学園黙示録~魔法を持って行く物語 (武御雷参型)
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プロローグ
プロローグ


はい、正式に書く事にしました。まぁ、色々とやってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。今月はもう一話投稿して終了します。ですので、更新は8月20日となります。


プロローグ

 

俺は真っ白な世界に来ていた。えっ? どう言う事だって?なら、回想を見てくれ。そうししたらわかるであろう。んじゃ、逝ってみよう!!

 

~回想~

 

俺は極普通の社会人だ。まぁ、介護職をしているがこの職業も結構楽しいな。で、まぁ、職歴としたら三年目だが、特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)デイサービス、デイケアサービスなどの施設に行っている経験がある。まぁ、ぶっちゃけ、忍耐や心に余裕がないとこの職業は勤まらないであろう。まぁ、自分はこの職業が大好きだからやっているがな……って、そこ!! 変人って言うな!!

 

まぁ、良いや。で、俺は早出で仕事が終わったから自転車で家に帰っている。

 

「なんか知らんけど、誰に言ってるんだろうかねぇ~俺は………おっ、信号が青になったな。早く家に帰ってリリなののセカンドムービーを見なければ!」

 

そうして俺は信号を渡っていたが、横から猛スピードでやってきた一台の車が既に俺の横に来ていた。そして、俺は何時の間にか宙を舞っていた。そこからは、俺の意識は無くなり、気付けば………

 

~回想終了~

 

此処に居たって訳だが………誰か来ないのかねぇ~そうじゃないと俺死んじゃうよって、既に俺は死んでるだったな。失敬失敬。まぁ、テンプレみたいな展開だったら『待たせたなぁ~』って言ってくるおじさんが……

 

『すまない、少し仕事が長引いてしまってな。で、君が今回死んでしまった者かね?』

 

はい、来ましたぁ~。本当に来ましたよ。おじさんが。

 

「はい、そうだと思いますが? で、私は貴方方のミスで死んでしまったのでしょうか?」

 

『そうなるかのう……じゃが、これだけは言わせて貰う。今回は我々の敵の所為であったと』

 

「はい?」

 

どういうこった? 敵? 誰じゃそれ。

 

『おっと、自己紹介が未だじゃったな。我が名は堕天使族の長、アポロニアスである』

 

「……………」

 

アポロニアスって、神と対立している悪魔じゃなかったっけ?

 

『まぁ、そこは気にしなくて良い。でだ、お主を転生させようと考えているんじゃが、何処の世界が良い?』

 

そう言われて何枚かの紙が渡される。そこには『学園黙示録』『喰霊』『バイオハザード』の三つだ。

 

「おい、どれも死にに逝く様なもんじゃないか!? えっ、何?俺は逝って早々死んじゃうパターンなんですか!」

 

『すまない。これしか用意が出来なかった。まぁ、特典は凄いのを付けるからさぁ~』

 

うん、これは悩む。だって『学目』だったらまぁ、死ぬ事は無いけどさぁ『喰霊』は………原作持ってないんだぜ? そして、『バイオ』はゲームもしてねぇしよ!

 

「なら、学園黙示録でよろしくお願いします」

 

『お願いされました!! では、特典じゃがリリなのの魔法が全部使えるようにしておこう。そして、無印編からForceまでのも付けて置こう。デバイスは、この空圧式・対魔居合刀『舞蹴拾弐號』(マイケルじゅうにごう)とやらでいいじゃろう。ついでにお主に『喰霊』に登場する霊獣の『白叡』も付けよう。そして、Forceの『CW-AEC00X Fortress』と『CW-AEC02X Strike Cannon』も付けよう。それとついでじゃ『CW-MR212』も付けよう。これでいいじゃろう。その他に欲しい物でもあるかのう?』

 

え~と、これが正しく『開いた口が閉じない』って事なんでしょうか?

 

「これって完全にチートですよね?」

 

『ん? 今更かのう? ならもっとつけようか?』

 

「いえ、結構です!! これ以上つけたら俺がどうなるか判らないんで」

 

『そうじゃろうな……さて、お遊びも此処までじゃ。あの扉を越えたら新たなる世界じゃ。それと、容姿はそのまんまじゃからな。では、新たな世界でも頑張って生きよ。山本俊輔』

 

「判りました。では、これにて山本俊輔。新たなる世界に向かいます!!」

 

こうして俺は学園黙示録の世界に行くことになった。この世界ではどんなことが待ち受けているのかが楽しみで仕方が無い。出来れば、俺の周りに居る連中は殺させはしない。この能力でな!!

 

 

『フォッフォッ、行きよったかのう………だが、移動手段もアレだけじゃと心細いな………そうじゃ、あの乗り物を使わせればいいのじゃ。では、今すぐにでも手配しようかのう」

 

そう言ってアポロニアスは何処からか現れた電話を取る。

 

『久しいのう、俊輔よ。そっちの世界では如何じゃ? ………そうか。それでのう、少し頼みがあるんじゃが? そうじゃ。ああ、一隻用意してもらえんかのう? そうじゃのう………なら****は如何かのう? ………そうか!! なら頼むぞ。ではな。さて、これであ奴もやりやすくなるであろう」

 

そう言ってアポロニアスは消えていった。




誤字脱字、感想、指摘がありましたらよろしくお願いします。


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第一話

はい、投稿します。


俊輔サイド

 

俺はあの扉から出た瞬間、そこは新たな家の中に居た。

 

「さて、此処から如何した物かな?」

 

『では、私達に名前を付けて貰えませんか?』

 

「ウォッ!!? 何処から声がしたんだ!!」

 

『此処ですよ、新たなる主』

 

声がした方を見ると一振りの刀と蒼いビー玉が机の上に置いてあった。

 

「君達はなんなんだ?」

 

『私達は堕天使族の長であるアポロニアス様から貴方様を助けるようにと言われて此処に居ます。私の正式名称は空圧式・退魔居合刀(舞蹴拾弐號)と言います』

 

『私達の正式名称はCW-AEC00X Fortress(フォートレス)並びにCW-AEC02 Strike Canon(ストライクカノン)と言います。ですが、私達は二機で一機です。ですので、正式名称はCW-AECx01 Fortress・Canon(フォートレス・カノン)です。これからよろしくお願いします』

 

「お、おお……」

 

俺は全く話の内容に付いて来れなかった。だが、一つだけ言える事は、名前を付けて欲しいと言う事だけだ。

 

「じゃぁ、舞蹴拾弐號だが…………神楽で良いか?」

 

『か…ぐら………うん!! それで良いよ!!』

 

「そ……そうか…」

 

神楽ってもしかしてあの神楽のまんまじゃねぇか!?

 

『では、次に私達にも名前を付けて下さい』

 

今度はフォートレス・カノンが言い始めた。

 

「なら、前の術者の名前は覚えている?」

 

『はい、前の主は高町なのは様でした』

 

「なら、君達の名前はそのままでも良い?」

 

『……………』

 

 

 

 

 

この言葉に二機は黙ってしまい俊輔は如何したら良いのか迷っていた。

 

「え? もしかしてダメだった? 名前が全く思いつかなくて………」

 

『いえ、それでも良いですっ!!』

 

「あ、そう………」

 

俊輔は急に叫ばれたのでビックリしていた。

 

『では、今度はワシにも名前を付けてくれないかのう?』

 

「『はっ!?』」

 

俊輔達は後ろを振り返った。そして、そこに居たのは………………………なんと霊獣の『白叡』であった。

 

「えっと、待って!! どうして具現化してんの!? それに、体に封印の鎖が無いし!!」

 

白叡の体には一本も鎖が付いていなかった。

 

『ああ、そのことかのう? 何、あのアポロニアスとか言う者に切って貰った。それに、お主なら、この力を扱えるであろうとも言っておったぞ? で、ワシにも名前を付けてくれないかのう?』

 

「『……………』」

 

これには俊輔達は開いた口が閉じなかった。

 

「…………。付ける事は良いけど、その姿だと、結構ヤバイぞ?」

 

『では、これではどうかのう?』

 

そう言うと、百叡が白い煙に包まれる。

 

「ケホッケホッ!! どうして、此処で煙をだ……す…かな!!?」

 

煙が晴れると、そこには一匹の子犬が座っていた。

 

「えっと、もしかして百叡か?」

 

『そうだが? 何か可笑しいかのう?』

 

「『…………』」

 

このことには俊輔達は黙ってしまう。と言うか、呆れていた。

 

「まぁ、良いんじゃないかな? で、もし開放する時は『喰霊、開放』って言えば良いのか?」

 

『そうだ。で、何時になったら名前をくれるんだ?』

 

「じゃぁ、白で良い?」

 

『ブフッ!!』

 

『な!! どうして、犬の名前になっている!!』

 

俊輔が付けた名前にフォートレス・カノンが笑い、百叡が噛み付いてくる。

 

「え? だって………姿が犬じゃん!!」

 

『何!! 鏡を見せてみろ!!』

 

俊輔は言われた通り、鏡を百叡の前に置くと、百叡は固まってしまった。

 

「も、開放時は真名を言うからさ、それで堪忍してくれへん?」

 

『それなら良いだろう。だが、開放時は必ず我が真名を言うのじゃぞ!!』

 

「了解。じゃぁ、先に力を解放してみよう。この家には地下室があるみたいだから、そこで、実験をしてみよう」

 

『『『おうっ!!』』』

 

そう言うと、俊輔は神楽を片手に持ち、フォートレス・カノンは自分で浮いて俊輔の後に続く。そして、白はトコトコと歩いて行く。

 

 

 

「さて、来ました。地下室!! それでは、デバイスを起動してみようと思います!!」

 

『『『イエェ~イ!!』』』

 

俊輔達は地下で(防音対策は万全)でデバイスを起動させようとしていた。

 

「では、先に神楽から行くか?」

 

『そうだね。じゃぁ、掛け声をお願いします』

 

「了解!! 神楽、セット・アップ!!」

 

『Stand by Ready.Set Up!!』

 

神楽の声がした瞬間、俊輔は光に包まれる。そして、その光が収まるとそこには、腰に神楽を挿して、黒いマントを着ており赤いシャツ、黒いズボンを穿いていた。

 

「うおっ!! まさかのエドかよっ!? まぁ、この姿は好きだったし一回はしてみたかったし……これで、少しは良かったのかな?」

 

『では、今度はそのままで私達を展開して下さい。掛け声は、武装展開と言ってもらえれば展開できますので』

 

「そうか……では、武装展開!!」

 

『Arm Develop!!』

 

そして、今度はフォートレス・カノンが光り輝き始め、その光は俊輔を包み込んだ。そして、光が止むと、左腕にストライク・カノンが装備され、俊輔の周りに三機のシールドが浮いていた。また、体にはカノンを固定する為のパーツが付いており、腰部に三機と背部に一機のパワーパックが装備されていた。これはそれぞれ役目を成しているおり、背部のパワーパックはシールドのエネルギー補充をする為にあり、腰部はストライク・カノンのエネルギーを補充する為に装備している。

 

「まずは、成功かな?」

 

俊輔はそう言うと、神楽、フォートレス・カノンが強制解除されて倒れてしまった。




確認はしていますが、誤字脱字があればよろしくお願いします。
感想、指摘も待っています。

サイドを変えました。作者サイドを無くしました。


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第二話

はい、投稿します。


俊輔サイド

 

「あれ? 俺って昨日………」

 

俺は混乱している。どうしてかって? だって、昨日は地下室で倒れたまでは覚えているが、ベットまで来た覚えは無い。だが、如何してか、ベットに居た。

 

「起きたか? 倒れた瞬間、俺達はビックリしたぜ」

 

俺の横から白の声がしたので、そちらを向くと…………

 

「誰?」

 

なんと、なんか知らんけど銀髪の男が立っていた。つか、マジで誰だ!! お前!!?

 

「俺か? なんか知らんが人間になってしまっていた。そこら辺はアポロニアスに聞いてみてはどうだ?」

 

「おお! そうだな。〔アポロニアス様…アポロニアス様〕」

 

『〔なんじゃ!! こっちは眠たいんじゃ!! ゆっくりと寝かせてもくれんのかぁ!!〕』

 

どうも、アポロニアス様はご機嫌斜めのご様子である………

 

「〔いえ、質問をしたくて念話をしたんですが………〕」

 

『〔なんじゃぁ~言って見ろ〕』

 

「(うわぁ~言い辛ぇ~)〔はい、どうして白叡もとい、白が男になっているんですか?〕」

 

『簡単じゃ、その家にはお主しか居らん。じゃから、保護責任者てものが必要じゃろ? だから、適任だったのが白だったちゅうことじゃ。他には無いかのう?〕』

 

「〔いえ、大丈夫です。ありがとうございました。では、おやすみなさい〕」

 

『〔おう、おやすみなさい〕』

 

そこでアポロニアス様との念話が終わる。

 

「さて、白が今から俺の責任者らしい。にしても、思うと面白いな、この関係………」

 

「どうしてだ? ……………そう言われてみれば面白いな」

 

『えっ? どういう意味ですか? マスター』

 

そこでフォートレス・カノン………今更だが、この名前って長いな………………

 

「フォートレス・カノンって名前は長いから、略してフォーカってどうだ?」

 

『本当に今更ですね? それって、作者が打つのが面倒だからってこう言う名前にしたんじゃないですか?』

 

「言うな、フォーカ。作者だって、好きでこの名前にしたんじゃないらしいぞ」

 

『へぇ~、じゃぁ、どうしてこの名前にしたんですか?』

 

俊輔はフォーカに言った意味を教える為に紙を持ってくる。

 

「フォーカ。お前の名前の意味って知っているか?」

 

『………………知らないですが? それが如何したんですか?』

 

「なら、教えていた方が良いな………フォートレス。綴りではFortress、この意味は直訳したら[要塞]って意味だ。次にCanon、この意味は[砲台]だ。なら、これをくっ付けてたら、どういう意味になる?」

 

『…………………要塞砲ですか?』

 

「正解!! だから、ある意味で名前が物騒だからって事で急遽、フォートレス・カノンからフォーカって変更したらしいぞ」

 

『作者、ありがとう!!』

 

「で、何時の間にか話が脱線していたら戻すけど、この関係を思い出してみろ。俺は白、そしてフォーカ、神楽のマスターだ。だけど、白が俺の保護責任者になったら、俺は白のマスターじゃなくて白が俺のマスターになるって事になってしまうって事だ。判ったか?」

 

『まぁ、何と無くですが………でも、マスターはマスターですよね!!』

 

「そうだ。そこら辺は変更しないから大丈夫だ。で、これからの事についてだが………原作が開始するまで平凡に生活しようと思う。でも、お前達をちゃんと使ってやりたいから鍛錬は欠かさず行う。だから、明日から二度目の小学生に戻りだ。さぁて、寝ますか?」

 

「『『そうだな /そうですね』』」

 

そう言うと、俺達は一緒の部屋に入ってベットに一つになって寝た。

 

 

 

 

 

 

 

そして……………………………

 

 

 

「初めまして!! 山本俊輔と言います。これからよろしくお願いします!!」

 

俺は新たな小学校、床主市立新床第三小学校に転入した。因みに、家には白が子犬形態で居り、神楽も家で留守番、フォーカは待機状態がレイジング・ハートとは色違いだけで他は同じであったので、首にかけて持ってきている。まぁ、神楽は白に咥えさせて持って来て貰えれば良いので、大丈夫である。近々、待機状態を変更するやらしないやらで検討中である。

 

 

 

 

 

 

俊輔が転入初日は一時間目を潰して質問タイムになった。

 

「ねぇ、前の小学校ってどんなのだった?」

 

「えっ? 前の小学校はね田舎の学校で、周りが木々で囲まれていて空気が澄んでいて気持ちの良い場所だったよ」

 

「なら、今、彼女って居る?」

 

「居ないよ。てか、まだ小三なのに彼女なんて居ない見決まってるじゃん」

 

『そうだよねぇ~』

 

この質問にはクラス一同が賛同していた。因みに、作者は居ました。

 

 

 

そして、その日はなんの問題も無く終了する。えっ? 授業時間は如何したって? 書いたって面白くないでしょ? それに、そこまで書く余裕無いし………

 

「じゃぁ、またね。俊輔君」

 

「おう、また明日ね!!」

 

俊輔はそう言いながら同級生に手を振る。

 

「さて、家に帰って勉強と鍛錬でもしようかな? ………ん? どうしてあそこに女の子が一人で立っているんだろう?」

 

俊輔は目の前に居る少女に声を掛けようとした。しかし、その前に黒いワンボックスカーに少女は連れ込まれる。

 

「エエエエエエエエ!! なんか知らんが、誘拐が起きたよ!? この時って119だったっけ? あれ、違う………じゃない!! 〔白、聞える!?〕」

 

俊輔は警察に連絡する前に家に留守番をしている白に念話を掛ける。

 

『〔聞えるぞ、俊輔。で、如何した?〕』

 

「〔今すぐ、神楽を持ってきて。場所は俺の霊力を辿れば判るから。頼むよ!!〕」

 

俊輔はそう言うと一方的に念話を切った。




誤字脱字、感想、指摘、質問受け付けています!!


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第三話

連続投稿!! まだまだ原作には入りませんよ? あと五話か十話以内で原作に入ろうと思います。


一方、家では白が神楽を咥えて出ようとしていた。

 

『でも、俊君がそこまで急ぐとは、よっぽどの事なんだろうね』

 

「そうだな。だが、我が主の命だ。致し方が無いだろう?」

 

『そうかも知れないけどさぁ~白って結構硬いね』

 

「グハッ!!?」

 

神楽の一言に白はライフがゼロになりかけてしまった。

 

『まぁ、でも。白の言う事も一理あるね。でも、瞬君は私達の事を家族って感じで接しているけどね?』

 

「まぁ、そこがあいつの良い所だろう。さて、急ぐぞ」

 

『了解!!』

 

何時の間にか復活した白はそう言うと、家の屋根の上を走っていく。

 

 

 

俊輔サイド

 

俺達は今、少女が誘拐されて連れ去られた場所に来ている。さて、もう少ししたら白達も来るだろうな。早く来てくれないかな?

 

『でも、マスター?』

 

「ん? どうした、フォーカ」

 

『突入しないの? 私達でも行けると思うけど?』

 

フォーカの言う事もそうだが、違うな。今回は並大抵の誘拐じゃない。それどころか、一歩間違えたらテロが起きるほどかも知れない程の誘拐事件だ。

 

「そう言うことはもう少し考えて言う物だな。なら、フォーカ。もし俺達が突入したとしよう。犯人達は銃火器を持っている。一方の俺はフォーカを装備しているだけだ。どちらが勝つ?」

 

『………………向こうが勝つね』

 

「そう言うことだ。だから、俺は白達を待っている。っと、言っているうちに白達も来た様だな……」

 

俺の行った直後、目の前に神楽を咥えた白が居た。

 

「少し待たせたな。では、これから如何する?」

 

白が人間形態に戻って神楽を渡しながら聞いてくる。

 

「決まっている。これから突入する。神楽、セットアップ!!」

 

『Aii right My Master Stand by Ready? Set up!!』

 

バリアジャケットを装備した俺は首からフォーカを取る。そして…

 

「フォートレス・カノン……武装展開!!」

 

『All right My Master Arm Develop!!』

 

俺の体にフォーカが装備される。そして、今度は印を結び……

 

「白叡、開放!!」

 

『待ってましたぁぁぁ!!』

 

白が本来の姿へと戻る。

 

「では、行きますかねっ!! フォートレスを全武装パージ!! カノンは砲撃モードに移行。これより突入します!!」

 

俺はそう言うとストライク・カノンを誘拐されている場所の扉に向ける。そして、俺の周りにラージ、ミドル、スモールが浮遊する。

 

「エクサランス・カノン……フル………バーストッ!!」

 

その瞬間、ストライクカノンを中心に砲撃を扉に放つ。着弾後、建物の半分は爆発の煙が出て全くと言って良いほどに中の状態が見えなかった。そして、煙が晴れるとそこに居たのはディバイダーを装備した少年であった。

 

「なっ!?」

 

俺は驚いていた。この世界に転生したのは俺だけだと思っていたからである。

 

「ねぇ、君の目的は何? この少女を助けるの? それとも僕と戦いに来たの?」

 

少年は殺気を飛ばしながら俺の方を見て聞いてくる。

 

「………俺はそこに誘拐された少女を助けに来た。君とは戦いに来た訳じゃない。全ての武装を解除。白も戻って」

 

「了解した」

 

俺はそう言うと全ての武装を解除して、少年の方に歩いて行く。白も霊獣の姿から子犬に戻る。

 

 

 

 

 

「君の名前を教えてくれないか? 僕の名前は山本俊輔だ」

 

俊輔は少年に尋ねる。

 

「……………僕の名前は山城空」

 

「そうか…空君ね。君はどうしてディバイダーなんかを持っているの? それに、そのディバイダーってもしかしてトーマが使用していた996じゃないの?」

 

「そうだよ。これは996だよ。そこまで知っているということは君も僕と同じの転生者と呼ばれる存在なの?」

 

空は目を虚ろにしながら尋ねる。

 

「そうだ。でも、君は眠たそうだね?」

 

「僕は今まで寝ていないからね……少し、休ませて貰うよ」

 

空はそう言うと前のめりになって倒れるが、俊輔が支えたので倒れる事はなかった。

 

「…………すまないけど、白。この子を俺の家に連れて寝かしてくれないか?」

 

「了解した。だが、俊輔は如何するつもりだ?」

 

「もう少ししたら騒ぎを駆けつけた警察が来ると思うからその時まで此処で待っているよ。じゃぁ、頼むよ」

 

俊輔はそう言うと建物の中で眠っている少女の下に向かって行く。その周りには誘拐犯であろう男達が伸びていた。

 

「はぁ、相変わらずだな。さて、我が主に言われた事ぐらいしなければな」

 

白はそう呟くと家へと帰って行った。

 

 

 

俊輔サイド

 

「はぁ、にしても少しやり過ぎたかな?」

 

俺は周りを見渡しながら呟く。

 

『当たり前です。まさか、フルバーストを掛けるなんて誰が考えますか!? まだ、なのは様の方がお優しいです!!』

 

フォーカが俺に小言を言ってくるが俺はそれを無視する。

 

『まぁまぁ、フォーカもそれぐらいにして……でも、俊君。此処の空気ってもしかして………』

 

「在り得るな。もしかしたら霊気が集まって来ているのかも知れない。まぁ、もしその時には白を呼んで食べて貰えれば良いから、餌代が安くなるね………でも、この空気は異常すぎる」

 

俺は回りを見回す。そして、見つけてしまった。一人の少女が立っていた。しかも………

 

「ああ、この子は事故で死んじゃったんだね……それで帰る場所が見つからなくて此処に来ちゃったんだね? 大丈夫だよ。こっちにおいで」

 

俺がそう言うと頭から血を流して泣きじゃくっている少女がこちらに来る。

 

「何時の間にか殺されたんだね? それは怖かったね。もう大丈夫だよ」

 

俺はそう言うと少女を抱擁する。

 

「見えるよね? 足元に流れている川が、この川はね、『生命の川』と呼ばれるんだよ。だから、君もそこに行って新しい命を貰うんだ。だから、気持ちを楽にして……そう。………オン・カカカ、ビサンマエイ・ソワカ………。お休み」

 

呪文を唱えると少女の体はキラキラと光り始め、泣いていた顔が笑い顔に変わって

 

『ありがとう………お兄ちゃん』

 

そう聞えた気がした。そして、少女は消えた。

 

「もう少しで警察が来るだろう。それまで少し休むか」

 

『では、また起こしますね?』

 

「ああ、頼む」

 

そう言って、誘拐されて気絶している少女の横で俺は横になった。

 

 

 

 

そして、これが俺と高城沙耶との出会いだった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けています!!


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第四話

完成したのでうpします。今回は新キャラが出ます。ついでに前話で、ヒロインが出ますと書いていましたが、訂正します。あれは候補です。今後ヒロインとして出して欲しい方はメッセージでお願いします。


俊輔サイド

 

俺はその後、少女が無事に警察に保護されるところを確認してから家に帰った。

 

「ただいま~」

 

「遅かったな。で、帰って来たと言う事は無事に確認したんだな?」

 

「ああ、それで、空は何処にいる?」

 

「今はソファーで寝かしている。もう少ししたら起きるだろう」

 

「そうか………」

 

俺は白に教えてもらい空の寝ているソファーに向かった。

 

『貴方がマスターを助けてくださった者ですか?』

 

「そうだが? 君は?」

 

『初めまして、私の名前はレイラ・フォークスです。愛称はレイです』

 

一冊の本が浮かび上がり俺の前に来る。

 

「で、君のマスターである山城空君は如何かな?」

 

『はい、体になんの異常もありません。ありがとうございます。マスターを助けていただきまして』

 

「いや、こちらも少し助かったみたいな………で、君に転生させた神は誰かな?」

 

『私達を転生させてもらったのはアポロニアス様です。貴方方も同じですか?』

 

「そうだな。で、君の能力を教えてくれないかな?」

 

『……………』

 

レイにそう言うと、少し黙ってしまう。

 

 

 

 

 

 

俊輔、白、フォーカ、神楽は黙ってレイが話してくれるのを待っていた。

 

『判りました。お話します…………ですが、これを聞いて貴方方がマスターに危害を加えた場合は、判っていますよね?』

 

「ああ。そこは大丈夫だ。さすがに今後の事で話したいんだ。殺しもしないし危害も加えない。約束するよ」

 

『………信用します。では、先に私の能力ですが、私はForceに登場するディバイダーを全て使うことができます。それも、感染もなくね。で、制御プラグである〔シュトロゼック〕は必要とはしません。それに、何時でも完全状態にもなれます』

 

『『「「っ!!?」」』』

 

この言葉に俊輔達は驚いていた。

 

「では、もしかしてあの状態は完全状態だったのか?」

 

『はい、そう言うことになります。ですが、あの時が始めての起動だったのでマスターの消費が限界なり、結果的に貴方方に助けてもらったという事です』

 

「そうか………」

 

「んっ!!」

 

『マスター!!』

 

ソファーで寝いていた空が起きた。

 

「こ、此処は………」

 

まだ意識がはっきりしないのか、空は部屋全体を見渡し最終的に俊輔を見つけると体を起こした。

 

「お、おい! まだ寝ていろ。体が完全に治った訳じゃないんだから!!」

 

「だ、大丈夫です」

 

しかし、空はソファーから転げ落ちてしまう。

 

「ほら、言っている傍から……よっと」

 

俊輔は空をもう一度ソファーに寝かした。

 

「さて、君に聞きたい事がある。一応、君のデバイスからは話を聞いたが、君に確認をしたいことがある。大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫ですが………なんでしょうか?」

 

空は最初に出会った時とは違い、少し大人しげな少年になっていた。

 

「あ、ああ。此処の世界の事はどれくらい知っている?」

 

「全く知りません。ただ、アポロニアス様に言われたのは〔君と同じ転生者が居る。それを頼りにすれば良い〕と言っていましたが?」

 

「そうか………」

 

俊輔はそう言うと頭を抱える。

 

「はぁ~。仕方が無いか………では、君にこの世界の事についてを説明する。レイもしっかり聞いてくれ。今後の事にも繋がるからな」

 

『判りました』

 

「では、この世界の事だが、あと七、八年後にこの世界は崩壊する。ある感染によってな」

 

「『………』」

 

「それで、今俺はそれに備えて体力、魔力、忍耐を底上げしている最中だ。そして、この世界はあるマンガの世界だ。一度は聞いた事は無いか?〔学園黙示録〕と言う物を」

 

俊輔はそう言うと空を見る。

 

「………はい、聞いたことがあります。ですが、ifの世界になりますよね、この世界は」

 

「そうだな。俺達転生者が入った事で原作通りに行くか、違う方向に行くかは判らない。でも、俺は原作通りにするつもりは無い!!」

 

俊輔は生前に読んだ学園黙示録で永を助けたいと思っていた。それに高城家の人達もそうである。

 

「それで、君は如何したい? アポロニアス様に頼めばもう一度学校に行けるが?」

 

「………」

 

しかし、空は何も答えない。

 

「ま、無理強いはしないさ。ゆっくり考えれば良いさ。それにこの家は結構広いし、腐るほどに部屋も余ってるし。適当な部屋を使ってくれたら良いから。それじゃぁ、俺はシャワー浴びてから寝るわ。お休み」

 

俊輔はそう言うとリビングから出て行った。その後ろから新しい待機状態になった神楽、フォーカが付いて行った。

 

「さて、少しなら話を聞いてやらん事も無いが………安心しろ。俺は俊輔とは意識が融合していない。だから、お前が話しても俊輔には聞かれない」

 

白が言う事は本当である。本来であれば術者の体内で封印される筈であるが、アポロニアスの力によってそれが解消されこうして実体化出来ているのである。

 

「………では、少し話を聞いて貰っても良いですか?」

 

「ああ、良いぞ」

 

此処からはリビングで空と白、レイが話をはじめ終わったのが翌朝の七時であった。

 

そして……………

 

「は、初めまして。山城空です!! よ、よろしくお願いしましゅ…/////」

 

空はアポロニアス様の力によって同じ学校の同級生、そして、同じクラスになったのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問があればよろしくお願いします。

次回はプロフィールをうpしようと思います。


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主人公設定

はい、漸く完成したので上げます。


プロフィール

 

名前:山本 俊輔(やまもと しゅんすけ)

 

年齢:転生時8歳 原作開始時17歳

 

容姿:AngelBets!の音無

 

魔法色:黒

 

ランク:Ex

 

性格:仲間意識が強く、仲間には優しく、敵には容赦が無いと言われるほどである。また、時には子供な面が見せるので、一部の人からは可愛がられている。

 

説明:生前は単なる中卒の社会人だったが、事故で他界。そして学園黙示録の世界に転生する。原作は全巻持っていて、永やあさみ等色々なキャラ達を助けたいと思っている。

 

 

 

名前:山城 空(やましろ くう)

 

年齢:転生時8歳 原作開始時17歳

 

容姿:ガンダムSEEDのキラ・ヤマト

 

魔法色:赤

 

ランク:ノーマル時sss エンゲージ時Ex

 

性格:仲間意識が強く、敵には容赦が無い俊輔と同じぐらいである。また、デバイスを起動していない状態ではおっとりとした感じでまだ幼さを残す話し方をする。しかし、起動時は変貌し性格がガラリと変わってしまう。俊輔とは仲間と言うより、家族みたいな感じで接している。

 

説明:生前の情報は全くと言って良いほどに皆無であり、どういう経緯で死亡したのかも不明である。しかし、転生時の特典として、Forceに登場するディバイダーを全て使えれるようになった。

 

 

デバイス設定

 

デバイス名:神楽(かぐら)

 

正式名称:空圧式・対魔居合刀 舞蹴拾弐號

 

AI:喰霊の土宮神楽

 

説明:神楽は特に原作とほぼ同じ性能であるが、それぞれにモードが備え付けられており、アイン・ツヴァイ・ドライの三つのモードが存在する。まず、アインはそのままの状態でカートリッジシステムを採用しており、6発まで装填が可能になっている。本当であれば、リボルバータイプのシリンダーを採用したかったが、形を壊したくないと思い、『リリカルなのは』でヴォルケンリッターの烈火の将「シグナム」が使うレヴァンティンを下に開発する。次にツヴァイは、刀から薙刀タイプに変更し、これについてもカートリッジシステムを搭載、鍔の下にリボルバータイプのシリンダーを採用、8発装填が可能になっている。最後にドライは、刀が二振りになり、銃も装備されるタイプとなる。刀にはそれぞれに名前が付けられており、右に装備される刀は『虎徹』左が『龍徹』。銃は右に装備される物が『ハレルヤ・イーグル』左が『アレルヤ・イーグル』である。

 

デバイス名:フォーカ

 

正式名称:CW-AEC10X『Fortress・Cannon』(フォートレス・カノン)

 

AI:ティアナ・ランスター、スバル・ナカジマ、八神はやて

 

説明:この機体については完全なオリジナルになっており、00のフォートレス、02のストライク・カノンを融合させた物となっている。連結と分裂が可能で、どちらにしても性能は原作より強力となっている。また、AIが二人居る意味は、フォートレスだけの場合はティアナ。ストライク・カノンでの場合ではスバルという形になっている。また、10では八神はやてとなる。そして、このデバイスにもモードが付いておりファースト、セカンド、サードの三つのモードが存在する。また、それぞれにカートリッジシステムが採用されている。まずファーストでは多目的盾が三つのみである。それぞれに名前と武装が搭載されておりラージ、ミドル、スモールの三つである。ラージタイプは砲撃粒子砲ユニット、ミドルタイプはS2シールド『CW-AEC00X-S2』にて遠中距離砲戦プラズマユニット、スモールタイプは近接戦闘用ブレードユニットを装備している。次にセカンドは多目的盾の数はそのままで、新たにロングレンジレール砲が装備される。このロングレンジレール砲の装填可能数は15発まで可能となっている。カートリッジタイプはハンドガンタイプの物になっている。最後にサードでは多目的盾の数が二倍の6機、さらにロングレンジレール砲から重剣タイプと砲撃タイプのどちらかになることが可能となる。

 

デバイス名:レイラ・フォークス

 

正式名称:剣十字

 

AI:アイシス・イーグレット

 

説明:このデバイスの性能は簡潔に記すと全てのディバイダーを使うことが出来ると言うことになっている。また、使用権限によってはシュトロゼックの力が要るものもあるが、それを無視して使用することが出来る。しかし、それでも性能は墜ちてしまうところが欠点である。また、防衛能力として単体での攻撃も可能である。しかし、ドライバーがいなければ本来の性能が発揮できないことが欠点でもある。

 

デバイス名:白(しろ)

 

正式名称:霊獣 白叡(びゃくえい)

 

説明:堕天使アポロニアスの力によって封印が解かれ本来の霊獣になっているが、俊輔が開放の声を掛けない限り、人間か子犬のどちらかでいる。本来の霊獣の名前は『九尾』である。また、奴らを喰いついても奴らになることも無いし俊輔も特に障害が無い。



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第五話

完成したので更新します。それとアンケートを採ります。アンケートは自分の活動記録にて書いていますので、解答もメッセージでお願いします。


俊輔サイド

 

結局、空は質問タイムで物凄い人に囲まれていてアタフタしていて面白かった………ではなくて、その日の授業は終了した。

 

「それで、学校は如何だ?」

 

「結構面白い場所でした。それに友達も出来ましたし」

 

「そうか」

 

空の表情は物凄く生き生きしていて、見ているこちらもニコニコしてしまうほどである。

 

「それじゃ、今日は簡単な基礎の練習をするか」

 

「判りました。今日の武装は何番ですか?」

 

「そうだな…………996はもう少しって所だし、928は威力が半端無いからまだまだ訓練が必要だし、944にしてみるか? 俺も神楽を使いたいし」

 

「判りました。では、今日の訓練は944を使った訓練ですね」

 

空はそう言うと家に急いで帰って行く。

 

「てか、俺も同じ家だったな。早く家に帰りますか」

 

 

 

 

 

俊輔と空は家に帰宅すると庭に出て自分達のデバイスを起動させる。

 

「神楽、セット・アップ!!」

 

「レイ、起動!!」

 

そして、それぞれのバリアジャケットになった瞬間、訓練が始まった。

 

俊輔はカートリッジを二発ロードし、空に向かって斬りに行く。しかし、空も944を使って攻撃を防いだ。しかし、俊輔の攻撃の手は緩まず、そのまま斬りかかって来る。その攻防戦が続き最終的に空は力負けして俊輔に負けてしまった。

 

「少し惜しかったな。もう少し力加減をしていれば勝てたものなのにな」

 

「そうですね。ですが、次こそは勝たせて頂きます」

 

「その時が来る事を願っているよ。さて、良い時間だ。白が晩飯を作ってくれているだろう。早く食いに行くか」

 

「はい!!」

 

そうして、俊輔と空との訓練は続いていくのであった。

 

 

 

 

そして…………

 

「孝、早く学校に行こうぜ」

 

「そうよ。早く学校に行こう」

 

「行きましょう、孝さん」

 

「孝、また同じクラスだったら良いのにな」

 

「ああ、そうだな」

 

俊輔、空は漸く高校生になった。そして、主人公である小室孝、井豪永、宮本麗と同じ学校に通う事になり、登校していた。

 

「それで、何時になったらお前の彼女を教えてくれんの?」

 

「待てって。まだ先だ。それに俺も正直、誰にも話したくないんだ。だって、もし俺の彼女を言って見ろ。周りの人間から復讐の嵐が吹き荒れるぞ」

 

「そ、そうか………」

 

孝はそう言って諦めた。しかし、永は知っているようである。

 

「まぁ、引き荒れるのは当然かもしれないな」

 

「ああ。だから、無闇に俺の彼女を言いたくないんだ」

 

 

その日の授業は終了して、夕方になった。その日も空と俊輔の訓練は続いている。空の能力は既に最強でありもし、トーマと戦っても勝てるぐらいの力になっていた。

 

その夜………

 

「すまないが、今日は出掛けて来るわ。少し遅くなるかも知れないけど、大丈夫だから。では、行ってきます」

 

俊輔はそう言うと白、空が何か言っていても無視して出て行った。

 

『でも、良いの? 俊輔君』

 

「ん? どういう意味だ?」

 

『だって、勝手に出たんだよ? 心配されないかな?』

 

「…………大丈夫であれば良いけどな。でも、今回はやばい件だ。見過ごせない」

 

俊輔はそう言うとホログラムを展開する。そこに書かれていたのは、とある情報であった。

 

『俊輔君、その情報って何? 見たこともないけど……………』

 

フォーカが俊輔に尋ねた。

 

「ん? この情報はパソコンでハッキングした時の情報。しかも、何時の間にか高城家の中に入っていてこの情報を手に入れた」

 

そう言うと俊輔はフォーカに情報を転送する。

 

『この情報はさすがに見逃せないね。まさか、高城家と紫藤の息が掛かった組が抗争になるなんて。しかも、警察も動かせない様に紫藤の親父がやったんだね。それで、如何するの?』

 

「そうだな………なら、あえて俺の名前を変えて介入しようと思う。何、簡単な名前さ。さて、フォーカ、神楽。セット・アップ!!」

 

『『了解!!』』

 

俊輔は何時もの服装になるが、仮面をかけていた。その仮面はラウ・ル・クルーゼがつけている仮面であった。

 

『そのチョイスは何?』

 

『全く、可笑しいんじゃないの?』

 

神楽とフォーカは俊輔に批判の声を上げた。

 

「良いじゃん。この仮面って結構お気に入りなんだけど…………」

 

 

俊輔サイド

 

俺は神楽、フォーカに批判されたがその声を無視して今、抗争が始まろうとしている場所に来ている。

 

「もう少しで始まりそうな不陰気だな………そろそろ、カートリッジを装填しておくか」

 

俺はそう言って神楽の鍔の後ろに設置されている場所に一発ずつカートリッジを入れていく。そして、フォーカには後方に設置されている場所にカートリッジを装備させる。その瞬間、紫藤側から一発の銃弾が放たれ、それが切っ掛けで抗争が始まった。

 

「そろそろ行こうか。フォーカ、サード形態。ロングレンジレール砲を装備。神楽はファーストのままで待機。では、戦争をしに行こうではないか!!」

 

俺はレール砲を誰も居ない場所に向けて放つ。それによってクレーターが出来るがそれは一切無視だ。

 

「今、抗争している者達。今すぐ解散しろ。さもなくば、これより雪羅が相手をする!!」

 

俺がそう言うと紫藤側、高城家が一斉に静かになった。これで終了してくれれば良いけど………そうも行くわけ無いよな。一発の銃声が鳴り響く。放ったのは紫藤側の人間であった。しかし、俺には当らない。ラージタイプの多目的盾が俺を守った。

 

「そうか………そちらがそのつもりならばこちらも対応させてもらおう!!」

 

俺はレール砲のカートリッジを二発ロードする。そして、放とうとした瞬間。とある男の声が響いた。

 

「少し待ってもらおうか!!」

 

「ん? 誰だ」

 

俺がそう尋ねると一人の男が現れた。そう、高城家、否、国粋右翼『憂国一心会』の会長の高城総一郎であった。




感想、指摘、質問、誤字脱字がありましたら、よろしくお願いします。


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第六話

はい、すみません。今回は何時もより若干少なめです。


俊輔に待ったを掛けたのはなんと憂国一心会会長である高城総一郎本人であった。この時、紫藤側から一発の銃声がするが、総一郎が刀を一振りすると銃弾が真っ二つになっていた。

 

「さて、君に質問がしたい。これはどう言う事かね?」

 

「如何とは?」

 

総一郎の質問に俊輔は惚けながら答える。

 

「ふざけるのは感心しないな。では、質問を変えよう。君は此処にをしに来た?」

 

「………簡単ですよ。私はこの抗争を止めたいだけだ。そして、もし私に刃向うのであればそれなりの覚悟は持って頂きたい」

 

俊輔は殺気を出しながら言う。この殺気に憂国一心会の面々はそこまで驚いてはいなかったが、紫藤側では怯えが出てきていた。

 

「で、答えは如何なんでしょうか? 貴方方はそこまで敵対心と言う物を感じられない。ですが、向こうさんはそうも行かないようですね?」

 

俊輔はそう言うと総一郎から視線を外し紫藤側を見る。

 

「ヒッ!!?」

 

紫藤側は急に俊輔が見てきたので気が動転して、発砲をする。それが切っ掛けにより、紫藤側の全員が俊輔に向けて銃弾を放っていく。

 

「はぁ~、少しは頭を使ったら如何かな? 勝てない相手に勝負を掛けるなんて三下のやる事だぞ?」

 

俊輔は呆れてその場を動かなかった。そして、銃弾は俊輔に当ると思われた瞬間、俊輔が動いた。

 

「と言うわけで、貴方方は此処で私刑にあって貰います。まぁ、安心して下さい。死にませんので」

 

俊輔はそう言うと上空に飛び、そしてロングレンジレール砲を構える。

 

「さて、見ていて下さいね。私を敵に回したらこうなるってね!! フォーカ、カートリッジロード!!」

 

俊輔の言葉のあとにレール砲の後方から空の薬莢が排出される。

 

「エクサランスカノン、フルバースト!!」

 

フォーカから放たれた砲弾と言うよりも魔導砲は紫藤側に向かっていきそのまま着弾して爆煙を辺りに撒き散らした。

 

 

俊輔サイド

 

「少しやり過ぎたか? まぁ、俺に対して放ってきたから良いんじゃね? なぁ、フォーカ、神楽」

 

『そうね。でも少しやり過ぎよ』

 

『そうです。貴方は少し周りの事を考えて下さい』

 

「ヘイヘイ、でも、死んでないから良いんじゃね?」

 

『『そうだね』』

 

「で、そこで見ている貴方は如何でしたか? 高城総一郎さん?」

 

俺は一旦地上に降り立ち、後方を見ながら言う。そして、そこには総一郎さんと配下の皆さんが絶賛俺に対して警戒心を強くしていた。

 

「ほう? 私の名前を知っているとは。君にはある意味で助けられたのかな?」

 

「如何でしょうかね? 自分でもわかりません。ですが、今後ももし抗争的なものがあれば自分は何時でも現れますよ。どんな時だってね? では、夜遅いので帰ります」

 

「待ちたまえ。君、その仮面を取って貰えないだろうか? もしかしたら知っている子かも知れないんでね」

 

正直、外しても良いんだが、めんどくさいからやめとこ。

 

「すみませんね。この仮面ははずすことが出来ないんですよ。それでは、今度こそ」

 

俺はそう言ってその場から帰って行く。

 

 

 

 

「さて、少しお前達の待機状態も変更しようかな?」

 

『それはどう言う事?』

 

『私達のどこがいけないんですか!!?』

 

「いや、お前達に不満はないけど、正直、今のままだと神楽が危ない」

 

『???』

 

俺の言った事に神楽は良く判っていない様であった。

 

「まぁ、要するに、今後外を出ようにも神楽は目立つ。だから、いっその事にお前達の待機状態を変更しようと考えた。そう言うことだ。お判りか?」

 

『『ああ、なるほどぉ~で?』』

 

関西人が嫌いな聞き方をしてくるな。

 

「だから、それを今からアポロニアス様に言おうと思っていてな」

 

『『そう言うことね』』

 

漸く納得したな。メンドーだな。

 

〔アァァー。念話テスト中、念話テスト中。アポロニアス様、聞えてますか?〕

 

〔聞えておるぞ~。で、何のようじゃ?〕

 

〔はい、今回頂いたデバイスの件なんですが、待機状態の変更をお願いしたいのです〕

 

俺はアポロニアス様に本題を切り出す。

 

〔ほう、で、どういう待機状態が良いのだ? 今すぐにでもしても良いぞ〕

 

〔はい、出来ればフォーカ、神楽の両方を収納できるようにして欲しいです〕

 

〔………難しいのう? 何かこう、具体的なものは無いかのう?〕

 

具体的なもの…………!!? あったぞ!!

 

〔ありました。では、リリカルなのは系であれば何でも良いです!!〕

 

〔了解した。では、直ぐにでも転送してくれ。ではな〕

 

そこでアポロニアス様に言われた通りにフォーカ、神楽を転送魔法で送った。

 

「さて、明日からはどうやって行きましょうかね?」

 

俺は独り言を良いながら家に帰宅して行った。




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第七話

何とか完成したので投稿しますが、次回も何時更新できるか判らないです。すみません。


一方、アポロニアスは俊輔から転送されたデバイス二機の待機状態の変更作業を行っていた。

 

「フゥ~、もう少しで完成するな。これを見たら俊輔もビックリすじゃろうな………そうだ!! もっと驚く顔が見たいからあえて、この機能も入れて置くかのう」

 

アポロニアスはそう言うとフォーカと神楽が輝きを出していき、そして、辺りを真っ白な光で満たした瞬間、デバイスは消え、代わりに一冊の本が現れた。その本の表紙には金の剣十字があしらわれており周りはこげ茶色をしていた。

 

「さて、これで一応完成かのう? しかし、起動状態を確認しなくてはのう………夜天の書起動」

 

アポロニアスの声に反応して夜天の書が起動し、目の前に五人の人が現れた。

 

「我ら夜天の主の下に集いし騎士」

 

「主ある限り、我らの魂尽きる事無し」

 

「この身に命ある限り、我らは御身の下にあり」

 

「我らが主、夜天の王の名の下に」

 

「「「「「我ら、ヴォルケンリッターなり」」」」」

 

「ほう、成功じゃのう」

 

「「「「「んなっ!!?」」」」」

 

アポロニアスがそう言うと目の前の五人は目を丸くして驚きを出していた。

 

「さて、先に君達に行って置こうかのう。ワシはおぬし達の主ではない。これから君達に本当の主の下に行って貰う」

 

「それはどう言う事ですか?」

 

「君は確か湖の騎士シャマル君だったね。理由は簡単。君達にはこの少年の助けになってもらいたいのだ」

 

アポロニアスはそう言うとモニターを展開しそこに俊輔を映し出した。

 

「この少年の名前は山本俊輔。もう間も無くこの少年の命は消えるであろうな」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

この言葉に騎士達は驚きを隠せなかった。

 

「どうにかならないのかよ!!」

 

「鉄槌の騎士ヴィータか。そうだね。だって、この少年のデバイスは此処にあるからね」

 

そう言うと目の前に刀とビー玉が現れる。

 

「これってなのはのレイジングハートじゃないのか?」

 

「それにこの刀って質量兵器みたいな感じがする」

 

「気にしたら負けじゃ。それは横に流して、レイジングハート似はフォートレスカノンの待機状態じゃ。質量兵器顔負けの刀は神楽と言ってレヴァンティン似の機体じゃ」

 

「ほう、どこが似ているのか教えてもらえないだろうか?」

 

レヴァンティンと聞いた瞬間シグナムが反応した。それに答えてアポロニアスも意気揚々と答えていく。

 

「それはのう、カートリッジの装填、排出場所が似ている。それに、蛇腹剣にもなれる。しかしのう、弓状にはならんがのう」

 

「そうか………使っている者を見てみたいものだな」

 

シグナムは変なスイッチが入ったのか、可笑しなテンションになっていた。

 

「それで、ヴォルケンリッターとその管制人格よ、お主は新たな主の下に行く気は無いかのう?」

 

『………』

 

しかし、シグナムたちは答えられなかった。新たな主の下に行くと言う事は前の主である『八神はやて』の事を忘れてしまうのではないかと心配しているからである。それを感じ取ったアポロニアスはシグナムたちに聞えるように言った。

 

「前の主の事は忘れないがのう」

 

『!?』

 

この言葉にシグナム達は豹変し、新たな主『山本俊輔』の元に行く事に決意したのである。しかし、この事は俊輔には知らされていなかった。

 

 

 

 

翌朝、俊輔は桜吹雪が舞い散る道を空、孝、永、麗の四人と一緒に登校していた。しかし、孝に到っては寝不足なのか、時折大きな欠伸をしていた。

 

「如何したんだよ、孝。もしかして寝不足か?」

 

「ああ、どうも寝られなくてな。ついつい、夜更かししてしまったんだよ」

 

「それはご苦労さん。もう少ししたら学校だし寝てたら?」

 

「「「いやいや、どうしてそうなる!!」」」

 

俊輔と孝の会話に麗、空、永は揃って突っ込みを入れる。

 

「「だって、授業なんて眠いじゃん」」

 

しかし、ツッコミを入れられた俊輔、孝も負けずにハモって対抗した。

 

 

 

俊輔サイド

 

この時期って言ったら原作開始か………なんとしても永やあさみさん達を助けないとな。

 

「さて、そろそろ教室だし別れるか。空、行くぞ」

 

「はい!! じゃぁ、またね孝、麗、永」

 

俺と空は隣の教室に向かって行く。そう、もう間も無く始まる世界の終わりが近付いてきていたのを俺と空は感じ取っていた。

 

「空、ちゃんと持ってきただろうな?」

 

「はい、大丈夫です」

 

空はそう言うとかばんからレイラを見せる。

 

「それにしても大丈夫なのですか?」

 

「ん? 何がだ?」

 

「えっ、だって俊輔さんのデバイスが無いじゃないですか。如何するんですか?」

 

そう、俺の手元にはまだ神楽、フォーカが帰ってきていない。何時のなったら返してくれるのかまだはっきりと判っていない。

 

「まぁ、もう少ししたら帰ってきたりしてな」

 

「そうですね」

 

「「あはははははははは………ハア~」」

 

そう言って俺達はハモって笑うしかないんだ。

 

『呼ばれてないけど、じゃじゃじゃじゃ~ん』

 

「「ギャァァァァァ」」

 

『アベルベルア!!』

 

急にアポロニアス様が出てきたのでつい、空と一緒に殴ってしまった。俺達は悪くはないからな。

 

『殴るとは酷い物じゃのう、俊輔よ』

 

「あんたが普通に出てきたら殴りませんよ」

 

「そうです。自業自得ですよ、アポロニアス様」

 

俺と空の攻撃にアポロニアス様も応えたらしく、少しだけ悲しそうな顔になっていたが、無視だぜ。

 

「それで、結界を張ると言う事は返してくれるんですか? 神楽とフォーカを」

 

『そう焦る物ではない。まぁ、見てくれ』

 

アポロニアス様が出したのはなんと、一冊の本であった。

 

「この本ってまさか!!」

 

 

 

 

 

 

俊輔は驚いていた。目の前には夜天の書があるからである。

 

「どうして夜天の書があるんですか? 神楽とフォーかは?」

 

『ここに入っておる』

 

「「ヘッ?」」

 

俊輔達は可笑しな声を出していたのであった。




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第八話

漸く完成したので投稿します。


俊輔サイド

 

「どう言う事ですか? フォーカや神楽はこの本に中に入っているのですか?」

 

「まぁ、そう言うことじゃな。それと、もう一つの機能を搭載しておる。まぁ、そこは今後に出てくるじゃろう」

 

アポロニアスはそう言うと、体が透け始める。

 

「ワシも此処までじゃ。今度会うときは天界でのう」

 

そう言ってアポロニアスは消えていくのであった。

 

「なぁ。此処で起動させてもいと思うか?」

 

「いや、ダメだと思いますけど?」

 

「ならさ、屋上に行かないか?」

 

「そうしましょうか」

 

俺と空は屋上に上っていく。

 

「さて、屋上に着いたのは良いが、どうやって起動させればいいのやら………夜天の書起動!!」

 

俺は何と無くそう言ってみた。すると、本が浮かび上がりページが俺から見て左から右へと勢い良く捲られて行く。そして、本がバタンと閉じると、本が急に光り始めたのだ。

 

 

 

 

「新たなる主の下に集いし騎士」

 

「我ら、守護騎士」

 

「主の命なれば何処へだって行きます」

 

「御身を守らせて頂く」

 

「ヴォルケンリッター」

 

 

俺の目の前には方膝を付いて俺に顔を垂れてる五人の人が居た。その姿は見たことがある姿だ。だから、俺は一応確認の為に名前を聞く事にする。

 

「君達の名前を教えてくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前はヴォルケンリッターの将、剣の騎士シグナムです」

 

「鉄槌の騎士ヴィータ」

 

「湖の騎士シャマル」

 

「盾の守護獣ザフィーラ」

 

「夜天の書の管制人格リインフォースです」

 

「「…………」」

 

俊輔と空は頭を抱えた。

 

『マスター!!』

 

その時、夜天の書から二つの光が出てきて俊輔の前で止まる。

 

「お前達……………よく帰ってきてくれた」

 

『マスター』

 

俊輔は漸く帰ってきたデバイス達を抱きしめていた。

 

「ところで、主」

 

「ん? なに?」

 

「我々は闇の書では無く、夜天の書として機能していますので蒐集はしなくても良い事になっています。また、我々は一種のプログラムでしたが、今ではそうでもありません。リインホースに関してはユニゾンデバイスではありますが、人間としての生活が出来ます」

 

「そうか………なら、これから何が起きるか判っている?」

 

俊輔はシグナムからの説明を聞き、今後のことについての確認を行う。

 

「はい、この世界には魔法と言う物が無く我々が居た世界で言う質量兵器が主な武器であると聞いています。また、この世界は死人が生き返り、生き人を喰らい、喰らわれた者も死人として生き返る世界ですよね?」

 

「ああ、まぁ大体はあっている。でだ、今後の事について説明する。今後は俺とシグナム、シャマル、リインで行動する。空はヴィータとザフィーラと一緒に行動してくれ。武装に関してはとやかくは言わない。各自、兵装自由。良いな?」

 

『了解』

 

そう言うと俊輔のチームと空のチームとで二手に分かれて行動する事になったのであった。

 

 

俊輔チームは、先に孝達と合流する為に2-Bに向った。

 

「主、今から向う場所は何処なんですか?」

 

「今から向う場所か? 俺のダチが居る場所だ。一応、まだ武装は展開するな。とある放送が流れたと同時に展開を許可する。リインは俺と融合な」

 

『了解』

 

走りながらそう言って説明する俊輔であった。

 

 

空のチームはと言うと、ザフィーラは狼モードになりヴィータと空を背中に乗っけて走っていた。

 

「空よ。今から何処に向かえば良い?」

 

「そうだな…………先に技術室に向う。そこで造れる物や持って行ける物があれば持って行く」

 

「了解した。しっかり捕まっておけ!!」

 

そう言うとザフィーラは走るスピードを上げるのであった。

 

 

 

その頃、孝は屋上で授業をサボっていた。しかし、何と無く校門が騒がしいと思いそちらを見ていると、一人の男が男性教師の腕に喰らいつき、男性教師は出血多量で死亡した。しかし、ものの一分も経たない内に、男性教師は起き上がり…………そして、近くに居た女性教師の首筋に喰らい付いたのであった。

その結果、校門は騒ぎになり、一人の教師が校舎に走って行くのであった。

 

「これはヤバイな………」

 

そう言うと孝は屋上から自分のクラスに向かって行った。

 

「おい、孝!!」

 

「ん? なんだ俊輔か…って、後ろに居る女性は誰だよ!!」

 

「今は気にしているほど時間は無い。今は直ぐにでもこの学校から逃げる事を優先する事だ。で、お前はクラスに向うんだろう?」

 

「ああ、そうだが………」

 

孝は頷く。

 

「丁度良かった。俺達も一緒に向かう」

 

「良いのか!!」

 

この言葉に孝は喜んでいた。

 

「ああ、俺達もそっちに行く予定だったからな。詳しくは話しながら説明する」

 

「ああ」

 

そう言うと孝、俊輔、シグナム、シャマル、リインホースは走り出すのであった。

 

 

 

一方、空たちは技術室に到着していた。

 

「空よ。これから俺達は如何したら良い?」

 

「今からこの袋にハンマーとか工具類を詰めれるだけ詰め込んで。今後必要になって行くから」

 

「判った」

 

「なぁ、私は何をしたら良い?」

 

「ヴィータは直ぐに扉の鍵を閉めてくれ。そっとな」

 

「あいよ」

 

空はそう言って的確に指示を出していく。その時であった。

 

『全校生徒、全職員に連絡します。現在、校内にて暴徒が現れました。速やかに担当の先生の指示を聞いて………』

 

此処で放送がとまる。しかし、その瞬間である。

 

『ガシャーン!! ヒッ………来るな!! 来るなぁぁぁぁ!! ギャァァァァァァ!! 痛い痛い!! ギャァァァァ……………う゛ぅぅぅ』

 

その瞬間、校内すべてが静まり返る。そして、何処かの教室でチョークが落ちる音がした瞬間、騒がしくなるのであった。




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第九話

完成したので投稿します。


何処かの教室でチョークが落ちる音が響く…………そして、校内は静けさから一変して何処の教室からも雪崩の如く、生徒達が我先にと逃げ出して行く。

 

「ヴィータ、ザフィーラ。直ぐに扉のほうについて」

 

「どう言う事だ?」

 

空の言葉に判らずザフィーラは質問をする。

 

「もしかしたらゾンビ共がこっちに来るかも知れない。それに、極力生かしておく人間は生かしておきたい」

 

「ふっ、了解した」

 

「判ったよ」

 

そう言うと二人は前方の扉と後方の扉のところに付く。

 

「さて、僕もデバイスを起動させておくかな? レイラ起きてる?」

 

『なんだか久々の感じなのは私だけなのかな?』

 

「いや、違うと思うぞ。まぁメタな話は置いといて、そろそろ僕達も戦闘準備をしないとね」

 

『了解』

 

そう言うと空は光に包まれ四散すると、ディバイダー996を展開した状態になった。

すると、技術室の扉が開こうとするが、鍵が掛かっている為開かなかった。この時、空達は気をいっそう引き締まる。

 

『えっ? どうして誰も居ない技術室が開かないんですか!!』

 

『知らないわよ!! さっさと開けなさいよこのデブチンが!!』

 

『アフンッ!! イエス、マムッ!!』

 

この会話を聞いていた空達はゲンナリしていた。

 

「(如何しますか?)」

 

ザフィーラから念話が来る。

 

「(決まっている。開けてあげて)」

 

「(判りました)」

 

そう言うと扉の鍵を開け、二人をいれ直ぐに扉の鍵を閉める。

 

「うわっ!!」

 

「キャッ!!」

 

二人は地面に転がり、ごろごろと転がっていく。

 

「少しは静かにしろ」

 

ヴィータはそう言うと転がりは行って来た二人を見る。

 

「もう少し丁寧に扱いなさいよ!!」

 

「うっせーな。黙れって行ってるだろうが、タコ!!」

 

「誰がタコよ!! そっちこそチビが何言ってるのよ!!」

 

「誰が、誰がチビだ。ゴラァァァ!!」

 

「ああ、もう!! 黙れ!!」

 

「「ビクッ」」

 

空の叫びで黙る二人。また、ザフィーラは普通に窓から外を見ており、もう一人の少年はガクガクと震えていた。

 

「少しは黙ってくれないかな? 君はこの状況を判っているのかな? かな? それと、ヴィータ、俊輔君に報告するよ?」

 

「…………」ガクガクガクガクガクガクガクガク

 

「………」

 

ヴィータは震え、もう一人の子は静かになる。

 

「ザフィーラ、どう?」

 

「もう少しで敵が来る。そろそろ迎撃準備をした方が良いと思うぞ」

 

「そう………ヴィータ。デバイス許可するから敵を殲滅して。それから此処に近づく奴らだけで良いから。良いね? ザフィーラは素手で戦う事は許せないから、デバイスってあったよね?」

 

「あるが」

 

ザフィーラはそう言うとガントレット型のデバイスが展開される。

 

「それで攻撃して。少しは違うと思うから」

 

「判った」

 

そう言うとヴィータとザフィーラは技術室から出て行き、ゾンビ否奴らを攻撃し始めて行った。

 

「ねぇ、アンタって2年B組みの山城空よね?」

 

「ええ、そうですが? それがどうかしましたか?」

 

空はそう言うと、相手の子を見るが見覚えが無いので判らなかった。

 

「なら、山本俊輔って知っているわよね?」

 

「ええ、知っていますが? それがどうかしましたか?」

 

「なら、今すぐにでも良いから会わせて!!」

 

相手の子は必死になって空に食いつく。

 

「良いのですが、先に奴らを如何にかしないといけません。ですから……」

 

そう言うと空は996を構える。

 

「奴らを潰しましょう!!」

 

 

 

 

時を遡り、俊輔達四人は走りながら状況を説明している最中であった。

 

「と言うことは、孝が見たのは教師が教師を喰っていたと言うことか?」

 

「ああ、そう言うことだ」

 

孝の説明で俊輔はシグナムとシャマルに指示を出す。

 

「シグナムはレヴァンティンを展開、シャマルはシグナムと一緒に行って屋上を目指してくれ。俺達も何人かと合流後に直ぐに屋上に向う」

 

「判りました。では、御武運を」

 

「また後でね」

 

「おう」

 

そう言ってシグナム達は別れていく。

 

「おい、俊輔。あの女性達の説明をしてくれ」

 

「そうだったな。あいつらは俺の家族だ。他にもあと二人? いや、一人と一匹だな」

 

俊輔はシグナム達の説明をする。

 

「そうか………でも、見たこと無いぞ?」

 

「そりゃそうだろうな。さっき帰って来た所らしいからな」

 

「そうか………」

 

孝はそう言って黙る。

 

「もう少しでクラスだ。急ぐぞ!!」

 

「おう!!」

 

二人は走るスピードを上げていき、教室内に入っていく。

 

「おい、小室!! それと山本今日はお前も一緒になって授業を妨害しに来たのか!?」

 

教師が俊輔と孝に声を掛けるが、二人は無視して孝は麗に向かい、俊輔は永の方に向かって行く。

 

「俊輔、どうかしたのか?」

 

「ああ。だから孝と俺、永、麗で屋上に向う」

 

「何があったか簡潔に教えてくれないか?」

 

「判った、でも此処ではなくて移動しながらでも良いか?」

 

「了解した」

 

永と俊輔は麗と孝の元に向かって行く。

 

「どう言う事よ!! 説明しなさいy(バァァァンッ!!)ッ!?」

 

麗が孝に説明を求めようとした瞬間、孝は麗の頬を叩く。

 

「今はそう言う事を言ってられる状況じゃない!! 黙って付いて来い」

 

孝はそう言うと麗の手を引っ張っていく。その後に俊輔と永が付いて行く。

 

 

そして、廊下に行くと永が徐にロッカー内にある箒を取り出し先端を取り外すとそれを麗に渡す。孝はその横に置かれていた野球部員のバットを手に取る。

 

「永は如何するつもりだ?」

 

「俺は空手の上段だぜ? この腕さえあれば十分だ」

 

俊介の質問に永はそう答える。

 

「それよりも先に警察に連絡しようよ!!」

 

麗はそう言うと懐から携帯を取り出し、電話を掛けた。しかし、その瞬間絶望の顔に変わる。

 

「どうかしたのか?」

 

「う、うそ…………」

 

麗はそう言うと携帯を孝に渡す。

そして聞えて来たのは機械音声の女性の声だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

《これは録音です。ただいま、110番通報が集中している為、回線が込み合っています。そのままでお待ちになるか、後ほど、掛け直すかしてください。繰り返します――――――――――――》




誤字脱字、感想、指摘があればよろしくお願いします。


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第十話

皆さん、遅くなり申しわけございません。
漸く完成したので投稿します。次の投稿は未定です。


麗はこのアナウンスを聞くと後ろに下がっていく。

 

校内放送が流れ終わり少し間を開けた瞬間……校内はパニックになる。全校生徒達が一斉にクラスから飛び出して逃げて行くが、その際に階段で、または廊下で下敷きになって死んで逝く生徒も少なくは無かった。

 

「俊輔!! これから如何する!!」

 

「仕方が無い、此処は一回屋上に上がる」

 

「どうしてよ!! 此処は外に出るのが安全じゃないの!?」

 

俊輔と孝の会話に麗が介入する。

 

「そうしたいのは山々なんだが、全校生徒が校内から出ようとしてる。それに、既に教師も逃げ出している。此処は屋上で様子を見てからでも遅くは無い。それと、永、これを渡しておく」

 

そう言うと俊輔は永にベレッタを渡す。

 

「これは何処から出したんだ? 俊輔」

 

「それは企業機密と言う事にしておいてくれ…………行くぞ!!」

 

そう言うと、俊輔、孝、永、麗は走り出して行くのであった。

 

 

一方、空達は奴らの殲滅を行っている最中であった。

 

「デリャァァァァァァァッ!!」

 

ザフィーラはそう言うと両腕に装着しているガントレットからカートリッジが装填され魔力が一気に開放されると、そこから圧縮された空気が吐き出される。それは直ぐに奴らに当たると、奴らは体を真っ二つにされて絶命していく。

 

「ラケーテン・ハンマァァァァァァァ!!」

 

ヴィータはデバイスであるグラーフアイゼンを使用して奴らを殴っていく。

 

「クソッ、限がねぇぞ!! 如何すんだよ、空!!」

 

「ここは俊輔君と落ち合う事を先決した方が良いね。少し待っててね」

 

「早くしろよ!!」

 

空はそう言うと念話で俊輔の位置を尋ね、屋上に向っている最中と聞くとそこに向かうと念話で伝えた。

 

「終わったよ。俊輔君は屋上に向かっている最中だって。僕達もそこに向かうよ!!」

 

「了解した」

 

「おうよ!!」

 

そう言うと三人は移動を開始するのであった。

 

 

 

一方、俊輔達は屋上を目指していた。

 

「クソッ、何処行っても奴らばっかしだな、おい!!」

 

「ぼやいてないで行かないと!!」

 

「そうだなって、麗。前!!」

 

永がそう言うが、既に遅く麗の前には一人の教師が立ち塞がる。しかし、孝はその教師の足もとを見た瞬間に麗に叫ぶ。

 

「麗、逃げろ!!」

 

「えっ?」

 

しかし、孝が叫ぶが教師は既に麗に近づいていて口を大きく開けて麗に噛み付こうとしていた。

 

「なっ、やだ………来ないで……………来るなって言ってるでしょうが!!」

 

麗は先ほど渡されたモップの先で教師の心臓部分に突き刺す。すると教師は止まった。

 

「やった……」

 

「いや、まだだ!!」

 

永が言うと教師がまた動き出した。

 

「どう……して………心臓を突き刺したのに…………」

 

「どけっ、喰霊開放…………白叡!!」

 

俊輔が印を結ぶと背後から一匹の白い九尾が出る。

 

「喰え」

 

俊輔の一言でその白叡は教師を上半身のみを食いちぎる。それを見た麗、永、孝は目を逸らすのであった。そそして、白叡は俊輔の元に戻ってくる。

 

「お疲れさん、美味しかったか?……………あっ、やっぱり? でもこれからはこう言うことが多々あると思うからよろしく。戻って良いよ」

 

俊輔がそう言うと白叡はまた消える。

 

「おい、あの生き物はなんだ?」

 

「それに関してはまた今度でいいか? 先に屋上に行かないと。そこで空達と待ち合わせしてるからさ」

 

「お、おお。まぁ、必ず話してくれよな」

 

「了解。なら先を急ごうぜ」

 

そう言うと俊輔達は屋上を目指していく。

 

 

 

 

空達は沙耶とコータと一緒に屋上を目指していた。

 

「空、どうするよ。これじゃぁ俊輔のところに行けねぇじゃねぇか」

 

「うん、そうだね…………本当はしたくは無かったんだけど仕方が無いね。ヴィータ、ザフィーラ。後ろの二人の防御頼んだよ」

 

「おう!!」

 

「承知した」

 

「ありがとう…………さて、久々の出番だよ。レイラ」

 

『待ってました!! さて行くよ空』

 

「行こうか…………明日の希望の為に!!」

 

『エンゲージ!!』

 

レイラがそう言うと空の服装が変わる。黒いジャケットを着て、ズボンも黒で統一し、下のシャツまでもが黒に変わる。

 

「さて、死にたいやるから来い」

 

空の口調が変わった。これには沙耶とコータはビックリしていた。そして、空の手には一艇のガンソードが握られていた。そのガンソードを前に掲げると一言呟く。

 

「朽ち果てろ」

 

空のその言葉で銃身から一筋の線が射出され、奴らの前に来た瞬間それは四方八方に別れ奴らの頭部のみを吹き飛ばした。

 

「よっしゃ!! これで俊輔の所に行ける。行くぞ」

 

「良いだろう」

 

「はい」

 

「「……………」」

 

この会話に付いて行けない沙耶とコータであった。

 

そして、空達は屋上を目指して階段の合流場所に着くとそこには奴らが四方八方から迫って来ていた。

 

「如何言う事だよ!? 此処にもいるじゃねぇか。空、私達はどうしたら良い?」

 

「ヴィータとザフィーラは攻撃に専念して。二人は僕が如何にかする。それと、二人とも、気をつけてね」

 

「おうよ!!」

 

「承知した」

 

そう言うと二人は自分達が持つデバイスでの攻撃を開始した。

 

「さて、僕も二人の助けに入らないとだね…………沙耶さん危ない!!」

 

「えっ?」

 

沙耶の後ろから元教師であった奴らが沙耶を食べようと口を開けていた。

 

「クソッ!! 間にあえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

空が沙耶に向かって手を伸ばすが、奴らが既に沙耶の目の前に来ていたのであった。




誤字脱字、感想、指摘がありましたらよろしくお願いします!!


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第十一話

早くも半年以上もの歳月を開けてしまい申し訳ございません。
何とか書き上がりましたので、投稿いたします。

今後も不定期更新ではありますが、お付き合いをお願いしたいと思います。


沙耶に喰らい付こうとしていた元教師だった奴らは、その頭部をぶち抜かれて死んだ。

 

「えっ?」

 

まだ、自分に何があったのか判らない沙耶はそこで呆然としてしまう。

 

「やっと着たのか」

 

「遅いぞ」

 

「待ったくだ」

 

空、ヴィータ、ザフィーラの三人は一点を見る。そこには、一艇の銃を握る俊輔の姿があった。

 

「すまん、少し遅れた」

 

「少しではないと思いますが…………」

 

「そう言わないの、シグナム」

 

「だが…………」

 

「烈火の将、湖の騎士。今は言い争いをしている時ではないと思うが?」

 

俊輔の後ろからシグナム、シャマル、アインスが出てくる。

 

「まぁまぁ、無事だったんだから良いんじゃないの? さて、さっきの銃声で奴らがここに来るのは時間の問題だ………孝、永、麗。また走るぞ」

 

俊輔の言葉に、三人は頷く。

 

「よし。屋上に行きたかったが、計画を変更する。今から職員室に向う。そこで、脱出手段を考える。行くぞ」

 

『おう!!』

 

俊輔達は無事(?)に空達と合流して、職員室に向って行く。

 

 

 

 

「ハァハァ、まだなの? 毒島さん」

 

「はい、もう少しです。頑張って下さい、先生」

 

「ええ~先生、足が疲れてもう走れない~」

 

「では、ここでゾンビモドキに喰われるか、生き延びる為に走るかのどっちかを選んでください」

 

「………判ったわ、走るわよ~」

 

廊下を走る二人の姿があった。

 

「しかし、校内で銃声とは…………急がなければ」

 

毒島と教師は廊下を走っていく。その先にある物を知らずに……………

 

 

俊輔達は、職員室前に到着するが、そこには既に元教師だった奴らの姿しかなった。

 

「まさか、ここにまで繁殖しているなんて………」

 

「我が主、流石に繁殖と言う言葉は無いかと」

 

「あっ、やっぱり? まぁ、教師達も既に殺られていると言う事は、校内はもうダメと言う事だな。取り合えず、先鋒を俺が勤める。シグナム、シャマルは後方の殿として着いて来い。孝達はヴィータ達に続いてきてくれ」

 

俊輔とシグナムとの軽口の後に、俊輔は孝達に指示を出す。

 

「わ、判った。でも、こんな子供d「子供じゃねよ!!」ッ、すみません」

 

孝がヴィータの見た目だけの判断に、ヴィータはキレてしまい孝は呆気なく、ヴィータに謝るのであった。

 

「まぁ、冗談はここまでにしておこう。既に奴らはこちらの存在を気付いているようだしな…………さぁ、久々に本気で暴れますか!!」

 

俊輔はそう言うと、手に持っているデザート・イーグルを懐に戻し、水色のビー玉を取り出した。

 

「フォーカ、セットアップ!!」

 

『Aii right My Master Stand by Ready? Set up!!』

 

フォーカが光ると、俊輔が光に包まれ光が収まると、俊輔の格好が変わっていた。

 

「しゅ、俊輔…………その格好は?」

 

「ん? この格好か? まぁ、気にするな。さてと、一丁、気前良く一発行きますか!! エクラサンスカノンヴァリアブルレイド………フルファイヤー!!」

 

俊輔はフォーカを前方にいる奴らに向けると、フォーカの先端から光の収束砲が放たれ奴らに当たると、奴らは跡形も無く消え去った。それを見た孝達は黙ってしまう。

 

「オイ、どうかしたか?」

 

『いえ、なんでもないですッ!!』

 

「ん?」

 

俊輔が固まっている孝達に尋ねると、孝達は敬礼をしそうな勢いで答えた。

 

「まぁ、良いや。さて先を急ぐぞ!」

 

そう言うと俊輔はフォーカを一旦仕舞い、神楽を展開すると邪魔な奴らを斬って行く。

 

「もう少しで職員室だ、頑張れ!!」

 

「ハァハァ、もう、僕はムリです~」

 

俊輔の言葉の後にコウタがそう言って、足を止めようとした。しかし、その瞬間。ザフィーラがコウタを背中に乗せて走る。

 

「すまん、ザフィーラ。コウタ、そのままでいろ」

 

ザフィーラは流石に孝の前では話を出させてはいけないだろうと思い、俊輔は目配せをする。ザフィーラも判っていて、顔を少し頷かせる。

 

「先を急ぐぞ!!」

 

俊輔達は職員室に向って行くのであった。

 

 

 

一方、毒島と教師の二人は職員室に向けて走っている最中であった。

 

「先生、もう間も無く職員室です!!」

 

「もぅ、やっとなの?」

 

二人はそう言うと職員室に向かう為の曲がり角を曲がった瞬間。

 

「こ、これは」

 

「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」

 

二人は驚きの声を上げる。そこには学生達と教師達だった奴らが大量にウロウロしていたからである。

 

「クソッ、これでは職員室に行けないではないか!!」

 

「毒島さん、どうするの~」

 

「他のルートは………」

 

毒島は職員室に向かう他のルートを考え始める。しかし、最終的な決論は何処に行っても奴らしかいないということである。

 

「此処で、お仕舞いか…………短い人生だったな」

 

毒島は諦めた様子で、自分に向ってくる奴らに対して抵抗も無く食われようとしていた。教師も同じく、抵抗をしても無駄だという事に気付き、脱力した感じで座る他無かったのであった。

しかし、その瞬間であった。毒島と教師に向っていた奴らは、興味が無くなったのか違う方向に向けて歩き始めた。

これを見た毒島と教師は驚きながらも、なにがあったのかを考え始めた。しかし、それは無駄であった。なぜならば、奴らは何かの砲撃により体が真っ二つになり、死んでしまったからである。

そして、砲撃の元には一人の少年が何かを構えていた。

その姿は正しく、天使の様に見えたと後々、冴子と教師は語っていた。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら何時でも構いません。
要望などについては、個人的なメッセージでお願いします。


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第十二話

長い間、放置してしまい誠に申し訳ありません。
放置していたので、クオリティーが下がっているかも知れませんが、今後もよろしくお願いします。


俊輔サイド

 

なんとなく撃ってしまったが、誰もキズが無いな。

 

「そこの人‼ 早く来い‼」

 

俺は曲がり角で躊躇している教師と学年が上であろう生徒に声を掛ける。

 

「チッ⁉ まだ来るかよ………仕方がねぇ、いっちょ、ド派手にぶっ放すか。ヴィータ、シグナム、ザフィーラ、シャマル‼ シールド展開しろ‼ 今からスターライトをぶっ放すぞっ‼」

 

「「「「了解‼」」」」

 

俺の言葉が判るとすぐに動き出してくれる。ヴィータとシャマルが前方の教師と生徒に就き、シグナムとザフィーラが孝達の前に立ちシールドを展開する。

 

「さぁて、やりますか‼ フォーカ、神楽行くぞッ‼」

 

『『Standby Ready Set Up‼』』

 

フォーカと神楽の形態が変更する。

 

『Drei Mode』

 

『Middle Mode』

 

神楽がドライ、フォーカはミドルモードに切り替わると、一気に魔力を集中させる。

 

「ふぅ………行くぞ、スターライト・ブレイカー‼」

 

神楽とフォーカ、そして俺自身の魔力を使い、バスケットボールサイズまでの大きさになった魔力を放つ。それは、校舎の壁を打ち抜き、職員室前に群がっていた奴らを一掃する。

 

「フヘェ~、スターライトの魔力は半パネェ………使いどころを間違えたら俺が死ぬな」

 

『まぁ、良いんじゃないの? 奴らは一掃できたし……まぁ、白が少し不服そうにしているけど』

 

『気にしたら負けやで。まぁ、少し休んだらどうや?』

 

「そうだな、おーい、大丈夫か?」

 

俺は後ろを振り向くと孝達が完全に呆けていた。そこで、俺は掌を合わせて鳴らす。すると、全員が戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

「オイ‼ さっきのはなんなんだ⁉ さっさと話せよ‼」

 

「判ってるって。でも、先に職員室に入ろうぜ? 俺もしんどいわ」

 

孝の言葉に俊輔は気怠そうに答えると、教室の扉を開けた。しかし、扉を開けると奴らになった教師が三人出て来る。俊輔はすぐに対応が出来なかったのか、奴らに喰われそうになった。しかし、俊輔の後ろで待機していた空がディバイダーで奴らの首を吹き飛ばした。

 

「すまねぇ、空」

 

「大丈夫です、俊輔君。ですが、貴方は魔力を使い過ぎたようですね?」

 

「たははは……面目ない」

 

「気を付けてくださいよ?」

 

「判ってるって……どうしたお前たち?」

 

俊輔は後ろにいる孝達に声を掛ける。しかし、孝達は今の展開に付いて来れず、口を開けていた。

 

「ほら、さっさと入るぞ」

 

俊輔はそう言うと、職員室に入って行く。それに続いて空やヴォルケンリッターも入って行く。漸く、展開が付いて来れたかは知らないが、孝達や教師と学年上の生徒が職員室に入り、コータと孝、永が扉を固定する。

 

「では、先に自己紹介でもするか?」

 

「呑気な事言っている場合?」

 

「だが、我々も初めて会った者同士に近い。少しは己の事を知っていた方が良いだろう?」

 

沙耶と学年上の生徒が口論をしていた。そこに待ったをかけたのは俊輔であった。

 

「ちょっと、お二人さん? 口論をやめようぜ? それに今、口論した処で何かが始まる訳でも無いだろ? それにこの人の言う通りかもしれないぞ?」

 

「………そうね。私は2年B組の高城沙耶」

 

「僕お同じくB組の平野コータです」

 

「俺も同じくB組の小室孝」

 

「同じくB組の井郷永」

 

「同じくB組の宮本麗です」

 

俊輔達以外が自己紹介をする。

 

「C組の山本俊輔です」

 

「同じく山城空です」

 

「私は3年A組の毒島冴子だ。鞠川教諭は判るな? それで、あなた方は?」

 

冴子はそう言うとシグナム達を見る。シグナム達は一度、俊輔を見ると頷かれたので自己紹介をする。

 

「我々は主…いや、山本俊輔をお守りするヴォルケンリッター。私の名前は烈火の将、シグナムだ」

 

「同じく、楯の守護獣。ザフィーラ」

 

「鉄槌の騎士、ヴィータ」

 

「湖の騎士、シャマル」

 

「あのう? 質問良いですか?」

 

シグナム達が自己紹介を終えると同時に孝が手を上げる。

 

「なんだ?」

 

「え、えっと………ヴォルケンリッターって何ですか?」

 

「主をお守りする存在と考えてくれて良い。我々の主はそこにおられる山本俊輔だ」

 

「そう言う事~」

 

シグナムの言葉に俊輔はドヤ顔で言う。

 

「と言う事は、俺達に力を貸してくれると言う事ですね?」

 

「そう言う事だ。だが、君たちに力を貸せても、我が主の命令が絶対だ。もしかしたら、君たちを見捨てる事になるかも知れないが、其処は我が主にお任せする」

 

「と言う事で、ここから脱出する事を考えましょうか?」

 

シグナムの言葉が終わると、俊輔が次の事を考える為の事を言う。

 

「だが、どうやってここを出る? これだけの人数を運べるものは無いと思われるが……」

 

冴子の言葉で場の空気が沈黙する。

 

「我が主」

 

「ん、なに?」

 

「夜天の書に入っています。例の物が」

 

「なる、そう言う事ね。俺達は大丈夫だ。お前たちだけでも何かに乗ってくれ」

 

「どう言う事だよ‼ ま、まさか⁉ 一人だけで逃げるつもりか‼」

 

俊輔の言葉に孝がキレる。

 

「アホか‼ なんで一人だけで逃げるねん‼ 俺と空には専用のバイクがある。だが、これだけの人数を運べるはずが無い。だけど、お前達だけでも乗れる物があれば、それと一緒に並走出来ると言う事や」

 

「焦らせるなよ~」

 

「だが、どうやってここから脱出するかと言う事になるが、何か案はあるか?」

 

冴子の言葉に誰もが黙る。しかし、其処に手を上げた者が居た。

 

「なら、俺にいい案がある」

 

「それ、ダメなフラグや」

 

「うるせぇぞ、空。まぁ良い。ちょっとだけ待って下さいね」

 

俊輔はそう言うと何かの印を結ぶと叫んだ。

 

「喰霊、解放‼」

 

そう言うと俊輔の背中から一匹の獣が出て来る。

 

『なんじゃこりゃぁぁ⁉』

 

それを見た孝達が叫ぶ。

 

『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン‼』

 

「お前ってそんなキャラだっけ?」

 

『やってみただけだ。それで、話は聞いた。俺が出たと言う事は、脱出経路を探してこいと言う事だな?』

 

「そう言う事~頼むぞ」

 

『あい、判った』

 

そう言うと白叡は職員室から出て行くのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、いつでもどうぞ‼


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第十三話

大変、長らくお待たせいたしました‼

書いては消しての繰り返しをして、漸く完成に漕ぎ着けました。




今後もこんな形での更新になりますが、楽しんで行ってください。


白が職員室から出て行くと俊輔はまたもや質問攻めに合ってしまう。

 

「オイ、あれの説明もしろ」

 

「ヘイヘイ、判っていますよ~。あいつの名前は白叡、狗神と呼ばれる霊獣だ。まぁ、あいつは俺の体に封印されている訳でもないし、ある程度自由に行動できる。因みに愛称は白だ」

 

「えっと、質問」

 

「どうぞ」

 

俊輔の簡潔な説明に質問を出したのはコウタであった。

 

「そもそも、“霊獣”って何?」

 

「あっ、そこから説明しないといけないんだっけ? えっと、霊獣と言うのは幽霊の霊い獣と書いて霊獣と読む。子の説明で判るでしょ?」

 

「もしかして、悪霊とかの類なわけ?」

 

「そうともいうし、そうでもないと言える。どちらかと言うと……」

 

『どちらかと言うと?』

 

「ペット」

 

『へっ? ………ペットォォォォォ⁉』

 

俊輔の言葉にヴォルケンズ以外の全員が驚く。

 

「あっ、害は無いから心配しないでね?」

 

「そう言う事を言ってるんじゃねぇ‼ あれをペットと呼べるもんなのか‼」

 

「まぁ、そう言う風に思ってたしね。今更変えるつもりは無いし、白もなんだかんだで、気に行ってるしね」

 

俊輔の言葉に全員が呆れ返るのであった。

 

「帰ったぞ」

 

「どうだった?」

 

職員室に戻って来た白は霊獣形態を解除し、人間形態に変形していた。

 

「やはり、どこもかしこも奴らばっかりだ。逃げ道は塞がれているに近いな。まぁ、何やらキナ臭い風陰気を放っている人間どもがいたがな」

 

「フムフム………と言う事は正面突破が好ましいと言う事か?」

 

「そう言う事になるな。だが、奴らは目が見えていない分、聴覚が鋭くなっている。そこだけ気を付けたら良いだろう」

 

「やっぱりね………なら、俺達で行きますか。空、どうする?」

 

「僕はこのまま、皆さんといます。何かあった時に対処できる人間がいた方が良いでしょ?」

 

「そうだな……ならザフィーラを付けておく。ザフィーラ、頼むぞ?」

 

「御意」

 

白との会話を終えた俊輔は、次の行動に移そうとしていた。その為にも空に来てもらう必要性があったが、空の言い分も確かな事であった為、俊輔は盾の守護獣であるザフィーラを空に付けて、残りで道を作る事にした。

 

「と言う事で行ってくるわ」

 

「なに、コンビニ行く感覚で言ってるんだよ‼ 怖くないのかよ‼」

 

俊輔の言葉に孝が怒鳴る。だが、俊輔は孝の方を見ずに答えた。

 

「怖いよ。怖いに決まってるだろ。だけどな………」

 

「ッ‼」

 

俊輔が最後まで言葉を言わず、孝の方に振り返るとそこにはオチャラけた表情は無く、真剣な眼差しで孝を見つめる俊輔がいた。

 

「俺が知っている者達を、目の前で死んでいく様を見る方がもっと怖いんだよ」

 

俊輔はそう言って職員室から出て行く。また、ザフィーラを除くシグナム、シャマル、ヴィータ、アインスが続いて職員室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよあいつは……ふざけたり真剣になったり訳判らねぇよ」

 

「そうでしょうね」

 

孝の言葉に空が反応する。

 

「どう言う事だよ」

 

「あの人は平気で無茶をする人です。仲間の為なら、自らの命を散らす覚悟でいます。僕はあの人の力になる為にいる様な物です」

 

『………』

 

空の言葉には重みを含めていた。それを感じ取った孝達は何も言えなくなるのであった。

 

「もう少しでしょう、あの人の本気が出すのは……」

 

空がそう言うと学園の外で大規模な爆発音が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達は学園から脱出する為に道を作ろうとしていた。

 

「主、どうするつもりですか?」

 

「シグナム、俺ははやてみたいに頭を使う事は苦手だ。だから……アインス‼」

 

「はい」

 

「「ユニゾン・イン‼」」

 

俊輔はアインスをユニゾンし、魔力を一点に集中させる。

 

「これで決める、フォーカ、神楽、最終形態に移行」

 

【Aii right My Master Stand by Ready? Set up‼】

 

俊輔の言葉を受けフォートレス・カノンと神楽は一つに纏まるとそこには、ロングレンジ砲が現れる。

 

「最終形態、ファントム・フォートレス・カノン形態移行完了。どうだ?」

 

『問題は無いわ、この形態になるのって初めてよね?』

 

「ああ、そうだ。ド派手にぶっ放すぞ‼」

 

『良いわ‼ 見せてやりましょう、最終形態の威力をね‼ チャージ開始‼ エネルギー供給開始、リンカーコアとリンク、問題なし。チャージ完了まで三十秒‼』

 

ファントム・フォートレス・カノンの銃口には漆黒の魔力が纏まり始める。だが、奴らは些細な音でも感じる聴力を持っている為、俊輔の声とカノンに供給される音に導かれるかの様に俊輔に向かって行く。

 

「シグナム、ヴィータ、シャマル‼ 援護を頼むぞ?」

 

『了解‼』

 

俊輔の言葉を受け三人は散開する。

 

「ラケーテン‼ ハンマァァァァァ‼」

 

「紫電一閃‼」

 

「クラールヴィント、二人に魔力を」

 

『Ja』

 

三人はそれぞれの連携を取り奴らを俊輔に近づけさせない様にしていた。しかし、無尽蔵に湧く奴らに徐々に押されて行く三人であったが、その時には既にカノンに供給が終わっていた。

 

「三人共‼ 離れろ‼」

 

『ッ‼』

 

俊輔の指示で三人はすぐに後方へと下がった。

それを見届けた俊輔は、トリガーを引くのであった。

 

「行けよ、これが俺達の力だ‼ ミラージュ・エクストラメイション‼」

 

ファントム・フォートレス・カノンから放たれた砲撃は一度、分裂するが分裂した先には鏡の様な物が設置されており、反射する事により拡散する。

それにより、砲撃の雨が奴らへと降り注ぎ、その名の通り殲滅するのであった。

 

「さて、これで脱出ルートは確保できたかな?」

 

「やり過ぎ感が凄いけど………」

 

「気にするな。さて、戻るぞ?」

 

俊輔達は、孝達が待っている職員室へ戻るのであった。

 

 

 

 

しかし、この時誰も気づかなかった。俊輔の砲撃を見て細く笑っている人物がいた事に…………




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、受け付けております‼

次回は脱出編になると思います。

皆さんの嫌いな奴が来ますよwwwww


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第十四話

お待たせしました、エタッていた武御雷参型です。
完成したので投稿します。


俊輔一行は職員室に入るや否や、椅子に凭れ掛るように座った。

 

「ダリィ~、空~お茶頂戴」

 

「判りました」

 

俊輔の言葉に空はお茶を俊輔の前に置いた。

 

「ズズズズズ……プハァ~、やっぱ空が淹れたお茶は美味いな」

 

「ありがとう、それで、さっきのは何をぶっ放して来たの?」

 

「ん? ああぁ~あれね………最終形態と言えば判るか?」

 

「………あっ(察し)」

 

俊輔の言葉で空の表情は遠くを見つめ、何かを悟った表情であった。

 

「どう言う事だ? 最終形態ってまだ何か隠しているのか?」

 

「隠していると言えば隠しているな………でも、これを使う時って物凄く疲れるから使いたくないんだよね~」

 

孝の言葉に俊輔は気怠そうに答え、お茶を啜る。

 

「まぁ、使う時になってしまえば使うけどね………さて、脱出の事を考えようか」

 

「そうですね。僕達は単独で逃げる事は出来ますけど、孝さん達は難しいですもんね」

 

「この辺で良い逃げる足なんて物はあるんか?」

 

俊輔は考えるが、何も思いつかなかった。その時、孝が鞠川教諭に尋ねた。

 

「先生、車のキィってありますか?」

 

「あるわ‼ 確か鞄の中に…」

 

鞠川はそう言うと自分の鞄を漁る。しかし、冴子の言葉に鞠川の手が止まる。

 

「全員が乗れるのか?」

 

「ウッ……コペンです」

 

「なら、遠征で使っているマイクロバスはどうだ?」

 

「まだあります‼」

 

冴子の言葉にコウタが窓から見える駐車場を確認した。

 

「なら、それで逃げるか。俺達はお前達をマイクロバスまで誘導する。その後はついて行くから安心しろ、良いな、空」

 

「了解」

 

俊輔の言葉で脱出する手が決まった。

 

「それじゃ、行きますか‼」

 

俊輔の言葉で全員が職員室から出るのであった。

 

 

 

 

俊輔と空が先頭に立ち、その後を孝達が続き殿としてヴィータ、シグナムが布陣を敷いていた。シャマルとザフィーラはいつでも動ける要員として孝達の両脇を固めていた。

その時、踊り場で悲鳴がし生きている生徒が判った俊輔達はそちらへと向かった。

 

「卓造」

 

「下がってろ」

 

踊り場で三人の生徒が奴らに追い詰められている所であった。

 

「孝と永、麗はそこを動くな‼ シグナムとヴィータ、シャマルとザフィーラも待機だ‼ 俺達が行く、空行くぞ」

 

「判った」

 

俊輔の言葉で空と俊輔は踊り場の奴らを殲滅する。既に空はエンゲージしていた為、口調が変わっていた。

 

「ありが「声を出すな。正確には大きな声は出すなだが」う、うん」

 

「誰も噛まれていないな?」

 

「三人共、奴らに噛まれていないわ」

 

俊輔の言葉に三人を診たシャマルが答える。

 

「今から駐車場のマイクロバスまで向かう、一緒に来るか?」

 

「行かせてくれ」

 

「ついてこい、なるべく声とか大きな音とかは出すな?」

 

「ああ」

 

俊輔の言葉に卓造たち三人は頷いた。

 

 

 

 

そして、駐車場に続く入り口まで付くが、既にそこには奴らがウヨウヨと湧いており自らの欲を満たすために歩いていた。

 

「うわー、沢山いますな」

 

「どうするんだ、俊輔」

 

「簡単だ、殲滅すればいいのだろう?」

 

「えっ?」

 

孝の言葉に応えた俊輔は奴らに向かって歩いて行く。それを見たシグナム達や空は驚きはしなかったが、孝達は驚いた。

 

「まぁ、見てなって………アクセルシューター‼ シュートッ‼」

 

俊輔が叫ぶと同時に周りに丸い弾丸が生成され、それが縦横無尽に奴らを抹殺していった。

 

「これで良し、行くぞ」

 

俊輔の言葉で全員が正気に戻り、俊輔の後に続いて行くのであった。だが、運が悪く何かが倒れる音がし、表にいた奴らが俊輔達に気付いてしまう。

 

「全員、走れ‼」

 

孝がそう叫ぶ。

 

「どうして声を出すのよ‼ 奴らを殲滅した方が良いんじゃないの‼」

 

「あんなに音が響いてちゃ、意味が無いし逆にこちらが不利な状況だ‼」

 

沙耶の言葉に俊輔が神楽を使って切り倒しながら答える。

 

「話より走り出せ‼」

 

 

 

 

 

 

俊輔、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル、アインス、空が殿を務め孝達がバスに乗り込んだ。

 

「いつまでも持つ訳じゃないんだぞ‼ 鞠川先生、早く車を出せ‼」

 

俊輔に催促された鞠川は自分の車と違う構造に戸惑うが、何とかバスのエンジンを掛けた。

 

「山本君達、出すぞ‼」

 

「………ってくれ‼」

 

「誰かの声がするぞ?」

 

冴子の言葉でバスが出発しようとしたが、校庭から走ってくる六人が走って来ていた。

 

「俊輔‼ 助けてy「あんな奴、助ける必要はないわ‼」麗…」

 

孝の言葉に被さる様に麗が叫ぶ。しかし、俊輔達はそれを無視して六人を助けた、バスに乗り込ませた。

 

「どうなっても知らないわよ」

 

俊輔達を見ながら麗が睨みつけた。

それと同時にバスが走り出し、俊輔達は専用のバイクを展開してバスの後について行った。シグナム達は空を飛び後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達は知らなかった。この先に待っている未来が、そして、出会いが。

 

 

 

 

宇宙空間に一隻の戦艦が停空していた。

 

「艦長、やはり地球のどこもゾンビで一杯です」

 

「やっぱりか………あいつらを出せるのか?」

 

「既に待機させています。命令があればいつでも出せます」

 

「そうか………それで、例の少年達の動きは?」

 

「既にキャッチしています。高校から逃げている最中ですね」

 

「判りました、あの子達を出しましょう。山本俊輔君達を助ける為にね」

 

艦長と呼ばれた女性の顔には悲しみの表情を顕にしていたのであった。



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第十五話

書き上げてやったぞ‼ 夜中のテンションで書いているので、おかしいです。(いつもの事か)
漸く単行本一巻が終了です。そして、今回はいつもより長く書けた気がする。
区切る所が無いんで、一巻を終わらせる気持ちで書いたら、終わっちゃいました。


孝達を乗せたバスは学校から脱出後、順調に走っていた。俊輔達はバスの後方で追尾する形で付いて来ており、上空で飛行しているシグナム達五人は、いつでも戦えるようにスタンバイしていた。尚、シグナム達は認識障壁を展開している為、索敵に引っかからない様にしていた。

しかし、順調に走っていたバスだったが、内部では分裂し始めていた。

 

「なんで小室達と一緒に行かなくちゃならないんだよ‼ 小室達だけで町に行けば良いだろ‼ 他にも隠れる場所位思いつくだろうが‼」

 

一人の生徒がバス内部で孝達と一緒に行動する事に異議を申し立てる輩が出た。紫藤と一緒にマイクロバスに乗り込んだ角田である。

 

「そうだよ、このまま進んだってどこもかしこも、あんな奴らばっかりなんだ。さっき、コンビニを見付けたんだ。そこで籠城すれば良かったんだよ」

 

それに便乗する形で、もう一人の生徒黒川が口を出した。

 

「俺達はこのままバスで逃げるから、小室達だけで逃げろよ‼」

 

角田が、自分勝手な言い分を申し立てた。鞠川は我慢の限界となり、バスを路肩に止めた。

 

「いい加減にしてよ‼ こんな雰囲気で運転なんて出来ないじゃない‼」

 

「なに⁉」

 

鞠川の言葉に角田がキレ始めた。

しかし、そこで待ったを掛ける者がいた。

 

「では、君はどうしたいのかね?」

 

冴子である。冴子は角田にどうしたいのか、静かに尋ねる。

 

「俺は小室(コイツ)と一緒なのが嫌なんだよ‼ 偉そうにしやがって‼ お前に何が出来るんだよ‼」

 

角田の言葉に孝は歯を食いしばる。又、コータは手に持つ改造して持ち易い様にした釘銃を角田に撃とうとしたが、沙耶がコータの手を押さえ付けられてしまう。そして永に至っては、俊輔から渡されたベレッタを取り出そうとしたが、ここで銃を出す事の危険性を考え、時期が来るまで見守る事にした。

 

「何がだ? 俺がいつ、どこで、お前に言ったかよ?」

 

孝は歯を食いしばっていたが、我慢が出来ず口を出してしまう。

 

「テメェ‼ ッ⁉」

 

角田が孝に殴り掛かろうとしたが、麗がモップの柄で造った簡易的な槍で角田の鳩尾を殴り倒れ込ませた。

 

「最低、孝」

 

倒れ込む角田に冷やかな目線を向けたかと思うと、孝には笑顔で名前を呼ぶ。

その時、バスの後方から、静かに拍手する人物がいた。

 

「いやぁ~、素晴らしい。実に素晴らしい‼ 小室君、宮本さん。見事なチームですね」

 

紫藤である。だが、その表情は優し気な表情をしていたが、目は笑っていなかった。

 

「しかし、こうして争いが起きてしまう。では、どうするべきか? 答えは簡単です」

 

そう言うと紫藤は麗と孝に顔を近づける。

 

「リーダーを作るのですよ、我々にはね‼」

 

この時の紫藤の表情は、歪んでおり先程とは違い、完全に何かに憑りつかれたような風陰気を出していた。

 

「で? その候補がアンタと言う訳?」

 

「そうです、私しかいません‼ この中で教師であり男性と言う事で、リーダー候補は私です。何かご不満でも?」

 

沙耶の言葉に紫藤は高らかに、自分がリーダーに相応しいと謳い始める。

 

「どうです? 皆さん。私なら、私なら、問題も起こさず死ぬ事も無い様に手を打つ事も可能なのですよ?」

 

この言葉を受け、孝や麗、コータ、冴子、沙耶、鞠川、永以外の生徒が、拍手をした。実質、リーダーは紫藤となってしまった。

 

「と、言う訳で。多数決の結果、私がリーダーとなりました。これから、よろしくお願いします」

 

紫藤は業とらしい演技で、会釈をする。

 

「先生‼ ここで降ろしてください‼」

 

「でも~」

 

紫藤の言葉に麗は我慢できず、バスから降りようとした。だが、鞠川としては止めたい気持ちであった。紫藤の言動などは、鞠川にとっても受け入れ難い物である。だが、ここで降ろすと言う事は、奴らになってしまう危険性も考えられるのだ。

 

「ッ‼」

 

麗は鞠川の止める声も聞かず、助手席からバスを飛び降りた。

 

「麗‼」

 

孝は窓を開けて麗の名前を呼ぶ。

 

「困りましたね~。行動を共に出来ないと言う事であれば、致し方が無いですね」

 

「何言ってんだ‼ テメェ‼」

 

紫藤の言葉に孝はキレ、殴ろうとバットの柄を強く握りしめた。だが、ここで殴ってしまうと、後方で待機している角田達が黙っていない。復讐として、孝を袋叩きにしてしまうのは目に見えているからである。又、コータが持っている釘銃や永の懐に隠しているベレッタを出したところで、意味があまりない。逆にそれを取られてしまう危険性があった。

 

「チッ‼」

 

孝は麗同様、助手席からバスを飛び降りた。

 

「麗‼ 冷静になれ。街までの我慢だろ」

 

「いやよ‼ あんな奴。私は一緒に行動出来ないわ‼」

 

「だけど「孝‼ 麗‼」なんだ‼ 俊s⁉」

 

麗の手を取り、バスに連れ戻そうとした孝だが、俊輔の声で振り向くと、一台の大型バスが道路にフロントを出している乗用車を避けようとしていない事に気が付く。

 

「何してんだ‼ ぶつk⁉」

 

孝はバスの運転手席に奴らが迫っている光景が目に入った。運転手は奴らから身を護るだけで精いっぱいなのか、前方を見ていなかった。

結果、バスは乗用車に衝突し、左フロントを破損、スピードも出ている為、衝突の影響でバスが右側へと浮かび、タイヤが右側へ向いていた。では、着地した時、どうなるのか? 答えは簡単だ。右のタイヤが着地と同時に破損し、ショックを和らげずそのまま横転してしまう。そして、運悪く衝突された乗用車から衝突時にエンジン部からオイルが漏れだし、バスが横転した時に出た火花に引火し、大爆発を起こした。

 

孝はバスが乗用車に衝突する寸前に麗を壁際に誘導していた為、爆発に巻き込まれずに済んだ。だが、爆発が起きたのはマイクロバスとの間でだった為、マイクロバスへ戻る事が出来なくなってしまった。

 

「小室君‼ 大事は無いか‼」

 

炎上しているバスの先から冴子の声が聞こえる。

 

「こっちは大丈夫です‼ でもバスに戻る事が出来ません‼ 警察署‼ 警察署で落ち合いましょう‼」

 

「時間は‼」

 

「午後の五時に‼ 今日は無理な可能性が高いので、明日でお願いします‼」

 

「判った‼」

 

冴子の声がした後、マイクロバスの扉が締められる音がし、バスが発進するのが判った。だが、俊輔達の乗るバイクの音がしていなかった為、孝は俊輔達に声を掛ける。

 

「俊輔‼ 空‼ 聞こえたら返事してくれ‼」

 

「聞こえている‼ 俺達はバスを追う。お前たちは警察署に向かえ‼ それと、ヴィータ‼ 孝達と一緒に行動しろ‼ 何かあれば念話を送れ」

 

「判った」

 

俊輔に言われた通りにヴィータが孝達の前に降り立つ。だが、服装が先ほどとは異なっていた。ゴスロリ衣装から、Tシャツに半ズボンとラフな格好になっており、ハンマーの様な武器が無くなっていた。

 

「ヴィータ‼ 孝達と一緒に行動しろ‼ なるべく魔法は使うな‼ それと、こんな状況下だ。暴漢が出るかも知れん‼ その時はセットアップして対応しろ‼ 止むを得ない状況以外は、極力殺生はするな‼ 良いな‼」

 

そう言うとバイクの音が二つ聞こえ遠ざかって行くのが判る。

 

 

 

「先を急ぐぞ‼」

 

「うん‼」

 

「判った」

 

孝の言葉で麗は喜んで頷き、ヴィータに至っては仕方が無さそうに返事をした。だが、その時、壁の上から奴ら特有のうめき声がし、孝達三人は上を見るとそこにはバイクのヘルメットを被った奴らが一人立っていた。そして、孝の服の襟を掴むと噛み付こうとした。しかし、バイクのヘルメットを被っている所為か、噛む事が出来ず頭突きをする結果となる。だが、奴らの力は強く、頭突きだけでも相当な威力になる。

だが、奴らはヴィータのアイゼンによって頭と体を離れさせられ、首だけになってしまうのであった。

 

「た、助かった。ありがとう、ヴィータ……さん?」

 

「ヴィータで良い」

 

孝の慣れないさん付けにヴィータは顔を背けながら、呼び捨てにするように言う。

それを見た孝と麗に、笑顔が取り戻された。だが、ヴィータは笑われた事に腹を立て、地団駄を踏むのであった。

 

「あいつ、メットを被っていたよな。と言う事は………あった‼」

 

ヴィータの地団駄を微笑みながら見ていた孝と麗であったが、先程の奴らが置いたであろうバイクが近くにあると思い、周囲を見渡すと案の定、バイクが一台、転がっているのが見えた。バイクにはエンジンが掛かった状態で、マフラーから排気ガスが出ていた。

孝はバイクを起こして跨る。

 

「免許って持ってったけ? 孝」

 

「無免許運転は、高校生の特権だ‼」

 

それを受け、麗は孝の後ろに乗り込む。

 

「ヴィータちゃんは、どうするの?」

 

「私は空を飛ぶ。この状態でも飛行は出来る(懐かしいなちゃん付けされるのも……なのはの奴は元気にしてっかな)」

 

麗にちゃん付けされた事に、腹が立たなかったヴィータであったが、アポロニアスによって俊輔の元へと送られる前までにいた世界で、最初に戦いそして共に戦った仲間の事を思い出していたヴィータであった。

 

「じゃぁ、行くか‼」

 

「「おう/ええ」」

 

孝の掛け声と共に三人は、俊輔達と合流する為に動き出すのであった。

 

 

だが、この時。俊輔や孝達には判っていなかった。本当にこの世が終わっているのが……




誤字脱字、感想、指摘、質問等お待ちしております。

次回位に、全話の最後で出たキャラを出そうと思います。リリカルなのはから出す予定です。誰を出すのかは、お楽しみに‼


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第十六話

連日投稿‼ 書ける時間があって嬉しいぜ‼


孝達三人は、国道をバイクで駆け抜けて行く。その際、生きている人間の姿は無く、又、奴らの姿も見受けられなかった。

その時、上空に一機の戦闘機が飛行しているのを見付けた。戦闘機は、街の惨状を撮影しており生きている人間がいないかを探っていた。

 

「あれは……」

 

戦闘機のパイロットが国道を法定速度をオーバーしているバイクを見付けた。

 

「生きている人ですね……見た処、高校生でメットも被っていない。無免許運転ですね」

 

「ああ、だがこの事態だ。逃げられる手段は限られる。高校生の特権と言えば、無免許運転だろ?」

 

「違いないですね‼」

 

操縦席と副操縦席に座るパイロットが雑談をしていた。

 

「近づけるぞ」

 

「了解‼」

 

パイロットは戦闘機を孝達に近づけた。

孝は運転に集中している所為か、目線だけ戦闘機に向け後ろに乗っている麗は片手を上げて、戦闘機のパイロットに生きていると言う事を伝えた。

 

「まさか、まだ生存者がいたとは思いもしなかったですね」

 

「ああ、そろそろ燃料が勿体無い。基地に戻るぞ」

 

「判りました」

 

パイロットは孝達を追い抜かして基地へと戻るのであった。

 

 

 

 

「もしかしたら、近くに基地があるのかな‼」

 

「さぁな。だが俺達を助ける程、甘くはないだろう」

 

戦闘機を見送った後、バイクを止める孝と麗であったが、麗の言葉に孝はネガティブな言葉を発する。

 

「どうして、そんな盛下がる事を言うのよ‼」

 

「学校でも同じ光景を見ただろ? それと同じだよ。自衛隊も自分達の基地を護るだけで精一杯なんだ。俺達、民間人を助けられると思うのか? これから先も同じことの繰り返しさ」

 

孝は脱出する前に、学校の窓から見えた光景を思い出していた。校庭に逃げ出した生徒が助けを求め、上空を飛行していた自衛隊のヘリに手を振るが、無視して目的の為に動いているのが手に取る様に判った。

 

「何言い合っているんだ? 今は俊輔達と合流するのが目的なんだろ? こんな所で言い合っていても、何も始まらないぞ」

 

ヴィータが孝達の許へ降り立ち、孝達の言い合いを止める。

 

「そうだったな……ん?」

 

「どうしたの、孝?」

 

「バイクの燃料が無い。近くにスタンドってあったか?」

 

「信号二つ過ぎた所にあった気がするけど……」

 

「なら、今はバイクの燃料を補給するのが目標だな」

 

バイクの燃料が無くなりかけている事に気付く孝は、この近辺にガソリンスタンドがあったか思い出せなかった。だが、麗の得る覚えに近い記憶を頼りにする他無い為、孝はバイクを走らせる。

ヴィータは先程と同じように、上空へ上がり認識障壁を張り孝達の護衛を務めるのであった。

 

 

 

 

一方、俊輔達は渋滞に巻き込まれていた。

バスの周りには徒歩で逃げている生存者も多く、又、車で逃げだしている生存者の所為で、道路規制が掛かり思う様に進めなかった。俊輔達は、偽造した運転免許証がある為、無免許運転にはならず、警察の手を焼かせなかった。

 

「これじゃぁ、動き出すのに時間が掛かりますね……」

 

「そうね、車だけが逃げる手段じゃないのに………」

 

バスの窓から見える光景にコータと沙耶が呟く。沙耶は窓に手を当てる。そこには一機のジャンボジェット機が離陸して飛行している光景が目に入った。

 

「洋上空港ですね。あそこなら行く手段も限られていますし、安全と言えば安全ですしね………リスクも高いですけど…」

 

「まぁ、逃げる場所も限られるわ。どこの島に逃げ込むのか、武器の人口比が高い孤立した地域とかね」

 

「沖縄や九州、北海道ですね。あそこなら本土から陸で行く事も困難ですし、自衛隊や海兵隊なんかもいますもんね」

 

沙耶の言葉にコータも続く。だが、沙耶の言葉は終わっていなかった・

 

「でも遅いわ。私達が北海道や九州、沖縄に行く手段が無い。既に多くの生存者がそっちに向かっている筈。それに、奴らを抑え込んだとしても、生存者を受け入れる為の厳しい検査や身元確認なんかも行われる可能性が高い。いずれ、軍がいる地域は遅かれ早かれ、そんな状態になるのが目に見えているわ。既に起きているでしょ?」

 

沙耶は自分の考えを述べる。だが、沙耶の言葉は正しかった。既に沖縄と北海道では生存者の受け入れに厳しい審査が執り行われている為、中々、中に入れない生存者が多く存在していた。

又、北海道は本土と繋がっている鉄道の線路が存在するが、既にトンネルは爆破され通る事が出来ない状況であった。

 

「なら、あんたはどうする? 他者との交流は奴らを入れてしまうリスクに繋がる。その時になれば?」

 

「引き籠りますね。その方が安全ですし、第一、他者との接触をしなければ奴らになる事も無いですしね」

 

沙耶の質問にコータは即答する。

 

「なら、世界中の人間がアンタみたいな考えになったらどうなる? 生き残るだけのコミュニティーを維持するだけを考える様になったら………」

 

「高城さんは、頭が良いですね。前から知っていましたけど、もっと尊敬してしまいそうです」

 

「何言ってるのよ‼ それにアンタも気付いてるんでしょ?」

 

「ええ、あの紫藤と言う教師の事ですよね?」

 

コータと沙耶の目線の先には紫藤が演説をしている所であった。演説を聞いているのは、紫藤と一緒にバスに乗り込んだ生徒達だけであった。

沙耶やコータ、冴子、鞠川、永達五人は違い、紫藤の考えに賛同するつもりは無かった。

 

「宮本が言っていた事が本当になったわね」

 

「そうですね……あの生徒達を見て下さい。既に紫藤の事を崇拝するような目で見ていますよ」

 

コータが言った通り、紫藤の演説に惹かれた生徒たちの眼には、紫藤の事を神の様に崇拝する眼差しを向けていたのであった。

 

「半日よ? 半日であんなことになるとはね……こんな時に小室がいれば相談できたのに………」

 

「高城さんは小室の事、好きですもんね?」

 

「なっ⁉ 違うわよ‼ バカな事言わないでよ‼」

 

コータの言葉に沙耶は強く否定するが、顔は茹で上がったタコの様に赤くなっているのであった。

 

「「ふ~ん」」

 

「だから‼ 違うってばぁ‼ それに私には…………」

 

冴子と鞠川の目線に気付いた沙耶であったが、本当に好きになっている人物の事を言えなかった。

 

「丁度良いかもね、この際」

 

永が立ち上がり次の行動の事を話し始めるのであった。

 

 

 

 

時を戻し、孝達は麗の得る覚えの記憶を頼りにガソリンスタンドへ向かっていた。

 

「誰もいないわね……逃げ出したのかしら?」

 

「さぁな……でも逃げ出したとしても逃げる宛はあるのか? 死んでしまって生きている奴を喰う為にどこかに隠れているのかもな………それか、生きている奴を追いかけたのか………どちらにせよ、戦う回数が減ってありがたいけどな」

 

孝は誰もいなくなった街を見ながら呟く。

 

「孝‼ 右‼ 右見て‼」

 

「えっ?」

 

麗の言葉に孝は目線を右側へ寄せた。そこにはパトカーが一台、交差点で止まっているのが目に見えた。

 

「無免許、ノーヘル、盗んだバイク。警察にばれたら補導されるのがオチだな‼」

 

「今更、何言ってるのよ? それを言うなら山本君達はどうなるの?」

 

孝はバイクのスロットを引きスピードを上げた。だが、その時に見た光景が、世界の終わりを告げる第一歩であると気付かされるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けてります‼


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第十七話

連続投稿です‼ 原作を見ながら書いているとサクサクと進んでいて面白いです‼


孝達は交差点で止まっているパトカーの前で絶句する。パトカーの右後部にダンプが突込み、後部座席を押し潰して止まっていた。その衝撃でか、乗っていた警察官は座席に押し潰される様に息絶えていた。

パトカーから漏れ出した燃料が流れだしているのが見受けられていた。

 

「マジかよ……麗?」

 

孝はパトカーの惨状に何も言えなくなる。だが、麗は静かにバイクから降り、パトカーの元へ向かって行く。

 

「麗‼ パトカーから燃料が漏れだしている‼ 危ないぞ‼」

 

「役に立つ物があるかも知れないじゃない?」

 

麗はそう言うと、パトカーへと近づいて行き、運転手席の扉を開ける。腰にぶら下がっている物を見て麗は躊躇わず、警官からそれを取った。それは拳銃であった。警察官が所持しているS&W M37エアウェイトと呼ばれるリボルバータイプの銃である。

 

「孝も一緒にやりなさいよ‼ ぼさっとしてないで‼」

 

「お、おう‼」

 

麗の一言で孝もバイクを降り、パトカーへと近づいて行く。

 

 

暫らくしてから、麗と孝はバイクの元へ戻った。しかし、そこにはヴィータが黒いオーラを纏って待っていた。

 

「お~ま~え~ら‼ 勝手な行動をするな‼ こっちは冷や冷やしたぞ‼」

 

「ごめんね~ヴィータちゃん。でも新しい武器が手に入るし、手段が増えるから良いかなって思ったんd「パトカーから燃料が漏れているだろうが‼ 何かの拍子で引火したらどうするつもりだった‼」ごめんなさい」

 

麗の言葉にヴィータは堪忍袋の緒が切れ、般若の表情を浮かべていた。

 

「まぁ、良い。それで新しい武器は手に入ったのかよ?」

 

「う、うん(怖かった‼ あんな小さい子でも迫力があるわ)」

 

ヴィータの言葉に頷いた麗が、バイクの座面に銃一丁と弾丸五発、警棒一つを載せた。

 

「孝、この銃は孝が持っていて。使い方は判る?」

 

「テレビとかで見た事だけだ………ずっしりしているな」

 

麗に手渡された銃を手に取った孝は、銃の重さに驚きを隠せなかった。

 

「当たり前だ。その銃の弾丸一つで人の命を獲る事が出来るんだからな。軽かったらその銃の責任が感じられないだろ」

 

ヴィータの言葉で孝は再認識する。自分が持っている銃の重みの意味を………

 

「先を急ぐぞ。時間が勿体無い」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

ヴィータの言葉で孝達はバイクに乗り込みガソリンスタンドへ向かうのであった。

 

 

 

 

洋上空港では滑走路にいる奴らを狙撃している部隊がいた。

 

「左右の風はほぼ無風。修正の必要無し。射撃許可を確認‼」

 

観測手の男性の声でライフルを手に持つ女性が、引き金を引く。

放たれた弾丸は、狂う事無く滑走路にいる奴らの頭を貫通し、今度こそ本当の絶命を迎えた。発砲音はそれからも続き、滑走路内にいた奴らを殲滅させた。

 

「お見事、化け物共は全滅を確認‼」

 

「フゥ~」

 

「何してんだよ」

 

観測手の男が狙撃手の女性に目を向けると、女性は立ち上がったかと思うと徐に、自分の胸を揉み始めた。

 

「朝っぱらから寝っ転がって狙撃してんのよ? 痺れちゃってんのよ」

 

「俺が揉んでやろうか?」

 

この非常事態でなければ、観測手の男性はセクハラとして訴えられていただろう。だが、長年連れ添った狙撃手の女性には、男性の言葉が冗談であると判っていた。

 

「揉みたかったら、私より狙撃がうまくなくちゃ揉ませないわ」

 

「全国の警察の射撃ベスト5に入るお前より上? ムリだな」

 

「なら、諦めなさい」

 

狙撃手の女性、南リカはサングラスを手に取り顔から外す。

 

「にしても、船でなければ入れないこの洋上空港にまで出て来るとはな………警備は怠っていないんだろ?」

 

観測手の男性、田島が呟く。

 

「ええ。要人とか空港の意地に不可欠な技術者の家族が入っているけど、その中に噛まれた者が居たのよ。その結果がこれよ」

 

リカの言葉に田島は肩をすくめる。

 

「いつまでこの空港が持つか………既に九州や北海道、沖縄の空港は受け入れを拒否し始めているわ。私達がこの空港に派遣されていなかったら、この空港も化け物一色になっていたかもね」

 

「だが、弾薬や物資も無限にある訳じゃない。いつか枯渇してしまうな」

 

「あら? 逃げるつもり?」

 

田島の言葉にリカは尋ねる。

 

「まさか、だがいずれかはするつもりだ」

 

「私は街に行くつもりよ」

 

リカの言葉に田島は驚き「えっ⁉ 男でも居るのか‼」と食いつくほどであった。

 

「違うわよ、街に私の友達がいるのよ」

 

そう言うとリカは空を見上げるのであった。

 

 

 

 

ガソリンスタンドが見つかり一安心する孝達は燃料を補給しようと、バイクを給油機の横に止めた。

 

「ガソリン残っているのかしら?」

 

「大丈夫だろ、どこのスタンドでも車千台分の燃料は貯蓄しているって聞くし………チッ‼」

 

孝は給油機のシステムに舌打ちする。

 

「どうしたのよ、孝?」

 

「ここのスタンド。セルフ式だ。金かカードを入れないと給油されないシステムだ」

 

「お金入れた良いじゃない」

 

「生憎、金が無い。まだ問題が起きていない学校の自販機でジュースを買ったからな。手元に残っているのが三十円しかない」

 

孝はそう言うとポケットの中に入っている三十円を麗に見せつける。

 

「最低」

 

「まさか、こんな事になるとは思っても見ないだろうが‼」

 

「何かの時の為に残しておくと言う気持ちは無かったわけ‼」

 

「家に帰ったら貯金箱に入っている金を出すつもりだったし‼ こんな状況になるなんて判っていたらもっと持って来てる‼」

 

「いい加減にしろ‼ お前ら‼」

 

「「(ビクッ⁉)」」

 

麗と孝の言い合いにヴィータがまたもや雷を落とす。だが、声のトーンは小さく奴らに聞こえる事は無かった。だが、トーンと迫力に二人は体を震わせる。

 

「今は言い合いしている暇はないと、さっきも言った筈だぞ? 忘れた訳じゃ無いだろうな?」

 

「いや…その……すみません」

 

「ごめんなさい」

 

ヴィータの迫力に二人は唯、頭を下げる他無かった。小学生の女の子が高校生男女を叱っている光景は、状況が状況なので笑う事は出来なかったが、もし何もない時であれば、笑われるのが目に見えていた。

 

「孝はあそこのカウンターに行ってレジを壊してこい。そこから金を出して燃料を入れろ。麗は付近の確認だ。もしかしたら、暴漢が潜んでいる可能性があるからな」

 

「ヴィータちゃんはどうするの?」

 

ヴィータは的確に二人に指示を出していた。

 

「私はちょっと上空を飛んで、近くに何か無いか探るつもりだ。麗、何かあれば叫べ。それに気付かないバカはいないからな」

 

ヴィータはそう言うと上空へと上がって行くのであった。

孝はヴィータに言われた通り、カウンターへと向かって行った。麗は誰も近づけさせない様に見張っていた。

だが、三人共気付かなかった。既に麗の近くに暴漢が立って、手にはナイフを握っていた事を………




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けております‼


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第十八話

俊輔達は未だに渋滞に立ち往生していた。だが、バスの中では混沌とした空気が流れだしていた。

 

「こう言う時だからこそ、我々藤見学園の者として、誇りを忘れてはいけないのです‼ その意味ではこのバスから去って行った宮本さんや小室君は、皆さんと一緒にいる事が相応しくないのです‼ 生き残る為に、一致団結しましょう‼」

 

紫藤の演説は火に油を注いだかのように、熱を上げていた。だが一方で熱が冷めている者達もいた。冴子達である。

彼女たちは、紫藤の演説を聞いている生徒達を見ながらある事を考えていた。

 

「マジヤバいわよ。あの状況」

 

「ああ、確かにな………あれではまるで」

 

「新興宗教の布教に近いですね」

 

「まるででは無い。完全に布教しようとしている。そして、僕達の前で新しい新興宗教が誕生しようとしている」

 

沙耶の言葉に冴子も頷き、コータが言葉をつづける。そして永に至っては状況を冷静に見ていた。

 

「紫藤教の始まりを僕達は目にしているんだ。見てくれ。あの紫藤の演説を聞いている生徒の眼を。完全に紫藤の事を神父の様に思っている連中しかいない」

 

永の言う通りである。紫藤の演説に惹かれた生徒達、全員の眼が紫藤の事を神の様に崇拝する眼差しを送っていた。

 

「道がこの有様では、バスを捨てて徒歩で逃げる他、あるまい」

 

「でも、そうした場合。僕達の足が無くなってしまいますよ?」

 

冴子の言葉にコータが意見を出す。

 

「だが、何としてでも御別橋を渡り警察署へ向かわなくては………小室君達と合流は難しいだろう?」

 

「あれぇ? 随分と小室の事を気にするじゃない? 自分の家族の事は良いの?」

 

冴子の言葉に沙耶が噛み付く。だが、冴子は冷静を欠ける事無く反論する。

 

「私の家族は父が一人だし、日本には居ない。つまり、今の私にとっては小室君との約束を守る事以外に護るのは己の命だけと言う事だ」

 

「グヌヌヌヌ」

 

冴子の言葉に沙耶は何も言えなくなってしまう。ここで、何かアクションを起こせば弱みの一つでも握れると思った沙耶の思惑が潰れてしまうのであった。

 

「それに私は父に言われ続けている事がある。一度、約束した事は絶対に違えるなとね」

 

「そうですか~」

 

沙耶は素っ気なく答えた。

 

「ところで、高城さんのお家はどこにあるの?」

 

「うちは小室同様、御別橋の向こう側です」

 

「ぼ、僕も家族が国外にいるので…………高城さんと一緒ならどこへでも………」

 

コータの言葉に興味を持った鞠川と冴子。

 

「平野君のご家族はいまどちらにおられるのだ?」

 

「父さんは宝石商なんでオランダへ買い付けへ行っていますし、母さんに至っては、ファッションデザイナーなので、ずっとパリに住んでいます」

 

「いつの時代の設定よ‼」

 

コータの家族構成に沙耶がツッコミを入れる。

 

「マンガだと、パパは外国航路の客船の船長さんだったりして………」

 

「お祖父ちゃんがそうでした……お祖母ちゃんはバイオリニストでした……」

 

「完璧だわ………」

 

鞠川の言葉にコータの祖父母がそうであったと暴露され、沙耶は完全に頭を抱え込むのであった。

 

「それで、これからどうするの> 私も一緒に行きたいのだけど………」

 

「えっ? 良いんですか?」

 

鞠川の言葉に永は驚く。

 

「うん、私の両親はこの世にいないしね…親戚も遠いしね…………それにこう言っちゃったらあれなんだけど」

 

鞠川はそう言うと言葉を区切り、演説を続けている紫藤を見ながら「私、紫藤先生の事。好きじゃないの」と発言する。

この言葉に永達に笑顔が戻った。

 

「どうしたのですか? 皆さん。ここは一致団結して一緒にn「ご遠慮させて頂きます。紫藤先生。僕達は僕達で目的を持って行動しているのです。修学旅行では無いのですから、一緒に行動する必要が無いですから。僕達はバスを降りさせて頂きます」ほう?」

 

紫藤の言葉に被さる様に永が言葉を発し、それが終わる頃には紫藤の表情が変わるのが判った。そして、角田が立ち上がり、いつでも殴り掛かれる体制を整えていた。

 

「あなた方が決めた事です。異議は立てられません。ですが………鞠川教諭。貴女には残って頂きたいですね‼」

 

紫藤の言葉に鞠川は体を震わせた。何に震わせたかと聞かれたら、判らないとしか答えられないが、紫藤の表情や声の質などで鞠川は、バスに残る=自分が何かされると言う恐怖感に襲われた。

 

「現状で、医師の資格を持っている貴女をバスから降ろすと、マイナスが大き過ぎますし…………それに、居場所をはっきりさせていれば、高城さん達も戻れる事ですしね~困った時に貴女を頼りにこのb」

 

紫藤の言葉は最後まで続かなかった。なぜならば、紫藤の頬から一筋の傷が出来、そこから血が流れだしていた。そして、それを作った張本人はコータであった。コータは手に持つ釘銃を撃って先へ進ませようとはさせなかった。

 

「ひ、平野君………君はこんなことをする生徒では無かったでしょ? どうしてですか?」

 

「外した訳じゃ無いんですよ? 紫藤先生。態と、外したんです。そして今の状況下………奴らだけじゃない。生きている人間も殺す覚悟も、僕は出来ている。もう普通なんて戻って来ないんですから」

 

コータはそう言うと釘銃の銃口を紫藤に向けたまま冴子の方へ振り返る。

 

「毒島先輩‼ 先に降りて下さい。殿は僕が務めますから」

 

男子(おのこ)だな‼ 平野君‼」

 

こうしてバスを降りたコータ、沙耶、永、冴子、鞠川は次の行動をどうするか相談をし始める。

 

「どう進む? 私はこの辺の地理には詳しくない」

 

「先に御別橋を確かめた方が良いわ」

 

「でも、この渋滞は普通の渋滞では無いです。行って見るだけ行って見ましょう」

 

そう言うとコータ達は先へと進むのであった。

 

だが、マイクロバスの入り口に立つ紫藤は、自分の計画が巧い事、進まなかった事に苛立っていた。

 

「先生? 大丈夫ですか?」

 

女子生徒が紫藤の事を心配する。

 

「大丈夫です。さぁ、これで邪魔する者達が居なくなりました‼」

 

紫藤の顔は先程とは打って変わり、笑顔であった。

 

 

 

 

時を戻し、孝達はそれぞれの行動をしていた。

 

「一度はやってみたかったんだ」

 

孝はカウンターの上に立つと、レジに向けて金属バットを振り下げた。

レジは破壊され、お金を入れる所が開き孝は迷わず、お金を手に取った。

 

 

 

麗はバイクを背にして立ち、孝が壊しているレジの音を聞きながら、これまでの事を振り返っていた。

 

「私も孝や山本君達の事を言える立場じゃなくなったわね」

 

 

ヴィータは上空へ上がるとサーチャーを飛ばそうとした。しかし、その瞬間、麗の悲鳴が聞こえた。

 

「なっ⁉」

 

ヴィータは目線を下に向けると、そこには暴漢に捕まった麗の姿があった。

 

「本当に暴漢が居るとは思いもしなかった」

 

ヴィータはまさか本当に暴漢が居るとは思っても見なかった。

 

「手が焼けるな、まったく‼」

 

ヴィータはそう言うと麗の元へと駆けつけるのであった。

 

 

 

孝が麗の悲鳴を聞きつけ、外へ出るとそこには体格の良い男が麗を後ろから抱え込み、ナイフを首元へ突き付けていた。

 

「ひゃぁっはっはっは‼ 兄ちゃん、可愛い彼女連れてんじゃん‼」

 

体格の良い男は麗にナイフを突きつけながら叫ぶ。

 

「麗を離せ‼」

 

「ばーか、誰が離すかよ‼ 化け物だらけになっちまった世界に生き残るには為には、可愛い女の子が要るんだよ‼」

 

「壊れてる…………」

 

男の言葉に孝は、相手が既に感情をコントロール出来ていないのが判った。

 

「あたりめぇだろうが‼ 俺の家族はな‼ 俺の目の前で化け物に喰われ化け物になったんだからな‼」

 

男は孝の言葉に反応する。だが、次の瞬間、表情が一変する。

 

「俺はな‼ 化け物になっちまった家族をこの手で殺したんだからな‼ 親父もお袋も弟、妹をな‼」

 

男はそう言うと高らかに笑い始める。そして、男は徐に麗の胸を掴んだ。

 

「ひうっ⁉」

 

「ウッヒョー‼ 可愛い声で啼くねぇ‼ そそられるぜ‼」

 

男は視線を麗から孝へ向ける。

 

「兄ちゃん、この娘と毎晩やってるんだろ? ああぁ? やってねぇの? マジで⁉ バッカじゃねぇの‼」

 

男の言葉に孝は麗を助けようと足を動かした。だが、

 

「おっと、そこから動くんじゃねぇぞ? 動いたら、この娘の首にナイフが刺さっちまうからな‼」

 

「チィッ‼」

 

男の言葉で孝は一歩も動けなくなってしまうのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けております‼



「ねぇ、作者? 僕達の出番はまだ?」

「○○、少しぐらいは落ち着かぬか‼」

「王、私もそろそろ我慢の限界です」

「で、どうなのだ? 駄作者よ」

駄作者って………まだいつ出すか判らない状況なの。もう少し待ってて。ほら、飴上げるから。

「うわ~い‼ アメだ‼」

「誰がそんなもので釣られるか‼ それはミッドで期間限定で販売された飴じゃないか‼ 我にも寄こせ‼」

「王、先程の発言は何だったのですか?」

「あっ………忘れろ」

「承知しました」


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第十九話

連続投稿‼


ガソリンスタンドで麗を抱え込んだ、体格の良い男はナイフを麗の首元へ突き付けながら孝と対峙していた。

 

「兄ちゃん。その手に持っている物騒なもん、床に投げ捨てな」

 

孝は男の要求通りに金属バットを遠くへ投げつけた。床に投げつけられたバットは、金属特有の音を立てて床を転がる。

だが、その行為は男にとっても孝達にとっても自殺行為であった。音を聞きつけた奴らが建物内部からゆっくりとその姿を現したからである。

男はその事に気付いてはいなかったが、孝と麗は奴らがこの音に気付いて出て来ることが判っていた。

 

「兄ちゃん、さっきレジを壊したんだろ? 金を持って来ているだろ。バイクに燃料入れな」

 

「判った」

 

男の言う通りに、バイクに燃料を入れ始めた。その時、孝の目にヴィータがいつでも攻撃が出来る準備をしているのが判ったが、視線をすぐにバイクへ戻した。

男に気付かれた時に、麗を助ける隙が無くなってしまうからである。

孝は男に静かに語りかけた。

 

「なぁ、俺達を見逃してくれ。俺達は街にいる家族が無事か、確認する為なんだ」

 

「黙れ‼ 俺の話を聞いていなかったのか‼ 街にいる家族だぁ? ひゃぁっはっはっは‼ お前達の家族もバケモンになってるだろうよ‼」

 

だが、孝の説得も虚しく男は聞き入れられなかった。

 

「終わった。なぁ、本当に見逃してくれよ」

 

孝はそう言いながら男へ近づいて行く。だが、その行為が男を逆上させた。

 

「うっせぇ‼ お前もぶち殺してやろうか‼」

 

男がそう言うとナイフを孝へ振りかぶった。

 

「ヴィータ‼」

 

「任せろ‼」

 

孝の声でヴィータはアイゼンで魔法で精製した鉄球を弾く。

 

「ギャァァァァァァァァ⁉ いでぇ‼ いでぇよ‼」

 

アイゼンで弾かれた鉄球は、男の右肩を貫いた。その手はナイフを持っている手であった為、貫かれた瞬間にナイフを落とした。

 

「よくも………よくもっ‼」

 

麗は先程、胸を掴まれた怒りで男を殺そうとした。

 

「止めておけ、もうその男は助からない」

 

ヴィータが麗の行動を止めた。

 

「どう言う事だ?」

 

「あれを見ろ」

 

「「ゲッ‼」」

 

孝の言葉にヴィータは近くを指さした。そこには夥しい数の奴らが、孝達へ向かって来ているのが視界に入る。

 

「私達だけで逃げるぞ。バットは………回収が不可能だな」

 

「そうだな」

 

「ええ、行きましょう」

 

ヴィータの言葉通り、バットがあった場所には既に奴らがおり、回収する必要性も無かった。

 

「お、おい‼ 行っちまうのかよ‼ 俺を助けてくれ‼」

 

「貴様は馬鹿か? 先程までの威勢はどこに行ったんだ?」

 

「さっきのは、勢いでやっちまった事なんだ‼ 許してくれ‼」

 

「………良いだろう助けてやる」

 

「えっ⁉ なんでなの、ヴィータちゃん‼」

 

「黙ってろ‼」

 

「ッ‼」

 

男の助ける声にヴィータは反応し、麗が異議を唱えたがヴィータの声で黙ってしまう。

 

「一瞬で楽にしてやる」

 

「え?」

 

ヴィータの言葉に男は、自分が何を言われたのか判らなかった。それもその筈である。男は驚きの言葉を上げたすぐに、ヴィータの相棒であるグラーフ・アイゼンで体を叩きつけられたからである。

 

「行くぞ」

 

ヴィータはそう言うと、空へと上がって行くのであった。

 

 

それから暫らく孝達はバイクを走らせていた。

その時、銃声が何発か聞こえる様になってきた。

 

「孝‼ もしかしたら生存者がいるのかも‼」

 

「そうかも知れないな………だけど、さっきの男の様になっている可能性も高いぞ」

 

「行って見ましょう‼」

 

「待て」

 

麗の言葉に待ったを掛けたヴィータ。

 

「なんでヴィータちゃん? もしかしたら協力してくれるかも知れないんだよ?」

 

「だからと言って、見に行く必要も無い」

 

「どう言う事?」

 

ヴィータの言葉に麗と孝には意味が判らなかった。

 

「私が見る。そこで待っていろ」

 

ヴィータはそう言うとサーチャーを飛ばした。

 

「それも魔法なの?」

 

「ああ、サーチャーと言って、危険が無いか確認する為でもあるし、危険人物を見張る役割も持っている…………行かない事をお勧めする」

 

「どうして?」

 

「サーチャーで確認したが、生存者はいる「だったら‼」だが、生存者(やつら)は奴らに限らず、生きている人間も殺している。必然的に、私達も巻き込まれる危険性が高い。行かない方が良いだろう」

 

ヴィータの言葉で孝と麗は言葉を呑む。

 

「だったら迂回しよう。その方が良いだろ?」

 

「なら、危険が少ないルートを探る」

 

孝の言葉にヴィータは頷くと、サーチャーを再度飛ばし危険性が少ないルートを探し出した。

 

「あった。私についてこい」

 

ヴィータはそう言うと認識障壁を解除して孝達の前を飛び始めた。

 

「行くぞ‼ 掴まれ」

 

孝はヴィータについて行く。

 

 

 

 

「止まれ」

 

ヴィータはビルの角で降り立つと孝達を止めた。

 

「どうしたの?」

 

「あれを見てみろ」

 

ヴィータが指さした方には生存者が奴らを散弾銃や日本刀で殺していた。

 

「ムチャクチャね………でもさっきよりマシと言う事?」

 

「ああ、さっきのはお前達にとってトラウマになる可能性があったし、巻き込まれる危険性もあった。だが、どこを見渡しても同じ風景しか無かった。ここがまだ安全と言えるルートだったから、こっちへ進んだ」

 

麗の言葉にヴィータは頷き説明した。

 

「まるで戦争だな……いや、戦争よりもっと酷いな」

 

「だが、ここで7止まっていられる猶予は無いぞ。行くしかない。お前達に危険が及ぶ時だけ助ける。行くぞ」

 

ヴィータはそう言うと、認識障壁を張り直し上空へと飛び立つ。

孝は隙を見計らい、角から飛び出した。だが、バイクの音が響いた所為か、生存者の一人に見つかってしまう。

 

「オイ‼ あそこにいるぞ‼」

 

「麗、しっかり掴まれ‼」

 

「えっ?」

 

孝の言葉に驚く麗であったが、一人の男が散弾銃を自分達に向けているのが目に入った為、孝に強く掴まった。

孝はバイクのアクセルを全開にし、逃げる。後に残ったのは、外れた弾が車に中りサイドを吹き飛ばすだけであった。

 

 

 

上空で見ていたヴィータは孝達が無事に逃げられたのを確認した。

 

「無事に乗り越えられたな…………これから先も同じことが起きるのか………憂鬱だな」

 

ヴィータは小さく呟くと孝達に追いかける為、飛行し始める。

だが、ヴィータの目に入ったのは、橋が渋滞で混雑している風景であった。

 

「やっぱり橋の方ではこうなっていたか………孝達と合流するか」

 

ヴィータは曲がり角で止まった孝達と合流する。

 

「孝、橋はまっすぐでしょ‼ どうして止まるの?」

 

「あれを見てみろ」

 

孝の言葉で麗は橋を見る。そこには渋滞で動けなくなった車や徒歩で逃げている生存者の姿が確認できた。中には警官の指示に従わなかった不良共が、法的の処罰で橋から落とされていた。

 

「このままじゃ、時間までに警察署まで向かうのは厳しいな」

 

ヴィータが降り立つと同時に言う。

 

「城の脇を抜けて御別橋の方へ向かうぞ」

 

孝はそう言うと行動を開始するのであった。




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「アメ美味しいね‼ 王様‼」

「うむ。中々の美味じゃな」

「そうですね……ナノハにも食べさせてあげたいです」

「オリジナルにもね」

「小鴉には……やらん事でもない」

素直になりなよ、王様

「お主は黙っておれ‼ ジャガーノート‼」

ギャァァァァァァァァ‼


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第二十話

孝達は御別橋に向かって走っていた。

 

「ン? あれ‼ 孝、あれ見て‼」

 

麗が指さした先には俊輔達がこちらへ向かってきているのが視界に入る。

 

一方の鞠川達も孝達を目視していた。

麗は鞠川の許へ駆け寄り抱き着いた。

 

「先生‼」

 

「宮本さん、無事だったのね‼ 小室君も」

 

「はい」

 

鞠川は孝と麗が無事だった事に安堵する。

 

「ヴィータ、どうだった?」

 

「やっぱりどこもかしこも同じ状況だった」

 

「やはりか………これからどうする? 警察署で合流する前に合流したけど、そろそろ日が暮れる。どこかで休める場所があればいいのだが……」

 

俊輔はこれから先の事どうするか全員に尋ねた。

 

「あのう、使える部屋があるんだけど………」

 

『えっ?』

 

鞠川の言葉に全員が振り向く。

 

「歩いてすぐの所にあるの」

 

「カレシの部屋?」

 

「ち、違うわ‼ 女の子の友達の部屋よ‼」

 

沙耶の発言に鞠川は強く否定した。

 

「マンションですか? 見晴らしはどうなのです?」

 

冴子は今から行く先の立地条件を確認する。

 

「あ、うん。川沿いに建っていてメゾネットだし、近くにコンビニもあるのよ。それに戦車みたいな大きな車もあるの‼ それにね、友達の家の近くに大きな家があって、庭に戦車が二台置いてあったのがみえたの」

 

鞠川は大きさを示すためか、手を大きく振る。

 

「移動手段はこれから必要になって来るな………先に行ってくれないか、小室君、山本君、山城君達」

 

「判った。シグナム達は毒島先輩たちを護衛しろ。何かあれば念話する」

 

「承知しました、主」

 

俊輔の言葉にシグナムは頷いた。

 

「先生は孝の後ろに乗って下さい」

 

「あ、うん」

 

空の言葉で孝のバイクの後ろに鞠川が乗り込む。

 

「では、先に行ってきます」

 

俊輔の言葉で四人は先に、鞠川の友達の家へと向かうのでった。

 

 

 

 

残されたシグナム達はデバイスを展開せず、周囲を警戒する。

 

「にしても、あんた達ってなんで山本についてるの? 誰かに指示でもされたの? それとも何か弱みでもにg「黙れよ」ッ⁉」

 

沙耶の言葉にヴィータは怒りを込めた表情で睨む。

 

「ヴィータちゃん、抑えて抑えて。私達は俊輔君についている理由よね………そうね~どう説明したらいいのかしら?」

 

シャマルがヴィータを抑えたので、ヴィータもここで無駄な問題を起こさずに済む。

 

「湖の騎士よ。ここは本当の事を話した方が良いのではないのか?」

 

「だが、それを信じられると思うか? アインス」

 

「絶対に信じないと思うぞ?」

 

「ううぅ」

 

愛すんあ本当の事を説明するか進言したが、シグナムとヴィータに反論されアインスは何も言えなくなる。

 

「だが、いずれバレる事だ。正直に話した方が良いだろう」

 

「だが」

 

「詳しい話は主にして貰えばいいだろ?」

 

「そうだが…………はぁ~一度主と話をする」

 

ザフィーラの言葉にシグナムは俊輔に確認を取る。

 

「(主、聞こえますか?)」

 

『(何か問題でもあったのか?)』

 

シグナムの念話に俊輔は尋ねた。

 

「(問題と言えば問題でしょう)」

 

『(話してくれ)』

 

俊輔に先程の会話を説明した。

 

「(と、いう事なのですがどうするべきでしょうか?)」

 

『(それは難しい話だが………いつまでも隠している事は出来ないだろう。ここは仕方が無い。説明してやれ。だが、詳しい話は落ち着いてからだと言ってくれ)』

 

「(判りました)」

 

『(空にもこっちで説明しておく)』

 

俊輔はそう言うと念話を切った。

 

「シグナム、どうであった?」

 

「説明するのは説明するが、詳しくは主から話してくれると言う事であった。まぁ、落ち着いてから詳しく話すと言われたがな」

 

「だろうな」

 

シグナムの言葉にザフィーラは判っていたかのように頷いた。

 

「主の事についてだが、すまない。大雑把な説明だけだ」

 

シグナムはそう言うと俊輔と空の関係を話し始めた。

 

「と、言う事だ」

 

『…………なに、そのチートキャラ設定』

 

全員が俊輔と空の持つ力に驚いていたのであった。

 

 

 

 

暫らくして俊輔達四人は鞠川の友人の家の前に到着する。

 

「大きい車だな………鞠川先生、大きな家ってあれですか?」

 

孝が指さした先には、一軒家だが庭が広い家を指していた。

 

「そうよ、あの家なの。あれ? 山本君に山城君達? どうかしたの?」

 

鞠川は俊輔と空が顔を白くしているのが判った。

 

「先生、すみません。あの家、俺達なんです」

 

『えっ?』

 

俊輔の言葉に孝と鞠川は驚きを隠せなかったのであった。

 

「ちょっと行って来るので、何かあれば携帯に連絡してください」

 

俊輔はそう言うと簡単なメモに電話番号を記入し鞠川に渡すと、自分達の家へ向かうのであった。

それと入れ替わる形で、シグナム達と合流した。

 

「あれ? 俊輔君と空君は?」

 

「ああ………あの家に帰って行った」

 

「帰った? え?」

 

孝の言葉で麗達が見た先には、大きな家であった。

 

「あの家が俊輔達の家だって」

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼』

 

孝の説明でシグナム達以外の人間が驚くのであった。

 

 

 

 

一方、俊輔と空は自分達の家の前に来ていた。

 

「ロックは生きているな………侵入者が入った痕跡はなし。良し、行くぞ」

 

「判りました」

 

俊輔と空は自分達の家に入って行く。

 

「先に何から始める?」

 

「先に足を作る事を優先しましょう。あの車だと僕達は乗れないですからね」

 

「そうだな…………戦車を出すか?」

 

俊輔が目線を向けた先には第二次世界大戦で使われていた戦車が二両、止まっていた。

 

「でも、あの戦車だと速力が遅いんじゃ?」

 

「安心しろ、エンジンを改造しているから馬力は普通の車並だ」

 

「あっ(察し)」

 

俊輔が言っている戦車と言うのは、ドイツ軍が配備していた重戦車TigerⅠとアメリカ陸軍が使用していたM26パーシング中戦車であった。

 

「操縦に関しては判るか?」

 

「一応………ちなみに俊輔君はどっちを乗るつもりなんです?」

 

「ティーガー」

 

「あ、はい」

 

空の言葉に即答する俊輔に空は何も言えなくなった。

 

「まぁ、安心しろ。一人で操縦できる設計になっているから」

 

「内部は広いんですね?」

 

「広すぎるぐらいだ。さ、荷物をまとめるぞ」

 

「はい」

 

俊輔達は家の中に入って準備を整えるのであった。



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第二十一話

気付けば二十話突破したよ。


孝達は無事にメゾナンス内部に入り一息つく事が出来た。

麗や沙耶達、女子メンバーは入浴へと向かって行き、孝とコータの二人は、鞠川の友人の部屋へと入って行く。

 

「楽しそ~だな~」

 

「セオリーを守って覗きにでも行く?」

 

「いやいや、覗きに行かないから」

 

孝とコータは二つのロッカーの前で、どう壊そうか悩んでいた。だが、そのBGMには入浴している女子メンバーのキャッキャウフフの声を聞きながらではあるが………

 

「これで、何も入っていなかったら頭が痛いな」

 

「そうだね、でも僕には確信があるよ」

 

「どこからそんな自信が湧くんだか」

 

一つのロッカーを壊した孝達。壊したロッカーの中には銃弾がごっそりと入っていた。必然的にもう一つのロッカーの中には銃が入っていると言う事になる。だが、本当にあるかどうかは、壊してみないと判らなかった。

 

「じゃぁ、行くぞ‼」

 

孝とコータ、永はロッカーの淵に釘抜きを差し込み、梃の原理でロッカーの扉を壊す事にした。

 

「1,2の3‼」

 

三人が力を合わせてロッカーの扉を壊す事に成功するが、壊した勢いで三人は床に転がる。

 

「イテテテ……コータ‼」

 

「や、やっぱりあった‼」

 

孝とコータが目にしたのは三丁の銃であった。

コータは徐に一つの銃を手に取る。

 

「スプリング・フィールドM1A1 スーパー・マッチか………セミオートだけど、M14シリーズだとフルオートは弾の無駄遣いだからね」

 

コータはスーパー・マッチを構える。

 

「マガジンには20発のも入る‼ 日本だと違法だよ、違法‼ これは………」

 

スーパー・マッチを床に丁寧に置くと、もう一つの銃を手に取る。

 

「ナイツSR-25狙撃銃………いや違うな。これは。日本じゃ手に入らない品物だから、AR-10を徹底的に改造した物か‼」

 

コータは孝をそっちのけで、銃の構造に弩嵌まりしていた。

孝は仕方が無く、ロッカーに仕舞っているもう一つの銃を手に取った。それを見逃すコータでは無く、直ぐに食いついた。

 

「それはイサカM‐37 ライオット・ショットガン⁉」

 

コータの絶叫は絶頂へと行く。

孝は弾は入っていないが、それをコータに向けた・

 

「うおわぁぁぁ⁉ たとえ弾が入っていないからって、銃口を人に向けちゃダメだ‼ 向けて良いのは……」

 

「奴らだけ………でも………」

 

孝の言葉にコータは黙る。

孝と麗が合流する前に見た光景を思い出していたからである。

 

「あいつらは、理性を失って生きている人も殺していた。でも、僕達は理性を失っちゃいけないんだ」

 

「そう……だね………」

 

孝とコータの中に決意が込められるのであった。

 

 

 

 

一方、俊輔と空の二人は、装備品を戦車の中に収納していく。

 

「俊輔君、こんなものかな?」

 

「ああ、忘れ物は無いか?」

 

「確認して来ます」

 

俊輔の言葉に空は再度、家の中に入って行く。

 

「俺はもう原作の記憶が薄れて来ているな………」

 

俊輔は転生してからと言うもの、原作の記憶が曖昧になって来ている事に気付く。

 

「まぁ、あいつらだけでも守れる力があるんだ。活用する他無いだろう」

 

「そうだな」

 

「うぎょわ⁉」

 

俊輔の隣に白叡が現れる。

 

「いきなり出て来るな‼ 驚くだろうが‼」

 

「すまない。だが、作者が俺の存在を忘れかけていたが思い出してくれて、ここで登場したんだ」

 

「メメタァ」

 

白叡の言葉に俊輔は頭が痛くなる思いであった。

 

「それで、この近辺の状況はどうなっている?」

 

「悲惨なもんだ。生存者は家の中に籠城をしている。入れる数も限られているから、見捨てられていく生存者も多い」

 

白叡の報告に俊輔は「だろうな」と呟く。

現に白叡の報告通り、この近辺では中の良かった者達だけで家に籠城しているケースが多かった。

 

「助けてやりたいが………」

 

「数に限りがある………だろ?」

 

「ああ、どうしようもない事だな」

 

俊輔と白叡は自分達の非力さに悔やむ思いであった。

 

「だが、第一に考えるのは」

 

「あいつらの事だな」

 

二人が見た先は、孝達が休憩をしている鞠川の友人宅の声であった。

 

「騒ぎすぎだろ、アレ」

 

「まぁ、ここよりもっとうるさい所があるがな」

 

「ん? ああ」

 

白叡が見た先には、橋の上で警察官が出している声であった。

 

〈たとえ、家族であっても襲い掛かって来る者達から離れなさい‼ 繰り返す、離れなさい‼ 襲い掛かって来る者達は、全員、感染者である‼〉

 

「まぁ、大丈夫だろ。あそこにはあそこのやり方があるんだからな」

 

「見捨てるのか?」

 

「……………」

 

白叡の言葉に俊輔は黙り込む。

 

「俺達は自分達を護るだけで精いっぱいだ。他の人間を助ける余裕は無い」

 

「だが、そうでもなさそうだぞ?」

 

「は?」

 

「あれを見てみろ」

 

「あいつら‼」

 

白叡が指さした先にはベランダに銃を抱えているコータが居た。その隣で孝が双眼鏡を使い、何かコータに伝えていた。

しかし、状況は刻一刻と緊迫していった。家の周りには先程までいなかった奴らがウヨウヨし始めていたからである。

 

「なんでだ‼ なんでこんなにも居るんだよ‼ 橋の方に行ったんじゃなかったのかよ‼」

 

塀の向こう側には奴らが入ろうと姥貝ていた。

 

「チッ、どうしようもねぇな‼ シグナム‼」

 

「ハッ、我が主」

 

俊輔の声にシグナムが答え、直ぐに駆け寄った。

 

「ヴォルケン達を率いて地下の車を出させろ。運転は出来るだろ?」

 

「はい、それと使用する車はどうしますか?」

 

「今、地下に置いている車は?」

 

「スカイライン、ヴェルファイア、ハイエース、73式中型トラックです」

 

「全部使えるのか?」

 

「使えます。整備不良は無いですね」

 

「どうしてだ?」

 

「アポロニアス様と言えば判りますか?」

 

「あっ(察し)」

 

すべての車両に、俊輔と空を転生させた神が関わっていたと言う事はそう言う事である。

 

「五台か………運転が出来るのが空と俺、リインフォース、シャマル、シグナム、ザフィーラ、白の七名。行けるな」

 

「ですが………奴らの存在の事だろう?」

 

「はい………」

 

ヴィータを除き全員が車両の運転が出来るが、それはこんな状況では無かったらの話である。俊輔と空の二人が搭乗する戦車、ティーガー、パーシングに至っては、最悪、奴らを轢きながら進む事は出来るが、スカイラインやヴェルファイア、ハイエースに至っては普通の車両である。

奴らとて、元は人間である。ぶつかればどうなるか想像が出来る。

73式中型トラックは、前面にガードを装備させれば進めない事も無かった。

 

「仕方が無い、スカイラインとヴェルファイア、ハイエースは諦めt「ちょっと待って下さい。俊輔君」なんだ、空?」

 

「もう一台、残っていますよ?」

 

「なんだって?」

 

空の言葉に全員が驚く。

 

「付いて来て下さい」

 

空の先導の元、地下へと進んでいく。

 

 

 

 

「ここにもう一台隠されています。僕もさっき知ったばかりなので、いきなりになってしまいましたが……」

 

「まぁ、良い。それで、さっきの言葉には何かニュアンスが含まれていたが?」

 

「はい、見て頂けたら判ります」

 

空はそう言うと内部へ進んでいく。

 

「これは………」

 

全員が見た物とは…………




次回は脱出の所から始めたいと思います。


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第二十二話

書ける書ける‼ 手が進むぞ‼


俊輔達が地下へ行っている時、孝達は一組の親子を見付けた。

 

 

「パパ‼ ママは‼」

 

「ママには後で会えるから………今は避難しておこう」

 

「う、うん」

 

少女の言葉に父親は笑顔で切り替えした。

二人は一軒の家の玄関で立ち止まる。

 

「助けて下さい‼ 子供連れで逃げられないんです‼ 少しの間で良いので入れて下さい‼」

 

『来るな‼ 他所へ行ってくれ。ここはもう一杯なんだ‼』

 

「クッ………」

 

「パパ……」

 

父親の言葉虚しく、他所へ行くように言われてしまう。

 

「判りました、行くぞありす」

 

「どこに?」

 

「助けてくれる家だよ」

 

「そう言うと父親はありすと呼んだ娘の手を引きもう一軒の家へと向かった。

 

「開けて下さい‼ 子供連れなんです‼」

 

『他所へ行ってくれ』

 

もう一軒の家も先ほどの家同様に断われてしまう。だが、父親は逃げる際に既に奴らの手が近づいていた事に気付いていた。

 

「頼む‼ 自分の事はどうでも良いから、娘だけでも助けてくれ‼」

 

『ムリだ‼ ここはもう一杯なんだ‼』

 

「なら、明けてくれないと言うのならドアを壊す‼」

 

『ま、待ってくれ‼ 今開けるから、扉を壊さないでくれ‼』

 

中の住人からの言葉で、ドアの鍵が開けられようとした。

 

「ありが………たい」

 

ドアが開けられると同時に、中から簡易的に作られた槍で父親の胸を貫いた。

 

「許してくれ、許してくれ‼」

 

中の住人たちは父親を殺したことを謝っていた。なかには、手を合わせて念仏を唱える者までいた。

そして、無情にも娘を残して扉は閉められた。

 

「パパ? パパ‼」

 

「あ、ありす………どこかに隠れなさい」

 

「でも‼」

 

「パパは大丈夫だから……さぁ」

 

ありすは父親の手を握っていたが、力なく父親の手は落ちてしまう。

 

「いやだぁ‼ パパと一緒にいる‼」

 

ありすは事切れた父親に抱き着き大声で泣き叫んでしまう。だが、奴らは感情と言うものを失い悲しむ事は無く、ただ目の前にある人間を食べたいと言う欲求でしか行動していなかった。

だから、ありすの声に奴らは近づいて行く。

 

 

 

 

 

 

「It's Rock'n'roll‼」

 

コータは試射した事の無い狙撃銃を使い、ありすに近づく奴らの頭を撃ち抜いた。

 

「試射もしていない他人の銃で、頭を一発で撃ち抜けるなんて僕って天才だよね‼」

 

そう言いながらもコータは狙撃銃の引き金を引いて行き、奴らを一人また一人と倒していく。

 

「平野、撃たないんじゃなかったのか?」

 

「小さな女の子だよ‼ 井郷君は助ける気はないの?」

 

「いや、君の言う通りだな。孝」

 

「おう‼」

 

「僕はここから援護するから‼ 気を付けてね?」

 

コータの言葉に二人は手を上げた。

 

 

下へ降りて行くと、入り口に麗と冴子が立っていた。

 

「どうかしたの?」

 

「女の子を助けに行く」

 

「えっ?」

 

孝の言葉に麗は驚くが、一方の冴子には驚きの表情は無かった。

 

「やはり君たちも男の子と言うものか………良いだろう‼ ここは何があっても護り切って見せる」

 

「お願いします。永」

 

「おう‼」

 

孝と永はバイクに跨ろうとした。そこに待ったをを掛けた麗。手には銃が一丁握られていた。

 

「これ位は持って行って。永は武器はあるの?」

 

「ああ、俊輔君から渡されたベレッタがな」

 

そう言うと永は腰に差しているベレッタを見せた。

 

「行くぞ」

 

静かに呟くと孝はバイクのアクセルを全開にしたのであった。

 

 

 

 

一方、俊輔達はキャリアーを見て驚いていた。

 

「三台積めるタイプのものだけど、若干長いな」

 

「でもこれで三台積み込む事は出来るでしょ?」

 

「そうだな、急いで行動するぞ」

 

俊輔の声によりキャリアーは地下から地上へ出し、ハイエース、ヴェルファイアは上段へ、スカイラインは下段の方へ積み込まれた。

 

「さて、後はどうするかだが………」

 

俊輔が悩んでいるのは、キャリアー自体、普通の車両同様であったからである。

 

「空、鉄板を前方に付けられないか?」

 

「出来ますけど、時間が掛かります」

 

「そうだな……ん?」

 

俊輔の耳に銃声が聞こえ始めた。

 

「聞こえたな?」

 

俊輔の言葉に全員が頷いた。

 

「状況を確認する‼ シグナムとヴィータ、アインスは上がれ、シャマルとザフィーラはトラックに乗り込め。俺達は戦車を出す」

 

『了解』

 

俊輔の指示で全員が動き始めた。

俊輔と空は戦車に乗り込み、ザフィーラはキャリアー、シャマルは73式中型トラックに乗り込んだ。

因みに余談だが、全部の車両には無線機が搭載されており、どこにいても通信が出来る様になっていた。

 

「こちらティーガー、出発するぞ」

 

『こちらパーシング。いつでもどうぞ』

 

『ザフィーラだ。こちらも行ける』

 

『73式も行けるわ』

 

俊輔の通信に全員が準備が出来た事を伝える。

 

「俺が先頭に出る。空は殿を頼む」

 

『了解』

 

「では、パンツァーフォー‼」

 

俊輔はティーガーを発進させた。

 

「いやっほう‼ 最高だぜ‼」

 

俊輔はパンツァーハイになっていたが、誰も咎めようとはしなかった。寧ろ、止められなかった。なぜならば……

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ‼』

 

空も同様であったからである。

 

 

 

 

 

孝と永はありすが隠れている家の前に来ていた。

 

「いっけぇぇ‼」

 

孝はバイクを横滑りさせてスピードを緩め、丁度入り口でアクセルを全開にした。

だが、奴らを踏んでいた為、油で横転してしまう。

 

「大丈夫か? 永」

 

「無茶をするよな、お前」

 

永は孝よりもいち早く立ち上がり入り口を閉める。

 

「マンガの様には行かないわな」

 

「当たり前だ。あそこだ」

 

「行くぞ‼」

 

「おう‼」

 

孝と永はそれぞれ持っている武器を片手に戦う。孝は釘抜きを使い、奴らの頭を強打する。永は空手の腕前を使い的確に急所を捕らえて行く。

 

「よく無事だったな‼ もう大丈夫だ」

 

「孝、数が多すぎる‼ これじゃ持たないぞ‼」

 

永が言う先には柵を壊そうと奴らが集結していた。

 

「音を立てすぎたな………どうする?」

 

「ここは賭けに出るか?」

 

「?……ああ」

 

永が指差したのは塀であった。

 

「だが、やる事があるだろ?」

 

「そうだな………」

 

二人が目線を向けた先にはありすを護っていた父親の亡骸であった。

 

「お兄ちゃん達………パパは死んじゃったの?」

 

孝と永は何も言えなくなったが、孝が機転を利かして、掛けられてあったYシャツを取ると父親の顔に被せた。

 

「君を守ろうとして死んだ。だが、立派なお父さんだな」

 

「うぅ………パパ………パパァァァァァ‼」

 

ありすは父親が死んだことにショックを抑えられず、大声を出して泣いてしまう。

 

「すまない。泣いている時間は無い。ここを逃げ出さなければ」

 

「そうだな、立てるか?」

 

「うん」

 

目元を腫らしたありすであったが、孝の声に素直に頷き立ち上がった。

 

「さて、塀を登ろうにも手ごろな足場が無いしな………ヴィータみたいに飛べないし………」

 

孝と永はどうするべきか悩んでした。だが、そこに救世主が現れた。

 

「困っている様子だな?」

 

「えっ? あっアインスさん?」

 

上から声がしたので見上げるとそこにはアインスとシグナム、ヴィータが停空していた。

 

「ここからの脱出を考えていたのだろ?」

 

「ええ、まぁ………塀を登ろうにもバイクはあんなんだし………」

 

孝が言った先にあるバイクは既に使い物にならない状態であった。

 

「仕方が無い。鉄槌、女の子を頼む。シグナムと私は二人を抱えて飛ぶぞ」

 

「まぁ、仕方がねぇわな」

 

「判った」

 

ヴィータはありすを抱えると空へ飛びあがった。

シグナムとアインスは孝と永を背中から抱き着き抱え込んだ。二人はシグナムとアインスの胸部の感触にドキドキしているのであった。

後に孝は冴子に、永は麗に酷酷く怒られるのであった。



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第二十三話

孝達が離れた家では、沙耶を筆頭に荷物を纏めていた。

 

「この荷物をどうやって車に載せる?」

 

「RPGみたく静かに積み込むしか無いわね。ありがたい事に、向こうに行ってくれているし」

 

沙耶が言うのは奴らが音に引き付け寄せられて孝達の方へ向かって行った事である。

 

しばらくすると、集められた荷物はハンヴィーのトランク部に詰め込められた。

 

「平野は?」

 

沙耶がそう言うと、丁度家から出て来るコータと出くわした。だが、その格好に誰もが言葉を失った。

頭に鉢巻をして両サイドに懐中電灯を二本差し、両手に狙撃銃とショットガンが握られ、体にはショットガンの弾が巻き付けられていた。

 

「あんた、楽しそうね」

 

「孝達はラクチンそうだけどね」

 

「「………」」

 

「「「ひっ⁉」」」

 

シグナム達に抱えられている孝と永を見て、麗と冴子に表情は無表情へと変貌する。

 

「帰ったら説明してもらわなくちゃね」

 

「互いに意見が一致したな」

 

「ええ、帰ってきたら」

 

「「お仕置きだ」」

 

麗と冴子の想いは一致した。

 

 

その瞬間、俊輔達がいる家の塀が壊れ、そこから戦車とキャリアー、トラック、殿を務めている戦車の計四台が現れた。

 

「な、なに⁉」

 

「ティーガーにパーシング⁉ それに73式中型トラックまでもある‼」

 

塀から飛び出してきた車両に麗達は驚くが、コータに至っては興奮を抑えられずにいた。

 

「待たせたな。あれ? 孝達は?」

 

ティーガーのキューポラから身を出した俊輔の質問に全員が指をさした。

 

「なるほどね………シグナム達はこっちで回収する。お前たちは俺達の車両の間に入ってくれ」

 

そう言うと一方的であったがティーガーは発進する。

鞠川が運転するハンヴィーも空の搭乗するパーシングの前方に入るのであった。

 

 

 

シグナム達に抱えられた孝達は、ハンヴィーの上に立つ冴子を発見するが、前方と後方に戦車が護衛しているのが見えた。

 

「あれは?」

 

「前に走っている戦車は我が主が乗っている。また、後方の戦車には空が搭乗している」

 

「空を飛んでる‼ 空を飛んでるよ‼」

 

「オイ‼ 暴れるな‼」

 

ヴィータの背中に乗っているありすは空を飛んでいる事に大喜びで、先程までの恐怖は無くなっていた。

 

「まぁ、結果的には良かったのかな?」

 

「そうだな………でも」

 

「でも?」

 

永の言葉に孝は顔を傾げる。

 

「麗が怖い」

 

「………ドンマイ」

 

孝の慰めの言葉に永は、体全体から鬱オーラを展開した。

 

「絶対、ばれたら殺される………確実に息の根を止められるっ‼」

 

「まぁ、事情を話せば大丈夫だろ………多分」

 

「多分って言ったよな‼ 今、言ったよな‼」

 

「まぁ、気にするな。俺は気にしない」

 

「気にしろよ‼」

 

「いつまで漫才をしているつもりだ? そろそろ合流するぞ」

 

「「あっはい」」

 

シグナムの声で二人の漫才は終了するのであった。

 

 

 

翌日、俊輔達は川を下っていた。カーキャリアはどう言う構造をしているのか、ハンヴィーの先頭を下っており、パーシング、ティーガーも同様に下っていた。73式に至っては普通に下っており、川の流れなど屁の河童状態であった。

 

「そろそろ川から出られるな………にしてもコータは子供に好かれ易いのか?」

 

ティーガーの操縦をしながら、ハンヴィーの上でコータとありすが仲良く歌っている姿に少し頬を緩ませていた。

 

「ま、子供の笑顔は誰もが笑顔になれるからな………」

 

俊輔は二人の姿を見ながらホッコリしていた。

 

『こちらパーシング。ティーガー、聞こえますか?』

 

「こちらティーガー。何かあったのか?」

 

通信機から空の声が響く。

 

『いえ、特に何も無いんですけど………ハンヴィーを見て』

 

「なるほどね」

 

空の言いたい事は俊輔と同じ事であった。

 

「まぁ、良いんじゃないの? 子供が一人増えた所で特に俺達に支障はないんだし」

 

『確かにそうですけど………これからの行動が………』

 

「そん時はそん時だ。そろそろ川から上がるぞ」

 

『了解』

 

俊輔の交信の後、五台は川から上がるのであった。

 

「コータ、孝、永‼ 上を確認してくれ‼」

 

俊輔はキューポラから顔を出して男三人に指示を飛ばす。

 

 

「クリア」

 

三人は川沿いの道に上がると銃を構える。だが、奴らの姿が全く見受けられなかった。

 

「奴らの姿は無いぞ‼」

 

「了解した‼ 先に戦車が行く。空、続け‼」

 

「了解です」

 

永の言葉で俊輔と空はティーガーとパーシングを川沿いの道に上げ、他の車両の邪魔にならない場所で停車した。

次にハンヴィーが上がるのだが、坂を急発進で駆け上ると、バウンドし90度直角に曲がる。

 

「なぁ、空」

 

「なんですか?」

 

「ハンヴィーってあんな動きで来たか?」

 

「さぁ?」

 

遠くで見ていた二人はハンヴィーの動きに驚きを隠せなかった。

キャリアーと73式は普通に上がった。

 

「行くぞ」

 

俊輔はそう言うとティーガーに乗り込み発進させようとした。だが、ここで思わぬ事が起きる。

 

「ねぇ、ありすも乗せて?」

 

「は?」

 

「僕も僕も‼」

 

「お前はダメだ」

 

アリスがティーガーに乗りたいと申し出し、それに便乗する形でコータも言うが、俊輔の一蹴りで地面にノの字を書いていた。

 

「冗談だ。乗れ」

 

俊輔はそう言うとありすを先にティーガーに乗せコータに至っては自力で登らせた。

 

「戦車の中ってこんな風になってるんだ~」

 

「あれ? ティーガーって五人じゃなかったっけ?」

 

「コイツは改造車でな。一人で運用できる様に改造しているんだ。装填も自動出しな。因みに、10式戦車と同じように行進間射撃が出来る」

 

「チートだね」

 

俊輔の説明にコータは呆れ顔であった。

 

「山本君、気付かない?」

 

「とっくに気付いている。奴らの事だろ?」

 

「うん」

 

コータは運転をしている俊輔に奴らが一人も遭遇していない事に疑問を投げた。

 

「序に言うと、空を見上げてみろ。気付かないか?」

 

「…………何も…」

 

「はぁ~」

 

俊輔が言いたい事は昨日まで飛んでいた飛行機やヘリが一機も飛んでいない事であった。

 

「まぁ、その時になりゃ気付くか……うん? 前方に奴らを発見‼ 数が多い‼」

 

『俊輔君、パーシングとティーガーを前に出しますか?』

 

「いや、ここは現状の布陣で行く。シグナム、ヴィータは空へ上がれ‼」

 

〈了解〉

 

俊輔はそれぞれに指示を出していく。

 

「さて、手始めにティーガーの砲弾を浴びせますか‼」

 

俊輔がそう言うと操縦席の近くにあるボタンを押す。

すると、砲弾が装填され、射撃準備が整った。

 

「二人とも‼ 耳を塞いで口を開けろ‼ 鼓膜が破れるぞ」

 

「「はい‼」」

 

俊輔はコータとありすに耳を塞がせ口を開けさせた。

それを確認すると、発射ボタンを押し込むのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けております‼


次回は高城家に助けられる前からスタートします‼


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第二十四話

連続投稿‼


ティーガーが放たれた砲弾は、奴らが固まっていた所に着弾する。着弾した所には、地面が抉られそこにいた奴らが肉片へと変貌していた。

 

「すっきりした~」

 

「目の前が真っ暗だよ‼」

 

「見ちゃダメ」

 

俊輔はすっきりとした表情になっており、コータは肉片へと変貌した奴らを見せない様にありすの目を覆った。

 

「山本君、やり過ぎじゃないかな? それに音に敏感な奴らがここに集まってくるよ」

 

「うん? まぁ確かにそうだがティーガー……いや、戦車に通れない道など存在しない。奴らは轢き殺してやる」

 

「いや、既に死んでるから」

 

「あっそっか‼」

 

俊輔とコータは高らかに笑う。その姿にありすはなぜ二人が笑っているのかが判らなかった。

 

「ん?」

 

俊輔は目の前にワイヤーで作られたトラップの存在に気付いた。

 

「やべっ‼」

 

すぐに急ブレーキを掛け、トラップの直前に停車した。だが、後方に付いて来ていた車両はティーガーが急ブレーキを掛けた影響で、ハンヴィーの上に乗っていた麗が、地面へ墜ちる。

 

「麗‼」

 

永がベレッタを持ち麗の元へ駆け寄る。だが、奴らが近づいていた。

 

「空‼ 機関砲で援護しろ‼」

 

「了解です‼」

 

俊輔はキューポラから顔を出して最後尾にいるパーシングに指示を出した。

空は俊輔の指示でパーシングに装備されている7.62㎜機関砲で近づいて来る奴らをミンチにする。しかし、麗と永に近すぎる奴らには発砲できなかった。

 

「俊輔君‼ 近すぎて撃てないです‼」

 

「チッ‼」

 

俊輔はティーガーから降りると神楽とフォーカをセットアップする。

 

「神楽、フォーカ‼ セットアップ‼」

 

『『Aii right My Master Stand by Ready? Set up‼』』

 

俊輔はバリアジャケットを着用して、奴らを殲滅する。

 

「ディバイン・バスター‼」

 

フォーカから放たれた法撃は永と麗の近くにいた奴らを消し炭にする。

 

「シグナム、ヴィータ‼ 殲滅しろ‼ アインス、ユニゾンするぞ‼」

 

「「「了解」」」

 

俊輔に指示されシグナムとヴィータは自身のデバイスを展開し奴らを殲滅していく。アインスは俊輔の傍に行き、ユニゾンする。

 

「「ユニゾン・イン‼」」

 

「序だ‼ 喰霊、解放‼ 白叡‼」

 

俊輔は印を結び白叡を出す。

 

「喰い散らかせ‼」

 

俊輔によって出された白叡は、近寄って来ていた奴らを喰い千切って逝く。

 

「空‼ 護衛についてくれ‼」

 

「了解です」

 

空はパーシングから降り、レイラとリアクト・エンゲージする。

 

「やられて奴から来な」

 

空の手にはディバイダー996が握られている。

 

「シルバーバレット‼」

 

空の近くを浮遊していた本《銀十字の書》から銀色の魔力弾が奴らの体を貫き身動きさせなくさせた。

その時、ワイヤートラップの向こうから女性の声が響く。

 

「全員、そこに伏せなさい‼」

 

女性の声に、全員が止まるがすぐに指示に従った。

 

「車は後で回収します。先にこちらに逃げ込んでください」

 

女性の指示でハンヴィーに乗っていた冴子や沙耶、鞠川、孝がワイヤーの向こうへ行き、永は麗を肩に抱いてワイヤーの向こうへと行く。

 

「君たちも早く‼」

 

「空‼ ヴォルケンリッターは行け‼ 俺も続く」

 

『了解‼』

 

俊輔を殿に全員がワイヤーの向こうへと避難する事が出来た。

 

「危ない所を助けて頂きありがとうございます」

 

冴子は顔が見えない女性に頭を下げた。

 

「当然の事をしたまでの事です。頭を上げて下さい」

 

そう言うと女性は顔に被っていたヘルメットを外した。

 

「娘とその友人を助けてもらったのですから」

 

「ママ‼」

 

女性は沙耶の母親であった。沙耶はすぐに母親の元へ駆け寄り抱きしめる。

 

 

 

 

その後、俊輔達は沙耶の実家に通されその日は、沙耶の実家で過ごす事になった。

翌日、麗は個室で永に体を抑え込まれ、鞠川が手にローションの様な薬を手にして、笑った表情で近づいて行く。

 

「ひ、ひさしぃ~」

 

「れ、麗。が、我慢だ。我慢」

 

「痛いのはやぁー‼」

 

「行くわよ~」

 

沙耶の実家の七不思議として、女性の悲鳴が聞こえたと言う珍事件が起きるのであった。

 

 

 

 

「判ったわよ‼ いつもママは正しいのよ‼」

 

沙耶は部屋の中で母親と口論の末に、部屋を出て行く。

 

「高城……」

 

それと丁度通りかかった孝と遭遇した。

 

「名前で呼んでって言ってるでしょ‼」

 

「あ…えと……ゴメン」

 

「男のクセにホイホイ、頭を下げないでよ‼」

 

沙耶は孝に八つ当たりしてしまう。

 

「ご、ゴメン………でも、男ならすぐに謝らない方が良いわよ」

 

沙耶はそう言うと階段を下って行くのであった。

 

 

 

一方、俊輔達二人は、家から持ってきた車両の点検を行っていた。

 

「空、キャリアーの方は対策されているのか?」

 

「いえ、されていません。他の車両は対策されているのに、どうしてコイツだけが………」

 

二人は家から持って来た車両は一部を除き、EMP対策が施されていた。しかし、運搬用としてのキャリアーだけは対策が成されていなかったのだ。

 

「さぁな。だが、何処かしらで分岐点があると言う事だろう………空、俺は原作の知識が薄くなってきている。この後に起きる展開が、要所要所でしか思い出せないんだ」

 

「………仕方が無いですよ俊輔君。君は神なんかじゃ無いんですから。知識が薄くなっていても、思いは忘れてないでしょ?」

 

「ああ」

 

「なら、大丈夫です」

 

空の励ましで俊輔は何とか持ち堪える事が出来た。

 

「そうだな。知識が無くったってやれるんだからな‼」

 

「そうです。さぁ、車両を点検しましょう」

 

「おう‼」

 

二人はキャリアーの事を忘れて、他の車両の点検を行うのであった。

 

 

 

「楽しそうね、アンタ」

 

「え? あっ高城さん‼」

 

倉庫の一部を借り、コータは銃の点検を行っていた。

 

「ま、今を楽しみなさい」

 

「はぁ~」

 

コータは沙耶が言っている意味を理解できなかった。

 

「でもどうしてですか? こんな要塞みたいな屋敷だったら、籠城とかしたら良いんじゃないんですか?」

 

「あんた、軍ヲタなら判っているでしょ? 水や電力はどうやって確保するの? もし生存者の一部がここを襲撃した時、一番最初に狙われるのは誰? 今の状況で安全な場所なんて物は存在しないのよ」

 

「…………そうですね」

 

コータは沙耶の言葉を頭の隅に入れながら銃の点検をしていた。

 

「良し。これで大丈夫だ」

 

「オイオイ、兄ちゃんそれ本物だろ? 子供が弄っていいもんじゃ無いぞ?」

 

「松戸さん、用件はそれだけ?」

 

「沙耶お嬢様‼ 乗って来られた車の整備が終わりました。それと………」

 

「何?」

 

松戸と呼ばれた男は、ハンヴィーの整備をしてくれた男だったが、何か言葉を濁していた。

 

「戦車二両、スポーツカー一台、バン二台の整備をしようとしたんですが………」

 

「あの二人に止められたの?」

 

「はい………」

 

松戸は申し訳無さそうに返事する。

 

「仕方が無いわよ。あの車両は特別だったらしいしね。何かの役に立つかも知れないから、様子観察ね」

 

「判りました」

 

そう言うと松戸は下がって行く。

 

「平野、アンタはその銃で何をしたいの?」

 

「小室達と話し合ってみます」

 

そう言うとコータは荷物をまとめて沙耶と一緒に孝達と合流するのであった。




話数を間違えていました。


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第二十五話

話数を間違えていました。すみません‼


俊輔と空は整備に夢中になり時間を忘れていた。

 

「お兄ちゃん達、コータちゃんや沙耶ちゃんが呼んでるよ?」

 

「うん? ありすちゃんか。判った。空、行くぞ」

 

「判りました」

 

ありすに呼ばれた二人は整備道具を置きありすについて行く。

 

「ねぇねぇ、あの戦車って強いの?」

 

「う~んどうだろうかな? 第二次世界大戦時中、ドイツ軍の主力戦車だったティーガー。俺が乗っている戦車ね? その戦車に対抗する形で作られたのが」

 

「僕が乗っているパーシングだよ」

 

俊輔と空の説明にありすは「へぇ~」と納得した様子だった。だが、二人は否、ありす以外の全員が知っていた。

まだありすは地獄の中を彷徨っている事に。

昨晩、ありすは何度も悲鳴を上げて目が冷めてしまっていた。それも当然の事である。助けてもらえると思っていた家の人間に、目の前で父を殺され、怖い目にも遭った。

ありすの心の傷は根深く築かれ、それが癒える日が果たしてくるのか、それは誰もが判らない事であった。

 

「あれ? 俺達が最後か?」

 

「遅いわよ、山本、山城」

 

「ごめんごめん。整備に夢中になってたからね」

 

沙耶が小言を零した。

 

「まぁ、良いわ。あたし達は一度、話し合いをしようと思って皆に集まってもらったの」

 

「なんでここなのよ………」

 

「アンタ、満足に動けないからだでしょ? だからここでするの。異議でもあるの?」

 

「………無いわよ」

 

沙耶に正論を言われた麗は何も言えなかった。だが、俊輔を恨みの籠った表情で睨みつける。

 

「それで、何を話し合うの?」

 

最初に口を開いたのは鞠川静香であった。しかし、その手にはバナナが握られており、皮が剝かれている状態であった。

 

「あたし達がこれからも仲間として動くかどうか……と言う話し合いよ」

 

沙耶の言葉で静香は口に入れていたバナナを落としかけた。

 

「当然だ。折角、ここまで一緒に生き抜いた者達だ。それを仲間として呼ばずに何と呼ぶ? つまり……」

 

「そう、今の段階で選択肢は二つしか無いわ」

 

「別れるか」

 

「呑み込まれるか」

 

沙耶の言葉を肯定として口を開く冴子。だが、孝達九人には二つの選択が迫られていた。

 

「でも、別れる必要なんてあるの?」

 

静香の言葉を受け沙耶はベランダへと進む。

 

「ここから周りを見渡せば判る筈よ。自ずとね。それが判らないと言うのであれば、私の名前を呼ぶ権利は無いわ‼」

 

沙耶は孝達に向き合うとそう断言する。

 

「街はどうなっているんだ?」

 

「はい、これ」

 

「サンキュー」

 

孝とコータもベランダへ出て、街を見渡した。その際にコータから渡された双眼鏡を使う。

 

「酷くなる一方だな………人類滅亡だな。だが、手際が良いな。お前の親父さん。右翼の偉い人だけあるわ」

 

「ええ、凄いわ。今だってそう………これだけの防衛を取れる。でも‼」

 

「高城……」

 

「名前で呼びなさいって言ったでしょ‼」

 

孝が言いたい事は沙耶自身も判り切っていた事である。

 

「判ってる。判ってるわ‼ 私の親は最高。 妙な事が起きたら途端に行動して、家族や部下、その家族までも守ろうとする。一番に考えるのは娘の私の事」

 

「それくらい…お前の事を大事にs「でもね‼ 生き残っている筈が無いと即座に諦めたのよ‼」ッ‼ 沙耶‼」

 

孝は堪忍袋の緒が切れたのか、沙耶の胸ぐらをつかみあげる。

その行動に全員が驚く。一番に手を出そうとしたのはコータであった。

 

「な、なによ………でもやっと名前w「お前だけじゃないんだ‼」ッ⁉」

 

沙耶の言葉を遮り孝が叫ぶ。

 

「みんな同じだ‼ いや、まだお前は両親が無事だと言う事が判っただけ良いじゃないか‼ 俺や麗、永、毒島先輩、誰もが同じことを思っているんだよ‼」

 

「判ったわ……判ったから手を離しなさい」

 

沙耶の眼の色が変わった事に気付いた孝は沙耶を降ろした。

 

「悪かった」

 

「ええ、本当に………でも良いわ。本題に入りましょう」

 

沙耶がそう言うと同時に、屋敷の近くからトラックの走行音やバイクの音などが聞こえ始める。

 

「あれは……」

 

「そう、この県の国粋右翼の首領。私のパパよ‼」

 

沙耶が指差したのは先頭車両から降りる一人の男性であった。

 

「聖者の割合を自分で決めて来た男よ」

 

男の表情は一点にしか見ていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

沙耶の父親が帰って来たと同時に壇上が組み上げられ、そこにフォークリフトが檻を持ちながら壇上横へ付けた。その檻の中には奴らとなってしまった、一人の男性が檻から逃げ出そうと姥貝ていた。

 

「この男の名は土井哲太郎。四半世紀の間、共に活動してきた我が同志であり、我が友でもあった。だが、この男は救助活動の最中、部下を助けようとして噛まれた。まさに自己犠牲‼ 人間として最もな高貴な行動である‼ しかし……」

 

国粋右翼首領の高城壮一郎は刀を手に取り、鞘かた刀身を抜く。

 

「彼はもはや人間としてでは無く、ただの物へとなり果ててしまった。だからこそ、私はこの男に最後の友情を示す‼」

 

壮一郎の言葉が終わると同時に、檻から奴らへとなり果てた男が飛び出し、壮一郎に飛び掛かろうとした。

だが、壮一郎は慌てずに刀で、男の首を刎ねた。

刎ねられた男に首は床に墜ちるが、まだ動こうとしていた。

 

「さらばだ、我が友よ‼」

 

壮一郎は男の首を踏みつけるのであった。

 

「これこそが今の現状なのだ。素晴らしい友、愛する家族、恋人だった者、だが、それでも躊躇わずに戦わなければならないのだ‼ 生き残りたいのであれば、闘え‼」

 

壮一郎の演説はそこで終了した。

 

 

それを遠くで見ていた孝達。だが、コータは納得のいく様子では無かった。

 

「刀じゃ効率が悪すぎる……」

 

「決めつけが過ぎるよ、平野君」

 

冴子がコータの言い分を否定した。

だが、コータは自分の考えこそが合っていると強く思っていた所為か、反論した。

 

「でも‼ 日本刀は人骨に当てたら刃毀れが起きますし3.4人斬ったら血脂などで役立たずになるじゃないですか‼」

 

「君の言い分も判る。だが、剣術の世界は乗数なのだ。剣士の技量、刀の出来、そして、精神の強固さ。この三つが合わさった時、刀は本当の力を出す。それだけなのだよ」

 

「でも‼ ッ⁉」

 

反論しようとしたコータの声が大きかったのか、下にいた壮一郎がコータ達を見つめた。目があったコータは言葉を呑み込むしかなかった。

そして、銃を取るとどこかへと走り出したのであった。

 

「ひ、平野‼」

 

「今は一人にさせてやれ。あいつには少し頭を冷やす時間が必要だ。それに俺も………」

 

沙耶がコータを止めようとしたが、永が手で遮りコータと同じ気持ちであると言うと、永もどこかへ行ってしまう。

 

「俺も何かあったら大変だから、車の整備に行って来るわ」

 

「僕も行きます‼」

 

俊輔もこの空気の重さに耐えられず、車の整備を続ける為に倉庫へと進んで行った。それに続く形で空も行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん達、大変‼」

 

「どうした‼ 何があった‼」

 

整備をしていた二人であったが、走って来たありすの表情が先ほどとは違った事に、何か起きたと言う切迫感があった。

 

「コータちゃんが……コータちゃんが‼」

 

「行くぞ空‼」

 

「はい‼」

 

二人はすぐにバリアジャケットを着用するとありす先導の元、コータの元へと行く。

二人が向かった先には、憂国一心会のメンバーがコータを取り囲み、銃を奪おうとしている所であった。



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第二十六話

最後です‼ 三話続けての投稿はしんどいです‼‼


二人が着くと、そこにはコータが憂国一心会のメンバーに銃を奪われようとしていたところであった。

 

「そこにいるお前たち、動くな‼ 動いたら、撃つ」

 

俊輔は神楽を二挺拳銃に切り替え、メンバーに銃口を向けていた。空も同様にディバイダー996を構えていた。

 

「兄ちゃん達、銃はオモチャじゃないんだ。それを渡してもらおうか?」

 

「断る。これらは俺の専用だ。お前たちでは扱える品物ではない」

 

メンバーの一人が俊輔達に銃を渡すように促したが断った。それもその筈である。二人が使用しているのは、魔法を持つ人間で、魔力がEx無いと扱えない物だからである。

一触即発状態の空気に一人の男が乱入する。

 

「何を騒いでいる‼」

 

「か、会長⁉」

 

国粋右翼の首領である高城壮一郎が乱入してくる。

 

「君たちの名前を聞こう」

 

「ひ、ひ、ひ、平野コータ‼ 藤見学園二年B組、出席番号32番です‼」

 

「同じく藤見学園二年、山本俊輔」

 

「同じく二年、山城空」

 

コータはすぐにでも泣き出しそうな勢いで名前を名乗るが、俊輔と空は堂々と答える。

 

「声に覇気があるな、平野君は………そして二人はビクともしていないな。さぞここまでにたどり着くまでに苦労しただろう。何があってもそれらは渡さぬというのか?」

 

壮一郎はそう言うと一睨みする。だが、俊輔と空は動じなかった。

 

「ダメです‼ ダメなんです‼ これを無くしたら僕は………僕は前の僕に戻されてしまう‼ やっと自分がしたい事が見つかったのに、戻りたくはないんです‼」

 

「俺達も同じです。貴方方に渡す銃はどこにもありません。それに………会長は俺の力を知っているはずですよ?」

 

「なに?」

 

俊輔の言葉に壮一郎は眉を顰める。

 

「神楽、フォーカ武装形態変更」

 

『『了解』』

 

俊輔の指示で神楽とフォーカの武装が変形し神楽は刀に変形すると背中にセットされ、フォーカはロングレンジ砲へと変わる。

 

「その武装は⁉」

 

俊輔の武装を見た壮一郎は驚きを露わにする。

 

「そうです。これが火を噴くという意味はあなたも知っているはずだ」

 

「会長、どういう事なのです?」

 

俊輔の言葉を受け壮一郎は何も言えなくなった。壮一郎が黙ったことに不審に思ったメンバーは尋ねた。

 

「前に紫藤の息のかかった組と抗争になりかけた時があっただろう。そのとき、抗争を止めたのがこの少年だ」

 

この言葉に後から来た沙耶や孝達を驚かせた。

 

「ほ、本当なの‼ パパ‼」

 

「沙耶か………本当のことだ。ある意味で無駄な血を流さなくて済んだ事には感謝しよう。だが、今は状況が状況なのだ。それを渡してもらえないか?」

 

それでも壮一郎は俊輔に武装の譲渡を言う。

 

「渡しましょう。ですが使えないですよ?」

 

俊輔がそう言うと武装を解除し先ほどまで着ていた作業服に変わった。

「ではどうぞ」と俊輔は神楽とフォーカを壮一郎に手渡した。

 

「…………何も起きない。何か細工でもしたのか?」

 

「細工も何もありませんよ。それを扱うにはある特殊な能力が必要なのです」

 

そう言うと俊輔は一冊の本を何も無い所から召喚する。

 

「ヴォルケンリッター、起動」

 

「我ら夜天の主の下に集いし騎士」

 

「主ある限り、我らの魂尽きる事無し」

 

「この身に命ある限り、我らは御身の下にあり」

 

「我らが主、夜天の王の名の下に」

 

「「「「「我ら、ヴォルケンリッターなり」」」」」

 

すると俊輔を囲う形で五人の男女が現れた。

 

「こいつら殺っても良いのか? 俊輔」

 

「ヴィータ、落ち着け」

 

ヴィータがアイゼンを肩に担ぎながら、壮一郎を含めるメンバーを殺す勢いで睨み付ける。

 

「待て、事を荒立てようとするな。俺の事を知ってもらおうとお前たちを呼んだ」

 

俊輔の言葉に全員が納得した。

 

「俺は元々、この世の人間ではない」

 

「どういうことだ?」

 

「簡潔に言うなれば、転生者と呼ばれる存在だ。前世の記憶もあるが………最近は薄くなってきている。まぁ、それはさておき、俺はこの世界の事を知っている。なぜなら、この世界の出来事は漫画で描かれていたからな」

 

≪なっ⁉≫

 

俊輔の言葉に誰もが言葉を失う。それもそのはずだ。いきなりこの世界のことを知っていると言われれば、驚くのも仕方が無い事である。

 

「だが、残念な事に………ここから先の記憶はない。理由として挙げられるのは、時間が経過しすぎた影響だろう。だが、俺のなすべき事は忘れていない」

 

「なすべき事とはなんだ?」

 

「俺が守れるだけの人間は助ける」

 

その言葉に誰もが反論できなかった。もしかしたら俊輔と言う存在がいなければ自分は今ここには居ないんだと言う実感が湧いて来たからである。

 

「ほう、言う物だな………」

 

「パパ、私からも言わせて。このチンチクリンがいなかったら、私はパパやママには会えなかったと思うわ。それに………」

 

≪えぇぇぇぇぇぇ⁉≫

 

沙耶が言葉を切ったと思ったら、俊輔に飛びついた。俊輔も驚いていた。

 

「私のパパの命の恩人がここにいるもの」

 

「…………良いだろう。君達の言い分を飲み込むとしよう。行くぞ」

 

壮一郎はそう言うと俊輔達を後にするのであった。

 

 

 

 

それを角で一人の青年が見ていた。

 

「先生、助けてくれる場所を見つけました………ええ、逃げる準備もしている様子です。準備をしてください、紫藤先生」

 

そういうと青年はどこかへと消え去るのであった。




誤字脱字、感想、質問、指摘等受け付けております‼

次回は紫藤がどう動くのか楽しみにしてください‼


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第二十八話

今回は少し短めです‼


とある海域に一隻の潜水艦が航行していた。

 

「艦長‼ 新たな緊急命令を受信‼ コード6-6-6-デルタ‼ 北朝ならびに中共に対する全面核攻撃です‼」

 

「そうか………とうとう核攻撃までする羽目になってしまうとは………アメリカもそこまで追い詰められたと言う訳か」

 

艦長と呼ばれた男は、自国がそこまで追い詰められていた事に嘆いていた。

 

「緊急命令だ………従う他無いだろう」

 

艦長はマイクを取り出すと、潜水艦クルーに通達をした。

 

「艦長より達する。大統領命令は最終的に確認された。これより本艦は北鮮ならびに中共の人口密集地に対する核攻撃を実施する」

 

艦長の言葉に誰もが言葉を失った。核を使う。即ち、第三次世界大戦の幕開けを意味していた。

 

「天にまします我が父よ。我らの罪を許したまえ………一番、二番ファイヤー‼」

 

潜水艦上部ハッチが開き、二発のミサイルが打ち上げられるのであった。

 

 

 

 

高城家の前にある大通りの一角にはコンクリートで造られた、車止めでバリケードを作り、奴らを食い止めていた。

その時、一台のバスが猛スピードでバリケードに向かって来ていた。

 

「スピードの出し過ぎだ‼ ぶつかるぞ⁉」

 

バリケードを護っている二人は、バスがバリケードを突き破るつもりではないかと内心考え、本部へ警報を出そうとした。しかし、バスはバリケードの直前で急ブレーキを掛け、バリケードと何センチしかない所で停車した。

 

「冷や冷やさせやがって、誰が運転してるんだ‼」

 

一人がバスの運転手に問いただそうとした時、窓から一人の少女が胸部を突き出す形で助けを求めて来た。

 

「おねが~い‼ 助けて下さい。私達、学校から命辛々、逃げて来たんです~」

 

二人の男性は、生徒の胸を凝視していた。

 

「ま、待ってろ‼ すぐに通らせてやるから‼」

 

一人が我に返ると、傍に置いていたフォークリフトに乗り込み、バリケードを退かそうとする。

 

「頼むぞ、俺は化け物が入ってこない様に見張っているから‼」

 

その声を聞きながら、バスの運転手である紫藤は顔を歪ませるのであった。

 

 

その頃、孝達は出発の準備に追われていた。

 

「永、孝、準備は出来た?」

 

「俺は出来たぜ。孝、どうだ?」

 

「俺も大丈夫だ。麗、体は大丈夫なのか?」

 

孝達二人は、既に準備が整っていたらしく、肩には荷物を掛け、背中には武器を背負っていた。

 

「私も痛い所はないわ。心配かけてごめんね?」

 

「まぁ、麗が無事ならいいけど………俊輔達はどうなんだろうか?」

 

「行って見るか?」

 

孝達が思い浮かべる二人が、今何をしているのかが判らなかった。だが、二人がいるであろう場所へ向かう事にした。

 

 

孝達が俊輔と空が居るであろう場所に着くと、そこにはハンヴィー、ティーガー、パーシング、ハイエース、ヴェルファイア、スカイラインを整備している俊輔達の姿があった。

 

「空、やっぱりキャリアーは置いて行く必要があるな」

 

「そうですね。流石にあの大きさの物を持って行く必要性も無いですからね」

 

「じゃぁ、俺達の戦車とハンヴィーを持って行くか………」

 

「じゃぁ、この三台はどうするんですか?」

 

空が指差す先にはスカイラインとハイエース、ヴェルファイアがあった。

 

「この三台は置いて行く。もしかしたら必要になる可能性があるからな…………バスは無かったのが痛手だったな」

 

「そうですね。マイクロバスぐらいの物があれば、移動が簡単に出来たんですけどね~」

 

二人は雑談をしながら整備していた。

 

「これはまた、大変な事をしているな、二人とも」

 

「ん? 孝達か………まぁな。俺達の物は俺達で整備する。それが俺達の考えだからな」

 

「それに、いつ魔法が使えなくなるか判らないからね」

 

二人は既に先の事を読みながら行動をしていた。

 

「主‼ どこも異常は見当たりません」

 

「こっちもだ」

 

すると、スカイラインとハイエースをチェックしていたザフィーラとシグナムが運転席から顔を出しながら、俊輔に報告をする。

 

「判った‼ 二人はそのまま待機だ‼ シャマル、どうだ‼」

 

「こっちも大丈夫よ~」

 

「なら、シャマルも待機だ」

 

俊輔は素早く指示を出していく。

 

「さて、俺達もキリが良い所だし外へ出るか」

 

「そうですね」

 

俊輔達は孝達を連れて外へ出た。その時、麗の表情が変わり、孝達も目線を追う先には、会いたくも無いし、顔も見たくも無い人物が乗る車が、高城家へ入ってくるのを目の当たりにした。

 

「麗‼ あれはッ⁉」

 

麗は銃を片手に飛び出すと運転席から降りた男に銃口を向ける。

 

「随分と立派な事を言う様になりましたよね、紫藤せ・ん・せ・い?」

 

「ッ⁉ み、宮本さんもご無事で………」

 

「黙れ、その薄汚い顔を見たくないのよ、こっちは…………それを………ノコノコと現れて、しかも? 良い先生ぶりを見せてくれるじゃないですか? 私達が乗っていた時とは違いますよね?」

 

麗の口調は荒々しくなっており、誰も止めようとはしなかった。否、出来なかった。麗から放たれるオーラに誰もが声を掛ける事を忘れてしまったからである。

 

「殺人を犯すつもりですか? 警察官の娘の貴女が……」

 

「アンタなんかに言われたくないのよ‼」

 

紫藤の言葉に麗は短剣を突き刺す前で踏み止まる。

 

「ならば、殺せばいい‼」

 

「ッ⁉」

 

「………」

 

後から来た壮一郎が麗に向かってそう言う。

 

「私はその男の父親とは関わりがある。だが、今はそんな事は関係ない」

 

その言葉にやじ馬たちが反論しようとしたが、壮一郎の睨みで黙らせた。

 

「無論、私も必要があればそうする」

 

その言葉に、誰もが言葉を失った。

 

「………良いでしょう。私を殺しなさい。私を殺して、一生その罪と向き合って苦しみなさい」

 

紫藤は自分が殺されようとしているのにも関わらず、自分を殺せと麗に囁いた。

麗は少しの間、銃口を紫藤へ向けていたが、徐に銃を下へ下げ、孝達の許へ向かって行く。

 

「それが君の答えなのか?」

 

「ええ、私には………いや、誰もがこの男を殺したところで何も得な事もありませんし、殺す価値も無い人間です」

 

その言葉に壮一郎は高らかに笑いだした。

 

「ハッハッハッ‼‼ それもまた、良し‼」

 

だが、紫藤は違った。自分が殺される価値も無い人間だと、年下の生徒であり女子に言われたのだ。紫藤は怒り心頭であった。

 

「私がどんな思いで生きて来たのか知らない、雌ガキが‼」

 

「貴様らはここを去れ。ここにいる価値はどない。本来であれば、鍛え直したいところだが、そんな猶予はない。乗ってきたバスでここから立ち去れ‼」

 

壮一郎の言葉に反論できなかった紫藤教のメンバーは、大人しくバスに乗り込み高城家から立ち去って行くのであった。

 

 

だが、ここからが本当の悪夢の始まりだった事に、誰もが気付けなかったのであった。




次回はとうとう、あれが来ますね。それと同時に、前々から出していた後書きのキャラ達も参加する予定です‼

「やっと我らの出番が来たのか………」

「王よ、もう少しの辛抱です」

「そうだよ、王サマ」

「貴様は何を食べているんだ‼」

「作者からもらった飴。美味しいよ。まだまだあるから王様も一緒に食べよ?」

「う、ウム。そうだな。我も頂こう………って、んなわけあるか‼」


誤字脱字、感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします‼


「勝手に閉めるな‼」


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第二十九話

やっとここまで着ました。
原作崩壊どころの問題じゃないですねwwww


壮一郎によって、追い出された紫藤達。

彼らは乗って来たバスに、乗せられ高城家を出て行った。

しかし、この時。誰もあんな状況に発展してしまうとは、思いもしなかった。

 

 

 

紫藤達を乗せたバスが見えなくなり、孝達は安心した。仲間が生きた人間を殺す所を見なかったと言う安心感であった。

 

「小室君? 携帯電話貸してくれない?」

 

徐に静香が孝に携帯を貸してほしいと申し出て来た。

 

「何に使うんですか? 携帯のゲームは無いですけど………」

 

「ゲームをするんじゃなくて、友達に電話したいの。私の携帯、学校に置いてきちゃったから」

 

「壊さないで下さいよ……」

 

孝はそう言うと懐に仕舞っていた携帯を取り出し、静かに渡した。

 

「え~と、1がここで……2がここ……」

 

静香は孝の携帯に慣れない手つきで操作をしていた。それに見かねたコータが携帯を取ろうとした。

 

「僕が押しますから、電話番号を教えて下さい」

 

「判んなくなっちゃうからダ~メ………出来た‼」

 

静香は嬉しそうに発信ボタンを押し込んだ。

 

『もしもし?』

 

「リカー‼ 生きてたんだ‼」

 

『その声って………静香なの⁉ 今、どこにいるの‼』

 

静香の電話の相手は南リカであった。

リカも静香からの電話に驚いていた。

 

だが………そんな電話での再会もすぐに終わりを告げた。

 

 

 

 

宇宙空間には一基のステーションが、各国から発射された核ミサイルの追跡を行っていた。

四発中、三発がアメリカと日本のイージス艦によって空中爆発させて無力化させた。だが、残り一発は、本来迎撃をする筈だったイージス艦〈カーティス・ウィルバー〉から迎撃ミサイルが発射されず、核ミサイルが上空で爆発した。

それにより、電子機器は破壊され、車のエンジンも掛ける事も出来ず、走行中の車両に至っては、エンストの様な状態を起こした。

 

 

 

「あれ? リカ? リカ‼」

 

電話口でリカの名前を呼ぶ静香。だが、向こうから聞こえてくるのは無音であった。

 

「ごめ~ん、小室君。携帯電話、壊れちゃったみたい」

 

静香の言葉に孝は何も言えなくなってしまった。

 

「どうかしらね………」

 

「確かにな………」

 

静香の言葉に沙耶と俊輔が反論した。

 

「宮本‼ ドットサイトを覗いてみて」

 

「う、うん」

 

麗は沙耶に言われた通り、スコープを覗き込んだ。しかし、本来ある筈のドットが無く、何も無い状態であった。

 

「何も映らないけど………」

 

「パパ‼ 計画を見直しを‼」

 

麗の言葉に沙耶は壮一郎に、脱出の計画案の変更を申し出た。

しかし、それと同時に門の所から一人の男性が駆け込んできた。

 

「大変だ‼ 化け物が‼ 化け物が‼」

 

男性が中に入ろうとした時、後方から走って来た奴らによって喰われてしまった。

 

「門を閉じよ‼」

 

「ですが、会長。まだ外には警備している者達が居ます‼」

 

「今閉めなくては、中にいる者達を危険に晒す羽目になってしまうぞ‼」

 

「は、はい‼ …………あれ?」

 

壮一郎の言葉で部下が電子キーで門を閉じようとしたが、門は一向に、反応する事は無かった。

 

「手動で閉じよ‼」

 

壮一郎はすぐに新たな指示を出した。部下の二人が門の後方に立つと、門を手動で閉じようとした。

だが、奴らは中に入ろうとして閉じられる門に挟まれた。しかし、運良く中に入る事が出来た奴らが居た。

 

「一匹、入ったぞ‼」

 

「フォーカ‼」

 

『…………』

 

「フォーカ?」

 

門を閉じた者からの報告に逸早く反応した俊輔は、自身のデバイスであるフォーカに指示を出したが、フォーカからの返事が全くなかった。

 

「僕が殺るよ………ポケットの中には…………が一つ」

 

コータがすぐに銃を構えると中に入って来た奴らの頭部を撃ち抜いた。

 

「スマン、コータ」

 

「お互い様だよ。でもこれでは………」

 

「ああ………」

 

俊輔はフォーカを握りしめた。フォーカが使用不能と言う事は、神楽も同様と言う事でもあった。

 

「幸い、夜天の書は無事だったがな」

 

俊輔は自身の近くに浮遊している夜天の書を見つめた。

 

「光った事が原因だな、これは」

 

「そうね………考えられる事は一つだけよ」

 

「高高度核爆発だな」

 

俊輔と沙耶の見解は正解であった。

 

電子パルス攻撃。又の名を高高度核爆発とも言う。

大気圏上層にて核爆発を起こし、ガンマ線が大気分子から電子を弾きだす事によってコンプトン効果を生み出す。それにより、地球の磁場に捕まり広範囲へ広がると、電子パルスが発生する。その効果は、電子装置には大ダメージを与え、アンテナになり得るものから伝わった電子パルスが集積回路を焼き消す事になる(原作より抜粋)

 

「と言う事は、電子機器は使えないって言う事⁉」

 

「そう言う事だ。序に言うと、俺のデバイスも電子機器が搭載されている。それによりダメージを受けてしまった。一応、直る事には直るが、部品が無い為整備が出来ない」

 

俊輔は相棒を失った悲しみに明け暮れていた。

 

「直す方法はあるのか? 沙耶」

 

「え? あっうん‼ 灼けた部品を交換したら動く車はあると思う。クラシックカーは問題ないわ」

 

「すぐに調べよ‼ 沙耶」

 

「え?」

 

壮一郎は沙耶に声を掛けた。

 

「この騒ぎの中で良く冷静に物を見た。褒めてやる」

 

壮一郎の言葉に沙耶はお礼を言おうとしたが、壮一郎は中に入って来ようとする奴らを見据えていた。

奴らは鉄の門を壊す勢いで押し寄せ、門からは悲鳴が響き渡る。

その時、上空から三人の少女の声が響き渡った。

 

「いくぞ‼ パワー極限‼ 雷刃封殺爆滅剣‼」

 

「疾れ、明星すべてを焼き消す炎と変われ‼ 真・ルシフェリオンブレイカー‼」

 

「紫天に吼えよ、我が鼓動、出よ巨重ジャガーノート‼」

 

三人から放たれた法撃は奴らを瞬く間に消し去ってしまい、脅威は消え去ってしまった。

 

「初めましてですね、堕天使より転生されし者」

 

「我らは堕天使から貴様らのデバイスの強化に来た」

 

「僕が居れば、怖い物要らずだよ‼」

 

俊輔の前には、レヴィ、シュテル、ディアーチェが降り立つのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等あれば受け付けております‼

「やっと出番が来たか」

「長かったですね、王」

「僕の活躍ってあるの?」

まぁ、基本的に君たちは助っ人と言う形だから、s(焼かれて見えなくなってしまっている)


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第三十話

気付いたら三十話まで行ってるwwww

どこかで番外編でも出そうかな? あっそうだ‼ 読者さんにアンケートしよ。

感想の方にアンケートを載せています。
回答は面倒ではありますが、自分のメッセージにお書きください。


「初めましてですね、堕天使より転生されし者」

 

「我らは堕天使から貴様らのデバイスの強化に来た」

 

「僕が居れば、怖い物要らずだよ‼」

 

俊輔の前には、レヴィ、シュテル、ディアーチェが降り立った。

 

「お前たちは………」

 

「私達は堕天使より使わされた者です。私の名は“星光の殲滅者シュテル・ザ・デストラクター”です」

 

「我の名は“闇統べる王ロード・ディアーチェ”だ」

 

「僕の名前はね‼ “雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャー”‼ カッコイイだろ‼」

 

三人の自己紹介に誰も口を開けての呆けていた。

 

「き、君たちの目的は何だ? 金か? 命か?」

 

「そんな物は要らん、塵芥共。我らが来た理由はそこにおる、山本俊輔のデバイスの強化だけだ」

 

「えっ? 俺⁉ と言う事は………そう言う事ね」

 

ディアーチェの言葉の意味を理解した俊輔はフォーカと神楽を渡した。

 

「すぐに終わらせる。シュテル‼ レヴィ‼」

 

「はい、王」

 

「は~い」

 

ディアーチェは神楽とフォーカを魔術式の上に置くと二人を呼び戻す。

 

「我、堕天使より使われし者なり」

 

「堕天使からの贈り物を授けたまえ」

 

「我等、マテリアルズが命ずる」

 

「「「甦れ、授けられし力よ‼」」」

 

三人の呪文に反応するかのように、魔術式が大きく広がりフォーカと神楽が光り輝き始める。

 

「さぁ、甦れ」

 

「あるべき主の元へ」

 

「そして、力を取り戻せ」

 

三人がそう唱えると、フォーカと神楽は元通りに戻り、自動的に俊輔の元へと行く。

 

「お帰り」

 

『『只今戻りました‼ 我が主‼』』

 

「さぁ、ド派手にやるか‼」

 

『『Aii right My Master Stand by Ready? Set up‼』』

 

俊輔の声に返事をしたフォーカと神楽であったが、二機は融合し一機のデバイスへと変貌した。

 

「これは………」

 

『私達は二機で一機です。最終形態“フォートレス・シントミュージック”と申します』

 

フォートレスと神楽が融合した最終形態“フォートレス・シントミュージック”は、フォートレスの砲身が長くなり左右に短剣が装着されていた。また、後方部には、魔力を吸収する為の装置も備え付けられ最終形態としての形を作り上げたのであった。

 

「そうか…………最終形態ね。行くぜ、フォートジック‼」

 

『Yes My Master‼』

 

俊輔の声に反応するフォートレス・シントミュージックは、バレルに魔力を集中させる。

 

「喰霊開放‼ 白叡‼」

 

『出番を待ってたぜ‼』

 

「喰い尽くせ‼」

 

俊輔は印を結び、白叡を解放させる。

 

「では、我々もお手伝いをします」

 

「感謝しろ」

 

「やったぁぁ‼ 僕のカッコイイ所を見せちゃうからね‼」

 

ディアーチェ達も参戦する事になり、各々のデバイスを掲げる。

 

「行きますよ、ルシフェリオン。轟熱滅砕‼ 真・ルシフェリオンブレイカー‼」

 

「征くぞ、エルニシアクロイツ。絶望に足掻け塵芥、エクスカリバー‼」

 

「いっくぞぉぉ‼ バルニフィカス‼ 轟雷爆滅‼ 雷刃封殺爆滅剣‼」 

 

三人の掲げるデバイスから魔法陣が展開され、それぞれの魔法色が輝き始める。

 

「フォートジック、カートリッジロード‼」

 

俊輔の指示にフォートレス・シントミュージックの左側にある排出口から四発の薬莢が出され、上部にある装填口がスライドする。

 

「スターダスト・スパークル・ブレイカー‼」

 

四人の最終奥義が放たれると、そこいらにいた奴らが消滅し後に残ったのは、瓦礫の山であった。

 

「やり過ぎたか?」

 

「いえ、化け物共を滅殺するにはこれ位の威力が無ければ、意味がありません」

 

「オウサマ‼ 僕頑張ったよ‼ 褒めて褒めて‼」

 

「…………」

 

瓦礫の山を見た俊輔達は何も言えなくなった。

また、下で待機していたシグナム達を始め、壮一郎たちもこの時、心が一つになった。

 

『絶対に俊輔を怒らせてはならない。怒らせてしまっては最後、自分達が消滅する』

 

と、考えてしまう程の威力であった。

 

 

「さて、これからどうするかな?」

 

『マスター、我々は別行動を取るのが宜しいかと思います』

 

「どう言う事だ?」

 

俊輔の呟きにフォートレス・シントミュージックが答える。だが、孝達と別行動を取ると言う事だった。

 

『私の考えを述べますと、あの人達は自分達の力だけ対処出来る事も、マスターに押し付ける可能性があります』

 

「だが、それはお前の考えであって本当かどうかも判らないだろ?」

 

『それは………確かにそうですが…………』

 

「それにな、俺は人に頼ってもらった方が嬉しいんだよ」

 

『はぁ~…………マスターがそう言うのであれば、私は何も言いません』

 

「スマンな」

 

俊輔は自分のデバイスが、意見を申し出て来た事に嬉しく思っていた。

 

「さてと、下に行くか」

 

俊輔はそう言うと壮一郎たちが待っている下へと降りて行く。それに続くようにディアーチェ達も降りて来るのであった。

 

「フォルム解除」

 

地上へと降りた俊輔は一つになったデバイスを二つに戻そうとしたが、一向に戻らなかった。

 

「スマン、一つ言うのを忘れていた。最終形態はその名の通り、最後だ。一つになってしまった物はそのままとなる」

 

ディアーチェが自分が言いそびれた事を俊輔に伝える。

 

「えっ? と言う事はこのまま?」

 

「そう言う事になります」

 

俊輔はガックシと肩を落とした。元々、二つだった物が一つになると言う事は、手が一つ空くと言う事でもあったが、俊輔自身、それが慣れていた為、ショックだった。

 

「でもね‼ モードがあるんだよ‼」

 

レヴィはフォートレス・シントミュージックのモードがあると言う。

 

「例えば?」

 

「神楽モード、フォートレスモード、カドラモード、そして最終形態であるファイナルモード。この四つになります」

 

「神楽モードは、神楽そのものだ。フォートレスに至っても同じことが言える。そしてカドラモードは二挺拳銃に二刀剣が装備される。ファイナルモードは先程の状態だ」

 

事細かにレヴィたちが俊輔に教えて行く。

 

「まぁ、それなら良いかな……………さて、これからどうしますか? 憂国一心会の皆さん?」

 

俊輔は気を取り直して壮一郎達の方へ振り返る。

 

「我々はもう一つの避難所へ向かう事にする。だが、足が無い分遅い行軍になるがな」

 

「足に関しては問題はありません。あの三台を使ってください」

 

壮一郎の言葉に俊輔はある物を指さす。指さした先には、ハイエースとヴェルファイア、スカイラインがあった。

 

「だが、あの三台も壊れているのじゃないのか?」

 

「ところがどっこい。あの三台は対EMP対策が取られている車両です。それに、俺達は戦車があります。ハンヴィーは壊れているのかどうかわかりませんが、使えるのであれば使う予定ですし、戦車も中は広いので何かあった時はそっちに乗せますしね。コータ」

 

俊輔はそう言うとコータを呼んだ。

 

「な、なに? 俊輔君」

 

「ハンヴィーのEMP対策はどうなんだ?」

 

「予算が削られてEMP対策は出来てないんだ」

 

「ならしゃーないな。俺と空の戦車に乗り込め」

 

俊輔は孝達に指示を出し、孝達も準備を整えていた荷物をティーガーとパーシングに載せて行く。

 

「沙耶ちゃん」

 

「なに、ママ?」

 

沙耶の母親である百合子が沙耶を呼び止めた。

 

「これを使いなさい」

 

百合子が沙耶に手渡した物はルガーP80と呼ばれる銃であった。だが、マガジンはドラムマガジンと言うマガジンが装備されていた。

 

「銃なんて使った事無いのに、どうしろと言うのママ‼」

 

「使い方は貴女のカレシさんにでも教えてもらいなさい」

 

百合子の言葉に沙耶は顔を赤くする。

 

「な、なに言ってるのママ‼ 私は別に俊輔の事なんか………」

 

「あら? 誰も俊輔君の名前を呼んでないわよ?」

 

「ッ⁉」

 

自分が墓穴を掘った事に気付いた沙耶は、増々、顔を赤く染めるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら受け付けております‼

アンケート‼
三十話を記念して、アンケートを取りたいと思います。
回答に関しては、ご面倒ではありますが、自分の個人メッセージ又は、活動報告にて送ってください。

1、ネタを書いてほしい
2、他のキャラ(リリカルなの系統)
3、助けてほしいキャラ(あさみは既に救出する予定)

この三つでお願いします。
全部の回答でもいいですし、一つでも二つでもいいです。
皆様の回答をお待ちしております。
期限は今月末までです。

では、よろしくお願いします‼


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第三十一話

書きだしてから四年の月日が経っています。
2013年から書いて、まだ完結していない。何故にだ‼ まぁ、エタッていた事もあったしね………他の作品に手を出して、こっちをほったらかしにしていましたからね。
今年中には完結するつもりでいるので、これからもよろしくお願いします‼


俊輔と壮一郎はこれからの事を話し合っていた。

 

「自分達は孝や麗の親を探すべく別行動を取ろうと思います」

 

「やはりそうだったか………我々も隣家にいる者達をここへ呼び、籠城しようと考えている」

 

壮一郎は鉄門が奴らの手により、壊されかけた為、補強をしないといけなくなっていた。しかし、補強しようにもEMP攻撃により、すべての車両が使用不能になった所為で補強しようにもできない状況であった。

だが、俊輔から提供された三台の車両を使えば、動かなくなったバスやトラック等で補強する事が可能になったのであった。

 

「君たちには大変、世話になったな」

 

「いえ、この状況です。お互いに助け合うのがベストでしょう」

 

俊輔の言葉に壮一郎は「確かにな」と言いながら笑う。

 

「それともう一つ。お願いがあるのだ」

 

「お願いですか?」

 

壮一郎の言葉に俊輔は何を言われるのか判らなかった。

 

「沙耶の事を守って欲しい。それと、この状況が済んだらもう一度、合ってくれないか?」

 

「まぁ、それぐらいでしたら構いませんが…………」

 

壮一郎の眼には沙耶の事を心配する色が覗えた。

 

「準備も終わった頃合いだろう。さぁ行くのだ」

 

「はい‼ 壮一郎さんもお元気で‼」

 

俊輔はそう言うとティーガーへ乗り込んで行き、出発するのであった。

シュテル達はいつの間にかいなくなっており、俊輔達はまたいつか会える事を信じていた。

 

 

 

「行きましたわね。私達の息子や娘たちが………」

 

「もはや、後顧の憂い無だな‼」

 

壮一郎はそう言うと高らかに笑うのであった。

 

「作業を始めるぞ‼」

 

壮一郎は自分達の城の護りを強化する為に動き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これからどうするつもりなんだ?」

 

『向かうのは大型ショッピングセンターに向かう予定です』

 

俊輔は地図を出そうとしたが、運転していた為取り出せなかったが、同乗している沙耶が気を利かせて地図を俊輔の前に広げ、目印を付けた。

 

「ありがとう、沙耶」

 

「どういたしまして」

 

『俊輔君。甘い空気がなぜかこっちにも入って来てるんですけど………』

 

「「うひゃぁぁぁぁ⁉」」

 

ティーガーに乗っている沙耶、ありす、永、麗であったが沙耶と俊輔が醸し出す桃色の空間に、永と麗は砂糖を吐いており、ありすは状況が呑み込めていなかった。

無線機から聞こえる空に沙耶と俊輔は変な声を上げた。

 

「さっきの聞こえてたのか?」

 

『はい、バッチリと………後ろで孝さんと冴子さん、静香先生が砂糖を吐いています。因みに、僕も吐きそうです』

 

「なんか………スマン」

 

空の言葉に俊輔は謝るのであった。

 

「主、それは良いとして。ショッピングセンターに行ってどうするのですか?」

 

「まぁ、食料や水なんかの補給も必要だろ? それに服もさ………流石に衛生上、悪いからな」

 

「私達はジャケットを脱げば問題ないんですけどね」

 

シグナムの言葉に俊輔は答えるが、シャマルが口をはさみ始めた。

 

「お前たちは良いかも知れんが、俺達は流石に勘弁したい」

 

俊輔の言葉にティーガーは笑いで溢れるのであった。

 

 

 

 

一方、パーシングでは通夜状態であった。

 

「なんかさ、いつの間にか発展してたな」

 

「そうだな………しかし高城君が山城君の事を好いていたとは……そんな風には見えなかったな」

 

「そうですか?」

 

孝と冴子は俊輔と沙耶の関係に驚きを表していた。空に至っては昔、沙耶と俊輔がであっている事を知っているので、そこまで驚く事は無かった。

 

「あの二人の関係に関しては、誰も口を挟めませんよ………それにもしかしたら運命の出会いと言う奴だったのかも知れませんしね」

 

空の言葉に冴子と孝は何も言えなくなった。

 

「さて、そろそろショッピングセンターに着く頃ですかね」

 

空が言う通り、目の前に大型ショッピングセンターが見えて来たのであった。

 

 

 

 

俊輔達はティーガーとパーシングをショッピングセンターから見えない場所で停車させて、孝達を降ろす。

銃などの武器は流石に、置いて行けなかったのでショッピングセンターに持って行く事になった。

 

「静かに入らなければ見つかる危険性もあるな………」

 

「そうですね…どこで誰が見ているか判りませんからね」

 

冴子の懸念は当たりであった。ショッピングセンターからは、丸見えな場所だった為、いつ誰に見つかるか判らない状況であった。

 

「でも、ここでコソコソ動くより正々堂々と入った方が良いと思いますけど………」

 

「確かにそうかも知れないが、孝。今の状況で俺達の事を快く入れてくれる人間は、一握りの人間だけだ。ましてや、俺達の手には銃と言う名の武器が握られている。それを奪われてしまっては元も功も無いだろ?」

 

孝の言葉に永が反論する。

 

「まぁ、孝の言う通りかもな。ここは正々堂々入って行った方が良いかもな。武器に関してはどこかの衣服店で隠せるだろうし」

 

「なら、行動を開始しますか」

 

俊輔の言葉で孝達は動き始めた。

静かにショッピングセンターの入り口まで来ると、扉を手動で開ける。

 

「凄いな……二階の部分はバリケードが仕掛けられている。余程、手慣れた人間でなければ出来ない事だな」

 

「確かにな…………」

 

俊輔達が目にした光景は、二階につながるエスカレーターの出入り口付近には家具店から出して来たのであろう、家具が所狭しと積み重ねられていた。

 

「一階付近は止めた方が良いな。もし奴らが入って来た時に備えて二階に行った方が良いだろう」

 

「だが、簡単に隠せられる場所はあるのかい?」

 

「このショッピングセンターには何回か来た事があるので、丁度良い隠し場所があります。こっちです」

 

俊輔はそう言うと、誰もいない事を確認してラグジェリーショップの前で止まった。

 

「ここなら誰も見に来る事は無いでしょう。それに………」

 

俊輔が目線を向けた先は特大サイズの置かれたカートだった。

 

「特にあれを見る人間なんてどこにもいませんしね」

 

その言葉に誰もが口を開けて呆けるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けおります‼

アンケートの方もよろしくお願いします‼


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第三十二話

書いていると時間を忘れるwwww
仕事が休みで助かった‼


孝達が銃を隠した丁度その時、男性の声が響く。

 

「そこを動くな‼」

 

バンダナを付けた男が俊輔達に鉈を持って、対峙していた。

 

「待ってくれ、俺達は今着た所なんだ‼」

 

俊輔が手に武器を持っていない事を示すために、両手を上げながら男に言う。

 

「じゃぁ、なんでそこでコソコソしていやがる‼」

 

「ええ~と………それは………」

 

俊輔自身もあまり言いたくない事であった為、言葉を濁していた。

 

「やましい事をしようとしたんだろ‼」

 

「ちげぇよ‼ いや、合ってるか?」

 

「真面目にしなさい‼」

 

俊輔が迷っている時に沙耶が俊輔の頭を殴る。

 

「痛いじゃないか‼」

 

「アンタが真面目にしないからでしょ‼」

 

「なんだと‼」

 

「何よ‼」

 

俊輔と沙耶のケンカが始まろうとした時、また新たに女性の声が響く。

 

「ケンカはダメです‼」

 

「「グウェ」」

 

女性の手で俊輔と沙耶の顔は潰れ、おかしな声を上げる結果となる。

 

「ホンカンの前でケンカはご法度です‼ 良いですか‼」

 

「だけど‼」

 

「こいつが‼」

 

「良いですね?」

 

「「あっはい」」

 

俊輔と沙耶のケンカを止めた女性警官のニコヤカな笑顔に、俊輔達はケンカを止める事になる。

 

「凄いな、あの警官」

 

「ホントだねぇ~」

 

永とコータは警官の手腕に驚いていた。

 

「では、ここで暮らすためのルールをお伝えしますね‼」

 

女性警官のルール説明に俊輔達は真剣に聞いていた。

問題を起こすつもりは無いが、何かの拍子に問題が起きては遅いと言う感覚があった為、静かに聞いていた。

 

「でありますので、基本的な事は皆さんと共同して生活をして下さい。先程のケンカはダメですからね?」

 

『はい‼』

 

「よろしいです‼ では、私は他の方達と話をしないといけないので、失礼します」

 

女性警官はそう言うと俊輔達から離れて行く。先程のバンダナを付けた男も一緒に警察官とと一緒に離れて行くのであった。

 

「冷や冷やしたわ~」

 

「流石に本職の人間とやりあう気は無いわね」

 

「確かにな」

 

先程までのケンカは嘘の様に沙耶と俊輔は話し込む。

 

「さてと、無事に入れた事だし、荷物を纏めるか」

 

「そうね。私達女性陣は服を見繕うわ」

 

「俺達男共は何か使える物はないか調べるわ」

 

「「じゃ」」

 

俊輔と沙耶の会議は終了すると、それぞれの行動へと移していくのであった。

 

 

 

 

「何か使える物と言ってもな………武器になる物なんて工具とかしかないしな」

 

「まぁ、音の出る物を改造したりしたら結構使えるものになるんじゃないか?」

 

「確かにそうかもね………でも、使えると言っても一時的な物だよね?」

 

「だが、一時的な物かもしれないが、使える物は使わないと損だろ?」

 

「そうですね。僕達だけで対処できるのにも限度がありますからね」

 

永、孝、コータ、俊輔、空の順番でそれぞれの意見を出していく。

 

「だが、どこで手に入れる? 工具店は基本的に一階にしかないだろ?」

 

「ところがそうでも無いんだよね~」

 

『?』

 

俊輔の言葉に全員が頭に?マークを出した。

 

「ここの二階の一角に工具店があるんだよ。それもとびっきりのな」

 

「じゃ、そこへ行くか」

 

俊輔の言葉を受け永が声を上げるのであった。

 

 

〈いつまでここにいりゃいいんだって言うんだよ‼〉

 

孝達が行動を起こそうとした時、どこからか大声が聞こえ出した。

 

「さっきの声って」

 

「言い争っているな………何も無い事を願うぞ」

 

「行きましょう」

 

俊輔達は声のする方へと向かって行った。

 

向かった先には女性警官を責め立てる大人たちの姿があった。

 

「すぐに助けが来るって話だったろ‼ なぜ助けが来ないんだYO‼ おまけに電気もケータイも繋がらないじゃんかYO‼」

 

首にヘッドフォンを掛けた男がラップ風に警官を責め立てる。

 

「私の事は良いんです。でも妻は週に一度、病院へ行って輸血を受けないといけないんです‼」

 

初老であろう男性が、肩に頭を乗せた妻の事を心配していた。

 

「私だって一刻も早く、本社に連絡を入れないといけないんです‼」

 

天辺禿の男性が机を叩きながら叫び出した。

 

「でも、その……松島巡査は助けが来るまでここで待てと言いました‼」

 

女性警官は上司の言葉をそのまま伝えたが、それは逆効果であった。

 

「アンタに、俺達を止める権利は無いだろうが‼ 権利があるのは護るだけだろうが‼」

 

「ひっ⁉」

 

先程までラップ口調だった男が女性警官の言葉を否定した。

 

 

 

「ヤバいなこりゃ……」

 

「確かにね。もう駄目な大人ばかりだ。現実を見ようとしていない………それに………」

 

俊輔達の目線には、包丁を手にして体を震わせている男の姿があった。

 

「アレ、確実に人を刺すね」

 

「不味いな………基本的に集団行動している者達は、それぞれに目的があって集団行動しているけど………」

 

「ここの人間たちはそれが無いと言う事だな?」

 

コータの言葉に永が言葉を続ける。

 

「それに、警官という権威に寄って縋っているだけの集団だ。いつか、爆発するぞ」

 

「永の言う通りだな………だが、どうするっていうんだ?」

 

「僕に良い考えがあるんだ」

 

『あっ、これダメな奴や』

 

コータの言葉に孝達はフラグが建ったと思ってしまった。

徐にコータは女性警官の元へと進んでいく。

 

「あの~ちょっと、良いですか?」

 

「今大事な話をしているんだぞ‼ ガキは大人しくしていろ‼」

 

「いえいえ、そうでも無いんですよね~これが………落とし物を届けたいんですよ………コレをね」

 

コータはそう言うと前に孝達から渡された拳銃を女性警官に手渡した。

それを見た全員がそれで勝てると言う確信を持ったが、そこでコータは言葉を続けた。

 

「因みにですけど………あの化け物たち。音に敏感で銃声なんて聞いたら………」

 

この言葉に誰もが、口を閉ざしてしまうのであった。

そしてコータは俊輔達の許へと戻ってくる。

 

「良いのか? 銃を渡しちゃって」

 

「良いんだよ………」

 

「確かにな。ある伝手で聞いた話だが、昔のイギリス軍の曹長はマスケット銃じゃなくて槍を持っていたらしいんだ。今の軍隊も同じで、槍じゃないけど戦場では役に立たない銃を持っている。これの意味が判るか? 孝、永、空」

 

コータの言葉の意味を理解した俊輔は孝、永、空に質問を投げつける。

 

「身を護る為か?」

 

「自殺する為?」

 

「………そう言う事か」

 

孝と空の回答は違っていたが、永だけは子の質問の意味が理解できていた。

 

「永は、判った様だな」

 

「ああ、集団を維持する為だろ? 命令に従わない奴を刺したり、射殺する事が出来ると言う立場を表している。これが正解だろ?」

 

「「正解‼」」

 

永の回答に俊輔とコータが声を揃えて肯定した。

 

「だったら良いけどね‼」

 

「沙耶?」

 

しかし、ここで口を入れて来たのは沙耶であった。

 

「あそこの連中、相当追い詰められているわ。それに銃を渡したところであの婦警に撃てるかしら?」

 

「流石に銃の撃ち方は習っているだろ?」

 

「あそこの連中が、撃てないと知ったら? どうなる?」

 

この言葉に孝達は何も言えなくなるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けております‼
アンケートの方もよろしくお願いします‼


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第三十三話

すみません。今回は、都合により若干短い構成となっています‼


「ねぇねぇ、沙耶ちゃん」

 

「沙耶お姉さまとお飛びと何度言ったら「静香先生は何処?」ッ⁉」

 

ありすの言葉にその場にいた全員が静香がいない事に気付いた。

 

「さっきまではどこにいたか判るか?」

 

「ベッドで座ってた気が………」

 

「ヤバいぞ‼ すぐに行くぞ‼」

 

「ちょ⁉ 待ってよ‼」

 

ありすの言葉に俊輔はすぐに静香がいた場所へと向かって行った。

 

〈きゃぁぁぁぁぁぁぁ‼〉

 

「遅かったか‼ フォートジック、セットアップ‼」

 

『Yes My Master‼』

 

俊輔はすぐにセットアップすると静香の悲鳴があった処へと向かった。

 

 

 

寝具コーナーの一角にあるベッド上で静かは先程のバンダナを付けた男に襲われそうになっていた。

 

「ちょっとそう言う事はー」

 

「良いだろう、別に。それにそこで寝ているアンタが悪いんだ。誘っているとしか見えないぜ?」

 

男はそう言うとベッドに乗り上げ、静かへと近づいて行く。

 

「なぁ、良いだろ? 一回だけだ。頼むよ」

 

「そう言うつもりじゃないんだけど………ただ、眠たかったから寝てただけなの………」

 

「理由なんてどうでも良いんだよ‼ ヤラしてくれよ………じゃないと……………」

 

男はそう言うと鉈を取り出した。

 

「これで………」

 

その時、男の後方で銃を構える音がする。

 

「俺はアンタには興味はないんdッ⁉」

 

そこには先程、コータに銃を渡された婦警が、銃を持って男に向けていた。

 

「武器を捨てて、その女性から離れなさい。これは警告であります」

 

「ハン‼ 撃てるのかよ、体が震えてるじゃねぇか」

 

「良いから、武器を捨てて女性から離れなさい‼ 最終警告です‼」

 

「撃てるもんなら撃ってみろよ。婦警さん?」

 

男の挑発に婦警は撃つ事が出来なかった。

しかし、そこに空が動き出した。男の目線は婦警に行っていたので、行動は簡単に出来た。

近くにあった100円ショップに向かうと、アルミ製のワイヤーを手ごろなサイズに切り取り、持って部分を付けた簡易的な首絞め道具が出来上がった。

空はすぐに男の後ろへと回り込むと、首絞め道具で男の首を締めあげた。

 

「もう良いでしょ?」

 

空の首絞めを緩めようと首に巻き付いているワイヤーを取ろうとするが、肉に食い込んでしまい取ろうにも取れない状況であった。

 

「無駄ですよ? 肉に食い込んでるんですから………婦警さんの言葉に従うか………僕に殺されるか、どっちが良いですか? 婦警さんの指示に従うんでしたら鉈を捨てて下さい?」

 

空の言葉に男は鉈を手放した。

 

「それで良いんですよっ‼」

 

空は力を緩めるのと同時に男の背中を蹴り倒れ込ませると俊輔がすぐにバインドで男を締めあげた。

 

「もう良いですよ、終わりましたから」

 

「えっ? えぇぇ」

 

婦警の持つ銃を優しく降ろしたコータであった。

 

「コータさん………」

 

『ッ⁉』

 

婦警がコータに墜ちた事に全員が驚くのであった。

 

 

 

 

コータは一人、屋上へ向かっていた。

 

「やっぱり何処も彼処も奴らばっかりだな………」

 

「何しているんですか?」

 

コータが状況を確認してると、先程の婦警がやって来た。

 

「周りの状況を確認しているんです。逃げ出すためにルート確認は必要最低事項ですからね」

 

「凄いですね、あっ、自己紹介がまだでしたね‼ 私の名前は中岡あさみと言います」

 

「僕の名前は平野コータです………なんか今更感が強いですけど………」

 

「気にしたら負けじゃないですか?」

 

「「ぷ……ぷくく……あはははは‼」」

 

コータとあさみは同時に笑い出す。

 

その時であった。

 

「お巡りさん‼」

 

ヘッドフォンを首に掛けていた男、平田がコータとあさみの所へと走ってくる。

 

「あの婆ちゃん‼ 調子が急に悪くなった‼ 今、あのエロい先生が診てくれているけど、直ぐに輸血をする必要があるって事だ‼ すぐに来てくれ‼」

 

その言葉にコータとあさみは走って戻るのであった。

 

 

 

 

コータとあさみ、平田が孝たちの元へと戻ってくる。

家具店に置かれていたベッドに、体調を崩したお婆さんが横たわっていた。

 

「確か……骨髄がどうとか言う病気で川島医院で診てもらっとったんです………」

 

夫であるお爺さんが静香に説明をしていた。

 

「それで輸血ですか………もしかしてRAね‼」

 

「いや、そんな名前では……」

 

「RAとは略称で不応性貧血骨髄異形成症候群とも言います」

 

静香の言葉にお爺さんは「それじゃ‼」と叫んでしまう。

 

「でも輸血するにしても……電気が切れて一日以上が経ってる……」

 

「なら」

 

孝が静香の耳元で自分の血は使えないかという質問をした。

 

「全血を―――血液をそのまま輸血するのは危険なのよ……それにあのお婆さんの血液型はO型で、血液型は気にしなくて良いのよ」

 

静香は耳元で話された事で、擽ったさに孝の顔を遠ざける。

 

「それは、O型を輸血するときじゃ……輸血を受ける場合は同じ血液型じゃないと………」

 

「違うよ、小室君。それは赤血球の話だよ。静香先生が言っているのは血漿の場合………赤血球とは逆の組み合わせになるんだ」

 

コータの言葉にあさみとありすは顔をキラキラさせていた。

 

「んで、先生的にはどうしたいってわけ?」

 

「それは………輸血を受けていた病院がすぐ近くなの。だから取りに行くとか……」

 

「なら、先生。一つだけ聞かして」

 

沙耶は静香に質問を投げた。

 

「なんで私たちが行くの?」

 

「えっ?」

 

この言葉に静香は黙ってしまう。




誤字脱字、感想、指摘、質問等受け付けております‼


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第三十四話

お待たせしました‼ 更新です‼
書き上げるのが苦労しました。だって、完全にオリジナルですもの………
まぁ、書いていて面白かったですけどねwwww

次回もオリジナルが続くと思います。

今回はある人が登場します‼ まぁ、原作を持っている方ならば名字を見て判ると思います。


一方、その頃シグナム達はと言うと―――――

 

「主の命令なのだ。諦めろ、ヴィータ」

 

「でもよ~」

 

「はいはい、そこまでよ二人とも。私達の任務は何だった?」

 

「俺達の任務はこの近辺に生存者がいるかの確認だ。そこを忘れるなよ、二人とも」

 

シグナム達はショッピングセンターの近くを飛んで生存者の確認をしていた。

この指示を出したのは、他でもない俊輔であった。

俊輔はシグナム達に生存者の確認の命令を出していた。

 

「お前たちにはここの近辺を捜索してほしい」

 

「どう言う意味ですか? 主」

 

俊輔の言葉にシグナムが質問をする。

 

「俺達は高城家で難を逃れたが、他にも生存者はいると俺は考えている。そこで、自由が利くお前たちに行って欲しいんだ」

 

「だからって全員で行く必要はないだろ」

 

「そうかも知れないが、何かあった時は俺は躊躇わずに、自分の力を発揮する。だが、お前たちの事は知っているのは俺達だけだ。不用意に接触するのも得策では無い」

 

「判りました。我々は生存者の捜索に当たります」

 

「そうしてくれ」

 

そして、その言葉通りシグナム達は、生存者の捜索を行っていた。

 

「にしても、どこもかしこも奴らばっかりだ」

 

「これでは生存者のせの字も無いな………あれは‼」

 

「なんだ、シグナム」

 

シグナムは遠くで奴らとは違う動きをしている姿を捉えていた。

 

「あそこの角を見てみろ」

 

「………あれ、生存者じゃねぇのか?」

 

「確かにな………どうする。接触するか?」

 

「様子を見る。もしかしたら有力な情報が手に入るかも知れないからな」

 

シグナム達は上空で角にいる生存者らしき女性を見つめているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここいら一帯、化け物だらけね………ホラー映画の撮影とかの風陰気じゃないわね………それに手元にあるのは銃が一丁だけ………心細いにも限度があるでしょうに………はぁ~ついて無いわね私って」

 

シグナム達に見られている事に気付いていない婦警は、角から見える先にいる奴らに溜息を吐いていた。

 

「まぁ、私が名乗り出した事だし仕方が無いか………でもこのまま東署まで行く事出来るのかしら?」

 

婦警は腰に仕舞っている銃を取り出したが、直ぐに元に戻した。

 

「ダメね。銃を使うと化け物共が集まってくる可能性がある………この場合は静かに物音を立てない様に歩く他無いわね」

 

そう言うと婦警は静かに歩みを進める。しかし、それもすぐに終わってしまった。

いきなり目の前に化け物が現れた事により、婦警は悲鳴を上げてしまったのだ。

悲鳴を聞き付けた奴らは挙って、婦警に近づいて行く。

 

「来るな………来るなぁぁぁ‼」

 

婦警は恐怖の余り、大声を上げながら銃を取り出し、引き金を引き続けた。

だが、装填されている弾数は六発だけである。必然的に引き金を引くが弾が一発も出ない事を悟り、力が抜け座り込んでしまった。

 

「これで、私も化け物になるのね………ごめんなさい、あさみ………必ず生きてね」

 

婦警は目を閉じ、奴らに喰われるのを待った。だが、痛みが無い事に疑問が浮かび、目を開けると先程まで自分を喰おうとしていた化け物の姿が無い事に気付いた。

 

「あれ? どうして………私は喰われようとしていたのに…………」

 

婦警の言葉に応える声が上空から聞こえ出した。

 

「私達が助けました。ケガはないですか?」

 

「あ、貴女方は⁉」

 

上空を見上げるとそこには刀を持った女性とハンマーを持った幼女、体格の良い男性、おっとりとした風陰気を醸し出す女性。そして、漆黒のチャイナ服に身を包む女性が浮遊していた。

 

「私はある人物から生存者がいないかを確かめていた所、貴女が喰われようとしていたので助けさせてもらった。ケガは………無いようだな」

 

「え、ええ。ありがとうございます」

 

女性はゆっくりと立ち上がるが、腰が抜けており思う様に立てなかった。

 

「あれ? 立てない…………」

 

「ザフィーラ………いや、シャマル」

 

「判ったわ」

 

シグナムに言われシャマルは婦警の手を取り立ち上がらせた。

 

「ありがとうございます。あっ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は松島由香里と申します」

 

「私の名前はシグナムです。こっちは」

 

「ザフィーラだ」

 

「ヴィータです」

 

「シャマルです。よろしくお願いします」

 

「リインフォースだ」

 

それぞれの名前を由香里に言っていく。

 

「苗字などはないんですか?」

 

「我々は苗字というものを持ち合わせていません。正確には苗字というものが無いです」

 

由香里の質問にシグナムが答えていく。

 

「それで、由香里さんはどちらへ向かうつもりだったんですか?」

 

「東署まで………もしかしたら残っている者達がいるかも知れなかったので………それに、応援を出せばショッピングセンターで残っている人たちを助けられると思ったので…………」

 

シャマルの質問に由香里は答えるが、シグナムは答えるべきか悩む。

 

「シグナム……どうする?」

 

「私としては伝えた方が良いと思うのだが………」

 

「真実を知った時………どういう行動をとるかが心配なのか?」

 

「ああ」

 

シグナムとリインフォースは静かに話し合う。

 

「だが、東署に向かったところで、誰もいないと言う事を先に言っておいたほうがいいと思うのだが?」

 

「だが」

 

「将の気持ちは解る。だが、ここで言わなければ、この人は死ぬぞ?」

 

「っ⁉」

 

リインフォースの言葉にシグナムは驚きを隠せなかった。

 

「判った。私が言おう」

 

「頼む」

 

「由香里さん………一つ言わせてほしい」

 

「はい? なんでしょうか?」

 

シグナムは意を決して由香里に真実を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東署には誰もいません」




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、どしどし送ってください‼
作者としては感想がありがたいかなぁ~って、武御雷参型は言って見たり


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第三十五話

お待たせしました。書き上げる事が出来ましたので投稿いたします。
オリジナル要素しかないです。それと、俊輔君のキャラが崩壊してますwww


「東署には誰もいません」

 

シグナムの言葉に由香里は怒りをあらわにする。

 

「なんでよ‼ 絶対に誰かはいる筈よ‼」

 

「諦めて下さい。この状況下です。誰もいる筈はありません。もしいたとしても…………あの化け物たちの様になっているだけです」

 

「そんな…………」

 

由香里は突き付けられた事に衝撃を受け、膝から崩れ落ちた。

 

「そこで提案があります」

 

「…………なに? 私達も化け物の様になれっていうの‼」

 

シグナムからの提案に由香里は語気を荒くして反論する。

 

「違います。ショッピングセンターに戻り、戦力を上げるのです。幸い、我らの主もそこにおられます。もし、あなたが我々と一緒にショッピングセンターに戻ると言うのであれば、護衛として働かして頂きます」

 

シグナムは「どうしますか?」と言い由香里の言葉を待った。

 

「もし、戦力が上げれたとしてもこの状況で、無事な場所なんてあるの?」

 

「それは判りません。ですが、どこか無事な場所は必ずあるでしょう。我々はそれを見付けるだけです」

 

「…………判ったわ。あなた達と一緒に戻りましょう」

 

由香里の返事にシグナムは頷いた。

 

「ヴィータを殿として私が先頭に立つ。アインスとザフィーラは由香里さんを護衛してくれ。シャマルは周辺の警戒に当たれ」

 

シグナムの指示でそれぞれが動き始める。

先頭に立ったのがシグナム。その後方で左右に立つアインスとザフィーラ。シャマルは上空へ上がると、周辺に奴らがいないかの確認。そして、ヴィータは最後尾で殿を務める。

 

「では、主のいるショッピングセンターに行くぞ」

 

シグナム達は、俊輔がいるショッピングセンターへと戻るのであった。

 

 

 

 

一方、俊輔達は老人夫婦の輸血について話し合っていた。

 

「先生、一つ聞かせて………どうして私達なの?」

 

「えっ………それは………しょ、処置しないといけない人がいるから、助ける。それが常識でsy「じゃぁ、輸血した後はどうするのです? 定期的に輸血をする必要がある……と言う事は必然的に毎回、私達が取りに行くと言う訳? それに、どこで輸血パックを取りに行くんです?」それは………」

 

静香の言葉に沙耶が噛み付く。

静香は沙耶の的確な言葉に、口を閉ざしてしまう。

 

「私達は、他人を助けられるほどの力があるんですか? 私達が誰も死なないと言う、明確な理由でもあるんですか?」

 

「それは………そうだけど…………でも困っている人がいたら、それを助ける。何か間違ってると言うの‼」

 

「静香先生の言葉は正しいわ………でもね、先生。今の状況で正しい事は判る筈でしょ‼」

 

「じゃぁ、どうしろっていうの‼ 沙耶さん‼ 私は先生であり、医者でもあるの‼ 助けられる命があるのに助けない。それは私にとって曲げられない事なの‼」

 

沙耶と静香の口論は激しさを増すばかりであった。

 

「二人とも落ち着けって。落ち着いt「黙れやぁッ‼ ボケェェェッ‼」……俊輔……」

 

二人の口論を止めたのは俊輔であった。俊輔の怒声に二人の口論は、止まる。

 

「今はそんな話をしている場合か‼ 沙耶‼ 今の状況で言えば、お前の言い分は間違っていない。だけどな、ここの場所で生活しているのは俺達だけなのか‼ あぁ? 判ってるんだろうが‼ 状況が刻々と変わっていっている事が‼ このチームの頭脳だろうが‼ その頭脳がそれに気付かない訳ないよな? それとも何ですか? 気付きませんでした~とでもホザク気か? 静香先生。アンタの考え方は俺は賛同したい。だけでな。今の状況で、誰が取りに行く事が出来るんだ? アンタ一人で行く気か? 武器も持たないアンタが…………ここは冷静になって話し合えばいいだろうが‼ そんな事も出来ないんか‼ このすっ呆け共が‼ ハァハァハァ……………孝、永。後は頼んだ」

 

俊輔のマシンガンの如く発せられた言葉に、全員が呆けてしまい、俊輔はどこかへと向かって行くのであった。

空が静かに俊輔の後を追って行った。その際、孝だけに聞こえる様に耳元で呟いた。

 

「今の状況を打破できるのは、貴方だけです。お任せします。それに………もしかしたら俊輔君は血清を取りに行く気かも知れないので………お願いします」

 

空は孝だけに聞こえる様に呟くと、俊輔を追いかけるのであった。

 

 

 

 

「やっちまったぁぁぁ‼ 俺が冷静になってなくてどうするんだよ‼」

 

俊輔は誰もいない場所に行くと、壁に手をついて先程の言葉に後悔をしていた。

 

「何が冷静になって話し合うだよ………冷静になってないのは俺じゃないか………それに沙耶にも静香先生にもきつく当たってしまった…………仕方がねぇ。俺が取りに行くか」

 

「どこに行く気ですか?」

 

俊輔が一人で取りに行こうとすると、そこに待ったを掛けた人物がいた。

 

「空………どうしてここに来たんだ? 孝達の所にいなくても良いのかよ?」

 

「アナタが勝手に一人で取りに行くであろうと考えた結果です。まさしくその状況ですけどね」

 

「まぁな…………あそこまで言ったんだ。俺が取りに言った方が安全だろ?」

 

「確かに…………ですが生きて戻れる保証はあるんですか?」

 

「……………」

 

空の言葉に俊輔は何も答えられなかった。

 

「俊輔君。ここは二人で行った方が確立が上がります。それに戦車持って行く気でしょ?」

 

「バレテたか………まぁ、その方が早いと思ってな」

 

「貴方の考え位、判りますよ。一緒に暮らしてたんですから」

 

「付いて来てくれるのか?」

 

「もちのロンです」

 

「じゃぁ、行きますか‼」

 

二人は静かにショッピングセンターを抜けだすと、戦車を置いている場所へ向かい、ティーガーにエンジンを掛け、病院へと向かうのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、よろしくお願いします‼


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第三十六話

お待たせしました。更新します‼


ショッピングセンターから出た俊輔と空の二人は、俊輔の愛車、ティーガーに乗り込み血清を取りに行っていた。

 

「次の角を右です」

 

「オーライ」

 

空のナビゲーションで、俊輔はティーガーの操縦桿を動かす。

 

「今更だけど………武器はどうしたんだ?」

 

「僕達にいりますか?」

 

「そうだったな………」

 

「次の角を左で、病院です」

 

「オッケー」

 

病院前に到着した二人は、ティーガーから降りなかった。

 

「さて、やりますか。フォートジック、サーチャー展開」

 

『Aii right My Master』

 

俊輔の言葉に反応し、フォートレス・シントミュージックはサーチャーを飛翔させ、病院の周りを探索する。

 

『マスター、病院内には夥しい数の奴らが居ます』

 

「やっぱりね………空。一気に攻めるか?」

 

「その方が良いと思いますよ。簡単ですし」

 

フォートレス・シントミュージックの報告に、俊輔と空の意見は一致する。

 

「さて、血清がある場所はどこだ?」

 

『暫しお待ちを………見付けました。入ってすぐにある診察室です』

 

「オーライ。空」

 

「はい‼」

 

「「Set up」」

 

俊輔と空は、バリアジャケットを身に着ける。

 

「フォートジック、神楽モード」

 

『Aii right My Master』

 

俊輔は神楽モードに切り替えると、フォートジックは居合刀へ変形する。

 

「行くぞ‼」

 

俊輔がそう言うと、二人は、病院内へ突入するのであった。

 

 

 

 

その頃、ショッピングセンターでは、孝と永が相談をしていた。

 

「どうする? 孝」

 

「永はどうしたいんだ?」

 

永の質問に孝は質問返しをする。

 

「……………判らない。だが、空が、俊輔は一人で動くぞと………俺は、それに対して何も答えられなかったんだ…」

 

「なぁ、永。俊輔が一人で動くと聞いたとき、何も答えられなかったと言ったな」

 

孝の言葉に永は頷く。

 

「それで良いんじゃないのか?」

 

「えっ?」

 

「俺たち人間は、一人で出来る事は限られてるけどさ、誰かといれば、自ずと出来るだろ? それに、今のチームだってそうだ。俺や永の一人だけだったら、学校から脱出もできなかった。だけど、いつの間にか、チームが出来て、俺たちの出来る事が増えたんだ。それに俊輔は一人で行ったって言ったけど、それは間違いだ」

 

「どう言う事だ?」

 

孝の言葉に永は尋ねる。

 

「空も行っていると言う事だよ」

 

「…………確かに。俺の横を通り過ぎるとき『頼みます』って言ってたな」

 

「だろ? だから、あいつ等は一人で行動してるんじゃなくて、二人で行動しているということだ。だったら………答えは出たな?」

 

「ああ‼ 行くぞ、孝‼」

 

「合点承知‼」

 

二人は俊輔達を追いかけようと、行動を開始しようとした。だが、その時、待ったを掛ける者達が居た。

 

「二人とも、どこに行くつもり?」

 

「俺だって、役に立つんだぜ?」

 

「ここは、本官の出番であります‼」

 

あさみ、コータ、山田の三人であった。

 

「僕達も一緒に行くよ」

 

「俺だって、高校生だけに行かせる訳にはいかないしな」

 

「警察官の力を舐めないで下さい‼」

 

三人の言葉に孝、永の二人は言葉を失う。

 

「良いのか? 命の危険だってあるんだぞ‼」

 

「僕は、二人に恩返しがしたいんだよ」

 

「俺は、まだ詳しい事は知らないが、それでも、あの二人の事は信用できると思ってるぜ」

 

「私もです‼ あさみは、出来ない事をして下さった二人に感謝しているんです‼」

 

コータ、山田、あさみは、それぞれの思いを孝と永にぶつける。だが、永と孝は納得がいかなかった。

だが、そんなときに三人の援護するかのように沙耶が発した。

 

「二人共。なに、考えてるのよ? 私だって俊輔の後を追いたいと思ってるのよ………でも、私だと足手纏いになっちゃうから、行けない。だけど、この三人とあんた達二人なら、可能でしょ?」

 

沙耶の言葉を受け、二人は漸く納得した。

 

「判った、だけどこれだけは約束してくれ」

 

「決して、無茶はしないでくれ」

 

二人の言葉に三人は強く頷くのであった。

 

 

 

 

その頃、俊輔と空たちは、病院内へ突入していた。

 

「静かだな………」

 

「不気味な程にですね………」

 

二人は病院内に奴らの発する独特の声が聞こえず、また、病院内からは生存者がいる気配すらなかった。

 

「サーチャーで調べてるが、どうもおかしいな………診察室に入ってすぐに出よう」

 

「そうですね……ッ⁉ 俊輔君‼」

 

「チッ‼ そう言う事かよ‼」

 

二人が診察室へ入った瞬間、診察室の扉は閉まり、鍵がかけられた。

 

「何者かがここにいると言う事ですかね…………」

 

「可能性は高いな………オイ‼ 出て来い‼」

 

俊輔は大声で叫ぶが、答えは返って来なかった。

 

「どう言う事だ? 鍵が勝手に閉まるとか………幽霊の仕業か?」

 

「奴らが居る時点で、幽霊とかいそうですね………」

 

その時であった。二人は病院が微かに揺れている事に気付いた。

 

「空………」

 

「揺れてますね…………まさか‼」

 

空が何かを感じ取り、床を見た瞬間、二人の目の前にあった床が何者かによって突き上げられ、何かが飛び出してきた。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ⁉」

 

「でけぇ…………」

 

二人の前に現れたのは、体長3mもあるではないかと思われる、大男であった。だが、その男にはある筈の物が無かった。

 

「頭が無い⁉」

 

「弱点が無い………だと…………」

 

そう、大男には頭部と言うものが存在しなかった。

 

「なんなんだよ………コイツ…………」

 

「体も硬い鎧の様な物を纏ってるね…………」

 

「どうするよ、空?」

 

「一撃必中と行きますか?」

 

「だな‼ フォートジック‼ ファイナルモード‼」

 

「ディバイダー、最終モード‼」

 

俊輔と空は、それぞれの最終形態で大男に挑むつもりであった。

 

「行くぞ‼」

 

二人は大男に斬りかかって行くのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、送ってください‼


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第三十七話

大変お待たせしてしまい、誠に申し訳ありません‼
やっと書き上げられました。
メインであるISの作品を書いている傍らに執筆していたので、気付けば一年が過ぎようとしていました‼
今回が最後となります。(最終回と言う意味では無い)
次回の更新がいつになるのか、不明ですがISの作品を書いている傍らで書いて行くので、今月中にはもう一話か二話ぐらいは更新したいと考えています。
長らくお待たせしてしまい誠に申し訳ありません。

次回もよろしくお願いします‼


俊輔と空は、病院に辿り着き輸血パックを探している最中、地面から出て来た首なしの大男と戦闘をする事になってしまった。

 

「頭の無い奴らか……新種だな」

 

「そうですね………行きますか」

 

「そうだな‼ フォートジック、ファイナルモード‼」

 

「ディバイダー、最終モード‼」

 

二人は、それぞれのデバイスの最終形態へと変形させる。

 

「ディバイン・バスター‼」

 

「撃ち貫け‼」

 

二人の攻撃は、大男に突き刺さり体を貫通させる事に成功した。しかし、大男は倒れる事無く佇んでいた。そして、貫かれた跡が塞がり始めていたのであった。

 

「なっ⁉ そんなのアリかよ‼」

 

「クソ、これじゃぁジリ貧じゃないか………俊輔、どうする?」

 

俊輔は大男の回復力に驚いていた。

 

「空、ありったけの魔力でブチ抜くぞ」

 

「了解‼」

 

二人は、自分達が持つ最大の魔力をデバイスに込め始める。

 

「カートリッジロードッ‼」

 

『Cartridge Load‼』

 

「スターダスト・スパークル・ブレイカー‼」

 

俊輔の愛機であるフォートレス・シントミュージックのマガジン部から薬莢が装填され、スライダがスライドする事により魔力が籠った薬莢に撃鉄が撃たれ、魔力をフォートレス・シントミュージックを包み込んで行く。

そして、魔力が無くなった薬莢は排出され外へ出されて行った。

フォートレス・シントミュージックの先端部に漆黒の魔力が込められ、俊輔は引き金を引き力を解放させた。

 

「最終モード、最終形態。形勢」

 

空はディバイダーに呟くと、リボルバータイプから一つの砲へと変化させた。それは、某種死に登場する一つ目量産機の砲と同じようなものであった。

 

「ガナー、展開完了………ブラスト・ブレイカー‼」

 

二人の放った砲撃は首なし大男に当たり風穴を開けるが、直ぐに復活してしまう。

 

「チッ‼ どれだけやっても効かないと言うのかよ‼」

 

「どうすれば良いんだ………ん?」

 

俊輔は大男を倒せない事に躍起になるが、空は大男の弱点らしきものを発見する。

 

「俊輔、もしかしたらの話だが………聞くか?」

 

「この際、可能性に掛ける他無いだろう。で? なんだ」

 

「あいつの胸を見てくれ」

 

「なんか呼吸してねぇか?」

 

「もしかしたらだが、あそこが弱点では無いのかと思っている」

 

「そう言う事だったら‼ こいつだ‼」

 

俊輔はそう言うとフォートレス・シントミュージックのマガジンを交換すると、魔力を集結させる。

 

「ディバインバスター‼」

 

俊輔の放った砲撃は大男の胸に当たると、大男は蹈鞴を踏み後ろへと下がった。

 

「やっぱりだ。火力集中させるぞ‼」

 

「了解‼」

 

二人はデバイスを大男へと突き付ける。

 

「「チェックメイト」」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼」

 

二人の攻撃によって、大男はその巨体を今度こそ、地面へと打ち付け動かなくなるのであった。

 

「まさか、こんな巨体が出て来るなんてな………」

 

「奴らの亜種ですかね?」

 

「こんな奴がウジャウジャいたら、誰も生還できねぇよ………だが、今後も続く可能性はあると言う事は覚えておいた方が良いな」

 

「そうだな………早く輸血パックを探し出さないと」

 

「そうだった。肝心な事を忘れていた。おっ、あったぞ‼」

 

「………どれがどれなのか判らないので、全部持って行きましょう」

 

「そうだな」

 

二人はありったけの輸血パックを近くにあったバックに詰め込み、外へと脱出する。

 

「そう言えば、この病院って結構な数の奴らが居た筈だよな?」

 

「………言われてみれば……可笑しいですね。声は聞こえているのに…………まさか⁉」

 

「そのまさか、だろうな」

 

俊輔が言うと同時に、病院の窓、玄関、屋根から夥しい数の奴らが現れる。

 

「やっぱりこうなるのですね‼」

 

「持久戦待った無しかよ‼」

 

二人がデバイスを掲げた瞬間、聞きなれた少年の声が二人の耳に聞こえた。

 

「二人とも、伏せて‼」

 

「空、伏せろ‼」

 

俊輔はすぐに空の頭を掴み伏せさせると、アサルトライフルの音とは違った銃声が辺りを響かせた。そして、夥しい数の奴らは跡形も無く微塵にされてしまうのであった。

 

「オイ、コータ。そいつをどこで手に入れたんだ?」

 

「あそこの銃取扱店に転がってた。弾はなんでか知らないけど、このアサルトと同じ弾薬だったんだ」

 

コータはそう言うとマシンガンを片手に握って車から降り立った。それと同時に孝、永、田丸、あさみの四人が車から降り立つ。

 

「なんで俺達に相談なしに行くんだよ。ちっとは相談位しろよな」

 

孝は俊輔達に苦言を呈する。

 

「スマン。あの場では相談できそうにないしな………それに俺達がやった方が早いと思ってな」

 

「確かにそうだけど………それで? 輸血パックは?」

 

永の言葉に俊輔と空は顔を見合わせると、地面に置いておいたバックに指をさした。

 

「どれがどれなのか判らなかったから、全部持ってきた」

 

「どれもキンキンに冷えてやがるぞ‼」

 

二人はそう言うとサムズアップするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達と合流した孝達は、自分達の出番が無いと知り安心してショッピングモールへと戻る。

そして、俊輔はある人物と待ち合わせをしていた。

 

「来てやったわよ。俊輔」

 

「スマンな。沙耶」

 

二人は向かい合う席に座ると、一向にしゃべる気配が無かった。と言うよりもどう話を切り出せば良いのか迷っていたのである。

 

「「あの‼」」

 

「俊輔、アンタから先に言いなさい」

 

「いや、ここは沙耶から……と言いたいが。俺から話すわ。あの時はすまない。きつい言葉を言ってしまった」

 

二人とも譲り合うつもりだったが、俊輔が意を決して沙耶に謝罪した。

 

「い、いや‼ 私の方こそごめんなさい………あの時は冷静になれてなかったわ」

 

「いや、あの時の俺の方が悪いんだ。お前が謝る事は無い」

 

「違うわよ。冷静になれていなかった私が‼」

 

「俺が‼」

 

「私が‼」

 

二人は顔を見合わせた瞬間、同時に笑いを堪えられずに笑ってしまう。

 

「「プッ……ハハハハハハハ‼」」

 

二人が些細なケンカをしていた事に気付き、可笑しくなってしまったのである。

 

「久々に笑った」

 

「私もよ……俊輔。大丈夫だった?」

 

「まぁな………でもこれからが心配だ」

 

「どう言う事?」

 

俊輔の言葉に沙耶は尋ねると、俊輔はフォートレス・シントミュージックの待機状態を取り出し、モニターを展開させると、そこには顔無の大男の画像を映し出す。

 

「顔が無い? 弱点が無いじゃないの‼」

 

「ああ、確かにな。何度も砲撃して風穴を開けても意味が無かった。だけどな………ここを見てくれ」

 

俊輔はそう言うと画像を拡大する。

 

「胸の部分………何? この口の様な物」

 

「コイツが、大男の弱点だったんだ。空が気付いたんだけどな」

 

「そう………無事だったなら安心したわ………だから」

 

「………判った」

 

二人はこの後、誰もいない部屋でニャンニャンするのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたらどしどし送ってください‼

次回の更新は不明ですので、悪しからず。


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第三十八話

完成したので投稿します


俊輔達がショッピングモールに戻って二日が経った。

既に俊輔達は次にどう動くのか、作戦会議を行うのだが…………

 

「ところで………なんであさみさんもいるんですか?」

 

「本官は皆さんと一緒に行動しようと思いましたので‼」

 

コータの質問にあさみは敬礼をしながら答えるが、俊輔達にとっては問題の種にしかならなかった。

 

「いや、それは良いんですけど………アナタの本職は警察官でしょ? なら、そう言う行動をすると言う選択肢は無かったのですか?」

 

「ありません‼」

 

俊輔の言葉にも即答で答えるほどであった。

 

「ワン‼」

 

「ジーク? どうかしたのか?」

 

ジークは何かに反応し、窓から外へ向けて咆えていた。

 

「なっ⁉ 人が空を飛んでいる……怪奇現象ですか⁉」

 

「シグナム達か………一人連れているな………空、屋上に行くぞ」

 

「はい」

 

俊輔はすぐに誰が向かって来ているのか判ったので、空を連れて屋上に向かって行く。

 

「………」

 

その姿を見ていたあさみは、何かを決断したかのように俊輔達の事を尾行するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナム達は屋上に降り立つと、抱えていた女性を降ろした。それと同時に、俊輔と空が屋上へと到着した。

 

「シグナム達、ご苦労様」

 

「主、ただいま戻りました。東署から戻る際に生存者がいた為、保護しました」

 

「そうか……初めまして。俺の名は山本俊輔です。こっちは、山城空です」

 

俊輔はシグナム達が保護した婦警に自己紹介をする。

 

「初めまして。私の名前は松島由香里です」

 

「それで、松島さんは何処へ向かわれている最中でシグナム達に助けられたのですか?」

 

「私は東署へ行こうとしていたのですが、ゾンビに驚いて悲鳴を上げてしまったんです。その時に助けられました」

 

「そうですか………「松島先輩‼」ッ⁉」

 

由香里が助けられた経緯を教えてもらった瞬間、俊輔達が出て来た扉からあさみが飛び出してきた。

 

「ついて来たのかよ………面倒な事になった」

 

俊輔はあさみがこちらに来ているのを見ながら呟く。確かに、俊輔や空たちの魔法の存在を知っているのは孝達、高校から一緒に逃げて来た者達だけである。

 

「どうしてここにいるのですか⁉ 東署に応援を呼びに行ったのでは無いのですか‼」

 

「それについてだけど、東署には誰もいないと言う事らしいの」

 

「どう言う事ですか?」

 

「シグナムさん達に教えてもらったのよ。東署には誰もいないってね。居たとしても化け物になった者達だけ…と言う事らしいわ」

 

由香里があさみに説明したが、あさみはそれを受け入れられない様子であった。

 

「じゃぁ、誰見助けに来ないと言う事ですか………そんな…………」

 

「だが、俺達が居る」

 

「え?」

 

あさみの絶望の言葉を言った瞬間、俊輔は自分達が居ると言う。だが、あさみにはただの高校生に何が出来るのかと噛み付く。

 

「たかが高校生である貴方達に何が出来ると言うのですか‼ 私達を、全員を助けてくれるとでも言うのですか‼」

 

「確かに俺達はあさみさんが言う様に、高校生でした………でもね、俺にはいや、俺達には皆さんを助けられる力を持っています」

 

「どう言う事ですか?」

 

「言葉で言っても納得しないでしょうから………空、孝達を呼んで来てくれ」

 

「判りました」

 

俊輔に言われて、空は孝達を呼ぶために戻った。

 

「孝達が来てから俺達の力をお見せしますよ」

 

俊輔はそう言うと獰猛な笑いを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俊輔君、お連れしました」

 

「どうかしたのよ、俊輔」

 

「いや、なに。俺に力を見せようと思ってな」

 

『あっ』(察し)

 

俊輔の言葉に孝達は察した様子であった。

 

「でも、戦車を出すんですか?」

 

「いや、アレも一つだが………俺の本気を出そうと思ってな………」

 

俊輔はそう言うと懐に仕舞っているデバイスを取り出した。

 

「まさかと思うけど…………駐車場にいる奴らを消滅させる気?」

 

「そうと言ったら?」

 

「…………やっておしまい‼」

 

沙耶に尋ねられ俊輔はニヤリと笑うと、沙耶は諦めた様子で俊輔に殲滅する様に指示を出した。

 

「了解しました、我がお姫様」

 

「ッ⁉」

 

俊輔にお姫様と言われた沙耶は顔を真っ赤にした。

 

「さてと、あさみさん。松島さん。これが俺の力です。フォートジック、セットアップ」

 

『All right My Master』

 

俊輔の声でフォートジックはバリアジャケットを展開する。

 

「本気の本気で行くぞ………スターダスト・スパークル・ブレイカァァァァァ‼」

 

俊輔の本気の砲撃により駐車場にウヨウヨいた奴らは文字通り、消滅した。

 

「すっきりすっきり………ん? どうかしたのか?」

 

俊輔の本気の砲撃に孝達は驚いていた。以前に見た砲撃よりも威力が増しており、駐車場は地面を抉られていたからである。

 

「やり過ぎではないのか?」

 

「そうか? やるんだったら本気でやる。これが俺の流儀だ!」

 

俊輔はそう言うとサムズアップするが、力が抜けたのか膝から崩れようとした。だが、直ぐに沙耶が駆け寄り俊輔の体を支えたのである。

 

「スマン」

 

「ほんと、バカね。本気のアンタが力を出したらこういう事になるって前にもあったでしょうが………」

 

「…………そう言えばそう言う事もあったな………気を付ける」

 

俊輔は沙耶にそのまま身を預けるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、よろしくお願いします‼


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第三十九話

本編の前に、まず初めに今回の災害で被災された方々に対して、早く復興が成される事を心より祈っております。
また、お亡くなりになられた方々に対して、お悔やみを申し上げます。



俊輔達が下へと行くと、そこにはショッピングモールに避難していた人たちが集まってくる。

 

「さっきの光は何だ⁉」

 

「助けが来たのか‼」

 

「わしらは助かるのか‼」

 

全員が俊輔達に詰め寄ろうとした。その時、一発の銃声が響いた。

 

「皆さん、落ち着いてください?」

 

『あっはい』

 

銃を放ったのはあさみであった。あさみはニコヤカな笑顔で全員に言葉を掛けると、その場にいた全員が頷いた。

 

「あれは全員が頷くな………」

 

「はい………」

 

俊輔と空はその光景を見ながら呟く。

そして孝達はと言うと“おっとりとした人を怒らしてはいけない”と“俊輔以上の迫力”と思っていたのである。

 

「さて、皆さんに一つの朗報です。駐車場にいたゾンビ擬きはいなくなりました。と言っても、先程の光で消え去ったのですけど……」

 

あさみは孝達以外の人達に説明する。その言葉にその場にいた全員が驚くのだが、先程の光を見た事により納得する。

 

「それで、儂らはこれからどうするのだ‼ このままここで留まっているつもりか‼」

 

「それについてはホンカンには関係の無い話です」

 

『なっ⁉』

 

この言葉には孝達も驚く。まさか警察官であろう者が職務放棄をしたからである。

 

「警察官が何を言ってるんだ‼ 俺達を護る為にいるのだろうが‼ それをなんだ……関係の無い話だと……ふざけるんじゃないぞ‼」

 

「ふざけてなどいません。ホンカンの任務はここで終わったのです。あとは皆さんで決めて行動してください」

 

まさかの無責任を感じさせる言葉である。だが、今の世界は秩序など存在しない世界と言っても過言では無いのである。警察官に頼るだけでは生き残れないのである。

 

「ホンカンもホンカンなりの考えで行動します………ですから、いままで未熟なホンカンに付いて来てくれた事に感謝します‼」

 

そう言うとあさみは敬礼を送った。

 

「ふ、ふざけるな‼ 無責任にも程度っていうもんがあるだろうが‼ それを何? 自分達の考えで行動をしろだと…………ふざけんじゃねぇぞ‼」

 

一人の青年が包丁を片手に走り出した。

 

「お、オイ‼ 待ちやがれ‼」

 

一人の男が青年を追いかけに走り出した。

 

「まさかのこう言う形になるなんてな………だが、仕方が無い事だな」

 

「仕方が無い事だと? お前達は何をっているのか判っているのか‼ お前たちの親の顔を見てみたいものじゃ‼」

 

「残念ながら、俺達はその親を探しに行くのです。俺達は今すぐにでもここを脱出します。後は皆さんのご武運を祈ってます」

 

そう言うと孝は歩き出し、それに釣られる様に永達もついて行った。

 

「俊輔さん…どうしますか?」

 

「どうするもこうするも……俺達は孝達について行く。空、お前はどうするつもりだ?」

 

「決まってるじゃないですか。僕もあなたについて行きます」

 

空の言葉に俊輔は静かに笑いだした。

 

「それじゃぁ、動き出しますk「入って来やがった‼」なっ⁉」

 

俊輔が動き出そうとした瞬間、先程の青年を追った男性が走りながら戻って来た。だが、その後方には多くの奴らの姿が見受けられた。

 

「なんでだ‼ さっきの光で消えたんじゃなかったのか‼」

 

「まさか……奴らは立体駐車場にいた奴らか………こいつはめんどい事になったな…………」

 

俊輔は奴らを呑気に眺めていた。

 

「呑気に言ってるんじゃねぇぞ‼ どうするんだよ‼」

 

「………孝、命令権を俺に寄こせ」

 

「判った。頼むぜ、リーダー代理」

 

俊輔は孝にリーダーとして代理を申し出ると、孝もこの場合では俊輔の方が良いと感じ、リーダー代理を頼む。

 

「それじゃぁ、命令するぞ。孝、永、コータはすぐに得物を取りに戻れ‼ 沙耶、麗、毒島先輩は孝達の援護だ‼ ヴィータ、シグナムも付いて行け‼」

 

『了解‼』

 

俊輔の指示で孝達は動き出した。

 

「俺とシャマル、リインフォース、ザフィーラ、空はここから攻撃する。ザフィーラと空は近距離攻撃。俺とリインはユニゾンするぞ‼ シャマルはザフィーラと空に魔力供給だ‼」

 

『了解‼』

 

俊輔の指示は的確であった。ザフィーラと空はすぐに下へと降り立つと迫りくる奴らに攻撃を仕掛けて行き、その数を減らしていく。

 

「行くぞ、リイン‼」

 

「はい、我が主‼」

 

「「ユニゾン・イン‼」」

 

俊輔とリインはユニゾンすると、上空に飛び立った。そして、フォートジックを掲げると夜天の書が俊輔の手に収まった。

 

「さてと、ド派手にいきますか‼ 空、ザフィーラ上がれ‼」

 

「御意」

 

「判った」

 

二人が上がるのを確認すると、俊輔は夜天の書のページを捲り一つの箇所で止めた。

 

「カートリッジ、フルロード‼」

 

俊輔の声にフォートジックはスライドを十五回もブローバックさせる。それに合わせて魔力が空となった薬莢が吐き出されて行く。

 

「咎人達に、滅びの光を……星よ集え、全てを撃ち抜く光となり貫け、閃光‼」

 

≪Starlight Breaker≫

 

「「スターライト………ブレイカァァァァァァァァァァッ‼」」

 

フォートジックの銃身から放たれた法撃は、地上階に屯っていた奴らを跡形も無く消し去ってしまった。先程まで聞こえていた奴らの呻き声は、数が少なくなったのである。

 

「あっ、やり過ぎた」

 

「「「やり過ぎだ‼/です‼」」」

 

俊輔の呟きにシャマルとザフィーラ、空がツッコミを入れた。だが、それだけでは終わらなかった。第二波が迫っていたのである。だが、その時には俊輔達も各々の得物を手に取っており、狙撃戦へと転じていた。

 

「俊輔‼」

 

俊輔はリインフォースとのユニゾンを解き、地上へ降り立つと沙耶が俊輔に迫っていた。

 

「あれほど無茶はしないでって言ったでしょうが‼」

 

「今回はシャマルからの供給があったから問題ナッシングだ。だが、疲れたな」

 

俊輔はフォートジックをフォートレスモードへとチェンジさせると、狙撃へと入った。

 

「数は減らしてるんだ………許して」

 

「………それなんかい聞けば済むのかしら?」

 

「どうすれば許してくれる?」

 

「後で私と寝なさい」

 

「判りました」

 

俊輔と沙耶は狙撃をしながら会話していたのである。だが、奴らの数も既に少数となり、コータ、孝、永の三人の手によって全て消えたのである。

 

「さて、脅威はなくなったな…………俺達はすぐにここから出ます。皆さんは屋上に行ってください」

 

「お、俺達もついて行ったらダメなのか‼」

 

「皆さんを運べられるほどの足はありません。ですから、救助を待って下さい。それと、出口は頑丈にバリケードを張ってください。奴らの力は途轍もないので」

 

そう言うと、俊輔達はショッピングモールを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達が外へ出ると、先程の青年がバンの上で助けを叫んでいた。

 

「た、助けてぇ‼ ごめんなさい…ごめんなさい」

 

青年を一目見た俊輔はコータに銃を差し出す様に言う。

 

「コータ、銃を寄こせ」

 

「えっ? でも………」

 

「楽にしてやるだけだ………どうせ助けたとしても奴は死ぬ。だったら、ここで楽にさせた方が良いだろう?」

 

「…………」

 

コータは一悩みしたが、俊輔に銃を渡した。

 

「ありがとう…………これは、俺達の恨みでは無い。お前を楽にしてやるだけだ。あの世で神様に懺悔でもするんだな」

 

俊輔はそう言うと、引き金を引く。放たれた銃弾はバンの上で助けを呼んでいた青年の頭にヒットし、頭の中身を撒き散らしたのであった。



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第四十話

本日より、更新を再開させて頂きます。
長きに渡り、更新を停止していた事を謝罪させて頂きます。

お気に入り登録者が200名となりました。
皆様、この作品を読んで下さり、誠にありがとうございます。

これからもよろしくお願い申し上げます。


俊輔達がショッピングモールをでたすぐに、陸上自衛隊のヘリが数機、飛行していた。

 

「無人偵察機のデータ通りだ……前方距離400のショッピングモール屋上にサインあり‼ 付近にも人影も視認‼」

 

「またアレじゃないのか?」

 

「………」

 

ヘリの操縦席に座る二人は、今までも同じ事があり、今回も同じではないのかと思っていた。

 

「一応、FLIRで確認してみる…………体温が高い‼ 生きているぞ‼」

 

「今回は当たりだな‼ すぐに僚機に伝える‼ こちらランサー6 ランサー6。シーカ―1だ‼ 3名の要救助者を発見‼ 目標に追い詰められている‼ 危険だ‼ 送レ‼」

 

「ランサー6より全機へ告げる‼ これより要救助者の救出作戦を開始する‼ 目標を速やかに駆逐せよ‼」

 

『了解‼』

 

隊長機であるヘリからの通達に全機が答える。すると、直ぐに隊長機から各機へ指示が送られる。

 

「6より全機へ‼ 目標は要救助者の至近にあり‼ 繰り返す。目標は要救助者の至近にあり‼ 先頭挺団は屋上にいる目標に対してガンで対応‼」

 

「先頭挺団、了解‼」

 

指示を受けたヘリは、屋上で生存者に襲い掛かろうとしている奴らに対して、30㎜チェーンガンが掃射され、奴は文字通り、木っ端微塵となった。

しかし、屋上にすべての奴らが集まっているかと思われたが、非常階段から数体の奴らが登っている姿を発見する。

 

「シーカ―1よりランサー6。非常階段にも目標多数、屋上に接近中‼ このままでは要救助者に危険あり‼ 繰り返す‼ 目標多数、屋上に接近中‼ このままでは要救助者に危険あり‼」

 

「ランサー6よりランサー1‼ 非常階段をミサイルにて破壊しろ‼」

 

「ランサー1、了解‼ ミサイルを非常階段に設定………発射‼」

 

ヘリから放たれたミサイルは、非常階段を屋上に繋がる部分に着弾し、非常階段を破壊する。これによりショッピングモール内にいる奴らは、屋上に上る手段は内部階段からしか無くなったのであった。

 

「シーカ―1よりランサー6‼ 非常階段は破壊された。しかし、屋上には目標多数あり‼」

 

ヘリはすぐに動きだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上では、孝達の助言もありバリケードが敷かれていた。しかし、奴らに対してあまり効果は無かった。奴らはバリケードを無理やり上から登ろうとしていたのである。

 

「なぜ、儂がこんな事をしなくちゃならんのだ‼」

 

一人の男が剪定バサミで登ろうとしていた奴らの首を斬る。これにより奴らの動きが止まった。

また、他の生存者達もスパナやレンチを持って奴らと戦っていた。

しかし、一人の女性が出刃包丁を片手に、陸上自衛隊に批難する。

 

「何、ノロノロしてるのよ‼ このままじゃ、殺られるじゃないの‼」

 

「良いから、お前も戦え‼」

 

批難していた女性に、レンチを持つ男性がツッコム。

すると、二機のヘリが屋上上空に停空すると、一機のヘリからブローニングM2重機関銃が火を噴き、バリケード外にいる奴らを殲滅させると、もう一機のヘリからロープが降ろされた。

 

「ま、まさかアレを登れと言うのか⁉」

 

「ち、違うわ‼ あれを見て‼」

 

剪定バサミを持っていた男性が、ロープを使って自分達で登れと勘違いするが、出刃包丁を持つ女性は、指でヘリから降下する自衛隊を指す。

屋上に降り立った自衛隊は、89式小銃を生存者達に向けたのである。

 

「動くな‼」

 

「どういう展開⁉」

 

女性は武器を床に落とし、抵抗しないと意志を見せたが、自衛隊には関係が無かった。女性に向けて引き金を引いたのである。

 

「ヒッ⁉ あれ?」

 

女性は自分が撃たれたと勘違いしたが、そうでは無かった。後ろで女性を襲うとしていた奴らを撃ったのである。

これに続く様に、他の自衛隊も89式小銃を使い、奴らを撃って行く。

 

「危険ですから、その場に伏せて下さい‼ 屋内に誰か生存者は残っていますか‼」

 

「残ってないわ…誰もいないわ‼」

 

自衛隊の一人が女性に、ショッピングモール内に生存者がいるか尋ねたが、既に孝達は脱出した後の事であり、屋内には誰もいないのである。

他のヘリからも自衛隊が降下し、奴らを殲滅していく。しかし、奴らの数が減る様子が無かったのであった。

すると、一人の隊員が何かを発見した。

 

「隊長‼ 目標は屋上階段口から入って来ています‼」

 

「……あそこか。ドック6よりランサー6。支援を要請する‼ 屋上階段口をガンで破壊してくれ‼ 屋内には生存者はいない‼ 繰り返す。屋内には生存者はいない‼

 

『了解‼』

 

一機のヘリが動き出すと、30㎜チェーンガンで屋上階段口にいる奴らを木っ端微塵にしていく。これにより、屋上階段口は瓦礫の山と化し奴らが入ってくることは不可能となったのである。

自衛隊はすぐに89式小銃で奴らを殲滅し、屋上の脅威は去ったのである。

すると、一人の隊員がアーマーの一部を外した。

 

「お疲れ様でした」

 

「いや、どうも……」

 

これには、生存者達も驚きであった。てっきり強面の男性が出て来るのかと思いきや、優し気な風貌を持つ男性だったのである。

 

「すぐに脱出します。ですが、今は脅威が去ったので少し休憩をします。皆さんもお疲れですからね」

 

「はぁ~………でもすぐに来れたもんだな」

 

「沖合の輸送艦からこちらへ飛んで来たのです。無人偵察機が貴方方を発見したので……命令であれば、どこへでも駆けつけますよ」

 

優し気な風貌を持つ自衛隊が空を指さすと、無人偵察機が自分はここだと言わんばかりに、機体を揺らして太陽の光を使って自己アピールをした。(無人偵察機ってこんな事出来る筈が無い)

 

「いや、そう言う話じゃなくて………ほら……なんだっけか……そう‼ EMPとか言う攻撃で機械が全ておじゃんになったはずと言う話で………」

 

「お詳しいですね。核弾頭は洋上で爆発しましたから、無傷だった地域も多いんです。目標はどこで湧きだすか判りませんから、安心できませんが………ですが、一般人である貴方がEMP攻撃を知っているのはなぜですか?」

 

自衛隊の疑問は当たり前の話である。目の前にいる男性は極普通の一般時にしか見えていなかった。また、軍ヲタでなければ、詳しい内容は判らない筈であった。

 

「あ、あたしたちじゃないわ‼ とんでもない高校生達がいて………」

 

「まさか、貴方方はその高校生たちを‼」

 

「違うよ……脱出したんだよ………」

 

この言葉にその場にいた自衛隊員は驚く。大人達でも協力して脱出する事が出来るかどうか判らない状況で、高校生たちが脱出できるとは思っていなかったのである。

 

「脱出? 自力でですか? 貴方方、大人の力も借りずにですか?」

 

「いや、彼らは………」

 

「何と言うか…………」

 

剪定バサミを持っていた男性と、出刃包丁を持っていた女性は孝達の事を思い浮かべたのである。

 

「彼らは非常階段を使って降りて行ったんです……その時に見たのが………何だっけな? 戦時中に使われていた戦車二台で脱出したんだ………」

 

「戦車ですか? それは自衛隊や軍しか持っていない筈……一般人がましてや高校生が戦車を持っているなんて信じられませんけど………」

 

「俺達は見たんだよ‼ ああ‼ 何だったか思い出せねぇ‼ なんかのアニメで登場していたんだよな‼」

 

「戦車………アニメ………平口‼」

 

「はい‼」

 

優し気な風貌を持つ男性が、一人の隊員を呼び出した。

 

「隊長、何でしょうか?」

 

「ヲタクであるお前なら判る筈だ。最近のアニメで戦車が出るアニメと言えばなんだ?」

 

「戦車が出るアニメ………戦車だけですか?」

 

「いや、美少女も出ていた………高校生ぐらいの………」

 

「………ガルパンですね」

 

「ガルパン? そう言えば茨城に陸上自衛隊の10式等が展示されるために行っていた気がするが………」

 

「そうですよ。隊長。ガルパン。正式名称はガールズ&パンツァ―と言うアニメです」

 

「そうだ‼ それだ‼ そのアニメで登場する黒森峰とか言う学校の隊長が乗る戦車と劇場版に出て来る緑の戦車だ‼」

 

この言葉で隊長は平口を見ると、合点が行ったかの様に手を合わせる。

 

「一両はティーガー1ですね。もう一台はパーシングとチヤーフィーですけど……「パーシングだ‼」名前だけでよく判りましたね?」

 

「あのアニメは何度も見てたからな‼」

 

「ですが、高校生が第二次世界大戦で使われていたドイツ戦車とアメリカ戦車を持っているとは……」

 

「自分も信じられません……」

 

二人は男性の言葉を信じようとはしなかった。だが、後に俊輔達とあった際に、本当に戦車を見る事になるとはこの時、自衛隊員は誰も思いもしなかったのであった。



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第四十一話

ストックがあるので、週一更新で行きたいと思っています。


その頃、俊輔達は戦車二両で街中を疾走していたのである。

 

「ヒャッハー‼ サイコーだぜ‼」

 

「なんでアンタはパンツァー・ハイになってるのよ‼」

 

「決まってるじゃないか‼ 街中を疾走しているんだぞ‼ これでパンツァー・ハイになるなって言われても、無理な話だぜ‼」

 

ティーガー1に乗る俊輔と沙耶、孝、冴子の四人である。因みにだが、パーシングではコータがパンツァー・ハイになっていたらしい。

 

「俊輔‼ 前方に奴らよ‼」

 

「いっちょ、ぶちかましてやらぁ‼」

 

「良い加減にしなさい‼」

 

「ギャフン⁉」

 

俊輔は沙耶にどこから出して来たのか不明な、ハリセンで頭を叩かれ操縦席に頭を打ち付け、正気に戻る。

 

「すまねぇ、久々にティーガーを動かしていたら、ついな」

 

「ついじゃないわよ‼ まぁ、良いわ。リーダー? どうする?」

 

沙耶は正気に戻った俊輔に呆れつつ、孝に尋ねる。奴らを殲滅させるのかこのまま突っ切るのか。

孝は少しだけ考えたが、弾薬の事も考え、この場は撃たずに突っ切る選択をする。

 

「弾薬が勿体無いから、このまま突っ切るぞ‼」

 

「了解だぜ、リーダー‼ 空‼ 聞こえてるな‼」

 

『聞こえてますよ、俊輔君………』

 

「どうかしたのか? なんか疲れているぞ?」

 

『………俊輔君同様にコータさんもパンツァー・ハイになってたんですけど………』

 

「なにがあった?」

 

『………言わせないで下さい』

 

「……何と無く察した。あさみさんが何とかしたんだろ?」

 

『その通りです。それじゃ、行きますよ‼』

 

「行くぞ‼」

 

俊輔と空は戦車のアクセルを踏み込む。アクセルを踏まれた戦車二両は、速度を上げ奴らを轢きミンチにしていく。

 

 

 

 

パーシング内で由香里は思い出したかのように声を急に上げた。

 

「ああ‼ 思い出したわ‼」

 

「びっくりした……何を思いだしたんですか?」

 

操縦席に座る空がびっくりしてアクセルを踏む力を一瞬だけだが、緩めてしまう。だが、直ぐに持ち直しアクセルを全開に踏み込ませる。

 

「J-ALERTが生きている筈だわ‼ 警察署全部にEMP対策されている筈だから‼」

 

「判りました。俊輔君に伝えます。俊輔君、聞こえますか?」

 

『聞こえていた。孝、良いな?』

 

『ああ、一つでも情報は欲しい』

 

無線機先では孝と俊輔が相談していたが、いまは情報不足である。救援の見込みの無い警察署でも情報が一つでもあると判れば、話は別である。

 

『先にシグナム達に確認させる。シグナム、頼めるか?』

 

『判りました。ヴォルケンズ全員で向かいます。リインフォースは主の元に』

 

『了解した。烈火の将』

 

早々に作戦が決まると、上空で飛行していたヴォルケンリッター達は一足先に東署へと向かう。

 

『俺達はこのまま進む。事故が無い様にな』

 

「了解です」

 

戦車二両は東署に向けて、静かな街中を疾走するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、避難所となっている床主第三小学校では生存者達を受け入れていた。しかし、ある一団を受け入れてからは、とある問題が蔓延り始めていたのである。

 

「皆さん‼ 良いですか……我々はこう言う時だからこそ一致団結しなければなりません‼ いまや警察や自衛隊は存在していないのと同じような物です‼ 我々が一致団結すれば、いまの世の中を変えて行くのも容易くもありません‼」

 

一人の男が避難してきた人々に説法を説いていた。男の説法を聞いていた人々は、神を崇めるかのような目をしていた。床主第三小学校に避難してきた人々は、今の生活に不満を抱いていたのである。

だが、この男が現れてからと言うもの、人々の多くが信者になって行ったのである。

 

「良いですか、皆さん‼ 我々が一致団結すればこの学校で一つの国が出来上がるのです‼ 今こそ、立ち上がる時です‼」

 

この男の説法は効果覿面であった。しかし、男は行動は今と言っておきながら矛盾な言葉を放つ。

 

「ですが、皆さん。我々は武器を持たない一般人です………だからこそ、武器を集めましょう。まず始めは、近くにある民家で工具類を集めましょう」

 

男はそう言うと、とある道具を持ちだした。それは日曜大工をしている旦那がいる家庭では、ごく当たり前に存在する道具であった。

 

「ハンマー、レンチ、包丁、皆さんが思い浮かべる武器をありったけ集めて下さい。そして、武器が揃い次第…………我々は動くときなのです‼」

 

男の言葉に、聞き入っていた人々は夜な夜な、静かに行動に移すのであった。

 

 

「紫藤先生? 私達はどうすればいいですか?」

 

「皆さんは、我々に協力してくれる人々を集めて下さい。出来れば、この学校にいるすべての人々が良いですね」

 

「判りましたわ、先生」

 

生徒達は密かに動き出す。

そして、後にこの学校は戦場と化すのだが、この時、紫藤にはそんな事は思いもしていなかったのであった。

 

「さぁ、始めましょう。私の、私だけの国を‼」

 

一人になった紫藤はそう呟き、静かに嗤うのであった。



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第四十二話

シグナム達は、東署内部に入っていた。

 

「シグナム、どうするんだ?」

 

「我らの役目は主が安心して入れるようにするだけだ………だから、紫電一閃‼」

 

シグナムはレヴァンティンを横振りする。すると、お手洗いから出ようとしていたカップルだった奴らが、首と体が離れ首が廊下へ転がる。

 

「今は、東署内部に蔓延る奴らを駆除するぞ‼」

 

「ああ‼ グラーフ・アイゼンの錆にしてやるぜ‼」

 

「クラールヴィントで縛るわよ」

 

「シュッツ・シルトで護る」

 

シグナム達は動き出した。階段から銃を指に引っ掛けたまま降りて来る元警官だった奴らは、シグナムの攻撃によって駆逐され、牢屋に収容されていたであろう犯罪者だった奴らは、ヴィータのアイゼンによってミンチとなる。

すると、シャマルはクラールヴィントを使い、建物内部を調べる。だが、内部を調べると言っても武器では無い。動く者が居るかどうかの確認である。

 

「数階に何体か奴らの反応があるわ………」

 

「そうか、シャマルは残って指示をくれ。ザフィーラは護衛だ」

 

「判った」

 

シグナムはヴィータを連れて階段を上がって行く。その度に、遭遇する奴らには容赦のない攻撃で殲滅するのであった。

 

≪シグナム、聞こえる?≫

 

「聞こえるぞ」

 

≪東署に動く物体は私達だけしかないわ………お疲れ様。戻って来て頂戴≫

 

「判った。ヴィータ、戻るぞ」

 

「と言う事は、ここには奴らはいないと言う事か?」

 

「ああ」

 

二人はシャマルの通信で、玄関まで戻るのであった。

 

それから数分後、俊輔達が乗るティーガー1とパーシングが到着する。

 

「遅れた。内部はどうなっている?」

 

「シグナム達によって殲滅されています」

 

「そうか………そう言っていると戻って来たな」

 

俊輔はシャマルからの報告を聞いていると、階段からシグナムとヴィータが降りて来る。

 

「主、内部にいる奴らは我々で殲滅しました」

 

「助かる。さて、じっくりと内部探検でもしますか‼」

 

俊輔はそう言うと、他の面々もノリノリで手を上げて答える。

 

「先にけん銃保管所に行きましょう。もしかしたら銃弾や銃が残っているかも知れません」

 

「それはあり得ません」

 

「どうしてそう言いきれるの‼」

 

由香里の提案にコータが否定すると、由香里は感情的にコータを叱り付ける様に声を荒げる。

 

「今の警察は一つでも武器が多く必要です。では、どこから真っ先に手を出しますか?」

 

「それはけん銃保管所……あっ‼」

 

「そう言う事です」

 

コータの言葉に由香里は自分が先ほど、コータに怒ったのは間違いだと思い、コータに謝る。

 

「ごめんなさい。私は警察官であれあ当たり前の事を忘れていたわ………」

 

「大丈夫です。皆も思っていたと思いますし」

 

そう言うとコータはみんなを見渡す。俊輔と空は、既に判っていた様子であったが、孝を始め永、麗、沙耶は顔を背けた。

 

「だが、証拠品には手を出していないだろう?」

 

「そうか‼ 証拠品は使ってはいけない事になっているんだった‼ だったら、麗‼」

 

「な、なに⁉」

 

永に声を掛けられた麗は驚き、肩を震わせた。

 

「さ、3階よ‼ 3階にあるわ‼ 小学生の頃に見せて貰った記憶があるから‼」

 

「そう言う事なら話は早い‼ 俺と空が先行する‼ ついてこい‼」

 

そう言うと俊輔は空と一緒に階段を駆け上がって行く。孝達も着いて行き、殿としてシグナム達が就いていた。

なんの障害も無く、俊輔達は証拠品保管庫の前に来る。

 

「さて、時間を掛けても良いんだけど………待つ気になれないから、ここは一気にやらせてもらう‼ みんなは下がれ」

 

俊輔が指示を出すと、孝達は後ろへ下がり、入れ替わる様にシグナム達が前に立つ。そして、シールドを展開させる。俊輔が何をやろうとしているのか判っているかのようであった。

 

「判っているな、シグナム達は………フォートジック‼ フォートレスモード‼」

 

《Yes My Master‼》

 

フォートレス・シントミュージックは二つある形態の一つである“フォートレスモード”に変形する。

 

「ディバインバスター‼」

 

漆黒の魔力による法撃により、証拠品保管庫の扉は呆気なく吹き飛んだ。

 

「すっきり、すっきり」

 

俊輔は一仕事を終わらせたかの様に、汗も掻いていない額を袖で拭う。

 

「何言ってるのよ……入るわよ」

 

「へいへい」

 

沙耶の言葉で全員が証拠品保管庫内部に入る。すると、コータが何かを見付けた。

 

「これは‼」

 

コータが手に取ったアタッシュケースの中には一丁のショットガンが収納されていた。

 

「M1014JSCS――ベネリM4スーパー90だ‼ アメリカ海兵隊やイギリス陸軍も使っている戦闘用ショットガンだよ‼ 小室、今度からこれを使いなよ‼」

 

コータはそう言うと、慣れた手つきでベネリM4スーパー90に弾を込め、孝に手渡す。

 

「重いな……イカサよりも重い」

 

孝は手慣れて来たイカサからベネリに変える事に抵抗があったが、コータはベネリの利点を伝える。

 

「でも、そっちの方が戦うには向いているよ。ガス圧利用でセミオートだから楽だよ‼ それに、ドア・ブリーチャーもついているから槍代わりにもなる」

 

「そう言う事なら、変えるか………でも他の銃はどうなんだ?」

 

孝はイカサからベネリに変える事を決心する。だが、保管庫内には多くの銃が残されていた。

 

「今の銃の方がマシだよ……でも、弾はあるよ」

 

コータが言う様に、机の上には様々な銃が置かれ、傍らには弾の入っている箱が幾つも積みあげられていたのである。

 

「良し、情報を手に入れに行くぞ」

 

俊輔は保管庫内の捜索も粗方、終わらせたところで、次の所に向かう様に急かす。

 

「そうね……平野。けん銃だけで良いから、バックに詰め込みなさい」

 

「…………判りました」

 

沙耶の指示を受け、コータはハンドガンのみをバックに積み込み、弾の入った箱も同様に詰め込んで行く。

 

「どうして、そんなに銃が必要になるんだ?」

 

「…………みんな、自分の事は自分で決められるようにだよ………」

 

「安心しろ。もし、お前達の中で奴らに噛まれたりでもした時は………俺が介錯してやる」

 

コータの言葉に俊輔はフォートレス・シントミュージックを撫でた。

 

「それじゃ、行くぞ‼」

 

暗くなった雰囲気を払拭するかの様に、俊輔は声を張り上げた。

そして、保管庫を後にする時、孝はいままでお世話になったイカサに敬礼を送るのであった。



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第四十三話

床主東署の通信指令室に俊輔達はなだれ込む。

 

「ここも全滅か……まぁ、シグナム達が先に殲滅してくれているんだ………判っていた事だけどな」

 

俊輔は通信指令室内部に誰もいない事に、当たり前のように感じてしまっていた。

 

「ねぇ、沙耶ちゃん。あそこ、電気がついてるよ?」

 

「退きなさい‼」

 

ありすに言われ、沙耶は優しくありすを退け電気がつくモニターを見る。

 

「ジェイアラートは生きているわ‼」

 

「じぇ、じぇい……なんだ?」

 

「J-ALERT、全国瞬時警報システムの事よ‼」

 

沙耶はまさか本当に警察に対EMP対策が成されているとは半信半疑であたが、生きていると判れば話は別である。すぐにキーボードを操作するが、幾らやっても欲しい情報が出る事は無かったのである。

 

「ダァァァ‼ なんでこうも私達に関係ない情報ばっかり出るのよ‼」

 

沙耶はキーボード横を叩く。すると、ありすが沙耶が知らぬ間にキーボードの一部をクリックした。

 

「何してんの‼ ちびっこ‼」

 

「だ、だって……触ってみたかったもん」

 

沙耶に怒られ、ありすは涙目になる。しかし、沙耶がモニターを見た瞬間、アリスの頭を優しくなでた。

 

「怒鳴ったけど、ちびっこ。よくやったわ‼」

 

「ふぇ?」

 

ありすが触った場所は、今、俊輔達が欲しい情報を映し出すボタンだったのである。

 

「床主でも、自衛隊による救出作戦が行われているわ‼」

 

「救出? 救援の間違いじゃないのか?」

 

沙耶の言葉に孝は救援物資を送るのではないのかと勘違いしていた。しかし、今の世界では救援よりも救出の方が速いのである。

 

「街がこの有様よ? 救援よりも救出の方が生きている人間を助けるには正しいわ」

 

「そう言う事ですか……でも、どう言う予定なんです?」

 

コータも理解したのか、自衛隊による救出作戦の予定を沙耶に尋ねる。

 

「明後日の午後に数時間だけしか、救出作戦が実行されないわ……色々と物資が足りないのよ。仕方が無いわ。そして、救出作戦が行われるのは………新床第三小学校よ。私達の母校」

 

この言葉に麗、孝、永は驚く。

 

「そう言う事なら、話は早い。行くぞ‼」

 

「待って‼」

 

冴子が新床第三小学校に向かう様に言うが、麗が待ったを掛ける。

 

「あたしのお母さんとお父さんはどうなるのよ‼」

 

「沙耶、時間はまだあるな?」

 

「え、ええ。まだ大丈夫よ………イレギュラーが無ければの話だけどね」

 

「そう言う事なら、先に麗のお父さんの所に向かうぞ‼」

 

俊輔の言葉で、麗の父親の職場に向かうのであった。

 

だが、無駄足であった。いや、無駄足と言えば無駄足だが、麗の父親は生きていたのである。

麗の父親の職場に置いてあるホワイトボードには、麗の父親の筆跡で“生存者は、新床第三小学校へ‼”と書かれていたのである。

これには、麗も嬉しく永に抱き着いたのであった。

 

 

孝はすぐに作戦を決め、全員に通達した。

 

「麗の親父さんは新床三小にいる筈だ。そして、僕のお袋も‼ そして、自衛隊の救出作戦は明後日。だから、やる事は二つ。一つは、麗の実家に向かい、お袋さんの安否確認。その後で、新床三小に向かう。異論は?」

 

孝の言葉に全員、首を横に振る。

 

「良し、行くぞ‼」

 

俊輔達は、ティーガーとパーシングに乗り込む。シグナム達は魔力消費を抑える為に、ティーガーとパーシングのキューポラなどに腰掛ける。

 

「全車、パンツァーフォー‼」

 

『二両しかいませんけどね』

 

「言うな」

 

俊輔の号令で、二両は麗の実家へと向かうのだが、その前に補給物資を手に入れる必要があった。

 

「俊輔、コンビニが先にある筈よ。そっちに向かいなさい」

 

「空、先にコンビに向かうぞ‼」

 

『了解です‼』

 

二両はコンビニへ向かい、まだ食べられるものだけを戦車内部に持ち込んで行く。だが、雨も降り始め今からの紅軍は危険と判断した孝であったが、俊輔はそうでは無かった。

 

「戦車内部にいれば、余程の事が無ければ安全だ。それに、俺達には戦車と言う動く戦艦が居るんだぞ? 問題ない」

 

「でも、視界とかそう言う問題は………」

 

「それに関してだが、この戦車たちは特殊でな………防水対策もされているし、装甲の厚さも戦時中のよりも上がっている。生きている奴らに撃たれ様が、問題ない」

 

「窓は「防弾対策されているけど、なにか?」あっはい」

 

コータの言葉にも俊輔は論破する。

 

「なら、進むぞ」

 

「了解、リーダー‼」

 

補給も終わり、ティーガーとパーシングは雨の中、疾走していく。だが、段々と奴らの数が増してくるのである。

 

「奴らが段々と増えてきやがる‼ どうなってるんだよ‼」

 

「元からいたんでしょうが‼」

 

俊輔のぼやきに沙耶がツッコム。すると、孝が思い出したかのように俊輔に横の壁を通る様に言う。

 

「俊輔‼ 横の壁は板だ‼ 簡単に通れるはずだ‼」

 

「どう言う事だ?」

 

孝の言葉に俊輔は怪訝な声で尋ねると、孝は小さい頃に鬼ごっこで、横にある家の壁を壊した事を話す。

 

「そう言う事か……空、俺に続け‼」

 

『了解です‼』

 

俊輔は空の返事を聞くと、超新地旋回しティーガーを壁に向けると、アクセルを踏み込んだ。それにより、壁はティーガーの重量に呆気なく負けて、壊れてしまう。そして、先にある家を戦車で風穴を開け、ぶち破ったのである。

 

「アンタ、やり過ぎよ………」

 

「どうせ、この家の住人は奴らになっているんだ……問題ねぇよ」

 

俊輔が言う様に、壁を打ち抜いた家には奴らとなった中にしかいなかったのである。

 

「さぁ、行くぞ‼」

 

二両はそのまま孝の指示で、麗の実家に向かうのであった。



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第四十四話

ティーガーとパーシングが、家を打ち抜き大き目な道路に出る。

 

「ここから、どう行けば良いんだ?」

 

「目的地は、左に進んで十字路を一つ越え、その先のT字路を右に俺てすぐ先だ。距離はざっと200mはあると思う」

 

俊輔はティーガーを止め、孝に確認をする。その横にはパーシングが停車していた。

 

「空、聞こえているか?」

 

『感度良好です。俊輔君。麗さんも同じ事を言っています』

 

「雨足も強くなって来た。そろそろ、休憩を入れようと思うのだが……どうだ?」

 

俊輔はずっと走りっぱなしであるティーガーとパーシングの足回りのチェックをしたかったのである。その為、今のタイミングであれば、音を出しても雨の音で抑えられると考えていた。

 

「判った。少しだけ休憩しよう」

 

孝もずっと戦車に乗りっぱなしと言う事もあり、疲労感が見えており、他のメンツもそうであった。

 

「空、少しの間、休憩を入れる。その間にパーシングの足回りのチェックをしろ。俺はティーガーのチェックをする」

 

『了解です』

 

俊輔は空に無線機で、休憩と足回りのチェックを指示を出す。空もレインコートを着込み、パーシングから出ると足回りのチェックに入った。

 

「孝、冴子さんとイチャコラすんなよ?」

 

「お、お前と一緒にするな‼」

 

俊輔はティーガーの足回りのチェックをする為、外へ出ようとする際に孝に冴子とのイチャコラを抑える様に言うが、孝の反論に俊輔は苦笑いで答え、外へと出る。

 

「…………駆動系統は問題なさそうだな……でも履帯に人肉が挟まったりしてこのままだと、やばいな」

 

「俊輔君。そっちはどうですか?」

 

俊輔がティーガーの足回りのチェックをしていると、一足早くに終わらせた空が俊輔の元に来る。

 

「ティーガーの履帯を酷使し過ぎている。履帯の間に人肉が挟まっていやがる。履帯が鉄だからまだ大丈夫だと思うが……時間の問題だな。そっちはどうだ?」

 

「パーシングの履帯や駆動系統に問題は見られません。この雨のお陰で、車体にこびり付いていた血とか肉片なんかは流されましたよ。ある意味で、この雨のお陰で洗車しなくて済みそうです。戦車だけに」

 

空は寒いギャグを挟むが、俊輔には壺だったらしい。小さくであるが、笑い始める。

 

「お前wwwww今そんなギャグを入れるなやww」

 

俊輔は一頻り笑うと、目尻にたまった涙を拭いた。

 

「笑った笑った。久々に笑うのも良いもんだ………さて、こっからが問題なんだが………パーシングの砲弾は問題なさそうか?」

 

「使ったのに、僕らが寝ている間に補充されていますよ。神様様ですね」

 

「やっぱりか……道理で使った砲弾の数が合わないんだな………さて、この雨の中を走っていたら履帯に挟まった人肉も落ちるだろう。先を急ぐぞ」

 

「はい‼」

 

二人はそれぞれの戦車に乗り込む。

 

「待たせたな」

 

「どうだったの?」

 

ティーガーに戻った俊輔に沙耶が尋ねる。

 

「まぁ、駆動系統に問題は見られないんだが……履帯の間に奴らの肉片が挟まっていた」

 

「見なくて正解だわ」

 

俊輔からの報告に沙耶は項垂れた。自分も手伝おうとしていたが、戦車の知識に疎い自分では、俊輔の足手まといになると思っていたからである。

 

「その気持ちだけでもありがたいよ。沙耶」

 

「………ナチュラルに気障な言葉を言うな」

 

沙耶はどこからともなく出したハリセンで、俊輔の頭を叩くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達はティーガーを走らせる事、数分。T字路に差しかかった。

 

「孝、このT字路を右だったな?」

 

「そうだよ」

 

「良し…ここからは徒歩で行くぞ」

 

俊輔の言葉に全員が驚く。

 

「なんで戦車で行かないんだ? その方が簡単だろう?」

 

「戦車で行っても良いが……一般人が戦車を見たらどうなる?」

 

「……あっ‼」

 

俊輔の質問に沙耶が解った様に、手を上げる。

 

「どうぞ、沙耶さん」

 

「パニックになるわ。自分達を撃ちに来たのではないかと思ってね」

 

「正解」

 

沙耶の言葉に俊輔はにんまりとする。

 

「と言う事だ。全員、降車‼ 各自、武装を所持しろ‼ ありすと鞠川先生に関しては中央に。孝、永、麗は先頭だ。コータ、沙耶、冴子さんは後方で殿を頼む」

 

「俊輔はどうするのよ? 戦車の中で待機してますなんて言わないわよね?」

 

「あたりめぇだ‼ 俺と空、ヴォルケンリッター達は上空に上がる。何が起きるか判らないんだ。すぐに動けれる遊撃隊に徹する。各自、持ち場に就け‼」

 

リーダーである孝を置いて、俊輔は空たちにも指示を出していく。

 

「俺って、必要か?」

 

俊輔の的確な指示を聞いた孝は、リーダーを本気で俊輔に譲ろうかと考えていた。

 

「孝、リーダーとしての手腕を見せているんだ。勉強しろ。この先、俺達が護ってやれるか不明なんだから」

 

「お、おう」

 

俊輔の言葉に引っ掛かりを覚えた孝であったが、無理やり納得する。

 

 

そして、戦車から降車した全員は、持ち場に就いてT字路を曲がろうとしたが、その瞬間、大きな声が響き渡った。

 

「貴様等、いい加減にしろ‼」

 

「今の声って‼」

 

「ああ‼」

 

麗と孝はこの声に一人の女性を思い浮かばせる。そして、全員がT字路を曲がると、そこには家具などでバリケードを敷いている前に、一人の女性が槍を持って立っていた。

 

「必要な物を取りに行かせておいて、帰ってきたら入れないってどう言うつもりだ‼ 宮本貴理子を舐めんじゃねぇぞ‼」

 

女性であるのを忘れるかのような迫力のある声で、バリケード内にいるであろう住民に怒鳴る。

 

「お元気そうで、何よりだ~」

 

「あはははは………」

 

孝は麗の母親である宮本貴理子の姿に安心し、麗に至っては苦笑いをしていた。

 

「良いから、どっかへ行きやがれ‼ 撃つぞ‼」

 

すると、バリケードの間からショットガンらしきものを出し、貴理子に威嚇する。

 

「アンタらねぇ‼」

 

麗はある程度、貴理子と住民によるケンカ(?)が済んだ所を見図り、麗が母親に抱き着いた。

 

「お母さん‼」

 

「麗⁉ んまっ、孝ちゃんも‼」

 

貴理子は孝の存在に気付き、孝と麗が生きている事に嬉しく感じていたのである。

 

「で、何の騒ぎ? 大声を出したら集まる習性を持っている事ぐらい、解るでしょ‼」

 

「だってぇ、ご近所の皆さんの為に食べ物とか取りに行って戻ってみたら、入れてくれないんだもの……最初は協力して、うまくやっていたのに……でも、電気が止まってからは色々と大変になって来て………それに、私が出ている間に変な人が入ったらしくて、皆を纏めちゃったのよ………ご近所付き合いの限界ってやつね」

 

貴理子はそう言うと、一度だけバリケードの方を見る。

 

「すまない。時間が押している」

 

「え? 人が空から……どう言う事⁉」

 

「お、落ち着いて。お母さん‼」

 

俊輔が上空から降りて来ると、貴理子は驚き、アタフタする。警官である事を忘れさせるほどであった。

 

「すみません、今は時間が惜しいのです。麗のお母さん。今から逃げます。付いて来て下さい」

 

俊輔は貴理子にそう切り出す。

だが、貴理子も並大抵の警官では無い。

 

「どこに逃げると言うのかしら? 明確な目的が無い事には、うまく行く事も行かなくなるわよ。生き残ると言うだけでは意味が無いわ。それとも、その覚悟があると言うかしら?」

 

「ええ、明後日の午後に新床三小で、ごく短時間ですが、自衛隊の救出作戦が行われる事になっています。東署のJ-ALERTで確認しました。多分ですが、これが最後の救出作戦になると思われます」

 

貴理子の質問に答えたのは沙耶であった。そして、沙耶の説明を受けると、バリケード内にいる住民に声を掛ける。

 

「明後日の午後‼ 新床三小で自衛隊の救助作戦が行われる‼ 私達はそこに向かいます‼ 一緒に行く人は出て来て‼」

 

「う、嘘だ‼ 俺達は信じないぞ‼」

 

しかし、貴理子の説得も虚しくバリケード内にいる住民の耳には届かなかったのであった。

 

「チッ‼ 無駄です。忠告はしたんです。警察の義理は果たしました。逃げますよ‼」

 

「俊輔‼ 大変だ‼ 距離60に奴らの群れを視認‼ 服装に見覚えがある………さっき、君が美地壊した家の横にいた奴らだよ‼」

 

『………………』

 

コータからの報告に、俊輔を除く全員が俊輔に視線を送る。そして本人である俊輔は顔を背けていた。

 

「なら、俺と空だけで戦車を回収に行く。ヴォルケンズ‼ 行くぞ‼」

 

『了解‼』

 

俊輔の指示でヴォルケンリッター達と空が上空へと上がり、戦車の元へと飛んでいったのである。

 

「戦車? どう言う事なの、麗?」

 

「あはははは………」

 

麗は貴理子にどう説明すればいいのか判らず、苦笑いをして逃げようとしていたのであった。



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第四十五話

孝達は俊輔達が戦車で来るのを待つ間、今までの事を話していた。

 

「そう、そんな事が………」

 

「……うん」

 

貴理子も孝達が大変な思いをしてここまで着たのだと思うと、喜んでいいのか悲しんでいいのか判らなかった。

 

「貴理子さん。これを」

 

「あら……これは」

 

コータは東署で拝借した拳銃の一つを貴理子に手渡した。

 

「これだけでもありがたいわ。ありがとう、平野君」

 

「えへへへ」

 

貴理子に感謝されたコータであったが、それを見ていたあさみには面白くなかった。

 

「コータさん‼ 鼻の下が伸びています‼」

 

「あ、あああさささみみみさささん⁉」

 

あさみはコータの両肩を持って、前後に激しく揺さぶった。

 

「コータさんは私だけを見ていればいいんです‼」

 

「は、はいぃぃぃぃぃぃ‼」

 

コータもあさみの尻に敷かれているのか、言われっぱなしであった。

 

すると、T字路から聞きなれた音が曲がって来たのである。

 

「待たせた‼ 全員、乗り込め‼」

 

俊輔の指示で全員が乗り込む。

 

ティーガー1

・俊輔

・沙耶

・孝

・冴子

・ありす

・ジーク(忘れていました)

 

パーシング

・空

・コータ

・あさみ

・由香里

・麗

・永

・貴理子

 

と、乗員オーバー。警察が機能していれば速攻で捕まるものであるが、今の状況では警察も機能しているのかどうかも判ら無い所であった。

 

「行くぞ‼」

 

俊輔はそう言うと、ティーガーのアクセルを踏み、全力疾走で奴らを轢き肉にしていく。

 

『所で、この戦車は誰の所有物なの?』

 

「俺のです」

 

『君は確か……俊輔君よね? この戦車はどうしたの? この戦車なんかは展示物としてロシアとかに置かれている筈なのに………』

 

「家の親父が趣味で作り上げたんですよ。何でも世界各国に知り合いがいるらしく、パーツも輸入させたらしいです」

 

この話は全くの嘘である。俊輔には父親も母親も存在しない。だが、俊輔が戦車を個人で所有すると言う事自体が問題なのである。そう言う事もあって、俊輔はウソを吐くのであった。

 

『………まぁ、そう言う事にしといてあげるわ』

 

「(ホッ)」

 

貴理子も納得した様子(?)で俊輔は胸を撫で下ろす。

 

『そろそろ、夜になるわね………どこか安全な場所で休みましょう』

 

「そうですね………孝、ここらへんで安全で休める場所はあるか?」

 

貴理子の提案に俊輔も乗っかり、この地域の事を詳しく知っている孝に尋ねると、孝は意外な場所をいう。

 

「なら、この先にある駐車場だな。あの駐車場はやけに頑丈な柵で護られているから、奴らの力でも耐えられると思うぞ」

 

「なら、案内は任せる」

 

こうして、俊輔達は安全な場所を確保し、眠りへとついた。因みにだが、ヴォルケンリッター達が夜間、監視体制を敷いて警備に当たっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔は、転生の際に来た空間にまた来ていた。

 

「あれ? ここって俺が転生する前に来た所だよな………なんで来てんだ? ハッ⁉ もしかして俺死んだ⁉」

 

『んなわけあるか、バカ者』

 

「この声……アポロニアス様?」

 

俊輔が自分が死んだと勘違いしていると、アポロニアスの声が空間内を響き渡らせる。

 

『そうじゃ。お主に来てもらったのにはわけがある』

 

「わけ? どう言う事ですか?」

 

『お主が辿ってきた道は、原作に基づいていた……だが、もう原作と言う概念が無くなる』

 

「と言う事は、朝起きたら、奴らになっていると言う事もあり得ると言う事ですか?」

 

『そう言う事だ』

 

この言葉に、俊輔はただ、驚く他無かった。

 

「でも、どうしてそれを俺に伝えたんですか?」

 

『お主の未来に一つだけ言っておかなくてはならない事がある』

 

「…………」

 

俊輔は嫌な予感しかしていなかった。

 

『今、お主たちは新床三小に向かう途中だが………自衛隊による救出作戦は実行されない』

 

「なっ⁉」

 

この言葉に、俊輔は絶望を感じさせた。

 

『だが、絶望するな。お主に新たな力を授ける。ここでの会話は朝起きても数日は覚えておる。だから、安心しろ。さて、新たな力と言うものじゃが…………明日、起きたらすぐに床主湾に向かえ。そして、パスワードを言えば、その力が手に入る』

 

「パスワードですか?」

 

『そうじゃ……じゃが、今言っても面白くはない………なので、床主湾に着いた頃にお主の頭の中に入れる。それだけじゃ…………では、これからも身近な人間を救え』

 

そう言うとアポロニアスの声は聞こえなくなり、俊輔は今度こそ眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、俊輔は起き上がると外の状況を見た。

すると、本来であれば奴らの呻き声が聞こえる筈なのだが、一切、聞こえる様子が無かったのである。

 

「おかしい……シグナム」

 

「ハッ‼」

 

俊輔は夜間、警備をしていたシグナムを呼び出した。

 

「どういう状況だ、これ」

 

「主、信じられないのかも知れませんが………奴らが昨日の夜中からいなくなったのです」

 

「はぁ? どう言う事だ。もっと詳しく説明をしてくれ」

 

「……………」

 

「シグナム?」

 

俊輔はシグナムに詳細を報告する様に要求するが、シグナムは口を閉ざしたままであった。

 

「主……怒らないで聞いてほしい………昨日、奴らの群れがある場所に向かっているのを発見した」

 

「それで、奴らはどこに向かって行った」

 

「…………新床三小です」

 

「なにぃ⁉ 奴ら全部がか‼」

 

「はい」

 

俊輔は驚きの余り、言葉を失った。

 

「チックショォォォォォ‼ そう言う事かよ‼」

 

俊輔の怒鳴り声に全員が驚きの余り、起き上がった。

 

「俊輔、何騒いでるんだ………」

 

孝がキューポラからでて俊輔に尋ねた。

 

「大変だ………奴ら全部が新床三小に向かっているらしい」

 

『ッ⁉』

 

驚きの余り、全員が言葉を発せなくなった。

 

「シグナム、ヴィータたちは何をしている………まさか、やられた訳じゃ無いだろうな?」

 

「ご安心を。我が主。ヴィータたちは誰も噛まれていません。ですが、状況が最悪です……ヴィータから念話です。どうした、ヴィータ? ………なに? 本当か‼ 判った、主に伝える。お前達も無理はするな、良いな‼ 主。もっと最悪な状況に陥りました」

 

「もう、驚く気になれんのだが…………」

 

「新床三小に避難している一部の住民が警察官と自分達の考えに背く住民を学校から追い出したそうです」

 

「…………どう言う事?」

 

俊輔には今起きている状況が呑み込めないのであった。



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第四十六話

シグナムは、今起きている情報をヴィータから念話で伝えられ、それを俊輔に報告する。

 

「新床三小に避難している一部の住民が警察官と自分達の考えに背く住民を学校から追い出したそうです」

 

「…………どう言う事?」

 

俊輔には今起きている状況が呑み込めないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 待って……住民が住民と警察を追いだしたって………馬鹿か?」

 

俊輔は今の状況でそれをすれば、自分達の首を絞めると言う事が判らない住民たちに対して罵倒する。

 

「ヴィータからの報告では、奴らが向かっている方角に追い出されたらしいです」

 

「………全員、起きているな?」

 

「ああ。お前の大声のお陰でな」

 

俊輔は孝に全員が起きている事を確認すると、俊輔の大声で皆が目を覚ましたと伝えると、頷いた。そして、声を荒げて指示を出した。

 

「これより、追い出された住民と警官たちの救助に向かう‼ これは俺の独断だ‼ だが、警官の中には麗の父親もいる可能性があり‼ 孝の母親もいる可能性が高い‼ よって、俺達は速やかに準備を整え、戦車で向かう‼ 異論はあるか‼」

 

『ない‼』

 

俊輔の言葉に全員が異論無しであった。

 

「各自、準備に取りかかれ‼ 持ち時間は3分だ‼」

 

『Jawohl‼』

 

俊輔の指示に全員がドイツ語で答える。(なぜ、ドイツ語かって? 決まってるじゃないか……かっこいいからだよ‼)

 

 

きっかり3分後には身支度が終わっていた。特に女性の準備には時間が掛かると言われているが、今回は緊急と言う事もあって、女性達は化粧をする時間を省いたのである。

 

「Panzer vor‼」

 

なぜか俊輔までもがドイツ語で戦車前進と言う。これにより、ティーガー1とパーシングは今までの走りより早くなっている気がしていた。

そして幾分か走っていると、奴らの数が増してきていた。

 

「奴らの数が増えて来た……このまま突っ切るぞ‼」

 

俊輔はそう言うと、アクセルを強く踏み込む。これにより、ティーガー1の速力が上がり、奴らのミンチを製造していく。続くようにパーシングもスピードを上げ、ミンチとなった奴らの肉片を踏み挽き肉に変えて行く。

 

「見えた‼ 空、行進間射撃用意‼」

 

『Jawohl‼』

 

俊輔の指示で、空は射撃体制を取る。操縦しながら射撃が出来る様になっているティーガーとパーシングは、疾走しながら砲撃をしていく。自衛隊の最新鋭である10式戦車も真っ青な行進間射撃である。

 

「撃て撃て‼ 奴らをミンチにしてやれ‼」

 

『汚物は爆発だ‼ ヒャッハー‼』

 

トリガーハッピーとなった二人は、生存者より遠く離れた奴らに向けて砲撃していく。

 

「ヴィータ‼ シャマル‼ ザフィーラ‼ 魔法の使用を許可する‼」

 

『Jawohl‼』

 

俊輔の指示で三人はバリアジャケットを身に着け、住民や警官たちを護る様に奴らを殲滅していく。警官たちも、民間人に護られているのが嫌なのであろう。けん銃を用いて奴らの数を減らしていく。そして、住民たちの近くに戦車を止めた俊輔と空は、バリアジャケットを身に着けると、上空へと飛び上がった。

 

「お父さん‼」

 

「れ、麗‼」

 

「アナタ‼」

 

「貴理子‼」

 

宮本家全員が揃った瞬間であった。三人は強く抱き合った。

 

「お袋‼」

 

「孝‼」

 

孝も母親と合流する事が出来、一時であるが安心できたのである。

 

「孝、住民たちを一か所に纏めろ‼ 警官たちもだ‼」

 

「お前、まさか‼」

 

「殲滅する‼」

 

「…………無茶して沙耶を泣かせるなよ」

 

「わーってるよ‼ ほら、急げ‼」

 

俊輔は孝が聞こえる距離で指示を出し、麗の父親の協力もあり住民や警官たちを戦車の周りに集めさせた。

 

「ザフィーラ、シャマル‼ お前達はシールドを展開させて住民と警官達を護れ‼」

 

「「了解‼」」

 

「ヴィータ、遠慮はしなくていい………やれ」

 

「判った」

 

「シグナム、切り刻め」

 

「御意」

 

俊輔は静かに指示を出していく。先程までとは違い、加減を無くした結果である。

 

「空、やるぞ」

 

「ああ」

 

二人はさらに高く昇ると、デバイスを掲げる。

 

「フォートジック、カートリッジ、フルリロード‼」

 

「マルチロック」

 

俊輔と空は、デバイスとディバイダーを最終形態にする。

 

「スタァーダスト………」

 

「シルバァァァァァ」

 

二人の魔力は膨大となり、漆黒の闇が包み込むのではないかと思われる程、大きくなっていたのである。

 

「スパァァァァクル………」

 

「スタァァァァズ………」

 

最後の仕上げと言わんばかりに魔力はいつ爆発しても良いぐらいに膨張し、限界を迎えていた。

そして、二人は引き金を引く。

 

「ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼」

 

「ハンドレッドミリオン‼」

 

二人の長距離砲撃並びに広域殲滅射撃によって、奴らはその数を減らし、ある程度の脅威を拭ったのである。

だが、着弾と同時に地面は地震が起きたのではないかと思われる程、揺れ民家に至っては建築法に基づいて建築された筈の家々は軒並み、崩れ去った。

 

「これで奴らはいなくなった………」

 

「後は……貴様だけだ」

 

二人が見る先には、一人の男が立っていた。

 

「「紫藤‼」」

 

「クッ……ですが、良いのですか? 今、貴方方が私に手を掛けたとなれば、警察たちが黙っていませんよ?」

 

紫藤は俊輔と空が自分を殺す勇気を持っていないと思っていたのである。だが、それは間違いである。

 

「だからなんだ?」

 

「俺達は貴様がこれまでやって来た行為を見逃す気は更々、無い。だからこそ、ここで死ね」

 

二人はデバイスを紫藤に向ける。

 

「クッ………ククク………アハハハハハハ‼」

 

「何が可笑しいんだ?」

 

「とうとう、頭がイカれたのか?」

 

紫藤は絶望的状況にもかかわらず、高笑いをする。

 

「私の役目はここでお終いです………後はあの方に託すことにしましょう」

 

そう言うと、紫藤はけん銃を自身の米神に当てる。

 

「さらばだ」

 

紫藤は引き金を引き、自ら命を絶ったのであった。



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第四十七話

皆さま、新年あけましておめでとうございました。

今年も執筆を頑張っていきますので、よろしくお願いします‼


俊輔達は紫藤を追い詰めたが、紫藤は自らその命を絶ったのである。この呆気ない終わり方に俊輔達は、これで終わったと言う認識では無かった。

 

「紫藤は言っていたな………」

 

「“後はあの方に託す”と………誰の事を言っているのでしょうか…………」

 

「判らない。だが、一つ言えるとすれば、奴らを生み出した者が居ると言う事だ」

 

俊輔が見つめる先には、小学校内で立てこもる暴徒住民を制圧していく孝やコータ、永、麗、冴子などであった。また、生き残りの警官たちも参加して、立てこもる暴徒住民の制圧に時間が掛かる事は無かった。

 

「さて、これからの事を考えなくてはな…………」

 

「そうですね…………」

 

俊輔がそう言うと、上空から数十機のヘリが小学校に向かって来ているのを見付ける。

 

「さぁ、俺達は静かに去って、今後の戦いに備える必要がある」

 

「でも、良いのですか? 俊輔君」

 

「何がだ?」

 

「沙耶さんの事です………」

 

「…………」

 

空の言葉に俊輔は何も言えなくなる。壮一郎に沙耶を託された事もあり、それを無下にする事は出来無いと言う事を言っているのである。

 

「判っている………だが、アイツはこのまま孝達と一緒居た方が身の為だ…………」

 

「そう言って、本当は別れるのが嫌なんでしょう?」

 

「グッ…………そうだよ」

 

空の呟きに俊輔は悔しそうに答える。

 

「俺だって、アイツの事は護りたいと思っている‼ でもやっと救助が来たんだ‼ アイツは………アイツには助かって欲しいんだ」

 

「へぇ~、そうなんだ」

 

「ふぁ⁉」

 

俊輔が吐き捨てる様に言うと、沙耶の声がして俊輔は変な声が出てしまう。

 

「さ、沙耶⁉ どうしてここに来たんだ‼ 救助が来たんだからそっちに行けば良いだろう」

 

「愚問ね………私はアンタと一緒に歩みたいの‼ この気持ちに偽りはないわ‼」

 

「だけど…………」

 

「アンタは黙って私に付いて来いと言えばいいのよ‼ そう、私のパパのようにね‼」

 

「だが………「君は私との約束を違えるつもりなのか?」ッ⁉ 壮一郎さん………ご無事だったんですね?」

 

「ああ、自衛隊の救助があってな………君ともう一度会う約束をしていたのだ。私はそれを違えなかった。だが、君はどうかね?」

 

「…………俺達がこれから向かおうとしているのは、生きている人間を殺す事になるかも知れないんです………それを沙耶にさせる訳にはいきません」

 

「君の言い分は判った…………だが、君は沙耶を守れないと言うのか?」

 

「………」

 

壮一郎の質問に俊輔は答えられない。

 

「だが、君のいや、君たちの仲間は君と一緒に行こうとしているそ? 君の考えは彼等には筒抜けだった様だな」

 

「え?」

 

壮一郎がそう言うと、孝達も俊輔の傍に集まる。

 

「どうして………救助が来たんだからそっちに行けよ‼」

 

「俺達は仲間だぜ? それにリーダーからの命令だ。俺達も一緒に行動する」

 

「………とことん、バカばっかりだ」

 

「ああ、俺達は馬鹿だ………だが、そんなバカも良いだろう?」

 

孝の言葉に俊輔は「確かにな」と呟いた。

 

「俺がやろうとしているのは途方もない事だぞ? それでもお前達は付いて来ると言うのか?」

 

『当たり前‼』

 

俊輔の確認に、全員が声を揃え肯定した。

 

「…………壮一郎さん。今ここでもう一度、誓いをさせて下さい。沙耶さんを絶対に護ります。この命に賭けても‼」

 

「………君の誓いは私の胸に刻ませた貰う。だが、一つ訂正させてもらう。命は賭けなくても良い。だが、傷付いたとしても、何があっても沙耶の元へ帰る事。これを誓いなさい」

 

「はい‼」

 

壮一郎の言葉に俊輔は強く頷いたのである。

 

「さて、私もこれでお暇させてもらおう」

 

「パパ………」

 

「沙耶よ………幸せになりなさい」

 

「はい‼」

 

壮一郎は憂国会の総長としてではなく、父親としての表情で、沙耶の幸せを願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自衛隊の救助作戦を見守った、俊輔達は戦車に乗り込み、俊輔が夢の中で言われた事を思いだしていた。

 

「そう言えば、アポロニアス様が言っていたな………自衛隊の救助作戦が行われないって………でも行われた。これはアポロニアス様の言っている事が嘘になるのか、それとも俺達が介入した事による改変が起きたのか………」

 

俊輔はティーガーを動かしながら、夢の中で言われた事を呟いていた。

 

「俊輔、何ブツクサ言ってるのよ」

 

「いや、夢の中でな言われた事を思い出していたんだ…………」

 

「そう……でもアンタが言われた通りにならなかった。それだけで多くの住民や警官が助けられたのよ? それだけでも良かったと思いなさい」

 

「………そうだな」

 

俊輔はそう言って操縦に意識を向ける。

 

「それで、私達はどこに向かってるのかしら?」

 

「ああ、そう言えば言っていなかったな。夢の中でもう一つ言われた事があるんだ。それを確認する為にな」

 

「そう………それで、どこにあるの?」

 

「床主湾だ」

 

俊輔は床主湾に向けて戦車を走らせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俊輔達が床主湾に着くが、そこには何も無かった。

 

「何も無いじゃない………嘘を言われたんじゃないの?」

 

「いや、降りれば判るだろう」

 

俊輔はそう言うと、戦車を降りそれに続き孝達も戦車から降り立った。

俊輔はそのまま床主湾を見つめると、一つの言葉が頭の中で浮かび上がった。

 

「『我、堕天により使わされた者。我が命に応じ現れよ。最強にして最凶の戦い船‼ 超大和型戦艦…そして、紀伊型超弩級戦艦‼』」

 

俊輔が高らかに宣言すると、床主湾の海深くから一隻の戦艦がその巨体を現した。その姿は旧大日本帝国海軍が全ての知能を使って完成させ、最後の戦艦として名を馳せた大和型戦艦に似ていた。

だが、似ていないのは主砲の数と所々にある対空火器である。

 

「“紀伊”って………大和型戦艦の改良艦に名付けられる予定だった名前………」

 

スペックだけ説明しておくと、大和型であって大和型では無い。

紀伊は船体の形こそ大和型であるが、艦橋や武装、レーダー、大きさ等では大和型と違うのである。

 

「さぁ、これで俺達がやるべき事が決まった」

 

「どう言う事?」

 

「俺達の敵はこの海の果てにいる。だからこそ、この戦艦が俺に手に収まったと言う事だ」

 

俊輔はそう言うと、紀伊を見つめるのであった。




次回の更新は未定です。


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第四十八話

皆様、お久しぶりです。
書き上げましたので、投稿いたします。

現在、自分の活動報告場にて、アンケートを実施しております。
詳しくは、そちらをご覧ください。
皆様のご協力を、お願いします。


俊輔はティーガー1とパーシングを紀伊の船底部にある格納庫へ搬入していく。なお、二両はそのまま固定され、何があっても動かない状態にチェーンで固定されたのである。

そして、俊輔達はエレベーターを使い、艦橋へと上がった。

 

「紀伊型と言うから、大和型をベースにしているのかなって考えてたけど……艦橋の形からして、アメリカ海軍のアイオワ級に近いわね………」

 

「確かに……ん?」

 

沙耶の言う通り、艦橋内部は大和型戦艦をベースとしたものでは無く、アメリカ海軍の最後の戦艦と呼ばれたアイオワ級戦艦の艦橋をベースにされていた。

俊輔は艦長席に一枚の紙が置かれている事に気が付いた。

 

「なんだ? 手紙?」

 

俊輔は紙を手に取ると、手紙で、差出人はアポロニアスであった。

 

『この手紙を読んでいると言う事は、無事に紀伊型戦艦を手にした、と言う事じゃな。さて、俊輔よ。以前、夢の中で話していたが、援助が来ない件。実は、俊輔の行動でそれは回避されたのじゃ。これにより、本来は孝君の母親や麗君の父親は死ぬはずじゃった。だが、俊輔の働きによって、それは回避された。君の働きをこれからも期待しておるぞ………さて、本題じゃ。この紀伊型戦艦にはアンドロイドが搭載されておる。起動するには俊輔が艦橋に上がった時点で開始されておるから、問題ないじゃろう………それから、空君に伝えてほしい。空君専用に航空母艦を用意しておる。この航空母艦の乗員は全員、アンドロイドじゃ。じゃが、特殊なAIを組み込んでおり、人間と同じように感情を持っておる。そこは留意しておくのじゃぞ。搭載機に関しては、航空母艦に乗艦してからのお楽しみにと言う事で………最後に、君らはもう原作と言う枠を外しておる。君らが知る原作と言う縛りは無い。その為、これから何が待ち受けているのかは、君らしか判らん。じゃが、君らであればどんな困難な状況であっても、打破出来ると儂は思っておる。これからの君らの活躍を見守っておるぞ』

 

アポロニアスからの手紙にはそう、書かれていたのであった。

 

「アポロニアス様………ありがとうございます。空、お前専用の空母が手に入るぞ」

 

「なんですと⁉」

 

俊輔は後方で待機していた空にアポロニアスからの伝言を伝えると、空は驚いていた。それもその筈である。自分専用の航空母艦が手に入ると聞けば、誰もが驚く内容なのだから。

 

「さて、その航空母艦を探しに行きますか………でも、その前に」

 

俊輔はそう言うと、艦長席に座った。

 

「艦長席って、こんなにも高いんだな………」

 

俊輔の感想はそれであった。

すると、俊輔は徐に艦長席に設置されている受話器を持ちあげた。

 

「こちら、艦橋。各員、聞こえているな。これより、我が艦は山城空専用航空母艦の捜索に当たる。各自、持ち場に配置。機関始動。対空、対艦、対潜戦闘用意‼」

 

「誰に言ってるのよ」

 

俊輔が一人芝居を始めたのかと、沙耶は呆れた表情で俊輔を見ていたが、俊輔は一人芝居をしていないと言う事を思い知らされた。

俊輔が指示を出した途端、紀伊が揺れ始めたのである。

 

「な、なに⁉」

 

「艦が動いてる? 俊輔、この艦には俺達以外は乗ってないんだよな?」

 

沙耶は驚き、近くにある物にしがみつき、孝が俊輔の方を見て確認をした。

 

「あー、確かに俺達以外は乗っていないな………人間は」

 

「人間は……ってどう言う意味だ? もしかして、俺達以外に何かが乗っていると言う事か?」

 

俊輔の回答に永が尋ねた。それに答えたのは、空であった。

 

「この艦には特殊なAIを組み込まれたアンドロイドが乗艦しています。その為、僕らはここにいれるのですよ」

 

空の説明に、何と無く全員が納得した様子であった。

 

「さて、空達はこのまま士官室で休んで来い」

 

「俊輔君はどうするのですか?」

 

「俺? 俺はこのまま艦長席で座っておくよ………何かあってもすぐに対応できる様にな」

 

俊輔は空達を先に休ませようとする。しかし、それは俊輔がどこで休むのか判らなかった。だが、俊輔の言葉を聞き納得したのである。

だが、空も自分専用で航空母艦の艦長となる身。俊輔の考えを良しとしなかったのである。

 

「なら、僕もここで残ります」

 

「だが、空。お前は疲れているだろう?」

 

「それは、俊輔君も同じ事ですよ」

 

「だったら、先に空が休んでくれ。その後の交代で空が臨時艦長をしてくれ」

 

「………判りました」

 

「なら、これが地図な。孝達も一緒に連れてやってくれ。それと、孝と冴子。コータとあさみさん。お前と静香先生、ありすちゃんは同じ部屋な」

 

空が折れる形で事は済んだのである。俊輔は地図を空に渡すが、その際、カップル同士を一つの部屋に纏めようと考え、ニヤニヤした顔で指示を出したのである。因みにだが、空と静香は恋人同士にはなっていない。だが、二人の距離はそれなりに近い物ではある。

 

「沙耶はすまないが……」

 

俊輔は沙耶を自分の部屋で一人で過ごしてもらう事に罪悪感を持ちながらも声を掛けようとしたが、沙耶は片手を出し俊輔の言葉を遮った。

 

「私もここに残るわ」

 

「だが、ここにいても何も面白くないぞ?」

 

「良いのよ………アンタの傍にいたいだけだから……」

 

「………判った」

 

今度は俊輔が折れる番だった。俊輔は副官席に沙耶を座らせたのである。

 

「なら、空。頼むぞ」

 

「了解です」

 

空は孝達を連れ、艦橋を後にするのであった。

 

「さて、これからだな………」

 

俊輔はそう言うと、窓から見える海を見つめるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、よろしくお願いします。


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第四十八話

今回は、ネタに走ってます。判る人は判ると思います。

アンケート、待ってます‼


空達は艦橋を後にし、士官室へと向かっていた。

 

「空君。僕達って士官室で休むんだよね?」

 

「そうだよ……何か問題でも?」

 

コータが口を開くと、少し不安な様子の声音であった。

 

「いや、僕達が士官室なんて贅沢なことしても良いのかなって………」

 

「ああ、そう言う事ですか。問題ないですよ。僕達専用の士官室が用意されています。俊輔君は艦長室ですけどね。それと、部屋割りですが……孝君と冴子さん。永君と麗さん。コータ君とあさみさん。僕は静香先生とありすちゃんと一緒に休みますので」

 

「待った。シグナムさん達はどうなるんだ?」

 

部屋割りを聞いた孝達であったが、俊輔の守護騎士達が部屋割りの中に入っていない事に気付き、空に質問する。

 

「ああ、シグナムさん達はシグナムさん達で部屋を渡しているので、問題ないですよ。それから、一つ、皆さんに注意事項を伝えます。まず始めに、この艦内は自由に動いてもらっても構いません。ですが、機関室と弾薬室には絶対に入らないで下さい」

 

「空さん、それはどうしてですか?」

 

空の注意事項にあさみが手を上げて質問する。

 

「この戦艦の機関は原子炉で動いています。その為、格納容器外部は放射能で汚染された地区になりますので、入らない様にしてください。まぁ、入れませんけど」

 

空の説明に、全員が絶句する。まさか、自分達が乗る艦が原子炉搭載なんて考えもしなかったからである。

 

「それじゃぁ、誰が原子炉を見ているんですか?」

 

「そこは、特殊な機構をしたアンドロイドたちがやってくれています。なので、僕らが入る必要も無いのですよ。それから、弾薬庫に付いてですが、この艦の弾薬庫には主砲の砲弾からミサイルまで備蓄されています。その為、弾薬庫の扉には武装したアンドロイドたちが待機しているので、知らせてくれますが入らない様にしてくださいね」

 

空の説明に全員は首を強く振るのであった。

 

「さて、この先が士官室となっています。それと、各部屋に一人ずつ、アンドロイドが支給されていますので、何か用事があればアンドロイドに言って下さい。それで問題は無いと思いますので………皆さんに忠告です。アンドロイドと言っても人間に近いAIが組み込まれています。人間と同じように感情を持っていますし、一見、人間の様にしか見えません。なので、淫らな事はしない様にしてください。まぁ、皆さんがそんな事をしないと判っていますが、一応、伝えておきます」

 

空は説明しながら士官室へと向かっていた。

 

「さて、ここからが士官室となっています。手前から、僕と静香先生、ありすちゃんが使う部屋。隣は孝君と冴子さん。その隣がコータさんとあさみさんです。では、皆さん、ゆっくりと休んで下さいね」

 

空の説明された部屋に各自、入って行く。すると、全員がイメージした士官室とは異なり、どこぞの高級ホテルを思わせる部屋の造りとなっていたのである。

 

 

 

空は静香とありすを部屋の中に招き入れた。すると、扉の内側で待機していたアンドロイドが一礼し、空達を歓迎した。

 

「お初にお目に掛かります。私が皆様のサポートをするアンドロイド“ミホ”と言います。よろしくお願いします」

 

「僕は山城空で、こちらが鞠川静香先生。その隣にいるのが、稀里ありすちゃんだ」

 

空によって自己紹介された二人はミホに一礼する。

 

「はい、覚えました。これから、よろしくお願いします」

 

ミホはそう言うと微笑む。その姿は人間そのものであった。

 

 

 

一方、孝と麗が部屋に入ると、そこに待ち構えていたのは、目元がキツメの女性であった。

 

「お初にお目に掛かる。私は“マホ”と言う。これから、よろしくお願いする」

 

「あっ、うん……俺は小室孝だ。こっちが、毒島冴子さん」

 

「毒島冴子だ」

 

孝と冴子はマホに一礼する。

 

「覚えたぞ。これから、よろしく頼む」

 

マホはそう言うと、微笑むがその姿に孝は少し見惚れてしまい、それを見た冴子が孝の首元に日本刀の刃を当てていると言う事件が発生したのであった。

 

 

 

永と麗が部屋に入ると、そこに待っていたのは、くまのぬいぐるみを抱え込む少女であった。

 

「私は“アリス”。こっちは、ボコ。よろしく」

 

「僕は井豪永で、こっちは宮本麗だ」

 

「宮本麗です。よろしくね、アリスちゃん」

 

「ん………よろしく」

 

アリスは顔を少し赤くさせ、ボコに隠れる様に返事をするのであった。その可愛さゆえに、麗は堪らずアリスを抱きしめた。

 

「きゃぁぁ‼ 可愛い‼」

 

「麗、落ち着け。アリスちゃんが困ってるぞ」

 

「………大丈夫。麗さんって柔らかい」

 

「アリスちゃんも柔らかいよ‼」

 

この部屋は、ある意味でカオスな空間になる予感がするのであった。

 

 

 

コータとあさみが部屋に入ると、そこに待ち構えていたのは、堂々と椅子に座って干し芋を食べている少女(?)であった。

 

「あっ、来たね~。私の名前は“アンズ”って言うよ~。まぁ、よろしくねー」

 

「あっ、はい……僕の名前は平野コータです」

 

「私は中岡あさみです」

 

「平野君に中岡さんねー。干し芋、食べる?」

 

こっちはこっちで、アンドロイドに振り回されそうな予感しかしない部屋となるのであった。

 

 

 

 

艦長室に一人の女性が待機状態で待っていた。彼女の名は………ナノハ。かの有名な白い悪m「作者さん? それ以上、言ったらOHANASHIなの」あっ、はい。すみませんでした‼ だから、デバイスを仕舞ってください‼ と言うか、アンドロイドなのに、魔法が使えるの?

 

「そこは問題ないの。って、私は誰と話してるんだろ?」

 

ナノハはそう言うと、再度、待機状態となるのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、よろしくお願いします‼


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第四十九話

スイスイ進む……止まるんじゃねぇぞ‼


元アメリカ、ホワイトハウスの大統領執務室に一人の男と数人の武装した集団が集まっていた。

 

「さて、大統領が亡き今。我々がこの世界を統治しなくてはならん………そこでだ……君らにある任務を行ってもらいたい」

 

「ある任務ですか? 詳細をお願いします」

 

「そう、焦るな………まず手始めに海洋にいるアメリカ海軍の空母を一隻、奪取してもらいたい」

 

男の言葉に、全員が絶句する。少人数で行える筈も無い任務だからである。武装集団のリーダーが男に断りを入れようとした。

 

「それは出来ません。我々の数で行えるのは精々、駆逐艦クラスです。それを、いきなり空母を奪取して来いなど、無謀にも程があります‼」

 

「君らの意見なぞ、聞いていない……いや、聞く耳を持たない。私には空母が必要なのだ。この世界を統治する第一歩としてな」

 

「それは、戦艦では駄目なのですか? 戦艦であれば、砲撃が行えます。空母ですと、航空機に必要な人材が要ります。この人数で空母を運用するなんて、宝の持ち腐れです」

 

「確かに、君の言う通りだ」

 

男はリーダーの言葉を肯定した。リーダーは作戦が変更されると安堵したが、そうでは無かった。

 

「だが、戦艦では通れない運河があるだろう? 空母であれば、艦載機を飛ばして行く事が可能だ………だから、私は空母を欲しがっているのだ‼」

 

男は怒鳴り声を上げる。ホワイトハウス周辺にはまだ、奴らの姿が確認されているが、内部は制圧しており、彼ら以外、動く者はいない。だから、男は堂々と怒鳴り声を上げる事が出来るのである。

 

「君らは元海軍の精鋭部隊なのだろう? なら、君らの力を使えば可能なのではないのかね?」

 

男はリーダーに対して意味ありげな目をする。

 

「………判りました。ですが、空母であれば何でもいいのですよね?」

 

「ああ、流石に私も鬼では無い。原子力空母を奪えなど、言えるはずがなかろう? だから、空母であれば何でもいい。君らの活躍を期待しているぞ」

 

「…………判りました。あなたの期待に沿えるよう、やり遂げて来ましょう」

 

リーダーはそう言うと、部下を連れ部屋を後にした。そして、残された男は窓から覗く風景を目に焼き付ける。

 

「そうだ、この様な世界は………もう一層の事潰れてしまえばいい。そして、新たな世界を作り上げるのだ。私が‼」

 

男の目には狂気としか思えない炎が宿っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーダーはまず手始めに、海軍工廠へと向かっていた。途中、奴らと遭遇するが的確に頭を撃ち抜き、骸を積み上げて行く。

 

「隊長‼ 我々がする事は何ですか‼」

 

「君らには、まず始めに使える戦闘機を探してもらいたい。燃料、弾薬は勿論だが、機体の状態も確認してくれ。飛んでいる最中に空中分解なんぞされたら、堪ったもんでは無いからな」

 

「ハハハ、確かにその通りですね。解りました‼ 機体は何でもいいんですか‼」

 

「ああ、構わない‼」

 

リーダーとその部下は銃声が響く工廠内で叫ぶように声を張り上げる。

部下達は、真っ先に地下にある機密格納庫へと向かった。そこであれば、機体が見つかるだろうと考えたからである。部下たちの考えは正解であった。地下格納庫には整備完了が終わって、いつでも飛ぶ事が出来る状態となっているF-14が数機、残されていたのである。

 

「すぐに機体のチェックを始めろ‼ 機体の状態、燃料、弾薬もだ‼」

 

一人の男が指示を出していた。その男は武装集団のナンバー2である。その為、リーダーがいない時は、男が指示を出す事になっている。

 

「こちらの機体は問題ないです‼ 全てオールグリーン‼」

 

「こっちの機体は燃料が抜かれてます‼ 弾薬は充填されてますけど………」

 

「こっちは逆に、燃料は満載でも弾薬がありません‼」

 

各自からの報告に男は頭が痛くなった。一機は全てが揃っているが、残りはどちらかが無いのである。痛いを通り越して、神々が自分達に試練を与えているのかと考えるほどであった。

 

「燃料が無い機体は、どこかにタンクがある筈だ‼ そこから給油しろ‼ 弾薬が無い奴も同じだ‼」

 

「「了解‼」」

 

男達はすぐに行動に移した。そして、男達の考えは当たり、弾薬の入ったケースや燃料満載のタンクが見つかったのである。すぐに、給油と補給を行うと全機、使える状態になったのであった。

 

「こちら、アンタレス2。隊長、聞こえますか?」

 

<感度良好だ。機体は見つかったか?>

 

「ええ、見つかりましたよ。すぐに出れます‼」

 

<判った、俺もすぐにそちらに向かう。機体を滑走路に上げておけ>

 

「了解です……機体を滑走路に向かわせろ‼ 滑走路で隊長と落ち合うぞ‼」

 

『了解‼』

 

男達は機体を滑走路へと向かわせていた。だが、滑走路へ通じる扉の向こうには奴らが埋め尽くしており、進もうにも進めない状況であった・

 

<どうする‼ このままじゃ、滑走路に行けないぞ‼>

 

「判っている‼ 仕方が無い‼ 機銃を使って薙ぎ払え‼」

 

男の指示でF-14のM61A1 20mmガトリング砲が火を噴き、奴らを鎌切れと化した。それにより、戦闘機が通れる広さを確保したのである。

 

「上がるぞ‼」

 

男の指示で、F-14は滑走路へと向かい、リーダーを乗せると、そのまま離陸して目的の空母へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、紀伊の士官室で休んでいた空は、いつの間にか真っ白な空間に連れて来させられていたのである。

 

「ここは………僕が転生した所………」

 

「そうじゃ、空君」

 

「ッ⁉ アポロニアス様……どうして僕をここに呼んだのですか?」

 

空は自分の後ろに立っていたアポロニアスに驚くが、直ぐに冷静になり自分を呼んだ理由を尋ねた。

 

「君の空母の場所を教えようと思ってな………さて、空君、君専用の空母じゃが、君であればすぐに見つかるじゃろう」

 

「なんでそんなに素っ気ないんですか………まぁ、良いです。自力で探します」

 

「それとじゃ………君にも一つ言っておかなくてはならない事がある」

 

「………何ですか?」

 

空はアポロニアスの真剣な顔からして、嫌な予感がしていた。

 

「君の専用空母じゃが………ある物が搭載されておる。なに、安心せい。危険な物じゃないから…いや、危険と言えば危険かのう?」

 

「なんで、それを僕に?」

 

「君であれば扱えると思ってじゃ………さぁ、行くのじゃ。君らの活躍を見ているぞ」

 

アポロニアスはそう言うと姿を消し、空自身も空間から出る感覚がしたので身を委ねるのであった。




誤字脱字、質問、指摘など有れば、よろしくお願いします‼


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艦艇設定

皆様にお知らせです。

遅くなりましたが、この作品をリメイクする事にしました。
と言うのも、設定自体がガバガバな上、矛盾点が出てきたからです。また、最大の理由は………終着点が見えなくなってしまったからです。
この設定を最後にこの小説は未完結とさせて頂きます。

自分の都合でこういう形になってしまった事、誠に申し訳ありません。
ですが、リメイク版では詳しく書いていきますので、そちらを楽しんで頂けたら幸いです。

最後に今までこの作品を読んでくださった皆様。誠にありがとうございました‼


艦名 紀伊型超弩級戦艦一番艦“紀伊”

 

正式名称 超大和型戦艦、紀伊型超弩級戦艦

 

全長 396.5m

最大幅 50.5m

 

武装

:51口径50㎝四連装砲 四基(前甲板2基、後部甲板2基)

:65口径15.5㎝三連装副砲 二基(艦橋前1基、艦橋後1基)

:60口径127㎜連装速射砲 八基(前甲板左右1基ずつ、艦橋横2基ずつ、後部甲板左右1基ずつ)

:CIWS 六基(艦橋周り)

:多目的VLS 五セル(一セル16基)(後部甲板)

:40口径12.7㎝自動連装高角砲 四基(艦橋横左右2基ずつ)

:ハープーンSSM四連装発射機 四基(後部甲板左右2基ずつ)

 

レーダー

:AN/SPY-3

:OPS-28

:OPS-20

:AN/SPS-73

 

C4I

:MOFシステム

:海軍戦術情報システム

:イージス武装システム

 

機関

:加圧水型原子炉 四基

:蒸気タービン 五基

:スクリュー 四基

 

設定

紀伊型戦艦として、アポロニアスが建造した戦艦である。

海上自衛隊のイージス艦“こんごう”“あたご”、アメリカ海軍の原子力空母“ジェラルド・R・フォード”“ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 ”の武装、機関、レーダーを装備させたトンデモ戦艦である。

なお、艦橋に関しては戦時中の物にしてしまうと、レーダー系統の搭載が不可能と言う事もあり、艦橋はアイオワ級を近代化改装した形となっている。また、乗員については、各種の乗組員で行えれる様に設計されている。

なお、足りない乗員に関しては、アンドロイドを使っている。

 

主砲…旧大日本帝国が開発予定だった物

副砲…大和型戦艦の副砲の口径を大きくした物

CIWS…“こんごう”が装備している物

多目的VLS…トマホーク巡航ミサイル、スタンダード SM-2/SM-6艦隊防空、SM-3弾道弾迎撃ミサイル、シースパロー、ESSM個艦防空ミサイル、垂直発射式アスロック対潜ミサイルを装備している。

40口径12.7㎝連装高角砲…旧大日本帝国海軍の多くに標準装備されている高角砲

ハープーンSSM四連装発射機…“こんごう”が装備している物

 

レーダー…ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 、こんごう、あたごより

 

C4I…こんごうより

 

機関…ジェラルド・R・フォードより

 

艦長 山本俊輔

副艦長 高城沙耶

 

 

 

 

 

 

 

 

艦名 天照級強襲機動航空戦艦

 

正式名称 天照級超弩級戦艦、赤城型航空母艦

 

全長 420m 

最大幅 60m

 

武装

:50口径50㎝三連装主砲 3基(前部3基)

:60口径20㎝三連装副砲 1基(前部1基)

:80口径15㎝連装速射高角砲 12基(右舷6基 左舷6基)

:40㎝八連装多目的VLS 8基 各種ミサイル最大64発搭載可能

:12㎝四連装艦対空ミサイル発射機8基

:12㎝三十連装近接防御ロケット発射機 12基

:30㎜六連多砲身近接防御機関砲 16基

:50口径16㎜連装両用機関砲 24基

 

レーダー

:OPS-50

:OPS-28

:OPS-20

:AN/SPY-3

 

 

機関

:加圧水型原子炉 四基

:蒸気タービン 五基

:スクリュー 四基

 

カタパルト

:電磁カタパルト 2基

 

艦載機

:VF-25 10機

:VF-31 5機

:VF-1 3機

 

設定

赤城をモチーフに、アポロニアスが建造した航空戦艦。色々と混じってカオスな航空戦艦となっているが、性能は紀伊型にも劣らない火力を保有している。なお、航空戦艦を撃沈させたい場合、簡単に沈める方法はアルペジオの艦艇がいれば勝てるらしい。



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