もしも兼一が龍斗との約束を覚えていたら (ポケモン大好きクラブ)
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あの日かわした約束

美羽は登場しません。

多分次ぐらい?どうぞ楽しめれば幸いです。


「すごい子だったね」

 

 

そう僕が言う。龍斗君は僕の胸元に着けてある太極バッチをぼーっと見ていた。

 

 

「やっぱりそのバッチ返してくれ!」

「えーなんでだよ?僕があの子と交換したんだぞ!」

「元をただせば僕のネコバッチだ!」

「僕に押し付けたじゃないか!」

「いいから返せよ!」

「い、いやだよー!」

 

 

こうして僕たちはあの子と交換したバッチを取り合った。

そしてこれが僕たちの初めてのケンカになった。

予想道理僕はボロボロになった。いつもいじめられていて、ただできることといったら立ち向かうことだけ。出来るなら人は殴りたくない。

 

 

だけどなんだか負けたくないな…

 

 

不思議と胸の奥からそんな想いが込み上げてきた。

目の奥に不思議な光を灯しながらヨロヨロと立ち上がる僕をを見て龍斗君は少し怯えていた。

何度も立ち上がる僕を不気味に感じていたのだろう。ちょっと悪いことをした気分だ。

 

ゆらゆらと立ち上がった僕のラッキーパンチが龍斗君のあごに偶然決まった。

こうして僕たちの初めてのケンカは無事平和に終わりをむかえたかに見えた。

 

 

「僕の負けでいいよ」

 

 

そう僕のこの一言がなければ…。

この時の僕は龍斗君がただバッチがほしいだけだと信じて疑わなかった。だからこそ勝ちを譲りバッチを譲った。龍斗君がどんな顔をしているのかも気づかずに。

 

それから龍斗君と話すことなく時間は流れ、僕は引っ越すことになった。最後の別れをしたくて引っ越しの前の日に僕は龍斗君のところへ走った。

 

 

「龍斗君!」

 

 

龍斗君のお母さんの言ったとうり、初めてケンカをした場所で竜斗君はブランコに揺られていた。

 

 

「はぁはぁ、はぁはぁ」

「…何のよう?」

 

 

僕は全力で走ったからいまだに息が整わずに膝に手をついて肩で息をしている。

そんな僕を龍斗君は冷ややかに見下ろしていた。なんだか龍斗君じゃないみたい。

 

息が整った僕は深呼吸して、意を決して言った。

 

 

「龍斗君、僕ね。明日遠くに引っ越すことになったんだ…」

「えっ…」

 

 

さすがに驚いたのか、目を見開いたまま固まってしまった。そのまま5秒くらいがたった頃理解したのかいろいろ聞いてきた。

 

 

「引っ越すってどこに!何で!最近はいじめられてないよね!」

「遠いとこっていってた。お父さんの仕事の都合だから仕方ないよ」

 

 

さっきまでの冷たい雰囲気とは一転、いつもの龍斗君に戻っていた。

 

 

「寂しく…なるね…」

 

 

泣きそうになるのをこらえながら言う僕にうつむいていた龍斗君が急にバッと顔を上げた。

 

 

「兼ちゃん、また会うとき今より強くなってまた僕とこのバッチをかけて戦おう。その時は僕が勝って君からそのバッチをもらうから今は預かってて!」

 

 

目元に涙をためながら渡されたのはあの日に龍斗君に渡した太極バッチだった。

 

 

「えっ…でも…」

「兼ちゃん、これは約束の証だよ!」

 

 

それなら、と僕は受け取った。

お互いに強くなろうと僕たちはこの日約束し、引っ越しの日を向かえた。

 

荷物もすべて積み終わり、もうすぐ行こうかという時、龍斗君が近くに来て

 

 

「兼ちゃん、約束だよ!」

 

 

と言いながら握手をして別れる。

 

 

「うん!」

 

 

お互い涙目になりながら手を振って、しばしの別れを告げた。

 

2人の物語はここから始まっていく




誰も書かないから自分が書いてしまった。
やってしまった感満載ですがいきなり過去から入ります。頑張って書いていくので応援よろです。


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出会いと道しるべ

基本的に兼一視点です。
読みにくかったらすいません。


あれから10年の時が流れこの春、僕は荒涼高校に入学した。荒涼高校は龍斗君と約束した公園のある、隣町だ。

 

 

「龍斗君、帰ってきたよ…。」

 

 

僕が荒涼高校を選んだのはもちろん龍斗君との約束を守るためだった。(バッチはもちろん襟につけてるよ)

この10年、出来る限り体を鍛えてきたつもりだけどちゃんとした指導者がいなかったから、どれくらい強くなったのかわからない。体力だけはつけてきたつもりだ。

 

ただ、僕はあの少女を見てから決意したことがある。約束のためだけではない。僕は誰もが見て見ぬふりをするような悪をやっつける力を手にいれたい。

これは、憧れに近かった。風を切るような羽のように舞う少女の姿に…。

 

入学してだいたい1ヶ月がたった頃、時間ぎりぎりに家を出たので僕は小走りでいると目の前に見慣れない金髪の美少女がいた。兼一はその女の子に見覚えがあるような気がしたが、思い出せず首をかしげた。

 

他のことに気をとられていた兼一は女性の斜め後ろから前に進んでおり、誰かの腕が目の前に飛び出した。当然考え事をしている兼一はそのまま腕に突っ込んでいき、派手に後ろに転倒し後頭部を強打した。

 

 

「あ、ああ~~っ!ごめんなさい、つい反射的に!」

「うっ、痛っ~。あっ荷物が」

「て、手伝いますわ!」

「あっ、うん。って…いきなり何するんだよ!」

 

 

後頭部強打なんて打ちどころが悪ければ即死である。可愛い顔して彼女は何を考えているのか。この時荷物を拾っていた僕は彼女が僕の襟、正しくは襟についているバッチを凝視していたなんて知るはずもなく…

 

 

「す、すいませんですわ…。でも、いきなり背後をとられたら普通、投げ飛ばしません?」

 

 

どこの普通?と突っこみそうになった僕は悪くないはずだ。笑顔でとんでもないこといってくるなこの子。

っと時間がそろそろ危ない。天然殺し屋娘はほっといて僕は学校へ向かうとしよう。

 

 

「そろそろ時間がぎりぎりだから先に行くね。また学校で会えたらよろしく」

 

 

そう言ってお別れを言う。なぜ学校で会えたらかというと、彼女が荒涼高校の制服を着ていたからだ。

 

ぎりぎりで教室に入り椅子に座っていると、ハ…ゲフンゲフン頭の眩しい先生が(何?隠せてないって?)転校生を呼んだ。呼ばれて入ってきたのはなんと朝にあった、あの女の子だった。

 

 

「高校生活が始まってまだ1ヶ月という時期だがみんな仲良くやるんだぞ」

「松竹林高校から来ました、風林寺美羽です。よろしくお願いいたしますですわ」

 

 

松竹林高校と言えば名門校だった。何でそんな名門校の生徒がうちの高校へ?と兼一は疑問に思ったがそこは、人には言えない事情もあるかと思いあまり深くは考えないようにした。

 

僕の放課後は帰宅部である。

僕は龍斗君と約束をした後、強くなるために引っ越し先で、さまざまな習い事を行った。だけど僕は筋が悪いらしく、いつも負けてばっかりだった。そんな僕に誰も技などの指導をしてくれるはずもなくいつもすみで見よう見まねで真似するばかりだった。そのため技術は未熟なままだ。

 

高校に入学して空手部に入部するために見学に行くと僕の理想とは真逆、まるでボディビルダーの集まりのような部活だった。しかも1年生は掃除からだそうだ。こんな部活に行くくらいなら筋トレをしていた方がいいに決まってる。

 

 

「これからどうしよう…」

 

 

とぼとぼ歩いていた兼一に不気味な影が歩み寄る。

 

 

「ケ~ケケケケケッ。よ~う、兼一何だか元気がねぇじゃねえか」

「あぁ、新島か。何のようだ」

 

 

こいつは新島春男。僕と同じ中学の出身で僕が強くなろうとしているところを見られた所から、こいつは何かとつるんで来た。何も知らない僕に武術の情報を教えてくれたのもこいつだ。

 

 

「フッフッフッ。そんなの転校生のことに決まってるさ。んで、どんな奴だ?」

「ん?あー、女の子で、眼鏡をかけてて、背後に来た人を投げる人」

「…ん?」

「投げる理由と力は本人に聞けよ」

 

「待てよ!兼一ィィー!」と言う声は無視して歩いていく。…ん?待てよ、彼女は無意識に背後の人を投げていた。つまり無意識に投げる位武術の鍛練を行っているのでは?

彼女に武術について聞いてみよう。うまくいけば、いい指導者が見つかるかもしれない!

 

それが兼一にとって、吉と出るか凶と出るか…。

 

 

 

 

 

 

 

(キーンコーンカーンコーン)

 

とある日の昼休みに僕は中庭の木の下で昼食のパンをモソモソと食べていた。

 

 

「うーん、どうやって話しかけようか…」

 

 

あれから数日、彼女の異様な雰囲気に飲まれて話しかけられずにいた。なかなかきっかけがつかめず、どうしようか悩んでいたところに天からの囁きが聞こえた。

 

 

「あの~、何かお困りですか?」

「へっ!?」

 

 

やましい気持ちを見抜かれたような、いたたまれなさが込み上げてきた。どこから声がするのかわからず見回すが姿が見えないので

 

 

「あっ、上ですわ。」

「えっ?」

 

 

上を見た瞬間顔に激痛が走った。あぁ、僕は踏まれたのか…。と理解したのは彼女が下にいたからに他ならない。

 

 

「踏む必要…なくない…?」

「ごめんなさい、ごめんなさい!この高校スカート短くて!」

 

 

それなら木の上に上がらなければいいのに…。それはまあいいとして彼女とせっかく話が出来ているんだ。今聞かなくてどうする!

 

 

「実はあなたに聞きたいことがあったんだ!」

「私にですか?」

「僕は今自分の信念のためと、ある約束のために強くなりたいんです。けれど強くなるための良い指導者がいないので探しているんですけど、あなたは何か武術を嗜んでいるのでは、と思い相談しました。」

 

 

風林寺さんは武術、と言う言葉を出すと目を見開いて固まっていた。普通の一般人は現役女子高生が武術を嗜んでるとか考えないからなぁ。

 

 

「わ、私、普通にしてたんですけど…」

「普通の人は背後に回った人を投げませんし、そんな近づきがたい雰囲気を出していません」

 

 

風林寺さんは目を丸くして涙目で明らかにガーンといったような表現が合うような表情をしていた。ちょっと可愛くて僕はドキッとしてしまった。

 

 

「それで、指導者の方は…」

「ああ、はい。では明日の放課後にでも来てみますか?明日なら案内できますので」

「えっ?そんなに急でもいいんですか?案内まで」

「はいですわ」

 

 

こんなにすぐに返事がもらえると思っていなかった僕はとても喜んだ。しかも案内までしてくれると言うことだ。

 

 

「あっ、自己紹介がまだでしたね。僕は白浜兼一です。兼一でいいですよ」

「私は風林寺美羽と言います。私も美羽と呼んで下さい」

「あの、指導料ってどのくらいでしょうか?」

「ふぇ?」

 

 

風林寺さんは口に指を当てて考えこんだあと、

 

 

「さぁ?ですわ」

 

 

とにっこりとそれはそれはきれいな笑顔を見せた。それを見た僕は(大丈夫か?そこ…)と一気に不安が押し寄せたのは言うまでもない。




おまけ

「母さん、父さん。この近くに道場があるみたいでね、武術を嗜んでる友達に紹介してもらってちょっと行ってくる」
「なっ!お前はまた道場通いなんぞ…」スパーン

母さんのお盆からは煙が出ており、父さんの頭に大きなコブが出来ていた。

「フフっ、兼一。気にしないで行っておいで。通うことになったらお金がいるわよね。とりあえずはい、1万円」
「えっ?でも僕お小遣いためてるけど…」
「子供は気にしなくていいのよ。お小遣いは他のものを買いなさい」
「ありがとう、母さん!」

「お兄ちゃん、またいっちゃうの!やだよ!またボロボロになって帰ってくるんだ!」
「…ほのか、修行したらボロボロになるのが普通だ。兄ちゃんは強くなるために行くんだ。止めるな」
「う~」


というやり取りが白浜家で行われていた。


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設定

兼一のトレーニングとか書いてみました。

原作とだいぶ違うのは新島との関係ですね。
読まなくても一応大丈夫なので面倒くさかったらとばしてください。


白浜兼一

荒涼高校に通う一年生。

6歳の頃、“朝宮龍斗と強くなろう"と言う約束をしたため道場に通ったり、体を鍛えたりしていた。

空手・柔道などの道場に通うが覚えが悪かったため、技術はあまり教えてもらえず馬鹿にされていた。

トレーニングは本屋で見つけたり、新島にすすめられたりした本を参考に行っている。もちろん柔軟や体幹トレーニングも行っている。

武術の知識は専ら新島がいろんな本を持ってきたりしていた。何の武術をしたいかこだわりはなかったが知っていて損はなかったし、読んでいくうちに兼一ははまっていき次第に歴史方面に興味を持ち出した。

新島からの情報により、朝宮龍斗と言う名前の反則ばかりする格闘家がいる、という話を聞くが兼一は勘違いだと頑として聞かなかった。

趣味はもちろんガーデニング。

 

 

朝宮龍斗

6歳の時に兼一と約束をした少年。この約束がきっかけで彼の人生は大きく変わっていく。

強さばかりを求め、様々な格闘技を行っては相手を怪我させていた。ある時拳聖と名乗る男と出会い、殺人拳の世界を知り、殺人拳の武術を習う。

 

 

風林寺美羽

眼鏡をかけた金髪碧目の巨乳美少女。背後に回った人をは投げ飛ばしてしまう変わった特技とただ者ではない雰囲気を醸し出している。誰かの面影があるようだが…?

 

 

新島春男

兼一とは同じ中学出身で悪友。出会った当初は兼一の事をフヌケン(腑抜けの兼一)と呼んでいたが、兼一が道場に通いまた体を鍛えていることを知るとつるみ出した。

兼一が道場のいじめに屈しなくなった頃、名前も兼一呼びになった。情報を兼一に渡す時、兼一が理由を聞くと「お前がもし強くなったら面白いからに決まってるだろ。まっ、そんときはせいぜい利用するけどな。ケケケケケケッ。」

という理由が返ってきた。

 

 

白浜ほのか

兼一の妹。ブラザーコンプレックスだが、龍斗との約束を知っているので修行に対する理解も多少はあるが、いじめも知っているのであまり道場には行ってほしくない。普段あまり構えないので、あいた時間によくくっついている。

 

 

白浜元次

兼一とほのかの父親。子供の前では厳格な父親の姿を見せようとするが、実際は嫁のさおりの尻に敷かれている。過保護で思い込みが激しく大したことがなくても、子供の一大事だと思い仕事を休んで駆けつけたり、子供のお祝いをするために仕事を放り出すことがあるのでさおりがお盆ではたいて止めている。

兼一が道場へ通うことには内心反対しているが兼一の熱意と「息子が成長するためならば…」と息子を送り出したが、後に崩れる。

クレー射撃が得意で大会で優勝するほどの腕前。相棒はセバスチャンとマクシミリアン。

 

 

白浜さおり

兼一とほのかの母親。基本的に穏やかで物静かな人。元次が暴走したときはお盆で黙らせている。

兼一が体を鍛えていることに関しては、龍斗との約束を知っているので協力的である。




けっこう長ったらしくなりました。
次頑張って書きます。

ちょっと修正しました。


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いざ梁山泊へ

やっと書き終わりました。

やっと梁山泊についた。さっさと修行させたい!


「お待たせ」

「いえ、大丈夫ですわ」

 

 

僕たちは下駄箱で待ち合わせをしてから下校した。この時周りの目が少々痛かったが仕方がない。

そして道場に行っている道中、僕は無視できない光景を目にしてしまった。

 

 

「邪魔だぜ、どきな!ジジイ」

 

 

おっさんが乱暴な声と共にお爺さんを蹴飛ばしている光景が目に入った途端、僕はいてもたってもいられなくて体が勝手に動いていた。

 

 

「何をしてるんですか?」

「お爺さんに謝りなさい!」

 

 

どうやら僕と同じように許せなかったんだろう、僕の隣に来てお爺さんをかばっていた。僕だけじゃなかったことが少し嬉しいけれど怪我しないかな…?

 

 

「何だとてめえ!もっぺん言うてみろ!」

「いいんじゃよ!お嬢ちゃんわしゃあ!」

 

 

何か怒らせてるし…、ヤクザと言い合ってるし…。美羽さんは意地でも謝らせたいようだけど…。僕はどうすればいいのかな、これ。

 

 

「ごたくはいいから謝りなさい!」

「なにいこの(アマ)!」

「どーも物分りが悪いな。」

 

 

美羽さんが掴まれたのを見て僕は掴んだ男の顔面に向かって正拳突きを放った。

 

 

「うおおおぉぉぉ!!美羽さんをはなせぇ!」

 

 

僕の放った正拳突きはお世辞にも勢いのあるものではなかったが、不意をついて顔面にクリーンヒットしたため、ヤクザは地面と仲良くキスすることになった。

 

 

「てめえ、よくもやりやがったな!」

 

 

そう言ってヤクザの1人が懐から取り出したのはドスと言われる武器だった。それを見て僕が怯み、「ひっ!」っと体がすくんだ瞬間彼女の体は羽のように舞い踊った。

 

 

「おつむに来ましたわ」

 

 

そういった後、ヤクザを踏み台にしたり、奪い取ったドスを車にさして折ったりなど、彼女の独壇場だった。

ただ、彼女の戦う姿を見て僕はある姿を思い出していた。あの風を切る羽のような少女の姿を…。

 

 

「助けていただいてありがとうございますですわ」

「こちらこそまた、助けられちゃったね」

「?」

 

 

僕は含みを込めた返しをしてちょっとだけからかった。いつか彼女が気づいてくれるよう、今度は僕が守ってあげられる日が来るよう。

いつの間にか落ちていた眼鏡を渡す。

 

 

「はい」

「あっ、ありがとうございますですわ」

 

 

お爺さんにお礼を言われ、しばらく歩くと道場へついた。門の上には達筆で梁山泊と書かれていた。

 

 

「ここですわ。実は私の家でもあるんですよ」

「えっ!」

 

 

と言うことは美羽さんの親がやっているのか?この道場。そりゃあ強いわけだ…。

美羽さんに案内されてついたのは客室だった。まあ客だから当たり前か。

 

 

「ちょっとここで待っててくださいまし」

「はい、わかりました」

 

 

少し待っているとふすまの辺りから変な視線を感じた。こちらが視線を向けるとそこには誰もいないが、確かに感じたので見ていない振りをして意識をふすまに向けてみると、誰かと目があったような気がした。

その時美羽さんが少し髭をはやした、道着を着たイケメン系の男性を連れて入って来た。

 

 

「お待たせしましたですわ。お茶もどうぞ」

「こんにちは、私は岬越寺秋雨だ。君が兼一君かね?」

「えっ!何で名前…」

「美羽から話は聞いているよ。強くなりたいんだろう」

「はい!」

「では、まずここに名前と住所を書いてもらってもいいかね」

 

 

巻物って古風なところだな…。建物も趣があるし、歴史があるのかな。でも他の門下生の人とかいる様子はなかったけど…。

 

 

「書けました」

「ふむ、では月謝として5千円いただこう」

「あっ、はい」

 

 

良かった、そんなに高くないや。それよりも気になることが…。

 

 

「すまないね、ここは今貧窮を極めていてね」

「あ、いえ、このくらいなら大丈夫です。あの…、ここは何の武術を教えているんですか?来る時に、他の門下生らしき人も見かけなかったんですけど…」

「ん、何だ美羽から聞いていないのかね?ここには他の門下生は入門してはいないよ」

「えっ?」

「秋雨君、終わったかね」

 

 

そう言って部屋に入って来たのは、2メートルを軽々と越しているだろう巨体の持ち主のお爺さんだった。

僕があまりの大きさとそのお爺さんらしからぬ肉体に唖然として固まっているとそばにいた2人が声をかけた。

 

 

「長老!」

「おじいさま!」

 

 

…おじいさま?

おじいさま…つまり、祖父?美羽さんの?

 

 

「えっ?美羽さん、この人が美羽さんのお爺さん?」

「はいですわ」

 

 

えええぇぇぇぇ!!!

心の中で叫ぶだけに止めた僕を誰か誉めてほしい…。

すると固まっていた肩をぽんっと岬越寺さんが叩いた。

 

 

「ふぉっふぉっ、まぁともかくじゃ、ここで修行するなら他のものたちとも自己紹介しておかねばならぬまいて」

「そうですな」

「他のもの?」

 

 

門下生かな?とここでそう思った僕は間違っていたんだ。ここからは引き返すことのできない、落ちることのしかできない、崖に向かっている最中だったけれど、僕に後悔はない。

 

 

「皆のもの、ちと来てくれんかの」

「はぁ~、なんでぃジジイ」

「アパー、何よー?」

「な…に?」

「今日の用事は決まってるね。わかってたことだから文句は言わないね」

 

 

鬼のような大男がちっと舌打ちする。正直迫力が凄すぎて、今すぐ部屋の端っこに行きたい気分だ。

 

 

「兼ちゃんここはのう、スポーツ化した武術に馴染めない豪傑や、武術を極めてしまった達人たちが共同生活をしとる場所なんじゃ。そして…

 

 

ケンカ100段の異名をもつ空手家 逆鬼 至緒

 

 

裏ムエタイ界の死神 アパチャイ・ホパチャイ

 

 

あらゆる中国拳法の達人 馬 剣星

 

 

哲学する柔術家 岬越寺 秋雨

 

 

剣と兵器の申し子 香坂 しぐれ

 

そして長老のわし!1人所用で出ておるがの。

ようこそ、梁山泊へ。」

「梁山泊…」

 

 

た、達人…凄い圧力だ。僕はこんな凄い人に教わることができるのか…。

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

兼一は勢いよく返事をした。兼一の梁山泊入門が決まった瞬間であり、地獄の日々の始まりでもあったのは言うまでもない。




美羽さんと一緒に行かせるだけでめんどくさくなった!

まず誰に迎えにいかせればいいかわからん!
とりあえず岬越寺かみたいな?
わからない時のドラえも~ん(笑)

一応流れは原作に沿いながらいってますので悪しからず


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修行初日は軽めでハード?

やっと更新できました。
ほとんどかけてたのに最後の数行書けなかった。

いろんな人に楽しみにしてもらえてるなら頑張って書きます。
おかしいところは迷わず言ってください。直すので。


「それで、君は全くの武術素人なのかね?」

「いえ、空手や柔道の道場には通ってました。けど、僕は才能がなかったので、技が全く上達しなくて…代わりに走り込みや筋トレなどをよくしてました」

「ふむ、なるほど。確かに筋肉はほどほどにはついている。それに…」

 

 

と言って急に岬越寺が兼一の腕を掴んで引っ張って来た。兼一はびっくりしながらもあまり動くことなく踏みとどまった。

 

 

「うわっ、何するんですかっ!」

「ふむ、体幹もしっかり鍛えられているね」

「えっ?」

「これなら、最初から多少無茶しても大丈夫だろう」

「ひっ!」

 

 

岬越寺の顔はまるでニヤッと言う効果音をつけたかのような怪しい笑いかたをしていた。兼一はその顔を見て突然背筋に寒気が襲った。

 

 

「そっ、そういえば!岬越寺さんは!」

「ああ、弟子入りしたんだ。先生と呼びなさい」

「岬越寺先生は、何の武術を教えて下さるんですか?」

「ん、言ってなかったかね。柔術だよ。柔術は身を守るのにとても有効だからね、頑張ろう」

「はい!」

「大丈夫、私はあまり厳しいほうじゃないから」

(ほんとか?)

 

 

 

一抹の不安を胸に、兼一の修行は開始された。

 

 

「先生…これ……後…どれくらいですか…」プルプル

「ん~?そうだねぇ、初日だし軽く後1時間だね」

 

 

すでに1時間が経過していた。

因みに今の格好は、裸足の足の下には木の板がしかれ肩幅に開かれた状態で足が木に固定され、膝は90°以上開かないように紐で縛られおしりの下で線香を焚かれている。膝の上にはコップが置いてあり中には熱湯が入っている。両腕は開かれていて、閉じれば二の腕に着けているナイフが刺さる仕組みだ。手のひらには酒を入れるツボを持っている。頭にもお椀が乗っていて熱湯が入っている。

 

 

「い…1時間……き、厳しく…ないんじゃ……なかったん…ですか…?」ゼェゼェ

「厳しくないよ〰全然」

(も、もしやこの人的には、これがやさしいレベルなのか…)

 

 

その後、何を言っても無駄だと悟った兼一は、抗議はしないことにしたという。(ただし暇なので世間話はする)

 

 

「君の根性は見込みがあるね。と言うことで、次は空見が丘公園まで行こうか、息抜きに」

「息抜きって…何か恥ずかしいな、これ…」

「はっはっはっ。大丈夫だよ、そんなこと思う暇もないからねっ!」

 

 

そう言った瞬間どこからか岬越寺は自分の膝の上にさらに重し(3㎏)を乗せていたが、兼一は岬越寺に鞭で叩かれながら全力で走っていたためそれどころではなかった。

 

ああ、遠くで「行ってらっしゃいまし~。」と言っていたが、全く返事など出来やしない。確かに恥ずかしさなど感じている暇なんかどこにもありゃしない。

 

 

「鬼いぃぃぃぃ!!!」

「はっはっはっはっはっ!」

 

 

兼一が涙目で走り帰って来る頃には少しだけ日が傾きかけていたが、今の兼一には時間を気にする余裕なんて全くなかった。

 

 

「ま、今日は初日だしこのくらいにしておこうか。明日から本格的に始めるので、今夜はよく寝て、疲れを残さぬよう、では。」

「ゼェハァゼェハァ、ゼェハァゼェハァ。」

 

 

兼一は疲れきっていてしばらく立つことが出来なかったので、うつ伏せで少し休んでいると天使が兼一に声をかけた。(ただの例えだよ笑)

 

 

「兼一さん大丈夫ですか?」

「んん?み、美羽さん?」

 

 

見上げると疲れきった兼一にはなんだか美羽がとても眩しく見え、直視出来なかった。

 

美羽さんを見てるとなんだか元気になってきたような気がする。僕は現金なのかな?ハハッ

 

 

「大丈夫です、歩けるぐらいにはなりました」

「そうですか、良かったですわ。あの…これからも来て下さるんですよね…?」

 

 

(うっわ、上目遣いでそれは普通なら勘違いされるって!でもこれはあれだよね。修行にってことだよね、わかります。だって僕と美羽さんはそんなに親密では無いもの。えっ?目から涙が流れてるって?違うよこれは心の汗だよ)

「兼一さん?」

「ああ、すいません。明日も、明後日も僕はここに来ますよ。だって、ずっと師匠が欲しかったんですから」

「ふふ、それなら良かったですわ」

「さて、そろそろ休んだので帰りましょうか。妹も心配しますし」

「えっ、妹さんいらっしゃるんですか!」

「あっ、はい。またいつか紹介しますよ」

「お願いしますですわ!」

(は、はは。紹介するのはいいけど仲良くなれるかな?一緒に買い物に行くとだいたい胸見て唸ってるからな~)

 

 

兼一は唸る妹を思い出す。

立てってから、ちょっとふらつきながら歩いていると

 

 

「アパチャイ、不器用だけど杖、作ったよ~」

「あ、ありがとうございます」

 

 

(アパチャイさん、体大きくて怖いと思ったけどやさしいんだなぁ~。何の武術やってるんだろ?今度見せてもらおうかな)

っと、考え事しながら歩いてたら家に着いた。意外と体は平気のようで、(日々の走り込みの成果かな、こりゃ)と基礎の大切さを噛み締める兼一。

 

 

「ただいま~」

「お兄ちゃん、お帰り!道場大丈夫だった!?いじめられてない?」

「心配性だな。初日でいじめる道場なんてないし、今度の道場は大丈夫だよ」

「じー」

「?」

 

 

パタパタパタッとほのかは居間に走って行くと大きな声で「おかーさん、今度は大丈夫そうだよ」と言う報告が聞こえる。(何故息子より妹の方が信頼度が高いのか、母よ)とため息をつきながら椅子に座り

 

 

「お母さんお腹すいたけど何かある?」

「ふふ、今からご飯よ。その前に手を洗って来なさい」

「あ、そっか」

「かかか、母さん!兼一は無事に帰ってきたか!」

 

 

玄関からあわただしく帰って来たのは、一家の大黒柱?である父の元次だ。

 

 

「あらあなた、今日は大事な会議があるから遅くなるって言ってなかったかしら?」

「はっはっはっ、何を言っている。終らして来たに決まって(プルルルル)うるさい電話だ全く!」(ピッ)←電源切った

「あ・な・た?」ゴゴゴゴ

「ドキッ!いっ、いや~、終わったんだよ本当に…」

 

 

お父さんとお母さんはいつも通りのやり取りをしている。お父さんは僕かほのかに何かある時は、必ずと言っていいほど仕事を放り出して帰って来る。なのに会社を首にならない。電話もいつも見てると思えるぐらいタイミング良くかかって来るので、電源を切っている。

 

夕食を食べ終わり、ベッドに転んだ兼一は本日の出来事を振り返っていた。

 

 

「何だか今日1日で凄いいろいろあったな…早く寝て明日も頑張ろう」

 

 

修行の疲れもあってすぐに眠気が来た兼一は、そのまま眠った。こうして兼一の知らないうちに梁山泊最強の弟子への道が踏み出されて、いや…崖を転がり落ちて行くのであった。

 

 

 

 




どきどき読みなおしては、たまに修正してるからちょっと読みづらいかもしれません。
設定のところかなり修正しました。
良かったら見てください。


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部活と増えた指導者

第3者目線で書いてます。
読みにくかったらすいません。




次の日の昼休み…

 

クラスメイトの男子2人が美羽を見て「めっちゃかわいくね?」「けど近寄りがたいよな」などヒソヒソと話していた。

そんな美羽の進む先には兼一しか見えていなかった。

 

 

「兼一さん、お昼ご飯一緒に食べましょう」

「あっ、美羽さん。もちろんいいですよ。中庭でいいですか?」

「はいですわ」

 

 

教室を仲良く話ながら出ていく2人を見ていた男子は「何であいつ何だ!」と怒鳴り周りの女子たちに「やぁねぇ~」と呆れられていた。

 

一方、中庭に着いた兼一と美羽は以前初めて会った木の下に腰をおろして昼食をとっていた。

 

 

「あの…兼一さんは部活には入らないんですか?」

 

 

美羽は転校初日に新体操部に入部していた。

兼一は指導者が欲しかったと言っていた。だからこそ美羽は、兼一が何の部活にも入部していないことに疑問を感じていた。

 

 

「そうですね…学校の運動部はボディービルに通ってそうな人ばっかいたんですよ」

「あらら」

「それに、今こうして梁山泊に通えているので、もともと好きだったガーデニングをするために園芸部にでも入部しようかと…」

「そうでしたの、では今日にでも?」

「はい」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

ここで予鈴がなった。

お弁当をかたずけて教室へ戻る。

美羽と教室へ入ると一部の男子から恨みがましい視線が送られる。

その日の授業は何もなく終わり、放課後になった。

 

 

「それでは美羽さん、入部届け出して来ますね」

「はいですわ。では、また後で」

「はい。部活頑張って下さい」

「そちらも行ってらっしゃいまし」

 

 

美羽からの行ってらっしゃいに自然と笑顔になった兼一は、軽く手を振りながら入部届けを出しに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しました」

 

 

兼一は入部届けを出した足でそのまま花を育てているであろう温室へと向かおうと足を向けた。

 

 

「ちょ~っと待ったぁ、兼一ぃ~。お前、昨日転校生と一緒に帰ったんだってなぁ」

 

 

…が、悪魔の姿をした悪友によって呼び止められてしまう。

 

 

「一緒に帰ったってことはいい指導者、見つかったのか?」

(新島にはいろんな情報を持ってきてもらっているし一応教えておいた方がいいか…。まぁ教えなくてもこいつなら自力で探し出しそうだけどな)

 

 

失礼なのか信頼なのかわからないようなことを考えながら情報を教える兼一。

 

 

「ああ、梁山泊っていう道場で指導してもらってるよ。ちなみに美羽さんの家だよ」

「何!家が道場やってたらそりゃ強い訳だ…」

 

 

データが電子手帳にどんどん書き込まれていく。新島春男は、今年の1年のデータはガクランとしてすべて書き込んでいた。データを書き終えて、

 

 

「ああそうだ、兼一。お前強くなるつもりならラグナレクに気をつけろよ」

「ラグナレク?」

「ああ、ここら辺一帯を支配してる不良グループのことだよ。大分規模がでかいみたいでな…この学校でも毎年1年の中から不良やら強い奴やらテストして合格したら、ラグナレクに入れるって話だぜ」

「ちなみに不合格の奴は?」

「そのまま潰されるんだと。テストには空手部副部長の筑波先輩がやってるらしいぜ。せいぜい頑張んな」

 

 

そのまま新島は「ケーケケケケッ!」と言いながら歩いて行った。新島からの注意を受けとった兼一は、温室へと向かったが思わず「はぁ」とため息が出てしまう。

園芸部は現在部長の(いずみ)優香(ゆうか)と兼一の2人だけだった。

 

 

「まさか園芸部に入ってくれる人がいるなんて思ってもいませんでした。でも白浜君は何で園芸部に?」

「ああ。園芸は昔から好きだったんだ!でも、男が花を育てていると友達によくダサイってバカにされてね…

まぁ、でも今は園芸ブームだし部活でぐらい園芸やりたいなって思ってね」

「そうなんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって新体操部。

美羽が端っこで柔軟をしていた。

 

 

「わぁ!」

「すっごぉ~い!」

 

 

周りにいた女の子達が体の柔らかさを見て騒いでいる。美羽は何故騒いでいるのかわからずきょとんとしてしまっている。

 

 

「風林寺さん体柔らか~い!」

「えい」

 

 

片手を着いて逆立ちをして開脚をしたりしていると、隣から声をかけて来る人がいた。

 

 

「風林寺美羽だったっけ、転校生君?噂じゃ中学生時代から、ハイレベルだったそうじゃない」

 

 

現エースの|鷹島(たかしま)千尋(ちひろ)その人だった。

 

 

「そんなに隅で柔軟ばっかりやってないで、もっと真ん中でいっちょ実力を見せてくれよ!」

「そうですよ!」

「あっ…でも…」

「見せて下さいよ、はいメガネ貸して!」

 

 

これだけ言われては流石の美羽もやらないわけにはいかなくなり、あまり目立ちたくないと思いつつ「それでは…」と演技をこなしていく。

美羽の演技を見たほとんどの部員達は感動している中で鷹島は普通じゃない美しさに驚愕した。

 

 

(何だ…この女の新体操は!?美しい…だが、普通の美しさじゃないぞ…鋭いと言うかなんと言うか…

そう、これはまるで…刀剣の美しさ!)

 

美羽の演技が終わるとみんな美羽の周りに集まった。

 

 

「きゃー、スゴーイ!」

「新体操じゃないみたい!」

「はいタオル」

「ど、どうもですわ」

「これならすぐにうちの部のエースになれるわ!ね!鷹島先輩」

「え?ええと、は、ははは。」(現エースに言うんじゃないわよ!)

 

 

苦笑いから作り笑いにかえ、鷹島が美羽にゆっくりと近づいて行き、美羽の耳元でぼそりと何か呟いた。

 

 

「風林寺君…いい気になんじゃねぇぞ!」

 

 

その言葉を呟く頃には笑顔は一片たりとも見えず、逆に怒りマークが見えそうなほどイラついていた。美羽はその理不尽な怒りに悲しみを覚えた。

 

 

「やれと言われたからやっただけなのに…ですわ」

 

 

女の世界では妬みと言う名の、体術とは別の戦いが起こっていた。

 

兼一と帰りの待ち合わせをしていた美羽は校門までとぼとぼと歩いて行き落ち合った。

園芸部が終わり校門で待っていた兼一は、見るからに落ち込んでいた美羽を見て吃驚してしまった。

 

 

「美羽さんどうしたんですか?」

「え?いえ…。ちょっと…。」

「困っているなら相談に乗りますよ。話すだけで楽になるかもしれませんし」

「そうですか、それなら…」

 

 

と、梁山泊へ向かいながら美羽は自分が何故落ち込んでいるのか、そして今なるべく目立たない姿を研究した結果、伊達メガネをかけているのだと明かした。

 

 

「それでそのメガネには度が入ってなかったんですね」

「ふぇ!いっ、いつから!」

「実はヤクザっぽい人達と戦った時メガネ落としたでしょ?その時に拾ってあれ?と思ってね。それに梁山泊ではメガネ、かけてなかったですよ」

「はわわ!でも何にも言わなかったでしょう!?」

「わざわざ聞かれたい話しでもないですよね?隠そうとしていることを聞くほど僕も無粋ではないつもりですよ」

「兼一さんの意地悪…」

「美羽さんのために黙ってたんですが…それより、女性の先輩に言われたことは完璧にひがみですよ」

「ひがみ?」

「はい、おそらく美羽さんの演技がすごいから嫉妬したんでしょう」

 

 

長く話してると梁山泊に着いた。

 

胴着に着替えて道場へ移動する。岬越寺の指導のもと筋力トレーニングを行っていると、横から小さいオッサン、もといあらゆる中国拳法の遣い手である馬剣星が横から入ってきた。

 

 

「脇が甘いね!」

「え?」

「先に足を出し、次に体重を乗せていくね。足で地面を掴むような安定感を養うね!」

「あっ、これって熊歩(ゆうほ)ですか?」

「そうね、よく知ってるね」

「本だけは読むので」

「知ってるだけあって実に上手ね。」

「えっ、本当?」

 

 

実は兼一、新島が持ってきたさまざまな格闘指南書などを読んで出来そうなものは実際に練習してみたりしている。その中に中国拳法の指南書も入っていたのだ。

歴史についても興味を持って、勉強しているため岬越寺に勝るは言い過ぎだが、岬越寺と話しの趣味が合うくらいには知識があるのだ。

 

 

「おいおい剣星、何故中国拳法まで…」

「いやね、どうせだから拳法も教えようと思ってね!」

「何でそんな無茶を…」

「拳法で戦いに入り、敵を掴んだら柔術!そんな達人作って見たくないかね?」

「ほほう…、興味がないと言えば嘘になるな…しかしそれでは弟子の体が持つのかな?」

「失敗をおそれてちゃ進歩はないね」

(何だかとても恐ろしい相談がされているような気がするのは、僕の気のせいだと思いたい…)

 

 

気のせいではないのだが、聞こえないふりをして現実逃避をする。

 

 

「さらにムエタイも加えれば最強よ!」

「そうか、君は弟子を持った事なかったっけ」

「そうよ何事も経験よ!」

「なあに潰れたらそこまでの弟子と言うことであきらめつくね!」

 

 

3人の目が狩人のようにキランと怪しく光った。

今、兼一は梁山泊に来て初めて逃げ出したいと考える。

 

 

(これだけの達人に教えてもらえる事なんてそうそうあるもんじゃない。けど…足が震えるのは許してほしいと僕は思うんだ…)

「もう少し、体が丈夫になるまでお手柔らかできませんか?」

「大丈夫、限界ギリギリでいくから」

(僕、いつまで生きれるかな…)

 

 

こんなことを思った僕は悪くないと思います。




今回は2人の部活と師匠が増えました。
次はどうしようか。
そろそろ筑波先輩出るかな~。

頑張ってかきます。応援よろしくお願いします。


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信じる正義

久しぶりの投稿です。お待たせしました。

やはり文才がないので暖かい目で見守ってくれれば幸いです。


梁山泊に入門してから兼一のトレーニングにタイヤを引いた朝の1時間全力ダッシュが加わった。家から行っているため完璧な自主練習だ。

家へ帰ると軽くシャワーを浴びて朝食を食べてから学校へ向かうと兼一の1日が始まる。

 

 

「兼一さん、おはようございますですわ!」

「美羽さん、おはようございます!」

 

 

学校が終わり、梁山泊で修行を行う。今は基礎を重点的に行っている。今日で3日目となり、この調子で4日目5日目と過ぎていき、6日目も過ぎるものと思ったある日の出来事。

 

 

「ちょっと遅くなっちゃたな」

 

 

兼一が園芸部の花の世話をしていて美羽との待ち合わせに少しだけ遅れた日の事。学校の裏の近くを通った時に悲鳴のような声を兼一は聞いた。

このような声を放っておくことが出来ない性格の兼一は当然、確認をしに行った。

するとそこで見た光景は、人が人を足蹴にしているところだった。兼一は頭で考えるよりも先に体が、足が、動いていた。

 

 

「何をしているんだ!」

「ああ?何だテメェ、何人の楽しみ邪魔してくれてんだ?」

「何が楽しみだ!」

 

 

大声でかっこよく向かっていっているように見えるけど相手は以前空手部の見学に行ったときに見たことがある副部長の筑波先輩だ。新島も空手部の副部長はラグナレクという不良集団の試験をしていると言っていた。

今の僕ではとても相手になるわけがない。足が少しばかり震えてしまい、それを筑波先輩に見られてしまった。

 

 

「ハンッ、よぇ癖に正義感だけはいっちょまえか?だが残念だな。お前は俺の邪魔をしやがったんだ。弱かろうが何だろうが、少しばかり相手になってもらうぜ」

 

 

「憂さ晴らしになっ!」と言って筑波は兼一に殴りかかっていく。兼一は修行で殺人級のパンチを日々受けていたおかげか、多少は見えたようでカウンターぎみにパンチを筑波に入れようと殴りかかるが、リーチの差により兼一の顔にドカッと言う音とともに突き刺さる。

 

 

「グフッ!」

「らぁっ!」

 

 

今度は無防備な腹部に強烈なキックが決まる。

筑波はしばらくお腹を押さえて噎せていた兼一を見下すように、見下ろしていた。

 

 

「予想通りだな、弱虫野郎が」

 

 

そのまま筑波は去って行った。

しばらくして、学校中を探し回った美羽が駆けつけ、兼一ともう1人の男子生徒が裏庭で倒れているのを発見した。兼一は修行で鍛えていたためあまり重症ではなかったがもう1人の男子生徒は全身打撲であった。

兼一はすぐ下校し梁山泊へ行った。

 

 

「ふむ」

「いたたた…」

「骨には異常はないな。脱臼もなしと、よし!」

「痛い痛いって!」

「無事で帰って来てなにより!」ハッハッハッ

「無事…、無事かぁ」

「何だね、何だか不満そうだね」

「いえ、不満…と言う訳ではないですけど、今の僕では勝てない、頭ではわかっていてもやっぱり負けたくなかったですよ。あんな人に…」

「では君は負けるとわかって彼に向かって行った訳だね。何故だい?」

 

 

岬越寺に聞かれたこの質問は兼一の根幹であり、この答えによって今後の修行内容が変わってくることを、この時の兼一はまだ知るよしもなかった。

 

 

「彼は理不尽な暴力を振るっていた。だから止めに入ったんです。間違っている事には僕は胸を張って、堂々と間違っていると言いたい。けれどそれには力と勇気がいるんです。今の僕にはどちらもまだまだだけれど…」

(ふむ、『信じた正義を貫くための力』か…遥か昔に私が師に言ったセリフがそのまま返ってくるとは…)

「よし!明日より技の修行に入る!」

「えっ?」

「勝ちたいのだろう?」

 

 

岬越寺がニヤッという効果音がつきそうな笑みを浮かべた。

 

 

「はっ、はい!」

 

 

元気のいい返事をした後、兼一が怖じけずいてしまうようなことをおまけのように岬越寺は言った。

 

 

「今よりすこ~しだけ厳しめに行くから頑張るように」

 

 

(少しって絶対少しじゃない)と兼一が思ったのは今までの修行内容から考えて無理からぬことである。




ちゃくちゃくと、そしてのろのろと進んでいきます。
龍斗に会うのはいつになるのやら…。


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新たな修行

ほとんど原作と同じ会話が広がっています。
多分龍斗に会うと展開は変わるかと…


明日と言う言葉が聞こえなかったのか、少々暴走気味のアパチャイに捕まった兼一はアパチャイがリアルで手加減を知らないこと知った。

 

 

(今までもきつかったのにこれ以上となるとアパチャイさんとの修行で果たして僕は生き残れるだろうか…不安

だ)

 

 

そんな兼一の不安をよそに、アパチャイは歌いながら兼一を抱えてあらゆるものを壊して回った。さすがに誰か止めると思いきや、生暖かい目で眺めていた。

 

そんなこんなで次の日の放課後、今兼一は技を教わろうと道場を訪れる。

 

 

「よしっ!」

 

 

胴着の帯を締め、兼一は岬越寺のもとへ向かった。

 

 

「きたね。ではまず、この岬越寺秋雨が『対空手』用の技を教えよう」

「えっ、空手?」

 

何故?と首をかしげる兼一に岬越寺が

 

 

「その筑波と言う彼は空手部なんだろう?彼が理不尽な暴力を振るっていたと言うのなら、次も彼がそんなことをしている現場に遭遇する可能性もある。その時に対処できるよう、『対空手』用の技を知っておいて損はない。」

「た、確かに!」

 

 

さすが岬越寺先生!と心の中で思う兼一だった。

そして「そこで」と言い岬越寺が後ろにいる人物へと声をかけた。

 

 

「逆鬼君、空手家として何かアドバイスはないかな?」

「俺は弟子はとらねぇ主義だ!」

((なら何故ずっとそこにいる?))

 

 

岬越寺と兼一の心が1つになった瞬間だった。

 

 

「まあそれはさておき、まずは柔術の基本である投げ技からいこうか」

 

 

その言葉とともに兼一の前に現れたのは、兼一よりも頭1つ分大きい胴着を着たお地蔵様だった。

 

 

「これは私が作成した『投げられ地蔵グレート』だよ」

「あの…岬越寺先生、もしやこれを投げる何てことは」

 

 

「ないですよね」と続くはずの言葉は岬越寺の否定とともにさえぎられた。

 

 

「そうだが…小さかったかね?」

「い、いえ、そんなことはないです!」

「ああそうそう、実戦で投げは畳の上とは違い、必殺の技となりうるので注意が必要だよ」

「はいっ!」

 

 

勘違いしたのか、はたまたわざとなのか(絶対後者だよ…)そんなことを言ってきた岬越寺に必死で手を振って兼一は否定した。その言葉に「そうか…。」と少々残念そうにしているのは気のせいだと思いたい兼一であった。

兼一は投げの注意を聞いて、修行を再開する。

 

 

「では一度投げてもらってもいいかな?」

「はい!」

 

 

早速モーションに入る兼一。そして投げられたかというと…

 

 

(確か投げ技は重心を考えて…)

「せぇい!」

 

 

わりとすぐに投げられた。だが岬越寺はおしいとばかりにアドバイスをする。

 

 

「ふむ、重心のことはわかっているようだね。そこで兼一君、君は人の重心は何処か知っているかね?」

「えっと、腰あたり…ですか?」

「少々おしいね」

 

 

と言い『投げられ地蔵グレート』の頭に触れながら

 

 

「正解はおへそだよ」

 

 

と言った瞬間地蔵の足を払い、その逆方向へと頭に力を加え地蔵を軽く回転させる。

元の位置へと戻った地蔵を見た兼一が

 

 

「わっ!すごい!」

「すごくないよ」

 

 

となんでもないように岬越寺は言った。

 

 

(もしやこれがこの人的に普通のことなのか…。)

 

 

少々呆気にとられながらも兼一は改めて地蔵を投げる。

おへそを意識して投げるとさっきよりも地蔵が投げやすいと兼一は感じた。

そしてしみじみ指導者のありがたみを感じた。

 

 

「では、もう少し地蔵を大きくして見よう」

「へっ?」

 

 

そう言った岬越寺は兼一よりも頭1個半ほど高い地蔵を持ってきた。どれだけ作っているのか疑問に思う兼一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はおいちゃんの時間ね。おいちゃんは攻防一体の技を授けるね」

「はいっ!」

 

 

次は馬先生の中国拳法の時間である。

ただ木によかって修行を見ている人が気になるが。

 

 

「まずは見ているね」

 

 

まず馬が兼一に手本を見せる。

 

 

「下がって避けるのではダメ。相手の陣地を占領して、反撃できない所から攻撃するね」

「あの馬先生、この技はどういった場面で使えばいいんですか?」

「ふむ美羽、ちょっと来てね!」

 

 

兼一が質問すると、美羽を呼んだ。

どうやら美羽と手本を見せてくれるようだ。

 

 

「よし、美羽!おいちゃんを攻撃してみるね!」

 

 

そう言いながら取った帽子の下は光を綺麗に反射して輝いていた。

帽子を兼一に渡すと美羽が掛け声とともに蹴りを繰り出した。

その美羽の足を「イエイ!」という変な声とともに掴み膝に手をかけ、頭は綺麗に腹に…つまり胸の下に入っていた。

 

 

「相手の蹴りを無効化しつつ膝を折っているんですね!」

「そうね!そして同時に胸、男の場合は金的を狙って頭突きをするね!」

 

 

説明をしながらもそのままの体勢だったため、美羽が馬の頭をどかそうと押しているとなんと、馬が頭を胸に押し付けてグリグリしだした。

それに怒った美羽は箒を振り回しながら馬を追いかける。

 

 

「キャー!馬さんの変態スケベ、変質者~!」

「ちょっ…ちょっと自習にするね。おいちゃんのやった動きを反復練習するね」

(どこまでが本気何だか…)

 

 

追いかけられている馬に呆れながら兼一は反復練習をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はアパチャイの番よ!」

 

 

アパチャイを見て兼一が少し後ずさった。

 

 

「どうしてそんなに遠いいよ!近く来ないと練習できないよ?」

「い、いえ…やる気はあるんですよ…?ただ本能が逃げろと言うもので…手加減…できます?」

 

 

正直傷が癒えてからにしてほしいと兼一は思っていた。

何せ今の傷は筑波にやられたものより、昨日行われたスパーリングによる傷の方が多かった。

だがどれだけ逃げようとも逃げることは叶わない。何故なら兼一の後ろには鎖鎌の鎖を振り回しながら待機している美人が構えているのだから。

 

 

「大丈夫!ちゃんとテッカメンするから!それに今日はスパーリングじゃなくてミット打ちだけにするよ!」

「テッカメンじゃなくて手加減ね!」

 

 

大事な所は訂正する。だがテッカメンと言っている時点でもうお分かりだろう。

 

 

「はいレウ!レウ!そこでヒジ!はい、そこでよけるよ!」

「えっ?」

 

 

アパチャイの指示どうりミットを打っていたが避けるの指示の後、気がついたら兼一の体は宙に舞っていた。

同時に強烈な膝が入り兼一の意識はブラックアウトしてしまった。





レウ…タイ語で『早く』という意味。

アパチャイに対してはどれだけ力が上がっていようとも素人では関係ないと思い気絶をしています。

逆鬼は多分次の話で先生になると思います。


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師匠の教えと再戦

久しぶりの投稿です。
お待たせしました。


新しい修行にもだいぶなれてきたころ、いつも遠くで見ていた逆鬼が声をかけてきた。

 

 

「なかなか続くじゃねぇか」

「え、あっはい!地蔵はなかなか投げれないですけど…」

「何だ、気づいてなかったのか?その地蔵をよーく見てみな」

「あっこら、逆鬼!」

「あれ?何だか前より大きいような…」

 

 

岬越寺先生も様子がおかしいし…

 

 

「…大きくしてました?」

「まぁ、そっちの方が強くなれるからね」

 

 

さすがよく考えてるなぁと感心した兼一だった。

 

 

「兼一、あーその、何だ…。俺もお前に教えてやる!」

「えっ!」

「おやぁー弟子はとらない主義じゃあなかったのかね?」

 

 

ネタをばらされたからか、岬越寺がニヤニヤしながら逆鬼に言った。

 

 

「う、うるせぇ!今日は特別何だよ!今日、今日はそう!俺の誕生日だった!だから特別だ!」

 

 

耳を真っ赤にしながら言われても説得力は皆無だが、つつくと修行をつけて貰えないので兼一は黙っていた。

 

 

「おら、行くぞ!」

「は、はい!」

 

 

兼一と逆鬼は庭に出た。

 

 

「で、だ。お前をやった相手はどんな武術だった?」

「えーと、構えとステップからしてスポーツ空手だと思います。」

 

 

空手は様々な格闘技を取り込んで多様化している。その中でもスポーツ空手は、ルールなしの喧嘩よりもルール内で闘うことに重点がおかれている。

 

 

「スポーツ空手か…ならとっておきの技を教えてやる」

「とっておき?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逆鬼から技を教えて貰い、基礎鍛練も怠けることなく続け、以前よりも体力、筋力共についてきたころ、花の手入れのため校舎裏へ行くとまた筑波が喧嘩しているところに遭遇してしまった。

 

 

「止めろ!」

「あん?またてめぇか、弱い癖にでしゃばんじゃねぇよ。また痣だらけになりたいか?」

「君、逃げて」

 

 

兼一の声で殴られていた人はそそくさと走っていった。

それを見て筑波は気に入らねぇとばかりに顔を歪ませる。

 

 

 

「何だか騒がしいですわね」

 

 

と美羽が歩きながら首をかしげていると、怪我だらけで必死に走ってきている人とすれ違った。

校舎裏から出てきたのを見て何事かと覗いて見ると、なんと兼一が筑波と対峙していた。

 

 

 

「おい、何してくれてんだ」

「闘うきのない人に暴力している所なんて見過ごせないだけです」

「いい度胸だ、またボコボコにしてやるよ!」

「兼一さん!」

 

 

叫んだ美羽の声が聞こえたが、兼一は第一撃に集中した。

むかってきた筑波に、兼一は顔面に向かって正拳を繰り出した。筑波はその拳を腕をクロスさせることでガードし、余裕そうな顔を見せた瞬間、顔が今度は歪み、苦痛の声色を出した。

 

 

「あっあれは」

「山突…だとお!こんな技試合に使う奴いねぇぞ!」

「これは試合じゃない、喧嘩です!」

 

 

筑波のお腹には突き出した右とは逆の左手の拳が突き刺さっていた。

 

 

『いいか兼一、人間ってのはどうしたって顔面への攻撃が怖いんだ。そら!』

『わっ!』

 

 

実際に兼一に技を出す。

 

 

『まず顔をかばったろ?余程の訓練を積まねぇ限り、この上下同時突きをかわすのは難しい』

『わっ、いつの間に!』

 

 

兼一がお腹を見ると逆鬼の拳が当たっていた。

 

 

『この山突は最近の試合のルールじゃねぇから、見慣れてないだろう、効くと思うぜ!』

 

 

 

 

(やった!当たった!)

 

 

逆鬼の読みどうり筑波の腹にクリーンヒットした。

そこから逆上して繰り出された蹴りを掴み、膝へ力を入れるが、予想以上に力が上がっておりミシミシと音をが聞こえた気がした。

 

 

(折れる!?)

 

 

思わず離した瞬間、顔面を狙って拳が迫ってきた。

その拳を腕ごと掴み、相手の力を利用して背負い投げを決める。

 

 

「ぐあぁぁぁ!」

 

 

そのまま筑波は気絶した。

 

 

「兼一さん!大丈夫ですか?」

「美羽さん、大丈夫ですよ。この人生きています。」

(自分じゃなくて今闘った人の心配ですか…自分も大切にしてほしいですわ)

 

 

兼一は今闘った筑波の心配をしていた。

というのも兼一がお人好しというのもあるが、岬越寺に投げの技は実践では必殺の技となり得る、と言われたことを気にしていたからだった。

 

 

「では帰りましょうか」

「そうですわね」

 

 

筑波を背負うことを忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!筑波がやられた?」

「はい」

「くっくくく…いるじゃないか骨のある奴が」

 

 

影で怪しい影が動いていたことを兼一は知らない。

 




このままだと美羽は何も教えずに終わってしまう!
と、思いつつ入れれたらいれようかと思います。


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初めての勝利は絶望(希望?)とともに

お待たせしました。

長らくさぼっておりました。
報告書もたまり、ゴロゴロとしてしまい、開かなかったところ、続きが気になるとの声が!

私の駄文を待っていてくださり恐縮です!
これからも応援よろしくお願いします!


梁山泊で筑波を倒したことを報告すると

 

 

「ふむ、倒したか」ニヤッ

「がははは!やっちまったな兼一!」

「やっちゃったね」

「あぱぱぱぱ」

「やっちゃった…?」

 

 

次々と先生たちから「やっちゃった」と言われ、不思議に思う兼一。

 

 

「お前が倒した筑波とか言う奴はラグナレクとか言う不良集団のテスト役何だろ?勝っちまったっつうことは目をつけられたわけだ」

 

「それもいろいろな意味でね」

 

 

 

岬越寺のこの言葉に、兼一はどんどん不安になっていく。

 

 

「兼ちゃん、そこそこ強いけど才能ないから頑張らないと死ぬかも知れないね」

 

「強く生き…ろ」

 

「アパチャイ、兼一が死なないように頑張るよ!」

 

 

剣星はいつもどうりエロ本を読みながら、しぐれはいつもと変わらない無表情で、アパチャイは今から修行でもしそうな勢いで言った。

 

 

「アパチャイ、君はほどほどにしておきたまえ」

 

 

岬越寺からのフォローが入った。

実際に兼一はアパチャイの修行で死にかけていた。

 

 

「ま、やっちまったもんはしょうがねぇ。腹くくるしかねぇぜ、兼一」

 

 

逆鬼ががははと笑いながら言ってくる。

 

 

「笑い事じゃあないですよ…」

 

 

兼一が頭を抱えてうなだれていると岬越寺が

 

 

「ふむ。予定よりも早いが少々前倒しだね。兼一君、君は強くなりたいかね」

 

「っ!はい!」

 

「そのために地獄を見ようとも?」

 

「…………はい…」

 

「覚悟はあるようだね…」

 

「秋雨、てめえまさか!」

「秋雨どん、それは!」

「アパパパパパッ!やめといた方がいいよっ!」

「や…める?」

 

「えっえっえっ?みなさん?」

 

「えっ?あの…」

 

 

岬越寺が言い出しすと、周りの豪傑たちはそろってうろたえ始める。美羽はわからないのか頭に?をうかべながらみんなの顔を見回す。兼一は周りの言葉に顔色が悪くなった。

 

 

「兼一君…」

 

「はっ、はい!!」

 

 

兼一はびくびくしながら岬越寺を見る。

 

 

「秋雨…」「秋雨どん…」「アパパパ…」「あき…さめ」

 

 

周りが見守るなか、岬越寺が口を開く。

兼一は無意識のうちに喉をならしていた。

 

 

「兼一君、君は今日から…」

 

(ゴクッ)

 

「内弟子だよ」

 

 

とても明るい、軽い口調で岬越寺は言った。さっきまでのシリアスはどこへ行ったのか周りは「おぉー!」と声をあげている。

兼一は「へっ?」と気の抜けた声が出た。

 

 

「えっ?あの…」

 

「おめでとう!君は今日から内弟子だ!24時間365日ともに生活し、武術による武術のための生活が始まるのだよ!」

 

「良かったなぁ兼一!」

「そうね、これで強くなれるね」

「アパパパ!兼一、修行できるよ!」

「強く生き…ろ」

 

 

最後の時雨の言葉が少々不穏だったが兼一には願ってもないことだったので喜んで受け入れる。

こうして兼一はその日から梁山泊の内弟子になった。

 

 

その日、兼一は一度帰宅して家族への説明、準備をするのだった。

 

因みに母さおりは2つ返事でOKするが妹のほのかはごねた。ほのかをなんとか説得をしているところ、何を感じたのか父元次(もとつぐ)が帰ってきて大騒ぎになるがさおりのお盆によって事なきを得た。

 




いろいろ前倒しです。

早く龍斗と会わせたいですね。

次も間が空きそうですが空かないように頑張ります…


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