ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師 (クッペ)
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お知らせ
皆さんお久しぶりです。
え~このたびこの作品を設定を少しいじってリメイクすることにいたしました。理由は個人的に展開に無理がありすぎるのと、今後の展開もまた無理やりすぎる駄文展開にしかならないためです・・・まぁ俺の個人的な技術もないしぁン全に見切り発車してしまったことが原因なので、深く反省している所存です・・・
そこで相談なのですが、リメイクにあたって今まで書いてきた作品を残して、まっさらな状態でリメイクをするか、もしくは今まで書いてきた作品を全消ししてこのUA、お気に入り件数、評価などを引き継いでリメイクを始めるか迷っています。
個人的には完全にまっさらな状態でやらせてもらった方が楽なのですが、こんなのもう読みたくねえよ!!っていう方がいらっしゃるのであれば、今までここで書いてきたものを全部消していろいろ引き継いだままリメイクという形を取らせていただきます。
ちなみに今まで書いてきた作品はここにしか残っていません。俺が使っているパソコンのワードファイルや、USBなどにも全く残っていません。ですから個人的にはこちらを残してまっさらな状態でのリメイクが望ましいです。
どちらがいいか感想の方によろしくお願いします。
リメイク作品が投稿されるのは11月以降になりそうです・・・リアルの方がごたついて忙しいので・・・
以下文字稼ぎ
m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m
小説用のTwitter作りました
しばらく投稿されることは無いですが・・・
@kuppe_0124
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設定
設定
カイン=レーダス
グレンの義理の弟、正し血の繋がりは全くない。
見た目のイメージはファイアーエムブレム新紋章の謎のカイン(CV.イメージ:細谷佳正)
魔術特性:物質の分解と再生
保有しているマナが尋常ではなくマナ欠乏症になったことは無い。
身体のマナをそのまま放つ技術があり、発動途中の魔術にマナの塊をぶつけることで魔術式を吹き飛ばし、その魔術を無効化する特別な技術がある(術式解体・グラムデモリッション)
ルーン語を用いた魔術では威力が高すぎるため、拳銃形態の魔道具を使用している。(CAD)
体術の技術はグレンに劣るが、それでも相当強い
特別な視力、「精霊の眼」を持っており、その物質の因果関係や特定の人物の監視が可能となっている。「精霊の眼」の力の25%をグレンとセリカに使っており、自分が「精霊の眼」を使う際には本来の力の半分ほどしか発揮できない。
宮廷魔導士団特務分室No.21『世界』の二代目
固有魔術
『再成』:すべての物質を24時間以内に限り復元することができる。それを自分に組み込むことにより、自己修復魔術が発動可能となっている。マナが枯渇しない限り、戦闘に支障が出る傷害は一瞬で復元される。他人に使用することで、他人の傷害を傷を負う直前の状態にすることができる。
『雲散霧消』:魔術特性の分解を用いた魔術。全ての物質を自分の任意の段階に分解することができる。人の身体そのものの存在の抹消も可能であるし、一部分だけ削り取ることも可能である
『術式解散』:すでに起動してしまっている魔術を分解して、魔術の効果をなくす対抗魔術
尚、カインの固有魔術は軍事機密指定がなされており上司であるイヴの指示が無い場合や、任務で使わないと生還できないような状況でない場合に限り、使用することは禁じられている。固有魔術発動には専用の拳銃形態の魔道具が必要。
魔法科高校の劣等生の司波達也の技ほとんど貰っちゃいましたwww
最初は達也をこの世界に突っ込もうと思ったんですけど、達也だと感情欠落しているし、他の魔法(魔術)満足に使えないし、学園に放り込んでも筆記で下位に圧倒的差をつけて勝っちゃうし、なんだかんだで「達也居れば良くね?」にしかならないという素晴らしい理由により、魔法科高校の劣等生とロクでなし魔術講師と禁忌教典のクロスオーバーは断念させていただきました・・・
こういった説明は下の文章で書くべきだと分かってはいるのですが、文字数稼ぎという素晴らしい理由のためにここに書かせていただきましたw
初投稿になりますがこれからよろしくお願いします!
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プロローグ
とある夜の出来事である。
「いやぁ、俺つくづく思うんだよ。働いたら負けだなって。お前がいてくれて本当によかったよ。お前のおかげで俺は生きていられるからな」
「はぁ、死ねよ穀潰し・・・」
ため息交じりにその女性は言った。
「あっはっは!セリカは厳しいなぁ!・・・あ、おかわり。でも今日はちょっと塩味がきついな。」
「清々しい上にダメ出しとは恐れ入るよ」
女性――セリカは不気味に微笑みながらそう言い、
「《まぁ・とにかく・爆ぜろ》」
不意にルーン語の三節で奇妙な呪文を唱えると、容赦ない爆風がグレンを吹き飛ばし、豪華な食卓は半壊した。
「ば、馬鹿野郎!お前、俺を殺す気か!?」
「殺す?違うな。ゴミを片す行為は掃除というんだぞ?グレン」
「今のはグレンくんが悪いよ・・・ちゃんと謝ったほうがいいんじゃない?」
ここまで静観を保ってきた銀髪の少女、セラがそう言うと
「うるせぇよ、お前だって、セリカから養ってもらってるじゃねえか」
「違いますぅ~、私はちゃんと働いて、家賃支払って下宿させてもらってるんです~。それよりセリカさん、いいんですかこんなにしちゃって。また彼から小言貰いますよ?」
「なんだかんだで、あいつはいつも直てくれるからあとでちゃんと謝るとして、なぁ、グレン。・・・お前いい加減仕事探さないか?」
グレンがよろよろと起き上がりながら一瞬動きを止め、
「お前が私の家に居候し始めてから早一年。毎日食って寝てぼんやりしているだけ。本当にそれでいいのか?お前の弟は、今でもお前の分まで働いているというのに・・・」
「大丈夫。今の俺は昔の自分より大好きだ!」
「弟分に働かせといてこの言い草とは、いや、お前もう死ねよ、頼むから」
セリカは呆れながら言い放ち
「お前というやつは、昔のよしみで面倒見てる私や、お前の弟には申し訳ないと思わないのか?」
「まぁ、確かにあいつには申し訳ないとは思っちゃいるが、俺とお前の仲だろう?そのくらいは見逃して・・・」
「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を・・・》」
流石に切れたセリカは呪文を唱えはじめ、セラはこの場から退避しつつ、
「おい!?それ、【イクスティンクション・レイ】の呪文じゃねえか!?待って!?それだけはやめて!俺が灰になっちゃうからー!?」
グレンが悲鳴を上げながら高速で後退りした。
セリカはため息をつきながら魔術を解除し、
「まぁいい、とにかくお前もそろそろ前に進むべきだと私は思う。お前自身も本当は分かっているだろ?」
「つっても、働くっていったい何すりゃあいいんだよ・・・」
「そういうと思って、すでに私が契約してきてやったぞ。実は今アルザーノ魔術学院の講師枠が一枠空いてしまってな・・・急な人事のため、代えの講師が用意できなくってな。そこで、お前には一ヶ月の間、非常勤講師をやってもらおうと思っている。」
「おい!?すでに契約されてる時点で、俺に選択しなんて無えじゃねえか!?しかもなんで俺なんだよ?あの学院には暇な教授共がたむろしてるんだろ?そいつらにやらせりゃあいいじゃねえか?」
「グレンくん魔術学院で働くの!?いいじゃん!グレンくん魔術にすっごく詳しいし、教えるのもうまいからきっといい先生になれるよ!」
いつの間にか戻ってきていたセラがグレンの雇用に関する話を聞いていたようで、目を輝かせながらグレンにそう言うが・・・
「いやいや白犬よ。勝手に俺の退路奪わないでもらえますかね?それに無理だよ・・・俺にはだれかを教える資格なんて無い・・・それに俺は魔術が大っ嫌いだからな!」
「グレンくん・・・グレンくんが魔術を嫌ってるのってやっぱり二年前の・・・」
「勘違いするなよ白犬。別にあの事があったから魔術が嫌いになったわけじゃねえ。」
「グレンくん・・・」
「とにかく!俺は金輪際!魔術なんかには関わらないからな!魔術に関わるくらいなら道端で命乞いでも――」
「≪其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離せよ≫」
セリカが呪文を早口でまくしたてた刹那、グレンの傍らを光の波動が駆け抜けていった。
グレンが波動の駆け抜けたほうへ目を向けると、そこには物理的な破壊が不可能であろう大穴がごっそりと空いていた。
「・・・狙いが甘かったか。」
セリカは舌打ちをしながらそう呟き硬直するグレンに向かって
「次は外さん・・・≪其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を・・・≫」
「ママぁあああああああああああ―――――ッ!?」
グレンが絶叫していると、セリカが発動しようとしている魔術は発動直前で吹き飛ばされ、
「母さん、ただいまー。・・・うわ、また凄いことになってるし・・・」
帝国宮廷魔導士団の制服に身を包んだ赤髪の少年が、拳銃形態の魔導器を向けながら、帰ってきた。
「母さん、今度は兄さんが何をしたんだよ・・・毎回毎回こんなにぶっ壊して、直すのもタダじゃないんだよ?」
そうため息をつきながらセリカが破壊した食卓、壁に拳銃形態の魔導器を向けながら呟き、引き金を引いた。すると壊されたところがまるで壊されたという現実が無かったかのように、直されていた。
「お帰り、いつもすまんな、カイン。だが今回は完全にグレンが悪い」
「いや、基本的に悪いのは兄さんっていうことは分かってるんだけど、今回は一体何があったのさ?」
セリカがここまでに経緯をカインに説明すると、
「え!?兄さん魔術学院で講師やるの!?応援してるよ!頑張ってね!」
目を輝かせながらそう言ったカインに対して、グレンはとうとう首を縦に振るしかなかったのだった。
「お帰りカイン君。今日もお疲れ様」
「ただいまセラ姉。そうだ、ちょっと耳貸して。―――」
帰ってきたセラに対してカインが何事か耳打ちをしている。
このような経緯があり、グレンの再就職先がアルザーノ魔術学院の非常勤講師に決まった。
基本的に原作準拠です。
セラは現在宮廷魔導士団特務分室執行官No.3『女帝』です
それと9月中はあんまり投稿できないかもです。リアルの方が少しごたごたしていまして…
お気に入りして下さった方々などには申し訳ないですが本格的な投稿は恐らく来月以降になりそうです…
初投稿作品ですので温かく見守っていただけると幸いです。
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第一巻
第一話
しばらく投稿できないといったな?・・・あれは嘘だ・・・と思いたいです・・・
明日以降どうなるかはよくわかりません。とりあえず失踪はしないつもり
――宮廷魔導士団特務分室室長室――
「イヴーーーー!」
カインが朝から叫んで室長室の扉を乱暴に開け放ち
「イヴ!一ヶ月休暇頂戴!!」
「・・・なんなんだいきなり。しかも休暇を一ヶ月だと?」
そうため息交じりにぼやくのは宮廷魔導士団特務分室室長、執行官No.1『魔術師』のイヴ=イグナイトである。
「なぜ急に一か月物休暇を要請してくる・・・お前ほどの魔術師を一ヶ月も休暇を取らせようとすると、それ相応の理由が必要になってくるのだが・・・」
「理由?兄さんの監視だけど?」
さも当然というような言い草にイヴは、
「・・・は?」
こう言い返すしかない。それもそのはずで、カインは彼の固有魔術の副産物である視力によって、常時グレンの監視をしていることを知っている数少ない人物なのだ。
「・・・とりあえず監視の理由を聞かせてもらおうか」
知っているとはいっても、それでも監視をしなければならない重要な理由があるのだろうと思って、理由を聞いてみるが、
「今日から兄さんがアルザーノ魔術学院で非常勤講師になるんだけど、その仕事をしっかりとやってるか監視したいんだよ。兄さんの雇用期間は取り合えず一ヶ月っていう契約らしいから、俺も一ヶ月休暇取っていいでしょ?」
「・・・・・・」
今度こそ絶句するしかなくなった。しかし絶句したのはカインの理由が予想していた物よりも酷いものだけではなかった。それでも大部分はその理由によるものなのだが。
(魔術学院で講師?あいつがか?)
グレンが宮廷魔導士団から去った理由を知っているイヴからしたら、グレンが魔術学院での講師なんて仕事をする理由が思いつかなかった。
「ちょっと!?カイン君!勝手な行動取り過ぎ!あぁ、イヴ、ごめんなさい・・・カインが勝手に・・・」
「ちょっと!?勝手って酷くない?昨日相談したよね?」
「相談はされたけど、まさかこんな朝一番に室長室に乗り込むなんて予想できないわよ!」
「君たちは相変わらず仲がいいね本当に」
イヴが目の前で繰り広げられている漫才を眺めつつカインに尋ねた。
「カイン。一ヶ月の休暇がほしいのは本当なんだな?」
「うん。本当だけど・・・くれるの?」
「もう少しまともな理由を用意してほしかったんだが、まぁ休暇の件は前向きに検討させてもらおう。ただし条件がある」
「条件って?」
「あくまで休暇でも理由は完全に認められるものではない。これからの一か月間で、君の力が必要になったときは、こちらの方を優先させてほしいんだ。君の戦力は特務分室でも群を抜いている。二代目『世界』からのお願いだから聞き入れないわけではないが、あまりこういった理由での休暇を取ろうとするのは勘弁してくれよ・・・それともう一つ、これはお願いなんだが」
「お願い?」
「元宮廷魔導士団特務分室執行官No.0『愚者』のグレン=レーダスにこちらに戻ってきてくれるように話してはくれないかね?彼が軍の仕事に向いていないことは重々承知していることなのだが、やはり彼の力もあってほしいものだからね」
「うーん・・・とりあえず聞いてはみるけど、あんまりいい結果は期待しないほうがいいかな?流石にあの一件の後に軍に戻ってきてくれって言っても、聞いてくれない可能性の方が高いわけだし・・・」
「イヴ・・・」
隣で話を聞いていたセラ、は少し憤りを感じていた。あの一件はグレンの心に深い傷を作るものであったし、その原因になってしまった自分に対しても、そのことを知っていて軍に戻ってきてほしいと思っているイヴに対してもだ。
「その条件と、お願いを聞いてくれるのならば、お前の休暇は許可してやろう。あくまで特例であって、以降はこんな理由で休暇なんて出さないからな?」
「ありがとうイヴ!」
「ところでお前、どうやって魔術学院に入るつもりだ?それとグレンの監視といったがどうやって監視するつもりだ?その視力によっての監視じゃないんだろう?」
アルザーノ魔術学院には特別な結界が施されていて、学院の学生、教授、講師などの学院関係者以外は、立ち入りが出来ないようになっているのである。それを知っているからなのだろう、イヴはカインにこう尋ねた。
「魔術学院の結界の事言ってるの?結界の事なら大丈夫。結界の術式を一部分解して吹き飛ばして、学院に入った後に戻すから。それと兄さんの監視だっけ?それは光学迷彩の魔術使って、姿見えないようにして、兄さんの講義やってるクラスに入り込むから大丈夫だよ。」
「「・・・・・・」」
学院でグレンの監視の方法を聞いていたセラも、学院に入る方法までは聞かされてはいなかったようで、絶句していた。何も聞かされていなかったイヴの方が、ダメージは大きかったかも知れない。
* * * * * * * * * *
特務分室での会合(?)のあと、早速学院に忍び込んだカインはグレンの担当クラスの2-2の教室に光学迷彩の魔術を使って忍び込んだが、まだグレンは学院に到着しておらずに授業開始時間を半分経過しようとしていた。
「遅い!」
このクラスの主席の生徒だろうか?銀髪の少女がそう叫ぶと、
「まぁまぁ落ち着いて、システィ。きっと何か問題でもあったんだよ。それにしても本当に遅いね・・・どうしちゃったんだろう?」
隣にいた金髪の少女が銀髪の少女を宥めていた。他の生徒もシスティと呼ばれていた生徒と感じていることは同じようで、大分いらだっている雰囲気も伝わってくる。
(初日から大遅刻って兄さん大丈夫なのかな?)
カインがそう思っていると、クラスの扉は開いた
「悪ぃ悪ぃ、遅れたわー」
そう言ってようやく到着した講師が気怠そうな雰囲気発し、なぜかずぶ濡れで擦り傷、痣などを身に纏った青年、グレンがやってきた。
(いったい何があったらそうなるんだよ・・・)
半ば呆れながらカインがそう思っているとシスティと呼ばれていた少女がグレンに詰め寄って説教していた。そしてグレンが自己紹介し始めると授業を早く始めるように促していた。
(ちゃんと授業する気あるのかよ?)
と、カインが内心思いつつグレンがおもむろに黒板に何かを書き始めた。何を書き始めたかと思えばそれは
自習
その文字を見て
(やっぱり・・・)
まともに授業をやると思っていなかったカインの予想通りまともに授業をやる気がないグレンがこう言った
「本日の一限目の授業は自習にしまーす。・・・眠いから・・・」
そう言い放ちさっそく睡眠の態勢に入ると
「ちょっと待てぇええええーーー!」
と、グレンに対してシスティと呼ばれていた少女が教科書を振りかぶっていた。
なんていうか、イヴめっちゃ優しくなっちゃった・・・こんなのイヴじゃないと分かっているのですが・・・
そして駄文で申し訳ないです・・・
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第二話
その後グレンはシスティと呼ばれていたにあれやこれや言われ、授業を始めたのだが
(兄さん、これはさすがに適当過ぎるでしょ・・・)
グレンが行った授業はおよそ授業と呼べる代物ではなかった。教科書に掛かれていることを気だるげに説明(?)し、要点を黒板に書いていき(ミミズがのたくったような、おおよそ文字と呼べるか怪しいもので)、図を適当に(形が歪んでいる)書いていた。そんな授業でも一応受けている学生はいるようで
「あの・・・先生・・・質問があるんですけど・・・」
眼鏡をかけた小動物的雰囲気を持つ少女がおずおずと手を上げていた。
「どうした?言ってみな」
「先ほど説明して下さったルーン語の呪文の一例なんですが・・・これの共通語訳が分からないんですけど・・・」
「ふっ、俺にも分からん。すまんな自分で調べてくれ」
堂々と講師の役目を放棄していた。しかし、カインはそのことに関しては特に何も思っていなかった
「待ってください、先生。生徒の質問に対してのその対応、講師としていかがなものかと」
システィと呼ばれていた少女がグレンを糾弾していたが
「だーから、分からんて言ったろ?分からないものをどうやって教えればいいんだよ?」
「それならば後日調べてきて次回の講義で改めて取り上げるのが、講師としての役目だと思うのですが?」
「ふーん、やっぱり自分で調べたほうが早くねえか?」
「そういう問題ではなく、私が言いたいのは―――」
「ひょっとしてお前ら、ルーン語辞典の引き方わからねえの?あー、はいはい、それなら仕方ねえわ。しょうがないから次回までに俺が調べてきてやるよ。めんどくせえな・・・仕事増えちまったぜ・・・」
「―――!もういいです!辞書の引き方くらい自分で分かります!」
少女は肩を震わせながら着席した。
(兄さん、このままで大丈夫かな・・・)
* * * * * * * * * *
次の時間の錬金術の授業はグレンが女子の更衣室に侵入し、2-2の女子生徒によるグレンへの粛清の結果、錬金術の授業は中止。
お昼になるとやがて学生は食堂に移動したが、カインは一日朝夕の二食しか食べないので、光学迷彩を維持しつつ、校内の敷地に生えていた『シロッテの枝』を加えながらとある考え事をしていた。
(やっぱり兄さん、まだ魔術が嫌いなんだよね・・・今日の授業はそれが顕著に表れてたし、恐らくこのまま行くとあの銀髪の子がきっと何かの行動を起こすよな。でもこの学園に侵入してることは誰にもばれるわけにはいかないし、どうしたものかな・・・)
* * * * * * * * * *
その後のグレンの授業もありていに言って酷いという一言で済まされる。
最初のうちはまだ一応説明をしていたが、日に日に状況は悪くなって行く一方で、教科書を丸写しする。教科書を黒板にくぎで打ち付けると悪化していった。
今日は教科書のページを引きちぎり、黒板に打ち付けようとしたところで
「いい加減にしてください!」
と、システィと呼ばれていた少女が、グレンに詰め寄っていた。
その後少女が自分の家の権限を使って、グレンを首にすることを脅していたが、グレンはそれにあやかろうとしていた。
(兄さん・・・それは流石に・・・)
そう考えていると、その少女が左手の手袋をグレンに投げつけていた。
(・・・は?)
カインはそう思わずにはいられなかった。
「ダメ、システィ!早く先生に誤って・・・!」
金髪の娘がそう言いうが彼の少女はそれを聞かずに
「いいぜ、その決闘受けてやる。ただし使う魔術は【ショック・ボルト】、この攻性魔獣のみだ。お前に怪我させるわけにも行かねえしな。」
(なんでそんなルール設定にしたんだよ?そのルールだと兄さん殆ど勝ち目ねえだろ)
カインがそんなことを考えているとクラスに人間は中庭に移動していたため、カインも光学迷彩を保ちながら、気配を遮断して移動を開始した。
* * * * * * * * * *
決闘の結果はシスティーナの圧勝に終わった。
システィーナがショック・ボルトを≪雷精の紫電よ≫という一節詠唱が可能なのに対し、グレンは≪雷精よ・紫電の衝撃もって・打ち倒せ≫という三節にわたって詠唱しなければ、魔術を発動できない。魔術決闘においては先に魔術を発動させた方の勝ちはほとんど確定のため、一節詠唱ができないグレンにそもそも勝ち目などなかった。
(なんでわざわざ自分が勝てないようなルールに設定するのかなぁ・・・)
なんて思ってたらグレンは魔術師同士の決闘の約束を反故にして、逃げ去っていった。そのためグレンのこうしてとしての評価は学院内で地に落ちていた。
カインの魔術戦闘は天の智慧研究会が学院に乗り込んできてからのため、もう少し先です。
そのあたりからカイン君のチートっぷりを発揮していきたいと思ってるので、もう少しお付き合いください。
駄文で申し訳ないです・・・
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第三話
後半オリジナル展開・・・かな?
決闘の後もグレンの魔術の講義に対する態度は変わることは無く、生徒たちの方もグレンの授業=時間の無駄、という法則でも立ったと言わんばかりに、グレンの講義の時間は思い思い自習に励んでいる。グレンの方もそれをとがめることは無く、決闘から三日が経った。
「はーい、授業はじめまーす」
そう言って講義の時間に大幅に遅刻してきた。生徒たちはそれぞれ自習に励んでいるが、それでも何かを学ぼうとしている生徒も少ないがいるのもまた事実。
「あ、あの・・・先生。今の説明に対して質問があるんですけど・・・」
「あー、なんだ。言ってみ」
「えっと・・・その・・・今先生が触れた呪文の訳が分からなくて・・・」
「これ、ルーン語辞書な。三級までのルーン語が音階順に並んでいるから。音階淳ってのは・・・」
グレンが面倒そうにため息をつきながら、少女へ教卓においてあった辞書を渡す。グレンに対して不干渉を決めていたシスティーナも、さすがに黙っていられなくなり立ち上がった。
「無駄よ、リン。その男は魔術の崇高さを何一つ理解していないわ。あんな男は放っておいて、一緒に偉大なる魔術の深奥に至りましょう?」
(魔術が『崇高』で『偉大』か・・・今の兄さんに対してそんなこと言ったら、ってもう遅かったか・・・)
カインがそんなことを考えながらグレンのことを見守っていると、
「魔術って・・・そんなに偉大で崇高なものかね?」
グレンがそう口走り、その言葉にシスティーナは反論する。
「ふん。何を言うかと思えば。偉大で崇高なるものに決まっているわ。もっとも、あなたには理解できないでしょうけどね。」
(そこで反応しちゃ駄目だろ・・・)
普段のグレンならば適当に流していたが、このことに関しては譲れないものでもあるのだろうか、
「何が偉大でどこが崇高なんだ?」
今日だけは、何かが違っていた。
「魔術ってのは何が偉大でどこが崇高なんだ?それを聞いているんだが?知ってるなら教えてくれよ?」
「・・・魔術はこの世界の真理を追究する学問よ。この世界の起源、構造、支配する法則。魔術はそれらを解き明かし、人がより高次元に至る道を探す手段なの」
「・・・何の役に立つんだ、それ?世界の秘密を解き明かしたところで、それが何の役に立つんだよ?」
「だから言ってるでしょう!?より高次元の存在に近づくために・・・」
「より高次元の存在ってなんだよ?神様か何かか?」
「それは・・・」
即答できないシスティーナに、グレンはさらに追い討ちをかける。
「そもそも魔術って、人々にどんな恩恵をもたらしている?この世の術ってつく言葉、医術、冶金術、農耕技術、建築術。これらは人々が暮らしていく上で多大な恩恵をもたらしているよな?じゃあ魔術はどうだ?同じ術という言葉を持つが、これは人々に恩恵はもたらしていない。魔術の恩恵を受けることができているのは、魔術師だけだとおもんだが、何か違うか?役に立たないのならただの趣味、違うか?」
「・・・・・・ッ!」
システィーナは歯噛みするしかなかった。この程度の俗物的な意見すら反論できないのか、という自うん自身のふがいなさに対して。あまりの悔しさにシスティーナが唇を震わせていると、
「悪かった、嘘だよ。魔術はちゃーんと人の役に立ってるさ」
「・・・え?」
突然のグレンの掌返しにシスティーナも、他の生徒たちも目を丸くしている。
(兄さん・・・!それ以上は・・・!)
だがカインは、今のグレンを止めたくて必死だった。
「魔術はちゃーんと人の役に立ってるさ。・・・人殺しのな」
一拍置いて淡い期待を持たせ、でもその期待をあっけなく打ち砕く。心を砕くには今のクラスの人間に対してはそれで十分だった。
「実際、魔術ほど人殺しに特化した技術じゃ他にないんだぜ?剣術、銃術、槍術なんかが一人の人間を殺している間に、魔術は何十人と殺せるからなぁ!魔導士の一小隊は、戦術で統率された一個師団を戦術ごと焼き尽くせる。ほら、立派に役に立つだろ?」
「ふざけないでッ!」
流石に看過できなかった。魔術を外道に貶められることは、祖父との繋がりを貶められたも、システィーナにとっては同然であった。しかし
「この国の現状分かってるよな?帝国宮廷魔導士団なんて連中に、莫大な国家予算がつぎ込まれているのは何故だ?お前らが習ってる汎用魔術、なんでほとんどが攻性呪文なんだ?魔術が二百年前の『魔導大戦』、四十年前の『奉神戦争』で何をやらかした?近年、帝国で外道魔術師たちが魔術を起こって起こす凶悪犯罪の件数と、その内容を知っているよな?知らないなんて言わせねえぞ?」
「―――ッ!」
「ほら見ろ!魔術なんて、人殺しと切手は切れない腐れ縁の関係ってことが誰にだってわかるだろ?他でもない魔術ってのは、人を殺すことによって発展してきた技術に他ならないってことなんだよ!!全く俺はお前らの気が知れないね。こんな下っらねえことに時間費やすくらいなら、もっと他に――」
ぱぁん、と乾いた音がクラス中に響き渡っていた。システィーナがグレンの頬を平手打ちしたのである。その後システィーナは泣きながら教室から飛び出していった。
「あー、今日はやる気出ねえから、自習にするわ」
ため息をつきながらグレンは教室を出て行った。
* * * * * * * * * *
「やーっぱ、向いて無いのかね・・・」
放課後、屋上の鉄柵に寄り掛かりながらグレンはそう呟いた。
「兄さん、さすがにあれは少し言い過ぎなんじゃない?」
学院でグレンに接触する気が無かったカインだったが、さすがにあれを見た以上接触せざるを得なかったようだ。
「うぉおおおおおお――ッ!カイン!?お前、どうしてここに!?」
「兄さんがちゃんと仕事してるか監視するために決まってるじゃん。休暇はちゃんとイヴから貰ってるよ?」
「そういうことじゃねえよ!?いや、それもそうなんだが、どうやってここに入ってきた?特別な結界が張って合って、関係者以外は入れないようになってるはずなんだが?」
「結界の一部を壊して誰でも入れるようにして侵入。その後結界を元に戻して光学迷彩の魔術使って、兄さんのクラスに初日から忍び込んで監視してたんだけど・・・」
「はぁ・・・それ完全に不法侵入なんだが。しかも教室でなんか魔力のゆらぎ感じると思ったら、お前かよ・・・しかも光学迷彩の魔術ってかなりの魔力消費するはずなのにそれを一日って・・・今更だが、やっぱりお前の魔力底無しだな・・・」
「他のクラスの人とかにばれてるかな?」
「いや、意識しないと分からないくらい微細なゆらぎだし、多分クラスの連中にはばれてねえよ」
「なら良かったよ。・・・で、兄さん。やっぱり、まだ魔術は嫌いなんだよね?」
「今日のあの光景見たならわかるだろ?俺は魔術が大っ嫌いだ」
「でも、あれは流石に言い過ぎなんじゃない?」
「そうかもしれねえな・・・やっぱ俺はここに居ねえほうがいいかもしれねえな」
「・・・・・・・」
「セリカにゃ悪いが・・・帰ったら土下座の練習だな。カイン、死にそうになったら俺を助け・・・ん?」
最低な前向き宣言をしつつ、弟に対して助けを求めようとしたところで西棟のとある窓のそばで影が動いたような気がした。
「なぁ、カイン。あの教室、誰がいるか見てくれねえか?」
「え?まぁいいけど」
そうやって両方の眼を閉じたカインだったが、
「誰かいるね。これは・・・流転の五芒の魔力円環陣?でもこれ相当下手くそだね。第七霊点は綻んでるし、水銀は流れちゃってるし・・・」
「そこまで具体的な回答は求めちゃいなかったが、実験室の無断使用なんだよなぁ。さぁて、どうしたものかね・・・」
そう言いながらグレンの口角は少し上がっているようにも見えた
* * * * * * * * * *
「おい、実験室の個人使用は原則厳禁なはずだが?」
乱暴に扉を開け放ち、仏頂面で立っているグレンがいた。
「グ、グレン先生!?」
金髪の少女は思わず立ち上がったが
(!?)
光学迷彩で隠れていたカインであったが、金髪の少女が目に入った途端動揺して、魔力の揺らぎが目立ってしまい、
「そこに誰かいるんですか?」
と金髪の少女が尋ねた。
「・・・お前、どこかで・・・?」
するとそこにはいつの間にか帝国宮廷魔導士団の制服を身に纏った、赤髪の、自分たちとあんまり変わらない年齢の少年が、いつの間にかグレンの後ろに現れていた。
中途半端ですがここまでです。
次回グレン覚醒、テロリスト乗り込んでくる。
その次にカイン君の初戦闘かな?
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第四話
「・・・昨日は、すまんかった」
「え?」
グレンが珍しく予鈴が鳴る前に教室に来たと思ったら、開口一番に放った一言がこの言葉である。全く予想していなかったシスティーナは硬直して、次の言葉を紡ぎだせずにいた。
「いや・・・まぁ、その、あれだ・・・大切なものは人それぞれっていうか、人の価値観は人それぞれっていうか・・・確かに俺は魔術が嫌いだが、それをお前にまで押し付けるのは筋違いっていうか・・・とにかく、すまなかった・・・」
「・・・・・・はぁ?」
グレンの真意を読み取れないシスティーナは怪訝な表情を浮かべていた。
クラスの人間はグレンが誤ったことに対して、狼狽えてざわついていたが、システィーナのなりに座っているルミアは、ただ一人微笑んでいた。
(良かった・・・。グレン先生ちゃんと謝ってくれて)
それと同時に教室の後ろの方へ少し注意を向けてみるが、
(やっぱり何も感じないけど、今日もいる・・・んだよね?)
ルミアは昨日の放課後に起こった出来事を少し振り返っていた。
* * * * * * * * * *
「・・・お前、どこかで・・・」
グレンの後ろにいつの間にかいた少年は、ルミアの顔を見ると開口一番そう言ってきて、グレンに対して耳打ちをしていた。
(なぁ、兄さん。この子って三年前のあの娘に似てないか?)
(はぁ?俺も最初にそう思ったが、気のせいなんじゃないのか?)
(そうかなぁ?)
「あなた、誰ですか?どこから現れたのですか?それにその服装・・・」
内緒話をしていたカインにルミアがそう尋ねた。なぜならカインの今の服装は、帝国宮廷魔導士団の制服に身を包んでいたからである。
「やべ!?ばれた!?・・・はぁ、まぁばれちゃったならいいや。どうせこの服装で、大体の察しは着いちゃってるでしょ?俺の名前はカイン=レーダス。宮廷魔導士団に所属してるんだけど、詳しい所属は秘密な、こればっかりは勘弁してくれ。そこにいるグレン=レーダスの弟みたいなものかな、血は繋がってないんだけどね。年齢は多分君たちと同じだよ。よろしくね。」
「その軍の方が何でここにいるのかな?確か関係者以外は入れないように結界が張ってあったんだけど・・・」
この状況に困惑しながらルミアはカインに聞いてみた。
「あー、やっぱり気になっちゃうよね・・・まぁここでばれちゃった俺が全部悪いから話させてもらうけど、このことは他言無用で頼むね?学生とかこの学校の講師、教授陣ならともかく、母さ・・・セリカって人にばれたら流石にヤバいから・・・」
「うん、それはいいんだけど。どうやってここに侵入したの?」
「この学院に貼ってある結界の術式を一部吹き飛ばして入れるようにしたんだよ。入ったら結界を元に戻して、光学迷彩の魔術を使ってね。君のクラスに兄さんが来た初日からずっと見てたんだ」
「・・・・・・」
流石のルミアも絶句するしかない。不法侵入も理由の一つなのだが、もし彼がテロリストなどであった場合なども考えると、恐ろしかったためでもある。
「まぁ、方法は話したからこれでおしまいとして、これって魔術円環式だよね?」
「う、うん。そうだけど、うまくいかないからもうやめようかと思ってたの・・・なんでかなぁ、この前システィとやったときはうまくいったんだけどなぁ・・・」
「バーカ、水銀が足りてないんだよ」
そう言って水銀が入ってる器から水銀を流し、迷うことなく腕を動かしていた。
「ほれ、これでもう一回起動してみ。教科書通り五節でな。横着して省略するなよ?」
「は、はい≪廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・路を為せ≫」
その瞬間方陣が白熱し、視界を白一色に染め上げていた。やがて光は収まり、鈴なりのような高音を立てて、駆動する方陣が視界に現れる。方陣のラインを七色の光が縦横無尽に走っていた。
「うわぁ・・・綺麗・・・」
ルミアはその光景を感極まったようにじっと見つめていた。
「やれやれ、これそんなに感激するようなもんかね?」
「だって・・・今までで見てきた方陣の中で一番綺麗なんですよ。先生って凄いですね・・・」
そう言われると少し照れた表情を浮かべながら、
「馬鹿言え。こんなもの、誰だって組める。ここまで鮮やかになったのは、お前が選んだ触媒が良かったからだろ。」
(素直じゃないなぁ・・・)
カインはそう思いつつグレンが実験室から出て行ったのでそれに付いていこうとした。
「先生、あの・・・もう帰るんですよね?ご一緒してもいいですか?」
「やだ」
グレンは即答したが、ルミアは肩を落として目を伏せていた。
「一緒に変えるのは御免だが・・・勝手についてくる分には好きにしろよ」
(なんでそう捻くれてるかなぁ・・・)
そう思わずにはいられないカインであった。
* * * * * * * * * *
そこからのグレンの授業は圧巻であった。
【ショック・ボルト】の術式を区切ったり消したりしていろいろな効果があることを実演したり、おおよそ呪文とは思えない言葉で【ショック・ボルト】を起動させたりしていた。
(やっぱりこうしてるときの兄さんはなんか生き生きとしてるね)
* * * * * * * * * *
ダメ講師、グレン覚醒
その噂はクラスだけにとどまらず、学校中に震撼し、今では違うクラスの人間が立ち見をしてまでグレンの授業を聞きに来ていた。
しかし・・・
「遅い!」
システィーナは唸りながらそう叫んでいる。
「あいつ、まさか今日が休校日だと勘違いしてるんじゃないでしょうね?」
(確かに遅いな・・・休校日だと勘違いしてる可能性はかなり高いが、それにしたって遅すぎる・・・)
そう思っていると黒いコートを着た謎の男性三人が、教室に現れていた。
すると何かもめている様にシスティーナが口論していたが、
「≪ズドン≫」
チンピラ風の男がとなえたふざけた呪文が発動し、システィーナを掠めて背後の壁に何かをうがったような音が響いた。
(今のは【ライトにニング・ピアス】!?何者なんだあいつら!?)
カインが驚愕しているとチンピラ風の男がルミアを探していると言い出した。
(なぜルミアなんだ・・・?)
そう思っているのはカインだけではなくクラスの人間がも同じ疑問を感じていた。
そしてルミアが名乗ってチンピラ風の男と、黙っていた男がルミアとシスティーナを連行していき、もう一人の陰険そうな男が、クラスの人間を縛り上げていた。
(今動くのは得策じゃない・・・か。とりあえず兄さんがこの学園に到着してから考えよう)
今一人でやみくもに連れていかれた連中を探し回っても効率が悪いのと、目の前にいるボーンゴーレムと陰険そうな男の監視によって、カインも動けずにいた。
しばらくたってグレンが学園に到着したことが分かったカインは、目の前の障害を突破することを考えるが
(俺の固有魔術は軍事機密指定、さらに拳銃形態の魔導器じゃあロクな威力が出ない、だからと言って普通に呪文を唱えるとこの教室が吹っ飛びかねない・・・どうやって目の前の障害を突破するかだが・・・)
作戦を練っているうちに、グレンたちが大量のボーンゴーレムに襲われているところを視たカインは
(あれこれ考えても仕方ない・・・か。とりあえず目の前のボーンゴーレムを消し去って、あの男の方は固有魔術使ってでもなんとかするしかないかな。ここにいる人間には軍事機密指定されてる魔術だって黙ってて貰うことにして)
そう至高をまとめるや否や、懐から拳銃形態の魔導器を取り出して、ボーンゴーレムに向けて引き金を引く。そうするとボーンゴーレムは一瞬揺らいだかと思うと、この世から消滅された。
「「「「な―――ッ!」」」」
クラスの人間と陰険そうな男は思わず声をあげる。
一つはボーンゴーレムが消滅した謎について、もう一つはいつの間にか目の前に立っていた、帝国宮廷魔導士団の制服を身に纏った、赤髪の青年が立っていたことについて
「き、貴様!いつからそこにいた!?」
「おー、おー、雑魚キャラのお決まりのセリフをどうもありがとうおじさん。ところでおじさん誰?」
カインの挑発にはまるで意にも介さずといった表情で陰険そうな男が名乗りを上げる。
「我は天の智慧研究会のイズカ!して、貴様は何者なのだ?」
「やっぱり聞いてくるか・・・できれば一般人の前で名乗りたくはないんだけど、状況が状況だし仕方ないか・・・」
(まずはこのクラスの人間を落ち着かせないといけないからね・・・)
「帝国宮廷魔導士団所属のカイン=レーダス!このクラスの担当講師、グレン=レーダスの義弟だ!」
特務分室であることは明かしません
次回、一巻の終了と、カイン君の無双
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第五話
イズカの見た目はFE暁の女神のイズカです
カインが軍の人間だということを理解したクラスの面々だったが、不安は全くなかったかと言えばそんなことは無かった。まず一つとしては、カインの戦闘力が未知数というのが大きかった。先ほどのチンピラ風の男が放った【ライトニング・ピアス】の事を考えると、目の前のイズカという男が少なく見積もってもチンピラ風の男よりもずっと弱い、と見積もるのは楽観視し過ぎであるためである。そして最大の理由は、あの三節詠唱しかできない講師の義理とはいえ弟であるということが大きかった。
「だぁあああああーーーー!もうマジでめんどくせえなお前の使い魔!!どんだけの数がいるんだよ!!」
先ほどからイズカという男が行っていることは、使い魔の召喚であった。しかし彼の呼び出す使い魔がかなり厄介で、薬物による強化がされた魔獣(主に猫、トラ、烏、鷹)で、先ほどから拳銃形態の魔導器で威力をかなり抑えた(それでも常人の放つ威力の二倍近く)【ライトニング・ピアス】で50匹近く倒しているのだが、使い魔がいなくなる気配は一向にない。本来なら【ブレイブ・バースト】などの広範囲を攻撃する魔術で一気に片付けたいのだが、カインが気にしていることは少し常人とは外れていた。
(広範囲一気に吹き飛ばしたいんだけど、そうすると教室吹き飛ぶしなぁ・・・)
先ほどから【ライトニング・ピアス】で応戦している理由は、広範囲を魔術で攻撃すると、教室の方に少なくない被害が出てしまい、それを元に戻す彼の固有魔術は軍事機密指定されている魔術なのだ。一般人の前でおいそれと使える者ではないため、仕方なく【ライトニング・ピアス】で一匹ずつ倒しているのだが、
(こりゃあ切りがないな・・・早く兄さんの方にも向かいたいし・・・)
さらにカインが魔術を制限している理由はグレンをここから援護しているためであった。彼の固有魔術で得た副産物の視力によって、カインはグレンとセリカを視力の25%の力を使って常に見守っている。今回はグレンはダークコートの男と戦闘中で、かなりピンチなためその視力の50%の力を使って時節ダークコートの男の魔術を無効化しながら戦っているため、目の前の敵に集中しきれていないのだ。
グレンを援護しながら、教室の被害状況を考え、さらにいつまでも出てくる使い魔との戦っていたカインはやがて切れる。
「うがぁあああああああーーーー!もうめんどい!全部ぶっ飛ばす!おい、お前ら!」
使い魔を倒しながらカインは後ろにいるクラスの人間たちに向けてこう言い放つ。
「今からこの教室ぶっ飛ばしてあいつを消し飛ばす!その後にこの教室直してやるが、その魔術は軍事機密指定されてる魔術だから、絶対に口外するなよ?」
そう叫び、彼らに拳銃形態の魔導器を向けて引き金を引く。その様子に彼らは目を見開いてぎょっとしていたが自分たちに掛けられた魔術【グラビディ・コントロール】だった。彼らを一つの塊と定義して重力軽減の魔術をかけたのである。そして一番前にいた生徒を乱暴に蹴り飛ばし、教室の後ろまで移動させていた。そうして自分も教室の後ろへ移動するととある魔術の詠唱を始めていた。
「≪我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知るもの―――・・・」
「何!?その魔術は!?」
魔術を妨害しようとイズカが使い間を次々と召喚するが、カインが右手に持っていた、先ほどとは違う拳銃形態の魔導器の引き金を引くことによって、使い魔たちは次々と消滅していった。
「多重起動!?しかも、その魔術を唱えながらだと!?」
驚くのも無理はない。まず魔術を右手で起動していることがそもそもおかしいのだが、これは拳銃形態の魔導器を使っているから可能なことである。もう一つの驚くことが、カインが今から使おうとしてる魔術は、セリカが過去に邪心を殺すために編み出した、ほぼオリジナルに近い固有魔術を発動していることにあった。その魔術と右手による魔術起動、これで驚かないほうが無理もない。イズカが逃げようと教室を出ようとするが、教室の扉は開かない。いつの間にか、カインが開かないように細工をしてあったためだ。
「―――其は摂理への円環へと帰還せよ・五素よりなりしものは五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ神羅の万象は須らくここに散滅せよ・遥かな虚無の果てに≫―――ッ!黒魔改【イクスティンクション・レイ】―――ッ!」
カインの左手から巨大な光の波動が走り、この教室の全てを吹き飛ばしていた。彼の後ろにいた生徒たちは無事だったが、彼の前方に見えるのは外の景色だけである。
「・・・はぁ、久しぶりに呪文唱えてみたが、やっぱりこうなるのか・・・やっぱりこれ使わないとどうも威力が出過ぎて困る・・・」
「・・・・・・」
クラスの人間は何も言えずに絶句していた。この規模の魔術を見たのが初めてであるということが一番大きな理由であった。
するとカインが先ほどイズカの使い魔に向けていた拳銃形態の魔導器をクラスの人間に向けて、引き金を引いた。すると【マジックロープ】は分解され、【スペル・シール】は効力を失っていた。
「おい、お前ら」
カインが声を発するとクラスの人間は一瞬硬直し、
「な、なんだ?」
先ほどの蹴られた体格のいい少年が尋ねる。
「連れていかれた二人、なんで連れていかれたか心当たりのある奴はいるか?」
そう尋ねられるが、全員が首を横に振って、知らないことを伝える。
「そうか。じゃあその二人の救出は、俺がやるからお前らはここに居ろよ?良いな?それと伝え忘れていたが、兄さんは生きてるから安心しろ」
そう言って壊れた教室の壁に向けて拳銃形態の魔導器の引き金を引くと教室はまるで壊れた形跡がなかったかのように元に戻り、彼は教室から出て行った。教室に残っていた面々はその光景に呆気にとられていた。
* * * * * * * * * *
カインがグレンの所にたどり着いたのはダークコートの男との戦闘が終わった後だった。グレンはダークコートの男に勝ったようだが、傷は浅くなく全身が血だらけの状態で倒れていた。システィーナが【ライフ・アップ】の魔術をグレンに行使していたが、傷が塞がる気配は殆どなかった。
「先生・・・!先生・・・ッ!」
夢中で魔術を行使してるシスティーナは近くに来ていたカインの気配に気が付かず、無我夢中で魔術を行使していたが、
「・・・おい」
傍によってカインはシスティーナに声をかけた。するとシスティーナは驚き一瞬硬直していたが、自分たちと同じくらいの年の少年だったのと、教室に乗り込んできた一味の中にいない人間であったため、敵ではないと判断したのか、カインが誰か尋ねていた。
「・・・あなたは?」
「宮廷魔導士団のカイン=レーダス。そこで倒れてるグレン=レーダスの弟だよ。血は繋がってないけど。今まで兄さんと一緒に行動してたんだよね?今までありがとう。少し離れてもらえるかな?」
なぜ宮廷魔導士団の人間がここにいるのかを尋ねたかったが、今はそれどころではないと理解していた。グレンから少し離れて彼が何をするのか注意深く観察していた。するとカインは懐から拳銃形態の魔導器を出して、グレンに対して銃口を向けていた。それが魔導器だと知らないシスティーナは声を荒げていた。
「あなた!?いったい何を――」
「これから俺が使う魔術は俺の固有魔術なんだけど、軍事機密指定されている魔術だから、この魔術については絶対に口外するなよ?」
システィーナの抗議を黙認し、躊躇なく引き金を引いた。銃弾が発射されると思っていたシスティーナは反射的に目を閉じてしまったが、銃弾が発射された音が聞こえてくることは無く、恐る恐る目を開くとそこには傷が全くなく、出血も全くしていないグレンの姿があった。
「・・・今のは・・・?あなた、いったい何をしたの?」
「固有魔術【再成】。全てのものを二十四時間以内に限り復元させる俺の固有魔術。兄さんの今までの負傷は全くなかったことになってるから安心して」
「・・・・・・」
そんな出鱈目な固有魔術に絶句していたが、カインがそんな様子を気にすることなく尋ねてきた。
「君っていつもルミアと一緒にいた子だよね?何でルミアが連れていかれたのか心当たりってある?」
カインはシスティーナに尋ねてみたが答えはクラスメイト達と同じだった。
「いいえ、なんで彼女が連れていかれたか分からないの・・・」
彼女でもわからないと益々ルミアが誘拐された原因が分からなくなってきた。
「ふぅん・・・なるほど分かった。いや、別に何もわかってないんだけど心当たりがない事だけは分かったよ。とりあえず、ルミアって子は俺が助け出すから安心して。君は兄さんと一緒に教室に戻ってもらえるかな?それと兄さん目を覚まして今の状況の説明を求められたら、俺の名前出せば多分全部わかるはずだから」
そう言ってカインはその場を去っていった。いろいろと聞きたいことは山ほどあったが、あとでグレンに聞けばわかることだろうと思い、グレンが目を覚ますのを待っていた。
* * * * * * * * * *
(・・・ここか)
カインは現在転送塔に来ていた。システィーナと別れた後グレンに向けていた知覚を元に戻し、今使える50%の知覚能力を学園の敷地にそれぞれ向けたのである。するとこの転送塔に二つの生体反応があったため、彼はここに向かったのである。するとガーディアン・ゴーレムと呼ばれるゴーレムがカインが転送塔に来た途端に沸き出したため、ここにルミアがいるとみて間違いなかった。
(周りに人は居ないよな・・・)
カインは知覚を広げ、自分を監視できる範囲に人がいないことを確認すると、拳銃形態の魔導器を抜きガーディアン・ゴーレムたちを次々と消滅させていた。
転送塔の螺旋階段を上っていると、最上階に到着したのか閉ざされていた扉があった。そこを開けると転送方陣の上で白魔儀【サクリファイス】に閉じ込められているルミアと、糸目の青年がいた。
「・・・カイン君?」
ルミアは彼がここに来たのが信じられないような驚き半分、カインが来てくれたことの安堵半分が入り混じった表情でこちらを見ていた。
「よぉ、助けに来たぜ?」
カインは気軽にそう応じていると
「・・・なぜ宮廷魔導士団の人間がここにいるのでしょうか?学院の結界は、まだ破られてはいないはずなのですが?」
「まぁたこの説明しないといけないのかよ・・・もういい加減飽きたぜ。というか朝から居たんだがな。結界の一部を吹き飛ばして侵入、その後結界を修復して光学迷彩の魔術でずっと教室にいたんだよ。というか、あんた誰?」
「・・・・・・不法侵入とは軍人の風上にも置けませんね。私はヒューイ・ルイセン。2-2の担当講師をしていた者です」
「ふーん、まぁいいや。で、何でルミアを誘拐した?目的は何だ?」
「言うと思いますか?」
するといつの間にか抜いていたのか、拳銃形態の魔導器を一つヒューイに向けており、もう一つはルミアに向けられていた。ルミアに向けられている魔導器の引き金を引くと、五層あったサクリファイスの一層目が消失していた。
「いやーすまんすまん。本当は全部ぶっ飛ばそうと思っていたんだけど間違えて一層だけぶっ飛ばしちゃった。で、もう一回聞くな?何でルミアを誘拐したんだ?お前たち、天の智慧研究会の目的は何だ?」
「・・・彼女は異能者なのです。感応増幅者なんですよ。そんな彼女を、我が組織はとても興味を持っている」
そういうとルミアは表情を附してしまったが、カインはそんなことに構わず質問を続けていた。
「本当にそれだけか?感応増幅者は他にもいるだろ?なぜこのタイミングでルミアっていう感応増幅者を狙ったんだよ。それだけじゃ説明は付けられない」
「・・・彼女は今は無きアルザーノの王女殿下、エルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ殿下です。病死したはずの、いないはずの王女殿下、そこに利用価値があるのでしょう。」
ヒューイがそういうとカインはルミアに向けた魔導器の引き金を引く。するとサクリファイスの第二、三層めが吹き飛んだ。
「お前は一体なんだ?なぜ少し前まで講師をしていた人間が、今回の事件の黒幕なんだよ?」
「僕は爆弾なんですよ。十年前に、いずれ入学してくるかもしれない一生徒のために、組織によって使わされていました。今日この日の為にね。このまま時間までサクリファイスが解除されなかったら、その転送方陣によってルミアさんは組織のもとへと飛ばされ、僕は自爆してこの学園を吹き飛ばす。そんな計画だったのですが、あなたのせいで全てが狂わされてしまった。」
「あぁ、そうだな」
そういうとカインは再び引き金を引いてサクリファイスの残りの層を吹き飛ばした。このことによってルミアは解放され、ヒューイは嘆息しながら上を向いていた。
「僕はどうすればよかったんでしょうね・・・このまま組織に使いつぶされるか、今日のような結末を迎えるか。でもね、彼女が解放されてほっとしている自分が確かにここにいるんですよ。」
「あっそ。知らねえよ」
そう言ってカインはヒューイに向けて引き金を引く。すると肩の付け根、脚の付け根に小さな穴が穿たれていた。神経を鑢で削られたような激痛によりヒューイは気絶した。
「カイン君・・・その・・・助けてくれてありがとう。」
「別に、大したことはしてねえよ。それよりもさっきの話、あれって本当か?」
「・・・うん、全部本当。私は異能者で、アリシア女王陛下によって追放された王女、エルミアナ。それが私の正体なの・・・」
「ふぅん・・・そうか。じゃあとりあえずみんなの所に帰るか?兄さんもシスティーナも、クラスの連中もみんな無事だ。そこで寝てるやつは・・・あとで軍の連中に処理は任せるか。」
そう言ってルミアの手を引いて教室に戻るように促す。話を聞く前とまるで変化ないカインの態度に疑問を抱えつつも感謝しつつ、ルミアは手を引かれるままみんなが待つ教室へと向かうのであった。
* * * * * * * * * *
後日、グレンとシスティーナは今回のテロ事件の解決功労者として、政府のお偉いさんに呼び出されてルミアの正体について話されていた。軍の徹底的な情報統制により今回のテロ事件が明るみに出ることは無く、また一人の少年軍人がいたことも無かったことになっている。話を聞いた後もシスティーナのルミアへの態度は変わることは無く、二人はまた、いつもの日常へと戻っていく。
ルミアは一ヶ月の休学をしていたが、やがてまた学院に姿を見せていた。
グレンは何の気紛れか魔術講師を続けるらしい。二人の少女の行く末が気になるとかなんとか。
そして現在カインは特務分室の室長室で正座をしていた。
「今回のテロ事件、報告書を読ませてもらったが、私が何を言いたいか分かるよな?」
そこにはたいそうお怒りのイヴが仁王立ちしており、かなりの迫力を放っていた。
「・・・独断専行したことも悪いし、何よりも軍の許可なく軍事機密指定されている固有魔術連発したことについて・・・ですよね・・・はぁ」
「一般市民を守るためとはいえ、勝手に固有魔術使われると困るのはお前だぞ?一応見た人間に対しては軍事機密だと伝えてはいるようだが・・・情報漏洩したらどうするんだよ・・・」
「・・・いや・・・本当にすいませんでした・・・」
「まぁこの話はこれでお終いとして、もう一つの報告であった王女について、これは本当か?」
「本人に確認を取ったところ、本当だと認めました。本当だという前提で動いたほうがいいかと・・・」
「はぁ・・・いろいろ厄介ごとの種が増えたな・・・さぁて、これからどうしていこうかね」
これから起こるであろうことに対して、溜息を吐かざるを得ないような状況に辟易しながら、これからも日常は続いていく。
正直言ってオリジナルの所が駄文過ぎて辛い…
このあと設定を上げて、二巻のプロローグを上げたいと思います。
いつも読んでくださってる方々には深い感謝を!そしてこれからも続くので、どうかよろしくお願いします。
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第二巻
プロローグ
帝国宮廷魔導士団特務分室室長室にて
「イヴ。いったい何の用?」
「来たか。カイン、以前のテロ事件覚えているよな?」
「そりゃあもちろん。公式の記録には残っていないけど、一応当事者だし」
「エルミアナ王女、彼女がまた天の智慧研究会に狙われないとは限らない、それも理解してるな?」
「あぁ、元王女で感応増幅者。ヒューイって人の言うことが正しければ、今後も狙われる可能性があるだろうね。」
「そういうことだ。そこでなんだが、これは軍務として扱ってもらうぞ。アルザーノ魔術学院2-2への編入、及びエルミアナ王女の護衛。長期間になるが、お前にはこの任務にあたってもらう」
「学院側には俺が軍人ってことばれてるけど、そのことは構わないの?」
「特務分室から現状その任務に回せるのがお前とリィエルの二人しかいない。どっちが良いかなんて、考えるまでもないだろう?」
「・・・ハハハ、そうでしたね。つまりあのクラスには軍務だということを知らせて黙らせておけばいいってことだね?」
「そういうことだ。任務の名目としては王女護衛だが、そのクラスに伝えるとしたら、クラスそのものの護衛と言っておけば問題無いはずだ。編入手続きはすでに済ませてある。明日から、頼んだぞ」
「了解」
敬礼の後カインは部屋を後にした。
そのころグレンは、ギャンブルによって給料をすべて吹き飛ばしていた。
* * * * * * * * * *
今日からアルザーノ魔術学院生としての生活が始まる。初日のため学院長に挨拶をしてから教室へ向かう手筈だったので学院長室に向かっていた。学院長室にノックして入室の許可をもらうと、そこには何故か黒焦げになったグレンの姿としかめっ面でグレンを睨めつけているセリカ、、調度品が吹っ飛んでいた学院長室の酷い惨状が広がっていた。
「・・・この惨状は一体何なんですか?」
何が起きたのかの確認を取るためにこの場で一番落ち着いていた学院長に話を聞いてみた。
「給料の前借りに来たグレン君に向けてセリカ君が爆裂魔術をぶっ放したところなんじゃよ・・・」
ため息交じりに学院長がそういうと、カインの方もため息交じりに拳銃形態の魔導器を抜き元に戻そうとしていたがそこでふと思い当たる。
(一応軍事機密指定の魔術なんだけど使っても大丈夫かな?)
「学院長。この惨状元に戻したほうがいいと思うので戻そうと思うのですが、今から使う魔術って軍事機密指定されている魔術なんですよ。今から起こったことについては、口外禁止の方向でお願いできますか?」
「まぁ・・・構わんが、本当に元に戻せるのかね?」
そう尋ねた学院長に首肯することで返事をすると魔導器の引き金を引く。すると学院長室の惨状が無かったかのように元に戻っていた。彼の固有魔術の【再成】の効果である。
「で、なんで兄さんはなんで給料日後なのにすでに食費がピンチになってるのさ?」
「ふっ・・・それは未来への投資。明日という無限の可能性のために、そして予知多くの希望をつかむために――」
「要するにギャンブルでスったのか。本当にもう死ねよ、お前」
「人がかっこつけてるところに、水を差すの辞めてくれる?」
セリカの言い草にグレンは講義するが、それは聞き入れてもらえなかった。
「というわけでお助け下さいお三方!」
なぜか今来たばかりのカインにまでこの被害は飛び火してきた。確かにカインは軍人のため同世代の中では稼ぎは比べるまでもないのだが、弟に養ってもらう兄というのは如何なものなのだろうか?と考えていた。
「しかしなぁ・・・規則として給料の先払いはできない事のなっておるのだよ。しかし、特別給与なら出すことはできるかもしれんなぁ・・・」
「特別給与!?学院長、それって一体!?」
目先の金をどうにかしなければならないグレンにとって、この言葉に喰いつくのは速かった。
「ほら、もうすぐ魔術競技祭があるじゃろう?そこで優勝したクラスの担当講師には、特別給与が出ることになっておるんじゃ。」
「なんと!?そんな素晴らしいイベントがあるだなんて!」
「今度の魔術競技祭は二年次生の部、つまり君の担当学年じゃ。そこで優勝すれば、特別給与は出そう。頑張ってみてはいかがかね?」
「はい!頑張らせていただきます!そうと決まれば!あいつらまだ残ってるといいんだが」
そう言ってグレンは教室の方へ走っていった。
「母さ・・・いや、アルフォネア教授って呼んだほうがいいのかな?」
「いや、お前の好きなように呼ぶといいさ。お前は私の息子も同然なのだからな」
「わかったよ母さん。で、さっき言ってた魔術競技祭って何なの?」
「ふむ、お前魔術競技祭知らないのか?」
「そりゃずっと軍にいたわけだし、この学院でやってることなんてほとんど知らないよ」
「・・・すまん、そうだったな。魔術競技祭っていうのは年に三回開かれる、学生同士による魔術の腕の競い合いだよ。今回は二年次生が開かれるからな。・・・ところで、なぜおまえが魔術学院の制服に袖を通してるんだ?」
「今更!?・・・軍務だよ。2-2のルミアの護衛。表向きはあのクラスの護衛ってことになってるけど、本当の任務は彼女の護衛だよ」
最近一人見守らなければならない人が増えたカインが残った知覚を最大限広げ、学院長室の周りに人がいないことを確認しながらそう話した。
「ほう、つまりお前、2-2に所属するわけだ。・・・魔術競技祭、出てみたいか?」
「まぁ気にはなるけど、俺の相手になるようなやつってこの学院にいないでしょ?」
「そう言ってやるなよ。お前が出たいか出たくないか、どっちなんだ?」
「・・・出てみたい・・・かな。初めての学院だし、せっかくイベントがあるなら出てみたいかな」
「とはいえ、お前が全競技に参加なんてしようものなら盛り上がりに欠けるだろうからなぁ・・・お前が出れる競技は一競技とかになりそうだが、構わないか?」
セリカは学院長とカイン、二人に許可を求めた。
「わしは構わないよ」
「俺もそれでいいよ」
「決まりだな。じゃあ早速クラスの方へ行ってこい」
「わかった。では改めまして。学院長。これから2-2に所属するカイン=レーダスです。たまに軍の任務で休学などをすることになってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」
そう言ってお辞儀をして学院長室を後にした。
教室にカインが入ると、そこには魔術競技祭の出場競技について頭をひねってるグレンと、それを見守るクラスメイト達がいたが、
「「「あ――ッ!」」」
「ん?」
カインの姿を見て声を上げるクラスメイトと、それを不思議に思って小首をかしげるカインの姿があった。
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第一話
「皆さんお久しぶりです。テロ以来ですね。とある軍務でこのクラスに在籍することのなりました、カイン=レーダスです。クラスメイトとしてよろしくね」
唖然としているクラスメイトに向かってカインはマイペースに自己紹介をしていた。
「カインじゃん。何で制服着てここにいるんだ?」
今まで競技祭の出場選手で頭をひねっていたグレンだったが、ようやくカインに気が付いたのか、ここにいる理由について尋ねていた。
「今言ったばっかじゃん!?この前このクラスがテロリストの標的になったでしょ?軍上層部がまた狙われないとも限らないから、このクラスの護衛やれってさ。・・・それに特務分室でここに来れるのって俺とリィエル位だろ?考えるまでもなく俺にお鉢が回ってきたわけ」
最後の部分をグレンに耳打ちして伝えていた。
「それで、今何してるの?」
「おぉ、そうだった。魔術競技祭の出場選手決めてたんだが、お前って出られるの?」
「出られるけど、条件がある――」
「よぉし、発表していくぞ。まず決闘戦、これは白猫、ギイブル、そして今来たカイン。次に暗号早解き、これはウェンディ一択だな。飛行競争はロッドとカイ。精神防御は・・・ルミア一択だな」
カインの話を最後まで聞かずに勝手に競技出場者を発表していくグレン。そのまま出場者を言っていくがなんとクラスの全員が一回は出場できるように編成されていた。成績上位者で固めるという近年の定石を完全に無視した編成なのであった。
するとこの競技編成に異議があるらしい眼鏡をかけた少年、ギイブルが抗議をしていた。
「あの、先生。本当にその編成で優勝しようと思ってるんですか?」
「なんだギイブル。これ以上に勝てる編成なんてあるのかよ?あるなら言ってみ」
「・・・本気で言ってます?そんなの、成績上位者だけで出場競技者を固めるんですよ。例年そうするのが定石ですしね」
(・・・マジで?被りってありなのかよ?それが例年なんだーふぅーん?)
自分の餓死がかかってるグレンはその時点で成績上位者で出場者を固めようと決心していた。
(つまり、白猫とかギイブルとかカインとか使いまわしていいんだよな・・・?)
「兄さんが何考えてるのかは大体わかるんだけどさ、俺一競技しか出してもらえないからね?それが母さんとの競技祭に出る約束だし」
このカインの申し出にグレンは固まった。
「・・・マジで?」
「うん、マジ」
早速カインを使いまわそうとしていたグレンだったが、そのカインによって出ばなが挫かれたしまった。そこでどう使いまわすか考えていたところにシスティーナがギイブルに向かって抗議していた。
「何を言ってるのギイブル!せっかく先生が考えてくれた編成にケチ付ける気!?皆見て!先生の考えてくれたこの編成を!みんなの得手不得手をきちんと考えて、みんなが活躍できるようにしてくれてるのよ!?」
システィーナの言葉にクラスのみんなが説得されている。
(ちょ・・・お前ら・・・説得されんな頼むから・・・)
「先生がここまで考えてくれたのにみんな、まだ尻込みするの!?女王陛下の前で無様な姿晒したくないとか、それこそ無様じゃない!」
(無様でも顔向けできなくてもいいから、余計なこと言うんじゃねぇ!)
自分の餓死がかかってるグレンはそれはもう内心穏やかではなかった。
「大体、成績上位者だけに競わせて何の意味があるっていうの!?先生は全力で勝ちに行く、俺がこのクラスを勝利に導いてやるって言ったわ!それはみんなでやるからこそ意味があるのよ!」
もうほとんど決定的であった。この言葉によってクラスのほとんどは、魔術競技祭に向けてやる気になっていた。
そして演説をしていたシスティーナは、珍しく険の取れた朗らかな笑顔をグレンに向けてこう言い放つ。
「ですよね?先生?」
「お、おう」
としかグレンは言いようがない。ここでそれを否定するのはただの極悪人である。
こうなると頼みの綱はギイブルしかいない
(頑張れ負けるなギイブル君!白猫なんぞ論破してしまえー!!)
グレンはそう思わずにはいられなかったが、ギイブルは皮肉気に冷笑しながら着席してしまった。
(てめぇふざけんなよこの草食系男子がー!!)
「あはは、よかったですね。先生の目論見通りいきそうですよ?」
(こいつ嘲笑いやがった、この俺を!しかも痛烈な皮肉の追い討ちまでしやがって。もしかしてこっちの企みを察してわざと?だとしたら性格悪すぎだろ!!)
「まぁ珍しくやる気になってるみたいだから、私たちも精いっぱい頑張ってあげるわ。先生?」
「お、おう・・・任せたぞ・・・」
引きつった笑みを浮かべながらそんなことしか言えないグレン
当然グレンのやる気になっていた理由を知ってるカインは呆れたようにため息をつくしかないし、ルミアは苦笑いを浮かべていた。
* * * * * * * * * *
決闘戦に選ばれたカインだったが、魔術競技祭に向けてやるべきことはそんなにない。精々やることと言ったら魔術の威力を出し過ぎないように、魔導器の調整をする程度だった。つまり放課後のクラスが練習している中、彼は特にやることが無く暇を持て余していた。クラスメイトも達も、先日のテロ事件の際に彼が使った魔術の【イクスティンクション・レイ】を見て、その後に吹き飛んだ教室を元に戻したあの魔術に恐れを抱いて、彼に積極的に話しかける者もいなかった。カインもそれが分かっているのか、彼から積極的に話しかけるようなこともしなかった。そうして暇を持て余していたところ、中庭が何やら騒がしかった。どうやら練習場所について、一組と二組が揉めている様だった。気になったカインは念のため光学迷彩の魔術を使って、そこに向かっていく。その揉め事にグレンも気が付いたようで仲裁を行っていたが、一組の担当講師のハーレイがやってきた。
「何をしている、クライス!さっさと場所を取っておけと言ったろう!まだ空かないのか!?」
「あ、ユーレイ先輩。ちーっす」
「ハーレイだ、ハーレイ!ハーレイ=アストレイだ!貴様、何度名前を間違えれば気が生むのだ!?ってか貴様、私お名前覚える気、全ッ然無いだろう!?」
「・・・でええと、ハー・・・何とか先輩のクラスも今から競技祭の練習っすか?」
「・・・貴様、そこまで覚えたくないか、私の名前・・・ふん、まぁいい。競技祭の練習と言ったな?当然だ。今年の優勝も私のクラスがいただく。私が指導する以上、優勝以外は許さん!今年は女王陛下が直々に御尊来になり、優勝クラスに勲章を賜るのだ。その栄誉を授かるに相応しいのは私だ!」
「あっはっは!うわー、すごい熱血ですねー、頑張ってください、先輩!」
道化じみたグレンの態度に、ハーレイは忌々しそうに舌打ちをした。
「それよりもグレン=レーダス、聞いたぞ?貴様は今回の競技祭、クラス全員を何らかの競技種目に参加させるつもりだとな?」
「え?あぁ、うん、まぁ、はい、そうなっちゃったみたいっすね・・・不本意ですけど・・・」
「はっ!戦う前から勝負を捨てたか?負けた時の言い訳づくりか?それとも私が指導するクラスに恐れをなしたか?」
「いやぁ、そうかもしれませんねー、何せハー・・・何とか先輩のクラスには学年でも上位の生徒たちが特に寄り集まっていますからねー。いやー、もう、優勝は先輩のとこで決まりかも知れないっすねー。」
道化を演じ続けるグレンに対して、ハーレイは苛立ったように歯噛みする。
「ちっ・・・腑抜けが。まぁいい、さっさと練習場所を開けろ」
「あー、はいはい、今すぐ。ええと、あの木の辺りまでければ充分ですかね?」
「何を言っている。お前たち二組のクラスは全員、とっととこの中庭から出て行けと言っているのだよ」
そんなハーレイの物言いに、その場にいた二組の生徒は凍り付き、光学迷彩の魔術で隠れて聞いていたカインは苛立っていた?
(・・・何言ってるんだあいつ?)
流石にグレンが獣面でこめかみを押さえ、抗議する。
「先輩…流石にそりゃ通らんでしょ・・・横暴ってやつですよ」
その言葉にハーレイが吐き捨てるように言い放つ。
「何が横暴なものか?もし貴様の本当にやる気があるのならば、練習の場所も公平に分けてやってもいいだろう。だが、貴様には全くやる気がないではないか!何しろ、そのような成績下位者達・・・足手まといどもを使っているくらいなんだからな。」
「――ッ!?」
「勝つ気のないクラスが、使えない雑魚同士で群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ!分かったならとっとと――」
言い終わる前に、いつの間にか目の前に現れていたカインの左手の手袋がハーレイに投げつけられていた。
次回、ハーレイ対カイン!
固有魔術は使いませんよ?術式解体は軍事機密されてません、とだけ伝えておきます。
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第二話
いつの間にかお気に入りが100件超えていました…
皆様ありがとうございます!
「いやー、すいませんね。えっと・・・パーリ―先生?」
「ハーレイ!ハーレイ=アストレイだ!・・・貴様、いつからそこに・・・」
気が付いたら目の前に現れていたカインに向かってハーレイは聞いた。
「さぁて、いつからでしょうね?最初からいたのかもしれませんし、今瞬間移動できたかもしれないですね?」
「答える気はないということか・・・それに、この手袋、いったいどういうつもりだ?」
怒気をはらませながらカインに向けて威圧的に言い放つ。しかし当のカインは全く気にした様子もない。
「いやぁ、自分決闘戦に出るんですけどね?決闘戦って練習とかできないじゃないですか?そしたら目の前にちょうどいい感じの人がいるじゃないですか?でもただ決闘戦の練習申し込んでも断られそうだたんで、魔術師同士の決闘なら断られないかな?みたいな。それに・・・」
へらへら笑いながらそう応じていたカイン。顔は確かに笑っていたが、目が笑っていなかった。
「怖がられているとはいえ、クラスメイトをそこまで馬鹿にされたら腹も立ちますしね。で、ハー・・・何とか先生、その決闘受けて下さるんですか?」
「ふん、下らん。なぜ私がお前みたいな一生徒の決闘を受理しなければならない」
「あぁ・・・もしかして、自信ないんですか?俺みたいな一生徒に勝つ自信もないんですか?いやぁそれならば仕方がない。流石に生徒の前で、生徒に負けるなんて恥さらしたくは無いですよねぇ?そういう理由ならば仕方がありません、ちょうどいい練習相手がいるかと思ったんですが諦めましょう」
やはりグレンの弟だけある。口が悪く煽るだけ煽る。生徒が講師に向かってちょうどいい練習相手なんて失礼なことは普通は言わない。しかしそこは沸点の低いハーレイだった。あっさりとこの挑発に乗ってきた。
「ほう、この私に向かってちょうどいい練習相手だと?その身の丈に合わない不遜な態度、叩きのめしてやろう。私は初級の攻性呪文しか使わない。貴様は何をしても良いぞ。ただし、できるのであればな。そして貴様が負けた時の条件は、貴様の退学だ!」
カインはハーレイが出してきた決闘のルールについて、口を開けてぽかんとしていた。もちろん軍事機密されている固有魔術を使うつもりは全くないが、それでもここまでのハンデをつけてくけてくるとは全く思っていなかった。
そしてこのルールに間抜け面をさらしていたのはカインだけではなく、後ろにいるグレンも同様の表情をしていた。
「あの・・・ハー・・・何とか先輩?本当にそのルールで決闘するんですか?」
「当然だろうグレン=レーダス。ここまでコケにしてくれおったこやつの鼻っ柱を叩き折るには、ちょうどいいハンデだと思うが・・・まだ何かハンデが必要か?」
この言葉にはもう笑うしかない。カインは腹を抱えて必死に笑いをこらえながら決闘のルールを受諾した。
「・・・ックク、分かりました。それで行きましょう。じゃあこちらが勝った場合の条件は、兄さん、グレン=レーダスに魔術競技祭までお昼ご飯を奢ることでおねがいします」
「ふん、条件など何でもいいがな。貴様、名は?」
「カイン=レーダス。今日から2-2に編入してきました」
* * * * * * * * * *
決闘のことをどこから聞きつけたのか、他クラスの人間まで集まってきていた。
人垣でできた即席のフィールドにハーレイと、拳銃形態の魔導器を手に持ったカインが対峙していた。カインが持つ拳銃形態のものに大半が怪訝な顔をしていた。魔術決闘なのに拳銃を持っているとはどういうことかというものが大半だろう。見た目は拳銃と大差ないから仕方がない事なのだが。
「じゃあお互い準備はできてるな?」
どこから湧いて出てきたのか、セリカが審判の位置にいる。
二人が首を縦に振り、準備ができたことを伝える。
「では――始め!」
「≪雷精の紫電よ≫ッ!」
開始と同時にハーレイが黒魔【ショック・ボルト】を発動――しようとした。
開始と同時に右手を前方に突き出したカイン、その行動によってハーレイの魔術は発動できなかった。その後もハーレイは魔術を発動しようとするが、魔術を発動できないでいた。
(どういうことだ!?あいつは今なにも魔術は唱えていない、いったい何をした!?)
「あれ、ハー・・・何とか先生?攻撃してこないんですか?」
「・・・貴様、一体何をしている?魔術の起動が起こらない・・・いや、起動はしているようだな。だが発言する直前に消されていると言えば正しいか。どういうことだ!?」
「・・・先生、やっぱりルール変えませんか?それとも降参してくれません?これ以上やっても時間の無駄ですよ」
カインがため息交じりに提案してくる。しかしハーレイはプライドのためか、降参などできるはずもない。
「ふざけるな!降参などできるものか!≪雷精の紫電よ≫ッ!」
いつも発動するよりも魔力を込めるがやはり発動できない。発動する直前で魔術式が吹き飛ばされてしまうのだ。
「・・・ではこちらもそろそろ行かせてもらいますよ」
そう言って左手に持った拳銃形態の魔導器の引き金を引く。黒魔【ゲイル・ブロウ】が発動しハーレイが吹き飛ばされる。
「・・・っく・・・ま、まだだ・・・」
そう言ってハーレイは立ち上がるが余裕はなさそうだ。
「そろそろ終わらせますよ」
そう言って引き金を引く。【ショック・ボルト】が発動し、ハーレイの体を感電させ意識を刈り取る。
「勝者、カイン=レーダス」
セリカがそう宣言し、決闘はカインの圧勝で幕を閉じた。
戦闘シーン下手くそ過ぎて笑えないんですが…
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