちも最高に燃え上がっている。そんな意気込んでいるトレーナーたちをチャンピオン、シンジは上から見下ろし、今年のリーグ大会を今から楽しみにしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日は緊張しました。」

「あはは、そうですね。今でも私心臓がバクバクしてます。」

 

ポケモンリーグが用意したホテルの一室に戻ったリーリエ。二人一部屋という事でヒナと同室となり、やっと一息つけるとフカフカのベッドに腰を下ろした。

 

「それにしても、参加者の皆さん強そうでしたね。」

「はい。リーリエさんはカントーリーグにも参加したことはあるんですよね?その時もこんな感じだったのですか?」

「そうですね。あの時は今以上に緊張していましたし、周りの人も自分より強そうだなって感じて少し弱腰になってました。でも……」

「でも?」

「ある人に言われたんです。バトルはどんな時でも楽しんでやった方がいい、って。その方が実力も出せるし、何より本来の自分を出し切ることができるから。」

「それって、一緒に旅をしていた彼氏さんですか?」

 

リーリエは当時のことをそう語りながら思い出す。その言葉をくれた彼の顔を頭の中に浮かべながら。

 

「だから、ヒナさんもバトルを楽しみましょう。そしてバトルロイヤルを勝ち抜いて、必ず本戦で戦いましょう!」

「は、はい!私も頑張ります!頑張って、絶対にリーリエさんと戦います!」

 

リーリエとヒナはお互いライバルとして、拳を突き合わせて大会での健闘を誓い合う。そして今日の緊張とこれまでの旅の疲れを癒すことに専念する。そして翌日。遂に待ちに待ったアローラリーグ大会当日がやってきたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アローラリーグ大会当日。再び参加トレーナーがバトル会場に集まり、今か今かと大会の時を待ち焦がれていた。今にも滾る炎が爆発してしまいそうな雰囲気が観客たちにも伝わるほどであった。リーリエやヒナもその一員で、緊張と同時に楽しみにも感じていた。

 

そして昨日の様に壇上にアローラリーグ主催、ククイ博士が立つ。さらにアローラリーグ会場全体を見渡せる一室には、アローラが誇る大企業、エーテル財団代表のルザミーネ、空間研究所の所長であるバーネット、アローラリーグ四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリ、そしてアローラ初代チャンピオン、シンジがトレーナーたちのこれから行われる熱いバトルを見守っていた。

 

「ではトレーナーの諸君!ポケモンを!」

 

その言葉と同時にバトル開始のカウントダウンが10、9……と開始される。そのカウントダウンに合わせ、トレーナーたちは自分のポケモンたちを繰り出していった。

 

「お願いします!シロン!」

「行きます!ドレディアちゃん!」

『コォン!』

『ディア!』

 

リーリエが繰り出したのはシロン、ヒナが選んだのは以前初めてゲットしたチュリネが進化した姿、ドレディアであった。

 

8、7、6……

 

「頼む!ガオガエン!」

「行くよー!ジュナイパー!」

『ガオォ!』

『ジュッパ!』

 

ヨウとハウはそれぞれの相棒であるガオガエン、ジュナイパーを選択。他のメンバーも続々とポケモンを選出していき、次第にカウントダウンが進んでいく。

 

5,4、3……

 

そして遂に……

 

2、1……

 

「アローラリーグ予選、バトルロイヤル!開始!」

 

パァン!

 

空高くスターターピストルが撃ちあげられ、皆が待ちに待ったアローラリーグが開催される。ピストルの音と同時に、トレーナーとポケモンたちが一斉にチャンピオンへの挑戦権を賭けて戦いを始めるのであった。




カントーリーグと同じ展開だと面白くないと思い、アニポケ形式を取らせていただきました。メインキャラも少ないのでいいかなと。しかしバトルロイヤルは初の試みなので割と無謀かも……。


ポケモンUNITEの最終レートは2016でした。


アンケートの件ですが、自分が一番好きなブイズを選んでもらっても構いません。その中から主人公の選出ポケモンを選抜し、バトル構成を練っていくつもりですので。投票数の多い順から4匹となります。


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アローラリーグ開幕!選ばれし16人!

ポケモンリーグアローラ大会、その予選が始まり、予選方法はバトルロイヤルと言う異質なルールで決定されることとなった。

 

無数の参加者たちが自分の信じるポケモンを繰り出し、合計16人まで減った時点で予選終了となる。そして今、バトル開始の宣言が出され運命を決める予選が遂に幕を上げたのであった。果たして生き残るのは誰なのか、注目が集まるのだった。

 

 

「行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエとシロンも意気込みはバッチリ。そんな彼女たちに異を唱えるかのような声が彼女たちの耳に入ってきた。

 

「ホイーガ!ポイズンテール!」

 

男性トレーナーの指示が聞こえ、同時にホイーガが回転しながら突進してきてポイズンテールを放ってくる。

 

「かわしてこおりのつぶて!」

『コン!』

 

シロンはホイーガの攻撃をジャンプで回避し、ポイズンテールは地面に直撃してしまう。その隙を見逃さず、シロンのこおりのつぶてがホイーガに直撃してホイーガはその場に倒れたのだった。

 

「ホイーガ!戦闘不能!」

 

審判であるミヅキがそう宣言すると、ホイーガとそのトレーナーは退場し、大きな電光板の参加人数カウントが一人減少する。審判はしまキング、しまクイーンが担当しており、ミヅキの他にクチナシ、ハプウに加え意外にもグズマも審判として参加している。本人はあまり乗り気ではなかったが、しまキングとしての仕事なので半分嫌々ではあったが。

 

兎に角このようにして、本戦への参加人数を絞っていく、と言う形である。不意打ちやタッグ、集中狙い、様々な策が飛び交うだろうが、リーリエは無事この予選を突破することができるだろうか。

 

リーリエが奇襲するトレーナーとポケモンを迎え撃っている中、ヒナとドレディアも別のトレーナーとバトルをしていた。

 

「ドレディアちゃん!はなびらのまい!」

『ディアァ!』

 

ドレディアの華麗な舞が、対面していたドロバンコを巻き込み突き飛ばした。ドロバンコはその攻撃によりノックダウンし、目を回して倒れるのだった。

 

「ど、ドロバンコ!?」

「ドロバンコ、戦闘不能」

 

審判であるクチナシの判断によりドロバンコは戦闘不能とみなされ予選敗退。リーリエもその様子を横目で見ていて、あの時からヒナは大きく成長したのだと実感していた。

 

「この調子で行こう!ドレディアちゃん!」

『ディア♪』

 

ヒナとドレディアは今のバトルで勢いづくことができ、このバトルロイヤルを絶対に勝ち抜くと意気込む。

 

そしてまた、他の場所でも次々とバトルは繰り広げられていたのだった。

 

「ガオガエン!DDラリアット!」

『ガウゥ!』

 

3組の敵に囲まれていたヨウとガオガエンだが、一斉に攻撃を仕掛けてくるタイミングでDDラリアットで返り討ちにする。手を伸ばして回転するガオガエンに弾き返され、全員がその場に倒れ伏せた。

 

「ジュナイパー!かげぬい!」

『ジュッパァ!』

 

ジュナイパーは相手の攻撃が届かない遠距離から弓矢を放つ。彼の的確な射撃は空中にいるエアームドを綺麗に射抜き、撃ち落として戦闘不能にするのであった。

 

ヨウ、ハウも問題なく戦闘を仕掛けてくる相手を次々と迎え撃つ。時には協力し、息のあったコンビネーションを見せて周囲の参加者を驚かせていた。

 

そんな中、今度はヒナとドレディアも複数の相手に囲まれている状況であった。相手はアリアドス、イノムー、カエンジシだ。くさタイプに対して有利な三体。恐らく同じく有利な相手を一緒に狩ろうという魂胆なのだろう。

 

「ドレディアちゃん!フラフラダンス!」

『ディアディーア』

 

ドレディアは自慢の踊り、フラフラダンスを披露する。フラフラダンスは周囲にいる敵を一斉に混乱状態にする効果を持つ技である。これによりアリアドス、イノムー、カエンジシも釣られて踊ってしまい、混乱状態となってトレーナーの指示も届かなくなってしまった。

 

「今ですよぉ!はなふぶき!」

『ディアァ!』

 

ドレディアは無数の花びらを文字通り吹雪のように舞い散らす。花びらの吹雪がアリアドスたちを一気に巻き込み、彼らは花びらごと壁に叩きつけられるのだった。

 

「ちっ、アリアドス、イノムー、カエンジシ、戦闘不能だ。」

 

少し不機嫌な様子を見せたグズマにより、三体の戦闘不能が確認された。ピンチを脱したヒナは『よし!』とガッツポーズを取ってしまった。それが一瞬の油断を招き、次のピンチを生んでしまう結果となった。

 

「テッカニン!シザークロス!」

『テッカ!』

「っ!?しまった!」

 

その油断を見逃さず、テッカニンが目にも止まらない素早さでドレディアの背後へと回っていた。多くの参加者たちを倒せば倒すほどライバルの数は減っていく一方、逆に目立ってもしまうため他の参加者たちのヘイトを買ってしまうことにもなる。それが今回は仇となったのだ。

 

「くっ!」

 

非常にマズいと歯を食いしばるヒナ。そんな彼女に、聞き覚えのある少女の声が聞こえてきたのだった。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

れいとうビームが横から勢いよく飛んできてドレディアの背後を取ったテッカニンを吹き飛ばし凍らせた。これもまた、グズマの判断により戦闘不能とみなされまた一人参加人数が減ったのである。

 

「ヒナさん!大丈夫ですか?」

「り、リーリエさん!あ、ありがとうございます!」

「約束しましたから。必ず本戦で会いましょう!」

「はい!」

 

そう言ってお互いハイタッチをし、約束することでその場を別れた。ヒナもリーリエとの約束を果たすために勝ち残ることを心の中に決め、ドレディアと一緒に走り出す。同じようにリーリエも、シロンと共に走り続けていた。

 

「ガメノデス!ロックブラスト!」

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

ガメノデスがシロンを対象にロックブラストで攻撃してくる。シロンは飛ばしてくる複数の岩をこおりのつぶてで迎え撃ち、凍らせることでその攻撃を阻止する。

 

「ムーンフォースです!」

『コォン!』

 

今度は飛び上がり、ムーンフォースによる追撃を浴びせた。その攻撃にガメノデスは溜まらず仰向けで倒れ、目を回すのであった。

 

「ガメノデス、戦闘不能じゃ!」

 

今度はハプウの判断によってガメノデスが戦闘不能と判断された。リーリエだけでなく、他の参加者たちの戦いもあってそろそろ参加人数が半分近くにまで減ってきていた。

 

「そろそろ残されている方たちは強者ばかりのはずです。ここからが……っ!?」

 

ここからが本当の戦いだと改めて気を引き締めているリーリエ。そんな彼女に前に、見覚えのある人物がやってきて立ち止まった。片目を隠す髪が、会場を吹く風でなびきチラリとその瞳を覗かせた。

 

「…………」

「……お兄様」

 

リーリエ、そしてその兄であるグラジオ。二人は暫くの間見つめ合う。そんな二人に二体のポケモンが飛びかかった。

 

「ブーバーン!ほのおのパンチ!」

「エレキブル!かみなりパンチ!」

「シルヴァディ!ブレイククロー!」

「シロン!れいとうビーム!」

 

向かいから攻撃してくるブーバーンに対してシルヴァディがブレイククロー、エレキブルに対してシロンがれいとうビームで反撃する。シルヴァディのブレイククローが懐に直撃し、ブーバーンはその巨体ごと簡単に押しのけられた。エレキブルはれいとうビームにより氷漬けにされ、地上に墜落してお互いに戦闘不能と判断された。

 

「……絶対本戦まで勝ち上がれ。」

「……はい。必ず。」

 

今は兄妹、と言う関係ではなく互いの実力を認め合うライバル同士。戦いに相応しいのはこの場所ではなく本戦と言う大きな会場だ。リーリエとグラジオは本戦まで勝ち残ることを誓い合い、それ以上何も語ることなく別れたのだった。

 

リーリエ、グラジオ、ヒナ、そしてヨウとハウ、この5人がそれぞれ戦っている一方、別の人物もまた予選を勝ち残っているのだった。

 

「エンニュート!はじけるほのお!」

『エンット』

 

エンニュートのはじけるほのおが対峙するマシェードに直撃し、その一撃で戦闘不能となる。さらにはじけるほのおの追加効果で、隣接しているフラージェスに対しても追加ダメージが入ったのだった。

 

「今だよ!どくづき!」

『ニュット!』

 

はじけるほのおの追加効果で怯んだフラージェスに素早く近付き、エンニュートはどくづきを喉元に突き刺した。効果抜群である鋭いどくづきを受けたフラージェスは、堪らず毒状態となり戦闘不能となるのだった。

 

「ふんっ、マシェード、フラージェス、戦闘不能。」

「他愛もないね。にしてもあんたがこんなことしてるなんて、なんだか笑っちまうね。」

「うるせぇ。俺様だって好きでこんなことしてるわけじゃねぇ。」

「ま、あたいも人の事は言えないだろうけどね。」

「……違いねぇ。」

 

同じ元スカル団であるグズマ、そしてプルメリ。今ではお互いしまキング、島巡りの挑戦者と、スカル団とは全く反対の行為をしていることに自然と笑いが込み上げてくる。

 

「まあ、せいぜい無様に負けないように頑張るんだな。」

「ああ、そうさせてもらうさね。」

 

元スカル団の相棒であったが故、なんだかんだで理解しあっている二人はそれだけの言葉を交わすと別れ、それぞれの仕事に戻る。スカル団としてではなく、グズマはアーカラ島を代表とするしまキング、プルメリは島巡りの挑戦者である一人として。

 

その後も激しいバトルロイヤルは続き、そして……

 

「シロン!ムーンフォースです!」

 

シロンのムーンフォースがアブソルに直撃。その一撃でアブソルは戦闘不能となり、同時にピーッ、と言う高い笛の音が会場に鳴り響いた。

 

その合図と同時に掲示板を見てみると、そこには16の数字が浮かび上がっていた。つまりこれで選ばれし本戦参加者が16人揃ったということである。

 

「そこまで!残った参加者が、明日から行われる本戦への参加者となる!」

 

ククイの言葉に参加者は全員周りを見渡す。そこに立っていた中にはリーリエを含め、ヒナ、グラジオ、ヨウ、ハウ、さらにはプルメリの姿もあった。他にも参加者はいるが、恐らくこの6人の中からチャンピオンへの挑戦権が得られるトレーナーが現れることだろう。

 

参加者たちはバトルを終え、最後まで頑張ってくれたポケモン達を労いながらモンスターボールへと戻して休ませる。自分たちも同じく疲れを癒すため、全員ホテルに戻って体を休めることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は疲れましたね、リーリエさん。」

「はい。ですがお互いに勝ち残れてよかったですね。」

 

リーリエとヒナは同じ部屋で休んでいた。体の汗を流すためにお風呂を済ませ、それぞれ大会登録したポケモン図鑑に連絡がくるのを待っていた。

 

リーグ委員会から、大会の本戦で戦うトーナメント表のデータが送られてくるのだと伝えられた。夜になった現在、二人はその知らせを今か今かと緊張しながら待っていた。

 

すると二人のポケモン図鑑から通知音が鳴り、連絡が来たのだと図鑑を開いて目を通す。そこにはトーナメント表が表示されていて、1回戦から順に記載されていたのだった。

 

参加人数は16人。つまり初戦の戦いは8回戦に分けられて行われる。1回戦はヨウの戦いだ。そしてハウは3回戦となっており、二人が勝てば準準決勝でお互いに戦うこととなる。

 

グラジオは7回戦、プルメリは8回戦で戦い、この二人も準準決勝で争う。しかし問題は5回戦目の戦いであった。

 

「っ!?まさか……」

 

そこに記載されていた名前、それを見てリーリエとヒナは目を見開いた。そこに記載されていたのは……

 

リーリエVSヒナ

 

そう書かれていたのだった。本戦一戦目から、リーリエとヒナは争う事となるのである。

 

衝撃の事実にリーリエは驚きを隠せない。しかしヒナは……。

 

「リーリエさん!」

「ヒナさん?」

「手加減……しませんから!」

「……はい!私も手加減はしません!」

 

ヒナは憧れの人とのバトル。リーリエはその先に待つ約束。互いに願いを叶えるため、明日の試合では全力で戦う事を誓い合う。リーリエとヒナ、ライバル同士の熱い戦いが今、幕を開けようとしていた!




UNITE新シーズンでマスターになるまで苦労した


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アローラリーグ1回戦!リーリエVSヒナ!

UNITEで16日にエーフィ参戦決定おめでとう!


予選が終わった翌日。本戦に参加することとなった16人のトレーナーが集まっており、多くの人たちが試合を見守っていた。

 

参加するトレーナーの内リーリエ、グラジオ、ヒナ、ヨウ、ハウ、プルメリの6人が特に注目を浴びる選手であることは間違いないだろう。

 

1回戦目の試合はヨウ、3回戦目がハウ、5回戦目でグラジオが戦い6回戦目でプルメリがバトルを行い、既にバトルは終了していた。

 

結果は全員とも勝利に終わり、ヨウはガオガエン、ハウはジュナイパーにより他を寄せ付けないストレート勝ちをしていた。グラジオはルカリオを使用し、波動と絆の力を見せ余裕の勝利を収めていた。プルメリも相棒であるエンニュートのトリッキーなバトルで客を驚かせ、敵を翻弄しての勝利は流石と言うべき内容であった。

 

そして注目すべき第8回戦。遂に訪れたリーリエとヒナ、ライバル同士による戦いの日がやってきたのであった。

 

「遂に来ましたね……この時が……」

 

バトルフィールドへと続く通路で待機していたが、待ちわびていた戦いを前に緊張を隠せないでいた。

 

旅に出たその日、初めて会ったリーリエに同行して憧れ、彼女を目標にしてここまでやってきた。決して楽な道のりではなかったが、それでもリーリエと戦う日を夢見てここまで勝ち上がりバトルの日を迎えた。

 

目標の舞台を前にしてヒナは深呼吸を繰り返す。まだ緊張はしているが、動悸は先ほどに比べ落ち着いてきたように感じる。

 

「……よし!」

 

ヒナは覚悟を決め、歩みを進める。それと同時に会場に響く司会の声が聞こえてきた。自分の名前が呼ばれるのと同時に、ヒナはバトルフィールドに姿を現したのだった。

 

「リーリエさん」

「ヒナさん」

 

ヒナはリーリエと向かい合う。対するリーリエも向かいに立ち、ライバルとして彼女の目を真っ直ぐと見つめる。その姿を目にして、遂にこの時が来たのだとヒナも更に実感するのだった。

 

「リーリエさん。今日は全力で戦います。成長した私の姿……見せます!」

「私もあの時より成長しています。負けませんよ!ヒナさん!」

 

今朝まで同じ部屋で友人として顔を合わせていた二人。しかし今はライバルとして向かい合い、お互いトレーナーとしての威圧感が放たれている。今までのバトルとは毛色が違うと、観客の皆も息を飲み込んだ。

 

アローラリーグは準決勝までは3対3のバトルで進んでいき、決勝戦では6対6のフルバトルで優勝を争うルールとなっている。リーリエとヒナが使用できるのはお互いに3匹までである。

 

「それではこれよりアローラリーグ1回戦、8試合目を開始する!両者!同時にポケモンを出すのじゃ!」

 

審判はポニ島のしまクイーンハプウが務める。ハプウの声に、二人はモンスターボールを手にして同時にフィールドに投げた。

 

「お願いします!フシギバナさん!」

「行きますよ!アマージョちゃん!」

『バァナァ!』

『アマッ!』

 

リーリエが繰り出したのは最近進化しパワーが飛躍的に上昇したフシギバナ。対してヒナが繰り出したのは同じくくさタイプのアマージョであった。

 

『アマージョ、フルーツポケモン。くさタイプ。美脚の持ち主でキックの名手。攻撃的な気質で、敵を容赦なく踏みにじる様はまさに女王として恐れられている。』

 

「リーリエ選手対ヒナ選手!バトル始め!」

 

お互いの準備が完了したと判断した審判のハプウが合図し、その合図と共に動き始めたのは意外にもヒナであった。

 

「アマージョちゃん!走って下さい!」

『アッジョ!』

 

ヒナの指示通りアマージョは走り始める。蹴り技の得意なアマージョにとって適正距離は間違いなく近距離戦。近づかせるわけには行かないと、リーリエもフシギバナに指示を出す。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

フシギバナは無数の鋭い葉を飛ばして反撃する。しかしアマージョの動きは非常に素早く、はっぱカッターの合間を潜って接近を許してしまう。

 

「ローキック!」

『ッジョ!』

 

アマージョは充分な距離に接近すると、スライディングでフシギバナの懐に潜り込む。アマージョのスライディングはフシギバナの前足に直撃し、フシギバナの強靭な足を崩したのだった。

 

『バナッ!?』

「今です!ふみつけ!」

『アッジョ!』

 

アマージョは飛び上がり、フシギバナの頭部に連続でふみつけをする。ふみつけのダメージに苦しむフシギバナだが、その攻撃を耐えて目を見開いた。

 

「フシギバナさん!つるのムチです!」

『バァナァ!』

『ジョジョ!?』

 

フシギバナの大きな咆哮にアマージョは怯んでしまい、一瞬の隙を突いてフシギバナはつるのムチでアマージョの足を絡めとる。自慢の足を防いでしまえば、アマージョは何もすることができない。

 

「そのまま叩きつけてください!」

『バナ!』

 

フシギバナはつるのムチで捕まえたアマージョを地面に叩きつける。フシギバナの強力な一撃はアマージョの体力を大きく奪った。

 

「続けてはっぱカッターです!」

『バナァ!』

『アッジョォ!?』

「アマージョちゃん!」

 

隙を見逃さずリーリエははっぱカッターで追撃を仕掛ける。ダメージを受けたばかりのアマージョは回避行動に移ることができず、追撃で大きく吹き飛ばされた。くさタイプであるアマージョに対して効果はいまひとつだが、それでも怒涛の連続攻撃を食らえば流石にダメージとしては大きいものとなっている。

 

「こうごうせいで回復です!」

『バァナァ』

 

フシギバナはこうごうせいにより太陽の恵みを受けて体力の回復を行う。冷静な対応に、ヒナは流石だと言う尊敬と同時に顔をしかめた。

 

(こうごうせいがあるとすると生半可な攻撃は無意味です。なにかいい手は……)

 

ヒナは考える。すると一つだけ、ヒナはあることに気付くのだった。

 

(フシギバナちゃんの足……あそこは……)

 

フシギバナの前足の怪我が完治しておらず、そこにはまだ傷跡が残っているのが確認できた。その場所は先ほどアマージョがローキックによる初撃を加えた場所であった。

 

(それなら……!)

「アマージョちゃん!トロピカルキック!」

『アッジョ!』

 

アマージョは再び走り出す。フシギバナも対抗しようとするが、体が大きくなったことでフシギソウの時よりも機動力が低下してしまい、アマージョのスピードに反応できなかった。

 

対するアマージョはダメージによるスピードの低下を感じさせない動きで、瞬時にフシギバナの目前まで迫ってきたのだった。これはヒナがアマージョのことを非常によく育てている証拠であった。

 

アマージョはトロピカルキックを繰り出した。そのトロピカルキックはフシギバナの急所ではなく、フシギバナの前足を狙ったものだった。フシギバナは怪我を負っていた前足に追撃のダメージを受けてしまい、苦しさから前足が崩れ倒れ込んだ。

 

「ふ、フシギバナさん!」

「追撃です!アマージョちゃん!リーフストーム!」

 

今度は強力なくさタイプの技、リーフストームの構えに入る。動けないフシギバナであれば簡単に命中させることができる、との判断による攻撃だろう。このままではマズい状況だが、リーリエは全く諦めていなかった。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

倒れた状態のままフシギバナははっぱカッターでアマージョのリーフストームに対抗する。すると驚くべきことに、アマージョのリーフストームをフシギバナははっぱカッターで打ち消していたのだった。

 

倒れた状態から、しかも踏ん張りが利かないにも関わらず、はっぱカッターでリーフストームに対抗したことに驚くヒナ。その時、リーリエは一か八かの攻撃に出る。

 

「フシギバナさん!ソーラービームスタンバイです!」

『バァナ』

 

ここでリーリエがとった選択はソーラービームであった。ソーラービームは威力が強力な分、チャージに時間が掛かってしまう大技だ。タイミングを見誤れば発動する前にやられてしまう。

 

「発動する前に攻め切ってしまいます!アマージョちゃん!トロピカルキック!」

『アジョ!』

 

アマージョはトロピカルキックによって頭部に一発の蹴りを入れる。フシギバナもそのダメージで顔を歪ませるが、まだまだ倒れないと気合を見せる。

 

「ならばそのままふみつけ!」

『アッジョ!』

 

「フシギバナさん……耐えてください……」

 

アマージョはトロピカルキックの反動でフシギバナの頭上に飛び上がり、連続のふみつけでフシギバナにダメージを与えていく。怒涛の連続攻撃にフシギバナも苦しみが隠せないでいる。

 

しかしフシギバナはリーリエの期待に応えるため、根性でその攻撃を耐え続えけていた。そして遂に背中の大きな花に光が集中して強い光を放つ。

 

「今です!ソーラービーム発射!」

『バァァァナァァァ!!』

『ジョッ!?』

 

フシギバナの渾身のソーラービームが解き放たれ、フィールド全体を眩い光が包み込む。その攻撃はアマージョ、そしてフシギバナさえも包み込み、フィールドの様子が確認できない状況になった。

 

二人は息を飲み込む。自分のポケモンはどうなったのかと心配しながら見守っていると、光が晴れたそこにいたのは、倒れていたフシギバナとアマージョの姿だった。

 

「フシギバナさん!」

「アマージョちゃん!」

『ば……なぁ……』

『あっじょ……』

「フシギバナ、アマージョ、両者共に戦闘不能じゃ!」

 

ハプウの判断により両者ダブルノックダウンの判定が下される。強力な攻撃を受けたアマージョだが、フシギバナも自身の強力なソーラービームの反動を耐え切る体力がなかったのだろう。最初のバトルから熱い展開が繰り広げられ、観客たちもヒートアップしていた。

 

リーリエとヒナはお互いのポケモンをモンスターボールへと戻す。開幕から想定外の結果ではあるが、まだバトルは始まったばかりである。両者は最後まで頑張ったポケモンに感謝し、次のモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

「次はこの子です!モクローちゃん!」

『クロー!』

 

次にリーリエが繰り出したのはみずタイプのマリル。ヒナが繰り出したポケモンは旅に出た時最初に選んだポケモン、モクローであった。どうやらヒナのモクローはまだ進化していない、もしくは意図的に進化させていないようだ。

 

「今度は私たちから行きます!マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

「かわして!モクローちゃん!」

『クロォ!』

 

マリルは初手でバブルこうせんの牽制攻撃を放つ。しかしモクローは空に飛び上ってあっさりと回避した。進化していない分体が身軽で小回りも利くため、機動力はジュナイパーよりもモクローの方が上のようだ。

 

「モクローちゃん!このは!」

『クロ!』

 

回避した直後、モクローはこのはで即座に反撃を繰り出す。はっぱカッターにも似た弾幕が独特の風邪に乗った軌道でマリルを襲った。

 

『リルゥ!?』

「マリルさん!」

 

マリルはこのはの反撃でダメージを受けてしまう。みずタイプであるマリルに、くさタイプのこのはは効果抜群だ。この一撃はかなり大きいものだろう。

 

「マリルさん!もう一度バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

 

マリルのバブルこうせんが空中にいるモクロー目掛けて飛んでいく。しかしモクローは特に苦労することなくその攻撃を回避する。

 

「今度はころがるです!」

『リル!』

 

マリルはころがるで勢いよく地上から接近する。距離を縮めたところでモクロー目掛けてジャンプし、ころがる攻撃で直接撃ち落とそうとする。

 

「モクローちゃん!かげぶんしん!」

『クロ!』『クロ!』『クロ!』『クロ!』『クロ!』

 

モクローはかげぶんしんで自身の分身を作り出し、マリルのころがるによる追撃を回避する。マリルは回避されたことに驚きながらも地上に着地し、モクローの方へと振り向く。するとそこには無数に増えたモクローの姿があったのだった。

 

「モクローちゃん!ブレイブバード!」

「ブレイブバード!?」

 

思ってもいなかった大技にリーリエは驚きの声をあげる。無数のモクローが地上へと降下し、一斉にブレイブバードで強襲を仕掛けてきた。まだ体は小さいとはいえ、これだけの数が大技を繰り出して突撃してきたら相当なプレッシャーを感じてしまう。

 

「っ!アクアテールで纏めて薙ぎ払ってください!」

『リル!』

 

マリルは尻尾に水のエネルギーを集中させ、モクローのかげぶんしんごと迎え撃つ。数が多いとはいえ初戦は分身。本体以外には攻撃力が一切ないため分かっていれば脅威ではない。

 

マリルはアクアテールでかげぶんしんを全て一斉に薙ぎ払った。しかし分身は全て消したのだが、本体でモクローの姿が見当たらなかった。

 

「っ!?し、しまった!」

 

その時リーリエはモクローの特徴を思い出した。しかし気付いてた時には遅く、モクローは既にマリルの背後に回っていた。

 

「今です!シャドークロ―!」

『クロォ!』

『リル!?』

 

羽音もなく接近したモクローは背後から鋭い足の爪から放たれる一撃、シャドークロ―でマリルを吹き飛ばす。マリルはその一撃で大きく吹き飛ばされるも、すぐに態勢を変更して反撃の準備へと移っていた。

 

「マリルさん!ハイドロポンプです!」

『リィルゥ!』

『クロッ!?』

 

マリルは吹き飛ばされながらも鉄をも切り裂く勢いのハイドロポンプで反撃をする。まさかの反撃にモクローは驚き、咄嗟のことで回避できずハイドロポンプの直撃を受けてしまう。

 

「っ!さすがリーリエさん。そんな態勢で反撃するとは……」

 

本来空中で態勢を変えて反撃するのは至難の業。しかしリーリエは咄嗟にそれをやってのけてしまった。本人はあまり自覚してはいないが、彼女がポケモンを信じているからこそポケモンたちがその想いに応えて成せることである。

 

『リル……り、るぅ……』

「っ!マリルさん!」

 

力を振り絞り反撃したマリル。しかしこれまでのダメージが大きかったのかハイドロポンプを放った直後、立ち上がることができずに倒れ込んでしまった。

 

「マリル!戦闘不能!」

「マリルさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」

 

最後まで自分の想いに応えて戦ってくれたマリルに感謝するリーリエ。マリルをモンスターボールに戻すと、ヒナの方へと顔を向ける。

 

「ヒナさん、昔とはまるで別人に感じるぐらい成長しましたね。私、正直かなり驚いています。」

「ありがとうございます!リーリエさんに追いつくために、私はここまで頑張ってこれました!」

「その気持ち、とても嬉しいです。ですが!私は、私たちは絶対に負けません!」

 

そしてリーリエは最後のポケモンが入ったモンスターボールを取り出す。

 

「……お願いします!カイリューさん!」

『バオウゥ!』

 

リーリエが最後に繰り出したのはカイリューであった。ハクリューから進化し、パワーもスピードも格段に上がったカイリューは迫力も増し、とてつもない威圧感がヒナとモクローを襲う。

 

「すごい迫力です……ですが私たちも負けません!」

『クロッ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウ!』

『クロッ!?』

 

カイリューは開幕からしんそくで一瞬で距離を詰めて攻撃した。その大きな体からは想像できないスピードによる一瞬の攻撃に、モクローとヒナは対応することができなかった。

 

「続けてれいとうビームです!」

『バオウ!』

 

カイリューはれいとうビームで攻撃し、その攻撃がモクローに直撃する。くさ・ひこうタイプを持つモクローにこおり技は効果抜群だ。その攻撃によってモクローは凍りつき、地上に落ちてピクリとも動かなくなった。

 

「モクロー!戦闘不能!」

 

今度は入れ替わりでモクローが戦闘不能となった。。カイリューの思いがけないスピードに、ヒナは感嘆する他なかった。

 

「モクローちゃん。ありがとう、ゆっくり休んでね。」

 

モクローをモンスターボールへと戻すヒナ。そして遂にヒナも残り一体となり、そのポケモンに最後の戦いを託すこととなった。

 

「私の最後のポケモンちゃん……お願いします!ドレディアちゃん!」

『ディア♪』

 

ヒナの最後のポケモンは予選のバトルロイヤルでも活躍したチュリネの進化形、ドレディアであった。カイリューに対しては相性が悪いが、1回戦突破を賭けて最後の戦いが幕を開ける。

 

「カイリューさん!れいとうビームです!」

『バウ!』

「かわして!」

『ディア!』

 

カイリューは空中に羽ばたきれいとうビームで攻撃する。しかしドレディアはその攻撃をお嬢様の様な可憐さを披露しながら回避した。

 

「にほんばれ!」

『ディイアァ♪』

 

ドレディアが空に舞いを披露すると、強い日差しが会場を包み込む。

 

「カイリューさん!しんそくです!」

 

再びカイリューは目にも止まらないスピードで接近する。このスピードならば攻撃が決まる、そう誰もが思った時意外な結果が待っていたのだった。

 

「はなふぶき!」

『ディア!』

 

ドレディアは全身を花吹雪で包み込み、身を隠すように姿を消す。しんそくのスピードに追い付き、カイリューの攻撃を回避したのだった。その時、リーリエはドレディアの特徴を思い出す。

 

「っ!ドレディアさんの特性はようりょくそ、ですか。」

 

ようりょくその特性は、日差しが強い時に自身の素早さを飛躍的に上げる特性だ。くさタイプであるにもかかわらずにほんばれで天候を変更してきたのは、カイリューの素早さを超える意図があったのである。

 

「今です!フラフラダンス!」

『ディィア♪』

 

ドレディアはフラフラダンスでカイリューを自分の世界に誘い込む。フラフラダンスによってカイリューを目を回してしまい、混乱状態となってしまった。

 

「カイリューさん!?」

「ドレディアちゃん!はなびらのまい!」

『ディア♪』

 

ドレディアははなびらのまいでカイリューに追撃する。花を舞い散らせ、荒々しく踊りカイリューにダメージを与える。混乱状態で反撃できないカイリューは、立て続けにドレディアの攻撃を受けてしまいダメージが蓄積していく。

 

「っ!?今は……今は耐えてください!」

『ッ!?』

 

チャンスは必ずやってくるとリーリエはカイリューにそう願う。リーリエの声と気持ちが届き、カイリューは反撃することなく防御の態勢に移行した。

 

混乱状態は攻撃しようとすると訳も分からず自分を傷つけてしまう状態異常だ。だが防御であれば自分を攻撃する心配もないため、チャンスが来るまで耐える寸法なのであろう。

 

ならばこのまま攻撃し続けて体力を削っていこうとドレディアははなびらのまいを継続する。防御して耐え続けるカイリューだが、次第にカイリューの体が鋭い花びらで傷付き、ダメージが蓄積しているのが分かる。やられてしまうのも時間の問題だ。

 

ドレディアの攻撃が続く中、次第に先ほどまでの勢いが収まってきた。明らかにパワーダウンしたその現象に、ヒナは「どうして!?」と焦るを見せる。その瞬間に原因に気付き、ヒナは空を見上げた。

 

空には先ほどよりも雲の量が増え、太陽の日差しが少なくなってしまっていた。にほんばれの効果が消え、ようりょくによる素早さ上昇効果を失ってしまったのだ。素早さがダウンしたことにより、パワーの低下と攻撃の隙間が目立ってしまう。

 

次の瞬間、カイリューは苦しそうにしていた目をカッと見開く。混乱から解放され、ついに自分を取り戻したのである。

 

「今ですカイリューさん!げきりん!」

『バオオォウゥ!』

『ディア!?』

 

カイリューは大きな咆哮を上げると同時に体が赤いオーラで包みこまれる。カイリューは逆鱗状態となり、全力の攻撃がドレディアを吹き飛ばして反撃した。

 

「っ!?ドレディアちゃん!」

『ディ……ア!』

 

大きなダメージを受けてしまったが、それでもまだまだ行けるとドレディアは態勢を整える。そこでヒナはこれで対抗するしかない、と腕のリングを構える。

 

「来ますよ!カイリューさん!」

『バオゥ!』

 

逆鱗状態のまま目に血を走らせ集中するカイリュー。ヒナは腕を構えてあの態勢へと移行した。

 

「私の最後の全力、リーリエさんたちに見せます!」

『ディア!』

 

大地から自然の力を感じ、花咲く演出をするそのポーズはくさタイプのZ技のポーズであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルームシャインエクストラ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナとドレディアの全力、ブルームシャインエクストラが発動する。フィールドに満開に広がる花々がカイリューを包み込み、大きな爆発を引き起こした。強力な技がカイリューに炸裂し、その代償としてヒナたちの体力はかなり消耗してしまっていた。

 

「はぁ……はぁ……これで、私たちの……っ!?」

 

爆風が包み込み手ごたえを感じていたヒナは勝利を確信した。しかし光が爆風を振り払い、そこには未だ逆鱗状態のカイリューが立っていた。そしてリーリエは腕をクロスさせ、腕に装着してあるZリングとZクリスタルが眩い輝きを放っていた。

 

「これが……私たちの全力です!ヒナさん!受け取ってください!」

 

リーリエが構えたのはノーマルタイプのZ技。その全力のオーラがカイリューを包み込む。カイリューもリーリエの想いを受け取り、全力のZ技を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

 

 

 

カイリューは背中に生えた翼を羽ばたかせ、地上に衝撃を引き起こしながら低空飛行でドレディアに向かって突っ込んでいく。Z技の発動で体力を失い、回避する体力もないドレディアにカイリューのウルトラダッシュアタックが直撃する。

 

その一撃でドレディアはヒナの背後まで吹き飛ばされ、壁に激突し追加ダメージを受けてしまう。ヒナが心配になり振り向くと、そこには目を回して力尽きていたドレディアの姿があった。

 

『でぃ……あ……』

「ドレディア!戦闘不能!カイリューの勝ち!よって勝者!リーリエ選手じゃ!」

 

「はぁ……はぁ……勝ちました……カイリューさん!勝ちましたよ!」

『ば……おう……』

 

リーリエは喜びカイリューに近付くが、当の功労者であるカイリューは逆鱗状態が解け、その上Z技の体力消耗によりその場で倒れ込み力尽きてしまう。

 

「カイリューさん、がんばりましたね。お疲れ様です。」

『ばうぅ』

 

リーリエは頑張ったカイリューに撫でながら感謝すると、カイリューは力ない声で返答する。ギリギリの勝負に喜びながらも、ドキドキした感情が抜けきれずにリーリエはカイリューをモンスターボールへと戻した。

 

「お疲れ様です。ドレディアちゃん。ゆっくり休んでください。」

 

同じくドレディアをモンスターボールに戻したヒナは、リーリエの元へと歩いていく。

 

「いやぁ、負けました!ですが私、今ではとてもすっきりしています!」

「ヒナさん。」

「正直ここまでこれるなんて思っていなかったんです。ですがリーリエさんと戦えて、リーリエさんも私に全力で応えてくれて、とても満足しました!絶対勝ち上がってください!私の分まで!」

「はい!必ず勝ち上がってみせます!全力で!」

 

ヒナとリーリエは最後に健闘を称えて握手を交わす。そんな二人を観客のみんなは暖かい拍手で称えていた。

 

そしてリーリエはバトルフィールドを去る前に、ある人物のいる場所へと目を移した。

 

(私は絶対に負けません。ヒナさんの想いを受け取りました。それに、あの人と戦うまで、負けられませんから!)




アンケートはまだまだ受付中です。好きなブイズでもいいので投票してくれると私は嬉しいです。


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アローラリーグ2回戦!グラジオVSプルメリ

先週は残業続きでリアルが忙しかった……
でもゲームはいっぱいやっていた
後悔も反省もしていない


「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカ!』

『チルッ!?』

 

2回戦第一試合。ヨウの対戦相手であるチルタリスはピカチュウの素早い一撃を回避することができず腹部に直撃し、痛みから怯んで動きを止めてしまった。

 

「続けて10まんボルト!」

『ピッカヂュウ!』

 

追撃の10まんボルトが身動きの取れないチルタリスを捉え身体全体を痺れさせる。その一撃でチルタリスは地上に落ちて戦闘不能となった。

 

 

『チルタリス!戦闘不能!よってこの試合、ヨウ選手の勝利!』

「よし!やったな!ピカチュウ!」

『ピッカァ!』

 

審判であるミヅキの合図でヨウが勝者となり準決勝進出を決める。ヨウとピカチュウは感極まってお互いにハイタッチをして喜びを分かち合う。

 

そして続く2回戦第二試合。今度はハウの戦いが行われていて、試合内容もハウの圧倒的優勢で進み試合も終盤を迎えていた。

 

「くっ、アブソル!かげぶんしん!」

『アブソッ!』

 

劣勢の状態から危険だと判断した対戦相手のアブソルがかげぶんしんにより自分の分身を複数体生成し、ハウのポケモンであるオンバーンを撹乱する。しかしオンバーンとハウに対してそのような小細工は一切通用しなかった。

 

「オンバーン!ばくおんぱー!」

『オッーン!!』

 

オンバーンとその進化前のオンバットは基本洞窟内に生息しており、視覚以上に聴覚が非常に優れている。故に音技にも長けていて、超音波により暗闇でも生物や物体の位置が正確に判別できる。

 

オンバーンはばくおんぱで会場全域に振動が起きる程の音波を放つ。その音波攻撃によりアブソルは苦しみ、一瞬の隙が生まれた。

 

オンバーンはばくおんぱによる振動と音波の反射を検知し、アブソルの分身を見破って本物をあぶりだした。

 

「とどめのドラゴンクロー!」

『バッオン!』

『アッソッ!?』

 

オンバーンは本物のアブソル一点だけを狙い撃ちし、空中から急降下してドラゴンクローで切り裂いた。ばくおんぱによるダメージもありアブソルは避けることができず、ドラゴンクローの一撃が直撃して吹き飛ばされダウンする。

 

「アブソル、戦闘不能。オンバーンの勝ち。よって勝者、ハウ。」

「やったー!オンバーン!お疲れ様ー!」

『バオン♪』

 

審判であるクチナシによって戦闘不能と判断され。ハウもヨウと同じく準決勝進出となった。これで準決勝第一試合のカードが決定し、ヨウとハウが争うこととなったのである。お互いよく知った間柄でこうなることは予想していたため、どちらも明日のバトルが待ち遠しいと言った様子である。

 

そして今日の目玉カード、2回戦第三試合が始まろうとしていた。フィールドに姿を現したのは、リーリエの兄であるグラジオ、元スカル団の幹部であるプリメリだ。グラジオは元スカル団の用心棒としても雇われていたため、知らない間柄ではない。

 

「まさか、あんたとこんな舞台で戦うことになるとは夢にも思っちゃいなかったよ。グラジオの坊や。」

「ふっ、それはこっちも同じだ、プルメリ。だが今の俺は昔の俺とは違う。舐めてかかると後悔するぞ?」

「それはこっちだって同じさ。やるからには勝つ。あたいたちの全力、あんたに見せてやるさね。」

 

以前グラジオはスカル団の正式なメンバーではなかったため、二人の間には険悪な雰囲気がありほとんど言葉を交わすことがなかった。しかし今はスカル団ではなく、一人のポケモントレーナーとして対峙している。ポケモントレーナーが目と目を合わせたら、やることはもう決まっている。

 

「ったく、なんで俺様がこんなバトルの審判なんか……。」

「そういいなさんな。以前はあたいたちもあんたの部下だったんだ。このバトルくらい見届けてほしいね。」

「……俺は部下だったつもりはないがな。」

 

審判を務めるのは元スカル団ボスであり現アーカラ島しまキングのグズマ。プルメリの軽口を聞いたグズマは小さく舌打ちをし、グラジオは少し不機嫌そうにそっぽを向く。彼にとってスカル団時代のことは思い出したくない過去なのだろう。

 

「ちっ、プルメリVSグラジオ。バトル始め」

 

グズマは気だるそうに合図を出す。その合図とともに、プルメリとグラジオは同時にポケモンを繰り出した。

 

「行きな!ベトベトン!」

『ベトォ!』

「マニューラ!頼むぞ!」

『マニュ!』

 

プルメリはどく・あくタイプのアローラの姿をしたベトベトン。対してグラジオが繰り出したのはこおり・あくタイプのマニューラであった。どちらも同じくあくタイプであるため、相性としては五分と五分だ。

 

「さあ、どっからでもかかってきな。」

「余裕だな……マニューラ!メタルクロー!」

 

プルメリはいつでもかかってこいとグラジオを挑発する。グラジオは上等だ、とその挑発を敢えてのり先制で攻撃を仕掛けた。

 

「ベトベトン!はたきおとす!」

『ベェト!』

「っ!?かわせ!」

『ニュッ!』

 

ベトベトンは正面から攻めてくるマニューラに対してはたきおとすで対抗する。硬化させた鋭いツメで切り裂こうとしたが、ベトベトンの攻撃を回避するために中断して回避する。

 

「逃がさないよ!ベトベトン!ダストシュート!」

『ベトォ』

 

ベトベトンは悪臭のするゴミをマニューラに投げつける。マニューラはベトベトンの怒涛の攻撃を回避し続けるが、フィールドを漂う悪臭に戸惑い怯んでいた。

 

「今だよ!かげうち!」

『マニュ!?』

 

ゴミによる悪臭で隙を見せてしまったマニューラの背後から、ベトベトンの影が襲い掛かりマニューラに的確なダメージを与える。その不意打ちによりマニューラは前かがみに倒れ膝をついた。

 

「これだとどめさ!だいもんじ!」

『ベトォ!』

 

怒涛の攻撃から更に追撃として大技のだいもんじを放つベトベトン。ベトベトンのだいもんじはフィールドに散らばったゴミごと、マニューラを焼き払おうと迫りくる。マニューラはこおりタイプ故にほのお技のだいもんじは効果が抜群。誰もが絶体絶命だと思ったその時、グラジオはニヤリと微笑んだ。

 

「マニューラ!あなをほる!」

『マニュ!』

 

マニューラはその鋭いツメで穴をあけて地中へと姿を消した。だいもんじは明らかにマニューラを捉えていたが、あなをほるで地中に姿を消したマニューラに当たることはなかった。

 

「っ!?しまった!」

『ニュラァ!』

『ベトッ!?』

 

マニューラはあなをほるでベトベトンの足元から姿を現し攻撃を仕掛ける。どくタイプであるベトベトンに対してじめん技のあなをほるは効果が抜群だ。今の一撃をベトベトンの体力を大きく削った。

 

「つららおとし!」

『ニュッラ!』

 

マニューラは氷柱をベトベトンの周囲に降り注ぎ、ベトベトンの逃げ道を完全に塞いだ。ベトベトンは身動きが取れず、気付けば形勢は一気に逆転していたのだった。

 

「とどめのメタルクロー!」

『ニュラ!』

 

マニューラは再びツメを硬化させ、自分が生成した氷柱ごとベトベトンを切り裂いた。切り裂いた氷柱がベトベトンに降り注ぎ、あなをほる、メタルクローの連続攻撃のダメージも相まって氷の下敷きとなり戦闘不能となった。

 

『べぇと……』

「……ベトベトン。戦闘不能だ。」

「っ、ベトベトン、戻りな。お疲れさん。」

 

ベトベトンをモンスターボールへと戻したプルメリは、嬉しそうに微笑むとグラジオの方へと顔を向けた。

 

「やるじゃないか。まさかこうも逆転されるとは思わなかったよ。」

「ふっ、俺も、俺のポケモンたちも日々成長している。いつまでも昔のままでいるわけがないだろう。」

「それもそうさね。だけど、成長しているのはなにもあんただけじゃないんだよ!」

 

嬉しそうに微笑んだプルメリは、次のポケモンが入ったモンスターボールをフィールドに投げた。

 

「次はあんたの番だよ!ゲンガー!」

『ゲェンガー!』

「次はゲンガーか……」

 

どくタイプに加えゴーストタイプを併せ持つゲンガー。あくタイプを持つマニューラに対しては不利だが、プルメリはトリッキーな戦いを得意とするトレーナーだ。間違いなく何かの作戦があることはグラジオも理解している。

 

「マニューラ!メタルクロー!」

『ニュッラ!』

「ゲンガーふいうち!」

『ゲェン!』

 

マニューラは素早い動きで翻弄しメタルクローでの先制攻撃を狙う。しかしゲンガーは動じることなく、変則的なふわふわとした動きからふいうちでカウンターを仕掛けた。

 

『ニュラ!?』

「続けてあやしいひかり!」

『ゲェン!』

「なっ!?しまった!」

 

ふいうちで怯んだ隙にあやしいひかりでマニューラを捉えたゲンガー。あやしいひかりを見たポケモンは混乱状態となってしまうため、自分を攻撃してしまう可能性がある危険な状態へとなってしまった。

 

「マニューラ!」

『にゅっらぁ』

 

マニューラの名前を呼ぶグラジオだが、マニューラには彼の声が届いておらず自分自身を訳も分からず攻撃してしまっている。そんな姿を見てゲンガーはケラケラと笑い眺めて楽しんでいる。

 

「ゲンガー!シャドーボール!」

『ゲンガァ!』

『ニュラッ!?』

 

混乱して動きが止まっているマニューラを捉えるのはゲンガーにとって造作もないことだった。マニューラは自傷ダメージとゲンガーのシャドーボールによる追撃でダメージが蓄積し、その場で倒れてしまった。

 

『にゅ……らぁ……』

「マニューラ、戦闘不能だ。」

「マニューラ、戻れ。よく頑張ったな。」

 

劣勢を優勢に変えたマニューラであったが、奮闘も虚しくゲンガーのトリッキーな動きに敢え無く敗北してしまう。これでお互いの残りポケモンは2体となり、戦況は振出しに戻った。

 

「これがプルメリの戦術か。厄介だが、方法ならある。出番だ!ルカリオ!」

『バウッ!』

 

次にグラジオが選出したのはかくとう・はがねタイプのはどうポケモン、ルカリオだ。しかしルカリオのかくとう技はゴーストタイプのゲンガーに対して効果がない。それでもルカリオを選出したのには何か意図があるのは間違いない。

 

「今度はこっちから行かせてもらうさ!ゲンガー、シャドーボール!」

『ゲェンガ!』

「ルカリオ!はどうだん!」

『バオウ!』

 

ゲンガーはシャドーボールで先制攻撃を仕掛けるが、ルカリオはその攻撃をはどうだんで迎え撃ち相殺した。

 

「ゲンガー!」

『ゲェン!』

 

プルメリの合図に合わせ、ゲンガーはフィールドから姿を消した。ゴーストタイプであるゲンガーの特徴を活かし、影の中に身を潜めたのだろう。このままでは姿の見えないゲンガーにルカリオが一方的にやられてしまう。

 

「ルカリオ!ゲンガーの波動を感じ取るんだ!」

『バウ……』

 

ルカリオは目を閉じて意識を集中させる。はどうポケモンであるルカリオは生物や物体の波動を感じ取り位置を目で捉えなくても把握することができる。その特徴を活かし、ゲンガーの位置を探ろうとしているのだ。

 

「……あやしいひかり!」

「っ!コメットパンチ!」

『バウ!』

 

一瞬ルカリオの影が僅かに光り、ゲンガーはルカリオに不意打ちを仕掛ける。しかしルカリオはその動きを見抜き、コメットパンチでゲンガーの体を鋭く、彗星の如き素早さで貫いた。

 

『ゲンッ!?』

 

ゲンガーはコメットパンチによる一撃で大きく吹き飛ばされる。その一撃によるダメージによって、ゲンガーは無理やり影から引き釣り出されて明らかな隙が生まれた。

 

「今だ!ボーンラッシュ!」

『バオウ!』

「かわしてシャドーボール!」

『ゲェン!』

 

ルカリオは骨で出来た棍棒を二本両手に取り一気に畳みかける。ゲンガーは自慢の身のこなしですぐに態勢を整えて空中に浮かびあがりその攻撃を回避する。

 

そして回避したゲンガーはシャドーボールで反撃をする。ルカリオはゲンガーのシャドーボールを、咄嗟にボーンラッシュで防御して防ぎダメージを殺した。

 

「コメットパンチ!」

『バオウ!』

「ふいうちで迎え撃て!」

『ゲン!』

「惑わされるな!波動を感じ取るんだ!」

『バウ!』

 

ルカリオがコメットパンチで畳みかける。ゲンガーもその攻撃をふいうちで止めに入るが、ルカリオは目を瞑ってゲンガーの波動を感じ取る態勢に入る。

 

ゲンガーがルカリオの背後の影から文字通りの不意打ちを仕掛けるも、ルカリオは波動を感じ取って即座に振り向いてコメットパンチを振り切った。お互いの息の詰まる攻防に観客たちも息を飲み込んだ。

 

『ッ!?ゲェン……』

 

立て続けにダメージを受け、自慢の身のこなしも死んでしまいダメージがピークになってしまったゲンガーは。今がチャンスだと、グラジオはトドメに入った。

 

「ボーンラッシュ!」

『バウ!』

 

ルカリオは再び両手に骨で出来た棍棒を持ち、一瞬で距離を詰めて最後の攻撃に入った。しかしそれはプルメリの罠で、彼女は最終手段に取っておいた技を披露したのだった。

 

「ゲンガー!みちづれ!」

『ゲェン!』

「なっ!?みちづれだと!?」

 

ゲンガーはボーンラッシュで吹き飛ばされ壁に衝突した。じめんタイプでもあるボーンラッシュはどくタイプのゲンガーに対して効果抜群。しかもあれだけのダメージが蓄積すれば一溜りもなく戦闘不能になる。しかしそれはゲンガーだけではなかった。

 

『ばっ……おう……』

 

ゲンガーだけでなく、勝者であったはずのルカリオも倒れてしまった。それはゲンガーが最後にしようしたみちづれ、と言う技が原因である。

 

みちづれは相手にダメージを与えることこそないが、技を使用したあとに自分が戦闘不能となった時、相手も同時に戦闘不能とする効果がある技だ。使用者であるゲンガーが戦闘不能となったため、ゲンガーを倒したルカリオもまた道連れとなり戦闘不能となってしまったのである。

 

「……ゲンガー、ルカリオ、共に戦闘不能だ。」

 

グズマの判決でゲンガー、ルカリオが戦闘不能と判断される。戦闘不能になったポケモンを両者共モンスターボールへと戻し、とうとう最後の一体を残すのみとなった。

 

「……あとはあんたに任せたよ、相棒。出番さね!エンニュート!」

『エンット!』

「ここで負けるわけには行かない。行くぞ!聖獣シルヴァディ!」

『シヴァ!』

 

お互いに繰り出したのは両者の相棒であるポケモンたち。どく・ほのおタイプを持つエンニュート、ノーマルタイプのシルヴァディだ。しかしシルヴァディはARシステムと言う特性を持っており、頭に埋め込んだ専用ディスクによりタイプを変化させることができる。

 

公式大会のルールにおいて、シルヴァディの特性はバトル中一度のみ使用することが許されている。しかしその場合Z技を使用することができず、一試合中どちらか一方の選択となる。それはトレーナーの力量次第で戦況も変わる、彼の腕の見せ所ということだ。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァヴァヴァ!』

「かわしな!」

『エント!』

 

シルヴァディの先制攻撃、エアスラッシュを素早い動きで難なく回避する。

 

「エンニュート!はじけるほのお!」

『エット!』

「っ、ブレイククロー!」

『シヴァア!』

 

エンニュートのはじけるほのおをシルヴァディは鋭いツメを開いて切り裂いた。はじけるほのおは地面に当たるとその場で弾けて追加効果によるダメージを受けてしまう。そのためグラジオはブレイククローで前もって相殺することで、ダメージを防いだのだった。

 

「やるじゃないか。ヘドロウェーブ!」

『エットット!』

 

エンニュートは毒の波で逃げ場のない広範囲攻撃を繰り出した。隙間のないほどの強力な毒がフィールドに蔓延し、シルヴァディが避ける隙間はほぼないに等しい

 

「シルヴァディ!鋼の力を身にまとい、忌まわしい毒を浄化せよ!」

『シヴァア!』

 

グラジオは銀色のディスクを投げ、シルヴァディの頭部に埋め込まれた。シルヴァディのトサカと尾が銀色に染まっていく。シルヴァディの特性により、彼ははがねタイプに変化を遂げた。

 

はがねタイプに対してどくタイプの技は効果がない。故にヘドロウェーブを無視してエンニュートに向かい突っ込んでいった。

 

「そう来るかい。」

「シルヴァディ!ブレイククロー!」

『シヴァア!』

『エント!?』

 

毒の波を超えたシルヴァディのブレイククローがエンニュートを切り裂き、その衝撃でエンニュートは大きくノックバックをしてダメージを負った。これを機に勢いに乗ったシルヴァディとグラジオは、今が攻撃のチャンスだと畳みかけた。

 

「シルヴァディ!もう一度ブレイククロー!」

『シルヴァ!』

 

再びシルヴァディはエンニュートへと突っ込んでいく。シルヴァディの全力を込めたマルチアタックがエンニュートに迫るが、その攻撃に対してプルメリは冷静に対応した。

 

「みがわりだよ!」

『エンニュ!』

「っ!?」

 

シルヴァディの攻撃をエンニュートの身代りが代わりに引き受ける。シルヴァディの攻撃は空振りに終わり、攻撃後の隙が逆にピンチを招く結果となってしまった。

 

「今だよ!はじけるほのお!」

『エンニュ!』

『シルヴァ!?』

「シルヴァディ!」

 

エンニュートのはじけるほのおがカウンターで決まり、シルヴァディを大きくのけ反った。現在のシルヴァディははがねタイプとなっており、どくタイプの技は無効化できるがほのおタイプの技は効果が抜群で入ってしまっている形勢が逆転し、今度はエンニュートの手番となったのだった。

 

「連続ではじけるほのお!」

『エント!エント!エント!』

 

エンニュートは連続ではじけるほのおを放った。はじけるほのおが一発シルヴァディに命中し、それ以外はシルヴァディの周囲に着弾して彼の体力をじわじわと削っていく。シルヴァディも熱さによる苦しみから一瞬膝をついてしまった。

 

「あたいのエンニュートはどく技だけじゃないんだよ!これで終わらせるさね!」

 

プルメリは手を交差して最後の攻勢に出る。彼女はシルヴァディに隙のできた今、Z技でとどめを刺すために勝負に出たのだ。

 

「あたいがZ技を使うなんて思ってなかったけど、勝つためならあたいたちの全力を見せてやるさ!」

『エント!』

 

プルメリとエンニュートの気持ちが一つに重なる。Zパワーが二人の間で膨れ上がり、最大パワーのZ技が解き放たれる。

 

 

 

 

 

 

――ダイナミックフルフレイム!

 

 

 

 

 

エンニュートのほのお技を媒体にしたZ技、ダイナミックフルフレイムが放たれる。広範囲、高火力のその技をシルヴァディを飲み込もうとしていた。リーリエを含む観客たちも絶体絶命のその状況に息を飲み込んで見守っていた。

 

「……シルヴァディ!」

『シヴァ?』

「俺たちならやれる。行くぞ。」

『……シヴァア!』

 

シルヴァディはグラジオの言葉に応えるように大きく咆哮する。そしてツメを立てて、グラジオはシルヴァディに指示を出した。

 

「ブレイククロー!地面に突き立てろ!」

『シ……ヴァア!』

 

シルヴァディはツメで地面を抉り裂き、空中に砂を巻き上げた。何をする気なのかと全員が疑問に感じていると、次の瞬間驚きの行動に出たのだった。

 

「シルヴァディ!そのまま突っ込め!」

『シルヴァア!』

「なにっ!?一体何をする気だい!?」

 

シルヴァディはダイナミックフルフレイムに対して正面から突っ込む。はがねタイプとなっているシルヴァディにとって、ほのお技は天敵中の天敵。喰らってしまえば一溜りもない。それでもシルヴァディとグラジオは互いに信頼し合い、この戦術に賭けたのだった。

 

「血迷ったのかい?だが、これであんたのシルヴァディは……」

『シヴァア!』

「なんだって!?」

 

これで決着がついたと思ったプルメリだが、シルヴァディは燃え尽きることなくダイナミックフルフレイムの中を突き進んでいる。一体なぜ、と思ったその時、シルヴァディの鋼の体を何かが包み込んでいるのがキラリと光って見えた。

 

「っ!?まさか、地面の砂を体に纏ってコーティングしたとでも言うのかい!?」

『エンッ!?』

 

そう。シルヴァディは先ほど巻き上げた砂を体に振りかけ、ほのおの衝撃を砂に吸収させることでダメージを軽減させているのだ。信じられない光景だが、実際現実で行われている現象だ。なによりこれは彼らの厚い信頼関係があるからこそ成り立っている戦術である。

 

「決めろぉ!マルチアタックー!」

『シルヴァアアア!!』

 

シルヴァディは炎を切り裂き、エンニュートの身体を貫いた。全員が息をするのを忘れ見守っていると、暫くしたらエンニュートは力尽きてその場で倒れてしまった。そしてその場に最後まで立っていたのは、グラジオのポケモンであるシルヴァディだった。

 

『えんっ……とぉ……』

「……ふん、エンニュート、戦闘不能。よって、グラジオの勝利。」

 

グラジオの勝利が宣言され、3人目の準決勝に勝ち上がったトレーナーはグラジオに決定した。

 

「……ふぅ、よく頑張ったね、エンニュート。ゆっくり休みな。」

「シルヴァディ、大丈夫か?」

『シルヴァ』

 

プルメリはエンニュートをモンスターボールへと戻し、グラジオも最後まで自分を信用して戦ってくれたシルヴァディの頭を優しく撫でる。その様子を見たプルメリは、ゆっくりと彼の元へと歩いて近付いた。

 

「まったく……まさかあんな方法で突破されるなんて思わなかったね。」

「ふっ、どっかの誰かに影響されただけだ。」

「次の試合、恐らく相手はあのお姫様になるんだろ?」

「ああ、間違いないだろう。アイツは必ず勝ち上がってくる。」

「まっ、精々どっちも頑張りな。二人とも応援してやるさね。」

 

プルメリはグラジオに激励を贈った後、手を振りフィールドを去る。両者の健闘を称え、観客のみんなは盛大な拍手を送った。

 

彼女の言葉を聞き、背中を見送ったグラジオは、心の中で決意をあらわにする。

 

「……ああ、俺は負けない。例え相手が妹でも、あいつであっても、絶対に勝って見せる。」

 

グラジオ、シルヴァディはお互いに気持ちを一つにし準決勝へと挑む決意を新たにする。明日、遂にアローラリーグはクライマックスを迎える。




なんかこの作品のトレーナがみんなしてサトシスタイルになってる気がする
大体シンジ君のせいってことで

ところで前回のアニポケリーリエ回はとてもよかった。作画も気合入ってたように見えたのは気のせいじゃない?


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ヨウVSハウ!幼馴染ライバルバトル!

遂にやってきた準決勝、ヨウ対ハウのバトルです。どちらが勝つか予想しながら楽しんでいただけると幸いです。


2回戦第三試合、グラジオVSプルメリの注目のカードは激戦の結果、グラジオが勝利し準決勝進出を決めた。

 

第一、第二試合ではヨウ、ハウが軽く勝利を収め、リーリエも難なく2回戦第四試合を制した。こうして準決勝進出トレーナーが全員決定し、ヨウ、ハウ、グラジオ、リーリエの四人が優勝を争う形となった。

 

そして2回戦が終わった翌日。準決勝第一試合、ヨウとハウ、幼馴染である二人の戦いが始まろうとしていた。

 

(ハウとは何度も戦ってきたが、今日はいつもと違う。勝って決勝に進むのはどちらか一方のみ。)

(ヨウの手の内は知ってるけど、それはヨウも同じだよねー。)

(それでも……)

(だとしても……)

「勝つのは俺だ!」「勝つのはおれだー!」

 

互いに試合への意気込みを口にし、通路をまっすぐ歩いて両者同時にフィールドに姿を現す。ここまで圧倒的な強さを見せてきた彼らに、観客たちが期待の歓声を送る。それを聞いた二人は胸が引き締まる思いでお互いの目を見つめる。ここまで来たライバルに、最早交わす言葉など必要ないことが伝わってきた。

 

「うーん、やっぱりこの試合は私が担当しないとねぇ♪」

「公平なジャッジ頼むぜ?審判。」

「あははー、楽しいバトルしようねー♪」

 

審判を務めるミヅキの対応に一瞬幼馴染としての三人に戻る。しかし雰囲気は一変し、ミヅキの引き締まった声に二人も戦闘モードへと移行した。

 

「それではこれより!ヨウ選手とハウ選手のバトルを始めます!両者、同時にポケモンを!」

「行くぞ!ピカチュウ!」

「頼むよ!クワガノン!」

『ピッカァ!』

『クワッ!』

 

ヨウが繰り出したのはピカチュウ、対してハウが繰り出したのはクワガノン。どちらもでんきタイプであるためタイプによる優劣はない。強いて言うならばもう一つのタイプが付与されているクワガノンの方が有利だろうか。

 

両者のポケモンがフィールドに登場し、ミヅキは二人の姿を交互に確認する。そしてお互いにバトルの準備が整ったと判断した彼女は、ついにバトルの火蓋を切って落とした。

 

「それでは……バトル、はじめ!」

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカ!』

 

試合開始の合図と同時に動き出したのはヨウとピカチュウであった。ピカチュウの素早い動きを利用し、クワガノンに不意打ちの先制攻撃を仕掛けた。しかしその動きはハウも読んでいたようで……。

 

「クワガノン!こうそくいどうで躱せー!」

『クッワ!』

 

クワガノンは目にも止まらぬ速さでその場から瞬間的に移動し、ピカチュウのでんこうせっかを回避し背後へと回る。

 

「今だ!マッドショットー!」

『クワ!クワ!』

「アイアンテールで防御だ!」

『ピカッ!ピッカ!』

 

ピカチュウの背後に回ったクワガノンはマッドショットで攻撃する。その背後からの攻撃をピカチュウはアイアンテールで防御し攻撃を受け流す。

 

「クワガノン!10まんボルト!」

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『クッワ!』

『ピッカァ!』

 

ハウとヨウはほぼ同時に10まんボルトの指示を出した。クワガノンとピカチュウも同時に10まんボルトを解き放ち、お互いの攻撃はフィールド中央で炸裂する。互いの10まんボルトが相殺されたことにより爆発が起こり、互いの姿が見えなくなってしまった。

 

初っ端からどちらも一歩も譲らない攻防に観客たちは息を飲み込む。経過した時間は僅かだが、それでもどちらかが先に攻撃を受けてしまっていてもおかしくはい戦いだ。しかしそんな拮抗していた戦いも、ついに動きを見せ始めるのだった。

 

「ピカチュウ!アイアンテール!」

『ピッカ!』

 

ピカチュウはアイアンテールで見えない視界を振り払い無理やりクワガノンの姿をあぶりだそうとする。しかし爆風を振り払うと、そこにはクワガノンの姿は見当たらなかった。

 

『ピカ!?』

「なに!?」

「よーし!ピカチュウを捕まえろー!」

『クワ!』

 

クワガノンは再びピカチュウの背後に回り、今度はその鋭い鋏のような大顎で捉え壁に突き刺す。ピカチュウは必死にもがくが、クワガノンの強靭な顎からは逃れることができずビクともしない。

 

「これなら避けることも防ぐこともできないでしょー?」

「っ!?しまった!」

「クワガノン!マッドショットー!」

『クワァ!』

『ピカ!?』

 

例えどれだけ素早いピカチュウが相手であっても、動きを止めてしまえば怖いものなど何もない。クワガノンは超至近距離からのマッドショットによりピカチュウを攻撃する。当然ピカチュウにはその攻撃を逃れる術はなく、遂には直撃を受けてしまう。

 

至近距離での攻撃による衝撃でクワガノンはピカチュウから距離が離れる。攻撃は間違いなくピカチュウを捉え手応えも感じたが彼の姿は爆風によって見えなくなってしまっている。動きを確認しようと様子を見ていると、一筋の閃光が突然クワガノンを貫いたのだ。

 

『クワッ!?』

「っ!?クワガノン!」

 

その閃光はピカチュウの10まんボルトであった。10まんボルトが命中したクワガノンは空中から落ちてきて、それをチャンスと捉えたヨウはピカチュウに追撃の指示を出す。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウは傷を負いながらも爆風から勢いよく飛び出し姿を現す。スピードは一切衰えておらず、素早い動きから繰り出されるパワフルな一撃がクワガノンを捉える。

 

「クワガノン!?」

『ッ!?クワッ!』

 

クワガノンは態勢を整えピカチュウの姿を見据える。自分の大顎をカチカチと鳴らして自らを鼓舞すると同時にピカチュウを威嚇する。

 

「やっぱりヨウは強い。でも!おれたちも負けないよー!」

「俺たちだって負けない!ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピッカァ!』

「クワガノン!こうそくいどう!」

『クワッ!』

 

ピカチュウはでんこうせっか、クワガノンはこうそくいどうにより互いの距離を一瞬で詰める。そのスピードから互いに額をぶつけあい、火花がバチバチとはじけ飛んでいた。ぶつかった反動により、お互いの距離が少し開く。

 

『10まんボルト!』

 

そして再び同時に10まんボルトを放って爆風が巻き起こる。先ほどと同じ状況が出来上がり、またもやお互いの姿が爆風で見えなくなった。

 

「……ピカチュウ!アイアンテール!」

『ピカッチュ!』

 

ピカチュウはまたもや尻尾を硬化させた状態で突っ込んでいく。しかしその状況は先ほど見た光景と全く同じもので、クワガノンの姿はそこには既におらずアイアンテールは空を切った。

 

「また同じ手に引っ掛かるなんてらしくないよー?シザークロス!」

『クッワ!』

 

クワガノンは大顎をクロスさせ、シザークロスによる反撃でピカチュウにとどめを刺そうと突っ込んでくる。逃げ場はない上にピカチュウはアイアンテールによって態勢を崩してしまっている。これでは先ほどの二の舞だと全員が思ったその時、ヨウは笑みを浮かべてピカチュウに指示を出した。

 

「そのまま地面を叩きつけろ!」

『ピカッ!ピッカァ!』

「えっー!?」

『クッワ!?』

 

ピカチュウは空を切ったアイアンテールを逆に利用し、地面に叩きつけることで空中に高き跳びクワガノンの攻撃を回避した。それだけでなく、その行動によってクワガノンは態勢を崩し、彼の真上を取ることに成功したのだった。

 

「今だ!もう一発アイアンテール!」

『ピッカ!ピカピッカァチュ!』

 

ピカチュウは空中からの勢いを利用し、落下のエネルギーによって溜まったパワーをアイアンテールに込めてクワガノンに叩きこむ。態勢を崩し上空からの攻撃に対しての対抗手段がないクワガノンはアイアンテールによる直撃を受けてしまい、地面に叩きつけられたのだった。

 

ピカチュウがその反動で着地すると、そこには目を回し倒れているクワガノンの姿があった。それを見たミヅキは、バトルの判定を下した。

 

『くわぁ……』

「クワガノン!戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」

 

一戦目からの激しい戦いに観客たちは盛大な歓声を上げていた。ピカチュウも激しい戦いから喜び、ヨウと一緒にハイタッチをして喜びを分かち合った。

 

「クワガノン、お疲れ様ー。よく頑張ったね。」

 

ハウはクワガノンをモンスターボールに戻した。決して油断していたわけではないが、自分の読みを上回ったヨウに心の中で称賛を贈る。しかしそれでもまだ勝負は始まったばかり。負けた訳ではないと次のモンスターボールを取り出すのだった。

 

「いっけぇー!オンバーン!」

『バッオォン!』

 

次に繰り出したのはドラゴン・ひこうタイプのオンバーンであった。ヨウは暫く考えたあと、ピカチュウに戻ってこいと指示を出してモンスターボールに戻した。

 

「頼むぞ!ウォーグル!」

『ウォー!』

 

ピカチュウに次いで繰り出したのはウォーグルであった。空を飛ぶオンバーンに対してはピカチュウで行くより、同じく空を自由に飛べるウォーグルの方が有利だと考えたのだろう。

 

「今度はおれから行くよー!オンバーン!ばくおんぱ!」

『バッオン!』

『ウォ!?』

 

オンバーンの強力なばくおんぱが命中する。しかし怯んでいるだけでなく、ウォーグルはすぐにばくおんぱの範囲外へと逃れた。

 

「ウォーグル!ブレイククロー!」

『ウォー!』

「ドラゴンクローで迎え撃てー!」

『バオン!』

 

ウォーグルはブレイククロー、オンバーンはドラゴンクローで正面から対抗する。互いの攻撃は弾き合い、両者共ダメージを負っている印象は見受けられない。どちらの攻撃も互角のようだ。

 

「続いてぼうふう!」

『ウォッグ!』

『バオっ!?』

 

今度はウォーグルの強力なぼうふうがオンバーンを捉えた。ぼうふうの威力に苦しんでいるオンバーンの様子から、長く受け続けているとマズイと感じすぐに空へと逃げるように指示をだした。

 

「オンバーン!空に逃げるんだ!」

『オオン!』

「ウォーグル!追いかけろ!」

『ウォー!』

 

オンバーンはぼうふうから逃れるために空に高く飛び、ウォーグルもオンバーンを追いかけ空高く飛び上がった。バトルフィールドは翼を持つもののみに許される場所、天空へと移ったのだった。

 

空高くに飛んだオンバーンとウォーグルはドラゴンクロー、ブレイククローを何度もぶつけ合い火花を散らしていた。地上の観客やトレーナーたちからも、その激しく散る火花からなんとなくバトルの様子が見えていたのだった。

 

「ばくおんぱ!」

「ぼうふう!」

 

トレーナーの指示が風に乗って聞こえたオンバーンとウォーグルは、トレーナーの指示通りばくおんぱとぼうふうを繰り出した。お互いの強力な攻撃は空中で混ざり合い大きな爆発を引き起こした。

 

「オンバーン!ドラゴンダイブ!」

「ウォーグル!ブレイブバード!」

『バッオン!』

『ウォッグ!』

 

そして二人はとっておきの大技、ドラゴンダイブとブレイブバードを繰り出した。オンバーンのドラゴンダイブが上から降り注ぎ、ウォーグルのブレイブバードが下から突き刺さる。お互い強力な技であったため再び爆発が引き起こり、両者共大きなダメージを負って天空から落ちてきた。

 

「っ!?ウォーグル!」

「オンバーン!」

 

天空から落ちてくる二匹はトレーナーの声により意識を取り戻す。空中ですぐさま態勢を整えた両者は、再び向かい合い突進した。

 

「ドラゴンクロー!」

「ブレイブクロー!」

 

お互いの鋭いツメが両者の姿を捉え同時にヒットする。しかし今度はぶつかり合うのではなく、お互いの攻撃が腹部と顔面、それぞれにヒットして確実なダメージを与えた。その強大なダメージによって、両者とも力なくフィールドに落ちてしまった。

 

「ウォーグル!?」

「オンバーン!?」

『うぉ……』

「ばっおん……」

「ウォーグル、オンバーン!両者共に戦闘不能!」

 

結果はダブルノックダウンと言う結果に終わった。息をする暇もない戦いであったが、ひこうタイプ同士の熱い空中戦、スピードの速い展開に観客たちもついて行くのが難しい状態となっている。それでも熱い戦いの前に盛り上がらずにはいられず、歓声はさらに大きく地響きが起きているのではと錯覚するほどのものとなっていった。

 

「ウォーグル、お疲れ。戻って休んでてくれ。」

「オンバーン、戻って。お疲れ様ー。」

 

引き分けだったもののお互い最後まで健闘したパートナーをモンスターボールへと戻し労いの言葉を贈る。これで現在の戦況を整理すると、ヨウの残りポケモンはダメージを残したピカチュウと後ろにもう一体。そしてハウの残りポケモンはラスト一体のみとなった。数的有利なのはヨウではあるがピカチュウも残り体力は僅か。見た目ほど対して差はないだろう。

 

ハウは最後のポケモンが入ったモンスターボールを手に取る。そして想いをそのポケモンに乗せ、フィールドに投げるのだった。

 

「……お願い!ジュナイパー!」

『ジュッパァ!』

 

モンスターボールから出てきたのは彼の一番のパートナーポケモンであるジュナイパーだ。対するヨウは……。

 

「もう一度頼む!ピカチュウ!」

『ピカッチュウ!』

 

意気揚々と出てきたのはピカチュウであった。しかし先ほどのクワガノンとの戦いのダメージが回復していないのか、肩で息をしている様子が見えていた。間違いなくまだ体力は戻っていない。

 

「おれは……おれとジュナイパーは負けないよー!ジュナイパー!かげぬい!」

『ジュッパ!』

 

ジュナイパーは懐から取り出した弓でピカチュウに狙いを定める。ジュナイパー専用の技、かげぬいはゴーストタイプの技であり相手の影を捉え逃げ道を塞ぐ特殊な技だ。命中したらダメージもタダではすまないのは言うまでもない。

 

「ピカチュウ!でんこうせっかで捉えさせるな!」

『ピカ!ピカピッカァ!』

 

ピカチュウはでんこせっかで相手のジュナイパーに自分の姿を捉えさせないように撹乱する。狙いをつける必要のあるかげぬいでは捕まえるのは難しいだろう。

 

ピカチュウは自慢のスピードで撹乱しながらジュナイパーとの距離を詰める。そして一瞬で目の前まで距離を詰めたピカチュウは一気に攻勢に出た。

 

「今だ!アイアンテール!」

『ピカァ!』

 

ピカチュウは硬化した尻尾、アイアンテールを振りかぶって速攻攻撃を仕掛ける。弓を構えているジュナイパーに対して接近戦は最適な判断。すぐに避けるのは厳しいだろう。誰もがそう思った時、ジュナイパーの姿が目の前から消え失せたのだ。

 

「なに!?」

『ピカ!?』

 

ジュナイパーのゴーストタイプの技、ゴーストダイブだ。狙いをつける必要がある以上、どうしてもその間に隙ができてしまう。その隙を補うため、二人は出来る限り可能な対策を施していたのだ。かげぬい中に接近されたらゴーストダイブで影に潜み躱すという対策を。

 

「ジュナイパー!狙い撃てー!」

『ピッカ!?』

 

ジュナイパーのかげぬいは見えないところから狙撃されピカチュウを影ごと射抜いた。その攻撃で限界が訪れたピカチュウは地面に倒れ伏せて目を回していた。

 

「ピカチュウ!」

『ぴっかぁ……』

「ピカチュウ戦闘不能!ジュナイパーの勝ち!」

 

ピカチュウは戦闘不能を宣告された。速攻作戦自体は悪くなかったが、ハウはそれを読んでさらに上を行っていた。先ほどはヨウの対応力に驚かされたハウだが、今度はパートナーとのコンビネーションによってヨウのことを驚かせた。

 

「だけど、パートナーとのコンビネーションならこっちも負けてないぜ?頼むぞ!ガオガエン!」

『ガオウッ!』

 

ヨウが一番のパートナーであるガオガエンを繰り出した。お互い残されたポケモンは一匹のみ。そしてそのポケモンは両者が最も信頼するポケモン、パートナーである。泣いても笑っても、これが決勝戦進出を決める戦いである。

 

「ジュナイパー!かげぬい!」

『ジュパァ!』

 

ジュナイパーは再びかげぬいを発射する。今度は先ほどよりも素早く狙いをつけ、即座にガオガエン目掛けて射抜いた。

 

「ガオガエン!ビルドアップ!」

『ガオウ!』

 

ガオガエンはビルドアップで肉体を強化し攻撃力と防御力を高める。それによりガオガエンはかげぬいを弾き飛ばしてジュナイパーの攻撃を防ぐのだった。

 

「ニトロチャージ!」

『ガウッ!』

 

ガオガエンは身体を燃え上がらせ、熱い炎を纏った状態でジュナイパーに突進する。ニトロチャージは使用すれば使用するほど自身の素早さを上げる技だ。ガオガエンはビルドアップで攻撃力と防御力を高め、ニトロチャージで素早さも上げるという作戦だろう。

 

しかしその攻撃は簡単にジュナイパーを捉えることは出来なかった。

 

「ジュナイパー!ゴーストダイブー!」

『ジュパァ』

 

ジュナイパーはゴーストダイブにより再び姿を消す。それによりガオガエンのニトロチャージは命中することなく不発に終わってしまう。

 

態勢を崩してしまったガオガエンを確認したジュナイパーは影から姿を現し、背後からガオガエンを蹴り飛ばす。それにより距離が離れ、再びジュナイパーの適性距離となった。

 

「リーフストーム!」

『ジュッパァ!』

 

ジュナイパーは鋭い葉の嵐をガオガエンに叩きつける。ガオガエンは防御するも、このままではジリ貧で倒されるのも時間の問題だ。

 

「っ!ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガオゥ!』

『ジュパ!?』

 

ガオガエンはベルトの中心からかえんほうしゃを放つ。くさタイプに効果抜群な炎がリーフストームを焼き尽くしジュナイパーを飲み込んだ。効果抜群の攻撃を喰らってしまい、ジュナイパーは溜まらず膝をついてダウンしてしまう。

 

「今だ!ニトロチャージ!」

『ガウッ!』

 

ガオガエンが再びニトロチャージで接近する。先ほどのダメージが余程大きかったのか、ジュナイパーは避けることができずニトロチャージの直撃を受けてしまう。ガオガエンのスピードも先ほどに比べて明らかに上昇していた。

 

「くっ!連続でかげぬいー!」

『ジュパッ!ジュパ、ジュパッ、ジュッパァ!』

「DDラリアットで防御だ!」

『ガウッ!』

 

空中で態勢を整えたジュナイパーはかげぬいで連続攻撃を仕掛ける。対してガオガエンはDDラリアットで全身を使い防御態勢に入る。

 

ジュナイパーの連続かげぬいを防いでいくガオガエンだが、それにも限界があり次第に勢いが弱まり防ぎきれなくなってしまった。その瞬間を狙われ、かげぬいがガオガエンの急所にクリーンヒットしたのだった。

 

『ガッ!?』

「ガオガエン!?」

 

今度はガオガエンが膝をつくが、最大のチャンスだったもののジュナイパーもダメージを抱えているため攻めきることができず目に見えて疲労を感じさせている。

 

ならばもうここで最後の攻勢に出るしかないと、ハウはラストチャンスと考えジュナイパーと心を一つにした。

 

「行くよー!ジュナイパー!」

『ジュッパ!』

 

ハウのZリングが光り輝く。その輝きはジュナイパーとハウの心を繋ぎ、互いのZパワーを最大まで高めていく。

 

「おれたちの絆、想い、このZ技にのせて届ける!ヨウ!これがおれたちの全力だよー!」

『ジュッパァ!』

 

ジュナイパーの周囲にかげぬいと同じ影の力が込められた矢が無数に構えられていた。これはゴーストタイプのZ技、無限暗夜への誘いではなく、ジュナイパー専用のZ技、シャドーアローズストライクだ。

 

 

 

 

 

 

 

――シャドーアローズストライク!

 

 

 

 

 

 

 

Z技発動と同時に飛び上ったジュナイパーが矢と同時に飛び上る。そしてガオガエンに向かって矢と共に突っ込んでいった。

 

無数のかげぬいを受けてしまえば大きなダメージを負ってしまっているガオガエンは一溜りもない。しかし予想以上にダメージがあるのかガオガエンは避ける程の体力が残っていない。

 

(くっ、それなら一か八か……賭けるしかない!)

「ガオガエン!俺は信じてる!ビルドアップ!」

『ガオッ……ガオウッ!』

 

ガオガエンはビルドアップで更に肉体を高め、ジュナイパーのZ技に備える。避けることができないのならば、耐えられるように祈るしか手段がない。ヨウはガオガエンを信じ、ジュナイパーのZ技を正面から受ける覚悟をした。

 

ジュナイパーの無数のかげぬい、シャドーアローズストライクがガオガエンに炸裂し大きな爆発が会場を包み込んだ。凄まじい威力に周囲にもその余波が襲っていた。これほどの威力があればガオガエンも一溜りもないだろう、そう誰もが思った。

 

しかし結果は想像とは大きく異なり、爆風が止むとそこには驚きの光景が広がっていた。

 

「なっ!?そ、そんな!?」

『ジュパァ!?』

 

そこにはジュナイパーを正面から受け止め、ジュナイパーを前に立っているガオガエンの姿があった。お前の攻撃を耐えきったぞ、と言わんばかりにガオガエンはニヤリと口角を上げ、反撃の態勢へと移っていた。

 

「今度はこっちの番だ!行くぞ!ガオガエン!」

『ガオウッ!』

 

今度はヨウとガオガエンのZパワーが高まり二人を熱いオーラが包み込む。それと同時にガオガエンはジュナイパーを投げ飛ばし、その先にはZパワーで出来たリング場が姿を現す。

 

「これが俺たちの全力全開!俺たちの魂を受け取れ!ハウ!」

 

ヨウたちの全力全開のZ技。それはあくタイプのブラックホールイクリプスとは異なり、ガオガエン専用のZ技であるハイパーダーククラッシャーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ハイパーダーククラッシャー!

 

 

 

 

 

 

 

 

ガオガエンは走り出しリングのコーナーでポーズを取る。そして倒れているジュナイパーの頭上に飛び上り、強靭な肉体全体を使って全体重で圧し掛かる。その衝撃波凄まじく、ジュナイパーを巻き込んだ爆風が一面に広がり再び会場を包み込んだ。

 

またもや大技が決まり観客たちも息を飲み込む。今度はどうなったか、と確認していると、爆風が晴れたそこにはガオガエンが立っていて、ジュナイパーが目を回して倒れていた。

 

『……ガッウゥ!』

『じゅっ……ぱぁ……』

「ジュナイパー!戦闘不能!ガオガエンの勝ち!よって勝者!ヨウ選手!」

 

ガオガエンの勝利ポーズと共に、勝者の名前が宣言される。ヨウの決勝進出が確定した瞬間であった。

 

「よし!やったな!ガオガエン!」

『ガオウッ!』

「あっちゃー、負けちゃったかー。悔しい……けど楽しいバトルだったなー!お疲れ様、ジュナイパー。ゆっくり休んでてー!」

 

ヨウとガオガエンは喜びを分かち合いハイタッチを交わす。それとは対照的にハウは悔しいと口にしながらもその顔はいつも通りのにこやかな笑顔で、悔しい以上に楽しいという感情の方が強いようだ。

 

「ヨウ!決勝進出おめでとうー!」

「ありがとう、ハウ!」

「次の決勝はリーリエかグラジオだねー。どっちも強敵だけど、絶対優勝してよねー!おれ応援してるから!」

「ああ、もちろんだ!絶対に勝って、チャンピオンに挑戦してみせる!」

 

ヨウとハウは互いの健闘を称え、最高のライバルとしてハイタッチを交わした。その両者の心意気に、観客たちも彼らを称えて拍手の嵐を贈ったのだった。

 

決勝にはヨウが進出し、残る一枠を争うのはリーリエとグラジオ。そして当のリーリエ本人はと言うと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨウさんが勝った。そして次は私。私の対戦相手は……お兄様」

 

次の対戦相手の姿を思い浮かべ、緊張から手をグッと握り締め緊張している様子であった。

 

「ですが、絶対に負けるわけには行きません。例え相手がお兄様でも、私の目標はその先ですから!」

 

兄を超え、さらにその先にある目標を目指し、彼女は歩みを進めるのだった。




アンケートはギリギリまで受け付けてますよー!


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リーリエVSグラジオ!決勝めぐる兄妹バトル!

兄妹バトル開幕


準決勝第一試合、ヨウVSハウの戦いは熱い接戦の中ヨウが制し決勝進出を決めた。

 

そして続く準決勝第二試合、グラジオVSリーリエの兄妹対決が始まろうとしていた時だった。

 

「えー!?あのグラジオって人、リーリエさんのお兄さんなんですか!?」

 

待合室にてリーリエはヒナと話していた時、彼女から衝撃の真実を教えられた。パッと見た印象ではグラジオとリーリエの雰囲気は似ても似つかないが、容姿を思い出してみると目の色や髪の色、顔立ちなどもそっくりであると納得する。

 

「リーリエさんはお兄さんと戦うことに抵抗はないんですか?」

「抵抗とかは特にないです。むしろ抵抗とか緊張とかよりも、不思議とワクワクしているんです。」

「ワクワク……ですか?」

「今までお兄様は私にとって遠い存在でした。会話することも殆どなかったですし、トレーナーとしても憧れていました。トレーナーとして戦った時も、私はまだまだ未熟でお兄様に手も足も出ませんでしたから。」

 

確かに、先日の戦いであるプルメリとの戦いでは目が離せないほどのバトルを繰り広げていたし、明らかに只者ではないオーラを纏っている気がする。まだまだ新米トレーナーであるヒナからしても、彼はより高みにいるトレーナーであることはなんとなく分かる。

 

リーリエは以前兄と戦った記憶を思い返す。初めてのバトルロイヤルによる戦いのときも、Z技の指導をされた時も、どちらも軽くあしらわれてしまって歯が立たなかった。しかし今は……

 

「ですが今はお兄様と同じ舞台に立ち、正面から戦うことができるのが嬉しいんです。成長した私のバトルを見てもらえる、全力で戦ってくれる、ようやくお兄様と同じフィールドに立てることがとても嬉しいんです!」

 

笑顔で拳を握りながらそう答えるリーリエ。彼女の瞳は戦うことだけを目的としているのではなく、その先にある勝利を見据えたトレーナーの強い瞳であった。やはり自分の尊敬したトレーナーはすごい人なのだと改めて感心する。

 

「リーリエ選手、そろそろ準備をお願いします。」

「あっ、はい!分かりました!」

 

スタッフが扉を開け待合室のリーリエを呼びに来た。リーリエは興奮する気持ちを落ち着かせ、兄の待つフィールドへと向かうことにする。

 

「リーリエさん!私、応援してますから!絶対に勝って優勝してください!」

「ヒナさん……はい!頑張ります!」

 

ヒナの応援を受け、リーリエは会場へと向かっていく。頬をパンパンッと叩き、改めて気合を入れ直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエは司会の紹介と共にフィールドに立つ。すると目の前には腕を組みリーリエのことを待っているグラジオの姿があった。

 

「お兄様……」

「……来たか、リーリエ。」

 

リーリエが来たことを確認すると、グラジオは妹でありライバルでもあるリーリエの瞳を真っ直ぐと見つめる。

 

「……ふっ、いい眼をしている。まるであいつみたいだな。」

 

グラジオは小さく呟く。その声はリーリエの耳まで届くことはなかったが、ポケモントレーナーであれば語り合う方法はただ一つ。バトルに乗せて、兄に自分の成長をすべて伝える。そう考えたリーリエはモンスターボールを手に取り既に準備万端であった。それと同時にグラジオも最初のポケモンが入ったモンスターボールを手に取った。

 

「ったく、どっちもやる気満々ってわけね。ま、軽くなんて野暮なこたぁ言わねぇよ。思う存分ドンパチやりな。」

 

準決勝第二試合の審判を務めるのはウラウラ島のしまキング、クチナシであった。両者の準備ができているのだと確認すると、試合の合図を出すのであった。

 

「それではこれより、準決勝第二試合を始める。使用ポケモンは今まで通り3対3。両者、ポケモンを。」

 

クチナシの合図とともに、リーリエはモンスターボールを投げる。

 

「お願いします!チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

リーリエが最初に繰り出したのは彼女のパーティにおける切り込み隊長、チラチーノであった。対してグラジオが繰り出したポケモンは……。

 

「……行くぞ!シルヴァディ!」

『シヴァア!』

「っ!?し、シルヴァディさん!?」

 

最初に繰り出されたポケモンを見てリーリエは驚きを隠せなかった。なぜならそのポケモンは彼にとって相棒でもあるシルヴァディだったからだ。初手から自分のエースポケモンを出す大胆な行為に、兄には何か考えがあるのだろうと考えるリーリエ。

 

「それではバトル、始め!」

 

兄の思考を読んでいる中、バトル開始の宣言がされグラジオ対リーリエのバトルが始まる。その直後に動いたのはリーリエではなくグラジオの方であった。

 

「突っ込め!シルヴァディ!」

『シヴァ!』

「っ!?来ますよ!チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

相手はあのシンジとライバル関係にあるグラジオだ。考えても思考で彼の上を超えていくのは難しい。ならば例え兄が何を考えていようと正面から自分の戦いをするしかないとチラチーノと共に身構える。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラチ!』

 

充分に接近してきたシルヴァディに対して、チラチーノはスイープビンタで迎え撃つ。しかしシルヴァディは自慢の身のこなしでその攻撃をスレスレの位置で回避し後ろに回り込む。

 

「かえんほうしゃだ!」

「っ!?かわしてください!」

 

シルヴァディは背後に回ると同時に振り向いてかえんほうしゃによる反撃をしてくる。チラチーノはその攻撃が命中する前に空振りしたスイープビンタを地面に叩きつけ、咄嗟に上空に飛び跳ねて回避するのだった。

 

「スピードスターです!」

『チラッチ!』

 

チラチーノは空中からスピードスターで反撃する。これは決まった、そう確信していた2人だが、その時シルヴァディが衝撃の技を放ち驚愕することになった。

 

「……ナイトバースト!」

『シッヴァ!』

「な、ナイトバースト!?」

 

シルヴァディが暗黒に染まった衝撃波を放つと、スピードスターを次々と消し去りチラチーノに接近する。空中で咄嗟に動きをとれないチラチーノはナイトバーストの直撃を受けて地面に叩きつけられ、大きくダメージを受けてしまった。

 

「チラチーノさん!」

『ち……ラァ!』

 

リーリエの声に答えてチラチーノは立ち上がる。どうやらまだまだ体力に問題はないようだ。しかし一番の問題はリーリエの中で完結していた。

 

シルヴァディの使った技ナイトバースト。それは本来シルヴァディが覚えることができず、あるポケモンが習得することで有名な技の一つである。つまりグラジオの繰り出したポケモンの正体は……。

 

「流石に気付いたか。もう戻っていいぞ、ゾロアーク。」

 

グラジオの指示に従い自分の姿を変えていくシルヴァディ。その正体は彼のエースであるシルヴァディではなく、ばけぎつねポケモンのゾロアークであった。

 

ゾロアークの特性はイリュージョン。手持ちのポケモン一体に化け、相手を視覚的に騙す特性だ。しかし使用できる技は自身の技のみなので、騙せるのは戦闘の序盤のみであろう。それでも今回はリーリエに刺さった戦術だったのは間違いない。

 

今まで彼がバトルでゾロアークを見せたことはなかった。恐らく彼にとってこの時のための隠し玉と言ったところだろう。結果、その戦術によりリーリエのチラチーノは初手から大きくダメージを負ってしまい不利な状況に追い込まれた。

 

「ゾロアークさん……まんまと騙されてしまいましたが勝負はまだまだこれからです!」

「来るぞ。気を抜くなよ、ゾロアーク。」

『ゾロアッ』

「チラチーノさん!あなをほる!」

『チラッ!』

 

相手が翻弄してくるならこちらも翻弄し返すまでだ、とチラチーノ得意の戦術に切り替える。あなをほるで相手の死角から攻撃して流れを強引にでも引き戻す作戦だ。しかしその戦術はグラジオとゾロアークの前には無意味だった。

 

「ゾロアーク!シャドークロ―!地面に突き立てろ!」

『ゾッア!』

 

ゾロアークは鋭いツメを地面に突き刺し地面を引き裂いた。その衝撃であなをほるで地中にいたチラチーノは溜まらず上空に追い出されてしまった。

 

『チラッ!?』

「チラチーノさん!?」

「とどめだ!つじぎり!」

『ゾロッ』

 

ゾロアークは素早い動きでチラチーノの体を貫き、一瞬でチラチーノを切り裂いた。チラチーノはその一撃によるダメージで力なく地面に墜落してしまい目を回していたのだった。

 

「チラチーノ、戦闘不能。ゾロアークの勝ち。」

 

初戦を制したのはグラジオのゾロアークであった。チラチーノが自分の戦いで流れを引き寄せる前にグラジオの戦術に引っ掛かってしまい流れを持っていかれてしまった。これは明らかなグラジオの戦略勝ちである。

 

「チラチーノさん、お疲れ様。ゆっくり休んでいてください。」

 

グラジオの練られた戦略、的確な状況判断力、間違いなく彼はシンジにも匹敵しうるトレーナーであるとリーリエは再認識する。それと同時に、絶対に勝たなければならない相手でもあると頬を叩いて改めて気を引き締める。

 

「……よし!シロン!お願いします!」

『コォン!』

 

次にリーリエが繰り出したのは彼女の相棒でもあるシロンだ。フェアリータイプを持つシロンであればあくタイプのゾロアークに対して有利に立ち回れる。問題はシロンがゾロアークの変則的かつ素早い動きにどこまで追いつくことができるかだが。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

先ほどとは打って変わって、今度はリーリエ側から攻撃を仕掛ける。

 

「ゾロアーク!かえんほうしゃ!」

『ゾロアァ!』

 

シロンのこおりのつぶてをゾロアークはかえんほうしゃの熱い炎で全て溶かして打ち消した。

 

「シャドークロー!」

「かわしてもう一度こおりのつぶてです!」

 

ゾロアークの素早い動きから繰り出される鋭い一撃をシロンはバックステップして回避する。そしてすかさずに再度こおりのつぶてを放ち反撃する。

 

ゾロアークは咄嗟に腕で防御するもさすがにダメージを完全に防ぐことは出来ず、貫通してダメージを受けてしまい顔を歪ませる。

 

「ちっ、ナイトバースト!」

『ゾロッ!』

「ムーンフォースです!」

『コォンッ!』

 

ゾロアークはダメージを負いながらもナイトバーストで反撃する。シロンはナイトバーストによる衝撃波に対してムーンフォースで迎え撃つ。先ほどのダメージもありナイトバーストの威力は減少しており、その上フェアリータイプのムーンフォースに対してあくタイプのナイトバーストは相性が悪い。

 

ムーンフォースの一撃がナイトバーストを貫きゾロアークに直撃する。効果抜群の技を喰らってしまい、ゾロアークは大きくフィールドの端まで飛ばされてしまった。

 

「ゾロアーク!」

『ぞ……ろぉ……』

「ゾロアーク、戦闘不能。」

 

ゾロアークが戦闘不能となり、今度はリーリエが流れを取り返す。これで互いに残りポケモンは2体となり、シロンも無傷のままバトルを終えたため戦況としては両者五分の状態に戻った。

 

「……やはり一筋縄ではいかない相手だな。」

 

グラジオはふっ、と微かに微笑むと妹の成長を心の中で感じ取り、喜びと同時にライバルとして負けられないと気を引き締める。そして次のポケモンが入ったモンスターボールを手に取り、フィールドに投げるのだった。

 

「……頼むぞ!クロバット!」

『カカッ!』

 

次にグラジオが繰り出したのはどく・ひこうタイプのクロバットだ。そのクロバットの姿を見たリーリエは、以前出会ったカントーでの一人のライバルのことを思い出した。

 

どくタイプを持つクロバットに対してフェアリータイプのシロンは相性が悪いが、対してクロバットはひこうタイプも併せ持っているのでこおりタイプのシロンに対しても相性が悪い。しかし、ひこうタイプ特有の空を舞う自由な動きは捉えるのが難しい。ここは冷静に、シロンではなくあのポケモンに任せた方がよさそうだと冷静に判断する。

 

「シロン、一度戻ってください。」

 

リーリエはシロンをモンスターボールに戻した。そしてクロバットに対抗して次に繰り出したのは……。

 

「お願いします!カイリューさん!」

『バォウ!!』

 

リーリエが次に繰り出したのは同じひこうタイプを持つカイリューだ。空を自由に飛び回ることのできるひこうタイプには同じひこうタイプ。ある意味セオリー通りの戦術と言えるだろう。

 

グラジオはこの大会でカイリューの戦いを確認しており、その力強さをよく知っている。だからこそ注意すべき相手だとクロバットに忠告する。

 

「クロバット!アクロバット!」

『カッ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウッ!』

 

開幕からアクロバットで翻弄しつつ先制攻撃を仕掛けてくるクロバット。対してカイリューはしんそくにより正面から対抗する。

 

クロバットとカイリューが正面から衝突し互いに弾き合う。どうやら互いに様子見の一撃は互角と言ったところのようだ。

 

「やるな……だが!クロバット!ヘドロばくだん!」

『カッ!カッ!』

 

クロバットはヘドロを連続で発射しカイリューを狙い撃つ。カイリューは空を飛んでその攻撃を避けていくが、無数に放たれるヘドロばくだんに次第に追い詰められていく。

 

「今だ!どくどくのキバ!」

『カカッ!』

『バオゥ!?』

 

ヘドロばくだんでカイリューを誘導し、狙い通りの場所に来たカイリューにどくどくのキバが決まる。それと同時にどくどくのキバの追加効果によりカイリューが毒状態となってしまいより一層追い詰められてしまった。

 

「カイリューさん!?」

『ば……オウッ!』

 

カイリューは毒で苦しみながらもリーリエの期待に応えるために自身を奮い立たせてまだまだ行けると意思表示をするため空高く吠えた。しかしそれでもこの追加ダメージは深刻なもので、彼女たちは短期決戦を強いられる結果となる。

 

「まだまだこれからです!カイリューさん!げきりんです!」

『バウッ!バオウゥ!』

 

カイリューは逆鱗状態に移行しすぐに勝負を決める態勢になったのだった。リーリエの思い切った戦術に、グラジオは面白いと口角を上げ、望むところだと迎え撃つ姿勢に入る。

 

「クロバット!アクロバット!」

『カカ!』

「受け止めてください!」

『バオゥ!』

 

カイリューはアクロバットで正面から突っ込んでくるクロバットを受け止める。逆鱗状態であるカイリューのパワーには流石のクロバットでも互角で打ち勝つことはできない。しかしグラジオたちの狙いは別にあったのだった。

 

「ヘドロばくだん!」

『カッ!』

『バオウっ……』

 

クロバットは掴まれた状態のままヘドロばくだんで反撃する。ゼロ距離であれば防御もできず回避もできないと踏んでの敢えての超接近戦を仕掛けたのだ。カイリューに命中したヘドロばくだんによって2人を衝撃が包み込む。

 

次の瞬間、衝撃から姿を現したのはクロバットであった。クロバットは風に乗り上空に上がるが、爆風からカイリューの姿が見えない。どうなったのかと様子を見ていると次の瞬間……。

 

『バオウッ!!』

『カッ!?』

 

カイリューが猛スピードで爆風から姿を現しクロバットの目前まで飛んできた。そのまま逆鱗状態の怪力でクロバットを地面に叩きつけた。クロバットもそれには堪らず大ダメージを受けてしまい、先ほどまでの元気がなくなってきていた。

 

「くっ、さすがにマズいか。ヘドロばくだん!」

『カカ!』

「かわしてしんそくです!」

『バウゥ!』

 

カイリューは逆鱗状態でありながらも冷静にヘドロばくだんを回避しスピードを上げてクロバットに向かって突っ込んでいった。

 

「っ!?アクロバット!」

『カッ!』

 

クロバットは再び空に飛び上りアクロバットで反撃する。お互いの技が衝突し、爆風が発生したと同時に両者地面に墜落する。よく見ると両者共目を回していて、どちらも戦闘不能になっているのが分かった。

 

『ば……おうっ……』

『か……かか……』

 

「クロバット、カイリュー、共に戦闘不能。」

 

ダブルノックダウンだ。カイリューも毒の継続ダメージが大きく、クロバットもカイリューの高い攻撃力で一気に体力を削られたのだろう。かなりの激戦だったが、両者共に最後のポケモンに勝負が託された。

 

「お疲れ様です、カイリューさん。ゆっくり休んでください。」

「ご苦労だったクロバット。あとは任せてくれ。」

 

お互い残るポケモンはラスト一体。妹の成長を実感したグラジオは、最終戦の前にリーリエに声をかける。

 

「リーリエ。」

「お兄様?」

「正直ここまでやるとは思っていなかった。俺をここまで追い詰めるとはな……ふっ、成長したな。」

「お兄様……」

「だが、勝負に勝つのはこの俺だ。お前の全力、俺とシルヴァディが受け止めてやる!」

「……はい!ですが、私たちは負けません!」

「ふっ、行くぞ!シルヴァディ!」

「お願いします!シロン!」

『シヴァア!!』

『コォン!』

 

両者最後に残ったポケモン、シルヴァディとシロンが姿を現した。兄妹バトルファイナルラウンド。この戦いに勝った者が決勝に進出できるのだ。

 

お互いの間に緊張が走る。そして観客たちも一瞬の静寂に息を呑む。刹那、最初に動いたのはリーリエだった。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

まずはリーリエとシロンの常套戦術、こおりのつぶてで先制攻撃を仕掛ける。しかしその攻撃はグラジオも当然読み切っている。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァヴァヴァ!』

 

シルヴァディは無数のエアスラッシュでこおりのつぶてを切り裂いた。シロンの攻撃が止んだ時、今度はグラジオたちが動きを見せる。

 

「シルヴァディ!炎の鎧をその身に纏い、凍てつく氷を溶かし尽くせ!」

 

シルヴァディは赤色のディスクをシルヴァディに投げる。ディスクのメモリをシルヴァディの頭部がインプットし、トサカと尻尾を真っ赤に染め上げる。ファイアメモリによりシルヴァディはノーマルタイプからほのおタイプへと変化した。変わりにこの戦闘中Z技の使用は制限されてしまう。

 

「シルヴァディ!そのまま突っ込め!」

『シヴァ!』

「来ます!シロン!」

『コォン!』

「ブレイククロー!」

『シヴァア!』

 

シルヴァディはツメを鋭く尖らせ攻撃態勢を整える。対するシロンは向かってくるシルヴァディに対抗するため身構え反撃の態勢をとる。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コン!』

 

シロンはこなゆきでシルヴァディに細かいダメージを与えながら地面を凍らせていく。しかしその行動をもグラジオは読んでいた。

 

「シルヴァディ!」

『シヴァ!』

 

シルヴァディはグラジオの合図と共に地面を抉り裂いてジャンプした。ブレイククローで鋭く尖らせていたことにより、地面が氷漬けになっても足場が不安定になることなく跳び上がることができたのである。

 

「マルチアタック!」

『シヴァ!』

『コォン!?』

 

シルヴァディのマルチアタックがシロンに炸裂する。シロンは強力なマルチアタックに吹き飛ばされてしまい大きくダメージを負ってしまう。

 

それだけでなくマルチアタックはシルヴァディのタイプに応じたタイプに変化する特殊な技だ。現在ほのおタイプのシルヴァディが放つマルチアタックは同じほのおタイプに変化し、シロンに対して効果抜群となっている。これは想定以上のダメージが入ったことは間違いないだろう。

 

「続けてラスターカノン!」

『シヴァア!』

「っ!?かわしてください!」

『こ……コォン!』

 

立て続けに放ったシルヴァディの技ははがねタイプのラスターカノン。こおり・フェアリータイプを持つシロンに対して非常に有効な技で命中すると一溜りもない、と慌ててシロンに回避の指示を出す。なんとか立ち上がり回避するも、肩で息をしていてこれ以上はかなり厳しそうな様子である。

 

「エアスラッシュ!」

『シヴァヴァ!』

「れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シルヴァディのエアスラッシュをれいとうビームで打ち消していく。この状況を打開するならあの技しかないと、リーリエはシロンの名前を呼ぶ。

 

「シロン!」

『コォン』

「私たちの全力、お兄様に見せましょう!」

『……コォン!』

 

リーリエとシロンは目を合わせ、お互いに頷いて気持ちを一つにする。グラジオは来るか、と微笑むとシルヴァディと共に身構えてZ技を受ける態勢を整える。

 

「お前たちの全力、俺たちにぶつけてみろ!」

『シヴァアア!』

「行きます!お兄様!」

『コォン!』

 

シロンは手をクロスさせ気持ちを落ち着かせ、シロンと一つになるため気持ちを集中させる。全力の一撃を放つために集約されたパワーがリーリエのZリングを伝わってシロンに届いていく。

 

「これが私たちの全力……私とシロンの全て……」

『コォン』

 

集約されたZパワーが氷の柱となってシロンを上空に持ち上げる。そしれシロンの身体全体をリーリエのZパワーが纏って全力の一撃が放たれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!!

 

 

 

 

 

 

シロンから放たれる大気が凍るほどの氷のブレス。その一撃がシルヴァディ目掛けて飛んでいく。これほどの攻撃を避けることは非常に困難で、例えよけられたとしてもその衝撃による余波で結果的にダメージを逃れることはできない。

 

ならばここは迎え撃つしかない。元よりそのつもりだったグラジオとシルヴァディは、自身の身体の一部に力を集中させる。

 

「俺たちも全力で応える!シルヴァディ!マルチアタックッ!」

『シヴァア!』

 

シルヴァディの脚に炎の力が集中し、氷のブレスと正面から衝突し合う。Z技とは言えポケモンの相性を覆すのは実際のところ困難である。炎の力が次第にZ技を溶かしていき、熱い熱量で氷のブレスを溶かし尽くした。

 

Z技を受けきったことでグラジオ本人も、観客も全員が勝負の行く末が決まったと思った。しかし目の前の状況を見た時、グラジオは驚きの光景に驚愕した。

 

「なにっ!?シロンがいない!?」

『シヴァ!?』

 

そこには氷の柱はあるものの、シロンの姿が見当たらなかった。一体なぜなのだと思った時には既に遅く、まさかと思い上空を見上げる。

 

シルヴァディの頭上に飛び上っていたシロンの姿があった。シルヴァディがZ技に対抗し破られる瞬間、シロンは彼の死角を取り隙を突いたのである。

 

「まさか……Z技を囮にするだとっ!?」

 

リーリエの戦術は驚くべきことに、アローラのトレーナーにとって最大に切り札ともいえるZ技を囮にすることであった。もちろん最初から囮にするつもりがあったのではなく、兄であるグラジオならばこのぐらいのことはやってくるであろうと読んでの行動である。戦略的にグラジオが一歩先を行っていたと思われていたが、最後にそのグラジオを妹であるリーリエが超えたのである。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コン!コォン!』

 

シロンは自分が持つ最大火力、全力のムーンフォースを頭上から放った。シルヴァディは受け止めたとはいえZ技の衝撃によるダメージがないわけではない。不意打ちであったことも加え、回避行動にも防御にも移ることができずムーンフォースの直撃を受けてしまった。

 

『し……ヴぁあ……』

「シルヴァディ、戦闘不能。キュウコンの勝ち。よって勝者、リーリエ。」

 

ムーンフォースの一撃でシルヴァディは戦闘不能となった。これでグラジオの手持ちのポケモン3体が戦闘不能となり、勝者が決定した。準決勝を勝ち上がり、決勝戦へと進出したのはシロンとそのトレーナー、リーリエだ。

 

「かった……?お兄様に……?」

『コォン!コォン♪』

 

必死過ぎて兄に勝ったことを受け止め切れていないリーリエ。その時感極まってシロンはリーリエに飛びついていく。シロンの声と重みを感じ、ようやくリーリエは兄に勝てたのだと実感することができたのだった。

 

「や、やりました!シロン!やりましたよ!ありがとうございます!」

『コォン♪』

 

ようやく実感した喜びをシロンと共に分かち合う。敗北してしまったグラジオはシルヴァディの傍まで歩く。

 

「シルヴァディ、よく頑張った。お前は自慢の相棒だ。」

 

最後まで健闘したシルヴァディに労いの言葉を贈り、グラジオはリーリエに歩いて近寄った。

 

「リーリエ。」

「あっ、お兄様。」

「ふっ、まさか妹に負ける日が来るとは思わなかったな。」

「私も、お兄様に勝てる日が来るとは思いませんでした。」

「だが、これが現実だ。……ふっ、素直におめでとう、と言っておく。」

「お兄様……。ありがとうございます!」

「だが、次のバトルに勝たなければあいつと戦うことはできないぞ?俺に勝っただけで慢心しないことだな。」

「分かっています。次の対戦相手……ヨウさんはとても強い人ですが、必ず勝ちます!そして……」

 

リーリエの眼を見たグラジオは、つくづくあいつと重なるなとライバルの事を思い出す。これ以上敗者である自分が言うことは何もないと、振り向いとフィールドを立ち去ろうとする。

 

「お兄様!」

「……次にやる時は負けないさ。」

「……はい!私も負けません!」

 

グラジオは背後のリーリエに手を振ってまたのバトルを誓う。リーリエも次バトルした際にも負けないと心に強く決める。

 

そして次はいよいよ決勝戦。対戦カードは一回戦を勝ち上がったヨウと二回戦を勝ち上がったリーリエ。

 

アローラリーグ勝者はたった一人。チャンピオンシンジへの挑戦権を賭けた戦いが遂に幕を上げる!




なぜシルヴァディのマルチアタックはダイマックスすると威力が下がるのか……。

明日は風花雪月無双の出る日ですぞ!


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決勝前夜、リーリエとヨウ、二人の覚悟

グラジオとリーリエのバトルが終了した時、フィールドを見下ろすことのできる一室では……。

 

「代表、グラジオ君とリーリエちゃん。いいバトルをしてましたね。」

「ええ。ここまで接戦になるなんて正直思っていなかったけれど、とてもいい試合だったわ。」

 

彼らの母親であるルザミーネは息子と娘の成長をしみじみに感じ、心からの笑みを浮かべていた。その様子を見た秘書のビッケは彼女の母親としての表情を優しく見守っていた。

 

「さて、チャンピオンの君から見たチャレンジャーたちの印象はどうかしら?」

 

ルザミーネの視線の先にいるのは、チャンピオンとしてチャレンジャーたちの戦いをずっと見守っていたシンジであった。

 

「……チャンピオンとして、であればどちらが勝っても全力で戦うだけです。ですが……」

 

彼は悩みながらもそれ以上口にはしなかった。チャンピオンである彼にとって個人の考えはまた別の問題である。

 

「そう……そう言うところは相変わらずね。」

 

本音で言えばリーリエと戦いたい気持ちがあるのは間違いないのだろう。しかし彼はチャンピオンであるが故に不平等や贔屓することを嫌っている。チャンピオンでありながら少し子どもっぽい部分も捨てきれていない彼の姿に、ルザミーネは大人として微笑ましく感じていた。

 

「明日の決勝戦……楽しみね。」

 

明日行われる決勝戦。チャンピオンシンジへの挑戦権を賭けた戦いを、この場にいる全員が楽しみにしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日、いよいよ決勝戦ですね。」

「はい……正直ここまで来ることができるとは思っていませんでした。」

 

決勝を後日に控えるリーリエだが緊張からあまり寝付けず、夜の外を同室のヒナと散歩して気を紛らわしていた。

 

シンジを目標にここまで戦ってきたリーリエだが、この大会に参加していたライバルたちは誰もが強敵揃いで簡単に勝ち進むことのできないハイレベルな戦いばかりであった。彼女は今まで戦ったライバルたちの顔を思い返す。

 

「私、リーリエさんと初めて出会って、それから強いポケモントレーナーになろうって決めたんです。リーリエさんには本当に感謝しています。だからこそ、リーリエさんには絶対決勝戦で勝ってチャンピオンさんに挑戦してほしいです!」

「ヒナさん……。」

 

ヒナは自分の思いを打ち明け、決勝戦を前にしている彼女に激励の言葉を贈る。その言葉を真摯に受け止めたリーリエは、彼女の思いを受け取り“ありがとう”と感謝の言葉を返す。

 

夜の外は冷えてしまうのでそろそろ帰ろうとしていると、少し離れたところでバチバチっと弾ける火花が彼女たちの目に映った。いったいなんなのだろうかと気になった彼女たちは、その火花の光が見えた場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

リーリエたちが向かっていった場所には、一人の少年とポケモンたちがバトルの特訓を行っていた。

 

「ピカチュウ!アイアンテール!」

『ピッカァ!』

「ガオガエン!DDラリアット!」

『ガウッ!』

 

ピカチュウのアイアンテールとガオガエンのDDラリアットがぶつかり合い再び火花を散らして夜の暗闇を眩しいほどに照らしていた。その光で少年は近付いてくるリーリエたちの姿に気付き振り向いた。

 

「リーリエ、それにヒナちゃん……だったっけ?」

 

その人物はリーリエと決勝で戦うことになったヨウであった。決勝前に最後の調整を行っている、ということだろうか。

 

「ヨウさん……どうしてここに?」

「不安と緊張で眠れなくてさ。気晴らしついでに特訓してたんだよ。」

『ガウゥ』

『ピカァ!』

 

ヨウと同じように、彼のポケモンであるガオガエンとピカチュウも同じ気持ちを抱いていたようだ。これだけの大舞台……それも決勝戦ともなれば緊張しない人はそうそういないだろう。例え彼のように肝っ玉が据わっていても、緊張する時は緊張してしまうものだ。

 

「リーリエはどうして?」

「私も同じです。決勝前の緊張を解すためにこちらのヒナさんと少しお散歩を。」

 

リーリエの紹介と同時に初対面であるヒナは緊張のためか軽く会釈をして挨拶する。

 

「そうか……。」

 

ヨウは何か考える素振りを見せる。すると意を決したのか、リーリエにあることを尋ねた。

 

「リーリエ。」

「はい?なんでしょうか?」

「リーリエの戦い方、やっぱりシンジのバトルを参考にしたものなのか?」

「それほど似ている、のでしょうか?もしそうなのだとしたら、近くでずっと見てきたからだと思います。」

「本人には自覚なし、か。」

 

ヨウはリーリエのその問いに対し小さく呟く。すると対戦相手である彼女に対してこう答えた。

 

「リーリエ。明日は俺たちが必ず勝つ。リーリエに勝って、必ず俺がチャンピオンに挑戦する!」

「ヨウさん……。」

 

ヨウの瞳は真っすぐリーリエを見つめていた。その目は自分だけでなく、自分の先にある目標を見据えている強者の瞳だった。まるで自分の姿を見ているかのように錯覚してしまう。

 

しかし、だからこそリーリエは彼の瞳を見つめ返し、こう返答する。

 

「私たちも同じです。私たちはシンジさんに挑戦するためにここまで戦ってきました。だからそれまで、絶対に誰にも負けるわけにはいきません!」

「……ふふ、そう来なくちゃ面白くないさ。おかげで逆に緊張が解れた。」

 

リーリエの覚悟を聞いたヨウはガオがエンとピカチュウをモンスターボールに戻して振り向く。

 

「……明日が楽しみになってきたよ。お互いに全力を尽くして戦おう。勝っても負けても恨みっこなしの真剣勝負だ。」

「……はい!全力で戦います!」

 

リーリエらしい返答にヨウは微笑み、その場を去って宿泊ホテルに帰っていく。ヨウの背中を見送ったリーリエに、ヒナは疑問に思ったことを問いかけた。

 

「えっと……リーリエさん。一つ聞いてもいいですか?」

「え?はい、なんですか?」

「リーリエさんの前言っていた男の人って、あのヨウさんって人ですか?」

 

リーリエはヒナの問いかけを聞き、以前彼女と話した内容を思い出す。おそらく彼女は憧れの人物と一緒に旅をしたことについて尋ねているのだろう。

 

「いえ、ヨウさんではありません。」

「え?だったら一体……」

 

誰なのかと気になり悩むヒナ。リーリエ的には別に隠すことではないのだが、どう伝えていいか少々戸惑った。

 

「まぁ、みんなが憧れているポケモントレーナーさん、とだけ伝えておきます。」

「……え?もしかしてそれって……」

 

リーリエの言葉でその男性の正体が誰なのか察するヒナ。驚きから咄嗟にその人物の名前を口にしようとするが、リーリエは“しっー”と指を口に当てて止めた。

 

「これ以上はダメですよ。あの人に迷惑がかかってしまいますから。」

 

その人物の立場上あまり公にするのは避けたい。だからこそこれ以上の詮索、他言無用という意味も込めてヒナに念を押しておく。彼女もリーリエの意図を理解して口を押えた。

 

「だったら余計にリーリエさんのことを応援します!必ず勝って、優勝して、チャンピオンへの挑戦権を獲得してください!」

「はい、必ず勝ちます!」

 

必ず勝つ。今までの彼女であれば口にできなかった言葉ではあるが、彼との旅路での経験、そしてここまで勝ち上がってきた彼女であるならば自信を持ってそう宣言できる。必ずヨウに勝ち、目標、約束の場所へと辿り着いてみせるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ついに決勝戦に日がやってきた。長いようで短かったアローラポケモンリーグも残すところあと僅か。それも決勝戦を残すのみとなった。

 

そして決勝を控えたリーリエは、決勝が行われるフィールドへと繋がっている通路を歩いている。

 

「この先に……ヨウさんが待っています。」

 

リーリエは決勝を争うヨウの顔と彼の今までの戦いを思い浮かべる。間違いなく強敵であり、決勝戦で戦う相手に相応しいトレーナーだ。

 

「……昨日のことがあったからでしょうか。不思議と緊張していません。」

 

むしろこれからの戦いをワクワクしていて、彼とのバトルを今か今かと待ち遠しく感じている自分がいることに不思議さを感じる。戦いを拒んでいた昔の自分であれば絶対に抱くことのなかった感情に、ふと昔の自分が聞いたらどう思うだろうかと考えてしまい、可笑しくなってしまう。

 

決勝を目前にしてリーリエは深呼吸をする。一呼吸おいて“よし”と口にし前を見る。

 

「行きましょう!」

 

そうしてリーリエは通路を照らしていた光の先へと歩いて行ったのだった。




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アローラリーグ決勝開幕!リーリエVSヨウ!

サンブレイクはいいぞぉ!


数多の腕が立つトレーナーが参加しているアローラポケモンリーグ。その決勝戦に勝ち上がったのはリーリエ、そしてヨウの二人であった。

 

幼馴染であるヨウとハウ、兄妹でありグラジオとリーリエの激闘は記憶に新しい。そして今、決勝に残った二人がフィールドに立ちお互いに向かい合う。二人の真剣な眼差しを見たヒナは緊張のあまり喉をゴクリと鳴らした。それと同時にこれからどのような激戦が繰り広げられるのだろうかと言う期待も胸の中に湧き上がっていた。強者同士の戦いを楽しみにするのはトレーナーとして当然の感情である。

 

ヨウはリーリエの瞳を真っ直ぐと見つめる。また、彼女の瞳もヨウの瞳を真っ直ぐと見つめていた。その瞳からはお互いに言葉は不要、バトルを通じて語れと言っているようにも思えた。ならば彼女に語り掛ける言葉はないだろうと、ヨウは一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。対するリーリエも、自分の信じるポケモンが入ったモンスターボールを握り締め、これからの戦いに気持ちを集中させる。

 

今か今かとバトルを待つ二人の間に、審判を務めるククイが立っていた。

 

「決勝の審判はボクが務める。使用ポケモンは両者6体ずつのフルバトル。手持ちのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了。また、このバトルに勝った者のみが、チャンピオンへの挑戦権を獲得できる。二人とも、正々堂々、悔いのないバトルをしてくれ!」

『はい!』

 

ククイの激励を受け取った二人は大きな声で返事をする。その返答をバトルの準備が整った合図だと判断したククイは二人の顔を交互に見ると、ポケモンを繰り出すように合図をする。

 

「それでは両者!ポケモンを!」

「ピカチュウ!頼むぞ!」

『ピッカァ!』

「お願いします!フシギバナさん!」

『バァナ!』

 

ヨウが最初に繰り出したのは素早さに定評のあるピカチュウ。対してリーリエの最初のポケモンは耐久力とパワーが自慢のフシギバナである。スピードとパワー、どちらが上回るのか観客たちの注目が集まる試合となりそうだ。

 

「では、決勝戦……はじめ!」

 

ククイが試合開始の合図を宣言し、遂にアローラリーグの決勝戦が始まる。最初に動いたのはヨウとピカチュウであった。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピカッチュ!』

 

ヨウの指示と同時にピカチュウは自慢のスピードで駆け出した。目にも止まらないそのスピードはフシギバナを翻弄し、みるみるとその距離を縮めて行った。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

接近してくるピカチュウに対してフシギバナははっぱカッターで対抗する。ピカチュウはでんこうせっかのスピードを活かして無数のはっぱカッターを左右に躱していく。

 

はっぱカッターを避けきったピカチュウのでんこうせっかがフシギバナの頭部に衝突し、フシギバナにダメージを与える。フシギバナは高い耐久力でその攻撃の衝撃を耐えていた。

 

「続けてアイアンテール!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウはでんこうせっかから続けてアイアンテールによる連続攻撃を仕掛ける。ピカチュウの連続攻撃は完成度が非常に高く、隙も少なくフシギバナの額に追撃がヒットした。アイアンテールに苦しむフシギバナに、更にアイアンテールの追撃を連続で仕掛けていた。

 

「っ!ですがこれだけ接近していればっ!」

『っ!?バァナ!』

『ピカッ!?』

 

アイアンテールに耐えていたフシギバナが目をカッと見開き、つるのムチでピカチュウの胴体に巻き付け動きを封じた。いくら俊敏に動くピカチュウであっても、攻撃の最中であれば隙を生み出すことができる。フシギバナの耐久力があればこそできる戦術である。

 

「っ!?しまった!」

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バァナァ!』

 

フシギバナはピカチュウを投げ飛ばし、空中に放り出されたピカチュウをはっぱカッターで狙い撃ち切り裂いた。そのダメージにピカチュウは溜まらず地面に叩き落とされるのだった。

 

「くっ!?ピカチュウ!大丈夫か!」

『ぴ……ピッカァ!』

 

ピカチュウは立ち上がるが、今の攻撃がクリーンヒットしたことでダメージがかなり限界に近くなってしまっているようだ。ピカチュウは素早さを活かした攻撃性能は非常に高いが、その分耐久力に関してはあまり高いとは言い難い。故に今の一瞬の攻防だけでも彼にとってはかなり痛い結果となった。速攻型のピカチュウにとっては、耐久力の高いフシギバナは不利と言えるだろう。

 

「フシギバナさん!こうごうせいで回復です!」

『バナァ』

 

フシギバナはこの隙を突き、こうごうせいによって削られた体力を回復する。相手の攻撃を耐えて反撃し、隙を見て回復する永久機関の戦術。非常に理にかなっていて完成された戦術である。

 

このまま回復されるわけにはいかないと、ヨウは慌ててピカチュウに攻撃の指示をだした。

 

「ピカチュウ!10まんボルトだ!」

『ピッ……ピカッチュウ!』

 

ピカチュウはダメージが思いの外大きいのか少し足元をぐらつかせる。しかし自身のダメージに耐えながら10まんボルトをフシギバナ目掛けて解き放った。

 

しかしその時には既にフシギバナの体力は回復しており、フシギバナは反撃の準備に入っていた。

 

「つるのムチで防いでください!」

『バナァ』

 

フシギバナは2本のつるのムチでピカチュウの10まんボルトを防御して四散させた。その光景には観客たちも驚くが、今のダメージが蓄積したピカチュウでは火力不足か、とヨウは理解していた。

 

その後、10まんボルトによる力を使ったピカチュウはダメージから膝をつく。その姿が最大のチャンスだという事をリーリエに伝える結果となった。

 

「ソーラービーム!スタンバイです!」

『バァナァバナ』

 

フシギバナは背中の花に光を集めて集中する。大技であるソーラービームによりとどめを刺すつもりだ。今のピカチュウでは避ける事すら厳しい、と判断したヨウは、最後の力を振り絞るようにピカチュウに伝えた。

 

「ピカチュウ!」

『ピ……ピカァ!』

 

ヨウの意図を理解したピカチュウは彼の言葉に頷いた。ならば自分も最大限の力を使おうとフシギバナを見つめる。

 

「ピカチュウ!ボルテッカー!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウとその進化系列が持つ最大の大技、ボルテッカーだ。ボルテッカーは威力が高い分、その反動で自身もダメージを受けてしまう諸刃の剣である。故にヨウは試合であまり使用することはなかった。しかしリーリエが自分の大技を隠してまで勝てるような甘い相手でないことも理解しているため、出し惜しみなしで全力を出すしかないと判断したのだ。

 

ピカチュウの身体全体を強力な電気が纏いでんこうせっかを超えるスピードでフシギバナに直進してくる。大技に対して防御したいところではあるが、ソーラービームに集中しているため途中で中断することは出来ない。フシギバナはピカチュウの攻撃に備え、歯を食いしばり耐える態勢をとる。

 

ピカチュウの全力のボルテッカーがフシギバナに命中する。ピカチュウのボルテッカーはギリギリの体力とは思えないほどの威力がでており、フシギバナの巨体を大きく押し出していた。その反動でピカチュウも大きくダメージを受けてしまったが、フシギバナにも間違いなくダメージが確認できる。しかし、フシギバナのソーラービームはすでに準備完了していた。

 

「っ!?フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」

『バァナァ!』

 

フシギバナのソーラービームが背中の大きな花から最大出力で発射される。そのソーラービームによりピカチュウの身体が包まれ大きな衝撃を引き起こした。

 

衝撃が落ち着くと、そこには目を回して倒れていたピカチュウの姿があった。反動、さらにソーラービームの直撃で体力は底を尽きてしまったのだろう。むしろここまでよく耐えたのが不思議なくらいである。

 

「ピカチュウ!戦闘不能!」

『ぴ……かぁ……』

「ピカチュウ……お疲れ様、よく頑張ったな。絶対に無駄にしないからな。」

 

ここまで頑張ってくれたピカチュウをモンスターボールに戻したヨウ。今の戦闘から改めてフシギバナの耐久力は驚異的だと感じた。それと同時に、やはり彼女は紛れもなく強敵なのだと再度認識する。

 

(だが……だからこそ燃えてくるんだ!)

 

ヨウは今のバトルで気落ちするどころか、より一層闘志が燃え上がっていた。自分と同等以上の相手と戦うと熱くなるのは、ポケモントレーナとして当然の反応であり、その感情こそが彼が一流のポケモントレーナーであることを証明していた。

 

「頼むぞ!サンドパン!」

『サッド!』

 

続いてヨウが繰り出したのはアローラの姿をしたサンドパンだ。通常のサンドパンはじめんタイプのみだが、アローラの姿ではこおりタイプに加えはがねタイプとの混合と、現在確認されている中では唯一のタイプである。

 

「相性としては不利……でしたら!フシギバナさん!こうごうせいです!」

『バナ!』

 

フシギバナは開幕からこうごうせいで先ほどの消耗した体力を取り戻そうとする。しかし、ヨウはそう来ると考えすでに対策を施していた。

 

「サンドパン!あられだ!」

『サンドッ』

 

サンドパンは天候を変更する技、あられを使用する。あられは天候を“あられ状態”にし、こおりタイプ以外のポケモンの体力をじわじわと削っていく。しかし今回はそれだけではなく、もう一つ別の狙いがあった。

 

『バナッ!?』

「っ!?フシギバナさんの光が!?」

 

こうごうせいで集めていた光がみるみると弱くなっている。こうごうせいは太陽の光を集約して自身の体力を回復させる業であるため、悪天候であるあられ状態では体力の回復量が大きく減少してしまう。

 

故にフシギバナの体力は一応多少の回復はしたものの、ボルテッカーによるダメージを回復することができなかったのはやはり痛いか。

 

「メタルクロー!」

『サッド!』

 

続けてサンドパンはメタルクローによる近接攻撃を仕掛けてくる。攻めてくるサンドパンに対して臨戦態勢を取り身構えるフシギバナだが、想定外の光景に驚きを隠せない様子でいた。

 

『バナァ!?』

「は、はやい!?」

 

サンドパンはピカチュウに負けない、いや、それ以上のスピードでフシギバナの目の前まで既に接近してきており、硬化したツメ、メタルクローによる鋭い一撃を加えてきた。

 

『バナァ……』

「フシギバナさん!反撃です!はっぱカッター!」

『バァナ!』

 

フシギバナはのけ反りながらもサンドパンの攻撃を耐えきり、はっぱカッターによる反撃を開始した。無数のはっぱカッターがサンドパンを襲い掛かり、硬い腕で急所に当たらないように防御するも彼の身体を鋭い葉が刃となって切り裂いていく。

 

しかしはっぱカッターを放ちながらもフシギバナの体力をあられが蝕んでいく。

 

「っ!負けるな!つららばり!」

『サッド』

 

サンドパンは背中の氷を針のように鋭く尖らせ連続でフシギバナ目掛けて発射する。

 

「つるのムチで防いでください!」

『バナ!バナ!』

 

フシギバナはつるのムチでつららばりを叩き落としていく。はっぱカッターの攻撃が止んだ今がチャンスだと、再びツメを硬化させて接近していった。

 

「サンドパン!メタルクロー!」

「フシギバナさん!もう一度つるのムチです!」

 

サンドパンのメタルクローに対してフシギバナはつるのムチで対抗する。フシギバナはつるのムチで叩き落とそうとするが、サンドパンはつるのムチを弾いて懐に潜り込む。つるのムチを弾かれてしまったフシギバナには隙が生じ、態勢を崩したところをサンドパンのメタルクローが切り裂く。

 

さしものフシギバナも回復が封じられて連続で攻撃を受けてしまえば耐えるのは難しく、メタルクローの一撃で限界が訪れその場で倒れてしまった。

 

『ば……なぁ……』

「フシギバナ!戦闘不能!」

 

フシギバナは目を回し、審判のククイによって戦闘不能と判断される。ピカチュウを倒しサンドパンともいい戦いを繰り広げたのだが、ここまでのようだ。

 

「フシギバナさん、戻ってください。ありがとうございました。あとはゆっくり休んでいてください。」

 

フシギバナをモンスターボールへと戻し労いの言葉をかけるリーリエ。戦果としては充分すぎるため、それを無駄にしないように気を引き締め、次のモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「っ!?ここでシロンを出してきたか……。」

 

リーリエが次に繰り出してきたのはシロンであった。こおりとフェアリータイプを併せ持つシロンにとって、はがねタイプを持つサンドパンは非常に相性が悪い。しかし、彼女のことだから何か考えがあるのだとヨウは警戒を忘れてはいない。

 

「サンドパン!つららおとし!」

『サンドッ!』

 

まずは牽制をして相手の手を伺おうと、つららばりによって遠距離攻撃を仕掛けるヨウ。つららばりがシロンに命中するかと思ったその時、シロンは心綺楼のようにその場から姿を消したのだった。

 

「っ!?なるほど、ゆきがくれの特性か……。」

 

特性ゆきがくれは、あられ状態の時に自身の回避率を上げる特性だ。この特性によってあられの中に身を隠し、サンドパンの攻撃を回避したというわけだ。相手の技を利用し咄嗟にこの作戦を思いつく辺り、さすがはリーリエだとヨウは感心する。

 

しかし感心してばかりはいられない。少なくともメタルクローで接近戦を仕掛けていたら反撃を喰らって間違いなくピンチを招いていたことだろう。自分の危機察知能力に安堵しながら、シロンの気配を感じ取ることに集中する。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

あられの中からシロンのこおりのつぶてがサンドパンに対して襲い掛かる。鋭く的確なその一撃を、サンドパンはギリギリのところでジャンプして回避するが、シロンの連続攻撃の的となってしまう。

 

「れいとうビームです!」

『サッド!?』

 

シロンのれいとうビームが回避したサンドパンの顔に直撃する。サンドパンは地面にツメを突き立ててダウンを拒否するが、れいとうビームによるダメージはしっかりと受けている。

 

「ムーンフォース!」

「メタルクローで防御だ!」

『サド!』

 

サンドパンは迫りくるムーンフォースをメタルクローで切り裂き防御する。その後、ムーンフォースの発動場所をしっかりと確認していたヨウは、その場所に攻撃するようサンドパンに指示をだす。

 

「そこだ!サンドパン、ドリルライナー!」

『サッドォ!』

 

サンドパンはムーンフォースが放たれた場所目掛けてドリル形態に移行して勢いよく突進する。あられを貫き、シロンをも貫く、はずであったが既にそこにシロンの姿はなかった。

 

「っ!?後ろか!?」

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

『サンドッ!?』

 

サンドパンの背後に回っていたシロンのれいとうビームが直撃し、サンドパンを地面へと叩きつけた。サンドパンは目を回して、それと同時にあられが止みフィールドが晴れ渡ってシロンの姿も露わとなった。

 

『さ……どぉ……』

「サンドパン!戦闘不能!」

 

れいとうビームと地面に叩きつけられた衝撃で目を回し戦闘不能となったサンドパンをモンスターボールに戻すヨウ。ゆっくり休むようにと感謝の言葉を伝え、シロンの対策を考えていた時、リーリエはシロンをモンスターボールへと戻した。

 

「シロン、戻ってください。」

 

「……なるほど、サンドパンを倒すためにシロンを選出したのか。」

「次はあなたにお願いします!マリルさん!」

『リルルゥ!』

 

シロンを戻し代わりに繰り出したのはマリルであった。みず・フェアリータイプであるマリルを見てヨウが繰り出したのは……。

 

「次はお前だ!頼むぞ!ギガイアス!」

『ギアァ!』

 

マリルに対して繰り出したのはいわタイプのギガイアスであった。その大きな体と威圧感のある雰囲気から、マリルとリーリエは圧倒される。しかしそれでも相性であればこちらが有利だと、強気で攻める意思を見せる。

 

「マリルさん!バブルこうせん!」

『リル!』

 

マリルはバブルこうせんで牽制攻撃を仕掛ける。ギガイアスは見るからに耐久力はあれど、鈍足で攻撃をかわすことは困難だろうと判断し遠距離から的確に攻めていく。

 

「ギガイアス!ロックブラスト!」

『ギガァ!』

 

ギガイアスはロックブラストでバブルこうせんに対して対抗する。ロックブラストはバブルこうせんを次々と打ち破りマリルに迫ってきた。相性の悪いみず技をいとも容易く打ち破ったことに驚きつつもリーリエはロックブラストを回避するように指示を出した。

 

「マリルさん!躱してください!」

『リル!』

 

マリルはリーリエの指示通りに回避する。ギガイアスはそんなマリルをロックブラストで連続して狙い撃ち怒涛の攻撃を見せるも、マリルはその攻撃を躱しながらギガイアスに接近していった。

 

ギガイアスは最後の一撃に更なる力を込め、ひと際大きいロックブラストで迎え撃つ。

 

「アクアテールです!」

『リィル!』

 

マリルはその一撃をアクアテールで攻撃して受け流し、その反動を利用して上空に飛び上る。観客たちもその華麗な動きに驚くが、ヨウにはあまり驚いている様子は見受けられなかった。

 

「そのままアクアテールです!」

『リルルッ!』

 

アクアテールで上空からの勢いを利用し強襲を仕掛けるマリル。しかしその攻撃を読んでいたヨウは、ある技でマリルを迎え撃つのであった。

 

「てっぺきだ!」

「っ!?てっぺき!?」

 

てっぺきは自身の防御力を大きく上げる防御技だ。元々かなり耐久力の高いギガイアスだが、てっぺきにより更に防御力を高めマリルのアクアテールを防御する。効果は抜群なはずが、てっぺきによって防御力の上がったギガイアスに弾かれてしまい、逆にマリルが吹き飛ばされてダメージを受けてしまう結果となり全員が驚きの声をあげた。

 

「もう一度ロックブラスト!」

『ギガァ!』

『リルッ!?』

 

マリルは態勢を立て直し、ロックブラストによる連続攻撃をギリギリのところで回避する。しかしギガイアスに回避先を誘導されてしまっており、気付いたときには岩に囲まれて逃げ場が無くなっていた。

 

「なっ!?マズいです!マリルさん!逃げてください!」

「ラスターカノン!」

 

リーリエの必死の呼びかけも束の間、マリルを囲んだ岩にギガイアスのラスターカノンが一直線に飛んでいく。そして岩ごとマリルの小さな体を吹き飛ばし、その一撃でマリルは地面にダウンした。

 

『りぃ……るぅ……』

「マリル、戦闘不能!」

 

ラスターカノンによる吹き飛ばしダメージに加え、破砕した岩の破片がマリルを襲い想定以上のダメージを負ってしまったマリルは無念にもここで戦闘不能となってしまった。健闘したマリルをモンスターボールに戻したリーリエは、彼女に感謝の言葉を伝えて後は任せてくれと言う。

 

「ギガイアスさん……とてつもないパワーの持ち主ですね。」

 

これだけのパワーを持つ相手であれば、あのポケモンに任せるしかないとリーリエはモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!チラチーノさん!」

『チラッチ!』

 

リーリエが選出したのはチラチーノであった。パワーが高く鈍重なギガイアスに対して、スピードによる撹乱作戦を決行しようというのがリーリエの考えだろう。

 

「ギガイアス!ロックブラスト!」

『ギガァ!』

 

ギガイアスは再びロックブラストで固定砲台となりチラチーノを攻撃する。しかしチラチーノは小柄で非常に素早いため遠距離からのロックブラストでは捉えることができない。

 

「スピードスターです!」

『チラッ!』

『ギガァッ』

 

チラチーノのスピードスターが四方八方からギガイアスを襲う耐久力が高いとはいえ、鈍重なギガイアスではその攻撃を避けることは非常に困難である。

 

「っ!?まだだ!もう一度ロックブラスト!」

『ギガァ!』

「躱して連続でスピードスターです!」

『チラチィ!』

 

ロックブラストで攻撃を仕掛けるギガイアスだが、相変わらずチラチーノを捉えることができず、着実にスピードスターで体力を奪っていく。

 

暫く試合は続いたが、ヨウは一向に戦術を変えずロックブラストを撃つだけである。その間にチラチーノのスピードスターがギガイアスの体力を蝕んでいく。何か考えがあるのだろうが、それを読むことができずに時間だけが過ぎていく。

 

着実なダメージが明らかになり、ギガイアスは肩で息をして苦しそうな様子を見せる。今ならチャンスだ、とリーリエは戦術を変える。

 

「チャンスです!チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

リーリエの指示に従い、チラチーノは素早い動きでギガイアスに接近する。今なら得意な近接攻撃を仕掛けるチャンスだと踏んだのだろう。一気に勝負を仕掛けるつもりだ。

 

対するギガイアスはロックブラストでチラチーノに対抗するも、チラチーノのスピードを捉えることは当然難しく、次々と避けられてしまい距離を詰められる。

 

「今です!スイープビンタです!」

『チラァ!』

 

充分な距離に接近することのできたチラチーノは得意技であるスイープビンタで攻撃を仕掛ける。これで勝負が決まった……かに思えたその時、ギガイアスの身体が白く光り輝き、その瞬間リーリエに嫌な予感が走った。

 

「っ!?ギガイアス!だいばくはつ!」

『ギ……ガァ!』

「しまった!?チラチーノさん!逃げてください!」

 

逃げるように促すリーリエだが、時すでに遅し。ギガイアスの光が更に強くなり、その光はギガイアス自身とチラチーノ、そしてフィールド全体をも包み込んだのち大きな爆発を引き起こした。強い光と衝撃のあまり、ヨウとリーリエ、それから観客の全員が目をあけていられない程の刺激を受けるのであった。

 

強い光に包まれたギガイアスとチラチーノ。波乱と注目のアローラリーグ決勝戦、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか。




ギガイアスのデザインと色違いがすごく好きです


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アローラリーグ優勝!願いと想いをのせて!

今日はユナイトにグレイシアちゃん実装日ですぞ!


アローラリーグ決勝戦、リーリエVSヨウの二人の試合は白熱した戦いを繰り広げていた。

 

リーリエのチラチーノがスピードスターを決め、ヨウのギガイアスが怯み大きな隙が発生した。その隙を突いてチラチーノがスイープビンタで攻め立てようとした時、ギガイアスが隠していた最終兵器を起動させた。

 

その技はだいばくはつ。自身を戦闘不能にする代わり、大爆発に巻き込んだ相手に致命的なダメージを与える高火力の大技だ。ギガイアスの身を挺した最後の攻撃は、フィールド全域を包み込むほどの衝撃と爆発を発生させ、チラチーノを巻き込んだ。

 

しばらくしてようやく爆発が収まりフィールドの状況が明らかとなる。そこにはだいばくはつを使用し戦闘不能となったギガイアスと、だいばくはつに巻き込まれて同じく目を回して倒れているチラチーノの姿があった。さすがにあれ程の爆発に巻き込まれてしまえば一撃だけで一溜りもなかっただろう。

 

『ぎがぁ……』

『ちら……ちぃ……』

「ギガイアス、チラチーノ、共に戦闘不能!」

「ギガイアス、最後までありがとう。助かった。あとはゆっくり休んでくれ。」

「チラチーノさん、戻ってください。ごめんなさい、私のミスです。ですがあなた達の戦いは決して無駄にはしませんから!」

 

戦闘不能となったパートナーをモンスターボールに戻すリーリエとヨウ。今のバトルは戦況がかなり不利だったヨウにとってギガイアス1匹で2匹のポケモンを倒したため大きな結果となったが、リーリエにとっては手持ちの数を五分まで戻されてしまったので結果的に振り出しに戻ることとなった。

 

(お互いに残りポケモンさんは3体。シロンはダメージを受けていないので私の手持ちも体力はフルで残っていますが……。)

 

有利な状況は一気に覆されてしまったのはかなり痛いと、リーリエは思いがけない事態に焦りを感じる。次のポケモンは誰を選出するかを考えていると、先にヨウが動き出し手にしたモンスターボールを投げる。そこから飛び出してきたのは……。

 

『ガオォウ!』

「っ!?」

 

ヨウが繰り出したのはまさかのガオガエンであった。このタイミングで彼のエースであるガオガエンが出てくるとは思わなかったため、リーリエは予想外の選出に驚き目を見開いた。

 

「……シロン!もう一度お願いします!」

『コォン!』

 

対してリーリエが繰り出したのは先ほどサンドパンを倒したシロンであった。リーリエが優勢になっていたのも束の間、ギガイアスの活躍によって再びバトルが五分の状態へと戻された。果たして今度はどちらが有利に立ち回ることができるのか、観客たちからの注目が集まる瞬間である。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コン!』

「DDラリアットで防御だ!」

『ガォウ!』

 

先制でシロンがこなゆきによる地面を凍らせながら攻撃する。その攻撃をガオガエンはDDラリアットで弾いて防ぎつつ、自身の纏う熱で地面を凍らせた氷を溶かしていく。さすがにヨウのガオガエンともなれば小細工は一切通用しないようだ。

 

「であれば!続けてれいとうビームです!」

『コォン!』

「ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガアウ!』

 

れいとうビームとかえんほうしゃがフィールド中央でぶつかり合う。氷と炎の相反作用によって蒸発し、お互いの視界を奪ってしまう。

 

「くっ、ニトロチャージだ!」

『ガオウ!』

 

ガオガエンは燃え盛る炎を纏いながら視界を遮る蒸気を振り払いながら一直線に突っ込む。しかしそこにはすでにシロンの姿は見当たらず、ガオガエンの攻撃は空振りに終わった。

 

「っ!上か!」

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

『ガウッ!?』

 

ガオガエンの攻撃を読んでシロンはジャンプして躱し、空中からムーンフォースを叩きこむ。ガオガエンは急所に当たらないよう腕をクロスさせて防御するも、シロンの大技による一撃にノックバックス、大きなダメージは免れなかった。

 

「続けてこおりのつぶてです!」

『コン!コォン!』

 

着地したシロンはこおりのつぶてで連続攻撃を仕掛け畳みかける。隙のできたガオガエンは回避行動に移ることができなかったため、シロンのこおりのつぶてを受け止めようと判断する。

 

「ビルドアップ!」

『ガオウッ!』

 

ガオガエンはビルドアップで筋力を増大させ、こおりのつぶてをその身で受け止める。ビルドアップは攻撃、防御を上げる技であるため、こおりのつぶてによるダメージを軽減させると同時に自身の攻撃能力を高めたのである。

 

「今度はこっちの番だ!ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガウゥ!』

 

ビルドアップによってこおりのつぶてを防御したガオガエンは、再び体に炎を纏ってシロン目掛けて突進する。先ほどのニトロチャージは使用するほど素早さが上がる技であるため、先ほどよりも更に素早さが上がっており、みるみるとシロンとの距離を縮めていく。

 

シロンはガオガエンの攻撃を回避するが、途中でガオガエンがブレーキを掛け振り向き、再度ニトロチャージで畳みかけてくる。更に素早さが上昇したニトロチャージは比べ物にならないスピードでシロンに迫り、シロンは連続で避けることができずにニトロチャージによって打ち上げられてしまう

 

『コォン!?』

「っ!?シロン!」

「まだまだ!DDラリアット!」

 

ガオガエンは続けてDDラリアットの構えに入る。ガオガエンのDDラリアットがシロンの落下地点を捉え、シロンは続けざまにガオガエンの攻撃で追加ダメージを受けてしまう。ビルドアップによる攻撃力上昇も加え、シロンが受けたダメージはかなりのものとなっている。そろそろ限界も近いだろう。

 

「シロン!ムーンフォース!」

『コォン!』

『ガォ!?』

 

限界が近いはず。それなのに立ち上がってムーンフォースによる反撃をしてきたことに対して驚くガオガエン。回避することができずその攻撃が直撃してしまいダメージを負う。

 

「っ、かえんほうしゃ!」

『ガオウ!』

『コォン!?』

 

ムーンフォースを受けても怯むことなく、ガオガエンはかえんほうしゃによって更なる反撃を加える。シロンもさすがに避ける体力は残っておらず、かえんほうしゃの炎に飲み込まれてしまった。

 

こおりタイプのシロンに対してほのおタイプのかえんほうしゃは効果が抜群である。限界まで削られ耐えていたシロンであったが、とうとう限界が訪れ力尽きてしまい目を回していた。

 

『こぉ……』

「キュウコン!戦闘不能!」

「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。」

 

相性の悪い相手にも最後まで頑張って戦ってくれたシロンを労いモンスターボールへと戻す。優勢だったがヨウの健闘で戦況が覆り、残るポケモンは2体と立場が逆転してしまったリーリエ。次はどのポケモンで行くかと考えていると、1つのモンスターボールが揺れて勝手に開きポケモンが飛び出してきた。

 

『ピィ♪』

「ぴ、ピッピさん!もう、また勝手に出てきて……」

 

いつも通り勝手に出てきてしまったピッピ。状況を理解しているのかしていないのか、ピッピは笑顔で振り向きその小さな体をポンッと叩く。

 

「え?私に任せろ……ですか?」

『ピッピ♪』

 

ピッピはどうやら自分にまかせてほしいと言っているようだ。いつもは遊び感覚で出てくるピッピだが、その時は必ず大きな活躍をして戻ってくる。ならば今回もピッピに任せ、自分は彼女のことを信じようと決める。

 

「分かりました……。ピッピさん!お願いします!」

『ピィ!』

 

ヨウにとってはピッピの力は未知数だ。小さいからと言って一切油断のできる相手ではない。ヨウはガオガエンと共に最後まで気を引き締める。

 

「ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガォウ!』

 

ガオガエンは素早い動きでピッピに襲い掛かる。しかし小柄でシロンよりも小回りの利くピッピは、ガオガエンの攻撃を軽々と避けていく。身のこなしの良さにヨウは感嘆の声をあげた。

 

「くっ、ならDDラリアット!」

『ガオウッ!』

 

今度はDDラリアットに変更し攻撃するガオガエン。回転しながら近接攻撃を仕掛けるDDラリアットであればニトロチャージよりも避ける隙が少ない。これならば、とヨウは確信を得ていた。しかし……。

 

『ピィ♪』

『ガゥ!?』

 

しかしピッピはガオガエンのDDラリアットを回避し、その上唯一の攻撃範囲外とも言える箇所、頭部にめざましビンタを命中させた。DDラリアットの勢いも作用し、通常よりもダメージが大きくなってガオガエンに襲い掛かる。

 

「なっ!?ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガオッ!』

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピッピ!』

 

ガオガエンは痛みに耐えながらかえんほうしゃを繰り出した。ピッピはその攻撃を回避し、ムーンフォースで反撃する。かえんほうしゃが空振りに終わり隙が生じたガオガエンに、ピッピのムーンフォースが命中。ピッピのムーンフォースによってガオガエンは吹き飛び、場外で目を回し倒れるのだった。

 

「ガオガエン!?」

『がお……』

「ガオガエン!戦闘不能!」

 

ガオガエンが戦闘不能となり、ピッピは無傷のままお互い2体となる。リーリエが優勢と思ったらヨウが逆転し、さらにリーリエが再び追いついた。予想不可能な熱い展開に観客たちはさらにヒートアップして興奮の歓声をあげる。

 

ヨウはガオガエンがこうもあっさりいなされるとは思っていなかったのか、悔しそうな表情をする。しかし一方、他には類を見ない強敵であるピッピに、感情が昂っていくのが感じられる。

 

「ピッピさん、よく頑張りましたね。」

『ピィ♪』

 

自分の足元まで歩み寄ってきたピッピの頭をリーリエは撫でる。リーリエの手の温もりに安心感を抱いたピッピは、嬉しさからいつもの愛らしい笑顔を浮かべていた。まるで今熱いバトルをしたポケモンとは思えない光景だ。

 

思いのほか身のこなし力の高いピッピに対して次のポケモンを選択する。そしてヨウはそのポケモンに思いを託し、フィールドに投げるのだった。

 

「頼むぞ!ウォーグル!」

『ウォー!』

 

ヨウが選出したのは彼の持つひこうタイプのポケモンであるウォーグルであった。空からの奇襲性、機動力でピッピに対抗しようという算段なのだろう。

 

「ピッピさん、またお願いできますか?」

『ピッピ♪』

 

リーリエの言葉にピッピは笑顔で頷いた。本当はあまり戦わせたくないのが彼女の本音だが、一体を残して勝てるほど甘い相手ではないのはよくわかっている。だからこそ彼女はピッピに改めて続投のお願いをしたのである。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ!』

「ウォーグル!」

『ウォオ!』

 

開幕から放たれるピッピのムーンフォースを、ウォーグルは空高く飛び上がることで回避する。ピッピはムーンフォースで狙いをつけるも、中々狙いが定まらずピッピのムーンフォースは空振りする。

 

「ウォーグル!ぼうふう!」

『ウォー!』

『ピィ……』

 

ウォーグルはピッピの攻撃を躱すと、激しい風を起こしてピッピへと襲い掛かる。ピッピはウォーグルの攻撃を耐えるも、強力なぼうふうに耐えるのが精いっぱいのようだ。

 

しかし攻撃を耐えたところでピッピの攻撃は宙を自由に舞うウォーグルを捉えることができない。このままではやられてしまうのも時間の問題である。ならばここは賭けるしかない、とリーリエはピッピのあの技に賭けることにした。

 

「ピッピさん!ゆびをふるです!」

『ピィ!』

 

ピッピの得意技、ゆびをふる。全ての技からランダムで選ばれ、その技をピッピが使用する特殊な技である。ピッピは規則正しい振り子でゆびをふるを使用する。ヨウはこのままではマズい気がする、とゆびをふるが決まる前に動いた。

 

「っ、ウォーグル!ブレイブバード!」

『ウォッグ!』

 

ウォーグルは低空飛行で接近し、翼を広げてブレイブバードの態勢に入った。ひこうタイプの技の中でもトップクラスの威力を持つブレイブバードは、みるみるとピッピとの距離を縮めていく。これで勝負あったか、と誰もが思った次の瞬間、ピッピの体が光りウォーグルの視界を奪った。するとウォーグルの目の前にはピッピの姿が無かった。

 

「なっ!?一体どこに……。」

 

周囲を見渡してもピッピの姿が見えない。焦ってピッピを探すヨウだが、観客たちの驚いた声に反応してヨウはその視線の先、空を見上げた。するとそこには驚きの光景があった。

 

「なっ!?と、とんでる!?」

『ピッピ♪』

 

ピッピのゆびをふるで発動した技はそらをとぶ。本来であればこの技を覚えるのはひこうタイプのポケモンばかりだが、ゆびをふるであればランダム性があるとは言え発動自体は可能である。今回はピンポイントで引き当てたところを見ると、やはりピッピは何かを持っているのであろう。

 

「……っ、ピッピさん!そのままウォーグルさんを追いかけてください!」

『ピィ!』

 

空を飛び距離を離そうとするウォーグルを追いかける。ピッピは空を飛ぶことを楽しんでいる様子だが、対するウォーグルは焦って距離を離そうと更にスピードを上げる。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ♪ピッピ!』

 

ピッピはムーンフォースでウォーグルを攻撃する。同じく空を飛び先ほどまでとは違って距離も縮まったため、ウォーグルは避けきることができず背中にムーンフォースが直撃する。

 

「くっ、まさか空中戦でウォーグルが苦戦するなんて……。ブレイククロー!」

『ウォグ!』

「ピッピさん!めざましビンタです!」

『ピィ!』

 

ブレイククローで自分の得意な接近戦に持ち込もうとするウォーグル。ピッピはめざましビンタで対抗するも、やはり力ではウォーグルの方が勝っているため、めざましビンタを弾いてブレイククローがピッピに命中する。

 

その衝撃でそらをとぶの効果が切れ、ピッピは空から落ちていく。ヨウは今がチャンスだ、と一気に畳みかけてフィニッシュを決めにかかった。

 

「ウォーグル!ぼうふうだ!」

『ピィ!?』

 

ウォーグルのぼうふうがヒットし、ピッピはそのまま真っ逆さまに地上まで叩き落とされた。

 

「ピッピさん!?」

 

真っ逆さまに落ちるピッピを心配し、リーリエは急いで落下地点に向かいピッピを受け止めた。

 

「ピッピさん、大丈夫でしたか?」

『ピィ……♪』

 

今の戦いで傷付いてしまったピッピだが、ピッピはどこか満足した様子で笑顔を浮かべていた。ガオガエンを倒し、その上ウォーグルと接戦を繰り広げたのだから戦果としては充分すぎるほどである。

 

「ピッピ、戦闘不能!」

 

リーリエが受け止めたことでピッピは戦闘不能の扱いとなってしまう。これ以上戦わせるのは忍びないので、リーリエとしては問題はなかった。しかし、遂にリーリエの手持ちは一体となり先に追い詰められる形となった。

 

観客たちは訪れたクライマックスにさらなる歓声をあげる。リーリエの残るポケモンはあのポケモンのみ。ここから巻き返して逆転優勝を狙うことができるのか。それともヨウがこの調子で勝利を掴むのか。これからの熱い試合展開に観客だけでなく、四天王たちからも期待の眼差しが向けられていた。

 

「……最後はあなたに託します。カイリューさん!お願いします!」

『バオォウ!』

 

カイリューの大きな咆哮が会場全体を揺らす。その途方もない威圧感に、ヨウとウォーグルに緊張感が走る。間違いなく彼女のパーティの中で最強クラスのポケモンであると感じたためである。

 

「……行くぞ!ウォーグル!」

『ウォー!』

 

ウォーグルは再び羽ばたき空を飛ぶ。対してカイリューはウォーグルを視界に入れたまま、視線によるプレッシャーを与えていく。

 

先ほどまで騒がしかった会場も一瞬の静けさが訪れる。カイリューから放たれるプレッシャーと、二人の間に広がる緊張感が観客たちにも感じられるためだ。誰かの喉がゴクリと鳴る。

 

「っ!?ウォーグル!ブレイブバード!」

『ウォー!』

 

ウォーグルはブレイブバードで速攻を仕掛ける。接近してくるウォーグルに、カイリューは身構えて正面から受け止める構えを取る。

 

ウォーグルのブレイブバードがカイリューの直撃する。……と思いきや、ウォーグルの翼をカイリューが抑えつけ受け止めたのである。これにはヨウも驚き目を見開いた。

 

「カイリューさん!アクアテールです!」

『バォウ!』

『ウォッグ!?』

 

カイリューは受け止めたウォーグルをアクアテールで吹き飛ばす。想定外のダメージに驚くも、ウォーグルは反撃の攻勢にでた。

 

「くっ、ブレイククロー!」

『ウォオ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウゥ!』

『ウォッ!?』

 

ウォーグルはブレイククローで反撃に出ようと態勢を整える。しかし攻勢に出る前に、ウォーグルの目の前にカイリューが文字通り神速で現れた。一瞬の隙を突いたカイリューの攻撃がウォーグルの体を地面に叩きつける。

 

『うぉ……』

「……ウォーグル、戦闘不能!」

 

ウォーグルはこれ以上羽ばたくことができず、地面に這いつくばってしまう。ククイの判断で戦闘不能となり、一瞬の出来事に観客たちは驚愕のあまり声がでないでいた。

 

「……ウォーグル、戻ってくれ。よく頑張ったな。最後は任せてくれ。」

 

ウォーグルが力尽き、ヨウも残るポケモンは最後の一体。ガオガエンを失った今、ヨウの手持ちをリーリエは知らない。ヨウは最後のポケモンに願いを込め、このバトルの結末を託す。

 

「……これが俺の秘密兵器だ。行け!ジャラランガ!」

『ジャラァ!』

 

現れたのはドラゴン、かくとうタイプと言う珍しいタイプのポケモン、ジャラランガである。ジャラランガの咆哮はカイリューのように会場を包み込んで震えが伝わってくる。間違いなく強敵であることがリーリエたちにも伝わってきた。

 

ジャラランガとカイリューはお互いに視線を合わせる。どちらも強敵であることを認識し、睨みつけて両者プレッシャーを与える。

 

ラストバトルが始まったと同時に、動き出したのはヨウとジャラランガだった。しかしその最初の行動は誰もが見ても驚くべきものであった。

 

ヨウは両手をクロスさせ、右腕から流れ出るオーラが彼とジャラランガを包み込む。紛れもなくその行動はZ技であった。

 

ポーズはドラゴンの大きな口をイメージしたドラゴンZ。いきなり大技から来るのかとリーリエ、カイリューは身構える。しかし通常のドラゴンZとは違い、ジャラランガは尻尾から音を鳴らしてダンスを踊り始めた。

 

一体何が始まったのかと戸惑うリーリエ。するとジャラランガは空中へと飛び上がり、両腕のヒレも同時に鳴らし始めた。著感からマズイと感じたリーリエは、カイリューに急いで指示を出した。

 

「っ!?カイリューさん!空ににげてください!」

『バオウ!』

 

カイリューは空に羽ばたいて逃げる。しかしジャラランガのZ技を止めることはできず、それはすでに発動していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ブレイジングソウルビート!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャラランガ専用のZ技、ブレイジングソウルビートだ。元の技はジャラランガのみが覚える専用技、スケイルノイズであり、Zパワーによって高められた音を鳴らして相手全体に攻撃する大技だ。カイリューはその音波を躱しきることができず、命中して怯んでしまった。

 

するとジャラランガの体を新たなオーラが包み込んだ。ブレイジングソウルビートの追加効果が発動したのだ。

 

ブレイジングソウルビートは使用すると、自身の全ての能力を上げる破格の性能を持っている。そのためヨウが初手からこのZ技を発動したのは、継続してバトルをするために能力を上昇させて有利に戦いを進める為である。

 

「っ、これは……ですが、私たちは負けません!カイリューさん!れいとうビームです!」

『バッオウ!』

「ジャラランガ!ドラゴンテール!」

『ジャラ!』

 

カイリューのれいとうビームがジャラランガを捉えるが、ジャラランガはドラゴンテールでれいとうビームを叩き割る。能力が上昇したジャラランガに対し、当然ながら生半可な攻撃は通用しない。リーリエはいよいよピンチに追い詰められてしまった。

 

「まだです!アクアテール!」

『バオウ!』

「もう一度ドラゴンテール!」

『ジャラァ!』

 

カイリューのアクアテールとジャラランガのドラゴンテールがぶつかり合う。お互いの攻撃力が高いため火花がバチバチと飛び散るが、ジャラランガがアクアテールを弾きカイリューを吹き飛ばした。

 

「っ!?カイリューさん!」

 

カイリューがパワー負けするとは思わず、驚きの声をあげるリーリエ。しかしカイリューはまだ倒れることなく、リーリエの声に答えて立ち上がった。

 

「ジャラランガ!きあいだま!」

『ジャラ……』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バオウッ!』

 

ジャラランガはきあいだまを放つ態勢に移行し、カイリューはしんそくでジャラランガに接近する。充分な距離に近付いたとき、ジャラランガはきあいだまを解き放った。

 

しかしジャラランガの一挙手一投足を注意して確認していたカイリューは、ギリギリのところできあいだまを回避した。そしてジャラランガの腹部にしんそくが直撃し、ジャラランガは苦しみの表情を浮かべるもまだまだ倒れることも怯むこともない。

 

「くっ、ドラゴンテール!」

『ジャラァ!』

 

ジャラランガはドラゴンテールで反撃する。カイリューはその攻撃を掴みなんとか防ぐも、次第にジャラランガのパワーに押され気味になってしまう。

 

このままではまた二の前になってしまう、とリーリエは最後にカイリューのあの技を頼るしかないとカイリューに指示を出した。

 

「カイリューさん!げきりんです!」

『……バオウゥッ!』

 

カイリューの眼が赤く光り、カイリューの体を赤いオーラが包み込む。パワーが飛躍的に上昇し、そのパワーでジャラランガを投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされたジャラランガは立ち上がり、カイリューの姿を視界に入れる。間違いなく先ほど以上に強力な力を得ていると、ここからはより一層気を引き締める必要があると改めて気合いを入れる。

 

しかしカイリューの使用したげきりんは効果が切れると混乱状態となってしまい、大きな隙が発生してしまう諸刃の剣だ。ヨウのジャラランガを相手にする場合、効果が切れるまでに決着をつける必要がある。紛れもなくリーリエにとってこれは最後の賭けである。

 

「一気に畳みかけます!カイリューさん!」

『バオウゥ!』

 

カイリューはすさまじい勢いで接近する。カイリューとジャラランガはフィールド中央で取っ組み合いとなり、両者自慢の力比べを開始する。

 

しかしジャラランガの能力が上昇したとはいえ、かなりのパワーを有しているカイリューの力が現在げきりんによって更に向上している。結果はカイリューが押し返す形となり、ジャラランガの頭部に頭突きを決めてジャラランガを怯ませた。

 

その隙を突いてジャラランガを突き飛ばすカイリューだが、彼の様子を見てみるとカイリューは肩で息をしているのが分かった。一方的に押しているように見えるが、今までの蓄積ダメージとげきりんによる能力上昇の反動があからさまに出てこれ以上はかなり厳しい状況となってしまっている。

 

しかしそれはジャラランガも同じであり、今の怒涛の連続攻撃により、かなりダメージが見受けられる。だったら攻めるのはこのタイミングしかないと、リーリエは最後の攻撃を開始する。

 

「ヨウさん!」

「リーリエ……」

「これが私たちの全力です!私たちの想い……この技に全て乗せます!」

「……こい!リーリエ!お前たちの全力、俺たちが受け止める!」

 

リーリエはZ技を放つ態勢に入る。使用するZ技はZ技の原点ともいえる基本的な技、ノーマルタイプのZ技である。

 

(私たちの想い……このZ技に全てのせます。)

 

リーリエの気持ちがZパワーを伝ってカイリューに伝わる。カイリューもリーリエの想いを受け取り、全身全霊のZパワーをげきりんと共に解き放った。

 

「これが……私たちの全力です!」

『バオウゥ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイリューの全力であるZ技が今解き放たれた。その攻撃を、ジャラランガも正面から受けてたとうと攻撃の構えに入る。

 

「ジャラランガ!スケイルノイズ!」

 

ジャラランガのスケイルノイズが両腕から振動を引き起こし、その音と振動が実体となって解き放たれる。カイリューの全力であるウルトラダッシュアタックとぶつかり、とてつもない衝撃が会場全体を襲っている。

 

どちらが勝つのか分からないこの状況、あまりの衝撃に観客たちはまともに試合を目にすることができない。次第に会場を白い光が包み込む。もはやこの試合を見ていられるのは戦っている本人たちだけである。

 

刹那、白い光が収まるとそこにはジャラランガの背後に立っていたカイリューの姿があった。どちらもまだ倒れておらず互いに試合の結末を待っているかのようであった。

 

カイリューが先に膝をつく。勝負あったか、と思いきや、先にバタンッと音を立てて倒れたのはジャラランガであった。

 

ジャラランガは目を回して倒れている。対するカイリューは、膝こそついているものの意識はハッキリと保たれている。今のこの光景が、勝者がどちらなのかとハッキリ物語っていた。

 

「ジャラランガ、戦闘不能!カイリューの勝ち!よってアローラリーグ優勝は!リーリエ!」

 

その瞬間、激闘を制し、リーリエのアローラリーグ優勝が決定したのであった。




カイリューの逆鱗が原作とかけ離れてぶっ壊れて、ピッピのポテンシャルが底知れないのはノリと見栄え重視なので……。

そしてブイズのアンケート投票は本日ラストとなります。次回最終結果を発表するのでお楽しみに!ちなみに4匹目に同率が存在していた場合、こちらでランダムに決定させていただきます。


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リーリエ、約束に向けて

アンケート結果はあとがきにて

UNITEのグレイシアちゃんつおい


フィールドには目を回して倒れているジャラランガ。そしてボロボロになり膝をつきながらも意識を保ち続けているカイリュー。彼らの姿を観客たちは唖然としながら見つめていた。

 

「ジャラランガ、戦闘不能!カイリューの勝ち!よってアローラリーグ優勝は!リーリエ!」

 

ククイの宣言によりその場にいる全員がハッとなり意識を戻す。その瞬間、リーリエの勝利が確定した。

 

激しい戦いの末勝利を手にしたリーリエだが、必死だったあまり勝利の実感がない。そんな彼女に、観客たちから拍手の喝采が嵐のように降り注ぐ。

 

それを聞いたリーリエは、自分が勝ったのだと実感することができた。しかし疲労のあまり喜びよりも先に、その場にペタッと座り込んでしまった。

 

「勝った……ヨウさんに、勝てました……。アローラリーグ、優勝、できました……。」

『バオウッ』

 

疲労から固まってしまっているリーリエにカイリューがゆっくりと抱き着いてきた。カイリューの傷付いた身体と温もりから、激戦を勝ち抜き優勝できたことの実感を改めて感じると同時に、カイリューに感謝しながらリーリエは涙を流した。

 

「……はぁ、負けたか。ジャラランガ、お疲れ様。」

『じゃ、らぁ……』

 

戦闘不能となったジャラランガは辛うじてヨウに返答する。悔しい気持ちと同時に、笑顔を向けてくれるヨウにジャラランガの表情は暗くなってしまう。

 

「なに、お前はよく頑張ったよ。負けたのはお前のせいじゃない。だから元気出せ。お前は俺の誇りだ。」

『……ジャラァ!』

 

ヨウの言葉に元気を取り戻したジャラランガは、ヨウのモンスターボールへと戻っていく。ヨウは最後まで戦ってくれたジャラランガ、そして自分のポケモンたちに改めて感謝し、リーリエの元へと歩いていく。

 

「リーリエ、お疲れ様。優勝おめでとう。」

「ヨウさん……」

 

ヨウはリーリエに手を差し伸べる。リーリエはその手を受け取り、ゆっくりと立ち上がってヨウと向かい合った。

 

「まさか負けるなんて思わなかったが……今回は俺の負けだ。改めて、優勝おめでとう、リーリエ!」

「はい!ありがとうございます!ヨウさん!」

「次の対戦は……いや、これに関しては野暮だったな。応援してる。頑張れよ。」

「ありがとうございます。」

 

リーリエは改めて感謝の言葉を述べ、ヨウとの握手を交わした。そして彼女が上を見上げると、視線の先には笑顔でこちらを見下ろしている少年、アローラ最強のトレーナーが彼女の瞳に映ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝戦が終わり、優勝トロフィーの授与式が始まる。優勝したリーリエは用意された台座の上に登り、向かいには優勝トロフィーを持った少年の姿があった。

 

「“リーリエ選手”、優勝おめでとう。」

「ありがとうございます。“チャンピオン”」

 

お互いいつもとは違う名称で呼び合う。現在は公の前なので当然と言えば当然ではあるが、リーリエ的には少し悶々とした気分になってしまっているのは言うまでもない。

 

チャンピオン、シンジがトロフィーをリーリエに手渡し、リーリエはそのトロフィーを丁寧に受け取り頭を下げる。優勝トロフィーを受け取ったリーリエに、参加したトレーナー、観客のみんな、さらには四天王やしまキング、しまクイーン、エーテル財団関係者たちからの拍手が贈られた。

 

トロフィーを渡したシンジは正面、トレーナーたちの方へと振り向く。そして大きな声で高らかに宣言をした。

 

「後日、彼女にはチャンピオンである僕とのバトルを行ってもらう!もし、彼女が勝利したのならば、チャンピオンの座は交代されることになるだろう!」

「っ!?」

 

その言葉にリーリエはハッとなった。今までシンジと戦うことだけを夢見てこの舞台に立ったが、冷静に考えてみれば後日行われる試合は公式のチャンピオン戦。つまり新チャンピオンが誕生するかどうかが懸かっている重要な試合だ。もし万が一、いや、億が一でも勝つことができたのなら、自分がチャンピオンになることとなってしまう。

 

彼女にとってシンジは永遠の目標。そんなこと、考えたことはなかったが、もしも勝ってしまったのならどうすればいいのだろうかと焦ってしまう。

 

「もちろん、僕は手加減することは一切ない。僕と彼女の真剣勝負、この場にいる全員、そしてアローラ全土に人たちに見てもらいたい!僕たちの全力バトル、後日の試合を楽しみにしてほしい!」

 

シンジの演説にこの場にいる全員が歓声を上げる。アローラ最強のチャンピオンと激戦を繰り広げ乗り越えたアローラリーグ優勝者のバトルを期待しない人はいないだろう。

 

先ほどの心配もそうだが、これだけの人間に彼とのバトルを期待されているのだと知るとリーリエにも少しずつ不安が募っていく。そんな彼女に、シンジは他の誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「明日のバトル、楽しみにしているよ。」

「シンジさん……」

 

シンジはその場から去り、リーリエは彼の背中を見つめ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜のこと、ベッドに横になって目を瞑っていたが、中々寝られずに時間だけが過ぎて行った。少し出かけようと外に出ようとしてベッドを降りる。

 

「リーリエさん、眠れないんですか?」

「ヒナさん、すみません。起こしてしまいましたか。」

「いえ、私も興奮してあまり寝付きませんでしたから。」

 

同室のとなりのベッドで休んでいたヒナも体を起こしリーリエに声をかけた。ヒナはリーリエにこれからどこか出かけるつもりなのか、と疑問を投げかけると、彼女は少し散歩してくると答えた。ヒナは何も言わず、気を付けてくださいとだけ伝えると、リーリエは静かに部屋から出て行った。

 

ラナキラマウンテンの夜は雪と相まって神秘的でとても落ち着く雰囲気だ。その分いつもよりも冷えてしまうほど気温も下がってしまうのだが、専用の温暖着を着用していれば問題はない。

 

それにしてもラナキラマウンテンに限らず、アローラの空気は身体中に染み渡る感じがして気分がスッキリする。海や太陽の香りが漂うのもその要因だろう。夜であってもそれは変わらない。

 

少しは緊張も解れ気分が落ち着いてきたその時、彼女の近くから男性の声が聞こえてきた。リーリエにはその声に非常に聞き覚えがあり、気がつけば物陰にこっそりと隠れてしまっていた。

 

その声の主は、彼女にとって特別な存在でもあるシンジであった。シンジはどうやら誰かと話しているようだが、座り込んでいる彼の姿を見て誰と話しているのかもすぐに分かった。

 

彼の近くにいるのは彼のポケモンたちであった。ニンフィア、イーブイだけでなく、シャワーズ、サンダース、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシアと勢ぞろいであった。本来所持可能なポケモンは6匹までではあるが、ここは現在彼の本拠地であるアローラリーグ。預けてあるポケモンたちと共に出かけているだけであろう。

 

シンジは呟くようにポツリと自分のポケモンたちに語り掛ける。

 

「……明日、ようやくリーリエと本気で戦うことができる。」

『イブ……』

「分かってる。彼女はこの短期間で本当に強くなった。そして僕との約束通り、この舞台まで来てくれた。」

『フィア』

「……今度は僕が彼女に応える番だ。全力で彼女と戦う。彼女に勝つことで、僕はきっとチャンピオンとして前に進むことができるんだ。」

 

シンジはそう言ってスクッと立ち上がり、自分のポケモンたちを見渡した。

 

「ニンフィア、イーブイ、シャワーズ、サンダース、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシア、明日は頼むよ。僕は君たちみんなのこと、信じてるからね!」

『フィーア!』

『イッブ!』

『シャウ!』

『ダァス!』

『ブッスタ!』

『エーフィ』

『ブラッキ』

『リィフ!』

『グレイ!』

 

シンジの呼びかけに全員が順番に答えた。その一部を見ていたリーリエは、彼の密かな考えを知ることできた。

 

「シンジさん……私とのバトルをそこまで考えてくれていたのですね。」

 

自分の戦いたいという気持ちに応えてくれるだけでなく、自分との戦いを本人もそれほど楽しみに、それもそんなに深く考えてくれているなんて思わなかった。リーリエにとって彼は今まで背中を追いかけるための目標であり、一人のトレーナーとして憧れの存在であった。しかし今、紛れもなく彼女の目の前にはチャンピオンとして全力で戦おうとしてくれる彼がいる。

 

リーリエの覚悟は決まった。不思議と緊張は解け、先ほどまで頭の中でグルグルと回り続けていた思考が纏まったのだ。

 

自分は明日のバトル、自分のバトルを全力でチャンピオンにぶつける。島巡りで培ってきた経験を、最強である彼にどこまで喰らいつくことができるか、その成長を彼に見せると心に誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして緊張の夜が明けた翌日、遂に皆が夢見た、いや、誰よりも当の本人である二人が待ちに待った運命の試合が始まろうとしていた。

 

「それではこれより!アローラリーグ、チャンピオンの座を賭けた最終試合を始めます!」




最終戦に参加するブイズの発表です

UNITE効果なのか直前で一気に伸びたグレイシアが一位
王道の圧倒的人気のブラッキー、エーフィが同率二位
そして残りは僅差となりリーフィアが四位
シャワーズ、サンダース、ブースターの初代御三家が同率五位となりました。

実は中盤ぐらいはブラッキーが圧倒的一位を走っていたんですけど、途中からエーフィが伸び始め、最終的にグレイシアが突然一気に伸びた感じでしたね。やっぱこの三匹はブイズの中でも人気が非常に高いんでしょうね。イーブイとニンフィアを混ぜたらどうなるか気になるところです。

と言うわけで投票してくれた皆さんありがとうございました。試合内容などはまたこれから考えますので、どうか楽しみにしていただけると幸いです。さて、最後の試合なので気合入れて頑張りますぞ!


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シンジVSリーリエ!約束を果たす最後の戦い!

この前アニメのスパイファミリー見たら面白かったから漫画全巻買いました。


ポケモントレーナーにとって最大の祭典、ポケモンリーグ。アローラリーグにおいて優勝したトレーナーには、アローラ地方最強のトレーナーであるアローラ初代チャンピオンへの挑戦権を得ることができる。

 

そして決勝戦、激闘を制し念願のアローラリーグ優勝を見事勝ち取ったリーリエは今まさに、夢と約束の地へと足を踏み入れようとしていた。

 

「それではこれより!アローラリーグ最後の戦い!チャンピオンバトルを開催します!」

 

戦いの審判を務めるアローラリーグ建設者、ククイが司会を開始する。その宣言に会場の人たちは盛り上がりを見せ歓声をあげる。

 

「まずはチャレンジャー!数々の激闘を勝ち抜き、見事チャンピオンへの挑戦権を得たトレーナーの名は……挑戦者リーリエだ!」

 

ククイの紹介により派手なスモークとスポットライトの演出から姿を現したリーリエ。彼女の姿に全員が拍手を送って盛大な歓声をあげて迎え入れた。大げさな紹介に恥ずかしさを感じるのか、彼女の頬は少し赤く染まっているようにも見える。しかしここからは自分が望んだ場所。このような気持ちでは今から戦う彼に失礼だと、頬をパンパンッと叩いて気合いを入れなおす。

 

「そして、我らがアローラ地方が誇る初代チャンピオン!2年間彼のチャンピオンの座を脅かすトレーナーは現れず、今日、果たしてチャンピオンの座は揺らぐのだろうか!?初代王者、シンジの登場だ!」

 

挑戦者リーリエと同じく派手な演出の中からチャンピオンでありリーリエの憧れのトレーナーであるシンジが姿を現す。堂々とした立ち振る舞いから、彼のチャンピオンとしての威圧感、プレッシャーがリーリエにも伝わってくる。

 

初代チャンピオンであるが故に、アローラにおいて絶大な人気を誇るシンジ。登場しただけでリーリエを超える歓声が彼に対して降り注がれた。名前を呼ぶ声や黄色い声援、待ってましたと言う声まで様々だが、誰もが彼の事を慕い、目標とし、憧れを抱いていることが分かる。それがリーリエにとって不思議ととても誇らしく感じてしまい、何より自分はこれからチャンピオンと戦うのだと改めて実感させられる。

 

シンジとリーリエはフィールドに立ち向かい合う。やはりチャンピオンとしての彼は他の誰よりも威圧感が強く、リーリエの額から汗が滴り落ちるのを感じる。先ほどまで緊張はあまり感じていなかったのだが、ここに来て先日感じていた緊張感がぶり返してきた。

 

だがそんな彼女に、チャンピオンであるシンジが口を開いて語り掛けてきた。

 

「……リーリエ、よくここまで来たね。」

「シンジさん……。」

「チャンピオンとしてここに立った以上、僕は全力でチャレンジャーを迎え撃つ。そう言う心構えでいつも戦ってきた。だけど今は……今回だけは、一人のトレーナーとして君に挑みたい。だからリーリエ……君の全力、僕に見せてくれ!僕も全力で君と戦う!」

「……はい!私の全力!チャンピオンに……シンジさんにぶつけます!」

 

シンジと全力で戦える。彼の言葉だけでリーリエは不思議と緊張が解れて行った。こんな時まで彼に助けられるのが少々情けないと感じながらも嬉しくもあり、これで心置きなくリーリエとして、彼と全力で戦うことができると覚悟が決まる。

 

二人の準備が整ったと判断したククイは、二人の姿を交互に見て確認すると、試合のルール説明を開始した。

 

「使用ポケモンは両者共に6体のフルバトル!チャンピオンは交代することは出来ず、チャレンジャーは交代自由!どちらかが6体全員戦闘不能となったらバトル終了だ!」

 

ククイの説明に両者理解したという意思表示のために頷いて答える。

 

「それでは、チャンピオンからポケモンを!」

 

「行くよ!リーフィア!」

『リッフィ!』

 

ククイの合図と同時に出したシンジの最初のポケモンは、くさタイプのリーフィアであった。シンジのポケモンはイーブイとその進化形だが、その数は現在合計9種類に及んでいる。その内6種類が今回のバトルに選出されているのだろうが、彼がどのポケモンを選出しているのかは不明だ。相性のいいポケモンはとっておきたいところだが……。

 

いや、そんなことを言っていては彼には勝てない。彼に勝つには、自分の信じるバトルを貫くのが最も近道となるだろう。ならば自分は、自分のポケモンを信じて戦うだけだと最初のポケモンを選びモンスターボールを手に取った。

 

「チラチーノさん!お願いします!」

『チラッチ!』

 

リーリエが最初に選出したのは彼女にとっての切り込み隊長的存在、チラチーノだ。いつも通りの戦術で来るか、とシンジは少し嬉しそうに小さく微笑んだ。

 

「それではチャンピオンバトル……開始!」

 

ククイの合図により誰もが待ち望んでいたチャンピオンバトルが幕を開けた。しかし誰よりもこの戦いを待ち望んでいたのは当の本人である。ここはリーリエが迷わず先手で攻めるのだろう、と思いきや、最初に動き出したのはシンジたちであった。

 

「つるぎのまい!」

『リフ』

「っ!?」

 

最初からつるぎのまいで勝負を仕掛けてきたシンジ。つるぎのまいは自身の攻撃力は大幅に上げる技で、これによりリーフィアの攻撃性能が飛躍的に上昇した。無暗に突っ込んでしまっては間違いなくリーフィアの剣の餌食になってしまう。

 

しかし彼を相手に後手に回ってしまっては倒されてしまうのも時間の問題。危険性は高いが、ここは大胆に攻めるしかないと彼女は判断したのだった。

 

「チラチーノさん!あなをほるです!」

『チラ!』

 

初めからあなをほるで地中に姿を消し不意打ちを狙う作戦で行くリーリエ。シンジはその状況でも落ち着いて状況を見極めており、彼の落ち着いた様子にリーフィアも同調していた。

 

リーフィアの背後からチラチーノはあなをほるで姿を現す。背後を取ったチラチーノは、今がチャンスと攻撃を仕掛けた。

 

「スイープビンタです!」

『チッラァ!』

 

チラチーノはスイープビンタで攻撃する。今日は見るからに彼女の調子もよく、スピードも乗りに乗っていた。これなら決まると確信していたリーリエだが、そう考えは甘くなかった。

 

「つばめがえし!」

『リッフ!』

『チラッ!?』

 

なんとチラチーノの攻撃をリーフィアは宙返りで回避した。無駄のないその動きは非常に洗礼されており、他のトレーナーとは比にならないものであった。

 

背後を取ったチラチーノだが、リーフィアに回避され逆に背後を取られてしまうチラチーノ。彼女の背中にリーフィアのつばめがえしがクリーンヒットし、地面に倒れ伏せてしまう。

 

「チラチーノさん!」

『ち……ラァッ!』

 

つるぎのまいで攻撃力を高めていることもあり、今の一撃だけでかなりのダメージを負ってしまった。チラチーノは今の攻撃を受けてもなお立ち上がるが、それでも足元がおぼつかずふらついてしまっている。流石はチャンピオンのポケモン、言うまでもなかったがやはり一筋縄ではいかない相手である。

 

「今度はスピードスターです!」

『チラァ!』

「エナジーボールで撃ち落として!」

『リフィ!』

 

チラチーノは星型の弾幕で反撃を仕掛ける。しかしその攻撃をリーフィアはエナジーボールで全て確実に撃ち落とした。しかしそれでもチラチーノは攻勢を止めることはなかった。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チッラァ!』

 

ダメージは蓄積してしまっているチラチーノだが、自分の体に鞭を打ち地面を思いっきり蹴ってリーフィアに接近する。リーフィアも正面から突っ込んでくるチラチーノを迎え撃つ態勢に移行した。

 

「リーフブレードで迎え撃って!」

『リッフィ!』

 

リーフィアは額の草にエネルギーを集中させて力を溜める。チラチーノが尻尾を振りかざすと、その攻撃をリーフィアはギリギリで回避する。刹那、リーフィアの反撃によるリーフブレードが決まったかに思えたタイミングであったが、その攻撃を更にチラチーノは回避してみせた。

 

そう、チラチーノの特徴である油のコーティングだ。綺麗好きであるチラチーノは自身の体をコーティングさせ汚れを寄せ付けないよう心がけている。そのコーティングに加え彼女のしなやかな体の動きにより敵の攻撃を逸らしていなし、リーフィアの攻撃を華麗に避けることができたのである。

 

『リフィ!?』

『チラァ!』

 

リーフィアのリーフブレードによるカウンターを更にカウンターする形でチラチーノのスイープビンタが2連続で炸裂する。相手の攻撃に合わせるカウンターという形によりダメージが増加し、想定以上の負荷がリーフィアを襲った。

 

「っ、リーフィア!エナジーボール!」

『リッ……フィ!』

 

リーフィアは吹き飛ばされながらも、受け身を取りながらエナジーボールで反撃をする。チラチーノは慌ててその攻撃を体を逸らして回避するが、着地した際にダメージが足に来てしまうふらつき隙を晒してしまう。

 

「リーフブレード!」

『リフッ!』

 

態勢を整えたリーフィアは、小さなその隙すらも逃すことなく距離を詰め、今度は腕の葉に集約したエネルギーを解放しチラチーノを切り裂いた。

 

「チラチーノさん!」

『ち……らちぃ……』

「チラチーノ戦闘不能!」

 

一矢報いることはできたものの、力及ばずリーフィアに敗北してしまうチラチーノ。しかしその戦いは決して無駄ではなく、確実にリーフィアにダメージを与えることには成功した。

 

「お疲れ様です。ゆっくり休んでいてください。」

 

健闘したチラチーノをモンスターボールに戻して優しく言葉をかけるリーリエ。チラチーノのボールを懐に戻すと、改めてシンジの姿を瞳に映した。

 

やはり彼は強い。チャンピオンである彼は紛れもなく自分が戦ってきたどのトレーナーよりも強い。今までアローラ地方のチャンピオンとして君臨し続けてきたのを納得させられる、そんな戦いぶりであった。

 

しかし、そんな彼が今までの交えたどの試合とも違い、紛れもない全力で自分と戦ってくれている。彼の強さはそう感じさせるほど洗礼されていた。それがリーリエにとって何よりも嬉しかった。

 

(やはり私は、あなたを目標にしてきて本当によかった。ですが……だからこそ!)

 

最初は彼に近付ければいいと思っていた。背中を任せられるぐらい傍にいられればいいと。しかし改めてバトルで会話を交わしたら分かる。自分はこの人を超えたい。勝ちたいという欲求が生まれてしまっている。それはトレーナーであれば誰でも持っているであろう当たり前の欲求。

 

「……私は……」

「…………」

「……私は絶対、あなたに勝ちます!」

 

リーリエのその宣言を聞いたシンジは、嬉しさから自然と笑みが零れていた。まだ始まったばかりの試合ではあるが、これほどバトルを楽しいと感じたのは久しぶりであった。それこそ、チャンピオンになってからは初めてかもしれない。だからこそ、彼の答えは決まっていた。

 

「全力で来い!リーリエ!」

 

シンジは力強くそう返答した。その答えを聞いたリーリエは満足そうにし、次のポケモンを繰り出すのだった。

 

「行きますよ!フシギバナさん!」

『バァナ!』

 

リーリエの2体目はくさ・どくタイプのフシギバナであった。その巨体と大きな咆哮は会場を揺らすほどの迫力で、彼の気迫がシンジたちにも伝わっていた。それでも彼らは表情を変えず、ただただ真っ直ぐフシギバナのことを見つめ彼の力を見極めていた。

 

シンジとリーリエは何度か手合わせを重ねてきたが、進化したフシギバナと対峙するのは初めてである。果たしてシンジは重量級となったフシギバナに対してどのような戦術をとってくるのか、リーリエは神経を研ぎ澄ませ彼らの戦いの観察に集中する。

 

「リーフィア!エナジーボール!」

『リッフィ!』

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

リーフィアのエナジーボールをフシギバナははっぱカッターで対抗し次々と切り刻んでいく。その衝撃で爆発したエナジーボールの背後から、リーフィアは額の葉にエネルギーを集中させて接近していった。

 

「リーフブレード!」

『リフィ!』

「っ、つるのムチで捕まえてください!」

『バァナ!』

 

エナジーボールを囮に接近してきたリーフィアは得意の接近戦で一気に勝負を仕掛ける。しかしその行動を読んでいたリーリエは、すかさずつるのムチでリーフィアの四肢を捕らえて捕縛する。

 

「つばめがえし!」

 

明らかに追い詰められていた状況だったが、リーフィアはつばめがえしで強引につるのムチを振りほどいた。そしてその勢いを利用しフシギバナに続けて攻撃をヒットさせた。

 

くさタイプのフシギバナにひこうタイプのつばめがえしは効果抜群。当然フシギバナには大きなダメージが入るが、それでも怯むことなくその攻撃を持ちこたえて踏ん張っていた。

 

「はっぱカッターで反撃です!」

『ば、ナァ!』

『リフィ!?』

 

フシギバナはすぐにはっぱカッターで反撃をする。予想外の反撃にリーフィアは対応しきれずはっぱカッターの直撃を受けて大きく飛ばされてしまった。

 

フシギバナとの戦闘だけでなく、チラチーノのスイープビンタによるカウンターも響いてきたのか、受け身をとるもののダメージから膝をついてしまう。そろそろ体力も限界が近づいているようだ。

 

「くっ、エナジーボール!」

『リーフィ』

「フシギバナさん!ソーラービームスタンバイです!」

『バァナッ!』

 

リーフィアはその場からでも攻撃できるエナジーボールで遠距離攻撃による反撃を仕掛ける。対してフシギバナはソーラービームの態勢に入る。背中の大きな花に日の光を集め、集中しながらリーフィアの攻撃を耐えしのぐ。

 

「っ、リーフィア!リーフブレード!」

『リッフィ!』

 

リーフィアの素早さを利用して近接攻撃しようと接近するシンジ。フシギバナの目前まで接近し、あと僅かで届く目と鼻の距離でフシギバナの光が前方に解き放たれた。その光が両者の姿を包み飲み込んだ。

 

光が収まると、そこにはまだ荒い呼吸をしながらも立っているフシギバナと、目を回して倒れているリーフィアの姿があった。その光景が今のバトルの結末を物語っていた。

 

『り……ふぃ……』

「リーフィア戦闘不能!」

 

「よく頑張ったね、リーフィア、あとは休んでて。」

 

戦闘不能になったリーフィアをモンスターボールへと戻すシンジ。チラチーノを倒し、フシギバナをも追い詰めたリーフィアの貢献は大きいものである。

 

「次は君だよ!グレイシア!」

『グレイッ!』

 

次にシンジが選出したのはグレイシアであった。くさタイプであるフシギバナはこおりタイプのグレイシアに対して相性が悪い。しかも今の戦闘でかなり体力を消耗してしまっている。ここは少しでも体力を回復させたほうが得策かと、リーリエはフシギバナをモンスターボールへと戻した。

 

「戻ってください、フシギバナさん。」

 

フシギバナを懐に戻し、次にリーリエは別のモンスターボールを手にする。しかしその時であった。

 

『ピィ♪』

「えっ!?ピッピさん!」

 

毎回の恒例行事のようにピッピが勝手にモンスターボールから飛び出して姿を現した。

 

「ぴ、ピッピさん、この戦いはいつもよりも……」

 

いつもの戦いよりも危険なものだ、そう忠告しようとしたとき、ピッピは自分の胸をポンッと叩き任せろと言ってきた。なんかデジャブのようにも思えるが、彼女の実績を信じてここは任せてみるのが一番なのかもしれないとリーリエは頷いた。

 

「……分かりました。任せますよ!ピッピさん!」

『ピィ!』

 

正直シンジとしては彼女が大切にしているピッピとあまり戦いたいとは正直思えない。しかし彼女のピッピは間違いなく実力者であり、彼もピッピの強さを知っているため油断などできるはずもないと、全力で戦う必要があると気を引き締める。

 

「行くよ、グレイシア」

『グゥレイッ』

「こおりのつぶて!」

『グレイッ』

「ピッピさん!躱してください!」

『ピッピィ!』

 

グレイシアは怒涛のこおりのつぶてで先制攻撃を仕掛けた。しかしその攻撃をピッピは自慢の軽い身のこなしによるステップで躱していく。その動きはふざけているように見えるが、無駄が非常に少なく的確にグレイシアの攻撃を回避している様は実戦的な動きであった。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ!』

「っ、躱してれいとうビーム!」

『グレイッ!』

 

ピッピがステップからのジャンプで空中に飛び上りムーンフォースによる反撃をする。その攻撃を今度はグレイシアが回避し、続いてれいとうビームによって反撃する。しかしその攻撃もまたピッピはステップして回避しれいとうビームは空を切った。

 

「もう一度ムーンフォース!」

「シャドーボール!」

 

再びムーンフォースで反撃するピッピに対し、グレイシアはシャドーボールで迎え撃った。両者の攻撃は中央で衝突し、大きな衝撃を発生させ視界を奪った。その状況でも立て続けに攻撃を仕掛けたのはまさかのリーリエであった。

 

「ピッピさん!めざましビンタです!」

『ピッピィ!』

「バリアー!」

『グレイ』

『ピィ!?』

 

ピッピは衝撃を突破しめざましビンタでの接近戦を試みる。しかしシンジは冷静にその攻撃をバリアーによって対処する。

 

バリアーは自身の物理防御力を大きく上げる技で、それによりピッピのめざましビンタが弾かれてしまい隙が生じた。

 

「こおりのつぶて!」

『グッレイ!』

『ピッピィ!?』

「ピッピさん!?」

 

こおりのつぶての直撃を受けて地面に倒れてしまったピッピ。すぐに立ち上がることができたためダメージは少なめであるようだが、それでも近接戦、遠距離戦どちらにおいても部が悪く中々打つ手が浮かばない。

 

「……あまり賭けに出るのはよくないかもしれませんが……」

 

シンジ相手に賭けるのはよくないと感じながらも、他に手が思い浮かばないためリーリエにはこの技に頼るしか術がなかった。

 

「ピッピさん!ゆびをふる!」

『ピッピッピッピッ!』

 

ピッピは得意技のゆびをふるを始める。ランダム性のあるこの技は使用者にも、相手にもなにが起きるのか予測がつかない技である。もちろん状況を覆せない可能性もあるが、ピッピは今までピンチをこの技で乗り越えてきた。ならばリーリエは最早この技に頼るしか道はなかった。

 

しかしゆびをふるは発生まで少し時間が必要な技であるため隙が生じてしまう。シンジ相手に無事に発動させることができるのかと心配になるが、シンジは一向に動く気配を見せずにその場で見守っていた。

 

攻撃したくないから、とか有情のために行為ではない。彼の意図はあくまでゆびをふるを警戒してのことである。

 

攻撃してしまうと、その隙にゆびをふるが発生してしまった場合回避することができない可能性が出てしまう。であるならばピッピの技の発生を確認し、それを回避してから反撃した方が確実だと判断したためだ。どのような状況でも冷静に対応するのは、彼が潜り抜けてきた修羅場の数が多いため、経験の賜物である。

 

ピッピのゆびをふるによる振り子運動がストップすると、ピッピの指が光りだした。一体何がでるのか、と警戒していると、光が収まった時に……。

 

「……あれ?」

 

そう口にしたのはリーリエであった。いつものように発生するかと思ったゆびをふるは、待ってみるもののなにも発生しない。不発に終わったのかもしれない、と少し恥ずかしい気持ちになってしまう。

 

「グレイシア!こおりのつぶて!」

『グレイ!』

「っ!?躱してください!」

『ピィ!』

 

ピッピはこおりのつぶてを回避する。しかし焦って回避指示を出してしまったため、先ほどよりも動きにキレが見られない。それと同時に、シンジとグレイシアの巧みな攻撃によってピッピの動きは誘導されていたのだった。

 

「捉えた!れいとうビーム!」

『グレイィ!』

『ピィ!?』

 

こおりのつぶてを回避するピッピだが、その回避をシンジに読まれてしまいグレイシアはピッピの回避位置を的確に狙い撃つ。ピッピはその攻撃によって氷漬けになってしまい、これ以上は戦闘続行不可能の状態へと陥ってしまった。

 

「ピッピ戦闘不能!」

「ピッピさん、お疲れ様です。よく頑張りましたね。」

 

リーリエはモンスターボールへとピッピを戻した。攻防一体のグレイシアをどうやって攻略するか、と考えているとき、シンジが何かの違和感を感じていた。

 

(……ピッピは確かに倒した。でも、この違和感は一体……)

 

次の瞬間、突如としてグレイシアの周囲に複数の空間が開き彼女を囲んでいた。それを見たシンジはマズいと察知し、グレイシアに指示を出そうとする。

 

「っ!?グレイシア!躱しt」

『グレイ!?』

 

しかしその指示は間に合うことはなく、空間から飛び出してきた弾にグレイシアは包み込まれてしまった。今の攻撃が致命的となってしまい、グレイシアはその場で倒れてしまったのであった。

 

「っ!?」

『ぐ……れい……』

「ぐ、グレイシア!戦闘不能!」

 

観客やリーリエも唖然とする中、グレイシアをモンスターボールへと戻すシンジ。今の光景がなんなのかを理解している人は少ないことだろう。

 

今の技はエスパータイプの技、みらいよち。発動した時間差で相手に高威力の攻撃を与える特殊な技である。つまり先ほどのゆびをふるは不発ではなく、みらいよちが発動しピッピが倒れた後でグレイシアに襲い掛かったのである。倒れてもなおグレイシアを倒したピッピは、まさに仕事人とでも言うべきポケモンであるだろう。

 

「頑張ったね、グレイシア。あとはゆっくり休んでて。」

 

まさかの展開は流石のシンジも予想していなかったが、それでも序盤からこれほどの戦いを味合わせてくれるチャレンジャーは他にはいないと、寧ろワクワクが止まらない程感情が昂っていた。やはり彼女をここまで待っていて正解なのだと。

 

「だからこそ僕は……君に勝つことでようやく胸を張ってチャンピオンなのだと名乗ることができる。エーフィ!次は君だ!」

『エッフィ』

 

三体目にシンジが繰り出したポケモンはエスパータイプのエーフィだ。超能力を扱うエスパータイプは非常に厄介だが、ならば正面から突破するまでとあるポケモンに任せることにした。

 

「カイリューさん!お願いします!」

『バオゥ!』

 

リーリエの次なるポケモンは、彼女にとってエース級のポケモンであるカイリューだ。カイリューの大きな咆哮に観客たちの期待が高まる。これまでど派手なバトルを勝利に収めてきたカイリューは、今期のアローラリーグにおいて絶大な人気と期待を誇っていたのである。

 

「まだまだこれからです!シンジさん!」

「ああ!僕たちも絶対に負けない!」

 

最早彼らの中でも段々とヒートアップしてきたのか、最初に感じていた緊張感は既にどこかにいってしまっていた。それどころか今はアローラリーグで戦っているというよりも、二人の世界で戦っているという感覚の方が強く、彼らの他には誰もいない錯覚にさえなっていた。こうなってしまったら決着が着くまで誰にも止めることはできないだろう。

 

「カイリューさん!しんそくです!」

『バオウ!』

「サイコキネシス!」

『エッフィ!』

 

カイリューは開幕からしんそくで素早い先制攻撃を仕掛ける。しかしエーフィも既に捉えていたため、冷静にサイコキネシスでカイリューの動きを止める。カイリューも体が動かない中必死に攻撃しようとするもやはりピクリとも動かない。

 

「でしたら……れいとうビームです!」

『バ……オウゥ!』

「っ!?エーフィ!躱して!」

『エフィ!』

 

カイリューは動きを止められながらも、無理やりれいとうビームでエーフィに遠距離攻撃を仕掛けた。体は動かなくとも、体の一部のパーツだけなら何とか動かせるようである。

 

エーフィはカイリューのれいとうビームを避けるためサイコキネシスを解除しジャンプして回避する。強引な手段ではあったが、すぐに対処してくるあたり流石だと関心する。

 

「サイケこうせん!」

『エフィ』

 

エーフィの額から放たれる直線状のサイコパワー、サイケこうせんをカイリューは空中に逃げて回避した。しかししっかりと育てられたエーフィのサイコパワーは非常に高く、薙ぎ払うようにカイリューの後を追尾していった。

 

「っ!?アクアテールで防いでください!」

『バッオウ!』

 

このまま逃げてはジリ貧だと、アクアテールで反撃する。サイケこうせんにアクアテールで迎え撃つも、流石に分が悪くサイケこうせんに弾き返されてしまう。

 

「続けてサイコキネシス!」

『エッフィ』

『バウッ!?』

 

再びサイコキネシスに捉えられてしまう。しかし先ほどと違い反撃手段がないため、カイリューは成す術がなかった。今度はそのまま地面に叩きつけられてしまい、連続攻撃によって大きなダメージを負ってしまう。

 

「っ!カイリューさん!」

『ば……オウッ!』

 

ダメージは間違いなく蓄積してしまっているが、それでもなおカイリューは立ち上がりエーフィを見据える。流石のタフネスぶりにシンジも驚くが、それと同時に当然かと言う感情も抱いていた。

 

「エーフィ!連続でシャドーボール!」

『エフィ!』

「カイリューさん!躱してください!」

『バォウ!』

 

エーフィによる連続シャドーボールをカイリューは素早い動きで空中を立体軌道して回避していく。ダメージがあってもなおこれだけの動きができるのはカイリューがそれだけ実力をつけたからである。

 

「れいとうビームです!」

『バッオウ!』

「ひかりのかべ!」

『エッフィ!』

 

シャドーボールを回避しきったカイリューはれいとうビーム反撃する。エーフィはその攻撃を特殊技のダメージを半減するひかりのかべで防御する。それでもダメージを打ち消せるわけではないため、ダメージは隠しきれていない。

 

「カイリューさん!しんそくです!」

『バゥウ!』

「サイコキネシス!」

『エフィ』

 

初めと同じでカイリューのしんそくが炸裂する直前で、エーフィのサイコキネシスがストップをかける。今度は反撃される前に手を打とうとすぐさま指示を出すシンジだが、その直前にリーリエが新たな指示をカイリューに出した。

 

「カイリューさん!げきりんです!」

『バ……オウゥ!!』

「なっ!?」

 

サイコキネシスに囚われながらもカイリューはげきりんの赤いオーラに包まれていた。げきりんの凄まじい威力に、次第にサイコキネシスを破っていきエーフィとの距離を縮め、最終的にはパリンッと言うガラスが割れるような音が響いてエーフィを貫いた。

 

しんそくとげきりんによる強力な合わせ技により、エーフィのサイコキネシスは破られその場に倒れ伏せてしまう。かなりカイリューを追い詰めたエーフィであったが、エーフィは耐久力の低いポケモンでもある。そのため、今の一撃だけでも致命傷となってしまいあと一歩及ばず倒れてしまったのである。

 

『え……ふぃ……』

「エーフィ戦闘不能!」

 

エーフィが戦闘不能となり、これでシンジのポケモンは残り半分の三体となった。対してリーリエのポケモンは傷付いたフシギバナとカイリューを含め残り四体。アローラリーグ最終バトル、シンジVSリーリエの激闘は、佳境へと突入しようとしていた。果たして勝つのは、どちらなのだろうか。




当然確定事項ではあったけど、ちゃんと先日のポケモンダイレクトにてニンフィア(ブイズ)の内定が確定して一安心


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シンジVSリーリエ!激闘の果てに待つもの!

サンブレイクのアプデやらマスターデュエルのイベントやらで結構時間とられてます


「す、すごい……」

「ああ、確かにすごいな。」

 

シンジとリーリエがこの大舞台で激闘を繰り広げている中、そう呟いたのはリーリエと初戦で争ったヒナであった。そしてその横で同意したのは共にリーリエの試合を観戦していたグラジオだ。

 

二人は知り合いではないが、互いにリーリエと戦って敗北してしまった共通点、そして何よりどちらもリーリエと縁のある人物であるため、成り行きで共に観戦することとなったのだ。

 

「ここまで拮抗した激しい試合になるなんて思ってませんでした。」

「……ヒナはリーリエとあいつ……シンジの関係について聞いているか?」

「いえ……ですがリーリエさんの言っていた大切な人、と言うのがチャンピオンだと言うのはなんとなく……。」

「そうか。リーリエは元々、ポケモンをバトルさせることに苦手意識を持っていた。」

「え?そうなんですか?」

 

ヒナはグラジオの言葉に衝撃を受ける。あれだけの実力を持っていて自分が憧れていたトレーナーが、バトルに対して批判的な感情を抱いていたとは想像できなかったからである。

 

「だが、シンジと出会ってからリーリエは変わった。様々な困難がリーリエに襲い掛かったが、そんな妹をシンジは幾度となく守り、そしてリーリエの進む道を導いていった。兄である俺ができなかったことを、あいつは平然と成し遂げてくれた。ふっ、全く、大層ムカつく奴だな。」

 

そう言いながらグラジオは口角を上げてどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。前髪で目元が隠れてしまっているので表情は掴めないが、彼の声色などからリーリエだけでなく、シンジに対しての信頼も感じ取れる。

 

「そしてある時、リーリエは自分の目的の為にアローラを発った。行先はアローラ地方とは真反対に位置しているカントー地方。」

 

カントー地方に行っていた事実はヒナも彼女から直接聞いているため、頷いてグラジオの話を聞いていた。

 

「リーリエは無事目的を果たした。数年が経ったある時、リーリエは旅に出ることを決意した。理由は……約束のためだ。」

「約束……ですか?」

「リーリエはある時シンジと約束をした。必ず一緒に旅をしよう、と。その約束を果たすため、リーリエはポケモンと共に旅に出て、シンジとの約束を果たすための一歩を踏み出した。」

「……そしてその約束を自ら果たすため、チャンピオンはカントー地方に向かった、と言うことですか?」

「ああ、そうだ。そして旅が終わった時、今度はまた別の約束を二人は交わしたらしい。」

「もしかして、その約束が。」

 

グラジオは察したヒナの言葉に頷いて答えた。その時交わした約束こそが、今のバトルなのである。

 

シンジとリーリエは今、約束の舞台でバトルをしている。二人にとって、このアローラリーグは他のトレーナー以上に大切な舞台なのだ。だからこそ、二人はこのバトルを全力で戦い、心の底から楽しんでいる。この戦いがずっと続けばいいのに、と切実な願いを抱きながら。

 

自分が憧れ、自分に勝ったリーリエには勝ってほしい。しかし、チャンピオンのシンジが負けるところも想像できず、負けて欲しくないと思ってしまう自分もいる。複雑な感情を抱きながら、ヒナはただただこの試合を最後まで見届けようと心に決める。それに一トレーナーとして、こんなにも熱い戦いを見逃すなんてこと、出来るはずもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挑戦者リーリエとシンジの壮絶なバトルは後半戦を迎える。シンジのエーフィが倒れ、現在シンジの手持ちは残り3匹。対してリーリエの手持ちは傷付いたカイリューとフシギバナ、そしてマリルとシロンの2匹計4匹である。

 

「エーフィ、お疲れ様。よく頑張ったね。ゆっくり休んでて。」

 

相手はリーリエの頼れるパートナー、カイリューだ。アローラリーグで彼女を支え続け実績を残してきたのだから桁外れに強いのは明白。そんなカイリューを相手に健闘したエーフィを労り、シンジは心から感謝と労いの言葉を贈る。

 

そしてシンジが繰り出す次のポケモンは……。

 

「お願い!イーブイ!」

『イッブ!』

 

シンジが次に繰り出したのは色違いのイーブイであった。イーブイは彼のパーティの中ではまだまだ未熟ながらも彼を信頼し、彼に信頼されて数々の戦いを乗り越えてきている。他のポケモンに比べてバトル経験が少ないとは言え、強敵であることに間違いはない。

 

リーリエのカイリューは今のエーフィとの戦いでかなり無茶をしていたため肩で息をするほど疲弊してしまっている。このまま続投してイーブイと戦うか、それとも交代するか、どちらの選択を取るか悩んでいた。

 

そんな時、リーリエのモンスターボールの一つが自動で揺れる。するとモンスターボールの中から、突如として彼女のポケモンが姿を現した。

 

『リルル!』

「え?ま、マリルさん?」

 

そのポケモンはマリルであった。モンスターボールから飛び出したマリルは、振り向いてリーリエの顔を見つめると、胸をポンッと叩いてキリッとした表情を見せている。どうやら自分に任せろ、とでも言っているようであった。

 

その姿には何やらデジャブを思わせるものがあるが、マリルが任せろと言うのであればリーリエは彼女の意思を尊重することを優先する。それに実際、シンジのイーブイとリーリエのマリルは仲が良い。それこそマリルはイーブイの事を兄のように慕っていて、自分の成長を兄であるイーブイに見て欲しいと思っているのかもしれない。妹であるリーリエも、その気持ちはよく分かっているつもりだ。

 

「分かりました。お願いします!マリルさん!頑張ってください!カイリューさんは戻って休んでてください!」

『バウッ』

『リル♪』

 

リーリエはカイリューを一時モンスターボールへと戻し、マリルとバトンタッチすることにした。マリルはフィールドに立ちイーブイの姿を真っ直ぐと見つめる。イーブイも少し困惑しながらシンジの方へと振り向いた。

 

「イーブイ。マリルは君と戦いたいみたいだ。だから君もマリルの気持ちに応えてあげて。」

『イブ……イブッ!』

 

本当はあまり戦う気は起きていない様子だが、シンジの言葉を聞いてマリルと戦うことを決意する。イーブイがマリルの姿を再び見ると、彼女の表情はやる気に満ち溢れていた。どうやらイーブイと戦う気力は万端のようである。

 

であるならば自分も彼女の気持ちに応えなくてはと、イーブイも胸を張って前にでる。それと同時に、なかよし二匹による戦いが幕を開けた。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

「イーブイ!スピードスター!」

『イッブイ!』

 

開幕バブルこうせんで攻撃を行うマリル。対してイーブイはスピードスターで対抗する。マリルの放った複数のバブルこうせんを、イーブイのスピードスターが次々と的確に撃ち落としていった。

 

「続けてアクアテールです!」

『リィル!』

「躱してアイアンテール!」

『イッブ!』

 

マリルはアクアテールで薙ぎ払うが、イーブイはその攻撃を冷静に回避しアイアンテールで反撃する。その攻撃はマリルの胴体にクリーンヒットし、マリルの体を大きく吹き飛ばした。

 

「マリルさん!大丈夫ですか?」

『リル!』

 

マリルは態勢を立て直し持ちこたえる。みずタイプであるマリルに対してはがねタイプのアイアンテールは効果がいまひとつだ。ダメージとしてはそこまで大きくないようである。

 

「もう一度バブルこうせんです!」

『リルゥ!』

「スピードスター!」

『イッブイ!』

 

マリルは再びバブルこうせんで攻撃するが、先ほどと同様にスピードスターであっさりと撃ち落とされてしまう。このままでは何度やっても結果は同じであり、この状況を変えることはできない。

 

「でしたら……マリルさん!ころがるです!」

『リル!』

 

マリルはころがるで勢いよく接近する戦法に切り替える。しかしシンジが接近することを黙って見ているはずはなかった。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『イッブイ!』

 

イーブイは連続でスピードスターを放ちマリルの接近を妨害する。だがマリルはころがるをしながら左右に動き、スピードスターを的確に回避していた。

 

「アイアンテール!」

『イッブ!』

 

今度は接近してきたマリルをアイアンテールで直接迎え撃つ。ころがるを正面から叩きつけ、強力なアイアンテールがマリルを真っ向から弾き返した。しかしリーリエもまた、これだけで終わるほど甘いトレーナーではない。

 

「そのままハイドロポンプです!」

『リィルゥ!』

『イブッ!?』

 

マリルは吹き飛ばされながらころがる状態を解除し、ハイドロポンプを発射する。鋭いハイドロポンプの一撃がイーブイに届き、マリルの攻撃を無理やりにでも当てることで試合の流れを強引に変えてきた。

 

「イーブイ、大丈夫?」

『イブイ!』

 

体に纏わりついた水をブルブルと体を震わせてふるい落とす。シンジは今回とってきているリーリエの戦術に少し違和感を感じていた。

 

リーリエは普段ポケモンたちの特徴や環境を活かして戦うことが多い。しかし今回リーリエがとってきている戦術は、どちらかと言うと力押しで戦う戦術の方が目立っている。

 

恐らく彼女はシンジに対していつもの戦術、小細工を弄しても勝つことはできないと考えているのだろう。だからこそ彼女とポケモンたちが使えるあらゆる手段、そしてシンジの知らない戦いをすることで不意を突き、彼に少しでも食らいつこうと努力している。それは彼女が彼との旅、そして島巡りで様々なトレーナーと戦い、学び、成長してきた証明である。

 

だからこそシンジはリーリエの成長を実感し、もっともっと彼女のバトルを堪能したい。彼女と全力でバトルをし、バトルを通じて会話を交わしたいと感じている。シンジにそう思わせるほど、リーリエは今回の旅で成長してきたのである。

 

「……イーブイ、まだ行けるよね?」

『イッブ!』

 

シンジの問いかけにイーブイは元気よく返答する。ハイドロポンプの直撃は喰らったが、態勢がやや不安定であったため致命打を与えるほどのダメージは出なかったようだ。

 

「今度はこっちが見せる番だよ!イーブイ!スピードスター!」

『イッブイ!』

 

今度はシンジから仕掛けてくる、と警戒するリーリエ。しかしイーブイの使用したスピードスターは先ほどと一風変わっていたため、リーリエも驚きを隠せなかった。いや、それは観客も同じようだ。

 

イーブイの放ったスピードスターはイーブイ自身の周囲に浮遊し、イーブイを守るように周回している。普段は攻撃技として使用するはずのスピードスターをこのような形でりようするのは、驚かずにいる方が無理と言う者だろう。

 

「君たちが旅している間、僕もただ待っていただけじゃない。僕とイーブイもまた進化してるんだよ。イーブイ!ダッシュだ!」

『イブイ!』

 

イーブイはスピードスターを身に纏ったまま走り始めた。驚いている場合ではないと、リーリエはマリルに攻撃の指示をだした。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!』

 

マリルは接近してくるイーブイをバブルこうせんで迎え撃つ。しかしバブルこうせんはイーブイを守るスピードスターに阻まれて防がれてしまう。それどころか攻撃モーションに移行していない関係上イーブイの勢いも止まることなく、マリルとイーブイの距離もみるみると縮んでいった。

 

「っ!?ハイドロポンプです!」

「シャドーボール!」

 

マリルはハイドロポンプで対抗し、その攻撃をシャドーボールで跳ね返して相殺する。威力の高い技が衝突し衝撃によって両者の視界が奪われるが、晴れた際にはそこにイーブイの姿はすでになかった。

 

「っ!?しまった!?」

 

リーリエは急いで上を見上げる。一瞬の隙、たった一瞬の隙ではあったが、それだけあればシンジたちにとってそれは充分すぎる時間であった。

 

「これでフィニッシュだ!とっておき!」

『イッブイッ!』

『リルッ!?』

 

イーブイは大きな星を放つ。とっておきは非常に威力が高い技ではあるが、発動条件が自分の所持技を全て1回以上使用しなければならないと言う条件付きの技である。このバトル中所持技であるスピードスター、アイアンテール、シャドーボールの全てを発動したため条件を満たし、懐に飛び込んだタイミングで使うことができたのである。

 

イーブイのとっておきがマリルの体を包み込む。マリルはその攻撃で仰向けに倒れ込み、目を回していた。これ以上の戦闘は不可能なようである。

 

『り……るぅ……』

「マリル!戦闘不能!」

 

リーリエのマリルは健闘したものの、残念ながら戦闘不能になってしまった。しかし慕っていたイーブイに一撃を加え、更に彼の本気を引き出したと考えるとマリルの成長は間違いなく感じられるバトルであった。それはイーブイも同じようで、マリルのことを心配しながらもどこか嬉しそうに笑みを浮かべていたのであった。

 

「お疲れ様です、マリルさん。ゆっくり休んでください。」

 

これでリーリエの残り手持ちはフシギバナ、カイリュー、そしてシロンの3体である。しかしカイリューとフシギバナは傷付いており、戦力としては五分五分かやや不利といったところか。

 

「……いや、まだ手はあります。フシギバナさん!もう一度お願いします!」

『バァナ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギバナであった。小柄なイーブイ対巨体を持つフシギバナの対格差は歴然。小柄なイーブイは小回りが利き、巨体のフシギバナは高い耐久力で立ち向かえると言ったメリットが存在している。果たして両者はどう立ち回るのか、注目が集まる。

 

「……イーブイ!シャドーボール!」

『イーブイッ!』

 

イーブイは開幕シャドーボールで先制攻撃を仕掛ける。体重の重いフシギバナは俊敏に動くことができないため、受け身の態勢をとりイーブイの攻撃を受け止め持ちこたえる。ダメージが蓄積してはいるが、持ち前の耐久力でイーブイのシャドーボールを凌いでいた。

 

「フシギバナさん!こうごうせいです!」

『バナァ』

 

フシギバナはイーブイの攻撃を耐えきると、日の光を浴びて体力の回復を図る。太陽の恵みがフシギバナを包み込み、フシギバナの傷を癒していく。このまま体力を回復され続けるのはさすがにマズいと、シンジは攻撃の手を緩めなかった。

 

「スピードスターで畳みかけて!」

『イッブ!』

 

イーブイは連続でスピードスターを放ち続ける。回復量を超える攻撃を与える。単調だが回復技に対しての対抗策として非常に有効な手段の一つである。実際フシギバナも体力を回復してはいるものの、やはり攻撃を耐えるだけでもかなり限界が近いようだ。

 

無数のスピードスターによる弾幕でフシギバナの姿が包み込まれ見えなくなる。攻撃の連続によりイーブイはスタミナが切れてしまい、攻撃の手を止めて一時休息をする。しかしその一瞬の隙を突き、フシギバナが動き出した。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バァナ!』

「っ!?イーブイ!躱して!」

『イッブッ!』

 

フシギバナのはっぱカッターによる反撃をイーブイは咄嗟にジャンプして回避する。だがリーリエもまたそう簡単にチャンスを逃すトレーナーではない。

 

「続けてつるのムチです!」

『バナ!』

『イブ!?』

 

イーブイの回避先につるのムチを放ちイーブイを叩き落とす。地面に叩きつけられ大きなダメージを受けたイーブイは立ち上がろうと足腰に力を込める。しかしスタミナ切れの影響もあり、力尽きてしまい立ち上がることができず力なくその場に伏せてしまった。

 

『い……ぶい……』

「イーブイ!戦闘不能!」

 

不利な状況かと思いきや、フシギバナの耐久力を活かしてなんとか勝利をもぎ取ったリーリエたち。シンジは健闘虚しくも倒れてしまったイーブイをモンスターボールへと戻した。

 

「頑張ったね、イーブイ。ゆっくり休んでね。」

 

しかしながらマリルを倒し、フシギバナを追い詰めたのは非常に大きい功績だ。シンジはイーブイにありがとうと感謝の言葉を贈り懐に戻した。

 

シンジの残りポケモンはこれで2体。次にシンジが繰り出したポケモンは……。

 

「お願い!ブラッキー!」

『ブラッキ』

 

次に繰り出したポケモンはあくタイプのブラッキーだ。ブラッキーの耐久力はリーリエも知っている。生半可な攻撃ではそう簡単に倒れてはくれないだろう。ならば今のフシギバナにできることは一つしかなかった。

 

「フシギバナさん!ソーラービームスタンバイです!」

『バナァ!』

 

フシギバナの体力も残りわずか。ここでこうごうせいによる体力の回復を狙っても結果的にジリ貧となってしまうのは明白。であるならば多少強引にでも大技を放ち、ブラッキーの体力を削る方が最も優先すべきことであり可能性が高い戦術だと考えたのだ。

 

「ブラッキー!バークアウト!」

『ブラッキ!』

 

ブラッキーはバークアウトを放った。バークアウトはフシギバナにヒットし、フシギバナは苦しそうな表情を浮かべる。しかしそれは痛みによる苦しさと言うよりも、もっと別のものによる苦しさのようにも感じる。

 

「走って!ブラッキー!」

『ブラキ』

 

ブラッキーはフシギバナ目掛けて一直線に走り出した。その行動は第三者から見ると浅はかな考えであり、大砲に自ら手を突っ込むようなものである。だが、彼が何の考えもなしに突っ込むはずもない。

 

しかし既にソーラービームの態勢に入っている以上、リーリエとフシギバナは止まることはできない。太陽の光を一心に受け、フシギバナはソーラービームの力を解き放った。

 

「ソーラービーム!発射です!」

『バァナァァァ!』

 

体力が限界近いとは言え、フシギバナの強力なソーラービームは地面を抉り、ブラッキーの身体を包み込んだ。さすがのブラッキーもこれを受ければ一溜りもない、と誰もが思った。しかし結果は全員の予想を上回るものであった。

 

「イカサマ!」

『ブラッキ』

『バナァ!?』

 

ブラッキーはフシギバナのソーラービームを物ともせず、フシギバナの足元に現れた。そしてフシギバナの足を払い、彼の態勢を崩し倒した。巨体をそのまま倒されてしまい、体力も限界であったフシギバナは強力なソーラービームの反動も相まって遂に力尽きてしまう。

 

「フシギバナさん!?」

『ば……なぁ……』

「フシギバナ戦闘不能!」

 

リーリエのフシギバナは戦闘不能となった。体力がギリギリの状態からかなり粘ったが、ブラッキーの強固な守りを破ることはできずに倒されてしまった。その上ブラッキーは未だに殆どダメージを受けている様子はない。

 

ブラッキーが最初の使用した技、バークアウトはまくし立てるように相手に怒鳴りつけることで、ダメージと共に相手の特殊攻撃力を低下させる追加効果を持っている。それによりフシギバナの攻撃力が下がり、ソーラービームの威力も低下したためブラッキーは余裕を持って耐えることができたのだ。これには観客たちも盛り上がりをより加速させている。

 

「戻ってください、フシギバナさん。お疲れ様でした。あなたの戦いは無駄にはしません。」

 

フシギバナが倒されたことにより、再び両者のポケモンの数が五分になった。しかし残るポケモンは体力を削られてしまっているカイリュー。リーリエにとっては再びやや不利な状況に戻されてしまったと言える。だがまだ彼女は全く諦めた様子は見せていない。寧ろ先ほどよりも表情が生き生きとしているようにも思える。それは彼女がこの戦いを誰よりも楽しんでいる証拠である。

 

「……カイリューさん……お願いします!」

『バッオウ!』

 

リーリエの繰り出したポケモンは残り体力も少ないカイリューだ。一応休んだことにより体力は少し回復している様子だが、それでも消耗していることに変わりはない。この状況から再び巻き返すことができるのか。それともシンジがこのまま押し切るのか、更なる注目がこの戦いに集まっている。

 

「カイリューさん!れいとうビームです!」

『バオウゥ!』

「ブラッキー!躱して!」

『ラッキ!』

 

開幕のれいとうビームをブラッキーはあっさりと回避する。逃しはしないと、リーリエは一気に畳みかけていく。

 

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウ!』

 

続いてしんそくで一気に懐に飛び込んだ。

 

「まもる!」

『ブラキ』

 

しかしその攻撃はまもるで的確に封じてきた。まもるによって弾き返され、カイリューは態勢を崩してしまう。

 

「アクアテールです!」

「イカサマ!」

『バオウ!』

『ブラッキ』

 

カイリューはアクアテールで薙ぎ払う。しかしブラッキーはその攻撃を受け止め、巴投げのように地面に叩きつけた。あの連続攻撃をいなすほどの身のこなしは、さすがとしかいいようがなかった。

 

「カイリューさん!?」

『ば……オウゥ!』

 

イカサマによりカイリューのダメージも更に蓄積してしまうが、立ち上がり咆哮することで自らを鼓舞し威圧感を放つ。どうやら彼も生半可な攻撃では倒れるほど軟な意思の持ち主ではないようだ。

 

「……だましうち!」

『ブラッ』

「っ!?カイリューさん!」

 

迫りくるブラッキーにカイリューは反撃しようとする。だがその攻撃をブラッキーは中断し、別の方面から攻撃を仕掛ける。文字通りのだまし討ちで、カイリューの意表を突いたのだ。

 

その攻撃は見事にカイリューの腹部に直撃……したかのように思えた。実際シンジもこの攻撃はヒットしたと思った。しかしよく見てみると、カイリューはその攻撃を受け止め、ダメージを逃がしていたのである。これには流石のシンジも驚きの表情を浮かべていた。

 

『ブラッキ!?』

「よし!カイリューさん!そのまま投げ飛ばしてください!」

『バオウ!』

「アクアテールです!」

『バッオウ!』

 

カイリューはブラッキーを空中へと投げ飛ばす。さすがのブラッキーも空中で態勢を整えるのは難しく、アクアテールの追撃を受け地面に叩きつけられてしまう。ようやくブラッキーに対して明確なダメージが入り、これはリーリエたちにとって非常に大きな一歩である。

 

この機会を逃すわけにはいかないと、リーリエは更に畳みかけるためカイリューに指示を出した。

 

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウゥ!』

「来るよブラッキー!」

『ブラッ!』

 

カイリューはしんそくで怒涛の連続攻撃を決めていく。ブラッキーは咄嗟にまもるで防御する。それでもカイリューはまだ怯むことなく攻め立てる。

 

「行きますよ!げきりんです!」

『バ……オウッ!』

『ブラ!?』

 

カイリューはげきりんで自分の臨界点を突破する。ブラッキーもカイリューの尋常ではない高火力に耐え切ることは出来ず、まもるの上から押し返されてしまう。そしてまもるが破られてしまい、げきりんとしんそくの合わせ技がブラッキーに直撃した。

 

壁まで叩きつけられてしまったブラッキーは限界が訪れてしまい、今の一撃で目を回し力尽きてしまっていた。

 

『ぶらっ……き……』

「ブラッキー!戦闘不能!」

 

まさかあの状況から捲くることができるとは思えず、カイリューの底知れぬ底力に観客たちは心からの歓声をあげる。

 

「お疲れ様、ブラッキー。あとは任せて。」

 

シンジはブラッキーをモンスターボールへと戻した。

 

「まさか僕が先に追い詰められることになるなんて、正直思わなかったよ。」

「私もです。ですが、ここまで戦うことができたのはシンジさんが相手だからです。」

 

お互い正直な感想を言い合う。戦いが始まってからお互いバトル以外で語り合うのは初めてかもしれない。

 

「でも、僕の残りポケモンは君も知っているよね。」

「……はい、もちろんです。」

 

そう、彼の残りポケモンは彼にとって最も信頼しているポケモンであり、旅に出た時から最も長い時を過ごしたポケモンである。この時が来ることは、バトルが始まる前からリーリエも予想していた。この戦いの中で最も緊張しているかもしれない。

 

「……君の出番だよ。僕たちの全力、リーリエに、みんなに見せよう!」

『フィア!』

 

そして彼が投げたモンスターボールから姿を現した。そのポケモンは彼の相棒であり最高のパートナーであるニンフィアであった。

 

姿を現したニンフィアは、笑顔でシンジの足元に歩み寄ってくる。シンジはそんなニンフィアに屈み、頭を優しく撫でる。

 

「今日は僕たちにとって最高に大切な試合だ。最後のバトル、君に託したよ。」

『フィーア♪』

 

シンジに撫でられ上機嫌になり、満面の笑みを浮かべて返事をするニンフィア。しかし今度はカイリューの方に顔を向けたと思うと、彼女からただならぬ威圧感が放たれカイリューとリーリエに襲い掛かる。

 

「っ!?この威圧感……ここからが、本当の勝負ですね。」

 

リーリエはニンフィアから放たれる威圧感に耐えながら、最後の戦いに身を投じるのであった。二人のバトルは遂に、再終幕の佳境を迎えようとしていた。




なんか思いの外内容が長くなってしまったため、最終戦は次回持ち越しにします。本当は今回と次回で最終回にするつもりだったのですが、もしかしたら少し延びるかも?


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ニンフィアVSシロン!全力全開の最終決戦!

シンジとリーリエの戦いは遂にフィナーレを迎えていた。リーリエとカイリューが対峙しているポケモン、ラスボスの登場である。

 

『フィーア♪』

 

シンジが旅に出た時からずっと一緒に過ごし、彼が最も信頼している最高のパートナー。彼が最強のトレーナー、チャンピオンとなってからも彼のことを支え続けてきた生涯の相棒。

 

普段は朗らかで人懐っこい性格のニンフィアであり、面倒見のいいお姉さん的存在だという事はよく知っている。しかし今対峙していると、そんな印象はどこにも感じられない。今まで戦ってきたどのポケモンよりも威圧感があり、一切隙を感じられないプレッシャーが放たれている。それだけで本当に自分はニンフィアと戦えるのだろうか、と言う不安に煽られてしまっているのをヒシヒシと感じる。

 

(いえ、最初からこうなることは想像していました。今更怯えていたって仕方ありません!)

 

リーリエはそんな不安を頭の中から追い出し改めて気合いを入れなおす。不安や緊張を抱いていては本来の力を存分に発揮することなどできるはずもない。

 

(……カイリューさんはこれまでの戦いで体力が限界に近いです。このまま戦わせるより、やはり休ませた方が……)

 

そう心の中で考えリーリエはカイリューをモンスターボールに戻そうとする。しかしその行動を見たカイリューはリーリエの方へと振り向いて首を振りそれを拒んだ。

 

「カイリューさん?」

『バウッ!』

 

カイリューの眼には確かな覚悟の炎が灯っていた。立っていることすらやっとですぐに倒れてしまうかもしれないが、それでもカイリューはニンフィアと戦ってみたい様子だ。

 

「……分かりました。最後までお願いします!カイリューさん!」

『バオウゥ!』

 

カイリューは大きく咆哮し自分自身を奮い立たせる。シンジはそんなカイリューの姿を見てニンフィアに「決して油断するな」と伝える。ニンフィアもシンジの言葉を受け止め、真剣にカイリューの姿を見据えていた。

 

「行きますよ!シンジさん!ニンフィアさん!」

「来い!キミたちの全力、僕とニンフィアが全て受けて立つ!」

『フィアァ!』

『バオウッ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウッ!』

 

カイリューは光のように素早く正面から突撃して一気に勝負に出る。そのスピードは本当に体力の限界なのかと思わせるほどのスピードでニンフィアに迫っていた。これだけのスピードであれば捉えるのは非常に困難だ、と思うほど。しかし、ニンフィアには通用しなかった。

 

ニンフィアは自身のリボンをカイリューに軽く触れる。本来であれば衝撃がリボンに伝わって逆効果であるだろうが、ニンフィアはリボンから相手の敵意を消す波動を伝えることができる。その波動の特徴を利用し、カイリューの技の威力を削いでいるのである。

 

そしてニンフィアはそのまま受け流し、ふわりとカイリューの頭上へと浮かび上がる。突然の出来事にカイリューも理解ができず、しんそくを受け流されてしまったため態勢を崩してしまった。しかもそれが最大の隙となってしまい……。

 

「ようせいのかぜ!」

『フィアッ!』

『バウッ!?』

 

ニンフィアはリボンを伝ってようせいのかぜを瞬時に解き放った。ニンフィアのようせいのかぜがカイリューを背中から地面に叩きつけ、カイリューはその場で倒れ込んでしまう。今までの疲労と今の強力な一撃が相まって、目を回してこれ以上は戦えない様子である。

 

「カイリューさん!?」

『ば……おうぅ……』

「カイリュー!戦闘不能!」

 

ダメージが蓄積していたとはいえ、あのカイリューをあっさりと倒したことに驚きながらも観客たちは歓声をあげていた。カイリューの攻撃を受け流し、技の発動に繋げ、その後華麗に着地する姿は、まさに戦場に舞い降りた妖精と言う表現がよく似合っている。

 

リーリエはカイリューをモンスターボールへと戻す。元より分かっていたことではあるのだが、今の一瞬の間合いでニンフィアの強さが改めてよく分かった。あとは自分も自分の相棒を信じるのみ、である。

 

「……最後はあなたに託します。私たちの全力、シンジさんたちに見せましょう!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが最後に繰り出したのは彼女の相棒であるシロン、アローラの姿をしたキュウコンである。シンジから貰った大切なタマゴから孵った永遠のパートナー。そんなシロンと、キッカケをくれたシンジとこんな素晴らしい舞台で戦うことになるとは、当時の自分は夢にも思っていなかっただろう。

 

「シンジさん。私も、私とシロンもここに来るまで沢山の経験をしました。多くのトレーナーやポケモンさんたち、シンジさんと別れてからも数えきれないほどの貴重な体験をすることができました。その全てを、シロンと共にあなたに伝えます!」

『コン!』

 

リーリエのその言葉を聞いたシンジは、嬉しそうに笑みを浮かべた。彼女が島巡りで体験してきたことはシンジはごく一部しか知らない。それを今からバトルを通じて教えてもらえること、それが何より嬉しいことであった。だからこそシンジはこう答えた。

 

「僕も君たちが体験してきたことを知りたい。だからこのバトルに全て乗せて、僕たちにぶつけてきてほしい。君たちの全力で!」

「はい!私たちの全力です!」

 

その二人の掛け合いが、最後のバトル開始のゴングとしてアローラに鳴り響いたのだった。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『フィア!』

 

シロンはれいとうビームを放ち、ニンフィアはようせいのかぜで応戦した。両者の攻撃は拮抗し、フィールド中央で爆散し相殺する結果となった。

 

「でんこうせっか!」

『フィイア!』

 

今度はニンフィアから先に動く。ニンフィアはでんこうせっかでその見た目とは裏腹なスピードで距離を縮めてくる。

 

「こおりのつぶてで迎え撃ってください!」

『コォン!』

 

シロンは無数のこおりのつぶてを放ち接近してくるニンフィアを拒もうとする。しかしニンフィアの勢いは止まることなく、次々とこおりのつぶてを躱して更に勢いを増していく。

 

こおりのつぶてを全て潜り抜け、ニンフィアのでんこうせっかがシロンの腹部に直撃して吹き飛ばした。シロンはなんとか持ちこたえたが、今の一撃でもかなりのダメージを負ってしまったようである。

 

心配そうに呼びかけるリーリエに、シロンは元気よくまだまだ行けると返事をする。それでも苦い顔をしているシロンを見ると、ニンフィアの攻撃力が如何に高いかがよく伝わってくる。下手な行動はそのまま敗北へと直結してしまうだろう。

 

「シロン!こなゆきです!ニンフィアさんの動きを止めてください!」

『コン!コォン!』

「甘いよ!ようせいのかぜ!」

『フィィア!』

 

シロンはニンフィアの移動速度を低下させようとこなゆきで動きを鈍らせようとする。しかしそんなことをニンフィアが許すはずもなく、ようせいのかぜでしっかりと防御する。隙も少なく攻防一体のようせいのかぜは非常に厄介で、リーリエの攻め手ははことごとく潰されてしまっている。

 

(やはりニンフィアさんはとてつもなく強敵です。ですが、私とシロンはまだまだやれます!)

 

「シロン!もう一度、今度は地面にこなゆきです!」

『コォン!』

 

シロンは地面に向かってこなゆきを放つ。さすがのニンフィアも地面に対するこなゆきを止める術はなく、リーリエたちの行動を許してしまう。

 

シロンのこなゆきによりフィールドの一部が氷漬けになった。つまり、こおりタイプのシロンにとって有利なフィールドへと変貌したのだ。

 

「シロン!フィールドを滑ってください!」

『コン!』

 

こおりタイプであるシロンにとって氷のフィールドはお手のもの。シロンは氷漬けとなったフィールドを、まるでスケートのように滑り、かなりのスピードでニンフィアへと接近していく。だがシンジもその対抗策はしっかりと練っている。

 

「地面に向かってシャドーボール!」

『フィイア!』

 

ニンフィアはこなゆきで氷漬けとなった地面にシャドーボールを叩きつける。シャドーボールが着弾した衝撃で前方の氷が割れ、破片が無数の氷の刃となりシロンに反逆する。

 

「やはりそう来ましたね!シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

どうやらリーリエもその行動を読めていたようで、氷の刃にれいとうビームを放って反撃する。氷の刃はれいとうビームで次々と氷漬けになり、れいとうビームとの重ね掛けにより氷の壁が完成する。

 

シロンは滑って氷の壁にたどり着くと、滑った勢いのまま氷の壁を登り始める。そして頂上を飛び越え、ニンフィアとの距離が目と鼻の先にまで接近できた上にニンフィアの頭上もとることができた。

 

「今です!ムーンフォース!」

「こっちもムーンフォース!」

『コォン!』

『フィーア!』

 

ニンフィアとシロンの互いが所有する大技、ムーンフォースを同時に解き放つ。ムーンフォースが衝突し、その衝撃が先ほどできた氷の壁をも破壊するほどであった。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『フィア!』

 

シンジは逃がすわけには行かないと、すぐにようせいのかぜを放った。しかしそこには既にシロンの姿はなく、シロンは次の攻撃態勢に移行していた。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コォン!』

『フィア!?』

 

こおりのつぶてがニンフィアを遂に捉えることに成功する。その時シンジは、今のシロンの行動の意図を理解した。

 

シロンとニンフィアのムーンフォースが衝突したときに発生した衝撃を利用し、シロンはその場から即座に離脱して着地していたのだ。そうすることで一瞬でもシンジとニンフィアの目を欺き、隙が生じたところをすかさず狙い撃つ、という作戦である。

 

その作戦は見事成功し、ニンフィアにダメージを与えることができた。リーリエたちにとってこの一撃は反撃の好機となるだろう。

 

「今です!行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

この機を逃すわけには行かない。そう思い、リーリエは勝負に出る。手をクロスさせ、ZリングにZパワーを集中させシロンと気持ちを一つにする。

 

「私たちの全力……シンジさんたちにぶつけます!」

『コォン!』

 

リーリエとシロンの全力、Z技を解き放つ。Zパワーと絆が二人の間を繋ぎ、Zパワーをさらに増大させていく。

 

「リーリエ。君たちの全力、真っ向から受けて立つ!僕は、僕たちの絆で君たちに勝つ!行くよ!ニンフィア!」

『フィアァ!』

 

リーリエの全力に応えるため、シンジもニンフィアと気持ちを一つにしてZパワーを高めていく。両者の高まるZパワーの気迫に、観客たちも緊張から喉を鳴らして静かに見守っていた。

 

同じくリーリエも緊張を感じていた。しかし彼女の心に、Zパワーを伝ってシロンの気持ちが伝わってくる。シロンの気持ちを感じていると、不思議と自分の緊張も落ち着いてきていた。

 

(シロン……私とあなたは一つです。私たちの全力を、シンジさんに見せつけましょう!)

 

シロンはリーリエの心の声に頷いて答える。シロンが居ればリーリエは不安がなくなる。リーリエが居ればシロンは安心して戦える。互いが互いを心の中で支え合い、自分たちよりも大きな存在へと立ち向かう。

 

「行きます!これが私の……私たちの全力です!」

『コォン!』

 

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕たちも君たちの全力を全力で受けて立つ!行くよ!ニンフィア!」

『フィィア!』

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!!

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエとシロンのZ技が発動したと同時に、シンジとニンフィアのノーマルタイプのZ技、ウルトラダッシュアタックが発動する。ニンフィアはレイジングジオフリーズを正面から受け止め押し返している。互いの全力が衝突し合っているため周囲に及ぶ衝撃も凄まじいものとなっている。

 

両者どちらも一歩も譲らない、一瞬も油断できない戦いが繰り広げられている。Z技がぶつかってから、シンジとリーリエは何時間もの間戦っているかのような錯覚にさえ陥ってしまっている。

 

まだまだ戦っていたい、終わらせたくない、でも勝ちたい。色々な思考が脳の中を駆け巡ってる。しかしどんなことにでも必ず終わりはやってくる。

 

「ニンフィア!」

『っ!?フィイイイア!』

 

主の呼びかけにニンフィアも反応して全力で応える。先ほどよりも更に威力が上昇し、シロンのZ技を次第に押し返し優勢になっていく。

 

シロンも押し返そうと努力するが、それでもニンフィアの底力がZ技の威力を更に上げて抵抗する。最終的にシロンのZ技を撃ち破り、全力を超えたZ技をシロンに向けて解き放っていた。

 

だがシロンのZ技によって軌道が僅かに逸れシロンに命中することはなく、シロンの足場となっていた氷を粉々に砕いたのだった。

 

両者はZ技の発動によりどちらも体力を消耗してしまっている。決着はもうすぐ目の前まで来ている。シンジとリーリエは残念に思いながらも、自分のポケモンたちへと指示を出していた。

 

「シロン!こおりのつぶて!」

『コォン!』

 

氷の足場が砕かれ空中に放り出されてしまったシロンは、ニンフィアからの反撃を受けてしまう前にこおりのつぶてで攻撃する。しかしその攻撃は驚くべき方法によってニンフィアに対処されてしまうのだった。

 

「地面に向かってようせいのかぜ!」

『フィィア!』

 

その行動とはようせいのかぜを地面に撃つことであった。ニンフィアのリボンから放たれたようせいのかぜは、ニンフィアを更に上空へと打ち上げる。最早タイプなど関係なく、ニンフィアは空へと舞い上がったのである。その回避方法を見た観客やトレーナーたちは呆気にとられ、感嘆の声が漏れ出ていた。

 

一方それを見ていたリーリエは、驚きと同時にニンフィアの優雅さ、そしてシンジの変幻自在な戦術に見惚れてしまっていた。

 

シロンはと言うと、対抗しようとするも太陽を背に取られてしまい一瞬視界が眩んでしまう。その隙を逃すことなく、シンジとニンフィアは反撃を繰り出した。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィアァ!』

「っ!?シロン!ムーンフォースです!」

『っ!?コォン!』

 

ニンフィアがムーンフォースを繰り出す中、リーリエとシロンも慌ててムーンフォースで迎え撃つ。慌ててはいたが発動になんとか間に合い、ニンフィアのムーンフォースを相殺することができた。

 

衝撃が二人の間を包み込む。ニンフィアの姿が見えなくなってしまうが、その時、ニンフィアが衝撃によって発生した煙を突き破りシロン目掛けて突っ込んできた。ニンフィアのでんこうせっかである。

 

これ以上空中で技を発動できるほどシロンには力が残っておらず、残っていたとしても瞬時に対抗などできようはずもない。ニンフィアのでんこうせっかがシロンに直撃し、シロンを地面へと叩き落とした。

 

「シロン!?」

『こぉ……ん……』

 

リーリエはシロンの呼びかけるも、シロンは目を回して倒れてしまっていた。かなり健闘していたが、どうやらここまでとなってしまい、激闘に終止符が打たれたのだった。

 

「キュウコン戦闘不能!ニンフィアの勝ち!よって勝者!アローラチャンピオンシンジ!」

 

その瞬間にシンジの勝利が決定し、観客たちからの歓声が降り注いだ。それを聞いたリーリエは、終わってしまったのかと残念に思いながらも、シロンの元へと歩み寄っていった。

 

「シロン、お疲れ様でした。」

『……コォン?コォン……』

「気を落とさないでください。あなたはとても頑張ってくれました。それに私、とっても楽しかったですから!」

 

目を覚ましたシロンはリーリエに申し訳なさそうにする。しかしリーリエは首を振り、笑顔でシロンを迎え入れる。その笑顔にシロンは嬉しくなり、咄嗟にリーリエに飛びついた。

 

「ニンフィア、君もお疲れ様。よく頑張ったね。」

『フィア♪』

 

シンジはニンフィアの頭を撫で、嬉しさのためニンフィアは満面の笑顔を浮かべる。ニンフィアは大好きなシンジの腕にリボンを絡め、一緒にリーリエの元へと歩いていく。

 

「リーリエ。」

「あっ、シンジさん。」

 

シンジに気付いたリーリエは立ち上がる。真っ直ぐ見つめるリーリエに、シンジは再び口を開いた。

 

「とてもいいバトルをありがとう。君のお陰で、僕はいつも以上の全力を出すことができた。リーリエじゃなかったら、ここまで楽しむことも、全力以上の実力を出すこともできなかったよ。」

 

そう言ってシンジはいつもの優しい笑顔で手を差し伸べた。

 

「改めてありがとう、リーリエ。」

「シンジさん……はい!こちらこそ、最高に楽しいバトルをありがとうございました!」

 

楽しいバトル……きっとこの人と会わなかったら一生そんな感情を抱くことなんてなかったであろう。そう思いシンジに心の中でも感謝しながら、かたい握手を交わした。それを見たアローラの人々からは、再び歓声と拍手の雨が降り注ぐ。

 

こうしてシンジとリーリエ、二人の約束のバトルは終わりを告げた。そしてアローラリーグは二人のバトルを終え、閉会式と打ち上げパーティを開始するのであった。




次回、遂に“本編”最終回


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アローラ!明るい未来へ!

シンジとリーリエの激闘を終え、無事にアローラリーグの閉会式を迎えることができた。そして現在、閉会式を終えた一同は盛り上がりを見せている閉会式後の打ち上げパーティに参加していた。

 

参加メンバーはアローラリーグに出場登録していたトレーナーの面々に加え、四天王やしまキング、しまクイーンの人たち、更にスタッフとしてエーテル財団も参加している。リーリエたちもまた、アローラリーグの感想を語り合いながらパーティを楽しんでいた。

 

「それにしても、シンジとリーリエの戦いはすごかったな。」

「はい!私すごく感動しました!チャンピオンをあそこまで追い詰めるなんてリーリエさんすごいです!」

「うー///そ、そんなに言われるとさすがに恥ずかしいんですけど///」

 

ヨウとヒナが率直に感想を口にすると、リーリエは顔を赤くしてあからさまに照れた表情を見せている。バトルの際は真剣に戦っており、自分たちも二人の世界に入り込むほど楽しんでいたのだからほとんど気にならなかったのだろうが、改めて公の前で戦っていると考えるとまた違った感覚になるのだろう。

 

「見て見てー!ここの料理、どれもすっごくおいしーよー!」

「いや、お前は相変わらずぶれないな……」

 

マラサダがないことに少し残念だと言っていたハウだが、それでも食欲旺盛なのは変わらないようで今でも会場に置かれている様々な料理に手を付けている。どんな時でも変わらない幼馴染の姿にヨウは呆れにも似た溜息をついていた。

 

「あれ?そう言えばチャンピオンは?」

「ああ、シンジならあそこだ。」

 

ヒナの疑問にグラジオが指を指して答える。その先には多くの取材班が押しかけて今回のアローラリーグについての感想などを取材していた。これだけ大盛り上がりのアローラリーグであれば話題性も十二分すぎるであろう。シンジもその取材の対応で忙しいようだ。

 

「残念だが、シンジに声をかけることは無理だな。」

「そう……ですね……」

「…………」

 

グラジオに言葉にリーリエは残念そうに表情を曇らせる。本人自体チャンピオンと言う関係上分かってはいたことだが、少しだけでも彼と話がしたかったと内心では思ってしまう。そんな妹の顔をグラジオは何か考える素振りをしながら見つめていた。

 

「……少し、試してみるか。」

「お兄様?なにかおっしゃいましたか?」

「いや、何でもない。」

「そう、ですか?」

 

リーリエの問いかけにグラジオは首を横に振って答える。その後、少し用事ができたとグラジオはその場から立ち去った。どうしたのかと気になるリーリエだが、あまり踏み込むと兄の機嫌を悪くしてしまうと思いこのままパーティを楽しむことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティが始まってからかなりの時間が経過し、お開きの時間が近付いてきた。パーティを切り上げ自分の部屋に戻る者もちらほら見受けられ、会場内の人口も少しずつ減少してきていた。

 

そんな時、ある人物がリーリエに歩み寄り彼女に声をかける。

 

「リーリエ。」

「お母様?」

「どう?パーティは楽しかった?」

 

その人物はエーテル財団の代表であり彼女の母親でもあるルザミーネであった。

 

ルザミーネはパーティの感想をリーリエに尋ねる。リーリエは「楽しかった」と答えてはいるものの、どこか煮え切らない様子であった。母親であるルザミーネにはその原因は当然分かり切っていた。

 

「リーリエ、アローラリーグ優勝者にはもう一つ報酬があるって知ってるかしら?」

「もう一つ、ですか?」

 

優勝トロフィーに加え、シンジとの対戦まで叶ったのにも関わらずそれ以上に何かを貰えるのが不思議だと感じるリーリエ。そんな彼女に、ルザミーネは一つのメモを渡した。そのメモに書いてある内容を見て、リーリエは目を見開いて驚いた表情を見せた。

 

「お、お母様……これって……」

「行ってきなさい。今の貴女にとって必要なものがそこで待ってるから。」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

ルザミーネの言葉に満面の笑みを浮かべてその場を走り去っていくリーリエ。そんな彼女を見て状況が把握できないでいるヒナたちだが、彼女たちに近付く影が背後から見えていた。

 

「はぁ……全く、貴方も大概不器用ね、グラジオ。」

「俺には少し荷が重いからな。それにこれに関しては俺よりも母さんの方が適任だ。」

 

その人物とはルザミーネに息子でありリーリエの兄でもあるグラジオであった。どうやら一連の策を考えたのはグラジオのようである。相変わらず普段の言動に反して控えめなグラジオに、ルザミーネは我が息子ながらと苦笑しながらため息をついた。

 

「まぁ、いいわ。それにあの子にとってはいい機会かもしれないからね。」

「ああ、いつまでも奥手なあいつにとってはいい薬だ。」

「そうね、あの子たちはどちらも奥手だからね。でもそれを貴方が言うの?」

「……?」

 

グラジオの言葉に賛同しながら、理解してない反応を示す彼に対して二度目の溜息をつく。「手間のかかる子どもたちね」と、ルザミーネを今はいない父親の姿を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエは財団が用意したヘリコプターで目的の場所へと向かった。操縦士にありがとうと頭を下げながら、目的地へと足を踏み入れた。その先には、とある人物が空を見上げている姿が目に映った。

 

「……今日の月、綺麗な満月だね。」

 

リーリエが来たと分かった時、その人物は空に浮かぶ満月に笑顔で感想を呟いた。リーリエはその人物の言葉を聞き、彼の名前を口にするのだった。

 

「そうですね……シンジさん。」

「アローラ、リーリエ。来てくれたんだね。」

 

リーリエを待っていた人物はシンジであった。彼女の呼びかけにシンジが挨拶すると、リーリエも「アローラ」と返答する。

 

「あのメモ、やっぱりシンジさんのだったんですね。」

「ああ、気付いてくれてたんだ。」

「もちろんですよ!だって、この場所は……」

 

その手紙に書かれていた内容とは、「ナッシーアイランドに来てほしい」と言うものであった。その一言だけでシンジが誘ってくれたのだという事が分かった。何故ならここは二人にとって始まりの約束をした場所でもあるのだから。

 

最もキッカケを作ってくれたのはグラジオなので、シンジはチャンスを作ってくれた彼に心の中で感謝する。

 

「リーリエ、君は僕との約束を守ってアローラリーグの頂点まで来てくれた。改めて感謝するよ。君とのバトルは今までの中でも最高だったから。」

「いえ!私の方こそシンジさんの事を目標にここまで来ることができました。それに、あなたが居なければ私はトレーナーになることはおろか、ポケモンバトルを楽しむこともできませんでした。こちらこそありがとうございます。」

 

シンジとリーリエは互いに謙遜し合いながらも感謝していることになんだかおかしくなり笑い声が零れていた。それと同時に、今まで彼らは自分たちが共に経験したことを鮮明に思い返していた。

 

初めて二人が出会ったアローラ地方。不思議な能力を持ったほしぐもちゃん。グラジオやミヅキ、多くのアローラ地方の人々との出会い。ルザミーネとの戦い。そしてカントー地方へと旅立つための別れも経験した。

 

それから2年が経過し、シンジとリーリエはカントー地方で再会し、リーリエはポケモントレーナーとしての一歩を歩み出した。アローラ地方にはないポケモンジム巡りを開始し、敗北することもありながらも諦めることなくシンジと共に歩み続けた。彼のような強いトレーナーになりたくて、彼の背中に追いつきたくて、背中を任せてもらえるような人間になりたくて。

 

ジム巡りを達成しカントーリーグへと出場。そこで強力なライバルたちと激しいバトルを繰り広げ、惜しくも優勝を逃してしまったが様々な経験を味わうことができて彼女はトレーナーとしても大きく成長することができた。その後アローラ地方へと帰還し、再び出現したUBとの戦闘の中で彼女は過去を乗り越えた。

 

島巡りが始まり、彼女は全ての島の試練、大試練に挑戦し突破してアローラリーグに出場。シンジと交わした約束を果たすため、目標へと近付くためにアローラリーグ優勝を達成した。そして先ほどその約束のバトルを果たし、二人は今この場に立っている。

 

「リーリエ。」

「はい、なんでしょうか?」

 

改めてリーリエに呼びかけるシンジ。シンジに問いにリーリエも昔を懐かしみながら返答する。

 

「今日、君をここに呼んだのは……大切な話があるからなんだ。驚かないで聞いて欲しい。」

「え?は、はい……」

 

改まって突然どうしたのだろうかとリーリエは疑問に思う。普段の頼もしく凛とした彼からは想像できないほど、彼が感じている緊張や不安と言った感情は自分にも伝わってくる。

 

それほど言いにくいことなのか、と思っていると、彼が突然膝をついてリーリエを見上げた。

 

リーリエは突然の出来事に驚きを隠せない。しかし普段の彼から想像できないような行動を目にしてからも、彼の眼から視線を逸らすことができなかった。いや、逸らしてはいけないような気がしていたのだ。

 

シンジはゆっくりとリーリエの手を取る。リーリエはドキッとしながらも、彼の瞳を見つめ続ける。すると彼から告げられた言葉は、彼女の想像を超える内容であった。

 

「リーリエ……僕と結婚を前提として付き合ってほしい。」

「え?え?」

 

リーリエはその言葉に思考が一瞬停止した。それはまるで以前少女漫画で見たかのような内容だったからである。

 

一人の乙女であれば男性からの告白は憧れるシチュエーションである。それも意中の相手からのプロポーズであれば尚更である。

 

リーリエも当然例外ではない。ましてや相手は彼女も慕っているシンジである。しかし彼はチャンピオン。果たして自分で釣り合いがとれるのだろうかと悩んでしまう。

 

リーリエはシンジの瞳を改めて見つめなおす。彼の瞳もまた真っ直ぐ、リーリエのことを見つめていた。それに暗くてはっきりと確認できないが、彼の頬もほんのり赤くなっているようにも思える。恐らく彼もこの言葉を告げるために相当な覚悟をしてきたのだろう。

 

だったら私も応えなければならないと、リーリエも自分の覚悟と答えをそのまま口にするのだった。

 

「……はい!私でよければ、よろしくお願いします!」

 

リーリエはハッキリとそう答えた。彼女に瞳からは嬉しさからか、それとも緊張した反動からなのか、涙が頬を伝っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして時が過ぎ――

 

『それではこれより!アローラリーグ優勝者とのチャンピオンバトルを始めます!まずは挑戦者の入場です!』

 

「お母様。この勝負、どちらが勝つと思いますか?」

「どうでしょうか。チャンピオンさんは今まで私が見たトレーナーの中でもトップクラスの実力者ですが、挑戦者も相当の実力者です。それは貴女も分かっていますよね。」

「はい!じゃあ私は二人とも応援しますね!」

「ふふ、そうですね。きっと楽しいバトルになると思いますよ。あの時みたいな、楽しいバトルに。」

 

金髪のサイドテールを結んだ髪の少女と、長く綺麗な金髪を風になびかせた落ち着いた雰囲気の女性が優しい瞳と笑顔で会場を見守っている。

 

『それでは続きまして、チャンピオンの入場です!』

 

「あ!チャンピオンが出てきました!」

「そうですね。挑戦者もいい顔になってますね。」

「頑張って下さーい!お兄様ー!お父様ー!」

 

少女の応援を背に受けた二人は、この時を待っていたと言わんばかりに笑顔で向かい合い、自分の信じるポケモンが入ったモンスターボールをフィールドに投げる。

 

女性の左薬指にはめられた指輪が、アローラの暖かい太陽に照らされキラリと輝いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは不思議な生き物、ポケットモンスターを通じて出会った少年と少女が共に歩み、共に成長し、共に同じ時を歩んでいく“もしも”の物語を綴ったお話である。









王道のハッピーエンドとなりました。

小説を投稿し始めて丁度5年が経過し、ようやく最終話に辿り着きました。これも応援してくれた皆様のおかげでございます!

しかしあくまで本編が終わっただけで他にも書きたいい話は色々あります。RR団編、アルセウス、アニポケ、未来のお話etc

ですのでこれからも末永くお付き合いいただければ幸いでございます。

あっ、因みに昨日は私の誕生日です(だからどうした)


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RR団編
束の間の平和、新たな災厄の訪れ


レインボーロケット団編となります。本編と違いリーリエは本格的にバトル可能なので内容も異なることになるかと思います。

今回はプロローグ回なので、本番は次回から。多分あんまり長く続けないと思いますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。


アローラリーグが盛り上がりを見せている一方、エーテルパラダイスの地下にてある実験が執り行われていた。

 

そこにいたのは緑のソラマメに似た大きなサングラスが特徴的な一人の研究員。その研究員は目の前にあるモノを見つめ目を見開き、感動のあまり歓喜の声をあげていた。

 

「ついに……ついに完成した!これで……これで私は今よりも出世することができるはずです!」

 

研究員の男が自分の膨れ上がった野望を夢見て高笑いを地下室に響かせる。その声を聞いている者は誰もおらず、ただただ彼の野望が刻一刻と人知れず進行していくのであった。

 

この話はある一人の男による身勝手な野望がアローラ全土を混乱へと陥れてしまうもう一つの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、アローラリーグで優勝し、シンジとの約束の戦いを無事果たすことができたリーリエ。数週間が経過し、暫くは旅の疲れを癒すためククイの研究所で以前使用していたロフトを再び借り住まわせてもらっていた。

 

「おはようございます……」

 

リーリエはロフトから起き、寝覚めの覚醒しきっていない状態のまま家主であるククイに挨拶する。しかし研究所はいつもよりも静かで、誰かの返事が返ってくることはなかった。

 

「あっ、そう言えば今日は空間研究所にお仕事で出かけるとおっしゃってましたね。」

 

リーリエは昨日の会話を思い出す。ククイは朝早くから空間研究所の所長であり、自身の配偶者でもあるバーネットと仕事があると言うことで出かけている。そのため朝ごはんの用意はされていなかった。

 

なら今日は自分が作る必要があると、リーリエは台所に向かった。旅の中である程度料理も覚えることができたので、日常生活でも旅の経験は生きていることに感慨深く感じている。

 

リーリエは慣れた手つきで朝ごはんを作っていく。と言っても朝から重い食事は胃袋によろしくないため、パンとサラダ程度の軽食で済ませることにする。

 

食事の準備を終えたリーリエはリビングに座りテレビをつける。何か気になる番組はないだろうか、と順番に番組を切り替えていくと、そこにはリーリエにとって身近な人物たちが映っていた。

 

真ん中には彼女の母親でありエーテル財団代表を務めているルザミーネ。向かって右側には代表秘書であるビッケが立っていた。そして向かって左側には、幹部であり支部長も務めているザオボーがいた。一見無表情なザオボーだが、彼の顔にはどことなく裏を感じさせる怪しさが見え隠れしている。

 

どうやらエーテル財団に対しての取材の生中継が行われているようだ。番組のタイトルを見る限り、エーテル財団が新しく開発する予定の商品に関する取材のようだ。カメラは代表であるルザミーネを中心に映しており、彼女はインタビューにいつも通り冷静に答えていた。

 

リーリエは以前起きた悲劇を思い出しながら、ルザミーネがこうしてインタビューに応じていることに嬉しさを感じテレビを視聴する。ずっとこんな平和な日常を望んでいた、そう心の中で感じながら。

 

しかし現実は非常であり、神は彼女の理想を裏切るかのように崩れ去ってしまった。

 

突然カメラが倒れてしまい、ルザミーネたちの足しか映らなくなってしまった。突然のトラブルに、現場は焦りの声が響き渡っていた。

 

その時黒服のズボンの裾がカメラに写り込み、マイクが男の声を拾うのだった。

 

「お前がエーテル財団代表のルザミーネだな?」

「!?な、なんですの、あなたたちは!」

「悪いが我々の目的のため、お前たちを拘束させてもらう。」

 

そこでカメラは暗転し、テレビ画面には砂嵐が発生してしまう。これはただ事ではない、とリーリエは荷物と自分のポケモンが入ったモンスターボールを手にしてククイの研究所を飛び出した。

 

エーテルパラダイスに向かう前に、彼女はある家に一度出向くことにする。そこはハウオリシティの少し外れに位置するある人物の家。そう、シンジの実家である。

 

リーリエは慌てていたためチャイムを鳴らすことも忘れてしまいシンジの家の扉を乱暴に開けてしまう。突然の出来事に家の中にいたシンジの母親は驚きのあまり目を見開いた。

 

「あらあらリーリエちゃん。そんなに慌ててどうしたの?」

 

来客の正体がリーリエだと知ったシンジの母親は冷静さを取り戻し、どういった用件かリーリエに尋ねる。リーリエは肩で息をしながら、彼女にある質問を問いかけた。

 

「はぁ……はぁ……シンジさんはいますか?」

「ごめんなさい。シンジは朝早くから出かけたわ。リーグに用事があるからって……」

「そ、そうですか……。もしシンジさんが戻ってきたらエーテルパラダイスに来て欲しいって伝えてください!」

 

そう言い残してリーリエはシンジの家を後にする。彼女の尋常ならざる様子を見て、何やらただ事ではないとシンジの母親は、リーリエが最も頼りにしている人物に連絡を取ることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエはエーテルパラダイスに辿りつく。しかしそこにはいつもいるはずの受付の財団員が不在であった。リーリエはもしかしたら、と嫌な予感から焦りを感じエーテルパラダイスの奥に進む。

 

だがリーリエが奥に進もうとすると、中央に虹色のRが描かれた黒服の人物たちが立ちふさがった。黒服、つまりカメラに少しだけ映り込んだ男の仲間なのであろう。

 

「我々はレインボーロケット団!このエーテルパラダイスは我々が占拠した!それ以上立ち入るのであれば、丁重におもてなしさせていただこう!」

 

ロケット団。リーリエはその言葉に聞き覚えがあった。以前ハナダシティの近辺で戦った彼らのことである。彼らはかつてカントー地方で悪事を働いていた悪の秘密結社、ロケット団である。

 

そして彼らの言う丁重なおもてなしとは間違いなく穏やかなものではない。彼らの言うおもてなしは言葉通りの意味ではないだろう。

 

ロケット団員はざっと100人近い人数が確認できる。リーリエたった1人では全員を相手にするのは困難であることは間違いない。しかしだからと言って、母親のピンチに目をそらすことなど彼女にできるはずもない。

 

「退く気はない、か。ならば例え子どもであろうとも容赦はしない!行け!ゴルバット!」

 

先頭に立つロケット団員はゴルバットを繰り出した。他の団員たちも通常のベトベターやドガース、デルビルやニューラなど、どく、あくタイプを中心としたまさに悪の組織らしいポケモンたちを多数従えていた。

 

これだけの人数差があれば勝てる確率はかなり低くなってしまう。だがここまで来たらやるしかない。リーリエは自分のポケモンが入ったモンスターボールを手に取り覚悟を決める。その時であった……。

 

「シルヴァディ!マルチアタック!」

『シヴァア!』

 

リーリエの横を銀色のポケモンが通り過ぎ目の前のゴルバットを一瞬で吹き飛ばした。一瞬の出来事で何が起こったのか理解できなかったリーリエだが、それだけで終わることはなかった。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

「ガオガエン!DDラリアット!」

「ジュナイパー!かげぬいー!」

『シレーヌ!』

『ガオウ!』

『ジュパァ!』

 

リーリエが唖然としている中、次々とロケット団のポケモンたちが倒れていく。この攻撃は、とリーリエがハッとなり振り向くと、そこには彼女の見知った4人の人間が立っていた。

 

「リーリエ、一人で突っ走るな。」

「やっほーリーリエ!助けにきたよ!」

「俺たちも忘れてもらったら困るな。」

「リーリエを傷つけたら許さないよー!」

 

そこにいたのはリーリエの兄であるグラジオ、しまクイーンの一人であるミヅキ、そしてアローラリーグを共に勝ち上がったヨウ、ハウであった。彼らもまたルザミーネたちを助けるために立ち上がった戦士である。

 

これ以上心強い味方はそうはいない。リーリエは援軍として駆け付けてくれたみんなに感謝し、自分も戦わなくてはとモンスターボールを投げた。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエは自分の相棒であるシロンを出した。そしてリーリエ、グラジオ、ミヅキ、ヨウ、ハウの5人は横に並び、レインボーロケット団たちに正面から対峙した。

 

「みなさん、力を貸してください!お母様を……エーテル財団を救いましょう!」

『ああ!!』

 

リーリエを筆頭としたウルトラガーディアンズがレインボーロケット団と戦うため再始動する。彼女を中心とした戦いが再び幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ――

 

ラナキラマウンテン頂上、アローラリーグにて。複数の足音がアローラリーグの会場まで迫ってきているのがある少年、チャンピオンであるシンジの耳に入ってきた。

 

「……はぁ、珍しいお客さんだね。」

 

シンジにしては珍しく大きな溜息が出ていた。現れたのは数多くのロケット団員。シンジを囲むようにロケット団員たちがフォーメーションをとる。

 

「胸元にRのマーク……ロケット団?」

「お前がチャンピオンだな?悪いがお前には我々の目的のためにここで足止めさせてもらう!」

 

シンジは先ほど母親から連絡をもらい、すぐにでもエーテルパラダイスに向かおうとしていた。しかし彼らはアローラ地方で最も厄介な人物であるチャンピオンの足止めをするため動き出していた。どうやら彼らに先回りをされてしまい、先手を打ってきたようである。

 

「すぐにでもエーテル財団に向かいたいところだけど……これだけの人数を相手にするとなると難しいね。全く……こんなに大勢で押しかけるなんて、礼儀を知らない大人たちだね。」

 

 

周囲を見渡すとまるでバトルロイヤル予選でも行われるのではないかと言う大人数が集まってきている。さすがのシンジと言えど、これだけの人数を相手にするのは骨が折れる作業である。

 

だがこうなってしまった以上仕方がない、とシンジは深呼吸して気持ちを落ち着かせる。覚悟を決め、シンジは自分のモンスターボールを手に取りロケット団員たちと向かい合った。

 

「チャンピオンとして、チャレンジャーの挑戦を拒むことはしない。全員纏めて相手になるよ!」



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総力戦開幕!駆けつける仲間たち!

RR団と名乗る者たちにエーテル財団を乗っ取られてしまい混乱の渦に巻き込まれてしまったアローラ地方。そんなエーテル財団を救うべく、5人のウルトラガーディアンズがエーテルパラダイスに乗り込んでいた。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァァ!』

 

リーリエのシロン、グラジオのシルヴァディがそれぞれRR団のポケモンたちを次々と倒していく。数は多いが相手は下っ端。一人一人の戦闘力は大したことはない。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレェ!』

「ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガオウッ!』

「ジュナイパ―!リーフストームー!」

『ジュパァ!』

 

ミズキ、ヨウ、ハウ、幼馴染三人も見事な連携で敵をなぎ倒していく。どれだけ数を揃えても、さすがにアローラリーグの激戦を乗り越えてきた猛者に勝つことは困難と言えるだろう。

 

「くっ!なんなんだこの子どもたちは!?」

 

RR団の下っ端は悪態をつく。まさかたった5人の子ども相手にここまで一方的にやられてしまうなどと夢にも思っていなかったのだろう。しかしポケモン勝負の世界に年齢など関係なく、実力が全ての世界。これが現実なのだと認めざるを得ないが、このままではRR団の名前に傷がついてしまう。

 

どうすればいいのかと下っ端たちが苦悩していると、彼らの背後から足音が聞こえる。彼らは足音の主を通すために道を開ける。だがその人物の顔を見たリーリエは驚きの表情を浮かべていた。

 

「……やはりお前か」

「え?お兄様?」

 

まるで知っていたかのように口を開く兄、グラジオに疑問符を浮かべるリーリエ。グラジオは主犯格の人物の名前を呟いた。

 

「ザオボー……やはりお前の仕業だったか。」

「気づいておられましたか。お久しぶりですね、グラジオ坊ちゃん。それからリーリエお嬢様も。」

 

その人物とはエーテル財団の幹部にして支部長であるザオボーであった。RR団を従えた状態でリーリエたちの前に姿を現す。それは彼がエーテル財団の人間ではなく、RR団の一員であるということの証明であった。

 

「ザオボーさん……どういうことですか?」

「おや?お嬢様はまだ理解されていなかったのですか?いいでしょう。でしたら教えて差し上げましょう!このRR団は、私が別の世界から呼び出したのですよ!」

 

ザオボーの口から告げられたのは衝撃的な答えであった。これだけの団員たちをザオボー自身が異世界から呼び出したのだと言う。この驚愕な真実にはさすがのグラジオも驚きのあまり目を見開いた。

 

「ど、どういうこと!?」

 

ミヅキがそう問いかける。ザオボーは彼らの驚く顔に愉悦感を抱いたのか、ニヤリと口角を上げ気味の悪い笑みを浮かべながら話し始めた。

 

「あなた方が島巡りをしている間、私は各地よりあるものの回収に励んでいました。そのあるものとはそう、以前このアローラにやってきたUBたちの残した僅かなウルトラオーラの痕跡です。」

 

「ウルトラオーラの痕跡?」

 

誰かがそう呟いた。ザオボーはそんな呟きを気にすることなく話を続ける。

 

「あなた方も知っているでしょう?UBたちは自分たちの世界とこの世界を自由に行き来できます。私はその力に目をつけました。その力さえあれば、別の世界から強力な力を持ったトレーナーを呼び出せるのではないか、と。」

「それがRR団、と言う訳か?」

 

ザオボーはグラジオの問いに対して邪悪な笑みで笑い飛ばしていた。

 

「どうしてこのようなことを!」

「簡単なことです。私の思想のためですよ。」

「ザオボーさんの……思想?」

 

ザオボーの笑みから恐怖を感じたリーリエは緊張から手汗を握り締めてザオボーに問いかける。するとザオボーの口からはまたしても驚きの回答が返ってきた。

 

「この世界のポケモンたちは苦しんでいる。トレーナーに捨てられ、道具にされ、傷付いている。私は多くのポケモンを救いたい。だがそのためにエーテル財団の代表になる必要があります。だからこそ私はルザミーネ代表を失脚させ、エーテル財団を私のものにする!そして!私の手で!ポケモンたちを救うのです!」

 

リーリエたちは開いた口が塞がらない。エーテル財団は元よりポケモンたちの保護を主に行っている団体である。ポケモンたちを救う、と言う目的はエーテル財団と同じである。

 

つまり彼が言っているのはポケモンを救いたい、と言う建前を理由に、ただただ出世欲に溺れているだけの哀れな男なのである。彼の思想にリーリエたちは心から理解できるはず等微塵もない。

 

「あなたたちに理解して欲しいなどと思っていませんよ。あなたたちは邪魔な存在でしかありません。よって私自らの手で!あなたたちを排除させていただきます!」

 

「っ!?来るぞ!」

 

グラジオの一声にリーリエたちも身構える。この一連の騒動の主犯であるザオボー自ら彼らと相手をするためにモンスターボールを手に取った。

 

「フーディン!出番ですよ!」

『フーディ』

 

ザオボーが繰り出したのはねんりきポケモンのフーディンである。フーディンは知能指数が5000を超えるとも言われているポケモンで、全ポケモンの中でもトップクラスに賢いポケモンである。そんなフーディンがザオボーに従っているという事は、相当な手練れであると言うことは言うまでもないだろう。

 

「このまま相手をするのもいいですが、折角です。あなた方に面白いものを見せてあげましょう。」

 

次の瞬間、彼がつけているサングラスがキラリと光を放った。一体なんだと思い見て見ると、その光と同時にフーディンも光り輝き、両者の光が結ばれて強力な光を解き放った。

 

光りが収まると、そこには姿を変えたフーディンがリーリエたちの前に浮かんでいた。そのポケモンは白く立派な髭に5本のスプーンを宙に浮かばせ、まるで仙人を想像させる容姿をしていた。その現象は、リーリエにとってとても見覚えのある現象に酷似していた。

 

「メガ……シンカ!?」

「ほう……メガシンカをご存じとは。流石は旅を続けてきただけはある、と言ったところでしょうか。」

 

これは紛れもなくメガシンカと呼ばれる現象である。ポケモンの姿形だけでなく、能力も大きく上昇した強力で特殊な進化方法だ。研究者の間では進化を超えた進化、とも評されている。

 

メガシンカをしたフーディンは間違いなく強敵だ。彼を倒さなければこの先に進むことなどできそうにない。しかし主犯はザオボーだとしても、黒幕も別にいることはテレビの生放送を通して知っている。ここで戦力を消耗してしまえばルザミーネを救うことはおろか、実力が未知数な黒幕と戦うことも難しい。

 

一体どうすればいいかと悩むリーリエたち。そんな時、エーテルパラダイスに一人の少年の声が響き渡った。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「っ!?フーディン!」

 

空からかえんほうしゃによる奇襲がやってくるものの、ザオボーのフーディンはその攻撃をなんなくエスパー技で相殺する。この場にいる誰もが状況を理解できずにいると、リーリエの目の前に二人の少年少女を乗せたリザードンがゆっくりと降り立った。

 

「よ!久しぶり!リーリエ!」

「久しぶりリーリエ!シンジさんと一緒に元気だった?」

「コウタさん!?コウミさん!?」

 

彼らの正体はカントー地方を旅していた時のライバルである双子、コウタとコウミであった。二人はリザードンの背中から降りると、久しぶりにあったリーリエと挨拶を交わし再会を分かち合う。

 

「どうしてお二人がアローラ地方に?」

「俺たちの探し物が終わったからな。シンジさんに挨拶しようと思ったら偶然にもこの場に遭遇した、ってわけだよ。」

「事情はよく分からないけど、リーリエたちが危ないみたいだから偶然にも居合わせてよかったよ。」

 

彼らは大会が終わった時、自分たちが探し求めているものがどこにあるかと言う情報を手にしたため二人で旅に出ていた。それが見つかったと言う報告とサプライズのため、アローラ地方に訪れたのだと言う。

 

彼らがこの場に訪れたのは単なる偶然。しかしその偶然でもリーリエたちにとっては嬉しい誤算である。グラジオはリーリエの友人と見込んで頼み込む。

 

「すまない。時間がないから事情を説明することはできないが、暫くの間でいい。奴の足止めをお願いできないか?」

「そのぐらいお安い御用さ!」

「私たち双子にお任せあれー♪」

 

グラジオの頼みに二人は快く引き受けた。厄介な連中がまた増えたなと、ザオボーは想定外の事態に悪態をついた。

 

「私たちも出番だよ!バシャーモ!」

『バシャア!』

 

コウミは自分の相棒であるバシャーモを繰り出した。カントーリーグの決勝戦を争ったリザードン、バシャーモが今この場に立ち並び共通の敵を相手に闘志を燃やしている。その姿を見たリーリエは、かつてのライバルたちはこれほど頼もしい背中をしていたのかと感心する。

 

「さあ、サングラスのおっさん。あんたの相手は俺たちがするぜ!」

「おっさんではありません!ザオボーです!」

「なんでもいいよ。リーリエたちの敵は私たちの敵!全力で足止めさせてもらうよ!」

『俺(私)たちの新しい力で!』

 

コウタとコウミの腕にはZクリスタルとは異なる腕輪が装備されていた。その腕輪には変わった模様の描かれた丸い石がはめ込まれている。リーリエはその石に見覚えがあり、次の瞬間にザオボーと同じように二人の腕輪、そしてリザードンとバシャーモが光り輝く。

 

光りが解き放たれた瞬間、その場にいたのは口元から青い炎を出している漆黒のリザードン。そして両腕から紅蓮の炎をなびかせ、体が一回り大きくなったバシャーモの姿であった。間違いなくそれはフーディンと同じくメガシンカしたリザードンとバシャーモであった。

 

彼らが探していたあるもの、とはリザードンとバシャーモのメガシンカに必要なメガストーンだったのだ。さらなる高みを目指す彼らにとってパートナーのメガシンカは一つの夢であった。そんな彼らは今夢を現実にし、その強大な力を今ここで解き放ったのだ。

 

「メガシンカ……ですと!?」

 

さすがのこの状況にはザオボーも驚きを隠せない様子だ。今ならば、とグラジオはリーリエたちを先導しRR団たちを蹴散らしながら突破する。

 

「ちっ!半分は私の支援を!もう半分は彼らを追いかけなさい!」

 

予想外の状況だからこそザオボーは冷静にRR団員たちに指示を出す。その指示に従い半分の団員がザオボーの支援に回り、他の団員たちはリーリエたちを追いかける。急いで建物の中に侵入しようと扉を勢いよく開けると、その先の広間では他の団員たちが待ち構えていた。

 

「っ!?囲まれた!?」

 

後ろから追いかけてきた団員たちも含め、リーリエたちは囲まれてしまった。一人一人の戦力が低いとは言え、それでも囲まれた状態でこの数は流石に厳しい。

 

だがこの状況を突破するにはやるしかないとリーリエたちも構える。しかしその時、またもや別の声か彼女たちの耳に入り込んできた。その声は断末魔にも近いRR団員の悲鳴であった。

 

背後のRR団員が次々と蹴散らされて行き、一体何事かと振り向くリーリエたち。そこには如何にも悪そう笑みをした知り合いが立っていたのだった。

 

「ちっ!数だけ揃えて大したことねぇな。こんなんじゃ壊しがいがねぇ。」

「いいじゃないか。久しぶりにこうしてあんたやこいつらと暴れられてあたいは嬉しいけどねぇ。」

「なっ!?あ、あいつは!?」

 

驚きの声をあげたのはRR団員の一人であった。RR団員はアローラの注意人物として彼らのことをマークしていた。リーリエたちのピンチに姿を現したのは、元スカル団のボスにして現アーカラ島しまキングのグズマであった。

 

それに加え同じく元スカル団の幹部であるプルメリ。そしてなんと元スカル団の下っ端たちも集結している。

 

彼らのシャツの裏にはスカル団のシンボルでもあったドクロマークが描かれているが、そのドクロには大きくペンキで×印が記されている。それは彼らがスカル団を解散したと言う証であった。しかしその服を着てこの場に現れたと言うことは、今一度アローラの危機を救う為にスカル団を一時的に再結成した、と言うわけだ。

 

「ふん。勘違いするな。オレ様はアローラで好き放題暴れているこいつらが許せねぇだけだ。」

「ってこいつは言ってるけど、こいつも代表のことが心配で来たんだよ。」

「ちっ!余計な事言ってんじゃねぇよ。」

「グズマさん……」

 

昔からグズマのことを知っているハウ、ミヅキ、ヨウの三人は彼の意外な行動に今日一番の驚きを示した。しかしそれ以上に、彼らが味方になってくれることはなによりも心強いものだと心から感謝する。グラジオもまさかグズマに対して感謝する日が来るなどと思っていなかったが、なんだかおかしくなってしまい小さく笑みを浮かべていた。

 

「リーリエさん!私も来ました!」

「ヒナさん!?」

 

次に姿を現したのはアローラリーグでライバルとして争ったヒナであった。ヒナもまたアローラのピンチにスカル団と協力し、リーリエたちのピンチにはせ参じてくれた一人である。

 

「私も戦います!リーリエさんや他のみなさんと一緒にルザミーネさんを助けたいです!」

「ヒナさん……ありがとうございます!」

 

次々と駆けつけてくれる仲間たちにリーリエはいくら感謝してもし足りず、心からも感謝の言葉を伝え続ける。そんな彼女にプルメリは自分たちの手に入れた情報を伝えると口を開いた。

 

「この先に二つの通路がある。片方にはルザミーネ代表が捉えられている場所へと通じる鍵があり、もう一つの場所には職員たちが捉えられているみたいだ。ここはあたいたちスカル団で食い止める。お姫様たちは二手に分かれて先に行きな。」

 

プルメリの提案に乗っかり、リーリエたちは先に進むことにする。リーリエ、グラジオ、ヒナの三人がルザミーネ救出の為に進み、ミヅキ、ヨウ、ハウの幼馴染組が他の財団員を救出するために進むこととなった。

 

彼らが行ったことを確認したプルメリは、自分の愛する部下たちに大きな声で指示を出した。

 

「あんたたち!久しぶりのスカル団結成だ!思う存分暴れてやりな!あたいたちスカル団の荒々しい戦いを見せてやるさね!」

『おおぉ!!』

 

プルメリの鼓舞にスカル団たちは士気を上げ自分たちのポケモンを繰り出していた。そしてグズマもまた、自分の相棒であるグソクムシャを従えて前にでた。

 

「……さぁ、ぶっ壊してもぶっ壊しても手を緩めなくて嫌われるグズマ様がここにいるぜ。気に入らない奴らは全員、このオレ様が徹底的に破壊してやる!」

 

ここに誰も知らないスカル団とRR団の全面戦争が幕を開けたのであった。




原作でこんな展開になって欲しいなと思っていたことをここで実現

サンブレイク第2弾アプデはいいぞぉ


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交差する思惑、それぞれの目的のために

一度作ったはいいものの誤って消してしまいもう一度作る羽目になってしまいましたorz


「マリルさん!アクアテールです!」

『リルゥ!』

「ルカリオ!はどうだん!」

『バウッ!』

「アマージョちゃん!トロピカルキック!」

『アッジョ!』

 

リーリエ、グラジオ、ヒナの三人はルザミーネを救出するべく妨害するロケット団員たちを蹴散らしながら前へ前へと突き進んでいく。しかしロケット団員の数は底が知れず、倒しても倒しても次々と現れ妨害の手が止むことがない。

 

「チッ……いくら倒してもキリがないな……」

 

グラジオは次々と現れるRR団員たちに嫌気がさし舌打ちをする。これではいつまでたっても前に進むことができず、ただただ体力を蝕まれていくだけでありジリ貧だ。

 

こうなったらこの手しかないとグラジオはまずルカリオに攻撃の指示をだした。

 

「ルカリオ!正面に向かって全力ではどうだんだ!」

『バウッ!』

 

ルカリオははどうだんで正面のRR団のポケモンたちを一気に排除し、真っすぐの道が切り開かれた。

 

「リーリエ!ヒナ!走れ!」

「っ!?は、はい!」

「分かりました!」

 

グラジオの指示に従い三人は切り開かれた道を駆け抜けるRR団員たちは突破されたことを驚きながらも、彼らを逃がすわけにはいかないと背後から追いかける。

 

そんな彼らに対抗するべく、グラジオはRR団員たちを突破した先で振り向き対峙する。

 

「お兄様!?」

「お前たちは早くいけ!ここは俺が引き受ける!」

「でもそれではお兄さんが!?」

 

無数に出現するRR団員たちを自分が相手をするといいグラジオはリーリエ、ヒナの背中を押す。そんな無茶なことをさせるわけには行かないと二人も止めるが、グラジオはそれでも早くいけと大声で怒鳴りつけた。

 

「っ!?ヒナさん……行きましょう。」

「で、でも……」

「お兄様なら大丈夫です。私たちは私たちにできることをしましょう。」

「リーリエさん……。」

 

一番辛い立場であるはずの妹が口を噛みしめて前に進むことを決断したのだ。ならば自分はそれに従い彼女と前に進むべきだと、振り向くことなくリーリエと共に走り出した。

 

「……ふっ、俺もあいつに感化されすぎたか。」

 

そう言いながらグラジオは微笑み、二つのモンスターボールを同時に投げた。

 

『カカッ!』

『ニュッラ!』

 

その中から飛び出したのは彼の仲間であるクロバットとマニューラであった。グラジオはルカリオ、クロバット、マニューラの三匹を従え、無数のRR団員たちと迎え合う。

 

「お前たちの相手はこの俺だ。ここから先、絶対に通しはしない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方同じころ。ミヅキ、ヨウ、ハウの三人はRR団の妨害を受けているのではなく、謎の迷宮へと迷い込んでいた。

 

「なんなのこの迷路……全然先が見えないんだけど!」

「いくら歩いても先に進めないな。まるで同じ場所をグルグルと回っているみたいで気味が悪い。」

 

いい加減終わりの見えない迷路に飽き飽きとしていたミヅキ、ヨウ。そんな時ハウが一つの提案をする。

 

「じゃあさー、もうポケモンの技で一気に突破しちゃおうよー。先を急いだほうがいいと思うしそっちの方が楽じゃない?」

「こんな狭いところで技なんか使ったら私たちも危ないわよ。」

「そもそも人の家を勝手に破壊するな。」

「そっかー。いい方法だと思ったんだけどなぁー。」

 

ハウの提案はミヅキ、ヨウの二人に却下された。しかしこのままでは一向に前に進むことができず足止めを喰らってしまう。最悪の場合は先ほどのハウの提案を採用するしかないが、可能な限りは避けたいところだ。

 

ならばどうするかと三人は考える。そこであることを閃いたとヨウはハウに声をかける。

 

「ハウ、お前ってオンバーン持ってたよな?」

「うん、持ってるけどー?」

「だったらここはオンバーンの力を借りよう。オンバーンは超音波が使える。」

「ああ!なるほどー!出てきてー!オンバーン!」

『バオォン!』

 

ヨウの意図を理解したハウはモンスターボールを投げる。するとオンバーンが待ってたと言わんばかりに元気よく咆哮をあげて登場する。

 

「オンバーン!君の超音波でこの迷路の出口に案内してくれる?」

『バオン!』

 

ハウの指示に従い、オンバーンは超音波を発生させる。オンバーンの発した超音波が壁と壁の間を反射し、反射した音波がオンバーンの大きな耳に返ってくる。

 

『バオン!バオォン!』

 

オンバーンは超音波の反射を聞き分け、出口の場所を見つけ出した。出口を見つけたオンバーンはミヅキ、ヨウ、ハウの三人についてこいと言い案内を始める。

 

「ヨウにしてはいい考えを思いついたね♪」

「一言余計なんだよお前は……。」

 

幼馴染同士がそんな会話をしながら迷宮の中を突き進んでいく。オンバーンの案内の元三人は無事に迷宮を抜け出すことに成功した。

 

迷宮を脱出した三人は目の前に続く道を真っ直ぐと突き進んでいく。しばらく走っていくと三人の前に大きな扉が姿を現した。その扉はまるで彼らのことを待ち構えていたかのような威圧感を放っており、不思議と三人に緊張が走っていた。

 

しかもおかしなことに今まで来た道だけでなく、扉の周辺にすら誰も配置されていなかったことが三人には気がかりであった。

 

考えられる可能性としては、この先には特に彼らが守るべきものが存在しないのか。それとも守る必要がないのか。ミヅキたちを誘い込むための罠、という可能性も考えられる。

 

しかしもとよりここは敵地であるため危険などは承知の上。たとえ何が待っていようとも、彼らの目的はエーテルパラダイスの救出とアローラを守ること。ミヅキ、ヨウ、ハウの三人は覚悟を決め、大きな扉をゆっくりと押し開ける。

 

そこに広がっていたのはまるで格納庫のように広い一つの部屋。絵画以外ほとんど何も置かれておらず、生活のための部屋では全くない、というのが最初に抱く印象だった。

 

しかしその部屋には別の違和感を感じさせる異端な存在が二人ほどいた。一人は青い髪に黒い服と銀の上着。胸元には黄色でGの文字が描かれている。目の下には隈があり、頬には窪みができていて少々やつれている印象だ。

 

もう一人は対照的な逆立った赤い髪。黒と赤を基調としたスーツに、首元にはファーがついている服。しかし一番特徴的なのはたてがみにも見える髪と繋がった顎髭であろう。

 

彼らから放たれる威圧感は彼らがただものでないことを証明していた。彼らはおそらくRR団の下っ端とは比較にならない強さを持っているのは間違いない。ミヅキたちは覚悟をして前へと進む。そんな彼女たちを見た青髪の男が口を開いた。

 

「君たちが来た、ということは計画も最終段階に突入した、ということだな。」

「そうでしょうね。彼らが持つものか持たざるものか。我々が判断すると致しましょう。」

 

そう言いながら赤髪の男は見た目とは裏腹に、紳士的な態度で一歩前に出て頭を下げ自己紹介を始める。

 

「はじめまして。わたしの名はフラダリと申します。現在ではRR団の一人として活動しています。」

「……わたしの名前はアカギ。君たちに質問がある。」

「質問?」

「君たちはこの世界をどう思う?」

 

アカギと名乗る青髪の男が突然質問を投げかけてきた。内容のスケールがデカすぎてミヅキはイマイチ彼の真意が理解でずに戸惑ってしまう。

 

「君たちには早すぎた質問だったか。わたしはこの世界を不完全だと思っている。」

「ふかんぜんー?」

「感情などと言うものがあるから人間は苦しみ、余計な情を抱き、そして争いが繰り返される。だからこそわたしは、“新世界を創り出した”のだ。」

「一体何を……。」

 

ヨウはアカギが何を言っているのかさっぱり理解できず彼に疑問を投げかける。それはミヅキ、ハウも同じで一緒に疑問符を浮かべていた。

 

新世界を創り出した?それはまるで実際に世界を創ったかのように思わせる言い回しであった。それも自分が神にでもなったかのような、ミヅキたちにとっては気が触れた人間の狂言に聞こえてしまう。

 

そんなミヅキたちを他所に、今度は赤髪の男、フラダリが口を開いた。

 

「わたしからも一つ問おう。君たちは明日、この世界で何が起こるか分かるか?」

 

フラダリの質問も突拍子もないものであった。明日何が起こるかなんてわかるわけがない。人間は明日の事なんて一切分からないし、未来を見る力もない。だからこそ今を必死に生きて、毎日が変わらない日々をただひたすらに望む生き物である。だからこそ自分たちは変わらない明日を守るために今を生きる、そうフラダリに強い意思を示し答えた。

 

「守る……か。一体何を守ると言うのだね?今日よりも悪くなる明日か?」

 

フラダリの表情からは複雑な感情が見え隠れしていた。怒りや悲しみ、色々なものが混ざり合ってしまい、彼の考えを正確に読み取ることができない。

 

「確かに人間は明日何が起こるか分からないからこそ今を必死に生きている。それは間違いない。だが、だからこそ人間は資源を無駄に浪費し、奪い合い、争いごとを引き起こす。だからこそ私は世界を破壊し、全てをリセットする。“どの世界”であっても、わたしのやるべきことは変わりはしない。」

 

フラダリは真剣な表情のまま自分の考えをミヅキたちに説明する。その説明は非常に長いものではあったが、内容としてはアカギのものに類似している。彼らは人間を、世界そのものに深い憎しみを抱いている。しかしそれは悪意からではなく、彼らの行き過ぎた正義感の歪み故の負の感情。最も悲しいのは、彼らの争いごとを嫌う感情が連鎖し、結果的に自らも争いの火種となってしまっていることである。

 

だからこそ、ミヅキたちは彼らを止めなければならない。でなければ彼らは本当のこの世界を破壊し、新しい世界を創るためにリセットを行おうとするだろう。そんなこと、させるわけにはいかない。

 

ミヅキ、ヨウ、ハウは同時にモンスターボールを構える。それが彼らの意思だと判断したアカギ、フラダリもまたモンスターボールを構えた。

 

「これで君たちにも戦う理由ができた。わたしたちを倒さなければわたしたちはこの世界をリセットする。」

「わたしはこの世界を元のあるべき“はじまり”に戻す。人間から感情を消し、わたしの望む争いごとのない世界を創る。」

「そんなことはさせない!」

「俺たちは自分の生きるこの世界を守る!」

「勝手に自分たちの価値観で決めつけないでほしいなー!」

「行くよ!アシレーヌ!」

『シレーヌ!』

「頼むぞ!ガオガエン!」

『ガオウッ!』

「ジュナイパー!出番だー!」

『ジュッパァ!』

「君たちの希望は何一つとして残らない。行け、マニューラ。」

『マニュ!』

「わたしたちは自分の任務を遂行する!ゆけ!カエンジシ!」

『ジッシィ!』

 

世界の命運をかけた戦いが、幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラジオRR団員たちと戦い足止めをしている間にリーリエとヒナはひたすら真っ直ぐと前へ進んでいた。辿り着いたのはミヅキたちが見たのと同じようにそびえ立つ大きな扉であった。

 

間違いなくここが自分たちの目的である部屋である。急いでルザミーネを救わなければと、二人は勢いよく扉を開けた。その先に待っていたのはまたしても非常に広い一室であった。

 

その奥で待ち構えているのは二人の男性。一人は黒ぶちの独特な眼鏡を身に付け、七三分けの赤い髪、同じく赤いスーツを着用した男性。もう一人は日焼けした健康的な肌に胸元を開けた海賊風の衣装。頭部にはバンダナを身に付けており、服の上からでも分かるほどの筋肉を持ち合わせていた男性であった。

 

「ちっ、まさかお前と同じ部屋に配置されるとは思ってなかったぜ。」

「それはこちらのセリフだ。わたしもお前と共に戦うなど人生で最大の屈辱だ。」

 

その二人はどうやら仲があまりよろしくないようだ。犬猿の仲、とでも言うべき関係だろうか。

 

「おっと、悪いな。俺はアオギリ。今はまあRR団として活動しているが、元はアクア団のリーダーだ。」

「わたしはマツブサ。わたしは元マグマ団のリーダーだが……アクア団のこの男とは正直関わり合いたくもない。」

「それはこっちのセリフだ。っと、いちいち絡んでたら進まねえな。お前たちは人間やポケモンたち、生物がどこで生まれたか知っているか?」

「それは……海、ですか?」

 

突然の質問に戸惑うリーリエたちだが、アオギリと名乗る男の質問にリーリエは一般常識的な回答で答えた。その回答にアオギリは満足そうに満面の笑みで大笑いしていた。

 

「そうだ!生き物は全て母なる海から生まれた!それは人間たちも周知の事実。しかし現状はどうだ?人間たちは海への感謝も忘れ、汚し続けている。そんな穢れた行為にポケモンたちは苦しみ続けている。罪のないポケモンたちが苦しむ世界なんてあっちゃいけねぇ。許されるわけがねぇ!だからこそ俺は、“俺の世界”を海で沈めポケモンたちが苦しむことのない世界にした!こうなってしまった以上、この世界も同じようにするしか俺の進む道はねぇ!」

 

アオギリの語った内容にリーリエは疑問を浮かべた。彼が言ったのは“俺の世界”と言う言葉である。その言葉はまるでこの世界とは別に自分の世界、とでも言っているようにも聞こえた。UBの件がある以上、全く信憑性がない、などと思えるはずもない。もしかしたら彼らはこの世界とは別の世界から来た人物なのか、とありえない仮説が頭の中を過ってしまう。

 

「ふん。お前の考えにはやはり賛同しかねるな。」

「あん?」

「ポケモンたちが苦しまない世界?そんなものになんの意味がある?我々は人間で、人間が生きているのは海ではなくこの地上だ。であるならば我々がするべき行為はただ一つ。人類が住みやすい環境を作るため、世界の全てを陸地で埋める事。人類にとっての理想郷を作ることだ。ポケモンとの共存などバカバカしい。」

 

しかしマツブサの考えはアオギリとは正反対であり、マツブサはポケモンのことを毛嫌いし人間よりも下の存在であると見下している。所詮ポケモンは人間の道具でしかないのだと考えている歪んだ思想の持ち主だ。

 

かたやポケモンたちの理想の為に海で世界を覆い、かたや人類のために陸地を世界中に広げる、と言う歪んだ考えを持つ男たち。その考えにリーリエとヒナは自然と恐怖を感じてしまう。

 

それもそうだろう。二人はポケモンが大好きであり、彼女たちのポケモンも彼女たちが大好きである。まさに今共存し、互いに人生を生きていくために必要不可欠な存在である。マツブサとアオギリは互いに相容れぬ関係であるものの、それはリーリエ、ヒナとも同じく相容れぬ関係であるのは間違いない。

 

世界を陸、または海で埋め尽くすなど現実的に考えて不可能な行為であるが。このまま放置していては彼らがこの先何をしでかすかが不明である。アローラが、いや、世界中が陸か海で埋め尽くされるなど、考えただけでもゾッとする。だからこそリーリエとヒナの答えは決まっていた。

 

――彼らを止める。

 

彼女たちは互いにその考えに至りモンスターボールを構える。その構えが彼女たちの意思だと判断したマツブサとアオギリもまた、ポケモンの入ったモンスターボールを手にしたのであった。

 

「はっ!いいじゃねぇか!少しは抵抗してくれなきゃ面白くねぇ!」

「わたしとしては不本意だが、君たちがわたしに楯突こうと言うのであれば容赦はしない。」

「私たちはあなたたちを止めて見せます!」

「この世界をあなたたちのエゴで好きになんてさせないんだから!」

「お願いします!フシギバナさん!」

『バァナァ!』

「アマージョちゃん!出番だよ!」

『アッジョ!』

「マツブサァ!俺の邪魔はするんじゃねぇぞ!サメハダー!」

『サッダ!』

「それはこちらのセリフだ、アオギリ。バクーダ!」

『バクッ!』

 

ミヅキ、ヨウ、ハウの三人に続き、リーリエ、ヒナもまた、世界を守るための戦いを始める。彼女たちの肩に、世界の未来が託されたのであった。




割と自己解釈な部分も混じり混じりで書いていきます。原作ではニンフィアが無双して終わりましたけど、この物語ではどうなるでしょうか。

それと誤字・脱字報告非常に助かっております。自分で偶に見直した際にも見つけた時は修正していますが、それでも抜け落ちている部分があるみたいなので、これからも気になる部分があれば報告していただけると大変助かります。


あとピクミン4発売決定おめでとう!


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開戦!VSマツブサ&アオギリ!VSアカギ&フラダリ!

サメハダーは不思議な力で浮いている!


リーリエ、ヒナの二人は目的地まで辿り着くと、そこで待ち構えていたマグマ団のマツブサ、アクア団のアオギリと名乗る二人とバトルを繰り広げていた。

 

「サメハダー!アクアジェットだ!」

『サダァ!』

「フシギバナさん!つるのムチで抑えてください!」

『バナァ!』

 

サメハダーは自分の背後に水ジェットを噴射し、目にも止まらないスピードで突撃してくる。フシギバナはつるのムチを構えてサメハダーを抑えるも、どこか苦しそうな表情を浮かべ体が少し傷付いていった。

 

「サメハダーの特性はさめはだ。触れればそれだけお前さんのポケモンにダメージが入って身体を徐々に痛めつけていくぜ?」

「っ!?」

 

今すぐにでも離さなければフシギバナの身体はサメハダーによって傷つけられ続けてしまう。しかしサメハダーの攻撃性能が想定よりも高く、フシギバナも抑えるので手一杯だ。

 

「アマージョちゃん!トロピカルキックです!」

『アッジョ!』

『ッ!?サッダ!』

 

アマージョはトロピカルキックを放ちサメハダーを攻撃する。アマージョの接近を察知したサメハダーは咄嗟にフシギバナから離れて距離を置いた。

 

「大丈夫ですか!リーリエさん!」

「はい、ありごとうございます!」

 

お互いに助け合い上手く連携がとれているリーリエとヒナのタッグ。それに対してアオギリとマツブサのタッグはと言うと……。

 

「おいマツブサァ!俺一人に任せてないでてめぇも戦え!」

「わたしはただ突っ込むことしか脳のない君とは違うのだよ。」

「あん?喧嘩売ってんのかてめぇ!」

 

絶賛言い争い中の真っ最中であった。マグマ団、アクア団と正反対の思想を掲げているからか、リーダー同士の仲は非常に不仲なようである。連携の取れていないタッグであれば、どれだけ強力な相手であっても脅威とはならない。

 

タッグバトルはそんなに甘いルールではないのだ。

 

「行きますよ!ヒナさん!」

「はい!リーリエさん!」

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

「アマージョちゃん!リーフストーム!」

 

言い争いをしている今の内に、とリーリエ、ヒナは一斉攻撃を仕掛ける。同時に放たれた無数の葉がサメハダー、バクーダの二体に襲い掛かった。

 

「チィ!サメハダー!あくのはどう!」

「バクーダ!かえんほうしゃ!」

『サダ!』

『バック!』

 

サメハダーとバクーダは両者共に技を放ってフシギバナ、アマージョの連携攻撃を相殺する。両者の連携は未だ息が合っていないが、それでもやはりリーダーと言うだけあって実力は伴っていて非常に強敵であることは間違いないとリーリエたちは再認識する。

 

「バクーダ、ふんかです。」

「なっ!?てめぇ!」

 

マツブサの指示に従いバクーダはその山にも似た背中から文字通りの噴火を放った。不動の巨体から放たれるふんかは強力で、周囲にいるフシギバナ、アマージョだけでなく味方のはずのサメハダーにも襲い掛かった。

 

サメハダーは自慢のスピードで間一髪その攻撃を回避している。対してフシギバナ、アマージョはそれぞれつるのムチ、自慢の脚力で対応している。しかしどちらもくさタイプであるがゆえ、いくら攻撃を躱したとしてもその熱量で体力は着実に蝕まれてしまっている。

 

「どういうつもりだマツブサァ!てめぇ、俺のサメハダーまで焼くつもりか!?」

「君のサメハダーはみずタイプ。対して相手のポケモンはどちらもくさタイプ。この状況で最良の判断をしたまでだ。」

「てめぇ……相変わらずムカつくやろうだなぁ!」

 

相変らず喧嘩を繰り返すマツブサとアオギリ。確かにマツブサの判断は合理的ではある。しかしタッグバトルは味方と息を合わせるのが基本であるため、戦術としては明らかに間違っている。ポケモントレーナーからしたら間違いなく反感を買う者も多い。

 

しかしこの状況はリーリエたちからしたら好都合であった。今なら彼らの隙を突くチャンスだとリーリエとヒナは互いに目を合わして頷いた。

 

「ソーラービーム!スタンバイです!」

『バナバナァ!』

「アマージョちゃん!バクーダにふみつけです!」

『アッジョ!』

『バクッ!?』

 

フシギバナは自身の背に咲く大きな花に光を集める。そしてアマージョは自身の脚力を利用して地面を蹴り、バクーダに接近して連続で踏みつける。鈍足なバクーダは対応することができず、されるがままに踏みつけを浴びてしまう。

 

「チィ!油断してんじゃねぇ!」

「君がバトルに集中しないからだろう!」

「癪ではあるがしかたねぇ。サメハダー!こおりのキバ!」

『サダー!』

 

サメハダーはバクーダを救出するために横からこおりのキバでアマージョに対して攻撃する。しかしその攻撃をアマージョは横目で確認し、当たる直前にふみつけの反動を利用して即座にバクーダを蹴り飛ばし離脱した。そこにアマージョの姿はなく、当然サメハダーの攻撃はアマージョにヒットすることはなく逆にバクーダに命中する結果となってしまった。

 

「リーリエさん!」

「任せてください!フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」

『バァナァ!』

 

その瞬間、チャージの終わったフシギバナのソーラービームがフルパワーで解き放たれた。お互い攻撃し合ってしっていたサメハダーとバクーダは回避することができず、ソーラービームの直撃を受けてしまう。その強力な一撃を浴びて、両者共に目を回して戦闘不能状態となってしまっていた。

 

「サメハダー!?」

「ふんっ、君が集中しないからこの様な結果を招いてしまったのだ。」

「てめぇが協調性なかったからだろうが!」

 

バトルが終わってからもいがみ合うマツブサとアオギリ。そんな二人を見かねて、リーリエは二人に声をかけるのであった。

 

「あなた方の負けです。早くお母様のところに案内してください!」

「ルザミーネさんは一体どこにいるんですか!?」

「はっ!勝った気でいるようだが、まだ終わっちゃいないぜ?本当は使うつもりじゃなかったんだがな。」

「……不本意だが、相手も相当な手練れ。この際仕方がないか。」

 

エースと思われるバクーダ、サメハダーを失ってもなお二人はいまだ余裕を見せている。二人の様子から察するに彼らには別の最終兵器があるように思われる。そんな二人の不穏な空気と異様な威圧感が放たれていた。

 

二人はモンスターボールをそれぞれ構える。そして二人はモンスターボールを投げると、中からは想定を遥に超える驚愕のポケモンが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

『グルオオオオォォォ!!』

 

 

『キュオオオオォォォン!!』

 

 

 

 

 

 

 

超古代ポケモンと呼ばれる伝説のポケモン、グラードンとカイオーガの姿だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエとヒナがマツブサ、アオギリと戦っている一方、幼馴染三人トリオであるハウ、ヨウ、ミヅキもまたアカギ、フラダリを相手に奮戦していた。

 

「ジュナイパー!かげぬいー!」

『ジュパァ!』

「メタルクロー」

『ニュッラ』

 

ジュナイパーの得意技、かげぬいをマニューラはメタルクローで簡単に弾いてしまう。感情をこの世界から抹消する、と言うからなのか、アカギからは生物感を感じられず寧ろ人間ではない無機質な印象すら感じてしまい不気味に思う。

 

「ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガウッ』

「カエンジシ、こちらもかえんほうしゃだ。」

『ジシィ!』

 

ガオガエンとカエンジシ、両者の炎がぶつかり合う。しかし威力はほぼ互角で部屋の中央にてはじけ飛ぶ。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

『シレーヌ!』

 

アシレーヌは美しい歌声と共に2つの大きな水玉を創り出しマニューラ、カエンジシ双方に飛ばした。マニューラとカエンジシはどちらも冷静に回避し、反撃の態勢へと移行した。

 

「マニューラ、つじぎり。」

「アクアジェットで迎え撃って!」

 

マニューラのつじぎりによる反撃を、アシレーヌはアクアジェットで迎え撃ち交差する。どちらの技の威力も高く、ぶつかり合うたびに火花が散るほどであった。

 

「カエンジシ、ハイパーボイス。」

『ジシィ!』

 

カエンジシのハイパーボイスが放たれ、その攻撃を察したマニューラは即座にその場から離れる。そしてカエンジシのハイパーボイスがアシレーヌ、ガオガエンに命中し両者が苦しみ始める。しかしその場には一体だけ姿が見えないポケモンがいた。

 

そのポケモン、ジュナイパーは音もなくカエンジシの背後に回り込んでいた。さすがの冷静なフラダリであっても、ジュナイパーの瞬間移動にも近い動きには驚きを隠せない。

 

「ふいうちー!」

『ジュッパァ!』

『ジシ!?』

 

ジュナイパーのふいうちがカエンジシにヒットする。カエンジシの放ったハイパーボイスはノーマルタイプであり、ゴーストタイプであるジュナイパーに対して効果はない。だからハイパーボイスの影響を受けずに動くことができたのだろう。

 

カエンジシは吹き飛ばされるが、それと変わるようにマニューラがジュナイパーに立ち向かう。こおり・あくタイプであるマニューラはくさ・ゴーストタイプであるジュナイパーに対して非常に相性がいい。その上接近戦が得意なマニューラと違いジュナイパーは遠距離戦が得意なポケモンだ。懐に潜り込まれてしまうと展開としては非常にマズいものとなる。

 

「れいとうパンチ」

『ニュッラァ!』

『ジュパァ!?』

 

ジュナイパーは回避しようと翼を羽ばたかせるが、マニューラのスピードは非常に早く、一瞬で懐に潜り込まれてしまいれいとうパンチを叩きこまれる。効果抜群の技を受け、ジュナイパーは苦しみに顔色を歪める。

 

「ガオガエン!マニューラにニトロチャージ!」

『ガオウ!』

 

ガオガエンは炎を纏いスピードを上げ、マニューラに接近する。しかしその攻撃はマニューラにヒットせず、今度はカエンジシが体でそのニトロチャージを受け止めていた。

 

「なっ!?」

「カエンジシ、もう一度ハイパーボイスだ!」

『ジッシィ!』

『ガオ!?』

 

カエンジシはニトロチャージを受けながら至近距離でハイパーボイスを放つ。これだけの至近距離で鼓膜が破けるかのような声を聞いてしまえば、ガオガエンと言えどただでは済まない。ニトロチャージは撃ち返されてしまい、ガオガエンの攻撃がマニューラに届くことはなかった。

 

アカギとフラダリは似た思想を持つ者同士だからなのか、連携が非常によく取れている。お互いの弱点をカバーし合い、それぞれが味方のピンチをフォローしている。このような強敵を相手にするには、やはりあの技しかないだろうと三人は目を合わし頷いた。

 

「ガオガエン!かえんほうしゃ!」

「ジュナイパー!かげぬいー!」

 

意図を理解しあった三人は、ヨウ、ハウのコンビネーション技で勝負に出た。ガオガエンのかえんほうしゃによってかげぬいが強化され、炎を纏った鋭い一矢に姿を変えた。これにはアカギとフラダリも驚きのあまり目を見開いた。

 

「メタルクロー」

「かえんほうしゃ」

 

両者メタルクロー、かえんほうしゃでヨウとハウの攻撃を受け止める。強力な合わせ技であるためアカギとフラダリの実力があると言っても苦戦してしまうのは必然。暫くの鍔迫り合いを制し打ち破ったものの、彼らは目の前の光景を見ると流石にピンチを悟り顔色を変えた。

 

「それだけで十分だよ。この技を使うにはね!」

 

目の前には自信の腕のリングとパートナーであるアシレーヌと共に光輝いているミヅキの姿があった。アローラ地方のトレーナーである彼女の秘奥義とも言える技、Z技である。

 

ミヅキとアシレーヌをZパワーが包み込む。そして両者の気持ちが一つになり、彼女たちが編み出したZ技が解き放たれるのであった。

 

「これが今私たちのできる、全力全開!」

『シレィヌ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――わだつみのシンフォニア!

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヅキとアシレーヌのZ技、わたつみのシンフォニア。先ほどのうたかたのアリアとは大きく異なり、超巨大な水玉を超えた大量の水がマニューラ、カエンジシの上空に浮かんでいた。

 

そのあまりの巨大さはすさまじく、例えマニューラであっても回避は困難なサイズであった。アシレーヌの合図とともに、大量の水がマニューラとカエンジシを包み込み水が降り注いだ。Z技が決まったアシレーヌはまるで指揮者のようにお辞儀をしてフィニッシュする。

 

さしものアカギ、フラダリのエースであるマニューラ、カエンジシであってもZ技を耐えきることは出来ず、同時に目を回して倒れてしまっていた。その姿を見たアカギ、フラダリはパートナーをモンスターボールへと戻していた。

 

「見事だ。君たちの実力、本物だという事がよく分かったよ。」

 

フラダリの称賛にミヅキたちは悪い気はしなかった。しかしその称賛からはどこか彼らに余裕が感じられ、ミヅキたちは警戒を解くことは一切なかった。まだ彼らは何かを隠しているのではないか、とポケモントレーナーとしての感がそう告げていたのだ。

 

「感情があるからこそ希望を抱き、その後に感じる絶望は計り知れない。それを今から味合わせてあげよう。」

「後悔と言う邪念を抱いてももう遅い。」

 

そう言ってアカギとフラダリは懐からモンスターボールを取り出し、それを正面に投げる。すると中から出てきたのは、まさに絶望と言う名に相応しいポケモンであった。

 

 

 

 

 

『グギャアアアアァァァ!!』

 

 

 

 

『キュアアアアアァァァ!!』

 

 

 

 

 

モンスターボールから飛び出してきたのは、空間を司ると言われる伝説のポケモン、そして破壊の化身とも恐れられる伝説のポケモン、パルキアとイベルタルであった。




アカギさんとカエンジシさんの伝説ポケモンがパルキア、イベルタルの理由
→ポケマス


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対決!VS伝説のポケモン!

VSダークライ


リーリエたちが建物内に侵入し奮闘している一方、外ではコウタ、コウミの二人がRR団として暗躍していたザオボーとの戦闘を繰り広げていた。

 

ザオボーと共に戦っていたRR団員の下っ端たちの大半は片付けることができたが、それでもまだ数名だけ残っている。その上相手にはザオボーの操るメガフーディンまで残っている始末。いくらコウタ、コウミのパートナーがメガシンカを習得できたとしても、体力には限界がある。

 

メガリザードンとメガバシャーモはまだ戦闘を継続しているが、かなり長時間時間稼ぎを行っているため相当疲労を感じてしまっているようだ。二匹の額からは汗が滴り落ちており、肩で息をしていて体力が尽きてしまうのも時間の問題である。

 

「大人しく降参した方がいいかと思いますが……あなたがただけでは私を倒すことはできないでしょうしね。」

 

ザオボーは不敵な笑みを浮かべながらまだまだ余裕がある様子でそう答える。悔しいが現状を見るとザオボーの言う通り、コウタとコウミに勝ち目は低いだろう。しかしそれでも親友に頼まれた手前、ましてやポケモントレーナーとしてバトルをあきらめることなどできるはずもない。

 

この状況をどう覆そうかと頭を必死に回転させ打開策を考える二人。だがその時、突然彼らにとって最大の好機が訪れた。

 

「っ!?一体どうしたことだ!?」

 

ザオボーが目を見開いて驚きの声をあげていた。それもそのはず。なんと、先ほどまで周囲にいたはずのRR団員たちが突如として姿を消してしまったのだ。それもまるでここには最初からいなかったかのように跡形もなく、である。

 

しかし理由がどうあれ、追い詰められていたコウタたちにとってこれは好機でしかない。相手がザオボー一人であるならば、追い詰められている現状でもなんとかなると、二人は目を合わせて頷き息を合わせて攻め立てる。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「バシャーモ!かえんほうしゃ!」

『ザァド!』

『バッシャ!』

「くっ!?フーディン!サイコキネシスです!」

『フディ!』

 

リザードンとバシャーモは同時にかえんほうしゃを放った。同時に放たれたかえんほうしゃは交差して威力を増す合体攻撃となるが、相手もまたメガシンカし能力が大幅に上昇している。サイコパワーが増したサイコキネシスでかえんほうしゃを打ち消した。だがその隙を見てバシャーモが即座に動き出していた。

 

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『シャモッ!』

 

バシャーモはかき消された炎から飛び出し燃え盛る脚で蹴り抜ける。フーディンはサイコパワーで自身を空中に浮かせることでその攻撃を回避するが、その先にはリザードンが先回りして攻撃の構えを取っていた。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

『ザァ!』

『フディ!?』

 

リザードンは鋭く尖ったツメでフーディンを切り裂いた。双子の息の合った連携攻撃によって、フーディンは地面に叩きつけられ大きなダメージを受ける。メガシンカしたとしてもフーディンは耐久力の低いポケモンであるため今の一撃だけで瀕死の重傷を受けてしまう。

 

「なっ!?フーディン!?」

「今だ!リザードン!」「バシャーモ!」

『かえんほうしゃ!』

 

再びリザードンとバシャーモのかえんほうしゃがフーディンに襲い掛かる。瀕死の重傷を受けたフーディンは当然回避することができず、パートナーであるザオボーとともに大きく吹き飛ばされていた。

 

フーディンは大きく吹き飛ばされ戦闘不能となったことによりメガシンカが解除される。また、フーディンに指示を出していたザオボーもまたフーディンとともに目を回して倒れていたのだった。

 

「よし、なんとか片付いたな。」

「でもどうして急に他の人たちが消えたんだろう。」

 

その答えは当然コウタにも分かるはずがない。しかし状況としては間違いなくこちら側にとっては好都合であるためそれ以上考えることなく、建物内部へと侵入していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、このポケモンさんたちは……!?」

 

リーリエとヒナの前に現れたのは超古代ポケモンと呼ばれているホウエン地方より伝わる伝説のポケモン、グラードンとカイオーガであった。通常のポケモンとは異なり、対峙しているだけで押しつぶされてしまうのではないかと錯覚してしまうほどの威圧感を二人は感じている。

 

「こ、こんなのが相手なんて……。」

 

ヒナはまさかのポケモンが登場したことで戦意を失いかけるが、今は一人ではない、大切なものを守らなければならないと思い留まり頭を横に振ってネガティブな思考を振り払う。そんな彼女の覚悟にアオギリはガッハッハと大きく笑っていた。

 

「中々度胸があるじゃねぇか嬢ちゃん。だが手加減はしねぇぜ?だから嬢ちゃんたちも全力で掛かってきな?」

 

アオギリは昂ってきたのかリーリエとヒナに対して挑発する。そんなアオギリのことをマツブサは『相変わらずだな』と呆れ気味に呟いていた。

 

相手が伝説のポケモンであるならばリーリエたちも手加減などできるはずもなく、新たなポケモンが入ったモンスターボールを手に取り投げる。

 

「お願いします!カイリューさん!」

『バオウゥ!』

「ドレディアちゃんもお願いします!」

『ディィア!』

 

リーリエはフシギバナに加えカイリューを、ヒナはアマージョに加えてドレディアを繰り出した。それでも相手はあの伝説のポケモンだ。4対2であっても勝てる保証などない。しかし囚われているルザミーネやエーテル財団の人たちを助けるためにリーリエとヒナも退くわけにはいかない。

 

「グラードン、だいもんじ!」

『グルオオオオォォォ!!』

「カイオーガ!れいとうビーム!」

『キュオオオオォォォン!!』

 

グラードンとカイオーガの同時攻撃がリーリエたちのポケモンへと襲い掛かる。回避することには成功するが、着弾した衝撃が全員に襲い掛かりそれだけでも伝説のポケモンたちのとてつもない力が肌に直接伝わってきた。

 

「カイリューさん!グラードンさんにしんそくです!」

『バウゥ!』

「アマージョちゃん!カイオーガにトロピカルキック!」

『アッジョ!』

 

カイリューのしんそく、アマージョのトロピカルキックがグラードンとカイオーガに直撃する。攻撃力は凄まじいものがあるが、体がデカい分機動力には少々難があるのか動きは少々鈍いようだ。もしくはここが自分たちにとってのホームじゃないから本領を発揮できないのか。

 

しかしそれでも相手は伝説のポケモン。特にカイオーガに至っては効果抜群の技を喰らっているのにもかかわらず、少し怯む程度で対してダメージを受けている印象は見受けられない。

 

「ハンッ!カイオーガ!げんしのちから!」

「グラードン、ほのおのパンチ!」

 

カイオーガはげんしのちからに巻き込むことでアマージョを振り払い、グラードンはほのおのパンチでカイリューを殴り飛ばす。その威力は相当なもので、あのカイリューでさえも軽くあしらわれてしまうほどの攻撃力であった。

 

だがその間にフシギバナの準備は終わっており、大技を放つ態勢に移行していた。

 

「フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」

『バァナァ!!』

 

フシギバナは蓄積させたソーラービームの光を一気に解き放つ。強力なソーラービームはグラードンに突き刺さる。しかしグラードンはその攻撃に怯むことなく押し返して歩みを進めた。まさかのその光景にはリーリエ達も驚かずにはいられなかった。

 

「だいもんじで迎え撃つのだ!」

 

グラードンはだいもんじでソーラービームを正面から対抗してくる。威力の差は歴然で、フシギバナのソーラービームがだいもんじによって反射されてしまう。そしてグラードンのだいもんじによってフシギバナは焼かれ吹き飛ばされてしまった。

 

「っ!?フシギバナさん!」

『ば……なぁ……』

 

フシギバナは力尽きて倒れてしまう。伝説のポケモンであるグラードンのだいもんじが直撃してしまったため戦闘不能になっても仕方がないと言える。しかしそれでもフシギバナが一撃で戦闘不能になってしまうのは予想外であり、それは伝説のポケモンの攻撃力が途方もないことの証明であった。

 

「お疲れさまでした、フシギバナさん。」

「リーリエさん!くっ!ドレディアちゃん!はなふぶき!」

『ディアァ!』

 

ドレディアはフシギバナの仇を取るべくはなふぶきを放った。その攻撃はまるでフシギバナを倒された怒りをぶつけるかのように荒々しく、グラードンとカイオーガに襲い掛かった。

 

グラードンとカイオーガも遂に顔色を歪めて苦しみ始めた。しかし次の瞬間彼らは目を見開き、大きく咆哮することではなふぶきの攻撃をかき消した。それと同時に咆哮の衝撃が広い範囲に響き渡り、カイリュー、アマージョ、ドレディアをも巻き込む攻撃と化したのだった。

 

「なっ!?カイリューさん!」

「ドレディアちゃん!アマージョちゃん!」

 

二人は自分のポケモンに呼びかける。ダメージはかなり負ってはいるが自分のトレーナーの声に応じて何とか立ち上がる。それでも立ち上がることがやっとであり、これ以上戦うのも限界に近い状態であった。

 

「悪くはなかったが、俺のカイオーガには及ばなかったな。」

「殆どやったのは私だが……まあいい。そろそろ終わりとしよう。」

「カイオーガ!こんげんのはどう!」

「グラードン!だんがいのつるぎ!」

 

カイオーガとグラードンが同時に構えパワーを溜める。両者が持つ最大の大技、こんげんのはどうとだんがいのつるぎによるプレッシャーと振動がリーリエたちに襲い掛かり、万事休すかと思われた。

 

しかし同時に解き放たれたその技はカイリューたちにヒットする前にお互いの技が交わってしまい大きな衝撃と共に爆ぜ散ってしまった。

 

「おいマツブサァ!てめぇ邪魔してんじゃねぇぞ!」

「邪魔なのはお前だアオギリ。先ほどから私の邪魔ばかりしているのはお前だろう。」

「ああ?てめぇ、喧嘩売ってんのか?だったら今日こそ決着つけてやんぞ?」

「奇遇だな。私もこれ以上君と慣れ合うつもりはない。どちらが正しいか決着を着けようではないか。」

 

そうして二人はリーリエたちを無視して火花をぶつけ合う。やられてしまう直前で注意が逸れ助かったのはいいものの、ここからどうするべきかと悩むリーリエ。しかし次の瞬間に突如として異変が訪れた。

 

なんと一瞬にしてマツブサ、アオギリの姿が消えてしまったのだ。それと同時に彼らを追うかのようにグラードン、カイオーガの姿も見当たらなくなってしまう。一体何が起きたのか脳の処理が追い付かない二人だが、なんとか助かったのかと安堵したのと同時に疲労が蓄積しその場に座り込んだ。

 

「……はぁ、なんとか助かったみたいですね。」

「一時はどうなることかと思いました。」

 

運が悪ければ敗北し最悪の結果となってしまっていた今のバトル。相手が悪かったとはいえまだまだ自分の実力不足だなと自らの未熟さを改めて実感する。そしてバトルが終わったのと同時に扉が開かれ、そこからは時間稼ぎをしてくれていたグラジオが姿を現した。

 

「リーリエ!ヒナ!」

「お兄様!?大丈夫でしたか!?」

「こっちはなんとかな。急にRR団が姿を消して驚きはしたが。」

「お兄さんもですか。実は私たちもそうだったんです。」

「そうなのか……」

 

いまいち状況が飲み込めなかったグラジオだが、今はともかく目の前の物事を解決する方が先決だと、リーリエとヒナの手をとって立ち上がる援助をした。

 

その後、奥の机を確認すると一つのカードキーを発見した。それが恐らくルザミーネのいる部屋への鍵だと判断すると、それをグラジオは手にし振り返った。

 

「カードキーは入手した。急いで戻るぞ。」

『はい!』

 

グラジオ、リーリエ、ヒナはルザミーネの救出を急ぐべく最初の部屋へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、リーリエとヒナがグラードン、カイオーガと対峙していた頃、ミヅキ、ヨウ、ハウの三人もまた伝説のポケモンであるパルキア、イベルタルと対峙していたのである。

 

「これが……伝説のポケモン……。」

 

ミヅキが伝説のポケモンのプレッシャーを肌で感じてそう呟いた。以前彼女たちも日輪の祭壇にてネクロズマと対面した経験はあるが、それでもやはり伝説のポケモンが纏っている途方もないプレッシャーには慣れることはない。

 

だがそれでも彼女とてアローラを代表とするしまクイーンの一人。伝説のポケモンに臆して退くことなどできるはずもなく、パートナーのアシレーヌ、そして一緒に戦ってくれるヨウ、ハウたちとともに伝説のポケモンと向かい合った。

 

「心意気は見事だが……恐怖を感じているのだろう?」

『っ!?』

「感情があるから人は恐怖を覚える。感情があるから人は悲しむ。君たちの中にある感情、私たちが抹消してあげよう。パルキア、ハイドロポンプ。」

 

まるでこちらの感情を見透かしているかのように淡々と語るアカギ。彼は自らの目的を遂行するため、伝説のポケモンパルキアに指示を出した。通常のハイドロポンプとは比にならない威力の攻撃がアシレーヌたちに襲い掛かるが、彼女たちはその攻撃を寸でのところで回避する。

 

「君たちのように勇気あるトレーナーを壊すのは私としても心苦しい。だが我々の目的のために、消えて貰おう。イベルタル、あくのはどう。」

 

続いてフラダリがアカギとは対照的に少し悲し気な声でイベルタルに指示を出していた。イベルタルのあくのはどうが地を割きながら襲い掛かった。パルキアの攻撃を避けた直後であったためあくのはどうまでは避けることができず、アシレーヌ、ガオガエン、ジュナイパーは薙ぎ払われ吹き飛ばされてしまった。

 

「アシレーヌ!」

「ガオガエン!」

「ジュナイパー!」

 

三人の呼びかけに答えて起き上がるアシレーヌたち。直撃を受けたわけではないためダメージは思ったほどなく、まだまだ戦う元気はあるようだ。

 

「なら今度はこっちから!アシレーヌ!うたかたのアリア!」

『シレェヌ!』

 

アシレーヌのうたかたのアリアがパルキア、イベルタルの頭上から襲い掛かる。しかし伝説のポケモンに対してそう簡単に攻撃が通るわけもなく。

 

「イベルタル、ぼうふう。」

 

イベルタルの強烈な羽ばたきによってうたかたのアリアは文字通り泡となって消滅した。だがミヅキたちの攻撃はそれだけでは終わらなかった。

 

「ジュナイパー!かげぬいー!」

『ジュパァ!』

 

ジュナイパーのかげぬいがパルキアの影を捉え動きを封じる。今がチャンスだと、最後に動き出したのはヨウのガオガエンであった。

 

「ガオガエン!DDラリアット!」

『ガオゥ!』

 

ガオガエンは回転しながら動きを止めたパルキアにDDラリアットによる攻撃を仕掛ける。今ならば攻撃が通るだろうと確信していたヨウたちだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「パルキア、あくうせつだん!」

『ギュルオオオオォォン!!』

『ガオォ!?』

 

パルキアはあくうせつだんによって空間に歪みを生じさせ、かげぬいを振り払いDDラリアットを弾き返した。パルキアはシンオウ時空伝説において空間を司ると言われている伝説のポケモン。かげぬいなどで止まるほど優しい相手ではなかった。

 

「っ!?くっ、強い!」

 

伝説のポケモンと言われるだけはありまるで歯が立たないと悔しがるヨウ。しかしその裏ではポケモントレーナーとして、こんなに強い相手と戦えるのが嬉しいと思ってしまう自分もいる。それは同じポケモントレーナーであるミヅキ、ハウも同じ気持ちであった。

 

だが相手は普通のポケモントレーナーではなく悪事を働く非道なトレーナーだ。フラダリは容赦することなく、イベルタルに指示を出して追撃を仕掛けてくる。

 

「イベルタル、デスウィング。」

『ギュルウウウウゥゥゥ!!』

 

イベルタルはあくのはどうに続き今度はデスウィングで破壊の限りを尽くしてくる。カロス地方において破壊の化身と言い伝えられているイベルタルの攻撃は、まさにその名を象徴するかのような威力を誇っていた。

 

さすがにこれはマズイと、ミヅキとアシレーヌが先に動き出す。

 

「アシレーヌ!ムーンフォース!ライチュウ!あなたもエレキボールで援護お願い!」

『シレェヌ!』

『ライライ!』

 

アシレーヌだけでは無理だと判断したミヅキはライチュウも繰り出しエレキボールでの援護を頼んだ。二体の攻撃となんとかデスウィングを抑え込むことに成功し、今の内だとヨウとハウに呼びかける。

 

ヨウとハウは呼びかけに頷いて答え、チャンスなら今しかないと同時に同じ構えを取る。

 

「行くぞ!ガオガエン!」

『ガォウ!』

「おれたちも行くよー!ジュナイパー!」

『ジュパァ!』

 

ヨウとガオガエン、ハウとジュナイパーをZパワーのオーラが纏い繋がる。互いの気持ちが一つとなり、内から湧き上がる力を膨れ上がらせる。

 

「俺たちの全力!」

「受けてもらうよー!」

 

そしてヨウとハウは全力のZ技を解き放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ハイパーダーククラッシャー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――シャドーアローズストライク!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガオガエンのハイパーダーククラッシャーがパルキアに、ジュナイパーのシャドーアローズストライクがイベルタルに襲い掛かった。両者の攻撃は伝説のポケモンの身体を貫き、確実に大きなダメージを与えているのが分かるほどパルキアとイベルタルは大きく仰け反っていた。

 

明らかにダメージは通っている。しかしそれでもパルキアとイベルタルは倒れることなくその場で踏みとどまっていた。伝説のポケモンの名は伊達ではない、と言うのは間違いないがそれでもこれほどタフネスだとは正直誰も思ってはいなかった。

 

「素晴らしい一撃だった。しかしそれでも私のパルキアを倒すことはできなかったようだな。」

「我々を倒すにはまだまだだ。我がイベルタルの本気の力、とくと味わわせてやろう。」

 

彼らとの戦いはまだまだこれから。だが三人は先ほど使用したZ技によって体力を消耗してしまっている。パルキアとイベルタルが本気を出したら果たして勝てるのだろうか?いや、まず勝ち目などゼロに近い。満身創痍な彼らでは満足に戦うこともできないだろう。

 

これ以上は厳しいか、と半ば諦めかけた頃、アカギとフラダリの身体が突如として光りだした。

 

「っ!?これは……」

「一体なにが……」

 

本人たちが疑問に思った刹那、二人の姿が突如としてこの場から消え失せた。それと同時に彼らの操るパルキア、イベルタルの姿も同時に消え去っていたのだった。

 

一体なにが起きたのかと疑問に思うミヅキたちだが、それ以上にZ技の反動と緊張感の解放からどっと疲れが訪れて三人はその場にへたり込んだ。

 

「疲れたー!」

「全くだな……ここまでしんどい相手は初めてだぞ……。」

「はぁ……ってそうだ!ビッケさんたちは!」

 

当初の目的を思い出し、ミヅキはビッケたちを探し始める。奥にはもう一室の部屋があり、そこには気を失って倒れているビッケとその他の財団員たちの姿があった。

 

「ビッケさん!起きてください!」

「んっ……ミヅキちゃん?それにヨウくん、ハウくんも?」

「よかった、無事だったんですね。」

「大丈夫ー?立てなかったら肩貸しましょうか?」

「いえ、大丈夫よ。三人とも助けに来てくれたのね。ありがとう。」

 

ビッケは助けてくれた三人に感謝する。ミヅキは現状を把握しきれていないビッケに事のあらましを説明する。その説明で理解したビッケたちは三人に協力すると、エーテルパラダイスの機能を修復するために別れたのであった。

 

ミヅキたちはこの場所の安全を確認すると、急いでみんなと合流するために元の広間へと帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女たちが伝説のポケモンを撃退した頃、シンジはRR団の下っ端たちと交戦を続けていた。

 

「ブースター!かえんほうしゃ!サンダース!10まんボルト!シャワーズ!ハイドロポンプ!」

『ブスタ!』

『ダース!』

『シャワ!』

 

ブースター、サンダース、シャワーズの合体攻撃で一気にRR団員たちのポケモンを蹴散らした。しかしそれでも数だけは一丁前に多く、シンジも苦戦を強いられていた。

 

「っ、早くエーテルパラダイスに行きたいのに、次々と沸いてくる。面倒くさい人たちだよ本当に!」

 

一向に数が減らないRR団に対し嫌気がさし珍しく悪態を吐く。このままではただただ体力と時間だけが蝕まれてしまい問題を解決することができない。

 

一体どうすれば、と悩むシンジだが、そんな彼の希望の光が差し込んだ。彼に襲い掛かったRR団のポケモンを第三者が吹き飛ばしたのである。その第三者は大きな巨体を持っておりまるで関取の様な見た目。紛れもなくハリテヤマと言うポケモンであった。そしてそのポケモンを操るトレーナーと言えば一人しかいないであろう。

 

「ハリテヤマ!つっぱりです!」

『ハァリィ!』

 

ハリテヤマのつっぱりが敵を一掃していく。だがRR団を倒しているのはハリテヤマだけではなかった。

 

「ルガルガン!ストーンエッジ!」

『ガウゥ!』

「シロデスナ!シャドーボール!」

『スゥナァ!』

「ドデカバシ!タネマシンガン!」

『カバシィ!』

 

ハリテヤマの他に真夜中の姿をしたルガルガン、シロデスナ、そしてドデカバシが次々と敵のポケモンをなぎ倒していく。状況を理解したシンジが振り向くと、そこには四人の頼もしい仲間が立っていたのだった。

 

「すみませんなチャンピオン。我々も倒すのに少々時間が掛かってしまいました。」

「いやぁー、こっちにもやたらと数だけ多いチャレンジャーが挑んできてねー。」

「でも正直腕前は大したことなかったからアセロラたちだけでなんとかなったよ♪」

「あなたは行くべき場所があるのでしょう?ここは私たちに任せて向かってください、チャンピオン。」

 

四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリである。シンジに引けを取らない実力者であり、彼にとっても信頼を寄せている仲間たちである。自分たちのところにも来たであろうRR団たちを処理し、シンジの援軍に来てくれたのである。

 

四人はシンジの前に立ち早く行くように促し道を切り開いた。そんな彼らに感謝し、シンジは自分のポケモンたちとともにRR団たちを振り切って駆け抜ける。その先で待機していたヘリコプターに乗り込み、急いでエーテルパラダイスへと向かうのであった。

 

(待っててみんな。僕もすぐにそっちに向かうから。)




本来は2話かけてグラードン&カイオーガ、パルキア&イベルタルの戦いを別々に書こうと思ったのですが、あんまり長引かせたくないので一話に纏めました。一気に凝縮したため結構なハイペースで戦闘が進みましたが、強力な伝説のポケモンを相手にすると長時間戦った場合戦況がかなり厳しくなりそうと思ったので結果的にこれでよかったのかなと。

ポケモンSVの発売まで残り一週間となりましたが、皆さんのパートナーは内定確定しているでしょうか?新ポケモンも色々と公開されているので、新しいポケモンとの出会いも楽しみにしながら発売を待ちましょう!

因みに私は当然SV両方予約してます。


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立ちはだかる強敵!VSゲーチス&キュレム!

こんなのが原作のストーリーで登場してたら普通にキツかったかもしれない


「グソクムシャ!ミサイルばり!」

『ムッシャ』

「エンニュート!ヘドロウェーブ!」

『エンット!』

 

グズマのグソクムシャ、プルメリのエンニュートが同時に連携攻撃を放つ。息の合ったコンビネーションにRR団員のポケモンたちは対応することができず一気に吹き飛ばされた。

 

他のスカル団たちも尊敬しているグズマ、プルメリの戦いに鼓舞され次々とRR団たちを退けていく。その様子はかつての不良集団とは思えない程統率がとれていて、腕前も当時より遥かに向上しているのが目に見えて分かるレベルであった。

 

スカル団一同はその勢いのままRR団を次々と倒していく。すると突然、RR団員たちが次々と姿を消していった。グズマたちも理解が追い付いていない状況ではあるが、グズマ自身は不完全燃焼なのかどこか不満そうに舌打ちをしていたのだった。

 

入口のホールからRRたちが姿を消したあと、そこに自分たちの戦いを終えたリーリエ、グラジオ、ヒナ、ミヅキ、ヨウ、ハウ、そして外で足止めをしていたコウタ、コウミの8人が同時に戻ってくるのだった。

 

「ふん、お前たちも終わったみたいだな。」

「はい。グズマさんたちも協力していただきありがとうございます。」

「チッ、礼はいいからさっさと代表を助けて終わらせるぞ。」

 

協力してくれたグズマに感謝の言葉を伝えるリーリエだが、彼は不機嫌そうに顔を背けて奥へと歩みを進めていた。気を悪くしてしまっただろうか、と感じるリーリエだが、そんな彼女にプルメリが耳打ちをして呟いた。

 

「あいつはああ見えて照れ隠ししているだけだよ。しまキングになっても素直になれないのは相変わらずだから、あんまり気にすることはないさね。」

 

プルメリのその言葉を聞いて安心するリーリエ。とりあえずはグズマの言う通りルザミーネを一刻も早く助ける必要があるため、ロックのかかった扉の前まで移動する。

 

グラジオは先ほど入手したカードキーを使用して扉のロックを解除する。RR団員たちが消えたとは言え、いつまた現れるかも分からないため念には念を入れ、グズマを始めとしたプルメリたちスカル団は入り口で待機することとなった。

 

彼らを待たせすぎるとあとで色々と愚痴を聞かされる可能性があるため、早くルザミーネを救出して戻ろうと先へと急ぐリーリエたち。しかしそんな彼女たちの目の前から一人の人影が彼女たちの前に姿を現すのであった。

 

「全く……他の方々は何をやっているのですか……」

 

その人物の声は低く、他のボスたち以上にどこか冷たい印象を感じさせるものであった。全身を覆うローブ

 

「……お前もRR団の人間か?」

「RR団?八ッ、こんなものはただのお遊びにしかすぎません。そう、“あの男”もワタクシの野望を達成するための道具でしかありません。」

「あの男……?」

 

この男が言う“あの男”とは間違いなくルザミーネを襲った黒服の人物のことであろう。しかし他のボスと同じように彼自身にも何か目的があるのも間違いないようだ。

 

「ワタクシの名はプラズマ団のボス、ゲーチス。あなた方は関わりすぎてしまった以上、ここで消えていただきましょう。」

 

言葉を交わす暇もなく、彼はすぐさま戦闘態勢へと移行した。どうやらゲーチスに対して一切の対話は不可能のようである。

 

「どうせここを通らなければ母さんを助けることはできない。力づくでも通してもらう!ルカリオ!」

『バウゥ!』

「お母様を助けるため、全力で行きます!シロン!お願いします!」

『コォン!』

「私たちも行きます!ラランテスちゃん!」

『ララァ!』

「リーリエとグラジオ君のため!ライチュウ!お願い!」

『ライライ!』

「俺たちも行くぞハウ!行け!ジャラランガ!」

『ジャラァ!』

「任せてヨウ!オンバーン!頼むよー!」

『バオォン!』

「俺たちも!リザードン!もう一度頼むぞ!」

『ザァド!』

「あなたもお願い!バシャーモ!」

『バッシャ!』

 

リーリエたちはそれぞれ自分のポケモンを繰り出した。しかし数で言えば圧倒的不利であるにも関わらず、ゲーチスは不敵な笑みを浮かべ余裕さえ感じさせていた。

 

「仮にもあなた方は他の方々を倒しここまでやってきた。であるならば、一切の手心などは不要でしょう。まあ元より手加減などする気は毛頭ありませんがね!」

 

そしてゲーチスはモンスターボールを二つ同時に投げる。そこから姿を現したのは、またもや想像を超えるポケモンたちであった。

 

 

 

 

 

『グギュアアアァァァ!!』

 

 

 

 

 

『キュルオオオォォォン!!』

 

 

 

 

 

 

一体は黒く筋肉隆々とした機械的なドラゴンポケモン、ゼクロム。そしてもう一体は兜に似た顔、左右非対称の翼に凍りの鎧を纏った異質な見た目のドラゴンポケモン、キュレム。どちらもイッシュ地方に伝わる伝説のポケモンである。

 

特にキュレムはかつて人間を食していたとも言われる伝承が伝わっているが、それが本当か嘘かは誰も知らないと言うのは余談である。

 

「特別です。この二体の真の力、ワタクシ自らが見せて差し上げましょう!」

 

ゲーチスがそう口にした瞬間、彼の持つ杖と同時にキュレムとゼクロムの身体が光り輝き全身を包み込む。二つの光が重なった次の瞬間、更なる衝撃がリーリエたちを襲うこととなる。

 

なんとそこに立っていたのは左半身がキュレム、右半身がゼクロムとなっている両者が融合した姿であった。名前を付けるとしたらブラックキュレム、と言ったところだろうか。

 

ブラックキュレムは静かにリーリエたちのポケモンを見下ろしている。その目つきは非常に冷たく、まるで世界が凍りついたのではと錯覚させるほどの寒気を感じさせていた。伝説のポケモンの融合体と言うだけあり、彼の放つ威圧感は他に類を見ないとてつもないものである。

 

「あなた方にワタクシの操るキュレムを倒すことができますか?精々抗うことですね。」

「っ!?例え誰が相手でも、俺たちは負けない!ルカリオ!はどうだん!」

「ライチュウ!エレキボール!」

「ジャラランガ!きあいだま!」

「おんばーん!ばくおんぱー!」

 

グラジオたちのポケモンは同時に一斉攻撃を解き放つ。しかしキュレムは微動だにすることなく前進から凍てつく冷気を出していた。その冷気に包まれた瞬間、グラジオたちの技が一斉に凍りついてしまったのだった。衝撃的な現象にグラジオたちも驚かずにはいられなかった。

 

だがそれを黙って見ているだけではなかった。リーリエとヒナのポケモン、シロンとラランテスは共に背後に回り攻撃態勢へと移行していた。

 

「シロン!れいとうビーム!」

「ラランテスちゃん!リーフブレード!」

 

シロンは右側かられいとうビーム、左側からはラランテスがリーフブレードで攻撃を仕掛けた。だがその攻撃もブラックキュレムによってあっさりと止められてしまう。なんと両者の攻撃をそれぞれ片腕だけで打ち消してしまったのである。

 

驚いたのも束の間、キュレムは右腕でラランテスを掴み、シロンに向かって投げつけた。ラランテスと共に当然シロンも一緒に叩きつけられてしまった。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「バシャーモ!かえんほうしゃ!」

 

今度はリザードンとバシャーモが同時にかえんほうしゃを放った。だがその攻撃に対してもゲーチスはニヤリと余裕の笑みを浮かべるのであった。

 

「そのような攻撃、ワタクシのキュレムに通用するはずがありません!キュレムよ!クロスサンダーです!」

『ギュオアアアア!!』

 

キュレムは雄叫びと共に自らに電気を纏いかえんほうしゃに突撃していった。電気の鎧はリザードンとバシャーモの攻撃をあっさりと無力化し、彼らを含むルカリオ、ライチュウ、ジャラランガ、オンバーンをも吹き飛ばした。

 

あまりの強力な攻撃にこの場にいる全員が歯を噛みしめ苦い顔をする。融合した伝説のポケモンが相手とは言え、ここまで強力な力を有しているなど想像していなかった。

 

「お兄様……ここはやはり……」

「ああ、分かっている。」

 

伝説のポケモンを倒す手段、それは一つしかない。それはグラジオも当然理解している。だが一つ考えがあるとグラジオはリーリエに忠告する。

 

「リーリエ。お前は力を使うな。」

「え?」

「奴はさっき“あの男”と口にしていた。その言葉はこのRR団を率いている黒幕に違いない。おそらくその男はゲーチスや他の奴らよりも強い可能性が高いだろう。ここでお前まで力を使うのはリスクが高い。」

「で、ですが……」

 

Z技はポケモンだけでなく使用者も体力を消費するため強力な分リスクを伴う。これだけ強敵との連戦ともなれば使えて精々一人一回程度。最終戦を前に全員が力を消費することだけは回避しなくてはならない。

 

しかし出し惜しみをしてゲーチスとキュレムを倒すことができるのかというリーリエの不安も最もである。そんなリーリエを安心させるため、グラジオは微笑みながら自信ありげに答える。

 

「お前の心配も分かる。だが一つ作戦がある。ヒナ」

「は、はい!」

 

自分に作戦があると言うグラジオはヒナに声を掛ける。突然自分に対象が変わり驚くヒナだが、グラジオの作戦にヒナは頷いて分かりましたと答えていた。

 

予想外の大役を担わされたヒナだが、不思議と緊張はしていない。それは彼女が一人ではなく、頼もしい仲間たちが傍にいてくれるからである。それだけ仲間という存在は人間やポケモンにとって大きな存在なのである。

 

グラジオの作戦を聞いたミヅキたちは、彼らがそれをこなす時間を稼ぐために前に出る。

 

「作戦会議は終わりましたか?」

「うん。あなたたちを倒すためのね!」

「それは到底無理な話ですね。ワタクシのキュレムは無敵です!あなた方ごときで倒すことなどできない!」

「それは俺たちを倒してから言うんだな!」

「私たちの絆は誰にも壊せはしないよ!」

『メガシンカ!』

 

リザードンとバシャーモはザオボー戦と同じようにメガシンカをして自身の能力を大幅に上昇させる。先ほどZ技を使用し体力を消耗してしまったミヅキ、ヨウ、ハウもこれ以上Z技を使用できないため前線で戦い時間を稼ぐために前に出る。

 

「ミヅキ!ハウ!俺たちもやるぞ!」

「もっちろん!」

「任せてー!」

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『ザァ!』

『シャァ!』

 

リザードンとバシャーモが中心となって前に出る。その間に遠隔射撃メインのジュナイパーは背後で待機、アシレーヌとガオガエンは左右に分散する。

 

「無駄なことを!キュレム!」

『キュルオオオオオン!!』

 

キュレムは甲高い咆哮を響かせてリザードンとバシャーモの攻撃を受け止める。アシレーヌ、ガオガエンがその隙を見つけて攻撃を仕掛けた。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

「ガオガエン!ニトロチャージ!」

『シレーヌ!』

『ガウゥ!』

 

キュレムはリザードンとバシャーモを弾き返し、今度は接近してくるガオガエンの攻撃を受け止める。そしてアシレーヌの攻撃にも対応しようとするが、アシレーヌは縦横無尽に駆け巡りキュレムを翻弄していた。多対1の状況に慣れていないのか、アシレーヌの動きに追い切れていない。

 

「くっ!何をしているのですかキュレム!げんしのちからです!」

 

キュレムはげんしのちからを乱れ撃ちしてアシレーヌを攻撃していくアシレーヌはその攻撃を回避していくが、それでも限界は訪れてしまいその攻撃が僅かに掠れて撃墜されてしまう。だがその一瞬は相手の気を少しでも逸らすことができた。

 

「今だ!かげぬいー!」

『ジュパァ』

 

ジュナイパ―は準備していた得意技、かげぬいでキュレムの影を射抜いた。伝説のポケモンに対して効果は薄いであろう、それでも大技を叩きこむ隙を作るには充分すぎるほどであった。

 

「行くぞ!ルカリオ!」

『バオウ!』

 

グラジオの掛け声とともにルカリオは意識を集中させ、Zパワーと自身の中の波動を溜めていく。その様子を見たゲーチスは先ほどまでの余裕ではなく顔色を変えていた。

 

「それが報告で聞いていたZ技ですか……ですがワタクシのキュレムに勝つことなどあるはずがないのです!キュレム!フリーズボルト!」

 

ルカリオと同様にキュレムも体内の冷気とゼクロムの電気を一点に集中させる。キュレムとゼクロムの力が融合した技ともなれば、その威力は考えるまでもなく計り知れないであろう。だがそれを理解していてもグラジオとルカリオは退くことなどできるはずもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ぜんりょくむそうげきれつけん!

 

 

 

 

 

 

 

 

グラジオとルカリオの気持ちが一つとなり、波動の力を拳に宿したルカリオがキュレム目掛けて突撃していく。そのタイミングに合わせて、キュレムも融合した力を解き放つ。

 

キュレムの放ったフリーズボルトは凍てつく冷気に電気を纏った如何にも強力な技であった。ルカリオはその攻撃を正面から連続で拳を叩きこみ対抗していく。

 

ルカリオの強力なZ技ではあるが、それでもなおキュレムのフリーズボルトが一枚も二枚も上手である。次第にルカリオの顔色に変化が訪れ、苦悶の表情を浮かべていた。それを見たゲーチスは不気味な笑みで勝利を確信していた。しかし相手は一人ではない。

 

「ラランテスちゃん!ソーラーブレード!」

『ララァ!』

『キュオオオ!?』

 

キュレムの背後からラランテスが巨大なソーラーブレードを振り下ろした。ルカリオが正面からキュレムの気を引いている間に、ラランテスが大技であるソーラーブレードを準備していたのである。さしものキュレムも背後からソーラーブレードの一撃を浴びてしまってはタダでは済まない。

 

キュレムはソーラーブレードの一撃で怯み技の力が一瞬弱まる。その隙を逃すことなく、ルカリオは拳に宿した波動の力を限界を超えて高めていく。そしてフリーズボルトを打ち砕き、キュレムの身体をZ技の一撃が貫いた。

 

「なんですと!?」

 

さすがのこれにはゲーチスも驚き目を見開いた。だがキュレムはまだ持ちこたえ敵の姿を捉えていた。しかしキュレムがこの一撃で倒せない相手であることはグラジオたちも理解していた。

 

「ヒナ!」

「はい!ラランテスちゃん!」

『ララ!』

 

今度はグラジオに続きヒナとラランテスがZパワーを溜めていく。Zリングを通し、二人の気持ちが一つになったところでラランテスは力を解き放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ブルームシャインエクストラ!

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールド一面に草花が開花し、一際大きな花びらにキュレムの身体が包み込まれた。キュレムを包み込んだ花びらが蕾となり、大きな爆発を巻き起こした。そのダメージにキュレムは溜まらず両手両膝をついた。

 

それでもまだ倒れることなく戦う意思を見せる。それを見て伝説のポケモンの強靭さを改めて感じさせられる一同だが、まだ最後の一撃が残っていた。

 

「リーリエさん!」

「任せてください!シロン!とどめのムーンフォースです!」

『コォン!』

 

シロンは体内に集中させ形成した力を解き放つ。シロンのフェアリータイプであるムーンフォースはドラゴンタイプを持つキュレムに対して効果は抜群であり、かなり体力を消耗しているキュレムに対しては非常に有効な一撃だった。

 

シロンのムーンフォースはキュレムの急所に命中し、その一撃でキュレムは仰向けになって倒れる。もはや立ち上がる力も残っておらず、戦闘不能となったのであった。

 

「っ!?ば、バカなバカな!ワタクシのキュレムが負けるなど!」

「お前の敗北だゲーチス。いい加減負けを認めるんだな。」

「ワタクシが……負けですと……?否!断じて否です!ワタクシが負けるはずなどあるわけがない!ワタクシの野望を達成するまで、ワタクシは!ワタクシだけがポケモンを使えればいいのです!」

 

その一言がまさにゲーチスの野望を物語っていた。自分だけがポケモンの力を使えればいい。この世界において、その野望こそがある意味一番の恐怖である。

 

ゲーチスは諦める気など毛頭なく、他のポケモンが入ったモンスターボールを手にしていた。消耗してしまっているリーリエたちにこれ以上バトルを続けられるのか不安に駆られてしまうが、そんな時一人の男性の声が聞こえたのだった。

 

「やれやれ……あなたは“そちら”でも相変わらずですか。」

「っ!?貴様は!?」

 

そこに現れたのは変わった機械的な白衣を装着し眼鏡をかけた金髪、長身の男性。あまりの異質な姿に、リーリエは自分の知っている人だと見間違えるはずもなかった。

 

「あなたは……アクロマさん!」

「リーリエさん、お久しぶりですね。」

 

島巡りの時に一度だけあっただけではあるが、それでも彼の特質な姿を忘れることなどできるはずもなく彼女に記憶には残っていた。しかしこの男はどうやらゲーチスの事を知っているようで、彼は再びゲーチスを見つめる。

 

「アクロマ……まさか貴様がここにいるとは……」

「……わたくしは二度とお会いしたくはなかったのですがね。人の事は言えませんが、あなたのやっていることにはわたくしでさえも反吐がでますよ。」

「貴様に言われる筋合いなどない!ワタクシは、ワタクシの野望を完遂させる!例え別の世界であったとしても、ワタクシだけが!」

 

ゲーチスの変わらぬ執着心にアクロマは呆れて溜息をついた。その様子を見たアクロマは、「かわいそうな人ですね」と一言呟いた。

 

「手を差し伸べてくれる相手がいなかったあなたはどこまでも可哀想な人です。最も、いたとしても救いはなかった、ですけどね。」

 

アクロマはどこか悲しそうな表情を浮かべてそう呟いている。ゲーチスはそんな彼に対してイラつきを隠せない。

 

「黙れ!貴様のようなマッドサイエンティストに何が分かる!貴様も全員纏めて!」

「あなたはこの世界にいるべき人間ではない。在るべき場所へと帰りなさい!」

「っ!?ふざけるな!ワタクシは!ワタクシは!」

 

アクロマはその言葉と同時に機械を作動させた。するとゲーチスとキュレムの身体が光に包まれ次第にその場から姿を消した。その現象を見たリーリエたちは驚いていたが、それと同時にその現象に見覚えがあった。

 

そう、先ほどからRR団のメンバーが忽然と姿を消した現象と全く同じなのである。つまり先ほどから彼らを消滅させていたのはアクロマだったのである。

 

「……お前は一体?」

「わたくしはただの科学者ですよ。今は、ね?」

 

精一杯絞り出したグラジオの一言に意味深な発言をするアクロマ。まるでかつてはただの科学者ではなかったかのような物言いである。

 

しかし彼が先ほどから自分たちを助けてくれていたのは事実。これ以上彼の素性に対して聞くのは野暮であろうと、グラジオは退いたのであった。

 

だがそれでも気になることはあったため、リーリエが彼に一つだけ質問を投げかける。

 

「あの……彼らは一体……」

「ああ……彼らは別の世界から来た人間ですよ。」

 

その言葉を聞いてリーリエたちは驚くことはなかった。先ほどから彼らの言葉を聞いてどこかそうなのではないかと頭の中で考えていたからだ。ウルトラホールの件もある以上、信じられない話ではなかったと言うのも一つの要因である。

 

「特にゲーチスはわたくしとも縁の深い人物でしてね。わたくしが最もこの世で嫌う人物ですが、同時に野心に見合った実力を持つ恐ろしい人物ですよ。」

 

ゲーチスの事をそう評するアクロマは、リーリエに近付くと先ほど操作した機械を手渡した。

 

「あなたにこのアクロママシーン1102号を渡しておきます。」

「アクロママシーン……ですか?」

「ええ。わたくしが新たに開発した装置ですが、これを使用すれば彼らを元の世界に戻すことができます。UBやウルトラオーラを利用して制作したのですが、上手く起動してよかったです。」

 

アクロマは笑顔で自分の作った機械を自慢げに語った。それと注意点として、相手は異常な力を持っているため戦闘で抵抗する力を失わせてから使用するようにと忠告する。

 

「今のわたくしではあなた方の力になることはできません。ですがUBを撃退することのできたあなた方であれば問題ないでしょう。それでは、わたくしはこれで失礼させていただきます。」

 

アクロマはそう彼女たちに激励すると、足早にその場を去っていった。リーリエはアクロマから受け取ったアクロママシーンを見つめると、これで新たな希望が訪れたと前を見つめる。

 

「行きましょう!今度こそお母様を助けます!」

 

リーリエの言葉に全員が頷き前へと進む。遂に残るはラスト一人、RR団の首領である黒幕のみである。リーリエたちは自分の信じるポケモンたちとともに、最後の戦場へと向かうのであった。




ブラックキュレム(A170)の登場
個人的にはホワイトキュレムの方が好き。と言うか一番好きな伝説がホワイトキュレムと日食ネクロズマ。やっぱり合体はロマン!

ポケモン最新作、ストーリーが非常に面白く新ポケモンも好きなんですけど、過去作にあった便利機能が消されててバグが多い挙句、パフォーマンスまで重いと不満点も結構多いのが……。恐らく新型switchに合わせて作ったと思うんですけど、だったらせめて設定でパフォーマンスを下げさせてほしかった……。あとニンフィアからマジカルフレイムを奪ったのは許されない。アプデで色々と改善して欲しいところ。

今日からモンハンもアプデだし、明日からはイーブイのテラレイドだし、色々と忙しくなります。


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RR団最後の一人、その名もサカキ

謎の多い研究者、アクロマの協力もあり最後のRR団幹部であるゲーチスを元の世界に送り返すことに成功したリーリエたち。彼女たちは最後の一人でありRR団を率いている黒幕を倒すべく最奥の部屋へと辿り着いた。

 

「……開けるぞ」

 

目の前に聳えている大きな扉を手にし呼びかけるグラジオの声にリーリエ、ミヅキ、ヨウ、ハウ、コウタ、コウミの全員が頷いて答える。意を決し扉をゆっくりと開けると、そこはかつてルザミーネがポケモンたちを自分の望む美しい姿で保管しておくために利用していた広い部屋であった。

 

とは言え当時はウツロイドの神経毒で膨れ上がっていた彼女の欲望によって生み出されてしまっていた悍ましい過去であるため、現在では何もない真っ白な部屋となっている。……はずだったのだが、RR団が支配したことによって部屋全体が赤と黒の悪趣味な色に染まってしまっている。

 

そんな部屋の奥に黒服の男が一人椅子に座り、近くには意識を失って倒れているルザミーネの姿があった。

 

「お母様!?」

 

リーリエは溜まらずルザミーネの元へと駆けだした。ようやくやってきたか、と男は薄ら笑いを浮かべながら椅子を立ち上がり彼女たちの前に立ちはだかった。

 

「お母様に……お母様に何をしたのですか!」

「キミたちがウルトラビーストと呼ぶ存在、UBの力を使って彼女には眠ってもらっているだけだ。最も、次に起きた時にはわたしの忠実な部下になっているだろうがな。」

 

男の声は低く静かな部屋に響き渡った。彼の卑劣な行いにリーリエたちは心からの怒りが沸いてくる、はずであった。しかしそれ以上に彼の声からは冷徹さを感じられ、同時に体の芯にまで響く恐怖が伝わってきた。明らかに今まで出会った誰よりも危険な存在であると感じ取ることができた。それ故に彼女たちの心臓は恐怖と緊張からバクバクと煩いほどに鳴り響いていた。

 

「まずは自己紹介をしよう。わたしの名はサカキ。RR団のリーダーだ。いや、こう言った方がいいか。カントー地方で“活動していた”ロケット団のリーダーだ。」

 

その言葉を聞いて全員は目を見開き驚きをあらわにする。カントー地方を旅していたリーリエはもちろんだが、その組織の名はグラジオたちも耳にしたことがあった。特にカントー出身のコウタ、コウミにとってその名を知らないはずもなかった。

 

ロケット団はかつてカントー地方において悪事を働いていた秘密結社である。世界征服や金儲けなどを目論んでおり、組織としての規模が大きい上に隠蔽工作や一般企業としても世間に溶け込んでいたため警察も迂闊に手を出すことができないでいた。

 

しかしそんな彼らにも終わりの時は訪れた。ある一人の少年がたった一人でロケット団を壊滅に追いやったのである。その結果、ロケット団のボスであった元ジムリーダーの男は姿を消し、ロケット団は自然と解散することとなった。その後もロケット団の残党はボスを連れ戻すべく悪事を続けていたのだが、ボスは戻ってくることなく彼らは国際警察やポケモンGメンの活躍によって徐々に数を減らしていくこととなる。

 

彼がもし本当にロケット団のボスであるのならば、何故このタイミングで戻ってきたのだろうか。いや、今までの流れを考えると彼はこの世界とは別の世界からやってきたロケット団のボス、サカキなのだろう。他のリーダーたちにそのような様子はなかったのだが、先ほどの言葉から察するに彼はこの世界のロケット団が壊滅したことを知っている可能性も高い。

 

この男は他のボスたち以上に侮ることできない存在だと警戒するリーリエたち。そんな彼女たちに再びサカキは口を開きその低い声を響かせた。

 

「キミたち子どもにわたしの、わたしたちロケット団の目的を理解できるなどと思ってはいない。わたしの目的を邪魔するのであれば、例え子どもであっても痛い目にあってもらう。」

 

サカキは4体のポケモンを繰り出した。ダグトリオ、ニドクイン、ニドキング、そしてドサイドンである。全てのポケモンがじめんタイプであり、その屈強な肉体と目つきから非常によく育てられているのかが伝わってくる。ポケモンの姿だけを見たらとても悪人とは思えない。それはサカキ自身がジムリーダーとして戦っていたからなのか、それともポケモントレーナーとしては超一流だからなのか。

 

とは言えリーリエたちは誰が相手であっても全力で戦い彼らからアローラを守らなければならない義務がある。ここまで相当疲労が溜まってしまっている彼女たちだが、最後の砦であるサカキを倒すためにモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「頼むぞ!シルヴァディ!」

『シヴァア!』

「モクローちゃん!お願い!」

『クロォ!』

「アシレーヌ!」

『シレェヌ!』

「ガオガエン!」

『ガオウ!』

「ジュナイパー!」

『ジュパァ!』

「リザードン!もう一度頼む!」

『ザァド!』

「バシャーモもお願い!」

『バッシャ!』

 

一同は一斉にポケモンを繰り出した。ここまでの連戦で疲労が溜まってきてしまっているが残る敵はラスト一人である。自らの身体を奮い立たせて最後の戦いに挑む。

 

「シロン!こなゆきです!」

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『コン!』

『シヴァヴァ!』

 

最初はリーリエ、グラジオの兄妹コンビが同時に先制攻撃を仕掛ける。こなゆきとエアスラッシュによる波状攻撃に対し、サカキは怯むことなく冷静に対処していた。

 

「ニドキング、かえんほうしゃ。ニドクイン、10まんボルト。」

『ニドォ!』

 

ニドキングとニドクインはそれぞれ同時に攻撃を放ち、息の合った連携攻撃でシロンたちの攻撃を相殺した。どちらの攻撃も非常に強力で、大会に参加していても一切おかしくないであろう腕前をサカキは有していた。

 

「こっちにもいるよー!ジュナイパー!かげぬいー!」

『ジュッパァ』

 

ジュナイパーはシロンとシルヴァディが先手で気を引いている間に力を溜め、かげぬいの一撃を解き放つ。しかしその攻撃はドサイドンが正面から受け止めるのであった。

 

ドサイドンはその巨腕によってかげぬいを叩きつける。かくとうタイプの強力な技、アームハンマーである。地面に軽くクレーターを作る程の一撃はかげぬいを玉砕するのに充分すぎるほどの威力であった。その威力にはさしものハウも苦笑いをするしかない。

 

ドサイドンの防御を起点とし、ニドキングが隙のできたジュナイパーに接近する。今度は彼を守るように、ガオガエンがニドキングと対峙する。

 

接近戦が得意なガオガエンはニドキングと取っ組み合い両者共に力比べを開始する。どちらも一歩も譲ることなく、互いの力は拮抗している。

 

ならば今の内に後衛を削っておこうとミヅキが動き出す。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

『シレーヌ!』

 

アシレーヌは綺麗な歌声で大きな泡を作り出す。うたかたのアリアはニドクインに迫り、彼女の頭上にまでやってきた。

 

「ニドクイン、もう一度10まんボルト」

 

ニドクインは再び10まんボルトを放つ。10まんボルトによる電撃がうたかたのアリア内を駆け巡り、内部から衝撃を加えることで形状を保つことができずに破壊される。

 

ならば今度はとアクアジェットの指示を出そうとするミヅキ。しかしその瞬間、突如としてアシレーヌの足元が崩れて態勢を崩してしまった。

 

一体なにが起きたのかと確認すると、そこにいたのはサカキのもう一体のポケモンであるダグトリオであった。ニドクイン、ニドキング、ドサイドンと言う超重量級ポケモンたちに気を取られ、ダグトリオから意識が外れてしまっていたのだ。相手の隙を逃すことなく自らの特徴を活かし攻めに転じる。これは紛れもなくサカキがポケモンの育成を疎かにしていない何よりの証拠であるだろう。

 

「ドサイドン、がんせきほう!」

『ドッサァ!』

 

ドサイドンは両手を合わせ両腕の穴から巨大な岩石を生成。そのまま岩石を解き放ち、怯んで動けないアシレーヌにトドメの一撃を加える。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『ザァド!』

『バシャ!』

 

リザードンとバシャーモはアシレーヌの盾となりドラゴンクロー、ブレイズキックでがんせきほうを破砕した。強力な一撃でありどちらも疲労が蓄積していたため、両者の力を合わせなければがんせきほうを防ぐことは難しかったであろう。ドサイドンの一撃はそれほどの威力であった。

 

しかしドサイドンの使用したがんせきほうにははかいこうせんと同様に反動で行動できないデメリットが存在している。攻めるならここしかない、とリーリエとシロンが初めに行動を起こした。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンは動くことのできないドサイドンを狙い撃つ。だが先ほどドサイドンに守られたのと同様に、今度はニドクインがドサイドンの前に出て守りに入る。

 

ニドクインは文字通りまもるでれいとうビームを防ぐ。まもるは相手の攻撃を完全に防ぐことができる防御技だ。これによりシロンのれいとうビームを防御し、お互いの欠点を両者ともに補っている。しかしその攻撃を機にウルトラガーディアンズが動き出した。

 

シロンの攻撃を受け止めているニドクインの懐にバシャーモが潜り込んでいた。これはバシャーモの技であるフェイントだ。

 

『シャ!』

『ニド!?』

 

バシャーモはフェイントをかけて翻弄しニドクインの腹部に蹴りを入れる。フェイントは威力が低いが、相手の守る状態を貫通する特殊な技である。故にニドクインの守を貫通してフェイントが入ったため、そのダメージでニドクインは怯んでしまい守る状態が解除される。ニドクインのまもるが解除されたことにより、れいとうビームが彼女の体を氷漬けにして戦闘不能となるのであった。

 

ニドクインがやられてしまったことによりニドキングが反応して一瞬の隙ができる。その瞬間にガオガエンが力を込めて頭突きで押し返す。ニドキングはその攻撃によるダメージで怯みガオガエンから距離を取る。

 

そして自分の背後から忍び寄る小さな影があることに気づくニドキングだが反応するのが既に遅かった。その気配はヒナのパートナーであるもクローで、モクローのふいうちが彼の背中を突き飛ばした。その瞬間を捉え、今度はジュナイパ―がリーフストームで畳みかけた。

 

怒涛の攻めによりダメージが蓄積したニドキングはニドクインと同様に戦闘不能となって倒れる。見事な連携で強敵を倒すことができたガオガエン、ジュナイパー、モクローはハイタッチをして喜びを分かち合った。

 

「シルヴァディ!ブレイククロー!」

『シッヴァ!』

『ダグ!?』

 

続いて動いたのはグラジオとシルヴァディであった。シルヴァディのブレイククローがダグトリオに直撃し、ダグトリオはその一撃で大きく後退する。先ほどダグトリオによって動きを止められてしまったアシレーヌも立ち上がり、チャンスを逃すことなく動いたのだった。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレーヌ!』

 

今度こそアシレーヌはアクアジェットを発動しダグトリオに渾身の一撃を加える。倍返しとでも言うかのような鋭い攻撃がダグトリオに突き刺さり、弱点技を浴びたダグトリオも戦闘不能となるのであった。

 

残されたのはサカキのポケモンの中で最も重量級であるポケモン、ドサイドンである。最後のポケモンであるドサイドンは反動から立ち直り、自分の攻撃を受け止めていたリザードンと対峙する。リザードンも強敵であるドサイドンと向かい合い、翼を広げて戦闘態勢を取っていた。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

『ザァド!』

「ドサイドン、受け止めろ」

『ドッサイ!』

 

リザードンがドサイドンに近接攻撃を仕掛けるも、ドサイドンはその攻撃を正面から受け止める。そしてリザードンを捕まえた状態で彼に対し反撃の構えを取っていた。

 

「そのままメガホーンだ」

「っ!?かえんほうしゃ!」

 

ドサイドンは頭部の角を大きく伸ばして反撃を仕掛ける。マズイと感じ取ったリザードンがかえんほうしゃで反撃するも、その攻撃は止まることなくリザードンの腹部に突き刺さる。

 

リザードンは翼を羽ばたかせて空中で止まり受け身を取る。その姿を見てサカキは流石だと関心していた。

 

「ドサイドン、ロックブラスト」

『ドサッ!ドサッ!』

 

ドサイドンは連続で複数の岩の塊、ロックブラストを放っていた。リザードンは飛び回ることで回避し続けドサイドンに接近していく。次第にリザードンとドサイドンの距離は縮まり、再び目と鼻の先にまで迫っていた。

 

「アームハンマーだ」

「はがねのつばさ!」

 

 

ドサイドンはアームハンマーでリザードンを上空から叩きつける。その攻撃をリザードンは翼を硬化させ丸々ことで防御するのであった。強固なはがねのつばさに阻まれたアームハンマーは弾き返され、動きの鈍重なドサイドンには一瞬の隙が生まれるのであった。

 

「今だ!ドラゴンクロー!」

『ザァ!』

 

リザードンはドラゴンクローを最大限の力でドサイドンに叩きこむ。鋭いツメによって切り裂かれたドサイドンの重い身体が仰向けに倒れ、ドシンッと言う大きな音が部屋に響き渡った。

 

ドサイドンも戦闘不能となり、サカキの手持ちのポケモン4体を倒したウルトラガーディアンズ。サカキは自分のポケモンをモンスターボールへと戻し、笑みを浮かべて称賛の拍手を送っていた。

 

「見事であった。君たちのポケモンはとてもよく育てられているようだな。さすがはRR団の幹部と互角以上に交えた実力者なだけはある。」

 

自分のポケモンたちを倒されたと言うにもかかわらず、サカキの声とその笑みからは未だなお余裕すらも感じられる。それもそのはずだ。今までの戦いから考えるに、サカキにはまだ秘密兵器が残っている。そのことを理解しているリーリエたちは喉を鳴らして緊張から手に汗を握っていた。

 

そう、サカキはまだ伝説のポケモンを繰り出していない。今まで出会ったザオボーを除く幹部たちは全員伝説のポケモンを所持していた。であれば間違いなくRR団のボスであるサカキもまた、何かしらの伝説のポケモンを所有しているに違いない。

 

サカキは紫色のモンスターボールを手にする。それはポケモンを絶対に捕獲できると言われている最高級のモンスターボール、マスターボールであった。サカキはそのマスターボールを投げる。

 

マスターボールが開くと、中から飛び出してきたのは異質な存在であった。人型の姿をしており細い身体に大きな尻尾を靡かせている姿はまさにポケモンと呼んでも可笑しくはないであろう。しかしそれだけではなく、そのポケモンは黒い鎧の様な機械を身に纏っていたのである。まるでそれは人工的に作られたロボットにも思える異様な見た目であった。

 

こんな伝説のポケモンは聞いたことも見たこともないと首を傾げるグラジオたち。しかしリーリエはその姿を見たことがあった。そのポケモンは、ハナダの洞窟で出会った悲劇のポケモンと酷似していたのである。そのポケモンの名前は……。

 

「みゅ、ミュウツー……さん……?」

 

そのポケモンの名前はミュウツーと呼ばれるポケモン。かつて望まれずロケット団に生み出され、誰にも知られることなく人間を恨み続けた悲しきポケモンの姿であった。




はい、サカキ様の使用するポケモンは原作と異なりアーマードミュウツーでした。ポケモンGOには実装されたけど残念ながら原作には登場することなかったので残念です。本来であれば力が強すぎるミュウツーを制御するための装備ですが、オリジナル設定として別の設定に変更しておりますのでご了承ください。


ここから少々自分の話を

ポケモンSVにて色違いニンフィアちゃんを見つけるべく3日間かけて約3年の時渡りをした結果、大量発生にありついて4匹目の色違いでようやくメスの色違いと出会いました。

ラブラブボールでゲットしてテンション上がっていたのですが、個体の確認をしてみたらまさかの冷静な証まで所有していて、頭がどうにかなりそうでした。

確率としては御守りなしの色違いが1/683、メスの確率12.5%、証を所有している確率約3.6%ほどなので相当低いと思います。自分は%の計算ができないので正確な数値は分かりませんが……。

何はともあれ、他にもゲットしたシャワーズやブースターの色違いには何もついてなかったのでニンフィアには運命を感じます。もはやラブラブボール色違い証持ち♀ニンフィアは私しか持っていないニンフィアだと思います。


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破壊と恐怖、サカキとミュウツー

ブイズとテラスタルの相性がかなりいいから対戦が楽しいけど、マスターボール級到達の報酬があまりにしょっぱすぎてやる気を失い、あまり本気でランクマッチしなさそうとモチベーションが下がったヌシであった。


RR団の黒幕、サカキの手持ちのポケモンを倒すことに成功したリーリエたち。しかしそんな彼女たちの前に姿を現した伝説のポケモンに、リーリエは衝撃を受け絶句していた。

 

「ほう?君はミュウツーの存在を知っているのか。」

 

サカキはリーリエの様子を見て感心に近い反応を示す。なぜならミュウツーはロケット団が独自に生み出した存在であり、世間一般的に一切公表されていない極秘ポケモンであるためである。

 

だがリーリエの知っているこの世界のミュウツーは本来ロケット団から抜け出し、自分を道具として生み出した人間を恨み誰にも知られない洞窟の中でポケモンたちとひっそりと暮らしていた。恐らく彼は本来手に入れられることのできなかったミュウツーを手に入れることに成功した世界線のサカキ、と言うことになるのだろう。

 

「君たちの実力は充分に確認させてもらった。その上でこのミュウツーで相手をするのが相応しい、と判断したのだ。精々最後まであがいてみたまえ。」

 

サカキがそう言うと同時に指をパチンッと鳴らす。するとミュウツーの力が一気に膨れ上がり周囲にサイコパワーを響き渡らせる。あまりの強力なサイコパワーの嵐に、リーリエたちは吹き飛ばされそうになり堪えるので精いっぱいである。

 

ミュウツーはこれまでの相手よりも明らかに強敵なのだということがすぐに分かる衝撃であった。リーリエだけでなくコウキやコウミ、グラジオまでもが彼の持つ力に冷や汗が止まらないほどの恐怖を感じてしまっている。もしかしたらネクロズマよりも危険な相手である可能性すらある。

 

だが、そうであっても尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない。このままではルザミーネが彼の忠実な部下となってしまい、アローラ全土がRR団に支配されてしまう最悪の事態となってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『リザァ!』

『シャァモ!』

 

リザードンとバシャーモは息の合った連携で同時に仕掛ける。両者の強力な攻撃がミュウツーに直撃する、そう思ったのも束の間、ミュウツーは無言のまま腕を振り払う。するとサイコパワーが一点に集中され、目に見えない波動となり大きな衝撃が発生し、リザードンとバシャーモの体を弾き返した。

 

リザードンとバシャーモは吹き飛ばされ、今の一撃であっさりと倒されてしまった。今までの疲労があったとはいえ、たった一撃でリザードンとバシャーモが倒されてしまった事実に全員が驚きを隠せず目を見開いている。

 

「どうした?君たちの実力はこの程度か?」

「っ!?アシレーヌ!うたかたのアリア!」

『シレーヌ!』

 

アシレーヌは自身の得意技、うたかたのアリアをミュウツーの上空に飛ばした。しかし一瞬だけミュウツーの瞳がアーマー越しに光ると同時に、アシレーヌのうたかたのアリアを消し飛ばした。

 

「それなら!ジュナイパ―!かげぬいー!」

『ジュッパ!』

「俺たちも行くぞガオガエン!DDラリアット!」

『ガオウ!』

 

ジュナイパーは遠距離からかげぬいで狙撃。ガオガエンはDDラリアットによる接近戦を仕掛ける。かげぬいがミュウツーの影を捉え動きを止め、その間にガオガエンがミュウツーとの距離を縮めていく。これならミュウツーにダメージを与えることができる、そう思った矢先のことであった。

 

ミュウツーは静かに手を前に伸ばした。するとガオガエンの動きがピタリと止まってしまった。その後再びミュウツーのサイコパワーが膨れ上がっていき、かげぬいの呪縛をあっさりと振り払ってしまう。そして軽く腕を前に振るうと、ガオガエンが背後に大きく吹き飛ばされてしまった。さらに背後にいたアシレーヌ、ジュナイパーをも巻き込んでしまい、三体同時に戦闘不能となってしまう。

 

ミヅキ、ヨウ、ハウは自分のポケモンたちをモンスターボールへと戻す。これで残るはリーリエのシロン、グラジオのシルヴァディ、ヒナのモクローである。グラジオはミュウツーの理不尽な強さに舌打ちをしながら、黒色のディスクを構える。

 

「シルヴァディ!闇の力をその身に宿し、悪の獣となりて暴れよ!」

『シヴァア!』

 

グラジオの投げたディスクがシルヴァディの頭部にインプットされる。するとシルヴァディのトサカと尻尾が黒色に染まっていき、シルヴァディはノーマルタイプからあくタイプへと変化するのであった。

 

「シルヴァディ!マルチアタック!」

『シヴァアアア!』

 

シルヴァディは正面からマルチアタックで攻撃する。マルチアタックはシルヴァディのタイプに応じて攻撃タイプを変化させる専用の技。現在はエスパータイプに効果抜群であるあくタイプへと変化しているため、効果は非常に高いと言える。

 

シルヴァディのマルチアタックがミュウツーにヒットする直前、ミュウツーの身を守るバリアーが突如として出現しシルヴァディの攻撃を阻んできたのであった。正面から攻撃を止められてしまい打つ手がない、そう思わせてミュウツーの背後には別のポケモンの影があった。

 

そのポケモンはヒナのポケモン、モクローであった。モクローは音を消して近づき背後からふいうちを仕掛ける。正面と背後、両方からの挟撃作戦である。これならば、と思った一同だが、それでもミュウツーには通用しなかった。

 

ミュウツーは背後から接近してきたモクローの足を掴み攻撃を封じる。そして掴んだモクローをシルヴァディ目掛けて投げつけ、両者を大きく吹き飛ばした。効果的だと思われた挟撃作戦でさえも通用しないミュウツーの強さに、ただただ脱帽するしかなかった。

 

「くっ、シルヴァディ、戻ってくれ。」

「モクローちゃん!戻ってください!」

 

グラジオとヒナは自分のポケモンをモンスターボールへと戻す。残るはリーリエとシロンのみであり、残された彼女たちが打てる手はたった一つであった。

 

リザードンとバシャーモですら届かず、ミヅキ、ヨウ、ハウの連携も通用せず、グラジオとヒナの挟撃作戦すら防がれてしまう。そんな相手に一矢報いるには、たった一つ、Z技しか存在しなかった。

 

「行きますよ!シロン!」

『コォン!』

 

二人の絆がオーラとなり二人の姿を包み込む。シロンの足元から氷の柱が彼女の体を高く持ち上げ、体内の冷気が一点に集中し力を高めていく。

 

「これが、私たちの全力です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シロンの全力のZ技、レイジングジオフリーズが解き放たれる。今までの経験が糧となりZ技は明らかに以前よりも強力なものへと仕上がっていた。これならばと期待する彼らであったが、なんとミュウツーは片手だけでそのZ技を抑えていた。

 

それでもこのまま押し切る、と出力を上げようとするが、ミュウツーはまるで雪玉を握りつぶすかのごとくあっさりとレイジングジオフリーズを弾き飛ばした。その勢いで弾け飛んだ氷の破片がシロンを支えていた氷の柱を削ってしまい、耐えきれなくなった柱が崩れ去ってシロンも地上に叩き落されてしまった。

 

「シロン!?」

 

地上に落ちてしまったシロンを心配して呼びかけるリーリエ。彼女の呼びかけに応えるも、Z技を使用した反動と墜落してしまった衝撃により力が入らず立ち上がることができない。

 

「くくく、はっはっは!やはりミュウツーの力は素晴らしい。ここまで快進撃を続けた君たちでも、最強のポケモンには太刀打ちできなかったようだな。」

 

サカキは満足気に笑みを浮かべながらミュウツーに最後の指示を出す。ミュウツーは彼の指示に従い右腕にサイコパワーを集中させる。そして倒れて動けないシロンに狙いを定めていた。ミュウツーの狙いを理解したコウタたちは彼女を守るため、モンスターボールを手に取ってポケモンを繰り出そうとしていた。しかし彼らが行動に出る前に、先に動いた人物がいた。

 

「なっ!?リーリエ!」

 

シロンのパートナーであるリーリエが咄嗟にシロンを庇う様に抱き着いた。だがそんなことはお構いなしにミュウツーは腕を振るって地面ごとリーリエたちを切り裂こうとする。衝撃からコウタたちの行動が遅れてしまい、既に間に合わない状況にまで迫ってしまっていた。

 

「リーリエー!」

 

ミヅキが危険な状況に陥ってしまっている親友の名を呼ぶ。咄嗟に体が動いてしまったリーリエも、恐怖から目を瞑る。そんな時、彼女の脳裏に自分が最も信頼する人物の顔が横切っていった。

 

(シンジさんっ……!)

 

リーリエは心の中でその人物の名を思い浮かべる。刹那、ミュウツーの攻撃がリーリエとシロンを包み込む爆発へと変化する。グラジオやミヅキたちはただただリーリエたちの無事を祈ることしかできない。

 

衝撃が徐々に晴れていく。リーリエの無事を確認するためにミヅキたちが凝視していると、そこにいたのはシロンと彼女を守り覆いかぶさっているリーリエ。そして彼女たちの前にて自らのリボンを靡かせているピンク色のポケモンと、そのポケモンを従え共に立っている一人の男であった。

 

いつまで経っても痛みが訪れないことに疑問を感じ目を開いたリーリエ。すると彼女の目の前にいたのは、自分が一瞬だけでも脳裏に思い浮かべたトレーナーであった。

 

「ったく、相変らず肝心な時に来るのが遅い奴だ。」

 

グラジオは妹を守った人物の顔を見ると軽口を叩きながら小さく笑みを浮かべていた。リーリエもその人物の顔がハッキリと分かった瞬間、希望と安心感から満面の笑みを浮かべていた。

 

「ごめん、遅くなった。」

「っ!?シンジさん!!」

 

その人物はアローラで最も強いチャンピオンであり、リーリエにとって、多くのトレーナーにとって永遠の憧れでもあるトレーナー、シンジとその相棒のニンフィアであった。ギリギリ間に合ったシンジのニンフィアが、ミュウツーの攻撃をなんとかして相殺してくれたのである。

 

そしてその人物の姿を見たサカキは、驚きよりも感心した様子で微笑みながら彼に語り掛けてくる。

 

「ようやくご到着か、チャンピオン。」

「あなたたちが贈ってくれたプレゼントのおかげで、随分と遅れてしまいましたけどね。」

「お気に召さなかったようだな。それは申し訳ない。」

 

お互い隙を見せることなく皮肉を言い合い会話を交わす。そんな会話の中、サカキはシンジに対してある提案をするのであった。

 

「どうだろうか、チャンピオン。わたしと共に組まないか?」

「なに?」

「君ほどの腕前があればRR団の幹部……いや、わたしの右腕としては十二分すぎるだろう。それにもしRR団に加わるのであれば、好きな地方を丸ごと君にくれてやってもいい。悪い話ではないと思うが?」

「その話に僕が乗るとでも?」

「ふふ、では交渉決裂か。残念だよ。君のような素晴らしいトレーナーを失うことになるなんて。」

 

話し合いの結果など分かり切ってはいた。しかしサカキとしては優秀なトレーナーは一人でも多いに越したことはない。あわよくば、とも考えたがシンジは一切の躊躇なくサカキの提案を断った。彼の心を折ることなど容易にできることではないと悟る。

 

そして何より、シンジは今仲間たち、アローラを傷つけられていることに怒りを覚えている。そんな彼が張本人であるRR団の黒幕であるサカキに手を貸すことなどあり得るはずもない。

 

二人は互いに目を合わせる。ニンフィアも戦闘態勢に入りいつでもバトルできる構えをとる。暫く静寂が続いたのち、サカキは再度指をパチンッと鳴らす。それが開戦の合図となりシンジとニンフィアは動き始めるのであった。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィア!』

 

ニンフィアは三連続でシャドーボールを放ち先制攻撃を仕掛ける。ミュウツーはその攻撃を片腕で簡単にいなすが、それでも現在のニンフィアの体力は他のポケモンたちと違いフルで体力を残している上にレベルも大きく上回っている。先ほどのように簡単に、と言うわけでもないように思える動きにみんなには見えていた。

 

「でんこうせっか!」

『フィイア!』

 

ニンフィアはフィールドを素早く駆け抜けてミュウツーの目の前まで接近する。ミュウツーはバリアーを展開して守りに入るが、その行動に気付いたニンフィアがすぐさま攻撃の手を変える。

 

ニンフィアバリアーを踏み台にして上空へと飛び上がる。シルヴァディよりも体が小さく、小回りの利くニンフィアだからこそできる芸当である。もちろんそれだけでなく、経験などの細かな要素も重要となってくるが。

 

「ムーンフォース!」

『フィアアア!』

 

ニンフィアは上空からムーンフォースを解き放つ。バリアーが張られているのは正面のみであり、上空はがら空きになっていたためムーンフォースがミュウツーに突き刺さった。

 

着弾した衝撃がミュウツーを包み込み姿を隠す。流石だと周りにいるリーリエたちも感嘆の声をあげていた。しかしシンジとニンフィアは油断することなくミュウツーのいる場所を睨みつけていた。

 

「……っ!?ニンフィア!」

『フィア!』

 

次の瞬間、影の動きで何かしてくると察知したシンジは咄嗟にニンフィアの名前を呼ぶ。その声に反応したニンフィアもまた最大限の警戒をする。

 

影の動きと同時に先ほどリーリエを襲った攻撃がニンフィアに向かい襲い掛かった。警戒していたこともあってニンフィアはリボンを前に構えて防御の態勢をとりミュウツーの攻撃を防ぐ。あまりに強力すぎる攻撃に防御越しでもダメージを負ってしまい、ニンフィアは大きく仰け反ったのち足を僅かにグラつかせるのであった。

 

衝撃からミュウツーが姿を現す。すぐに反撃したためダメージは薄いと思っていた一同だが、ミュウツーの顔を覆っていた仮面が僅かに欠け、右目だけがチラリと見えるぐらいには破損していた。その様子から、今のはミュウツーにとって大きな一撃となったのは明白だ。

 

しかし驚くべきは僅かに見えるミュウツーの瞳である。その瞳からはかつて彼らが出会ったミュウツーとは違い覇気が感じられず光がない。まるで死んでいるのではないか、自分の意思がないのではないかと思えるような生気を感じさせない瞳である。

 

衝撃を受けているシンジたちに、サカキは笑いながら語り掛ける。

 

「このミュウツーは我々ロケット団が作り出した最高傑作のポケモンだ。しかし強すぎ、賢すぎるが故にわたしの指示に従おうとはせず、愚かにも反抗しようとした。」

 

サカキはだが、と話を続ける。

 

「我がロケット団が誇る最新の機器を利用し、ミュウツーの力を抑える装置を作ることに成功した。ミュウツーを制御し、我が手中に収める……ロケット団の計画を徐々に進行していったのだ。だがそれでも、ミュウツーの力は抑えても彼の力を存分に発揮できなくては意味がない。我々はそう考え、ある作戦を決行した。」

「……っ!?まさか!」

「そう!ミュウツーを洗脳し、我が忠実なる僕とすることである。初めはその強大な力で抵抗しようとしたようだが次第に抵抗する力を失った。結果、我々の指示を忠実に遂行する最強のポケモンができあがったのだ。最も、その代償として自らの意思や思考を失い、生物とは呼べなくなってしまったがな。」

 

サカキの行った実験は結果としてミュウツーの自我を完全に削除する洗脳行為であった。その非人道的な行いに、シンジだけでなくこの場にいる全てのトレーナーが怒りを募らせていた。実質的にそれはミュウツーを生み出した挙句、彼を生き物ではなく自らの手でただの道具として利用する、と言う人間としてタブーな行いであった。別の世界線のサカキは、こちらのサカキが行った行為以上に最低な行いをしているようである。

 

完全な救済になるかは不明だが、ミュウツーを救うには彼の纏っているアーマーを完全に破壊するしかない。ならばここは全力のZ技を解き放つ以外方法はない。シンジはそう考えた。

 

だが今までの中でもトップクラスに強敵であるミュウツーに対し、簡単にZ技を決められるとは思えない。どうするべきか、と考えているとミュウツーは次の行動へと移っていた。

 

サカキの指示を待つことなく、ミュウツーは攻撃の構えを取る。彼が身に纏っているアーマーが原因なのか、既に彼の中ではニンフィアたちは自動的に敵として認識されているようだ。

 

ミュウツーが洗脳されていると分かれば、シンジたちも無理に手をだすことができない。万が一彼を傷つけてしまっては、その衝撃で完全に彼の身体が壊れ取り返しのつかないことになってしまう可能性すらある。少しでもミュウツーを助けられる可能性があるのであれば、何とかしてあげたいと考える。

 

しかしシンジが考えを纏める前にミュウツーは腕を振り払って攻撃してくる。あれだけのサイコパワーを何度も受けてしまえば例えニンフィアであっても耐え続けることはできない。

 

そんな彼の思いに答えるかのように、彼らの目の前に一本の光の柱が降り立った。その光の柱はニンフィアを守るように聳え立ち、ミュウツーの攻撃を防ぐのであった。

 

一体なにが起きたとシンジやサカキを含む全員が目を見開き驚いていた。そしてその光が収まり中央から現れたその姿に、一同は衝撃を受ける。

 

「え?」

「そ、そんな……まさか……!?」

 

その中でも最も衝撃を受けていたのはシンジとリーリエであった。何故なら彼らにとってはその出会いは大切な記憶であり、あり得るはずのない奇跡であったのだから。

 

『……まさかまた会うことになるとはな。人間。』

 

そこにいたのは、サカキの従えているミュウツーと瓜二つの姿をしたポケモン。シンジとリーリエがかつてカントー地方で出会った伝説のポケモン。この世界で生まれ自分の意思で世界を知ろうと決意したポケモン。この世界で生まれ旅立ったミュウツーであったのだから。




ノーマルテラスタルエーフィでミミッキュを対面倒せる時代になり歓喜しているヌシです。

今回まさかの(?)ミュウツー様再登場していただきました。実は以前別れる際に一言だけ伏線を張っていたので当時から出す予定はありました。

原作では再現されなかったミュウツー(本物)VSミュウツー(アーマード)となります。

そう言えば来年10年ぶりくらいにアーマードコアの最新作が発売されるとかなんとか……。


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ミュウツーVSアーマードミュウツー!人間とポケモンの絆の証!

あんまり長引かせたくなかったので戦闘描写は少し控えめの短めです。


シンジとRR団の黒幕、サカキがバトルを繰り広げていると、そこに突如として光の柱が降り立ち一匹のポケモンが姿を現した。そのポケモンとは、シンジとリーリエが以前カントー地方で出会ったこの世界のミュウツーなのであった。

 

「ミュウツー、どうしてここに?」

『私に似たサイコパワーを感じたが、不思議と違和感を覚えたのでな。奴からは、邪悪な気を感じる。』

 

どうやらミュウツーはサカキの操る同族につられこの場所に訪れたらしい。自由を手に入れたミュウツーと闇に染まってしまったミュウツー。本来出会うはずのなかった2人が一つに世界にて出会うこととなった。

 

ミュウツーは険しい顔でアーマードミュウツーを見つめる。その表情は操られてしまった自分を見る苦しみからなのか、それとも自分を生み出し道具として扱うロケット団に対しての怒りなのか。

 

ミュウツーはその大きな尻尾で床を叩きつける。その衝撃によって発生した大きな音が室内に響き渡り、その音が開戦の合図となり両者の姿が同時に消える。

 

互いのミュウツーの素早さは異常なほどであり、目で追いかけようとしても限界があった。両者がぶつかり合う衝撃がシンジたちに襲い掛かり、彼らはその衝撃で飛ばされないように耐えるので精いっぱいだった。

 

なんどもミュウツー同士がぶつかり合う衝撃が収まると二人とも姿を現し、次第に拮抗状態に変化が訪れる。

 

吹き飛ばされてしまったのはミュウツーであった。ミュウツーは地面に叩きつけられる直前に受け身をとりダメージを少しでも抑える。鎧の影響で強化されたアーマードミュウツーの方が一枚上手であったようだ。

 

力の差を思い知らせるかのようにアーマードミュウツーは見下ろしていた。ミュウツーはそんなアーマードミュウツーを見つめ更に顔をしかめる。その瞳からは、怒りよりも悲しみに近い感情をシンジは感じ取ることができた。ミュウツーはそんなシンジの想いを心で感じ取り、彼に一つの疑問を問いかけた。

 

『……人間。あの時の石は持っているか?』

「え?メガストーンのこと?」

 

以前シンジとミュウツーが出会ったとき、彼と心を通わせることができるキッカケとなったメガストーン。シンジはバッグの中に大切に保管していたメガストーンを取り出してそれをミュウツーに見せる。するとメガストーンはシンジとミュウツーを結び付けるように強い光を輝かせる。

 

「この光は……」

『まさか私がまた人間と協力することになるとはな……』

「ミュウツー」

『人間よ。その力、今一度貸してもらうぞ。』

「……分かった。行くよ!ミュウツー!」

 

シンジはあの時と同じようにメガストーンを掲げる。するとメガストーンの光が先ほどよりも更に強まり、シンジとミュウツーの信頼を形にしていく。大きな光がミュウツーの身体を包み込み、彼の姿を次第に変化させていく。

 

光から解き放たれたミュウツーの姿は通常よりも小柄になっており、大きな尻尾は後頭部から伸びている異質な形状へと変化した。ミュウツーがメガシンカした姿、メガミュウツーYである。通常時よりも更にサイコパワーが上昇し、その衝撃は形となって現れグラジオたちも肌で感じ取れるほどのものへとなっていた。

 

「ほう?これは……」

 

サカキは驚きと同時にそのミュウツーの姿に興味を抱いていた。自分の持つミュウツーは人間の技術力によって生み出したポケモンが、更に人間の力によって無理やり力を増幅させた姿である。しかし目の前にいるミュウツーは人間による力ではなく、本来恨んでいるはずの人間との信頼関係が秘めたる力を覚醒させると言う、作り出したサカキたちロケット団からしたら皮肉な姿なのである。

 

しかしミュウツー自身はそれを受け入れ、人間とともに協力し元凶であるサカキを倒すために全力の力を使おうとしている。もし世界が違っていれば、自分は自分の世界で目的を達成させることなどできなかっただろうと心の中で確信する。

 

「面白い。ならば我々の技術の結晶であるミュウツーと君たちの絆の結晶であるミュウツー。どちらが強いのか決着を着けようではないか。」

「僕たちは負けない!ミュウツー!」

 

シンジの声にミュウツーは頷いて答える。サイコパワーの引き上がったミュウツーの心の声が、メガストーンを通じて声にせずともシンジの心にも伝わっていた。

 

「ゆけ、アーマードミュウツーよ。お前の力を見せつけてやるのだ!」

 

アーマードミュウツーは腕に集中させたサイコパワーを、思い切り振るうことで解き放った。強力なサイコパワーは地面を引き裂きメガミュウツーに迫りくる。

 

しかしミュウツーはバリアを展開し、アーマードミュウツーの強力な攻撃をいとも容易く防御する。サイコパワーが上昇したミュウツーにとって、この程度の防御など造作もない芸当であった。

 

「ミュウツー!シャドーボール!」

 

ミュウツーは無数のシャドーボールを連続で放つ。アーマードミュウツーはその攻撃の軌道をサイコパワーで逸らすが、それでもメガミュウツーの強力なシャドーボールを完全に受け流すことは出来ず、いくつかのシャドーボールがアーマードミュウツーの鎧にヒットし、少しずつ破壊されミュウツーの姿があらわになっていく。

 

「素晴らしい力だ。まさかこれほどまでの力を持つとは。だが!ミュウツー、サイコブレイクだ!」

「ミュウツー!」

『!?』

 

アーマードミュウツーは更にサイコパワーを高め全身から解き放った。そのサイコパワーは実体化され、メガミュウツーを取り囲んだ。逃げ場を失ったミュウツーの身体を、サイコブレイクが襲い掛かる。

 

メガミュウツーを包み込む衝撃にリーリエやグラジオたちは不安を駆られてしまう。しかし当のシンジは一切顔色を変えていない。その様子からは彼が無事なのだと言う確信を持っている表情であった。

 

衝撃が晴れると、そこには全体にバリアを展開し攻撃をアーマードミュウツーの攻撃を防ぎ切ったメガミュウツーの姿があった。本来のミュウツーであればアーマードミュウツーの攻撃を耐えるようなバリアを展開することなどできるはずもないが、メガシンカによって高まったサイコパワー、そして何よりシンジとの信頼関係、絆が彼の底に眠る真なる力を解放し形となったのが目の前に広がる光景なのである。

 

「ミュウツー!サイコブレイク!」

 

ミュウツーは一点に集中させたサイコパワーを解き放ち、アーマードミュウツーを攻撃する。アーマードミュウツーは同じようにバリアを展開させるが、鎧が部分的に欠けてしまっているせいかバリアの出力が低下してしまっている。

 

なんとかメガミュウツーの攻撃を凌ぎ切ったアーマードミュウツーであったが、それでも想定以上のダメージを喰らい、鎧からの力の供給も落ちてしまったため体力が低下し膝をつく。やるならばチャンスは今しかない。

 

(人間)

(っ!?ミュウツー?)

 

ミュウツーはテレパシーを使用してシンジに心の中で語り掛ける。驚くシンジに、ミュウツーはある提案をするのだった。

 

(最後はお前がケリをつけろ。私の力を引き出したお前なら奴を解き放つことぐらい可能であろう。)

(ミュウツー……君は……)

(私はお前に助けられた。ならば私は、もう一人の私も過去の呪縛から解き放ってやりたい。)

(……分かった)

 

闇に染まったミュウツーを救う手段。それはネクロズマを救った時と同様、アローラに伝わる光の力、Z技しかない。シンジは自身の持つ全力を放つため、相棒であるニンフィアと目を合わせて心を一つにする。

 

ミュウツーの願いを叶えるため、そして何より自分が救いたいと思うミュウツーを助けるため、シンジはZ技を放つためZリングにZパワーを集中させる。Zリングの光がシンジとニンフィアを結び付け、互いの気持ちをZ技となって解き放った。

 

「ミュウツー!僕たちの想い、君に届ける!」

『フィーア!!』

 

 

 

 

 

――ラブリースターインパクト!

 

 

 

 

 

ニンフィアはフェアリータイプのZ技、ラブリースターインパクトを解き放つ。メガミュウツーの攻撃でかなり体力を消耗していたアーマードミュウツーであったが、本能的に危険だと感じたのか最後の抵抗を見せてきた。

 

アーマードミュウツーは残った力を使い再びサイコブレイクで反撃してくる。体力を失くしてしまっているとは言えアーマードミュウツーはロケット団によって生み出された伝説のポケモン。そのサイコブレイクはニンフィアの攻撃を止めるのには充分すぎるほどであった。

 

ニンフィアにアーマードミュウツーのサイコブレイクが直撃するかと思ったその時、突然ニンフィアが加速しサイコブレイクの嵐を潜り抜けた。一体なにが起きたのか説明すると、メガミュウツーがサイコパワーの衝撃をニンフィアに撃ち込み、その衝撃によってニンフィアが瞬間的にブースト効果で加速してスピードを増したのである。

 

サイコブレイクを潜り抜けたニンフィアのZ技が、アーマードミュウツーの鎧に直撃する。光と絆の結晶であるZパワーがアーマードミュウつのー闇である鎧を全て砕き、ミュウツーの肉体を解放した。闇の力から解き放たれたミュウツーはその場で倒れ、気を失っていたのだった。しかし彼の姿を見たミュウツーは、小さく微笑んでいた。その表情から、もう一人のミュウツーが無事元に戻ったのだと言うことがシンジたちも理解できた。

 

「……ふふふ。はっはっは、これが君の……いや、君たちの力か。素晴らしいものだ。」

 

サカキは笑いながら称賛の拍手をシンジに贈る。彼のその余裕からこれ以上なにかあるのかと警戒するが、サカキは抵抗する気はないと手をあげて降参の意思を示していた。

 

「正直言って負ける気などなかったのだが、私は君たちの力を甘く見ていたようだ。ああ、もしも君たちのような子どもが私の目の前に現れていたのなら、別の世界線もあったのかもしれないな。」

 

サカキからは彼の言葉とは思えないセリフがとんできた。彼は微笑みシンジたちの横を通り過ぎたところで立ち止まる。

 

「……私を止めてくれたこと、感謝する。」

「っ!?」

 

シンジたちは振り返る。しかしそこにはサカキの姿はなく、この場には気を失って倒れているミュウツーのみが残されていた。

 

「……リーリエ。」

「お兄様?」

「さっきの男……アクロマだったか?あいつから貰った機械を使って、ミュウツーを元の世界に戻してやれ。今のミュウツーなら元の世界に戻すことができるだろう。」

「分かりました。」

 

リーリエはアクロママシーンを起動する。アクロママシーンの光がミュウツーとエーテルパラダイス全体を包み込んだ。

 

すると光から解放された時、サカキのミュウツーは既にその場に存在せず、悪趣味な部屋へと変更されてしまっていた室内も真っ白な部屋へと元通りとなっていた。アクロマの偉大な発明により、まるでRR団など元よりいなかったのではないかと錯覚してしまうぐらい綺麗に元のエーテルパラダイスに戻っていたのであった。

 

リーリエは気を失って倒れていたルザミーネを引き起こす。ルザミーネは意識を取り戻し目を開けると、そこにはいつも通りの優しい声で自分の娘と息子の名前を呼ぶ母親の姿があった。何の変化もなく元通りの姿を見せたルザミーネにグラジオは優しく微笑み、リーリエは涙を流して母親を抱きしめていた。

 

そしてミュウツーは戦闘を終えたことにより元の姿へと戻りシンジに呼びかける。

 

『また本当にお前と協力することになるとは思っていなかった。』

「僕もだよ。でも、君とまた戦うことができてうれしかったよ。」

『変わった人間だ。だが、不思議と私も心の中で安心している。』

 

ミュウツーは心からの笑みを浮かべシンジに背中を向ける。

 

『もう会うことはないと思うが……そうだな。元気でな。』

「ミュウツー……君も元気でね。」

 

そう言ってミュウツーはシンジと最後の挨拶を交わすとその場からテレポートで姿を消した。シンジは自分たちのピンチ、そして別の世界のミュウツーを救ってくれた彼にありがとうと感謝の言葉を呟く。

 

こうしてアローラを混沌に陥れたRR団との激闘は幕を閉じる。UB程世間的に知られる事件ではなかったが、それでも一部の者たちにとっては忘れられぬ事件であったのは間違いない。また同じようなことが起きてもこのアローラを守れるようにと、シンジたちはもっともっと強くなれるように努力しようと心に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RR団の危機が過ぎ去り、シンジたちは一息ついていた。

 

久しぶりに出会ったコウタ、コウミとの再会を互いの喜ぶのと同時に、メガシンカの習得を祝福するシンジとリーリエ。そして彼らの今まで培ってきた旅の経験、グラジオやヒナ、ミヅキ、ヨウ、ハウたちも含めてそれぞれの経験話で盛り上がり友好を深める。また、コウタとコウミは暫くこのアローラに滞在し暫くは観光を楽しむようである。

 

久しぶりに結成したスカル団は一時的なものとは言え、下っ端一同は感動のあまり涙を流していた。今回は悪事ではなかったが、心を入れ替えたスカル団は尊敬しているボス、グズマと共に活動できることが何よりも嬉しかったようである。今でも自分たちを救ってくれたグズマに感謝し称える下っ端たちに、グズマは少し照れくさそうにして顔を背けていた。しかし彼の顔からはまんざらでもない笑みが浮かんでいて、それを横目で見て茶化していたプルメリの姿があったのだった。

 

そして問題の元凶となったザオボーの処分だが、ルザミーネの有情によりクビになる事態は回避されたが、幹部と言う大きな役職から平社員に降格する事態となった。現在では元々近しい立場であったビッケにコキ使われ、裏で愚痴を言う日常を贈ることになったらしい。その裏ではまだエーテル財団のトップに立つ夢を諦めていないのだとかなんとか。

 

とは言え今回のような事態があり平社員に降格したため、エーテル財団職員に監視されているザオボーが再び悪事を働くことなど簡単にできるはずもないであろうが。

 

それにもし再び不測の事態が発生しようとも、ウルトラガーディアンズがいる限りアローラから光が失われることはないだろう。これからもずっと、太陽と月に見守られアローラには平和な時がずっとずっと未来永劫続いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふふ。さて、次はどの世界に行こうか。」

 

不穏な男の笑みがアローラから姿を消して……

 

 

 

 

 




RR団編は終了となります。もう一話作ろうかとも考えていましたが、次話があまりに短くなりそうだったのでここで切り上げました。

以降は気ままに番外編を描いていきますので気ままにお待ちいただけると幸いです。


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LEGENDSアルセウス編
知らない世界


レジェンズアルセウスの第一話となります。内容は原作とは異なり、色々と設定を弄って導入していきたいと思います。

またアルセウス編の投稿は気ままに進めていくため、進行は少々遅くなるかもしれません。楽しみにしている方がいたら申し訳ありませんがご了承下さい。


「ん……こ、ここは……」

 

少年は目を覚ます。するとそこは何もない真っ暗な空間。まるで宇宙にでもいるような感覚に陥ってしまうほどの不思議な空間。

 

しかし呼吸はできるし意識もしっかりと保てている以上、ここが宇宙空間でないことは理解できる。戸惑っている彼の前に、丸く輝く光がふっと現れるのだった。

 

『お目覚めになられたのですね。』

 

その丸い光は少年に声を掛ける。突然の問いかけに少年は驚き目を見開いた。

 

『驚かれるのも無理はありません。ですが今から私の言うことを静かに聞いてください。』

 

光の玉の語る言葉に、少年は頷いて黙って耳を傾ける。

 

『私の名はアルセウス。あなたたち人間がポケモンと呼ぶ存在を生み出した者です。』

 

少年は聞いたことのある名に驚きを隠せず再び目を見開いた。アルセウスといえば全てのポケモンの生みの親であり、シンオウ時空伝説にも名を残している神と呼ばれているポケモンである。

 

『人間とポケモンが共存するずっと昔。その時代に危機が訪れてしまっています。このままでは昔の時代はおろか、あなたたちの住む未来の世界も存続の危機に陥ってしまいます。』

 

アルセウスが言うにはある一人の人間の行き過ぎた信仰によって、過去の世界の行く末が変えられてしまう恐れがあるのだそう。

 

過去が変われば未来も変わる。例えば植物に水を与えればすくすくと育つが、水を与えないで放置してしまえばすぐに枯れてしまう。それは過去の行いの違いにより未来が変化してしまっている一つの例である。

 

本来では存在しえなかった過去のできごと。それが時空の歪みによって変化が生じてしまい、本来辿るべき歴史と異なる世界線へと進みつつあったのだ。アルセウスとしてもそれを阻止しなければならないと焦りを感じているようだ。

 

『ですが私が直接手を加えてしまっては歴史を大きく変動させてしまう恐れがあります。そこで白羽の矢を立てたのがあなた、というわけです。』

 

少年は疑問に思い、なぜ自分なのかとアルセウスに最もな疑問を投げかける。

 

『あなたは気付いていないかもしれませんが、あなたは何度も自分の世界の危機を救っています。あなたであれば、きっと過去の世界も救うことができると私は確信しております。』

 

神と呼ばれしポケモン、アルセウスにそこまで評価してもらえるとは思わなかった少年は、そこまで言われたら断ることなどできないと、恐縮ながらもアルセウスの頼みを引き受けることにした。正直不安なことはたくさんあるがお人よしである彼にアルセウスの頼みを断ることなどできるはずもない。

 

それになにより、彼は自分の世界とその世界に住む人々、ポケモンたちを愛している。そんな世界を守るために力を尽くすことは、なにもおかしなことではなかった。

 

『ありがとうございます。しかし一つだけ、過去の世界にいる間はあなたの世界の記憶を一部消させていただきます。万が一にでも過去の世界と未来の世界が干渉してしまい、歴史が変化してしまうことは避けなければなりませんので、どうかご了承下さい。』

 

アルセウスの言葉に少年は頷いた。少年の寛大な心に、アルセウスは「ありがとう」と再び感謝の言葉を伝える。

 

『では目を閉じてください。次に目を開けたとき、あなたは過去の世界にて目を覚ますことでしょう。』

 

少年は目を閉じ、アルセウスに身を委ねる。しばらくすると彼の意識が途切れ、彼の意識は夢の中へと消えていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年が目を覚ます。するとそこは広がるばかりの大草原であった。

 

「ここは……」

 

しかし少年はその光景に見覚えがなかった。それどころか自身の持っている記憶の一部が曖昧であった。

 

なぜ自分がここにいるのか。自分は一体何者なのか。自分はどこから来たのか。そう言った記憶が欠落してしまっている。記憶喪失というものだろうか。思い出そうとすると頭痛がして脳が拒絶してしまう。

 

頭痛に苦しみながらも、自分が所持するものになにか手掛かりになるものはないかと手持ちを探してみる。するとズボンのベルトになにやら球状のカプセルのようなものがぶら下がっていた。これは一体何だろうか、と触れた瞬間、遠くから何か悲鳴のようなものが聞こえた。

 

少年は一目散に声のした方向へと走る。そこには一人の少女と、彼女を何かから守るように少年が目の前に立ちはだかっていた。

 

少年たちの前には一匹の不思議な生物がいた。出っ歯が特徴的なネズミにも似た茶色の毛並みを持つ生き物。駆け付けた少年にはその生き物の正体がふと脳裏に浮かんだ。まるねずみポケモンと呼ばれているビッパである。

 

なぜこの名前が彼の脳裏に浮かび上がったのかは分からない。しかし彼は記憶を失くしてしまっているものの、この世界に存在している不思議な生き物、ポケモンの記憶は失くしていないようである。しかし彼はそれ以上考えている暇もなく、彼らを助けなければと焦っていた。

 

「イーブイ!イーブイ!しっかりして!?」

「ショウ!落ち着いて!大丈夫だから!」

「で、でもテル先輩!」

 

ショウと呼ばれた少女はしんかポケモン、イーブイを抱えて焦っている様子だ。イーブイはビッパと戦闘をしたのか、少し傷つき弱っている姿が確認できる。対して名前を呼ばれたテルと言う少年は、自分の手持ちのポケモン、ねすみポケモンピカチュウと共にビッパと対峙していた。

 

しかしピカチュウとの連携ははっきり言って最悪で、テルの指示に従うことなくピカチュウは闇雲に攻撃を仕掛けていた。そのためビッパにも簡単に躱されてしまい、ただただスタミナだけが消費していく。

 

『ビッパァ!』

『ピィ!?』

「っ!?ピカチュウ!」

 

ビッパの攻撃がピカチュウにヒットし、ピカチュウはその攻撃でダメージを受け戦闘続行が難しくなってしまう。テルは慌ててピカチュウを抱きかかえるが、野生のビッパは一切待ってはくれなかった。

 

その時、彼の懐にあるカプセルが揺れる。そのカプセルから、少年はある感情を感じ取った。少年はその感情と自分の本能に従い、迷いなく駆けだした。

 

「っ!お願い!」

『フィーア♪』

 

少年はカプセルを前方に投げる。カプセルがパカッと開き、そこから一匹のポケモンが飛び出した。ピンクと白の体をし、リボンの触覚のようなものが付いていて、ウサギのような大きな耳を持ったポケモン、むすびつきポケモンのニンフィアであった。

 

そのポケモンを見た瞬間、彼は思い出した。このポケモンは自分が最も信頼するパートナーであり、今まで苦楽を共にしてきた相棒なのだと。このニンフィアと一緒なら、何も怖いものはないのだと。先ほどまで知らない場所にいたと言う不安があったが、その不安も不思議と心の奥から消えていった。

 

「ニンフィア!でんこうせっか!」

『フィア!』

 

気付けば少年は、自然とニンフィアに指示を出していた。ニンフィアもまた、当たり前のように少年の指示に従っていた。ニンフィアはビッパの懐に飛び込み、突撃して大きく突き飛ばした。

 

「ムーンフォース!」

『フィイア!』

 

月の力を借りた大技、ムーンフォースが放たれる。ムーンフォースはビッパに当たることなく、彼の足元で炸裂した。その衝撃はビッパを追い返すには充分な威力で、ビッパは驚いてその場から逃げ出した。

 

「お疲れ様、ニンフィア。」

『フィーア♪』

 

少年は活躍したニンフィアの頭を撫でる。彼の暖かい手の温もりに、ニンフィアも喜びから笑顔で浮かべている。二人にとって、自然とこれが当たり前の行為であるのだと理解した。

 

その二人の様子を見ていたテルとショウだが、その目は微笑ましいものを見る優しいものではなく、信じられないものを見る驚愕の瞳をしていた。

 

「あっ、と、二人とも大丈夫?怪我とかしてない?」

「あ、ああ、大丈夫。助けてくれてありがとう。」

 

テルとショウは立ち上がり、助けてくれた少年に感謝する。先ほどの光景に驚いていたテルたちだが、一先ず助けてくれた少年に礼を尽くさなければと自己紹介を始める。

 

「俺の名前はギンガ団所属のテル。それとこっちが……」

「同じくギンガ団に所属してるショウです。あなたのお名前は?」

「僕は……」

 

突然名前を聞かれてしまいどうしようか、と悩む少年。記憶がないため自分のことでさえも不明瞭な点があるが、その時ふと一つの名前が頭に思い浮かんだ。

 

「――シンジ。僕の名前はシンジ。」

 

なんとなく、それが自分の名前なのだろうと確信を得ることができた。何故だかは不明だが、必要な時に最低限の情報が自然と頭の中にまるで魔法でもかけられているかのように思い浮かんでくる。

 

「シンジ、か。とりあえずすぐそこにコトブキムラって言う俺たちの村があるからそこで話そう。この近辺はポケモンが出て危ないからな。」

 

シンジはテルの提案に乗り、二人の後を付いていきコトブキムラへと向かう。

 

歩き始めてそれほど時間もかかることなくコトブキ村へと辿り着いた。そこには見張りを務めていた人がいたが、テルとショウの紹介によりシンジは無事にコトブキムラへと入ることができた。

 

コトブキムラは人の集まる集落であるが、シンジはその村にある建物に見覚えを感じられない。記憶喪失だから、と言ってしまえばそれまでだが、彼の心の中にその村の風景は“知らないもの”である気がしてならない。

 

その中でひと際大きい3階建ての建物が存在していた。そこから一人の中年太り気味な白衣を着た男性が飛び出してきた。するとテルとショウの元に走ってきて、汗を垂らしながら二人に心配そうに問いかけた。

 

「はぁ……はぁ……二人とも、大丈夫でしたか!?」

「はい、問題ありません。この人に助けてもらったので。」

「それよりラベン博士、この程度の距離で息が上がるなんて運動不足なんじゃないですか?」

「あはは、返す言葉もない……。」

 

ショウのジョークにラベン博士と呼ばれた男性は苦笑を浮かべるしかなかった。その後、シンジの事を見ると興味深そうに彼に話しかけた。

 

「ふむ、君、この辺では見ない顔だね。とりあえず二人を助けてくれてありがとう。」

「いえ、そんな、たまたまですから。」

「たまたま……本当にそうなのでしょうか?」

「ラベン博士?」

 

ラベンの呟きにテルは疑問を抱いた。兎に角立ち話もなんだから、と四人は近くの茶屋で食事をしながら話をすることにした。

 

「お話をする前に、僕はラベン。この世界にいる不思議な生き物、ポケモンについて調査しています。」

 

ラベンは自己紹介をし、シンジもまたその自己紹介に対応して自分の名前を名乗る。彼は茶屋の主人である老人にいつものをと頼んだ。

 

老人が運んできたのはイモモチ、と呼ばれる団子のようなものであった。どうやらこれはこの集落の名物で、ラベンの大好物でもあるそうだ。

 

お互いに名前を知ったところで、ラベンは深刻な表情で語り始める。もちろん食事をしながら。

 

「先ほど、空に裂け目の様な不思議な空間が出現しました。」

 

その言葉を聞いてショウとテルは驚きを隠せない。何かの予兆なのか、はたまたポケモンが何かしら能力を発動したのか。それともシンジが現れたこととなにか関係があるのか。彼らには理由が分からないと言うのが何より恐ろしかった。

 

「ポケモンは怖い生き物です。僕はポケモンの調査をしていますが、彼らには不明な点が多すぎる。何より、彼らは人間を襲うことも少なくありません。」

 

その言葉を聞いたシンジは違和感を感じた。ポケモンが人を襲う、と言うのは納得いく。しかしポケモンが怖い生き物、と言うのが彼にとって不思議でしょうがなかった。

 

「博士、ですが先ほどシンジに助けられた時、彼は自分のポケモンと仲が良かったように思えます。」

「っ!?それは本当ですか?」

「え?は、はい……。」

「なんと……そのようなことが……」

 

ラベンの剣幕な姿に驚きシンジは若干引き気味になるが、落ち着きを取り戻したラベンはぶつぶつと何かを呟きながら提案する。

 

「もしよろしかったら、ギンガ団に入団しませんか?」

「ギンガ団に、ですか?」

 

ギンガ団はテル、ショウが所属している組織である。一体何故なのか、と理由を尋ねると、ラベンは先ほどの深刻な表情とは裏腹に、柔らかい笑顔で返答していた。

 

「我々ギンガ団は不思議な生き物、ポケモンについて調査をしています。彼らには不明慮な点ばかりであると言うこともありますが、コトブキムラの住人はポケモンを恐れています。もちろん僕も例外ではありません。ですがその一方で、ポケモンと共存することができないかとも考えているのです。」

 

ラベンは一度イモモチを口にし、話を続けた。

 

「先ほども言いましたがポケモンは怖い生き物です。ですが同時に人間にはないとても強力な力を持っていますが、彼らの事を深く知ることができれば共存することも夢ではないのではと考えています。あなたたちのように、協力し合い信頼し合う関係になることも。」

 

シンジはラベンの言葉を聞いて、ニンフィアが入っているカプセルを取り出して見つめる。

 

「それはモンスターボール。人間がゲットしたポケモンはその中に収納される画期的なアイテムです。」

 

モンスターボール。それがポケモンの入っているカプセルの名称である。その響きに、シンジは懐かしさすら感じていた。

 

「シンジ君、どうでしょうか。あなたさえよければ、ギンガ団に入団していただけないでしょうか?」

 

ラベンの頼みにシンジは断る理由がなかった。彼にとって現在の状況は右も左も分からない状態だ。今の彼に頼れる人物もいなければ目的も分からない。であるならば目の前に必要としてくれる人がいれば、その人の助けになることで一歩ずつ前に進めるだろうと判断した。

 

「僕でよければ、こちらからお願いしたいです。」

「本当ですか!?よかった、では早速シマボシ隊長に――」

 

ラベンが早速行動に移ろうとすると、彼らに近付く人影があった。その人物は中性的な見た目ではあったが、口紅を塗っていることを考えると女性なのだろう。彼らに近付いた彼女は口を開く。

 

「テル、ショウ、二人とも無事に帰ってきたか。」

「シマボシ隊長!お疲れ様です!」

 

テルとショウは立ち上がり同時に頭を下げた。どうやらこの人物が先ほどラベンが一瞬口していたシマボシ隊長と言う人物らしい。

 

シマボシは初めて見るシンジの姿を見ると、彼の事を疑問に思いラベンたちに尋ねる。

 

「この子はシンジ君と言って、テル君とショウ君のピンチを救ってくれた子です。」

「ほう、彼らの。ありがとう、私からも礼をさせてほしい。」

 

シマボシは二人を助けてくれたことに対して素直に礼をする。シンジも何度目になるか分からない感謝に苦笑しながら、素直にその言葉を受け取った。

 

「それでシマボシ隊長。シンジ君をギンガ団に入団させたいのですが……。」

「ふむ……」

 

ラベンの提案にシマボシは悩む素振りを見せる。隊長として得体の知れない人物を入団させていいものか悩んでいるのだろう。組織の上に立つものとしてそれは当たり前の悩みである。

 

暫くしてシマボシはシンジにある質問を問いかける。

 

「キミはポケモンと言う存在について、どう思っている。」

「ポケモンについて、ですか。」

 

シマボシの質問にシンジは少し困惑する。記憶がない彼がどう答えるか悩みものだが、その答えも彼の意思とは関係なく口から出てきていた。

 

「友だち、でしょうか。」

「友だち?」

「はい。ポケモンは未知な部分も多く、人間では敵わない力も持ち合わせています。怖いと思っても仕方ありません。ですが、分かりあうことでお互い助け合い、家族や友だちのように仲良くなることができる、そう思います。」

 

記憶がない彼だが、それでもその答えに関しては確信を持てた。実際、自分と共にあるニンフィアを誰よりも大切な友だちだと思っている自分がいることに気付いている。それは記憶がなくても絶対だと言える自信が彼にはあった。

 

その答えを聞いたシマボシは、表情を一切変えず頷いた。しかし彼女の顔はどことなく満足そうにも見えた。

 

「そうか。分かった、君の入団を許可しよう。しかし後で私の元までくるように。ギンガ団に入団するにあたり、君に渡したいものがある。」

 

シマボシはそう言って再び建物内に戻る。テルとショウは隊長の前で緊張していたのか、どっと疲れが抜けたように椅子に座り込んだ。

 

「はぁ、緊張したぁ……。」

 

ショウはグデーとテーブルに伏せていた。彼らにとってシマボシ隊長は少し怖い存在なのかもしれない。それは上司だからなのか、それとも彼女の表情が殆ど変化しないからなのか。

 

その後緊張が解けた彼らの前に、茶屋の中から茶屋の主人とは別の人物が姿を現した。その人物の姿は金色の長いロングヘアーに、黒を基調とした百合柄が描かれた浴衣、綺麗な顔立ちをした少女であった。

 

「先ほどからなにやらお話をされているようですが……どうかされたのでしょうか?」

 

丁寧な口調で喋る彼女に、シンジは不思議な感覚に囚われていた。懐かしいような、それとも別の感情なのか。一目惚れ、とはまた別の不思議な感覚。しかしそれは彼女も同じようで、シンジを見た瞬間彼女も不思議な感覚を感じ取っていた。

 

「あなたは……この辺りでは見ない顔ですね。私はこのお店で働かせていただいているサレナと申します。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか。」

「え?あ、うん、僕はシンジ。よろしく、サレナさん。」

「サレナで問題ありませんよ。シンジさん。これからよろしくお願いしますね。」

 

お互いに自己紹介をするシンジとサレナ。その後、続けてサレナと名乗った少女は自分の考えを口にする。

 

「しかし……あなたとは初めて出会った気が致しません。なんとも説明しがたい、不思議な感覚が致します。」

「それは……実は僕も同じなんだ。変、だよね。」

「変、ですか。私は変だとは感じません。寧ろ、あなたとはもっとお話しがしたいと考えております。もしよろしかったらまたここに尋ねて下さいませんか?」

 

サレナの提案にシンジは「もちろん」と答える。その答えを聞いたサレナは「よかった」と一安心し、最後に挨拶を交わして店に戻った。

 

記憶を失くしてしまい色々と考えることが多いシンジだが、サレナと名乗った彼女の存在が気にかかった。これが彼らにとって、時を超えた運命の出会いだとは誰も想像するよしなどなかったのである。




これが神様転生ってやつか……

最後に登場したサレナちゃんについてですが、名前の元ネタは機動戦艦ナデシコの映画に登場したブラックサレナから取っています。名前の由来は黒百合。つまりサレナちゃんの正体は……?


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人間とポケモン、それぞれの関係

一度別の話を書いた結果なんか違うと思い書き直しました。その結果全く違う内容になりましたが。
なんか結局アルセウス編をガッツリ進める雰囲気になっていますが、これから書く話も特にあるわけではないので、未来の話や番外編、アルセウス編などを適当にかつ気ままに書いていきます。

実はアルセウス編ではポケモントレーナー自体が浸透していないため、なるべくトレーナーと言う単語は使用しないように心がけていたりします。


人間とポケモンが共存して暮らすよりもずっと大昔。現代では多くの者たちに忘れられてしまった時代、ヒスイ地方。のちにシンオウ地方と呼ばれるようになる場所である。

 

そして現代から記憶を失いこの時代にやってくることになった少年、シンジ。この世界のポケモンを調査しているギンガ団のシマボシ隊長、ラベン博士たちの計らいによってギンガ団に入団することとなり、同じく隊員であるテル、ショウと共にポケモンの調査に出かけていた。

 

シンジは現在相棒であるニンフィアと野生のポケモンに対峙している。相手はせんこうポケモンのコリンクである。コリンクは気性が荒く、敵とみなした者には容赦なく襲い掛かる習性がある。

 

彼の実力を知るための試験みたいなものではあるが、その戦いを見てテルとショウは改めて驚いていた。それはシンジの実力が高いから、と言う理由ではない。そもそもこの時代の人々はポケモンバトルに精通しているものが少ないためバトルの評価などを正確に測ることができないだろう。

 

なら一体なにに驚いているのか。それはニンフィアがシンジの指示を正確に聞いているからである。シンジがコリンクの攻撃を躱せと言えば確実に回避し、攻撃の指示を出せばその通り攻撃している姿が何よりも輝かしく羨ましいと思い、同時に彼らのことが怖いと感じてしまっていた。

 

特にテルはピカチュウとの連携が全くとれておらず、彼自身ピカチュウのことを全くと言っていいほど理解できていない。そんな彼は自分のポケモンを理解し、互いに意思疎通できているシンジとニンフィアがどうしても解らなかった。この時代の人間にとって、解らないということが何よりも恐ろしいものである。何よりそれは謎多き生物、ポケモンが証明している。

 

しかし、だからこそテルは興味を持ちシンジのことをじっと観察していた。シンジの指示に従ったニンフィアがコリンクを倒す。戦闘続行不可能となったコリンクを確認したシンジは、ラベン博士から預かったモンスターボールを投げる。そのモンスターボールがコリンクに命中し、コリンクが中に収納される。ポフッと言う音と共にコリンクをゲットすることに成功した。

 

それも見たテルとショウがまたも驚きの表情を浮かべる。シンジは簡単にしてみせたが、モンスターボールを的確にポケモンに命中させるのは当然難しい。それを難なく成したシンジはポケモンを操るだけでなく、モンスターボールを投げる技術さえも有している。現役のギンガ団にもこれほどの使い手はいないだろう。

 

シンジはモンスターボールを回収する。彼が任務を無事達成したのを見届けたテルはあることを決意し、ショウを連れてコトブキムラへと帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジ、テル、ショウはコトブキムラにあるギンガ団の拠点に帰還し任務報告を済ませる。隊長であるシマボシからは労いの言葉をもらい休息するように言われ、これからどうしようかとシンジ、ショウは会話していた。そんな彼にテルはある提案をしてみる。

 

「……シンジ!」

「テル?どうかしたの?」

「俺と……俺とポケモン同士で戦ってほしい!」

「て、テル先輩!?」

 

普段ポケモン同士の戦いが怖くて好まないテルが言い放つ予想外の言葉に、ショウは驚き目を見開いた。一方シンジは、どうして急にそんなことを言い出したのか気になりテルに問いかけた。

 

「ここでは何だし、あっちに移動しよう。」

 

そう言ってシンジたちはテルの案内に従い場所を移動する。そこはポケモンバトルを行うためのフィールドであった。ここは調査隊が万が一に備えポケモンバトルの練習をするためのフィールドであるが、そもそもポケモンバトルをできる人が限られているためほとんど使われることはなかったのであるが、シンジがいるのであれば話は別である。

 

「ピカチュウ、出てきてくれ。」

『……ピッ』

 

ピカチュウはモンスターボールから姿を現すと、テルのことが気にいらないのか彼と目を合わすことなくぷいっと目を逸らした。

 

「御覧の通り、ピカチュウと俺は仲がよくない。それに俺も、正直言ってピカチュウが……いや、ハッキリ言えばポケモン自体が苦手だ。」

 

ショウはテルがポケモンの事が苦手なのを知っていた。シンジも驚く様子を見せることなくテルの話を黙って聞き続けている。

 

「だってこいつ……イカヅチを出すんだぜ?普通あり得ないだろ?当たったら痛いどころの話じゃない、下手をすれば死にかねない。そんなポケモンたちが怖くないわけがない!なのになんでシンジは平気なんだ?怖くないのか?どうしてポケモンと一緒にそんな仲良くいられる?」

 

テルは任務の時からずっとシンジの隣で彼の手にリボンを巻き付けて歩くニンフィアを見て手を握り締める。それは異端なシンジたちを恐れてのものか、それとも彼らに対しての嫉妬のようなものか。いずれにせよ、彼の答えを導き出せるのは一つしかないとテルに呼びかける。

 

「分かった。だったらバトルしよう。その中でキミ自身の答えを見つければいい。」

「俺……自身の?」

「僕もここに来た時、自分自身の記憶が殆どなくなっていた。正直に言えばニンフィアとの記憶も曖昧なんだ。でも、この子を見た瞬間に確信めいたものがあったんだ。」

 

シンジは屈んでニンフィアの頭を優しく撫でる。ニンフィアも彼の手の温もりに触れ笑みを浮かべ嬉しそうな声を出していた。

 

「ニンフィアは紛れもなく僕にとって最高の相棒であり、生涯のパートナーなんだって。それは例え記憶をなくしても、世界が変わったとしても変わることはないって。それに……」

 

シンジは立ち上がってテルの瞳を真っ直ぐと見つめる。

 

「野生のポケモンとバトルしてる時、不思議と気持ちが落ち着いたんだ。楽しい、とかそう言うのじゃなくて、なんだかしっくりとくるような不思議な感覚が。だからテルとバトルすれば僕の記憶にも直結するかもしれないし、テルも僕のバトルで何かヒントを得られるかもしれない。都合がいい解釈かもしれないけど、僕でよければテルの相手になるよ。」

「シンジ……ありがとう。よろしく、お願いします。」

 

ギンガ団としてはテルの方が先輩ではある。しかしポケモンを操る者としては間違いなくシンジの方が圧倒的に上である。テルは胸を借りる気持ちで挑むために、シンジに頭を下げて感謝を示すのであった。

 

シンジとテルはお互いフィールドの外に立ち向かい合う。ショウは不安そうにしながらも二人のバトルを外野から静かに見守ることにする。

 

ピカチュウは早速戦闘態勢に入る。しかしバトルが精通していないこの時代ではバトルのルールなどまともに定められているはずもない。そこでシンジはテルにルールの提案をする。

 

「ルールはどちらかのポケモンが戦闘不能になったら、もしくは僕の判断で中断させてもらうよ。それでいいかな?」

「分かった」

 

テルは冷静に答えたものの、内心では緊張で汗の湿る手を強く握りしめていた。彼自身調査団としてピカチュウを連れてはいるが、他の人間が連れているポケモンと戦うのはこれが初めてである。それに野生のポケモンと戦ってもまともに勝利したことが殆どない。しかも一番の懸念点でもあるピカチュウがちゃんと指示に従ってくれるのかと言うのも問題であった。

 

だが原因はそれだけではない。一週間ほどシンジと共に過ごしてはいるが、今正面に立っていると、彼からは不思議といつものような優しさではなく押しつぶされそうな威圧感を感じてしまう。シンジは一体何者なのか。更に謎が深まるが、今は彼の正体を考えている余裕など微塵も存在しなかった。

 

「ピカチュウ!今回は――」

『ピッカァ!』

「っ!?ピカチュウ!」

 

ピカチュウはテルの指示を待つことなくニンフィアに突っ込んでいく。テルの指示には一切従う気はないようだが、それでもピカチュウは素早さは本物であるすぐにニンフィアの眼前へと接近していた。

 

ピカチュウがニンフィアにでんこうせっかを決める直前、ニンフィアは触角のようなリボンを優しく触れて受け流した。テルたちと同様にシンジの指示を待たず行った行為だが、明らかに違うのはシンジもそれが当然であるかのように堂々と構えていたことであった。まるで互いの考えを理解しあっているかのような、テレパシーでもして意思疎通しているのではないかと思わせるような不思議な感覚に、テルだけでなくショウも包み込まれていた。

 

ピカチュウはニンフィアに躱されたことで勢い余って転んでしまう。急いで立ち上がり振り向きニンフィアを睨め付ける。

 

『ピカッ……ヂュウ!』

 

ピカチュウはでんきショックを放った。バトルに一切慣れていないのにちゃんと技を使用できるのは凄いと素直に関心しながら、シンジはニンフィアに指示を出す。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィァ!』

 

ピカチュウのでんきショックに向かってニンフィアはシャドーボールを放ち迎え撃つ。ニンフィアのシャドーボールはあっさりとでんきショックを打ち破り、ピカチュウの足元に命中して彼を吹き飛ばした。

 

「ピカチュウ!?」

『ピカァ……』

 

ピカチュウは立ち上がろうとするが足に力が入らず立ち上がることができない。そんなピカチュウにトドメを刺すべく、シンジはニンフィアに最後の攻撃の指示をだした。

 

「ニンフィア、でんこうせっか!」

『フィイア!』

 

ニンフィアはでんこうせっかで一気にピカチュウとの距離を詰める。ヤバイと直感したピカチュウはなんとか立ち上がろうとするが、それでもやはり動くことができない。

 

もうダメかと目を瞑るピカチュウ。しかしそんな時にシンジが別の指示をニンフィアに出す声が聞こえた。

 

「ニンフィア!ストップ!」

 

シンジの指示に従いニンフィアはでんこうせっかをピカチュウに当てることなく横を素通りし急停止する。元よりボロボロになってしまっているピカチュウにトドメを刺すつもりなどなく、バトルを終わらせるための決定打にするためだけの一撃だったのである。

 

「取り敢えずバトルは中断。これ以上はピカチュウも戦えないから。」

 

バトルで疲弊したピカチュウをテルは抱きかかえる。怖いとは言え、自身のパートナーが傷ついてしまったら当然の反応であるだろう。ショウも心配そうに彼らに近付き、シンジとニンフィアも一緒になって歩み寄った。

 

「……お疲れ様、ピカチュウ。」

『……ピィ』

 

結局ピカチュウはテルの言うことを聞くことはなかった。それどころかバトルが終わっても互いの関係はギクシャクしたまんまだ。一体シンジたちと何が違うんだ、と考えるテルに、シンジは呼びかける。

 

「テル」

「……シンジ」

「やっぱりキミ、ピカチュウのこと今でも怖がってるね。」

 

図星を突かれビクッと体が震えるテル。

 

「確かにポケモンは人間に無い驚異的な力を持ってる。それは僕でも思うよ。人間にはない力を持っていて、時には人間の命を脅かす可能性のある力を行使してしまう。知らない人からしたら恐怖の対象と見てしまっても可笑しくない。だからさ……ピカチュウのこと、褒めてやってくれないかな?」

「褒める?」

 

何か有用なアドバイスを貰えるのかと思ったら、まさかの答えにテルは拍子抜けをして思わず尋ね返してしまった。テルのそんな返答にシンジは頷いて答える。

 

「二人に足りないのは互いに必要としあう信頼関係。だけど信頼関係は人間同士でも簡単に築けるものではない。それぞれが互いに理解し合い、時間をかけて築き上げるのが信頼関係。それは人間同士だけでなく、人間とポケモンでも同じだよ。」

「人間とポケモンでも……同じ……。」

「人間もポケモンも違いはあれど、どちらも同じ世界に住む生き物であるのに変わりはないよ。だから、時間さえかければお互いに理解し合うことも難しくない。僕はそう思う。」

 

そう口にしながら、シンジは不思議と脳裏に浮かぶかつての記憶を呼び覚ましていた。。そう、かつてシンジとニンフィアが出会った時のことである。

 

ニンフィアは元々進化前のイーブイの時、元のトレーナーに捨てられ、裏切られたショックで彼に対しても反抗していた。しかし彼の優したと温もりに触れ、共に過ごしていく内に彼の事を信頼し、進化して元のトレーナーと和解した際もシンジにずっとついて行くと決めたのである。それはシンジとニンフィアが長い時をかけて築き上げた絆であり、数々の思い出が記憶を失くした今でも彼らの支えとなり続けているのである。

 

「だからこそまずはピカチュウを褒めるところから始めるといいよ。焦らなくたっていい。ゆっくりとピカチュウのことを、ポケモンのことを知っていればいいと思うよ。」

「ゆっくりと……か。」

 

シンジと出会ってまだ短いが、それでも彼の言葉は不思議と説得力があった。彼が口にした言葉は何故か信じることができて、どうにかなるのではないかと思わせてくれる。まるで優しく包み込んでくれるかのような不思議な感覚。テルはシンジの言葉を信じ、ピカチュウの頭を優しく撫でた。

 

「ピカチュウ、お疲れ様。」

『……ピィ』

 

頭を撫でられたピカチュウはほんのり顔を赤くして目を逸らす。正面から褒められたため素直になれないピカチュウは少し照れくさかったのだろう。そんなピカチュウにテルはまだ信頼が足りないのだと思い、自分の思いを口にした。

 

「……正直まだ俺はポケモンの事が怖い。でも、いつまでもこのままじゃダメだって思ってる。今はまだ頼りないパートナーだけど、いつかはお前のパートナーとして相応しい人間になってみせるから。」

『……ピカァ』

 

ピカチュウはそんなテルの言葉を聞いて意味を理解しているのか不明ではあるが、今日初めて彼と一瞬だけでも目を合わせた。そんな彼らを見て、これなら心配無さそうだなとシンジは優しく見守っていた。

 

だが彼らは見ていたのはシンジとショウだけでなく、影から覗く怪しげな瞳がじっと見つめていた。その人物の瞳には光が無く、テルたちと言うよりも他の何かを見つめているようにも感じた。まるで品定めでもするかのような冷ややかな眼。彼らの知らないところで、穏やかではない空気が静かに流れているのであった。




新作のFE(エンゲージ)ガッツリプレイ中
ストーリー面白いぞー!あとセリーヌちゃん可愛いぞー!属性がリーリエに似てるからか凄い好き。
金髪、妹、お兄様呼び、丁寧語、王女(リーリエはお嬢様)と共通点が多い気がする。


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シンジュ団とコンゴウ団と異変の始まり

悩んだ結果アルセウスのお話を進めることに。思いの外未来編のお話が思いつかずに四苦八苦しています・

最近プライベートだけでなくお仕事も忙しくなる日々。楽しいからいいけども


シンジがこの世界にやってきてから2週間が経過し、順調に調査範囲も拡大していき今まで停滞していたポケモン調査もシンジのおかげでかなり進んできている。ギンガ団としての活動でもある人助けも順調であり、今まで正体不明のシンジの事を警戒していた村の人々も彼に色々と助けて貰い今ではすっかりとこの村に打ち解けている。

 

シンジ、テル、ショウが調査から帰還し村へと戻ってくる。調査の報告をしようとシマボシ隊長の元へ向かおうとすると、ギンガ団本部の前にて二人の男女が言い争いをしているのが目に入った。

 

一人は短い金髪で少し露出の高い赤い服を着用している少女。南国っぽい衣装は冷え込むヒスイ地方においてかなり珍しく、ひとり異彩を放っているように感じさせる。

 

もう一人は少女とは対照的に青色のジャケットを着用しておりかなりの厚着。同じく青を基調としてはいるが黄色、緑色も混じった特徴的な髪色で後ろで束ねている独特な髪型は、少女とはまた違った意味で異彩を放っているとも言える。

 

「なんであんたと鉢合せちゃうのかしらね。全く、嫌になるわ。」

「それはこっちのセリフだ。毎度毎度お前と話してたら時間が勿体なくて仕方ねぇ。」

「言っとくけど、わたしはあくまでデンボクさんに呼ばれたから来ただけで、あんたと慣れ合うつもりはないから。」

「それは俺だって同じだ。そもそも俺はお前が突っかかってこなければ言い争いなんかする気はねぇよ。」

「は?わたしが悪いっていいたいわけ?大体、あなたたちコンゴウ団はシンオウ様の事を全く理解していないわ。」

「それを言ったらシンジュ団こそ違う。シンオウ様は我々に貴重な時間を与えて下さった。それを無駄にするなんて失礼だろう。」

 

二人は仲が悪いのか両者共に悪態が止まらない。共に言い争いをしながらギンガ団本部へと入っていく。

 

「えっと……今の二人は?」

「女の子の方はカイちゃんって言って、シンジュ団の長を務めてるんだ。」

「もう一人の男の人はセキさん。カイと違ってコンゴウ団の長を務めているんだけど……。」

 

どうやら二人の話によると彼らの率いる組織であるシンジュ団、コンゴウ団は思想の違いから対立をしているらしい。先代の時代では仲が悪いという事はなかったそうだが、セキとカイの世代になってから神として崇めるシンオウ様の姿がも異なる、と言う考えから次第に仲が拗れてしまったそうだ。

 

何故かギンガ団が仲介役となっているため両組織が争うことはないが、何分長が顔を合わせるたびに言い争いをしているため両者の溝が埋まるどころが広がる一方で一向に関係性が改善されない。今のところ大きな問題はないが、いつかは何とかしないといざという時に協力することができないのではないか、と言うことが最近のギンガ団の悩みでもあるらしい。

 

とりあえず報告を済ませようと本部に入室するシンジたち。そこではギンガ団隊長であるシマボシからある言伝が伝えられた。

 

「調査ご苦労であった。だが報告の前に、デンボク団長が君たちを……正確にはシンジを呼んでいる。」

「僕を、ですか?」

 

先ほどカイも口にしていたデンボク団長。ギンガ団結成のきっかけとなった人物でギンガ団の団長その人。シンジも一度あったことはあるが、「ポケモンの考えていることなぞ人には分からん」とシンジの考えを否定する考えを口にしていた。彼自身悪い人ではないのであろうが、正反対の考えを持つ彼のことをシンジは少々苦手意識を持っている。

 

デンボク団長が呼んでいるなら早く行った方がいいと、テルとショウはシンジに団長の元へと急ぐよう誘導する。隊長への報告は彼らに一任し、シンジは急いでデンボク団長のいる3階へと向かった。しかしそこでは……。

 

「ったく、シンジュ団は自分のポケモン管理もできないのかよ。」

「うっさいわね!あなたにとやかく言われる筋合いなんてないわよ!」

 

案の定そこでは先ほどの二人、カイとセキが相も変わらず言い争いをしており、黒い着物にファーコートを羽織ったガタイの言い男性、デンボク団長が呆れかえっている様子があった。

 

「二人とも、いい加減にしなさい。もう彼が来ておる。」

「ん?おお!あんたが噂の優秀な新人か。」

「ふぅん、この子がねぇ。」

 

シンジの姿を確認したセキはなるほどと頷くようにしてシンジのことを凝視していた。先ほどまで悪態をついていた時とは裏腹に、快くシンジを迎え入れている姿にこれが本来の彼なのかとシンジは安堵する。

 

しかし一方で、カイは警戒した様子でシンジと少し距離を置いているように感じる。セキはシンジの事を受け入れていたが、本来であれば身元が不明の人物が目の前にいたら警戒するのが普通であるだろう。それも組織のリーダーともなれば当然の対応である。その辺はシンジも理解しているため彼女に対して嫌悪感を抱くことは一切なかった。

 

「シンジ、来てくれたか。感謝するぞ。」

「いえ。それより自分に用件とは……」

 

シンジは早速本題に入ろうとデンボクに用件を尋ねる。デンボクは「うむ」と頷くとシンジにある質問をする。

 

「シンジ。君は先日大きな雷が落ちたのを知っているかね?」

「いえ、ですがテルやショウたちから話は聞いています。」

 

実は先日の夜中に大きな落雷がこのヒスイ地方に響いたのである。コトブキムラの人間たちはその落雷に気付いていたのだが、何故かシンジだけはその落雷に気付くことがなかったのである。

 

デンボクはそのことに少し違和感を感じながらも、今は急を要するため気にすることなくシンジに今回の用件を伝える。

 

「実はその落雷が落ちてからこの黒曜の原野に住むキングに異変が起きたのだ。」

「キングに、ですか?」

 

キングとはこの地方に存在する通常の個体よりもひと際強力な個体のポケモンである。この世界の神にも等しいシンオウ様より力を授かり、より強力な力を所有しているキング・クイーンと呼ばれる個体。本来であれば周辺のポケモンたちに比べ圧倒的な力の差を持っていることから、縄張り争いの必要もないため比較的温厚な性格のはずである。

 

しかし、デンボクの話によると各地に点在する彼らは突然凶暴化し、周辺のポケモンだけでなく人間にさえ危害が及ぶ危険が高まってしまっているらしい。そこでポケモンの扱いに長けているシンジに彼らを鎮めるための任務を依頼したいとのことであった。

 

ショウやテルはと尋ねてみたが、彼らはモンスターボールを投げることすらままならず、ポケモンの捕獲成功率がかなり低い。実際モンスターボールを動く的、つまり生きたポケモンに当てるのは本来非常に困難で、それをいとも容易く熟してしまうシンジの方が異端であると言われても、正直彼には反論が難しかった。

 

シンジとしてはこの任務を断る理由はなく、ポケモンや人間に危害が及ぶ前に早急に対処したい気持ちでいっぱいであった。セキはそんな正義感の強いシンジに対して嬉しそうに笑い声をあげていた。

 

「気に入ったぜシンジ!お前に任せれば安心だろうな!」

「ちょっと待って!わたしはまだ認めてないわよ!」

 

そこに待ったをかけたのはカイであった。黒曜の原野の担当管理者はシンジュ団。その組織の長となれば自分の管轄エリアで見ず知らずの余所者に好き勝手されるのは気に入らないのだろうか。

 

「いいじゃねぇかカイ。どうせお前じゃキングであるバサギリを止められるわけないだろ?」

「っ!?言い方は気に食わないけど、否定できないわね……。」

 

カイはセキの言葉にぐうの音も出ないと言った様子で悔しそうに唇をかみしめる。カイは悩んだ末、一つの結論を出しシンジにある提案をする。

 

「シンジ、だったかしら。わたしと勝負しなさい!もしあなたが勝ったらキングの件、あなたに任せてもいい。」

「じゃあカイさんが勝ったら?」

「そうね……今回の件は見送りにして、長であるわたしに任せてもらいましょうか。」

 

この手のタイプは口だけで聞くタイプではないとシンジも理解している。故にカイの提案を承諾し、彼女との対決を受け入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって修練場。バトルフィールドにてシンジとカイは自分のポケモン、ニンフィアとグレイシアを携え向かい合うのであった。

 

「あー、審判は俺が務めよう。どちらかのポケモンが戦闘続行できなくなるか、もしくは危険だと判断したら俺が止める。異論はないな。」

「はい。」

「カイ、安心しな。俺が審判するからには公平な判断するからよ。」

「当たり前じゃないの。寧ろ納得できない判定したら潰すわよ。ナニをとは言わないけどね。」

「普通にこえぇこと言うなよ……。じゃあ早速、はじめ!」

 

そうしてセキの合図とともに勝負が始まる。そこで初めに動き出したのはカイであった。

 

「グレイシア!れいとうビーム!」

『グレイ!』

「ニンフィア躱して!」

『フィア!』

 

グレイシアはれいとうビームで率直に攻撃を仕掛けてくる。しかし直線的単調な動きではシンジとニンフィア相手に通用するはずもない。

 

「もっともっと!攻撃は最大の防御!連続でれいとうビーム!」

『グレイ!グレイ!』

 

彼女の性格に違わぬ真っ直ぐな攻め。しかしポケモン勝負はそんな簡単な戦術で通用するほど甘いものであはない。だがこの世界の人間はバトルなど慣れているはずもないため、効率的な戦い方もできず戦術もバラバラ。

 

シンジとニンフィアはグレイシアの攻撃を冷静に次々といなしていく。そんな中、ニンフィアが手を出す間もなくセキのストップが入った。

 

「そこまでだ。これ以上は無意味だな。」

「なっ!?なんでよ!まだわたしのグレイシアはダメージを受けてないわよ!」

「よく見て見ろ。グレイシアの様子を。」

「グレイシアの?……っ!?」

 

カイの瞳に映ったのは肩で息をして汗をかいているグレイシアの姿であった。確かにグレイシアはダメージを受けていないどころか、ニンフィアから攻撃を仕掛けることすら無かった。しかしグレイシアは無暗に攻撃を出し過ぎた結果、普段から慣れていないバトルであったためにスタミナ不足になってしまったのである。

 

「分かったか?俺も決してポケモン勝負に慣れてるわけじゃねぇ。けどよ、それでも今の手合いを見ればシンジは只者じゃないってことぐらいお前も分かったはずだぜ?」

「……」

 

カイと言い争っていた時のセキとは思えない発言にシンジは驚いていた。カイの話を聞いていたらセキはせっかち、又は落ち着きがない人間だと認識していた。しかしそれはあくまでコンゴウ団の方針、引いては信仰しているシンオウ様が理由である。本来のセキは冷静で大人びていて、分析能力の高い面倒見のいい兄貴肌の長なのだろう。

 

シンジからは一切手を出していない。傍から見たら防戦一方だが、逆に言えば冷静に躱せるだけの余裕があったと言う事。実際シンジはギンガ団の調査に大きく貢献しているほどの実績がある実力者。正直カイそんなことは最初から理解している。

 

しかし認めたくなかった。自分たちシンジュ団、コンゴウ団の長に出来ないことが余所者にできてたまるかと。見ず知らずの彼の事を信用してもいいものかと。

 

だが短い間とは言え手合いしてみて不思議と理解した。彼は決して根拠のないことを言うような人間ではないと。二つ返事で今回の任務を引き受けたのもきっと彼に何かしらの考えがあるからなのだろう。ただのお人好しな可能性もあるがそれでも彼は信用できる。なんとなくだがそんな気もする。

 

カイは立ち上がって覚悟を決める。シンジに向き合い、彼の眼を見て自分の知っているあることを話した。

 

「キングバサギリの面倒を見ているのはキャプテン、キクイ。あの子はまだ若けど優秀、なのはいいんだけど強くてかっこいいバサギリに憧れてて、凶暴化したバサギリに対しても心酔していて興奮してるの。だから今回のことにも納得してないと思うけど……わたしが話をつけてあげる。」

 

今日は休んで準備ができたら明日にでも来て、とだけ伝えてカイはその場から立ち去っていく。そんな彼女の姿にやれやれ、と呆れた様子でセキは溜息をついていた。

 

「全く、あいつは相変わらず素直じゃないな。まあ俺も人の事言えないか。」

「セキさんはカイさんと長い付き合いなんですか?」

「まあそうだな。以前はああでもなかったんだが、シンジュ団を任されるようになってから女らしさがまるっきりなくなったな。多分長としての責任を感じてるんだろうな。」

 

カイはまだ少女と呼べる年齢だ。そんな彼女は一つの組織を背負う長として責任を背負っているためにピリピリとして、常に緊張感を持って長の仕事に務めているのだろう。特に長として能力の高いセキを意識しているが故に長としての責任感が彼女にのしかかっているのだ。

 

そんな彼女の姿がなんとなく自分と重なった気がした。記憶がない自分に虚ろと浮かんでくる微かな光景。自分には何か守らないといけないものがあるような気がしてならなかった。何よりも大切なもの、そして多くの何かを守る存在だったのではないか。まだハッキリと思い出せてはいないが、自分は彼女の力になる必要がある。そんな気がした。

 

「まああいつが言ったように今日はゆっくり休め。今日は調査やらカイの相手やらで疲れただろ?」

 

セキは優しい声でそう言った。ならば今日はゆっくりと休むことにしようと、セキに感謝の言葉と別れを告げていつものあの場所に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは一日の終わりに必ず向かうところがある。そこは茶屋であり、そこでイモモチを注文するのが日課だ。

 

「ムベさん、いつものお願いします。」

「あいよ。ちょっと待ってな。」

 

茶屋の主人、ムベがシンジの注文に答えイモモチの準備をする。その声を聞いた一人の少女が茶屋から姿を現した。

 

「シンジさん。今日も来てくれたのですね。」

「うん、サレナ、こんばんは。」

 

普段は物静かで落ち着きのある可憐な少女、サレナはシンジの顔を見るとパァと表情が明るくなった。シンジの日課とは、一日の出来事や調査で調べてきたポケモンの生態を彼女に話すことである。

 

サレナ自体危険と言われているため外の世界に出ることはなかった。しかし彼女も年頃の少女。ポケモンと言う未知の存在に彼女は非常に興味を示している。だからこそシンジの好意に甘え、彼から様々な話を聞くことで知識を蓄えているのである。

 

ムベが注文したイモモチを二人分持ってきてくれる。若い者の邪魔にならないようにと空気を呼んで茶屋の中へと戻っていった。

 

「なるほど、そのような生態のポケモンもいらっしゃるのですね。」

 

興味深そうにシンジの話を聞いて頷くサレナ。そんなサレナが珍しく悩む素振りを見せると、シンジは彼女の様子が気になって彼女の顔を覗き込んだ。

 

「サレナ、どうかしたの?」

「い、いえ、なんでも、ありません///」

 

夕焼けで分かりづらいが、サレナは頬を少しだけ赤く染めて否定する。これを伝えたらシンジが困ってしまうだろうと思い言い留まるサレナ。しかしそれでもやはり伝えたいと思ったためシンジにあることを伝えた。

 

「シンジさん……明日、危険な任務に挑むんですよね?」

「え?う、うん。そうだけど。」

 

なんでサレナがそんなことを知っているのだろうと疑問に思い尋ねる。するとどうやらテルとショウが愚痴をこぼしにやってきたらしい。彼らもギンガ団の先輩としてのプライドがあるのか、それともシンジに対してのライバル心が芽生えているのか、彼らにも思うところがあるのだろう。だからと言って無関係の人物に任務について口走ってしまうのはどうなのかとも思ってしまうが。

 

「危険な任務であるためにお二人が付いていけないのは承知しています。ですが私、外の世界に興味があるんです。シンジさんからお話を聞くたびに、ポケモンたちへの興味が尽きないどころか、どんどんと溢れてくるんです。それに……」

 

あなたのことが心配だから、と言いたかったが、直前でなんだか恥ずかしくなってしまいその言葉を呑み込んだ。無理な願いだとは彼女も重々承知しているが、それでも彼女はシンジに付いて行きたいと懇願する。

 

当然シンジも対応に困惑してしまう。正直凶暴化したキングの傍まで連れて行けば彼女に危害が及ぶ危険がないとも言い切れない。万が一のことがあれば、と不安を感じるシンジ。

 

シンジはサレナの瞳を見る。サレナの綺麗な緑色の瞳は真っ直ぐとシンジを見つめていた。その瞳にはどこか見覚えがあった。一瞬だけ、サレナと見ず知らずの少女の姿が彼の記憶の中で重なった。その瞳を見たシンジは、不思議と彼女の願いを断ることができなかった。

 

「……分かった。ただし何があっても前に出ないこと。僕の指示には従うこと。それだけは約束して欲しい。それでもいい?」

「はい!もちろんです!」

「じゃあ明日の朝出発するから、その時また呼びに来るよ。」

 

そうして今日のところはとイモモチを食し終えた二人は別れを告げる。もしシマボシ隊長にバレたら大目玉だなと、シンジは心の中で自分の甘さに溜息をついたのだった。




シーズン3は秘伝スパイスが報酬に来てたのでブイズでマスターボール級に到達
ニンフィアとブラッキーが活躍したのは当然として、後半から草テラス根性ブースターと地面テラススカーフグレイシア大活躍して嬉しかった。意外と物理受けリーフィアも頼りになったよ。


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VSキングバサギリ

先週UNITEに実装されたブラッキーが楽しすぎる。来週はリーフィア実装のイーブイフェス最高か


ギンガ団所属のシマボシ隊長より緊急任務を命令されたシンジ。その翌日、茶屋で働いている少女サレナと共に、シンジュ団の長カイが待つ黒曜の原野、奥の森へと来ていた。その場所にある大きな木が目立つフィールド、巨木の戦場と呼ばれる場所に例のキングであるバサギリが生息しているようである。

 

そこに辿りつくと、カイが仁王立ちをして待ち構えていた。彼女の横には大きいテンガロハットを被った小柄な少年が近付いてくるシンジのことを睨みつけるようにして立っていた。恐らく彼がカイ言っていたキクイと言うバサギリのお世話をしているキャプテンなのだろう。

 

「……お前がシンジ?」

「うん。君がキクイ、だよね。」

 

シンジの返答にキクイは静かに頷いて答えた。その後横にいる謎の少女、サレナに対して君は誰なのかとでも言いたげな視線を向ける。

 

「は、初めまして!私はサレナと申します。シンジさんのその……お付き添いで来ました。」

 

キクイはサレナの自己紹介を聞くと理解したのか、はたまたあまり興味がないのかシンジに視線を戻した。

 

「単刀直入に言う。オレはまだお前を認めてないからね!バサギリは気高く、強くてカッコいい憧れの存在なんだ!前よりも強くなっているバサギリを元に戻す必要なんてないからね!」

 

シンジはなんとなくそうなんだろうと思っていた。カイの話してはまだ彼は若く、そしてバサギリのことを崇拝しているようであった。この世界の人物、ましてや子どもであるキクイに現状を理解することなど難しいであろう。

 

「じゃあどうするの?このままバサギリを放っておく?」

 

しかしシンジは違った。記憶がなくともポケモンの気持ちをなんとなくでも理解できる彼は、現状を放置しておくと後々危険な事態が訪れてしまうことを察知していた。

 

「話に聞いた限りだとバサギリは無暗に縄張りに入らない限り温厚な性格だと聞いている。でも先日から急に暴れ出したって報告を受けたんだ。原因は何かは不明だけど、もしかしたら彼は苦しんでいるのかもしれないよ?」

「なんでお前にそれが分かるんだよ!バサギリはただ前より強くなってただ興奮しているだけだからね!少ししたら元に……!」

「戻らなかったらどうするの?」

「っ!?」

 

相手はキャプテンとは言えまだ子ども。子どもであるキクイにあまり強く言うのは気が引けてしまうが、それでもこのまま放置してしまう方が悪手であると判断しシンジは少し強い口調で彼を説得する。

 

「今回の件は今までになかった例外。そんな中バサギリが元に戻る保証はない。もしこのまま元のバサギリに戻らず縄張りの外に出てしまった場合、ポケモンたちの生態系が崩壊する可能性すらあるんだよ?」

 

もしもバサギリが今の状態で外に出て暴れてしまったら、この時代のポケモンの生態系が崩壊してしまいこの時代だけでなく未来のポケモンたちの生態系が大きく変化してしまう恐れがある。それは絶対に避けなくてはならない最悪の未来だ。そしてなにより……。

 

「バサギリは、苦しんでいるかもしれないんだよ。」

「バサギリが……苦しんでる?」

 

バサギリが苦しんでいる。そんな発想はキクイにはなかった。普段から強くてカッコいいバサギリの事だ。以前よりも更に強さを増して、むしろ喜んでいるのではないかと思っていた。だが今目の前にいる男はバサギリが苦しんでいるかもしれないと口にしたのだ。

 

キクイはすぐにでも反論したかった。どうしてそんなことがお前に分かるのかと。ずっとバサギリのことを見てきた自分よりも、一度も会ったことも見たこともないようなこの男が理解しているような口をしているのが悔しかった。

 

だがキクイはシンジの眼を見て確信した。この男は決して出まかせや知ったかぶりをしているんじゃない。心の底からただバサギリの事を、ポケモンの事を心配してそう告げているのだという事を。この男にバサギリのことを任せれば全て解決するような安心感が彼には感じ取れたのだ。

 

しかしキクイも子どもとは言えキャプテン。見ず知らずの男に自分が世話をしている大好きなバサギリの事を「はいそうですか」と任せることなどできない。ならばせめて、未熟ながらキャプテンとしてやるべきことは一つである。

 

「……分かった。ただし、その前にオレとバトルをしてくれるかね?」

 

まだまだトレーナーとして未熟なキクイだが、彼のバトルを通して少しでも彼の腕前を知っておきたい。本当に安心してバサギリを任せることができる人物なのかを自分の手で見極めたい。そのキクイの心意気に対してシンジは頷いて「分かった」と答え、彼と距離を取りモンスターボールを手にした。

 

シンジュ団の長であるカイもキャプテンキクイの意向を尊重して黙って彼らのバトルを見守ることにする。サレナもバトルと言うものを全く見たことがないので、大丈夫なのだろうか、危険ではないかと心配しながらシンジを見守っていた。

 

キクイが繰り出したのはドラゴンタイプのヌメラである。対するシンジは当然相棒であるニンフィア。キクイとの一対一のバトルが始まるが、結果はすぐについたのである。

 

結論から言うと、ヌメラのたいあたりをニンフィアが回避し、返しの容赦ないムーンフォースの一撃が突き刺さって一瞬で決着がついた。素人相手なので結末としては当然と言えば当然なのだが、キクイを納得させるには圧倒的な実力差を見せつけて認めさせるのが手っ取り早いと判断したまでのことである。

 

同時にシンジのバトルを見たカイもまた驚いて目を見開いていた。軽やかな身のこなし、一撃で戦闘不能にする技のキレ、紛れもなく彼は自分では絶対足元にも及ばない相手であることを理解した瞬間だ。だからこそ余計に余所者に頼らざるおえない悔しさが沸き上がり、手をギュッと握りしめるのであった。

 

「……ヌメラ、お疲れ様。君の実力、只者じゃないね。」

 

本来であれば彼が何者なのか尋ねたいところだが、彼は記憶を失っているという事を事前に聞いているため敢えて彼の事を尋ねることはしなかった。

 

「バサギリのこと、よろしくお願いね。」

「うん、僕とニンフィアに任せて欲しい。絶対に助けるから。」

『フィア!』

 

シンジとニンフィアがキクイの言葉に返事する。その返答を聞いたキクイは、この二人に任せれば問題ないだろうと確信を得ることができた。

 

話は纏まったなと、カイが早速何をするべきなのかをシンジに説明する。

 

「やることは簡単。キングであるバサギリの好物を調合して袋に詰め込んだ道具、私がシズメダマと呼んでいる袋を用意した。バサギリの隙を見つけてこのシズメダマを彼に当てるんだ。君がモンスターボールを投げる才能があるからこその提案だ。そしてバサギリが大人しくなったら、大きな一撃を与えて正気に戻させる」

 

簡単、とは言うが暴れまわっているバサギリにシズメダマを当てるなんてことは決して楽な仕事ではない。あくまで内容がシンプル、と言うだけの話である。しかしカイはシンジの実力を見て、彼のことを信頼しても良いのではないかと思い始めている。彼女も初めに比べて彼の事を信頼しているからこその言葉であろう。

 

シンジはカイからシズメダマを受け取る。自分のやるべきことは理解した。あとはみんなの期待に応えてバサギリを止めるだけである。シンジは自分の相棒であるニンフィアと目を合わせて頷き一歩前に出る。するとそこでサレナが一言声をかけてシンジの事を呼び止めた。

 

「シンジさん!」

「サレナ……君はここで待ってて。」

「はい……気を付けてください。」

「うん。カイ、サレナのことお願い。」

「ええ。そのくらい任せて。」

 

サレナの事はカイに任せ、自分は巨木の戦場へと足を踏み入れた。すると突如として周辺の木々が次々と切られて行き、金色に光った何者かがシンジの目の前に降り立った。

 

両腕にはゴツゴツとした鎌状の石斧。全体的にストライクに似た見た目だが、彼こそが例の暴れているキングであり、ストライクの進化形でもあるバサギリである。

 

バサギリはシンジとニンフィアを視界に入れるなり、縄張りに侵入した敵と見なして両腕の鋭い鎌を構える。シンジはそんなバサギリを鎮めるべく、早速シズメダマを投げてみる。

 

しかしシズメダマはバサギリの鎌によってあっさりと切り裂かれてしまい不発となる。やはり無暗に投げても効果はない。ならばなんとかしてでも隙を作る必要があるとニンフィアに指示をだした。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィア!』

 

ニンフィアはシャドーボールを放つものの、バサギリは再び腕をぶん回して力づくでシャドーボールを引き裂いた。それを見たシンジは、とんでもない怪力の持ち主だとバサギリの事を改めて評価し直した。

 

今度はバサギリがシンジたちに襲い掛かった。バサギリの攻撃をなんとか躱し、一度彼から距離を置いた。どうやって彼の隙を作るべきかと考えながら逃げ回っていると、広場中央の大木へと追い詰められてしまい遂に逃げ場がない状態へと陥ってしまった。

 

「っ!?シンジさん!」

「待ちなさい!」

「で、でも!」

「今バサギリに近付くのは危険だからね!絶対縄張りに入ったらだめだよ!」

「今は彼を信じて待ちましょう。」

「……シンジさん。」

 

サレナは心配そうにシンジを見つめる。本当はすぐにでも助けに行きたいが、ポケモンを持たない自分が助けに入ったところで足手まといになるだけなのは明白。それに何より決して前に出ないことが彼との約束なので、自分はただここからシンジの事を見守るしかできない。歯がゆい気持ちでいっぱいだが、自分はただただシンジがこの状況を切り抜いてくれると信じて祈るだけである。

 

バサギリがじわじわとシンジとの距離を縮めていく。両腕の鎌を広げ、いざシンジとニンフィアに襲い掛かろうとするが、その瞬間に二人は屈んでバサギリの攻撃を掻い潜り後ろに回り込んだ。空を切ったバサギリの両腕は大木に刺さってしまい、一時的に動きを停止してしまうが、すぐに引き抜いて振り向きシンジたちを視界に捉えた。

 

その時シンジは既にシズメダマを投げるモーションを取っていた。バサギリはシズメダマの攻撃に備えて構えるが、シズメダマは思わぬ場所へと飛んでいくのであった。

 

「ニンフィア!」

『フフィ!』

 

シンジがシズメダマを投げたのはニンフィアの正面目掛けてであった。まさかの彼の行動に驚き、バサギリは反撃のタイミングを逃してしまう。そしてニンフィアは自分の元へと飛んできたシズメダマを、ようせいのかぜでバサギリ目掛けて吹き飛ばした。

 

タイミングをずらされようせいのかぜによって勢いが増したシズメダマはバサギリに命中。先ほどまで暴れまわっていたはずのバサギリが好物に接触したことにより一瞬落ち着きを取り戻す。その瞬間を逃すことなく、シンジはニンフィアに指示をだした。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーア!』

『ッ!?』

 

ニンフィアのムーンフォースがバサギリの頭部を直撃。そしてバサギリはその場に倒れ目を回していた。戦闘不能の合図であり、それはバサギリの暴走を止めた証拠でもあったのだった。

 

シンジとニンフィアのコンビネーションが綺麗に決まり、シンジの手の平とニンフィアの触手でハイタッチを交わした。あのバサギリをまさか本当に止めるなんて、と驚きと共に尊敬の眼差しを向けるキクイ。シンジが無事だったことに心の底から安堵するサレナ。

 

そして何より、シンジとニンフィアの事をじっと凝視するカイ。しかしその眼差しは先ほどまでの敵視や悔しさなのと言ったものではなく、もっと別の感情のものが込められているように感じられた。まるで二人の関係を羨ましく思っている、羨望のような眼差しだ。

 

(あの二人……言葉を交わさなくても理解しているというの?シンジが投げたシズメダマを、当たり前のようにニンフィアがバサギリにぶつけて。しかもそれまでの行動も、まるで二人が一心同体にでもなったかのように完璧に一致した動きだった。)

 

カイは二人を見て思った。なんて息の合った二人だろうと。ずっと一緒にいたとしてもあんなに分かりあえるものなのだろうかと。

 

人間とポケモンは全く別の種類の生き物。人間にはない未知の力をポケモンたちは持っている。そんなポケモンたちを人間は畏怖の対象として見ている者も多い。言葉も通じづ、ポケモンたちが何を考えているかなんて人間には理解し得ないもの。

 

それなのに彼らはお互いの事をよく理解し、お互いの思考を共有し合っている。ハイタッチをし喜びを分かち合っている。そんな関係がカイにとってはただただ羨ましかったのだ。

 

(ああ、そうか。私、彼らの事が羨ましかったんだ。)

 

最初は彼らの事を余計なことに首を突っ込む余所者なのだと思い敵視していた。いや、ただの得体の知れない余所者なのだと思いこんでいた。しかし本当は、ポケモンと上手くいっている彼らに嫉妬していただけだったのだと気付いた。

 

(……私もいつか、グレイシアと)

 

そう考えてカイはグレイシアの入ったモンスターボールを見つめる。自分のパートナーであるグレイシアとはまだまだ目に見えない溝があるのだと感じている。だがいつかは自分も彼らのように、心と心を通わせられるパートナーになれればいいなと。

 

これからは、もう少し彼らに向き合うべきかもしれないと戻ってきたシンジたちを迎えるのであった。

 

その後、無関係者でありポケモンを連れていないサレナを同行させたことがバレ、シンジはシマボシ隊長に怒られることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほう、あの方が、ねぇ。」

 

一方、バサギリの件を解決したシンジたちを見る謎の人物がいたことを、シンジたちは知る由もなかったのである。




なんだか異世界転移チート主人公みたいな物語になってる気がするんだが気のせいだろうか。

多分他のキング・クイーンの話は飛ばすと思います。物語の進行と話の内容的にノボリさんも登場しないかも。ノボリさんはイッシュでクダリさんと幸せに暮らしてください(切実)


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ウォロとヒスイに伝わる神話

原作とは結構異なるストーリーにしております。なにせ主人公が違う上にこの世界に来た経緯もまた異なりますので。全てのポケモンと出会えもないし……。


相棒ニンフィアとの協力の末、暴走するキングバサギリの騒動を鎮圧させることに成功したシンジたち。その日の夕刻、いつもの日課でシンジは茶屋に訪れいももちの注文を済ませて待っていたのだが、その間にシンジは疲労から机に突っ伏していた。

 

しかしその理由はバサギリとの戦いで疲弊したから、ではなかった。一般人であるサレナを重要任務に同行させたことをシマボシ隊長にバレてしまったからである。一応任務を無事成功させたことと、サレナ本人からの口添えもあり今回は不問にさせてもらったが、隊長からの説教など諸々長時間に渡る疲労が響き今こうして力尽きているのである。

 

「さ、さすがに疲れた……」

「まあ二時間ぐらい説教が続けばね」

「シマボシ隊長の無言の圧力は精神的にくるからな」

 

常日頃から無表情のシマボシ隊長に無言で睨まれてしまったら、流石のシンジでも精神的に追い詰められてしまう。それも長時間に渡れば余計ダメージはでかくなったのであろう。その原因ともなったサレナは、シンジに対して申し訳なさそうに頭を下げて謝ってきた

 

「シンジさん!今回は私の我儘のせいですみませんでした!」

「ううん、今回は僕の独断だったし、サレナが気にすることないよ。」

「で、ですが、私が無理してお願いしたからシンジさんにも迷惑をかけてしまって。」

 

別に気にしなくてもいいと言うシンジだが、それでもサレナは罪悪感から何度も頭を下げて謝ってくる。お互いに譲らないためこのままでは埒が明かないと、シンジはそれならとある提案をする。

 

「だったら今日のイモモチ、サレナが奢ってくれないかな?それで今回の件は無かったことにしよ?」

「え?そ、それだけでいいんですか?」

 

サレナの返答にシンジも大丈夫だと答える。彼がそう言うならと、サレナはシンジの提案を快く受け入れてイモモチを提供した。そんな二人のやり取りを、テルとショウは笑顔で眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日。シンジは改めて調査を開始しようと村の外へと出たところで、テルとショウがある人物を連れてシンジに呼びかけてきた。

 

「シンジ!」

「テル?それにショウまで。どうかしたの?」

「実は今日はシンジに紹介したい人がいて連れてきたんだ。」

「紹介したい人?」

 

そうしてテルたちの前に歩み出てきたのは、身長が非常に高く中性的な見た目で、金髪の長い髪に左目が隠れた男性であった。その人物は笑顔で微笑みながらシンジに話しかける。

 

「あなたがシンジさんですね?ジブンはイチョウ商会に所属しているウォロと言う者です。以後お見知りおきを。」

 

ウォロにそう丁寧にあいさつされたので、シンジも自己紹介を返答する。するとウォロはどこか興味深そうにシンジの姿をじろじろと凝視していた。

 

「ふむふむ。なるほどなるほど、あなたが……。」

 

シンジを見ながらぶつぶつと小さく呟いているウォロ。シンジに対する人間観察が終わったのか、ウォロはニヤリと口角を上げて再びシンジに話しかけた。

 

「アナタ、とても面白いです!別の場所からやってきたと言うのも実に興味深い。」

 

好奇心旺盛なウォロはモンスターボールを取り出しながらシンジに提案をする。

 

「突然ですが、ジブンのポケモンとバトルしてはいただけませんか?」

「バトル、ですか?」

「ええ。ぜひあなたの実力を見せていただきたいのです。なにせジブンはあなたの実力に興味津々ですので♪」

 

ウォロは笑顔でシンジにそう頼み込んだ。おそらく彼は単純な興味本位でシンジにバトルを申し込んだのだろう。しかしシンジはどことなく彼が興味だけでなく、なにか別の意味を求めてバトルを申し込んできたのではないかと薄々ではあるが勘ぐってしまう。

 

だがそれは彼が悪意を持ってなのか、それともまた別の感情があるのかは不明だが、どんな理由にせよシンジがバトルの申し込みを断るはずもなく、快く彼のお願いを受け入れた。

 

「いいですよ。それではバトルしましょうか。」

「おお!感謝します!」

 

そうしてシンジもモンスターボールを手に取り、相棒であるニンフィアを繰り出した。ウォロもまた、自分のモンスターボールからポケモンを繰り出した。ウォロが繰り出したポケモンははりたまポケモンと呼ばれるポケモン、トゲピーであった。

 

「では始めましょうか。ウォロさんからどうぞ。」

「さすが余裕がありますね。では遠慮なくいかせてもらいますよ!トゲピー!たいあたり攻撃!」

『トゲッピ!』

 

そう言ってウォロとトゲピーから先に動く。トゲピーは早速ニンフィア目掛けて一直線に突撃していった。

 

しかし当然ニンフィアはその攻撃をひらりと簡単に回避する。その動きを見てウォロはまたしてもニヤリと笑みを浮かべていた。それは別に余裕があるから、などと言う理由ではない。ただ単純にシンジとニンフィアに対する興味故のものだろう。

 

「でしたら今度はようせいのかぜです!」

『トゲピッ!』

 

今度はようせいのかぜでニンフィアに追撃を加える。だがその攻撃がそう簡単に通るわけもなく。

 

「ニンフィア!こっちもようせいのかぜ!」

『フィア!』

 

ニンフィアも同じくようせいのかぜで反撃をする。同じようせいのかぜであっても当然威力は全く異なり、トゲピーのようせいのかぜはあっさりと押し返されてしまいトゲピーは吹き飛ばされてしまった。

 

「っと、大丈夫ですか?トゲピー。」

『トゲピ』

 

飛ばされたトゲピーをウォロが優しく受け止める。ウォロが受け止めたことにより、思った以上のダメージもなくトゲピーはまだまだ元気であった。

 

しかしお互いの力量差は圧倒的であり、これ以上戦っても意味がないと悟ったウォロはトゲピーをモンスターボールに戻した。

 

「いやぁ、さすがですねシンジさん。ジブンでは手も足も出ませんでした!」

 

ウォロは笑顔で参った参ったとシンジの実力を称賛する。そして彼の実力を知ったところである頼みを彼にするのだった。

 

「実はあなたの実力を見込んで、折り入ってお願いしたいことがあるのです。」

「お願い、ですか?」

「ええ。その件について色々とお話をしておきたいので、ジブンがお世話になっている場所へと案内したいと思います。ジブンを信頼して着いてきてくれませんか?もちろんテルさんとショウさんも。」

 

突然着いてこいと言われて怪しくないわけではない。しかし元よりシンジたちは彼のお願いを聞くつもりであった。特に彼の事を怪しむことなく、シンジ、テル、ショウの一行はウォロの後を着いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォロに案内された場所は一つの家が建ててある小さな里であった。里と言うには些か小さすぎるとは思うのだが、ウォロの話からするとここは古の隠れ里と呼ばれる、外からは隔絶された場所であるのだそう。ここには彼がお世話になっている一人の人物が住んでいるらしいのだが……。

 

「コギトさん、ただいま帰りましたよ。」

「ふむ。おぬしはいつも突然帰ってくるのお。しかも珍しく客人を連れてくるとは。」

 

そこには黒いドレスを着た一人の女性が優雅にティータイムを楽しんでおり、ゆっくりとウォロたちの姿を見まわした。その女性の雰囲気は一言で言うとミステリアス、と言った風貌で、間違いなく世間一般的に言えば美人の部類に入るのであろう。

 

「それで、彼らは一体誰なのじゃ?」

「ええ。彼らはジブンの協力者となってくれるかもしれない方々ですよ。」

「ほう。おぬしはまだ諦めていなかったのじゃな。」

「もちろんです。ジブンは執念深い方なのでね。」

 

彼女の言葉にウォロは冗談っぽく返答すると、協力者となってくれるシンジたちの事を彼女に紹介しはじめる。

 

「彼らはギンガ団に所属している者たちです。」

「初めまして。僕はシンジと言います。」

「俺はギンガ団のテルです。」

「えっと、テル先輩の後輩のショウです。」

「ふむ、なるほど。わらわはこの家の家主であるコギトと申すものじゃ。よろしく頼むぞ。」

「彼女は……まあジブンにとって母親みたいな存在ですかね。」

「これこれ何を言う。わしはまだそのような年齢ではない。せめて姉と呼ぶのじゃ。」

「あなたは見た目以上の年齢でしょうに……」

 

と彼女に聞こえない程度の声量で呟くウォロ。誤魔化すように咳ばらいをし、早速本題に入ることにした。

 

「あなた方は神話をご存じありますか?」

「神話?」

 

ウォロの問いかけにシンジは疑問符を浮かべる。記憶を失くしているシンジにはそんな話を知っているはずもない。しかしこの世界の住人であるテルとショウには思い当たる節がある。

 

神話に深く関わりのあるシンジュ団、コンゴウ団の長であるカイやセキから聞いたことある。彼らによるとシンオウ様と呼ばれる存在がこの世界の時間、空間を創造したのだとか。だがおかしなことに二人の言い分にはスレ違いがあり、カイは空間を司ると語っていたが、一方でセキは時間を司ると語っていたのだ。シンジュ団とコンゴウ団は互いにいがみ合っている関係であるため、信仰対象のいがみ合いは発生してしまうものなのだろうが、神話としての信憑性は少し薄くなってしまっている。

 

「ええ。確かに両者の言い分は間違っていません。しかし正しくもありません。なぜなら彼らの言うシンオウ様は複数存在するのですから。」

 

その言葉にテルとショウは驚きの余り目を見開いた。まさかそんな神々しい存在が複数存在するなどと誰が想像できるものだろうか。つまり彼の言うことが正しいとするとシンジュ団の信仰するシンオウ様と、コンゴウ団の信仰するシンオウ様はまた別の存在と言うことになる可能性が出てきたのである。

 

シンジュ団の信仰するシンオウ様は空間を司り、コンゴウ団の信仰するシンオウ様は時間を司る。彼らが大切にしている信念は、まさにそれぞれのシンオウ様の特徴が関係しているのであろう。

 

「そしてもう一人。それぞれのシンオウ様を生み出したと言われている神、アルセウス。」

「アル……セウス……」

 

シンジはその名前を聞いてどこか懐かしい響きを感じた。驚きや恐怖と言った感情では一切なく、どことなくアルセウスの事を知っているのではないかと言う記憶に関するものであった。

 

しかし自分が神である存在を知っているはずもないとその考えを頭の隅に追いやった。ウォロは再び話を続ける。

 

「アルセウスは自分の分身となるシンオウ様を生み出し、そして更に三つの命を生み出した。そして世界に人間とポケモン、様々な命を生み出し感情が生まれた。ジブンはそう聞いています。」

「わらわの一族に代々伝わっている逸話じゃ。この話をウォロにしたら大層興味を示してのお。わらわとしてはあくまで神話として伝わっているだけで信じているわけではないのだが、こやつはそれ以来アルセウスに会いたいと言い放っておるのじゃ。」

「そのような素晴らしい存在がいるのであれば会いたいと思うのは当たり前でしょう!」

 

先ほどまでの好青年っぷりが嘘のように興奮するウォロ。取り乱したことを恥ずかしがってか突如冷静になり、コホンと咳をして一呼吸ついた。

 

「そこで、あなたに見ていただきたいものがあるのです。」

 

そう言ってウォロはシンジにある物を見せてくる。長方形型の薄い緑色をしたプレートであった。

 

「これは見た目の通りプレートです。実は先日シンジさんがバサギリと戦ったと言われている場所に訪れてみたところ、これが落ちていました。このプレートは全部で18種類存在し、神話では神の欠片とも呼ばれているそうです。」

「神の欠片?それってつまり……」

 

なんとなく察したシンジたち。そんな彼らにウォロは笑顔で頷き続けた。

 

「そうです!この神の欠片を集めることができれば、神であるアルセウスへと繋がる手がかりとなるはずです!そして暴走したバサギリの傍にプレートがあったという事は……」

 

他のキング、クイーンたちも持っている可能性が高い、そうシンジたちも察した。そしてキング、クイーンが持っている可能性があるという事は、同時にバサギリと同様暴走状態に陥ってしまう可能性もあると言うことである。

 

「そこで実力者であるシンジさんにお願いしたい事と言うのは、言わなくても分かると思います。キング、クイーンたちの暴走を止めていただきたいのです。彼らを野放しにしてしまってはヒスイの生態環境は大きく変化してしまいます。それに加え彼らを止めることができれば、神の欠片であるプレートも手に入る。一石二鳥だとは思いませんか。」

 

若干私利私欲も混じっている気はするが、確かにこの話が本当だとすればキングとクイーンを放置してしまうとこのヒスイの地が危険な状況に陥ってしまうのは間違いない。それにバサギリのようにポケモンが苦しんでいるのだとしたら、彼らの事を放置などシンジにできるはずもない。だとしたら、シンジのウォロに対する回答は一つだけだった。

 

「……分かりました。僕で良かったら協力します。」

「俺もシンジみたいに強くないけど、出来る限り協力するぜ!」

「もちろん私も協力します!」

 

シンジは協力することを承諾し、テルとショウも彼に協力することを申し出た。

 

「ありがとうございます!あなた方が協力していただければ、ジブンの夢も実現できそうです!我々イチョウ商会も可能な限りバックアップします!」

「いや、おぬしにそんな権限ないであろうに……。」

 

心強い協力者を得てご満悦なウォロの発言に、「ギンナンも苦労するな」と呟いて呆れるのであった。




今年はピクミン、アーマードコアの新作、ポケモンのDLC、旧作の移入やリメイク作品と中々忙しい年になって大歓喜。龍が如くも出るし暫くは飽きる事もなさそうでいいですが、その分マスターデュエルやポケモンUNITE、ポケモンSVのオンラインの方も時間が取れなくて厳しいのが現実……。


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未来編
約束から幾年・・・


あけおめことよろです!

新年早々名前の通り未来編突入です。

ここからは気ままに思いついたら投稿する形なのでペース遅くなるかもです。元々定期的じゃなかったって?(´・ω・`)


ここはアローラ地方、メレメレ島。そこにあるアローラで最も大きな街、ハウオリシティ。そこから少し離れた街外れに一軒だけ建っている家があった。そこに住んでいるのは一つの変わりない幸せな家族の姿。普通に過ごしているだけの、普通の家族のお話。

 

「よし、朝ごはんはこれでバッチリですね。あとは……」

 

金髪のポニーテールをした女性は朝食を作り終えたことで作業を終了したため、髪留めを外して綺麗な長髪靡かせ着用していたエプロンを脱いで慣れた手つきで折畳む。

 

一息つきエプロンをソファの端に置く。そんな彼女に二人の子どもが笑顔で近付いてきた。一人は8歳ぐらいの黒髪の男の子。短い髪と黒い瞳、どこにでもいそうな普通の男の子である。そしてもう一人は6歳ぐらいの金髪セミロングに緑眼をした元気な女の子。今は6歳であるためまだ幼さがあるが、大人になったら美人になるであろう容姿をしている。髪の色や眼の色に違いこそあれど、顔のパーツや輪郭などを比較してみると二人が兄妹なのだという事がすぐに分かる。

 

女の子は女性の足元に抱き着いてきた。嬉しそうに「お母様!」と口にしているところを見ると、少女は抱き着いている女性の子どもなのだろう。男の子も同じくお母様と呼びかけると、母親の女性は子どもたちの名前を呼んだ。

 

「おはようございます、ロウ、ティア、二人は今日も元気ですね。」

『おはよう(ございます)!お母様!』

 

子どもたちは元気よく挨拶を返す。分かるとは思うが、男の子の名前がロウで女の子の名前がティアである。

 

「お母様、朝ごはんできた?」

 

ロウは母親に疑問を問いかける。母親はその疑問に笑顔で「ええ、できましたよ」と返答すると、二人は満面の笑みで喜びの表情を浮かべていた。それほど彼らは母親の料理が大好きなのだろう。

 

「ではお父さんを呼んで来てくれますか?いつもみたいにみんなで食事をとりましょう。」

『はーい!』

 

そう言って子どもたちはバタバタと二階の父親の部屋に突入していく。案の定彼らの父親は気持ちよさそうにスヤスヤと眠っており、慌ただしく入ってきた子どもたちにも気付いている気配がない。

 

「お父様、朝ごはんの時間だよ。起きて!」

 

そう言ってロウがユサユサと父親を揺らして起こそうとするも、父親は寝返りをうつだけで起きることはなかった。元々父親自身が朝に弱いという事もあるのだが、仕事が多忙で疲れていると言うのもあるのだろう。一家の大黒柱であるためそれ自体は仕方ないことではあるのだが、このままでは折角の朝食も冷めてしまう。

 

事情を知っている子どもたちも本当は大好きな父親を寝かせてあげたいところではあるのだが、このままでは折角母親が作った朝食も冷めてしまって勿体ない。そう思ったティアは、いつもの手段で父親を起こすのであった。

 

ティアは父親の部屋のテーブルに乗ってるモンスターボールを手に取り、中からポケモンを繰り出した。繰り出したポケモンは小さく白色の身体をしており、綺麗な毛並みと大きくもふもふな尻尾。父親のポケモンである色違いのイーブイである。

 

『イブ?』

「イーブイ。いつもみたいにお願いね!」

『イッブ!』

 

ティアがイーブイにお願いすると、イーブイは父親の上に乗っかった。すると尻尾を顔に向けて軽くペチペチと左右に振って叩くのであった。頬に伝わる軽い痛みが父親の脳を覚醒させ、父親はバッと飛び起きるのであった。

 

「いっつつ、イーブイ?もう少し優しく起こしてくれると助かるんだけど……」

『イブ!』

「お父様が早く起きてくれれば助かるんだけどねー。」

「あはは……はい、すいません。」

 

まるで形無し、と言った様子で父親は娘のティアに謝る。親子の立場が逆転しているように見えるがこれがこの家族の日常的な会話。それでもロウとティアは父親のことが大好きであり、父親の事を誰よりも尊敬しているのである。

 

ロウとティアはようやく目覚めた父親に早く降りてくるようにと急かすようにして部屋を出て行った。子どもたちに頼まれたら断れないなと、父親も手早くパジャマから部屋着に着替え準備を済ませ一階へと降りて行った。そしてそこで、父親と母親は顔を合わせ夫婦同士朝の挨拶を交わすのであった。

 

「おはようございます、シンジさん。」

「ああ、おはよう、リーリエ。」

 

そう、この家族とはアローラ地方初代チャンピオンのシンジと、アローラリーグ優勝経験のあるリーリエの家庭である。二人が戦ったあのアローラリーグが終わり二人は正式に付き合うようになった。そして7年の年月が経ち両者が20歳を迎えると二人は結婚。二人には愛の結晶であるロウとティアが生まれ、それ以降は大きな事件が起こることもなく順風満帆、30歳を迎えて二人の子どもを授かり、普通の家庭と同じ幸せな生活を送ることができているのである。

 

また、今もまだチャンピオンであるシンジの座を脅かす者は現れることなく、彼は初代チャンピオンとして君臨し続けている。アローラのトレーナー誰もが憧れ目標としている父親の姿をロウとティアも誇りに思っていて、自分たちも父親のように強い存在になりたいと夢に見ているのである。

 

「子どもたちも待っていますし、早速朝ごはんを食べてしまいましょう。」

「うん、そうだね。」

 

子どもたちが待ち遠しそうに席に座っているのを見て苦笑したシンジとリーリエも一緒に席に着く。四人は同時に『いただきます!』と言うと子どもたちは待っていましたと言わんばかりにすぐさま朝食にかぶりつく。

 

「ん~!やっぱりお母様のご飯はおいしー!」

「そうだね。お母様のご飯はとっても美味しいです。」

「ははは、そう言ってくれると作った甲斐があります。まだお父さんには届きませんけど……」

「謙遜しなくてもいいよ。僕もお母さんのご飯は大好きだからね。」

「もう、シンジさんまで……」

「お父さんとお母さんラブラブー♪」

『っ///』

 

娘にからかわれて顔を赤く染めるシンジとリーリエ。そんな他愛もない会話を交わしながらシンジたち家族の朝の時間は過ぎていく。

 

美味しい朝食の時間が終わり満足した子どもたち。彼らのポケモンたちも朝のポケモンフーズを食し満足して一休みしている。ロウとティアは丁度いいサイズのイーブイを抱きしめてソファーに座りテレビを見ている。イーブイも特に抵抗を見せることなく子どもたちにされるがままになっているのは、彼らの兄貴分になった気でいるためである。どことなく彼の顔がふんすっ、とドヤ顔をしているように見えなくもない。最もロウとティアはイーブイの事を可愛がっているだけなのであるが。

 

ロウとティアはDVDを再生する。今流しているのはかつてシンジとリーリエが対決したアローラリーグの記録である。二人は両親が最高の舞台で戦ったこのバトルを見るのが好きで、視聴回数は既に10回以上を超えているだろう。とは言えシンジとリーリエにとって自分の若い頃の映像を子どもたちに隣で見られるのは少々気恥ずかしく思えてしまうのだが、熱中して見ている子どもたちに見るななどと言えるはずもない。

 

テレビでは視聴するのも何度目かになるシンジとリーリエの激闘の様子が流れていた。若い頃の父と母の熱い戦いに興奮する観客と一緒になって、自分たちも声援をあげる。二人からは「お父様がんばれー!」や「お母様も負けるなー!」といった声が聞こえてくる。結果は何度も見ているため分かり切っているのだが、それでも子どもたちはまるでその場にいるかのように熱中して必死に応援を繰り返していた。子どもらしいその姿に、シンジとリーリエも親としての自覚が生まれてきたのか自然と互いの顔を見合わせ微笑んでいた。

 

「そう言えばお父様。」

「ん?どうかした?ロウ」

「もうすぐお父様のエキシビションなんだよね?絶対応援に行くからね!」

「お父様!頑張ってくださいね!」

「ありがとう。お父さん頑張るよ。」

 

シンジは優しくロウとティアの頭を撫でる。父親の温かく大きな手の平に安心感を抱いた子どもたちは嬉しそうに微笑んだ。その光景を見ていた母、リーリエもまた自然と心の中から幸せいっぱいの温もりを感じていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後――

 

シンジのエキシビションマッチの日がやってきた。毎回チャンピオンへの挑戦者が現れるわけではないため、目標であるチャンピオンの強さを示し、島巡りのトレーナーたちを鼓舞するため定期的に行う必要があるこのエキシビションマッチ。現在シンジは対戦相手とのバトルに奮戦中である。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーア!』

 

チャンピオンの相棒、ニンフィアのムーンフォースがアローラの姿をしたゴローニャに直撃。ゴローニャはその一撃によって瀕死のダメージを負い仰向けに倒れ、目を回し戦闘不能状態となってしまった。圧倒的な力の差、そして舞うような華麗なチャンピオンのバトルに観客たちは大興奮。もちろん興奮していたのは観客たちだけでなく、チャンピオンの子どもであるロウとティアも同じであった。

 

「見た見た!お母様!お父様のニンフィアはやっぱり最強だよ!」

「ええ、そうですね。あの人はアローラで最強のトレーナー、チャンピオンですからね。」

 

ロウとティアがそれぞれ興奮しながら今のバトルの感想を言い合っていた。それを見てリーリエは微笑ましいなと優しく見守っていた。恐らく自分の母親も昔はこんな気持ちだったんだろうな、と幼い頃の自分と兄を見ているようでどこか懐かしい気分になっていた。

 

エキシビションの公開が終了し、家に帰宅したリーリエたち。暫くして時刻は夜の10時を過ぎてもうすぐ日も変わろうとしていた頃。チャンピオンの務めを終えたシンジも自宅へと帰還した。

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。お疲れ様でした。」

「あれ?ロウとティアは?」

 

いつもなら元気に迎えてくれる二人だが今日はリーリエのみであった。どうしたのかと尋ねると、リーリエは口にすることなくソファーを指差した。するとそこには既にスヤスヤと寝入ってしまっているロウとティアの姿があった。

 

「さっきまではお父様の帰りを待ってる、なんて言ってましたけど、気が付いた時には静かになっていて。」

「そっか。」

 

ロウが寝返りをうったことで毛布がズレてしまったため、シンジは優しく毛布を掛け直す。子どもたちの可愛い寝顔に癒され今日一日の疲れが取れた気がして、起こすのも悪いからこのまま寝かしておこうとソッとしておくことにした。

 

「私、シンジさんと結婚して、二人の元気な子どもに囲まれて、平和な日常が過ぎて……。あの時みたいな冒険はもうないですけど、毎日が楽しくて。私今、とっても幸せです。」

「それは僕もだよ。あの時はまだまだチャンピオンとして駆け出しで、将来家庭を持つことなんて考える余裕もなかった。でも今、大好きな人と一緒にいられて、家族のために毎日を頑張ることができる。これ以上の幸せ他にないよ。」

「あはは、改めて思うとなんだか恥ずかしいセリフ言ってますね、私たち。」

「それは昔からだからね。愛してるよ、リーリエ。」

「はい。私も愛しています、シンジさん。」

 

二人は静かに口づけを交わす。そう、ここからは何もない、ただただ幸せな普通の家族の生活を描いただけの物語である。

 

 




本日息子と娘登場となります。名前の由来はハワイの植物名を調べたので以下の通りです。

ロウ→ヤシ科の『ロウル』

ティア→アカネ科の『ティアレ』

こう言ったものにはあまり詳しくない上にヌシはウマシカであるため人名にしやすそうなものを二つ雑に選びました。

現在レジェンドアルセウス2周目をプレイしてザックリと内容の再確認をしているので、次できたらアルセウス編を進めるかと思います。ただし恐らく内容や進行がオリジナルに変更される可能性があります。主人公がそもそも原作と異なるので。


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子どもたちの一日

マスターデュエル1周年、プリコネ5周年おめでとー!


アローラ地方メレメレ島にあるポケモントレーナーズスクール。ここではポケモンについての知識を身につけたい人が学ぶために通う施設である。そしてこの小等部ではまだ年齢制限の関係でトレーナーになれていない子どもたちが、立派なトレーナーとなるために今日も楽しく学び舎へと通っている。

 

そこにいる一人の少年もまた立派なトレーナーを目指している一人である。その少年の名はロウ。チャンピオンシンジの息子である。ロウは今日も妹のティアと共にトレーナーズスクールで勉学に励んでいる。

 

今日の授業はポケモンのタイプについての問題だ。ポケモンバトルにおいてポケモンのタイプ相性というのは最も基本的かつ最も重要な項目であることは言うまでもない。例えばほのおタイプはくさタイプに強く、くさタイプはみずタイプに強く、みずタイプはほのおタイプに強い、と言った具合にだ。

 

ポケモンバトルをメインとしないポケモンブリーダーになった場合でもタイプを知識として取り入れるのは重要なことである。ポケモンのタイプをしっかりと把握しておくことでそのポケモンに必要な栄養、好みの味、健康状態のチェックなど、幅広い分野で役立たせることができる。ポケモンにおいてタイプとは、人間における血液型や細胞などの遺伝子情報に近しい重要性があるのである。

 

「ではここで問題です。チャンピオンのパートナーであるニンフィアはフェアリータイプです。フェアリータイプに効果が抜群な技はほのおタイプですか?それともはがねタイプですか?」

 

この問題の答えに子どもたちは頭を悩ませる。まだこの問題は難しかったかと先生は苦笑するが、その問いに一人だけ手を挙げている者がいた。先生はその生徒の名を呼び指名する。

 

「ではロウ君。この問題に答えられる?」

「はい。フェアリータイプに弱点のタイプははがねタイプです。」

「その通り!よくできました。」

 

ロウは簡単に問題の答えを言い当てる。その答えに流石はチャンピオンの息子だとかの称賛を贈られる。同じクラスで授業を受けている妹のティアモ、鼻高々と言った様子で「流石はお兄様」と称賛の声を贈っていた。

 

実はこのクラスの生徒たちは皆、ロウとティアがチャンピオンの子どもたと言うことを認知している。しかしチャンピオンの子どもだからと言ってクラスメイトは特別な扱いをすることはなく、精々先ほどの様な賛辞を与える程度であったためロウたちにとっても居心地は悪くないと感じている。

 

答えを言い当てたロウは自分の席に着席する。先ほどの問題に先生は補足説明を入れるのであった。

 

「フェアリータイプのポケモンにはがねタイプは効果抜群です。対してほのおタイプの技はフェアリータイプのポケモンに対して効果は普通ではありますが、フェアリータイプの技はほのおタイプに対して効果はいまひとつです。このように必ずしもお互いが抜群、いまひとつの関係と言うわけではありませんので気を付けてくださいね。」

 

先生の言葉に生徒たちも「はーい」と元気よく答える。ポケモンの相性は絶対的に相反作用があるわけではなく、時には片方のみに影響を及ぼしたり、またある時は同じタイプ同士で弱点であったりとかなりややこしい関係で成り立っている。覚えるまでには時間がかかるが、一度覚えてしまえば忘れることは中々ないであろう項目だ。

 

授業が終わり移り変わってグラウンドに集合する生徒たち。今度は座学ではなくポケモンバトルに関しての実技試験だ。

 

とは言えポケモントレーナーではない彼らには自分のポケモンを所有することは許されていない。そこでスクールで使用するのはここで管理している貸し出し用のポケモンたちである。ちゃんとしつけも済ませているため、ポケモンと日常的に触れ合ったことのない子にも言うことを聞く扱いやすいポケモンたちばかりである。

 

万が一危険がないために二人一組で順番にバトルをしていき先生がちゃんと監督する形式となっている。そして順番が流れていき、いよいよロウの出番となった。しかし……。

 

「イワンコ!かみつく!」

「ガーディ避けて!」

 

ロウがイワンコにかみつくの指示を出すが、相手のガーディはその攻撃は横に飛んで回避する。攻撃を躱されたことに隙が生じたイワンコにガーディはすかさず反撃をする。

 

「ひのこ!」

『ワウ!』

『イワッ!?』

 

ガーディのひのこがイワンコに直撃する。効果はいまひとつではあるもののどちらもバトル用に育成した個体ではないため今の一撃でガーディは大きく弱る。無理にバトルを継続させて無茶をさせるわけにはいかないので、審判も務めていた先生はそのバトルを中断する。結果的にロウは残念ながらバトルに負けてしまったのである。

 

「ごめんね、イワンコ。君の力を活かせなくて。」

『イワッ』

 

謝るロウにイワンコは身体を擦り付けて笑顔を見せる。どうやら彼は特に気にしておらず、ただただロウに甘えているようだ。そしてロウはイワンコを連れてフィールドから出て、次の出番となる妹のティアと交代する。

 

「お兄様の敵は私がとるよ!」

 

敵と言っても対戦相手は別人ではあるのだが、兄であるロウが負けたことでティアの心に火がついたようである。ティアのパートナーとなったポケモンはコリンク。コリンクは元々気性の荒いポケモンではあるが、人に慣らせば忠実に従ってくれる頼れるパートナーとなるポケモンである。

 

そして対戦相手はノーマルタイプのエイパム。動きが身軽で素早いことで有名なポケモンだがイタズラ好きで、言うことを聞かせられるようになるまでは少々慣れと時間がかかる。だがそこはスクールが選んだポケモン。先ほど説明した通りちゃんと子どもでも扱えるようにしつけられているため問題はない。

 

ロウに続いてティアの対戦が開始される。しかし開始早々、すぐに動き出したのはティアではなく対戦相手のエイパムであった。

 

「エイパム!スピードスター!」

『エイパッ!』

 

エイパムは星型の弾幕、スピードスターで先制攻撃を仕掛ける。攻撃は最大の防御、を体現するかのように放たれる無数のスピードスターがコリンクに襲い掛かるが、ティアは意外にも冷静にこの攻撃を対処する。

 

「コリンク!後ろに避けて!」

『リンクゥ』

 

コリンクはティアの指示に従いバックステップで回避する。初心者とは思えない冷静な対応力に、観戦していたクラスメイトたちは感嘆の声をあげていた。

 

「っ!?エイパム!みだれひっかき!」

『エパァ!』

 

あっさりと躱されてしまい、対戦相手の生徒はしびれを切らして接近戦に移行する。しかしそれは悪手であり、初心者によくある失敗だ。ティアはその行動を読み切っており、再びコリンクに回避の指示をだした。傍から見たら劣勢な状況に見えるものの、ティアは的確な指示を出してエイパムの攻撃を回避していた。

 

するとすぐにエイパムの状態に変化が訪れる。エイパムは息を切らし、明らかに疲労を見せている状態になる。バトル用に育成が充分にされていないレンタルポケモンであるため、体力なども一般のポケモンに比べて少ないだろう。ティアはそのことをバトル前から既に読み切っていたのである。

 

その隙を見たティアはチャンスだと思い、遂にコリンクに攻撃の指示を出した。

 

「コリンク!かみなりのキバ!」

『コリンッ!』

 

エイパムの動きが遅くなり攻撃が大振りになった隙を見つけ、ティアはコリンクにかみなりのキバの指示をだした。コリンクは鋭いキバに電撃を纏い、エイパムの腕に噛み付いた。エイパムはコリンクの鋭い電気に体が痺れ動くことができず、痛みと共に膝をついた。

 

「そこまでです!」

 

これ以上の続行は不可能と判断し、先生は二人のバトルを止める。ティアは無傷で完璧な勝利を掴み、クラスメイトたちからは流石だと言った称賛の声を多く飛び交っていた。ロウも同じく戻ってきたティアを褒めるのであった。

 

「流石だねティア。やっぱりバトルは君の方が上みたいだ。」

「ありがとうお兄様!でも勉学ではお兄様に勝てないから。」

 

今のバトルを見て分かる通り、バトルに関してはティアの方が上だ。ティアは大人しくしているのが苦手で本などもじっくりと読むことができない。一方でバトルに関するセンスはピカイチであり、ポケモンと息を合わせて戦う姿は将来性を感じさせるものがある。天性の天才肌なのか、はたまたただの感覚派なのか。

 

ロウはバトルは妹に比べて苦手なものの、勉学による記憶力はクラスメイトの中でも群を抜いている。

読書が趣味であり過去のバトルを見返したりなど真面目で努力家なのだが、真面目過ぎるのが仇となりバトルの時に臨機応変な立ち回りができないのである。また本番には弱く、彼自身が緊張してしまうのかバトルでは本領を発揮することなく負けてしまうのだ。

 

それでも互いの夢は正反対であり、ロウはバトルは苦手だが将来両親の様な立派なトレーナーになることを夢見てバトルのことも勉強している。ティアはバトルのセンスがあるのだが特にトレーナーになりたいと言った夢は持っておらず、女の子らしく母親のような綺麗で大人の女性になり、父親のような立派で素敵な男性と結婚することを夢見ている一人の少女である。

 

どちらもお互いに持っていないところを羨ましがっているが、だからこそ互いに支え合ってお互いを参考にしようと努力している。もちろん彼らはまだ幼い子どもであるためまだまだその努力が実るのは先になりそうではあるが。

 

バトルの授業も終了し、今日一日の終わりのチャイムが鳴り響く。先生の挨拶でスクールの一日が終了し、さようならと先生や同じクラスメイトたちに別れを告げる。ロウとティアも帰り支度をし、家への帰路を辿る。

 

「今日も楽しかったねお兄様!」

「まあね。でもまたバトルに勝てなかったんだよな~。」

「それを言ったら私も先生の質問に答えられなかったし。あーあ、やっぱり私は考えるより体動かす方が好きだなー。」

 

いつものように今日の振り返り、そして他愛のない話、それから家族の話をしながら歩みを進めていく。そして家に着くと、家の外ではロウとティアの大好きな人たちが二人の帰りを待っていてくれたのである。

 

「あっ!お父様!お母様!」

 

そこにいたのはロウとティアの両親、シンジとリーリエであった。ティアは二人の姿を見つけるとすぐに二人に抱き着きシンジとリーリエは愛娘のことを抱き留めた。ロウもティアの後を追いかけて父親に疑問を問いかけた。

 

「お父様、今日はお仕事大丈夫なのですか?」

「うん。今日は昼に終わったからね。折角だからロウとティアの帰りをここで待ってたんだ。」

「じゃあじゃあ!今日はずっと一緒にいられるね!私お父様といっぱいお話ししたい事あるの!」

「こらこらティア。あんまりお父さんを困らせちゃだめですよ。」

 

普段シンジは夜遅くまで仕事をしていることが多いため、子どもたちとはほとんどお話をする機会がない。それ故にこのような休みは貴重で、ティアは嬉しさのあまり落ち着きがない状態となってしまった。しかも休みの日であっても緊急で仕事が入ることもあり、彼自身がゆっくりと過ごす日も少ない。大好きな父親と共に長い時間を過ごせるのだから嬉しくないわけがない。もちろんそれはロウも同じで、少々もじもじとしているようにも見える。

 

「大丈夫だよリーリエ。じゃあ今日は学校で何をしたのか教えてもらおうかな。」

 

シンジのその言葉に子どもたちは元気で答え、その様子を見たリーリエは微笑ましいものを見て笑みを浮かべる。そしてシンジたちは全員家の中に入り、家族全員で仲良く話し続けていた。

 

こうしてシンジ一家の長いような短いような一日が過ぎていく。疲れて幸せそうに眠る我が子を見て、シンジとリーリエは共に優しく微笑むのであった。




やさいせいかつ

明日からニンフィアのレイドが始まるのでちょっと本気出す。


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とある少年と少女のお話

お久しぶり


ここはメレメレ島にあるポケモントレーナーズスクール。今日も今日とて、ロウとティアの兄妹は授業を受けていた。そして現在行っている授業はバトルの実践授業なのだが……。

 

「うー……また負けた……」

「お、落ち込まないで、お兄様。」

 

現在進行形でロウは落ち込んでいた。勉学の方は学内トップクラスの成績を収めているロウではあるが、バトルの実践に関しては下から数えるのが早いであろう順位である。ティアはそんな兄のロウを慰めているのだが。

 

「大丈夫!いつかお兄様もお父様みたいなバトルができるようになるから!」

「そう言うティアこそ勉強の方はからっきしだけどねぇ。」

「うっ、あっ、そ、それは……」

 

ロウの言葉にティアは視線を逸らした。ロウは勉学で良い成績を残している反面、ティアは実技で非常に良い成績を残しているのである。つまりその逆も同じで、ロウが実技を苦手としているのに対し、ティアもまた勉学を苦手としているのである。ある意味似た者同士であるところが兄妹の証拠と言えるだろうか。

 

お互いに現実を突きつけられたところで同時に大きな溜息を吐く。父親はみんなから憧れる最高のチャンピオンであり、知識も実力も兼ね備えている理想の人物。そんな彼の顔に泥を塗るかのような自分たちに心底呆れかえってしまう。

 

もちろん自分たちが最も尊敬している父が楽をして今の地位や実力を身に付けただなんて思っていない。しかし尊敬する父の子どもとして、せめて恥じない知識や実力くらいは身に付けたいものだと思っている。

 

しばらくして授業が終わり、今日一日の終わりのベルが鳴り響いた。先生や生徒たちに別れの挨拶をしたロウとティアは、まっすぐ自宅へと帰るのであった。

 

『ただいま帰りました、お母様』

「お帰りなさい、ロウ、ティア。お疲れ様です。冷蔵庫におやつのプリンを用意してあるので、手を洗ってうがいをしたら食べてもいいですよ。」

『はーい!』

 

家ではエプロン姿で家事をしていた彼らの母親、リーリエの姿があった。リーリエが笑顔で二人を迎えると、早速おやつのプリンを食べることを楽しみにしながら持ち物を自室に置いて、母親の言う通りに手洗いうがいをキチンとしてプリンを食べる。

 

また二人が帰ってきたことに気付いたイーブイもロウとティアの元に擦り寄ってきたのであった。イーブイはロウとティアの間に座り込み、二人は母の用意してくれたプリンを食べ始めた。

 

「お二人とも。今日のスクールはいかがでしたか?」

「楽しかったです。ただ……」

「ただ、どうかしたのですか?」

「いえ、その……」

「お兄様はバトルが苦手なので相談したいんだと思います。」

「ちょ!?てぃ、ティア!」

 

バトルが苦手なことを暴露するティアに顔を赤くして怒るロウ。恐らく大好きな母親にバトルが苦手なことを知られるのが恥ずかしかったのだろう。なにせ母親であるリーリエはかつて、チャンピオンである父親とあれだけの激闘を繰り広げることのできた優秀なトレーナーなのだから。

 

幻滅されてしまわないだろうか、と少し不安になってしまい俯くロウであったが、そんな息子にリーリエは優しく声をかける。

 

「ロウ」

「は、はい!」

「あなたはトレーナーとして強くなりたいのですか?父親であるシンジさんのように?」

「はい、それはもちろん……」

 

憧れである父親でありチャンピオンであるシンジ。しかし彼の背中は今のロウとは遠く及ばない雲の上の存在。そんな彼の背中を少しでも見たいと言う欲はもちろんある。だが逆に自分の才能でその気持ちを抱くのは父に対して失礼なのではないかとも卑屈になってしまう。

 

そんな彼の気持ちを悟って、リーリエはロウにある話を聞かせることにした。

 

「……少し昔話をしますね。ある時、一人の少女がいました。その一人の少女は、ポケモンバトルが苦手でした。理由は、ポケモンが傷つくのを見るのが辛い、ということでした。」

 

母親の語る昔話に、ロウだけでなくティアも静かに聞いている。その少女が誰のことかは分からないが、自分と理由が違うとはいえバトルが苦手だという点はロウの現状と一致している。

 

「しかしその少女は、ある時一人の少年と出会いました。その少年はバトルがとても強く、様々な強敵と戦い、試練を突破し、すべての脅威を退きました。少年は少女のことを幾度となく助け、少女は少年に幾度となく助けられてきました。少女は少年に憧れを抱きました。バトルが苦手だった少女は、いつの日か少年のように強くなりたいと願うようになりました。いつか彼の背中に追いつけるように、隣に立ちたいと願い、旅に出ることを決意します。ですがそのためには、少年との別れを決意する必要があったのです。」

「え?その人、もしかして好きな人と別れちゃったのですか?」

 

ティアが悲しそうな表情で尋ねる。リーリエもティアの言葉に静かに頷き、話を続ける。

 

「少女にはやるべきことがあったのです。それは大切な母の病気を治すこと。少年が少女のことを助けたように、自分もまた大切な人を自分の手で助けたいと強く願っていたのです。だから少女は意を決し、少年の元を離れることにしたのです。」

「そ、そのあと、二人は出会うことはできなかったのですか?」

 

ロウが不安そうに尋ねる。折角巡り合うことができた二人なのに、永遠の別れが訪れてしまうなんてストーリーとして悲しいなんてものでは済まない。最終的な展開にロウとティアは不安な気持ちでいっぱいであった。しかしその疑問に、リーリエは笑顔で答える。

 

「少女は、努力の末母親を病から救い出すことができました。大切な母を救い出し、少女は母と共に幸せに過ごすことができました。そして少年と別れて2年が経った時、ある決断をすることになります。それは、少年との約束を果たすこと。」

「男の子との約束?」

「はい、大切な約束です。その約束は、いつか一緒に旅をしたいというもの。ですが今の自分では彼と一緒に旅をするなんてできるはずもない。だから少女は自分のポケモンと共に旅に出ました。しかし少女は一人で旅をするにはまだまだ未熟で、絶体絶命のピンチに陥ってしまいます。」

「そんな!女の子はどうなっちゃうんですか!?」

 

慌てて身を乗り出すロウとティア。子どもらしくお話の中にのめり込む姿に小さく苦笑しながら、リーリエは「大丈夫ですよ」と答えてお話をつづけました。

 

「そんな時現れたのは、かつて約束をしていた少年だったのです。少年は別れた時と変わらず、少女をピンチから救い出したのです。少女は泣きました。自分が誰よりも会いたい相手と出会えて、2年前と同じように助けてくれて嬉しかったのです。二人は思いがけぬ形で、2年ぶりの再会を果たしました。それと同時に、これまた思いがけぬ形で約束も果たすこととなったのです。」

 

まさかの形で再会した二人に嬉しくなり二人はホッと安心した溜息を吐いた。

 

「それから少年と少女の旅が始まりました。しかし少女はバトルに関しては素人でした。途中で挫折しそうなこともありましたが、少年やポケモンと共に成長を繰り返し、バトルの腕前も少しずつ、少しずつ上げていくことができました。」

「ポケモンが傷つくのが嫌だったのに、怖くなかったんですか?」

「少女はそれでもポケモンが傷つくのはやっぱり怖い、と思っていました。ですがこうも思うようになったのです。ポケモンバトルはただ傷つけあうためのものではない。トレーナーとポケモンが一つとなり、心を通わせあうもの。トレーナーはポケモンのために、ポケモンはトレーナーのために。だから少女は、少年とポケモンのために強くなろうと思うようになりました。ポケモンバトルを通して、自分も成長することを決意することができたのです。」

「ポケモンと……一つに……」

「少女は旅を通して大きく成長しました。旅の中で多くの人と出会い、多くのことを学び、多くの景色を見てきました。そして旅が終わりを迎えた時、少女は少年にもう一つの約束を交わされました。今度は自分とバトルしよう、と。」

「男の子と女の子のバトルってことですか?」

 

ティアの問いにリーリエもはい、と頷く。

 

「少年と少女はその後、自分たちの故郷とも言える場所に帰りました。しかしそこでは、新たな脅威が待ち構えていました。その正体は、少女を苦しめていた悪夢だったのです。」

「そんな!?女の子は大丈夫なんですか!?」

「少女は最初不安で不安でいっぱいでした。ですが少年や他にも多くの仲間たちの助けを借りながらも、悪夢を打ち破ることができました。かつて少女を苦しめていた悪夢の霧は晴れ、少女もようやく前を向いて歩くことができるようになりました。」

 

少年と少女の波乱万丈な日常にハラハラしながらも、ロウとティアはどこかワクワクした様子で話しの続きを楽しみにしている。そんなお話もそろそろ最終局面。リーリエは少年と少女の最後の物語を語りだした。

 

「少女は少年との約束を果たすため、再び旅に出ました。以前の旅で出会ったポケモンたちと力を合わせ、かつて少年が乗り越えた試練を自分も乗り越え、一歩、また一歩と少年の背中に近づいていきました。かつて少年と共に見た景色は、改めて眺めてみるとまた違って見えていました。それがまた楽しくて、少女の中でまた一つ特別なものとして根強く残り続けました。」

「それで、男の子とはどうなったのですか?」

 

ロウとティアが最も気になる結末。それは紛れもなく少年と少女の約束である。その約束はもう目の前であり、その時が来たのだとリーリエも語った。

 

「少女は約束の舞台に足を踏み入れました。そこには他にも多くのライバルが集結しており、全員が少年と戦うことを夢見てやってきた猛者たちでした。少女は多くのライバルたちと戦うことになりましたが、苦戦を強いられることは逃れられませんでした。試合に勝てば勝つほど相手は手強さを増しましたが、少女は勝利をもぎ取り遂に少年との約束の場所へとやってきたのです。」

 

そこまで来るとロウとティアは口を開くことなく、リーリエの語る物語に耳を傾けていた。

 

「少年と少女の戦いは激しく熱いものでした。多くの人々が見守る中、二人は自分たちの世界に入り、バトルの中で多くのことを語り合いました。お互いが出会うことがなかった空白を埋めるかのように、バトルを通して何分も、何時間も、何日も経過しているのではないかと思うほど、長い時間語り合うことができました。結果、少女は少年に勝つことはできませんでした。しかし少女は心の底からバトルを楽しむことができました。かつてはポケモンが傷つくことが苦手だと感じていた少女も、少年との戦いの中で新しい自分を見つけることができました。」

「そのあと、少年と少女はどうなったのですか?」

「約束を果たした少年と少女はその後、結ばれました。長いようで短い、短いようで長い恋が実り、少年と少女は二人の子どもに恵まれ、幸せに暮らしています。」

 

その言葉を聞いて二人は確信した。そのため、ロウはその最後の疑問を母親に問いかけた。

 

「それってもしかして、お父様とお母様のお話でしょうか?」

「ええ、そうです。お母さんがお父さんと出会い、結婚して共に暮らすまでの長い長いお話ですよ。」

 

意外だった。あれだけ父と激戦を繰り広げた母が元々バトルが苦手だったとは思わなかったのだ。父との出会いがきっかけでバトルを始め、トレーナーとして成長するきっかけになっただなんて誰も思うまい。

 

「ロウ、それにティアも、あなたたちはまだ小さい。今はまだバトルが弱くても学べることはたくさんありますよ。初めから才能がないなんて諦めず、コツコツと小さな努力を続けて行くことが大切です。努力を重ねたのはお父さんも同じなのですから。」

「お父様も?」

「私も昔のシンジさんを全て知っているわけではありません。ですがあの人も昔から全てが上手くいっていたわけではありません。失敗を重ね、後悔をし、それでも諦めずに歩いてきた。そして今もポケモンさんたちと共に成長しているんです。だからあなたたちも現状に嘆くことなく、ゆっくりとでいいんです。前を向いて歩き続けてください。あなたたちはあのチャンピオン、シンジの息子と娘なんですから。もし躓くことや悩み事があれば、お父さんやお母さんに相談して一緒に解決していけばいいんです。」

『っ!?はい!』

 

その一言で元気付いたロウとティアは力強く返事をした。確かに今はまだお互い苦手なことがハッキリしている。それはかつての父と母も同じであり、様々な経験を経て今のように立派な大人に成長したのだ。どのような経験も決して無駄になることなんてない。

 

ロウとティアは母親の貴重な経験を元にしたお話を胸に深く刻み込み、慌てることなく父親の背中を追いかけることにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ロウとティアの努力が実を結び隠れた才能が花開くのはまだまだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 




今回は過去の総集編みたいな話になりました

今ランクマッチに集中してて中々他の時間がとれてないです
もうちょいで最高ランク行けそうなんだけど……


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ありえたかもしれない悪夢 前編

※詳しくは後編で

実は結構前から考えていた内容ではある


「んっ……あれ?ここは……」

 

ある日の休日、ロウは目を覚ます。しかしそこはいつもの自室ではなく、何故か見覚えのない外の景色であった。ロウが体を起こすと、横で寝ていた妹のティアが寝返りを打ったのに気づき彼女の体を揺らして起こす。

 

「ティア!ティア起きて!」

「んっ……お兄様?どうかしましたか?」

 

ティアはまだ覚醒しきっていない頭を無理に起こしてまだまだ眠そうに目をこする。しかし目の前に広がる光景を見て、一瞬で目を覚ますことになったのである。

 

「え?こ、これって……」

 

そこには思わず絶句してしまう光景が広がっていた。まるで廃虚のように建物が崩壊していて、ポケモンはおろか人が一人もいる気配すらない。本当にここは現実なのか?アニメやドラマの世界なのではないか?と疑ってしまいたくなる光景であった。

 

「っ!?お父様とお母様は!?」

 

自分は家で寝ていたはず。ならば近くに父と母がいるのではないかと探し始めた。しかしどこにも大好きな彼らの姿は見当たらず、誰一人として人間の姿をみることはなかった。

 

「そ、そんな……お父様とお母様は……」

 

大好きは父と母が見当たらない。そんな最悪な状況にティアの顔色は真っ青になっり今すぐにでも泣き出してしまいそうになってしまう。ロウは兄としてそんな絶望的な表情をするティアのことを慰める。

 

「だ、大丈夫!お父様とお母様が簡単にいなくなるわけない!きっと今頃僕たちを探してるよ!だから僕たちもあきらめずにお父様とお母様を探そう!」

「う、うん!」

 

ティアはあふれ出しそうになる涙を拭き取り、兄の手をとって立ち上がる。早速両親を探そうと決意した矢先、どこからか瓦礫の動いた音が聞こえた。もしかしたらそこに誰かいるのかもしれないと思い、二人は手を繋ぎながら走り出した。

 

二人は音がした場所まで走り続ける。瓦礫の音が大きくなってきて、ここに確実に誰かがいると確信して二人は辺りを見渡した。すると黒い影がごそごそと動くのが見えた。しかしなんだか様子が変だとロウとティアは警戒して、倒壊したビルに隠れて覗き込んだ。するとそこには想像を絶する存在がいたのである。

 

「え?な、なに、あれ?」

 

あまりにも想定外な存在にティアは思わずそう口にした。その存在を後ろからでしか確認できないが、大きくも黒い色をした丸い背中、両肩から見える大きな手、よくよく見るとその存在は何かを口にしているのが分かった。どうやら倒壊した建物の瓦礫を食しているようだ。

 

その悍ましい光景にロウとティアは一歩後ずさる。その瞬間、地面に転がっている石を踵で飛ばしてしまい、廃虚にコロコロと響いてしまう。その音に気付いた黒いデカブツは動きを止め、時間をかけて後ろへと振り向いた。その瞬間、そのデカブツの顔があらわとなり彼らに更なる恐怖を植え付けた。

 

そのデカブツの腹部はとてつもないほど大きな口が広がっており、何本もの牙が生えている上にまるでブラックホールのように奥底が見えない。そして両端からも竜を思わせるような口みたいなものが二本生えており、まるで悪魔をイメージさせるようなその見た目はロウとティアの動きを封じるには充分な見た目であった。

 

「っ!?」

 

デカブツと目が合った。そう思った二人は恐怖から腰が抜けて動けず、デカブツはこちらを見下ろしてくる。そして大きな二本の口を二人に伸ばしてきたのであった。

 

二人はもう駄目だと恐怖から思い目を瞑る。現状に訳も分からず死ぬなんて嫌だと父と母の顔を思い浮かべながら。その時彼らの耳に入ってきたのは甲高くも苦しそうな叫び声であった。

 

一体何があったのかと二人は勇気を出して目を開いた。そこには自分たちのよく知る小さな存在で、それでも今の自分たちには大きく頼もしいと感じる存在であった。

 

『イッブ!』

『い、イーブイッ!』

 

そこにいたのは色違いのイーブイ、つまり父の手持ちでロウとティアにとって仲の良い大切な友だちであった。

 

どうしてイーブイが突然ここに現れたのかは不明だが、二人はそんなことを考えている余裕はなかった。それよりもイーブイがいくら強いとは言え、相手とのサイズ差を改めて見比べてみるとあまりにも雲泥の差であり、とても勝てるビジョンが見えなかった。

 

それでもイーブイは自分にとって大切な友だちであり弟、妹分的なロウとティアのことを守ろうと自分よりも遥に大きな相手に立ち向かう。ロウも何か策はないかと思い思考を巡らせるが、未知の相手が敵で知識も全くないためいい案が思い浮かばず焦りだけが出てしまう。

 

その時デカブツがイーブイの姿を視認すると、先ほど攻撃された恨みなのかデカブツはイーブイに向かって甲高い咆哮をすると共に再び二本の口を伸ばしてきた。イーブイも反撃の態勢を取るが、それと同時に今度は女性の声と共に別の攻撃がデカブツの動きを止めるのだった。

 

「ピクシーさん!ムーンフォース!」

『ピックシ!』

 

やってきたのは白いピッチリとしたスーツを着た金髪の若い女の子と大きな体をしたピンク色のポケモン、ピクシーの姿であった。しかしその女の子はどことなくロウたちにとって見覚えがあり、雰囲気も知っているような気がした。

 

すると記憶の中にいるとある人物の姿が彼女の姿と一致した。そう、自分たちの大好きな母親であるリーリエであった。だが自分たちの知っている美人で優しい母親とは裏腹に、その少女は母親よりも若く小さい上に、勇ましいと言う表現がある表情を浮かべていた。

 

「お母様!」

 

ティアは咄嗟に母親に似たその少女のことをいつものようにお母様と呼ぶ。その言葉を聞いた少女は首を傾げながらロウとティアに呼びかける。

 

「お母様?あなた達!とにかくこちらに!早く!」

「っ!?は、はい!」

 

少女が自分たちを呼ぶ呼び方に違和感を感じたロウだが、今はそんなことを気にしている場合ではないと妹のティアの手を引いて少女の指示通り彼女に着いていった。イーブイもまたロウとティアの後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……ここまでくれば安心ですかね。」

 

少女に着いて行き辿り着いたのは、崩落しているもののまだ僅かに原型を留めている建物の内部であった。ピクシーのムーンフォースでデカブツが怯んでいる内にかなりの距離を走ったので今ならば少しは安全であろう。少なくともあれ程の巨体であればすぐに追いつくことは不可能だ。

 

少女は華奢な見た目から想像できないくらいの体力の持ち主だったようで、あれだけ走ったにも関わらず呼吸が乱れていなかった。対してロウとティアは年齢的に幼いこともあって肩で息をしている状態だ。周りには敵と呼べる存在はおらず、安心したのかロウとティアはその場に座り込んだ。彼らの様子を見た少女も土台になっている瓦礫に座り込む。

 

「とりあえず、いったんここで落ち着いて話しましょう。」

「は、はい、ええっと、助けていただいてありがとうございます。」

「ありがとうございました。イーブイもありがとね。」

『イッブ♪』

 

ロウは助けてくれた少女にお礼を言う。ティアはイーブイにもお礼を言い、抱きかかえたイーブイの頭を優しく撫でた。イーブイは気持ちよさそうな声を出して目を細める。

 

「まずは自己紹介を。私はリーリエと言います。こちらが私のパートナーのピクシーさんです。」

『ピクシッ!』

 

ロウとティアは少女の名前を聞いて驚き目を見開いた。リーリエは二人にとって大切な母親と同じ名前である。そのうえ彼女のパートナーはアローラの姿をしたキュウコン、シロンなのである。しかも自分たちの知る母に比べて若いというよりも、かなり幼く見える。自分たちよりも少し年上のお姉さん、といった印象だ。

 

「あの、どうかしましたか?」

「い、いえ!えっと、僕はロウと言います!そしてこちらが妹の……」

「は、はい!ティアです!」

 

どこか様子のおかしいロウとティアに少女、リーリエはどうしたのかと尋ねると、慌てて二人は自己紹介をする。ロウはお互いの自己紹介を済ませると、一つ気になることをリーリエに尋ねる。

 

「え、えっと、つかぬことをお伺いしますが、シンジ、と言う人はご存じですか?」

「シンジ、さんですか?お二人のお友達ですか?」

「いえ、僕たちの父、なのですが。」

「お父様ですか……申し訳ありませんがご存じないです。」

「そう、ですか……。」

 

ロウの質問にリーリエは少し悩んだ素振りを見せるも、自分の記憶にそのような人物は思い浮かばなかった。その解答にティアは暗い表情を浮かべていた。

 

頭の良いロウはその解答で可能性のある結論を思いつく。一つは父と出会う前の母の過去の世界であること。非現実的ではあるがなんらかの理由が原因で過去にタイムスリップした可能性だ。しかしタイムスリップしたにしてはあまりに世界が荒廃しすぎていて寒気すら感じてしまう。それになにより父のポケモンであるイーブイがいることも説明がつかない。

 

もう一つは自分自身が見ている夢であること。自分の持っている記憶が混ざり合って、辻褄のあわない夢を見てしまうことは珍しいことではない。だがその場合でも違和感は生じる。あまりにも自分の意識がハッキリしすぎている点だ。しかも呼吸や見ている景色、走った時に感じた疲労感、どれをとっても夢と思えない要素が揃いすぎている。なにより夢に母親が出てきているならば、なぜ父親はでてこないのだろうか。結局ロウとティアの疑問は晴れないままだが、今はこの状況を理解し何とか解決するしかないであろう。

 

「おか……リーリエ、さん。先ほどの大きなポケモン?は一体……。」

「あれは……人間のエゴが生み出してしまった悪魔です。」

「悪魔?」

「コードネーム“GLUTTONY”。通称アクジキング。」

「アクジ、キング……。なんだか怖かった。」

 

ポケモンとは思えない先ほどの異形な姿にイーブイを抱きかかえるティアの体は震えていた。イーブイは恐怖で震えるティアに優しく触れてなだめていた。

 

「人間のエゴってどういうことですか?」

「……もともとこのアローラ地方には大きな街がありました。自然も豊かで、人間たちもポケモンたちも多く住んでいて、とても平和でした。ですが……」

 

リーリエは過去の出来事を思い出しながら顔色を暗くする。

 

「人間は一度便利なものを手に入れると簡単に手放すことはできません。そして更に便利にしようと努力を重ね研究します。それがいけなかったのでしょう。研究が進むにつれ、世界の環境汚染もともに進んでいきました。環境汚染問題を解決するべく生み出したのが、あのアクジキングなのです。」

「え?でもさっきのは……」

 

ロウが疑問に思ったのは恐らくリーリエの言わんとしていることと同じだろうと、彼女も頷いて話を続ける。

 

「汚染された空気や排出されたゴミを食べるために、アクジキングが生まれました。なんでも食す大食漢、それがアクジキング。ですが彼の食欲は人間が想定していたものよりも遥かに悪食だったのです。」

「さっき、ビルの瓦礫を食べていたのも。」

「はい。彼自身の食欲を満たすための行為です。ただただ周りにあるものを無差別に食べ尽くす。そこには善意も悪意もなく、ただただ食欲という一つの欲を満たすためだけの存在。」

「もしかしてさっき、イーブイや私たちのことも……」

「食べようとしていたのでしょうね。彼にとって、周りの生き物すらも食べ物に見えているでしょう。」

 

その衝撃の真実にロウとティアはショックを受ける。まさか人類が研究の末に生み出した存在が人類にとって最大の敵になってしまうなどと想定しているはずもなかっただろう。

 

しかしだとすると一つ疑問が残ってしまう。その想像は一切考えたくもないものであったが、ここは聞くしかないとロウは勇気を出してリーリエに聞くのだった。

 

「も、もしかしてこの世界の人たちって、みんな……。」

「いえ、アクジキングに食べられたわけではありません。殆どの人間はみな別の世界に逃げて移住しています。ただ、私のように一部の人間はアクジキングを止めるために、ここに残っただけです。皆さんの現在の所在は、一切不明ですが……。」

 

リーリエと共に残ったメンバーはもしかしたら、と最悪な想像が三人の頭を過る。そんなこと、考えたくもないが先ほどのアクジキングを見ると、その可能性も否定できない。だがリーリエは屈することなく、二人にある決意を告げた。

 

「私は、なんとしてでもあのアクジキングを止めます。例え皆さんが倒れてしまっていたとしても、無事であったとしても、私には彼を止める義務があります。でないと、私は……。」

 

その彼女の瞳には悲痛の感情と強い信念を持った想いが込められていた。ロウとティアも正直あんな怪物と戦うなんて怖い。当然だ。自分たちよりも遥かに大きく、周りの物を食べ尽くすような怪物が怖くないわけがない。大人だって怯えて逃げてしまっても仕方のないような存在だ。しかしここで逃げてしまっては、尊敬する父に笑われてしまう。だったらロウとティアの考えは一つであった。これが夢だろうが現実だろうが、二人には関係がなかったのである。

 

「リーリエさん!僕たちも協力します!」

「少し怖い、けど、みんなの平和のために私も戦います!」

『イブッ!』

「で、ですがアクジキングは危険です!お二人の様な小さな子どもにまで戦わせるわけにはいきません!」

「小さな子どもじゃありません!僕たちはチャン……シンジの息子と娘です!」

「絶対に足は引っ張りません!お願いします!」

 

ロウとティアは頭を下げて頼み込む彼らの両親もまた正義感の強いトレーナーであったため、両親の血は無事子どもたちにも分けられたと言うことなのだろう。リーリエもそんな二人の姿を見て、頷いて答えた。

 

「……分かりました。ですが危なくなったらあなた達だけでも逃げる事、それだけは約束してください。」

『は、はい!』

 

こうしてリーリエ、ロウ、ティアによるアクジキング討伐作戦が決行されることになったのであった。




ここがどんな世界なのかは後編で分かります(タブンネ)


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ありえたかもしれない悪夢 後編

気が付くと見覚えのない場所で目が覚めたロウとティア。そこではアクジキングと呼ばれる人間が生み出してしまった悪魔のような存在が名前の通り悪食の限りを尽くし、世界は荒れ果て周囲が廃虚と化してしまっていた。

 

ピンチだった時に助けてくれたのは父のポケモンであるイーブイ。そして少し幼い姿をした母、リーリエと彼女のパートナーであるピクシーであった。

 

現在彼女たちはアクジキングの手の届かない場所まで避難し、奴を討伐するための作戦を考えていた。

 

「リーリエさんの仲間の方々は現在行方不明、なんですよね?」

「はい。アクジキングの暴走を止めるため、多くのトレーナーたちが名乗りをあげました。もちろん私も彼を野放しにしたくなかったので参加しました。ですがアクジキングにいくら攻撃を与えても、吸収されてしまい全く攻撃が通らないんです。おそらくあの大きな口で私たちの攻撃すらも食してしまっているのだと思います。」

 

その事実にロウとティアは驚く。リーリエが仲間たちと言うのだから相当の数のトレーナーが参加したに違いない。しかしどれだけの手数で攻撃を加えようとも、アクジキングの食欲はそれすらも上回るほど驚異的なものであった。

 

「じゃ、じゃあさ!Z技は!?ドッカーンってでっかいの叩きこめばさすがのアクジキングも食べられないんじゃない?」

 

ティアは名案だと思いそう提案した。自分はまだ試練に挑戦できる年齢ではないので使うことができないが、いつも父が試合で使っているのを見て憧れているのと同時に、決まれば絶対無敵の必殺技だと思っている。しかしティアの期待も空しくリーリエは首を横に振り否定の意を示した。

 

「ロウさん、ティアさん。Z技の発動条件は何かご存じですか?」

「え?ポケモンとトレーナーの絆じゃないの?」

「……っ!?そ、そういうことですか……。」

「え?え?どういうこと?」

 

リーリエの悲しげな表情の意味が理解できたロウとは裏腹に、ティアは兄が一体何に理解しているのか分からずあたふたとしていた。ロウは理解できていないティアに説明をする。

 

「Z技はポケモンとトレーナーの絆が必要不可欠。だけどそれと同時に、アローラの太陽や海、そして自然の恵みから力を授かってようやく真価を発揮する大技。でもこの世界では……。」

「あっ!?そ、そっか……ここではアクジキングが……。」

 

そう、環境汚染、そして何よりアクジキングの暴走により自然がほぼ壊滅状態となってしまっている。そんな環境ではZ技を発動することはできない。いや、できたとしても威力は大幅に軽減されてしまい、大技とは言えない程度の威力にしかならないであろう。

 

正直ロウもZ技には大きな希望を抱いていた。しかし非常な現実を突きつけられてしまい、内心かなり落ち込んでしまっている。

 

「……そうだ!アローラの守り神様たちは!」

「それが……。」

 

アローラの守り神。カプ・コケコ、カプ・テテフ、カプ・ブルル、カプ・レヒレ。アローラ四つの島をそれぞれ守護し見守る存在。それぞれ特徴的な性格をしているが実力は申し分なく、彼らであればアローラを守ってくれるのではないかとロウは考えた。しかしその期待すらもリーリエの一言で無に帰してしまった……。

 

「守り神たちは……いません。」

「え?ど、どういうこと、ですか?」

「守り神は恐らく……人間たちに愛想を尽かしたんだと思います。気付いたときにはもう、一切姿が見えなくなってしまったので……。」

 

普段姿を見せることがない守り神とはいえ、かつては人間の危機を何度か救った経歴のある守り神たち。しかし今回に限っては一切助けてくれる様子はなく、それどころか祠にお祈りにいっても音沙汰がなかったのである。今までとは明らかに様子が違い、人間たちの勝手な行いに見限って彼らは姿を消してしまったのではないかと結論付けることとなったようだ。

 

「で、では本当に打つ手は……。」

「残された手段はたった一つ。私たちがアクジキングを倒すのみです。」

「ちゃ、チャンピオンは!?それか別の地方から援軍を要請するとか!」

「この地方にチャンピオンはいません。もちろんポケモンリーグも設立されていませんので、ハッキリ言ってしまえばトレーナーの質は他の地方に比べて低いです。他の地方に援軍を要請するにしても、ご覧の状況では連絡手段が途絶えてしまい、直接伺ったとしても時間がかかりすぎてしまってアローラ地方は……。」

 

このアローラ地方は他の地方から大分隔離された場所に位置しているため、船で長い時間をかけて旅をするしかない。しかし往復する時間も考えると、1日2日で帰ってこれるような距離ではないため最適とは言えない。

 

周囲の建物も崩落してしまっているため、当然連絡手段も現状存在しない。危険地域であるためトレーナー以外の人間は全て別世界に避難していることも踏まえると、もはやアクジキングに対抗する手段は一つしか考えられなかった。

 

「……僕たちがやるしかない、か。」

「私たちが……あのデカいのと……。」

 

覚悟は決めたつもりであったがまだ経験が浅く幼い二人ではやはり荷が重い。先ほどアクジキングに食べられそうになってしまった恐怖のトラウマもあって足が震える。自然と手にも力が入るが、そんな震えるティアの手に優しく触れる感触があった。

 

「っ、イーブイ?」

『イブ!イッブイ!』

 

自分よりも小さい身体なのにも関わらず、抱えられているイーブイはキリッとした逞しい顔つきでティアを元気づける。その顔はまるで『僕に任せて』とでも言っているようであった。

 

「……うん、そうだよね!こんなんじゃダメだよね!」

「僕たちはチャンピオンの子ども……このくらいの危機、お父様なら必ず乗り越えられる。僕達だって!」

「お兄様と私、それにイーブイがいる!大丈夫!大丈夫!」

 

大丈夫だと自分たちに言い聞かせるロウとティア。そんな二人と一匹の様子を見て、出会ったばかりの幼い少年と少女のはずなのに頼もしい姿だと心の中で思うことができた。あれだけ絶望的な敵が相手であっても、彼らがいれば大丈夫なのではないかと感じたのだ。そしてその瞬間、見知らぬはずの男の姿がリーリエの目に映ったのであった。

 

(っ、い、今の人は……)

 

どこか懐かしい気がする、と男の正体が気になるリーリエだったが、次の瞬間、予期せぬ現象が目の前で発生してしまったのである。

 

現在リーリエたちがいるのは廃墟ビルの内部だが、周囲の建物と同様に崩落しているため天井には大きく穴が開いてしまっている。違和感を感じたリーリエが空を見上げると、そこには空間の裂け目ができており何かが姿を現した。

 

「っ!?アクジキング」

 

 

 

『あああああああああああああああアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!』

 

 

 

それはなんとつい先ほどロウたちに恐怖を植え付けた元凶、アクジキングの姿であった。アクジキングは周囲全体が震えるほど甲高く大きな声で咆哮する。その声は聞くもの全てに恐怖感と嫌悪感を同時に与えるほど不愉快なもので、ロウたちは思わず耳を塞いだ。

 

「っ!?マズいです!今すぐビルの外に!」

 

アクジキングの咆哮は周囲にも影響を与えた。巨大な咆哮によってビル全体が振動し、既に半分近くが崩落していたビルが耐えられるはずもなく更に崩壊を進めていく。リーリエの咄嗟の指示によりロウ、ティア、イーブイとピクシーもビルの外まで脱出する。

 

リーリエたちが脱出に成功すると同時に先ほどまでいたビルは完全に崩落した。崩壊したビルの残骸を目にしたロウとティアは、少しでも脱出が遅れてしまったらどうなっていたのかと、最悪の結末を想像したら血の気が下がる気がした。

 

脱出したロウたちと違い当の原因であるアクジキングはビルの残骸に埋まった。もしかしてこれでやれたのか、と淡い期待も胸にしていたが、当然そんな期待は一切叶うことがなかった。

 

ビルの残骸から黒い手が飛び出してきた。そして手に瓦礫を大きく握りしめると、残骸から姿を現したアクジキングが瓦礫を口にしたのだった。どうやらダメージと呼べるものは一切なく、自分の身体よりも食欲を優先するほど余裕があるようだ。

 

「くっ、想定外の展開ですが、これ以上逃げることはできないみたいです。やるしかないですね!」

 

先ほど逃げられたのはアクジキングが鈍足だと言う事が前提だ。しかし偶然か意図的かは不明だが、いずれにしてもワープできる可能性が出てきてしまうとこれ以上逃げても無駄に体力を消耗してしまい最終的に食べられてしまうだろう。だったらここで抵抗して食べられる前に倒してしまうしか道はない。リーリエはそう決断した。

 

「ロウさん、ティアさん。ここでアクジキングを止めます。ですが危なくなったら、あなたたちだけでも逃げてください。」

「そんな!でもリーリエさんは!」

「先ほど約束したはずです。絶対に逃げてください。いいですね?」

『っ!?』

 

ロウとティアはリーリエの事を知っている。彼女が自分たちの大好きな優しい母親なのだから当然だ。実際の彼女でも恐らく同じことを言うだろう。

 

しかし現在目の前にいる彼女は自分の知っている優しい母親とはどこか違う。見た目が幼いから、と言う理由ではない。彼女の表情は温厚なものでは一切なく、凄んでいる目つきであり、どこか悲しそうな険しい表情をしていた。その顔を見たら、ロウとティアは反論することができなかった。初めて彼らは自分の母親ことを怖いと感じたのだった。

 

「さあ、行きますよ!」

 

リーリエはアクジキングに向かい合う。するとアクジキングはリーリエと向かい合い、彼の目は獲物を見る目から完全に敵対視している警戒した目つきへと切り替わった。リーリエのことを食事の対象としてでなく、自分に仇なす敵だと認識したのだ。

 

アクジキングは大きな口から黒い波動をリーリエに向かって放った。あくタイプの技であるあくのはどうだ。

 

「ピクシーさん!ひかりのかべです!」

『ピックシ!』

 

ピクシーはリーリエの前に出ると、ひかりのかべで彼女をあくのはどうから守る。そしてピクシーはすぐさま反撃に出た。

 

「ムーンフォースです!」

『ピィ!』

 

ピクシーはムーンフォースで攻撃する。しかしピクシーのムーンフォースは、無情にもアクジキングの口の中に吸引され、無力化されてしまった。

 

「僕たちも!イーブイ!シャドーボール!」

『イブッ!』

 

次はイーブイのシャドーボールがアクジキングに迫る。だが結果は変わることなく、アクジキングがシャドーボール吸引し食すという同じ結末であった。

 

「お兄様!ここは私が!イーブイ!走って!」

『イブ!』

 

ロウに代わってティアがイーブイに指示を出す。ティアの指示通り、イーブイは走り始める。小さな身体、そしてスピードと小回りの良さを生かして走り回る。アクジキングはあくのはどうを連続して放つが、イーブイを捉えることはできない。

 

イーブイはアクジキングの怒涛の攻撃を躱しながら接近する。アクジキングの足元まで辿り着くと、ティアはイーブイに次の指示を出す。

 

「アイアンテール!」

『イッブ!』

 

イーブイは尻尾を硬化させ、アイアンテールでアクジキングの足を薙ぎ払う。当然アクジキングは大きすぎるためイーブイの力では完全に崩すことはできない。しかしアクジキングのスピードは反応速度、移動速度、どちらをとってもかなりの鈍足であり、軽くでも怯めば態勢を整えるのにも時間がかかるだろう。

 

ティアは兄であるロウに比べてバトルセンスが高い。だが彼女は知識の量では下回ってしまっており、殆どなんとなくで戦っている感覚派のトレーナー、いわゆる天才肌と言うやつだ。今回の作戦も彼女自身、アクジキングの足を崩せないかな程度の考えだったのだろうが、結果的に功を奏したのだ。

 

「っ!?今です!もう一度ムーンフォース!」

『ピィ!』

 

ピクシーは態勢を崩したアクジキングの牙目掛けてムーンフォースを放った。怯んで動けないアクジキングは抵抗することができず、ムーンフォースの直撃に苦しみ悲鳴をあげる。絶妙なコンビネーションで大きなダメージを与えることに成功するが、アクジキングは苦痛からなのか、それとも苛立ちからなのか、さらに大きな雄たけびをあげる。

 

 

 

『アアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァああああああああああああああああ!!!!!!!!』

 

 

 

アクジキングの悲鳴により周囲に衝撃波が発生する。その衝撃波により、アクジキングに近くにいたイーブイは大きく吹き飛ばされ、ロウとティアは慌ててイーブイの元に駆け寄る。

 

「イーブイ!」

「大丈夫!?」

『いぶっ』

 

衝撃波によって飛ばされたイーブイは、ロウとティアの呼びかけに応じてゆっくり立ち上がり。しかし衝撃波と同時に周辺の瓦礫も飛び散ったため、その破片がイーブイに当たってしまい傷を負ってしまったようだ。思いのほかイーブイに対してのダメージも大きいものとなってしまっている。

 

続いてアクジキングは上空を見上げる。するとアクジキングの口に光が集中し空目掛けて放たれた。頂点まで達すると、光は周囲全域に分散しところかまわず襲い掛かった。ドラゴンタイプ最強の技、りゅうせいぐんである。あまりの破壊力と無差別な攻撃に、ロウとティアはイーブイを抱えて伏せて目を瞑る。

 

「くっ!?ピクシーさん!」

『ピクシッ!』

 

ピクシーは急いでロウとティアの前に立つと、上にひかりのかべを展開して彼らをりゅうせいぐんから守る。リーリエも急いで彼らの元へと駆け寄った。

 

「二人とも、大丈夫ですか!?」

「は、はい……」

 

ピクシーに守られていることで少し安心感を感じられたため、なんとか落ち着いて声を振り絞るロウ。しかしやはりまだ幼い少年と少女、声は震えており冷や汗が止まらない様子だ。恐怖心を抱くのも無理はないだろう。

 

そんな二人を見て、リーリエはある決断をして口にした。

 

「……ロウさん、ティアさん、りゅうせいぐんが止んだらすぐにここから避難して下さい。」

『っ!?』

「危険になったらすぐに逃げること。これは私たちの約束です。私とピクシーさんなら大丈夫ですから。」

『ピックシ!』

 

リーリエの言葉に反応し、ピクシーも笑顔で振り返り返答する。リーリエは立ち上がり、ロウとティアの前に出る。

 

「すいませんピクシーさん。最後まで付き合っていただけますか?」

『ピクシッ!』

「……ありがとうございます。」

 

リーリエの問いにピクシーももちろんだと言った表情で答える。その返答にリーリエも満足そうな表情を浮かべる。

 

(お母様……お父様……お兄様……どうか見守っていて下さい)

 

リーリエはそう心の中で空に願いを込める。一方ロウは……。

 

(っ、結局僕は何もできてない。助けるって言いながら、戦ったのはほとんどティアとイーブイで、お母様とピクシーに守ってもらって、僕は……)

 

ロウは悔しさから手をギュッと握りしめる。例え知識があったとしても、未知の相手や世界では何も意味をなさない。バトルセンスのない自分では全くの役不足であり、足手まといにしかならない。無力な自分に腹が立つ。

 

(こんな時、お父様なら……)

 

幾度もアローラを救い、みんなの希望であり続けた父の姿を思い浮かべる。その背中は頼もしく、信頼するパートナーと共にどんな敵に対しても臆することなく立ち向かい勝ち続けてきた憧れの存在。父のような立派なトレーナーになりたい。世界を救いたいなんて大それたことは言わないが、それでもせめて、せめて目の前で苦しんでいる人だけでも助けたい。大好きな父のように。

 

ロウがそう願った次の瞬間、握りしめていた拳が突然光始めた。それと同時に、イーブイの体の中心もまた反応するかのように光り輝いていたのだった。

 

「えっ?えっ?なになに?」

 

突然の現象に戸惑うティア。リーリエも一体何が起きたのか分からず驚いた表情をしていた。

 

ロウは自分の光る拳を恐る恐るゆっくりと開き確認する。するとそこに握りしめていたものは見覚えがあるものであった。黒い色をした腕時計のようなリング。そして中央にはひし形の何かを嵌めることのできる穴。これは紛れもなくZ技を発動するために必要なZリング。それも父が愛用している特殊なZリングであった。

 

「イーブイ、これって……」

『イッブイ!』

 

イーブイは理解しているのか、ロウの方へと振り返って頷いた。正直突然のことでロウ自身まだ理解が追い付かない。だがここに父のZリングがあり、それを信じろとイーブイは返事をしてくれた。ならば自分は父とイーブイを信じる。そう結論付けたロウは覚悟を決めてZリングを腕に装着した。

 

まだトレーナーではないロウはアローラの試練に挑戦できない。つまりZ技を発動した経験は皆無だ。しかしZ技自体は幾度となく見たことがあるため、自分の目に焼き付いている。その姿をしっかりと脳裏に思い浮かべ、ロウは集中し深呼吸をする。

 

(Z技……アローラの島巡りを乗り越えることで使用することができる必殺技とも言える大技。それに必要なのは、ポケモンとの信頼関係、絆。僕とイーブイには充分!)

 

「行くよ!イーブイ!」

『イーブイ!』

 

ロウは集中する。初めてのZ技とこの土壇場の状況で緊張もするが、それ以上にどこかワクワクし気分は高揚していた。自分も父と同じZ技ができる。憧れの存在に一歩近づけるのだと。

 

ロウはワクワクしながらも冷静さを欠かず集中力を乱さない。バトルセンスは低くても、スクールの成績上位なだけはあり集中力は幼い子どもとは思えないほどだ。ロウのZリングとイーブイの体にオーラが纏い、その力は解き放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ナインエボルブースト!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イブーイ!』

 

イーブイがオーラを纏い空に向かって吠える。するとその咆哮に呼応してか、青、黄、赤、紫、黒、緑、水、桃の色をした球体が彼方より迫ってきた。球体がイーブイの頭上で円を作り浮遊すると、うっすらとその姿が浮かびだされていた。

 

「っ!?こ、この子たちって!」

 

『シャウ!』

『ダース!』

『ブッスタ!』

『エフィ』

『ブラッキ』

『リィフ!』

『グレイ!』

『フィーア!』

 

そこに浮かび上がったのはイーブイの進化系、シャワーズ、サンダース、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシア、そしてニンフィアであった。それぞれのポケモンたちがイーブイに力を分け与えると、イーブイの纏っていたオーラが更に大きくなっていき、それと同時にニンフィアたちも自然と消滅して気付けばいなくなっていた。

 

ロウとティア、そしてリーリエにはイーブイの力が大幅に増加しているのがよく分かる。その力を見たアクジキングも怯んでいる様子で、恐怖を感じているのか一歩後退りをした。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『イブィ!』

 

ロウがイーブイに指示を出す。イーブイがスピードスターを放つと、スピードスターがアクジキングの周囲を取り囲んだ。アクジキングは煩わしそうに腕や牙を振るって薙ぎ払おうとするが一向に離れる気配はない。

 

「す、すごい……。」

 

ふとそう零したのはリーリエであった。まさかイーブイがここまでの実力を持っているなんて思わなかったのもあるが、その実力は明らかに自分よりも上だと悟った。そのイーブイの実力は、彼女にとって尊敬するに値するものだった。

 

「ティア!」

「うん!お兄様!」

 

二人は互いに確認し頷く。条件を満たした今、イーブイにとっての切り札を解き放つ時である。その切り札とは……。

 

『とっておき!』

『イッブイッ!』

 

文字通りのとっておき。自分の所持している技を全使用することで初めて発動することができるとっておきの技。イーブイはスピードスターとは比にならない大きな星を生成し、アクジキングに向かって解き放った。その星はアクジキングでさえとても吸収するほどができない程強大なもので、アクジキングの全身を光が包みこんだ。

 

 

 

『アアアアアアアアアあああああああああああああァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

 

 

 

アクジキングは光に包まれると、その大きな巨体ごとゆっくりと姿を消し次第に消滅していった。アクジキングは光の柱へと変化し、光がアローラ全域に広がり包み込んだ。

 

光の柱から一粒の光がリーリエの足元にゆっくりと落ちた。光の粒子が地面に吸収されると、そこから緑の芽が出てきた。環境汚染とアクジキングの影響で完全に消滅したと思われた植物が、目の前に再び誕生したのである。その姿にリーリエは温かい気持ちになり、そっと涙を流していた。

 

次の瞬間、先ほどまで汚染され汚れていた空が晴れ渡り、リーリエ、ロウ、ティアの三人は再び空を見上げる。するとそこには人間を見限って消えたはずの守り神、カプ・コケコがこちらを見下ろしていた。

 

「守り神……様?」

『…………』

 

カプ・コケコは静かに見下ろす。空を見上げ手を広げるカプ・コケコ。そんな彼から光が放たれ、その光はリーリエたちを含むアローラを包み込んだ。

 

あまりの眩しさに目を瞑る三人だが、リーリエは眩しい中でもゆっくりと目を開いた。するとそこには一人の男の横顔が見え、彼の表情は口元が緩んだ笑顔であった。その表情はリーリエをどこか優しい気持ちにさせ、安心感を与える不思議なものであった。

 

(あなたは、先ほどの……)

 

アクジキングに襲われる前にも見た記憶のある男の後ろ姿。リーリエは手を伸ばそうとするが、その男は歩きはじめどんどんとリーリエから距離を離していく。リーリエも釣られて歩き始めるが、距離は縮まることはなく次第に彼の姿が見えなくなってしまった。

 

彼の姿が見えなくなった瞬間、リーリエは光から解放される。そこにロウとティア、イーブイの姿はなく、残されたのはリーリエとピクシーだけであった。

 

「今のは、一体……」

『ピクシ?』

 

リーリエの脳裏に焼き付くように残った男の姿。はっきりとは見えなかったが、それでも薄っすらとした彼の姿はリーリエの記憶に刻み込まれた。その男を何故か知っているのではないかと、そんな気がした。

 

「……もしあなたに出会えていたら、違った未来もあったのかもしれませんね。」

 

リーリエは久しぶりに澄み切った空を見上げる。大きく深呼吸をし、アローラの空気はこんなにも美味しかったのかと、久しぶりの感覚をじっくりと味わう。以前は当たり前のように感じることのできたアローラの自然。

 

「これからは私が……私たちがこの豊かな自然を守っていかなくてはなりませんね。」

 

彼女は小さくそう呟いた。彼女の決意を歓迎し祝福するように、太陽は温かくアローラの地を照らしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロウ、ティア。そろそろ起きないと遅刻するよ。」

『んっ』

 

ゆっくりと揺らされてロウとティアは目を覚ます。その優しく語り掛ける声は、二人にとってとても聞き覚えのある大好きな声で、とても懐かしく感じる安心感のある声だった。

 

目を開けると、そこに立っていたのは自分の大好きな父、シンジの姿であった。

 

『っ!?お父様!』

「っとと、ど、どうしたの二人揃って……。」

 

二人は父の姿を見た瞬間、感極まって涙を流しながら父に抱き着いていた。突然抱き着かれたことでシンジは反応できず戸惑うが、怖い夢でも見たのだろうかと二人の頭を撫でる。

 

「どうしたのですか?何やら大きな物音が……」

『お母様!』

 

今度は姿を見せた母、リーリエに抱き着いた。当然リーリエも反応できるはずもなかったが、急に甘えん坊になった二人の頭を優しく撫でる。

 

『イッブイ♪』

『イーブイ!ありがとう!』

『イッブブイ♪』

 

今度はイーブイがひょっこりと顔を出すと、二人はイーブイを抱きしめる。イーブイも嬉しそうに笑顔で抱きしめられている。

 

なんだかいつもと様子が違うなと思いながら、それでも怖い夢でも見たのならば大切な息子、娘を慰めてやろうとシンジとリーリエは二人でその温かな腕で優しく包み込んだ。

 

ロウとティアが見ていたのは果たして夢なのか、幻なのか、はたまた……。その正体は結局誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らを、黒い何者かが見下ろしていた。黒い何者かは表情を変えることなく、自らの暗黒の影の中へと姿を消すのだった。

 

 

 

 

 




正直こんなに長い話になるとは思わなかったので今回の話の補足、設定などは次回のお話で書きます。それまで自分の中で考察でもして待っていただけると。

あっ、ありきたりな設定だと思うのであんまり期待しないで欲しいです。期待されすぎると私の胃が……。



因みに現在色イーブイを大量捕獲中です。現状91匹捕まえていて、濃霧の証持ちが♂5匹、♀3匹で♀はドリームボール2、ラブラブボール1で捕まえました。DLC後編配信まで全力で厳選(乱獲)して行きます。

証持ち色ニンフィア♀6匹の歌姫パーティでブルーベリー学園に殴り込みに行く予定


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ありえたかもしれない悪夢 解説・補足

前回書いたお話の世界についての解説となります

正直書いてるうちに『主人公いないだけでヤバすぎでは?』と自分で引いてました。ドラゴンボールで言うところの悟空が死んだだけで悲劇の道を進んだトランクスの未来世界みたいな感じ。

そう言った設定を胸糞に感じる方がいましたらブラウザバック推奨です。













































OK?


世界観

 

人間が便利さを求めて研究を進めてきた結果、環境汚染が進行して荒れ果ててしまったアローラ地方の世界線。

このような結末を迎えてしまった理由は、まず主人公不在であること。主人公が不在であることによって発生してしまう不具合は、

1、コスモッグを守れず覚醒しない

2、スカル団を止められるものがおらず治安が悪い

3、ルザミーネを助けられずエーテル財団崩壊

4、チャンピオンが誕生せずトレーナーの実力が低下

5、UBの被害増大 など

 

父親に続いて母親まで同じように失ったことでグラジオは両親を探しながら実力をあげるために旅に、リーリエは頼れる家族がいなくなったため、母の忘れ形見でもあるピクシーと共に強く生きることを決意。だがシンジがいないことによって師匠と呼べる存在がおらず、トレーナーとしての実力は正史世界に比べて大きく異なりかなり低い。

 

世界的な技術力は正史世界よりも進歩している。その代償として環境汚染が進行してしまい、解決するべく生み出されたのがアクジキング。かつて出現したUBについての研究も進められ、その研究の成果がアクジキングの素材となっている。だが結果、アクジキングの食欲が想定よりも遥かに高く暴走してしまい、アローラ地方一番の都市であるハウオリシティが半壊に追い込まれてしまったため撃退を決意。

 

島巡りに挑戦しているトレーナーも含め、多くのトレーナーがアクジキングを撃退するため抵抗するも、UBの能力が含まれているアクジキングに普通の攻撃は通用せず、トレーナーの実力も伴っていないため街が壊滅状態になってしまう。環境汚染とアクジキングの暴走によってアローラの自然もほぼ壊滅、悪天候の状態が続いてしまい太陽の光も徐々に薄くなってしまっている。自然の恵みが減少したことによってアローラのトレーナーがZ技を全力で使用できなくなり、さらに戦力が低下する。

 

人間たちの過ちによって守り神たちも愛想を尽かして失踪。アクジキングへの対抗手段が完全になくなってしまい、一部のトレーナーを除いて最終手段としてUBの研究成果を利用してウルトラホールを通り、別の世界へ移住する決意をした。リーリエを含む一部のトレーナーは最後までアクジキングに抵抗するため残った。だがほぼ建物も目印になるものも原型をとどめていないため、メンバーが散り散りになってしまい行方不明となる。

 

迷い込んでしまったロウとティアにとって悪夢の世界であるが、この世界はある者によって生み出されてしまった暗黒の世界であり、もしかしたらあったかもしれない最悪の未来である。少しでも選択を誤ってしまうと未来は崩壊してしまうという警告なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

この世界の人物やポケモンたち

 

アクジキング→環境汚染が進んだアローラ地方を掃除するために人間によって生み出された存在であるため、この世界ではUB扱いではない。そのためコードネームにUBが付いていない。UBの能力を参照して作られたため空間移動が可能で、サイズも本来のアクジキングより大きい。また、無限の食欲に関してもウルトラホールが関係している。

最終的にイーブイとブイズたちのZ技(光)によって、悪夢であり闇そのものであった元凶のアクジキングは消滅し、アローラに光が戻った。

 

ピクシー→ルザミーネのパートナーだったポケモン。彼女の部屋に残されており、リーリエとも仲が良かったこともあって彼女についていくことを決めた。

 

黒い何者か→毎回何かしらの戦いに巻き込まれるアイツ。つまるところロウとティアが見ていたのは悪夢ではあるが、別の可能性があった平行世界の話でもある。

 

カプ・コケコ→人間たちの過ちに愛想を尽かして姿を消した。しかし人間たちのことを見捨てたわけではなく、最後まで彼らのことを信じて陰から見守っていた。自分たちに課せられた試練を乗り越えた時、再びその姿を現した。

 

リーリエ→正史世界とは異なる歴史を歩んだリーリエ。シンジに出会わなかったことでルザミーネを助けることができず、ピクシーと共に強く生きることを決めたため控えめな性格から少し強気な性格に変化。ただし実力は正史世界のリーリエよりもはるかに劣ってしまう。大切な人たちを失ってしまったため、誰かが犠牲になるのことを極端に怖がる。

 

スカル団→グラジオやミヅキたちが抵抗するも、グズマに敗北してしまったため誰も止めることができず、グズマはルザミーネと共にウルトラホールへと姿を消してしまった。結果、リーダーの失ったスカル団の残存メンバーは荒くれ者の無法者集団になってしまった。プルメリはグズマのいないスカル団に興味を失い、一人どこかへと消えた。

 

ルザミーネ→ウツロイドと共にウルトラホールへと旅立っていった。グラジオたちがスカル団に敗北してしまったため助けることができず、神経毒にやられつづけている最悪の結末を迎える。

 

グラジオ→スカル団に敗北し、母親であるルザミーネを救えなかった悔しさからリーリエを残して旅にでる。旅の中で修業しながらどこかへと姿を消した両親を見つけるため、一人孤独に旅を続ける。

 

ミヅキ→グラジオとリーリエの助けになることができず、自分の実力の無さを痛感し精神的に追い込まれてしまう。二人に合わせる顔がないと、どこかに姿を消してしまう。

 

しまキング、しまクイーン、キャプテン→この世界での実力は非常に高いトレーナーたちだが、アクジキングに抵抗するも本来の威力であるZ技が発動できず歯が立たなかった。やむ無く撤退し、アローラの住民を守るため彼らの身の安全を優先し守りながら移住することを決意した。

 

ククイ→本来であればシンジをアローラに連れてきた張本人であり、ポケモンリーグの設立にも貢献していたため結果的に一番の功労者だが、シンジに出会うことがなかったためアローラは最悪の結末を迎えてしまった。この世界では別の地方を見て回っており、強いトレーナーがいないかを模索していたものの残念ながら彼が強いトレーナーを見つけ、ポケモンリーグを設立する夢は叶うことはなかった。

 

バーネット→空間研究所の所長であり、人間たちが移住するためのウルトラホールを開発したこの世界で一番の功労者。行方不明になってしまった友人、ルザミーネのことが気がかりであり、旅に出たまま長いこと姿を見せない夫ククイのことを心配しながらも、研究員たちや移住先での生活のことも考え、自らもアローラの住民たちと共に別の世界へと移住することを決意する。

 

エーテル財団→ルザミーネが行方不明になってしまい、その息子であるグラジオが姿を消してしまったため実質ビッケが後継者として引き継ぐことに。しかしエーテル財団の信用は低迷してしまい彼女自身有能であるものの、出世欲に飲まれてしまったザオボーとその部下が裏切りエーテル財団を乗っ取ることとなる。結果当然エーテル財団は崩壊し、大企業が潰れたことでアローラの秩序すらも壊してしまう最悪の結末を迎える。

 

ウルトラビーストたち→ルザミーネが消える前に襲来していたが、トレーナーたちの奮闘もあって撃退には成功した。しかし当然苦戦は強いられており犠牲者はルザミーネを除いていないものの、町や島全体に対しての被害は甚大なものであった。

 

トレーナーたち→島巡りに挑戦するトレーナーは存在するものの、チャンピオンであるはずのシンジが不在であるため、彼の本来行うはずであったトレーナー育成のための試みも行われず、アローラ地方のトレーナーたちの実力は大幅低くなってしまっている。また、ポケモンリーグも存在せずポケモンバトルが正史世界に比べて浸透していないため、トレーナー自体の人数もかなり少なくなっている。チャンピオンと言う強大な目標もないため、途中から挫折する者も多い。




やっぱり主人公は必要やね

本日12月14日、遂に全人類が待望していた藍の円盤配信日
前日までに【証持ち色違い♀ニンフィア】を6体育成したので準備万端です。

因みに最終的に色違いイーブイは証持ち78体、証無し102体の計180体捕獲しました。自分でも気が狂ってると思う……。


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番外編
USUM発売直前記念特別編 ~僕~


USUM発売が遂に明日へと迫ってきたため、(勝手に)スペシャルっぽくオリジナルストーリーを書いてみました。初めに言っておきますが滅茶苦茶長いです。元々こんなに長い話にする気はなかったですが、気付いたら2万字を超えてました。書いてるうちに筆ならぬキーボードが進んでいました。非力な私を許してくれ。

今回はアニポケとのコラボをしてみました。時系列はだいぶ前ですが……。先週のアニポケでは遂にリーリエがポケモンに触れるようになって感動しました。後グラジオがポケモンと妹思いでいい子過ぎる。グラジオBGMアレンジが神すぎて泣いた。

原作でもアニメでも大体ウツロイドの所為


この話はシンジがチャンピオンとなり、リーリエと再会する前の不思議な不思議な出来事を綴った記録である。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

リーリエがカントーに旅立ってから数か月が過ぎた。あれから僕は今もチャンピオンとして防衛を続けている。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

 

「なっ!?ケンタロス!?」

 

チャレンジャーとして今日挑戦してきたタロウ君のケンタロスが目を回して戦闘不能になる。タロウ君はすぐにケンタロスに声をかけ、ボールに戻す。僕はそんな彼に声をかけるために前に出る。

 

「君のポケモンたち、よく育てられているね。特にケンタロスは力強くていい動きしてたよ。」

 

「ありがとうございます。でもやっぱりチャンピオンはレベルが違いますね。また、挑戦させていただいてもいいですか?」

 

「うん。君がまた挑戦してくるのを楽しみにしてるよ。」

 

タロウ君は頭を下げてチャンピオンの間を後にする。他にも挑戦者として挑んでくる人は数多くいる。僕としても強いチャレンジャーたちとバトルできるのは楽しいけど、やっぱり毎日のようにやってくる挑戦者の相手をするのは少し疲れるかな。

 

僕がチャンピオンの間にある椅子に座って一休みしていると、四天王のハラさんが僕の元へとやってきた。

 

「チャンピオン、少しよろしいですかな?」

 

「ハラさん、今は二人きりなんですからいつもの呼び方で呼んでくださいよ。なんだかその呼び方まだ慣れないので……。」

 

僕は苦笑いしながらハラさんにそう言う。ハラさんも僕に釣られて笑いながら「それはすみませんでしたな!」と言う。四天王とチャンピオンと言う関係になっても、みんなは僕といつものように関わってくれていて、僕としても凄く助かっている。

 

「実はシンジ君に少しお願いしたいことがありましてな。」

 

「お願い……ですか?」

 

ハラさんはそのお願いを少し深刻そうな表情で伝える。

 

「先ほどククイ博士から連絡がありましてな。君が以前ウルトラビーストの事件の時に行った日輪の祭壇を覚えていますかな?」

 

「はい、もちろんです。」

 

あの時の事は忘れるはずがない。リーリエと共にほしぐもちゃんとルザミーネを助けるために行った場所なんだから。

 

「そこで何やら強い磁場のようなものが発生しているようでしてな。それをチャンピオンである君に少し調査していただきたいと依頼されたのです。」

 

「調査ですか?別に構いませんがなぜ僕なのでしょうか?」

 

「君は以前アローラ地方を救ったという経歴がある。それに私やククイ博士を含め、多くの人が君に信頼を寄せている。危険かもしれないが、どうか頼まれてほしいのです。」

 

ハラさんは頭を下げて僕に心から頼み込んでくる。そこまで言われたら仕方ないね。元々僕は断るつもりはなかったけれど、最近は平和そのものだったし偶にはこういうのも悪くないかもしれないね。

 

「分かりました。ですからどうか頭を上げてください。必ず無事に帰ってきますから。」

 

「シンジ君。ありがとう。君にそう言ってもらえて私もホッとしました。準備ができしだいククイ博士も向かうそうですので、先に行ってて下さいと言っておりましたぞ。」

 

「分かりました。それでは先に向かってますね。」

 

僕はハラさんに別れを告げ先にポニ島にある日輪の祭壇に向かう。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライドポケモンであるリザードンを借りているので直ぐに向かうことが出来た。僕は懐かしの日輪の祭壇へと無事に辿り着くことが出来た。

 

「ありがとうリザードン。またよろしくね。」

 

僕がリザードンを撫でるとリザードンは嬉しそうにして再び飛び立つ。そして僕は祭壇の階段を上り始める。頂上に辿り着いた僕は、以前きたときと違う違和感を感じた。

 

「……なんだろう、この違和感」

 

僕は空を見上げると空は一面の星空で輝いていて、綺麗な運河が流れていた。今は夜であり、こんなにきれいな星空を高いところが見上げると神秘的な感じがする。

 

「ん?あれって……」

 

僕が空を見上げていると、月がいつも以上に輝いている気がした。その月にこそ違和感を感じる。そしてその月から何かが近づいてくるような気がした。少しずつ大きくなってくるそれがハッキリとしてきた瞬間、僕はその正体に気付いた。

 

見た目は星空をイメージしたように輝く大きな翼に、一度見たことがあるような宇宙を思わせる額。この見惚れる程神秘的な姿をしたポケモンは見間違えるわけがない。そうだ……このポケモンは……

 

「……ほしぐもちゃん」

 

彼は正真正銘のほしぐもちゃんだろう。あの時はソルガレオとなって僕とリーリエの前に姿を現した。しかし今度はあの時と全く違う姿をしている。そんなことを考えていると、頭の中に直接声が聞こえてくる。ほしぐもちゃんがテレパシーで話しかけてきているのだ。どうやらこの姿はルナアーラと呼ばれているようだ。ほしぐもちゃんは昼間にはソルガレオ、夜間にはルナアーラと姿を変えるらしい。現在は夜の時間帯であるためルナアーラとして僕の目の前に姿を現したのだろう。

 

「でもどうしたの突然?」

 

僕はほしぐもちゃんになぜ僕の前に姿を現したのかを尋ねる。すると脳内に謎の映像が流れくる感覚がする。どうやらほしぐもちゃんが僕に直接見せているようだ。

 

――『ピカチュウ!10まんボルト!』

 

僕の脳内に一人の少年とピカチュウが映りだされる。ピカチュウが放った10まんボルトはかなりの威力で、ピカチュウがどれだけ大事に育てられているかがよく分かる。

 

――『行くぞ!これが俺たちの全力だ!スパーキングギガボルト!』

 

少年が電気タイプのZ技のポーズを決め、ピカチュウも全力のZ技を放つ。彼もZ技を使いこなすということはかなりの腕を持つトレーナーということだろうか。

 

僕はハッとなり現実に戻る。目の前には変わらずにほしぐもちゃんが僕の眼を見ている。ほしぐもちゃんがなぜ僕にこの映像を見せたのか尋ねようとすると、ほしぐもちゃんの後ろに歪んだ空間が現れる。あの空間には見覚えがある。あれはウルトラビーストの住む世界、ウルトラスペースへと通じた時に通った空間だ。

 

「……ほしぐもちゃん。もしかして僕にあの空間へ入ってって言ってるの?」

 

ほしぐもちゃんは僕の声に頷き僕の元へと寄ってくる。ほしぐもちゃんは以前してきたように僕に頭を擦り付けてくる。見た目は全く違っても、そう言ったところは何も変わらないんだね。なんだかあの時の事を思い出すように少し安心したよ。

 

「分かった。君を信じるよ。じゃあちょっと行ってみるね。」

 

僕はほしぐもちゃんに手を振って歪んだ空間へと入ってみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラスペースへの入り口に入る時と感覚自体は変わらないけど、不思議と恐怖や緊張は感じなかった。寧ろ、なんだか楽しい経験が出来る、そんな確信が僕の中に感じ取れた。そしてその空間を通り抜けると、そこはメレメレ島のトレーナーズスクールによく似た場所だった。いや、厳密には雰囲気がよく似た、と言った方がいい。建物自体は全く違う。僕はその校門と思われる場所の前に突っ立っていた。

 

「……ウルトラスペースじゃない?」

 

感覚自体はあの時と同じだったため、僕はてっきりウルトラスペースへと出るのかと思ったが、まさかメレメレ島に出るとは思いもよらなかった。だが一つおかしなことがある。それは……。

 

「すごく明るい。」

 

そう、僕があの空間を通る前は夜中だったのに対し、今はすごく明るい。どうやら朝日が昇ったところのようだ。そこに色々な人が集まってくる。もうすぐ授業が始まるところだろうか。初めはここが昼夜逆転の世界である可能性も考えたが、この賑わいを見ると恐らくその仮説は間違っているだろう。

 

「わあ!遅刻遅刻!」

 

一人の少年が走ってこっちに向かってくる。僕は咄嗟の事で避けることが出来ずにその子とぶつかってしまう互いに頭を抑えて倒れてしまう。

 

「いたたた。ご、ごめん!ちょっと急いでて前見てなかった!」

 

「い、いや、こちらこそボーとしてて……ってあれ?」

 

僕はその少年を見て少し驚いた。その少年はほしぐもちゃんに見せてもらった映像に映っていた少年だったからだ。同じくあの時に映っていたピカチュウも少年の肩から降りて心配そうに声をかける。少年もピカチュウの頭を撫でて落ち着かせると、ピカチュウも嬉しそうな顔をして身を委ねている。それだけでこの二人からは信頼関係がどれだけすごいかがよく伝わってくる。

 

そこにチャイムが鳴り響く。恐らく授業開始の合図なのだろう。

 

「あっ!やばい!遅刻する!じゃ、じゃあな!お前も急げよ!行くぞピカチュウ!」

 

少年はそう言ってスクールに向かって走っていく。ピカチュウも後を追いかけるように付いて行く。と言うか僕も生徒と間違われてたのかな?とは言え今はこの状況がよく理解できない。先ずは状況を確認してみよう。そう思い僕は近くにあったベンチに腰を掛けて考える。

 

ここがメレメレ島ということは僕が暮らしている島。そこで僕がチャンピオンなったというのは祭りを行ったため島中に知られているはず。それなのに今の少年は僕がチャンピオンだと知らなかった。それどころかここの生徒だと勘違いしていた。それに僕はトレーナーズスクールに特別講師として招かれたことがある。でもその時にさっきの少年を見た覚えはない。スクール全部を見て回ったため見逃している生徒はいないはずだ。

 

「ん?あれってさっきの?」

「どうしたの?サトシ?」

「いや、あそこに座っている人、さっき俺とぶつかった人なんだ。」

 

と言うことはここは僕の知っている世界とは全くの別世界ということか?でもそんなことがあり得るのか?いや、しかしそうでも思わないと説明がつかない。もしくは過去の世界である可能性もあるか。例えば僕がアローラに来る前の世界であるなら僕の事を知らなくても無理はない。

 

「おーい!聞こえてるー?」

「ねえサトシ、この人考え事してるみたいだし止めた方がいいんじゃない?」

 

とにかくこの世界の事を少し調べないと話にならないよね。ハラさんにも祭壇の調査をすると約束したし、ほしぐもちゃんに誘われた世界だとしたらそこにはきっと意味があるだろう。僕には僕の成すべきことをしないと。

 

「二人とも、どうかしましたか?」

「!?」

 

僕が考え事をしていると僕のよく知った声が耳に入ってきた。その声に釣られて正面を見ると先ほどの少年とマオ、そしてなんと初めて会った時と同じ姿のリーリエが立っていた。

 

「り、リーリエ!?」

「え?なんでわたくしの名前を?」

 

リーリエが首をかしげる。僕はリーリエのその反応を見て確信した。ここは僕の知っている世界ではない。目の前にいるマオもリーリエも違う世界の二人だ。そしてこの反応を見る限りでは僕はこの世界に存在しないのだろう。でも違うリーリエだと分かっても、彼女に忘れられているような気がして少し悲しかった。

 

「あ、えっとごめん。ちょっと色々あって気が動転してたみたい。」

「そ、そうですか。」

 

リーリエに警戒されちゃったかな。それはそうだ。突然初対面の人に自分の名前を呼ばれたら誰でも驚くし警戒もする。

 

そしてさらに奥からは別の見知った顔の人たちが続々と集まってくる。

 

「サトシ、遅いぞ。みんな待ってるんだからな。」

「そうだよサトシ!早く授業に行こう!」

「早くいこ!博士も待ってる!」

「ああ悪い悪い!すぐに行くよ!」

 

集まってきたのはカキ、マーマネ、スイレンだった。そしてピカチュウを連れた少年はサトシと言う名前なのだろう。このメンバーがクラスメイトなのだと考えるとなんだか楽しそうな組み合わせだと考える。最も僕の世界の人たちと同じ性格ではないと思うが。さきほどのリーリエの一人称が“わたくし”であったためその可能性が高い。

 

と言うかスイレンが博士って言ったけど、もしかしてこっちのククイ博士は先生もやってるのかな?それはそれでなんだか新鮮で面白いね。

 

「そうだ、もしよかったらお前も一緒に来るか?」

「え?僕?」

「ああ!なんだか分かんないけど、すっごく悩んでたみたいだったし、悩んでたってなにも始まらないしな!」

 

サトシは鼻の下をかきながら僕を誘ってくる。この世界の事をよく知らない僕にとっては都合がよかった。みんなを騙す形なのは少し心苦しいが、言っても信じてもらえないと思うので今は黙っておく。いずれは話せればいいなとも思ってはいるが、今は大人しく彼らについて行くのが無難だね。

 

「うん。じゃあ僕も行ってもいいかな?」

「勿論だぜ!な?みんな!」

 

皆はサトシの言葉に異論がないようで賛成してくれている。こうなった以上、僕も自己紹介をしようとベンチを立つ。……そろそろリーリエの警戒を解いておかないとなんだか再起不能になりそうな気がするし。

 

「僕の名前はシンジ。よろしくね。」

「俺はマサラタウンのサトシ!そしてこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピッピカチュウ!』

「私はマオ!そしてこの子がアママイコだよ!」

『アーマイ!』

「炎タイプ専門のカキだ。」

「私はスイレン。そしてこっちがパートナーのアシマリ!」

『アウアウ!』

「僕はマーマネ!そしてこっちがトゲデマルだよ!」

『マキュキュ!』

「わ、わたくしはリーリエと申します。この子はシロンです。」

『コォン!』

 

僕に続きみんなが自己紹介を終える。それにしてもこの世界のリーリエはアローラのロコンがパートナーなんだ。僕の世界のリーリエにもロコンのタマゴを渡したからなんだか不思議な気分だね。

 

「おーい!みんな!」

 

少し遠いところから手を振りながら走ってくる人がいる。あの服装は間違いなくククイ博士だ。みんなもそうだけどこの世界でも容姿や服装だけは僕の世界と変わらないんだね。

 

「全く、みんなして授業に遅れるとはどういう……ん?その子は?」

「あっ、僕はシンジです。ちょっと訳があってみんなと話していました。みんなを止めてしまって申し訳ありません。」

「そ、そんな!シンジは悪くないよ!」

 

博士に頭を下げて謝る僕に、マオが僕のせいではないと強く発言してくれる。この世界のみんなも優しいみたいで僕は少しホッとした。

 

「(見た感じみんなと年が離れているように感じないのにできた子だな)いや、そういうことなら別に構わないが、シンジはこの学校の転入生か?」

「いえ、少し道に迷ってしまって気がついたらここにいました。先ほどサトシ君に授業に参加してみないかと誘われたので参加しようとしていたところです。もしご迷惑でなければ少し見学させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

「あ、ああ、俺は構わないぜ。それとそこまでかしこまらなくてもいいぞ?なんだかよく分からないけど、敬語使って話すの疲れるだろ?」

「……分かりました。博士がそう言うのであればそうさせてもらいます。」

 

僕はククイ博士にそう言われ少しいつものような口調に戻す。周りのみんなもさっきの僕の喋り方に驚いているようだ。流石に僕も見知った顔であるとは言え、実質初対面である相手にあまり悪い印象を持たれたくない。だがククイ博士がそう言ってくれたので僕は少し楽に話したいと思う。正直敬語はあまりなれないため変な言葉遣いになってしまいそうで不安だ。

 

「じゃあ早速行くか。シンジも俺についてこい。」

 

僕たちは博士について行くことにした。そして博士について行って辿り着いたのが校庭のトラックだった。ケンタロスが配備されているところを見ると、今からやる授業はアレしかないだろう。

 

「今からケンタロスレースの授業をするぞ。あくまで授業だから順位だとかタイムはあまり気にせず、怪我しないようにやれよ。」

 

やはりケンタロスレースだった。博士はああ言っているが、こちらではサトシとカキがどっちが早いかを競い合おうとしている。どうやらこの二人勝負好きなようだ。そう様子を見て、博士も苦笑する。

 

にしても、ケンタロスを見ていると今日挑戦しに来てくれたタロウ君の事を思い出すな。彼もまた強くなって僕の前に現れてくれるのだろうか。

 

「じゃあ最初はサトシとカキにやってもらおうか。」

『はい!』

 

サトシとカキがケンタロスにまたがり配置につく。

 

「あの時は負けたけど今度は負けないぜ!」

「望むところだ!」

 

二人は以前にも競ったことがあるようだ。そして博士の合図でレースが開始される。序盤はサトシが優勢なように思えたが、後半からカキが巻き返し、僅差でカキが勝利する結果となった。

 

「くっそー!また負けちゃったか!」

「今回はギリギリだったな。」

「次は負けないぜ!」

「それは俺も同じだ!」

 

サトシの顔には悔しさが見えいたが、その表情にはどちらかと言えば楽しかった気持ちの方が強いように思える。二人はライバルであると同時にいい親友でもあるんだね。なんだか僕とグラジオみたいだね。……戻ったら一度訪ねてみようかな。最近忙しいみたいだけど、偶には一緒にバトルしたいしね。

 

「じゃあ次はマオとスイレンでやってみるか?」

「はい!手加減しないからね、スイレン!」

「私だって負けない!」

 

この世界ではマオとスイレンも仲がいいようだ。いや、むしろこのクラスのみんな全員が仲がいいみたいだ。なんだか新鮮な気分だけど、みんなとこうして楽しく過ごせるのも悪くないかもと思えてしまう。

 

今度はマオとスイレンのレースが始まる。マオもスイレンも女の子とは思えないほどにケンタロスを巧みに操る。しかし次第にテクニックの差が広がりスイレンが前に出る。よく見るとスイレンの表情が真剣そのものである。僕の知ってるスイレンと違ってなんだか少し怖く感じてしまうのは気のせいだろうか……。

 

「ああ、悔しい!まけちゃったよ!」

「えへへ、私の勝ちだね!」

「うん、じゃあ次はバトンタッチだ。マーマネとシンジ。シンジの実力見せてもらおうかな。」

「は、はい。」

 

実力ってあまり持ち上げるようなこと言わないで下さいよ。とは言えあのマーマネが相手でも僕は負ける気はないけど。

 

「僕たちの番だね!絶対負けないからねシンジ!」

「あっ……うん!僕も負けないよ!」

 

マーマネもみんなと同じで勝負前提で話す。だがその言葉が僕にはすごく嬉しかった。最近では挑戦者とばかり戦っていて、いつも「対戦よろしくお願いします!」と硬い表情で挑まれていたので、楽しんで戦ってくれる相手がいなかったのだ。今マーマネは僕と対等に戦ってくれようとしているのが、僕にとっては嬉しい事である。僕もその気持ちに全力で答えよう。ライバルとして!

 

「じゃあ位置について!よーい!……ドン!」

 

ククイ博士の合図に僕とマーマネは同時にスタートする。僕が外側からのスタートであるため、僕にとっては不利だろう。そして早くも初めのコーナーに差し掛かる。

 

「ケンタロス!」

 

僕はケンタロスに呼びかけ足で軽く合図を送る。僕が送った合図にケンタロスが答えてくれて、すぐにマーマネの後ろに回る。マーマネもこの行動には戸惑ったようだが、変わらずそのままコーナーを回ろうとする。その時僕はマーマネの左側に回りインコースを取る。

 

「なっ!?インコースギリギリだと!?」

「ど、どうしたんだ?カキ?」

「インコースを走るのはレースにおいて最も基本となるが難しいコースでもある。何故ならポケモンとの意思疎通が出来なければならない上に、インコースを走ること自体が危険だからだ。ポケモンと共に重心をかなり傾ける必要があるからな。だがあいつはそれを平然と熟している。まるでケンタロスの事を理解しているようにな。」

「す、すごいです。初めてあったポケモンとこんなことが出来るなんて。」

 

ケンタロスが難しいインコースを走ってくれたことに感謝しながらレースを続行する。マーマネも頑張っているが、今のコースで少し差に余裕が出てきた。僕は真っ直ぐのコースを少しペースを落として進むように指示を出す。あまり全力で走ってはインコースを走る体力が残らない可能性も出てくるからだ。

 

そして再びインコースを走りマーマネよりも前に出た僕はそこで全力でゴールを目指すようにケンタロスに指示を出す。そして見事にケンタロスは最後まで走りぬいてくれる。

 

「よし!僕の勝ちだね!」

「はあ、僕の負けか~。シンジ強すぎだよ~。」

 

溜息をつくようにマーマネが言葉を出す。最後まで僕についてきてくれたケンタロスに感謝しながら頭を撫でる。ケンタロスも気持ちよさそうにしてくれて僕にとってもそれは嬉しいことだ。

 

「じゃあレースの授業はここまでだな。一旦休みにしていいぞ。」

「あれ?リーリエはやらないの?」

「あっ、えっとわたくしは……。」

「えっとね、リーリエはシロン以外のポケモンに触れないんだ。だからちょっと……ね?」

「お、お恥ずかしながら……」

 

戸惑うリーリエに変わりマオが説明してくれて、リーリエも顔を赤くして俯いている。しかしその後にリーリエが「でも!」と言葉を続ける。

 

「私はポケモンの事が大好きなんです!学びの対象としてとても魅力的ですし!」

「……うん。その思いだけはなんとなく分かるよ。だってポケモンを見てる時のリーリエの眼、すごく輝いてるから。」

「え?」

 

同じ『リーリエ』……だからかな。なんだかそんな感じがするんだ。喋り方も性格も違いはあれど、やっぱりリーリエだってことに変わりはないんだしね。

 

「きっと触れるようになるよ。ゆっくりでいいから慣れていこ、ね?」

「は、はい///ありがとう……ございます///」

 

僕も余計なこと言ったかな、とも思ったが、でもリーリエをそのままにしておくのはなんだか気が引けた。そしてそんな僕たちに水を差す声が聞こえた。

 

「おうおうおう!今日は仲良くレースの授業かあ?微笑ましいかぎりだなあ!」

「!?お前たちは!?」

 

声は違うがあの姿には見覚えがある。……と言うかあの特徴的でなんというか……変わったセンスの服装はむしろ忘れることは出来ないだろうなあ。

 

「スカル団!?あんたたちまた来たの!?しつこいわね!」

 

スカル団……僕の世界では既にいい人集団になっているが、こちらでは全然懲りてないみたいだね。こっちの世界でもグズマさんがリーダーなのだろうか?プルメリ姉さんも存在しているのか少し気になるところではある。それにしてもこのスカル団は男性二人に女性一人か。何故だろう……謎のかませ臭がしてしまう。まるであの時のスカル団のように……。

 

「ん?兄貴、なんだか見慣れない男がいるスカ!」

「ん?ホントだな。あいつのポケモンもゲットしてやるぜ!」

「さっすが兄貴!今日も強気ですね!」

 

……なんだろ、あの時のスカル団よりも別の意味でひどい気がする。まあここまで喧嘩売られちゃ黙ってられないよね。じゃあ僕も折角だし少し本気出しちゃおうかな。

 

「みんな、ここは僕に任せてくれるかな?」

 

僕は一歩前に出ながらそう言う。その言葉にみんな驚くが、サトシだけは僕の事を信頼の眼差しで見てくれている。

 

「……分かった。俺はお前を信じてるぜ!」

「……うん、ありがと。」

 

僕はそのサトシの言葉に背中を押されるように前に出る。

 

「ちょっとサトシ!ホントにいいの?」

「相手は三人もいるんだよ!?」

「こんなの無謀!早く止めないと!」

「いや、あいつなら大丈夫さ!」

「なぜそう言い切れる?」

「……なんかあいつさ、すっげえトレーナーな気がするんだ。さっきカキが言っていたように、レースではすごいテクニックを見せていた。それにレースが終わった後、ケンタロスを撫でてただろ?なんだかその時、ケンタロスがシンジに信頼を置いているような顔をしている気がしたんだ。だからあいつはすごい奴なんだよ。」

 

サトシが僕の事について説明してくれているような声が聞こえる。僕はその言葉を聞きながら心の中でサトシに感謝する。

 

「たったそんだけのことでお前……」

「……わたくしも信じてもいいかもしれません。」

「リーリエ?」

 

リーリエの発言にマオが疑問符を浮かべる。いつものリーリエらしくないと感じているのかもしれない。

 

「シンジのレースを見ている時の彼の表情……なんだかすごく楽しそうな表情をしていたんです。心からポケモン愛しているような気がしました。それに先ほど声をかけてもらった時思ったんです。シンジは悪い人じゃない。凄く芯が強くて、それで頼れる人なんじゃないかって。」

「リーリエがそんな事を思うなんて……でも二人がそう思うなら私も信じるよ!シンジの事!」

「僕も!」

「私も!」

「もちろん俺もだ!」

 

みんなの言葉に僕は支えられる。やっぱり僕はみんなの支えがあるからこそ頑張れる。あの時もそうだった。ルザミーネを救った時だってみんなの思いを抱いて頑張ることが出来た。それこそが僕の最大の長所だよね。ククイ博士も言葉にはしていないが、僕の方を見て頷き、心配していないと言った表情で見ている。僕もみんなの思いに応えるようにモンスターボールを手にする。

 

「友情ごっこを見せつけやがって!こうなったら容赦しないぜ!いけヤトウモリ!」

「頼むぞ!ヤブクロン!」

「お願い!ズバット!」

 

スカル団は三体ずつポケモンを出し合計九体のポケモンで対峙するつもりだ。全く、盛り上げてくれて感謝しなきゃいけないね。

 

「ちょっと!9体1なんて卑怯よ!」

「卑怯もひったくれもあるか!俺たちは泣く子も泣かすスカル団だぜ!」

「くっ、こうなったら俺も!」

「いや、僕一人で大丈夫だよ。」

「なっ、しかし!」

 

僕は激昂するカキを止めて一つのモンスターボールを上に放り投げる。そして僕がこの状況で選んだポケモンは……。

 

『イブイ!』

 

「白い……イーブイ?」

「白いイーブイってことは色違いか!?これは珍しいものをみたな!」

 

スイレンとククイ博士が感想を言ってくれる。なんだかこの反応ってデジャブ?

 

まあいいや。この状況ではイーブイが一番適任だろう。振り返って歩いてくるイーブイに僕は屈んで声をかける。

 

「イーブイ、相手は9体だけど大丈夫かな?」

『イブイ!』

 

イーブイはキリッとした表情で答えてくれる。大丈夫だと言ってくれているのだろう。これは頼もしい限りだ。

 

「相手が九体でくるなら、僕もみんなの力を合わせて戦うだけだよ。」

「あっ?何言ってんだ?」

 

僕はその言葉通りの意味を体現しようとある技のポーズを取る。ノーマルZのポーズだ。

 

「なっ!?そのポーズはまさか!?」

「さあ行くよ!これが僕たち全員の力を集結させた全力!」

 

 

 

 

――――ナインエボルブ―スト!

 

 

 

 

 

その合図と共に僕のボールから全てのポケモンたちが飛び出してくる。そう、僕のポケモン…………通称ブイズ達。ブースター、サンダース、シャワーズ、エーフィ、ブラッキー、グレイシア、リーフィア、そしてニンフィアだ。

 

「す、すっげぇ!イーブイの進化形が全部そろった!」

「さあ!行くよ!みんな!」

 

ブイズ達は僕の声に応えるように返事をして空中へと浮かぶ。そしてそれぞれの色に対応したオーラを纏い、それをイーブイに分け与える。イーブイもその波動を受けて力が溢れてくる感覚が伝わってくる。この技は全てのブイズの力をイーブイに集結させ、イーブイの力を最大限に引き出す専用のZ技だ。

 

「な、なんだなんだ?ただのハッタリか?野郎ども憶するな!やっちまえ!」

 

スカル団が一斉に攻撃を仕掛けてくる。しかしイーブイは既に力を受け取り準備は万全になっている。

 

「一撃で決めるよ!シャドーボール!」

 

イーブイは複数のシャドーボールを一度に放つ。スカル団のポケモンたちはシャドーボールの直撃をまともに受けてしまい、トレーナーの元まで吹き飛ばされる。

 

「なっ!?ヤトウモリ!」

 

今の一撃でスカル団のポケモンたちは全て戦闘不能になる。三人は急いでポケモンたちをモンスターボールに戻す。

 

「あ、あれだけのポケモンたちを……たった一瞬で!?」

「す、すごい……」

 

「くっそ!なんなんだよお前!ずらかるぞ!お前たち!」

「あっ!?兄貴!待ってくださいよ!」

「お、覚えてろよー!」

 

スカル団はすごい勢いで走って去っていく。逃げ足は僕の知ってるスカル団と同じみたいだね。

 

「すごい!すごいよシンジ!」

「あはは、ありがとう。イーブイもお疲れ様。」

 

僕はイーブイの頭を撫でる。イーブイも褒められて喜んでるみたいだ。この表情を見ていると僕も癒される。

 

「す、すげぇなシンジ。あんなに精錬されたZ技は初めてだ。」

「そんなにすごかったのか?」

「ああ、俺も島クイーンのZ技を見せてもらったが、その時のZ技も凄いものだった。だが今見せて貰ったZ技は更に桁が違う。数多くの試練を超え、磨きに磨かれ極められたZ技だ。ポケモンたちとの強い絆も感じ取れた。見るだけで色んなものが伝わってくる!あんた一体何者なんだ!俺にもZ技の極意を教えてくれ!頼む!」

 

カキが僕に血相を変えて頼み込んでくる。と言うかそこまで褒められると流石に照れる。でも僕の正体を言って信じてもらえるのだろうか。ここにいる時間があとどれ位か分からないけど、伝えてもいいのだろうか。

 

「おいおいカキ。そこまで言ったらシンジが困るだろう。……とは言え俺も君に興味があるのは事実だ。Zリングを持っているということはシンジも島巡りを達成したか、島の守り神に選ばれたトレーナーだということ。それだけの実力を持っていれば、嫌でも噂は聞こえてくるだろう。だが君の事は聞いたことがない。もしよければ君の事について聞かせてくれないだろうか?もちろん君が教えられないというのであればそれでも構わない。」

「ククイ博士……」

 

僕の一番の恩人であるククイ博士にこんなことを言われたら僕も弱い。やっぱりみんな、どの世界でも優しい事だけは変わらないんだね。僕もこれ以上隠すのはもう嫌だな。なにより……

 

「……………………」

 

リーリエにあんなに不安そうな顔をされるのがとても辛い。これ以上リーリエを悲しませたくはない。……やっぱり打ち明けるべき……だね。

 

「……分かりました。では僕の事、全部お話しします。」

 

僕は真実を話す決意をし、みんなと向かい合って話す。みんなも真剣な表情で話を聞いてくれた。僕が別の世界からきた人物だということ。その世界にもサトシ以外のみんなが存在していること。僕がその世界のチャンピオンであると言うこと。そして……リーリエが僕の大事な人であるということも。

 

「そ、そんなことが起こり得るのか?いや、先ほどの実力を見ればチャンピオンだということも頷ける。それに今の話が作り話であるとも思えない。これは真実として受け止めるしかないな。」

「これならさっきのリーリエに対する反応も頷けるね!リーリエも隅に置けないねえ!」

「ちょ、ちょっとマオ///やめてくださいよ!」

 

どうやらククイ博士は僕の言葉に信じてくれたようだ。リーリエもマオの言葉に赤くなる。サトシはその意味を理解していないみたいだが。スイレンはその事実に顔を赤くしている。女の子は恋バナに花を咲かせる、と聞いたことがあるがそれと関係があるのだろうか。……自分で考えてて少し恥ずかしくなってきた。

 

「先ほどのZ技。これでやっと理解できたな。あんたが……いや、あなたがチャンピオンだと言うのであれば全て説明がつく。」

「本物のチャンピオンに会うの僕初めてだよ!少しデータを取らせてほしいかな……なんて」

 

僕の正体を知ったみんなが思い思いの言葉を告げる。……やっぱりもうチャンピオンになったらみんなは普通には接してはくれないのだろうか。正直なんだか寂しい気がするな。

 

「……?シンジ?どうかしましたか?」

「え?」

「だってシンジ、なんだか悲しそうな顔をしています」

 

リーリエの言葉に僕はハッとなり気付く。リーリエはいつも僕の様子を気にかけてくれていて、僕の一番の心の支えになってくれていたことに。今でも変わらず、彼女はいつも僕とチャンピオンとしてではなく、『シンジ』として接してくれていることに。

 

「……ううん!なんでもないよ!心配してくれてありがとう!リーリエ!」

「///い、いえ!お気になさらないでください///」

 

僕が笑顔でリーリエに感謝すると、リーリエは照れたように下を向く。その様子を見たマオは茶化すようにリーリエを弄る。リーリエも更に頬を赤くして否定する。僕もそのリーリエの姿を見て、また必ず会いに行こうと決意する。……約束を守るためにも。

 

僕たちがそんな話をしていると、すぐそばに歪んだ空間が現れた。みんなはそれに驚くが、僕にはそれが何なのかすぐに分かった。少し待っていると、中からソルガレオの姿をしたほしぐもちゃんが現れた。

 

「なっ!?ソルガレオ!?」

「は、博士?ソルガレオって?」

「ソルガレオはアローラの二大伝説のポケモンの内一体だ。太陽の化身とも言われていて、守り神たちと共にこのアローラを見守っているポケモンだ。まさかこの目で見られるなんてな。」

『え~!?』

 

博士の言葉にこの場にいる全員が声をそろえて驚く。それは伝説のポケモンが目の前に現れたら驚くものだろう。当時の僕とリーリエは状況が状況であったため、驚くことは全くなかったが。

 

「にしてもほしぐもちゃん?なんでここに?」

 

僕がほしぐもちゃんに声をかけると、いつものようにほしぐもちゃんはテレパシーで僕に語り掛ける。どうやらほしぐもちゃんは僕を迎えに来たようだ。……もう少しみんなと話していたかったような気がするけど、仕方ないね。

 

「……ほしぐもちゃんは僕を迎えに来たみたい。そろそろ行かなきゃ。」

「え?ソルガレオの言葉が分かるの?」

「うん、ほしぐもちゃんは僕の脳内に直接テレパシーで声をかけてくれるんだ。だからよく分かるよ。」

 

僕はほしぐもちゃんの言葉をみんなに伝える。みんな別れに悲しそうな顔をするが、サトシだけは何か決意をしたような表情をして口を開く。

 

「その前に俺とバトルしてくれませんか!」

「サトシと?」

「はい!俺、ポケモンマスターを目指していて、そのためにはどうしても強い人と……チャンピオンとバトルしなくちゃダメなんです!だからお願いします!」

 

サトシは僕とのバトルを頭を下げて頼み込んでくる。僕は脳内でほしぐもちゃんにバトルをしてもいいか尋ねてみる。ほしぐもちゃんは全然問題がないと答えてくれる。いや、むしろ本当の目的は彼と戦わせることだったのかもしれない。もしかしたら彼と戦うことで、僕自身何か答えを見つけ出せるのではないかとも思えてくる。じゃあ答えは一つしかないね。

 

「うん、分かった。僕も本気で相手させてもらうよ。」

「!?ありがとうございます!」

「なっ!?チャンピオンの本気のバトル!?これは楽しみだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとサトシは校庭にあるバトルフィールドで向かい合う。そしてククイが審判を務める。

 

「それではこれより、シンジ対サトシのポケモンバトルを開始する!使用ポケモンは……」

「博士、少しいいですか?」

「お?どうした?」

 

ククイがルール告げようとした瞬間シンジは一つの提案をしようとする。シンジの真剣な様子にみんなが「なんだろう?」と思い聞き耳を立てる。

 

「……サトシ、今回僕はチャンピオンとして対峙させてもらう。だがポケモンの使用数は全てのポケモンを使ってほしい。僕は相棒一体のみで相手をする。」

「なっ!?サトシのポケモンは今4体!」

「つまり4対1の戦いってこと?そんな無茶な!」

「……僕は君の全力を見てみたい。どうだろうか。」

「分かりました。それがチャンピオンの望みであるなら俺も全力で行きます!」

「……ありがとう」

 

シンジは自分の望みを聞いてくれたサトシに小さな声で感謝する。シンジはそんなサトシに全力で応えるために相棒の入ったモンスターボールを手にする。

 

「では4対1の変則バトルでいく!両者、ポケモンを!」

「じゃあ行くよ!お願い!ニンフィア!」

 

シンジはククイの合図とほぼ同時にポケモンを繰り出す。モンスターボールから出てきたのはニンフィアだった。ニンフィアはボールから出てきてすぐにシンジの足元に寄ってきて頭を擦り付ける。よっぽど一緒に戦うことが嬉しいのだろうか。シンジもニンフィアの頭を撫でて応える。

 

「チャンピオンの相棒はニンフィアか。じゃあこっちの一体目は、ニャビー!君に決めた!」

 

サトシが繰り出したのはニャビーだった。フェアリー技は炎タイプに対して効果が薄いため、セオリー通りの選択と言えるだろう。

 

「それでは……バトル開始!」

 

博士の合図でバトルが始まる。先に動いたのはサトシだった。

 

「先ずは先手必勝!ニャビー!ほのおのきば!」

「ニンフィア!ジャンプして捕まえて!」

 

ニャビーはほのおのきばで先制攻撃を仕掛けてくるが、その攻撃は空を切り、ニャビーの胴体にニンフィアのリボンが巻きつけられ捕らえられる。

 

「り、リボンにそのような使い方が!?こんな戦い方、本でも読んだことがありません!」

「さすがはチャンピオン。ポケモンの特徴を熟知している。当然だが一筋縄には行かないぞ。」

 

リーリエとカキが感嘆の声を漏らす。シンジはすかさずに指示を出して畳みかける。

 

「ニンフィア!そのまま叩きつけて!」

 

ニンフィアはリボンで縛り付けたニャビーを地面に叩きつける。

 

「あっ!?ニャビー!」

「ムーンフォース!」

 

ニンフィアはムーンフォースを放ちニャビーを襲う。そのダメージは例えいまひとつでも、態勢が整えられていないところに直撃すれば一溜りもない。煙が晴れるとニャビーは目を回して倒れていた。

 

「にゃ、ニャビー戦闘不能!ニンフィアの勝ち!」

「な、なんて威力だ。ニャビーがたった一撃で……」

「くっ!戻れニャビー!ゆっくり休んでくれ。」

 

サトシはニャビーをモンスターボールに戻して次のボールを手にする。

 

「モクロー!君に決めた!」

 

次に繰り出したのはモクローだ。ニャビーとモクローは共にアローラの初心者用ポケモンとして知られている。

 

「モクローこのは!」

 

モクローは回転しながらこのはを放つ。だがそう簡単に喰らうわけには行かないと、シンジも攻撃の指示を出す。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ニンフィアはようせいのかぜでモクローのこのはは無残にも散っていく。しかしその先にはモクローの姿はなかった。

 

「……そう言うことか」

「よし!後ろを取った!モクロー!たいあたり!」

 

モクローが既にニンフィアの後ろに回っていた。モクローは獲物に気付かれないよう静かに飛ぶのが得意なポケモン。さっきのニンフィアと同じく上手くポケモンの特徴を活かしている攻撃と言える。

 

「宙返りで躱してシャドーボール!」

 

ニンフィアはシンジの指示に従いすぐさま宙返りをしてモクローの攻撃を躱す。そしてその態勢のままモクローの背後からすかさずシャドーボールで反撃する。

 

「なっ!?モクロー!」

「なんて無駄のない流れるような動きだ。」

 

カキの言葉にみんなが納得し、ニンフィアの動きに見惚れている。なによりあの二人の信頼が厚いことがみんなにもよく伝わってくる。

 

「そのままでんこうせっか!」

 

飛ばされたモクローが態勢を整える前にすかさずでんこうせっかを決める。モクローもこれには耐え切れずにフィールド外で戦闘不能となる。

 

「モクロー戦闘不能!ニンフィアの勝ち!」

「モクロー戻れ!お疲れ様。」

「も、モクローまで負けちゃった。」

「もうすぐでダメージを与えられたのに惜しかったね。」

「こ、これがシンジの実力……なのでしょうか。」

 

サトシはモクローをボールへと戻す。だがサトシの眼は昔のシンジの眼にに似ている。過去のポケモンバトルを純粋に楽しんでいる姿に。シンジは彼の姿をかつての自分に重ねて見ていた。

 

「まだまだこれからだ!イワンコ!君に決めた!」

 

サトシが次に繰り出したのはイワンコだ。シンジはイワンコの目から熱い闘争本能を感じ取り、気を引き締める。

 

「イワンコ!いわおとし!」

 

イワンコは複数の細かい岩をニンフィア目掛けて放つ。いわおとしは岩タイプの基本的な技だ。ならばこっちもと、シンジもフェアリータイプの基本的な技で対処しようとする。

 

「もう一度ようせいのかぜで防いで!」

 

ニンフィアはこのはの時と同じようにようせいのかぜではじき返す。

 

「あのようせいのかぜ、思ったよりも厄介だぞ。基本的な技とは言え、ニンフィアの技全てが完成されている。一体どんな育て方をしたっていうんだ。」

「それほどまでなの?」

 

カキはこの中でもバトルにはかなり慣れている方だ。マオの質問に続けてカキが説明をする。

 

「ああ、あのようせいのかぜ、無駄な前動作が一つもない。それどころかパワーもスピードも、基本技とは思えないほど精錬されている。何度も使いこなさなければあそこまでにはならないだろうな。」

「で、でもZ技を撃てばさすがのニンフィアにもダメージは与えられるんじゃない?」

「どうだろうな。さきほどから俺もチャンスを探ってみてはいるが、Z技を撃ち込む隙が見つからないんだ。あのニンフィアには隙がなさすぎる。闇雲に撃っても避けられるのが落ちだろうな。」

「そ、そんな。それじゃサトシはこのまま……」

 

カキの言葉にみんなが不安そうな声をあげる。しかしリーリエは彼の表情を見て少し違和感を感じていた。

 

「なぜ……でしょうか……」

「リーリエ?どうかした?」

「あっ、いえ、ただシンジの表情がなんだか浮かないようでしたので……」

 

リーリエのその言葉に反応してみんなもシンジの顔をよく確認してみる。するとシンジの顔はというと……。

 

「……笑ってない?」

 

そう、スイレンの言う通りシンジの顔には笑顔がないのだ。

 

「彼が先ほどケンタロスレースをしている時は笑顔を浮かべていました。まるで友達と遊んでいる時の子供の様に。スカル団との戦いのときもそうでした。イーブイを撫でていた時、彼は心の底からイーブイの事が大好きで、ポケモンバトルを楽しむ一人のトレーナーの顔をしていました。今のサトシの様に純粋な笑顔を。」

 

リーリエの言葉を聞いてサトシとシンジの顔を見比べてみる。確かにサトシは不利な状況だと言うのに戦いを純粋に楽しんでいる表情を崩していない。しかしシンジの場合は、楽しむというよりも何かに突き動かされているかのように表情が硬くなっている。今までサトシのポケモンたちを圧倒しているにもかかわらず、その顔からは余裕と言うものが見られない。

 

 

 

 

 

――――『今回僕はチャンピオンとして対峙させてもらう』

 

 

 

 

 

「あの言葉を言った時から彼の顔には余裕を感じられなくなりました。」

「そう言えばあの時リーリエも……」

 

 

 

 

 

――――『だってシンジ、なんだか悲しそうな顔をしています』

 

 

 

 

 

「はい、シンジはあの時も無理に笑顔を作っていた感じでした。」

「チャンピオンとして…………もしかしたらあいつ、チャンピオンとしての責任を感じているのかもしれないな。」

「チャンピオンとしての…………責任?」

 

カキの発言にマーマネが疑問に思う。

 

「そっか、チャンピオンってことは一番強いってことだもんね。」

「ああ、それに俺たちとあまり変わらない若さだ。そんな早くにチャンピオンになれば、気負いもするってもんだろう。」

「それにさっきシンジが話してくれた。あっちの世界のリーリエの事。」

 

リーリエはスイレンの言葉に少し顔を赤くする。リーリエは照れながらも先ほどの話を思い返す。

 

 

 

 

――――『リーリエは僕の支えとなってくれた大事な人だった。でも今は……』

 

 

 

 

「……やらなければならないことのために離れ離れになってしまった。」

「分かっていることとはいえ、支えてくれた人が遠くへ行っちゃたら、不安にもなるよね。」

「その気持ち……なんとなくだけど分かる気がする。私もアシマリやみんなと別れることになれば絶対に耐えられない。」

 

スイレンは抱いているアシマリとみんなを見渡しながら言う。みんなもその言葉に同意する。それだけ彼は辛いことを乗り越えてきたんだと実感しながら。

 

「イワンコかみつく!」

 

みんなの意識が再びバトルへと移る。イワンコが丁度ニンフィアにかみつくを決めようと接近しているところだ。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

 

イワンコはようせいのかぜで吹き飛ばされてしまう。強力なようせいのかぜのせいでサトシのイワンコは全く接近できない状態だ。そしてシンジは反撃の隙を与えまいとさらに畳みかけようと指示を出す。

 

「でんこうせっか!」

 

ニンフィアのでんこうせっかによりイワンコはモクローと同様に大きく吹き飛ばされてしまう。流石のイワンコもこれ以上は立ち上がれずにダウンしてしまう。

 

「イワンコ戦闘不能!ニンフィアの勝ち!」

「イワンコ戻れ!いいバトルだったぜ。後は任せろ。」

 

サトシはイワンコを戻す。そして最後のポケモンに全てのポケモンたちの思いを託そうと屈む。

 

「ピカチュウ、後は頼むな!」

『ピカッチュウ!』

 

ピカチュウはサトシの思いに答えようと気合を入れる。

 

「よし!ピカチュウ!君に決めた!」

『ピッカァ!』

 

その掛け声と同時にピカチュウもフィールドに出る。そして今、最後のバトルが始まる。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

 

ピカチュウは物凄い勢いでニンフィアに迫る。しかしシンジも読めていたと言わんばかりにその動きに冷静に対処する。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ようせいのかぜによりピカチュウは接近できぬまま飛ばされてしまう。しかしサトシも読めていたようで、ピカチュウに更なる指示を出す。

 

「そのままエレキボール!」

 

ピカチュウは空中でエレキボールの態勢に入る。シンジはその状態でも技を繰り出せることに驚きを隠せない。しかしシンジも負けじと攻撃を止めることはない。

 

「シャドーボール!」

 

エレキボールとシャドーボールがぶつかり合い、大きな爆風が起こる。その爆風で互いに前が見えない状況になるが、サトシはチャンスと思い攻撃の手を緩めない。

 

「ピカチュウ!アイアンテール!」

 

ピカチュウが尻尾を硬化させて爆風の中から飛び出してきた。そしてニンフィア目掛けて振り下ろす。シンジとニンフィアは予想外の動きに対応しきれず、ついにダメージを貰ってしまう。アイアンテールは鋼タイプの技であるため、フェアリータイプのニンフィアには効果が抜群だ。さすがにこれはダメージもデカいだろう。

 

「!?ニンフィア!」

 

シンジはダメージを受けたニンフィアを心配して声をかける。しかしニンフィアはシンジに心配かけまいと首を振り、再びピカチュウを見据える。シンジもそのニンフィアの様子を見て安心する。

 

「(サトシとピカチュウは凄まじいくらいに戦いなれている。それにあの二人の顔は……まるで……)」

 

まるで昔の自分のようだと、サトシとピカチュウの姿を過去の自分やポケモンたちの姿と重ね合わせる。しかしシンジはバトルの最中に気付いていたのだ。自分がバトルを心の底から楽しまなくなっていたことに。だけどその理由は自分でも分からない。

 

「(いつからかな……僕がバトルを楽しまなくなってしまったのは……。)」

 

シンジが心の中で自分の状態を悩み続ける。そこに一人の少女の声がシンジの耳に入ってくる。

 

「シンジさん!」

「!?」

 

その声の正体はリーリエだった。彼女はシンジの知っている彼女ではないが、それでも今一瞬彼の知っている『リーリエ』の姿と重なった。その様子に周りのみんなも驚く。リーリエがこの様に大声を出すことなど滅多にないからだ。

 

「あなたはあなたです。だから……自分の信じる道を進んでください。それが……“私”の望みです。」

「……リーリエ。」

 

リーリエの言葉にシンジが気付く。自分が悩んでいた理由が。自分の支えとなる存在が。自分の思いが。

 

「リーリエの言葉で目が覚めたよ。僕は少し悩みすぎていたのかもしれない。」

 

シンジは目を閉じて自分の心情をポツリと呟く。そして対戦相手であるサトシを真っ直ぐ見てこう答える。

 

「サトシ!ここからは一人のトレーナとして戦う!だから君も全力でこい!僕も全力を出してサトシと戦う!」

 

その眼には先ほどの悩みは一切なかった。サトシもその眼を見て覚悟を決める。彼はさっきまでとは違い、今度こそ本気のバトルを見せてくれると。そしてチャンピオンとしてではなく、自分のライバルとして戦えるのだと。

 

「……ああ!俺も全力で戦うぜ!“シンジ”!」

 

「!?うん!気を引き締めていくよ!ニンフィア!」

 

サトシに名前を呼んでもらえて、今だけでもライバルとして戦えるのだと感じたシンジはチャンピオンとしての立場を忘れて思いっきり楽しめそうだと思い笑顔を取り戻す。

 

ニンフィアもシンジの気持ちに応えるように一瞬振り向き安心したような顔を見せる。ニンフィアもパートナーとして、トレーナーであるシンジの事を心配していたのだろう。しかしここからは自分もシンジの支えとなるべきだと感じ、一層気合を入れる。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

「えっ!?そんなことしたら!」

 

先ほどのバトルを見ていたマオはその行動に驚いていた。なぜなら先ほどピカチュウのでんこうせっかはようせいのかぜに止められてしまったのだ。しかしシンジの取った行動は……。

 

「ニンフィア!こっちもでんこうせっか!」

『え~!?』

 

シンジの突然の行動にみんなが驚く。さっきの様にようせいのかぜで防げば再び封じることが出来るのではないかと。しかしサトシとリーリエには何故だか理解できた。これが彼の元々のバトルスタイルなのだと。チャンピオンではなく、“シンジ”としての戦い方なのだと。

 

ピカチュウとニンフィアは中央でぶつかり合う。そして互いに吹き飛ばされ、また所定に位置まで戻されてしまう。しかし互いに休む間もなく次の行動へと移る。

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

「躱してシャドーボール!」

 

ピカチュウの一筋の電撃をニンフィアはジャンプして躱す。そこにすかさずシャドーボールをピカチュウ目掛けて放つ。しかしピカチュウもすぐさまその攻撃に反応する。

 

「アイアンテールで跳ね返せ!」

 

ピカチュウはアイアンテールでシャドーボールを跳ね返す。しかしシンジは笑みを浮かべて更に攻撃を重ねる。

 

「ならばこちらも!ムーンフォース!」

 

ムーンフォースでシャドーボールを相殺する。アイアンテールで撃ち返したシャドーボールは威力が上がっているはずなのに、それを容易く破ってしまうムーンフォースの威力にサトシは驚くが、逆に隙を見つけたと大技を放つ体勢に入る。

 

「やるぞピカチュウ!」

「!?くるか!」

 

サトシは腕を交差させ、その動作に合わせて腕にはめてあるZクリスタルが輝く。サトシの全力……電気タイプのZ技が放たれようとしていた。

 

「これが俺たちの全力だ!」

 

 

 

 

 

――――スパーキングギガボルト!

 

 

 

 

 

ピカチュウの腕から大きな電気の塊がニンフィア目掛けて放たれる。その威力は普通のZ技の比ではない。どれだけピカチュウが鍛えられているのかがよくわかる。だがシンジもその時には既にZ技のポーズを決めて態勢を整えていた。

 

「待ってたよサトシの全力!だったら僕も僕の全力で対抗するのが礼儀だよね!行くよ!」

 

 

 

 

 

――――ラブリースターインパクト!

 

 

 

 

 

ニンフィアも同じようにフェアリータイプのZ技を放つ。そのZ技は弧を描くようにピカチュウのZ技へと向かっていく。そして二つのZ技がぶつかった時、先ほどの爆風とは比べ物にならない爆風が発生した。そして飛ばされない様にサトシが帽子を抑えるが、横を何かが通り過ぎた時にそれが何かを確かめる。しかしそこにいたのはボロボロになって飛ばされていたピカチュウだった。ピカチュウはサトシの後ろで目を回して戦闘不能となっていたのだ。

 

「ぴ、ピカチュウ戦闘不能!ニンフィアの勝ち!よって勝者シンジ!」

「ピカチュウ!」

 

ククイの判定で勝負の結末が決まる。サトシはすぐさまピカチュウの元へと行き、ピカチュウを抱きかかえる。クラスメートたちも心配になりピカチュウの元へと駆け寄る。

 

「さ、サトシ!ピカチュウは!?」

「ああ、ピカチュウなら大丈夫だよ。」

「そ、そっか、良かった……」

 

サトシの言葉にクラスのみんなが一安心する。そこにシンジとニンフィアがやってきて、一つの木の実を渡す。

 

「オボンの実だよ。これを食べさせれば少しは元気になるはずだよ。」

「ありがとう。ほらピカチュウ、これ食べな。」

 

サトシにオボンの実を渡されたピカチュウはそれを食べる。そして安心したようにサトシの腕の中で眠りにつく。さすがのピカチュウも今のバトルは相当堪えたのだろう。

 

「サトシのピカチュウ、本当に強かったよ。なんだか久しぶりにスッキリバトルすることが出来たみたい。ありがとう。」

「いえ、こちらこそ。今回はいい経験をしました。ありがとうございました。」

 

サトシはシンジに深々と頭を下げる。

 

「それにしてもすごいバトルだったね。」

「ホントだよ!僕もう少しで胸が張り裂けそうだったよ!」

「うん!まだ心臓がバクバクしてる!」

「全くだ。最後のZ技対決も熱くさせられたぜ。」

 

みんな思い思いの感想を告げる。そんな中、リーリエは今の戦いを見て安心したような顔を浮かべる。自分自身もなぜそのような顔をするのか分からないが、もう一人のリーリエの魂が反応しているのかもしれないと、自分の中で思ってしまう。いつもの『論理的結論』とは遠い気もするが、偶にはそういうのもいいのではないかと心の中で感じている。

 

「リーリエ」

「は、はい!」

 

シンジに声をかけられ甲高い声をあげてしまう。咄嗟の事とは言え、先ほどは偉そうなことを口走ってしまったために怒られてしまうかもと思ってしまうリーリエ。しかしシンジから返ってきた言葉は彼女の想像していない言葉だった。

 

「……さっきはありがとう。」

「え?」

「さっきのリーリエの言葉で気付くことが出来たよ。本来の僕を。だからさっき僕の知ってる『リーリエ』の喋り方で言ってくれたんでしょ?」

「へ?そ、それは……」

 

正直リーリエにもなにがなんだかさっぱりだった。気がついたら立って叫んでいたいたし、気が付けば喋り方も変わっていた。だがこのことを彼に直接伝えていいか分からなかった。

 

「……ふふ、もう一人のリーリエの魂でも乗り移ったかな?」

「ふえ!?」

「だって僕はリーリエの事は話したけど、リーリエの喋り方までは話してないもんね。」

「あっ」

 

普通に考えれば気が付くことだった。確かにシンジはリーリエと事については話してくれたが、喋り方までは何も言ってなかったからだ。

 

「それでもありがとう。……やっぱりリーリエはリーリエだね。」

「!?」

 

今の言葉にリーリエは気付く。彼が自分に対して呼びかける時と、自分の世界のリーリエへと呼びかける時の込められている思いが違うことに。“彼女”が彼にとってどれだけ大事なのかということに。だからこそリーリエはこの言葉を伝える。

 

「こちらこそありがとうございます!」

 

リーリエは笑顔を浮かべてその言葉を告げる。彼は彼自身であったように、自分も自分だと気づかせてくれたことに感謝を込めながら。シンジも笑顔でリーリエに応える。彼女と、この場にはいないもう一人の彼女に対して。

 

周りのみんなもその様子を見て笑顔で見守っている。二人が更に前に進めたことに喜びを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてサトシとシンジの激しいバトルが終わり遂にお別れの時がやってきた。

 

「……もう行っちゃうの?」

「うん。これ以上ここにいたら帰るのが辛くなっちゃうからね。とても楽しい一日だったよ。なんだか久しぶりに騒いだ気がした。」

 

シンジはアローラの夕日を見上げながらそう呟く。その表情は曇ひとつない、とても明るいものだった。

 

「また、会えるよね?」

「……うん。必ず会えるよ。僕たちがポケモンを愛し続けている限りね。」

 

シンジはみんなとみんなの持つポケモンたちを見渡しながら言う。その眼には何故だか確証があった。またいつか、絶対に会える日が来るだろうと。

 

「世界は違っても、同じアローラの空の下にいるんだ。会えないわけがないよ。」

「……うん、そうだな!絶対会えるよな!」

 

サトシもシンジの言葉を聞いて確信を得た。それはみんなも同じようで、先ほどまでの悲しそうな顔から一気に明るくなった。

 

「……ねえサトシ?」

「ん?」

「……今度会ったら、僕と友達として関わってもらえるかな。」

「……何言ってんだよ!」

 

シンジの今の発言にサトシは驚きながらもすぐに答えを返す。シンジはその返答に一瞬怖くなったが、すぐにその恐怖は無くなっていった。

 

「今でも俺たちは友達じゃないか!」

「!?」

「そうだよ!私たちはずっと友達だよ!」

「当たり前だろ!」

「私たちは、友達!」

「勿論僕だって!」

「友達ですよ!シンジ!」

「俺もいるのを忘れるなよ!」

 

全員が笑顔でシンジの事を友達と認めてくれた。その事実にシンジは泣き出しそうになるが、グッとこらえてみんなに心の底から感謝する。友達と言う存在の大切さを噛み締めながら。

 

「うん!僕たちは友達だよ!」

「ああ!もちろんだぜ!」

「今度会ったら俺とバトルしてくれ!」

「今度は私のお店、アイナ食堂にも食べに来てね!」

「次はシンジのポケモンのデータも取らせてよ!」

「私のお気に入りの場所、案内してあげる!」

「いつでも遊びに来いよ。ここはみんなの場所なんだからな。」

「待ってますから!シンジ!」

 

みんなはシンジに最後の別れの挨拶を告げる。しかしこれは最後ではなく、必ず再開できると信じて自分の言葉を伝える。そして最後に、シンジは伝えなければならないことをリーリエに伝える。

 

「……リーリエ、最後に一ついいかな。」

「はい?何でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『がんばリーリエ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジはその一言だけ伝え、ソルガレオと共に歪んだ空間を潜り抜ける。リーリエには一瞬意味を理解できなかったが、シンジの姿が見えなくなった瞬間、頭にその意味が浮かび上がってきた。

 

「がんばリーリエ……か……。ふふ、“シンジさん”らしいですね。」

 

その彼女の姿はどちらの『リーリエ』かは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戻ってこれたね」

 

僕はルナアーラに姿を変えたほしぐもちゃんと共に祭壇に立っていた。今日はすごく長い時間をあっちで過ごした気がするのに、こっちの世界は真っ暗だ。時間があまり進んでいないように感じる。

 

「……ありがとう、みんな。ほしぐもちゃんも」

 

今この場にはいないみんなに感謝の言葉を呟く。当然ほしぐもちゃんにもお礼をいう。するとほしぐもちゃんの声が直接頭の中に響く。ほしぐもちゃんは『もう大丈夫そうだね』と言ってくれる。

 

「こうなることが分かってたのかな?だから僕をあっちの世界に?」

 

ほしぐもちゃんは頷いて今回の意図を説明する。ほしぐもちゃんは最近空元気しか出していなかった僕を心配してあっちに送り出してくれたみたいだ。もう一人のリーリエと出会わせ、サトシと戦わせることで本来の僕を取り戻させてくれようとしてくれたみたいだ。本当に僕たちの事を見守ってくれたんだね。

 

「そっか。ありがとう、ほしぐもちゃん。」

 

僕はほしぐもちゃんの頭を撫でる。ほしぐもちゃんも嬉しそうに跳ねてくれる。ふふ、こういうところは昔と変わってないんだね。僕も見習わないといけないかもしれないね。

 

「じゃあね、ほしぐもちゃん。また会おう。」

 

ほしぐもちゃんと別れを告げ、ほしぐもちゃんは月へと向かって羽ばたいていく。太陽と月、二つの姿を持つほしぐもちゃんは、僕たちアローラの事を昼も夜も見守ってくれるのかな。そう思うと力が湧いてくる感じがする。ほしぐもちゃんに恥ずかしくないよう、僕も前に進まなきゃね。

 

「おーい!シンジ!」

 

その時に博士の声が聞こえてきた。声のする方を向くと博士が階段を駆け上ってきて丁度頂上に着いたところだった。

 

「はあ……はあ……すまない、準備に手間取って遅れてしまった。結局磁場の正体は何だったんだ?」

 

博士の疑問に僕は今までにあったことを説明する。博士も初めは信用できないようだったが、それでも僕の言うことなのだから間違いないだろうと最終的には信じてくれた。

 

「取り敢えずシンジに何事もなくて良かったぜ。今回迷惑かけたお詫びにご馳走おごってやるよ。」

「え?いいんですか?」

「ああ!もちろんだ!好きなだけ食べてくれ!」

 

博士の気前の良さに僕は思わず笑顔を浮かべる。どっちの世界の博士も優しくて、僕の最大の恩人だ。

 

「……博士」

「ん?どうした?」

「……ありがとうございます」

「おいおいどうしたんだよ改まって。奢ることくらい別に……」

「いえ、そうではなくて。……なんとなく伝えたかったんです。」

「……そっか。じゃあ素直に受け取っておくよ。」

 

僕は博士に今思っている言葉を一言だけ伝える。一言だけだけど、この言葉には色んな意味が込められている。博士にはどれだけ感謝してもしきれないけど、伝えずにはいられなかったから。博士も笑顔を浮かべて僕の言葉を受け取ってくれる。

 

僕はアローラの夜空を見上げてあっちの世界の事、そしてリーリエの事を思い返す。みんなも同じ空を見上げてくれているのだろうか。今度会った時は、一緒にこの星空を眺めたいなと、そう心の奥で感じ取りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして彼の不思議な一日は幕を閉じた。彼自身もこの一日で大きく成長できたと実感した。まだまだチャンピオンとしての実感は少ないけど、それでも自分は自分なのだと気付き、これからは自分の道を進むのだと固く決心する。彼女の隣に立っても恥ずかしくならないように。そして、いつか彼女と“シンジ”として再開できるように…………。

 

 

 

 

 

 

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アニポケとのコラボ回でした!時系列的にはシロンが産まれて少しした辺りですかね。やはりキャラが多いと表現や役回りが難しいですね。まあバトル表現の練習も兼ねてね?やはりアニメ制作人は凄いと改めて感じました。ん?サトシのロトム図鑑はどこかって?家でアローラ探偵ラキでも見てるんだよ(適当)。

まだソルガレオやルナアーラの正確な立ち位置がいまいち分からないので勝手に表現しました。

次回は普通に話を進める予定です。ではまた来週~!








あっ、活動報告にて意見箱なるものを作っておきましたので何かあればそちらに書き込んどいて下さい。


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アニポケコラボ特別編 ~再会~

完成しました!当然のように長いのでご了承ください。

こんな長いの流石に一日では書き上げられないので何日かに分けて書いてました。ですので少々文が意☆味☆不☆明になっているかもしれません。ここまで長くするつもりは全くなかったのですがね。……イイワケジャナイヨ?

取り敢えず楽しんでいただければ幸いです。一つ言っておきます。アニポケ時系列ではほしぐもちゃん編ですが、ほしぐもちゃんの出番は少々少ないかもです。メイン(?)がバトルになってしまっています。ヌシの力ではこれが限界かと……。


アローラ地方のメレメレ島。そしてメレメレ島のとある通りに一つの屋台があった。その屋台にはキテルグマのイラストが描かれており、二人の男女と二匹のポケモンが同じくキテルグマ柄の帽子とキテルグマをイメージして作られたであろうピンク色の衣装を着て宣伝している様子が目立っていた。しかし…………

 

「ああ~、全然売れない……」

 

今怠そうに椅子にもたれながらぼやいた一人の女性。帽子を被っているため髪は綺麗に纏められていて、髪色は赤である。瞳の色は髪色に反して青色であり、女性のツリ目が彼女の印象を表しているようにも見える。

 

「まあそう言うなってムサシ。頑張って活動資金集めてボスに認められようぜ?はい、ドーナツ揚がります!」

 

そう言って揚がったドーナツをムサシと呼んだ女性の元へと運ぶ男性。彼の髪は女性とは対照的な青色であり、瞳は綺麗な緑色である。男性の顔立ちは非常に整っており、イケメンと呼ばれてもおかしくはないだろう。彼にとある趣味が無ければの話だが……。

 

「でも売れないのは事実じゃないのコジロウ。あーあ、誰か早く買いに来てくれないかしらねー。」

 

ムサシは怠そうにしながらも、男性……コジロウの揚げてくれたドーナツにハニーミツをたっぷりとかける。その動作は売れていないとボヤキながらも、非常に手慣れた動作のように思えた。そのドーナツからは香しい香りが漂い、一目見るだけでも食欲が溢れてくることだろう。なぜこれが売れていないのかが疑問に残る所でもある。

 

「だからこそニャースが外で声を出して宣伝してくれているんだろ?」

「キテルグマ印のおいしいハニーミツドーナツにゃー!おいしいのにゃー!」

 

屋台の外ではカントー地方でおなじみのニャースが元気よく声を出して宣伝している。この姿を見て疑問に思った人もいるであろう。そう、なんとニャースが普通に人間の言葉を話しているのだ。確かにポケモンたちは頭もよく、人間の言葉や思考を理解する者も数多く存在している。しかし、人間の言葉をしゃべるポケモンは一部の特殊なポケモンのテレパシーを除けば前例がない。とは言え彼の過去を知れば誰しも納得しそうな気はするが、一番の疑問は何故道行く人に正体がバレないのか、と言う部分だと思われるが……。

 

「あっ、美味しそうなドーナツ!」

「本当ですね。すごくいい香りがします。」

『!?いらっしゃいませ!』

 

そこには一人の少年と一人の少女がやってきて、二人の視線はドーナツに釘付けになる。ムサシとコジロウも珍しくやってきた客を逃すわけにはいかないと、すぐさま態度を切り替えて喰らいつくように応対する。

 

「すみません。このハニーミツドーナツ2つください。」

「・・・・・・へ?」

「え?」

 

(初めてきた)客にどうやってドーナツを買わせようか考えていると、少年がノータイムでドーナツの購入を決めた。予想外の答えだったのか、ムサシたちは全員素っ頓狂な声を出す。しかし、予想外の答えだと感じたのは少年も同じようで聞き返してしまう。

 

「あ、あの~、何かまずかったですか?」

「あ、いえいえいえ!なんでもありません!ハニーミツドーナツ2つですね?まいどあり!」

 

少年の問いかけに、コジロウは慌てて首を振り接客モードへと戻る。その手際は見事と言うほかなく、先ほどの変な声が嘘のように素早く対応した。少年はお礼を言いながらお金を払い、購入したドーナツの入った袋を受け取る。

 

「はい、こっちがリーリエの分。」

「ありがとうございますシンジさん。」

 

シンジと呼ばれた少年は、リーリエと呼んだ少女に片方のドーナツを渡す。リーリエの手が汚れないように、自分の分のドーナツを取り出してから袋ごと渡すことにした。そのことも含めてリーリエはシンジに感謝しながらそのドーナツを受け取る。

 

そう、彼らはアローラ初代チャンピオンであるシンジと、皆の良く知るがんばリーリエである。そして彼らのいるこの世界は彼らのいた元の世界とは違う世界……過去にシンジが迷い込んだもう一つの世界である。なぜ彼らがこの世界にいるのかと言うと、その出来事は少し前に遡る。

 

 

 

 

 

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リーリエの島巡りの旅も無事に終え、アローラで開催されたリーグ戦も幕を閉じた頃。これからリーリエは自分がどうすればいいかシンジに尋ねにやってきた。シンジもリーリエと接する時は、チャンピオンとしてではなく一人のトレーナーとして接することにしている。勿論不公平な行為を嫌う彼は、島巡りの時に限っては彼女と共に旅をすることもなく、個人的に接することも少なかった。それゆえ、二人にとっては久しぶりに何時もの関係に戻れたと言えるだろう。

 

「シンジさん。私は無事島巡りの試練を達成することができました。でも……」

「これからどうすればいいか目的が分からない?」

「はい……お恥ずかしながら……」

 

リーリエは顔を赤くしながら俯いてそう答える。あまり彼ばかりを頼るのも迷惑かとも思ったが、本人は無意識にシンジと久しぶりに接したかった、と言う気持ちもあったのかもしれない。シンジはリーリエの為に次の目標を見つけようと一緒に頭を悩ませて考える。すると自分が経験した一つの出来事を思い返す。

 

「そうだ!リーリエに紹介したい世界があるんだ!」

「世界……ですか?」

 

思い出したように相槌を打つシンジに対し、リーリエは何の事かさっぱり分からずに疑問符を浮かべる。そんなリーリエに対し、シンジはその時経験したことを一から話す。普通ならこのような非現実的な事を信用する人はそういないだろうが、リーリエは真剣に彼の話を興味深そうに聞いていた。彼がそんな嘘を言う人間ではないことを良く知っているし、彼女が大切にしていたソルガレオ…………ほしぐもちゃんの力を目の当たりにしたため、寧ろ信じない方が不可能と言うものだろう。

 

「シンジさんはそんな貴重な経験をしていたのですね。私もその世界に興味が出てきました!」

「じゃあ試しに行ってみようか。ほしぐもちゃんに相談してみないことには始まらないけど、リーリエに会えると知ればほしぐもちゃんも絶対に喜ぶよ。」

 

そうして二人はかつて共に訪れた場所、ポニ島へと足を踏み入れた。しかし今回はあの時のような焦りや不安などと言った感情は一切なく、寧ろ新しく始まる冒険にワクワクを心の中で感じていた。初めて訪れる世界、久しぶりに会える仲間、お互いに違った期待、同じ思いを胸に秘めながら。

 

「……なんだか懐かしいね、ここ。」

「そうですね。今回はあの時と訪れた理由が違いますが。」

 

二人は懐かしの日輪の祭壇へと辿り着いた。すると二人が訪ねてきたことに反応するかのように、太陽から何かが近づいてくるのが見える。白く輝く立派なたてがみ、神秘的に煌めく額、空を駆ける逞しい脚、間違いなく彼がソルガレオの姿をしたほしぐもちゃんだ。

 

「ほしぐもちゃん……会いたかったです……。」

 

ほしぐもちゃんは久しぶりに会ったリーリエと額を合わせ、懐かしの再開を果たした。その姿を見たシンジは、この二人には切っても切れない絆があるのだと目に見えて感じることが出来た。

 

「ほしぐもちゃん……あなたにお願いがあります。」

 

リーリエは先ほどシンジと話していたことをほしぐもちゃんに話そうとする。しかしその前にほしぐもちゃんがテレパシーで彼らに先に話しかけてくる。太陽の化身であるソルガレオはリーリエたちの事を…………このアローラの出来事を全て見ている。そしてアローラにおいて、リーリエたちの事を最もよく知る存在でもあるだろう。故に言葉にしなくてもリーリエが何を言いたいのかがすぐに分かるのだ。

 

「……ありがとうございます、ほしぐもちゃん。」

 

ほしぐもちゃんはリーリエの頼みを快く承諾した。いや、正確に言えば、シンジの時と同じようにいずれはリーリエもあの世界に連れて行き彼らに会わせるつもりだったのだろう。

 

シンジとリーリエはソルガレオの背に跨る。ソルガレオが雄叫びをあげると、空間に歪みが現れ、ソルガレオは眩い光を身に纏いその歪みへと突入する。そしてかつてシンジが体験した不思議な世界へと二人で入り込むこととなったのである。

 

 

 

 

 

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そして先ほどこちらに辿り着き、現在に至ると言うわけである。

 

しかしその時、ムサシたちはと言うと……

 

「ねえ、さっきあのジャリボーイ、確かリーリエって言わなかった?」

「ああ、言った。」

「リーリエって確か白ジャリガールの名前だったはずにゃ。」

『ソーナンス!』

 

ムサシたちはシンジたちにバレない様にヒソヒソと話し始める。しかし、その後の彼らの言葉によりその思考は吹き飛んでしまった。

 

「うん、これすっごくおいしい!」

「本当ですね。ふわふわの生地にカリッとした食感。それにこの甘く蕩けそうなハニーミツは絶妙にマッチしています!」

 

彼らの心からの感想に満面の笑みを浮かべるムサシたち。ここまでの高評価は今まで貰ったことがないため驚き以上にとても嬉しいのだろう。しかしそれならば何故売れないのかが余計疑問である……。

 

「ふぅ、美味しかったね。」

「はい、とっても。ごちそうさまでした。」

『またのお越しを~!』

 

ドーナツを心底美味しそうに食べ終えたシンジたち。ムサシたちもそんな彼らに感謝しながら再び来ることを願って見送る。その時、彼らがドーナツを食する姿を見ていた人たちがやってきて、次々にハニーミツドーナツを注文し始めた。

 

「すみませーん!俺にもハニーミツドーナツくださーい!」

「あっ、私もお願いします!」

 

突然次々とやってきたお客に彼らは戸惑いながらも、接客に気合を入れ丁寧かつテキパキと素早く対応する。

 

「いや~、さっきのお客様様ってかんじよね~。」

「ホントだな。この調子でがっぽりと活動資金を稼ごうぜ!」

「ニャーたちに不可能はないのにゃ!」

 

彼らはこの調子で商売繁盛を胸に秘めお客の対応をしていく。

 

『いらっしゃいませー!』

 

そう言って彼らが次にやってきた客の対応をするために振り向く。しかしそこには客の顔がなく、見えたのは何者かの腹部だった。その正体を確認すべく、覗き込んで顔を確認する。するとその正体は予想外の者だった。

 

『キイイイイイイィィィィィィィィ!』

『キイイイイイイィィィィィィィィ!?』

 

その正体は何とキテルグマだった。彼らは予想外の客の姿に驚きのあまり、キテルグマと同じ声の悲鳴をあげてしまう。そしてキテルグマは屋台の中から彼らを引きずり出して抱きかかえたまま走り去っていく。

 

『なにこのかんじ~……』

 

その信じられない光景を目の当たりにした他の客は、呆然と立ち尽くすほかなかった。この日が彼らの商売が繁盛した最後の日だったという。これがカントー地方で悪事を働いていたロケット団のなれの果て(?)である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはポケモンスクール。生徒たちがポケモンたちと共に学び、成長するために作られた場所である。ここでは今日も生徒たちが楽しく授業を受けているのだが、今はどうやら休憩中のようだ。

 

『コッグ!』

「お?金平糖が欲しいのか?」

 

帽子を被った少年、サトシは机の横に置いていたカバンから飛び出してきた星空が描かれた雲の様なポケモン、コスモッグに金平糖を差し出す。コスモッグは以前サトシが拾ってきたポケモンであり、サトシ本人はとある夢で見たと言う約束のため彼の世話をしていると言う訳だ。因みに、カバンの中にはもう一匹のポケモン、モクローがすっぽりと綺麗に入った状態で気持ちよさそうに寝ている。

 

「ほしぐもちゃんは今日も元気ですね。」

『モッグ?』

 

金髪の少女、リーリエがコスモッグの事をほしぐもちゃんと呼び近づく。この名前はコスモッグが図鑑にも登録されていない未知のポケモンであったため、リーリエが自ら咄嗟に名付けた名前である。しかし、コスモッグは彼女の存在に近づくと彼女に向かって飛びついてしまう。リーリエは一部のポケモン以外に触れることができないため、その場で硬直してしまう。

 

「リーリエ、大丈夫?」

「ドンマイ、リーリエ。」

 

緑髪でツインテールの褐色肌の少女、マオが心配そうにリーリエに近づく。同時に青い髪に小柄の少女、スイレンも少し困った顔で声をかける。サトシは硬直しているリーリエに謝りながらコスモッグを抱きかかえる。

 

「ごめんな、リーリエ。ほしぐもにも悪気はないと思うんだ。」

「い、いえ!大丈夫です!ちゃんと分かっていますから。」

 

サトシの言葉にリーリエもそう答える。彼女自身ポケモンが好きではあるものの、過去のとある事件を機にポケモンが触れなくなってしまったのだ。その時の事件がきっかけとなり、トラウマとして彼女に植え付けられてしまって以降、当時の記憶も思い出せないでいる。彼女なりに努力はしているものの、当時の経験がよほどのショックだったのか未だに克服できないでいる。それでもサトシのピカチュウや自分のパートナーであるロコンには触ることが出来るため、少しずつだが進歩はしているのだろう。

 

「少しずつ慣れていけばいいだろう。時間はまだいっぱいあるんだしな。」

「そうそう!リーリエなら絶対大丈夫だって!」

 

日焼けしたような黒い肌の少年、カキが励ましの言葉を伝える。その言葉に続き、小太りで小柄な少年、マーマネが笑顔でカキに同意する形で励ます。自分のクラスメート達が優しく声をかけてくれたことに安らぎを感じ、リーリエは笑顔を取り戻す。その時、白衣を羽織ったサングラスをかけた男性が教室に入ってきた。

 

「アローラ!みんなは今日も元気そうだな!」

『アローラ!ククイ博士!』

 

みんながククイ博士と呼んだ人物は軽く手を上げていつものように挨拶をする。みんなも答えるように挨拶をし、急いで自分の席につく。ククイ博士はこのクラスの担任であり、全員がククイ博士の事を慕っているようだ。

 

「博士!今日の授業は何をやるんですか?」

 

サトシが今日の授業が待ちきれないようにククイに尋ねる。ククイもそんなサトシの姿に笑いながら答える。その笑顔はまるで、自分の子どもを見守る父親の様な優しい笑顔だった。

 

「サトシは今日もやる気満々だな。今日はみんなでポケモンバトルの練習だ!」

「やった!バトル!」

 

ポケモンバトルの授業と聞き、バトルが大好きなサトシとその相棒、ピカチュウは立ち上がり同じように喜びを示す。サトシと同じようにバトルが好きなカキとその相棒、バクガメスも同じく喜ぶが、その他のメンバーも普段経験できない授業に嬉しさを感じていた。特に室内でなく天気の良い日に外で受ける授業と言うだけで嬉しいと言う気持ちもあるのだろう。

 

『ビビッ!ポケモンバトルと聞いたら黙っていられないロト!バトルの映像の記録は任せるロト!』

「頼むぜ、ロトム!」

 

ククイにそう言われたロトムは胸を張って『任せるロト!』と息巻く。このロトムは外見こそポケモン図鑑だが、中にはロトムが入って生み出された最新の図鑑なのだ。その名もロトムポケデックスフォルムという名前だ。但し名前も長く、覚えられない人も(約一名)いるため簡単にロトム図鑑、又はロトムと呼ばれている。とあるアニメにどっぷりハマっていると言う変わった一面も持っている。当然図鑑であるため、ポケモンの詳細や生態などにも目がない。

 

「ポケモンバトルはポケモンとの息を合わせることが重要となってくる。バトルに熱くなることも結構だが、自分のパートナーの事をよく理解し、ポケモンの技や特性の知識を身につけることが目的だってことを忘れるなよ?」

『はい!』

 

ククイの言葉にみんなが一斉に返事をする。そしてみんなで校庭に移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士!まずは誰の組み合わせでやるんですか?」

「最初はバトル慣れしているカキとサトシに実践をしてもらおうと思う。二人もそれで構わないか?」

『はい!』

 

マオの質問にククイが答えると、指名されたカキとサトシの二人も待ってましたと言わんばかりにいい返事を返す。そして二人はバトルフィールドにて互いに向かい合い、カキはモンスターボールを手にする。

 

「いけ!バクガメス!」

『ガメース!』

 

カキがモンスターボールを投げると、中からバクガメスが堂々と登場する。彼の相棒だけはあり、バクガメスの纏う雰囲気には貫禄と言うものを感じさせる。

 

「やっぱりバクガメスか!ピカチュウ!君に決めた!」

『ピカッチュー!』

 

サトシは自分の足元で準備万端と言った様子で構えていたピカチュウを繰り出した。授業とは言え、二人の相棒であるバクガメスとピカチュウがぶつかることに対し、皆は思わず息を飲み込む。二人は学園内でも屈指の実力者であり、Z技を扱える数少ないトレーナーであるため見ている側が緊張してしまっても仕方ないだろう。

 

「じゃあフレアドライブの様に熱いバトルを開始してくれ!」

 

ククイの合図に反応し、最初に動き始めたのはサトシとピカチュウだった。

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

 

サトシは挨拶代わりとして10万ボルトを選択した。ならばこちらも答えなければと言う形で、カキも同じような技で対応する。

 

「バクガメス!かえんほうしゃ!」

 

バクガメスは口からかえんほうしゃを放ち、10万ボルトを相殺する。互いに手の内を知り尽くしているとはいえ、バトルにおいて相手の手札をどれだけ掴めるかと言う点も重要になってくる。カキとサトシはバトルの基本を理解していると言う証拠だろう。クラスメート達も二人の戦いを観察しながら、バトルの奥深さを改めて理解していく。疑問を抱く生徒たちには、博士が自ら解説をして説明をしている。

 

「アイアンテール!」

「バクガメス!ブロックだ!」

 

尻尾を硬化させ、アイアンテールによる追撃をしようと接近したピカチュウに対し、バクガメスは背を向け受けの姿勢に入る。バクガメスの背、甲羅にある黒い棘は、触れると大爆発を起こし接触した相手に大ダメージを与えるバクガメス最大の武器ともなっている。これは一般的にトラップシェルと呼ばれる技であり、今も接近してくるピカチュウに背を向けた状態で万全の態勢をとっている。

 

しかしピカチュウは背を向けたバクガメスの棘に触れず、棘のない部分を踏み台とし高く飛び上がる。この光景は皆も一度は見た光景であり、ピカチュウとバクガメスの戦いにおける定番でもある。

 

「まだだ!ドラゴンテールで迎え撃て!」

 

バクガメスは尻尾に力を溜めアイアンテールを振り下ろしてくるピカチュウを迎え撃つ。両者の尻尾が交わった瞬間、地面に穴が開きピカチュウとバクガメスはその穴に落ちてしまう。衝撃により勢い余って空いてしまったのかと思いきや、どうやら様子が違うようだ。

 

「ピカチュウ!?」

「バクガメス!?」

 

サトシとカキが自分のパートナーの安否を心配して呼びかける。それと同時にみんなも立ち上がり二人の傍まで駆け寄る。するとピカチュウとバクガメスは鋼鉄の檻に入れられ引き上げられる。檻が吊るされている方を確認すると、太陽の光で見にくくなっているが、そこには一つの気球が浮かんでいた。

 

「一体何なの!?」

 

マオの言葉と同時に気球から三人組……もとい、二人と二匹のポケモンが顔を出した。

 

「『一体何なの!?』と言われたら」

「聞かせてあげよう我らが名」

「花顔柳腰 羞月閉花 儚きこの世に咲く一輪の悪の花……ムサシ!」

「飛龍乗雲 英姿颯爽 切なきこの世に一矢報いる悪の使途……コジロウ!」

「一蓮托生 連帯責任 親しき仲にも小判かがやく悪の星……ニャースでニャース!」

「ロケット団!参上!」

「なのニャ!」

「ソーナンス!」

 

ムサシ、コジロウ、ニャースが順番に名乗りを上げ、最後にソーナンスが相槌を打つかのように声を出す。実は彼らは先ほどのキテルグマのハニーミツドーナツを販売していた店員と同一人物である。普段はこのように、サトシのピカチュウを筆頭とした人の持つポケモンを狙って悪事を働いているのである。

 

「ロケット団!?またお前たちか!」

 

サトシが懲りないやつだと言いたげな顔でそう言う。それもそうだろう。なんと言ったって、ロケット団はサトシがカントー地方を旅している時から常にピカチュウを狙っているほど執着しているのだから。だがそのせいで出世の機会も逃してしまったのは、彼ら自身気が付いていないのだが……。

 

「ピカチュウ!アイアンテールだ!」

 

サトシの指示でピカチュウはアイアンテールを檻に向かって振り下ろす。しかし思いの外檻は頑丈に出来ており、アイアンテールは難なく弾かれてしまう。

 

「ならバクガメス!かえんほうしゃ!」

 

物理がダメなら炎で溶かそうと、続けてバクガメスが自慢のかえんほうしゃで攻撃する。しかし、それでも効果がないようでバクガメスの炎が掻き消されてしまう。

 

「無駄無駄無駄ぁ!そんな攻撃じゃ、この特殊な素材でできた鋼鉄の檻を破ることは不可能さ!」

 

コジロウは得意げな笑みを浮かべる。対するカキは自慢のパートナーの攻撃でも歯が立たないことに悔しさと呼べる感情をあらわにする。周囲のメンバーも戦いに慣れていないため、こういった時にどう対処すればいいのかわからず戸惑ってしまう。

 

「今日はとってもいい感じー!」

「折角だからもう一匹頂いときますか!」

「了解ニャ!といニャ!」

 

ニャースは自らの掛け声とともにミサイルのようなものを取り出し、それを構え発射した。発射した弾は一直線に飛んでいき、対象のポケモンへと接近していく。その先にいたものは、なんとコスモッグであった。コスモッグはサトシのバッグの横でぐっすりと眠っており、この状況にも全く気付いていないようだった。

 

危ないと思った矢先、すぐに庇う様に飛び出したのはリーリエだった。彼女の心には恐怖があったが、それでもコスモッグ……ほしぐもちゃんを守りたいと思う意思が強く、体が勝手に動いていた。親友であるリーリエが危険だと感じたマオはリーリエの前に飛び出そうとする。しかしそんなマオの横を、風を切るかの如く素早く駆け抜けた影があった。

 

「え?」

 

そんな声を出したのはリーリエだ。何が起きたのか分からず目の前を見ると、そこには優雅にも美しく立っていたポケモンの姿があった。そのポケモンは……

 

「アローラの……キュウコン?」

 

そう、そのポケモンはアローラの姿をしたキュウコンだった。リーリエのパートナーであるロコン、シロンの眼にも憧れのようなものが宿っていた。キュウコンはロコンの進化形であるため、その憧れの感情は当然と言えば当然と言うべきものである。

 

「なになに?あのポケモン?」

「えーと待てよー。あ、あれはアローラのキュウコンみたいだぞ。」

「アローラのキュウコン?って事はレアなポケモンってこと?じゃあ頂くしかないじゃない!」

 

コジロウがアローラのガイドブックを見てポケモンの名前を伝える。ムサシは謎のキュウコンゲットに息巻いているなか、ニャースだけは嫌な予感が頭を過っていた。何故か手を出してはいけないものに手を出そうとしているような、不思議な感覚だった。

 

「ロトム、あのポケモンは?」

『任せるロト!キュウコン、アローラの姿。きつねポケモン。こおり、フェアリータイプ。ロコンの進化形。性格はとても穏やかで遭難した人を助けてくれることもある。』

 

サトシがあのポケモンの詳細を尋ねると、ロトムは図鑑を見せながら説明する。サトシも初めて見るアローラの姿をしたキュウコンに感動しているようだ。

 

「でもなんでキュウコンがここに?」

 

マオの疑問も最もである。アローラのキュウコンはこおりタイプであるがゆえに、主に雪山であるラナキラマウンテンに生息しているポケモンだ。と言う事はこのキュウコンにはトレーナーがいると言う事。しかし周囲にはそれらしいトレーナーは見当たらない。

 

「何故……助けてくれたのですか?」

 

リーリエがふと思った疑問を問いかける。なぜ見ず知らずの自分を助けてくれたのかと。その問いに答えるように、キュウコンは無言でリーリエの後ろを見つめた。その視線はコスモッグでもリーリエの持つシロンでもない。何を見ているのかと気になったみんなは後ろへと振り返る。その先には一人の人が走ってきている姿が見えた。このキュウコンのトレーナーだろうか、と疑問に思ったみんなはその人物の姿が明らかとなった時、驚かずにはいられなかった。

 

「もう!シロン!急に走り出さないで下さいよ……。」

 

一人の少女がはぁはぁ、と息を切らしながら走ってきた。その少女は白い服と白いスカート、金髪の髪をポニーテールに纏めた容姿をしており、皆も自分たちのよく知っている人物に似ていた。

 

「りー……りえ?」

 

誰が声を出したのか分からないが、彼女は紛れもなくリーリエにそっくりなのだ。雰囲気や声、それに今名前を出したシロンと言う言葉さえも同じなのだ。まるで鏡を見ているかのように、リーリエも信じられない光景を見ているかのように驚いている。

 

「あ、皆さん初めまして。リーリエです。やっぱりシンジさんに聞いた通りですね。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ロケット団(とロトム)以外のこの場にいる者たちが納得した。忘れる事のできぬ名であり、自分たちと約束を交わした仲間であると。

 

「なに話してるか知らないけど、そのキュウコンとプチドガスは頂いていくわよ!」

「ニャース!もう一度捕まえろ!」

「分かったニャ!」

 

コジロウの指示に従い、ニャースは再び捕獲用ミサイルを発射する。捕獲用ミサイルはキュウコンへと向かって一直線に飛んでいくが、それに動じることなくリーリエはパートナーに指示をだす。

 

「シロン!れいとうビーム!」

 

その姿は落ち着いていて、勇ましく、頼りになれるトレーナーであると皆は感じた。それと同時に、自分の知っているリーリエとはやはり違うのだと言う事も。

 

キュウコン……シロンは口から放った冷気、れいとうビームによっていとも容易く捕獲用ミサイルを凍らせてしまう。それを見れば、どれだけよく育てられているかが伝わる。

 

「なに!?」

「これってヤバい雰囲気?」

「お、大人しく撤収した方がいいんじゃニャいだろうか……。」

「ソ、ソーナンス……。」

 

何だかヤバそうな雰囲気に襲われたロケット団一同は、早々に撤収することを決意し振り返ろうとする。「待て!」とサトシが一喝した次の瞬間、キュウコンとはまた違った影がサトシの頭上を勢いよく飛び越えていった。それはどこか懐かしい気がサトシには感じられた。

 

その影はピカチュウたちが捕らわれていた檻に突撃していき、それを容易く砕いた。内側からピカチュウのアイアンテール、バクガメスのかえんほうしゃさえも無力化してしまった頑丈な檻を破壊したその威力に、ロケット団を含む全員が驚いた。最も、もう一人のリーリエは「流石ですね」と呟き当然と言わんばかりの表情を浮かべている。

 

その影はそのまま優雅に降り立ち、笑顔を浮かべて元気よく皆に振り替える。攻撃の衝撃によりロケット団は気球ごと墜落してしまう。よくある光景ではあるが、初めてみるリーリエにとっては大丈夫だろうか、と少し心配になる。そしてロトムはそのポケモンの詳細を調べる。

 

『ニンフィア、むすびつきポケモン。フェアリータイプ。イーブイの進化形。人に懐きやすく、大好きなトレーナーの腕にリボンを巻きつける。触れるだけでトレーナの気持ちが分かる。』

 

そのポケモンの正体はニンフィアだった。ピカチュウとバクガメスはそれぞれ自分のトレーナーの元へと駆け寄る。そして、サトシたちの横を一人の人物がゆっくりと通り過ぎ、ニンフィアの前で屈み頭をなでた。

 

「うん、よくやったね、ニンフィア。」

『フィーア!』

 

頭を撫でられたニンフィアは嬉しそうに微笑み、頭を擦り付ける。一度は見た懐かしい光景、それだけで皆にはその人物が誰なのか分かった。

 

『シンジ!』

 

もう一人のリーリエ(とロトム)以外の皆が懐かしの人物、大切な仲間の名前を呼ぶ。呼ばれた人物、シンジは立ち上がったのち振り向き軽く挨拶をする。

 

「みんな、久しぶりだね。」

 

その後、墜落したロケット団は気球の残骸から抜け出し立ち上がる。

 

「なんなのよアイツ!」

「クッソー!もうちょっとだったのに!」

 

ムサシとコジロウは計画を邪魔したシンジに激昂する。そして自分の持つポケモンの入ったモンスターボールを取り出して投げる。片方はゴージャスボールと言う珍しいボールだが。

 

「行け!ミミッキュ!」

「頼むぞ!ヒドイデ!」

 

ムサシはミミッキュを、コジロウはヒドイデを繰り出した。しかし、ヒドイデは飛び出した瞬間、コジロウの頭に食らいつく。コジロウは少し抵抗するが、しばらくすると力尽きたように膝をつき、ヒドイデが頭から離れる。コジロウの頭部はまるでヒドイデの様な見た目になっており、毒状態を浴びたかのような姿になってしまった。その光景にシンジとリーリエは苦笑をするしかなかった。

 

「はあ、何やってるのよ。」

 

ムサシは呆れたようにそう呟くが、ムサシの指示を待たずに今度はミミッキュが飛び出した。

 

「あっ!ちょっとミミッキュ!?」

 

ミミッキュはピカチュウに向かいウッドハンマーを振り下ろそうとする。ミミッキュはピカチュウに恨みを持っているようだ。いつものことではあるが、それを見る限りある意味ムサシは苦労人のように思える。

 

ミミッキュのウッドハンマーは確実にピカチュウを捉えていた。しかしミミッキュのウッドハンマーは空を切り、その場にはピカチュウがいなかった。何故かいなかったピカチュウはどこに行ったのかとミミッキュは辺りを見渡す。するとそこにはニンフィアの背に乗ったピカチュウを見つけた。自分の標的であるピカチュウを奪われたミミッキュは、ターゲットをニンフィアに切り替え攻撃を仕掛ける。

 

「まあいいわ!ミミッキュ!やっちゃいなさい!」

 

特に指示も出さずにムサシはミミッキュに呼びかける。ミミッキュに指示を与えたとして、彼が言うことを聞いてくれるとは思えないからだ。それにミミッキュ自身はかなりの手練れだ。ある程度自分勝手にやらせても充分戦闘で活躍する。実際、ミミッキュはヌシポケモンであるラッタを倒した実績もある。

 

「ヒドイデ!お前も行け!」

 

向かってくるヒドイデとミミッキュに対し、シンジとニンフィアは身構える。相手が二体であるため、リーリエもシンジの横に立ちパートナーであるシロンと共に立ち向かう。

 

「じゃあやろうか、リーリエ。」

「はい!」

 

二人からは信頼を超えた絆をサトシたちは感じた。

 

ミミッキュはシャドークローによりニンフィアを攻撃をする。しかしニンフィアはその攻撃を避ける様子を見せず、シロンがニンフィアの前に立ち構えた。

 

「シロン!こおりのつぶて!」

 

こおりの欠片を複数口から放ち、ミミッキュを迎撃する。そのこおりのつぶては鋭く、そして素早くミミッキュを捉えた。ミミッキュは首元がコテッと力なく倒れる。が、これはあくまでミミッキュの特性“ばけのかわ”であり、決してミミッキュの首が圧し折れたわけではないため心配はいらない。

 

ムサシも自慢のミミッキュが簡単に撃墜されてしまったため、苦い顔をする。コジロウも退くわけには行かないと、自分もヒドイデに指示を出す。

 

「ヒドイデ!とげキャノン!」

 

ヒドイデは頭部を相手に向け、鋭い針を無数に発射する。その攻撃を見たニンフィアは、シロンの背後でジャンプし迎撃の態勢をとる。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

シャドーボールは、とげキャノンを正面から弾いていき、勢いを殺すことなくヒドイデに命中する。ヒドイデはその場で墜落し、下にいるミミッキュにぶつかってしまう。

 

相変わらず凄いと、サトシたち一同も感心する。それだけでなく、リーリエとの息もバッチリで、互いに信頼し理解しあっているからこそのコンビネーションだと言う事が伺える。

 

「行くよ!」

「はい!任せてください!」

 

シンジが声を出しリーリエに合図を出す。リーリエもシンジの考えが分かっているようで、最後の技の指示を出した。

 

「ニンフィア!」

「シロン!」

『ムーンフォース!』

 

ニンフィアとシロンは共に浮かび上がり同時に月の力を借りてムーンフォースを解き放つ。同時に放たれたムーンフォースは、ミミッキュとヒドイデを吹き飛ばしロケット団の元へと飛ばされる。その勢いに負け、ロケット団も自分のポケモンたちと共に叫び声をあげながら飛ばされる。

 

「ねえ、あいつらってどっかで見なかった?」

「うーん……俺もどっかで見た記憶があるんだけどなー。」

「しかも最近見た気がするニャ」

 

どうやらシンジとリーリエをどこで見たのか覚えてない様子。遠目で見ているからなのか、一度しか会ってないからなのか、はたまた彼らの記憶力が低いからなのか。とは言え飛ばされながら空中で物事を考える余裕があるあたり、相当な大物である。

 

『いやなかんじー!』

『ソーナンス!』

 

ロケット団一味とソーナンスが最後の叫び声のようなセリフを言いながら星となり遠くへと姿を消してしまう。普通だったら大ごとになるであろうが、彼らなら問題ないだろうと言う確信が不思議と感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ロケット団は森の中へと真っ逆さまに墜落していく。彼らもやってくるであろう衝撃に備え眼を瞑り力を込めるが、痛みが一切やってこない。それどころか、謎の浮遊感が感じられる。その正体を確認するため3人とソーナンス(ソーナンスは元々目を閉じているように見えるが)は目を開ける。

 

『クゥー』

 

そこにはなんとキテルグマがロケット団を抱きしめ受け止めていたのだ。何故彼らがこの場にピンポイントで落下してくるのが分かったのか不明だが、キテルグマはロケット団たちを抱えながら自分の住処へと入っていく。そしてロケット団は、先ほどとは違うセリフを呟いた。

 

『なにこの感じ~』

 

その言葉にはどこか悲しいような物足りないような、それとも残念そうな何とも言えない感情が込められているように思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロケット団たちを難なく追い払ったシンジとリーリエは、互いに顔を見合わせ完璧なコンビネーションに満足しながら一緒に頷く。そして振り返り、シンジがかつて出会った仲間たちと懐かしの再会を果たす。

 

「みんな、改めて久しぶり。」

「ほんとだよー!ビックリしたんだから。」

「久しぶりだな、シンジ!」

 

マオとカキが懐かしの出会いに感動的な様子を見せながら挨拶を交わす。シンジは皆が変わらずに元気そうな様子を見て安心したのと同時に、忘れてはいけないことを言葉にする。

 

「みんな、紹介するね。こっちが以前僕の言っていた……」

「皆さん改めまして、シンジさんと同じ世界からやってきましたリーリエです!」

 

シンジの言葉に続くようにリーリエは頭をペコリと下げて挨拶をする。その姿は礼儀正しくお嬢様な雰囲気を感じさせるが、明るく元気な女の子と言う印象も与えさせる不思議なものだった。

 

「へえ、そっちのリーリエは服も髪型も全然違うんだ。」

 

サトシが自分の世界のリーリエとの違いに感心した後、「あっ、忘れてた!」と言いながら自分も自己紹介を始める。さらにサトシに続き、他のメンバーも自己紹介とパートナーの紹介をしていく。

 

「俺はサトシ、そしてこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピカ、ピカチュウ!』

「知ってると思うけど、私はマオ!そしてこっちがアママイコだよ!」

『アーマイ!』

「俺はカキ、そしてこっちがパートナーのバクガメスだ。」

『ガメース!』

「私はスイレン!こっちはパートナーのアシマリ!」

『アウアウ!』

「僕はマーマネ!それとパートナーのトゲデマルだよ!」

『マキュキュ!』

「俺はククイ。ポケモンの技の研究をしている、ってもう知ってるよな?」

「わたくしはリーリエです。それとパートナーのシロンです。な、なんだか自分に自己紹介するのって恥ずかしいですね……」

『コォン?』

『そして僕がサトシのサポートをしているロトム図鑑ロト!ヨロトシク!』

 

みんながそれぞれ挨拶をし終える。リーリエは挨拶している相手が自分……厳密に言えば別世界の自分であるため少々気恥ずかしさがあるようだ。もう一人のリーリエは特に気にしてはいないようだが。

 

『ところでサトシ達はこのシンジって人に会ったことがあるロト?』

「ああ、そうか。あの時ロトムはいなかったんだったな。」

 

あの時、がいつなのかは気になるところではあるが、そんなことよりロトムはこのシンジという人物の事が非常に気になるようだ。ピカチュウやバクガメスの攻撃でもビクともしなかった檻をあっさりと壊したのだから、興味に惹かれるのも無理なきことではあるだろうが。

 

「シンジは以前出会った仲間なんだ。俺も詳しくは知らないんだけど、シンジはこことは別の世界からやってきたみたいでさ。」

『理解不能、理解不能』

 

ロトムは頭……なのかはよく分からないがパンクしたように湯気を出し頭を押さえる。ロトムとは言っても現在は図鑑としての機能が強いため非科学的な現象を聞いて理解のできない情報を得て、許容量を超えてしまったのだろう。

 

「それでシンジはその世界のチャンピオンなんだよ!」

『理解ふ……ビビッ!?チャ、チャンピオンロト!?』

 

チャンピオンと聞いて慌ててシンジの姿を記録に収めようと写真を撮影する。突然写真を撮られシンジは困惑する。周りのみんなも苦笑いするしかないようだ。

 

「ほら、ロトム。シンジも困っているだろ?あんまりはしゃぐなよ。」

『あっ、ご、ゴメンロト。つい興奮してしまったロト。反省するロト。』

 

ククイの言葉により写真を撮るのを中断し、落ち込んだ様子で反省するロトムに対し、シンジは全然気にしないでいい、と一声かけてロトムを励ます。チャンピオンは器も広いのか、とロトムは心の中で感心する。

 

「あっ、忘れるところでした。こちらは私のパートナーのシロンです。こっちの世界の私のパートナーと同じ名前ですね。」

 

リーリエは自分のパートナーであるキュウコン、シロンをみんなに紹介する。シロンはリーリエの言葉に合わせて一歩前に出る。みんなもアローラのキュウコンが珍しいようで、頭を撫でて歓迎している。シロンも満更でもない様子で微笑んでいる。

 

『コォン!』

『コォン?』

 

こちらの世界のシロンが憧れの感情を抱きながら進化した自分の元へと歩み寄る。そんなもう一人のシロン……かつての自分の姿にシロンは顔を口で軽く触れて挨拶する。シロンも進化した凛々しい姿の自分に触れて貰ったのが嬉しいようで、共にじゃれついている。

 

「昔のシロンとは少し違いますね。」

「そうなのですか?」

 

リーリエは進化する前の姿をしたシロンを見ながら昔のパートナーの事をこちらの世界のリーリエに話す。リーリエも自分の大事なパートナーであるシロンとはまた違った姿を見ることが出来た気がしてどこか嬉しそうな表情を浮かべる。その時リーリエは見覚えのあるものが目に入った。

 

「あ、あれってもしかして……。」

「どうしたの?リーリエ?」

 

リーリエが目に入ったものに近づきその正体を確認する。シンジもリーリエに釣られる形で後をついていく。リーリエがその場でしゃがむとそれは彼女にとって忘れられない、そしてとても大切な存在であった。

 

「ほしぐもちゃん!?」

「え?ほしぐもちゃん?」

 

リーリエがその存在の名を口にすると、シンジもリーリエの傍でしゃがみこむ。その存在は紛れもない二人の知っているほしぐもちゃんであり、今もぐっすりと眠っている。あれだけの騒動があったにも関わらす眠っているところを見るとよほど疲れているのか、それともいい夢を見ているのか。幸せそうな顔をしているところを見ると、恐らくは後者であろう。

 

リーリエはそんなコスモッグを優しく、丁寧に抱きかかえる。サトシは慌てて止めようとするが、大きな声を出しては余計に起こしてほしぐもの機嫌を損ねる結果となってしまう為強くは言えなかった。誰かに抱きかかえられたためほしぐもは目を覚ましてしまう。ほしぐもは寝ている時に起きてしまうと泣き喚いて周囲の人(主に耳)にダメージを与えてしまう為みんなは慌てて耳を塞ぐ。

 

『コッグ?モッグ♪』

 

しかし、ほしぐもが泣くことはなかった。それどころかリーリエに懐いている様子を見せ、彼女の元に抱き着く。こちらのリーリエとの区別がついているのかは不明だが、それでもほしぐもは懐かしくも安心する気分を抱きながらリーリエに身を委ねる。

 

シンジもほしぐもの頭を撫でる。ほしぐもはシンジに対しても敵対する様子を見せず、それどころか撫でられて嬉しさを感じているようだった。彼の話を聞く限りでは、もう一つの世界はこの世界とそっくりだと言う話だ。もしかしたら彼らはほしぐもの事も何か知っているのかもしれない。それならばダメ元で話を聞いてみようと尋ねることにした。

 

「シンジたちはほしぐもの事何か知っているのか?」

 

サトシの口からほしぐもと聞いて、シンジたちはこちらの世界でも同じくほしぐもと呼ばれていることに何故だか安心する気持ちになった。この世界でもほしぐもちゃんは変わらずやんちゃで元気で、迷惑をかけているかもしれないがそれでも大切にされているのだと言う事が伝わったからだ。

 

「うん、よく知っているよ。でも……」

「はい、ほしぐもちゃんの事は詳しくは言えません。」

 

二人は顔を見合わせ、ほしぐもちゃんのことを彼らに伝えるのは控えようと判断する。ほしぐもちゃんの正体を言っても彼らの態度が変わることはないだろうが、それでももしこの世界の未来が変わってしまっては非常にマズイことになってしまう。ふとしたことで未来が変わる可能性は充分にあり得るため、ほしぐもちゃんの件は黙っているのが無難である。

 

「そっか。まあいいや!正体が何であれほしぐもはほしぐもに変わりないからな!」

 

サトシは相変わらずの笑顔でそう納得する。みんなもサトシの言葉に同じく賛同し頷く。その後、サトシは思い出したようにシンジに一つの頼みごとをする。

 

「なあ、折角だしまたバトルしてくれないかな?」

「ずるいぞサトシ!俺ともバトルしてくれ!」

 

サトシに続きカキもバトルの申し出をする。シンジがどうしようか迷っていると、ククイが1つの提案を出してきた。

 

「じゃあこうしないか?今俺たちはポケモンバトルの授業をしているんだ。だがロケット団の妨害があって中断されてしまってな。そこで他のメンバーとも1体2の形式でバトルをしてやってほしいんだ。」

「ククイ博士それって……」

 

スイレンの言葉にククイは僅かに口角を上げながら言葉を続ける。

 

「スイレンの察している通り、俺の提案は以前カントーのジム体験をした時と同じバトル形式だよ。」

 

ククイのその言葉を聞いたサトシたちは良い提案だと全員が顔を合わせて喜ぶ。シンジもどうやら問題ないようで、そのバトルにはもう一人のリーリエにも参加してもらうこととなった。

 

「じゃあ対戦カードはどうする?」

「私はもう一人のリーリエと戦ってみたいな!あっちの世界のリーリエの強さが気になるし!」

「私も自分と戦ってみたいです。本で読んだこと以外にも学べそうなことは多くありそうですし。」

「僕はシンジと戦ってみたいかな。チャンピオンのデータを取ってみたいし。」

「私、チャンピオンと戦ってみたい!」

 

それぞれの希望を聞き、ククイは対戦カードを頭の中で組み合わせ決定する。

 

「よし、じゃあ決まったな。」

 

そうして、チャンピオンシンジともう一人のリーリエと言う特別講師を参加させたポケモンバトルの授業が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同はポケモンスクールの中庭にあるバトルフィールドまで移動した。最初はリーリエ対リーリエ&マオである。戦いなれてはいない二人だが、それでも親友同士と言う組み合わせであるため、息の合わせたチームワークによってはいいところまで食らいつけるのではないかと考えている。

 

「リーリエ!頑張ろうね!」

「勿論です!」

 

二人が顔を合わせてこの戦いの意気込みを見せる。その二人の姿を見て、自分たちの知っているマオ、そして自分自身とは違うのだと感じたリーリエだった。

 

「行くよ!アママイコ!」

『アーマイ!』

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

二人は前に出る自分のパートナーに激励を入れる。リーリエもどのポケモンを繰り出そうか悩んだが、今回はこの子にお願いしようとモンスターボールを握り締める。

 

「お願いします!フシギバナさん!」

『バナァ!』

 

リーリエが繰り出したのは大きくも立派な花を背中に咲かせたフシギバナだった。フシギバナの強大な咆哮に二人は一瞬思わず怯んでしまう。先ほどのキュウコンの優雅さとは裏腹に、フシギバナは迫力が段違いだ。バトル経験の浅い二人にも、対面した瞬間その強さが芯から伝わってきた。

 

『ビビッ!あれはフシギバナロト!』

 

ロトム図鑑はフシギバナの詳細を調べる。カントー地方ではよく見かけるポケモンだが、アローラ地方では滅多に見かけることが出来ないため興奮しているのだろう。

 

『フシギバナ、たねポケモン。くさ・どくタイプ。フシギダネの最終進化形。大きく成長した花からは心を癒す香りが漂う。近年ではメガシンカが確認されたポケモンの一体である。』

 

最終進化形であるフシギバナを持っているという事は、かなり育ててあると言う証明でもある。サトシたちはリーリエがどんな戦いをするのかワクワクして見ている様子だ。

 

「お二人からどうぞ。」

 

リーリエは先に仕掛けてくるように促す。別にこれは二人を舐めて言っている行為ではなく、二人の力量を確認したいと言う彼女の考えからである。マオとリーリエも遠慮なく、と言った様子で先制攻撃を仕掛ける。

 

「アママイコ!マジカルリーフ!」

 

アママイコは手で円を描くようにしてマジカルリーフを放つ。フシギバナは動じることなくマジカルリーフを受ける態勢をとる。寧ろフシギバナの巨体では相手の攻撃を躱すことは難しいだろう。アママイコの放ったマジカルリーフはフシギバナを捉え直撃するが、フシギバナには全く効いていない様子でビクともしていない。

 

「なっ!?全然効いてない!?」

 

確かにくさ・どくタイプであるフシギバナにくさタイプのマジカルリーフは効果は薄い。とは言え全く傷ひとつつかないと言うのは心に来るものがある。

 

「マオ、ここは私に任せてください。シロン!こなゆき!」

 

続いてシロンはこなゆきによる攻撃を仕掛ける。くさタイプにはこおりタイプの技は効果抜群だ。それならば致命傷とはいかなくてもダメージを与えることは可能だろうとリーリエは判断したのだ。しかし……

 

『バァナァ!』

 

フシギバナが咆哮すると同時に、その衝撃によりこなゆきは簡単に掻き消されてしまう。まさに衝撃的な光景だった。シロンはまだ戦いに慣れておらず技の威力もまだ未熟だと言うのは確かにある。だが、だからと言ってたった一つの咆哮により攻撃を無効化されてしまうのは考えられなかった。

 

「はっぱカッターです!」

 

フシギバナは動揺しているシロンとアママイコにはっぱカッターで同時に狙う。そのはっぱカッターは鋭く、同じタイプで効果の低いアママイコにすら大きなダメージをもたらした。

 

「バトル中に動揺を見せてしまっては、今の様にやられてしまいますよ?戦闘中の油断は一切禁物です。」

 

その言葉を聞いたみんなは、やっぱり自分たちの知っているリーリエとは違うんだという事を再認識した。しかしリーリエはその後、小さく呟くように「シンジさんからの受け売りですけど」と呟く。その小さな呟きは誰にも聞こえることはなかったが。

 

「これは完敗だね。もう一人のリーリエには勝てる気がしないよ。」

「そうですね。自分とは言え、力の違いを思い知りました。」

 

流石はチャンピオンと長い間一緒にいただけの事はあると二人は納得する。リーリエもフシギバナに声を掛け、ゆっくりと休むように言いながらモンスターボールへと戻す。そして入れ替わる様にシンジとリーリエがすれ違い準備をする。

 

「次は僕との戦いだね。」

 

シンジのその言葉に合わせて、マーマネとスイレンも準備をする。そして二人はパートナーであるポケモンを繰り出す。

 

「行くよ!トゲデマル!」

『マッキュ!』

「お願い!アシマリ!」

『アウ!』

 

トゲデマル、アシマリを繰り出した二人にシンジはどのポケモンで行こうかを直ぐに決めた。そこでシンジが選んだポケモンは…。

 

「ここは君に任せたよ!ブースター!」

『ブースタ!』

 

『ブースター、ほのおポケモン。ほのおタイプ。イーブイの進化形。体内にはほのお袋を持ち、体温はなんと900度にまで達することもある。』

 

シンジが選んだのはブースターだった。ロトムもいつも通りに図鑑説明を確認する。ブースターはほのおタイプのポケモン。はがねタイプを持つトゲデマルに対しては有利だが、みずタイプのアシマリには当然相性は悪い。そんな中、どうやってバトルするのかみんなは興味が尽きない。

 

「さぁ、どこからでもかかってきていいよ。」

 

シンジのその言葉と同時にブースターも、かかってこいと言う様に構える。相手がチャンピオンという事もあり緊張気味の二人でもあるが、公式試合ではないと気持ちを落ち着かせて胸を借りるつもりでポケモンに指示を出す。

 

「トゲデマル!びりびりちくちく!」

 

マーマネのトゲデマルの代名詞、びりびりちくちくだ。トゲデマルは体に電気を纏った状態でブースターに突撃する。シンジも対抗するためにブースターに指示を出すが、その指示は予想とは全く違いみんなが驚くような内容であった。

 

「回転しながらかえんほうしゃ!」

 

ブースターは体を回転しながらかえんほうしゃを放ち、自分の周囲を守る様に攻撃した。それはまるで炎の鎧をまとっているようにも見えた。そしてトゲデマルはそのブースターの攻撃に成すすべもなく飛ばされてしまう。予想とは遥かに超えるその攻撃に、流石チャンピオンのポケモンは一味も二味もレベルが違うのだとマーマネは感心する。

 

「まだ私がいる!アシマリ!バブルこうせん!」

 

アシマリはバブルこうせんによりブースターに牽制の意味も含む攻撃を仕掛ける。みずタイプの攻撃であれば先ほどの防御も不可能だろ考えての行動だ。しかし……

 

「かえんほうしゃで迎え撃て!」

 

今度は普通にかえんほうしゃでバブルこうせんを迎え撃つ。その攻撃はバブルこうせんと拮抗するどころか、寧ろ凌駕するようにバブルこうせんを次々と撃ち落としていく。アシマリはかえんほうしゃの直撃を受けない様に途中で攻撃を中断し、ジャンプして攻撃を回避する。

 

「なら今度はアクアジェット!」

 

今度はアシマリが水を纏いアクアジェットでブースターに一直線に突撃してくる。そのスピードはなかなかのもので、バトル慣れしていないポケモンの動きとは思えなかった。シンジはそんなスイレンとアシマリに敬意を表し正面から迎え撃つ。

 

「フレアドライブ!」

 

ブースターも同じく炎を体に纏い、全力の力でアシマリを迎え撃つ。正面からぶつかり合う二人だが、やはり力の差が出たのかアシマリが上空に飛ばされてしまいダウンする。致命的なダメージではないが、効果の薄いほのおタイプの技でもかなりのダメージが見られる。それほどまでにブースターの攻撃は凄まじいものだったのだ。

 

「さすがチャンピオン、全然かなわない。」

「やっぱりチャンピオンってすごいんだね。強さが段違いだよ。」

 

どうやらスイレンとマーマネも満足したようだ。シンジは戦ってくれたブースターの頭を撫でて、ブースターに礼を言いながらモンスターボールへと戻す。そしてカキとサトシが勢いよく立ち上がり、遂に俺たちの出番だと意気込む。

 

「次は俺とバトルしてくれ!シンジとバトルしたくてうずうずしてるんだ!」

「それは俺もだ!またシンジと戦えると思うと俺、ワクワクが止まらないんだ!」

 

どうやらカキもサトシもシンジとのバトルが待ちきれないようだ。ならばいい考えがあると、シンジは一つの提案を持ちかける。

 

「だったらタッグバトルをしてみない?カキとサトシ、僕とリーリエのタッグでさ。」

 

シンジの突然の提案に、サトシは面白そうだと更に興奮した様子を見せる。カキもそれはそれで面白そうだと同意する。リーリエもシンジに提案に異議を唱える様子も見せずに賛同する。

 

そしてリーリエはシンジの横に立ち、サトシとカキも二人の前に立つ。

 

「サトシ、足は引っ張るなよ?」

「カキこそ」

 

カキは一見皮肉にも聞こえる言葉を言うが、決してそのような感情はない。それどころか彼のその言葉はサトシに対しての信頼が感じ取れる。サトシもそのことが分かっているからこそ、そう一言だけ返したのだ。いつもは互いに競い合っている二人だが、今回は珍しく共闘……それも相手がシンジとリーリエと言う最強クラスのタッグであるためバトルをしないメンバーたちにさえ緊張が伝わってくる。

 

『これは面白そうなバトルになりそうロト!チャンピオンのバトルは要チェックロト。撮影なら任せるロト!』

 

ロトムは貴重なチャンピオンのバトルを撮影しようと張り切っているようだ。ポケモンスクールでの実力がトップクラスの二人に対し、チャンピオンともう一人のリーリエの試合となれば興味が尽きないのも頷ける。ポケモン図鑑としてのロトムであれば録画したくなるのも仕方のない事だろう。

 

「それにしても、流石はチャンピオンだな。目の前に立っているだけで威圧感が伝わってくる。」

 

前回戦うことが出来なかったカキは、シンジから自然と放たれる威圧感に押しつぶされそうになる。それは多くの強者の纏うオーラのようなものだ。しかし、それはシンジからだけでなくリーリエからも感じ取れる。それだけ彼女も自らに与えられた数多くの試練を乗り越えて辿り着いた境地と言うものなのだろう。

 

「では行きます!シロン!」

『コォン!』

「出番だよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

リーリエとシンジは同時にパートナーであるシロンとニンフィアを繰り出した。その二人のタイミングは完璧で、まるで打ち合わせでもしたのではないかと思わせるぐらい同じ動きだった。

 

「じゃあ俺はこいつで行く!頼むぞ!ガラガラ!」

『ガァラ!』

「なら俺はこいつだ!ルガルガン!君に決めた!」

『ガウ!』

 

カキはガラガラ、サトシはルガルガンを繰り出した。カキの出したガラガラはアローラのすがたであり、ほのお・ゴーストタイプと言う珍しい組み合わせだ。一方、サトシのルガルガンはシンジやリーリエも見たことのない姿をしていた。鮮やかなオレンジ色の体に、澄んだエメラルドグリーンの瞳。真昼の姿とも真夜中の姿とも違い、双方にもある特徴をしたそのルガルガンは、まるで黄昏の姿とでも言いそうな容姿をしていた。

 

「見たことのないルガルガンさんですね。」

「うん、気を引き締めて挑もう。」

 

シンジの言葉にリーリエも頷き、戦闘態勢へと入る。先手必勝と言わんばかりに最初に動いたのはサトシだった。

 

「行くぜ!ルガルガン!キュウコンにいわおとし!」

 

ルガルガンは細かい岩を多数生成し、いわおとしをシロン目掛けて放つ。しかし、シロン目掛けて一直線に迫るいわおとしは、第三者の攻撃によって遮られた。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ニンフィアの見惚れるようなようせいのかぜにあっさりと阻まれる。それを見て驚くサトシであったが、そんなサトシたちにシンジが言葉をかける。

 

「これはチーム戦だよ?相手は一人じゃないからね。」

 

シンジの言う通りこれはチーム戦。いかにパートナーをサポートし、コンビネーションを合わせて攻め込むか。当然一人の時とは戦術の幅も違うし、攻め方守り方共に工夫が必要となってくる。シンジとリーリエはそのことがよく分かっており、コンビネーションもばっちりだ。その上互いの事を理解しているため息も合っている。サトシもそのことを理解し、パートナーであるカキとの連携を大事にしようとカキをチラリと見る。カキもサトシの考えを理解したようで目を合わせて頷く。

 

実際、カキとサトシは考え方こそ違うものの、戦闘スタイル自体は似ている。互いに攻撃主体のバトルスタイルであり、強い相手とバトルをするとどちらも燃えるのだ。勿論、サトシの奇想天外な戦い方はカキに真似することは出来ないかもしれないが。

 

「ガラガラ!ニンフィアにシャドーボーン!」

 

ガラガラはニンフィアに向かって走り出し、シャドーボーンによる近接攻撃を仕掛ける。それを防ぐためにシロンがニンフィアの前に出る。

 

「こおりのつぶてです!」

 

こおりのつぶてがガラガラ撃墜しようと正面から迫りくる。しかしガラガラの邪魔はさせないとサトシとルガルガンが動いた。

 

「いわおとしでガラガラを助けるんだ!」

 

ルガルガンは再びいわおとしを放つことでこおりのつぶてを相殺し、ガラガラへの障害を排除する。ガラガラはシロンとルガルガンの攻撃によって発生した煙を突っ切り、正面にいるシロンへとシャドーボーンを振り下ろす。だがそうは問屋が卸さない。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

シロンの背後からニンフィアが飛び出し、シャドーボールによってガラガラを迎撃する。これは先ほどのロケット団との戦いでも見せたコンビネーションだ。完全に油断していたガラガラはシャドーボールを正面から食らってしまい攻撃を中断させられた。日頃から強くなる向上心もあり、特訓している成果もあるため受け身をとりダメージを最小限に抑えることが出来た。

 

「ガラガラ!大丈夫か!?」

『ガラガァラ!』

 

カキの声にガラガラは骨を持った右腕を空に突き上げ大丈夫だ、と答える。一方、シンジとリーリエは互いに言葉にしなくとも出来ているサポートに目を合わせて頷き次の行動へと移る。

 

「今度はこっちから!ニンフィア!ルガルガンにでんこうせっか!」

「させるか!ガラガラ!アイアンヘッド!」

 

ルガルガンにでんこうせっかで素早い攻撃を仕掛ける。対してカキは、ルガルガンを守るためにアイアンヘッドで対抗するようにガラガラに指示を出す。ガラガラの頭は瞬時に鋼の様に硬化され、ニンフィアとの距離を縮めていく。

 

「シロン!ニンフィアさんをサポートしますよ!れいとうビーム!」

 

ガラガラにれいとうビームを撃ち、ニンフィアの邪魔をさせないように妨害しようとする。

 

「ルガルガン!アクセルロック!」

 

しかしルガルガンはシロンを標的にしアクセルロックで攻撃する。ルガルガンは風のように素早く駆け抜け、シロンがれいとうビームを撃つ前に止めることに成功する。シロンも不意打ちの攻撃によってダメージはかなりあるようだが、それでも膝をつくことはなく首を振って自らを奮い立たせる。

 

ガラガラとニンフィアは共に正面から勢いよくぶつかる。スペックだけで言えばシンジのニンフィアの方が圧倒的に上だろう。しかしこれはポケモンバトル。ポケモンの強さだけでなく当然タイプによる相性なども関わってくる。ガラガラの攻撃にニンフィアは押し負けてしまい、元の位置まで戻されてしまう。

 

アイアンヘッドははがねタイプの技であり、フェアリータイプのニンフィアには効果抜群だ。その上、シンジの持つニンフィアはフェアリースキン。ノーマルタイプのでんこうせっかがフェアリータイプに変化しているとはいえ、ほのおタイプを併せ持つガラガラには効果が薄い。パワー負けではないかもしれないが、ガラガラに押し負けてしまっても仕方ないことだ。

 

「流石にやるね、あの二人。」

「はい。立っているだけで目の前のお二人の強さは伝わってきます。シンジさんと一緒でも勝てるかどうか不安でした。」

「うん。でも……それでも!」

「はい!私たちは負けません!」

 

サトシとカキの強さを再認識し、余計に負けられない気持ちが溢れてきたシンジとリーリエ。サトシたちもその二人の感情を感じ取り、一層気合を入れ気持ちを昂らせる。

 

「凄いバトルだね。」

 

マーマネが四人の戦いを見てそう呟く。他のメンバーも同じ感想を持ったようでその言葉に同意し頷く。

 

「シンジが強いことは知っていたけど、もう一人のリーリエもこんなに強いだなんて。」

「うん、シンジとのコンビネーションもバッチリ。」

 

マオとスイレンもリーリエの強さに感心している。リーリエも二人の言葉を聞き、自分もあのリーリエの様に強くなれるのだろうか、と頭の中で考える。バトルの事に執着したことは全くないが、あの自分の姿を見ていると自分も強くなれないのかと期待が溢れてしまう。

 

「あの二人はアローラで出会ってから長く一緒にいたと言っていた。そしてシンジもリーリエの事が大事な存在だとも言っていた。だからこそ、彼らは互いの事をよく理解し、言葉にしなくても考えていることが伝わっているんだろうな。」

 

ククイの言葉にみんなは納得したように頷く。ククイの言う通り、彼らは長い間行動を共にしている。しかしそれだけでなく、リーリエにとってシンジは憧れの存在であり、シンジにとってリーリエは背中を追いかけてくるチャレンジャーでもある。二人のその関係こそがバトルにおいてコンビネーションを合わせるキッカケにも繋がっているのだろう。

 

みんながそう考察している間にもバトルは佳境へと進んでいた。互いにかなり激しいバトルを続けているため、体力も少なくなってきているようだ。

 

「くっ、やっぱりこの二人に勝つにはZ技しかない!カキ!」

「ああ、任せろ!しっかり決めろよ?」

 

カキの言葉にサトシは微笑みながら頷いて答える。どうやらサトシがZ技で攻め、カキがサポートをすると言う戦法のようだ。シンジも何かを悟ったように身構える。

 

「リーリエ、そろそろきそうだよ。気を引き締めていくよ。」

 

リーリエもシンジのその言葉に覚悟を決め頷いて答える。その頬には緊張のあまり僅かな汗が滴り落ちる。視聴しているみんなにも緊張が届いているなか、先に動き出したのはガラガラだった。

 

「ガラガラ!ホネブーメラン!」

 

ガラガラは手に持った骨を全力で投合する。その骨は横から薙ぎ払う様にニンフィアとシロンの二体を狙う。シンジとリーリエの指示によりジャンプして回避する。しかしその時にはサトシのZ技の準備がすでに整っていた。

 

「行くぜ!シンジ!リーリエ!これが俺の全力だ!」

 

 

 

 

 

――ワールズエンドフォール!

 

 

 

 

 

空中にはまるでフィールド全体を覆いつくすような巨大な大岩が出来ていた。その真下にはルガルガンの姿があり、ニンフィアとシロンを押しつぶすように投げ捨てる。これがいわタイプのZ技、ワールズエンドフォールだ。その破壊力は見た目に違わずとんでもないもので、流石のニンフィアとシロンでも当たってしまえば一溜まりもないだろう。

 

「リーリエ、まだ諦めてないよね?」

「勿論です!シンジさんも一緒ですから!」

 

フィールドには逃げ道はない。しかし、二人の眼に宿る闘志は一切消えていない。寧ろより一層強くなった気すらあった。一人のトレーナーとして諦めることは許されない。極限の崖っぷちまで追い詰められたからこそ、トレーナとしての本能が逆境を吹き飛ばそうとしているのだろう。あの二人ならばこの逆境すら跳ね返してしまうのではないか、とみんなは心の中で不思議とそう思ってしまった。

 

「ニンフィア!」

「シロン!」

『ムーンフォース!』

 

ロケット団にとどめを刺した時と同じように、ニンフィアとシロンの持つ最大の技による合わせ技を放つ。その攻撃はルガルガンの撃ったZ技に向かっていく。その結果は驚くべきものであった。なんと、二体の撃ったムーンフォースはルガルガンのZ技、ワールズエンドフォールと共に砕け散ったのだ。無残にも散ってしまったその破片は、心なしか美しさすら宿ったように落ちていく。その輝きにはほしぐもも大喜びしているようだ。恐らく何が起こったのか意味は理解していないだろうが。サトシとルガルガンも驚きを隠せない様子だが、それ以上に驚いているのはカキであった。

 

「なっ!?Z技があっさりと!?」

 

カキはZ技と言う存在に誰よりも強い拘りを持っている。そのZ技がZ技同士ではなくニンフィアとシロンによる合わせ技と言う驚くべき攻撃によって相殺されてしまったことにショックを受けたのだろう。だが、それでもあの二人の絆と強さがあれば不可能すら可能になってしまうのかもしれないと、心のどこかでは認めてしまっていた。

 

「リーリエ!」

「はい!任せてください!」

 

カキとサトシが動揺しているなか、今度はリーリエがZ技のポーズをとる。そのZ技はこおりタイプのポーズであり、可憐な姿をした彼女にはどこか様になっていた。

 

「行きます!これが私の全力です!」

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

リーリエがポーズを決めると、周囲は寒さを感じる程の冷気に包まれた。するとシロンの足元からは氷の柱が現れ、シロンを高い位置へと持ち上げる。シロンはその高度かられいとうビームとは比にならないほどの冷気を放つ。そのZ技は威力もスピードも凄まじく、Z技を撃った反動で体力を消耗しているルガルガンでは回避する力を残していない。ガラガラがそのZ技を代わりに受けようと盾になるも、ガラガラの体力も残り少なく次第に押し負けてしまう。当然後ろにいたルガルガンにも貫通してしまい、二体は共に凍りつきフィールドの外まで飛ばされる。その後は氷から解放され、ガラガラとルガルガンは戦闘不能となってしまった。

 

「ガラガラ!?」

「ルガルガン!?」

 

サトシとカキはそれぞれのパートナーに寄り添い抱きかかえる。やはり激しい戦いだったこともあり、二人ともかなり体力を消耗しているようだ。慌ててこの世界のリーリエが駆け寄り、救急箱を取り出して手当を行う。

 

「……はい、これで大丈夫です。」

「ありがとう、リーリエ。」

「サンキューな。」

 

キズぐすりで丁寧に直してくれたリーリエに二人は感謝する。ルガルガンとガラガラも落ち着いたようで今は二人の腕の中で眠っている。全力で戦ってくれたガラガラとルガルガンに感謝しながら、モンスターボールへと戻す。

 

その後、シンジとリーリエがニンフィアとシロンを連れて二人にゆっくりと歩み寄る。ほしぐもちゃんもリーリエの事が気に入ったようで、腕に抱かれたままどこか嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「あ、あの、大丈夫でしたか?」

 

どうやらもう一人のリーリエはルガルガンとガラガラの怪我を心配してくれているようだ。その優しい言葉をかけてくれたリーリエに、二人は「問題ない」と答える。その言葉にリーリエは安心したようにホッと一息つく。

 

「それにしても二人とも凄かったな。完敗だよ。」

「全くだ。完璧なコンビネーションには驚かされることばかりだった。」

『今のバトル、バッチリ録画できたロト!凄まじいバトルを撮らせてくれて感謝するロト!』

 

サトシとカキ、ロトムの素直な感想にリーリエは頬を僅かに赤く染めながら照れる。あまり褒められる事には慣れていないようだ。シンジもそんなリーリエを見て思わず笑顔を零す。

 

「二人はとても仲がいいんですね。」

「シンジさんは、私にとっては憧れの人、そしてかけがえのない人ですから。」

 

リーリエがもう一人のリーリエにそう言うと彼女はそう答えた。その答えに今度はシンジが赤くなりながら照れた表情をして、その様子を見たみんなにも二人の仲の良さが伝わってきた。

 

「そう言えばシンジたちはまだ時間はあるのか?」

「うん、まだ大丈夫だけど?」

 

サトシの疑問にシンジは何も問題ないと答える。すると今度はサトシが一つの提案をした。

 

「だったらさ、もう一つの世界の話、聞かせてくれないかな?ほしぐもの話も少しでもいいから聞いてみたいし。」

「あっ、それ私も興味ある!」

「聞きたい、向こうの世界の事!」

「確かに興味あるよね。僕も聞いてみたいな!」

「ポケモンリーグを建てたあっちの俺の話も気になるな。」

 

サトシの提案にマオ、スイレン、マーマネ、ククイが興味津々な顔で賛同する。カキ、リーリエ、ロトムも同じく興味があるようだ。シンジとリーリエも互いの顔を見て頷き、快く承諾した。ほしぐもちゃんもリーリエに抱かれたまま心地よさそうにしていた。

 

その後、彼らはシンジたちの世界の話で盛り上がった。ここにいるメンバーは向こうの世界では話し方や手持ち、それにやっていることも違うという事。それぞれがキャプテンを務めているという事。チャンピオンとして初めて戦ったのがククイ博士だという事。リーリエとシンジが共にカントー地方で旅をし苦難を乗り越えたこと。そして、その後の長き旅路の事も……。

 

皆、それぞれ興味深そうに聞いており、それぞれが色んな思いを抱いて聞いていた。自分とは全く違う姿の自分。自分に与えられた大切な役割。そして人との繋がりと大きな冒険。冒険が大好きなサトシは目をキラキラさせてシンジの話を聞いており、カキは感動のあまり涙を流している。マーマネは別の世界でもどこか自分に似ている部分もあるなと感じている。

 

スイレンとマオは、リーリエにシンジとの関係性について興味深そうに尋ねていた。リーリエもそのことについては流石に恥ずかしさがあり、終始顔を赤くしていた。こっちの世界のリーリエは、ほしぐもちゃんの話を一片だけでも聞いて彼の正体に興味が湧いていたようだ。彼の力にも謎が多く、それらもいつかは解明出来たらいいなと思った。

 

ククイももう一人の自分が考えられないほどの偉業を成し遂げたことにどこか親近感を感じていた。いつか自分も彼がしたことと同じくらいスケールのデカいことをしてみせると心に誓う。

 

ロトムはロトムで、シンジの持っていたロトム図鑑と共に図鑑内容を比較して競い合っていた。当然と言えば当然だが、シンジのロトム図鑑に比べ、こちらのロトム図鑑は島巡りによる経験が未だないため図鑑登録数が劣っていても仕方のない事だろう。後々、いつかシンジのロトム図鑑を超えて見せようとサトシを急かしていた。

 

シンジとリーリエは、こうして再び非現実的な経験を味わった。同時に、サトシたちもこれ以上に貴重な経験は味わえないだろうと、今回の出来事を深く噛み締める。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、これはあくまでもしもの話。実際に起こった出来事かどうかは…………これを見ている皆の想像にお任せする。もう一人の自分との出会い、大切な存在、仲間たちとの再会、そして別世界の友人。次にこれらの不思議な経験を味わうことが出来るのは、もしかしたらあなたなのかもしれない…………。

 

 

 

 

 

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夢落ちっぽく終わらせてみました。偶にはカッコよく決めてみたかったですの……。決してどうやって終わらせればいいか分からなかったわけではない。ホントダヨ?

そしてリーリエ急成長なり。作中ではシロンとフシギソウが進化していましたが、どこで進化させるかはまだ未定です。少なくともカントー編で進化させることは恐らくないと思われます。まあ流石に最終的には進化させることくらい予想しているとは思うので、ネタバレではない……よね?

キャラが多いと書くの難しいのでアニポケキャラの性格とか喋り方がこれであってるのか分からないです。特にリーリエに「論理的結論として」を言わせたかったのですがタイミングが全く分からなかったです。非力(ry

では次回は本編です。先週の様に予想GUYに忙しくならない限りは書き上げます。ここで書くと言ってしまっては逃げ道がなくなるので(ボソッ

で、ではではまた来週ノシ


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アニポケコラボ特別編 ~超全力Z炸裂~

なんか間に合いました。と言う訳でリクエスト回です。

まさかの展開!?が待っているかどうかは分かりませんが、取り敢えず例のごとく長いので(2万字ほど)ご容赦ください。


ここはメレメレ島のとある大木。そしてそこには大きな穴が開いており、中には空洞が広がっている。この大木にはあるポケモンが住処として住み着いているが、そこにはまた別の人物たちも共に過ごしていた。その人物たちは……。

 

「ではこれより、我らロケット団の作戦会議を開始する!」

『ラジャ!』

『ソーナンス!』

 

そう、彼らはロケット団。カントー地方を拠点に世界中のポケモンを手に入れ、世界征服をしようと目論んでいる悪の秘密結社である。だがここにいるのは3人――正確に言えば2人と2匹のポケモン――であり、秘密基地としてその一部を改造し利用しているのだ。

 

そもそもある事情により、そのとあるポケモンの元を離れることが出来ずにやむを得なくここを基地にした、という理由もあるのだが、本人たちは割と現在の状況にも満足しているようだ。

 

「まず、以前出会ったニンフィア使いだが……」

 

赤髪の女性はそこで一度言葉を止める。すると……

 

「なんなのよアイツ!もうちょっとのところでジャリボーイのピカチュウを奪えたってのに!」

 

突然机をバンッと叩き立ち上がり、激昂し始めたのだった。彼女はムサシ。そしてムサシが以前邪魔をされたニンフィア使いと言うのが紛れもなく別世界からやってきたシンジだ。ムサシは短気な性格で、上手く行かない事があると人に当たりたくなってしまうのだ。

 

しかしそんな彼女でも、人のポケモンを奪おうとすることはあろうとも自分のポケモンを責めることは決してない。彼女もまた、心優しいトレーナーの一人という事なのかもしれない。

 

「でもアイツのニンフィア強かったよな。たった一撃で俺の作った特製の檻を壊したんだもんな。」

 

青髪の男性、コジロウがそう呟いた。コジロウは主に発明担当で、その発明品は中々興味深いものが多い。前回もあるポケモンを捕まえようと頑丈な檻を作成し破壊不可能かと思われていたが、それでも突然現れたシンジのニンフィアにあっさりと破壊されてしまったのだ。

 

「あのニンフィアちゃんは可愛かったのニャ~」

『ソーナンス……』

 

目がハートマークとなってそう呟いたのはニャースだ。紛れもなくカントー地方に生息するニャースだが、ある事情により人間の言葉が喋れるようになった。そのことについては割愛するが、彼は雌ポケモンに惚れやすい傾向にある。今回もいつもと同じパターンであろう。メロメロも使われていないのにメロメロ状態になってしまうとは相当である。

 

そしてもう一匹いるのがムサシの手持ちの一匹であるソーナンス。このソーナンスは特にこれと言って特別なことはないが、強いて言うのであれば頭が良いという点であろうか。ムサシが特に指示を出していないにも関わらず、物理技を跳ね返す“カウンター”と、特殊技を跳ね返す“ミラーコート”を使い分けるのである。

 

これはムサシがかつてあるトレーナーに教えてもらったのだが、ムサシ自身判断するのが難しいと割り切ってしまったため、ソーナンスは自分で判断するしかなくなってしまったのだ。それでも自分で未だに判断し使い分けているため、流石と言うべきだろうか。

 

彼らが狙っているのはマサラタウンからこのアローラまでやってきた一人の少年トレーナー、サトシの相棒であるピカチュウだ。そのピカチュウとは初めて会った時に敗北して以来、彼らはピカチュウをずっと追いかけ捕まえるために努力しているのである。もちろん人のポケモンを勝手に捕まえのは犯罪であるが、彼らは悪の秘密結社ロケット団。そんなことはお構いなしなのだろう。

 

「あ~、ニャースの事は放っておいて、あのニンフィアは使えない?」

 

ニンフィアに惚れ込んでいるニャースを無視し、ムサシは作戦会議を継続する。

 

「ああ、あの強さはもしかするとメガシンカにも匹敵するかもしれない。ピカチュウと共にロケット団ポケモン精鋭部隊を結成すれば、俺たちに敵はいないな!」

 

そう怪しげな笑みを浮かべたコジロウは「それに」と言葉を続けた。

 

「あの時一緒にいたキュウコンも使えるよな?」

「確かにあのれいとうビームは強力ね。」

 

そして2人の言葉を聞いたニャースは我に返る。

 

「そうニャ!ニャーにいい考えがあるニャ!」

 

主に作戦担当のニャースがいい案を思いついたと、ムサシたちに耳打ちをする。ムサシとコジロウもニャースの作戦を聞き、黒い笑みを浮かべてニャースの意見に賛同した。

 

「なるほど、いいわねそれ!」

「よし!それじゃあ早速!」

「行動開始ニャ!」

『オー!』

『ソーナンス!』

 

3人で同時に拳を天に突き上げる。それに対しソーナンスも彼らに相槌を打つ。こうして彼らロケット団の悪巧みが再び始まろうとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!これがアイナ食堂特性の“幻のアローラシチュー”だよー!」

 

そう言って緑髪のツインテールの女の子、マオは美味しそうな香りの漂うシチューを運んでくる。相棒であるアママイコもマオのお手伝いとして共にシチューを運ぶ。

 

ここはアイナ食堂。マオとその父親が共に経営している人気ある食堂である。彼女はクラスメイトであるサトシたちを招き、アイナ食堂で自慢の料理を振舞っていたというわけだ。

 

「待ってました!」

「僕もうお腹ペコペコだよー」

「相変わらずうまそうだな!」

 

サトシに続き、小太りな少年であるマーマネがそう呟いた。さらにその後、こげ茶色の肌をした少年、カキもまたマオの運んできた料理を見た感想を言う。彼らはこの店によく訪れることもあり、マオが振舞ってくれる料理が大好物なのである。

 

「久しぶりですね!マオの作った“幻のアローラシチュー”!」

「うん!あの時と変わらないいい香り!」

 

淡く長い金髪の少女、リーリエと小柄で青髪の少女、スイレンが幻のアローラシチューを目にして感動した様子で見つめている。彼女らもまたマオの作る料理が大好きなのだ。

 

そんな彼らと共に食事をしようと、ある人物たちがその場にいた。だがその彼らはと言うと……。

 

(ほ、本当に食べても大丈夫なのだろうか……)

(見た目も香りもすごく美味しそうなのですが……)

 

彼らはこの世界とは別の世界からやってきたシンジとリーリエである。かつての出来事以降、偶に2人でこの世界へと立ちよりサトシたちと触れ合うことも多くなったのだ。別の世界であるとはいえ、彼らもまだ子供と言える年なので友達と遊びたい年頃なのだろう。

 

だが、そんな彼らは目の前に運ばれてきた料理を食べるのを躊躇っている。確かに見た目も香りも美味しそうなシチューだ。しかし彼らは、自分たちの世界に存在しているマオの料理を食べ、身をもって体験してしまっていることがある。

 

(僕たちの世界のマオの料理って……)

(なんと言うか……独特なんですよね……)

 

彼らの言うとおり、彼らの世界にいるマオは料理が下手、というわけではないのだろうが、独特な料理をしてしまうのだ。彼らは一度そんな料理を口にしてしまい、果てしなく後悔してしまったことがある。

 

以前彼らが元の世界で彼女の店に立ち寄り食べた事があるが、その時に食した“Z定食スペシャル”と呼ばれるものは例えることができないほど癖のある味だったらしい。一部それを完食する人物もいたが、少なくともシンジとリーリエにはそれを食べきることができなかったらしい。

 

そんな味を知っていては、食べることも戸惑ってしまう。だが、目の前に出されたからには少なくとも口に入れなくては失礼に値してしまう。そう思ったシンジとリーリエは、シチューをスプーンで掬い口に運ぶ。思わず力が入ってしまい目を閉じるが、暫くしてから予想外の味に感動を覚える。

 

「!?これすっごく美味しい!」

「本当です!ピリッとした辛さに香ばしい香りが口の中に広がって、後から味わい深い甘さが蕩ける食感。凄く美味しいです!」

「そ、そんな大げさだよー!でも2人が喜んでくれて私も嬉しいよ!」

 

まるで食レポのようにシチューの感想を語るリーリエに、マオは照れくさそうな仕草をする。幼少のころから豪華な食事をしていたであろうリーリエだが、最近ではシンジの作る料理もよく食すことがあるため彼女の舌も充分に肥えてしまったのだろう。

 

周囲のクラスメイトたちに加え、彼らのパートナーポケモンたちも美味しそうにポケモンフーズを頬張っている。

 

「お代わりってある?」

「ごめん!今日はもうこれくらいしか作れないんだ!」

 

マーマネがお代わりを求めるが、マオは手を合わせて謝った。

 

マオ曰く、幻のアローラシチューに使う素材はやまぶきのミツと呼ばれるものが必要なようで、探したはいいもののあまり回収することが出来なかったようだ。

 

やまぶきのミツは、オドリドリと呼ばれるポケモンの姿を変化させる特別な花の蜜で、特定の場所で特定の時期、特定の時間と入手できる時が限られている。そのため、現在の時期では入手できることはあるものの数が少なく、1人一杯分しか集めることが出来なかったのだとか。

 

マーマネもマオの話を聞き、残念だけど仕方がないと諦めた。そこでリーリエが立ち上がり、シンジにある提案をしたのだった。

 

「シンジさん!でしたら私たちが料理を振舞いましょう!」

「僕たちが?そうだね。分かった。じゃあそうしようか!」

 

リーリエの提案にシンジも乗っかり、彼女と共に料理を作ろうとマオにキッチンを使用していいか許可を求める。マオも問題はないと許可を出し、席に座って彼らの料理を待つことにした。

 

「シンジたちの料理か……どんなのが出てくるんだろうな!」

「な、なんだかわたくしが料理していると考えると違和感が……。」

 

サトシはシンジたちの作る料理をワクワクしながら待機している。逆にリーリエは、別世界の自分とは言え普段料理を作ることのない自分がキッチンで料理していることに、少なからず違和感を覚えているようだ。姿がそっくりな自分が普段の自分と違う事をしているとどうしてもそう言った違和感を感じても仕方がないだろう。

 

「リーリエはそっちをお願い。僕はこっちをやるよ。」

「分かりました!」

 

シンジが指示を出して分担を決め、リーリエはシンジの指示通りに動く。その様を見ると、やはり2人は息がピッタリなのだという事がよく分かる。

 

「やっぱりあの2人って仲いいよね。」

「ああ、料理している姿を見るだけでそう思わせるな。」

 

マオとカキが2人の様子を見てそう感想を漏らす。他のみんなも2人の言葉と同意見なようで同時に頷く。

 

「あの2人って喧嘩するのかな?」

「喧嘩するほど仲がいい、って言うけどあの2人を見た限りじゃとても喧嘩するようには見えないよ。」

 

マオが気になったことを呟くが、マーマネは2人のそんな姿は想像できないと否定する。確かに喧嘩するほど仲がいいとは言うが、仲がいい者が誰しも喧嘩するというわけではない。もちろん喧嘩しないからと言って仲が悪いわけではない。それはあの2人が証明している。

 

「喧嘩しなくても仲がいいのって、なんだか羨ましい。」

 

スイレンは小さくそう呟いた。スイレンには双子の妹がいるのだが、彼女たちはスイレンの言う事を中々聞いてくれない。姉妹仲が悪いわけではないが、時折言うことを聞いてくれない時は叱ることもあるため喧嘩をしない彼らが羨ましいのだろう。

 

みんながシンジとリーリエの関係について考えていると、シンジとリーリエに加えシンジの持つエーフィとニンフィアも一緒に料理を運んできてくれた。エーフィはエスパータイプ特有のサイコパワーで、ニンフィアは自分の特徴でもあるリボンの触手を使って器用に運ぶ。

 

「お待たせ!と言っても単純にカレーにしてみたけど。」

 

シンジたちが運んできたのは一般家庭でも人気のあるカレーライスだ。料理の材料は常に自分がいつでも作れるように確保しているため、材料不足になることはなかった。サトシとマーマネは待ちきれないようで、料理が運ばれるのを確認した瞬間に既にスプーンを所持して待機していた。

 

「おっ!うっまそう!」

「早速食べていい!?」

「うん、もちろん遠慮なく食べていいよ。」

 

みんな涎が垂れそうになるのを我慢しながら、同時に“いただきます”と手を合わせて食前の挨拶をする。それとほぼ同時のタイミングでサトシとマーマネがカレーを口へと運ぶ。

 

「んっまい!」

「なにこれ!?すっごく美味しい!」

 

シンジとリーリエの作ったカレーはサトシとマーマネに大好評なようだ。彼らはその味に満足しているのか、次々と皿に盛られたカレーライスを次々と消費するほど驚異的なスピードで食べていく。

 

「もー、サトシもマーマネも行儀悪いよ!」

「マオも食ってみろって!すっげぇ美味いぜ!」

 

マオの制止も聞かないサトシに呆れつつも、マオはカレーを掬って口に運んだ。すると先ほどとは表情が変わり、彼女の瞳に星が映っていると錯覚させるほどの感動を彼女は感じた。

 

「なにこれ!?すっごく美味しい!」

「ああ!これはうまい!」

「すごい!シンジとリーリエの作ったカレー!」

「こんなに美味しいカレー初めてです!」

 

サトシとマーマネだけでなく、他のメンバーからも絶賛の嵐だ。これにはさすがのシンジとリーリエも照れずにはいられない。

 

「リーリエが手伝ってくれたから楽に作れたよ。」

「い、いえ!私は何もしていませんよ。」

 

シンジの言葉にリーリエは謙遜するも、その表情はまんざらでもない様子だ。彼女もシンジに料理を教わっていたため、今では一人でも作れるまでには上達している。だからこそ褒められた気がしてリーリエも自然と嬉しい気持ちが出てきたのだろう。

 

サトシたちがおいしそうに食事をしているのを眺めているポケモンたちも、涎を垂らしながら食べたそうにしている。特にサトシのモクローはその匂いに釣られ、いつも寝ているにも関わらずに今は目を見開いている。今にも飛びつきそうな様子だが、そんなポケモンたちにシンジはポケモンフーズを差し出した。

 

「みんなにはこっちだよ。」

 

ポケモンフーズを差し出されたポケモンたちは、すぐに飛びつき漁るかの如く食していく。シンジの作った特製のポケモンフーズは味だけでなく、栄養のバランスも考えられているためどのポケモンにも好評であった。

 

味付けにも勿論工夫してある。例えばでんきタイプのピカチュウには刺激のあるマトマのみをちょっぴり加え、甘いのが好きなアママイコにはナナのみとモモンのみを小さく切って混ぜるなどだ。こうすることによってポケモンたちの好みの味にし、誰でも簡単に食べられるようにしてポケモンたちの健康を保つことが出来るのだ。

 

「シンジってポケモンフーズも作れたんだね。」

「あの、今度ポケモンフーズのレシピを教えてもらってもいいですか?」

「うん、もちろんだよ。」

 

マオがシンジの腕前に改めて感心し、こちらの世界のリーリエがシンジにポケモンフーズのレシピの教えを乞おうと頼む。シンジもその頼みを断る理由がないため、快く了承する。

 

シンジとリーリエの作った料理に満足した一行は、一度アイナ食堂を後にすることにした。因みにサトシ、マーマネ、カキは一杯で満足できなかったのかカレーのお代わりを注文していた。シンジはその食欲旺盛な3人組に苦笑しながら、次々と彼らの皿にカレーを盛っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイナ食堂でお腹いっぱいになった一行は、ポケモンスクールへと戻ってきた。そこではククイがある準備をして、彼らの事を待っていた。

 

「おっ、戻ってきたか。どうだった?アイナ食堂の方は?」

「マオの作ったシチュー、凄く美味しかったです!」

「シンジの作ったカレーも美味しかったですよ!」

「シンジも飯作れるのか?俺も食べてみたかったぜ。」

 

そう言って羨ましがるククイに、シンジは大きな器に入ったカレーを差し出した。

 

「よかったらこれ、作り置きしておいたので後でバーネット博士と食べてください。」

「おっ!気が利くなー!じゃあありがたく後でいただくよ!」

 

シンジはククイのために用意していた作り置きのカレーを渡した。元の世界でよくお世話になったククイに恩返し、というわけではないが、そういった意味も込めて彼に渡したかったのかもしれない。

 

こちらのククイは最近になってバーネット博士と結婚したようだ。元の世界ではシンジやリーリエと出会う前に結婚していたが、こちらとは世界観が少し違うようだ。

 

因みに、以前来た時に出会ったほしぐもちゃん……コスモッグの姿もない。サトシたちの話によると、彼はソルガレオの姿となり去っていったのだとか。

 

また、こちらの世界でもリーリエの母親であるルザミーネを救うため、サトシたちと協力して彼女を救い出すことに成功したという。だがこちらの世界のルザミーネはシンジたちの世界の彼女と違い、ウツロイドの神経毒による後遺症が残ることはなかったようだ。その話を聞いたシンジとリーリエは、彼らに話すことはなかったが心の中では大きく溜息をつき一安心していた。

 

それにこちらの世界のリーリエも、以前はポケモンに触れることができなかったのだが、ある事がキッカケで再び触ることができるようになっていた。前に進むことのできた彼女に、もう一人のリーリエもそのことを知らされた時には自分の事のように喜んでいた。

 

今日は偶々シンジとリーリエがこちらの世界にやってきたため、折角だから彼らにこの世界のアイナ食堂へと案内してあげようというククイの粋な計らいだ。サトシたちもその意見にはノリノリであり、先ほどまでアイナ食堂でゆっくりと過ごしたと言う訳だ。

 

「ところで博士?今から何をやるんですか?」

「折角シンジたちが来てくれてるんだ。ポケモンバトルについていろいろと教えてもらおうと思ってな。」

 

ククイの言葉にサトシを筆頭としたクラスメイト達が盛り上がる。特にサトシはポケモンバトルと聞いたら黙っていることが出来ない主義だ。強い相手と戦うことが出来ればそれだけでも嬉しいのだろう。その相手がシンジとなれば尚更だ。

 

「よし!じゃあ早速俺とバトルしようぜ!」

「ズルいぞサトシ!俺ともバトルしてくれ!」

「そんなに焦らなくても僕は逃げたりしないよ。じゃあ今日はカキとリーリエがバトルした後に僕とサトシがバトルしよう。それでいいかな?」

 

本音で言えばもう一度シンジと戦いたかったカキだが、リーリエも決して油断できる相手ではないため相手としては不足はない。そのため異論はないと頷くことでシンジの意見に賛同する。

 

リーリエも問題はないようで、折角なら私も色々と経験したいという事でシンジの提案に乗っかる。島巡りをして強くなった自分を試す絶好の機会だと考えた。

 

そしてシンジの提案通り、カキとリーリエがお互いに向かい合ってフィールドに立つ。他のクラスメイト達も離れてリーリエとカキの応援をしようと見守る。女性組はどちらを応援しようか迷っているようだが。

 

「行け!ガラガラ!」

『ガラガァラ!』

 

カキは前回と同じでガラガラを出してきた。ガラガラは気合十分と言った様子で骨を持った拳を突き上げる。リーリエも出すポケモンを決め、モンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

優雅にフィールドに降り立ったのはリーリエの相棒であるアローラのキュウコン、シロンだ。シロンのその美しい姿は見るものを見惚れさせ、背後には雪結晶が降り注いでいるような錯覚に陥るほどの優雅さを醸し出している。

 

だが今のシロンは美しさだけではない。今のシロンのそれらに加えて強さも充分に兼ね備えている。カントーでの旅やアローラでの島巡りが彼女を強く育て上げたのだ。

 

「相性は圧倒的にこちらが有利だが……。油断するなよ!ガラガラ!」

『ガラ!』

 

こおり・フェアリータイプのシロンに対し、ほのお・ゴーストタイプのガラガラは相性がこの上なくよい。だが、例えどれだけ相性が良くても油断するのは素人のやることだ。カキはそれを理解しているからこそ、油断するなとガラガラと自分に言い聞かせる。

 

「それではカキのガラガラ対リーリエのシロン、バトルはじめ!」

 

審判を務めているククイの合図で2人のバトルが開始される。開始されると同時に動いたのはカキのガラガラであった。

 

「ガラガラ!ホネブーメラン!」

「躱してください!」

 

ガラガラは持っている骨をシロン目掛けて投げる。ガラガラの投げた骨は弧を描いて遠回りにシロンを狙う。しかしシロンはあくまでも冷静にジャンプすることで簡単に避ける。

 

だがガラガラは骨を投げた後も走ってシロンとの距離を縮めていく。ホネブーメランに気をとられている内に接近して自分の得意な距離にしようとするのが彼らの本当の狙いだ。

 

「シャドーボーン!」

 

戻ってきたホネブーメランをキャッチし、ガラガラは次の攻撃へと移る。次は骨に魂の宿った力を付与し、シロンに殴りかかる。その攻撃は素早さだけでなく、威力もかなりあるものだと言うのが伺えた。だが、それでもリーリエとシロンはうろたえることなく冷静に対処する。

 

「こおりのつぶてです!」

 

シロンは接近してきたガラガラにこおりのつぶてを至近距離で当てる。動き回られては当てにくい技でも、目の前まで接近してきた相手であれば確実に当てることが出来る。リーリエはカキの狙っていた作戦を逆手にとって逆に利用していたのだ。

 

至近距離のこおりのつぶては避けることが出来ずにガラガラを直撃する。だが至近距離という事もありガラガラにダメージは入ったものの、衝撃によりシロンも少し後ろに下がらされる。

 

「大丈夫か!?ガラガラ!」

『ガラガァラ!』

 

それでもガラガラは大丈夫だと言わんばかりに再び拳を突き上げカキに応える。カキもその姿には少し一安心した。

 

「リーリエすごい……」

 

スイレンの言葉にみんなも同意する。通常どれだけ冷静を装ったとしても相手の策略を利用するのは難しいものだ。だがそれをリーリエはいとも容易く行ってしまった。それは状況判断に長けているだけでなく、これまでそういった戦い方を続けてきた結果体に染みついたからだろう。

 

「リーリエはこれまで多くのライバルたちと戦って強くなってきたからね。リーリエの強さは折り紙つきだよ。」

 

シンジの評価に全員が納得する。こちらの世界のリーリエも自分では到底真似できないだろうなと感じさせられた。また、この世界のシロンも主人の指示に的確に動き期待に応えている姿に憧れを感じていた。

 

「今度はこちらから行きます!れいとうビームです!」

 

次はシロンから攻勢に出た。シロンのれいとうビームは強力で、鋭さも相まって躱すことが困難であった。避けれないと判断したガラガラは骨を使って受け止める。しかし、次第の押され始めてしまい遂には弾かれてガラガラは飛ばされてしまった。

 

「ガラガラ!?」

 

カキの声に反応し、ガラガラはダウンを拒否してなんとか持ちこたえる。まだまだこれからだとガラガラは自らを鼓舞し、骨を力強く握りしめた。

 

「その意気だ!フレアドライブ!」

「こおりのつぶてです!」

 

炎を纏い突っ込んでくるガラガラに、今度は真っ向から迎え撃とうとこおりのつぶてで対抗する。だがタイプ相性の差がもろに出てしまい、ガラガラは無数のこおりのつぶてを次々とフレアドライブで掻き消していった。最終的にはフレアドライブがシロンへと直撃する。

 

弱点であるほのおタイプの技を正面から受け流石にダメージを隠しきれないシロンだが、それでもリーリエの期待に応えるために倒れることなく踏みとどまった。

 

「今の一撃でもダメか……。やっぱあっちの世界のリーリエもかなりの強さだな。」

 

シンジだけでなく彼の傍に長くいたリーリエもまたかなりの強者だと改めて感じるカキ。そんなカキはリーリエに勝つにはあれしかないと、自身の持つ最大の技で対抗することにした。

 

「やるしかない!行くぞガラガラ!」

『ガラ!』

 

カキはそうガラガラに呼びかけ、手を目の前でクロスさせる。リーリエも間違いなく来る、とシロンと共に身構える。

 

「俺の全身、全霊、全力!全てのZよ、アーカラの山のごとく、熱き炎となって燃えよ!」

「出た!カキの全力のZ技!」

 

カキのセリフと共にガラガラを熱い炎を感じさせるオーラが包み込む。サトシの言った通り、これはカキの全力のZ技が放たれる前兆だ。

 

カキは右手を前に突き出し、左手で右手を支えるポーズをとる。そのポーズはほのおタイプのZ技を出すためのポーズだ。それと同時に、ガラガラの纏っていたオーラが解き放たれ、ガラガラが全力の一撃を撃ち放った。

 

 

 

 

 

――ダイナミックフルフレイム!

 

 

 

 

 

全力のZ技、ダイナミックフルフレイムが解放される。その強大な炎の弾丸は強力な一撃となりシロンへと近付いていく。

 

「シロン!れいとうビームです!」

 

回避が困難だと考えたリーリエとシロンはれいとうビームでZ技に対抗した。しかしそのれいとうビームはZ技に対して正面から対抗したわけではなく、地面に放つという驚くべき行動であった。カキを含めクラスメイト達も驚くが、その間にれいとうビームは氷の壁を作ってZ技を遮った。

 

その壁でZ技を完全に止めることは出来ず、Z技は氷の壁を簡単に破壊して更に接近してくる。だが、リーリエはまだ手を緩めることはなかった。

 

「ムーンフォースです!」

 

今度はムーンフォースで対抗するシロン。しかしその攻撃も地面へと放たれたものだった。そのムーンフォースは地面を抉り、砂を巻き上げて再びZ技の行く手を阻む。当然Z技を抑えることは出来ないが、それでもその攻撃で確実にZ技の勢いを多少は抑えることが出来た。また、それらの妨害でZ技の大きさが心なしか小さくなっているようにも感じる。

 

「今です!躱してください!」

 

シロンはその瞬間に高くジャンプして回避する。技範囲も狭まり、勢いも殺された技であればたとえ強力な技であっても回避するのは容易だ。リーリエの狙っていたのはこのタイミングであった。ガラガラも戦闘のダメージが抜けていなかったため、Z技の威力が通常よりも弱くなってしまったのも原因の一つだ。それがなければここまで上手くことを運ぶのは難しかっただろう。

 

当然この結果にはカキが一番驚いている。まさかこんな方法で自分の自慢のZ技が破られるとは思っていなかったためだ。

 

「れいとうビームです!」

 

ジャンプした高所かられいとうビームを放ち、その攻撃はガラガラを襲う。ガラガラはダメージが溜まっていることに加え、強力なZ技の反動で動けなくなってしまっている。そのため、シロンのれいとうビームに対抗することが出来ずに直撃してしまった。

 

流石のガラガラも効果の薄い技とは言え、これ以上耐え切ることが出来ずに戦闘不能となってしまった。

 

「そこまで!ガラガラ、戦闘不能!リーリエとシロンの勝ち!」

「ガラガラ!?」

 

カキはガラガラの身が心配となり、急いで走って近づく。頑張って戦ったガラガラにお疲れ様と言葉をかけ、モンスターボールへと戻した。

 

「カキさんのガラガラさん、凄く強かったです。正直危なかったです。」

「Z技で決まったと思ったんだけどな。だがどうしてZ技に直接攻撃を加えなかったんだ?」

 

カキの疑問も最もである。Z技に対して直接攻撃を加えれば、先ほどのように手間をかけることなく止めることが出来たのではないか。クラスメイトも同じ疑問を抱いている。その疑問にリーリエは迷いなく答えた。

 

「Z技だからですよ。」

「Z技だから?どういうことだ?」

「Z技は通常の技をとても凌駕する強力な技です。そんな強力な技に直接攻撃を加えれば、下手をすればその技を吸収されて力を高められてしまう可能性もあります。だからこそ、私は間接的な方法で対処させていただきました。」

 

カキはリーリエの説明に納得した。Z技の強大さは自分もよく知っているつもりだ。その力は時には自分の想像すらも超えてしまうものだ。だからこそ、リーリエの対応には感心しか覚えない。

 

あれだけ追い詰められた状況でも冷静な状況分析、臨機応変な対応、これだけの実力を見せられれば島巡りに成功したと聞いても疑う余地はない。

 

「完敗だ。今回はいい勉強になった。また俺とバトルしてくれ。今度は負けないからな。」

「私も同じです。もっともっと強くなって、いつか必ず……」

 

そこで言葉を止め、リーリエはシンジの方へと視線をずらした。島巡りを終えた今でも、必ず目標の人物に追いついて見せると決意を固めながら。

 

「よし!次は俺の番だ!バトルしようぜ!シンジ!」

「うん。僕も全力で迎え撃つよ!」

 

今のバトルで興奮がピークに達したサトシは、もう待ちきれないと言った様子でシンジに呼びかけた。シンジもサトシと気持ちは同じようで、全力で戦うと彼に誓う。

 

そしてサトシとシンジはフィールドで向かい合う。その時、サトシとシンジは最初に初めて戦った時の事を思い出した。

 

「あの時は俺が負けたけど、今度は絶対勝って見せる!」

「僕もそう簡単に負けるつもりはないよ。君に全力で挑んで勝つ!」

 

シンジはそう言い放って、モンスターボールを手に取る。そしてそれをフィールドに投げると、中からは彼の相棒であるポケモンが姿を現した。

 

「行くよ!ニンフィア!」

『フィーア!』

 

彼の相棒であり最高のパートナーであるニンフィアだ。サトシはやはりニンフィアで来たかと、自分も相棒で戦うべきだと相棒の名を口にした。

 

「ピカチュウ!君に決めた!」

『ピカ!ピカチュウ!』

 

サトシの呼び声に答え、ピカチュウは頬袋で電気をバチバチと鳴らして気合を入れながら前に出る。両者ともに気合充分だと感じたククイは、再びバトル開始の合図を出した。

 

「それでは、シンジのニンフィア対サトシのピカチュウ、バトルはじめ!」

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

「ニンフィア!こっちもでんこうせっか!」

 

ククイの合図と同時にお互いが動く。ニンフィアとピカチュウはフィールドを駆け抜け、互いの距離が急速に縮まる。やがて中央でぶつかり合い、お互いに元の位置まで戻る。お互いに準備はバッチリだという意思を伝えあい、挨拶もかわしたところで今度はピカチュウから仕掛けた。

 

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『ピッカ!』

 

ピカチュウはジャンプして飛び上がり、10まんボルトを放つ。

 

「ようせいのかぜ!」

『フィア!』

 

全力で放たれた10まんボルトは、ニンフィアはようせいのかぜを壁代わりにして簡単に阻む。ようせいのかぜと10まんボルトの衝撃で爆風が発生するが、サトシはこうなることを予測して次の行動へと移った。

 

「ピカチュウ!アイアンテールだ!」

 

ピカチュウは瞬時に尻尾を硬化させ、アイアンテールをニンフィアの頭上から先ほどの爆風を振り払って振り下ろしてきた。誰もがこれは決まると思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「リボンを使って防いで!」

 

ニンフィアはなんと二つのリボンの触手を交差させ、ピカチュウのアイアンテールを防いだ。正確には防いだというよりもダメージを抑えたと言った方が正しい。技を受けた衝撃でニンフィアは後退させられるも、直撃を受けた時よりもはるかにダメージは少ない。

 

「サトシ、最初から全力だね。」

「ああ。だがシンジもさすがだ。ニンフィアの特徴を上手く活かしている。やっぱりとんでもなく強いぞ。」

 

マーマネとカキの言葉にこの場にいるみんなが頷く。それだけ最初から激しい戦いが繰り広げられている。互いの熱気が観戦している者たちにも伝わる程に。

 

「シンジさんは強いですよ。それに、シンジさんはあのカプ・コケコさんにも勝ちましたから。」

 

リーリエのその言葉にこの場にいる全ての者が絶句する。メレメレ島のカプ・コケコの強さはみんなが目の当たりにしている。そのうえ、その絶大な強さも知っているつもりだ。

 

実際、サトシもカプ・コケコと2回程対戦したことがあるが、そのどちらも負けている。2戦目はZ技を使ってカプ・コケコに一矢報いることができたものの、それでもカプ・コケコには力が及ばなかった。パワー、スピードに加え耐久力まで兼ね備えたカプ・コケコに勝つのは至難の業だ。

 

それを乗り越えたシンジの強さは想像を絶する。だが、そのカプ・コケコと戦って苦戦を強いられたことくらいは想像に難くない。だからこそ、全員が言葉を失ってしまったのだ。

 

「私もその場に居合わせましたが、当時の素人である私から見ても凄い戦いでした。」

 

そんなシンジの戦いを間近で見てきたからこそ、自分は彼を目標として頑張ってこれたのだとリーリエは語る。この世界のリーリエも、そんな高い目標を掲げる彼女を心から凄いのだと称賛する。

 

みんながリーリエの話を聞いている間もバトルは続いている。シンジの強さは桁外れだが、それでもサトシも以前に比べ強くなっているのも確かである。現在も以前の敗北の時とは違い、シンジのニンフィアに食らいつけているのが確認できた。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

「躱してムーンフォース!」

 

ピカチュウの素早いでんこうせっかをニンフィアはジャンプして躱す。そしてそのままムーンフォースの態勢に入り、ピカチュウの背中から攻める。それでもピカチュウは反撃の態勢に入ったのだった。

 

「後ろからくるぞ!エレキボールで迎え撃て!」

『ピカ!』

 

後ろから接近してくるムーンフォースに対し、ピカチュウは一回転して尻尾から放たれる電気の塊、エレキボールで反撃をする。強力なムーンフォースを、また強力なエレキボールで相殺することに成功した。やはりサトシはあの時よりも確実に強くなっていると、シンジも心から実感することができた。

 

「もう一度エレキボール!」

 

先ほど放ったエレキボールの反動を利用し、今度は逆回転で再びエレキボールを放つ追撃を行う。先ほどのエレキボールよりも明らかに勢いがあるが、それでもシンジとニンフィアには焦りと呼ばれる感情が全く見えなかった。

 

「でんこうせっか!」

 

華麗に着地したニンフィアは、でんこうせっかでエレキボールを容易く回避して接近する。ピカチュウとサトシもこれには驚きを隠せず、回避行動にとる前に腹部にでんこうせっかを受けてしまう。

 

ピカチュウは今のダメージが効いたのか、一瞬膝を折りそうになるもののなんとか耐える。このままでは絶対に勝ち目がないと感じたサトシは、一度感じた違和感を再び感じて自分のZリングを見つめた。

 

「!?これって!?」

 

かつてカプ・コケコを含むアローラの守り神たちから貰った黒いZリング。そこには普段付けているはずのでんきZが無く、見慣れない形のZクリスタルがはまっていた。そのZクリスタルは通常のZクリスタルであるひし形とは異なり、まるでピカチュウの尻尾を模したかのような不思議な形をしていた。

 

見慣れないZクリスタルではあるが、サトシはこのZクリスタルがどんな技なのか、どれだけ強力な技なのかを知っている。かつて、ルザミーネを助ける際に暴走していたウツロイドを倒したことがある。だからこそ、これならば行けるかもしれないとピカチュウに大きな声で呼びかける。

 

「ピカチュウ!」

『ピカピ?』

「俺たちの全力……シンジたちに見せてやろうぜ!」

『ピカチュ!』

 

ピカチュウはサトシの言葉に強く頷き、サトシの元へと駆け寄る。そして近寄ってきたピカチュウにサトシは自分の帽子を被せて拳を突き合わす。その後、互いにハイタッチをして同じポーズをとりピカチュウはオーラを纏う。

 

その二人の姿からは固く結ばれた絆が感じられる。これは少しまずいかもしれないとシンジたちは身構えた。

 

「10まんボルトよりでっかい100まんボルト!いや、もっともっとでっかい俺たちの超全力!行くぞピカチュウ!」

『ピカチュウ!』

 

 

 

 

 

――1000まんボルト!

 

 

 

 

 

ピカチュウは高く飛び上がり、10まんボルトを越えた全力のZ技を放つ。そのZ技は黄色の電撃ではなく、カラフルな電気がまるで虹のように見え、相手を追い込むようにニンフィアへと迫る。そのあまりにも絶大な技の威力とスピードに、ニンフィアは成すすべもなく直撃を受けてしまう。その衝撃は、観客席の方へと響き渡る程のものであった。

 

これは流石にまずいかもと感じてしまったリーリエが心配になり思わず立ち上がる。目の前でシンジが負ける姿を想像することができないため、心の中では誰にも負けてほしくないと思っているからだ。

 

とてつもない威力のZ技、1000まんボルトが直撃し、全員が勝負がついたと確信していた。サトシも「やったぜ!」、と肩に乗ったピカチュウと共に再び拳を突き合わせる。

 

しかし、衝撃から発生した土煙が晴れたところに映った光景は、想像を覆すものであった。

 

『ふ、フィーア!』

「!?そ、そんな!?」

 

そこにはボロボロになりながらも勇ましく立っているニンフィアの姿があった。カキやククイ、リーリエも含む全ての者がまさかの光景に言葉を失う。だが、シンジの表情にはまだ諦めと呼べるものが一切なかった。

 

「ニンフィア!まだまだ行けるよね!」

『フィア!』

 

ニンフィアはシンジの言葉にそう答え、ピカチュウを見据える。どうやらまだ戦う意思を潰えていないようだ。あれだけ強力なZ技、それも直撃したにもかかわらず立っていられるニンフィアに驚きつつも、ピカチュウはサトシに帽子を返して再び戦闘態勢をとる。

 

恐らくニンフィアが耐えられた理由は、シンジの期待に応えようとする心、二人の絆の力であろう。精神の力は時に、肉体を凌駕する力を発揮することもある。昔から培われた二人の絆が、不可能と思われたことを可能にしたのだろう。

 

「ニンフィア!でんこうせっか!」

「ピカチュウ!こっちもでんこうせっかだ!」

 

ニンフィアとピカチュウは開幕と同じようにでんこうせっかでぶつかり合おうとする。しかし、互いの攻撃が交じり合おうとした瞬間、第三者の手によって妨害されてしまう。

 

『ピカ!?』

『フィア!?』

「なっ!?ピカチュウ!」

「ニンフィア!いったいなにが!?」

 

ニンフィアとピカチュウが大きなマジックハンドによって捕らわれてしまった。そのマジックハンドはみるみると縮んでいき、そのいく先には2人組が巨大なメカの両肩に乗って腕を組みポーズをとっていた。

 

その一人が口を開き、彼らは次々とセリフを発していく。

 

「『いったいなにが!?』と言われたら」

「聞かせてあげよう我らが名」

「花顔柳腰 羞月閉花 儚きこの世に咲く一輪の悪の花……ムサシ!」

「飛龍乗雲 英姿颯爽 切なきこの世に一矢報いる悪の使途……コジロウ!」

「一蓮托生 連帯責任 親しき仲にも小判かがやく悪の星……ニャースでニャース!」

「ロケット団!参上!」

「なのニャ!」

「ソーナンス!」

 

「ロケット団!またお前たちか!」

 

そこにいたのはピカチュウを付け狙うロケット団たちの姿であった。ロケット団は巨大なニャース型のメカの肩に乗ったまま、自分たちの目的を話し始める。

 

「作戦大成功。」

「お前たちが戦い傷付き疲れたところを狙う作戦だったが、こうも上手くいくとは思わなかったぜ!」

 

ムサシとコジロウは2人が戦うことを読んでいたらしく、この絶好なタイミングを見計らってピカチュウたちを捕まえたというわけだ。ピカチュウとニンフィアも抜け出そうともがくが、ガッチリと掴まれてしまっては抜け出す事も出来ない。

 

そのまま二人は抵抗も意味をなさず、ニャース型のメカの中央にある丸い穴の中に放り込まれて閉じ込められる。彼らを助け出そうと、他のメンバーたちも協力して戦う為にポケモンたちに指示を出した。

 

ピカチュウとニンフィアはメカの内部から逃げ出そうとするが、先ほどの戦闘で疲労してしまった2人は上手く力を出すことができずに脱出することができなかった。

 

「ピカチュウたちを離しなさい!アママイコ!マジカルリーフ!」

「アシマリ!バブルこうせん!」

「シロン!こなゆきです!」

「バクガメス!かえんほうしゃ!」

「デンジムシ!ほうでん!」

「モクローこのは!ニャビーはひのこ!ルガルガンはいわおとしだ!」

 

サトシとそのクラスメイト達が一斉に攻撃を仕掛ける。しかし……

 

「ニャース!あれ、よろしく!」

「ほいニャ!」

 

メカを操縦しているニャースが目の前にあるスイッチを押すと、電磁ネットが作動してそれが六角形の形となり電磁バリアとしてポケモンたちの攻撃を阻んだ。全ての攻撃があっさりと防がれてしまい戸惑う一行。

 

「シロン!私達も行きますよ!」

『コォン!』

 

それならばとシロンとリーリエが前に出る。その時を待っていたといわんばかりに、ロケット団たちは口角を上げてにやりと微笑む。

 

「シロン!れいとうビームです!」

「おっとそうは行かないぜ?ニャース!」

「任せるのニャ!」

 

今度はニャースは目の前のレバーを手前に引く。するとマジックハンドがシロンのれいとうビームを阻害し、シロンの体を掴み取った。

 

『コォン!?』

「シロン!?」

 

リーリエは連れていかれるシロンに手を伸ばすが、残念ながらその手は届かずにシロンもニンフィアたちと同じ運命にあってしまう。

 

「わーはっはっは~!」

「驚くほどに上手くいったな!ニャース!長居は無用だ!」

「了解ニャ!撤収!」

『と言う訳で帰る!』

 

ロケット団はそう言ってメカの底が噴出して飛び上がる。サトシが待てと制止して追いかけようとするが、ロケット団は最後のダメ押しをしてきた。

 

「ほぅら!おみやげよ!」

 

ムサシが投げたのは正方形の小さな機械であった。サトシの目の前に落としたその機械は、暫くすると爆発して中から黒い煙幕がばら撒かれた。

 

そしてその後、煙幕が晴れた時にはその場にロケット団の姿は見当たらなかった。サトシたちの視界を奪っている内に逃げてしまったようだ。

 

「くっ、逃げられた!」

「急いで追いかけよう!」

「うん、まだ遠くには行っていないはず!」

 

サトシが悔しそうに呟く中、カキとスイレンが追いかけようと走り出そうとする。しかし、そんな彼らを意外な人物が制止したのだった。

 

「待って!」

「シンジ?どうした?早くしないと!」

 

カキがなぜ止めるのか疑問に思う中、シンジは目を瞑って何かを感じ取るかのように精神を集中させる。何をしているのかとみんなが聞きたくなるが、声をかけてはいけない気がしてシンジを見守る。

 

(ニンフィア……君は今どこにいる?答えて……)

 

シンジが精神を集中させて耳を傾ける。すると彼にだけ、ニンフィアの声が聞こえてきた。もしかするとあくまで聞こえた気がしただけかもしれないが、シンジにはそれがニンフィアの声だという確信があった。

 

「!?ニンフィアの声が聞こえた!」

「え?僕には何も聞こえないけど……」

 

マーマネは聞こえないというが、シンジはそれでも聞こえたと断言する。2人のリーリエとサトシだけはシンジの言葉に納得していた。

 

「わたくし、本で読んだことがあります。心の繋がったポケモンとトレーナーは、離れていても心が離れることはないと。恐らく、シンジとニンフィアの絆が二人を繋げているのでしょう。」

 

リーリエの言葉にみんなも納得する。確かにそう言ったことは例外はないわけではない。この世界でも一部のトレーナーやポケモンたちはそのような現象を経験した人たちもいる。サトシも旅を続けてきてそんな経験があるため、シンジの言葉を信じることにした。

 

「なら俺は校長にこのことを伝えてくる。みんなも充分に注意してくれ!」

『はい!』

「よし、行こう!僕についてきて!」

 

そしてシンジたちはニンフィア、ピカチュウ、シロンを助けるためにロケット団の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ここまで上手くいくとわね~!」

「頑張って作った甲斐があるってもんだぜ!」

「これでニャーたちの出世も間違いなしニャ!」

『ソーナンス!』

 

ロケット団は逃げた先の森の中で一時の休息をしていた。だが檻に捕らえられているポケモンたちはご立腹な様子だ。特にピカチュウはアイアンテールで今も檻を破壊しようと抵抗している。

 

『ピカッ!ピカッ!』

「無駄ニャ無駄ニャ!今のおみゃーさんたちの力じゃその檻は壊せるわけないニャ!」

 

ロケット団はそんなピカチュウを嘲笑うかのように高笑いをする。ピカチュウはそんなロケット団に悔しい思いを抱き苦い顔をする。

 

だが、そんなピカチュウを落ち着かせるためにニンフィアは彼の肩にリボンで触れて優しく言葉を掛ける。

 

『フィア。フフフィーア。』

『ピカチュ?』

『コォン。』

 

ニンフィアはピカチュウに「シンジたちが必ず助けに来てくれるから大丈夫」だという。ピカチュウもその言葉を聞いて先ほどまでの焦りは少しとれる。シロンもニンフィアの言葉に同意し、シンジとリーリエ達が来てくれるのを待つことにした。

 

その時、高笑いを繰り返すロケット団の背後から、ニンフィアたちの見知った声が響いたのだった。

 

「見つけたぞ!ロケット団!」

「ニンフィアたちは返してもらうよ!」

「ゲッ!?ジャリボーイ!?」

「お前ら来るの早すぎだぞ!」

 

彼は紛れもなくシンジとサトシたちであった。ロケット団はあまりにも早く発見されたことに焦るが、こうなっては仕方がないとポケモンたちを繰り出して対抗した。

 

「ミミッキュ!行きなさい!」

『カカッ』

「ヒドイデ!お前もだ!」

『ドイデー!』

 

ムサシはミミッキュを、コジロウはヒドイデを繰り出した。しかしヒドイデは(いつも通り)コジロウの頭部に張りついた。コジロウも抵抗はするが、暫くすると力が抜けたように地面に座りヒドイデが頭部から離れる。コジロウの頭部はヒドイデのようにひどい有様であったが、暫くすると元に戻った。

 

「……ミミッキュ!シャドーボール!」

 

一瞬捕らわれているピカチュウを狙うが、ピカチュウを狙いたい衝動をグッと抑えてミミッキュはサトシたちに攻撃する。

 

「サンダース!10まんボルト!」

『ダース!』

 

シンジはサンダースを繰り出すのと同時に指示を出す。サンダースは10まんボルトでミミッキュのシャドーボールを相殺し、サトシたちへの被害をゼロにした。サトシもシンジとサンダースに感謝しながら、自分もポケモンを出す。

 

「行け!ルガルガン!」

『バウ!』

 

サトシが出したのは黄昏の姿をしたルガルガンだ。エメラルドグリーンに光るその瞳は、ロケット団たちを捉え睨みつけていた。

 

「ここは俺たちに任せてくれ!」

「リーリエはみんなのことをお願い!」

「分かりました!」

 

シンジの言葉にリーリエも頷いて答える。他のみんなも、ここは二人に任せようと一歩下がった。

 

「調子に乗るんじゃないわよ!ミミッキュ!シャドークロー!」

「ヒドイデ!とげキャノン!」

「ルガルガン!アクセルロック!」

「サンダース!ミサイルばり!」

 

ルガルガンはアクセルロックでミミッキュのシャドークローを弾いて防ぎ、サンダースはミサイルばりでヒドイデのとげキャノンに対抗する。サンダースのミサイルばりの方が威力が高いようで、とげキャノンを貫通してヒドイデにダメージを与える。

 

『ドイデ!?』

「なっ!?ヒドイデ!」

 

倒れてしまったヒドイデにコジロウが呼びかけると、ヒドイデも反応して起き上がる。思い通りにはさせないと、ムサシとコジロウは畳みかける。

 

「ミミッキュ!連続でシャドーボール!」

「ヒドイデ!ヘドロばくだん!」

 

ミミッキュはシャドーボールを無数に放ち、ヒドイデはヘドロばくだんで絶え間ない攻撃を続ける。サトシとシンジは互いに目線だけをチラリと合わせて、先にサトシが攻撃を仕掛けた。

 

「ルガルガン!いわおとし!」

 

いわおとしでヒドイデのヘドロばくだんを防いだ。そしてその衝撃をかいくぐり、ミミッキュのシャドーボールが接近してくる。その攻撃にはシンジのサンダースが対応した。

 

「シャドーボールで撃ち落して!」

 

サンダースはミミッキュと同じくシャドーボールを無数に発射し、問題なく撃ち落し。だが、一発だけミミッキュの放ったシャドーボールが流れ弾としてリーリエ達に接近する。リーリエは危ないと悟り、モンスターボールからポケモンを繰り出した。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

リーリエが繰り出したのはフシギバナで、はっぱカッターを壁にしてシャドーボールを防いだ。

 

「ありがとう!リーリエ!フシギバナ!」

「皆さんが無事でなによりです!」

 

みんなの無事を確認したシンジも安心し、続けてサンダースに指示を出した。

 

「サンダース!ワイルドボルト!」

 

サンダースは電気を纏い、ワイルドボルトで素早く駆ける。だがその攻撃対処はミミッキュでもヒドイデでもなかった。その先にあるのはニンフィアたちを捕えている檻で、ロケット団たちが気をとられている隙に壊そうというのだ。

 

ロケット団たちもその攻撃を阻もうとするが、そのサンダースの驚異的なスピードについていけずに檻は無残にも破壊された。

 

『ピカ!ピカチュウ!』

『フフィーア!』

『コォン!』

 

ピカチュウ、ニンフィア、シロンの三匹は檻を抜け出し、自分のパートナーの元へと走っていく。シンジたちはそんなポケモンたちを抱いてそれぞれ無事を確かめた。

 

「こ、これってマズイ予感?」

「なんだか……」

「とっても……」

『そ、ソーナンス……』

 

ロケット団一同が全員一致して危険を察知する。だがそんな暇も与えないと、シンジ、リーリエ、サトシは同時に前に出る。

 

「行くよ!ニンフィア!ムーンフォース!」

「シロン!れいとうビームです!」

「ピカチュウ!10まんボルト!」

 

三体のポケモンが同時に攻撃を放つ。それらは交差して交じり合い、更に強力な技へと変貌してロケット団たちを襲った。ロケット団の顔は絶望の色に染まりながら、抵抗できずにその攻撃を受けてしまい空高く舞い上がる。

 

「あー!また失敗するなんてー!」

「次はこうは行かないぞー!」

「覚えてろニャー!」

「やなかん」

 

そこで言葉を遮るかの如く、あるポケモンの影が彼らを覆った。

 

『キイイイイイイィィィィィィィィ!』

 

その正体はキテルグマであった。木をバネにして勢いよく飛んできたキテルグマは、ロケット団たちを抱えて森の中へと姿を消していく。

 

『なにこのかんじー……』

 

ロケット団たちはどこか残念そうにキテルグマに連れ去られていったのだった。シンジたちもその様子には唖然と見送るしかなかった。

 

「……まあとにかくニンフィアたちが無事でよかったよ。」

『フィア!』

 

改めてニンフィアが無事だと確認したシンジは、安心してニンフィアの頭を撫でる。ピカチュウとシロンも、自分のトレーナーの頬に自分の頬をこすり合わせて互いに無事を確認した。

 

「シンジ!」

「?」

 

肩に乗ったピカチュウを支えながら、サトシは言葉を続けた。

 

「今回は決着つかなかったけど、次に会う時は俺が絶対に勝つぜ!」

「……ふふ、僕も絶対に負けないからね。そうは行かないよ!」

 

サトシとシンジは互いに微笑みながら握手を交わす。いつかこの強いトレーナーに追いついて見せると決意を新たにしながら、サトシは更に強くなると心に誓う。

 

サトシたちとシンジ、リーリエは再び再会しようと約束をし、今回はこれで別れることにした。リーリエも、再びこの世界に来るまでには今よりも腕を上げていようと決意し、元の世界へと戻っていったのだった。。




ちょっとバトル展開強引だったかなと反省。まあでもサトシのピカチュウも「電気を足場に使って登れ!」とか荒業使ってたからいい気はします。

結局決着つかずでしたが、何度もサトシが負けるのはなんか変というか納得できなかったのでこんな展開にしました。それにこうするしかロケット団を出すタイミングが無かったです。話を伸ばす展開で考えるとロケット団はすごい便利。

今回一番感じたのは、キャラが多いとセリフ回しが凄く難しくなることですね。話は広げられるけど誰がいるのかとか誰にしゃべらせるかとか悩むことが多かったです。何だかマオとカキがしゃべらせやすかったので少し多めかも。逆にスイレンが結構難しいです。

ハロウィン仕様のニンフィアが可愛い(なでなで

ではまた次回お会いしましょう!ではではノシ


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アニポケコラボ特別編 ~時を超えた世界 前編~

久しぶりの投稿。アニポケ完結記念にサン&ムーンを見直してたら思いついたのでお話を書いてみました。前後編で日常会話編、バトル編と分けます。アニポケ時系列ではアローラリーグは終わったがまだマギアナが目覚めていない頃。

寝違えて首が痛い


ここはアローラ地方のメレメレ島にあるポケモンスクール。と言ってもシンジたちのいる世界のスクールとは違う。もう一つのアローラ地方、サトシたちの通うポケモンスクールの様子であった。

 

この世界でもアローラポケモンリーグが開催され、大きな盛り上がりを見せたのち決勝戦はサトシVSククイ博士のカードで争った。最終試合はメレメレ島の守り神であるカプ・コケコとククイ博士が共闘し、サトシのピカチュウと熱いバトルを繰り広げお互いの全力のZ技が炸裂。初のアローラリーグでありながら歴史に残る激闘の末、サトシが優勝し彼が初代のアローラチャンピオンに就任して幕を閉じた。

 

それも遂先日行われた夢のような時間であった。アローラリーグ・マナーロ大会での熱い余韻が残る中、ポケモンスクールにてもうすぐやってくる長期休みの目標で盛り上がっていた。

 

マーマネは将来宇宙飛行士になるのが夢であり、ホウエン地方にあるトクサネ宇宙センターを見学しに行くと息巻いていた。カキはリーグ戦で戦うことのできなかったサトシとガチバトルしたいと熱くなっており、スイレンは父の海洋調査を手伝い、幻のポケモンであるマナフィを追いかけるそうだ。

 

マオは父が経営するアイナ食堂をプチリニューアルし、人間だけでなくポケモンたちも楽しめる食堂に成長させることを夢見ており、リーリエは未だに眠り続けてしまっている父が残したマギアナを絶対に目覚めさせるのだとやる気に満ち溢れていた。

 

一方でサトシはどうしようかと悩んでいた。当初の目標であるリーグ優勝を果たすことができチャンピオンになることができたサトシ。カキとのバトルをするのはサトシにとっても大切なことではあるのだが、それでもそれはあくまで目標の一つでしかない。ではそれが終わったら?今まで色々な地方を旅してきたサトシだが、この先何をするべきかいい目標が思いつかずに悩んでいた。

 

その時、彼の脳裏にたった一人のトレーナーの顔が思い浮かんだ。チャンピオンになった彼にとって唯一の心残りでもあり、大きな目標。今なら彼に追いつけたのではないかと淡い期待を抱き、もう一度だけでもいいから彼に会いたい。彼と戦って自分の今の実力を確かめたいと思ってしまった。もう一つの世界に存在する自分と同じチャンピオン、シンジに。

 

「サトシ」

「ククイ博士?」

「彼に、会いたいんだろ?」

「……うん」

 

サトシのことを自分の息子のように可愛がっているククイ博士がそう口にすると、サトシは静かにうなずいて答えた。彼と言うのが一瞬誰なのか分からずマオたちは「彼?」と疑問に思って首を傾げる。

 

「サトシは今の自分を試したいんだよ。それにこの先の目標のために、サトシは彼に会う必要がある。」

「もしかしてその彼って……」

「ああ。サトシと同じアローラ地方チャンピオン。シンジだよ。」

 

その名前を聞いてクラスメイト達は思いだす。かつて別の世界からやってきた友人のことを。アローラ地方チャンピオンシンジ、そして彼の想い人である別の世界のリーリエのことを。

 

「私も会いたい!」

「私も!」

「僕も!」

「俺もだ!」

 

マオ、スイレン、マーマネ、カキが順番にそう口にした。そしてリーリエも心の中でもう一度彼らに会いたいと思う。

 

(それにシンジやもう一人の私なら、マギアナを目覚めさせるヒントを知っているかも……)

 

彼女もまた自分の目標のために彼に会いたいと願う。全員の願いが一致したのを確認したところで、ククイ博士が一つ提案をした。

 

「じゃあ明日、早速会いに行くか!」

「え?で、でもそんな簡単に……」

 

彼らは自ら伝説のポケモンであるソルガレオの力を利用してこの世界にやってきた。しかし彼らとのつながりはそれ以外になく、当然別の世界であるため通信手段も存在しない。その上自分たちは彼らの世界に訪れたことがないため会いに行く手段が思いつかない。

 

だがそんな彼らにククイ博士は一つの希望を提案する。

 

「彼らがソルガレオの力でこの世界にやってきたのであれば、今の俺たちにも決して不可能なことではないだろう?それにエーテル財団やバーネットたちに頼めば可能性はあると思うぜ?」

 

確かにエーテル財団のウルトラホールに関する研究はUBの事件を通してかなり進んでいる。それにエーテル財団の技術を用いれば、彼らの世界と繋がることも夢ではないのかもしれない。

 

「……よし!行こう!」

 

そう口にしたのはサトシだ。考えるよりまずは動いてみる。その考えが体現したように口にしたサトシに、相変わらずだと呆れるクラスメイトたちだが、実に彼らしいと自分たちも乗ってみることにした。

 

かつてソルガレオ……ほしぐもやべベノム、リーリエの母親であるルザミーネたちを助けるためにウルトラホールを通って別世界に行ったことがある。ならば今回も意外となんとかなるのではないかと言う確信が心のどこかで生まれていた。

 

「リーリエのママやバーネット博士に頼んで明日!シンジの世界に行ってみようぜ!」

『おー!!』

 

みんなの心が一致し、早速関係者たちに今回の件を依頼して明日にでも行ってみようと決断する。ルザミーネやバーネットたちからは相変わらず救難だからと呆れられていたが、それでも快く承諾されたため後日シンジたちの世界に行くための準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、サトシ、リーリエ、マオ、スイレン、カキ、マーマネ、ククイ、バーネット、さらにエーテル財団のルザミーネ、秘書のビッケ、ザオボーにサトシのライバルであるグラジオも同行しポニ島にある日輪の祭壇に訪れていた。彼らの到着に気付いたソルガレオが空からやってきたのに気付いたサトシたちは笑顔で迎え入れた。

 

「久しぶりだなソルガレオ!元気にしてたか?」

『グルゥ♪』

 

ソルガレオはほしぐも時代のように育ての親であるサトシに甘えるように額を擦りつける。彼の過去を知っているここのメンバーたちはその様子を微笑ましいと笑顔で眺めている。

 

「ソルガレオ」

『グルゥ?』

 

ソルガレオの名前を口にすると、サトシは手をソルガレオの額に優しく触れる。サトシの手からソルガレオは彼の気持ちを読み取り理解する。俗にいうテレパシーと言う能力である。信頼し合っているサトシとソルガレオだからできる芸当だ。

 

サトシの願いを読み取ったソルガレオは小さく頷いて承諾した。そしてシンジたちの世界に行くために必要なことをルザミーネが説明する。

 

「サトシ君以外のみんなはZ技を発動させてZパワーを集約させるわ。Zパワーを高めてウルトラホールを通常よりも更に遠くの世界に繋げるために範囲を広げるの。」

「じゃあ俺はどうすれば?」

「サトシ君はソルガレオのZ技を使ってウルトラホールを切り開いてほしい。先にZ技を使ってしまうと必要なソルガレオのZ技が正常に発動しない可能性があるからよ。」

 

ルザミーネの説明にみんなが頷いてそれぞれの役割を理解する。サトシ以外のメンバー、カキ、マーマネ、マオ、スイレン、リーリエ、グラジオたちが自分のパートナーポケモンと並び立った。ククイ博士を含むサポートメンバーはZパワーの出力を確認するために彼らの動向を見守っていた。

 

「行くぞ!」

 

グラジオの合図に合わせて全員が構える。それぞれがZリングと自分のポケモンに集中してZパワーを高めていく。そしてZ技を祭壇の中央部に解き放ち、集約した力はみるみると膨れ上がって膨大なZパワーとなり空間の歪みが発生していた。

 

「Zパワー、既定の数値まで到達しました!」

「ええ。ではみんな、ソルガレオの背中に乗って頂戴。」

 

ビッケとルザミーネの合図に合わせて全員が一斉にソルガレオに乗り込んだ。しかし一人だけ、ソルガレオに乗らない人物がいたのだった。

 

「グラジオ?お前は行かないのか?」

「俺はそのシンジと言う奴を知らないからな。それに、俺は少しやりたいことがあるから今回は遠慮させてもらう。戻ってきたらあっちの世界の話でも聞かせて貰うさ。」

「……分かった!ちゃんと土産、持って帰ってくるぜ!」

 

サトシとグラジオは拳を突き合わせて約束を交わす。そんなサトシたちに対し、バーネットは最後の忠告をする。

 

「みんな。あんまり長居しすぎるとこっちの世界に戻ってこれなくなる可能性があるわ。だからあっちに行ってから24時間以内に戻ってきなさい。私たちも初めての経験だから想像できないの。」

 

バーネットの忠告に全員が「はい!」と元気よく口にする。今までのウルトラホールへの冒険とは異なり、今度はもう一つの世界と結ばれる前代未聞の実験。いわば幻のポケモン、せレビィの行える時渡りにも似た現象を人間の手で行おうとしている。正直言ってバーネットもあまりに危険すぎる実験であるため無茶はさせたくないが、だからと言って彼らが大人しく聞く性格であるとは思えない。ならばこちらは彼らの危険を最小限に抑えるために、こちらの世界からZパワーの管理などのサポートに徹底しようと判断したのだ。

 

「よし!じゃあ行くぞ!ソルガレオ!みんな!」

『ああ!』

『グルォ!』

 

そしてサトシはZ技のポーズをとる。サトシのZリングから発せられるZパワーのオーラがソルガレオを包み込み、どんどんと熱量を引き上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

――サンシャインスマッシャー!

 

 

 

 

 

 

 

眩い光に包まれたソルガレオが先ほど開いた空間の歪みに突撃していく。パリンッとガラスが割れるような音と共に空間が大きく広がり、その先にあるウルトラホールへと突入していく。サトシたちの姿はすぐに見えなくなってしまい、この世界に残ったククイたちはサトシたちの無事を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラホールに突入してから暫く経過した時。右も左も歪な空間が続いているため何分、何時間経過したかが感覚が狂ってきてしまう。あまりに風景の変化がなく、以前と違ってなんだか不思議な不安が彼らの心を蝕むように襲い掛かってきた。

 

「一体いつまで続くのでしょうか。」

 

不安に耐え切れずそう口にしたのはリーリエであった。その声に反応するかのように周囲の風景が変化してくる。しかしその風景はサトシたちが期待していたものとは大きく違っていた。

 

空間には稲妻が走り周囲は真っ暗になり、ソルガレオを通じてサトシたちにも衝撃が伝わってしまう。一体なにが起こっているのか分からず、その衝撃に苦しむ声を一同はあげる。

 

「い、一体何がっ!?」

 

これは流石にマズイと直感する一同。ソルガレオもサトシの気持ちをテレパシーで感じ取り、限界の力を振り絞って空間を駆け抜ける。稲妻空間を通り抜けると、奥には真っ白な空間が広がっていた。その先がようやく出口なのだと分かりソルガレオが抜け出すと、一同は安心感と一瞬の疲労感からプツリと意識を手放すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラホールを抜け出したサトシたち。意識を失ってしまった一同だが、手持ちのポケモンであるピカチュウが先に目を覚ましてサトシに呼びかける。

 

『ピカピッ、ピカチュウ』

 

しかしサトシは起きる気配がない。元々朝が弱く寝坊しがちなサトシがその程度で起きるわけはない。ピカチュウはやっぱりと呆れた溜息を出すと、頬の赤い電気袋をバチバチと鳴らして電撃を周囲に放った。

 

『ピィカァヂュウ!!』

 

電撃はサトシだけでなく、周囲で一緒に意識を失っていたクラスメイト達も巻き込んで一斉に目を覚ます。体中に襲い掛かる電撃の痺れを感じながら、サトシは起こしてくれたピカチュウに声を振り絞って「ありがとう」と口にした。ピカチュウもその言葉を聞いて笑顔になるが、彼には決して悪気はないので全員悪態をつくことなどできるはずもなかった。

 

「えっと、ここは?」

 

そこは草むらで生い茂っており視界も悪い場所であった。現在地がどこなのか分からなかったが、力を使い果たしたソルガレオが休んでいる姿だけは確認できた。

 

「ソルガレオ、お前はここで休んでいてくれ。元の世界に戻る時にまた力を使うことになると思うから。」

『グルゥ……』

 

本当はサトシと一緒に行きたい気持ちはあるのだが、サトシの気持ちを汲み取り力を蓄えるため彼の言うことに従うことにした。今現在彼らがやるべきことは、この世界は本当にシンジたちの世界であるのかの確認だ。そもそも先ほどの空間の出来事はなんだったのか気になるが、一先ずはこの茂みから抜け出そうとサトシたちは行動に移す。

 

茂みをかき分けて一行は外に出る。するとそこには少しだけ見覚えのあるような気がする大都会の光景が広がっていた。どことなくメレメレ島にあるアローラ一の大都会、ハウオリシティによく似ていたが、本来のハウオリシティに比べて一回り、いや二回りほど大きく感じられる。もしかしたらここがシンジたちの世界なのかと希望を持つことができた。

 

しかし一番確信に至ることができるのはやはりサトシやリーリエの存在を確認すること。アローラ地方の初代チャンピオンであるならだれでも知っているはずなので、情報を集めることにする。手始めに目の前を歩いている金髪の長い髪をした女性に声をかけてみた。

 

サトシの呼びかけに答えた人物がこちらに振り返る。だがその女性の顔を見たサトシたちは自分たちの目を疑った。何故ならその女性の顔は誰が見ても見惚れるほど、この世の者とは思えないほどの絶世の美女であったのだ。それは恋愛に疎いサトシですらも例外でなく、女性陣であるマオ、スイレン、リーリエですらも見惚れてしまっていた。

 

女性の両隣には10歳にならない程度の小さな男の子と女の子がいた。人見知りなのか二人は女性の後ろに回っていたため、子どもたちはその女性の子どもなのだという事が分かった。

 

ある意味で怯んでしまっているサトシたちの顔を見た女性は、もしかしてと思いだしたようにサトシたちの呼びかけた。

 

「もしかして……サトシさんたち、ですか?もう一つの世界の?」

「え?俺たちのことを知ってるってことはもしかして……」

「え?うそ?リーリエ!?」

「はい。私はもう一人のリーリエ、ですよ。シンジさんと一緒にそちらの世界に伺った。」

 

なんと、目の前にいたのはあの時に出会ったもう一人のリーリエだと言う。あの時出会った幼さは一切なく、美しい顔立ちに綺麗な髪、宝石さえも霞むような透き通る瞳。良くも悪くも道行く人々の目を奪っているのがすぐに分かる程目立っているその容姿に、彼らは言葉が出なかった。

 

「お母様、お知り合いですか?」

「ええ。彼らは私のお友達です。さあ、あなたたちも挨拶して。」

「わかりました。僕はロウと言います。それからこちらが妹の……」

「はい!私はティアって言います!よろしくお願いします!」

 

年に似合わず礼儀正しく一礼して挨拶をする真面目そうな少年、ロウ。その妹である年相応の天真爛漫っぷりを見せる笑顔の少女、ティア。挨拶を終えると、サトシたちも子どもたちに挨拶を返した。

 

「俺はサトシ!それとこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピカッピカチュウ!』

「俺はカキ、よろしくな。」

「僕はマーマネ、よろしく。」

「私はマオだよ!よろしくね!」

「私はスイレン。よろしく。」

「わたくしは……」

 

その時にリーリエは思った。いつものように自分の名前で挨拶してしまうと彼らの母親と同じ名前という事で混乱を招いてしまいかねない。であるならばここは一つ偽名で誤魔化した方がいいかもしれないと気転を利かせる。

 

「えっと、わたくしはリリィと言います。よろしくお願いしますね。」

「リリィさん、ですか?」

「なんだかどことなくお母様に似てますね!?」

「え!?き、気のせいですよ!ほら、世界には同じ顔の人が3人はいると言いますし!」

 

慌ててリーリエ(以降リリィ)は苦し紛れの言い訳をする。少し苦しいかとも思ったが、相手は子どもであったためなるほどと疑問を持つことなく納得してくれた。

 

「ここで立ち話するのもなんですし、私たちの家まで案内しますよ。」

「え?あ、ああ、はい、お願いします。」

 

相手はリーリエだと分かっていても、その美しい容姿と落ち着いた対応力に思わず委縮してしまう一行。彼らは無事にこの世界に辿り着いた安心感と、予想外の展開にドキドキと鳴る心臓を落ち着かせながらリーリエの後ろを着いて行くのであった。




次回はバトル編。正直いつになるかは分かりませんが気ままに進めていきますので何卒よろしくお願いいたします。

大人リーリエは絶対滅茶苦茶美人になる(確信)


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アニポケコラボ特別編 ~時を超えた世界 後編~

今期のアニメ好みのが多くて助かる


マナーロリーグで優勝し、初代アローラチャンピオンに就任することができたサトシ。長年の夢であったリーグ優勝を果たしたものの、この先に自分が何をしたいのかに迷っていた彼は、クラスメイト達と共にもう一つの世界へと訪れることを決意する。もう一人のアローラチャンピオン、シンジと出会うために。

 

伝説のポケモン、ソルガレオの力を借りもう一つのアローラ地方へと訪れることのできたサトシたち一行。しかしそこは自分たちの世界のハウオリシティよりも発展しており、どこか様子が違っていた。そこで初めて出会った人物はシンジと共にサトシたちの世界に訪れたことのあるリーリエであった。

 

だがそのリーリエの姿は以前出会った姿とは異なっており、綺麗な長い髪に大人びた容姿、誰もが見惚れるほど成長した彼女であった。それに加え彼女はどうやら結婚しているらしく、二人の小さな子どもも連れており、サトシたちと久しぶりに出会ったリーリエは彼らを自宅へと案内するのであった。

 

そして場所は変わり街はずれのリーリエ宅。自宅へと帰ってくると子どもたちは元気よく『ただいま』と家に入っていく。サトシたちも自分の良く見知ったリーリエの家だと分かってはいるのだが、綺麗な大人の女性の家にお邪魔すると言うことで少し緊張している様子で家の中に入っていく。

 

「こ、ここがリーリエの家なんだね~。」

「すごい綺麗。私の家は妹たちが散らかすから羨ましい。」

 

スイレンの家にはリーリエの子ども、ロウとティアに近い年の妹がいる。しかし年頃の妹と言うこともあり、妹たちは姉の言うことを中々聞いてくれず部屋が散らかることも少なくないと、スイレンは溜息を吐いていた。

 

子どもたちは家につくとすぐにテレビの前にスタンバっていた。彼らがテレビをつけると、前もって入っていたDVDが起動する。その内容がテレビに映ると、サトシたちも気になってテレビの前に移動した。

 

「ロウ君、ティアちゃん、これは?」

「お父様とお母様がバトルした時の試合です。僕も妹もこの試合が好きでいつも見てるんですよ。」

 

ロウが自慢げにそう話している内に試合が始まる。画面に映っているのはかつて自分の世界に訪れた時の姿をしたリーリエ。そしてその対戦相手は間違いなくアローラチャンピオン、シンジであった。既にティアはテレビの世界に入り込んでおり、何度も見ているはずなのに集中して見入ってしまっている。

 

そしてロウが言った先ほどの言葉。お父様とお母様の試合。分かってはいたことだが、リーリエの旦那さんは紛れもなくシンジなのであることが分かった。当時の様子から絶対にこうなるであろうとは分かっていたが、それでも未来ではめでたくゴールインしたのかと全員が納得していた。特に結婚と言うものに強く憧れを抱く女性陣は羨ましく思いながら、自分も将来素敵な旦那さんを見つけたいものだとしみじみ思うのであった。

 

そんなことを考えている間に試合は進んでいく。シンジの強さは身をもって知っているが、そんな彼に一歩も引けを取らず熱いバトルを繰り広げるリーリエ。最初はシンジが一歩リードをするが、決してシンジが優勢な状況を続けるわけではなくリーリエもまた負けじと巻き返していきバトルは盛り上がりを見せていく。

 

そんな中、特に目を引くものがリーリエのカイリューの快進撃であり、スピードとパワーを兼ね備えた力強いバトルスタイルがシンジたちを追い詰める。そして遂にシンジのポケモンが一体となり、当然姿を現したのは彼の絶対的な相棒、ニンフィアだ。

 

やはりニンフィアの強さは別格で、弱っていたとは言えあのカイリューを一瞬で倒してしまったのである。そして始まる最終バトル、ニンフィアとキュウコンの戦いが幕を開ける。

 

驚くことにキュウコンはニンフィアの動きについて行くことができている。テレビ内の観客たちも最高潮の盛り上がりを見せ、サトシたちもその場にいるかのように熱く燃えていた

 

激戦を繰り広げていたシンジとリーリエのバトルも遂に終わりを迎える。結果はシンジの勝利に終わったが、誰もが認めるほどの最高のバトルがその映像に詰め込まれていた。カメラに映ったリーリエも悔しさ以上に満足そうな笑みを零しており、シンジとリーリエはお互い笑顔で握手を交わしてその映像は終了するのであった。

 

「すっごい試合だったね!僕思わず喋ることも忘れてたよ!」

「こんなにすごいバトルは中々見られません。とても素晴らしい試合でした!」

 

マーマネやリリィを始め、シンジとリーリエのバトルの感想を口々にしていた。特にカキに関しては感動のあまり号泣するほどであった。そんな時、玄関の扉がガチャンとする音が聞こえ、一人の男性が家の中に入ってきたのである。

 

「ただいま、ってあれ?お客さん?」

「あっ、シンジさん!おかえりなさい!」

『お父様!おかえりなさい!』

 

入ってきたのはこの家の亭主であるシンジであった。リーリエと同じくらいか少し低い程度の身長であった彼は今では高身長になっており、顔も幼い顔立ちから男らしい大人なものへと成長を遂げている。

 

大好きな父親が帰ってきたことでロウとティアも笑顔で彼の事を出迎える。最愛の息子、娘が出迎えてくれたことにシンジも笑顔で彼らの頭を撫でてもう一度ただいまと口にする。そんな彼の顔は今や立派な父親のものなのだと伝わるものであった。

 

「はい、実は――」

 

リーリエは今までにあったことを説明する。以前自分たちが訪れた別の世界で出会ったサトシたちが態々やってきてくれたこと。そんな彼らと昔の映像を見ていたこと。

 

一方でサトシたちも自分たちの世界であったことをシンジたちに話した。過去に自分たちの世界のほしぐもの事も含め、アローラリーグのこと、サトシもまた初代アローラチャンピオンに就任したことも。そのことを聞いてシンジたちからは祝福の言葉が伝えられ、サトシ自身も感謝しながら少し照れくさそうにしていた。そんな彼に一つ、シンジは提案するのであった。

 

「サトシに一つ、お願いしてもいいかな?」

「お願い?」

「実は今日、本来僕とエキシビションで戦う相手が急遽出られなくなったんだ。そこでもしよかったら君に相手をしてもらいたいんだけど、いいかな?」

「そ、そりゃあ嬉しいけど。でもいいのか?そんな急に誰も知らないような俺が対戦相手になっても……。」

「実際にバトルするのは僕自身だから、僕からのお墨付きがあれば大丈夫だよ。それに僕も、チャンピオンになった君とバトルしてみたいからね。」

 

サトシにとっては願ってもない申し出であった。何より彼の瞳は昔と何一つとして変わっておらず、ただ一人のトレーナーとしてサトシと戦いたい、そんな感情が彼の瞳から感じられた。彼はどれだけ強くなっても、チャンピオンとして成長しても、少年のように純粋にバトルを楽しみたいと言う気持ちは失っていないのである。

 

「……分かった!そう言うことならバトルしようぜ!」

『ピカ!ピカチュ!』

 

サトシと一緒にピカチュウもやる気満々と言った様子で答えていた。シンジとサトシは公の舞台で早速バトルをすることとなったのである。ロウとティアはその急な決定に興奮しバトルを今か今かと楽しみにしていた。他のメンバーたちも現場でバトルを見られるように、シンジはすぐ特別な席を用意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてやってきたリーグ会場、ラナキラマウンテン。シンジとは何度かバトルをしてきたサトシだが、それでもこれだけの舞台でバトルをするのは初めてである。自分も彼と同じアローラチャンピオンにまで上り詰めることは出来たが、それでも現在彼は10年以上もチャンピオンの座を守り続けているベテランであり、サトシにとっては先輩にあたる。その上以前戦った時とは間違いなく別格であり、流石のサトシであっても少なからず緊張する。

 

一方カキたちはシンジに用意された指定席で観戦している。しかし当のカキは少々不満そうにしていた。

 

「ったく、俺もシンジとバトルしたかったぜ。」

「仕方ない。私たちはこの世界だと有名人みたいだし。」

「あはは。この世界だとキャプテン、だっけ?私たち。」

「僕でさえキャプテンになってるらしいからね。」

 

そう、この世界ではカキ、マオ、スイレン、マーマネはこの世界でキャプテンを務めている。島巡りをするトレーナーたちに顔を知られている彼らが若い頃の姿で公の場に出てしまったら騒ぎになってしまうのは明白だ。もちろんリリィも同じで、彼女の見た目はシンジの妻であるリーリエと瓜二つ。そんな彼女もバトルに参加することなどできない。シンジの要望でチャンピオンであるサトシが選ばれたのもあるが、他のメンバーがバトルに参加するのはそもそも不可能なのであるため、カキたちには我慢してもらうしかない。

 

「それではこれより!チャンピオンシンジによるエキシビションマッチを始めます!本日の挑戦者はなんと!チャンピオン直々の推薦により対戦相手が決定いたしました!」

 

まさかチャンピオン直々に推薦されるとは、と観客の皆は驚きと同時により一層楽しみな様子で待ち望んでいた。チャンピオンからの推薦とあれば間違いなく相応の実力者であることは間違いない。そんな人物と我らがチャンピオンがどのようなバトルを繰り広げるのか、ワクワクが止まらないのであろう。ここにはそれだけチャンピオン、シンジのバトルに魅了された人たちが揃っているのだ。

 

「ではまず挑戦者の入場です!チャンピオンからの推薦で本日挑戦するのは!サトシ選手だ!」

 

サトシの登場と共に観客たちからの歓声があがる。サトシに大きな期待が寄せられるが当のサトシはプレッシャーに圧されるほど軟なトレーナーではない。サトシとピカチュウは観客たちの期待に応えて笑顔で手を振っていた。流石はいくつもの修羅場を乗り越えてきたトレーナーなだけはあると称賛に値する。

 

「では続きまして我らがチャンピオン!シンジの入場だ!」

 

その紹介と共にサーチライトの先からチャンピオン、シンジが入場する。彼の登場に観客たちからはサトシ以上の声援が降り注いでいた。むしろ黄色い声援も幾つか聞こえてきていたため、観客と言うよりもファンからの声援、と言った方が正しいかもしれない。

 

「す、すごいですね、シンジの声援。」

「当然、お父様は19年もの間チャンピオンに君臨していましたからね。誰よりも強くて尊敬できるお父様です!」

「お兄様ずるいです!お父様のすごさは私が最初に言いたかったのに!」

 

ロウとティアは二人でお互い尊敬する父親の事を言い合っていた。19年も王座を譲らずチャンピオンとしてアローラを引っ張ってきたのだから尊敬しないはずもない。それに手元に渡されたチャンピオンの経歴を見ても、彼は幾度となくこのアローラの危機を救ってきたと紹介されているため、尊敬しない理由が見当たらないと納得している。彼こそまさに絵に描いたかのようなチャンピオン像であると言えるだろう。

 

一方、リーリエはどことなく笑顔でシンジの事を優しく見つめていたのであった。

 

「リーリエ……さん。なんだか嬉しそうですね?」

「リーリエでいいですよ。ただ、なんだかシンジさん、いつも以上に楽しそうにしていたので私も嬉しくなっただけです。」

「へぇ~、相変らずよく見てるんだね。」

「お父様とお母様は今でもラブラブですから~♪」

「うっ、も、もう、そう言うことは恥ずかしいから言わなくていいですっ///」

 

娘ティアの言葉に顔を赤くしてそう言った。大人びた雰囲気を纏っていた彼女だが、相変らずシンジとの恋愛模様の事となると少女の時と同じような反応をするところか彼と同様、昔と変わらないのだなと感じられた。

 

シンジとサトシの紹介が終わり、いよいよバトルが始まろうとしていた。あくまでエキシビションマッチであるためルールは1対1のシングルバトル。対戦相手であるサトシが最初にポケモンを繰り出すのであった。

 

「よっしゃ!頼むぜ!ピカチュウ!」

『ピッカァ!ピカチュ!』

 

サトシの合図と共に彼の肩に乗っていたピカチュウが頬の電気袋をバチバチと鳴らしながら勢いよく飛び出した。そして当然シンジが繰り出したのは……。

 

「出番だよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

シンジが繰り出したのは彼の相棒のニンフィアであったニンフィアの華麗な登場で着地した瞬間、会場は大盛り上がり。まさにリーグのアイドルとも言った存在だ。歓迎されているとはいえ圧倒的アウェイな状況であるサトシとピカチュウ。そんな状況で彼らが一体どんなバトルをするのか期待がより一層高まる。

 

ニンフィアはシンジの足元に歩み寄り、彼はそんなニンフィアの頭を優しく撫でる。チャンピオンとニンフィアの恒例行事であり、その光景に毎回気持ちが落ち着かされる観客たち。彼らの深い絆が感じられる光景だ。

 

「それではバトル開始!」

 

バトル開始の合図が宣告される。最初に動き出したのはサトシとピカチュウである。

 

「ピカチュウ!でんこうせっかだ!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウは目にも止まらぬ勢いでニンフィアに突っ込んでいく。小柄で小回りも利くピカチュウは素早い動きでニンフィアを翻弄しながら突撃していく。その状況でシンジは……。

 

「……」

『……フィア』

 

シンジはアイコンタクトでニンフィアに合図を送る。ニンフィアもシンジの意図を読み取り、リボンの触角で接触してきたピカチュウに軽く触れる。そしてピカチュウを軽くいなして回避するのであった。

 

「っ!?これは!?」

 

そう、先ほど見たテレビ映像でカイリューに対し行っていた回避手段である。リボンから伝わる波動で相手の攻撃技の威力を削ぎ、その一瞬でピカチュウの攻撃を受け流したのである。以前出会った時はしてこなかった手段であり、それはシンジとニンフィアがチャンピオンとしてより一層成長した証拠でもあった。

 

「ニンフィア!こちらもでんこうせっか!」

『フィア!』

『ピカァ!?』

 

今度は攻守交代で、ピカチュウの背後を取ったニンフィアが打って変わってでんこうせっかで攻撃に転じていた。慌てて振り返るピカチュウだが、ニンフィアのでんこうせっかは更に磨きがかかっており、振り返った瞬間には時すでに遅し。もはやピカチュウの眼前まで迫っていた。

 

ピカチュウは当然回避することなどできずニンフィアのでんこうせっかを直撃してしまう。基本的な技であるでんこうせっかのはずなのに、体の芯まで響くその威力にピカチュウは苦い表情を浮かべていた。

 

「ピカチュウ!大丈夫か!」

『ピッカァ……ピカチュ!』

 

サトシの声にピカチュウは態勢を立て直し再びニンフィアを捉える。

 

「今度はアイアンテールだ!」

『ピッカァ!ピカピッチュ!』

 

ピカチュウは尻尾を硬化させニンフィア目掛けて振り下ろす。はがねタイプの技はフェアリータイプのニンフィアに効果抜群だ。まさにセオリー通りの選択肢である。しかし……

 

「ニンフィア!」

『フィイア!』

 

ニンフィアは再び触角を利用する。驚いたことにピカチュウのアイアンテールに巻き付ける形で受け止めたのである。いわばニンフィア流の真剣白刃取りである。この状況には流石のサトシたち自身も驚きだ。

 

「ようせいのかぜ!」

『フィアアァ!』

『ピカァ!?』

 

ニンフィアはすかさずようせいのかぜでピカチュウを吹き飛ばす。その上空中ではニンフィアにとっていい的となってしまう。

 

「そのままシャドーボール!」

『フィイア!』

 

ニンフィアはシャドーボールを放った。シャドーボールは一直線にピカチュウに迫っていき、このままではマズいとピカチュウは空中でなんとか態勢を立て直す。

 

「ピカチュウ!エレキネット!」

『ピッカ!』

 

ピカチュウは咄嗟にエレキネットでシャドーボールを包み込んだ。電気に包まれたシャドーボールは勢いを失いピカチュウの元で止まる。

 

「アイアンテールで弾き返せ!」

『ピカチュッピィ!』

 

なんとピカチュウはニンフィアのシャドーボールを利用し、更に威力を引き上げて弾き返した。ニンフィアは一瞬だけ驚くものの、ピカチュウの反撃をバックステップで回避する。だがピカチュウの反撃は止まることはない。

 

「10まんボルト!」

『ピィカァチュウ!』

『フィ!?』

 

ピカチュウの10まんボルトがニンフィアにヒットする。まさかあの態勢から反撃をしてくるなど誰も想像しておらず、驚きの声があがっていた。ニンフィアを包み込んだ電撃が爆発し、彼女の姿を包み隠してしまった。

 

よし、と思わずガッツポーズするサトシ。手ごたえを感じ嬉しいのだろう。しかしシンジとニンフィアがそう簡単にやられることなどあるはずがなく、舞い上がった土煙からピンク色の光が飛び出してきた。

 

『ピィカ!?』

「ピカチュウ!?」

 

飛び出してきたのはニンフィアの大技、ムーンフォースであった。ムーンフォースがピカチュウに直撃し、ピカチュウは地上に墜とされてしまった。そしてニンフィアの身体から光が放たれ、土埃を全て薙ぎ払い会場全体に光輝いていた。

 

「この光りはっ」

「サトシ。君たちはすごいよ。こんなに僕たちを本気にさせるのは久しぶりだ。だから僕たちも本気で応えるよ。」

 

シンジがしようとしていること。それはZ技。アローラにおいて伝わる最強の技でサトシに応える。それがシンジの出した答えである。ならばサトシもそんな彼に自分の全力で応えるしかないと、自分の帽子を取りピカチュウに被せる。

 

「ピカチュウ!俺たちの全力、シンジたちに全てぶつけてやろうぜ!」

『ピカ?ピカッチュ!』

 

サトシの左手とピカチュウの尻尾はハイタッチをして互いのZパワーを高める。

 

「10まんボルトよりでっかい100まんボルト!いや、もっともっとでっかい俺たちの超全力!受け止めろ!シンジ!」

 

サトシたちの高まってくるZパワー、それと同時にシンジとニンフィアもZパワーを高める。膨れ上がったZパワーが強大な光となり、眩い光が会場全体に広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1000まんボルト!

 

――ラブリースターインパクト!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹色に輝く光の電撃がニンフィアを逃がさないと言わんばかりに彼女の周囲を包み込んでいく。一方でニンフィアは強大な敵に立ち向かうように空を優雅に駆ける。お互いのZ技がぶつかろうとしている緊張感に、会場中が喉を鳴らす。

 

刹那、ピカチュウとニンフィア、二人のZ技が中央にて交わりあう。その瞬間、会場全体を白い光が包み込みあまりの眩しさに全員思わず目を瞑る。一瞬何がと疑問に感じる瞬間、シンジとリーリエ、そしてサトシとリリィの脳裏に映像が流れ込んできた。

 

「こ、これは……」

 

その映像は一瞬であった。シンジとリーリエの脳裏にはこれからサトシたちが経験する未来の映像。サトシとリリィの脳裏にはシンジたちが経験した過去の映像。

 

すると光は収まり、光から解放されたみんなが目にしたのは疑うべき光景であった。するとそこにはサトシとピカチュウの姿はなく、シンジとニンフィアだけが残されただけであった。そしてリーリエたちの横にいたはずのリリィたちもその場から姿を消していたのだ。まるで最初からいなかったかのように跡形もなく。

 

「あれ?お姉さんとお兄さんたちは?」

「いつの間にかいなくなってる?」

 

ロウとティアはもちろん、会場中の人たちも軽くパニックになっているようだ。しかしそれでもシンジとリーリエはなんとなく理解していた。

 

「答え、見つけたのかな。」

 

「頑張ってくださいね、リーリエ。」

 

そう言って空を見つめ、もう一人の自分たちの未来を願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、こ、ここは?」

 

サトシたちが気付いた時にはハウオリシティの外れまで来ていた。先ほどまでラナキラマウンテンでシンジとバトルをしていたはずなのに、急に何故ここに移動してきていたのかと疑問に思った。

 

「え?さ、さっきまで会場にいたはずなのに?」

「よく分からないけどいいところで終わっちゃったね。」

「残念、盛り上がってたのに。」

「くっ、今度は絶対俺もシンジとバトルしてやる!」

 

原因はよく分からないがバトルが中断されたことに少々ガッカリする面々。一部は自分もシンジとバトルしたいと息巻いているが、当のサトシ、それからリリィ、いや、リーリエは決意を込めた表情をしていた。

 

「……俺、決めた!」

「決めたって何を?」

「昔シンジと戦った時、あいつは誰よりも強かった。でも今日またあいつと戦って前よりもはるかに強くなってることが分かった。だから俺ももっともっと強くなれるんだって思ったんだ!だから俺ももっともっともーーーっと強くなってあいつに勝つ!それが俺の目標だ!」

「相変わらず単純だねー」

「でもそれがサトシらしいな。」

「うん、サトシっぽい。」

 

サトシは念願のリーグ優勝を決め、トレーナーとして間違いなく大きく成長することができた。しかしそれは決して終着地点ではなく、更に上を目指すための目標ができたスタート地点なのだ。

 

そしてサトシだけでなくリーリエもまた、手をギュッと握りしめて何か決意を決めた眼差しをしていた。

 

「リーリエも、なんだか吹っ切れた顔してるね。」

「……はい!わたくしも、これからの目標が見えてきましたので!」

 

リーリエの目標。マギアナをなんとしてでも目覚めさせる。そしてその先のことも、リーリエは必ず成し遂げて見せると決意をあらわにしていた。

 

『グルゥ』

「おっ、ソルガレオ!もう大丈夫なのか?」

『ガウゥ♪』

 

ソルガレオはサトシに擦り寄りもう体力は回復したと意思表示をする。それを見て安心したサトシは彼の頭を優しく撫でる。

 

「よし!戻ろう!俺たちの世界へ!」

『おう!』

 

そう言ってサトシたちはこの世界から姿を消した。異世界に赴きこれからの目標を見つけたサトシたち。そしてシンジたちもまた、サトシとの戦いを経て更に一つ成長することができた。今回もまた決着を着けることができなかったが、いつか彼と本気の決着が着ける日を夢見て、アローラの青い空を見つめ彼の姿を思い浮かべるのであった。

 

「またいつか、会う日まで」

 

時を超えた出会いは、またいずれあるのかもしれない……




最新のアニポケも普通に面白いと思うの

リコちゃんの中の人が鈴木みのりさんなのは嬉しい。因みにロイ君の中の人はXYのコルニちゃん。なによりホゲータの中の人がゴウ君なのが一番の驚きだけども……。


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バレンタイン特別編 ~甘い甘い思い出~

14日がバレンタインだと気付き急遽火曜日に書き上げました。正直バレンタインとか貰った記憶がママンから貰ったポケモンチョコぐらいしか記憶にありません。主はポケモンチョコか、きのこの山orたけのこの里さえもらえれば満足ですが。実際にどっち派なのかは、ここで“きのこたけのこ戦争”が勃発してしまう可能性があるため伏せておきます。

と言うわけで今回はバレンタイン回と言うことでリーリエ視点のみで進行します。そして二人が取り敢えずいちゃつきます。偶には甘い展開もいいんでね?(適当


こんにちは、リーリエです。私は今、これまでになかったほどに悩んでいることがあります。正直に言えばジム戦前の緊張感の方がマシだと思えてしまいます。その理由は明日の日付に関係しています。それは……

 

「……明日は2月14日……ですね。」

 

明日は2月の14日です。そう、一般的にバレンタインデーと呼ばれる日です。私は今までバレンタインデーと言うものが何なのか知りませんでした。しかし昨日突然、シンジさんとカントーを旅している途中にお母様から連絡があり……

 

『そう言えばリーリエはバレンタインどうするの?』

 

……と言われました。その時私は初めてバレンタインと言う日を知り、同時にどう言った行事を行うのかを知りました。名前だけを聞いたときは目がメタモンさんになりましたが、内容をお母様に尋ねると思わず顔がオクタンさんのように赤くなった気がしました。同時に顔が熱くなったようにも感じました。

 

バレンタインデーとは、女の子が好きな男の子にチョコレートを渡す日、だそうです。内容を知れば、私がバレンタインの事を知らなかったのかは仕方がない事なのかもしれません。自分で言うのもなんですが、お母様がウツロイドさんの神経毒にやられてしまってからは、シンジさんに出会うまでお嬢様育ちをしてきて世間の事を全く知りませんでした。その上えっと……その……好きな人も出来たことがありませんでした///

 

そんな私とは縁のない日だったはずなのに、今年はシンジさんがすぐ傍にいて下さって、そのシンジさんの事を私は好きになってしまっているのです。なので今年は絶対にチョコレートを渡して感謝の気持ちを伝えるべきだと考えました。終始お母様からはニヤニヤした表情でからかわれてしまいましたが、最後にはちゃんと激励の意味も込めて『がんばりなさい』と一言貰ったので頑張ろうとは思います。

 

とは言え、今回が実質的に私の初めてのバレンタインなので不安な気持ちで一杯です。念のためにグラジオお兄様にも相談しましたが、『アイツなら大丈夫だろう』と参考になりそうもない言葉だけいただきました。それにしてもお兄様はいつまであのポーズをとり続けるつもりなのか正直疑問に思います。

 

少し話が脱線してしまいました。私はシンジさんにお料理を少し教わったので多少のお料理は可能だとは思います。しかし、チョコレートのようなお菓子は少々勝手が違うと思いますので、作れる自信は皆無です。頼りになれる人と言えばシンジさんです。けど、シンジさんに渡すチョコレートを本人に聞いてしまっては本末転倒ですのでそれは避けなければなりません。世間一般では義理チョコと言うものもあるそうです。昔の私ならお店のチョコレートを買って渡していたかもしれませんが、それだとシンジさんに義理チョコだと思われてしまう可能性があります。それもやっぱり避けたいです。それに手作りのチョコレートの方が気持ちがこもるものだと思います。

 

やっぱりここは自分でチョコレートを作るべきなのでしょう。シンジさんには日頃お世話になりっぱなしです。少しでもシンジさんに恩返ししたいですし、何より私の気持ちもシンジさんに伝えたいです。少々難易度が上がるかもしれませんが、自作のチョコレートを作ってシンジさんに渡すのが最適ですね。がんばリーリエです!私!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで私の所に来たと?」

「は、はい///」

 

私は今シンジさんと旅の途中に立ち寄ったハナダシティにいます。近くまでやってきたので、ついでに寄っていこうかと言うシンジさんの提案でした。私も急ぎでチョコレートの作り方を誰かに教わらなければならないので都合が良かったです。言い出しっぺのお母様に聞くのが一番かもしれませんが、流石にマサラタウンまでは少々距離がある上に、態々マサラタウンまで行くとシンジさんに怪しまれる可能性がありました。なので立ち寄ったついでにシンジさんと仲の良かったカスミさんに聞けば何か教えていただけるのではないかと思い、ハナダジムまでやってきました。

 

「それは何?彼氏の出来たことのない私に対してのあてつけ?」

「い、いえ!決してそんなつもりは!?」

 

今回の用件をカスミさんに尋ねたら、目を細くして睨まれてしまいました。怒らせてしまったのでしょうか。

 

「冗談よ冗談!全然気にしてないから気にしないで!」

 

カスミさんが笑顔になりそのまま笑い飛ばしてくれました。そのカスミさんの言葉に私は安心して先ほどまでの緊張が取れました。

 

それにしてもカスミさんが彼氏出来たことがないのが少し意外でした。カスミさんはスタイルもシュッとしていてスリムだし、親しみやすくて美人なのでモテると思っていました。これを本人に言うと何故か怒られるような気がするので止めておきますが……。

 

「それでチョコレートの作り方だっけ?」

「はい。私お料理は多少心得ていますが、チョコレートは作ったことがないので……」

「いいわよ、教えても。」

「本当ですか!?」

 

カスミさんの言葉に私は喜びのあまり大声を出して近づいてしまう。カスミさんも戸惑ってしまっていたようで、私はすぐに謝って少し距離を離す。その後カスミさんは、“ただし”と言って更に言葉を続ける。

 

「チョコレートをアイツに渡すのは一人でやること!これだけは必須条件よ!」

「!?は、はい!」

 

カスミさんの勢いに負け、私は慌てて直ぐに返事をしてしまいました。一人で渡すのは正直心細いですが、それでも自分の気持ちを伝えるには一人で行くのが正解ですよね。少々恥ずかしいですが、一世一代の大勝負です。覚悟を決めて必ず成功してみせます。

 

こうして私の初のバレンタインデーの幕が開きました。全力で頑張ります!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは材料の確認ね。」

 

カスミさんの指示で私はチョコレートに必要な材料を買ってきました。今はカスミさんに材料がこれであっているのか確認していただいてる最中です。私は一人でお買い物したのが初めてなので分からないこともありましたが、なんとか帰宅することが出来ました。途中シンジさんとバッタリ出会ってしまい、言い訳をするのに苦労しましたが、なんとか誤魔化すことが出来ました。シンジさんに嘘をつくのは心苦しいですが、今回の件はバレたくありませんので仕方ありません。

 

使う材料はカカオや砂糖といったチョコレートづくりには欠かせない材料のほか、ミルクやバターなどの味付けに重要な素材を購入してきました。一人分ならそこまでの量はいらないだろう、と言うことだそうなので、あまり多めには買っていません。それとシンジさんはどちらかと言えば甘いのがお好きだそうなのでミルクチョコレートを作ろうと思います。

 

「うん。大体はそろったわね。じゃあ早速始めましょう。」

「はい!」

 

私も気合を入れ、自前のエプロンを着用してチョコレートづくりに臨むことにしました。道具はカスミさんが一通り貸してくれるそうなので困ることはないと思います。

 

私はカスミさんの指示に従い、チョコレートを作ることにしました。お菓子作りはお料理とはまた違い、丁寧に作っていかなくては形が崩れてしまうためいつも以上に丁寧に取り組まなくてはいけませんでした。苦すぎず甘すぎず作るために、ミルクやカカオなどの量も上手く調整しなければならなかったので疲れてしまう作業ばかりでした。そして味付けなどが一通り完了し、それらをボウルに入れて次のステップへと向かいます。

 

「じゃあ次はこれね。」

 

そう言ってカスミさんが用意したのはいくつかの型抜きのための道具でした。このまま固めるだけで渡してしまうと手抜きだと思われてしまうかもしれないですし、やっぱり折角なので自分の気持ちを上手く伝えるためには必要不可欠ですよね。

 

「どれでも好きなの選んでいいわよ。サイズが大きいのしかないから一つだけだけどね。」

 

カスミさん曰く、これらは自分のお姉様たちに作ってあげるために用意したものだそうです。毎年バレンタインの日にはお姉様たちに作っているのだそうです。そう言えば私はカスミさんのお姉様を見たことがありませんでした。どのような方かは気になりますが、今はチョコレートを作ることに専念したいため保留としておきます。

 

「えーと……じゃあ……!?」

 

私は一つの型を見た瞬間に目がとまってしまいました。シンジさんに渡すのであれば、この型しかありえないのではないかと心の中で思ってしまったのです。ですがなんだかこれを選ぶのは勇気が……。

 

「どうかした?」

「!?え、えっと!これです!」

「……ふぅん、やっぱりね~。」

 

咄嗟に私は目を奪われた型を選択しました。カスミさんのやっぱりと言う言葉に私は恥ずかしくなって顔を赤くしてしまいます。で、でもなんだかこの型しか選べない気がしました。それにこれでシンジさんが喜んでくれれば、私自身もとても嬉しい気がします。

 

「まあいいわ。じゃあこれで作るわよ。」

「は、はい///」

 

まだ恥ずかしい気持ちが癒えない私を置いて、カスミさんは更に次の工程へと進めていく。私も気を取り直して、チョコレートづくりを進めていこうと再び道具を手に取る。型にチョコレートを注いだ後は、上から同じ型の道具で型抜きをします。後はこのまま冷蔵庫で保管すれば完成するそうです。後日には綺麗に仕上がっていると思います。

 

「後は包むための袋ですね。」

「そうね。折角あの形にしたなら、包む袋も同じにしたらどう?」

「え///」

 

カスミさんの言葉に思わず再び顔を赤くしてしまいます。でも渡す前からあの形だってわかったら恥ずかしい気持ちが先に来てしまいますよ///

 

「何を今更恥ずかしがってんのよ。それに、気持ちを伝えるならその方が一番手っ取り早いって。」

 

確かにカスミさんの言う通りかもしれません。恥ずかしい気持ちも勿論ありますが、やっぱり一番はシンジさんに喜んでほしい。何より自分の気持ちも伝わってほしいと言う気持ちの方が強いです。ここはカスミさんのアドバイス通りにしようと思います。

 

「分かりました!カスミさんの言う通りにしてみます!」

「オーケー!プレゼント用の袋は私が用意しておくから、明日はあんたの出番よ!頑張りなさい!」

「はい!」

 

カスミさんから激励を受け取った私は明日をドキドキしながら待つと同時に、ワクワクした気持ちで一杯でした。シンジさんは一体どんな顔をしてくれるのか、どんな言葉をかけてくれるのかと考えながら。プレゼントを渡す恋人とはいつもこんな気持ちなのでしょうか。……恥ずかしくて爆発してしまいそうなのでこれ以上考えるのはやめにしておきます。

 

私はシンジさんの待つポケモンセンターへと帰ると、シンジさんに今日は何をしていたのか尋ねられました。正直に言ってしまってはこの計画が台無しになってしまうので、シンジさんには「ポケモンフーズの研究をしていました」と嘘をついてしまいました。シンジさんもその言葉を素直に信じてくれたようです。ですがごめんなさい、シンジさん。貴方に嘘をついてしまって。隠し事をするのは辛いですが、明日を楽しみにしていてください。そうシンジさんに届かない声を呼びかけながら、私は眠りにつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2月14日、バレンタインデー当日

 

 

 

「準備はいい?」

「は、はい!」

 

私は緊張のあまり甲高い声で返事をしてしまう。カスミさんも私の返事に堪らず苦笑いをしてしまっているようです。

 

「一回深呼吸しなさい。」

「は、はい。スーハ―、スーハ―。」

 

カスミさんの言う通りにゆっくりと深呼吸をしました。思いの外緊張が解けたようで、先ほどよりも肩の重荷がなくなった感じがあります。

 

「よし、じゃあ行ってきなさい!王子様が待ってるわよ!」

「お、おうじ!?え、えっと、はい///」

 

カスミさんの突然な言葉に驚くも、ここまで来たらもう腹を括って頑張るしかないと決意しました。昨日は頭の中で何度もシミュレーションしてきました!後は本番で頑張るだけです!そうです、がんばリーリエです!私!

 

「あの二人の熱さでチョコが溶けなければいいんだけどね~」

 

ギュッと手を握り締めた私の後ろで呟いたカスミさんの言葉は、私には聞こえませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自分で作ったチョコレートを持ってシンジさんと待ち合わせた場所までやってきました。ここはハナダシティの名所だそうで、海がよく見渡せる絶好のデートスポットなのだそうです。カスミさんに教えていただきましたが、確かにいい景色です。しかしシンジさんの姿が見当たりません。少し早すぎたでしょうか……。

 

「リーリエ~!」

「あっ、シンジさん!」

 

私がシンジさんを探していると、遠くから手を振りながら走ってくるシンジさんの姿が確認できました。

 

「ごめん遅れちゃって。待たせたかな?」

「いえ、私も今来たところですから。」

 

手を合わせて謝ってくるシンジさんに、私は両手を振りながら気にしないでくださいと言う気持ちを伝える。そこでシンジさんは、早速私が呼んだ本題を振ってくる。

 

「それで今回はどうしてここに呼んだの?」

(き、きた!)

 

早速来たと私は内心かなり緊張した状態で本題を口にしようとする。しかし緊張のあまり口が思い通りに動こうとしません。やっぱりシミュレーションとは全然違います。普段とは違って中々口にできない私は意気地なし……という事なのでしょうか……。

 

「だ、大丈夫?顔赤いよ?」

「い、いえ!?大丈夫です!」

 

私の身を心配して覗いてくるシンジさんに、私は余計緊張してしまい更に顔を赤くしてしまいます。ほ、本人を前にするとここまで伝えにくくなるものだとは思いもしませんでした。

 

私がどうやってシンジさんに伝えようかと頭の中で試行錯誤し悩んでいる時、モンスターボールが私の気持ちに応えるように少し揺れました。

 

(シロン?)

 

そのモンスターボールはシロンのボールでした。恐らくシロンは、自分もいるから緊張しないで、と伝えたいのでしょう。私もシロンとは長い付き合いなのですぐに分かりました。シロンのその行動に私は今ならシンジさんにこの気持ちを伝えるれるのではないかと思い口を開きました。

 

「し、シンジさん!」

「う、うん。」

 

突然大声を出した私に戸惑ったのか、シンジさんは困惑した声を出す。しかし私はそのことを気にしている余裕は正直ありません。なので率直に気持ちを伝えることにしました。

 

「あ、あの……これ!受け取ってください///」

「!?」

 

シンジさんは私が差し出したものを見た瞬間に硬直し、私と同じくらい顔を赤くしてしまいました。やっぱりシンジさんも実際に目の当たりにすれば恥ずかしいようです。だって私の渡したチョコレートは……。

 

「え、えっと///ハート型ってことはそう言う意味で受け取っていいって事なんだよね///」

「は、はい///」

 

そう、私の渡したチョコレートはハート型のチョコレートです。星型や花型のチョコレートもありましたが、やっぱりシンジさんに渡すにはこの型が最も適切だと思い選択しました。シンジさんの顔がさっきよりも赤くなっています。恐らく私の顔もシンジさんと同じくらいかそれ以上に赤くなっていると思います。

 

「あ、開けていいかな?」

「ど、どうぞ///」

 

シンジさんは私の言葉を聞くと、ゆっくりと丁寧に袋を開けていきました。世の中には袋を破り捨てて開けると言う人も多いと聞きますが、シンジさんはそのような事はせず、一切破ろうとせずに袋を開けました。私はそれだけでもなんだか嬉しく感じました。

 

「す、すごい。」

 

シンジさんからの最初の言葉はそれでした。どうやら見た目に関しては喜んでくれたようです。ですが肝心なのは中身です。正直見た目には結構自信がありました。しかし味付けに悪戦苦闘を強いられ、シンジさんの好みに合わせるための試行錯誤が苦労しました。

 

「食べてもいいかな?」

「勿論です!」

 

私はどうかシンジさんが喜んでくれるようにと頭の中で神様にお祈りしました。シンジさんが口にチョコレートを運ぶ中、私は口から心臓が飛び出るかと錯覚してしまいました。シンジさんが口にチョコレートを入れると、シンジさんの表情が変わりました。も、もしかしたら美味しくなかったのだろうか、と不安がよぎり、思わずシンジさんに尋ねてしまいます。

 

「い、いかがでしたでしょうか?」

「…………い」

「え?」

 

よく聞き取れなかった私は、シンジさんに何と言ったか聞き返してしまいます。しかしシンジさんは、今度は大きな声でハッキリと、私に伝えてくれました。

 

「これすっごく美味しいよ!リーリエ!」

「ほ、本当ですか?お世辞じゃなくて?」

「お世辞なんかじゃないよ。今まで食べたどんなチョコレートよりも美味しいよ!」

 

その言葉を聞いて、シンジさんが心の底からそう思ってくれているのだろうと感じて喜びがあふれてきました。よく考えれば、シンジさんはお世辞を言ったことは一度もありません。それにそんな人じゃないって分かっていました。

 

その後もベンチに座り、私が作ったチョコレートを残さず食べてくださいました。その姿を見て、やっぱり心の底から美味しいと言ってくれたのだと改めて感じました。やっぱり自分で作って良かったと思いました。

 

「先に僕から驚かせるつもりだったのに、先越されちゃったな。」

「え?何か言いました?」

「ううん、何でもないよ。」

 

シンジさんの小さなつぶやきが聞き取れず、私は聞き返したもののシンジさんにはぐらかされてしまいました。その後、再びシンジさんが口を開きました。

 

「リーリエ、ちょっと目を瞑ってもらってもいいかな?」

「え?は、はい。構いませんが。」

 

シンジさんの言葉に従い、私は目を閉じました。暫くすると、首に何かが巻かれた感覚が伝わってきました。それが何なのかは気になりましたが、シンジさんに目を瞑っていてくれと言われたのでその言葉通りに待つことにしました。しかし、それを巻いていると、なんだか温かい気持ちになってきました。

 

「うん、もういいよ。」

 

シンジさんに言われ、目を開け首元を触ると、そこにはマフラーが巻かれていました。マフラーは白色をベースにして、薄い水色で小さくシロンの刺繍がしてありました。

 

「カントー地方はアローラ地方に比べて寒いからね。少しでも温かくしてあげようかなと思って編んでみたんだ。ちょっと慣れてないことだったから失敗ばかりだったけどね。」

 

そう言うシンジさんの手を見ると絆創膏の痛々しい痕が残っていました。普段編み物をやっている姿を見かけないため、余程不慣れなことをしていたのでしょう。そう言えば最近言われてみたら、布団の中でゴソゴソと何かをしている姿が確認できました。もしかしたらこれをしていたのかもしれません。

 

「僕からのバレンタインってところ。気に入ってもらえたら嬉しいんだけど。」

「ありがとうございます。凄く温かいです。一生大切にしますね。」

 

私のその言葉に、シンジさんは照れくさそうに頬を掻く。その姿を見て、私は少しシンジさんが可愛いと思ってしまいました。しかし、そこでシンジさんに一つの疑問を問いかけました。

 

「でもなぜバレンタインに?男性からのプレゼントは、3月14日のホワイトデーにするものだと聞いたのですが。」

「別にバレンタインとホワイトデー、それぞれに決まって渡すなんて決まりはないよ。ただ大切な人への贈り物、っていう特別な日って意味だから。」

「そうだったんですか。私はてっきり男性と女性は別々に贈り物をするものなのかと……」

「そう言う見解も間違ってないよ。人によってこの考え方は変わってくるし、何より僕はリーリエに喜んでほしくてプレゼントしただけだからね。」

 

シンジさんは微笑みながらそう言ってくれる。やっぱりシンジさんは私には勿体ないくらいに優しくて素敵な人です。

 

「じゃあ僕は来月のホワイトデーに今回のお返しとして自慢のチョコレートを贈ろうかな?」

「え~!?そんな、悪いですよ!」

 

シンジさんの提案に私はそれは欲張りすぎだと否定しようとする。しかしシンジさんのその後の言葉に、納得してしまうのでした。

 

「だったらその日にリーリエも僕にプレゼントしてほしいかな。年に2回大切な人から贈り物が貰えたら、それだけで幸せじゃない?」

「!?は、はい!分かりました!」

 

私はシンジさんの言葉にそう言って来月もプレゼントを渡すと誓う。次回のプレゼントを考えるのが大変ですが、大切な人に渡すものであれば苦になりませんね。シンジさんからはチョコレートを貰えるようですし、私も何か残るものを渡さなければいけませんね。

 

そうして私たちは暫くこのままベンチに座り、水平線に沈んでいく夕日を眺めていました。気が付いたら時間もあっという間に過ぎていきましたが、シンジさんが一緒だから長いようで短い、自分にも分からない位のスピードで時間が経った気がしました。私たちは、お互いに夕日を眺めながら次回のホワイトデーに渡すプレゼントを考えていました。これは来月の楽しみも増えました!これからもがんばリーリエ!ですね!




いかがでしたか?バレンタインを味わったことがないのでこんな感じになりましたが、まあ個人的には割といい出来栄えかなと思っています。この小説のカスミさんはなんだかんだ言いつつも面倒見のいいお方がコンセプトです。ヌシは料理は(意外と)問題なくできますが、チョコは制作したことないので多少大雑把です。許してください(土下寝

そう言えば先週からポケモンのopとedが変わりましたね。どっちもサンムーンのイメージに合っててすっごい好みです。夏めく坂道と同じくポケモンっぽさは無かったですがそれも逆に高評価ポインッです。後ベベノム可愛い。

リーリエが可愛くて、映像も神でしたが、一番印象に残ったのがマッシブーンの発音ですね。今まで多くの人が思っていたであろうマッシ↑ブーンの発音ではなく、マッシ↓ブーンだったのには吹きました。まあ癒し系UBですしね、仕方ないね。

では次回は普通に進みます。また楽しみに(しているかどうか分からないけど)していてください。ノシ

あっ、因みにこの前リーリエ&ほしぐもちゃんのフィギュアが無事届きました。


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掲載一周年記念特別編 ~リーリエ IN カントー~

リーリエinカントーできました!後付け設定だのなんだのはよくあることなので気にしたら負けです。

そこそこの長さにはなりました。ざっと17,000字程。

途中自分で妄想、というか所々アレンジ設定もありますがご了承ください。そうでもしないと完結しなさそうだったので。

では1周年記念のリーリエの冒険をご堪能下さいませ。


『リーリエ!』

 

『!?……来てくれたのですね、シンジさん。』

 

『本当に……行っちゃうんだね……』

 

『はい。ウツロイドさんの神経毒に侵されてしまったお母様は、今の医学では完全に治すことは困難だそうです。ですが、カントーには一度ポケモンさんと融合してしまっても、元通りに戻ることができた人がいるそうです。』

 

『カントーに……』

 

『私はその人に会って、お母様を必ず治して見せます。シンジさんのように……前に進みたいから……』

 

『……そっか。』

 

『……シンジさん……わたし……私!っ!?』

 

『……ごめんね。不意打ちみたいなことして。でも、どうしても気持ちを抑えられなかったから。……大好きだよ。』

 

『!?……はい!私もシンジさんが大好きです!』

 

『これ……受け取って。』

 

『シンジさん……これって……。』

 

『ポケモンのタマゴだよ。リーリエの最初のパートナーになってくれるポケモン。きっと、お似合いのパートナーになると思うよ。』

 

『シンジさん……私のためにこんなになって……ありがとうございます!大切にしますから!あなたから貰った思い出も……勇気も……それからこの子も!』

 

『うん。』

 

『私からも……受け取ってください。私からの餞別です。』

 

『これは……ピッピ人形?』

 

『少しくたびれていますが、私が使っていたものです。過去の私との決別の意味もありますが……シンジさんには、これを受け取ってほしいと思って。いつまでも、私の尊敬する……大好きなあなたでいて欲しいから。』

 

『リーリエ……。うん。僕もずっと大事にするよ。必ず……』

 

『ありがとうございます。あっ、もうそろそろ行かないと。』

 

『……リーリエ!』

 

『はい?なんでしょうか?』

 

『きっと……いつか……いつか一緒に旅をしよう!僕と2人で!』

 

『っ!?はい!いつか……必ず!』

 

『……行ってらっしゃい!』

 

『はい!行ってきます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

「どうしたの?リーリエ?」

「お、お母様?いえ、なんでもありません。」

「なんでもないって顔には見えないけど。あなたは顔に出やすいからね。もうすぐカントー地方に着くのだし、そのままじゃ困るわよ?」

「大丈夫です、お母様。お母様は必ず、私が助けますから。」

 

私はウツロイドさんの神経毒に侵されてしまったお母様を助けるため、カントー地方へと船に乗って向かっています。今は自室でゆっくりとカントー地方に着くまで、ベッドで寝ているお母様とお話ししています。無理に動かさなければ、会話ぐらいは大丈夫だとお医者様も言っていました。

 

「……シンジ君の事、考えていたのね?」

「え!?ど、どどどどうしてそれを!?///」

「さっきも言ったでしょ?あなたは顔に出やすいって。彼と何かあったかくらい、私にも分かるわ。それに……」

 

ピンポイントに捉えられた指摘に、私は思わず驚いてしまいました。そしてお母様はそんな私が持っているタマゴに手を伸ばし、優しく撫でるように触れました。

 

「私も、早くこの子の顔が見たいのよ。」

「お母様……。」

「だって……なんだかあなたとシンジ君の子みたいじゃない?」

「……!?///ななななな何を言っているのですか!?私とシンジさんはそんな関係じゃ!?///」

「あら?あなたは彼の事を好きなのだと思ってたのだけれど、違ったかしら?」

「///そ、それは好きですけど///そ、それとこれとは話が違います!///」

 

お母様は微笑みながら私にそんなことを言ってきました。お母様ってこんなに意地悪な方でしたっけ。私が幼いころの記憶しかないので正直昔のお母様のことはあまり覚えがありません。でも……お母様とこんな話ができるのが……夢みたいで嬉しいです。シンジさんには感謝してもしきれません。

 

お医者様が言うには、お母様の体調は元に戻りつつはあるそうです。ですが、現在の医学では完全に治ることは極めて困難だそうです。命に別状はないまでも、このまま放置しておけばまた以前のように暴走してしまう可能性もある。それに、今のままでは自力で歩くこと自体が難しいのだそうです。筋力もはるかに衰えてしまい、このままでは最悪寝たきり状態が続いてしまうとも言われました。そのため、私はカントー地方でポケモンと融合しても元に戻ったと言われる人物の元へと行く必要がありました。

 

シンジさんに頼りっぱなしだった私。不安な気持ちは勿論ありますが……それでも……シンジさんから頂いた勇気が私の心の中にあります。それに……シンジさんから頂いた大切な命も……。

 

私はそう思いながら、抱きしめているポケモンさんのタマゴを優しく撫でました。そしてその時、船内放送が私たちの部屋にも流れてきました。

 

『まもなくカントー地方に到着いたします。降りられる方は、準備をしてください。』

 

どうやらカントー地方は目の前のようです。私はそう思い立ち上がって、自分のリュックサックの中にポケモンさんのタマゴをしまいました。

 

「お母様、折角ですので外に出てみませんか?カントーに降りる前に、一度外の空気を吸っておきましょう。」

「そうね。じゃあお願いするわ。」

 

私はお母様の体をゆっくりと起こし、車椅子に乗せました。一連の作業は力のいる作業ではありますが、今のお母様は私と同じくらいか、もしくは軽いくらいには体重が落ちてしまっているため、私でも持ち上げることができます。

 

私はお母様を連れ、部屋を出て甲板へと向かいました。カントー地方へと向かっている人は多いようで、甲板には既に大勢の人で賑わっていました。

 

「あっ!見えてきました!あれがカントー地方です!」

 

私は見えてきたカントー地方を指さしそう言いました。4つの島で構成されたアローラ地方とは違い、カントー地方は遠くから見ても分かるくらい大きいです。ジョウト地方と隣接しているため、他の地方と比べても大きく見えるのかもしれません。

 

「カントー地方にはアローラ地方とは違ったポケモンが一杯いるわよ。」

「はい、シンジさんから話は聞いてます。」

 

アローラ地方のライチュウさんやコラッタさん、ニャースさんにナッシーさん。それらのポケモンさんも、カントー地方とアローラ地方では全く異なるのだそうです。アローラ地方で出会うポケモンさんは一般にリージョンフォームと呼ばれていますが、カントー地方に生息するそれらのポケモンさんは、あくまで通常の姿なのだそうです。

 

「……あなたはどんな姿で産まれてくるのでしょうか。」

 

私はリュックサックの中で眠っている私のパートナーに、そう語りかけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遂に来ました……カントー地方!」

 

私はお母様の乗った車椅子を引っ張り、遂にカントー地方へと足を踏み入れました。常夏のアローラとは違い、カントーは涼しいどころか、アローラに慣れ切った私にとっては寒すぎるくらいでした。

 

いま私たちが辿り着いたのは、カントー最大の港町、クチバシティです。港町という事もあり、大勢の人で賑わっています。カントー地方に来たら、殆どの人が最初に足を踏み入れることになるであろう町としても有名なところです。

 

「カントーに着いたわけだけど、先ずはどうするの?」

「はい、ククイ博士がオーキド博士に連絡をして手配してくださると聞いたのですが……。」

 

私がカントーに旅立つと言った際、ククイ博士はポケモン研究の第一人者、オーキド博士に取り合って手を貸してくださるように頼んでみると言ってくださいました。シンジさんは勿論ですが、ククイ博士にもお世話になりっぱなしで、私はその度に色んな人の手を借りて生きているのだと実感されます。

 

「リーリエさんとルザミーネさんですね?」

 

私がどうしようか戸惑っていると、大きな長袖の白衣を着ている男性に声を掛けられました。ククイ博士の着ていたものとは全く違いますが、見た感じでは恐らくオーキド博士の関係者の方でしょう。

 

「は、はい。」

「オーキド博士の使いの者です。こちらへどうぞ。」

 

私たちはその方に案内され、その方が乗ってきたというヘリコプターに乗り込みオーキド研究所と呼ばれる場所へと向かいました。車椅子に乗ったお母様の事も考慮して下さり、ヘリコプターに乗せるのを手伝って下さりました。

 

私たちはオーキド研究所へと辿り着き、広い庭に着陸してそこに降りました。そこには多くのポケモンさんたちが元気な姿で笑顔を見せて走り回っていました。

 

オーキド研究所がある町はカントー地方の中でもかなり小さな町、マサラタウンです。このマサラタウンは始まりの町、とも言われていて、このオーキド研究所で旅に出るトレーナーが最初のパートナーをオーキド博士から頂くことができるのだそうです。そしてここは…………あのシンジさんの出身地でもあります。

 

「さあ、こちらへどうぞ。」

 

オーキド博士の助手だと名乗る方に案内され、私たちは施設の中へと入っていきました。オーキド博士が待っている部屋まで案内されその部屋の扉が開くと、そこにはあの有名なオーキド博士の姿が私の目に映りました。

 

「君がリーリエ君じゃな?」

「は、はい!オーキド博士……ですよね?」

「如何にも!ワシがポケモン博士のオーキド・ユキナリじゃよ!それと、あなたがリーリエ君の母親のルザミーネさんじゃな?」

「はい、そうです。お会いできて光栄です、オーキド博士。」

 

私は初めて会うオーキド博士にどう対応していいのか困惑してしまいました。多くの人たちから尊敬されているポケモン研究の第一人者であり、あのククイ博士も最も尊敬する人物の一人と称するほどの方です。オーキド博士の名前を知らない人は恐らくいないでしょう。そんな方に初めて会えば、緊張してしまうのも仕方のない事だと思います。

 

ですが、お母様は緊張している様子は一切ありません。以前までエーテル財団の代表を務めていた方なので、こういった状況は慣れているのかもしれません。……お兄様はお母様の後継を務めることができているのでしょうか。少し心配です。

 

「長旅で疲れているじゃろ。今日は一先ずここで休むといい。研究所の部屋は自由に使っていいからの。」

「はい、ありがとうございます。」

 

オーキド博士のご厚意に甘え私たちは一度休むことにしました。外を見れば既に薄暗く、日が落ちている時間帯でした。アローラと違いカントーの夜は早いみたいです。

 

オーキド博士の用意してくださったベッドは温かく、不思議と安心感のある心地よいもので、ゆっくりと休むことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カントーについて翌日。私は再びオーキド博士と面会し、今後の事について話し合う事にしました。お母様は体に無理がないように、部屋で休んでいただいているのでこの場にはいません。

 

「さてと、君たちの事はシンジから聞いておるよ。」

「シンジさんから?」

 

オーキド博士は私もよく知る人の名前を口にしました。オーキド博士はシンジさんから聞いたことを全て話してくださいました。アローラであった旅の事はもちろん、私たちの訪れた理由まで聞いていたようです。

 

アローラから離れたこの地でもシンジさんのお世話になるとは思っていませんでしたが、それでも私はシンジさんが私の事をそこまで思ってくれていると考えるとすごく嬉しかったです。

 

「リーリエ君の会いたいと言っている人物はマサキという1人の研究家じゃよ。」

「マサキさん……ですか?」

 

マサキさんと呼ばれる方が私の探している方だと言います。ですが、オーキド博士が言うにはマサキさんは研究家としては優秀ですが、少々性格に難があるのだそうです。理由は会ってみれば分かる、とのことですが、現状マサキさんしか可能性が無いので、彼を頼ることにします。

 

マサキさんは“みさきのこや”と呼ばれる場所にいるそうです。ですがそこはマサラタウンからはかなり距離があり、手持ちのポケモンがいない状態で行くには危険だそうです。何故なら歩いていく場合、その道中に野生のポケモンが多く生息しているトキワの森やオツキミやまを通らなければならないからです。

 

私がどうすればいいかと尋ねたところ、助手の方が私を車で送ってくださるのだそうです。何度も世話になって悪い気もしますが、折角の好意ですしほかに手段が無いのでここは送っていただくことにしました。

 

早速私は助手の方の車に乗せていただき、みさきのこやに向かう事にしました。マサラタウンを出てトキワシティ、ニビシティ、ハナダシティを超えた場所にそのみさきのこやはありました。そこには小さな小屋があり、その小屋は失礼かもしれませんがククイ博士の研究所と同じくらいボロボロの家でした。

 

私は助手の方には車で待っていただくことにして、その小屋の前に立ちました。人の気配がしない不思議な感じがしたので、もしかしたら留守の可能性もあります。私はノックをするため扉に手をかけようとすると、自然と扉が開いてしまいました。戸締りをしていないのは少々物騒な気がしますが、私は控えめに声を出した中に人がいないかを確認します。

 

「あの~、誰かいませんか~?」

 

扉をそっと開けてみると、電気は点いているものの人がいる気配は全くありませんでした。部屋の中は散乱状態で、泥棒が入ったのではと錯覚させられる光景でした。ククイ博士から聞いた話では、研究に没頭している人は部屋がどうしても散らかってしまうものもいるのだそうです。実際ククイ博士にもそういうところはありました。

 

私は恐る恐る部屋の中に入りました。部屋の外装から想像してはいましたが、部屋の内部も当然狭く、散らかっているためとても人が住めるものとは正直思えません。

 

「ん?誰かそこにいるんか?」

「ひゃい!?」

 

私が室内を見渡していると、どこからともなく男性の声が聞こえてきました。突然の事で驚いた私ですが、改めて確認してみても周りには人の影は全く確認できません。

 

「こっちやこっち!下や!下見てみ!」

 

その聞こえる声に従い、私は下を見ることにしました。するとそこには、一匹のポケモンさんがいました。

 

「コラッタさん?」

 

そのポケモンさんは間違いなくカントー地方のコラッタさんでした。ですがコラッタさんが人の言葉を話すはずは……。

 

「誰がコラッタやねん!ワイは人間や!」

「……ひゃ!?コラッタさんが喋った!?」

「だから人間や言うてるやろが!正真正銘の人間や!」

「いや、そう言われましても……」

 

私の目の前にいるのは誰がどう見てもコラッタさんです。にわかには信じがたいことです。ですが、コラッタさんが喋るなんてことを聞いたことがないのもまた事実です。もしかしたら、この人……コラッタさんが言っていることは本当の事だという可能性も……あるかもしれません。

 

私が心の中で状況を整理していると、コラッタさんが慌てた様子で声を掛けてきました。

 

「せや!あんたワイがあの装置に入ったらそこのボタンを押してくれへんか?」

「ボタンですか?」

「ほな、今から装置に入るから頼んだで!」

 

コラッタさんはそう言ってすぐに部屋の奥においてあるカプセル型の装置の中へと入りました。その装置は二つあり、コラッタさんが入ったのは向かって右側の装置でした。左側の装置は、既に扉が閉まっていて中の様子が見えないようになっていました。

 

未だに困惑している私は、取り敢えず言う通りにしようとコラッタさんが装置に入るのを確認してからボタンを押しました。

 

ボタンを押すのと同時に装置が起動し、扉がゆっくりと閉まっていきました。その後、ドライアイスのような煙が装置から出て、もう一つの装置も同時に起動しました。そしてしばらく待つと、二つの装置の扉が開き片方からコラッタさんが走って出てきました。しかし、そのコラッタさんは先ほどとは違いどこか様子が違いました。

 

コラッタさんは辺りをキョロキョロと見渡し、現在の状況が掴めないでいるようでした。そしてもう片方の装置からは、煙の奥に人影が確認できました。

 

その人影が前に出てくると、その姿は少しずつ明らかになってきました。その人物は正真正銘の男性であり、煙から姿を現した男性は口を開き、私に話しかけてきました。

 

「いやー、助かったわ。ありがとな嬢ちゃん。」

 

その喋り方にはどこか聞き覚えがありました。そうです、先ほどの喋るコラッタさんと同じ声、同じ喋り方です。

 

「あ、あの……もしかしてあなたがマサキさんですか?」

「せやで。なんや嬢ちゃん。ワイに何か用でもあったんか?」

 

色々と聞きたい事はありますが、そのことは取り敢えず後回しにするとしましょう。今はやるべきことを優先すべきです。

 

私はそう思い、今までの経緯をマサキさんに話しました。アローラであった出来事、それとここを訪れた目的を。

 

「なるほど。つまりリーリエちゃんは母親であるルザミーネさんをそのウツロイドっちゅう奴の神経毒から助けたくてここに来た。そう言うことやな?」

「はい。」

 

私の説明を真剣に聞いて下さったマサキさんは、暫く悩む素振りを見せたのち、申し訳なさそうな表情を浮かべながら口を開きました。

 

「態々アローラから訪ねてきて悪いんやけどな。ワイではその症状はどうにもでけへんな。」

「!?そ、そうですか……。」

 

マサキさんの言葉に私はショックを受けた半面、心の中でなんとなくそんな気がしていました。アローラから遠く離れたこのカントーでは、UB自体が全く浸透していません。その上、お母様がかかってしまった神経毒は他に前例はないでしょう。もしかしたら、という期待感はありましたが……。

 

私がショックで途方に暮れていると、マサキさんは『せやけど』と言葉を続けました。

 

「可能性はないわけではないで?」

「ほ、本当ですか!?」

「ただこれにはリーリエちゃん、君の覚悟と勇気を見せる必要があるんや。……きっと辛い道のりになるで?」

 

マサキさんの言葉に私は喉を鳴らしました。マサキさんが言うからにはそれほどの事が待ち受けているのだろうと。

 

ですが私はここで退くわけには行きません。お母様を助けると誓い、覚悟を決めてアローラを出立しました。それに……シンジさんとも約束しましたから。必ず一緒に旅をすると……。私の答えは決まっています。

 

「はい!どんなことがあっても、必ず乗り越えてみせます!」

 

私の覚悟が伝わったのか、マサキさんは私の目をじっと見て微笑み、言葉を続けました。

 

「分かった。じゃあ今からその方法を伝えるで。」

 

そしてマサキさんが口にしたのは、予想を超えていた答えでした。

 

「君のお母さん……ルザミーネさんを助けられる可能性のある唯一の方法は…………」

「方法は?」

「…………伝説のポケモン、ホウオウの持つ虹色の羽や!」

「!?にじいろの……はね……。」

 

その言葉を聞いた私は絶句しました。本で読んだことがありますが、ホウオウさんは滅多なことでは人の前に姿を現さないポケモンさんで、心の正しい者の前にのみ姿を現すと言われるポケモンさんです。

 

「リーリエちゃんも知ってると思うけど、ホウオウは人前に姿を現すことは滅多にあらへん。せやけど、ホウオウに認められ、虹色の羽を手にすることができれば、ルザミーネさんの病も治すことができるかもしれへん。」

 

とはいうものの、マサキさんも詳しい事はよく知らないようです。マサキさんが言うには、ホウオウさんの資料はオーキド研究所に色々と置いてあるそうです。それを読んで調べてみるのが良いのでは、と提案を下さいました。私も本を読むのは好きなので、是非その資料を読んでホウオウさんと虹色の羽について調べてみたいと思いました。

 

「ワイの方でも色々調べてみるさかい、何かあればまたワイのところにきてや。困ったことがあれば力になるで。」

「はい!ありがとうございました!」

 

私はマサキさんにお礼を言い、みさきのこやを後にしました。その後、長い間待っていただいた助手の方の車に乗り、オーキド研究所へと戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私はホウオウさんについて資料を読んで調べることにしました。とは言え、ただでお世話になるのも悪いので、オーキド博士のお手伝いをしながら日々を過ごすことにしました。

 

研究所にいるポケモンさんのお世話やポケモンさんの健康チェック、もちろん研究についてや初心者トレーナーさんへの簡単なアドバイスなどもしました。当然偉そうなことは言えませんが、今まで溜め込んだ知識は豊富にあるため、それらを活かしたアドバイスであれば私でもできます。それに、ククイ博士のところでも助手を務めていたので経験は充分にあると思っています。

 

それにしても流石はオーキド博士の研究所です。ホウオウさんの事は勿論、他の伝説のポケモンさんの研究資料も数多くありました。これは色々と勉強になります。

 

私はそれから数か月、必死にホウオウさんの事について勉強しました。お母様のお世話をしながらですが、それでも自分の中に知識を集めることができるのはやっていて楽しいので全然苦にはなりませんでした。

 

私が調べて分かったことは色々あります。ホウオウさんは正しい心の持ち主にしか姿を見せない、というのは知っていましたが、その正しい心の持ち主にしか虹色の羽を渡すことはないのだそうです。また、稀に心の正しい持ち主には虹色の羽を渡し、その人物を試す……いわゆる試練を行うこともあるのだそうです。

 

そして、その虹色の羽には様々な効果があり、心の正しい持ち主がその羽を特定の場所でかざすと、その人の前にホウオウさんが姿を現すのだそうです。ですが汚れた者がその虹色の羽に触れると、羽は色を失い、とんでもないことが起きてしまうのだそうです。かつてはそれが原因で、争いが絶えずホウオウさんが力で彼らを押し込めた、とも記されていました。

 

また、カントー地方の隣にあるジョウト地方ではホウオウさんによる伝承があり、とある塔が焼け落ちた際、三匹の名もなきポケモンさんが亡くなってしまったのだそうです。それを悲しんだホウオウさんが彼らを復活させ、新たな命を吹き込んだのだと言われています。

 

そのポケモンさんは、エンテイさん、スイクンさん、ライコウさんと呼ばれ、ジョウトの三聖獣として崇められることもあるのだそうです。

 

それに、虹色の羽にはホウオウさんを呼ぶ以外にも様々な効果があるのだそうです。人の気持ちを抑制する効果、万病を治す効果、更に言い伝えでは死者を蘇らせることもできるのだそうです。それらの効果を聞いただけでもどれだけ凄いものかが伝わってきます。

 

そんなホウオウさんですが、たった一つだけ、ホウオウさんに会うことができると言われる唯一の方法があると資料に書かれていました。それは、ジョウトとカントーの間にある険しい山、シロガネやまを頂上まで登ることだそうです。恐らくマサキさんの言っていた険しい道とはこのことでしょう。ただし、山を登るのはポケモンさんと一緒にでは問題ないそうですが、1人で登らなければならないようです。つまり、私一人で行く必要があるという事です。

 

明らかに簡単な道ではありませんが、覚悟を決めた以上は登るしかありません。今、お母様を助けることができるのは私しかいないのですから。

 

そしてまたそれから数日が経った時でした。あることに変化が起きました。それは……

 

「お、お母様!」

「どうしたの?そんなに慌てて……」

 

私は慌ててお母様の元へと駆け込みました。休んでいるお母様には申し訳ありませんが、この状況では落ち着いていられませんでした。

 

「こ、この子を……シロンを見てください!」

「あら、これは……」

 

私がお母様に見せたもの……それはシンジさんからいただいたポケモンさんのタマゴです。このタマゴは色が白く、コロンコロンと転がるのでシロンと私が名付けましたが、今までもかすかに揺れたりしてまるで返事をしていたり感情を表現していると思わせるようなことは多々ありました。しかし、今では青白く光りいつもよりも揺れが激しくなっています。

 

私がポケモンさんのタマゴを抱いていると、ピキピキッと言う音共にタマゴが割れ始めました。頭から少しずつ割れ始めたタマゴは、次第に光が強くなり、その光が解き放たれた時にはタマゴの姿はありませんでした。そこにあったのは、一匹の真っ白なポケモンさんの姿でした。

 

「この子は……アローラのロコンね。」

「アローラのロコンさん……ですか?」

 

その子紛れもなくアローラのロコンさんでした。アローラのロコンさんは主にラナキラマウンテンの寒い場所に生息しており、個体数も多くないポケモンさんだと記憶しています。

 

少し間をおいてから、ロコンさんは目をゆっくりと開きました。今までタマゴの中にいたため、光に慣れていないのでしょう。ロコンさんが目を開けると、目の前にいる私と目が合いました。

 

「……ふふ、実際に会うのは初めてですね。私はリーリエです。よろしくお願いします。」

『コォン?コォン!』

 

ロコンさんは私の姿を見ると、すぐさま飛びついてきました。顔も舐められたりして少しくすぐったいですが、それよりもやっぱり嬉しいという感情の方が先に出てきます。

 

「この子、多分リーリエの事を親だと思っているのかもしれないわね。」

「え?そうなんですか?」

「多くの生物は産まれた時に初めて見たものを親だと思う習性があるの。それはポケモンももちろん例外じゃないわ。」

「親……親ですか。ロコンさん……ううん、シロン!」

『コォン?』

 

私がシロンと呼んだことに疑問を感じたのか、シロンは不思議そうに首を傾げました。そこで私は、シロンにあることを…………大切なことをお願いしました。

 

「……私の……最初のパートナーになってくれませんか?」

『コォン?』

「私はポケモントレーナーではありません。正直、まだ戦うのは怖いです。ですが、いつまでも守られる側でいるのは嫌なんです。私は……あの人に追いつきたい……一緒に並んでいたいから……。」

 

私がそうシロンに告白すると、シロンは私の顔を舐め、笑顔で答えてくれました。

 

『コォン!』

「い、いいんですか?私がパートナーに……トレーナーになっても?」

 

シロンは力強く頷いてくれました。私の希望を快く受け入れてくれたようです。ちょっとだけシンジさんの気持ちが分かりました。ポケモンさんが……信頼できるパートナーが近くにいるだけで、こんなにも頼もしく思えるのですね。

 

「はい!これからよろしくお願いします!」

『コォン!』

 

こうしてシロンは晴れて私のパートナーとなりました。私一人で行けなかった場所でも、シロンとならどこまでも行ける……そんな気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、着いたで。ここがシロガネやまや。」

「はい、ありがとうございます。」

 

準備を整え、マサキさんにシロガネやまの麓まで送ってもらった私たち。今日、遂にホウオウさんに会う為にこのシロガネやまを登る決意をしました。

 

空を見上げると、シロガネやまの頂上は全く見えず、果てしない雲が続いているだけでした。こんな山、ラナキラマウンテン以外に見たことがありません。ですが、ここで怖気づくわけには行きません。

 

「気を付けてね、リーリエ。」

「はい!必ずホウオウさんに会って帰ってきますから!」

 

私は見送ってくれるマサキさんとお母様に手を振り、シロガネやまへと足を踏み入れました。

 

(……シンジさん。私に勇気を分けてください。)

 

中は当然薄暗く、不気味さが伝わってきます。ここには私のようにホウオウさんと出会う為に訪れる人もいれば、修行するために山籠もりをする人もいるのだそうです。ですが、ホウオウさんに出会うことができた人は1人もいないそうです。

 

理由は道が険しいだけでなく、道のりが長すぎる、迷子になるなどして意思を折られることが殆どだそうです。なんだかその人たちの気持ちが分かる気がします。それだけ私は困難な道を渡ろうとしているのでしょうが、今の私には怖くはありません。だって……

 

「出てきてください!シロン!」

『コォン!』

 

私がオーキド博士から頂いたモンスターボールを投げると、中からはシロンが元気よく出てきました。シロンはすぐに振り向き、私の元へと飛びついてきました。

 

「正直、私は少し前までは不安で一杯でした。一人で乗り越えられるのか……。でも」

『コォン?』

「今はあなたがいるから不安はありません。全力で乗り越えましょう!」

『コォン!』

 

私の言葉に合わせ、シロンは元気よく返事をしてくれました。やっぱりパートナーがいるだけで、全然気持ちが違ってきます。それと同時に、私も遂にポケモントレーナーになったのだと実感しました。あの人と……シンジさんと同じポケモントレーナーに……。それだけで気が引き締まってきました。

 

しかしその時、なんだか辺りがガサガサと騒がしい気がしました。私はバッグから懐中電灯を取り出し、辺りを照らしてみます。そして懐中電灯を天井に向けると……。

 

『カカッ!』

「!?ゴルバットさん!?」

 

天井にはゴルバットさんが張り付いていました。それも一匹や二匹ではなく、複数体です。私たちが山に入ってきたことで、彼らを目覚めさせてしまったのでしょうか。ゴルバットさんたちは一斉にこっちを向いたため、自然と恐怖を感じました。

 

「と、取り敢えず逃げましょう!」

 

私は一先ずシロンと共に逃げる選択肢を選びました。ゴルバットさんもそれと同時に私たちの方へと飛んできました。ですが山のデコボコ道は足場が悪く、一方ゴルバットさんは空を飛んでいるため、距離は離れるどころか縮まるばかりです。私がどうしようかと焦っているその時……。

 

『コン!コォン!』

 

シロンが振り向き、凍りつく吐息をゴルバットさんたちに放ちました。見た感じあれはこなゆきでした。それを受けたゴルバットさんはすぐさま退散していきました。

 

「た、助かったのですか?」

『コォン!』

「あ、ありがとうございます、シロン。おかげで助かりました!」

 

シロンに咄嗟の行動に助けられた私はシロンに感謝して頭を撫でました。シロンも頭を撫でられ気持ちよさそうにしています。

 

「よし!ではこの調子で進みましょう!」

『コォン!』

 

私は頼れるパートナーと共に、山を進む決意をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……つ、疲れました……。」

 

シロガネやまを大分登ってきましたが、正直疲れ果てました。道が険しいのも勿論ありますが、それだけではなく、この道中にあった出来事にも疲れる要因はありました。山道からゴローンさんが大勢で勢いよく雪崩のように転がってきたり、不意にイワークさんの怒りを買ってしまったり、時には迷子になりかけてしまったり。ついつい自分が方向音痴なのを忘れてしまいます。それもこれも、シロンのお陰で何とかここまで来れましたけど。

 

『コォン……』

「私なら大丈夫ですよ。心配しないでください。」

 

これ以上シロンに心配かけないように、シロンの頭を撫でて気持ちを落ち着かせました。パートナーに心配をかけるようではトレーナー失格ですからね。

 

「さて、では引き続き登りましょう!」

 

私は手にギュッと力を込め、再び歩き出そうと立ち上がります。

 

しかし、少し離れたところから大きな音がして、こちらに近づいてくるのが分かります。

 

「な、なんでしょうか……。」

 

物音は段々と近くなり、次第にその音がなんなのかハッキリしてきました。

 

視線の先にはイワークさんがこちらに向かって勢いよく這いずってきているのが分かります。恐らく先ほどのイワークさんでしょう。さっきはシロンのお陰で助かりましたが、それでも逃げるしか手がないと感じ、私はシロンと共に走り始めました。

 

「マズいです!このままでは!」

 

私がピンチだと思った矢先、シロンが再びこなゆきでイワークさんに攻撃してくれました。しかし、今回はイワークさんは止まる様子はありませんでした。さっきとは明らかに様子が違います。私たちはもう逃げるしか手が残されていませんでした。あわや圧し潰されてしまうのでは、そう思った時でした。

 

『イワーク!』

 

イワークは何かに驚いてこの場を去っていきました。その時、私の目の前には一筋の炎が通り過ぎました。その炎は神々しく、まるで神の力を宿しているかのようでした。

 

私は何者かの気配がして、その気配のする方へと振り向きました。するとそこには、一匹のポケモンさんがいました。しかし洞窟の薄暗さのせいで姿がハッキリとは見えませんでした。なんだかポケモンさんの姿が波打っているような気がしましたが、姿までは見えませんでした。

 

そのポケモンさんは私の姿を確認する素振りを見せると、私の目の前へと降り立ち、その場をすぐに立ち去っていきました。私はなんだか無視してはいけないような気がして、そのポケモンさんの後を追う事にしました。

 

暫く後を追いかけると、洞窟の外に出ました。そこには一面に綺麗なお花畑が広がっており、幻想的な光景がありました。

 

「す、すごいです。こんなにきれいな場所が山にあるなんて思いませんでした。」

 

私が振り向いて空を見上げると、山頂は見える場所まで来ていました。ですが先ほどのポケモンさんはどこにも見当たりませんでした。疲れて幻覚でもみたのでは、と思ってしまう出来事でした。

 

「あれ、霧が……」

 

私が自問自答を繰り返していると、今度は霧が出てきました。次第に霧は濃くなってきて、前が見えないほどまでになってきました。

 

しかし、その霧の中にはさっきと似た違和感を感じました。なんだか不思議な力を感じる。そんな気がします。

 

私が霧の中に目を凝らすと、そこには先ほどのポケモンさんと似た形状のポケモンさんを発見しました。しかし、先ほどのポケモンさんは力強さが感じられたのに対し、今度のポケモンさんは神秘的なオーラのようなものを感じます。

 

そのポケモンさんも、先ほどのポケモンさんと同様に、私の姿を確認するような素振りを見せるとそのまま走り去っていきます。私も見失うと行けない気がしてしまったので、急いで後を追いかけます。

 

そのポケモンさんはふわりふわりと不思議な感覚で走っていき、追いかけている最中に霧の中を抜けました。霧を抜けた先には、そのポケモンさんの姿はありませんでした。

 

しかしいつの間にか、私は山の頂上の付近まで近づいていました。もしかしたら、先ほどのポケモンさんたちが私を道案内してくれたのでしょうか。

 

私がそんなことを考えていると、今度は黒い雲が怪しく周囲を覆いました。すると突然、目の前に落雷が落ちました。私はあまりの眩しさに目を腕で守るように塞ぎました。すると目の前には、かすかですがポケモンさんの姿が確認できました。もしかしたら先ほどのポケモンさんたちと関係があるのかもしれません。

 

そのポケモンさんは落雷の中を素早く駆け抜けたためハッキリと確認することは出来ませんでしたが、私は夢我夢中で追いかけました。

 

そしてポケモンさんを追いかけていると、既にそこは山の山頂でした。案内されている、というよりもなんだか不思議な空間を駆け巡っていたような味わったことのない感覚でした。ですがやはりそこにはポケモンさんの姿はありませんでした。でも、何者かに見守られている感覚だけはありました。

 

私は周りを見渡し、ホウオウさんがこの場にいないか確認しました。伝承ではシロガネやまの山頂に着くとホウオウさんが姿を現す、と書いてありました。伝承通りであれば、この場に姿を現してくれるはずです。

 

ですが、ホウオウさんは一向に姿を現そうとしません。大声で呼びかけても、やはり姿を現しません。結局、伝承もあくまで伝説だったという事なのでしょうか。

 

私が諦めかけたその時、先ほどまで黒雲だった空に一筋の光が差し込み雲を晴らしていきました。私は眩しさのあまり、目を開けることができませんでしたが、私の目の前にヒラヒラと何かが落ちてきました。私はそれを優しく包むように受け取りました。するとそれは暖かく、逆に私が包み込まれるのではと思わせる程不思議なものでした。

 

勇気をだして私はそれが何なのか確認すると、それは虹色に輝くものでした。紛れもなくそれは……

 

「にじいろの……はね……。」

 

そうです、紛れもなくそれは資料で読んだ虹色の羽そのものでした。私は空を見上げ、その光を見つめると、そこには信じられない光景が広がっていました。

 

「あ、あれは……ホウオウさん!?」

 

そう、そこにいたのは黄金色に輝く、あの伝説のポケモン、ホウオウさんの姿だったのです。ホウオウさんはゆっくりと羽ばたきながらシロガネやまの空を飛び去って行きました。

 

「私が触れても色を失わない……認めて下さった……のでしょうか。」

 

虹色の羽は私が触れても色を失う事はありませんでした。それどころか、寧ろ色の輝きが増している気さえしました。私は、大きな試練を乗り越えることができたのだと実感しました。もちろんそれは…………

 

『コォン!』

 

私の大切なパートナーと共に乗り越えた証です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹色の羽を手に入れた私は、お母様たちの元へと戻りました。

 

虹色の羽を手にした私は、その羽をお母様に翳すと、不思議なことにお母様がみるみると元気になっていきました。残念ながらやつれてしまった姿までは元に戻りませんでしたが、これほどまでの効果があるとは正直驚きです。伝説のポケモンさん、その力の一端を見せられ私は言葉にすることができませんでした。

 

お母様はすっかり元気になり、私は神経毒に悩まされることのなくなったお母様に思わず抱き着いてしまいました。その時、私は涙を流して今まで甘えられなかった分、甘えてしまっていたのを記憶しています。

 

そして無事私たちは親子として、家族として再開することができ、マサラタウンで新しく家を建てそこに住むことにしました。

 

はじめは慣れない暮らしで大変なことばかりでしたが、それでもお母様と共に過ごせるというだけで苦を一切感じませんでした。

 

お母様とのカントーでの暮らしに慣れ始めた私は、シンジさんに手紙を書きました。私がカントーで体験したこと、シロンの事、お母様の事、新しい生活の事、もちろん私の事も。シンジさんからも手紙が届き、お兄様やミヅキさん、シンジさんも元気よくやっていけているそうです。私はそれが聞けただけでも充分嬉しかったです。

 

そして暫くの年月が経ち、アローラを発ってから2年がたとうとしていました。

 

私はある時、お母様に言われました。充分体調が戻ってきたから、旅に出てみてはどうだ、と。私は最初お母様を残してまで旅に出るかどうか悩みました。ですが、やはり私の脳裏にはシンジさんの姿がちらついてしまいます。あの人に並びたい、追いつきたい、そんな感情ばかりが頭を過ってしまいます。

 

私は自分の欲望に負け、旅に出る決意もしました。もちろん、シンジさんやお兄様たちにも旅立ちの件を伝えました。

 

そして私は遂に、あの日から丁度2年が経った日に旅立つことにしました。私は旅立ちのためオーキド博士の元へと立ち寄りました。お母様の件で色々お世話になったこと、新しい環境に慣れない私たちを色々サポートしてくれたこと。他にも感謝するべきことがあるかもしれませんが、多すぎて言葉が出てきません。

 

オーキド博士は旅立つ私に餞別として、初心者用のポケモンを一匹選ぶといいと言ってくれました。私もその言葉に甘え、2匹目のポケモンを選ぶことにしましたが、どの子も魅力的で悩みました。

 

カントー地方ではほのおタイプのヒトカゲさん、みずタイプのゼニガメさん、くさタイプのフシギダネさんから選ぶことになります。シロンとの組み合わせで言えばみずタイプのゼニガメさんがいいかもしれません。ですがヒトカゲさんの力強さも捨てがたかったです。

 

私は悩みに悩んだ結果、くさタイプのフシギダネさんを選びました。理由は、ただ単純に自分が一番可愛いと思ったからです。これから苦楽を共にする仲間なのですから、論理的な考えよりも、素直に考えた方がいいかと思ったのです。

 

私はフシギダネさんを新たに仲間に加え、2匹の大切なパートナーたちと共にマサラタウンを旅立ちました。

 

そして旅に出たすぐの町、トキワシティへと立ち寄りました。トキワシティにはポケモンジム、所謂アローラで言う試練のような施設がありましたが、今の私では自信が無いので立ち寄らないことにしました。それに旅に出たはいいものの、私はまだ目的を決めていません。これから何がしたいのか、どうするべきなのかもじっくりと考えていきたいと思います。

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~、迷ってしまいました。」

 

私は見事にトキワの森で迷子になってしまいました。トキワシティで聞いた話によれば、トキワの森の中は複雑で、野生のポケモンも多く生息しているそうです。

 

私がどうしようかと迷っている時、近くの茂みにてなにかが動く音がしました。私はそれが何なのか気になったため、警戒しながら近づきました。

 

『スピ!』

「!?す、スピアーさん!?」

 

茂みから飛び出してきたのは複数のスピアーさんでした。スピアーさんはカントー地方では珍しくないポケモンさんで、恐らくここはスピアーさんの住処だったのでしょう。私が近づいたからか、どことなく気が立っているように思えます。

 

「ってそんなこと考えている場合ではありません!早く逃げなければ!」

 

私は急いで振り返り、全力で逃げました。しかしスピアーさんのスピードは素早く、全力で逃げても追いつかれてしまいそうでした。このままではマズイ、私はそう思いました。しかしその時……

 

「10まんボルト!」

 

鋭い電撃がスピアーさんの目の前を横切りました。何が起きたのか分からなかった私は、その場でへたり込むように座りました。そんな私の耳に、一人の男性の声が入ってきました。

 

私はその声の主を忘れません。いえ、忘れることができません。だってその人は……

 

「リーリエ!」

 

だって、その人は……私にとってとっても大切な方で、憧れを抱いている方で……

 

「リーリエ!大丈夫だった!?」

 

私の…………大好きな方なのですから…………

 

「……シンジさん……なぜ、ここに……?」

「約束したからね。必ず一緒に旅をするって。」

「!?シンジさん!」

 

私は嬉しさのあまり、涙を流しながら私の一番大好きな方、シンジさんに抱き着きました。私との約束を……覚えてくださっていたのですから……。

 

「リーリエ……」

「シンジさん……。会いたかったです。」

 

私は抱き着きながらシンジさんの顔を見つめました。間違いなくシンジさんです。間違えるはずがありませんが、シンジさんが確かに目の前にいる。シンジさんの温もりがする。それだけで現実ではない気がしてなりません。

 

シンジさんはそんな私の戸惑いを吹き飛ばすように、優しく口づけをしてくれました。アローラで別れた時と同じように……。

 

「また、しちゃいましたね///」

「いやだった?」

「いいえ、嫌なはずありません……。だって……」

 

だって、私はこんなにも幸せなのですから。

 

私達は幸せを確かめるように、再び口づけをしました。好きな人と一緒にいられるだけでこんなにも幸せだなんて、まるで夢みたいです。

 

こうして私の新しい冒険、新しい挑戦が始まりました。これからもシンジさんと、それから頼れるポケモンさんと一緒に、がんばリーリエ!です!




ホウオウや虹色の羽の設定にはちょこちょこ主の妄想も入ってます。勿論公式設定も混ざってますが、伝説のポケモンでしかもホウオウならできそうだなと思ったりして書いてました。書いてて楽しかったので満足ですが。

伝説、幻のポケモンに関しては謎に包まれたまま終わる方がそれっぽい気がします。リーリエの見た謎のポケモンたちに関しても同じです。

因みにルザミーネさんに関してもほぼオリジナル設定です。原作では昏睡状態でしたが、この小説では普通に会話はしています。ただ神経毒の所為で体が弱っているからすぐに疲労してしまう、赤子のように歩くことが困難、栄養不足でやつれてしまっている等、身体に影響が出てしまっている、という設定です。まあ結局は二次創作ですしこんなもんでしょう。二次創作作品に公式設定を求めるのはご法度です。



さてと、今日で丁度掲載1周年と言う事で頑張ってまいりましたヌシですが、これも応援してくださった皆さんのおかげです。正直ここまでやれるとは思ってませんでした。自分でも驚きです。

初めは自己満足で書き始めた小説ですが、これからも是非応援よろしくお願いします!

そう言えばリーリエの中の人はXYのミルフィ(二代目)と同じなのは有名ですが、オーバーロードのエントマの中の人でもあるんですよね。因みに先週やっと出てきたアルシェとも同じ人だそう。まあ後の結末的に考えれば妥当なのですが。

それはそうと、レッツゴーイーブイのイーブイ役はあおちゃん(悠木碧さん)だそう。ポケモン好きの方にも分かりやすく言えば、BWのアイリス、バージルのブラッキーの進化前だったイーブイ、イーブイフレンズのブースターです。つまり俺得。

それにオーキド博士の中の人(石塚運昇さん)が亡くなってしまったのが残念です。後任が気になりますが、まずは石塚さんにお疲れさまでしたと言いたいです。

と最後は湿っぽくなってしまいましたが、雑談をしたところで本日はサヨナラです。また次回お会いしましょう!
ではではノシ


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ピカブイ発売直前記念特別編 前編 ~キミにきめた!~

我慢できずに書いた。後悔はしていない。今は反省している。

タイトル通り“劇場版ポケットモンスター キミにきめた”とのパロと言うかコラボと言うかそんな感じです。ただあまり内容は変えていないです。一部変更点はありますけど。いつも通りの勝手なオリジナル設定とかね。

当然ですが劇場版と同じで、全く本編とは関係ない話になっております。平行世界的なものです。

それと今回は以外に話が長くなったので、前後編で分けます。劇場版のクオリティを甘く見ていた……。ですが実際にとても面白い話なので、みていない人は劇場版を見ることをオススメします。ポケモン知らない人でも楽しめるかと思います。いや、ポケモンを知っているからこの小説を読んでいただけているのか……。


ポケットモンスター……縮めてポケモン。この星の不思議な不思議な生き物。

 

海に、森に、山に、町に、彼らはこの世界の至る所に存在している。

 

ポケモンと人間は共に協力し合って暮らしている。人が笑えばポケモンも笑い、ポケモンが悲しい時は人も悲しい。

 

そしてここ、カントー地方にも当然ポケモンたちは存在し、人間と共存している。

 

このカントー地方のマサラタウンでは、10歳になると最初のポケモン、ヒトカゲ、フシギダネ、ゼニガメのいずれか一匹を貰い旅に出ることが出来る。そして遂に今日、10歳となり遂にポケモンを貰い旅に出ようとしている少年がいるのだ。

 

「ちょっとシンジ~?早く起きないとポケモン貰えないわよ~?」

「う~ん……ポケモン?…………っ!?しまった!?」

 

その少年、シンジは母親の声により目が覚め慌ててベットから落ちてしまう。急いでいつもの服(青いポロシャツと黒色のズボン)に着替えて準備をし1階へと降りた。

 

「なんで起こしてくれなかったの!?」

「起こしても起きなかったじゃないの。それに10歳になったら自分で起きるんじゃなかったの?」

「うっ、そうだった……。と、とりあえず行ってきます!」

 

シンジは母親の抑止を聞かずに飛び出すように家を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……まだ……ポケモン残ってるかな……。」

 

シンジは全力で走りポケモンを貰うことができるオーキド研究所へと辿り着いた。だがその時には既に息は切らしてしまい、肩で息をしている状態だ。

 

そんなシンジの元にもう一人ダッシュで走ってきている少年の姿があったのだった。

 

「やばい!遅刻遅刻~!」

 

その少年は薄緑色の服をきてまさかの裸足でやってきていた。慌てすぎてパジャマのまま家を出てしまっていたようだ。もっとも、現在の彼らはそんなことを気にしている余裕はないようだが。

 

「さ、サトシも遅刻したんだ……。」

「シンジ……お前もか……。」

 

その少年の名はサトシ。シンジとは幼馴染で、共に旅に出ようと約束をしていたのだ。だが二人とも仲良く遅刻をしてしまったようだ。似た者同士だからなのか、2人とも気が合い昔からよく遊んでいる仲である。

 

「と、とにかく早くポケモン貰いにいこう!」

「あ、ああ!そうだな!」

 

サトシとシンジは再び走り出しオーキド研究所の敷地内へと入る。するとそこには草ポケモンに水をあげているオーキド博士の姿があった。

 

『博士!』

「ん?おおサトシくんにシンジくんか!ようやくきおったの!今日旅に出る新人は5人で聞いていたが、君たちで5人目じゃの。」

 

博士は二人の存在に気付き水やりを中断し彼らへと振り向いた。

 

『ぽ、ポケモンは残ってますか?』

「とりあえずここではなんじゃ。中に入りなさい。」

 

シンジとサトシはオーキド博士にそう言われ、博士のあとを着いていくことにした。

 

「シンジは貰うポケモン決めてる?」

「僕?実はまだ迷ってるんだ。本物を見てから決めようかなって思ってるから。」

 

サトシの質問にシンジはそう答える。実際、初めにパートナーとするポケモンは誰にとっても思い出深く悩んでしまうものである。そうやって悩んだ末、選んだポケモンと旅をするからこそより楽しみも増えることだろう。

 

そんな中サトシは指をパチンと鳴らし、最初のパートナーにしたいポケモンの名を口にした。

 

「俺はもう決めてるぜ?ゼニガメ!君に決めた!」

「ゼニガメは時間通りに来た子が連れて行ったよ。」

 

サトシの言葉にオーキド博士の無慈悲な言葉が刺さる。その言葉はシンジの胸にも突き刺さる言葉であった。

 

「じゃ、じゃあフシギダネ!君に決めた!」

「フシギダネも遅刻しなかった子が持って行ったぞ。」

 

再び放たれたオーキド博士の言葉に2人はダメージを受けてしまう。だがサトシはめげずに最後のポケモンの名前を言った。そしてポケモンの貰える部屋のある二階へと行くために階段を上りはじめる。

 

「だ、だったらヒトカゲ!俺のパートナーは君しかいない!」

「通勤電車もポケモンも、一秒の遅れが人生を変える。」

 

部屋に辿り着くと、そこでは最後に残ったヒトカゲがモンスターボールに入れられ、そのトレーナーとなった男の子が挨拶をして退室していく瞬間に出くわした。

 

「そ、そんな~。」

「では僕たちがもらえるポケモンはいないってことですか?」

「いるにはいるのじゃが……」

 

サトシはガックリと項垂れた。シンジは冷静にオーキド博士に尋ねるが、その様子はどこか不安気な表情であった。やはり最初に貰えるポケモンであるため楽しみにしていたのだろう。とはいえ遅刻をした自分に非があるため、文句を言う訳にもいかなかった。

 

オーキド博士はポケモンがいることにはいると言うが、どこか苦い顔をして渋っている様子だった。

 

「その二匹は少し気難しくてな。扱いが難しいポケモンなんじゃよ。」

「遅刻をした僕たちに問題があります。」

「そうだな。そのポケモンたちを俺たちにください!」

 

サトシの言葉と同時に一匹の影がシンジの近くを通っていった。その影に気付いたシンジはゆっくりとその影を追いかけるように視線をやる。

 

「今のって……。」

 

追いかけた視線の先には、物陰に隠れこちらの様子をじっと見つめているポケモンの姿があった。

 

そのポケモンの姿は全体的に茶色い姿をしており、首元がモフモフとしている可愛らしい姿であった。だがその様子は彼らの事を警戒しているのかプルプルと震えて怯えているようであった。

 

それと同時に、サトシの目にも一匹のポケモンの姿が目に入った。そのポケモンは黄色い姿で、頬には赤く丸い模様がある姿だ。だがシンジの見かけたポケモンとは違い警戒心はないものの、良からぬことを考えているかのような笑みを浮かべていた。

 

「もしかして博士の言っていたポケモンは……」

「まあそのポケモンたちなのじゃが……」

 

博士はそう言ってそのポケモンたちの説明をする。

 

「サトシ君の見つけたポケモンはピカチュウじゃ。」

「ピカチュウ?可愛いじゃないですか!俺、このポケモンに決めました!」

「……果たしてそうかな?」

 

博士は小さく誰にも聞こえない声でそう呟きピカチュウの説明をしようとする。だがサトシはお構いなしに笑顔でピカチュウへと近づいた。

 

「俺はサトシ!今日からよろしくな、ピカチュウ!」

『ピカ?チュピ~!』

「あばばばばばばば!?」

 

サトシがピカチュウを抱え上げると、ピカチュウは頬の赤く丸い部分、電気袋から強力な電気を放った。ピカチュウの得意技である10まんボルトだ。ピカチュウを抱えているサトシは勿論直撃し、全身が激しく痺れてしまった。

 

「通称でんきねずみ。恥ずかしがり屋で人に慣れづらく、下手に触るとそうなってしまうのじゃ。」

「そ、それを早く言ってくださいよ……。」

 

サトシは黒焦げで痺れた状態でそう言った。そんなサトシを心配するように苦笑いをしていたシンジもサトシに声をかけた。

 

「さ、サトシ大丈夫?」

「だいじょぶだいじょぶ……」

 

どう見ても大丈夫ではないが、サトシはその状態からなんとか復帰し起き上がった。その様子を見ていたシンジは、さすがはサトシと呆れにも近い言葉をつぶやいた。

 

そしてシンジは自分も声を掛けてみようと、先ほどのポケモンにゆっくりと歩み寄る。そのポケモンの様子は、サトシとピカチュウのやり取りが原因なのか先ほどよりも怯えている様子であった。

 

「君の名前はなんていうの?」

『イブ……』

「そのポケモンはしんかポケモン、イーブイじゃ。」

 

怯えているポケモン、イーブイに代わりオーキド博士がポケモンの紹介をした。

 

「イーブイ?このポケモンにも何か問題があるんですか?」

 

すぐに近づいたサトシと違い、シンジはオーキド博士に質問する。オーキド博士はそんなシンジにイーブイの説明をした。

 

「イーブイは少々、いや、かなり臆病な性格でのぉ。中々人に心を開いてくれないんじゃよ。」

 

シンジはオーキド博士の話を聞き、イーブイが先ほどから怯えている理由が分かった。臆病であるイーブイは、初めて会ったシンジたちの事が怖くて物陰に隠れて恐怖で出てこれなくなってしまったのだ。

 

「怖くないよ。僕は君と仲良くなりたいだけなんだ。」

 

シンジはイーブイに手を差し出して優しく語り掛けるも、イーブイはそれでも怯えてしまいすぐには出てこれそうもない。そんなイーブイの姿を見て、シンジはある決断をしたのだった。

 

「博士、イーブイを僕のパートナーにしてもいいですか?」

 

博士は彼ならきっとそう言うだろうと、静かに頷いた。そしてオーキド博士は二人にそれぞれのパートナーを入れるためのモンスターボールを渡したのだった。

 

サトシにはピカチュウの、シンジにはイーブイ専用のモンスターボールを渡した。ピカチュウのモンスターボールには小さく雷マークが描かれており、イーブイのモンスターボールにはピカチュウのボール同様、星のマークが描かれていた。

 

「これがピカチュウとイーブイのボールじゃ。難しいかもしれないが、上手くやるんじゃぞ?」

『はい!ありがとうございます!』

 

サトシとシンジはそれぞれ自分のパートナーとなるポケモンを入れるモンスターボールを受け取る。それと同時に、2人の女性が彼らの元へと訪れたのだった。

 

「サトシ!ポケモンを貰ったらそのまま旅に出るつもりだったでしょ?」

「シンジ!ポケモンは貰えた?」

「ママ!?」

「お母さん!?」

 

その女性はサトシとシンジの母親であった。サトシの母親は彼の着替えと帽子、それからリュックを持っていた。シンジの母親も同じくシンジに渡すリュックと帽子を持ってきていたのだ。

 

「ほら、折角旅に出るんだから新しい帽子よ。」

 

シンジに手渡されたのは青いモンスターボールが描かれたキャップであった。シンジはそれを受け取ると早速頭に被り、それを確認した母親は彼の後ろに回り腕を通して黒色のリュックをかけたのだった。

 

「必要なものは全部入れておいたから。」

「ありがとう、お母さん。」

 

シンジは丁寧に用意してくれた母親に感謝する。

 

それと同時にサトシも旅立ちの準備が完了した。サトシは先ほどのパジャマ姿から変わり、黒いシャツの上に青を基調とした服を羽織り薄水色のズボン、黒と白のスニーカーを履き緑色のリュックを背中に背負っている。そして帽子はローマ字のCにも似た形の緑のマークが入ったキャップであった。

 

「ところでポケモンはモンスターボールに入っているものなんじゃないの?」

「あっ、もちろんだよ!」

 

母親に言われハッとなったサトシは、ピカチュウをモンスターボールに入れるため屈みモンスターボールを構えた。

 

「これからよろしくな、ピカチュウ!」

 

ピカチュウをモンスターボールに入れるため軽く投げるサトシ。しかし……

 

『ピカッ!』

 

なんとピカチュウにモンスターボールを尻尾で跳ね返されてしまったのだ。サトシはそのボールを綺麗にキャッチし、もう一度投げる。だがそれでも弾き返されてしまい、暫くそのラリーが続いた。すると遂にピカチュウが強力な一撃で返しそれがサトシの顔に直撃してしまう。それをみたピカチュウはクスクスと口を押えて笑った。

 

「まぁ!キャッチボールするほど仲が良くなったのね!」

「!?そうさ!俺とピカチュウは友達なんだ!なっ?ピカチュウ!」

 

ピカチュウを抱きかかえたサトシ。だがそれに痺れを切らしたのかピカチュウの頬がビリビリと鳴り始める。それを見たシンジは何だか嫌な予感がすると母親と共に下がる。

 

そしてシンジの嫌な予感が的中し、電撃がサトシだけでなくオーキド博士とサトシの母親も巻き込んで放たれてしまった。ピカチュウの電気を受けて無事な所を見る限り、流石としか言いようがない光景であった。どうやらピカチュウはモンスターボールに入るのが嫌らしい。

 

「そういえばシンジのポケモンはどこにいるの?」

「ああ、僕のポケモンは……」

 

シンジは自分のポケモンがいる場所に目をやる。そこにはやはり怯えて丸くなった状態のイーブイがいた。先ほどと同様、どうしてもまだ慣れないようだ。

 

「この子なの?可愛いじゃない。」

「うん。さあイーブイ。このボールの中に入るんだ。」

『……イブ』

 

シンジはイーブイの元にモンスターボールを転がす。しかし、イーブイはその尻尾でモンスターボールを転がし返したのだった。

 

「?もしかしてモンスターボールに入るのが嫌?」

『イブ……』

 

イーブイはシンジの言葉に小さく頷く。どうやらピカチュウ同様、イーブイもモンスターボールに入るのが嫌なようだ。もしかしたらモンスターボール内の方がイーブイにとって恐怖をかんじてしまうものなのかもしれない。

 

「……そっか。」

 

だったらとシンジはイーブイに手をさし伸ばし、優しく抱きかかえた。

 

「暫くこうしててあげるよ。」

 

イーブイはシンジに抱きかかえられるが、緊張からか恐怖からか固まって動けない状態であった。だが逃げる勇気がないためか、その場からは一切動こうとしない。

 

そして二人は問題を抱えたまま、母親に見送られマサラタウンを後にし旅に出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……サトシ?いつまでそうやってるつもりなの?」

 

シンジはサトシに尋ねた。サトシは今、ピカチュウをロープで縛って引きずりながら歩いているのだ。ピカチュウはいやそうな顔をしているが、そうでもしないと動こうとしてくれなかったのだ。

 

一方イーブイは、みたことの無い外の世界を見てプルプルとしている。やっぱり知らない世界を見て恐怖が増してしまったのかもしれない。心を開いてくれてはいないが、シンジはそんなイーブイを落ち着かせるために常に頭を優しく撫でている。

 

「……なぁピカチュウ。いつまでこれ続けるつもり?」

『ピカッ』

「君は俺が嫌い?」

『ピカチュウ』

「俺は君が好きだよ?」

『ピッカ……』

「参ったな……」

 

ピカチュウはどうやってもサトシに心を開いてくれない。取り敢えず仲良くなりたいと、サトシはピカチュウを縛っていた縄を解いた。ピカチュウはやっと解放された、とうんざりした表情をしていたが、サトシはどうやってピカチュウと仲良くなれるかを頭の中で考える。

 

するとそんな二人の前に、一匹のポケモンの姿が現れた。小さな鳥型のポケモン、ポッポだ。サトシは早速ゲットしようと前へと出る。

 

「おっ?ポッポだ!早速ゲットだ!」

 

しかしピカチュウは無視し続け、一向に捕まえる手助けをしようとしてくれない。

 

「いいよ、一人で捕まえるから!いけ!モンスターボール!」

 

サトシはモンスターボールを投げてポケモンを捕まえようとする。モンスターボールに当たったポッポは一瞬ボールの中に入るが、直ぐに外へと出てしまう。

 

「サトシ!ポケモンは弱らせてからじゃないとゲットは難しいよ!」

「っと、そういえばそうだった……」

 

サトシはシンジの指摘により気付きしまったという。それと同時にピカチュウに指示を出すが、ピカチュウはそっぽを向いてしまい一向に手を出す素振りは見せない。

 

「仕方ないな。いいよ、俺が自分でやるから。」

 

サトシの発言にシンジは首を傾げる。どうするつもりだろうと疑問符を浮かべるシンジだが、サトシは足元に落ちている小石を拾い構えた。

 

「ちょ!?サトシ!」

「そら!」

 

サトシはその小石をポッポ目掛けて投げた。だがそれに気付いたポッポはサトシが投げる前に気付き飛び去る。それを追いかけるように投げた小石はポッポに当たることはなく、その奥にいる何者かに当たった。そのの頭上にたんこぶができ、そのポケモンの姿が明らかになった時サトシは腰を抜かしたように転んだ。

 

「オニスズメ!?」

 

そのポケモンの正体はオニスズメであった。オニスズメは周りを見回し犯人を捜す。するとタイミングの悪いことに、ピカチュウが腹を抱えて笑ってしまっていた。そのピカチュウの姿を見たオニスズメは、小石をぶつけたのが彼だと勘違いしすぐさま飛び掛かって襲い始めた。

 

『ピカッ?ピッカ!』

 

ピカチュウは軽やかな身のこなしでオニスズメの攻撃を回避した。そしてすぐさま10まんボルトでオニスズメを追い払ったのだ。

 

だが、更に悪いことに一本の木へと飛び去ったオニスズメは、大勢の仲間を連れて再び飛んできたのだ。気性が荒く執念深いオニスズメは、今一度ピカチュウを標的として飛び掛かってきた。

 

「まずい!早く逃げよう!」

「あ、ああ!」

 

シンジの誘導に従いサトシとピカチュウも逃げ出した。だが、オニスズメはそんなシンジやサトシたちに目もくれず、ピカチュウを集中的に狙っていた。

 

『ピッカ!?ピカ……』

「っ!?ピカチュウ!?」

 

ピカチュウは大勢のオニスズメに襲われ、地面に伏せてしまう。さすがのピカチュウも数で圧倒されてしまっては成すすべがない。

 

「やめろ!石をぶつけたのは俺だ!やるなら俺をやれ!」

 

 

ピカチュウの危険を察知したサトシは、オニスズメの大群を掻い潜ってピカチュウを庇うように覆う。そのせいか、オニスズメの標的にサトシも加わってしまい同時に狙われてしまう。

 

「サトシ!ピカチュウ!」

 

サトシは傷付いたピカチュウを抱きかかえ走り出す。シンジもサトシたちに呼びかけるが、シンジたちに興味を示さないオニスズメ達は標的であるサトシとピカチュウをしつこく追い掛け回す。

 

シンジもサトシたちの後を追いかける。オニスズメの大群を見たイーブイは、シンジの腕にうずくまっている。あれだけのオニスズメを見れば誰だって恐怖心を抱くだろう。臆病なイーブイであればなおさらである。

 

サトシはピカチュウを抱きかかえたまま、崖に追い込まれる。だがサトシは迷うことなく崖を飛び下り川に飛び込んだ。

 

「サトシ!まずい……このままじゃ……。」

 

川に流されてしまえば下手をすれば大惨事になりかねない。その上弱ったピカチュウを抱きかかえたままでは逃げ切るのは困難であろう。オニスズメは簡単に諦めることなくサトシたちを追いかけた。

 

シンジもサトシたちを追いかけるため川を下る。すると川から這い出るサトシたちの姿を確認した。

 

シンジはサトシたちに追いつくために急いで飛び込み後を追う。そして次第に天気が悪くなり、大雨が降りそそぐ。

 

その時、イーブイは何故シンジがここまで必死になれるのだろうかと疑問に思う。なぜ彼の為に躊躇なく危険なことに首をつっこめるのだろうかと。

 

シンジがサトシたちの姿を見つける。しかしそこでは地面に這いつくばった状態のサトシがいた。このままではかなり危険な状態だ。オニスズメ達にも囲まれ、サトシたちには既に逃げ場がなかった。

 

「イーブイ……」

『イブ……?』

 

その光景を見ていたイーブイは恐怖により震えていた。だが、それでもこんなことを頼めるのはイーブイしかいないとシンジは覚悟を決めて語り掛けた。

 

「お願い、イーブイ。君の力を貸して。」

『イブ!?イブイイブイ!』

 

イーブイは首を振り全力で否定する。シンジにはイーブイがそういう反応を示すことは分かっていた。だけど……それでも……。

 

「……怖いってのは分かってる。でもこんなことを頼めるのはイーブイしかいないんだ。」

『イブ……』

 

それでもイーブイはやはり無理だと首を振る。だが、次のシンジの姿を見てイーブイの気持ちが揺らいだ。

 

「お願いイーブイ。僕はサトシを……大切な友達とそのパートナーを助けたいんだ。」

『イブ?』

 

その瞬間にシンジの頬を一つの涙が伝う。その涙はシンジの頬から滴り落ち、イーブイの頬へと伝った。それを見たイーブイは彼の思いに突き動かされ、覚悟を決めたのだった。

 

イーブイはシンジの頬に伝う涙を舐めとる。するとシンジの涙は自然ととまり、イーブイの顔を見つめた。

 

「イーブイ……手伝ってくれるの?」

『イブ!』

 

イーブイは頷いた。シンジもそんなイーブイに小さく感謝の言葉を伝えた。

 

「よし!じゃあ行くよ!イーブイ!」

『イブイ!』

 

イーブイはシンジの腕から解放され、オニスズメ達の姿を捉える。

 

「イーブイ!スピードスター!」

 

イーブイは尻尾から星型の弾幕、スピードスターを放つ。スピードスターはオニスズメ達を捉え数匹ではあるが追い払うことに成功する。数匹のオニスズメがいなくなり、ハッキリとサトシの姿を確認したシンジは彼に近付き彼の前に立つ

 

「サトシ!」

「!?」

「君はポケモンマスターになるんだろ?こんなところで立ち止まっちゃてもいいの?」

「シンジ……」

「大切なものは自分の手で守れ!ポケモンマスターを目指すなら!」

 

サトシはシンジの言葉に目を見開く。そして立ち上がり口を開いた。

 

「へっ、誰に向かって言ってんだよ。」

 

口を緩めたサトシを見たシンジは、安心したのか同じく口元を緩ませた。そしてサトシは仁王立ちをし、オニスズメ達と対峙する。

 

「オニスズメ!俺を誰だと思ってるんだ!俺は世界一のポケモンマスターになる男だ!お前たちになんか負けない!」

 

その覚悟を見たピカチュウもまた目を見開く。そしてオニスズメは一斉に彼らに飛び掛かった。

 

その時、なんとピカチュウがサトシの肩を伝ってジャンプし、強力な10まんボルトを放った。その10まんボルトはオニスズメ達を包み込み追い払ったのだった。

 

サトシたちはその場で全員力尽きたように倒れこむ。ピカチュウはサトシの頬を舐め、サトシはピカチュウの手を取る。どうやら互いにパートナーとして認め合えたようだ。

 

一方、シンジの元にもイーブイがゆっくりと歩み寄った。ピカチュウの電撃に巻き込まれてしまいボロボロのシンジたちだが、イーブイは彼の体にすり寄った。

 

「僕で……いいの?」

『イブ……。イブイ!』

 

イーブイはシンジの言葉に笑顔で頷いた。どうやらイーブイもシンジのことを認めてくれたようだ。先ほど震えていたのが嘘のように彼の体にすり寄る。

 

先ほどの大雨が嘘のように晴れ渡った空に鮮やかな光が照らされる。その光を見た2人は虹だと思い立ち上がるが、その正体は大きく羽ばたく見知らぬポケモンの姿であった。

 

そのポケモンから一枚の羽が2人の前に舞い落ちた。2人は羽を同時に優しく受け取ると、その羽は強く輝きを示した。その羽からは温かさが感じられ、虹色に輝く神々しい羽であった。

 

「……シンジ。」

「どうしたの?」

「いつか、あいつに会いに行こうぜ!」

「!?うん!からなず会いに行こう!」

『ピカチュ!』

『イブブイ!』

 

シンジとサトシは共にハイタッチをする。ピカチュウとイーブイも同意見なようで、お互いのパートナーの言葉に相槌を打った。こうして、2人と2匹の冒険が幕を開けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が冒険に出てから様々なことがあった。あの一件以降、ピカチュウとイーブイも完全に二人に心を開いている。

 

まず、サトシは初めのゲットとしてキャタピーを、シンジはポッポを捕まえた。互いにゲットしたポケモンを羨ましがったりもしたが、同時に祝福もしていた。自分のポケモンの方がいいだろうと自慢し合ったりもしたが、それも互いにポケモンが好きで仲がいい証でもあった。

 

さらにキャタピーは華麗に舞うバタフリーを、ポッポは大空を羽ばたくピジョットの姿をみて憧れの眼差しを向けていた。やはり自分の進化形ともなれば憧れの感情を抱くものだろう。その感情は子どもが早く大人になりたいと願うものと同じかもしれない。

 

次に2人はカントーリーグ公認のポケモンジムに挑戦している。ポケモンジムは全国に多数あり、それぞれ一つのタイプに精通しているジムリーダーがいる。彼らを倒し認められることによりジムバッジを貰う事ができる。それらのジムバッジを8つ集めると強力なトレーナーたちが集うカントーリーグに参加する資格を得る事ができる。

 

二人もジム戦では順調に勝ち進むことができ、時には協力し、時には競い合っている。

 

お互いの腕を磨き合うため、偶に模擬戦として2人でバトルをすることもある。戦績はお互いに五分と五分で、実力は拮抗している。それでも、勝っても負けても互いの健闘を称えることは忘れない。

 

そして2人は旅の道中、ポケモンセンターへと立ちより一休みをしていた。2人は旅に出てしばらく連絡をとっていなかった母親へとそれぞれ連絡していた。

 

「サトシ!やっと連絡くれたのね!」

「うっ、ママ……。」

「あなたの行きそうなポケモンセンターに伝言残すの大変だったんだから。」

「ご、ごめんってママ。」

 

サトシは久しぶりに連絡をとった母親に叱られている様子だ。サトシの母は自分の息子に色々質問をしていた。汚れたシャツは着ていないか、食事はちゃんとしているか、シンジに迷惑はかけていないかなど、まさに母親らしい事を聞いていた。旅の出来事よりも、サトシの身を案じる辺り結構な親バカなのかもしれない。

 

因みにシンジは母親とあまり話すことはなかった。シンジの母親は気まぐれな性格で、特に心配はしていなかったようだ。だが最後には応援しているから頑張りなさいと一言だけシンジに伝えていた。今シンジはイーブイに食事を与え、それを笑顔で眺めている。シンジは大切なイーブイの事を溺愛しているようであった。

 

だがそんなのどかな時が流れているなか、不穏な空気が立ち込めてしまう。

 

一人の少年が自分のポケモンであるシャワーズを抱えてポケモンセンターを訪れた。だがその様子はおかしく、シャワーズは傷だらけの状態で運び込まれた。

 

「ジョーイさん!こいつを……シャワーズを治してください!」

「!?酷い怪我……。一体何があったの?」

「エンテイが現れて……」

「!?エンテイ!ママ!ごめん、一旦切るね!」

「えっ!?ちょっとサトシ!」

 

少年の言ったエンテイと言う言葉に反応したサトシは母親の制止を聞かずに連絡を切った。

 

「捕まえようとしたんだけど、強すぎて、俺のシャワーズが……」

 

どうやら少年はそのエンテイと戦ったようだ。

 

エンテイはカントー地方と隣接しているジョウト地方に伝わる幻のポケモンである。その姿を見たものは少なく、報告例も少ないとかなりレアなポケモンだ。エンテイはほのおタイプで、シャワーズはみずタイプだ。相性でいえばエンテイの方が悪いにも関わらず、一方的にシャワーズがやられてしまった事を考えるとどれだけエンテイが強力なポケモンかが伝わるだろう。

 

サトシはエンテイの詳細が気になり、その少年に声をかけた。

 

「なあ、エンテイを見たって……。」

「ああ。この先の森で偶然会って。絶対にゲットしてやるって思ったんだけど、あまりに強すぎて歯が立たなかった……。」

 

エンテイを見たという話を聞いたトレーナーたちが一斉に動き出す。「まだ近くにいるぞ」や「絶対に捕まえてやる」などといった声が聞こえる。その声を聞く限りトレーナーとして幻のポケモンをどうしてもゲットしたいのだろう。気持ちだけでどうにかなるほど、生易しい相手ではないが。

 

「俺たちも急ごうぜ!シンジ!」

「あっ!ちょっと待ってよサトシ!」

 

ピカチュウとエンテイゲットに張り切るサトシを、イーブイとシンジは慌てて追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!」

『いた―!』

 

森の中に入りエンテイを探していると、そんなに時間もかからない内にエンテイの姿を見つけた。しかし、それと同時に一人の少女もエンテイを指さしサトシと同時に叫んだのであった。

 

その少女は軽く笑みを浮かべてサトシよりも先に走り出した。サトシも「あっー!」と叫びながら後を追うように走り出す。それをシンジは後ろから呆れたように眺めていた。

 

「全く、本当に無鉄砲なんだから。」

『イブイ……』

 

シンジはそう言いながらも、イーブイと共にサトシの後を追いかけて行った。

 

「ポッチャマ!バブルこうせん!」

『ポチャ!ポチャマー!』

 

少女はモンスターボールを投げ相棒であるポッチャマを繰り出す。そしてそのままポッチャマに指示を出し、バブルこうせんをエンテイへと放った。そのバブルこうせんのスピードとキレは中々で、良く育てられていることが分かった。

 

だが、エンテイはそれを軽くジャンプすることで軽々と躱した。そしてサトシの背後に降り立つ。そしてサトシの眼を暫く見つめて、何かを見定めているようであった。

 

サトシもまるで時間が止まったかのように感じていたが、ハッとなりピカチュウに攻撃の指示を出した。

 

「ピカチュウ!10まんボルト!」

『ピカチュビ!』

 

ピカチュウは10まんボルトを放つも、それすらも簡単に躱される。そして今度はシンジの目の前に降り立ち、彼の眼を見つめた。

 

シンジの中でも時間が停止したようであったが、エンテイの放つ威圧感は凄まじくただ見つめているだけであった。イーブイも怯えてしまい、シンジの後ろに隠れた。幻のポケモンとはそれだけのプレッシャーを持つ存在なのだ。

 

「ポッチャマ!もう一度バブルこうせん!」

 

少女が再びポッチャマにバブルこうせんの指示を出した。そのバブルこうせんを躱したエンテイは最初に見つけた岩の上まで戻り、サトシたちに向かってかえんほうしゃで反撃した。

 

「あっつ!あっつあっつ!」

 

サトシのお尻が僅かに燃え、サトシは必死にその火を消した。サトシ程の頑丈さがなければ無事じゃなかったかもしれない。

 

エンテイのあまりの強さに怯んでしまう一行だが、その横から第三者の攻撃が加えられた。

 

「ルカリオ!はどうだん!」

『バウッ!』

 

そこには一人の少年とルカリオがおり、ルカリオははどうだんでエンテイに攻撃する。だがやはりエンテイはその攻撃を軽くいなし、かえんほうしゃで反撃する。

 

「くっ!ルカリオ!」

 

ルカリオはかえんほうしゃの直撃を受けてしまい大ダメージを受けてしまった。ルカリオははがねタイプを持つポケモン。ほのおタイプの技は効果抜群で、ルカリオは今の一撃で瀕死の状態だ。幻のポケモンであるエンテイの攻撃をもろに食らえば一溜まりもないだろう。

 

エンテイはそんな彼らの姿をチラリと確認した後、ふわりとジャンプして姿を消した。サトシたちはそんなエンテイの姿をただ眺めているだけしかできなかった。

 

「……ちょっと!あんたのせいで逃げられちゃったじゃない!」

「俺のせい!?お前のせいだろ!」

「あんたがいなければ今頃エンテイをゲットできていたのよ!」

 

エンテイがいなくなって早々、サトシと少女が喧嘩を始める。そんなサトシたちを止めるために、シンジは2人の間に割って入った。

 

「ストップストップ!エンテイは元々強力なポケモンなんだから、捕まえられなくても仕方ないよ!」

「そ、それはそうだけど……。」

「それより、自分たちのポケモンだけでも無事だっただけ運がいいと思わなきゃ。」

「……それもそうだな。」

 

シンジの言葉にサトシは納得する。確かに自分の大切なポケモンが傷ついてしまったら例え幻のポケモンとは言えゲットどころではないだろう。そう思いながらサトシはピカチュウの頭を撫でた。ピカチュウも嬉しそうに微笑んでいる。

 

少女も自分のポッチャマを抱きかかえて頭を撫でる。

 

「あなたの言う通りね。さっきは怒ったりしてごめんね。」

「こっちも悪かったよ。ついカッとなっちゃって。」

「自己紹介がまだだったわね。私はフタバタウンのマコト!」

「俺はマサラタウンのサトシ!それでこっちが幼馴染の……」

「シンジだよ。」

 

2人は無事に仲直りをすることが出来た。そしてお互いに自己紹介を終え、シンジは先ほど助けてくれた少年の方へと振り向いて感謝の言葉を告げる。

 

「君もさっきはありがとう。おかげで助かったよ。」

「礼なら気にしなくていいよ。僕はトバリシティのソウジ。」

 

ソウジはそう言いながらルカリオをモンスターボールへと戻した。

 

「一つ忠告しておく。これから嵐が来る。どこか雨宿りできる場所を探したまえ。」

 

ソウジはシンジたちにそう忠告し、その場を立ち去った。

 

「嵐?……まさか。」

 

マコトはそう言って笑った。今は少し雲はあるものの澄み切った青空が見える程の晴れだ。嵐が来ると信じる方が難しいであろう。

 

だが、シンジはそうとは言い切れないかもしれないとサトシとマコトに説明をした。

 

「森の中をよく見て。ポケモンたちの姿が見当たらないよ。」

 

シンジの言う通り辺りを見渡したサトシとマコト。確かにシンジの言った通り周囲にはポケモン達の気配はするものの、姿を確認することができない。

 

「野生のポケモンたちは危機的な情報を察知する能力があるって聞いたことがある。もしかしたらソウジの言った通り、嵐がやってくる前兆なのかもしれない。」

 

シンジの言葉にサトシとマコトも納得した。危機的な状況であれば、エンテイが姿を現したことも関係するかもしれないが、エンテイは明確な敵意を出さない相手に対して牙を向けることはない。そのため野生のポケモンたちにとっては脅威となりえないだろう。であれば、一番の可能性はソウジの言った嵐が最も可能性が近い。であればと、シンジたちは森を出るために歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くすると、ソウジの言った通り嵐が吹き始め天候が荒れた。サトシたちもなるべく濡れないようにとリュックなどで頭を庇いながら雨宿りの場所を探すために走り出す。

 

するとその道中、サトシはあるポケモンに目を奪われた。そのポケモンはとかげポケモンのヒトカゲである。雨の中佇んでいるヒトカゲにサトシは声をかける。しかし、ヒトカゲはそんなサトシに見向きもせず、まるで何かを待っているかの様子であった。

 

それからすぐに、ヒトカゲは何かを見つけ走り出す。その先には一人のトレーナーがいた。ヒトカゲはそのトレーナーに倒れ込むも、ヒトカゲを蹴り飛ばし拒絶した。

 

その様子を見ていたサトシたちは怒りをあらわにし、なんでそんな扱いをするのかと尋ねた。その少年、クロスは弱いポケモンはいらないと信じられない発言をした。パートナーポケモンを大事に思っているシンジ、サトシ、マコトは彼の考えを否定する。だが、彼は考えを改めることはなかった。

 

サトシは苛立ち、クロスの肩を掴んで抑止する。だが、彼のパートナーであるルガルガンがサトシを突き飛ばし仲裁に入った。クロスは最強のポケモントレーナーになると告げ、その場を後にした。

 

残されたヒトカゲは追いかけようとするが、力尽きてしまいその場に倒れ込んでしまう。そのヒトカゲの尻尾を確認すると、その火の力が弱まってしまっており、今にも消えてしまいそうだった。ヒトカゲは尻尾の炎が消えてしまうと死んでしまう。そのことを知ったサトシはヒトカゲを庇いながら走り出す。シンジとマコトもその後を追い走り出した。

 

そしてその後、彼らは洞窟を見つけその中に入っていった。そこでは先ほどであった少年、ソウジの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでこんな状態になるまで放っておいた!」

 

ソウジはサトシの抱えているヒトカゲをみて怒鳴るようにそう言い放った。そんなソウジとサトシの間に入り、シンジは彼に説明した。

 

「サトシは悪くないよ。このヒトカゲはトレーナーに捨てられていたんだ。トレーナーが迎えに来るって信じて待ってたんだけど……」

「っ!?とにかく手当てをしなくては。」

 

シンジの話を聞きソウジは洞窟の奥へと案内する。そこでヒトカゲを寝かせ、ソウジは手当の準備をする。

 

「酷い熱だ。」

 

サトシたちは濡れた上着を脱ぎロープにかけ乾かす。ソウジはヒトカゲの額に手を当てる。ヒトカゲの額は熱く、熱の症状が酷く出ていた。シンジは心配になり、ソウジに声をかけた。

 

「治せる?」

「治して見せるさ。トレーナー思いのポケモンを、死なせるわけには行かない。」

 

ソウジはそう言って手当てを開始する。そのソウジの表情には、どこか拭えない過去があるようにシンジには見えた。

 

ソウジはポケモンの熱を冷ますための薬を作り、それをヒトカゲに飲ませる。ヒトカゲは苦みで顔を歪ませる。しかしこれだけで熱が冷めるはずもなく、まだ苦しそうな表情を浮かべていた。ソウジに暖める必要があると言われ、サトシは自分の懐で暖めることにした。

 

暫くするとヒトカゲは一瞬だけ目を覚ます。その時サトシと目が合い、彼に声をかけられるとどこか幸せそうな笑みを浮かべて再び眠りについた。

 

「ジョーイさんみたいだったね。」

「ポケモン博士を目指しているからね。」

 

ソウジが目指すものはポケモン博士なようだ。そのため全国各地を回り、医療に関することや幻のポケモンの知識を蓄えているのだという。そのため、ヒトカゲの治療もスムーズに行うことができたのだろう。

 

「マコトは何か目指していることはあるの?」

「私?えーと、私は特にないかな?」

 

どこかはぐらかすようにマコトはそう言った。その後、話を逸らすためにサトシに話題を吹っ掛けた。

 

「そうだ!サトシは何か目指しているものとかあるの?」

「俺?俺は勿論世界一のポケモンマスターになることさ!」

「ポケモンマスター?」

 

マコトはサトシの目指しているものに疑問符を浮かべた。

 

「最強のトレーナーってこと?」

「もっと上だよ!」

 

サトシのその真っ直ぐな瞳は、いかにもサトシらしいものだと感じたシンジ。マコトもその答えにはサトシらしいねと答えるしかなかった。

 

「シンジは何か目指しているものとかあるの?」

「僕?僕はまだ特にないかな。」

「まだ?」

 

シンジから返ってきた答えに意外だと感じるマコト。このサトシと共に旅をしているのだから何か目的があると思ったのだが、彼はまだ目的を見つけていないようだ。そんなシンジが、でもと言葉を続けた。

 

「いつか、ポケモンと共に夢中になれる夢を見つけられたらいいなって思うんだ。言うならポケモンと一緒に見つける夢が僕の夢ってところかな。」

 

少し臭い事を言ったかと照れるシンジ。だがそんなシンジの言葉に、マコトは感動を覚えた。

 

「ポケモンと見つける夢……。それすっごい素敵じゃない!」

「そうだね。それもポケモンと人の在り方の一つだね。」

 

マコトとソウジもシンジの言った言葉に感動する。サトシもその答えは非常にシンジらしいものだと心の中で感じていた。

 

だがそんな話をしている時、サトシが小さくクシャミをした。いかにも寒そうに震えているが、外は大雨であるため仕方がない。洞窟内で焚火をしているとはいえ、雨の降る夜は余計冷えてしまう。

 

「忠告しておく。モンスターボールに戻したまえ。ポケモン達だけでも、寒さは凌げる。」

「そうね。ポッチャマも戻って。」

 

ソウジの忠告通り、マコトはポッチャマをモンスターボールへと戻す。ソウジもルカリオをモンスターボールへと戻した。

 

「戻したいけど、俺のピカチュウはモンスターボールに入るのを嫌がるんだ。」

『ピカ!?ピカピカ!』

「僕のイーブイも、モンスターボールに入りたがらないんだ。中に入るのが怖いみたいで。」

『イブブイ!イブイ!』

 

ピカチュウはモンスターボールから距離をとり拒否、イーブイはシンジの懐に潜り首を振った。そんな二人のパートナーを見て、ソウジとマコトは珍しいなと心の中で思う。

 

だがその時、ポッチャマとルカリオが彼らのモンスターボールから出てきた。何故入らないのか、と尋ねるが、ルカリオとポッチャマはモンスターボールへと戻ることを拒む。もしかしたら彼らもトレーナーと一緒にいたいのかもしれない。仕方がないなと諦めるソウジ、風邪を引いても知らないと今一度忠告したマコトであった。

 

その後、何者かが洞窟内へと入ってくる音がした。シンジたちはその音が気になり、一体何なのかを確認するために覗き込む。するとそこにはエンテイの姿があった。エンテイは小さなポケモンたちを引き連れ洞窟の奥に座り込む。着いてきたポケモンたちはエンテイの懐に潜り丸くなる。エンテイの体温で冷えた体を暖めて貰っているようだ。

 

「……エンテイはホウオウに命を与えられたという伝説がある。」

「ホウオウ?」

 

ソウジが言った聞きなれない名前をサトシは疑問に思い口にする。するとソウジは一からホウオウについて説明する。

 

「150年前、ホウオウが接触を持っていたカネのとうが落雷で焼け落ち、突然の大雨で沈下したと言われている。その時、名もなき三匹のポケモンが亡くなってしまった。その時ホウオウが降臨し、彼らに命を与えたと言われている。そのポケモンは塔に落ちた雷、塔を焼いた炎、塔を沈下させた雨、その化身だと言われている。」

 

ソウジはそこで図鑑を開き、その三匹の画像を見せる。

 

「そのポケモンがライコウ、スイクン、エンテイだ。」

「私スイクン大好き!」

 

そしてソウジは再び図鑑を弄り、もう一つの画像を見せた。

 

「そしてこれが、ポケモンの命を司ると言われているホウオウだ。」

「っ!?サトシ!これって!」

「あ、ああ!」

 

サトシはあわっててポケットからある物を取り出そうと駆け出す。ソウジはどうしたのかと尋ねると、それにシンジが答えた。

 

「旅立った日に2人で見たんだ。その時……」

「この羽が落ちてきたんだ!」

 

その羽をサトシが翳すと、ソウジは信じられないものでも見たかのように目を見開いた。

 

「虹色の羽!?」

「えっ?にじいろの……はね?」

「ホウオウは滅多なことでは人前に姿を現さないが、極稀に気に入った人間に虹色の羽を渡すらしい!」

「でも、なんで?」

 

マコトの言葉にソウジは更に説明を続けた。

 

「こんな伝説がある。虹色の羽に導かれ、ホウオウに会うものが、虹の勇者となる。」

「へえ~、なんだか知らないけど凄そうだな。」

「って、それサトシのことだよ?」

 

シンジはサトシに呆れたようにそう言う。だが、ソウジはシンジの言葉に一つ付け加える。

 

「いや、もしかしたら君もそうかもしれないよ。」

「えっ?僕?」

「確かめる方法がある。シンジも虹色の羽に触れたまえ。」

 

ソウジの言う通り、シンジはサトシに差し出された虹色の羽を手にする。

 

すると、虹色の羽が反応するかのように輝き始める。

 

「やっぱり。」

「え?どういうこと?」

「虹色の羽は、選ばれしものが触れた時、輝きを増すと言われている。シンジが触れ、羽の輝きが増したという事は、シンジも選ばれしものだという事だろう。」

「僕も……選ばれし者……。そっか……。」

 

シンジは実感がわかないながらも、嬉しそうに微笑む。普段大人しく夢を描くことがないシンジも、今回のことには嬉しさを感じているようであった。

 

シンジたちは今日は一先ず休むことにした。色々あって全員今日は疲れているのだろう。顔には表れていなくても疲労は溜まってしまうものだ。無理せず、ポケモンたちと共に休むシンジたちであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、目が覚めるとエンテイの姿はなかった。野生のポケモンたちもエンテイと共に姿を消していた。

 

サトシはヒトカゲにこれからどうするのかと尋ねた。ヒトカゲは最初悩んでいたが、サトシが友達になってくれと頼むと、彼の気持ちに答え承諾した。そしてサトシと一緒に旅をする決意をし、彼の持つモンスターボールの中に入った。シンジたちもサトシのヒトカゲゲットを祝福した。

 

外では昨日の大雨が嘘のように晴れ、全員で外に出る。すると、遠くの山には綺麗な虹がかかっていた。

 

それを見たサトシのポケットから音がする。どうやら虹色の羽が何かに反応しているようだ。それをサトシはシンジと共に翳すと、虹色の導きが現れる。

 

虹色の導きは強く輝き、何かを指し示していた。それを見たソウジが、この先にある山の名前を告げた。

 

テンセイ山、険しい山々が連なるライゼン山脈の中にある山の一つだ。テンセイ山の頂上で虹色の羽を翳すと、ホウオウが現れバトルをすることができるのだと言う。

 

サトシは大きな声で、「ホウオウとバトルしたい!」と告げた。続いてシンジもホウオウと全力でぶつかってみたいと自分の覚悟を語った。マコトとソウジも、ホウオウに会ってみたいと、共に旅をすると決めた。

 

こうして4人はホウオウに会うため、ライゼン山脈へと向かうことにしたのだった。

 

「よし!ホウオウに会いに行くぞ!」

「うん!ホウオウに会いに行こう!」




本編を楽しみにしている人には申し訳ありませんが、もうしばらくお付き合いくださいませ。私個人として書いててなんだか楽しいのです。

明日からポケモンピカブイが発売されるため、投稿頻度が減ったりしないかが不安ですが……。とりあえずなんとか頑張ってみます(汗

そう言えばポケモンピカブイではピカニキとイーブイの種族値が変更されるそうです。ピカはスピード特化の攻撃配分重視、イーブイは耐久寄りのバランス配分みたいです。恐らくパートナー限定でしょうが、寧ろワクワクしてきますね。イーブイの♀厳選しなきゃ(使命感

半年前位に注文したイーブイのPC抱きクッションが届いて可愛すぎるためずっと抱きしめながら次話の投稿とポケモン新作のプレイに励みたいと思います。

はやくあしたにな~れ!


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ピカブイ発売記念特別編 後編 ~キミにきめた!~

はい、なんとか完結できました。あまり内容は大きく変えていないつもりです。上手く劇場版みたいに表現できるか不安ですが、どうか楽しんでいただければ幸いです。

結構ギリギリの投稿なのでまた誤字脱字あるかも。どうかご容赦くださいませ……。


ホウオウに会うため、ライゼン山脈へと旅を続けていたサトシとシンジたち。その道中には色々な出来事に出会っていた。

 

先ずはサトシのキャタピーが進化したことだ。偶然出会ったカイロスを捕まえようとキャタピーを繰り出したサトシだが、その途中でキャタピーがトランセルへと進化したのだ。

 

さなぎポケモンのトランセルは、自ら動くことは困難でカイロスを逃がしてしまったが、それでもサトシはトランセルの進化を心から嬉しく思い気にすることはなかった。シンジたちも、トランセルの進化を笑顔で祝福していた。

 

また、全員が野宿で就寝している時にマコトが幻のポケモン、スイクンに出会ったと言う。スイクンもエンテイと同じくホウオウに生み出されたとされるポケモンで、滅多なことでは人前に現れない。マコトも時が止まったかのように感じる程で、声が出せなかったのだと言う。それほど神秘的で幻想的な光景であったのだろう。サトシたちもそんなスイクンを見たマコトの事を羨ましがっていた。

 

さらにサトシのヒトカゲも、あるトレーナーのプリンとバトルをし、勝利した際に進化してリザードになった。リザードになり体も一回り大きくなり、頼もしさが増した。

 

それから次のポケモンセンターへと目指している道中…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次のポケモンセンターまでどれくらい?」

「そこまで遠くないみたいだよ。」

 

シンジの質問にソウジが答える。結構な距離を歩いているためみんなの疲労の色が見え隠れしている。ポケモンセンターであれば野宿よりも安心して休むことができるため、疲労を取ることができる。そのため、一行はポケモンセンターを目指して急ぐことにする。

 

だがその時、空が騒々しく感じたシンジたちは空を見上げた。そこではオニスズメの群れが叫びながら何者かを追いかけている光景が目に映った。よく見てみると、オニスズメたちがポッポたちが襲われている現場であった。

 

ポッポとオニスズメは、カントー各地でよく目にするためいがみ合う事が多い。今回もその例に溺れないであろう。

 

「大変!あのままじゃポッポたちが!?」

 

マコトが慌てて声をあげる。だったらここはと、シンジは自分のモンスターボールを手にしそれを投げる。

 

「ここは君に頼むよ!ポッポ!」

『ポッポォ!』

 

ポッポはボールから出た瞬間、オニスズメの前に立ちはだかり身構える。自分たちの邪魔をしたと判断したオニスズメたちは、そんなポッポに標的を変える。

 

「ポッポ!かぜおこし!」

 

ポッポは迫りくるオニスズメたちをかぜおこしで止める。逆風に煽られる形のオニスズメたちはその流れに逆らうことができずに動きを止める。

 

「続けてでんこうせっか!」

 

ポッポのでんこうせっかがオニスズメたちに次々と炸裂する。オニスズメたちはその攻撃を受け傷付き、その場を飛び去って行った。

 

「お疲れ様ポッポ!」

『ポッポ!』

 

ポッポは急いでシンジの元へと戻る。その時、ポッポの体が青く光り徐々に姿を変えていく。

 

シンジたちもこれには驚き目を見開く。そしてその光からポッポが解放されたとき、そこにはポッポよりも大きく、逞しくなったポケモンの姿があった。

 

『ピジョォ!』

「ピジョン……ピジョンに進化したんだ!」

 

ポッポは進化し、ピジョンへと生まれ変わったのだ。小柄なポッポから大きく成長したピジョンは、これまで以上に心強く感じる逞しさを纏っていた。

 

「やったな!シンジ!」

「おめでとう!」

 

サトシやマコト、ソウジもピジョンへの進化を祝福してくれた。シンジもピジョンも、そんな仲間たちに感謝する。

 

『イブブイブイ!』

『ジョォピジョ!』

 

イーブイもピジョンに祝福の言葉をかける。今まで共に旅をしてきた中であるため、イーブイも友達として自分のことのように嬉しいのだろう。

 

その後、助けたポッポたちがシンジたちの元へとやってきた。そのポッポたちはシンジたちに語り掛けてきた。どうやら助けてくれたことに感謝しているようだ。

 

「そんなことなら気にしなくていいよ。君たちが無事でよかったよ。」

『ピジョー!』

 

シンジもピジョンも彼らに気にする必要はないと伝える。そんなポッポたちは再びシンジたちに感謝をして飛び立つ。

 

「もう喧嘩したらダメだよ!」

 

飛び立つポッポたちにシンジはそう言った。そして無事ピジョンへと進化を遂げたピジョンを連れ、彼らは次のポケモンセンターへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一行は無事ポケモンセンターへと到着する。その夜、ソウジとシンジは2人でポケモンセンター内にある書庫にて、ホウオウにまつわる話を調べていた。

 

「何かわかった?」

「うん。かなり丁寧に纏められてるよ。」

 

サトシはシンジたちのホウオウのことについて何かわかったのかと尋ねた。本を読むことが苦手なサトシとマコトは、自分たちから進んで調べようとはしなかったのだ。こればかりは本人の趣味や性格もあるため仕方のない事なのだが。

 

「この本にはかなり興味深いことが書かれている。聞きたまえ。」

 

ソウジはホウオウの伝説が気になり首を傾げているサトシとマコトに説明を始める。

 

ソウジが言うには、ホウオウは人とポケモンの営みが発する幸せの波動を感じ取りエネルギーを得るのだと言う。だがその逆に、人が発する邪悪な波動には力を奪われてしまうとも書かれていた。

 

「それは?」

 

ソウジがページをめくると、そこには黒く染まった何かが描かれていた。マコトの疑問に対しソウジは、これは虹色の羽だと説明する。

 

「かつて虹色の羽の効果を知った人間たちが虹色の羽を巡って争った際、穢れた心を持った者たちが羽に触れ、色を失ってしまった。この本にはそう書かれているよ。」

 

シンジが虹色の羽に起きた出来事を補足した。邪悪な心に敏感に反応する虹色の羽は、悪しき心を持った人間が触れてしまうと色を失い、その効力さえも失ってしまうそうだ。伝説の存在であるが故、昔からそういった争いごとが絶えないのは人間としての性と言うべきものであろうか。

 

その話を聞いたサトシは、内ポケットから虹色の羽を取り出して確認する。

 

「……俺のは大丈夫だ。」

 

サトシが虹色の羽を確認すると、それは今でも眩い光を放っていた。サトシが触れても変化しないという事は、汚れがない証拠である。

 

念のためシンジも触れ確かめてみるが、それでも変化は起きなかった両者の心には一切の穢れはないようだ。

 

「ま、サトシは単純で慌てん坊だけど、悪しき心は持ってないからね!」

「ああ!単純で慌てん坊なら負けないぜ!」

「……サトシ?今のは褒められてないよ?」

 

マコトが言った言葉にサトシは何故か自信満々に答える。シンジはサトシに褒められていないと指摘する。その後、マコトとソウジがクスクスと笑い、サトシは彼らに笑うなと怒った。だが、その光景が彼らの仲が良い事を証明するものであった。

 

しかし、そんな彼らのやり取りを見ているものの影があったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピカチュウ!10まんボルト」

『ピカチュ!』

「イーブイ!躱してスピードスター!」

『イブイ!』

 

今、サトシとシンジはポケモンセンターの外にあるバトルフィールドでバトルしている。お互いに相棒であるポケモンを戦わせ、共に成長する。2人の間では日常茶飯事の出来事だ。だがここが公共の場でもあり、トレーナーたちが連戦していることもあって観戦している人が多いのがいつもとの違いか。

 

ピカチュウは10まんボルトでの攻撃を仕掛けるが、それをイーブイは華麗に躱してスピードスターで反撃する。ピカチュウはその攻撃に素早く反応し、さらに反撃をする。

 

「アイアンテールで打ち返せ!」

『ピカチュッピ!』

 

ピカチュウはアイアンテールでスピードスターを撃ち返した。

 

「イーブイ!まもる!」

『イブブイ!』

 

イーブイは反射されたスピードスターをまもるによって防ぐ。

 

「イーブイ!でんこうせっか!」

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

 

シンジとサトシはほぼ同時にでんこうせっかの指示を出す。互いのでんこうせっかがフィールド中央でぶつかり、互いに元の位置まで戻る。攻撃力ではほぼ互角、いやピカチュウの方に僅かだが分があるだろうか。イーブイが僅かに今の反動で怯んだのだ。

 

「これで決めるぜ!エレキボール!」

「!?シャドーボール!」

 

ピカチュウはシャドーボールでピカチュウのエレキボールで反撃する。パワーは拮抗しているように見えたが、攻撃力の差が次第にあらわれる。

 

拮抗していたかに思われた技の鍔迫り合いは、ピカチュウのエレキボールがシャドーボールを破ると言う結果に終わった。シャドーボールを貫通したエレキボールは、そのままイーブイに接近し、イーブイは回避行動が間に合わずに正面から受けてしまった。

 

イーブイはその攻撃によってその場でダウンし、戦闘不能となる。シンジは慌ててイーブイの元へと駆け寄り、審判によって勝者の宣言がされた。

 

「イーブイ!大丈夫?」

『イブ……』

「ううん。よく頑張ったよ。サトシたちに負けないように、もっと強くなろう。」

 

イーブイはシンジに申し訳なさそうな顔をして呟いた。シンジはそんなイーブイを咎めることはせず、むしろ頑張ったと労いの言葉を送り、今よりも強くなろうと約束した。イーブイもそんなシンジの期待に応えたいと、強く頷いてくれた。

 

「今回は僕の負けだよ。でも次は!」

「ああ!俺だって負けないぜ!」

 

バトルを終えた両者は、互いの健闘を称え握手する。イーブイとピカチュウも仲が良く、互いにライバルとしての認識があるため2人で握手を交わす。観戦している人たちも、そんな二人に拍手を送ってくれた。

 

「さあ!ここまで連勝中のサトシ君に挑むのは誰だ!」

 

そこでマコトが私たちの出番だと張り切るが、第三者の声がそれを遮り、奥から一人の少年とポケモンが姿を現したのだった。サトシとシンジはその人物の顔を見て目を見開いた。

 

「久しぶりだな。」

「!?クロス!」

 

その人物はクロス。そして彼の横にいるのは彼の相棒と思われるまよなかのすがたのルガルガンだ。

 

クロスは以前サトシのゲットしたヒトカゲの元トレーナーで、ヒトカゲを弱いと言う一言で切り捨てた男である。サトシにとっても、リザードにとっても因縁深い相手である。ポケモンが大好きなシンジも、彼の考えに同意することは出来ない。サトシやシンジとは相容れない関係といってもいいだろう。

 

クロスは、連勝中のサトシに挑戦を申し込んだ。彼の目的は最強のトレーナーになること。故に、サトシに力の違いを見せつけるために姿をあらわしたのだろう。サトシも覚悟はできているようで、彼の挑戦を受け入れた。

 

こうして、サトシのリザードと、クロスの持つ最強のほのおタイプ、ガオガエンとのバトルが開始された。

 

だが、結果だけ言えば惨敗。見事にクロスの策略にかかってしまった。

 

サトシは始め順調に攻め込み、ガオガエンを追い込んでいたように見えた。だが、それはあくまでクロスがそう仕向けただけ。ガオガエンは攻撃を敢えて受け続けることで、自らの攻撃力を高め一気に勝負を決める、それこそが彼の狙いであった。

 

一方、サトシのリザードは進化したばかりで自分の変化した力に追いつけていなかった。それ故に、後半では技を上手く出すことができず、一方的に攻め込まれてしまい圧倒的な力の差を見せつけられた敗北となってしまった。

 

ダメな指示によってポケモンに屈辱を与えたと言うクロスの指摘がサトシの心の中に響いてしまい、サトシはショックを受けてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サトシ!元気だしなよ!」

 

サトシは傷付いたリザードをポケモンセンターで回復させた。だが、先ほどのショックからは立ち直れておらず、納得がいかないと言った様子であった。

 

「あんな奴が勝つのはおかしいよ!」

 

サトシはそう言い放った。サトシにとって、クロスは正反対の考え方を持つトレーナーだ。勝つことにこだわるクロスの考えを否定するサトシに対し、ソウジから返ってきた言葉は意外なものであった。

 

「しかし、彼の考え方も否定できない。」

 

クロスの考えは最強のトレーナーであること。そこには強さを求める信念があった。それはガオガエンも同じだ。彼らは、その信念によって強く結ばれていた。例え正しい考えでなくとも、それも一つの強さに違いはない。

 

「負けて悔しいって思うから、次も頑張ろうって思えるんじゃない。」

「そんなの分かってるよ!けど!」

 

サトシはそんな仲間の言葉を聞いても納得がいかない。やはり、心の中で彼の考えを認める事ができないでいる。

 

シンジはそんな迷走する親友の姿を静かに見守っていた。

 

「!?……ピカチュウなら勝てたんだ」

『ピカッ!?』

「っ!?サトシ……」

「そんなこと言ったら、リザードが可哀想だよ!」

「っ!?」

 

サトシは思わずつぶやいてしまう。マコトの言葉に気が付き、ハッと現実に戻る。ピカチュウも自分のパートナーがらしくないことを呟き、その言葉に驚いていた。

 

「勝つことに拘るのであれば、君もクロスと同じだ。」

「くっ!」

 

サトシはそのまま走り出す。サトシは暗闇の中、森の奥へと姿を消した。ピカチュウも後を追いかけサトシと共に森の奥へと入っていく。ソウジとマコトも彼を追いかけようと走り出した。

 

しかし、それを意外な人物が止めたのであった。

 

「まって!」

「!?シンジ?でもこのままじゃサトシが!」

 

そんな彼らを止めたのがシンジであった。マコトは彼がなぜ止めるかが分からなかった。そんな二人に、シンジはこう答えた。

 

「サトシの事は僕に任せてくれないかな?」

「シンジ……」

「彼のことは、僕が一番よく知っている。」

 

シンジはそれに、といって言葉を続けた。

 

「僕の親友は、そんなに弱い人間じゃないからさ。」

 

そう言い残し、シンジもサトシの後を追って森の中へと入っていった。ソウジとマコトは、そんな彼の姿を後ろから見つめているしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サトシ……どこまで行ったんだろう……。」

『イブイ……。』

 

シンジはイーブイと共に森の奥へと進んでいく。進んでいることは分かるのだが、サトシの姿が一向に見えない。イーブイも恐怖心からか、少し怯えている様子だ。

 

今は夜で森の中も真っ暗闇だ。夜の森ほど怖い場所もないであろう。恐怖心を抱いてもおかしくはない。寧ろ、恐怖しない人の方が少ないのではないだろうか。

 

暫く森を進むと、サトシのピカチュウがこちらにゆっくりと歩いてくる姿が確認できた。イーブイはピカチュウの姿を確認すると、すぐに走り出し彼に声をかけた。

 

『イブブイ!』

『ピカピカ……』

 

イーブイの声に反応し答えたピカチュウ。だが、ピカチュウの声は低く、耳も垂れてどこか落ち込んでいる様子であった。その姿から、サトシと何かあったのは容易に分かることであった。

 

「ピカチュウ、サトシと何かあったの?サトシはどこ?」

『ピカピ。ピカチュウ』

 

ピカチュウは更に奥へと指を指す。どうやらサトシはもう少し奥に進んだところにいるようだ。シンジは、ピカチュウを連れてサトシの元へと向かうことにした。

 

さらに森を進むと、そこには一人の男が木にもたれかかって座り込んでいる姿があった。遠目では暗くて分かりにくかったが、近寄るとその人物がサトシであることが確認できた。

 

「サトシ!?」

『ピカピ!?』

 

シンジとピカチュウは慌てて駆け寄る。寝ているのかと思わせる程静かだが違う。どこか気を失っているようにも感じられる違和感があった。

 

「ピカチュウ。とりあえずソウジたちを呼んできてくれる?」

『ピカチュ!』

 

ピカチュウは慌ててソウジたちを呼びに行く。何が原因かは分からないが、ソウジならばこの現象が分かるかもしれない。もしかしたらポケモンの仕業という可能性も考えられるが、それも含めてソウジたちと相談した方がいいだろうと判断する。

 

『イブブ……』

「大丈夫だよイーブイ。僕がついてるから。」

 

恐怖心から、イーブイは呟いた。シンジはそんなイーブイの頭を撫でて優しく声をかける。そんな彼の目に、ある物が映ったのだった。

 

「ん?これって……」

 

それは黒色に染まった羽であった。それは紛れもなく虹色の羽。シンジはそれを慌てて手に取る。だが、その虹色の羽を手にした瞬間、何者かに操られるかのようにシンジは意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとシンジ~?早く起きないと学校に遅刻するわよ~?」

「う~ん……学校?…………っ!?しまった!?」

 

その少年、シンジは母親の声により目が覚め慌ててベットから落ちてしまう。急いでいつもの服に着替えて準備をし1階へと降りた。

 

「なんで起こしてくれなかったの!?」

「起こしても起きなかったじゃないの。それに10歳になったら自分で起きるんじゃなかったの?」

「うっ、そうだった……。と、とりあえず行ってきます!」

 

シンジは母親の抑止を聞かずに飛び出すように家を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーキド先生!」

 

慌てて家を飛び出したシンジは息を切らし、学校へと辿り着く。そこでは校門の花壇に水をやっているオーキド先生の姿があった

 

「お~シンジ君。今日の遅刻した生徒は4人と聞いていたが、君が最後の一人か。」

「え?4人?」

 

シンジはその時強い違和感を覚える。このやり取りが以前どこかで行われた気がし、4人という数字に違和感を感じたのだ。

 

「どうかしたのかの?」

「い、いえ、なんでもありません。」

 

シンジはどうせ気のせいであろうと気に留めることもなく、教室へと向かった。

 

 

 

 

教室へと入ったシンジは自分の席へとつく。その隣と後ろの席には、彼の幼馴染で友人の生徒が座っていた。シンジの姿を見るや、その一人の女の子が彼に声を掛けた。

 

「シンジ珍しいね。遅刻するなんて。」

 

女の子、マコトの言葉に、シンジは言葉を濁らせちょっとね、とごまかした。理由が少々恥ずかしいため、正直なことは言えなかったのだ。そんな彼女に続き今度は男の子が彼に声を掛けたのだった。

 

「シンジ、宿題はやってきた?」

 

男の子、ソウジが問いかけた。その問いに対しシンジは、バッチリだよと答える。だが椅子に腰かけた時、彼はまた別の違和感を感じたのであった。

 

「ん?今のって……」

「シンジ?どうかした?」

 

シンジは目の前を何かが通ったと感じる。だが席の下を覗いても何かがいる気配はしない。シンジの様子が変だと感じたマコトがそう問いかける。シンジはまた気のせいだろうと思い、何でもないと答えた。

 

シンジはその時、チクリと何かが胸に刺さる感じがした。

 

(なんだろう……この感じ……)

 

結局その正体も分からないまま授業が始まった。シンジはその正体を考えるが、授業に身も入らないまま放課後になってしまう。

 

放課後、シンジは屋上にやってきた。そんなシンジを気にかけ、マコトとソウジも同じく屋上にやってきたのだった。

 

「シンジどうしたの?屋上にくるなんて珍しいね。」

 

シンジはマコトの問いにちょっと考え事がしたくてね、と答える。そんなシンジは2人にある事を尋ねた。

 

「ねえ。少しいいかな。」

「どうしたんだい?」

「僕たちっていつも3人……なんだよね?」

 

シンジはそう問いかけた。3人……本当に3人なんだろうかと思い始める。何か、もっと大切な何かを忘れている気がしてならない。

 

オーキド先生の時も、席に着いた時も、気のせいだと感じてはいるが何か引っかかるものがある。そんなシンジにマコトが笑顔で答えた。

 

「なに当たり前のこと言ってるのよ。私たちはいつだって3人だったじゃん!」

「今日の君はどうしたんだい?らしくないよ。」

 

らしくない。そんなソウジの言葉を聞いたシンジの胸に、再びチクリと何かが刺さった感じがする。やはり何かおかしい。シンジはどうしても違和感を拭えない。

 

マコトとソウジの存在は偽りではない。確かに存在している。だが、それ以上に大切なことがある。この二人の他に大切な親友、大切な相棒がいた。そんな記憶の断片が彼にはある気がしていた。

 

その時、シンジの目からは涙が零れ落ちた。

 

「あれ?シンジ泣いてるの?」

「っ!?なんでだろう。」

 

悲しくなんてない。泣きたいことなんてないはず。それでも、シンジの目からは自然と涙が溢れてきた。最も大事なこと。それを忘れることの方が、よっぽど辛い気がしたから。

 

シンジは涙を拭きとり周りを見渡す。すると、シンジの後ろには何かがかすかにぼやけて映っていた。それが何かはシンジには分からなかった。それでも、彼は自然とその存在に手を伸ばしていた。

 

「シンジ?」

 

マコトの言葉にシンジはハッと我に返る。やっぱり自分は何かおかしいのだろうか。しかし、それでもその存在を無視することができなかった。その存在を無視してしまっては、自分が自分で無くなってしまう。二度と戻れなくなってしまう。そう感じてしまったから。

 

シンジは無意識のうちに走り出した。そんな彼をマコトとソウジは止めようと呼びかけるが、シンジの耳には入らなかった。

 

シンジは走る。だが一向に追いつく気配がない。本来であれば狭いはずの屋上も、今では異常なほど広く、大きさを増してしまっている気さえした。

 

思い出せない。大切な存在であるはずなのに。思い出したいのに、思い出せない。君の存在も、大切な親友の存在も。自分は彼のためになにかをしようとしていたのに。

 

そんな焦りがシンジの頭の中を巡った。シンジはただひたすらに追いかけた。自分から逃げるその存在を。見失ってしまえばもう二度と会えないのではないか、思い出せないのではないかという焦りが彼を襲う。

 

そんな時、彼の足元が突然崩れ始める。空間が崩れるかのように、シンジを急な浮遊感が襲った。シンジが追いかけていた存在も、空間と同時に崩れ始める。

 

待って、と慌てて呼びかけるシンジ。そんな彼に、どこからともなく声が聞こえた。

 

『ブ……ブ…イ』

 

途切れ途切れのその声はハッキリとは聞こえなかった。だが、シンジにはその声に聞き覚えがあった。そしてその声に続き、また別の声が彼の耳に届いた。

 

『……ジ……ンジ!』

 

誰かが自分の名前を呼んでいる気がする。マコト?ソウジ?いや違う。もっと違う誰かだ。男の子の声。それも、彼にとってとても大切な存在。名前も思い出せない親友の声。

 

シンジの目にその親友の姿が僅かに浮かぶ。擦れてよく見えないその存在は、絶えずシンジに語り掛ける。シンジも、そんな彼に返事をするように名前を呼ぶ。

 

「……シ?」

 

上手く声が出ない。空間が崩れて自分の感覚が狂ってきたのか?いや、違う。やっぱり違和感なんかじゃない。大切なものを忘れている。自分はそれを思い出さなきゃいけない。そんな感覚が彼を襲う。

 

(君の名前……。ダメだ、どうしても思い出せない。忘れちゃいけないのに。忘れられるはずがないのに!)

 

シンジは心の中で自問自答を繰り返す。忘れられるはずがない。そんな存在の名前を思い出そうと。そんな時、彼にまた同じ声が届く。

 

『ブイ!』

(!?今の声!)

 

今度はハッキリと聞こえた。大切な存在、相棒の声が彼の耳に届いた。彼はその声に向かい手を伸ばす。そして、その大切な存在の名前を口にした。

 

(そうだ!君の名前は!)

「イーブイ!」

 

その瞬間、彼の周りの空間が1つ破れた気がした。そしてシンジが口にした存在が、彼の元へと飛び込んできた。

 

『ブイブイ!』

「っ!?イーブイ!」

 

シンジはそんな大切な存在、イーブイをしっかりと抱きしめる。なんで忘れていたんだろう。忘れたくても忘れられない、ずっと一緒に旅をしてきた存在なのに。

 

シンジはその時、もう一つの存在を思い出す。ずっと旅をしてきた存在、イーブイ。それにもう一人。ずっと一緒に育ち、共に過ごしてきた大切な存在がいたはずなのだ。

 

『ブイ!ブブブイ!』

 

イーブイは悩むシンジに呼びかけた。イーブイも何かを訴えている。ポケモンの言葉は人間に伝わることはない。だが、それでもシンジにはイーブイの言葉の意味が分かった。なぜなら、イーブイもまた共に旅をし、過ごしてきた大切な存在なのだから。

 

「なんでだろうね。忘れるなんて……できるはずないのに。」

 

僕たちは永遠に一緒だ。そう見えない彼の存在に言葉をかけ、シンジは彼の名前を小さく呟いた。

 

「そうだよね。……サトシ」

 

シンジは大切な親友の名を口にした。そしてそれが最後の言葉となり、空間が完全に破れ、シンジの意識が覚醒したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シ!……ジ!」

 

声が聞こえる。その声に従うように、シンジとサトシは目を覚ます。

 

「あっ!やっと起きた!」

 

心配したんだからと心から安心したマコト。2人の顔を覗き込み、目が覚めた時に胸をなでおろす姿を見ると、余程彼女が心配していたのだろうと言う事が分かる。ソウジも二人が無事なのを確認し、優しい笑みをこぼした。

 

「ご、ごめん、心配かけて。」

『イブブイ!』

 

夢でも見ていたのだろうか、と思ったシンジであったが、妙に現実味があったため夢にも思えなかった。実際起こりえることではなかったが、あの出来事は現実のものなのではないかとシンジは心の中で感じていた。

 

シンジのことが心配で気が気でなかったイーブイも、彼が目覚めたことですぐさま胸に飛び込んだ。その目には涙が浮かんで潤んでおり、シンジのことを心から心配し、不安を抱いていたことが伝わる。シンジもイーブイに謝り涙を拭きとって、イーブイの頭を優しく撫でた。

 

『ピカピ!』

「っ!?ピカチュウ!ごめんなピカチュウ!俺が悪かったよ!」

 

サトシも飛びついてきたピカチュウに謝りギュッと抱きしめる。その光景を見る限り、やはり二人には何かあったようだ。

 

「サトシ。」

「シンジ……。」

 

シンジはサトシに声を掛け、彼に一つ伝えたいことを伝える。

 

「クロスはクロスの、君には君の考えがある。君や僕にも信念がある様に、彼にだって譲れない信念があるだろう。」

 

サトシは黙ってシンジの言葉に耳を傾けていた。

 

「全てのバトルに勝つ事なんてできない。まずはポケモンと、向き合うところから始めたらどうかな?」

「ポケモンと……。」

 

サトシはシンジの言葉を聞き、そうかと心の中で納得しモンスターボールを取り出した。

 

「……ごめんな、リザード。」

 

サトシはそう言って、モンスターボールの中にいるリザードに謝ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サトシとシンジはその後、みんなに自分たちが経験したことを話した。シンジが味わっていたことと同じく、サトシもまた同じ現象を味わっていたようであった。

 

だが、ソウジはその現象に何か引っかかりを覚える。偶然にしてはできすぎであろう。

 

まず共通点として、お互いにホウオウに選ばれたもの。そして同じ夢を見ていたこと。それらは偶然にしては出来過ぎで、偶然とは思えない現象だ。

 

その後、マコトが拾った虹色の羽には色が戻っていた。それを見たシンジは口にはしなかったものの、先ほど見た虹色の羽は色を失ってしまっていたことを思い出す。心が穢れた者が触れてしまえば色を失う虹色の羽。もしかしたらサトシが穢れてしまったのではないかと不安になるシンジだが、2人が触れても虹色の羽が色を失うことはなかった。むしろ、より一層輝きを増したのであった。

 

ポケモンの記憶を失うのは夢でも嫌だと思うマコトとソウジ。そんな話を聞いたソウジは昔に起こった出来事を思い返す。

 

ソウジはかつて、帰りの遅い親の代わりとして育ててくれたレントラーというポケモンがいたのだという。だが、ある日に自分は一人で雪山に登ってしまい遭難してしまったことがあるのだとも。その際、心配したレントラーがソウジのことを探しにやってきて、傍に寄り添い彼のことを雪から守ってくれたのだとか。

 

しかし翌日、目が覚めるとレントラーは冷たく凍えてしまっていた。レントラーはソウジの呼びかけに答えることはなく、その場に残された。ソウジはその後救助隊に無事助けられたが、レントラーが戻ってくることはなかった。だが、そのレントラーの顔は、どこか嬉しそうな笑みを浮かべていたそうだ。

 

人とポケモンの在り方は色々ある。それはサトシやシンジ、マコトにソウジ、それからクロスも例外ではない。サトシはそのことを胸に刻み、もう一度自分とポケモン、クロスと向き合おうと決意する。

 

その時、背後から何者かの気配がした。誰かが覗いているような感覚。それを感じたシンジとサトシは立ち上がって振り返った。

 

だがそこには何もいなかった。ピカチュウはその正体を暴くべく10まんボルトを木に放った。だが、その攻撃は別のポケモンを呼ぶ結果となってしまう。

 

そのポケモンはオコリザル。一度怒らせると手が付けられなく、彼らは群れで降りてきたのだ。ピカチュウの攻撃で気が立ってしまった彼らは、一行を胴上げでもするかのように持ち上げる。

 

ソウジはサトシにトランセルで対処するように言う。無駄に攻撃してしまっては、更に彼らはを怒らせてしまう結果となってしまう為だ。サトシはトランセルを出し、オコリザルの手から抜け出す。運動神経がずば抜けているサトシだからこそできる芸当だ。

 

サトシはトランセルを抱えオコリザルの周囲を走る。そしていとをはくで彼らの動きを止めた。シンジたちは動きが止まったところを見計らい、彼らの手を逃れる。オコリザルから離れるために走り出す一行だが、オコリザルもいとをはくを破って追いかけてくる。その時、トランセルを青白い光が包み姿を変えていく。

 

トランセルを包んだ光が解き放たれ、解放された時にはサトシの手から抜け出して空へと羽ばたき、バタフリーへと姿を変えていた。

 

バタフリーはオコリザルの動きを止めるため、ねむりごなで一斉に眠らせる。眠り状態となった彼らは一行を追いかけることはなく、その場で眠っていた。

 

その後、暫くしてからやってきた3人組が目覚めたオコリザルに飛ばされたのは、シンジたちが知ることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えた!あれがホウオウの住む場所、ライゼン山脈だ!」

 

とある湖に出た一行。その先には険しい山々が連なる山脈があった。間違いない、とソウジは図鑑を確認しその山がライゼン山脈であると判断する。もうあと一歩だ、という時に空から以前見たのと同じ光景が目に映った。

 

そこには以前見かけたポッポ、それからピジョンの姿があった。そして彼らを襲う集団、オニドリルを加えたオニスズメ達の姿も見られた。彼らは今度は逃げているのではなく、真っ向から立ち向かっていた。恐らく一部のポッポがピジョンに進化し、彼らを束ねているのだろう。

 

だが、それでも明らかにポッポたちが劣勢であった。ポッポやピジョンはボロボロであるのに対し、オニドリルはまだ元気が有り余っており、彼らを威嚇していた。

 

このままじゃマズイと判断したシンジは、すぐさまピジョンを繰り出し助けに入る。

 

「ピジョン!つばめがえし!」

 

ピジョンはつばめがえしにより勢いよくオニドリルを襲う。オニドリルはピジョンの急襲に対応できずダメージを受ける。だが流石は進化形というべきか、以前のオニスズメたちと違い一撃で撤退することはなかった。

 

オニドリルの反撃、ドリルくちばしがピジョンを襲う。シンジは慌ててピジョンの名を口にする。ピジョンは墜落しそうになるも、その際にピジョンを青白い光が包み込みピジョンは再び飛び立つ。

 

そしてその光が解き放たれると、そこには雄々しくも気高い翼を備えたポケモンの姿が映っていた。

 

『ピジョットォ!』

 

ピジョンが最後の進化を果たし、ピジョットとして群れの先頭で対峙していた。オニドリルは、進化して更に増したそのピジョットの威圧感に怯んでいる様子であった。

 

シンジたちは進化したピジョットの勇姿に感動し、嬉しさがこみ上げる。その背中は、進化する前とは比べ物にならないくらい大きく、逞しく成長していた。ピジョンやポッポたちも、ピジョットの事を憧れと信頼の眼差しで見つめている。

 

オニドリルは退くことはなく、果敢にピジョットを攻める。だが、進化して更に増した素早さについていくことができず、ことごとく攻撃を躱されてしまう。

 

「ピジョット!エアスラッシュ!」

『ピジョット!』

 

ピジョットは翼を羽ばたかせ、エアスラッシュにより体勢を崩したオニドリルへと命中する。素早さだけでなく、攻撃力までも増したその一撃はオニドリルに大きなダメージを与え撤退させることに成功する。オニスズメ達も自分のリーダー格がやられたことで、勝てないと判断したのかその場を後にした。

 

「ピジョット!お疲れ!」

 

ピジョットも笑顔でシンジの元へと戻る。以前憧れの目で見ていたピジョットに進化することができ、自分自身も嬉しいのだろう。

 

そのピジョットのあとをポッポたちがついてきた。ポッポとピジョンは、キラキラした目でピジョットを見つめる。ピジョットも彼らに向き直って彼らからの感謝を受け取る。

 

「まるでリーダーみたいね。」

「ホント。みんなから歓迎されているみたいだ。」

 

マコトとソウジの言葉に、シンジはある決断をする。そしてその決断した内容を、ピジョットへと伝えた。

 

「ピジョット。」

『ピジョ?』

「僕たちはここで別れるべきだ。」

『ピジョ!?』

 

シンジの衝撃の発言に、ピジョットは驚きを隠せない。ずっと一緒にいると思っていたため、シンジの発言はピジョットにとって衝撃的であった。だが、その後にシンジはその別れを告げた理由を述べた。

 

「このピジョン達には、君みたいに引っ張っていく存在が必要だ。君なら、その役割にもピッタリだと思う。」

 

仲間たちもシンジの判断に驚き、彼に本気かと尋ねる。彼からの返事はなかったが、彼の目からはその覚悟が感じられた。

 

ピジョットは迷う。咄嗟に判断するには難しすぎる決断だ。だが、シンジが最後に伝えた言葉に、ピジョットは覚悟を決めた。

 

「僕たちは離れ離れになっても繋がっている。君と結ばれた絆も、決して切れることはない。僕たちは……友達だから。」

『ピジョ……』

 

シンジの決断に、ピジョットも覚悟を決めて頷く。ポッポやピジョンたちをこのまま行かしてしまえばまたオニドリルたちに襲われてしまう可能性もある。そんな彼らを放っておくこともピジョットにも、シンジにも出来ない。だからこそ、彼らを守るために、引っ張っていく為にピジョットが必要なのだと。

 

ピジョットは自分がみんなを引っ張るリーダーとなると伝える。ピジョン達もそんなピジョットを歓迎する。その姿を見たシンジは、僅かに涙を流し彼を見送る。

 

「これでいいんだ……これで……」

「シンジ……」

 

飛び立ったピジョットは振り返り、再びシンジの元へとやってくる。覚悟を決めても、やはり名残惜しいものがある。それが人間とポケモンの関係であるから。

 

「ピジョット。ありがとう。」

『ピジョ……』

「……君に出会えて……良かったよ」

『ブイ……』

 

ピジョットとシンジは抱きしめ合う。最後の別れをしっかりと噛み締めて。仲の良かったイーブイも、名残惜しくもピジョットと最後のハイタッチをする。ピジョットもシンジもイーブイも、それぞれ涙を流して別れを告げた。ピジョットの姿が見えなくなるまで、名前を叫び続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ライゼン山脈を登る一行。その時、バタフリーの群れと遭遇した。そこには以前サトシのバタフリーが助けたピンク色のバタフリーの姿があった。

 

バタフリーはこの時期になると、子作りのために集団で南にわたるそうだ。サトシのバタフリーはピンク色のバタフリーに求愛のダンスをし、互いに認められた。だが、それは同時にサトシとも別れなければならないという意味でもあった。

 

サトシは決断に迷うが、先ほど見ていたシンジとピジョットの結末を見届けていたため、そう長いこと迷うことはなかった。サトシは快くバタフリーを見送ってやろうと決意する。

 

サトシと別れることをバタフリーは戸惑う。番いのバタフリーと共に南へ行きたいが、サトシと別れることもしたくない。そんな時、サトシからバタフリーに一言告げられた。

 

俺たちは離れていてもずっと友達だ、サトシのその言葉に突き動かされ、バタフリーは南へと渡る決意をする。サトシも終始涙を流していたが、バタフリーの幸せを願い見送った。シンジたちと同じように、姿が見えなくなるまで手を振り、止まらない涙を拭きとりながら。

 

しかしその瞬間、背後から凄まじい威圧感が彼らを襲う。その正体を確認するため振り向くと。そこには幻のポケモン。ライコウの姿があった。エンテイ、スイクンに続きライコウ。この三体の姿を全て確認し一行はかなりの幸運だ。

 

ライコウはその後姿を消してしまうが、一行はその雄々しい姿を目に焼き付け胸に刻んだ。

 

ピジョット、バタフリーと別れ、ライコウを目にした一行はライゼン山脈を登っていく。すると道中、ボンジイと名乗る老人に出会った。

 

ボンジイはホウオウの伝説に纏わる逸話を調べており、以前ポケモンセンターで調べていた本の著者でもあった。ボンジイはホウオウの羽に反応し、シンジとサトシを虹の勇者と呼んだ。

 

ボンジイによると、サトシたちがエンテイ、スイクン、ライコウに出会えたのは、彼らが虹色の羽に相応しい人物か見定めていたのだという。それと同時に、もう一つ一行を見守っている存在もいるのだと言った。

 

そのポケモンの名はマーシャドー。マーシャドーは影より導く者と言われており、人前に姿を現すことはない。しかし、万が一道を踏み外してしまった虹の勇者がいた場合、その者を正しい道へと導く重要な存在であるとも言っていた。

 

サトシたちにもその存在は覚えがある。以前感じたのはマーシャドーの気配で間違いないだろう。サトシたちの見たと言われる夢も、マーシャドーの仕業であると思われる。

 

その後、サトシたちは虹色の羽が何かに反応するのを感じ取り出す。そしてサトシとシンジは、一緒にそれを山の頂上へとかざす。そこに虹の導きが開かれ、最後の目的地を指し示していた。サトシたちは興奮し、急いで向かおうと走り出す。もうすぐ伝説のポケモンホウオウに会えるとなれば、トレーナーなら間違いなく黙ってはいられないだろう。

 

そして一行はライゼン山脈、その中のホウオウが住むと言われるテンセイ山へと辿り着く。しかしそこには先客がいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?サトシ危ない!」

「っ!?」

 

サトシはシンジの呼びかけに反応し、間一髪急襲を回避する。そこにいたのはガオガエン。そしてその奥から姿を現したのは因縁の相手、クロスだ。

 

「クロス……」

「ホウオウに会うんだって?今すぐ虹色の羽を渡せ。」

「誰がお前なんかに!」

 

マコトの穢れた者が触れれば虹色の羽は色を失う、という忠告にも耳を貸さず、クロスは虹色の羽を渡せという一点張りであった。

 

「やっぱりお前には負けるわけにはいかない!」

 

その時、サトシたちの影から一匹のポケモンが姿を現す。小柄で黒く染まったその体は間違いなく影より導くもの、マーシャドーであった。マーシャドーはあくまで見守るつもりだとボンジイはいい、彼らの行く末を見守ることにした。

 

「……リザード!君に決めた!」

 

サトシはそう言ってリザードを繰り出す。リザードも目の前のクロスを見て、今度こそはと覚悟の表情を浮かべる。だが、クロスから放たれた言葉は意外なものであった。

 

「お前たち、2人ともホウオウに選ばれたんだろ?だったら2人でかかってこい。まとめて相手にしてやる。」

「……本気なんだね。」

「俺はいつだって本気さ。」

 

シンジの言葉に、自分の発言には偽り無しという覚悟を見せる。それと同時に、ホウオウに選ばれるのは俺だと宣言する。ならば彼の覚悟に従い、シンジもバトルの準備をした。

 

「お願い!イーブイ!」

『イブイ!』

 

シンジの言葉に従い、イーブイは前に出る。リザードとのタッグは初めてだが、トレーナー同士が互いに信頼しているため何も心配することはない。

 

「ガオガエン!かえんほうしゃ!」

「突っ込め!リザード!」

 

 

リザードはかえんほうしゃを回避し、ガオガエンへと接近する。その後、サトシはきりさく攻撃を指示し、その攻撃はガオガエンを捉えてダメージを与えることに成功する。あきらかに以前の敗北した時とは違い的確な判断であった。

 

「くっ!ルガルガン!ブレイククロー!」

 

ルガルガンのブレイククローがイーブイ目掛けて迫る。だが、イーブイも簡単にその攻撃を受けるはずがなかった。

 

「まもる!」

 

イーブイはまもるで確実にブレイククローを防ぐ。弾かれ態勢を崩したルガルガンを、イーブイの攻撃が捉えた。

 

「スピードスター!」

 

その攻撃は確実にルガルガンに命中し、ルガルガンはダメージを受ける。だがそれでもルガルガンへのダメージは少なく、まだまだ平気と言った様子だ

 

「ガオガエン!じごくづき!」

 

ガオガエンのじごくづきがリザードを襲う。だがリザードは軽やかにガオガエンのラッシュを回避していく。

 

「きりさくだ!」

 

ガオガエンのじごくづきとリザードのきりさくがぶつかる。互いの力が拮抗するが、ガオガエンの手が緩むことはない。

 

「かえんほうしゃ!」

 

ガオガエンがかえんほうしゃで追撃を仕掛ける。リザードンは防戦一方であった。だが、その炎はリザードの内に秘める炎を更に燃え上がらせ、意外な結果へと繋がった。

 

かえんほうしゃの中、リザードはまた別の光に包み込まれる。見覚えのあるその青白い光は、徐々にリザードと共に大きくなり、かえんほうしゃを弾いて解放したのだった。

 

『リザァー!』

 

そこにいたのはさらに大きく、力強く成長したリザードの姿、リザードンであった。クロスはその姿を見て驚くが、弱い奴は弱いままだと吐き捨て攻撃を続けた。

 

「ストーンエッジだ!」

 

地面を殴り、ルガルガンはストーンエッジでリザードンへと攻撃を仕掛ける。ほのお・ひこうタイプのリザードンにいわタイプの技はかなり有効だ。そんなリザードンをまもるため、一匹の小さなポケモンが壁となって立ちはだかった。

 

そのポケモンはイーブイだ。まもるによってリザードンをストーンエッジから守ったのだ。

 

「助かったぜシンジ!イーブイ!」

 

助けてくれたシンジとイーブイに感謝するサトシ。そんなサトシにシンジはあることを伝えた。

 

「サトシ。バトルが長引けば明らかにこっちが不利だ。僕がサポートする。チャンスがきたら、一気に蹴りをつけよう!」

 

サトシはシンジの考えに賛同し、静かに頷く。

 

「ほのおのキバ!」

 

ほのおのキバで攻撃を仕掛けるガオガエン。しかし、リザードンは寸前のところで回避する。飛べるようになり機動力の増したリザードンに追いつくのは至難の業であろう。

 

「ガオガエン!奴を引きずりおろせ!ルガルガンはブレイククロー!」

 

ガオガエンはリザードンへと飛びつき、ルガルガンはブレイククローでリザードンに集中攻撃する。だがこれはタッグ戦。相手は一人ではない。

 

「イーブイ!シャドーボールで援護だ!」

 

イーブイによるシャドーボールがルガルガンに命中し妨害に成功する。一方ガオガエンはリザードンにしがみつき引きずりおろそうと力を込める。だが、リザードンは大人しくやられることはなかった。

 

「ちきゅうなげだ!」

 

リザードンはしがみついたガオガエンの腕をつかみ、ちきゅうなげで地上に叩き落とす。そのダメージはハッキリと分かるもので、ガオガエンもダメージから腹部を押さえていた。

 

「くっ!かえんほうしゃ!」

「リザードン!かえんほうしゃ!」

 

互いのかえんほうしゃがぶつかる。ガオガエンはダメージが溜まっており、先ほどの勢いが弱くなっている。一方リザードンは、進化したことにより高まった力を最大限放ちガオガエンのかえんほうしゃを打ち破る。ガオガエンはその一撃により倒れ、戦闘不能となったのだった。

 

悔しそうな表情を浮かべたクロスは膝をつき、ガオガエンをボールへと戻す。ルガルガンもダメージは溜まっており、クロスの精神的なダメージもあってこれ以上戦闘を続けられそうな状況ではない。

 

それを確認したシンジはサトシに呼びかける。サトシもシンジの呼びかけに頷き、2人は同時に歩き出して虹色の羽の導きに従い最終目的地へと向かう。だが、その時にクロスが口を開く。

 

「……俺もホウオウを見た!」

「っ!?」

「だが、虹色の羽は貰えなかった!どうしてお前なんだ!なんでお前たちなんだ!」

 

クロスはシンジとサトシになぜなのだと尋ねる。だがシンジたちがその答えを知るわけはない。サトシはそんなクロスに自分なりの答えを伝える。

 

「友達になりたいからさ!」

「っ!?」

「ホウオウだけじゃない!全部のポケモンと友達になる!それが俺のバトルだ!なっ?シンジ!」

 

サトシの言葉にシンジも頷いて答える。

 

「バトルをすれば、お互いに分かり合える。僕たちはその中で全てのポケモンと友達になりたい。それが僕たちだから。」

 

二人の言葉を聞いたクロスは、やはり間違っていると思いシンジを突き飛ばす。シンジも咄嗟の事に反応できず無抵抗で飛ばされ、クロスはサトシから虹色の羽を奪った。

 

それを目的地であるホウオウの降り立つ場所へと持っていく。

 

「いかん!」

 

ボンジイがそう口にするも、すでに遅かった。虹色の羽は瞬時に色を失い、クロスはそれをかざした。

 

「さあこい!ホウオウ!」

 

虹色の羽は禍々しいオーラを放ち、ホウオウが降り立つことはなかった。その時、マーシャドーが動き出し、クロスをその場から引きずりおろす。

 

マーシャドーは全てを閉ざし、全てを正す。マーシャドーは黒く染まった虹色の羽を手にするが、それを認めないと言ったクロスが攻撃の指示をルガルガンに出した。

 

だがルガルガンの攻撃が届く前に、マーシャドーの技が決まる。その技はルガルガンにダメージを与えることはなかったが、明らかに様子が変わっていた。

 

すると驚くべきことに、ルガルガンはクロスに対して攻撃をしたのであった。ルガルガンはクロスに信頼を置いているため信じられる光景ではなかった。ボンジイが言うには、マーシャドーがポケモンたちと人間を引き離そうとしているそうだ。

 

マーシャドーはルガルガンだけでなく、先ほどの技を周囲にまき散らした。それらを受けたポケモンたちの様子が次々と変化していき、サトシたちを襲った。

 

「くっ!まずい!みんな操られている!」

「一体どうすれば!」

 

シンジとサトシはどう対抗すればいいのか悩む。その時、ボンジイがこの解決策をサトシたちに与えた。

 

「こうなったらマーシャドーから虹色の羽を取り返すしかない!」

「虹色の羽を?」

「うむ。こうなってしまってはホウオウは現れないだろう。マーシャドーはあの羽から力を得ている。ならば彼から羽を取り戻すには、虹の勇者であるおぬし達以外にいないだろう。」

 

ボンジイの話を聞き、サトシとシンジは互いに頷きマーシャドーから虹色の羽を取り返すことを決意する。

 

「だったら僕たちは2人の援護だ!」

「分かった!」

 

ソウジとマコトが援護をしてくれると言った。ならばあとは動くのみだと、みんなボンジイについて行く。

 

そしてシンジとサトシはマーシャドーの元へと向かう。ポケモンたちによる様々な妨害が行われるが、ルカリオやポッチャマ、リザードンの攻撃により道が開かれる。

 

そんな彼らの前に、ルガルガンが立ちはだかった。ルガルガンはストーンエッジでサトシたちに攻撃しようとするが、それをクロスが飛びかかり止めた。

 

「コイツは俺の相手だ!早くいけ!」

 

クロスの覚悟にシンジとサトシは頷き先に行く。そして遂にマーシャドーの前まで辿り着いた。

 

「マーシャドー!羽を返してくれ!」

「僕たちは君と争う気はない!」

 

しかしマーシャドーは聞く耳を持とうとしない。マーシャドーはそんなサトシたちに対し容赦ない攻撃を仕掛ける。

 

「っ!?イーブイ!まもる!」

『ブイブイ!』

 

マーシャドーは連続でシャドーボールを放った。その攻撃をイーブイはピカチュウの前に立ちまもるで防ぐ。だが、そのまもるにもやはり限界が来てしまう。

 

「アイアンテールで打ち返せ!」

『ピッカッ!』

 

イーブイのまもるが破られる前に、ピカチュウはアイアンテールでシャドーボールを打ち返す。射撃でダメだと踏んだのか、シャドーボールを中止したマーシャドーが近接戦を仕掛けてくる。ピカチュウはそんなマーシャドーにアイアンテールで対抗する。

 

拮抗状態だが、その状態を破るようにイーブイの攻撃は阻んだのだった。

 

「シャドーボール!」

 

シャドーボールでマーシャドーをピカチュウから引きはがす。そして正面に立つマーシャドーに2人で対峙する。

 

「マーシャドー。間違いなく強い。」

「ああ。だけどそれでも!」

『2人で力を合わせれば!』

 

シンジとサトシは2人で呼吸を合わせる。マーシャドーはそんな2人に全力を出したのか、形態を変える。マーシャドーの体が緑色に変色。彼の闘志のあらわれであるが、彼の全力が解放された。

 

マーシャドーの連続パンチにより強力な攻撃が繰り出され全力のマークが刻まれる。そんな彼に対抗するため、イーブイとピカチュウは力を合わせ同時に突撃する。マーシャドーは最後に全力の飛び蹴りで対抗する。

 

ピカチュウとイーブイは必死にマーシャドーに抵抗する。だが、彼の力が余りにも強すぎ次第に力の差が現れ爆発し弾かれた。その衝撃はすさまじく、周囲にすら影響を及ぼすものであった。

 

『うわあ!?』

 

サトシとシンジはその衝撃によって一緒に吹き飛ばされる。

 

爆風が収まると、そこには傷だらけのピカチュウとイーブイの姿があった。

 

「イーブイ!」

「ピカチュウ!」

 

シンジとサトシは慌てて駆け寄る。どちらも息はしているが、これ以上の戦闘は難しい。それどころかマーシャドーの強力な一撃で立つことすらできない。

 

そんなサトシたちを、ポケモンたちはゆっくりと歩み寄り追い詰める。サトシとシンジは必死にパートナーを抱え逃げるが、ここは山の頂上。すぐに崖に追い詰められ逃げ道を失う。

 

だがパートナーを必死に守りたいため、なんとかしてでも逃げようとする。しかしポケモンたちの攻撃により技僅かな逃げ道すら絶たれてしまった。それだけならまだいい。ポケモンたちの攻撃がシンジとサトシを捉えてしまったのだ。2人はパートナーを守るために自らの体を盾にして守った。

 

2人が心配になった仲間たちは近づこうとするが、それすらもポケモンたちが許すことはなかった。

 

パートナー同様、サトシとシンジもボロボロだ。体を這いずってでも近づこうとし、パートナーに手を伸ばす。このままではマズいと感じた2人は、懐からパートナーのモンスターボールをとる。

 

「ピカチュウ……これにはいれ……」

「イーブイも……お願い……」

 

モンスターボールをパートナーの前に転がす。

 

「入るのが嫌いなのは分かってる。でも、これに入ればお前たちは助かるかもしれないんだ!」

「君たちだけでも助かる道があるなら、僕たちはその道を選ぶ……。」

 

サトシとシンジはそこで立ち上がり、ポケモンたちへと振り返る。

 

「お前たち……俺を、俺たちを誰だと思っているんだ……!」

「僕はマサラタウンのシンジ!」

「俺はマサラタウンのサトシ!」

『世界一のポケモンマスターになるんだ!こんなことには負けない!』

 

シンジとサトシのその言葉と同時に、ポケモンたちの技が放たれる。目の前で自分のパートナーがやられてしまう。そんなことを黙ってみていることは出来なかった。イーブイとピカチュウは彼らの前にでて必死に彼らを守ろうとする。

 

シンジとサトシはそんな彼らの行動に気付き、彼らを庇ってポケモンたちの攻撃を受ける。

 

「お、お前たち……」

「ど、どうして……」

 

サトシとシンジがなぜモンスターボールに入ってくれないのかと疑問に思い尋ねる。するとピカチュウとイーブイは同時に彼らへの思いを告げた。

 

『ずっと……ずっと一緒に……いたいから……』

「!?ピカチュウ……」

「!?イーブイ……」

 

シンジとサトシは目を見開く。そして覚悟を決め、モンスターボールを手に取った。そんな彼らを、ポケモンたちの攻撃が容赦なく襲った。

 

ピカチュウとイーブイをモンスターボールにいれ、2人はパートナーたちを庇いポケモンたちの攻撃を受ける。その衝撃で2人は吹き飛ばされ、その場にモンスターボールが落ちる。

 

その時、すぐにピカチュウとイーブイはモンスターボールから出てきた。だが、彼らの目に映ったのは、信じられない光景だった。

 

『ピカピ!?』

『イブ!?』

 

そこには体が徐々に薄くなり、消えていってしまう2人の姿であった。ピカチュウとイーブイは彼らの帽子を持ち近付き被せようとするが、その時には2人は粒子となり消えていく。その時、ピカチュウとイーブイには2人のかすかな声が聞こえた。

 

『キミに出会えて……良かった……』

 

それと同時に彼らは粒子となって完全にいなくなる。そしてマーシャドーの持つ虹色の羽も消滅する。ピカチュウは帽子を手に取りサトシの存在がないか確認するが、結果は変わらない。イーブイも涙を流して信じたくないその光景を悲しむ。

 

ピカチュウは悲しみのあまり、強力な電撃を繰り出す。その衝撃はこの場にいるポケモンたちを巻き込み、彼らを正気に戻す。だが、サトシたちが戻ってくることはなかった。

 

ピカチュウとイーブイの叫びが、ライゼン山脈に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サトシとシンジは目を覚ます。目の前にはピカチュウとイーブイが泣いている姿があった。

 

ピカチュウとイーブイの言葉が聞こえる。サトシとシンジはその言葉に従い走る。

 

「俺たち、こうやって一緒に走ったよな!」

「うん!僕たちはいつだって一緒だった!」

 

彼らはただひたすらに走る。映る光景は花畑、空、それ以外変わりない。だが、それでも走らなきゃいけないと思ったのだ。

 

「もう二度と離さないって決めたんだ!」

「もう二度と忘れないって決めたんだ!」

 

2人は走る。すると空に2つの粒子が集い、それがやがてハッキリとした形を映し出す。2人にはそれがなんなのかすぐに分かった。だってそれは2人にとって…………

 

「ピカチュウ!」

『ピカピ!』

「イーブイ!」

『イブイ!』

 

2人にとって、決して忘れることのできない宝物なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くとサトシとシンジは、自分のパートナーと共に現実の世界へと戻っていた。この場にいるすべてのものが信じられない光景を見ていると口を開けている。死んだと思われたものが粒子となり集まり、またこの世に姿をあらわしたのだから。

 

サトシとピカチュウ、シンジとイーブイはお互いに確かにここにいると確かめ合う。確かに2人はここにいる。確かに僕たちはここにいる。その存在が、決して偽りのものではないと確かめる事ができた。

 

「サトシ!」

「シンジ!」

 

仲間たちも戻ってきたサトシとシンジを笑顔で迎える。

 

「マコト!」

「ソウジ!」

 

サトシとシンジも2人の名を口にした。その時、サトシとシンジの元にある物が現れた。

 

それを手にしたサトシとシンジは、それから暖かさを感じた。それは紛れもなく虹色の羽。消えたと思われた虹色の羽も、虹の勇者の元へと再び現れたのだ。

 

その光景を見たボンジイは、ホウオウの伝説を口にして2人に言った。

 

「行くのじゃ少年たちよ!」

 

2人はボンジイの言葉に頷き、羽をホウオウの待つ場所、虹の導きの場所へと向かう。

 

「シンジ!」

「サトシ!」

 

2人は頷き、一緒に虹色の羽を翳した。すると先ほどの禍々しい光とは対照的に、神々しい光と共に虹が空に渡る。まるで何かを導くように。

 

暫くすると、その虹の先から伝説のポケモン、ホウオウが姿をあらわす。それは紛れもなく旅に出た時見たあの時のポケモンそのものであった。

 

ホウオウが鱗粉のような不思議な力を振りまく。するとこの場にいる全てのポケモンの傷がたちまちに治る。伝説のポケモン、ホウオウの力を目の当たりにする一行。それを見たシンジとサトシは覚悟を決め、パートナーと顔を合わせて共に前に出る。

 

『ホウオウ!』

 

ホウオウは静かにサトシとシンジの目を見る。

 

「俺たちと!」

「僕たちと!」

『バトルしようぜ!』

 

ホウオウは頷く。そしてここに、選ばれし2人の勇者と、伝説に語り継がれしポケモンとの戦いの火蓋が、切って落とされたのだった。

 

「ピカチュウ!」

「イーブイ!」

『キミにきめた!』

『ピカチュウ!』

『イーブイ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サトシとシンジは、ボロボロになったバートナーを連れ、ポケモンセンターを立ち寄る。

 

『お願いします!』

「あら、バトルしたのね。相手は誰?」

 

サトシとシンジは、ジョーイの質問に対し笑顔でそのポケモンの名を口にした。

 

『ホウオウです!』

「へぇ~。え?」

 

2人はボロボロになりながらも、どこか幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモン達を回復させた後、サトシたちはクロスと別れた。今までのギスギスした雰囲気は一切なく、クロスも考えを改めた。そして次会うまで、絶対に誰にも負けるなとサトシに告げる。サトシももちろんだと強く答えた。その後、シンジとも再会したらバトルをしようと約束した。シンジも絶対に負けないよ、と答える。その2人の姿は、旅に出た時よりも大きく、逞しく成長していた。

 

翌日、サトシとシンジも、ソウジとマコトと別れることとなった。ソウジはファイヤー、フリーザー、サンダーの伝説を調べるために旅を続ける。

 

マコトは一度家に帰ると言う。口うるさく言われるのが嫌で飛び出したマコトだが、ふと母親に会いたくなったのだとか。

 

サトシは目指せポケモンマスター。シンジもサトシと共に旅をして成長できることを願う。その時、ソウジが旅のどこかでまた出会えたら、と言うと、全員が顔を合わせて同時に口を開いた。

 

『バトルしようぜ!』

 

全員の気持ちは同じで、それはポケモンたちも同じだ。トレーナーと共に、パートナーたちも笑いあう。仲間との約束を交わし、4人はそれぞれの道を進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ、これからどこに行こうか。」

「僕たちの行く場所は決まってるでしょ?」

「……ああ!そうだな!」

『風の向くまま!夢に向かって!』

「行こう!ピカチュウ!」

『ピカピ!』

「行こう!イーブイ!」

『イブイ!』

 

ポケットモンスター。縮めてポケモン。この世界の不思議な不思議な生き物。空に、海に、森に、町に、この世界のいたるところでその姿を確認できる。

 

人とポケモンは調和し、仲良く暮らしていた。

 

そしてこの2人の少年、マサラタウンのサトシとシンジ。相棒のピカチュウ、イーブイと共にポケモンマスターを目指し修行の旅を続けている。

 

ポケモンの数だけの夢があり、ポケモンの数だけの冒険が待っている。

 

2人の歩む物語は、まだまだこれからなのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued…




いかがでしたでしょうか?劇場版と大きく変えているつもりはありませんが、キャラの感情とか上手く演出できてればいいのですが。映像と文章ではやはり表現の仕方が違うので難しいですね。まあそれらを考えるのも楽しみの一つなのですが。

では昨日がイーブイの日でもあったので早速ピカブイの報告をば!(因みに今日はいい夫婦の日)

とりあえずヌシはストーリークリアしてポケモン図鑑完成、イーブイの色違いゲット、ブイズ3種の厳選まではやりました。残念ながら第二世代以降のブイズが出ないので4匹でバトルするしかありません。対戦潜ったら辛そう……。

従来通りピカチュウ版もしなくては図鑑埋めれなかったので兄貴から拝借してやりました。ただ化石復元までめんどくさかったので、ヤマブキとセキチクジムだけ飛ばしてグレンまで行きました。もしかしたら秘伝技が存在しないのでニビ以外飛ばせる可能性あります。また別のデータでイーブイのみの縛りをやるつもりなのでその時に確認してみますが。(とは言っても1週目もイーブイだけみたいなものでしたが……)

因みにヌシのイーブイは女の子で、耳にピンクの花飾り、胸にピンクのキュートリボン、尻尾に白の花飾りと、シンプルかつ可愛らしいコーデにしてます!髪は基本的に通常が好みなので変えていません。他の髪型も可愛かったけど、イーブイにもパッツンほしかったなあ……。

それにやっぱり自分のイーブイが一番可愛く感じるよね!突っついたら嫌がるところとか、呆れてジト目で見るところとかもう可愛くて顔がにやけちゃうよ。更にいいのは仲が最大まで良くなると嫌がることが一切なくなり、凄く愛で甲斐のある素直な子になるところだよ。嫌がるところもいいけど、じゃれてくるところも好きで、特に(ry

これいじょう は じがかすれて よめない!


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掲載二周年記念特別編 前編 ~みんなの物語~

新作FEの風花雪月を買ったら思いのほか超絶面白くて投稿が遅れる主です。風花雪月はいいぞ~!

本日はみんなの物語ですが、キミにきめたに比べると複数キャラからの視点が多いので前作に比べると意外に短くなりました。ですが一応前編後編に分けて投稿します。もうしばしお付き合いください。

キミにきめた同様内容は対して変更は加えてません。あくまで本作の主人公がいたら?という捏造に過ぎないのでご了承ください。


とある場所に、海と山に囲まれた一つの大きな街が存在していた。

 

かつてその街があった土地はかなりやせており、今に比べ街も小さく殆ど人も住んでいない土地であった。

 

ある時、伝説のポケモンであるルギアがその街に姿を現した。

 

人とポケモンが協力し支え合って暮らしているのを見たルギアはその街に風を送った。

 

その後人間たちはルギアと約束を交わし、一年に一度ルギアを称えるために風祭を開くことにした。

 

そしてその風祭りの最終日、ルギアに風を送ってもらうことになったのだ。

 

街は発展していき、人間とポケモンたちは幸せに暮らしていた。

 

しかし、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。

 

ある事件を境に、知られざる一匹のポケモンと人間たちの間に亀裂が入ってしまったのだった。

 

この物語は、そんな一匹のポケモンと2人の少年が紡いだ、始まりの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはフウラシティ。風と共に暮らす街と呼ばれ、一年に一度風祭りが開かれ街中が賑わう大イベントが行われる。

 

そんなフウラシティの道路に敷設されたレールの上を、一本の電車が走っていた。いわゆる路面電車である。

 

そんな路面電車に、ある一人の少年と一匹のポケモンが満面の笑みではしゃいでいた。

 

「見ろよピカチュウ!すっげぇ楽しそうだぜ!」

『ピカチュウ!』

 

その少年、マサラタウンのサトシ。ポケモンマスターになるのを夢見てピカチュウと共に旅をしているポケモントレーナーである。そしてもう一人……。

 

「2人とも、あんまり騒ぎすぎると迷惑だよ。」

『イブブイ……』

 

サトシとは正反対で席に座り彼に注意を促す少年がいた。彼はシンジ。サトシと共に相棒のイーブイを連れてポケモントレーナーとしての腕を磨いている。

 

「だって風祭りだぜ?全力で楽しまなきゃ損だろ!」

『ピッカチュウ!』

 

シンジの忠告などお構いなしと言わんばかりに落ち着きがない様子のサトシとピカチュウ。しかし普段この様な祭りに参加することなど滅多にないため、一年に一度開かれるといわれているこの風祭りに来れば大はしゃぎしても仕方のないものだろう。

 

「……まあ、その気持ちは分かるけどね。」

『イブ!』

 

シンジも小さな声でそう呟く。普段は落ち着きのないサトシと違って冷静な彼だが、実際は彼もこの祭りが楽しみで仕方がなかったのだ。実際、この電車が駅に着くのを今か今かと待っている。

 

一方のイーブイは、シンジの膝の上で彼に気持ちよさそうに撫でられながら寛いでのんびりと過ごしている。イーブイは人見知りな部分があるが、シンジの傍にいると落ち着くようだ。

 

サトシのピカチュウはそんなイーブイと違い、サトシと一緒に大はしゃぎの真っ最中だ。ペットは飼い主に似る、とよく言うが、それはポケモンも同じようである。

 

暫くすると電車は駅に辿り着き彼らはそこで降りる。サトシは真っ先に走り出し、風祭りの屋台が並ぶ通りに向かっていった。

 

『ピカピ!ピカチュウ!』

「おいピカチュウ!あっちにもっと面白いものがあったぜ!」

『ピカ!?ピカッチュ!』

 

ピカチュウが珍しい商品が並んでいるガラスを眺めていると、サトシがそう言ってピカチュウを誘った。ピカチュウは真っ先に反応し、サトシの元へと走り出した。

 

「ちょっとサトシ!どこ行くの!」

「俺はピカチュウと一緒に色々見て回る!後でまた合流しようぜ!」

 

そう言ってサトシはピカチュウと共に人混みの中へと姿を消していった。相変わらずの幼馴染の姿に、シンジは呆れて溜息をつくしかなかった。

 

「はぁ……本当に落ち着きがないんだから。」

『イブブイ……』

 

でもそれがサトシか、と半ば諦め自分たちも折角の祭をパートナーと一緒に楽しもうと屋台を見て回ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、サトシやシンジたちとは別に風祭りに訪れ周りを見渡している少女がいた。

 

「はぁ……」

 

その少女はどこか気だるそうに大きなため息を吐く。彼女の手に握り締められているのは一つのモンスターボールだ。しかし、そのモンスターボールにはポケモンは入っていない。

 

「弟の頼みで風祭りにきたはいいものの、全然見つかんないじゃない。」

 

少女は現在この場にいない弟に愚痴を言いながら再び溜息を吐く。彼女がこの風祭りに来た理由はその弟に頼まれたことが関係している。

 

彼女の弟は現在怪我をしてしまい自分の足で歩くことが出来なくなってしまっている。そのためこの風祭りに来たくても来られない状態なのだ。

 

だがその弟は一つの頼みごとを姉にお願いした。それはとある珍しいポケモンを捕まえてほしいというものであった。

 

しかし彼女はポケモントレーナーではない。そのためポケモンの知識はおろかそのポケモンの詳細すら知らない。一応弟にポケモンの写真を自分が携帯しているスマホに送ってもらったため容姿だけであれば知っている。

 

彼女はそのポケモンを探しにこの風祭りに来たのだが、一向にそのポケモンの姿がない。余程レアなポケモンなのかと半ば諦めかけていると、何かが自分の足にぶつかってしまいその場で転んでしまう。

 

「いったったった……」

「おい、リリィ!大丈夫か?」

 

彼女にぶつかってしまったのはまだ幼い少女であった。男性がその少女の事を心配し駆け寄る。どうやらぶつかってしまった少女の名前はリリィと言うそうだ。その場にもう一人居合わせた女性がぶつかってしまった女性に謝る。

 

「ごめんなさい!大丈夫でしたか?」

「お姉ちゃん、ごめんなさい。」

「あっ、ううん。いいのよ。私もよそ見してたし。」

 

少女は自分にも非があるから気にしなくていいと立ち上がる。リリィは彼女の手に握られていた空のモンスターボールが気になり質問を問いかける。

 

「お姉ちゃん、ポケモンは?」

「ああこれ?ポケモン捕まえに風祭りに来たんだけど全然見つかんないの!きっと超レアなポケモンよ!」

「だった伯父さんに聞くといいよ!すっごいポケモントレーナーなんだよ!」

「ホントッ!?」

 

リリィは隣にいる男性に話題を振った。凄いポケモントレーナーと聞いて少女は目を輝かせ期待の眼差しでその男性を見つめる。リリィもその男性の事が大好きなのか、同じように目をキラキラと輝かせている。

 

当の男性はその期待のプレッシャーからか冷や汗を流している。少女はお目当てのポケモンの画像を男性に見せると、男性は脳裏のある少年の姿が写った。

 

(こ、このポケモンって確かあの時の坊主が連れてた……)

 

その時に彼は良い事を思いついたとそのポケモンの情報を彼女に伝える。

 

「そ、そのポケモンはな、さっき知り合いのトレーナーが連れ歩いてたな~。」

「え!?ホントに!?どこどこ!そのトレーナーはどこにいるの!?」

「あ~えーと……確かあっちの山の方で捕まえたって言ってたな~。」

「ホントに!?ありがとうおじさん!」

 

男性はそう言って遠くの山を指さして答えた。女性はそう感謝の言葉を告げるとその男性の指した山へと向かっていったのだった。

 

「ちょっと。またあんな嘘ついて……」

「いっ!?う、うそじゃねぇよ。は、半分はホントだって。」

 

隣にいた女性は男性に小さく耳打ちをしそう伝えた。その女性の言った通り、彼の言ったことは嘘である。そもそも彼の記憶にある坊主とはシンジの事であり、シンジとこの男性は全く面識がない。

 

彼は悪い人間というわけではないが、嘘をつくのが癖になってしまい、リリィの期待に応えるためについつい嘘をついてしまうのだ。とは言え知らずに彼の言うことを鵜呑みにしてしまった女の子が少々気の毒でもあるが。

 

何はともあれなんとか窮地を脱したと彼は再び姪であるリリィと共に風祭りを楽しむことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び視点は戻り風祭りを楽しむシンジとイーブイ。屋台で綿あめを買いパートナーと共に食している時であった。

 

『まもなくポケモンゲットレースが開始されます。どなたでも参加自由ですので、こぞってご参加下さいませ。』

 

祭り会場全体に放送が流される。その内容を聞いたシンジは、サトシであれば間違いなく参加するんだろうなと考えながらイーブイに話しかける。

 

「折角だし僕たちも参加しようか?」

『ブイブイ!』

 

どうやらイーブイも乗り気なようで、シンジの意見に賛同してくれた。互いの参加の意思があると確認したシンジとイーブイは、ポケモンゲットレースが開催される舞台へと向かう。

 

そして場所は変わりポケモンゲットレースの舞台へとたどり着いたシンジたち。そこには当然と言わんばかりにサトシとピカチュウの姿も確認することができた。

 

「おっ!?やっぱりシンジも参加するのか!」

「サトシこそやっぱり来てたんだね。」

「当ったり前だろ!こんな面白いイベント、参加しなくちゃもったいないぜ!」

『ピカピカチュウ!』

 

サトシとピカチュウはゲットレースが開始される前からやる気に満ち溢れている。参加する以上二人には優勝しか頭にない様子だ。そんなサトシは、シンジに対してある提案を出したのだった。

 

「シンジ!どっちが多くポケモンゲット出来るか勝負しようぜ!」

「サトシならそう言うと思ってたよ。やるからには僕たちも負けないからね!」

「俺だって負けねぇぜ!」

『ピカチュピ!』

『イブブイ!』

 

シンジとサトシはお互い認め合っているライバル同士拳を突き合わせて正々堂々バトルの挨拶を交わす。イーブイとピカチュウもパートナー同様お互いにライバルであり親友である両者と声を合わせて挨拶をする。

 

そして司会者の合図によりポケモンゲットレースの開会式が開かれる。

 

『それではこれより!ポケモンゲットレースを開始したいと思います!』

 

司会者によりポケモンゲットレースのルールが説明される。

 

この風祭り会場全域にポイント対象となる印であるマークをつけたポケモンが放たれており、彼らを多くゲットした者が優勝となる至ってシンプルなルールだそうだ。

 

司会者からルールの説明があったところで、遂にゲットレースの開始が宣言されようとしていた。

 

『それではポケモンゲットレース……レディー・ゴー!』

 

司会者の言葉と同時にポケモンゲットレースがスタートし、サトシやシンジを含む参加者が一斉に飛び出す。

 

「サトシには負けられないね。一匹でも多くゲットするよ!イーブイ!」

『イブイ!』

 

イーブイと共にサトシとのバトルに燃える2人。そんな2人の前にあるポケモンが姿を現した。

 

『エッパ!』

「あっ!エイパムだ!」

 

そのポケモンは紫色の体色をしたおながポケモンのエイパムであった。ゲットレースの印であるシールが貼られていたため、ゲットレース対象ポケモンに間違いない。

 

出会って早々、エイパムは自慢の尻尾を突き出して攻撃してくる。エイパムの得意技であるダブルアタックだ。

 

しかしその直線的な攻撃をイーブイは冷静にジャンプして回避する。

 

「スピードスター!」

『イーブイ!』

 

イーブイの放った星形の弾幕、スピードスターが攻撃後の隙を晒したエイパムにクリーンヒットする。その衝撃で大きく吹き飛ばされたエイパムにチャンスが生まれ、すかさずシンジはゲットレース専用のモンスターボールを投げつける。

 

そのモンスターボールはエイパムを捕らえ、抵抗する間もなくゲットに成功する。専用のモンスターボール故か、野生のポケモンをゲットするよりもあっさりと捕獲することができた。

 

「やったね!早速一匹ゲット!」

『イブーイ!』

 

シンジとイーブイはお互いにハイタッチをしすぐに次のポケモンを探しに走り出す。時間制限があるため少しの時間ロスも減らさなくてはいけないため中々にハードである。

 

その後も順調にポケモンのゲットに成功していく。同時にサトシもシンジと同率で争っていると実況解説から耳に入ってくる。

 

だが彼らの上にポケモンを次々と捕獲している選手がいるそうだ。その選手の名はカガチという男性トレーナーで、パートナーのヒトデマンの特性である“はっこう”を利用しポケモンたちを引き寄せているようだ。間違いなく今大会の最大のライバルになるであろう彼に追いつくため、シンジとサトシも必死にポケモンを探し続ける。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

『イッブイ!』

 

街の路地裏にて、イーブイのシャドーボールで遭遇したデルビルの足元を狙い怯ませる。その攻撃で怯んだデルビルの隙を狙い、シンジはモンスターボールで捕獲する。

 

順調にゲットしていくシンジであったが、その時何か大きな物音が聞こえた。そちらをふと確認すると、そこにはこちらに向かって爆走してくるバンギラスの姿があった。

 

シンジはバンギラスに引かれないようにイーブイと共に端に退避する。しかしその時、バンギラスの首元に異変があったのが確認できた。

 

「!?あれって!」

「シンジ!」

 

バンギラスの異変に気付いたシンジの元にサトシが慌てた様子で走ってきた。そのサトシの姿を見たシンジは、ある程度の現状を理解することができた。

 

「サトシ、あのバンギラスって……」

「ああ、間違いなく首に巻き付いたロープで苦しんでる。」

 

そう、バンギラスの首には祭りの会場にぶら下がっている屋台などを結ぶロープが巻き付けられており住宅地を爆走していたのだ。おそらくゲットレースの際に何らかの拍子で衝突してしまいロープが絡まり取れなくなってしまったのだろう。

 

シンジとサトシは2人でバンギラスの後を追いかける。バンギラスの爆走で住民たちはかなりのパニック状態に陥ってしまっている。実況の内容からその様子が伝わってくる。

 

「このままじゃ街中が大混乱だよ」

「シンジ!あのバンギラスをあの広場に誘導できるか!?」

 

サトシが指を指したのは大きく開けた広場だ。サトシの幼馴染であるシンジにはサトシの考えが読め、相変わらず無茶なこと考えるなと思いながらも、力強くサトシの質問に頷き答えたのだった。

 

「ピカチュウ、イーブイ。2人とも力を貸して!」

『ピカピカチュウ!』

『イブイブブイ!』

「頼んだぜ!相棒!」

 

シンジとサトシは互いの役割を理解し拳を突き合わせ、バンギラス救出のためにその場で分散した。サトシは広場に向かって真っすぐに進み、シンジはバンギラスを追いかけ住宅の裏道へと進んでいく。

 

「ピカチュウは10まんボルト!イーブイはスピードスターでバンギラスを誘導して!」

 

シンジの指示通りピカチュウは10まんボルト、イーブイはスピードスターで上手くバンギラスを裏道から広場に向かって誘導していく。もちろん住宅を破壊しない程度にピカチュウとイーブイは軽く技を放っているため民家に被害はない。

 

ピカチュウとイーブイの連携によりバンギラスを広場に誘導することに成功する。タイミングを見計らったシンジはサトシの名前を呼び合図を送る。

 

その合図を受けたサトシは歩道橋から勢いよくジャンプしバンギラスの背に飛び乗る。サトシはバンギラスに必死に呼びかけるも、バンギラスは一向に止まる気配がない。それどころかバンギラスはその影響で余計に暴れてしまう。それでもサトシが抑止力となり先ほどに比べ勢いは収まっている。

 

しかしバンギラスは未だ我に返らず広場を暴れまわっている。その正面には人だかりができてしまっており、このままでは多くの人に被害が出てしまうであろう。

 

「!?イーブイ!バンギラスの足元にシャドーボール!」

『イブ!』

 

イーブイはシャドーボールでバンギラスの足元に攻撃する。バンギラスはその攻撃に驚き僅かに動きを止める。今がチャンスだと思ったサトシはピカチュウに指示を出した。

 

「ピカチュウ!ロープに向かってアイアンテール!」

『ピカピカッチュピ!』

 

ピカチュウはサトシの指示通りロープをピンポイントで狙いアイアンテールを振り下ろす。そのアイアンテールでロープは千切れ、バンギラスの首から離れる。

 

ロープによって苦しんでいたバンギラスは疲労でその場に倒れこむ。サトシとシンジはそんなバンギラスに近寄り優しく声を掛ける。バンギラスは力なく2人の問いに答えるも、体調に大きな影響はないようで2人も一安心する。

 

「ありがとな、ピカチュウ。」

『ピッピカチュウ!』

「ありがとね、イーブイ。」

『イブブーイ!』

 

期待に応えてくれたパートナーを撫でるサトシとシンジ。ピカチュウとイーブイも撫でられたことが嬉しいように笑顔を見せる。

 

「立てるか?バンギラス!」

「僕たちの肩に捕まって」

『バンギィ……』

 

サトシとシンジの肩に捕まり疲弊したバンギラスはゆっくりと立ち上がる。実況解説からもゲットを超えた熱い友情と称され、バンギラスを無事に運営に引き渡したのだった。

 

その後ゲットレースは無事に終わりを迎え、サトシとシンジはバンギラスを助けたことを称え市長から市長賞を受け取ることとなった。

 

「バンギラスを助けてくれてありがとう。」

「シンジとピカチュウが一緒ならできると思ったんです!」

「サトシとイーブイが一緒だからできると思ったんです!」

 

サトシとシンジは惜しくも優勝することは出来なかったが、それでもパートナーたちとの友情を確かめることができたのだと実感することができた。優勝こそできなくとも、それ以上に大切なことを知ることができて良かったと感じる2人であった。

 

そして同率の2人を超え優勝を手にしたカガチに優勝トロフィーが贈られる。そんなカガチに、司会者からある質問が投げかけられる。

 

「ちなみに、今後ゲットしたいポケモンはいますか?」

「いっ!?え、えっと……」

 

シンジは一瞬カガチと目があったと感じたが、特に気に留めることもなくカガチの話を聞いた。

 

「ど、どうやらこの辺りには超レアポケモンがいるみたいですね。」

 

カガチは折角風祭りに来たのだからその超レアポケモンをゲットしたいと語る。その言葉を聞きここの集っているポケモントレーナーたちはざわざわとしはじめる。やはりポケモントレーナーたるもの、レアなポケモンと聞いたら黙っていられない性分なんだろう。

 

サトシとシンジも同じように珍しいポケモンの存在が気になるざわつき始める。しかしそのインタビューを聞いていた一人の少女が、心の中で強い決意を燃やしていたのは誰も気付くことはなかった。

 

(わたしが守ってあげないと!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日は変わりとある宿泊施設

 

「今日は何する?ピカチュウ!」

「イーブイ、今日はどこ見て回ろっか。」

 

サトシとシンジは相棒に今日は何をするか聞きながらエレベーターが到着するのを待つ。そして『チーン』という音と共にエレベーターの扉が開く。

 

しかしそこには疲労のせいかボロボロになった女性が乗っており、2人の姿を見ると彼女は目を輝かせながら近づいてきた。

 

「や、やっと……やっと見つけた!」

 

何を見つけたのか不明だが、ゆっくりと近付いてくる。シンジの肩を掴み迫ってくる。

 

「あ、あの……」

『イブ……イブ!』

 

状況がよく分からず戸惑うシンジ。そんな彼に反し臆病な性格のイーブイは驚きのあまり尻尾でその女性の頬を叩いてしまう。

 

女性はそのダメージでその場で倒れてしまう。余程怖かったのかイーブイは涙を浮かべながらシンジの腕にうずくまり震えている。とりあえずこのままにしておくわけにはいかないと彼女を起こし事情を聞くことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イーブイがさっきはごめんねって。」

『イブブイ……』

「ああ、あんなの気にしなくていいって!私の方こそ驚かしちゃってごめんね。」

 

現在シンジは彼女の頼みに応えるために一緒に街から少し離れた野原に来ている。先ほどのトラブルは和解できたようで、イーブイも彼女に対する警戒は解いている。

 

彼女の名前はリサ。リサの頼みとは、弟に頼まれあるポケモンを捕まえたいから手伝ってほしいとのことであった。そのポケモンの正体を聞いたシンジは、そのポケモンであれば自分の方が適任であるだろうと自分が引き受け、サトシには先に祭に行ってくれと言ったのである。

 

サトシもお人好しなシンジであればそういうだろうと思い、これ以上の事は何も言わずに先に風祭りに行くことにしたのだ。

 

「ゲットレース準優勝者に手伝ってもらえるなんて、私ツイてる!」

「そんな、大げさだよ……。」

 

その後リサはシンジにも聞こえない声でぶつぶつと何かを言ったが、その時に何か物音が聞こえたのかイーブイは耳をピクリと動かせ、シンジの腕から飛び降りて茂みを覗いた。イーブイが何かを見つけたのだと分かったシンジは、リサに『しっ』と静かにするように伝える。

 

シンジとリサがイーブイの見ている場所を一緒に覗くと、そこにはリサの目的であるポケモンの姿があった。

 

「いたいた、イーブイだよ。」

 

彼女のお目当てのポケモン。それはシンジのパートナーと同じイーブイであった。今彼らの目の前にいるのは野生のイーブイだが、この辺りには危険がないのか全くの無警戒で欠伸をしている姿が確認できる。

 

「よくやったね、イーブイ。」

『イブ!』

「リサ、ポケモンは?」

「え?持ってないけど……」

 

リサはポケモンの知識すらない全くの初心者であるためポケモンを所持していない。ならば仕方がないと、屈んだ状態でイーブイ話しかける。

 

「イーブイ、リサの初ゲットに協力してくれるかな?」

『イブ……イブブイ!』

 

イーブイは自分のパートナーの意図を理解したのか、強く頷き返答する。シンジはその答えを聞くと、その場でスクッと立ち上がりリサの手を引っ張る。

 

「え?」

「後は実践あるのみだよ!」

「ええ~!?」

 

リサはシンジの突然の行動にイマイチ飲み込めず驚きの声をあげる。突然目の前に人間が姿を現したため野生のイーブイも警戒し戦闘態勢をとる。

 

野生のイーブイは先ず自分の身を守るためにすなかけをする。野生のイーブイが蹴り上げた砂埃がイーブイの顔に当たってしまい、イーブイは一瞬視界が悪くなってしまう。

 

「い、イーブイごめん!」

『イブ!』

「僕の指示通り動けば大丈夫だから、リサも同じように挑戦してみて!」

「う、うん!」

 

シンジの声に頷き答えたリサは、野生のイーブイと向かい合う。すると野生のイーブイが先に動き出し攻撃を仕掛けてきた。

 

『イブ!』

「リサ!回避の指示を!」

「イーブイ躱して!」

 

まずは基本的な攻撃、でんこうせっかでの牽制だ。シンジの言う通りにリサも指示を出し、イーブイもリサの指示に従い野生のイーブイの攻撃を冷静に回避する。

 

「次はでんこうせっか!」

「イーブイ!でんこうせっか!」

『イブイ!』

 

イーブイは野生のイーブイよりも早いスピードで接近し攻撃の後隙を狙ってでんこうせっかを決める。その攻撃のダメージが相当なのか、野生のイーブイも大きく仰け反り怯んだ。

 

「今だよ!モンスターボールを!」

「うん!おっとっとっと!それっ!」

 

懐からモンスターボールを取り出し、初心者らしいたどたどしい動きでリサはモンスターボールを投げる。そのボールはイーブイにヒットし、数回左右に揺れるも中から飛び出しゲットに失敗してしまう。

 

「惜しい!でももう少しでゲットできるよ!」

 

後少しでも野生のイーブイの体力を削れば確実にゲットできる範囲になることは確信できた。

 

『イブブイ!』

「リサ!こっちもスピードスターだ!」

「イーブイ!スピードスター!」

『イブイ!』

 

野生のイーブイはスピードスターで反撃を仕掛けてくる。対してシンジのイーブイもスピードスターで反撃し互いの攻撃を相殺する。

 

『イッブ!』

「まもるで防御だ!」

「イーブイ!まもる!」

 

野生のイーブイは再びでんこうせっかで接近戦を仕掛けてくる。しかしその攻撃はイーブイのまもるによって完全にシャットアウトされ逆に飛ばされる。その状態はイーブイの反撃する絶好のチャンスとなった。

 

「もう一度スピードスター!」

「イーブイ!スピードスター!」

『イッブイ!』

 

イーブイはスピードスターで野生のイーブイに追撃する。今がチャンスとリサに指示を出し、リサはもう一度モンスターボールを手にして願いを込める。

 

「お願い!」

 

再びモンスターボールが野生のイーブイにヒットする。今度こそ捕まってくれと願いながら、揺れるモンスターボールを全員で見つめる。そして暫くすると、『ピコンッ』と音が鳴り揺れが止まる。ポケモンのゲットに成功した合図だった。

 

「やった!イーブイゲットだよ!」

「え?これでゲットできたの?」

 

初心者であるリサは夢我夢中でやっていたため実際にどうなったのかを把握できていなかった。しかしシンジにそう告げられると、ようやくゲットできたのだと実感することができ額の汗を拭う。一仕事終えたイーブイはシンジの腕に飛びつき再び抱かれる。

 

「あっ……」

「ん?どうしたの?」

「あの……言いにくいんだけど……」

 

汗を拭ったリサにシンジは言いにくそうにしながらもあることを口にした。

 

「……眉毛のメイクとれてるよ?」

「……へ?」

 

それに気付いたリサは急いでその場を離れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!」

「うん。折角だし捕まえたイーブイ見せてよ。」

 

再度メイクをして戻ってきたリサにそう頼み込むシンジ。リサも同意し、早速捕まえたイーブイを外に解放した。

 

リサの捕まえたイーブイはモンスターボールから出るとすぐに欠伸をした。先ほどの様子から考えるともしかしたらこのイーブイは結構なのんびり屋なのかもしれない。

 

イーブイ同士だからか、リサのイーブイは警戒することなくシンジのイーブイと仲良くなる。

 

「私はリサ!これから仲良くしましょ!」

『イブ』

 

リサは屈みイーブイの仲良くしようと声をかける。しかしイーブイはプイッとそっぽを向き拒絶する。どうやらまだリサには懐いていないようだ。

 

「ははは、そのうち仲良くなれるよ。それより、折角だからリサの話よければ少し聞かせてよ。」

「うん、いいよ。」

 

そう言って2人はベンチに腰を掛け、シンジはリサの話に耳を傾けた。

 

リサはここから少し離れた高校に通っている女子高生だそうだ。ケガをして外出できない弟に代わりイーブイのゲットをお願いされたのだとか。

 

以前リサは陸上競技ばかりをやっていたためにポケモンに関しての知識は全くないのだという。地方チャンピオンでかなりの腕前を誇っていたそうだが、足を怪我してしまい陸上をやめたそうだ。ケガは治り現在異常はないが、それでも当時の恐怖から陸上に戻ることはできないらしい。

 

「そっか。でもさ、イーブイと一緒ならまた走れるかもしれないよ?」

「え?どうして?」

「なんとなくだけどさ、ポケモンと一緒だとなんだってできるって思うんだ。きっと、僕の親友も同じこと言うだろうね。」

『イッブイ!』

 

シンジの言葉を聞きイーブイは彼の元に再び飛びつく。シンジの根拠もないその言葉に、なんだかおかしくなりリサは涙を浮かべながら笑った。

 

「あれ?ジュンサーさん?」

 

しかしその時、治安を守るジュンサーがバイクに跨り目の前を横切っていった。

 

「街でなにかあったのかな?」

「とにかく行ってみよう!」

 

街でなにかしらの事件が起きたのかもしれないと思い、シンジとリサは急いで風祭りの開かれているフウラシティまで戻るのであった。



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掲載二周年記念特別編 後編 ~みんなの物語~

二周年記念とか言いながら3週間ほど投稿をサボるヌシです。素直にごめんなさい。

特にオリジナル展開とかはあまり用意してないですが、無能なヌシなりに頑張って書いたので許してください(懇願


無事にイーブイをゲットすることに成功したシンジとリサ。途中フウラシティに向かうジュンサーを見かけた2人は急いで街まで戻ってきた。

 

フウラシティまで戻ると、そこには人だかりができているのが確認できる。そこには風祭りを楽しんでいるサトシの姿もあり、サトシは戻ってきたシンジを見かけると小走りで近づいてきて話しかけてきた。

 

「シンジ!目的のポケモンは捕まえれたのか?」

「うん、無事にね。それよりなにかあったの。」

 

人だかりの中央ではジュンサーが市長と一緒に何かを話しているのが分かる。サトシに何事かと尋ねると、サトシが何があったのか質問に答えてくれる。

 

どうやら線路にに石が詰め込まれていたり、広場に洗剤が撒かれていたりなど、何者かのいたずらが原因で風祭りが続けられない状態になってしまっているようだ。

 

その時、リサが一人の男性を見つけ「あっ!?」と口にしどこか怒った様子で近寄る。

 

「ちょっとあんた!」

「ん?いっ!?」

 

リサの姿を見た男性、カガチは驚き表情を固めるが、少しリサが一方的に言い争っていると思ったら、周囲の人に聞こえない声でひそひそと話し始めた。

 

「あっ!お姉ちゃんポケモンゲットできたの?」

「ええ、おじさんのおかげでね!」

 

どこか含みのある笑顔でそう言うと、カガチは冷や汗を流しながら苦笑いをしてその場をしのぐ。その後、市長からこの場にいるみんなに今回の件についてあることが発表される。

 

「すみません!現在原因を調査中ですので、解決し次第放送にてお伝えしたいと思います!」

 

視聴から一時的に風祭り中断の宣言がされる。とは言え現在の状況が改善されない限りは風祭りを続けることはできないため仕方のないことだろう。

 

サトシとシンジたちは、今回の事件について詳しく聞くために市長の元に駆け寄り声をかける。

 

「市長!」

「?おお、サトシ君とシンジ君!」

「あっ、サトシ!」

「おっ、ラルゴ!」

 

その時サトシは市長のそばにいたピンクの髪をした少女に声をかける。どうやらサトシとその少女、ラルゴは知り合いのようだ。2人の話によるとサトシがこの街についた時にあることがキッカケで知り合ったようだ。

 

「市長、僕たちも手伝いますよ!」

「本当ですか?それは助かります!」

「ちょっと、僕たちってもしかして私も入ってる?」

「みんなで協力すればすぐ終わるよ。」

「それに早く風祭りを楽しみたいしな!」

 

シンジとサトシの無邪気な明るさに思わずため息をつき、面倒くさいと内心思いながらも仕方がないとリサは一緒に手伝うと決める。

 

今の話を聞いたリリィも自分も手伝うといい、彼女の母親であるミアもリリィと一緒に手伝ってくれるそうだ。一方のカガチは研究発表会に赴き何かしらの用事があるというが、リサの威圧に負けてしまいやむなく手伝うことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼らは風祭り再開のために協力して復興しようと努力する。しかしその時、三人組の少年がやってきて何かを口にしていた。サトシとラルゴはこの三人組のことを知っているようだったが、彼らが気になることを喋っていたためそのことについて尋ねてみる。

 

彼らの会話の内容はゼラオラの呪い。昔この土地に住んでいたゼラオラと呼ばれるポケモンが死んだ際、この土地に災いの呪いをかけたのだと言い伝えられているらしい。

 

しかしラルゴは声を荒げ彼らの語る内容を否定する。なぜ否定するのかと気になる尋ねるも、ラルゴは言いよどんでしまう。それと同じタイミングで街中に市長からの放送が流れ、風祭りの再開が宣言される。

 

皆風祭りの再開にワイワイと騒ぐが、カガチただ一人だけ冷や汗を流しながらぶつぶつと言っている姿があった。

 

風祭りの再開に心躍らせるも、カガチはみんなの隙を見てその場を抜け出す。その姿を見たリサは今回の事件に関係があるのではないかと怪しむが、カガチの姪であるリリィは強く違うと断言した。その後シンジとサトシはカガチの後を追いかけようと判断し皆を先導しドードリオに乗ったカガチの後を追いかける。

 

カガチが辿り着いたのは彼が先ほど言っていた研究発表会の会場であった。カガチの後を追っていたサトシたちも、暫くしたら彼に合流し研究発表会が始まった。

 

そこでは緑髪のメガネをかけた少年がおどおどとした様子で皆の前に立っていた。恐らく緊張しているのだろう。そんな彼が研究の発表をしようとスクリーンに画面を映すと、驚くべきことが映ってしまった。

 

それはポケモンゲットレースで行われていた一部始終であった。その画面にはヒトデマンとゲットレース対象のポケモンの姿が映っており、ある人物の視点でモンスターボールが投げられている様子が映っていた。

 

そこに映し出された映像と共に流れていた音声にはある人の声も流出してしまった。それは今壇上に立っている男性の声と、ポケモンゲットレースにて優勝したカガチ本人の声であった。つまりカガチは不正をしてポケモンゲットレースに参加していたというわけだ。

 

その衝撃の真実にショックを受けたリリィがカガチに涙を浮かべて問いかける。リリィの悲しげな表情を見たカガチは言葉に詰まってしまう。大好きな叔父に裏切られたと思ってしまったリリィはカガチに大嫌いと叫び階段を駆け下りる。

 

しかし階段を駆け下りた直後、リリィはその場に座り込んでしまう。元々体の弱いリリィが興奮状態になってしまったため体に負担がかかってしまったのだ。そんなリリィの事が心配になりカガチはリリィに駆け寄った。そんな2人の姿をシンジとサトシはただただ黙って見守るしかできなかった。

 

しかしそんな時、1人のおばあさんの「泥棒!」という叫び声が聞こえた。何事かと気になり皆の視線が集まった先にシンジとサトシが良く見知った顔があった。それはシンジのイーブイ、サトシのピカチュウを付け狙い、各地で悪事を働いているロケット団の姿であった。

 

2人はすぐにその場を同時に飛び出し、ロケット団の後を追いかけるのだった。

 

だがその混乱の中、リサのイーブイが人ごみに巻き込まれて怪我を負ってしまう。そんなイーブイが心配になり駆け寄るリサだが、ポケモントレーナーになったばかりでは何をどうすればいいのかが分からず焦る気持ちだけが込み上げてしまう。

 

しかしその時、先ほどまでおどおどしていた緑髪の少年がまるで別人のように率先してイーブイの容態を確認する。少年はパートナーであるラッキーにいやしのはどうを指示し、イーブイの応急処置をする。一先ずはこれで大丈夫だと判断した彼らは、ジョーイに診てもらうために急いでポケモンセンターへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。まだ足のケガは完治していませんが、しばらく安静にしていれば大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます!ジョーイさん!」

 

その日の夜、リサはジョーイからイーブイを預かりイーブイに具合を尋ねる。イーブイは少しだけ笑みを浮かべ、リサの言葉にしっかりと頷き大丈夫だと伝える。

 

先ほどの一件でリリィに会いに行っていたカガチが部屋から戻ってきた。そんな彼から見られたのは普段の陽気な彼とは違い明らかに落ち込んでいる姿であった。

 

「リリィちゃんは?」

「今はぐっすり眠っている。一日騒ぎすぎて疲れてたんだろう。元々体が強くなかったからな。」

「ごめんなさい。僕のせいで……。」

「いや、俺が嘘ばかりついてたからだ。」

 

緑髪の少年、トリトがそう尋ねてカガチが答えた。その後、ポケモンセンターの自動ドアが開きロケット団の後を追っていたサトシとシンジが入ってくる。

 

「どうでしたか?」

「ごめんなさい。2人で手分けして追いかけていたんですが……」

「途中で見失って逃げられてしまいました。」

 

トリトの質問にサトシとシンジは申し訳なさそうにそう答える。その後、リサが抱えていたイーブイのケガにシンジが気付き、彼女にそのケガはどうしたのかと尋ねる。

 

リサは2人にケガの経緯を伝える。足を捻らせてしまったようで未だ後ろ足を痛めているイーブイを心配し、シンジとシンジのイーブイが心配そうに尋ねるが、2人は笑顔で安静にしていれば大丈夫と答える。

 

「……今日はもう遅い。みんなも疲れたろう?今日はもう休もう。」

 

この中で最も年配のおばあさん、ヒスイの言葉に全員が頷き今日は一先ず休むことにした。今日は色々と騒ぎ続きであったためみんなの顔から疲労の色が伺える。それを察した彼女の配慮であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、今朝早くにリサがシンジたちの部屋を尋ねてくる。シンジがそれに応対すると、リサは外がなんだか騒がしいという。シンジは未だぐっすりと寝ているサトシを起こし外の様子を確認に出る。

 

すると風の街であるはずのフウラシティに明らかな異変が起こっていた。それはフウラシティ全体の風車が止まっているのである。

 

伝説のポケモンルギアから風を授かっているはずのフウラシティでは風が止まるといったことはそうそう起こるものではない。何かの原因があるのは明白であった。それらを追求するために、シンジたちは市長のもとへと行き尋ねることにした。

 

シンジたちが向かったのはみんなが集合している広場であった。広場には街に伝わる聖火台があり、原因としたらそこに何かしらの異常があるからに違いないと踏んでの行動だ。

 

予想は的中し、その場にいた市長と昨日であったおばあさんのヒスイは聖火台にあるはずの聖火になんらかの異変があるのだといった。シンジとサトシはその原因を調べるために聖火台まで上ることにした。

 

三人が聖火台に上ると、そこにあるはずの聖火が無くなっていた。誰かが持ち去ったのだと考えられるが、その場には証拠と呼べるものが見当たらなかった。どうするべきかと悩むシンジとサトシだが、イーブイとピカチュウが周辺の匂いを嗅ぎ始め2人に道を指し示す。

 

高いところが苦手だと終始腰を落としていたリサを連れ、2人は聖火台から降りピカチュウとイーブイの後を追う。するとそこには昨日知り合った少年であるトリトと、彼が連れているポケモン達の姿があった。ピカチュウたちが辿り着いたのはトリトの連れているポケモンの一体、ドーブルであった。

 

リサはもしかしたらドーブルが犯人なのかと尋ねるが、ピカチュウとイーブイ、それとドーブルは犯人だということを否定する。未だ疑問を感じているトリトに現状の説明をすると、ピカチュウたちにドーブルのインクに釣られてやってきたのかと尋ねる。ピカチュウとイーブイはトリトの答えに頷くと、一行はトリトを連れ再び聖火台へと戻る。

 

トリトが原因となるドーブルのインクについて説明する。ドーブルは自身のインクを縄張りに付けて誇張する。それを改良した薬剤は透明だが、トリトの取り出した懐中電灯のようなものを地に照らしてみる。するとそこに現れたのは小さな足跡であった。恐らくサイズ的に考えて子どもの足跡だろう。

 

サトシとシンジ一行は足跡を追いかけ逃げたであろう犯人の元へと急行するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フウラシティから少し離れた山に2人の男の影があった。その男たちはポケモンたちを捕獲用のネットで捕らえ高く売れるとニヤニヤと笑っていた。

 

そんな男たちの一番の目的は、少し前に聞いたレアなポケモンであった。つい先日のカガチの発言によりそのレアなポケモンがこの近くに存在しているという噂が流れたため彼らのようなポケモンハンターが金のために動いてしまっているというわけだ。

 

噂の超レアなポケモンが見当たらないとボヤキながら彼らが歩いていると、建物が廃墟のような場所に出た。そこからピンク髪の少女、ラルゴが姿を現す。

 

「あれ?おじさんたちどうしたの?」

「やあ嬢ちゃん。このあたりに珍しいポケモンは見かけなかったか?」

 

ラルゴは男性の質問にしばらく悩むそぶりを見せて、明後日の方角へと指を指す。

 

「見た見た!」

「ホントか!?」

「うん!あっちの方で見たよ!あんなポケモン見たことないもん。」

 

男性はラルゴの言葉を信じてそちらの方角へと歩いていく。しかしその時、何かが動く物音がした。その場所へと目をやると、そこには慌てた様子のヒメグマとメタモンがいた。

 

彼らの目的とは違うポケモンであろうが、両者とも珍しいポケモンに違いなかった。男たちはそのポケモンたちを捕まえるためにモンスターボールを構える。

 

「待って!珍しいポケモン捕まえに行かなくていいの?早くしないと逃げちゃうよ!」

 

そんなラルゴの忠告もお構いなしに男たちはパートナーのヘルガーとニューラを繰り出す。そしてその二体の攻撃が容赦なくラルゴに迫った。

 

ラルゴは危険だと感じ咄嗟にヒメグマたちを守ろうと庇う。しかし一向にラルゴたちを襲う痛みはやってこない。ラルゴが恐る恐る目を開けると、そこには彼女を庇うゼラオラの姿があった。

 

「おいおい、なんだあのポケモン?あんなん見たことねえぞ?」

「やっと見つけたぜ!レアなポケモン!」

 

男たちはようやく見つけたポケモンの姿に興奮する。ゼラオラはそんな卑劣な人間たちに憎悪の怒りをあらわにする。その姿には長年抱き続けた人間たちへの怒り全てが込められているようにさえ感じさせる。

 

男たちはゼラオラを捕獲するために自分のポケモンたちに襲い掛からせる。ゼラオラはそんな人間たちに必死の抵抗を見せる。

 

伝説に伝わるゼラオラはかなり強力な力を所有していた。しかしケガを負ってしまい本来の力を出し切れないゼラオラは次第に押し切られてしまいラルゴの目の前で倒れてしまう。ラルゴは必死に呼びかけるものの、ゼラオラからの返事はない。

 

「手こずらせやがって。」

「だがこれでゲットだぜ!」

 

男たちは捕獲用ネットを発射する。もうお終いかと思ったラルゴだが、そのネットを二体の影が破ったのであった。

 

そしてラルゴの目の前に立ったのは2人の少年、シンジとサトシであった。ネットを破り捨てたのは、彼らのパートナーでもあるイーブイとピカチュウだったのだ。

 

「よく頑張ったな、ラルゴ!」

「あとは僕たちに任せて!」

「サトシ!シンジ!」

 

頼もしく感じた2人の背中に、ラルゴは再び希望を持つことができた。その後、他数名の人間がその場に駆けつけてくれたのだった。

 

「!?ラルゴ!」

「あ、お、お父さん!?」

 

ラルゴの父親でもありフウラシティの市長でもあるオリバー、そしてリサにトリト、それからヒスイであった。

 

市長が男たちにこれ以上の行為に対しての注意勧告をすると、男たちはポケモンたちを戻しその場を急ぎ立ち去っていく。

 

追いかけようとするリサであったが、ヒスイが深追いは禁物と抑止した。トリトが先ほど使ったライトを使用すると、足跡の正体がラルゴのものであることが分かった。つまり聖火を盗み出したのはラルゴだったというわけだ。まさかの結末にサトシとシンジは驚きを隠せない。

 

なんとなく察しがついていた市長は、ラルゴに近づき屈み今回行った過ちをきく。

 

「……お前がやったことがどれだけ大変なことか、分かっているね?」

 

ラルゴはなぜこのような行為に至ったのか白状する。

 

最初にゼラオラと知り合ったのはこの付近でポケモンたちと遊んでいた時であった。突然崖の岩が崩れ、ラルゴたち目掛けて落ちてきた。本来であればケガでは済まない事態になっていただろう。

 

しかし、ラルゴたちのピンチを救ったのがここにいるゼラオラである。どこからかやってきたゼラオラは落ちてきた岩を受け止めラルゴたちを助けたのである。ゼラオラは死んだと聞かされていたラルゴは驚きを隠せなかった。

 

だがその時にゼラオラは大きなケガを負ってしまう。ラルゴはその時のお礼も兼ねて、ゼラオラを守ってあげようと決意したのだ。

 

先日、カガチの言った言葉であるレアポケモンの存在が主な理由だそうだ。レアポケモンの存在が知られれば、ゼラオラが人間たちに捕まってしまう。それを恐れ風祭りを中止にすることでゼラオラの存在を隠そうと考えたのだ。

 

今回の一件が収まれば、またひっそりと聖火を元に戻すつもりだった。しかしこれだけ大ごとになってしまってはこれ以上隠すことはできないし、自分が犯してしまった過ちも消すことはできない。多くの人に迷惑をかけてしまい済まないと謝るラルゴ。

 

だがそんなラルゴを市長は咎めようとはせず、ある出来事を語ることにする。その内容は、フウラシティの人々がゼラオラの存在を隠ぺいした理由であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつてゼラオラはここのポケモン達を率いて仲良く暮らしていた。ポケモン達もゼラオラの事を慕っていた。

 

しかし人間は、更に豊かな暮らしを求め続けた。その結果、50年前の山火事が発生してしまったのだ。

 

ポケモン達の事まで目がいかなかった人間たちだが、ゼラオラだけはポケモン達のことを見捨てなかった。人間たちのせいでポケモン達の住処が無くなり追いやられてしまったのだと判断したゼラオラは、次第に人間たちの事を嫌う様になってしまった。

 

その後、ゼラオラの噂を耳にした人間たちはゼラオラを捕まえようとこの地を訪れた。それが原因で、人間たちはゼラオラの信頼を失ってしまったのだ。

 

先代の市長たちは、二度とゼラオラに関わらないようにするために嘘をつくことを決めた。それこそが子供たちの話していたゼラオラの呪いである。衝撃の真実を知った一行は、驚かずにはいられなかった。ただ一人、その真実を知っていたヒスイだけが、市長の話を静かに聞いていた。

 

しかしその真実が明らかになった時、爆発音が聞こえ大きな振動と共に最悪の災害が訪れることとなってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

全員が一斉に爆発音の聞こえた方を眺める。するとそこには辺り一面を覆いつくすほどの黒い煙が広がっていた。それを見たトリトは、尋常ではない程の冷や汗を流し、彼の表情を見るだけで非常事態だという事はすぐに分かった。

 

また、その非常事態と同時に上空を飛んでいたポッポたちが次々と弱っていき地上に落ちてしまう。トリトはそんなポッポたちを助けるために、パートナーであるラッキーに指示を出しアロマセラピーで回復をはかる。

 

アロマセラピーはポケモンの体力ではなく、状態異常を回復させる技だ。その技の効果を知っていたシンジは、自分の考えた推測をトリトに尋ねようとする。

 

「トリトさん。もしかしてあの煙って……」

「……はい。あれはポケモンの特性“ほうし”を元にして作ったものです。」

「それって胞子の薬剤……ロケット団が盗んだ!」

 

ポケモンの特性であるほうしは、触れた相手を稀に麻痺状態にしてしまう特性の事だ。あの煙は

ほうしの濃度を上げたもので、触れたり吸ったりしてしまえばポケモンだけでなく人間たちも毒に犯されてしまい重度の麻痺状態となってしまうのだそうだ。

 

「ど、どうしてそんな危険なものを?」

「研究の結果、あの薬剤は人間に病気に効果があることが分かったんだ。」

 

リサはその薬剤を作った原因を尋ねるとトリトはそう答える。毒や薬にもなる、という言葉があるように、胞子も使い方次第では人間にも効果がある薬にもなるという事だ。

 

結果的にではあるが、これは50年前の山火事と同じ人間の過ちによって再発してしまった事故である。より快適な利便さを求めた人間の末路という事なのだろうか。

 

ロケット団が盗んだ薬剤をばら撒いたのか、はたまた事故で暴発してしまったのかは不明だが、このままでは街中が大パニックとなってしまい事態は一刻を争うだろう。

 

だがこうして黙っていてもなにもはじまらない。そう考えたサトシは数歩前に出て、みんなの方へと振り向き宣言した。

 

「俺たちで、フウラシティを守るんだよ!」

 

でもどうやって?というリサの疑問に皆も同意する。これだけの大災害をたった数人の人間の力でどうやって止めればいいというのだろうか。

 

「俺たちにはポケモンたちがいる!傍にいるだろ?」

 

ここにいる皆がサトシの言葉にハッとなり自分の傍に当たり前のようにいてくれる大切な存在、ポケモンの姿が目に映る。

 

そうだ。今まで自分たちと共にいてくれたポケモンたちが傍にいる。なぜこんな当たり前の事に気付かなかったのだろうか。

 

「……そうだね。相変わらずだよ、君は。」

 

そう言ってシンジもサトシの横に立ち皆の方へと振り向いた。

 

「僕たちの隣にはポケモンたちがいる。ポケモンたちがいればなんだってできるんだ。」

「だってそれが……」

 

2人は目を合わせ、息を合わせるかのように同時に声を発した。

 

『ポケモンパワーだ!』

 

「ハハハ!なによ2人してポケモンパワーって!」

 

涙を浮かべ笑うリサ。確かに2人の言っていることは無茶苦茶で言葉だけ聞いたら意味が分からない。だがそれでも心の中ではその意味が分かってしまう自分もいる。だからこそ自分も彼らに少なからず影響されているのだという事に気付き笑わずにはいられなかったのだ。

 

リサだけではない。ラルゴや市長、トリトにヒスイ。この場にいる全ての人間が2人の言葉に納得していた。

 

ならばこうしてはいられない。みんなで協力してこの事態を収束に導くのだと決めたのであった。

 

とは言えそう簡単にものではないことは誰に目にも明らかだ。まずは個人個人での役割を決める必要がある。

 

まずはトリトがこの状況の打開策を考える。ポケモンの特性“しぜんかいふく”を利用した薬剤を作ることができればあの煙をどうにかすることができるかもしれないと考える。

 

しかしたとえ作ることができたとしても、それを街中にばら撒く手段がない。そこでヒスイが一つの提案をする。それは風を使うことである。

 

しかしルギアがいないこの状況でどうすればいいのか?そう疑問に思うものたちにヒスイは古びた風車の施設を起動させればいいと告げた。

 

ヒスイ曰く、あの施設はヒスイ自身が作ったものであり、あれを起動させることが出来さえすれば薬剤を街中にばら撒くことも容易いとのことだ。

 

目的は決まった。まずトリトが胞子の薬剤を止めるための新たな薬剤を仲間たちと作る。それをヒスイが動かす施設によって街中にばら撒きこの騒動を収めるということだ。

 

市長は今回の事態の対応をフウラシティに戻り皆に伝え、混乱を少しでも抑える。そして残ったサトシ、シンジ、リサ、ラルゴの四人でゼラオラを含む弱ったポケモンたちの手当てをする。トリトによると薬剤の煙は比重が重いため、高いところであれば安全だそうだ。

 

サトシたちはトリトからポケモン用のキズぐすりを貰い早速ポケモンたちの治療に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これで大丈夫だよ。」

「へえ、ポケモンの応急処置になれてるのね。」

 

シンジがキズぐすりと万が一のために備蓄していた木の実を併用しポケモンの体力と状態異常を治していく。リサはそんなシンジの姿に感心を覚える。

 

「いざというときのためにある程度自分でできるようにしてるんだ。結果的に役に立ってよかったよ。」

 

シンジとサトシたちがこの場にいる殆どのポケモンたちのケガと症状を治していくと、今まで気を失っていたゼラオラが目を覚ます。しかし、ゼラオラは先ほどの一件の事もあり目を覚ました直後にシンジたちを警戒し距離を離す。

 

「ゼラオラ!私たちはあなたに何もしない!だから!」

 

ラルゴが必死にゼラオラを説得しようと試みる。しかしゼラオラは一向に警戒を解こうとしない。その時の遠くで更なる爆音が聞こえる。

 

ゼラオラはその爆音からポケモンたちの危険を察知し、体を稲妻へと変えてすぐさま飛んでいく。ラルゴは慌ててゼラオラの後を追いかける。

 

「サトシ!」

 

シンジはサトシに呼びかける。シンジはサトシに首を縦に振ることで答えると、シンジの意図を理解したサトシはラルゴの後をすぐに追いかける。シンジはそのサトシの背中を見送ると、リサに近づき口を開いた。

 

「リサ」

「え?なに?」

「……あの聖火をフウラシティの聖火台まで持っていくんだ。君の足で、ルギアを呼ぶんだよ。」

「!?無理だよ無理!そんなのできるわけない!」

 

シンジの頼みにリサは全力で否定する。以前足にケガを負ってしまって以来自分の足で走ったことのないリサには、その時の恐怖から走ることを自然と拒んでしまう。しかし、それでもシンジはあきらめようとはしなかった。

 

「これはリサにしか頼めないことなんだ。ここから聖火台までかなりの距離があるけど、この距離を走って聖火を届けられるのはリサしかいないんだ。」

「そ、そんなの……無理だよ。だって私は……。」

 

シンジの必死の説得にリサは心が揺れながらも否定し続ける。そんなリサの姿を見た彼女のイーブイが彼女の腕から飛び降り、聖火を咥えてリサの元まで必死に運ぶ。かつてのリサのように足にケガを負いながらも。

 

「どうして?どうしてそんなに頑張れるのよ!」

『ブイ!』

 

リサは涙を流してそう問いかける。イーブイはただリサに笑顔で答えるだけであった。ただそれだけなのに、イーブイが訴えたいことが自分に伝わった気がした。

 

「ポケモンと一緒なら、どこまでだって行ける。」

「シンジ……」

「前にも言ったよね?リサもイーブイと一緒にいれば絶対また走れるようになるって。」

『イブブイ!』

 

シンジのイーブイもリサにエールを贈る。イーブイを捕まえたとき彼に言われたこと。リサはその言葉を思い出す。あの時はそんな簡単にいくわけがないと笑い飛ばしていたのに、今では寧ろその言葉が信じられる気がした。

 

リサは覚悟を決めた顔で髪留めを使い邪魔にならないように髪を後ろで留める。そして走りやすいようにその場に靴を脱ぎ捨て、イーブイを抱きかかえて聖火を手にする。

 

「シンジ」

 

リサはシンジの名を呼ぶ。シンジはそんなリサの顔を無言で見つめ見守っていた。

 

「私、今まで現実から逃げてばかりだった。でもあなたとイーブイのお陰で分かったんだ。逃げてばかりじゃダメだってことに。」

「リサ……」

「見てて。私は一歩踏み出して見せる。だって、これが……」

 

リサはクラウチングスタートの態勢をとる。

 

「イーブイ。しっかり掴まっててね。」

 

肩に乗るイーブイにそう伝える。そしてリサは最後の決め台詞を吐きスタートの合図にする。

 

「……これが私の、ポケモンパワー!」

 

リサはそう言ってスタートを切る。以前全国クラスの陸上部選手であったというだけあり、その姿はどんどんシンジの目から遠ざかり小さくなっていく。

 

彼女の覚悟を見届けたシンジは、リサなら絶対に大丈夫だという確信を得て、ここからは自分のするべきことをやろうとサトシたちの元へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サトシ!」

「!?シンジ!」

 

シンジがサトシの元へとたどり着くと、そこには既に傷だらけのピカチュウとゼラオラが戦っている姿があった。

 

ゼラオラはシンジの声を聞くと、一時的に戦闘を中断する。しかし彼の表情から、憎むべき人間がまた増えたかという憎悪の感情が伝わってくる。今の彼は完全に憎しみに囚われている。

 

無理かもしれないが、可能性がゼロじゃない以上、シンジはゼラオラに説得を試みる。

 

「ゼラオラ、人間のこと、今でも信用できないんだよね?」

『・・・・・・』

 

ゼラオラはシンジの言葉に無言の圧力をかける。電気の火花がゼラオラを包みいつでも攻撃の態勢に移れるであろう状態だ。シンジが危険だと感じたイーブイは、シンジの前にでて守ろうとする。

 

「イーブイ、僕なら大丈夫だよ。」

『イブ?』

 

シンジの言葉に疑問符を浮かべるイーブイだが、パートナーがそういうのであれば信じないわけにはいかないとイーブイは一歩引き警戒を解く。サトシもシンジの事だからなにか考えがあるのだと思い見守っている。

 

「……信じることができないんだったら恨めばいいよ。僕も君の嫌いな人間だから。でも、キミのことを助けた女の子だけは信じてあげてほしいんだ。ただ一人、キミの味方でいてくれたんだから。」

『!?』

 

シンジの言葉で明らかに心が揺らいだ様子を見せるゼラオラ。それでも人間はみな信用することはできないと自分の信念を貫くためにそう言い聞かせ、自分の腕に稲妻の力を蓄電させる。

 

その力を思いきり地面に解き放つ。ゼラオラの専用技であるプラズマフィストだ。その攻撃はサトシとシンジ、ラルゴを目掛けて貫くはずであった。しかしケガを含め余力が少ないゼラオラの攻撃は対象からそれてしまい、近くにいるポケモンたちの元へと向かってしまう。それに慌てゼラオラは駆けつけようとするも思う通りに体が動かない。

 

そんなゼラオラよりも先に動いたのはサトシとシンジだ。サトシはポケモンたちの正面に立ち、ポケモンたちを庇う。シンジはゼラオラの攻撃を背にし、ポケモンたちを覆うように庇った。

 

ゼラオラの攻撃を受けたサトシは仰向けに倒れ、その際に発生した衝撃によってシンジもまたうつ伏せでその場に倒れてしまっていた。

 

「サトシ!シンジ!」

『ピカピ!?』

『イブイ!?』

『!?』

 

あまりの衝撃に慌てて近づくラルゴと心配になって焦るピカチュウとイーブイ。彼らの声に反応を示さない2人だが、守ったポケモンたちに顔をペロリと舐められると、2人がくすぐったさに笑顔を浮かべそのまま起き上がる。

 

「今回は何とか無事で済んだね。」

「ああ、少しヒヤッとしたぜ。」

「もう!ヒヤッとしたぜ、じゃないわよ!心配したんだから!」

『ピカチュ!』

『イブイ!』

 

ラルゴの言葉にごめんごめんと謝るサトシ。そんな2人にパートナーのピカチュウとイーブイは涙を浮かべて飛びついた。2人の覚悟とポケモンとの絆を見せられたゼラオラも、2人の傍に近寄り手を差し出す。

 

「ゼラオラ?」

「……分かってくれたのかな?」

 

サトシとシンジは差し出されたゼラオラの手を掴み立ち上がる。するとゼラオラは2人の心に答えるように初めて人間に微笑みかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼラオラと和解することに成功したシンジとサトシたち。ラルゴやゼラオラを含むポケモンたちと共に協力し、あの時のように発生してしまった山火事の消火活動に当たっていた。

 

その途中、空から鱗粉のようなものが街や山全体を包み込む。この粉は間違いなくトリトの言っていた自然回復の薬剤だ。その証拠に、先ほどまで街に見えていた黒い煙は見る見ると消えていく。彼らの方も無事作戦が終了したようで、体調が悪くなっていたポケモン達も元気を取り戻していく。

 

しかしこちらはと言うと、ゼラオラと協力してもなお山火事の勢いは収まる気配がない。シンジの言うようにリサがルギアを呼ぶまで抑えることができればいいのだが、このままではさらに勢いが増すばかりである。

 

このままでは厳しいのではないかと思った矢先、他の人間たちの声が聞こえる。振り向くと、そこには大勢の人間を引き連れた市長の姿があった。ゼラオラは人間たちの姿を見て、即座に警戒態勢に入る。やはりラルゴたちの事を信用することはできても、すべての人間に同じ感情を向けることはできないのだろう。

 

ラルゴはそんなゼラオラに呼びかけ抑止させる。未だ警戒を解くことのないゼラオラに市長は無言で頭を下げることで自分の意を示す。その後、連れてきた他の人間たちに指示を出し、トリトやヒスイ、そして彼らの協力をしていたカガチらも含み消火活動に全力で取り組もうとしていた。

 

その姿をみたゼラオラは、先ほどまで纏っていた殺気をしまう。自分たちのことを狙っていた以前の人間たちとは明らかに違うということが分かったのだろう。そんなことを思うゼラオラにラルゴはこう告げた。

 

――前にサトシとシンジが言っていたの。人の傍にポケモンがいるから、人はどこまででも頑張れるって。それってさ、逆もそうなのかな?

 

その言葉にゼラオラは考えさせられる。人の傍にポケモンがいれば人は頑張れる。であればポケモンの傍に人がいればポケモンたちもまた頑張ることができる。以前は考えもしなかったことだが、それは今の自分でも当てはまることができるのだろうかと。

 

この場にいるすべての人間が消火活動に懸命に取り組んでいる。電気ポケモンと一緒にスプリンクラーを作動させるために止まった電気を発電する者、水ポケモンと一緒にバケツに水を汲み消火する者、50年前には見られなかった光景がゼラオラの目に映っていた。

 

懸命に消火活動に取り掛かってくれる人間たちに危険が及んだ時、ゼラオラが助けてくれた。ゼラオラの心にもラルゴやサトシ、シンジだけでなく他の人間たちも信用してみようという心が芽生えたようだ。

 

その後、人間とポケモン達の協力によって施設のスプリンクラーが作動する。これでこの周辺の火災だけでも収束させることが出来るであろう。

 

人間とポケモン達の協力の元、大きな事件が収束に向かっていることを実感したラルゴはサトシの元へと駆け寄る。しかしその時に悲劇が起こってしまう。

 

施設の上に建ててある鉄塔が火災による被害に耐えられず折れてしまい、ラルゴの上へと落ちてきてしまう。それに気付いたサトシはラルゴを守るために彼女に近づき庇う。

 

だがその鉄塔はラルゴとサトシの元へと落ちることはなかった。なぜならその鉄塔は、ゼラオラによって支えられていたのだ。

 

ゼラオラはその鉄塔を元の場所へと戻そうと力を振り絞る。しかし今までのケガや疲労もあり中々持ち上げることが出来ない。

 

そんなゼラオラにラルゴを始め、この場にいる人間たちが声を張り上げゼラオラに声援を送る。あれだけ憎み嫌っていた人間からの声援を受け、ゼラオラは不思議と限界以上の力が湧き上がる。刹那、ゼラオラの脳裏には、先ほどのラルゴの言葉が繰り返される。

 

人間の傍にポケモンがいれば人間はどこまででも頑張れる。逆もそうだろうか。今ならゼラオラもその言葉の意味が分かると感じる事ができた。

 

ゼラオラは大きく咆哮を上げ更に力を引き上げる。体中が悲鳴をあげているが、それでもなお力を緩めようとしない。結果、ゼラオラは鉄塔を元の場所まで戻すことに成功した。

 

しかしその時、ゼラオラは力尽きてしまい地上まで転落しはじめてしまう。このままでは今のゼラオラでは無事では済まないであろう。

 

そんな彼を救うため、野生のポケモンたちが技“わたほうし”を使用しゼラオラの転落地点にクッションを作る。ゼラオラはその柔らかいクッションに助けられ無事に済んだ。

 

いつも助けている弱きポケモン達に、今度は逆に助けられた。不思議な気分だが、助け合うのも悪くないとゼラオラは自然と心配で近寄ってきたラルゴに笑みを浮かべるのであった。

 

その後、地上には雨が降り注いだ。突然の雨に喜びと戸惑いを感じた人々は空を見上げる。するとそこには伝説のポケモン、ルギアの姿があった。

 

ルギアの姿を見た人々は興奮し、シンジはリサが遂にやり遂げてくれたのだと確信することが出来た。聖火が戻ったことで、街にも風が再び吹き、事態は収束を迎えたのであった。長年人間がついてきた嘘に終止符を打ち、新たな一歩を踏み出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ゼラオラを隠す掟を撤廃すると宣言した市長。何もかもが元通り、いや、良き方向に進み人間とポケモンたちが共に協力し前へと進むことを決意した。

 

風祭りも無事再会し、全ての人、ポケモンたちは変わった。そしてシンジとサトシは、今回経験したことを糧とし、自分たちも前に出ようと再び旅に出るのであった。

 

一方その時、とある近くの病院では。

 

「という事で、フウラシティは――」

「ちょっとリクくん!」

「!?ね、姉ちゃん!?」

「どうして私の居場所が分かったのか……正直に答えなさい!」

「あっ、いや、そのサングラスハイテクでさ……。風祭りの情報とか欲しいなって……。あっ、それより!」

「?なによいきなり」

「姉ちゃん、あのシンジって人とはどうなの?」

「え?」

「あんなものまであげちゃってさ。もしかして姉ちゃん……」

「!?///こ、こらリク!姉ちゃんをからかうんじゃない!」

「ご、ごめんなさーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックション!」

「おい、シンジ?大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫大丈夫。」

「ん?シンジの握ってるそれってネックレスか?」

「うん。風祭りの後にリサから貰ったんだ。今回世話になったお礼だって。」

「へえ~。よかったなシンジ!」

「うん。」

『ピカピカチュウ!』

『イブイブ!』

「……なあ、シンジ」

「なに?サトシ」

「次はどんなポケモンに出会えるかな!」

「……ふふ、楽しみだね!」

「ああ!行こうぜピカチュウ!」

『ピカチュウ!』

「行こう!イーブイ!」

『イーブイ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には不思議な不思議な生き物が存在している。空に、森に、海に、街に、至る所でその姿を確認することが出来る。共に笑ったり、泣いたり、怒ったり、仕事をしたり、遊んだり、時に喧嘩したりすることもある。それでも人間たちと協力し、いつまでも仲良く暮らしていた。

 

この世界に無数に存在しているその生き物の名は、ポケットモンスター。縮めて、ポケモン。ポケモンの数だけの夢があり、ポケモンの数だけの冒険が待っている!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-THE END-




恐らくキミにきめたに比べて文字数が少なくなってしまった理由は、あっちに比べると色んな人の視点で物語が進む関係上省いている部分が多くなってしまっているのが原因かと思われます。映画見ていない方は絶対に面白いので本編を見ることをオススメいたします。

書いてる途中でリーリエの話が無性に書きたくなってしまったりしました。次回には間に合うように努力します。


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コラボ外伝 サンムーン~ifストーリー~ × もう一つのサン&ムーン

完成いたしました!最後に慌てて書いてしまったのでやっつけ感あるのは申し訳ない……。

恐縮ながらパラドファンさんとのコラボ回を書かせていただきました!別作品様を書くのは難しく大変でしたが、その分自分も凄い楽しかったです。パラドファンさんありがとうございました!

書いてる途中にロトム図鑑とか色々忘れかけてたのは内緒です。多くのキャラを書くのって大変だと感じる今日この頃です。

追記
実はロケット団かスカル団の下りを入れようか迷いましたが、実際入れたらえらい長くなってしまったので全てカットしました。ロケット団だけで1万字はさすがに……。
後内容も以前と同じで完全にぐだってしまいました。できるだけ2人のバトル中心に書きたかったのでそこはご勘弁を

ちなみにアニポケコラボとは関係ない為サトシたちとは初対面です


ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界に住む不思議な不思議な生き物。

 

空に、森に、山に、海に、そして街にさえも存在し、この世界のいたるところでその姿を確認することが出来る。

 

人とポケモンは互いに助け合い、共に暮らしている。時にはポケモンを悪用しようとするものもいるだろう。しかし、人にとってポケモンはなくてはならない存在であり、ポケモンにとってもまた人はいなくてはならない存在である。

 

だがこの世界にも様々な可能性が含まれている。それが並行世界と呼ばれる世界……可能性そのものを体現した世界だ。

 

いつもと違う自分、いつもと違う友人、いつもと違う大切な人、いつもと違うパートナー。そんな存在ともし出会うことがあればどのような物語が紡がれるのだろうか?

 

この話は、もしそんな世界と交じり合ったら?と言う可能性の物語である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはエーテルパラダイス。エーテル財団と呼ばれるポケモンや環境の保護を目的としたアローラでも随一と呼べる団体が存在している巨大組織である。そしてこのエーテルパラダイスに、2人の少年と少女が呼ばれてやってきていたのだ。

 

「失礼します。」

「いらっしゃい。よく来たわね。シンジ君、リーリエ。」

 

大きな一室にノックをして入る少年と少女。そして奥の椅子に座っていた女性はすぐに立ち上がり2人の事を歓迎した。

 

少年の名はシンジ。このアローラ地方において就任した初代のアローラリーグチャンピオンである。現在もアローラのチャンピオンとしての務めを毎日こなしている。

 

少女の名はリーリエ。かつてシンジと共にカントー地方を旅し、アローラでは島巡りを突破して今ではポケモントレーナとして立派に成長を遂げた。

 

そして2人を歓迎した女性の名はルザミーネ。ここエーテル財団の代表を務めており、リーリエの母親でもある。以前はある事情により代表の座を退いていたが、ある人物の意向により再び代表の座へと就くことにしたのだ

 

「私たちに用事とは、何かあったのでしょうか?お母様?」

 

なぜ自分たちを呼び出したのか分からなかったリーリエはその理由を母親であるルザミーネに尋ねる。ルザミーネを早速本題に入ろうとリーリエの質問に答えるために口を開く。

 

「実は、あなたたちに調査してほしい事があるの。」

「調査……ですか?」

 

ルザミーネの意外な頼みにシンジは首を傾げる。

 

ハッキリ言えばシンジとリーリエは調査に関しては全くの素人同然だ。何をすればいいのか右も左も分からない。そんな2人に依頼するよりもエーテル財団の人間を使った方がよっぽど効率がいいだろう。シンジは疑問に思いながらもルザミーネのその内容を尋ねた。

 

「調査とは、いったいどんな内容なんですか?」

「それにはついては私が答えるわ。」

 

ルザミーネがシンジの質問に答える前に背後の扉が開き2人は振り向く。するとそこには一人の女性が立っていた。

 

「バーネット博士!」

 

リーリエが驚きの声をあげる。彼女の名はバーネット。リーリエがかつてお世話になった人物で、彼女にとってもう一人の母親的存在である。

 

「どうしてバーネット博士がここに?」

「今回の依頼、私からもお願いしたい事なの。」

 

バーネットはルザミーネの横に立ちそう答える。そしてバーネットはシンジたちの疑問に答えるために口を開き以来の詳細を話す。

 

「実は最近、アローラの各地で空間が不安定になっている箇所があることが私たちの調査で判明したの。」

「空間が……ですか?」

 

意味が理解できずリーリエは思わずバーネットに聞き返す。バーネットはそんなリーリエに一つ質問をした。

 

「リーリエ、あなたはこの世界とは別に違う世界が存在すると言ったら……信じる?」

「別の世界?」

 

リーリエはあまりに突拍子もない話に目が点になってしまう。

 

バーネットは自分たちの住む世界とはまた別の世界があるのだと説明する。そんな非現実的なことがあるのだろうか?突然明かされた非現実的な話にリーリエは頭を悩ませる。

 

「じゃあ並行世界(パラレルワールド)……って知ってるかしら?」

「確かこの世界とは違う別の可能性の世界……ですよね?」

 

シンジの曖昧ながら話した説明にルザミーネは頷いた。ルザミーネとバーネットは並行世界についての説明を2人にする。

 

並行世界。この現実とは別に、もう一つの現実が存在する可能性の世界だ。別の歴史を辿った世界、あり得るかもしれなかった世界とでも言えばいいのだろうか。

 

ルザミーネは未だに理解が追い付いていないシンジとリーリエに例え話で説明する。

 

「例えばそうね……シンジ君がこのアローラを訪れなかったとするわ。」

 

シンジとリーリエはルザミーネの言葉に頷き耳を傾ける。

 

「そうすればリーリエはシンジ君とあっていなかったかもしれないし、シンジ君はリーリエとあっていなかったかもしれない。そうすればシンジ君は私たちとも会っていなかった可能性だってあるし、私はウツロイドの毒にやられて永遠に支配されていたかもしれない。」

 

今だから思えることだが、そんな現実は受け止めたくないと心の中で思うリーリエ。シンジとの出会いが彼女を変え、ウツロイドの神経毒に侵されていたルザミーネを救ったのは事実だ。もしシンジとアローラで出会えなかったと思うとゾッとする。

 

「この世界には様々な可能性が秘められているの。人との出会い、夢、もし一つの選択が違えばそれだけで未来は大きく変わる可能性もあるのよ。」

 

バーネットはそれこそが並行世界なのだと説明する。その言葉でシンジとリーリエは深く頷き納得する。とても信じられる話ではないが、彼女たちの可能性の話を聞いたら信じられずにはいられない。彼らにとって、今の話は説得力のある説明だったのだ。

 

「この不安定な空間の歪みは、別の世界と繋がっている可能性があるわ。それをあなたたちに見てきて欲しいのよ。」

「でもなぜ僕たちなんですか?」

 

シンジが最もな質問を返すと、その理由をルザミーネが真剣な眼差しで説明したのだった。

 

「私たちが懸念しているもう一つの問題はUBの存在よ。」

「UB……。」

 

リーリエはその言葉を聞きかつて味わった悲劇を思い出した。

 

UBはこの世界とは全く別の世界……ウルトラホールと呼ばれる空間からやってきたこの世界に存在しないものたちだ。その非生物的異形な姿からポケモンとは違う存在だと思われていたが、研究の結果別世界のポケモンの一種だと判明した。

 

ルザミーネを神経毒に侵して狂わしていたウツロイドも同じUBで、彼らは人間に対して害を与える存在である可能性が高かった。そのUBたちの能力はアローラに存在する島の守り神たちにも匹敵するほどである。

 

バーネットが言うにはその不安定な空間からはウルトラホールに似た波を感じ取れ、もしかすればUBによるかつての悲劇が起きてしまう可能性も高いとのことだ。彼らに対抗できるのは同じ力を持つポケモンだけである。

 

だが彼らは極めて強力で危険な力を持ち合わせている。生半可なトレーナー、それも島巡り中のトレーナーでは簡単に返り討ちにあってしまうだろう。

 

「でもあなたたちは違うわ。あなたたちにはUBとの戦いの経験がある。もしもの時のために、あなたたちにはその場所に出向いてもらいたいの。それに私たちはあなたたちの事を信頼しているわ。」

「お母様……。」

 

ルザミーネはシンジたちの目を真っ直ぐ見てそう答える。リーリエはそんな母の顔を見て本当に信頼してくれてるんだと心の底から思う事ができた。だからこそ、自分も母のために自分の出来る限りのことをしたいと思ったのだ。

 

シンジとリーリエはルザミーネの覚悟を買いその依頼を承諾する。元より引き受けるつもりではいたが、その理由を聞いては断ることなど彼らに出来るはずもない。ルザミーネとバーネットはそんな2人に頭を下げて感謝する。

 

「すでにグラジオとミヅキちゃん、他にも優秀なトレーナーたちに声をかけて調査を依頼しているわ。」

「お兄様たちもですか?」

「ええ。実はその不安定な空間……出現しては消えるのを繰り返しているの。だから正直な話、正確な位置は掴めていないわ。」

 

ルザミーネはその後「だけど」と言いその続きをバーネットが答えた。

 

「一つだけ、集中して頻繁に空間が不安定になっている場所が存在しているの。」

「一つだけ?それってどこですか?」

 

シンジの質問にルザミーネが一呼吸おいてその場所の名前を口にした。

 

「……場所はメレメレ島。リリィタウンの奥にあるマハロ山道よ。」

 

シンジとリーリエは急ぎルザミーネが指定した場所、メレメレ島にあるマハロ山道へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きましたね、マハロ山道。」

「うん。懐かしいね。」

 

マハロ山道の橋の前に辿り着いたリーリエとシンジ。そんな2人は昔のことを懐かしみ思い出していた。

 

マハロ山道は2人が出会った思い出深い場所だ。かつてリーリエが必死で守っていたほしぐも……コスモッグと呼ばれるポケモンを助けた際に2人は出会ったのだ。2人にとって、ここは始まりの場所と言っても過言ではないだろう。

 

「カプ・コケコさん……元気にしてるでしょうか。」

 

メレメレ島の守り神、カプ・コケコ。当時ほしぐもとシンジを助けてくれたため、2人感謝してもしきれない恩がある。だがカプ・コケコは気まぐれで人前にも中々姿を見せず、時には島の人々にイタズラをしていることもある。そうそう会える存在でもない。

 

だがその時、2人の横を強い風が横切っていった。あまりの勢いに頭を抑える2人だが、風が収まり落ち着いたときの正面を確認する。するとそこには驚くべきポケモンの姿がいたのだった。

 

「!?カプ・コケコ!」

 

そう、そこにいたのは島の守り神であるカプ・コケコ本人だ。カプ・コケコは戦神と呼ばれるほどの存在だ。風のように素早く駆けることも彼にとっては造作もない。

 

そんなカプ・コケコの登場に驚いていると、カプ・コケコの背後にじわじわと何かが出現してきた。その存在は少しずつ巨大化し、そこにあったのはウルトラホールにも似た空間であった。それを見た時、2人にはそれがルザミーネたちの言っていた不安定な空間なのだと理解した。

 

カプ・コケコは無言でその空間を指差す。カプ・コケコの示している意味が理解できない2人だが、今は取り敢えず自分たちのするべきことをしようと何が起きてもいいように身構える。

 

「な、なに!?」

 

しかしその時、突然シンジとリーリエだけがその空間に引き寄せられる。2人も必至に抵抗して逃れようとするが、その引き寄せる力は凄まじくリーリエの体が浮き始める。

 

「キャッ!?」

「リーリエ!」

 

浮かび上がったリーリエの手を握り締めシンジは耐えようとする。だがリーリエがいくら華奢で軽いとはいえ、1人の人間でそれを支えながら空間の引き寄せる力にあらがうのは限界がある。

 

徐々に耐え切るのが難しくなり、リーリエだけでなくシンジも足が宙に浮いてしまう。

 

「きゃああああああ!」

「うあああああああ!」

 

そして耐え切れなくなった2人は、遂にその空間へと吸い込まれてしまう。その様子をカプ・コケコは静かに見ていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはメレメレ島のとある砂浜。ここで一人の少年がポケモンたちと共に特訓をしていた。

 

「ニンフィア!でんこうせっか!」

『フィア!』

「ニャビー!躱してほのおのキバ!」

『ニャブ!』

 

ニャビーはニンフィアの攻撃は上手く躱しほのおのキバで反撃した。ニンフィアもニャビーの攻撃を咄嗟の判断でまもるを使用し上手く防御する。

 

「よーしそこまで!2人とも調子いいみたいだね」

『フィーア!』

『ニャブ』

 

ニンフィアとニャビーは自身のトレーナーに撫でられて笑顔を浮かべる。大好きなトレーナーに褒められて撫でられればどんなポケモンでも嬉しいものだろう。

 

『フィア?』

「え?ニンフィア?どこ行くの?」

 

すると突然ニンフィアが何かに気付いたように走り出した。少年は何故ニンフィアが走り出したのか分からなかったが、すぐにニンフィアの後を追いかけた。

 

ニンフィアが浜辺に打ち上げられている何かに近づく。その何かを少年が目を凝らして確認すると、それは紛れもなく人間であった。大変だと感じた少年は、慌ててその人物の元へと駆け寄る。

 

「だ、大丈夫!?」

 

少年がその人物に近づくと、少年はあまりの衝撃に目を見開いた。

 

「り、リーリエ!?」

 

その人物は彼のよく知る少女、リーリエであった。だが少年には疑問に感じる事があり、その少女の服装と髪型が知っている彼女のものと一致しないのだ。しかし彼女は一向に起き上がる気配がない。どうやら気を失ってしまっているようだ。

 

そんな衝撃にとらわれていると、ニンフィアが少年に呼びかけてきた。

 

『フフィーア!』

「!?そ、そうだね!取り敢えずククイ博士の家まで運ぼう!」

 

そして少年はその少女を背負い、急いで自分がお世話になっているククイ博士の研究所へと運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

わ、私……気付かない内に寝ていたのでしょうか……。た、確か……シンジさんと一緒にマハロ山道に着いたらカプ・コケコさんが現れて……。そしたら急に変な空間に……。

 

……そうです!シンジさんは!?

 

『フィア?』

「え?ニンフィア……さん?」

『フィーア!』

 

私がソファーから起き上がると、横からよく見知ったポケモンさんがひょこっと顔を出してきました。シンジさんのパートナーでもあるニンフィアさんです。ですがこのニンフィアさん……シンジさんのとは色が違います。シンジさんの持つニンフィアさんはピンク色をしていますが、この子は全体的に水色をしています。正確に言うと通常のニンフィアさんとは色が完全に逆転しています。

 

「あっ、起きた?無事に目が覚めたみたいで安心したよ。」

 

私がニンフィアさんの事を頭の中で考えていると、部屋のキッチンの方から一人の男性が声をかけてきました。その人の姿を見た時、私は驚きのあまり大きな声を出してしまいました。

 

「し、シンジさん!」

「え?シンジさん?」

 

私がつい大声を出してしまうと、その人は驚き疑問符を浮かべて固まってしまいました。私も冷静になってよく見てみると、その人は全くの別人だという事が分かりました。

 

「す、すいません///人違いでした……。」

「ううん。別にいいよ。でも意識はハッキリしてるみたいだね。」

 

その男性は私の安否を気遣い優しい言葉をかけてくれました。

 

ですがその人を見ていると、どことなくシンジさんの面影がしてなりません。姿や服装は全然違いますが、優しいところや雰囲気がシンジさんに似ている気がしたのです。

 

その人の容姿は青い帽子に黒色のシャツ、白を基調としたパンツに左腕にはZリングを付けているのが確認できました。それを見た私は、その人も島巡りをしているトレーナーなのだという事が分かりました。

 

「はい。お腹減ってるでしょ?軽食だけど作ったからよかったら食べて。」

「あっ、いえ、私は……」

 

さすがに食事をいただくのは悪いと思い私は断ろうとしました。しかし、その時タイミングの悪いことに私のお腹がキュルキュルと鳴ってしまいました。

 

「……ふふ、やっぱりお腹空いてるんだね。遠慮しなくていいから食べてよ。」

「は、はい///で、ではお言葉に甘えて……」

 

私は恥ずかしさで顔を赤くしながらも、やはり誘惑に逆らえずに作ってくださったご飯に手をつけました。

 

そのご飯はシンジさんの作ったご飯と同じくらい美味しく、どこか温かい気分になれました。作ってくれた方も、私が美味しく食べたことに満足してくれたのか笑顔で眺めていました。

 

私が食事を食べ終わると、私がどうしてここで寝ていたのかを聞かせてくださいました。

 

私はどうやらこの近くの浜辺で倒れてしまっていたようです。原因はあの空間に吸い込まれたときに起きたのでしょうが、私自身詳しい理由は分かりません。それより、私には一番気がかりなことがあります。

 

「あの……ひとつ聞いてもいいでしょうか?」

「なに?」

「私の他に……もう一人倒れていたりしなかったでしょうか?私と同じくらいの年の男の人なんですけど……。」

「いや、僕が見かけたのは君だけだったよ?」

「そうですか……」

 

そんな気はしていましたが、やっぱりその人から事実を聞いてしまうとショックが大きいです。シンジさんの事ですから無事だとは思いますが、それでもあれだけの衝撃で吸い込まれてしまえばどうしても心配になってしまいます。

 

「あっ、自己紹介がまだだったね。僕はコウヤ!君の名前を聞いてもいい?」

「私はリーリエです。よろしくお願いします、コウヤさん。」

「!?う、うん!よろしくね!」

 

コウヤさんが丁寧に挨拶をしていただいたため、私も自己紹介をして頭を下げ挨拶をしました。一瞬私の名前を聞いたときに驚いていたように見えましたが、そのことを気にする前にコウヤさんが私に質問をしてきました。

 

「リーリエは何であそこで倒れていたか覚えはある?それとさっき言ってたシンジって……。」

「そうですね。少し長くなりますが……。」

 

隠すことでもないので私は私自身の事を詳しくコウヤさんに説明しました。お母様に依頼されたこと、空間に飲み込まれたこと、それからシンジさんが私にとって大切な人だという事も。

 

私の説明を聞いてコウヤさんは顎に手を当てて考え事を始めました。あまりに突然すぎる話に混乱しているのでしょうか。だとしても私自身でも信じられないため仕方のない事だとは思いますが……。

 

(リーリエの言っていることは正直信じられないことだけど、彼女が嘘を言っているとも思えない。僕の知っているリーリエと違う事を考えると……もしかすると……)

 

コウヤさんは暫く考えるそぶりを見せると、私の目を見て結論付けたことを口にしました。

 

「リーリエ、まず君の話から推測するとここは君の知っている世界とは別の世界の可能性がある。」

「別の世界……ですか?」

「先ず一つ目の根拠だけど、君は僕の知っているリーリエじゃないんだ。」

「ど、どういうことですか?」

 

未だに疑問符を浮かべる私に、コウヤさんは簡単に説明をしてくださいました。

 

「僕の世界にも君にそっくりの人物、同じ名前のリーリエって女の子がいるんだ。君のお母さんの言った並行世界と言うものを信じるのであれば、君はこの世界とは別の世界のリーリエって考えるのが妥当だと思う。」

 

なるほど、と私はコウヤさんの言葉に納得しました。

 

コウヤさんの知り合いにも私そっくりのリーリエと言う女の子がいるのだそうです。ただそのリーリエは私と髪型も服装も違い、喋り方も若干差があるそうです。

 

特に大きな違いは、ポケモンを触れるかどうかだそうです。私は問題なくコウヤさんのニンフィアさんに触れますが、この世界のリーリエは自分の所持するポケモンさんと、クラスメイトのピカチュウさんと言った一部のポケモンさんにしか触れることができないそうです。この話を聞いていると、私との違いは明らかと言っていいです。

 

それに辺りをよく見てみると、私にとってもここは見覚えのある場所でした。私が以前よくお世話になっていた場所、ククイ博士の研究所に間違いありません。ククイ博士の姿が見えないのでご本人は留守のようですが。

 

お母様とコウヤさんの言っていることが正しいのであれば、私はこの世界とは別の世界から来たリーリエという事になります。私にとってはここが別の世界という事になるので少々ややこしいですが……。

 

『フィアー!』

 

私が現在の状況を頭の中で整理していると、ニンフィアさんが私に頬を摺り寄せて甘えてきました。甘えん坊さんなのでしょうか?

 

「ははは、ニンフィアもリーリエに懐いたみたいだね。」

「そうなんでしょうか?」

 

私はニンフィアさんの頭を優しく撫でてあげました。するとニンフィアさんは私の膝の上に乗っかりました。

 

「……なんだかシンジさんのニンフィアさんに似てる気がします。」

「シンジって人もニンフィア持ってるの?」

「はい。色は違いますけど、人懐っこくて甘えん坊で、それでもすごく強くて頼りになるシンジさんの相棒です。」

 

私はニンフィアさんとシンジさんの事を思い出すと、声のトーンが自然と下がってしまいました。やっぱり心の中では不安で仕方ないのかもしれません。だってシンジさんは……

 

「その人、リーリエにとってすごく大事な人なんだね。」

「……はい///」

 

シンジさんは私にとって、とても大切な方ですから。私は顔熱くなるのを感じながらコウヤさんの言葉に頷きました。

 

その時、家の扉が開いて男の子と女の子が一人ずつ家に入ってきました。一人は白のラインが入った青いシャツに赤い帽子、下部が赤の黒いパンツ。それと男の子の肩にはカントー地方で有名なポケモンさんであるピカチュウさんと、背負っているリュックサックの中にはアローラの初心者用であるモクローさんが気持ちよさそうに寝ていました。

 

女の子はブロンド色のショートヘアーに赤の中折れ帽、ピンクのワンピースに赤のロングカーディガンを着用していて首元には青のリボンをつけていました。私は服装のことについては良く分かりませんが、それでもその女の子がおしゃれには気を遣っているのだという事は伝わってきます。

 

「ただいまー!」

「2人ともおかえりー!」

 

3人は挨拶を交わすと、帰ってきた2人は私を見て目を見開き驚いた表情を浮かべました。

 

「あれ?り、リーリエ?」

「あっ、いえ、私は……」

 

女の子が私の顔を見て私の名前を口にしました。先ほど聞いたコウヤさんの話からすると、女の子は私の事をこの世界のリーリエと勘違いしているのでしょう。私がその勘違いを正す前に、コウヤさんが立ち上がって口を開きました。

 

「セレナ、サトシ、この子はリーリエじゃないよ。あ、いや、リーリエと言えばリーリエなんだけど……。」

 

コウヤさんは少し頭を抱えながらこれまでの経緯を2人に説明してくれました。

 

正直私でさえ信じがたい話でしたが、2人とも疑うことなく私の事を笑顔で迎えてくれました。コウヤさんもそうですが、ここにいる人たちは優しい方々ばかりなのですね。

 

複雑な話だったので男の子は理解が追い付いていない様子でしたが、それでも最終的には私は悪い人ではないと結論づけてくれたようです。

 

「てっきり私はリーリエがイメチェンしたのかと思ったわ。あっ、私はセレナ!よろしくね!」

「俺はサトシ!それとこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピカ、ピカチュウ!』

『僕はロトム図鑑ロト!ヨロトシク!』

「リーリエです。よろしくお願いします。サトシさん、セレナさん、ピカチュウさん、ロトム図鑑さん。」

 

自己紹介をしてくれた私も改めて挨拶をしました。

 

「そうだ。サトシとセレナはここに来る途中にシンジって人に会わなかった?」

「いや、会ってないけど……。」

「そ、そうですか……」

 

外から返ってきた2人も見ていないとなると、いよいよ私も不安がどんどん募ってしまいます。しかし不安で俯いてしまう私を見て、サトシさんが笑顔で声をかけてくれました。

 

「じゃあみんなでそのシンジって人を探そうぜ!」

「え?で、ですが……」

「困ったときはお互い様よ!それに同じ女の子としてリーリエの事は放っておけないもの!」

「サトシさん……セレナさん……」

 

サトシさんとセレナさんは私の事を励ましてくれて協力してくれると言ってくれました。今の私にとってこれ以上頼もしい事はありません。

 

「決まったね。じゃあまずは……」

『フィア?』

「え?ニンフィア?どこ行くの!」

 

コウヤさんがシンジさんを探すための方針を言おうとした瞬間、ニンフィアさんが何かに気付いたように駆け出して行ってしまいました。

 

「ニンフィアが勝手にどこかに行っちゃうなんて珍しいわね。」

『ニンフィア、どこに行くつもりロト?』

「何か見つけたのかも?」

「とにかくニンフィアの後を追いかけよう!」

「は、はい!」

 

私たちは突然駆け出したニンフィアさんの後を追い、ククイ博士の研究所を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはメレメレ島のアイナ食堂と呼ばれる場所だ。今ここに一人の少年と少女がいるのだが……。

 

「さっきは助かったよ、マオ。」

「いいのいいの!困ったときはお互い様でしょ?」

 

マオと呼ばれた少女はお礼を言う少年に笑顔でそう告げる。

 

「それより、ごめんね。私の方こそシンジにお店のこと手伝って貰っちゃって。」

「それくらいお安い御用だよ。それに、さっきのマオの言葉を借りるなら困ったときはお互い様、だからね。」

 

この少年はリーリエと共に自分の世界からこの世界へと飛ばされてしまったシンジだ。何故彼がアイナ食堂にいるのかと言うと、森の中を散策していたマオが偶然にも倒れているシンジを見つけたのだ。

 

最初は倒れていることに驚き焦ったマオだが、このまま森の中に置いておくことができずに自分の家までシンジを運ぶことにした。

 

シンジは自分に起きたことを全てマオに話した。とても現実離れした信じがたい話ではあったが、マオはシンジの言っていることを疑う事はなかった。シンジがそんな嘘をつく人物ではないと感じたことも一つの要因だが、彼女にはシンジの姿が自分のよく知る彼の姿と重なったのだ。そんな人物の事を疑うことは彼女にはできなかった。

 

『フィア!』

「ニンフィアもありがとう!おかげで助かったよ。」

 

シンジと共に店の手伝いをしてくれたニンフィアの頭を撫でてお礼を言うマオ。そんなマオにニンフィアも頬を擦り付けて喜んでいる。人懐っこいニンフィアの姿を見て、ますます彼女の目に彼の姿が浮かび上がる。

 

「リーリエ……大丈夫かな……」

 

シンジが不安そうにそう呟いた。マオも最初にその名を聞いたときは自分の耳を疑ったが、彼は間違いなくリーリエと言っていた。

 

しかしシンジの話を聞くと、彼の探しているリーリエは自分の知るリーリエとは全くの別人なようだった。シンジの話によると彼の言うリーリエは彼の世界にいる別のリーリエだ。そして彼にとってもかけがえのない大切な存在だと。

 

マオもシンジの力になってあげたいが、彼の倒れていた付近に誰かがいる気配はなかった。手がかりがない状態では探しようがないし、探そうにも人手も足りない。

 

そんな時、アイナ食堂の扉が開きベルの音が鳴る。

 

「あっ、お客さんかな?いらっしゃいませ!」

「マオちゃん!」

「遊びにきました。」

「スイレン!リーリエ!」

「リーリエ!?」

 

マオが飛び出して接客の準備をすると、そこにいたのは彼女の友人のスイレンとリーリエであった。その言葉を聞いたシンジがすぐさま飛び出すが、人違いだと気付くと突然名前を呼ばれ驚いているリーリエに謝った。

 

「あっ、ご、ごめん。人違いだった……。」

「い、いえ。マオ、この方は?」

 

リーリエは困惑しながらマオにシンジの事を尋ねる。マオも一から彼の事情を説明した。スイレンとリーリエも疑うことなく、自分の親友が信じた彼の事を自分の信じることにした。女の勘というやつだろうか。

 

「それであなたはわたくし……ではなくて、リーリエの事を探しているというわけですね?」

「うん。さっきは間違っちゃってごめんね。」

 

さきほどのことを謝るシンジに、リーリエは気にしなくていいと首を振る。

 

「……うん!私たちも探そう!もう一人のリーリエの事!」

「スイレン?」

 

立ち上がってギュッと手を握り締めるスイレン。そんなスイレンの姿を見て、マオとリーリエも同じく笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「そうだね!2人だと難しくても、4人ならすぐに見つかるよ!」

「はい!みんなで手分けして探しましょう!」

「で、でもみんなに迷惑かけるわけには……」

「さっきも言ったでしょ?困ったときはお互い様!」

 

笑顔でそう言うマオの言葉にスイレンとリーリエも同時に頷いた。それを見たシンジは、みんなにありがとうと一言感謝して答える。

 

早速リーリエを探しに行くためアイナ食堂を出ようとシンジが扉を開けようとしたとき、扉に触れる前に自然と開いた。そして何者かがシンジに飛びかかり、シンジは突然のことで反応することができずに押し倒される。

 

シンジはそれが何かを確認すると、そこには自分もよく知っているポケモンの姿があった。

 

『フィーア!』

「に、ニン……フィア?」

『フィア?』

 

そのポケモンは自身の相棒でもあるニンフィアであった。しかしそのニンフィアは明らかに自分のニンフィアとは違っていた。自分のニンフィアは通常のピンク色が主な色であるのに対し、そのニンフィアは水色なのである。まさしく色違いのニンフィアだ。

 

シンジが突然現れたニンフィアに困惑していると、そこに4人の少年と少女が息を切らしてやってきた。

 

「はあ……はあ……あ、あれ?ここってアイナ食堂?」

「コウヤ!サトシにセレナも!」

 

そこにはマオたちのクラスメイトで友人のコウヤ、サトシ、セレナの姿があった。そしてもう一人、探していた少女の姿もそこにあった。

 

「!?リーリエ!」

「し、シンジさん!?///」

 

リーリエを見つけたシンジは感極まって思わず彼女に抱き着いた。突然のことで驚くリーリエだが、シンジが無事だと分かり心の中に募っていた不安が完全に消え今では無事だと分かった事実に安心していた。

 

最も周囲の女性陣はシンジの大胆な行動に顔を赤くしているが。

 

「よかった……リーリエが無事で……。」

「シンジさん……。シンジさんも無事でよかったです……。」

 

その時リーリエはハッとなり、多くの人に見られているのに気付き顔を赤くする。

 

「え、えっと……シンジさん///そ、そろそろ離していただけると///」

「え?あ、ああ///ご、ごめん///」

 

シンジも今の状況に気付きリーリエと同じくらい顔を赤くして慌ててリーリエから離れた。

 

「2人は仲がいいんだな!」

 

サトシは笑顔でそう言うが、恐らく彼が言ったのは純粋な意味であろう。サトシの発言にみんな呆れている様子だが、当のサトシは全く理解していないだろう。

 

「と、とりあえずよかったね、リーリエ。目的の人と再会できて。」

「は、はい!ありがとうございます!コウヤさん!」

 

リーリエはそう言ってお世話になったコウヤに頭を下げて感謝する。その後、コウヤたちを紹介するためにシンジの方へと向き直った。

 

「シンジさん!この人が私を助けてくれたコウヤさんと、その友達のサトシさんとセレナさんです!」

「僕はコウヤ!それとこっちが僕のパートナーのニンフィアだよ!」

『フィーア!』

「俺はサトシ!それとこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピカ、ピカチュウ!』

「はじめまして!私はセレナ!よろしくね!」

「僕はシンジ。それとこっちが僕の相棒のニンフィアだよ。」

『フィーア!』

 

コウヤ、サトシ、セレナに続いてシンジも3人に挨拶する。その後コウヤの方へと振り向いて口を開いた。

 

「僕からも礼を言わせて。リーリエの事、助けてくれてありがとう、コウヤ。」

「気にしなくていいよ。僕も困っている人は放っておけないんだ。」

 

その後、「でも」とコウヤはシンジに出会ってから感じていたことを不思議な感情を彼に伝えた。

 

「シンジ……なんだか君とは初めて会った気がしないんだ。」

「奇遇だね。僕もそう思っていたところなんだ。なんて言うか……コウヤとは他人の気がしない。」

 

確かに2人は初対面だ。それは間違いない。しかし、2人には以前からずっと一緒にいたような不思議な感覚がしてならない。

 

不思議な感覚にとらわれ見つめあう2人だが、その時キュルキュルと音が鳴る。デジャブのような光景に思わずクスッと笑うリーリエ。その音の正体はシンジとコウヤのお腹の虫であった。

 

「……ははは、お腹鳴っちゃったね。」

「……ふふっ、そうだね。」

「だったら折角だから家で食べていきなよ!とびっきりの料理をごちそうするからさ!」

「じゃあ折角だしカキとマーマネも呼ぼうぜ!シンジたちを紹介しなきゃな!」

 

そうして一同カキとマーマネも加え軽いパーティのような催しを開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?コウヤってシンオウ地方の次期チャンピオンなの?」

「うん、そうなんだ。でも今はもっとポケモンたちの事学びたいし、それにサトシたちといるとすごく楽しいんだ。」

 

シンジはどこか嬉しそうに語るコウヤの姿を見て、自分とどこか似ていると感じていた。するとシンジはクスッと笑い、今度はシンジが口を開いた。

 

「やっぱり僕たち似てるね。」

「え?」

「僕も自分の世界では、アローラ地方のチャンピオンなんだ。」

「アローラの!?」

 

コウヤはシンジから聞いた事実に驚きを隠せない。こちらの世界ではアローラにリーグは存在せず、チャンピオンであるという事はアローラで最も強いトレーナーだという事だ。

 

それと同時にコウヤは、シンジとバトルをするとどんな勝負になるのかという興味が湧いてきた。自分はまだ正式に継いだわけではないが、実質的にチャンピオン同士の戦いになるわけだ。どんな結果が待っているのか興味が出ないわけがない。

 

この人と戦ったらどうなるのか、どんなバトルをするのか、そんなことを考えると胸の鼓動が鳴りやまない。気が付けば、コウヤはシンジにある提案をしていた。

 

「シンジ!」

「ん?どうしたの?」

「僕と……僕とバトルして欲しい!」

「!?コウヤ……」

「僕は次期チャンピオンとして、今よりもっともっと実力をつけなくちゃいけない。それにシンジとバトルしたらどうなるのか、単純に興味が尽きないんだ。こんな気持ちのなったのは久しぶりなんだ……。だからお願い!」

 

コウヤは手を合わせ頭を下げて懇願する。突然のコウヤの頼みに戸惑うシンジだが、対するシンジも同じことを考えていた。

 

直感ではあるがコウヤは間違いなく強いことは分かっていた。そんな彼とバトルをしてみたいと心の中で願う自分がいた。だからこそ、コウヤの願いに対する答えは決まっていた。

 

「……うん。こちらからもお願いするよ。僕も同じことを思っていたんだ。僕と君で全力のバトルをしよう!」

「!?うん!でも僕は負けないよ!」

「それはこっちも同じだよ。」

 

そうして2人は後日、ポケモンスクールにてお互い全力のバトルをすることを約束したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとリーリエがこの世界に迷い込んで翌日。ポケモンスクールにてシンジとコウヤがフィールドで向かい合いバトルの準備をしていた。

 

「2人とも、準備はいいか?」

『はい!』

 

ククイが2人にバトルの準備ができたかと確認を取る。今回の話を聞いたククイは、快く2人の戦いの審判を買って出てくれたのだ。

 

昨日シンジの正体とバトルの話を聞いたクラスメイト達は、今回のバトルの話で持ち切りだ。

 

「ねえ、シンジがアローラのチャンピオンって本当?」

「私も昨日聞いてビックリしたけど、本当みたいよ。」

『これはすっごいスクープロト!最初から最後まで見逃せないロト!』

「すごい!実質的なチャンピオン同士のバトル!」

 

マーマネの質問にセレナが答え、ロトムとスイレンが興奮気味にそう言う。普段バトルをする彼女ではないが、これほどのビックカードであれば興奮しない理由がない。バトルが大好きなサトシとカキもこの対戦には興味津々だ。

 

「カキはどっちが勝つと思う?」

「正直なところ分からん。だが、一つ言えることは間違いなく激しいバトルになるって事だけだな。」

 

冷静に答えるカキだが、内心ではうずうずして落ち着かない様子なのがすぐにわかる。だが、一番ワクワクしているのは当の本人たちだろう。2人はバトル開始の時を今か今かと待っている。

 

「こちらに誰よりも興奮している2人がいるのですが……」

「シンジさーん!頑張ってくださーい!」

「コウヤー!絶対勝ってよー!」

 

リーリエが指を指した方を見てみると、そこにはもう一人のリーリエとマオが2人の事を応援していた。コウヤとシンジは微笑みながら無言で手をあげ対応するが、予想外の光景に他のみんなは苦笑するしかないようだ。

 

「それではこれより!コウヤ対シンジのバトルを始める!ルールは3対3の3本勝負!先に2回勝った方が勝ちとする!2人もそれでいいな?」

 

コウヤとシンジは頷き承諾する。そして自身のモンスターボールをそれぞれ手にし、バトル開始の合図を待つ。

 

「それでは両者、ポケモンを!」

「僕の最初のポケモンは……」

「もちろんこの子だよ!」

 

そして2人は同時にモンスターボールをフィールドに投げる。すると中から出てきたのは……

 

『フィーア!』

 

互いにパートナーとしているニンフィアであった。初めからぶつかるパートナー同士の戦いに、周囲の熱もさらに熱くなる。

 

「バトル始め!」

『ニンフィア!でんこうせっか!』

 

バトル開始の合図と同時に互いにでんこうせっかを繰り出す。ニンフィアは中央でぶつかり合い、互いのでんこうせっかが炸裂する。お互いの威力はほぼ互角で、どちらも元の位置まで戻らされる。挨拶は充分と言ったところか、今度はシンジが先に動いた。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

「まもるで防ぐんだ!」

 

シンジはシャドーボールで攻撃を仕掛けるが、コウヤはまもるを指示し的確に防ぐ。まもるは連続で使用すると失敗してしまうため、シンジはその隙を狙って追い打ちを仕掛けることにした。

 

「でんこうせっか!」

『フィア!』

 

シンジのニンフィアはでんこうせっかで接近戦を仕掛ける。しかしコウヤのそう易々と攻撃を受ける程甘くはない。

 

「ハイパーボイス!」

『フィアー!』

 

コウヤのニンフィアはハイパーボイスで反撃する。シンジのニンフィアはハイパーボイスによって動きを止められ、接近する前にその場で怯んでしまった。

 

「今だ!でんこうせっか!」

 

ハイパーボイスによって動きを止められたシンジのニンフィアは、回避できずにでんこうせっかの直撃を受けてしまう。

 

「ニンフィア!大丈夫!?」

『フィア!』

 

ニンフィアは頭を振りダメージを抜き取る。シンジはやっぱりコウヤたちは強いのだと確信した。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

「躱してでんこうせっか!」

 

コウヤのニンフィアは力を溜めてムーンフォースを解き放つ。シンジのニンフィアはその攻撃を上手く躱しでんこうせっかで再び接近する。

 

「もう一度ハイパーボイス!」

「そのままようせいのかぜ!」

 

再びハイパーボイスで攻撃を止めようとするコウヤだが、シンジのニンフィアはでんこうせっかをしながらようせいのかぜを放ちハイパーボイスを阻害する。いくら範囲が広く厄介な音技のハイパーボイスと言えど、強い風を発生させることで妨害させることが可能だ。

 

ハイパーボイスを止められコウヤのニンフィアに隙が生じ、今度は逆にでんこうせっかの直撃を浴びてしまう。だがこちらも同じくこらえ凌ぎきる。

 

「ニンフィア!まだいけるよね!」

『フィーア!』

 

コウヤの呼びかけにニンフィアも答える。コウヤもシンジとの戦いに気分が高揚し、いつも以上にバトルの楽しさを感じていた。

 

「シャドーボール!」

「躱して!」

 

コウヤのニンフィアはシャドーボールを上手く回避する。

 

「ムーンフォース!」

「こっちもムーンフォース!」

 

その後ムーンフォースの力を同時に解き放ち、互いのムーンフォースが交差する。どちらの威力もすさまじく、交わった衝撃がフィールド全体を包み込む。視界が奪われ、コウヤには打つ手がなくなった。

 

「ようせいのかぜ!」

「っ!?かわして!」

 

シンジのニンフィアはようせいのかぜで煙を振り払いコウヤのニンフィア目掛けて攻撃する。コウヤのニンフィアは咄嗟の判断によってジャンプをして回避する。

 

「でんこうせっか!」

「まもる!」

 

コウヤのニンフィアはでんこうせっかをまもる防いだ。しかしシンジのニンフィアはその反動を逆に利用し、怒涛の攻めで追撃をする。

 

「今だ!ムーンフォース!」

 

シンジのニンフィアは弾かれた反動から流れるように態勢を整え、そのままムーンフォースの構えに入り瞬時に力をため解き放った。コウヤのニンフィアは咄嗟によけることが出来ず直撃してしまう。

 

「っ!?ニンフィア!」

『フィア……』

「コウヤのニンフィア、戦闘不能!シンジのニンフィアの勝ち!」

 

コウヤのニンフィアは奮戦したが戦闘不能となり、惜しくも敗れてしまう。コウヤはニンフィアの身が心配になり傍まで駆け寄る。

 

同じポケモン同士の場合実力の差以上に経験の差が物を言う。シンジとコウヤの差よりも、ニンフィアの戦闘経験がバトルの結果につながったのだ。

 

『フィア……』

「ううん、君はよく頑張ったよ。これからもっと強くなろう。」

『……フィア!』

 

申し訳なさそうに表情を暗くして謝るニンフィアだが、コウヤはニンフィアを咎めることはなかった。コウヤの優しい言葉にニンフィアも自然と表情が明るくなり、もっともっと強くなることを誓う。

 

「ニンフィア、お疲れ様。ゆっくり休んでね。」

『フィア!』

 

シンジもニンフィアをモンスターボールへと戻す。その後、次のポケモンを決めモンスターボールへと手にした。

 

「次は君に任せたよ!お願い、ブースター!」

『ブスタ!』

 

シンジは手にしたモンスターボールをフィールドに投げる。すると姿を現したのはほのおタイプのポケモン、ブースターだ。そのブースターの姿を見たコウヤは、次に出すポケモンを決めモンスターボールを手にする。

 

「なら僕は……お願いドダイトス!」

『ドダァイ!』

「ドダイトス!?」

 

コウヤが選抜したのはドダイトスだ。ドダイトスを見たサトシが予想外のポケモンの姿に驚く。

 

「あのドダイトスね、今日の朝にコウヤが研究所から送ってもらったんだって。シンジとは本気で戦わないと勝てないからって。」

「本気で勝ちに行ってるんだな、コウヤは……。」

「あのドダイトスさん……強いですね。」

「分かるの?リーリエ?」

「なんとなくですが伝わってきます。」

 

マオの説明にカキはコウヤがこのバトルにかける思いを感じ取る。リーリエもあのドダイトスを見てその強さを察する。ポケモントレーナー同士、どこか通ずるものがあるのだろう。

 

ドダイトスはコウヤが初めてパートナーにしたポケモンだ。見ただけでその強さを感じ取れるのはそれだけドダイトスに秘められた力が強いということだ。シンジも決して油断しないようにブースターと気を引き締める。

 

「ブースターはほのおタイプ。対してドダイトスはくさタイプ。相性的に言ったらコウヤのほうが不利だよね?」

「だけどドダイトスはじめんタイプも持っているわ。」

「勝負は相性だけでは決まらないね……。」

 

相性だけで決まるのがポケモンバトルではない。それはこの場にいるみんなが散々見てきたからわかっていることだ。クラスメイト達は静かに2人の戦いを見守ることにした。

 

「ブースター!かえんほうしゃ!」

 

まずはあいさつ代わりにほのおタイプの基本的な技、かえんほうしゃで先制攻撃を仕掛ける。コウヤとドダイトスもその攻撃に冷静に対処する。

 

「ストーンエッジ!」

 

ドダイトスは力強く地面を踏み、青く光る巨大な岩を隆起させかえんほうしゃを防ぎながら攻撃する。

 

「っ!?躱して!」

 

シンジはその強力なストーンエッジに驚きながらも回避の指示を与え、ブースターは被弾することはなかった。

 

「今度はシャドーボール!」

 

あきらめずにシャドーボールの連続技で攻め立てる。だがドダイトスは決して怒涛の攻撃にも動じることはなかった。

 

「ウッドハンマーで跳ね返せ!」

 

その連続で放たれたシャドーボールをウッドハンマーで跳ね返す。その一つがブースターに向かうが、ブースターはジャンプして間一髪に回避する。

 

「今だ!ストーンエッジ!」

『ドッダァ!』

 

隙を逃すまいとドダイトスは再びストーンエッジを放ち追い打ちを仕掛ける。ブースターも態勢が崩れた状態では回避することが出来ず、ストーンエッジの直撃が突き刺さる。

 

「ブースター!?」

 

ブースターはストーンエッジによる直撃を受け吹き飛ばされる。しかしシンジの言葉に反応し、上手く受け身を取ることに成功した。それでも弱点であるいわタイプの技を受けダメージは隠せない様子だ。

 

「たたみかけるよ!じしん!」

 

ドダイトスはその巨体を利用し、地面を大きく揺らした。その衝撃によりブースターは思う様に態勢を整えられない。

 

「もう一度ストーンエッジ!」

 

三度ストーンエッジで攻め立てるドダイトス。ピンチだと感じたシンジは、仕方がないと諦め奥の手を出す。

 

「ブースター!オーバーヒート!」

『ブスタ!』

 

ブースターは体内の熱を集め力を込め、その熱を一点に集中して放出する。その攻撃はストーンエッジを打ち破り、ドダイトスまで貫通し見事命中した。あまりの威力にコウヤも目を見開いた。

 

「っ!?ドダイトス!」

『ドダイ!』

 

ドダイトスは強力なオーバーヒートの一撃を受けてしまうも、なんとか踏みとどまり耐えしのぐ。オーバーヒートの威力はすさまじいが、ドダイトスの耐久力も天下一品だ。そう易々と倒れることはない。

 

オーバーヒートは強力な分使えば使うほど威力が下がってしまう技だ。恐らくコウヤ相手に撃てるのはこの一回が限界だろう。

 

「楽しい……このバトルすっごい楽しい!」

 

その時、コウヤは心の底からこのバトルがこれ以上ないくらい楽しいと感じていた。これまで多くのトレーナーと戦ってきたが、自分と対等に戦えるものは数えられるほどしかいなかった。

 

だがシンジは、間違いなくコウヤと同等の実力者だ。そんな相手と全力で戦えるのは次期チャンピオンとして、いや、1人のポケモントレーナーとしてこれほどまでに嬉しい事はない。

 

「僕もだよ。僕も君との戦いはすごく楽しい。もっともっとぶつかり合おう!全力で!」

 

シンジとコウヤはもはやチャンピオン同士と言う立場を完全に忘れ、この楽しいひと時を味わっていた。その2人の姿を見て、クラスメイト達も唖然としている。

 

「何て2人だよ、本当に……」

 

カキの言葉にみんなが頷く。これほど強力な技の応酬をしていれば、どちらが倒れても可笑しくはない。そんな2人は今、笑いながらこのバトルを心の底から楽しんでいる。見ている方がハラハラする勝負だ。

 

特にリーリエとマオは、このバトルに夢中になりすぎて目が離せない状態だ。これだけのバトルであれば当然と言えば当然だが、いつどっちが倒れるかが不安で自分の心臓の音が聞こえてしまうほどに緊張している。

 

「ブースター!フレアドライブ!」

「ドダイトス!ハードプラント!」

『ブースタ!』

『ドダァイ!』

 

ブースターは炎を身に纏ったフレアドライブを、ドダイトスは地面から巨大な蔦を多数出現させるハードプラントを使用した。互いに自身の持つ最大の大技であるため、これで決着をつけようと踏んだのだろう。

 

ドダイトスのハードプラントが容赦なくブースターを襲う。ブースターはフレアドライブの勢いを一切殺すことなく距離を縮めていく。だが、次第にドダイトスのハードプランが勢いを増し、ブースターは遂にドダイトスに触れる前に飛ばされ倒れてしまう。

 

「っ!?ブースター!」

『ブスタ……』

「ブースター、戦闘不能!ドダイトスの勝ち!」

 

さすがにダメージの限界がきたのか、ブースターは堪らず戦闘不能になる。シンジはブースターに駆け寄り、ブースターを抱えた。

 

「ブースター、お疲れ様。あとはゆっくり休んでね。」

 

シンジは最後まで戦ったブースターに優しく言葉をかけモンスターボールへと戻す。

 

「ドダイトス、お疲れ。よく頑張ったな。」

『ドダイ』

 

ドダイトスの頭を撫で、コウヤは頑張ってくれたドダイトスを褒める。ドダイトスもこれには嬉しそうに微笑んだ。

 

この2人には相性の差なんて関係ない。バトルの中でも互いに成長し、底知れない力を発揮する。そんな2人を見て、クラスメイトのみんなは息を呑む。もはや声を出すことすら難しくなってきたのだ。

 

しかしこれで勝負は1対1。お互いに後がなくなり、次で勝った方がこのバトルの勝利者となる。泣いても笑ってもラストバトルだ。

 

シンジとコウヤは、お互いに負けられない、負けたくないと言う感情が心の底から溢れてくるのを感じる。2人はこの思いを最後のポケモンに託し、お互い同時にモンスターボールを投げた。

 

「お願い!リーフィア!」

「頼むよ!ラランテス!」

『リーフ!』

『ララーン!』

 

シンジはリーフィアを、コウヤはラランテスを繰り出した。お互いのタイプはどちらもくさタイプ。タイプで優劣はつけられないが、先ほどの戦いを見ていれば誰にでもそんなことは関係ないのが分かる。この勝負はどちらに転んでも可笑しくないのだ。

 

「全力で行くよ!シンジ!」

「僕も全力で迎え撃つよ!コウヤ!」

 

互いにラストバトルへの意気込みはバッチリだ。互いに準備が出来たことを確認し、完全に同時に動き出した。

 

「リーフィア!リーフブレード!」

「ラランテス!リーフブレード!」

 

リーフィアとラランテスは同時に走り、中央でリーフブレードを使い交じり合う。

 

リーフィアは尻尾と額の葉を駆使し、ラランテスは鎌状の腕を振るう。斬っては防ぎ、斬っては躱しを繰り返した激しい鍔迫り合いだ。互いに仕込んでいた刀を振るっているかのように鋭く、力強く攻撃していた。

 

だがこのままでは埒が明かない。そう思ったリーフィアとラランテスは一度元の位置に戻って距離を離す。

 

「リーフィア!エナジーボール!」

「シザークロスで切り裂け!」

 

ラランテスはエナジーボールをシザークロスによって簡単に切り裂く。むしタイプのシザークロスであれば、くさタイプの技であるエナジーボールを切り裂くことも容易だ。

 

「ラランテス!はっぱカッター!」

『ララン!』

 

ラランテスははっぱカッターで攻め立てる。だが、今度はシンジとリーフィアが見せる。

 

「リーフブレード!」

『リッフ!』

 

リーフィアはリーフブレードで無数に放たれたはっぱカッターを全て落とした。簡単に出来ることではない芸当にみんなが驚く。その隙を見てリーフィアはラランテスに素早く接近する。

 

「つばめがえし!」

『ララ!?』

 

ラランテスの懐に潜り込んだリーフィアは、アクロバットな動きでつばめがえしをラランテスに命中させる。くさタイプであるラランテスにひこうタイプのつばめがえしは効果抜群だが、ラランテスも決して負けていなかった。

 

「ラランテス!シザークロス!」

『リフィ!?』

 

今度はラランテスが反撃し、シザークロスがリーフィアを直撃する。つばめがえしがラランテスに効果抜群だったのに対し、シザークロスもまたリーフィアに効果抜群だ。大きなダメージを受けても冷静に判断し弱点で反撃する。実力があるトレーナーだからこそ焦らず的確な対応が出来るのだ。

 

(やっぱり楽しい……シンジとのバトル!サトシ以外で熱くなったのっていつ振りだろう。でも、だからこそ……)

 

僕たちは負けない。そう心の中に湧き上がる闘志を感じるコウヤ。ラランテスもコウヤと目を合わせ頷いた。そしてコウヤとラランテスは遂に気持ちがシンクロし、不思議な力がみなぎってきた。

 

「僕たちは負けない!ラランテス!僕たちは、今を超えて強く!行くぞ!」

『ララーン!』

 

コウヤがラランテスと気持ちを同調させそう叫ぶと、ラランテスの周囲に風が巻き上がり、木の葉がラランテスを包み込んだ。姿はハッキリとは見えないが、ラランテスの姿はいつもと違う様子にみんなの目には映っていた。

 

「っ!?これって!」

「出た!キズナ現象!」

 

キズナ現象。みんなが口にするその言葉にシンジ、そしてもう一人のリーリエは驚きを隠せない。ラランテスのこんな姿は教科書や図鑑にすら載っていない。

 

(キズナ現象……僕の見たことのないラランテスの姿。メガシンカとは違う?)

「コウヤはやっぱり凄いや。でも……僕だって負けられない!行くよ!リーフィア!」

『リーフ!』

 

シンジの言葉にリーフィアも気合を入れなおし身構える。するとすぐさまコウヤとラランテスが攻めの態勢に入っていた。

 

「ラランテス!ソーラーブレード!」

『ララン!』

 

姿が変わり、間違いなく威力が通常よりも上がっているソーラーブレード。だが何よりの変化は、コウヤの動きがラランテスと完全にシンクロしているところにある。

 

ソーラーブレードは通常隙が大きい分強力な技だが、ラランテスはすぐにソーラーブレードを振り下ろしてきた。巨大なエネルギーの剣はリーフィアに振り下ろされるが、リーフィアはなんとかその攻撃を回避した。こんな強力な技をまともに受けてしまえば一溜まりもないだろう。

 

「くっ!?リーフィア!つばめがえし!」

 

リーフィアの素早さを活かし、確実に弱点の技でダメージを与えようとするシンジ。しかし……

 

「ラランテス!リーフブレード!」

 

ラランテスの剣と交じり合い、拮抗するも弾き返されてしまい逆にダメージを受けてしまう。攻撃力だけでなく、ラランテスの素早さまで上昇しているようで簡単に攻めさせてはくれない。

 

「ラランテス!はっぱカッター!」

「躱してエナジーボール!」

 

リーフィアははっぱカッターを回避し、すかさずエナジーボールで反撃する。エナジーボールはラランテスに命中し、ラランテスはその一撃で怯みを見せた。シンジはその隙を見て長引かせては危険だと感じ、一気にケリをつけようと考える。

 

「リーフィア!つるぎのまい!」

 

リーフィアの周囲を3本の剣が舞い、リーフィアの攻撃力を格段に上昇させる。だったらこっちも一気に決めるために決断した。

 

「これで決めるよ!ソーラーブレード!」

『ララン!』

 

ラランテスはリーフィアの上空からさらに巨大になったエネルギーの塊である剣を振り下ろす。

 

「リーフィア!リーフブレード!」

『リーフ!』

 

リーフィアはそのソーラーブレードに立ち向かい、リーフブレードで迎え撃つ。

 

空中で交差する互いの大技。どちらの力も互角で、遂に反発し合った力が爆発を引き起こしフィールド全体にその音が轟きフィールドを爆風が包み込んだ。

 

リーフィアとラランテスの姿が見えなくなり、勝敗がどっちに転んだのか分からない状況となった。ゴクリと喉鳴らし結果を待つ両者。しかし爆風が晴れた時には、そこには驚くべき結果が待っていた。

 

『リフ……』

『ララン……』

「っ!?リーフィア!」

「っ!?ラランテス!」

「り、リーフィアとラランテス!両者ともに戦闘不能!よってこの勝負引き分け!」

 

リーフィアとラランテス、2人ともフィールドで目を回し倒れていたのだ。ダブルノックダウンである。ラランテスもバトルが終わり、元の姿へと戻っていた。

 

シンジとコウヤはすぐにリーフィアとラランテスの元までかけつける。あまりの強力な技のぶつかり合いだったため2人とも力を使い果たしている様子だ。

 

『ララン……』

「ううん、謝る必要ないよ。シンジは強かったし、君もよく頑張ったんだから。」

「リーフィア、大丈夫?」

『リーフ……』

「うん。コウヤ、すごく強かったね。僕たちももっともっと強くなろう!」

 

コウヤとシンジ、ラランテスとリーフィアも今よりさらに高みがあることが分かり、悔しさよりも逆に嬉しさが込み上げてきた。だがその時、コウヤは苦痛により顔を歪め膝を崩す。

 

「うっ!?」

「コウヤ!大丈夫!?」

 

すぐさまマオがコウヤの身を案じ駆け寄った。キズナ現象と呼ばれるこの姿はポケモンだけでなくトレーナーに対しての負担も大きいものとなる。ポケモンの感じた痛みもトレーナーに伝わり、バトルが終わると溜まっていた疲れが一気に伝わってしまうのだ。

 

コウヤは心配するマオに、大丈夫だと伝える。だがそれでもマオは体の疲労が癒えないコウヤに肩を貸し、彼を支えてあげた。

 

「シンジさん、今回は残念でしたね。」

「バトルは引き分けだったけど、いい経験は出来たよ。」

 

リーリエの言葉にシンジはそう答え、「それに」とさらに言葉を続けた。

 

「もしあの力が真にコウヤのものになっていたら、僕は負けてたかもしれないしね。」

「え?」

 

コウヤはシンジの言葉に疑問を感じた。キズナ現象にはさらに上があることをシンジは知らない。それなのになぜそのことを知っているのか気になったのだ。

 

「さっきの力、戦ってる時になんだか違和感を感じたんだ。ラランテスとコウヤには、もっともっと高みがあるんじゃないかって。」

「僕とラランテスの……高み……。」

「もしその力をコウヤたちがものにしたら、もう一度全力でバトルしよう。僕も負けない様に、もっともっと腕を磨いて強くなってるよ。」

「……僕も、今度はシンジたちに勝てるように強くなる!今度は絶対に負けないから!」

 

シンジとコウヤは互いに称え合い握手を交わす。その姿を見たリーリエは、自分もいつか2人のようなバトルが出来るようにしたいと思い見つめていた。

 

「……ぷはぁ!心臓止まるかと思ったぜ……」

「本当だよ……。僕なんか寿命が縮んだよ……」

 

まるで息をするのを忘れていたかのように息を吐きだしたカキ。そんなカキの意見に同意し、マーマネは苦しさを感じた胸を抑える。

 

「チャンピオン同士のバトル……すごすぎ!」

『バッチリ記録に残したロト!こんなバトル二度と体験できないロト!』

「わたくし感動しました!こんなにも素晴らしいバトルがあるなんて!」

 

スイレン、ロトム、リーリエも激しいバトルに感動していた。

 

「すごいバトルだったわね……。私緊張しすぎてちょっと危ないかも……。」

「すっげえバトルだったぜ!2人とも!」

 

同じようにセレナとサトシも2人のバトルに感動する。セレナの場合は緊張のあまりその場に座り込んでしまったが。

 

だがその時、シンジとリーリエを不思議な光が包み込む。その突然の現象にみんなが驚くが、2人はもう時間かと悟った。

 

「どうやらもう元の世界に戻らなきゃいけないみたい。」

「残念ですけど、これでお別れみたいですね。」

 

みんなは折角友達になれたのに、と残念そうな表情を浮かべる。そこで最初に口を開いたのはコウヤだった。

 

「……また、会える?」

「……わかんない。」

 

今回の原因が分からない以上、また会えるかどうかもシンジとリーリエには不明だ。だが、「それでも」とシンジは続けて口を開いた。

 

「……なんだか会える気がする。僕たちがポケモンと共に歩んでいる限りね。」

「!?うん!また会おう!シンジ!リーリエ!」

 

コウヤの言葉にシンジとリーリエも笑顔で頷く。すると徐々に2人を包んだ光が強くなり、その場から一瞬の内に消えてなくなった。

 

「……絶対に会おうね。」

 

僕たちは友達だから、コウヤは最後にそう呟き、どこまでも続くアローラの青空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戻ってきた……のかな?」

「そうみたい……ですね」

 

シンジとリーリエは周囲を見渡す。するとそこは見覚えのあるマハロ山道であった。

 

ハッとなり背後にあるつり橋を確認してみるも、そこには空間の歪みは完全に消失していた。

 

だが、そこではカプ・コケコがシンジたちの様子をじっと見ていた。暫くすると、カプ・コケコはその場を飛び去りマハロ山道から姿を消した。

 

「……一体何だったのでしょうか?」

「分からない……分からないけど……」

 

充実した日々が過ごせた気がする。シンジはそう感じた。リーリエもシンジのその言葉に同意し、笑顔で頷いた。

 

カプ・コケコは2人をあの世界に連れて行きたかったのか、それとも空間の歪みの件を解決してほしかったのか、それは謎に包まれたままだが、それでももしカプ・コケコが連れて行ってくれたのであれば、2人は守り神に感謝するだろう。

 

「……さあ、僕たちはルザミーネさんに今回の事を報告しよっか。」

「そうですね。でも、どうやって報告しましょうか……」

 

非現実的な現象であったため、どうルザミーネに報告しようか迷う2人。だが悩んでいてもしょうがないと、2人はエーテルパラダイスに向け歩みだした。

 

その後エーテルパラダイスに辿り着き包み隠さず報告するシンジとリーリエ。ルザミーネとバーネット博士も、2人の報告を受け取り納得し感謝した。一先ずUBが関係していないという事には安心するルザミーネたちであった。

 

そして報告を終えたシンジたちは、それぞれいつもの日常に戻る。だが、あの日の体験は彼の頭からなくなることはないだろう。

 

(もしかしたらコウヤって……)

 

シンジはその日の出来事を思い出す。もしかしたらコウヤはあの世界の自分自身なのかもしれないと考える。

 

(……まさかね。でも……)

 

シンジはコウヤも見ているかもしれない空を見上げ呟いた。

 

「僕たちは友達だよ、コウヤ」

 

また会う日を願い、シンジは友達の姿を思い浮かべたのだった。




なんとか間に合ってホッとしてます。でも楽しかったので個人的には満足でした。コウヤ君だけじゃなく他の原作キャラも含め難しかったですが、ちゃんと表現できているでしょうか。

兎に角改めてパラドファンさんありがとうございました!また機会がありましたらよろしくお願いいたします!

では私は少し疲れたので休ませていただきます。また次回お会いしましょう!ではではノシ


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ポケモンUNITEニンフィア参戦記念 二人の出会いリメイク版

予想より数億年早かったので、ニンフィア参戦記念と言う名目の元始まりの話を慌ててリメイクしました。1話2話と大分内容が変わり、どちらかと言うと原作開始の話に近い展開です。

それにしてもニンフィアちゃん強いね。苦手な相手としたらルカリオ、ゼラオラ、アブソル、ファイアローみたいな懐に一瞬で潜り込める物理ポケモンかな?それ以外には割と有利に立ち回れそう。


ここはアローラ地方。4つの自然豊かな島と1つの人工島から成り立っている少し特殊な地方だ。

 

当然この地方にもポケットモンスター……縮めてポケモンと呼ばれる不思議な生き物たちが生息している。空に、海に、森に、山に、そして人間たちとも仲良く暮らし共存している。

 

そしてこのアローラ地方の一つの島、メレメレ島にあるアローラで最も大きな街、ハウオリシティ。その街はずれにとある一軒家があった。その一軒家のベランダで、一人の女性が背伸びをして深呼吸していた。

 

「んー!やっぱりアローラの朝の空気は気持ちいいー!」

 

アローラの新鮮な空気に満足そうな笑みを浮かべる女性。そんな女性の足元に、一匹の白い体をしたポケモンが歩いて近付き擦り寄ってきた。そのポケモンに気付いた女性は屈みこみ頭を撫でてスキンシップをする。

 

「おはようニャースちゃん!今日も元気そうね!」

『ニャー♪』

 

そのポケモンはカントー地方では非常に有名なポケモン、ニャースであった。見たところ彼女のパートナーか家族、と言った関係であろう。二人は仲睦まじそうに朝の挨拶を交わす。

 

「さて、そろそろあの子を起こしてきてくれる?あの子朝弱いから。」

『ニャー!』

 

ニャースは女性の言葉に快く返事をする。人間にポケモンの言葉は伝わらなくても、ポケモンは人間の言葉を理解してくれる。だからこそ人間とポケモンはお互いに理解し合い、共存することができているのだろう。

 

その時、ピンポーンと家のインターホンが鳴る。女性はハーイと返事をしてお客様を出迎えるために入り口に向かう。

 

女性の言葉に頷いたニャースはある一室の扉を開ける。器用なことに、届かないドアノブにジャンプしてぶら下がり扉を開けたのである。

 

扉を開けると一つのベットに大きな膨らみがあった。そこには1人の少年がスヤスヤと気持ちよさそうに規則正しい寝息を繰り返して今も眠っている。ニャースは仕方ないといつもの容量で飛びかかる。

 

「うわあああああ!」

 

少年は驚き軽い悲鳴をあげる。いつものことではあっても、寝ている時にポケモンが飛びかかってきたら驚きもするだろう。しかもニャースの体重は4キロあるため、驚くには充分な重量である。

 

『ニャア!』

「あ、ああ、ニャースか……あはは、おはよう。でもせめてもう少し優しく起こしてほしいな……。」

『ニャー……』

 

それができれば苦労はしないと呆れた顔で部屋を去っていくニャース。その様子に少年は苦笑をするしかなかった。

 

「シンジー!ククイ博士がきたわよー!」

「あっ!はーい!」

 

先ほどの女性が少年の名前を口にして大きな声で呼びかける。少年……シンジも返事をして早速準備をする。パジャマ姿のまま出るわけには行かないので、早々に着替える。

 

上は青を基調とした涼しそうなポロシャツ、そして黒色の長ズボンと言うシンプルなファッションだ。彼曰く、母親に選ばせると碌な格好にはならないため自分で選んだシンプルな格好の方がマシ、だそうだ。

 

着替えが終わり準備完了すると、シンジは自室の扉を勢いよく慌てて飛び出した。

 

「はぁ……はぁ……博士!お待たせしました!」

「ははは、そんなに慌てなくても大丈夫だよシンジ。アローラ!アローラ地方で一日過ごした感想はどうだい?」

 

博士は飛び出してきたシンジに対して落ち着いて挨拶をする。アローラ、とはこのアローラ地方に伝わるこんにちは、に該当する挨拶である。この言葉には挨拶以外にも分かち合う、と言った意味も含まれているそうだが、その点に関しては割愛する。

 

シンジも博士に対してアローラ、と元気よく挨拶を返す。このアローラ地方において一般的なこの挨拶も至る所で聞き、なんだか清々しい気持ちになれるので彼も結構気に入っている。

 

「まだあまり見て回れてはいませんが、このアローラはとてもいいところだと思っています。カントーでは見られなかったポケモンや、カントーのポケモンとは姿の違うポケモン、それに綺麗な澄んだ空気。どれも新鮮で、これからがとても楽しみになってきました!」

 

シンジのその言葉を聞き、博士も満足そうに笑顔で頷いた。

 

彼は元々カントーの出身だ。そんな彼は今まで地元であるカントーを始め、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュにカロスと、様々な地方を旅してきた。次はどこに行こうかと悩んでいると、偶々カントーを訪れていたククイ博士に声をかけられたのだ。

 

『君、よかったらアローラ地方に来てみないかい?』

 

博士からそう声をかけられ、シンジも聞いたことの無い地方に興味を持った。博士から話を聞くと、アローラ地方では姿の異なるリージョンフォームと呼ばれるポケモン、島巡りと呼ばれるジム巡りとは違う独特な文化、更には自然が豊かで環境の整った場所と、興味の惹かれる項目がいっぱいあった。ポケモントレーナーである彼にとって、それ以上に魅力を感じるものは中々なかった。

 

シンジは次はアローラ地方に旅に出ることを決意する。そのことを母親に相談すると、まさかの『私も一緒に行く』と返事が返ってきた。

 

母親曰く、一度アローラに行ってみたかった、と言った単純な理由である。彼の母親は気まぐれな性格で、こうすると決めたら最後まで貫く性格の人物である。それに関してはシンジも同じではあるのだが、相変わらずの母親の気まぐれにシンジは苦笑し、共にアローラに引っ越すこととなったのだ。

 

そして引っ越した日の翌日、こうしてシンジを誘った張本人、ククイ博士が挨拶に出向いたと言うわけだ。

 

「さて、シンジ!君はもちろん島巡りに挑戦するんだよな?」

 

博士の言葉にシンジは元気よくはい、と返事をする。今まで他の地方でジム巡りをしてポケモンバトルを競い極めてきた彼は、とてもポケモンバトルが好きなのである。それは彼のポケモンたちも同じなのだが、島巡りで見たことのない様々なポケモンと出会い、新たなライバルたちと戦うことができると思うと、彼自身ワクワクが止まらなかった。

 

博士に聞いた話によると島巡りは文字通り4つの島を巡り試練に挑む。そして試練を担当するキャプテンに認められると、それぞれの島で最強と言われるポケモントレーナー、しまキングとしまクイーンに挑むことができる。

 

それぞれの島にいるしまキングたちに勝利し認められると見事島巡りを達成し、一人前の大人に成長したとアローラの人々に認められる、と言う風習らしい。シンジにとっては認められる、と言うよりも主にポケモンとの出会いやバトルができることが一番の目的ではあるのだが。

 

「それじゃあ早速メレメレ島が誇るしまキング、ハラさんに会いに行こうか。お母さん、暫く息子さんをお借りしますね?」

「ええ、もちろん。ただ少し待ってください。」

 

そう言うと、彼女は奥の部屋へと入っていく。するとすぐに部屋から出てくるが、その手にはボールが描かれた黒い帽子と、黒を基調とした青の模様が入ったリュックが握られていた。彼女がこの時の為に用意したプレゼントのようである。

 

母親は自分の息子に帽子を被せ、リュックを後ろから優しく背負わせる。

 

「ほら、新しいリュックと帽子よ。気を付けて行ってきなさい。」

「母さん……ありがとう。行ってきます!」

 

母親からのプレゼントにシンジは感謝の言葉を口にする。その後行ってきますと出発の挨拶を交わし博士について行って外へと出る。そんな息子を、母親は笑顔で手を振り見送ったのであった。

 

「いいお母さんだね。」

「はは、いつもは母親の気まぐれに振り回されることもあるんですけど……」

 

シンジはそう言うが、彼の表情はまんざらでもなさそうであった。11歳と言う年頃でもあるため、あまり素直になれないのかもしれない。旅をしてきた、と言ってもやはりまだまだ子供の部分も抜けていないのだろう。

 

「そう言えばこれから会うしまキングのハラさんって、どんな人なんですか?」

「んー、そうだなぁ……。どっしりと構えているが寛大な人で……見た目はハリテヤマに似ているかもね!」

「ハリテヤマ……ですか。」

 

シンジはその言葉でなんとなくどんな人なのか想像できた。ハリテヤマみたい、ということは体格も大きいと言うことだろう。寛大、と言うイメージにもなんとなくマッチする。

 

シンジとククイは話しながら歩いていると、すぐに目的の村に着いた。リリィタウン。しまキングが住んでいる小さく平和な村である。

 

「しまキングは……」

 

ククイは周りを見渡すが、しまキングであるハラは見当たらないようだ。シンジも一緒に見渡すが、ハリテヤマに似ていると言う人は全く見当たらない。

 

「うーん……どこかに出かけているのかな……。一応ボクはこっちを探してみるよ。シンジはマハロ山道の方を探してみてくれないかい?」

「マハロ山道?」

 

シンジの疑問に、ククイは村の奥を指差して答えた。

 

「この奥に階段が見えるだろう?あの奥に行くとマハロ山道と呼ばれる道に出るんだが、その奥にはメレメレ島の守り神、カプ・コケコが祀られているんだ。」

「カプ・コケコが、ですか?」

 

カプ・コケコ。メレメレ島を守る守り神としてアローラに広く知られているポケモンの名前である。

 

アローラの4つの島にはそれぞれ守り神が存在している。メレメレ島にいる守り神がそのカプ・コケコなのである。

 

しかしカプ・コケコは少々イタズラ好きで、時折島の住人たちを困らせているそうだ。ただし別名、戦神とも呼ばれており、その名に恥じぬ強力な戦闘能力を持っているとも言われているのだ。だからこそメレメレ島の住人はしまキング、守り神に守られているため心配することなく平和に暮らせている、と言うわけである。

 

しまキングであるハラは、時折守り神カプ・コケコに祈りを捧げに行く。しまキングとしての役割、と言うのもあるが、いつも守ってくれていることに対する感謝の気持ちを捧げているのだ。もしかしたら今日も祭壇に祈りを捧げに行っているのかもしれないと、ククイはシンジに説明する。

 

「分かりました。」

 

シンジはそう返事し、ハラを探すためにマハロ山道へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マハロ山道へ向かい山道を登るシンジ。とはいえカプ・コケコが祀られている祭壇がある道なため、きちんと整備はされているようでそこまで険しい道のりではない。

 

今まで旅を続けてきたシンジにとって、この程度の山道ではそれほど苦になるようなことでもなく、スムーズに登ることができた。

 

山道を登り切り少し開けた場所にでたが、そこにはハラの姿がなかった。少し先に行けばカプ・コケコの祭壇までたどり着くだろうか、と考え先に進もうとするシンジ。しかしその先には、ハラではなく白いワンピースを着た少女の後ろ姿があった。

 

「えっと……君は?」

「っ!?」

 

シンジが声をかけると、少女は驚いたようにこちらを振り向く。しかし彼女はどこか困った様子で、どうしたのかシンジは訪ねる。

 

しかしそんな彼に、少女は慌てた口ぶりで声を出した。

 

「た、助けて下さい!ほしぐもちゃんを!」

 

突然少女からそう頼み込まれてしまい困惑するシンジ。一体何のことだろうかと彼女の先を見る。

 

するとそこには少しくたびれたつり橋があり、数匹のオニスズメが何かを襲っている姿があった。オニスズメの対象となっている存在を見ると、そこには星が映し出されたような雲の形状をした存在がいた。

 

ポケモンなのだろうが、シンジはそのポケモンの正体を知らない。普段なら興味を示すところだが、彼にとって今はそれ以上に虐められているそのポケモンを助けることの方が先決だと、考える前に彼の体が動き走り出す。

 

オニスズメはシンジに気づくと、対象を変えシンジに襲い掛かる。少女はその様子に怖くなり目をそらすが、シンジは虐められていたポケモンを庇うように覆いかぶさり、オニスズメから身を守る。

 

「大丈夫、僕が守ってあげるから。」

『き、キュイ?』

 

恐怖からか震えていたそのポケモンはシンジの言葉を聞き、安心した様子で体の震えが自然と止まる。しかしその時、ミシミシッと嫌な音がシンジの耳に入ってきた。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、つり橋のひもがブチっと勢いよくちぎれる。その反動で、シンジたちは下の川に真っ逆さまに落ちていく。それに驚いたオニスズメたちはその場を去っていくが、シンジたちにとってはそれ以上に絶体絶命だ。

 

少女は驚きと恐怖のあまり目を瞑る。シンジはポケモンだけでも守ろうと力強く抱き寄せた。ポケモンも恐怖から再び体を震わせてしまう。

 

万事休すか、とその場にいる誰もが思ったその時、一つの光がシンジたちを包み込み一瞬で少女の目の前まで降り立った。その場には、ケガ一つないシンジとポケモンの姿があったのである。

 

「っ!?大丈夫ですか!」

「あっ……う、うん、僕の方はなんとも……」

 

何が起こったのかわからずシンジも目を丸くする。そんな彼らの前に、一匹のポケモンがゆっくりと空から降りてきた。

 

「え?このポケモンは?」

「カプ・コケコ……さん?」

 

少女の言葉でそのポケモンの正体がメレメレ島の守り神、カプ・コケコであることが分かる。シンジもまさか守り神に出会えるとは思わず、先ほどから驚きの連続である。

 

カプ・コケコは静かに二人を見つめる。いや、正確にはシンジをじっと見つめていた。まるで品定めでもしているかのようである。

 

暫くシンジとカプ・コケコが見つめ合っていると、カプ・コケコは頷いたのちそのまま空へと飛んでいき一瞬で姿を消した。戦神と言うだけあり、とんでもないスピードの持ち主である。

 

「……あっ、あの、ほしぐもちゃんを助けて下さりありがとうございます!」

「いや、とりあえずその……ほしぐもちゃん?も無事で安心したよ。」

「本当にすみません。ほしぐもちゃんも、勝手に先にいってしまってはダメじゃないですか。」

 

少女はめっ、とかわいらしくほしぐもちゃんに説教する。ほしぐもちゃんもさすがに申し訳なく感じたのか、しゅんっとしおらしい表情を浮かべていた。

 

「あっ、自己紹介が遅れました。私はリーリエと申します。」

「僕はシンジ。よろしくね、リーリエ!」

「はい!よろしくお願いします!シンジさん!」

 

これが、少年と少女の運命の出会いであった。

 

この時、二人の運命の歯車が回り始めたことは、この時の二人には全く想像すらしていなかったのであった。



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掲載5周年&本編完結記念 ~そして少女は夢を見る~

作ってみたかった完全なる番外編。シンジでもリーリエでもない全く別の視点をお楽しみください。

時系列はアローラチャンピオンが初めて誕生してからまだ間もない頃です。リーリエはカントーで奮闘中。


ここはアローラ地方、アーカラ島にあるカンタイシティ。そのカンタイシティから少し離れた外れに、とある少女とその家族が静かに暮らしていた。

 

「ほら!早く起きなさい!もう朝よ!」

「うーん……もう少し……」

 

相変わらず朝に弱い娘の反応に呆れながら、いつものように少々荒っぽく起こそうと彼女に被っている毛布に手をかけ、力いっぱい引っぺがした。毛布を手にしていた少女はその勢いで布団から落ちてしまい、その痛みから目が覚めるのだった。

 

「いったぁ……。もう、お母さん!もう少し優しく起こしてよ!」

「優しく起こしてもあんた全く起きてこないじゃないの。簡単に起きるんだったら苦労しないわよ。」

「うっ……そ、それは……ごめんなさい。」

 

勢い余った反論したものの、母親の正論にぐうの音も出ず少女は謝る。元はと言えば自分が朝に弱いのが原因であるため仕方がない。

 

「ほら、分かったらさっさと顔洗って朝ごはん食べちゃいなさい。学校に遅刻しちゃうわよ、ユメミ。」

「はーい」

 

ユメミと呼ばれた少女は母親に返事をすると、洗面所で顔を洗い目をしっかりと覚まして1階のリビングに向かう。リビングでは新聞を読んでいる父親が座ってユメミのことを待っていた。

 

「おはようユメミ。今日もお母さんに起こされたんだね。」

「あはは、まあね。」

「あんまりお母さんを怒らせるんじゃないよ。あとが怖いからね。」

「はいはい。余計なこと言ってないで、早く食べて準備しなさい。」

 

ユメミの家族の朝はいつもこんな他愛のない話から始まる。ユメミは高校へと通い、父親は自宅勤務、母親は家事をしながら会社へと勤務している至ってどこにでもある普通の家庭だ。

 

ユメミは今日も学校に向かう。いつもの日常、いつも過ぎていく時間、特に不満は感じていなかった。だがそれでも、特にやりがいも感じていなかった。不満はないはずなのにも関わらず、やりたいことも見つからず、夢や目標、そう言ったものがユメミには一切なかった。

 

ユメミは高校3年生。つまりもうすぐ進路を決める時期である。誰もが自分の夢へと向かって一歩を踏み出そうとしている中、ユメミは未だに将来を決められていなかった。

 

彼女の目の前には進路希望調査票と書かれた紙が一枚。しかし将来を決めかねている彼女は当然白紙のまま提出できない状態でいた。

 

「でさー、昨日見たテレビで……」

 

近くでは同級生の女の子が昨日見たテレビの内容を話しているのがチラリと聞こえた。しかし進路希望調査に何かしら書かなければならない彼女はそんな話を気にしている場合ではなかった。

 

(……はぁ、もういっそのことアルバイトとかでも書こうかな。特にやりたいこととかないしなぁ……。)

 

最近の女子にしては珍しく将来の夢の欠片もないユメミ。進路希望調査とにらめっこしているユメミに、先ほど会話していた女子二人が話しかけに来た。

 

「ユメミ、まだ進路希望決めてなかったの。」

「あー、まあね。」

「そんなのノリで決めちゃいなよ。ポケモントレーナーとかでいいんじゃない?」

「いや、それは……。」

 

ポケモントレーナー。この世界に存在している不思議な不思議な生き物ポケットモンスター、縮めてポケモンをモンスターボールと呼ばれる特別なカプセルに入れている人のことを全般的に指す。しかしどちらかと言えばポケモンと共に旅をする人たちの事を指すことが多いだろうか。主にポケモン同士をバトルさせて腕を競い合う人たちのことである。

 

ここアローラ地方にはポケモンを持つと島巡りと呼ばれる試練にチャレンジし、人としてもトレーナーとしても成長させると言う風習が昔から伝わっている。今でももちろんそう言った風習は続いているが、もちろん強制されているわけではない。

 

基本10歳を過ぎるとポケモンと共に旅をすることを許されている。多くの人たちがポケモンと共に旅をすることを憧れ、島巡りへと旅立つことが多い。しかしユメミはポケモンに対しての関心も低く、旅に出ることなど面倒くさいと思い島巡りを拒んだ。

 

「ユメミは何かやりたいこととかないの?」

「やりたいこと、ねぇ……。」

 

改めて考えてみるものの、今すぐに思いつくことが全くない。物事に対しての関心が低い性格がここにきて災いになるとは思ってもみなかったと、少し後悔をするユメミ。

 

そんな時、一人の女子生徒が一つの話題をユメミに振ってきたのだった。

 

「そう言えばユメミは昨日のテレビ見た?」

「テレビ?」

「もしかしてユメミ……テレビにまで関心がないなんて言わないわよね?」

 

女子生徒が尋ねると、相変わらず首を傾げているユメミの反応に溜息をついた。ここまで世間にすら耳を傾けない花の女子高生がいるものだろうかと心の中で呆れている。

 

「あれを見てないなんて勿体ないなぁ。」

「あれって……だからなに?」

「なにってそんなもの……チャンピオンの試合に決まってるじゃない!!」

 

突然興奮気味に顔を近づけてきた友人に呆気にとられるユメミ。しかしユメミにはなんのことを話しているのか理解できていない。

 

チャンピオンと聞いて真っ先に思いつくのはボクシングなどのスポーツぐらいだが、昨日やっていたのは精々野球の試合ぐらいであった。であれば彼女は一体何の話をしているのだろうか、と疑問に思っていると彼女は先ほどよりも早口になって説明し始めた。

 

「チャンピオンって言うのはポケモントレーナーの中で一番強い人のことだよ!各地方にチャンピオンは一人いて、アローラ地方にも最近すっごい強いチャンピオンが誕生したんだよ!」

「へ、へぇ~そうなんだ。」

 

ユメミは呆気にとられながらも返答する。ユメミに限ったことではないが、アローラ地方は他の地方に比べてポケモンバトル自体があまり浸透していない。なぜならこのアローラ地方にはポケモンリーグと呼ばれるトレーナー同士で腕を競い合う施設が最近完成したばかりであり、ポケモンジムと呼ばれる施設も存在していない。故にユメミだけでなくポケモントレーナーでないものにとって、ポケモンバトルに関するニュースは少々耳に入り辛い情報ともいえるだろう。

 

もちろんニュース自体はテレビを通じて発信しているので、チャンピオンが誕生したなどと言う大ニュースを知らない人物など極僅かではあるだろうが。

 

「そのチャンピオンってそんなにすごい人なの?」

「何言ってるのユメミ!?」

「ひゃい!?」

 

ユメミの疑問に対して信じられないと言った表情で目を見開き怒鳴る女子生徒。普段と違う剣幕に、ユメミは思わず変な声が出てしまう。

 

しかしそんなことは気にすることなく、女子生徒はユメミにチャンピオンの凄さを語り始めた。

 

「チャンピオンはすごく強いだけじゃないの!ポケモンとの連携も完璧だし、何よりパートナーのニンフィアともすっごく仲がいいの!それに何より、チャンピオンとニンフィアの華麗に舞う優雅なバトルが綺麗で――」

「まあまあ落ち着いて。ユメミも追いついていけなくてキョトンとしてるから。」

 

と長くチャンピオンのことを語る女子生徒をもう一人の生徒がなだめると、我に返ったチャンピオンのファンである生徒がコホンと咳ばらいをして落ち着きを取り戻した。

 

「と、とにかく、チャンピオンは凄い人なんだからユメミも一度見た方がいいよ。絶対にユメミも興味を惹かれるから。」

「う、うん……」

 

いつもの軽い反応を示すユメミだが、そこまで熱弁されると流石のユメミでも少し興味を惹かれていた。今度そのチャンピオンの試合が報道されたら見て見ようかな、と考えていると、もう一人の生徒がある三枚の紙を取り出して提案する。

 

「じゃーん!実はさ、ここにチャンピオンの試合を見られるチケットが丁度三枚あるんだけど。」

「え!?うそ!?マジ!?チャンピオンの試合を生で見れるの!?」

「だから落ち着きなって。まあパパの伝手で貰ったんだけど、他に一緒に見に行く人がいなくて。もしよかったら、二人も一緒に見に行かない?」

「行く行く!絶対行く!ユメミも一緒に行こうよ!」

「え?うん、まあ、タダならいいかな?」

 

直接行くのは少し面倒だなぁ、と思いながらも、女子生徒の勢いに負けてしまいノリでチャンピオンの試合に行くことになってしまったユメミ。

 

そしてチャンピオンの試合当日。ユメミは少し後悔していた。と言うのも、まさかのウラウラ島にあるアローラ地方最も高いと言われているラナキラマウンテン頂上にアローラポケモンリーグは設立されていた。

 

一応山の麓に専用の送迎バスがあったため苦労はしなかったのだが、如何せんアローラの温暖な気候とは裏腹に、ラナキラマウンテンの気温はかなり低い。貸し出しの温暖スーツを着ているとはいえ、寒さが苦手なユメミにとっては少々厳しい環境だったのである。

 

施設の中は暖房が効いていたためよかったと、心の中で安心しているユメミ。しかし心の中で安心感を感じた時、緊張が解けた緩みから尿意が訪れてしまった。

 

「ご、ごめん、少しトイレに寄っていくね。」

「そう。じゃあ私も……『二人ともー!はやくはやくー!』私は心配だからあの子について行くわ。」

「う、うん、また後でね。」

 

そう言ってトイレに立ち寄るユメミ。だが思いの外トイレが長引いてしまい、トイレから出た時には周りに誰もいなかった。恐らく全員会場まで着いてしまったのだろう。

 

自分も早く向かわないとと思うユメミだが、想像よりも施設内部が広く、初めて訪れたユメミはリーグ内で迷子になってしまう。このままでは折角ここまで来たのに苦労が全て水の泡となってしまい骨折り損のくたびれ儲けと言う、ユメミにとっては最悪の結末を迎えてしまう。

 

なんとかして試合までに間に合わなくては、と焦るユメミに、ある男性の声がかかったのである。

 

「あれ?どうかしたんですか?」

 

ユメミはその声がした方向へと振り向く。そこには声の主と思われる少年がこちらを見ていた。少年は見たところ18歳のユメミよりも若く、10歳前後と言うところだろうか。しかしアローラの少年にしては背格好が小さく見えるので、10歳未満だろうか。

 

という事はこの少年は親とはぐれてしまった迷子なのだろうか、と考えていると、再び少年が話しかけてきた。

 

「もしかして迷子ですか?」

「え?ま、まあね。そう言う君は親とはぐれちゃったの?」

「……なるほど、そう言うことか……」

「え?何か言った?」

「いえ、なんでもありません。」

 

見た目に反してなんとなく大人びた反応をする少年。しかし自分も迷子になってしまっているため、少年の親を探し出せる自信もない。

 

どうしたものかと悩むユメミ。そんな彼女に対し、少年はもう一度あることを尋ねる。

 

「ここにいるってことは、チャンピオンの試合を見に来たんですよね?」

「う、うん、そうだけど……君も、だよね。」

「まあ、そんなところです。」

 

ユメミの問いに少年は曖昧な回答で返答した。彼は明確な答えは出すことなく、正面を指差す。

 

「この先の通路を真っ直ぐ突き当りを左に曲がれば観客席に出られますよ。もうすぐ試合も始まりますし、早く行った方がいいかと思います。」

「そうなんだ。ありがとう。君も一緒に行こう?」

「僕は少し用事を済ませてから行くので先に向かっててください。」

 

とユメミが少年も一緒に行こうと振り向くと、彼はユメミとは反対の方向へと振り返り歩き始めた。どうしてだろうと少し疑問に感じるユメミであったが、少年はその時足を止めてもう一度ユメミの方へと振り向いた。

 

「今日の試合、どうか楽しんでいってくださいね。」

「え?う、うん……。」

 

観客であるはずの少年が、まるで自分がするかのようにユメミに笑顔を向けていた。最後まで疑問が残るユメミであったが、会場の盛り上がる声が聞こえてハッと我に返り、急がないとと会場へと向かった。

 

「はぁ……はぁ……ごめん、遅れちゃって!」

「おっそーい!もうすぐ試合始まっちゃうところだったよ!」

「もしかして迷子になってた?」

 

友人の言葉に図星をつかれて乾いた笑いしかでないユメミ。ユメミは友人の隣にあいている席に座り一息つく。

 

次の瞬間会場が暗くなり、スポットライトが一人の男性を照らす。ヘッドマイクを付けているところを見ると、恐らく司会を務める男性なのだろう。

 

『お待たせいたしました!それではこれより、アローラリーグ初代チャンピオンによるエキシビションマッチを開催いたします!』

 

その言葉を聞いて会場は一気に熱が入り盛り上がりを見せていた。その様子からチャンピオンと呼ばれるだけはあると人気の高さを実感するユメミ。隣で騒ぐ一人の友人を横目で見ながら。

 

『それでは最初に、チャンピオンに挑戦するトレーナーを紹介します!』

 

挑戦者は非常にガタイが良く、見ただけで威圧感を感じさせるほどの身体をしていた。むしろポケモンではなく自分が戦った方がよいのでは、と言うツッコミがユメミの心の中で入っているのだが。

 

司会の解説曰く、あのトレーナーは見た目だけでなく実績のあるトレーナーで、大会でも優勝経験がある名の知れたトレーナーだそう。エキシビションマッチと言うだけはある、腕前に相当の自信のあるものを選抜しているようである。

 

となるとチャンピオンはそんな挑戦者よりももっと強い人物であるのは間違いない。一体どのようなトレーナーなのだろうか、と少女は喉をゴクリと鳴らし生唾を呑んだ。

 

『それではお待ちかね!アローラ地方初代チャンピオンの入場だ!』

 

そして待ちに待ったチャンピオンが入場してくる。しかしそのチャンピオンは、想像とかなり異なり少々小柄な少年が姿を現した。その少年の姿を見た瞬間、ユメミは思わず「えっ?」と声が零れる。

 

「ユメミ?どうかした?」

「え?う、ううん、なんでもない。」

 

友人の一人がどうかしたのかと尋ねるが、ユメミはなんでもないと答える。もう一人の友人はチャンピオンの登場に興奮しすぎているのか全く気付いている様子はないのだが。

 

姿を現したチャンピオン。その容姿にユメミは見覚えがあった。その少年は先ほど迷子になっている時、廊下であった少年と瓜二つであった。同じ会場で同じ容姿の人間が偶然存在するわけなどなく、正真正銘ユメミが廊下で出会った彼はチャンピオンだという事になる。

 

これで彼が最後に言い放った一言の意味をユメミは理解した。今日の試合を楽しんでくれ、とは自分の試合を楽しんでくれと言う意味だったのである。

 

しかし彼は明らかに10歳程度にしか見えない。チャンピオンになったと言うからには間違いなく島巡りを攻略しているため、10歳以上なのは間違いない。自分よりも若い子供がチャンピオンとして君臨しているなど、ユメミは夢にも思わなかった。

 

チャンピオンと挑戦者はモンスターボールから自分のポケモンを繰り出した。挑戦者が繰り出したのは大きな顔と身体が一体となって、体から四本の逞しい足が生え、それぞれの足に三つのツメが生えている鋼鉄の身体でできたメタグロスと呼ばれるポケモン。見るからに厳つく、硬くて強そうな見た目にユメミは圧巻していた。

 

チャンピオンのポケモンもさぞ迫力のあるポケモンなのだろうと思い見て見ると、チャンピオンが繰り出していたのはなんと小柄で可愛らしいリボンが特徴的な四足歩行のポケモン。瞳はつぶらで、戦えるようには到底見えない女の子にも似た印象のポケモンであった。名前はニンフィアと言う、彼にとっては一番のパートナーと紹介されている。

 

あんな可愛らしいポケモンで本当に戦えるのか、と初めて見た彼女は不安に駆られてしまう。するとニンフィアは、チャンピオンの足元まで歩み寄り、チャンピオンは屈むとニンフィアの頭を優しく笑顔で撫でていた。その様子から、二人が非常に仲のいい二人であることが伝わってきた。

 

次の瞬間、挑戦者とメタグロスに向き合う二人は真剣な眼差しになり、先ほどまで無かった威圧感が一気に対戦相手へと襲い掛かった。その姿を見たユメミは、何かしらの違和感を感じた。

 

(なに?この感覚……あの子たち、一体なんなの?)

 

尋常じゃない迫力、先ほど話した時と試合が始まる前の優しい印象とは裏腹に、彼らからはとてつもないほどの気迫を感じ取ったユメミ。全く異なる彼らの姿に、ユメミは再び息を呑んだ。

 

試合が開始される。地面を滑るかのように素早く移動し接近したメタグロス。初めてポケモンバトルを目にするユメミには何がなんだかさっぱり分からない。あれほどの速度で移動されてしまったらチャンピオンは捉えることができないのではないか、とさえ思ってしまう。

 

しかしユメミの予想は簡単に超えられてしまう。ニンフィアは華麗に宙を舞い、フィールドを舞い、メタグロスを逆に翻弄する。気が付けばメタグロスはあっさりと追い詰められており、息が荒くなっているのが分かった。一瞬の攻防が、ユメミには全く理解が追い付かない時間であった。

 

刹那、突然挑戦者の腕が光り始めたと思ったら、とてつもない破壊力を持つ技が飛び出していた。その威力は会場全体に伝わるほどで、爆風で吹き飛ばされてしまうのではないかと言う錯覚にさえ陥った。

 

その攻撃はニンフィアにヒットした。これで終わってしまったのか?いや、そんなはずはないとユメミは不思議と確信を持つことができた。気が付けばユメミも手を強く握りしめ心臓がバクバクと跳ねているのが分かった。

 

次の瞬間、衝撃の中からニンフィアが勢いよく飛び出しメタグロスへと突き刺さった。メタグロスは壁にまで吹き飛ばされ、目を回して倒れているのが分かった。これがポケモンバトルにおける戦闘不能、つまりバトル続行不可能の合図であった。

 

司会による合図があり、バトルは終了する。迫力のあるバトル、そしてチャンピオンの華麗かつ力強いバトルに会場は大盛り上がり。かく言うユメミも、気が付けば立ち上がって大きな歓声をあげていた。自分がまさかこんなにも大きな声を出して興奮するなど、考えたこともなかったため自分で驚いていた。

 

ポケモンバトルってこんなにも興奮してすごいものなんだと感じたユメミ。その上チャンピオンはこんなにもすごいトレーナーなんだと感じたユメミ。興奮も冷めやらぬ中、冷静になった二人がトイレに行くとユメミから手を振って離れていく。

 

一人になった彼女は会場の外で待つことにする。そんな彼女に、またある人物が声をかけてきたのだった。

 

「さっきぶり、お姉さん。」

「え?え?えーーー!?」

 

その声をかけてきた人物に驚き大声をあげてしまうユメミ。その少年とは先ほど熱い試合で自分を興奮させてくれたチャンピオンの少年であった。少年は慌ててしっーと自分の口に指を当てる。

 

彼がサングラスをかけていることを考えると、なるべく正体をバレないようにしているのだと察したユメミは、慌てて自分の口を両手で塞いだ。周りを見て見ると、どうやら自分に注目をしている人たちはいなかったようだ。

 

「な、なんでチャンピオンがここに?」

「少し気晴らしに散歩してるんです。それより……どうでしたか?今日の試合。」

「す、すごく興奮しました!ポケモンにあまり興味がなかったんですけど、あんなに迫力があって熱いものだなんて思ってもみませんでした!感動しました!」

 

先ほどまでの様子とは打って変わって、ポケモンに興味を示したと熱く語るユメミ。そんな姿に、チャンピオンは温かく頷いてよかったと答えていた。

 

「僕はチャンピオンとしてまだまだ未熟だけど、これから応援してくれると嬉しいです。もしお姉さんがトレーナーとして旅に出て、僕との戦いを望むのであれば、その時を楽しみにしていますよ。」

「トレーナーとして……旅に……」

 

チャンピオンのその一言にユメミは思った。自分も旅に出て島巡りをすれば、自分が彼とバトルをすることができる。それだけでなく、ポケモンの事を知ることができる。そう考えると、今まで感じる事のなかったユメミの奥に眠った衝動が不思議と湧き上がってくるのを感じた。

 

その時、ユメミの名前を呼ぶ声が聞こえた。友人たちがトイレから戻ってきたのだ。改めて振り返りチャンピオンの方へと目を向けると、そこには既に彼の姿が見当たらなかった。

 

「ユメミ?今誰かと話してなかった?」

「え?ううん、そんなことないよ。」

 

チャンピオンの事は無暗に話さず、自分の心の中にだけ秘めておこうと心の中で決めるユメミ。そんな彼女は、今日の出来事で決めたことを二人に話した。

 

「私……将来の夢決めた!」

 

そう言って、彼女は自分が見つけた夢を二人に語ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、ユメミは高校を無事に卒業することができた。そしてある日、彼女は靴を履き、玄関を出て振り返る。

 

「それにしても貴女が旅に出るって言うなんてね。」

「もー、お母さん!折角の娘に旅路なんだからもっと言うことあるでしょ?」

「ごめんなさい。未だに信じられないことだったから。忘れ物ない?ちゃんとお母さんが言ったもの全部持った?」

「大丈夫だよ、心配性なんだから。」

「朝全然起きられないような娘、心配しない方が無理でしょう?」

「うっ……おっしゃる通りです……」

 

母親の指摘に言い返すことができず、ユメミはガックリと項垂れた。しかし今日からは違うぞと、いつもの彼女と違うはりきりを見せていた。

 

「あはは、まあユメミなら大丈夫だよ。それに、今日からは一人じゃないんだから。」

 

父親の「一人じゃない」と言う励ましに、ユメミは心にある期待を膨らませて見送ってくれる父と母に笑顔で答える。

 

「じゃあ行ってきます!お母さん!お父さん!」

「行ってらっしゃい。気を付けるのよ!」

「頑張ってね。無事に帰ってくるんだよ。」

 

父と母の言葉を受け、ユメミは歩き始めた。最初に目指すはアーカラ島のしまキングがいると言われているコニコシティ。そこでしまキングから初めてとなるポケモンを貰い、彼女の旅はスタートする。

 

一体どんなポケモンが貰えるのか、最初のポケモンに期待しながら、彼女は歩みを進める。

 

これからどのような出会いが待っているのか、どんな困難が待っているのか、どのような旅になるのか、それは未来の彼女しか分からない。

 

ユメミはまるで子どものようにワクワクした気持ちを抱きながら未来へと進む。初めて見た夢に向かって――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~そして少女は夢を見る~

 

 

 

 

 

 

 

 

 




全く別からの視点、難しかったですけど楽しかったです。
実は色んな内容を考えた結果こういった話に落ち着きました。一応他3パターン程考えてたんですが、書いてる内にこの様な内容に仕上がったので。

多分この世界でも現実と同じように暮らしている人もいる、と言う妄想から生まれた話です。

こんな感じでこれからも番外編などを含め色々と気ままに書いていくので、末永くよろしくお願いいたします。


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特別番外編 ~少女たちは夢を叶える~

お久しぶりです

本日プリコネの6周年記念&超大型アップデートですぞ


ここはアローラ地方、アーカラ島にあるオハナタウン、そのポケモンセンターである。ポケモンセンターにて、自分の手持ちであるポケモンを回復させてもらっている一人の少女がいた。

 

「おまたせしました。お預かりしていたポケモン、すっかり元気になりましたよ。」

「あっ、ありがとうございます、ジョーイさん。」

 

そうして預けていたポケモンの入ったモンスターボールを受け取る少女。少女の名はユメミ。そう、以前アローラ地方チャンピオン、シンジのバトルに感銘を受けて旅に出ることを決めた、18歳の新米トレーナーである。

 

彼女は旅に出ると決めた時、しまキングのいるコニコシティにて初めてとなるポケモンを受け取り共に旅を始めたばかりである。ユメミは回復したばかりである初めてとなるポケモンを、モンスターボールから出した。そのポケモンとは……。

 

「出てきて、コソクムシ」

『……ムッシッ!?』

 

コソクムシは出てきた瞬間、周囲に人が大勢いることに驚いてしまい、即座にユメミの腕の中に潜り込んでしまった。ユメミが受け取ったのはモクローでもアシマリでもニャビーでもなく、なんとむし・みずタイプであるコソクムシである。

 

コソクムシはアローラ中の海辺であればどこにでも生息している適応力の高いポケモンであるが、非常に臆病な性格であり、常に群れで行動して周囲を警戒している小心者なポケモンとして知られている。その上地面に落ちているものなら何でも食し、腐ったものであっても喜んで食べてしまう海の掃除屋と呼ばれており、アローラでは重宝されているポケモンだ。

 

だが説明した通り小心者であり、食べるものも特殊すぎるため初心者にはあまりにも不向きなポケモンである。それなのにユメミがコソクムシを受け取った理由だが、運が悪いことにユメミが到着した時には本来渡されるはずの初心者用ポケモンが既に配られてしまっており、残念なことに受け取りができなかったのである。

 

仕方ないのでメレメレ島のしまクイーンのところで受け取ろうとしたところ、しまキングに呼び止められてしまい、半強制的にコソクムシを薦められてしまい受け取らざるを得なかったのである。しまキングの圧がすごかったので自然と断れなかったと言うのもあるのだが……。

 

ポケモンの事に関する知識が全くないユメミにとって、初めてのポケモンと言うだけで嬉しかったので特別疑問を持つことも文句を言うこともなかった。(そもそも文句があっても言い返すことなどできなかっただろうが……)

 

しかしいざ旅に出てみると困ったことに、コソクムシは非常に弱いのである。と言うのも野生のポケモンを見つけても逃げ出してしまいユメミの懐に潜り込んで隠れてしまい、初心者同士のトレーナーとバトルすることとなっても、軽い攻撃で簡単に倒れてしまうほど貧弱なのである。全くバトルにならない上に、新しい仲間を手に入れることすらできないのは新米トレーナーとして致命的な弱点である。

 

「……はぁ、これじゃあチャンピオンみたいに強いトレーナーになるなんて夢のまた夢だなぁ。」

『むしぃ……』

「あっ、ご、ごめんごめん!別にコソクムシが悪いわけじゃないから!」

 

椅子に座って溜息を吐く。その溜息を見たコソクムシはごめんなさいと言ったように落ち込んでいた。コソクムシに気を遣わせたことを逆に申し訳ないと思ったユメミは慌てて君のせいじゃないと否定した。

 

確かにコソクムシが原因なのは間違いないかもしれないが、ユメミにとっては初めてのポケモンであり、この子がどうしようもなく可愛いと思ってしまっている。そんなコソクムシのことを悪く思いたくないし、コソクムシのせいでなどと責任を押し付けたくない。ユメミは大丈夫大丈夫とコソクムシの頭を優しく撫でた。

 

「時間ならまだまだいくらでもあるんだから、私たちのペースでゆっくりゆっくり歩いていこ。ね?」

 

元々毎日のように寝坊するほどマイペースなユメミは、コソクムシにそう優しく語り掛けた。まだ自分は18歳であり旅に出たばかりの新米だ。慌てることなくゆっくり強くなっていけばいいんだとコソクムシに語り掛けた。コソクムシもユメミの言葉に小さく頷いた。

 

そう意気込んだユメミとコソクムシだが、そんな時にポケモンセンターの外がガヤガヤと騒がしくなってきて、人がポケモンセンターの外に集まっていくのが室内から見えた。一体どうしたのだろうかとユメミもコソクムシを抱いたまま外に出る。

 

するとそこは既に大盛り上がり状態となっており、視線の先に目をやるとどうやらトレーナー同士がバトルフィールドにてバトルをしているようであった。戦っているのはぱちぱちスタイルオドリドリと、マケンカニのバトルであった。

 

「マケンカニ!クラブハンマー!」

 

男性トレーナーの指示に従い、マケンカニはその小さな体に見合わない大きな腕を振るってオドリドリに襲い掛かる。その攻撃をオドリドリはまるでダンスでも踊るかのように躱して反撃に出る。

 

「オドリドリ!めざめるダンス!」

『ドリィ!』

 

オドリドリはめざめるダンスで攻撃を仕掛けた。めざめるダンスはオドリドリのみが覚える専用の技で、使い手のタイプによって技のタイプも変化する。ぱちぱちスタイルのオドリドリはでんきタイプであるため、めざめるダンスのタイプもでんきタイプになるのである。

 

オドリドリのポンポンのような腕から電撃が放たれ、攻撃を外してしまったマケンカニに直撃する。マケンカニはその攻撃を受けてしまってダメージが限界に達し、目を回してその場で倒れた。戦闘不能であり、この瞬間に勝者はオドリドリに決まった。

 

「お疲れ様オドリドリ。ゆっくり休んでね。」

「マケンカニ、ご苦労様。よく頑張ったな。」

 

お互い勝負で力を尽くして戦ってくれたパートナーを労いモンスターボールへと戻す。そしてトレーナーとしての礼儀として、向かい合って握手をする。その戦いを見届けていた周りの人たちも2人に称賛の言葉を贈り、次々とその場を後にするのだった。

 

戦っていたトレーナーもまた会おう、と挨拶してその場を後にする。その時ユメミは急いで今の戦いに勝利したオドリドリのトレーナーに声をかけた。

 

「す、すみませーん!」

「ん?えっと、あなたは?」

「すみません、急に呼び止めてしまって。私はユメミって言います。えっと……さっきのバトルすごかったです!」

「あはは、ありがとうございます。と言っても私も最近トレーナーになったばかりなんだけどね。」

 

女性の一言にユメミは驚きの声をあげる。彼女は自分と同じ駆け出しの新米トレーナーであるにも関わらず、あんなに冷静な判断といい動きをしていたのだからある程度の経験はあるものだと思っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからユメミとその女性トレーナーは意気投合し暫く二人で旅をすることになった。女性の名前はアミといい、ユメミより3歳年下の15歳であった。アミから敬語はなしでいいと言われたのでユメミは敬語をやめ、自分に対しても気軽に話していいと言うことになったので、二人は友だちのような感覚で会話するようになった。

 

「ところで、ユメミはどうしてポケモントレーナーになろうと思ったの?」

「ありきたりなんだけどね、実は私、友達に誘われてチャンピオンの試合を見に行ったんだ。」

「え!?チャンピオンの試合を生で見に行ったの!?いいなぁ!」

 

突然興奮気味に前のめりになって早口になるアミ。この人もチャンピオンマニアなのかと、まるで自分の友人を見ているように思えて思わず苦笑いをしてしまった。

 

「おっと、ごめんごめん。つい興奮しちゃったよ。」

 

ハッと我に返ったアミはユメミに謝って距離をとった。ユメミは気を取り直して自分がトレーナーになるきっかけを語りだす。

 

「私、元々はポケモンに特別興味もなくて、夢なんかも持ってなかったんだ。特別何がしたいわけでもなく、ただ適当に働いて、適当に人生を全うして、それで別に満足なんだって思ってたんだ。でも、チャンピオンの試合を見て考え方が変わったんだよね。」

 

ユメミの話を聞いてアミはうんうんと頷いていた。ユメミは続けてその時の自分の心情を話す。

 

「チャンピオンのバトルはとてもすごかったんだ。言葉で表せない程繊細で、それでいて豪快で、華麗で、ポケモンバトルを初めて見た私でも分かるぐらい、なんと言うか凄いものだった。それを見たときから、私の中で何か変化が起きたのを感じたんだ。こんなバトルが出来たら一体どんな気持ちなんだろうって。今まで見てきたテレビ番組とは違う、心の奥を突き動かす何かがチャンピオンのバトルからは感じられた。私にもこんなバトルが出来るのかな?ポケモンってこんなに神秘的なポケモンなんだなって。」

「分かる……分かるよその気持ち!」

「あ、アミ?」

 

ユメミの話を黙って聞いていたアミは、突然再び興奮モードになりユメミに自分の過去を話し始めた。

 

「実は私も、ついこの間までは引きこもりだったんだ。学校ではいじめにあって、ポケモンには襲われて、外は危険なことでいっぱいなんだって思ったら、気付いた時には外に出られなくなっていたんだ。」

「……そうだったんだ。」

 

意外だった。先ほどは楽しそうにオドリドリとバトルしていたトレーナーがそんな辛い過去を持っていたなんて思わなかったからだ。

 

「そんな時なんだ。ふと見ていたテレビにチャンピオン……シンジさんが映ったのは。シンジさんがニンフィアを出した時、ポケモンなんて二度と見たくない、そう思ってテレビの電源を切ろうとした。でも、切れなかった。だってその時シンジさんは、ニンフィアの頭を優しい顔で撫でてたんだもん。それに対してニンフィアも嬉しそうに微笑んで、そのやり取りが二人にとっては当たり前で、日常的な行為なんだってことがすぐに分かった。それと同時に、どうして全く別の生き物なのにこんなに分かりあえているのだろうかと不思議で不思議でしょうがなかった。」

 

ユメミにもその気持ちは分かる。ユメミもまたシンジのバトルを見学しに行ったとき、彼はニンフィアの頭を撫でていた。チャンピオンがバトルをする時は必ず行う恒例の儀式。その当たり前とも言える行為は、どこか引き付けるような魅力がユメミにも感じられた。

 

「それから私は気が付いたらテレビを食い入るように見つめてたんだ。ジブンでも何分か、何時間か経ったか分からないくらい、暗い部屋の中でテレビだけをずっと見ていた。シンジさんとニンフィアの息はバッチリで、不思議と彼らは絶対に負けないだろうと確信を持つことすらできていた。そして何より、彼らの戦いからは目を離せなかった。いつの間にやら私はあの人たちの戦いに魅了されていた。そしてバトルを見終わっていた私の手には、凄い量の汗が握り締められていたんだ。精神的に追い詰められ、感情を殆ど失ってしまっていた私にも、こんなに興奮できるものが、夢中になれるものがあったんだって思えたら嬉しくて、泣けてきて、なんだか最高な気分だった。」

「アミ……」

「私もいつかこの人みたいに強い人間になりたい。精神的にも、トレーナーとしても強くなりたい。そしていつか、あの人に追いついて認められるような人になりたいって思うようになってたんだ。何より、自分よりも幼いはずの人があんなに頑張っているのに、自分もいつまでもくすぶって何ていられないって、そう思わされたんだ。」

「それでチャンピオンを目指してポケモントレーナーになることを決めたの?」

「うん。それが私のポケモントレーナーになる理由。そしてチャンピオンと戦うことが私の目標。その時、チャンピオンに少しでも近づけたその時、私はアナタのお陰でこんなに変わることができましたって報告して、ありがとうって感謝したいって思ったんだ。」

 

世の中には自分だけではなく、多くの人がチャンピオン、シンジの戦いを見て変わったと言う人が大勢いるのだろう。アミのように人生が大きく変わった人もいれば、自分のように夢を持つことができた人もいる。アローラ初のチャンピオンの影響力は、それだけ多くのトレーナーに与えられてきた大きなものだという証明である。

 

「あ、あはは、ごめんね、長々と熱く語っちゃって。あれ以来チャンピオンの大ファンでさ。なんだか一度話始めると止まんなくなっちゃうんだよね。」

「いや、寧ろいい話が聞けてよかったよ。ありがとね。」

「……まさかお礼を言われるなんて思わなかったな。でも、そっか、うん。」

 

どこか照れくさそうに顔を赤くして俯いたアミ。それから暫く歩いていくと、そこには二手に分かれた分かれ道があった。

 

「どうやら分かれ道みたいだね。私は右に行くけど、ユメミはどうする?」

「私は……私は左に行くよ。」

「お互いに別の道に行くってことだね。じゃあこれからは私たちはライバルって訳だ。」

「ライバル……」

 

そのたった一言がユメミの心の中に響く。友だちや親友、といったいつも聞く単語とはまるで違うライバル。友であり敵であり、お互いに競い合う存在、それがライバル。その言葉がユメミにとって何より魅力的な言葉のように思えて仕方なかった。

 

「うん!これからはライバルだ!」

「今度会った時は、必ずバトルしようね!」

「もちろん!」

 

そう言って二人は熱い握手を交わし、アミは右の道へと先に歩みを進めた。ユメミはそんなアミの逞しい背中が小さくなるのを見届けて、自分の歩く道の先を見つめた。

 

「……コソクムシ。」

『ムシ?』

「これから先、間違いなく道は長くて険しいものになると思う。アミみたいに強くて、他にも多くのトレーナーがチャンピオンを目指して日々精進してるんだと思う。私たちが目標に辿り着くにはどれだけかかるか分からない。それでも、これからもずっと私と一緒にいてくれる?」

『!?ムッシ!』

 

コソクムシは今までではないぐらい強く頷いた。自分は弱く、臆病で小心者なコソクムシ。特別取り柄もなく、トレーナーから使えないと見放されてしまうこともあると小さな存在。怖い男のトレーナーに拾われ、初めてトレーナーとして旅に出る少女に引き取られ、全く戦う事もできないままここまで来たけど、それでも彼女は自分を必要としてくれた。ずっと一緒にいたいと願ってくれた。だったらコソクムシの答えは決まっていた。

 

自分も彼女と一緒に歩き続けたい。今は戦うこともできない弱い自分だけど、いつか弱い自分を変えて、彼女を守れる大きな存在になりたい。自分を必要だと言ってくれたたった一人の少女の力になりたい。そうコソクムシは強く願ったのだった。

 

「……よし!行こうか!」

 

ユメミは歩みを進めた。まだまだ長い道のり、まだ自分では歩けない道だけど、いつかは自分が彼女の後ろを歩きたい、いつか自分のパートナーと一緒に歩きたい。ユメミとコソクムシは、お互いにそんな夢を抱きながら、ただただひたすら長い道のりの先を見つめて歩き続ける。もちろん、自分たちのペースで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして幾つかの月日が流れた時、ある場所では――

 

「それではこれより、挑戦者の入場です!」

「――出番だね。」

『ムッシャ』

 

少女は緊張を解すため深呼吸をする。

 

「行くよ!相棒!」

『ムッシャ!』

 

そう言って少女は歩みを進める。その少女の後ろには、少女よりも大きな身体と剛腕を持ったポケモンが、まるで彼女を守る騎士のように付き従っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――少女たちは夢を叶える

 

 

 

 

 




いつかは書きたいなと思っていたユメミちゃんのその後のお話です。

パートナーポケモンを何にしようか考えた結果こうなりました
個人的にメッソン→インテレオンみたいな弱い印象のポケモンが滅茶苦茶カッコよくなるの大好きです。


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〜ブイズとの出会い〜
~リーフィアとの出会い~


実はホラーが大好物

そろそろブイズたちの性格も軽く纏めたいので、前から言っていたブイズとの出会いの話を少しずつ書いていきたいと思います。初めはリーフィアちゃんとなります。


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

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ここはシンオウ地方、ハクタイの森。ハクタイシティの隣に位置する、少し薄暗くトレーナーたちの迷いやすい森だ。

 

そう、つまりシンジたちは現在絶賛迷子中なのである。

 

「えっと……出口どっちだろう……。」

『フィア……』

 

シンジとニンフィアは出口を探してうろうろと彷徨う。

 

彼は特に方向音痴というわけではない。しかしこのハクタイの森は右を見ても左を見てを気が生い茂っているのみ。いくら進んでも景色が一向に変わらない。同じ場所をグルグルと周っているような錯覚に陥ってしまっている。

 

「日も傾いてきたし、早いところ抜け出したいところだけど……」

 

長いことこの森で彷徨ってしまっている。夕暮れ時になり森の中は薄暗さが増す。さすがに暗い森の中で一夜を過ごすのは危険すぎるため、できる限り今日中にこの森を抜けておきたいと考える。

 

しかし進めど進めど見えるのは草木ばかり。途方に暮れ始めたシンジたちの前に、一つの影が下りてきた。

 

いったいなんだと影の正体を確認するシンジ。するとその姿がはっきりと目に映る。

 

その影の姿には耳と尻尾が確認でき、そのどちらとも少し切れ込みが入っており葉っぱの形状をしている。体はクリーム色で、そして額からも葉っぱとも呼べるような緑色の体毛が生えている。間違いなくポケモンの姿であった。

 

シンジはポケモン図鑑を開きそのポケモンの詳細を確認する。

 

『リーフィア、しんりょくポケモン。イーブイの進化形。植物に近い細胞を持ち、光合成をする。争いを好まない性格だが、仲間を守るためならば戦うことを厭わない。』

 

そのポケモンの正体はリーフィアであった。くさタイプのリーフィアはニンフィアと同じくイーブイの進化系であり、主に森の中や川の近くで穏やかに生息している。

 

もしかしたら侵入者である自分たちを追い払いに来たのかと少し警戒するシンジ。しかし彼と目を合わせたリーフィアは、別の方向へと向きなおると静かに歩き始めた。

 

『フィフィア』

「……そうだね、ついて行ってみようか。」

 

そう思ったシンジはニンフィアと共にリーフィアの後をついていく。しばらくついていくと、その先には非常に太い大木があり、その幹には人が入れるほどの穴が開いていた。

 

リーフィアはその穴に入ると、シンジにこちらに来るようにと誘導する。シンジはリーフィアの指示通り大木へと入り、草でできた足場に腰を掛ける。

 

『リフィ』

「えっ?これって……」

 

リーフィアは木の実をいくつか差し出してくれる。どうやら食べて構わない、と言っているようである。

 

シンジとニンフィアはその心遣いに感謝していただくことにした。しかしただで受け取るというのは性に合わないため、リュックからとある食べ物をリーフィアに差し出した。

 

「ほら、これ食べてごらん。」

『リーフィ?』

 

シンジが差し出したのは一般的にクッキーと呼ばれるお菓子であった。人間が作ったお菓子は当然野生のポケモンが口にしたことなどないだろう。リーフィアは見たことのないクッキーに警戒し匂いを嗅ぐ。

 

「大丈夫だよ。ほら、ニンフィア。」

『フィーア!』

 

警戒しているリーフィアを安心させるため、先にニンフィアにクッキーを与えることにする。ニンフィアはシンジに差し出されたクッキーを嬉しそうに頬張る。

 

ニンフィアの頭を撫で、シンジはもう一枚のクッキーを取り出してそれをリーフィアに差し出した。さっきのニンフィアの様子を見て警戒心が薄れたリーフィアは、そのクッキーを口にした。

 

『!?リーフ!』

 

リーフィアはその時初めて嬉しそうにほほ笑む。どうやらシンジの差し出したクッキーがお気に召したようだ。その様子に満足したシンジは、リーフィアのくれた木の実をニンフィアと共に食べる。シンジが美味しいと表情で伝えるとリーフィアも満足そうに微笑み返してくれた。

 

その後、リーフィアは静かにシンジの元へと歩みより、彼の傍で丸くなり眠る。どうやら彼に対して心を許してくれたようである。

 

リーフィアはニンフィアと共にシンジの傍で眠り、シンジもまた2匹の頭を優しく撫でる。2匹は安心しきった様子でそのまま眠り続ける。

 

そして一夜が明けた翌日。シンジとニンフィアが目を覚ますと、そこにはリーフィアの姿がなかった。どこにいったのかと疑問に思ったが、リーフィアは野生のポケモン。野生のポケモンには野生のポケモンなりの生き方があるのだ。

 

せっかく仲良くなれたのに残念だ、と思うシンジとニンフィアだが仕方がないと、明るくなった森を歩き引き続き出口を目指すことにした。

 

そう思い歩き始める二人だが、突如ポケモンの大きな叫び声が聞こえた。一体何がと気になった二人は、叫び声のした方へと走り出した。現場に辿り着くと、そこでは大きなポケモンが小さなポケモン達を虐めている姿があった。

 

『モジャンボ、ツルじょうポケモン。モンジャラの進化形。再生力が非常に高く、腕が食べられてもすぐ再生する。ツル状の腕を器用に扱い木の実をとる。』

 

大きなポケモンの正体はモジャンボであった。モジャンボが襲っているのは小さなむし、くさポケモンたち。野生ポケモンの間でよく起きるいざこざのようだ。

 

野生ポケモン同士の争いとは言え、一度目にしておいてそのまま放置しておくことはシンジにはできなかった。

 

「待って!」

『モジャ!?』

 

シンジは怯えているポケモン達の前に立ちモジャンボの行く手を阻む。モジャンボは突然のことに驚き、立ち止まる。

 

「この子たちも怯えているんだ!可哀想だからこれ以上は!」

『モジャア!』

 

シンジはモジャンボを制止するが、それでもモジャンボはやめようとしない。相当気が立っているのか、それとも何か別の理由があるのか。

 

モジャンボは雄叫びをあげてシンジもろとも襲い掛かろうとする。シンジは身構え、彼を守るためにニンフィアは前に出る。

 

しかしそんな彼らの前に、見覚えのある影が再び降り立った。

 

『リフィ!』

『ジャモ!?』

「リーフィア?どうしてここに……」

 

その影は今朝姿を消してしまっていたリーフィアであった。先日は温厚な態度を見せていたリーフィアだが、今では静かにモジャンボを鋭い目つきで睨みつけている。

 

リーフィアは普段戦うことを好まず平穏に暮らすと言われているポケモンだ。しかし仲間意識は非常に高く、仲間のピンチとなれば全力で戦う。いままさに森の仲間たちに危険が及んでいる。だからこそ彼らを助けるために姿を現したのだろう。

 

『リフ!リフリフィ!』

『ジャンボォ!』

 

リーフィアが説得しようとするもモジャンボは聞く耳を持たず、エナジーボールでリーフィアに攻撃する。リーフィアは額の葉を鋭く尖らせ、エナジーボールごとモジャンボを切り裂いた。リーフィアの得意技、リーフブレードだ。モジャンボはその場に倒れ、戦闘不能状態となる。

 

一撃でモジャンボを戦闘不能にする威力にシンジは「すごい……」と呟き感心する。

 

暫くすると倒れたモジャンボは目を覚ました。リーフィアが呼びかけると、冷静さを取り戻したのかモジャンボはリーフィアに頭を下げて謝った。

 

リーフィアは静かにモジャンボに木の実を渡す。どうやら仲直りの意味を込めて、のようである。モジャンボはその優しい心遣いに涙を流し、喜んで木の実を食べ始める。仲直りは無事成功したようだ。

 

「良かったね、リーフィア。みんなも無事でよかった。」

 

そう言ってシンジがポケモン達に呼びかけると、ポケモン達は笑顔で答えた。しかしリーフィアは、そんなシンジの事を静かにじっと見つめていた。

 

「リーフィア?どうかしたの?」

 

シンジがそう問いかけると、リーフィア皆を見渡す。どうやら彼女はシンジについて行きたくなったようだ。仲良くなったとはいえ昨日であった仲だが、彼がポケモン達を必死で守ろうとした姿に何か感じるものがあったのだろう。

 

しかし森のポケモンたちを置いていくのは心苦しい。そのため、今シンジに着いていくか森を守るかで天秤にかけているようだ。その気持ちに気付いたシンジも、ポケモンたちの事を見渡した。その時リーフィアに対し、モジャンボが立ち上がって声をかける。

 

『モジャ!モジャモジャンモ!』

『リフィ……』

『モジャモジャ!』

 

モジャンボはツタ状の腕で自分の胸をたたく。その様子を見るに『私に任せろ』と言っているように思える。そのモジャンボと一緒に、小さなポケモン達も笑顔で手を振っている。他のポケモン達もリーフィアの事を快く送り出そうとしているようである。

 

『……リフ』

 

そのポケモン達の姿を見てリーフィアは決意が固まったのか、シンジの足元へと近付いてくる。シンジはそんなリーフィアに、一言問いかけた。

 

「……僕と一緒に……くる?」

『……リフィ!』

 

その言葉を聞き、シンジは空のモンスターボールを手にしリーフィアの額にコツンと当てる。モンスターボールが開きリーフィアの姿が吸い込まれていく。数回揺れると、ピコンという音と共にリーフィアのゲットが確定したのであった。

 

「リーフィアゲット、だね!」

『フィーア!』

 

こうしてシンジは、穏やかながら仲間思いの頼もしいポケモン、リーフィアを仲間に迎え入れたのであった。

 

 

 

 

 

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モジャンボの設定的には「トレーナーに捨てられた腹いせ」or「腹が減っていて気が立っていた」辺りが妥当?あんまり深く考えてませんのでご想像にお任せします。
でもその後はポケモン達に木の実をとってあげたり助けてあげたりと、森の中で平和に暮らしているみたいです。

多分ポケモンUNITEの配信日は30日。早くて23日だと思う。ポケモンの発売日の傾向的に金曜日が濃厚な気がする。

さて、じゃあぼく夏ならぬクレヨンしんちゃんのオラ夏買ってきます。


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~サンダースとの出会い~

今回のピックアップはサンダースです。ブイズとの出会い編は基本シンプルかつ短めに書いていきます。

にしてもブイズ全員の出会いの話を書くのって難しいね。内容が中々思いつかないというか、それぞれ被らないように書かないといけないので……。

因みに時系列はバラバラで正確に決めていないので、基本手持ちのポケモンはニンフィアちゃんしか出しません。じゃあカントーリーグとかどうしたのかって?知らん、そんなことは俺の管轄外だ。


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ジム巡りをしながら各地を旅して回っているシンジ。今は旅の途中、相棒であるニンフィアと共に休憩中である。

 

「ニンフィア、おいしいかい?」

『フィア♪』

 

シンジの作ったポケモンフーズを美味しそうに笑顔で食すニンフィア。満足そうな笑顔に、思わずシンジも嬉しさから小さく微笑んだ。自分も食事にしようとニンフィアと共に仲良くランチタイムへと入る。

 

二人がそんな様子で旅を満喫していると、近くの茂みがゴソゴソと動き出した。何かいるのかと覗くと、そこから一匹の黄色く首回りと尻尾がトゲトゲしたポケモンが姿を現した。

 

『ダァス?』

『サンダース、かみなりポケモン。イーブイの進化形。肺に発電器官があり、マイナスイオンを吸い込んで電気を生み出す。逆立てた体毛は針の様になり飛ばすことができる。』

 

そのポケモンの正体はサンダースであった。サンダースはイーブイの進化形の一種であり、でんきタイプ。神経質な性格で、懐かせるのも難しいとされているポケモンでもある。

 

突然現れたサンダースに対して珍しさのあまり嬉しくなるが、それと同時にサンダースがシンジの元へと近付いてきた。

 

『ダス?』

「えっと……どうしたの?もしかしてご飯の匂いに釣られてきちゃった?」

『ダァス!』

 

サンダースはシンジの問いかけに対して笑顔で大きく頷いて答えた。どうやらシンジの作った食事の匂いが気になって思わず出てきてしまったらしい。

 

シンジはそんなサンダースにニンフィアと同じポケモンフーズを差し出す。本来野生のポケモンであれば警戒して匂いを嗅ぐところだが、サンダースは一切その様子を見せることなくポケモンフーズをバクバクと食べ始めた。余程お腹が空いていたのか、それともただただ無警戒なだけなのか。

 

とは言え、サンダースは美味しそうにポケモンフーズを次々と食べていく。そこまでおいしそうに食べられると、作った本人のシンジも釣られて笑顔になってしまう。

 

あっという間にサンダースはポケモンフーズを平らげた。口元に付いた食べかすも舌でペロッと綺麗に拭き取る。食べ残しの一切ない皿を見ると、作った人間としては非常に嬉しい光景であろう。どうやらサンダースにとってシンジのポケモンフーズはお気に召したようだ。

 

『フィフィアフィア』

『ダス?ダァス♪』

 

そんな様を見たニンフィアが自分の食べていたポケモンフーズの残りを分ける。ニンフィアはサンダースの食べっぷりを見てまだまだ物足りないのではないかと感じたみたいだ。

 

サンダースはその心遣いに喜び遠慮なくと言った様子で食いついた。余程気に入ったのか、サンダースはかなりの食いしん坊のようだ。

 

「ありがとうね、ニンフィア。」

『フィア♪』

 

ニンフィアの優しい心遣いにシンジが感謝すると、ニンフィアは笑顔で返答する。面倒見がよくお姉さん気質のあるニンフィアにとって、この行為も一つの喜びなのであろう。

 

続けてニンフィアの渡したポケモンフーズも平らげたサンダース。流石にこれだけ食べれば満足なようで、満面の笑みを浮かべていた。そんなサンダースは突然背後を振り向く。

 

もう行ってしまうのか、とシンジが思った矢先、サンダースの体毛が更に逆立ち刺々しさが増した。何をするつもりなのかと思うと、彼の体からバチバチと小さな電気が発生する。

 

次の瞬間、サンダースが小さな電撃を目の前の木の枝に放った。その電撃は木の枝にあたり、木の枝ごと木の実を落とした。サンダースはその木の実を雷のような素早い動きで受け止める一瞬で戻ってくる。

 

気付けばサンダースは木の実のついた木の枝をシンジとニンフィアの前に置いた。

 

「これ、貰っていいの?」

『フィフィア?』

『ダァ♪』

 

二人が問いかけるとサンダースは機嫌よく頷いて返答した。どうやらサンダースにとってこの木の実はお礼の意味を込めているらしい。シンジはそんなサンダースにありがとうと感謝して、ニンフィアと共に木の実を分け合った。

 

「うん、とっても美味しいよ♪」

『フィア♪』

 

シンジとニンフィアの言葉にサンダースも嬉しそうにし、シンジの足元へと歩み寄って体を擦り付ける。シンジもそんなサンダースを優しく撫でた。次にニンフィアに対してもじゃれつくように互いの体を擦り合わせる。彼にとってはこれが彼なりのスキンシップなのだろう。

 

サンダースの体はチクチクとしていて少し痛かったが、不思議とその痛みも不快感はなく寧ろ心地のよいものに感じられる不思議な感覚であった。

 

本来サンダースは神経質であり懐くのが難しいポケモンである。もちろん個体差もあるのだが、このサンダースはとても人懐っこい性格のようである。

 

「サンダース。キミのトレーナーはいないの?」

『ダァス?』

 

シンジの問いかけにサンダースは首を傾げる。この様子だとトレーナーと言う存在を知らない野生のポケモンのようだ。

 

シンジはそんなサンダースに「じゃあ」と言葉を続けた。

 

「もしよかったら、僕と一緒に行かない?一緒に色んな所を旅をして、色んな景色を見て、美味しいものを食べて。すごく楽しいよ!」

 

『ダス……ダスダァス!』

 

サンダースはその光景を頭の中で思い浮かべると、目をキラキラと輝かせて何度も頷いて返事をする。サンダースもシンジの旅と言うものに興味を抱いたようだ。

 

「よし!じゃあ一緒に行こう!サンダース!」

『ダァス!』

 

シンジの差し出したモンスターボールにサンダースも自らタッチする。サンダースはモンスターボールに吸い込まれ、一切抵抗を見せることなくピコンッ、と音がなった。

 

「サンダースゲット、だね、ニンフィア!」

『フィフィーア♪』

 

こうしてシンジは少し食いしん坊で人懐っこい、珍しいサンダースをゲットし、ますますこれからの旅に胸を躍らせて冒険を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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先日サーナイトがUNITEに実装されましたが、かなり面白い性能してますね。何故か素早さ種族値30のカビゴンより僅かに遅いですが……。因みにUNITE上ステータスはアローラキュウコンに似ている。

UNITEはカジリガメを取ること意識したら大幅に勝率上がりました。やはりレベリングは大事。現在私はエリートランクです。


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~ブースターとの出会い~

今回のピックアップはみんな大好きモフモフブースターちゃんです。ブースターちゃんモフモフしたいけど、平均体温は700度から800度らしい。割と勝手な自己解釈もありますが、ご容赦下さい。


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

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「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーア!』

 

シンジの指示に従い、ニンフィアは岩に向かってムーンフォースを放つ。ニンフィアの一撃で、岩は半分近く砕けるが、それでも破砕するまでには至っていない。

 

シンジは今ニンフィアと共に人気のない場所で特訓している。彼らはジム巡りをして腕を磨く一人のポケモントレーナーだ。トレーナーたちは常に強くなるための努力を欠かすことはない。

 

「だいぶ様にはなってきたけど、まだパワーが足りないね。」

『フィア……』

「大丈夫だよ。まだまだ旅は続くんだから、これから時間かけて成長していこう。」

『……フィア♪』

 

シンジはニンフィアの頭を撫でてそう言う。ニンフィアもシンジの言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

シンジとニンフィアは最近覚えたムーンフォースの特訓をしていた。強力な技ゆえに扱いが難しく、最大限の威力を発揮することができない。だからこそ旅の合間にこうして特訓をして少しずつレベルを上げているのだ。

 

「さぁ、そろそろご飯にしようか。美味しいもの食べれば気分も変わるから。」

『フィーア♪』

 

二人は早速昼食の準備に取り掛かる。こうして協力して食事の準備をするのも、二人にとっては旅の楽しみの一つでもあるのだ。それだけ二人の仲が良いと言う証明である。

 

「……うん、こんなもんかな。」

『フィア?』

「ニンフィア?どうかした?」

 

 

シンジが食事の準備を終えた頃、ニンフィアが何かに気付いたような仕草をする。一体どうしたのかとニンフィアに尋ねるも、ニンフィアは草むらにゆっくりと近付いていく。

 

何かいるのか、と気になったシンジは草むらをかき分けて確認してみる。するとそこには朱色の体とふわふわの白い体毛に包まれている小柄のポケモンがいた。そのポケモンはブルブルと震えて、不安そうにこちらを見つめていた。

 

『ブースター、ほのおポケモン。ほのおタイプ。イーブイの進化形。体内に炎袋があり、炎が溜まると体温が最高900度まで上がる。吸い込んだ息を1700度の炎にして吐くこともできる。』

 

そこにいたのはイーブイの進化形であるブースターであった。ブースターはイーブイがほのおのいしに触れることで進化することのできる珍しいポケモンだ。特に野生では中々見ないだろう。

 

「君、こんなところで何してるの?君のトレーナーは?」

『ブスタ……』

 

シンジは気になったことを問いかけてみる。しかしブースターはシンジと目を合わせるとその場で硬直し、動きを止める。そして元々赤い体が更にどんどん赤く染まっていく。

 

「あつっ!?」

 

様子が変だと感じ大丈夫かとブースターに触れようと手を伸ばす。しかしブースターの体温が以上に熱くなっており、とっさに手を引っ込める。先ほどの図鑑説明のように、体温が急激に上昇しているようだ。この状態のブースターに触れ続けるのは流石に危険だろう。

 

一体何故体温を急激に上げたのか原因が分からなかったが、考えているシンジにニンフィアが呼びかけた。

 

『フィア!フフィフィーア』

「ニンフィア?」

 

何かを伝えようとするニンフィア。しかしいくら仲が良いとしても、人間がポケモンの言葉を完全に理解するのには無理がある。

 

ニンフィアは自分のリボンをブースターに近付ける。熱いから危ないとニンフィアを止めようとするが、止める前にニンフィアのリボンがブースターの首の体毛に触れる。

 

しかしニンフィアは一切熱そうにする素振りは見せず、優しくブースターの首を撫でていた。

 

「大丈夫?熱くないの?」

『フィア!』

 

どうやらニンフィアは全く熱さを感じていないようだ。大丈夫なのか、とシンジもニンフィアと同じようにブースターの首部分に軽く触れてみる。

 

「あれ?熱くない……」

 

熱は感じるものの、先ほどのような火傷しそうな熱さは感じない。寧ろ程よい温かさで、不思議と落ち着く程度の温もりを感じる。

 

しかし何故首回りは極端な熱さを感じないのか気になり、もう一度ポケモン図鑑を開いて確認してみる。

 

『ブースターは自分の体温が高すぎると健康状態に悪影響が出てしまうため、首回りの体毛を広げて熱を放出し体温を下げる。』

 

図鑑説明によると、どうやらブースターの体毛は熱伝導体の様な役割を担っているようだ。そのためブースターの体毛には熱があまりこもらないようになっているのかもしれない。

 

ニンフィアも同じようにイーブイの進化形。もしかしたら同じ種族故に、直感でブースターの特徴を理解したのかもしれない。ポケモンは今でも不明なことが多い存在なので、このような不思議な現象が起きてもおかしくはないだろう。

 

シンジもブースターの首を優しく撫でる。すると先ほどまで赤くなっていていたブースターの体も少しずつ収まり、硬くなっていた体も自然と解れて柔らかくなってきた。

 

『ブースタ……♪』

 

ブースターも表情が柔らかくなってくる。シンジとニンフィアが撫でたことにより落ち着いてきたようだ。このブースターは首回りを撫でられるのが好きみたいだ。

 

どうやら先ほどの反応からして、このブースターは極度の恥ずかしがり屋のようである。シンジの作った食事の匂いに釣られて来たものの、シンジとニンフィアがいて出られなかったのだろう。だからシンジと目があった時に動きを止め、体温が急激に上昇したのだ。

 

「ねぇ君、君のトレーナーは……」

 

落ち着いてきた頃合いを見計らい、もう一度ブースターに尋ねてみる。しかしその時、近くに茂みが再び揺れる。今度は何だとそちらに目をやると、そこには一匹の凶暴なポケモンが姿を現した。

 

『グマァ!』

「っ!?あれはリングマ!?」

 

そこに姿を現したのはリングマであった。リングマは縄張り意識が強く、非常に気性が荒いことで有名だ。実際、リングマに襲われ怪我をしてしまったトレーナーの被害報告も多数出ている程だ。

 

リングマは執念深く、一度進入してきた相手を容赦なく襲い掛かり追い続ける。ここは戦って追い払うしかないと判断したシンジは、ニンフィアと共に戦闘態勢をとる。

 

しかしその時、意外なポケモンがシンジの前に立ち、リングマに一喝入れたのであった。

 

『ブスタ!』

「え?ブースター?」

 

そのポケモンは先ほど出会ったブースターであった。恥ずかしがり屋のブースターはリングマに対して睨みつけ、前髪、首、尻尾の毛を更に逆立てる。どうやら戦闘態勢に入ったようだ。

 

普段恥ずかしがり屋のブースターでも、敵対心をあらわにしている相手に対しては非常に攻撃的になるのだろうか。ブースターの不思議な行動にそう考えるシンジだが、そんな彼をよそにブースターはリングマに攻撃を仕掛けた。

 

『ブースター!』

『グマ!?』

 

ブースターのかえんほうしゃがリングマに直撃する。シンジに驚き硬直してきたブースターからは考えられない、強力で勢いのあるかえんほうしゃがリングマを怯ませる。

 

その威力に驚いたリングマはその場を退き、森の中へと姿を消した。図鑑説明では1700度の炎を吐くと言う。そんな熱量を持った炎を浴びれば一溜りもない。

 

「ブースター、君……」

『ブスタ!?ブスタ……』

 

何故かバツの悪そうな顔をするブースター。不安そうなブースターの事を、シンジは改めて優しく撫でる。

 

「ありがとう、君のお陰で助かったよ。」

『フィーア♪』

『……ブスタ?』

 

怒られると思ったのか、ブースターはプルプルと震えていたが、シンジに撫でられて体の震えが治まった。過去のトラウマか何かが原因で、ブースターはこの様な性格になったのだろうか。恥ずかしがり屋と言うより、どちらかと言うと少し臆病なのかもしれない。

 

シンジに撫でられ落ち着きを取り戻したブースターは、彼の足に擦り寄り笑みを浮かべた。先ほどに比べ、だんだんと心を開いてきたようだ。その姿を見て、もしかしてと声をかけてみる。

 

「ブースター……僕たちと一緒に、くる?」

『ブースタ?……ブスタ!』

 

シンジの言葉にブースターは頷く。その返答にシンジは、安心してモンスターボールを手にしてブースターに差し出す。

 

ブースターは差し出されたモンスターボールに少し控えめな様子でゆっくり触れる。するとモンスターボールが開き、ブースターは中に吸い込まれる。数回揺れ、ブースターは抵抗なくシンジのモンスターボールに捕獲された。それがブースターにはトレーナーのいない証拠であった。

 

「ブースターゲット、だよ!」

『フィア♪』

 

こうしてシンジは恥ずかしがり屋で臆病だけど、戦闘時にはとても頼りになるブースターを仲間にし、更なる冒険を目指して旅を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【朗報】ニンフィアちゃんUNITE実装確定!

きちゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


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~エーフィとの出会い~

今回はエーフィ回なの


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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シンジがある地方を旅していた時、旅の途中に訪れた町で困りごとを抱えている女性に遭遇した。明らかに困っている様子だったので、シンジは彼女に尋ねてみた。

 

その女性の話によると、近くにある無人のはずの洋館から何か物音が聞こえるようになってきたと言う。不穏な物音に町の人たちも不安になっているとのことだ。

 

町人たちの不安を解消するために確認する必要があるらしい。その話を聞いて放ってはおけないと、自分が確認しに行くとシンジが名乗り出た。

 

女性はシンジに対して感謝するが、流石に一人では危険かもしれないということで自分も一緒に探索すると言った。二人は物音の謎を突き止めるために共に洋館へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はユナ。一応これでも町長の娘よ。」

「僕はシンジです。カントーのマサラタウンから旅をしてきました。」

 

シンジとユナは互いに自己紹介を交わす。洋館までの道のりの間、二人は互いの事を雑談して時間をつぶす。

 

「ほら、着いたわよ。」

 

気が付けば既に洋館の前まで辿り着いていた。洋館の外壁には植物が絡まっていて、見るからに人の住んでいる様子はない。明らかな廃屋だ。

 

ユナは洋館の大きな扉の鍵を取り出し開けようとする。廃屋とは言えここの土地と建物は町の所有物。町長が今でも管理しているのは不思議なことではない。金銭面の問題で建物自体を潰すのが難しかったりもするのだろう。

 

しかしその時ユナは違和感を感じる。不思議に思いユナが扉に手をかけると、キィ、と扉が甲高い擦れる音を出してゆっくりと開く。町長である父も寄っていないはずなのに鍵が開いているのはおかしいと感じたユナだが、ここは入るしかないと思い洋館内部へと侵入する。

 

二人は建物の中に入る。建物内部は埃が溜まっていたり蜘蛛の巣が張ってあったりはするが、それでも思った以上に汚れてはいなかった。どちらかと言うと廃屋にしては綺麗な方だ。それこそまるで、人でも住んでいるかのようにすら感じられる。

 

しかし内部は電気がついておらず薄暗い。ユナは電気をつけるために電源を探すが、見つける前に天井にある立派なシャンデリアが明かりを灯した。

 

「ユナさん、今電気つけてくれましたか?」

「いえ、私はなにも……」

 

その言葉で二人は少し寒気を感じる。誰も立ち寄っていない廃屋の洋館で不思議な怪奇現象……幽霊の仕業ではないかと脳裏にちらつく。

 

「……取り敢えず内部を探索してみましょうか。」

「ええ、そうね。」

 

不気味さを感じつつも、シンジとユナは互いに確認して内部の探索を開始する。洋館はかなり大きく、部屋の数もそれ相応に多い。一つ一つ扉を開けながらしらみつぶしに確認していく。しかし特別変わったところは見当たらない。

 

「にしてもここの洋館、かなり広いですね。」

「昔は資産家の人たちが住んでいたんだけど、急死してからは放置状態が続いていて。」

 

資産家であればこれだけ広いのも納得だ。しかしこれだけ大きな豪邸であれば並大抵の家族では大きすぎるであろう。金持ちの気まぐれな道楽、とも言えるかもしれないが、一般人には金持ちの気持ちは分からないだろう。

 

しかしいくら探してもなんら異変は見当たらない。一度引き返して出直すべきかと考えたその時、背後からドスンッ、と何かが落ちる物音が聞こえた。

 

「今の聞こえた?」

「はい……あっちの方から聞こえました。」

 

もしかしたら不法侵入した輩かもしれないと、ユナとシンジは物音のした部屋へと向かう。

 

二人は物音がしたと思われる部屋の扉を開ける。

 

「あれ、この椅子……」

「確かさっき来たときは倒れてなかったわよね?」

 

実は先ほどもこの部屋を訪れた。しかしその時には椅子は綺麗に並んでいたのだ。四足の椅子がひとりでに倒れるはずがない。つまり誰かが倒した可能性が高いのだ。

 

「もしかしたらこの近くに誰かがいるのかも……」

「探してみましょうか」

 

原因を見つけるためにこの部屋を探るシンジとユナ。探し始めるのと同時に、先ほどとは別のガタンッ、という物音が二人の耳に入ってきた。

 

振り向いてみると、今度は外に繋がる窓が開いていた。間違いなくこの部屋に来た時には閉まっていたのにだ。

 

「これって、どういうこと?」

「幽霊……ってことはないと思いますが……」

 

お互いに窓に触れた形跡はない。しかも見渡してもこの部屋には二人しかいない。とは言え幽霊などと言う非科学的な存在がいるとは考えづらい。

 

ならば一体何が、と考えていると、立て続けに二人を別の怪奇現象が襲い掛かった。

 

「えっ!?今度は椅子が!?」

「危ない!」

 

突然周囲に置かれていた椅子が空中へと浮かび上がった。浮かんだ椅子たちはユナへと襲い掛かるが、シンジは彼女を引き寄せて助けた。

 

「一体何が……」

 

突然のことに頭が混乱するユナ。だが今の現象を見たシンジは、ある一つの仮説に辿り着いた。

 

「……そうか。これは多分、エスパータイプのポケモンの仕業だ。」

「え、エスパータイプ?」

 

混乱して考えが纏まらないユナにシンジは説明を始める。

 

今椅子を浮かべていたのはエスパータイプの技、サイコキネシスだ。遠くからでも対象の物を操り宙に浮かせることができる技である。

 

冷静に考えてみれば洋館に入った際に自動的に電気がついたり、ひとりでに窓が開いたりと不可思議な現象が起こっていた。それらはエスパータイプ、またはゴーストタイプのポケモンが原因だと考えるのが最も辻褄がある。

 

原因が分かったなら後は元凶であるポケモンを探すべき、と意気込んだシンジのモンスターボールが勝手に開き、中からポケモンが姿を現した。

 

『フィア!』

「ニンフィア?急にどうしたの?」

 

そのポケモンは彼の相棒ポケモン、ニンフィアであった。どうしたのかとシンジは尋ねるが、飛び出してきたニンフィアはある一点を見つめるとその場所に向かってシャドーボールによる攻撃を放つ。

 

『フィーア!』

 

その攻撃を避けるために別の影が飛び出して姿を現す。そこにいたのは、少しニンフィアに似ている姿をしたポケモンであった。

 

『エーフィ、たいようポケモン。非常に賢く、認めたトレーナーには極めて忠実。額の珠に強力なサイコパワーを溜めている。』

 

そのポケモンの正体はエスパータイプのエーフィであった。恐らく今までの怪奇現象は全てエーフィの仕業だ。つまりシンジの仮説は当たっていたことになる。ユナは幽霊の仕業ではないと分かりホッとする。

 

「どうして君は……」

 

今までの行為の意味を問おうとするシンジ。しかし直後、エーフィの背後の影から複数の小さいポケモンが震えながら姿を見せてきた。

 

「え?このポケモンたちは……」

「ユナさん?知っているんですか?」

 

ユナはそのポケモンたちを見た瞬間に顔色を変える。様子が変だと感じシンジが彼女に尋ねると、ポケモンたちの詳細を教えてくれた。

 

「この子たち……この洋館の持ち主だった人のポケモンだわ。」

「え?」

 

ユナの話によると、急死したこの洋館の主である資産家が所有していたポケモンたちのようである。庭も広く、自分のポケモンたちと仲良く遊んでいた姿は町の住人からもよく知られていたことであるそうだ。

 

このポケモンたちは自分の主が死んだことを知らないのか、それとも行き場所がないからなのか、ずっとこの洋館で暮らしていたようだ。

 

しかしエーフィに関しては見覚えがないようで、野生のポケモンではないかと推測する。ここに近付いてくる怪しい人物たちを物音や怪奇現象で驚かせ、退散させることで彼らを外敵から守っていたのかもしれない。エーフィは頭のいいポケモンとしても有名なので、それぐらいの知能があったとしても不思議ではない。

 

「……そっか。キミはとても優しい子なんだね。」

『エフィ……』

 

シンジはエーフィに歩み寄る。エーフィは警戒態勢に入るが、シンジはエーフィの前で屈み優しく頭を撫でる。

 

「ありがとう、よく頑張ってたね。」

『……エフィ?』

 

突然撫でられて目を丸くするエーフィ。何故見ず知らずの人間に撫でられたのか、いくら賢いエーフィと言えど分からなくて困惑しているのだ。しかし、不思議と心地よく感じていたのか、エーフィは一切の抵抗を見せることはなかった。

 

「……よし!決めた!」

「ユナさん?」

「私、この洋館を建て直すようにお父さんに相談する!それで、この子たちが安心して暮らせるように責任もって管理する!」

 

ユナはこのポケモンたちを守るために、と決意をもってそう宣言する。ポケモンたちの面倒を見ることは簡単なことではないが、それでも事情を知ってしまった以上放置なんてしておけない。

 

「大丈夫、これからは私が……町のみんなが傍にいるからね。」

 

その言葉を聞いてポケモンたちは笑顔で答えてくれた。ユナの優しい気持ちが彼らに届いてくれたようだ。

 

早速このことを町長や町のみんなに知らせなくてはと、二人はポケモン達に待っててくれと伝える。そして2人は洋館を後にし、すぐに町へと戻るのであった。

 

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ君、ありがとうね、付き合ってくれて。」

「いえ、僕は何もしてませんから。」

『フィア?』

 

二人は町に戻るために帰路を歩く。しかしそんな彼らの後ろを付いて影にニンフィアが気付き、シンジもニンフィアと共に振り向いた。

 

「あれ?あの子は……」

 

ユナも同じく気付くと、その影の正体は先ほどのエーフィであった。何故ついてきたのかと尋ねると、もしかしたらとユナはあることに気が付いた。

 

「その子、あなたと一緒に行きたいんじゃない?」

「え?僕と、ですか?」

「あれだけ警戒していた子が、頭を撫でられた時すごく嬉しそうな顔していたし、きっとあなたの事を気に入ったのよ。」

「エーフィ、そうなの?」

『エフィー!』

 

シンジの問いかけにエーフィは笑顔を浮かべて元気に返事をした。そう言うことならと、シンジは空のモンスターボールを取り出した。

 

エーフィはシンジの意図を理解し、モンスターボールに軽く触れる。するとエーフィの姿はモンスターボールへと吸い込まれ、一切の抵抗を見せることなくピコンッ、と音がなる。エーフィのゲットに成功した合図だ。

 

「エーフィゲット!ニンフィア、新しい仲間ができたよ!」

『フィア♪』

 

物静かだが仲間思いの優しいポケモン、エーフィを仲間にしたシンジ。彼と共に新しい仲間のゲットに喜びを共感するニンフィア。彼らの旅は、これからもまだまだ続くのであった。

 

ちなみに洋館は住みやすいように改築され、ポケモンたちの住居、および町の人たちとの遊び場としてリフォームされ、今でも仲良く過ごしているそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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来週UNITEのスマホ版配信!

テイルズオブアライズ普通に神ゲーです


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~グレイシアとの出会い~

ダイパリメイク発売前には書きたかった

最近プリコネの動画もあげたりしてるから割と忙しかったりします(私用)


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

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シンジは現在雪山を歩いて登っている最中だ。一人で迷うことがないように、とガイド役の女性も一緒にである。

 

「はぁー……シンオウの雪山は寒いなぁ~」

「この時期は特に寒さが厳しくなりますから。」

 

シンオウ地方は他の地方に比べて気候が寒く、気象が変化しやすい地方である。雪山、と言うだけあり周囲には雪が積もっており、辺り一面真っ白な雪景色が広がっている。見ているだけでも寒くなっている。

 

一応寒さ対策に厚手の防寒着と手袋、雪山用の靴を着用しているため比較的マシである。とはいえ、やはり普段経験している寒さとは違うため慣れてない人には厳しいであろう。

 

「このまま一気に、と言いたいところですが、風が強くなってきたのでそろそろ天候が荒れそうです。近くの洞窟で一休みしましょう。」

「分かりました。」

 

シンジとガイドは近くにあった洞窟の中へと非難する。ガイドの女性が言った通り、次第に周辺が暗くなり突然雪が激しくなり吹雪いてきた。

 

流石はガイドと言うだけあり、雪山の変化に敏感である。これだけ変化しやすければガイドがいなければ迷子、最悪の場合凍死などの事故にあっていたことだろう。これだけ寒ければ手持ちのポケモン達に頼ることも難しい。

 

ガイドの指示で暫く洞窟の中で吹雪が過ぎ去るのを待ことにする。雷と同じくシンオウの雪山で降る吹雪は少しすれば止むとのこと。こういった状況が多いため、この近辺にはいくつか小さな洞窟の休憩場を作っているそうだ。

 

「ブーバー、焚火に火をつけて」

『ブーバ!』

 

ガイドの女性はブーバーをモンスターボールから出して洞窟に常備されていた焚火に火をつける。厚手の服をしているためそこまで体が冷えたりはしないが、それでも普通の人間であれば寒くないわけがない。少しでも暖かくすれば全く違うだろう。

 

それにしてもすごい吹雪だと関心するシンジ。少しだけ弱まってきたかと考えていると、吹雪の中になにか動く影が見えた。

 

この近辺に生息しているポケモンだろうか、と思ったがどうやら様子が違うようだ。こちらに少しずつ近付いてきて正体が判明する。

 

驚くことに一匹のポケモンが一人の男性の服を無理やり引っ張って引きずっているようだ。しかし男性を襲った素振りはなかった。

 

放っておくことができずシンジは思わず洞窟内を飛び出る。ガイドの人も危険なので引き留めようとするが、その抑止を聞く前にシンジは男性の元へと駆けつけた。

 

「大丈夫ですか!?」

『グレイ……』

 

男性は返事がない。ここは一先ず洞窟のなかへと非難させようと彼を肩に乗せる。

 

「一人では危険です!私も手伝いますから!」

「すみません、ありがとうございます。」

 

ガイドとして無視するわけには行かないと女性もシンジに手を貸す。二人で協力し男性を洞窟へと運ぶ。

 

男性は30代くらいの成人男性だが、力ない子どもと女性でも二人で協力すれば運ぶことはできた。二人はゆっくりと男性を洞窟内部に寝かせる。脈もまだ動いており息もある。吹雪の中にいたため体は冷えているが、まだ死んではいないようだ。

 

洞窟内には焚火が焚いてあるため熱は確保できている。後はこれ以上冷えないように彼の上にふかふかの毛布を掛け。

 

「僕温かい飲み物を用意しておきます。」

「ありがとう、助かります。」

 

女性が男性の面倒を見ている間にシンジは温かい飲み物を用意する。体温が戻っても体の芯が冷えてしまったままでは意味がないからだ。

 

シンジが用意している間、暫くすると男性の瞼が微かに動く。彼が目を開くと、周囲を見回しここはどこだと頭を無理やり覚醒させる。

 

「ここは?」

「ここは雪山の洞窟ですよ。あなたは吹雪の中で倒れていたんです。」

「吹雪の中で……そうか……みんなとはぐれてしまったか……」

 

どうやら彼は仲間たちとこの雪山に来たが先ほどの吹雪ではぐれてしまったようだ。未だ混乱状態の様子の彼に、落ち着くようにとシンジは温かい飲み物を差し出した。

 

「これ飲んでください。少しは落ち着くと思います。」

「ありがとう、助かるよ。」

 

そう言って彼はシンジから手渡された紙コップに入った飲み物を口にする。体の芯から温まり、彼はふぅっと一息ついて落ち着くことができた。

 

「君たちが助けてくれたのかい?」

「いえ、あなたのグレイシアが運んでくれたんですよ。」

「グレイシア?」

『グレイ』

『グレイシア、しんせつポケモン。体毛を針の様に尖らせて敵から身を守る。大気の水分を凍らせてダイヤモンドダストを起こすことができる。』

 

ガイドの言葉に男性は疑問を抱いて足元にいるグレイシアに目を向ける。しかし男性は驚きの言葉を発したのであった。

 

「いや、このグレイシアは俺のではないが。」

「え?そうなんですか?」

 

驚くべきことにグレイシアはその男性のポケモンではなかった。グレイシア自体野生で見ることは稀であり、警戒心も強いため自分から人に近付くことは珍しい。

 

想像できることと言えばこのグレイシアは面倒見のよいポケモンで、雪山を行き来する人間に慣れて警戒心が薄くなっているということだろうか。そう考えると、このグレイシアはかなり賢い個体のようである。

 

「そうか。ありがとうね、グレイシア。キミは優しいんだね。」

『……グレイ♪』

 

シンジがグレイシアの頭を優しく撫でると、グレイシアも嬉しそうに小さく微笑んだ。珍しい個体ではあるが、ポケモンの数は無数に存在するためそう言ったレアな個体がいても不思議ではないだろう。人間の性格が人間の数だけあるのと同じである。

 

男性を看病している間に気付けば吹雪が止んでいた。これなら今日中に抜けられるだろうとガイドの女性が判断し出発の準備をする。

 

「あなたも一緒に行きましょう。他の方々も心配してますよ。」

「はい、助かります。」

 

そう言って男性も一緒に仲間たちが待っている場所へと向かうことにする。

 

「ありがとうね、グレイシア。またね。」

『…………』

 

シンジはグレイシアの頭を再び撫で出発しようとする。しかしそんな彼の足元に、グレイシアは頭を擦りすり寄ってきた。

 

「グレイシア?」

『……グレイ』

「もしかしたらこの子はあなたと行きたいのではないでしょうか?」

 

ガイドの言葉にハッとなり、シンジはグレイシアのそうなのかと尋ねる。するとグレイシアはゆっくりと頭を縦に振り、肯定の意思を示した。

 

その行動にシンジは嬉しくなり空のモンスターボールを手にする。シンジがモンスターボールを差し出すと、賢いグレイシアは彼の意図を理解しモンスターボールに軽く触れる。

 

モンスターボールが開くとグレイシアは中に吸い込まれていった。互いに同意しているので、抵抗も一切なく数回揺れると同時にピコンッと音が鳴る、グレイシアゲットの合図である。

 

「おめでとう!これからグレイシアをよろしくお願いしますね!」

「はい!ありがとうございます!」

 

こうしてシンジは旅の仲間、優しくて面倒見がよく、賢いポケモンであるグレイシアを仲間にした。新たな仲間を手にし、シンジはこれからも旅を続けて行くのであった。

 

 

 

 

 

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みんな忘れてるかもしれないけど、ダイパ発売当時一番の衝撃は既存ポケモンの新しい進化先と進化前の追加だと思う。

マンムーやキッスはそうだけど、リーフィアとグレイシアもこの時代だし、公式がマルチ押ししてたのもこの時代。特殊な進化ばかりで初見じゃ進化させられないやつ。

リメイク発売にあたっての問題は、当時いなかったニンフィアが実装されるのかどうか。ダイパ図鑑準拠なら実装は望み薄っぽい。PVにもグレイシアとエーフィとリーフィアしか出てきてないし……。


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~ブラッキーとの出会い~

ブイズとの出会い(ブラッキー編)

実はブラッキー編は2パターン考えててギリギリまでどっちにするか悩んでました。


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

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シンジがとある地方のとある森の中を旅していた時のこと、突然天気が悪くなってしまいポツリポツリと雨が降ってくる。次第に雨は強くなり、とてもではないがこのまま外を歩き続けることは困難となってしまう。

 

「ニンフィア!走るよ!」

『フィア!』

 

ずぶ濡れになる前に一緒に歩いていたニンフィアと走り出す。この近辺にはポケモンセンターも見当たらず、周りには木々が生い茂るばかりである。

 

せめて大きな木陰でもないかと走りながら周囲を見渡していると、森の中に一件の家がポツンと建っていたのが見えた。この際仕方がないと、雨宿りさせてもらえないか尋ねてみることにした。

 

「すみませーん!誰かいませんかー!」

『はーい!』

 

シンジが扉をノックする。家の中から声が聞こえ、暫くすると一人のお婆さんが扉を開けて姿を現した。

 

「おやおや、こんな森の中に人が来るなんて珍しいね。」

「すみません。急に雨が降ってしまって、少しの間雨宿りさせてもらえませんか?」

「それは災難だったね。ほら、早く上がりなさいな。」

 

雨に濡れたシンジたちをお婆さんは快く家に向かい入れてくれる。シンジはお婆さんに感謝してお邪魔します、と家に上がった。

 

「ほれ、このままじゃ風邪を引いてしまうよ。遠慮なくこのタオルで拭いなさい。」

「わざわざありがとうございます。」

 

シンジはお婆さんから手渡されたタオルで自分の濡れた服と頭から染み込んだ水分を拭き取る。

 

「ほら、ニンフィアもおいで。」

『フィア♪』

 

その後同じく雨で濡れてしまったニンフィアもタオルで綺麗に拭く。ニンフィアも嬉しそうにしながらシンジにゴシゴシとされるがままにされている。タオルで吹いていると言うより、どちらかと言えばじゃれついているようにも見える。仲がいい証拠なのだとお婆さんも小さく微笑んだ。

 

その後、お婆さんの計らいでシンジは上着をリビングにある暖炉で乾かさせてもらう。暖炉とふかふかの毛布のお陰で冷えていた体温も自然と温かくなっていく。

 

「ほれ、温かいココアを飲みなさい。体の芯も温まった方がいいからね。」

「なにからなにまで、ありがとうございます。」

「あなたにはこれよ。ゆっくりお飲みなさい。」

『フィア♪』

 

お婆さんの用意したココアをシンジは受け取り早速口にする。そのココアは非常に温かく、お婆さんの優しい気持ちも伝わる味であった。ニンフィアは受け皿に入れられたミルクを美味しそうに少しずつペロペロと飲んでいく。

 

「あの……お婆さんはここに1人で住んでいるんですか?」

「ああ。でもここには野生のポケモンも沢山遊びにくるから、寂しくはないよ。天気のいい日はいつも賑やかなところさ。」

 

人の気配を感じなかったのでシンジは失礼かと思いながらも気になったことを尋ねてみる。するとお婆さんは明るい笑顔でそう答えた。

 

お婆さんの話によると、庭にはよく野生のポケモン達が元気よく遊ぶ姿が窓から見えるのだとか。そんな光景を眺めるのがお婆さんの日課であり楽しみでもあるのだそうだ。

 

お婆さんと日常的な話を続けるシンジ。すると奥から一匹のポケモンがゆっくりと姿を現した。そのポケモンは黒い体に、額や脚に光り輝く黄色の丸い模様。見覚えのあるそのポケモンの詳細を、図鑑を開いて確認する。

 

『ブラッキー、げっこうポケモン。イーブイが月の波動を受けて進化したポケモン。満月の夜には体の模様が黄色く輝くという。』

 

そのポケモンはイーブイが夜に進化するというブラッキーであった。珍しく聞こえた話し声が気になって出てきたのだろうか。

 

しかしブラッキーはシンジを見ると、特に興味もなさそうに暖炉の近くに行って体を丸めて眠り始めた。どうやら気になって出てきたわけではなさそうだ。

 

「あのブラッキーはお婆さんのポケモンですか?」

「いいえ、野生のブラッキーよ。」

 

シンジはお婆さんにブラッキーとの経緯を尋ねてみる。お婆さんの話によれば最近ブラッキーはフラフラとこの近辺に現れたようだ。はじめは警戒していたが、お婆さんが食べさせたお菓子が気に入ったのかそれ以降この家に出入りするようになったそうだ。

 

お婆さんは快くブラッキーを受け入れ、出入りするうちに自然とこの家に住み着くようになったそうだ。ブラッキーもお婆さんのことは気に入っているのか、毎日大人しく一緒に暮らしている。

 

しかし、野生のポケモンが遊びに来ても興味を一切示さず、家の中で毎日うずくまって日がな一日眠りについている。お婆さんが遊びに行くように促しても、反応こそ示すが外に出ようとはしない。

 

そんなブラッキーのことを気にしたシンジは、お婆さんにブラッキーと話してもいいかと尋ねてみることにした。

 

「あの……ブラッキーと話してみてもいいですか?」

「もちろんよ。あの子と仲良くしてあげて。」

 

お婆さんの許可をとり、ブラッキーの傍にゆっくりと近づく。

 

「こんにちは、ブラッキー。」

『……』

『フィア!』

 

シンジとニンフィアが挨拶するが、ブラッキーは一瞬目を開くもすぐに目を閉じて再び眠ってしまう。それでもシンジは彼と仲良くしたいともう一度話しかけてみる。

 

「君、お婆さんのこと好き?」

『……』

 

お婆さんの話を振ってもブラッキーは無反応である。その様子を見て、シンジは思い切って一歩踏み込んだ質問をしてみた。

 

「……もしかしてさ、君には元々トレーナーがいたんじゃないかな?」

『っ……』

 

先ほどまで無反応だったブラッキーの体がビクッと反応した。どうやらシンジの考えは当たっているようだ。

 

ブラッキーへの進化条件はトレーナーに対してのなつき度が関わってくる。そのため野生での発見例は極めて少なく、野生のブラッキーは殆ど見ることはない。そのため、以前はトレーナーと一緒にいたと言う仮説が彼の中で立てられたわけである。

 

ブラッキーのその反応だけで彼がどんな過去を持っているのかなんとなく理解した。

 

「……この子も同じなんだ。昔、別のトレーナーと一緒にいたんだけど、ある理由がキッカケで僕と一緒に旅をすることになったんだ。」

『フィア♪』

 

シンジはニンフィアの頭を撫でながら彼女の過去をブラッキーに話す。ブラッキーも態勢は一切変えていないが、耳だけはピクピクと僅かに動いている。興味無さそうにしていてもシンジの話の内容が気になっているようである。

 

ニンフィアにとってはあまりいい思い出とは言えない。しかし、原因はどうあれ彼女にとって最高のパートナーと呼べる存在と出会えたことはとてもいい思い出なのだろう。当の本人は辛い過去の話を特に気にしておらず、主人に頭を撫でられて気持ちよさそうにしている。ニンフィアのその様子から、ブラッキーは彼が悪い人ではないことはなんとなく理解していた。

 

ブラッキーも自分の話に少しは興味を持ってくれたのだと思い、シンジはブラッキーと話を続ける。お婆さんに聞いた話の内容からくみ取るに、ブラッキーはあまり他人に対して心を開こうとしなさそうだと思い、彼の心に寄り添ってあげたいと感じたためである。

 

「そうだ!」

 

シンジは何か思いついたように自分のバッグを漁る。バッグの中身から、一つの小さな缶を取り出した。彼が缶の蓋をあけると、中にはポケモンフーズが入っていた。

 

「これ、僕が作ったポケモンフーズだよ。と言っても、最近作り始めたばかりだからあんまり自信はないんだけどね。」

 

シンジは手のひらにのせたポケモンフーズを差し出す。ブラッキーは少し興味を示す素振りを見せるが、警戒しているのか口にしようとしない。

 

やっぱり出来が良くないのか、と少し残念に思うシンジだが、そんな彼の前にニンフィアがブラッキーに話しかけて前に出る。

 

『フィア!』

『……ラッキ?』

『フフィフィ、フィーア』

 

ニンフィアはシンジの作ったポケモンフーズをリボンで器用に取って自分の口に入れた。特に危険もなく、こうやって食べるのだと実演してみせたのだ。面倒見がいいニンフィアらしいと言えばらしいのだが、似たような境遇であるブラッキーにどこか思うところもあるのかもしれない。

 

『……』

 

ブラッキーはニンフィアとシンジ、それと彼の持っているポケモンフーズを交互に見る。それでも食べてくれないのだろうかと暫く待ってみると、ようやくブラッキー体を起こして動き始めた。

 

すると興味を持ち始めたのか、ブラッキーはシンジのポケモンフーズに近付く匂いを嗅いだ。そしてようやく警戒心を少しでも解いてくれたのか、ポケモンフーズを半分かじって口にした。

 

『……ブラッキ』

 

ブラッキーは無表情のまま一切表情を変えていない。彼の表情からはイマイチ感情が読み取り辛いが、それでも一度口にしたポケモンフーズを続けて食べ始める。どうやら危険はないと判断してくれたようで、シンジは嬉しさから小さく微笑み、ニンフィアの頭を撫でて感謝する。

 

ポケモンフーズを食べ終えたブラッキーは静かに三度眠りについた。シンジはこれ以上話しかけることはなく、静かに彼の傍で背中を撫で続けて安心させていた。

 

暫くして窓の外を見てみると先ほどまで大降りだった雨は既にあがっていた。どうやら降ってもすぐに止むにわか雨だったようだ。

 

これ以上お世話になって迷惑をかけるわけにはいかないと、シンジは立ち上がって自分の荷物をまとめて旅に戻ることにする。そんな彼らを、お婆さんは優しく見送ってくれるのであった。

 

「それではお世話になりました。」

「ええ、また近くに来たら遠慮なくよっていいからね。気を付けて旅を続けなさいな。」

『フィア!』

 

シンジとニンフィアはお世話になったお婆さんに頭を下げて別れを告げる。そんな彼らをブラッキーは静かに見つめ見送っていた。

 

そんなブラッキーの顔を見たお婆さんは、彼の気持ちを悟って声をかける。

 

「あの子と行きたいんじゃないのかい?」

『……』

「私の事はいいから、彼と行ってきなさい。あなたはあなたのしたいようにすればいいのよ。」

 

お婆さんの言葉にブラッキーは静かに首を縦にふる。その後軽く駆けだして、シンジのズボンの裾を引っ張り気を引いた。

 

「ブラッキー?どうかしたの?」

「その子はあなたと一緒に行きたいみたいよ?」

「え?そうなの?ブラッキー」

『……』

 

ブラッキーは何もしゃべらないが、シンジの言葉に対して首を縦に振ることで答えた。その反応にシンジは嬉しくなり、空のモンスターボールを取り出してブラッキーに差し出した。

 

「ブラッキー、これからよろしくね!」

『……ブラッキ』

 

今まで無表情だったブラッキーだが、モンスターボールに触れて吸い込まれる瞬間だけ少し笑顔を見せた気がするシンジ。数回モンスターボールが揺れ、ピコンッの合図とともにブラッキーのゲットに成功する。

 

「ブラッキー、ゲットだよ」

『フィア♪』

 

静かに、それでも嬉しそうに呟くシンジにニンフィアも同じように嬉しくなり声を出す。そんな彼らに、お婆さんは「ブラッキーのことをよろしくね」、と一声かける。

 

もちろんですと返答するシンジは、新たに仲間になったブラッキーと共にこの先も冒険を続けるのであった。

 

 

 

 

 

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残るはシャワーズのみとなります

新実装のアマージュクッソ強いね。カイリューも最終進化9に下げられてそうだから強そうだし、ジュナイパー君も救ってあげて。かげぬいのリキャストタイムが長いせいでバナのソラビの劣化にしかなんないんっすよ。


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~シャワーズとの出会い~

ウルトラネクロズマ編が終わったのでラストのブイズ出会い編となります。

また後でブイズ編(ニンフィア、イーブイを除く)を同じ場所に纏めておきます。


これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

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自分のパートナーであるニンフィアと旅をし、日々成長を繰り返しているシンジ。今日は日頃の疲れを癒すためにとある浜辺に訪れていた。

 

「風が気持ちいいね」

『フィーア♪』

 

浜辺でくつろぎ安らぎを感じるシンジとニンフィア。障害物がなく、海を渡る潮風が肌を優しく撫でて通り過ぎている感覚が、彼らの日頃の疲れを自然と拭い去ってくれる。

 

こうして静かに過ごしているだけで気持ちが落ち着いてきて、眠気から彼らの瞼が徐々に落ちてくる。しかしその時、彼らの横に何者かが立つ気配があり眠気が解けて行った。

 

『シャウ』

「えっ?君は?」

 

そこに立っていたのは青色の体をしていて、シャンプーハットにも似たエリマキをしたポケモンであった。そのポケモンは、どことなく心配そうな瞳でシンジたちを見つめていた。

 

『シャワーズ、あわはきポケモン。細胞構造が水の分子によく似ていて、水に溶けることができる。人魚に見間違えた人もいると言われている。』

 

そのポケモンの名前は水タイプのポケモンであるシャワーズ。ニンフィアと同じイーブイの進化形である。しかしイーブイの進化形は珍しく、野生での目撃例はあまりない。誰かトレーナーはいないのかと辺りを探す。

 

すると一人の男性がシンジに近付いてきた。この人がシャワーズのトレーナーだろうか、と考えていると男性がシンジに話しかけてきた。

 

「どうやらこのシャワーズは君が倒れていると思ったみたいだね。」

「え?そうなんですか?」

「ああ。このシャワーズは優しい性格で、この浜辺でよく人助けをしたりゴミを拾ったりしてくれているんだ。」

「ごめんね、シャワーズ。でもありがとう。僕たちは大丈夫だから。」

『シャウ♪』

 

シンジがシャワーズの頭を優しく撫でる。シャワーズは目を細めて、気持ちよさそうな高い声を出していた。

 

「このシャワーズはあなたの?」

「いや、違うよ。この子は野生のシャワーズさ。」

「珍しいですね、野生のシャワーズなんて。」

「私は言わばここの管理人みたいな者なんだが、ある日このシャワーズがやってきたんだ。」

 

管理人と言う男性は、シャワーズと出会った時のことを話し始める。

 

ある時、男性がこの浜辺でゴミ拾いをしていた時のことだった。突然ふとこのシャワーズが自分の元へと現れたのだ。

 

一体誰のシャワーズなのかと疑問に思ったが、彼のトレーナーは辺りに見当たらなかったようだ。恐らく野生なのだろうと判断するが、シャワーズは人慣れしているのか男性を怖がる様子はなかった。

 

変わったことにシャワーズは男性の真似をしてなのか、ゴミ拾いを手伝ってくれたのだった。それだけでなく、海で溺れそうになっていた人を助けたり、困っている人がいたら知らせてくれたり、喧嘩を仲裁してくれたりと、シャワーズ自身が優しい性格のようであった。そのおかげで、この近辺では一切大事なく平和な日常が過ぎて行ったそうである。

 

「そんなことがあったんですね。」

「ああ。このシャワーズにはいっぱい助けられたよ。でも、私としては……」

 

男性はどこか思うところがあるのか少し暗い顔をする。どうしたのかとシンジが尋ねようとすると、彼らの耳に少女の叫び声が聞こえてきたのだった。

 

「うええええん!!私のプリンちゃんがっ!」

『プリュ!プリュ!』

 

少女は泣き叫び、海ではプリンが溺れている姿が確認できた。ふうせんポケモンであるプリンはその体系からかなんとか浮かんでいられているが、それでも波にさらわれでもしたら広大な海に流され行方不明となってしまう。

 

しかし少女はまだ幼く、助けに行けるような状況ではない。お人好しなシンジは、放っておくことはできないと急いで海に飛び込み、プリンを助けに向かった。

 

「君!危険すぎる!?」

『シャワ!?』

 

男性とシャワーズも、彼の無謀な行動に驚き目を見開く。相変わらず無茶をする主人に、ニンフィアも心配そうに眺めている。

 

シンジはなんとか海を泳いでプリンの元に辿り着く。溺れて戸惑っているプリンを抱きかかえ、シンジは優しく声をかけ安心させるのであった。

 

「大丈夫、僕がついてるから。」

『プリュ……?』

 

先ほどまで慌てていたプリンも、シンジの言葉に少し安心したのか彼に身を預けた。大人しくしてくれれば、沖まで戻れるだろうと振り向こうとする。しかしその時、彼らの周囲を取り囲む影に気付いた。

 

その正体は頭部に赤く光る水晶体と二本の触手が特徴的なみず・どくタイプのポケモン、メノクラゲであった。それも一体や二体ではなく、複数体に囲まれている状況であった。

 

海の中で、それも複数体に囲まれてしまっては人間に力で抵抗するのは困難だ。それも弱ったポケモンを抱えた状態であれば尚更である。

 

『フィア!?』

 

主人のピンチに慌ててニンフィアも向かおうと駆け出した。ニンフィアが海に足をつけ、泳ぎ出そうとした刹那、彼女の動きを抑止するように横をもの凄い勢いで通り過ぎていく姿があった。ニンフィアは呆気にとられ動きを止めた。

 

「っ、このままじゃあ……」

 

メノクラゲたちは近づいてきた獲物を触手で拘束し毒針で攻撃する習性がある。釣り人や海水浴に来た人などを刺し事故にある例も確認されている。シンジはどうやって打破するか、と必死に頭を回転させていた。

 

『シャワ!』

 

その時、海に溶け込み姿を潜めていた一匹のポケモンが海面から飛び出し姿を現した。先ほど出会ったあわはきポケモン、シャワーズであった。

 

『シャウ!』

 

シャワーズは飛び出すのと同時にれいとうビームを海面にまき散らす。れいとうビームはシンジを囲んでいたメノクラゲたちを包み込み、海面と同時に凍らせることで動きを封じた。

 

『シャワァ!』

 

シャワーズはその後海面に着地し、シンジに何かを語り掛ける。言葉は分からないが、体を寄せてきたため自分に掴まれと言っていたのがなんとなく伝わった。シンジはシャワーズに急いで掴まり、彼が掴まったのを確認したシャワーズは勢いよく泳ぎ始めた。

 

そのスピードは凄まじく、みるみる内にメノクラゲたちとの距離が離れていく。そして気付いたときには、浜辺へと到着しシンジたちを打ち上げたのだった。

 

「ゲホッ、ゴホッ!あ、ありがとうシャワーズ、お陰で助かったよ。」

『シャウ』

 

シンジ助けてくれたシャワーズにお礼を言う。心配していたニンフィアも、シンジに擦り寄って彼の無事を肌で確認した。心配させてごめんと、シンジはニンフィアの頭を優しく撫でる。

 

「プリンちゃん!よかったー無事で!」

『プリュ!』

「お兄さん!ありがとうございます!」

「お礼なら僕じゃなくてシャワーズに言ってよ。この子がいなかったら助けられなかったから!」

「うん!シャワーズちゃん!ありがとう!」

『シャウ♪』

 

泣きながらプリンに抱き着いた少女は、シンジとシャワーズにお礼を言ってその場を立ち去っていく。シャワーズは笑顔を取り戻した彼女たちの背中を、優しい瞳で見つめ見送っていた。

 

「君たちが無事でよかったよ。あの子たちを助けてくれてありがとう。」

「いえ、シャワーズがいてくれたから。」

「……シャワーズは君のことを大層気に入ったようだね。」

「え?」

「この子は優しい子だ。でも今回は、ただ助けたいだけじゃなかったと思うよ。自分の身を顧みず助けに入った君のことを、この子は助けたかったんだろう。」

「……そうなの?シャワーズ」

『シャウ!』

 

シンジの言葉にシャワーズは笑顔で頷き返答する。そんなシャワーズの答える姿を見て笑顔を浮かべた男性は、シンジにとある提案をした。

 

「どうだろう。君さえよかったらシャワーズを連れて行ってはくれないか?」

「え?で、でも……」

「私はシャワーズにここだけじゃなくて、他にも困っている人がいたら助けて欲しいと思っている。それと同時に、この子には広い世界を見せてやりたい。だからどうだろうか。君さえよければ、シャワーズに色んな世界を見せてあげて欲しいんだ。」

 

シンジは男性の言葉を聞き、屈んでシャワーズと向かい合う。自分は一緒に旅をしたいが、最終的に決断するのはポケモンだ。シンジは、最後の判断をシャワーズに委ね尋ねた。

 

「シャワーズ、君はどうしたい。」

『シャワ』

「……僕と一緒に行くかい?」

『……シャウ♪』

 

シャワーズはシンジの問いに笑顔で大きく頷いた。その返答を聞いたシンジも同様に嬉しくなり、懐から取り出したモンスターボールをシャワーズに差し出した。

 

「一緒に行こう、シャワーズ!」

『シャウ!』

 

シャワーズがモンスターボールに触れ、ボールの中にシャワーズが吸い込まれる。数回ボールが揺れ、ピコンッという音と共にシャワーズのゲットが確定した。

 

「シャワーズ、ゲットだよ」

『フィア♪』

「シャワーズのこと、よろしくお願いするよ」

「はい!」

 

そしてシャワーズは、シンジやニンフィア、他の仲間たちと一緒に広い世界を旅し、色々な経験をすることになるのであった。

 

 

 

 

 

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最近ルナアーラの強さに気付いた。やっぱり特性マルスケは強いや


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