この腐り目に祝福を! (クロスケZ)
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第一章 プロローグ
1-1 プロローグ


「う……うん?」

 

あれ?なんだここ?

周りは暗いのに、ここだけ明るい空間は?

 

「目を覚ましましたか、比企谷八幡さん」

 

俺は、声のした方を向くと…そこには天使、いや!女神がいた!

 

「あの大丈夫ですか?」

「ひゃ、ひゃい!」

 

おいおい、はいの一言でも噛じまったよ。

いや、でもこんな美少女にいきなり声掛けられたら普通噛むでしょ?

だから、俺が噛むのは世界の道理だ!

とりあえず、一呼吸入れて…

 

「あ、あの、此処はどこですか?あと、あなたは?」

 

「私の名はエリス。女神エリスです。そして、ここは死後の世界です。」

 

はぁ?女神?死後の世界?何を言って…

その瞬間、記憶がフラッシュバックを起こした。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

バレンタインイベントが無事に終わってから数日が経っていた。

 

俺はいつものように、授業を終え部活も終えて帰宅していた。

てか、この季節はやっぱし冷える。こういう時は、マイフェイバリットドリンクのマッ缶ことマックスコーヒーを飲みながら帰るのが一番。

 

「さみぃ。早く買って帰ろ」

 

マッ缶が売ってる自販機に足を運んでいたら、背中に急にドスっと衝撃が走った。俺は衝撃のあった場所を触ると、触れた手が真っ赤に染まっていた。

 

「うっ…くそっ、なんだよ、これ!」

 

怒りと痛みが混じりながら、後ろにいた人物を確認した。そこには、文化祭の時に依頼をしてきた相模南が立っていた。

 

「……あんたが悪いんだからね……あんたが……」

 

「なに言ってんだよ」

 

「あんたが、なんで幸せそうに日々を過ごしてて、ウチが不幸になるの!なんで!なんで!なんでよ!これも全部あんたのせいなんだから!」

 

「訳わかんねぇよ!うぐっ…」

 

痛みを抑えるかのように、刺された箇所を抑え相模から逃げるように歩き出した。

 

「ねぇ!なんで!逃げるのよ!答えてよ!」

 

それから、俺は何分、いや何十分間相模から逃げた。時説、痛みから意識が飛びそうになったが歯を食いしばって逃げた。

俺が食いしばって、痛みから泣きそうな時、相模が壊れた人形のように笑いながらゆっくりと追いかけてきた。

なんとか、俺は隠れる場所を探して路地裏へと行った。廃材などが置かれた物陰に隠れ、意識が朦朧としていたが壁に持たれ掛けた。

 

「うっ……ハァハァ…うぐっ!」

 

内心では、分かっていた。俺は、もう助からないと。だから、俺は自分が助かる道ではなく相模が俺以外の奴に手を出さないようにするしかないと。

ポケットからスマホを取り出し、雪ノ下陽乃に電話を掛けた。

 

「はろはろ~、比企谷くんから連絡なんて珍しいねぇ~。なに?お姉さんとデートしたいの?」

 

電話口からは、いつものテンションの雪ノ下さんの声が聞こえた。

 

「…伝えたい事があります」

 

「うん?いつもと雰囲気違う?なに、やっぱしお姉さんに告は「いいから!今は黙って、聞いて下さい。」…」

 

「小町と雪ノ下と由比ヶ浜……それに俺に関わってきた奴らを守ってやって下さい。俺は…もう…「やっと、見つけた……早くさっきの質問に答えてよ!」っ。」

 

相模が遠くからゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。俺はもう立つ力すらなかった。だから最後の抵抗としてスマホを相模にバレないように、廃材の隙間に隠した。

 

「相模、お前が、あの時真面目に仕事とかしていれば、なにもなかった。それに、お前がちょっとハブられ始めたからって、それを不幸とか言うんじゃねぇよ!全部お前の自業自得だ!」

 

「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」

 

相模は、俺の腹部に何度も何度もナイフを刺してきたが、もう叫ぶ気力も残っていなかった。

俺は刺される度に、この1年間の思い出が1つ1つ蘇ってきた。

 

(あー、本当にいろいろあったな。本当に…)

 

そこで、俺の意識が無くなった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 



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1-2 プロローグ

俺は全てを思い出した、その瞬間刺された箇所が痛み出した。すぐさま、腹部を確認したが刺された傷はなかった。どうやら、錯覚だったみたいだ。

 

「比企谷八幡さん、思い出したんですね。」

 

「はい。……あの1つ良いですか?」

 

エリス様の表情は曇っていたが、俺はそんなことよりも……

「俺が死んだ後、あの後どうなりましたか?アイツらはどうなりましたか?」

 

「あの後、雪ノ下陽乃さんが警察に連絡して、相模南さんは捕まりました。比企谷八幡さんが言うアイツらというのは、比企谷八幡さんに関わっていた人達の事ですよね?」

 

「はい。」

 

「まず、比企谷小町さん・雪ノ下雪乃さん・由比ヶ浜結衣さん・一色いろはさん・川崎沙希さんは、あなたが亡くなった事で精神が安定していない状態です。」

 

「戸塚彩加さん・材木座義輝さん・戸部翔さん・海老名姫菜さん・三浦優美子さんも先ほど出た女性の方々と比べるとマシですがかなりショックを受けている状態です。」

 

「平塚静さんと雪ノ下陽乃さんに関しては、日々の日常が上の空の状態です。」

 

意外だった。俺の死に対してこんなにも影響を与えていた事に。それに、小町や雪ノ下や由比ヶ浜よりも関わりが少なかった奴らまで…。

 

「あのエリス様、アイツらが今後どうなるか未来は見えないんですか?」

 

「ごめんなさい、見えません。見えたとしても天界規定により教えることも出来ません。」

 

エリス様は、今にも泣きそう顔をしていた。

 

「そうですか…。エリス様、大丈夫ですよ。俺が居なくなっても、アイツらは半年、いや一ヶ月もすれば元に戻りますよ!」

 

エリス様を励まそうと笑顔でサムズアップしたが、それを見てエリス様は泣き出してしまった。

おい、俺の笑顔のせいで女神が泣いちまったじゃねぇか!どうすんだよ、これ。てか、俺の笑顔って、そんなにヤバいのか。

 

「比企谷八幡さん、あなたは少し自分のことを卑下しすぎです。あなたの行動によって、救われた人達がいることを考えて下さい!」

 

「……っ。すみません、あと一つ良いですか。俺は、アイツらを救う事ができたんですかね。結果的には……」

 

「はい!」

 

「そうか……良かった……」

 

俺は、その言葉で今まで我慢していたものが一気に崩壊した。本当ならいつものように、アイツらと過ごし、小町も総武校に来て、俺らと一緒に奉仕部に来た依頼を解決したり、生徒会の仕事を手伝ったり、時折いがみ合ったりして……今にして分かった。アイツらと過ごした日々は、俺が求めていた本物だったことに。

その瞬間、俺の目から頬を伝って一筋の涙が伝っていった。

 

「なんで…今更…クソっ……っ!」

 

「今は、私と比企谷さんしかいません。我慢しなくてもいいんですよ。」

 

エリス様は、そういうと優しく抱きしめてくれた。俺は、年甲斐にもなく大声を出して泣いた。

 



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1-3 3つの選択肢

ひとしきり泣いた俺は、女神さま、いや、美少女に抱きしめて貰っていたことを思い出したが、少し恥ずかしかったが気持ちは楽になった。

それと、後半になっていくにつれてエリス様の胸が硬い事には気づいたが触れないでおこう。

 

「ありがとうございます。」

 

「いえいえ、私もこういうことは初めてでしたので、うまく出来ましたか?」

 

エリス様は、もじもじしながら両手の人差し指を合わせていた。

なに、この天使!いや、女神様!めちゃくちゃ可愛いんですけど!小町、戸塚の上位互換か!

 

「大丈夫です、大分気持ちも楽になりました。」

 

「良かった!」

 

「エリス様、結婚してください!」

 

「えっ!?」

 

「はっ!?今の違います!」

 

いや、だってあんな眩しい笑顔を向けられたらねぇ。分かるでしょ、みんな?

むしろ俺みたいな訓練されたボッチですら、これだよ。訓練されてない奴らだったら理性ぶっ飛んで何をやらかすか。ふぅ…。

 

「ごほん!えっと、比企谷八幡さん。これからあなたに3つの内1つを選んでもらいます。」

 

「なんの3つですか?」

 

「これからの事です。1つ目は、もう1度赤ん坊になって人生をやり直すか。2つ目は、天国に行って何事もなく日々を過ごす。 「2つ目でお願いします。」えっ!?ちょっと待ってくださいよ!」

 

えっ?なんで、片方地獄でもう片方が天国なんだよ?そんなの天国選ぶでしょ。

 

「まだ3つ目を言う前に、決めないで下さい!」

 

声を荒らげて怒っているのはわかるが、何故だろ。とてもSなとこを刺激される。とても弄り倒したいけど、グッと抑えなければ。

 

「えっと、最後の3つ目はなんですか?」

 

「もう!3つ目は、記憶を保持した状態で異世界に飛んでもらいます。そこで、魔王を倒して平和な世界にして欲しいんです。今現在、その世界では魔王軍により人々が減らされてしまっているのです。本来なら殺された方々は、もう1度その世界で転生するですが、そちらの世界で殺された人々は、1度殺されたのに、なんでもう1度同じ場所に行かなくてならないのかと言って転生を拒んでしまいます。」

 

あー、なるほど。それは、誰も殺された場所に帰りたがらないよな。まして、転生をする度に状況が悪化しているなら尚更。

 

「なので、若くして亡くなった方の肉体と記憶を保持した状態でそちらの世界に送り出しているのです。」

「それは能力が平均より下の人は、その世界で生き残るのは難しいんではないんですか。」

 

「本来なら生き残るのも大変ですが、こちらから1つ固有スキルや神器などを使えるようにしております。」

 

言わばチート能力をもって、俺TUEEEEをして行くわけだな。だが、腑に落ちない。

 

「その固有スキルとか持った人達は、既に送られているはずなのに魔王は倒せていないんですか。」

 

エリス様は、ちょっと困った様子で目をそらした。

 

「えっと……あちらの世界の暮らしが楽しくなってしまい、わざわざ危険を犯す必要がないという人達が多くて……」

 

あっ、これダメなやつだ。



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1-4 決断

「そ、それで比企谷八幡さん、この3つの選択肢どれにしますか?」

 

うわぁ、これで3つ目選ばないと罪悪感が……。

てか、もうこれ詰んでるんじゃね?1つ目は論外だし、2つ目選んだらエリス様泣くと思うし……。

覚悟を決めるか。

 

「では、3つ目でお願いします。」

 

「良いんですか!?本当に!」

 

エリス様が俺の手を握ってきた。余程うれしかったのであろうが、近いです!いや、本当に近い!本当に勘違いしちゃいますから!勘違いして、告白して振られ…さっき告白まがいなことしたが、あれはノーカンだからな!

 

エリス様も手を握っている事に気づいたのか、ゆっくりと手を離した。しかも、ちょっと俯いてたが、真面目な顔して、すぐに俺のほうを向いた。

 

「では、ちょっと待ってくださいね。特典をファイリングしてあるので、ファイルを取ってきますね。」

 

とことこ、エリス様は俺が来るまで座っていたであろう椅子の方に歩いて行った。こう言っては、なんだが…美少女というものは、歩く姿だけでも可愛いと思ってしまう。

ファイルを両手で抱えて、鼻歌混じりでこちらにきた。

 

「では、自分が欲しい能力を選んでください。」

 

「分かりました。」

 

ファイルを開くと、まぁ有名な武器が多い事、多い事。エクスカリバー、グングニル、草薙の剣に、えっなに?漫画・アニメの能力とかもあるの、これは俺の中二心がうずいちゃう。材木座だったら、これだけで1日は粘れるんじゃないのか。

それから、俺はペラペラとファイルを捲っていくと、ある1枚のページで捲るのを辞めた。

そこに書いてあったのは、少年だったら誰しもが1度はなりたいと思うものだった。

 

「え、エリス様!これでもいいんですか!?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「よっしゃー!んじゃ、この''仮面ライダー''でお願いします!あっ、でもこの能力って、どのライダーになれるんですか!」

 

自分自身でも、興奮していることは分かった。興奮のあまりいつも三割増しくらいの声を出していた。

 

「そちらの能力は、比企谷八幡さんに性格にあったものになります。」

 

って、ことは……俺の性格から…あっ、俺は主人公ライダーになれない。

その場で、両手を床につき思わず

「あぁぁぁんまりだぁぁぁー!」と叫んでしまった。

 

「だ、大丈夫ですか?!比企谷さん!」

 

「くっ!大丈夫です。」

 

クソっ……俺の性格が憎い!だか、まぁ…ライダーになれるチャンスはないんだし、もしかしたらギルス・新アギト・カイザ・スカルとかになれるかもしれないし!物は考えようだ!でも、キャンサーだけは辞めてくれ……

 

「エリス様!俺は''仮面ライダー''の特典を選びます。」

 

「分かりました。では、こちらの能力を比企谷さんの固有スキルとして付与します。あちらでは冒険者登録を最初に行って下さい。その時に、冒険者カードを頂くので、そちらに固有スキルを習得していただければ大丈夫ですので。」

 

「分かりました。」

 

エリス様は、ポケットの中から布袋を取り出し俺に渡してきた。

 

「こちらには、あちらの世界のお金が入っております。このお金で冒険者登録を行ってくださいね。」

 

「ありがとうございます!」

 

「では、比企谷八幡さん、ご武運を。そして、新たな世界での幸福を祈っております。」

 

俺の周りが、白い光に包まれた。

 

 




最初の部分だけで、かなり時間をかけてしまいごめんなさい!
あと、感想ありがとうございます。
まさか、この小説で感想が付くとは……
本当に読んでいる方々に感謝しています!

あと、こう言った後書きは章の終わりだけに書いていきます!
作者の日常とか書いたら、FF14とFGOの話しとかなっちゃうんで( 笑 )

では、今後とも''この腐り目に祝福を!''よろしくお願いします。


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第二章 冒険×変身×仲間
2-1 現れた紋章


光が徐々に消え、俺の目には中世ヨーロッパ風の異世界の風景が広がった。

やはり、異世界ものといえば中世ヨーロッパ風!

異世界もののライトノベルでも、定番だ。

 

「頭では、わかっているつもりだが定番といっても感動するもんだな。」

 

早速、街中を見渡しながら歩いて行き交う人を観察してみると、獣人・エルフ・人間など…本当にファンタジーの異世界なんだなと感動した。

 

「おい、そこの。変な装備の奴。」

 

行き交う人を観察しながらと歩いていたら、不意に後ろから声を掛けられた。声の方を向くと、そこには世紀末から来たのではないかと思う風貌の男がいた。

 

おい、マジかよ。いきなりカツアゲですか。

てか、おっさん、世界観違うだろ!あんたは、どちらかといえば、胸に七つの傷がある主人公の世界の住人だろうが。

 

「聞いてるのか、そこのボーズ。」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

やばい、やばい。こっちに歩いてきた。

俺の異世界人生、初っ端から運が悪いんだが!

 

「おっ、近くでみると貫禄がある目じゃねぇか。いい目してるじゃねぇか!ボーズ!おまえ、ここに来るの初めてか?」

 

「はい」

 

あれ、この人めちゃくちゃ好い人なんですけど。

俺の目を褒めてくれるとは…この世界にマッ缶があったら奢るわ。

 

「ほぅ、そうか。なら、冒険者登録はしたか?あそこで出来るからしてないんだったら登録をしてくるがいい。」

 

おっさんは、1つのデカい施設を指さした。

本当に好い人!前の世界だったら、確実にカツアゲか舌打ちしかされないのに!

ましてや、ここまで他人に優しくされたのは初めてだ。むしろ、優しくされる数より、嫌がらせの数のほうが……あれ、ちょっと目頭が熱く…。

 

「ありがとうございます。」

 

「おう!頑張れよ! 」

 

俺は、おっさんに一礼して施設に向かった。

施設に入ると、様々な人種が分け隔てなく酒を飲んだり、1枚のボードを見たり様々な光景が広がっていた。そこで、1番奥にあったカウンターに受付嬢であろう女性が4人並んでいた。

なんか、ハロワみたいな光景だな。まぁ、行ったことないけどな。とりあえず、並んでみるか。

並ぶこと数十分、やっと俺の番がきた。

 

「では、次の方どう…ひっ!アンデッド!」

 

「こう見えても一応人間です。」

 

おいおい、やっぱりアンデッドに見えちゃうの。なに、この目が悪いの。クソっ、エリス様にこの目を綺麗にしてもらえば良かった。

てか、一応人間とか言ってる自分が1番心に来るわ。さっきのおっさんの時とは、違う意味で目頭が熱くなってきた。

 

「し、失礼しました!」

 

金髪のウェーブが掛かった受付嬢は直ぐに頭を下げてきた。

 

「いえいえ、慣れてますから…。」

 

「えっと、今日はどうされましたか?」

 

「冒険者登録をお願いします。」

 

「はい、分かりました。では、こちらに名前と登録料をお願いします。登録費用は1000エリスです。」

 

えっ、エリス様って、お金の単位になってるの。まぁ、こんな俺にも優しくしてくれたしな。

制服のポケットからエリス様から渡された布袋を取り出し受付嬢に渡した。

 

「確認できました。では、こちらお釣りの500エリスです。」

 

「えっ、あっ、ありがとうございます。」

 

おっ、マジか。エリス様!少し多めに入れといてくれたんですね!ありがとうございます!もう、エリス様に一生ついて行くわ。

 

「では、こちらのカードに触れて下さい。ヒキガヤ ハチマンさんの潜在能力などが記載されますので。」

 

こういった異世界ものでは、あるあるの奴がきた。普通のヤツなら、此処で俺の隠された潜在能力が覚醒して、施設内で騒がれるとか思っちゃうんだが、俺は違う!そんな潜在能力が俺にあるとも思えんし!期待しただけ、凹むだけだ。だが…少しは期待しても罰は当たらないよな?いいよね?若干の期待をもちながら、カードに触れた。

 

「もう、大丈夫です。では、ヒキガヤ ハチマンさんのステータスを拝見させて頂きます。幸運が平均より低いことを除けば、他は平均より上ですね。何よりも耐久値が凄く高いです、次に知力ですね。あと、この右下の紋章みたいなものは、何でしょうか…。」

 

「すみません、1度見せてもらってもいいですか。」

 

「はい、どうぞ。」

 

カードを手渡されると、すぐに右下にマークを確認した。そこにあったマークとはライダーズクレストだった。だが、そこには''2つ''のライダーズクレストがあった。

1つは、そのライダーのある語源で表したものと、もう1つは、Φのマークが記載されていた。

おいおい、マジか、マジかよ!自分の手が震えていることが分かった。俺は何度も目を擦って、見直したが、2つのマークは変わらなかった。

 

「あ、あのヒキガヤ ハチマンさん。そのマークの意味わかりましたか?」

 

「よっしゃー!!!!」

 

「ひっ!」

 

思わず、ガッツポーズを取りながら叫んでしまった。受付嬢は、ビクッとしたのを見て我に返った。

 

「すみません。このマークは、俺の憧れていたスキルだったので嬉しくて、つい。」

 

「だ、大丈夫ですよ。憧れていたスキルでしたら、その嬉しくて叫んでしまうのも納得ですしね」

 

受付嬢は、最初は戸惑った様子はあったが理由に納得したのか、ニコニコ笑いながら肯定してくれた。本当に、この世界好い人しかいないなぁ!

 

「では、ヒキガヤ ハチマンさんジョブのほうはどうされますか?一応上位ジョブのクルセイダーには慣れますが。」

 

この仮面ライダーなら、やっぱりこのジョブじゃねえとな。

俺は、迷いもなく「冒険者でお願いします。」と言った。

 

「分かりました。冒険者ギルドにようこそ、ヒキガヤ ハチマンさん。今後のご活躍期待しております。」

 

俺の新しい世界での生活が、ここからスタートした。



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2-2 変身と出会い

受付嬢さんに、現状として最低ランクの依頼を教えて貰った。その依頼とは、ジャイアントトードを3日以内に5匹討伐という内容だ。

カエルか…前の世界では、ヒキガエルと呼ばれた身としてはカエルを退治するのは気が引けるが仕方ない生活のためだ。そういえば、雪ノ下にも呼ばれたことあったなぁ…。

センチメンタルになりながら、平原を歩いてジャイアントトードを探していると遠くの方から青髪の女と''緑色のジャージを着た男''の2人組がジャイアントトードに追いかけられて…あっ、青髪の女が喰われた。

 

ジャージ男が、必死に女を助け出そうとしているがカエルは微動だにしてないな。

人助けが初陣とはな。

 

俺は仮面ライダークウガを想像しながら、鳩尾の前に手で逆三角形を作った。っが、何も起きない。あれ?俺、間違ってる?もう一度やるが、何も起きない。おかしい、本来ならベルトが出てくるはずなのに。はっ!?まさかレベルが足らないとかか?!

 

俺は、財布の中に仕舞ってあった冒険者カードを取り出してカードを確認した。

裏面にも表面にも変化が無い。最後に、ライダーズクレストを触って何も起きなかったら、あの二人には悪いが帰って寝るか。

 

2つのマークに指先で触れた途端に、能力と解説が頭の中によぎった。クウガもファイズも両方に別々のレベルが存在して、レベルが上がる度に変身できる幅が増えるらしい。もちろん、強さは原作と同じだ。クウガのほうは、変身出来なかった理由としては原作と同じように敵を殴ってやらないと最初の1回目は変身できないようだ。

また、変身をする際にその仮面ライダーのイメージを強く持つことが変身する際に必要と。

 

2つの能力は強力だが、デメリットとしては1日の変身回数は決まってないが変身解除をする度に戦闘での疲労が一気に押し寄せてくる。また、変身出来るのは1日の内どちらかしかなれないことと、この世界でのスキル習得ができない点だ。

まぁ、これだけの能力があれば仕方ないか…。

 

「よしっ!んじゃ、行きますか!」

 

俺は、ジャージ男の方に走っていった。

ジャージ男は、こちらに気がついたみたいだな。

 

「おーい!頼む助けてくれ!」

 

「分かった。」

 

俺は、カエルに向かって拳を放った。その瞬間に殴った方の腕に鎧の様なものが付いた。

すかさず、鎧が付いていない方で殴り、すぐさま蹴りも入れた。手足両方で殴ったことで、俺は姿が仮面ライダークウガ グローイングフォームへと変わった。

 

「よし!変わった!」

 

「嘘だろ、おい!か、仮面ライダークウガになった!」

 

「おりゃ!」

 

グローイングフォームになって、カエルの腹を殴った瞬間に、口からカエルの唾液塗れになった青髪の女が出てきた。

カエルが絶命したことを、確認してから変身を解いた。

 

「…うぐ……うえ……うええええええん……!うぐ、うええええん、あ、ありがとうどうねぇ………アンデッドさん、あとでターンアンデッドしてあげる…」

 

おい、コイツ感謝しながら俺の事ディスったぞ。

しかも、浄化までしようとしてるぞ。

 

「お、おい、あんた!」

 

「あん?うぉっ!?」

 

ジャージ男は鼻息を荒くしながら、俺の両肩を掴んできた、俺はそっちのけはないぞ!

 

「今、仮面ライダークウガになったのか!それと、もしかして、俺と同じで転生者なのか!」

 

「そうだが!ちょっと離してくれ、肩が痛い。」

 

「わ、悪い、つい興奮しちまって。」

 

「あぁ…。」

 

「とりあえず、どこかで話さないか?」

 

このジャージ男のコミュ力高っ!えっ?コミュ力高ければ、初対面の奴にここまでぐいぐい来れるの?

 

「べ、別にいいぞ。でも、もう少しジャイアントトード倒したいから夕暮れになったら冒険者ギルドで待ち合わせでどうだ?」

 

「分かった!あっ、俺の名前はサトウ カズマだ。よろしく!あと、こっちのベタベタの奴が「アクア!女神アクアよ!」へいへい」

 

「俺の名前は、ヒキガヤ ハチマンだ。」

 

「分かった、ハチマン。とりあえず募る話は後でしよう!俺たちは先に帰ってるからな。ほら、行くぞアクア。」

 

「うぅ…早く帰ってお風呂入る…。」

 

サトウとアクアは、街に向かって歩きだした。てか、アイツ普通に名前で読んできたよ。

コミュ力お化けかアイツは。

あと、アクアに様を付けるべきなのか…てか、臭い。

 

その後、俺は夕暮れまでジャイアントトードを狩りまくった。

 



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2-3 1日の締めくくりは不幸に終わる

サトウと別れた後、俺はジャイアントトードを10匹ほど狩った。10匹目を狩り終わったぐらいに日も落ち始め、サトウとの約束もあるから街に戻ることにした。だが、正直に言うと、会うのがダルい。予想以上に身体に疲れが押し寄せてきたからな。

バレないように換金だけして、適当に宿とって帰ろうかな…よし!帰ろう!

明日、サトウに会ったら見つかんなかった、てへぺろって感じにすれば大丈夫だろ。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

まぁ…、世の中そんなに甘くなかった。

冒険者ギルドの出入口でサトウが待ち伏せしていた。

 

「ハチマン、遅かったな!」

 

「なに、お前、あれからココでずっと待ってたのか?暇なのか?アホなの?」

 

「おい!いきなり会って、それかよ!」

 

「悪い、疲れ過ぎて本音がでちまったわ。てへぺろ!」

 

「尚更、悪いわ!てか、可愛くもないし腹立つわ!」

 

「アクア様?のほうはどこいるんだ?」

 

カエルに捕食されていたが、自称女神だが、もしかしたら本当の女神かもしれないし、この世界のことは、まだ分からないし。一応、様を付けておいた。

 

「様?アクアなら向こうだ」

 

サトウが、ギルド内のある一角に指を指した。

そこには、おっさん連中と共に酒を飲みながら踊っているアクアがいた。

ありゃー、女神とはかけ離れてるな。やっぱり、自称女神だな。様つける必要ねぇな。

俺が呆れた顔をしていると、サトウが「席は確保してあるから着いてきてくれ」と歩きだした。

 

「サトウ、悪いんだが席の場所を教えてくれ。先に討伐報告をしたい。」

 

「分かった、席はあそこな。」

 

「分かった。」

 

俺は、サトウに席を教えて貰ったのでギルド嬢に今回の討伐の報告した。

ジャイアントトード、規定討伐完了+1匹討伐事に5000エリスとの事だったので、12万5千エリスを貰った。

あら、やだ!初日でこんなに稼げるなんて思いもしなかったわ。 思わず、オカマ口調になってしまうくらい驚いている。

金は持ちきれ無かったから、受付嬢さんに持ちきれなかった分を預けて、サトウがいる席に向かった。

 

「とりあえず…話が終わったら宿屋に行くか……。」

 

「おっ、やっと来たか。」

 

「悪い待たせたな。んで、話ってなんだ。」

 

「直球で言うぞ!俺たちとパーティを組んでくれ!」

 

サトウは、手を合わせながら頭を下げてきた。

なぜ、俺をパーティに誘うんだ?サトウも転生者なら固有スキルを持っているはずだ。

それに……

 

「サトウ、なぜ俺とパーティを組んで欲しいんだ?」

 

「………………戦力が欲しいんです!」

 

「えぇ……サトウお前だって、こっちに来る際にスキル貰っただろ?それで、何とかならないのか?」

 

サトウは、ゆっくりと腕を上げアクアの方に指を指した。

 

「あれが……俺のスキルというか特典だ。」

 

「はぁ?」

 

「だから、あれが俺の特典!クソっ…ちゃんと選んでおけば良かった…うっ…」

 

声を荒らげて、泣きながら言われたが俺には、何が何だか分からない。とりあえず、慰めてやるか…?いや、辞めておこう。多分理由とか聞いたら、確実にパーティに引き込まれそうだ。

ココは、そっとしてしたおくか。

 

「なぁ、ハチマン!聞いてくれよ!」

 

「いやだ。」

 

「あんな、俺が転生してから、この1ヶ月な…」

 

うわぁ、完全にこっち無視で話始めやがったよ。

どうするか、退散するか。

よし!決めた、退散しよ!

俺が席を立とうした瞬間に後ろからドンっという衝撃がきた。

 

「アンデッドさ~ん!さっきは、ありがとう~ね~」

 

衝撃の正体は、自称女神のアクアだった。てか、酒臭っ!あと、さっき自己紹介したよな?

 

「なになに、なんれ、カズマ泣いてるの?ねぇ、なんで~?」

 

「うるせえ!全部アクア!お前のせいだから!」

 

「あによ!カズマ!いきなり、怒らなくたっていいじゃない!」

 

喧嘩なら他所でやってくれよ。あと、酒臭いから離れてくれ。

 

「転生の際に、お前が煽らなきゃこんなことにならなかったんだよ!」

 

「はぁ?あんな死に方したら誰だっていじるでしょ!うっ…叫んだら気持ち悪く…」

 

えっ?ちょっと待ってください。

まさか、まさか…おい、やめろ、やめろ!

 

「おうぇぇぇぇぇぇぇ…。うぐ、おぇぇぇぇ…ゴホゴホ……。」

 

やりやがった…。小町、お兄ちゃん異世界来て1日を締めくくる最後がゲロまみれになっちまったよ。

 

「もう…いいや、帰ろ…。」



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2-4 新たな関係

あの後、俺がゲロまみれになった現場に受付嬢さんが来てくれて、アクアとサトウを叱った。二人のことを叱り終えた後に、受付嬢さんは大浴場へと案内してくれた。その際に受付嬢さんが自己紹介をしてくれたが、俺的にはゲロまみれになった臭い体を早くどうにかしたかった。いや、だって…ただでさえ、アンデッドと間違われるのに匂いまで付いちゃったら本物と変わらなくなっちゃうじゃん。今なら、L〇D2やバイオなハザードに出てもゾンビに噛まれない自信あるわ。とかくだらない事を考えたりしていた。

寝る前には、パーティの事、今後の事を考えたしたいたら、いつの間にか寝ていた。

 

まぁ、こんな回想したところでどうしようも無いことは知っているが、一応な、一応。

 

こんな回想してる暇があるだったら、未来の事考えなさい回想谷君と聞こえて来そうだから、もうやらね。

 

――――――――――――――――――――――――――――

「「ハチマン様、昨日はすみませんでした!」」

 

冒険者ギルドに着くなり、サトウとアクアが土下座をしてきた。辞めてくれ、めっちゃ目立ってるから本当に!辞めて!

 

「昨日のことは、気にすんな。とりあえず、目立つから土下座は辞めてくれ。」

 

「「ありがとうございます!」」

 

なお、土下座で言われた。だから、それを辞めろ。

 

「とりあえず、昨日の話しの続きをしないか?」

 

「おう!分かった!とりあえず席とってくるわ!ほら、行くぞアクア。」

 

「はーい。」

 

2人は空いてる席を探し始めた。

数分もしない内に、サトウが俺の名前を呼ぶ声が聞こえたから、どうやら席が取れたみたいだな。

サトウ達がいる席に向かった。

 

「んじゃ!ハチマン!昨日も言ったどおりなんだが、俺たちとパーティを組まないか?」

 

「とりあえず、昨日も言ったが理由を教えてくれ。じゃなきゃ断れないだろ?」

 

「なんで、断わる前提なんだよ!」

 

「大丈夫だ、昔の俺だったら即効で断っていた!」

 

「何が大丈夫なんだよ!なんで、そんな事でドヤ顔してんだよ!」

 

あれ?おかしいな?これでも、俺は成長した方ですよ。前の世界でアイツらといたせいか、この世界でのせいなのかは分からないが、俺が理由を聞いてから断るんだぜ。成長したわ、本当に。

 

「落ち着きなさいよ、カズマ。せっかく、仲間が増えるかもしれないのに。」

 

「そ、そうだな。理由としては、単純に戦力が欲しいんだ。」

 

「戦力?サトウ、昨日もよく分からなかったんだが、特典でアクアを選んだみたいな感じだったがどういう事なんだ?」

 

生前に、付き合っていた彼女だった奴を連れてきたのかと思ったが態度が違う気がする。

 

「い、いや、話せば長くなるんだが…。」

 

サトウは目を逸らしながら、ダラダラと汗を流し始めた。

 

「お、おい。そんなになるんだったら話さくてもいいぞ。」

「カズマが話せないなら、私が話すわ!」

 

それから、サトウが死因から特典でアクアを選んでから、これまでの出来事をアクアが説明してくれた。それにしても、死因と今までの生活が悲惨すぎて笑えなかった。

 

「サトウ……おまえ、辛かったな。死んでもなおさら、コレだもんな」

 

「やめてくれ!同情されるのが一番キツいんだよ!」

 

「ねぇ!なんで、私に同情してくれないの!」

 

「「うるせい、ダメ神」」

 

「二人して、私のことダメ神って言った!うわぁぁぁん……。」

 

アクア泣いているが気にせず、話しを進めた。

 

「ハチマンは、どんな死に方したんだ?」

 

「あっ、それ、私も気になる!それに、誰に転生して貰ったのか教えてよ!」

 

「あー、そのなんだ…。」

 

「なんだよ、はぐらかさず言えよ~。もしかして、俺と同じような感じの死に方なのか!」

 

「それはないから安心しろ。」

「クソっ!」

「ぷっ…カズマみたいな死に方する奴なんて、普通に居ないわよ。アハハ…。」

 

「う~!」

 

サトウが泣きそうになっている。

 

「はぁ…分かった。話すぞ、あんまりいい話じゃないから覚悟しておけよ。」

 

それから、俺はなぜ死因である事件が起きたのかなど、前の世界での俺の話しをした。

話しを終えると、二人と黙って下に俯いていた。

 

「……な……な……!」

 

サトウは、俯いていた顔を一気にあげた。

サトウと顔には、涙が零れていた。

 

「なんで!ハチマンがそんな死に方しなきゃいけないんだよ!なんで、ハチマンだけ身を挺して頑張ってきたのに救われねぇんだよ!」

 

サトウは、本気で俺に対して泣いていてくれた。

あー、サトウも俺なんかのために泣いてくれるんだな。

 

「あ''、あ''だじが…ぐすっ…天界に戻ったら…、その相模って…奴に天罰絶対に与える…!うわああああん…」

 

「お、おい。2人とも落ち着けって!もとはと言えば、俺が、あの時うまくやっていれば、こんな事にはならなかったんだよ。だから、2人が気にする事は無えんだよ。」

 

俺が2人を慰めようとしたら、2人は俺の顔面向かって拳を飛ばしてきた。いきなり飛んできた拳を避けられるはず無く、椅子から転げ落ちた。

 

「いってぇなぁ…おい、お前ら!なんの…」

 

2人の顔は、さっきと違い怒っていた。

 

「確かに、俺たちはまだ会って間もないけどな!お前が、やった正しさ位わかるんだよ!」

 

「それに、ハチマン…気づいてないかもしれないけど泣いてるんだかんね。」

 

アクアに指摘されて、自分でも気付かず泣いていたことが分かった。

エリス様の所で泣いて、結構吹っ切れた気にはなっていたが……やっぱり悔しいんと思っちまうんだな。

 

サトウとアクアは泣きながら、俺に抱きついてきた。俺は拒まず、受け入れた。

あー、こんな会って間もない奴にも関わらず、コイツらは俺の為に泣いてくれるんだ。コイツらとなら、俺は…また新しい関係が築けるのかもしれない…なぁ、雪ノ下、由比ヶ浜…俺は、この世界で''本物''を築けるよう頑張るからな。



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2-5 新たな仲間を求めて

「えー、あー…なんだ、その…」

 

3人は目を腫らしながら、席に付いていた。まぁ…なんだ…俺は一応パーティを組もうと思っている。だが、なんて言うか…気恥しいんだよ!

 

「んで、ハチマン。もう一度言うけど、俺たちとパーティを組まないか?」

 

カズマは、俺が言い出せないこと察したのか、なかなか言えなかった一言を言ってくれた。俺はもちろん…。

 

「断る!」

 

「なんでだよ!さっきまで、いい感じだったじゃねぇか!」

 

「冗談だ。」

 

「ったく、本当に冗談なのかよ…」

 

「これからよろしく頼むわ」

 

「あぁ!ハチマンよろしくな!」

 

互いに、握手した。前の世界だったら、本当にありえない光景だな。この光景を見たら、アイツらなんて言うのか…多分というか確実に、買収したとか言われるわ。

 

「ずるい!私もハチマンと握手する!」

 

「はいはい」

 

こうして、俺は転生してから2日目で仲間が出来た。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「おい、カズマさんよ~。」

 

「はい…。」

 

「ちゃんと戦う努力をしてくれ」

 

俺は、フォークをカエルの唐揚げに指して口に運んだ。

 

そう、アレから数十日が経ち、俺らは魔王を倒すべくモンスターから経験値を得ようと頑張っていたが…全く持って、カズマが戦力として、まだ使えないのである。アクアに関しては、いつの間に飲み代で借金が出来ており、日夜バイトに明け暮れて戦闘になかなか参加しない状態が続いたりした。

 

 

「はぁ…とりあえず、今のままでは戦力が足りな過ぎる。新たにパーティ募集をかけよう。」

 

「賛成だ!」

 

「はいはい!私が募集要項書く!」

 

アクアは、手がカエルの手羽先の杏でベタベタにしながら言ったが、正直不安でしかない。とりあえず、汚いから手を拭きなさい。

 

「アクア、書くんであればマトモな奴を頼むぞ。」

 

「大丈夫よ!なんてったって、私は上位ジョブのアークプリースト様よ!私が募集掛ければ、すぐ来るわよ!それに、私以外は、下位ジョブの冒険者2人だから、一般的に見れば私が2人を支えていて素晴らしいお方なんだなと思って来るはずよ!むしろ、私が居ることに讃えなさい!」

 

「借金…」

 

「ごめんなさい!ちゃんと、書きますので!」

 

綺麗なフォームで、頭下げたきたなぁ。このダメ神…とりあえず、不安だか任せてみるか。

 

「まぁ、任せるわ。」

 

「はい!」

 

カズマは、アクアを不安そうな目で見ていた。

本当に不安しか無い。

 

―――――――――――――――――――――――――



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2-6 めぐみん

翌日の冒険者ギルドにて。

 

「なんでぇ!なんで来ないのよ!」

 

アクアが頭を抱えていた。

俺達が求人募集の紙を出してから、冒険者ギルドの片隅にあるテーブルで、半日が経過していた。

 

誰も見ていない訳ではないんだが、俺ら以外にも募集を掛けているパーティもある訳で、所々で面接やら談笑やらしている。

 

つまり……どういう事が言いたいのか言うと、内容がかなり悪いんだ。

それに加え、アクアの今までの所業の悪さが広まっているせいで見向きもされない状態だ。

 

何となく、予想は付いていたが…まさかここまでとはなぁ。

 

「なぁ、やっぱり募集要項のハードルをさげないか?」

 

「いやよ!なんで、私が妥協しなきゃいけないのよ!」

 

「もとあと言えば、おまえがな!」

 

「あ、あのー!募集要項を見て来ました!」

 

アクアとカズマが言い争いをしているとこに、トンガリ帽子を被って、目には眼帯を付けていて、歳が小町と同じくらいの少女がきた。

 

「ほらきた!えっと、自己紹介頼めるかしら?」

 

「ふふふ…我が名はめぐみん!最強のアークウィザードにして、魔術攻撃で一番最強の爆裂魔法を操る最強の魔術師!

この出逢いは世界の理!そう我はこの運命とも呼べる、出逢いを待ち望んでいた!」

 

1回1回ポーズを変えながら、自己紹介していく少女ことめぐみん。

俺は、この自己紹介の感じ…材木座と同じ匂いがする。

 

「ふふふ…あまりにも強大な存在故に、世界に拒まれ続けた我の力を求めるか!」

 

マントをなびかせながらセリフを続けた。

おかしいなぁ。俺に的確なダメージが蓄積されている。めぐみんを見る周りの目が、俺が小町に黒歴史を見せた時みたいな目をしている。

 

 

「ならば、我と共に究極の深淵を覗く覚悟は出来ているか!人が深淵を覗く時、深淵も、また人を覗いている!」

 

最後の決め台詞が決まったのか、顔が綻んでいた。頼むこれ以上は辞めてくれ。その言動とポーズとかは俺に一番ダメージが通るんだ。しかも、小町と変わらないくらいっぽいから、俺の黒歴史を小町が親父達に披露した時の事も思い出すから。

見せた後に、親父達が病院を本気で進めてきた時には……もう、やめよう…思い出すだけでエリス様の所に行きそうだ。

 

最初に口を開いたのカズマだった。

「冷やかしなら他所でやっくれ。」

 

「ち、ちがうわい!!」

 

めぐみんは慌てて否定した。まぁ、めぐみんの自己紹介見たら冷やかしかと思うわな。

 

「その赤い瞳!もしかして、あなた紅魔族?」

 

アクアの言葉に、少女は嬉しそうな顔をしながらコクリと頭を頷ける。

 

「如何にも!わたしは、紅魔族で随一の魔法の使い手で、最強なんです!最強!あと、図々しいお願いがあるですが…出来れば何か食べるものを頂けませんか?3日ほど何も食べてないんです。」

 

めぐみんは、目をうるうるさせながカズマを見ていた。それと同時にめぐみんの腹がなった。

はぁ…

 

「カズマ。ここは、俺が出すわ。」

 

「あいよ。」

 

奢るはいいんだが…俺としては、どうしても気になっている物がある。

 

「めぐみん?でいいのか?」

 

「はい!なんでしょ!」

 

「その眼帯は、怪我でもしているのか?怪我しているんであれば、アクアに頼んで回復してやるが。」

 

「そうだぞ、回復だけしか取り柄がないアクアが治してくれるぞ!」

 

「誰が回復しか取り柄しかないって!」

 

「おいおい、今は面接中だから後にしてくれ。んで、どうする?」

 

「回復など入りません!この眼帯には意味があるのです!」

 

眼帯に意味がある?まさか…

 

「眼帯の下に何かあるのか?」

 

「ふっふっふっ…そこに気づくとは!貴方もなかなかいい目…してないですね!何ですか、アンデッドと合体としたような目は!」

 

「よし、カズマ。こいつ面接落とすぞ。」

 

「あっ、待ってください!ごめんなさい !だから、落とさないで!」

 

人の目を、アンデッドと合体したような目とは失礼な!てか、カズマとアクア、何笑ってんだ?あとで、2人ともしばく。

 

「んで、その眼帯付けてる意味は?」

 

「えっとですね!これは、我が強大な魔力を封印を施す為に付けている!もし、この眼帯が外れたとあれば、世界に多大な影響を及ぼします!」

 

おいおい、もしそれがマジならウチのパーティかなりの戦力になるな。それにこの世界では、封印とかあっても不思議ではないしな。

 

カズマが興奮気味にめぐみんに尋ねた。

 

「おぉ!それは本当なのか!」

 

「まぁ、嘘ですけどね。この眼帯は、ただのオシャレです!」

 

…………。

カズマと俺は目を合わせてからの行動は早かった。

俺がめぐみんを羽交い締めし、カズマがめぐみんの眼帯を引っ張り始めた。

 

「あ、あのー…眼帯を引っ張らないでくれませんか。お願いです!あの2人ともお願いです!」

 

めぐみんは、涙になりながら訴えてきたがシカトだ。

カズマに関しては、ロマンを返せと言わんばかりの顔をしていた。俺もかなり期待していたからな。封印とかカッコイイしな。みんなもそう思うだろ?封印されている武器とか、ロボットとか。

 

「2人共に冷静に!冷静になって下さい!その眼帯をゆっくり戻すのです!いえ、戻してください!」

 

俺ら2人の行動見かねたのかアクアが、紅魔族の説明し始めた。

 

「2人…紅魔族は、生まれつき高い知識と高い魔力を持っていて、大抵の魔法なら使いこなせる。まぁ、簡単に言うなら魔法使いのエキスパートね。あとは……変わっている名前を持っていることかしら。それと、紅魔族のこうは紅って書くのよ。」

 

珍しく、アクアが使えると思ってしまったが言葉に出すのは辞めておく。だって、コイツ泣くと慰めるのに酒を要求してくるからだ。

 

「「へーそうなのか……あっ」」

 

アクアに関心したせいか、カズマが眼帯を掴んでいた手を緩めてしまい、眼帯はめぐみんの目に吸い込まれていった。

 

「いっ……たい!目がぁぁぁ!くぅぅぅ……。」

 

「悪い悪い、もう少し伸びると思ったんだがカズマが離しちまったから中途半端な痛みになっちまったな。ほら、アクア目を治してやってくれもう一回やるから」

 

「ハチマン、お前鬼かよ!!」

 

「冗談だ」

 

「ハチマンが言うと、冗談に聞こえない時がある…。悪い、変な言動だし、からかってるのかと思ってさ、あと名前も変だしな」

 

 

 

「ぐぅぅ…変な名前とは失礼な!私から言わせれば、人族の方がおかしい名前です!」

 

「ほぅ…ちなみ、父親と母親な名前は?」

 

「母はゆいゆい!父はひょいざぶろー」

 

………………。

 

「ハチマン、どうする?この子、一応質のいい魔法使いだが。」

「おい!わたしの両親について何か言いたいことが聞こうじゃないか!」

 

「ハチマン、いいんじゃない。冒険者カードは偽装とか出来ないわけだし。それに、高い魔力が記されてる。魔力容量に関しては、普通ですけど。実際に、彼女が爆裂魔法が使えるんであれば戦力として問題無いはずよ!」

 

おかしいなぁ。アクアがまともな意見を言うとは…明日は雨か?

まぁ、でも言っていることが本当なら、かなりの

戦力増強ができる。

 

「んまぁ……様子見だな。明日、実力を見して貰ってから決めるか。」

 

俺はめぐみんに、メニューを渡した。



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2-7 爆裂魔法と変身

俺たち4人は広大な平原に来ていた。

そう、めぐみんの実力を知るために。

今回は、ジャイアントトードの討伐依頼を選んだ。選んだ理由としては、もしも、めぐみんの実力不足で倒せなかったりした場合でも対処ができるように配慮した結果だ。ついでに、俺たちのレベル上げるのにも丁度いいしな。

「爆裂魔法は最強魔法!その分、詠唱に時間がかかります。詠唱が終わるまであのカエルの足止めをお願いします。」

 

めぐみんは、平原の遠く離れている場所にいた、1匹のカエルを指さした。

カエルがこっちに気がついたのか、こっち向かってきやがった。

それに、加え逆方向にいたカエルもこちらに向かってきている。

 

「分かった。カズマは近い方のカエルを引っ張ってくれ。めぐみんは、遠くの方のカエルを頼む。」

 

「「了解!」しました。」

 

「ねぇ!ハチマン、私は!私!」

 

「アクアもカズマと一緒にやってくれ」

 

「分かったわ!」

 

アクアのテンションが異様に高いんだが…。

まぁ、毎日バイトだから、久々の討伐依頼だからテンションも上がっているのか。

 

「おい、アクア。前のリベンジと行こうぜ!一応もとなんたらなんだから、偶にはもとなんたらの実力を出してくれよ。」

 

「ねぇ!カズマ!元ってなに!私は現在進行形で女神なの!アークプリーストは仮の姿なの!」

 

半泣きで、カズマの首を締めようとする自称女神。

 

「……女神?」

 

「を自称している可哀想な奴だ。今後ともこう言った可哀想な発言をするかもしれないが、その時はそっとしてやって欲しい。」

 

めぐみんは、凄く可哀想な人を見るような目をしていた。

 

「ハチマン~!カジュマが私を虐めるの~!」

 

「あー、はいはい。上手くいったらシュワシュワ奢ってやるから。ほら、さっさと行ってこい。」

 

「ハチマン、約束だからね!うぉおおお!」

 

アクアは、拳を握って近い方のカエルへと走り出した。

 

「震えながら眠るがいい!ゴォォォォォォォッッッド!レクイエム!ゴッドレクイエムとは、女神の愛と悲しみの鎮魂歌!相手は死ぬ!」

 

なんか、すげー叫んで技出したが…やっぱり食われたか。身を呈して時間を稼ぐとは、やるな女神様は。

 

「おっ」

 

カズマと俺の後ろから、風が吹き始めた。

後ろを振り向くと、めぐみんの詠唱が始めていた。

 

「黒より黒く 闇より暗き漆黒に 我が真紅の混淆に望みたもう 覚醒の時来たれり 無謬の境界に落ちし理 。 無業の歪みになりて現出せよ! 踊れ 踊れ 踊れ!我が力の奔流望むは崩壊なり 並ぶ者なき崩壊なり…。万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!これが、人類の最大の威力の攻撃手段!これこそが、究極の攻撃魔法!エクスプロージョン!」

 

閃光が走った。

カエルの頭上にあった、魔力の塊がカエルに向かって放たれた。 放たれた塊は、轟音と共に1本の炎の柱が出来た。

凄まじい突風がに、俺とカズマは飛ばされるのを足を踏ん張って耐えた。

煙が晴れると、放たれた場所には数十メートルのクレーターが出来ていた。

コレが、魔法か。オレには、この世界のスキルを習得が出来ないが、かなり羨ましと思ってしまった。それと同時に…。

 

「すげー!魔法だ!ハチマン、今の見たかよ!」

 

「あぁ、かなりすげーな!今の!」

 

カズマは目をキラキラさせながら言った。

やはり、男子たるものデカいものは好きである。

俺も、すげー興奮気味だ!

 

二人で爆裂魔法に興奮していたところ、爆裂魔法の衝撃で地中から1匹、また1匹とカエルが出てきた。冬眠なのか、はたまたこちらの世界では地中で年中過ごしているのわからないが出てきたカエルの動きは遅かった。

このカエルのスピードなら、1度距離を取ってから、もう1度爆裂魔法を撃てば一掃できるな!

 

「おい!めぐみん!距離をと…る…ぞ?」

 

めぐみんの方向をみると倒れていた。

 

「ふっ…我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力も絶大。要約すると限界超える魔力を使ったので動けません。」

 

「「へぇ~」」

 

嘘だろ。あまりにもアホな話し過ぎて、声が震えてしまった。

 

「……近くからカエルが湧き出すとか予想外です。やばいです。喰われます、ちょっとたすけ……うくっ…」

 

めぐみんがカエルに喰われた。

はぁ…結局こうなるのか……。

 

「…カズマ、とりあえずめぐみんを助け出すから助け出したら遠くに運べ。」

 

「お、おう」

 

俺は、ファイズに変身する為にファイズを強く思った。その瞬間腰にファイズドライバー、手には折りたたみの式の携帯ことファイズフォンが出現した。

 

「すぅ…はぁ…」

 

1度深呼吸してからファイズフォンを開き、5番のボタンを3回押し、最後にENTERのボタン押した。押されたと同時に、ファイズフォンから「 standing by 」と流れ、軽快なリズム音が鳴り始めたのを確認してファイズフォンを閉じた。

俺は、ファイズフォンを握っていた右手を上げ、左手で拳を作り腰の位置にセットした。

 

「変身」

 

ファイズフォンをドライバーにセットした。

セットと同時に「complete」と流れ、俺の周りに赤いラインが出現し、身体が発光し、俺は仮面ライダー555へと姿を変えた。

 

「よし!」

俺は、右手をスナップさせた。

「今回は、ファイズか!あとで、俺にもベルト貸してくれよ!」

 

「それは無理だ。ほら、助けに行くぞ!」

 

「へーい」

 

俺は、めぐみんを喰っているカエルを殴った。

カエルは、殴られた衝撃でめぐみんを宙へと吐き出した。

 

「あ~れ~」

 

宙に、吐き出されためぐみんをキャッチしてから地面に置いて、残りのカエルに向かって走り出した。

 

「あのカッコイイ鎧着た人は誰ですか?」

 

「あれは、ハチマンだ。まぁ、今は仮面ライダー555と言った方がいいか。」

 

「555…。」

 

何やらカズマとめぐみんが話していたが、俺は次にアクアを喰っているカエルを蹴りを入れ、アクアを救出した。

 

「ハチマン~!ありがどう''~」

 

「そういうの良いから、ほら早く行け。」

 

「う’’ん’’」

 

アクアは泣きながらカズマの方に走っていった。

そのことを確認してから、俺は湧いてきたカエルを1匹また1匹と倒していった。

最後の1匹は、腰のファイズポインターを取って、右脚の脛部分のホルスターに付けて補足を行なった。カエルには円錐状赤い光が出現し、俺はカエルに飛び蹴り叩き込んだ。

 

叩き込まれた、カエルはΦマークが浮き上がり灰化して崩れた。

 

「ふぅ…。」

 

< 討伐依頼 3日間以内で、ジャイアントトード 5匹討伐。討伐数 12匹 >

 

依頼達成



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2-8 新たな仲間

「うぅぅぅ…ぐすっ…生ぐざいよ~。ひぐっ…なまぐざいよ…」

 

粘液塗れのアクアはめそめそ泣きながら歩いていた。

2回目だが、この光景には見慣れた風景ものだった。

 

「おーい!ハチマン、憲兵さん達にカエル運んでもらえるように話しておいたぜ!」

 

「サンキュー」

 

カエルを倒した数も数だから、カズマに憲兵に運んでもらえるように頼んで貰った。

だって、俺が行くとアンデッドと間違われるわ、緊張しすぎて噛んで何を言ってるのか分からなくなるからな。

 

「カエルの体内って、匂いはキツいけどいい感じに温いんですね……。知りたくもない、知識が増えました……」

 

アクアと同じように粘液塗れで、そのような事を言っているめぐみんは、俺が背中におんぶしている。

めぐみんの身体が小さい為、小町をおんぶしている感覚に似ているのか、全く緊張しない。

 

「ハチマン、これ。俺が遠くから見た時に、なかなかヤバい構図だったぞ。」

 

確かに…。粘液塗れの女が2人とそれを運ぶアンデッドの目を持つ俺。

まず、こんな奴らと俺が遭遇したら間違いなく通報するレベルだ。てか、関わりたくもない。

 

「なぁ、めぐみん。今後は、爆裂魔法は緊急時以外は禁止な。使用する魔力が大きいと魔力の代わりに命を削るらしいから。コレからは他の魔法で頑張ってくれ。」

 

「使えませんよ」

 

「……何が使えないって?」

 

思わず、オウム返しのように言葉を返した。

めぐみんが、きゅっと俺に掴まっていた手を強くした。

 

「…私は爆裂魔法しか使えません。他の魔法は一切使えません。」

 

「マジか」

 

「おいおい、ハチマンマジな分けないだろ~。なぁ、めぐみん?」

 

「マジです。」

 

俺とカズマは、めぐみんの言葉で静まり返った。

その中で、泣きながら歩いていたアクアも泣き止んで、鼻をグズクズにしながら会話に参加した。

 

「爆裂魔法しか使えないってどういうこと?爆裂魔法を習得できるほどのスキルポイントあれば、他の魔法もスキルを習得出来るはずよ?」

 

「えっ?ちょっと待って、アクア。スキルポイントって、何だ?ハチマン知ってるか?」

 

「俺は知っているぞ。ギルドのルナさんから聞いたし。」

 

そんなカズマを見て、アクアが説明をし始めた。

 

「スキルポイントは、ジョブに就いた時に貰えるのよ。クラススキルを習得するポイントね。もちろん、最初が私みたいに優秀な人ほど、貰えるポイントが多いのよ!だから、私は宴会芸スキルを全て習得してからアークプリーストのスキルを習得したわよ」

 

「なぁ、アクア。宴会芸スキルっていつ使うんだ?」

 

アクアはカズマの質問を無視して話を続けた。

 

「クラススキルを習得するのにも、注意点があってね。水が苦手な人は、水魔法・氷結魔法を習得するのに普通の人よりもスキルポイントを使ったり、習得出来ない場合があるの。それでね、今回の爆裂魔法は複合魔法だから、様々な属性が絡みあってできる魔法なのよ。」

 

「なるほど。だから、爆裂魔法が使えるぐらいなら、他の魔法を使えないわけではないのか。」

 

カズマがアクアの説明で分かったみたいだ。

だが、アクア…お前自分の職のスキルよりも先に宴会芸スキルを取るとは…。あとで、説教しておく必要があるな。

 

「……ボソッ」

 

背中におぶっためぐみんが、ボソボソいい始めた。そのボソボソ声は段々大きくなるに連れて、俺を掴んでいる手にも力が入っていった。

 

「私は、爆裂魔法をこよなく愛しているアークウィザード!爆発系統の魔法が好きなんじゃなく!爆裂魔法が好きなんです!」

 

痛い痛い!掴まれている肩が痛い!

 

「確かに、基本魔法とか習得していれば旅は楽になるでしょう!ですが、ダメなんです!私は、爆裂魔法しか愛せないんです!例え、1日1発しか撃てなくても、撃った後に倒れようともいいんです!私は爆裂魔法を愛しているんですから!だから、私は爆裂魔法を使うためにアークウィザードの道を選んだんです」

 

あー、この感じはダメなやつだな。

変なとこに一直線なのはいいが、その一直線を間違えてる。

それに…。

 

「素晴らしい! 素晴らしいわ! その、非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」

 

ウチの問題児が同調しているのが証拠だ。

このアークウィザードは、駄目な奴だ。

カズマと目を合わせると言いたいことを分かってくれたみたいだな。てか、思っていることは同じだ。

 

「そうか、そうだよな!一直線なのはいい事だ!例え、この先が茨の道だろうが強く頑張って行けよ!今回の報酬は門出の祝いとして少し多めにやる。」

 

めぐみんを下ろそうとした瞬間、必死になってしがみついてきた。

 

「我が望みは、爆裂魔法を撃つことのみ!なので、無報酬でも構いません!ただ、ご飯とお風呂と雑費さえ頂ければ大丈夫です!それだけで、絶大的な力を得られるんです!お得ですよ!これは、もう長期契約をするべきです!」

 

カズマ頼む!

カズマにアイコンタクトを送った。

 

「アハハ…!ハチマン、今の何気持ち悪いですけど!」

 

このクソ女神…説教時間増やしやるからなぁ。覚えておけよ。

 

「いやいや、俺達みたいな弱小パーティには宝の持ち腐れだって。特に俺とアクアなんて、レベル低いしさ!」

 

「いやいやいや、私だってレベル低いですよ!だ、だからレベルが上がれば魔法で倒れなくなります!だから、引き剥がそうとしないで!」

 

ちょっ…と待って…この子本当にアークウィザード?握力めちゃくちゃ強いんですけど!

ふぉぉぉぉ…

 

「いやいやいやいや、1発しか魔法使えないとか使い勝手悪いだろ。てか、ハチマン大丈夫か!顔真っ赤だけど」

 

「コイツ、アークウィザードの癖にめちゃくちゃ握力あるんだが!ふぉぉぉぉ!」

 

「こ、こらハチマンを離せ。 お前多分他のパーティにも捨てられた口だろ。というかダンジョンにでも潜った暁には、爆裂魔法なんて狭いダンジョンじゃ使えないし、いよいよ役立たずだろ、お、おいこら離せ。てか、本当に握力つえぇなぁ!」

 

「み、見捨てない下さい!もうどこのパーティーにも拾ってもらえません!ダンジョンの際には、荷物持ちでも何でもしますので、捨てないで下さい!」

 

俺の背中にいるめぐみんを、男2人で引き剥がそうとしている姿とめぐみんの捨てるだのと大声で叫ぶから周囲に奇怪な目とあらぬ誤解を招いてしまった。

 

「やだ……。あの2人の男の人、あの女の子を見捨てるつもりよ。」

「ほら、見て。隣の女の人も粘液塗れにされてるわよ。いったいどんなプレイしたのかしら変態共は。」

「特におんぶしている男の方は、完全にキメてる目してるわよ。相当ヤバい事やらされたんじゃないかしら。」

 

間違いなく、あらぬ誤解をされている。

めぐみんにも、聞こえたのか、わざと俺に聞こえるようにニヤッと言ってきやがった。ヤバい…。

 

「どんなプレイでも要望に答えます!先程のカエルプレイを超えるプレイでも構いません!」

 

「「わ、分かった!コレからはよろしくなめぐみん」」

 

新たな仲間ができました。



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2-9 大人の女性×視線×レベルアップ

「はい、確かに。ジャイアントード討伐依頼確認しました。今回も規定数より多く討伐をして下さったのですね、ヒキガヤさん。」

 

「えぇ、まぁ」

 

ルナさんは、相変わらず俺に対してもニコニコしながら話し掛けてきた。

ルナさんは、今まで俺が会ってきた''大人の女性''にはない落ち着きがあった。まぁ、胸に関しては…大人組は一緒だな。

 

「ごほん、ヒキガヤさん。ダメですよ、女性の胸を見ちゃ。」

 

「す、すんません!」

 

ヤバい、ヤバい!思わず、胸に視線がいっていたことがバレちまったよ。あー、俺は冒険者から変態にジョブチェンジ待ったなしだよ!

 

「まったく…。女性は視線に敏感何ですから、今後あまり見すぎないこと。私との約束ですよ、ヒキガヤさん。」

 

「は、はい!気をつけます。」

 

ルナさんは、怒っていたように見えたがイタズラっぽく微笑んでいた。

なんで、こう魅力的な人なのだ。俺が大人だったら指輪持って告白するわ。だが、振られる未来しか見えない。ふっしぎ~。

 

「……」

 

そんな事を考えていたら、背後から鋭い視線を感じてバッと振り返ると、酒を飲んでワイワイしている輩や雑談楽しんでいるパーティしか居なかった。そもそも、こちらを見ている者など誰も居なかった。

 

「どうかされましたか、ヒキガヤさん?」

 

「い、いえ、何でもないです。」

 

「では、こちらが報酬になります。今日はお疲れさまです。」

 

「ありがとうございます。」

 

ルナさんから報酬と冒険者カードを貰い、先程の視線が気になったが、ギルドの端っこにある空席に向った。

えっ、カズマ達は?アイツらなら、風呂だ。

粘液塗れで生臭いアクアとめぐみんを連れてきたりしたら、またあらぬ誤解を受けるから、とっとと風呂に追いやった。

カズマに関しては、まぁ、ジャンケンして負けて先に風呂をとられた。3回勝負で、まさかストレート負けするとはなぁ。やっぱし、ステータスの幸運関係すんのか?とりあえず、カズマには運が関する勝負避けておこう。

 

席に着いて、改めてカードを見ると、そこには冒険者レベル15と記述されていた。

カエルを倒すだけで、レベルが上がってステータスが上がるんだよなぁ。もし、前の世界でもあったら、多分俺のレベルは…………。2だな、確実に!頑張っても8とか、いや無理だ。だって、俺働きたくないもん。この世界に来てから、討伐やら納品やら働いてるのは、生活の為であって、前の世界なら親父とお袋がいるしな。料理に関しては、小町がなんとかしてくれる。あれ、そう考えると前の世界は、かなりぐうたら出来ていのでは?

 

「どうした?ハチマン、そんな絶望した顔して。」

 

「あぁ…ちょっとな。」

 

「まぁ、いいけど。」

 

カズマは、1度首を傾げてから俺の隣の席に座ってから自分のカードを見ていた。

 

「しっかし、あれだよなハチマン。モンスターを倒すだけで、ステータスが強くなるもんなんだなぁ。ましてや、パーティが一緒なら味方が倒した分の何割かは入るし。」

 

「へいへい、そうですね。」

 

そう、この世界では、パーティを組んで居ればポケ〇ンの学習装置を付けているみたいに経験値が仲間にも入る。だから、より強い者をパーティに入れて頑張らせて、自分が楽できるシステムだ。

本来なら、俺は旨みを感じる側だったが…。

 

「んで、カズマ。お前、レベルいくつ上がった?」

 

「今回ので、レベル6になったぜ!ステータス的には、あまり変わりはないがスキルポイントが60も貯まったからスキルが使えるようになったぜ!コレで、ようやく戦闘に参加できる!」

 

「ほう、そうか。頑張れよ。」

 

「もっと、なにかないのかよ!?」

 

えっ、だってね…。過度な期待ほど、怖いものはねぇからなぁ。下駄箱にあった、ピンクのラブレター、女子から貰うお菓子、女子からの善意とかな。

 

「ったく……。とりあえず、ハチマン。オレが帰ってきたから風呂にでも入ってこいよ。さすがに生臭いぞ。」

 

「んじゃ、行ってくるわ。」

 

俺は、席を立ち風呂に向かっていった。

 

………………………………………………………………

…………………………………………………………

…………………………………………

………………………………

………………

…………

……

 

「やっぱり、胸が大きい方が好きなのかな。」

 

暗い路地裏にいた、一人の人物がハチマンの姿を見ながら呟いていた。




クロスケZです。
一応、コレにて2章終わります。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
あと、誤字の報告ありがとうございます。

まだまだ、文章力などが足りないの事を痛感しています。あと、タイトルが思いかない!
それに加え、八幡が八幡じゃない!
何度も読み直したり、見返したりしてるんですが、どうも自分が書くと……。

まぁ、気を取り直して。次の章というかこの小説?をよろしくお願いします!

※Fate映画を観たい…。FGOガチャ出ない…。


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第三章 スキル×討伐×レベル
3-1 晩飯×スキル×タレ


俺が風呂から戻って来ると、先程座っていた席にアクア達が合流していた。

 

「ハチマン~!早く!報酬分けましょ!」

 

このダメ神…。

俺が呆れた顔しているとめぐみんの腹からグゥ~と可愛らしい音が聞こえた。

めぐみんも年頃の女の子なのだろう、顔真っ赤にしてお腹を抑えていた。

 

「はいはい…。ちょっと待ってろ。」

 

風呂に行く前に、ルナさんに金を預けていたので取りにいった。

なぜ、預けるかと?前に、カズマとアクアに預けたらいつの間にか、飯と酒で俺の報酬分も使いやがったからな。基本、金に関しては二人は信用にならん。

 

「ほら、今回の報酬だ。大事に使うんだぞ。」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

今回の報酬金額13万5千エリス。

3人に3万づつ渡した。残り分は、俺である。

なぜ、この値段なのかというと…まぁ、言わなくてもわかると思うが、ほぼ俺が倒していたからだ。最初は、きっちり分けようとしていたが、アクアとカズマが「俺(私)達、何もしてないので端数はハチマンさんがもらってください!」と言ってきたことにより、端数を切った数字で渡している。

 

それにしても、スキルのお陰でなんとかなってるが…命懸けで倒して4万って…割合わねぇ。

 

報酬の金を渡すやいなや、めぐみんとアクアは机いっぱいに注文しては、来たカエル料理にがっついていた。

アクアにいたっては、シュアシュアを一気に呑んでこめかみを押さえていた。

なんだろう、コイツら…本当に女なのか?色気一つねぇ。片方にいたっては、女神だぞ。

カズマも何か言いたそうな顔していたが、ぐっと抑えて2人に質問した。

 

「スキルって、どうやって習得するんだ?」

 

「スキルの習得方法?そんなのもの、カードにあるスキル欄をって…。カズマあんた、まだ初期クラスの冒険者だったわね。スキル習得するにあたって、誰かに教えもらって習得するって感じよ。」

 

「そうなのか、ハチマン?」

 

「カズマ、お前…。アクアが言ったことくらい信じてやれよ。たくっ…アクアが言ったように、誰かから教えてもらうんだ。まず、習得したいスキルを見てから、スキルの使い方を教えてもらう。そしたら、カードに欄が出るらしいからスキルポイントを使って習得するんだ。」

 

「らしいってことは、スキル習得はしたことないのか?」

 

「俺に関しては、他者からスキルを教えて貰っても、固有スキルのおかげで覚えられないんだ。」

 

「なるほど。」

 

「んで、スキルを使い続けるとスキルレベルが上がって、威力や効果が本職にも届く場合があるでいいのか、アクア?」

 

「ほふほふ……ごくっ…。そうよ!」

 

 

俺が説明すると分かった途端に、コイツは……。

カズマは、なるほどなど口ずさみ何かに気づいたのか、また質問をした。

 

「んじゃよ、もしオレがめぐみんから爆裂魔法を教えて貰えば使えるようになるのか?」

 

「その通りです!」

 

「うぉ?!」

 

先程まで、食べる事に夢中だっためぐみんがカズマの質問に対して、かなり食いつてきた。

てか、口周りに照り焼きのソースが付いてるぞ。

 

「めぐみん、ちょっとこっち向け。」

 

「はい?むぐっ…!」

 

俺は、口周りに付いたソースを紙ナプキンで拭いてやった。

拭き終わってから気づいた。

やっべ…、オートお兄ちゃんモードが発動して、小町にやっていた癖でやっちまった!

いや、だって、仕方ないじゃん?めぐみんが小町と変わらないくらいの年頃というか体型だし。

今日のポンコツ具合から、手のかかる妹ポジションみたいなキャラだしな!

ゆっくりとめぐみんを見てみると、多少驚いた様だったが、すぐに俺に向って「ありがとうございます。」と感謝された。

あら、この子!ちゃんとありがとうって言えるのね!ちょっと感動した。

 

「気を取り直して!カズマ!スキルポイントを多少食いますが、爆裂魔法を身に付けましょ!冒険者はアークウィザードを除き唯一爆裂魔法が使えるクラス!爆裂魔法ならいくらでも教えましょ!爆裂魔法以外の魔法なんて、いりません!ていうか、爆裂魔法以外の魔法を覚える価値はありません!さぁ、一緒に爆裂道を行きましょ!」

 

めぐみんは、一言一言を発する度にカズマに近づいて行き、最後の方になると机をバンバン叩き始めた。

 

「ちょっ!近い、近い!少しは落ち着け、ロリっ子!」

 

カズマの一言が、よっぽどショックだったのか、しょんぼりしながら「どうせ、私なんか…ぺったんこですよ…なんで、同期の人たちの成長は…」などとブツブツいいながら、カエルの肉を食べはじめた。

めぐみん大丈夫だよ、君はまだ成長期だから。きっと育つよ。

 

「なぁ、アクア。もしも、ハチマンから固有スキルのやり方とか教えて貰ったら俺にもできるのか?」

 

おいおい、そんな事ができたら俺がこの世界にいるアイデンティティがなくなっちまう質問をするな。

 

「あっ、それ私も聞きたかったんです!あのファイズでしたか、私もカッコイイ奴になりたいです!」

 

先程まで、落ち込んでいためぐみんも同調してきた。めぐみんも、仮面ライダーの格好良さに気づくとは、明日の飯ぐらい奢ろう。

 

「出来ないわよ。あれは、ハチマンのみの固有スキル。それに、出来たとしてもかなりのスキルポイントを使うし、デメリットもあると思うわよ。ねぇ、ハチマン。」

 

「あぁ、このスキルのデメリット点は他のスキルが習得出来ないことだ。」

 

「では、レベルが上がってスキルポイントがガンガンに貯まっていった奴はどうしてるんですか?」

 

「スキルポイントに関しては、このスキルの中にあるスキルを習得するのに使ってる。例えば、さっき変身したファイズの場合は、初期の時は何も装備が無く変身のみだったが、スキルポイントを使うことで最後に使ったポインター…まぁ、武器が増えたりするんだ。」

 

聞いてきた、2人は声を揃えて「へー、なるほど」と言っていた。

まぁ、もし、このスキルにデメリットがなく、この世界のスキルが習得出来たとしても習得はしないだろうがな。仮面ライダーに、やたら変なスキルを持って戦うなんてロマンの欠けらも無いしな。

 

「とりあえず、カズマはアクアから適当にスキル教えてもらえ。スキルの数だけは、多いからな。」

 

「それも、そうだな。アクア、スキル教えろ。」

 

「ねぇ、カズマ。それが人に教えてもらう態度?それと、ハチマン!数だけって何よ!ったく!見てなさい、この華麗なスキルを!」

 

アクアは、1つの水が入ったコップに何かの種を入れて自分の頭の上に乗せた。

そして、何処から出したかわからんが扇子を両手に持ち、「ハァ…!」掛け声と同時に扇子を開いた同時にコップの水が空になり、種がにょきにょき育ち花が咲いた。

あっ、コレが例の宴会芸ってやつか…。

 

「どう!カズマ!ハチマン!」

 

「誰が宴会芸教えろっつった!このダメ神!」

 

「うぐっ!そこまで、言わなくても……」

 

アクアは、コップをテーブルに置いて、ジョッキに入ってるシュアシュアをちょびちょび飲み始めた。

 

あーあ、めんどくさい。とてつもなくめんどくさい。めぐみんは、俺のスキルの話し聞いてから落ち込んだ様子はないが黙々とカエルの食べていた。ほら、また口周りにタレが付いてるよ。

 

「あはははは……!君たち面白いねぇ!ねぇ、スキル教えてあげようか、盗賊スキルだけど」

 

机の横から突然の声がした。

そちらを、見れば隣の席に二人の女性が座っていたが、多分スキルを教えてくれるであろう女性の口周りには、ここで食べて付いたであろうタレが付いていた。



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3-2 二人の女×雰囲気×血涙

「えっと、盗賊スキル?どんなのがあるんですか?」

 

あのカズマが緊張しているだと!?

まぁ、美人の人が相手だと仕方ないか。もちろん、俺は吃るから喋らんし信用もしない。

親父曰く、美人の人からうまい話しがある時は、大抵裏がある。親父は、昔ほいほい付いていっては裏路地でジャンプするハメになったらしいからな。だから、黙って聞いておくか。

 

「盗賊スキルっていうのは、罠解除・敵感知・潜伏・窃盗って感じのスキルだよ。持ってるだけでも、お得なスキルばっかりだよ。それに、君達冒険者でしょ?習得するスキルポイントも少ないから良いよ。今なら、そうだな…」

 

盗賊ような格好した女が、何か考えながら俺のほう見てきた。

やめて、見られるだけでも緊張して…あん?なんだろう、どっかで会ったような雰囲気があるな。

俺は、誰か思い出そうと盗賊女を見始めた。

 

「……ッ!対価決めた!シュワシュワ一杯と…うん。」

 

盗賊女は、俺に近寄ってはタレのついた頬を突き出してきた。

 

「あん?」

 

「うん!」

 

「えっ?なに?」

 

「もう!察しが悪いなぁ!頬付いたタレを取ってくれよ!」

 

え~。いきなりハードルが高いのきたぁ。

カズマに関しては、恨めしそうにこっち見てるし。盗賊女の相方は、黙って飲み物飲んでるし。ウチのパーティの女連中に関しては、飯食うのに夢中だし。

 

「は・や・く」

 

「ハチマン、うらやましいぞ!」

 

「うるせえよ!カズマ!俺だって、こんな事になってドギマギしてんだよ!」

 

「早くしないとスキル教えないよ~」

 

盗賊女は、悪戯っぽくニヤニヤしていた。

南無三!強化の為だ!

俺は、テーブルの紙ナプキンを取ってタレを拭いてやった。

盗賊の女性は、くすぐったそうにしていた。

やめて、その姿に僕のハートがヤバいです。

 

「ほ、ほら、終わったぞ。」

 

「ありがとう。」

 

盗賊女は、悪戯っぽく微笑んだ。

 

「ハ''チ''マ''ン''!」

 

お前に関しては、なんで血涙流してるんだよ。

てか、考えて見れば俺スキル覚えられないんだった。やる意味ねぇじゃねぇか!

 

「はぁ…すいません。こっちの女にシュワシュワお願いします。」

 

「ありがとう。」

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「ぷっはー!まずは、自己紹介しとこうか。あたしはクリス。見ての通りの盗賊だよ。で、この無愛想なのがダクネス。ダクネスのクラスはクルセイダーだから、君達に有用なスキルは無いかな。」

 

「ウス。カズマと言います。クリスさんよろしくお願いしやっす!」

 

「んで、君は~?」

 

「ハチマンです。よろしくお願いします。」

 

「硬いなぁ~」

 

だって、自己紹介なんか名前が分かればよくね。別に硬くてもいいよね。えっ、なに?休日なにしてるのかとか話したほうがいいのか?

んな事より、クリスさんの雰囲気どこかで…思い出せ俺の小さな脳みそ!

クリスさんが、シュワシュワを堪能しながらカズマからきた質問を解答していたがどうでもいい。

思い出す事に、必死なっていると1人の人物に思い当たった。その人物がいるはずがない、だが…。

 

「よし!飲み終わったから、今から習得させるからギルドの裏へ行こうか。」

 

「はい!」

 

どうやら、考えている間にクリスさんは飲み終わったらしい。カズマは、クリスさんに続いて席を立ち上がった。クリスさんは俺が立ち上がらない様子を見て、1度首を傾げた。

 

「ほら、ハチマンも行くよ。」

 

「俺は、スキル習得出来ないから待ってるわ。」

 

「習得出来ない?まぁ、いいから、ほら立って行くよ。」

 

「お、おい。ちょっと待ってくれ。」

 

クリスさんは、俺の手を引っ張って席から立ち上がらせた。

だから、カズマ。そんな不満そうな顔するなよ。

 

「ほらほら!」

 

「分かったから、その前にトイレ行かせてくれ。」

 

「了解。んじゃ、あたし達は先行ってるからね。」

 

クリスさんは、ダクネスさんとカズマを連れてギルドから出ていった。

俺はトイレに行かずにアクアに話しかけてからギルドから出ていった。

 



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3-3 盗賊スキル×スティール×パンツ

「わり、待たせたな。」

 

ギルドの裏路地にいる3人に、軽く手を上げた。

とりあえず、今はクリスさんの正体を探るのは後にしておくか。スキルを習得の仕方も見ておきたいしな。

ちなみに、アクアとめぐみんはギルドに置いてきた。

 

「よし、揃ったね。んじゃ、早速スキルを使うよ。最初に習得して貰うのが''敵感知''と''潜伏''といってみようか。罠解除に関しては、この街で罠がないから、また今度ってことでね。ダクネス、ちょっと向こう向いてて。」

 

「……ん、分かった。」

 

ダクネスさんは、言われた通りに向いた。

クリスさんは、近くにあった樽の中に入って、上半身だけを出し、ダクネスさんに向かって何かを投げた。クリスさんは、直ぐに樽の中に隠れた。

 

…………コレが?潜伏スキルなのか?いや、もっとスっと消えたりする奴じゃないのか?

カズマも、思っていたのと違うと言わんばかりの落胆差を見せていた。

 

石を投げられたダクネスは、無言で樽に向かって行った。

 

「敵感知……!ダクネスが怒ってるのがピリピリ伝わってきたよ!一応、ダクネス。コレはスキルを教えるためにやったんだからね。えっ、ちょっ!ダクネス!」

 

樽の中にいるクリスさんが何か言っていたが、ダクネスさんが樽を横に倒しては、ゴロゴロ転がし始めた。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!やめて!ダクネスー!」

 

…………本当に大丈夫なのか?

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「さ、さて。次に教えるのは、あたしのイチオシのスキルの窃盗だよ!対象の相手から持ち物をランダムで奪い取るスキルだよ。相手が使ってる武器、鞄の中のサイフだろうが奪い取るんだ。奪い取る物は使い手の運次第。色々と使い勝手がいいスキルだよ。」

 

おっ、やっと盗賊らしいスキルだな。

でも、奪えるものは指定ではなくランダムか。

使い手の運次第ってのもあるが、そいつが本当に使えるものを盗れるかも分からない。

もし、奪われる側が大切な物だとしても、使い手に取ってゴミかもしれない訳だしな。

 

「とりあえず、2人に使ったあげから''スティール''」

 

クリスさんが、両手を前に突き出した瞬間に淡い光が発生と共に、その手には奪ったであろう物が握られていた。それは……。

 

「あっ!それオレのサイフ!」

 

カズマはサイフを奪われたら見たいだ。

俺の方は…。

 

「おっ、当たりだね。もう一つの方は?うん?布?」

 

クリスさんは、もう片方の手には布が握られていた。

 

「…………。」

 

クリスさんは、手に持っていた布を広げた。

股間がスウスウするなぁ。なんでだろうなぁ。ズボンの生地が直に当たってるような。しかも、クリスさんが持ってる布、今朝見たな。

俺は、ゆっくりとズボンの中を確認した。うん、やっぱり……。

 

「いやぁぁぁ!」

 

「なんで、ハチマンさんが先に叫ぶのよ!」

 

「とりあえず、俺のパンツ返してくれないか。頼むよ、スウスウするから。」

 

俺たちは自分たちの物を返して貰うために、クリスさんに手を伸ばしたがニヤリと笑みを浮かべた。とても、嫌な予感しかしない。

 

「……ねぇ、君達。あたしと勝負してみない?君達、さっきの窃盗スキルを覚えてみなよ。それで、今取った物を取り返せたら君達の勝ち。もし、それ以外に奪ったとしても君達の物になるけど奪われた物は返ってこない。一応、身に付けている武器とかは、カズマさんのサイフよりも高価なものだよ。」

 

あっ、これパンツ帰ってこねぇ。

 

「あ、あの、俺スキル覚えらないんだが。」

 

「……じゃあ、コレは私のものってことで。」

 

「嘘だろ!カズマ頼む、俺の!俺のパンツを取り返してくれ!」

 

「えぇ…。オレの初スキルがパンツ取るとかねぇ…。」

 

コイツ……。ならば、背に腹は変えられない。

 

「取り返せたら、1週間飯代は出すから!」

 

「分かった。へっへっへっ……見とけよ!あっ、とっ…とりあえず覚えなきゃ。」

 

カズマがせかせかとカードのスキルを取り始めた。早くしてくれ、気持ちが悪りぃから早く、Harry up!

 

「よっしゃー!覚えたぞー!そして、その勝負乗った!オレが何を盗られようが文句を言うなよ!」

 

「いいね!君!そういうノリ好きだよ。だけど、あたしが持ってるダガーは40万は下らないから残念賞もなきゃね。」

 

クリスさんは、 おもむろにポケットから結構な数の石ころを取り出し始めた。

てか、さっきダクネスさんに投げた物って石かよ!

 

「「おい!きったねぇにも程があるだろ!」」

 

「君達、コレは授業料だよ。どんなスキルも万能ではないってことさ。1つ勉強になったね。」

 

畜生!やっぱり、付いてくるんじゃなかった。

カズマ、お前に俺のパンツが掛かってるんだ!頼む!

 

「やってやる!いくぞ!''スティール''」

 

カズマが突き出した手の平にはガッチリと何かを掴んだいた。カズマはゆっくりと掴んだ物を広げた。

 

「なんだ、これ?」

 

そこには、三角形の白い布だった。

 

「ヒャッハーー!当たりも当たり、大当たりだー!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!あたしのパンツ返してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

クリスさんは、短パンを抑えながら涙目で絶叫した。

カズマよ。俺が今欲しいのは、そのパンツじゃないんだよ!

俺は、その場で力なく地面両手を付いた。

 

「クソーーーー!!」



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3-4 パンツ×ハンター×緊急クエスト

俺達4人が冒険者ギルドに戻ると一際、賑わっていた。

 

「アクア様!もう一度、もう一度だけ!花鳥風月を見してくれ!」

「馬鹿野郎!アクア様の花鳥風月を見るんであれば、金かシュワシュワ渡さなきゃダメだろうが!」

「そ、それもそうだな!アクア様ー!」

 

めんどそうな様子のアクアの周りに、おっさん達が群れていた。

 

「あんた達!芸っていうものを分かってないわね!芸って物はね、求められてやる物ではないの!それに答えて同じ芸をやる人は、3流よ!3流!分かる?それに、私は芸人じゃないから、お金とかを目的でやってる訳じゃない!分かった!?」

 

「「「はい!」」」

 

「ならば、良し!ほら、解散解散!」

 

男達は、アクアの一言で解散していった。

 

「……あっ、カズマにハチマン、やっと戻ってき……どうしたの、その子とハチマン?」

 

そう俺とクリスさんは、めちゃくちゃ落ち込んでいた。クリスさんに関しては、それにプラスして涙目だ。

俺も泣きそうだが、男の子だから泣かない!それに、泣く理由がパンツって……。

 

「ハチマン、大丈夫ですか?」

 

めぐみんが、こちらにトコトコ歩いてきて気にかけてくれた。

 

「大丈夫だ。」

 

俺が力なく答えると、ダクネスさんがボソボソと呟き始めた。

 

「……ん。クリスとハチマンは、パンツ盗られた挙句、持ち金を毟り取られて落ち込んでいるんだ。」

 

「おい、ちょっと待ってくれ!」

 

「カズマ…あんた…。」「最低です。」

 

「あぁぁぁぁ!違うんだ!」

 

2人はカズマに対して冷たい目で見ていた。

そう、なぜこのような事になったのか…まずクリスさんがパンツを返して貰うために、それに見合う金をカズマが請求して、足りない分、俺がクリスさんに俺のパンツを買って足りない分に当てパンツを取り返した。

なんで、500円で買ったパンツを1万エリスで買わなきゃならないんだよ。

はぁ…、しかも金払って戻って来たと思ったら、クリスさんに速攻でスティールされて、またパンツ盗られるし。

なんなん?なんで、俺のパンツを的確にスティールできるんだよ。

 

「なぁ…俺帰っていい?パンツ無くて気持ち悪いんだよ。なぁ……」

 

俺が震えた声で言うとアクアとめぐみんが同時に「カズマ!ハチマンにパンツ返してあげて!「下さい!」」と言ってくれた。

だが、そのセリフはクリスさんに言って欲しかったが、説明をしていないからしょうがないし、あまりにも惨めで説明する気力もわかない。

 

「うぉい!俺じゃねぇよ!それを取っ「あーあ、公の場でいきなりパンツ脱がされたからってメソメソしててもしょうがないよね!よし!ダクネス、臨時だけど稼ぎが良いクエスト行って来るね。下着を人質にされて有り金失っちゃったしね!」っおい!」

 

カズマが俺のパンツはクリスさんに盗られた事を言おうとしたら、見事にセリフを重ねられてカズマが悪役に仕立て上げられた。

それに加え、クリスさんの声が大きくて周囲の女性はカズマに怯えた視線を送った。

 

「あはっ…!余計な事言ったら…。ダクネス、適当に遊んでてね!ちょっと行ってくるね!」

 

クリスさんは、カズマの耳元でボソッと言ってから、臨時募集の掲示板に向かっていった。

あ、あ……俺のパンツ。

こんなにパンツ、パンツと話題を出してたら、000の主人公の火野映司さんが来そうだな。

 

「とりあえず、俺は帰るからな。ダクネスさんの相手は頼んだぞ。」

 

「嫌よ!この下着泥棒と一緒なんて!」

 

「おいっ!?誰が下着泥棒だ!」

 

「ハチマン、1度帰って下着を穿いてから戻って来てください。わたしも今のカズマと一緒いるのは嫌です。」

 

「あー、だから誤解なんだー!」

 

「はぁ…分かったよ。じゃあ、宿に戻ってくるわ。」

 

俺はパンツを穿きに宿に戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

宿に戻って、パンツを穿いてギルドに戻った。

やはり、パンツとは素晴らしいな。俺も映司さんみたいに派手なパンツが欲しいな。あとで、買いに行くか。

 

「おい、戻ったぞー」

 

「うわぁぁぁん、ハチマンー!」

 

「うぉっ。」

 

めぐみんが戻るなり、抱きついてきた。

何があったのかとカズマを見たら……あー、理解した。アイツ、めぐみんにスティールしたな。しかも盗ったもんが、またパンツかよ。

 

「カズマ、またお前か……。」

 

めぐみんの頭を撫でながら、カズマに呆れた顔してた。

 

「ち、違うんだ!わざとじゃない!」

 

「うるさい!パンツハンターカズマ!はやく、パンツ返して下さい!」

 

俺の胸に頭を埋めながら言わないでくれ。なんだか、小町が親に怒られた時みたいだな。

んで、そんな感傷に浸っている中、先ほどと違う様子の奴が1人。

 

「カズマ、お前…会ったばっかりのダクネスさんにも何かしたのか?まさか、スティールしちゃった?スティった?」

 

「な、なんもしてねぇよ!」

 

「おい、正直に言えよ。カスマさんよ~」

 

「うぉい!誰がカスマだよ!本当に何もしてねぇよ!」

 

「んじゃ、なんでダクネスさん、顔を赤らめてモジモジしてるんだよ。」

 

俺がダクネスさんに、指を指すとアクアとカズマがダクネスさんを見た。

 

「…うくっ…先ほどの時も、公衆の面前でパンツを取り辱め、こんな小さい子まで辱めるとは…今度は私も……ハァハァ…」

 

……。あー、この人は、あれだな。いや、まだ決めつけてはならない。

カズマ、なんでお前顔を赤らめてんだよ。確かに、ちょっと…。

 

「あ、あの!私を是非ともあなた方のパーティに入れてください。」

 

とりあえず、断ってからどう反応するか見て決めるか。もし、俺が間違ってなければ…。

 

「断る。」

 

「んはっ!はぁはぁ…。」

 

あー、これダメだ。この人完全にダメな人だ。さっきまでのクールさは何処にいったんだよ。

俺の周りに来るヤツらは、どうしてまともな奴がいないんだ。

あっ、俺がまともじゃないからか。

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

ギルド内にアナウンスが鳴り響いた。



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3-4 キャベツ×ポンコツ×仲間

「おい、緊急クエストとはなんぞ?モンスターが街に向かってるのか?」

 

カズマは今のアナウンスを聞いてほうけた顔をして質問した所、めぐみんとダクネスさんは可哀想な目をして見ていた。

危ねぇ、俺も聞くとこだったわ。危うく、カズマと同じポジションになる所だった。

 

「そろそろ、キャベツの収穫時期か。」

 

はっ?何を言ってるんですか?このマゾは?

思わず、ダクネスさんを見た。

 

「んはっ!その目!ゴミクズを見る目…たまらん!頼む!もっと…!」

 

ダクネスさんは身体をビクビクさせながら訳の分からない事を言ったので無視しよう。

てか、もうさん付けなくていいか。なんか付けてる方が馬鹿らしいわ。

んで、とりあえず俺の腹あたりで抱きついているめぐみんに聞いてみるか。つか、そろそろ離してくれない?

 

「めぐみん、済まないが一回離れてくれ。それと、キャベツの収穫時って?」

 

「んはっ!放置プレイ!コレもコレで…ハァハァ…」

 

「うるせえよ!ちょっと黙っててくれない?」

 

「ハチマン、ダメだ。アイツに強く言ったら喜ぶだけだ。」

 

ったく…Mってのも考えようだな。

おっと、めぐみんが離れてくれたか。若干名残惜しいのは秘密だ。

 

「えっとですね、キャベツっていうのは丸くて緑色で美味しい食べ物です。」

 

あれー?俺が求められてる答えとは違うなぁ。

緊急クエストとキャベツの関連性を知りたかったんだがな。

 

「んなもん!知ってるわ!じゃあ、なんだ?農家の手伝いをする為に、緊急クエストでもやるのか?」

 

おっ、カズマが俺の代わりに言ってくれたか。

だが、またもめぐみんはカズマの事を残念そうな顔で見ていた。

 

「あー…。カズマとハチマンは知らないでしょうけど、この世界のキャベツはね…」

 

アクアが俺達に説明をし始めてくれたが、それを遮るようにギルドの職員達が騒ぎ始めた。

 

「皆さん!お気づきだと思いますがキャベツです!今年の収穫時期が来ました!キャベツ1玉につき1万エリス!既に住民の方々は避難しております!できるだけ、多くのキャベツをこちらにお納め下さい!では、皆さんのご武運を祈っております。」

 

おい…今、職員何つった?

 

その時、ギルドの外から歓声が起きた。

何事かと、俺とカズマは外に出てみると……キャベツが空を飛んでいた。俺が訳分からない事を言っていると思うが、俺も訳が分からない。

 

呆然とその光景を見ていると、アクアがやって来て隣で呟き始めた。

「この世界のキャベツは飛ぶのよ。収穫時期になるとキャベツの味が濃縮していて、とても美味しいのよ。でも、キャベツも食べられないように海を渡ったり、大陸を横断したりして、最後に誰もいない安息の地で安らかに眠るのよ。それならば、私達が彼らを1玉でも多く収穫して美味しく食べてあげるのよ。」

 

俺達の頭上を飛ぶキャベツ達とそれを追いかける冒険者達…なんだこれ?

 

もういいや…、この世界について考えるだけ無駄だな。

布団を暖かくして寝よ…。

宿に帰ろうとしたら、ダクネスに呼び止められた。

 

「カズマ、ハチマン。丁度いい機会だ、私のクルセイダーの実力を、その目で確かめてくれ。」

 

ダクネスは、キャベツに向かって走っていった。

いや、もう、なんで勝手に行っちゃうかなぁ。

でも、実力を知るには良いチャンスか。

 

ダクネスは、自分の周りを飛んでいるキャベツに向かって鋭い一撃を数々といれてった。

 

「せい!」

 

うん?

 

「はぁー!」

 

あれ?

 

「うぉりゃー!」

 

嘘だろ!?あんだけ放ったのに、全然当たってないんですけど!?

そんなダクネスを見ていたら、周りからキャベツから攻撃を貰っていた冒険者達の声を上げていた。

1人の冒険者が、キャベツの攻撃によって、吹き飛ばされたであろう味方の冒険者に押しつぶされて身動き出来ない状態だった。すかさずキャベツがその冒険者に襲いかかろうとした時に、その冒険者の前にダクネスが盾となった。

 

「んくっ!ここは私が!」

 

「馬鹿野郎!俺達の事なんてほっといていいんだ!はやく姉ちゃん!俺達を見捨ててくれ!」

 

「バカを言うな!」

ダクネスは、後ろにいた冒険者を逃がそうと盾になっていた。キャベツの攻撃により防具が徐々に壊れていった。

 

「ダクネス!お前!」

 

思わず、カズマは叫んでいたが、俺は気づいていた。だって、ダクネスの奴…キャベツの攻撃を貰う度に頬を赤くして、何よりもはだける度に喜んでいることに…。

 

「騎士様!」「あんなになってまで守るとは!」「俺も騎士として、見習わないとな!」

などと、冒険者達は声を上げていた。

 

違う、違うんだ、あの変態は自ら望んでやっているんだ。

 

そんな時に、離れた場所から1つの笑い声が響いた。

 

「フッフッフッ……我が必殺の爆裂魔法には何者も抗うこと叶わず。」

 

ダメだ、ここにもバカがいたよ。ていうか、このポンコツの事を忘れていた。

 

「あんな大軍を目にして、爆裂魔法を撃たないなんて勿体無い!」

 

「おい、バカ、やめろ!!」

 

カズマの叫び声は、虚しくもめぐみんには届かなかった。

 

「光に覆われし漆黒よ 夜を纏いし爆煙よ 紅魔名の元に 原初の崩壊を顕現する 終焉の王国の地に力の根源を隠匿せし 我が前に術よ!エクスプロージョン!!! 」

 

めぐみんの杖から巨大な魔力が放たれ、ダクネスを中心に魔法陣が展開した。周りにいた冒険者達は、魔法陣から逃げるように走り出した。

だか、もちろん察していると思うが、ダクネスは逃げなかった。

そして、次の瞬間に1つの炎の柱がたった。

 

緊急クエスト「キャベツ大豊作」コンプリート

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

納得いかねぇ…なんで、こんなキャベツ炒めが、こんなにも美味いのか。

俺達は、ギルドに戻って報酬であるキャベツを食べていた。

 

「しっかし、やるわね!ダクネス!さすが、クルセイダーね!あの鉄壁の守りに攻めあぐねていたわ」

 

「おっ…私など、ただ硬いだけの女だ。誰かの壁になって守ることしかできん。それに、私は不器用過ぎて、剣がロクに当たらない。その点、めぐみんの爆裂魔法の一撃は凄まじかったぞ。」

 

「紅魔の一撃を思い知りましたか!」

 

「あぁ、とても!あんな火力の直撃を受けたのは初めてだ!」

 

「直撃させんなよ…。」

 

思わずカズマがツッコミを入れていた。

その後、思わず俺とカズマは溜息1つ付いた。

 

「あっ、でもカズマとハチマン、あなた達もなかなかのものだったわよ。」

 

「はい!それにハチマンの先ほどのアレはいったいなんですか?」

 

アクアは、俺の頬を指で突き、めぐみんはさっきの戦い?で使ったスキルについて質問してきた。

 

まず、カズマに関しては、潜伏スキルを使ってキャベツの背後からスティールをして、キャベツの羽を奪い、落ちたキャベツを籠に放り混んでいった。

俺に関しては、ファイズのスキルの''オートバジン''と共にキャベツを狩っていった。

本来なら、この前に取ったスキルの''ドラゴンフォーム''・''ペガサスフォーム''を試して見たかったが、今日はファイズになっていたからクウガにはなれなかった。

オートバジンも試して見たかったら良しとしよう。

 

「めぐみん、あれは俺の使い魔的なものだ。」

 

「えっ!いいなぁ!羨ましいです!」

 

「まぁ……ポンコツだけどな」

 

カズマは、俺の使い魔こと、オートバジンをポンコツ呼ばわりしやがった。

 

「うるせえよ、キャベツ泥棒」

 

「誰がキャベツ泥棒だ!……あぁ!もう、どうしてこうなった!」

 

キャベツ泥棒は、頭を抱えテーブルに突っ伏した。

まぁ、言いたい事は分かる。

 

「皆に、私のクルセイダーの実力が分かって貰えて何よりだ。では、改めて。名はダクネス。一応両手剣を使っているが戦力としては期待しないでくれ。だが、壁になるのは大得意だ!」

 

そう…新たにポンコツが仲間になったのだ。

俺とカズマは、断り続けたがめぐみんとアクアに押し負けてしまったのだ。

 

 

「ウチのパーティも、なかなかの豪華な顔ぶれになってきたわね!アークプリーストの私に、アークウィザードのめぐみん、そして、クルセイダーのダクネス!上級者が3人もいるパーティよ!なかなか無いわよ!」

 

アクアは、新たな仲間が上級ジョブの為、嬉しさを隠しきれない様子だった。

 

確かに新たな仲間というものはいいものだ、それに加え上級ジョブだ。''普通''なら、最強の布陣だが……上級ジョブというだけのポンコツが3人じゃなぁ…。

 

「それでは、ハチマン、カズマ。これからも遠慮なく、私を囮や壁に使ってくれ。はぁはぁ…」

 

はぁ…もう、未来が不安でしかない。

 

「パーティの足を引っ張るようなことがあれば強めに罵ってくれ。なんだったら、捨て駒に!何より、その目で雌豚を見るような目で罵ってくれ!はぁはぁ……考えただけで、武者震いが」

 

ダクネスは、頬を赤くして涎を垂らしていた。

このドMはダメだ。なんとかして、担当をカズマにしなければ…。

おい、カズマ。そのお前が担当な!みたいに顔をすんじゃねぇよ。オートバジン呼んで、タイマンはらせるぞ。

 

かくして、俺達のパーティに新たな''ポンコツ''が仲間になった。

 



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3-5 報酬×ナイフ×尻

冒険者レベルが20になった。

 

キャベツ狩りとカエル狩りで、まさかここまで上がるとは……てか、むしろキャベツを倒すだけで経験値が貰えて、カエルよりもキャベツから貰う経験値の方が多い。キャベツの方がカエルよりも魂の質とか良いのか?むしろキャベツに魂ってあるのか?ダメだ、この世界の物を深く考えていけない。何故かって、それはアホになりそうだからな。

 

「おい、ハチマン。今回のキャベツ狩りでレベルどのくらい上がった?」

 

ギルド嬢のルナさんから最近苦情が多いキャベツ大使こと、カズマが話しかけてきた。

 

「うん?あぁ、4レベル上がった」

 

「マジかよ!んじゃ、もうハチマンのレベル20かよ!」

 

「そういうカズマはどうなんだ?」

 

「オレは、9レベルになった。あと1つで、やっと2桁になる。」

 

カズマは、嬉しそうにカードを見ていた。まぁ、レベルが上がると嬉しくなる気持ちはわかる。

俺もポ〇モンやFFとかでレベルが上がると、めちゃくちゃ嬉しかったが、途中からレベル上げるのが苦になっていくんだよな。しかも、自分のデータだけならまだしも、小町が可愛い顔して上げておいてというんだもん。ええ、まぁ上げますけどね。可愛い妹の頼みですから。

 

「これと、あとこれも…」

 

隣に座っているカズマは、どうやらレベルが上がった分のスキルポイントを使って、新たなスキルを習得していた。

 

俺もスキルを習得するとするか。今回のレベルアップで、60ポイント貯まっていた。1レベルで15ポイント貰えたが、どうやらこのポイントも人によって違うらしい。カズマは10ポイント、めぐみんは、俺と同じく15ポイントらしい。

俺のスキルは自分にあったものだから習得するのにポイントが少ないけど、どうやら新しいスキルを習得するには自身のレベルが上がっていないとスキルは出ない仕様だ。

今回のレベルアップで、新しいスキルでクウガは''タイタンフォーム''、ファイズは''フォンブラスターとファイズエッジ''の威力の向上だ。

俺としては、早くファイズのアクセルフォームになりたいものだ。

 

俺もカズマもスキルを取り終わると同時にギルド内からアクアの叫び声が轟いた。

 

「なんで!何でなのよ!」

 

アクアの方見ると、報酬で揉めている姿が見えた。

 

「なんで!報酬がこれだけなのよ!」

 

「えっとですね、アクアさんから納品された物は全て原価が安いレタスでして…。こちらの方で渡せるのはこちらの額だけになります。」

 

「なんで!レタスが混じってるのよ!むぅ……」

 

こっち来やがった。やだな~、めんどくさいな。絶対に金のことだよ。

 

「おい、カズ…」

隣にいたはずのカズマは居なかった。

潜伏スキル使って逃げやがった。あの野郎…。

 

「ハ・チ・マ・ン」

 

うわぁ、来ちゃったよ。

 

「今回の報酬は、お幾ら万円ですか?」

言いたくねぇ…めっちゃ言いたくねぇ。どうする、どうする。誤魔化すか…いや、誤魔化したら誤魔化したで、後のちめんどくさいことになるのは確実。どうする。

 

そんな葛藤をしていると、アクアの足元へと1枚の紙が落ちた。

 

「うん?何かしら?えっと…ねぇ、ハチマンさん~!」

 

「あん?」

 

コイツ急に声色を変え始めた。

 

「今回の報酬で、150万エリス入ったらしいですね!」

 

バカな。なぜバレた!?

今回の報酬の事を話したのは、カズマだけのはずだ、それなのに…。あん?

 

「アクア、その紙を貸してくれ。」

 

「えっ!?だ、ダメよ!」

 

「あー、貸してくれたら、借金に関して考えてやってもいいぞ。」

 

「えっ!本当!はい、これ!」

 

ちょろい。この女神がちょろすぎる。

俺は紙に書いてある内容を確認したところ、やはり俺の報酬額がカズマの字で書いてあった。

 

「おい、カズマ聞こえてんだろ。灰になるのと爆発四散するのどっちがいい?出てこなかった場合は、フルコースになるが。」

 

「ちょっと、待ってくれぇぇぇぇ!」

 

「あん?やっと出てきやがったか。んで、どっちがいい?」

 

「ハチマン様!ごめんなさい!」

 

カズマは、俺の目の前で土下座をしてきた。

 

「許してやってもいいが、アクアの借金はお前持ちだからな。コレに懲りたら、あまりアホな事をするなよ。」

 

「はい!」

 

「アクアも、あんまり借金するなよ」

 

「はい!分かりました!」

 

ったく…手のかかる子供を相手にしているみたいだ。切実に癒しが欲しい。戸塚とけーちゃんに会いたい。

 

「ハ~チ~マ~ン~!」

 

今度はなんだと、声のした方を見ると杖を嬉しそうに持ってめぐみんがやってきた。

 

「見てください!この杖を!」

 

「はいはい」

 

「今回のクエストの報酬で、杖を強化してきました!」

 

「そうなのか」

 

「はい!マナタイトをふんだんに使いまして!見てください!この色艶を!それに、魔力溢れたマナタイトを使ったお陰で、魔爆裂魔法の威力が更に高まりました!はぁはぁ…早く爆裂魔法を使いたいです!」

 

「そうか、そうか」

 

何故か、めぐみんがどっかの犬みたい懐いているんだが。

まぁ、手がかからないから良しとしよう。

 

「お~い、ハチマン。」

 

この流れからして、ポンコツ剣士のダクネスか。

 

「はいはい、なんだなんだ。」

 

「私も今回の報酬で、防具を新調してきた。どうだ?似合っているか?」

 

「はいはい、世界1似合ってますよ。」

 

「まったく、雑な褒め方だな。私だって偶には普通に褒めて貰いたい時だってあるんだぞ。」

 

「へいへい、悪うございました。」

 

「カズマとアクアはどうした?」

 

「アイツらなら、あそこで借金返してるよ。」

 

「まったく…なにをしているのか。」

 

珍しくダクネスと意見が会い「だが、借金をして金の代わりに、ブ男達に身体を求められ、私は嫌がりながらも…」ダメだ、このドMは本当に。

 

「カズマ、仲間っていいわよね!最高のパーティだわ!」

 

「この野郎…。」

 

おっ、どうやら支払いが終わったらしいな。

 

「全員揃ったところで、今日どうすっか。宿帰って寝るか。」

 

「なんで寝るんだよ!まだ集まったばっかりじゃねえか!」

 

いいアイディアだと思うんだがな。何故、却下されたのか俺には理解できない。

 

「では、討伐に行きませんか!それも数が多いやつ!ふっふっふ…爆裂魔法で一気に吹き飛ばすのは、さぞや快感なんでしょう!」

 

「いや、一撃が重くて気持ちいいやつだ!はぁはぁ、だから強い敵にしよう!」

 

「いえ、お金が沢山貰える奴にしましょ!さっきの借金を返して、もうお金が無いの!」

 

まとまりが無さすぎる……。とりあえず、上2つは却下だ。

 

「カズマはどうしたい?」

 

「オレは、装備を整えたいかな」

 

装備か。確かに、カズマはジャージだからな。俺に関しては、戦う時には変身するから普段着があればなんとかなるしな。

 

「カズマの装備を整えるまで、自由行動でいいな。んじゃ、解散という事で。」

 

「「「ちょっと待って(下さい。)(よ!)」」」

 

女性陣が反発してきたが、俺は動じずに宿に戻ろうとしたが背後から小さな衝撃がきた。

 

「待ってくださいよ!」

 

「わかった、わかった離してくれ、めぐみん。」

 

「やです。ハチマンは、すぐに逃げそうですから。」

 

おやおや、俺の性格をよくご存知で。

ついでにアクアとダクネスも俺の腕を掴んできた。

両腕からたわわな感触が…はっ!

そんな、アホな事を考えていたら背後からナイフが飛んできた。

ナイフは、俺の頬を掠めては、ダクネスの胸の甲冑に当たり弾かれた。弾かれたナイフは、回転をしながらアクア、めぐみんの順に柄が当たり、ナイフはカズマの尻に刺さった。

 

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!オレのケツがっああああ!」

 

カズマの尻から血が…笑っちゃいけないんだが、このピタゴラは…。

 

「ぷっ!あははは!」「くっ…くくく…」「ふっふふ…」

 

「何笑ってんだよ!オレの!オレのケツが!」

 

本人は一大事なのは分かるが、ダメだ。もう限界だ。

 

「あははは…!おいおい、カズマ。お前運はある癖に、こういうのには運が悪いんだな」

 

「うるせえやい!アクア、オレのケツにヒール頼む!」

 

「嫌よ!」

 

「アクア様!お願いしますよ!今晩奢るから!」

 

「うーん…嫌」

 

「カズマ、とりあえずギルド内にある医者にいってヒールしてもらって来い。」

 

「うぅ…なんでこんな目に…。」

 

カズマは尻のナイフを取って、尻を抑えながらギルド内の医者に向かっていった。

はぁ…アイツには、笑わせてもらったがナイフは何処の誰が投げてきたんだ。投げてきたであろう、方角を向いても誰もいなかった。手掛かりとなるのは、カズマに刺さったナイフだが…ナイフが落ちてた場所にはもう既にナイフはなかった。



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3-6 犯人探し×新装備×不安

アレから1時間後くらいに、カズマが肩を落としながら、ギルド内の医者から帰ってきた。尻にナイフが刺さって医者に行くなんて、恥ずかしいもんな。俺だったら泣くわ。

 

「カズマ、気を落とすなよ」

 

「……看護婦さんに笑われた…。だが、ケツを女の看護師に見られてると思ったら…ぐふふ…これは、これで…。」

 

コイツ、気を落としてるかと思ったら新たなプレイを覚えて帰ってきやがったよ。

ちょっとでも、同情した俺が馬鹿だったよ。このケツ野郎。

 

「カズマ、コレからの予定なんだが…。」

 

「……まだ痛いフリをして…あの看護婦さんに…ぐふふ…」

 

「おい、ケツマ。トリップしてないで話聞けよ。」

 

「誰がケツマだ!」

 

「この後の予定についてだ。」

 

「あぁ、わかった。」

 

カズマに、この後の予定を伝えた。

予定としては、まずケツマとアクアはケツマの新防具を買いに行く。アクアは駄々こねたが、先ほど借金を返したことを話したら、歯切れは悪かったが納得したようだ。

ケツマが新防具を買ってる間に、俺とダクネスとめぐみんはクエスト選びとナイフを投げてきた犯人探し。まぁ、俺はコミュ障だからダクネスを中心に犯人探しだ。

「よし。犯人探しは、カズマの新防具を買うまでがリミットだ。」

 

「はい!フッフッフッ……我が頭脳を持って、犯人を探し出します!」

 

「どんな、強敵と戦えるか…はぁはぁ…私が満足出来るように慎重に選ばないと!」

 

2人は変な方向に意気込んでやがるが無視だ、無視。とりあえず、始めますか。

 

――――――――――――――――――――――――――――

俺たち3人は、先程のテーブルで肩を落としていた。

結果から言おう。犯人探しは、まったく情報はなかった。というか、相手にされなかった。それに加えて、女性冒険者や女性職員からのカズマからのセクハラ行為、めぐみんの爆裂魔法の騒音問題に、アクアの借金の事を愚痴愚痴と言われた。

パーティリーダーは、俺じゃないのに…。

 

クエストに関しては、ダクネスが''キングベヒーモス''を倒しに行くと駄々こねるわ。

 

限界…ハチマン、もうお家帰る!

 

「おーい、ハチマン。戻ったぞ」

 

「聞いて聞いて、ハチマン!ぷふふ……」

 

帰ってきたな、うちの問題児共が。

今は、説教する気すらしないから後でするか。

 

「カズマ、随分とマシな格好になったな。」

 

「おお、ようやく冒険者らしくなりましたね。」

 

「……見違えたじゃないか。」

 

俺ら3人は各自カズマの新しい装備を見て感想を述べた。

カズマの新しい装備としては、冒険者の基本装備の上下に加えて、緑のマントに皮の靴と皮のベルト、腰にいつも使っている短剣を付けていた。

ジャージに比べ、かなり冒険者らしい格好に仕上がっていた。

 

「んで、アクアどうした?」

 

「カズマが、調子乗って鎧を注文したんだけど、ぷふふ……。鎧が重くてその場から動けなくなってたの!あははは……。!」

 

「おい、やめろ!オレは、鎧なんかよりもシーフ系の装備の方が似合うから良いんだよ!」

 

カズマは、顔を真っ赤にして反論していた。

頼む、これ以上、アホな事をしないでくれよ。

 

「んで、ハチマン達はどうだったんだ。」

 

「犯人に関しては、情報なし。クエストは、あそこにいるドM騎士様が駄々こねているところだ。」

 

「はぁ?駄々こねてるだぁ?」

 

「聞いてくれ、カズマ!私は、ハチマンに''キングベヒーモス討伐戦''を押しているのだが「却下だ!」なぜ!?」

 

「俺たちに倒せる訳ねぇだろうが!」

 

「あはっ!……また、怒られた!だが、先程のハチマンの方が優れているな。カズマじゃあダメだな。」

 

「なんで!?俺がダメ出しされんだよ!?」

 

もうめんどくさい。俺も潜伏スキルが欲しい。てか、なんで、この世界ではステルスヒッキーは通用しないんだよ。前の世界じゃ、発動もしてないのに''えっ?いたの?''から始まり、クラスメイトの奴らには''別のクラスと間違えてない?''、はたまた教師からは''比企谷、比企谷!おっ、今日は1限からいるのか!''と言われるまであったのに。てか、最後の教師に関しては、俺は毎日1限から来てたのにも関わらず、これだもんな。

 

「んで、ハチマン。討伐はどうする?やっぱり、レベルに見合うものか、それなら街の近場で繁殖期に入ってるジャイアントトー…「「カエルはやめましょ!!」」」

 

カズマが、俺らでも出来そうなジャイアントトードの討伐を言いかけたら、アクアとめぐみんが強く否定をした。

 

「うん?どうしてだ?攻撃行動といっても、舌を出して捕食攻撃しかしてこないから、深手を負う危険性もない。倒したカエルは食用としても使えるから高く売れて稼ぎもいいのに。」

 

普通の冒険者なら至極当然の疑問だ。

もう少しカエルを倒して資金を稼ぎつつ経験値も稼いでいくのが普通だ。

だが、否定した2人はあるトラウマを持っている。

 

「ダクネス、その2人は食われた事があるんだ。」

 

「しかも、頭からパックりいかれて身体中を粘液塗れにされたしな。」

 

俺の説明の後に、カズマの食われた時の様子を説明した途端にダクネスの頬が赤らめ始めた。

 

「…粘液塗れに。」

 

「ダクネス、興奮してんだろ?」

 

「し、してない!」

 

ダクネスは、俺から目を逸らしては顔を赤くしてもじもじし始めた。

あー、ダメだ。コイツ完全に興奮してやがるわ。

目を離したスキに、勝手にカエルの討伐行ってそうだな。

 

俺とカズマは、先の事を考えたら不安でしかなかった。

 

 



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3-7 冬虫夏草×ドラゴンフォーム×タイタンフォーム

「ねぇ、みんな。コレなんて良いんじゃないかしら?ほらほら、冬虫夏草の討伐だって」

 

アクアがボードに貼られている、1枚の依頼を指していた。

依頼内容としては、牧場の家畜が冬虫夏草に寄生された家畜の討伐依頼だった。

寄生された種類は、山羊と馬と牛の3種類、なお討伐した家畜は自由に持って帰ってもいいとも書いてある。報酬金額も1頭3万エリスか。

なかなか良いクエストだな。

久しぶりに、カエル以外の肉も食いたいところだが、報酬の金額など考えたらかなりの難易度を誇るんじゃないのか?

それに、もし簡単なクエストであれば取り合いになるはずだ。

 

俺が悩んでいると、カズマがアクアにクエストの冬虫夏草について質問をした。

 

「アクア、冬虫夏草ってアレだよな。虫とかに寄生するキノコの事だよな?」

 

「そうよ。冬虫夏草っていうのは、生き物に寄生して脳を侵食し、他の生物にわざと襲わせて卵を植える嫌なモンスターよ。寄生するのは、牧場で動けなくなった動物に多いから冬虫夏草って言われてるの。強さとしては、寄生した動物によって変わるけど家畜なんかだと、それほど強くないわよ。」

 

アクアの説明で、やはりこのクエストのレベル的にはそんなに高くないのが分かる。

なぜ人気がないのかは、とりあえず行って確認してみるか。

 

そう、俺はなんで単純な事を忘れていたのか、また止めなかったのか、後悔した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

冬虫夏草。

名前的にはキノコを連想するが、れっきとしたモンスター。

名前の由来から分かるように、虫を寝床するキノコである事から冬虫夏草と呼ばれている。

だが、この世界の冬虫夏草は''モンスター''である。

つまり、どういう事かと言うと………

 

寄生した動物の身体から触手を生やしては、至る所から冬虫夏草の粘液が出ていた。

このクエストの人気がない理由は、このグロテスクな見た目からだった。

皆に簡単に言うと、もの○○姫に出てくる乙事主みたいな感じだな。実に気持ち悪い!

 

「いやああああああああああ!神様助けてぇぇえええええ!いや、いや、怖い!怖い!ひゃああああ!」

 

アクアは泣きながら、こちらに走ってきた。

おい、こっちに来んじゃありません。

てか、神って…お前が神だろうが!

本来なら、こういう時にツッコミを入れてるカズマだが、そんな余裕も無かった。

何故なら……

 

「ああああああああぁぁぁ!助けてぇぇえええええ!ダクネス!いや、クルセイダー様ぁぁぁぁ!」

「ギチギチギチギチ、ケダゲゲケダケダゲケダ」

 

アイツも頭から変な触手を生やしたエイリアンみたいな山羊に追いかけられていたからだ。

 

「ああわあわあわあわ、わ、わ、、わ、我がば、爆裂魔法にいいいい、け、消し、消し、飛ばして、や、やる!!ひい!今、アレと目が合いました!は、はち、ハチマン、お願いします!」

 

めぐみんに押される感じ形で、グロテスクなモンスターの前に出された。

イヤだなぁ、絶対に殴ったら気持ち悪いじゃん。

てか、俺も吐きそうだが年下の面倒を見るのも年上の役目か。

 

俺は、溝に逆三角を作った。その瞬間にクウガのベルトが現れた。

今回は、クウガで試したい事もあるしな。

いっちょ頑張ってみますか。

 

「変身!」

 

軽快な音と共に、クウガのマイティフォームに変身した。

山羊に寄生した冬虫夏草が触手を伸ばしてきた。

伸ばしてきた触手を掴んで、そのままアクアを追いかけている山羊にぶつけた。

山羊から異様な声を発しては、スグに立ち上がってきた。

 

近場にあった木の棒を手にした。そして、「超変身!」と叫ぶとマイティフォームからドラゴンフォームにチェンジをした。手に持っていた木の棒はドラゴンフォームと共にドラゴンロッドへと形を変えた。

 

「おぉ!今度はハチマンが青くなりましたよ!」

 

「青!あれは、アクシズ教団に身を染めた者がなれるフォームよ!」

 

「本当ですか!アクア!」

 

アクアの奴、適当なこと言いやがって。純粋にヒーローに憧れてるめぐみんに変な知識入れやがって。てか、2人共いつの間に岩陰に隠れてたんだよ。だが、とりあえずは目の前の敵に集中だ。

 

2匹が声を発しながら、こちらに向かって走ってきた。ドラゴンロッドを振り回して、前にいた1匹の頭部を目掛けてドラゴンロッドをぶつけて吹き飛んだ。

すぐさま、2匹目が1匹目の影から飛びだしてきたが、体を回転をさせて、その勢いを利用して飛び出てきた2匹目の頭部にもドラゴンロッドをぶつけては1匹目が吹き飛んだ方に飛ばした。

 

2匹の頭部に封印文字が浮き上がって、2匹は爆発した。

 

「意外と使いやすいな。」

 

「ハチマン!カッコイイです!」「そのまま、どんどんやっちゃってー!」

 

おいおい…そう言えば、ダクネスはどうしたんだ。ダクネスの方を見ると、カズマを庇ってダクネスは触手に捕まっていた。

おい、やべーんじゃねぇか、あれ!

 

「ハチマン!見てくれ!こんな、こんなグロテスクなモンスターによる触手プレイだ!私は!私は、どうすればいい!私は、このままきっと、このモンスターに脳を侵食されて、抵抗虚しく純潔を散らされて、あちらこちらを弄ばれてしまうんではないか!やがて、私の身も心もこのモンスターに支配されて、このモンスターの事を主と崇める奴隷に!ハチマン達は、私に構わず先に行けー!」

 

あー、結構、平気そうだわ。

カズマも呆れた顔していた。

俺は、誰かが落としたであろうショートソードを持ち「超変身!」と叫ぶと、ドラゴンフォームからタイタンフォームへと変身した。

ショートソードは、もちろんタイタンソードに変形した。

 

「アクア!また、ハチマンの姿が変わりましたよ!」

 

「あれは、アクシズ教団の太師になった時になれる姿よ!」

 

「アクシズ教団って、すごいんですね!」

 

「えぇ!アクシズ教団は、すごいのよ!」

 

だから、アクア適当なこと言ってんじゃねぇよ。

このクエスト終わったら、説教だからな。

ったく……。

タイタンフォームになるとドラゴンフォームと違って、機動力は落ちるが攻撃力と防御力はかなり上がる。

 

ハチマンは、ダクネスを絡んでいる触手をタイタンソードで切った。

触手が切れたことにより、冬虫夏草は後ろに転がっていった。

 

「あ…ああああー!ジェスター様ー!」

 

ダクネスは、触手が切られた冬虫夏草を見て悲鳴を上げた。

おい、せっかく助けたのに、そっちの心配するか普通?

 

「おい、ダクネス!アイツは、お前の主人様じゃない!それと、モンスターに名前を付けるやつがいるか!なんで、まだ寄生されて無いのに主従関係が成り立ってんだよ!」

 

「カズマには、私の気持ちが分からないのか!」

 

「わかるか!」

 

もがき苦しんでいた、冬虫夏草は何とか立ち上がっては触手を飛ばしてくると思ったが、二本足で俺らに背を向けて走り出した。

 

「……は?」

 

前傾姿勢で、それは見事なフォームで走っていった。

あまりにも変な出来事に唖然としてしまった。

カズマも、口をポカーンとあけて二本足で走っていった冬虫夏草を指指しながら「……ナニコレ?」と呟いていた。

 

とりあえず、変身解くか。



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3-8 デコピン×弱点×愛と哀しみのゴッドブロー

「ふぅ…。」

 

変身を解いて、俺は一息ついた所に岩陰に隠れていためぐみんとアクアが合流してきた。

とりあえず、アクアには折檻が必要だな。

 

「ハチマン!先程の戦いカッコよかったです!やっぱり、アクシズ教団に入ったからですか!」

 

「違うぞ、めぐみん。アクア、ちょっとこっち向け。」

 

「うん?何かしら?」

 

めぐみんは、興奮気味でその場をぴょんぴょんしていた。何この子可愛いんですけど。

だが、その前に…。俺は、アクアのデコに本気のデコピンをかました。

 

「いったーーーーい!何するのよ、ハチマン!あぅ…。」

 

余程痛かったのか、アクアはデコを抑えながら涙目で反論してきた。

 

「アクア、めぐみんに変な嘘ついた罰だ。これぐらいで済んで良かったと思えよ。次に変な嘘ついたら変身をした状態でデコピンだからな。」

 

「うぅ…はい。」

 

それと……そこのアホクルセイダーにも折檻しないとな。だが問題は、ドが付くほどのMだ。普通の折檻なら、さっきやったデコピンで済むんだが…。チラッとダクネスの方を向くと、物欲しそうな顔をしていた。あー、もうめんどくさい!

 

「ハチマン、ダクネスどうする?てか、さっきのアイツは逃げちゃったし、俺の感知スキルで探すか?」

 

「ダクネスは、放置でいいだろ。逃げた奴に関しては、依頼されている事だから倒すか。」

 

そんな、話しをしてるとアクアは分かりやすく顔をしかめた。

 

「えぇ~、自分が取ってきたクエストですけど…なんて言うか、あんな不気味なモンスターをもう一度見ないといけないとか嫌なんですけど~。てか、戦力になるのがハチマンとカズマだけで、めぐみんは1発こっきりで、ダクネスは命中率低いし…。私は、あんな見た目の奴と近接とか嫌だし~。」

 

このダメ神が…。

俺とカズマは、呆れた顔をしていたところにめぐみんが手を挙げた。

 

「はいはい!」

 

「はい、めぐみん。何かあるのか?」

 

「ゴッホン。アイツの弱点を付けば、もっと楽に倒せると思うんですが。」

 

「あんな化け物みたいな弱点なんかあるのか?やっぱ、虫が付くだけあって火に弱いとかか?」

 

カズマは首を傾げなから質問した。

たしかに、あんな見た目の奴に弱点とかあるのか?

 

「いいえ、火ではありません。確か、寄生系モンスターは水を嫌うと聞いてます。キラーマンティスって、モンスターのお腹の中にいる何とか寄生虫も水に付けるとキラーマンティスから脱出するらしいです。でも、私は街の近くという事だったので、水なんか持ってきてありません。皆さんは?」

 

なんだか、カマキリの腹の中に住むハリガネムシみたいだな。

確か、ハリガネムシって、宿主が食べたものを食べて成長するんだよな。まるで、人間でいうヒモだな。なんか羨ましい。だって、働かずに飯も食えて宿もあるんだぜ。

 

おっと、アホな事を考えてないで、水か……。俺も街の近くという事で、水とか食料などといったものは何も持ってきていない。

 

「おいおい、水のことなら俺に任せてくれ。」

 

カズマがドヤ顔で言ってきた。なんだろう…めぐみんと違って、無性に殴りたい。

 

「任せてくれって?」

 

「実はな、キャベツの時に仲良くなった他のパーティの人に初級魔法を教えて貰ったんだ。」

 

そう言えば、行く前にスキル習得してたな。てか、他のパーティと仲良くなるとか、相変わらずコミュニケーション能力は高いな。

 

カズマは、右手を突き出して''クリエイト・ウォーター''と叫んだ。突き出した右手に光が集まり、次の瞬間に何も無い場所から大量の水が現れた。

 

「おぉ!すげぇじゃん、カズマ。」

 

「へっへっへっ……」

 

「おい、クソニート…私に言うことないの?」

 

アクアの方を向くと、カズマに対して殺気だっているズブ濡れになったアクアの姿があった。

死んだな、カズマ。

 

「えっと…水もしたたる女神さま、今日もアクアはいい女だな!」

 

「ゴオオオオオオオト!ブロオオオオオ!」

 

「いやあああああ!」

 

カズマの溝にアクアの右拳が炸裂した。

あーあー、本当にカズマはついてないな。

とりあえず、南無!成仏しろよ。



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3-9 休憩×大群×爆裂魔法

「うぅ…ハ〜チ~マ~ン~!」

 

カズマに、ゴッドブローこと鳩尾をぶちかましてからアクアは泣きついてきた。

はぁ…、手が掛かる。

 

「はいはい、何でしょうか。」

 

「カジュマに、汚されちゃった~!ひぐ…カズマから出た汚い水で!うわぁーん!」

 

「はいはい、よしよし。」

 

「ぐぅ…ハチマン、オレの心配は…。」

 

「自業自得だ。」

 

「くそ…あふっ……。」

 

カズマは、そのまま気絶をした。はぁ…。

せっかく、RPGっぽくモンスターを弱点を付いて倒すみたいな事ができると思ったんだがな。

とりあえず、カズマが起きてから敵感知スキル使ってもらうとするか。

それに、このダメ神も起きる前に慰めねぇと。

あとは…。

 

「おい、そこのクルセイダー。いつまでふて寝してんだよ。」

 

「ふ、ふて寝ではない!」

 

「はいはい、なんでも良いからカズマを運ぶから、こっちに来い。」

 

「ふん!」

 

この野郎…。ふて寝と言われたのが相当気に食わないのか顔をそっぽ向けやがった。

そっちがその気なら…

 

「おい、ポンコツ。10秒以内に来ないとお前の事を褒め殺すぞ。」

 

「ごめんなさい!今すぐ行きます!」

 

ダクネスは、いそいそとカズマを木の下に運んでいった。そう、コイツが前に罵倒しても反省の色がないというか、意味が無いことから1度だけ褒めて褒めまくったら泣きながら辞めてくれと懇願して来たのである。

何はともあれ、手間が掛かるパーティだな。

誰か変わってくれないかな。なぁ、頼むよ。

はぁ…。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「う…うん…」

 

おっ、カズマがやっと気がついたようだな。俺たちは、カズマが気がつくまで木の下で休憩していた。

 

「あれ、オレは?おい、ハチマンどういう状況だ?」

 

「えっ?あぁ。カズマが気絶してる間に休憩をしていたところだ。」

 

「いや、そうじゃなくて!なんで、みんなハチマンに寄りかかって寝てるんだよ!」

 

そう、アクア、めぐみん、ダクネスは俺に寄りかかって寝ている。アクアとめぐみんに肩を貸し、ダクネスには背中を貸していた。

 

「安心しろ、カズマ!お前には、俺の膝を貸してやっていた。」

 

「何が安心だよ!くそ!こういう時は、普通は女の子とかが膝枕をしてくれるイベントだろ!」

 

「ったく、人の膝で寝かしてやったのに文句ばかり言いやがって。」

 

「おい!ハチマン!もし、オレがお前に膝枕したとしたらどうする?」

 

「その膝引きちぎる。」

 

「おい!こえーよ!」

 

いや、だって何が悲しくて男の膝枕だよ。あっ、だが、戸塚の膝枕だったら有りだな。テニスやってる割に柔らかそうだったしな。それに、天使!

 

「うるさいですね…。」「本当よ。」「ふわぁ…。」

 

カズマの声で続々と起きはじめた。俺としては、重かったからどいて欲しかった。

特にダクネスは、甲冑もあるから特に重かった。

みんなが退いたことを確認をして、体をバキバキと鳴らしながら背伸びをした。

 

「みんなが起きたことだ。とりあえ、残り1匹倒して帰るとしようべ。カズマ、敵感知。」

 

「おっけー。おっ、早速敵さんが来たみたいだぞ!」

 

カズマは茂みの1部を指差しながら言った。

茂みからガサガサと大きな音を出しながら蠢いるのが、敵感知を持っていない俺でも分かった。

 

「えっ、やだ!また、あのキモいのがいるの!?」

 

アクアは、俺の両肩を掴んできた。

痛い、痛い!頼むから、離してくれ!

 

「よし!そこにいるな!今回は、オレに任せろ!めぐみんとアクア、それにハチマン!後ろに下がってろ!今度は血迷うなよ、ダクネス!あそこにいるのは、ご主人様ではなくモンスターだからな!」

 

「私はモンスターをご主人様と呼ばない!安心しろ!」

 

「おい、嘘つくな。つくなら、もっとマシな嘘をつけ」

 

「嘘ではない、ハチマン!」

 

「…………」

 

「はう!やめてくれ!その目で、その目で…うっ…」

 

このクルセイダーは、なに興奮してんだよ。

俺とカズマは呆れた顔をしたが、敵が茂みの中で激しく動き始めたことを察知して顔を引き締めた。

 

「カズマ!」

 

「おう!先手必勝!''クリエイト・ウォーター''ッッッ!」

 

「ヒギイイイイイイぃぃぃぃ!ギギキギィィィィ!」

 

カズマは、茂みにクリエイト・ウォーターを大量にぶっ掛けた。降り注いだ、大量の水が冬虫夏草に当たったんであろう、気色が悪い甲高い声を上げた。

どうやら、水が弱点というのは本当だったみたいだな。

 

「おぉ!だけど、最弱クラスのクセに生意気よ!カズマのクセに活躍するなんて!」

 

「うっせぇ!お前こそ、アークプリーストの癖に支援魔法の1つくらいかけてくれよ!」

 

「キィーーー!」

 

戦闘中だ、馬鹿共が。アクアもアクアで、カズマが舐めた口調を言っていると、俺の背後にいためぐみんの手が震えている事が分かった。

なんだ?冬虫夏草は、まだ茂みの奥にいるし姿は見せてないから怖いもんなんてないだろうに?

とりあえず、話しかけってみっか。

 

「あん?どうした、めぐみん?」

 

「あ、あ、ハチマン!べ、別にカズマが初級魔法が使えるようになったからといって、わたしの魔法使いとしての存在意義が1段と薄れた訳ではありませんからね!わた、わたし………我が爆裂魔法は最強ですからねっ!」

 

いやいや、震え声+涙目で言われてもなぁ。てか、めぐみんも爆裂魔法以外覚えればいいんじゃないのかと思うんだが…。

下手に言うとめんどくさい事になるのは目に見えて分かる。

 

「はいはい、爆裂魔法は最強だよな」

 

そう、俺は適当に流すこと決めた。

めぐみんは、その言葉にパーっと笑顔になった。

 

「フフフッ!ハチマンは、分かってらっしゃる!」

 

「はいはい」

 

「おい!ハチマン!あのモンスター茂みから出るぞ!」

 

カズマのセリフを吐いた途端に、茂みから先ほどとは違う牛に寄生した冬虫夏草が出てきた。

それが、コチラをジッと睨みつけているだけで、攻撃をしてこない。なんだ?なんか嫌な予感がする。

 

「ギギギギ!キリキリキリキリキリキリキリ……!」

 

「何故、アイツは攻撃してこない。身動き出来ない、今なら私でも当てられるぞ!ハチマン、カズマ、トドメを指してしまおう!」

 

ダクネスは、妙にいき込んでいる。

何故、前に出てきて攻撃をしてこないで叫んでいるだけなんだ。うん?叫ぶ?動物や虫が叫ぶ時は、助けを求めて……。

 

「カズマ、ダクネス!あの叫んでいる奴を倒せ!早く!」

 

「「えっ?」」

 

2人は、素っ頓狂な顔をした瞬間に遠くから同じ叫び声が上がった。

その叫び声は、徐々にコチラに向かってきた。

そう、その叫び声の正体は、冬虫夏草は携えた家畜が向かって来たのである。

 

「「「ギギギギギギギギギィィィィィィィィィィ!」」」

 

「「いやあああああ!いっぱい来たぁぁぁ!」」

 

アクアとめぐみんが、あの百鬼夜行みたいな光景を見て叫びあげていた。

しかも、その百鬼夜行は俺達を標的にしている事が分かる。

俺がクウガになろうとした時に、ゆらりゆらりと百鬼夜行の前にダクネスが現れた。

 

「おい、バカ!何してんだよ!」

 

「ふふふっ…」

 

ダクネスは、不敵な笑みを浮かべては、装備している剣を地面に突き刺した。そして、剣の柄に両手を置いて仁王立ちをし始めた。

あのバカ何をする気だ、とんでもないアホな事をやるのは分かるが。

 

「ふふふっ……かかってこぉぉぉぉおい!''デコイ''ッッッ!」

 

それは、クルセイダーのスキルの敵視を上げる能力だ。

百鬼夜行は、ダクネスに向かって一直線に走っていった。

 

「めぐみん!あのバカごとでいい!爆裂魔法をぶちかます準備!アクアは、あのバカに防御支援魔法!カズマも遠くからでいいから、爆裂魔法が詠唱が終わるまで、クリエイト・ウォーターで敵を足止め!」

 

「了解だ!ハチマン!」

「わ、分かりました!どうしよう。こんな非常事態にわたしが頼られるなんて生まれて初めてです!フフフッ……群れるだけしか能が無い家畜共よ!我が絶大魔法である爆裂魔法!目に焼き付けるがいい!」

「えっと、分かったわ!防御支援魔法ね、支援…防御…ハチマン!一時期的でも、芸達者になる支援魔法必要かしら?」

 

「んなもん、いらねえから早く準備しろ。」

 

慌てて2人は、魔法の詠唱を始めた。カズマもクリエイト・ウォーターを百鬼夜行にぶつけては速度を緩めた。

 

そして、俺は…。

「変身!」

クウガになり、近くあった棒を掴みドラゴンフォームにチェンジをした。

俺はクラウチングスタートの準備をした。

タイミングだ、タイミングを図るんだ。

ふぅ…。

 

「ハチマン!ダクネスに、防御支援魔法終わったわよ!」

 

「ハチマン!こちらも爆裂魔法いつでも行けます!でも、ダクネスが範囲内に入っております!」

 

めぐみんが準備が終わったようだな。

「構わん!今なら、高位防御支援魔法が掛かってるからこぉぉぉぉい!」

アホが叫んでいた。

 

「めぐみん、大丈夫だ。あのアホはハチマンが回収してくれる。」

 

めぐみんに、サムズアップをして見せた途端に安心した顔をした。

 

「エクスプロージョン!」

 

めぐみんの呪文と共に、魔方陣が発生したと瞬間に、俺はスタートを切った。

ギリギリ間に合うか、今は間に合うか間に合わないかじゃない、間に合わせるんだ!

 

俺は、走ってダクネスを抱えた瞬間に「離せぇぇえ」と聞こえたが無視だ無視。

ダクネスを抱えて、足に力を入れその場から直ぐにジャンプして逃げた。

 

ジャンプして、離れた瞬間に背後から爆裂音と冬虫夏草の断末魔が聞こえた。

 



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3-10 拗ねる×改め×頑張る

俺達が拠点を置く街が、ようやく見えて来た。

 

「うぐっ…なぜだ!なぜ、あの時に…ひぐっ…。」

 

「ハチマン、そろそろ変わるか?」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

カズマは、俺に気遣いをしてくれた。

何故カズマから気遣いされてるのかというと、俺の背中で泣いているダクネスを、おんぶして街まで歩いてきたからだ。

 

それと、どうしてダクネスが泣いているのかというと、冬虫夏草を爆裂魔法で消し飛ばす際に、ダクネスを避難もとい救出をした事で泣いているのである。

おかしいだろ、普通は''ありがとう''って言葉が来るはずが帰ってきた言葉は、''なぜ!助けた!私はあの中で、最高にHighになるはずだったのに!''だ。

挙句の果てに、''もう一度、あの状況にならない限り帰らない''とまで言って、頬膨らまして涙目で、その場に座り込んじまってからこの状況になるまでに大分時間が掛かった。

 

だが、その時間のおかげで、めぐみんの魔力が回復して歩けるようになったのが幸いだったが。

 

それにしても、この世界はすげーよな。前の世界だったら、ダクネスをおんぶして牧場から街までとか重くて無理だったしな。

ステータスのおかげで、俺でも鎧を装備している状態のダクネスでも軽く感じるしな。

 

「うぅ…うー!」

 

「ポカポカ叩くなよ。」

 

ダクネスは、俺の背中を両手でポカポカ叩き始めた。あれか?重いとか考えたのがバレたか?

 

「でも、今回の作戦は上手くいきましたね!」

 

「あぁ、そうだな。」

 

めぐみんは、爆裂魔法が思いのほか上手く決まった為か、魔力が回復次第に直ぐにテンションが高くして歩き出したほどだ。

 

そんな、めぐみんに続いて、もう1人テンションが高いやつが口を開いた。

 

「ねぇ!もう1回だけ、めぐみんの冒険者カード見して!……冬虫夏草25匹。1匹につき、3万エリスだから…75万エリス!!あわわ…どうしようハチマン、カズマ!土木工事のアルバイトの4ヶ月ちょいあるわよ!ちょろい、ちょろすぎるわ!冒険者家業!」

 

「いや、お前なぁ。今回は上手くいったから良いけど、ハチマンが居なかったらダクネスは、あの中心で爆裂魔法に巻き込まれて破損した装備の修理代になってたんだからな。それに、ちゃんと山分けの取り分の計算とかはハチマン次第なんだからな。」

 

アクアは、ぶーっと頬膨らましながらぶつくさ言っていた。

確かに、今回は上手く行ったが、もしダクネスがあれに巻き込まれてたら取り分は、きっとカエルの討伐と変わらないんじゃないか。

でも、まぁ……。

 

「よし、今日は飯は豪勢にいくとするか。」

 

俺の言葉で、3名が目を輝かせていた。

 

「「「いい(ですか!)(の!)のか!ハチマン!」」」

 

「あ、あぁ。」

 

「よっしゃー!!ハチマン、カズマ!焼肉よ!焼肉!」

 

「おい、アクア。アレを見た後で、良く焼肉行きたいっていうな。しかも、提供される肉が寄生されたやつだぞ。」

 

「うぷっ…やっぱりいらない。」

 

そんなアホな事を談笑していたら、いつの間にか街の門についた。

だが、門の前には見慣れた人影が顔を真っ赤にして、今にも食ってかかって来る形相して立っていた。

 

そう、クリスさんだ。

 

「パンツハンターァァァァァ!あたしがクエストに出てる間に、ダクネスに何をしたァァァァ!」

 

目を腫らして泣いているダクネスの姿を見ては、クリスさんが叫んだ。

まさか、ダクネスを背負ってる俺ではなくカズマにキレるとは。

まぁ、妥当か。

 

「お、オレはなんにもしてねぇよぉぉぉぉ!」

 

「問答無用!」

 

あーあ…本当にカズマは人間関係に関しては、運が悪いな。

てか、ダクネスも弁護してやれよ。あっ、コイツ、狸寝入りしてやがる。

はぁ…。

 

俺は何度目か分からないが、ダガーを持ったクリスさんに追いかけられているカズマに合掌した。

 

「おい、ハチマン!てめぇ、合掌なんかしてなっ!おわっ!危なっ!」

 

「めぐみん、アクア。風呂入ってから合流な。あと、俺の背中で狸寝入りこいてるダクネスは、クリスさんにちゃんと説明したから来いよ。」

 

 

「「は~い」」

 

俺は、ダクネスをその場に下ろそうと、しゃがんだ途端に俺の肩に乗っていた手に力が入れてきた。

 

「いっ!痛い、痛いダクネス痛い!分かった、分かったよ。」

 

何が分かったかは、分からんがしゃがまずに立つと、肩に乗った手の力が緩んだ。

まったく、もうなんなんだよ…。

とりあえず、あの2人止めるか。なんだが、この世界に来てから、本当に幼稚園の先生みたいな気分だよ。

 

「おーい、クリスさん!ちょっと話を聞いてれ。」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

場所は移して、ギルドと併設している酒場の中。

クエスト報酬を山分けして、各自冒険者カードの更新を行ってからダクネスが泣いてる理由をクリスさんに説明した。

 

「なんだ~、そういう事だったんだね。でも、キミたち結構無茶し過ぎだよ。冬虫夏草のクエストの平均パーティレベルは10レベルだよ。それに平均と言っても、15レベルの冒険者でも苦戦する場合もあるんだからね。んで、キミ達レベルは?」

 

「俺は、今のでレベル22になった。」

「私もさっきので、レベル13になりました!」

「オレもレベル11だ。」

「私もレベル11になった。」

「えっ?なんで、みんなそんなにレベル高いの?私様がレベル5よ?もしかして、1番低い!?」

 

アクアは、自分のレベルの低さに絶望していた。

それは、そうだ。アクアに関しては、俺らが討伐クエストとかやってる時に、借金返済の為にバイトしてたからな。

 

「はぁ…ハチマンさんが、パーティレベルの平均値を底上げしてるけど、ハチマンさんが抜けたら、アウトだったよ。冒険者はね、慎重に慎重を重ねるぐらいで丁度いいの!それに、ハチマンさんがレベルが高いからって、いけるだろって事は無いんだからね!まったく、勇気と無謀は違うんだからね!」

 

クリスさんは、声を荒らげていた。確かに、今回は上手くいったが次が確実に上手くいくなんて事は無い。

それに、今回のクエストレベルの確認やモンスターの詳細などを知らず行ったのは、不味かった。

異世界だからって、何処かで浮かれてちまったのかな。この世界でも、死ぬことだってあるんだ。失った命は、もう…。

 

「クリスさん、俺が悪いんだ。」

 

「えっ!?あっ。」

 

俺は、クリスさんに頭を下げた。

 

「クリスさんの相方でもあるダクネスを危険な目に合わせてしまって。」

 

「ちょっと待ってくれ!ハチマン!あれは、私がやってくれと言ったのだ!それに、謝るなら私だ!いつまでも、変な事に強情になっていたから!だから、顔を上げてくれ!」

 

「えっと、あっ、うぅ。ハチマンさんだけが悪いんでは無いんですから、顔を上げて下さい。お願いします!」

 

顔を上げると、俺の態度が予想外だったのかあたふたしたクリスさんの姿があった。

やはり、この姿といい態度といい…やはり、この人は。

 

「ですが、ハチマンさん。私の相方でもあるダクネスをちゃんと守ってね。」

 

「分かったよ。」

 

「ダクネスも、そこの変態パンツハンターに酷い事されたら、すぐにあたしの元に帰っくるんだよ。」

 

クリスさんは、カズマの事を指で指した。

 

「ちょっ!さっきよりも、ランクが上がってるんですけど!」

 

「うっさい!」

 

「ハハハ…。酷いなど…望むとこ………っんでは、なく。心配しすぎだ、クリス。大丈夫、またその内一緒に冒険をしよう。」

 

ダクネスとクリスさんは、一緒に笑いあっていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「さてと…それじゃ、あたしも行くね。さっきも言ったどおり、変態パンツハンターX君、もしもダクネスに変な事したら…。」

 

「わ、分かってるよ!くそ…。」

 

まぁ…前科持ちだからな。疑われてとしょうがない。

 

「ねぇ、あんた盗賊職なんでしょ?どうせなら仲間にならない?」

 

「そうです。盗賊職は、ダンジョンでは重宝される存在ですし。歓迎しますよ。」

 

クリスさんは、首を横に振った。

 

「あたしのスキルは、そこいるカズマに1部教えてるし、あたしの有り難みが半減してしまうしね。それに、あたしは自由気ままにやっていく方が、しょうに合ってるしね。おっと、そろそろ新しい冒険者君たちと、一緒にダンジョンに行く時間だ。」

 

ダクネスは、少し心配そうな顔はしていたがクリスさんの笑顔を見て、ほっとした様子に変わった。

ダクネスは、ドMを除けば普通なんだよな。

 

「じゃあね!ダクネス!討伐クエストとかあったら、一緒に行こうね!」

 

クリスさんは、これからダンジョンを一緒に行くであろうパーティいるテーブルに向かっていったが、こっちに戻ってきた。

 

「ハチマンさん。」

 

「あん?」

 

クリスさんは、俺の耳元で他のメンバーで聞こえない声で''ハチマンさん、貴方様の今後冒険にご武運を。それと、頑張ってくださいね。''と言っては、さっさと行ってしまった。

 

ったく…あの人は。

そう言われたら、頑張るしかないよな。

 

「よし、飯食って明日からも頑張ってみますか。」

 

 




ここまでで、3章は終了です!
大分時間がかかってしまったし、長くなってしまいました。

4章の予定としては、あの巨乳のお姉さんが出てくる予定です!


それにしても、誤字が多くてすみません!
それと投稿が遅くなってすみません!
体調が悪かったんです、許してください!

話が変わります、作者は今SICの555のアクセルフォームを買うか悩んでいます。
開閉がある限定版を買うか……。
財布との相談ですね(笑)

読者の皆さんも風邪には気をつけて下さいね!
では、4章で会いましょ!


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第四章
4-1 お金×カズマの計画×穀潰し


「……という訳で、金が欲しい。それも、大量にだ!」

 

開幕早々に、いきなりカズマが金が欲しいとか言い始めた。聞く価値があるかないかでいうとない方だな。

 

「ハチマンさん、本なんか読んでないで聞いてください!」

 

そう…俺は、この世界での知識を増やす為に冒険者ギルドの近くにある図書館に通っては、本を借りて読んでいた。

んで、現在ギルドの俺達専用と言って良いほど、隅っこのテーブル席でダクネスとめぐみんが来るのを待っている最中だ。

アクアに関しては、シュワシュワが入ったジョッキを片手に上機嫌だ。

 

「あーん?何言ってるの?カズマ、バカなの?みんな、お金欲しいに決まってんじゃん!てか、私も欲しいわよ!私よりも知力がちょっと高いとか思ってたけど、やっぱりバカね!まぁ、所詮ニートだし~」

 

昼間から酒を呑んでる自称なにか様は、カズマを煽った。

っが、カズマは、このダメ神に何を言っても無駄な事を知っているから、俺の名指しで話しを聞いてくれと懇願してきたのである。

 

「んで、金が欲しい理由は?」

 

「お前が欲しいの散財する金だろうが!…ごほん…えっとですね、ハチマンさん。僕達も安定した生活が欲しいんですよ。ハチマンさんと違い、未だに馬小屋生活ですし、本来ならチート能力を手に入れて、ここでの生活も苦労せず過ごせたはずなんですよ。」

 

「……。」

 

「そりゃあ、俺だってロクに何もしてないですよ。転生の時に、特典とか無償で貰える身としては、不満なんてありませんでした。でも、勢いとはいえ、チート能力や武器よりもコイツを選んだんだ。多少なりともチート能力とか武器に匹敵するぐらいの使えるかというと使えない元自称なんとかさん!」

 

「うぐ……元じゃないもん…今だって、女神だもん…」

 

あーぁ……、アクアが泣きそう。カズマも、さっきの煽りの仕返しの分も交ざってるタチが悪くなってやがる。

しかも、段々熱くなってきてる。

 

「ほう…女神ねぇ?女神様って、あれだろ?勇者を導いて優秀な武器の在り処や勇者が一丁前になるまで、魔王軍とかを足止めしたり封印したりするんじゃないんですか~?それが、カエル食われて、朝から酒呑んで…この演芸しか脳がない穀潰しが!」

 

「わぁぁぁん……。」

 

アクアは、机に突っ伏して泣き始めてしまった。

カズマが、その姿を見ては満足そうに鼻で笑っていた。

傍から見ても、この光景はマズいだろ。女泣かして、ドヤ顔の男とか…また、俺達パーティの評価が下がる。

 

「うぐっ…でも!私だって、回復魔法とか支援魔法に回復魔法とかで、役に立ってるわよ!このクソニート!じゃあ、早く!お金が欲しい理由を話してみなさいよ!」

 

涙を流しながらアクアは、カズマに訴えては、また机に突っ伏して泣き始めた。

カズマをチラッと見ると、完全にとどめを刺すつもりだな。嫌だなぁ~、この後の処理誰がするでしょうかね?えぇ、もちろん、俺ですよ。

はぁ…、めんどくさいが仲介に入るとするか。

手に持っていたパタンと閉じた。

閉じた音で2人は、こっちに注目した。

 

「んで、カズマ。アクアが言った通り、なぜそこまで金が欲しいんだ?それに、金なら前の冬虫夏草だの討伐の山分けした報酬とかあるだろ?」

 

「えっとですね。まずお金が欲しい理由としては、日本から来たというのに全く活かせてない。そこで、俺達でも出来そうな簡単な日本製品を作成して売り出してみたらどうかなって思ってさ。ほら、オレのステータスの運の項目がめちゃくちゃ高いから受付のルナさんに商売人とかどうかって勧められたんだ。」

 

なるほど、冒険者では命を落とすリスクがあるが、商売人には冒険者ほどリスクは少ない。それに、カズマの持っている潜伏スキルと運を使えば高ランク材料を揃えることも出来る。

なかなか理にかなったことだ。

だが……。

 

「カズマ、お前が金が欲しい理由は分かった。」

 

「なら!」

 

「だが、俺はさっきも言ったよな?冬虫夏草やら討伐で山分けした金があるはずだと。その金があれば、小さな店くらいなら借りられるくらいだろ?ましてや、俺と違って''無料''の馬小屋に住んでんだから。」

 

カズマはバツが悪そうな顔をした。

 

「……た」

 

「あん?」

 

「酒と夜遊びで使い切りました!」

 

「お前もアクアと対して変わらんわ、穀潰し。」

 

俺の言葉にアクアと同じように、カズマも机に突っ伏して泣き始めた。

ダメだ、コイツ…アクアもタチが悪いが、コイツも同じくらいタチが悪い。

と、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

「ハチマン、昼間からどうしたんですか?…正論というのは、時にはとんでもない武器になりえますからね。」

 

「ハチマン、私にも!私にも、女にセクハラをしては、飽きたら女を泣かせるだけ泣かせ、何もしないで夜遊びしかしなくて、簡単に金が手に入れられると思っている穀潰しを見る目で言ってくれ!」

 

そこに居たのは、めぐみんとおかしな言動して、カズマに追い討ちをしたダクネスの姿があった。

だがこの文書だけでも、なかなか清々しい程のゴミっぷりだな。

 

カズマとアクアは、2人からの視線を感じて時折チラチラッと見ていたが反省の色なしだな。

 

「あの2人は、ほっといて。ハチマン、今日もクエスト行きましょ。」

 

「そうだな。バカ2人は、ほっといてクエスト受けて金でも稼ぐか。」

 

「「待って(よ)ください!俺(私)達も行く!」」

 

コイツら、金という単語が出た途端に顔をすぐにあげやがって。

 

「では、アクアのレベルに合わせたクエストにしましょう。前にクリスさんが平均パーティレベルの話しをされていたので。アクアの様なプリースト系はレベルを上げるのは難しいですが。」

 

「そうだな。でも、確か…プリースト系には、攻撃魔法とかないんだよな?」

 

「はい、そうなんですよ。ですが、安心して下さい!プリーストにはプリーストしか使えない浄化魔法があるんです!つまり、アンデッド系を狩るクエストを受ければ、アクアのレベルも上げられると言うことです!ふふふ……」

 

めぐみんは、まな板の様な胸を張りながらドヤ顔をしていた。

まぁ、かわいいから許す。

 

「良い提案だ、めぐみん。ありがとうな。」

 

めぐみんの頭を軽く撫でて、ポンコツ2人の肩を叩いた。

 

「ということだ。カズマ、アクア、良い依頼がないか探してきてくれ。俺は、そういったクエストが、まだボードに貼られていないかもしれないから確認してくるわ。」

 

「「はい!」」

 

「あと…カズマはクエスト終わったら説教な。」

 

「なんでさぁぁぁぁぁぁ!」

 

カズマの大声はギルド内を駆け巡った。



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4-2 初級魔法×ゾンビメーカー×リッチー

街から外れた丘の上。

そこには、身寄りがない人やお金がない人などの為の共同墓地がある。

この世界では、火葬はせずに土葬という形で埋葬をしているらしい。

その為か、埋葬している死体の体内にある魔力が枯渇せず残ったりしてるとアンデッドモンスターに変化するらしい。

そう、今回の依頼はアンデッドの討伐クエストだ。

あの後、 受付嬢のルナさんに依頼があるか聞いてみたら、喜んで紹介してくれた。

 

 

 

今の時刻は、夕方に差し掛かろうとしていた。

俺達5人は、墓場の近くで夜を待つべくキャンプをしていた。

 

「ちょっと!カズマ、その肉は私のよ!カズマは、野菜食べなさいよね!」

 

「うるせい!こういうのは早い者勝ちなんだよ!」

 

「私にもお肉下さい!」

 

「皆で、外で焼肉もいいものだな。」

 

墓場のちょっと離れた位置で、鉄板を敷いて焼肉を食べていた。

これから討伐クエストなのに、こんなにものんびりしているのは、今回の討伐クエストのメインとなるのは、ゾンビメーカーの討伐だ。

ゾンビメーカーとは、死体からアンデッドモンスターを作成しては、手下として兵として操るモンスターだ。

まぁ、ネクロマンサーと言った感じだな。

ゾンビメーカー自身は、かなり弱いらしいから駆け出し冒険者でも倒せるレベルらしい。

まぁ、ルナさんの紹介だし大丈夫だろう。

よし、俺も肉を……。

 

「ふぅ…食った食った。」

 

鉄板を見てみると、肉はなく野菜しか無かった。

 

「おい、誰だ。肉ばっか食ってるアホは?」

 

「カズマ(よ)(です!)(だな)」

 

「おい!嘘つくんじゃねぇよ!特にアクア、てめぇ!」

 

「私は、野菜も食べてました~!べー!」

 

「はぁ…もういいわ。野菜食いますよ。」

 

「ハチマン、私の肉をやろう。」

 

「ありがとうな、ダクネス。」

 

ダクネスから肉を貰っていたら、後ろから服の裾を引っ張られた。

 

「うん?」

 

「ハチマン、私のお肉あげます。」

 

「めぐみんありがとうな。でも、ダクネスからもらった分だけで大丈夫だ。それに、その分けてくれるって、気持ちだけで充分だしな。」

 

こんな育ち盛りの子から、お肉は取れないよ。

こんな状況にもなったのは、クズマとバカ女神のせいだしな。

 

 

 

そんなこんなで、俺達は腹ごしらえを終えた。

カズマから、各人コーヒー貰って寛いでいた。

 

「カズマ、お前器用だな。」

 

「あぁ?あー、これくらい簡単だぞ。」

 

カズマは、マグカップにコーヒーの粉を入れては、クリエイト・ウォーターでマグカップに水を入れ、ティンダーという火の魔法で、マグカップを暖めていた。

 

「初級属性魔法なんて、ほとんど使われていないので、カズマを見ていると便利そうに見えます。」

 

 

「いや、多分そういった使い方をするんじゃないのか、初級魔法って?あっ、でも''クリエイト・アース''って、どう使うんだ?」

 

カズマは、呪文を唱えると手の中にサラサラした土が出てきた。

確かに、土を生み出せると言っても使い道とかって、スグに思いつくもんでもないからな。

 

「…………えっとですね。クリエイト・アースはですね、畑などに使用すると良い作物が取れたりするんですよ。まぁ、それだけしかないんですけどね。」

 

その説明を聞いたアクアは、吹き出していた。

 

「えっ、何々、カズマさん畑作るんですか?プースクス、やったわね!土も作れるし、クリエイト・ウォーターで水も撒けるし、農家とか天職じゃないの?ぷっ、アハハ…!」

 

カズマは、おもむろに土がある手をアクアに差し出しては、''ウィンドブレスト''と唱えた途端に、土はアクアに飛んでいった。

 

「ぎゃーーー!目に砂がー!」

 

目に砂が入ったアクアは、その場で転げまわっていた。

おい、ただでさえ短いスカートなんだから、そんなに動いたら見えちゃうでしょ!

見えても、不可抗力だからな。あっ、シマシマ…。

 

「なるほど、こう使うのか。」

 

「違います!絶対に!って、なんで初級魔法以上に上手く使いこなしているんですか!」

 

とりあえず、コイツらは食後の珈琲も、ゆっくり飲めないのかよ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「…ふぅ…大分冷えてきたわね。ハチマン、今回受けたクエストって、ゾンビメーカーの討伐よね?そんな小物じゃなくて大物のアンデッドが出そうな予感がするだけど。」

 

月が登り、深夜を回った頃。

アクアは、そんな事をポツリと言い始めた。

 

「おい、変なフラグ立てんなよ。ただでさえ、このパーティ全員で挑む時ほど、イレギュラーな事しか起きねぇんだから。」

 

「そうだぞ、アクア。俺達は、ゾンビメーカーを倒して、取り巻きのゾンビ共も土に返して、ギルドに戻って美味しいご飯を食べて、馬小屋で寝る!それ以外のイレギュラーが起きた場合は、すぐに帰る。」

 

カズマの言葉に、俺達は縦に頷いた。

だが、俺は気づいていた。カズマのセリフが絶対に変なフラグになって、帰れなくなることを。

 

そして、敵感知が行えるカズマを先頭にして墓場を歩いた。歩き始めてから数十分が経った時に、カズマが止まれの合図した。

 

「…………敵感知に引っかかったぞ。敵の数は、1匹、2匹、3匹、4匹、5匹?あれ、ちょっと多くないか?ハチマン?」

 

「あぁ。確かに…。」

 

ゾンビメーカーの手下の出来る数は、2匹から3匹と言われている。

ここは、慎重になっておいた方がいいな。

 

そんなことを考えていると、墓場の中央から青白い光が走った。

その光は、妖しくも幻想的なものだった。

青白い光の発生源を見てみると、かなり大きめな魔法陣と黒いローブを着ている人影があった。

 

「あれは、ゾンビメーカーではない気がします。」

 

めぐみんは、自信なさそう言った。

黒いローブの人影の周りには、次々と蠢く人影が増えていった。

 

「どうする?突っ込むか?ゾンビメーカーにしろないにしろ、この時間に墓場にいるのはおかしい。それに、こっちには、アンデッドに対抗できるアクアもいるし。」

 

ダクネスは大剣を持って、ソワソワしていた。

 

「ダクネス、ちょっと落ち着け。確かに、この時間にいるのは怪しいが、めぐみんの発言も気になる。カズマ、ここで待機して、ゾンビメーカーではない場合は戻るぞ。その場合、ギルドにスグに報告だ。」

 

「オッケーだ。」

 

俺達は、その場で待機していたらアクアがとんでもない行動を起こした。

 

「あーーーーーーーーーーー!」

 

アクアは、叫び始めたと思ったら、黒いローブに向かって走り出しのだ。

 

「おい!バカ!お前らは待機してろ。」

 

俺も、すぐにアクアの後を追いかけた。

アクアは、黒いローブの前に立つと指をビジッと指した。

 

「ノコノコ、こんな所に現れるとはね!この''リッチー''が!私が成敗してやる!」

 

はい、やはり完全にイレギュラーが発生しました。



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4-3 リッチー×ターンアンデッド×ウィズ

リッチー。

 

リッチーとは、かなり有名なアンデッドモンスター。ヴァンパイアと並ぶくらいのアンデッドモンスターの中では最高峰のモンスターでもある。

 

魔法に長けた者が、長い年月をかけて大魔法士になって、魔道の奥義で人の身体を捨て去った、ノーライフキングと呼ばれるアンデッドだ。

 

本来のアンデッドと違い、自らの意思でアンデッドになったという神の定めた自然の摂理に反し、神の敵対者でもある。

 

つまり、何が言いたのかというと…、序盤でラスボスとエンカウントしちまったってことだ。

「や、やめ、やめてくださーーい!誰なの!?私の魔法陣を消そうとするですか!?ほ、ホントにやめてください!」

 

「うっさい!黙りなさいよ、アンデッド!どうせ、この妖しい魔法陣を使って碌でもないことするつもりでしょ!この!こんなもの!」

 

ぐりぐりと魔法陣を踏みにじっているアクアの姿と泣きながらしがみついているリッチー。

そんな2人を、ただただ見ているリッチーの取り巻きのアンデッド。

 

どう考えても、アクアの方が悪役にしか見えない。

例えるなら、内職をしている奥さんに飲んだくれのプライドの高い旦那が、奥さんが作った物を踏みつけているような光景を見ている感じだ。

 

どうする?止めるか?

 

「やめ、やめて下さいー!!この魔法陣は、成仏出来なかった方々を成仏させる魔法陣なんです!ほ、ほら、魂が空高く旅立ってるじゃないですか!」

 

「問答無用!それに、リッチーの癖にプリースト紛いな事をしてるなんて生意気よ!見てなさい、コレがプリーストの力よ!」

 

「え、えっ!」

 

「''ターーーンアンデッド''!!!!」

 

アクアを中心に光が発生して、墓場全体を包んだ。

その光に包まれたアンデッド達は、存在をかき消すかの如く、次々と消えていった。

その光は、もちろんリッチーにも……

 

「いやぁぁぁ!か、身体消えちゃう、消えちゃいます!や、やめてください、成仏しちゃうー!」

 

「あはははは……!ざまぁみなさい!私の力にひれ伏しなさい!」

 

はぁ……見てられん。

俺は、アクアに近づいて「おい、アクア。そろそろやめてやれよ。」と声を掛けつつ、デコピンをかました。

 

「…うぐ!いたーい!何するのよ、ハチマン!私は悪を退治しようとしただけよ!」

 

アクアは、後頭部にデコピンを喰らって集中力が途切れたのか、光を放つのをやめた。

物陰で隠れていたカズマ、めぐみん、ダクネスと順々と姿を現わした。

 

とりあえず、こっちよりもあっちの方は大丈夫ではなさそうだな。

 

頭を抱えて震えながらうずくまるリッチーに声をかけにいった。

 

「えっと…、リッチーでいいのか?大丈夫か?」

 

よく見ると、足元が消えかかっていた。

やがて、徐々に消えかけていた足の線がくっきりとし始めて、涙目で足をフラフラしながら立ち上がった。

 

「は、はい。ど、どなたか存じ上げませんが、助けて頂きありがとうございます。え、えっと、おっしゃる通り、リッチーです。リッチーのウィズと申します。」

 

とても丁寧に返された。

ウィズさんは、真っ黒フードを跳ね除けては、月明かりで徐々に顔の輪郭などが映し出された。

その見た目は、20代くらいの茶髪のロングウェーブの美人の女性だった。

 

リッチーというから、骸の姿などを思い浮かべていたが、普通に俺らと変わらない姿だ。

それに、ウィズさんの格好としては、ローブに黒マントを羽織っている姿だ。リッチーと言うよりかは、魔法使いって感じだ。

 

あと、カズマさん。ハスハスしながら、女性を見るのはやめておいた方がいいぞ。

めぐみんとダクネスが引いてるし、ウィズさんもビクビクしてるから。

 

 



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4-4 善行×失敗×ズボン

「えっと…ウィズさん?こんな墓場で何をしてんだ?さっきの話しを聞いてたら、死者の魂を成仏させるとか言っていたが、リッチーがやる事ではないんじゃないか?」

 

「ちょっと、ハチマン!こんな腐った蜜柑みたいなアンデッドと話してると、それ以上に目が腐るわよ!早く、ターンアンデッドさせなさい!」

 

おい、アクア。今は俺の目については、どうでもいいだろうが。

 

アクアは立ち上がってウィズさんに飛びかかろうとしていた。

そんなアクアの姿を見て、ウィズさんは俺の背後に怯えて隠れた。

そして、カズマよ。お前も、羨ましいのか悔しいのか分からんが歯ぎしりをするな。

俺だって、心臓バクバクなんだからな。

 

「そ、その……。私は、見ての通りリッチーで、ノーライフキングをやっています。……それで、アンデッドの王なんて呼ばれてるくらいなので、私には彷徨える魂の声が聞こえるんですよ。そして、この共同墓地には多くの方々がお金がないなどして、禄に供養なども受けられずに彷徨っているのです。そこで、アンデッドの王の私が定期的に墓地に訪れ、成仏をしたがっている魂を成仏をさせているのです。」

 

……めちゃくちゃいい人じゃねえか。

カズマなんて、話し聞いて泣いてるし。

やはり、この世界の人達は基本的に優しいんだな。まぁ、人じゃないけど。

 

「うっ…それは立派な事だ。良い事だと思うが……。だけど…そういった事は、街にいるプリーストとかに任せればいいんじゃないのか?」

 

カズマは、至極真っ当な質問した。

ウィズさんは、チラチラとアクアに申し訳なさそうな顔していた。

 

「えっと……とても言いづらいですが……。街にいるプリーストさん達は、拝金主義で……。いえ、その、お金が無い人を後回し……と言いますか……えっと……。」

 

アークプリーストのアクアが居るから、言いづらいんだろうな。

てか、拝金主義って……。やはり、どの世界でも金が無いとやって貰えないのが現実なんだな。

ちょっと切ない気分になったわ。

 

「って、つまり街のプリースト達は、金儲けを優先で、こんな共同墓地に埋葬された金がない奴らに関しては供養どころか寄り付きもしないと言うことか?」

 

「えぇ……、そ、そうなんです。」

 

………カズマ、流石だ。俺でも言いづらいことをずばっと言うとは。

また、ウィズさんの肯定したことにより、その場の全員がアクアに視線を向けた。

 

アクアは、視線が向けられるなり目をそらした。

おい、お前…女神なんだったら、こういう所にボランティアでも良いから来てやれよ。

 

「事情は分かった。だが、今回の依頼がゾンビメーカーの討伐なんだ。ウィズさん、ゾンビを呼び起こさずに成仏させることは出来ないのか?俺もウィズさんとは、戦いたくないしな。」

 

俺の言葉に、ウィズさんは困惑をしていた。

 

「あっ……そうなんですね。その、呼び起こしている訳ではないんですよ。私が来ると、死体の中に残っている魔力が反応して、勝手に目覚めてしまうですよ。その……私としては、埋葬された方々を成仏させれば、ここに来る必要が無くなるんですけど……。えっと…どうしますか?」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「納得いかないわよ!」

アクアは、まだ怒っていた。

時刻は、すでに空が白く明るくなってきた頃合だ。

 

「しょうがねぇだろ。やってる事としては、プリーストと変わらないんだから。それに、元はと言えばプリーストが動かないのが悪いんだからな。それに、さっき俺と交渉したよな?」

 

「う、う…分かったわよ。でも……。」

 

結果から言うと、ウィズさんを見逃した。

これからは、暇を持て余しているアクアに、定期的に墓地を浄化しに行くという事で折り合いがついた。

 

そこは、腐っても女神だ。一応、迷える魂を成仏させる事には納得をしていた。

 

ただ、酒が呑む時間が減るなどやお金にならないとなどと駄々をこねていたが、俺が月初めに酒を買ってやる事を条件を提示したら、すんなり''やる''と言ってきたのだ。

 

んで、ウィズさんに関しては、最初はめぐみんとダクネスは見逃すという事に抵抗があったが、ウィズさんが今までに人を襲った事が無く、むしろ善行の方が多いと聞いて、ウィズさんを見逃す事に同意してくれた。

 

そして、カズマと俺は1枚のチラシを見ていた。

 

「それにしても、不思議だよな。ウィズが街の中で住んでんだもんな。街の警備とかどうなってんだ?」

 

そう、このチラシにはウィズさんが住んでいる住所が記載されていた。

リッチークラスが、普通に暮らして普通に生活をしているんだからな。

しかも、小さなマジックアイテムの店を経営しているらしい。

リッチーでも店を経営して働いてるんだから、世知辛い世の中だぜ。

 

「はぁ…この世界に来てから、オレが思っている異世界冒険のイメージが崩れている。ていうか、オレが期待していた世界と違う……。」

 

カズマは、隣でボソボソと不満ばかり垂れていた。

 

「しかし、穏便に済んでよかったです。いくら、アクアが居ると言っても、相手はリッチーですから。もし戦闘にでもなってたら、私やカズマは死んでいたでしょ。」

 

何気になく発言をした、めぐみんの言葉にカズマは顔面を蒼白させた。

 

「えっ?そんなにやばかったのか?」

 

「えぇ。ヤバかったって、レベルではありませんよ。リッチーっていうのは、魔道を極めた人が行う禁断の儀式でなれる者なんですから。強力な魔法防御の装備や支援魔法、アイテムを準備を万全の状態で挑む必要がありますし。それに、リッチーに触れられるだけでも、状態異常を起こしたり、生命力を奪われるという話し聞きました。多分ですが、爆裂魔法も使えると思います。なので、アクアのターンアンデッドが効いたのが不思議です。」

 

あっぶねぇ。

もし、戦闘になっていたら現状の能力のクウガやファイズの力を使っても、勝てるかどうか。

クウガもファイズも、''スキル項目''が出ていないから、ライジングやアクセル・ブラストを習得を出来ていない状態だ。

そうだよな、アンデッドの元締めみたいなもんだからな。

 

「ハチマン。とんでもない人からスキル教えてもらうつもりだったわ。名刺まで貰っちゃったし。」

 

「そうだな。」

 

「カズマ!その名刺寄越しなさい!あの女より先に店に行って、家の周りに浄化魔法掛けておくから!」

 

「おい!バカやめろ!」

 

アクアとカズマが1枚の名刺を取り合っていたら、ダクネスがぽつりと言った。

 

 

 

「ゾンビメーカーの討伐依頼どうなるんだ?」

「「「「あっ」」」」

 

 

 

駆け出し冒険者でも達成できる依頼を失敗した上級者が多いパーティとして、しばらくバカにされた。

そして、俺は気づいていた……カズマのズボンが濡れていたことに…。

 

 

墓場まで、持って行ってやるか。



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4-5 交換×1人×出会い

今回からは、オリジナル回です!
よろしくお願いします!


今日は1人で''クウガ''のスキルの確認の為、討伐クエストを受けていた。

 

何故こうなったかというと…。

 

前回のゾンビメーカーの討伐クエストの失敗をした事で、周りの冒険者にバカにされていた。

その時に、戦士風の格好したダストって奴に挑発紛いな事をされて、カズマはキレたんだ。

 

えぇ、まぁ……キレた理由は、ダストの「良い女を集めたからって、ハーレム気取ってんじゃねぇよ。しかも、上級職の姉ちゃん達におんぶにだっこで楽しんで、苦労知らずがよろしいこって!なぁ、俺と代わってくれよ~」の一言が引き金になった。

その一言に対してカズマは、「おい!良い女がどこいるんだよ!!!あぁ?苦労も知らず!!だったら、代わってやるよ!」とキレたのだ。

 

 

俺のほうが苦労している気がするが、この際どうでもいい。

てか、カズマが相手側が謝るくらい気迫出してキレるとはな。

 

 

そんなこんなで、1日だけカズマとダストがパーティを交換したのだ。

俺に関しては、カズマがハチマンがいると俺達の苦労がアイツに分からないから、今回は別行動してくれという事だ。

 

考えてみれば……この世界に来てから、1人で行動っていうのは久々な感じがする。

ちょっと、寂しいとか思ってないんだからね!むしろ、本来の俺に戻った感じなだけなんだから!

 

さて、どうしたものか。

討伐クエストの内容も、洞窟に住み着いたモンスターの確認・討伐だ。

ルナさんからは適正レベルという話しだから大丈夫だろ。

 

「あれ~?ハチマンさんじゃん!」

 

声の方向を向くと、クリスさんが居た。

 

「ねぇねぇ、どうしたの?他の皆と一緒じゃないの?」

 

「あー、あいつらなら別行動ですよ。」

 

「ふぅーん…。…って、事はハチマンさんだけって事か……。ぬふふ……。」

 

何かボソボソ言った後に、クリスさんは何か企んでいる素振り見せた。

嫌だなぁ…、またパンツ盗られそうだ。

 

「んじゃ、ハチマンさんのクエスト一緒に言ってもいいかい?あたしも、今暇だからさ!」

 

「えっと……まぁ、いいですけど。」

 

「やったー!」

 

クリスさんは、その場でぴょんぴょん跳ねていた。

アクアやダクネスと違い跳ねても、胸は跳ねなっ……!?

ナイフが俺の顔横を掠めた。

 

「ねぇ、今さぁ?変な事考えなかった?」

 

「な、なんにも考えておりません!本当です!」

 

俺の顔を覗きこむ様な感じで「本当に?」と言ってきた。怖い!めっちゃ怖いですけど!

小町ちゃん、助けて!

 

「本当、本当です!」

 

「なら、いいけど!じゃあ、クエストに向かいながら内容教えてね~。」

 

「あ、あぁ。分かりました。」

 

ふぅ…助かったみたいだ。クリスさんの前で、胸の事を考えるのは辞めておこう。

次、何されるかわからん。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「あはは……、なるほどね。そんな事があったんだ。それにしても、君たちは面白いね~。」

 

カズマがキレた内容を話しをしたら、クリスさんは腹を抱えて笑った。

 

「あいつらと居ると苦労はするが、楽しいこと多いですよ。」

 

「うん?ハチマンさん。」

 

クリスさんは、急に立ち止まった。

あん?どうしたんだ。敵か?

 

「ねぇ…なんで急に敬語なの?」

 

「はい?」

 

神妙な顔しているから、敵かと思って身構えていたら斜め上の事を言われた。

なんで敬語?それは……。

 

「クリスさんの正体がエリスさまですから。」

 

「むぅ…!今は、エリスじゃなくてクリスなの!まったく、君は……。」

 

クリスさんは、頬膨らましながら顔を横に背けた。

えっ?何?俺が悪いの?

 

「えっと…どうすればいいですか?」

 

「君自身で考えなさい!フンっ!」

 

この後、俺は洞窟に取るまで頭にハテナマークを浮べながらクリスさんの機嫌をとっていた。



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4-6 少女×店員×パーティ

「もう!着いちゃったじゃないか!」

 

「すみません!」

 

依頼されていた洞窟が見えてきたのだ。

あれから、ずっと考えては答えていったが全てハズレた。

クソっ…まったく分からない。小町ちゃん、このダメえちゃんに教えてくれ!

 

小町ちゃんから何かを得ようとしている時に、洞窟の前で1人の少女が頭を抱えていた。

 

「どうしよう、どうしよう。せっかく、……と勝負しようと思って持ってきたのに……。」

 

クリスさんも少女に気づいた用で、女の子に駆け寄っていった。

 

「君、大丈夫?」

 

「えっ、あっ、あわあわ…。」

 

何だろうな…何か共通のものを感じる。

少女は、何か言おうとしているが焦っている様子だった。

 

「うん?ゆっくりでいいから話そうか。」

 

「は、はい!えっとですね……。あっ、先にじ、自己紹介ですよね!…あれ…やりたくないな……。でも……!」

 

少女は立ち上がり、心呼吸をした。

自己紹介って、そんなに意気込むもんなのか?

あっ…、俺も自己紹介の度に意気込でるわ。

そして、噛んで失敗してるわ。

 

「ふぅ……。我が名は、ゆんゆん!アークウィザードとして、上級魔法を操る者!やがては、紅魔族に長となる者!」

 

少女は、ポーズを取りながら自己紹介をした。

あー…。完全にウチのポンコツ爆裂魔法娘の知り合いだな。

 

俺とクリスさんが、ゆんゆんをじーっと見ていた。

 

「だ、だから、この自己紹介は、いやだったんですよー!」

 

「だ、大丈夫だよ!ちょっと、驚いただけだから。ねっ!ハチマンさん!」

 

「あ、あぁ。てか、ウチにも似たような奴いるからな。大丈夫だ。」

 

「うっ…、ありがとうございます。」

 

なんとも言えない空気になってしまった。

だが、やっぱり紅魔族の名前って、あんな感じなんだな。

ついでに、自己紹介も…。

 

「えっと…あたしの名前はクリスだよ。見ての通り、職業は盗賊だよ。よろしくね!ほら、次。」

 

「俺の名前は、ハチマン。職業は、冒険者だ。よろしく。」

 

「それで、どうしたの?」

 

「…………クリスさんとハチマンさんですね……。あっ!はい!さっき買ったマジックアイテムがないんですよ。うー…。」

 

あら、それは災難ですね。てか、マジックアイテムか……。最近どこかで、聞いたか見たような。

 

「やっと、追いつきました!はぁはぁ……。」

 

「あん?」

 

後ろから先日あったリッチーこと、ウィズさんが走ってきた。

あれ?大丈夫なのか?クリスさんも女神だが。

チラッと、クリスさんの方を見ると、何かブツブツ言っていた。

 

「はぁはぁ……ゆんゆんさん、マジックアイテム忘れてましたよ。…って、ハチマンさんじゃないですか。どうして、ここに?」

 

「クエストで、この洞窟の調査で来てます。」

 

「そうなんですか。あっ、ゆんゆんさん、商品です。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

ゆんゆんは、ウィズさんからマジックアイテムを受け取った。

 

俺の服を、軽く引っ張られた。

引っ張られた方を見るとクリスさんが、耳を貸してと言ってきた。

俺は、耳をクリスさんの方に傾けると小さい声で話し始めた。

 

「ねぇ、ハチマンさん。あの人とはどういう関係なの?」

 

「あー、先日のクエストでお世話になった人だ。それとクリスさんは、気づいていると思うが。」

 

「大丈夫、分かってるよ。彼女がリッチーって事だよね。それについては、こちらの世界のプリースト達に任せるつもりよ。下手に手を貸したりするのは、こちらの世界の為にもならないしね。」

 

意外と考えているんだな。どっかのダメ神と違って。それから、先日の事件で起きた事とウィズさんの事を話した。ウィズさんに関しては、クリスさんも納得して貰えたようだった。

むしろ、プリーストに対して苦笑いを浮かべていた。

 

「よし。ねぇ、ハチマンさん。」

 

「うん?」

 

「今回のクエストに、あの2人も連れていかない?」

 

「えっ?はぁ?何言ってるの!?出会って、ま……「ねぇ、2人共~。」あっ、ちょ、待ってくれ。」

 

この人、行動早すぎだよ!?

だが、普通出会って間もない人間とクエストに行くことはないだろ。

むしろ、俺なら話しかけられる前に逃げますけどね。

 

「って、事で一緒に行かない?」

 

「えっと…、お誘い、あり、ありがとうございます!」

「誘って頂きありがとうございます。」

 

よし、次に来るセリフは、''今回は遠慮させていただきます''だ。

だか、2人から返ってきたセリフは違った。

 

「ご、ご迷惑で無ければ一緒に行きたいです。」

「私も、お店は閉めてきてあるので大丈夫ですよ。それに、もしかしたら良いアイテム手に入るかも知れませんですし。よろしくお願いしますね。」

 

うっそーん。なんで、断らないの。普通断るでしょ、普通。

 

「うん、今回はよろしくね。ほら、ハチマンさんも。」

 

「あぁ、よろしく頼むわ。」

 

「んじゃ、行こう!」

 

「「おぉー。」」

 

なんで、こんなに乗り気なんだよ。

こうして、俺達のパーティに新たな2人が加わった。

 

 

……俺のメンタル持つかな。

 

 



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4-7 洞窟×団欒×敵

「新たにパーティを組んだから、もう1度自己紹介が必要だよね?」

 

「ウィズさんと初対面のクリスさんだけで、充分だろ。」

 

「分かったよ、ウィズさん!」

 

クリスさんは、ウィズさんの方に寄って、自己紹介を始めた。

今回の依頼としては、この洞窟の調査及び必要とあればモンスターの討伐だ。

まぁ、いつもみたいなアクシデントは起きないと思うが油断せず行くに越したことはない。

 

俺達は、ランプを片手に洞窟の奥へ奥へと進んで行った。洞窟内部は、奥に進んでいくほど道が広く、緩やかに地下へと続いていた。

音も水滴が落ちる音と俺達の足音のみだ 。

 

アクア達と違って、全員が警戒しているので声を出したとしても聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で話して、基本的には静寂が続いた。

 

こういう静寂は、俺にとっては心地が良いものだ。そして、この緊張感も良いな。ちゃんと冒険をしている感があって。

あれ、もしかして…この世界に来てから、ちゃんとした冒険は初めてか!

やべ、なんか今更緊張してきた。

 

「ふぅ…ハチマンさん。ねぇ、そろそろ休憩しよっか。さすがに、ちょっと疲れてきたし。」

 

「そうだな。」

 

辺りを見渡し、腰掛けに丁度良さそうな岩が幾つか並んでいる場所に腰掛けた。

俺の右隣にクリスさん、正面にゆんゆん、左隣にウィズさんという配置だ。

このパーティで、洞窟行ったって言ったらカズマ怒るだろうな。

 

リュックから、小さいヤカンとコップを取り出して、ヤカンの中に水筒に入った水を注ぎ、ランプの火を使って水を沸かし始めた。

こういう時の為に、簡易キャンプセット(初心者編)の装備を持っておくと便利だよな。

 

「んー!はぁ…。疲れた。」

 

「大分歩きましたからね。」

 

「そ、そうですね。」

 

「それにしても、ハチマンさん準備がいいね~。コップも4つ丁度あるし。まさかこうなるって、予想してたのかい?それとも、入れっぱとか?」

 

「いや、たまたまセットで買った時に付いてきたやつだ。それに入れっぱなしだったら、ウチのパーティ5人いるから5個入ってなきゃおかしいだろ。」

 

「えっ?ハチマンさんって、クリスさんと常にパーティ組んでるんじゃないんですか?」

 

「今回だけ、クリスさんとパーティを組んでるんだ。いつもの組んでいるパーティは、別にいるんだ。」

 

ゆんゆんからの質問に答えたら、ゆんゆんは驚愕した顔をしていた。

えっ?何んですか、そんなに驚くこと何だろうか。

 

「じゃ、じゃあ!えっ、えっと…!」

 

「とりあえず、落ち着いてから話そうな。」

 

「は、はい!えっと、ハチマンさんのパーティの人達について、教えて貰っていいですか!それと、どうやってパーティを組んだのかも!」

 

「べ、別にいいが。それに今回、何でこうなったのかも話してやるよ。」

 

「やったー!」

 

ゆんゆんは、急に立ち上がって喜んでいた。

その時に気づいた。ゆんゆんの胸が、すんごい揺れていたことに…。すげー、これが万乳引力の法則か!さすがだな、乳ートン先生!

 

その時、足から衝撃が走った。

 

「いってぇー!えっ!?なに!?」

 

「ふん!」

 

どうやら、犯人はクリスさんのようだった。

あー、大丈夫だよ。まだ、クリスさんも成長する未来があるさ。あっ、でも女神って、どうなんだ?成長するのか、それとも成長しきっているのか。

 

また、足に衝撃が走った。

 

「もう変な事も考えないんで、クリスさん踏むのやめてください!お願いします!ものすごく、痛いので。」

 

「ふん!君は、まったく反省しないな。」

 

「仲が良いんですね、お二人は。」

 

ウィズさんは、俺達のやり取りを見て呟いたと同時にヤカンから音が鳴った。

 

「おっと、沸いたみたいだな。」

 

4つのコップに、粉末コーヒーとお湯を注いで各人に渡して、一息ついた。

 

「んじゃ、あいつらと出会った経緯とパーティなった経緯から話してやるよ。」

 

「お願いします!」

 

そこから、カズマとアクア、めぐみん、ダクネスとの出会いを話して、どうやってパーティを組んだかを話した。

そこまで、大層な話しではないが、俺にとっては1つ1つが大きい事である。

それに、何だかんだ居心地の良いパーティだ。

 

話しの中で、めぐみんの話しをした時に、ゆんゆんが反応していたが、俺の話しに夢中に聞いていた。やっぱり、ゆんゆんとめぐみんは知り合いっぽいな。

 

それからというもの、時説洞窟内に小さな笑い声が響いたりしていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ってな感じで、今はパーティが離れているんだ。」

 

「ハチマンさん、結構苦労しているんですね。」

「今度、店に来てください。その時に、疲れが取れるマジックアイテムとか安くお売りしますので。」

「ねぇ、なんであたしがパンツを盗られた話しをしたの?」

 

各々と感想という述べた。というか、2人から同情された。クリスさんは、思い出したくない事を話されたので、ジト目で見てきた。えっ?パンツの話し大事でしょ。カズマの危険性を教えるのに。

 

「そう言えば、ゆんゆん。さっきめぐみんの話しをした時に、反応していたが知り合いか?」

 

「あっ、はい!私のライバルです!」

 

「えっ?もう一度頼む。」

 

俺は耳を疑って、思わずもう一度聞き直した。だって、あのポンコツのライバル?何を言っているんだ。

 

「めぐみんと私は、ライバルです!」

 

俺の耳は正常だったみたいだ。じゃあ、なんだ?この子も爆裂魔法しか使えないポンコツなのか?

俺は、おそるおそるとゆんゆんに聞いた。

 

「…ゆ…ゆんゆんも、めぐみんと一緒で爆裂魔法しか使えないのか?」

 

「い、いえ!私は中級魔法と上級魔法使えます!」

 

なんだと!?この子、めっちゃ優秀ではないか!えっ、じゃあなんでライバルなの?むしろ、めぐみんに勝てそうな所が思いつかないだが。

 

「そ、そのめぐみんは学生時代軒並みに成績が良かったんですよ。」

 

「嘘だろ!?あのポンコツがか!?」

 

「は、はい!ですから、私がめぐみんに勝負を挑ん……「キィィィィィィン!!!!」えっ!?」

 

洞窟奥から甲高い声というよりも耳鳴りに近い音が鳴り響いた。

団欒をしていた雰囲気から戦闘態勢に切り替え、洞窟の奥に目を向けた。

 

 

 

「おい…嘘だろ……なんで、コイツが…。」

 

 

 

 

俺は驚愕した。洞窟の奥から現れたのは、仮面ライダークウガに出てきた''未確認生命体第3号 ズ・ゴオマ・グ''だった。



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4-8 ズ・ゴオマ・グ×戦闘×ペガサスフォーム

どうも、クロスケZです。
戦闘シーンを、初めて書きましたが難しい。
頭の中では、動くんですが文字にするというのは難しい。

もっと、上手くなるよう頑張っていきます!


おい…おかしいだろ。なんで、アイツがここに…。俺が呆気に取られているとズ・ゴオマ・グは、俺の姿を見た途端、走って来る。

 

「くっ!?」

 

ズ・ゴオマ・グは、一気に俺の懐に入っては鳩尾を狙って拳を振るってきた。

咄嗟にガードをしたが、後ろの壁に叩きつけられた。叩きつけられた衝撃で、肺の中の空気が口から出ていった。

 

「「「ハチマンさん!?」」」

 

「はぁはぁ……。クソっ……。」

 

何とか立ち上がったが、ズ・ゴオマ・グは、先程と打って変わってゆったりと歩いてきた。

ヤバい…。早く変身を……ダメだ、意識が集中できない。しかも、足に力が…。

 

「ハチマンさん!」

「よくも!」

「喰らえ!」

 

いつの間にか、ズ・ゴオマ・グと距離を取っていた3人が各種攻撃を始めた。

ウィズさんとゆんゆんは魔法で攻撃し怯んだ隙に、背後に回り込んだクリスさんがナイフをズ・ゴオマ・グの首に刺した。

 

刺されたズ・ゴオマ・グは、すかさず後ろにいたクリスさんを掴み、ウィズさん達の方に投げた。

ウィズさんとゆんゆんは、クリスさんを何とか受け止める事は出来たが、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。

ズ・ゴオマ・グは倒れている3人の元へとゆっくりと歩き出した。

 

 

クソっ……このままじゃ……。

守るんだ…。俺があの人達を守るんだ。今回は、自分の手で''守る力''があるんだ!立て、立つんだ、早く!

 

 

 

「立って、あの人達を守るんだ!変身!!!」

 

 

 

軽快な音と共に、俺は仮面ライダークウガ マイティフォームに変身をした。

変身したと同時に、勢い付けてズ・ゴオマ・グにタックルをした。ズ・ゴオマ・グは、タックルの衝撃で後方に吹き飛び、3人から遠ざかった。

 

「うっ…ハチマンさん大丈夫ですか。」

 

ゆっくりと立ち上がったウィズさんの発した言葉に、サムズアップをした。

他の2人を見ると、ゆんゆんは後ろに倒れた時に当たりどころ悪かったのか目を回していた。クリスさんは、ウィズさんと同様にゆっくり立ち上がった。

 

「なんなんだい…あのモンスター。」

 

「分かりません。私も初めて見ました。」

 

2人が後ろで話していると吹き飛んだズ・ゴオマ・グが首を回しながら立ち上がってきた。

これ以上、2人を下手に戦わせる事は出来ない。むしろ、この世界の攻撃が効くかもわからない。

 

俺は、2人に見えるように待てと合図を送った。

2人は、声を揃えて「分かりました。」と言った。それと同時に俺は助走つけて顔を殴った。

 

殴られたズ・ゴオマ・グは怯みはしたが、直ぐに殴り返してきたが、ズ・ゴオマ・グの手を右手で弾いて、すかさず腹部にリズム良くワン・ツーと拳を叩き込んだ。

叩き込まれた腹部を抑えながら、ズ・ゴオマ・グは後ろによろけ隙ができた。

 

その隙にトドメを刺すため、両手を広げ、腰を下ろし、一歩一歩に力を込めるように走り出した。徐々に距離が詰まった時、両足に力を込めてジャンプをし、空中で一回転して右足を突き出した。そう、ライダーキックをしたのだ。

 

だが、渾身のライダーキックをズ・ゴオマ・グは、右手で突き出していた足をたたき落とした。俺はたたき落とされた事で、その場に片膝立ちの状態になった。

そこにすかさず、ズ・ゴオマ・グの右膝が顔に叩き込まれ、身体が後方に吹き飛ばされた。

 

「「ハチマンさん!」」

 

すぐに立ち上がり、ズ・ゴオマ・グの顔面に渾身の一撃を入れようとしたが、ズ・ゴオマ・グは、持ち前の翼を羽ばたかせ、拳を避けた。

そのまま宙を飛び、こちら嘲笑うような感じで頭上を舞っていた。

 

クソっ……手出しが出来ない。だが、どうすれば……。

 

敵に手出しが出来ない事に、焦り感じている時にボウガンが投げ込まれた。飛んできた方を見ると潜伏スキルを使ってクリスさんが、カバンにあったボウガンを取ってくれたみたいだ。

 

ありがとうございます、クリスさん。

あのフォームは初めて使用するが、''耐えられる''かどうかは気力次第だ。

 

 

「超変身!」

 

 

マイティフォームの赤い鎧が、ペガサスフォームの緑の鎧に変わり、手に持っていたボウガンはペガサスボウガンへと変わった。

それと、同時に感覚が鋭くなり洞窟内で落ちる水滴音や風の音などが頭の中で反響をさせた。

 

 

うぐっ…ここまでキツイのか…。コレは早急に終わらせないと気力が持たない。

ゆっくりとボウガンを構え、宙に舞って旋回をしているズ・ゴオマ・グに集中し、隙が大きい旋回するタイミングを計った。

 

まだだ…まだ……………………今だ!

 

ズ・ゴオマ・グが旋回をした瞬間にペガサスボウガンのスロットルを引き、封印エネルギーを込めて放った。

放たれた封印エネルギーは、ズ・ゴオマ・グの胸に当たったと同時にズ・ゴオマ・グは、地面へと落ち爆発四散した。

 

終わった…

クウガの変身を解いたと同時に、身体全体の力が入らず、その場に倒れた。

 

「「ハチマンさん!」」

 

2人が駆け寄って来たが、そこからの記憶は無かった。



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4-9 2つの山脈×深まる謎×大小

「……さん……。ハ………さ…ん 。ハチ……ンさ……。ハチマンさん!」

 

うっ……。俺の名前の呼ぶ声が聞こえてきた。

目を開けてみると、眼の前に2つの山脈があった。しかも、後頭部がほのかに暖かく柔らかい感触があった。

 

「ハチマンさんが目を覚ましたよ、クリスさん!」

 

「本当かい!」

 

俺が倒れている間、ウィズさんが膝枕をしていてくれたらしいが……今はそれどころではない!

山脈が揺れている!2つの山脈が揺れている!

凄い、何これ!めっちゃ揺れてるんですけど!

……ッ!

 

「い、痛いです、クリスさん。頬を、ひ、引っ張らないで。」

 

「ったく、君は!こっちが心配しているのに何を考えていたんだい!」

 

言えない、2つの山脈が揺れているのに感動してたとは…。

やめて、そんな目で見ないで。

 

「ウィズさん、ありがとうございます。結構回復したので、起きます。」

 

「はい、分かりました。」

 

2つの山脈を避けるように、起き上がった。

ペガサスフォームで気力を、全部使いきったみたいだな。このフォームは、想像以上に神経を使うから街中では使えないな。

 

「そういえば、ゆんゆんは大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

ちょっと離れた位置に、背筋をピンとして正座していたゆんゆんの姿があった。

そして、そのまま頭を下げた。ジャパニーズ・土下座だ。

 

「ごめんなさい!私、何も役に立てずに!」

 

「お、おい!あれは、しょうがないからな。それに、全員無事だったから気にすることはない。だから、頭を上げてくれ!」

 

「うっ…ありがとうございます!」

 

ふぅ…。女の子に土下座させたなんて言ったら、アイツらに''ヒッキー最低''だの''クズ谷君、女の子に土下座させるとは何様なのかしらクズ谷くん?''とか夢の中で言われかねん。

 

「それにしても、あのモンスターは何だったんでしょうか。」

 

「モンスター記載されている書物にも載っていませんでした。」

 

「あたしも、初めてあんなのと遭遇したし…。ねぇ、さっきハチマンさん知ってそうな感じだったけど、知ってたら教えてくれないか?」

 

各々とズ・ゴオマ・グの事を話し始め、クリスさんが俺に質問をしてきた。

どうする?この世界に、他世界のモンスター、いや、空想上のモノだと説明していいのか?下手に言うと、ゆんゆんとウィズさんに俺が''別世界の住人''だとバレてしまう。とりあえず、適当に誤魔化しておくか。

 

「えっとだな…さっきの奴は、昔読んだ本の敵の1人なんだ。だから、実在していた事に驚いたんだ。」

 

「「へ~、そうなんですか。」」

 

ゆんゆんとウィズさんは、納得してくれたようだ。それに、俺が質問に答えに対して、やっちゃったみたいな顔をしていた。

とりあえず、後でクリスさんもといエリスさまに聞いてみるか。

 

だが、何故ズ・ゴオマ・グが出てきたんだ。もし、今後的にクウガの未確認生命体が現れるとしたら、かなりの人数の人が死ぬ。

それに……もし、''アイツ''と闘う事になったら、俺は勝てるんだろうか。もし、その時が来たら''死''を覚悟しておいた方がいいな。

 

それと別に気がかりなのは、先程の戦闘だ。ズ・ゴオマ・グが劇中とは違い''喋らなかった''という事だ。

クウガの姿をみたら、何かしら反応はするはずだが、''何も無かった''。むしろ、ちょっと強いモンスターという印象の方が強い。ただ本能で動いている感じだ。

 

「ハチマンさん~、お~い。」

 

「おっ、悪いな。ちょっと考え事してたわ。」

 

「ううん、大丈夫だよ。とりあえず、この後どうする?」

 

「街に引き返すとするか、さっきの戦闘で大分疲労したみたいだ。もし、戦闘になったら動けないかもしれないしな。」

 

「分かった。」

「分かりました。」

「わ、分かりました!」

 

 

簡易キャンプセットを片付け、洞窟を出た。

 

とりあえず、明日もう1度調査しておくか。何かわかるかもしれないしな。

 

──────────────────────

 

ギルドに戻ると、カズマとカズマと組んだパーティの奴らが、酒を飲んでいた。

あっちは、あっちで上手くいったみたいだな。

カズマも、気づいたのか組んだパーティの連中に離れると合図をしながら、こちらに歩いてきた。

 

「ハチマン!おかえりー!」

 

「ただいまだ。そっちは、かなり上手くいったみたいだな。」

 

「そうなんだよ!アクシデントはあったけど、全体的に上手くいったんだよ!」

 

「それは、よかったな。」

 

「そっ…ちの………おい、ハチマンさん。今日はソロで行ったんだよな?」

 

俺の後ろにいたメンバーに気がついた。

 

「最初は1人だったんだが、いつの間にか増えた。」

 

「久しぶり~。」「お久しぶりです、カズマさん。」「は、初めまして!」

 

各々、カズマに挨拶をした。カズマは口をポカンと開けていた。

そして…

 

「こんのぉ!ハーレム野郎ぉぉぉぉぉがぁぁぁ!」

 

カズマの声がギルドに響き渡った。

 

おいおい、急に叫ぶと皆に迷惑かかるだろ。しかも、俺に対しての風評被害が起こるだろうが。

 

「なんだよ!こっちは、初心者殺しにあって本気で死ぬかけてる間、お前は!」

 

「言っておくが、俺も死にかけはしなかったが激戦だったぞ。」

 

「はぁ?洞窟の調査だけだろ?なんだ?激戦って、あれか、誰がハチマンの隣り行くかで、女性陣が争ったとかだろ?あぁん?しかも、巨乳ぞろ………ごめんなさい。」

 

おい、バカ、やめろ。クリスさんを見て、謝るんじゃない。俺に被害が出るだろうが。

やめて、クリスさん。そんな目で、俺を見ないで!俺は何も言ってないです。

 

「と、とりあえず、飯食った後で説明すっから、また後でな!ほらほら、行くぞ。」

 

俺が、クリスさんの背中を押して奥の席へと向かった。

ったく……カズマの野郎、俺がなんかあったら変身して殴る。

 

──────────────────────

 

「シュワシュワおかわりー!」

 

「はいはい……。すいません、シュワシュワ1つお願いします。」

 

「くぅ……胸が何よ。大きれば勝ちなの?ハチマンさん貸して!んぐ……んぐ……。」

 

愚痴愚痴言いながら、次々とシュワシュワを飲んでいく、クリスさん。

そんな様子を見ていたウィズさんとゆんゆんは苦笑いをしていた。2人共、食事は終えていたがクリスさんが、この様子だ……帰るに帰れないというか、気を使って帰らないのである。

 

えっ?俺は何してるかって?黙って、シュワシュワを献上するのが、今の役目だ。だって、下手な事言ったらパンツどころか全裸で帰ることになるかもしれんしな。

 

「え、えっと、クリスさん。胸が大きくても良い事ないですよ。荷物を運んだりする時に、胸で下が見えなかったりしますし。」

 

「そ、そうですよ!肩は凝るし、走ると痛いですし。小さい方が羨ましいですよ!」

 

2人は、クリスさんをフォローするが……残念。それは、フォローという名の無慈悲な攻撃だ。

 

「うわぁぁぁぁん……!」

 

あーあ……。

クリスさんが泣き始めてしまった事に、オロオロする2人だった。

 

「はぁ……。2人共、今日はありがとうな。また後日に、今日のお礼はさせてもらう。後は、俺に任せても大丈夫だから2人は帰って大丈夫だ。また、なんかあったら宿に来てくれ。」

 

「分かりました。」「はい!」

 

2人は、ちょっと申し訳なさそうにしながら帰った。

さてと……。

 

「クリスさん。」

 

「ぐすっ……ふぅ……。」

 

大分落ち着いた様子だな。

 

「ねぇ、ハチマンさん。正直に答えて。」

 

……とんでもなく、嫌な予感しかしないんだが。

絶対に、ヤバい。

 

「ハチマンさんは、胸が大きいのと小さいのどっちが好き?」

 

ほら、来たよ。究極にヤバい奴が来ちゃったよ。

どうすんだよ、これ。

もし、大きい方がと言ったら泣くだろうし、小さい方と言ったら、嘘だと言われる。

感度か……感度言えばいけるのか……だめだ!ただの変態じゃねぇか!

どうする?………………ココは。

 

「……クリスさん。俺は!胸の大きさなんて関係ない!というか、選べるような人間でもないですし!だって、俺モテたことないんで!だから、胸なんかどうでもいいんです!」

 

俺は、何を言ってんだよ!訳が分からね!

 

「……っぷ。アハハ…まさか返ってくる言葉が、それとはね。」

 

「あは、アハハ……。」

 

「まったく……よし、なんか元気出てきたからクズマさんの所行って、今日の話しをしようか。」

 

「そうですね。」

 

「あと……今日は良いけど、次会う時には、敬語禁止だからね。もし、敬語使ったら公衆の面前で全裸にするからね。」

 

めちゃくちゃいい笑顔で、何言ってんのこの人?!拒否権すらない!

 

「は、はい……。」

 

その後、俺とクリスさんはカズマの所で洞窟で会ったことを話した。

話し終わった辺りに、めぐみんを背負ったダストと白目を向いたダクネスを背負ったアクアが来ては、ダストがカズマに頭を下げて謝っていた。

 

 

ギルド内は、延々とダストの泣きながら謝る声が響き渡った。

 



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4-10 野菜スティック×バランス×店

ズ・ゴオマ・グとの戦闘から数日が経った。

結果からいうと、ズ・ゴオマ・グが出現した理由は不明だ。戦闘した次の日に、1人で洞窟の調査を行ったがあったのは金品が入った宝箱があったくらいだ。

まぁ、懐は潤ったが、ズ・ゴオマ・グに関しては何も分からなかった。もしかしたら、宝箱の中の金品の中に出現させる何かがあったのかと調べたが、何も無かった。

今後も、新しい洞窟が出てきたら調査しに行くか。

 

「おーい、ハチマン。見てくれよこれ!」

 

ギルドの片隅で、ノートを広げていた所にカズマがやってきた。

 

「どうした?また、なんかスティったのか?とりあえず、警察行くか?」

 

「なんもしてねぇよ!てか、スティったってなんだよ!」

 

えっ?何?スティった知らないの?

まぁ、俺が今作ったから知らないよな。

 

「んで、どうした?」

 

「キースから千里眼スキルと狙撃スキルを教えて貰ったんだ。」

 

「おっ、よかったな。」

 

どうやら、カズマは前のゴブリンとの戦闘でレベルがレベル13になってスキルポイントも大量に確保出来たらしい。

俺もズ・ゴオマ・グとの戦闘でレベル25になったが、両方ともスキルは出現しなかった。

もしかして、レベル50とかにならないと出現しないのか…。

 

「んで、ハチマン。未確認生命体についての調査はどうなんだ?」

 

「まったくダメだ。ルナさんにも聞いてみたが、新種モンスターの情報とかは無いらしい。」

 

「そうか。」

 

そんな話をしていると、遠くから「おーい。ハチマン~、カズマ~」と呼ばれた。呼ばれた方向を見ると、野菜スティックを片手に持っているアクアと、その後ろにめぐみんとダクネスが歩いてきた。

 

「この話しは情報が入り次第に話すわ。」

 

「分かった。俺もキースとか他の冒険者に聞いて情報が入り次第、ハチマンに報告しておく。」

 

相変わらず、このコミュ力お化けは凄いな。

 

「何々?なんの話してたの?」

 

「あぁ、ちょっとな。」

 

アクアは、持っていた野菜スティックを机に置き席について、めぐみんとダクネスも同様に席についた。

 

「オレも野菜スティックもらうわ。」

 

カズマが手を伸ばすと、野菜スティックが手から逃れるように、ひょいっと避けた。

 

……あん?

 

「何してんのよ、カズマ。」

 

アクアが机をバンッと叩くと、野菜スティックはビクっと反応して、動かなくなった野菜スティックを1本取り出し食べ始めた。

 

「……むぅ。ハチマン、私達に内緒で何を話してたんですか?なんですか、ちょっと胸がモヤモヤします。」

 

ちょっと不機嫌なめぐみんが、野菜スティックのコップの淵をピンと弾き、そのま野菜スティックを摘んだ。

 

「めぐみん、今やってる調査が終わったら話してやるから待っててくれ。それに、場合によっては、めぐみんの爆裂魔法を頼るかもしれんからな。」

 

「そ、そうですか!ハチマン、いつでも頼ってください!」

 

めぐみんは、先程と打って変わって嬉しそうな表情していた。

そう、この3人にはズ・ゴオマ・グの話しはしていないのだ。

話さない理由としては、確実にコイツは未確認生命体を確認次第に突っ込んで行くからだ。下手に突っ込まれて死んだとかシャレにならんしな。

 

「だが、ハチマンよ。洞窟の調査して以来、あまり休んでなさそうだが、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ、ダクネス。俺のモットーは、休める時に休んで、休めない日も休むだからな。」

 

「ぷ…。なんだ、それは。」

 

ダクネスは、笑いつつ野菜スティックのコップの淵をピンと弾き、野菜スティックを摘んだ。

 

「よし!次こそは…。」

 

カズマは、机を叩いて野菜スティックに手を伸ばした。

 

 

 

 

ひょいっ!

 

「…………だぁぁぁぁぁぁぁぁ!くそがぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

カズマは、野菜スティックのコップを掴み壁に叩きつけよう振りかぶった。

 

「おいおい、食べ物を祖末にするなよ。」

 

「うっ……分かった。野菜スティックごときに向きになりすぎた。」

 

カズマは、コップしぶしぶ机に置いた。

 

「でも!野菜スティックごときに舐められてたまるか!てゆーか、なんで野菜スティックが動くんだよ!」

 

「何言ってんの?お魚もお野菜も新鮮な方が良いでしょ。活気作り知らないの?」

 

「んな、活気作りいらねぇよ!むしろ野菜スティックごときにあってたまるか!」

 

活気があった方が新鮮感があるよな。

今更、空飛ぶキャベツがいるんだから野菜スティックが動いても不思議じゃないしな。

おっ、意外と上手いな、この野菜スティック。

 

「……はぁ…。野菜スティックは、もういいや。とりあえず、お前らに相談があるんだが。レベルが上がったから、新しいスキル取れそうなんだが、次のスキルを何をするかって話だ。そういや、お前らのスキルとかって、どんな感じなんだ?」

 

カズマは、今後のクエストを効率よくこなしていく為に、今後覚えるスキルを少しでもパーティのバランス良くするためにと考えていた。

 

「まずは、私から。物理耐性と魔法耐性、各種状態異常耐性等で占めている。後はデコイっといった囮スキルだな。」

 

「……大剣の修練とか取って、命中率上げたりしないのか?」

 

「しない!言っては何だが、筋力と体力はある。もし、命中率を上げてしまったら簡単に敵が倒せてしまう。かといって、手を抜いて戦うのは違うんだ。……そう、必死に剣を振っては当たらず、力及ばす圧倒されるのがいうのが気持ちいいん」

 

「もう、いいや。ダクネス、ちょっと黙ってろ。」

 

「うっ…うんあ……たまらない!ハチマンのゴミを見るような目で言われるとたまらん!」

 

頬を赤く染め、体をふるふると震わしていた。

 

「次は、私ですね!」

 

「「あっ、大丈夫です。」」

 

「なんでですか!」

 

「だってな…。なぁ、ハチマン、」

 

「まぁな。めぐみんは、爆裂魔法の威力を上げるスキルと高速詠唱スキルに、溜まったポイントを爆裂魔法にぶっ込んでるとしか考えられない。」

 

「うぐ……まったく、その通りなので何も言えません。」

 

「めぐみんは、中級魔法を覚えないのか?」

 

「何いってるんですか、カズマ?中級魔法なんて要りません!爆裂魔法だけで充分だと、まだ分かってないんですか?」

 

「……。」

 

「えっと……次は私ね!ふふふ…聞いて驚かないでよね!」

 

「いや、アクアもいいや。」

 

「何でよ!?」

 

自分のスキルを言おうとしたが、カズマによって止められた。正直アークプリーストのスキルは気になるが、アクアだからなぁ……。由比ヶ浜に、料理レシピを持たせるようなもんだな。

 

「はぁ……なぁ、ハチマン。なんで、こうウチのパーティは纏まりがないんだ。」

 

今更の話しじゃないか。それは……。

 

 

 

──────────────────────

 

俺はアクアとカズマと一緒に、ある所に向かっていた。

めぐみんとダクネスは、手頃なクエストがあるか探しておいて貰ってる。

カズマじゃないが、現状の戦力としてはタンクのダクネスは防御力が高すぎて、アクアのヒールが意味をなさない、それに加え遠距離DPSのめぐみんに関しては1発だけの魔法だ。

まぁ、近接に関しては俺とカズマがなんとかするとするが……いくら何でも、1人1人が変に特化しすぎている。

複数の敵に対して、安定した火力が出せるのが俺だけだ。カズマに関しては、何かメインとなる武器かスキルが欲しいところだ。

 

「よし、2人共着いたぞ。アクア、一応言っておくが、絶対な暴れるなよ。フリじゃねぇからな。喧嘩もダメだからな。もちろん、魔法もだ。カズマは、アクアが変な真似したら、すぐ止めるように。」

 

それは、小さなマジックアイテムを取り扱う店だ。

 

「分かった。」「ちょ、ちょっと、ハチマン!私は、そんな野蛮じゃないわよ!何ってたって、女神よ!人が崇められる神様よ!」

 

俺の後ろで文句言っていたが、店のドアを開けた。

ドアは、小さな鐘がカランカランと軽快な音をさせ、俺達が入店したことを店の亭主に告げた。

 

「いらっしゃいま……あぁ、ハチマンさん!」

 

「出たわね!このクソリッチーが!あんたなんかが店を出してるのよ!女神である私が馬小屋生活で、クソリッチーが店なんか経営して、、、生意気よ!こんな店、女神の名の元に燃やしてやる!」

 

俺が入店して、いきなりアクアが暴走した。

とりあえず、アクアの頭に拳骨を落として黙らせた。

怯えている亭主ことウィズさんに挨拶をした。

 

「ウィズさん、数日ぶりです。前の約束通り来ました。」



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4-11 魔法店×仁義なき戦い×緊急クエスト

「……ふん。ねぇ、このお店はお茶も出ないのかしら?」

 

「あっ、す、すみません!今すぐお持ちしますので!」

 

「持ってこなくていいですよ。」

「そうですよ!それに、客にお茶を出す魔法店ってどこにあるんだよ。」

 

アクアの陰湿なイビリに対して、素直に言う事を聞いてしまうウィズさんを止める。

それにしても、魔法店というのは初めて来たな。

店を見渡すと、様々な色をした瓶や占いとかで使いそうなガラス玉が綺麗に並べられていた。

 

俺と同様に店内を見渡すカズマ。

ふと、カズマは棚に並んでいた1つの小さな瓶を手にした。

 

「あっ、それ強い衝撃を与えると爆発しますので気をつけて下さいね。」

 

「うぉい!マジか!」

 

カズマは、ゆっくりと瓶を棚に戻した。

すげーな、カズマ。こんなに並んでるマジックアイテムから爆弾を選び出すとはな。

俺もカズマ同様に、カズマの隣にあった小瓶を手に取った。

 

「あっ、ハチマンさん。それはフタを開けると爆発しますので……」

 

…………。いや、まぁ……なんだ。冒険するのに必要なもんだしな。

おっ、こっちの綺麗な瓶はポーションかな。

 

「それは、水に触れると爆発……。」

 

「えっと…、ウィズこれは?」

 

カズマが、先程の俺が選んだ瓶の隣りあった瓶を手に持った。

 

「温めると爆発を…。」

 

………………。

 

「おい、爆薬しかねーのか!」

「カズマ落ち着け、たまたま爆発の物を選び続けただけだ。ウィズさん、これは?」

 

「そ、そちらも、魔力を注ぐと爆発を……。」

 

「…………。」

えっ?なに?この店は、爆発物しか取り扱わないの?マジックアイテムって、名前だけの爆発物専門店なの?

 

思わず、俺とカズマはウィズさんをじーっと見ていた。

 

「ち、違いますからね!言っておきますが、そこの棚に置いてあるのが爆発シリーズだけなんです!」

 

そ、そうですよね。

爆発物専門店で、魔法店を名乗ってるはずも無いよな。

おっと、本題を忘れるところだった。

アクアは……大丈夫そうだな。どこからか出したか分からないが、お茶を啜っているし暴れる事は無さそうだな。

 

「おい、カズマ。」

 

「あ、あー、そうだった。ウィズ、何か使えるスキルを教えてくれないか?リッチーならではのスキルとかさ。」

 

「ぶっー!」

 

「……おい。」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい!い、今、は、ハンカチを!」

 

カズマの言葉に、アクアがお茶を吹き出し、もろに掛かったんだが。

ウィズさんは、それを見るなり慌ててポケットからハンカチを取り出し渡してくれた。

 

「ちょ、ちょっと! 何を考えているのよ、カズマっ!! リッチーのスキル? リッチーのスキルですって!? 何しに、この店に来たのか、やっと分かったわ! リッチーのスキルなんて、ロクな物でもないものばかりよ! そんなもの、覚える必要はないの! いい? リッチーっていうのは、薄暗くてジメジメした場所を好む奴よ! 言うなれば、ナメクジよ、ナメクジ!」

 

「ひ、酷い!」

 

アクアのあんまりの決めつけに、ウィズさんは涙ぐんでいた。

てか、お前、俺に先に言う事あるだろうが。

 

「いや、ナメクジの親戚でも従兄弟でも何でもいいんだけど、リッチーのスキルって、普通得られないだろ?そんなスキルを覚えれば、戦力の強化にもいいだろ?お前も、ハチマンが居ない時の戦力が酷い事は、知っているだろ?それにハチマンにも、相談をして決めたんだ。」

 

「む、むう。」

 

アクアは、カズマの言葉に一応納得している様子だったが、渋々引き下がった。

 

それと…カズマ。お前もなかなか酷いこと言っているぞ。後ろでウィズさんがシクシク泣いているぞ。とりあえず……。

 

「アクア……。まずは、俺に言う事があるだろ?」

 

「ひぎ!?あ、あ、あ、あのハチ、ハチマンさん?あ、頭が痛いんですが……。」

 

アクアの頭をがっしり掴み、ギギギと擬音がなりそうなくらいアクアはこちらをゆっくりと向いた。

 

「あー、痛くしてるからな。んで、言う事があるんでは?」

 

「えっ、えっと……、お茶を掛けてしまってすみません!で、でも!私が口に含んだお茶は浄化されてき、綺麗、だから大丈夫よ!むしろご褒美よ!」

 

「……。」

 

「痛い!痛い!めっちゃ痛い!ご、ごめん!ごめんなさい!変な事言ってごめんなさい!だ、だから、頭から手を退かして下さい!ぁぁああぁぁあ……!」

 

 

────────────────────────

 

ナメクジ呼ばわりにされたウィズさんを励まし、気を取り直した。

アクアは、頭を抑えながら床で悶えていた。

 

「ぐす……ありがとうございます、ハチマンさん。で、では、一通りスキルをお見せしますので、見逃しなどがあれば言ってくださいね。」

 

言ってから、ウィズさんは、ハッと何かに気づいた様に、俺とカズマを交互見て困った様にオドオドしていた。

 

「えっと、どうした?」

 

カズマは問いかけると、ウィズさんは怯えながら床で転がっているアクアを見た。

 

「あ、あのですね、私のスキルは相手がいないと使えない物ばかりなんですよ……つまり、その……誰かにスキルを使わないといけないんですよ。」

 

なるほど、対人に使ったりするスキルって事か。

俺とカズマは、リッチーのスキルを受けて害が応じるかもしれないから、ここは……。

 

「アクア、頼めるか。」

 

床で悶えていたアクアは、頭を抑えながら立ち上がった。

 

「ふん!いいわよ!クソアンデットの力を試してあげるわ。それで、私様にどんなスキルを使うのかしら!」

 

ウィズさんを威嚇するアクア、そのアクアに怯え身を引いたウィズさん。

 

「そ、そのドレインタッチなんてどうでしょうか?あぁっ、も、もちろん、ほんのちょっとしか吸いませんので!スキルを覚えてもらうので、ほんのちょっと効果があれば覚えられると思いますので。」

 

慌てたように口調が早くなっていたウィズさんに対して、アクアはにんまりと凶悪な笑みを浮かべた。

 

おい、どっち女神でリッチーなんだとツッコミたくなる風景である。

はぁ……、バカな事をしなければいいんだけどな。まぁ、無理だろな。

 

一応カズマにアイコンタクトを送ってみると、頷いてくれたから分かってくれたようだ。

 

「いいわよ?構わないわよ、いくらでも吸っていいわよ。さぁ、どうぞ。」

 

「で、では、失礼します……………………。………?……あれ?…あれ、あれ?」

 

俺には、何が起きているかは分からないがアクアが悪さをしている事は分かった。

 

「ほらほら、どうしたの?私の魔力と体力を吸い取るんじゃないの?あらあら、まさかアンデットの元締めでもあるリッチー様が、ドレイン出来ないの?ぷぷぷ……。」

 

余裕たっぷりで、涙目のウィズさんを煽るアクア。

 

「あ、あれーーーー?!」

 

どうやら、アクアはドレイン出来ないように抵抗しているようだ。

 

「カズマ。」

 

「あいよ。」

 

カズマは、アクアの後頭部を引っぱたいた。

 

「痛いっー!ちょっと、カズマ!邪魔しないでよ!これは、リッチーと女神の仁義なき戦いなんだから!私だって、女神の端くれよ!簡単にに吸わせてたまるもんですか!」

 

「いや、話しが進まねぇから吸わしてやれよ、ポンコツ。」

 

「そうだぞ、ポンコツ。変なプライドなんか捨てちまえよ。」

 

「むぅ……。てか、ポンコツ呼ばわりするあんた達はなんなのよ!」

 

「悪いな、ウィズさん、迷惑掛けた。どうも、このポンコツの職業柄、アンデットが受け付けない見たいだから。」

 

「きぃー!またポンコツって、言った!」

 

ポンコツの代りに謝ると、ウィズさんはとんでもないと言うほど首を横に振った。

 

「い、いいえ!そ、その私がリッチーなのが悪いんで……あ、あの、女神?以前にターンアンデットで、私が簡単に逝きかけたり、私の力が効かなかったのは……もしかして、本当に女神様なんですか?」

 

ヤバい……。

流石に気が付くよな、レベルが低いアークプリーストが、こんなに強い訳では無いしな。

てか、カズマよ、顔に出てるぞ。アクアが女神っていうのに、納得してないって顔が。

 

「そうよ!あなたは、他所で言いふらさいと思うから言っておくけど。私はアクア。そう!あのアクシズ教で崇められている女神アクアよ!控えなさい、リッチー。」

 

「ヒィ!」

 

「うぉ!?」

 

予想以上に怯えた顔をしたウィズさんは、俺の後ろに隠れた。

それほど、リッチーにとって女神というのは、怯える存在なのか。まぁ、リッチーにとっては天敵がいる訳だしな。

 

「ウィズ、そこまで怯える必要ないだろ?アンデットと女神は、水と油みたいな関係だろうけど。それと、ハチマン…そこ代われ。羨ましいんだよ!!!オレも、それ味わいたいんだよ!」

 

「ヒィ!」

 

ウィズさんは、カズマの声に驚いて、より強く服の裾を掴んだ。

なんか…歳上なのに小動物みたいな感じでいいな。

 

「カズマ、アホな事言ってんじゃねぇよ。」

 

「じゃあ、ハチマン、オレとハチマンが逆の立場だったらどうする?」

 

「そんなもん決まってんだろ。」

 

「ほーう、どうする?」

 

「店の裏呼んで、変身して全力でぶん殴る!」

 

「おいっ!?」

 

そりゃ、やるでしょ。こんな小動物にも近い歳上のお姉さんに涙目で服の裾を引っ張る姿なんて、こんなにも愛らしいものはないからな。

ましてや、前の世界の歳上の女性に関しては、魔王と先生くらいだったしな。

 

「とりあえず、ウィズさん大丈夫ですか?」

 

「は、はい。た、ただ……その言い難いのですが……。アクシズ教団は、頭がおかしい人達が多く、関わり合いにならない方がいいと言うのが、街の常識だったので……。それで、そのアクシズ教団の元締め女神と聞いて……。」

 

「何ですってぇっっ!?」

 

「ご、ごめんなさい!!!!」

 

「おい、コラ!アクアやめろ!」

 

「……話しが進まない。」

 

アクアに首を絞められそうになった、ウィズさんをなんとか庇いつつ、アクアと攻防していた。

 

そんな事をしていたら……。

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

そのアナウンスは、街中に響く大きなものだった。そう、この大きなアナウンスは、緊急事態知らせるものだ。

 

「何だ?キャベツか?」

 

「いや、違うだろ。キャベツの季節ではないはずだから違う何かだ。」

 

ウィズさんもアクアも緊急事態という事だけあって、その場に大人しくなった。

しかし……緊急事態か。もしかして、未確認生命体が出現したとかか……。だとしたら……。

 

「何かしら。でも、今回はパスね。ギルドから結構離れた場所に来てるし。他の冒険者に任せましょ。」

 

アクアの言葉に、息を切らしながら同意をした。

 

「はぁはぁ…そうですね。本来なら、冒険者は余程の事がないと集まらないといけない義務はあるですが……。このお店からだと距離もありますからね。」

 

「そんなもんなのか?デカいモンスターとか出て街がヤバいとか、そんか事は無いのか?」

 

カズマの疑問に、アクアが肩を竦めながら言った。

 

「そんな緊急クエストなら、尚更行きたくないでしょ。」

 

まぁ……普通ならそうだが……。

とりあえず、俺だけでも出れる準備だけしておくか。

 

 

 

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! ……………………冒険者の皆さんっ!!』

 

アナウンスの人が息を吸った。

 

 

『宝島ですっ!!』

 

 

 

 

アナウンスのその声に、アクアとウィズが店から飛び出し、脇目もふらずに駆け出した。

 

 

 




────────────────────────
作者です!
これから、頑張って2日1話ペースで書いていこうと思います!


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4-12 バイク×道具×神獣

「おい!どういう事だよ、説明を……早いっ!?」

 

カズマが説明を求めるよりも、先に2人は外に飛びだして行った。

2人を追いかけて外に出てみると、すでにアクアとウィズさんの後ろ姿は小さくなっていた。

とりあえず、ウィズさんの店の札を裏返して、準備中に変えた。

 

「ったく…。おい、カズマ追いかけるぞ。」

 

「おう。てか、どうする?同じく走るか?」

「いや、今回はコレで行くぞ。」

 

小屋の裏からオートバジンが飛んできた。

いやー、便利だな。冒険者カードを持って、来て欲しいと思うだけで来てくれる。

だが、今日の変身はファイズと決まってしまうが。

 

「おぉ!バイクか、いいなぁ!」

 

「とりあえず、メット1つしかないからカズマ被っておけ。」

 

「ハチマンはどうするんだ?」

 

ファイズフォンを取り出して、変身準備を行ってベルトにセットして「変身」と言った。

冒険者の格好からファイズへと姿を変え、オートバジンに跨った。

 

「なるほどな。」

 

カズマは、よっとと掛け声を出しながら後ろに乗った。

 

よし、とりあえずクラッチレバーを握り、シフトペダルを下げてローに入れ、アクセルを回してクラッチレバーを緩め発進をした。

 

スピードが上がるに連れて、ギアを上げっていった。

 

「ふぉぉぉ!最高だ!バイク最高だな!羨ましいぞ、ハチマン!」

カズマが後ろで、叫んでいた。

 

気持ち分からんでもない。こんな事だったら、前の世界でもバイクの免許取っておけば良かったな。

てか、今無免許運転だが大丈夫だよな?

乗り方とかはオートバジンにビートチェイサーを取得した時に知識と技術も同時に体と頭に入ってきた。

 

まぁ、問題なく運転も出来てるからいいか。

よし、飛ばして行くぞ!

 

──────────────────────

 

飛ばすこと10分、冒険者ギルドに着いた。

やはりバイクとかだと早いな。

だが、アクアとウィズさんには追いつけなかったな。どんだけ、早いんだよ!魔法でも使ってるのか?

 

カズマはバイクから降りて、俺も変身を解いてバイクから降りた。それと同時にオートバジンは変形をして、飛んでいった。

 

あー、そう帰るんだ。

 

「なぁ。ハチマン、気づいていると思うが……。」

 

「分かってる。」

 

何に気づいているかというと、バイクでギルドに向かう道中、ヘルメットと大きなリュックサックとツルハシを持った冒険者が続々とギルドに向かってた事に。

 

「おーい!ハチマン、カズマ!遅いわよー!」

「そうですよ!」

 

俺らよりも先に飛び出した、アクアとウィズさんがツルハシとヘルメットといった先程すれ違っていった冒険者達と同じ装備してギルドから出てきた。

 

「ハチマン、カズマ、あなた達の分も確保してきたから急いで!ギルドにいるはずのダクネスとめぐみんは居なかったから、きっと先に行ってるわ。ほら、私達も急いで街の外に行くわよ!」

 

言いながら、アクアは俺達にツルハシとヘルメットにカバンを渡してきた。

どうやら、街の外に行けば分かるみたいだが……。

 

「アクア、とりあえず説明してくれ。さっきの放送で流れた宝島ってなんだ?」

「そうだぞ、アクア。オレらには、何が何だか分からないし。一応、名前とお前等の反応から随分と割の良いクエストなんだろうけど。」

 

俺らはアクアから道具を受け取って、アクアに訪ねながら2人の後を付いて行った。

 

「宝島とは、玄武の俗称です! 街の外に玄武という名の巨大モンスター現れたのです! 玄武は、十年に一度甲羅を干す為に地上に出て来ると言われています。これは、普段は地中で生息している玄武が、甲羅に繁殖したカビやキノコや様々な害虫を日干しにする為だと言われていますが、定かではありません。言えるのは、玄武は暗くなるまで甲羅を干す事。そして玄武は鉱脈の地下に住み、希少な鉱石類をエサにする為、その甲羅には希少な鉱石が地層の様にくっ付いている事です!」

 

興奮気味にウィズが走りながら教えてくれた。

話を聞くに、割が良いクエストなんだろうけど……こういったクエストには、それなりに難がある。対処しきれるレベルならいいんだが。

 

「なぁ、アクア。話しは分かったけど、その巨大亀は背中を掘られて攻撃とかしないのか?」

 

「大丈夫よ、ハチマン。よっぽどの事がなきゃ攻撃はしてこないわ。」

 

「そうか。」

 

「つーか、すでに凄い人数が行ってるけど、俺達が付く前に掘り尽くされちまうじゃないか?」

 

カズマの言葉に、アクアが。

「なに言ってんの、カズマ?名前を思い出して、宝島よ!宝「島」!まぁ、とりあえず見てもらった方が良いわね。それよりも、アンデット!なんで、人類の敵が来てんのよ!」

 

「ひどい!?いいじゃないですか、リッチーだって宝島登ったって!それに、私も一応元人類何ですから、人類の敵扱いしないで下さい!今月も、赤字でキツいんです……み、店の借金が……。」

 

あー、店の経営が上手くいってないみたいだな。

リッチーが借金の為に、ツルハシ持って肉体労働か……世知辛い世の中だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……おい。マジかよ……。」」

 

俺ら2人が声を揃えて驚愕した。

なんというか小山が居た。

なんだこれ、山か?いや、山だな。

街の入口を出てすぐの所に、小さな山と勘違いするほどの大きさモンスターがいた。

その大きさは、千葉マリンスタジアムぐらいか?いや、分かりづらいな東京ドームとでも言っておくか。

近くの地面には、この亀が出てきたのであろうデカいクレーターが出来ていた。

 

こういうのが、神獣と言われるんだろうな。

 

隣にいたカズマも同じ感想持ってそうな感じで惚けていた。

 

「一応戦闘になりませんように……。」

 

小さく神獣に手を合わせて拝んだ。



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4-13 鉄石×タコ×影

さて、神獣こと宝島に合掌をしてみせたものの宝島自身は、巨大なヒレを地面に投げ出し、首を地に伸ばして寝そべっている。

すでに冒険者達がその背を登り、岩石みたいなその背中にツルハシを打ち付けていた。

背中が掘られているのに、宝島は気持ちよさそうにしていた。宝島自身は、背中のゴミというか垢を取って貰ってるような感じなんだろう。

多数のロープが張られている背中に、ロッククライミングの要領で、冒険者達は次々と背中に登っていっていた。

 

なるほどな……こんだけでかければ半日で掘りつくすなんて無理だな。

てか、登るのにも苦労しそうだな。

 

「行くわよ、ハチマン、カズマ!タイムリミットは、日が沈むまでなんだから!リュックがパンパンになるくらいまで、やるんだから!」

 

アクアは、すでに張られていたロープを使って登り始めていた。

 

「ハチマン、実際どのくらい儲けられると思う?」

 

「こういうのは、登ってみん限りわからんしな。」

 

「だよな……おし、せっかくだから行ってみるか!それにしても、めぐみんやダクネスどこだ?……おっ、テイラー達はいるじゃないか!あいつらも先に来てたのか。」

 

カズマは、ロープをよじ登りながら周りに知っている顔ぶれがいて安心していた。

……決して、羨ましいとか思ってないからな。俺だって、こっちに来てから大分コミュニケーション能力は上がってるんだぜ。まぁ……俺と話すのは、大抵おっさんかおばちゃんとかだけどな。

 

それから、俺達は難なく宝島の背をよじ登った。

俺とカズマは、よじ登るなりにヘルメットを被り、ツルハシを適当に振り下ろした。

 

アクアとウィズさんは、髪の形が崩れるのが嫌なのかヘルメットを着用せずに、掘り進めていた。

俺もアイデンティティのアホ毛が、ヘルメットに隠れてしまい、ただの目が腐った作業者になってしまった。あってもなくても、目が腐った作業員には変わりないか。

 

珍しく誰も喋らずに、黙々と鉄石にツルハシを打ち込んでいると、キラキラと輝く石が散乱する。

この石1個でどのくらいの値打ちなんだろうか。

 

「……なぁ、この石1つがどの位の価値があるか分からないんだが、こんな簡単に儲けられるもんなのか?ていうか、同業者しかいないんだが、こんなに簡単なら街の人達も堀に来ればいいんじゃないか?」

 

カズマが石を持ちながら、アクアに質問した。

まぁ、確かに…いくら何でも、簡単すぎる。

 

「そんなの決まってるじゃない……危ないからよ。」

 

その瞬間、誰かの声が轟いた。

 

「うぎゃああぁぁぁ!鉄石もどきを掘り起こしまった!」

 

悲鳴が聞こえた方向を向くと、1人の冒険者がタコみたいにぐにゃぐにゃした生き物と対峙していた。

 

「うぇ、なんだありゃ?気持ち悪っ!」

「本当に気持ち悪いな!?と、とりあえず、助けに行かなくていいのか?」

 

カズマと俺が、タコの姿をしたモンスターを見て引いていた。

ぐにゃぐにゃと動きながら、周囲の鉄石に溶け込むように擬態化した。

 

だが、カズマの問いかけに応じる事なく、アクアとウィズさんは一心不乱に鉄石を掘り進めていた。

 

「ほっときなさい!ここにいるのは、仮にも冒険者しかいないんだから!冒険者っていうのは、いつなんどきも、死ぬ覚悟で来ているのよ!そんな覚悟していふ冒険者助けるなんて、覚悟を踏みにじるのと一緒よ!」

 

「全くです!たとえ、力及ばず果てるとしても、冒険の最中に果てられるというのは冒険者冥利につきます!そ、それに借金が!」

 

おいおい……あんたらそれでいいのか?

人としていいのか?

あー、そういえば2人とも人の形をした別の生き物だったか。

 

鉄石もどきに襲われている冒険者が叫ぶ。

「た、助けてくれぇぇぇぇ!」

 

「おい……助けてくれって言ってるぞ、自称女神様。」

「あははははははっ!やったわ、高純度マナタイトよ!こっちにはフレアタイトっ!ふふふ……ここ最近の失敗なんて、コレでチャラよ、チャラ!」

 

ダメだァ……俺の声にも全く聞く耳を持たないな。

女神がダメならリッチーの方はどうだ?一応、元人類だしな。

 

「ハァハァ……くっ……!お店なら、私が今月の食事を我慢すればなんとかなる……っ!大丈夫っ、私は死なないんだから……うふふ……。」

 

こっちもダメそうだな。

しかも涙ぐましい事まで言ってるし……。これ終わったら、飯でもご馳走してやるか。

 

「はぁ……カズマ、俺が助けに行ってくる。ウィズさんはとりあえず掘っててくれ。」

 

「お、おう!頼んだぞ。」

 

俺の呼びかけに、ウィズさんが儚げ微笑んだ。

 

「……ねぇ、ハチマンさん、ウィッチーの爪って高く売れるんですよ。爪には魔力が集まっているので。」

 

「ちょっ、おい、やめてくれ。ウィズさん、後で飯でも奢ってやるから、そこまで悲観しないでくれ!」

 

「いいんですか!よーし、頑張りますよ!」

 

ウィズさんは、眩しい笑顔で言ってきた。

はぁ……綺麗な人なんだが、どこか残念な人でもあるな。

とりあえず、助けに行くか。

 

「変身!」

 

ファイズに変身をして、襲われている冒険者を助けに行った。

 

──────────────────────

 

それからというものの、俺は所々で助けを求める声に応じて助けいた。

 

大分、カズマ達と離れちまったな。

そろそろ、戻るとするか。

 

最初にいた方向に向かおうと足を動かし始めた瞬間に、背後にドサッと音がした。

そう、何かが上から着地したかのような音が。

 

音がした背後を見ると、そこに居たのは……ホースオルフェノクだった。

 

おい、嘘だろ!?未確認生命体の次にオルフェノクだと?どうなってやがる。

 

オルフェノクの存在に、驚きを隠せずにたじろいでいると、ホースオルフェノクが間合いを詰めて殴り飛ばされた。

 

くっ……。やるしかない。

だが、ここで戦闘するのはダメだ。

他の冒険者達がいるし、宝島を変に刺激をしてしまう。

 

俺は、その場から走り宝島を飛び降りた。

ホースオルフェノクも同様に、俺を追いかける為に宝島から飛び降りた。

 

まだ、街との距離は近いか…もっと離れた場所に行かなくては、オートバジン来てくれ。

 

俺の呼びかけに応じるように、オートバジンは空から飛んで来ては、バイクへと姿を変えた。

変形したオートバジンに跨り、ホースオルフェノクに対して、来いと合図を送り走り出すとホースオルフェノクも疾走態へと姿を変え走り出した。

 

よしっ!

このまま、付いてこい!

 

俺とホースオルフェノクは、街と宝島から離れていった。

 

 

──────────────────────

 

街で1番高い建物から望遠鏡覗き込み、八幡とホースオルフェノクの姿を見る1つの影。

 

「……君は、どこまでやってくれるのかい?俺の’’特典スキル’’で出した奴と……。」

 

その影は、ニヤリと笑みを浮かべた 。

 





今回は短めです、ごめんなさい!
そして、なんと!!!
UAが、8万を突破しました!ありがとうございます!
そして、お気に入り数も500件を突破!

めっちゃニヤニヤしてます(笑)

読んで頂き、本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします!


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4-14 スタミナ×盾×敗北

今回、戦闘シーンの書き方を変えてみました。
まだまだ、改善点が多いですがよろしくお願いします!




バイクを乗ってから大分経った。

街や宝島からは、かなり離れた場所まできた。

そこには、見渡す限り草原だ。ちらほらと木々や岩などがあるが、戦闘にきたすほどの量ではない。

 

(よし、ここまで来れば大丈夫なはずだ。)

 

バイクから降り、後ろから追ってきたホースオルフェノクを見ると疾走態から格闘態を戻していた。

 

(前回の未確認生命体とは違い、本能で襲ってきている様子はないな。

だが、何故オルフェノクまで出てくるんだ。)

 

お互いに、間合いを開けつつ互いに睨み合いが続いた。

静かに時間だけが過ぎていった。

 

そんな静かの空間に、風が吹き始め、木々は風に靡いては葉と葉が擦れて音を鳴らし始めた。

 

そして、風がなり止むと同時に葉の擦れる音も徐々に無くなっていった。

完全に音が無くなったと同時に互いに向かって走り出した。

 

芸もなく、互いの拳を相手の胸に一撃を入れた。

拳の衝撃で、後ろに数歩下がりはしたが、直ぐに立て直し拳を相手にぶつけた。

だが、相手も同じ様に立て直しては、拳をぶつけてきた。

互いの拳は、ただ真っ直ぐに相手の体へと拳をぶつけ、時には防御や回避と繰り返しながら攻防を続けた。

 

互いに一撃が入ると怯み、次の繋がる一撃を回避をしては一撃を入れてを来る返していた。

 

そんな殴り合いにも終止符を打つかの如く、徐々に怯みが大きくなってきたホースオルフェノクに渾身の一撃を加えた。

ホースオルフェノクは、後ろに吹き飛んでは不格好に転げた。

 

結構良いのが入れられたが、何とか押し返す事は出来たが、スタミナが大分取られ肩で呼吸するをしていた。

 

(キツい……、かなりキツいな。防御と回避をしながらとはいえ入ったダメージも大きいな。

しかも、相手側は俺とは違って怯みはするが疲れている様子はあまり無い。

このままでは、ジリ貧どころかスタミナ負けか。

だが、ダメージが通っていないわけではない…こちらの体力を使う前にやるしかないな。)

 

なるべく回復をするように、深呼吸をして呼吸を整えていた。

先程、吹き飛ばされたホースオルフェノクはダメージが少し残っているのか、立ち上がるのに時間が掛かっていたが、立ち上がるとホースオルフェノクの手には、魔剣ホースソードとシールドを装備していた。

 

ホースオルフェノクは、その場で何度も大きく剣を降った。まるで、魔剣の感触を確かめるかのように。

 

(剣と盾か……厄介だな……。だったら、こっちも使わせてもらうか。)

 

バイクの元まで行き、左ハンドルグリップのファイズエッジを引き抜き、ホースオルフェノクへと走り出した。

 

ホースオルフェノクも同様に、魔剣の感触を確かめ終わったのか、ゆっくりと歩き始め、徐々に歩きを早め、最後には走り出した。

 

互いの距離が剣で届く距離まで近くなった瞬間、

互いの剣がぶつかり火花が散った。

何度も何度も剣がぶつかり合い火花は散っていった。

剣同士のぶつかり合いの中で、ホースオルフェノクは盾を使い防御しては攻撃を繰り返し、ファイズの方は防御の術がない為、体を大きく動かしては、斬撃を避けることしか出来なかった。

 

この攻防は、八幡自身の体力を大きく削りファイズエッジの斬撃も徐々に雑になり、徐々に振りかぶりも大きくなっていった。

 

そして、この斬撃戦にも終止符が打たれた。

そう、八幡が斬撃が雑になった所にホースオルフェノクは盾を使いパリィをしたのである。

パリィをされた八幡は、体を大きく後ろに逸らされ大きな隙が出来た。

ホースオルフェノクは、その大きな隙を突き斬撃を入れた。

八幡の体から火花が散り同時に、後ろに数歩下がったが、ホースオルフェノクの斬撃は止まらず、何度も何度斬撃を加えられ、最後の一撃と言わんばかりの斬撃を最後に加えられ、火花と共に八幡は後ろに吹き飛びファイズの変身が解けた。

 

「……力の差が……ここまで……あるとは……ゴホッ…。やばい……早く変身を……。」

 

ホースオルフェノクは、トドメのを刺そうと近付いて近付いてきていた。

変身をしようとするが、立つこともままならない状態だった。

 

あぁ…、俺はここまでなのかな。と考えが走った瞬間、ホースオルフェノクの背後からオートバジンが銃撃を行った。

ホースオルフェノクは、予想外の攻撃から怯みを見せた。その隙を突き、オートバジンは八幡を抱えホースオルフェノクから飛んで逃げていった。

 

「……おせえよ、バカバイク……。」

 

オートバジンに一言言った後に、意識を失った。

 

 

 

 

今回の戦闘で八幡は、この世界に来て初めての敗北をした。



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4-15 目覚め×存在

あけましておめでとうございます!
去年は沢山の方々に読んで頂き感謝しています!
今年もよろしくお願いします!

すみません、ちょっと身内が入院してしまったので書けませんでした。
身内の方も大分落ち着いて来たので、また書いていきますのでよろしくお願いします。



「…………うっ……ここは?」

 

目が覚めると、視界はボヤけていたが徐々にはっきりと見え始めた。視界に映し出されたのは、見知らぬ天井とベット。ベットから身体を起こそうとしたすると、身体中に痛みが走りベットに倒れ込んだ。

 

「おう、起きたのか。大丈夫か、3日も目を覚まさなかったから死んでるのかと思ったぞ。」

 

ドアを開けてきた、武将ヒゲ生やしたおっさんが話しかけてきた。

てか、3日!?3日も寝てたのか。それよりも…礼を言わないとだな。

 

「…助けてくれてありがとうございます。すんませんが、ここは?」

 

「ここは、俺の家だ。お前の変な使い魔に渡されたんだ。」

 

使い魔……あー、オートバジンか。あいつがここまで運んでくれたのか。

 

「そうだったんっすね。」

 

「それと、お前が来た方に行ってみたら変なモンスターは居たんだが「そ、そいつに何かされたんっすか!!」ふんっ!」

 

「……いっ!」

 

俺が、おっさんの話しを遮って話し出した瞬間に、おっさんの拳骨が脳天を直撃した。

死ぬ!マジで死ぬ!何、この痛さ!ホースオルフェノクでの殴り合いよりも痛いんだが!

 

「お前、人が話してる時に遮っちゃダメと教わらんかったのか?とりあえず、あのモンスターには、手を出しても出されてもない。ただ、立っていただけだ。まるで、誰かを待っているようだったぞ。」

 

「そうなんっすね。す、すんません。」

 

頭を手で抑えながら答えた。

 

「だが…お前、面白いスキル覚えているな。」

 

「は?」

 

服を間探り、財布の中にある冒険者カードを確認した。

カードは、抜かれた様子はなく定位置に収まっていた。

そんな様子を見ていた、おっさんは豪快に笑った。

 

「ハッハハ……すまぬな。ワシには変わったスキルがあってな。そのスキルでおめえさんのスキルを確認したまでだ。だから、取ったりはしてない。」

 

「そ、そうなんっすね。」

 

「んでだな。お前、ちょっと冒険者カードを見せてくれないか?」

 

「どうぞ。」

 

カードを見せると、おっさんはしかめっ面をしながらカードを見ていた。

なんだ?仮面ライダーのスキルに関しては、説明を求められても答えられる範囲でしか話せないぞ。

 

「お前、全然このスキルに対していろいろと足らんぞ。」

 

「はい?」

 

えっ?なんですか?レベルは足らないのは自覚しているが……てか、おっさん何でそんな事分かるんだよ。

 

「まずは、体力だな。この数値じゃ長くは戦えないだろ。次に筋力と防御力だな。それから……。」

 

おいおい……どんだけ足んねぇんだよ!?

俺が足りない物に対して驚愕をしていたが、おっさんは淡々と足りない物が何なのか指摘してきた。

 

「こんなもんだな。」

 

「は、はぁ。」

 

「とりあえず、あのモンスターに勝ちたいか?」

 

急に、声のトーンが下がり周りの空気がピリピリしはじめた。

だが、俺からしたら答えは決まっている。

 

「もちろんだ。もし、アイツが俺の仲間や街で暴れて、守る力があるにも関わず守れなかったって事になったら、一生後悔する。」

 

「そうか……。よし、気に入った。修業というか足りない部分の補強とかを手伝ってやる。とりあえず、俺の名前はミクタだ。よろしく。」

 

ミクタさんは、手を差し伸べてきた。

 

「ハチマンです。こちらこそよろしくお願いします。」

 

差し伸べられた手を握り締め、アイツに勝つという決意を固めた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

――――――――――――――

―――――――

――

 

カズマです。

宝島から5日が経った。街はかなり活気立ち、街全体が好景気に包まれていた。

しかし、5日経った、今でも仲間のハチマンとは、あれから会っていない……というか、行方不明だ。

さっき、受付のルナさんハチマンが帰ってきてないかと尋ねられた。他にも、ハチマンが助けたと思われる冒険者や街の人から尋ねられた。

てか、なんで!ルナさんや女冒険者があんな心配そうな顔するだよ!

腐った目で、8割方顔を台無してる男なのに!

確かに、気が利くし、金持ってるし、強いし、優しいし…………あれ?オレが勝てる要素なくね?

クソっがーーーーー!

 

「さっきから何してるのよ、カズマ。」

 

目の前で、お茶を啜っている駄目神ことアクアが話しかけてきた。

 

「あー、とりあえず全員来てから話す。」

 

「そう。」

 

アクアは、お茶を再び啜り始めた。

そして、いつも集合している時間になると、めぐみんとダクネスがやってきた。

 

「アクアにカズマ、ハチマンは来てないんですか?」

 

「ふむ、もう5日経ったというのに1度も会ってない。くっ……こんな5日もあの目に見られていないと身体が……」

 

「あー、その事なんだがな。実はハチマンが行方不明らしいんだ。」

 

「へ?」「はい?」「えっ?」「うぇ?」

 

各々が素っ頓狂な顔していた。

まぁ、オレも最初聞いた時は同じような顔をした。

というか、声が1つ多い気がしたんだが……。

周りを確認すると、朝から飲み会をしているおっさん連中だけだった。

 

「ど、どどどどどういうことよ!カズマ!」

「そうですよ!ハチマンが行方不明って!」

「おい!あの目で蔑んでくれなくなるじゃないか!」

 

「落ち着けって!」

 

身体を揺さぶるな!

ダクネス、お前は完全に私情じゃねえか!

 

「ハチマン探しに行きます!」

 

めぐみんは、杖を持って焦ってる様子を見せながら出口に向かおうとしていた。

 

「だから、待てって。」

「うぐっ!」

 

めぐみんのマントを引っ張って静止させ、椅子に座らせた。

なんか、犬のリードを持っている気分だ。

 

「とりあえず、ハチマンは大丈夫だと思う。」

 

「なぜ!そんなことが断言できるですか!」

「そうよ!」

 

ったく……なんでいつもより冷静になれないんだ?コイツらは……。

 

「簡単な話だ。アイツがオレらよりもレベルが高いって事だ。そこらのモンスターには負けないしスキルもある。 」

 

「「た、確かに……。」」

「ギルドには、届けは出してあるから大丈夫だ。それにしても、2人して何を焦っているだ。」

 

「焦るも何も!私の…」

 

アクアは急に表情を暗くした。

おい、まさか……ハチマンに!

 

「私のご飯はどうするのよ!ハチマンがくれなきゃ、餓死しちゃう!」

 

ですよね……。この駄目神は本当にダメだ。

 

「おい、めぐみんどうなんだ?」

 

「わ、わたしは……その……。」

 

めぐみんは、頬を少し赤らめて、恥ずかそうにモジモジしていた。

おい、今度こそ本当に!

 

「そ、その……ハチマンは、わたしにとって兄的存在というか……。もう、お兄ちゃんだと思ってます!」

 

…………予想の斜め上にいった。

 

「私だって、ハチマンが必要だ!」

「うるさいぞ、ダクネス。」

 

「……ダメだ!カズマじゃ、ダメだ!やはりハチマンでないと!」

 

うるせえ!お前を喜ばしたくて言ったわけじゃねえよ!

ダメだ……。このパーティ……。

早く帰ってきてくれハチマン。

 



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4-16ハチマンロス×クエスト

カズマです。

ハチマンが行方不明になってから、10日が経ちました。

仲間の様子はというと……。

 

「ハチマン…お兄ちゃん……ハチ兄……お兄様……ふへへ……。」

 

「シュワシュワ……シュワシュワ……お肉と一緒に……でへへ……。」

 

「罵倒してくれ……いや、違うな……これは、ある種の放置プレイ!……これはこれで……ハァハァ……最高だ、ハチマン……デュフフ……。」

 

という感じに、机に突っ伏しながら項垂れているうちのパーティーの女共。

なんなんの!?本当に!

ハチマンロスが、ここまで響くもんなの!

てか、周りの冒険者達もハチマンが行方不明と聞いてから変にテンション下がってるしよ!

どんだけ、影響力あるんだよ!

てか、アクア、お前に関しては宝島で稼いだ金3日で使い切る方が悪いだろ。

はぁ~……。この空気どうすっかなぁ。

 

そんな事を考えていたら掲示板が目に入った。

 

「おい、お前らクエスト受けに行かないか。」

 

「「「え~。」」」

 

オレの言葉に、3人から乗り気ではない感じの返事が返ってきた。

だが、オレには秘策がある。

 

「おい、アクア。お前、シュワシュワと肉が食べたいんだよな?」

 

「え、えぇ。」

 

「なら、多少キツいクエストをやって金を入手するぞ。なんなら、倒した敵から材料を入手して、それを売ればもっと美味い酒が飲めるかもだぞ。」

 

「美味しいお酒……。お酒……!行くわよ!」

 

アクアは、項垂れた表情から活気に満ちた表情へと変わっては掲示板へと向かった。

よし、1人確保。次は……。

 

「めぐみん!どんどんクエスト受けて、レベルが上がっていけば爆裂魔法の威力も上がる。それに加え、ハチマンが戻ってきた時にレベルと威力を見たら褒めてくれるぞ!」

 

「爆裂魔法……レベルアップ……ハチマンに褒め貰える……行きます!すぐ、行きましょ!」

 

めぐみんも、意気揚々と掲示板へと向かって行った。

最後は……。

 

「ダクネス。お前は……どうでもいい。とりあえず、来い。」

 

「扱いが酷い!」

 

ぶつくさ言いながらもダクネスも掲示板へと向かった。

コイツら、ちょろっ。

 

そんな事を思いつつ、オレも掲示板へと向かった。掲示板に着くなり、難しい顔をしながらクエストを吟味しているアクアの後ろに立った。

アクアは、オレが後ろに立っている事に気付かずに、真剣な顔をしてクエストを選んでいた。

そして、1枚のクエストを選んだ。

 

「よし!」

 

「よし!じゃねぇよ!お前は、なんつうの受けようとしてんだよ!」

 

アクアから選んだクエスト用紙を奪った。

そこに書かれていた内容は……。

 

『マンティコアとグリフォン討伐依頼。平原で、マンティコアとグリフォンが縄張り争いが勃発しています。放っておくと危険の為、速やかに討伐してください。報酬 120万エリス。』

 

「アホか!」

 

オレが叫ぶと、貼り紙を元の位置へと戻していった。

危ない危ない、真剣に選んでるから大丈夫かなと思ってたが、念の為に背後から見ていて良かった。

「ったく……なによ!2匹いるだから、纏まっているとこにめぐみんの爆裂魔法をやればいいじゃない……。しょうがないわね~……」

 

コイツ、その危険の2匹を纏める作戦についてオレに投げる気だな。

 

いっそこのクエストを受けて、1人で出そうか悩むオレに、アクアは興奮しながらオレの裾を掴んできた。

 

「ねぇ!これよ!これ!私にぴったりのクエストよ!」

 

言われて、クエストを確認すると。

 

『タルラン湖の浄化。街の水源の一つのタルラン湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーター等の凶暴なモンスターが住みつき始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移す為、モンスター討伐等はしなくてもいい。※要浄化魔法習得済みのプリースト。報酬は30万エリス』

 

「お前、水とか浄化できるのか?」

 

「ったく、何言ってるのよ!私を誰だと思っているの?というか、名前と外見と神々しさで、何を司る女神か分かるでしょ?」

 

「宴の神。」

 

「ちっがうわよ!クソニート!水よ、水!この青い髪が目に入らないの!ったく……ハチマンだったら、すぐに分かってくれるのに……。」

 

「へいへい、わるーございました。」

 

だが、水の浄化するだけで30万か。

なかなか美味しいクエストだな。

特に討伐をしなくてもいいって所が最高だ。

それに敵が出たとしても、めぐみんの爆裂魔法もあるからな。

 

「ん?でも、コレならお前1人でも受けてきてもいいんじゃないか?しかも、報酬も独り占めできるんだし?」

 

オレの言葉に、アクアは渋い顔した。

 

「え、えぇ……。だって湖で浄化してる時に、敵が沸いてきたら浄化する事ができないじゃない?だから、浄化するまで守って欲しくて……。」

 

なるほどな。そういうことか……。

しかし、ブルータルアリゲーターか。名前から察するに、ワニだな。めちゃくちゃ危険そうだな。

めぐみんの爆裂魔法打ったとしても、カエルの二の舞になりかねん。

 

「ちなみ、浄化するまでどのくらいかかるだ?5分くらいか?」

 

まぁ、長くても1時間くらいなら問題は無いはずだ。

アクアは、また渋い顔しながら

「……半日くらい?」

 

「長ぇよ!ふざけんなよ!」

 

ったく、オレはすぐさまクエスト用紙をボードに戻そうとするとアクアがしがみついてきた。

 

「あぁっ!お願いぃぃぃ、お願いよ、お願いします!他に禄はクエストがないのよ!協力してよー!」

 

泣きながら懇願するアクアだが、クエスト用紙を戻そうした時に、ふと気がついた。

 

「なぁ?アクア。」

 

「なによ?」

 

「浄化って、どうやってやるんだ?」

 

「……へっ?私くらいなら水に触れてるだけで浄化されていくわよ。」

 

「ほーう……ならいい方法があるんだ。やって見るか?」

 

 



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4-17 先駆者×決闘

結果から言おう。

クエストに関しては成功だ。

そう、ハチマンいない状況だがクエストをクリアーできる。

だが、失う物は大きかった。

 

「お、おい、アクア。そろそろ、歌うのやめてくれないか。ボロボロの檻の中に膝を抱えた女を運んでる時点で、注目が集まるんだからな?」

 

''檻''の中にいるアクアに話しかけたが

「ドナドナドーナードーナー……。」

と目を虚ろして膝を抱えて、歌っている続けている状態だ。

 

クエストから帰る際に、頑なく檻から出ようしなかったので、仕方なく馬に檻を引かせている状態だ。

 

8時間近く、紅茶のティーパックのように水に浸らせ、その内3時間近くはブルータルアリゲーターに襲われたからな。

それは、トラウマにもなるが……それ以外被害らしい被害はない。

 

ウィズから教わったスキルの1つを試して見たかったが、戦闘にならなかったから使えなかった。

まぁ、戦闘にならずに済んだのだからそちらの方が良いに決まっている。

 

今回のクエストは、大したことも無く済んだとも言える。

 

そんなフラグみたいな事を考えたせいでもあるだろう。

 

「め、女神さまっ!?女神さまじゃないですかっ!何をしているんですか、こんなところでっ!」

突然そんな事を叫び、檻に引きこもっているアクアの元へと駆け寄り、鉄格子を掴む男。

そしてあろうことか、ブルータルアリゲーターでも壊せなかった鉄格子をいとも簡単にグニャリと捻じ曲げ、アクアに手を差し伸べた。

その光景に唖然としていたオレとめぐみんを尻目に、アクアの手を……。

 

「おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様何者だ?それに、貴様の言葉にアクアは反応していていないではないか。」

 

あれ?今のダクネス、ちゃんとクルセイダーしてる。しかもどこに出しても恥ずかしくないクルセイダーに。

 

あぁ……、いつもこれならいいんだけどな。

男はそんなダクネスを一瞥すると、ふうと一つ、ため息を吐きながら首を振る。

いかにも、自分は厄介ごとに巻き込まれたくは無いのだが仕方ないといった感じで。

その男のその態度に、普段はあまり表情をあらわにしないダクネスが、明らかにイラッとした。

何だかきな臭い雰囲気になってきたので、俺はこの期に及んでも膝を抱えてオリから出ようとしないアクアに、そっと耳打ちしようとした時、

 

「……今の声……それと女神?…ハチマン?……ハチマン!そして、私は女神!そうよ、ハチマン、やっと私が女神だと…。」

 

アクアは檻から出てきた。

と言うかコイツは、自分が女神だと言うことすら忘れているのか。しかも、絶対に声はハチマンそっくりだがお前のことは絶対に女神とは言わんぞ。

 

もぞもぞと檻から出てきたアクアは、笑顔からガッカリした顔をしながら首を傾げた。

 

「カズマ、このパチモン誰?」

おい、お前の知り合いじゃないのかよ。てか、パチモンって……。

 

いや、知り合いのようだ。

男の方が信じられないと言わんばかりの顔しながら目を見開いたいた。

多分、アクアが忘れているんだろう。

 

「な、何を言っているんですか、女神様!御剣響夜ですよっ!あなた様から魔剣・グラムを頂いた!それに、パチモンって、なんですか!!」

 

「…………?パチモンにパチモンっていって何が悪いの?」

 

アクアは首を傾げながらえげつない事を言った。

アクアは、まだピンと来ていないみたいだが、オレは何となく分かった。

このうるさい奴は、オレと同じ日本から来たやつだ。

漫画とかアニメでは、主要人物っぽい立ち位置にいそうな感じだが、ヤツは、オレよりも先にアクアからチートアイテムを貰って、ここに来た感じだな。

 

何だか正義感強そうで、しかもイケメンときた、しかも、後ろには戦士風の美女と盗賊風の美少女を連れている………気に食わん!

 

まぁ、一応アクアには日本から送り込んだ奴だろと説明した。

 

「あー、そう言えば居たわね、そんな人が。ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって、あなた以外にも多くの人を送ってあげたんですから、仕方ないよね!」

 

やっと思い出したみたいだ。

ミツルギは、顔を引きつきながらも、笑顔を浮かべていた。

 

「えっと、お久しぶりですアクア様。勇者として送られてから順調に頑張ってます。レベルも37になりました。……えっと、アクア様はなぜこちらにいるのですか?あと、なぜこちら方々に檻に閉じ込められているんですか?」

 

ミツルギは、チラチラ警戒しながらこちらを見ながら言ってきた。

なんだろうか、イラッとしたが確かにはたから見たら、閉じ込めているように見えるから仕方ない。

しょうがない…。オレとアクアは、オレと一緒にアクアがこの世界に来た経緯や今までの出来事などを話した。

 

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―――――

――

 

「……バカな!ありえないそんな事が!あなたは、一体何を考えているのですか!?女神をこっちに引き込んだあげくに、湖に浸けた?!」

 

いきり立ったミツルギが、オレの胸ぐらを掴んできた。

それをアクアが慌てて止めた。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!いや別に、こっちに連れられてから、私としては毎日楽しく過ごせてるわ!それに、私としては連れてくられた事を気にしてないわよ!あと、今回のクエストで貰える報酬が30万エリスよ、怪我も無く無事に30万よ!」

 

そんなアクアの言葉に、ミツルギは憐憫の眼差しでアクアを見た。

 

「……アクア様……、あなたがどのようなに丸め込まれたのかは分かりませんが、今のあなたは不当ですよ。そんな目にあって、たった30万エリスだなんて……。ちなみに、今どこで宿泊を?」

 

ミツルギの言葉に、アクアは若干押されながらおずおずと答えた。

 

「えっと……今は私とカズマで馬小屋で生活を……。」

 

「てめぇ!」

 

ミツルギの胸ぐらを掴んでいた力が強くなった。

ちょ、ちょっと、マジで痛いんだが。

 

 

「おい、そこのお前。流石に初対面の人に対して失礼じゃないか?」

 

ダクネスは、オレを掴むミツルギの手を横から掴んだ。

普段は全然ダメ人間だが、今は静かに怒っていた。それに、めぐみんも杖を構えては、今にも爆裂魔法を撃とうとしていた。

めぐみん、気持ちは嬉しいがここでは撃つのはやめてくれよ。だから、詠唱をやめろ!

 

ミツルギは、胸ぐらを掴んでいた手を離すとめぐみんとダクネスを観察をしていた。

 

「……アークウィザードとクルセイダー……。それに随分と綺麗な人達だな。君はこんなにも恵まれたパーティなのに、アクア様を馬小屋に住まわしているのかい?恥ずかしいと思わないのかい?それに、君は初期クラスの冒険者らしいじゃないか。」

 

ダストとテイラーが絡んできた時の事を思い出した。

確かに、傍から見たらオレはかなり恵まれいるように見えるらしい。

 

そして、ミツルギは徐々にヒートアップしていった。

 

「それに、確かもう1人仲間が居るらしいじゃないですか。その仲間はどうしたんです?まぁ、居たとしても初期クラスの冒険者では役に立たないでしょ。居ても居なくても変わりませんか。」

 

「ちょっと、カズマの事はバカにしてもいいけど、ハチマンの事はバカにしないでくれる!」

 

アクアがキレた。

てか、おい!オレがバカにされるのは良いのかよ!

 

「ど、どうしましたかアクア様?!」

 

流石にミツルギもアクアがキレた事に驚いた。

 

「そうですよ!カズマはバカにしてもいいですが、ハチマンをバカにしないでください!」

 

「そうだ、カズマをバカにしてもいいが、ハチマンをバカにするな。」

 

おい、お前ら!

なんで、オレがバカにされる事はいいんだよ!

ふざけんなよ!

 

「アクア様や美人達から擁護されるとは……。だが初期クラスの冒険者だぞ。まさか、洗脳を!洗脳をされて…!」

 

いつの間にか、ミツルギの近くまできためぐみんが、杖を大きく振りかぶりミツルギの股間へと振り下ろした。

 

「る…………うぐっ…………!」

 

ミツルギは、股間に衝撃が走った。

そう、男の誰しもが共通する弱点部位をフルスイングのされた杖の装飾であろう丸い球が直撃したのである。

いくら鎧の1部がガード機能があるとしても玉突き事故の衝撃は計り知れない。

 

オレは、その光景を目の当たりした途端に下半身の方がブルっときた。

 

「…………いい加減にしてください。ハチマンに洗脳なんかされていませんし、バカにするなと言いましたよね?」

 

地面で悶え苦しんでいるミツルギに対して、めぐみんはゴミを見るような目で見下ろしていた。

 

なにあの子!?めちゃくちゃ怖いんですけど。

 

「うぐっ……あっ……あっ……。うく……。はぁはぁ……。」

 

ミツルギは、何とかその場で立ち上がった。

めっちゃ足をプルプル震わせながら。

 

「はぁはぁ……。クソっ……。よくもやってくれたな。お前だけは許さないぞ。」

 

ミツルギは、オレに向かって言ってきた。

おい、やったのはめぐみんだろ!

オレは関係ないだろ。

 

「アクア様だけではなく、こんな幼子まで……。」

 

「誰が幼子ですか!」

 

めぐみんは、今にも第2打を打ち込もうと言わんばかりの勢いで吠えた。

そんな光景を見て、アクアは止めに入った。

 

「わ、私やめぐみん、それにダクネスは洗脳なんかされてないわ 。自分の意思で仲間になったのよ。」

 

「で、ですが……!」

 

「あー、もうめんどくさい!だったら、あなたとカズマが勝負して、カズマが負けたらあなた達の仲間になってあげるわ!」

 

アクアは、ミツルギが納得しない事やハチマンがバカにされた事などが積み重なって、勢いでとんでもない事を言い出した。

 

おい!おまえ!なんつう事言ってやがる!

あっ、でも、コイツらが居なくなってもオレとハチマンは得しかしない気がするぞ。

よし、盛大に負けてやる!

 

「アクア様、いいんですか?そんな提示をしても?相手は、初期クラスの冒険者ですよ?しかも、装備も……ぷっ……大した装備もしてませんですし。どうせスキルなんかも初期魔法しか覚えてなさそうですが。」

 

あーん?今のは、イラッとしたぞ?さっきからネチネチネチネチ言いやがって。

コイツらの事はどうでもいいが……ぶっ飛ばしてやりたくなったぞ。

 

「ふん!女神に二言はないわ!」

 

「分かりました、後悔しないで下さいね。では、もし、君が勝てたらなんでも言うことを聞いてあげましょう。」

「よし、分かった!行くぞ、コラっ!」

 

なんだかんだイライラが限界を超えていたオレは、速攻で襲いかかった。

腰に装備している短剣を右手に持ち、左手をワキワキさせながら斬りかかった。

 

卑怯もクソもあるか!

こんな負イベだが、やるからには勝つ気で行く!

そして、そのスカかした顔に1発入れる!

 

ミツルギも、合図もなく始まった決闘に困惑をしていた。

 

「えっ、ちょ!待っ……!」

 

奇襲をかけたが、そこは流石にオレよりも高レベルだけの事はある。

咄嗟に背中携えた魔剣を構えては、短剣の攻撃受け止めようとした。

オレは魔剣に短剣が当たる寸前に、左手を突き出し叫ぶ!

 

『スティーーーールッッッ』

 

左手にずっしりとした''剣の重み''を感じた。

よっしゃー!いきなり大当たりだ!

短剣を受け止めるはずだった魔剣が、ミツルギの手から消え失せた。

 

「「「はっ?」」」

 

一同は、何が起きたのか言わんばかりに気の抜けた声が発せられた。

そう、盗賊スキルで、魔剣を奪ったのだ。

 

だが、短剣よりも魔剣の方が重く奪った際に、オレの体がよろめき魔剣のブレイドのフラー部分がミツルギの脳天を直撃。

 

ミツルギはその場で倒れ、オレの勝利で決着が付いた。

情けない勝ち方であるが、勝ちは勝ちだ!

あーん?文句あるのか!



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4-18 不死の手×魔剣

「卑怯よ!卑怯者卑怯者卑怯者!!」

 

「あんた最低よ!正々堂々戦いなさいよ!卑怯者っ!」

 

ミツルギのパーティの二人少女が喚いている。

 

「うるせい!卑怯もらっきょうもあるか!」

 

正直言うと、高レベルの奴が低レベルに勝負を挑む方が卑怯だろ!

 

「…………。」

 

ミツルギはというと、脳天にヒットしたダメージが大きいのか気絶をしていた。

レベル的に考えて、あと5分もしないうちに目を覚ますだろう。

目が覚めたら、めんどくさいだろうな。

もう1回勝負しろとか言いそうだし。

 

そこで、オレは閃いた。

ウィズから教えて貰った、スキルを試すか。

 

オレは、倒れているミツルギの肩に触れてスキルを発動した。

 

「ねぇ、ちょっと!何をするつもりなの!」

 

「聞いてんの卑怯者!」

 

「''不死王の手''」

 

「あがががが……っ。」

 

スキルを発動した際に、ミツルギは電気ショックを受けているかの如く身体をビクビクさせていた。

 

『不死王の手』

このスキルは、ウィズからポイントをはたいて手に入れたスキル。

主に触れた相手を毒・麻痺・昏睡・魔法封じなどといった状態異常にすることができる。

ミツルギの反応を見る限り、麻痺っぽいな。

しかし、スキルレベルが低い分発動が難しいと、ウィズは言っていたが、幸運が高いせいか1発で上手くいった。

 

「うっし、コレでこいつは当分起きることはないだろ。」

 

「卑怯者!動けないミツルギに追加で、何かするなんて最低よ!」

 

「そうよ!この卑怯者!私達の大事なミツルギに、よくも!どうせ、ミツルギよりもモテないからって、腹いせでやったに違いないわ!」

 

''モテないから''?

……あー、そうだよ!どうせ、オレはモテねぇよ!

ミツルギみたいに魔剣を手にして、強大な力を奮ってかっこよく敵を倒したりすれば、さぞモテるだろうな!

本来、オレもそれが出来たはずなんだよ!

チートアイテムを手にしてれば、今頃オレはモテモテで金も家も持って冒険者らしい冒険者をやってたよ!

あ~、なんだか……いろいろ考えてたらイライラしてきた。

 

再度、ミツルギの肩に触れて『不死王の手』を発動させた。

タダでさえ、状態異常の相手にさらに状態異常かけた。

今回は、オレの恨みなどが織り交ざったせいか、手から禍々しいオーラが発生した。どうやら、弱体化が発動した。

効果は……レベル減少だ。

フフフッ……レベル1まで下げてやるか。

 

ミツルギが首から掛けている冒険者カードを確認すると、ソードマスターレベル1と記載されていた。

ざまぁみやがれ!

 

さてと……。

ゆっくりと立ち上がって、ミツルギの連れの美少女の方を向いた。

 

「さて、さっきからピーチクパーチクうるさい女共が。」

 

「何よ!」

 

「私達2人、あんたみたいな男に負けないだから!」

 

オレがゆっくりとミツルギの連れに視線を合わせると、身体をビクッと震わせた。

オレは、栄光の右手(なんもないんですけどね。)をミツルギの連れに向かって伸ばした。

 

「真の男女平等の主義者のオレは、例え美少女でもドロップキックをかます男だ。手加減して貰えると思うなよ。」

 

「「ひっ!」」

 

「公衆の面前で、このスキルを使って動けなくてしてから、スティールを使って1枚……いぃぃちまぁい!ずつ身ぐるみを剥がしていく。」

 

オレは伸ばした右手の指を1本1本畳んでは、開いて、まるで魔女が誘惑する際に行う手招きのごとく。

 

「ほれ…ほれ…。」

 

「「いっ……。」」

 

「ほら、早く……、クククッ……。」

 

「「いやああああ!!!!」」

 

ミツルギの連れは、走って逃げていった。

くっ、本当にやっとけばよかったと後悔している自分が悔しい。

 

「さて、奪った剣は勝負で勝った報酬として貰って行くか。なぁ、アク…。どうした、お前ら?」

 

アクア達の方をみると、とても引いている様子だった。

 

「……そこで倒れている人は、生理的に無理ですが……ここまでされるとどちらが悪なのか……。流石に気の毒です。」

 

「…しかも、連れの女の子達にまで手を出そうとするとは……。」

 

「うわぁ……カズマさん、うわぁ……。あと、その剣についてだけど、あくまでも特典だからそこの残念の人だけ使える仕様になってるから。」

 

めぐみんとダクネスは、憐れだよう様に眠るミツルギに同情していた。

てか、ミツルギをみたいな後にオレをみるな!

視線が痛い。

 

 

 

―――――――――――――――

 

――――――

 

―――

 

――

 

オレ達は、借りた檻を引きずりながらも、その場を後にしてギルドへと向かった。

報酬に関しては、アクアが全額貰う事になっていたから、クエスト完了報告はアクアに任せ、オレとめぐみんとダクネスは夕飯を食べていたのだが……。

 

「なんでよぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

動物かのごとく叫ぶアクアの声がギルドに響いた。

まーた、何か騒ぎを起こしているのか?

あいつは、何かと騒ぎを起こさないと気が済まないのか?

定食を頬張りながら、受付カウンターを見た。

そこでは、涙目なったアクアが受付職員のルナさんに掴みかかってた。

…………もう少しでこぼれ落ちそう、頑張れアクア。

 

「だから借りた檻を壊したのは私じゃないんだってって言ってるでしょ!ミツルギ キョウヤとかいう冒険者が檻の柵を折り曲げたのよ!なんで、私が弁償しないと行けないのよー!」

 

なるほど、ミツルギが柵を折り曲げてアクアを助けようとしてったっけ。

 

しばらくして、駄々をこねていたアクアは諦めたのか、報酬を貰ってとぼとぼと歩いて、オレ達の席に来た。

 

「今回の報酬に関して、壊した檻の請求金額を差し引いて、10万エリスしか貰えなかった。なんでも、あの檻は特別製らしいわ…………。」

 

しょんぼりしていたアクアに、流石に同情した。

あんだけ身体を張ったにも関わらず、第三者が檻を壊して報酬が減ったのだから。

 

「何だったんでしょうね、あのパチモン。なんな勝手にアクアを助けがってたし、ハチマンの事を悪く言うし……。しかし、それにしても、カズマのあのスキルはなんなんですか?特に最後の奴は?オーラ出てましたよ?」

 

「あー、あれはだな。スキルの中に含まれる1つの状態異常魔法だ。特に最後の奴は、受けた奴のレベルを下げて弱体化させる能力があるんだ。」

 

めぐみんは、オレの言葉を聞いて絶句していた。

アクアも、先程まで悲壮感溢れていたがめぐみんと同じ様に絶句していた。

 

「……ねぇ、カズマ。その魔法使ってる時は、私に近づかないでね。」

 

「わ、わたしにも!」

 

「……レベルが減少して……嬲られるのも……また……。それに、レベルを上げたにも関わらず、また最初から……これは、コレで。」

 

各々がスキルを聞いてから、感想述べていた。

 

「んで、アクア。多分あいつ、また来るじゃないか?来たらどうする?」

 

「すかさずゴッドブローをかますわ!そして、檻代を弁償させる!」

 

オレの質問に、アクアは悔しげに答えたいた。

まぁ、確実にここには来るだろう。

理由?んなもん……。

 

「見つけたぞ!サトウカズマ!!」

 

おいおい、フルネームで叫ぶなよ。

ったく、誰だよ。

ギルドの入口を見ると、話題となっていたミツルギが立っていた。

 

「君の事は、ある盗賊の少女に教えて貰ったよ。パンツ脱がせ魔だってな!他にも、女の子を粘液塗れにするのが趣味だとか噂になっているそうじゃないか。鬼畜のカズマだってね!!」

 

「ちょっと、おぉい!待ってぇい!誰がそれを広めたのか詳しく!」

 

入口から歩いてくるミツルギに、焦りながら反論というより突っ込んだ。

いや、マジで、なんなの!?

普通に歩いて来ればいいのにも、関わらず噂話を大声で叫びながら来る必要ありましたか!

 

「それに加え、僕のレベルを1にしてくれたそうじゃないか。それに、どのクラスでも、そんなスキル教えられる職業なんて、僕は知らない。鬼畜カズマ、君は何者なんだ!」

 

真剣な顔で、オレに詰め寄ってきたミツルギに、アクアはゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと身体を動かしながらミツルギの前に立った。

 

「……アクア様、僕はまたレベルを上げて、そして、その男から魔剣を取り返し、魔王を倒します!ですから、この僕のパーティに「ゴッドブロォォォォォ!!!!」ぐふァ!」

 

「「あぁ!キョウヤ!!!」」

 

アクアの渾身のゴッドブローが、ミツルギの顔面に炸裂した。

なぜ殴られたか分からない顔しているミツルギに、ツカツカと詰め寄り胸ぐらを掴んだアクア。

 

「ちょっと!あんた檻のお金返しなさい!あれは特別製の檻なの!わかる?30万よ、30万!分かったら、早く払いなさい!ほら!30万!」

 

「えっ、あっ、はい。」

 

アクアの気迫に負けたミツルギはされるがまま、懐から金をだした。

さっき、20万とか言ってなかったっけ。

 

気を取り直したミツルギは、上機嫌なアクアの方を気にしながらも、悔しそうな声でオレに話しかけてきた。

 

「……あんなやり方だが、負けは負けだ。そして、なんでも言うことを聞くといった手前、こんな事を頼むなんて虫のいい話だと思う。だけど、お願いだ、魔剣を返してくれないか。代わりに1番いい剣を買ってあげるから!」

 

と頭を下げてきたミツルギの肩を、ちょんちょんつつくめぐみん。

 

「あの、この男が魔剣を持っていない件について。」

 

えっ、言わんばかりにすぐに顔を上げて、オレの姿を見た。

顔がだんだん真っ青になっていくミツルギ。

 

「……あ、あの、魔剣はどこにあるのですか。」

 

「売った。」

 

「ちくしょうぅぅぅぅぅぅ!」

 

ミツルギは、すぐさまギルドを出ていった。

ふぅ、ようやく一段落だな。

 

 

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

―――

 

「なぁ、さっきからあいつが言っていた事なんだが、アクアが女神とはどういう事なんだ?」

 

一段落が付いたものの、ギルド内であんだけの騒ぎを起こしたせいか冒険者達の好奇心の視線を遠巻きに浴びながら、ダクネスが質問してきた。

まぁ、あんだけ女神、女神って言ってれば誰しもが気になるわな。

この際に、この2人には話してもいいじゃないか。

 

オレがアクアに視線を送るとアクアは真剣な顔して頷いた。

アクアは、めぐみんとダクネスの方を向き直る。

珍しく真剣な表情していたアクアに、2人も真剣な表情を浮かべた。

 

「今まで黙ってたけど、あなた達だけには言うわ。……私はアクア。…………アクシズ教団が崇拝する者にして、水を司る女神、そう、私がその女神アクアよ!」

 

「「という、夢を見ている(だな。)(ですね。)」

 

「違うわよー!なんで2人してハモってるのよぉぉぉぉ!」

 

ギルド内に、アクアの悲痛が響いた。

ハチマン、今日もオレ達は元気にしています。

ハチマンというお守役がいないとオレがダメになりそうです。

……早く、帰ってきてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!

 




随分、遅くなりました!ごめんなさい!
今後の予定としては、八幡が帰ってくるのに2話くらいかかりそうですが応援よろしくお願いします!



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4-19 デュラハン×呪い

早くハチマンが出したい……。
作者がハチマン成分不足です。



カズマです。

ミツルギとのいざこざがあってから、早1ヶ月が過ぎ、オレ達の仲間であるハチマンが行方不明になってから、もう少しで1ヶ月半が経とうとしていた。

 

ギルド内は、相変わずハチマンが見つからないという事もあり冒険者登録した時に比べて活気少なかったが、行方不明と聞かされた当初よりかは、活気は少し戻っていた。

 

まぁ、活気が上がらない理由は他にもある。

 

「うわぁぁぁん!なんでよぉぉ!」

 

また、ウチのダメ神が叫んでる。

まぁ、叫んでる理由はわかる。

 

「おい、アクア。うるさいぞ~。」

 

オレがめんどくさそうな態度に、苛立ちを覚えたのか、こちらに涙目になったアクアが早歩きしながら来た。

 

そして、来るなり机にバンバン叩きながら言ってきた。

 

「だって、だって!カズマ抜きでクエストが達成してきたのに、勅令クエスト発生してるせいで、一切の他のクエスト処理ができないってなんなのよ!!!」

 

……コレばっかしは、アクアに同情だな。

 

活気が上がらない理由でもある、もう1つの理由とは、なんでも魔王幹部がこの街の近くに住み着いたらしく、弱いモンスターが魔王幹部にビビって出現しにくくなっている状態になっている。

 

そして、アクアが嘆いている理由も、それに関わっているのだ。

 

なんでも魔王幹部の討伐をするまでは、魔王幹部の討伐が優先になり、他のクエストは後回しになっている状態だ。

受付嬢のルナさん曰く、他のクエストで報酬を出すくらいなら、王都から魔王幹部討伐で派遣された冒険者に武器や防具を買い揃えろと上の方から通達が来たらしい。

 

まぁ、ココは初心者ギルドだし、しかも初心者冒険者達だけで対処できる問題でもないのが現状である。

 

収入得ようとしても、残っているのは他の街での高難易度クエストのみだけがある状態だ。

 

はぁ……どうすんだよ、これ。

 

泣きながら、オレのジャージを引っ張るアクアを余所に溜息を付いた。

こんな時に、ハチマンが居てくれたらなぁ。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

―――――――――――――――

 

―――――――――

 

――――――

 

―――

 

 

「ということで、しばらく仕事ができない状況だ。」

 

オレは、ギルドのいつもの場所で仲間達に状況を説明した。

 

「うぅ……どうするのよ!収入がなきゃ、お酒も飲めないじゃない!」

 

「お前はなくても、勝手に飲んでるだろうが!」

 

「でも、収入源がないと流石に生活の方が厳しくなりますね。」

 

「そうだな。私は、預金があるからまだ大丈夫だが。」

 

めぐみんの発言に、同調するダクネス。

だが……今回に関しては吉報がある!

 

「ふふふっ……だが、当分はなんとかなりそうだぞ。」

 

「なに気持ち悪い顔してるのよ、カズマ。」

 

肘を付いてだらしない顔しながら、机に指をトントン叩いているアクア。

 

「おまえ、そんな態度しててもいいのか?」

 

「なによ、早く言いなさいよ。」

 

こんのダメ女神が………。

まぁ、いい。オレもさっきまで、この話しを聞かなければ同じ態度を取っていただろう。

怒りをグッと抑えた。

 

「えっとだな、さっき受付嬢のルナさんからなんたがな。ハチマンが、『俺が帰れなかったりした時、何かしらの理由で収入源がない時とかに使ってくれ。』と伝言と金を貰った。」

 

ハチマンが、いざと言う時の為に残してくれたんだろう。

オレは伝言聞いた時に、驚きと同時に、本当にハチマンの事が恋しくなった。

アクア達も同様に、驚きの表情から流石ハチマンと言わんばかりの顔をしていた。

 

「んでだ、ハチマンから1人辺り10万ずつある。これをまとめて、代表者に管理を任したい。」

 

「はいはい!私が管「お前は、却下だ!」なんでよ!?」

 

すぐさま、手を上げては却下されたアクアはぶつくさ文句を言っていた。

正直コイツに預けたら、1日で無くなる。

めぐみんとダクネスもうんうんと首を振っていた。

 

「では、わたしとダクネスが預かります。お金関して余り使い道がないわたしとダクネスが管理するという形でいいと思います。」

 

めぐみんがまともな意見を出した。

確かに、管理者をめぐみんやダクネスにするのは良い気がするが、なぜオレの名前がでない?

 

「言っておきますが、カズマの名前がでない理由としては、カズマもアクア同様にお酒や変なお店で使い込んでしまいますから。」

 

オレが疑問に思っていたことを回答してくれためぐみん。

 

「おい、待て。酒は分かるが変な店ってなんだ?オレは行ってないぞ!」

 

「ギルドを出て、最初の路地を右に曲がってそのまま真っ直ぐ行って、左側き細い道に入って「もう、いい!」なんでですか?」

 

コイツ、オレが秘密裏にしている如何わしい店の場所知ってやがる。

まさか、ダクネスやアクアも。

2人の方を見ると、頭にハテナマークを出していた。

よし、大丈夫だ。

 

「と、とりあえず、管理者はめぐみんとダクネスで決定でいいな。」

 

「はい。」「わかったわ。」「了解だ。」

 

「んじゃ、今日から魔王幹部が倒されるまでは自由行動だ。んじゃ、解散。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――

 

――――――

 

―――

 

 

んでだ、暇を持て余したオレは、めぐみんの日課の1日1発爆裂魔法を撃つという訳の分からないものに付き合わせられ、街を出て放つ場所を探していた。

ひょっとしてたが、魔王幹部が倒されるまでコレに付き合わせられるのか。

一応、行く前に1人で行けと言ったが、全魔力を使い果たして倒れている私を誰が運んでくれるのですかと開き直られた。

 

「なぁ、めぐみん。もうここら辺でいいじゃないのか?適当なとこ撃って帰ろうぜ。」

 

街を出てすぐの所で、爆裂魔法を撃たないかと促したが、めぐみんは首を横に振った。

 

「ダメです!もっと遠くに行かないと、また守衛さんに怒られてしまいます!」

 

おい、こいつ、今 ''また’’ って言わなかったか?

確認の為、オレは口を開いた。

 

「おい、またって言ったか?音がうるさいとかで怒られたのか?」

 

「……はい。」

 

めぐみんは小さい声で返事をした。

こいつ……。

 

仕方ない、とりあえず歩いて行くか。

オレとめぐみんが、街から出てから1時間くらいたった頃に、随分昔に捨てれられたであろう廃城が見えてきた。

 

「カズマ!あれにしましょ!あれ!廃城だから、壊れても誰にも迷惑はかけません!」

 

「あ、あぁ。」

 

まぁ、確かにこんな辺境な所に住むやつなんていないよな。

とりあえず、めぐみんにゴーサインを出した。

 

「よし!では、『紅き黒煙、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!エクスプロージョン!』」

 

廃城に大きな爆発をあげ、1つの炎の柱を立ち、爆裂の振動と爆風がオレ達を襲った。

その後、廃城からは黒煙が空へと登っていった。

 

その様子を、魔力が無くなった事で立てなくなっているめぐみんが「最高……。」と呟きながら気を失った。

 

こうして、オレとめぐみんの新しい日課が始まった。

 

それからというものの、毎日廃城に向かっては爆裂魔法を撃ち、時には、雨が降る夕方でも。

それは、穏やかな食後の昼下がりでも。

それは、朝起きて爽やかな早朝でも。

どんな時でもめぐみんは、爆裂魔法を撃ち続けた。

いつしか、オレは爆裂魔法を見慣れたせいか、その日の爆裂魔法の出来が分かってきた。

 

「今のは、今までのに比べて1番いいじゃないか?心地よい爆風、体全体にズンと来る爆発音、爆発後の1本柱の輝き。ナイス爆裂!」

 

「ナイス爆裂!ふふふ……カズマもようやく爆裂魔法の良さが分かってきましたね。どうです、カズマも爆裂魔法覚えるのは?」

 

「うーむ……爆裂道も面白そうだが、パーティ編成で魔法使い2人で、近接であるハチマンが囮みたいな感じになっちまうんだよな。」

 

「それは、ダメです!では、やはり今まで通りカズマも近接でお願いします。」

 

そんなアホなやり取りしながら街へと帰った。

 

―――――――――――――――

 

―――――――――

 

―――――

 

 

ハチマンが居なくなってから、2ヶ月が過ぎた時の事だった。

 

「緊急!緊急!全冒険者さんは、今すぐ武器を持ち戦闘態勢で正門に集合して下さい!」

 

街に鳴り響くのはお馴染みの緊急アナウンス。

そのアナウンス通りに、武器や防具を整え正門へと向かった。

正門には、多くの冒険者が集まる中、オレ達は凄まじい威圧を放つモンスターに呆然としていた。

 

「……貴様ら!毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日!俺の家に爆裂魔法撃ち込みやがって!どこのどいつだ!爆裂魔法撃ち込んでくる馬鹿野郎はっ、誰だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

魔王幹部、もう限界だと言わんばかりに怒っていた。ずっと何かに耐えてきたが、とうとう我慢が切れてしまった様な、追い詰められたデュラハンの絶叫に、オレ達の周りにいた冒険者もざわついた。

というか、周りの冒険者に関しては何が何だか理解が出来ていない。

ただ、わかるのは爆裂魔法というワードだけだ。

 

「……爆裂魔法?」

「爆裂魔法使える奴といったら……。」

「爆裂魔法って言ったら……。」

 

周りの冒険者の視線が、めぐみんに視線が自然と集まり始めた。

視線が集まって来たことに焦ったのかめぐみんは、フイっと横にいた魔法使いの女の子を見た。

視線に釣られてか、めぐみんに視線を集めいた者は魔法使いの女の子に集まった。

 

「ふ、ふぇ!?な、なんで私に視線が……わ、私じゃないよ……。だって、爆裂魔法なんて使えません!それに、わた、わた、私は駆け出しで……。」

 

魔法使いの女の子は、涙目になって訴えていた。

ちょっと可愛いから、このまま見てみようかなと思ったら、隣でガタガタ震えているめぐみんがいた。この震えは罪悪感から来たのであろう。

 

「ふぅ……。」

 

めぐみんは、嫌そうな顔しながら前に出た。

 

「めぐみん?」

 

ダクネスは、前に出るめぐみんに驚いていた。

街の正門に佇むデュラハンへと、めぐみんは歩き始め、デュラハンとの距離が10メートルほど離れた場所で止まった。

もちろん、仲間であるオレ、アクア、ダクネスは後ろに付いていった。

 

「お、お前かぁ!お前が毎日毎日、爆裂魔法をぶち込んでくる○チ○イか!俺が魔王軍の幹部だと知っていて喧嘩を売るなら乗ってやるよ!それに普通喧嘩売るなら城をちゃんと攻めて来いよ!その気がないなら街で震えていろよ!なんなの、陰湿な攻め方しやがって!この街の冒険者のレベルが低いことも我々も知っている!だがな、それを知っていたが為に見逃していた雑魚に、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポンポンポン爆裂魔法撃ち込みやがって!!頭おかしいんじゃないか、お前!」

 

よほど堪えていたのだろう、手に持っていた兜や身体プルプル震えさせていた。

だが、めぐみんはその様子に若干怯むが、意を決して口を開いた。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

「……めぐみん?バカにしてるのか?」

 

「違うわっ!」

 

めぐみんの名乗りに受けたデュラハンは突っ込まれるのも、めぐみんも気を取り直した。

 

「我は紅魔族の者にして、そしてこの街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、こうして魔王軍幹部の貴公をおびき出す為の作戦……! まんまとこの街に、一人でノコノコ出て来たのが運の尽き!」

 

集まった冒険者達がざわめき始めた。

デュラハンに対して、ノリノリで言っているところだが、オレら3人はめぐみんの後ろでヒソヒソ話し始めた。

 

「なぁ、いつの間にか作戦になったんだ?」

「うん……しかも、サラッとこの街随一の魔法使いと言い張ってるな。」

「しー!黙っておいてあげなさいよ。今日は、まだ爆裂魔法使ってないのよ。しかも、後ろに冒険者控えているから強気なのよ。ほら、見守りましょ。」

 

そのオレ達のヒソヒソ話しが聞こえたのか赤面をしていた。

デュラハンとは言えば、どこか納得している様子だった。

 

「……ふん。まぁいい。お前ら雑魚にちょっかい出しに来た理由ではない。しばらくは、あの城に滞在するが、これからは爆裂魔法を使うな。いいな。」

 

「無理です。紅魔族は、1日で1回爆裂魔法を撃たないと死にます。」

 

「っんな、話し聞いたことないわ!適当な嘘を付くなよ!」

 

どうしよう、もう少しめぐみんとあのモンスターのやり取りが見たい。

見れば、アクアもワクワクした様子でめぐみん達を見ていた。

 

デュラハンは、外人がやれやれとやるみたいに肩すくませた。

 

「どうあっても、爆裂魔法を撃つのを止めないと。」

 

デュラハンは殺気を出しながら言うと、めぐみんはビクつきながらも小さく頷いた。

 

「よかろう……。俺は魔に落とした身ではあるが元騎士だ。弱者を狩る趣味はない。だが……。」

 

「ふん!余裕ぶっているのは今のうちです!先生、お願いします!」

 

めぐみんが大声で、叫んだ。

思わず、「はっ?」となって周りを見ると、恍惚の表情を浮かべているアクアの姿。

おい、まさか……。

 

「ふふふ……仕方ないわね!」

 

「はぁ!?」

 

「あんたのせいでね、マトモなクエストも受けられないのよ!」

 

意気揚々と走りながら杖(物干し竿)をくるくる回して、めぐみんの隣へと移動した。

 

「ほう、これはこれは。アークプリーストか、俺は仮にも魔王軍の幹部の1人だ。こんな初級レベルしかいない街のアークプリーストを恐るとも?そうだな…ここは1つ、そこにいる紅魔族の娘を苦しめてやろう。」

 

デュラハンは、禍々しいオーラの様な物を右手から発していた。

 

「ふん!何をするつもりかわかんないけど、私が浄化してやるわ!」

 

「間に合わんよ。」

 

ゆっくりと、オーラを纏った右手の人差し指をめぐみん向けた。

 

「汝に死の宣告を。お前は1週間後に死ぬだろう。」

 

指から黒い光を発した。

その瞬間、めぐみんの襟を引っ張って、自分の後ろに隠したダクネスに直撃した。

 

「だ、ダクネス!!」

 

めぐみんが叫ぶ同時に、ダクネスの身体から黒いモヤが発しては身体の中に入っていった。

 

くそっ!やられた、まさか死の宣告だったとは!

 

「おい、ダクネス大丈夫か!痛いところとかないか!」

 

オレが慌てて聞くも、ダクネスは手をワキワキさせていた。

 

「……ふむ、なんともない。」

 

「仲間同士の絆が深い分、自分のせいで呪いをかけられたという方がお前らには効く。ましては、死の呪文だ。紅魔族の娘よ、そのクルセイダーは一週間後に死ぬだろう。お前の大切な仲間は、一週間死の苦しみを味わいながら死ぬのだからな。貴様のせいでな!」

 

高笑いをしているデュラハンに対して、めぐみんはショックを隠せない表情をしていた。

その中、ダクネスは剣を使ってなんとか立ち上がった。

 

「き、貴様!つまり、私に呪いをかけては、俺の言うことを聞かなければ呪いを解かないという事だな!つまりはそういう事なのか!」

 

「ふぁ?」

 

あー、なんで緊迫した場面で、こんな事言えるだ?

てか、コイツの考えも理解したくない。

 

「呪いぐらいでは、わ、わた、私は屈しない!屈しないが……どうしよう、カズマ!見るがいい、あのデュラハンの兜の下のいやらしい目を!カズマが、受付嬢のルナや私や巨乳冒険者の胸を見る目と一緒だぞ!もし、あいつに捕まったら、私はどうなってしまうのか!はぁはぁ……考えるだけでも恐ろしい。」

 

ちょっと、待って!なんで、オレまで巻き添え食らってんの!?

冒険者の女性陣を見たら、みんな胸を隠していた。

 

「ふふふ……私が囮になっているから、その間に街の人や冒険者を避難を!行ってくりゅぅぅぅ!」

 

ダクネスは、デュラハンへと走り出したがなんとか抑えた。

 

「止めろ、ダクネス!デュラハンの人も困ってるから!」

 

まさか、デュラハンが小さい声で「きっつ……。」と言いながら後ろにたぢろいだ、まぁ分からなくもない。

 

「と、とにかく、これから爆裂魔法を撃ち込に来るな。それと、そこクルセイダーの呪いを解いて欲しければ、城に来るがいい!くははははははっ!」

 

笑いながら馬で帰っていった。

なかなか、不味い状況だ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

――――――――――――

 

――――――

 

―――

 

 

呆然と立ちすくむ冒険者達。

 

それは、オレに関しても同じだ。

オレの隣では、今にも泣きそうになっているめぐみんが杖を震わしては、立ち尽くしていた。

そして、ぎゅっと杖を握り直しては、街の外へと出ようとしいた。

 

「おい、めぐみん!どこ行こうとしているんだよ!」

 

「今回の件は、全てわたしのせいです。なので、わたしが!」

 

めぐみん1人で行ったところで、なにも変わらない。

ていうか……。

 

「オレも行くに決まってるだろ。爆裂魔法でアイツを倒せても、魔力が尽きて帰れないだろ。ついでに、帰りにハチマンでも探してながら帰る必要もあるしな。」

 

「……。そうですね!では、一緒に行きましょ!ていうか、先にハチマンを見つけましょ!」

 

オレの言葉に、笑顔を浮かべためぐみん。

んじゃ、ちょっと気合い入れますか。

オレのスキルでも、多少なりとも使えるはずだしな。

 

「おい!ダクネス、オレ達がお前の呪……いを……解決……。何してるんだ、お前。」

 

そこには、体育座りして凹んでいるダクネスの姿があった。

その隣には、じっとオレとめぐみんのやり取りを終わるの待っていたアクア。

 

やり取りが終わったの確認した、アクアが何でもなさ気に言ってきた。

 

「呪いなら、もう解いたわよ。」

 

「「はっ?」」

 

オレとめぐみんは、素っ頓狂な声を出した。

 

 



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4-20 帰ってきた我らの仮面ライダー

投稿が遅くなりました!
繁忙期がぁぁぁぁぁ!やっと、落ち着いたので
どんどん書いていきたいと思います。

最後の方とか、何回も書いては消してを繰り返していたので文書が変になっていたらすみません!

それと、誤字のご指摘ありがとうございます!



デュラハン襲撃から一週間と数日が経った。

その間に、やはりクエストは受けられないオレ達は、バイトや筋トレ、ポイントでスキルを取ったり、ハチマンを探しに行ったりしながらも有意義に過ごしていた。

 

そんな感じに過ごしていたら

『 緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください! ……特に、冒険者サトウ・カズマさんとその一行は大至急でお願いします!』

と放送が流れた。

 

正直、なんでこんな放送が流れたのかは察してはいる。だから行きたくない。

 

周りの冒険者も行きたくなさそうな面をしながらも、装備をゆっくりゆっくり取り出しては、溜息を吐いて出ていった。

 

仕方ない、オレも行くか……。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

―――――――――

 

――――

 

 

オレ、アクア、めぐみんが正門に着くと人集りを掻き分けながら前にでると、やはりアイツが来ていた。

アイツとは……そう、デュラハンである。

 

デュラハンは、オレとめぐみんの姿見るなり開口1番に叫んだ。

 

「この人でなし共がぁぁぁぁああああ!何故城に来ないんだ!」

 

じわじわとデュラハンに近づきながらも、めぐみんをかばう感じで前に出ては、デュラハンの問に答えた。

 

「え、えっと……何故城に来ないかだっけか。とりあえず、なんで城に行かないと行けないんだ?爆裂魔法を撃ち込み行くわけでもないのに。あと、人でなしとはなんだ?」

 

オレは疑問をぶつけた。

デュラハンは身体をプルプル震えさせながら、めぐみんを指差した。

 

「撃ち込んでないだと……。き……きき……貴様!!そこのアホ娘は、あれだけ言ったのにも関わらず、ポンポンポンポンポンポン毎日撃ち込みやがって!」

 

「はぁ?」

 

だって、そうだろう。あれからというもの、日課であった爆裂魔法撃ち込みに行くのをやめていた。

それに、めぐみん1人で行っていたとしても魔力使い切って倒れて動けなく……うん?1人なら……。

 

「おい、アクア。」

 

「な、なによ!」

 

「お前、めぐみんの協力者だろ。」

 

「そ、そんなわけ、な、な、ないでしょ!食べ物に釣られてなんかないんだから。」

 

あー、ダメだぁ……。本当にコイツはポンコツだ。

アクアのバレバレの嘘ついている隣で、オレと目を合わせないめぐみん。

 

「め~ぐ~み~ん~。ほらっ!こっちを向け!」

 

オレはめぐみんの顔を掴み無理矢理正面を向かせては、めぐみんの付けてる眼帯を引っ張った。

 

「やめ!やめて!それは、それはダメです!本当のこと言いますので!本当にそれだけわ!ダメ、ダメ、そんなに引っ張っちゃ!」

 

「ほら、早く言うんだ。」

 

「は、はい!あの後、城ではなく草原に撃ったんですが……、物足りなくて…あの城というより巨大な物体に撃つ快感が忘れられ「ギルティ!」イッタイ!!!メッガァァァァァ!!!」

 

めぐみんは、その場で目を抑えながら、のたうち回っている。

このポンコツ共が!

余計な事さえしなければ、派遣組が倒して平穏な日々が過ごせたのに。

しみじみとそんな事を考えていたら、デュラハンがオレの事を指差して言った。

 

「言っておくが、貴様も同罪だぞ、そこ緑のマント!貴様は仲間が呪いに掛かったのに関わらず、え、え、え、えっちな店ばかり行きやがって!うらやま……くっ!けしからんぞ!この人でなしがっ!」

 

周りもデュラハンの言葉にヒソヒソと話し始め、少し後ろにいたアクア、隣でのたうち回っていためぐみんも目を抑えながら軽蔑する目をしながら

「カズマ……あんた……。」

「そんなとこに行ってたんですか……。」

と言った。

 

「えっ、あっ……ちっくしょう!またオレの評価が下がっちまった!なんで、んな事を魔王幹部の奴にバラされないといけないんだよ!なんなの!本当に!オレは……オレは!ダストとテイラーに誘われただけなのに!!!!!」

 

オレは、その場に崩れ落ちては地面をバンバンと拳を叩きつけた。

 

「「ちょっ!?あのカスっ!!オレ達まで売りやがったな!!!えっ、あっ、ちょっ!リーンさんやめ、やめ……アーー!!」」

 

地獄に落ちるなら少しでも仲間は必要だ。

いい仲間を持ったものだ。

さてと……。

オレは、立ち上がってデュラハンに指を差した。

 

「おい、むっつりデュラハン!」

「誰が、むっつりだ!」

 

「なんで、オレがあの店に行った事を知っているんだ!」

 

「ふんっ……そんなことか。俺はある奴にアドバイスを貰ってな。使い魔を使って、貴様らを少しの間だが監視をさせて貰った。」

 

おいおい、誰だよ。余計な事をアドバイスした奴!

 

「監視させて貰っていたが、言わせてもらうが貴様らもそこの変態緑マントと同罪だからな!誰1人、あのクルセイダーを助けようとせずに飲み会やら下らない夢を語ったり、誰1人気にかけなかったクソ共がっ!コレでも生前の時は、真っ当な騎士だったが、仲間がピンチになれば全員で助けに行ったというものの!貴様らは……!!!!…………うん?」

 

後ろから恥ずかしそうにダクネスが出てきた。

ダクネスの登場に、デュラハンも困惑をして奇声を発した。

 

「な、なぜ……生きている?ていうか、本当に生きてるの?」

 

「えっ、なんですか?あのデュラハン?まさか、ず~と、私たちの事を待っていたの?帰った後、すぐに呪いが呪いが解けたとも知らずに?監視までしてたのに気づかないとか!プークスクス……ウケるんですけど!!!」

 

アクアは、デュラハンを指差し小馬鹿にしながら大笑いしていた。

まぁ、そうだ。監視をしていたとはいえ、まさか呪いが解けた後に実家に帰ってたからな。デュラハンは、知らなくて当然だ。

ちょっとだけ、デュラハンに同情した

同情されたデュラハンはというと、困惑しつつも威勢を張っていた。

 

「お、俺がその気になれば、この街の住人を皆殺しにだってできるんだぞ!」

 

「ふぅ…あんた、アンデッドの癖に生意気よ!」

 

「駆け出しの冒険者風情が、俺にダメージを与えられると思うなよ!」

 

「ターンアンデット!!!」

 

「ぎにゃぁぁあああ!!!!」

 

アクアの呪文と共にデュラハン下に魔法陣が展開されて、光の柱が発生しデュラハンが乗っていたアンデットの馬が消滅と共にデュラハンは床を転げ回った。

あっ……コレ勝てるかも。

 

鎧をガシャンガシャンと音を立てながら、なんとか立ち上がる姿を見たアクアは狼狽えていた。

 

「ねぇ、カズマ、カズマ!やばい!効いてないかも!」

 

「いや、結構効いてたんじゃないか?」

 

「いや、だって!」

 

「んじゃ、もう一度やってみたら?」

 

「うん、分かったわ!ターンアンデット!!!」

 

デュラハンは、思わず「えっ?」という声出してはゆっくりとこっち側に身体を向けた瞬間に、先程の倍の範囲の魔法陣が下に形成されて、光の柱も先程より太くて大きい物が発生した。

 

デュラハンは先程と同じように、その場に奇声を発っしながら転げ回った。

 

「ひぃぃぃぃああぁぁぁ!お目目が、お目目がが……。」

 

アクアも先程と同じように、デュラハンの姿を見ては狼狽えていた。

 

「ど、どうしよう、私の浄化魔法が効かないわ!」

 

「いや~、ひぃぃぃぃああぁぁぁ!とか言ってたから効いてるんじゃないか?」

 

まぁ、女神の力を使って1回で浄化出来なかった事で、狼狽えているんだろう。

だが、爆裂魔法を撃ってから浄化さえ決まれば勝てる!

間違いなく、勝てる!

 

「……くはははははッ!もう良い……。街の者共を皆殺しにしてやる!来い!サモン アンデッド!!!」

 

デュラハンは、片膝を着いたまま魔法陣を展開してはかなりの数のアンデッドを召喚した。

周りもアンデッドの数を見て、ざわめき始まめては ’’「プリースト!!早く」・「街にいるプリーストを集めろ」「あんだけの数、この街のプリーストだけで足りるのか」’’などと集まっている冒険者がざわめき始めた。

 

「フハハハ……!貴様らが悪いんだからな!行け、アンデッド共!奴らを皆殺せ!」

 

デュラハンの声と共に、召喚されたアンデッドは走ってきた。

流石にヤバい。コレだけの数を倒そうにも時間とレベルが足りなすぎる。

オレが短剣を腰から取り出し、身構えて待っているとアンデッド達は冒険者が集まる方では無くオレ達の方へと走ってきた。

 

「おい!?どうなってるんだよ!!な、なんで全員こっちに向かって来てんだよ!」

 

「そんなこと、私が分かるわけないでしょ!」

 

「1度散開しましょ!」

 

「いいや!私が囮に!」

 

「おい、バカ!」

 

アンデッド達の囮になる為、ダクネスはその場に立ち止まった。だが、アンデッド達はダクネスに見向きせずに追い越していった。

 

「なぜだぁぁぁあああ! 」

 

ダクネスが悲痛の叫びが聞こえるが、今は無視だ。

くっそー、なんでこっち来てんだよ!

恨みでも買った覚えないぞ!

てか、さっきまで横で一緒にいためぐみんがいない。

周りを見渡すと、岩の上に頑張って登ろうしているめぐみんの姿。

あいつ、さっさと避難しやがって!いや、待てよ。

 

「めぐみん!爆裂魔法の詠唱を頼む!オレが合図したら撃て!」

「わ、わかりました!」

 

「アクア!」

 

「な、なによ~!もう!」

 

「オレに着いてこい!」

 

アクアは必死でオレの後を着いてきた。

その事を確認次第に、オレはデュラハンの方へと走った。

 

「き、貴様ら、なにをするつもりだ!?」

 

デュラハンは、急にオレ達が方向転換してデュラハンの元へと走り出した事に、オレ達が何をするのかわからない分困惑をしていた。

 

もう少し、もう少し……あと、少し!

よし!今だ!

デュラハンまでの距離が数メートルの所で、オレはアクアを横に突き飛ばし、デュラハンの前でアクアと二手に別れた。オレ達の事を追ってきたアンデッド達は止まることは出来ずにデュラハンへと雪崩込んだ。

 

「今だ!めぐみん!」

 

「なんと!カズマが、こんなにも最高のシュチュエーションを用意してくれるとは!感謝します!我が名は、めぐみん!紅魔族、最高にして最強の者なり!我が力にひれ伏すがいい!エクスプロージョン!!」

 

デュラハンとアンデッド周りに多大な魔力の渦が発生した。そして、渦は徐々に集束しては、大きく炎の柱立てては、また炎は下へ下へと集束しては、ピカッと閃光が発生したと共に大きな爆発と爆音が発生した。

そして、爆発が時間と共に収まり、爆発が発生した場所には砂煙が周りに立ち込めた。砂煙も爆発と同様に徐々に風で晴れては、爆発した場所もといデュラハン達がいた所には、大きなクレーターが出来ていた。

 

「ハッハッハっ!我が力の前では、誰も声も出なかったか。ふぅ……気持ち良かった……。」

 

「おい、おんぶはいるか?」

 

「お願いします。」

 

これさえなきゃ、本当にいいのにと思いつつも、めぐみんをおんぶしては良くやったと思っている。

後ろで控えていた冒険者もクレーターを見ては、続々と声をあげて言った。

 

「おい、みんな!やったぞ!あの頭がおかしい子がっ!」「あぁ!頭がおかしくて名前もおかしい女の子がなっ!」「えぇ!本当に頭がおかしい女の子がやってくれたわ」

 

まぁ、大抵の声をあげた人間からは頭がおかしいと最初に着いているがな。

そんな声を聞いためぐみんは、ボソッと「カズマ、今頭がおかしいと言った連中の顔を覚えていてください。絶対にぶっ倒しますので。」と言ってきた。

 

だが、喜んでいたのは、つかの間クレーターの中心からガシャンガシャンと金属音がなった。

そして、笑い声と同時に何事も無かったかのようにデュラハンが立ち上がった。

 

「くははははははっ……!面白いぞ!本当に面白いっ!初心者しかいない街だと思っていたが、まさかここまでしてくれるとな!…くはっ、では、この俺自ら貴様らの相手をしてやろう。……我が名はベルディア。魔王軍斬り込み大隊隊長にして、デュラハンのベルディア。さぁ、何処からでも来るがよい。」

 

くっ……。めぐみんには、もう魔力はない。アクアの魔法もダメージは入るが、致命だになるダメージを与えなきゃ、何発も撃たないと致命にはならない。どうする……!

 

オレが思考張り巡らしていると、オレの横をダストを先頭に多くの冒険者が走り抜けた。

 

「こんな奴は見てくれだけだ!それにすぐに、この街の切り札やってくるしな!」

 

「さっきの爆裂魔法のダメージで実際はフラフラしてるのに、気張ってるだけだぜ!それに、どんな奴でも後ろに目がある訳じゃねぇ!行くぞ!」

 

「「そうだ!そうだ!」」

 

この街の切り札……?

疑問を浮かべている内に、デュラハンことベルディアの周りを冒険者が囲んだ。

 

「ふん……。来るがよい。」

 

「やっちまえ!」

 

先頭だったダストの叫びに全員が各々の武器を攻撃のモーションに入った。

その瞬間に、片手に持っていたベルディアの自身の頭を頭上に高く投げた。

高く投げられた頭は、地を向きながら宙を待った。

その光景を見た瞬間、今まで生きていて初めてと言わんばかりに背筋が凍った。

それは、オレだけではなくベルディアに攻撃しようとした冒険者達も同じだったらしい。

 

「おい!ヤバい!逃げっ……。」

 

ベルディアの背中に目が有るのか如く、するりと剣や斧、はたまた矢を避けながら1人1人攻撃してきた冒険者を斬り捨てていった。

そう、気づいた瞬間には目の前で知り合いが、何の躊躇もなく殺されたのだ。

 

ドシャリという音と共に、多くの冒険者の体がその場に崩れ落ち。この世界での友だったダストもその場に崩れ落ちた。

その音を聞きつつ、宙を舞っていたベルディアの頭がベルディアが伸ばした手元へと帰ってきた。

何事も無かったのようにベルディアは述べた。

 

「次に来るやつは誰だ?」

 

その言葉と光景に、門の前いた冒険者達は怯みを見せていた中、テイラーは叫びをあげた。

 

「てめぇ!てめぇだけは!許さねぇ!」

「だ、ダメよ!テイラー!行っちゃダメ!」

 

ダストが殺された事に激怒しているテイラーを、必死に仲間であるキースとリーンが止めていた。

 

ヤバい……。正直言って舐めていた。

さっきの攻撃で、かなり間抜けにダメージを受けていたが、あくまでも相手は魔王幹部だ。

オレはアクアの方を見ると、既に先程までいた場所にいなかった。

この場で、唯一の切り札がアクアはベルディアを無視ては、斬り捨てられた死体をぺたぺたと触わっていた。

あいつは、何をする気なんだ。

 

その光景を見ていた時に、怯えていた冒険者が声をあげた。

 

「大丈夫よ!こんな奴は、ミツルギさんが切り伏せてくれるわよ!」

「そうだ!ミツルギがいる!オレらの切り札がっ!」

 

その声は次第に大きくなっていったが……済まない、みんな。ミツルギは、今レベル1で魔剣を持っていない。そう、このオレのせいでな。

 

「ほーう。そいつは強いのか。では、そいつが来るまで持ちこたえられるかな。」

 

ベルディアは、ゆっくりと歩みを寄ってきた。

その姿に誰しもがたじろぐ中に、1人だけベルディアの前へと立ち向かった。

 

「……私が相手になろう。」

 

我らの仲間のダクネスか立ち向かった。

いつもはポンコツだが、装備は特注品の重厚の白い鎧に、ステータスも防御に割り当ててるから硬さはある。

だが、いくら硬さがあるとはいえ相手は魔王幹部の1人だ。最初の一撃一撃の攻撃は受けきれても時間経つに連れて鎧が持たないのでは。

オレが不安からダクネスを止めべきか止めないべきかを悩んでいるとダクネスは自身有りげに言った。

 

「大丈夫だ、カズマ。私の頑丈さは、誰にも負けない。それに所持しているスキルで武器と鎧にも効果かあるはずだ。だが、奴も剣が良い物だとしても、金属製の鎧を紙の如く切り伏せることは出来ない。奴も攻撃系のスキルに持ちだ。なら、私の防御スキルと奴の攻撃スキルがどっちが上か勝負してやる!」

 

なんかいつにも増して攻撃的なダクネス。

だが、いくら受けることは出来ても、お前の場合攻撃当たらないじゃないか。

 

「やめとけ、ダクネス。あいつは攻撃だけじゃなく、回避も凄かっただろう。あれだけの冒険者の攻撃が当てられなかったんだ、不器用なお前に当てられるはずないだろ。」

 

オレの言葉にピクリとも反応せずに、ベルディアと対峙しているダクネス。

 

「……あぁ。でもな、カズマ。確かに私は不器用だ。だがな……、聖騎士として譲れないものだってある。だから、ここは任せてくれないか?」

 

何の事を言っているのかは分からないが、本人にとって本当に譲れない物があるのだろ。

剣をゆっくりと正眼に構え、ベルディアへとダクネスは斬込みに走った。

 

「ふふふ……。いいぞ、いいぞ!俺も元騎士だっ、クルセイダーの貴様が相手なら是非も無し。さぁ、相手してやろう。」

 

ダクネスは上から真っ直ぐに斬り掛かったが、ベルディアも同様に大剣を真っ直ぐと斬込み、互いの剣から火花を放ちながらぶつかり合った衝撃で砂煙が大きく舞った。

砂煙で、ダクネスとベルディアの姿は見えなくなってしまったが中からは剣同士がぶつかる音は聞こえた。

砂煙が徐々に晴れていくと、鍔迫り合いをしている姿が現れた。

 

「クルセイダーやるではないか!」

「ぐぅぅ。なんて……なんて力強いんだ!この力強さを持って私を屈服させては、その力で、私の装備を徐々壊して、皆の前で強さを示しながらも少しずつ上半身を肌けさせていくんだな!まったく……たまらん!!」

 

「おい、やめろ!俺まで変態扱いされるわ!」

 

鍔迫り合いをしながら、そんなアホな会話していたが2人は後ろに飛んだ。

ダクネスは、顔を赤らめながらもベルディアの一撃に注意し、ベルディアの懐に向かって走り出した。

ベルディアも、その行動に対して大剣を横に大きく振り、ダクネスの首元を狙ったがダクネスは一気に体制を低くして紙一重で大剣を避けて渾身胴切りを放った。

 

 

 

……………………………………。

 

 

 

ズバッだのガンッだの音がしない。

音がならない理由は、剣とベルディアの距離を目測を謝ったのか、剣は全然ベルディアには届いていなかった。

 

やだ、もう!あの子ったら、カッコよくいけたと思ったのに大事な部分で外すなんて恥ずかしい。

さすがウチのポンコツパーティーの1人だ。

 

「……なんたる期待外れだ。」

 

ベルディアはつまらない相手と言わんばかりに口調で、ダクネスに袈裟懸けに、無造作にその剣を片手で一閃した。

 

「ダクネーース!」

 

「私の新調したばかりの鎧がぁぁぁぁぁ!」

 

「ふぁ?!」

 

ベルディアは、本気ではないが普通の冒険者なら殺せるほどの力で剣を振ったとはいえ、鎧のみしか傷ついていないことに、素っ頓狂の声を上げていた。

 

しかし、あのバカは自分の身よりも鎧が傷ついたほうがショック受けてやがる。

だが、今ので時間が稼げる!

この時間を使って、魔法で何が効くか調査だ。

 

「魔法使える冒険者の皆さん、ウチのポンコツに構わずにベルディアに色々と魔法を打ってくれ!多少ポンコツに当たっても防御力があるから大丈夫だから!」

 

「「「はい!」」」

 

冒険者の返事と共に、様々な魔法がベルディアに飛び交っていった。

 

「小賢しい!」

 

「熱い!熱い!!、冷たっ!、あががが……!目に砂がぁぁぁ!……はぁはぁ……。街のみんなから様々な魔法で攻められる……これはコレで……ひぃぃぃ……!」

 

炎、氷、雷、砂塵、水などの攻撃がベルディアとダクネスに飛び交った。

その中で、水だけは他とは違い大袈裟にベルディアの姿があった。

もしかして……。

 

「皆さん!集中して水攻撃にしてくれ!」

 

「「「はい!」」」

 

ベルディアに向かって水の魔法が飛び交う。

クソっ、回避能力が高くて当たらない!

必死にクリエイト・ウォーターで狙撃するが当たらなくて、イライラしているとさっきまで死体をぺたぺたと触っていたアクアが不思議そうな顔をしながらやってきた。

 

「ねぇ?カズマ、何してるの?」

 

「おまっ!今、アイツの弱点かもしれない水を当てようとしているだ!てか、お前もやれ!」

 

「え~。」

 

「え~、じゃねえよ!うん……そうか、お前水を司る女神とかいいながら実際は、あんまり使えないんだろう?ぷぷぷっ……水を司る女神とかいいながら実際は、宴会の神様(笑)なんだろ?」

 

「なんでっすってぇぇぇええええ!いいわよ!見せてあげるわ!水の司る女神だって証拠をっ!そして、それを見て、私を讃えなさい!カズマ!……この世の全ての我が眷属達よ……水の女神アクアが命ず……」

 

「えっ……。」

 

「なんだ……あれは……。」

 

デュラハンもアクアの周りに集まる水の量を見てや驚きが隠せない。

 

「我が声、我が願いに答え その力を世界に示せ」

 

水は、まだまだアクアの周りに集まり続ける。

その量は、この街の冒険者全員がクリエイト・ウォーターを使っても集まらない程の量が集まった。

 

「くっ……いくら回避能力があってもあれはヤバい!……ぐお!?なんだ!誰かに足を掴まれてる?!」

 

ベルディアは逃げようとしたが、足を動かしたが片方の足にがっしりと様々な魔法を受けて倒れていたダクネスが掴んでいた。

 

「離せ!このド変態騎士が!」

 

「なんという心地の良い名だ!」

 

一向に離さないダクネス、空もやがて曇り、アクアの集めた水は雲へと集められた。

 

「ふふふ……カズマ見ておきなさい!これが私の力よ!セイクリッド・クリエイト・ウォーター!!!」

 

アクアが魔法発動すると、雲から大量の水が降り注いできた。その水は、ベルディアを飲み込んだ。だが、水はベルディアを飲み込んだだけでは収まらず、草原一帯の木々や街の城壁を破壊し、後ろに控えていた冒険者達も至る所に流されるという災害レベルまで発展した。

もちろん、オレも流された。

だが直撃したベルディアは相当なダメージが入った筈だとベルディアがいた場所を目視すると、そこには青緑色の炎の柱が発生していた。

 

「ゴホッゴホッ…なんだ、あの炎の柱は!」

 

水を飲み込んだせいで、咳き込みながらも思わずその光景に圧倒された。

そして、炎を纏いながらベルディアが炎から出てきた。

 

「正直かなり焦った……だが、彼奴から貰った力のおかげで助かった。さて……、俺をここまで苦しめたアホゥはどこだ。」

 

本当にヤバい……。

ベルディア自身が弱まっている様子はなく、むしろ前よりも禍々しく力強くなってるんだが。

ここは、息を潜めながら 攻め込むタイミングを探

「なんで!なんで、あの水の量に対してダメージが入ってないのよぉぉぉ!チートよ、チート!そんなの汚いわ!」そうとしたがポンコツアクアが声をあげていた為、出るしかないな。

 

「おい!デュラハン、さっきの炎はなんなんだ!」

 

「ふんっ、そんな事はどうでもよかろう。今から貴様は死ぬのだからな。」

 

そう言うと、ベルディアは剣を大きく横に薙ぎ払うように振った。

その瞬間、大きな爆音と共に衝撃波が飛んできた。洪水で流されも何とか立ち上がった冒険者達は、もちろんオレの溝に衝撃波の衝撃が走り、その場に膝から崩れ落ちた。

衝撃により胃から何かがこみ上げてきては、その場に吐き出した。

吐血とまでは行かなくても、胃酸や胃に溜まった水分などで水溜まりができた。

 

「ふん、振っただけでこの威力……。良き力を手に入れた。」

 

溝付近を抑えながら、ベルディアを見ると手をグーパーグーパーと繰り返しながら高笑いをしていた姿があった。

 

「さて……この力も試しては見たいが、もう試せるような奴はいない。なら、作り上げればよいのか。」

 

ベルディアの発言に、何をするつもりなのかは検討も付かないが、その場に居たヤツらはこの場から逃げなければ死ぬという事だけは確実だった。

ゆっくりとベルディアは、歩み初めて倒れている冒険者を掴んだ。

 

「確か……貴様は、酒を飲みながら夢を語っていたな。なんでも、魔王はオレが討伐するだとか……下らぬ!」

 

ベルディアは、掴んだ冒険者を投げ捨てては大剣手に取り冒険者を刺した。

そして、また歩み初めては1人、また1人とそいつが語った夢を否定しながら殺していった。

なんだよ、この状況は!どうしたらいいんだよ!

 

「おや……。これはこれは、爆裂魔法を撃ってくれた小娘ではないか。確か、貴様の夢は紅魔族の長になり爆裂魔法の素晴らしさを広めるだったか……。ふんっ、貴様も下らぬ。貴様には散々転けにされたが、今の俺は気分が良いから貴様は、この大剣で斬ってやろう!ふんっ!」

 

ベルディアは、めぐみんを大きく空へと放り投げた。

また、目の前で仲間が殺される。

オレは必死に立ち上がって、ベルディアの下へと走ろうとしたが衝撃波のダメージ大きく足がふらつき歩こうしたが前に倒れ込んでしまった。

 

「くそー!めぐみーーーーん!」

 

「ふはは……!」

 

「た、助けて下さい!はちまーーーん!」

 

めぐみんは落下しながら、行方不明になっている仲間のハチマンの名前を上げていた。

そして、もう少しでベルディアの剣の斬れる距離になった瞬間、オレは目を瞑った。

 

 

 

いくら待てど、めぐみんの身体が下に落ちる音は聞こえなかった。

ゆっくりと目を開けると、ベルディアはその場に膝を着いていた。

何が起きたのか、さっぱり分からない状況だった。この状況に呆気を取られていたが、めぐみんの姿を探した。

ベルディアの周りには、めぐみんの姿はなかった。まさかと空を見上げると、そこには見慣れたロボットが、めぐみんを抱っこしていた。

 

「おい、デュラハン。さっきから人の夢を下らないと否定ばかりしやがって。」

 

「ぬっ……。」

 

オレの後ろから聞き覚えのある声がした方を見た。

その声の持ち主は、淡々と言葉を続けながら歩き始めた。

 

「なぁ、デュラハン。お前には分からないと思うが夢を持つと、時々すんげー熱くなったり、切なくなるんだ。」

 

ピッ……。

携帯からなる機械音。

 

「だがな、ある人は夢を呪いだと言っていた。その呪いは夢を叶えければ解けない呪いなんだと。」

 

ピッ……。

見たことがあるアホ毛とドロドロと魚が腐ったような目を持つし人物。

 

「俺もその意見には同意している。それに夢を叶えられない奴の方が多いしな。でもな……そんな呪いからでも、そいつ等とっては1つの経験で呪いなんて思ってもねぇんだよ。その経験があるからこそ、また違う夢を追う事ができるからな。」

 

ピッ…… standing by……。

 

「俺には、胸張って言えるような夢はない。だがな、この手の届く範囲の奴らの夢くらい護る事は出来る!!」

 

「変身!!」

 

complete。

 

その人物は仮面ライダーファイズへと変身した。

そう……その人物とは行方不明だった我らの仲間のハチマンだ!

それにしても、クソっカッコイイ登場しやがって!

…危うくハチマン惚れちまうとこやった。

ふぅ……。



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4-21 新フォーム

書いていた分が飛んだ時ほど、ショックはない。
というより、小説を書いている方々はスマホ打ちなのかキーボードで打っているのか知りたい。

あと、SIC仮面ライダーファイズのファイズフォンがポロッと落ちるのどうにかならないだろうか。

と悩むクロスケです。
次回はのんびりまったりした話しを書きます。


ファイズに変身して、カズマの元へと向かった。

 

「おい、カズマ。立てるか。」

 

「おう、なんとか。てか……おせーよ、ハチマン!」

 

「悪かった。てか、そんだけ、元気あるなら大丈夫だな。とりあえず、そこら辺に転がっているアクアとダクネスを起こしてくれ。ダクネスは起き次第、倒れている人と死体を端に運んでくれと言っておいてくれ。」

 

「わかった!」

 

カズマの手を引っ張って体を起こし、カズマは自分の溝を抑えながらアクアとダクネスの元へと歩いていった。

さてと……。

 

デュラハンは、ゆっくりと立ち上がっては笑い始めた。

 

「フハハ……ようやくまともに戦えそうな奴が来たか!貴様が冒険者達の言っていたミツルギだな!」

 

「いや、違うぞ。」

 

間髪をいれずに否定をした。

ミツルギ?という奴どこかで名前を聞いたことが……。まぁ、今はどうでもいい事だ。

 

「ふ、ふん!まぁ、良い!どちらにしろ手応えがありそうな奴には違いない。我が名は、ベルディア。魔王幹部で斬込み隊長。推して参る!」

 

ベルディアは落ちていた大剣を拾い上げ、持っていた自身の首を八幡の頭上へと投げ、ベルディアは八幡の方へと走った。

八幡はというと、ベルディアが迫っているというのにも関わらず、その場に動かずにいた。

 

「ふん!」

 

大剣の間合いに八幡を捉えると、ベルディアは右足を力強く踏み込み、腰を捻らせ、大剣を大きく横に振った。

振られた大剣は、風を切る音を出しながら八幡の首へと剣先が向かった。

だが、大剣は八幡の首を斬らずに空を切った。

次の瞬間に、ベルディアの横腹に衝撃が走った。

 

そう、八幡は、大剣が当たる寸前、その場にしゃがみ大剣の攻撃を避け、その場でベルディアと同じように一歩、踏み出して腰を捻らせ、左の拳ですかさずベルディアの横腹にフックを入れた。

 

殴られたベルディアの鎧には、ピシッと音鳴らしてヒビが入った。

 

ベルディアは、殴られた脇を抑えながら数歩下がった。

だが、八幡は直ぐに次のモーションへと移した。

そのモーションとは、左足を踏み込み、先程と同じように腰を捻らせ右拳を鋭くベルディアの左の脇へと一撃を入れた。

 

ベルディアは、大剣をその場に落として両脇を抑え膝から崩れ落ちた。

 

後ろの方にいたカズマは、その光景を見て「嘘だろ」と口をあんぐり開けて驚愕していた。

 

そして、空からベルディアの頭が八幡の元へと落下してきた。

八幡は、ベルディアの頭を掴みベルディアの体へと軽く投げた。

 

「まさか、魔王幹部がこんなもんじゃないよな。」

 

「うぐぐ……。」

 

八幡のセリフに対して、苦虫を噛み潰したような声をあげるベルディアは、横腹を抑えていた手を地面に着けた。

 

「まだだ。サモン・アンデット!」

 

地面には大きな魔法陣が出現と同時に、前回の爆裂魔法で消し飛んだアンデットの数を優に超える程の数を出現させた。

出現させたアンデットも、先程の炎の柱を出した時に何かの力で魔力などが向上したおかげかアンデットの身体も大きくゴツイ鎧を装備していた。

 

「おいおい、さっきのアンデット達と数も形も全然違うじゃねえか!どうなってやがる!」

 

カズマは、そのアンデットの数や形を驚いていた。他にも水に流されて気絶していた冒険者も、徐々に目を覚ましては、アンデットを見て驚愕の声を上げていた。

 

「ほう……まさか、先程の彼奴から貰った力のおかげで、ここまで強化できるとはな。行け、アンデット共!あの仮面の奴を殺せ!」

 

アンデット達は、ベルディアの命令に従い次々と八幡の元へと走っていった。

だか、走ってきたアンデット達の走りゆく先に銃声と火花が飛び散り、アンデット達は立ち止まった。

銃声の先には、オートバジンの持っているバスターホイールから煙が立ち上がっていた。

 

お前、いつの間にめぐみんをカズマ達の方に運んだよ。まぁ、援護してくれるんだから文句は言わねえよ。

 

「なんなんだ!その使い魔は!クソっ!怯むな!行け、アンデット共!」

 

ベルディアの言葉に反応してアンデット達は走り出した。オートバジンも、それに呼応するように走り出しては八幡の隣へと来た。

八幡は、オートバジンのハンドルにミッションメモリーをセットしてファイズエッジを手にした。

 

「出力……アルティメット。」

 

ファイズエッジの出力を最大まで上げると、荒々しい赤いオーラを発生させた。

 

「セイヤー!!」

 

掛け声と同時に、ファイズエッジを横に大きく振った。

八幡との距離が、あと少しとまで迫り来ていたアンデット達はファイズエッジの荒々しい赤いオーラに触れた途端に鎧はバターの様に斬れ、斬られた箇所から青い炎を出しながらアンデット達はその場に倒れていった。

その攻撃の範囲は、5m先の敵までも切り裂いた。

 

「ふぅ……。オートバジン、残りを頼む!ベルディアとかいうデュラハンは、俺がやる。」

 

オートバジンはは残ったアンデット達の殲滅を始めた。

 

「……なんなんだ、この状況は!ここは、初心者冒険者しかいないはずだろうが!それになんだ、俺も俺でパワーアップしたはずだ!クソっ!もっと……もっと、力をっ!」

 

ベルディアの言葉に呼応するかのように青緑の炎が猛々しくなり、それと同時にガラスにヒビが割れるような音がなった。

ベルディアの鎧から徐々に青緑の炎が漏れ出しながら鎧の形状を変化させていた。

丸みを帯びていた指先は獣の爪のように尖り、鎧自身も丸みを失い角張ったデザインになり、抱えていた頭部の鎧も獣の様な形になり、全体に刺々しい姿へと変貌させた。

 

「そうだ!この力だ!彼奴からの貰った力が溢れてくる!だが、まだだ!」

 

ベルディアは、まだ力を求め続けた。

青緑の炎はさらに燃え上がり、鎧もそれに呼応して形状をもっと獣に近く変化させた。

そして、ベルディアは完全に別の者ととなった。

ベルディアの前の姿から、かなり掛け離れた姿だった。

 

「最高の良い気分だ。」

 

ベルディアは、抱えていた頭部を元ある位置へと戻した。そう、頭を首部分に戻したのだ。

もはや、今の姿から彼がデュラハンだと言っても分からない。

 

「さて……やるぞ。もう、先程みたいにはならないぞ。」

 

「……。」

 

八幡は、その姿を見ても驚いた様子はなく、ただ相手に真っ直ぐファイズエッジを構え続けていた。

 

「では、行かせてもらう!」

 

姿勢を低くしてドンッと音立てた瞬間にベルディアは八幡の前へと移動していた。

右手には自分の大剣を持ち、左手には冒険者の物であろう大剣を持っていた。

移動した時に発生した勢いを殺さず右手に持っていた大剣は横に大きく振った。

八幡は、後ろへと飛び大剣の攻撃を避けた。

しかし、ベルディアは体を回転させて左の大剣を同じように横に振り八幡へと攻撃をした。

 

「くっ!」

 

八幡は、ファイズエッジを大剣の攻撃を受け横へと吹き飛んだ。

身体は、地面に着くなりゴロゴロと転がっていった。

 

「「「ハチマン!!」」」

 

外野で見ていた者達は、吹き飛んだ八幡を心配するかのように名を読んだ。

その中で、ベルディアは嬉しそうな声を出しながら言った。

 

「フハハ……ッ!最高だぞ!貴様!本当に最高だ!まさか、あの攻撃が当たる瞬間に横に飛んでダメージを最小限にするとはな!」

 

「はぁ……。」

 

何事もなく立ち上がる八幡。

そう、八幡はベルディアが言ったように来る大剣に対してガードをしつつ横に飛んでダメージを小さくしながら吹き飛んだ衝撃を拡散するように転がってダメージを軽減させていたのだ。

 

「だが、軽減させたとはいえダメージには代わりない。」

 

「まぁな。痛てえもん痛てえからな。」

 

「フハハ……さぁ、もっと俺を楽しませてくれよ!」

 

ベルディアは先程と同じようドンッと音鳴らしては、八幡の元へと移動しては横に大きく振った。

八幡も、その攻撃を後ろに避け、ベルディアの二

撃目も避けた。

ベルディアは、間合いを詰めるように前に飛び真上から大剣を大きく振ったが、それも八幡は後ろへと飛んで避けた。

避けられた大剣は、地面に当たったがその勢いを使いベルディアは身体を宙へと浮かして身体を捻り反対に持っていた大剣を八幡へと叩き付けるかの如く大きく振った。

だが、八幡もその攻撃に対してさらに大きく後ろへと飛んで避けた。

 

「ほう、これも避けるか!」

 

ベルディアは、嬉しそうに言葉を発したと同時に大剣で連撃をしてきた。

八幡も、それに対応するかのようにその場を飛んだり、身体を横や上下に逸らしたりして避けていた。

 

「おい……。ハチマンの奴、大丈夫なのかよ。さっきから避けてばかりだけど。」

 

「あんたねぇ、よく見なさいよ。」

 

「ベルディアも馬鹿みたいに、何も考えずに攻撃をしている訳ではない。一撃、一撃、洗礼されていて、かつ鋭く、次の相手の動きを考えて放っている。」

 

「そんな一撃、一撃を避けているハチマンなんですよ!さすが、私の兄です。」

 

「凄いことはわかった。だが、倒れながら理由の分からない事言ってんじゃねぇよ。」

 

カズマが八幡を心配している裏腹に女性陣は心配はしていなかった。むしろ、カズマのセリフに呆れていた様子まで伺えていた。

周りの冒険者も、その言葉を聞いては歓声を上げていた。

 

「ふんっ!いつまで避けているつもりだ。攻撃をしてこないと、俺は倒せないぞ。」

 

「言われなくても分かっている。」

 

八幡は、腰に付いていたファイズショットを取り出し、ファイズエッジからミッションメモリーを抜いてファイズショットへと装填した。

ファイズショットからは、’’READY’’という機械音が鳴りグリップが下りてきて握りしめた。

 

「なんだ、その武器は?だが、関係ない!今更、何が来ようが関係ない!」

 

ベルディアは連撃を続けた。

ベルディアの攻撃を避けながら、腰の携帯を開いてEnterキーを押すと、携帯から''EXCEED CHARGE''とボイスが流れ、腰から腕へと赤いラインを通りファイズショットへと光が流れていった。

 

「俺は彼奴から貰った力を使って貴様を倒すのだからな!」

 

ベルディアは両手で持っていた大剣を上から振り下ろそうとした。

 

「そこだ。」

 

八幡は、振り下ろされる前にベルディアの懐に飛び込み、胸に渾身の一撃のグランインパクトを撃ち込んだ。

撃ち込んだ瞬間に、ドンッと音と同時に衝撃波が起きてベルディアは吹き飛んだ。

そして、ベルディアの胸からはφのマークが赤く浮き上がった。

 

「ぐほっ……馬鹿なっ!彼奴の力で強化したはずだ……まさか、こんなっ!」

 

ベルディアの鎧が胸からヒビが広がり身体全体へと伸びていった。そして伸びきった瞬間に爆発した。

その光景を見て集まっていた冒険者は歓声を上げた。

だか、八幡はその爆発したベルディアから目を離していなかった。

 

カズマは、八幡の様子に気づいた。

まだ、終わっていないと言わんばかりに武器を構えたままの八幡。

爆発が収まり出した次の瞬間、時間が巻き戻されるかのように爆発したはずのベルディア身体が元に戻った。

 

「……なぜだ?俺は死んだはずでは……。」

 

ベルディアも何が起きているのか分からずに、自分の身体を見渡した。

 

「まぁ、なんでも良い!」

 

そう言って、足を1歩前出した途端、ベルディアの身体からガラスが割れる音がした。

 

「なんだ、今のお……ぐわぁぁぁあ!ふぐっ……身体……身体の中……焼け……焼ける……。」

 

ベルディアは悲痛の声を上げ、その場に崩れ落ち、体から青緑の炎が鎧から漏れていた。その光景は、まるで炎が鎧という束縛を壊して外に出ようとしているようだった。次第に、鎧は所々が砕け炎は大きくなっていった。

その炎は、ベルディアの体を包み球体となり空へと浮んでは、さらに大きくなった。

 

カズマは、もちろん集まった冒険者達も口をポカンと開けては何が起きているのか分からず呆然としていた。

 

「来るぞ。全員、出来るだけ早く下がれ!」

 

呆然としていた冒険者は、八幡の言葉に反応を遅れながらも門の入口へと退避した。

 

炎の球体に、ヒビが入った瞬間に爆発と共に青緑の炎のドラゴンが中から出てきた。

そのドラゴンは所々にベルディアが使っていた鎧が付いていた。

 

「GYAAAAAAAAAAA……!!!!!」

 

ドラゴンは、咆哮を上げると衝撃波を発生させては門にいた冒険者は門の中へと吹き飛び、門周辺の壁は崩れ落ちた。

 

「おいおい……警戒はしてたが、あんなもん来るなんて予想できるか普通。」

 

思わず声を出してしまったが、やる事は変わらない。ミクタさん……いや、巧さん。力をお借りします。

 

「オートバジン!」

 

オートバジンは、機械音で返事をすると腰に手を伸ばし、茶色い布で巻かれた物を八幡へと投げた。八幡は投げられた物を左手でキャッチして、巻かれていた布を解いた。

布で巻かれていた物は、ファイズの追加装備のファイズアクセルだった。

八幡は、ファイズアクセルを左腕に取り付けた。

だが、敵のドラゴンも悠長に待っているはずもなく八幡へと火球を飛ばした。

火球は八幡に直撃して大きく爆発をした。しかし、ドラゴンの攻撃は続き、次々に八幡のいた場所へと火球を撃ち、最後に力を溜めてその場所を先程とは比べ物にならない大きな火球を放った。

 

「クソっ!ハチマン!」

「やめろ、カズマ!今、お前が行ったところでどうにもならない!」

 

カズマは、ハチマンの元へと走り出そうとしたがダクネスに止められては何も出来ないことに唇を噛んだ。

 

「カズマ、大丈夫ですよ。ハチマンは大丈夫です!」

 

「はっ?」

 

「だって、ヒーローですから!」

 

めぐみんは、アクアにおんぶされてながら笑顔で答えた。

カズマも、ヒーローという言葉に何処か納得したのか抜け出そうとしていた力を抜いて「そうだな。」と言った。

 

火球を放たれた場所は、大きなクレーターができ、所々に黒煙が立ち上がっていた。

だが、そこには八幡の姿はなかった。

 

「おい、ドラゴン。コレで終わりにしようぜ。」

 

ドラゴンは八幡の声がした方へと向くとそこには、いつの間にかオートバジンの背中に乗って、ドラゴンの頭上より遥か高い空へといた。

八幡は、オートバジンからドラゴンの元へと飛び降り、左手に装着したファイズアクセルのアクセルメモリーをファイズギアへとセットした。

セットされた携帯からは’’COMPLETE’’と鳴り、ファイズの胸部の’’フルメタルラング’’が展開され、ファイズの体のラインが赤く発光して徐々に白へと代わり赤いラインは銀へと変化した。

そう、八幡はアクセルフォームへとフォームチェンジをしたのだ。

 

「カズマ、カズマ!ハチマンの姿が変わりました!!!」

 

「アクセルフォームだ!!」

 

ファイズの形態が変化したことに興奮覚えるめぐみんと、嬉しそうに叫ぶカズマ。

そんな、カズマにアクアが「アクセルフォーム?なによ、それ?」と言うと、カズマは嬉しそうに見てれば分かると言って、アクアは八幡へと視線を戻した。

 

「GAYAAAAAAAAAAA!!!」

 

ドラゴンは、八幡に向かって先程と同じように火球を何発も放ったが、八幡はアクセルフォームへとフォームチェンジを済ましていた。

八幡は、ファイズアクセルのボタンを押すと、ファイズアクセルから’’START UP’’と声と同時に軽快な音が鳴ってファイズアクセルの画面に10カウントダウンが始まった。

 

八幡は、素早くファイズショットからミッションメモリーを抜き取り、ファイズエッジへと取り付け、携帯のEnterキー押しては、次々と自分に迫り来る火球を斬り捨てながらドラゴンの頭部へと落下していった。

落下速度はアクセルフォームのおかげで通常よりも早く、また火球はドラゴンの動きスローへと変わっていた。

 

「出力 アルティメット。」

 

八幡は、ファイズエッジの出力を限界値まであげドラゴンの頭部へと突き刺した。

ファイズアクセルから、3……2……1……。とカウントダウンが鳴り響きながらも八幡は、頭部から尻尾の方まで走り突き刺さった剣でドラゴンを切り裂いた。

尻尾の先に到達と同時に、ファイズアクセルから’’TIME OUT’’と鳴り、展開していたフルメタルラングは元に戻り、ファイズのラインも銀から赤へと戻った。

 

「GY……AA……。」

 

切り裂かれたドラゴンは、青白い炎が発生してファイマークが出現と同時に灰化して形が崩れ落ちた。

 

「終わったのか?」「今度こそ終わったよな。」「終わった……。」「終わった、いよっしゃー!!!!」

と灰となって崩れ落ちたドラゴン姿をみた冒険者達は、歓声を上げた。

 

八幡も完全に倒しきったと確認してから変身を解いた。

 

「はぁ……。」

 

しんどい、いや、本当にしんどかったわ。

でも、巧さんから借りた力があったから早く対処出来たから感謝しかないな。

 

そんな事を考えていると、「ハチマ~ン」と呼ぶ声が近づいてきた。

声のする方を向くと、俺が所属しているパーティーのメンバー達だった。

 

「よう、お前ら。久しぶり。」

 

「久しぶりじゃねえよ!どこいってたんだよ!」

 

カズマが、声を上げて怒っていた。

アクアやめぐみん、ダクネスを見てみると3人とも泣きそう顔をしながらこっちを見ていた。

 

「あー、悪いな。その、なんだ……心配かけちまって。」

 

「本当よ!バカハチマン!」「うわーん……ハチマン~。」「良かった……無事で。」

 

3人は、泣きながら抱きついてきた。

ちょっと、ちょっと待ってくれ!

めぐみんは大丈夫だけど、アクアとダクネスはまずいだろ……なんて思いつつも久々に再会出来た仲間の感触を味わっていた。

えっ?言っておくが、胸とかそういう事じゃないからな!本当に!

 

「あっ!?」

 

何か思い出したように、カズマが声を上げた。

アクアは泣きながら、カズマに「どうしたのよ」と声を掛けた。

 

「いや……そのなんだ。ウチのパーティーは感動再会をしているけど……他のパーティーでは……結構な数の人間が死んでるんだよな。」

 

「へっ?そんなのとっくに生き返らせてあるわよ。」

 

カズマは、へっ?と間抜けな声を出していた。

 

「お~い~、カズマ!」

 

カズマを呼ぶ声が後ろからすると、そこにはダストが大きく手を振っていた。

カズマは、その姿を見て思わず泣き出した。

 

「おい、バカ!生き返ったら、さっさと声掛けろよな!」

 

「仕方ねえだろ!」

 

ダストとカズマは泣き笑いながら抱き合った。

そこにダストの仲間達も加わって一緒に生き返った事を分かちあった。。

 

「さてと……。とりあえず、戻るか俺たちの街に。」

 

「そうね!」「はい!」「うむ!」

 

ダスト達と合流しつつ俺達の街へと帰還をした。



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4-22 修行①

断空我さん、オオゾラさん、ありがとうございます!
参考になりました!

誤字修正などをやって頂いた方々には、いつも感謝しています!ありがとうございます!
また、感想なども感謝しいます!

感想が増える度に、毎回嬉しくて心をはしゃがしてます(笑)
本当に感謝です!

※アマゾンズ シーズン1 面白すぎてやばいですね!
だが……ハンバーグ回だけは……あそこだけは……。




デュラハンこと魔王幹部の1人のベルディアを倒した俺らは街へと戻った。

さすがに、魔王幹部と戦闘があったという事もあり、集まった冒険者達は自分達の家や宿屋へと帰路していった。

 

ココに来るまでにいろいろあった為、俺も宿屋へと向かおうとしていたが……。

 

「なぁ、めぐみん。そろそろ離してくれないか?」

 

「…………。」

 

街に着いてからめぐみんが腰に腕を回して、がっしりしがみついて離してくれない、トトロにしがみつくメイちゃんみたいな状況と伝えた方がいいか?

それでいて、めぐみんに話しかけても顔を腹に埋めているせいでモゴモゴ言って、聞き取り辛いのだ。

 

「お~い、めぐみん。そろそろハチマンを離してやれ。」

 

カズマが呼び掛けても、顔を横に振るめぐみん。

ダクネスもやれやれみたいな顔をしながら微笑ましそうに見てくるし、アクアはアクアで手をワキワキしてるし。

 

はぁ……。なんか、昔にもこんな事があった気がする。いつだったか……小町が1人で留守番してる時に、帰りが遅くなった時はいつもこんな感じだったな。あと、入学式前に車で轢かれた時もだったかな、めぐみんみたいにしがみついて来たなぁ。

 

しがみついているめぐみんの頭を被っている帽子の上から撫でた。

 

「めぐみん。悪かったな、寂しい思いをさせて。」

 

「……んっ。本当です。それに、まだ言うことあるはずです。」

 

目を腫らしながら、上目遣いしてくるめぐみんがそう言うと、カズマ達の口からも「そうだな」と声を上げた。

言ってないことか、ベタなアレだよな。

 

「ただいま。」

 

「「「「おかえり、ハチマン!!」」」」

 

ちょっと前までは、当たり前の言葉だが2ヶ月ちょっととはいえ、仲間達からの’’おかえり’’という言葉は、とても懐かしく帰ってきたんだなと実感を得て、少しむず痒い感じがした。

 

…………さて。

 

「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだが。」

 

「なんだ、ハチマン?」

 

「なんで、魔王幹部がこんな所に来たんだ?」

 

質問をした瞬間に、アクア、カズマ、しがみついていためぐみんさえも街の中へと脱兎のごどく走り出した。残されたダクネスは、そんな3人を見て「へっ?」という気が抜けた声を出していた。

 

「ったく……アイツら。ダクネス、事情を聞かせて貰おうか。」

 

「あ、あぁ。」

 

その後、ダクネスから魔王幹部が来た理由を聞き、俺はファイズに変身をして本日2度目のアクセルフォームにチェンジをして、3人を捕まえて説教をした。

ある意味、本当に戻ってきたという実感を得た。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

―――――――――――――――

 

―――――――――

 

――――

 

――

 

俺が帰ってきてから、早3日が経った。

説教後、アレからすぐに宿屋に帰って、借りている部屋の枕に顔を埋めて、己の言動に恥ずかしくなり声を上げていた。

なに、あれ?巧さんに影響されたから!めっちゃキザなセリフ吐いてるし!……でも、あのセリフを言えた事に満足している自分がいるという事が何よりも恥ずかしい!

などと、2、3時間ほど枕で悶えながらも眠りに落ちた。

 

んで、次の日は迷惑をかけた人達にひたすら謝りに行くだけで潰れた。

でも、まぁ…この世界の人達は謝ったとこで気にしてないから大丈夫だと言っては、むしろ俺が2ヶ月ちょい居なかったほうが心配だったと説教された。相変わらず良い人しかいないと痛感したわ。

前の世界なら、居なくても気にされないだろうしな。あっ、居ても気にされないか。

いや、待て ……小町と戸塚には気にしてもらいたい。

 

そんなこんなで、俺はいつもの席に座って仲間達を待っていた。

 

「悪い、ハチマン遅れた。」

 

「んっ、あぁ、大丈夫だ。」

 

「そうか。今日はどうするよ」

 

ギルドの入口から軽く走ってきて、いつものように俺の前の席にカズマが座って、予定を聞いてきた。

 

「今日は…「ハチマン!遅れました!」「すまない、遅れた。」全員来てからでいいか。」

 

同じように入口からめぐみんとダクネスが一緒に入ってきて、めぐみんは俺の横にダクネスはめぐみんの隣へと座った。アクアに関しては、バイトだから来ないな。

 

 

「それでハチマン、今日はどうしますか?」

 

「そうだな……そろそろ拠点が欲しいな。」

 

「拠点ですか?」

 

めぐみんは首を傾げて聞いてきた。

久々に、この表情を見たがポンコツがという点を除けば、小町と戸塚に次ぐくらいに可愛い……つまり、何が言いたいかというと!

かなり可愛いということだ!

おっと……、表情を緩めるとキモイとか言われそうだから戻しておこう。

 

「…そうだ、拠点だ。なんやかんや宿屋代とかも馬鹿にならないしな。だったら、全員で割り勘してでも拠点という名の家を買おうと思うんだ。」

 

「「「家を!?」」」

 

「そうだ、家だ。」

 

カズマ、めぐみん、ダクネスは驚愕してその場に立ち上がった。

カズマに関しては、その後すぐに泣きながら

「ついに!ついに!家が……、あの臭い馬小屋からおさらばできる……。」と切実な声で言った。

てか、まだカズマとアクアが馬小屋生活をしていた事に驚いたわ。

 

「だがハチマン、なぜ皆と割り勘なんだ?この前のデュラハンを倒したことで報酬はかなり入るはずだろう?」

 

「あー、あの報酬に関してだがな……」

 

全員が俺の顔をじっと見てきた。

やめて、ちょっと恥ずかしいから。

 

「壁代ということで、報酬が届き次第に壁の修繕費となるんだ。」

 

「「「はぁ!?」」」

 

「はぁとはなんだ、はぁとは……。てか……もとはと言えば、めぐみんが爆裂魔法で城を襲撃しなきゃ、デュラハンは来なかった。それに、壁が壊れたのはバカ女神の洪水のせいでもあるからな。だから修繕費として使ってくれと話してある。」

 

ぐぬぬ……と言いながら、めぐみんは小声で「あんな事しなきゃ……だけど……。」と後悔している。

ダクネスは、納得したのかいつ間にか頼んでいた紅茶を啜っていた。

カズマは、納得しているが納得いかない感じで腕を組んでいる。

 

「……なぁ、ハチマン!お前が、もっと早く来れば、壁も壊れなかったんじゃないのか?てか、この2ヶ月半何してたんだよ。」

 

「そうですよ!2ヶ月半も何していたのかの話しのほうが大事ですよ!」

 

「私も聞きたいな、この2ヶ月半何をしていたのか。」

 

カズマが疑問をぶつけてきた。

それと、なんか知んないが前よりもめぐみんが隣からぐいぐい来るんだが……。まぁ、この2ヶ月間は別にやましい事をしていた訳ではないからな。

 

「分かったから、めぐみん1回離れてくれ。」

 

「うぅ~。」

 

「んじゃ……まず、この2ヶ月間何してたか簡単に説明するぞ。俺は、ある英雄に修行を付けてもらっていたんだよ。それとカズマ、俺が早く来ていたとしてもアクアが洪水を起こしていたと思うし、なによりもデュラハンが街に来て多大な迷惑を掛けちまったことには変わりないしな。」

 

「うっ……確かに、あのダメ女神なら……それに、呼んじまったのはオレらのせいだしな……。」

 

俺の言葉に、渋い顔をしたカズマだったが納得したのか続けて疑問をぶつけてきた。

 

「壁に関してはしょうがない……しょうがないんだ。それにしても英雄、修行どういうことだ?」

 

「まぁ、事の顛末としては、2ヶ月半前に宝島の時にある敵に遭遇して、その敵に負けて、その英雄に助けて貰って、修行を付けてもらったって感じだよ。」

 

「ハチマン負けたんですか!!!」

「嘘だろ?だって、お前…うん?……敵…。もしかして……。」

 

めぐみんは、俺が敵に負けた事に驚き声を出した。前に座っていたカズマに関しては、察してくれたようだ。カズマには前にクウガの敵と闘ったこと話してある。それになぜ、俺が魔物とは言わずに敵と言った事にも気づいたようだしな。

 

「んで、2ヶ月半いろんな修行を付けてもらって、新しいフォームであるアクセルフォームになれるようになったんだ。ついでに、俺を負かした敵をぶっ倒した。」

 

「そんなに修行とかしていたのなら、レベルもかなり上がったんじゃないのか?」

 

「どうだろうな?レベルに関しては、まだ鑑定して貰ってないからどのくらい上がったとかは知らないんだ。」

 

「なら、早く行ってきてはどうだ?ついでに帰ってき次第に、その修行の内容を教えてくれないか?もしかしたら、今後の参考になるかもしれないからな。」

 

「参考なるかどうかわからんが分かった。んじゃ、行ってくるわ。」

 

ダクネスに言われ、受付嬢がいるカウターへと向かった。着くなり、ルナさんが手を振って話しかけて来てくれた。

 

「ヒキガヤさん、今日はどうしましたか?」

 

「あっ、えっと、レベルアップしてるか確認したいんですが。」

 

「はい、分かりました。では、こちらの水晶に手をお願いします。」

 

カウターの下から水晶を取り出し、カウターの上に置いた。その水晶に慣れた手つきで、水晶に触れた。触れた瞬間に薄い水色の魔法陣が現れ、数値が現れては、ガンガン数値のレベルが上がっていった。そして、40の数字で止まった。

 

「おぉ!かなりレベルが上がりましたね!」

 

「はい、そうですね。」

 

「コレでますますのご活躍が期待出来ますね!」

 

「期待って……。」

 

期待という言葉に苦笑いした。

まぁ、こんだけレベルが期待出来ます上がれば期待もされるもんだろうな。

ルナさんに軽く会釈して、カズマ達の元へと戻った。

 

 

「ふふふ……私も個人的にいろいろ期待しているんですよ。」

 

席に戻ると、カズマはコーヒーを啜り、めぐみんはホットミルクを飲んでいた。

ダクネスが俺を見るなり、口を開いた。

 

「レベルどのくらい上がったんだ?」

 

「15ぐらい一気に上がったぞ。」

 

「……結構上がったんだな。」

 

「まぁ……あんな修行すればな……。」

 

巧さんとの修行を思い出した。

カズマとめぐみんは、そんな俺を見て「うわぁ……目が……。」と声を出していた。

多分、目が相当腐ったのであろう。

その中で、ワクワクしているダクネス。

 

「久々に見たがいい目だ…ふふ………。おっと、涎が……。それでハチマン、その修行の内容を教えてくれないか?」

 

「あ、あぁ。修行内容も含めて、この2ヶ月半の話もするわ。」

 

「分かった。」「分かりました。」「あぁ。」

 

――――――――――回想―――――――――――

 

俺は敵(ホースオルフェノク)に負けて、ミクタさんって人に助けられた。

最初の3日くらいは、怪我のせいで動けなかったがクウガの能力である治癒能力のおかげで早く怪我は治った。

助けて貰ってから最初の1ヶ月の生活風景は……。

 

「おい、ハチマン!洗濯物が真っ白じゃないぞ!罰として、筋トレ5セット追加と走り込み10キロ追加だ!」

 

「えっ、ちょ!まっ!」

 

現在、今日の晩飯に使う肉の調達で体長3メートルくらいありそうな野生のエッグベアと生身で素手で戦っていた。この世界ではレベルがあるので、生身では戦えるが、素手という点が正直かなりキツい。

てか、あの人無茶苦茶だ!!

 

俺の怪我が治り次第に、強化修行が始まった。

ミクタさんから強化修行中は変身禁止という課題を出され、また修行の一環として戦闘経験を得るという意味でエッグベアなどの魔物と戦闘する。倒した魔物は、その日の晩飯の材料となるので経験も積めるし、晩飯も確保できるから一石二鳥だろと笑いながら言ってきたミクタさん。

見た目が白い小動物の皮を被った宇宙人じゃないが、わけがわからないよと言いたい……。

 

「コイツ、前の奴より硬い!くっ……。」

 

それから俺は午前中いっぱい使って、なんとか勝利。ついでに晩飯の材料を手に入れた。

 

「ハァハァ……、終わりました。」

 

「遅いぞ、ハチマン。ほら、ナイフで内蔵取ってそこの池に付けておけ、あとで皮を剥いでから解体して晩飯に使うから。」

 

「ちょっと……まっ……。」

 

「早くしないと筋トレメニュー増やすぞ。」

 

「分かりました!」

 

そこからは、倒したエッグベアを池まで運び、最初の方はぎこちない手つきで内蔵を取り出していたが、今では慣れた手つきで内蔵を取っては、エッグベアを池に沈めた。

沈めている時間の間に筋トレと走り込みをやっては、終わり次第に休憩挟んではミクタさんが作った昼飯を食べた。

昼食後は1時間ほど食休憩をし、ミクタさんと戦闘訓練。

戦闘訓練と言っても、あの人は武術とか使えず完全な喧嘩殺法での訓練である。

 

「ハチマン、どうした!」

 

「野生の勘を頼りにしたような戦い方しやがって!クソっ!」

 

「ほら、そこだ!」

 

「ぐっ……。」

 

ミクタさんとの訓練は、結構ハードだ。

今だって、ミクタさんに回し蹴りをされて仰向けに倒れている状態だ。

現状では、大体がこんな感じにボコボコされている。たまに良い一撃が入ると、ミクタさんが本気を出しては骨を折られたりする。

クウガの治癒能力が無かったら、多分俺は逃げ出していた。てか、逃げ出したところで、あの人の場合は追いかけて、もう一本折られる未来しか見えない。

あぁ……自分でも目が腐っていくのがわかるが、あの馬野郎をぶっ倒すというのが今の目標だ。うだうだ言ってられねぇよな。

何度も自分に言い聞かせては、自分の中の闘志を燃やして立ち上がってはミクタさんに挑んだ。

 

訓練は夕方にまで行った。

訓練後は、先程の池に沈めたエッグベアを池から運び出しては血抜き作業、皮を剥いで解体をする作業といった一連の作業行い、解体した肉と山菜などをミクタさんと共に調理をする。

そこから、ギルドいる時みたいに晩飯を食べて、風呂に入って就寝という流れだ。

 

この1ヶ月は大体こんな感じに過ごした。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「「「」」」

 

俺の話を聞いてた、3人は絶句していた。

おい、そんな顔するなよと思ったが、俺が話を聞く側だったら同じようなリアクションをしていただろう。

絶句していた1人のカズマが口を開いた。

 

「おい、ハチマン。えっ?なに?お前、オレと同じ人間か?」

 

「何言ってんだ?同じだろう。」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや……。」

 

やっと口を開いたと思ったら何通質問してくるんだ、コイツ?多少目が腐っているが人間だぞ。

確かに、何度かアンデットに間違われたりしたが……。前の世界では……前の…………されてなかった気がする。

前の世界の扱いを思い出し、少し凹んでいると、めぐみんがバンッと叩いた。

 

「ハチ、ハチ、お兄、ハチマン!素手でって!?え~!だって、エッグベアを素手?!えー!?」

 

めぐみんがバグを起こしていては、何度も同じ事を言ったりしていた。……ほっとくか。

めぐみんの隣に座っているダクネスの方を見ると、珍しく優雅に紅茶を飲んでいた。

おぉ!この2ヶ月半で、ダクネスが多少真人間になったのかと感心した。

 

「……あふん!!ハァハァ……想像しただけで、まさかこんなになるとは……ハァハァ……。今度、私も素手で……ぐふふ……。」

 

あっ……ダメだこれ。

少し感心した瞬間に、これだよ。

 

ダクネスを軽蔑した目で見ると、ダクネスは「ダメだ、ハチマン!そんな目で、今見られたら……見られたら……はぅーん!」と持っていた紅茶を盛大に零した。

 

「おい、ダクネス大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫。この熱さも1つのプレイ……ぐふふ……最高だ、ハチマン!」

 

「うるさいわ!」

 

「久々に頂きました!ありがとうございます!」

 

もう嫌だ……なんなのこの子は……。

泣きたくなってきたよ。

3人が正気になるまで、ここから1時間近く掛かった。



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4-23 決着と正体

随分と遅くなりました!
結構いろいろと悩みながら書いていました。
途中悩みすぎて、ゲシュタルト崩壊が……(笑)

皆さん、最近急激に暑くなってきたので体バテないように気をつけて下さいね!




壊れたラジオみたいになっている2名と顔と身体が火照っている変態1名が正気になるまで1時間くらい掛かった。

変態ことダクネスに関しては、カズマと2人で火照っているなら冷たい水をかければ冷静になって少しはマシになるだろうと、前に試してみたら大声で「ありがとうございます!」と言って、さらに色々と求めて来たので、この変態が落ち着くまで目も合わせずにシカトして待っていた。

 

「んで、落ち着いたか3人とも?」

 

「あぁ……。悪い、いろいろと処理に困っていた。」

 

「大丈夫です!」

 

「ふぅ……コレがカズマが言っていた賢者タイムというものか……。とても虚しい感じだが満たされている気分でもある。」

 

おい、カズマなんつう事教えてんだよ。

思わずカズマの顔を見たら、バツが悪そうに顔を逸らした。

めぐみんに関しては、「けんじゃたいむ?なんですか、そのカッコいい時間は?」とダクネスに訪ねていた。

めぐみんに変な知識が入る前に、話しを戻すか。

 

「ゴホン……とりあえず、さっきの修行の話しを続けるぞ。」

 

「お、おう。」「あっ、はい!」「うむ!」

 

 

 

――――――――――――回想――――――――――――

 

ミクタさんとの修行始めてから、そろそろ2ヶ月が経とうとしていた。

いつものように、食べられそうな猪型の魔物ことレッドワイルドボアを狩りをしていた。全体的に最初の頃と比べると、エッグベアーや15メートルくらいある巨大蛇のスカルスネイク、木の角を生やした鹿のフォレストディアーなどの魔物を狩る時間が徐々に短くなっていった。

 

「うし……、コレでトドメだ!」

 

レッドワイルドボアの額に跳び・カカト落としを決めると、断末魔を上げながらその場にズドンと大きな音を立てながら倒れた。

 

「ミクタさん、今日の飯の調達終わりました。」

 

「おう、わかった。ハチマン、お前ここに来てどんくらいになる?」

 

「そろそろ2ヶ月ぐらいになります。」

 

ミクタさんは、2ヶ月か……と呟いては、1度空を見てから俺の方を向いて言ってきた。

 

「よし!ハチマン、試験をするぞ。」

 

「試験?」

 

「あぁ、試験だ。ある敵を倒したら合格のな。」

 

ある敵と言って、すぐに思いついたのがホースオルフェノクだった。

2ヶ月前に、俺が敗北した敵だ。

 

「やります!」

 

「おう、いい返事だ。試験日は、明日の朝からだ。今日は俺が解体とかしておくから。あと組手とかもなしだ、ゆっくり休んでおけよ。」

 

「はい。」

 

急に仕事がなくなった為に、宛もなくただ周辺を散歩していた。

ただ頭の中では、また負けるのではないか本当に倒せるくらい強くなれたのかと不安があった。

だが、それと同時に修行の成果を試して見たいと思っている自分がいた。

「変に考えず、全力で行くのが一番か。」

 

一息を入れ覚悟決め、小屋へと戻った。

小屋に戻ってからは、いつもと変わらず食事をとってミクタさんと談笑しながら1日を終えた。

 

そして、試験当日。

ホースオルフェノクがいる草原に行くと、ホースオルフェノクのただ草原の真ん中で立っていた。

体にはチラホラと苔が生えていた。

 

コイツ、俺と戦ってから一切この場から動いていなかったのか。

 

ホースオルフェノクの目の前に移動したが、全く動く気配を感じさせなかった。

ホースオルフェノクをじっと見ていたら、後ろに控えていたミクタさんが声を張って言った。

 

「ハチマン。相手は、お前のスキル待ちだ。早くしてやれ。」

 

「はい!」

 

ホースオルフェノク、あの時は負けたが今回は勝たせて貰うからな。

腰にベルトを巻いて、手に出現したファイズフォンのボタンを押した。

ピッ、ピッ、ピッとキー音鳴らし、軽快な音へと変化させては携帯を折りたたんだ。

腰を捻らせ、右手を掲げ、「変身!」と叫び、携帯をベルトへと挿入。

携帯からは、''complete''と音が鳴り、体に赤いラインが形成され、姿を仮面ライダーファイズへと変身させた。

 

ホースオルフェノクも、仮面ライダーファイズへと変身が終えたことを認識し、目に光が宿り起動した。

 

「修行の成果見せてやる。」

 

ダラりとしていた右手をスナップさせて、ホースオルフェノクへと走った。

ホースオルフェノクも同様に両手を広げなからファイズへと走った。

互いに拳が届く距離になった瞬間に、ホースオルフェノクは右手を拳を握り、右腕を振りかぶってはファイズの顔面に向けて拳を放った。

 

ファイズは、放たれた拳を体を捻りながら最小限の動きで頬をカスリながらも避け、左手の拳を握り、捻られた体を戻しながら拳を相手の溝へと叩き込んだ。

 

叩きん込まれた瞬間、ホースオルフェノクの数センチとはいえ体が浮いた。

ホースオルフェノクは、溝を抑えようとした瞬間にファイズのカカトが左顔面へと叩き込まれ地面を転がりながら吹き飛んだ。

そう、ファイズは溝に拳を放った途端にすぐに右足を軸にして体を回転させながらジャンプをしてカカトを相手の左顔面へと蹴りを入れたのだ。

 

ファイズは、ホースオルフェノクが飛んでいった方を拳を構えながら警戒していると、ホースオルフェノクはその場ではね起きてはドンッと音たて、先程の走ってきたスピードを凌駕する勢いで走ってきた。ホースオルフェノクは走りながらスモールシールドと剣を手に形成させていた。

 

ファイズは、ベルトに装着してあるファイズフォンを手に取り、番号を106と打ち込みガンモードへと変形させホースオルフェノクへと弾丸をはなった。

ホースオルフェノクは、弾丸をスモールシールドを前に出し弾丸を弾いた。

だが、スモールシールドでは全部の弾丸を弾くことは出来ず足な脇腹などに当たった。

しかし、ホースオルフェノクのスピードはあまり落ちず向かってきた。

 

ものの数十秒もしないうちにホースオルフェノクは、ファイズと剣のリーチが届くか届かないかの距離まで来ていた。

そして、間合いに入った瞬間にホースオルフェノクは走ってきた勢い殺さずに右手に持っている剣を横大きく振った。

走ってきたスピードも混じった攻撃は当たれば、ファイズの横っ腹を切り裂き致命傷は免れないほどの威力を持ったものだった。

 

「ハッ!」

 

掛け声と同時にファイズは右膝を上げ、それと同時に右肘を上げた膝をぶつける勢いで振り落とした。

振り落とされた肘と上げた膝の間に、ホースオルフェノクの剣が止まっていた。

 

「ほう。」

 

その光景を見た、ミクタも思わず声を漏らした。

受け止められたホースオルフェノクに関しては、ファイズが剣をがっしりと停めたことにより急ブレーキが急ブレーキが掛かり、掴んでいた剣に引っ張られたかのように盛大に背中から転んだ。

 

ファイズは、肘と膝の力を抜いた。力を抜いた途端に、剣は肘も膝の間から抜け地面へと落下した。

ファイズは腰に付けていたファイズポインターを右足に取り付け、右手を1度スナップさせ、ファイズフォンを開きボタンを押した。携帯から赤いラインを通って右足へと光が流れていった。

光が右足に充填されるのと同時に、足を開き腰を低くして倒れているホースオルフェノクを見据えた。

 

ホースオルフェノクが膝を着きながら立ち上がろうとした時、ファイズは助走をつけ高くジャンプをした。

ファイズは、ジャンプの最高到達点に差し掛かった瞬間に体を回転させてポインターが相手に向くように足を向けた。向けられたポインターから円錐状の赤い光がホースオルフェノクに目の前に発生した。

 

「せいはー!」

 

掛け声と同時にに、赤い光の円錐向かってライダーキックを放つと赤い光はドリルのように相手を貫き、相手の背後に着地をした。

貫かれたホースオルフェノクは、体からファイマークと共に青い炎を発生させ、その場崩れた。

そして、その場に倒れたホースオルフェノクは灰化して形が崩れた。

 

「よし!試験終了!」

 

「ハァハァ…はぁ………。」

 

俺は息を切らしながら、変身を解除をした。

客観的には一方的に見えたが、相手の攻撃を受けたりする際に瞬間的に集中力を最大まで上げていたせいか、それとも久しぶりの変身のせいか疲れがどっときた。

 

「いい戦いだったぞ。」

 

「ふぅ……ありがとうございます!」

 

「それじゃ、戻って飯にするぞ。」

 

「はい!」

 

息を整え、ミクタさんの一緒に小屋へと戻った。

その日の夜は、試験合格とミクタさんから言われいつもより豪華な食事を用意してくれた。

それから、試験合格してから3日が経った。

ミクタさんとの修行も今日でちょうど2ヶ月目だ。

その日にミクタさんから修行終了と伝えられ、餞別と言ってファイズアクセルを貰って、あくせるの街に向かった。

向かっている途中に小さい町とか寄って行ったという感じだな。

 

 

 

 

 

ココから先はアイツらにはオフレコだが……。

ミクタさんとの修行終了の言い伝えられた時の話しだ。

 

アクセルの街に帰る準備をしていた時に、ミクタさんが話しかけてきた。

 

「ハチマン。試験合格と修行終了の祝いにお前に俺の正体を教えてやるよ。」

 

ミクタさんから唐突に正体教えてやると言われた。

 

「正体?」

 

「あぁ、見ておけよ。はぁぁぁ……。」

 

ミクタさんの体の周りに薄くボヤけた別の生別の姿が現れた。そして、体の周りに浮かび上がった生別の色が濃くなりミクタさんの姿が変わった。

目の前に居たミクタさんの姿は、鋭い突起と白く綺麗であり荒々しい体毛で覆われ、頭部は狼の顔が現れた。

そう、ミクタさんの正体とは’’ウルフオルフェノクでもあり、先代の仮面ライダーファイズだった乾巧さん’’だった。

 

「ハチマン、これが俺の正体だ。」

 

「……。」

 

「おい、どうした?驚いて声も出せねぇのか?」

 

「いや、なんというか……知ってました。」

 

「はぁ?」

 

思わず、巧さんは変身を解き詰め寄ってきた。

 

「おい、知ってたってどういうことだ?」

 

「えっ、あっ、最初は気づいてませんでしたが、ご飯の時に猫舌のせいで食べるの遅かったですし、それに訓練前の手のスナップと戦い方と洗濯物への異常なこだわりとかあったんで、それらに該当するのが巧さんしか居なかったんですよ。」

 

詰め寄ってきた巧さんは、頭を抱えていた。

多分、言われた事を1つ1つ思い出しているのであろう。

 

「はぁ……ったく、分かった時点で言えよな!バレてないと思ってた俺がめちゃくちゃ恥ずかしいじゃねえか!」

 

「っつ!」

 

そう言いながら、俺の頭をスパンと軽く叩いた。

まぁ……言ったら言ったで惚けて誤魔化そうとしてるけど、ボロが出て殴られる未来しか見えなかったから言わなかっただけだけどな。

 

「まぁ、いい。ハチマン、俺から出来る事はコレで終わりだ。せっかく、俺の跡を継いでるんだから負けんじゃねぇぞ。」

 

「はい!」

 

「それとこれだ。」

 

巧さんはポケットから、ファイズアクセルを取り出した。

 

「ファイズアクセル……。」

 

「そうだ。今のお前なら使いこなせるはずだ。受け取れ。」

 

「……ありがとうございます!」

 

「多分、この先……俺と会うこともうないと思う。だから最後に言っておく。夢を持て。そして、夢を持った人達の夢を守ってやれ。それが出来れば、お前はどんな悲劇をハッピーエンドに変えられるはずだ。」

 

「夢ですか。」

 

「あぁ、それもでっかい夢をな。分かったな。」

 

「わかりました!」

 

巧さん、笑顔で右手の拳をグーにした。俺も同じように右手をグーに変えた。互いに拳を軽くぶつけた。

 

「じゃあな、ハチマン。」

 

「巧さん、2ヶ月ありがとうございました!」

 

「んじゃ、俺は一足先に帰る。2ヶ月の間楽しかったぞ、ハチマン。」

 

そう言うと、巧さんの周りにキラキラとした光が現れ、巧さんの体を包み込んだ。

光に包み込まれた巧さんの姿は、徐々に色が薄くなり透明になった。

そして、体を包み込んだ光が消えると巧さんの姿はそこにはもうなかった。

 

「…………夢か……。」

 

その場に残った俺は消えた巧さん場所から空へと視線を変えた。そこには、涙が出るほど眩しすぎる太陽があった。

 

 

―――――――――――回想終了――――――――――――

 

 

 

「んまぁ……大体こんな感じだな。」

 

「はえ~。えらくハードな2ヶ月だったんだな。でも、修行か……。」

 

カズマは感心と何処か羨ましそうに言った。めぐみんも何処か羨ましそうな顔していた。

ダクネスに関してはスルーだ。

 

「なぜ、私だけスルーするだ!」

 

「うっせー、変態ポンコツ。」

 

「ぬはーっ!たまらん! 」

 

さてと、話してたら結構いい時間になってたな。

集まったのが昼過ぎだったからダラダラと話していたせいか夕方に差し掛かていた。

 

「修行の話しは終りとして、早いけどそろそろ夕飯にすっか。」

 

「そうだな。」

 

「あー!やっと見つけたぁぁぁああああ!!」

 

冒険者ギルドの入口から聞き覚えのある声……てか、大声だしてどうしたんかね……女神様は……。

 

「は~ち~ま~ん~さ~ん~!」

 

「ごふっ!」

 

やれやれ……とか思ってたら横っ腹に衝撃が走った。横っ腹を見てみると盗賊の姿をした女の子のクリスが抱きついていた。

てか、タックル早くない?数秒前まで、入口にいたよね?

 

「おい、ハチマン大丈夫か!」

 

「あぁ……。」

 

「はぁはぁ……クリスさん、早いですよ。どうしたんですかって、あっ、ハチマンさん!」

 

息を切らしながら遅れて現れたのは、魔王幹部の1人でありウチの駄女神よりも女神らしい性格をしているウィズさんだった。

ウィズさんは、とことこ歩いてきた。

 

「クリスさん、ウィズさん久しぶりです。」

 

「ったく!君は今まで何処に行ってたんだよ。もう、急に居なくなるから心配で心配……。このっ!この!」

 

「そうですよ、ハチマンさん。宝島からこの2ヶ月何処に行ってたんですか。クリスさんと2人であちこち探し回ったんですからね。」

 

腹回りで頭をグリグリするクリスさんの頭を撫でつつ、頬を膨らましていたウィズさんの方を向いた。

 

「いや、まぁ……修行を?」

 

「「修行?」」

 

あっ……このパターンはまた説明が必要か……。

あとめぐみん、むーむー言いながら背中に抱きつかないでくれ。

 

「はぁ……とりあえず、アクアが来ても同じ説明をするんだからアイツが来たら説明しますよ。」

 

「むぅ……わかったよ。」「わかりました。」

「「だけど……まだ言ってないことあるよ(ありますよね)!」」

 

2人は声を揃えて言ってきた。

えっ?なに?夕飯ぐらいなら奢るけど……。なんだ、なんだ?

じーっと……俺の顔を見てくる2人。

 

そんな、俺を見かねたのかダクネスが小声で「帰ってきた時に言うことがあるだろう」と言ってきた。

 

……あぁ……なるほど。

 

「遅くなりましたが、ただいま。」

 

「「おかえりー(なさい)!」」

 

2人は笑顔で言ってきた。

あー、女神が2人いるぅぅぅぅ、痛い痛い痛い!

めぐみん、背中の肉を引っ張らないでくれ!

 

その後、アクアと合流してから2ヶ月間の修行の内容を話しながら夕飯をとった。

途中から、他の冒険者が合流して帰還祝いという事で盛大に宴が開催された。

 

 

そういえば……すっかり忘れていたがミツルギって、途中で寄った町で一緒にバイトしてたわ。

まぁ……この話はいらないよな。アイツらとは関わりないしな。

そんな事を考えながら、眠りについた。



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4-24 家と悪霊

お久しぶりです。
執筆スピードが遅く、あげくパソコンが逝ったクロスケです。
次の章行きたいと思います!



「この屋敷か・・・。」

 

俺たちは町の郊外に佇む、一軒の屋敷の前に居た

なぜ俺たちが、こんなところにいつかというと・・・。

 

 

 

 

時を遡って、日差しが強い昼。

俺はいつものように、コーヒー飲みながら優雅に読書をしていた。

・・・優雅か。

俺を知らない人から見たら、アンデットがコーヒー飲みながら本読んでるってコソコソ言うんだろうな。

だが、もしコレが芸だと思われて、金などを投げ入れられるもんなら喜んでアンデットと呼ばれよう。

いいじゃん、俺は本を読んで過ごせる、見物客は俺の行動を見て喜ぶ。

Win-Winの関係じゃねえか。

っと、アホなことを考えていたら、ギルドの入り口から2つの山を揺らしながら歩いてくるウィズさんの姿が見えた。

 

「あっ!ハチマンさん!」

 

俺の名を呼んでは、更に激しく2つ山を揺らして走ってくるウィズさん。

・・・高校男子があの山を見たら、テンション上がるだろうな。

えっ、俺?勿論上がりますよ。むしろ、上がらない奴などいないだろう。

だが、ウチのパーティーにいるスケベ魔王のカズマほど分かり易くはならんがな。

というか、ウィズさん走ると転びっ。

 

「あっ!」

 

「危っ!」

 

ローブの裾を踏んで転びそうになったのを、咄嗟に動いて受け止めることができた。

よかった・・・ウィズさんはを見るとハラハラするから身構えておいて。

 

「あ、ありがとうございます・・・、えっと・・・。」

 

うん?なぜか歯切れの悪い感じだn・・・。

そう言えば、右手にとても柔らかいマシュマロみたいな感触が。

ゆっくりと感触の先を見てみると、がっつりとウィズさんのたわわのモノを触っていた。

あっ、これ死んだわ。世間的にも、人的にもな。

 

ゆっくりと抱きかかえていたウィズさんの体制を直して、ひと呼吸を入れた。

顔赤らめながらもきょとんとするウィズさんに、土下座をした。

そう、やらかした人間がやる、あの土下座をね。

 

「ウィズさん、すんませんでした!咄嗟といえ、ウィズさんの、ウィズさんの!」

 

「えつ!?わた、私は大丈夫ですから、むしろ私の粗末なものをっ!」

 

「粗末?いいえ、最高の代物でした!ありがとうございます!」

 

「ふえ!?な、なにを。と、とりあえず顔を上げてください、ハチマンさん。」

 

「は、はい。」

 

顔上がると、ウィズさんは頬を赤らめして恥ずかしそうにして「謝らなくても大丈夫ですよ。あれは私が転びそうになったところを助けてくれたんですから。・・・でも、Hなこと考えちゃダメですよ。」と言った。

あー、なんかやばい!色々とやばい!思わず、顔をまた下げた。

八幡落ち着け!落ち着くんだ!!深呼吸だ、深呼吸をしなければ!

 

深呼吸をして、もう一度顔を上げるとウィズさんは、まだ恥じらう姿があった。

クッソ!なんなんだ、この天使いや女神は本当に!

どんな前世を歩んだら、ウィズさんと結婚できるんだよ!

むしろ、こんな女神に会えただけでも幸福だ!

はっ!思わず深呼吸するのを忘れていた。

 

「スゥーハァー・・・と、とりあえず、座りましょうか。」

 

「そ、そうですね!」

 

互いに、ぎくしゃくをした感じで席に着いた。

 

「え、えっと、何か飲みますか?」

 

「は、はい!では、紅茶をっ。」

 

「わたしは、カフェオレね。」

 

「・・・ん?」

 

俺の横の席から聞き覚えのある声が・・・・。

横の席を向くと満面の笑みをしたクリスさんの姿が。

 

「いつから居たんですか!?」

 

「うん?君がここで1杯目のコーヒーを注文した時からだよ」

 

おいっ。コーヒー注文したのって、一番最初だぞ。

ちなみに、3杯目のコーヒーだ。

 

「ねぇ~、ところでハチマンさん~。」

 

クリスさんがニコニコしながら甘ったるい声を出てきた。しかも、ニコニコとした表情ではあるが目が笑っていないのだ。それに加え、巧師匠に負けないくらいの殺気まで出してるんだが。

 

「え、えっと、クリスさん、ど、どどうしましたか?」

 

「わたしに言うことないかな?」

 

今までボッチだった俺には、難関な問題を出てきた。

……やはり、ウィズさんの胸をっ!危っ!

ナイフ投げてきたよ、この人!この人、仮にも女神だぞ。

周りも周りで、掛からないように席の端に移してるし、ウィズさんのカリスマガードしてる状態だ。

ここは、話題を変えなければ死ぬ。

なんだ、なにか話題をっ。

 

「えっ、えっと、クリスさん、そろそろパンツ返してく下さい。」

 

「えっ?あっ、はいっ?」

 

「修行から帰ってきてから3枚、昨日1枚盗りましたよね。」

 

「ぬ、盗んでないよ!」

 

「本当ですか?女神エリスに誓って?」

 

「ちか、ちか……。」

 

あまりにも急激な話題の変化と俺のパンツ盗難という訳の分からないワードで狼狽えるクリスさん。

カリスマガードをしていたウィズさんは、「パンツ?盗む?」 とハテナマークを浮かべていた。

ギルドの人々も同じような感じになっていた。

 

「どうしました、狼狽た様子ですが?」

 

「くぅぅ…誓えないこと知ってるくせに………ずるいっ。はぁ……わかりました。あれも事故ですから……今回は大目にみます。」

 

クリスさんから殺気は無くなり安堵した。

最悪、パンツを交渉道具にするかとか思いついだが流石に倫理的にな。

そういえば。由比ヶ浜から預かった犬のクッキー?いや、マカロン?そうだそうだ、サブレを預かった時に俺のパンツ盗られたな。

てか、なんで盗るのかわからん。何、俺のパンツからフェロモンでも出てるの?今度嗅いで・・・やめよう、ただの変態になる。

クリスさんは溜息を一度吐いて気持ちを入れ替えたのか、ウィズさんに話しかけた。

 

「んで、ウィズは今日どうしたの?」

 

「あっ、そうでした。ハチマンさん、家探してますよね?」

 

「えぇ、探してますよ。それが、どうかしましたか?」

 

「ウチに来るお客さんがですね、所持している別荘を格安で売りたいという依頼が来ましてね。」

 

「格安で?」

 

「はい、格安でです。理由としては、ここ最近悪霊が出るようになって値段がガタ落ち、オーナーも不気味がって所持もしたくない状態らしいです。」

 

なるほど。悪霊のせいで、値段が下がるのは前の世界と同じようなもんだが前の世界と違いこちらの世界では、冒険者やプリーストに依頼すれば確実に処理はできるはずだ。

疑問をウィズさんに疑問を問うと、どうやら何度か依頼をしたが悪霊を処理をしても何度も出てきてしまって、きりがないらしい。

 

「ちなみに、値段はどの位なんですか?」

 

「値段としては、500万エリスです。ちなみ大きさとしては、このギルドより大きいサイズです。それにオーナーが売れるように週1回は、掃除・点検など行っているみたいです。それと、これが屋敷の絵と間取りの設計図です。私も何度か見に行きましたが良いところでしたよ。」

 

「かなり大きいじゃんか。このギルドも中々大きさあるけど、これ以上になると5000万エリスはくだらないよ!買いだよ、ハチマンさん!」

 

絵と間取りの設計図をみると、かなり大きな屋敷だとわかった。このサイズからすると確かに格安だ。うーん・・・問題は悪霊のほうだが、ウチのパーティーにアークプリーストで女神のアクアがいるから問題ないな。それにウィズさんがよかったというのもポイントが高いな。

ここは買われれる前に買っておくのもいいか。

 

「ウィズさん、その物件買います。オーナーさん伝えてもらってもいいですか?」

 

「はい、わかりました。」

 

その後、3人で談笑をしながら夕飯を食べ、次の日ギルドに仲間を呼んで、屋敷のこと話し屋敷のオーナーから購入した。

そして、現在購入した屋敷前いるということだ。

ちなみに、購入資金はアクア以外の全員で出し合った。

アクアに関しては、資金を出す代わりに悪霊の処理をしてもらうことになっている。

 

「悪くないわね! ええ、悪くないわ! この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!やっとまともな家にっ!」

 

アクアが興奮したように叫び、カズマは感動あまり泣き出し、ダクネスとめぐみんも心なしか顔が紅潮している。

絵や図面を見たが本当に大きい。それに実際に来ないと分からなかったが陽当りも良く、大浴場もついている。

5人で住むにしても、手に余るほどの良い物件だ。

そん中、浮かれるアクアにダクネスが言った。

 

「しかし、本当に除霊ができるのか? 聞けば、今この街では払っても払ってもすぐにまた霊が来ると言っていたが。除霊ができなくては、せっかく皆で高い金を出したのに、この物件が無駄になってしまうぞ。」

 

「そうだぞ、アクア。お前にすべてが掛かっているだからな。」

 

ダクネスに続き、カズマも浮かれているアクアに釘を刺した。

まぁ、除霊に関しては大丈夫だろう。仮にも女神だから心配ないだろ・・・。

最悪、クリスさんにでも頼んでみるか。

 

「でも悪霊憑きとは言え、よくこんなお屋敷があの値段で買えましたね。小さな家ぐらいのちょっと街から離れますが小さな家を買える値段でしたよ。もしかして、今回の街中の悪霊騒動が起きる前から問題がある、訳有り物件だったりして・・・。」

 

めぐみんが不安になる様な事を言った。

 

「そ、そんなはずないだろ。・・・ないよな、ハチマン。」

 

「まぁ、屋敷といえば殺人事件。1件や2件あっても不思議じゃないな。」

 

カズマの不安を煽るように言った。

屋敷=殺人、金〇一しかりコ〇ンしかり相〇でも屋敷が出てくることが多いな。

 

「やめ、やめて下さいよ!ハチマン!」

 

声が震え青い顔をして、自分のプルプル震えるめぐみん。

そんな姿を見て、罪悪感と同時に昔小町に怖い話をした時と同じ反応していたのを思い出した。

小町とめぐみんは、時々重なって見える時がある。

 

自然と手が、めぐみんの頭を撫でた。

 

「うゅ。」

 

めぐみんから変な声が出たが、目を細めながら鼻歌交じりに心地よさそうにしていた。

カズマ・ダクネスが悪霊に対してまだ不安がある様子はあった中、アクアが自身ありそうな声で言った。

 

「さて、行くわよ。悪霊とかは、私に任せなさい!。・・・・フフフ。見えるわ、私にも見える!この私の霊視によると、この屋敷では貴族が遊び半分でメイドに手を出して、そのメイドとの間にできた子供が幽閉されていたみたいね。その貴族は生まれつき体が弱かったことから病死、母親のメイドもゆくえ行方知らず。この屋敷に幽閉された女の子が若くして父親と同じ病で伏して、両親の顔知らず一人寂しく亡くなったみたい。名前はアンナ・フィランテ・エステロイド。好きなものはぬいぐるみや人形、そして冒険者達の冒険話。でも安心して、この子は悪い霊ではないわ。私達に危害を加えたりしないはずよ。おっと、でも子供ながらにちょっぴり大人ぶったことが好きで、時々甘いお酒を飲んだりしているみたい。お供え物はお酒を用意していてね。」

 

あまりにもインチキくさい事を延々と口走ったアクア。正直、まだ夏の特番でホラー特集のほうがマシなくらいだ。カズマもダクネスも胡散臭い霊媒師を見るような目をしていた。

「・・・ハチマン、どう思う?なんで、このバカは余計な設定と名前までわかっちゃうの?割り勘とは言え、オレ全財産はたいたんだが・・・。」

「まぁ・・・不安があるが買っちまったもんはしょうがない。なんかあったら。俺が他のプリーストにでも相談してやる。」

「最初から、そっちのほうg「だめだぞ、めぐみん。それを口にしたら」・・・・はい。」

どこか不安がありながらも屋敷の中に入っていった。

 

 

 

 

 

夜半過ぎ。

俺達はみんな鎧や装備を外して、くつろいでいた。

最初は不安などがあったが、今のところ悪霊や怪奇現象などの問題なく過ごせていた。

それに、各自部屋割なども決めて、荷物などを持ち込んでいた。

俺の部屋は、角にある少し広い部屋がもらえた。

リビングまでは、多少離れているが風呂とトイレが近いのは助かる。

一応だが、部屋にあった家具やクローゼット、それにベッドの裏側などにお札的なものがないかは確認済みだ。

昔、面白半分で泊まった旅館のクローゼットをずらしてみたら、びっしりお札が貼ってあった時は、小町と一緒に寝てくれないかと交渉したもんだ。

今回は何もなくて本当によかったわ。それにあったとしてもアクアがいるから大丈夫だろ。

 

「ああああぁぁぁぁんん!うわーん!」

 

安心して、ベッドの上で寝ながら借りてきた本の続きを読み始めようとした瞬間にアクアの泣き声が自室まで響いた。

アクアの声を聞いて、俺は慌てて部屋を飛び出してアクアの部屋へと向かった。

途中カズマと合流してアクアの部屋の扉前へと行きノックをした。

 

「おい、どうした!何かあったのか!」

 

カズマの声にアクアは反応がない。

これは相当やばいことが中で起きてるんじゃないかと、カズマと顔を見合わせて扉を勢いよく開けた。

 

 

そこには・・・・。

 

「ハチマン、カズマ・・・うぅ・・うぅうう・・・。うえーん!」

 

部屋の真ん中で、大事そうに酒瓶を抱いて泣いていたアクアの姿だ。

よし、解散しよう。撤収、撤収。

俺が再度扉を開けて出ていこうとすると、アクアがグイッと服を引っ張ってきた。

 

「おい、俺は部屋に戻って本を読むんだ。」

 

「ひぐっ・・・事情くらい聞いてよ~、ハチマン!」

 

「はぁ・・・んで、どうした?あと、カズマどさくさに紛れて帰ろうとすんな。」

 

「ちっ。」

 

聞きましたか、今の舌打ち。

こいつが夜中トイレ行くときに、背後で世にも奇妙〇物語のテーマソング口ずさんでやる。

 

「ねぇてば!真剣に聞いてよ!」

 

「はいはい。まさかだと思うが、酔っ払いの奇声とかじゃないよな?」

「違うわよ!このお酒の中身が無くなっていたのよ。」

「それは、飲んじゃえば無くなろう。」

「そうじゃないのよ!このお酒は高いからお風呂上りに大事にチビチビ飲んでいたのよ!それが・・・それがっ!私が帰ってきたらお酒が空になってたのよ。」

・・・戻って本でも読んで寝るかね。明日は、日用品とか買いに行きたいし。

「そうか、大変だったな。」

俺にできる最高の笑顔で、アクアの肩をポンポンとやさしく叩いた。

カズマもあくびをしながら「そうか。お休み。また明日な。」と言った。

 

「ねぇ!なんでそんなに冷たいの!ハチマンに限っては、無駄にいい笑顔だし!ちょっ、2人共待ってよ!これはココに住む悪霊のせいよ!絶対間違いないわ!こんな悪質なことをする悪霊は速攻で消し去ってあげるわ!ということで、今から屋敷内の霊という霊をしばいていくわ!」

 

アクアが高笑いをしながら、部屋を出て行った。

悪霊だろうが霊だろうが除霊してくれるなら止める必要もないし何でもいいか。

 

「うぅ・・・もう結構な夜中なんですから勘弁して下さいよ。何事ですか?」

「っていうか、今アクアが高笑いしながら、廊下を走って行ったぞ。」

 

先ほどのアクアの叫び声で来たのであろう、眠そうに目をこするめぐみんときょとんした顔をしたダクネスがアクアの部屋に来た。

 

「あぁ・・・アクアが除霊をするらしいぞ。ほら、お前ら自室戻って寝るぞ。」

 

その場で、全員解散をして自室戻っていった。

 

 

 

 

一体どのくらい寝たのだろか。

屋敷は静まり返り、深夜をとっくに回っているだろう。

その静まり返った中で、部屋の扉をたたく音が鳴り響いた。

 

おい、ふざけるなよ。こんな夜中にノックするアホは。

俺は絶対にベッドから出ないからな。

 

決意を硬く持ったところで、徐々にノックする回数と速さが増していった。

 

「だぁ!もうわかりましたよ・・・どちらさん。」

 

イライラしながら扉を開けると、そこにはモジモジしているめぐみんの姿があった。

えっ、どうしたのこの子?

寝起きのせいか頭が回らずにめぐみんを見ていたら恥ずかしそうに、めぐみんは口を開いた。

 

「は、ハチマン・・・あ、あの・・・。・・・・に・・・レに・・・。」

 

「どうした?」

 

「う~、と、トイレに一緒に行ってくれませんか?」

 

「・・・はいはい、トイレね。」

 

「う~。」

 

恥ずかしいのか、うねり声を発してながらもトイレに向かうめぐみんに着いていった。

なんか、本当に小町そっくりだな。昔は、夏の特番でホラー番組やホラー映画を見たときは、毎回深夜にトイレに一緒に行ってくれと言われたな。

トイレに着くなり、めぐみんはそそくさとトイレの中に入って行った。

 

「ハチマン、外にいますか!」

 

「いるよ。」

 

「本当の本当ですか!」

 

「・・・はいはい、いるよ。」

 

その後何回も何回もいるかどうか確認をさせられ、トイレから出てきた。

 

「ハチマン、ありがとうございます。」

 

「あいよ。」

 

さて、部屋に戻ってもう一度寝るとするか。

自分の部屋に戻ろうと歩き出そうとした時に、遠くから悲鳴と叫び声が聞こえた。

その悲鳴は徐々にこちらに近づいてきた。

 

「な、なんでしょうか、この悲鳴?」

 

「わからんが・・・逃げる準備だけはしとけ。」

 

めぐみんは、俺の服をぎゅっと掴んで体をビクつかせながらも悲鳴が聞こえる方を見つめる。

そして、悲鳴を上げている人物の姿が俺達の前に現れた。

 

「ハチマン、めぐみん助けて~!」

 

「なんだ、カズマか。」

 

「ふぅ・・・カズマでしたか、驚かせ・・・ひゃあああああああああ!!!!逃げますよ、ハチマン!!!早く!!!」

 

「おい、どうし・・・・。行くぞ、めぐみん!」

 

めぐみんの手を引っ張って、走り出した。

なぜ?走り出したかって?カズマの後に多数のフランス人形が宙に浮きながら追いかけてきたからだ。

 

「おい、カズマこっちくんなよ!」

 

「そうです。」

 

「お前らひどくないか!」

 

俺達、3人は仲良く廊下を爆走した。

 

 

 

 

「うぅ・・・ハチマンいますか。」

 

「あぁ、いるぞ。囮に使えるカズマもいるから安心しろ。」

 

「だれが囮だよ!」

 

「安心ですね!」

 

俺達は屋敷中を駆けて、空き部屋のクローゼットの中に隠れていた。

さすがに3人でクローゼットの中というのはキツイ。しかも、俺を挟んで密着している状況だ。

そんなかで、文句を言っていたカズマが急に黙りこくっては、体をモジモジさせ始めた。

 

「動くなよ、カズマ。」

 

「そうですよ、ただで狭いんですから・・・はっ!カズマもっと動いてもいいですよ。」

 

「何言ってんだよ、めぐみん。」

 

「クンカクンカ・・・。」

 

「おい、俺の匂いを嗅ぐなよ!おい、カズマも動くんじゃねぇよ!」

 

「・・・トイレ。」

 

カズマが情けない声を発した。だが、その一言で、すべてを把握した。

・・・この場で漏らされる訳にはいかない、俺の服にこいつの威厳が・・・って、元々ないか。

 

「仕方ない。俺が囮になるからカズマは、その隙に行ってこい。あと、めぐみんもその隙にアクアと合流してこい。」

 

「すまない、ハチマン。」

「えっ?今の状況が「行ってこい」・・・むぅ、わかりました。」

 

外から物音はないが、気配はある。

巧師匠の修行を思い出せ、あの時の怖さに比べれば。

よっしゃ、行くぞ!クソがっ!

自分自身に活を入れて、クローゼットのドアを開けた。

 

「来い!俺が・・・。」

 

活を入れクローゼットを開けるも、そこには人形がこれでもかってくらいに床や壁や天井などにびっしりいた。

人形達も、俺の声に反応してはプラスチックが軋む音を立てながら顔を回転させて、俺に視線を合わせてきた。

oh・・・予想以上にいるんだが。

 

「「ひぃぃぃぃ!」」

 

「クソっ!やってやる!」

 

クローゼットから出て、両掌を丹田のあたりにかざし右腕を勢いよく左斜め上に伸ばした。同時に左手を右腰あたりにつけ、スーッと右腕を左から右に高さを変えずに平行移動させた。左手もそれに合わせてスライドして左腰に平行に添え、「変身!」と叫び、右手を左腰にある左手の上に素早く移動させ、軽くグッと押し込み、身体を開き、両腕を緩やかに腰の高さで広げた。俺の姿はクウガへと変わった。

 

「カズマ・めぐみん!」

 

「「はい。」」

2人はクローゼットから飛び出て、廊下へと出ていった。2人が出たことを確認して、人形達に向けてファイティングポーズをとると人形達も両手を前に出した。

「来い!」

 

 

・・・・・・・・・・・・。

 

人形達は、俺の気合とは裏腹にまったく動こうとしなかった。待てど待てど、まったく動く気配がせず思わず、ファイティングポーズを解くと人形達は前に出した両手を合わせたり離したりを繰り返した。

そう、人形達は俺に向かって拍手をしてきたのだ。・・・おいおい、どう反応すればいいんだよ。

「ハチマン!私が来たか・・・らには?どういう現状?」

 

アクアが駆け付けるなり、このよくわからん状況に困惑していた。

「俺にもわからん。」

 

「・・・とりあえず、話し聞いてみるわ。」

 

そこから、アクアは人形達に話しかけ始めた。

途中にふむふむ、なるほどと声を上げていた。

 

「ハチマン。どうやら、この子達、その特典というか仮面ライダーだっけ?気になるらしいわよ。」

 

「はぁ。」

状況がわからず、思わず気の入らない返事をした。とりあえず、変身解こう。

クウガの姿を解いて、アクアを見た。

 

「気になると言われてもな。」

 

「ふむふむ。この子達が仮面ライダーの話しを聞きたいって。なんでもカッコイイからワクワクしてる少年少女の霊とかがワクワクしてるわよ。」

 

「それなら仕方ないな!」

 

少年少女に来世の夢を与えるは必要だし、なによりもカッコ良さを分かるしな。

そこからの行動は早かった。

アクアにもう少し広い部屋に霊たちを集めてもらい、仮面ライダー1号から俺が知る限りの最新の仮面ライダーの話をしてあげた。

ところどころ、嬉しそうに拍手をする霊達を見て一緒に変身ポーズしたりした。

朝になる頃には、霊達は満足したのかアクアのところに行っては成仏させてもらっていった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・これで最後ね。結局朝まで掛かっちゃったわね。」

アクアは、窓から日の光が差し込み明るくなった外を見て呟いた。なんだかんだ、この広い屋敷の霊を成仏させたアクア、一晩でここに居た霊の他にも霊も除霊やるだから腐っても女神か。

 

「さて、一応このままギルドに報告しに行くぞ。」

 

「えーーー「朝食ぐらいなら奢るぞ。」行くわ!」

 

リビングに行って、置手紙を残してアクアとギルドに向かった。

ウキウキ気分になっているアクアに対して、テンションが上がっていたとは言え、あんまり寝れなかったので何時もよりも歩みが遅くなっていた。

 

「そういえば、貴族の霊がどうたらって言ってたが、その霊は悪さをしないんじゃなかったのか?」

「あぁ、居たわね、そんな霊。あの子は今回の件は関係ないわ。それに今回の件は全部野良の霊の仕業だから。」

野良ねぇと眠気のおかげで頭がぽけーっしていた。

そして、嬉しそうにギルドのドアを開けた。

「あっ。おはようございます、ルナさん。すんません、こんな早くに、報告したいことがありまして。」

こんな朝早くだというのに、受付嬢のルナさんが居た。

 

「ハチマンさん、おはようございます。いえいえ、いつでも来て頂いても大丈夫ですよ。それで、どんな報告ですか?」

 

アクアと俺は、夜に起きた事を話した。

ルナさんが、アクアの冒険者カードを見ては、なるほどと頷いていた。

冒険者カードには、倒したモンスターの数字が記載されているので、その数字の確認をしているのだろう。

 

「はい、分かりました。この件に関しては、今張り出されているクエストで不動産から悪霊退治の依頼と合致しています。この屋敷の持ち主はハチマンさんとなっておりますが、街の悪霊退治したということで僅かとはいえ臨時報酬を出させていただきますね。」

 

思わぬ、臨時収入にアクアは無言でガッツポーズをしていた。

ルナさんは、尚話しを続けた。

 

「ハチマンさん達には、苦労をかけて申し訳ないですが街に増えた悪霊の原因が分かったので、そちらのほうもお願いしたいんですが。」

 

「原因?」

 

「はい、街の共同墓地がありますよね。あの墓場のところで、何者かのイタズラか何かで、神聖属性の結界を張ったんですよ。それで、墓地で発生した霊達が行き場所がなくなって、空き家に住み着くように・・・。」

 

それを聞いたアクアの体がビクンと震えた。

・・・まさか。

 

「すいません、ルナさん。少し待ってもらってもいいですか?」

 

「はい。」

 

不思議そうに首を傾げていたルナさん。

俺は、アクアをギルドの隅っこに連れて行った。

 

「アクアさん、何か心当たりがあるじゃないんですか。」

 

「・・・はい。ウィズに頼まれて、定期的に墓場の霊を成仏させるって話があったじゃないですか。でも、しょっちゅう墓場に行くのって面倒くさいじゃないですか。・・・それで、墓場に結界張っておけば霊もどっか適当なところ行って、勝手に成仏してくれるんじゃないかなぁ・・・みたいな?」

 

・・・完全にマッチポンプじゃねぇか。

これは、不動産の人にも言わなきゃ、ダメな奴だ。

 

「・・・おい、臨時報酬はなしな。」

 

「・・・はい。」

 

「それと、お前が原因なんだから除霊費用として家代貰わなかったが、今後のクエストから少しずつ減らしていくからな。」

 

「うぅぅぅぅ・・・・。」

 

「あと、今から不動産にも謝りに行くからな。」

 

「・・・うぅ・・・ごめんなさい。」

 

ルナさんに、臨時報酬は貰えないと伝え、ギルドを後にし不動産に・・・。

と思っていたが、行く道中で昨日売ってくれた不動産の亭主と店員と出会った。

 

「おぉ、こんなところで会うとは奇遇ですな。先ほど、心配で屋敷のほうを見たのですが無事除霊も上手くいったようで。何事もなくよかったです。」

 

にこやかに挨拶をした亭主は、俺達の心配までしてくれた。

心がっ!心がいたたまれない!

やめて、本当に。もう、ただでさえ、この世界住人の人達の優しさに頭が上がらないのに。

 

俺とアクアは事情を話し、屋敷を返し、買ったお金はお詫びにと言った。

 

・・・がっ。

 

「なるほど・・・。・・・これは私の我儘なのですが、あの屋敷に住んでいただけますでしょうか。あそこの屋敷には、アンナ・フィランテ・エステロイドという元屋敷の持ち主の令嬢が遺言がありまして。その遺言では自分の身体が弱くて外に出れなかった自分の代わりに、外の世界を見て回れる冒険者に売って欲しい。そして、楽しそうに冒険話をする様子を見守りたいと書いてありました。貴方達は、マッチポンプだったとはいえ、あれだけの悪霊を成仏をさせてあげたのですから、かなりの実力者と見込んでお願い致します。」

 

亭主は頭を下げた。

 

「頭を上げてください!あんな良い物件を断る理由なんてありません!むしろ、住まわせてしてください。」

 

亭主は頭を上げて、にこやかに「ありがとう、ようやく約束が果たせたよ。」と言って、店員と一緒に店へと戻っていった。

 

 

 

屋敷に帰る道中に、花と人形を買って屋敷の外にある小さなお墓に供えた。

バカみたいな冒険話をしないとな、こんなパーティだから飽きは来ないだろうから安心してくれとお墓に手を合わせると、墓の後にある木が大きく揺れた。

まるで、頷いているかのように。

 




FGOで無課金で石を200ちょい集めて、沖田ちゃん狙いでいったら……なんと!
星4のエミヤしか来ませんでした。
もう……ログインだけでいいかな。


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5-1 メガネパニック 前編

ギャグ回の前編です。
よろしくお願いします。


『子供』

子供というのは、とても純粋な生き物である。

時に、残酷な事をしたり残酷なアダ名付けたりする。それも、全て悪気があってやっているのではなく純粋にやっている事が多く大人になってから、その残酷な行為を悔い改めたりするもんだ。だが、子供は残酷な事ばかりやっている訳ではない。子供は純粋さゆえに、大人などに憧れを持ち、自分がなりたい職業などに繋がっていくものだ。自分を助けてくれた医者や自分の家を修理や建てて貰った大工や英雄の名剣を作った鍛冶師、名をあげた冒険者など、いろいろな職業に憧れるものだ。その憧れた職業を行っている大人達は、子供にとってはヒーローである。どの世界でも同じで、ギルドの窓から外を見てみると子供達は冒険者ごっこしていた。

 

 

『『『『『ジャンケン……ポンっ!』』』』』

 

 

『やった!オレの勝ち!オレがやる役は、ハチマン!』『取られた……んじゃ、敵のデュラハンでいいか。』『わたしは、爆裂魔法の紅魔族のお姉ちゃんやる!』『ワタシは、黄色い鎧を着た騎士のお姉さん。』『あたしは、青のお姉さん!』『残ったのゴミみたい緑のジャージの奴だけじゃん。えー、この人やるぐらいなら倒れてる木が良い!』

『ダメだよ、ちゃんとやらないと。ゴミみたいな緑の人も大事な役だよー。』『うぅ……、次やる時は代われよ!』

 

 

と子供達が騒いでいる。

そう、今子供達のマイブームはデュラハン戦ごっこ遊びが流行っているのだ。

しかも、驚く事にデュラハンとかの台詞とかは曖昧なのに、俺が吐いた台詞は曖昧ではないことだ。その為、街を歩く度に、いろいろ所から小っ恥ずかしい台詞が聞こえる。でも、あの名台詞を言えたから後悔はしてないから良いんだが。

だが、ここに1人だけ納得していない者がいる。

 

「くそっ!なんでっ!オレだけ外れ役なんだよ!あのデュラハンこそ外れ役の筈だろ!」

 

「カズマ、子供にとって戦闘員と非戦闘員では人気の差があるのは仕方がない事です。」

 

「おいっ。オレも戦っていたぞ!」

 

納得していなかったのは、ウチのパーティの子供達から不人気である緑役のカズマだ。

カズマを不満を口にしながら、ヤケ食いをしていた。

そんなカズマの姿を見て、アクアがプスプス笑いながら言った。

 

「確かに、カズマは戦っていたわ。でも、役割が地味なのよ、じ~み!プッ、ハハハッッ!」

 

「あ''あ''ぁ?」

 

「アクア、そう言ってやるな。カズマが、あの戦闘でデュラハンの弱点を見つけたおかげで時間稼ぎができたのだからな。」

怒り狂うカズマに対し、すぐさまフォローを入れるダクネス。

俺は、ダクネスのフォローに関心していた。

 

「時に、カズマ。子供達からバカにされる感触はどんな感じなのだ?私も、純粋な子供からゴミと蔑まれたい!」

 

あぁ・・・やはり、そう来るのね。こいつは、こういうところさえなければ間違いなく他のパーティーでも人気があっただろう。

ダクネスを残念そうに見ていると、ダクネスはそれを待っていたと言わんばかりに、にんまりして頬を赤らめていた。

 

「だぁ!もう我慢ならねぇ!ハチマン!オレと一緒にチート級の武器探しに行くぞ!」

 

カズマは、机を叩くなり俺の名を指名して立ち上がった。

正直めんどくさい、こういう時ほど厄介事に巻き込まれるのは鉄板だ。

だが、ココで断るのも後々めんどくさい事になる。

 

「はぁ。へいへい、探しに行きますか。」

 

「よし!行くぞ!」

 

溜息を吐きつつも、意を決して席から立ってカズマと共にギルドから出た。

 

 

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-

 

「んで、カズマ。」

 

「なんだ、ハチマン?」

 

「チート級の武器を探しに行くけど当てがあるのか?」

 

ギルドを出て、カズマと共に歩きながら質問をしたところ、自信ありげな顔をしていた。

これは、ちゃんと計画していたのか。

 

「あぁ!もちろん、ないぞ!」

 

「・・・帰る。」

 

歩く方向をギルドに変更して、歩き始めるようにカズマはヘッドスライディングして俺の足に縋り付いてきた。

 

「待って!待って下さい!」

 

泣きながら懇願するカズマ。

だが、俺は歩みを止めん!今の俺ならこの状態でも歩くことできるので、カズマを引きずり歩き始めた。

 

「ハチマンさん、お願っ!やめて、これでも全体重掛けてるの!普通に歩くのやめて!いたたたた。」

 

ずるずるとカズマを引きずり歩いていると、見慣れた女性がいた。

 

「ハチマンさん。こんにちわ~。」

 

「こんにちわ、ウィズさん。」

 

ウィズさんと挨拶を交わすと、掴まれていた足が急に軽くなった。

後ろを向くと、何事もなかったように服の砂を払い、すました顔をしたカズマがいた。

こいつは・・・。

 

「あら、カズマさんも居たんですね。」

 

「はい、さっきまでハチマンと戯れてました。」

 

「そうなんですね。2人は、これから何処かに行くんですか?」

 

「オレの新しい武器を探してるんだ。」

 

「あっ、それならウチのお店で買いませんか?いいの、揃ってますよ。」

 

ウィズさんは、にこにこしながら提案をしてくれた。

マジックアイテムならチート級の性能の物もあるかもな。

それに、埃まみれになった隠れたマジックアイテムとか見つけて、無双するっていうライトノベル定番な展開もありそうだしな。

まぁ、ウィズさんが道具を粗末にしてるはずはないな。

 

「なぁ、ハチマン行ってみようぜ。」

 

「そうだな。ウィズさん、お願いしてもいいですか?」

 

「はい!もちろん!」

 

眩しい!笑顔が眩しい!目がっ、目が浄化される!

浄化されて、腐った目が綺麗に・・・いいのか。綺麗になるのはいいことか、なら見続けても大丈夫か。

そんなアホな事を考えつつ、ウィズさんのお店へと向かった。

 

道中、子供達から握手を求められたり変身ポーズ取ってと言われ、ポーズを取ったりなどしてお店に着いた。

 

「ハチマンさん、すごい人気ですね。」

 

「人気があるのは、スキルのヒーロー姿の方ですよ。」

 

「いえいえ、そんなことないですよ。子供達からあんなに憧れの眼差しを貰えるのはスキルだけじゃないですよ、ハチマンさんの魅力があるからです。」

 

「……あ、ありがとうございます。」

 

初めて女性に魅力があると言われたわ。小っ恥ずかしくて、顔が暑……。カズマから嫉妬や怨恨が混じったような目で見てきている姿が視界に入った。

原因は、俺が握手などしている隣で同じように子供達に握手してあげようとしたところ「触るな、ゴ緑!」と言われて伸ばした手を弾かれた。しかも、それを見ていた周りに居た女性達からは、ヒソヒソと何かを言われていた。あれは流石にキツい、フォローすら出来ない空気だった。

 

「カズマ、とりあえず中に入ってマジックアイテム買おうぜ。きっと、お前にあったアイテムがある筈だしな。」

 

「そうですよ、カズマさん。ウチのマジックアイテムは、自慢の品々が多いんですから。」

 

「……。」

 

無言を貫くカズマの近づき耳元で、「女からモテるマジックアイテムや下着とか見えるマジックアイテムがある可能性もあるぞ。」と耳打ちすると、「おいおい、ハチマン何してんだよ!早く探そうぜ!」と言って店の中へと入って行った。

こういう時は、単純で助かる。ホッと一息ついた瞬間に、ウィズさんが耳元で「そ、そんなアイテムはありませんよ。ハチマンさんのえっち。」と囁やいて店に入っていった。

まさか聞こえていたとは・・・っていうか、カズマのせいで俺の評価下がんじゃねえか。でも・・・ありがとうございます!

去って行ったウィズさんに向かってお辞儀をしてから店に入った。

 

「よし!ウィズ、おすすめの商品あるか?」

 

「そうなんですね、カズマさんはどんなものをお探しですか?」

 

「どんなものか・・・ハチマン、オレに似合いそうなものってなんだと思う?」

 

「カズマに似合いそうものか、最近手に入れた狙撃スキルを利用した武器とかどうだ?」

 

「おぉ、それいいな!」

 

発案に乗ったカズマは、狙撃を利用した武器をウィズさんと共に探し始めた。

カズマは、ギルドの飲み会を通じて手広くスキルを確保している。しかも、カズマ自身が器用で手に入れたスキルの応用をしている。

色々なスキルが使えるというのは、羨ましいと思う。

 

「なぁ、これは?」「そちらは、衝撃を与えると爆裂魔法には届きませんが中級爆発魔法に匹敵するほどの威力を持つ爆弾です。」

 

とんでもない単語が聞こえたが気にしない。俺は気にしないぞ。

だが、こう店を見渡してみると色々あるんだな。

 

「うん?」

 

俺は、ひときわ目立つ眼鏡を見つけた。

見た目は、何にも変哲もない銀縁の眼鏡なのだが、周りのラインナップなどと比べて異質というかなんというか。数も、この2個しか並んでないのもある。

 

「ウィズさん、これは何ですか?」

 

「あっ、そちらの商品は入荷したばかりの物です。こちらの眼鏡を掛けると女性から嫌われるという効果を持ちます。基本的に、女性に嫌がらせやセクハラなどした方に付けて罰する道具です。効力的には、女性から罵声を浴びたり変な噂を立てたり、場合によっては暴行されるということもありますね。」

 

「へー。そんな……っ!身体が……。」

 

マジックアイテムに関していると、急に身体全身が痺れ、力が抜けてその場に倒れた。何が起きたのか分からず、首をなんとか動かし周りを確認するとニヤケ面したカズマが手をワキワキさせていた。

 

「きゃー!カズマさん何をっ!」

 

「カズマ、お前……まさか!」

 

「へへへ……。どいつこいつも、人気がありやがって……ハチマン、お前に関しては子供だけではなく、女までもファンがいやがって……オレには……オレには……っ!喰らえ!スチャっと……。」

 

カズマは、俺にマジックアイテムの眼鏡を付けては、高笑いをし始めた。コイツ、後ではっ倒す。

 

「これで!コレで、ハチマンもオレと同じになる!ひゃっはー!」

 

「ハチマンさん、今治します!」

 

倒れている俺の前に、駆け寄って来てくれるウィズさん。そして、手を体に乗せて状態異常を治す魔法をかけてくれた。身体は徐々に、痺れが取れ始め立ち上がる事ができる範囲までいったのを確認して立ち上がった。

 

「身体の方は大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です、ありがとうございます。……っていうか、眼鏡掛けてるのにウィズさん何ともないんですか?」

 

「えぇ、何ともないです。ハチマンさんに対して、嫌な感じとかしませんね。」

 

どうやら、眼鏡の効力が発揮されていないようだ。うん?発揮されていない?元々が……いや、考えないでおこう、死にたくなる。

 

「さて、カズマちゃん?分かってるよな?」

 

「えっ?あっ……。」

 

「ウィズさん、ちょっと出てきます。こっからは、18禁ですので。」

 

カズマの首根っこを掴んで、店の外へと連れ出し龍が如くの壊し屋スタイルのヒートアクションをかました。どのヒートアクションかは想像に任せる。

カズマにお灸据え、首根っこを掴んだままお店の中に入ると想像もしていない光景が目に入った。

その光景とは……ウィズさんが、紫を基準に黒のラインが施されたセクシーな下着姿だった。

 

「う、ウィズさん!服!服着てくださいよ!」

 

「えっ?着てますけど?」

 

「はっ?だって、紫のっ「えっ、ひゃ!」。」

 

「おい、ウィズが下着姿だと!……んだよ、服着てんじゃん。」

 

「まさか……この眼鏡の効力か?」

 

俺の発言に顔を赤らめては、その場にしゃがむウィズさん。

俺も慌てて眼鏡を外そうとしたが、ビクともしなかった。無理に外そうとすると顔の皮まで持っていかれそうになった。

先程まで技をかけられて、ぐったりしていた筈のカズマはウィズさんの下着姿という言葉に反応して元気が戻ったと同時に眼鏡の効力だとしり、その場で床に崩れた。

 

「なんで!なんで、ハチマンだけが美味しいイベントがあるんだよ!ハッ!オレも眼鏡をかければ!」

 

「おい、ちょっと待てカズマ。なんで、これ外れないんだよ。クソ……うん、なんだこれ?」

 

外そうと色々と眼鏡を触っていたら眼鏡の縁の所にダイヤルらしき物があった。一か八かに掛けてダイヤルをカチッと動かした。

ダイヤルを動かすと、ウィズさんの姿はいつものローブの姿に戻っていた。

一安心したのは、つかの間。カズマが、もう1つの眼鏡をかけた。

 

「おっしゃー!コレで、パンツ見放題だぜ!……って、あれ?おい、ハチマン何も見えないぞ!」

 

「はぁ……、良かった。」

 

「ウィズ、これ欠陥商品じゃねえか。」

 

「………………。」

 

先程まで、しゃがみ込んでいたウィズさんが無言で立ち上がった。おかしい……何かがおかしい。

 

「おい、ウィ「うるさい、この豚野郎!私の名前を気安く呼ぶな!」「へっ?」」

 

俺とカズマは、ウィズさんの言動に素っ頓狂の声が出てしまった。

嘘やろ?あの女神より女神に近い人が、あんな汚い言葉を吐くはずが「おい、聞いてんのか?そこゴ緑。お前だよ、お前。さっきから……。」……マジですか。

 

「おい、カズマ!お前、何しでかしたんだよ!」

 

「お、オレは何も!あっ!もしかして、この眼鏡が原因なのか!」

 

「うるさいって言ってんでしょ!」

 

ウィズさんは、大きな風を起こしてドアの外までカズマを吹き飛ばした。

 

「あー、見てるだけでイライラする。いいですよね、凍らしても!………………カースド……。」

 

ウィズさんが、詠唱をし始めと同時に周囲に冷気が発生した。空気も、今までにないくらいピリピリとしていた。

あれは、やばい!と1発で分かるほどだ。

 

「カズマ!俺がウィズさんを抑えるから逃げろ!」

 

「あ、あぁ!」

 

すぐさま、ウィズさんの体を後ろから羽交い締めした。羽交い締めした瞬間、詠唱は途切れ冷気が和らいだ。

その一瞬を見逃さないように、カズマは手足をバタつかせながらも街へと走っていった。

 

「お、落ち着いて下さい!ウィズさん!」

 

「…………ちっ、やり損ねました。」

 

逃げた事を確認してから羽交い締めを緩め後ろに1歩下がった。しかし、下がった筈なのにウィズさんとの距離が先程の羽交い締めしていた時と距離が変わらなかった。もう一度後ろに1歩下がって見たが、やはり変わらなかった。さらに、もう一度後ろに下がろうとした瞬間にウィズさんが身体を反転させて正面から抱き締めてきた。

 

「ほわぁ!?ウィズさん、どうしたんですか!」

 

「むー。ハチマンさん、私を呼ぶ時はウィズさんじゃなくてウィズと呼んでください。」

 

「はい?」

 

「いいから!ウィ~ズ。ほら、早く~!」

 

「えっ……あっ、ウィズ?」

 

「えへへ……。」

 

何、この状況?八幡、よくわからない?

困惑している俺に対して、ベッタリ抱き締めて離さないウィズさん。抱き締められる事により、ウィズさんのたわわの実りが押し付けられている事に気づいた。

 

「ウィズさん「さんはいらないですよ。」……ウィズ、む、胸が当たっ「ワザと当ててるんですよ。」……。」

 

現実世界で、ワザと当ててると言う台詞を聞くことができるとは……この台詞はライトノベルやアニメだけかと思っていた。おっと……感動している場合じゃない!どうする?何が原因だ?何故こうなった。

少し前の行動を思い出すと、眼鏡の縁に付いているダイヤルを回した事を思い出した。

 

「回した瞬間に目を瞑れば大丈夫、目を瞑れば……。よしっ!」

 

眼鏡の縁に付いているダイヤルを回してカチッと音を立てた。その音と同時に、目を瞑った。

 

「ウィズ?」

 

「はわわ……あれ?あれあれあれ?、なんでこんな事に。」

 

いつもの感じに戻った感じだな。抱き締められていた腕の力も緩んで、離れていて行ったのがわかった。

 

「良かった元に戻った見たいですね。」

 

「は、ハチマンさん、何があったんですか!それと、なんで目瞑っているのですか?あと…今……。」

 

「えっと……まぁ、数分前の事を話しますね。」

 

それから、目を瞑りながらもウィズさんに数分前に起きた事を話した。きっと、目の前にはわはわ言いながら顔を真っ赤にした女神がいるんだろうな。言っておくが、薄目してでも見たいとか思ってないんだからね!ホントだよ。

 

ていうか……これどうやって帰ればいいんだよ。




最近、色々なゲームが出てますね~
今更になって、オーバーウォッチと龍が如く極を始めました。
両方楽しすぎてやばいです。
皆さんは、今ハマってるゲームとかありますか?


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5-2 メガネパニック(後半)

お久しぶりです!
大分期間が空いての投稿なります!
転職やら何やら大分落ちつきました。

オリジナルの話を書くのは、やはり難しいのでオリジナルを書いてる人は本当にすごいです!

では、どうぞ


どうやって帰るべきか。

どんな状況なのかをウィズさんに説明した後、急いで眼鏡について調べてくれると言ってくれた。

説明を聞いている時のウィズさんの顔の赤面したりあわあわしている姿など声色でわかった。

あの人ほどわかりやすい人はいないな。実際に目で見たかったな・・・・もし、その姿が見れていたら・・・。

おっと、自分でもわかるくらい表情が緩んでしまった。

引き締めるため、軽く顔を両手で叩いた。

 

「ふぅ・・・。」

 

よし!まずは、現状の確認だ。

周りを見渡し、腰掛けに丁度良い岩を見つけ腰を下ろした。

現状の居場所としては、ウィズさんの店を出て、5分ばかり歩いた場所だ。

人通りが少ないおかげで、目を開けてここまで来れた。

眼鏡のモードは、透視モードにしている。範囲などがわからない状態で、下手にチャームモードにするとえらいこになる。

まぁ・・・本当にチャームモードなのかは、わからないがな。

 

今の状況で、どっちのモードにしても街に戻ったら理性的にヤバイのは目に見えている状況だ。

まさに、前門の虎後門の狼だ。いや、虎や狼だったらどんだけマシか。

前門に雪ノ下雪乃 後門に雪ノ下陽乃だな。考えただけでゾッとするところか失神しちまうよ。

はぁ・・・。本当にどうっすか。解除方法がわかるまで、適当に穴倉か森で生活するか?

 

そんな事を考えていると、頭をがっしり掴まれ後へと倒す感じに引っ張られた。

あまりにも突然のことだった為、岩に頭部をぶつけると思い思わず目を瞑った。

だが、待てど待てど岩にぶつかる様子はなく、依然と頭はがっしり掴まれたままだった。

ゆっくりと目を開けると淡い緑色と白の縞々の布とニコニコしているクリスさんの姿があった。

 

「こんにちは!ハチマンさん。」

 

「えっと・・・こんにちは。縞々さん。」

 

「えっ?何言っているのハチマンさん?縞々?」

 

「あっ・・・今のなしで。」

 

直ぐに顔を反らそうとしたが、クリスさんは瞬時に体制を変え足を俺の首に巻き付け、首が動かないように軽く締めてきた。

俺の体制もつらいが、首に当たる生暖かい感触もつらい。

 

「ハチマンさん、なんで顔を反らそうとしたの?」

 

「せ、説明しますから一度離してください!」

 

俺がそういうとクリスさんは、首に巻きつかした足を離した。

首に巻き付いた感触と生暖かい感触から解放され、安堵というか色々と安心したせいか口から、ふぅと声を出しながら息が出た。

 

「それで、顔を反らした理由を教えてよ。まさか、眼鏡かけてイメチェンした姿が恥ずかしいとかじゃないよね?」

 

「そんな簡単な理由だったら、どんだけ楽だったか・・・。」

 

思わず、肩落としため息吐いた。それを不思議そうな顔して首お傾げているクリスさん。

言っておくが、こんな状況でも俺はクリスさんの首から下は見てないからな。

でも、本当に言うべきなのか・・・。言っても大丈夫か、だって女神様だよ!多少のことなら許してくれるはずだしな。

いや、でも・・・と言うか言わない悩んでると、「ほらほら、この偉大なお姉さんに話してみなよ~。うりうり~。」と言いながら、俺のほっぺを人差し指でグイグイ押してきた。

 

「い、言いますから、ほっぺをグイグイするの辞めてください。」

 

「しょうがないな。」

 

「えっと、言っても怒らないですよね?」

 

「うん?怒らないと思うよ?」

 

「んじゃ、言いますね。今掛けている眼鏡なんですけどね。」

 

「うん。」

 

「・・・服を透視して、下着が見えるんですよ。」

 

「・・・はい?ごめん、もう一回行ってくれる?」

 

思わず、聞き直すクリスさん。

まぁ。そうなるだろう、俺が同じようなこと言われれも同じ反応するしな。

てか、ちゃんと理由とか話さないと、ただの変態妄言野郎になってしまう。

だが、もう一度同じこと言うんであれば・・・・。

 

「・・・はは・・・透視して、下着がみえるんですよ。今もね♪」

 

俺のできる最大限の爽やかな感じで、最低な発言をした。

硬直するクリスさん。

無駄に流れる沈黙・・・。

 

そして、クリスさんの頬に一つの雫が流れだし徐々に雫が流れ地面に流れた。

 

「・・・ごめんね。ハチマンさん、目の濁りが脳まで浸透するなんて・・・女神の力使ってでも治しますからね。」

 

「いやいや、本当なんですよ!確かに、濁ってますけど脳は大丈夫ですよ!」

 

「じゃあ・・・証拠みせてよ。」

 

「証拠って・・・。」

 

仕方ないか、これは不可抗力だもんな。八幡悪くないもん。

証拠のためだもん!

視線を、ゆっくりとクリスさんの首から下へと下した。

 

「・・・淡い緑と白のストライプのブラとパンツ。」

 

「へっ?・・・ちょっと確認してくるね。」

 

クリスさんは、そう言うと岩陰に隠れにいった。

隠れてから、30秒もしないうちに岩陰から「ぴにゃぁぁぁああああ・・・!」という叫び声が聞こえた。

あぁ、この後ビンタか何か喰らうだろうななどと覚悟を決めて、待っていると顔を真っ赤にしながら岩陰から出てきた。

そして、んー!と言いながら、あまり痛くない肩パンをしてきた。

何発かやってから、落ち着いたみたいで少し離れていった。

 

「と、とりあえず、じ、事情はわかりました。だけど、なんでそんな眼鏡を付けたままなの?もしかして・・・「違いますよ!」」

 

「言っておきますが、俺だって外れるんであれば、すぐにでも外したいくらいなんですから。」

 

「本当に?」

 

ジト目で、見てくるクリスさん。本当ですよ、本当。確かに、多少・・・いいや、男としては捨てがたいアイテムだ。

ToでLOVEな主人公も何回か着けてたしな。男なら一度は夢に見るアイテムだしな。

はっ・・・!

 

「ハチマンさん、今変な事考えてたっでしょ。スケベ、変態、ハチマン!」

 

ごふぁ・・・。

俺は、膝から崩れ落ち両手を地面に着けた。

なんてダメージだ、ジト目+罵倒だ。タクミ師匠のパンチなんて比べもんにならないダメージだ。

くっ・・・だが、どこか自分の中では、これはこれで有りなんじゃないかと思っている部分があるのが悔しい。

 

「一応確認だけど、あたしが外せないか試すね。」

 

「・・・はい。」

 

目を瞑って、顔だけあげた。

クリスさんの指先が、そっと眼鏡の耳掛けの部分に触れた。

耳周辺は、なかなか他人も触られない部分もあり、クリスさんの指先に触れた瞬間に身体がゾワッとした。

指先は暖かく、指先が動く度に耳元がくすぐった。だけど、なぜか心地良く感じていた。

 

だが・・・その変な心地良さから一気に地獄に変わった。

 

「いたたっ!」

 

思わず声が、出てしまうほど痛みが先ほど心地良かった耳元付近からした。

その原因は、クリスさんが無理やり外そう眼鏡を引っ張ったのだ。

 

「本当に外れないですね。」

 

「だからって、急に引っ張らないで下さいよ。」

 

「ごめん、ごめん。それにしても、なんで外れ・・・あれ、なんかスイッチがあるよ?」

 

「えっ?あっ!そこのスイッチ触っちゃ「えっ?」」

 

時すでに遅し、クリスさんはスイッチをカッチと切り替わった音が聞こえた。

やばい、クリスさんもチャームに掛かる。

焦って目を開けてみると、呆けた顔したクリスさんの姿があった。

 

「なんともないんですか?」

 

「なんとも?何が?」

 

「・・・体とか大丈夫です?」

 

「うん。なんともないよ。」

 

・・・もしかして、チャーム機能が壊れたのか。

いや、しかし・・・時間差で掛かるというパターンも。

だが、これは確認のしようがない。それに壊れたなら壊れたに越したことはないしな。

何よりも、目を開いて帰れる。

1人で感動していると、先ほどまで呆けた顔していたクリスさんが先程の態度や質問に対して疑問をあげた。

 

「ねぇ、ねぇ、ハチマンさん、今のスイッチって何だったの?」

 

「これはですね。っと、一度立たせてください。それから事の経緯を話しますので。」

 

「うん。」

 

それから、俺はウィズさんの家で何が起きて装着する羽目になったのかを説明した。

説明するのに、5分ばかり掛かったが時間経過をしてもチャームの効果はクリスさんには現れなかった。

一応ウィズさんの行動は、やんわりと誤魔化しながら言った。

 

「ふーん、なるほどね。2つの効果を持つ眼鏡か。もしかしたら、天界の特殊アイテムの可能性もあるかもね。」

 

おいおい。この眼鏡が天界から貰える特典として選ぶ奴の気が・・・結構多い気がするな。

だが、それは眼鏡が自由の自由に着脱可能であればの話だがな。

 

「クリスさん、この眼鏡のこと調べてもらってもいいですか?」

 

「いいけど、ハチマンさんはこれからどうするの?」

 

「一応カズマの様子を確認しようかなと思ってます。あんなんでも仲間なんで。」

 

「そうかい。んじゃ、一度天界に戻って調べてみるね。」

 

「お願いします。」

 

クリスさんは、うんと頷くと大きく手を振って森の中へと消えて行った。

天界アイテムか、それともこの世界のアイテムなのかはウィズさんとクリスさんに任せて、どうやって帰るかだ。

さっきは、クリスさんにはチャームは掛からなかったが、もしかして勝手にチャームが掛かると思い込んでるだけで、本当は何にもないんじゃないのか?

だか、あのウィズさんの行動が説明がつかん。

そう考えると発動条件があるとしか考えられないな。

あの時の事を、思い出せ……カズマ………アイツ帰ったら〇る……カズマ……ウィズさん……メガネ?

もしや、カズマが付けたメガネに共鳴して、チャームが掛かったんじゃないのか?

よし!なら、大丈夫だな!カズマには、あとでちょっと痛い目にあってもらいつつ隣町まで吹き飛ばす!

とりあえず、戻ってみるか。もしかしたら、壊れたという事もあるからな。

 

希望を持て、八幡!俺なら大丈夫!小町と戸塚が付いているんだからな!

帰るぞ、帰るぞ!

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

┈┈┈┈┈

 

 

はいはい、誰ですか!発動条件あるとか考えた馬鹿はっ!はい、俺です!

なんの意味もないじゃないか!!!!

 

「ハチマーン様ぁぁぁ」「私を抱いてー!」「結婚してー!」「ぐふふ...」「ハマーン様!」

 

おい、最後の奴!なんで薔薇持ってんだよ!しかも、お前!俺はハマーン様じゃねぇよー!

使いたくはないが、やるしかない。

咄嗟にファイズフォンを取り出し、番号を入力した。

 

「変身!!!」

 

走りながら、八幡はファイズへと変身をした。

ファイズへと変身ことにより跳躍力が伸びて、後ろから追いかけてきていた集団との距離が少しずつ、少しずつと距離が伸びていき、最終的には集団を引き離した。

 

「はぁはぁ…。」

 

ここまで引き離せば大丈夫なはずだ。

息を切らしながら、空を見上げた。

師匠、すんません!こんな事で、ファイズの力を使ってしまい!と心の中で謝罪をした。

息を整えつつ、とぼとぼと歩き始めた。今回幸いなことにも、逃げ切った先が住んでいる屋敷付近だから良かった。

それからとぼとぼ歩き始めてから15分くらいが経過した時に、屋敷の姿見えてきたと同時に野太い声が聞こえてきた。

なんだ?この野太い声は。

屋敷に近付けば近付くほど、野太い声の声量は大きくなっていった。

 

「「「「カズマ!カズマ!!カズマ!!!」」」」

 

屋敷方から聴こえてきたのは、今回の騒動を起こしたカズマの名前だった。

 

んだ、これ?何が起きてやがるんだ?

屋敷の前まで行くと、そこ広がる光景に驚愕した。

その光景とは、屋敷の庭いっぱいに集まる屈強な男達。しかも、恰好に関しては何故か全員上半身裸だ。

見ているだけでも、色んな意味胸焼けをするよう光景が広がっていた。

 

おいおい、なんだよ、これ?

はっ?えっ?はっ?

 

あまりにも情報量が多すぎた為、頭の中で状況が整理出来ない状態だった。

そんな状態の中、屈強な男達の声は歓声へと変わった。

 

「「「うぉぉおおおおお!!!」」」

 

歓声につられて、屋敷の方を見るとルーフバルコニーからカズマの姿が現れた。

 

「皆の者、静粛に!」

 

カズマの一言で、先程まで騒いでいた男達は静かになった。

 

「静粛ありがとう。今日は、皆の者に報告がある!」

 

男達は、報告という言葉を聞きガヤガヤとし始めた。

つーか、あいつ何やってんだよ。

家の庭に、むさ苦しい男達を集めて。

 

「これは!ココに集まった全ての者達に関わる事だ!オレのパーティの1人であるハチマンという男が、この!この!筋肉連合を裏切った!」

 

おい、ちょっと待て!いつ、俺がその連合に入ったんだよ!

おい、なに嘆いてるんだよ筋肉共!

驚きを隠せない状態でも、カズマの馬鹿げた報告が続いた。

 

「ハチマンは、筋肉連合を裏切り女の子とイチャイチャ…イチャイチャイチャイチャしている!!!オレはとても悲しく思っている……くそが!!!あいつ、あいつの掛けている、あのメガネをオレが掛けていれば…オレがむふふな事になっていたのに、いつもいつもハチマンだけがおいしい思いをする…絶対許さん!!!!!」

 

おい…悲しむなら最後まで悲しめよ。

途中から唯の逆恨みじゃねえかよ。

 

「裏切り者のハチマンを見つけて、ボコボコにした者には最高級のプロテインをやろう!!!」

 

「「「うぉぉおおおおお!!!!」」」

 

「さらに、オレからも何かをやろうではないか!」

「「「〇す!〇す!!〇する!!!」」」

 

「ふふふっ…フハハ!皆の者やるぞー!」

 

「「「うぉぉおおおおお!!!」」」

 

はぁ…。あの馬鹿のせいで街とかに迷惑かけるのは本当に勘弁だ。

めんどくさいが出ていくか。

 

「おい、カズマ!」

 

「その声は…!ハチマン!!!」

 

男達は、俺の方に顔を向けた。

めちゃくちゃむさ苦しいし、圧が強いんだよ、圧が。

 

「とりあえず…ココで決着つける」

 

「ふふふっ…望むところだ!ハチマン!!!我がメガネは、男を魅了するメガネだ!!!魅了された男達にやられるが良い!!!」

 

あっ…、なるほどな。なんで、カズマにこんなに男達が集ったのかが分かった。

まぁ、なんでもいいか…。

 

ファイズフォンを取り出し、番号を入力した。

 

「変身!」

 

電子音と共にハチマンは、ファイズへと変身をした。

ファイズは、軽く手首をスナップさせて握り拳を作った。

 

「野郎共!!!裏切りものをやっちまえ!」

 

「「「ヒャッハー!」」」

 

男達VSファイズの闘いが始まった。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「ぐわぁ…。」

 

闘う事、2時間が経過したところで庭に居た最後男が倒れた。

 

「く、くそっ!!!まだだ!まだ、オレがいる!今降りるから待ってろ!!!」

 

カズマは、ファイズに啖呵を切って家の奥へと消えていった。

それから5分が経過したが、カズマは来ることはなかった。

 

はぁ…。アイツは…。

ファイズは、ファイズアクセルを取り出し左腕に取り付けた。アクセルメモリーをファイズギアへとセットした。そして、ファイズの姿は、アクセルフォームへとフォームチェンジをした。

カウントダウン始まると同時にファイズは走り出した。

 

それからというもののカウントダウンが半分をきる前に、カズマの姿を見つけて後ろから蹴りを入れた。

カズマは、地面にキスをしながら数メートルに渡り滑っていった。

 

「ぐわぁぁぁ!顔が顔が!!!」

 

「ったく…アホやってないでメガネを解除方法の手はずをさが「「ハチマンさ~ん」」うん?」

 

前からウィズさんと後ろからクリスさんが手を振ってやってきた。

 

「「メガネの解除方法が分か(ったよ)りましたー!」」

 

タイミング良く、メガネの解除方法が見つかったようだ。

ファイズは、敢えて変身解かずに2人を迎えた。

 

合流したと同時にウィズさんは、息を切らしながら呼吸を整え始めた。

その間に、クリスさんが解除方法説明した。

 

「えっと、アタシの方の解除方…なんですか、この地面落ちているゴミは?」

 

クリスさんの表情が一変して、地面に倒れているカズマに向かって言った。

それと同時に、先程まで呼吸を整えていたウィズさんもゴミを見るような目でカズマを見ていた。

そして、互いに目を合わせると2人でヒソヒソと話を始めた。

 

「やはり解除方法は、同じでしたか。」

「これは好都合ですね。」

 

「「ふふふっ…。」」

 

2人の笑みは、とても楽しそうに笑みを浮かべていたが目は笑っていない状態だった。

 

「ハチマンさん、少しこのゴミを借りますね。」

 

ウィズさんは、カズマのマントを指先で掴んで地面を引き釣りながら森の奥へと消えていった。

その後に続くように、クリスさんも着いていった。

 

「……変身解除しとこ…。」

 

変身解いたと同時に、森の奥から悲鳴が聴こえたが何も聞こえないふりをして2人の帰りを待っていた。

この先で何が行われているのかを知りたいかと言われても、絶対に近づかないし、知りたくもない。

 

それから、1時間にも及ぶ悲鳴が森の奥から聴こえていた。

後に、この森は叫びの森として心霊スポットの1つになったのは、また別の話である。

 

叫び声が聞こえなくなったと同時に、ハチマンが掛けていたメガネが地面へと落下した。

 

「おっ、外れたか。」

 

外れてから少したった時に、森の奥からガサガサと音を立てながらウィズさんとクリスさんがやってきた。

 

「ふぅ…やっと外れたね」

「そうですね!」

 

2人は、笑顔浮かべ、スッキリした顔をしながら森から出てきた。

絶対に突っ込んではいけない…2人の手が真っ赤に染まっていることを。

俺は、心の中で誓った。

絶対にこの2人を怒らせないと。

 

 

2人の笑い声は、どこまでも遠くに響き渡るようだった。

 

 

カズマはというと、森の中で吊るされている所を発見され、酷く怯えた状態で帰ってきた。

 

「すいません、すいません。二度と悪ふざけでハチマンに迷惑は掛けません。すいません、すいません…」

 

これに懲りたら、当分は悪さをしない事だな。

さて、今日は何をするかね。

こうして、メガネパニックは終焉を迎えたのである。

 

 

 



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5-3 次の目標?

お久しぶりです。
プライベートで、人に騙されたりしてお金がない作者です。
久しぶりの投稿です。
リハビリ込みで暖かい目で見てください。


俺がこの世界に来てから数ヶ月経った。

 

 

 

この数ヶ月の間のいろんなことがあった。

 

師匠との出会いと修行、四天王の一人と戦い、屋敷の購入したり。

 

前の世界と違い、毎日がイベントようだ・・・今現在も。

 

 

 

「ハチマーーーン、助けてくれ!!!」

 

 

 

仲間の一人のカズマが草原を全力疾走していた。

 

カズマの後ろには30を超えるほどのモンスターのリザードランナーが追いかけていた。

 

なぜ、こんなことになっているかと言うと・・・。

 

仲間の一人にいるポンコツ女神ことアクアが作戦と違うことを行ったのが原因だ。

 

本当にあのポンコツ女神は思い付きで何でもやるから。

 

 

 

「はぁ・・・仕方ない。変身っ!!!」

 

 

 

俺は、スキルの1つの仮面ライダークウガへと変身を行った。

 

ペガサスフォームになり手に街で買ったボウガンをリザードランナーに向けるとボウガンはペガサスボウガンへと変形させた。

 

カズマを追いかける群れの先頭いるひと際大きいリザードランナーに狙いを定め、ペガサスフォーム必殺の一射 【ブラストペガサス】を放った。

 

放った一射は、狙ったリザードランナーに命中した。

 

撃ち抜かれたリザードランナーが倒れるなり、群れはカズマを追いかけるのをやめた。

 

どうやら撃ち抜いた奴は、嬢王のリザードランナーだったみたいだ

 

追いかける対象が居なくなった、オスのリザードランナー達は引き返していった。

 

その帰っていく姿を確認して変身を解いた。

 

 

 

「ふぅう・・・助かったぜ、ハチマン。」

 

 

 

カズマはその場にへたり込みながら言った。

 

 

 

「ったく、どうしてこうなったんだ。」

 

 

 

「いやぁー、あのポンコツ女神が・・・」

 

 

 

おちょぼ口にしながらぶつくさと言っていたカズマ。

 

そんなカズマを見て溜息が思わず出てしまった。

 

 

 

「とりあえず、色々と回収しに行くぞ。」

 

 

 

「おう。」

 

 

 

二人で草原に転がっている仲間を拾いに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、ようカズマにハチマン!・・・・・って、女性陣ボロボロだなおい。なんだ?女性陣を囮にしてクエストしたのか?」

 

ギルドに帰った俺達の姿を見て、冗談交じりにキースが声を掛けてくる。

 

 

 

「おいおい、そんな事をすると思うか?」

 

 

 

「ハチマンはしないな。カズマはするけどな。」

 

 

 

「オレだって、そんな事しねぇよ!」

 

 

 

キースは笑いながらも、持っていた女性陣の武器を運ぶのを手伝ってくれた。

 

カズマはボロボロで気を失っているアクアを背負いながらもキースの後を追いかけた。

 

軽傷で意識はあるが、魔力不足で歩けないめぐみんと草原に寝ころびリザードランナーに蹴られ、踏まれ続けたあげく、途中から泣きながら助けたバカを背負って俺もキースの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

今回の報酬・・・1人2万エリス。

 

アクアとダクネスのケガなど治療費を考えるとマイナスだ。

 

この調子でクエストしてたら、マイナスしかない。

 

これは、これで考えないといけないかもな。

 

切実に有能な人材が欲しい・・・。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

報酬を受け取り屋敷に戻った俺達は、ダクネスよりも先に目が覚めたアクアに全員の傷を癒した後に、屋敷の広間に集まるように声を掛けた。

 

今後クエストとかどうするかを話し合いたいと言って集めた。

 

俺よりも先に、めぐみん・ダクネスが広間に備えつきのソファーに寝ころび、くつろいでいた。

 

こらこらめぐみん、そんな冒険する恰好で寝ころびながら足をパタパタさせない。

 

パンツがみえちゃうでしょうが、たくっ。

 

めぐみんの後ろに立ち、めぐみんの脇から持ち上げて身体をおこした。

 

 

 

「おっおお?!」

 

 

 

「ほら、だらしなくしてないでちゃんと座ってろ。」

 

 

 

「わかりましたよ。ぶぅ。」

 

 

 

頬を膨らませつつも、座りなおした。

 

世話のかかる妹みたいだが、あっちでは俺が小町にやられていた。

 

あっちでは、どっちが兄で妹かわからくなるな。

 

でも、姉が小町というのもありだな。

 

そんなことを考えていると、ドアが開きカズマが入ってきた。

 

 

 

「わりーわりー、遅れたわ。」

 

 

 

「気にするな、俺も今来たとこだ。」

 

 

 

「そうなのか?どっこいせと。」

 

 

 

カズマはソファーの空いているとこに座った。

 

その後、アクアが来るのまでのんびりと待っていた。

 

数十分後に、慌ただしくアクアが広間に入ってきた。

 

 

 

「だぁぁぁぁぁ!!!!ハチマン、カズマまたやられたぁぁぁぁ。見てよこれ!!」

 

アクアは涙目で空になった酒瓶を突き出してきた。

 

 

 

「はいはい、いつものことだな。」

 

「また貴族様のなんたらさんが表れて、勝手に飲んでいったのだろう。わかったわかった。」

 

 

 

「なんで!ふたりともあきれ返った顔をしてるのよ!!!!これめっちゃ高かったのよ!!!」

 

 

 

「正直どうでもいい。」

 

カズマは、俺の発言に大きくうなずいた。

 

その反応に、またぐずり始めたアクア。

 

 

 

「ていうか、そんなに悪戯されるのなら、祓っちまえばいいじゃねぇか。そうすれ穏便に飲めるじぇねか。」

 

カズマの言葉を聞いたアクアは、指を組んでもじもじしながら少し困った表情を浮かべながら「だ、だって、この屋敷に冒険者が住んでもらったら、いろんな冒険の話を聴くのが夢だなんて言われたら…。」

 

っと言った。

 

こんな珍しく言い淀むアクアの姿を見たら、こいつは本当のこと言っているのかもしれないな。

 

カズマもアクアの姿を見て驚き表情を出し後に、ため息交じりに「んで、今その女の子は何をしているんだ?」と聞いた。

 

 

 

アクアの話が本当なら、少し寝る前に独り言になっても今日あったことぐらい話してやるか。

 

 

 

「私にしか見えないことを言いことに、カズマの後ろでとあるヒゲダンスをしながら、カズマが邪魔で手を出せない私を挑発してるわ。」

 

 

 

「「んな、陽気な幽霊がいるか馬鹿野郎!!!」」

 

 

 

少しでも信じようとした俺が馬鹿だった。

 

というか、こんなしょうもない話をするためにみんなに集まってもらったわけではない。

 

俺は、カズマ、アクア、ダクネス、めぐみんが皆が見える位置に移動した。

 

 

 

 

 

「拠点も手に入った。レベルも装備も順調にレベルが上がった。だが不思議と金がない!今後どうするか目標を決めようと思う。」

 

 



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