メールペットな僕たち (水城大地)
しおりを挟む

モモンガの楽しい毎日

タイトルの通りの、【ユグドラシル】の頃のモモンガさんの楽しい毎日の話。





モモンガこと、鈴木悟は最近【ユグドラシル】以外に【リアル】で楽しみが出来ていた。

いや、正確に言えばこれも【ユグドラシル】の延長なのだと言ってもいいだろう。
簡単に言うなら、ギルメンとのメールのやり取りにあるソフトを導入してから、メールのやり取りが今まで以上に楽しくなったのだ。
そのソフトとは、ヘロヘロさんが百年以上前にあったと言うものを、身内のやり取りのみに限定して現代向けに組み直したメールペットソフトだ。

以前、ペットロスでログイン出来なくなったギルメンを見ていて、それならギルメン間でのみ使えるペットソフトはないか探した結果、見付かったのがこのソフトだったのである。

これなら、きちんと管理された電脳空間で飼育できるように手筈を組めば、餌のやり忘れや病気、寿命で死なせる心配なく飼えるだろうと言うのが、ヘロヘロの主張であった。
確かに、この方法なら全員が毎日メールのチェックをするこの時代で、餌を与え忘れたりする心配もなければ、病気や寿命も心配する必要はないだろう。
ヘロヘロの主張を、全面的に支持したのはかのペットロスのギルメンを中心にしたメンバーで、彼らの熱意によって他のギルメンからも支持を受けて受け入れられた。
そこから更に打ち合わせした結果、ギルメン全員で自分の作った(協力して作った場合は、話し合いで)それぞれのNPCがそのペットになる事になったのである。

ソフトウェアの容量の関係で、全員が二頭身のディフォルメキャラになったのだが。

当然、モモンガの手元に来たのは自分がデザインした宝物殿の領域守護者であり、卵頭に軍服のパンドラズ・アクターである。
最初こそ、割り当てられたそれを見て微妙な気持ちになった。
その頃には、自分が作り出したNPCがその場のノリと勢いで自分の理想を詰め込みすぎて、色々な意味でおかしくなっている事に、何と無く気付いていたからだ。
しかし……今は違う。
【ユグドラシル】を起動し、何らかの用事でナザリックの宝物殿に訪れた際に顔を合わせると、一定のコマンドで地雷が発動する事もあって色々と思う所がある相手なのだが、このメールソフトのパンドラズ・アクターは違ったのだ。
ヘロヘロの説明では、性格部分の基本設定はそのままだが、それ以外は赤ん坊と一緒で自分の手で育てて教育していく事が出来るらしい。
一種の育成ゲームとして捉えれば、そこから先は別の楽しみが出来たのである。

ナザリックのNPCであるパンドラズ・アクター本体とこのメールペットをリンクさせて、設定以外の部分で何かしらの変化をさせられないかと、何と無くそう考えたのだ。

何せ、目の前の相手は二頭身の可愛らしいディフォルメキャラなのだ。
くるりと黒く空いた二つの目と口だけしかない卵顔だが、その感触はもちもちとしていて柔らかそうだし、短い手と足を一生懸命動かし何かしている姿は、どこか微笑ましくて仕方がない。
とても、宝物殿に居るアレと同じ黒歴史だなんて思えなかった。

更に、その外見に似合った愛嬌のある仕種を見ていると、ついついほっこりとした気持ちになって、仕事でささくれだった心が癒されてしまうのである。

それに、この外見でなら多少の仰々しい言動も可愛らしく映って、許容できない範囲ではない。
もちろん、どう見てもやりすぎの場合はそれとなく叱るのだが、その時は凹んでいる姿がとても【可哀想で可愛いらしい】状態になり、暫く隅に移動したかと思うと身を丸めるように座り込んで、はっきりと見て解る様に落ち込んでいる状態を示すのだ。
しかも、時折こちらの様子を見て【ごめんなさい】と言わんばかりの仕種を繰り返していて。
緩しの言葉を告げつつ、出来るだけ優しく軽く頭を撫でてやれば、パッと嬉しそうな声を上げて立ち上がる様は、小さな子犬を思わせる仕種だった。

そんな姿を見たら、本当に小さな子供を相手にしている親のような気分になって、次第に愛着がわいてきたと言うべきだろうか。

一先ず、その一連の動きはモモンガの中では【パンドラズ・アクターが見せる可愛い仕種】の不動の第一位なのだが、余り見る機会は少なかったりする。
何故なら、その一連の動きは叱った時のみ見られるものだからだ。
あれで、パンドラズ・アクターは学習能力が高い。
元々、メールペットと言う育成ソフトだけあって、ちゃんとこちらの意図を学習する機能も付いている。
ある程度まで叱れば、叱った事に関してはちゃんと学習していて、繰り返したりしない素直ないい子だったりするのだ。
だが、それではあの【可哀想で可愛い】姿が見られないので、普段は行動の自由を少しばかり緩めて好きにさせている。

そうして、思い出したかのように別の事で羽目を外し過ぎた所で叱る事で、叱られた事に落ち込む姿を存分に楽しんでいる悪い親だった。

多分、この事を友人たちに話したら苦笑される可能性は高いだろう。
それ位の自覚は、モモンガにもある。
だが、これも仕方がないと思って欲しい。
【ユグドラシル】では、決まったルーチンでの行動しかしないNPCよりも、このメールペットたちの方が感情豊かに見えるのだ。
こんな風に、自分の言動に対して喜怒哀楽を見せられたら、構い倒したくなるのは当然だろう。
結婚どころか恋人もいない身の上で、子育て経験するのはと思わなくもないが、手持ちの端末に登録してあるのであちこちどこでもメールソフトを立ち上げて使える事も、こうして余計に構う要因だった。

それに、メールのやり取りも今まで以上に楽しい。

ギルメンにメールを送る時は、二頭身のパンドラズ・アクターが一生懸命に両手でメールの入った封筒を抱えて、目的の相手のメールサーバーまで駆けていくのである。
お出掛けする前に支度をする姿や、「行ってきます!」の挨拶をする姿、そして帰ってきた時に満面の笑みで「ただいま帰りました!」と告げる姿は、今まで家族が居なかったモモンガに……鈴木悟に、小さな家族が出来たように思えるのだ。
お使いから戻って来た所を出迎えるべく、自宅の仮想サーバー内に降りて三頭身になっている【ユグドラシル】の自分のキャラで撫でてやるか、出先で3Dタッチ専用グローブを付けて撫でてやれば、それは嬉しそうに笑う姿が小さな子供の様でとても可愛いと思う。
更に付け加えるなら、仮想サーバー内なら臭いや味覚はないが、その代わりに触覚はそのままであるので、頭や顔を撫でたりハグしたりしていれば、その見た目通りの柔らかさを感じられた。

ただし、自分達から彼らに対して出来るのは、あくまでもペットを愛でる意味での額や頬にキスまでらしいが。

家族に対して、親愛の情を示すだけの目的なら、ハグまででも十分だと俺は思うのだけれど、一部のギルメンはそれでは足りないと主張したらしい。
性的な意味を持たせそうな場所には、キスをしたり触れたり出来ないのは当然だと思うし、その話を聞いた時には本気で呆れたものだ。
まぁ、自分はパンドラズ・アクターを息子として育てているから、別に関係がない話なのだが。

それ以外でも、ギルメンたちからメールが来るのも楽しい。

まず、それぞれの手元にいるキャラたちが自分の元まで一生懸命にメールを届けてくれる姿が可愛くて、見ていてとても楽しいのだ。
何というのか、基本の性格設定はそのままに、育成されている部分が持ち主の性格の影響を受けているらしく、どこか似ていて見ていて楽しいし、小さな身体で一生懸命に動く仕種が微笑ましく思えて仕方がない。
ウルベルトさんの所のデミウルゴスは、そつなく自分に挨拶をしてから手紙を渡してくれるし、パンドラズ・アクターが居ればそのまま暫くチェスをしたりして遊んでから帰っていく。
もてなしにと、用意してあるストックからお茶やおやつを渡してやると、はにかんだようや笑みを浮かべながら受け取り、美味しそうに食べていく。
そして、来たときと同じ様に挨拶をしてから帰っていくのだ。

もしかしたら、【ナザリック】のデミウルゴスも、自分の意思で動けたらこんな感じなのだろうか?

建御雷さんの所のコキュートスの場合は、訪問の挨拶の仕方とかが何となく前に建御雷に見せて貰った【時代劇】に出てくる武士のような雰囲気だった。
もしかしたら、コキュートス用の礼儀作法の学習ソフトとして、建御雷さんが使っているのかもしれない。
その影響なのか、パンドラズ・アクターとの遊びもチェスから剣道の練習に変わるし、訪問時にこちらが提供するものも、昆虫種の影響からなのかお茶とおやつよりも甘い蜜の方を好むので、用意するのは蜂蜜やメープルシロップだったりする。

色々と堅苦しい物言いをする事もあるけど、それもコキュートスの個性だと思って楽しんでいる。

アウラとマーレの二人(茶釜さんのごり押しで双子揃って茶釜さんのメールペットだ)は、いつも二人揃ってやってきて、とても賑やかだと言っていいだろう。
元気いっぱいのアウラと控えめで大人しいマーレが来るだけで、何となくデミウルゴスやコキュートスが来た時よりも、賑やかな感じになった気がするのだ。
やはり、尋ねてくる人数が一人じゃなく二人だから、その分もにぎやかなのだろうか?
二人はモモンガの所に来ると、最初にきちんと挨拶してから自分の仕事であるメールをモモンガに渡してくれるのだが、その後二人してこちらを見上げながら【褒めて?】とキラキラ目を輝かせるので、ついつい二人の頭を撫でてしまうのを止められない。
そうして、モモンガが頭を撫でてやると満足そうな顔をして、パンドラズ・アクターとささやかなお茶会をしてから帰っていく。

どうも、【ナザリック】のNPCの二人も子供の外見だからか、ついつい仕種が微笑ましくて仕方がないから甘やかしちゃうんだよな。

ペロロンチーノさんの所のシャルティアは、【ナザリック】のNPCとしてのその持ち前の性癖からなのか、必ず最初の挨拶の後にモモンガにハグをして行くのが通例だった。
最初にされた時こそ面食らったものの、彼女なりに親愛の情を示している事が判っているので、モモンガも悪い気はしていない。
それに、抱き付いてきた所をモモンガが頭を撫でてやれば、満面の笑みを浮かべながら満足して離れていくので、モモンガも彼女がメールを運んでくる際の恒例行事として受け入れている。
パンドラズ・アクターとも、まるで自分とペロロンチーノの様に仲が良い。
メールを運ぶ仕事の後、二人で並んでソファに座りながら楽しそうに話をしたり、遊んでいたりする姿はとても微笑ましくて、ついついまた頭を撫でてやりたくなる位だから、このまま仲良くして貰いたいものだ。

そして……そんな風に割と仲が良いメールペットの中で、唯一と言っていい位に問題行動をしているのが、タブラさんの所のアルベドだった。

彼女は、タブラさんからのメールを届けに来たらモモンガに引っ付いて離れなくなり、いつまでもモモンガの所に居座ろうとするので、追い返すように送り出すのが常なのである。
しかも、モモンガが不在の時にパンドラズ・アクターが居ると、何やら嫌みを言ったり意地の悪い事をしてきたりすらしい。
割と忙しい時期に、仕事の空き時間を見付けてメールサーバーを確認して、彼女が来た証拠として自分宛のタブラさんからのメールがあった場合、パンドラズ・アクターがたまに隅の方で涙目になっていじけているので、ほぼ間違いないと思う。

これに関しては、似たような案件が茶釜さんの所のマーレ相手で発生しているらしい。

なので、ギルメンを円卓の間に集めてお互いにメールペットのアルベドの行動を確認してみたところ、似たような話が幾つも上がってきた。
改めてタブラさんに問い詰めたところ、どうやらNPCとしての彼女の設定が暴走しているのではないかと言うのが、彼の推測である。
それで、改めて彼女の設定を確認してみたら……あの長文設定には参った。
まぁ、最後の【ちなみに、ビッチである】には呆れさせられたのだが。
そして、その設定こそが暴走の原因だろうと全員が思ったのだが……この部分を変える事にタブラさんが猛烈に反対した為、未だに改善の兆しが見えない。

まぁ、これ以外にも色々と問題がある部分あるが、モモンガにとってはそれでも楽しい毎日を暮らしていた。




こんな感じで、ゆるゆるなギルメンとメールペットになっている守護者を筆頭にしたNPCたちの、のんびりほのぼのな話が浮かんだので書いてみました。
既に、pixivでは幾つか投稿済みなのですが、こちらはあちらから移動する際に加筆修正してあります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ペロロンチーノの至福の毎日

毎回視点が変わります。


ペロロンチーノの朝は、他のギルメンに比べて割とゆったりしている。
彼は、あらゆる年代やジャンルのエロゲ好きが高じて、気付けばエロゲ専門のシナリオライターになっていた。
もちろん、そこまで有名シナリオライターになっている訳ではない。
それこそまだ駆け出しの身ではあるのだが、それでもそれを仕事にして食べていける位には稼げている。
相変わらず、姉には仕事に絡んで苦労しているのだが。

そんなペロロンチーノの朝の日課は、端末でメールの立ち上げから始まる。

メールを立ち上げると、そこでは【ユグドラシル】において【己の嫁】と公言して憚らない可愛い可愛いシャルティアが、まだすやすやと眠っている。
なので、ペロロンチーノは彼女が目を覚ますまで見守るのを毎朝の楽しみにしていた。
特に、完全に覚醒する前の寝惚けているシャルティアは、とても可愛いからだ。

ペロロンチーノにとって、今は朝から至福の一時を過ごしている。

彼が、この至福の時間を得られたのは、ギルドメンバーの一人が、飼っていたペットが死んだ事によって、ログインしなくなった事が起因している。
そんな彼の為に、仲間たちが代わりになるようにと電脳空間で飼えるペットのような存在として作り上げたのが、このシャルティアたちメールペットなのだ。
今まで、ログインしてナザリックの第三階層の死蝋玄室まで赴かなければ、彼女に会う事は出来なかった。
だが、このメールペットは違う。
何時でも何処でも、端末などのきちんと必要なものを揃えれば、可愛いシャルティアに逢えるのだ。

ペロロンチーノにとって、これ程幸せな事は無いのだろうか?

朝のゆったりとした時間は、シャルティアの寝起きを待つ為にのんびりと過ごしているものの、ペロロンチーノが起きるのは特に遅い時間帯ではない。
自宅で仕事をするペロロンチーノは、出勤する時間がないのでそれほど早く起きる必要はないのだが、それでもそれなりに早いと言われる時間帯に起きる。
理由は、シャルティアの寝起きの姿を見る為もあるが、他にも理由があった。
わざわざこうして朝一番に起きる理由は、友達であり仲間である【アインズ・ウール・ゴウン】の面々から、ペロロンチーノへのメールが来るのが、この朝の早い出勤前の時間帯か夕方の終業後だからだ。
仕事柄、朝の時間帯は自由なペロロンチーノとは違い、彼らが起きて出勤する時間帯はかなり早い。

だからこそ、そんな彼らから来るメールを出来るだけ起きていて、彼らのメールペットを出迎えたいと思う訳で。

シャルティアも、その頃には目を覚まして身支度を終わらせているので、お出迎えには万全の態勢が出来ていた。
まず、朝一番にやって来るのが多いのは、モモンガさんの所のパンドラズ・アクターだ。
礼儀正しく、軽くノックすると扉を押し開いて軽く頭を下げると、いつものように笑顔で挨拶の言葉をのべる。

「おはようございます、ペロロンチーノ様。
朝早くからお邪魔いたします。
モモンガ様より、昨夜の件のお返事メールをお持ちいたしました。」

ペロロンチーノは、割とメールを夜のログアウト後に出すことが多く、律儀なモモンガさんはその返事を朝一番に返してくれるからだ。
だから、朝一番にメールを持ってくるのはパンドラズ・アクターが多かった。
シャルティアとも仲が良いパンドラズ・アクターは、毎朝のようにモモンガさんからのメールを持ってくると、シャルティアのリクエストがあれば、二重の影(ドッペルゲンガー)のスキルを使ってモモンガさんに姿を変えて見せてくれる。
それを見届けると、シャルティアは嬉しそうにパンドラズ・アクターと並んで座って本を読んだり、お喋りしたりしているのだ。
そんな二人の姿は、とても微笑ましい。
もちろん、変化しない日は遊ばない訳じゃない。
変化しない日は、二人でくるくると楽しそうに歌ったり踊ったりしている。

パンドラズ・アクターの姿の違いで、二人の遊び方が違う理由は教えてくれないが、まあ楽しそうだから構わないだろう。

次のメールを持ってくるのが早いのは、仲が良いウルベルトさんの所のデミウルゴスだろうか?
デミウルゴスも、パンドラズ・アクターと一緒で礼儀正しいと思う。
丁寧に頭を下げながら、訪問の挨拶を皮切りにご機嫌伺いまで、それこそ流れるように述べる姿をウルベルトさんが見たら、【流石は俺のデミウルゴスだ!】と、諸手を上げて喜びそうな気がする。

あの人、メールペットを含めて【デミウルゴス】に関しては、正直言ってかなり親バカだし。

シャルティアは、デミウルゴスがメールをもって来ると、何やら図鑑を片手に持って嬉々として出迎える事が多い。
ペロロンチーノは、そんなものを与えた記憶が無いのだが、いつの間にかシャルティアの所持品として、部屋の中にあった図鑑だ。
一体、どこから入手してきたのか良く判らないものの、それを処分する事は出来ない。
何故なら、それを広げてデミウルゴスと一緒に見ている姿は楽しそうだからだ。

その図鑑が、【世界の拷問大百科】と銘打たれているのは、俺の見間違いだと思いたいけど、間違いじゃないんだろうな……

他にも、何人かメールを持ってくると、朝の受け取り分は終わるので、今度は既に用意しておいた別の相手のメールのお使いを、シャルティアに頼む。
この時間帯にお使いを頼むのは、ホワイトブリムさんとか、死獣天朱雀さんなどの割と時間帯を問わずに忙しい人たち相手だ。
忙しいからこそ、この時間帯にメールを送ると、時間の合間を見てメールを読んで返事をくれるので、わざとこの時間帯にしている。
他にも、メールを出す時間帯を選ぶ人は何人かいるので、それなりに気を付けるのは手間が掛かるが、可愛いシャルティアの為だと思えば気にならなかった。

そう、メールを受取人であるギルメン達に直接渡す事が出来ず、手紙を置いて悲しそうに帰ってくるシャルティアの姿を見るくらいなら、この程度の手間など惜しくないからだ。

端から見て、呆れるくらいに俺はシャルティアを溺愛している自覚は、幾らでもある。
だって、可愛くて堪らない理想の嫁を更に自分の手で育成出来るんだぞ?
何か気になる事があった時に首を傾げる姿も、俺が教えた間違いだらけの郭言葉を使う姿も、俺を慕って顔を見せるとまずギュウギュウと甘えるように抱き着いてくる姿も、全部可愛くて愛しいんだから仕方がないだろ!

可愛いシャルティアには、いつも笑顔で居て欲しいんだから、その為の手間は惜しんじゃ駄目だよな。

夕方の時間帯が近付くと、今度は武御雷さんの所のコキュートスが良くやって来る。
これは、武御雷さんの仕事の終わり時間の都合らしい。
ログイン前に、俺にその日のクエストの協力を頼みたい事がある時に来る場合が多いから、彼の訪れはその前触れとして認識している。

コキュートスとシャルティアは、俺のメールサーバー内に設置した一番広い部屋で簡単な手合わせをしている事が多いから、お互いに手合わせ相手として認識しているんだろう。

以外に、時間帯を問わずに短いメールを持ってくるのは、姉ちゃんの所のアウラとマーレだ。
姉ちゃんの仕事も、それこそ分刻みの場合が多いから、俺に対して罵声に近い内容のショートメールばかり送り付けてくるのは、ストレスを発散しているんだと思う。
なんと言っても、姉ちゃんの仕事は人気商売だし、対人関係のストレスは半端ないのは知ってるから、それ位の事は甘んじて受け入れてる。
もちろん、俺は姉ちゃんに直接それを言うつもりはないし、姉ちゃんの方も俺に何も言ってこない。

こればかりは、姉弟ならではのやり取りだからな。

まぁ、それはさておき。
姉ちゃんと俺の付き合いはそんな感じだから、アウラとマーレとシャルティアも周囲が思うよりも割と仲が良い。
一生懸命、俺の所まで毎日何度も往復させているのは、ちょっとだけかわいそうな気もするけど、頑張って運んでくる二人の姿は可愛いので、つい頭を撫でちゃうのは仕方がないよな。
すると、シャルティアがやきもちを妬いて拗ねちゃうんだけど、これはお仕事頑張っている二人へのご褒美だから諦めて欲しい。

多分、同じことを姉ちゃんもシャルティアにしているだろうし。

どうも、俺が電脳空間に降りて居る前だと、設定を重視して仲が悪い振りをするみたいだ。
でも、実際に中が悪い訳じゃない。
俺が電脳空間に降りなかったり、シナリオライターの仕事中で忙しかったりして、俺のメールサーバー内で三人だけの状態になると、姉弟みたいに仲良くわちゃわちゃとお茶会をしているんだ。
こっそり、そんな彼女たちの様子を覗いて見ていると、本当に仲が良くて三人とも可愛くて仕方がない。

三人が仲良くしている姿を、姉ちゃんも同じ様にこっそり見てるのかな?

さて……こんな風に仲が良いメールペット達なんだけど、ここで一人問題児が居るんだ。
多分、ギルメン全員のメールペットが何らかの被害を受けているだろう、問題時の名前はアルベドと言う。
彼女は、タブラさんの所のメールペットなんだけど、彼女の元になった【ナザリック】のNPCが創造主であるタブラさんの趣味に凝り固まった設定を文字数限界までの細かな部分まで書き込まれているせいで、色々とそれに振り回されているんだ。
いや、違うか。
彼女が振り回されているのは、タブラさんが設定文の中につけた最後の一文だ。
あの一文のせいで、彼女は周囲の迷惑や注意をものともせず、メールペットの役目としてギルメンたちにメールを届ける度に、届け先のギルメンに自分への愛を求め、こそこそと彼らのメールペットに地味な嫌がらせをして泣かせているらしい。
うちのシャルティアとは、正面切っていつも喧嘩してるけどな。

いつも、俺に抱き着いてくるアルベドを排除しようと頑張るシャルティアは、滅茶苦茶可愛い!

「ペロロンチーノ様に抱き付くなぁ!!」

って、必死に俺からアルベドを引き剥がそうとするシャルティアの姿を見たら、嬉しくて身悶えるね。
ただ、そこからの暫くの間続く二人の喧嘩は、正直言っていただけない。
だけど、アルベドが帰った後にまるで「消毒」だと言わんばかりに抱き付いて離れない姿を見たら、あまりシャルティアを叱れないんだよね。
だって、本気で半泣きになりながら離れないんだもん。

姉ちゃんの所のマーレも、彼女の被害に遭っているらしいし……やっぱり、タブラさんにはきちんとアルベドの言動に対して、それ相応の対策を講じて貰わないと駄目かもしれない。

夜になると、【ユグドラシル】にログインして、ギルメンの皆とクエストやら何やら楽しんだ後、【ユグドラシル】で伝え忘れた事を思い出したらメールで送る。
忘れない内に連絡しないと、お互いにうっかり忘れちゃいそうだからね。
そうして、最後のお使いから帰ってきたシャルティアを出迎えてた後、寝間着に着替えた彼女にお休みの挨拶をして、ペロロンチーノは就寝する。
おはようからお休みまで、シャルティアと一緒なんて本当に嬉しくて仕方がないよね。

そんな感じて、ペロロンチーノは至福の毎日を過ごしている。




と言う訳で、第二弾はペロロンチーノさん視点でした。
ペロロンチーノさんは、思い描いた通りに動くシャルティアと過ごせて、文字通り至福の毎日を過ごしているんですよね。
そして、何気に仲が良い非課金同盟の僕たちです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウルベルト・アレイン・オードルと理想の悪魔の穏やかな毎日

この話は、格好良いウルベルトさんはいません。



ウルベルト・アレイン・オードルの毎日は、己が細部にまで拘り手塩に掛けて作り上げた、【理想の悪魔】の端正な声で始まる。

彼の、至福とも言うべき環境が作られた背景には、彼にとって大切な仲間達が関わっていた。
アインズ・ウール・ゴウンの仲間であるギルメンのペットロスから始まった、ナザリックの僕をメールペットにする計画。
その計画に、ウルベルトは最初の段階から賛成し、協力していた一人である。
あまりにも、ウルベルトの賛同が素早かった事に対して、意外に思う者も居た。
だが、ウルベルトからすればむしろもっと早い段階で、この計画が持ち上がればよかったのにと、今でも本気で思っている。

何故なら、このメールペットの積み重ねた経験は、そのままナザリックのNPCにも反映可能な設定だと、ウルベルトは計画を聞いた時点で気付いていたからだ。

もちろん、それは自分達が住む【リアル】の世界の情報がNPC達に伝わる訳ではなく、メールをやり取りする為のサーバー内などの限定空間での経験に関してのみだが、それだけでも別に構わなかった。
ウルベルトなどの、NPCに深い愛情を注ぐ者にとっては、どんな形ででも己の愛するNPCに、【リアルの世界】でも同じ様に愛情を注げて、それが彼らに伝わる可能性があると言うことが、何よりも大切なのだから。
どんなものでも、ちゃんと大切にして愛情を注いでやれば、それに相応しいだけの愛情を返してくれるものだ。

現に、うちのデミウルゴスはその通りだからな。

毎朝の始まりだってそうだ。
そう……ウルベルトの朝は、メールサーバーの中にいるデミウルゴスからの、モーニングコールで始まる。
自分の理想の粋を集めた、文字通り最高傑作とも言うべきデミウルゴスの端正な声で、毎朝緩やかに目覚めを促されるのがどれだけ幸せな事なのか、実感出来ているのは自分だけだろう。
そう思うだけで、ウルベルトはひどく満たされた気持ちになるのだ。

まぁ、当然だろう。
自分にとって自慢の息子に、毎朝丁寧に起こされているようなものなのだから。

******

ウルベルトが、デミウルゴスからのモーニングコールを受ける状況に至るまで、実はそれなりに紆余曲折があった。

デミウルゴスが自分の元へやって来て、ウルベルトが最初に行ったのは、メールペットの彼に対する細かな設定だ。
基本設定として、与えられたメールサーバー内のデミウルゴスの部屋は、真っ先に改装しておく。
育成ソフトの人格は、普通の人間と同じ様に環境に影響されるからな。
自分の理想の結晶とも言うべきデミウルゴスに、粗末な環境で過ごさせたくはない。

可能な限り、使用できる素材をふんだんに使い、デミウルゴスにふさわしいへやをつくりだしたと言う自負がある。

次にしたのは、俺がデミウルゴスと共に暮らすために必要なこと。
元々、このメールペットソフトの機能には、メールが来ていることを知らせる為のコール音が有るのだが、俺は音声設定時にデミウルゴス声を選択した。
【リアル】で、擬似的な意識を持つあいつに呼び掛けられたら、それは幸せな気分になれそうな気がしたからだ。
そして、その俺の選択は間違いじゃなかったらしい。

ウルベルトの元にメールが来る度に、デミウルゴスからの声が聞こえてくると思うだけで、仲間とのメールのやり取りが今まで以上に楽しくなったのだから。

正直言って、こんな幸せな環境を得られた事に関して、仲間たちへの感謝の念が絶えない。
流石に、ここまでの機能を持ったデミウルゴスを【リアル】で再現するのは、幾ら望んだとしてもウルベルト一人では叶えらない案件だっただろう。
なので、それを叶える切っ掛けをくれた仲間に対して、それはもう丁寧にお礼をしたのは、ウルベルトとその仲間との秘密だったりする。

それはさておき。
本来なら、メールペットとしての限られた機能しか持たない筈のデミウルゴスが、どうしてモーニングコールまでしてくれるようになったのかと言うと、そこに至るまでには本当に色々とあったのだ。

主に、ウルベルトの身の危険と言う意味で。

そもそも、この話がギルメン全員に対して伝わる前から、この件に関わり開発チームにテスターとして協力していたウルベルトは、見返りにある事をして貰っていた。
何を頼んだのかと言うと、メールペットとしてデータの吸出しなど、様々なテスト段階から協力する代わりに、デミウルゴスの学習能力をそのフレーバーテキストに合った、高めのものに設定して貰ったのである。
その高い学習能力で、デミウルゴスが興味を持つだろう様々な知識を得られるように。

やはり、デミウルゴスは頭が一番良く在って欲しいからな。

その結果として、デミウルゴスはウルベルトの予想通り、様々な事を学習していってくれたらしい。
メールのやり取りだけではなく、自分が存在している場所に関する知識や、サーバー内からの【リアル】のメールソフトの起動方法まで、その知識は多彩なものだ。
一応、情報の収集先をウルベルトの個人端末の中に登録されたもので済ませていたので、そこまで【リアルに纏わる詳報】は伝わっていない筈だ。
ただし、確実にウルベルトの【リアルの姿】を覚えてしまったようだが、それはそれで問題ないと判断している。
そうして、ある程度の知識を蓄えた所で、デミウルゴスが最初に実践し始めたのは、ウルベルトへのモーニングコールだった。

初め、ウルベルトはそれが偶然だと思っていたのだ。

たまたま、端末の電源を落とし忘れていた為に、メールが届いた事で機能が立ち上がり、デミウルゴスの声がしたのだと。
ウルベルトも、非課金同盟の同士だったペロロンチーノと同じで、ゲームをログアウトした後でメールを送る事が多かったからだ。
だが……そんなウルベルトの考えを、すぐに打ち消す様な一件が、起きたのである。

深夜遅く、ゲームを終えて寝る準備をしていたウルベルトの部屋に、浸入しようとしていた不審者がいたのだが……その存在をメールペットでしかないデミウルゴスが気付き、警告ボイスで報せてくれたのだ。

そのお陰で、ウルベルトは侵入した不審者に襲われる事なく、寝室に備え付けてあった自前の防犯グッズで、きっちり返り討ちにする事が出来たのである。
もっとも、ウルベルトが撃退した不審者はそれなりに場数を踏んでいたらしい。
こちらが自衛手段を持っていると理解した途端、すぐにその場から逃げ出したので、流石に不審者を自分の手で取り押さえるのは出来なかった。
何せ、この末期の世界とも言うべき【リアル】では、デミウルゴスの警告で怪我もなく、盗られたものもない状況では、警察になにか言っても無駄な地域にウルベルトは住んでいる。
運良く、翌日が休みだったウルベルトは、その場で簡単に解除出来ない電子錠をネットで購入し、即配達して貰った。

鍵は、力任せに壊されたのではなく、少しの手間を掛けて開けられたらしい。

やはり、ウルベルトの部屋に侵入した不審者は、この手の行動に手慣れていたようだ。
そこまで確認した所で、注文した電子錠が届いたので、即受け取って取り付ける事にしたのだが……
そこで、またメールソフトのデミウルゴスから、痛烈な警告が発せられた。
わざわざ、デミウルゴスがメールソフト内から警告音を出しているからには、何か言いたい事があるのだろう。
そう考えて、携帯用端末を玄関先まで持ってくると、デミウルゴスはウルベルトの取り付けたばかりの電子錠の動作を、丁寧に確認し始めたのである。

いつの間に、そんなスキルを身に付けたのか、本音を言えばとても気にはなった。

だが、デミウルゴスが俺の役に立ちたいと思って発露した能力なら、それに文句を言うつもりはない。
可愛い一人息子のようなデミウルゴスが、【ウルベルトの為】と考え頑張って色々と学習しているのに、それを根底から否定するつもりなど、ウルベルトには欠片もないからだ。
それよりも、もっと出来る事が増えれば、もっとデミウルゴスとこの【リアル】で一緒に楽しく過ごす事が出来る。
そう考えた途端、ウルベルトは今までのように自重する事を止めた。

より正確に言うなら、色々な事を学習していくデミウルゴスに、自重を促すことを止めたのだ。

様々な事を覚えて、少しでもウルベルトの役に立てると考え、それは嬉しそうにしているデミウルゴスの姿を見たら、自重を促せる訳がないのである。
デミウルゴスの努力は、全部ウルベルトの為なのだ。
そのことを理解していながら、今更【止めろ】なんて言える筈がないだろう。
それこそ、その言葉を告げた途端、心の底からショックを受けて愕然とした後、悄々と青菜に塩を振ったかのように落ち込む姿が、手に取るように想像できてしまうのだ。
そんな、かわいそうなデミウルゴスの姿など、見たくは……無いとは言わないが、かわいそう過ぎるし笑っている顔の方が見たいので、そちらを優先したのである。
聞いた話しでは、モモンガさんはたまにパンドラズ・アクターの落ち込む姿を【かわいそうで可愛い】と見ているらしいが、少し悪趣味と言うか悪い親だと思う。
まぁ、それを凌駕するくらいにパンドラズ・アクターを可愛がっているので、今の時点では何も言ってないけどな。

とにかく、ウルベルトはデミウルゴスが好きに学習出来るように、自重を促すことなくそのまま放置していたのだが……どうやら最近はそのデミウルゴスの行動が、一部のメールペット達に伝達されているらしい。

主にその影響を受けているのは、メールペットの中でも仲の良いパンドラズ・アクターとシャルティアだった。
元々、NPCとして頭の良い設定を受け継いでいるパンドラズ・アクターは、デミウルゴスとやり取りをしていれば、学習していくのは解る。
しかし、設定ではあまり頭が良い方ではないシャルティアが、デミウルゴスの影響を受けるに至ったのは、色々な理由があるのだが……その事を詳しく語るのは、またの機会にするとして。

とにかく、デミウルゴスと一番仲が良いメールペットは、パンドラズ・アクターとシャルティアの二人だろう。

頭がとても良くて、性格は穏やかでモモンガさん似のパンドラズ・アクターとは、頭を使ったゲームをすることが多いらしい。
顔の作りの関係上、表情が読み難いパンドラズ・アクターが相手だと、ポーカーなどの心理戦ゲームが楽しくて仕方がないのだと、いつか話してくれた記憶がある。

たまに、何やら二人でひそひそ話をしている姿も見るが、どんな話をしているのやら。

逆に、脳筋ビルドで頭の良さはそれほどではないが、趣味の面では気が合うシャルティアとは、俺の所に来る度にかなりディープな話題もしているらしい。
先日、ペロロンチーノからシャルティアとデミウルゴスが二人で【世界の拷問大百科】を見てたと泣き付かれたが、その程度で済んでいるなら、そう設定した親として【諦めろ】と言いたい。

なにせ、俺の所に来ている時は、平気でその手の研究や実験の話をしているからな。

本を読んでいる程度なら、本の内容を覗き込んで見なきゃ問題ないだろうが、会話に関しちゃ丸聞こえなんだぞ!
それこそ、その程度で悲鳴を上げてたら、うちでの二人の会話を聞いただけでSAN値をごりごり削られるぞ、ホントに。
と、まぁ……仲はとても良いのだが、放置して良いものか迷う面々もいるが、割穏やかな日々を過ごしている。
デミウルゴス自身は、パンドラズ・アクターとシャルティアの二人以外だと、コキュートスとも仲が良いらしい。
何やら、二人でデミウルゴスの為に気合いを入れて似合うように作ったバー施設で飲んでいる姿が、たまに見られるからな。

どちらかと言うと、大人の友人としての付き合いをしている感じなのだろうか?

それ以外のメールペット達とは、割と一定の距離感を保ってしまっているらしく、見た感じ仲はよくも悪くもないといったところだろうか?
他の場所だと、色々と問題行動を起こしているらしいアルベドだが、ここではかなりおとなしくしているからな。
やはり、頭が良くて制限されていないデミウルゴスが相手では、同じ土俵にたった状態では自分に勝ち目がないのを理解していて、無理に喧嘩を売らないのだろう。

下手にデミウルゴスを怒らせても、アルベドには何のメリットもないのだから。

そう考えると、同じ様に頭が良い筈のパンドラズ・アクターが被害に遭っている原因は、その性格がモモンガさんに似ているからかもしれない。
モモンガさんは、どちらかと言うと押しに弱いからな。
話に聞いた感じだと、アルベドはかなり肉食系女子だし、パンドラズ・アクターでは押し負けてしまうのだろう。

それにしても……
やはり、うちのデミウルゴスは優秀で格好いいと、最近本気で思う。
こんな優秀な息子と、比較的穏やかな毎日が過ごせる事が、幸せなんだと本当に思うウルベルトだった。



と言うわけで、第三弾はウルベルトさんとデミウルゴスでした。
ある意味、親バカ全開のウルベルト氏が居ます。
デミウルゴスの優秀さを、とにかく自慢したくて仕方がないらしいです(笑)
メールペット組の無課金同盟も、どこに行っても仲良しさんです。

誤字報告ありがとうございます。
修正させていただきました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ぶくぶく茶釜と双子のエルフの賑やかな毎日

既に、活動報告で予告していたのですが、今回はこの方の話です。


私、【アインズ・ウール・ゴウン】のぶくぶく茶釜には、ここ数ヵ月の間、毎朝の楽しみにしている事がある。

【リアル】で声優の仕事をしている私は、基本的にそれ程早く朝起きる必要はない。
もちろん、握手会やサイン会などのイベントがある時や、一緒に仕事をする人のスケジュールの都合で、早朝の仕事を指定された場合は別だが、それ以外の時はそれ程早い時間帯に起きる必要はないのだ。
だが、それでも私は遠距離通学の学生と同じ位の時間帯に、毎朝起きるようにしている。
その理由は、実に簡単なものだ。
私にとって、楽しみにしている恒例行事と化した事が、朝の早い時間に発生するようになったからである。
それを、出来る限りこっそりと観察する為には、朝の早起きは欠かせない案件だった。

そう、私が必ず行う朝の日課になった恒例行事の観察は、端末でメールソフトを立ち上げてから開始されるのだから。

慣れた手付きで、素早く操作をしてメールソフトが立ち上がったのを確認すると、そっと私はそこの中にある仮想空間を覗き込む。
すると、そこでは私にとって可愛くて堪らない双子のエルフの姉弟による、朝の攻防戦が起きているのだ。
これが、私の毎朝の楽しみにしている恒例行事であり、観察の対象と言って良いだろう。

これ以外でも、この二人が繰り広げるやり取りなら、幾ら見ていても飽きないんだけどね。

元々、ちゃきちゃきとした元気のいい姉のアウラと、少し引っ込み思案な男の娘である弟のマーレは、それこそ性格も違えば行動パターンも違う。
それが顕著に表れるのが、この朝の攻防戦だった。
どちらかと言うと、大人しい性格で低血圧と言った感じがする弟のマーレはそれ程朝に強くないのか、それとも本が好きでついつい夜更かしして本を読んでしまう癖でもあるのか、あまり早く朝は起きない。
それでも、朝の七時になればちゃんと起き出してくるのだから、彼らの寝顔を楽しみたい私としてはそのままでも構わないのだが、どうやら朝の六時半には起きる姉のアウラは、それが納得いかないらしかった。
多分、その前に二人の寝顔を見たくて私が起きている事に、彼女は気付いてしまったのだろう。
だからこそ、アウラは必死にマーレの事を早く起こそうとする。
しかし、だ。
マーレは、お仕事が無ければ眠る事が大好きな、引き籠りタイプの男の娘である。
当然、主であるぶくぶく茶釜が【良いよ】と赦している事もあり、無理して起きようとはしない。

その結果、毎朝の様に二人の間で発生するのは、マーレを出来るだけ早く起こそうとするアウラと、そんな姉に逆らってまだ寝ていようとするマーレの攻防戦だった。

私にとって、その二人のやり取りがどうしても可愛らしくて仕方がない。
それこそ、前日の夜の仕事上がりが遅かったとしても、早朝の仕事が入っていたとしても、毎朝欠かさずそれを見ずにはいられない程には、私は双子たちの朝の攻防戦を観察するのを気に入っていた。

そう……私にとって、可愛くて仕方がない双子の姉弟たちは、今では掛け替えのない宝の物の様な我が子たちだと言える存在なのだから。

*******

私が、この幸せ可愛らしい一時を得られたのは、ちゃんと理由がある。
【ユグドラシル】で、私が――ぶくぶく茶釜が所属するギルド【アインズ・ウール・ゴウン】のメンバーの一人が、飼っていたペットが死んだ事によってログインしなくなったのだ。
それによって、仲間の中で【ネット空間で安心して世話が出来るペットを、ギルドメンバー全員で飼おう】と言う計画が立ち上がった。
様々な情報を集めて回って、漸く使えそうなものとして見付けた古いソフトが、このメールペットである。
旧式すぎて、今のメール環境に合わなかった代物を、様々な機能を追加して問題なく使えるようにしたのは、ギルメンの中でもシステム担当のメンバーたちだ。
それこそ、彼らが必死に寝る時間を削ってまで努力し結果だと言っていいだろう。

この件に関しては、本当に仲間のソフト開発担当のシステムエンジニアとしてのスキルを持つギルメンと、そのデータ吸出しの為のテスターとなった仲間が、実にいい仕事をしたものだと、ぶくぶく茶釜は思っている。

今まで、ログインしてナザリックの第六階層にある巨大樹まで赴かなければ、この私自身が手掛けたNPCである可愛い双子たちに会う事は出来なかった。
だが、こうしてぶくぶく茶釜のメールペットになった双子たちは違う。
何時でも何処でも……そう、それが例え遠方に仕事に出た際でも、きちんと携帯可能な端末などの必要な道具一式を揃えれば、可愛いアウラとマーレに逢えるのだ。

ぶくぶく茶釜にとって、これ程嬉しい事はなかった。

さて……問題の毎朝の攻防戦は、大概アウラの勝利で終わる。
この兄弟、姉の方が弟よりも強い立場にあると言うのも理由なのだろうが、それ以上にアウラにとって最大の強みとなっているのが、双子の寝室が一緒だと言う事だった。
もし、これがナザリックの巨大樹の中にある彼らの住居なら、部屋はそれぞれ個室が与えられていると言う事もあって、部屋の中に引き籠られたらアウラには分がかなり悪い。
裏を返せば、メールサーバーの彼らの部屋の中には、マーレが引き籠れる場所がベッドの中しかないのだから、絶対的に不利なのはマーレの方なのだろう。
その結果、マーレは七時よりも前にアウラによって叩き起こされると言う状況を、毎朝のように繰り返していた。

まぁ、朝の攻防が終わるまでの二人のやり取りを楽しみにしているので、どちらが勝ってもぶくぶく茶釜にしてみれば構わないのだが。

それはさておき。
可愛い双子が揃って起きたら、まずは美味しい朝食を食べさせて彼女達に今日の服を選んでやるのが、今のぶくぶく茶釜の日課であり楽しみの一つである。
ナザリックの階層守護者である双子たちとは違って、この子達は外にメールのお使いに出す時も、その日の服として選んだままの姿で出歩けるのだ。
この辺りに関しては、メールペットを着飾らせたいと言う女性陣を中心にした仲間の要望によって、選んだ服のデザインを普段の装備に重ねて見せているだけなのらしいのだが、それでも十分可愛く着飾った姿を仲間に見せられるので、ぶくぶく茶釜にはそれに対して特に文句はない。

そんな風に、毎朝彼らが着る服を決めて二人の身支度が出来たら、今度こそアウラとマーレのお仕事開始である。

双子たちの朝一番のお仕事は、ぶくぶく茶釜の友人であるやまいこさんの所から来るメールを受け取る事だ。
教師である彼女は、学校で生徒たちの為に様々な仕事をする必要もあって、ぶくぶく茶釜よりもかなり早い時間に起きる。
そして、朝の支度の合間に手早くぶくぶく茶釜へのメールを書くと、自分のメールペットであるユリに持たせて送ってくるのだ。
ほぼ毎日、とりとめもないメールのやり取りしている事から、これがアウラたちの朝の一番の仕事だった。

何時も、ユリが来る前に彼女の為にお茶の準備をして待っているのだから、アウラたちも彼女がメールと携えて来るのを楽しみにしているのだろう。

他にも、色々なギルド関連の連絡事項があったり、何かのイベントで個人的に協力を頼みたいと前日に話してあったりした時は、モモンガさんからのメールをパンドラズ・アクターがこの時間帯に運んでくる。
モモンガさんは、とてもギルド長としても個人としても律儀だから、こういう連絡が必要な事がある時はスケジュールの確認をして、きちんと翌日に返事をくれるのだ。
ただ、二人ともかなり朝の早い時間帯にメールを送ってくるので、パンドラズ・アクターとユリは鉢合わせをする事が多い。
だが、ぶくぶく茶釜の元にパンドラズ・アクターが来る時は、先程上げたような理由がない限りほぼ一斉送信の場合が多く、長居をせずに急ぎ足で帰っていく事が多かった。

そんな事もあって、アウラとマーレの二人は私の前では、余りパンドラズ・アクターと仲良くしている姿を見せてくれなかったりする。

モモンガさんの話を聞く限り、彼の元ではのんびりとお茶会をしてる姿を見せてくれているらしいから、ちょっとだけ悔しいと思っているのはぶくぶく茶釜だけの秘密だった。
幾らなんでも、そんな事を誰かに言うのは筋違いからね。
それに、パンドラズ・アクターとアウラとマーレの二人が、仲が悪い訳じゃない。

何せ、いつも長居出来ずに帰るお詫びの品として、パンドラズ・アクターはアウラたちへのお菓子を手土産として持参して来てくれているのだから。

もう一人の女子メンバーである、餡ころもっちもちさんの所のエクレアが来るのは、いつもお昼の時間帯だ。
彼女の場合、朝は忙しすぎてメールをしている時間が無い分、お昼のちょっとだけ時間を長く取れる休憩時間に、メールを纏めて確認して返事をする事が多いらしい。
だから、いつも沢山のメールを一度に運ぶ必要があるエクレアも、パンドラズ・アクターと同じように割と滞在時間が短いタイプだ。
エクレアの外見は、見ているだけで可愛らしいイワトビペンギンだから、出来れば一度位は撫で回してみたいと考えているのだけど、どうも警戒されているらしくて今まで一度も実現していない。
ちょっとだけ、それが残念だとぶくぶく茶釜は思っている。

元々、ぶくぶく茶釜が所属しているギルド【アインズ・ウール・ゴウン】は、女性メンバーが三人しかいない。
そう……彼女とやまいこ、そして餡ころもっちもち以外は男性しかいない事もあって、男女比率が極端な構成になっていたりする。
こればかりは、異形種であることと社会人であることがギルドへの加入条件になっているから、仕方がないのかもしれない。

何せ、異形種の外見は余り可愛いと思えるものがないから、一部の種族を除いて自分から進んで異形種を取る女性は少ないのだ。

そんな事もあって、自動的にメールのやり取りをするメンバーは女性中心になってしまいがちなのだが、それでも割と小まめにメールをくれる人がいる。
我がギルドの最大火力を担う、魔法詠唱者であるウルベルトさんだ。
元々、普段の言動の割に細かい気遣いが出来る人なので、何かあると連絡をくれる優しい人だと思う。

その辺りを、本当の意味で正確に理解しているのは、少し前まで【非課金同盟】なんてものまで組んでいた、仲の良いモモンガさんと弟のペロロンチーノだけなのだろうが。

とにかく、そんな理由で彼の所のデミウルゴスもメールを運んでくることは多かった。
デミウルゴスは、とにかく礼儀正しい紳士だと思う。
毎回、こちらの事を気遣いながら丁寧な訪問の挨拶を皮切りにして、ぶくぶく茶釜へのご機嫌伺いからメールを持参した旨まで、それこそ流れるように述べるデミウルゴスの姿は、紳士としか言いようがないのだ。
そんな彼の姿をウルベルトさんが見たら、【流石は俺のデミウルゴスですね!】と、親バカ全開で褒めちぎりそうな気がするのは多分間違いじゃないだろう。

あの人、メールペットだけじゃなく【ナザリック】に居るNPCも含めた、【デミウルゴス】に関する事だけは、正直言ってかなり親バカだと思うから。

デミウルゴスが来ると、マーレが割と自分の方から寄っていって話し掛けている姿を良く見るのは、あの子も一応自分が【男の子】だと言う自覚があるからかもしれない。
やまいこさんから、ウルベルトさんはデミウルゴスのスペックを上げる為に、色々とこのメールペットの開発チームのギルメンたち相手に、事前のデータ吸出しなどに協力していたと言う話を聞いた事がある。
その結果なのか、他のメールペットよりもデミウルゴスはかなりハイスペックらしく、先日もウルベルトさんがそれをみんなに自慢していたから、その話は多分本当なんだろう。
そんなデミウルゴスから、少しでも何か学べる事があるなら、マーレにはぜひとも学んで強くなって欲しい。

少なくても、自分のホームでメールを受け取っているのにも拘らず、メールを持参して来たアルベドに泣かされるなんて状況から、脱却出来るようにはなって欲しい所だ。

そう、ぶくぶく茶釜の所にやって来て困るメールペットの筆頭は、間違いなく問題行動ばかりのアルベドだろう。
もちろん、外観的な事を言っていいのならば、少し前までは恐怖公をメールペットに持つるし☆ふぁーからのメール受け取るのも、ぶくぶく茶釜はとても苦労していたのだ。
どうしても、あの外観が苦手なぶくぶく茶釜としては、本音を言えば例えメールを運ぶためでも、ここに来て欲しくもない。
だが、るし☆ふぁーがそんなメールペットになる様な流れを作ったのは、ある意味ギルメン全員だと言う事もあって、今更文句を言う事なんて出来なかった。

本当に、あのメールペットを決める時のギルメンたちは、自分たちの希望を通す事を優先し過ぎていて、全員どうにかしていたんだと思う。

だから、最初の頃は恐怖公が来る度にぶくぶく茶釜は苦労してメールを受け取っていたのだが、マーレが恐怖公を相手にしてもごく普通に対応出来る事が判明してからは、彼に一切を任せる事で特に問題なく受け取れているので、そこまで困る事はなくなったのだ。
そんなマーレとは対照的に、アウラは恐怖公が来るだけで思わず腰が引けているから、多分自分と同じで恐怖公が苦手なんだろうと思う。
それが判っていて、アウラに恐怖公の相手なんてさせるつもりはなかったが。

とにかく、恐怖公と言う自分が苦手だった相手もマーレが請け負った時点で、ぶくぶく茶釜にとって問題児のメールペットの筆頭は、間違いなくアルベドになっていた。

と言うか、己の主からの仕事でメールを届けるべく人様のメールサーバーに来て、どうしてそこのメールペットを苛められるのか、そこの辺りを詳しく製作者のタブラさんを問い詰めてやりたいのが本音ではある。
あるのだが……タブラさん自身もまた、ある意味アクの強い困った人物だ。
ぶくぶく茶釜が一人で対峙しても、彼自身が持つ様々な知識からくる話題をこちらに振る事で、いつの間にか本題がうやむやのまま煙に巻かれそうな、面倒な人なのである。
なので、今度のギルド会議の議題として今回の一件は挙げてやると、ぶくぶく茶釜は心に決めていたりするのだが。

また、彼女が割とこちらから受け取り側の事を気にする事無く、それこそ一日何度でも頻繁にメールのやり取りしている相手が一人いた。
それは、ぶくぶく茶釜自身の弟であるペロロンチーノである。
あの弟は、エロゲをメインにしたシナリオライターなんて仕事をしていて、普通に会社勤めをしている面々よりも時間の都合が付く方だ。
だから、彼女は時間を気にせず仕事で溜めたストレスを発散する為に、彼に対してショートメールを送り付けるのは、元々昔から当たりの様にしていた事だったのである。
だが、最近はストレス以外にも理由があって、わざと矢継ぎ早にメールを送ってやることが多い。

わざわざ、ぶくぶく茶釜が彼に対してそんな真似をする理由は、そうすると弟の所に行っていたアウラとマーレが帰ってくるとほぼ同時に、弟のシャルティアも返事を携えて訪ねて来るからだ。

正直、【ユグドラシル】でのシャルティアの設定には、本気で弟のあらゆる性癖が煮詰められていて、その設定を目の当たりにした時はかなりドン引いたものだが、このメールペットのシャルティアは弟だけじゃなく周囲の環境の影響も受けているからか、【ユグドラシル】のシャルティアとは違っているところが多く、とても可愛い。
多分、このメールペットが【本格的な育成ソフト】と言う事も、それなりに影響しているのだろう。
こんな風に、メールをもって色々所に出掛ける事で経験を積めば、シャルティアの雰囲気が変わるのも当たり前なのかもしれない。

何せ、モモンガさんの所のパンドラズ・アクターやウルベルトさんの所のデミウルゴスとも仲が良いと、前に彼らから話を聞いた事があるので、シャルティアはいい意味で成長しているのだろう。

実際に、弟のペロロンチーノが一から育成している筈のメールペットのシャルティアは、確かに可愛く賢く育っているとぶくぶく茶釜でも思うのだ。
だからこそ、彼女と自分の所のアウラとマーレが一緒に仲良くお茶会をしているところを見るのは、実に可愛くて仕方がないと思う。
外見だけなら、三人の中で一番年上なのはシャルティアなのだが、ここはアウラとマーレのホームだと言う事で、アウラが場を仕切っているのも悪くない構図なのだ。

それに、あの子たち三人が集まってお茶会をしている姿を見ると、それこそ女子会をしている少女たちにしか見えないのだから、目の保養にもなっていると言っていいだろう。

多分、弟も私が頻繁にメールを送る意図は何となく気付いているだろうと思うものの、止めるつもりはない。
あちらからも、多分この件に関しては何も言って来ないだろう。
こんな無茶な対応が通じるのも、また家族だからだ。
実際、ぶくぶく茶釜が仕事で感じている対人関係のストレスも凄いし、仕事の内容によってはプレッシャーが半端ない者だって沢山ある。

だからもし、この件で何か言ってくる奴がいたとしたら……【家族として仕事の愚痴を聞いて貰いつつ、同時に癒しとなる可愛いアウラたちのお茶会を楽しんで、何が悪いのか】と言ってやるつもりだった。

まぁ、そんな感じで仕事の合間に上手く時間を作ってメールをやり取りしつつ、ぶくぶく茶釜はこの状況を楽しんでいる。
夜の仕事の上りはその日によって違うものの、自宅に帰宅したらすぐに端末を立ち上げて【ユグドラシル】にログインするのも、ぶくぶく茶釜の日課だった。
もちろん、仕事の都合によってはログインするのが深夜に近い時間帯になる事もあるけど、そういう時は残っていた面々と話だけでもするように心掛けている。

幾ら、ギルメンたちと一緒にクエストが出来ないからと言って、【ユグドラシル】にログインしないままでいるのは勿体ないからだ。

そうやって、時間が合った時はギルメンの皆とクエストやら何やら楽しんだ後、【ユグドラシル】でやまいこさんたちに伝え忘れた事を思い出したらメールで送る。
これは、仕事の状況によっては翌日メールが送れなくて用件を忘れてしまわない為の、ぶくぶく茶釜なりの防止策だった。
そうして、夜の最後の仕事を終えて帰ってきたアウラとマーレを出迎えてた後、二人にお休みの挨拶をして彼らの為に一曲だけ子守唄を歌って聞かせてから、メールソフトを終了して私は就寝する。

そんな風に、賑やかで楽しい毎日をぶくぶく茶釜は過ごしているのだった。




と言う訳で、第四弾はぶくぶく茶釜さん視点でした。
正直、pixiv版に比べて、ここまで長くなるとは思わず……まぁ、メールペットが二人いますからね、茶釜さんの所は。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギルド会議


親バカたちによる、定例会議いう名の【ペット自慢】の筈が……


その日は、十日に一度の定例会議だった。

定例会議が、【十日に一度】と言う割と頻繁なペースで行われるのは、ちゃんと理由がある。
自分達、【アインズ・ウール・ゴウン】のギルドメンバーだけの間で使用しているメールペットソフトについて、何か異常や問題がないか定例報告会を兼ねた会議をする事が、このソフト導入時に決まったからだ。
この提案に、誰も反対するものは居なかった。

なんだかんだ言って、彼らは全員自分のメールペットが可愛くて仕方がない親バカだったので、自慢する場が欲しかったのだろう。

何せ、十日に一度開かれるこの定例会議の場では、メールペットの育成状況を報告し合うと言う名目での、各自のメールペット自慢の時間が一人三分設けられているのだ。
普段から、自分たちがどのようにメールペットたちと過ごしているのか、色々と仲間に対して自慢が出来る時間を貰って、ハッスルしない訳がない。
三分以内で話せないと、話が途中でも持ち時間終了でぶった切られる可能性がある事も考えると、その内容をきちんと纏め上げてもれなく自慢できる状態で来るだろう。

どう考えても、会議が終わった後は座談会の様に各グループで別れてメールペットたちの自慢大会の続きを話し合うだろうし、今日はこのまま会議の後に狩りに行くのは無理だろうと、議長役のモモンガは考えていた。
そうして、ギルメン全員が集まって会議が始まったのは、夜の八時。
そこから簡単な挨拶と、特に先にメールペット関連以外での報告する案件の有無を確認し、今回のメインとも言うべきメールペットに関する報告会が始まった。

一応、どれも本人的には押さえ気味だと言うことなのだが、それでもやはり彼らの大半が【自分のメールペットが可愛い】と言う、親バカ発言で終始していたと言っていいだろう。
もちろん、中にはウルベルトさんの所のデミウルゴスのように、学習力が半端なくて本来のメールペットの枠を越えているだろう、報告が本当に必要な特殊な例もあったものの、その殆どが親バカ満載のペット自慢だった。
と言うか、ウルベルトさんは報告の中にも親バカ振りを全開していたので、デミウルゴスの優秀さだけじゃなくウルベルトさんの親バカ振りも再認識されたんだけど。
まぁ、モモンガ自身も似たような話をした自覚はあるので、それ事態は悪い事じゃないとするとして、だ。

その後に、ぶくぶく茶釜さんから議題として出された【メールペットであるアルベドの、訪問先での目に余る行動について】についての内容は、かなり紛糾する事になった。

彼女がその話を切り出した途端、他のメンバーからも出るわ、出るわと言わんばかりの被害報告を見れば、流石に放置するのは拙いだろうと言う話の流れになってきたからである。
まぁ、流石に彼女のホームであるタブラさんの所だけはなく、他のギルメンのホームまで来た時でもやらかしているのが、彼らの怒りを買ったと言うべきだろうか。
しかも、彼女からの被害が出ていない一部のメンバーが、ウルベルトさんの所のデミウルゴスとるし☆ふぁーさんの所の恐怖公、たっちさんの所のセバスなんていう、アルベドが【敵に回すと面倒だ】と判断した者たち以外は全員だったのが、余計に問題だと言えただろう。

「……どう見ても、アルベドはちゃんと自分が勝てると思った相手にしか、問題行動を取っていないようですね。」

この件で、自分は全く被害を受けていないウルベルトさんが、茶釜さんがいつの間にか軽く纏めてきたらしい資料用の画面を指で弾きながら、溜息交じりにそう呟く。
多分、ウルベルトさんはデミウルゴスの事を溺愛しているから、もし今回の報告にあったような被害の内容のうちどれか一つでもデミウルゴスの身に振り掛かる様な状況になったら、間違いなくアルベドの事をメールサーバー内に出入り禁止にしかねないだろう。
もっとも、デミウルゴスの性格ならやられた事を倍にして返しそうな気もしなくもないが、それとは別の話なのである。

「まず、この件について話し合う前に、一つタブラさんに確認する事があります。
ちゃんと、アルベドの世話はしていますか?」

製作に関わったヘロヘロさんが、まずはここから聞くべきだろうと質問を口にする。
何故、そんな質問をするのかと言わんばかりにタブラさんは不思議そうに首を傾げつつ、ヘロヘロさんの質問の内容を考える。
そして、今までの育成状況を思い返せたのか、何度か頷く仕草を見せた。

「もちろん、アルベドにはきちんと食事やおやつは与えていますし、メールペットとしての仕事も与えてますよ。
衣服や住空間も、彼女が生活するのに問題がない程度に整えてあります。
……えぇ、間違いありませんので、なんの問題がないですね。」

タブラさんの口から出たその答えに、半数以上のギルメンが微妙な違和感を覚えて、不審そうな視線をタブラさんに向ける。
モモンガもその一人で、思わずタブラさんに対して胡乱な視線を向けてしまっていた。
いきなり、半数以上から不審な視線を向けられ、流石に気になったのか首をますます傾げるタブラさんに対して、溜め息を吐いたのはウルベルトさんだ。
本気で呆れたような視線を向けつつ、準備されていた比較用の【ナザリックのNPC】の資料の中からアルベドの設定文を引っ張り出し、軽く画面を叩きながら質問を口にした。

「……今の話でとても気になったんですが、タブラさんはちゃんとアルベドを相手にスキンシップは取ってますか?
メールペットは、メールをやり取りしつつペットを育てると言う、育成ソフトでもあります。
ただ単に、メールの配達の仕事を与えつつ食事や住空間と言った環境を整えてやるだけじゃなく、きちんと自分の愛情を注ぎながら、子供を育てる様に躾をして一人前になるまで世話をする必要があります。
ちゃんと、タブラさんはきちんとそれらをアルベドに対してしていますか?
特に、こちらの【ナザリックのNPC】としての資料を見る限り、アルベドはサキュバスで設定に【ただし、ビッチである】なんて文面がついてるんです。
人一倍気を付けて育てないと、仲間ときちんと交流が出来るまともなペットにならないと思うんですが、その辺りまで注意してますか?」

ウルベルトの質問に対して、タブラさんは不思議そうな様子で首を傾げる。
そして、こう宣った。

「え……必要なんですか、それ。
ちゃんと、成人女性として細かいところまで設定してある【ナザリックのNPC】のデータをベースにしてますし、人格構成はきちんとデータによって出来ているんですから、改めて育成とか面倒臭いじゃないですか。
もちろん、アルベドがこちらに甘えてきたら撫ではしてますけど、私の方からは特に触れてやる必要は感じませんでしたし。
あの子が欲しがっているものがあれば、出来る限り与えるようにはしてますし、それで問題ないですよね?」

つらつらと、彼の口から次から次へと溢れ出る内容は、最初の配布時にヘロヘロさんらメールペット作成側がきっちり説明した事を、きちんと聞いていなかったのが丸分かりな言葉ばかり。
そんなタブラさんの返答に、真っ先にブチ切れたのはメイン開発担当だったヘロヘロさんである。
ダンッと、円卓の間にあるラウンドテーブルを勢い良く叩くと、スライムの身体を最大限に膨張させながらタブラさんに向けて怒鳴り付ける。

「タブラさん、あなたは我々が最初にメールペットを渡した時の説明を、ちゃんと聞いてなかったんですか!
【育成ソフトで構築された彼らにとって、《ナザリックのNPC》の設定は、あくまでも種族を構成するのと人格構成の補助的な設定でしかありません。
ある程度は、組み込んだ設定が影響を与えますけど、無垢な小さな子供と一緒で親の育成手腕が問われますので、なのでちゃんと一から育ててください。】って言いましたよね!
それなのに、タブラさんがきちんと愛情をもって接したり、悪い事をした時は叱ったりするなどの育成していないから、アルベドは育児放棄によるスカスカの中身を補うべく、ある程度の影響しか与えない筈の【ナザリックのNPC】の設定が暴走しておかしくなってるんですよ!」

タブラさんの返答に、ヒートアップしていくヘロヘロさんの姿は、この場にいる面々の中にいる被害者達の気持ちを代弁していると言って良いものだった。
正直、タブラさんはペットを飼うのには向いていないタイプだと言っても良いかもしれない。
専用の電脳空間内で、自分が作ったNPCがモデルのメールペットなら、それ相応の愛着を持つだろうと考えていた分、こんな事になるとは予想していなかったのだ。
あの、自分のNPCに対して設定を三行で済ませたたっちさんですら、セバスの事を自分の息子を育てる感覚で色々と世話しているのに、あの設定に拘るタブラさんがこんな事になるなんて予想外過ぎたのである。

「……まぁ、タブラさんが認識違いをしていたせいで、アルベドの育成に完全に失敗したのは分かったけど、今後の対策はどうするんだ?」

その声が上がったのは、武御雷さんだ。
彼のところのコキュートスは、アルベドの行動による大きな被害にこそ遭っていないが、小さな嫌がらせは受けているようだし、それ以上に彼が仲の良い弐式さんの所のナーベラルがかなり大きな被害に遭っているからこそ、その辺りが気になったのだろう。
それに対して、返事をしたのはそれまで黙っていたぷにっと萌えさんだった。

「そうですね……一番手っ取り早いのはアルベド自身を初期化して育て直す事なんでしょうが、既に他のメールペットとの交流をしてしまっている以上、それは難しいですね。
次の手としては、設定の中の【ただし、ビッチである】と言う部分を抹消して、そこから修正を図ると言う方法もありますけど、それに関してはタブラさんが納得してくれなさそうな顔をしていますし。」

つらつらと、案を出しては自分で否定していくぷにっと萌えさんの言葉に、当たり前だと言わんばかりの顔をしているタブラさん。
特に、【ただし、ビッチである】と言う部分を抹消すると言った時の反応は、絶対だめだと言わんばかりのものだったので、多分この辺りは全員で説得しても了承するつもりはないだろう。
しかし、だ。
彼が受け入れないからと言って、このままアルベドの状況を放置という訳にはいかないのは、ぶくぶく茶釜さんなどの被害者たちの様子を見れば、すぐに判った。
正直、モモンガ自身もパンドラズ・アクターが受けた被害を考えれば、それ相応の対策を取って貰いたいのが本音である。

「ぷにっと萌えさんが出す案を全て蹴るなら、タブラさん自身が今からでも全力でアルベドを躾直すしかないでしょうね。
あそこまで自由奔放に育ってしまった以上、かなり修正は厳しいと思いますが。
これも親の……飼い主の責任として、人様に迷惑を掛けなくなるまできっちり面倒見るべきです。」

状況を見守っていたたっちさんが、タブラさんの事を見据えてそう言い切る。
リアルで娘がいる彼から見てみれば、タブラさんの所業は腹が据えかねたのかもしれない。
ある意味、タブラさんがしていたのは育児放棄に近いからね。
それに対して、ニヤリと口元を上げながら笑ったのは、ウルベルトさんだ。

「まぁ、今回はたっちさんが言うのが正論だし、それに関しては特に反論するつもりはありませんね。
たっちさんは、実際にセバスの事を娘と同様にきちんと世話をしているようですから。
ただ……たっちさんが言うように、タブラさんがアルベドを躾直している時間があると良いですね。
メールペットたちは、俺の所のデミウルゴスを筆頭にして、どの子も自分で色々な事を学習していく能力を持っている子たちです。
そんな子たちが、ただアルベドに泣かされたままでいるだけの存在だと思っていると、多分タブラさんを筆頭に俺たち全員仰天させられる状況になる可能性があると、そう思った方が良いですよ?
あの子たちには、【学習能力の限界】と言う制限は付いていないんですから。」

意味深な言葉を告げるウルベルトさんに、誰もが困惑した様子を見せる。
だが、彼はそれ以上の事をこの場では言うつもりはないらしい。
完全に、口を閉ざしてしまったウルベルトさんの様子を見ながら、それは確かにその通りだとモモンガも思う。
ここの所、パンドラズ・アクターの色々な知識を得ようとする意欲は、最初の頃よりも格段に上がっている。
それは、決して悪い事じゃないと思っていたからこそ、モモンガもパンドラズ・アクターがやりたい事をやれるようにと後押ししていた。
けれど、ウルベルトさんの意味深な言葉を聞いたら、もう少しだけきちんとパンドラズ・アクターと向かい合って対話を増やす方が良いような気がしてきたのだ。

アルベドじゃないけど、自分が関与しない所でパンドラズ・アクターが何かをしでかしてからじゃ、それこそ遅いからな。

結局、それからもギルメンたちから幾つもの案が出されたものの、当のタブラさんがそれを受け入れなかったので、【タブラさん自身がアルベドを躾直せるかどうか、しばらく様子を見る】と言う事で今回の話し合いは終了した。
正直言って、ウルベルトさんの言葉じゃないが、あそこまで歪んで育ったアルベドを育て直すのが可能なのか、モモンガから見ても疑問しか残らない内容で様子を見る事に、不満が無いと言えばうそになる。
それでも、ペットの育成方法は飼い主次第と言う主張をされてしまえば、反論出来ないのも事実で。
会議が終わった後、帰り際にウルベルトさんが小さく零した言葉が、モモンガはとても気になった。

「まぁ……こうなったら、確実に嵐が起きるだろうなぁ。」

それは、どうやらモモンガにしか聞こえなかったらしい。
とても気になったので、それを何もせずに放置する事は出来なかった。

『何か知っているなら、ギルド長である俺にだけでも教えてくださいよ、ウルベルトさん。』

まだ、残っていたウルベルトさんに対して、周囲に気付かれない様に伝言で尋ねたのだけれど、ウルベルトさんが教えてくれたのは一つだけ。

『うちのデミウルゴスをアドバイザーにして、色々とアルベドの被害に遭ったメールペットたちが集まって何かやっている事位しか知りませんよ。』

との事だった。
どうやら、ウルベルトさん自身もそこまで詳しい内容は知らないらしい。
だが、【アルベド被害者の会】と言ってもいい感じのメールペットたちが集まり、必死に何かをしている事だけは知っているので、あの発言に至ったそうである。

それを聞いて、モモンガは家に帰ったら早速パンドラズ・アクターと話し合ってみようと、強く心に決めたのだった。




という訳で、タブラさんによるアルベドの育成失敗が判明しました。
普通に考えて、四十一人もいれば【育成系ゲーム】が向いていない人間はいる訳ですよね。
それが、たまたまタブラさんだったと言う。

これにて、手持ちのストックはなくなりました。
現在、この次の話を書いていますが、もう暫くかかる予定です。
活動報告でお尋ねした件は、どなたの希望もなかったので予定通りに勧めようかと思案中です。
それでも、一応ご希望いただく場合の最終期限として、この次の話がアップされるまでは待ちたいと思います。
詳しくは活動報告をご覧ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヘロヘロの慌ただしい毎日

という訳で、次はこの方で。





ヘロヘロは、つい数ヶ月前までずっと死ぬほど忙しい日々を送っていた。

もちろん、それにはヘロヘロ自身が【リアルの仕事が多忙】と言う以外の理由がある。
その理由は、【アインズ・ウール・ゴウン】の仲間のギルメンの一人が【リアルで飼っていたペットが死んだ】事によるペットロスで、ログインしなくなったことだった。
正直、この末期な世界である【リアル】でペットを飼っている事自体が凄い話なのだが、それはさておき。
こんな風に、ペットが死んだ事でログインして来なくなる位ならば、彼の為に【電脳空間でも飼えるペットを作ろう】と考え、結果として膨大な過去のデータの中から見つけ出したのは、百年以上前に存在していたメールソフトに付属させる事が出来た、ペットの育成ソフトだった。
これなら、まずペットが死ぬ心配はない。

育成ソフトである以上、ペットの成長を促す意味で細かな世話をする必要はあるだろうが、それでも普通に【リアル】で生きているペットを飼うことよりは、余程簡単に育成できるだろう。

そう考えたヘロヘロが、まずこの件に関して相談を持ち掛けたのは、同じギルメンのウルベルトだった。
彼は、【ナザリックの第七階層守護者】であるデミウルゴスを作成した頃から、色々とNPCに対して色々と思い入れが強い部分があった様なので、今回の一件も相談すれば協力を得られそうな気がしたからだ。
元々、ヘロヘロはギルメンの為に作るメールペットのベースは【ナザリックのNPC】のデータを流用するつもりだったので、余計にそう考えたのである。

そして、そのヘロヘロの考えは当たっていた。

彼は、≪デミウルゴスと【リアル】で過ごす為と≫言う事で、色々とヘロヘロに手を貸してくれたのである。
それこそ、ヘロヘロが考えていたよりもウルベルトは色々な意見や要望、そしてその為に必要なデータの入手などまで手伝ってくれたのだ。
最終的には、メールペットの反応を確認する意味でのサンプルデータを取る為に、試作版のメールペットの【デミウルゴス】を彼に渡した上で、試作的にメールのやり取りをする事になった。

それ以外にも、初期の段階で細かな動作確認にも協力して貰っているので、ウルベルトには頭が上がらないと言っていいだろう。

これに関しては、ヘロヘロを中心にした今回の製作チームがほぼ似たような考えだった。
なので、彼へのお礼をどうするかと言う話は、作成に携わったメンバー全員一致ですぐに決まったのだ。
これから、メールペットが本格的に始動するまでの間、試作版から蓄積したデータも反映させる事で、他のメールペットよりも経験値と学習能力を向上させ、名実ともにデミウルゴスを【メールペット一の知恵者】にする事で、話が纏まっている。

なんと言っても、それが一番ウルベルトの喜ぶ事だろうと、誰もがすぐに判ったからだ。

もちろん、ウルベルトの所のデミウルゴスだけでは、メールペット同士のサンプルが取れないので、他の製作メンバーやヘロヘロ自身も、メールペットの試作版を試す事が決まっていた。
参加したメンバーと話し合い、自分なりに色々と考えた上で数多く手がけた自作のNPCの中から、ヘロヘロは自分のメールペットとする相手を選んだ。
彼が、自分のメールペットとして選んだのは、【戦闘メイドプレアデス】のソリュシャンである。
元々ヘロヘロは、彼女を筆頭にナザリックに居る様々NPCたちのAIを担当していた。
【戦闘メイドプレアデス】達は、他のギルメンも製作に関わっているが、彼女だけはヘロヘロが一から設定を請け負ったNPCである。
なんだかんだ言っても、ヘロヘロは彼女に対して愛着が一番強かったのだ。
もちろん、ソリュシャンの事を試作機のデータテストをする間だけのパートナーにするつもりは、ヘロヘロにはない。
本格的にメールペットを導入後も、自分が選ぶメールペットの枠は彼女つもりだし、他人に譲るつもりはなかった。

先に、自分のメールペットになるNPCを選べるのは、制作者側の特権だと言っても良いだろう。

これは、他の製作メンバーも同じ意見なので、完成するまで苦労した分の見返りだと言えば、他のギルメンも反対できない筈だ。
なんと言っても、ヘロヘロ達がここまで自分の時間を費やして作製したからこそ、彼らはメールペットを受け取れるのである。
むしろ、この件に関しては譲るつもりはなかった。

ギルメンに対して、正式にメールペットのソフトが導入されるのは、それから数ヶ月後の話である。

*******

ヘロヘロの朝は、かなり早い。
彼の仕事先である会社が、傍から見てもかなりのブラック企業であり、一日の勤務時間が長いためだ。
一応、それでも【ユグドラシル】にログインして仲間とゲームを楽しむ時間は何とか確保しているが、それでも他のギルメンに比べてヘロヘロの拘束時間は長い。
そんな彼が、自分の自由になる僅かな時間を使ってまで、それ程数が多くないとはいえギルメンたちときちんと定期的にメールをやり取りするのは、自分のメールペットのソリュシャンの為だった。

ちゃんと、彼女にメールを運ぶ仕事を全く与えてあげられないのは、この【メールペット】と言うソフトのメイン制作者として、絶対にやってはいけない事だと考えているからだ。

******

ウルベルトさんや製作メンバーと共に、あらゆる事を協力しながらメールペット関連のデータ調整をしていた頃は、とても大変だった。
だが、その数ヵ月の苦労はギルメンが喜ぶ姿を見た事で、十分報われたと思っている。
それ位、ギルメン達はヘロヘロ達が必死になって完成させたメールペットの事を、本当に喜んでくれたのだ。

だからこそ、ヘロヘロは唯でさえ少ない睡眠時間を削ってまで頑張ったと言うのに、そこまで身を削っていたヘロヘロの苦労を、タブラさんは理解した上でアルベドをあんな状態で放置しているのだろうか?

先日のギルド会議を思い出すだけで、ヘロヘロは怒りが込み上げてきてしかたがない。
もちろん、他のギルメンからは随分と心配されたし、この一件で一番協力してくれていたウルベルトさんや他の製作メンバーなどは、メイン製作者のヘロヘロがどれだけ大変だったか理解しているだけに、同じ様に憤慨してくれた。
ウルベルトさんや他のメンバーも、今回のタブラさんの反応には思う所があったんだろう。
そもそも、アルベドをそのままタブラさんの設定通りに育てるのなんて、普通じゃできる訳が無いのだ。

彼が考えている理想を詰め込み、ギャップを盛り込んだあんな女性に育てようとしたら、それこそメールペットのAIの許容量を超えてしまうだろう。

冷静に考えれば、それ位の事など簡単に判りそうな物なのに、彼は自分でアルベドを選んだ。
他にも、タブラさんの作ったNPCはいる。
そう……アルベドの姉であるニグレドだって選べたのに、彼は最も育成が大変なアルベドを選んだのだ。

自分で選んでおきながら、設定通りに育てるのは面倒だからと育成は放棄とか……本当にあり得ないんですけど! 

正直、タブラさんの件を考えるだけで頭が痛くて仕方がない。
この件に関しては、メイン製作者であるヘロヘロにも打てる手は殆どなさそうだから、後はタブラさん自身がどうするか見ているしかないだろう。
と言うか、メールペットの初期化が出来ない以上、根底の設定を変えると言う選択肢を拒否するなら、こればかりはタブラさんが自分で何とかするしかない。
そんな風に、タブラさんのしでかした事を考えてイライラしていると、いつの間にかソリュシャンが心配そうに引っ付いてくる。

そう言えば、今は電脳空間に降りて彼女に癒しを求めている最中だったよ、うん。

多分、ソリュシャンはどうしてヘロヘロが苛立っているのかを理解はしていないだろう。
まだまだ、そこまでの細かな機微を理解出来るまでAIの方が成長していない筈だからだ。
それでも、自分の事を心配しているのか様子を伺ってくるソリュシャンの頭を優しく撫でながら、ヘロヘロは一先ずウルベルトさんへのメールを作成し始めた。

*****

話を元に戻すが、ヘロヘロの【リアル】の仕事は、長時間拘束型だ。
とは言え、常に仕事を詰め込まれて忙殺されているばかりかと言われると、微妙に違う。
一日の仕事の中で、少しゆとりがある時間がどこかで発生するので、それがそのまま彼の休息時間になるのだ。
ただ、その休息時間は仕事の進捗次第と言う事もあり、いつ休みに入れるかは誰にも読めない。
それこそ、ヘロヘロ自身を含めた自分の担当部署ごとに交代で休む為、それこそ休息時間に入れる時間帯は安定していないのだ。
特に、ヘロヘロのようなシステムエンジニア系の部署は、営業職よりも【納期の最終締め切り】と言う名の時間に追われる事も多く、本気で休息時間に入れる時間帯が安定していない。
それでも、一度休憩に入れば三十分ほどは纏めて休めるので、その間にヘロヘロはちゃっちゃと食事を取りつつメールのチェックをする。
朝の出勤前の時間は、とても余裕が無いのでメールの返信を書くどころかチェックすらしていられないからだ。
なので、こうして業務時間内に発生する休憩時間に纏めてチェックして、簡単な返信を作成するとそれをソリュシャンに託して配達して貰う。
主に、ヘロヘロの所にメールを送ってくるのは、メールペットの試作していた頃からの付き合いのウルベルトさんと作成メンバーなので、ざっくりと簡単な返信内容だったとしても向こうも慣れたものなので気にしていない。
むしろ、ヘロヘロの状況を理解しているので、この返信がソリュシャンに仕事を与える為に作られたものだと言う事も理解していくれているのだ。
更に、彼らは今でもメールペットに何か不具合が出た時のことを考えて、色々な対策を取れるようにとヘロヘロと小まめに連絡をくれている。

特に、定例会議でタブラさんの一件が判明してからは、育成がいい加減なアルベドの影響がメールペットに出ないか、それを心配してメールペットのメンタルデータを中心に取ってくれているらしい。

彼女の被害を受けていない、ウルベルトさんの所のデミウルゴスのメンタルデータと、ある程度の被害を受けている彼らのメールペットのメンタルデータの状態を比較するのは、確かに彼女たちの育成状況を図る意味で必要なデータ収集の一つだから、率先して協力して貰えるのはとても助かると言っていいだろう。
まだ、彼ら全体がメールペットとして生まれて数か月しかたっていない。

そんな彼らだからこそ、まだどこか行動に幼い部分が目立つのだ。

アルベドの行動は、その幼さが極端に出たと言っても良いだろう。
本当は、主であるタブラさんに愛されたいけど、ちゃんと自分の事を見てくれないから、他のメールペット達の主に愛されようとしただけ。
それと同時に、自分とは違って主に愛されている他のメールペットへ嫌がらせしたのは、彼らが羨ましかったから。

だから、今ならまだアルベドだって十分取り返しが付く筈なのだ。

それこそまだ幼いからこそ、今からでもタブラさんがアルベドに本当の意味で向き合い、きちんと愛情を注げばまだ育て直しは出来る筈。
ただ、【ナザリックのNPC】のアルベドがとても賢いと設定されているので、彼女の頭の回転もかなり良い事を考えれば、あまり時間は残されていないかもしれないのだが。
にも拘らず、アルベドを放置したままのタブラさんに、ヘロヘロは苛立ちを感じていた。

あれでは、流石にアルベドが可愛そうだと。

ヘロヘロと同じ様な事を、どうやらウルベルトさんも感じていたらしく、頻繁にメールをくれる。
むしろ、ウルベルトさんはアルベドによって虐められている他のメールペット達からの報復の方を心配していた。
どうやら、一部のメールペット達の中では、既に何らかの動きが見えるらしい。
ウルベルトさんがそれを知っているのは、デミウルゴスが一枚噛んでいるからだそうだ。
ただ、この件に関してはあまり詳しくは教えてくれないらしく、ウルベルトさんも手を拱いているらしい。

ソリュシャンなんて、そんな話がある事すら教えてもくれないのだから、教えて貰えるだけまだましじゃないだろうか?

こんな風に、ウルベルトさんとは頻繁にメールをやり取りしているお陰で、ソリュシャンとデミウルゴスはかなり仲が良い。
やっぱり、試作版の頃からの付き合いだから余計に仲が良いのかな?

製作者サイドの視点で見ると、ウルベルトさんの所のデミウルゴスの育成の仕上がり具合は、それこそ文句の付け所がない位完璧だと思う。
もちろん、デミウルゴス自身が試作版から起動している事や、学習能力が半端じゃないと言う事もあるだろうが、それ以上にウルベルトさんの愛情の注ぎ方が半端じゃないと思うのだ。
細かな動作や言動を含め、全てウルベルトさんが設定に書き上げた通りの理想を完全に再現していると言っていい位、デミウルゴスは完成度が高くて自然なんだよ。
仲間思いな部分も強く出ていて、友人としてソリュシャンの事もちゃんと気遣ってくれているし。
普段、仕事が忙しくてソリュシャンの事を構えないヘロヘロの代わりに、ウルベルトさんが色々と心遣いをしてくれているのも知っている。
なので、ヘロヘロは彼ら二人には頭が上がらないと言っていいだろう。

それ以外に、メールペットの中でソリュシャンと仲が良いのは、実はシャルティアだ。

ペロロンチーノさんの所のシャルティアは、【ナザリック】のNPCとしてのシャルティアと違った感じに可愛らしく成長している。
もちろん、彼女自身の中には根底の設定として【ナザリックのNPC】としての部分は残っているらしい。
らしいのだが、それでも沢山の仲間との積極的な交流と彼女自身のメールペットとしての学習能力によって、いい意味で違いが出来てきているらしいのだ。
そんなシャルティアを、ペロロンチーノさんも【これもシャルティアの可能性の一つ】として認識して、滅茶苦茶可愛がっている事も知っているので、彼らの事はヘロヘロとしても安心してみていられる。
何より、ソリュシャンとシャルティアの仲が良いのは、ペロロンチーノさんの気遣いの結果だ。

時間にかなり自由が利く彼は、ヘロヘロに対してメールをくれる際に色々と考えてくれている。

そう、休憩時間が安定していないヘロヘロの事を考え、いつも【時間がある時に連絡ください】と言ってくれている一人だ。
彼曰く、「シャルティアがヘロヘロさんにメールを渡せなくて、残念そうに帰ってくるのは嫌ですから」との事だが、裏を返せばメールを届けに来たシャルティアとソリュシャンが、楽しそうに二人で遊んでいる姿を、ヘロヘロも見れる事になる訳で。
多分、こちらからは頻繁にメールを出せる訳じゃない事も見越して、時間に自由が利く自分の方がヘロヘロに合わせる事を優先してくれているのだろう。

そう言う意味では、本当にソリュシャンの為にも有り難い相手だった。

他に、ヘロヘロが頻繁にメールをやり取りしている相手は、るし☆ふぁーさんだったりする。
ギルメンの半数以上が、恐怖公がメールペットとしてメールを運んでくる事にあまり良い顔をしていないらしいが、ヘロヘロはそこまで彼の事は気にならないし、このメールペットとしての彼とは、ソリュシャンも割と仲が良い。
恐怖公が、るし☆ふぁーさんのメールを持って来てくれるのは、昼前から昼過ぎの合間なのだが……信じられない事に、ヘロヘロの休憩時間に上手くエンカウントする事が多いのだ。

その理由を、少し前にるし☆ふぁーさんに聞いた所、「何となく、この時間だとすぐに返事が来る気がした」と言うものだから、本当に驚くしかないだろう。

そんな感じで、ヘロヘロの元へとメールを送って来るし☆ふぁーさんは凄いし、恐怖公の言動もどれもかなり紳士的で、外見もそんなに気にしない自分やソリュシャンは、上手く付き合っていると言えるだろう。
基本的に、ソリュシャンにはメールペットの仲間に対して偏見を持たない様に、気を付けて躾をしているつもりだからね。
普段は、あんな感じで【悪戯好き】で通っているし☆ふぁーさんだけど、【ユグドラシル】の中ならともかく日常では本当に必要なTPOは踏まえた、気遣いある行動を出来る人だ。
そうじゃなければ、それこそ末期である【リアル】で社会人として生き抜くのは難しいだろうし、そんなるし☆ふぁーさんが育てている恐怖公が紳士だっていう事位、きちんとメールのやり取りをすれば解るんだろうけど、恐怖公のあの外見が邪魔するからな。

ま、るし☆ふぁーさん本人がそれを判っていて、それでも彼を選んだ訳だし、周囲とはともかく彼らの関係はそれなりに上手くいっているのだから、これに関してヘロヘロが口を挟む事じゃないんだろう。

ヘロヘロとしても、ソリュシャンがそれなりに上手く仲良くやっているので、恐怖公の事は嫌いじゃない。
少なくても、日に日に問題行動の多くなるアルベドと比べるなら、ヘロヘロは間違いなく恐怖公の方をとる。
彼の方は、本当に礼儀とかきちんとしているし。

そう……普段から少ない接触しかしない筈なのに、しっかりソリュシャンに対して問題行動を取る彼女よりは。

タブラさんとは、先日のギルド会議の一件まで、ヘロヘロは殆どメールのやり取りをする事もなかったのだ。
けれど、それでも何かの連絡メールを持ってこちらに顔を出したアルベドは、一つだけやらかしてくれたのだ。

それは、ある事をソリュシャンに吹き込んで、彼女を凹ませて泣かしていったのである。

今回の会議の一件で、アルベドの育成に問題があった事が発覚した事で、どうして彼女があんな事をしたのか理由は判った。
むしろ、彼女がそんな状態だったのならば、ソリュシャンにやったことは許せないものの、納得するしかないだろうと思わせる。
ここまでヘロヘロが怒る程、アルベドがソリュシャンに対してやらかしてくれた事はなんなのか。

それは、普段忙しくてヘロヘロがソリュシャンの事を短い時間しか構えない事を指して、『あなたは、ヘロヘロ様に愛されていないの』と言う刷り込みをしようとしてくれたのである。

どうしてアルベドが、そんな事をソリュシャンに対してしたのか、最初の頃はどうしても理由が判らなかった。
だが、今回の一件で彼女の置かれている状況を理解したら、漸く納得がいった。
彼女は、自分以外にも似たような境遇の存在として、ソリュシャンを自分の仲間として引き込みたかったのだろう。

もっとも、ソリュシャンの心を傷付けるだけのやり方は最低で、ヘロヘロを本気で怒らせるだけだったが。

アルベドが、ソリュシャンに対してそんな行動に出た最初の日、他のメールをチェックするべくメールソフトを立ち上げたヘロヘロは、部屋の隅で泣くソリュシャンと、それを慰めているデミウルゴスの姿を見て、最初はデミウルゴスが彼女を泣かせたのかと勘違いしそうになったものだ。
それでも、メールペット同士が喧嘩をする事が普通にあり得ることを、彼らの製作者として判っていたので、ヘロヘロは割と冷静に対応出来た。
だから、ヘロヘロはデミウルゴスまで傷付ける事はなかったが、他のギルメンの所だったら誤解して騒動に発展していたかもしれない。
詳しい話を聞いて、彼が悪くない事を理解したところでデミウルゴスには帰って貰ったのだが、その日の夜に【ユグドラシル】にログインした途端、ウルベルトさんからソリュシャンを心配するショートメールが来たのには、本気で驚いたものだ。
とにかく、ソリュシャンが【愛されていない】などと言う勘違いする事なく安定させる意味で、時間が許す限り彼女の事を構い倒してあげたら、そんな勘違いをする事はなくなった。
と言うか、デミウルゴスの所へと時間がある限り何か弟子入りしに行くと言い出した。

どうも、メールペットたちの中で一番頭が良いデミウルゴスは、色々とペットたちに知恵を貸しているらしい。

詳しい事は聞けなかったけれど、彼女が自分で強くなろうと頑張っているのを反対するつもりはヘロヘロにはない。
と言うか、これがウルベルトさんの言っていた案件かもしれない。
なんだ、ちゃんと話してくれていたじゃないか。

勘違いして、ウルベルトさんに八つ当たりめいた事を考えてたよ。

それはさておき。
こんな風に、ソリュシャンを悩ませる原因になったアルベドの発言だが、ある意味痛い所を突かれたと思う。
どうしても【リアル】の仕事の関係上、ヘロヘロにはソリュシャンの事を余り構ってあげられる時間がないのは、どうする事も出来ない事実だからだ。
なので、メールペットたちがそれぞれ仲間同士で集まる形で仲良くする事は、決して悪い話じゃない。
ギルメン同士で交流が少ない場合、どうしてもやり取りが希薄になるメールペットがいるのは理解しているので、その穴を埋めてくれるのなら好都合だからだ。

例え、懸念すべき案件がメールペットの間で持ち上がっているとしても、こればかりはヘロヘロは自分から干渉するつもりはなかった。

*****

ヘロヘロの帰宅は、基本的に遅い。
と言っても、【他のギルメンと比べたら】と言う時間帯で、今のところは収まっているので、まだ問題がないと考えるべきだろう。
帰宅して最初にするのが、メールソフトの立ち上げと、【ユグドラシル】へのログイン前に簡単な夕食を取る事だ。
メールソフトを立ち上げるのは、仲間からのメール確認という理由あるが、それ以上に少しでもソリュシャンとスキンシップを取りたいからである。
朝の時間帯は、どうしても彼女を構えない分、時間が取れる時にはきちんと彼女との時間を取る様にしていた。
試作時代からの付き合いもあり、アルベドに少し精神的に揺さぶられて不安定だったことはあったものの、ソリュシャンはちゃんとこちらの事を理解して待ってくれている。
そんな所が、ヘロヘロには可愛くて仕方がない。
この時間帯は、基本的に届いたメールチェックはするのものの、ソリュシャンはとのスキンシップの時間だった。
食事を取る必要がある分、電脳空間まで直接下りる時間は短いが、その分も3Dタッチ専用グローブを付けて彼女を撫でたり、その手の上に座らせたりする事でヘロヘロなりにソリュシャンの事を可愛がっている。
インカムを付けて、彼女のお話を聞くのもその時間だ。

短い時間でも、ヘロヘロが自分の言葉に耳を傾けてくれているのが判るのか、ソリュシャンは満足そうに笑っているので、もう次にアルベドに何を言われても心配ないだろう。

その後、ヘロヘロは【ユグドラシル】にログインして仲間とある程度遊んでから戻ってくる。
ある程度までなのは、【ユグドラシル】から戻った後、ヘロヘロはいくつかのメールの配達をソリュシャンに頼んで、彼女が配達に行く時間を利用して簡単なデバッグ作業をする為だ。
暫くして、メールの配達に出ていたソリュシャンが戻って来たのを確認し、【お休み】と告げてから就寝する。
帰宅した時点で、目を通したメールの返事の半数は【ユグドラシル】の中でのショートメールで返事をしてしまう為、彼女が運ぶメールは少ない。
本当は、もっとメールを運ばせてあげるべきなんだろうけど、ヘロヘロの側の時間的許容量が足りないのだ。
メールを作成する時間よりも、ソリュシャンとのスキンシップに充てたかったし、少しでも彼らの改善点を探す時間を確保したかったから。

そうして、ヘロヘロの慌ただしい毎日は過ぎていくのだった。



今回はヘロヘロさんの視点の話になりました。
ギルド会議の流れを汲んでいるので、今までの流れとは違うものになっていると思います。
どうしても、製作者視点での話も書きたかったので、こんな感じになりました。
今までの様に、ヘロヘロさんとソリュシャンのうふふキャッキャの話にならなくてすいません。

それと、誤って投稿予約の時間を間違えてしまい、まだ少し弄る予定の文章を投稿してしまいました。すいません。
一旦投稿を取り消して、修正したものを投稿し直しました。
すぐに気付いたのですが、ご迷惑をおかけしてすいませんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。