衛宮さんちのメイドラゴン。 (ギルス)
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第1話 「幻想種」

Fate/staynight の世界にトールが居たら。
そんなお話。
聖杯戦争は始まるかどうかすら未定。
今後の話で拙作、カルデアアフターシリーズと若干のリンクあり。
また、pixivでも同じ内容で投稿して居ます。



──大きい。

小山のような巨体。

 

翡翠色をした綺麗な鱗。

なんでも噛み砕いてしまいそうな、ナイフのような牙がズラリと並ぶ裂けた口。

 

鹿にも似た角を持ち、蝙蝠にも似た黒い皮膜を持つ翼。

 

御伽噺に出てきそうなドラゴンが、そこに居た。

 

「…怖くない?」

 

「…こ、怖くないよ、き、綺麗だ。」

 

竜が、問いかける。

少年はしどろもどろながらそれに答えて。

 

…竜の身体のあちこちには剣が刺さっていて、他にも無数の裂傷、擦過傷、──大小無数の傷、傷、傷。

 

「痛く、ないの?」

 

今度は少年が問いかけた。

 

「…痛いね、ああ、痛い…人間、御前達がつけた傷だ…私は人間が──」

 

「き、嫌いだなんて言わないでよ、俺なら、こんな綺麗な鱗に…傷なんかつけたくない!」

 

どういうわけか。

その「竜」は絶句していた。

 

まん丸に目を見開いて、やがて唸るようにして声を絞り出した。

 

「…ああ、皆が君みたいなら…私はトール…君、名前は?」

 

「小林、小林士郎!」

 

そこで夢は途切れた。

 

それが、俺の原初の記憶。

小学校低学年の時に記憶の殆どを磨耗させ、失った自分が唯一覚えていること。

 

実の親の顔も名前も忘れた俺が覚えている、幼い自分が見た、夢──。

 

 

*****…

 

 

チチチ、と鳥の囀りが聞こえて目を覚ます。

どうやらまた、土蔵で鍛錬していて寝てしまったらしい。

 

「あー、久しぶりに見たなこの夢。」

 

この家、衛宮の家に引きとられてしばらくはこの夢を頻繁に見た。

 

「…そういや俺の旧姓、小林だったなあ。」

 

あの、10年前の大災害で全てを失った俺は養父、衛宮切嗣に引きとられた。

 

未だ原因不明の冬木の大災害。

断片的な記憶に良いものはない、黒焦げの遺体を眺めて絶望する夢も見た。

 

…記憶に脚色はあるかもしれない、だが概ね事実が夢として現れたもの。

 

今見ていた夢は今では子供ながらにあの地獄の記憶に蓋をした結果出てきたものではないかと思っている。

 

多分8割脚色の、遠足先の森で見かけた罠にかかった大型動物。

そんな何かを見た記憶が変質したもの、ではないかと思う。

 

「いやに鮮明な夢だけど…あれは無い、よなあ…」

 

魔術を使えた切嗣ですら幻想種はまず出会えないと言っていた。

まして竜種など幻想中の幻想。

 

だから、そんなものに出会うわけがないと。

この時の俺はそう考えて、いた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「先輩、こっちはこれでいいですか?」

 

「──どれ…うん完璧だ、もう桜には洋食では敵わないなあ。」

 

「私なんてまだ…和食なら先輩の独壇場じゃないですか。」

 

なんて、互いを褒めあっている、相手は

とても長くて綺麗な紫紺の髪をした美少女。

 

間桐 桜。

弓道部の後輩で、可愛い妹分、だった筈なのだが。

 

最近じゃあ妙に意識してしまう自分がいて困る、何と言っても桜の発育はこのところ凄い、とにかく凄い。

 

目のやり場に困るくらいにそのグラマラスなスタイルで、それでいて奥ゆかしい。

 

…そんな据え膳みたいな現状だが、決してそんな甘いものではない。

弓道部を辞めたのは俺の個人的な我儘だというのに、生真面目な桜はそれにありもしない負い目を感じて、いつのまにかうちの家事を手伝いにきてくれる様になっただけ。

 

正直に言うなら早く桜の事を解放してやりたいとすら思う。

悪いのは俺なんだから。

 

と、益体も無い事を考えていたら玄関のチャイムが鳴った。

 

「ああ、俺が出るよ。」

 

桜にそう断って玄関へ。

 

「ん?」

 

何故か玄関が薄暗い。

電球が切れたか──?

 

そんなことを考えながら引き戸を開けたその先には。

 

扉一面分のサイズの縦長の瞳があった。

 

「──!?!?」

 

あまりの驚きに、息が止まる。

 

やがて、その瞳が離れてそれが、なんの眼だったかがわかる。

 

小山のような巨体。

ナイフのような牙がズラリと並ぶ口。

 

なにより、その濃密な魔力。

 

ドラゴン。

それは最強の幻想種である。

炎を吐き、空を飛び、時には高度な魔術を操る、魔術世界ですら伝説に数える存在。

 

──だと。

俺は、思って──いた。

 

咆哮。

空気を震わせるそれが、俺に死を覚悟させた。

 

だが。

次の瞬間には宙空に展開された積層型の陣が輝いたかと思えば。

 

「じゃーーん!」

 

そこにはゴスロリメイド服を纏う桜より何かが「凄い」かもしれない…女の子が、居た。

但し、その背には翼、頭には角、お尻からは尻尾が生えている。

 

「こんにちは、小林さん!」

 

繰り返すが。

 

──ドラゴン。

それは最強の幻想種である。

炎を吐き、空を飛び、時には高度な魔術を操る、魔術世界ですら伝説に数える存在。

 

──だと。

俺は、思っていた。

 

…いたんだけどなあ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「俺が、うちに来いって…言った??」

 

「ハイ!小林さんのあの時の言葉…私がどれだけ心癒された事か!」

 

覚えが無い。

…まるで無い。

 

「えと、先輩…この方は?」

 

「…いや、俺が聞きたい。」

 

「トールです!」

 

「「そうじゃな(いです)くて。」」

 

とりあえずお茶を出し、居間で応対をする。

 

「むむ!これは…なんと、ほう…しばらく見ないうちに小林さん、随分精悍な顔つきになっ…まさかとは思いますが奥様ですか?」

 

と、俺と桜とを見比べてそんな事を言い始めた。

しかもなんか視線がちょっと怖い。

なんか瞳が縦に細くなって…爬虫類特有の視線が突き刺さる。

 

「え、いやいや桜は部活の後輩で、そんな関係じゃあないぞ…確かに俺には勿体無いくらいの良い子だからそんな誤解をまねいてちゃいけないんだが──」

 

「…ぁ、私なら全然構わないのに…」

 

「ん…桜、なんだって?」

 

「…あ、いえ、なんでもありません。」

 

「…あー、なるほどよくわかりました、小林さんはとってもおもてになられるんですね〜」

 

「なんだそりゃ。」

 

「…鈍感…」

 

「は?」

 

「ああ、いえなんでも。」

 

「…というか、どこかで出会いましたっけ、俺たち?」

 

そう、まずそこだ。

 

「はい!山で出会いました!」

 

「山──いつ?」

 

「えぇと、こっちの暦でいえば…10年と少し前、でしょうか?」

 

可愛らしく指折り数えながら小首を傾げるトール。

 

「…ああ、それでか…悪い、10年以上昔の話は…あんまり覚えて無い、なあ…後俺養子になっててな、今は衛宮、なんだ。」

 

…そうか、まさかあの夢は夢じゃなかったのか…幻想種 (ドラゴン)に出会ってたなんて、親父が聞いたらなんていうかなあ?

 

「え?小林さんは小林さんでは?」

 

「…あー、それは苗字だからさいろいろあって変わったんだ。」

 

「…なるほど!暗殺されないように名を変えたんですね、わかります!私の国の王様とかも国を滅ぼされた後にそうしてるのを見たことあります!!」

 

「「それは違う」」

 

「──あれ?」

 

流石ドラゴン…常識が通じない。

 

「と、いうわけで!私メイドとしてここで働きにきました、雇ってください!」

 

「え、いやいやまてまて、そもそもなんでメイド?」

 

「…こば、衛宮さんが言ったんですよ?好きなものは何かって聞いたら、メイド!って。」

 

「…そういやその頃将来はホテルマンとかメイドとか言っていた、かも…。」

 

…皮肉な話だ、きっかけがあるとはいえ両親の顔も名前も思い出せないのにこんな事は思い出せるんだから。

 

「…あはは、なんか先輩らしいというか。」

 

「…それ褒めてないだろ、桜?」

 

「え!か、可愛らしくていいと思いますよ?」

 

慌てて否定?する桜だがまるで否定になって無い。

 

「…やっぱり褒めてねぇ…」

 

思わず頭を抱えた。

 

「あはは、じゃあ、おっけーですね!?」

 

「いや、それは無理だ。」

 

「なんで!?」

 

ガン!と効果音がしそうな涙目で抗議するトール。

 

「だって君は女の子だろう。」

 

「そうですけど、メイドでドラゴンです!」

 

ドラゴン?、と桜がハテナマークを飛ばした後に尻尾と角を見てああ、こすぷ…れ?と一人納得していた。

 

「じゃあどうしたら雇ってくれるんですか?」

 

「いや、ダメだろ…常識的に考えて。」

 

「JKって奴ですか!?JKだから捨てられるんですか、私!酷い!」

 

まて、単語がおかしい、あとやめろ凄く言葉がマズイ、なんか桜の笑顔がちょっと怖くなってきたし、なんでさ!?

 

「いや、護れない約束をして悪かった。」

 

と、そうして断り、玄関までとぼとぼと歩くトールを送り出そうとして気づいてしまった。

その目に涙が光っている事に。

 

「見たところ、トール、さんは外国人だよな?」

 

異世界人…竜?だという話だが広義的に見れば外国人、で間違いでもないだろう。

 

「え…、あ、はい。」

 

先ほどのような明るさが消えたその表情を見て、俺は遂に陥落した。

 

「──住む場所が見つかるまでだ、それまでなら離れの部屋を使ってくれたらいい。」

 

「せっ、先輩!?」

 

「は、はい!はいっ!!」

 

ぱあ、とトールに明るい笑顔が戻る。

 

──全く。

現金なもんだなあ。

 

「住む場所を見つけるまでだぞ?」

 

「はい、ここが私の住みたい場所です!なんていっても──」

 

「小…じゃなかった、衛宮さんがいますから!」

 

「…士郎、でいいよ。」

 

「ハイ!シロウさん!」

 

…顔が熱い。

いくら鈍感な俺でも、流石に純粋な好意をこうストレートにぶつけられれば気づきもする。

 

…まあ、ドラゴン相手にどうなんだとは思うけど、この明るい笑顔を見ていたら。

 

悪くはないんじゃないかな?

なんて──、思ってしまった。

 

親父が聞いたら…本当、なんて言うかな。

 

これが。

俺の非日常が…始まった瞬間だった。

 




出会ったチョロゴンと、士郎。
果たして聖杯戦争はどうなるのか。

乞うご期待??


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第2話 「門番?」


猛竜注意!



この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight の2次創作です。

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

それでも良いよ!
と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

…ジョークですよ?w

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。



        

げぇときぃぱあ

 

昼中の衛宮邸。

二人の指名手配中の強盗殺人未遂犯が空き巣を狙い、玄関前にしゃがみ込んでいた。

 

「へっへっへ…今はこのうちの住人は出払っていて居ないはず、このうちは学生の小僧が一人暮らしなのは調査済みよ!」

 

「さすが兄貴…そこにニラレバ頑張れるぅ!」

 

「…なんか微妙に違わねぇか、それ?」

 

この時、注意して見ていたなら、あるいはサングラスなんかしていなければ引き戸の磨りガラスの向こうが薄暗い…いや、緑色の何かに埋め尽くされていることに気づけたかもしれない。

 

だが、二人は不幸にもそれに気づかず。

引き戸の鍵をピッキングで開けてしまう。

 

「へっへっ、俺様ほどになると手元を見ないでもこんなショボい…カ、ギ…?」

 

喋りながら、引き戸をガラリと開けた向こうには。

 

「「ひいっ!?!?」」

 

ドラゴン、の、顔、が。

 

巨大な顎門をパックリと開いて待っていた。

 

咆哮。

湧き上がるのは…

心凍てつかせる原初の感情──即ち、恐怖。

 

魔力を込めるでもなく付与 (エンチャント)されたソレは悪漢二人の心胆寒からしめるに十分に過ぎた。

 

まだしも逃げだせただけ二人は大した胆力だったと言えるかもしれない。

 

普通なら固まるか、腰を抜かしていただろう。

それは彼らには幸運だった。

何せ、逃げだせたことが彼らの命を救ったのだから。

もし、逃げだせていなければ。

 

「あら、逃げちゃいましたか…残念、殺せませんでした。」

 

さして残念そうにも聞こえない声で。

ドラゴン──トールは呟くのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

済し崩しに衛宮邸に棲みついたトールは悩んでいた。

 

「…門番…門番って何をすれば良いんでしょう?」

 

発端は士郎達の学校に自分もついて行こうとしたら言われた言葉である。

 

──ほ、ほらっドラゴンって言われたらやっぱり財宝とか護るもんだろ!な、な?

 

そうですねっ!

良妻は家を守れなければ!!

 

と。

 

…因みにその時後半のトールの台詞に桜の額には青筋が浮かび、強烈なオーラ(黒と赤が明滅)が発されていたのは完全に余談である。

 

というか、トールさんチョロすぎです。

そんなだから原作でちょろゴン言われるんですよあなた。

 

「ファフニールさんに聞いてみますか。」

 

と、黒いアンティークとも言えるデザインの電話機のダイヤルを回し始めた。

…使い方すら知らなかった電話を使いこなしているのも驚きだが、異世界の竜の住処に通じる時点で常識など無い。

 

「…殺セ、財ヲ 奪オウト スル者 全テヲ 殺セ。疑ワシキ ハ 殺セ。呪イ ヲ コメテ 殺セ。」

 

「──魔剣バルムンク ニ 気ヲツケ──」

 

──ガチャン。

 

「参考になるなー。」

 

…なんの参考なのかは悪漢二人への対応が物語る所であるが。

 

…と、言うのが時間軸は前後したが、本日日中の出来事である。

 

 

 

 

赤い光が明滅する。

パトライトだ。

 

桜を伴い帰宅する途中。

士郎はパトカーと警察官、二人の強面の男を見つけていた。

 

「なんだ、パトカー?」

 

「何でしょう…あれ、あの二人の顔どこかで…見たような?」

 

「あんな知り合い居ないだろ、気のせいじゃないか?」

 

道路の側では、二人の強面の男が泣きながら警察官に懇願していた。

携帯電話を片手に(どうやら自ら呼んだらしい)助けて、出た、殺される、保護、いや…逮捕して下さい!?

 

──と。

 

桜が記憶していたのは、商店街に貼られた指名手配のポスターが原因である。

 

「ただいまトール、何かあったか?」

 

「はい、門番は寂しかったです…殺せなかったし。」

 

「ははは、そっかー寂し…えっ、コロっ!?」

 

「…トールさん、何故先輩に抱きつこうとしてるんです?」

 

「スキン…いや、スケイルシップです!」

 

「ダメです、常識的に考えてアウトー!」

 

「リアルJKだからって!リアルJKだからって!シロウさんを独り占めにしていいと思ってるんですかっ、あまり強欲だと竜に攫われますよ!?」

 

「な、なんですかその聞いたことない諺みたいなのはっ、てそうじゃないです、常識を考えてって言ってるんです、トールさん!?」

 

「あー、二人とも穏便に──」

 

「「先輩(シロウさん)は黙ってて下さい!」」

 

「あ、はい…。」

 

ドラゴンはトールだろ、と内心ツッコミつつ口をバツの字にしておし黙る士郎。

 

すでに抱きついているトール。

引き剥がしにかかる桜。

 

昨日今日でこれが当たり前になりつつある。

 

「…なんでさ…?」

 

朴念仁は今日もマイペースであった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

       

優等生とどらごん

 

「…聖杯戦争の開始が近い、とは言え…」

 

魔術の名家、始まりの御三家と呼ばれる家の生まれである彼女、遠坂凛は困惑していた。

 

艶やかな黒髪のサイドを特徴的なツインテールに仕立て、後ろ髪は流している。

 

慎ましくもくびれたスタイル、健康的にスラリと伸びた健脚。

成績優秀、才色兼備。

校内でも有名な優等生、それが遠坂凛である。

 

しかし、それはあくまでも「常に余裕を持って優雅たれ」が家訓である彼女の拘りである。

本来ならば魔術師である彼女が態々一般社会で目立つ必要は無いのだから。

 

しかし、その「優等生」の凛をして今の事態は理解不能だった。

 

「……アレ、絶対人間じゃないわよね…」

 

体育館の床に座り、男女合同での球技大会の練習に駆り出された凛は男子が騒ぎ立てている中心にいる人物を注視していた。

 

最近、体育教師として赴任してきたルコアと言う外国人。

無意識にか、常に恐ろしいほど濃密な魔力を撒き散らしている。

しかも、フルネームはケツァル・コアトルときた。

 

「…南米の太陽神の名前じゃない…」

 

まさか、サーヴァント?

いや、確かに近いが何処か違う──

 

「はーい!みんなー!元気デスかー!」

 

「「「うぉおおーー!!!」」」

 

男子が完全に魅了されていた。

…そう、教師は女性。

しかも、とんでもないサイズ、ワールドクラスの爆乳であった。

 

バスケットボールを見本だ、とゴールのフープに投げ入れようと飛び上がる度にバルンバルンと揺れるボールより巨大な双丘。

まるでキングサイズのメロンが揺れているようだ。

 

男子生徒の視線はそこに集中し、女子生徒からは呪詛めいた声が聞こえてきた。

 

「…死ねばいいのに。」

 

女子生徒の一人が呟いた言葉に、内心深く同意

する凛であった。

 

 

 

 

そんな中。

凛が気にしているもう一人の人物にも変化があった。

 

穂群原学園の体育館は広く、偶々だが後輩のクラスも直ぐ隣で体育座りをしていた。

凛が気にしているその人物も、あれだけの魔力に気づかないはずはない、とは思うのだが。

 

「…桜、どうしたのよため息なんかついて。」

 

「え、あ…遠坂先輩?」

 

間桐 桜 (まとう さくら)

一年下の後輩。

 

──私がいることにも気づかないとかどんだけ落ち込んでるのよ、この娘…。

 

「あ、な、なんでもないんです、その。」

 

わたわたする桜をワザとイジワルな声を出して追い詰め、白状する様に誘導する。

 

「…どうせ、衛宮くんがらみでしょ、んん?」

 

にまにまとしながら言ってやれば、顔を赤くしながら、は、はい。と頷く桜。

…可愛いなあ、もう…桜を泣かしたらガンド撃ちの刑よ…衛宮くん。

 

暇な待ち時間の中で聞き出した内容はこう。

 

衛宮くん家に、おしかけメイドが住み着いた。

しかも、そのメイドは若くて可愛い。

何故かいつもコスプレ姿。

 

「あ、あんなのだめです、あんな格好で先輩の気を惹こうなんてずる、い、いえいつも同じ服なんて清潔じゃありません!」

 

…最後の言い訳、苦しいなー。

 

「あ、なら格好を変えてあげたら良いのよね?その娘に私のお古を何枚かあげるわ、今日あたり一緒に行きましょうよ桜。」

 

「え、あ、そう、ですけど多分サイズが…」

 

「フリーサイズだから大丈夫よ、身長がよほど違わなきゃ、袖とかの丈だけなら手直しもしてあげるし。」

 

「…あ、はい。」

 

歯切れの悪い返事ね?

ま、いいけど。

 

魔術師として。

桜とはあまり関わらない様にしてきたけど。

偶には、聖杯戦争が始まる前に一度くらいは、桜を助けても…かまわないわよね。

 

だって。桜は可愛い「後輩」なんだから。

 

ただ、この時私は気付くべきだった。

桜の視線がルコア先生のワールドサイズに向けられた後、私の慎ましくも美しいものに向けられていた事に。

 

──神様、その不公平に呪詛を吐いていいかしら?

 

神など信じない私だが、後にそんな感想を抱く羽目になったのだ、ガッデム!!←

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

       

トールと洗濯

 

暖かな日差しだ。

最近は家事をトールが分担してくれるから随分と楽をさせて貰っている。

土曜で授業も半ドンだったし、今日はお茶請けに鯛焼きを買ってきた。

…たまには家事をしてるトールを労いに行くか。

 

そう考えてお盆にお茶と鯛焼きを乗せて庭先に、草履をひっかけて足を伸ばした、その先に見えた光景は最早ツッコまずにはいられなかった。

 

「やはり人間は下等な生き物ですねえ、老廃物で衣服が汚れるなんて──…」

 

洗濯物を干すトールがなんかあたりをキョロキョロ見回したと思うと恍惚とした表情で俺の洗濯物を握りしめていた。

 

「こば…シロウさんの…老廃、物…。」

 

ヌロン。

と、卑猥な効果音がしそうな位にヤバイ構図。

トールが俺のトランクスを舐めた。

 

「…な、なにしてんだトールウウゥ!?」

 

「ぴゃっ!?」

 

あまりの俺の絶叫にトールが可愛らしい声で驚いてみせた。

騙されないからな!?

 

「な、何って洗濯物を干していたんですよぅ」

 

「舐める必要無いだろっ!?////」

 

「んふふ〜シロウさんはシャイですねぇ。」

 

「そうじゃないっ!?」

 

ハアハアと肩で息をしながらとりあえずお盆を置く。

 

「あ、あのなトール…家事を手伝ってくれるのは嬉しいんだがな…だけどなぁ…」

 

「直接舐めた方が良いと?どこを?」

 

「違うわっ!!」

 

突っ込むまで凡そ0.3sec。

 

「トールの性癖に疑問は感じるが…問題は洗濯の仕方であって…」

 

「ど、どこか間違ってましたか?間違っているのは何度滅亡しかけても戦争を繰り返す人間の愚かな習性だと思うんです!」

 

 

「過去を絡めるなっ…い、いや、まず洗濯をどんな手順でしていたか言ってみろっ!」

 

「えー?まずは、透視能力でポケットの中に小銭や小物が無いか確認しました。」

 

「あ、ああ…それから?」

 

透視能力かよ、とは突っ込むのは我慢した。

 

「はい、色物は分けて洗い、洗剤も種類を変えました。」

 

「そこまでは問題ないな、後は?」

 

「後は──痛みやすい生地は口洗いで。」

 

「お゛ーーーーい゛っ、なんだ口洗いって!?」

 

「え、だから、こう…」

 

はむ。

おもむろに取り出したシャツを咥えたトール。

竜頭になりむぐむぐと咀嚼する。

 

「まてまてまてまてーい!?」

 

「汚れのみを溶かす唾液を出せるんですよ?」

 

「引くわっ!ビジュアル考えてくれっ、見た目大事!?」

 

「…あ、このままでって事です?」

 

人の顔に戻──りやけに扇情的な表情でシャツを手に取って。

 

「このままじゃいけない!余計いけない!っていうか顔っ!?」

 

あーん、と人の姿のままシャツを再びはもうとするトールを慌てて止める。

 

「ちぇ。」

 

そこ、舌打ちしない。

 

「あのなぁ、トール、女の子がそんな──」

 

 

更にトールにお説教を始めようとした矢先、玄関先に人影が見えた。

それはこちらを見つけるとトコトコと歩いてきた。

 

「こんにちは衛宮くん、お邪魔するわね?」

 

「え?え?遠坂!?」

 

「先輩、お邪魔します。」

 

桜もおずおずと遠坂の後ろからついて来ている。

 

「へぇ〜その娘が噂のメイドさん?確かに変わっ──げ。」

 

遠坂が固まり、その視線は角、尻尾ときて最後はトールの顔より下で止まる。

 

「どなた様ですか?」

 

「えっ、あ、うん私は衛宮くんの同級生で遠坂凛よ、桜が貴女がいつもその服だから、っていうから着替えを…あ、私のお下がりで悪いけどいらないかな、って思って。」

 

「そりゃすまない、なんか気を遣わしちまったかなあ、ありがとう遠坂。」

 

「へ?あ、い、いいのよ桜──後輩のためでもあるんだし。」

 

「そうか、しかし桜と遠坂が面識があるとは知らなかったな。」

 

「先輩は知らないかもしれませんが遠坂先輩、とある方を見によくいらっしゃっていたんですよ?」

 

「な、桜余計な事言わないの!」

 

「ああ、そういや遠坂、美綴と仲良かったよな…それでか。」

 

「あ、うん、そうよ、そうなの!」

 

あわあわと慌てる遠坂凛。

 

「…あーうちのシロウさんは本当におもてになるんですねえ…そのあたりどうですか、こじゅ…桜さん。」

 

それを見て感づくトール。

 

「今なんて言おうとしたか後でたっぷり聴かせてくださいねトールさん。」

 

「ハッw」

 

「…まあ、悔しいですけどそれは認めますよ、ええ、先輩は密かにモテるんです。」

 

鼻で笑うトールをうぐぐっと睨みながら答える桜。

 

 

 

 

それから数分。

 

「わー!これ可愛いですね!」

 

と、トールがきているのは女の子らしいニットのワンピース。

嬉しいのかくるくると回っている。

 

「…遠坂、こんな服よく持ってたな?」

 

「どういう意味か問い詰めたいところだけど…生憎私の趣味じゃないわ、とある知り合いが毎年毎年誕生日になると私にまず似合わない服を贈りつけてくるの…絶対嫌がらせよ、アレは。」

 

「ありがとうございます、遠坂さん!」

 

にぱ、と笑ってトールが礼を言う。

 

「とっても気に入りました!…あ、でも胸がちょっと…キツ…」

 

そう呟くトールの胸は、ゆったり目のはずのニットワンピースの胸元をこれでもかと押し上げ、些か苦しげだった。

 

それを見た凛の脳裏に、ワンピースをプレゼントした人物の言葉が蘇る。

 

『なに、凛よ。おまえのサイズは調査済みだ…きちんとおさまり、また垂れないように適度に締めつけるように調整して編んである珠玉の一品だ、何礼はいらんぞ、私とおまえの仲ではないか、ん?」

 

と、いうセクハラまがいな発言が。

 

「あんの似非神父──」

 

いつか事故を装って殺してやる。

などと、物騒な事を考えながら。

 

トール、桜、自分の順に見比べて。

こうべを垂れて格差を恨むのであった──




【後書き的なモノリス】

はい、みなさまこんばんは、こんにちは、あるいはおはようございます、みなさまの心の清涼飲料水、になれたらいいな?…ライダーです。

今回、ルコアさんが登場しましたが彼女普段の見た目は小林さんちのメイドラゴン仕様ですが、性格や戦闘能力なんかはFGO寄りです。

もし、戦闘になれば姿もFGOのルコアさんに成ります。

後、ルコアは隠す気がありませんが、トールは一応魔力は押さえていたため凛も気づきませんでした。
桜からもコスプレメイドだと聞いていたのもありましたし、胸のサイズのインパクトに疑う頭がぶっ飛びました。

と、いうわけで衛宮さんちのメイドラゴン、第二話如何でしたか?

本当に不定期連載になりますが、またよろしくお願いします。

そ、れ、で、は、また!
しーゆー!


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第3話「竜殺し」

どらごんょぅじょ、登場。

あと、すまない、
なんかすまない。

本当すまない。
キャラが適当すぎて…

すまない。




どらごにっくあーつ?

 

その日は、曇天だった。

折角洗濯したものがこれでは乾かない。

 

以前魔力を使って乾かしたらすぐにばれた。

 

「…トール、またズルをしたな?」

 

「へ?な、なんのことですか?」

 

シロウさんは最近、魔力で何かをする事を極力やめなさいと言う。

 

特に直接作用するような類を、だ。

透視してポケットの中を見るくらいは良いそうだが。

 

「日に干したなら匂いがしなさすぎる、完全に無臭でそれでいてアイロンかけしたみたいに乾いてるとかおかしいからな?」

 

第一、布団なんかはそのお日さまの匂いがいいんじゃないか、とか言っていた。

 

…因みに、お日さまの匂いとか言うがあれは太陽光で死滅したダニや微生物の死骸の匂いである。

…それを言ったらこっぴどく叱られた。

 

「人間の常識って、細かいですよねえ…」

 

ま、とりあえずお日様に当てれば良いわけですからね。

 

と、考えて大きく息を吸い込む。

 

ついでに多量の魔素(マナ)を込め、吐き出す。

 

カッ!

 

稲光にも似た光の柱が天にかかる雲を難なく散らしていく。

 

「…ょし!」

 

…いまにも降りそうだった雲がなくなり、日が差し込んできた。

 

因みにこの後。

何故かブレスで雲を散らしたのがバレて怒られた、なんででしょう?

 

「……匂いならいいよね?」

 

ああ、至福です。

シロウさんの香り…癖になりそう。

 

…見られたら怒られそうですが、もう我慢できない、思わずシロウさんの衣服をかき抱いて匂いを嗅いでしまった。

 

「…ああ、いけないとわかってると何故か余計に…スハー、スハー。」

 

…変態である。

 

 

帰宅部で、今日は頼まれ事もないので早めに帰路についていると。

 

──いきなり、雲が光に蹴散らされて晴れた。

トールだな、間違いない…帰ったらお仕置きだ。

 

…お仕置き、って言っても軽くチョップしてお説教するだけなんだけどな。

卑猥な意味じゃないぞ、決して。

 

「…見つけた…。」

 

何か、道端に佇む少女がそんな事を呟いていた。

 

薄紫の長いふわふわの髪に、ヒラヒラとした飾りの多い、ワンピース姿の可愛らしい童女。

何故か頭にカチューシャと一緒にツノみたいな飾りが見える。

 

…コスプレ?

まさか、トールの…?

 

「まさかな、そうそうドラゴンに会えるわけがないか。」

 

そう呟いた俺は、見事にその言葉を裏切られることになるのだが、その日はそれで暮れていった。

 

翌日。

日曜なので買い物に出ようとすればトールが当然とばかりについて行くと主張した。

 

「…ああ、わかったわかった。」

 

早々に観念してついてくるのを許可する。

 

暫く一緒に歩き、駅に向かう途中でトールに袖を引かれた。

 

「ん?トール、駅はこっち──」

 

今日はトールも喜ぶかと、新都のデパートに行こうかと思ったのだが。

 

「…ああ、あの白い建物ですか…あそこは嫌です、聖騎士共の本拠地を思い出すんですよ…。」

 

「…トールの基準って…大体過去の経験からだよな。」

 

苦笑いしつつも、商店街なら馴染みもあるしそれならそれでかまわないか。

 

「ならとりあえず魚から買いに行こうか。」

 

「はい!」

 

嬉しそうだな、トール。

 

「お!トールちゃん、今日はお連れさんがいるとか珍しいな…って、あれ?シロちゃんじゃないか。」

 

「…ああ、こんにちは、トダさん。」

 

魚屋のトダさん、中学の頃から買い物に来ているからこの商店街の人なら大体顔見知りだ。

 

…そういや、トールと一緒に来たのは初めてだしな。

 

「…どういう関係?」

 

まあ、聞かれるよなあ。

 

「…こば…シロウさんはご主人様です!」

 

「いっ、ちょ、誤解を招く事を言わない!」

 

ほら、トダさんちょっと引いてるじゃないか!?

 

「いや、ハウスキーパーですからね!?」

 

「あ、ああ、そっか、シロちゃんもお年頃だしなあ…桜ちゃんはどうしたんだ、まさか二股!?いかん、いかんよ!?」

 

「話聞いてくださいよ!?」

 

すったもんだありまして。

 

「わー、コスプレのお姉ちゃんこんにちは!…お兄ちゃん、彼氏?」

 

「あらトールちゃん、とシロウちゃん、あらあらあらあら、そうなの?そういうことなの?」

 

「…どういうことですか…」

 

通りすがりの子供や、ご近所のおばちゃんにも変な事を言われた。

 

つ、疲れる…行く先々でなんか誤解を受けている!

 

「シロウちゃん結婚するのかい!?桜ちゃんかわいそうに…この女泣かせ!」

 

八百屋でもそんな事を言われ。

 

「どうしてこうなった…」

 

と、俺がうちひしがれていた時だった。

 

「泥棒ーー!!」

 

甲高い悲鳴とともに小太りの男が女物のバックを抱えて走ってきた。

あいつが泥棒だろう。

 

「…シロウさん、捕まえてもいいですか?」

 

「あ、ああ…ドラゴンだとバレないようにな、ブレスや魔法も無しだぞ?」

 

「はい、おまかせください!」

 

言葉とともに。

トールの上体が僅かに沈みこむ。

膝を曲げ、走り出す予備動作だろうか。

 

次の瞬間、そこに残っていたのは罅割れたレンガのタイルと、土埃。

 

かなり離れていた男の背後に、まるで瞬間移動の様にして現れ、いや。

跳び、追いついたトールが勢いよく空中で身体を捻り、右拳を振り下ろした。

 

ゴパア!!

 

派手な音をたて、地面にめり込む泥棒。

 

「………」

 

「え。」

 

「は?」

 

皆、一様に驚きを隠せない顔だ。

あたりまえだ、わかっていた俺ですら一瞬絶句してしまったのだから。

 

やりすぎだ!

 

(こりゃ、空気──ヤバイ?)

 

「トー…r」

 

ワッ!、と。

最悪の想像をした俺の考えは杞憂だったようだ。

 

皆が口々にトールを褒め称える。

 

「すごいじゃないか!トールちゃんこんなに強かったんだなあ!」

 

「わあああ、お姉ちゃん、ドラゴンポールみたい!」

 

アニメに例えてキラキラした瞳を向ける子。

バンバンとトールの肩を叩く八百屋の大将。

 

他のみんなも笑顔だ。

…よかっ、た…、本当に。

 

「…トール、帰ろうか。」

 

「は、はい!」

 

びっくりしていたトールを連れて商店街から出る、思わず手を握って連れて来たが…トールは震えていた。

 

「…怖かった、です…やりすぎてしまった、かと…あの沈黙の後、私向こうの世界みたいに怖がられて、また──」

 

「…それ以上言わなくていいよ、トール…今度からはもう少し自重しような、人間レベルに身体能力も控えるように。」

 

「はい…あれ、でも…この間みたテレビではあのくらい…」

 

「…それは作り話だからな、本当、気をつけてくれよ?トールに居なくなられたら…なぁ?」

 

夢、壊しちゃったかな…?

 

「はい…ありがとう、ございます。」

 

きゅ、っと手を握り返された。

…ドラゴンとか言ってもやっぱり、女の子、なんだなあ。

 

「…この手、暫く洗いません…」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いえ、なんでも!」

 

トールの顔が明るくなる。

弾けるような、いつもの笑顔。

 

「…トールはやっぱり、笑ってるほうが可愛いよな、うん。」

 

「ふぁっ!?/////」

 

なんか、もじもじしながら真っ赤になって黙るトール。

 

(…なんか変な事を言ったか、俺??)

 

「…こばやし、じゃなかった…シロウさん…私、貴方を…」

 

「ん?」

 

「…なんでもないです、帰りましょう?」

 

「ああ、そうだな…桜も待ってるだろうし。」

 

「…そうでしたね…あの小姑もくるんでしたね…はぁ。」

 

「小姑って…桜が聞いたら怒るぞ?」

 

「……こば、シロウさんのばぁか。」

 

「え??」

 

何故か、ぷくーっ、と頰を膨らませて怒り出したトール。

手はきつく握りしめて離さないくせに。

暫く目を合わせてくれなかった。

 

謝り倒して許してくれたが、なんで怒ったんだ…

 

本当に、なんでさ???

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

どらごんょぅι゙ょ、ょゎぃ?

 

 

先日、まさかと考えたわけだが。

その時の童女が、玄関前に佇んでいる。

 

「…え、えっと…うちに、何か用か?」

 

一緒思考がフリーズしたが。

十中八九トールの知り合いだろう、むしろそうでなければおかしいからな。

 

「…人間。」

 

「あ、やっぱりトールの知り合い…?」

 

俺を人間呼びとかまあ、自分が人間ではないと白状した様なものだ。

角とか有るし、よくみたら…紐のさきにマリモがついた様な可愛らしい尻尾まである。

 

「…そう、トール様と、別れて!」

 

「…は?」

 

別れて?何を言ってるんだこの子。

…トールがくる前に話をしないとややこしくなりそう──

 

とか考えた側から、背後に気配。

 

「私とっ、別れて?…こ、シロウさん…まさか、まさか!うーわーきーですかぁっ!?」

 

トールの顔がどんどん険しく…いや、もう半竜化してる!?

火をチロチロするな!

 

「お、落ち着けトール!?」

 

ひょい、と俺の身体からトールの知り合いだという少女が顔を出した。

 

「あれっ!?」

 

それをみたトールの怒気がしぼんでいく。

…ホッとした。

 

 

 

 

 

「…紹介します、この子はカンナカムイ、私の知人です。」

 

「…まあ、予想はしていたが…やっぱりか。」

 

「…で、カンナちゃんはなんでウチに?」

 

「トール様が行方不明になって、探してた。」

 

と、カンナの顔が歪む。

 

「そういう事は親しい人には言っとこうぜ…」

 

「あはは、いろいろあったので。」

 

適当だな、おい!?

 

「…トール様、なんでそんな姿に…私と、帰ろう?」

 

「…それは、できません。」

 

きっぱりと断わるトール。

 

「なんで!?」

 

カンナ、涙目である。

 

「…なんでっ、て…私はシロウさんを…愛してますからっ!!」

 

大袈裟なポーズでちゃぶ台に足を乗せて胸を強調しながら答えるトール。

 

「…おい、真面目に…」

 

「大真面目ですっ!」

 

…むう。

 

「やっぱり!バザールでデートしてるの見た!人前で手を繋いで…うらや…変態!」

 

今羨ましいとか言いかけたか?

 

「えふぇへへへへ…」

 

「照れる真似とかすなっ!?」

 

思わず突っ込みを入れてしまった。

…たく、どこまで本気なんだか。

 

「──こうなったら、おまえを殺して…!」

 

やば、トール並みの腕力で殴られたら…!?

 

ぽくん。

ポクポクポク。

 

…あれ?

 

完全に見た目通りの力だった。

子供のそれだ。

 

「…カンナ、貴女──すごく非力になってませんか??」

 

「と、トール様がおかしい…ここはマナの純度が、低すぎる…。」

 

がっくりと崩れ落ちるカンナ。

そうか、魔力で腕力を補っていたのか…

だから人型でもトールはあんな凄まじいのか。

 

「…カンナちゃん、もしかして、さ。」

 

「……」

 

「帰れなく、なった?」

 

「ウっっ!?」

 

ガァン!と、ショックを受けるカンナ。

 

「…そ、そんな事、ない…。」

 

「でも、行くとこないよね?」

 

追い討ちの様でかわいそうだが…子供に正直に話させるには仕方ない。

 

「はぅっ!」

 

「…さあ、俺の目を見て話してごらん?」

 

「…う。」

 

何故か顔が赤くなるカンナ。

 

「…シロウさん、顔、近いです。」

 

また、トールが頬を膨らましていた、なんでさ。

 

「…カンナ、何を企んでいるんですか…シロウさん狙いなら諦め──」

 

「トールは少し黙ってろ、頼むから。」

 

手で目を覆い目眩がしそうな思考を振り払い、続ける。

 

「…実、は…。」

 

 

****

 

「いたずらして追放された??」

 

「カンナはいたずらっ子でしたからねぇ。」

 

「……う。」

 

涙目で俯くカンナ。

 

玄関の外で泣きながら扉を叩いている近所の子供の姿を見たのを思い出した。

 

「はい、大体そんな感じです。」

 

「…心を読むなよ…」

 

目をそらすトール、魔力を使ったな…?

どこまで思考を読めるかわからないがプライバシーとか無いのかよ。

 

「…カンナちゃん、行くとこないなら、ウチに来るか?」

 

「…あっれえ、私の時はダメって言ったのに、あっれえ〜?」

 

むううう、と迫ってきるトール。

 

「一人許したら二人も三人も一緒だよ。」

 

「に、人間なんか信じない!何か企んでる、利用しようとしてる!」

 

「…知らない世界で誰も信じられない…そんなのは当たり前だ、俺だっていきなり信じたりはできないさ。」

 

(シロウさんならあっさり信用してそうですけどね…)

 

「…トール、今何か失礼な事考えたろ?」

 

「…シロウさん、テレパシストですか!?」

 

「…表情でわかるだけだ、全く。」

 

気を取り直し、カンナの頭に手を置き、撫でる。

 

「…誰かを信じるなんてさ、友達になったり、恋人になった後にするものなんだよ、──だから、カンナ、一緒に居よう?それだけでいいから。」

 

…目を見開いて耳まで真っ赤になったカンナが、涙をポロポロ零しはじめる。

 

「う、ひっ、うう〜〜、うん、う〜/////」

 

(──私、シロウさんを…好きになって、良かった。)

 

「…なんだよ、トール?」

 

「ふふ、シロウさんに、惚れ直してました。」

 

「…からかうなよ。」

 

トールはそれから終始ご機嫌で。

カンナはなかなか泣き止まず食事を終える頃には22時を回っていた。

 

「さて、風呂入って寝るかなあ…あ、先でいいからお風呂は勝手に使ってくれ、トール、カンナを入れてやってくれよな?」

 

「…シロウさんも、一緒に入ります?」

 

「なっ、は、入らないよっ!後でいいから、俺は!」

 

一瞬、トールの裸体を想像してしまったのは健全な男子なら、仕方ないだろ。

 

「……こばやし、わたしのはだか、みたい?」

 

「や、だから俺は衛宮で、こばやし、は旧姓…って俺が変態みたいに聞こえるからやめなさいっ!?」

 

「「うふ、あははははっ。」」

 

二人して太陽みたいに笑う。

 

…ま、女の子は笑ってるほうが…いいよな?

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

どらごんすれぃやぁ

 

円蔵山、柳洞寺。

ここ冬木市、深山町に広がる御山の中腹に位置する寺である。

 

ここは多数の檀家を持つこの地域の仏教の本拠地みたいな場所で、藤姉…、藤村先生の同級生であり穂群原学園OBである柳洞零観さんやその弟、現生徒会長の柳洞一成の家でもある。

 

今日はその一成の頼みで境内や寺院内の大掃除を手伝いに来たわけだが。

 

「すまんな、衛宮…学園外でまで手伝わせてしまって。」

 

「いや、かまわないさ普段から一成には世話になってるしな。偶にはこんな広い場所を掃除するのも悪くない。」

 

「いやいや、恩に着るぞ、衛宮。……ところでそちらの御仁は…随分と奇抜なファッションをされているようだが…」

 

と、奇抜な、のあたり失礼だと思ったか一成が声を潜めて聞いて来た。

 

「ああ、最近ウチで働いてくれてるハウスキーパーのトールだ。」

 

「はうすきーぱー…ああ、家政婦さんですか、なるほどそれでその格好…や、これは失礼しました自分は柳洞一成、衛宮とは同級生でして、今日はうちの小坊主連中がやる筈だった作業なんですが急な用事で数人本山に(よば)れてしまいましてね…衛宮にピンチヒッターを頼んだ次第でして。」

 

「なるほどなるほど…私の方こそよろしくお願いします、シロウさんのお友達なら私にとっても仲良くしたい方ですからね、まだこの国には慣れなくて…お寺というのは教会とは違うのですか?」

 

「外国の方には馴染みは薄いかもしれませんね、事に貴女の様な白人系の方には教会の方がわかりやすいのでしょうが…大雑把に言ってしまえば信仰する神の違い、でしょうか…信仰し、教義を守り、広めるのは変わりありませんが…仏教は複数の神を奉る教えであるのが最大の違いですね。」

 

「はあ、つまりは悪魔死すべし!蛇(教義的解釈としてのドラゴンの意)、滅ぶべし!主の名の下にい!とか言いながら甲冑姿のやつらが竜を追い回したりしないわけですか。」

 

「…どんな映画に影響されたかは存じませんが…それは教会の方でもないのでは…いや、まあ昔話的な話であれば我々坊主も鬼や邪を祓う様な行いもして来ていますが…あくまで病や不幸を祓う…坊主である我々が言うのも変ですが、所謂 "人々の安心" を作るが為の行為であると私は思っていますがね、本物の竜や鬼、悪魔など見た事はありませんから。」

 

「…お前が言うと本当に身も蓋もないぞ、一成。」

 

「はは、まあそういうな、神仏が居ないとは言っていない、少なくとも現代においては悪魔祓いだの、退魔業などはありえない話だからな。それに竜は神仏に数えても差し支えない、雨や水の恵みは竜に例えられるだろう?」

 

と、一成がまた理屈を並べるとトールがひし、と一成の手を取りキラキラした目で見つめついた。

 

「あなた…よい人間ですね!」

 

「ははは、トールさんは竜がお好きかな?」

 

女性に手を握られて少々驚きながら人の良い笑みを浮かべて答える一成。

 

「はい、それはもう、身内ですから。」

 

「ほう、竜を祀る様な生まれで?」

 

キラリとメガネを光らせて聞く。

 

「まあ、似たようなものですかね。」

 

…トールの場合むしろ崇め畏れられる方だよね。

 

「村々の人々は崇め畏れていましたが…」

 

と、そんな会話をしていると寺院内から厳しい声がした。

 

「一成、そいつから離れろ。」

 

「──む、ジーク?」

 

雑巾片手に現れたのはおよそ坊主とは思えない、作務衣姿にざんばらな長髪をした細身の巨漢だった。

身体つきこそ締まっているがその背丈はかなり高い、190に届くのではないだろうか。

 

「…彼らはお客人だ、その物言いは失礼だろう、ジーク。」

 

「む…、そうなのか…その女性からどうも見知った気配を感じたので、つい…一成がそういうのなら私の勘違いか…すまない。」

 

巨躯を折り曲げて丁寧に謝罪する男に、トールもとくに噛み付くでもなくはあ、と気のない返事を返している。

 

「…紹介しよう、我が家にホームステイしている親父殿の知り合いでな、ジークという。」

 

「ジーク、だ…よろしく。」

 

「ああ、衛宮士郎ですよろしく。」

 

手を差しだせば、握り返しながら「シロウ…シロウ…?」と巨漢は首を傾げている。

 

「…トールです、ところで貴方…雑巾絞った手で握手とかどうなんですか、手を洗いましょうよ。」

 

と、自分にも向けられた手を見て、やんわり握手を断わるトール。

 

「…あ、すまない、シロウ。」

 

「あはは、かまいませんよ。」

 

うん、悪い人には見えない、というか和尚の知り合いならそれこそ杞憂だろう。

 

さて、それでははじめようか。との一成の言葉に掃除が始まった。

 

 

 

 

雑巾がけ、掃き掃除、道具類の修繕、破棄。

主に俺が修繕を、トールが掃き掃除、ジークは一人であの広い廊下をすぐに拭き終えてしまった。

 

「…負けませんよ?」

 

トールが何故か対抗心むき出しで箒を振り回し始め、土煙が盛大に舞う。

 

「ゲホ、ゲッホ、うわ、トール!やりすぎだっ喉にくる、ゲホゲホゴホ!」

 

「あわわわ、す、すみません!?」

 

苦笑いしながらそうして、境内に出された古いストーブを修繕しているとジークがその様子を覗きに来た。

 

「…器用なものだな、シロウ。」

 

「そうでもない、構造さえ理解すれば簡単なものさ。」

 

「…そういうもの、か。」

 

「ああ、そうさ。」

 

なんだか、年上だろうに妙に子供じみた人だ。

 

「…これを、はめればいいのか?」

 

外していたストーブのカバーを付けようとジークがそれを被せる。

 

ガチャガチャ。

 

「む…はまらん…」

 

ガチャ、ガタガタ、パキン!

 

「…あ。」

 

どうやら部品の噛み合わせが悪いままに力任せに押し込もうとしたらしく、パーツが欠けてしまった。

 

「…す、すすす、すまない!」

 

「あちゃ…まあ、あとで接着しておきますよ、ダメならパーツを今度調達してきますから気にしないでください、確かうちの土蔵に使わなくなっていた同型のストーブがあった筈なんで。」

 

「…ふ、私達の勝ちですね。」

 

離れて見ていたトールがドヤ顔していた。

…お前なにもしてないだろ?

 

結局、夕方までかけて掃除を終わらせて飯くらい食べて行かんか、との一成の誘いを丁重に断り、帰路を急ぐ。

 

…桜がそろそろきている頃だからな。

今日は夕飯の支度を任せてしまったし少しくらいは手伝わないと。

 

と、途中でトールがいきなり立ち止まる。

 

「わ、と…どうした、トール?」

 

「…シロウさん、あのジークとかいう奴、どう思いますか?」

 

「…どうって…不器用な感じだけど良い人じゃないか?」

 

「あいつ、危険です、私の本能がガンガン警鐘を鳴らすんですよ…シロウさんもできればあまり関わらないでください、お願い、します。」

 

そう告げるトールはあまりに真剣で、僅かに震えていた。

 

「…大丈夫、トールが何を怖がるか知らないけど…少なくともあそこの和尚が住み込みを許してるんだから見境ない人間じゃないさ。」

 

そっと肩に手を置き、迷ったが頭を撫でる。

トールは目を細め、気持ち良さそうにした後頬を染める。

 

「こ、怖くなんかありませんが…あいつからは勇者とか呼ばれた奴らと似た気配がしました、同時に…物凄く危険な、魔力も。」

 

ええ、あれは──人間じゃ、ありませんでした。

 

トールが絞り出した言葉に。

 

「あ痛っ!?」

 

 

俺は───、チョップで返事をしていた。

 

 

「他所様の事をよく知りもしないで悪く言わない!」

 

「え、え〜!?そんなあ!」

 

…心配してくれるのは嬉しいけど、な。

心が何処か暖かくなるのを感じながら。

 

「二人」衛宮家の扉を潜る。

 

「おかえりなさい、先輩!」

 

「トールさま、おかえり?」

 

桜とカンナの笑顔に迎えられながら。

ああ、幸せだなあと。

 

感じたのはどちらだったのか。




【あとがき的なモノリス】

何故か居ます、ジークフリート。
カルデアアフターシリーズとリンクしているのはこの辺りという話でして、ぐだお、ぐだこや他の鯖も実は居ます。

まあ、あくまでジークフリートとルコア以外はゲストでしか出しませんが。

それでは皆さま、またの更新でお会いしましょう!


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第4話「はじめてのおつかい?」

はじめての、おかいもの!

あ、スパイスの話はガチです。
皆さまもお気をつけください。



        猛竜注意!

 

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight の2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

 

 

 

めめたぁ?

 

 

 

「なになに…、筆者の長々としたキャラクター紹介にお付き合いくださいました皆様、ありがとうございます…、すまないさんは誤字ではありません、仕様ですありがとうございました?」

 

「…トールさん、どこに向かって、何を言ってるんですか??」

 

桜とトールが二人して台所に立ち、料理を作っているとトールが唐突に窓に向けて何かを喋り出した。

 

「いや、なんだかそう言わなければならない様なテレパシー的な電波を受信しまして。」

 

「…なんだそりゃ??」

 

二人が作るから、と台所を追い出されて炬燵で一人暇を持て余していた士郎が突っ込んだ。

 

「あと、こう言わなきゃいけませんね、桜さん、ご一緒に…ごにょごにょ…」

 

何事か耳打ちするトール。

二人が息を吸い込み、同時に。

 

「「メメタァ!!/めめ、たぁ?」」

 

トールは勢い良く、桜は首を傾げながら疑問形で声を上げた。

 

「……桜、付き合わなくていいんだぞ?」

 

士郎が呆れた声で。

 

「酷い!読者に向けて言わなきゃいけないんですよ、お約束ってあるじゃないですか!?」

 

 

「……いや、ないだろ。」

 

「めめたぁ?」

 

「…カンナ、意味わかってる?」

 

ぶんぶん、と首を横に振られた。

 

…落ちナシ!

 

 

ご興味がある方は巻末のきゃらくたあ図鑑、をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

がっこぅ、たのしぃ?

 

 

「行ってきまあす!」

 

「あ、そうか今朝は朝練ないから桜も同じ時間だな…なら多少早いが俺も一緒に行くよ。」

 

「良いんですか、いつもなら片付けをしてから来てましたよね?」

 

片付けも桜が、といつもならそう言っても士郎が頑として譲らず、先に行けと言う事も多いから洗い物が多いと一緒に登校できない日もあったりして桜はいつも出かけたフリをしてゆっくり歩いてわざと士郎に追いつかれたりしていた。

 

…士郎は士郎で半ばわかっていて急ぎ足で来てくれるのだが。

 

結果的には一緒に登校しているが、最初から一緒にいる、と言うだけでもウキウキと気持ちが弾むのを感じ、頰が緩むのは致し方ない。

 

「…いいもなにも、いつも俺に合わせてくれてるのは桜だろ?」

 

だからたまにはな、と言う士郎が愛おしい。

 

「…いいなぁ。」

 

「いいな〜?」

 

それを見たトールが呟き、カンナが真似る。

 

「…トール、おまえは生徒じゃないんだから駄目だからな?」

 

「そ、そうですよ…トールさんはおうちでいつも先輩を独占…じゃなかった、迷惑かけているんですから学校くらいは先輩に負担をかけないでください。」

 

桜さん、前半、本音本音!

 

「…うぅ、わかりました…そうですよね、私生徒じゃありませんもんね…」

 

シュン、と項垂れるトールを見て二人がちょっと悪いことしたかな、と思った訳だが。

 

直後にソレは撤回された。

 

 

「──男子生徒諸君、喜べ…豚のように鳴けっ、貴様ら垂涎の美少女転校生ちゃんだ!」

 

 

「はぁい、小林トールです、衛宮さんのお宅にご厄介になってます、本業はメイド、ハウスキーパーですっ宜しくお願いしまぁす!!」

 

「ちょっと待てーーーー!?」

 

「「「衛宮っ、貴様ーー!?」」」

 

「どういう事っ、えみやん!?」

 

「えみやくーん!?」

 

「爆ぜろっ、えみやあ!?」

 

「俺の嫉妬が有頂天!!」

 

「9杯でいい!」

 

「俺と変われっ!」

 

「衛宮君は柳洞君一筋と信じていたのに!」

 

「良くやった衛宮、貴様◯モじゃなかったんだな!!」

 

「ちょっとおまえら、話を聞けっ、て言うかなんでさーーーっ、さー、さー、さー……。」

 

士郎の、魂の叫びが廊下に反響した。

 

因みにこの後、美綴達や桜、終いにはなぜか一成、遠坂にまで詰め寄られた。

 

…後、藤姉に泣かれた。

──どら焼き10個で泣き止んだ。

 

 

 

 

えみやさんちのにちじょう

 

 

くつくつ、ことこと。

ホワイトソースに沈んだ野菜たちが、美味しそうな音をたて、芳しいバターとミルクの香りを鼻腔に届ける。

 

アクセントに入れたスパイスも格調高い風に料理を高める。

素材はそこそこの値段しかしないものだが、この男の手にかかるとそれが大変美味なものへと姿を変える。

高校生にしてプロ顔負けなその腕前は凝り性と、料理ができない情けない義理の父の賜物だったりする。

 

 

「…もうすぐできるからなー、トール、お風呂は沸いたかな?」

 

「はい!地獄の釜もかくやといわんばかりにグラグラと!!」

 

「ガスで沸かそうなっ!?」

 

もはや日常となりつつある非日常。

いいのか、これで。

 

「え、ブレスで沸かせた方が早…」

 

「煮えて死ぬからっ…石川五右衛門か、俺はっ!?」

 

「(๑•ૅㅁ•๑)え〜〜?」

 

「え〜、じゃない、元に戻してガスで沸かしなおしなさいっ!?」

 

がらっ、と慌てた士郎が風呂の扉を開けると、そこにはカンナが入っていた。

頭にタオルをのせて、真っ白な肩を出して…

ほんのり頬を染めている。

ょぅι゙ょの入浴シーンである、ひとによってはほっこりしたり、なんかハァハァしたりご褒美だったりする絵ヅラである。

 

ただし、カンナが入っているのは溶岩みたいにボコボコいってる煮え湯の中だった。

 

浴室内はスチームサウナみたいになっている。

 

「…ん、いいお湯。」

 

 

「カンナーー!?」

 

結論、やっぱりカンナも竜種だった。

 

「あらあら、カンナってば…一番風呂はシロウさんのものですよ、もう。」

 

「だから煮えすぎ!死ぬから、普通死ぬからな!?」

 

お風呂も沸点を超え、士郎の血管も沸騰中とかなんとか。

 

「…人間ってひ弱なんですねぇ。」

 

「自分達基準はやめような、な?」

 

士郎の額に青筋を見た。

 

「はぁ〜ぃ(テヘペロ)」

 

「可愛くしてもダメ!」

 

「チッ。」

 

「今舌打ちしたよな!?」

 

「…カンナですよ?」

 

カンナ、反抗期?

 

「…トール様を怒るこばやし、嫌い。」

 

ぷー、と湯船の中でむくれてみせるカンナ。

 

「…だから俺は今は衛宮だとなんry」

 

その後、デザートやらないぞと言ったら二人とも泣きついてきた。

 

──あ、や、やめろやわらかい!

カンナ、服、服!

トール、胸っ、胸ぇっ!?!?

 

ばしゅう!

 

シロウ は 鼻血 を 噴いた!

 

「きゃあ〜〜っ、し、シロウさんん!?」

 

…チーン。

 

 

 

 

すまないさん、がんばる!

 

 

「ああ、ジーク…すまないが買い物を頼まれてくれないか。」

 

「ああ、俺でいいなら…迷うかもしれないから時間がかかったら、すまない。」

 

「ああ、こちらこそすまない、手が足らなくてなあ…貴方は客人で、年上なんだが…頼まれてくれるか。」

 

「…ああ、問題ない。(凄い嬉しそう)」

 

なんか、尻尾を振る大型犬が見えたような気がした一成であった。

 

「…じゃあ、財布を預けるからこのメモの通りに買い出しを頼む。」

 

「…わかった、まかせろ。」

 

 

 

 

はじめてのおつかい。

どらごんすれいやあ、じいくくん。

 

さあ、がんばれ、ぶじにおかいものできるかな?

 

 

てくてく、てくてく。

商店街へと徒歩で向かう。

 

 

ワンワンワンワンワンワン!!!

 

フギャーー!!

 

シャアアア!!

 

バウバウバウバウ!!

 

ケーンケーン、アホー、アホー!

 

クケケケケ!!

 

クルックルー、クルックルー、グル、グル!

 

カナカナカナカナカナ!

 

ピーーヒョロローー!

 

バーウー?

 

お兄さん、イケメン〜、ちょっとアタシラと〜、いいことしなあい?

 

「ん…、すまない、買い出しを頼まれたのでな、またの機会があればたのむ。」

 

「ちぇ、お兄さん、イケメンだからざんねん〜〜、あちしらあ、お兄さんになら…タダでなんでも、し、て、あ、げ、る?」

 

「…なんだかわからんが、急いでいて──ああ、待て、なんでもしてくれるというならひとつ教えてくれ。」

 

「え!なになに?スリーサイズとか、言っちゃう〜〜??」

 

「豚肉は、どこに行くと安いだろうか、安売り中の肉はあるか?」

 

「ぶっ、ぶひ、じゃない豚ぁ!?」

 

なぜか、おこりだしました。

あれあれ?

たしかにまえにたつ人は、ちょっとふくよかですけど…きにしていたのかな?

 

「…ッザッケンなコラー!アチシらが豚だって言いたいわけ!?」

 

「いや、豚肉を…」

 

「ッセ、この【ピーピーピー】がっ、国にかえれ馬鹿あ!!」

 

あー、あー、きたないことばはいけませんね。

あ、ふくよかなひとたち、いっちゃいました。

ぶたにく、きけなかったね。

 

 

****…

 

 

そのあとも、あらゆるどうぶつが、じいくくんをはばみます。

 

こわがらずに、いけるかな??

 

ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!

 

ペットショップのまえでまたほえられました。

だいじょうぶ、じいくくん?

 

 

「──やかましいぞ、退 ()け。」

 

 

ぴたり。

 

 

すごいすごい!

じいくくんがひとこえかけたら、どうぶつたちが、ぴたりとなきやんだ、ぞ!

 

じいくくん、ムツゴ◯ウさんをこえたかな?

 

 

「…はっ…しまった、怖がらせてしまった…本当は撫でてやりたい、のだが…。」

 

じいくくん、しゅんとしちゃった。

ほんとはなかよくしたかったんだね?

つぎは、がんばろう!

 

 

 

 

ようやく、しょうてんがい。

じいくくん、まちがわずに、おかいものできるかな〜??

 

 

「…あー、まずは、野菜か…何…カレーの材料…芋?」

 

キョロキョロ、キョロキョロ。

じいくくん、おいもを探します。

 

「…芋、芋…これか。」

 

あー、ざんねん、じいくくん、いもはいもだけどそれは山芋だね…カレーには、ジャガイモだよ?

 

「豚肉……豚肉…む、これは…牛、か…この方が安いではないか…セール中か…よし、こちらにしよう…まあ牛の方が美味いと聞くし良いだろう。」

 

あらあら、じいくくん、いいのかな?

それ、お肉もそうだけど…

ほねつき──すぺありぶ、だよ?

 

「…出汁もでるだろう、うむ、うむ。」

 

──しらないよ〜?

 

「…カレー、ルウ…は、これか…」

 

あっ、じいくくん!

だめだよ、それは商札のところはカレールーになってるけど、ならべまちがえたんだ、カレールーじゃなくて…板チョコだよ!?

 

「…さて、あとは人参…これか。」

 

ほっ、それはせいかい。

 

「…む、福神漬け…赤い、漬物?ああ、これだろうか??」

 

わー、じいくくん!

あかはあかだけど、それ「かぶの千枚漬け」だよ!?

 

「らっ、きょう…とは…どれだ?」

 

「…ん、すまない、そこのやけに汗をかいた人、らっきょはどこにあるだろうか?」

 

「…んふー、らっきょ?らっきょ好きなの、お兄さん!?」

 

あー、このひとはあれだね、じいくくん…

あに豚ってじんしゅだよ?

カバンからぽすたあがビームサーベルみたいに出てるよ。

あー、空の境界の、ぽすたあ…

 

「なら、ここじゃない、っとっときの店に、案内、したげる!」

 

あに豚さんは、商店街の奥にある、あにめ伊藤

、ってお店にじいくくんを引きずっていきます。

 

「……ここで、本当に、いいのか?」

 

「ああ、もちろんさ!まっててくれ、らっきょなら僕が買ってきたげるから!」

 

ひかりのようなはやさで、あに豚さんは店内に消え、すぐに紙袋を抱えてでてきました。

 

「はい、どうぞ、ぷひぃ!」

 

「ああ、すまない、ありがたい。」

 

「じゃあ、たのしむといいよ、ばいばいイケメンなお兄さん!」

 

「あ、お金──」

 

「ああ、大丈夫…きみ、初心者だろ…布教用のお金から出したからあげるよ…なによりぼくは、きみが喜んでくれたらそれでいいんだ!」

 

「な、なん…だと…何という、君は、聖者か…あの天草にも君の爪の垢を煎じて飲ませたい…!!」

 

「ははは、良いんだよ、さあ、早くけえりな、にいさの、うちにょぉ!」

 

…さいご、なまりましたね…あに豚さん、どこの出身…?

 

「ああ、ああ、ありがとう、ありがとう!」

 

かんげきしながらじいくくん、お寺にいそぎます。

 

しばらくして、かえりつきました。

…こうどうでは、スピードをまもろうね、じいくくん…けいさつかんさんが、おいかけてきていたよ?

きみはきづかずぶっちぎっていたけど。

 

あれ…、とほでスピードいはんって、なるのかな?

 

 

「いまかえったぞ、一成。」

 

「ああ、おまえにお客人だ、ジーク!すまないがカレーくらいなら作れないか、ちょっと手が離せなくてな…」

 

一成さんは、じいくくんのおきゃくいがいにも、どうやら大事なおきゃくさまをむかえているみたいだ。

 

おかいものは、ここでおわり!

さあ、料理をはじ──!?

 

…うん、なんだかさむけがするよ。

わたしは、かいせつを、おりさせてもらうね!

あとは自分でがんばってネ、じいくくん!

 

ばははーい!!

 

 

 

 

 

「ん、おまえか、エリザベート。」

 

…廊下を暫く進み、暖簾を潜ればそこには見知った顔がいた。

 

「はぁい、駄竜!元気してた?」

 

「まあ、それなりに、な。」

 

「なんか可愛らしい小坊主が私にも是非手伝って欲しいって(目が)そう言ってた(気がした)から、私自ら料理を手伝ってあげるわ、光栄に思うのね!」

 

腰に手をあて、反り返りながら言い放つピンクロリータ風のヒラッヒラの衣装を纏う少女…、エリザベート・バートリー(ランサー)。

 

「…確か、おまえは下手だから決して料理はさせるな、と言われていたと記憶しているが?」

 

と尋ねれば。

 

「な、い、いつの話をしてるのよっ、私だって進歩するの、前みたいな事はないから安心なさい!」

 

一瞬、考えた。

考えたが…そうか、そうだな。

 

「…確かに、誰しも進歩くらいする、か。」

 

そう、独りごちたジークは…

 

「わかった、ならたのむ。」

 

と、言って…しまった、のだ。

 

言って…しまった、の、だ。

 

大事なことだから二回言った。

 

「まっかせーなさーいららら〜〜♪」

 

機嫌よく歌い始めたエリザベート。

なんだか、周りの景色が歪みはじめたような。

 

隣の部屋で話していた一成と、檀家のお客様が二人して気分を悪くしたらしいと後から聞いた。

 

「…相変わらず耳に残る歌だ、な。」

 

「当然!あたしってば超売れっ子だから!?」

 

と、話しながらボチャンボチャンと具材が適当なサイズに切り分けられ、鍋に放り込まれていく。

 

「あら、ニクズク(ナツメグ)ね、たっくさん入れて…香りをつけましょう!」

 

バチャバチャバチャバチャ。

 

…一瓶、二瓶…しかも、業務用サイズを精々四、五人前のカレー鍋に…。

 

「あら、シナモンスティック、これも私、好きよ、大好き、甘い香りが最高ね、いっぱい入れちゃいましょう!」

 

「…おい、そんなに入れたら味が…」

 

「大丈夫よ、心配性ね…ちょっと舐めてみなさい。」

 

言われて、ペロリ。

 

「…確かに、やや甘ったるい香りが強いが…悪くは、ないか。」

 

──そう。

恐ろしい事に、エリザベートが作りながらも今回、味だけは、まともにできてしまったのである、ああ…味だけは。

 

「…ちょっと、これチョコじゃない、馬鹿ねえ…」

 

「む、本当だな…間違えたか、すまない。」

 

「まあいいじゃない、カレールー、少し残ってるみたいだしスープカレーにしちゃえばいいんじゃないかしら、肉もスペアリブだし。」

 

…またしても、見た目、味、問題なく見えた。

 

そして──…。

 

「付け合わせに、と言われて買ってきた…あの聖者がくれたらっきょ…これは、食べてもいいもの…ではない、気がする…」

 

紙袋から出てきたのは「空の境界」通称、らっきょのDVDでした。

…食べてはいけないんじゃないかな、かな?

 

結局、らっきょのDVDはそっと、戸棚にしまわれました。

 

暫くのち。

 

「できたっ、さあ小坊主どもに配りに行くわよ、駄竜!」

 

「承知した、エリザベート。」

 

…因みに、かぶの千枚漬けと山芋、板チョコは冷蔵庫にログアウトしました。

 

 

*******…

 

 

「う、うぐぐぐっ、な、なんだ頭がフワフワする、息が、息が苦しい〜〜!?」

 

「か、かは、なんだこれはあ…!?」

 

「ちょっと、なんなのあんた達、私の料理を食べてなんでそんな風になるわけっ!?」

 

料理を最初は美味い美味い、変わった香りだがなかなかイケるな!

とがっついていた一成と他の坊主達。

 

しかし次第に皆が息苦しさと目眩、中には幻覚症状に見舞われるものまで出る始末。

 

「エリザベート…おまえ、何をした?」

 

「普通に料理をしただけよ、貴方も見ていたじゃないっ、駄竜!?」

 

「む、むう…確かに、そうだがしかし…」

 

と、そうこうしているうちに遠方に出ていた零観達が戻って来た。

 

「な、なんだこの有様はっ!?」

 

「わわわわ、わかんないわよ!」

 

 

──結局。

調べてみれば原因はスパイスだった。

 

「貴様ら、これを全て入れたのか!?」

 

ナツメグは過度な摂取をすれば幻覚症状など麻薬ににた症状を引き起こし、最悪死に至る。

 

シナモンもまた同様に、過剰摂取すれば窒息してしまうのだとか。

 

「馬鹿者っ、寺の小坊主全員、殺す気かっ!」

 

「だ、だってわたし、そんな、知らなくて…私達食べてもなんとも!」

 

「…君らは特別丈夫だったか、摂取量が少なかったのだろう…香辛料とは過度に摂取すれば毒になるものもあるのだ…気をつけ給えよ、まったく。」

 

結局、救急車を呼び7人の坊主が運ばれていった、大事はなかった事は先に記しておこう。

 

「…やはり、やらせてはいけなかったか…すまない、すまない、すまない…orz」

 

「ちょっと、なんであんたが落ち込むわけ!私の方が泣きたいんだけどっ!?」

 

などとしていたら、迎えがやってきた。

 

「あー、一成〜こっちにうちのエリちゃん来てないかな?」

 

と、見やればそこにはボサボサの黒髪をした少年が、一人。

 

「む、君は一成の友人の…確か隣町の高校の生徒だったか…あー、ぐだおくん?」

 

ぐだお…毎日疲れ切った顔をしているからぐったりからきたあだ名である。

 

「そのあだ名やめてほしいんですけどねえ……あはは。」

 

「──九狼か、久しぶりだな。」

 

「やあ、ジーク…ってなんで膝ついて、なんでエリちゃん半泣きなの、どんな状況、これ?」

 

「…私に聞くな。」

 

まだ怒っている零観(当たり前)だった。

 

 

本当に。

エミヤか士郎ならこう言うだろう。

 

 

なんでさ!?

 

 

 

 

おまけ。

 

 

※ この後はキャラクター紹介。

両作品を知ってる方は飛ばしても平気かな?

 

一応関係とかも少々記載。

【】内は種族とかジョブ的な物。

 

 

 

 

 

きゃらくたぁでぇた

 

 

 

トール【ドラゴン:ライダークラス】

 

原作、小林さんちのメイドラゴンのヒロイン。「終末をもたらす程度には」強いとか。

西洋種の竜で、竜種の中でも突出した力を持つと思われる。

サーヴァントと比べても劣らないだけの力を持ち、原作セイバーともガチでやり合える。

カリバられたら流石に躱さないと致命傷を受けるが。

原作ではガチレズ風味だが今作品では小林さんの変わりに士郎に惚れた。

子供の頃の士郎に惚れた辺り、ショタもいけるんじゃないか、こいつ?

 

 

 

衛宮士郎【人間:アーチャークラス】

 

言わずと知れたFate/staynight の主人公。

特S級フラグ建築士。

今作品でも既にトール、桜、凛、と知らない内に攻略済み、隠しバッドエンドルートに一成がいるとかいないとか。

底無しのお人好しで、かつ自己を顧みることが出来ない、ある意味で壊れた心の在りようをしている。

とある英雄のなりかけで、未来次第では「守護者」として人類救済の為のヒーローになる。

ヒーロー、英雄、正義の味方…生前それを志し、ひたすらに見返りすらなく人々を救い続けた、ただ、救うために戦った。

しかし、その道は茨の道、誰にも感謝されず、最後は助けた人に裏切られ、死を迎えた。

その後、死してなお「守護者」となり…

今作品の士郎はそうはならない、別の道を行く、筈。

 

 

 

カンナカムイ【ドラゴン:ょぅι゙ょ】

 

鳥竜種、羽毛の有る細身の竜。

普段は可愛らしい童女の姿をしており、精神年齢もその見た目のままの子供。

親の愛情に飢えており、トールに懐いている。

士郎に対しては父性を求めて懐き始めている。

魔力、マナの扱いが下手な為にマナが薄いこちらの世界では十分な力を発揮できないが、扱いに慣れさえすれば力を発揮できる。

(アニメでは段々強くなっていたのはそうだと解釈しています、公式設定ではない。)

 

 

 

間桐桜 【人間:魔術師】

 

とある事情で養子に出された遠坂凛の妹。

魔術師の家系の出であり、稀有な特性と才能を持ってはいるが、普通の少女そのもの。

その背景事情から重いトラウマと、自己被虐性の強い面がある。

士郎に惚れており、その「普通の」生活や恋心に何より価値を見出している。

衛宮さんちの通い妻、トール曰く「小姑」。

これにヤンデレが加わらない事を願うばかり?

 

 

遠坂凛【人間:魔術師】

 

 

桜の実姉であり、古い魔術師の家系。

学園では知らぬ者がいないほどで、文武両道の才女で通しているが本性は後の衛宮士郎曰く、「あかいあくま」。

節約家で、他者の浪費を見るとイライラする面があり成金な浪費家などは大嫌い。

また、かなりのドSな癖にいざ恋愛となるとドMな面がある──と言うか、押しに弱く、恋愛に不慣れで初心で可愛らしい少女な所を自らの弱点と思ってひた隠している。

貴族然とした父親の影響から本人もノブレスオブリージュに近い考えを持ち、常に努力を怠らず、一流であろうとし、弱きを助け、悪を挫く精神性をしているが、肝心な所でミスをする遺伝性ウッカリ。

また、彼女の父親にとっての「悪」とは即ち魔術師としての「誇り」を蔑ろにする者や、自身の価値観の中でのソレであり、常人からすれば狂気の範疇であったが…早くに親を亡くした事から本人なりの善悪にとどまっており、一言で言うならば「お人好し」。

ある意味で士郎と似た者同士である。

 

 

 

ルコア【ドラゴン:ライダークラス】

 

ルコアは愛称であり、真名はケツァルコァトル、元は南米の太陽神であり、竜種…と言うか蛇神。──『翼ある蛇』の異名を持つ。

今作品では穂群原学園の体育教師。

そのワールドクラスのボディ(主に胸部)は小林さんちのメイドラゴンの原作通り。

但し戦闘時にはFate/GrandOrderよりの姿になり、ルチャドールを操るあの人になる。

…笑顔ェ…

 

 

 

柳洞一成【人間:見習い坊主】

 

士郎の同級生で、生徒会長。

ぐだお…九重九狼(ここのえくろう)共友人。

凛とは犬猿の仲…若干ホモ◯モしぃ。

おまえ本当にノーマルか?

 

 

 

 

藤村大河【人間:英語教師】

 

士郎の後見人である藤村雷我氏の娘で義理の姉的存在、幼馴染とも言える。

穂群原学園の英語教師。

士郎を家族として愛し、支えてきたのだが最近はごはんをたかりにくる駄目な大人と化している、タイガーと呼ばれると吠えて怒る。

 

 

 

美綴綾子【人間:同級生】

 

凛と同じクラスで、桜とは部活の先輩にあたりどちらとも仲が良い。

凛程ではないが文武両道の美人で通っている学園の有名人。

ただ、凛とは仲良しと言うかライバルと認識しあっており、「どちらが先に素敵な彼氏を作るか」と言う勝負をしていたりする。

また、凛が衛宮を意識しているのを何処か感じており再三からかいのネタにしていたり。

また、違う意味での有名人、仲良し三人組…三馬鹿?の氷室、蒔寺、三枝ともクラスメイト。

 

 

 

すまないさん【英霊:セイバークラス】

 

愛称ジーク、柳洞寺に居候する外国人の大男。

やたらに作務衣(さむえ)が似合う。

その正体は英霊、セイバークラスの大英雄…ニーベルンゲンの歌に登場するドラゴンスレイヤー、ジークフリート。

何故、柳洞寺に現界しているのかとか、全く謎、筆者がカルデアアフターの続きをちゃんと書いたら明かされる?

 




【後書きてきなモノリス】

はい、長々書いちゃいました。
ぐだおでたよ、ぐだお。

他シリーズ、カルデアアフターシリーズとリンクしてみました。
皆んな転生した設定。

ジークもそうです。

…聖杯戦争、起きても一瞬で鎮火しそう…

まあ、ぐだぐだと話を書いて行く気まんまんです!
もし聖杯戦争はじまるならぐだおはあまりからみません、ハイ。

というわけでいろいろ書いた今回でしたが、大分…詰めすぎた感。

完全オリジナルな話でした。


それでは、皆様の感想などお待ちしています!
次回更新まで…しーゆーー!!


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第5話「邪龍降臨」

ファフニールさんと、嗤うルコアさん、FGOと性格、設定入り混じりつつ呼ばれて飛び出ます。


猛竜注意!

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight の2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

 

 

 

邪龍降臨

 

 

「ふむ…これが人間どもの世界か…」

 

長髪に黒服、どこか周りを睨みつけるように半眼で呟く男。

 

「──どうにもゴミゴミと狭苦しい所だ。」

 

冬木市、新都の歓楽街を歩きながら、男は人々を見下すような視線を辺りに向けている。

 

「やめ…、止めて下さい…」

 

「は!止めろだぁ?そいつはこの馬鹿に言うんだな、和解の機会はあったろうがよ、それをふんぞり返って俺らに楯突いたのはこのワカメ野郎だろうがっ!!」

 

「きひひ、そうそう、生意気な口聞いたのもさあ、10万置いてきゃ許してやる、ってんだよ、わかるだろ〜なあ、学生君ヨォ?」

 

「おいおい、あんまり虐めるなよ、ぶるっちゃって…彼女ちゃんなんかおもらししちゃいそうじゃねえか、ぎゃはははは!」

 

複数の男達が癖毛の少年を袋叩きにしようというのだろう、中でもひときわ体格の良い男が少年の胸ぐらを掴んでいる。

 

饐えた匂いのする裏路地に連れ込まれた、少年の身体つきを見れば勝ち目など無いのが一目でわかった。

 

「は!おまえらみたいな腕力に物を言わせるだけの粗野な猿に払う金があると思うか、えぇ?そういうの、カッコ悪いぜあぁ?」

 

明らかに形勢不利な状況でよくもまあ口が滑らかに回るものだ。

 

「や、止めてぇ…間桐君に乱暴しないで!」

 

涙目で訴える少女は特に目立たない、地味目な娘だ。

 

「…な、んでこんなワカメ頭がモテるのかさっぱりだが…とりあえず腹立たしいから一発いっとくか、なあ!」

 

バグン!…ドシャア!!

 

「っ、うぐ!」

 

中々に派手に吹き飛んだ少年は、地面に叩きつけられ、呻き声を上げる。

 

「クソ、クソ…なんでお前みたいなクズに…僕に魔術の才があれば──こん、な…っ」

 

ギリ、と歯をくいしばる少年は悔しげに、それでも立ち上がる。

 

「…ふん、掃き溜めの様な場所ではあるが…中々に面白そうなモノもいるものだな。」

 

小さく、とても小さく呟いた言葉。

確かに少年は口にした。

魔術、と。

 

「…喜べ少年、助けてやろう…それとな、呪術で良ければ指南してもいいぞ?」

 

「は?あんた、何言っ──」

 

「んだこら、邪魔すんなよヒョロ男が!」

 

「あ゛?」

 

一瞬だった。

ほんのひと瞬きの間に。

長髪の眼が殺気を帯びたかと思えば。

男は吹き飛び、周りの取り巻きを巻き添えにしてボーリングのピンみたいに諸共弾け、転がった。

 

「な、な、なあ!?」

 

「ひ、いやあああ!!」

 

少年は口を半開きにし、少女は慌てて逃げていく。

 

「少年。」

 

「な、なんだよ?」

 

「…俺は今、諸事情あって住処を探していてな…貴様が住処を提供するなら、お前に力を貸してやろう、呪い、呪い返しを教えるでも…或いは呪いたい相手がいるなら呪ってやってもいい。」

 

「…普通なら、あんたおかしな奴にしか聞こえない、んだけどよ…なあ、もしかしてあんた…サーヴァント、なのか?」

 

そう、普通の人間であればこの状況については行けず、先の少女の様に逃げ出すのがあたりまえだ、理解などできはしないだろう。

 

しかし。

彼の名は間桐。

間桐慎二──始まりの御三家。

 

「聖杯戦争」を始めた魔術の大家の一つ。

マキリの直系、だったのだ。

 

「サーヴァント…ああ、世界と契約した亡霊どもの話か…違うな、我が名はファフニール、誇り高き邪龍…サーヴァントなどでは断じて無い!」

 

ファフニールは呪術にも長けた古き龍。

世界の理にも、サーヴァントにもある程度の知識を持っているのもあたりまえではあった。

 

「…邪龍!?ファフニールぅ!?」

 

まあ少年、間桐慎二には驚きしかなかったが。

 

 

「ふん、さあ案内しろ少年。」

 

「はあぁーーーー!?」

 

 

 

 

 

ょぅι゙ょ充電

 

 

「おっと、充電しとかないとな…」

 

「…こばやし、それ何?」

 

「ん、ああ…携帯電話だよ、と言っても俺ほとんど使わないからたまに充電忘れて携帯してる意味がないって言われるんだけどな〜ってカンナ、だから俺は衛宮だって。」

 

「けい、たい…でん、わ??」

 

「ああ、遠く離れた人と話ができる道具ですね、正確には電子的な音声でその人の声に近い音域の音を再生してるだけだそうですけど。」

 

「…詳しいな、トール…俺初めて聞いたぞそんな話、あれって機械で音を届けてるわけじゃないんだ?」

 

「ちょっとこちらの文明にも慣れなければと思いまして知り合いにいろいろ教えてもらいましたから…魔法でならばそれも可能ですが…科学とやらではそれをするには効率が悪すぎるのでしょうね。」

 

「…これは?」

 

と、カンナは興味深気に見ているのはコンセントの方だった。

 

「ああ、電気を蓄えるために挿してあるんだ、コンセントだな。」

 

「……。」

 

と、唐突にカンナがコンセントの差し込み口の一つに自分の尻尾を挿し入れた。

 

しばばばばば!

 

当然ながら感電する。

 

「ちょ!カンナ、何してんだ馬鹿!?」

 

「……あ〜〜、マナが、入って、くる。」

 

「は??」

 

一瞬だけ感電したカンナだったが、しかしながらすぐにそれは収まり、収束した電気が尻尾と差し込み口の周りで僅かな火花を散らすのみ。

 

「ああ、なるほど…電気を魔力に変換しているんですね…カンナの根本的な魔力不足はこれで解決するかも?」

 

「もうなんでもありだよな、お前ら。」

 

段々と、順応し始めている士郎であった。

 

 

 

 

すりー うぃーく ぁごー。

 

 

時は遡り、三週間ほど前。

暗い地下室で一人の少年がローブ姿で呪文を唱えていた。

 

「…抑止の輪より来たれ──天秤の護り…うぐっ!!」

 

地面に描かれた魔術による洗礼を施された霊銀の魔法陣。

 

魔道書片手に呪文を唱える、少年。

まだ幼さの残る顔立ち、見ようによっては少女にも見える少年は、今一世一代の大魔術を行使している最中だった。

 

「英霊召喚」──人類の護り手たる七騎の英霊を呼び寄せる、魔法に等しい大魔術を基盤とし、人にも扱い得る形に落とし込んだモノ。

この地に眠る聖杯を用いて初めて可能になる英霊の使役。

 

「く、なん、で──安定しない…最高の状況で行使している筈なのに、僕には無理だった、のか…嫌だ、僕は誇り高い魔法使いの家系なんだ…かの魔道元帥…宝石翁の、血筋なんだからぁ〜〜!!」

 

カッ!

魔方陣が輝きを増す。

 

力が荒波のように押し寄せ、術式が崩れかける。

 

(…あ、マズイ…僕の魔術回路に、魔力が…逆流して──)

 

《……力を抜いて、ダメよ…そんなに力んではダメ、魔力をねじ伏せるんじゃない、流れを緩やかに掌握するの。》

 

「──え?」

 

優しい声。

何処か慈しむような、心配する様なその声。

 

《さあ、魔力に意思を、貴方の心を──》

 

「…心、を?」

 

《ええ、そうよ…そして私を呼びなさい。》

 

ふ、と。

その声の主が笑ったような気がした。

 

バシィ!

魔力が弾け、光が満ちる。

 

今一度、召喚の句を詠む。

 

「抑止の輪より来たれ──天秤の護り手よ!」

 

ガカッ!

 

輝きが増し、光が奔流となる。

魔方陣から…顕われるヒトガタ。

 

「──サーヴァント、ライダー…呼び声に応え、ここに…さぁ、お前の望みを教えるがいい!!」

 

「…ヒィッ!?」

 

緩やかにウェーブのかかった金糸の様な長く美しい髪、放射状に飾られた羽根飾り。

豊かな胸に絹であろう光沢のある面積のやたらに狭い胸と、腰回りだけを隠したパレオの様な衣服。

 

何よりも、召喚主たる少年が恐怖に怯え、尻餅をついたのはその、顔にあった。

 

「ん〜、ク、ふふっ…どうしマシタカ〜?」

 

ニヤリ、と嗤うその顔は。

ズラリと生えた牙を剥き出し、目は笑う、いや…嗤うと言う方がしっくり来るだろう。

目は細められ、今さっき大量虐殺をしてきた後の至福の笑みデース!とか言われても違和感が無い。

 

「あ、あ、あ、ひ、あころ、殺されるぅ!」

 

「…失礼な子ですねぇ…ふふふ…」

 

さらに笑みが深められ、視線が少年を射抜く。

 

「さ、去れ悪魔よぉっ、僕が、魔法使いの末裔たるこのっ、真ヶ土翔太が呼んだのはお前みたいな奴じゃない、チェンジだ、クーリングオッフ!だあああ!?」

 

手に十字架を持って振り回し、慌てる子供を見ながら。

 

サーヴァント、ライダーとして顕現した彼女は思った。

 

(──子供が危ない召喚をしようとしていたから強引に召喚式に割り込んだのデスが…ちょっとお灸を据えようと怖い顔してみましたら…薬、効きすぎマシタかね〜?)

 

「残念、君はワタシヲ召喚しま〜シタ、もう変更はきかないのデス☆」

 

ニイイ、と牙をむき出し、顔を寄せてやる。

 

「───あ、あわわっ%×¥€々*──!?」

 

すると。

声にならない声をあげると少年はそのまま気絶してしまう。

 

「あら可愛い♡」

 

何故か、その姿に嗜虐心を煽られる。

 

「ちょっと怖い思いをさせてしまいましたから…フォロー、してあげなくちゃいけない、かな?」

 

口調も幾分か穏やかに、見開かれていた目は糸の様に細められ…その姿が光と共に変じてゆく。

 

黒いタンクトップに、ジーンズ生地のハーフパンツと言ったラフすぎる格好に変わると、倒れた少年、真ヶ土翔太を抱きしめるように抱えて、寝室を探す。

 

そのまま、ベッドルームを見つけるや翔太を抱きしめたままにダイブした。

 

「ふふ…可愛い寝顔デスねぇ…僕、新しい扉を開いてしまいそうデス☆」

 

ぎゅむう、と。

その豊満すぎる胸に翔太少年を抱きしめたまま、サーヴァント…ケツアルコァトルは眠りにかかる。

 

「あふ…そういえばこちらに来てからお昼寝してませんでしたネ…おやすみなさあい。」

 

胸の中で、少年が苦しげに呻いているが、気にも止めず。

 

ケツアルコァトル──ルコアの意識は眠りに落ちてゆく。

 

本来サーヴァントには眠りは要らず、食事もいらない。

しかし、彼女は生きた神。

故に、そのどちらもしないでもよいが、好んで行なっていたりするのだった。

 

──目覚めた翔太少年が、再び大騒ぎしたのは言うまでも、ない。

 

 




【あとがき的なモノリス】

たくさんの感想、評価ありがとうございます。
FGO要素も僅かながら混じったりしていて、キャラが、入り混じり始めております。
まあ、あまり出しすぎは良くないので抑え気味にはするつもりです。

なんにせよ、意外なほど評価をいただいて感謝です。

それでは。また次回の更新で!


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第6話 「五百年の妄執ェ…」



蟲、発見──駆除、開始。(イケボ

今回、あまりにもあんまりな扱いな人?が一人います。

仮面ライダーアマゾンズ、ちょっと血とかドバドバだし表現キツイシーンもあるけど面白くて1、2シーズン一気に見てしまった…。

──ゾォルケンは犠牲になったのだ。




        猛竜注意!

 

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight の2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ぶつよくせんさぁ?

 

 

「あれ…なんでヤンス?…私アニメやゲームにハマりはしても現実と非現実の区別くらいつくつもりでありましたが…」

 

曇天の空の下、二人の人が空を見上げた。

雲間からわずかに見えたのは何だったのか。

 

それは確かに人の形をしていた。

赤茶けたマントに身を包んだナニカ。

 

地上を睥睨したそれは、すぐにその姿を消した。

 

「……疲れてんだな私たち。」

 

瓶底眼鏡の男性にこたえた、くたびれた顔をした女性は頭を振り、直ぐに店頭に並べられた本を睨んだ。

 

「…それよりもこっちだろ。」

 

「…然り!こんなチャンス滅多にないですからな!」

 

並べられた本のタイトルは。

 

『世界のメイド百選〜限定版〜』。

 

「いよっし!買うぞ、後一つでコンプリートなんだ!」

 

……本の端には、小さなフィギュアの入った中の見えない箱が付いている。

 

「…シークレットが出たのになんでアンコモンが出ないんだあ!!」

 

「物欲センサー、乙。」

 

…女性の傍らには、同じタイトルの本が10冊程積み上げられていた。

…開封されたフィギュアと共に。

 

「うるさいよ!滝谷、あんたさらっと10冊で7種コンプリートしたじゃん、裏切り者っ!?」

 

「ははははは、日頃の行いかな!」

 

「口調が素に戻ってんぞちくしょう!」

 

 

ぎゃんぎゃんとかしましく喚きたてる二人は明るい。

 

あにめ伊藤、この街唯一のヲタクの聖域。

わりといつもの光景だったりする。

 

「…平和だねえ…」

 

あにめ伊藤店主、伊藤忠文は呟いた。

 

「そうねー、平和ねー……で、なんで私はこんなところでこんなカッコさせられてんの!?」

 

「日給3万。」

 

「……くっ、わりの良さに内容も聞かなかった私の落ち度だけどっ!」

 

「あっはっは、お陰様で大繁盛だよ遠坂さん。」

 

メイド姿でレジに立つ、黒髪ツインテールが居た。

 

「…美綴ィ!絶対後で目にもの見せてやるんだからね!」

 

「笑顔だよー、笑顔ー。」

 

「うぐ、わかったわよ…」

 

穂群原の才女、遠坂凛。

聖杯戦争間近にして何故か彼女は一日メイドをさせられていた。

客入りは上々、グッズも飛ぶように売れて店長はホクホク顔である。

 

と言うのも。

 

「何、遠坂お金入り用なの?よし、そんな貴女に良いバイトを紹介してあげよう!」

 

つい、予算がキツイ…と、聖杯戦争に向けていろいろ買い揃えた結果を呟いたのを聞かれ。

 

3万あれば触媒のつなぎにする宝石粉くらいは仕入れられるな、とか軽く考えて返事をした結果である。

 

「遠坂さん、こっち見て!写真いいかな!?」

 

「あ、あははは…写真はやめて欲しいかなー、と…。」

 

「一枚!一枚だけ!」

 

「…ダメ、恥ずかしいでしょ、もう。」

 

「…なんか会話が卑猥に聞こえるなあ…」

 

なんて店長の一言に、後で後ろからガンド撃ちしてやろうかとか神秘の秘匿はどうした、って考えを巡らせながら。

 

震える拳を隠す優等生、遠坂凛だった。

 

(どうしてこうなった!?)

 

物欲センサー?怖い。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

すまないさんと小坊主。

 

 

 

「何故私はこう不器用なのか…」

 

はぁ、ため息をついたジークフリートの足元にはいくつもの残骸が転がっている。

 

以前力加減を誤り修理するはずのものを士郎の目の前で壊してしまって以来、加減を覚える為にいろいろと試したのだが…

 

全て失敗していた。

転がっているのは犠牲になった握力トレーニング機器やゴムボールの残骸だ。

 

「…すまない、壊してしまってすまない…」

 

「よいから片付けるとしようではないか、ジーク兄(にい)。」

 

最近では馴染んできて一成には兄呼ばわりされているジークフリート。

それに対し、なんとも微妙に嬉しそうな顔でああ、すまない。と頷くジークフリート。

 

…尻尾があればぐるんぐるん振っているのではなかろうか?

 

「尊い……美丈夫と若い小坊主尊い…!」

 

……何故か、フード姿のエルフ耳が柱の影から覗いていた。

 

 

……聖杯戦争…本当に始まるの?

大丈夫か、冬木。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

こうはんぱつまくら?

 

「うふふ、翔太くん可愛いデース。」

 

真ヶ土家。

体育の授業と、宿題、さらには日課の魔術の修練で疲れ果てた翔太はベッドで眠る。

 

だが、何故か布団が不自然に盛り上がっており、明らかに翔太以外の誰かが居た。

 

「う、うーん、うーん、この枕、沈むよう、やたらに跳ね返るよう…うーん、うーん…」

 

ぽよん、ぽよよん、ぽよよん。

 

「あふん!翔太くん、そ、そこはお姉さん弱いデース!はふ!」

 

……………………………。

 

 

世の中には知ってはいけないことがたくさんある。

 

だからこの光景は誰にも言っちゃいけないよ?

よいこのみんな!

九狼お兄さんとの約束だ!?

 

「……そうですネ、確かに恥ずかしいのデース。」

 

真後ろにいつの間にか嗤う蛇神様が立ってた。

 

「…え゛。」

 

…偶々だったんだ。

エリザベートを迎えにきて。

帰り道に偶々見知った気配を感じたからちょっと覗いて見たんだ、他意はないんだ!

 

「…あらあら、九狼さんてば未だにワタシを召喚してくれないカラ、ついつい浮気しちゃいました、ゴメンねマスター?」

 

「いやいやいやいや!前世では確かにウルクで一時的にご縁がありましたけど!今生の僕はカルデアマスターぢゃないから!それにマシュ一筋だかrウプッ!?」

 

「捕まえタ♡」

 

「へ、ヘルプミー!?」

 

その夜、真ヶ土家では何故かやたらに背徳的な声と、耐えるような若い男の呻き声が聞こえたとかなんとか。

 

翌朝、同じベッドにいつものようにルコアのおっぱぉに挟まれてうなされる翔太と。

 

精魂尽き果てた黒髪の青年がいた事を付け加えておく。

 

「……マシュ…俺は耐えた、耐えたぞ…」

 

…よく耐えた、うん。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ごひゃくねんのもうしゅう。

 

 

「まず、呪術とはどんなものか言ってみろ、慎二。」

 

「あ?そんなもの…呪い、だろう。」

 

「…ならば呪いとはなんだ?」

 

成り行きから連れ帰った男、ファフニール。

彼は住処を提供すれば呪術なら教えると話した。

 

ので。

今現在居候の邪龍様はワカメに呪術講座を開いているのである。

 

「…あーなんだ、確か魔術がそこにあるものを組み替えるプログラム、であり呪術は自身の肉体を素材にして組み替えるプログラム、だったか?」

 

「…ほう、博識だな。それがわかっているならば話は早い。」

 

「いや、待て待て…僕だって大雑把な概要は言えても本質までは知らないし使いこなせもしないんだが…大体なんで自身の肉体を素材にして組み替えるプログラム、だってのに他者に害を為したりできるんだよ?」

 

「…それは呪殺なんかをする際の話か?」

 

「ああ。」

 

「簡単だ、自身の肉体を素材にして組み替える、とは即ち己を魔術回路と、現象を起こすための術式そのものにすることも可能だという話だ…つまりは己自身が一個の魔道具と化すわけだな。」

 

「…なんかそれって反則じゃないか?」

 

「一見なんでも出来る肉体になれてしまうように聞こえるがな、自己を失えばそれまでだ、自分が自分と認識できなくなれば人では無くなり、術式を行使することも叶わなくなる。」

 

「…あ?それじゃ呪術でできることなんてたかが知れてないか…ああ、だから魔術師からすれば呪術なんざ大したこともできない原始的な術式だって話になるわけか。」

 

「そうだな、確かに真に理解できねばそう言う認識になるのはしかたあるまい。」

 

ファフニールはうむ、とひとつ頷きながら慎二に視線を向けた、その刹那。

 

「うっ!?」

 

慎二の視界が真っ白になった。

 

「あが、が!」

 

目が回る。

吐き気が迫り上がる、終いには身体中が痺れ始めた。

 

「な、なに、ゔぉぇっ、かはっ!」

 

語尾がおかしくなるのを理解しつつも、まともに喋れないのがもどかしい。

怖い。

 

このまま、自分は死んでしまうのではないか。

 

「……理解したか?」

 

と、ファフニールの言葉を境に不快感が嘘のように消え去った。

 

「は、あ、ああ…なんだよ今の!?」

 

「呪術だ。」

 

「ば、馬鹿抜かせっ今のは魔眼じゃないか!」

 

「…そうだな、呪術によってなんの変哲もない、ただ数キロ先の金貨の柄が分かる程度の視力しかない私の目を、邪眼の一種に『組み換えた』わけだ。」

 

身体中の産毛が総毛立った。

 

「は、ははは…凄い、凄いなそれ!」

 

ファフニールの視力がなんの変哲もないかはさておき、確かにこんな事ができるなら呪術も使い道があると言うものだ。

 

「つまりは使い方次第と言う話だな、それでは慎二。」

 

「ああ、まずは何を教えてくれるんだ!?」

 

「まずは基本から…そうだな、日本の古式にのっとって丑の刻まいりなんかどうだ?」

 

「……巫山戯てんのっ、おまえ!?」

 

「いや、意外に侮れないんだぞ、丑の刻まいり。」

 

「…いや、普通そこは如何にもな西洋式の呪術を教えてくれるとか、竜種らしく知識を与えてくれるとかじゃないの!?」

 

「…魔術師の家系の癖に頭が硬いやつだな、禿げるぞ?」

 

因みに。

ファフニール的には呪術を行使する感覚さえ養えれば良いため実は方法はどうでも良かった。

 

要するにトランス状態…半ば無意識下で術式を行使できる下地を作れるならなんでも良いのである、後はそれこそファフニールが慎二の意識に干渉して呪術を扱うすべを教えこめば良いのである。

 

「僕はあの妖怪ジジイみたいにはならないからなっ!?」

 

と、思わず叫ぶが、ふと慎二は思い至る。

 

「……あれ?そういやあの妖怪ジジイはどうしたんだ…これだけ騒いでも出てこない、もう日も沈んだのに…?」

 

間桐臓硯。

己の祖父を名乗る、五百年から年を経た妖怪ジジイが活動可能な夜になったのにでしゃばってこない。

 

「…妖怪ジジイ…ああ、あれか。」

 

「は?」

 

「あの蟲の塊なら焼き払っておいたぞ。」

 

「は、はーーーっ!?!?」

 

「俺を見るなり群がって来たんでな、さっき追尾式の呪術を叩き込んで焼いた。」

 

「Σ(゚д゚lll)」←慎二

 

 

 

〜〜その頃の桜〜〜

 

 

「はうっ!な、なんだか胸が、胸が苦し…」

 

「大丈夫か、桜!?」

 

胸を押さえてうずくまる桜に、士郎が駆け寄れば。

 

「は、無駄に肉付きが良すぎるから筋肉痛にでもなったんじゃないですかねえ?」

 

トールが毒舌を吐き。

 

「……おっぱい、しすべし!」

 

カンナが乗っかった。

 

「カンナ、そんなこと言わない!」

 

士郎が怒りながら桜を抱きとめると。

 

「……おっぱい、やっば衛宮くんも大きいほうがいいんだ……男の子って……。」

 

何故か疲れ果てた顔でいつの間にか一緒に飯をたかりに来ていた凛がジト目で睨んだ。

 

因みに凛が居るのは、学校でトールと何かわからないが意気投合したからである。

 

「おまえらなあ!?」

 

「えへへ…先輩に抱きとめて貰っちゃいました…うへへ。」

 

桜が、だらしない顔でにやけていた。

 

(……ワシ、今正に滅ぶ寸前なんじゃけど…なんでこいつらコントしとるんだ…ああ、ワシの五百ね……ユスティ……ぐふっ。)

 

そして、ひっそりと桜の心臓に寄生していた悪も滅んだ。

 

…ここに、あまりにもあんまりな終わり方で、五百年の妄執が潰えたのであった。

 

 

──間桐臓硯、リタイヤ。

 

 

 






【あとがき的なモノリス】


──ハイ、あんまりな終わり方をしたマキリゾォルケンさん南無。

久しぶりにバカな話を書いてスッキリしました。

もう、いろいろスランプで話が書けなくて。
やっぱりギャグはいいな、ギャグは…

開始前からいろいろ改変されていく聖杯戦争。
どうなるんだこれ。
始まるのか、戦争。

そんな話は次回を待て?

筆者が書いたら、続くんだ、多分。

そんなわけで皆様、間が空きましたが私は生きてます。

読んでくれて居る皆々様、ありがとうございます!

それでは、また次回更新で!
しーゆー!!


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第7話「開幕の血槍」

歯車が、廻り出す。

第5次聖杯戦争。
異分子をはらみながら、その幕が上がる。

今回シリアス成分多めです。



 

 

猛竜注意!

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

  

 

──────────

 

 

因果地平

 

 

冬木。

幾重にも重なる因果が集い、螺旋描く地。

 

今、この地には新たな因果が集いつつあった。

 

竜種、英霊、人理の守護者。

 

本来始まるべき戦はまだ、始まりを迎えていない。

 

だが、それもいつまでも続くものではない。

変化した因果が、新たな因果を紡ぐ。

まさに今、その具現にも等しいモノが大空洞内部に巣食っていた。

 

「……害悪めが。」

 

終焉帝。

そう呼ばれた初老の男は口髭や髪色からは考えられない覇気を纏っている。

 

その真名は口にするのも畏れ多く。

あらゆる全てが平伏す終焉の主。

 

「……我が娘が今、この地に足を運んでおるのだ…キサマの様な半端モノが世界の均衡を崩す事、まかりならん。」

 

書き換えられ、絡まりつつあった事象が、再び捩れを解き、解されていく。

 

──キサマ、ワタシヲ、ヒテイスルカ。

 

「ふん、否定も肯定も無い。」

 

男が拳を握ると同時。

因果に干渉していたモノが結晶化してその手に現れた。

 

「……お前はもう、生まれ出でる必要も無いものだ。」

 

手に握られた結晶は虹色に鈍く輝く多面体。

 

「…やれやれ…この様に過保護な真似はトールには見せられんな、全く。」

 

男の干渉により、因果は僅かなズレを残して修正された。

 

「どうやら大きく変容はせんで済んだか。」

 

…彼は知らない。

この干渉が故に、愛娘の想い人の性別すら変わった事を。

本来、無かった出会いが起きた事を。

 

干渉するならば、今手にしたソレを。

完全に消し去るべきだったのだ。

 

だが、それを指摘するものは誰一人としておらず。

 

確かに世界規模ではない、しかし。

個人の運命は…大きく、変わっていた。

 

 

 

 

 

違えた歯車

 

 

「……全く、前代未聞だぞマスター。」

 

「な、何よ?」

 

「君の不手際のおかげで私は自身が何者かすらわからない、挙句に君はサーヴァントにこのような雑事をこなしてみせろと言う。」

 

「……その割には随分手際がいいじゃない、貴方。」

 

テキパキと床に散乱した壊れたものの破片や埃を片付けていく長身の男。

 

本来、万全の状態で、最高の英霊を召喚するはずだった。

だが。

 

結果は見るも無残な現状である。

召喚陣の外に召喚されたサーヴァント。

それは求めたセイバークラスの英霊では無い、アーチャー、弓兵だ。

それどころか記憶に欠損があり、自らの真名すら思い出せないなどとのたまう始末。

 

しかし。

それもこれも、最後の最後に時計の時刻のズレに気がつかず、本来最高のコンディションになる時刻を大幅にずらしてしまった事。

 

また、本来あった筈の前回の聖杯戦争時の触媒が失われてしまっている事。

 

我が家の血筋は、ここぞという場面で致命的な失態をやらかす、最早呪いじみた宿業がある…なんて話は信じたくはなかった。

たまたま、偶然にもほどがあっただけなのだと、思いたかった。

 

しかし。

 

「……認めるしか無いのかしら…」

 

げんなりとしながらそう呟けば。

 

「ほら、出来たぞマスター。」

 

その弓兵は。

とても芳しい香りを漂わせた紅茶を、差し出した。

 

「……美味しい…アーチャー命令よ、貴方これから毎朝紅茶を入れなさい。」

 

一瞬、苦い顔をしたアーチャーだが、すぐさま皮肉を返してきた。

 

「いいだろう。またくだらない命令に令呪を消費されてはかなわんからな。」

 

フン、と意地の悪い笑みを浮かべ睨み、いや…見下ろしてくるアーチャー。

 

「…幾ら何でも二度はやらないわよ。」

 

そう、私の手にある三画の令呪は、既に一つ、私の怒りと共に消費されていた。

私の命令に絶対服従、などという愚かしい命令で。

 

「わかっているならそれでかまわない、まあ…先ほども言ったが確かに君は最高のマスターだ、そこは認めているからそう膨れた顔をするな凛。可愛らしい顔が台無しだぞ?」

 

「……んなっ、あ、あんたねっ…ま、マスター誑し込む気?」

 

「ハ、真逆、選ぶ権利と言うものがあるだろう。」

 

「なんですって!?」

 

「あまり膨れ面をしていると子供と間違われるぞ。」

 

最も、選ぶ権利があるのは君の方に、だがね?…そんなアーチャーの言葉は届かない。

 

「あ、あーもう、張り倒すわよ!?」

 

それはかなわん、と肩をすくめるアーチャー。

 

「…調子が狂うったら無いわ…」

 

肩を落とし、がっくりと項垂れながら呟く。

前途は、多難だ。

 

そんな私を見つめながら。

()()()()()()()() ()アーチャーが僅かに口角を吊り上げて笑う。

 

本当、調子狂うったら無い。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

しゅらばぁ?

 

「……トール先輩。」

 

「何ですか?桜さん。」

 

「衛宮先輩から、離れて、下さい。」

 

ばちばちと。

それはもうばちばちと。

 

火花が出てる。

幻覚かなあ…なんかもう、おかしいなあ。

 

桜の背後になんか真っ黒な影が見える気がして仕方ないんだが…あとトールはドラゴンの影は隠せ。

 

普通こう言う場面では龍虎が相対するんだが…

 

「ふ、二人とも落ち着こう!せ、先生喧嘩はいけないと思──」

 

「「先生は黙っていて下さい!晩ご飯抜きにしますよ!?」」

 

「…ハイ!」

 

冬木の虎はあっさり敗北した。

…ところで二人とも気づいているだろうか。

柔らかくも素晴らしいボリュームの二人のそれが、腕を絡めて引っ張り始めたがために俺の腕を包んでいる。

 

ギリギリと音が聞こえた様な気がした。

 

「痛い痛い痛い!桜、トール!大岡裁きみたいになってるから!から!」

 

 

そしてそれを見たクラスメイト(主に男子)の反応。

 

「…エミヤメェ…エミヤメェ…!」

 

「リア充メェ…リア充メェ…!」

 

「トールちゃんは俺の嫁ェ…!」

 

「爆発しろ!」

 

「…衛宮…お前がおっぱい星人とは!」

 

「いや!最近ロリロリな子を連れて歩いていたって噂も聞いたぞ!」

 

「え!?俺は衛宮がついに遠坂さんまで毒牙にかけたって聞いたぞ!?」

 

「馬鹿な!真実か!?」

 

「だって遠坂さんが衛宮のウチに入ってったのを見たやつがいるんだよ!」

 

「エミヤメェ…エミヤメェ…!」

 

「リア充メェ…!リア充メェ…!」

 

「藤村先生は俺の嫁ェ…!」

 

と、様々?だった。

 

 

「最後の、なんでさ!?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

逃れ得ぬ命運

 

「トール、今日は生徒会の手伝いをしていくから先に帰って晩御飯の支度を頼んでかまわないか?」

 

「はいはい、喜んで!私は士郎さんの専属メイドですからね!」

 

でも、一緒に帰れないのはちょっと寂しいです、なんて続けるものだから、またも周囲が殺気立つ。

 

「トール、あまりそういう事を軽々しく言わない。」

 

「え〜〜?」

 

「…はあ、まあとにかく頼んだからな。」

 

「は〜い。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そう、笑顔のトールと別れたのがほんの数時間前。

 

今、俺はありえないものを見てしまった。

人にあらざる動き、殺し合い、血の匂い。

 

あいつが…魔術師だなんて!

それに、あのとんでもない戦闘。

 

見えなかった。

一合一合の刃の速さ、魔力のうねり。

全て途方も無い高みだとしかわからない。

 

 

「なんなんだ、あれっ…!」

 

衛宮士郎。

穂群原学園の制服に身を包んで、肩を大きく上下させている、呼吸は荒く、冷や汗が止まらない。

 

アレは。

人じゃ、ない。

 

「運がねえな坊主。」

 

「…!?」

 

見上げれば、月明かりに照らされた青い影が。

紅い魔槍をぶら下げて立っていた。

 

「良く逃げた、最速を誇る我が脚から良くぞ、と誉めてやるよ、お前はもしかしたらいずれはひとかどの戦士になっていたかもしれねえな。」

 

「な、なっ…!」

 

「有望な男を殺すのは本意じゃ無えが…悪く思うな、お別れだ。」

 

トス、と。

いやに軽い衝撃と共に喉奥からせり上がったものが口腔内を満たし、口から溢れた。

 

「ガッ…ハッ、ガボ…!」

 

鉄錆の味が鼻まで逆流し、みっともない顔をしているだろうな、なんて事を考える。

 

最後に浮かんだのは、桜、藤姉、何故だか、遠坂と…カンナ、そして。

 

大輪の花が咲いたようなトールの。

向日葵のような笑顔、だった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ふんふんふ〜ん、わたしのおっにくは、栄養たっぷり、愛情たっぷり〜♪」

 

鼻歌交じりに、明らかに普通では無い肉を薄く衣をつけて揚げているトール。

 

実はトールの尻尾の肉だった。

以前から事あるごとに士郎に出しては断られている。(当たり前だが。)

 

中身が丸わかりでなければ士郎も知らずに口にしそうなものだが、それはどうにもトールの矜持が許さないらしい。

 

「今日は、私を…食べてくれませんかねぇ、うふ、うふふ♪」

 

なんて、妄想にふけりながら料理をしていたら、背筋に言い様のない悪寒が走る。

そこを狙いすましたかの如く油が跳ねた。

トールの顎の下、首に一枚だけ残る薄ピンク色の鱗「逆鱗」にだ。

 

「あ、あっつう〜〜っ!?!?」

 

一瞬、あまりの熱さに顔がドラゴン化し、ひとしきり悶えた後。

 

「な、なんでしょうこれ…とんでもなく不吉な予感が…するんですけど…!」

 

油の火を止め、火事にならぬ様処置をし。

すぐさま窓から文字通り飛び出すトール。

 

「……士郎さん…無事ですよ、ね?」

 

轟々と風を切って空を飛びながら。

不安に涙を浮かべながら士郎がまだいるはずの学園へと向かう。

 

「どうか…どうか何も、ありませんように…!」




【後書きてきなモノリス】

はい、皆様こんばんは。
いきなりシリアスですいません。

聖杯戦争に関してはきちんとシリアスもします。
ただしかなり駆け足に話を進める予定です。

後、なんか真っ黒な人居ますけど石投げないで下さい、真っ当なエミヤを期待して居た方すいません。

この世界線のエミヤは…筆者の別作品、カルデアアフターに於いてぐだことダダ甘な生活を送ってます。
故に代打に真っ黒がきました。

一応、家事はできる。
ただし色々とエミヤと違います。
齟齬や、批判もあるとは思いますがエミヤはまた違う形で顔を出す、かもしれません。

その辺り、原作イメージ壊れたらすいません。
一応、この世界では皆が幸せな世界に纏めたいと思ってます。

と、言うわけで…次回更新にて、またお会いしましょう!


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第8話「涙」


猛竜注意!



この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

また、しばらくシリアスが続きます。
合間合間におバカな話は挟みそうですが。

それでも良いよ!
と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

…ジョークですよ?w

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。



 

逢魔ヶ刻・side士郎

 

 

 

夕闇に沈む校庭。

本来帰宅部である自分だったが、今日は一成の頼みを聞いていたら随分と遅くなってしまった、そもそも今日中に終わらせる必要も無い暖房器具の修理などここ最近の物騒な話を聞けば後回しにしておけば良かったのかもしれないが、どうにも半端に放り出すのは性に合わなかった。

 

部品を交換するだけで良いと高を括っていたのだが、肝心の交換部品が無いときた。

おかげで態々「裏技」を使う羽目になった。

 

投影魔術。

基礎すら落第レベルの俺が扱える数少ない魔術の一つ。

 

無から有を創り出す、等価交換の法則を無視した代物だ。

…とはいえ、魔術は万能では無い。

あまりに複雑なものや、自身にとって理解の及ばない物は投影できないし、リスクが上がる。

 

例えば複雑な機構は仮に丸ごとコピーした品物を作ろうとガワだけのハリボテにしかならない。その機構の本質を理解し、如何なる理由から、どの程度の強度が、厚みが、必要か否かが分からなければ一瞬にして自壊する不良品にしか成り得ない。

 

「…ま、幸い点火プラグ程度なら苦もなく再現できるんだが、なっ…と。」

 

周りの部品と規格を合わせ、最後に投影したプラグをはめ込み、改めて点火を試みれば暖かな火が灯る。

 

灯油が火と成り、埃が焼ける匂いが鼻をつく、すぐさま消火したことで灯油独特の匂いが室内に充満する。

 

「さて、帰るか。」

 

念のため点火プラグ用の乾電池を抜いて火事を引き起こさぬよう備えて、ひとりごちる。

 

消灯し、戸締りをした後外へ出ればひやりとした外気が背筋を撫でる。

 

「寒いなあ…早く帰ってトールの…ん?」

 

ふと、何気なくグラウンドを見ればそこには人影があった。

 

「…なんだ、まだ誰かいたのか?」

 

随分と遅くなり、教師すらも自分に鍵を預けて帰ってしまったと言うのに…誰が?

 

キィン、ガキン。

微かに耳に入ってきたのは金属に金属が当たる音、それに。

 

ガォン!!

 

「な…銃声!?」

 

いよいよもって放置できない。

夜間の学園に銃を持った輩が入り込み、あまつさえ発砲したなどと。

 

「…だれも、怪我なんかしてないでくれよ…!」

 

自然、恐怖を覚えることもなく足は動き出していた、それが。

衛宮士郎が衛宮士郎であると言う事だから。

 

夕暮れ刻には魔に出会う。

正に、魔は其処に居た。サーヴァントと呼ばれる他に類を見ない規格外の使い魔が。

 

「……っ、」

 

声にならない。

それは何故だか、胸を突く光景だった。

何より俺が嫌いな争い事だというのに。

 

野性味溢れる、牙を向くような表情で紅い槍を幾度も繰り出す青い衣服に、銀の肩当てをした男。

 

もう一人は黒人だろうか?

真っ黒な肌をして、同じく黒く、金色の柄に彩られた、まるで黒い虎のような印象を受ける、肌に張り付くような衣装を身につけた偉丈夫。

諸手に二丁の、あまりにも仰々しい形をした拳銃を振り回しては撃ち放つ。その拳銃の銃口の下には二振りの肉厚の刃が見えた。

 

銃剣?に、してもあまりに奇妙な形をしているし、何よりあれはただ仰々しいだけの銃ではあり得ないと己の中の勘が告げていた。

 

「なんて動きだよ…ほとんど見えない。」

 

かろうじてわかるのは片方が紅い槍を、もう片方は銃剣の様なものを二つ振り回して槍を受け流しながら時に発砲しているらしい、と言う事。

 

そんな事を考えている間にも争いは続く。

 

「ちいいっ、なんつー嫌らしい戦い方だ…そいつは…銃、とか言う武器だったか?」

 

槍を持った男が、合わせた刃を弾く様にした後わずかに距離を開けた、否。

開けざるを得なかった。

 

俺の目に動きは追えないものの、真っ黒な男が青い槍使いに銃口を向けているのだけは解る。先ほどの勢いのまま槍と刃を合わせていれば少なくともその弾丸は至近距離で弾けていた事は間違い無い。

 

「…ふ、どうしたランサー…この様な神秘の欠片も無い銃口など何するものでもなかろうが?」

 

「…どうにもな、そいつは…喰らっちゃ不味いもんな気がするんだよなあ。」

 

ランサーのそれは直感ですらない。

士郎は知る由もなかったが本来彼には飛び道具は通じない、そうした護りを常時纏っているのだから。

 

矢避けの加護。

ランサーが持つスキルは本来飛び道具を逸らすものだが、あの弾丸は逸れていかない。

 

考えられるとすればソレは弾丸自体が強力な呪いや、加護の類を纏う場合だろう。

 

「…ふ、怖気付いたかランサー…怯えた犬の様に尻尾を巻いて逃げてみるか?」

 

殊更に、挑発する真っ黒な男。

そして、それを聞いた青い槍使いは。

 

「…貴様今犬、と…言ったか?」

 

その眼に浮かぶ怒り。

そして、三日月の様に歪む銃使いの口。

 

「ああ言ったとも…犬なら犬らしく…大陸で捌かれて食われてくるといい、何…赤犬が美味いと聞いたが青犬も存外食えるのかもしれんぞ?」

 

「……何故解ったかはわからんが…いや、わかった上でソレを言っているのならば…」

 

「ああ、知っているとも、紅い魔槍、獣が如き俊敏さ、加えてそれ程の槍の使い手など…二人と居まい?」

 

答えた銃使いの言葉が起爆剤となる。

 

「抜かせ…ならば受けるか、我が必殺の一撃を……!!」

 

辺りから、熱が、消えた。

 

「…!!」

 

槍使いから立ち昇る鬼気迫る気配。

辺りの熱が全て槍の穂先に集まったかの様な錯覚を覚える。

いや、事実そうであるのかもしれない。

 

「止めはすまい、何れ殺さねばならぬ相手だろう…ならば何も問題は無い。」

 

もはや言葉はそこで終わりとばかり、男たちは構えた。

 

槍使いは、低く、低く…身を沈め、槍の穂先は敵ではなく、地面につくほどに下げられている。

 

銃使いは、二丁のうち片方を構えて何かを呟いた。

 

一瞬の後には双方が必殺の一撃を放たんとした刹那。

 

パキッ。

 

音が、響いた。

 

「しまっ…!」

 

「誰だ!!」

 

即座に槍の穂先がこちらを向いた。

 

そうして俺は。

ただ、ひたすらに逃げた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ぼんやりと。

意識が浮上していく。

 

やけに重い瞼がなかなか開いてくれなくて。

ああ、なんでこんなに疲れてるんだ?

なんて的はずれな事を考えた。

 

「……んで……あんたが…やめてよね、なんで、なんであんたなのよ!」

 

誰だったか。

聞いたことがある様な、声。

 

そういや、あの二人の他にも誰か居た様な…

そうだ、確かにあれは…

 

そうだ、あんな非常識なものは魔術師だとしか思えない。

なら、あの三人目は…

 

ぼやけた視界に映る、綺麗な瞳。

涙を浮かべたそれが宝石みたいに綺麗に見えて……。

 

「─── 何を、貴女は、何をぉ!!」

 

あれ、この、声?

 

ああ、…喧嘩は、やめような。

なあ?

 

トール?

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

逢魔ヶ刻〜トールside

 

 

逸る気持ちを抑え、ひたすらに夜空を駆ける。

物理法則を無視した速度で、しかし衝撃一つ漏らさずに静かに校庭に着地する。

 

「…なんですか、この異様に濃い魔力は?」

 

グラウンドに残る魔力の残滓。

はるか遠くへと飛ぶ様に離れて行く魔力の気配。

 

もう一つ。

校舎の中から感じる魔力。

 

一つは、見知らぬ鋭い魔力。

もう一つは、五色の魔力。

 

そして、今にも消えてしまいそうな…

見知った、魔力。

 

「あ、あ、あ!ウソ、ウソですよね?」

 

窓へと一息に飛び上がる。

見えたのは、蹲り、何事かつぶやきながら手を翳す少女。

 

そして。

一番当たって欲しくなかった、血の海に静かに沈む、少年の姿。

 

「─── 何…を、貴女は、何をぉ!」

 

視界が赤く染まる、怒りが、身体中の血を沸騰させる。

 

弾ける様に飛びかかる。

ゾロリと伸びた爪が、まるで刀の様に鋭く光を放つ。

 

「くっ…アーチャー、お願い!!」

 

ガキィ!!!

銃剣が爪を受け止め、腹を強かに蹴りつけると、同時にトールの胴へと銃口が向いた。

 

「承った、マスター。」

 

トールに視線を向けることすらせずに。

少女…魔術師、遠坂凛は叫ぶ。

 

「誰だか知らないけど邪魔しないで!」

 

かけらも余裕の無い、焦燥に満ちた声。

しかし、血に伏せた想い人を目にしたトールは冷静でなどいられなかった。

 

「オマエコソ…ジャマダ…ニンゲんんん!!」

 

ゴッ、と。

鈍い音がした。

 

発砲するより早く振り抜かれたトールの尾に、受け止めた銃剣毎吹き飛ばされ、壁に激突しかけ、身を捻って立て直すアーチャー。

 

「なんという膂力…!」

 

即座に陽銃干将・陰銃莫耶を抜き撃ちする。

ガガガ、と硝煙を吐き出しながら撒かれた弾丸はトールの胴を捉え、火花を散らした。

 

「ぐ、が、あ、あ、あ、ぁ゛あ゛、あ゛!!」

 

白いメイド服にあちこち穴が開くが、致命傷には至らない。

 

「カエセ、カエセェェーー!!」

 

返して。

私の、大切な人。

 

私の事を綺麗だと言ってくれた。

私の事を必要だと言ってくれた。

私の事を家族と扱ってくれた。

私に陽だまりの様な場所をくれた。

私が、怖くないと言ってくれた。

 

ワタシガ、ワタシガ、ワタシガ、ワタシガ、ワタシヲ、ワタシ、ヲ───

 

ワタシの、大切な人なんです。

 

「……かえして、シロウさん、ヲ…」

 

喉の奥から迫り上がる怒りと、哀しみ。

感情は魔力の渦となる。

 

「……これは、竜種の吐息 (ドラゴンブレス)」…ッ!?」

 

光が奔る。

熱が渦巻く。

 

「──────!!!」

 

声にならぬ叫びが、熱量を持って吐き出され。

アーチャーは咄嗟にそれを防ぎ得るモノを投影した。

 

熾天覆う、七つの円環 (ロー…アイアスッ)!!!」

 

双銃の銃口の先に展開された本来のソレと比べ幾分劣化した高位の防御宝具。

それでもそれは、幸いにも一瞬の怒りにより溜めも無く吐き出されたブレスを塞き止め、外へと流れを受け流した。

 

「……我が骨子は嘆き狂う──」

 

もう片方の銃口に宿る投影の輝き。

 

「少し頭を冷やせ…ペーネロペーの涙 (ペネロペイアダクリュオン )──!」

 

ペネロペイア、ギリシャ神話にて20年に及ぶ戦乱から夫が帰るまで待ち続けた、貞淑な女。

長き時を待ち続け、数多の男からの求婚を袖にし続け、夫に再会した時に流したその涙は、安堵故だったと言う。

その逸話を概念として練りこんだ魔術礼装を弾丸として加工した一発だ。

礼装の効果は、鎮静化。

 

荒ぶる神すら正気を取り戻すとの謳い文句の高価な礼装だったのだが…。

 

「…は、人生何が役に立つか判らんな…もはやどうして私がこの様なものを手に入れて弾丸に加工したかも思い出せんが…やってみるものだ。」

 

ブレスは直撃しなかったとはいえ、即座に展開した不完全なアイアスでは防ぎきれず、アーチャーの半身を焦がしていた。

 

だが、代償に放った魔弾は確かにトールを捉え、その激情を抑えてのけた。

 

「…あ、と、遠坂、さん?」

 

ようやく、トールは目の前で士郎の前に跪いているのが遠坂凛だと気づく。

 

 

「…まさか、貴女が本物だなんてね…いえ、今はどうでもいいわ、とにかく一刻一秒を争うの…士郎を救いたいなら黙って見てなさい。」

 

翳した宝石からは莫大な魔力が少しづつ、士郎へと流れ込んでいく。

 

「…良いのか、マスター?」

アーチャーが左肩を抑え、左脚を引きずりながら凛に近づき問いかける。

凛はアーチャーに「殺すな」と命じていた。

その結果がアーチャーの現状なのだが…

 

「…目の前で、死なれちゃ寝覚めが悪いのよ、第一…私の落ち度に違いはないんだもの。」

 

「いっだい、なにが、どうなっでるんでずがぁ〜〜〜う、うわあああん!」

 

ポロポロと大粒の涙を零しヘタリ込む。

もう感情のコントロールができなくなって子供みたいにしゃくりあげるトール。

それを見て肩をすくめてやれやれと壁に寄りかかるアーチャー。

 

「…死なせない、死なせないんだからね…この馬鹿…!」

 

引き攣れたような声を上げ、必死に魔術を制御する凛を見ながら。

 

トールはただ、見つめるより無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が助けた事はこの馬鹿には黙っててよね、トール。」

 

治療を終えて凛が発したのはそんな言葉だった。

 

トールも今は事情を聞いて何がどうなったかは理解している。

聖杯戦争、サーヴァント。

七騎の英霊、七人のマスター同士の殺し合い。

 

全ては万能の願望器、聖杯を求める魔術師達の行う儀式だと。

 

巻き込まれた士郎の命を凛は、大切な形見を使い潰してまで助けてくれた。

何も黙ってなくても良いのではないか?

 

「…その馬鹿が知ったら、絶対言い出すわよ。命には命をかけて返さなきゃいけない、なんてね、トールは…そいつがもう一度死ぬところが見たい?」

 

ふるふると、首を横に振る。

そんなものは嫌に決まっている。

 

「…大切なら、守りなさい。貴女なら例えサーヴァントと鉢合わせても防御に徹すれば人一人守るくらいはできるでしょ。」

 

「…でも…」

 

「…欲張らないの、貴女は確かに強いわ、本物の竜だなんてね、けどそれでも。」

 

願いを叶えるために死にものぐるいになった英霊に、覚悟もない者が挑めば…そこには敗北と死が待っている。

 

「…だから、今夜のことは悪い夢とでも割り切って。もう二度と士郎は関わらせちゃダメよ。」

 

そう語りかけ、凛は去っていった。

魔力を失った宝石を残して。

 

「ほんと、人間って勝手です…」

 

まだ整理のつかない胸中を静める為と言わんばかりに胸をきつく握りしめる、痛い。

 

「…う……ぁ…、トー、ル?」

 

膝の上で静かに横たわっていた士郎の眼が開く。

 

ああ、良かった……良かった!

 

「シロウさん…心配、させないでください…もう、絶対に、絶対…、こんな思いはしたくありません、から。」

 

ポロポロ、ポロポロと涙が次から次に溢れて士郎の顔に降りかかる。

 

「な、どうしたんだよトール、泣いて…」

 

がば、と。

胸で塞ぐようにして顔を抱きしめる。

 

「グズ、う、ううう〜〜!!」

 

「な、トール、ちょ、落ち着け、胸、胸が当たる、っもが、もがが!?」

 

何も言葉が出てこない。

嬉しいのに、ほっとしたのに、何も言葉が出てこない。

 

やがて、最初は暴れていた士郎も観念したかの様に腕を回し、トールを優しく抱きしめた。

 

「トール…なんだかわかんないけど泣くなよ、大丈夫…俺は大丈夫だから、な?」

 

床に伏せるように上半身を折り曲げ、膝に乗せた士郎の顔を胸にかき抱きながら。

トールは静かに涙した。

 

「はい、はい、う、ひっく、う〜〜!」

 

「な、なんだよ…泣くなって、クソッ」

 

二人は血塗れになりながら、それでも暫く抱き合って、泣いた。

 

トールは安堵から。

士郎は死の恐怖に今更に追いつかれ、そこにトールがいて、抱きしめられている事で気が緩んで。

 

 

月灯りに照らされ始めた校舎の廊下で。

竜と少年は…ただ、生きていることを噛み締めた。

 

 

 

 




【あとがき的なモノリス】

トール「シーリーアースーしーかーない!」

カンナ「でーばーんーがーないっ!!」

士郎「……余韻とか噛み締めさせてくれよ」

デミヤ「…あとがきと言うぐだぐだ粒子空間だ、諦めろ。」

冬木の虎「その通り!馬鹿士郎!よくぞ生き延びた、まずはおめでとう!!」

弟子一号「おめでとう!」

虎「しかぁし!油断すると即、Death!なバッドエンドが待っているので心するやうに!」

トール「…シロウさん、ファイ!」

カンナ「ふぁい!」

士郎「…はあ、なんだこの脱力感は…」

デミヤ「次回、セイバーはうどん粉で出来ていた、だそうだ。」

虎「こら、デトロイトなアーチャー!勝手に次回予告するな!?」

士郎「いや、ていうかうどん粉…?」

トール「サーヴァントってうどんなんです?」

士郎「リヨに聞いてくれ…」

弟子一号「あきらかなウソ予告、乙!」


そんなわけで、次回更新でまたお会いしましょう!

しーゆー!


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第9話「剣の英霊」

トール「私の戦闘力は53万QPだ。」

ぐだ「…それじゃスキル一つすらマックスにならんよ?」

トール「なん、だ…と?」

筆者「ボックスガチャ、またやりやがれください。」



        猛竜注意!

 

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがありますまた、しばらくシリアスが続きます。

合間合間におバカな話は挟みそうですが。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

望み

 

 素早く戦場を離れたランサーは、未遠川に架かる大橋の上、巨大な特殊繊維のワイヤー上に立ち、巨大な魔力が弾けるのを感じて舌打ちする。

 

「…チッ、なんだこりゃ…もう少し残れば楽しめたんじゃねえか…?」

 

だが、そんな彼の呟きを咎める声が聞こえてきた。

 

『…ランサー、私は全力を出さずに敵戦力を把握してこいと命じたはずだな?』

 

「…ハ、承りましたと答えた覚えもねぇぞ?」

 

しかし、事実上彼がそれを拒否しきることはできない、何せ令呪と言う縛りをチラつかせられれば否とは言えず。

 

「さっきは許可を取ったろうが、奴は明らかに俺の真名に気づいてやがった。だからこそ倒す必要があったし、その最中に目撃者の始末を優先してさせたのはテメエだろうが、マスター。」

 

『私が言っているのはそうではない、その後の不明勢力からの離脱を惜しむ様な発言を咎めた迄。』

 

「臆病者が。」

 

『不満か?』

 

「当たり前だろうが…まあ、それでも従っちゃやるさ、これでも俺は主人をたてるタイプでね?」

 

『心にもないことを…いや、喜べランサー。お前の望みは叶いそうだぞ?』

 

「あ"?」

 

『貴様が始末した少年、どうやら生きながらえた様だ…そこに先の不明勢力が居る。極力避けては貰うが…必要ならば全力を尽くしても構わん、殺せ。』

 

「…二言は無ぇな?」

 

『目撃者を始末したと言うのに新たにことを構えるは愚策と判断したまでだ、生きていたと言うなら…否はない。』

 

それを聞くが早いか、ランサーはワイヤーから身を踊らせて宙を舞う。

直ぐに鉄塔を蹴りつけて再度跳躍する。

 

その一跳びは、正に砲弾が如く。

夜の闇に青い流星が、跳んだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

竜に蹴られて死んじまえ?

 

 

「大丈夫ですか、シロウさん?」

 

「あ、ああ大丈夫、大丈夫だからちょっと身体離そう、な、な?」

 

少し慌てながらそう言う士郎にトールはますます身を寄せ、身体を押し付ける。

 

「駄目です、駄目なんです!もう二度と離しませんからね!?」

 

涙目で睨まれてはそれ以上は言えずに口を噤む士郎。

 

「…宜しい、私の困ったご主人様は私に黙って瀕死になるお馬鹿さんだとわかりましたので…どなたかはわかりませんがおそらくその宝石の持ち主が助けてくれなければ、シロウさん…死んで…死んでいたかもじれないんでずからね〜〜ズビズバズビッ!!」

 

「う、うわ、悪かった、は、反省してるから…トールには心配かけないよう努力するからっだから制服の袖で鼻をかむな!」

 

ポケットから取り出した血に浸らなかったティッシュを取り出し、トールの顔を拭ってやれば。

 

「…どうだか。」

 

そう言ってトールはツーン、とそっぽをむくものの依然として腕は離さないし尻尾は上機嫌な感じに地面をペシペシしている。

 

それを見た士郎が頬を緩ませる。

眼ざとく気づいたトールが戯けるようにして膨れてみせる。

 

…望外の喜びを感じている。

それは、確かな事だ、父母を喪い、養父を喪い…家族と言えるのは藤村の人達や、雷画の爺さんくらい。

 

それだって、「家族に等しい存在」であって「本当の家族」では無い。

血の繋がりだけを拘るつもりはないが、彼らはやはり他人なのだ。

同じ家に帰ってくるわけじゃない。

いつもおはようと言えるわけじゃない。

 

そんな。

僅かな「家族」の線引きを考えた時、浮かんでくるのはいつも…藤姉と、最近では何故か、この括りからは外れている筈の桜だった。

 

けれど。

そこにまた一人、大切な人が増えつつある。

 

いや、二人…かな。

カンナのあどけない表情が脳裏に浮かんだ。

 

「…なあ、トール。」

 

「何ですか、シロウさん。」

 

何故、今なのかはわからない。

けれど自然に言葉が口から出ていた。

 

「俺の家族になってくれないか?」

 

君は俺をご主人様だなんて言うけれど。

俺はそんな大した人間じゃあない、それでも。

 

同じ家に暮らして、同じ飯を食べて。

笑い声に囲まれていけるならそれは──

 

「…………ヒュー………」

 

トールが息してない。

 

「…え、あれ?…トールさん?」

 

密着していたから、トールの顔が酸欠でみるみる白くなっていくのが良くわかる。

 

「……カヒュッ。」

 

白眼剥いた。

 

「トールーーーー!?!?」

 

そのままパタリと倒れそうになったトールを必死に痛む身体で支えると。

次の瞬間ばね仕掛けみたいに起き上がってきた。

 

「シ、シシシシシシ、シロウサン!」

 

「は、ハイ!?」

 

うなじから耳まで真っ赤に染まった顔で士郎に向き直ると、改めてガバ、と抱きついてきた。

そして早口に──

 

「ふ、不束者れしゅが…、よろしくおねひゃいしみゃ…イタイっ!?」

 

舌噛んだ!あ、わ、わらひウェディングドレしゅが良いです!

 

なんて言葉が続いた。

 

「…え?」

 

そんな意味ではなく言っていた士郎には完全に不意打ちだった。

 

「ばっ、ち、違っ…そう言う意味じゃない!」

 

瞬間湯沸かし器みたいに沸騰した顔で叫ぶ士郎の言葉は完全に自分の世界に入ってしまったトールには届いていなかった。

 

「は、話聞いてくれ、トール!?」

 

「ふ、ふふふふ…ま、まさかシロウサンから告白飛び越えてプロポーズ受けちゃうなんて、うへ、うへへへへへ…!」

 

「おーい、戻ってこい、トールー!?」

 

ぎゅう。と。

幸せそうに士郎を抱きしめてだらけた笑顔を見せるトール。

すりすりしたりモジモジしたり、尻尾は上機嫌を通り越して先がぐるんぐるん回転していた。

 

「あー、もうっ、もう幸せすぎて死んでしまいそう…なん、です、というの、に!!!」

 

唐突に。

ギッ、と宙を睨んだかと思えば士郎を抱えたまま一息に飛び退くトール。

 

「な、わ、うわわっ!?」

 

急加速と浮遊感に慌てる士郎。

普段ならバリアを張り、慣性などは影響しないようにしてしまうのだが、あまりの緊急避難にその暇がなかった。

 

道路の真ん中に紅い槍が突き刺さって。

 

「…は、躱したか。そうこなくちゃあなあ?」

 

周囲を見渡せば旧市街の古い町並みの、塀の上から飛び降り槍を握り直す青い衣服の男。

 

「…お、おま…えはあの時の…槍使いッ…」

 

震えが止まらない。

確かに、あの、槍が。

己が心の臓を貫いたのだと、身体が理解していた。

 

「…そう、貴方が…貴方、が…シロウさんを…許さない──」

 

「…勘のいい奴は好きだぜお嬢ちゃん…見た所サーヴァント…にも見えねえが、それに比する神秘を感じるな…クク、楽しいなぁオイ?」

 

シュッ、と空を割いて振り回された槍の穂先が士郎の胸を指す。

 

「まあ、先ずは小僧…死に損ないの手前からだ。じゃねえと俺のプライドがズタボロなんでな…先にも言ったがよ、悪く思うなよ?」

 

にイイ、と。

獣が牙を剥く様に笑う。

 

「許すと、思いますか?」

 

トールから鬼気迫るものが立ち昇る。

魔力だ、魔力が可視化されるほどの密度を以って宙に放たれ始めた。

 

「…この気配、覚えがあるな、竜種の魔力…ああ、生前に幾度か感じたモノと同質だ。」

 

トン、と。

軽い力でトールが俺を押し出した。

 

「な、おい、トール?」

 

「シロウさんは逃げてください、それで警察に通報を。」

 

「…トール、馬鹿を言うなっ、彼奴は化け物だ、見たんだよ俺はっ、あの男が人知を超えた速さで真っ黒な男と殺し合ってたのを…っ警察なんか巻藁より簡単に斬り殺されちまう!」

 

必死に言い募る士郎だが、トールは引かない。

それどころか、士郎の瞳を覗きこむと暗示をかける。

 

「…貴方は、今から…逃げて、隠れます。余裕があるならば、警察に通報を…シロウさん──お願いします、生きてくださいね。」

 

ふっ、と。

瞳から光が失せた士郎は踵を返して逃げ、走り始めた。

 

「…小僧の言う通り、そんなもん呼ぶだけ無駄だぜ嬢ちゃん。」

 

士郎を殺すと宣言しながら、しかしソレを追いはせずにトールへと睨みを効かせるランサー。

 

「…どうでしょう。もし無駄ならば人目を避ける理由が判りません、少なからず目立ちたくはない、違いますか?」

 

既にこの一帯には人払いの効果を持つ沈黙と幻惑のルーンによる結界が敷かれていた。

 

今、周囲に活動する人間はいない。

野外は言うに及ばず屋内にいる人間は皆が無意識のうちに外を見ようと言う思考を持たぬ様誘導されていた。

 

「ルーン魔術…北欧の縁者ですか?」

 

「…そこまでお見通しか、ますます楽しみだ、行くぜえ!!」

 

ダンッ、と。

爆発する様な加速で飛び出したランサーは槍を瀑布の如くトールに向け、連続で突き入れる。

 

「ガァ!」

 

眼を赤く、爛々と輝かせて伸びた爪を振るい槍を払い、弾くトール。

 

その攻防は強い空気の流れと衝撃、火花を散らして続いていく。

 

「はははははっ!!これだ、これだよ!こんな熱さが欲しかった、感謝するぜお嬢ちゃん!」

 

「私は迷惑この上ないだけです、ね!!」

 

槍を弾く隙間に尾の一撃で足払いをかける。

 

「ぬわっ…尻癖の悪い嬢ちゃんだな!」

 

「レディに失礼ですね、貴方…でも、そんなことはどうでもいい──シロウさんを殺した事──絶対に許しません、死んでください。」

 

尾の足払いを避け、槍を支点に曲芸の様に飛び上がったランサーへ、数多の魔力弾が殺到した。

 

「…づっ!?」

 

魔槍を振るいそれを辛うじて迎撃するランサーだが、内心冷や汗ものだった。

 

(なんて威力だ…範囲こそ限定してやがるが…いや、あの高威力で範囲をあんな狭さに限定して操るたあ…この嬢ちゃん、下手なキャスターより腕が立つんじゃねえか…!?)

 

「…まだ、ギアは上がりますよ?」

 

ニコリ、と笑いながら穴だらけ、血塗れのメイド服のスカートを優雅に摘み上げるトール。

 

「カッ、抜かせ小娘!ケルトの男を、舐めんじゃねぇぞっ…おらぁ!!」

 

追い討ちの魔力弾を先よりも倍する速度で打ち払い、切り裂いてトールへと肉薄せんと走る。

 

だが、一瞬早くトールは空へ飛び上がり魔力弾が更に倍する数と威力でランサーへと迫る。

その数、三十三。

 

「だっ、と、ぬあ、おおぉ!?」

 

なんとか対応したものの、段々とランサーの手が足りなくなりつつあった。

何せランサーには対魔力があるが頼りにはならなかった、そのランクはそう高くは無い上、トールの放つ魔力弾は一撃一撃が致死の威力を備えた儀式魔術並みの大威力。

 

「…まだ、いきますよ?」

 

更に倍する数の魔力弾が宙に浮く。

 

「…嘘だろ、オイ…お前は影の国の女国主かよっ!!??」

 

とうとう、悲鳴みたいな非難の声を上げるランサー。

 

「…わたしはまだ、二回の変身を残している、この意味がわかるか槍男?」

 

底冷えする様な笑みを浮かべたトールを見て、ランサーは考えた。

 

あ、これヤバイ奴だ──、と。

 

「クソッッ、タレがあああ!!!」

 

半ば捨て鉢になりながら矢避けの加護と、魔槍を頼りに突撃するランサー。

 

一見トールが完全に押している様に見えたが、トールは内心焦っていた。

実力では相手と十分に渡り合える。

しかし、相手は英霊、その宝具を開帳させてはならない。

 

英雄と呼び名のつく者がいかに恐ろしいか。

それは個々の実力などでは無い。

諦めない心、その果てに伝承に至った逸話。

それにより彼らが手にした破格の武装、昇華された逸話の具現──

 

そう、そんな切り札 (ジョーカー)を切らせてはいけない。

 

それは、トールが長い生涯の中で培ってきた活きた教訓だった。

 

(私は、二度と無様は…晒さない…!)

 

聖杯戦争は、始まったばかり──

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

剣の英霊

 

 

ランサーから逃れ、やがて暗示が解けた士郎はいつの間にか自宅の庭に立っていた。

 

「…あれ、トール…あれ?」

 

記憶が僅かに混乱する、確かトールに見つめられて…

 

そう、走って、走って…我が家に転がり込んで、電話して…それで…訳も解らず安全な場所に行かなきゃ、って…それで俺は。

 

「そうだ、土蔵の中なら、って…違う、そんなことはどうでもいい!」

 

トールを助けに…警察が向かったからってどうなるかわからないじゃないか。

 

そんな事を考えて。

すわ、助けに…と足に力を入れた瞬間。

 

一度は黄泉路を見、そこから帰って来た余韻だっだのだろうか。

背筋に走ったのは死の予感。

ぞわりとした寒気と、二度とは感じたくない。

そう思った、あの昏い果てに沈んでいく虚無感…それが再び自身の背に追いついて来た感覚。

 

「──────ッ!」

 

ズザア、と。

反射的に飛び退いたその位置に。

 

ガキン!

 

真っ黒い短剣 (ダーク)が突き刺さった。

 

「な、短剣!?」

 

驚愕に目を見開く士郎。

だが、それ以上に狼狽したのは短剣の持ち主だった。

 

襤褸切れを巻きつけた異様に長く太い片腕。

全身を覆う黒い外套。

何より異様なのは顔を覆う…髑髏面。

 

節くれだった指をわなわなと震わせ、ソイツは呟いた。

 

「…馬鹿な、ただの人間に…我が気配を気取られた…と?」

 

世界的にも有名な暗殺教団の教主にしてその筆頭の実力者。

呪腕のハサン、彼はそう呼ばれた幾人も存在した教主の一人。

 

この冬木の聖杯戦争にて必ず呼びだされる確定した英霊、無数の暗殺者の一人 (ハサン・サッバーハ)。通常、歴代の教主の内の一人が召喚されることが確定した特殊なクラス、アサシン。

 

「なんだ、お前は…!」

 

「貴様こそ何者…否、貴様が死ぬに変わりは無し──シャ!!」

 

無数の短剣が、士郎に襲いかかる。

必死の思いでそれを転がり、躱す。

 

「だ、くあっ、痛っ、う!」

 

ゴロゴロと転倒しながら土蔵の中へと転がりこみ、扉を蹴りつけて半ば閉じる。

 

「──カ、ハ…な、何か武器になるもの!」

 

あたりに散らかった物をあさり、棒状の何かを握りしめる。

 

「これなら…って、ダメだ!」

 

硬く丸められてはいたがそれは、唯のポスターだった。

 

「くそっ、藤姉がくだらないものばかり持ち込むからっ…!」

 

そこで目に入ったのが、木刀。

京都土産か何かで貰ったものだが、ポスターよりはましな武器に…

 

「そこまでデス、魔術師殿──」

 

ふ、と。

音もなく眼前に現れたソイツはそう語りかけて来た、最初の事は偶然に過ぎないのだがどうやら向こうは自身の隠行は無意味と断じたらしく、その手に短剣を無数に握り、正面から構えを見せている。

 

逃げ場はない、木刀を手にする余裕も、無い。

やれる、か──?

 

「……」

 

手にしたポスターを、剣であるかのように構え

、そこに魔力を通す。

 

強化魔術。

はっきり言って成功率は高くない、が。

それでもやらなければ、死ぬ。

 

「…強化、開始(トレース・オン)―――。」

 

身体中が神経と化したかのように、魔力が通る、すんなりと成功したと言う実感。

これが鍛錬の最中ならば飛び上がって喜んでいたかもしれない。

 

しかし、今は己が命を賭した凌ぎ合い。

 

「…ああああ!!」

 

ビュッ!

ギャキーーン!

風をきる音、次いで響く硬質な金属同士が当たるような甲高い音。

 

投げ放たれた短剣があたりに転がる。

ボロボロになったポスターサーベルを魔力をありったけ尖らせるように通し、投擲する。

 

サーヴァントに通じるようなものではないが、髑髏面目掛けて放ったのを嫌がったのかそれを手にした短剣で切り払うアサシン。

 

「…ぅ、えゃああああ!」

 

その隙に手にした木刀を、瞬時に強化する。

会心の出来だ、先のポスターサーベルの比ではない。素材が硬質な樫の木だった為、木刀は今や鋼の刀並の威力を持った。

 

「…ふ、笑止也!」

 

斬りかかった木刀は顔をそらすだけで避けられ、さらには軽い様子で放たれた蹴りが士郎の脇腹を抉る。

 

全サーヴァント中最弱のステータスであるアサシンのそれではあるが、それでも人間からすれば十分に悶えるレベルの威力だった。

 

「が、ゲフゥ!」

 

悶絶しながら転がり、壁にしたたかに背を打ち付けられる。

 

「…く、そ…こん、な…俺はまだ…」

 

死ねない。

強く、強くそう思った。

 

「…素人が良くぞここまでと褒めて差し上げる、だが──終りよ。」

 

アサシンの目が、士郎の手の甲に向く。

そこには先ほどまではうっすらとした赤みでしかなかったものが。

 

くっきりと、剣のような、十字のような痣に変わっていた。

 

「……やはり、…令呪を得たか。」

 

アサシンの声が、急に先ほどまで以上に嗄れた声に変わる。

 

「──前回、アインツベルンの子飼いであった小僧の…義理とはいえ倅…宿すと思っておったぞ、衛宮、士郎。」

 

短剣の刃が、士郎の喉へ直に突きつけられた。

 

アサシンを操るその声。

それは──

 

「ワシはまだ死ねぬ、死ねぬのだよ…故に障害になる貴様は…死ね、小僧!」

 

五百年に至る妄念の魂塊だった。

アサシンと、ソレが抱くはともに不老不死。

 

あわや、士郎の喉が裂かれようかと言う刹那。

 

爆発するかのような光が、蔵の内部を蹂躙した。

 

「ガッ…な、何い!?」

 

光に眼を灼かれ、慌てて数歩下がるアサシン。

 

乱雑に散らかっていた品々が今の争いの最中、偶々敷かれていたブルーシートを翻し。

その下には、一つの陣が刻まれていた。

 

光はそこから放たれ、やがて。

 

「…問おう。」

 

そこに一人の存在を喚び出した。

 

「貴方が、私のマスターか?」

 

流れる、美しい金糸の髪。

翡翠のように美しい瞳。

 

銀の鎧と青の鎧下に包まれた、その身体。

衛宮士郎が。

二人目の運命と交わった瞬間だった。

 

「サーヴァント、セイバー…召喚に応じ、参上した──」

 

 

to be continued

 




【あとがき的なモノリス】

ハサン「…わたし、次回あっさり斬られそうなんですが、そこのとこどうですか魔術師殿。」

魔術師M「…ワシだって想定外じゃよ…」

士郎「しぶとかったけど、復活そうそうリタイヤフラグだな、乙。」

トール「一部読者様はもう消えたって喜んでませんでした?」

ランサー「そもそもリタイヤ、って書いたよな…嘘はいけねえな、嘘は。」

筆者「…う、わかってるよう、悪かったよ。」

トール「貴方は次回しっかりお仕置きしてあげますからね、槍男さん?(ニッゴリ)」

ランサー「ひい!師匠許してくれ、俺じゃない、師匠の酒を盗み飲みしたのは俺じゃないんだ!」

士郎「……ランサーがトラウマこじらせた…」

トール「失礼な人ですね、私そんなに怖いです?」

士郎「ところで二回の変身ってなんだ?」

トール「半竜化と、完全竜化です。」

士郎「すでに尻尾や爪出してないか?」

トール「ああ、武装形態というか、鱗や角を戦闘用に硬化したモードが半竜化です。」

カンナ「……フリー、zモゴモゴ」

トール「それ以上イケナイ。」

筆者「は、は、は、ではではまた、次回更新でお会いしましょう!!」


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第10話「ゲイボルク ── ドラタナティブ!」

猛竜注意!


この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがありますまた、しばらくシリアスが続きます。
合間合間におバカな話は挟みそうですが。

それでも良いよ!
と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

…ジョークですよ?w

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。



 それは、随分と昔の話、ある月夜の晩。

 

縁側に腰掛けてまるで老人みたいに熱い茶をすする彼の、丸めた背中にため息をつく。

 

「……やめろよな、切嗣はシャンとしてたらカッコイイんだからさ、そんな爺さんみたいに背中を曲げるなよ。」

 

そう指摘すると切嗣は。

 

「ああ、これはいけないな…昔は世界中の戦地を転々として映画の主役もかくやというくらいにストイックな狙撃手だってこなしていたんだけどなあ、いつの間にか弱くなったね、僕も。」

 

なんてことを言うのだ。

 

「…まあたその手の法螺話かよ、切嗣が魔術師だってのはわかるけどさ、その性格で傭兵とか軍人なんてありえないだろ。」

 

と、返せば。

 

「二度と、こんな気持ちにはならないと思っていたんだが…なんだかいたたまれなくなるね、なんとも。」

 

はは、と力なく笑いそう零す切嗣の首には古いロケット型のペンダントがある。

カチリ、とそれを開けばそこには銀の髪に紅い眼をした浮世離れした美貌の女性の写真。

写真はモノクロだというのになぜわかるかといえば以前に切嗣がそう教えてくれたからだ。

 

「…なあ、士郎。」

 

「なんだよ、じいさん。」

 

「…じいさんは酷いな、まあいいや。」

 

「いいのかよ。」

 

「この写真のヒト…正確にはこれは似てはいるが別人、だとは思うんだがね…僕の、奥さんだった人…アイリスフィール、その先代ってとこかなあ、瓜二つさ。」

 

「…そんな美人だから自慢したいのはわかるけどよ、なんで写真一つ残ってないわけ?」

 

「……1枚くらい残しておけば良かったと、今になって思うけどね、そんな暇もなかったのさ、あの時は。今でもアイリの実家に行けば残ってるかもしれないが…」

 

そう言って月を見上げて。

切嗣はポツリと零したのだ。

 

「僕はね、士郎。──正義の味方になりたかったのさ。」

 

そう言った時の切嗣の顔を。

俺は今でも忘れられずにいる。

 

話に脈絡が無く、どうしてそうなったかわからない。

ただ、切嗣はきっと…救えなかったのだと理屈では無く理解した。

 

「なんだよ、なればいいじゃないか切嗣なら余裕だろ、だって魔ほ…魔術師じゃないか。」

 

「…残念ながら正義の味方には期限があるのさ、年老いた僕にはもうなれない。ヒーローになれる期限は有限なんだ。」

 

「…なら、俺がなるよ。」

 

だから、今より幼い俺は。

とっさに答えたのだ。

ただ、嘘偽りの無い真実を。

 

「俺が、切嗣の代わりに正義の味方になってやる!俺ならまだ若いし、なれるだろう?」

 

それを聞いた切嗣は、嬉しいのか悲しいのかわからない、とても複雑な顔をした後に破顔した。

 

嬉しそうに、本当に嬉しそうに──

あの時、俺を救ってくれた時の様に嬉しそうに、助けられたのは俺の方だった筈なのに、まるで自分が助けられたみたいな顔を見てしまったから。

 

その顔が、あまりに嬉しそうだったから憧れた。自分にはもうなくなってしまった本当の生の感情に強烈に惹きつけられた。

 

 

だから。

その願いは、俺の…希望/呪いとなってこの胸に居座り続けている。

 

 

───────────

 

 

 

 

「ふ、ふふふふ…あはははは、あーっはっはっはっはっ!!!」

 

 最早叫ぶように笑いながらトールが魔力弾を乱射する。恐るべきはその精度。

 

嵐のような勢いとは裏腹に、決して無用な破壊は生んでいない。

ランサーが避けた場所はやむなしだが、それ以外には一切の流れ弾はない。

 

「豚のようにお鳴きなさい!ふぇーっはっはっはっはっはっ!!」

 

「ぬおぉぉ!?」

 

割と必死な顔で魔弾の嵐を回避する為に八艘跳びもかくやの俊敏さで跳び、駆け回るランサー。

 

「て、てめえこら、ヒロイン (婦女子)があげる声じゃねえだろそれ!!」

 

「おまえの前でヒロイン (女の子)する理由がない!!」

 

「少しは慎みとかもてよ!?」

 

「そんなこと言う貴方にプレゼント、ドラゴンブレスプレミアム!!!」

 

ゴパア!

 

答えの代わりに特大の火炎をプレゼント。

 

「ぬおおっ、ア、アンサズ!!」

 

体表面に火のルーンを張り、炎熱をいなし、なんとか直撃をさけるランサー。

 

「……ち、しぶとい。」

 

「鏡見ろこの腹黒系竜娘!?」

 

…最早コントの様相を呈してきたわけだが、そんなことをしているトールは内心焦っていた。

 

(…まずいなあ…まずいですね、これ以上やると流石に気づかれ (探知され)ちゃうかも…それはよろしくない。)

 

そう、トールの身の上は実は家出娘同然なのである。

 

身内に察知されるわけには行かず、それ故に魔力はあまり大きく使わないようにはしていたのだがこのままでは遅かれ早かれ気づかれてしまうだろう、それはできれば避けたいトール。

しかし相手はそんな事は一切関係ないわけで。

 

「さて、こちらとしても長引かせるのは望みませんので幕引きと致しましょう──なぁ《《セタンタ》 》。」

 

「テメェ、その呼び名は…いやまさかだな、その口調。やけに馴染みがあるのはどういう事だ、あぁ?」

 

先ほどまでの半ば焦るような口調では無い…真剣で、それでいて何かを畏れるように語るランサー。

 

「…類縁憑依魔術…かかわりある存在をトレースし、人格、技術を模倣する高等魔術よ。」

 

答えと同時に宙空に顕現する数多の魔槍。

その形は見まごうはずもない、よく知ったものだった。

それは実体を持たぬ魔力光の塊ではあるが、真贋はともかくその形だけでランサーには深い意味を持っていた。

 

「ゲイ・ボルグ…魔槍を模倣し、そしてその眼、口調…テメェまさか──スカサハ(師匠)の縁者か?」

 

「如何にも、今我が人格を想起し使役するこの者は私に縁ある…一時期時空の狭間にて傷を癒していた際にたまたま放浪した我がオリジナルが気まぐれに手ほどきをしたのよ。」

 

ニヤ、と笑う口の釣り上げ方までがランサーが知るスカサハそのものだ。

声と見た目にギャップこそあるが概ねランサーの記憶通りの仕草。

 

 

「…と、言う訳だから死ねセタンタ。」

 

 

シリアスな会話もへったくれもなかった。

極上の(ドSな)笑顔とともに蹴り放たれたのは魔力光の槍。

それは原典には及ばない威力で、しかし確実に相手を穿つべく飛翔した。

 

「刺し穿ち、蹴り穿つ──ゲイボルク・ドラタナティヴ!!」

 

「ちょ、ま…どわああああ!?」

 

威力こそ原典の数十分の一であり、呪いもない、しかし、それはランサーの体を蜂の巣にするには充分すぎた。

 

影の国にて自分を鍛え上げた女傑、スカサハ。

時に師であり、女であり、そして生涯において誰より畏敬を抱く戦士。

 

その技能を模倣するなど本来万死に値する愚行である、生前の彼ならば怒り狂い、トールを殺すと牙を剥いた事だろう。

事によれば怪物と化すこともいとわない程に。

が。悲しいかな今の彼はどこまで行っても「ランサー」である。

狂戦士としての側面も、術師としての側面も全盛期ほどには発揮し得ない。

サーヴァントとはそういうものだった。

 

「ぐ、こっの…クソがああああ!?」

 

必死に光の槍を防ぎ、躱すが槍は軌道を変えてランサーを襲う。

幾百の礫と変じたそれを全ていなすには今の彼の力は限定的に過ぎた。

 

己が放つには溜めを必要とする宝具に匹敵する一撃を苦もなく放つ。

正に怖るべき師の姿を垣間見る技量。

 

「こ、んなもので…がああ!」

 

本物ではない、魔力で編まれた仮の槍である事、当然ながら幾分本来より落ちる威力が幸いしたのか、災いしたのか。

ランサーはまだ消滅には至らない。

霊核は依然として無事だった。

 

「…流石にしぶといなセタンタ。」

 

「…テメ、ぇ…その顔と声でスカサハを真似るんじゃねぇ…大体ドラタナティヴってなんだ巫山戯やがって必ず殺してやるぞこの、トカゲ娘!」

 

「ふん、わかるはずだろう…類感魔術の類ではあるが私は私、真実スカサハの残滓を再現している…決して偽物ではないと言うことを。」

 

「それが余計に腹立たしいんだよクソがっ触れちゃなんねぇところに触れやがって…」

 

わからないではない。

スカサハは…己が師は存外茶目っ気のある女なのだ、アレでも。

ヤンデレ気質でなければ…ヤンデレ気質で、なければ。

ふと、懐かしい想いに要らぬことまで思い出し、顰め面で睨めば。

 

「…巫山戯ているのはどちらでしょうね、シロウさんを一度殺した相手を私が許すと思いますか、あり得ませんね…いくらあの人、スカサハが楽しげに語った光の御子その人であっても──必ず殺す?それはこちらの台詞ですね。」

 

空に浮かんだままそう告げるトール。

地面には無数の穴が穿たれ、ランサー自身も肩、足、頬、脇腹と無数の裂傷、刺傷を負っていた。

 

「…さあ、まだギアは上がりますよ…いいや、まだまだ甘い、私を殺せると言うなら殺してみせよ、セタンタ!!」

 

「だからやめろってんだろうが、トカゲぇ!」

 

飛び退き、槍を振りかぶるランサー。

 

正体は知られていた。

さらには相手は劣化してはいるが己が師のコピー。

 

「加減は無しだ──全魔力、解放。」

 

トールにとっての誤算。

ランサーにとっての勝機。

 

それは、トールが決着を急ぐあまりによりによってスカサハを模倣した事。

槍と、ルーン魔術、体を癒していた10年の間に出会っていた女傑に聞いていた話。

そこからランサーの正体に気づいたトールは最も効果が高いであろうと、彼の師を模倣すると言うある種の愚行を犯した。

 

それはランサーになりふり構わぬ全力を出させる結果となり。

 

ランサーと言う一側面(型に嵌められた存在)故に特化した、先ほどまで決して切らせてはならないと危惧していた切り札を切らせてしまったのだ。

 

突き穿つ (ゲイ)──死翔の槍 (ボルグッ)!!!」

 

「っ、しまった…煽り過ぎた!?」

 

慌て、素にもどったトール。

紅い魔槍はとんでもない威力でカッ飛んできた。

ランサーは本当に全身全霊で投げたのだろう。

そして相手が師の力の一端を模倣した時点で怒りながらも冷静に、決して侮らなかった。

投擲と同時に全力で離脱して行くのが見えた。

 

つまり。

凌がれた場合も視野に入れての退避行動。

 

「逃してたま、はわあっ!?」

 

スカサハの残滓が頭の中で警告する。

このままでは死ぬぞ?、と。

 

パリンパリンと軽い音を鳴らして。

幾重にも張り巡らせたトールの防御結界をまるで飴細工をアイスピックで突いたみたいに貫通して槍が迫る。

 

速度にして音速の2倍──マッハ2のミサイルみたいな投槍。

 

「ぜ、全身半竜化ああ!?」

 

先までの威厳は何処へやら。

トールは涙目で身体を本気の戦闘形態に移行し、竜鱗に覆われ、魔法のフルプレートアーマーも凌ぐ防御を固める。

 

が。

 

ガキイイーン、バキャッ!!

 

と、嫌な音を立てて鱗が砕けた。

槍の穂先は肉に食い込み、交差した両腕を貫く。

 

「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?」

 

噴き出す血。

竜の血は高濃度の魔力の塊。

それが同じく神秘と魔力の塊であるランサーの宝具を濡らし、放電するほどの魔力を散らす。

 

「テ、て、テレポートぉ!!」

 

バシュン!

と、一瞬にして姿をくらましたのはトール。

 

遠く離れた空中、油断なくそれをみながらも魔力を使い果たしたランサーは悔しげに呻き、舌打ちした。

 

「チッ…瞬間転移だと?ますますキャスターみてえな真似しやがるあのドラ娘…クソがっ!」

 

目標を失い、槍が戻る中。

脱力したランサーは未遠川にまで飛翔していた。

そのままなすすべもなく水中へと落下する。

 

バシャン、と。

あっけないほどの音を最後に。

竜と光の御子の対決は見送りとなる。

互いに傷を、負いながら。

 

トールが消えた街中には、赤いパトランプの光と、サイレンの音が今更ながらに聞こえ始めて、いた。

 

 

───────────

 

 

ところは変わり、衛宮邸。

その庭先の土蔵の中では。

 

一方的な蹂躙が行われていた。

それは、もちろん暗殺者が士郎をでは、ない。

 

突如現れた金糸の様な美しい髪をした剣士による蹂躙劇。

先ほどまで士郎を追い詰めていた暗殺者は哀れ狩る側から狩られる側へと転落した。

 

「く、クハ…魔術師殿…これは分が悪すぎる…こやつおそらくセイバー、あ!?」

 

ザン、と。

外套の端を切り裂かれて身をよじる仮面の暗殺者。

 

『仕方あるまい、退け、アサシン。』

 

己がマスターの指示に従って逃げようとするアサシンだが。

不運は重なるものだった。

 

飛び退いた軒先き。

着地したその場に…巨大な魔力が顕現したのだ。

 

「いったあああああいーーー!!?」

 

ドガアァン!!

と、爆発する様に顕現したのは巨大なドラゴン。

 

ランサーの一撃に這々の体で逃げだしたトールは痛みのあまり完全に人化を解いてしまっていた。

 

莫大な魔力を伴う爆発じみた転移に、思わず叫んだ際に漏れ出したトールの竜の吐息 (ドラゴンブレス)は。

空中に吹き飛ばされた哀れな暗殺者を、その身に宿した「虫」ごと薙ぎ払った。

 

「「あ。」」

 

間抜けな主従の声が重なると同時。

空中に迸った灼熱の吐息が吹き飛ばす。

 

こうして、完全に妖怪は潰えたのである。

 

『ば、ばかな…ワシの扱い、酷すぎィ!?』

 

給料低すぎィ?みたいな言葉が断末魔だった。

 

「な、ど、ドラゴン!?」

 

驚愕するセイバー。

血だらけの両手を竜体のままふーふーするトール。

 

シュールな光景に、思わず士郎は土蔵からふらつきながら出て、腰砕けになる。

 

「は、はは…なんだかわかんないが助かった…それに、トール?…おかえり。」

 

「シロウざああん、痛いですぅー!」

 

涙を浮かべる竜を見て、絶句しているのはセイバー、一人だった。

 

 

間桐、否。

マキリ・ゾォルケン、死亡。

完膚なきまでに──リタイヤ!

 

 




【あとがきてきなモノリス】

はいみなさま、大変、大変にお久しぶりでございます…ライダー/ギルスです。

もうね、ほんまにね。
最近書いては消し、書いては消しを繰り返していました。

書きかけていたこの話をシブの方にコメント頂きなんとか気合いで書き上げました。

このシリーズ何ヶ月放置していたやら。
オルタニキのシリーズすら停止中ではアレですが。

兎にも角にも待ってくださる方がいらっしゃるのはとても嬉しく思います、ありがとう、ありがとう。

頑張るよ俺…

そんなわけでちょっと無理矢理な展開ですが他のシリーズと共通するため、このシリーズの時空には転生した鯖勢が多数います。
実は槍ニキもいますけど、冬木にはいません、ので今回川へ落ちた兄貴とは同一にして別存在となります。

スカサハ師匠とは実は過去に出会っていたトール。
魔術その他諸々師匠から吸収しています、ので本気の本気ならマジで化け物。
今回は何故類感魔術を用いたかといえば、自らの魔力波動を撒き散らせばお父様他に気取られるから、です。
家出娘は複雑なのです。

…まあ実はバレてますけどね!
終焉帝、親バカだと思う。
すくなくともうちの終焉帝は親バカ。

そんなこんなで、短めですが更新でした!
それでは次回更新でまたお会いしましょう!

しーゆー!


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第11話 「竜たちの邂逅」


竜因子持ちが二頭と一人。
説明回?


 猛竜注意!

 

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがありますまた、しばらくシリアスが続きます。

合間合間におバカな話は挟みそうですが。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

 

────────────────

 

 

夢だ。

あ、これ絶対夢だな。

 

…昔みたいな魂持ってかれる系じゃ無いけど。

 

見えるのは魔方陣、召喚サークル。

眩く輝く金色の円環。

 

…金色…これは、強大な霊基の予感!?

 

え?

バーサーカークラス?

 

「………Arrr……Arrrrrrrrrr!」

 

ランスロットォ!?

 

いや、おまえもう12人来たダロォ!?

来すぎだから!!

もういいからあ!?

 

え?

13人揃ったからすごい技が使える?

 

コクコクと頷く13人のランスロット。

一人だけセイバークラスである。

 

何、男の方の我が王から借りた?

 

手にした剣にはなにやらかっこよく変形する鞘が。

 

鞘ごと聖剣を手前に構えるランスロット(セイバー)。

 

『シールサーティーン、ディシジョンスタート。』

 

なんかその女性の我が王の声じゃ無いこれ?

 

『承認──

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【バーサーカー】

 ランスロット【セイバー!!】』

 

待て待て待て待て!?

コレは世界を救う戦いである(CV置鮎)、じゃねーから!

 

独裁聖剣 (Arrrrrrrrロン…dieト)ーー!!』

 

あれ、なんか誰かとパス繋がってないこれ?

てか、13人同一人物とかおかしいからね!

 

一人円卓かよ!

 

承認の意味は!?

あ、だから独裁政権…いや、聖剣だって?

 

駄洒落かよ!

 

ていうかいつもの単体宝具がぶっちらばって全体宝具化しただけじゃねーか!!

 

ゔぉ〜〜ぃ!?

 

アロンダイトが光り、刃が弧を描く中。

視界は、フェードアウトしていった。

 

 

────────────────

 

 

【竜は円卓の夢を見るか】

 

 

 

「円卓の騎士ぃぁ!?」

 

ガバァ!

と。

 

焦りながら布団から飛び起きる。

ん。

んんん??

 

見慣れた衛宮亭の一室、しかし何かが違う。

そう、そうだ。

 

ちょこん、と正座したその女性。

何故か、シロウさんの隣に。

 

「よかった、目が覚めたかトール、ドラゴン姿から人型になった途端に気絶したから心配したぞ?」

 

ああ、そうか私は魔力の急激な解放とその魔力の痕跡を広く拡散しないため、傷の回復とあれこやこれやに魔力を使いすぎて…

シロウさんに抱きついて安心して気を…うん、役得でした、ってそうじゃない。

 

いつもと同じ優しい笑みを浮かべてそう語りかけてくるのは愛しい人。

衛宮士郎その人に違いないのだ。

 

ただ、その隣に正座した人物が問題なわけで。

青いスカートドレス姿にはなんとなく見覚えがあった。

そうだこの人は、──では?

 

「……私、今何を言いました?」

 

「……我が王とか、なんとか?」

 

「……私は竜種を部下に持った覚えはありませんが…シロウ、彼女は確かトール、と言いましたか。」

 

「あ、ああそうだ…トール、彼女はセイバー。俺をアサシンとやらから救ってくれた恩人だ。」

 

「いえ、私は貴方の剣だシロウ。」

 

目の前の美少女はまるで芸術的な人形の様な美しさだった。

金糸の様な柔らかな髪に翡翠の様な美しいエメラルドグリーンの瞳。

華奢な体つき、しかし無駄の無い肉付きをしたその手足は最低限の筋量ながらも引き締まっている。

 

美しいだけではない、戦士のソレだ。

 

それに何よりその身体から発せられる魔力。

己ほどではないが現代の魔術師には到底有り得ない魔力であり、またその質も。

 

「…ご同輩、ですか貴女?」

 

「はい、私にも竜の因子があるのは察しの通りです…本来ならシロ…いえ、未熟なマスターに真名を晒す気はまだありませんでしたが…貴女が味方であるならばよいでしょう。」

 

味方ですよね?と改めて確認をする美少女。

 

「…事実でも未熟と言われるのはやっぱりこたえるなあ。」

 

「いえ、未熟というには些かおかしいのですが…普通竜種を側仕えなんかにできませんよ…いかなる王にも容易にはできなかった事ですからね…何故その魔術の腕前でそんな奇跡が。」

 

「そりゃ、側仕えじゃなくて友「妻」達だからな。」

 

「えーー!?」

 

「いや、いつ妻になったんだよ!」

 

「え、それはこの家に置いて貰ったその時にでは?」

 

「ハウスキーパーだ、ハウスキーパー!」

 

「……なるほど、わかりません。」

 

「…おしかけにょぼう?」

 

ひょこ、と出てきたカンナがそう付け足す。

 

「…いや、カンナそれも違うからな。」

 

「照れなくてもいいじゃないですか、このこのぉ。」

 

「やめろ、脇腹をつつくなトール!?」

 

「ハウスキーパー、ようは側仕えでは?」

 

「いや、側仕えだと部下とか下働きだろ…トールやカンナは…ハウスキーパーみたいなことはして貰ってるけど家族みたいなものだから、さ。」

 

桜や藤姉もな。

と付け足す照れ顔のシロウさん可愛い。

 

「尊い…尊い…!」

 

「…あの、トール…帰ってきてください話が進みません。」

 

ちょっと遠慮がちなセイバーの声にはっとなる面々。

 

「あ、わるいセイバー。」

 

「そうですね…シロウさん可愛いです。」

 

「いや、なんでさ。」

 

 

閑話休題 (それはさておき)

 

 

「…先程シロウには簡単に説明をしましたが、私はこの地の聖杯により呼び出された英霊、サーヴァントです。」

 

「英霊…サーヴァント…人類というカテゴライズにおける最高峰のゴーストライナーじゃないですか…それが使い魔?ありえませんね…けれど貴方のその力は…衰弱した様な状態ですが確かにそうだと言われても納得できそうなものだとはわかります。」

 

「流石に竜なだけあって詳しいな、トール。」

 

「伊達に長生きはしてませんよ、それに他のサーヴァントとも不本意ながら交戦済みですから…まさかこの上、シロウさんが土蔵で襲われているとは思ってませんでしたけど。」

 

「ええ、概ね指摘の通りです。私は確かにマスターであるシロウが魔術師としては未熟故に魔力不足から弱体化していますし、本来なら人間が英霊を使役するなど不可能に近い。」

 

しかし、とセイバーが俺の手の甲を見た。

双刃の剣にも見える赤い痣。

 

「その赤い聖痕は令呪と呼ばれる大魔術式の一部であり…サーヴァントを統べるための3度きりの絶対命令権であり、奇跡を起こす触媒でもあります。」

 

「奇跡?」

 

「はい、限定的ながら魔法にも近しい現象を起こしたり、我々サーヴァントをパワーアップする事もできます。」

 

「ふむ。」

 

「例えば、今この場に来いと言われればたとえ万里が離れていようと空間を捻じ曲げてでも今すぐに馳せ参じることが可能になります。」

 

「…そして、いかなる不本意な命令であれ令呪を用いて強制されれば従わざるを得ません。ただしあまりに意にそぐわない場合などはサーヴァントも抵抗しますから、一画ではなく二画必要となる事もあります。」

 

「なるほど…そして一画は残さなければいけないわけですね。」

 

「え、なんでだ?」

 

「英霊とは人を遥かに凌駕する存在です、それが従う理由は聖杯による願いの成就──そして、令呪による絶対命令権があるが故です、どんなに逆らおうと、二画もあれば願いの否定すら強要できるから…です。」

 

ゴクリ、と唾を飲む音。

 

「セイバー、君は俺を助けてくれた…それは令呪があるから、契約があるからか?」

 

それがなければ、俺を殺す事さえ?

 

「…ふ、心配はいりません、私は貴方の剣だ、その担い手である貴方を害しようなどとは思いません。」

 

「…そうですか、けれどセイバーさん、どんな理由があれ、万が一にもシロウさんに剣を向けた時には、私が許しませんからね。」

 

トールが、その瞳を竜のそれに戻して睨む。

 

「…シロウがマスターとして、共に正しく聖杯を求めて戦うのであればそんなことにはなりませんよ、トール。」

 

「…なら、いいですけど。」

 

「ああ、それと話が脱線しましたが。」

 

改めて自己紹介を、とセイバーが切り出す。

 

「…トール、今はただのトールです…あなた方英雄という人種からすれば竜なんて倒すべき悪でしょうが…まあ、シロウさんの力になるっていうのなら我慢します、でもシロウさんに色目を使うのは禁止ですからね、あとシロウさんたまに見惚れるのやめてください、すごく嫌です私と言う妻がありながら!?」

 

「ぶっ、いや、待て、だからトール、おまえ妻じゃないだろ!」

 

「じゃあ許嫁でいいので。」

 

「いーのでー。」

 

と、ひっつく竜二頭。

 

「はあ…あ、セイバー、こっちの小さい子はトールの知り合いで、やっぱりドラゴンのカンナカムイ、カンナだ。」

 

「かんなー、よろょろ〜〜。」

 

「…どこでそんな適当な挨拶覚えてきた。」

 

「んー、たいがあ?」

 

「藤姉か…。」

 

ため息をついていると、セイバーがクスクスと笑いながら佇まいを正した。

 

「…改めて、マスター…衛宮士郎、私はサーヴァント、セイバー…あの土蔵で召喚されたその時より貴方の剣となり共に戦うものだ。」

 

シュ、と。

一瞬にしてその身体が銀色の鎧に覆われる。

その姿は正しく騎士だ。

凛として、強く、美しい戦場に咲く花。

 

「──貴方と、トール、カンナカムイの力を信じて明かしましょう…我が真名はアルトリア・ペンドラゴン…あなた方が認識するところのアーサー・ペンドラゴンです。」

 

ブワ、と。

その手に握る不可視の何かが振り抜かれ、次の瞬間眩い金色を露わにする。

 

それは剣。

何より眩い、幻想の中に語られた金色の刃。

ブリテンに伝わる人類史上、知らぬ者はいないほどに有名な聖剣の代名詞。

 

「え、え、えっ、アーサー、アーサー王!?」

 

トールが流石に驚き、俺はその剣に見惚れ、釘付けになっていた。

 

「はい、この剣…エクスカリバーがその証。」

 

 

間。

 

さらに間。

 

 

「「う、うええーーーー!?!?」」

 

 

俺とトール、二人の驚愕の叫びが轟いたのだった、まさかアーサー王だなんて思ってなかったからな…。

 

 

────────────────────

 

【擬・魔力供給】

 

 

あの驚愕の事実から役四半刻(30分)。

トールがランサーを退けたこと、その真名がクランの猛犬、クー・フーリンであった事。

また、聖杯戦争におけるアサシンはごく僅かな例外を除き山の翁と呼ばれる代々の暗殺教団の教主である事など情報を交換した。

 

セイバーは何故アサシンの事など知っていたのか謎だが、聖杯からもらう知識のうちなんだろうか?

 

そして、ランサー、アサシン、セイバー以外にはエクストラクラスと言う例外がいる可能性を除けば残っているのは、弓の騎士アーチャー、騎乗兵、ライダー、魔術師、キャスター、狂戦士、バーサーカーがいるらしい。

 

七騎のサーヴァントと七人のマスターの殺し合いの果てに決まる聖杯の争奪戦。

それが、聖杯戦争。

 

「話を聞いてわかりましたが、校庭でシロウが出くわしたのはランサー、それにトールが僅かだけ交戦したと言う銃剣使いはアーチャーでしょう。」

 

「そっか、銃も弓兵に入るのか。」

 

「ええ、そしてランサーは暫くは表に出ては来ないでしょう、傷を癒すまでは潜むと見ていい。」

 

「……なあ、セイバー。」

 

「なんですか?」

 

「やっぱ殺し合わなきゃだめか?」

 

バカなことを聞いていると思いながら、言わずにはいられなかった。

 

「…話を聞くにシロウ…貴方一度死にかけたのでしょう、それを何を悠長に…次は生きていられるかわかりませんよ?」

 

「かもな、けれど…だからって殺し合わなきゃならない理由にはならない、危険だからって相手を殺していい理由にはならないよ。」

 

「シロウ…それは美徳だが、賢いとは言えない、これは戦だ…一騎当千の英霊と、人の道理を外れた魔術師達のバトルロイヤル…甘いことを言っていれば死ぬのは貴方になってしまう。」

 

「…セイバーさん、私達を忘れていませんか?私はサーヴァントとも戦えます、言うならこちらはサーヴァント二騎を有しているわけですから。」

 

「いや、しかし私も不完全だ…トールだけをあてにするわけにもいかない…宝具、エクスカリバーを撃てるとして一度が限界でしょう…2度目を撃てば魔力の枯渇で私は消えるしかない。」

 

「……ううん、うーーん。」

 

「どうした、トール…具合でも悪いのか?」

 

「トールさま、便秘?」

 

「カンナ、おだまりやがりなさい、違いますよ、違います…本当は嫌なんですけどね…セイバーさんの魔力不足…補えるかもしれませんよ?」

 

「…ほ、本当ですか、どうやって?」

 

セイバーが思わずと言った風に身体を乗り出して──って近い近い!

 

「何故シロウさんを挟むようにして乗り出してくるんですか、わざとか!あざといのか!ヒロインの座は渡さない!?」

 

「いや、落ち着けトール、そうじゃない。」

 

一瞬、セイバーの綺麗な髪と女の子らしい甘い香りにくらっとしたのもこの茶番劇で吹っ飛んだ。

 

「で、その方法って?」

 

「それは、ずばり────」

 

「ずんばりずばり?」

 

カンナが間でふわふわと空中を舞いながら相槌をうつ。

 

「料理、です!!!」

 

は?

 

「いや、たしかに兵站は重要ですが食事で得られる魔力量は本当にごく僅かですよ、とても状態を改善する程には…」

 

「まっかせなさい、私に良い考えがある!」

 

それ、なんか心配な台詞だな、特に司令官的な人が言いそうで。

 

そして。

セイバー歓迎、もとい、魔力供給の為に。

深夜のどらごん料理劇場が幕開けたのだった。

 

 





【あとがき的なモノリス】

はい、またも間が空きました。
引っ越し、環境が変わりなかなか時間を作れなかったライダー/ギルスです。

まあ、気力も体力もついていってないのでやはりオルタニキを集中して書いていた時みたいなペースは厳しそう。

まあ、ゆっくり書いてますからたまに上がってたら読んでやってください。
感想とかくれたら超喜びます。

さて、セイバーとトールの邂逅。
魔力不足をどうするの?
ならトールに解決してもらいましょう。

と言うわけで次回はトールの三分クッキング?
開幕です。

乞うご期待?

「まよねーず?」

「カンナ、それ以上いけない。」

そういやFGOの強化に必要なのは…Q──

ガシャアン!(何かがぶつかる音


トール「と言うわけで、筆者にかわりまして、私から…皆さま次回更新まで、しーゆー♡」

カンナ「しーゆーぅ?」

多分続く。


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