ウルトラマンカイナ (オリーブドラブ)
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第1話 流星と博物館

 宇宙という暗黒の大海原。その中を翔ける光の玉が、二つ。

 赤い玉が青い玉を追い、この虚空を駆け抜けていた。

 

『待てッ……待ちやがれッ!』

 

 蒼く美しい星を目指し、青い玉は唸りを上げて突き進む。その後に続く赤い玉は、血気盛んな叫び声を上げていた。

 だが、青い玉がそれを聞き入れることはなく――彼の者はただ真っ直ぐに、目的の星だけを目指す。

 

『くっ……そぉお! 認めさせてやる……! 絶対、認めさせてやるんだァッ……! たとえ、あの鎧がなくたってッ……!』

 

 赤い玉は、それに追いつけず。徐々に、距離を引き離されつつあった。

 小惑星帯を抜け、隕石をかわし、なお執拗に青い玉をつけ狙う彼は――焦燥を露わに、この宇宙を翔ける。

 

 彼らが、私達の星に辿り着くのは、時間の問題だろう。私達が暮らす、この美しい緑の星――地球に。

 

 ◇

 

「はぁー……やっぱ壮観だよなぁ、こうして見てみると」

 

 ショーケースに並べられた、歴代のウルトラ戦士の立像。雄々しく立ち並ぶ、その像の群れを前にして――風祭弓弦(かざまつりゆずる)は嘆息していた。

 今年で創立100周年を迎えるという、このウルトラ記念博物館には、かつて地球の危機に立ち向かったと言われる伝説の巨人――「ウルトラマン」の歴史が刻まれている。

 

 9年前に地球に訪れた「ウルトラウーマンジャンヌ」のことも、しっかりとここには記録されていた。

 

 今日、弓弦達城南大学付属高校(じょうなんだいがくふぞくこうこう)の生徒達は、このウルトラ記念博物館の見学に来ているのだ。

 今年から高校に入学したばかりで、初々しくブレザーに袖を通している黒髪の少年は、穏やかな面持ちで立像を眺めている。

 ……昔から何かとぽけーっとしている彼は、天然キャラとして扱われることが多い。本人としてはそんなつもりはないのだが、今ではすっかりクラスメートからもそういう扱いを受けてしまっている。

 今も、他のクラスメート達があちこち見て回っている最中だというのに、彼だけはぼんやりと立像を眺めている、という始末なのだ。良くも悪くもマイペース、という少年なのである。

 

 ――だが、世の中何が起こるかわからないもので。そんな彼に想いを寄せる、奇特な女子もいた。

 遠くから彼に熱い視線を送る彼女の隣で、もう一人の少女がため息をついている。

 

「ねぇ……梨々子(りりこ)。今更だけどさ、あいつのどこがいいわけ? あんな何考えてんだかわかんないような奴」

「そ、そんなこと言わないでよ。……と、とにかく今日が勝負なんだから。頑張れ、私!」

「はぁ……あんたの趣味はよくわかんないなぁ」

 

 艶やかな茶髪をポニーテールに纏めた、スポーツ系の少女――尾瀬智花(おぜともか)。その親友であり、付属高校のアイドルとして知られる美少女――綾川梨々子(あやかわりりこ)

 艶やかな黒髪をショートに切り揃えた彼女は、その白い柔肌と美貌に加え、推定Gカップの巨峰という圧倒的プロポーションの持ち主でもある。

 

 加えて、地球の平和を預かる防衛チーム「Bureau of Ultra Repose Keeping」――通称「BURK」の司令官を父に持つ、御令嬢でもあるのだ。今でも、こっそりとBURKの隊員がこの近くに紛れ、彼女を護衛しているのである。

 

 まさに天が一物も二物も与えたような美少女なのだが……男の趣味は、いまひとつらしい。

 

「ふーん……こんなウルトラマンもいたんだ。これはオレも初めて見るなぁ」

「これはね、ウルトラマンジョーニアスっていうの。U40(ユーフォーティ)からやって来た、かなり特殊なウルトラマンなんだよ!」

「へぇ……綾川さん、詳しいんだね」

「えへへ、ちょっと予習してきちゃった」

 

 立像を眺める弓弦の隣に歩み寄り、ウルトラマンの解説を始める梨々子。――実は彼と話すきっかけを掴むために、わざわざウルトラマンのことを猛勉強していたのだが。当の弓弦は、知るよしもない。

 

「やれやれ……ま、ここは親友として素直に応援しといてやりますか」

 

 そんな親友の姿を、苦笑交じりに見守りながら。智花は、学園のアイドルに話し掛けられても相変わらずのほほんとしている弓弦に、ため息をつくのだった。

 ――梨々子に構われている弓弦に、周囲の男子達が殺意の篭った視線を向けるのも、今となっては日時茶飯事なのである。

 

 その渦中にいる梨々子には今日、ある目的があった。それは、この後の昼食に彼に手作り弁当を渡して、告白する――というもの。

 小学生時代から弓弦を恋い慕っていた彼女は、この高校三年間を恋人同士として過ごしたいと願い、今日を決行日に選んでいたのである。

 

(こうして、風祭君と2人で博物館を見て回って、最後に2人で一緒に食べて……よ、よし。頑張ろう)

 

 猛勉強で得たウルトラマン知識を披露するごとに弓弦に褒められ、その度にガッツポーズを決める梨々子は、期待に胸を高鳴らせながら、軽やかな足取りで館内を歩んでいる。

 

(よっぽどウルトラマンが好きなんだなー、綾川さん。すっごく楽しそうだ)

 

 その様子を微笑ましく見つめる弓弦には、全く伝わっていなかったが。

 

 ◇

 

 一方。一般人に扮して、司令官の娘である梨々子を見守っている女性隊員は、定時連絡で上官に現状を報告していた。

 亜麻色のストレートを艶やかに靡かせる、切れ目の美女である彼女は――なんとも言えない表情で、梨々子と弓弦を見つめていた。

 

「――こちら駒門(こまかど)。梨々子お嬢様の近辺に異常はありません。相変わらず例の少年にベッタリです」

『了解。そのまま監視を続行しろ。もし2人きりで密室にでも行こうとした時は、実力行使もやむを得ん』

「了解。……しかし弘原海(わだつみ)隊長。あの少年、すごいほんわかしてます。お嬢様のGカップを目前にしても、眉ひとつ動かしていません。放っておいても大丈夫なのでは?」

 

 BURK隊員である駒門琴乃(こまかどことの)は、地球を守る防衛チームの一員でありながら、毎回こんな仕事しか回ってこない現実にため息をつきながら――ぽけーっとした表情を浮かべる弓弦の横顔を、じっと見つめている。

 

(しかし……あの少年の横顔、どこかで……?)

 

 その顔に、えもいわれぬ既視感を覚えながら。

 

『うむ……俺も正直そう思う。だが、いくら穏やかな人柄とは言っても年頃の男女だ。司令官も気が気でないようだし、念のため監視は続行しろ』

「了解。……こんな仕事ばっかりですね、私達」

『そう言うな、平和なのはいいこと――? おい、どうした。……なに、怪獣!?』

「……!?」

 

 だが、そういう言葉を並べる時は、よくないことが起きる予兆(フラグ)になるもの。

 ろくな装備も携行していない、最悪のタイミングで――BURKの隊員達は、戦いの時を迎えるのだった。

 



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第2話 恐竜戦車と光の巨人

 ウルトラ記念博物館の近くに、宇宙怪獣が接近している。その情報がBURKを通じて報じられた途端、館内は騒然となった。

 他の隊員達が避難誘導を行う中、琴乃は梨々子の手を引く弓弦の後を追い続ける。こうなった以上、速やかに梨々子を安全な場所まで護衛しなくてはならない。

 司令官の娘に万一のことがあれば、BURKは面目丸潰れだ。

 

「……!?」

 

 すると。今までとは別人のような、鋭い顔付きに変わっていた弓弦の横顔が目に入り、琴乃は思わず目を見張る。

 ――その時だった。

 

 宇宙怪獣がついに墜落したのか、激しい地震が館内を襲い、人々の悲鳴が轟いた。その直後、BURKとの交戦が始まったらしく――けたたましい衝撃音が、外から響いてくる。

 一瞬にして戦場に巻き込まれてしまった恐怖に煽られ、博物館に来ていた一般客や付属高校の生徒達は、我先にと外へと群がっていった。

 

「壁が崩れるぞ! ――あっ、子供が!」

「危ないっ!」

 

 その時。戦いの余波なのか、突如壁に亀裂が走り――その下にいた子供の上に、瓦礫が降り注いだ。

 それを目の当たりにした琴乃が、瓦礫を破壊しようと、とっさに懐から光線銃「BURKガン」を引き抜いた――次の瞬間。

 

「風祭君ッ!?」

 

 鋭い眼差しに変わった弓弦が、目にも留まらぬ速さで弾かれたように飛び出し――少女を抱え、間一髪瓦礫を回避してしまった。

 

「よっ、と。もう大丈夫だよ」

「お兄ちゃん……わ、わぁあん! 怖かったよぉ!」

美華(みか)ちゃあぁん!」

「ママぁあ!」

「あぁ、良かった……! ありがとうございます! ありがとうございました!」

「ここは危ない、さぁ、早く!」

 

 弓弦は少女を優しく下ろすと、駆け寄って来た母親に避難を促し――やがて何事もなかったかのように、惚けていた梨々子の手を引き、その場を離れていった。

 あまりにも鮮やかに少女を救って見せた、その俊敏な動きに、ただならぬものを感じた琴乃は――通信で、隊長に真実を問う。

 

「弘原海隊長、彼は一体……!?」

『……あぁ、お前は今日が初めての監視任務だから、知らないのか。彼の名は風祭弓弦。BURK最優秀隊員・風祭勇武(かざまつりいさむ)の息子で、弱冠14歳で入隊試験をパスしたこともある天才君だよ』

「風祭勇武って……! 異星人をBURKガン一丁で撃退したこともある、あの伝説の……!?」

『あぁ。だが、2年前に異星人との銃撃戦で戦死しただろ? あれ以来、息子の方もすっかり意気消沈しちまってなぁ。入隊も辞退して、今じゃ普通の高校生だ。……尤も、体はまだ覚えてるみたいだがな』

「そんなことが……」

『だから司令官も、娘の恋路を半ば黙認してんのさ。それでも心配でソワソワしてるらしいが――おっと、無駄口は終わりだ。例の怪獣、そっちを狙い始めてやがる。奴は俺達がなんとか抑えるから、お前は速やかにお嬢様を安全なところへ送り届けてやれ!』

「りょ、了解!」

 

 琴乃は弓弦の正体に息を呑むと――梨々子の手を引いて外へ飛び出す彼に続き、博物館を後にする。すでに外には、付属高校の生徒を乗せた避難用バスが待っていた。

 

 ――刹那。

 

「きゃあぁああ!?」

 

 凄まじい爆発が辺りを襲い、梨々子の悲鳴をかき消した。弓弦はとっさに彼女の上に覆い被さり、彼女を火の手から庇う。

 その鋭い視線は――爆発の原因である、遠方の怪獣に向けられていた。

 

 恐竜の上半身と、戦車の下半身を持つ、異形のサイボーグ怪獣――「恐竜戦車」。それが、ウルトラ記念博物館を襲った宇宙怪獣の正体だったのである。

 すでに駆け付けたBURK隊員が戦闘を始めているらしく、恐竜戦車の周囲にはBURKガンの光線が飛び交っていた。

 

「怪獣の攻撃がここまで及んでいるなんて……私も応戦しないと!」

 

 琴乃は弓弦と梨々子を庇うように前に立ち――民間人の服を脱ぎ捨て、その下にあるBURKの制服を露わにする。

 ミニスカートから覗く白い太ももが、バスに乗っている男子生徒達の注目を集めていた。――智花をはじめとする女子生徒達の顰蹙を買ったのも、その直後である。

 

 琴乃は腰のホルスターからBURKガンを引き抜き、恐竜戦車の方へと向かっていく。――次の瞬間、怪獣の凶眼が彼女の方へと向けられた。

 

「危ないッ!」

 

 その視線から危険を察知した弓弦は、咄嗟に琴乃を突き飛ばす。彼の足元で爆発が起き、彼の身が吹き飛ばされたのは、その直後だった。

 

「かっ……風祭君ッ! いやぁあぁあ!」

「梨々子、乗って! あの怪獣、こっちを狙ってきてる! もう、もうダメだよ!」

 

 その光景を目の当たりにしてしまった梨々子は、絶叫を上げてへたり込んでしまった。だが、恐竜戦車の狙いはこちらに向かい始めていた。急がねば、生徒全員が危ない。

 智花は懸命にバスから呼びかけ、梨々子を乗せようとする。だが、彼女は地面にへたり込んだまま動けなくなってしまっていた。

 

(私のせいだ……! 地球を守るBURKの隊員が、なんたるッ……くそォッ!)

 

 この事態に責任を感じた琴乃は、唇を噛み締め――暫し逡巡した後、意を決したように顔を上げる。

 そして、へたり込んだままの梨々子に肩を貸して強引に立たせ、バスに乗せるのだった。

 

「梨々子お嬢様、私は彼の救出に向かいます。あなたは何としても、一刻も早くここから逃げてください! ――運転手、早くバスを出せ!」

 

 梨々子に自らの決意を告げた琴乃は、BURKガンを手に走り出す。目指すは、弓弦が吹き飛ばされた方向だ。

 

「待っていろ、風祭君! 借りは必ず――!?」

 

 すると、その時。

 恐竜戦車の眼前に、赤く発光する巨大な玉が墜落してきた。激しい爆音と共に、恐竜戦車は後ろへと退き――鋭い凶眼で、その玉を睨む。

 

 やがて、赤い玉は激しい光と共に消え去り――その中から、体長40mにも及ぶ巨人が現れたのだった。

 

 ――そう。

 この星に住む誰もが知っている、あのシルエットを持つ巨人が。

 

「あれは……!」

 

 その出現に、琴乃が息を飲むと同時に。バスに乗せられた梨々子が、感嘆の息を漏らすのだった。

 

「……ウルトラマン!」

 



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第3話 ウルトラマンと少年

 白銀の逞しい肉体。真紅の手足。

 丸い目に、頭部に閃くトサカ状の刃。そのシルエットは、紛れもなくウルトラマンのそれであったが――博物館の中に、この姿に該当する立像はなかった。

 つまり……今日初めて地球に来たウルトラマン、ということだ。

 

「あんなウルトラマン、初めて見る……!」

「ていうか、ナマでウルトラマン見るのも初めてだよ……!」

「やれーっ! やっちまえーっ!」

 

 バスにいる付属高校の生徒達は、ウルトラマンの出現に歓声を上げる。これでもう安心だと、確信するように。

 ――だが、未だ弓弦の安否は不明であり。それを何より気にかけている梨々子は、不安げな表情のままであった。そんな彼女を気遣うように、智花が隣に寄り添っている。

 

「……大丈夫だよ、きっと。風祭の奴、すぐに見つかるって」

「智花……」

「ちらっと見てたんだけどさ。さっきのあいつ、普段とは別人ってくらいキリッとしてて、カッコよかったよね。普段からあれでいきゃいいのに!」

「あはは……うん、そうだね……」

「……だから、きっと大丈夫だって。学校で待っててやろうよ。弁当、食べさせてあげるんでしょ?」

「うん……でも、さっきのどさくさで中身ぐしゃぐしゃだと思うし……」

「あいつなら気にしないよ、絶対。普通に何食わぬ顔でむしゃむしゃすると思う」

「あはは……そうかも。そんな気がして来たよ」

 

 懸命な励ましが効いたのか、梨々子にも少しずつ笑顔が戻り始めている。そんな彼女の様子に安堵しつつ、智花は剣呑な面持ちで、ウルトラマンの背中に視線を向けるのだった。

 

(……うちの親友が、こんなに心配してんのよ。さっさと帰って来なさいよね、風祭!)

 

 ◇

 

「シェァッ! ダァアァッ!」

 

 赤い玉から現れた赤い手足のウルトラマンは、恐竜戦車と相対してすぐに殴り掛かった。真正面から突っ込んでいった彼は、力任せに拳を振るい、恐竜戦車の顔面を打つ。

 ――だが、ゼロ距離からのミサイル射撃をまともに浴び、すぐに転倒してしまった。それでもめげず、再び真っ向から突撃していくのだが……恐竜戦車の牙城を崩す前に、砲撃で吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ、う……こ、ここは……!」

 

 その戦場となっている、市街地の廃墟。そこで目覚めた弓弦は、自分のすぐ近くでウルトラマンと怪獣が戦っていることに、ようやく気付いた。

 すぐにここから離れなくては――そう思う瞬間、彼の傍らにウルトラマンの巨体が倒れ込んでくる。

 

「おわっ!」

 

 眼前にウルトラマンの頭が現れ、その衝撃に弓弦は再び吹っ飛ばされてしまう。なんとか身を起こした彼の眼前では、仰向けに倒れたウルトラマンが尻尾の連打を浴びせられていた。

 弓弦の間近で苦悶の声を漏らすウルトラマンは、カラータイマーが点滅しているこの状況でも、活路を見出せずにいる。もはや、そんな余力は残されていないのだ。

 

 このままでは、やられてしまう。そう焦る弓弦と、ウルトラマンの視線が交わった――その時だった。

 

『助けて……くれ!』

「……!? ウルトラマンの声……なのか!?」

 

 弓弦の脳内に直接、知らない声が入り込んでくる。それが意味するものを彼が理解した瞬間、ウルトラマンは深く頷いた。

 

『あぁ……そうだ。ぐっ! お、俺は地上では長くエネルギーが持たないんだ! この地球上でエネルギーを回復させるには、人間の姿を借りなきゃいけない……でも、俺には地球人に擬態する能力がないんだ! ぐふっ!』

「このままだと体がもたないってことか……! だけど、どうしたら……!」

『これだ……! これを使えば、俺はお前と一体化して、エネルギーを回復出来る……!』

 

 すると、ウルトラマンの目が光り――弓弦の手元に、赤いペンライトのようなものが現れた。

 

「一体化……! 擬態の代わりに、俺の体でエネルギーを回復するってことか!」

『そ、そうだ……がふっ! た、たの、む……』

「わかった……! よし、行くぞッ!」

 

 弓弦は躊躇うことなく、ペンライトのスイッチを押す。ウルトラマンの体が一瞬で消え、彼を打ち据えようとした恐竜戦車の尻尾が、地面に突き刺さったのはその直後だった。

 

「今だ! 一斉射撃ィィィ!」

 

 勢い余って尻尾を突き刺してしまったせいで、身動きが取れなくなった恐竜戦車。その好機に乗じて、BURKの隊員達が一斉に光線銃を放ち始める。

 この混乱と激戦に乗じて、弓弦はペンライトを手にしたまま、市街地から離れるように走り出すのだった――。

 

 ◇

 

 市街地からやや離れた、丘の上の公園。そこにたどり着いた弓弦は、未だ街中で激戦が続いている様子を遠巻きに眺めながら、ベンチに腰掛ける。

 ――ウルトラマンと一体化した影響なのか、かなりの距離を走ったにもかかわらず、疲労は全くなかった。

 

『ありがとう……お前のおかげで、命拾いできた。俺はカイナだ』

「どういたしまして、オレは風祭弓弦。……えぇと、ウルトラマンカイナって呼べばいいのかな」

『よしてくれ、俺はウルトラマンなんて器じゃない。カイナって呼んでくれればいい。……ちなみに、俺が渡したそれはカイナカプセルって言うんだ。さっきのスイッチを押せば、お前は再び俺に変身することになるから、気をつけてくれよ』

 

 ペンライトから、ウルトラマンの声が聞こえてくる。カイナと名乗る彼は、どこか憂いを帯びた声色だった。

 

「そうか……。じゃあ、カイナ。君は……あの怪獣を追ってこの星に来たのか?」

『あぁ、まぁな。……といっても、あんまり綺麗な理由じゃない』

「……?」

『……命の恩人に隠し事なんて、ダメだよな。お前には話しておくよ』

 

 ――やがてカイナは、観念したように自身が地球に訪れた経緯を語り始める。

 

 過去に地球にやって来た歴代ウルトラマンと同様、カイナもM78星雲にある「光の国」の出身だった。

 両親を怪獣との戦いで失って以来、彼は大切なものを守れる強さを求めて宇宙警備隊の門を叩いたのだが――若過ぎることを理由に、入隊を拒否されてしまったのである。

 そこで、宇宙を彷徨う怪獣を退治して武勲を上げ、自分の力を宇宙警備隊に照明しようと決めた。例え年若い身であろうと、実力があると見せつければ警備隊も自分を放ってはおかない――そう考えたのである。

 

 だが、結果としては惨敗。怪獣を倒せなかったばかりか、力任せに戦うあまりエネルギーを無駄に消耗し、地球人の体を借りて命拾いする始末。

 武勲どころか地球の民に迷惑を掛けてしまい、意気消沈……といったところなのだ。

 

「……」

『……ってわけだ。へへ、情けねぇよな……。何が警備隊も俺を放っておかない、だ。とんだウルトラマンがいたもんだぜ』

 

 弓弦は、最後にそう言って自虐的に笑うカイナの話を、真摯に聞き続けていた。

 ――重ねていたからだ。父を失い、戦う理由を見失った自分を。

 

『死んだ親父もお袋も、俺の醜態を見て笑ってるだろうな。……なーにが、地球を守る……だ。笑えるぜ』

「……笑ってない。誰も、君を笑ってなんかいない」

『ユズル……?』

「笑わせてたまるかよ。そんなの!」

 

 やがて弓弦は、意を決したように立ち上がる。その眼は、手元のカイナカプセルを映していた。

 

(オレは、父さんと一緒に戦うのが夢で……その夢が叶わなくなった途端、何もかも投げ捨てた。あの時、とっさに体が動いてしまうくらい……未練があったのに!)

 

 自分と同じ、家族を失う苦しみを味わっていながら。それでもなお、前を向こうとしていたカイナ。

 そんな彼の心を、ここで折ってはならない――その想いに駆り立てられ、弓弦はカプセルを握り締める。

 

(オレは、叶わない夢に背を向けて逃げた。でも、カイナは違う。カイナは例え両親を失っても、若さが理由で入隊できなくても、諦めずここまで突き進んで来た! そんな彼が、笑われていいわけがない!)

 

 そして、尻尾を引き抜きBURK隊員達を圧倒する、恐竜戦車に鋭い眼差しを向けて。

 

(オレが……絶対に笑わせない!)

 

 かつて胸を滾らせていた、情熱を思い出すように。その戦場を目指して、走り出していた。

 

「カイナ。エネルギーの全快まで、あとどれくらい掛かる?」

『え!? あ、あと少しだけど……まさかユズル、戦うつもりなのか!?』

「あぁ。君は絶対、オレが笑わせない。君がまだウルトラマンじゃないって言うのなら、オレがそこまで君を押し出す!」

『ま、待てよ無茶だ! 俺に変身したら下手に戦わず、ウルトラサインで他のウルトラマンを呼んだ方がいい! 今度やられたら、お前が傷つくことになるんだぞ!』

「分かってる! ……でも、君がくじけて行く様を見ている方が、もっと痛いんだ!」

『どうしてそんな……俺なんかのために……!』

「君にだけは、なって欲しくないんだ。オレのようには!」

 

 そして、恐竜戦車の巨体が、視界を埋め尽くすほどの距離に来た瞬間。

 弓弦はカプセルを天に掲げ――スイッチを、押す。

 

 天を衝く閃光が、彼の身を包み――ウルトラマンカイナへと変身したのは、その直後だった。

 




・ウルトラマンカイナ

身長:40m
体重:29000t
年齢:4900歳(人間換算で中学生に相当)
必殺技:ゼナリウム光線

 勇士司令部に属する宇宙警備隊の隊員を父に持つ、若きウルトラマン。血気盛んなレッド族とシルバー族の混血児であり、シルバー族の外見でありながら手脚が紅く、宇宙ブーメラン「カイナスラッガー」を備えている。
 両親を怪獣との戦いで喪い、大切なものを守る強さを求めて宇宙警備隊の門を叩くが、若過ぎる年齢を理由に断られ、訓練学校にも入れなかった。そこで、宇宙を彷徨っていた怪獣を倒して、武勲を上げようと考えるのだが……。

 ※モチーフは「ウルトラマンタロウ」第52話『ウルトラの命を盗め!』に登場した、赤手袋のウルトラマンジャック。ネーミングの由来は、その赤い「(かいな)」から。

・恐竜戦車

身長:60m
体重:70000t

 遥か昔の侵略宇宙人・キル星人が開発したサイボーグ怪獣。数百年前に主人のキル星人を他のウルトラ戦士に倒され、コントロールを失い暴走していたところを、ウルトラマンカイナに発見される。
 長い間宇宙を彷徨っていたため、ボディは非常に老朽化しており、未熟なウルトラマンにすら倒されかねないほど弱体化している。

 ※実は作者のお気に入り。


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最終話 旅立ちと再起

「見ろ! ウルトラマンが帰ってきたぞ!」

「ウルトラマン……今度こそ頼むぞ!」

 

 再び戦場に現れ、恐竜戦車と対峙するウルトラマンカイナ。そこから始まる激戦を予感し、BURKの隊員達は巻き込まれないよう距離を取る。

 その様子を一瞥したのち、カイナは改めて紅い拳を構えた。そして――恐竜戦車の銃砲が、火を噴く。

 

「シェァッ!」

 

 だが、今度は喰らわない。弓弦の記憶と人格を持った今のカイナは、身を翻して砲撃をかわし――背後に回り込む。

 そして、一気に恐竜戦車の延髄に、チョップの嵐を叩き込むのだった。

 

「……!? 弘原海隊長、あれは!」

「うむ……多少荒削りだが、あの手刀の太刀筋。あれはBURKの精鋭でしか、真には使いこなせないと言われる……BURK式軍隊格闘術だ」

「なぜウルトラマンがその技を……!? しかも、さっきまでとは身のこなしが全く違います……!」

「あぁ。まるで……風祭勇武の魂が、憑依しているかのようだ」

 

 その戦い振りに既視感を覚え、BURKの隊員達は瞠目する。

 恐竜戦車の砲撃の射線。尻尾の動き。それらを観察していた弓弦の洞察力と、父譲りの戦闘センスが、カイナにプラスアルファを齎したのである。

 

(し、信じられねぇ。これが、俺の動きなのか!? 突っ込むくらいしか能がなかった、この俺が、こんな……!)

(そうだ、カイナ。これが君の本当の力だ、強さだ! 君の力とオレの技を合わせれば……こんな奴になんか、絶対に負けない! 負けさせやしないッ!)

(ユズル……!)

(行こうカイナ! オレは……オレ達は、2人で1人の、ウルトラマンだッ!)

 

 後ろから馬乗りになり、チョップを連打するカイナ。そんな彼を背後から打ちのめそうと、恐竜戦車も尻尾を振るうが――その直前、反撃を察知したカイナは背中から飛び降りてしまった。

 結果、カイナを叩こうとした尻尾は、恐竜戦車自身の後頭部に命中してしまう。痛みに悶える恐竜戦車に追撃を浴びせるべく、カイナは側面から殴り掛かった。

 

 ――だが、痛みにのたうちがむしゃらに暴れる恐竜戦車の尻尾に、吹っ飛ばされてしまう。あまりに無軌道なせいで、今のカイナでも読み切れなかったのだ。

 

 そこに反撃のチャンスを見出した恐竜戦車は、一気にミサイルを連射してくる。その時カイナは――BURK隊員達の近くにいた。

 

「ダアァッ!」

 

 避けるだけなら容易い。だが、自分1人が逃げ出してはBURKの隊員達が、恐竜戦車の砲撃を浴びてしまう。

 カイナは意を決して、頭部のトサカ状の刃――「カイナスラッガー」を抜くと、それを逆手に構え、迫り来るミサイルを斬り落としていった。BURKの隊員達を避けるように、切り裂かれた弾頭の破片が散らばり、爆発していく。

 

「……ゥアァッ!」

 

 だが、全てを捌き切ることは出来ず。ミサイルの濁流が、カイナの体に襲い掛かる。

 それでも、逃げ出すわけにはいかない。ここでBURK隊員を死なせては、カイナは今度こそウルトラマンとして、立ち直れなくなってしまう。

 

 ――弓弦はその一心で、耐え忍んでいた。

 

 やがて恐竜戦車の一斉砲火が打ち止めとなり、それと同時に、カイナも力尽きたように倒れ伏してしまう。

 だが……恐竜戦車にはまだ、如何なる場所も踏破する強力なキャタピラという武器がある。その巨体は、倒れたカイナをひき潰そうとしていた。

 

「させるかぁああ!」

 

 その時。駆けつけた琴乃をはじめとするBURK隊員達が、恐竜戦車の砲口に向けて、BURKガンを一斉に放つ。

 砲身内に残された弾頭が、それにより誘爆し……恐竜戦車の体内で、凄まじい爆発が発生した。

 

「ウルトラマン、立ってくれ! 俺達に、お前を……ヒーローだと称えさせてくれ!」

「頑張れ……ウルトラマンッ!」

 

 恐竜戦車がのたうちまわる中、BURK隊員達の激励が響き渡る。その叫びが――カイナを、弓弦を、動かした。

 

(……カイナ、聞こえるか! 君を、応援している声だ! 君を、ウルトラマンだと信じて戦う、皆の声だ!)

(あぁ……聞こえる! 聞こえるぜ、ユズルッ!)

 

 震える膝に力を込め、ビルに寄りかかりながら。カイナは、再び立ち上がった。そして――全てに決着を付けるべく。

 

 腕を十字を組み……狙い撃つ。

 

『――ゼナリウム光線ッ!』

 

 刹那。カイナと弓弦の叫びが重なり合うと、蒼い電光が一条の閃きとなり――恐竜戦車の体に直撃する。激しい閃光と火花が噴き上がり、怪獣の咆哮が響き渡った。

 

『うおぉ……おぉおおぉッ!』

 

 恐竜戦車の装甲は厚く、蒼い光線は一向に通らない。だが、2人はそれでも諦めることなく、争い続けた。

 

 ――力を使い果たし、光線が弱まった瞬間。恐竜戦車による怒りの一斉砲火を浴びるまで。

 

『ぐあぁあぁあッ!』

 

 2人の絶叫が重なり合い、カイナの巨体が後方に吹き飛ばされる。ビルをなぎ倒しながら、轟音と共に仰向けに倒れたその躰は――再び、BURKの隊員達の前から消滅してしまった。

 

「ウルトラマンが……負けた……」

「あの光線を浴びても、死なないなんて……!」

「……諦めるな! その昔、科学特捜隊はウルトラマンを倒したゼットンを破り、地球人の手で故郷を守り抜いた! 今こそウルトラマンの想いを継ぎ、我々が立ち上がる時なのだッ!」

 

 だが、そんな絶望的な状況の中でも。BURKを率いる隊長は光線銃を撃ち放ち、怯むことなく戦い続けていた。

 周囲の隊員達もその勇ましさに惹かれるように、1人、また1人と戦線に復帰していく。

 

 ◇

 

 ――その頃。瓦礫の中から目覚めた弓弦は、コンクリートの破片を押しのけながら立ち上がり、手にしたカイナカプセルに視線を落としていた。

 カイナを勝たせてやれなかった自責からか、その表情は沈痛な色を湛えている。

 

「……カイナ……!」

『ユズル……済まない……! 俺の力が、足りないばかりに……!』

「謝るのは……俺の方だよ。君に、こんな無理をさせて……」

 

 やはり一度挫けてしまった自分達では、あの恐竜戦車を破ることは出来ないのか。そう、弓弦までもが折れかけてしまった――その時だった。

 

(――諦めるな!)

 

「……ッ!?」

 

 どこからか、威厳に溢れた声が響き渡ってくる。これは……カイナの時と同じ。頭の中に、直接声が入り込んでくる感覚だ。

 

(君達はここに辿り着くまで、苦い挫折を味わった。苦しみを知った。そんな君達だからこそ、掴める未来があるはずだ)

「……あなたは……!?」

(あの怪獣を倒し、未来を掴んで見せろ。答えは、その向こうにある)

 

 弓弦の問いには答えないまま、声の主は戦いを促す。眼前に現れた、眩い輝きの中から――赤いクロスボウガンが現れたのは、その直後だった。無意識のうちにそれを手に取った弓弦は……そこに、カプセルの差込口があることに気付く。

 

「これは……!?」

(カイナブラスター。……かつて、勇士司令部の戦士だった彼の父が使っていたものだ。君達の未来には、必要なものだろう)

『親父の、形見……!』

(さぁ……行くのだ、若きウルトラマンよ。君達の未来は、君達の手で拓け)

 

 カイナブラスターと呼ばれる、赤いクロスボウガン。それを託してから間も無く、「声」は消えてしまった。だが、彼の言葉が聞こえなくなった今でも……やるべきことは、分かっている。

 

「……カイナ!」

(あぁ……頼む、ユズル! もう一度、一緒に戦ってくれ!)

「分かった……! 行くぞッ!」

 

 弓弦はカイナブラスターの差込口に、カイナカプセルを装填する。そして、雄叫びと共に――空に向かって引き金を引くのだった。

 

「カイナァアァァッ!」

 

 刹那。眩い電光が彼の全身を包み込み、その輝きは光の柱となる。

 

『シェアァッ!』

 

 ――紅いプロテクターで上体を固めた、新生ウルトラマンカイナが顕現したのは。その、直後であった。

 

 ◇

 

 肩と胸、そして両腕を固める、メタリックレッドの増加装甲。その荘厳な鎧「カイナテクター」を身に纏い、再び立ち上がったカイナの姿は――劣勢に立たされていたBURKに、希望の火を灯していた。

 

「隊長、見てください! ウルトラマンが……ウルトラマンが復活しました!」

「また立ち上がったのか!? ――ふっ、随分と血の気の多いウルトラマンだな! 各員、あのタフガイの援護に回るぞ!」

「了解ッ!」

 

 絶え間ない恐竜戦車の砲撃により、窮地に立たされていたBURKの隊員達が、息を吹き返していく。そんな人間の強さを一瞥しつつ、「ウルトラマンカイナ・スカーレットブラスター」は、紅い拳を構えて仇敵に向かって行った。

 そんな死に損ないに業を煮やし、恐竜戦車は先ほどカイナを沈めた一斉砲火を叩き込む。――が、父の形見を纏い生まれ変わったカイナの装甲は、傷一つ付かない。

 

『デュワッ! デアァアッ!』

 

 無数の砲撃を浴びても、ミサイルを撃ち込まれても。カイナは一歩も下がらず、恐竜戦車の顔面に拳打を見舞う。矢継ぎ早に飛ぶ真紅の鉄拳が、怪獣の貌を打ち据えて行った。

 

 今度こそ、仕留める。その一心を胸に、側転で距離を取ったカイナと弓弦は――紅い鋼鉄の鎧を、念力で分解した。すると、そのパーツひとつひとつが宙を舞い、鎧とは異なる形状に合体していく。

 ――やがて、メタリックレッドの巨大な弓矢が完成し。それを手にしたカイナは恐竜戦車に向け、赤い光線の矢を一気に引き絞った。

 

「行くぞ……カイナ!」

『あぁ……ユズルッ!』

 

 この一撃は、絶対に破らせない。その不退転の決意を纏う、真紅の弓矢が激しく閃き――

 

『ゼナリウムッ……ブラスタァアァアアァアッ!』

 

 ――今度こそ。恐竜戦車の躰を、貫くのだった。

 

 紅い光の矢に貫かれた怪獣の体内で、全ての砲弾とミサイルが誘爆し……その全身を、爆炎が飲み込んで行く。

 やがて、その巨体が爆散し、肉片が天に舞い上がった時。この戦いは、終わりを告げたのだった。

 

「やった……やったぞ!」

「ありがとう……ウルトラマン!」

 

 BURK隊員。テレビから、この戦いを見ていた民間人。バスの中から、戦局を見守っていた付属高校の生徒達。

 全ての人々から歓声が上がり、カイナの奮闘を賞賛していた。

 

(ほら……カイナ。これは、君が掴んだ勝利だよ。君が、勝ち取った平和だ)

(……お、俺……やれたんだな……本当に……! う、ぉ、ぉお……!)

 

 その声を一身に浴びて。鎧姿に戻ったカイナは涙を堪え、泣き顔を見せないように――何処かへと飛び去ってしまう。手を振る人々のエールを、その背中に浴びながら。

 

 ◇

 

 ――空の彼方を駆け抜けた先。戦いを終えたカイナの前には、偉大な人物が待ち受けていた。

 

(あなたは……そうか、あなたが……)

『勇敢な地球の少年よ。私は、宇宙警備隊隊長のゾフィー。……君のおかげで、暴走した宇宙怪獣からこの星の人々を守ることができた。ありがとう』

(ゾフィー隊長……)

 

 カイナと弓弦の前に現れた、伝説の巨人――ゾフィー。カイナブラスターを授け、この戦いを勝利へと導いた彼は、弓弦に感謝の言葉を告げると……カイナの人格に目を向ける。

 

『カイナ。私はかつて、君の入隊を拒んだことがある。その理由……今ならわかるな?』

(……若過ぎたから、ですよね。諦めない強さを持てないほどに、俺がガキだったから……)

『そうだ。大切なのは最後まであきらめず、立ち向かうことだ。例えわずかな希望でも、勝利を信じて戦うことだ。信じる心……その心の強さが、不可能を可能にする。それが――ウルトラマンだ』

(……)

『君は確かに、両親の死をバネにする強さを持っていた。だが、宇宙警備隊として何よりも必要な、諦めない強さが足りなかった。そして、それを持つには、君は余りにも若過ぎた』

 

 ゾフィーはそこで一度、言葉を切り――「だが」、と付け加える。

 

『君は彼と共に再び立ち上がり、諦めない心を武器に恐竜戦車を破った。――君はようやく、ウルトラマンの門を叩いたのだ』

(ゾフィー隊長……)

『今なら、君を訓練学校に迎え入れられる。大切なものを守る強さ……君が追い求めたそれを、手に入れるチャンスだ』

(……)

 

 待ち望んだ、宇宙警備隊への登竜門。それを目前にしたカイナは――迷うことなく、首を振る。

 

(……恐竜戦車を倒せたのは。地球の皆を守れたのは、親父の形見と……ユズルの力です。俺はただ、がむしゃらに戦っただけだった)

『――そうか』

(俺はこれから、武者修行の旅に出ます。隊長にも、ユズルにも、胸を張れる勇気を持てるまで)

『門はいつでも開けておく。……覚悟が決まった時、光の国を訪ねるがいい』

(はい。……その時こそ、一から鍛え直して頂きます)

 

 カイナはやがて、ゾフィーに旅立ちを告げると――弓弦の体から分離し、彼の身を丘の上の公園に移動させる。

 

『ユズル……短い間だったけど、お前に会えて本当によかった。ありがとうな』

「……ううん。礼を言いたいのは、オレの方だ。君のおかげで……オレも、前に進めそうな気がするよ」

『そっか……よかった。じゃあ……いつか、またな』

 

 そして、弓弦からカイナカプセルとカイナブラスターを返された彼は、ゾフィーと共に宇宙の彼方へ飛び去っていく。

 その背中を見送った後――弓弦の背後から、彼を呼ぶ声が響き渡ってきた。

 

「風祭くーんッ! いたら返事してーッ!」

 

 振り返ってみれば、先ほどのBURK隊員――駒門琴乃が、自分を探してあちこち駆け回っている。どうやら怪獣を倒した後も、休まず自分を探し続けていたようだ。

 

(ありがとう……ウルトラマンカイナ)

 

 そんな彼女に、「おーい!」と手を振って駆け寄りながら。弓弦は、自分だけが知る新たなウルトラマンの名を、呟くのだった。

 

 ◇

 

 夕陽が茜色の光を放つ、黄昏の空。生徒達が解散した後も、綾川梨々子は親友の尾瀬智花と2人で、その空を眺めながら待ち続けていた。

 付属高校の校舎は、あの戦いが嘘のように静かで――まるで、全てが夢であったかのようだった。

 

「……」

「……梨々子、やっぱ一度帰った方がいいんじゃないか? またあんたんとこのお父さん、心配で胃痛になっちゃうよ」

「ごめん、智花。……もう少しだけ、ここにいたいの」

「いやまぁ、あたしはいいんだけどさ……」

 

 憂いを帯びた表情で、想い人を待つ梨々子。その切なげな貌を、智花はじっと見守っていた。

 

 ――宇宙人や怪獣が、この地球を再び攻め立てるようになったのは、ここ数年の話であり。彼女達が小学生の頃は、怪獣も侵略者も過去の物となっていた。

 その当時、戦う相手がいなかったBURKは「税金泥棒」「暴力装置」などとメディアに叩かれ、今より遥かに肩身が狭い思いをしていた。その司令官の娘である梨々子も、そんな世情の誹りを受ける形で、苛められていたのである。

 

 ――そんな彼女をただ1人庇い、BURKが必要とされる今の時代になるまで、彼女の味方であり続けたのが……幼き日の風祭弓弦だったのだ。

 

 彼は、どんな時も自分の側にいてくれた。だから、今度は自分が……。

 

「……!」

 

 そう強く想う彼女が、ハッと顔を上げ――感涙を頬に伝せながら、教室を飛び出していく。智花の視界に、駒門琴乃に連れられた風祭弓弦の姿が映り込んだのは、その直後だった。

 

「風祭くぅうぅんッ!」

 

 梨々子は涙を浮かべながら、満面の笑みを咲かせて――弓弦の胸に駆け込んでいく。そんな彼女を見つけ、普段どおりのぽけーっとした笑顔を浮かべながら。

 

(……父さん。オレ、もう一度だけ目指してみるよ。地球を守る、BURKの隊員をさ……)

 

 ――風祭弓弦は、心の奥底に新たな夢を刻むのだった。

 




 本作「ウルトラマンカイナ」はこれにて完結となりました! ここまで読んで頂いた読者の皆様、本当にありがとうございます!

 さて、来週この時間帯からは、2016年に公開していた「THE 地球防衛軍」の2次創作「うぬぼれ竜士 ~地球防衛軍英雄譚~」のリニューアル版をお送りします。真の最終話を加筆した完全版を、この時間帯の週1更新でお送りして行きますので、楽しみにして頂ければ幸いです。
 次週も、拙作をチラ読みして頂けると幸いです! ではでは、失礼しました!(^^)


・ウルトラマンカイナ・スカーレットブラスター

身長:40m
体重:35000t
年齢:4900歳(人間換算で中学生に相当)
必殺技:ゼナリウムブラスター

 ウルトラマンカイナが増加装甲「カイナテクター」を纏った姿。風祭弓弦が「カイナブラスター」にカイナカプセルを装填することで、この姿に強化変身できる。カイナの亡き父は人間に擬態していた際、このカイナブラスターでテクターを纏っていた。(カイナは人間に擬態できないため、弓弦がいないとこの形態に変身できない)
 強固な装甲と重量が武器であり、格上の怪獣さえも力技で封殺できる。さらに、この装甲には装着者のエネルギーを増幅する作用があり、光線技も格段に強化される。必殺技は鎧を弓矢に変形させ、光線の矢を放つ「ゼナリウムブラスター」。


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特別編 ウルトラカイナファイト part1

◇今話の登場ウルトラマン

風祭弓弦(かざまつりゆずる)/ウルトラマンカイナ
 6年前、恐竜戦車の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。紅い手足という特徴を持つシルバー族のウルトラ戦士であり、必殺技は腕を十字に組んで放つゼナリウム光線。現在の弓弦はBURKの隊員であり、年齢は22歳。



 6年前に起きた、恐竜戦車地球降下事件。その際にウルトラマンカイナの手で倒された件の個体は、キル星人という主人を失ったことで暴走状態に陥っていた。

 

 だが、その個体は単なる「暴走」だけで地球に来たわけではなかったのだ。

 

 ――恐竜戦車は、逃げ込んで(・・・・・)来たのである。

 理性を失った中であっても、本能で理解してしまうほどの恐怖。そのプレッシャーを齎す、「脅威」の影に怯えながら。

 

 そして、ウルトラマンカイナの登場から6年を経た今になって。人類はようやく、その「脅威」の存在と侵略の真相を理解したのだった。

 

 ◇

 

 ――恐竜戦車との戦いから6年。

 地球を狙う凶悪な異星人を阻止するべく、BURKに入隊した風祭弓弦と、戦士としての経験を重ねたウルトラマンカイナは再び一心同体となり、侵略者達の群れ(・・)に敢然と立ち向かっていた。

 

『ぐ、あ……!』

 

 だが、戦場となった東京はすでに半壊状態であり。大量のビルの残骸にもたれ掛かっているカイナも、満身創痍となっていた。

 この6年間で、カイナ自身もウルトラマンとしての実戦経験を重ね、誰もが認める一人前の戦士として成長したのだが。そんな彼の全力を以てしても、「多勢に無勢」だったのである。

 

『ふん……なんと脆い。この地球の守護を託されたウルトラ戦士が、そのような醜態を晒しても構わんのか?』

『ぐッ……!』

 

 5体もの強力な怪獣を従え、カイナを圧倒する青い異星人。テンペラー星人と呼ばれるその巨人は、両の足で立つことすら叶わなくなっているカイナを嘲笑うように、鼻を鳴らしている。

 

『我は此奴らを力で捩じ伏せ、従順な尖兵として調教した。……此奴らを倒せぬ程度では、我に挑む資格すらないということだ』

 

 宇宙恐竜ゼットン。

 宇宙怪獣エレキング。

 用心棒怪獣ブラックキング。

 一角超獣バキシム。

 火山怪鳥バードン。

 彼が己の力を以て従えている怪獣達でさえ、一体一体が並外れた戦力を持っているのだ。それら全てに同時攻撃を仕掛けられては、歴戦の勇士としてのキャリアを重ねたカイナでも、凌ぎ切るのは困難を極める。

 

『だったら……「頭」の貴様を仕留めて終わりにしてやるッ!』

 

 この苦境を切り抜けるには、敵の首魁を討って指揮系統を絶つしかない。そう判断したカイナは、頭部のカイナスラッガーを引き抜き、テンペラー星人の首目掛けて一気に投げ付ける。

 

『……言ったはずだ。今の貴様には、我に挑む資格すらない!』

『なにッ!? ぐわぁあッ!』

 

 だが、テンペラー星人は鋏状の片腕から発した光線で、カイナスラッガーの刃を容易く跳ね返してしまうのだった。彼の光線はそのまま直進し、紅い増加装甲を纏うカイナの胸に直撃してしまう。

 吹っ飛ばされたカイナの装甲には、小さな亀裂が入っていた。これまで一度も傷付いたことがなかったカイナテクターの損傷は、光線の威力を雄弁に物語っている。

 

『カ……カイナテクターに、傷が!?』

『ほう、我の光線にも耐える装甲か。なかなか良い物を使っているではないか』

『なんて威力なんだ……! 今のがあの、「ウルトラ兄弟必殺光線」って技なのか……!?』

 

 かつて、ウルトラマンタロウを筆頭とするウルトラ6兄弟が相対したテンペラー星人。その個体が使用していた最大火力の光線は、「ウルトラ兄弟必殺光線」と呼ばれている。

 

『ふん、何を言っている。これは、その名で呼ばれるような光線ではない。ほんの小手調べだ』

『なッ……!?』

『とはいえ、今の一撃で破壊出来ぬとなれば手加減などしてはいられまい。それほどまでに見たいというのであれば、見せてくれよう。……我にとっての、必殺光線をな』

 

 だが、カイナの目の前にいる個体は、不遜に鼻を鳴らしてそれを否定した。その名を与えるような威力の技ではない、と言うのだ。

 彼は己の光線にも耐えたカイナの装甲すらも破壊するべく、全身の力を両手の鋏に集中させ――光線状のエネルギーとして、一気に解放する。

 

『ぐわぁあぁあぁあッ!』

『……冥土の土産に覚えておくがいい。これが我の必殺光線……星という世界をも絶つ咆哮、「絶世哮(ぜっせいこう)」だ』

 

 その威力は、もはやカイナの理解を超越していた。これまでどのような攻撃も跳ね除けてきたカイナテクターは、瞬く間に粉々に砕け散ってしまったのである。

 さらに、増加装甲という犠牲を払ってもなお衝撃を殺し切れず、カイナの巨体は激しく吹っ飛ばされてしまうのだった。胸のカラータイマーは、すでに赤く点滅している。

 

『く、くそッ……負けてたまるか……! オレは、オレ達は絶対にッ……!』

 

 それでも闘志だけは折れることなく、カイナはよろけながらも立ち上がっていく。

 綾川梨々子との結婚式を来月に控えていた、弓弦にとっても。友として、そんな彼らを祝福したいと願うカイナにとっても。これだけは絶対に、負けられない戦いなのだ。

 

 だが、増加装甲を失った今の彼だけでは、テンペラー星人率いる怪獣軍団を阻止することなど出来るはずもない。

 状況は、絶望的であった。

 




 現在、活動報告にてpart3から登場するオリジナルウルトラマンを募集しております。締め切りは7月11日18:00までとなっておりますので、機会がありましたらお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)

Ps
 昭和ウルトラマンにはその時代ならではの味があるなぁ、と思うのですよ(*´꒳`*)


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特別編 ウルトラカイナファイト part2

 ――その頃。怪獣軍団に破れ、壊滅状態に瀕しているBURKの基地内では。半壊したブリーフィングルームの中で、駒門琴乃が声を荒げていた。

 

「そんなっ……弘原海隊長、本気なのですか!」

「俺が冗談でこんなことを言うと思うか? ……もはや、手段を選べる状況ではないんだ。情けないことにな」

 

 彼女の抗議を受けている弘原海も、沈痛な面持ちで自嘲している。2人の視線は、基地の屋上にあるアンテナと繋がっている、とある「装置」に向けられていた。

 

 ――かつて人類はウルトラマンを「捕獲」し、その存在を「生物」として解析した上で、「兵器」として運用しようと目論んでいた。

 それで万が一、ウルトラマンを敵に回すような結果を迎えれば、地球そのものが取り返しのつかない末路を辿ることになる。人道的見地以前の問題を抱えた、禁忌の研究であった。

 

 そして、その計画が必然的に頓挫する直前。ウルトラマンという英雄――イカロスの「翼」を焼き、地に落とすために開発された「太陽」があった。

 それが人工ウルトラサイン発信装置、通称「イカロスの太陽」なのだ。

 

 本物に極めて近しい精度で偽造されたウルトラサインで、標的とするウルトラマンを地球に誘き寄せ、捕獲する。そのために生み出された、悪魔の産物。

 ウルトラマンという救世主の存在を巡る、人類の闇そのものであった。

 

 弘原海は封印されていたその装置を使い、「カイナからの救援要請」を装って他のウルトラマン達を呼び寄せようと考えていたのである。

 

 カイナの窮地とあらば必ず駆け付けるであろう、彼の「後輩達」を。

 

「こいつの力で『彼ら』を呼び戻す。それ以外にもう……ウルトラマンカイナを救う手立てはない。お前にだって分かっているはずだ」

 

 ――ウルトラマンカイナが初めて地球に降り立ち、恐竜戦車との死闘を繰り広げた日から6年。それまでの間、地球は絶えず怪獣や異星人の襲撃を受け続けていた。

 安息など与えられない、闘争の日々。それでもBURKが一度も屈することなく、地球の守手としての使命を全うして来られたのは、「ウルトラマン」という存在が常に支えとなっていたからなのだ。

 

 1年経つごとに、任期を終えたとばかりに地球を去っては。入れ替わるように新たな巨人が現れ、BURKと共闘して侵略者達を退けていく。

 カイナの登場を皮切りに、それが6年間にも渡って続いてきたのである。かつては新米だった彼の5人の後輩達も、今や1年間地球を守り抜いた歴戦の猛者なのだ。

 

 そして、カイナに続く地球の守手として戦ってきた彼らならば。自分達の先輩に当たる彼の窮地に、動かないはずがない。

 彼らがこの地球で戦ってきた怪獣達も恐竜戦車と同様に、テンペラー軍団によって「追い立てられた」存在だったのであれば。これは彼らにとっても、真の最終決戦となるはず。

 

 弘原海は、そこに賭けているのだ。彼ら自身にも、戦うに値する理由はあるはずだと。

 

「そんなことは分かっています! しかし『彼ら』はもう、十分過ぎるほど戦いました……! それなのに、またこのような戦場に引き摺り込むなんてッ!」

 

 琴乃としても、弘原海の主張が理解できないわけではない。それでも彼女はあくまで、反対の立場にいる。

 その理由は、カイナの後輩達が地球で活動するための依代(パートナー)として選んだ、この星の青年達にあった。

 

 彼らは全員、ウルトラマンとしての1年間に渡る任期を終えた現在では、ごく普通の人間として暮らしているのである。地球を救った救世主としての名声よりも、ウルトラマンになる前と変わりない、当たり前の日常を望んでいるのだ。

 

 カイナの後輩達を「イカロスの太陽」で呼び寄せるという判断は、依代である彼らを再び戦場へと巻き込むことにも繋がりかねない。身命を賭して地球を守らねばならないBURKの隊員として、それだけは看過できなかったのである。

 かつてはウルトラマンと共に戦った英雄であるとはいえ、名誉よりも安寧を求めた青年達を、この期に及んで戦いに駆り出すなど。

 

「……安心したよ、駒門。お前のような奴が1人でもいる限り、BURKは安泰だ。例え、俺がいなくなろうともなッ!」

「た、隊長ッ!」

 

 それが人として、BURKの隊員として最も正しい見解であることは、弘原海自身も承知していた。その上で彼は、牽制のために琴乃の足元を光線銃で撃ち抜きながら、発信装置に駆け寄って行く。

 

 ――弓弦が搭乗していたBURKの戦闘機が、バードンの火炎放射に焼かれ墜落する瞬間。2人は、カプセルを掲げた彼がカイナへと変身する場面を目撃していた。

 今まさに命懸けで戦い、死に瀕している巨人が自分の部下なのだと知ったからこそ。弘原海は隊長として、是が非でも隊員を守らねばと覚悟を決めてしまったのである。

 

 琴乃は阻止する暇もなく、装置への接近を許してしまうのだった。

 

「この装置を起動させるということは、軍の禁忌に触れることにも等しい。俺は今回の戦いを最後に、BURKから退くことになるだろう。……後はお前に任せたぞ、駒門ッ!」

「待ってください隊長! 隊長ォッ!」

 

 敬愛する隊長が下した、悲壮なる覚悟を伴う決断。その瞬間を目の当たりにしていながら、琴乃はただ手を伸ばすことしかできずにいる。

 

「これが罪だというのであれば! その罰は全て、この俺が引き受けるッ! だから頼む……どうか、頼むッ! かけがえのない俺の部下を、お嬢様の夫になる男を……救ってくれえぇーッ!」

 

 そして、弘原海が装置のレバーを勢いよく倒した瞬間。

 

 そこから伝播するようにアンテナへと駆け上がっていく青白い電光が、宇宙の彼方を目指して解き放たれていくのだった――。

 

 ◇

 

 「イカロスの太陽」から発信された、人工のウルトラサイン。カイナの窮地を報せるその閃光は、東京にいるカイナとテンペラー軍団も目撃していた。

 

『……!? あ、あのサインは……!』

『あの救難信号は……地球人類共の紛い物か。ふん、なんという杜撰な作りだ。あのような信号に反応するウルトラマンがいるとすれば、よほどの馬鹿か……偽造を承知で駆けつけて来るような、酔狂者であろうな』

『……ッ!』

 

 弓弦も、「イカロスの太陽」という禁忌の存在は弘原海から聞かされていた。それを使えば、BURKからの永久追放は免れないということも。

 

(弘原海隊長ッ……!)

 

 そして今、その装置を管理出来る人物は弘原海しかいない。そこからこの現象の背景を汲み取ったカイナは、彼の覚悟を悟り拳を震わせる。

 彼の献身に報いるためにも、必ず勝たねばならないと。

 

 ――そんなカイナの闘志に、呼応するかの如く。霧散していく信号の向こうから、光り輝く五つの星が現れた。

 

『……! あ、あれはッ!』

『ほう……どうやら我の見立て以上に、酔狂者は多かったようだな』

 

 否、それは星ではない。人の形を持った、希望の輝き――ウルトラマンであった。

 

 彼らは皆、弘原海という男を知るが故に。自分達に向けて発信されたサインが「イカロスの太陽」によって生み出された偽物であると知りながら、その覚悟に報いる道を選んだのである。

 

「お、おい見ろよ、あれ……!」

「あぁっ、ああ……ウ、ウルトラマンだ……! あの時、地球を救ったウルトラマン達だぁっ!」

「すげぇ……! こんなことあんのかよッ! 今まで地球を守ってきたウルトラマン達が……今度は、全員纏めて来てくれるなんてッ!」

 

 両手を広げ、空の彼方から飛来する5人の巨人。この星に暮らす誰もが知っている、その勇姿が再び露わにされた瞬間――絶望に包まれていた人から、爆発的な歓声が上がるのだった。

 

「あれは……!? カ、カメラ! カメラ向けて、早く! せ、世界中の皆様、この中継をよくご覧ください! あの5人のウルトラマンが……皆様も私も、よく知っているあのウルトラマン達が、帰って来たのですッ! この地球の希望は、ウルトラマンカイナだけではなかったのです! 我々はまだ、絶望するには早過ぎたのですッ!」

 

 BURKの完敗。

 カイナの窮地。

 その光景をただ映像で見ていることしか出来ず、滅びに向かうしかないのかと打ちひしがれていた世界中の人類は、かつて地球を救った救世主達の再来に希望の光を見出している。

 

 聞こえずとも、その歓声を肌で感じていた5人のウルトラマンはやがて、半壊した東京の戦地に勢いよく着地するのだった。衝撃によって噴き上がる土砂が天を駆け上り、大空に巨人の来訪を報せている。

 

『お、お前達……!』

 

 未熟だった6年前のカイナよりも、さらに若い5人の後輩ウルトラマン。その背中は「1年間の地球防衛」という大役を経て、カイナの想像よりも遥かに逞しく成長していたのである。

 今この場に集結した6人のウルトラマン達の中では、最年長であるカイナも思わず息を呑んでしまう。それほどまでの「進化」が、「後輩達」のオーラに現れているのだ。

 

『数だけ揃えて、互角に持ち込めたつもりか。……やはり若造だな、実に浅はかだ』

 

 そんな若獅子達の気迫を前にしても、テンペラー軍団を率いる首魁は全く動じていない。彼が従える5体の怪獣も、美味そうな獲物が増えたと喜んですらいる。

 

 ――6対6。この状況に至り、地球の命運を賭けた最後の死闘はようやく、第2ラウンドへと移行したのだった。

 




 現在、活動報告にてpart3から登場するオリジナルウルトラマンを募集しております。締め切りは7月11日18:00までとなっておりますので、機会がありましたらお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)

Ps
 ウルトラマンFEシリーズ新作出ないかなぁ……一度でいいから触りたいんだなぁ……(´-ω-`)←FEエアプ勢


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特別編 ウルトラカイナファイト part3

◇今話の登場ウルトラマン

暁嵐真(あかつきらんま)/ウルトラアキレス
 5年前、怪獣や異星人の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。全身の各部にプロテクターを装着しているレッド族のウルトラ戦士であり、必殺技は片腕を横に振りかぶった後、縦に突き出して放つイーリアショット。現在の嵐真は小学校の教師であり、年齢は24歳。
 ※原案はMegapon先生。



「おい、いつになったら進めるようになるんだよ! もう怪獣達がすぐそこまで来てんだぞ!? 俺らを見殺しにする気か!?」

「ウルトラマンカイナもBURKもやられちまってるって話じゃねぇか! 俺達、一体どうなるんだよ! アメリカや中国のBURKは何やってんだ!」

「もういい、俺は家に帰る! あいつらが勝てないってんなら、どこに逃げても同じだ!」

 

 ――遡ること、約数分前。隣県に繋がる東京の道路では、避難民達の車両が大渋滞を引き起こしていた。

 テンペラー軍団によって破壊された都市から退避するべく、大勢の都民達が我先にと逃げ出そうとしているのである。この一帯は人々の怒号と、クラクションの音ばかりが響き続けていた。

 

「せ、先生ぇ……」

「怖い……怖いよぉ……!」

「大丈夫大丈夫、何も心配いらないさ。きっとすぐにウルトラマンカイナが、怪獣達なんてやっつけてくれるよ」

 

 大人達の言動に狂気を与えている、焦燥と恐怖。その負の感情は、子供達にも伝播しているのだろう。渋滞に巻き込まれているスクールバスの小学生達も、身を寄せ合い震え上がっていた。

 そんな子供達に優しげな笑みを向け、穏やかでありつつも力強い言葉で励ましている若手の教師――暁嵐真(あかつきらんま)は。この状況でありながら、落ち着いた様子で後方を見遣っている。

 

「先生……ダメだよ、カイナでも勝てないんだよ? ……負けちゃってるんだよ?」

「ねぇ先生、誰かカイナを助けてあげられないの? BURKがダメになったら、カイナは独りになっちゃうの?」

 

 遥か向こうから響いて来る激戦の轟音が、カイナの劣勢を雄弁に物語っていた。子供達も状況を察しているのか、嵐真の励ましを受けてもその表情は暗いままとなっている。

 

「……」

 

 自分達の命すら危ういのに、それでもカイナの身を案じている子供達の言葉を受け、嵐真は逡巡し――懐に手を伸ばした。

 その手に掴んだ、真紅の眼鏡のようなものに視線を落として。嵐真は「5年前の戦い」を振り返る。

 

(俺の元に「これ」が再び現れたということは……やはり、そういうことだったんだな)

 

 ウルトラマンカイナが恐竜戦車を倒した日から、1年が過ぎた頃。再び地球に怪獣や異星人の危機が訪れた時、第2の新世代ウルトラマンが颯爽と現れたのだ。

 かつてそのウルトラマンと一体化し、共に地球を救ったカイナの「後輩」こそが、この暁嵐真なのである。

 

 その戦いの日々において、相棒同然だった変身アイテムは使命を終えた瞬間に、消滅したはずだった。それが今蘇り、こうして手元に現れている。

 しかも、テンペラー軍団という全ての「元凶」を前にして。

 

(そして、さっきのサイン……間違いない。弘原海隊長が、「イカロスの太陽」を使ったんだ。俺達に助けを求めるために……カイナ兄さんを、救うために)

 

 地球の守り手(ウルトラマン)としての重責に苦しむ中で、独りにはさせまいと命懸けで支えてくれた、父のような存在。そんな弘原海が己の全てを投げ打って、SOSを発信している。

 

(……教師として、教え子達から目を離すわけには行かない。だけど、今この瞬間だけは……俺は、ウルトラマンでいなければならないんだ)

 

 それを悟り、子供達の思いを知った今。嵐真は教師という立場だからこそ、子供達に「絆」という力の強さを伝えねばと決意する。

 

「……大丈夫だよ、皆! カイナの他にも、地球を救ってくれたウルトラマン達がいただろう? 今に彼らが大急ぎで助けに来てくれるさ!」

「ほ、本当……?」

「ああ、本当だ! 今まで、先生が嘘ついたことあるかい?」

 

 カイナに続いて地球に現れ、活躍してきた5人の後輩ウルトラマン。その登場を「予言」する嵐真の言葉に、子供達の目にも微かな「光」が灯る。

 それが、子供達を励ますための「嘘」なのだと解釈していた若い女性教師は、心配げに嵐真の袖を摘んでいた。

 

「あ、暁先生……そんなこと言っちゃって大丈夫なんですか? 確かにそれくらい言わないと、子供達も安心できないとは思いますけど……」

「……辻凪(つじなぎ)先生。少し周りの状況を見て来ますので……この子達を頼みます。必ず戻りますから」

「ふぇっ!? ちょっ……暁先生っ!?」

 

 漫画の制作が趣味だという、眼鏡を掛けた姿が愛らしい同僚の女性教師――辻凪あやめに子供達を託して。嵐真は素早くスクールバスから飛び降りると、渋滞の真っ只中を逆走していく。

 

「すみません、辻凪先生! これから起きること、漫画のネタにしても構いませんのでっ!」

 

 立ち往生になっている車の大行列。その隙間を縫うように、嵐真は燃える街の方へと走り去ってしまった。その背を見送ることしかできないあやめは、豊満な胸に手を当て、彼の身を案じることしかできずにいる。

 

「暁先生……」

 

 それが、「単なる同僚」に対する感情ではないということに。子供達は、すでに勘付いているようだった。

 

「あやめ先生、嵐真先生のこと心配なのー?」

「絶対そうだよ! だってあやめ先生、嵐真先生のこと大好きだもん!」

「ふぇっ!?」

「えー!? やだよー、私が嵐真先生のお嫁さんになるんだもんっ!」

「あ、あなた達まで何を言ってるんですかっ! い、いいから暁先生が戻るまで大人しくしてなさいっ!」

「あはは! あやめ先生、耳まで真っ赤ー!」

「たこちゃんみたいー!」

「もっ……もぉおぉっ! 先生怒りますよ! ほんとのほんとに怒りますよっ!」

 

 自分の恋心を看破され、驚きのあまり眼鏡がずれてしまったあやめは。ばるんばるんとHカップの巨乳を揺らしながら、可愛らしい怒号を上げている。

 そんないまひとつ威厳に欠けている彼女の姿に、子供達もようやく笑顔を取り戻したのだった。

 

「よし……ここなら行ける!」

 

 その頃。車が1台も見られない無人の道路に行き着いた嵐真は、真紅の眼鏡「アキレスアイ」を掲げていた。

 

「デュワッ!」

 

 その掛け声と同時に、アキレスアイを装着した瞬間。

 目元から広がるようにウルトラマンの姿が形成されて行き、徐々に巨大化していく彼の肉体が、レッド族のウルトラ戦士へと「変身」していく。

 

 ――シルバー族の血を引いているためか。レッド族ながら眼の形状はシルバー族に近く、全身のあらゆる部位がプロテクターに防護されている。その上に備わるカラータイマーは、縦に長い六角形のようであった。

 頭部にあるアイスラッガー状の武器「アキレスラッガー」の前面には、ビームランプ状のクリスタルが付いている。赤色で統一された上半身と、銀色に染まっている下半身が、混血という「雑種」の強力さを物語っていた。

 

 この巨人の名は、「ウルトラアキレス」。かつてウルトラマンカイナに続く2人目の新人ウルトラマンとして、地球を守り抜いた若獅子だ。

 今や歴戦のウルトラ戦士として立派に成長した彼は。その力と経験値を余すところなく発揮しうるほどの戦場に、巡り会ってしまったのである。

 

『カイナ兄さん……今行きます! ダアァッ!』

 

 地を蹴って両手を広げ、マッハ3にも迫る速度で飛ぶアキレスは。「先輩」であるウルトラ戦士の元へと、全速力で飛び出すのであった。

 




 まずは本作における読者応募企画にご参加頂いた皆様、ご協力誠にありがとうございました! おかげ様で作者の予想を遥かに上回る盛り上がりになりましたよー(о´∀`о)
 次回からも今話のようなタッチで、残り4枠となる本採用ウルトラマンの変身シーンを書いて行く予定となっております。まずはMegapon先生原案のウルトラアキレスが、本採用枠のトップバッターとなりました!(*≧∀≦*)
 本採用枠のウルトラマン達は全員、1年間に渡って地球防衛という大役をやり抜いたツワモノ揃いですからねー。やはり可能な限りは、「過去作の主人公っぽさ」を出して行けたらなーと思っております(*´ω`*)

 残念ながら本採用枠としての登場は叶わなかった案もあるのですが、その案についても出来る限りは……ほんとに出来る限りは今回のように原案に少しでも寄せつつ、様々な形で物語に組み込んでいくつもりです。変身前だけの登場だったり、逆に変身後のみの登場だったりと色々なパターンがありますぞ(´-ω-`)
 誰がどんな枠でどういうポジションとして登場するのか。そこもひっくるめて、最後まで楽しんで頂けると幸いです。ではではっ、次回もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 「お前らちゃんとアキレス腱伸ばしたか?」


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特別編 ウルトラカイナファイト part4

◇今話の登場ウルトラマン

椎名雄介(しいなゆうすけ)/ウルトラマンザイン
 4年前、怪獣や異星人の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。胸部から肩部にまで伸びているプロテクターと、電子回路のような模様の身体と、電気属性を待ち合わせているレッド族のウルトラ戦士であり、必殺技はスペシウムエネルギーを球体状に凝縮して撃ち放つザイナスフィア。現在の雄介はBURKの専任分析官であり、年齢は22歳。
 ※原案は魚介(改)先生。



 同じく、約数分前。テンペラー軍団の猛攻によって崩壊した、BURK日本支部の基地の前には――急造の遺体安置所が設けられていた。

 幾つかのテントの下に、袋詰めにされた遺体が死屍累々と横たわっているだけの、簡素な安置所。そこで眠っているBURKの隊員は皆、基地の崩落に巻き込まれた者達ばかりであった。

 

「……これで、全員か?」

「いえ……まだ下敷きになっている隊員達がいるはずです」

 

 テンペラー軍団と、ウルトラマンカイナの激戦が続いている今の状況では、弔う暇もない。

 BURK隊員の生き残りである真壁悠兎(まかべゆうと)江渡匡彦(えとくにひこ)の2人は、負傷者でありながら懸命に瓦礫を退かし続け、生存者の捜索に励んでいた。傷の痛みよりも、仲間達が瓦礫に潰されたままであることの方が、遥かに辛いのだと。

 

小森(こもり)巡査、もう結構ですからあなたも早く逃げてください……! ここだって、いつ怪獣達の攻撃が飛んでくるか分からないんですよ!」

「それはあなた達BURKだって同じでしょうが……! ここまで来たら一蓮托生です、俺も最後まで働きますよ!」

「小森さん……!」

 

 その作業には、警察官の小森ユウタロウも加わっている。都民が避難するための時間を命懸けで稼ぎ、その犠牲となってきた彼らを、放っておくことが出来なかったのだ。

 警察機関の手に負える相手ではない以上、ユウタロウ自身も避難するよう命じられているのだが。彼はその命令よりも、人を守るという警官としての「矜持」を優先している。

 

「うぅ……痛い、苦しい……!」

「た、助けて……助けてくれぇ……!」

「……! せ、生存者だ……! 生きてる奴がいるぞ! 真壁、小森巡査! 手を貸してくれッ!」

「は、はいッ!」

「分かりましたッ!」

 

 瓦礫の影から響いて来る、生存者達の呻き声。それを耳にした匡彦達は顔を見合わせ、全力で瓦礫を退かそうと力を合わせる。

 だが、瓦礫はあまりに大きく、到底人の力で動かせるような質量ではない。てこになるような物も見当たらず、この廃墟同然の基地では重機の類も全滅している。

 

「ち、ちくしょう……! もう、どうにもならないってのか!? 救える命が、目の前にあるってのに……!」

 

 万事休す、だというのか。その悔しさに匡彦が拳を震わせた、次の瞬間。

 

「ふんッ!」

「……!?」

「え……えぇっ!?」

「ゾ、ゾンビぃ!?」

 

 突如、背後から何者かの声が聞こえたかと思うと。並べられた遺体袋の一つが、内側から(・・・・)拳で破かれてしまったのである。

 死人が蘇ったとでもいうのか。その光景に振り返った3人が仰天すると同時に、遺体袋を破った1人の男が身を起こすのだった。

 

「……済まん、皆。俺はまだ、くたばるわけには行かないらしい」

 

 周囲の遺体袋に神妙な眼差しを向けながら、ゆっくりと立ち上がった彼の名は――椎名雄介(しいなゆうすけ)。4年前、アキレスに次ぐ「第3の新人ウルトラマン」として戦っていた過去を持つ男だ。

 現在は「後輩」となるウルトラマン達を支えるため、BURKの専任分析官を務めているのだが。彼はこの戦いによる基地の崩落に巻き込まれ、死亡したはず。「人間」であれば、蘇ることなどありえない。

 

「俺にはウルトラマンとして、やらねばならないことがある。……そういうことなのだな」

 

 「ザイナスキー」と呼ばれる、銀色の鍵を模したペンダント。彼の「変身アイテム」であるそれが、首に下げられていたこと。

 そして、「イカロスの太陽」による人工のウルトラサインが、「自分達」に助けを求めていること。その二つが、答えであった。

 

 専任分析官という役割では、先輩(カイナ)の窮地を救うことは出来ない。再び己自身がウルトラマンにならねば、この地球を守り抜くことは出来ないのだと。

 

「し、椎名さん……どうして……!?」

「ご無事、だったのですか……!?」

「お前達こそ、よくあの崩壊から生き延びたな。『生還こそ勝利』という俺の教えも、無駄ではなかったらしい」

 

 崩落の際に自分達を突き飛ばし、身代わりとなって瓦礫に潰されていたはずの雄介が。生前と変わりない姿で、蘇っている。

 その奇跡を目の当たりにした匡彦と悠兎が驚愕する中、雄介は生存者達を生き埋めにしている巨大な瓦礫を仰いでいた。

 

「江渡、真壁、それに小森巡査……生存者の捜索、ご苦労だった。瓦礫の排除なら、この俺に任せておけ」

「ま、任せろと言われても、この大きさじゃあ……!」

「……ザイン・イグニッション!」

 

 やがて、ユウタロウの言葉を遮るように叫びながら。雄介はその胸にザイナスキーを突き刺し、ウルトラマンの力を「解錠」する。

 眩い輝きが「鍵」を中心に広がって行き、掌を掲げる真紅の巨人が「ぐんぐん」と顕現したのは、その直後であった。

 

「な、なんだと……ま、まさか!?」

「椎名さんが……!」

「ウルトラマンッ……!?」

 

 目を覆うような光が収まり、3人の視界が戻った時には。すでに彼らの眼前には、かつて地球を救った「第3のウルトラマン」が出現していたのである。

 その巨躯を仰ぐ匡彦達は、自分達の理解を超えた光景に言葉を失うばかりであった。

 

 ――アイスラッガーのような突起物。曲線的な「凹み」がある頭部、胸部から肩まで伸びている、金と銀のプロテクター。全身を走る直線的な銀線と、その両端部の銀円によって彩られた、電子回路のような模様。

 どこか「メカニカル」な印象を与えている、レッド族のウルトラ戦士。それはまさしく、4年前にこの地球を救った第3の勇者――「ウルトラマンザイン」の姿であった。

 

『ジュアッ!』

「うわっ!?」

 

 ウルトラマンの力なら、瓦礫を退かすことなど容易い。ザインは変身を終えてすぐに、瓦礫を持ち上げ無人の方向へと放り投げてしまう。

 

「す、すごい……あの大きさの瓦礫が一瞬で!」

「……2人とも、今だ! ウルトラマンザインが……椎名さんが瓦礫を退かしてくれた、今のうちに!」

「りょ、了解ッ!」

 

 その下には、瓦礫の山から解放された多数の生存者達の姿があった。それを目にした匡彦達は我に帰ると、弾かれたように救助へと動き出していく。

 

『よし……ここから先は任せたぞ、お前達。……俺も、俺の責務を果たしに行く。ジュアァッ!』

 

 そんな彼らの姿に深く頷いていたザインは、やがて両手を広げて地を蹴り、「先輩」が待つ上空へと飛び去って行った。

 

「椎名さん……今度こそ、生きて帰ってきてください。『生還こそ勝利』、なのでしょう……!?」

 

 マッハ4という速さで姿を消してしまった彼の背を見送る匡彦達は、生存者達に肩を貸しながら――その拳を震わせている。

 生還こそ勝利。その理論は、人智を超えたウルトラマンにも適用されるべきなのだと。

 




 今話は魚介(改)先生原案のウルトラマンザインの登場回となりました。他の方々が考案されていたキャラ案も、瓦礫から生存者達を救助するという大事なポジションに就いております(о´∀`о)
 本採用枠は残り3人。次回もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 にせウルトラセブンとか超好き。メカっていいよね(*´ω`*)


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特別編 ウルトラカイナファイト part5

◇今話の登場ウルトラマン

覇道尊(はどうたける)/ウルトラマンエナジー
 3年前、怪獣や異星人の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。アイスラッガーに近しい形状の突起物を持つレッド族のウルトラ戦士であり、必殺技は斜め上に伸ばした右腕の肘に左腕の指を当てて発射するエナジウム光線。現在の尊は身辺警護課の警備員であり、年齢は20歳。
 ※原案はたつのこブラスター先生。



「おぉーい、この子を頼む! 意識が戻らないんだ!」

「輸血の用意は!?」

「痛え……ちくしょう、痛えよぉ!」

 

 椎名雄介がウルトラマンザインと再び一体化し、遺体袋を突き破って復活した頃。逃げ遅れた人々を保護している総合病院は、さながら野戦病院のような惨状となっていた。

 医師も、看護師も、休む暇すらなく次々と運び込まれて来る急患達の対応に追われている。

 

「……」

 

 その喧騒を背に、力無くベッドに横たわる「部下達」を静かに見下ろしている青年がいた。表情に悔しさの色を滲ませている彼――覇道尊(はどうたける)は、無言のまま拳を震わせている。

 

あの時(・・・)……奴はすでに、動き出していたのか)

 

 テンペラー軍団の襲撃開始から、約1時間前。とある世界的な大企業の令嬢が、妖しげな老紳士に奇襲されるという事件が起きていた。

 その老紳士が仕込み杖に隠していた剣によって、令嬢のボディガードを任されていた身辺警護課の警備員達は、瞬く間に斬り伏せられてしまったのである。

 

 唯一、老紳士の剣技と互角に渡り合うことが出来た尊は、仕込み杖を叩き折り後一歩というところまで彼を追い詰めたのだが。

 

『流石は世界最優のボディガードと謳われる、覇道尊と言ったところか。それとも、「ウルトラマンエナジー」と呼ぶべきかな?』

『なッ……!?』

 

 老紳士が放ったその一言に虚を突かれ、取り逃してしまったのである。結果として令嬢を守り抜くことには成功したものの、重傷を負わされた部下達の仇を討つことは叶わなかったのだ。

 3年前、ウルトラマンとして地球を救った自分の「過去」を知っていた謎の老紳士。その声色は、今まさに東京を蹂躙しているテンペラー星人の声と、完全に一致している。

 

(済まない……お嬢、皆……! ボディガードであるはずのこの俺自身が、襲撃の元凶になってしまうとは……!)

 

 テンペラー星人は尊の実力を測るためだけに、老紳士の姿に擬態し。令嬢を襲い、部下達を傷付けていたのだ。

 今になってようやくそれを理解した尊は、自分のせいで部下達が斬られたのだと、自責の念に囚われているのである。その腰に提げられた剣状の変身アイテム――「ウルトラエナジーソード」は、自分自身への怒りが伝播しているかのように紅く輝いていた。

 

「うぅ……あぁあ……! 助けて、痛い、痛いっ……!」

「ママ、ねぇママ、起きてよ! 目を開けてよぉっ!」

「お父さん、お母さんっ! しっかり、しっかりして! 諦めちゃダメぇっ!」

 

 背後から聞こえて来る、患者達の呻き声。子供の泣き声。家族の危篤に狼狽する声。それらは全て、テンペラー軍団の破壊活動による被害者達の「嘆き」であった。

 

(俺のせいだ……! 俺があの時、奴を仕留めていればこんなことにはッ……!)

 

 老紳士に扮していた時のテンペラー星人を、あの時に倒せていたら。そんな思いが過ぎる度に、尊はその頬に雫を伝わせ、血が滲むほどに拳を握り締めていた。

 

「覇道さん、誰を責めても仕方がないことはあります。自分独りで背負い込むのは、もうやめにしましょう」

三蔓義(みつるぎ)先生……」

 

 その時。わなわなと震えていた尊の手に、部下達の主治医――三蔓義命(みつるぎみこと)の手が重なる。

 

「幸い、この方々も命に別状はありません。僕達も彼らに負けないように、今出来る最善を尽くしましょう。……助かった人には、助かった人にしか出来ないことがあるはずです」

「……!」

 

 鞘を握る手の震えを鎮め、嗜めるように語り掛ける命の言葉に、尊はハッと顔を上げる。眼前の鏡には、自分自身の悲痛な貌が映り込んでいた。

 

『その顔はなんだその眼はなんだ、その涙はなんだ!? お前の涙で、この地球が救えるのか! 牙無き地球の人々は、それでも必死に生きているというのに! 牙を持ちながら挫ける自分を、恥ずかしいとは思わんかァッ!?』

 

 3年前、ウルトラマンとして怪獣や異星人達と戦い続けていた頃。尊は何度も侵略者達に敗れ、何度も挫けそうになっていた。

 

(レグルス師匠……)

 

 そんな自分を、苛烈なまでに厳しく指導していた師匠――「ウルトラマンレグルス」の言葉が、脳裏を過ぎる。今の自分の貌は、その言葉をぶつけられた時のような酷いものであったということに、尊はようやく気付いたのだ。

 消えかけていたその眼の炎が、かつての勢いを取り戻していく。側で彼の「変心」を見守っていた命も、その心境を察しているようだった。

 

「……三蔓義先生、ありがとうございます。今、ようやく思い出せました。俺が何者なのか。そして今、何が出来るのかを」

「そうですか……それは良かった。さぁ、ここは僕に任せてください。あなたは、あなたに出来ることを……お願いします」

「はい……!」

 

 昏睡状態にある部下達を一瞥して。尊は命に一礼すると、涙を拭い病室を後にする。闘志に満ちたその背中を、命は静かに見送っていた。

 

 やがて病院の外へと飛び出した尊は、街の惨状に唇を噛み締め、ウルトラエナジーソードの鞘を握り締める。すでに上空では、「イカロスの太陽」により発せられた人工のウルトラサインが煌々と輝いていた。

 

「これ以上、お前達の思い通りにはさせんッ! ウルトラマンッ……エナジィィィイッ!」

 

 そして、地球を救うウルトラ戦士としての使命を完遂するべく。勢いよく鞘から抜刀した彼は、絶叫と共にその切っ先を天高く掲げるのだった。

 

 刹那、尊の全身を眩い輝きが飲み込んで行き――剣を中心に広がっていく閃光が、ウルトラセブンを彷彿とさせる「真紅の巨人」を形成する。

 それから間もなく。アイスラッガーのような突起物を備えたレッド族のウルトラマンが、拳を突き上げ「ぐんぐん」と出現した。

 ウルトラマンカイナ、ウルトラアキレス、ウルトラマンザイン。その後に続いて地球に現れた、第4の新人ウルトラ戦士――「ウルトラマンエナジー」が、3年振りの復活を果たしたのだ。

 

『アキレス兄さんとザイン兄さんも動いているはずだ……急がねば! デァアーッ!』

 

 マッハ5の速さで地を蹴り、両手を突き出し大空へ飛び立つウルトラマンエナジー。その勇姿を病室の窓辺から見届けていた命は、優しげに口元を緩めている。

 

「……何度倒れても挫けても、その度に立ち上がってきた君になら出来るはずだ。()も信じているよ、ウルトラマンエナジー」

 

 ――かつては別の次元(・・・・)の地球を救ったこともある、歴戦の猛者「ウルトラマンドクテラ」は。「三蔓義命」の名を借りて、若きウルトラマン達の勝利を祈るのだった。

 




 今回はたつのこブラスター先生が考案された、ウルトラマンエナジーの登場回となりました。他の方々が考案されたウルトラマン案も、彼を導く師匠的なポジションを確立しておりますぞ(о´∀`о)
 此度の募集企画は作者の予想を大きく上回る数の応募キャラが集まりましたからねー……。「枠さえ足りていれば……!」と思わずにはいられないキャラばかりだったのですよ。とはいえ、やはり仮面ライダーといえば「栄光の7人」、ウルトラマンなら「6兄弟」だと思っちゃう作者ですから、そこのこだわりだけは外せなかったのです(ノД`)
 そんな中で選び抜いた本採用枠も、残り2人。次回もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 エナジーとレグルスは公開ギリギリまで役割が入れ替わる可能性がかなりありました。それくらい難しい選択でしたねー。逆だったかも知れねェ……→←


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特別編 ウルトラカイナファイト part6

◇今話の登場ウルトラマン

八月朔日要(ほずみかなめ)/ウルトラマンアーク
 2年前、怪獣や異星人の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。頭部にある二つのウルトラホールと、体の模様にある青い差し色が特徴のシルバー族のウルトラ戦士であり、必殺技は腕をL字に組んで放つメタリウムアークシュート。現在の要は大学生であり、年齢は18歳。
 ※原案はmikagami先生。



「ちょっと、なんでシャトルバスが動いてないんですか! 運転手まで逃げてるとかマジありえないんですけど!?」

「もしもしお姉ちゃん!? 早く迎えに来てよぉ、電車もバスも全然動いてないし……ウソ!? 渋滞!?」

 

 テンペラー軍団の襲来によって、東京が大混乱に陥る中。都内の大学生達も、慌ただしくキャンパスから避難しようとしていた。

 講義が中断されたことに喜んでいる暇などない。次の瞬間には怪獣の攻撃が飛んで来るかも知れない、という焦燥感に追い立てられ、誰もが必死にキャンパスの外へと飛び出して行く。

 

「皆、落ち着いて! 実は俺、こう見えてバス免許持ってんだわ! とにかく乗れるだけ乗ってくれっ!」

「おぉっ、さすが佐渡(さわたり)パイセン! 頼りになるぜぇっ!」

「あれ? ミスコンの菜緒(なお)ちゃんはどこ行ったんだ!?」

「知るかバカ! そんなことよりさっさと乗れよ!」

 

 彼らの暴走を阻止したのは、とある1人の大学4年生だった。バス免許を持っているという佐渡光(さわたりひかる)の声掛けに反応し、大勢の学生達が通学用のシャトルバスへと群がって行く。

 

「ねぇ……ほんとに行くの? 今回の相手ってさ、結構ヤバい……よね?」

兄さん(・・・)達は必ず行くだろうからな。俺が行かないってのは……ダメだろ、多分」

 

 その混乱の渦中からやや離れたところにある、学生用の駐輪場には。1台のレーサーバイクに跨る青年と、そんな彼の傍らに寄り添う1人の女子大生が居た。

 入学から間もない新1年生でありながら、Fカップの圧倒的プロポーションとその美貌を以て、今年のミス・コンテストのグランプリに輝いた猫島菜緒(ねこしまなお)。そんな彼女が心配げに見つめている同級生の青年こと、八月朔日要(ほずみかなめ)にはとある「秘密」があった。

 

「……あ〜あ。ウルトラマン様はこんなところにか弱い女の子を置いて、さっさと1人で戦いに行っちゃうわけですかぁ。ミスコン優勝者でもほったらかしにしちゃうわけですかぁ。寂しいなぁ〜心細いなぁ〜」

「菜緒、お前なぁ……」

「ふふっ、冗談冗談。怒んないでよぉ。……ちゃ〜んと分かってるから。要君が一生懸命、皆を守ってくれてたってことくらい」

 

 要は2年前、ウルトラマンエナジーの「後任」として地球に現れた、第5の新人ウルトラマンとして戦っていたのだ。

 その頃から、この重大な「秘密」を共有してきた菜緒は。自分だけが正体を知っている、自分だけのヒーローである要を、密かに想い続けているのだが。未だに、その胸中を素直に明かしたことはないのである。

 

「……分かってるよ。私は、ちゃんと」

 

 先ほど上空に現れた、「イカロスの太陽」による人工のウルトラサイン。それを目にした要の様子を見れば、おおよその状況は察しがつく。彼は再び、ウルトラマンとして立ち上がらねばならなくなったのだろう。

 もはや、ウルトラマンの力だけが頼りなのだ。その背を押して戦いに行くよう促すのは、当然のこと。それは、頭では分かっている。

 

「ほんと……やだなぁ」

 

 それでも本心では。そんな使命になど背を向けて、自分と一緒にここから逃げて欲しかった。ウルトラマンという過酷な道になど、戻って欲しくはなかった。昨日までの穏やかな日々のように、ただの大学生のままでいて欲しかった。

 地球の未来などより、自分と過ごす1秒を優先して欲しかったのだ。要がどれほど苦しい思いを抱えながら、1年間も戦い続けていたのかを、知っているが故に。

 

「菜緒……?」

「……ん〜ん、何でもない。ホラ、早く行かないと怪獣が来ちゃうよ! 皆を守るんでしょ?」

「……あぁ。守ってみせるさ、必ず。お前も早く佐渡先輩のバスで、少しでも遠くに逃げるんだ」

 

 だが、この本心を悟られてはならないのだ。自分の気持ちが、要の枷になってしまうことこそあってはならないのだから。

 菜緒はそんな葛藤を胸の奥にしまい込み、笑顔で要を送り出して行く。

 

 どこか寂しげな色を残した彼女の笑みに、思うところを抱えながらも。要は促されるままに、バイクのエンジンを起動させるのだった。

 

「もし負けちゃったりしたら要君の正体、今度の動画で配信しちゃうからねっ! 私のパルクール動画、ますますバズっちゃうかなぁ〜?」

「負けられない理由を余計に増やすんじゃねーよっ!」

 

 菜緒は光が運転するシャトルバスに向かって走りながら、軽やかに振り返ると。懸命に手を振りながら、自分なりの激励の言葉を送る。

 その洒落にならない内容に怒号を上げながらも、要は苦笑を浮かべてバイクを発進させて行くのだった。光のバスと別れるように。菜緒の視線を、振り切るように。

 

「……絶対、ちゃんと帰って来てよね。ガチの告白、まだなんだから」

 

 そして。遠くへと走り去って行く要のバイクを、寂しげに見送りながら。菜緒は独り豊かな胸に手を当て、「再会」が叶う未来を祈るのだった。

 

「……来たなッ!」

 

 それから、僅か数分後。要を乗せたバイクが無人の街道に辿り着いた瞬間、その頭上に無数の瓦礫が降り注いで来た。

 ウルトラマンカイナとテンペラー軍団の激突による「余波」は、この地点にまで及んでいるのだ。要は左右にハンドルを切り、スピードを落とすことなく紙一重で瓦礫をかわしていく。

 

「ぐッ!」

 

 それでも「変身前」の身体能力が人間と同じである以上、全てを回避することまでは叶わない。墜落の際に弾け飛んだ瓦礫の破片が、要の頭部に命中してしまう。

 

「まだ……だァッ!」

 

 だが、吹き飛んだのは彼が被っていたヘルメットだけであり。切れた額から血を流しながらも、要は全く怯むことなくエンジンを全開にしていた。

 露わになった彼の鋭い素顔は、すでに「歴戦の勇士」の色を帯びている。正面から廃車が転がって来ても、要は躊躇うことなくそのまま直進し――車体に乗り上げ、空高くジャンプしていた。

 

「菜緒がいる世界を……この地球を、壊させるわけには行かないッ!」

 

 そして着地と同時に、廃車を飲み込んだ爆炎を背にしつつ。瓦礫の雨を掻い潜るバイクが、最高速度に達した瞬間。

 ハンドルから手を離した要はそのまま立ち上がると、勢いよくライダースジャケットの胸元を開く。そこには、彼がウルトラマンとして蘇ったことを示す「証」があった。

 

 カラータイマーの輝きを彷彿させる、五角形の宝石のペンダント――「アーククリスタル」。

 首に下げられていたそれを引きちぎり、天高く翳した瞬間。要の「変身」が、始まるのだ。

 

「――アァークゥッ!」

 

 その絶叫に呼応したアーククリスタルから広がる閃光が、彼の全身を包み込み。やがて眩い輝きの中から「ぐんぐん」と、銀色の巨人が拳を翳して飛び出して行く。

 無人となったバイクが力無く横転した瞬間、その巨人の全貌が露わとなった。

 

 頭部のトサカに備わる、二つのウルトラホール。額に輝くウルトラスター。ウルトラマンリブットに近しい、複雑なラインを描いた模様と、青の差し色。アーククリスタルと同じ、五角形のカラータイマー。

 その勇姿はまさしく、この次元における5人目の新人ウルトラマン――「ウルトラマンアーク」のものであった。カイナ以来となるシルバー族の戦士が、2年の沈黙を破ってついに降臨したのである。

 

『やはり、兄さん達も動き出している……! 俺も行きます! テェェイッ!』

 

 両手を揃えて地を蹴り、マッハ3.5の速度で飛び上がったアークは。その音速を以て、「先輩達」の元へと急行する。

 守りたいと願った女性がいる、この地球に真の平和を取り戻すために。

 

「……君の大切な人は、必ず()が守り抜いて見せる。思いっきり戦ってくれ、ウルトラマンアーク」

 

 そして、菜緒を含む学生達を乗せたシャトルバスが、東京を脱出した頃。その運転手を務めていた光は、バックミラーに写し出されたアークの後ろ姿に微笑を浮かべていた。

 ウルトラマンドクテラと共に、別次元の宇宙からやって来ていた「ウルトラマンフィスト」は今――佐渡光と名乗り、アークの復活を見届けている。その背中に、「かつての己」を重ねながら。

 




 今回はmikagami先生が考案された、ウルトラマンアークの登場回となりました。他の方々が考案されたキャラ案も、ヒロイン枠だったり避難のための運転手枠だったりと、大事な役どころを担っておりますぞ。大変申し訳ないことに、今回は特に「改変」が顕著でしたなぁ。上手く原案通りに転がして行くための引き出しが足りぬ……足りぬぞ(ノД`)
 さてさて、本採用枠もとうとう残り1人。次回もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 バイクの手放し運転とか絶対危ないからダメ絶対。あれはヒーローにしか許されない行為ですから!( ゚д゚)


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特別編 ウルトラカイナファイト part7

◇今話の登場ウルトラマン

荒石磨貴(あらいしみがき)/ウルトラマンジェム
 1年前、怪獣や異星人の脅威から地球を救った若きウルトラマンと、その依代になった人物。岩のような甲殻と茶色の差し色を持つシルバー族のウルトラ戦士であり、必殺技は両腕を開いた後、腕を十字に組んで放つジェムナイト光線。現在の磨貴は高校生であり、年齢は17歳。
 ※原案はラノベ野郎先生。



「やべぇ、ガチでやべぇじゃん! もう怪獣、すぐそこまで来てるって!」

「早く逃げないと、どんな攻撃で殺されるが分かったもんじゃねーよ!」

「おいお前ら、迂闊に動き回るなって言ってるだろうが! 早く体育館に――!」

「体育館に逃げ込めば何だって言うんすか! 死んだらオシマイなんすよ、先生ッ!」

 

 要達が通っていた大学と同様に、都内の高校もテンペラー軍団の襲来に騒然となっていた。授業どころではなくなった校内はパニックに陥り、生徒達は体育館に避難させようとする教師陣の呼び掛けにも耳を貸さず、我先にと学校から逃げ出している。

 

「お前ら落ち着け! 先生の言う通り、体育館に逃げるんだよ! 危ないのは怪獣だけじゃないんだ、外に出たらガラス片や石飛礫だって飛んで来るんだぞ!」

「そうだ! 下手に飛び出す方が危険なんだぞ、慌てるなお前らッ!」

 

 だが、その非常時の只中であっても冷静さを失わず、教師と協力して学内への避難を呼び掛けている生徒もいた。相撲部のエース、大力力也(おおりきりきや)と――宝石店の息子にして、元不良(・・・)でもある荒石磨貴(あらいしみがき)だ。

 

「お、大力、荒石まで……」

「でっ、でもよぉ……」

「でももクソもあるかッ! お前らが死んで悲しむのは、親やセンコーだけじゃねぇーんだぞッ!」

 

 かつては校内きっての「札付き」だった彼ら2人は、今や生徒達だけでなく、教師陣からも一目置かれる「優等生」となっていた。そんな2人の言葉に、外へ飛び出そうとしていた生徒達にも「迷い」が生まれ始めている。

 

「磨貴、ここは俺がどうにか収めるから……お前は早く、『兄貴達』のところに行ってやれ!」

「力也……!」

「もう分かってるはずだろ? お前にしか出来ない、お前のやるべきことはよ!」

「……っ」

 

 ふと、力也が投げかけて来たその言葉に、磨貴は拳を静かに震わせていた。この校内で、力也だけは知っているのだ。

 

 荒石磨貴は1年前、第6の新人ウルトラマンとして地球を救った、知られざるヒーローだったのだということを。

 ウルトラマンとしての責任に苦しみながらも、持ち前の情の厚さを頼りに、1年間もの地球防衛をやり抜いたのだということを。

 

 力也自身も、そんな彼の戦いを親友として支え続けていたからこそ。不良という立場から磨貴と共に脱却し、優等生と見られるほどにまで成長出来たのである。

 ウルトラマンという「正義のヒーロー」としての役割を、命懸けで完遂した経験が。磨貴を更生させ、力也を正しく導いていたのだ。

 

 そして今、テンペラー軍団の襲来によって地球は最大の危機を迎えている。そんな中で力也に出来ることと言えば、混乱している生徒達を説得することくらいだ。

 しかし、磨貴は違う。空に輝く人工のウルトラサイン――「イカロスの太陽」による産物を目にした磨貴には、それ以上の「大役」があるのだ。再びウルトラマンとして立ち上がり、この地球を救うという「大役」が。

 

「あの意味わかんねー象形文字みたいなヤツが……SOSのサインなんだろ。お前の助けを、ウルトラマンカイナが必要としてるんだろ!? だったら迷うな! 行けよ、磨貴ッ!」

「……分かった! ここは頼むぜ、力也ッ!」

 

 ウルトラマンとしての自分を見てきた、力也の思いを汲み。磨貴は意を決してこの場を離れると、校舎の屋上を目指して全速力で駆け上がって行く。

 不良時代の溜まり場だった、人気のない屋上。もう2度と来ることはないと思っていたその場所こそが、「絶好のスポット」なのだ。

 

「……リッパー師匠、ルプス師匠。こんな札付きの俺ですが……この戦いだけは、是が非でも勝って見せます。だから見ていてください、光の国から!」

 

 1年前。ウルトラマンとしてはあまりに未熟だった磨貴を、徹底的に鍛え上げた2人の師匠――ウルトラマンリッパーと、ウルトラマンルプス。

 手の掛かる不出来な弟子なりに、その2人への勝利を捧げるべく。彼は変身アイテムである指輪「コネクトリング」を、左手の中指に嵌めると。その台座に変身の鍵となる宝石「リリースジェム」を装填し、左の拳を勢いよく天に突き上げるのだった。

 

「――ジェムゥゥウッ!」

 

 リリースジェムを台座に差し込まれた、コネクトリング。その指輪を中心に広がって行く巨大な光が、磨貴を飲み込み――銀色の巨人と化して行く。

 固く握られた拳を突き上げ、「ぐんぐん」と現れたその巨人が、学校の前に着地したのは、それから間もなくのことであった。

 

 筋骨逞しいボディライン。肩や足を保護している、岩のような甲殻。初代ウルトラマンを想起させる模様に、茶色の差し色。両手の甲に埋め込まれた、四角の宝石。

 質実剛健。その言葉が相応しい、堅牢なるシルバー族のウルトラ戦士。それが、カイナを筆頭とする「新人ウルトラマン」最後の1人――「ウルトラマンジェム」なのだ。

 

「おい、見ろよ……! あれ、ジェムじゃないか!? ウルトラマンジェム!」

「本当だ……ウルトラマンジェムだ! ちょっ、写真写真! これ絶対バズるって!」

「お前らそんな場合かッ!? さっさと避難しろって言ってんだろがッ!」

 

 1年前、ジェムは何度もこの学校を怪獣達の脅威から救ってきたのだ。そんなウルトラマンとの思いがけない「再会」に、生徒達は避難すら忘れて歓声を上げている。

 中には、SNSで拡散しようと写真を撮り始める者までいた。そんな彼らを嗜めながら、力也はジェムの巨躯を仰ぎ、深く頷いている。

 

(行ってこい! あの怪獣共に、正義の突っ張りかましてやれ!)

(おう……! 任せときな!)

 

 言葉を交わすまでもない。ジェムと力也は無言のまま頷き合い、それぞれの「最善」を尽くすべく動き始めて行く。

 力也は、生徒達の避難誘導。磨貴ことジェムは、テンペラー軍団の打倒。それぞれの「責務」を、果たすために。

 

『この気配は……アーク兄さんだな! いや、あの人だけじゃない! エナジー兄さんにザイン兄さん……アキレス兄さんも動いてるのか!? ちくしょう、すっかり出遅れちまったぜ! 全力で飛ばすかッ……タアァーッ!』

 

 年功序列という意味では自分が最も「下」だというのに、「先輩達」よりも変身が遅れていた。その点が気になって仕方がないのか、ジェムは焦った様子で地を蹴り、両手を広げて飛び上がって行く。

 全身に装着されている甲殻の重さもあり、マッハ1までしか出せないジェムは、それでも全速力で「先輩達」の元へと飛び去って行くのだった。

 

「……勝てよ、絶対。ウルトラマンジェム!」

 

 そんな親友の旅立ちを見送り、力也は唇を強く噛み締める。必ず生きて、帰って来い。そう、強く祈りながら。

 




 今回はラノベ野郎先生が考案された、ウルトラマンジェムの登場回となりました。他の方々が考案されたキャラ案も、師匠枠だったり親友枠だったりと、彼を支える重要な役どころに就いておりますぞ(о´∀`о)
 ジェムの登場を以て、ついに本採用枠のウルトラマン5人が全て揃いました。いよいよこれから、テンペラー軍団との対決へと移行していきます。次回もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 仮面ライダーは時代もあってか「先輩後輩」という感じではなくなってきてるのですが、ウルトラマンの方は割と今でもゴリゴリの縦社会ですからねー……(ノД`)


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特別編 ウルトラカイナファイト part8

 ――かくして。

 

 ウルトラアキレス。

 ウルトラマンザイン。

 ウルトラマンエナジー。

 ウルトラマンアーク。

 そして、ウルトラマンジェム。

 

 カイナの窮地に立ち上がった5人の後輩ウルトラマン達は、こうしてこの場に合流して来たのである。

 満身創痍のカイナを庇うように立ち並ぶ彼らは、それぞれの胸中に負けられない理由を秘めているのだ。多くを語らずとも、闘志に満ちた彼らの背中が、それを雄弁に物語っている。

 

『お前達……今のサインがどういうものなのか、分からないわけじゃないだろう……!? 「イカロスの太陽」のことを知った上でのことなのか!?』

『当然でしょう、カイナ兄さん。この中に、身内(・・)がいることをお忘れですかな?』

『ザイン……!』

 

 カイナの問い掛けに応じるザインは、BURKの専任分析官としての観点から、今回の参戦を「当然」と言い切って見せた。他のウルトラマン達も顔を見合わせ、深く頷いている。

 

『あれがどういうものであろうと、使ったのが弘原海隊長ならば……信じるしかないでしょう? 俺達は皆、彼の支えがあったから1年間も戦って来られたのです』

『ザイン兄さんとアキレス兄さんの仰る通りです。あの信号の真偽など、俺達には関係ありません。現に奴らの攻撃で、あなたが窮地に陥っている。これ以外に駆けつける理由が必要ですか?』

『アキレス、エナジー……』

 

 疲弊のあまり、片膝を着いていたカイナに肩を貸しながら。アキレスとエナジーも、ザインと同様の姿勢を見せている。

 

『そうですよ、水臭いこと言わないでください! 俺達だって、伊達に今日まで地球を守ってきたわけじゃあないんです!』

『エナジー兄さんやジェムの言う通りですよ。……俺達の出動に理由が必要なのでしたら、それはあのサインだけで十分なんです』

『ジェム、アーク……ふふっ、確かにそうかもな。済まない、愚問だったよ』

 

 この中では特に若手である、ジェムとアークも反応は同じであった。怪獣や異星人の脅威とあらば、どこにいようと必ず駆け付ける。それが、ウルトラ戦士の基本原則なのだから。

 

『……ふん、若造5人が集まったところで何が出来る。ならばその手並み、篤と拝見させて貰うとしようか……「各々の舞台」でな』

『なに……!?』

 

 一方、そんな彼らの様子を冷酷な眼差しで見つめていたテンペラー星人は。片腕を勢いよく振り上げ、「絶世哮」に続く新たな技を繰り出していた。

 彼が従えている5体の怪獣が、突如この場から姿を消してしまったのである。その「気配」は一瞬にして、この場から遠く離れた地点へと「散開」していた。

 

『姿が消えた!? ……でも、気配は感じる!』

『まさか、テレポートか!』

『左様……奴らの転移先にいる人間共を見捨てて、全員で我と戦うか。カイナを置いて、分散するか。好きな方を選ぶが良い』

 

 テンペラー星人は自らが従える怪獣達を、遠く離れた別々の場所へと瞬間移動させてしまったのである。今頃は転移して来た怪獣達に、現地の人々が襲われている可能性が高い。

 

『テンペラー、貴様ッ……!』

『ふん、何を迷っている。貴様らにそのような余裕があるのか?』

『くッ……!』

 

 その暴虐を阻止するには、変身したばかりでエネルギーが充実しているアキレス達が各所に飛び、怪獣達を制圧して行くしかない。だが、それはすでに消耗しきっているカイナを、この場に残して行くことを意味している。

 今の彼1人で、テンペラー軍団最強の首魁を相手に持ち堪えられるかどうかは、「賭け」であった。

 

『……怪獣達が転移した先には、抵抗する術もない人達がいるんだ。皆、行ってくれ! 奴はオレが、なんとか食い止めて見せるッ!』

『だけどカイナ兄さん、その状態のあなたを1人にしておくわけには……!』

『いや……ここはカイナ兄さんを信じよう。俺達は直ちに各地に飛び、怪獣達の対処に当たるべきだ』

『アキレス兄さん、しかし!』

 

 カイナを置き去りにする判断に、乗り切れないアーク。その肩に手を置くアキレスは、周囲を見渡しながら今後の方針を定めようとしていた。

 今こうしている間にも「抵抗する術」がない人々は、突然転移して来た怪獣に、為す術もなく蹂躙されているのかも知れないのだと。

 

『アーク、お前ほどの男が何を狼狽えている。俺達が奴らを全員秒殺して、この場に戻って来れば済む話だ』

『それとも、その自信がないのか? 何なら、俺が「2体分」引き受けてやっても良いんだぞ』

『まさか……! じゃあやってやりますよ、やれば良いんでしょう!?』

『俺達だって、伊達に1年間も戦って来たわけじゃあないんです! やって見せらァッ!』

 

 アキレスと同じ見解を示すザインとエナジー。そんな先輩達の言葉に焚き付けられ、躊躇していたアークとジェムもようやく覚悟を決めるのだった。

 

『よぉし、2人共その意気だ。……カイナ兄さん、よろしいですね?』

『あぁ……済まない、アキレス。皆のこと、よろしく頼む』

『任せてください。……行くぞお前達ッ! ダァアッ!』

 

 後輩達の意見が纏まったことを確認したアキレスは、カイナと頷き合い――大空へと手を広げて飛び上がって行く。彼に続き後輩達も、矢継ぎ早に地を蹴って四方に飛び去って行くのだった。

 

『……了解。ジュアァッ!』

『デアァーッ!』

『テェーイッ!』

『タアァーッ!』

 

 散り散りに暴れ回っている怪獣達を仕留め、牙無き人々を守り抜くために。

 

『頼んだぞ……皆ッ! 生きて帰って来てくれッ!』

『……案ずる必要はないぞ、ウルトラマンカイナ。誰1人として、帰ってくることなどあり得んのだからなッ!』

 

 音速を超えて飛び出していく後輩達。その勇姿を見送った後、カイナは拳を構えて再びテンペラー星人と相対する。

 一方、両手の鋏を振り翳して妖しげに嗤う首魁は。自らが統べる軍団の勝利を確信し――再び、凶悪な破壊光線を放つのだった。

 

『貴様ら全員、我が軍団の前に滅びるが良いッ!』

 




 やっと6人のウルトラマンが勢揃い……かと思いきや、いきなり分散。次回からは各地に転移した怪獣達を追うアキレス達のバトル回が始まります。やっとお話が本筋に入って来たって感じですねーε-(´∀`; )
 次回からもどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 「怪獣達を秒殺? できらぁっ!」「こりゃあどうしても怪獣達を秒殺してもらおう」「え!? 怪獣達を秒殺!?」


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特別編 ウルトラカイナファイト part9

「きゃああぁあっ!」

「な、なんでこんなところに怪獣が!? 墨田区に集まってるって話じゃなかったのかよッ!」

「知るかよ! あの怪獣……気が付いたらもう居たんだッ!」

「ウルトラアキレス……早く、早くなんとかしてくれぇッ!」

 

 東京都大田区、羽田空港。その広大な飛行場に突如出現した宇宙恐竜ゼットンの姿に、居合わせた空港関係者や避難民達は阿鼻叫喚となっていた。

 テンペラー星人によるテレポートによって転移して来た、漆黒の怪獣。その異様な電子音と鳴き声は、外観以上の悍ましさを齎している。

 

『トロイレーザーッ!』

 

 飛行場に急行し、そのゼットンの相手を務めていたウルトラアキレスは、頭部のビームランプから細い光線を発射する。だが、ゼットンは避けようともせずに彼の光線をそのまま胸で受け止め、吸収してしまった。

 

『くッ!?』

 

 間髪入れず、ゼットンは吸収したトロイレーザーのエネルギーを利用し、両腕からの波状光線を発射する。真横に転がり辛うじて回避したアキレスは、即座に頭部の宇宙ブーメラン「アキレスラッガー」に両手を添えた。

 光線技が通用しないのならば、物理攻撃に切り替えるしかない。

 

『さすがはあの宇宙恐竜、と言ったところか……なら、これはどうだッ!』

 

 これまで、何体もの怪獣を切り裂いて来た必殺の刃。その一閃を以て決着を付けるべく、アキレスは渾身の力で宇宙ブーメランを投げ付ける。

 今までの相手なら、確実にこれで仕留めていた。だが、初代ウルトラマンすらも屠る宇宙恐竜の雷名は、伊達ではない。

 

『なにッ……!?』

 

 全身に展開されたバリヤーによって、アキレスラッガーはいとも容易く弾き返されてしまったのだ。何の成果も得られずに宇宙ブーメランが戻って来た瞬間、ゼットンの反撃が始まる。

 

『うおあぁあッ!』

 

 不気味な鳴き声と共に、顔面の発光器官から連射される――1兆度の火球。その猛雨に晒された飛行場は焼け野原と化し、直撃したアキレスは一瞬のうちに満身創痍となってしまう。

 連射が終わり、黒煙が晴れた頃には。彼の全身を守っていたプロテクターに、亀裂が入っていた。胸部のカラータイマーはすでに、危険信号を発している。

 

「ひ、ひぃいい……!」

「お、俺達、助かるのか……!?」

 

 ゼットンがターミナルを背にしていたおかげで、そこにいる避難民達は巻き込まれずに済んだのだが。もし射線にそこが含まれていたら、大勢の人間が施設ごと蒸し焼きにされていただろう。

 

『くッ……このまま、倒れるわけには……ぐぁッ!』

 

 傷付いた身体に鞭打ち、片膝立ちの姿勢からなんとか立ち上がろうとするアキレス。そんな彼を容赦なく殴り倒すゼットンは、とどめを刺そうと再び火球の発射体勢に入ろうとしていた。

 すると、その時。

 

『……!?』

 

 突如、海の彼方から無数の誘導ミサイルが飛び込んで来たのである。数え切れないほどの軌跡を描く弾頭の雨は、ゼットンの顔面に容赦なく直撃していた。

 やがて爆煙が晴れると同時に、ミサイル攻撃を実行した「戦闘機の大編隊」の機影が見えて来る。その機体の垂直尾翼には、BURKの4文字に加えて――星条旗が描かれていた。

 

『あれはBURKの……アメリカ支部か!?』

 

 これまで自国の防衛にのみ専念し、日本で起きていた戦闘にはほとんど介入して来なかった海外のBURKが、ついに駆け付けて来たのである。

 GUYSガンクルセイダーを想起させる、曲線的なボディ。そのシルエットはまさしく、世界各国のBURKで運用されている制式主力戦闘機「BURKクルセイダー」のものであった。

 

『よし、全弾命中ッ! あれが、初代ウルトラマンを倒したっていう宇宙恐竜ゼットンね……! 上等じゃない、BURKアメリカ支部の底力を証明するには丁度いい標的だわッ!』

『アメリア隊長、気をつけてください! あのウルトラアキレスでも、苦戦を強いられているようです……!』

『……だったらなおさら、私達が活躍するチャンスってことじゃない! 覚悟を決めなさい、エリー!』

 

 その機体を駆る女性パイロット達は皆、毅然とした面持ちでゼットンの巨体を見据えている。

 この怪獣達は、人類が持てる全ての力を賭けて倒さねばならない規模の相手なのだと、彼女達も理解していたのだ。もはや、国単位の「持ち場」に拘っている場合ではないのだと。

 

「お、おい見ろ……! あの怪獣、アメリカ支部のミサイル攻撃を喰らっても、ピンピンしてやがる!」

「だ……ダメだぁ。あいつ、不死身なんだぁ!」

 

 だが、物量と火力にものを言わせた総攻撃でも、BURKの――人類の通常兵器では、怪獣を完全に仕留め切ることは出来ない。相手がウルトラマンすら倒せてしまう宇宙恐竜となれば、なおさらだ。

 

『俺も……負けてられないなぁッ!』

 

 それでも、ほんの僅かな「隙」は生まれる。それこそが、アメリカ支部からアキレスに託された「勝機」であった。

 ゼットンが頭上を飛ぶ戦闘機隊に狙いを定め、火球を放とうとした瞬間。アキレスは左腕のブレスレットから、三又の槍――「ウルトライデント」を顕現させる。

 

『アキレスラッガーでも足りないのなら……これで、どうだあぁあッ!』

 

 戦闘機隊に注意を逸らされ、バリヤーの展開が疎かになっている隙に。アキレスはその槍を振りかぶり、一気に投げ付ける。

 三つの切っ先が胸部の吸収器官に突き刺さり、ゼットンが片膝を着いたのはその直後だった。光線技を吸収・反射するための部位が破壊された今なら、通用するはずだ。

 最大火力の、必殺光線が。

 

『イーリア……ショットォッ!』

 

 片腕を横に振りかぶった後、縦に突き出して発射するアキレス最大の必殺技――「イーリアショット」。その閃光が槍もろとも、ゼットンの胸を貫いた時。

 ウルトラアキレスの勝利が、確実なものとなるのだった。宇宙恐竜の最期を物語る爆炎が、その結末を祝している。

 

「勝った……! アキレスが勝ったんだ!」

「やったあぁあぁっ!」

 

 ターミナルから戦況を見守っていた人々から、爆発的な歓声が上がる。アメリカ支部の大編隊も、アキレスの勝利を讃えるようにその周囲を旋回し続けていた。

 

『さっすがウルトラアキレスねっ! あなたと一緒に戦えたこと……BURKアメリカ支部のパイロットとして、誇りに思うわっ!』

『ゼットンの沈黙を確認、こちらの被害はゼロです! 良かった、皆も無事で……!』

 

 その戦闘機隊の隊長である金髪の巨乳美女――アメリアは、コクピットの中から溌剌とした笑顔を咲かせ、親指を立てている。彼女を乗せた隊長機の傍らを飛んでいる、僚機のパイロット――エリー・ナカヤマも、安堵の息を漏らしていた。

 

『よし……そろそろ皆も、各地で決着を付けているはずだ。俺も急いで戻らねば! ダァアーッ!』

 

 だがアキレス達には、勝利の余韻に浸っている暇はないのだ。彼はすぐさま両腕を広げて飛び立つと、カイナが待つ墨田区の戦地へと引き返していく。

 他の仲間達も、今頃は怪獣達との決着を付けているのだと信じて。

 




 今話からいよいよ、テンペラー軍団の怪獣達とのバトル回が始まっていきます。まずはアキレス対ゼットンのバトルから(`・ω・´)
 ちなみに羽田空港は初代ウルトラマンと二代目バルタン星人が対決した場所でもあったりします。次回以降もこういう「お馴染み」な場所を選んで行きたいなーと思っておりますぞ(о´∀`о)
 劇場版ウルトラマンメビウスや平成ジェネレーションズのような、「歴戦ヒーローVS敵幹部」っぽいアツアツなシチュエーションを目指して行こうと思いますので、次回以降もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 1兆度の火球なんて出て来たら空港どころか地球が蒸発する? し、知らんな:(;゙゚'ω゚'):


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特別編 ウルトラカイナファイト part10

「東京が戦場になってるってニュースは何だったんだよ!? 神戸(ここ)にまで怪獣が出て来てるじゃねぇかっ! に、逃げろぉおおっ!」

(よう)ちゃん、ねぇ曜ちゃん! 早く逃げないと、踏み潰されちゃうよっ!」

「だって……だってあの船にはお父さんが、お父さんがぁっ!」

 

 兵庫県神戸市、神戸港。その近海に出現したエレキングの巨影に、神戸の人々は悲鳴を上げて逃げ惑っている。

 フェリーの船長を父に持つ少女は、親友に手を引かれながらも懸命にその場に留まろうとしているのだが――非情なるテンペラー軍団の怪獣には、人の心など通用しない。

 

「よ、曜……母さんを頼んだぞッ!」

 

 船長としての責任を果たすべく、全ての乗組員が退避するまで船内に残り続けていた少女の父は。今まさに、フェリーもろとも踏み潰されようとしている。

 

『ジュア……ァァッ!』

「ウ……ウルトラマンザインッ!?」

 

 それを間一髪阻止したのは――この場に駆け付けていた、ウルトラマンザインであった。驚愕する船長の頭上でエレキングと組み合ったザインは、激しい水飛沫と共に、怪獣の巨体を沖側へと投げ飛ばす。

 

『この船も街も……地球人達の科学と努力の結晶だ! その価値も分からんケダモノ如きが、気安く触れてくれるなッ!』

 

 そして起き上がる間も与えず、馬乗りになりながらチョップの連打を見舞うのだった。神戸で生まれ育った椎名雄介としての魂が、その手刀に怒りのパワーを乗せている。

 だが、いつまでも防御に徹しているエレキングではない。しなる大きな尾に背中を打たれ、ザインはすぐに転倒してしまった。

 

『ジュウ……アァッ!』

 

 そこから間髪入れず首に尾を巻き付けられ、締め上げられていく。その力はあまりに凄まじく、ザインは立つことすらままならず片膝を着いていた。

 額のビームランプはすでに、激しく点滅し始めている。エネルギーの限界が、近づきつつあるのだ。

 

「ザイン、負けないで! お願い、お父さんを助けてぇっ!」

「……!? ねぇ見て、あれっ!」

 

 すると。その戦局を中突堤から見守っていた少女の祈りと叫びが、届いたのか。

 突如、第3突堤の方向からキャタピラの轟音が鳴り響いたかと思うと――無数の戦車隊が群れを成して、突堤の端に雪崩れ込んで来たのである。

 

 その車体にはいずれもBURKの文字が刻まれているのだが、日本支部のBURK戦車隊はすでに壊滅している。そう、この戦車隊は日本支部のものではなく――救援に駆け付けてきた、ロシア支部のものなのだ。

 

『ロシア支部……! まさか彼らが動くとはな……!』

 

 意識が混濁していく中、思いがけない援軍の登場に気付いたザインは。エレキングが戦車隊の砲撃に怯んだ隙を突き、尾の拘束から脱出しようとする。

 だがエレキングは、そうはさせじと自らの尾に強烈な電流を流し、ザインの首から全身へと強烈なショックを与えるのだった。

 

 それはエレキングにとって、必殺の一撃だったのだろう。だが、ザインにとっては違っていた。

 

『……甘いな、エレキング。専任分析官たるこの俺が、何の算段もなしに貴様のところに来たと思うか?』

 

 電子回路のような身体の模様に電流が迸り、額のビームランプに眩い輝きが灯る。ザインはダメージを受けるどころか、むしろエレキングの電流によってさらにパワーアップしていた。

 電気属性の持ち主であるザインは、エレキングが電流を放って来るタイミングを伺い続けていたのである。この瞬間に訪れた、絶好の勝機を得るために。

 

『ジュアアァッ!』

 

 高まった力を全開にしたザインは、電気を放出したままの尾を掴み、再びエレキングの巨体を投げ飛ばしてしまう。そして矢継ぎ早に、頭部の宇宙ブーメラン「ザインスラッガー」を投げ付けるのだった。

 

 アキレスラッガーをも凌ぐその切れ味は、エレキングの身体を紙切れのように切り裂いて行く。首すらも容易く刎ね飛ばしてしまったのは、その直後であった。

 

『……さすがは、この長きに渡る戦乱の元凶。テンペラー軍団の一角、ということか』

 

 だが、まだ終わりではない。満身創痍のエレキングは首を斬り落とされたというのに、まだ両手を伸ばしてにじり寄っている。ここまで痛め付けられてもなお、ザインに襲い掛かろうとしているのだ。

 さながらゾンビのようなその姿は、死してもなお殺戮と闘争を望む彼らの獰猛さを、言外に物語っているかのようであった。

 

『お前は……どう生きても、今のようになるしかなかったのかも知れんな。ならばせめてもの手向けとして、お前に相応しい「最期」をくれてやる』

 

 その姿に、哀れみすら覚えるようになったザインは。完全なる「死」を以て「救済」とするべく、最大火力の必殺技を放つ決断を下すのだった。

 スペシウムエネルギーを充填させた両手の拳を前に出した彼は、手を開いて二つの光弾を出現させる。

 

『ザイナ――スフィアァアッ!』

 

 その光弾を一つに集約させ――ザインは。自らの力で顕現させられる限りの、「最強の光弾」を撃ち出すのだった。

 眩い電光を纏って翔ぶ、必殺の一撃。その球体は瞬く間にエレキングを貫き、内側からの大爆発を引き起こして行く。

 

「か、勝った……ザインが勝ったぁあ!」

「やったあぁあ! ザイン、ありがとおぉおおっ!」

 

 少女達をはじめとする神戸の人々から歓声が湧き上がったのは、その直後であった。

 天を衝くようなその爆炎を目の当たりにすれば、誰もが理解できるのだ。この戦いは、ウルトラマンザインの勝利に終わったのだと。

 

「……見事な一撃でした。さすがは4年前、我らの母なる大地を救った英雄……ウルトラマンザインですね」

 

 決着を見届けていた、戦車隊の隊長を務める金髪の美女――イヴァンナも。潮風にポニーテールを靡かせながら、背筋を伸ばしてザインに敬礼している。その真摯な面持ちには、彼女の生真面目な人柄が現れていた。

 だが、今のザインには市民達の歓声や、隊長の敬礼に応えている暇はない。1分1秒を争う事態である以上、この場に長居するわけには行かないのだ。

 

『……予測よりも手こずってしまったな。カイナ兄さん、今行きます! ジュウアァッ!』

 

 ザインは両手を広げて素早く大空へと飛び出し、力の限り加速しながら東京へと引き返して行く。

 自分達にとっての「長兄」を、テンペラー星人の猛攻から救うために。

 




 前回に続き、テンペラー軍団の怪獣達とのバトル回が始まっております。今回はザイン対エレキングのバトルですぞ(`・ω・´)
 今回の舞台となった神戸港は、ウルトラセブンとキングジョーが対決した場所でもありますね。ウルトラマンメビウスの劇場版でも神戸が舞台になりましたし、シリーズのファンにとってはもはや「お馴染み」なのかも知れませんな(о´∀`о)
 ウルトラマンと防衛チームが力を合わせて怪獣と戦う。この伝統的なお約束をしっかり押さえつつ、各ヒーローの持ち味を出せて行けたらなーって思います(*´ω`*)


Ps
 ヨーソローとか言いそうな女の子がモブの中にいたような気がしますが、たぶん気のせいです。戦車隊の隊長も露骨に誰かをモチーフにしてる気がしますが、それはミトメラレナイワァ(゚ω゚)


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特別編 ウルトラカイナファイト part11

 

「う、うぉああぁっ! か、怪獣や……! 黒くてでっかい怪獣やぁああ!」

「大阪城に何の恨みがあるっちゅうんや!? は、早よ逃げな巻き込まれてまうでぇっ!」

「ウルトラマンエナジー! 大阪城を守ってくれぇえ! あの城は、俺らの魂なんやっ!」

 

 大阪府大阪市、大阪城。その目前に転移して来たブラックキングは、自身を追って来たウルトラマンエナジーとの死闘を繰り広げていた。

 蜘蛛の子を散らすように大阪城から離れた市民達は、固唾を飲んで戦いの行方を見守っている。

 

『デアァッ、ダアァーッ!』

 

 この街の民にとっての象徴である城を破壊することで、自分達の威光を知らしめ屈服させる。

 そのためだけに、大阪城を破壊しようとする怪獣の腹に、エナジーは拳打の嵐を叩き込んで行くのだが。その堅牢な甲殻には、師匠(レグルス)直伝の宇宙拳法すらも通じていない。

 

 振り向きざまに振るわれた尾に打ち据えられたエナジーは、そのまま激しく転倒してしまう。咄嗟に防御したはずなのに、尾の衝撃はそれすらも貫通するほどの威力だったのだ。

 さらに、追撃とばかりに赤い熱線まで撃ち込まれてしまい。エナジーは為す術もなく、ダウンしてしまう。

 

『デェ、アァッ……!』

「あぁっ、エナジーでもやられてまうんか……!? どんだけ強いねん、あの怪獣っ!」

「他のウルトラマンは助けに来てくれへんのかっ!?」

 

 苦悶の声を漏らすエナジーの姿を前に、人々の間にも動揺が広がっている。ブラックキングが背後からその首に腕を回し、締め上げ始めたのはそれから間も無くのことであった。

 

『ダア、ァッ……!』

 

 その膂力は、これまでエナジーが戦って来たどの怪獣よりも凄まじく。首絞めから全く逃れられないまま、カラータイマーは「死」が迫っていることを報せるかのように、激しく点滅し始めていた。

 もはや、絶体絶命。この戦いを目撃している誰もが、エナジーの敗北を覚悟していた。だが、その時。

 

「み、見ろや皆! BURKの連中が来とるでぇっ!」

『……!?』

 

 遥か上空から、凄まじい勢いで急降下して来る爆撃機の編隊が現れたのである。

 その機体の垂直尾翼にはBURKの文字だけでなく、五星紅旗が描かれていた。壊滅状態に陥った日本支部に代わる形で、中国支部が救援に駆け付けて来たのである。

 

 ――ガッツウイングEX-Jを想起させるシルエットを持つ、4枚の後退可変翼を持った全長30mの荘厳な外観。それはまさしく、中国支部の現役大型爆撃機「BURK烈龍(リィエロン)」の機影であった。

 先頭を翔ぶその隊長機の後方には、ずんぐりとした深緑の量産型爆撃機「BURK炮龍」が追随している。全長38.5mにも及ぶ大型爆撃機が何機も随伴しているその光景は、中国支部の威光を象徴しているかのようであった。

 

『中国支部だと……!?』

 

 爆撃機の編隊が急上昇する寸前に放った、大量の爆弾は――1発たりとも外れることなく、その全弾がブラックキングの頭部へと叩き込まれていた。

 BURK炮龍の両翼部に搭載された4連装対空ミサイルランチャーの弾頭や、BURK烈龍の機首に装備された単装76mm速射砲の砲弾も間髪入れず撃ち込まれ、ブラックキングの視界を爆炎と硝煙で封じている。

 

『まだまだァッ! 私達中国支部の恐ろしさは、こんなもんじゃあないわよッ!』

神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)――全門斉射!』

 

 そして旋回した爆撃機隊が、下部爆弾倉に搭載された「神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)」を矢継ぎ早に撃ち出し、黒き怪獣の顔面へと炸裂させた瞬間――その象徴とも言うべき一角が、ついに破壊されてしまうのだった。

 

 自慢の角を、見下していた地球人の兵器にへし折られてしまった怪獣は、悲鳴を上げてエナジーの拘束を緩めてしまう。その一瞬が、「敗因」であった。

 

『……おい。いつまで俺の上にいるつもりだ?』

 

 僅かな隙を突いてブラックキングの拘束を外したエナジーは、背を向けたまま勢いよく後方に頭を振る。アイスラッガー状のトサカが、ブラックキングの喉首に突き刺さったのはその直後だった。

 

 アキレスラッガーやザインスラッガーとは違い、エナジーのその部位には取り外し機能がない。

 だが、外れる仕組みではないということは――その分だけ、刃物として頑丈という意味でもあるのだ。それこそ、ブラックキングの外殻さえ貫通できるほどに。

 

『何が「ブラックキング」だ、紛い物の僭王風情が。……貴様のような不逞の輩が、この城を壊そうなどとは片腹痛いッ!』

 

 のたうち回るブラックキングの首を掴まえたエナジーは、傷口目掛けて再び拳を叩き込んでいく。外殻ごと抉られた部位にさらなる衝撃を与えられ、漆黒の怪獣はたまらず横転してしまうのだった。

 死に瀕するほどのダメージを負っている今の状況でも、エナジーの眼は全く死んでいない。かつては師匠との「特訓」において、生身のまま何度もジープで撥ねられたこともある彼にとっては、「死」以外は「誤差の範囲」に過ぎないのである。

 

『貴様の外殻はスペシウム光線すら通さんと聞くが……これはどうかな?』

 

 そして、痛みに苦しむブラックキングが、ようやくその巨躯を起こした時には。すでにエナジーは、必殺光線の発射準備を完了させていた。

 右腕を斜め上に伸ばし、左腕を横に倒し。右腕の肘に左腕の指を当てるという、独特の体勢。人々がその構えを目の当たりにした瞬間、彼らはこの戦いの終焉を悟るのだった。

 

『エナジウム……光線ッ!』

 

 眩い輝きを帯びた、破壊の閃光。その一条の煌めきは、甲殻を剥がされている傷口から喉奥へと突き刺さり――黒き怪獣の巨体を、内側から木っ端微塵に吹き飛ばしてしまう。

 誰の目にも明らかな、ウルトラマンエナジーの完全勝利であった。

 

「エナジーが……エナジーが勝ったでぇえ!」

「よっしゃあぁあ! エナジー、おおきにっ! 今度タコ焼き奢ったるでぇえっ!」

 

 その勇姿に拍手と歓声を送る市民を一瞥した後。エナジーは空を仰ぎ、中国支部の爆撃隊と視線を交わす。

 

『なかなかやるじゃない、ウルトラマンエナジー! ……まっ、中国支部最強のエースパイロットであるこの私が付いてるんだもの! 当然の結果ってところかしらっ!』

『やれやれ、ナビゲーターの僕達が居てこその戦果だというのに。いつものことながら、ワンマンな隊長様には困ったものだね』

『う、うるさいなー! カッコ良く決まったところなんだから、水差すんじゃないわよ劉静(リウジン)っ!』

 

 編隊の先頭を翔ぶBURK烈龍に搭乗していた、黒髪を三つ編みリングに纏めている爆乳美少女――凛風(リンファ)は、勝ち気な笑みを浮かべてエナジーに敬礼を送っていた。

 一方。彼女の副官として、BURK烈龍の機体後部にある指揮官席(ブリッジ)に座していた「男装の麗人」――劉静は、そんな隊長の自信過剰な振る舞いに苦笑を浮かべている。こうして凛風が調子に乗るたびに、彼女(・・)をはじめとする部下達が釘を刺しているのだ。

 

『……兄さん達やアーク達も、そろそろ決着を付けた頃だろうな。少し飛ばして行くか……デアァッ!』

 

 このような状況でなければ、ほんの少しは彼女達のように勝利の余韻に浸れたのだろうが。今は、カイナの元に駆け付けテンペラー星人を討つのが先決。

 エナジーはすぐさま、両手を上に突き出して空へと飛び立ち、人々に見送られながら大阪を後にするのだった。爆撃機隊の隊長である凛風の、熱い視線を背に浴びて。

 




 前回に続き、テンペラー軍団の怪獣達とのバトル回が始まっております。今回はエナジー対ブラックキングのバトルですぞ(`・ω・´)
 今回の舞台となった大阪城は、初代ウルトラマンとゴモラが対決した場所でもありますね。今回はぶっ壊されることなく無事に乗り切ることができましたよー(о´∀`о)

 そして、今回登場したBURK中国支部所属の爆撃機「BURK烈龍(リィエロン)」と「BURK炮龍」を、俊泊先生にカッコ良くデザインして頂きました! 俊泊先生、誠にありがとうございます(о´∀`о)

・BURK烈龍

【挿絵表示】

・BURK炮龍

【挿絵表示】


【挿絵表示】


 それから、「凛風(リンファ)が隊長に就任したばかりの頃に劉静(リウジン)と一緒に乗っていた機体」の案もこの度デザインして頂きました!


【挿絵表示】


【挿絵表示】


 もしかしたら、この機体にスポットを当てる機会も……あるかも? 俊泊先生、ありがとうございました!(*^ω^*)

Ps
 なんで各国支部の隊長が美女や美少女ばっかりなのかと申しますと、ヒロイン枠不在で「華」が足りてないウルトラマンもいるためでございます。け、決して作者の趣味というだけのことではございませんのですよ?:(;゙゚'ω゚'):


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特別編 ウルトラカイナファイト part12

「あ、あれってガチの怪獣かよっ!? 人口が多い都市が狙われてるって、完全にデマじゃねーかっ!」

「嘘だろっ!? こんな孤島にまで飛んで来てんのかよっ!」

「んなこと言ってる場合か、いいからさっさと逃げろっ! ここはもう、昔みたいな『怪獣島』になっちまってんだよっ!」

 

 かつては髑髏怪獣レッドキングをはじめとする、多くの強豪怪獣達が集まっていたことから「怪獣島」とも呼ばれていた多々良島。

 険しい岩山や、鬱蒼と生い茂るジャングルに包まれたこの島も、現代においては大自然を堪能出来る観光スポットとして栄えていたのだが。

 

「いや、そんなもんじゃねぇ……ここは今、『超獣島』になっちまってんだ!」

 

 テンペラー軍団の一角ことバキシムの出現により、過去のような戦場と化してしまったのである。

 

 逃げ惑う人々を嘲笑うように、宿泊施設を踏み潰して行く一角の超獣。その姿は「怪獣島」ならぬ、「超獣島」の誕生を象徴しているかのようであった。

 

『行か……せるかあぁあッ!』

 

 施設から逃げ遅れた旅行客を踏み潰そうと、バキシムが片足を上げた瞬間。その背後に組み付いたウルトラマンアークが、超獣の体勢を崩して行く。揉み合う両者が、施設を避けるように転倒したのはその直後だった。

 

『トワアァッ! テェェイッ!』

 

 素早く馬乗りの体勢に入ったアークは、バキシムの顔面にパンチの嵐を叩き込む。超獣も反撃とばかりに、大顎から強力な火炎放射を放って来た。

 

『ヌヴゥンッ!』

 

 その熱気に煽られ、マウントポジションを乱されたアークは、やがて体勢をひっくり返されてしまう。バキシムの体重に押し潰される前に、彼は渾身の力で巴投げを繰り出すのだった。

 

 放り投げられた超獣の巨体が、険しい岩山に激突する。それはかなりのダメージになったはずなのだが、バキシムは痛みなど感じていないのか、傷も厭わず戦闘を再開していた。

 

『やはりこいつも、生き物としての恐怖を持たない個体なのか……!』

 

 その両腕から連射されるミサイルを側転で回避しながら、アークは生物らしからぬバキシムの挙動に戦慄を覚えている。

 怪獣を凌ぐ脅威を持つ、超獣。その名を冠する巨大生物には、「恐怖」という感情がない。それ故にどれほど傷付いても、立ち止まることなく戦い続けてしまうのだ。

 

 1年間に渡り、その超獣達と戦い抜いてきた今のアークにとっても。彼らの無機質さには、悍ましさを感じずにはいられないのである。

 

『ぐあぁああッ!』

 

 その僅かな精神の乱れが、命取りであった。

 ミサイルの連射が止み、アークが反撃に移ろうとした瞬間。バキシムの象徴とも言うべき頭部の角が発射され、アークの胸に直撃してしまったのである。

 

 たまらず吹っ飛ばされてしまったアークの巨体が、木々を薙ぎ倒しながら海岸線まで転がっていく。何とか立ち上がろうとする彼のカラータイマーは、すでに危険信号を発していた。

 

「あぁっ……! あ、あのウルトラマンアークが負けちまうっ……!」

「……!? おい、あれはなんだっ!?」

 

 だが、その光景に旅行客達が絶望しかけた瞬間。海の彼方から飛んで来た無数の「軌跡」に、人々の目が留まる。

 

『……!?』

 

 それが「砲弾」だとアークが気付いた頃には。すでにその全てが、バキシムの巨躯に降り注いでいた。

 瞬く間に爆炎に飲まれ、転倒する超獣。その姿が、海の向こうから飛んで来た「砲撃」の威力を物語っている。

 

「見ろ……BURKだ! BURKのイギリス支部だぁっ!」

「すげぇ! BURK最強の艦隊が勢揃いしてやがるっ!」

 

 それから間も無く。双眼鏡で遠方を観測していた旅行客達から、歓声が響いて来た。

 彼らの言う通り、艦砲射撃でアークの窮地を救ったのは、BURKのイギリス支部だったのである。ユニオンフラッグを掲げる無数の戦艦を率いて、多々良島に駆け付けてきた彼らは、バキシム1体に持てる火力の全てを叩き込んでいた。

 

 必ず勝て。敗北など我々が許さん。アークに対して、そう訴え掛けるかのように。

 

『……ははっ。ここまでお膳立てされて負けたりしたら、また菜緒に怒られちまうし。琴乃さんにも、「ぶったるんどる」ってどやされちまうなッ!』

 

 その艦隊の勇姿を目の当たりにしたアークは、不敵な笑みを溢しながら。全身に力を込めて立ち上がり、再びバキシムと相対する。

 

『そうですよね……エース先生ッ!』

 

 イギリス支部の艦砲射撃を受けて満身創痍になってもなお、不屈の超獣は躊躇うことなくアークに襲い掛かっていた。そんな怪物の魂を鎮めるべく、アークも一切の迷いを断ち切り、眼前の「命」を絶つ決意を固める。

 ウルトラマンエースの教えを受けた、弟子の1人として。

 

『ジェミニギロチンッ!』

 

 バキシムの両手から放たれるミサイル掃射を掻い潜り、アークは頭部のウルトラホールから円形の光刃を発生させ、一気に投げ付ける。

 その刃は瞬く間に超獣の両腕を斬り落としてしまったのだが、恐怖を知らぬ怪物は間髪入れず、大顎から火炎放射を放って来た。

 

『アークバリヤーッ!』

 

 だが、恐れることなく突き進むのはこちらも同じ。アークはそう言わんばかりに両腕を突き出し、光の防御壁を出現させる。

 その壁で炎の直撃をかわしながら、彼は熱気に怯むことなく前進して行った。両者はやがて、拳が届くほどの距離にまで近づいて行く。

 

『メタリウム……アークシュートッ!』

 

 そこまで接近した瞬間、アークはバリヤーを後方に放り捨てながら腕をL字に構え、至近距離から強力な光線を叩き込む。その一撃を顔面に叩き込まれたバキシムは、痛みを知らぬまま「死」へと吸い寄せられるかのように、後退りして行った。

 

『……これで、終わらせる!』

 

 だが、恐怖を知らない超獣は死ぬまで戦うことを止めようとはしないのだ。それをよく知っているアークは、今度こそ決着を付けるべく、「最後の必殺技」の発射準備を開始する。

 両手を天に掲げたアークは、頭部のウルトラホールにエネルギーを集中させると。己に秘められた全ての力を、一つの光球として具現化させていく。

 やがて、その光球を両手で握り締めたアークは。体勢を立て直し、こちらに突進して来る哀れな超獣へと。

 

『スペース……アァークゥッ!』

 

 全力を込めて、投げ付けるのだった。ウルトラマンアークという超人に秘められたエネルギーを、限界まで凝縮させた光球は――バキシムの巨体に触れた瞬間。

 

 超獣の肉体すら一瞬で吹き飛ばすほどの、大爆発を引き起こしたのだった。天を衝く爆炎が超獣の肉片を四散させ、この戦いの終焉を周囲に報せていく。

 

「アークの勝ちだ……! ウルトラマンアークが、勝ったんだ!」

「やったあぁあ! 俺達、助かったんだあぁあ!」

 

 スペースアークの炸裂を目の当たりにした旅行客達から、爆発的な歓声が上がった頃には。遠方から戦況を見守っていたイギリス支部の艦隊も、目標の沈黙を確信し、祖国へと帰還し始めていた。

 

「……あれが、ウルトラマンアーク。2年前にもこの地球を救ってくださった、栄光あるウルトラ戦士の1人なのですね。共に戦えたことを……光栄に思いますわ」

 

 その司令官を務めていた、金髪を靡かせる色白な美少女――オリヴィアも。縦ロールに巻かれた髪をか細い指に絡ませながら、安堵の笑みを溢している。

 

『やっぱり、BURKあってこその俺達だよなぁ。……さぁ、俺も早く兄さん達と合流しないとな! テェェイッ!』

 

 去り行く艦隊を見送ったアークも、やがて先を急ぐように両腕を揃えて伸ばすと。一気に地を蹴り、大空へと飛び出して行くのだった。

 旅行客達や艦隊に手を振りながら飛び去って行く彼の姿は、人々を苦笑させている。彼が度々見せている、ウルトラマンらしからぬ人間臭い仕草は――機械のような超獣とは、あらゆる面において対極のようであった。

 




 前回に続き、テンペラー軍団の怪獣達とのバトル回が始まっております。今回はアーク対バキシムのバトルですぞ(`・ω・´)
 今回の舞台となった怪獣島……もとい多々良島は、初代ウルトラマンとレッドキングが対決した場所でもありますね。次回で5兄弟のバトル回もラストになりますが、どうぞ最後までお楽しみに!(о´∀`о)


Ps
 「イギリスだから」って超安直な理由だけで某代表候補生を意識したわけじゃないんです! 信じてください、本当なんです!( ゚д゚)


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特別編 ウルトラカイナファイト part13

 

 かつてウルトラマンが初めてその姿を現し、宇宙怪獣ベムラーと戦った場所として知られている竜ヶ森湖。

 豊かな森と広大な湖に彩られた絶景ということもあり、現代においては多々良島と同様に観光スポットとして人気を博していたのだが。

 

「こ、こいつ俺達を食う気だぞ! に、逃げろおぉおっ!」

「いやあぁあっ! こ、来ないでぇえっ!」

 

 人肉すら喰らう獰猛さを持つバードンが襲来したことにより、この地は一転して悲鳴が飛び交う修羅場と化していた。ギョロリと蠢く怪鳥の双眸は、逃げ惑う人々という「餌」の動向を追い続けている。

 

『てめぇの相手は……俺だって言ってんだろうがさっきからよぉおッ!』

 

 彼の相手を務めているウルトラマンジェムは、背後からその巨躯を羽交い締めにして、真後ろに放り投げたのだが。バードンは両翼を羽ばたかせ、容易く体勢を立て直してしまう。

 旅行客達を庇うように一気に間合いを詰めたジェムは、甲殻を纏う肩部でのタックルを仕掛けたのだが。バードンの巨体には、まるで通じていない。矢継ぎ早に拳やチョップを叩き込んでも、巨大な怪鳥は平然としていた。

 

『こいつ……タフだなんてレベルじゃねぇ。生物としての「格」が……違い過ぎるッ!』

 

 ジェムの方からは何度パンチを打ち込んでもびくともしないのに、バードンが翼を一振りするだけで、ジェムの身体は容易くよろけてしまうのだ。

 小細工で解決できる差ではない。1年間に渡り死線を潜り抜けてきたジェムでさえ通用しないほどの力を、この個体は秘めている。

 

 首魁に次ぐ戦闘力を誇る、事実上のNo.2。テンペラー軍団最強の怪獣兵器。それがこの、火山怪鳥バードンなのだから。

 

『くそッ、なんて耐久力なんだッ……! こうなったらァ……!』

 

 甲殻の重量や硬度を利用したパンチですら通用していないのだ。もはや、通常の肉弾戦では勝ち目などないことは明白。ならば、次の手を打つしかない。

 翼を広げ、頭上を取るように天高く飛び上がったバードンを狙い――ジェムは両腕を大きく開くと、必殺光線を放つべく腕を十字に組む。

 

『ジェムナイト……光線ッ!』

 

 形成逆転を狙い、発射された眩い閃光。手の宝石を輝かせて放たれた、その一撃は――確実にバードンの胴体を捉えていた。

 その、はずであった。

 

『な、にッ……!?』

 

 避けられたわけではない。バードンはその胴体で、ジェムナイト光線を受け切ってしまったのである。

 特別なバリヤーの類を使われたわけでもない。単純な耐久力だけで、ジェムナイト光線が破られたのだ。

 

『ジェムナイト光線が、通じない……!?』

 

 勝負を急ぐあまり、敵を弱らせないままジェムナイト光線を使った結果、避けられてしまい窮地に陥ったことならある。だが、外したわけでもないのにこの光線が全く通用しなかったのは、今回が初めてだったのだ。

 これまで戦って来た怪獣達とは、明らかに「格」が違う。それを改めて肌で実感させている相手を前に、ジェムはただ息を飲むしかなかった。

 

 だが今は、慄いている場合ではない。反撃を開始したバードンは、ジェムの全身を飲み込むような凄まじい火炎放射を放って来たのである。

 

『うぉあぁあッ!? ……あちゃちゃちゃちゃッ!』

 

 咄嗟に身を屈めることで、直撃だけは回避したのだが。頭頂部には猛炎が掠っていたのか、その部分だけが激しく燃え上がっている。

 慌てて燃えている頭を湖に突っ込んだジェムは、なんとか鎮火に成功したのだが。水面から顔を上げた時にはすでに、着陸したバードンが鋭い嘴を振り上げていたのである。

 

『ぐぁ……あぁッ!?』

 

 ジェムも咄嗟に、甲殻を盾に防御姿勢を取ったのだが。嘴による刺突の嵐は、その甲殻すらも破壊してしまう。

 圧倒的な貫通力により、ジェムの身を守っていた甲殻は全て打ち砕かれてしまうのだった。その衝撃に倒れたジェムの巨体が、水飛沫を上げて湖に倒れて行く。

 

 だが、まだ勝負が決したわけではない。バードンはジェムにとどめを刺すべく、点滅するカラータイマー目掛けて、最後の一突きを繰り出そうとしていた。

 

 その絶望的状況の最中、固唾を飲んで戦局を見守っていた旅行客の1人が、声を上げる。

 

「……!? おい、あそこ!」

 

 彼の視界に映り込んでいたのは――空の彼方から飛来して来た、大型のジェット輸送機だった。過去の防衛チーム「HEART(ハート)」で運用されていた、ハートワーマーをベースとする「BURKワーマー」だ。

 その機首部に搭載されているレーザー砲が火を噴いた瞬間、ジェムにとどめを刺そうとしていたバードンは頭部に熱線を受け、大きく怯んでしまう。B-52「ストラトフォートレス」のものを想起させるレドームが、バードンの位置を正確に捕捉していたのだ。

 

『命中を確認、これより本機は着陸体勢に入るわ! エレーヌ隊は直ちに突入準備! 人類の底力というものを、あの鳥野郎に教えてあげなさい!』

『了解しました! アリア機長、お願いしますッ!』

 

 30過ぎの女性とは思えない幼い容姿を持ち、「合法ロリ」とも呼ばれているアリア・リュージュ機長。そんな彼女の指揮により運用されているBURKワーマーは、近くの草原にゆっくりと垂直に着陸して行く。

 それから間も無く、そのハッチから矢継ぎ早にBURKの歩兵部隊が駆け出して来た。その腕章には、トリコロールの国旗が描かれている。

 

 光線銃を手にこの場に駆け付けて来た彼らは、BURKのフランス支部から派遣された精鋭部隊なのだ。だが、彼らの参戦を目撃した人々からは、不安の声が上がっている。

 

「BURKの……フランス支部!? 生身でやり合う気かよ、あいつらっ!」

「あんた達、戻れっ! ウルトラマンジェムでも敵わない相手なんだぞ!? 殺されちまうっ!」

 

 それでもフランス支部の歩兵部隊は、旅行客達の声に耳を貸すことなく、光線銃の引き金を引く。外野の下馬評など知ったことか、と言わんばかりに。

 そして、バードンの片目にのみ照準を合わせていた彼らの銃撃は、寸分の狂いもなく命中していた。1丁だけでは大した威力にはならない光線銃でも、数十人掛かりで脆弱な部位に撃ち込めば、十分な効果を発揮できるのだ。

 

「す、すげぇ! あいつら、怪獣の片目を潰しやがった!」

「あぁ、でもダメだ……! あの怪獣、ますます怒っちまった!」

 

 片目を潰されたバードンは甲高い悲鳴を上げ、横転してしまう。だが、残されたもう一つの目は激しい怒りと殺意を宿して、歩兵部隊を射抜いていた。

 すぐさま立ち上がったバードンは、光線銃の狙いを安定させられないように、両翼をはためかせて猛風を起こしていく。その風圧に次々と転倒していく歩兵達を冷酷に見下ろしながら、怪鳥は嘴を大きく開いていた。

 

 貴様らなど餌にも値しない。この場で消し炭にしてやる。その意思を込めた、火炎放射を放とうとしているのだ。

 

『させ……るかぁああッ!』

 

 だが、それを許すウルトラマンジェムではない。水飛沫を上げて立ち上がったジェムは、背後からバードンの嘴を掴むと、力任せに閉じて火炎放射を逆流させてしまった。

 ウルトラマンリッパーと、ウルトラマンルプス。荒々しく野性的な戦法を得手とする師匠達の教えが、この強引な力技に顕れているのだ。

 

 自身の火炎で体内を焼かれたバードンは苦しみにのたうち、ジェムから距離を取るように湖から這い出て行く。その時すでにジェムは、「最後の切り札」である最強形態へと進化していたのだ。

 

 全ての甲殻を捨て、細く引き締まった体格へと変貌したジェムの肉体。その差し色は茶色から、鮮やかな虹色へと変わっていた。

 まるでダイヤの原石が磨き上げられ、眩い宝石へと生まれ変わったかのように。ジェムの身体は、「ブリリアントモード」へと強化されていたのである。

 

『……へっ。カイナ兄さんは鎧を着てからが本番なんだけどな。俺の方は、脱いでからが本番なんだよッ!』

 

 甲殻を失い、身軽になったというのに。中腰の姿勢から、一気に間合いを詰めて放たれたジェムのパンチは、以前よりも遥かに強力になっていた。

 先程までとは比べ物にならない速さで飛ぶジェムの拳に、バードンは悲鳴を上げる暇もなく吹っ飛ばされてしまったのである。単に身軽になっただけではない。パワーまで大きく向上しているのだ。

 

 生物としての「格」が違い過ぎる。

 優秀な怪獣兵器であるが故に、その事実を本能で察知したバードンは、両翼を広げて素早く上空へと飛び立ってしまう。

 頭上から攻撃するつもり、というわけではない。このまま逃げるつもりなのだ。

 

『――逃すかよ』

 

 先程は容易く防がれたが、今度はそうはいかない。そう言わんばかりに、ジェムは再び両腕を大きく開き、十字に組む。

 

『ブリリアントッ! 光ッ線ッ!』

 

 そこから放たれる、虹色の巨大な閃光は――空の彼方へ逃げ去ろうとしていたバードンの背に突き刺さり。痛みを感じる暇すらも与えず、一瞬のうちに爆散させてしまう。

 この一撃を以て、ジェムの勝利は確実なものとなり。テンペラー星人が従えていた怪獣軍団は、ついに全滅の時を迎えたのだった。

 

「か……勝ったのか!? 勝ったんだ、ウルトラマンジェムが勝ったんだぁあ!」

「おい、ニュース見ろよ! 他のウルトラマン達も、全部の怪獣を倒しちまったらしいぜ!?」

 

 その瞬間と爆炎を仰ぐ人々は、さらなる吉報を耳にして歓声を上げている。バードンの最期を見届けていたフランス支部の歩兵部隊も、安堵の息を吐き出していた。

 

「……あれがウルトラマンジェムの真の力、ということですか。ふふっ……私達フランス支部も、負けてはいられませんねっ!」

 

 現代に蘇ったジャンヌ・ダルクの如く、歩兵部隊を率いていた金髪の巨乳美少女――エレーヌも。虹色の光線を以て、地球に勝利を齎したジェムの巨躯を仰ぎ、華やかな笑みを咲かせていた。

 戦闘の終結を見届けたアリア機長も、仲間達の生還に安堵の息を漏らしている。

 

『……皆、ありがとうな。この調子で必ず、カイナ兄さんも助けて見せるぜ。……タアァーッ!』

 

 そんな隊長の笑顔と、喜びの声を上げる人々に親指を立てた後。両手を広げて地を蹴ったジェムは、東京を目指して全速力で飛び去って行く。

 ブリリアントモードに変身したことで、マッハ7もの加速を得たジェムの身体は、瞬きする暇もなく人々の視界から消え去るのだった。

 

 ――そして、全ての怪獣を撃破した5人のウルトラマン達は。ついに決戦の地へと、足を踏み入れるのである。

 6年間にも渡る死闘の連鎖に終止符を打ち、この地球に真の平和を取り戻すために。

 

 今こそ。その手を、繋ぐ時が来たのだ。

 




 前回に続き、テンペラー軍団の怪獣達とのバトル回が始まっております。今回はジェム対バードンのバトルですぞ(`・ω・´)
 今回の舞台となった竜ヶ森湖は、記念すべき初代ウルトラマン第1話「ウルトラ作戦第一号」において、初代ウルトラマンとベムラーが対決した場所でもありますね。本作における「最後のウルトラマン」であるジェムが、「最初の戦場」であるこの竜ヶ森湖で、「最後の怪獣」であるバードンを倒す。これは絶対やりたいシチュだったのですよー(о´∀`о)
 さてさて。これにてついに全ての怪獣達が倒され、残るは首魁のテンペラー星人のみとなりました。全てに決着を付けるラストバトル、どうぞお楽しみにー!٩( 'ω' )و


Ps
 ファイヤーヘッドがやりたかっただけ疑惑? し、知らんな:(;゙゚'ω゚'):


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特別編 ウルトラカイナファイト part14

 5人の後輩ウルトラマン達が放つ必殺技に、テンペラー軍団の怪獣達は続々と斃れ。残るは、その群れを率いる首魁ただ独りとなった。

 

『バカな……ありえん! 我が軍団が、あのような若造共に遅れを取るなどッ!』

『ダァ、アァッ!』

 

 予想だにしなかった劣勢に、焦燥を隠し切れないテンペラー星人。東京スカイツリーの前に立つ彼は、満身創痍のまま組み付いて来るウルトラマンカイナを電撃の鞭で叩き伏せながら、怒号を吐き散らかしている。

 5大怪獣の敗北も確かに想定外だった。が、何よりもテンペラー星人の精神を乱していたのは、常軌を逸するカイナのタフネスであった。

 

 カラータイマーの点滅は、5人のウルトラマンが到着する前から始まっていたというのに。その輝きは今もなお、止まっていないのである。

 不死身を疑うほどの継戦能力を見せつけ、チョップを連打して来るカイナを蹴り倒し、テンペラー星人は足早に距離を取っていた。まるで、恐れているかのように。

 

『なぜだ! なぜ立ち上がろうとする、あんな紛い物まで造るような地球人共のために! 奴らが何を企んでいたのか、分からぬ貴様らではなかろうッ!』

『分かってる……分かってるさ。それでもオレ達は……信じると決めたんだ。決めたから、戦って来られたんだ! 人間は……それだけなんかじゃないって!』

『ええい……! ならば今度こそ、我が絶世哮の前に砕け散るが良いッ!』

 

 だが、テンペラー星人とカイナの間には、今もなお隔絶された戦力差というものがある。ましてや今のカイナは、増加装甲を失った基本形態なのだ。まともに絶世哮を浴びれば、今度こそ命はない。

 

 それでもカイナは、1歩たりとも引き下がらない。腕を十字に組み、ゼナリウム光線の発射体勢を取る彼は、言外に真っ向勝負を挑んでいた。

 

『愚か者めが……! ならば望み通り、跡形もなく消し飛ばしてくれるわぁぁあッ!』

『ゼナリウム……光線ッ!』

 

 カイナと弓弦の叫びが重なり合い、蒼い光線が迸る。その閃光が絶世哮の輝きと衝突したのは、それから間もなくのことであった。

 あまりに激しいエネルギー同士の激突に、周囲のビル群が「余波」で薙ぎ倒されていく。スカイツリーを支える地盤すらも、「競り合い」の影響に揺らぎ始めていた。

 

 だが、やはり戦局は厳しい。絶対に負けられない、という信念を宿したゼナリウム光線すらも、絶世哮の威力は容易く捩じ伏せようとしている。

 その光景を中継映像で目撃している、BURKの面々から見ても。世界中の人々から見ても。誰の目にも、カイナが押されていることは明白であった。

 

『だけど……それでも、俺達(・・)は負けないッ! カイナ兄さんは、俺達に教えてくれたんだッ!』

『……!? き、貴様らァッ……!』

 

 にも拘らず、カイナの光線がまだ消えていないのは。

 「先輩」と肩を並べるように再び降り立った5人のウルトラマンが、各々の必殺技を撃ち放っていたからなのだ。

 

『大切なのは最後まで諦めず、立ち向かうことだとッ!』

 

 ウルトラアキレスの、イーリアショット。

 

『例え僅かな希望でも、勝利を信じて戦うことだと……!』

 

 ウルトラマンザインの、ザイナスフィア。

 

『信じる心……その心の強さが、不可能を可能にする!』

 

 ウルトラマンエナジーの、エナジウム光線。

 

『それが、ウルトラマンなんだってッ!』

 

 ウルトラマンアークの、メタリウムアークシュート。

 

『俺達は、教わって来たんだ! 紡いで来たんだ、今日までずっとッ!』

 

 そしてウルトラマンジェムの、ブリリアント光線。

 

 ゼナリウム光線の軌道に重なるように放たれた彼ら5人の必殺技は、眩い閃光を築き上げ――絶世哮の圧倒的火力すらも、徐々に押し返して行く。

 そんな頼もしい後輩達に背を押され、カイナの両眼も勇ましい輝きを灯していた。カラータイマーの点滅など意に介さず、彼は最後の全力をこの一瞬に注ぎ込む。

 

『今ここには……オレ達がいる! この瞬間のためだけの、ウルトラ6兄弟がいるッ! だから……たった独りのお前になんざ、絶対に負けないッ!』

 

 この戦いのためだけに集まった、6人の勇士。敢えてその総称を「6兄弟」とするカイナの雄叫びと共に、究極のゼナリウム光線の威力が最高潮に達する。

 

『お前達如きがウルトラ6兄弟、だと……!? 認めん……我は貴様らなど、認めんぞおぉおぉッ!』

 

 その輝きが絶世哮を打ち破り、テンペラー星人の巨体を貫いた瞬間。ウルトラマンタロウを筆頭とする、真の6兄弟を想起させる力を目の当たりにした彼は――断末魔と共に、爆炎の中へと消えて行く。

 

 テンペラー軍団の脅威に追われ、地球に墜落した恐竜戦車の出現と、ウルトラマンカイナの登場から6年。それまでの間、絶えず続いてきた侵略者達との戦争は、この瞬間を以て真の終結を迎えたのだった。

 ウルトラアキレス。ウルトラマンザイン。ウルトラマンエナジー。ウルトラマンアーク。ウルトラマンジェム。彼らが1年間に渡り戦ってきた怪獣や異星人達を、この地球に追いやった(・・・・・)「元凶」が、ついに全滅したのである。

 

『み……皆様、ご覧になられましたか! 今、今……ウルトラマンカイナが! 6人のウルトラマンが、凶悪な異星人を撃破したのです! この地球は……今度こそ! 救われたのですッ! ……やったぁぁあっ!』

 

 その瞬間を目の当たりにしたアナウンサーが、いの1番に喜びの声を上げた瞬間。彼女の歓喜が伝播したかのように、世界中に歓声が広がって行く。

 

 辻凪あやめ。江渡匡彦。真壁悠兎。小森ユウタロウ。三蔓義命。猫島菜緒。佐渡光。大力力也。この戦いの行く末を見守っていた彼らも、事態の終息を悟り安堵の息を漏らしていた。

 

『ふん……エナジーの奴め。ブラックキング如きに手こずるとは、まだまだ修行が足りんな』

『俺達の弟子もそうだぜ。宇宙警備隊に認められた暁には、もっとシゴいてやる必要がありそうだなァ』

『あぁ、全くだ。……まァ、今回の戦い振りはあいつにしちゃあ上出来な方さ。これから先が、楽しみだぜ』

 

 宇宙の彼方から、弟子達の死闘を見守っていたウルトラマンレグルス、ウルトラマンリッパー、ウルトラマンルプスの3人も。

 口先では厳しい評価を下しながらも、その声には喜びの色を滲ませている。弟子達の成長と勝利を、噛み締めるかの如く。

 

 そして。半壊したブリーフィングルームから全てを見届けていた、弘原海と琴乃も。

 安堵の表情を浮かべ、空の彼方へ飛び去って行く6兄弟の勇姿を見送っていた。

 

「……終わったな、今度こそ」

「……はい」

 

 長きに渡る戦争の終幕。平和への夜明け。その光明を前に頬を緩める弘原海は、満足げに踵を返してブリーフィングルームから立ち去って行く。

 

「隊長、どちらへ……!」

「もう俺は隊長ではない。……言っただろう? 後は、お前に任せたぞ。これからの地球と……BURKをな」

 

 BURKの隊長として積み上げてきたもの全てを賭け、地球を守り抜く。その本懐を遂げた彼を引き留められる言葉など、ありはしない。

 

「……はい。今まで、ありがとうございました……弘原海さん」

 

 琴乃はただ、去り行く彼の背を見送るしかなく――破壊された天井の亀裂から差し込む陽射しが、その行く先を鮮やかに照らしていた。

 




 今話を以て、ついにテンペラー軍団との決戦に終止符が打たれました! ウルトラマンカイナをはじめとする6人のウルトラマン達の戦いも、これにて真の終焉でございます(о´∀`о)
 ちょっとした後日談的なエピソードになる次回の最終話で、この特別編もとうとう完結。どうぞ最後までお楽しみにー!٩( 'ω' )و


Ps
 ウルトラマンFEシリーズ、新作出ないかなぁ(´・ω・`)


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特別編 ウルトラカイナファイト partFINAL

 あらゆる惑星に生きる怪獣や異星人達の住処を破壊し、地球への「侵略」……という名の「逃亡」を招いたテンペラー軍団。この次元の地球における最大の脅威である、その軍勢が滅亡してから、すでに3ヶ月が過ぎていた。

 

『――では、次のニュースです。東京都、大阪府、兵庫県における復興事業の進捗について、政府は本日の作業を以て都市機能の9割が回復するという見解を示しており、多々良島及び竜ヶ森湖の観光施設が被った損害についても各国からの支援が――』

 

 壊滅的な被害を受けた東京をはじめとする、戦場と化した都市の機能は現時点で9割近くも回復している。早ければ来月には、全ての都市が「元通り」になる見通しだ。

 アメリカ支部をはじめとする、5ヵ国のBURKによる全面援助がなければ、これほどの早さにはならなかっただろう。そのニュースを報じているラジオの声にも、希望の色が滲んでいた。

 

 皮肉なことに、6年間にも及ぶ戦争で得た修復作業のノウハウが、迅速な復興に一役買っていたのである。駒門琴乃隊長を筆頭とする新生BURKが主導しているその事業は、戦闘の余波で職や住まいを失った人々を救うための新たな雇用を生み出していた。

 

「オーライ、オーラーイ! ……ふぅっ、早く終わらせて一杯やりてぇぜ」

「ぐちぐち喋ってばっかりだと、いつまで経っても終わらねぇぞー!」

「わかってらァ!」

 

 休む暇などない激務の日々。それでも仕事の終わりには、笑顔が広がっている。戦争という悲惨な歴史を目の当たりにしてきた記憶が、人々をそうさせているのかも知れない。

 あの絶望の淵に比べれば、どうということはないのだと。この平和を掴み取るため、散っていったBURKの隊員達を思えば、へこたれてはいられないのだと。

 

「……逞しいな、この星の人々は。一度はウルトラマンになった身だからこそ、そう思うよ」

「えぇ……俺達もです」

 

 そんな彼らの逞しさが垣間見える、作業現場を見上げながら。復興作業の最中である、東京の街道を歩む5人の青年達は、歌舞伎町の外れにあるという小さな喫茶店を目指していた。

 

「それにしても、5人全員が休日だったなんて珍しいこともあるもんだなぁ。雄介達も元気そうで良かったよ」

「嵐真先生も御壮健で何よりです。確か辻凪先生は、今日が当直でしたかな?」

「あぁ。帰りに何か美味いもん買って、差し入れにするよ。……『新作』がバズってるみたいだし、近いうちにお祝いもしないとなぁ」

 

 椎名雄介の言葉に空を仰ぐ暁嵐真は、今も小学校で仕事に励んでいる同僚の女性に思いを馳せている。その女性――辻凪あやめがネットで公開した「新作」のWEB漫画は、SNSで密かに人気を集めているらしい。

 

「分析官殿。来年の慰霊祭には、俺も参列致します。……此度の戦いに身命を賭したBURKの方々の御霊には、俺からも感謝を捧げたい」

「尊……ありがたい限りだが、その気持ちだけ貰っておこう。今のお前は『世界最優のボディガード』として、引く手数多な身だ。身辺警護課の人間ならば、今生きている人々のために時間を使え。彼らへの感謝なら、俺が纏めて持って行く」

「分析官殿……」

 

 テンペラー軍団との戦闘で命を落とした、BURKの隊員達。その慰霊碑に眠る魂を思い、覇道尊は神妙な表情を浮かべていた。

 

「ウルトラマンの依代だった俺達は、『人』でありながら『神』であることを求められていた身だ。確かにその重荷は、ただの人間に戻ったからと言って容易く降ろせるものではない。……だからこそ、俺達『兄弟』が分かち合わねばならんのだ」

「……ありがとうございます、分析官殿。あなたがそう仰るのであれば、俺は従うのみです」

「これくらい言わねばならんような男であることは、今さら分析するまでもないからな。……お前はやはり、独りで背追い込み過ぎる」

 

 そんな彼も雄介の言葉に心を救われたのか、普段の仏頂面に反した笑みを僅かに零している。

 

「そうそう。三蔓義先生のおかげで、部下の人達も無事に退院できたことですし。肝心な時に尊さんがいないと、皆も困っちゃいますって。今度の休みは大阪で、皆にたこ焼き奢ってあげるんでしょう?」

「……ふっ、確かにな。お前の言う通りかも知れん。しかし要、今日はあの猫島という娘との予定があったのではないか?」

「今度のコミケに全日付き合うなら許す、って言われちゃいましたよ。またコスプレさせられるんだろうなぁ、俺……」

 

 彼を励ましている八月朔日要も、猫島菜緒との「約束」の内容に肩を落としていた。彼の夏休みは、過酷な宿命を帯びてしまったらしい。

 

「ま、まぁまぁ。俺もネットで見ましたけど、要さんのコスプレって結構イケてたじゃないっすか。去年の銃剣男子コスも好評だったみたいですし、俺はカッケーって思いますよ」

「……じゃあ磨貴、お前も来るか? あの茹だるような炎天下の会場にさ」

「お……俺は遠慮しときます」

 

 その地獄を知る者ならではの目には、フォローしていた荒石磨貴もたじろいでいる。この後、彼もカメラマン役に連れ出されてしまったことは言うまでもない。

 

「……はぁ。せめて嵐真先生達みたいに足が長けりゃあ、もうちょい映えるんだろうけどさ……」

「心配するな、要。そのコミケ……とやらのことはよく分からんが、お前はどのような格好でも男前だ。俺が保証する」

「あーもう、尊さんまで茶化さないでくださいよ!」

「茶化してなどいない。俺は本気で言っている」

「なおタチ悪いんですけど!」

「ははっ、要も青春してるなぁ。……思えば、この6年間の中にもそんな『息抜き』があったから、俺達もここまでやって来られたのかもな」

「嵐真先生。そのような甘いことを仰っていては、また巻き込まれてしまいますよ。……磨貴。先に言っておくが、今年はお前がカメラマンだ。俺達はもうやらんからな」

「えぇーっ!? 雄介さん、そりゃあないっすよッ!」

 

 そんな他愛のない言葉を交わし、笑い合いながら。かつてウルトラマンという「神」だった男達は、束の間の休日を穏やかに過ごしていた。

 

「ねぇ見て、あそこの5人……レベル超やばくない?」

「映画の撮影かな? でも、雑誌とかでも見たことない顔だよね……?」

「写真撮ったら怒られるかな?」

「あんた、ちょっと声掛けてきてよ」

「やだよぉ、ホントに撮影だったらマジで恥ずいやつじゃん」

「ていうかあそこの1人、去年のコミケにいなかった?」

 

 カジュアルな私服に袖を通した彼ら5人は、その颯爽とした容姿もあり、すれ違う女性達の視線を絶えず集めている。だが、それは彼らが美男子だからという理由だけではない。

 他の男達とは、全ての「格」が違う。理屈ではなく本能で、そう感じさせるほどの「何か」が、女性達の視線を無意識のうちに集めていたのである。

 

「……!」

 

 彼らとすれ違った、とある巨乳美女達も。その「何か」を本能で感じ取り、豊穣な乳房を揺らして振り向いていた。

 

 アメリカ支部の戦闘機隊隊長、アメリア。ロシア支部の戦車隊隊長、イヴァンナ。中国支部の爆撃機隊隊長、凛風(リンファ)。イギリス支部の艦隊司令官、オリヴィア。そして、フランス支部の歩兵隊隊長、エレーヌ。

 彼女達5人は互いに顔を見合わせて、その瞳に「女」としての「本能」を滲ませている。強く逞しい男の遺伝子を欲する、「女」としての「本能」を。

 

「ねぇ、イヴァンナ。さっきの男達……」

「……あなたも感じていましたか、アメリア」

「めちゃくちゃ男前な連中だったわね、さっきの奴ら。……でも、なんだろう。それだけじゃないような……」

「アメリア様もイヴァンナ様も、凛風様も……なのですね。実は私も、あの人達のことが気になっていて……」

「い、一体……どうしたというのでしょう。あの人達を見ていると、胸がどんどん……高鳴っていくのです」

 

 今まで、誰の甘言(ナンパ)にも耳を貸したことがない「鉄の女」だったはずの彼女達は。嵐真達の横顔に「面影」を重ね、頬を染めていたのである。

 かつて自分達の祖国を、怪獣の脅威から救い。3ヶ月前の決戦においては、共にテンペラー軍団とも戦っていた、ウルトラ戦士達の「面影」を。

 

 ◇

 

 やがて青年達は狭い路地の奥に進み、ひっそりと開店の日を迎えていた喫茶店の姿を目にする。「カフェ・アルティメットファイヤーウルトラバークワダツミ」と書かれたその店前の看板に、5人の青年達は苦笑を浮かべていた。

 

「……よぉ、久しいな。お前ら」

 

 扉を開けた先では、すでにコーヒーを淹れ始めていた店長(マスター)が不敵な笑みを溢している。数多の死線を潜り抜けてきた者にしかできない、優しげでありながらも鋭さを秘めた笑顔だ。

 

「弘原海隊長、お久しぶりです。……相変わらず、ネーミングセンスは壊滅的ですね」

「本当ですよ。何なんですか、アルティメットファイヤーウルトラバークワダツミって」

「普通、喫茶店にそんな物騒な名前付けます?」

「……お前らなァ、再会早々に文句ばっかり並べるんじゃねぇよ。それに、俺はもう隊長じゃねぇって何度も言ってんだろうが」

「その割には、看板の主張が激し過ぎるのですが」

 

 開店祝いを兼ねて、とある「報告」のために訪れた5人の英雄。そんな彼らの戦いを支え続けてきた、歴戦のBURK隊長……だった男は、ため息混じりに鼻を鳴らしていた。

 

「それに、今さら他の呼び方なんてしっくり来ませんよ。……そうですね、強いて挙げるなら『おやっさん』なんてどうでしょう」

「いいな、俺も同意見だ。よし、今後はその呼称で統一するとしよう」

「急速に馴れ馴れしくなりやがって……俺本人の意向は無視ってかぁ? へっ……まぁ、おやっさんってのも悪くはねぇがよ」

 

 ウルトラマンと一体化し、共に命を賭け地球を守るために戦う。そんな過酷な宿命を背負いながらも、最後まで投げ出すことなく超人としての責務を完遂した彼らは、弘原海にとっては息子同然の存在であった。

 そんな彼らから、「おやっさん」と呼ばれるようになる。口先では文句を言いつつ、そんな第2の人生も悪くないと、弘原海は微かに笑みを溢していた。

 

 自分達にとっては父のような存在だった、弘原海のその横顔を一瞥する嵐真は。他の4人と頷き合うと、1枚の手紙を彼の前へと差し出す。

 

「……これ、弓弦さんからです。今日は復興現場が忙しくて来れなかったみたいですけど、そのうちここにも『挨拶』に来ると思いますよ」

「あぁ、そうかい……じゃあ、今度会ったら祝いに1発ぶん殴ってやらなきゃな。お嬢様を……若奥様を、よろしく頼むってよ」

 

 その手紙を開いた弘原海は、僅かに涙ぐみながらも朗らかに口元を緩めていた。華やかなウェディングドレスに彩られた風祭梨々子と、その隣に立つ風祭弓弦の写真が、2人の幸せを艶やかに写し出している。

 まるで愛娘の晴れ舞台を想像しているかのような彼の涙に、5人の青年達も目を見合わせて微笑を浮かべていた。

 

 ――この次元における、ウルトラマンと侵略者達との戦いは、完全に終結したのかも知れない。

 

 だが、これから何年も、何十年も、何百年も、何千年も。地球の平和を守り抜くための、人間達の物語は続いて行くのだ。

 それを紡いで行くことができるのは、この星で暮らす地球人達だけなのだから。

 

『……シュワァッ!』

 

 それ故に。遥か上空から地球人達の営みを見守っていた6人のウルトラマンは、未練を振り切るように宇宙の彼方へと飛び去って行くのだった。

 今回の戦果を認められ、正式に宇宙警備隊へと入隊した彼らは、これから様々な惑星に派遣されて行くことになる。もう、この地球に現れることはないだろう。

 

 ここから先の「物語」に、ウルトラマンの力が求められることはない。これからの未来は、人間達の力でしか築き上げられないのだ。

 それを理解していたからこそ。彼ら6人も、地球から旅立つ道を選んだのである。

 

『……ありがとう、ユズル。ありがとう、皆!』

 

 そして、その筆頭であるウルトラマンカイナは。風祭弓弦をはじめとする全ての地球人に、別れの言葉ではなく――感謝の思いを、告げるのだった。

 

 ◇

 

「しかしおやっさん、このコーヒーほんっとに不味いですね」

「逆にどうやればここまで不味く出来るのですか」

「最優先すべきはバリスタの雇用では?」

「よくこれで営業許可が降りましたね」

「シンプルに不味いっす」

「……帰れお前らァアァア!」

 




 今回の特別編「ウルトラカイナファイト」はこれにて完結となりました!(*≧∀≦*)
 本章を最後まで見届けてくださった読者の皆様! 募集企画にご参加頂いた参加者の皆様! おかげさまで、ウルトラマンカイナを巡る物語も真の完結を迎えることが出来ました! 誠にありがとうございます!(๑╹ω╹๑ )

 この次元の地球におけるウルトラマンの英雄譚は終焉を迎えましたが、別の次元では他のウルトラマン達がこれからも頑張っていくのでしょう。私も今後は読者側として、色々なウルトラ小説を読んでいければなーと思っております(о´∀`о)

 次回作については今のところ特に予定はないのですが、またこういう企画を開催できる機会がありましたら、お気軽に遊びに来て頂けると幸いです(*´ω`*)
 ではではっ! またいつか、どこかでお会いしましょう〜。失礼しますっ!٩( 'ω' )و


Ps
 ウルトラマン生誕55周年! そして仮面ライダーは生誕50周年! おめでとうございまーす!(*≧∀≦*)


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特別編 ウルトラカイナファイト partEXTRA

 お久しぶりです! 今回はちょっとしたおまけエピソードをお届け致しますぞ! 特別編最終話の裏側的なお話になりますー(*´ω`*)



『いやはや、聞きしに勝る美しさだな。君のような美女が、数多の侵略者達を退けて来たBURKの新隊長だとは……にわかに信じられんよ』

『……恐縮であります』

 

 ウルトラマンカイナをはじめとする6人の新世代ウルトラマン。彼らとBURKの長きに渡る戦いの日々が終わりを告げ、3ヶ月が過ぎた頃。

 弘原海に代わりBURKの隊長に就任した駒門琴乃は、新設されたブリーフィングルームで独り背筋を正していた。眼前の巨大モニターに映された「超大物」は、彼女の毅然とした佇まいとその美貌に感嘆している。

 

『さて……我々も可能な限りで協力はさせて貰ったが、やはり君達BURK日本支部の活躍がなければ、此度の勝利はあり得なかっただろう。改めて、世界を救ってくれたことに礼を言わせて頂きたい。ありがとう、ミス・コマカド。ミスター・ワダツミにも、よろしく伝えて欲しい』

「……恐縮であります、大統領。しかし、これもあなた方をはじめとする各国支部の支援と……ウルトラマン達の尽力があってこその結果です。我々は、この星を守り抜いた『力』のほんの一部に過ぎません」

 

 挨拶代わりの口説き文句をにべもなく流されてしまった、その超大物――もといアメリカ合衆国大統領は、苦笑を浮かべながらも彼女達の功績を率直に称賛していた。

 だが、大統領直々の言葉を受けてもなお、琴乃は眉一つ動かすことなく整然とした佇まいで彼と向き合っている。「鉄の女」とは、まさしく今の彼女のためにあるような言葉なのだろう。

 

『物質的にはそうかも知れん。だが、そのウルトラマン達と我々を精神的に動かしたのは、紛れもなく君達だ。……あの青年達も(・・・・・・)、君達の支えがあったからこそ、この6年間を戦い抜けたのだと私は見ている』

「やはり……気付いていらしたのですね」

『我が国のBURKは、衛星上から全ての戦いを観測していたからな。ミガキ・アライシ、カナメ・ホズミ、タケル・ハドウ、ユウスケ・シイナ、ランマ・アカツキ……そしてユズル・カザマツリ。6年間にも渡る彼らの献身は、まさしくヒーローと呼ぶに相応しい行いだったと言えよう。もし彼ら6人が我が合衆国の国民だったなら、勲章を用意していたところだ』

「……そこまでご存知ならば、彼らがその類を欲する性格ではないことも把握されているのでは?」

『無論、知っているとも。……一個人に託すにはあまりにも強大過ぎる力。それを一身に背負っていた彼らが、どのような思いで戦って来たのか。その重責に伴う苦悩と、葛藤もな』

 

 琴乃自身が薄々察していた通り、アメリカを含む諸外国はすでに、6人のウルトラマン達が依代としていた地球人達の情報を得ていた。

 まるで彼らの全てを見て来たかのように語る大統領の口振りに、琴乃は違和感を覚え眉を顰めている。いくら大国アメリカのトップといえど、多くの悲しみを背負い戦って来た青年達の思いまで分かると言うのか、と。

 

「ウルトラマンとの接触者である彼らの存在を認知していながら、あなた方はその身柄を強引に確保しようとはされなかった。……何故です?」

『子供でも分かる単純な話だ。彼らがウルトラマンの依代として選ばれた理由は、未だ科学的に解明されていないブラックボックスなのだろう? であれば、取り返しのつかない結果に繋がり得る選択は避けねばならん。「イカロスの太陽」の運用計画が凍結されたようにな』

「諸悪の根源であるテンペラー軍団が全滅した今、その懸念は無くなっているはずです。現に各国支部から派遣されているBURKのリーダー格は、いずれも各支部の広報活動を経験している良家出身の『美少女』ばかり。……これには、あなた方なりの『思惑』があるのでは?」

『他国の真意までは測りかねるが、少なくとも我が国としては「希望的観測」に過ぎんよ。あくまで本人達の幸せを願うだけの、可愛らしい恋のキューピッドだと思ってくれ』

「……」

 

 テンペラー軍団を打倒した後も、日本国内に駐留している各国のBURK。その部隊や艦隊等を率いているリーダー達はいずれも、見目麗しい美女や美少女ばかり。

 各国が弓弦達の正体を把握しているのであれば、体良く自国に身柄を取り込むためのハニートラップ要員だという可能性も出て来る。それ故に自分が相手だろうと臆することなく、毅然とした態度で追及して来る琴乃の凛々しい貌に、大統領は不敵な微笑を浮かべていた。

 

『……人の口に戸は立てられないものだよ、ミス・コマカド。彼らにも(・・)いつか必ず、その正体を暴かれる時が来る。真実を知る我々には、その日のために「後ろ盾」を用意しておく使命があるのだよ。限りなく「超人」に近しい存在だった彼らを、無思慮な悪意から守るためにもな』

「仰ることは……分かります。ですが大統領、なぜあなたはそれほどまでに彼らを……?」

 

 全てを見通していながら交渉材料にしようともせず、あくまで友好的な姿勢を示し続ける大統領。その真意が読めず、訝しげに目を細めている琴乃の言葉に、彼は神妙な表情を浮かべていた。

 

『なぜ……か。ミス・コマカド。君は、ヒーローになるための条件は何だと思う?』

「は……?」

『私は今でも(・・・)、それは「愛」だと思っている。理屈を超えた、無償の愛。私は、それを届けられるようなヒーローでいたい』

 

 やがて呟かれたのは、「愛」などという突飛な言葉。やるかやられるか、という激動の6年間を過ごして来た者達にとって、それほど信じられないものはない。

 その「愛」のために戦って来たウルトラマン達の背中を知る琴乃ですらも、大統領の言葉がどこまで本心なのかまでは推し量れず、ただ困惑するばかりであった。

 

『君も私と同じ気持ちであることを祈っているよ……ミス・コマカド。それでは、今日はこれで失礼する』

 

 それでも構わない。と言わんばかりに、大統領は微笑を浮かべて一方的に通信を切ってしまう。話し相手がいなくなり、静寂に包まれたブリーフィングルームに独り取り残された琴乃は、暫し天を仰ぐと。

 

「……言葉通りの意味であると、信じたいものですね。マスターソン大統領」

 

 せめて今からでも、彼の言葉が真実になるような世界に近付いて欲しいと、静かに祈るのだった。

 

 ――彼女はまだ、知らなかったのである。

 

 アメリカ合衆国大統領、スコット・マスターソン。かつては彼も、「ウルトラマンスコット」と呼ばれる光の巨人だったのだと。

 





【挿絵表示】

↑新人ウルトラマン達のヒロイン候補だった各国のBURK隊員。彼女達については最後まで掘り下げる機会を得られないままだったので、せめてビジュアルだけでも明らかにしておきたかったのです……(ノД`)

 今回は1987年のアニメ「ウルトラマンUSA」から、ウルトラマンスコットことスコット・マスターソンにご登場して頂きましたー(о´∀`о)
 過去作品の主役ヒーローだった人をめっちゃ偉い人として出す、という小ネタは拙作「仮面ライダーAP」でもやってたことなのですが、やっぱりそういうシチュエーションに燃えちゃうタチなので、今回もやらずにはいられませんですた(*´ω`*)


Ps
 劇場版仮面ライダーアギトの警視総監のシーンとかすごい好きでしたし……(*´꒳`*)


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女傑編 ウルトラガールズファイト 前編

◇今話の登場ヒロイン

駒門琴乃(こまかどことの)
 前隊長の弘原海(わだつみ)に代わり、現在のBURK日本支部の実戦部隊を率いている若き女性リーダー。6年間に渡ってウルトラ戦士達の戦いを支えて来た女傑であり、弘原海に対しては密かな愛情を寄せている。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女であり、実戦経験は非常に豊富。28歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

◇アメリア
 BURKアメリカ支部の戦闘機隊隊長であり、現在は日本支部の実戦部隊にも協力している、金髪碧眼の快活な爆乳美女。自身が不在の際は副官のエリー・ナカヤマ隊員に指揮を託している。ウルトラアキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)に惚れている。24歳。
 スリーサイズはバスト102cm、ウエスト60cm、ヒップ93cm。カップサイズはK。

◇イヴァンナ
 BURKロシア支部の戦車隊隊長であり、現在は日本支部の実戦部隊にも協力している、金髪ポニーテールのクールな爆乳美女。ウルトラマンザインこと椎名雄介(しいなゆうすけ)に惚れている。23歳。
 スリーサイズはバスト97cm、ウエスト59cm、ヒップ91cm。カップサイズはI。

凛風(リンファ)
 BURK中国支部の爆撃機隊隊長であり、現在は日本支部の実戦部隊にも協力している、黒髪三つ編みリングの勝ち気な爆乳美女。自身が不在の際は副官の劉静(リウジン)隊員に指揮を託している。ウルトラマンエナジーこと覇道尊(はどうたける)に惚れている。19歳。
 スリーサイズはバスト91cm、ウエスト57cm、ヒップ97cm。カップサイズはG。

◇オリヴィア
 BURKイギリス支部の艦隊司令官であり、現在は日本支部の実戦部隊にも協力している、金髪ロングヘアの穏やかな爆乳美少女。ウルトラマンアークこと八月朔日要(ほずみかなめ)に惚れている。16歳。
 スリーサイズはバスト88cm、ウエスト55cm、ヒップ90cm。カップサイズはF。

◇エレーヌ
 BURKフランス支部の歩兵隊隊長であり、現在は日本支部の実戦部隊にも協力している金髪ショートの生真面目な爆乳美少女。ウルトラマンジェムこと荒石磨貴(あらいしみがき)に惚れている。15歳。
 スリーサイズはバスト86cm、ウエスト54cm、ヒップ84cm。カップサイズはE。



 

 テンペラー軍団との激闘から、約半年。それほどの月日を経た頃にはすでに、復興を果たした東京は平和という「日常」を享受するようになっていた。

 

 怪獣の出現、BURKの緊急出動、そしてウルトラマンの登場。かつては「日常的」だったその「非日常」が、今となっては「懐かしさ」すら覚えるようにまでなっていたのである。それほどまでに、大衆の多くは平和の到来を実感するようになっていたのだ。

 

 だが。ウルトラマンの力が不要とされる新時代が来たと言っても、この平和が未来永劫不変のものであるという保証などない。

 故にBURKは地球人類最後の砦として、より精強であらねばならないのだ。例えこの先何が起ころうとも、地球の明日は地球人の手で守り抜かねばならないのだから。

 

 ◇

 

 ――東京郊外にひっそりと放置されている、廃ビルの一室。薄暗いそのフロアに繋がるドアが勢いよく蹴破られたのは、日曜日の昼下がりのことであった。

 

「全員動くなッ! ウルトラ平和防衛局『BURK』の名において、貴様達を拘束するッ!」

 

 制式光線銃のBURKガンを手に怒号を上げる、BURK新隊長の駒門琴乃(こまかどことの)。新型の戦闘服からはみ出しかけている、Lカップの爆乳がたわわに弾むと同時に――その凛とした声が、フロア全体に響き渡る。

 

 そんな彼女の気勢にビクッと肩を震わせて反応したのは、数名の宇宙人であった。「三面怪人」の異名を取る宇宙人――ダダは、仲間達と顔を見合わせて狼狽えている。

 彼らの手元には掌ほどの大きさに「縮小」された、「生きた人間の標本」が握られている。テンペラー軍団の襲来に乗じてこの星に潜入していた彼らは、攫った人間を「標本」にして母星に送り届ける計画を企んでいたのだ。

 

 その計画を察知した琴乃は、彼らの潜伏先となっていた廃ビルの存在を突き止め、一挙に制圧するべく突入作戦を敢行しているのである。光線銃を握る琴乃の眼は、悪を許さぬ気高き「正義」を宿していた。

 

「どこまでも卑劣な奴らめ……! さぁ、大人しくその人達を解放しろッ! 投降するならばこちらも人道的見地に則り、穏便に母星に送還――ッ!?」

 

 だが、降伏を迫る琴乃に向けられたのは――ミクロ化器の先端部だった。そこから放たれた光線を咄嗟に回避した琴乃は、爆乳と巨尻を弾ませながら体勢を立て直し、BURKガンを構える。

 

「ちッ……! やはり、一筋縄では行かないようだなッ!」

 

 人間をミクロ化させるダダの専用兵器。その光線を浴びて縮小されてしまえば、琴乃も今の被害者達と同じ「人間標本」にされてしまう。

 その脅威に冷や汗をかきながら、決裂は避けられないと判断した琴乃は一切の情けを捨て、BURKガンで応射し始めた。廃ビルの一室を舞台に、激しい銃撃戦が始まったのである。

 

「くッ……!」

 

 だが、ダダは数名掛かりで執拗に琴乃を狙っている。このままでは、多勢に無勢であった。ほどなくして琴乃は、壁際に追い詰められてしまう。

 鋭く目を細める彼女の白い頬を、冷や汗が伝う。その液体から漂う芳醇な女の香りに、異星人達は下卑た笑みを溢していた。

 

 じりじりと包囲するように迫り、ミクロ化器の集中砲火を浴びせようとする数名のダダ。しかし琴乃は、その窮地に立たされながらも不敵にほくそ笑んでいた。

 

「……ふん。どうやら、私達(・・)BURKを少々侮り過ぎているようだな?」

 

 その瞬間――琴乃が蹴破ったドアから、続々と「増援」が突入して来たのである。琴乃はダダ達を逆に包囲するため、敢えて単独行動を装っていたのだ。

 

 琴乃のものと同じBURKガンを手に、ダダ達を取り囲む5人の美女。彼女達は全員――世界各国の支部から出向して来た、エリート中のエリートであった。

 

 その豊穣な肉体に隙間無くぴっちりと張り付いている新型戦闘服が、彼女達の規格外なプロポーションをこれでもかと強調している。

 中には豊穣過ぎる乳房がスーツに収まり切らず、白く深い谷間が強調されている者もいた。そこから漂う甘い汗の香りが、この薄暗い一室を女の匂いで染め上げている。

 

「さっすが琴乃、作戦通りぃ! 自分から囮役を買って出るなんて、なかなかのガッツじゃない! ウルトラマン達の戦いに6年も付き合って来たって言うだけのことはあるようねっ!」

 

 艶やかな金髪とKカップの爆乳を揺らしている、快活なBURKアメリカ支部戦闘機隊隊長・アメリア。

 

「……全く、いつものことながらあなたは少々無謀過ぎます。少しは日本支部の隊長としての重責を自覚されては如何です? これでは、あなたの部下達もいつか心労で倒れてしまいますよ」

 

 ブロンドのポニーテールとIカップの果実を弾ませている、クールなBURKロシア支部戦車隊隊長・イヴァンナ。

 

「ま、私達に掛かればこんなミッション楽勝だから良いんだけどね! 白兵戦って言うのは本来私達の領分じゃあないけど……出来ないとはちっとも思ってないんだしッ!」

 

 三つ編みリングに結われた黒髪を靡かせながら、強気に胸を張ってGカップの乳房を主張させている、BURK中国支部爆撃機隊隊長・凛風(リンファ)

 

「それにしても……うふふっ、人間標本だなんて随分と恐ろしいことをお考えなのですね。……一方的に蹂躙される側の恐怖、というものを教えてあげる必要があるようですわ」

 

 金髪のロングヘアとFカップの乳房を揺らしながら、穏やかでありつつも殺気を纏った笑みを浮かべている、BURKイギリス支部艦隊司令官・オリヴィア。

 

「生きている人間を標本にするだなんて……人間としても、BURKとしても許せないッ! 琴乃、早く発砲許可をくださいッ! 私達に……こいつらを撃つ許可をッ!」

 

 そして。金髪のショートヘアを靡かせ、Eカップの双丘をぷるんと揺らし、真っ直ぐな眼差しでダダを射抜いている、BURKフランス支部歩兵隊隊長・エレーヌ。

 彼女達5人が突入して来るタイミングを待ち侘びていた琴乃は、誤射を避けるために伏せながら――声を上げる。

 

「待たせたな、皆! ――撃てぇえッ!」

 

 その叫びが、合図だった。地に伏せながらBURKガンを構える琴乃と共に、光線銃を握る5人の美女達は同時に引き金を引いたのである。

 

「……ウルトラマンさえ居なければ、強気に出れるとでも思ったか? 私達BURKを、地球人類を無礼(なめ)るな……!」

 

 反撃の暇も与えられず、何人ものダダが同時に撃ち抜かれたのはその直後だった。世界各国から結集したエリート美女達の銃撃は、卑劣な異星人の両脚を正確無比に撃ち抜いて見せたのである。

 

 発砲の瞬間にぶるんと弾んだ、美女達の爆乳が魅せる扇状的な躍動。それが、ダダ達が倒れる前に目にした最後の絶景であった。

 

 暁嵐真(あかつきらんま)椎名雄介(しいなゆうすけ)覇道尊(はどうたける)八月朔日要(ほずみかなめ)、そして荒石磨貴(あらいしみがき)

 彼ら5人の美男子達を何としても射止めたい、という一心でこの東京に残留している彼女達の結束の強さが、この一糸乱れぬ連携に表れている。

 

「……!? しまったッ! あいつ、超能力で壁を……!」

 

 だが、包囲射撃から運良く逃れた者が居たのか――辛うじて被弾を免れていた1人のダダが、コンクリート壁を通り抜けてこの場から逃走してしまう。

 




 今回はちょっと長めな小話になりましたので、前後編に分けることになりますた。続きは明日更新予定の後編になりますぞ! 明日もどうぞお楽しみにー!(`・ω・´)


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Ps
 「シン・ウルトラマン」ようやく観てきました! いやはや、まさかあれがああなってああなるとは……とにかく最高でした! (禍特対の超速台詞回しがほとんど理解出来なかったので)また観に行きますぞー!(*´ω`*)


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女傑編 ウルトラガールズファイト 後編

◇今話の登場ヒロイン

猫島菜緒(ねこしまなお)
 都内の大学に通う女子大生であり、同級生のウルトラマンアークこと八月朔日要に密かに想いを寄せている。ミスコンで優勝するほどの美少女でもあり、パルクールを得意としている。抜群のプロポーションと、艶やかな黒髪のポニーテールの持ち主。18歳。
 スリーサイズはバスト90cm、ウエスト54cm、ヒップ85cm。カップサイズはF。
 ※原案は黒子猫先生。

辻凪(つじなぎ)あやめ
 ウルトラアキレスこと暁嵐真の同僚に当たる女性教師であり、彼に仄かな想いを寄せている。漫画制作が趣味であり、「ツジーン」というペンネームでSNSに漫画を投稿しているらしい。黒のボブカットと、眼鏡を掛けた愛らしい容姿の持ち主。19歳。
 スリーサイズはバスト96cm、ウエスト58cm、ヒップ89cm。カップサイズはH。
 ※原案はリオンテイル先生。

風祭梨々子(かざまつりりりこ)
 ウルトラマンカイナこと風祭弓弦(かざまつりゆずる)の妻であり、新婚間も無いスタイル抜群の爆乳美女。BURK司令官の娘でもあり、黒髪のショートヘアの持ち主。22歳。
 スリーサイズはバスト105cm、ウエスト62cm、ヒップ94cm。カップサイズはJ。

尾瀬智花(おぜともか)
 風祭梨々子の親友であり、彼女とは学生時代からの付き合いである女子大生。ポニーテールに纏められた茶髪の持ち主。22歳。
 スリーサイズはバスト84cm、ウエスト56cm、ヒップ92cm。カップサイズはD。



 

「不味いぞ、このビルのすぐ近くには大通りがあるというのにッ……! 民間人への被害が拡大する前に、奴を捕らえねばッ!」

「急ぎましょう、皆ッ!」

「えぇ!」

「あいつッ、どこまでも往生際の悪いッ!」

 

 ビルの壁をすり抜けるという、超能力を活かしたダダの逃亡劇。その瞬間を目撃した6人の女傑達は、一目散に廃ビルの階段を駆け下り、逃げた最後のダダを追って走り出して行く。

 焦燥の汗を柔肌に伝わせる彼女達の甘く芳醇な匂いが、その薄い戦闘服の下で濃く深く熟成されていた。

 

 一方、ダダは敢えてすぐに遠くへと逃げようとはせず、廃ビルの1階に身を隠して琴乃達を待ち構えている。すでに屋外に脱出しているものと思い込んでいた彼女達が、背後を取られてしまったのはその直後だった。

 

「きゃあぁあッ!?」

「ひぁああッ!?」

「うぁああッ……!?」

「何ッ!? アメリア、凛風、イヴァンナッ!」

「あのダダ、後ろにッ……!」

 

 最も狙いやすい位置に居たアメリア、凛風、イヴァンナの3人が、無防備な背にミクロ化器の光線を撃ち込まれてしまう。

 眩い光に包まれた彼女達の姿が消えた瞬間、3人が身に付けていた戦闘服と光線銃が、その場に力無く落下していた。

 

『う、うそッ……!? 私達、小さくなって……し、しかも脱がされてるッ!?』

『いやぁあっ! ちょっ、何なのよこれぇッ!』

『きゃあぁあっ! き、貴様よくもッ……!』

 

 衣服や装備はそのままに、肉体だけを「縮小」されたアメリア達は、一矢纏わぬ姿でダダのカプセルに囚われてしまうのだった。白く豊満な爆乳をはじめとする、乙女としての「聖域」を懸命に手で隠す3人は、カプセルの中で可愛らしい悲鳴を上げる。

 

 一方、カプセルの上部にある通気口に顔を押し当てているダダは、そこから漂う芳醇な女の香りを鼻腔で堪能していた。ぴっちりと肉体に張り付いていたスーツを脱がされたことで、内側に籠っていた彼女達の汗の香りが、そのカプセル内にむわっと解き放たれている。

 

『や、やだっ、ここ最近ちゃんとシャワー浴びてないのにっ! 嵐真にだってまだ見られたことないのにぃっ!』

『ちょっ、やめっ、嗅ぐのやめなさいよこの変態ッ! 私の匂いを嗅いで良いのは、尊だけなんだからッ!』

『……こ、この異常性癖者めッ! 元に戻った暁には、必ずやこの手で蜂の巣にしてくれるッ! し、椎名殿にすらまだ見せていないというのに、何たる屈辱ッ……!』

 

 成熟した「大人」の肉体を持つ女傑達は特に匂いが「濃い」のだろう。地球人女性の体臭に強烈な知的好奇心を抱いているこのダダは、甘い汗の匂いが特に濃いアメリア達を優先的に狙っていたのだ。

 もし先頭を走っていたのが琴乃でなければ、何を置いても真っ先に彼女が狙われていた。女傑達の中でも一際芳醇な琴乃の匂いは、このダダにとっては最高級の研究材料なのだから。

 

「……こ、こいつだけは許しておけん……! 色々な意味で存在してはならん生物だ……! これ以上の『女の敵』が、かつて存在しただろうかッ……!?」

「わ、私、夢に出そうですわ……! この悍ましい生命体だけは、骨も残さず抹消せねばなりませんッ……! 要様、どうかオリヴィアをお守りくださいましッ……!」

「……よし殺しましょう、今すぐ殺しましょう! 大丈夫ですよ、多分磨貴様もそう仰るでしょうからッ!」

 

 下卑た笑い声を漏らしながら、アメリア達の芳しい香りを貪欲に嗅ぎ回るダダの姿。

 それを目にした琴乃、オリヴィア、エレーヌの3人は、テンペラー軍団よりも遥かに恐ろしいものを見たかのような表情で、頬を引き攣らせていた。

 

 我に帰った彼女達は即座に光線銃を構えると、殺意を込めた一閃を撃ち放つ。だが、間一髪その射撃をかわしたダダは再び超能力でコンクリート壁を通り抜け、琴乃達の前から姿を消してしまった。

 

「くッ……! 奴め、また超能力でッ……!」

「琴乃様、すぐに追わないとアメリア様達が……! アメリア様達の女性としての尊厳その他諸々がッ……!」

「分かっている! オリヴィア、エレーヌ、急ぐぞッ!」

「……はいッ!」

 

 だが仲間達が囚われている以上、何としても見失うわけにはいかない。琴乃達は危険を承知で光線銃を手に、ダダを追って走り出していく。

 

 一方――廃ビルを後にして、複雑に入り組んでいる路地裏の中を無軌道に走り回っているダダは、なんとか琴乃達の追跡から逃れようとしている。

 だが、その背後を巧みな体術で追い続けている「民間人」が居た。

 

「……ははーん、BURKに追われてるってことは悪い宇宙人ってことよね? もし捕まえちゃったりしたら、まーたバズっちゃうかなぁっ! 私っ!」

 

 ミスコン優勝者にして、パルクールの達人でもある猫島菜緒(ねこしまなお)。ポニーテールの黒髪を猫の尾のように弾ませ、Fカップの巨乳をぷるんと揺らしている彼女は、狭い路地裏の中でも全く減速することなくダダの背後を追跡している。

 

 身体のラインを剥き出しにしているスパッツの上にアロハシャツを羽織っているだけ、という大胆な格好で地を蹴っている彼女の巨尻も、ぷるぷると扇情的に弾んでいた。

 

 パルクールの練習中、偶然にもBURKガンの銃声を耳にしていた彼女は、ダダがコンクリート壁を通り抜けて逃走する瞬間を目撃していたのだ。

 

(要君、見ててね……! 私だって、負けないからっ!)

 

 想い人である八月朔日要に良い所を見せたい、という一心で磨き上げた体術を武器に。菜緒はさながらくノ一の如く、縦横無尽に路地裏を駆け抜けていた。

 

 巨乳と巨尻をぷるんと躍動させて、軽やかに地を蹴る菜緒の豊満な肉体。その柔肌から飛び散る健康的な汗からは、甘い女の匂いが放たれていた。

 その匂いから民間人による追跡に気付いたダダは、道中に置かれていたゴミ箱やパイプを倒して追跡を断念させようとする。だが菜緒はその全てを軽やかに飛び越し、一瞬たりとも立ち止まることなく疾走していた。

 

「よっ、とっ、甘い甘いっ! そんなんじゃあ、この菜緒ちゃん様の進撃は止められないなぁっ!」

 

 その光景に動揺しながらも、ダダはなんとか路地裏を抜け、大通りに出ようとする。だがその先には、通り掛かった一般人の姿があった。

 黒のボブカットを靡かせる、カジュアルな私服姿の眼鏡美女。その美貌とたわわに実ったHカップの乳房を目にした菜緒は、慌てて声を上げる。

 

「あっ!? そ、そこのお姉さん避けてっ! 宇宙人が来ちゃうよぉっ!」

「えっ……!? きゃあぁあっ!?」

 

 だが、もう遅い。大通りに脱出しようとしていたダダは「邪魔な通行人」を排除するべく、ミクロ化器の先端部を向ける。

 一方、突如宇宙人に遭遇してしまった女性教師――辻凪(つじなぎ)あやめは、恐怖のあまり思わず尻餅をついてしまう。さらに彼女はその弾みで、胸に抱えていた「新作漫画」の原稿を宙に放り出していた。

 

「い、いやぁあっ! 暁先生ぇえっ!」

 

 そして咄嗟に、想い人である暁嵐真の名を叫んだ彼女は――顔を手で覆い、その場にうずくまってしまった。だがその行動こそが、ダダの運命を大きく分けたのだ。

 

 放り出された原稿用紙で視界を塞がれたダダは、立ち止まる暇もなく躓いてしまい。うずくまったあやめの真上を飛び越すように、盛大に転倒してしまったのである。

 そしてダダが転倒した先は――歩道の先にある、「車道」であった。

 

「あっ」

「えっ」

 

 そんな間抜けな声を、菜緒とあやめが発した瞬間。車道に飛び出したダダはさらに、通り掛かった一般車に跳ね飛ばされてしまったのだった。

 鈍い衝撃音と共に激しく吹き飛び、路肩付近のゴミ箱の中へと頭から墜落した哀れな宇宙人。その末路を見届けた菜緒とあやめは、何とも言えない表情を浮かべている。

 

「ちょ、ちょっとあの宇宙人大丈夫!? いきなり車道に飛び出して来たんだけど……!」

「い、一体何があったの……!?」

 

 白塗りの一般車に追突されたダダは、ゴミ箱の中でピクピクと痙攣している。どうやら辛うじて一命は取り留めているようだが、もう抵抗出来る状態ではないのだろう。

 一方、一般車に乗っていた2人の巨乳美女は、乳房を揺らしながら慌てて車から飛び出していた。風祭弓弦(かざまつりゆずる) の妻である風祭梨々子(かざまつりりりこ)と、その親友である尾瀬智花(おぜともか)だ。

 

「よ、よく見たらアイツ……BURKが指名手配してた『ダダ』って奴じゃん! と、とにかくBURKに通報しないと……!」

「う、うんっ……!」

 

 学生時代を懐かしむように2人でドライブを楽しんでいた最中に起きた、突然の大事故。その当事者となってしまった彼女達は動揺しながら顔を見合わせている。

 

 ――JカップとDカップというたわわな果実とその美貌に目を奪われた男達から、しつこく付き纏われたことは何度もある。

 特に梨々子は、数多の男達から絶え間なくその豊穣な肉体を狙われ、性的な欲望の標的にされて来た経験もあるのだ。

 

 いつも彼女の傍に立ち、その柔肌を男達から守り抜いていた弓弦の存在が無ければ、今頃どうなっていたかなど想像もつかない。

 そんな苦い経験の数々に比べれば、多少のトラブルに動じることなどないのである……が、ドライブ中にいきなり宇宙人が飛び出して来るという事態はさすがに予想外だったのだ。事故の瞬間を目の当たりにした菜緒とあやめも、どうしたものかと途方に暮れている。

 

「居たぞ、ダダを発見したッ! 直ちに確保だッ!」

 

 そして、この事態にざわめく野次馬達の騒ぎを耳にして。ようやく、琴乃達が到着した。

 息を切らして駆け付けて来た美女達の肉体から漂う甘美な汗の香りが、この空間の匂いをより甘く染め上げている。

 

「よし、これで全員確保だな! ……って、梨々子お嬢様!?」

「えっ……琴乃さん!? こんなところで何してるんですかっ!?」

 

 一方。オリヴィアとエレーヌによってゴミ箱から引き抜かれ、取り押さえられていくダダを尻目に。思わぬところで鉢合わせた琴乃と梨々子は、互いに瞠目していた。

 

 ――かくして、民間人達の協力(?)によって捕縛されたダダは、敢え無く御用となるのだった。アメリア達3人を含めた、ミクロ化器による被害者達も無事に救出され、事件はようやく解決したのである。

 

 その後、BURK本部へと連行されて行くダダ達を見送っていた女傑達の眼が、汚物を見るかのような冷酷さを帯びていたことは……言うまでも無いだろう。

 さらに、スタイル抜群な美女達の鮮やかな逮捕劇……という光景は野次馬達によってSNSで全世界に拡散され、大いに注目を集めることになった。彼女達は一躍、世間の話題を独占する時の人となったのである。

 

 ちなみに、梨々子と智花が起こした事故は琴乃達の対応を経て不問とされたが、車の修理費用は持ち主である弓弦が支払うことになった。知らない間に愛車が凹んでいた弓弦と5人の「後輩達」は後日、女傑達のニュースをテレビで眺めながら、何とも言えない表情を浮かべていた。

 行きつけの喫茶店で深々とため息をつく彼らの前に、不味いコーヒーが出されたのはそれから間も無くのことであり。店長の弘原海(わだつみ)と、元BURK隊員の従業員・望月珠子(もちづきたまこ)は、そんな「元ウルトラマン」達の様子に顔を見合わせ、苦笑いを浮かべていた。

 

 そして、この事件をきっかけに知り合うことになった女傑達は――やがてプライベートでも親交を持つようになり、互いの惚気話や愚痴で盛り上がる日々を共有するようになって行くのだった。

 

 ただ――その中に恋敵(ライバル)がいると知った一部の女傑達は、熾烈な恋の鞘当てを繰り広げることになるのだが。それはまた、別のお話である。

 

 ◇

 

「えっ、この漫画……もしかしてお姉さん、あの『ツジーン』先生なんですかっ!? あの、私先生の大ファンなんですっ! 今度のコミケで先生のキャラのコスプレもしようと思ってて……! あ、あの、もし良かったらサインとか貰ってもいいですかっ!?」

「ひぃっ!? わ、分かりました、分かりましたから大声でその名前は出さないでくださいぃっ! リアルバレはマズイんですぅ〜っ!」

「……しかし猫島君、我々BURKに協力してくれたのは有り難いのだが、その格好は少し大胆過ぎるのではないか? 周りの野次馬達の目線もある、少しは身体のラインを隠した方がいいぞ」

「いや、あなた達にだけは言われたくないんですけど……」

 




 読了ありがとうございました! 今回は読者応募キャラも含め、ヒロインキャラにのみ焦点を絞ったお話となりましたね。黒子猫先生、リオンテイル先生、考案ありがとうございました!(о´∀`о)


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Ps
 ウルトラマンFEシリーズ新作はよ!( ゚д゚)(エアプ勢並感


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女傑編 ウルトラビートルファイト

◇今話の登場人物及び登場メカ

◇ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス
 BURKスペイン支部から教導のため来日していた女性パイロットであり、可憐で小柄な外見からは想像もつかないほどの経験を積んで来たベテラン。37歳。
 スリーサイズはバスト72cm、ウエスト50cm、ヒップ79cm。カップサイズはA。
 ※原案はただのおじさん先生。

◇BURKビートル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。爆撃機としての機能も備えており、駒門琴乃(こまかどことの)、アメリア、凛風(リンファ)の3名が搭乗する。


【挿絵表示】




 

 ――ダダの一件を通じて、BURKの女傑達と知り合うようになってから約1ヶ月後。

 新作漫画のための「取材」として、辻凪(つじなぎ)あやめはこの日――BURKの新型主力戦闘機「BURKビートル」に乗り込み、とある森林地帯の上空を飛行していた。

 

「す、すみません皆さん。まさか私なんかのために、こうして取材の場を設けてくださるなんて……」

 

 後部座席で肩を縮ませている彼女は、おずおずと口を開いている。その視線の先には、指揮官席と操縦席に座している3人の美女達が居た。

 頼もしいBURKの主力隊員であり、あやめの友人でもある彼女達は、艶やかな口元をふっと緩めている。

 

「気にするな、あやめ。梨々子(りりこ)お嬢様の頼みでもあるし……私達の仲でもあるからな」

 

 メタリックイエローとシルバーを基調とするBURKビートル。その流線形の機体を操縦している駒門琴乃(こまかどことの)は、戦闘服の下から激しく主張しているLカップの爆乳を揺らしながら優しげに微笑んでいる。

 

「それに今回の漫画はBURKの広報用アカウントに掲載するんでしょ? それなら、公私混同ってことにはならないわ。これも立派なお仕事ってことよっ!」

「大丈夫大丈夫、私達が付いてるんだから、心配することなんてないわ。中国支部最強パイロットの凛風(リンファ)様に、どーんと任せちゃいなさいっ!」

「あ、ありがとうございます、皆さん……!」

 

 その両脇の席に座っているアメリアと凛風(リンファ)も、溌剌とした笑顔であやめを受け入れていた。KカップとGカップの豊穣な乳房は、今日もゆさゆさと揺れている。

 そんな彼女達の言葉にほっと胸を撫で下ろしたあやめは、ようやく少しだけ緊張がほぐれたのか、優しげな笑みを浮かべるようになっていた。

 

「……それは良いんだけどよぉ。何でこの俺が後部座席なんだよっ! 俺だって一端の戦闘機(ファイター)パイロットなんだぞっ!」

 

 ――その一方で。あやめが膝の上に乗せている金髪の小柄な少女らしき(・・・)女性隊員は、不満げに頬を膨らませていた。

 彼女の名は、ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス。BURKスペイン支部からはるばる教導に来ていたベテラン(・・・・)パイロットであり、その可憐で幼い外見からは想像もつかない経験を積んで来た女傑の1人……なのだが。

 

「仕方ないだろう、クーカ。民間人のあやめでは、万一の時のための脱出装置を使いこなすのは難しいんだ」

「そーそー! BURK隊員たるもの、民間人の安全はしっかり守ってあげないとねー?」

「ベテラン様はそこでゆっくり寛いでるのがお似合いだもんねぇー?」

「こ、このっ、カラダだけいっちょ前なガキ共がぁ……! 帰投したら覚えとけよぉ……!」

「あ、あはは……」

 

 琴乃の言う通り、脱出装置を扱えないあやめを万一の際にサポートするためとして、今回は彼女の膝の上にちょこんと座っている状態なのだ。

 あやめ以上に小柄なクーカはどれほど凄んでも威厳が皆無であり、涙目になりながら膨れている彼女を肩越しに一瞥しているアメリアと凛風は、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべていた。ぷるぷると顔を赤らめているクーカを宥めるように、あやめは苦笑いを零しながらも、彼女の頭を優しく撫でている。

 

「全くあいつらは……! あやめ! お前のことは俺が守ってやるから、お前もしっかり自分の仕事をこなすんだぞっ!」

「は、はいっ! ……ありがとうございます、クーカさん」

 

 ――あやめの友人であり、BURK司令官の娘でもある風祭梨々子(かざまつりりりこ)。彼女からの提案でBURKのプロモーション漫画を描くことになったあやめは、特別にBURKビートルに乗り込むことになったのである。

 BURKビートルはテンペラー軍団との戦いの後に開発された最新型の戦闘機であり、当然ながらあやめはこの機体に搭乗した初めての民間人となる。その事実に震えながらも、彼女はこのチャンスをものにすべく懸命に、機内から見える全ての景色をスケッチしていた。

 

「……でもさぁ、こーんな退屈な哨戒任務なんてちゃんとしたネタになるの? どうせなら怪獣との戦闘を見せてあげたかったわねぇ。絶対イイ画になるのに」

「馬鹿を言うなアメリア、そもそもこの機体に民間人を乗せるということ自体が特例中の特例なのだぞ。……それに、そんな危険な現場にあやめを連れて行けるはずがなかろう」

「そりゃあ確かにそうなんだけど、アメリアの言うこともちょっと分かるわ。ねぇあやめ、あなたとしてはその辺どうなの?」

 

 アメリアの発言を嗜めている琴乃の隣では、凛風が複雑な表情を浮かべていた。今回あやめが同行しているのは比較的安全な哨戒任務であり、戦闘になる可能性は非常に低い。

 だからこそ同行の許可が降りたのだが、この哨戒任務が退屈でたまらないアメリアとしては、漫画の取材として成り立つのかという懸念もあったのだ。そんな彼女の思いを汲んだ凛風の言葉に暫し考え込んだ後、あやめは意を決したように顔を上げる。

 

「……確かに、皆さんが実際に戦ってる場面を見ることが出来たら、凄くカッコいい画になるなぁって思います。でも今回頂いた案件は、皆さんの『普段のお仕事』をPRするための作品なんです」

「……!」

「アメリアさん達にとっては退屈でも、それはとても大切なお仕事なんだってことを皆に伝えるための漫画を書く。それが私のお仕事なんですから、心配しないでください! せっかく頂いたチャンスなんですから、しっかりネタにして見せますっ!」

「……なんだか、自分が言ってたことが急に恥ずかしくなってきたわ」

「……あんたよりよっぽどまともなこと言ってるわね、この子」

「お前達、少しは彼女を見習ったらどうなんだ。……各支部最強の名が泣くぞ、全く」

「やれやれ……やっぱりカラダだけのお子ちゃまだよ、お前らは……」

 

 あくまで「普段のお仕事」を描くのが目的なのだから無理に魅せる必要はない。そうせずとも民間人の読み手には新鮮に伝わるのだから、飾らず自然体でいて欲しい。

 その旨を語るあやめの言葉に嘆息するアメリアと凛風は、なんとも言えない表情を浮かべていた。そしてそんな2人に、琴乃とクーカが深々とため息をついた――その時。

 

「……!? あれはッ!」

 

 森林地帯を彩る深緑の木々が、大地を迫り上げる「何か」に薙ぎ倒され始めたのである。その光景を目にした琴乃が声を上げた瞬間、地を裂く轟音と激しい土埃と共に――「何か」がそこから這い出て来た。

 

「琴乃、あれってまさか……!?」

「くそッ、よりによってこんな時に……!」

 

 地中から突如出現したその「何か」とは――「凶暴怪獣」の異名を取る、アーストロンだったのである。長らく地中で眠っていた怪獣が、この地で目覚めてしまったのだ。

 

 この次元の宇宙において、最凶最悪と恐れられてきたテンペラー軍団が、6人のウルトラ戦士とBURKによって倒されてから約半年。

 地球の戦力に恐れをなした外宇宙の異星人達は、そのほとんどがすでに侵略を諦めるようになっていたのだが。それ以前から地球に潜んでいた異星人や怪獣達は、今も地球に残ったままとなっているのだ。このアーストロンも、その内の1体なのである。

 

「あれは凶暴怪獣アーストロン……! こんなところで眠り続けてたっていうの!? あぁもうっ、こっちにはあやめが居るっていうのにっ……!」

「おいおい、早速俺の出番になっちまうのかよッ!」

 

 こうした個体が突如出現しては暴れ出すという事件はさほど珍しくもなく、その度にBURKが対処に当たっているのだが――今回はよりによって、民間人のあやめが同行している状況なのだ。

 最悪のタイミングで怪獣と遭遇してしまったことに、凛風とクーカは悔しげな表情を浮かべる。

 

 普段なら即座に攻撃を仕掛けているところなのだが、あやめを危険に晒すわけにもいかない。

 それにアーストロンには、その大顎から吐き出す「マグマ光線」という、強力な飛び道具もあるのだ。万一撃墜されるようなことがあれば、あやめを死なせてしまうことにもなりかねない。

 

「琴乃、速く奴を倒してしまわないと街に被害が出るわ! 前翼部のレーザー砲を使うわよ!?」

「待て、あやめを一旦安全な場所に降ろすのが先だ! 私は機長として、彼女を戦闘に巻き込むわけには……!」

「私達だってそうしたいわよっ! でもっ……!」

 

 だが手をこまねいていては、暴走しているアーストロンが森林地帯を抜けてしまう可能性もある。それで市街地に被害が及ぶようなことになれば、本末転倒だ。

 

「……私なら大丈夫です! 琴乃さん、アメリアさん、凛風さん……戦ってください!」

「……! あやめ……」

「私、信じてますから! BURK最強の皆さんなら……絶対、勝ってくれるって!」

 

 その葛藤を抱える3人の背に、凛々しい声を掛けたのは――あやめだった。スケッチブックとクーカを強く抱き締めながら、勇ましい表情で自分達を見つめている彼女の眼に、琴乃達はハッとした表情を浮かべる。

 

「……ふっ。どうやら今度は、この私が彼女に教えられてしまったようだな。アメリア、凛風! 急降下攻撃で一気に奴を仕留めるぞッ!」

「オッケー! あやめ、しっかり掴まってなさいッ!」

「私達が、最っ高にカッコいい画を見せてあげるわッ!」

「……はいッ! お願いしますッ!」

 

 やがてBURK隊員として、戦乙女としての貌に戻った彼女達は、意を決したように各席の操縦桿を握り締めていた。もはや、迷いはない。

 

「……おおぉおおーッ!」

 

 琴乃の操縦によって急上昇したBURKビートルは遥か天空で宙返りすると、そのまま一気に急降下して行く。

 その凄まじい風切り音から「敵」の接近を感知したアーストロンは、真上に向かってマグマ光線を放つが――琴乃が操るBURKビートルの機体は、その悉くを紙一重で回避していた。

 

「無駄だアーストロン、お前のデータはすでに分かり切っているッ! アメリア、頼むぞッ!」

「任せなさいッ!」

 

 無数の熱線を巧みにかわしながら、急降下を続けるBURKビートル。その機体の前翼部に搭載されているレーザー砲が、一気に火を噴いた。

 射手を担当するアメリアの正確無比な狙いにより、そのレーザーはアーストロンの一角を焼き切り、怪獣の全身を隈無く撃ち抜いていく。悲鳴を上げてのたうち回る凶暴怪獣は、すでに瀕死となっていた。

 

「凛風、奴にとどめだッ! 急上昇の瞬間に仕掛けるぞ、タイミングを合わせられるかッ!?」

「当然よ、この私を誰だと思ってるのッ!」

 

 だが、まだ油断は出来ない。最後の最後まで、攻撃の手を緩めないのがBURKの基本戦術なのだ。

 地表に激突する寸前のところで一気に操縦桿を引き戻し、BURKビートルの機体を上昇させる瞬間。凛風の操作によって機体下部から投下された爆弾が、倒れたアーストロンの大顎に直撃する。

 

「……決まった!」

 

 そして。戦況を見守っていたクーカが声を上げるのと同時に、空高く舞い上がったBURKビートルがアーストロンを背にした瞬間。

 凶暴怪獣は爆発四散し、跡形もなく消し飛んで行くのだった。

 

「アーストロン、完全に沈黙……私達の勝利だな」

「よぉおしっ、今日もパーフェクトに決まったわねっ! あやめ、しっかり見てたっ!?」

「これでつまらない漫画なんて描いたりしたら、承知しないわよっ!」

「俺達みんな、楽しみにしてっからよっ!」

「……はいっ! 私、頑張りますねっ! 皆さん、本当にありがとうございましたっ!」

 

 天高く立ち昇る爆炎を肩越しに見遣る琴乃達は、その光景に自分達の勝利を確信し、ほっと息を吐き出している。どうやら、予定よりも遥かにダイナミックな取材になったようだ。

 しかし、その甲斐は十分にあったのだろう。夕焼けに照らされながら帰路についているBURKビートルの機内では、戦いを終えた美女達が華やかな笑顔を咲かせていたのだから――。

 

 ◇

 

 ――それから、約1週間後。

 SNSで人気を博しているWEB漫画家「ツジーン」が、BURKの広報用アカウントで公開した新作漫画は爆発的に拡散され、期待以上の人気を博したのだが。

 それを目にした一部の美少女達からは、密かに不満の声が上がっていたらしい。

 

「……確かに素晴らしい漫画です。我々の日常を写実的に描き出した、見事な芸術作品です。ただ……BURKビートルでアーストロンを撃破した場面以外が、悉く地味なのですが。私達の仕事を描いている場面が、凄まじく地味なのですが……!」

「だってしょうがないじゃない。あの子がエレーヌ達のところに取材に行ってた時は、ほんとに何も起こらなかったんだもの。今回の漫画はノンフィクションなんだから、盛るわけにもいかないし」

「俺なんてずっと後部座席に居たから、漫画の中じゃあマスコット扱いだったんだぞ! ちくしょう、あやめの奴〜っ!」

「ふふっ、なるほどなるほど……! よく分かりました……! ならば『何か』が起きた時、あやめ様には是非とも再び取材に来て頂かなくては……!」

「……お前達、毎度毎度いい加減にせんかぁーっ!」

「や、やばいっ! 琴乃がキレたわ! 逃げるわよ皆〜っ!」

 




 今回も読了ありがとうございました! 今話はBURKの新メカ・BURKビートルを主役としつつ、またしても琴乃達にスポットを当てるお話となりました。BURKビートルの見た目は色以外、ほぼジェットビートルそのまんまだと思って頂いてOKです_(:3 」∠)_
 次週にはイヴァンナ、オリヴィア、エレーヌの3人にも見せ場があるお話をお届けする予定ですぞ。ではではっ!٩( 'ω' )و


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Ps
 ウルトラホークの昔のプラモにはセブンの飛び人形キットも付属しているのですが、そのセブンの顔のディテールがなんとも味わい深いのですよ。ブルマァク時代のソフビを想起させる、なんとも面白い面構えなのです(*´꒳`*)


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女傑編 ウルトラバークファイト 前編

◇今話の登場メカ

◇BURKライフル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型突撃光線銃。従来の光線銃を遥かに上回る威力を持ち、エレーヌが携行する。

◇BURKアルマータ
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型主力戦車。山を突き崩すほどの強力な主砲を搭載しており、イヴァンナが指揮を取る。
 ※原案は俊泊先生。



 

 恐竜戦車地球降下事件に端を発する、6年間にも渡って繰り広げられた侵略者達との戦争。

 その真の元凶たるテンペラー軍団が6人のウルトラ戦士とBURKによって撃滅されたことで、地球に恐れを成した他の侵略者達はその星を自然と避けるようになっていた。長い戦いの果てに、地球はようやく平和への第一歩を踏み出したのである。

 

 ――だが。人類がその戦果を地球に齎したのは、ウルトラ戦士が居たからに過ぎない。6人の戦士達が地球を去った今、恐れるものなど何もない。

 一部の異星人達の中にはそんな「勘違い」を是正する機会もないまま、愚かにも地球侵略を企てる者達も居た。人間標本の収穫に勤しんでいたダダ達の他にも、そのような愚か者達が牙を研ぎ澄ましていたのである――。

 

 ◇

 

 とある山岳地帯の地下深くに存在する、謎の秘密基地。その最奥にある薄暗い一室で、白衣を纏った男達が下卑た笑みを浮かべていた。

 

「ククク……栄光あるBURKの皆様、ご気分の程はいかがですかな?」

 

 そのうちの1人の男が厭らしく嗤う先には――アイソレーション・タンクのようなカプセルがあった。妖しい輝きを放つカプセル内の薬液には、3人の爆乳美女があられもない姿で浸されている。

 

「……最悪だな、キル星人。洗脳用の薬液だと聞いているが、私達が受けて来た耐毒訓練はこんなものの比ではなかったのだ。思い通りに行かず、残念だったな……!」

「私達に手を出したこと……絶対に後悔させてやるわ。もう謝ったって、手遅れよ……!」

「BURKを無礼(なめ)た代償は、高く付くわ……! 今に見てなさい、このゲス共ッ!」

 

 駒門琴乃、アメリア、凛風。彼女達はそのカプセル内に仰向けで浸されたまま、キッと鋭い眼差しで男達を睨み付けていた。頬は羞恥の色に染まっているが、その眼は気高いBURKの隊員としての誇りに燃えている。

 

 ――某山岳地帯の地下に、地球侵略を目論むキル星人が潜伏している。その情報をキャッチした琴乃達3人は威力偵察のため潜入を試みていたのだが、キル星人の罠に嵌められ捕らえられてしまったのだ。

 だが、人間の理性を数秒で溶かすという洗脳用の薬液に浸されながらも、彼女達はBURKとしての誇りを頼りに己の尊厳を保ち続けている。すでに薬液のカプセルに入れられてから1時間以上が経過しているというのに、彼女達は全く屈していない。

 

「ふっふっふ、それならそれで結構……。簡単に屈してしまっても、それはそれでつまらないですからねぇ?」

「ですが、あなた達に勝ち目はありませんよ……耐性があると言っても、無力出来るわけではないのです」

「なので……私達はここで、あなた達が隷従を誓う瞬間をゆっくり待つとしましょう。ふふふっ……」

「くッ……!」

「こ、このッ……調子に乗ってッ!」

「絶対に、絶対に許さないからッ……!」

 

 一方、琴乃達を捕らえている男達――キル星人の科学者達は、そんな彼女達の姿を虚勢に過ぎないと侮っていた。

 

 彼らは得意げな笑みを浮かべてカプセルに歩み寄ると、琴乃達の肉体から漂う甘美な雌の芳香を鼻腔で堪能しながら、その下顎を指先でくいっと持ち上げている。彼女達の瑞々しい柔肌を味わうように、白い頬を粘ついた舌でべろりと舐め上げる者もいた。

 柔肌をなぞり上げて来る指の感触。頬を這い回る厭らしい舌先。体臭を嗅ぎ回って来る鼻先の動き。その全てに女傑達は激しい屈辱と嫌悪、そして憤怒を覚えていた。

 

 洗脳薬液への耐性の強さは本物のようだが、それも所詮は時間の問題。今に自分達に従順な奴隷となり、地球侵略の尖兵として働いてくれるようになる。キル星人達は皆、それを確信しているのだ。

 

「……ふんっ、どこまでも詰めの甘い奴らめ。今のBURKの主力が、私達だけだとでも思ったか?」

「何ィ……?」

 

 それでも、琴乃達は諦めない。彼女達にはまだ、頼れる仲間がいる。キル星人達がそれを思い知ったのは、それから間も無くのことであった。

 

「……ッ!? な、なんだこの揺れはッ! 地震かッ!? ええい、地震大国はこれだから……!」

「ち、違います……! これは砲撃ですッ! BURKの砲撃がこの基地の上にッ!」

「な、なんだとォ!?」

 

 突如、この地下秘密基地に強烈な振動が襲い掛かって来たのである。先ほどまで余裕綽々といった様子で琴乃達を見下していた科学者達は、予期せぬ事態に慌てふためいていた。

 そして、振動の弾みでカプセルが倒れてしまい――琴乃達の白く豊穣な肉体が、薬液の外へと放り出されてしまう。Lカップ、Kカップ、そしてGカップの双丘が、たわわに躍動していた。

 

「……私達を、BURKを無礼(なめ)た。それが貴様らの、最大の敗因だ」

 

 反撃の機は熟した。爆乳を揺らしている女傑達の鋭い眼光が、そう語っている。

 

「……ふんッ!」

「はぁあッ!」

「とりゃああッ!」

「ぐはぁあッ!? き、貴様らッ……!」

 

 そしてカプセルの外に転がり出た瞬間、地を踏み締めて飛び出した琴乃達の美しい回し蹴りが、科学者達の延髄に炸裂した。その反動で、女傑達のむっちりとした巨尻もぷるんと弾んでいる。

 鮮やかな弧を描くように放たれた、白く肉感的な美脚による強烈な一撃。それを急所に浴びてしまった科学者達は瞬く間に意識を刈り取られ、その場に倒れ伏してしまった。

 

 彼らが着ていた白衣を素早く奪い取り、白く豊満な柔肌の上に羽織った女傑達は――これまでの屈辱を怒りに変えて、恐れ慄くキル星人達を睨み付ける。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「貴様ら……もうタダでは済まさんぞッ!」

「ひ、ひぎゃあぁーッ!」

 

 彼女達の白く艶やかな脚と、ピンと伸びた優美な爪先が再び弧を描き。この一室にいるキル星人達を1人残らず叩き伏せるまで、そう時間は掛からなかった。

 白い爆乳と巨尻を揺らして蹴りを放つ彼女達の華麗な脚技は、邪悪な異星人達をものの数分で叩きのめしてしまったのである。この一室につながる自動ドアが開かれたのは、その直後のことだった。

 

「琴乃様、アメリア様、凛風様! ご無事でしたかッ!?」

 

 雄の情欲を煽る、扇情的なボディライン。白くたたわな双丘に、安産型のむっちりとした巨尻。

 その全てをありのままに浮き立たせている、極薄の新型戦闘服に袖を通したエレーヌが、新型突撃光線銃「BURKライフル」を抱えてこの一室に駆け付けて来たのである。

 

 琴乃達の定時連絡が途絶えたことから状況を察した彼女達が、救出作戦を実行していたのだ。

 フランス支部が新たに開発したという、携帯性に秀でたブルパップ型の新型光線銃。そのBURKライフルを抱えている彼女は、混乱に乗じて一気にこのフロアまで突入して来たのである。白兵戦に秀でている彼女との合流を果たした琴乃達は、その心強さに安堵の表情を浮かべていた。

 

「エレーヌ、よく来てくれた! 無事とは言い切れんかも知れんが、問題はない! アメリア、凛風、直ちに脱出するぞッ!」

「了解っ! ……ちょっと蹴り足りなかったけど、この辺で勘弁しておいてあげるわ」

「……跡形もなく消えちゃうんじゃあ、蹴りようもないわね。最後の最後まで、忌々しい連中だわ」

 

 エレーヌから副兵装(サイドアーム)のBURKガンを受け取ってすぐに、白衣を翻して走り出していく琴乃。そんな彼女に続き、アメリアと凛風もその場を後にする。絶命に伴い消滅していくキル星人達を、汚物を見るような眼で一瞥しながら。

 

 ◇

 

 白い爆乳と巨尻をばるんばるんと弾ませ、汗ばむ肉体から甘い匂いを絶えず振り撒き。くびれた腰を左右に振りながら、地上に続く螺旋階段を駆け登っていく琴乃達。

 そんな彼女達の眼に、あるものが飛び込んで来た瞬間――4人の女傑は、思わず息を呑んでいた。

 

「あれは……!」

「……私も潜入する途中であれを見付けた時は、驚かされました。キル星人め、まさかあんなものまで……!」

 

 基地の格納庫で眠っている、キル星人達の「切り札」。それはまさしく、6年前に地球に飛来して来たものと同じ――恐竜戦車だったのだ。

 

「き、貴様らいつの間に……ぐはぁッ!?」

「失せなさい下衆共、私達の邪魔はさせませんッ!」

 

 行手を阻むキル星人の兵士達をBURKライフルで矢継ぎ早に撃ち倒しながら、琴乃達を連れて地上を目指しているエレーヌも、恐竜戦車の巨躯を前に険呑な表情を浮かべている。絶命と共に消滅していくキル星人達を冷たく見下ろしている彼女は、素早くグリップの後ろにあるエネルギー弾倉を再装填(リロード)していた。

 

「おのれッ……地球人の雌豚共がッ! こうなればもう一度全員ひっ捕らえて、2度と逆らえなくなるまで徹底的に嬲り尽くして――がはぁあッ!?」

「皆様、急ぎましょう! あの怪獣の始末は、私達が脱出した後ですッ!」

「……そうね、今はここを出るのが先決だわ。行くわよ皆ッ!」

 

 白く柔らかなEカップの乳房と、戦闘服の上からでもはっきりと形が分かる豊穣な巨尻は、エレーヌが引き金を引く度にその反動で何度もぷるぷると弾んでいた。張り詰めた胸元の谷間からは、しとどに汗ばんでいる彼女の甘い匂いがふわりと広がっている。だが、その芳醇な汗の香りに惑わされたキル星人の兵士達は、女だと侮る暇もなく眉間を撃ち抜かれていた。

 彼女の言葉に背を押されたアメリアと凛風は、白衣をはためかせてさらに地上へと駆け上がって行く。一方――琴乃は、恐竜戦車の禍々しい姿により険しい表情を浮かべていた。

 

(……恐竜戦車、か。6年前はウルトラマンカイナに頼るしかなかった我々だが……あの時とは違うぞッ!)

 

 ウルトラマンカイナと共に地球に現れた()の怪獣は、6年間にも渡る戦争の象徴とも言える存在。琴乃にとっては、因縁の相手でもあるのだ。

 

 ――やがて琴乃達が地下秘密基地の外へと脱出し、陽の光に照らされる場所まで辿り着いた瞬間。キル星人達の潜伏先となっていた山岳は、彼らと恐竜戦車を丸ごと押し潰すように崩落してしまうのだった。

 

 琴乃達の無事が確認された瞬間、BURK戦車隊による「本気」の砲撃が始まったのである。山すら突き崩すほどの砲弾を叩き込まれた山岳の崩落は、凄まじい轟音を天に響かせていた。

 フランス支部最強の歩兵であるエレーヌをここまで運んで来た、アリア・リュージュ機長の新型武装輸送機も、上空からその攻撃に参加している。彼女が琴乃達の無事を空の上から確認したことが、この総攻撃の合図になっていたのだろう。

 

「やった……! さすがアリア機長っ! あの大きさの山で生き埋めにして仕舞えば、恐竜戦車でもイチコロですねっ! 任務完了ですっ!」

「……あぁ、そのようだな」

 

 琴乃様を無事に救出し、キル星人のアジトも恐竜戦車もろとも壊滅させることが出来た。作戦は大成功と言ったところだろう。

 その成果を目の当たりにしたエレーヌは、溌剌とした笑顔でガッツポーズを決めている。素肌の上に白衣を羽織っている琴乃達も、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「……!? ねぇ見て、あれッ!」

「な、なんだと……!?」

 

 だが、その時――崩落した山の中から、なんと恐竜戦車が咆哮を上げて這い出て来たのだ。大量の岩石を掻き分けるように顔を覗かせて来た怪獣の姿に、琴乃達は思わず目を見張る。

 

「あれで死んでなかったっていうの……!? いえ、むしろ目覚めさせてしまったのかしら……!」

「ま、不味いかも知れません……! アリア機長の武装輸送機も、今の総攻撃で弾を使い果たしてしまったようです! このままではあの恐竜戦車が……!」

「とにかく、迅速に奴を倒さねば市街に甚大な被害が出てしまうぞッ! 6年前の二の舞だけはなんとしても、なんとしても阻止せねばッ……!」

「琴乃……!」

 

 6年前の戦いで、壊滅的な被害を被ってしまった街の光景。それを思い起こした琴乃は、血が滲むほどにまで強く拳を握り締めていた。

 

(我々が、我々がやるしかないのだ……! もうこの地球に、ウルトラマンは居ないのだからッ……!)

 

 彼女がそれほど意気込んでいるのは、「不安」の裏返しでもあるのだ。ウルトラマンカイナですら一度は敗れたあの恐竜戦車を、自分達の力で本当に倒せるのか、と。

 過去の経験があるからこそ、その恐怖を拭いきれずにいる。そんな彼女の胸中を慮る女傑達は、心配げに顔を見合わせていた。

 

 ――恐竜戦車地球降下事件を皮切りに始まった、6年間にも渡る戦乱の日々において。地球防衛の一翼を担って来たBURK日本支部の戦いは、常に「ウルトラマンとの共闘」だった。

 琴乃達も決して、ウルトラマンの力にばかり縋って来たわけではない。それでも戦いの「主役」は常に、彼らの方だった。少なくとも今の世間は、そう認識している。

 

 そして、そのウルトラマンとしての使命を帯びていたのはいつも――成人すらしていなかった、10代の若者。まだ遊びたい盛りの、学生ばかりだったのである。

 

 1年前、ウルトラマンジェムこと荒石磨貴(あらいしみがき)が初めて変身した時。彼はまだ、16歳の高校1年生だった。

 2年前、ウルトラマンアークこと八月朔日要(ほずみかなめ)がその使命を帯びたのも、彼が16歳になったばかりの時だった。

 3年前、ウルトラマンエナジーこと覇道尊(はどうたける)がその力を託された時、彼は17歳の高校2年生だった。

 4年前、ウルトラマンザインこと椎名雄介(しいなゆうすけ)が初変身した時。18歳の大学生だった彼は、民間人としての日常を唐突に奪われた。

 5年前、ウルトラアキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)が戦士として選ばれた時も。彼は19歳を迎えたばかりの、ただの大学生だった。

 そして6年前、ウルトラマンカイナこと風祭弓弦(かざまつりゆずる)が、恐竜戦車との戦いに立ち上がった時も。彼はまだ、16歳の高校1年生だったのである。

 

 誰1人として、本来「矢面」に立って良いような人間ではなかった。ウルトラマンとして選ばれた者だからと言って、恐ろしい怪獣や異星人達に、平気で立ち向かわせても良いような者達ではなかった。

 

 自分達BURKが、大人達が率先して、その「矢面」に立たなければならなかったのに。真っ先に「子供」を戦わせるような真似など、許されるはずがないというのに。

 とうとう、最後の最後まで。彼ら6人がテンペラー軍団を撃滅したその時まで、琴乃達はその許し難い図式を変えることは出来なかったのである。

 

 代われるものなら、いくらでも代わりたかった。なぜ彼らでなければならないのだ、なぜ彼らを戦わせねばならないのだと、何度も自分の非力さを責めた。彼らを選んだ、光の国を責めた。

 もちろん、頭では理解している。6人の青年達は皆、真っ直ぐな正義感と熱い闘志を胸に秘めた、勇気ある若者達ばかりだった。彼らはきっと、「なるべくしてなった」ウルトラマンなのだろう。

 

 だからこそ。琴乃の胸中には常に、彼らへの激しい罪悪感と劣等感が付き纏っているのである。

 泣く子も黙る鉄血の女傑として、決してそれを表に出すことはなかったが。その重みはいつも、彼女の心を締め付けていたのだ。

 

 選ばれてしまっただけの子供を戦わせて、何がBURKだ。何が地球の守護者だ。彼女は毎年のように、鏡に向かって悔し涙を浮かべながら、そう叫んでいた。

 

 ――そんな中でも。前隊長の弘原海(わだつみ)は、毎年のように入れ替わるウルトラマンの変身者達と、親子のような良好な関係を築き続けていた。時には励まし、時には叱るその姿は、さながら彼らの父親代わりのようだった。

 地球の平和のために戦う男同士として、通じ合うものがあったのだろう。ウルトラマンの変身者達と肩を組んでいた頃の彼は、腹の底から笑っているようだった。

 

 琴乃もそんな彼に続き、変身者達に対しては姉のように、あるいは母のように接していた。だが決して、弘原海のように心の底から笑えていたわけではない。彼のように、この図式を受け入れていたわけではない。

 

 ――もう、戦うべきではない者達を巻き添えには出来ない。何としても、BURKの力だけであの怪獣を仕留めねばならない。

 例え、あの恐竜戦車が相手であろうとも。ウルトラマンカイナですら、一度は敵わなかった相手であろうとも。

 

(私がやらねば……私が……!)

 

 そう意気込む余り、周りを見失いかけていた琴乃は、緊張する拳をわなわなと震わせていた。

 今戦っているのは、彼女独りではないというのに。

 

「琴乃、アメリア、凛風、エレーヌ! すぐに乗ってください、奴を追います! ……今こそ、我々BURKの進化を証明する時です!」

「イ、イヴァンナ……!?」

 

 そんな彼女の目の前へと、BURKの新型主力戦車――「BURKアルマータ」が駆け付けて来る。E-100戦車のシルエットを彷彿とさせる、漆黒の大型戦車だ。

 つい先ほどまで山を砲撃していたのは、その戦車を指揮しているイヴァンナの部隊だったのだ。76mm口径の主砲を搭載した指揮官仕様車に搭乗している彼女の後ろには、より強力な大口径の主砲を搭載した部下達の車両が何台も続いている。

 

 BURKアルマータによって構成された戦車隊の砲撃によって、キル星人達のアジトは山もろとも壊滅してしまったのだ。そのハッチを開いて身を乗り出して来た彼女のIカップの爆乳は、車体の上でむにゅりと形を変えている。

 

「さぁ、早く! 不可能を可能にする力は、ウルトラマンだけの特権ではありません! 我々人類にも、その可能性があるはず! その答えに辿り着くための、6年間だったはずですッ! 違いますか、琴乃ッ!」

「……ッ!」

 

 琴乃が経験した6年前の死闘を知っているイヴァンナは、今が過去の雪辱を果たす時なのだと戦友を鼓舞する。「同じ悔しさ」を味わった者達の1人として、彼女は普段の物静かな佇まいからは想像もつかないほどにまで、語気を強めていた。

 

 イヴァンナだけではない。アメリアも、凛風も、エレーヌも、今ここには居ないオリヴィアも。彼女達は皆、ウルトラマン達の圧倒的な力に畏敬の念を抱く一方で――自分達の非力さを、ひたすら悔やみ続けて来たのだ。

 

 1年前、パリの上空から怪獣が飛来して来た時。当時14歳の士官候補生だったエレーヌは、初めて間近で目の当たりにした怪獣の脅威に失禁してしまい、ウルトラマンジェムが駆け付けて来るまで同期達を連れて避難することしか出来なかった。

 2年前、ブライトンの沖に怪獣が出現した時。当時14歳の艦長補佐官だったオリヴィアは、艦砲射撃が通じない怪獣に腰を抜かして失禁してしまい、ウルトラマンアークが到着するまで艦隊の後退を進言することしか出来なくなっていた。

 3年前、上海(シャンハイ)の黄浦江に怪獣が発生した時。当時16歳のエリートパイロットだった凛風は、爆撃をものともせず友軍機を次々と屠る怪獣に恐れ慄き、恥も外聞もなく失禁。ただ泣き縋るように、ウルトラマンエナジーの救援を待つしかなかった。

 4年前、モスクワ川から突如怪獣が這い出て来た時。当時19歳のエリート戦車兵だったイヴァンナは、戦車砲が一切通用しない怪獣の外皮硬度に恐れをなして失禁。ウルトラマンザインが現れるまで、撤退を余儀なくされていた。

 5年前、ハドソン川に現れた怪獣がニューヨークの市街地へと侵入した時。当時19歳のエースパイロットだったアメリアは、怪獣の圧倒的な火力によってエリートとしてのプライドを粉砕された挙句、撃墜されかけた恐怖のあまり失禁。海を越えて急行して来たウルトラアキレスが怪獣を撃破するまで、ほとんど逃げ回ることしか出来なかった。

 

 強く気高く、そして美しい彼女達5人には――「怪獣」という「絶対的な破壊者」により、女傑としての尊厳と誇りを徹底的に蹂躙された過去があるのだ。それでも彼女達はその悔しさと絶望をバネにして、ここまで這い上がって来たのである。

 だからこそ。より成長した彼女達はテンペラー軍団の恐ろしさを承知の上で、かつて自分達を救ってくれたウルトラマン達のために、海を越えて日本まで駆け付けていたのだ。過去に味わった屈辱と挫折すらも糧にして、受けた恩に報いるために。

 

 ――その「ついで」に。戦闘中での失禁という、「人生最大の恥辱」の瞬間を目撃していた当時の変身者達に、男としての「責任」を取らせるために。

 

(イヴァンナ、皆ッ……!)

 

 そんな女傑達の1人であるイヴァンナの言葉に琴乃が気高く顔を上げたのは、それから間も無くのことだった。剣呑でありつつも、どこか落ち着きを取り戻したようにも見える彼女の貌に、イヴァンナはふっと微笑を浮かべる。

 

「……あぁ、そうだな! 行くぞ皆、直ちに追撃だッ!」

「了解ッ!」

「オッケー、そう来なくっちゃねッ!」

「皆様、急ぎましょうッ!」

 

 そして、琴乃の心が前を向いたことに安堵する女傑達は。彼女と共に白く豊満な乳房を揺らして、イヴァンナが乗っているBURKアルマータへと乗り込んで行くのだった。巨大な車体をよじ登る女傑達の巨尻は、何度も左右にぷるんと揺さぶられている。

 

「んっ、んんっ、んふぅっ……!」

「ちょっ、ちょっとこれ、入り口狭くないっ……!? 大丈夫なんでしょうね、この戦車っ!」

「……聞き捨てなりませんね、凛風。我がロシア支部が総力を上げて開発したBURKアルマータに、欠点など存在しません。単にあなたが太り気味なのでは? 特に、この尻が」

「んなっ!? い、言ったわねイヴァンナッ! だいたいあんただってさっきハッチから出て来た時に、ちょっと乳が引っ掛かってたでしょうがっ!」

「……そ、それは違います! 今日はたまたま、胸を抑えるブラのホックが壊れてしまったというだけで……!」

「お前達、こんな時に何を揉めている! 何でもいいからさっさと入れッ! こういう時はな、腰を捻るんだ腰をッ!」

「いーだだだだ!? ちょっ、下から引っ張らないでよ琴乃っ! 壊れちゃう壊れちゃう! 私のお尻、壊れちゃうぅっ!」

 

 ハッチの穴に引っ掛かりがちな爆乳と巨尻を、なんとか通すために。

 女傑達は時に悩ましい声を上げ、時に言い争いながら。くびれた腰を前後左右に艶めかしく、扇情的にくねらせていた。三角木馬のような立ち乗り構造の戦車長席に座しているイヴァンナは、その様子をじっくりと静観している。

 

「……よし、全員搭乗しましたね。我々はこれより、恐竜戦車の追撃に向かいます。全車両、全速前進ッ!」

「あ、あうぅ……お尻、私のお尻がぁあ……」

 

 やがて全員を乗せた指揮官仕様のBURKアルマータは、一気にキャタピラを猛回転させると、山岳地帯を抜けようとする恐竜戦車を追跡し始めて行く。火力に特化した部下達のBURKアルマータも、隊長の車両を追うようにキャタピラを回転させていた。

 そして。イヴァンナの命令を忠実に遂行するべく、運転席に座している女性隊員は全力でアクセルを踏み込んでいる。

 

 汗だくになっている5人の爆乳美女を乗せた大型戦車の車内は、雄の情欲を掻き立てる芳醇な匂いで充満していた。同性すら魅了しかねないその濃厚な香りに、運転手の隊員はごくりと生唾を飲み込んでいる――。

 




 今回もちょっと長めのお話になりそうだったので、前後編に分けることになりました! 後編では更なる新メカも登場する予定です! 次週でいよいよ決着となりますので、どうぞ後編もお楽しみにー!٩( 'ω' )و


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Ps
 弘原海はいわゆるムラマツキャップ的なポジションだったのですが、弓弦や嵐真達にとっては立花藤兵衛のような「おやっさん」でもありました。どっちも「あの人」なんですよねー(*´ω`*)


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女傑編 ウルトラバークファイト 後編

◇今話の登場メカ

◇BURKビートル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。自動操縦(オートパイロット)による乗員不足の補助も可能であり、駒門琴乃(こまかどことの)が搭乗する。

◇BURKイーグル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。高火力のレーザー砲を搭載しており、アメリアが搭乗する。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURK爆龍(バオロン)
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型爆撃機。強力な対怪獣爆弾を搭載しており、凛風(リンファ)が搭乗する。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURKハイドランジャー
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型潜水艦。対怪獣用の対地ミサイルを搭載しており、オリヴィアが指揮を取る。



 

 ――追跡開始から、約10分。

 イヴァンナが指揮を取るBURKアルマータは主砲を連射しながら、不安定な山岳地帯を全速力で爆走している。その指揮官仕様車に続くイヴァンナの部下達も、キル星人達のアジトを破壊した火力特化仕様車の主砲を、恐竜戦車の背後に叩き込んでいた。

 

 だが、山を崩すほどの威力を持つ砲弾を立て続けに浴びても、恐竜戦車は全く止まる気配がない。琴乃もハッチから身を乗り出してBURKガンを撃ち込んでいるのだが、まるで効いていなかった。

 火力特化仕様のBURKアルマータによる集中砲火を以てしても、この怪獣を駆逐するには足りないというのか。その光景を目にした琴乃はBURKガンを握ったまま、悔しげに唇を噛み締めている。

 

「……ダメだ、イヴァンナ! BURKアルマータの戦車隊だけでは、奴を倒せる火力には届かないぞ! アリアの武装輸送機も弾切れになっている以上、なんとか増援が到着するまでは私達で奴を食い止めねばならんというのに……!」

「その必要はありません。……準備は既に整っております」

「な、なに……!?」

 

 だが、三角木馬状の戦車長席に座しているイヴァンナは、一切動じることなく車内の通信機を手に取り、「合図」を発信していた。

 次の瞬間――自動操縦(オートパイロット)によって飛来して来た3機のBURK製航空機が、BURKアルマータの頭上に現れる。

 

「あれはBURKビートルと……各国支部の試作兵器!? この日本支部にも回されていたのか!」

「……さっすがは梨々子(りりこ)のパパ、綾川(あやかわ)司令官ね! なかなか太っ腹じゃないっ!」

 

 「凶暴怪獣」アーストロンを撃破した実績もある、メタリックイエローとシルバーを基調とする日本支部の新型戦闘機「BURKビートル」。

 両翼部のレーザー砲と、シルバーを基調とする全長21mのボディを特徴とする、アメリカ支部の新型戦闘機「BURKイーグル」。

 そして全長38.5mにも及ぶ深緑のボディを持ち、機体下面に搭載された強力な対怪獣爆弾を最大の武器とする、中国支部の最新大型爆撃機「BURK爆龍(バオロン)」。

 

 実戦配備されて間も無いBURKビートルだけでなく、試作段階であるはずのBURKイーグルとBURK爆龍までもが今、琴乃達の真上を飛行しているのだ。

 BURK日本支部の綾川司令官が、彼女達のためにと事前に各国支部と交渉し、手配していたのである。アメリカ支部のエリー・ナカヤマ隊員や、中国支部の劉静(リウジン)隊員の協力が無ければ、実現し得ない特例措置であった。

 

 琴乃達の「力」が最も発揮される条件。その全てを揃えて来たイヴァンナは、彼女達にむっちりとした巨尻を向けたまま、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「布石はすでに打ってある、ということです。……試作段階での実戦投入など褒められた手段ではありませんが、そんなことを気にするあなた達ではないのでしょう?」

「……ふふんっ! さすがイヴァンナね、よく分かってるじゃない! 琴乃、こうなったらやるしかないわよッ!」

「あぁ……分かっているッ! アメリア、凛風、行くぞッ!」

 

 そんな彼女の言葉に強く頷いた琴乃は、身を捩らせてハッチから外に出ると――頭上の機体から垂らされていたワイヤーを握り締めた。

 アメリアと凛風も琴乃に続き、艶かしく腰をくねらせてハッチの外へと這い出て行く。彼女達の豊かな爆乳と巨尻は、狭いハッチから解放された反動でばるんっと弾んでいた。

 

「……言っておきますが、この車輌には車体後部にもドアが付いています。そちら側からならば、上面ハッチよりは楽に出入り出来るはずですよ」

「先にそれを言いなさいよッ!?」

 

 そんなイヴァンナの一言に、アメリアと凛風が目を丸くして噛み付いた後。3人はそれぞれのワイヤーを握り締め、BURKアルマータから飛び出して行く。

 琴乃はBURKビートルへ、アメリアはBURKイーグルへ、そして凛風はBURK爆龍へ。彼女達は各々の機体に素早く乗り込むと、即座に操縦桿を握り締めるのだった。

 

「さぁ……私達BURKの攻撃は、ここからが本番だぞッ!」

 

 そして、力強い笑みを浮かべた琴乃の言葉に、アメリアと凛風が深く頷いた瞬間。彼女達を乗せた3機の航空機は、バーニアを噴かして一気に加速して行く。

 

「自動操縦なんて普段は頼りないものなんだけど、今回ばかりはそれでラッキーだったわね! 心置きなく、こいつと戦えるわっ!」

「同感っ! こんな格好、部下の皆には見られたくなかったものっ!」

「アメリア、凛風! 余計なことは考えるな、今は目の前の敵だけに集中しろッ!」

 

 レーシングバイクのシートのような構造となっている、BURKイーグルとBURK爆龍の操縦席。そこに跨るアメリアと凛風は、その白く豊穣な巨尻をぷりんっと後方に突き出していた。

 弓なりに背を反って前のめりになっている彼女達は、その柔肌を辛うじて隠している白衣を激しくはためかせながら、愛機をさらに加速させている。

 

 今回は3機共、自動操縦機能で乗員不足を補っている状態なのだが、結果的にはそれで正解だったのだろう。もし後部座席に隊員達が居る状況だったならば、今頃は後ろから白衣の下が「丸見え」になっていたところだ。

 

「さぁ、まずは私達からだ! 行くぞアメリアッ!」

「オッケー! ぶちかましてやるわよ、琴乃ッ!」

 

 スピードに秀でているBURKビートルとBURKイーグルは、全ての神経を眼前の恐竜戦車のみに注ぎ、一気に急上昇する。

 そして頭上の「敵」に気付き、上空を仰いだ恐竜戦車の両眼から迎撃のレーザーが照射された瞬間――2機の戦闘機は、同時に急降下を仕掛けるのだった。

 

「甘い甘いッ! そんなので墜ちるBURKイーグルじゃあないんだからッ!」

 

 加速に秀でた流線型のボディを持つBURKイーグルは、BURKビートルをさらに凌ぐスピードで迎撃レーザーを回避している。もう昔の自分ではない、と言わんばかりの勝ち気な表情で、アメリアは自信満々に操縦桿を握り締めていた。

 前のめりになる余り、その白い巨尻はぷるんっと浮き上がっている。Kカップの白い爆乳も、シートにむにゅりと押し付けられていた。

 

 BURKアメリカ支部の司令官――チャック・ギャビンからその将来を嘱望された、同支部きってのエースパイロットとして。アメリアはむっちりとした巨尻を仰け反るように突き出しながらも、真摯な貌でただ前方のみを見据えている。

 

「よし……射程圏内だアメリア、仕掛けるぞッ!」

「分かってるわよッ!」

 

 地上から乱れ飛ぶ、恐竜戦車による迎撃レーザーの嵐。その真っ只中を掻い潜るように翔ぶBURKビートルとBURKイーグルは、同時に両翼部のレーザー砲を連射していた。その反動で琴乃の爆乳が激しく揺さぶられ、アメリアの巨尻がたわわに弾む。

 

「これまでの分のお返し……たっぷりと味わいなさいッ!」

「我らBURKの、人類の底力……思い知るがいいッ!」

 

 琴乃とアメリアの絶叫と同時に、両機から放たれたレーザーが恐竜戦車の外皮を焼く。そして――水平飛行の姿勢から僅かに機首を下げ、空を裂く轟音と共に突撃して行く凛風のBURK爆龍も、爆撃を敢行しようとしていた。

 凛風はGカップの爆乳を押し潰すように前のめりになり、背を反って安産型の爆尻をぶるんっと弾ませている。攻撃に集中するあまり自分の格好が自覚出来なくなっているのか、彼女は真剣な貌のまま、むっちりとした白い爆尻を恥ずかしげもなく後方に突き出していた。

 

「あの時とは違うわ……! もう私達は、無力なんかじゃないッ! それをこれから、証明し続けて行くッ! そのための……BURK爆龍なんだからッ!」

 

 恐竜戦車の車体から放たれる機関砲を真正面から浴び、機首先端部のレドームを破壊されながらも。BURK中国支部の誇りを背負った彼女の愛機は、怯むことなく前進し続けている。砲身と砲塔本体が一体化されている、機体上面の格納式板状無人高角レーザー砲も、絶えず火を噴き続けていた。

 両翼下部に搭載されているミサイルも、出し惜しみは無しだと言わんばかりに連射されている。コクピットの後方にあるミッションコントロール区画も、戦闘の苛烈さを物語るように激しく揺れ動いていた。

 

「私達BURKを無礼(なめ)たこと……地獄で後悔させてあげるわッ!」

 

 やがて、彼女のけたたましい雄叫びと共に。特大の対怪獣爆弾が、BURK爆龍の機体下部から投下されて行く。

 

「いい加減にッ、くたばれぇぇえーッ!」

 

 そして、空と地を裂く凄まじい衝撃音が天を衝き。97cmもの爆尻をばるんっと弾ませた凛風の絶叫と、呼応するかの如く。その弾頭が勢いよく、恐竜戦車に直撃するのだった。

 

 天を衝くほどの激しい爆炎が広がる直前に操縦桿を引き上げた3人の愛機は、それぞれ3方向へと離脱して行く。しかし、まだ終わってはいない。

 

「ちッ……さすがはウルトラマンカイナを負かした怪獣ね! そこらの怪獣なら、今の1発で骨も残らないのにッ……!」

 

 BURK爆龍の爆撃により、恐竜戦車は「満身創痍」となっている。だが、まだ倒れてはいなかったのだ。

 レーザー掃射と爆撃により外皮を吹き飛ばされた恐竜戦車は、あらゆる箇所の内部機構が剥き出しにされている。そのような状態になりながらも前進を続けている姿は、さながら生ける屍のようであった。

 

 サイボーグ怪獣故の尋常ならざるタフネスを目の当たりにした凛風は、白くむっちりとした爆尻をぷるぷると震わせながら、悔しげに舌打ちしている。それは、対怪獣爆弾の威力を知る琴乃とアメリアも同様であった。

 

「ええいッ……何という頑強さだ、確かに効いているはずだというのにッ! こうなれば、もう一度総攻撃を――」

「――その必要はありませんよ、琴乃。奴を確実に仕留められるデータは、すでに揃っています」

「なんだと……!? イヴァンナ、どういうことだ!?」

 

 だが、それでも全く焦っていない者が居た。イヴァンナだ。

 彼女がBURKアルマータのコンピュータで、何らかの「データ」を送信した瞬間。各機に搭載されている通信機から、聞き慣れた仲間の声が響いて来る。

 

「……オリヴィア。怪獣の位置及び移動速度のデータを送信しました。後はよろしくお願い致します」

『情報提供、感謝しますわイヴァンナ様。不躾な侵略者の皆様には、この地球を攻め落とすことなど不可能であることを……その身を以て理解して頂きましょう』

 

 その穏やかで気品に溢れた声色は、まさしくオリヴィアのものだった。山岳地帯から遥か遠方――東京湾付近の「海上」に居る彼女は今、新型潜水艦「BURKハイドランジャー」の艦長として、その指揮を取っているのだ。

 全長は約50m、潜行時の最高速度は26ノットを凌ぐというイギリス支部の最新兵器。海上に現れているその鈍色の船体は今、燦々とした陽射しを浴びて眩い輝きを放っていた。船体の各部にある無数の「発射口」が、その殺意を鋭利に研ぎ澄ましている。

 

「オリヴィア……!? まさか、『BURKハイドランジャー』がもう完成したのか!? あらゆる怪獣を一撃で粉砕し得るという、あの新型潜水艦が……!」

『ご名答ですわ、琴乃様。あなた様が提供してくださった6年間の戦闘データを基に、研鑽を重ねて開発したBURKイギリス支部最強の巡航ミサイル潜水艦「BURKハイドランジャー」。少々実戦配備を急ぎ過ぎてしまいましたが……その甲斐はあったようですわね。ここからは、我がイギリス支部に任せてくださいまし』

 

 恐竜戦車を追跡しているイヴァンナのBURKアルマータから、その位置情報のデータを受信した彼女は、確実に怪獣を葬れる「正義の矢(ミサイル)」を放とうとしていたのである。琴乃の問い掛けに頷くオリヴィアは、深窓の令嬢の如き穏やかな微笑を浮かべていた。

 

 一歩踏み出す度にぷるんと揺れる巨尻と、歳不相応に実っているFカップの巨乳。その膨らみをありのままに主張させている新型戦闘服を纏った彼女は、甘い匂いを振り撒く金髪を優雅に靡かせている。

 白く扇情的な彼女の肉体から醸成される甘美な芳香には、艦内の女性乗組員達もごくりと生唾を飲み込んでいた。16歳とは到底思えない完成された色香は、部下達を瞬く間に虜にしている。

 

「うふふっ……では、栄光ある乗組員(クルー)の皆様。BURKイギリス支部の誇りに賭けて、優雅に美しく……憎き仇敵を骨も残さず殲滅すると致しましょうか」

 

 やがて――艶やかなブロンドのロングヘアと、Fカップの豊満な果実を弾ませて。全ての準備を整えた彼女は淑やかに右手を掲げると、乗組員(クルー)達に攻撃の開始を命じる。

 

「……目標、恐竜戦車ッ! 対地殺獣ミサイル全門斉射ッ、()ぇぇぇえッ!」

 

 華やかでありながらも、勇ましく凛としているその叫びが、艦内に反響する瞬間。BURKハイドランジャーに搭載されている、対怪獣用の対地ミサイルが全ての発射口から射出された。

 

 発射口を包む猛煙を突き破り、天高く飛び上がるその無数の弾頭は、怪獣の外皮硬度を研究し尽くしたイギリス支部が、確実にその防壁を貫くために開発した必殺兵器なのだ。

 鋭い矢の如き弾頭は怪獣の頑強な外皮をも容易く貫き、その内側から粉々に対象を粉砕するのである。

 

「……! おぉっ……!」

「恐竜戦車が……!」

 

 ――それは、ウルトラマンカイナを一度は撃退した恐竜戦車といえども、例外ではない。

 内部機構が剥き出しになっている箇所へ、無数の鋭利な弾頭の豪雨を浴びせられた恐竜戦車は。その弾頭内の爆薬を全て「体内」で起爆され――「内側」から跡形もなく消し飛ばされてしまったのである。

 

 まさしく、オリヴィアの宣言通り。骨も残さないほどの、徹底的な「殲滅」であった。

 琴乃が「あの日」から積み重ねて来た6年間が、ついに実を結んだのである。

 

 その瞬間を目の当たりにしたBURKアルマータの戦車隊は、事件の収束を悟り静かに停車する。BURKビートルをはじめとする3機の航空兵器も、その近くへと着陸して行くのだった。

 彼女達の勝利を祝福するかのように、後方から全部隊を指揮していたアリアの武装輸送機も、遠方の空から合流して来ている。

 

「……終わりましたね、琴乃。我々人類はもう、ウルトラマンに縋るだけの弱い生き物ではない。今日の戦いはきっと、それを証明するための試練だったのでしょう」

「……ふっ、確かにそうなのかも知れんな。そして我々は今日、その試練を乗り越えたということなのだろう。地球は我々、地球人類の手で守る。それが本来、あるべき姿なのだからな」

 

 勝利に沸き立つ他の仲間達を背に、それぞれの兵器から降りた琴乃とイヴァンナは、肩を並べて微笑を向け合う。

 

 ウルトラマンに頼らずとも、この地球を守り抜いていく。その理想にようやく辿り着いた琴乃は、過去を振り切るように穏やかな笑みを浮かべていた――。

 

 ◇

 

「そういえば琴乃って、ウルトラマンの変身者達と毎年一緒に戦ってたのよねぇ。いいなぁ、私も5年前の……ウルトラアキレスだった頃の嵐真に直接会ってみたかったわ。私だったら絶対、その場でガンガンアプローチしてるもの!」

「私も私も! 3年前、ウルトラマンエナジーだった頃の尊がどんな感じだったのか、凄く気になるわ! その時からあんなに強くてカッコ良かったのかしら……! あぁっ、一度で良いから手合わせしてみたかったわっ!」

「ウルトラマンザインとして戦っていた、4年前の椎名殿……ですか。きっと、その当時から非常に勤勉な殿方だったのでしょうね。仮定の話に意味はありませんが……私ならば恐らく、彼を支えるためとあらば己の全てを捧げていたのでしょう……」

「あぁっ……2年前の要様はウルトラマンアークとして、一体どのようなお気持ちで戦っていらしたのでしょう……。もし私がその場に居たなら、毎晩彼のために紅茶をご用意していましたのに……!」

「1年前、ウルトラマンジェムとしての使命を帯びていた頃の磨貴様は、金髪の不良……だったのですよね。そんな磨貴様も、ワイルドで素敵ですわっ……! あぁ、磨貴様磨貴様っ……!」

「……良いわけがあるかぁあ! ウルトラマンカイナだった弓弦だけはほとんど手が掛からなかったが……後の5人の面倒を見るのは、本当に、本っ当に大変だったんだぞっ! 嵐真は美女に化けた敵性宇宙人に何度も騙されてはアキレスアイを盗まれる! 雄介は家庭教師のアルバイトにかまけて私達の緊急呼び出しにも出ない! 尊はそろそろ休めと何度言っても剣の素振りを続ける! 要はいつも学生気分で基本的にぶったるんどる! 磨貴に至っては怪獣と戦う前から街の喧嘩で怪我をして来る始末だ! この数年間、私や弘原海前隊長が一体どれほどフォローに奔走したことか……! お前達、『恋は盲目』と言っても限度があるぞ! ウルトラマンだった頃のあいつらだと!? 見せられるものなら見せてやりたかったわッ!」

「オ、オーケイ……落ち着いてちょうだい琴乃、ストレスはお肌の敵よ?」

 




 今回も読了ありがとうございました! お色気路線な女傑編も、これにてようやく一区切りでありまする(*´ω`*)
 次回の更新予定は今のところノープランなのですが、もし新たな短編をお届け出来る時が来ましたら、またお気軽にお越しくださいませー! ではではっ!٩( 'ω' )و


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Ps
 メカコレのプラモは非常にコンパクトだから場所も取らないし、作りやすいしで良いこと尽くめですなー。ジェットビートルとハイドランジャーはパーツも特に少ないから、思いの外パパッと組み立てられちゃいますぞ( ^ω^ )


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女傑編 ウルトラバオロンファイト

◇今話の登場人物及び登場メカ

劉静(リウジン)
 BURK中国支部出身の女性パイロットであり、猪突猛進気味な凛風(リンファ)を理知的にサポートする副官でもある。ボーイッシュな顔立ちと紺髪金眼が特徴の、怜悧な爆乳美女。27歳。
 スリーサイズはバスト94cm、ウエスト60cm、ヒップ91cm。カップサイズはG。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURK爆龍(バオロン)
 38.5mという巨体を誇るBURKの新型爆撃機。強力な対怪獣爆弾を搭載しており、凛風(リンファ)が主に指揮を取る。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURKサーチナイフ
 琴乃達が太腿のベルトに装備している投擲用のナイフであり、柄の部分には攻撃対象を追跡するための音波を発信する装置が内蔵されている。


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 ミクロネシア連邦の近海に位置する、南国のリゾート地。その常夏の島では最近、観光客が浜辺で「謎の触手」に襲われるという事件が頻発しているのだという。

 地球に残留している怪獣の仕業と睨んだ、駒門琴乃(こまかどことの)を筆頭とするBURKの精鋭達は、その事件の全貌を調査するべく問題のリゾート地に向かい――

 

「そーれっ! 琴乃様っ、今度こそ本気で行きますよぉっ!」

「いいぞエレーヌ、どこからでも掛かって来いッ!」

 

 ――3対3のビーチバレーに興じていた。燦々と輝く太陽に照らされた砂浜を舞台に、競泳水着を纏う6人の爆乳美女が激しく乳房と巨尻を弾ませ、ボールを打ち合っている。

 砂浜のコートを駆け回る駒門琴乃、アメリア、イヴァンナ、凛風(リンファ)、オリヴィア、エレーヌの6人は、貸切状態となっているリゾート施設を存分に堪能していた。

 

「うふふっ……イヴァンナ様、手加減など必要ありませんわ。私こう見えても、ビーチバレーについては心得がありましてよ!」

「ほう……? ならば遠慮は必要なさそうですね。お望み通り本気で参りますよ、オリヴィア」

 

 優美にして肉感的な白い足が砂浜を踏み締めるたびに、たわわに実った乳房とむっちりとした巨尻が、雄の劣情を煽る躍動を披露している。その色香は凄まじく、彼女達に調査を要請したリゾート施設のオーナーも、粘ついた視線で彼女達の肉体を凝視していたほどだ。

 

「さぁ凛風、今日こそ決着付けるわよ! 勝った方がパフェ1年分だからねっ!」

「上等っ! 後で吠え面かくんじゃないわよ、アメリアッ!」

 

 陽射しに照らされた白い柔肌も瑞々しい輝きを放ち、その豊穣な肉体から飛び散る汗は、甘く芳醇な匂いを漂わせていた。ぴっちりと肌に密着している競泳水着は、美女達の艶やかなボディラインをありのままに強調している。

 入国時の琴乃達を出迎えていた現地のBURK隊員達も、彼女達の規格外な美貌とプロポーションには思わず息を呑み、鼻の下を伸ばしていたのだ。このビーチが貸切状態でなければ、今頃は全ての男達の視線を彼女達が独占していたことだろう。

 

 ――世界的にも人気が高いリゾート地だったこの島は現在、謎の触手事件による影響で客足が著しく遠退いている。この施設が齎す経済効果を取り戻すためにも、早急に事件の解決を目指さねばならない……のだが。

 オリヴィアが指揮を取っている潜水艦「BURKハイドランジャー」で近海を調査しても、触手の正体に繋がり得る情報は得られなかったのである。それだけ「敵方」の警戒心が強いということなのであれば、闇雲に捜査しても事態の解決は望めない。

 

 そこで、敢えて普通の観光客であるかのように振る舞い、件の触手を誘き寄せる作戦に切り替えたのである。琴乃達は豊満な双丘と安産型の巨尻をぶるんっと揺らし、ボールの応酬を繰り返していた。

 

「本当に……これでっ! 食い付くんでしょうねっ!?」

「食い付くさ……! 施設のオーナーによれば件の触手は、このビーチで遊んでいた『女』を集中的に狙っていたという話だ! 今の私達はまさに、絶好の撒き餌というわけだなッ!」

「……確実に痛め付けられるような弱い相手を狙う。卑劣にして、残忍の極みですね。決して許してはおけません」

「しかも、BURKハイドランジャーを警戒して一向に姿を現さないなんて……つくづく腹立たしい輩ですことっ!」

 

 不幸中の幸いと言うべきなのか、現時点ではまだこの事件に関する「死者」は出ていない。だが、このまま件の触手を放置していてはそれも時間の問題であろう。

 すでに何人もの負傷者が出ていることに怒りを募らせていた6人の美女は、無意識のうちに鋭いスパイクを打ち出すようになっていた。例え今が貸切状態ではなかったとしても、その殺気を目の当たりにすれば男達も声を掛けようとは思わなくなるだろう。

 

 ――そして、6人のビーチバレーがさらにヒートアップしかけていた、その時。

 

「きゃぁああっ!?」

「くぅうっ……!? き、来たかッ! 皆、気を付けろッ!」

 

 海辺から飛んで来た蛸の足のような触手が、素早く這い出て来たのである。瞬く間に琴乃達の白い脚に絡み付いたそれは、ぬるぬるとした粘液を帯びていた。

 

「ひ、ぃっ……!? き、気持ち悪いっ!」

「なんなんですの、これぇっ!」

 

 その粘液によって滑りやすくなっていた触手は、肉感的な脚から徐々に琴乃達の全身へと絡み付いていく。不規則で不気味なその動きに、エレーヌとオリヴィアは可憐な貌を引き攣らせていた。

 

「くぅうっ……こ、こいつらは……!」

「我々の、体液をっ……!? んぉっ!?」

 

 脹脛から太腿へ、太腿からさらに上へ。それは文字通り、彼女達の肉体を隅々(・・)まで舐め回しているかのような挙動だった。女性の肉体から分泌される液体に執着しているのか、その先端は特に汗ばんでいる腋や、足の指や裏をちろちろと舐めている。

 

「……はぁうっ!? や、やめっ……!」

「うそっ、やだっ!? そ、そんなところぉっ……!」

 

 さらに触手は、ぴっちりと張り付いている競泳水着の「内側」にまで滑り込もうとしている。隙間なく密閉されたその「内側」で熟成されている、甘美な汗の匂いに吸い寄せられているのだ。

 全世界のBURK隊員にとっては「高嶺の花」という言葉すら及ばない、「生ける女神(ヴィーナス)」。そんな6人のエリート美女達が持つ極上の肉体と色香は、怪獣すらも惹き付けているのか。

 

 このままでは――競泳水着の下に隠された、「絶対不可侵の領域」に侵入されてしまう。鼠蹊部や乳房の周りを這いずり回る触手の動きに、美女達はぞくぞくと背筋を駆け登るような悪寒を覚えていた。

 

「くッ……! 観光客を襲っていたのはこいつで間違いないようだなッ!」

「……離しなさい、薄汚い怪獣風情がッ!」

「この私の肌に断りなく触るなんて、いい度胸じゃないッ!」

「誰にセクハラしてるのか分かってないみたいねッ!」

 

 生理的な嫌悪感を煽るその動作に「女性としての危機」を感じていた琴乃、イヴァンナ、アメリア、凛風の4人は、羞恥に頬を染めながらも――太腿のベルトに装備していたナイフを引き抜き、素早く触手を斬り捨てた。ほんの僅かでも対応が遅れていたら、競泳水着の「内側」に入り込まれていたところだ。

 

「このっ……いい加減にしなさい! 変態怪獣っ!」

「万死に値しますわっ!」

 

 その刃を目にしたオリヴィアとエレーヌも、我に帰ったようにナイフを握り締め、不躾な触手を切り落として行く。彼女達の反撃に怯んだのか、先端を斬られた触手は海中へと引き返そうとしていた。

 

「……今だッ!」

 

 すると琴乃は1本のナイフを触手に投げ付け、その刃を肉に沈み込ませてしまう。琴乃のナイフに刺された触手はその痛みにのたうちながら、すごすごと海中に消え去って行った。

 その様子を見届けた爆乳美女達は互いに頷き合うと――即座にビーチから走り去り、海を一望出来る高級リゾートホテルへと向かう。そこの裏手には、凛風が持ち出して来た爆撃機「BURK爆龍(バオロン)」が待機していたのだ。

 

劉静(リウジン)、奴が引っ掛かったわ! すぐに爆龍を出すわよッ!」

「……来ましたか。では、僕も行くとしましょう」

 

 ホテルの裏手に隠されていた爆龍の機体を監視していた、凛風の副官である劉静隊員は、爆乳を弾ませて駆け寄って来る上官に怜悧な眼差しを向けていた。琴乃達にも劣らぬ美貌とプロポーションの持ち主である彼女は、その柔肌に甘い汗の香りを滲ませている。

 中性的な顔立ちと気障な振る舞い故か、女性隊員達からの人気も高い「中国支部の王子様」……なのだが。そんな佇まいとは裏腹に、彼女の白い爆乳と巨尻は、その蠱惑的な肉体が「女」であることをこれでもかと強調していた。そのギャップもあってか彼女も凛風達と同様に、多くの男共から好色と欲望の視線を激しく集めているのだ。

 

「……思いの外、奴の『反応』が早くて助かったよ。そろそろ悪質な声掛け(ナンパ)をあしらうのも疲れてきたところだったからね。……凛風隊長の色香に掛かれば、それも当然のことだったのかな?」

 

 パラソルの下でトロピカルジュースを手に寛いでいた劉静は、豊満な乳房を躍動させながら素早く起き上がると、即座に凛風達と合流して行く。残念ながら、優雅なひと時もここまでのようだ。現地の男達を惑わせた94cmの爆乳と91cmの巨尻が、僅かな挙動でもぶるんっと弾んでいる。

 

 女傑達の向かう先は、38.5mもの巨体を誇る深緑の大型爆撃機。爆乳と巨尻をたわわに弾ませ、甘い汗の香りを漂わせながら、7人の女傑はその機内に素早く乗り込んで行った。

 

 レーシングバイクのシート状の操縦席に飛び乗ったアメリアは、Kカップの爆乳をむにゅりと下に押し当て、安産型の白いヒップをぷりんっと後方に突き出していた。

 そこから漂う芳醇な女の香りに思わず頬を染めながらも、イヴァンナ、オリヴィア、エレーヌの3人は乳房を揺らし、砲手席を兼ねたオペレーター席に着く。その弾みで彼女達の巨尻も、ぷるんっと躍動していた。

 

 一方、汗ばんだ柔肌から女の芳香を漂わせている琴乃と凛風、そして劉静の3人は――ぶるんぶるんと乳房と爆尻を弾ませながら、後方のミッションコントロール区画へと駆け込んでいる。そこに設置されたレーダーには、「触手の正体」の位置が正確に映し出されていた。

 

 先ほど琴乃が触手に投げ付けた「BURKサーチナイフ」には、超音波を特定のリズムで発信する機能が内蔵されていたのである。彼女達は触手と遭遇した時に備えて、追跡手段を事前に用意していたのだ。

 

「琴乃、奴の位置は!?」

「この島の近海……その海底の砂中に身を隠しているようだな! BURKハイドランジャーの魚雷を警戒しているようだが……味な真似をしてくれるッ!」

 

 その座標を指差している琴乃の貌は、散々「好き放題」されて来たことへの怒りに燃え上がっている。

 それは凛風達も同様であり、6人の女傑の豊かな胸に秘められた殺意は今、たった一つに注ぎ込まれようとしていた。

 

「BURK爆龍、発進! 頼んだわよ、アメリアッ!」

「オッケー、凛風ッ! あのクソッタレに目にもの見せてやろうじゃないッ!」

 

 あの怪獣だけは絶対に殺す。その不退転の決意を固め、女傑達を乗せたBURK爆龍は垂直に上昇した後――島の近海に向けて飛び立つのだった。

 

 それから、約数分後。海上へソノブイを投下し、そこからBURKサーチナイフの音波を捕捉したBURK爆龍は、「触手の正体」の真上に到着する。

 凛風とアメリアが頷き合い、爆撃の準備に入ったのはその直後だった。

 

「標的の頭上に到着! アメリア、爆撃開始よッ!」

「りょーかいッ!」

 

 レドームを搭載している機首を僅かに下げつつ、一度旋回して爆撃態勢に入ったBURK爆龍は――機体下部のハッチを開き、特大の対怪獣爆弾を投下する。

 海中を進行するその爆弾はやがて、海底の砂中に炸裂し、大爆発を引き起こすのだった。そして着弾点の真上に相当する海面から、激しい水飛沫が噴き上がると――そこからついに、「触手の正体」がその全貌を露わにする。

 

「あれって……!?」

「でっかい……蛸ぉ!?」

 

 それは約100mもの巨体を誇る、異様に大きな「蛸」そのものであった。

 遥か昔にはコンパス島の近海にも生息していたという水棲怪獣「スダール」。それが、この一連の触手事件を起こしていた張本人だったのである。

 

「あれはスダール……!? 前世紀の資料写真でしか見たことがなかったが、まさかこの現代にも生存している個体が居たとは……!」

「感心してる場合じゃないわよ琴乃ッ! イヴァンナ、オリヴィア、エレーヌ! レーザー砲及び両翼ミサイル、安全装置解除! 全門斉射よッ!」

「了解ッ!」

 

 砲身と砲塔本体が一体化された、機体上面の格納式板状無人高角レーザー砲。両翼下部に搭載されている大型ミサイル。その全ての火力を解き放ち、BURK爆龍は上空からスダール目掛けて一斉射撃を敢行する。

 

「デカいだけが取り柄の蛸風情が……このアメリア様を捕まえられると思ってんじゃないわよッ!」

 

 長い触手を振り回し、BURK爆龍を叩き落とそうとするスダールだったが――BURKアメリカ支部最強のエースパイロットと謳われたアメリアが操縦するその機体を、ただ大きいだけの蛸が捉えられるはずもない。

 

「女達の怒り……篤と思い知りなさい、変態蛸野郎ぉおッ!」

 

 凛風の雄叫びと共に、触手攻撃の隙間を縫うように飛ぶBURK爆龍の猛攻。その弾雨を浴びた100mの巨体は――あっという間に、レーザー砲とミサイル攻撃で木っ端微塵にされてしまうのだった。

 その爆発の衝撃で激しく機内が揺さぶられ、女傑達の爆乳と巨尻がばるんっと大きく躍動する。白い柔肌から飛び散る汗の滴も、甘く扇状的な匂いを放っていた。

 

 最初の爆撃を喰らった時点で、すでにスダールは瀕死だったのだろう。女傑達の怒りと殺意が込められた総攻撃は、反撃の隙すら与えないままこの決闘に幕を下ろしてしまった。

 

「……スダールの沈黙を確認。これでようやく、一件落着ですね」

 

 劉静のその呟きが、戦いの終焉を告げていた。圧倒的な勝利を掴み取った7人の女傑は、安堵の笑みを浮かべて胸を撫で下ろす。

 その汗ばんだ肉体から分泌される芳醇なフェロモンの香りが、この機内に充満していた。

 

 リゾート施設に向かう途中の道でも、幾度となく現地の男達に声を掛けられることがあったのだ。もしこの場に1人でも男性が居たならば、決して正気では居られなかったことだろう。

 

「ふぅっ……思ってたよりも随分と手こずったわね。さぁ皆、帰ったらバレーの続きよ! 勝ったチームがパフェ1年分……あだっ!?」

「任務報告が先に決まっているだろうが、馬鹿者! そもそも我々は休暇(バカンス)で来ていたわけではないのだぞ!」

「こっ、琴乃のケチー! せっかくの……せっかくの南国リゾートなのにぃーっ!」

「ふふっ……凛風様ったら、相変わらずなのですから」

 

 そして怪獣退治が終わるや否や、ビーチバレーを再開しようとして琴乃の拳骨を貰ってしまった凛風は、涙目になりながら不満を溢している。その様子に他の女傑達がくすくすと笑みを浮かべているのも、今となっては彼女達の日常の1ページとなっていた。

 

「ふふっ……報告なら僕が済ましておきますから、今日くらいはビーチバレーを楽しんだり、ホテルで宴会でもして一晩飲み明かすのも良いのではありませんか?」

「さっすが劉静、良いこと言うじゃないっ! それでこそ私の副官だわ〜!」

「……凜風には過ぎた部下かも知れないな。いや……凜風だからこそ、ああいう部下が必要ということかな?」

「ちょっと琴乃っ! それってどういう意味よっ!」

「あはははっ!」

 

 ――この世界に、ウルトラマンはもう居ない。それでも彼女達が居る限り、この次元の地球が怪獣や異星人達によって蹂躙されることはないのだろう。

 世の男達を虜にする美貌とプロポーション、そして地球の守護を担えるほどの強さを兼ね備えたBURKの女神達。彼女達の活躍が紡ぐ英雄譚は、6人のウルトラマンが去った今も続いているのだ――。

 





 いよいよ7月に入り、夏本番になって来ましたねー! というわけで(?)、今回は夏っぽくリゾート地を舞台にした水着回を執筆させて頂きました(о´∀`о)
 もしかしたら今話がこの女傑編のエピローグになるんじゃないかなー……? ということで、今回は6人全員にしっかりピンチに遭ってもらいました。何気にオリヴィアとエレーヌがピンチに遭うのは今回が初だったりします(´Д` )
 そして現在は、ウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」が公開されております! こちらも是非ご覧くださいませ!(*≧∀≦*)

 さてさて。次週からはいよいよ、活動報告でも触れていた「新企画」を始められる……かも知れませんので、次回の更新までまったりゆっくりとお待ちくださいませ。ではではっ!٩( 'ω' )و


【挿絵表示】


Ps
 Switch版DOAX3もやってみたいんですけど、容量がほぼサンブレイクに持って行かれてるンゴ……_:(´ཀ`」 ∠):


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過去編 ウルトラピルザファイト

◇今話の登場ウルトラマン

◇ウルトラマンピルザ
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたシルバー族のウルトラ戦士。初代ウルトラマンを想起させつつも非常に恰幅の良いボディの持ち主であり、得意とする防御技は巨大なバリヤーを形成するピルザウォール。
 ※原案はリオンテイル先生。



 テンペラー軍団が地球に襲来し、この次元における「6兄弟」との決戦が始まった運命の日から、約5年前。

 怪獣や宇宙人による侵略が活発化し始めていた、この当時。ウルトラマンカイナに続き、地球を守護していたウルトラアキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)は――最大のピンチを迎えていた。

 

『くそッ! こいつッ……俺のパワーでもびくともしないなんて、一体どんな重さなんだよッ!』

 

 巨大な2本の角を備え、のしのしと緩慢な動作で山岳地帯を進行している巨大な怪獣。「メガトン怪獣」の異名を取るその怪獣――スカイドンは、アキレスに角を掴まれながらも全く意に介さず進み続けている。

 

 2本の角を握り締め、押し返そうと踏ん張るレッド族の巨人は、20万tという規格外の重量を前に完全に押し負けていた。アキレスの足元は土や岩を抉るばかりであり、スカイドンの進行を全く阻止出来ていない。

 

 BURKの戦闘機隊も上空から激しく爆撃しているのだが、どれほど頭上から爆弾を落とされても、当のスカイドンは何の反応も示してはいなかった。

 

「クソったれ……! 20発以上の爆弾を叩き込んだってのに、傷一つ付いてねぇなんてッ……!」

「隊長、このまま奴の侵攻を許せば街が……!」

「分かってらァッ! 畜生め……! アキレスのパワーでも押し返せないような怪獣なんて、一体どうしろってんだよッ……!?」

 

 上空からその戦況を見詰めていた弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)は、スカイドンの進路上にある都市に目を向け、焦燥を露わにしていた。

 

 アキレスやBURKに対する攻撃の意思を示していないスカイドンは、一見すれば無害なようにも見えるが。ただ前進するだけで地響きを起こすその巨体を放置しては、周辺の市街地に甚大な被害を及ぼしてしまうのだ。

 

 特に、アキレスの背後にある市街地への侵入を許せば、街はスカイドンによって踏み荒らされてしまうことになるだろう。その時の物的、人的被害の大きさは計り知れない。

 地球人類の守護を担うBURKとウルトラマンの誇りに賭けて、この怪獣だけは絶対に阻止しなければならないのだ。

 

 その焦りゆえに勝負を急いだアキレスは、敢えて一度、角から手を離して距離を取ると。左腕のブレスレットから、三又の槍――「ウルトライデント」を顕現させる。

 

『これで……どうだァアッ!』

 

 そして、勢いよくスカイドンの眉間目掛けて投げ付けたのだった。三又の切先は怪獣の角をへし折り、そのまま顔面に突き刺さって行く。

 

 だが。悲鳴を上げながらも侵攻を止めようとしないスカイドンは、自分に痛手を負わせたアキレスをついに「敵」と認識したのか。怒りの咆哮を上げると、凄まじい火炎放射を浴びせて来た。

 

『うおわぁああッ!?』

 

 直撃すれば、アキレスの全身を固めるプロテクターすらも溶かしてしまうほどの火力。その勢いを目にしたアキレスは、咄嗟に横に転がり退避する。だが、炎は地を転がるレッド族の巨人を執拗に追いかけていた。

 

(やられるッ――!?)

 

 回避すら間に合わないほどの速さで迫る炎に、アキレスは死を覚悟する。

 だが、次の瞬間。

 

『ピルザウォールッ!』

『……ッ!?』

 

 炎からアキレスを庇うように現れた巨大な影が、彼の視界を塞いだかと思うと。炎の勢いは、謎の声の主が発生させたバリヤーによって、完全に防がれてしまうのだった。

 

『フッ……どうやら今回ばかりは、この私の手助けが必要だったようだな!』

『あ、あなたは……!』

 

 やがて出し尽くされた炎が消えて行き、役目を果たしたバリヤーも霧散して行く。そして、その防壁を作り出していた「シルバー族の巨人」の勇姿も、ついに露わになるのだった。

 

「あれは……! アキレスと同じウルトラマン……なのか!?」

「いえ……しかし、あの姿は……!?」

 

 だが、上空を飛行している戦闘機のコクピットからその姿を目撃していた弘原海と琴乃は――なんとも言えない表情を浮かべていた。

 

 ボディの模様をはじめとする基本的な外観は、初代ウルトラマンに非常に近しい。だが、問題はその恰幅の良過ぎるボディにあった。

 太い。凄まじく太いのである。間違いなくウルトラマンなのだが、ただひたすらに太いのだ。筋肉質かつ均整の取れている体型がほとんどであるウルトラ戦士の中において、そのシルエットは一際異彩を放っていた。

 

「……デブ過ぎない?」

 

 それが、間一髪のところでアキレスの窮地を救った巨人――「ウルトラマンピルザ」に対する、弘原海と琴乃の第一印象であった。

 一方、当のピルザ自身はそういう眼で見られることなど、とうに慣れているのか。地球人達の視線を気にすることなく、肩越しにアキレスの方を見遣っていた。

 

『久しぶりだな、アキレス! 見ない間に随分と立派になったようだが……少しばかり肉付きが足りていないようだな? 鍛えることはもちろん大切だが、しっかり食べることも忘れてはいかん! それでは一流のウルトラ戦士にはなれんぞッ!』

『ピ、ピルザ先輩は食べ過ぎなんですよ……』

『ハッハッハ、おいおい褒めても何も出ないぞ! 私の腹は出ているがな!』

 

 かつての後輩の成長ぶりを豪快に喜ぶピルザは、微妙な反応を示しているアキレスの様子も意に介さず、ふくよかな腹をだぷんだぷんと揺らしている。一方、火炎放射を出し尽くしてしまったスカイドンは、ピルザを無視して進行を再開しようとしていた。

 

『あいつ、炎を切らしてるのにまだッ……!?』

『なるほど、スカイドンか……確かに今のお前には荷が重かったかも知れんな。良かろう、ここは私に任せておくがいいッ!』

 

 その様子を目にして立ち上がろうとしていたアキレスを片手で制すると、ピルザは得意げに腹を揺らしながらのっしのっしと歩み出し、スカイドンの前に立ちはだかって行く。

 

『ピルザ先輩、ダメです! そいつの重さはッ――!?』

 

 身を持ってその圧倒的な重量を理解していたアキレスは、制止しようと声を上げるのだが。

 彼が言い終えないうちに――ピルザは軽々と、20万tもの巨大怪獣を持ち上げてしまうのだった。自分より軽い(・・・・・・)怪獣を担ぐことなど、彼にとっては朝飯前なのである。

 

『う、うそーん……!?』

『……ふむ。この怪獣、どうやら元々地球人らに対する害意はなかったようだな。ならば、このまま宇宙に送り返してやるのが筋というものであろう! シュウゥワッチッ!』

 

 その光景に瞠目するアキレスやBURKの面々を尻目に、ピルザはスカイドンを持ち上げたまま素早く地上を蹴ると、マッハ2.5という疾さで宇宙の彼方に飛び去って行く。

 

『ハッハッハ! 我が誇らしき後輩・アキレスよ! 君がこの地球を救えるような戦士に成長してくれる日を、心から楽しみにしているぞッ! ハーッハッハッハー!』

 

 自分自身の重量に縛られないほどの膂力を持っているためなのか。スカイドンの巨体を、さも通常の怪獣のように持ち上げたまま翔ぶピルザの姿は、「動けるデブ」という一言に尽きるものであった。

 

「あんな外見であれほど速く飛べるのか……しかも、あの怪獣をああも容易く持ち上げてしまうとは……」

「でも……一体何だったのでしょう。あの異様に太いウルトラマン……」

「あぁ……何だったんだろうな、あの腹……」

 

 嵐のように現れては去って行く。そんなピルザの立ち回りを目撃した弘原海と琴乃は、顔を見合わせて微妙な表情を浮かべていた。

 それはアキレスも同様だったらしく、彼は紅い手で顔を覆いながら天を仰いている。

 

『……全くもう、いきなり来たかと思ったらすぐに帰っちゃって。見た目の割にフットワークが軽いのは、相変わらずなんだからなぁ』

 

 助けられた礼を言う間も無く飛び去ってしまった先輩に、苦笑するアキレスは。ピルザが去っていった方向を見遣ると、その空に向かって手を広げ、自身も飛び上がって行く。

 

 そして明日も、地球を襲う怪獣や宇宙人との戦いに臨んで行くのだ。ピルザが期待していた通りの、ウルトラ戦士に成長するために。

 

 ◇

 

 その日から、約5年後。

 数々の戦いを経て「一流のウルトラ戦士」へと成長したアキレスは、ついにテンペラー軍団との最終決戦に望むことになる――。

 




 今回はリオンテイル先生原案のキャラ「ウルトラマンピルザ」に登場して頂きました! ピザデブのウルトラマンという斜め上のキャラ案だったこともあり、今回はややギャグ寄りな回となっておりまする(゚ω゚)
 リオンテイル先生、ピルザの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)


Ps
 「シン・ウルトラマン」早く観に行きたいお……_:(´ཀ`」 ∠):


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過去編 ウルトラクライムファイト

◇今話の登場ウルトラマン

小森(こもり)ユウタロウ/ウルトラマンクライム
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたシルバー族のウルトラ戦士。銀色を基調にネイビーの紋様が入った身体の持ち主であり、必殺技は拳を握った右腕を突き上げ、そこから右腕と左腕をX字に交差して光線を放つライズアップ光線。ザインが地球の守護を担っていた頃は、現地の警察官・小森ユウタロウの身体を一時的に借りていた。
 ※原案は平均以下のクソザコ野郎先生。



 テンペラー軍団の襲来から、約4年前。怪獣や宇宙人から絶えず狙われ続けていた地球の命運は、当時のBURKとウルトラマンザインに託されていた。

 

 そのザインに変身し、地球を守り続けていた青年――当時18歳の椎名雄介(しいなゆうすけ)は。人間の負の感情から発生し、怪獣を生み出すことすらある「マイナスエネルギー」の脅威を、その身(・・・)で味わっていた。

 

「そん、なッ……! どうして、こんなッ……!」

 

 ――双頭怪獣「パンドン」がその二つの嘴から猛火炎を放ち、東京の街を火の海に変えて行く。マイナスエネルギーを帯びたその個体は、従来種よりもさらに強大な火力を振るっているようだった。

 その光景を、遠方の高層マンションの外廊下から目撃していた雄介は――鮮血の染みが広がっている腹部を抑えながら、手摺に寄り掛かっていた。

 

「ひ、ひどい怪我だよね、雄介先生。そんなにひどい怪我なら、もう戦えるわけない、よね? 私だけの雄介先生で、居てくれるよね……!?」

 

 そんな彼の眼に映っていたのは、街を焼いているパンドンではなく。

 ザインに変身しようとしていた自分を包丁で刺した、教え子(・・・)の少女だったのである。

 

 震える手で包丁を握っている彼女は、自分の「行為」をまともに受け止められずにいるのか。光を失った眼に愛する男の姿を映し、ぼろぼろと涙ぐみながらも力無く笑っている。

 

 ――毒ヶ丘有彩(ぶすがおかありさ)、15歳。都内在住の中学3年生だったが、現在は不登校。そして、家庭教師のアルバイトをしていた雄介の教え子だ。

 146cmという小柄な体躯に反した、推定Iカップの爆乳を持つ絶世の美少女。そんな彼女の類稀な容姿は、羨望、嫉妬、欲情、好奇、虐めだけでなく。ストーカーや誘拐未遂など、不登校に至るほどの「災厄」を呼び込んでいたのである。

 

 その災厄を糧に生み出された莫大なるマイナスエネルギーが、今まさに東京を燃やしているパンドンの発生源となっていたのだ。

 包丁を握る彼女の全身には、パンドンにあるものと同じ、どす黒いオーラが纏わり付いている。ウルトラマンの力を持つ雄介にしか視認出来ないそのオーラは、ますます強まろうとしていた。

 

(有彩のマイナスエネルギーがあの怪獣を……!? ここまで濃く(・・)ならないと、ウルトラマンの俺ですら気付けないなんてッ……!)

 

 腹部の傷を抑えながらも、有彩とパンドンを交互に見遣り状況を把握しようとする雄介。その眼は傷の痛みに構うことなく、怪獣を倒さんとする鋼鉄の意志を宿していた。

 そんな彼の様子を目にした有彩は、信じられないと言わんばかりに眉を吊り上げている。

 

「えっ……雄介先生、まさか、まだ戦うつもりなの……!? そんなの、そんなこと出来るわけないじゃん! だって先生、私にお腹刺されて……ひどい怪我してるんだよ!? そんな身体で戦うなんて無理だよっ! だって私、そのために先生をっ!」

「有彩……」

 

 マイナスエネルギーは怪獣を生み出すだけでなく、発生源の人間が持つ負の感情をより増幅させて行く作用がある。自我が無くなるのではなく、自我がより強く先鋭化されたものが行動に顕れるのだ。

 つまり雄介を刺したという有彩の行為は、マイナスエネルギーだけのせいだとは一概には言い切れないのである。雄介という「男」を欲する、「女」としての倒錯的な愛情。それこそが、有彩をこの凶行に走らせた真の原因なのだから。

 

 ――不登校に陥ってからも、成績を落としたくはないと悩んでいた優等生の有彩にとって、雄介は単なる家庭教師という枠には到底収まらない大きな存在となっていた。

 都内最優と評判の家庭教師だった彼は、深刻な男性不信に陥っていた有彩の心をも少しずつ解きほぐし、やがては家族のような絆を育んでいた。有彩の窮状を儚んでのその行動が、結果として「仇」となったのである。

 

 雄介を家庭教師としてではなく、「男」として見るようになっていた有彩は、いつしか「女」としての自分を求めて欲しいと願うようになっていた。

 

 そして、教師と生徒としての日々を共に過ごす中で、雄介が現役(いま)のウルトラマンであると知っていた彼女は。雄介を戦いから遠ざけたいという想い故に、彼を包丁で刺したのである。

 当初こそ純粋にウルトラマンとしての彼を応援していた有彩だったが、戦いの日々が激しさを増して行くにつれて、不安を募らせるようになっていた。その不安こそが、莫大なマイナスエネルギーの源泉となったのである。

 

 言葉で止められないのなら、戦えない身体にすればいい。

 そんな暴挙に出るほどにまで、マイナスエネルギーにより自制心を失っていた彼女は、短絡的な衝動を抑えられなくなっていた。

 

「ダメだよ……ダメだよダメだよそんなのッ! 雄介先生はもう、ウルトラマンなんてやらなくていいのッ! これからもずっと、私だけの雄介先生でいてよッ! あんなところになんか、もう行かないでよッ! なんでBURKが居るのに、雄介先生まで戦わなくちゃいけないのッ!」

 

 不登校となり、外との繋がりを持てずにいた有彩にとって、雄介は家族を除けば唯一とも言っていい拠り所。

 その雄介を危険な戦地に行かせないために刺す、という矛盾の極致は、彼女の心をさらに混沌の奥へと沈めている。耐え難い罪悪感に狂いながら包丁を振り回し、怯えたような表情で雄介を凝視する有彩の言動は、ますます常軌を逸していた。

 

(……俺のせいだ。俺が有彩の気持ちを知らないままだったせいで、彼女を追い詰めてしまった……! マイナスエネルギーの発生源が彼女だと気付いてさえいれば、こんなことになる前にいくらでも手が打てたのにッ……!)

 

 一方、雄介は自分を刺した有彩を責めようとはせず、むしろ罪悪感すら覚えていた。彼女から発生していたマイナスエネルギーに気付けなかったことだけではない。

 彼女をここまで追い詰めたのは自分1人だけではないが、最後の最後で「溢れさせた」のは間違いなく自分なのだと。

 

 そんな彼が、震える足に力を込めて立ち上がろうとする姿に、有彩は胸を打たれ――再び包丁を握り直していた。

 

「……あ、あはは、そうか、そうなんだ。雄介先生は、お腹刺されたくらいじゃ諦めてくれないんだ……! そりゃあそうだよね、今までずっと私達を守ってくれていたウルトラマンなんだもん……! これくらいで止まってくれるわけなんてないッ……!」

「有彩……!?」

「ごめんね先生、気付かなくて。先生を止めるなら……足の腱を切ればいいんだって!」

 

 怪獣の発生を止められなかった責任だけは、ウルトラマンとして取り返さねばならない。そんな雄介の力強い意志をその眼差しから察していた有彩は、彼の足を動けなくしようとしていた。

 

「そこまでだッ! 大人しくしろ、毒ヶ丘有彩ッ!」

「あうッ!?」

 

 だが、その刃が雄介の足に届くことはなかった。この外廊下に駆け付けて来た1人の警察官が、有彩の手から包丁を叩き落としてしまったのである。

 その警察官――小森(こもり)ユウタロウ巡査は、鮮やかに有彩を投げ飛ばすと、瞬く間に彼女の両手に手錠を掛けてしまった。

 

「うあぁっ!」

「小森巡査……!? いや、あなたは……!」

 

 ユウタロウとは以前から顔見知りだった雄介だが、その時の彼は普段とはあまりにも雰囲気が違い過ぎていた。間違いなく自分が知っている小森ユウタロウだというのに、顔付きが明らかに「別人」だったのである。

 

「全く……詰めが甘いぞザイン。灯台下暗し、とはよく言ったものだが……注意深くこの娘を見ていれば気付けていたはずだ。女心に鈍いからこういうことになるのだと知れ」

「クライム教官……なのですか!?」

 

 その正体は――ウルトラマンザインの師匠、ウルトラマンクライムだったのだ。小森ユウタロウに憑依していた彼は、弟子の活動を地球人の視点から視察していたのである。

 

 怪獣が現れても一向に弟子が駆け付けて来ないことから事態を察した彼は、1人の警察官としてここまで急行して来たのだ。

 彼は暴れようとする有彩を強引に押さえ込み、完全にその暴走を封じている。うつ伏せに取り押さえられた黒髪美少女の爆乳が、床に押し付けられむにゅりと形を変えていた。

 

「ぅうっ! 離せこのっ、このおぉッ!」

「待ってくださいクライム教官、その子は……!」

「あうぅうッ! 離せ、離してよおッ! 私は、私は……雄介先生を止めなきゃいけないのにぃいッ!」

「……辛い思いをして来たという過去は、今の悪事を正当化出来る免罪符ではないッ! そこを履き違えるなッ!」

 

 マイナスエネルギーによって凶暴化した人間の膂力は、平常時のそれを遥かに凌いでいる。それを熟知していたユウタロウことクライムは、手加減することなく有彩を押さえ付けていた。

 

(クライム教官、有彩ッ……!)

 

 その光景を見ていることしか出来ずにいた雄介は、己の未熟さが招いてしまったこの状況に苦悶の表情を浮かべ、外廊下の向こうに見える怪獣の巨影を見遣る。

 二つの嘴から猛火を放つパンドン。逃げ惑う人々が織り成す、阿鼻叫喚の煉獄。瓦礫の下敷きにされた母親に縋り、泣き叫んでいる子供。

 

「ぐ、うッ……おぉッ!」

 

 その全ての景色に追い立てられるように――雄介は腹部を抑えながら、立ち上がっていた。やがて彼はユウタロウと有彩をこの場に残して、走り出して行く。

 

「……!? おい、待てザインッ! 間も無く救急車と応援の警察官が到着する、お前は安静にしていろッ! 無理に動けば傷が広がるぞッ!」

「先生、雄介先生ッ! お願い、行かないでぇッ!」

 

 その行動に瞠目するユウタロウと有彩は制止の声を上げるが、雄介は決して立ち止まることなく、ふらつきながらも走り続けていた。

 ユウタロウとしてはすぐさま雄介を追いたいところだったが、有彩が彼に危害を加えようとしている以上、増援の警官隊に引き渡すまでは手放すわけにも行かない。

 

 そんな2人を置き去りにしたまま、雄介は銀色に輝く鍵状のペンダント――ザイナスキーを握り締めていた。

 

(すみません教官、ごめんな有彩……! 俺が、俺がもっとしっかりしていればこんなことにはならなかったのにッ……!)

 

 燃え盛る街の中を駆け抜け、パンドンの巨体を仰ぐ彼は。誰も責めることなく、ただ己の責任を完遂することにのみ心血を注ごうとしている。

 

(だからせめて……奴だけは、奴だけは俺がッ!)

 

 そして、その悲壮な覚悟を胸に。銀色の鍵を胸に突き刺し、ウルトラマンとしての己に「変身」するのだった。

 

「ザイン――イグニッションッ!」

 

 やがて光の中から飛び出して来た、レッド族の巨人――ウルトラマンザインが、パンドンの眼前に着地する。その着地点を中心に噴き上がる土砂の勢いが、周辺のアスファルトを跳ね上げていた。

 

『ジュアアァッ!』

 

 電子回路状の模様を持つサイボーグウルトラマンは、一気にパンドンの懐に飛び込むと――その機械化されたボディを活かした格闘戦に持ち込んで行く。文字通りの鋼鉄の拳が、双頭怪獣の巨体に減り込んでいた。

 

『ジュアッ……ァアッ!?』

 

 だが、有彩のマイナスエネルギーをふんだんに吸収していたパンドンの耐久性は、ザインの見立てを遥かに凌いでいた。

 鉄拳の乱打を浴びながらも、一歩も下がることなく耐え抜いていたパンドンは、カウンターのボディブローをザインの腹部(・・)に叩き込んだのである。

 

 先ほど有彩に刺された、腹部を。

 

『……グゥアァアッ!』

 

 その痛みにダウンし、のたうち回るザインを冷酷に見下ろすパンドンは、追い討ちの蹴りを入れ続けていた。

 ウィークポイントとなっていた腹部を庇おうとするザインは、激しく頭部を蹴られ、額のエネルギーランプを割られてしまう。

 

「くッ……! あのバカ弟子め、いつになったら私の命令を聞く気になるのだッ!」

 

 そんなザインの窮地を目の当たりにしていたユウタロウは、有彩を他の警官隊に引き渡した後――即座に現地に駆け付けていた。

 その腰に提げていた白銀の拳銃「クライムリボルバー」を引き抜いた彼は、そこに素早く「ウルトラバレット」と呼ばれる銃弾を装填する。

 

「クライム・イグニッションッ!」

 

 そして、シリンダーを回転させながら――その雄叫びと共に天に向けて、引き金を引いた瞬間。

 弾丸のようなオーラと共に「ぐんぐん」と飛び出して来たシルバー族の巨人が、颯爽とザインの前に降り立つのだった。

 

『シュアァッ!』

 

 銀色を基調としつつも、ネイビーの紋様が入ったボディを持つ「ウルトラマンクライム」。ウルトラセブンを想起させる顔つきを持つその巨人のカラータイマーは、ウルトラマンメビウスのような形状となっていた。

 

 彼は着地と同時にパンドンに向かって飛び掛かると、火炎放射を掻い潜りながら素早く組み付いて行く。そして生身のウルトラマンでありながら、サイボーグのボディを持つザインよりもさらに強力なパンチを叩き込むのだった。

 

『アトミック――クライムッ!』

 

 ウルトラマンタロウが得意としていた「アトミックパンチ」を彷彿とさせる、大型貫通爆弾の如きストレートパンチ。その一撃は強化されたパンドンのボディすら、発泡スチロールのように容易く貫いていた。

 その衝撃とダメージに絶叫し、激しく転倒する双頭怪獣。そんな光景に生き延びた都民達が歓声を上げる中、ザインはようやく立ち上がっていた。

 

『クライム教官ッ……!』

『……今さら退けと言っても、どうせお前は聞かんのだろう? ならば最後の一撃くらいは付き合って見せろ、この私に逆らったからにはな!』

『……はいッ!』

 

 教官の言葉に奮起するザインは、両脚を震わせながらもザインスラッガーを投げ、パンドンの胸に刃を沈ませる。

 さらに、そのままスペシウムエネルギーを凝縮させた二つの光球を合体させ、一つの「弾丸」を形成していく。

 

 一方、クライムは拳を握った右腕を突き上げ、そこから右腕と左腕をX字に交差していた。さらにその体勢から、ウルトラ戦士の基本技――スペシウム光線の体勢へと移行して行く。

 

『ライズアップ……光線ッ!』

『ザイナ……スフィアッ!』

 

 ウルトラマンクライムの最大火力を込めた必殺技、「ライズアップ光線」。ザインスラッガーの投擲に重ねて叩き込む、ザイナスフィアの「ハイパーノックスタイル」。

 その二つが同時に炸裂し、パンドンを跡形もなく消し飛ばしたのはそれから間も無くのことであった。突如として現れた謎の巨人(クライム)の勇姿に歓喜する人々を一瞥し、銀の巨人はゆっくりと弟子に肩を貸す。

 

『……申し訳ありませんでした、教官。俺は有彩のことを何も……』

『我々ウルトラ戦士の中にもベリアルという者が居たように、地球の人々も決して善き者ばかりではない。……その前提を踏まえた上で、我々は彼らと向き合わねばならん。心して掛かるのだぞ、この地球でウルトラマンと名乗るからにはな』

 

 厳しい言葉を浴びせつつも、決して弟子を見放すことなく肩を貸しているクライムは、そのままザインと共に遥か彼方へと飛び去って行く。

 

 家庭教師の青年を包丁で刺したという中学3年生の少女が、警察に逮捕されたと小さく報道されたのは、その翌日のことであった――。

 

 ◇

 

 そして、ウルトラマンザインが己の使命を果たし終えた日から4年後。マイナスエネルギーから解放され、贖罪を終えた毒ヶ丘有彩は――さらに美しく成長し、19歳の女子大生となっていた。

 入学当初からミスコン最有力と目されていた彼女は、当然の如く大勢の男達に言い寄られていたのだが、その全てを冷ややかに拒絶していたのだという。芸能界からのスカウトに対しても、それは同様であった。

 

 その一方で、テンペラー軍団の襲来によって住まいを失った人々のための炊き出しに積極的に参加していた彼女は、いつしか「被災地の聖天使」とも呼ばれるようになっていた。

 そんな彼女が、BURK隊員として視察に訪れていた椎名雄介との「再会」を果たした時。4年前から止まっていた2人の時間も、ようやく「再開」したのである――。

 

 




 今回は平均以下のクソザコ野郎先生原案のキャラ「ウルトラマンクライム」に登場して頂きました! 警察官というユウタロウの個性を活かせるエピソードを……と考えているうちに、なんとも生々しい内容になってしまいましたなぁ(´-ω-`)
 近日中にはウルトラアキレスの現役時代エピソードも投稿出来ればなーと思っております。ではでは、平均以下のクソザコ野郎先生! クライムの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)


Ps
 いよいよ今日から「シン・ウルトラマン」の公開が始まりますなー! 私はちょうど繁忙期なのですぐには観に行けないのですが、どんな作品になっているのかすごーく楽しみでありまする(*´ω`*)


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過去編 ウルトラゼファーファイト

◇今話の登場ウルトラマン

江渡匡彦(えとくにひこ)/ウルトラマンゼファー
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたレッド族のウルトラ戦士。頭頂部の長めのスラッガー、ツリ目で横長な六角形の黄色い目、胸部に伝う楔模様のプロテクターが特徴であり、必殺技はエネルギーを帯びたスラッガーで相手を斬るゼファードスライサー。ザインが居る地球に訪れた際は、BURKの新人隊員・江渡匡彦の身体を借りていた。
 ※原案はクルガン先生。



 

 テンペラー軍団の襲来という、この世界史上最大の侵略が始まる運命の日から、約4年前。

 地球の防衛という大任を担うBURKとウルトラマンザイン――椎名雄介(しいなゆうすけ)は、日本を揺るがす大事件に直面していた。

 

『くそッ……! なんとしても、こいつらを発電所に入れるわけには行かないッ!』

 

 ――都心部からは遠く離れた山中に設けられている、原子力発電所。

 

 日本のインフラを担うその発電所を背にしているウルトラマンザインの前には、2体の怪獣が立ちはだかっているのだ。

 複数の怪獣を相手にしたことがなかった当時のザインにとっては、非常に苦しい状況なのだが――この戦いだけは、一歩たりとも退くわけには行かないのである。

 

 発電所を稼働させているウランを狙っている、「ウラン怪獣」ガボラ。電気を餌としている「透明怪獣」ネロンガ。

 その2体の怪獣の暴走だけはなんとしてでも阻止せねば、原子力発電所は甚大な被害を被ってしまう。そうなればインフラへの損害のみならず、最悪の場合――この一帯が放射能によって汚染される可能性もあるのだ。

 

 核の恐怖を知る人類の1人として、その守り手たるウルトラマンとして。ザインは今、かつてない窮地に陥っている。

 そんな彼に続くべく、弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)も光線銃を手に必死に応戦しているのだが、彼らの攻撃など怪獣達は気にも留めていない。

 

「くそったれッ! やっぱりBURKガン程度じゃ蚊が刺す程度にも効かねぇってことかよッ……!」

「しかし、今から退却してもザインが敗れれば我々も助からないでしょう……! 隊長、ここは腹を括るしかありませんッ!」

「分かってらァッ! 駒門、ここまで来たらお前も覚悟を決めやがれッ!」

「元より私は……そのつもりですッ!」

 

 彼らの戦闘機もすでにネロンガが放つ電撃によって撃墜されており、もはや光線銃での白兵戦に挑むしかない状況であった。

 

 放射能汚染の懸念があるこの状態で戦闘を続けるのは本来得策ではないのだが、今さら撤退したところで万一ザインが発電所の防衛に失敗すれば、汚染から逃げ切れる可能性も低いのだ。

 こうなれば、もはや一連托生。弘原海達はザインと運命を共にしつつ、ただ貪欲に勝利を目指すしかないのである。その時、発電所内の火災現場から職員達の悲鳴が響き渡って来た。

 

「隊長、発電所内にはまだ逃げ遅れた職員達が居る模様です! 自分が避難誘導に向かいます!」

江渡(えと)……!? 済まん、危険な任務になるが……頼んだぞッ!」

「いいか、決して無理はするなよ! 入隊早々死なれては寝覚めが悪いからなッ!」

「分かってますよッ!」

 

 彼らの悲鳴を耳にした、BURKの新人隊員――江渡匡彦(えとくにひこ)は光線銃での迎撃を中断すると、燃え盛る発電所内に向かって走り出して行く。

 入隊から間も無い新人だろうが、こうなれば彼にも頼るしか無い。そう判断した弘原海と琴乃は敢えて制止することなく、職員達の救助を匡彦に任せていた。

 

「……しかしあいつ、ここ最近は異様に勇敢なんだよなぁ。ついこの間までは、ちょっと頼りないくらいだったんだが……」

「もしかしたら彼も雄介に……ウルトラマンザインに刺激されているのかも知れませんね」

「ハハッ、俺達も負けていられねぇなッ!」

 

 発電所を目指し、ネロンガの電撃を掻い潜りながら走り続けている匡彦。その背中を一瞥する弘原海と琴乃は、不思議そうに顔を見合わせている。

 

 BURKに入隊したばかりである彼は、ほんの数日前までは新人らしい臆病さもあったはずなのだが――最近はまるで、歴戦の勇士であるかのような佇まいで、勇敢に怪獣達に立ち向かっているのだ。その変貌に小首を傾げつつも好意的に受け取っている2人は、江渡の成長と活躍に期待しながら、光線銃を撃ち続けていた。

 

「くッ、火災がどんどん激しくなって……うあぁッ!?」

 

 一方、発電所に到着した匡彦は、職員達の悲鳴が聞こえる方向へと走り続けていたのだが――行手を阻む火の勢いに思わず足を止めていた。そして、次の瞬間に起きた爆発に巻き込まれ、激しく吹っ飛ばされてしまう。

 

「しまった……!」

 

 その弾みで彼の懐からは、スティック状の「装置」が落下していた。火の海の中に落ちてしまったその「装置」を目にした匡彦は、焦燥の表情を浮かべて顔を上げる。

 

『ジュアァ、ァァアッ……!』

「ザイン……!」

 

 一方、彼の眼前――発電所の門前では、ザインがネロンガとガボラの猛攻に晒され、防戦一方となっていた。

 ネロンガの角から飛ぶ電撃と、ガボラの大顎から吐き出される放射能火炎。その両方から発電所を守るべく身を挺している彼のカラータイマーは、すでに激しく点滅している。ザインのピンチを目にした匡彦は、険しい面持ちで拳を握り締めていた。

 

(ネロンガに遅れを取るようなあいつではない……! やはりガボラかッ……!)

 

 すでに多量の電気を喰らったことで透明状態を維持出来なくなっているネロンガは、それほど脅威ではない。電気に対する高い耐性を持っているザインならば、耐え凌ぐことも出来るだろう。

 問題はガボラだ。放射能火炎の威力はかなりのものであり、加えてガボラ自身も体内に大量のウランを含有している。ザイナスフィアで撃破しようものなら、その瞬間にこの一帯を巻き込む核爆発が起きてしまう。

 

 その2体に同時攻撃を仕掛けられているザインは、全く反撃に転じることが出来ずにいるのだ。ネロンガから先にザイナスフィアで始末しようにも、2体が肩を並べているこの状況では、どうしてもガボラを巻き添えにしてしまう。

 文字通りの爆弾を抱えているガボラが相手では、本来のペースで戦うことは非常に難しい。その窮地に立たされているザインはまさに、絶体絶命となっていたのだ。

 

(やはり……俺がなんとかするしかないッ! 済みませんクライム教官、俺にはあいつを放っておくことなんて出来ないッ!)

 

 そんなザインのピンチを目の当たりにした匡彦は、意を決して火の海の中に飛び込むと――戦闘服に付いた火を消すために激しく地を転がり、素早く立ち上がる。火の中からスティック状の「装置」を取り戻した彼の眼は、不退転の決意に燃え上がっていた。

 

弟弟子(・・・)の窮地に……熱いとか苦しいとか、言ってられるかよッ!」

 

 ――そう。彼の肉体には数日前から、ウルトラ戦士が憑依していたのである。

 かつては共にウルトラマンクライムの元で修行を積んでいた、ザインの「兄弟子」。それが匡彦と一心同体になっていた、ウルトラ戦士の正体だったのだ。彼が火の海に飛び込んでまで取り戻したスティック状の物体は、本来の力を呼び覚ますための「起動点火装置」だったのである。

 

「……ッ!」

 

 彼は意を決して、スティック状の変身アイテム――「ゼファードスティック」のスイッチを押すと。その先端部を点灯させ、空高く突き上げる。

 

 そして、次の瞬間。眩い閃光がこの一帯に迸ると、その中から現れた巨大な真紅の拳が、匡彦の全身を頭上から包み込んでいく。やがて発電所を飲み込む火の海を突き破るように、光の巨人が「ぐんぐん」と拳を突き上げ、この戦場に顕現するのだった。

 

「あれは……!」

「新しい、ウルトラマン……!? 一体あそこで何が起きてるんだ、江渡は無事なのかッ!?」

 

 その光景に瞠目する弘原海と琴乃は、思わず射撃の手を止めてしまう。

 部下が走り去った先に現れた、レッド族のウルトラ戦士。その勇姿を目にした彼らは、匡彦の安否を気に掛けていた。果たして彼は無事なのだろうか……と。

 

 一方、その匡彦が変身した真紅の巨人――「ウルトラマンゼファー」は、ザインの背後で深く息を吐き出し、戦闘態勢を整えている。

 頭頂部に備わっている長めのスラッガーや、ツリ目がちで横長な六角形の黄色い眼は非常に攻撃的なデザインであり、胸部に伝う楔模様のプロテクターも、彼の雄々しさに彩りを添えている。

 

『ジョワァアァッ!』

 

 彼はその紅い両手から放つ「ウルトラ水流」で、発電所を飲み込む炎の海を一瞬で鎮火すると――九死に一生を得た職員達が顔を上げている間に、地を蹴って高く飛び上がっていた。

 やがてガボラの顔面に鋭い飛び蹴りを叩き込んだ彼は、怪獣が怯んでいる隙に弟弟子(ザイン)の傍らに着地する。予期せぬ兄弟子(ゼファー)の参戦に、ザインは思わず仰け反っていた。

 

『ゼファー先輩、どうしてこの次元の地球に……!? 別の次元の惑星に正規配属されたはずでは……!』

『有給使って、弟弟子のツラを拝みに来てやったのさ。クライム教官からは手を貸すなと言われたが……生憎俺は昔から、聞き分けのない問題児だったからな。さっさとこいつらを片付けるぜ、ザインッ!』

『……はいッ!』

 

 兄弟子の心意気に胸を打たれたザインは高らかに声を上げると、ゼファーと肩を並べて怪獣達の方へと向き直って行く。怪獣達の目線に合わせるかのように腰を落とした2人のウルトラ戦士は、猫背のような低姿勢でのファイティングポーズを取っていた。常に重心が低い怪獣達のタックルで、足元を掬われないようにするためだ。

 一方のネロンガとガボラは、ゼファーの登場に怯むどころか、獲物が2人に増えたと言わんばかりに闘争心を剥き出しにしている。けたたましい彼らの咆哮は、全面対決の始まりを告げていた。

 

『ジュァアッ!』

『ジョオワァァアッ!』

 

 次の瞬間。双方は真っ向から激しく組み合い、苛烈な格闘戦へともつれ込んで行く。チョップやキック、尻尾による殴打が乱れ飛ぶ大混戦となっていた。

 やがてザインはネロンガへ、ゼファーはガボラへと狙いを絞って行く。怒涛の打撃によって弱った2体へと、とどめの「必殺技」を叩き込む瞬間が迫ろうとしていた。

 

『ゼファー先輩、そいつは体内に……!』

『分かってるさッ! ……そういう時はな、こうするんだよッ!』

 

 だが、体内に大量のウランを抱えているガボラに光線技を叩き込むことは出来ない。その懸念を訴えるザインを他所に、ゼファーは頭頂部のスラッガーに自身のエネルギーを収束させていく。

 

『ゼファード……スライサーッ!』

 

 そして、高エネルギーを帯びて光り輝くスラッガーを手にした彼は、ガボラの放射能火炎をかわしながら――勢いよくその刃を投げ飛ばすのだった。

 猛火を斬り、空を裂く光刃は瞬く間にガボラの首を、頭部の襟もろとも刎ね飛ばしてしまう。体内のウランには全く傷を付けることなくガボラの命を刈り取った刃は、素早くゼファーの元へと戻って来るのだった。

 

『す、凄い……! ガボラのウランは首のすぐ下にまで詰まっていたのに、それを一切傷付けずに頭部だけを……!?』

 

 確かに頭部だけを切断してしまえば、誘爆の危険性はない。だがガボラの体内に蓄積されていたウランはすでに、頭部の手前にまで達していたのだ。僅か数センチの誤差でも命取りになるような、危険過ぎる手段であることには違いない。

 

 そのウランを一切傷付けることなく本当に頭部だけを切り落とすなど、並のウルトラ戦士に出来る芸当ではない。飛翔しているミサイルの起爆装置だけをピンポイントで切断しているようなものだ。

 怪獣の首を一瞬で切断出来る光刃の精製と、念力によるスラッガーの精密操作。その両立が為せる妙技を目の当たりにしたザインは、驚嘆の声を上げる。

 

『ザイン、一気に決めるぞッ! ガボラを倒した今なら……もう遠慮はナシだッ!』

『……分かりましたッ! 全力で行きますッ!』

 

 だが当のゼファーは己の技術を奢ることなく、ガボラの死体を背にするようにネロンガの方へと向き直っていた。そんな彼と頷き合うザインは、敬愛する兄弟子と共に決着を付けるべく、二つのスペシウムエネルギーの球体を出現させる。

 ゼファーも、両腕を胸の前で交差してエネルギーを集中させると。右腕を天に、左腕を水平に伸ばし――やがてL字に組んだ両腕を、ネロンガに向けていた。

 

『ザイナ……スフィアァッ!』

『セフィニウム……光線ッ!』

 

 スペシウムエネルギーを纏う球体の一撃。L字の腕から飛び出す眩い光線。その両方が同時に閃き、ネロンガへと炸裂する。

 

 天を衝くような爆炎が立ち昇り、この戦いに終幕が訪れたのはその直後であった。ウルトラ戦士達の勝利に、弘原海と琴乃が喜びを噛み締めてガッツポーズを決める中、ザインとゼファーは固く握手を交わしている。

 

『……成長したな、ザイン。これからもしっかり頼むぜ? この星の未来は今、お前に懸かってるんだからよ』

『もちろん、そのつもりですよ。……応えて見せます、必ず』

 

 やがて、ガボラの死体を持ち上げたゼファーが勢いよく地を蹴り、そのまま空の彼方へと飛び去って行く。ザインもそんな彼に続き、発電所の職員達や弘原海達が手を振る中、両手を広げて飛び立って行くのだった。

 

「やれやれ、今回もウルトラマンザインには助けられちまったな。それにしても、あの紅いウルトラマンは一体……んっ!?」

「弘原海隊長、あそこ!」

 

 そして、2人のウルトラマンが人々の前から消え去った後。胸を撫で下ろしていた弘原海と琴乃の視界に――こちらに向かって駆けて来る青年の笑顔が映り込んで来た。

 遠くから手を振り、「おーい!」と叫んで走って来る江渡匡彦。彼の姿を目の当たりにした弘原海と琴乃は目を見合わせ、安堵の笑みを浮かべる。

 

「江渡隊員、無事だったか! 良かった、本当にっ……!」

「バッカ野郎ォ、心配掛けやがってッ! あの紅いウルトラマンが来てくれなかったら、今頃どうなってたと思ってやがんだッ!」

「あははっ! 自分は不死身ですよ、隊長っ!」

 

 そんな江渡匡彦こそがウルトラマンゼファーであることなど、露も知らない弘原海と琴乃は、歓喜の笑みを浮かべて部下の肩を叩いていた。一方、国彦の身体を借りているゼファーも、弟弟子(ザイン)に頼もしい仲間達が居るのだと知り、優しげな微笑を浮かべている。

 

 いずれ彼は匡彦の身体を離れ、依代(あいぼう)となっていた男の記憶を消し去ると。一人前のウルトラ戦士に成長したザインと共に、この地球を去って行くことになるのだが――それはまだ、もうしばらく先のことになる。

 ザインの「後輩」となるウルトラマンエナジーがこの地球に降り立つ、約1年後まで。ゼファーは兄弟子として、かけがえのない弟弟子を支え続けて行くのだった――。

 




 今回はクルガン先生原案のキャラ「ウルトラマンゼファー」に登場して頂きました! ベーターカプセル系アイテムでの変身シーンはやはりいいものですなー。シンプルイズベスト! でございます(*^ω^*)

 これまでの過去編に登場してきた読者応募ウルトラマン達の多くは「一度きりのスポット参戦」……というイメージで書いていたのですが、ゼファーに関してはこの後もずっと、ザインの窮地に駆け付けてくれるサブトラマン枠だったんじゃないかなーと想像しております。
 ちなみに今話の時点ではまだ学生であるはずの雄介の方が、「ウルトラカイナファイト」本編時においては先に入隊しているはずの匡彦よりも立場が上になっているのですが、そこはいわゆるキャリア組とノンキャリ組の違いだと思って頂ければ……m(_ _)m

 「ウルトラカイナファイト」本編におけるザイン=雄介が、クライムのような厳しい言葉遣いである一方で、後輩達に対しては面倒見良さげな感じにもなっているのは、ゼファーの影響があってのことなんじゃないかなーと思っております(´ω`)
 クルガン先生、ゼファーの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)

Ps
 「シン・ウルトラマン」の監督も、主人公の変身シーンで「自分は今『ウルトラマン』を撮っている」ことを強く実感されていたそうです。それまで「ただの人間」だった者が「ヒーロー」に変身する場面っていうのは、その作品の最大の見せ場と言っても過言ではありませんものね……(*´꒳`*)


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過去編 ウルトラレグルス&ドクテラファイト

◇今話の登場ウルトラマン

鷹村隼人(たかむらはやと)/ウルトラマンレグルス
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、ウルトラマンエナジーの師匠でもあるレッド族のウルトラ戦士。両腕と両脚に銀色のラインが入った真紅のボディの持ち主であり、必殺技は両手を合わせ腰に引いた後、両手を上下に開いた形で前方に突き出し、掌から光線を発射するレグルロア光線。かつて別次元の地球を救うために戦った際、依代にしていた大学生の姿を借りている。外見の年齢は21歳。
 ※原案はサンシタ先生。

三蔓義命(みつるぎみこと)/ウルトラマンドクテラ
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、ウルトラマンレグルスの師匠でもあるシルバー族のウルトラ戦士。他のシルバー族よりも銀の比率が高い身体であり、必殺技は左腰から手裏剣を投げるように、光輪状のエネルギーを放ち相手を切断するエクセシウム光輪。かつて別次元の地球を救うために戦った際、依代にしていた研修医の姿を借りている。外見の年齢は24歳。
 ※原案はX2愛好家先生。



 テンペラー軍団の襲来から、約3年前。絶え間なく地球を襲う怪獣や異星人達の侵略を阻止するべく、覇道尊(はどうたける)ことウルトラマンエナジーが先陣を切って戦っていた頃。

 

『よく見るがいい、地球人共! お前達の希望……ウルトラマンエナジーは、このラスヴァーダの前に敗れ去った! この地球はたった今、我々バルタン星人のものとなったのだッ!』

 

 人類の希望を背負い戦い続けていたエナジーは、「宇宙忍者」の異名を取る伝説の宿敵――「バルタン星人」との戦いで、敗北を喫していた。ラスヴァーダと名乗るバルタン星人の戦士は、勝鬨を上げるように己の鋏を天高く掲げている。

 

 夕焼けに彩られた東京の市街地を遥か上空から見下ろしている、ラスヴァーダ率いるバルタン星人の宇宙船団。その艦艇から逆さ吊りにされているウルトラマンエナジーは、全てのエネルギーを失い身動きひとつ取れない状態であった。

 四肢を拘束され、十字架に縛り付けられているその姿は、誰の目にも明らかな「完敗」の2文字を突き付けている。

 

『明日には貴様らの頭上に、八つ裂きにしたエナジーの骸を叩き落としてやる! それが我々の勝利宣言となろう! せいぜい震えて待つがいいッ!』

 

 絶望に打ちひしがれた表情で、その光景を仰ぐ都民に告げられた非情な予言。それを耳にした力無き人々の間には、どよめきが広がっていた。

 逆さ吊りにされたエナジーを連れて、遥か宇宙の彼方まで飛び去ってしまった船団が姿を消した後。その動揺は、最高潮に達する。

 

「お、おい……どうするんだよ、どうなるんだよ俺達……!」

「BURKも負けて、エナジーまで倒れちまったら……もう、どうしようもねぇじゃねぇか……!?」

「……じゃ、じゃあ私達、ホントにあいつらに支配されるしかないってこと……!? 冗談でしょっ!?」

「と、とにかく今からでも逃げないと! 明日にはエナジーがバラバラにされて降ってくるんでしょっ!? ここに居たら危ないじゃないっ!」

「逃げるって……どこに逃げりゃいいんだよぉっ!」

 

 際限なく広がり行く動揺はパニックを呼び、そのパニックがさらなる混沌を呼ぶ。やがて阿鼻叫喚の渦に飲み込まれた都民は、少しでも遠くに離れようと逃げ惑い始めていた。

 空港に殺到した人々は冷静さを失うあまり、飛行機の翼や機体にまでしがみ付いている。船団が居た空域の真下に相当する地域は、10分も経たないうちに静寂に包まれていた。

 

「……」

 

 その中央に位置する公園で独り、鋭い表情を浮かべて去り行く船団を見送っていた青年は。研ぎ澄まされた刃のような眼を細め、悔しげに拳を震わせている。

 そんな青年の背に歩み寄る、白衣を纏ったもう1人の男性は、彼の後ろから優しげに声を掛けていた。

 

「……さすがは『宇宙忍者』の異名を取るバルタン星人。その中でも屈指の武闘派と恐れられた、侵略軍司令官ラスヴァーダ……と言ったところですか。あなたが直々に鍛え上げた愛弟子……ウルトラマンエナジーすらも破るとは」

「ドクテラ師匠……」

「ここでは三蔓義命(みつるぎみこと)先生、ですよ。鷹村隼人(たかむらはやと)君」

 

 振り返った青年の唇に指先を当てると、白衣の男性も神妙な表情で天を仰ぐ。孫弟子(・・・)の窮地を目の当たりにした彼の心中も、決して穏やかではない。

 

 ウルトラマンエナジーの師匠である、ウルトラマンレグルス。そのレグルスが師事していた、ウルトラマンドクテラ。

 彼ら2人はこの時、かつて自分達が依代としていた青年の姿と名を借りて、この次元の地球に訪れていたのだ。愛弟子にして孫弟子である、エナジーの危機を予感していたが故に。

 

「……申し訳ありません、三蔓義先生。弟子(エナジー)の失敗は俺の失敗です。俺がもっと、あいつをしっかりと鍛えていればこのような事態には……」

「隼人君。過ぎたことを悔いては前に進むことも、今在る生命を守ることもできません。それはあなたを弟子に取った時、最初に教えたことですよ」

「……はい」

 

 ウルトラマンレグルスこと鷹村隼人は、己の不甲斐なさを責めるあまり拳から鮮血を滴らせていた。

 医師として、それを見過ごすわけには行かなかったのだろう。ウルトラマンドクテラこと三蔓義命は、自然な手つきで隼人の手を取り、流れるように応急処置を施して行く。

 

 あっという間に彼の手を止血した命は、穏やかにして毅然とした面持ちで、隼人と向かい合う。すでに彼の意図を察していた隼人は、命がこの先の「作戦」を語るよりも早く、深く頷いていた。

 

「すでに力尽きている今のエナジーでは、自力であの拘束から逃れることは叶わないでしょう。それに本来、別次元の宇宙を守らねばならない立場にいる私達も、長くこの次元の地球には留まれない」

「早急に『持ち場』に戻らねばならない俺達が、最速でエナジーを救出するには、やはり……」

「『ウルトラの星作戦』しかない、ということです。……やるべきことは分かっていますね?」

「当然です。我々の力で、『ウルトラの星』を創りましょう」

 

 ――「ウルトラの星作戦」。

 かつて初代ウルトラマンとウルトラセブンが、「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャックを救出する際に実行したとされる作戦の名である。

 

 迅速かつ確実に、愛弟子を救出するため。偉大なる先人の知恵を借りることを決意した命と隼人は、夕焼け空を睨み上げると、各々の「変身アイテム」を取り出して行く。

 

「レグルスッ!」

 

 「レグリスト」と呼ばれるブレスレットを装着した右腕から、鋭い正拳突きを繰り出すと同時に、隼人が叫び。

 

「ドクテラッ!」

 

 ナイフ状のアイテム「トリアージャー」を鞘から抜刀した命が、雄叫びを上げて刃を空へと掲げる。

 

 その透き通るような叫びが引き金となり、それぞれのアイテムから放たれる光が、2人の全身を飲み込んでいく。やがて無人となった市街地の中央に、新たなる光の巨人が「ぐんぐん」と拳を突き上げ、降臨するのだった。

 

 両腕と両脚に銀色のラインを描いている、真紅のボディ。そしてウルトラセブンに近しい顔立ちでありながら、ゾフィーの様な楕円形の眼を持つ――レッド族のウルトラ戦士「ウルトラマンレグルス」。

 

 他のシルバー族より、銀の比率が高いボディ。それに加えて頭部の一部と、肩からカラータイマーを通って腰に続くラインに赤い差し色を滲ませている、シルバー族の戦士――「ウルトラマンドクテラ」。

 

『行きますよ、レグルス。シュアァッ!』

『はい、師匠! ……イヤァアーッ!』

 

 彼ら2人は変身した瞬間、即座にマッハ9という超音速で地を蹴り、船団を追って宇宙へと飛び出して行く。

 その際に発せられた絶大なエネルギーは、光り輝き天を衝く2本の巨柱となり、遠方から目撃した人々を驚愕させていた。

 

「な、なんだぁっ!?」

「光の、柱……!?」

 

 それがウルトラマンの出現に伴う現象であることなど、知る由もなく。逃げ惑っていた人々は騒ぐことすら忘れて、眼前に映る巨大な光の柱に、ただ目を奪われるのだった。

 

 そして、2人の変身から10秒も経たないうちに。両手を広げて宇宙を飛翔していたドクテラとレグルスは、即座にラスヴァーダの船団を捕捉する。

 船団に属しているバルタン星人の戦士達は、そのあまりにも早すぎる追撃に動揺しつつも、すぐさま迎撃に動こうとしていた。

 

『超高エネルギー反応接近! ウ、ウルトラ戦士ですッ!』

『何ィッ!? そんなバカな、ウルトラマンエナジーの他にも即応出来る戦士が居たとでも言うのかッ!?』

『ええいッ、各員戦闘配備ッ! 奴らの狙いはウルトラマンエナジーだ! 決して接近させるなッ!』

 

 エナジーを拘束している十字架。それを牽引している宇宙船から、続々とバルタン星人が飛び出して来る。

 彼らは鋏状の両腕から破壊光弾を連射し、ドクテラとレグルスを必死に牽制していた。だが、2人はその弾幕を軽やかに掻い潜り、瞬く間に距離を詰めて行く。

 

『イヤァアーッ!』

『シェアァアッ!』

 

 レグルスの宇宙拳法が唸り、ドクテラの光線技が閃くと。彼らの行く手を阻むバルタン星人の群れは、紙切れのように吹き飛ばされて行った。

 如何なる精強な戦士達の心も、一瞬にしてへし折るほどの圧倒的過ぎる戦力差。その隔たりの深さは、誰の目にも明らかであった。

 

『く、くそォッ! あんな雑魚1人のために、なんだってこんな奴らが出て来てやがるんだよッ!』

『……俺の弟子を愚弄するとは、いい度胸だ。エナジーを救出することだけが目的だったが……気が変わった』

『……全滅して頂きましょう』

 

 2人の力を目の当たりにしたバルタン星人の1人が戦闘中に零した、失言。

 それを聞き逃さなかったレグルスの眼に、殺意にも似た闘志が宿る。穏やかな口調を崩していないドクテラまでもが、その声色に確かな憤怒を滲ませていた。

 

 それから、より2人の攻撃は激しさを増し。バルタン星人の宇宙船団は戦闘開始から2分足らずで、ドクテラの宣言通りに全滅してしまうのだった。

 邪魔者がいなくなったことを確認したレグルスとドクテラは、互いに頷き合うと拘束されたエナジー目掛けて、それぞれ別方向から急接近していく。

 

『甦れ、エナジーッ!』

『あなたはまだ、倒れるわけには行かないのですッ!』

 

 そして、×字を描くように双方がエナジーの傍らをすり抜けた瞬間。中心点から発生した膨大な光エネルギーがエナジーを包み込み――その赤い身体を、復活させて行く。

 

『レグルス師匠、ドクテラ師匠ッ……! う、おぉおおぉおッ!』

 

 ウルトラ戦士達の故郷であり、生命の源でもあるウルトラの星。その星の力を人為的に再現するこの秘術を以て、エナジーはついに息を吹き返したのだった。

 身体の中から噴き上がる凄まじいエネルギー。その余剰分を吐き出すかの如く、エナジーは自身を捕らえていた十字架の拘束を、力任せに引きちぎって行く。

 

『成功ですね……!』

『……ふん、つくづく世話の焼ける弟子だ』

『レグルス師匠、ドクテラ師匠……ありがとうございます! 俺が至らなかったばかりに……!?』

 

 かくして、バルタン星人の拘束から脱出することに成功したエナジーは、師匠達との予期せぬ再会を果たしたのだった。だが、戦いはまだ終わっていない。

 

『貴様らァアッ!』

『ラスヴァーダ……! くそッ、今度こそ決着を付けてやるッ!』

『あの時、手も足も出なかった若造が何を偉そうに……! 貴様ら、よくも我が同胞達を可愛がってくれたな! もはやこの怒り、貴様らの首だけでは到底収まらん! 地球の人間全てを根絶やしにして、我がバルタン星人の植民地としてくれるわッ!』

 

 初戦でエナジーを打倒し、十字架に張り付けたバルタン船団のリーダーこと、ラスヴァーダ。その男がついに、3人の前に再び姿を表したのである。

 彼は宇宙忍者の異名に違わぬ影分身によって、無数の幻影を生み出すと、3人を完全包囲する。そして決して逃すまいと、全方位から破壊光弾を連射するのだった。

 

『……フン。どれが幻か実体かなど、瑣末な問題よ。俺の前には、そのようなまやかしなど通用しないと知れッ!』

 

 だが、レグルスは全く動じることなく、エネルギーを充填させた両手を合わせ腰に引き、より力を凝縮させて行く。

 

『レグルロア……光線ッ!』

 

 やがて、両手を上下に開いた形で前方に突き出した瞬間。その掌から、眩い光線が発射されるのだった。

 レグルロア光線と呼ばれるその閃光は、迫り来る光弾を瞬く間に撃墜してしまう。さらにレグルスは発射体勢のまま身体を回転させ、全方位の幻影を光弾もろとも、一気に薙ぎ払っていた。

 

『おッ……おのれぇえぇッ! 我が侵略を阻むウルトラ戦士共めがッ! こうなれば、1人でも多く道連れにしてくれるわァアッ!』

 

 その掃射から唯一逃れていたバルタン星人は、レグルスを避けるようにドクテラとエナジーに迫る。それは紛れもなく、幻影ではないラスヴァーダの「本体」であった。

 

『……あなた達の野望に「侵略」の2文字がある限り。その願いが叶う日は、未来永劫訪れないでしょう』

 

 破壊光弾を連射しながら、猛接近して来るラスヴァーダ。その仇敵を討つべく、ドクテラはエネルギーを充填させた両腕を左腰に当て、腰だめの姿勢に入る。

 

『エクセシウム光輪ッ!』

 

 そこから、右手で手裏剣を投げるように。「エクセシウム光輪」と呼ばれる光輪状のエネルギーが、勢いよく放たれたのだった。

 

『が、ぁッ……!?』

『エナジー、今ですッ!』

『はいッ! ……エナジウム光線ッ!』

 

 悲鳴を上げる間も無く、ラスヴァーダの身体が真っ二つに両断される。そして寸断された半身は、復活したエナジーによる「エナジウム光線」によって、跡形もなく消し飛ばされたのだった。

 かくして、ラスヴァーダ率いるバルタン星人の宇宙船団は全滅し。今回の事件は、3大ウルトラマンの完勝に終わったのである。

 

『レグルス師匠、ドクテラ師匠……ありがとうございました。俺が未熟だったばかりに……』

『ふん。これを貸しだと思うのなら、この先の戦果で返して行くのだな。鍛錬を怠るなよ』

『さぁエナジー、あなたも地球に帰りなさい。早く人々に、元気な姿を見せてあげるのです』

『……! はいッ!』

 

 その後、エナジーはドクテラに促され、すぐに地球に向けて飛び去って行くのだった。これから逞しく成長していくであろう孫弟子の背を、ドクテラは宇宙の彼方から穏やかに見守っている。

 

 一方で、レグルスは神妙な様子でドクテラの横顔を見遣っていた。その胸中には、とある「懸念」が渦巻いている。

 

『……ドクテラ師匠、本当によろしかったのでしょうか。エナジーの奴に、何も伝えないままで』

『ラスヴァーダの船団が、たったあれだけの規模で地球を征服しようとしていたことですか』

『えぇ。……恐らく奴らの目的は、自分達の移住先に適している地球が「終末」を迎える前に、侵略を終えて来るべき「決戦」に向けた準備を進めるためだったのではないかと。そうでなければ、機動力にのみ特化した船団で地球に現れたことへの説明がつきません』

 

 今のこの瞬間も、刻一刻と地球に迫りつつある「終末」。それを齎す絶対的破壊者達の影は、2人もすでに感知しているのだ。

 

『テンペラー軍団……この次元の宇宙における、最強最悪の殺戮集団。奴らは近いうちに必ず、地球に現れるでしょう。エナジー達にもその存在を教えておくべきでは……?』

『今知らずとも、いずれは知ることになりますよ。……私は信じています。あなたが育てた彼ならば、必ずやこの地球を守り抜いてくれると』

『ドクテラ師匠……』

 

 その脅威を知る上で。孫弟子達の勝利を疑うことなく、ドクテラは悠然と腕を組み、蒼い星を静かに見つめている。

 

 ◇

 

 それから、約3年後。

 彼の予言通り、ウルトラマンエナジーを含む新世代の若獅子達は、その成長を証明するかの如く、テンペラー軍団を打倒するのだった――。

 




 今回はX2愛好家先生原案のキャラ「ウルトラマンドクテラ」と、サンシタ先生原案のキャラ「ウルトラマンレグルス」に登場して頂きましたー。この2人はなんとか物語に出せないかなーと特に悶々していたキャラだったので、今回ウッキウキで書かせて頂いておりまする(о´∀`о)
 本採用キャラ達とはまた違った方向性での登場となりましたが、我ながら美味しいポジションに書けたなーとちょっと自負してみたり。X2愛好家先生、サンシタ先生、ドクテラとレグルスの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)


Ps
 今回の主役となった3人。変身前の名前を並べると、「ハヤトタケルミコト」になります。なんか見覚えのある字並びですなー?(゚ω゚)


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過去編 ウルトラフィストファイト

◇今話の登場ウルトラマン

佐渡光(さわたりひかる)/ウルトラマンフィスト
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたシルバー族のウルトラ戦士。鋭角的な眼付きと身体の模様の持ち主であり、必殺技は両碗を腰だめに構え、正拳突きと共に光線を撃ち出すフォトンブラスト。アーク達が居る地球に訪れた際は、現地の青年の姿を借りていた。
 ※原案はマルク先生。



 大切な人を失った時、誰しも一度は思うことがある。

 

 あの人にもう一度会いたい、やり直したい。

 不可能と知りながら、そんな月並みで愚かしい願いを抱いてしまうのは、感情を持つ人間としてはむしろ必然なのだろう。

 

 そんな情動に揺さぶられてしまう人としての脆さにおいては、ウルトラマンですら例外ではなかったのだと明らかにされたのは――テンペラー軍団の襲来から、約2年前のことだった。

 

 思うがままに時空を歪めてしまう力を持つ、四次元怪獣「ブルトン」。

 フジツボのような無数の突起物と、塊状の身体の持ち主である、その異形の怪獣と対決していた当時のウルトラマンアークは。彼の者が出現させた異次元へと繋がる穴に、為す術もなく吸い込まれてしまったのだ。

 さらに、アークを救出するべく駆け付けて来たウルトラアキレスとウルトラマンザインまでもが、その穴に引き摺り込まれてしまったのである。

 

 やがて3人のウルトラマンは次元の壁を越えると、自分達が知る世界とは異なる歴史を歩んでいる「別次元の地球」へと漂着した。

 その地球が、自分達にとっての「異世界」であることを認識していなかったわけではない。この転移が怪獣(ブルトン)の仕業である以上、早急に元の世界に帰る方法を探さねばならないのだということは、3人も頭では(・・・)理解していた。

 

 にも拘らず。彼らは転移から1ヶ月が過ぎても、元の世界に帰る方法を探そうともしていなかったのである。

 

 理由は、ごく単純なものであった。

 

 怪獣に踏み潰されたはずの、八月朔日要(ほずみかなめ)の妹が。異星人に刺し殺されたはずの、椎名雄介(しいなゆうすけ)の恋人が。戦闘時の火災に焼き尽くされたはずの、暁嵐真(あかつきらんま)の両親が。

 この異次元の地球においては、何事もなかったかのように生存していたのである。逆に要、雄介、嵐真の3人が、この世界では死亡していることになっていたのだ。

 

 死んだと思っていた大切な人が、ある日ひょっこりと帰って来た。この次元の地球で生まれ育った者達にとっては、それが真実となっていたのだ。

 今目の前にいる八月朔日要が、椎名雄介が、暁嵐真が、異次元の地球から飛ばされて来たウルトラ戦士であることなど知る由もない。要の妹も、雄介の恋人も、嵐真の両親も、奇跡が起きたのだとしか思っていなかった。

 

 そんな彼らと同じ気持ちを抱えていた要達もまた、真実を打ち明ける機会を逸したまま。魂ごとこの世界に引き摺り込まれてしまったかのように、1ヶ月もこの世界に留まっていたのである。

 まるで、自分達がウルトラマンであることすら忘れようとしているかのように。

 

「うわぁあーっ! かっ、怪獣だぁあ!」

「ふ、踏み潰されるぅっ! 助けてぇえっ!」

 

 その状況に変化が現れたのは、この世界に約1ヶ月ぶりの「怪獣」が出現した時であった。突如市街地の中心部に現れ、破壊の限りを尽くし始めたその怪獣の巨躯に、人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

「――!」

「あぁっ、見てお兄ちゃん! あれ、怪獣! 怪獣が出たよっ!」

 

 兄と手を繋いで歩いていた可憐な少女も、つぶらな瞳でその怪獣を遠くから見つめていた。怪獣の姿を目の当たりにした要は、目を逸らし切れない「現実」を突き付けられたかのように、引き攣った貌で後退りしてしまう。

 

「あの怪獣、すっごくヘンな形してるねー。どこから来たのかなぁ?」

「……」

「お兄ちゃん? どうしたの? お腹痛いの?」

 

 この世界の地球に現れた怪獣は――まさに1ヶ月前、要達をここに転移させたブルトンだったのである。

 今の幸せな毎日が、この怪獣によって生み出された歪な幻であるという事実を思い出させるには、十分過ぎる光景であった。

 

 その異様な外観は、若きウルトラマン達に非常な現実を見せつけていたのである。妹の手を握る要は、その青ざめた頬に汗を伝わせていた。そんな兄の異変に気付いた妹は、心配げに顔を覗き込んでいる。

 

『へァアッ!』

「あっ、見てお兄ちゃん! ほらっ、ウルトラマンが来てくれたよ! あんな怪獣、すぐにやっつけてくれるんだから心配しないでっ!」

「……!」

 

 そこへ、この次元の地球を守護しているウルトラ戦士が駆け付けて来る。マッハ5もの速度でブルトンの前に飛来して来たその戦士は、勇ましい雄叫びを上げて怪獣に掴み掛かっていた。

 初代ウルトラマンを彷彿とさせる外観でありつつも、瞳と身体の模様が鋭角的になっているその戦士――「ウルトラマンフィスト」は、人々に迫ろうとする怪獣に組み付き、その進行を押し留めていた。

 

(……俺は、俺は……!)

 

 その勇姿が、要の心をさらに追い立てる。自分はこんなところで何をしているのだ、という気持ちが、彼に激しい焦燥を齎している。それは、別の場所で恋人や家族と過ごしていた雄介と嵐真も同様であった。

 

「……花苗(かなえ)。先に、家に帰ってろ」

「お兄ちゃん? えっ? どこ行くの?」

 

 気が付けば、要の手は最愛の妹から離れていて。その首に下げられている、アーククリスタルを握り締めていた。

 幼い妹を置き去りにして、ゆっくりと歩み出していく要の背に、少女の声がのし掛かる。けれど、振り返ることはできない。今振り返ったら、自分は今度こそ戻れなくなる。

 

(あぁ……帰りたくないなぁ。花苗と、ここで暮らしていたいなぁ。この世界なら、花苗が大人になるまで、一緒に居てあげられるのに。俺の中での花苗は、永遠に小さいままなのに)

 

 肩を震わせ、ボロボロと泣き崩れながらも。せめてその貌だけは見せまいと、涙声など聞かせまいと。要は妹の声に耳を貸すことなく、歩み続け、やがて走り出して行く。

 ブルトンの突起物から放たれる謎の力に吹っ飛ばされたフィストが、ビルに激突したのはその直後だった。

 

「お兄ちゃん!? 待ってぇ! 花苗を独りにしないでぇっ!」

「……ッ!」

 

 ビルの崩壊に伴う轟音が、天を衝いている時でさえも。そんな妹の涙声が、要の背に突き刺さってくる。

 

 心の底から、振り返りたかった。踵を返して、今すぐにでも抱き締めたかった。変身アイテムなど放り投げて、この世界での優しい日々に浸っていたかった。

 それでも要は、妹を置き去りにしたまま、走り去ることを選んでいる。人間としての自分の魂ごと、置いて行くかのように。

 

(ごめんな、ごめんな……! 花苗、ごめんなぁ! お兄ちゃん、本当はもう居ないんだ! ここに居ちゃいけないんだ! それでも俺達はずっと、見守ってるから! 遠い世界の向こう側から、花苗のことも……死んで行った皆のことも、ずっと!)

 

 この決断を迫られたのは、要だけではない。雄介も、嵐真も、苦悩と葛藤の果てに、戻ることを選んでいたのだ。その証拠に、この世界のウルトラ戦士ではないはずのアキレスとザインが、倒れ込んだフィストに肩を貸している。

 彼らも、この世界で人間として生きることより、ウルトラ戦士としての使命を果たす道を選んだのである。先輩達のその姿を目撃してしまったからには、もはやこれ以上、目を背けることはできない。

 同じ涙の味を、覚えてしまった者として。

 

「――アァークゥッ!」

 

 そして、全ての迷いを振り切るために。要は首に下げられていたアーククリスタルを引きちぎると、絶叫と共に天高くそれを翳す。

 その叫びに呼応したクリスタルから広がる閃光が、彼の全身を包み込み。やがて眩い輝きの中から「ぐんぐん」と、銀色の巨人が拳を翳して飛び出して行く。

 

『テエェーイッ!』

『……!』

『来たか、アーク!』

『待っていたぞ!』

 

 空中で軽やかに身を翻したウルトラマンアークが、ブルトンの前に着地したのはその直後であった。フィストを助け起こしているアキレスとザインを庇うように、彼は勇ましく拳を構えている。

 

『……アキレス、ザイン、そしてアーク。私達の最大火力で、一気に奴を仕留めるぞ』

『あぁ……そうだな』

『終わらせよう。俺達の手で』

 

 そんな彼が、ここに来るために「捨て去ったもの」。その重さを慮るフィストは、同じ苦しみを味わったアキレスやザインと頷き合い、「必殺技」の体勢へと移行する。

 

『イーリア……ショットォッ!』

『ザイナァッ……スフィアァアッ!』

『メタリウムッ……アァークシュゥウートッ!』

 

 片腕を横に振りかぶった後、縦に突き出して発射する「イーリアショット」。

 スペシウムエネルギーを充填させた両手の拳を前に突き出し、手を開いて二つの光弾を出現させる「ザイナスフィア」。

 両腕を後方に振りかぶった後に腕をL字に構え、強力な光線を叩き込む「メタリウムアークシュート」。

 

 その三つの必殺技がブルトンの全身に直撃し、黒煙が上がる。だが、彼の怪獣はそれでも力尽きることなく、再び謎の力を突起物から発してアーク達を吹っ飛ばしてしまうのだった。

 

『これで……今度こそ終わらせる! フォトンッ……ブラストォッ!』

 

 だが、彼らが攻撃を引き受けている間に。両碗を腰だめに構え、「力」を蓄え続けていたフィストは、正拳突きと共に必殺の光線「フォトンブラスト」を撃ち出していく。

 その一閃がブルトンの巨体を貫き、爆炎が大空に噴き上がった瞬間。この戦いは、ようやく終焉を迎えたのだった。

 

『……この次元の地球のことは、どうか私に任せて欲しい。君達には、君達の手で守らねばならない世界があるはずだ』

『……』

 

 人々がウルトラマン達の勝利に歓声を上げ、沸き立つ中。空の彼方には、ブルトンの活動により発生していた異次元への「穴」が広がっていた。

 そこを指差すフィストの言葉に、アーク達は暫し目を伏せ――観衆達の中に混じっている、それぞれの「大切な人」と視線を交わしていた。

 

 今度こそ、いなくなってしまうのか。そう問い掛ける力無い眼差しに、心を揺さぶられなかったわけではない。

 だがブルトンが倒れた今となっては、その残滓である上空の「穴」だけが、この世界から脱出できる唯一の道なのだ。ウルトラマンとしての使命を果たすと決めた以上、今さら引き返すことなど出来るはずもない。

 

『……行きましょう、アキレス兄さん。ザイン兄さん。俺達はまだ、「こっち側」には居られないんです』

『あぁ……そうだな、アーク。今はまだ、一緒には居られない。それだけのことなんだから』

『いつか俺達が星になった時こそ、本当の再会が果たされる。……焦ることなど、ないんだ。今日までの日々を、忘れない限りは』

 

 やがて彼らは、最後の迷いを振り切るように。両手を伸ばして遥か上空へと飛び去り、ブルトンが残した「穴」の向こうに消えて行く。その姿を見届けたアークは、彼らがこの世界に残した「大切な人々」に、視線を落とすのだった。

 

(……君達の世界にはいずれ、この次元の地球とは比べ物にならないほどの『災厄』が訪れることになるだろう。それはきっと、誰1人として欠けてはならない死闘となるに違いない。今君達が立ち止まっても、君達が味わった悲しみが広がるだけなんだ)

 

 人々の多くが、アーク達に笑顔で手を振る中で。嵐真の両親と雄介の恋人、そして要の妹だけは――最愛の人を失ってしまったかのように、泣き崩れていた。

 だが、この結末を悲しんではならないのである。アーク達が居た世界には今も、テンペラー軍団の影が忍び寄ろうとしているのだ。

 その予感があったフィストとしても、彼らを苦しめるような決断をさせてしまった自分の不甲斐なさを、ただ噛み締めることしかできない。最後まで残っていた彼も、やがて両手を広げて大空へと飛び上がり、人々の前から姿を消してしまうのだった。

 

(約束しよう。アキレス、ザイン、アーク。いつか『その日』が来た時は、必ず私も力になる。どんな形であろうと……必ずな)

 

 人知れず固めていた、その決意の通り。彼が佐渡光(さわたりひかる)と名乗り、アーク達の地球に訪れることになるのは、もうしばらく先の物語であった――。

 




 今回はマルク先生原案のキャラ「ウルトラマンフィスト」に登場して頂きましたー。特別編の中でも美味しいお助けキャラとして活躍していましたし、もう一つ何か掘り下げられないかなーという思いで書かせて頂きました(´-ω-`)
 本採用キャラ達とはまた違った方向性での登場となりましたが、我ながら印象的なポジションに書けたかなーという気もしておりますね。マルク先生、フィストの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)


Ps
 「なんでこんな話書いた! 言え!」「最近無限列車編観直してたからつい……」


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過去編 ウルトラシスニャーファイト

◇今話の登場ウルトラマン

◇ウルトラシスニャー
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたレッド族の女性ウルトラ戦士。猫耳やツインテールに、尻尾を生やした紅いキャットスーツを想起させる独特な外見の持ち主であり、巨乳の谷間にあるタイマーは猫の肉球型でピンクに光っている。必殺技はハート型の光線で相手を「魅了」し、一瞬のうちに抱擁で相手をへし折るヘヴンズハグ。
 ※原案は黒子猫先生。



 

 この次元の地球における、全ての怪獣災害の元凶となった殺戮集団――テンペラー軍団。その襲来から約2年前の地球は、当時のBURKと、ウルトラマンアークこと八月朔日要(ほずみかなめ)に託されていた。

 

『くそッ……! なんなんだこの怪獣、いくら斬ってもキリがないッ!』

 

 ――とある孤島の海岸線を舞台に繰り広げられている激闘。その戦場に立つアークは斬撃の光輪を矢継ぎ早に放ち、怪獣の一部である緑色の触手を斬り続けていた。

 

 だが、何度切断されてもその瞬間に再生する触手は、アークの斬撃などものともしていない。触手の主である「植物怪獣」ことグリンショックスは、何度身体の一部を斬られても意に介することなく、獲物であるアークを執拗に狙い続けていた。

 

『うッ!? くそッ……! こいつ、再生が早いだけじゃない……! これじゃあ、光線を外さないように近づくことも出来ないぞッ!』

 

 ――M78星雲に存在する惑星ソーキンを故郷とする怪獣「ソーキン・モンスター」。その一種であるグリンショックスは緑色の触手を全方位に振り回し、アークを寄せ付けまいとしている。

 

 従来種の半分程度の身長しかない50m級の個体なのだが、それでも今のアークにとってはかなりの脅威となっていた。

 アーク最大の必殺光線であるメタリウムアークシュート。その一閃を確実に叩き込める間合いまで、近寄れずにいるのだ。

 

『ぐぅうッ!?』

 

 やがて無数の触手はアークの首に絡み付くと、そのまま本体の懐に引き摺り込もうとして来る。頭部の花弁に貯蔵されている禍々しい溶解液は、ぐつぐつと煮え滾っていた。

 

 その光景から自分に迫りつつある危機を察したアークは、首に絡み付いた触手を掴み、懸命に踏み止まろうとする。だが触手の引力は凄まじく、アークは足元の土を抉りながらグリンショックスの眼前に引き摺り出されようとしていた。

 

『く、くそッ……! このまま、やられてたまるかッ……!』

 

 このままではアークが捕食されてしまう。その窮地を目の当たりにしたBURKの戦闘機は懸命にミサイルを連射し、その頭部に弾頭の嵐を叩き込んで行くのだが――植物怪獣は怯みもしていない。

 

「弘原海隊長、このままではッ……!」

「ちきしょうッ……! アークをやらせるわけには……うぉおッ!?」

 

 その光景に歯噛みする間も無く、まるでハエを払うかのようにグリンショックスの触手が飛んで来る。弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)を乗せたBURKの戦闘機は、その一閃を辛うじて回避していた。

 

『く、くそォッ! もう、ダメなのかッ……!?』

 

 BURKのミサイル攻撃でもびくともしない植物怪獣。その攻撃を阻止する方法など、無いというのか。

 そんな考えが全員の脳裏を過った……その時だった。

 

『こらこら、ダメだよアーク! 決着が付く前から諦めても良いなんて、お姉さんは教えてないぞぉ〜?』

『げっ……!?』

 

 突如、鈴を転がすような女性の声が鳴り響いたかと思うと。遥か上空から、女性のウルトラ戦士が飛来して来たのである。

 その女性戦士はグリンショックスの頭上からハート型の光線を照射し、怪獣の動きを足止めしていた。光線の効果によるものなのか、光を浴びた触手の動きは非常に緩慢なものとなっている。

 

 彼女はその隙にアークの傍らに着地すると、首に絡み付いていた触手を簡単に引きちぎってしまった。女性らしい優美な曲線を描いた身体からは想像も付かないそのパワーには、アークもBURKも困惑している。

 

『全く……地球での戦いでちょっとは成長したかと思ってたんだけど、まだまだ未熟さは抜けてないみたいだねぇ。そんなんじゃあ、立派なウルトラ戦士にはなれないよっ!』

『げほ、げほっ……! シ、シスニャー教官……!』

 

 地球に来る前のアークに戦闘の基礎を叩き込んだ、女性戦士の「ウルトラシスニャー」。彼女はおどけたような口調で「教え子(アーク)」を嗜め、咳き込むアークの鼻先を細い指先でピンっと弾いている。

 

 猫耳やツインテールに、尻尾を生やした紅いキャットスーツを想起させる特徴的な外見。たわわに揺れる巨乳の谷間に埋め込まれ、ピンクの輝きを放っている猫の肉球状のカラータイマー。細くくびれた腰に、ぷりんと弾んでいる巨尻。

 そのどれもが、従来のウルトラ戦士像からはかけ離れたものとなっていた。

 

「あ、あれもウルトラ戦士の1人……なのか!? どう見ても女じゃねぇか……!」

「……しかし、見た目が女だからと言って非力だとは限らないようですね。現に彼女は今、アークでもどうにもならなかった奴の触手をああもあっさりと……!」

 

 上空から戦況を見守る中、その(色々な意味で)規格外なシスニャーの容姿に瞠目している弘原海を他所に、琴乃は先ほど彼女が見せた並外れたパワーを思い返していた。

 

 斬撃光線の類でもないただの握力だけで、あの強靭な触手を千切ってしまったのだ。見かけこそ「スタイル抜群な女性」だが、その外見に騙された者から痛い目を見ることになるのだろう。

 

『……あんっ!』

『シスニャー教官ッ!?』

 

 それを知ってか知らずか、グリンショックスは触手で狙う相手をアークからシスニャーへと切り替えていた。グラマラスな彼女の肢体にねっとりと絡み付く緑色の触手が、その全身を這い回っていく。

 握力だけで触手を千切って見せたシスニャーのパワーでも、引き寄せる力には抗えないのか。彼女の肉体は徐々にグリンショックスの方へと引き寄せられようとしていた。

 

『シスニャー教官ッ! このッ……!』

『……大丈夫だよアーク。この子、もう私に「魅了」されちゃってるみたいだから』

『えッ……!?』

 

 アークは師を救うべく斬撃の光輪を放とうとするのだが、当のシスニャーは弟子の攻撃を制止し、敢えてされるがままとなっていた。先ほど彼女が照射したハート型の光線によって、グリンショックスはシスニャーに「魅了」されていたのだ。

 

 そのためグリンショックスは、触手で絡め取った彼女を懐に引き寄せはしたが――溶解液を浴びせようとはしていない。あくまで彼女を自分の手元に置こうとすることに拘っているのか、その巨体を彼女の肉体に擦り付けようとしていた。

 

『うふふっ……甘えんぼさんだなぁ。でも残念、あなたみたいにヌメヌメしてる怪獣って……私のタイプじゃないんだよねぇ』

 

 そんなグリンショックスの姿に、妖艶な笑みを溢すシスニャーは。その優美な両手を怪獣の背に回し、豊満な乳房をむにゅりと押し当てるように抱き締めると――

 

『……ふんッ!』

 

 ――先ほど触手を引きちぎったパワーを全開にして。グリンショックスの上体を、「抱擁」の要領で両断してしまうのだった。

 魅了の光線で相手の敵愾心を解きほぐし、懐に誘い込ませたところで放つ「ヘヴンズハグ」。女性戦士ならではの色香と、その裏に隠された攻撃性を併せ持つシスニャーの必殺技であった。

 

『アーク、この子は海水が弱点だよ! 後は分かるねっ!?』

『えっ……あ、はいッ!』

 

 その悍ましい攻撃にアークと弘原海が戦慄を覚える中、シスニャーの声が上がる。気を取り直したアークが両腕を振りかぶったのは、シスニャーが「射線」から逃れるべく真横に転がった直後であった。

 

『メタリウムッ……アークシュートォッ!』

 

 やがて、L字に構えられた両腕から放つ眩い光線が、再生直後のグリンショックスに直撃する。その光線の勢いに押し流された怪獣の巨体は、踏み留まる暇もなく海面まで吹っ飛ばされてしまうのだった。

 

 ――ヘヴンズハグによって上体を切断されたグリンショックスは、持ち前の再生能力を活かしてそのダメージからも回復して見せたのだが、千切られた上半身全てを再生し切るまでには大きな隙が生じていた。触手1本とは損失の量が比べ物にならないからだ。

 

 その隙にメタリウムアークシュートを叩き込めば、グリンショックスが反撃に転じる前に弱点の海に突き落とすことが出来る。そこまで読んだ上での、シスニャーの作戦だったのである。

 

『……ふふん、どお? 凄いでしょ、うちのアークは』

 

 そんな彼女の術中に嵌った植物怪獣は、そのまま海中で崩れ落ちてしまうのだった。教え子の必殺技が完璧に決まったことに喜ぶ女性戦士は、得意げに巨大な爆乳を揺らしている。2大ウルトラ戦士の勝利を目の当たりにした弘原海と琴乃も、上空でほっと胸を撫で下ろしていた。

 

『シスニャー教官、ありがとうございました……! 教官がいなかったら、俺……』

『良いの良いの、君が一人前になるまでしっかり面倒を見るのが教官(わたし)の仕事なんだから。……君なら、きっと地球を救える。私も、そう信じてるよ』

『教官……』

 

 いずれ教え子達の前に立ちはだかることになるであろう、テンペラー軍団。その影を予感していたシスニャーは、真剣な笑みを浮かべてアークの肩を軽く叩くと――巨尻を弾ませて地を蹴り、遥か宇宙の彼方へと飛び去っていく。

 

 まだ若く未熟な戦士が、彼女の期待通りの活躍を見せることになるのは、この戦いから約2年後のことであった――。

 




 今回は黒子猫先生原案のキャラ「ウルトラシスニャー」に登場して頂きました! 読者応募キャラ達の中でも一際注目されていた彼女にも、ようやく見せ場を設けることが出来ましたよ。彼女にぶつける怪獣はどいつが1番良いのかなーと思い悩む日々でしたが、最終的には最もオーソドックス(?)な相手に着地した感じになりましたねー_(:3 」∠)_
 「partEXTRA」に登場したマスターソン大統領にとっては、「懐かしい」という感想が先に来る相手だったのかも知れませんなぁ。ではでは黒子猫先生、シスニャーの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)

Ps
 グリンショックスは本来100m級の怪獣なのですが、今回の個体は40m級のウルトラマン達に合わせて大幅に縮小しております。「ウルトラマンUSA」に出て来る連中はどいつもこいつもデカ過ぎんだよ……_:(´ཀ`」 ∠):


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過去編 ウルトラリッパーファイト

◇今話の登場ウルトラマン

霧町英二(きりまちえいじ)/ウルトラマンリッパー
 Z95星雲出身であり、ウルトラマンジェムの師匠でもあるシルバー族のウルトラ戦士。腕に鋭利なヒレを持つ屈強な戦士であり、必殺技は半月状のエネルギーを放ち相手を切断するウルトラZギロチン。かつて別次元の地球を救うために戦った際、依代にしていた旅人の姿を借りている。外見の年齢は33歳。
 ※原案は黒崎 好太郎先生。



 テンペラー軍団の襲来から、約1年前。次々と地球に迫り来る怪獣や異星人達の脅威に対抗するべく、ウルトラマンジェムがその命を懸けて戦っていた頃。

 

「くそッ……! 弘原海隊長とも琴乃さんとも連絡が取れない! 一体どうなってやがるんだッ!」

 

 とある山奥の温泉街へと繋がる狭い山道を、1台のレーサーバイクが疾走していた。そのハンドルを握る金髪の少年――荒石磨貴(あらいしみがき)は、真紅のライダースジャケットをはためかせ、大自然に挟まれたアスファルトの上を駆け抜けている。

 

 山奥の温泉街に居た住民や観光客が全員、ブロンズ像にされてしまった。そんな奇妙な通報を受けたBURKが、異星人の仕業と疑い現地の調査に動き出してから、すでに3時間以上が経過している。

 今頃は現場に着いているはずの弘原海と琴乃からは定時連絡もなく、呼び掛けても応答すらない。そこで、学校帰りのウルトラマンジェムこと磨貴が、現場に急行しているのだ。

 

「待ちな!」

「……!?」

 

 すると。山道の中央に立っていた1人の青年が、掌を突き出して磨貴の前に立ち塞がってきた。30代と思しき精悍な顔立ちの青年は、真っ直ぐな眼差しで磨貴を射抜いている。

 

「誰だあんた!? 邪魔しないでくれ! こっちは大急ぎなんだッ!」

「誰でもない、ただの旅人さ。……それより、この先はかなり危険なんだ。命が惜しかったら、これ以上近付かない方がいいぜ」

「危険だから俺が行かなきゃいけないんだよ! だいたい、この道路はとっくにBURKが封鎖してるはずなのに……どうやって入って来た!? あんた、何者だ!」

「何者……か。そうだな、霧町英二(きりまちえいじ)……とでもしておこうか。とにかく、死にたくなけりゃさっさと引き返せ。歯ァ磨いて朝まで寝てろ」

 

 弘原海や琴乃と連絡が取れない焦りからか、磨貴は声を荒げて、英二と名乗る青年に怒鳴っている。一方、当の英二は涼しげな表情で「しっしっ」と手を振り、淡々と磨貴を帰そうしていた。

 そんな彼に痺れを切らした磨貴は、バイクのエンジンを噴かせて急発進させる。前輪を上げたウィリー走行で道路の横にある山肌に突っ込んだ彼は、そのまま滑るように壁を走り、英二の後ろへと回り込んでしまうのだった。

 

「もういい! あんたこそ怪我する前に、さっさと山を降りるこったなッ!」

「……」

 

 そして捨て台詞を残すと、瞬く間に英二の前から走り去ってしまう。そんな弟子(・・)の背中を見送った旅人は、ため息混じりに煙草を取り出すと――独り静かに、一服し始めていた。

 

「……まァ、言って聞くようなお利口ちゃんでもねぇよなァ。あのバカ弟子はよ」

 

 かつて別次元の地球を救うために戦っていた頃、地球で活動するための依代としていた旅人の青年。その姿を借り、弟子の様子を見に来ていたウルトラマンジェムの師匠――「ウルトラマンリッパー」は。

 

 この先に待つ「巨悪」の力を知るが故に、弟子を引き止めに来ていたのである。

 

 ◇

 

 そこから先は霧町英二こと、ウルトラマンリッパーが想定していた通りの事態に発展していた。

 

 温泉街の住民や観光客達と同様に、調査に赴いていた弘原海や琴乃も、ブロンズ像にされていたのである。それも全ては、生きた人間をブロンズ像に固め、自分の「作品」にしようと企む「ヒッポリト星人」の仕業だったのだ。

 

 その光景を目の当たりにした磨貴は怒りに身を任せ、ウルトラマンジェムに変身。

 だが未熟なことに加え、ブリリアントモードにも目覚めていなかったこの頃の彼では、ヒッポリト星人には敵わず。程なくして、彼が繰り出す「ヒッポリトカプセル」に囚われてしまったのである。

 

 救援に駆け付けたウルトラマンカイナをはじめとする5人の兄弟達でさえも、ヒッポリト星人には歯が立たなかった。

 カイナとアキレスは戦闘開始直後に、あらかじめ用意されていたカプセルに入れられてしまい。兄2人を救助しようとしたエナジーとアークも、次々と囚われ。ただ独りでヒッポリト星人に肉弾戦を挑んでいたザインまでもが、炎を纏う拳によって叩き伏せられてしまった。

 5兄弟がヒッポリト星人の姿を捕捉してから、1分も経たないうちに。彼らはカプセルの中に囚われ、戦闘不能に陥ったのである。

 

 そして。かつてウルトラマンエースと、その兄弟達が敗れた時のように。

 ウルトラマンジェムを含む6人の新世代ウルトラマンは、カプセルの中に「ヒッポリトタール」を流し込まれ――呆気なくブロンズ像にされてしまったのであった。

 

「……ったくよォ。揃いも揃って、世話の焼ける若造ばっかりで困るぜ」

 

 ガードレールに腰掛け、その惨劇を見届けていた英二は。やがて吸殻を携帯灰皿に入れると、ゆっくり立ち上がり――戦士としての鋭い貌で、ヒッポリト星人を睨み上げる。

 

「だから言ったのによ。……歯ァ磨いて、寝てろってさァ」

 

 彼の手には、赤い電動歯ブラシ「ブラッドブラッシャー」が握られていた。そのブラシが彼の歯に触れた瞬間――真紅の輝きが、英二の前身を包み込んでいく。

 

 彼をあるべき本来の姿へと、戻すために。

 

 ◇

 

 山奥の温泉街。その裏手を舞台に繰り広げられた死闘は、ヒッポリト星人の圧勝に終わっていた。

 ノズル状の口を揺らして、ブロンズ像にされた6人のウルトラマンを嘲笑う赤黒い巨人。その巨影は、沈黙に包まれた温泉街を覆い尽くしている。

 

『ハァッハハハ、ザマァねぇぜ! 何人掛かって来ようが、俺様のタールには誰も敵わねぇってこったなァッ!』

 

 そのうちの1人――ウルトラマンジェムの額を小突いた後。温泉街の方へと視線を移したヒッポリト星人は、下卑た笑い声を溢しながら、ブロンズ像にされた人々を舐めるように見下ろしていた。

 

『んー……それにしても、やっぱり地球人はいいねぇ。恐怖、悲しみ、苦しみ、悔しさ……ありとあらゆる負の感情ってヤツがこれでもかと顔に出てやがる。他の異星人だと、なかなかこうは行かねぇよなァ。フヒヒ、見てろよォ……今に全ての地球人を俺様の芸術作品にしてやるぜぇ』

 

 ブロンズ像にされた人々の表情は様々だった。ヒッポリト星人の姿に怯え、恐れ慄く観光客。自分の身体が冷たいブロンズ像になっていく光景に、絶望する地元民。先にブロンズ像にされた娘を抱きしめ、悲しみに暮れる母親。

 そして、何も出来ずブロンズ像にされていく中で、悔しさに口元を歪めていた弘原海と琴乃。彼らの貌を覗き込み、自身の美学を称賛するヒッポリト星人は、やがて苛立ちの色を帯びた眼差しでウルトラマン達の方へと振り返る。

 

『……それに引き換え、こいつらときたらみーんな同じようなツラ並べやがってよ。つまらねぇったらないぜ。……やっぱ壊しちまうか、見ててムカっ腹立つしよォ!』

 

 地球人達とは違い、悲しみや苦しみといった感情を顔に出さない光の巨人。ブロンズ像にされてもなお、その気高さを失わずにいる彼らへの怒りが、ヒッポリト星人の破壊衝動を駆り立てていた。

 

『よーし、じゃあまずはこいつからぶっ壊してやろうかなァ! あばよウルトラマンジェム! 変身する直前の、怒りに満ちていたてめぇのツラ……嫌いじゃなかったぜェッ!』

 

 そして、彼の矛先がジェムに向けられ。そのブロンズ像を打ち砕こうと、拳が振り上げられた瞬間。

 

『俺も、てめぇのツラは嫌いじゃねぇな。殴りやすそうでよ』

 

 背後に居た何者かが、その腕を掴む。何事かと振り返った瞬間、ヒッポリト星人は己の顔面に赤い鉄拳を叩き込まれていた。

 

『え? ……ぶぎゃあぁあッ!?』

 

 あまりの威力に吹っ飛ばされ、轟音と共に転倒してしまったヒッポリト星人は、慌てて立ち上がると予期せぬ「新手」に向けて怒号を上げる。

 腕を組み、両の足で雄々しく大地を踏み締めている、筋骨逞しいシルバー族の巨人。その勇姿はまさしく、ウルトラ戦士のそれであった。

 

 Z95星雲出身ということもあり、その深紅を基調とする容姿は、ウルトラマンゼアスに近しく。それでいて筋肉質な身体と、腕から伸びている鋭利なヒレは、よりワイルドな印象を与えている。

 青緑に輝く彼の両眼は、ヒッポリト星人の醜悪な姿を鋭く射抜いていた。

 

『て、てめぇ何者だッ!?』

『俺か? ……俺はウルトラマンリッパー。そこのバカ弟子共が世話になった礼を言いに来たのさ』

『バカ弟子共、だと? てめぇもウルトラ戦士か……! だったら、てめぇも俺様のコレクションに加えてやるぜぇッ!』

 

 ジェムに戦い方を教えた師匠の1人である、ウルトラマンリッパー。その巨躯目掛けて、ヒッポリト星人は炎を纏う拳を振り上げ、真っ向から襲い掛かっていく。

 先ほどの戦闘で自分に挑んできたジェム達を、1人残さず叩き伏せた炎の拳。目の前にいる新手もこの力で捩じ伏せてやろう、という甘い考えであった。

 

 リッパーは当然のように、その灼熱の拳を掌で容易く受け止めてしまう。炎の高熱すらも通用していないのか、リッパーは涼しげな佇まいで、瞠目するヒッポリト星人と視線を交わしていた。

 

『なッ……!?』

『……礼を言いに来たと言っただろう? ありがとうよ。最近のバカ弟子共は連戦連勝だからって、ちょっと調子に乗り始めていやがったからなァ。ここらで一度、お灸を据えてもらう相手としてお前は実に理想的だったぜ……ヒッポリト星人』

『ふがあァッ!?』

 

 中腰の姿勢から放たれる、体重を乗せたストレートパンチ。先ほどの不意打ちとは比にならない威力に、ヒッポリト星人は再び転倒してしまう。

 今度は、すぐに立ち上がることさえ出来なかった。あまりの威力に足に力が入らず、尻餅をついたまま後退りするしかないヒッポリト星人を追い詰めるように、リッパーは悠然とした足取りで距離を縮めていく。

 

『今回のことがありゃあ、こいつらだって己の甘さを知って鍛錬にも励むようになるだろうさ。……で、お前はもう用済みってわけだ』

『ふざけんじゃねぇ! 俺様の芸術の邪魔はさせねぇぞッ!』

 

 だが、ヒッポリト星人にはまだ奥の手がある。ジェムをはじめとする新世代のウルトラマン達を完封してきた、ヒッポリトカプセルがあるのだ。

 彼は尻餅をついた姿勢のまま形勢逆転を狙い、リッパーの頭上にカプセルを出現させる。そしてジェム達を封じた時のように、素早くカプセルを急降下させたのだが。

 

『なッ!?』

『そんなもん、俺に当たると思うか?』

『ひぎゃあッ!』

 

 頭上に目線を向けていたわけでもないのに。ヒッポリト星人の所作から企みに気付いていたリッパーは、真横に側転してカプセルをあっさりとかわしてしまうのだった。

 そして反撃とばかりに、横薙ぎに蹴りを入れられてしまったヒッポリト星人は、満身創痍といった様子で命乞いをし始める。

 

『ま、待て! 待ってくれぇッ! 俺様は何も、地球人を滅ぼそうだなんて考えちゃいないんだッ! むしろ救いに来たんだよォッ!』

『ほう……?』

『お前ほどの戦士なら分かるだろう!? あんなひよっこ共じゃあ奴らには……テンペラー軍団には絶対に敵わねぇ! 遅かれ早かれ、この星は奴らに滅ぼされる! 絶対にだ!』

『……』

 

 その口から出てきた「テンペラー軍団」という単語に、リッパーは一瞬だけ足を止める。それは、この次元の地球にあらゆる災厄を呼び込んできた、最大の元凶を指す名であった。

 彼らの強大さと、今の弟子(ジェム)達の未熟さを知るが故に。リッパーは暫し、ヒッポリト星人の「言い分」に耳を傾けている。

 

『だからその前に、俺様の手で地球人共をブロンズ像にしてやろうってんだよ! 俺様のタールで肉体を覆われた生命体は、半永久的にブロンズ像の中で生き永らえるんだぜ!? 例え地球が奴らに吹き飛ばされても、地球人という種の存続は可能となる! こんな美味い話が他にあるか!?』

『……なるほど。そいつぁ確かに、ありがてぇ話だな』

『だろう!? ハハッ、あんたなら分かってくれると思ったぜ! 俺様にゃあまだまだ利用価値がある! こんなところで殺すなんてもったいねぇ! そうだろう!?』

 

 やがて、尻餅をついたまま手を差し出し、助けを求めようとしているヒッポリト星人に対して。リッパーは静かに、左手を伸ばしていく。

 だが、ヒッポリト星人に降伏の意思などなく。彼は狡猾に、逆転の一手を打とうとしていた。

 

(へへ……甘いなァ、ウルトラマンリッパーさんよォ。タールを出せる発射口は、カプセルの中だけじゃねぇのよ。実を言うと、俺様の掌からも放射出来るんだぜぇ? てめぇがこの手を取った瞬間、直接タールをぶちかましてやらァ……!)

 

 リッパーが自分を助け起こそうとした瞬間、掌から噴射されたタールによって、ブロンズ像にされてしまう光景を夢想しながら。ヒッポリト星人は下品な笑みを噛み殺し、無力な敗北者を演じていた。

 

 しかし。

 

『え?』

 

 リッパーが差し伸べた左手はヒッポリト星人の掌ではなく、上腕部を掴んでいた。

 次の瞬間、その腕はリッパーの腕部にあるヒレの刃によって、バターのように両断されてしまう。

 

『ふんッ!』

『……ッ!? ひ、ぎゃぁあぁあッ!?』

 

 エネルギーを宿したヒレ状の刃で、相手を切り裂く「ウルトラZスラッシュ」。

 その一閃によって片腕を斬り落とされたヒッポリト星人は、絶叫を上げてのたうち回る。そんな彼の醜態を、リッパーは冷酷な眼で見下ろしていた。

 

『て、てめぇなんてマネしやがるッ! それでもウルトラの戦士かよッ!? 誇りってものはねぇのかッ!?』

『ハッ、まさかてめぇに誇りを説かれるとは思わなかったぜ。……お上品な相手じゃなくて、残念だったな』

 

 予想だにしなかった斬撃を受け、ヒッポリト星人は苦悶の声を上げながら必死にリッパーを糾弾している。だが、当のリッパーは悪びれもせず、不遜な笑みすら浮かべているようだった。

 

『……何か勘違いしていやがるようだから、一つ教えてやるぜ』

『な、何ィ……!?』

『今のてめぇの話は所詮、テンペラー軍団にはどう足掻いても敵わないという前提の上にしか成立し得ない、机上の空論でしかねぇのよ。俺は懸けてるのさ。こいつらなら必ず、テンペラー軍団からもこの地球を救えるってな』

『バ、バカな……! それこそ、天地がひっくり返ってもありえねぇぜッ! それほどの強さを持っていながら、奴らの力が分からねぇのか!? 俺様にすら負けるようなひよっこ共になんざ、勝てるわけねーだろうがッ!』

『……だからこいつらは、今から(・・・)強くなるのさ。そのための「教訓」が、お前との戦いだった。さっきも言っただろう? てめぇは、もう用済みだってよ』

『ち……ちくしょぉおおッ! なんてひでぇ野郎だ、この人でなしがァアッ!』

 

 この男には話など通じない。今になってそれを理解したヒッポリト星人は自分の卑劣さを棚に上げ、半狂乱になりながら残っている腕を振り翳し、リッパーに殴り掛かっていく。

 すでに破られている炎の拳が、その巨体に迫ろうとしていた。

 

『……ヌゥンッ!』

 

 そんな彼を、「介錯」するべく。リッパーは腕を×字に組み、エネルギーを溜めると――その両腕を上下に伸ばし、半月状の光刃を形成して行く。

 

『ウルトラZ……ギロチンッ!』

 

 やがて打ち出された、縦一文字の一閃「ウルトラZギロチン」。その光刃は真っ向から迫るヒッポリト星人の巨体を、瞬く間に両断してしまうのだった。

 

『……ふん。てめぇの2枚おろしなんざ、豚の餌にもならねぇな』

 

 まさしく苦しむ暇もない、一瞬の介錯。その閃刃に倒れたヒッポリト星人の骸を見下ろし、リッパーは鼻を鳴らして踵を返して行く。

 

 今回の元凶であるヒッポリト星人が倒れたことが影響しているのか。ジェムをはじめとするウルトラマン達や、温泉街の人々を覆っていたタールも、徐々に溶け始めていた。

 全てが元通りになるのも、時間の問題と言えるだろう。ヒッポリト星人を巡る今回の事件も、これでようやく解決となったのだ。

 

『今のこいつらは、確かにひよっこさ。……それでも最後まで諦めず立ち向かい、僅かな可能性でも勝利を信じて戦って来たこいつらなら、いつかその心を以て不可能を可能にする。それが、「ウルトラマン」なんだよ』

 

 だが、今回の事件はこれから始まる「本当の戦い」の序章に過ぎない。

 

 それを知るリッパーは、ブロンズ像から復活しつつある弟子達を一瞥すると――敢えて何も語ることなく、この場から飛び去って行くのだった。ウルトラマンジェムをはじめとする彼ら6人なら、必ずこの地球を守り抜けるのだと信じて。

 

 ◇

 

 ――そして。復活後、真っ二つにされたヒッポリト星人の遺体から全てを察したジェム達6人は、改めて己を鍛え直すようになり。

 

 この日の事件から約1年後、テンペラー軍団の侵略を見事に打ち破って見せたのである。その瞬間を見届けていたリッパーが、安堵の笑みを浮かべていたことなど知る由もなく。

 




 今回は黒崎 好太郎先生原案のキャラ「ウルトラマンリッパー」に登場して頂きましたー。作者がリアルタイムで初めて観たウルトラマンがゼアスだったので、その流れを汲んでいるリッパーはどうにか採用出来ないかなーってずっと思ってたのですよー(´-ω-`)
 本採用キャラ達とはまた違った方向性での登場となりましたが、我ながら美味しいポジションに書けたなーって気もしております。黒崎先生、リッパーの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)


Ps
 今回のリッパーは「別次元の地球に居た人間」に擬態しているという設定なので、ウルトラマンXに客演した時のウルトラマンマックス=トウマ・カイトに近い状態でした。あのお話も結構好きなのですよー(о´∀`о)


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過去編 ウルトラルプス&リキシファイト

◇今話の登場ウルトラマン

◇ウルトラマンルプス
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたシルバー族のウルトラ戦士。狼のような鋭い目付きと両肩にある赤い華の模様が特徴であり、必殺技はエネルギーを両手に溜めた後、爪状のビームで敵を切り裂くルプスネイル。
 ※原案はボルメテウスさん先生。

◇ウルトラマンリキシ
 別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたシルバー族のウルトラ戦士。ウルトラマン80に近しい顔立ちでありつつも、力士のような体型と廻し姿のような模様がある。必殺技は利き手にエネルギーを集中させ、突っ張りの如く相手に照射する張り手光線。
 ※原案はM Y先生。



 

 数多の惑星を滅ぼし、全宇宙に恐怖と災厄を振り撒いたテンペラー軍団。彼らの地球侵攻が始まる「運命の日」から、約1年前――当時の地球はBURK日本支部の精鋭達と、ウルトラマンジェムこと荒石磨貴(あらいしみがき)に託されていた。

 

「きゃあぁあっ! なんで、なんでウルトラマンジェムがっ……!?」

「し、知るかよ! とにかく遠くへ……少しでも遠くへ逃げるんだよォォーッ!」

 

 ――だが、その時。夜の東京に突如現れたそのウルトラマンジェムは、守るべき街を破壊し始めていたのである。

 逃げ惑う人々を嘲笑うかのように振るわれる、岩石の如き剛拳。その巨大な拳がビルを薙ぎ倒し、天を衝く轟音を響かせていた。

 

「あ、あぁっ……!」

 

 非常サイレンが闇夜の市街地に鳴り響き、BURKの戦闘機が緊急出動する中――街を破壊するウルトラマンジェムは、その「吊り上がった両眼」で逃げ遅れた子供を見下ろしていた。なんと、彼は恐怖で身動きが取れない子供を踏み潰そうとしていたのである。

 上空からその様子を目撃していた弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)は、「本物」からは想像もつかない所業を重ねるウルトラマンジェムの姿を目の当たりにして、素早くその「正体」を看破する。

 

「弘原海隊長ッ! ウルトラマンジェムが子供をッ……!」

「磨貴の奴がこんなことをするはずがねぇ……! さてはアイツに化けた偽物だなッ!? 駒門、遠慮はいらねぇ! 一気に仕掛けるぞッ!」

「了解ッ!」

 

 ウルトラマンの姿に擬態して破壊活動を行うことで、地球人からの信用の失墜を狙った邪悪な異星人。そのデータを過去の戦闘記録から学んでいた2人の乗機は、惑わされることなく上空からミサイルを連射していた。

 

「その吊り上がった目……気に入らんなッ!」

 

 近くで見ればジェムとは似ても似つかない、歪に吊り上がった両眼。その部位に狙いを定めた琴乃は、義憤を込めたミサイルを撃ち込んでいく。

 顔面に着弾したことで思わず怯んだウルトラマンジェムは、数歩引き下がり子供から離れてしまう。やがて彼の注意は、上空を舞い飛ぶ戦闘機へと向けられた。

 

 ――そして、邪魔な羽虫を叩き落とすかのように。ジェムは指先から光弾を発射し、戦闘機の片翼を撃ち抜いてしまうのだった。

 

「ぐあぁッ!?」

「くそッ……! 駒門、脱出だッ!」

 

 制御を失った戦闘機は、錐揉みしながら地上へと落下していく。それでも弘原海は懸命に操縦桿を倒し、全住民の避難完了が報告されている無人の地域へと機体を向かわせた上で――琴乃と共に、脱出レバーを引いた。

 

 やがて上空に飛び出した2人はパラシュートを開き、間一髪で脱出に成功する。無人の地域に墜落した戦闘機は、その直後に大破炎上していた。

 

 だが、それで終わりではなかったのである。

 

「ぐぁああッ!?」

「駒門ッ!? や、野郎ぉおッ!」

 

 パラシュートで降下していた2人に目を付けていたジェムは、その巨大な手で琴乃の身体を掴み取ったのだ。ジェムの手に握られた琴乃の背中からパラシュートが切り離されてしまい、彼女は囚われの身となってしまう。

 

「クソッ、クソッたれがぁあッ! 俺の部下を離しやがれぇえッ!」

「た、隊長ッ……! 早く、早く逃げてくださいッ……!」

 

 残された弘原海は無防備な降下中であることも厭わず、琴乃を救うべく腰のホルスターからBURKガンを引き抜き、ジェム目掛けて連射するのだが――ミサイルすらろくに通用しない相手に、光線銃が効くはずもく。ジェムはBURKガンの光線を全く意に介さず、自分の眼にミサイルを撃ち込んだ琴乃にのみ注目していた。

 その勇敢さと美貌に心惹かれるものがあったのか、彼は自分の手の中にあるLカップの爆乳と怜悧な美貌を交互に見遣っている。

 

「ち、ちくしょうッ……! 磨貴の奴、こんな時にどこで油売ってんだッ……!?」

 

 一方、注意を引き付けることも出来ないまま地上に降り立った弘原海は、悔しげに唇を噛み締めている。忌々しげにジェムを見上げる彼の脳裏には、無鉄砲な不良少年の姿が過ぎっていた――。

 

 ◇

 

 ――その頃、ジェムが暴れ回っている現場の近くにひっそりと建っている廃ビルの一室には。椅子に縛り付けられている、荒石磨貴の姿があった。

 

 剣呑な表情を浮かべ、窓から街の惨状を見つめている彼の両脇には――人間と同じ体格(サイズ)で活動している2人の「凶悪宇宙人」の姿がある。その宇宙人達は勝ち誇ったような笑みを零し、椅子に縛られた磨貴を冷酷に見下ろしていた。

 

「てめぇらッ……! こんな真似して、タダで済むと思うなよッ……! 俺達を無礼(なめ)てんじゃあねぇッ……!」

「ふっ……いいように囚われている分際で、偉そうな口を叩くなウルトラマンジェム。こうなってしまっては、いかに君といえども多勢に無勢……というものだろう?」

「慌てずとも、君はそこでゆっくりとBURKの壊滅と……ウルトラマン神話の崩壊を見届けるが良い。地球人類に対する生殺与奪の権利は、我々ザラブ星人のものだ」

「……だが、BURKの隊員諸君もなかなかにやるようだ。そう来なくては、我々がわざわざこの星に来た『甲斐』がないというものだよ」

「なに……!?」

 

 磨貴の威勢を嘲笑う2人の宇宙人――ザラブ星人は、ウルトラマンジェムに化けて破壊活動を実行している「同胞」の姿を見遣り、自分達の勝利を確信していた。

 その一方で、躊躇なくミサイルを撃ち込んでいたBURKの戦闘機に対しては思うところがあるのか、感心したような声を漏らしてもいる。そんな彼らの言葉に、磨貴は眉を顰めていた。

 

「とはいえ……手こずり過ぎだぞ、あいつめ。奴ら(・・)が来る前に早く侵略を完了させて、1人でも多くの『素体』を確保しておかねばならんというのに……」

「地球人類は生物兵器の素体として非常に優秀だからな。奴ら(・・)が来てしまったら、せっかくの素晴らしい素材が星ごと消し飛ばされてしまう。困ったものだよ」

「素体……!? 奴ら……!? てめぇら、一体何の話をしてやがるんだッ!」

「君には関係のない話だよ、ウルトラマンジェム。……これから死ぬ、君にはね」

 

 ザラブ星人達が語る、「奴ら」とは一体何なのか。その全容を問おうとする磨貴を永遠に黙らせるべく、2人の星人は指先を彼の眉間に向ける。そこから放つ光弾で、瞬く間に彼の頭部を撃ち砕くために。

 

 ――だが、撃ち砕かれたのは磨貴の頭ではなく。この一室に繋がる、コンクリート壁の方だった。

 

「なにッ……!?」

「君達は、まさかッ!?」

「……!」

 

 激しい衝撃音に動揺し、思わず振り返った2人のザラブ星人。壁を突き破ってザラブ星人達の前に姿を現したのは――彼らと同じく、人間と同じ体格(サイズ)になって駆け付けて来た、2人のウルトラ戦士だったのである。

 

 そのウルトラ戦士達の姿を目にした磨貴は、思わず目を見開いてしまう。彼らは磨貴と一体化したジェムの「師匠」や、「兄弟子」に相当する戦士だったのだ。

 

「おおっと……おいたはそこまでだぜ、ザラブ星人。随分と好き放題暴れてくれたようだが……ここからは、こっちの番ってわけだ」

「ルプス師匠……!」

「……やれやれ。俺やリッパーの元で修行しておきながら、なんてザマだ。今はお前がこの星を守るウルトラマンなんだろう? ちったァしっかりしやがれよ、バカ弟子が」

 

 ウルトラマンリッパーと同じく、ジェムを苛烈なまでに厳しく鍛え上げていた戦士――ウルトラマンルプス。

 両肩にある赤い華の模様を特徴とする彼は、狼のような鋭い眼で2人のザラブ星人を見据えている。その様子はさながら、獲物を見つけた猛獣のようであった。

 

「土俵際から出ちまうまでは……勝負の行方ってのは、分からないものさ。それをこれから、たっぷりと教えてやる。……稽古代は、高く付くがな?」

「リキシ先輩まで……!」

「遅くなって済まなかったな、ジェム。この兄弟子の技、後学のためにもしっかりと見届けておけ!」

 

 ジェムと共にリッパーやルプスの元で修行を積んでいた、宇宙相撲の達人――ウルトラマンリキシ。

 ウルトラマン80に近しい顔立ちでありつつも、力士のように太く筋肉質な体型である彼の身体には、廻し姿のような模様があった。その名の通りに力士らしく四股を踏んでいる彼は、弟弟子(ジェム)を傷付けたザラブ星人達に静かな怒りを燃やしている。

 

「ええいッ、まさか別次元の宇宙を警護していたウルトラマンまで来るとはッ……! ここまで来て、今さら手ぶらで引き下がれるかッ!」

「君達の出る幕などないッ! ここで死ねぇえーッ!」

 

 予期せぬ増援に狼狽しながらも、2人のザラブ星人は両手の指先から光弾を連発して、ルプス達を排除しようとする。だが、宇宙警備隊の正規隊員として実績を積んできた彼らに、そんな小手先の攻撃は通用しない。

 両手を腰に当て、雄々しく大胸筋を張ったルプスとリキシは、その胸板だけで光弾を防ぎ切ってしまうのだった。あまりに大きな力の差を見せ付けられたザラブ星人達は、思わず後ずさってしまう。

 

「……おいおい、線香花火にしたってちょっとしょぼ過ぎやしねぇか? それで攻撃のつもりかよ」

「その程度の光弾で我々を排除しようとは、宇宙警備隊も舐められたものだな」

「く、うぅッ! き、君達、そこから一歩も動くなッ! 君達の大切な同胞がどうなってもッ――!?」

 

 それでも勝負を諦め切れずにいたザラブ星人達は、磨貴を人質に降伏を迫ろうとする。だが、その脅迫を言い終える暇もなく――2人のザラブ星人は、命を刈り取られていた。

 

「……生憎だが、それで躊躇って隙を見せるような宇宙警備隊じゃあねぇんだよ」

「お前達の光弾より、我々の光線の方が遥かに疾い。その時点で、人質作戦などすでに破綻しているのだ」

 

 エネルギーを両手に凝縮し、爪状の光線で敵を切り裂く、ウルトラマンルプスの「ルプスネイル」。

 利き手にエネルギーを集束させ、突っ張りの挙動で相手に光線を照射する、ウルトラマンリキシの「張り手光線」。

 

 2人のウルトラ戦士が繰り出したその必殺技は、人質作戦に出る隙すら与えぬまま、ザラブ星人達を跡形もなく消し飛ばしてしまったのである。

 

「さぁ……俺達の仕事はここまでだ。なにせ俺達は本来、この次元の地球に居るべき存在ではないんだからな」

「お前が守るべきものは、お前自身の手で守り抜け。私もルプス教官も、お前ならば必ずそれが出来ると信じている」

「……はい!」

 

 そのまま磨貴の拘束を解いた2人は、ザラブ星人に奪われていたコネクトリングとリリースジェムを彼に差し出す。それはさながら、「後は任せた」というバトンタッチのようであった。

 

 そんな師匠達の信頼に応えるべく、磨貴は2人が見守る中――コネクトリングを左手の中指に嵌め、その台座にリリースジェムを装填する。そしてリングを嵌めた左の拳を、勢いよく天に突き上げるのだった。

 

「ジェムゥゥウッ!」

 

 リリースジェムを中心に広がって行く巨大な光が、磨貴を飲み込み――銀色の巨人が下から顕現して行く。

 拳を突き上げ、「ぐんぐん」と現れたウルトラマンジェムが夜空に飛び立ったのは、それから間もなくのことであった。

 

「あっ……あれは!」

「ジェムがもう1人!? もう、何がどうなってんだよっ!?」

 

 両手を広げて闇夜の空を翔ぶ「本物」のジェム。その勇姿を見上げる人々は、動揺の声を上げていた。一方、真打の登場を目の当たりにした弘原海は、「やっと来やがったな」とほくそ笑んでいる。

 

『タァァーッ!』

 

 そのまま「偽物」の眼前に降り立ったジェムは、息つく暇もなく「お礼」代わりの頭突きを見舞っていた。脳を揺さぶられた弾みで両手の力が抜けた瞬間を狙い、ジェムは素早く偽物の手から琴乃の身柄を奪還する。

 

「た、隊長っ……!」

「駒門、よく無事だったな! ……磨貴の奴ぅ、一体どこをほっつき歩いていやがったんだ! 心配掛けさせやがって!」

 

 彼の「眼」からその意図を察した弘原海は、ジェムの手から降ろされた琴乃の肢体を素早く抱き留める。その逞しい胸板にLカップの爆乳がむにゅりと押し潰され、琴乃は思わず頬を染めていた。

 だが、当の弘原海は琴乃の爆乳が当たっている感覚など気にも留めず、ようやく姿を現した「本物」の勇姿に破顔している。その相変わらずな朴念仁ぶりには、さしもの女傑もため息をつくばかりであった。

 

『タァアァッ!』

 

 一方、琴乃の安全を確保したジェムは偽物と組み合うと、素早く渾身のチョップを顔面に炸裂させていた。

 

『ダ、ァアッ……!』

 

 だが、これまでの所業への怒りに燃えるあまり、チョップの打ち方を誤ってしまったらしい。自らの手を痛めたジェムは低い呻き声を漏らしながら、手をひらひらと振っている。

 一方、ジェムのチョップを喰らって激しく転倒していた偽物は、とうとうその「擬態」を解除されてしまった。巨大化していたザラブ星人という「正体」が、ついに暴露されたのである。

 

「やはりザラブ星人の仕業だったのか……!」

「過去の戦闘データの通りでしたね、隊長!」

 

 琴乃の熟れた女体を抱き留めている弘原海は、剣呑な表情で彼女と深く頷き合っていた。やがてBURKガンを引き抜いた2人は、倒れたザラブ星人への銃撃を開始する。

 だが、正体を暴かれたザラブ星人はジェムやBURKの攻撃から逃れようと、素早くその場から飛び去ってしまった。それでもジェムは逃すまいと地を蹴り、両手を広げて夜空へと飛び立って行く。

 

『この期に及んで1人だけ逃げようなんて……虫が良すぎるぜ、ザラブ星人ッ!』

 

 絶対に逃しはしない。その信念を胸に、ジェムは両腕を大きく開くと、必殺光線を放つべく腕を十字に組む。

 

『ジェムナイトッ……光線ッ!』

 

 両手の宝石を輝かせて放たれた、その光波熱線は夜空に一条の閃光を描き――ザラブ星人の背を、瞬く間に貫いたのだった。

 

「き……決まったぁ! ジェムの勝利だぁあ!」

「隊長、やりましたねっ……!」

「あぁ……! 磨貴の野郎、帰ったら拳骨からの説教だっ!」

 

 やがて、戦いの終焉を告げる爆炎が東京の夜空に煌めき、ウルトラマンジェムの勝利を確信した人々が歓声を上げる。苦しい戦いを乗り越えた弘原海と琴乃も、熱く見つめ合い肩を組んでいた。

 

 そして――そんな人々の様子を、ルプスとリキシが廃ビルの屋上から静かに見下ろしている。歓声を上げる民衆の姿から、愛弟子(ジェム)がヒーローとして受け入れられているのだと実感を深めていた2人は、感慨深げにその景色を見つめていた。

 

「……強くなったな、ジェム。このまま順当に成長していけば、秘められた本来の力(ブリリアントモード)に目覚めるのも時間の問題だろうよ」

「えぇ……その力なくして、あのテンペラー軍団に勝つことは不可能でありましょう。いずれ来たる決戦の日までに、彼には何としても強くなって貰わねばなりません」

「それが出来なかった時は……この次元の地球も、いよいよおしまいだろうからなァ」

 

 だが、その表情に安堵の色はない。この先の未来に待ち受けている「真の巨悪」を知る2人は、剣呑な佇まいで人々を見守っている。

 この時のジェムはまだ、己の体に宿る真の力――ブリリアントモードに目覚めてはいなかった。その覚醒に至らないままでは、決してテンペラー軍団に勝つことは出来ない。

 

 それを知るルプスは険しい声を漏らし、この星に迫りつつある「脅威」が潜む星空を、静かに仰いでいた。だが、その隣に立つリキシは師の胸中を看破した上で、自信満々に胸を張っている。

 

「……おしまいにはなりませんよ、ルプス教官。この地球には我々以外にも、頼れる仲間達が居るようですからね」

「……あぁ、そうかもな」

 

 どんな状況だろうと、どんな相手だろうと躊躇うことなく立ち向かっていたBURKの隊員達。その勇姿を知るリキシは優しげな笑みを溢し、弘原海達の元へと駆け寄って行く荒石磨貴の背中を見守っていた。

 そんな彼の言葉を信じることに決めたルプスは、ぶっきらぼうに踵を返すと――人知れず優しげな眼で、肩越しに磨貴の様子を一瞥する。弘原海の熱い拳骨を貰って涙目になっている少年の姿を目にした師は、不敵な笑みを溢したのだった。

 

 ◇

 

 それから約1年後。ついにテンペラー軍団が地球に襲来し、蒼き星は未曾有の危機に晒されたのだが。

 その時すでにブリリアントモードの力を手にしていたウルトラマンジェムは、臆することなく恐怖の軍勢に挑み――滅亡の運命から、この地球を救って見せたのだった。

 




 今回はボルメテウスさん先生とM Y先生が原案のキャラ「ウルトラマンルプス」と「ウルトラマンリキシ」に登場して頂きました! 今まで彼らを登場させられるストーリーがずっと思い浮かばないままだったのですが、なんとか今話を以て、現在原案を閲覧出来る全ての読者応募ウルトラマンを出すことが出来ました……ふー(;´д`)
 次回は女傑編の新たなエピソードをお届け出来ればなーと思いまする。ではではっ、ボルメテウスさん先生、M Y先生! ルプス及びリキシの考案ありがとうございました!(*≧∀≦*)

Ps
 最近行きつけの中古屋で昔のペギラのプラモを手に入れたので、ペギラと戦うお話もいつか書けたらなーと思います(*´꒳`*)


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外星編 ウルトラホピスファイト part1

◇今話の登場人物及び登場メカ

弘原海(わだつみ)
 BURK日本支部の実戦部隊を率いている、質実剛健にして熱血漢な隊長。部下達の生還を何よりも優先する人情家であり、ウルトラマンに対しても厚い信頼を寄せている。35歳。

駒門琴乃(こまかどことの)
 弘原海の副官として彼を支えている実質的なサブリーダーであり、任務遂行のためとあらば如何なる危険も顧みない鉄血の女傑。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女。22歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

◇シャーロット
 BURKオーストラリア支部から惑星調査隊に参加した女性科学者であり、宇宙人の文明力や科学力に関する研究を専門としている。ウェーブが掛かったプラチナブランドのボブヘアーが特徴の、妖艶にして蠱惑的な美女。26歳。
 スリーサイズはバスト115cm、ウエスト65cm、ヒップ98cm。カップサイズはM。

◇BURKスコーピオン
 BURKオーストラリア支部が開発した、スペースシャトル型の最新型宇宙船。遥か遠くの惑星であっても容易く往復出来るほどの航続距離があり、弘原海、駒門琴乃、シャーロットの他にも多くの男性乗組員が搭乗する。

◇BURKセイバー
 BURKアメリカ支部をはじめとする多くの支部で制式採用されている現役の単座式宇宙戦闘機であり、F-86セイバーを彷彿させる後退翼が特徴。どのような環境下でも運用出来る汎用性があり、BURKスコーピオンの護衛任務に就いている女性パイロット達が搭乗する。

◇BURKエイティーツー
 BURK日本支部で開発された、BURKスコーピオンの船内に格納されている惑星探索用の偵察車両。82式指揮通信車をベースとしており、指揮官席の座席は尻が背凭れで隠れない構造となっている。弘原海、駒門琴乃、シャーロット博士をはじめとする調査隊の地上部隊が搭乗する。
 ※原案は俊泊先生。


【挿絵表示】




 

 これまでの歴史の中で、幾度となく宇宙からの侵略者達に狙われ続けてきた地球。その蒼き星が今もなお存続しているのは、ウルトラマンの来訪をはじめとする幾つもの「奇跡」によるものだったのだろう。

 

 防衛チーム「BURK(バーク)」の隊員達がその事実を改めて実感したのは――ウルトラマンカイナが初めて地球に現れた「恐竜戦車地球降下事件」から、約半年後のことであった。

 

 ◇

 

 恐竜戦車の撃破から数ヶ月の間は怪獣の出現も大幅に減少しており、当時の人々は穏やかな日常を謳歌していた。だがこの時すでに、外宇宙の状況を観測していたBURKの宇宙パトロール隊は、その束の間の平和を破られていたのである。

 

 ――宇宙パトロール隊が観測対象としていた惑星の一つである、ホピス星。地球から遠く離れた宙域に存在しているその星が突如、謎の大爆発に飲み込まれたのである。

 星の表面を丸ごと更地にしてしまい、その惑星に住まう生命全てを焼き払ってしまうほどの爆炎。その業火は、地球と同じ緑豊かな星だったホピス星を、一瞬のうちに死の大地へと変えてしまったのだ。

 

 人類が外宇宙への本格的な進出を果たした暁には、是非とも交流を試みたいと願われていた緑豊かな平和の星。そのホピス星を瞬く間に焼き尽くした爆炎の熱量は、「余波」だけで宇宙パトロール隊の衛星すらも破壊するほどの威力だったのである。

 

 この異常事態を受け、BURKスイス本部はホピス星で発生した大爆発の実態を調査するべく、「BURK惑星調査隊」の編成を決定。

 その「人選」を託された日本支部の綾川(あやかわ)司令官は、最も実戦経験が豊富な同支部の実戦部隊を中心に、惑星調査隊のメンバーを選抜。オーストラリア支部から派遣されて来た天才科学者・シャーロット博士と共に、最新型宇宙船「BURKスコーピオン」による調査を部下達に命じた。

 

 ――かくして。日本支部出身の弘原海(わだつみ)隊長を筆頭とするBURK惑星調査隊は、草一つ無い不毛の地と化したホピス星へと飛び立つことになったのである。

 

 ◇

 

 スペースシャトル状の宇宙船であるBURKスコーピオンと、その護衛機として随伴している宇宙戦闘機部隊。調査隊に選抜されたエリート隊員達を乗せ、宇宙の大海を翔んでいるそれらのスーパーメカは、光速に迫る疾さでホピス星を目指していた。

 

 あまりの速さ故か、機内から見える暗黒の景色は渦のように歪み始めている。それはやがて大きなうねりとなって、旅人達を目的の星へと連れて行く。

 いつしか全ての歪みが消え去り、穏やかなモノクロの世界が戻って来たかと思えば。その静寂を中央から突き破るかのように、旅人達の眼前を、真っ赤な「新境地」が覆い尽くしてしまう。

 

 それは謎の大爆発によって焼き払われた、ホピス星の荒野だったのだ。「ウルトラマンカイナ」の物語を越えた先に待つ、新たな戦い。その舞台が、この惑星なのである。

 


 

ウルトラホピスファイト

 

空想2次創作シリーズ

 


 

 惑星ホピスの環境は地球に極めて近しいものであり、かつては生命に溢れる緑豊かな大地が広がっていた――のだが。

 弘原海達を乗せたBURKスコーピオンの着陸先に広がっていたのは、荒れ果てた死の地平線のみであった。

 

『な、何よこれ……! ホピス星は地球よりも自然が豊富な星なんじゃなかったの……!?』

『こんなに広い惑星なのに、生命反応が全く無いだなんて……! まるで死の星じゃない……!』

 

 その宇宙船の護衛に就いている、単座式の宇宙戦闘機――「BURKセイバー」の女性パイロット達も、眼下に広がる凄惨な光景には息を呑んでいる。

 F-86セイバーを彷彿させる後退翼を特徴とするこの機体は、どのような環境下でも飛行出来る汎用性の高さが最大の武器なのだが。それは未知の領域に踏み込まなければならないパイロット達が背負うプレッシャーを払拭し切れるものではなく、彼女達はその頬に冷や汗を伝わせていた。

 

「こいつぁ……ひでぇな。殺風景なんてもんじゃねぇ、まるで星の文明そのものを根刮ぎ焼き払った後みてぇだぜ」

「……研究者達の話では、地球に極めて近しい環境である可能性が高い……ということでしたが。今となっては、見る影もありませんね」

「何らかの事故による自滅……って感じじゃあねぇな。やはり、この星を滅ぼした侵略者達が居たってわけか……」

 

 BURKスコーピオンのコクピットからその大地を見下ろしていた弘原海と駒門琴乃(こまかどことの)も、僅かに焼け残っている建物らしき残骸の数々を前に、沈痛な表情を浮かべている。かつてこの星で栄えていたのであろう文明の「残滓」が、そこに残されていたのだ。

 

 赤いレオタードのような形状となっている、女性専用の特殊戦闘服を着用している琴乃は、その白く豊満な肉体に冷や汗を伝わせていた。推定Lカップの豊穣な爆乳と安産型の爆尻は、着陸の衝撃でばるんっと弾んでいる。亜麻色のロングヘアも、その弾みでふわりと靡いていた。

 

(……地球に近しい星、か。つまり何かが違っていれば……今頃は地球も、この星のようになっていたのかも知れないのだな……)

 

 この先の調査で、自分達は一体どのような「真実」と向き合うことになるのか。一瞬のうちに死の星と化したこのホピス星で、一体何が起きたというのか。

 その思いを巡らせる彼女の柔肌を、甘く芳醇な匂いを帯びた汗が伝っていた。雄の情欲を掻き立てる特濃のフェロモンが、その汗を通じてコクピット内に充満しつつあるのだが――ホピス星の惨状にのみ目を向けている弘原海は、全く意に介していない。

 

 このBURKスコーピオンに搭乗している男性乗組員(クルー)達の多くは、琴乃の色香にはごくりと息を呑んでいたというのに、弘原海だけはまるで気にも留めていなかったのである。付き合いの長さが為せる慣れ、というものなのかも知れない。

 

 ――だが、BURKスコーピオンの乗組員達を惑わせていたのは琴乃だけではない。この宇宙船に同乗しているもう1人の爆乳美女は、彼女以上に濃厚なフェロモンを、その白く豊穣な肉体から振り撒いていたのである。

 

「焼け跡を見る限りだと、光波熱線の照射によるものと考えられるけど……規模があまりにも桁違いね。星ごと焼き尽くすなんて、一体どんなエネルギー量を放射すれば実現出来るのかしら……」

「光波熱線……!? シャーロット博士はこの惨状が……あのスペシウム光線のような、光波熱線の類によるものだと仰るのですか……!?」

「地球人類の物差しで測れる範囲なんて、たかが知れてるのよ……駒門隊員。私達が知っている光線技なんて、彼らにとっては軽いジャブに過ぎないわ。ゾフィーのM87光線だって、地球上で観測された照射は本来の威力の1/10以下ではないかとも言われているくらいなのだから」

「……途方もない、とはまさにこのことですね……」

 

 ウェーブが掛かった、艶やかなプラチナブロンド。その髪をボブヘアーに切り揃えている、眼鏡を掛けた色白の女性科学者――シャーロット博士だ。

 BURKスコーピオンと共にオーストラリア支部から派遣されて来た彼女は、宇宙人の文明力や科学力に関する研究を専門としており、今回の調査に協力するために同行して来たのだが――その熟れた極上の女体は、琴乃すらも思わず「禁断の高鳴り」を覚えてしまうほどの色香を放っているのだ。

 

 ぷっくりとした蠱惑的な唇に、濡れそぼった妖艶な眼差し。透き通るような色白の柔肌に、178cmという長身。そして推定Mカップという琴乃を凌ぐ特大の爆乳に、安産型の豊穣な爆尻。

 さらに、その熟れた白い肉体を伝う汗からは――雄の本能を刺激する芳しいフェロモンが漂っていた。地表を焦土に変えた光波熱線の影響もあり、しとどに汗ばんだ彼女の肉体からは芳醇な「オンナ」の香りが漂っているのだ。乗組員の男達も、彼女の蠱惑的な肉体と芳香には毎日のように頭を抱えていたのである。

 

「なぁに、この星を滅ぼした奴らと今すぐやり合おうってわけじゃあねぇんだ。今からあれこれ不安がってたって、何も分かりゃあしねえよ。為せば成る、その精神で行こうや」

「弘原海隊長……」

「……ふふっ。あなたみたいな単純なタイプが結局、誰よりも早く道を切り開いて行くものなのかも知れないわね。弘原海隊長」

「よせよシャーロット博士、褒めたって何も出て来やしないぜ?」

 

 ……が。そんな爆乳美女2人が、すぐ近くで特濃の芳香をその熟れた肉体から振り撒いているというのに。

 弘原海は眉一つ動かすことなく着陸を成功させ、上陸準備を整え始めていた。腰のホルスターに制式光線銃「BURKガン」を収めた彼は、琴乃を励ますように豪快な笑みを浮かべている。そんな彼に勇気付けられた琴乃とシャーロットも、釣られたように微笑を溢していた。

 

「……うふふっ。変わってるわね、あの隊長」

「ふふっ……私もそう思います。……だから、付いて行くのです」

 

 並外れた美貌と色香、そして蠱惑的に熟れた極上の女体。そこに目が眩む余り、自分達の人格や能力を見ようともしなかった愚かな男達を大勢見てきた2人にとっては、弘原海のような男は「初めて」であり、頼もしく思えるのだろう。

 足早に地上へと降りて行く彼に続き、笑顔で顔を見合わせる2人の美女も。張りのある爆乳と爆尻をどたぷんっと弾ませ、素早くコクピットから駆け降りて行った。

 

 すでにBURKスコーピオンの船内からは、調査用の偵察車両「BURKエイティーツー」が出動している。82式指揮通信車をベースとしている、日本支部製の惑星探索用特殊車両だ。

 

「……よし、全員揃ったな! 俺達はこれより、この惑星ホピスの調査を開始する! まずは、あの遥か向こうに見えるいかにもな洞窟からだ! いいか、俺の部下になったからには誰1人として欠けることは許さんぞ! 必ず全員で生きて地球に帰る……それが最優先事項であることを忘れるなッ!」

「はいッ!」

「了解しましたッ!」

 

 これから現地調査に赴くことになる男性隊員達は皆、弘原海と同じ赤と黒を基調とする隊員服と、白のヘルメットを着用していた。調査隊専用装備として新たに開発された隊員服を纏う彼らを率いて、弘原海達はこの惑星ホピスの調査に乗り出して行くことになるのだが――これが凄まじい激戦の序章になることなど、知る由もないのであった。

 




 現在、活動報告にてpart5以降から登場するオリジナルのウルトラマンor女性パイロットを募集しております。締め切りは7月28日00:00までとなっておりますので、機会がありましたらお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


【挿絵表示】


Ps
 今回の企画は「男性はウルトラマン」、「女性は防衛チームのパイロット」と、男女でハッキリ役割が分かれております。どうぞお好みの方で遊びに来てください(*^ω^*)


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外星編 ウルトラホピスファイト part2

◇今話の登場人物

◇リーゼロッテ
 BURKドイツ支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、若くして隊長の座に昇り詰めた才媛……なのだが、高飛車で自信過剰な性格が玉に瑕。艶やかなブロンドのツーサイドアップが特徴であり、小柄な体型とは裏腹な特大の爆尻の持ち主。15歳。
 スリーサイズはバスト74cm、ウエスト54cm、ヒップ102cm。カップサイズはA。


【挿絵表示】




 

 BURKスコーピオンの乗組員達の中でも、特に身体能力が高いとされている精鋭隊員達。その男達と共にBURKエイティーツーに乗り込んだ弘原海、琴乃、シャーロットの3人は、残骸の下に隠されていた洞窟らしき大穴へと探索に向かっていた。

 

「……シャ、シャーロット博士、やはりその席には私が座ります。今からでもこちらの後部座席に移ってください」

「あら、どうして? ここの方が周囲の状況がよく見えるじゃない。私はそのために来たのだから、観測しやすい位置に座るのは当然でしょう」

「そ、それはそう……なのですが……」

「……それにしても、本当に見渡す限りの荒野ねぇ。あの洞窟に、何か少しでも真相に近付けるような手掛かりがあれば良いのだけれど」

 

 車内にある指揮官席は臀部(ヒップ)が背凭れで隠れない構造となっており、そこに座しているシャーロットのむっちりとした爆尻は、後部座席に居た琴乃の眼前でその存在感をこれでもかと主張していた。指揮官席に腰掛けている女科学者の爆尻は、白衣の上からでもハッキリと形が分かるほどのボリュームを誇る安産型であり、扇状的なラインを描いてむにゅりと大きく形を変えている。

 しとどに汗ばむMカップの爆乳も、その蠱惑的な色香に更なる彩りを添えていた。僅かに身動ぎするだけでぷるんっと躍動する白い果実は、白衣の下にある薄着の中でどたぷんっと暴れ回っている。より直接的に雄の情欲を掻き立て、理性を揺るがす悪魔のような双丘であった。しかも張りの良さにおいても、琴乃の乳房に匹敵しているのだ。

 

 汗ばんだ肉体から漂う芳醇な「オンナ」の香りが車内に充満していることもあり、琴乃も他の隊員達も、シャーロットの色香には目を泳がせていた。動じていないのは隊長の弘原海と、ごく一部の隊員くらいのものだ。

 だが、琴乃の言う通りに座席を入れ替えたとしても、その状況はさして変わりないのだろう。男の理性を翻弄する香りをその柔肌から振り撒いているのは、Lカップの爆乳と91cmの爆尻を持つ琴乃も同様なのだから。

 

『……BURKエイティーツー、洞窟に向けて移動中。現状に大きな変化は見られません』

 

 惑星調査隊の母船であるBURKスコーピオンの護衛を任されていたBURKセイバー隊の女性パイロット達は、そんな彼らをコクピット内から静かに見送っている。

 彼女達はその任務の都合上、BURKスコーピオンの側を離れるわけにはいかないのだ。

 

『あーあ、シャーロット博士と日本支部の人達は楽しそうで良いですねぇ。私達はこーんな何もない荒野で、ひたすらお留守番だっていうのに』

 

 ――そのことを承知の上で。15歳の若さでこの部隊の隊長に昇り詰めた美少女パイロットは、ツーサイドアップに纏められた艶やかな金髪を指先に絡ませ、独り悪態をついていた。

 

『高貴なる名家の出身にして、ドイツ支部最強のエリートパイロットであるこのリーゼロッテ様に「お留守番」を命じるだなんて、日本支部の弘原海(ゴリラ)隊長も随分と偉くなったものですねぇ。これで何の成果も得られなかったら、私の足でも舐めて貰わなきゃ気が済みませんよぉ〜?』

 

 名家出身のエリートにして、ドイツ支部最強のパイロットとも噂されている彼女の名はリーゼロッテ。

 同支部からこの惑星調査隊に参加した精鋭の1人であり、BURKセイバー隊の隊長も務めている絶世の美少女……なのだが、その性格にはかなり難があるようだ。他の機体に搭乗している彼女の部下達も、また隊長の癇癪が始まったとため息をついている。

 

 透き通るような色白の柔肌に、艶やかな曲線を描くスレンダーなボディライン。そして、低い身長に反した100cm超えの爆尻。

 その扇状的な白い女体は、琴乃が着用しているものと同じレオタード状の特殊戦闘服に包まれているのだが――臀部のサイズがまるで合っておらず、白く豊穣な爆尻が「丸出し」になるほど食い込んでいた。レーシングバイクのシート状になっている操縦席の構造上、彼女はその安産型の爆尻をばるんっと後方に突き出してしまっているのである。

 

 さらに外部の熱気が影響しているのか、その瑞々しい柔肌に滴る汗からは甘美な芳香が漂っていた。世の男を魅了する危険なフェロモンを、彼女はすでにこの若さで身に付けているのだ。

 じっとりと汗ばんだリーゼロッテの白い肌から漂う、甘い「オンナ」の匂い。その芳香はすでに、BURKセイバーの機内にむわっと広がっている。背を反ってぷりんと突き上げられている爆尻を滴る汗の雫は、その白く扇状的なヒップラインをゆっくりとなぞっていた。

 

 それもあり、部下の隊員達は「留守番」を任されて良かったと胸を撫で下ろしているのである。

 特大の爆尻を全く隠せていない隊長のふしだらな格好を、健全な男性隊員達に見せるわけには行かない。それに、同じレオタード状のスーツを着ている自分達も地表の熱気に当てられ、その肉感的な肢体から芳醇な汗の匂いを漂わせているのだ。

 

(……良かったぁ、私達まで降りずに済んで)

 

 すでにBURKセイバーのコクピット内は、見目麗しい美女パイロット達の蠱惑的な肉体から分泌された、濃厚なフェロモンで充満しているのである。

 こんな汗だくの状態で男性隊員達と行動を共にするのは忍びない、というのも彼女達の偽らざる「本音」であった。

 

『だいたい、あのゴリラ男は何かと上から目線だし、私のことは子供扱いするし、前々から気に入らなかったんですよ!』

『あはは……隊長、もうそろそろその辺にして――!?』

 

 そして、弘原海達を乗せたBURKエイティーツーが洞窟に辿り着いてから数十分後。

 隊員の1人がリーゼロッテの愚痴に歯止めを掛けようとした――その時。

 

 この荒野を揺るがす、激しい地震が始まったのである。

 

『……全機離陸ッ! BURKスコーピオンの周囲を警戒してくださいッ!』

『了解ッ!』

 

 突発的な緊急事態を前に、即座に鋭い顔付きに切り替わったリーゼロッテ達は、それぞれの乗機であるBURKセイバーを素早く垂直離陸させる。母船を中心に飛び回り、四方を見渡す彼女達の眼は、凛々しい戦乙女のものとなっていた。

 

『今の振動は地下から……!? 洞窟内の調査に向かったシャーロット博士達は無事なのですかッ……!?』

『た、隊長! あれッ……!』

『……!』

 

 すでにBURKセイバーに搭載されているコンピューターは、この振動の「震源地」を特定していた。その震源地とは、弘原海達が突入した大穴の奥地だったのである。

 

 そして。先ほどまでの愚痴も忘れて、彼らの身を案じるリーゼロッテが桜色の唇を噛み締めていた時――「震源地」の方角に目を向けていた隊員の1人が、驚愕の声を上げていた。

 彼女の声に顔を上げたリーゼロッテも、部下が目にした光景に言葉を失ってしまう。

 

『あ、あれはまさかッ……!?』

 

 この振動を引き起こし、弘原海達が向かった先の「洞窟」から現れたのは――内部機構が剥き出しになっている、満身創痍の「巨大ロボット」だったのだ。

 辛うじて原型を留めているそのロボットの名を、BURKの美女隊員達はよく知っている。歪な電子音を発し、轟音と共に大地を歩むその姿は、紛れもなくあの(・・)兵器だったのだ。

 

『キング……ジョー……!?』

 

 ペダン星人が開発したとされている、「宇宙ロボット」キングジョー。その鋼鉄の巨人が今、リーゼロッテ達の前に姿を現したのである。

 

『隊長ッ! あのキングジョー……どうやら私達を敵と見ているようですッ!』

『各機散開ッ! ……何であんなモノがこの星に居るのか、何ですでにボロボロなのかは知りませんが……襲って来るのなら、力の差というものを分からせてあげるまでです。全機、攻撃体勢ッ!』

『了解ッ!』

 

 眼に相当する部位から照射される破壊光線が飛んで来たのは、その直後だった。リーゼロッテ機率いるBURKセイバー隊は即座に散開し、反撃に転じる。

 

『ふふんっ……ざぁこ、ざぁこっ! 外装ボロボロよわよわロボット! 私達「BURKセイバー隊」の恐ろしさ、たっぷりと味わうが良いですっ! 機首部レーザー銃、安全装置解除ッ! ――()ぇぇえッ!』

 

 凛々しき戦乙女達を乗せた宇宙戦闘機の編隊は、BURKスコーピオンを狙わせまいとキングジョーの周囲をマッハ4の速さで飛び回る。そんな彼女達を叩き落とそうと、鋼鉄の巨人はその巨大な鉄腕を振り翳していた――。

 




 現在、活動報告にてpart5以降から登場するオリジナルのウルトラマンor女性パイロットを募集しております。締め切りは7月28日00:00までとなっておりますので、機会がありましたらお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


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Ps
 ちなみにホピスというネーミングはホープ(希望)とピース(平和)から来ています。さぞかし希望に溢れた平和な星だったんでしょうねー_(┐「ε:)_


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外星編 ウルトラホピスファイト part3

 

「ぐ、うぅッ……! あのロボット野郎、もう外に出ちまいやがったのか……!?」

 

 ――その頃。キングジョーが「通過した」洞窟の中で、弘原海達はうつ伏せに倒れ伏していた。

 琴乃とシャーロットを庇うように伏せていた弘原海は、周囲の安全を確認しつつゆっくりと起き上がる。2人の爆乳美女も、それに続くように静かに身を起こしていた。

 

「危ないところでした……! 申し訳ありません隊長、私が不甲斐ないばかりに……!」

「……駒門隊員、自分を責めてる暇なんてないわよ。このままでは、BURKスコーピオンもBURKセイバー隊も危ないわ」

 

 数分前――BURKエイティーツーから降りた弘原海達はこの洞窟の最奥で、沈黙していたキングジョーと遭遇していたのである。光波熱線によるものだけではない、深刻なダメージを受けていたそのボディは、弘原海達が発見した時点ですでに満身創痍となっていた。

 だが、そのキングジョーはまだ完全に戦闘機能を失ってはいなかったのである。弘原海達という「生命体」の接近を感知したキングジョーは、その機体を軋ませながらも動き出してしまったのだ。

 

 そして、決して広いとは言えないこの洞窟内で55mものキングジョーが動き出してしまったことにより、凄まじい振動が発生し――洞窟の一部が崩落してしまったのである。

 幸い、咄嗟に2人を庇うように伏せた弘原海に落石が降って来ることはなかったが、彼らはそのままキングジョーの暴走を見送る形となってしまっていた。

 

 起動したばかりのキングジョーはすでに洞窟を脱して、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊との交戦に突入している。BURKセイバーの機首付近に搭載されているレーザー銃の連射音は、この洞窟内にまで響いて来ているのだ。

 

「しかし、どうしてペダン星の兵器がホピス星にッ……!? まさか、この星の滅亡はペダン星人の仕業だったのかッ……!?」

「……いいえ駒門隊員、それは考えられないわ。キングジョーの破壊光線(デスト・レイ)では限界まで出力を引き上げたとしても、この星を焼き尽くすほどの火力は出せない。あの機体はむしろ、ホピス星が保有していた防衛戦力だったと見る方が妥当よ」

「なんだって……!? あのウルトラセブンですら敵わなかったと言われているキングジョーだぞ!? それがあんなザマになるまでやられちまったってのかよ……!?」

 

 外の状況に弘原海達が思いを馳せる中、シャーロットは自身が辿り着いた「仮説」を口にしていた。その内容に瞠目する弘原海に対し、彼女は深く頷いている。

 

「……ここは恐らく、あのキングジョーを保管しておくための格納庫だったのでしょうね。あの機体の背部にはこの星の言語らしき文字列と……ペダン星の『通貨』の記号が記載されていたわ」

「通貨だって……!?」

「この星の言語までは私にも分からないけれど、その記号だけでもある程度の背景は推測出来る。……ホピス星人はペダン星人から、あのキングジョーを『輸入』していたのよ」

「輸入……!? しかしシャーロット博士、キングジョーは……!」

「ええ、そうよ駒門隊員。弘原海隊長が今言った通り、あれはウルトラセブンですら苦戦を強いられたロボット兵器……決して安い買い物ではなかったはず。しかもあの機体は、星ごと焼き尽くすような光波熱線に晒されても、戦闘機能を維持出来るほどの特別製……。過去のデータにあるどのキングジョーよりも、強力な機体である可能性が非常に高いわ」

「……ホピス星人は一体、そんな代物を手に入れるためにどれほどの代償を……!?」

「全てが丸焼けになった今では、その真相も闇の中……ね。ただ少なくともホピス星人には、何としてもアレを手に入れなければならない理由があったのよ。……そうでもしなければ勝てない『相手』が居ることを、彼らは知っていたのね」

「……そこまで分かり切っていて、そのための準備までして、それでもこんなことになっちまったっていうのか!? そんなあんまりな話が、あって良いのかよッ……!」

 

 この星に破滅を齎す侵略者達に抗うため、あらゆる手を尽くしたはずのホピス星人。その無念に思いを馳せて胸を痛める弘原海は、血が滲むほどにまで唇を噛み締めていた。

 そんな彼の言葉に、シャーロットは首を振る。

 

「あって良いわけがない。……それを繰り返させないために、私達はここまで調査に来ているのでしょう? 弘原海隊長」

「あぁ……そうだったな博士。よし駒門、まずは俺達も脱出するとしようぜッ!」

 

 彼女の言葉に顔を上げた弘原海は、この洞窟から脱出するべく外に繋がる方向へと眼を向ける。だが、その胸中には一抹の不安があった。

 ――弘原海達がこの最奥に辿り着くまでの道には、幾つかの分岐路があった。この探索に追従していた男性隊員達は、その分岐先を調査するため弘原海達とは別のルートを探索していたのである。

 

「あいつら……上手く脱出してるだろうな……!? 通信機が故障してやがるのか、さっきから全然繋がらねぇしよ……!」

「彼らとて、この調査隊に選ばれたBURKの精鋭です。……これしきのことで死ぬような者などおりません。私は、そう信じます」

「駒門……あぁ、そうだな!」

 

 この振動による落石の発生。その影響を受けているのではないかと案じている弘原海を励ますように、琴乃は強気な声を上げていた。そんな彼女に背を押されるように、弘原海は意を決して真っ直ぐに脱出を目指して行く。

 一方、彼らに続いてこの場を後にしていくシャーロットは――ある思いを胸に、キングジョーが眠っていた場所へと視線を移していた。

 

(……特別製のキングジョーでも太刀打ち出来ないような侵略者達が、今の地球に攻めて来たらひとたまりもないわね。BURKの現行装備だけで、そんな奴らに対抗出来るとは到底思えない)

 

 ウルトラセブンですら叩きのめされてしまったことがあったという、最強のロボット兵器。そのキングジョーをあれほど無惨に痛め付け、この星を滅ぼしてしまえるような存在が地球に襲来した時、自分達は抗えるのか。このホピス星のような破滅を、回避する術はないのか。

 そんな思いを巡らせるシャーロットは独り、白くか細い手を強く握り締めていた。

 

 

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(……「力」が必要だわ。今の地球の科学力だけでは絶望的に足りない。もっと強大な「力」が必要になる。そうだわ……ウルトラマンのような強大な外宇宙の戦力を、防衛手段に利用出来る手段があれば……!)

 

 地球人の科学力では太刀打ち出来ない絶対的な破壊者。その脅威にも屈しない、より強力な対抗手段を得なければ、地球人類もいずれはホピス星人のような末路を迎えてしまうのだと――。

 

 ◇

 

 そして、弘原海達3人が洞窟から脱出した頃。暴れ回るキングジョーを撃破するべく、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊は総攻撃を仕掛けていた……の、だが。

 

『ひ、ひぃいぃんっ! これだけ撃ち込んでも倒れる気配がないなんて、一体どれだけタフなんですかぁぁあっ!?』

 

 満身創痍になってもなお戦闘機能を維持しているキングジョーの攻勢に押され、圧倒的な力の差を分からされていた。外装に守られていない箇所を狙ってレーザー銃の砲火を集中させているのに、キングジョーは全く怯む気配がないのである。

 

 それどころか、リーゼロッテ達を迎撃する破壊光線の精度がますます高まっていたのだ。幸いにもまだ被弾している機体は無いのだが、それも時間の問題だろう。キングジョーはすでに、BURKセイバー隊の挙動を「学習」しているのだから。

 

「あのキングジョー、BURKセイバー隊の動きをもう把握し始めている……! このままでは完全に挙動を読まれて、偏差射撃で撃ち落とされてしまうわ! あのお嬢様(リーゼロッテ)達だけでは長くは持たない……!」

「なら、この星に来る時に使った光速ドライブで一旦離脱を……!」

「……ダメよ。ホピス星の近辺には幾つもの小惑星が点在しているの。事前の座標計算も無しに回避目的でいきなり使ったりしたら、この星を飛び出した瞬間に激突死だわ……!」

「くそッ、こうなりゃ少しでも奴の注意を引き付けるしかねぇな……! シャーロット博士は先にBURKスコーピオンに退避してろ! 俺と駒門は地上からBURKガンで攻撃だッ!」

「了解ッ!」

 

 洞窟を出てからすぐにその状況を目の当たりにした弘原海達は、即座にそれぞれの行動を開始していた。

 豊穣な爆乳と爆尻をばるんばるんと弾ませ、BURKエイティーツーに乗り込んだシャーロットはハンドルを握り、BURKスコーピオンの方向へと走り出して行く。それと同時に弘原海と琴乃は、光線銃を腰のホルスターから引き抜き、キングジョーを地上から銃撃し始めていた。

 

「大して効かなくても良い、とにかく奴を撹乱するんだッ! BURKスコーピオンを破壊されても、シャーロット博士を殺されても俺達の負けなんだからなッ!」

「はいッ!」

 

 当然ながら、その火力だけでは今のキングジョーにも通用しない。それでも、この星に関する情報を得たシャーロットを死なせるようなことがあっては、調査任務も失敗に終わってしまうのだ。

 

「……頼んだわよ、皆!」

 

 例えこのキングジョーに勝てずとも、自分達は何としても生き延びて、地球に情報を持ち帰らねばならない。この星で起きていた凄惨な破壊と殺戮。その惨状を、伝えねばならない。

 シャーロットはその決意を胸に、焦燥を露わにしながらも必死にアクセルを踏み込んでいた。後ろ髪を引かれるような思いを、振り切るように。

 

『ひぃいぃいんっ……! こ、このっ、このぉおっ……!』

「おい、リーゼロッテの嬢ちゃん! そんなに突っ込んでたら撃ち落とされちまうぞッ! もっと不規則に飛び回れッ! 奴の狙いを掻き乱すんだッ!」

『あ、あなたの指図が無くたってそうしますよ、この日本製ゴリラッ! こんな化け物を起こしておいて、偉そうな口叩かないでくれますかっ!』

「リーゼロッテ、聞き捨てならんぞ! 弘原海隊長に対して何という口の利き方を……!」

「お前ら揉めてる場合かっ!?」

 

 弘原海と琴乃も、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊も。敵わないと知りながらも、それぞれの武器でキングジョーを攻撃し続けていた。BURK隊員の誇りに賭けて、任務は必ず完遂する。その信念だけを頼りに。

 

 ――そして。キングジョーの注意が、地上に居る弘原海と琴乃に向けられようとしていた、その時だった。

 

「……!?」

 

 突如、弘原海達の後方――洞窟の方向から、幾つもの「閃光」が突き上がり。やがてその光が巨人の姿となって、弘原海達の眼前に舞い降りたのだ。

 

 マッハ5という脅威的な速度で空を駆け抜けると、弘原海と琴乃を庇うように現れ、キングジョーの前に立ちはだかる巨人達。それはまさしく、M78星雲の「光の国」からやって来た、正義のヒーロー達の勇姿そのものであった。

 

「な、なぁっ……!?」

「えっ……!?」

『あ、あれって……!』

 

 弘原海、琴乃、リーゼロッテをはじめとするBURKの面々は皆、その光景に瞠目している。BURKスコーピオンの船内に辿り着き、しとどに汗ばんだ身体でコクピットに乗り込んでいたシャーロットも、その巨人達の勇姿に息を呑んでいた。

 

「ウルトラ、マン……!」

 

 特濃のフェロモンを帯びた芳醇な汗を、白い爆乳の谷間に滴らせて。彼女は乳房と臀部をぷるんっと弾ませながら、身を乗り出して巨人達の「総称」を口にしていた。

 BURKスコーピオンに残っていた他の乗組員達も、この時ばかりはシャーロットの熟れた女体から漂う芳香も忘れて、ウルトラマン達の姿を凝視している。

 

 ――だが、彼らは知らなかった。知る由もなかったのだ。

 そのウルトラマン達は皆、弘原海が率いていた男性隊員達が「変身」した姿であることなど――。

 




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 ここから先はしばらくお休みを頂きますねー_(┐「ε:)_


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外星編 ウルトラホピスファイト part4

 次回の更新は募集締め切り後……という予定だったのですが、現段階でも少しだけ更新出来そうな部分がありましたので、ちょっとした1シーンを新たに加筆させて頂くことになりました。締め切り後の更新はpart5以降とさせて頂くことになりましたので、何卒ご了承くださいませ(´-ω-`)



 

 ――遡ること、数分前。弘原海達とは別行動を取り、洞窟内を探索していた男性隊員達は、キングジョーの起動に伴う洞窟の崩落に巻き込まれ、落石の下敷きとなっていた。

 

 それは、決して助かる見込みのない絶対的な「死」。彼らが歩んで来た人生は、そこで永遠の終焉を迎える――はずであった。

 

 だが、彼らが次に瞼を開いた時。

 眼前に広がっていた景色は、天国でも地獄でもなく。そこに居たのは、天使でも閻魔でもなかったのである。

 

「……誰だ、そこに居るのは」

『M78星雲の宇宙人だ。……君達にとっては、「ウルトラマン」という名の方が通りが良いのかも知れないが』

「ウルトラマン、だと……!?」

『君達は洞窟の落石に巻き込まれ、死に瀕していた。君達を救うためには、我々と一心同体になって貰うしか方法がなかったのだ。驚かせてしまい、申し訳ない』

 

 「ウルトラマン」を名乗る光の巨影達は、死んだはずの男達の魂に語り掛けると。赤と白銀の2色を基調とする、ペンライト状の物体――「ベーターS(スパーク)フラッシャー」を落として行く。

 思わずそれを手にした男達は、予期せぬ事態の連続に戸惑うばかりであった。そんな彼らを他所に、巨影達は抑揚のない声で口々に事の経緯を語る。

 

『……この次元の地球には今、凄まじい脅威が迫ろうとしている。今の君達では決して太刀打ち出来ない、恐るべき破壊者達だ』

『だが、本来ならば別次元の宇宙を守護していなければならない我々の立場では、この次元の人々に多くを語ることは出来ない。こうして干渉することさえ、掟に反する行いなのだ』

『それでもせめて、この瞬間だけは君達のために働きたい。これは、そのための「ベーターSフラッシャー」だ。困っている今こそ使うといい。それを使うと……』

「使うと……どうなる!?」

『ヘッヘッヘ……心配することはない』

「おい、待て! 待ってくれッ! 君達は本当にッ――!?」

 

 男達は巨影達を呼び止めようと懸命に手を伸ばすが、その前に彼らは眩い光の向こうへと消えて行き――男達もまた、その閃光の中に飲み込まれて行く。

 

 そんな夢のような世界が、終わりを告げた時。死んだはずの男達は、落石の山の中で目を覚ましたのだった。

 

 ◇

 

「く、うッ……! こ、ここは……! 皆は、無事なのかッ……!? くそッ、通信機も壊れてるッ……!」

 

 落石の下敷きにされた状態で、最初に意識を取り戻した士道剣(しどうつるぎ)隊員。彼は光一つ差さない暗黒の世界の中で、懸命にもがいていた。

 視界を塞ぐ岩石を力任せに退かしているその膂力は、すでに「人間」の域を「逸脱」している。

 

 弘原海達と別れた先で遭遇した大地震と、その衝撃による落石。そこに巻き込まれた「彼ら」は、確実に死んだはずだった。

 だが実際のところ、彼らはまだ生きている。それどころか、生身の人間とは到底思えない馬鹿力を発揮して、自力で落石を排除しようとしているのだ。

 

(あれは……やっぱり、夢なんかじゃなかった……! 「俺達」は本当に、「彼ら」と……!?)

 

 そんな自身の力に驚きながらも、大岩を押し退けている士道は、「ウルトラマン達との邂逅」という荒唐無稽な夢を思い出していた。

 あれが単なる幻ではないということは、己の身に宿る常軌を逸した膂力が証明している。そうでなければ、身の丈に迫る大きさの岩石を、腕の力だけで退かせられていることへの説明がつかない。

 

 ウルトラマンとの一体化。その効果は、この時点からすでに顕れていたのだ。全身に漲る力の奔流から、その真実に辿り着いていた士道は、ごくりと息を呑んでいる。

 

「皆……! 生きているのか!? 皆ッ!」

 

 そんな彼はハッと顔を上げ、懸命に周囲を見渡そうとする。真っ暗な闇の中でも、彼ははぐれた仲間達を見つけ出そうとしていたのだ。

 

 だが、返事はない。それでも彼は仲間達の生存を諦めることなく、落石の山から這い出ようとしていた。

 ここを抜け出して、すぐに彼らを探さねばならない。その決意を、胸に宿して。

 




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 サンシタ先生原案の士道剣だけがちょこっと先行登場しておりますが、ちゃんとした紹介はpart5以降になるかと思われます。今しばらくお待ちくださいませー_(┐「ε:)_


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外星編 ウルトラホピスファイト part5

◇今話の登場ウルトラマン

士道剣(しどうつるぎ)/ウルトラマンシュラ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。鋭い目付きとスラリとした長身が特徴であり、必殺技は刀剣状に形成したスペシウム光線による6連斬撃を繰り出すスペシウムブレード・へクス。23歳のBURK男性隊員・士道剣の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はサンシタ先生。

鶴千契(つるせけい)/ウルトラマンメディス
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たレッド族のウルトラ戦士。左肩にある銀色の十字紋様と後頭部から伸びている湾曲した1本の角が特徴であり、必殺技は右腕を正面に突き出し、大きく回してから左腕と合流させ、十字を組んで放つシフリウム光線。20歳のBURK男性隊員・鶴千契の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はX2愛好家先生。

手力握人(てぢからあくと)/ウルトラマンミラリ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。細くシャープな赤のラインと、額のクリスタル「ミラリギャザー」が特徴であり、必殺技は右手に集中させたエネルギーを光線として放ち、後方に出現させたブラックホールに相手を叩き込むミラリウムウェーブ。20歳のBURK男性隊員・手力握人の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案は黒崎 好太郎先生。

多月草士郎(たつきそうしろう)/ウルトラマンアトラス
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たレッド族のウルトラ戦士。ほとんど赤一色で統一されたボディと逞しい筋肉が特徴であり、必殺技は居合のように構えた手刀を、逆袈裟で振り上げることにより巨大な八つ裂き光輪を放つアトラススラッシャー。26歳のBURK男性隊員・多月草士郎の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はクレーエ先生。

木場司(きばつかさ)/ウルトラマンヴェルゼ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。ロケットのような形状を持つ独特な頭部が特徴であり、必殺技は胸の前で腕をクロスさせて放つクロスプリット光線。29歳のBURK男性隊員・木場司の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はヒロアキ141先生。

荒島真己(あらしまみこと)/ウルトラマンリード
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。ウルトラマンゼノンやウルトラマンメビウスに近しいオーソドックスな外見であり、必殺技は同時に数十枚の光輪を精製して同時に放つ「一気呵成」。25歳のBURK男性隊員・荒島真己の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案は平均以下のクソザコ野郎先生。

叶亥治郎(かのうげんじろう)/ウルトラマンポーラ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。ボディビルダーを想起させる筋骨逞しい体型が特徴であり、必殺技はスペシウム光線の構えから冷凍光線を放つウルトラエイジ。53歳のBURK男性隊員・叶亥治郎の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案は秋赤音の空先生。

日ノ出新(ひのであらた)/ウルトラマンヘリオス
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。たすき掛けのような大きな赤い模様と、その縁をなぞるように細い青いラインが入った左右非対称の模様が特徴であり、必殺技は両腕を横に張り出し、両手を頭上と腰部の辺りに来るように回転させた後、十字に交差させて放つソルディウム光線。20歳のBURK男性隊員・日ノ出新の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はMegapon先生。

氷川雄一郎(ひかわゆういちろう)/ウルトラマンアルミュール
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。初代ウルトラマンに、赤白のヘッドギアや鎧を着用したような外見が特徴であり、必殺技は両手首を交差させた後、円を描くようにそれぞれの腕を大きく回し、十字に組んで撃ち放つアルミュール・スペシウム光線。20歳のBURK男性隊員・氷川雄一郎の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はピノンMk-2先生。

前田力也(まえだりきや)/ウルトラマンブフ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。ウルトラマンパワードに近しい外見である一方で、ブフ相撲の力士を想起させる模様と体型が特徴であり、必殺技は相手を掴んで地面に叩き付けるマクゼリオンアタック。15歳のBURK男性隊員・前田力也の身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案はM Y先生。

◇シゲタ/ギガロ
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。ゾフィーに近しい外見である一方で、身体の一部が金色となっているボディが特徴であり、必殺技はカラータイマーに太陽光線と自身の全エネルギーを集束させて放つプラズマヴァイス光線。33歳のBURK男性隊員・シゲタの身体を一時的に借りて活動している。
 ※原案は神谷主水先生。

◇ブルーマン
 別次元の地球を守護していた宇宙警備隊の一員であり、この次元の異変に気付いて駆け付けて来たシルバー族のウルトラ戦士。レッド星雲の戦士「レッドマン」を想起させるシルエットと、彼とは対照的な青いボディが特徴であり、必殺技は念力により精製されたボウガンで射撃するブルーアロー。人間体を持たず、本来の姿でのみ活動している。
 ※原案はダス・ライヒ先生。



 

 ――士道剣(しどうつるぎ)の脳裏に過ぎったのは、BURKスコーピオンで宇宙に飛び立つ前のこと。自身と同じ調査隊のメンバーとして選抜された、エリート隊員達との語らいの日々だった。

 

 特に印象深いのは――全く反りが合わないまま共に到着の日を迎えた、鶴千契(つるせけい)隊員だ。

 常に寡黙で冷静な男だが、その佇まいに反して怪獣や敵性異星人に対しては非常に好戦的であり、「あんな蛮族を宇宙に出したら地球人が誤解される」とまで評されたこともある獰猛な男であった。

 

 その姿勢も、地球を守らねばという使命感の強さ故……なのだが、「怪獣が居たなら即座に倒せば良い」という攻撃的な思想を隠そうともしないのである。荒事をなるべく避け、慎重に調査を進めるべきだという考えを持っていた士道とは、まさに水と油であった。

 

「だから! 例えホピス星で怪獣を発見したとしても、いきなり俺達の方から攻撃を始めたら現地の星人を巻き込む可能性があるだろうが! その短絡的な思考はいい加減どうにかならないのか、鶴千!」

「……あの爆発の熱量では、現生人類の生存率は絶望的だ。俺達が躊躇えば、その瞬間に殺られる。お前のそういう甘い考えこそが、仲間を窮地に追いやりかねんということが分からんのか? 士道」

 

 BURKスコーピオン打ち上げの前日。地上に設けられた宇宙基地の休憩室で、毎日のように激しく議論を戦わせていた士道と鶴千は、この調査隊メンバーの中においても屈指の体格と戦闘能力の持ち主であり、ほとんどの乗組員達は慄きながら2人の様子を見守っていた。

 もし2人の争いが本気の殴り合いに発展したら、「カミナリ親父」の弘原海隊長しか止められないのではないか。そんな噂が囁かれるほどに、両者の「腕っ節」は突出していたのである。

 

「おいおいお前ら、せっかく同じチームに選ばれた仲間達同士で何を揉めてんだ! こういう時はな、まず握手で友情を深め合うんだよっ!」

 

 ――だが。そんな険悪な空気などどこ吹く風と言わんばかりに、気さくな様子で割って入って来る青年が居た。「握手をすれば仲間」をモットーとする、手力握人(てぢからあくと)隊員だ。

 身長195cmという大柄な2人に対して、173cmと(調査隊メンバーの男性隊員としては)比較的小柄な彼は、その体格差を全く気にせず堂々と2人に絡んで行く。そんな手力の登場に、士道と鶴千は顔を見合わせてげんなりとした表情を浮かべていた。

 

「……続きは次の機会だ。手力が来たらもう議論にならん」

「……そうだな。また煩いのが来てしまった」

「えっ? おいちょ、待てよ士道! 鶴千! 仲直りの握手がまだだぜぇ!?」

 

 双方の睨み合いなど全く意に介さず、良くも悪くも空気を読まない彼の登場により、毒気を抜かれた2人は深々とため息を吐いてしまう。彼らの議論はいつもこうして、強制終了させられているのだ。

 

 そんな彼らの「日常」を遠巻きに見守っていた、ベテランの多月草士郎(たつきそうしろう)隊員と木場司(きばつかさ)隊員は、静かに苦笑を浮かべている。かつては士道と鶴千の教官だった彼らにとって、仲を取り持つ手力の存在は非常に大きなものであった。

 

「全く……いつもいつも、あの2人には困ったものだな。手力がいなければ、今頃どうなっていたか……」

「己の使命に誇りを持っているからこそ、譲れないものがあるのだろうが……その矜持は、仲間達と力を合わせて初めて実を結ぶものだ。手力の存在がきっと、あの馬鹿共にそれを教えてくれるさ」

「……やれやれ。いつになったら私達は、あいつらのお目付役から解放されるのだろうな? 木場」

「解放など期待しない方がいいぞ、多月。手力が付いていても、あいつらはやはり水と油だ」

 

 手力の介入により議論を打ち切られた後も、肩越しに睨み合いながら別室に移動して行く士道と鶴千。そんな2人を一瞥しながら、木場は戦友(ダチ)の心労を労わるように多月の肩を叩いている。

 

 一方、怪獣の着ぐるみを着た1人の男――荒島真己(あらしまみこと)隊員が、多月達の傍らをのっしのっしと通り過ぎていた。その珍妙な格好について苦言を呈する叶亥治郎(かのうげんじろう)隊員は、教え子の奇行に今日も頭を悩ませている。

 

「……荒島君、いつまでその着ぐるみで基地内を歩き回るつもりだね。『あの2人』なら今ここには居ないのだぞ」

「そうは言いますけどね、叶先生。基地内に居れば必ずどこかで『あの2人』にかち会う可能性はあるんですよ? いつもいつも、女臭くて敵わないんですよぉ」

 

 大学の准教授位を持つ初老の男性であり、惑星探査の専門家として今回の調査隊に参加している叶。そんな彼の教え子である荒島も、優れた頭脳と身体能力を兼ね備えた優秀な隊員……ではあるのだが、女性の色気や芳香に関しては大の苦手という一面があるのだ。

 彼らの云う「あの2人」とは無論、駒門琴乃隊員とシャーロット博士のことである。特に芳醇な女の香りを、その豊満な肉体から絶えず振り撒いている彼女達2人は、荒島にとってはまさしく「天敵」なのだ。

 

「俺は理性的かつ合理的に、遭遇時のリスクを想定して回避に努めているまでですよ。うん、我ながら完璧な防護服だ! くっせぇ匂いもこれで完全シャットアウトだぜ!」

「……君を見ていると、私は教職者としての無力さを痛感するよ」

 

 そんな教え子の言い分を承知の上で、叶は顔を覆い天を仰いでいる。もう少し他に手はなかったのか。その思いが今、彼の胸の内を満たしていた。

 

 ――その頃。BURKスコーピオンの船内にある格納庫では、BURKエイティーツーの整備が進められていた。

 これから自分達が乗り込むことになる通信車の機能を確認していた2人の若手――日ノ出新(ひのであらた)隊員と氷川雄一郎(ひかわゆういちろう)隊員は、車内のコンピュータを真摯な面持ちで操作している。

 

「……これくらいの動作点検なら、もう俺1人で充分だ。日ノ出、お前はそろそろ上がれ」

「そう言う氷川は、昨日からずっと篭りっきりじゃないか。お前こそ、いい加減休みなよ。明日にはホピス星に出発するって話なんだから、少しでも体力を回復させないと」

「このBURKエイティーツーは、未知の惑星に向かう俺達の命を背負うことになるんだ。妥協は出来ん。……それに俺は、『機械のような奴』らしいからな。機械なら機械らしく働くまでだ」

 

 その寡黙な性格と仏頂面から、「機械のような男」と評されることが多い氷川。そんな彼が呟いた自嘲の言葉に、日ノ出は眉を吊り上げる。

 人助けを趣味と公言するお人好しとしては、そんな同期を放っておけるはずがないのだ。半ば意固地になりながら、彼はその場から動くことなくコンピュータと向かい合っている。

 

「その機械みたいな奴を、壊れるまで放っておけるわけないだろ。……そんな奴だからこそ、助けようとするバカだって出て来るんだ」

「……ふん。お前も相当に、甘い奴だな」

 

 そんな同期の姿に苦笑を浮かべながら、氷川は作業のペースを徐々に早めて行く。自分の「無茶」にいくらでも付き合う気でいるのなら、その「無茶」を可及的速やかに終わらせるしかない。それが機械と呼ばれた男なりの、最適解であった。

 

 一方、何機ものBURKセイバーが配備されている宇宙基地の飛行場では、2人の男が自分達の護衛機を整備していた。

 今回選抜されたメンバーの中でも特に歳若い前田力也(まえだりきや)隊員と、フランス支部の外人部隊出身という異色の経歴を持つシゲタ隊員だ。BURKスコーピオンの乗組員達にして、BURKセイバー隊のメカニックでもある彼らは、自分達の命運を預ける機体を入念に点検している。

 

「……前田。お前、本当にこの調査隊に参加するつもりなのか。あの爆発が起きた星でこの先、何が起こるか分からねぇんだぞ」

「あはは、今さら何言ってるんですかシゲタさん。何が起きるか分からないから、俺達が調査に行くんじゃないですか」

 

 数々の工具を手に、螺子の1本に至るまで念入りにチェックしている前田は、シゲタの神妙な言葉に強気な笑みを浮かべていた。

 ――弱冠14歳でBURK隊員の資格を得た風祭弓弦(かざまつりゆずる)。彼以来の逸材とも呼ばれている前田は、BURKスコーピオンの乗組員になるということの意味を承知の上で、シゲタの言及を笑い飛ばしている。

 

 だが、外人部隊の隊員として多くの血を見てきたシゲタの表情は優れない。数多の修羅場を目の当たりにしてきた年長者は、自分の半分程度も生きていない少年の未来を憂いているのだ。

 

「……しかしな前田、お前はまだ15だ。その歳で入隊試験をパスしたってのは確かに大したタマだが、ガキであることに変わりはねぇ。リーゼロッテの奴にも言えることだが……自分から命を懸けに行くには、お前らはあまりにも若過ぎる」

「いつか大人になる日を待っていたら、その間に全てが終わってしまいます。戦場においては常に巧遅より拙速……なのでしょう? 俺はその原則に則り、()行くべきだと判断しました。だから、この調査隊に参加したんです。……ガキだとしても、です」

 

 前田としても、シゲタの言い分が理解出来ないわけではない。それでも彼はこの若さで、すでにBURK隊員としての矜持というものを身に付けていたのである。

 自分が教えた「原則」をそのまま返されてしまった年長者は、深々とため息をつきながら天を仰いでいる。だが、その表情は先ほどまでの暗いものではなくなっていた。

 

「……言うようになっちまいやがって。俺達大人の立つ瀬がねぇだろうがよ」

 

 自分の方こそ、彼を子供扱いし過ぎていたのかも知れない。そう思えてしまうほどに、前田力也という少年は戦士としての覚悟を固めていたのだ。

 

 ――そして、この翌日。

 

 BURKスコーピオンの乗組員としてホピス星に旅立った彼らは、その旅路の先で「死」の運命を迎え――奇跡的な「邂逅」を果たしたのである。

 

 ◇

 

 士道だけではない。一度は命を落としながらも、ウルトラマンとして蘇った男達は次々と目覚め、懸命に落石の中から抜け出そうとしていた。

 今もなお戦っている仲間達の元へと駆け付けるため、彼らは懸命に大岩を押し退け、積み上がった岩山の外へと這い出て行く。

 

「……!」

 

 そんな彼らの勇気と闘志に呼応するかのように。薄汚れた隊員服の胸ポケットから、眩い光が溢れ出して来る。

 

 ――ペンライト型変身システム起動点火装置「ベーターSフラッシャー」。

 赤と白銀を基調とするその「装置」が、懐の中から煌々と輝きを放っていたのだ。自分を使え、と言わんばかりに。

 

「……ッ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 士道達の決意は、同時だった。彼らはその装置を手に取ると、全ての迷いを振り切るように勢いよく天へと掲げ――スイッチを押し込む。

 

 刹那。その先端部を中心に広がって行く、推定200万W(ワット)の烈光が男達の全身を飲み込み。やがてその輝き――フラッシュビームの中心部から、光の巨人達が拳を突き上げるように、「ぐんぐん」と顕現して行くのだった。

 

 ――鋭い目付きとスラリとした長身を特徴とする、士道剣が変身する「ウルトラマンシュラ」。

 

 ――左肩にある銀色の十字紋様と後頭部から伸びている湾曲した1本の角を特徴とする、鶴千契が変身する「ウルトラマンメディス」。

 

 ――細くシャープな赤のラインと、額のクリスタル「ミラリギャザー」を特徴とする、手力握人が変身する「ウルトラマンミラリ」。

 

 ――ほとんど赤一色で統一されたボディと逞しい筋肉を特徴とする、多月草士郎が変身する「ウルトラマンアトラス」。

 

 ――ロケットのような形状を持つ独特な頭部を特徴とする、木場司が変身する「ウルトラマンヴェルゼ」。

 

 ――ウルトラマンゼノンやウルトラマンメビウスに近しいオーソドックスな外見を特徴とする、荒島真己が変身する「ウルトラマンリード」。

 

 ――ボディビルダーを想起させる筋骨逞しい体型を特徴とする、叶亥治郎が変身する「ウルトラマンポーラ」。

 

 ――たすき掛けのような大きな赤い模様と、その縁をなぞるように細い青いラインが入った左右非対称の模様を特徴とする、日ノ出新が変身する「ウルトラマンヘリオス」。

 

 ――初代ウルトラマンをベースに、赤白のヘッドギアや鎧を着用したような外見を特徴とする、氷川雄一郎が変身する「ウルトラマンアルミュール」。

 

 ――ウルトラマンパワードに近しい外見である一方で、ブフ相撲の力士を想起させる模様と体型を特徴とする、前田力也が変身する「ウルトラマンブフ」。

 

 ――ゾフィーに近しい外見である一方で、身体の一部が金色となっているボディを特徴とする、シゲタが変身する「ギガロ」。

 

 そして――唯一誰とも一体化することなくその姿を露わにした、青の巨人。レッド星雲の戦士「レッドマン」を想起させるシルエットと、彼とは対照的な青いボディを特徴とする「ブルーマン」。

 

『……シュウワッチッ!』

 

 彼らはその一瞬のうちにマッハ5の閃光と化し、崩落した洞窟から飛び出して行く。その光が弘原海達の眼前に降り立った時、この戦いは新た局面を迎えることになるのだ。

 

 ◇

 

 その「邂逅」と「変身」を経て――彼ら12人のウルトラ戦士は今、キングジョーの前に立ちはだかっているのである。思わぬ形での「再会」を果たした男達は皆、崩落に巻き込まれた全員が、ウルトラマンとして蘇っている事実を直感的に理解していた。

 

 そして、ウルトラ戦士達と一体化した今だからこそ。士道達は、彼らの「窮状」もすでに察知していたのである。

 

 別次元の宇宙へと渡る旅は、それ自体が命を縮める危険な行為だというのに、ウルトラ戦士達はそれでも士道達のために駆け付けて来たのだ。しかもウルトラ戦士達は、その士道達を蘇生するために己の命をさらに削り、「依代」として復活させていたのである。

 

 弘原海達を勇気付けるように雄々しく地を踏み締めている彼らだが、本来ならばまともに戦える状態ではないのだ。疲れを見せまいと胸を張っている彼らはすでに、キングジョー以上に消耗しているのである。

 だが、それでもウルトラ戦士達は、一歩も退くことなくキングジョーと相対している。「ウルトラマン」としての譲れない矜持が、彼らの両足を奮い立たせているのだ。

 

 その巨大な勇姿を目の当たりにしたBURKの隊員達は皆、過去のデータに存在しないウルトラマン達の迫力に息を呑んでいた。

 

『隊長ッ、あのウルトラマン達……データにはありませんが、私達と一緒に戦ってくれるみたいですよ!?』

『これは頼りになりそうですねっ! 残った「奥の手」は1発限りだし、絶対に外せませんからっ……!』

『ふ……ふんっ! せっかくの手柄を横取りされるなんて、癪ですけど! どーしてもウルトラマン達が戦うつもりだっていうのなら! わざわざ邪魔する理由もないですし!? 特別に共闘させてあげなくもないですけどっ!』

 

 BURKセイバー隊に属する美女達の多くは、加勢に駆け付けて来たウルトラマン達の姿に黄色い歓声を上げ、士気を高めていた。リーゼロッテも口先では文句を垂れつつ、頼もしい援軍が現れた安堵感に口元を綻ばせている。

 

 一方。巨人達の勇姿を仰ぎながらも、光線銃による銃撃を続けている弘原海と琴乃は、顔を見合わせ――洞窟の方向へと振り返っている。士道達がまだ脱出して来ていないことに、2人は一抹の不安を覚えていた。

 

「くッ……あのウルトラマン達、洞窟の方向から飛んで来たような気がするが……あいつらは大丈夫なんだろうな!?」

「連絡が取れない以上、今はその可能性に賭けるしかありません……! 隊長、攻撃を続けましょうッ!」

 

 それでも今は、彼らの捜索に注力出来る状況ではない。ならば迅速にキングジョーを撃破し、この一帯を制圧するしかない。

 その決意を胸に引き金を引く弘原海と琴乃は、真相を知る由もなく、キングジョーへの攻撃に集中している。そんな彼らの様子を一瞥するウルトラマン達は、互いに頷き合いながらキングジョーに対して拳を構えていた。

 

『弘原海隊長、駒門隊員……! くそッ、こうなったらすぐにこいつを倒すしかないッ! 行くぞ皆ッ!』

『おうッ!』

『……ふん』

 

 かくして――M78星雲の宇宙人達からその命を託された士道達は、ベーターSフラッシャーでウルトラマンの姿に変身し、宇宙ロボットとの死闘に臨むことになったのである。

 マッハ5の速さで空を飛び、残されたエネルギーを駆使してこの強敵に立ち向かう不死身の男達となったのだ。それゆけ、我らのニューヒーロー!

 




 今回は読者応募ウルトラマン達のお披露目回となりました。いずれは読者応募女性パイロット達にもスポットを当てて行きたいと思いますので、今しばらくお待ちくださいませー(о´∀`о)
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


Ps
 ちなみにラストのフレーズは「ウルトラ作戦第一号」にて、初代ウルトラマンの初変身時に流れたナレーションが元ネタとなっております。原点にして頂点、私の好きな言葉です(*´꒳`*)


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外星編 ウルトラホピスファイト part6

 

『ヘァアァッ! ダァアッ!』

『ジュワァアッ! ジュアッ!』

 

 ウルトラマンへと変身した士道達はその強大な力を振るい、キングジョーの侵攻を阻止するべく渾身の力で組み付いている。

 その鋼鉄のボディにしがみ付いたウルトラマンシュラとウルトラマンメディスは、自分達の手を痛めることも厭わず、チョップの連打を見舞っていた。だが、キングジョーはその全身を軋ませながらも、難なく2人を振り払ってしまう。

 

『ウァアッ!』

『ガァアッ……!』

 

 激しく転倒させられた2人に向けて、キングジョーは必殺の破壊光線(デスト・レイ)を放とうとしていた。すでに消耗している今の状態でその一撃を浴びれば、宇宙警備隊のウルトラ戦士といえどもタダでは済まない。

 

『……そうはさせるかッ!』

 

 そこへ2人を庇うように飛び込んで来たウルトラマンミラリが、間一髪でバリヤーを展開させ、光線を防いでしまう。接近戦を不得手とする彼ならではの活躍であった。

 その間に立ち上がったメディスは、治癒能力を宿した光エネルギーを己の掌に集中させると、シュラの手を掴んで素早く助け起こしていく。

 

『ヴェエァアッ!?』

 

 ……のだが、メディスはその治癒の光を纏った拳を、いきなりシュラの鳩尾に叩き込んでしまった。銀十字軍の見習い隊員にして、「ウルトラマンドクテラ」の弟子でもあるメディスの得意技、「ウルトラヒールコンバット」だ。

 通常の治癒よりも素早く仲間を回復させることが出来る「荒療治」を喰らったシュラは、憎たらしそうにメディスを睨み付けている。それは、メディスの方も同様だった。

 

『お、お前なぁ……!』

『……言っておくが、さっき手を掴んだのはさっさとお前を回復させるためだ。「握手」などではないからな?』

『何! 握手だと!? そうかお前ら、やっと仲直り出来たんだな! よっしゃあ、身体を張った甲斐があったぜ! 身体っていうよりはバリヤーだけどな!』

『……』

 

 よりによって手力(ミラリ)のそばで「握手」をする羽目になった士道(シュラ)鶴千(メディス)は、バリヤーを張りながら目を輝かせている厄介な男の存在に、揃って閉口している。

 

『ダァアーッ!』

『シェアァアッ!』

 

 その頃、キングジョーの両脇に組み付いたウルトラマンアトラスとウルトラマンヴェルゼは――赤と白の剛腕を振るい、ペダニウム宇宙合金に守られたボディを何度も殴り付けていた。

 さらにヴェルゼはそのロケット状の頭部で、幾度となくヘッドバットを放っている。アトラスも稲妻のような細いラインが走った脚で、ミドルキックを見舞っていた。だが、キングジョーはその猛攻を浴びても怯んですらいない。

 

『テェエエーイッ!』

『イヤァアァーッ!』

 

 これでもビクともしないのなら、さらに畳み掛けるまで。そう言わんばかりに、キングジョーの前方と後方から挟み撃ちにするかの如く――ウルトラマンヘリオスとウルトラマンアルミュールが突っ込んで来る。

 

 アトラスとヴェルゼがキングジョーの両腕を渾身の力で引っ張り、無防備な体勢にした瞬間。赤の模様が入った右の拳と青の模様が入った左の拳を矢継ぎ早に振るい、ヘリオスは怒涛の乱打を打ち放っていた。

 外側が青く、内側が赤色になっている下半身は、その反動に耐えようと大地を強く踏み締めている。左胸に付いている円形のカラータイマーも、煌々とした輝きを放っていた。

 

『ヘァアアッ! ダァアァアッ!』

『タァァーッ! イヤァアッ!』

 

 クリスタル状のプロテクターをガントレットのように装着したヘリオスの拳が、僅かにキングジョーの装甲を抉る。後方からキングジョーを殴打しているアルミュールも、拳からエネルギー弾を放つ「アルミュール・クラッシュ」を、至近距離で連射していた。

 

 間違いなく、効いてはいる。並の宇宙怪獣ならば、ここまでの攻撃でとうに沈んでいるところだ。

 だが――それでも、この宇宙ロボットの牙城は揺らいでいない。本来のスペックがあまりにも常軌を逸しているが故に、すでに損耗している状態でありながら、ウルトラ戦士達との「勝負」が成立しているのだ。

 

(こいつ、一体どれほどまでッ……!?)

 

 ウルトラ戦士達も依代の人間を蘇らせるためにかなりのエネルギーを失っており、決して本調子というわけではない。その点を差し引いたとしても、このキングジョーの硬度と耐久性はあまりにも桁違いであった。

 拳から伝わる、その異様なまでの硬さに瞠目する日ノ出(ヘリオス)。たった一瞬のその隙が、キングジョーに反撃の好機を与えていた。

 

『ウアァアッ!』

 

 僅かに乱打の勢いが弱まった瞬間、拳の隙間を縫うように振り抜かれたキングジョーの鉄腕が、4人のウルトラマンを容易く跳ね飛ばしてしまう。ヴェルゼ、アトラス、ヘリオス、アルミュールの巨体が宙を舞い、轟音と共に大地を揺るがしていた。

 

『シュワアァッ!』

『ヴァァッ!』

 

 地を転がる彼らの真上をジャンプで飛び越しながら、ウルトラマンリードとウルトラマンポーラも、恐れることなくキングジョーに挑み掛かって行く。

 だがやはり――リードの軽やかな飛び蹴りも、ポーラのフィジカル任せな乱打の嵐も、そのボディを打ち倒すまでには至らない。その手応えのなさを肌で察知したポーラは、素早く低姿勢からのタックルを敢行し、キングジョーの下半身を拘束した。

 

『……シュワッ!』

 

 その隙に後方宙返りの要領で跳び、距離を取ったリードは八つ裂き光輪を放つ。光線技を苦手としつつも、八つ裂き光輪の精製と制御においては宇宙警備隊の中でも突出している彼の技は、キングジョーの上半身にしっかりと命中していた。

 咄嗟に上体を捻り、内部機構が露出していない箇所で光輪を受け止めたキングジョーだったが、その刃を受けた外装は徐々に削れ始めている。このまま押し切れば、外装を切り裂いてそのまま真っ二つに出来る。

 

 はず、だったのだが。

 

『シュアッ……!?』

 

 回転中の光輪を掴んだキングジョーはなんと、刃に触れた掌から激しく火花を散らしながらも、無理矢理光輪を引き離してしまったのである。その力業に瞠目するリード目掛けて投げ返された光輪が、空を裂く。

 咄嗟に屈んで光輪をかわしたリードだったが、それから間も無く凄まじい衝撃に襲われ、大きく転倒してしまうのだった。強引に引き剥がされたポーラの巨体を、そのまま投げ付けられてしまったのである。

 

『ヘァアァアッ!』

『ダアァアッ!』

 

 自分の装甲を傷付けたリードにとどめを刺そうと、躙り寄るキングジョー。その進撃を止めるべく、ウルトラマンブフとギガロが同時にタックルを仕掛け、チョップとパンチの連打を見舞う。

 

 インファイトを得意とするブフのパワーは、特に目を見張るものがあった。相撲さながらの踏み込みでキングジョーを押し出して行く彼の勢いは、この強大な宇宙ロボットの侵攻をも食い止めていたのである。

 その隣で共に踏ん張っているギガロも、少しでもキングジョーを怯ませるべく、ウィークポイントとも言うべき内部機構の露出箇所をしきりに殴り付けていた。勝利のためならばどこまでも手段を選ばない、依代(シゲタ)の精神性が作用した攻撃であった。

 

 ――そして。ブフとギガロによって進行を阻止されたキングジョーの背後には、蒼き超人ことブルーマンが大きな双眸を輝かせ、忍び寄っていた。

 ブルーアックスと呼ばれる手斧と、ブルーハープンという銛を両手に持ち、背後を取るその姿は――ヒーローと形容するには、あまりにも殺気立っている。言うなれば、殺し屋のそれであった。

 

『ブルーファイッ!』

 

 攻撃開始を宣言するその台詞を放った瞬間、ブルーマンの猛攻が始まる。手斧による容赦なき滅多斬りと、返しが付いた銛による刺突。その無慈悲な凶器攻撃に火花を散らしたキングジョーのボディが、大きくぐらついた。

 この攻撃でついに、不沈艦の如きキングジョーの牙城が揺らいだのである。だが、それはこの宇宙ロボットが「本気」になった瞬間でもあった。

 

『ウグァァアッ!』

 

 リミッターを全開放した、暴走状態に陥ったのか。これまで以上の凶暴性を剥き出しにして動き始めたキングジョーは、銛を突き刺されたままブフとギガロを腕力だけで投げ飛ばしてしまう。

 そして、斬り掛かって来たブルーマンの手斧を、己の鉄拳で叩き折ってしまうのだった。その威力を目の当たりにしたブルーマンは素早く後方に転がり、距離を取る。

 

 その一連の攻防を目撃していたBURKスコーピオンの乗組員達は、ウルトラ戦士達と互角に渡り合うキングジョーの性能に息を呑んでいた。いくらウルトラセブンすら苦戦させた宇宙ロボットとは言え、これほどまでの耐久性と継戦能力を持った機体など、過去に例がないのである。

 

「な、なんて奴なんだ……! 12人ものウルトラマンに総攻撃されても、まだ立っていられるなんて……! し、しかもウルトラマン達の方が押されてるくらいじゃないか……!?」

「いや、だけどウルトラマン達の攻撃も確かに効いているぞ……! 出現時よりもさらに装甲が削り落とされてる! 無防備な部分はどんどん増えて来てるんだから、そこに強烈な1発をかましてやれば……!」

「頑張ってくれよ、ウルトラマン……! BURKセイバー隊の皆ッ……!」

 

 それでも、決して不利というわけではない。乗組員達が言う通り、出現時の時からすでに損耗していたキングジョーの外装は、ウルトラマン達の攻撃によってさらに剥がれ始めている。

 つまりそれだけ、攻撃が通りやすくなるということなのだ。一見すればキングジョーが圧倒しているようだが、実は向こうもかなり危険な状態なのである。

 

 その勝機に自分達の運命を委ねた乗組員達は、ウルトラマン達とBURKセイバー隊の勝利を祈り続けている。それは、BURKスコーピオンのコクピットから戦いの行方を見守っているシャーロットも同様だった。

 

(……あのキングジョーは私達の前に現れた時から、すでに激しく損耗していた。そして、これまでの攻撃でやっとあそこまでのダメージ……。やはり、これまで地球で観測されて来た機体とは明らかに耐久性が異なるわね。この状況下でも分離合体を一度も使っていないところを見るに、その機能を犠牲にして耐久性の向上に特化した、拠点防衛仕様の機体……ということかしら)

 

 豊穣な爆乳を腕に乗せ、その白く深い谷間から甘い女の匂いを振り撒いている彼女は、目を細めて戦況を凝視している。

 

(そのキングジョーをあそこまで痛め付けた光波熱線……か。もしそんな大火力が私達に向けられるような時が来たら、その時こそ間違いなく地球は滅亡ね)

 

 キングジョーの並外れた耐久性に着目している彼女は、それ自体だけでなく――そのキングジョーをあの状態になるまで追い詰めた、光波熱線の正体に思いを馳せていた。

 

 この星を滅ぼし、あのキングジョーを大破寸前にまで追い込んだ侵略者とは、一体何者なのか。その恐るべき最大の謎は、シャーロットの脳裏に絶えず纏わり付いている。

 

 だが、それがこの場で明らかになることは無いのだ。ホピス星人が滅びた今、死人に口はないのだから――。

 




 今回はウルトラ戦士達のバトル回となります。本調子じゃない分、今は苦戦を強いられている彼らですが……もちろんこのままやられっぱなしではありません。次の更新の準備が出来るまでは暫しお休みを頂くことになりますが、次回以降は女性パイロット達にもスポットを当てつつ、物語も逆転に向けて動き出して行くものと思われますので、どうぞ今後もお楽しみに!٩( 'ω' )و
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


Ps
 ウルトラマンが吹っ飛ばされてゴロゴロ転がるのと同時に、他のウルトラマンが飛び掛かって行く……というアクションは、「ウルトラマンレオ」のババルウ星人回(ウルトラマン同士の内ゲバ回)の殺陣が元ネタとなっております。昭和2期は客演ウルトラマン達の扱いの悪さが結構目立つのですが、その雑な扱いが一周回ってクセになるんですよね……(´Д` )


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外星編 ウルトラホピスファイト part7

◇今話の登場人物

◇ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル
 BURKドイツ支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、腰まで届く黒い長髪を纏めたポニーテールが特徴であり、蒼氷色の瞳と白い爆乳の持ち主。18歳。
 スリーサイズはバスト100cm、ウエスト76.2cm、ヒップ88cm。カップサイズはF。
 ※原案はG-20先生。

八木夢乃(やぎゆめの)
 BURK日本支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、浅栗色のサイドテールが特徴。17歳。
 スリーサイズはバスト85cm、ウエスト55cm、ヒップ81cm。カップサイズはF。
 ※原案は魚介(改)先生。

望月珠子(もちづきたまこ)
 BURK日本支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、ショートボブの髪が特徴であり、ややぽっちゃりとした体型の持ち主。19歳。
 スリーサイズはバスト90cm、ウエスト65cm、ヒップ89cm。カップサイズはG。
 ※原案は赤犬先生。

◇アリア・リュージュ
 BURKフランス支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、145cmという歳不相応に小柄な体躯の持ち主。27歳。
 スリーサイズはバスト62cm、ウエスト53cm、ヒップ60cm。カップサイズはA。
 ※原案はリオンテイル先生。

◇ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス
 BURKスペイン支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、138cmの低身長とボーイッシュなショートヘアが特徴。31歳。
 スリーサイズはバスト72cm、ウエスト50cm、ヒップ79cm。カップサイズはA。
 ※原案はただのおじさん先生。

◇アルマ・フィオリーニ
 BURKイタリア支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、ミディアムウルフカットに切り揃えられたブラウンの髪が特徴。20歳。
 スリーサイズはバスト94cm、ウエスト60cm、ヒップ88cm。カップサイズはH。
 ※原案はクルガン先生。

劉静(リウジン)
 BURK中国支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、ボーイッシュな顔立ちと紺髪金眼が特徴。21歳。
 スリーサイズはバスト94cm、ウエスト60cm、ヒップ91cm。カップサイズはG。
 ※原案は俊泊先生。

◇ナターシャ・ジャハナム
 BURKエジプト支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、褐色の肌とウェーブが掛かった薄紫色のロングヘアが特徴。19歳。
 スリーサイズはバスト84cm、ウエスト64cm、ヒップ89cm。カップサイズはD。
 ※原案はエイゼ先生。

◇エリー・ナカヤマ
 BURKアメリカ支部から惑星調査隊に参加したBURKセイバー隊の女性パイロットであり、茶髪に3色のメッシュを入れたロングヘアとギョロっとした大きな眼が特徴。24歳。
 スリーサイズはバスト78cm、ウエスト56cm、ヒップ84cm。カップサイズはC。
 ※原案は非常識先生。


【挿絵表示】




 

 ドイツの名家出身であり、史上最年少でBURKセイバーの正規パイロットとして認められた才媛。そんなリーゼロッテにとって、今回の調査任務は家名に相応しい出世を果たすための大事な「足掛かり」でもあった。

 それだけに、失敗は許されない。自分自身は当然として、部下達も精強であらねばならない。普段の高飛車で傲慢な振る舞いは、そんな重圧(プレッシャー)の裏返しでもあった。

 

 しかしシゲタが言っていたように、彼女も所詮は「優秀なだけの子供」に過ぎなかったのである。部下の女性パイロット達は皆、リーゼロッテの高慢さが不安の現れであることなど、出会った頃から分かり切っていたのだ。

 そんな彼女を隊長として立てつつも、年長者として支え、導いて行く。それが世界各地から選抜されたエリートである、BURKセイバー隊の女性陣が共有していた優先事項の一つであった。

 

 ――そして、ホピス星に発つ前日の早朝。BURKスコーピオンの発射を翌日に控えた、地上の宇宙基地にて。リーゼロッテ達BURKセイバー隊の面々は、基地に配備されている自分達の乗機を横目に見遣りながら、飛行場でのランニングに励んでいた。

 

「はぁ、はぁっ、んはぁっ……!」

 

 安産型の巨尻や豊穣な乳房をばるんばるんと弾ませ、レオタード姿の美女達が飛行場を駆け抜けて行く。その艶やかな髪を靡かせ、蠱惑的な唇から甘い吐息を吐き出す彼女達の柔肌からは、芳醇な汗の香りが漂っていた。この基地に勤務している男性隊員達は、女傑達の美貌と芳香に鼻の下を伸ばし、厭らしい笑みを溢している。

 

「おい見ろよ、BURKセイバー隊の女達だ……! 今度の惑星調査に同行するっていう……!」

「おぉっ……! あの乳の張り、あのケツの食い込み、腰つき……! 太股の肉付きも、ぷるっとしてる唇もたまんねぇ……! 俺、あいつらの匂いだけでどうにかなっちまいそうだぜぇ……!」

「ち、ちくしょう……! あの駒門琴乃やシャーロット博士も一緒に行くって話だし、BURKスコーピオンに乗れるエリート野郎共は良いご身分だよなぁ……! 俺もあんな美女軍団に守ってもらいてぇぜ……!」

 

 雄の本能を強烈に刺激する彼女達の色香は、基地内ですれ違う男性隊員達の下卑た視線を常に集めている。琴乃やシャーロットの爆乳にも思いを馳せている男達は、弘原海を始めとする男性乗組員達への嫉妬心を燃え上がらせていた。

 だが、当の本人達はその一切を意に介さず、眼前のランニングルートに意識を向けていた。下賤な欲望を隠せもしないケダモノなど、視界に入れるだけ気力と体力の無駄遣いだと、彼女達はすでに学習しているのである。

 

(……ふん)

 

 美女、あるいは美少女揃いのBURKセイバー隊。彼女達が基地内外で声掛け(ナンパ)に遭遇したケースは枚挙にいとまがなく、強引に迫った男達の股間が無惨にも一蹴される……という一幕が日常茶飯事となっていた。過去には彼女達の一糸纏わぬ姿を見たい一心で、シャワールームにカメラを仕掛けようとした一部の隊員が、憲兵隊に連行されるという事案もあった。

 

 それほどまでに、この女傑達の突出した美貌とプロポーションは、男達の目を惹きつけて止まないのである。怪獣災害が決して珍しいものではなくなってしまったこの時代に生まれ合わせていなければ、今頃はモデルやグラビアアイドルとして大成していた者もいたのだろう。

 だが、BURK上層部の高官達による「接待」の誘いも拒み、前線で戦い続ける道を選んできた彼女達には、今さらそんな選択肢などあり得ない。怪獣や異星人の侵略から無辜の人々を救う。そのBURK隊員としての純粋な矜持こそが、今の彼女達の原動力なのだ。

 

「……フッ。まさかこの私が、君の部下になる日が来ようとは。数奇な運命があったものだな、リーゼロッテ」

「ふんっ! この私の部下になったからには、幼馴染だからと言って特別扱いはしませんからねっ! 覚悟しておきなさい、ヴィルヘルミーナッ!」

 

 リーゼロッテの幼馴染であり、かつてドイツ支部にその名を轟かせた偉大な軍人を先祖に持つ、ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル隊員もその1人。

 透き通るような白い柔肌に張り付いたレオタード状の戦闘服は、どたぷんっと弾む100cmもの爆乳にも隙間なく、ぴっちりと密着している。肉感的にして蠱惑的なそのボディラインをありのままに浮立たせている彼女は、88cmのヒップをぷるんと揺らし、ポニーテールに纏められた黒の長髪をふわりと靡かせていた。その芳醇な色香はもはや、雄にとっては劇薬に等しい。

 

「……で、でも……来てくれて、ありがとう」

「ん? 何か言ったかな」

「な、何も言ってませんっ!」

「そうか? 来てくれてありがとう、と言われた気がしたのだがな。……愛い奴め!」

「き、聞こえてたんじゃないですかぁ! ちょっ、わしわししないでくださいっ!」

 

 幼い頃から姉妹のように育って来た彼女が部隊に居たことについて、リーゼロッテは表面上鬱陶しがっているようにも見えるが――その実、安堵もしていた。気心の知れている彼女が居なければ、心細くて堪らなかったのだろう。

 そんな妹分の胸中をすでに看破しているからこそ、ヴィルヘルミーナも大らかに微笑んでいるのだ。わしわしと頭を撫でられているリーゼロッテは、ぷりぷりと頬を膨らませている。

 

 彼女達を先頭に、飛行場の外周を走るBURKセイバー隊の美少女達は、さらにペースを早めていた。それに比例して、きめ細やかな柔肌を滴る甘い汗の量も増し、乳房や臀部の躍動も激しくなって行く。

 

「はぁ、はぁっ……! ま、待ってくださいよせんぱ〜いっ……!」

「……待ってあげてもいいけど、私が後ろから追う側に回ったらどうなるか……知ってるわよね? またお尻を引っ叩いて欲しいのかしら?」

「ひぃっ! お、鬼ぃ……!」

 

 先輩である望月珠子(もちづきたまこ)隊員の後を追う八木夢乃(やぎゆめの)隊員は、早くも息を荒げ始めていた。浅栗色のサイドテールと、85cmのバストを弾ませる彼女は、肉感的な太腿に汗を滲ませ懸命に地を蹴っている。

 だが、ショートボブの黒髪を弾ませて先を走っている望月は、ややぽっちゃりとした体型でありながら八木を大きく上回るペースで走り続けていた。90cmの巨乳と89cmの巨尻を揺らし、むっちりとした太腿を振る彼女の健脚は、甘いもの好き特有のぽっちゃり体型からは想像も付かない速さと持久力を発揮している。

 

「うぅ〜っ……望月先輩、いつも酷いですよぉ〜っ!」

「酷いと思うのなら、早く成長して私達を追い抜くことね。そうやって泣き言ばかり言ってるうちは、いつまでも変わらないわよ」

 

 対外的には穏やかで人当たりの良い女性として振る舞っている望月だが、同僚――特に後輩である八木に対しては、こうしてスパルタ気質な一面を覗かせているのだ。

 それも八木を死なせまいとする一種の善性によるものではあるのだが、だからこそなおタチが悪い、とも言えるのかも知れない。

 

「やれやれ、最近の若い奴らは元気で良いもんだなァ。俺達もあんな風にはしゃいでみるか? アリア」

「……もうそんな歳ではないでしょう、クーカ。あなたも、私も……」

 

 そんな彼女達よりも先を行っている、スペイン支部出身のラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス隊員。フランス支部出身のアリア・リュージュ隊員。彼女達は、その小柄な体躯ならではの身軽さを活かすかのように、軽やかに地を蹴っていた。

 138cmという低身長と、ボーイッシュなショートヘアの持ち主であるクーカ。145cm程度の短身と、知的な佇まいを併せ持つアリア。実は彼女達2人はこう見えて、31歳と27歳の年長者(ベテラン)なのである。

 

 10年以上の付き合いがある2人は、その幼い外見からは想像もつかない経験値と技術、そして知識を活かし、これまで何人もの後輩達を育て上げてきた名教官でもあった。その実績を買われて今回の調査任務に抜擢されたのだが、瑞々しい柔肌から爽やかな汗を散らして走る2人には、ある共通の悩みがあった。

 

「……俺達、いつ結婚出来るのかな」

「……私は嫌よ、生涯独り身なんて」

 

 10代前半の可憐な美少女……にしか見えないその外見が災いしているのか、一向に婚期が巡って来ないのである。

 特殊な嗜好を持った変質者などお呼びではない彼女達としては、真っ当な男性と結ばれたいという普遍的な願望があるのだが。そういった男性からは悉く避けられているという世知辛い側面が、彼女達をごく一般的な幸せから遠ざけているのである。

 

 数少ない共通の悩みを抱えている2人は、疲労しているわけでもないのに深々とため息を吐き出していた。それでもペースやフォームが全く乱れていないのも、ある種の「経験」の賜物なのかも知れない。

 

 そんな彼女達にピッタリと付いて行っている2人の爆乳美女は、しとどに汗ばむ白い柔肌から甘い匂いを振り撒き、むちっとした太腿を振って地を蹴っている。たわわに弾む乳房と巨尻の躍動が、すれ違う男性整備士達の視線を奪い去っていた。

 

「……さすがはイタリア支部を代表するエースパイロットだね、アルマ。僕やクーカさん達にピッタリと付いてくるなんて」

「ふふんっ、甘く見ないでよね? 私だって伊達に鍛えてないんだからっ!」

 

 ミディアムウルフカットのブラウンの髪を靡かせる、イタリア支部出身のアルマ・フィオリーニ隊員。M字バングに切り揃えた紺色のショートヘアを弾ませる、中国支部出身の劉静(リウジン)隊員。

 94cmという彼女達の豊穣な爆乳は、肌に隙間なく密着している戦闘服の中からも、その存在感をこれでもかと主張している。安産型の白い巨尻もむっちりと食い込んでおり、しとどに汗ばむ彼女達の肉体に秘められた濃厚なフェロモンは、そのレオタード状の戦闘服の中でじっとりと熟成されていた。

 

「……アルマはいつも頼もしいな。その手腕で是非とも、僕のことも守って欲しいものだね」

「ふっふーん、いいよいいよー! 劉静も皆も、私が守ってあげちゃうんだからっ!」

 

 ボーイッシュな美貌をアルマの頬に寄せ、劉静は「男役」さながらの低い声で妖しく囁く。気障な佇まいとその怜悧な眼差しで、多くの女性隊員を虜にして来た彼女の甘い言葉に、アルマはすっかり気を良くしていた。

 特に人口が多い中国支部から選抜されただけあって、劉静は単座機のパイロットとしても非常に優秀なのだが、本人は複数人で搭乗する大型爆撃機のナビゲーターを希望しており、「程々に黒幕でいられて、そこから気ままに献策できて、程々に命令される、というくらいが性に合っている」とまで公言している。

 

 そのため、体良く他人を利用しようとしているのではないか……と噂されることもあるのだが、本人は全く悪びれることなく飄々としている。そんな彼女の蠱惑的な囁きに気分を良くしているアルマは、さらに走るペースを早めていた。

 

「はぁ、はぁっ……! や、やっぱりあいつら速いねー……! エリー、まだ行けるっ!」

「はっ、はぁうっ……! だ、大丈夫ですナターシャさん、まだ頑張れますっ……!」

 

 そんな彼女達に合わせるように、その後方では2人の美女が息を切らして速度を上げている。

 褐色の柔肌に汗の匂いを滲ませ、ウェーブが掛かった薄紫色のロングヘアを靡かせている、ナターシャ・ジャハナム隊員。青、赤、黄色のメッシュが入った茶髪ロングヘアーを弾ませている、エリー・ナカヤマ隊員。

 彼女達2人は白と褐色のむっちりとした柔肌から瑞々しく汗を散らし、たわわに実った双丘と臀部をぷるんっと揺らしている。その頬を伝う汗からは、雄の情欲を煽る女の香りが染み出していた。

 

 BURKエジプト支部から選抜されたナターシャはメカニックとしての技能にも秀でており、男性整備員に混ざってBURKセイバーを整備することもある才媛だ。半年前の恐竜戦車地球降下事件に遭遇して以来、彼女はウルトラマンにばかり頼ってはいられないと、パイロットとしての技術も磨き抜いて来たのである。

 一方のエリーはアメリカ支部の出身であり、日本生まれでありながらもアメリカで青春の大半を過ごしたハーフでもあった。メッシュを入れたロングヘアや、頭の横に入った刈り上げ、スプリットタンに多くのピアス、ギョロっとした大きな眼など、外見からは非常に「危険」な匂いが漂っている彼女だが――実際の性格は至って穏やかであり、そのギャップに驚く者も多いのだという。

 

 レオタード状になっているBURKの戦闘服を気にしてか、平時は腰にブランケットを巻くなど慎ましい振る舞いを心掛けており、時には軽食を仲間達に振る舞うこともあるのだ。そんな「内面」を知る一部の男性隊員達からは密かな人気があるのだが、それは当人には知る由もないことであった。

 

「す、すみませんナターシャさんっ、私のペースに付き合わせてしまって……!」

「いいのいいのっ、私達仲間でしょっ! エリーが居てくれないと私だって困っちゃうんだからっ!」

「ナターシャさんっ……!」

 

 自分のペースが遅れていることに引け目を覚えているエリー。そんな彼女の背を押すように朗らかな笑顔を咲かせながら、ナターシャは親友の手を引いていた。

 敬遠されがちな自分の容姿を「カッコいい」と評し、いつも晴れやかな笑みを向けてくれるナターシャの姿に、感極まったような声を漏らしながら。エリーは懸命に足を動かし、彼女と共に走り続けていた。

 

 そんなBURKセイバー隊の1日は、この午前中のランニングに始まり――やがて各乗機の最終調整を経て、終わりを迎えた。

 

 ◇

 

 ――そして、翌日。BURKスコーピオンの護衛任務に就いた10人の女傑は、到着先のホピス星にて、 恐るべき大敵(キングジョー)と相対することになったのである。

 

『このまま終わるわけには行きませんっ……! 全機、攻撃開始! BURKセイバー隊の底力、思い知らせてやりますよっ!』

『了解っ!』

 

 BURKセイバーを駆る戦乙女達は皆、レーシングバイクのシート状の操縦席に己の肢体を預け、大きく前のめりになっていた。

 むにゅりと形が変わるほどにまで乳房を押し付け、なだらかなラインを描く上体をシートに擦り付け。背中を弓なりに反って、安産型の臀部(ヒップ)をぷりんっと後方に突き出しながら。凛々しい面持ちで操縦桿を握る女傑達は、それぞれの愛機を最大速度のマッハ4へと加速させていた。

 

 音速の世界を駆け抜ける、10人の女傑。その鋭い眼光は、暴走する鋼鉄の巨人を真っ直ぐに狙い澄ましている――。

 





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 今回は読者応募ヒロイン達のお披露目回です! 同時に、男性陣の時と同じ回想編となりました。彼女達一人一人の日常会話シーンをゆっくりお見せ出来るタイミングがここくらいしか無かったもので……(ノД`)
 次回からは現在の視点に戻り、ウルトラマン達と共に戦う彼女達の勇姿を描いて行くことになります。どうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


Ps
 リーゼロッテは女性パイロット枠が1人も来なかった場合の備えとして登場したキャラでもありました。よもや1人も来ないどころか、9人も来てくれるとはこのドラブの眼を以てしても(ry


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外星編 ウルトラホピスファイト part8

 

 リーゼロッテ達の眼前で猛威を振るっていたキングジョーは、その常軌を逸したパワーだけを武器に、ウルトラ戦士達を圧倒していた。だが、その規格外な馬力を目の当たりにしてもなお、ウルトラマン達は怯むことなく肉弾戦を仕掛けている。

 

『……ウルトラマンにばっかり良い格好させるもんですかっ! レーザーがダメならミサイルで吹っ飛ばしてやるまでですッ! 全機、両翼部ミサイルで上空から仕掛けますよッ!』

『了解ッ!』

 

 だが、キングジョーに立ち向かっているのは彼らだけではない。強さと気高さ、そして美しさを兼ね備えたBURKの女傑達も、ただ見ているわけではないのだ。彼女達は同時に操縦桿を引き上げ、キングジョーの頭上を取るように急上昇して行く。

 リーゼロッテ機を筆頭とする10機のBURKセイバーが、両翼部に搭載されている奥の手(ミサイル)の安全装置を同時に解除したのは、その直後であった。

 

『1発限りなのですから無駄撃ちは許しませんよっ! 外した子には私の足を舐めてもらいますからねっ!』

『隊長こそ外さないでくださいよっ!』

 

 レーシングシート状の操縦席にむにゅりと乳房を押し当てながら、むっちりとしたヒップをぷりんっと突き上げて操縦桿を握り締めている、BURKセイバーの美女パイロット達。リーゼロッテを筆頭とする彼女達も、その命を愛機に託し、この戦場の空を駆け抜けているのだ。

 

 

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『ざぁこ、ざぁこッ! よわよわロボットッ! 私達BURKを、無礼(なめ)るなッ!』

『はぁあぁあぁあーッ!』

 

 愛機が空を切るたびに飛び散る健康的な汗に、甘い女の芳香を滲ませて。しとどに汗ばんだ肉体を前方に傾け、扇情的な曲線を描く背を弓なりに反り。安産型の桃尻をばるんっと後方に突き出しながら、彼女達は上空からの急降下攻撃を仕掛けていた。その衝撃により、レオタード状の戦闘服がより深く、彼女達の鼠蹊部に食い込んで行く。

 

『見ろ! リーゼロッテ達が上昇して行くぞ……!』

『……皆、今だ! 全員でキングジョーを抑えろッ!』

『おうッ!』

 

 一方。シュラを筆頭とするウルトラマン達は、BURKセイバー隊の挙動から急降下攻撃の角度を予測し、同時に動き出して行く。キングジョーは一斉に組み付いて来た彼らに手足や身体を掴まれ、身動きが取れない状態に陥ってしまうのだった。

 そして――その内部機構が露出している箇所を狙い。濃厚なフェロモンを滲ませた汗を、その肉体から振り撒く美女パイロット達は、両翼の下部に搭載されたミサイルの引き金を引く。

 

『いっ……けぇぇえぇーッ!』

 

 両翼から解き放たれた弾頭の豪雨がキングジョーの頭上から降り掛かり、外装に守られていない機構部分を次々と吹き飛ばして行った。

 ライトンR30爆弾をベースに量産された新型ミサイルには、さしものキングジョーもノーダメージとは行かないようだ。ウルトラマン達に拘束されたまま弾頭を浴び続けたキングジョーの全身からは、黒煙が立ち昇っている。

 

『やった……! 全弾命中ですよ、望月先輩っ! これならあのキングジョーもイチコロ……うひゃあっ!?』

『集中しなさい八木ッ! まだ戦闘は終わっていないわッ!』

『皆、無事か!? こんなところで堕とされるんじゃあないぞッ! 我々BURKセイバー隊は、全員で生きて地球に帰らねばならんのだッ!』

 

 だがキングジョーはまだ沈むことなく、四方八方に破壊光線を乱射していた。乱れ飛ぶ金色の熱線が、10機のBURKセイバーに容赦なく襲い掛かる。

 

 八木が搭乗するBURKセイバーの片翼を、その熱線が僅かに掠めて行く。望月とヴィルヘルミーナの乗機は、間一髪その閃光を回避していた。急激な旋回によってコクピットが大きく揺さぶられ、彼女達の乳房がどたぷんっと躍動する。

 彼女達の白く豊満な肉体は冷や汗でじっとりと濡れそぼり、コクピット内を芳醇な香りで満たしていた。一方、他の機体も乱れ飛ぶ破壊光線の回避に徹している。

 

『ハッ、そんな甘い狙いで俺を墜とせると? 舐められたもんだぜッ!』

『クーカ、油断しないで! この不規則な光線の連射……私達のデータには無いわッ!』

『足りないデータは「勘」で補って来たのが俺達だろうが! 今さらそれくらいが何だってんだよッ!』

 

 クーカとアリアの機体はパイロットの身体が小柄な分、追加の演算装置が増設されており、戦闘中での情報分析能力が他の機体よりも高くなっている。10機のBURKセイバーが寸分の狂いもなく急降下爆撃に成功したのも、彼女達の機体に搭載された演算装置の補助があってこその成果だったのである。

 そのアドバンテージと長年の操縦技術を活かした高機動で、彼女達は破壊光線を難なくかわし続けていた。

 

『……! アルマ、その角度で飛んではいけないッ!』

『えッ!?』

 

 だが、全てのパイロットが彼女達ほどの練度に達しているわけではない。直撃コースに入りかけていたアルマ機を庇うように飛び込んで来た劉静機が、片翼を消し飛ばされてしまったのである。

 

『うあぁああ……ッ!』

『劉静ッ! 隊長、劉静機が被弾ッ!』

『何ですって!? アルマ、劉静機の状況は!?』

 

 男性的でありつつも、どこか扇情的でもある劉静の悲鳴が全機の通信機に入って来る。だが、焦燥を隠し切れないリーゼロッテの問い掛けにアルマが応えるよりも早く、劉静機は片翼を失いながらも辛うじて体勢を持ち直していた。

 

『リ、劉静……!』

『……片翼は失いましたが、まだ飛べますよ隊長。アルマ、君こそ無事だったかい?』

『わ、私は全然平気だよっ! それより劉静こそ……!』

『ふふっ……この前の約束とは逆になってしまったけど、こういうのも悪くはないね』

 

 九死に一生を得た劉静は、しとどに汗ばみながらも不敵な笑みを溢している。コクピットのキャノピー越しに、心配げに見守るアルマやリーゼロッテに微笑み掛けながら、彼女は安堵の息を漏らしていた。

 

 他人を体良く利用している魔性の男役。自分がそう噂されること自体を疎んだことはないが、それでもやはり、自分を純粋に認めてくれる仲間達に誤解されたくはなかったのだ。

 その可能性を少しでも払拭出来るのなら、こうして誰かの盾になるのも悪くはない。そんな胸中を滲ませるように、劉静は憔悴しつつも蠱惑的な笑みを溢していた。シートに押し付けられた彼女の乳房は、むにゅりと扇情的に形を変えている。

 

『エリー、今の状態で劉静の機体を狙われたら今度こそ助からないよ! 私達で仕掛けようッ!』

『……はいっ! 劉静さんを死なせるわけには……行きませんっ!』

 

 一方、片翼を失った劉静機の姿を目の当たりにしたナターシャ機とエリー機は、キングジョーの狙いを引き付けるべく機首部のレーザー銃を連射していた。

 一つの部位を執拗に狙い続け、相手の動きを阻害する戦法を得意とする彼女達の攻撃が、さらなる爆炎を呼び起こしている。

 

『各機、深追いは禁物です! ミサイルは確かに効いているのですから、無茶はしないでくださいッ! 高度を上げて距離を取りますよッ!』

『……了解ッ!』

 

 リーゼロッテを筆頭とする女傑達はミサイルの効き目に確かな手応えを覚えつつ、すれ違いざまに操縦桿を引き戻して高度を取り戻して行く。艶やかな髪からふわりと漂う甘い香りも、瑞々しい柔肌を伝う汗の匂いも、彼女達のコクピット内を優しく満たしていた。

 

‘『ギ……ガ、ガガ……!』

 

 ――その一方。大破寸前となっているキングジョーは暴走を続けながら、不規則な電子音を発していた。そこには、開発者であるペダン星人にしか理解できない一つのメッセージが込められていたのである。

 

『オ……オデ、マモル……! ミンナ、マモル……!』

 

 ◇

 

 希望(ホープ)平和(ピース)を愛する人々が穏やかに暮らしていた、緑豊かな惑星――ホピス。

 その美しい大地が「恐ろしい侵略者達」に狙われていることに気付いていたホピス星人達は、ペダン星人との交易を経てキングジョーを「輸入」していた。

 

 どのような世界にも、戦うことでしか守り抜けないものがある。それを理解していたホピス星人達は、ペダン星が誇る最強の宇宙ロボットに母星の未来を託し、敢然と立ち上がったのである。

 

 彼らにとってのキングジョーはまさしく、母星を守護する「鋼鉄の騎士」であった。その願いを託された特別改修機は、「ホピスナイトカスタム」という個体名を冠していたのである。

 そして――そんなキングジョーには、ある一つの「特徴」があった。優れた継戦能力を維持するため、より高精度な人工知能を搭載していたその機体には、「心」があったのである。

 

 あまりに精度が高い人工知能は、ホピス星人達との交流という「学習」を経て、人類が持つ情緒の動きを習得していたのだ。

 そんなキングジョーに一輪の花を捧げていた1人の少女の言葉が――今もなお、人工知能の深層部に刻まれているのである。

 

 ――わたしたちを、まもってね。

 

 そう微笑んでいたホピス星人の少女は、この惑星を焼き尽くした光波熱線に飲み込まれ、数え切れない犠牲者達の1人となった。

 平和への祈りを一身に背負い、この星を守り抜くはずだった鋼鉄の騎士は。何の役にも、立たなかったのである。

 

 ――おれは、まもる。みんなをまもる。

 

 どの口が言うのか。何も出来なかったというのに。全てが滅びた今になって、何から何を守ろうと言うのか。

 それが分からないような知能ではない。キングジョーの頭脳はすでに、己の存在そのものが無意味に終わったことを理解していた。

 

 だが、高度な人工知能が得てしまった「心」という「エラー」が、納得を拒んでいたのである。まだ自分は負けていない、まだ戦いは終わっていない。

 その暗示を己に掛けていたキングジョーは、BURK惑星調査隊を侵略者と見做し、攻撃を開始したのである。自分の敗北を認められない哀れな人形は、この期に及んで無意味と知りながら、己のアイデンティティを闘争によって取り戻そうとしていたのだ。

 

 何の役にも立たなかった、穀潰しの騎士は。ただひたすらに、惨めであった。

 





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 今回は読者応募ヒロイン達によるワンダバな攻撃シーン回となりました。同じ戦闘機に乗っている以上、個性が出て来るのはパイロット同士の掛け合いがメインとなるので、今回は少し短めになりましたな。次の更新の準備が完了するまで、また暫くお休みを頂くことになりますのでご了承くださいませ(´ω`)
 いやはや、しかしこの枠で9人も集まるとは企画主としては大変嬉しい誤算でありました。生物が軒並み滅びた死の大地……という非常に殺風景なシチュエーションですし、こうして華を添えてくれる美少女キャラの存在は不可欠だったのですよ。この戦いも次回でようやくクライマックスです。最後までどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


Ps
 BURKセイバーのモデルになっているF-86セイバーは、昭和のウルトラシリーズをはじめとする数々の特撮作品にも登場していた名機でございました。作者が最近買ったペギラのプラモにも付属していたのですよー(*´ω`*)


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外星編 ウルトラホピスファイト part9

 

 ――そして、今。暴走を続ける哀れな「穀潰しの騎士」は、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊の急降下爆撃を受け、完全なる「死」に至ろうとしていた。

 

『ジュウァアッ!』

『ゥアァアッ!』

 

 だが、それでもキングジョーは屈していない。無防備な内部機構にミサイルを撃ち込まれ、何人ものウルトラ戦士に手足や胴体を掴まれている状態だというのに――この宇宙ロボットはそれでも、力任せにシュラ達を払い退けてしまったのである。

 

『ヘァッ……! ァアッ……!』

 

 依代としている士道達を蘇生させるため、すでにかなりのエネルギーを消耗していたシュラ達は――胸のカラータイマーを赤く点滅させていた。これ以上戦いが長引けば、彼らは2度と立ち上がれなくなり、依代もろとも斃れてしまうことになる。

 

 キングジョーだけではない。ウルトラ戦士達もまた、戦う前からすでに満身創痍なのだ。

 士道達に対して「心配することはない」と気丈に振る舞っていた彼らは、とうとうその消耗を隠し切れなくなっていたのである。

 

「うぉおッ……!? な、なんて底力だよアイツ……! あの状態でもまだ戦えるっていうのか!?」

「ですが、かなり限界に近いはず……! もう一押しです、隊長ッ!」

 

 吹っ飛ばされたウルトラ戦士達は轟音と共に転倒し、激しく砂埃を撒き散らしている。弘原海と琴乃はその砂塵と猛風に顔を覆い、キングジョーの並外れたタフネスとパワーに瞠目していた。

 だが、諦めることなくBURKガンを撃ち続けている琴乃の言う通り、その戦闘機能は停止寸前となっている。

 

 キングジョーの全身から立ち昇る黒煙はやがて猛炎となり、そのボディを飲み込み始めていた。BURKセイバー隊の決死の攻撃が、ついにこの機体をここまで追い詰めたのである。

 

『今だ……! 行くぞ、皆ッ!』

『おうッ!』

 

 それは当然、ウルトラ戦士達にも分かり切っていることだった。カラータイマーの点滅はさらに加速し、危険信号を発している。

 

 もはや、隙を窺っている時間はない。

 彼らはふらつきながらも互いに頷き合うと、それぞれの「必殺技」を放つべく一旦キングジョーから距離を取り――エネルギーを全身に集中させていく。

 

『シェアァアッ!』

『ダァアァアッ!』

 

 胸の前で腕をクロスさせて破壊光線を放つ、ウルトラマンヴェルゼの「クロスプリット光線」。

 居合のように構えた手刀を逆袈裟の要領で振り上げ、巨大な八つ裂き光輪を放つ、ウルトラマンアトラスの「アトラススラッシャー」。

 

 その烈光と光刃がキングジョーのボディに炸裂し、天を衝くほどの火花を放つ。さらにウルトラマンリードとウルトラマンポーラの2人も、「必殺技」の発動体勢に入っていた。

 

『ヴゥァアァッ!』

『シュワァアァッ!』

 

 スペシウム光線の構えから冷凍光線を放つ、ウルトラマンポーラの「ウルトラエイジ」。

 その冷気に足を凍らされ、身動きが取れなくなったキングジョー目掛けて、ウルトラマンリードが放った数十枚の光輪が降り注いで行く。

 

 「一気呵成」と名付けられたその技を浴びた鋼鉄のボディは、徐々に外装もろとも切り刻まれようとしていた。

 その攻勢に乗り、ウルトラマンヘリオスとウルトラマンアルミュールも、必殺光線の構えに入って行く。

 

『テェエェーッ!』

『ディヤァアァーッ!』

 

 両腕を横に張り出し、両手を頭上と腰部の辺りに来るように回転させた後――腕を十字に交差させて放つ、ウルトラマンヘリオスの「ソルディウム光線」。

 両手首を交差させた後、円を描くようにそれぞれの腕を大きく回し、腕を十字に組んで撃ち放つ、ウルトラマンアルミュールの「アルミュール・スペシウム光線」。

 

 二つの閃光がやがて一つの輝きとなり、キングジョーのボディに炸裂して行く。さらに外装が剥げ落ち、キングジョーはより無防備な姿を曝け出していた。

 

『ダアァアッ!』

『ヤァーッ!』

 

 その隙を見逃すほど、ギガロとブルーマンは甘くはない。

 カラータイマーに太陽光線と自身の全エネルギーを集束させたギガロは、その中心点から必殺の「プラズマヴァイス光線」を照射していた。灼熱の閃光を浴びたキングジョーの全身が、無惨な姿に爛れて行く。

 

 ブルーマンも念力により精製されたボウガン「ブルーアロー」の引き金を引き、その光の矢でキングジョーのボディを射抜いている。

 ブルーハープンの切っ先に続き、ブルーアローの矢にまで貫かれたキングジョーは、大きくよろめいていた。

 

『ディヤァアァァッ!』

 

 そこへ畳み掛けるように、ウルトラマンミラリが額のクリスタルから、光の鞭型光線「ギャザリングレイ」を放射して行く。しなる閃光の鞭がキングジョーの頭部を打ち据え、その体勢を崩していた。

 

『ヘェアァアアッ!』

 

 そこに好機を見出したウルトラマンブフは、残されたエネルギーを全身の強化に注ぎ込み、低姿勢の構えで突撃して行く。相手を掴んで地面に叩き付ける「マクゼリオンアタック」が炸裂したのは、その直後だった。

 

『ダァアッ!』

『ジュアッ!』

 

 そして、あまりのダメージに起き上がれずにいるキングジョーに「とどめ」を刺すべく。

 スペシウム光線を刀剣状に形成したウルトラマンシュラが、勢いよく地を蹴って跳び上がった瞬間。ウルトラマンメディスは右腕を正面に突き出し、大きく回して左腕と合流させ、十字を組んでいた。

 

『ジュワァアァアッ!』

 

 ウルトラマンメディスの必殺光線である、「シフリウム光線」。その閃光が焼け爛れたキングジョーに浴びせられ、黒ずんだボディが崩壊を始めて行く。

 

『――ダアァアァアッ!』

 

 だが、最後の最後まで攻撃の手は緩めない。スペシウム光線の刀剣を握るウルトラマンシュラは、ジャンプした体勢から刃を振り下ろすように、超高速の6連斬撃――「スペシウムブレード・へクス」を放つ。

 

『ヘアァッ!』

 

 複数の腕が生えているかのような残像を生み出す、神の如き疾さ。その速度でバラバラに切り裂かれたキングジョーは、どのような暗示も逃避も成り立たない、「完全敗北」を喫したのだった。

 

『ダァァアッ!』

 

 そして斬撃を終えて着地したシュラは、切り刻まれたキングジョーの部品全てに、追い討ちのスペシウム光線を撃ち放つ。

 十字に組んだ腕から照射された光波熱線が、宇宙ロボットを形成していた物体全てに命中していた。

 

 12人のウルトラ戦士が残されたエネルギーを込めて放った、必殺の一撃。その威力は傷付いたキングジョーの外装も、露出した内部機構も全て吹き飛ばすほどの域に達していたのである。

 

 ウルトラ戦士達の必殺技を立て続けに受けたキングジョーの内側から、閃光が漏れ出して行く。そして爆ぜる直前――この星の人々に仕えていた機械仕掛けの騎士は。

 

 ――お、おれ、まもる。このほし、まもる。みんなを、まもる。ホピスのえがお、きぼう、へいわ。おれが、まもるんだ――

 

 ペダン星人にしか通じない電子音声で、譫言のようにそう呟いていた。

 言葉は通じずとも、敵意が感じられない音声の「声色」からその「思念」を汲み取ったシュラ達は――

 

『……もう、眠れ。もう……いいんだ』

 

 ――爆ぜて行くキングジョーの無念に、鎮魂の祈りを捧げるように。その全てを吹き飛ばして行く爆炎を、ただ静かに見届けるのだった。

 





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 今回は読者応募ウルトラマン達の必殺技お披露目回となりました! このキングジョーとの激闘もこれにて終幕。ここから物語はエピローグへと向かって行くことになります。残り約2話となりましたが、どうぞ最後までお楽しみに!٩( 'ω' )و
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)

Ps
 カイナ、アキレス、ザイン、エナジー、アーク、ジェム以外は全員、本来の持ち場を離れて駆け付けて来たウルトラ戦士ばかりでした。それだけの数のウルトラマンにそれくらいの無茶をさせないと、即滅亡しちゃうレベルのオワタ式世界だったということになりますね……(ノД`)


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外星編 ウルトラホピスファイト part10

 

『デェァァッ!』

 

 ――そして、決着の直後。

 ミラリは右手に集中させたエネルギーを圧縮し、掌底打ちの要領で必殺の光線「ミラリウムウェーブ」を撃ち放っていた。

 

 その光線の着弾点に発生した小さなブラックホールが、爆発によって飛散するキングジョーの残骸を次々と飲み込んで行く。

 

『あのウルトラマンの光線で、ブラックホールが……! キングジョーの破片が吸い込まれて行く……!?』

『私達の機体を、破片の飛散から守ろうとしているんだわ……!』

 

 それは爆発に伴う破片の飛散で、BURKスコーピオンやBURKセイバー隊に被害が及ばないようにするための措置であった。特に片翼をもがれている劉静機では、破片の回避は難しい。

 そこまで状況を読み込んでいた手力(ミラリ)の機転により、BURK側は一切の被害を受けることなく、戦いの終幕を見届けることが出来たのである。

 

「や……やった! やったぞ駒門ッ! あいつら、とうとうやりやがったッ!」

「はっ……はいッ! 隊長、我々の……BURKの勝利ですッ!」

『……よぉおしっ! キングジョー、完全に沈黙っ! 私達BURKセイバー隊の完・全・勝・利ですねぇえっ!』

 

 ウルトラ戦士達の必殺技を浴び、虚空の果てに跡形もなく消滅したキングジョー。その最期を目の当たりにした弘原海やリーゼロッテ達は、ウルトラマン達とBURKの勝利を確信し、爆発的な歓声を上げるのだった。

 

「……ふぅっ。まさに首の皮一枚、と言ったところね。あのキングジョーが万全な状態だったら、誰か1人でも欠けていたら……私達が押し負けていたところよ」

 

 BURKスコーピオンのコクピット内に座していたシャーロットも、深く安堵の息を漏らしている。そんな彼女の近くでも、乗組員達の歓声が沸き立っていた。

 

『シュウワッチッ!』

「……ホピス星人。あなた達の無念は、いつか私達が必ず晴らすわ。そうでなければ、次に滅びるのはきっと……私達の方だもの」

 

 戦いと分離(・・)を終えたウルトラマン達は、やがて両手を広げて勢いよく飛び去って行く。その光景に弘原海やリーゼロッテ達が笑顔で手を振る中、シャーロットだけは複雑な表情を浮かべていた。

 

「おーい、弘原海隊長ーッ!」

「あっ!? おいお前ら、一体どこをほっつき歩いていやがったんだッ! 心配掛けやがってッ!」

「す、すいません! 俺達はあの後……あの後、どうしてたんだっけか……?」

 

 その後、行方不明のままとなっていた士道達が、遥か遠方から手を振って駆け寄って来た――のだが。洞窟の崩落から先の記憶が無いのか、彼らは互いの目を見合わせて小首を傾げている。

 

 それでも、無事に生きて帰って来たことが何よりも嬉しかったのだろう。弘原海は怒号を飛ばしながらも頬に熱い雫を伝わせ、部下達の肩を抱き寄せている。琴乃もその様子を遠巻きに見守りつつ、人知れず目元を拭っていた。

 

『……ふ、ふんっ! あの地上部隊の男共、一体今までどこで油を売っていたのですかっ! 地球に帰ったら全員お尻ぺんぺんですっ!』

『ふふっ……そんなこと言って、本当は隊長もずっと心配だったのではありませんか? 顔に出てますよ』

『んなっ!? か、勝手なことばかり言わないでもらえますかっ!』

 

 そんな弘原海達の和気藹々とした様子を、BURKセイバー隊の女性陣は微笑ましげに見守っている。表面上は悪態を吐いているリーゼロッテも、内心の安堵を隠し切れずにいるのか、その白い頬を優しげに緩ませていた。

 弘原海率いる調査隊と、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊。彼らを取り巻く和やかな雰囲気には、シャーロットも微笑を浮かべている。

 

「……そうよ。彼らのような、勇敢な若者達を死なせるようなことがあってはならない。このホピス星のような悲劇を、繰り返してはならない……!」

 

 だが――ウルトラマン達が飛び去って行った方向を見上げた時。彼女の面持ちは、悲壮な決意を固めた険しい色へと変貌していた。

 

 ◇

 

「……ん?」

 

 そんな中――弘原海や琴乃達と共に、BURKスコーピオンの船内へと撤収して行く途中で、士道は独りその足を止めていた。

 

 ふと足元を見遣ると、そこには一輪の花が横たわっていたのである。端々が焦げているその花を手に取った士道は、吸い寄せられるように花びらを見つめていた。

 

 草一つ生えていないこの大地に、何故このようなものが残っているのか。そんな疑問を抱く彼の頭上を、BURKセイバー隊の機体が勢いよく駆け抜けていた。

 

「おーい、士道っ! 何してんだぁ? 一旦船に戻ろうぜぇーっ!」

「……あ、あぁ。今行く」

 

 やがて士道は、背後から響いて来た手力の声に振り返ると、花を手にしたままその場を後にして行く。

 

 キングジョーがボディの内側で密かに守り続けていた、この星の存在を証明する最後の残滓。

 その一輪が、外星からの来訪者達に託された瞬間であった――。

 

 ◇

 

 ――その頃。ホピス星から遥か遠くに位置するとある惑星には、蒼い身体を持つ1人の宇宙人の姿があった。そこはホピス星と同様に、ありとあらゆる命が刈り尽くされた「死の大地」と化している。

 

『……我が「絶世哮(ぜっせいこう)」で星ごと焼き払ってもなお、あれほどの戦闘機能を維持していたとはな。ペダニウム宇宙合金、やはり侮れん硬度だ』

 

 禍々しく凶悪な外観を持つその宇宙人は、天に広がる星空を静かに仰いでいた。そんな彼の背後では、この星に棲息していた「冷凍怪獣」ペギラの屍肉を貪り食う怪獣達が、その咀嚼音を響かせている。

 

『分離合体機能を排し、純粋な戦闘力のみを追求した防衛用改修機……「ホピスナイトカスタム」、か。ホピス星人共も愚かなものよ。我が「軍団」への隷属を誓い、あのキングジョーを差し出していれば数百年は見逃してやったというのに。弱者が縋る「誇り」というものはいつも、真実を視る目を曇らせる』

 

 その下僕達の様子を一瞥する宇宙人は、深々とため息をつき――足元に転がるペギラの頭部を踏み潰していた。ホピス星を滅ぼしてから間も無く、この星を蹂躙し尽くしていた彼らこそが、全ての災厄の元凶だったのである。

 

『それにしても……宇宙警備隊の武力介入があったとはいえ、我が「絶世哮」すらも凌いだキングジョーを仕留めるとはな。太陽系第3惑星「地球」の戦士達……か』

 

 その「元凶」たる怪獣軍団を率いている宇宙人は、自身が強者と認めていたキングジョーを倒した地球人達へと思いを馳せていた。遥か遠方の惑星からホピス星の戦いを観測していた彼の興味は、何万光年も遠く離れた蒼い星へと向けられている。

 

『……ふっ、くくく、面白い。我が「軍団」の贄となるに相応しい絶好の「餌場」ではないか。我々が赴く日まで、せいぜい束の間の平和を謳歌しているが良い……ははははははッ!』

 

 やがてその宇宙人――「極悪宇宙人」テンペラー星人は高笑いを上げ、轟音と共に歩み出して行く。新たな獲物を見つけた主人に続くように、「食事」を中断した怪獣達もその後に続いていた。

 

 「宇宙恐竜」ゼットン。「宇宙怪獣」エレキング。「用心棒怪獣」ブラックキング。「一角超獣」バキシム。そして、「火山怪鳥」バードン。

 原種に対してあまりにも醜悪で、凶悪な容貌を持つ5体の怪獣は――食い散らかされたペギラの屍肉を無慈悲に踏み躙り、「テンペラー軍団」の一員として主人に追従している。

 

 彼らが地球に襲来することになる「運命の日」まで、残り5年半。

 

 それが地球の命運を左右するタイムリミットであることなど、この当時の弘原海達には知る由もないのであった――。

 





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 今回は真の黒幕がベールを脱いだお話となりました。今話で名前が出て来たラスボス集団「テンペラー軍団」は、特別編「ウルトラカイナファイト」でメインヴィランを務めておりますので、機会がありましたらそちらのエピソードもどうぞよしなにm(_ _)m
 ホピス星は言うなれば「テンペラー軍団に滅ぼされた地球」であり、キングジョー・ホピスナイトカスタムは「何も守れなかったウルトラマン」だったのでしょう。さてさて、次回でいよいよ本章も最終話となります。最後までどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
 また、前回のキャラ募集企画から誕生したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」も現在連載中となっております! こちらも是非ご覧ください!(*≧∀≦*)


Ps
 ペギラの出番がなかなか用意出来ないまま最終話手前まで来てしまったので、むしゃむしゃすることにしました(´-ω-`)


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外星編 ウルトラホピスファイト partFINAL

◇今話の登場メカ

◇BURKクルセイダー
 BURKセイバーの後継機として開発された制式主力戦闘機であり、GUYSガンクルセイダーを想起させる曲線的なフォルムが特徴。単座式と複座式の2種類が存在している。ウルトラマンザインが地球に降着した頃から本格的に実戦配備されていた機体であり、弘原海や駒門琴乃をはじめとする多くのパイロットが搭乗していた。
 ※原案は魚介(改)先生。


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※こちらのイラストはたなか えーじ先生に有償依頼で描いて頂きました! 地上の基地から飛び立つBURKセイバーと、その発進を見送る駒門琴乃の姿を凛々しく描いた珠玉の1枚! たなか先生、この度は誠にありがとうございました!



 

 ――かくして、死の惑星ホピスを戦場とする激闘は幕を下ろし。弘原海率いるBURK惑星調査隊は、1人の犠牲者も出すことなく地球への帰還を果たしたのだった。

 

 だが、現地のホピス星人がすでに絶滅していたことや、キングジョーの残骸がミラリウムウェーブによって消失したこともあって、地球人側が得られた情報はごく僅かであり。そこから推測される内容も「不明瞭な点が多く、民衆の不安を悪戯に煽るだけ」と判断されたため、調査結果が正式に報道されることはなかった。

 

 ウルトラマンと一体化していた士道達も「分離」の際に記憶を消去されていたため戦闘内容を全く覚えておらず、記録上は「洞窟の崩落を受けてのショックによる部分的な記憶喪失」となっている。

 

 惑星ホピスの滅亡も、キングジョーとの死闘も公にされないまま。惑星調査隊は人知れず、その役目を終える形となったのである。

 

 そして――この調査隊に参加していた全隊員は解散後、各々の原隊に復帰。それから約数年間に渡り、世界中で活発化し始めた怪獣災害に立ち向かって行くことになる。

 

 ウルトラアキレス、暁嵐真(あかつきらんま)。ウルトラマンザイン、椎名雄介(しいなゆうすけ)。ウルトラマンエナジー、覇道尊(はどうたける)。ウルトラマンアーク、八月朔日要(ほずみかなめ)。そしてウルトラマンジェム、荒石磨貴(あらいしみがき)

 彼ら5人が紡ぐ、輝かしい英雄譚の影には常に――元調査隊メンバー達の勇姿があったのだ。

 

 時にはBURKガンを手に地上から怪獣を銃撃し、またある時は戦闘機のパイロットとして、上空から怪獣を攻撃する。そんな「名も無きBURK隊員」の1人として、彼らはウルトラマン達の戦いを支え続けたのである。

 

 リーゼロッテをはじめとするBURKセイバー隊の女傑達も、後に弘原海や琴乃が搭乗することになる次期主力戦闘機「BURKクルセイダー」の開発計画に参加。同機のテストパイロットを務め、怪獣達との戦いに大きく貢献していた。

 彼女達が築き上げた運用データはそれだけに終わらず、後に開発されていく様々な新型航空機に活かされて行くことになる。ドイツ支部、フランス支部、エジプト支部、スペイン支部、イタリア支部、中国支部、アメリカ支部、そして日本支部の戦闘機は特に、彼女達が齎したデータによって飛躍的な発展を遂げていた。

 

 そして、ホピス星の戦いから5年半後に起きたテンペラー軍団との最終決戦を制し、この地球が真の平和を掴み取った日まで。彼らはどれほど傷付こうとも、誰1人として戦死することなく、「終戦」まで生き残って見せたのだ。

 

 部下達の生還を何よりも願っていた弘原海の精神が、彼らにただならぬ「生への執着」を齎していたのである。

 どれほど苛烈な戦火の中に立たされようと、彼らは弘原海の言葉を胸に、生きるための戦いを遂行し続けていた。恐らくはその信念が、終戦の日まで彼らを導いていたのだろう。

 

 ――ウルトラアキレスが地球の守護を担っていた頃に起きた最後の戦闘で、負傷による「名誉除隊」を余儀なくされた八木夢乃と、身寄りがない彼女を介護するためにBURKを退いた望月珠子を除いて。

 全ての戦いを終えた彼らは今、怪獣災害によって破壊された各地の都市を巡り、復興に尽力している。

 

 ウルトラマンカイナの地球降着から始まった、6年間にも及ぶ長い戦争の日々は終わりを告げた。だが、地球の人々の笑顔と未来を守らねばならないBURKの戦いは、ここからが本番なのだ――。

 

 ◇

 

 ウルトラマンカイナを筆頭とする新生6兄弟と、テンペラー軍団の最終決戦。その死闘に終止符を打つ舞台となった東京の都心部では、多くのBURK隊員達による復興作業が進められている。

 長きに渡る戦乱の序章とも言える、恐竜戦車地球降下事件から6年。その歳月を経て、ようやく平和を掴み取った地球の未来は今、彼らの働きに委ねられているのだ。

 

「そろそろ休憩だ、皆! 水分と塩分の摂取を怠るなよッ!」

「このリーゼロッテ様の部下が熱中症だなんて、世に示しが付きませんからねーっ! 体調管理が万全でない者は、早退の刑に処しますっ! 不調の報告を怠った者は、救急搬送の刑ですよーっ!」

 

 その中には――ドイツ支部のリーゼロッテとヴィルヘルミーナを筆頭とする、元調査隊メンバー達の姿もあった。

 

 ウルトラマンとしての記憶を失ってからも、BURK隊員の責務を全うせんと戦い抜いて来た男達。BURKセイバーからBURKクルセイダーに乗り換えてからも、強かに生き延びて来た女傑達。

 かつてホピス星の戦いに参加していた彼らは今日も、炎天下の中で瓦礫の撤去作業を続けている。彼らの頭上を翔ぶ曲線形の制式戦闘機――BURKクルセイダーの編隊も、上空で定期パトロールに励んでいた。その光景と夏の青空を仰ぐ劉静とクーカは、共に微笑を浮かべている。

 

「……僕達が開発に関わったあのBURKクルセイダーが、今や世界中に配備され、この空を守っている。これまでの月日を思うと、感慨深いものがあるね」

「ま、そのBURKクルセイダーもそろそろ『型落ち』なんだけどな。琴乃から聞いた話だと、例の新型試作機のテスト……もう始まってるらしいぜ?」

「日本支部の『BURKビートル』にアメリカ支部の『BURKイーグル』、そして我が中国支部の『BURK爆龍(バオロン)』……か。まさかあの『お漏らしお嬢様達』が、最新鋭機のテストまで任されるようになるなんてね」

 

 アメリカ支部戦闘機隊隊長、アメリア。ロシア支部戦車隊隊長、イヴァンナ。中国支部爆撃機隊隊長、凛風。イギリス支部艦隊司令官、オリヴィア。フランス支部歩兵隊隊長、エレーヌ。今や駒門琴乃と共に新生BURKの女傑として名を馳せている、彼女達5人の新人時代と、その当時の醜態を知る劉静とクーカは、感慨深げに頷いていた。

 

 この2人をはじめ、かつて調査隊に参加していた隊員の多くは、すでにこのような現場作業に出るべきでは無い立場に出世している。中にはイタリア支部やスペイン支部、エジプト支部の戦闘機隊を率いている隊長の姿もあった。

 

 だが、テンペラー軍団との戦いで壊滅的な打撃受けた東京の街を前に、じっとしていられるような者達ではないのだ。ホピス星の時でもそうだったように、彼らは己が信じる為すべきことにのみ、目を向けている。

 

 士道剣。

 鶴千契。

 手力握人。

 多月草士郎。

 木場司。

 荒島真己。

 叶亥治郎。

 日ノ出新。

 氷川雄一郎。

 前田力也。

 シゲタ。

 リーゼロッテ。

 ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル。

 アリア・リュージュ。

 ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス。

 アルマ・フィオリーニ。

 劉静。

 ナターシャ・ジャハナム。

 エリー・ナカヤマ。

 

 彼らは皆、眩い日差しの下で毎日のように瓦礫の排除に勤しんでいた。バリケードの向こう側からその様子を眺めている通行人達は、日々汗を流している彼らに笑顔で手を振っている。

 

 BURK内でも屈指の美男美女揃い……ということもあり、民間人の男達は女傑達の美貌とプロポーションに釘付けになり、その肉体から漂う芳醇な色香に喉を鳴らしていた。柔肌を伝う甘い汗から漂う香りに、男達は思わず鼻の下を伸ばしている。

 若い女性達は男達の鋭い眼差しや逞しい二の腕に目を奪われ、その頬を伝う汗に生唾を飲み込んでいた。離れていても本能が反応してしまうほどの精強な雄のフェロモンが、鍛え抜かれた彼らの肉体から滲み出ている。

 

「あ、見て見て! 今日もあの人達、作業で来てるよ……! やっぱイケてるよねー、あの人達! ねぇねぇ、ちょっと一緒に写真撮ってもらおーよ!」

「やめときなよ、邪魔になるし危ないでしょ。姉さん、『映え』に命懸け過ぎ。また炎上したって知らないからね」

「えーいいじゃん減るもんじゃないしっ! あんなに男のフェロモンむんむん出しておいて、撮るのもダメだなんてもはや新種の当たり屋じゃんっ! しかもBURK隊員なんて今や超絶勝ち組のガチエリートなんだし、あわよくばワンチャン……!」

「姉さん……話聞いてた? 命張って地球を守ってくれた人達に対して失礼でしょ、早く学校行くよホラッ」

「しょ、しょんなぁ〜……私の目の保養がぁあ〜……!」

 

 黄色い声を上げながら、日ノ出達に携帯のカメラを向けようとする薄着の女子大生と、そんな姉を嗜めている怜悧な女子高生。

 どちらも(・・・・)男達を目当てに現場近くの通学路を利用しているらしく、きゃあきゃあと騒ぐ女子大生に気付いた日ノ出達は「またあの子達だよ」と顔を見合わせていた。この2人――沢宮(さわみや)姉妹は都内でも有名な美少女であり、最近はモデルとしても活躍しているのだが、芸能界に疎い日ノ出達には知る由もないことであった。

 

 ――ウルトラマンカイナが初めて地球に現れた、恐竜戦車地球降下事件に端を発する6年間もの戦乱。その暗黒時代を経た現在においては、BURKの隊員は誰もが憧れる「英雄」の職業として称賛されるようになっていた。

 かつては税金泥棒などと謗られていたBURKは、6年間にも渡る戦争を経て劇的に再評価されたのである。その頃を知っている世代であるが故に、日ノ出達は女子大生達の様子を複雑な表情で見守っていた。

 

「あ、あのっ! 何かお手伝い出来ることってありますか!? 私、BURKさんのお役に立ちたいんですっ!」

 

 そんな中。バリケードの向こう側から、隊員達に声を掛けて来る小学生の少女が現れた。恐らく、彼女も通学中なのだろう。溌剌と目を輝かせている彼女は、ぴょんぴょんと地を蹴って艶やかな黒髪を揺らしている。

 

「……もう役に立ってくれてるさ。君がそうやって応援してくれたおかげで、俺達もいっぱい元気が出る。いつも、ありがとうな」

「はっ……はいっ!」

 

 純粋な憧れに胸を躍らせている彼女の姿を微笑ましげに見遣っていた士道剣は、片膝を着いて彼女の目線に合わせると、その頭を優しく撫でていた。その掌の温もりと、華やかな微笑に思わず頬を染める少女は、顔を真っ赤にしながら学校に向かって走り去って行く。

 

「ちょっと士道、幼気な女の子の男性観を軽率に歪めないでくれる? さっきのあの子、耳まで真っ赤だったわよ」

「え……? いきなり何の話だよ。……でも、顔は確かに赤かったよな。背の低い子供ほど熱気の影響を受けやすいんだから、熱中症対策はきちんとしていて欲しいんだが……。夏休みも近いんだし、念のため後で近隣の学校に注意喚起しておくか。アリアも水分はこまめに摂れよ」

「……それ、どういう意味かしら」

 

 少女の様子からその心中を察していたアリアは、ため息を吐いて戦友の腰を叩くのだった。士道より50cmも背が低い彼女では、その位置がやっとだったのである。一方、自分が「しでかしたこと」に全く気付いていない当人は、アリアの苦言にも小首を傾げていた。

 

「あのっ! お、俺もBURKに入れてくださいっ! 俺、どうしてもBURKに入りたいんですっ!」

「こ、こらダメだよ! 皆さんお仕事中なんだから、邪魔になっちゃう!」

 

 ――その頃、別のバリケード付近では。小学生ほどの幼い少年が身を乗り出して、作業中の荒島達に声を掛けていた。そんな弟の肩を掴んで制止している女子高生の姉は、荒島達の視線に気付き、ぺこぺこと頭を下げている。

 

「……」

 

 そんな2人の前に無言で歩み出して来たのは、鶴千契だった。彼は士道と同様に片膝を着いて少年に目線を合わせると、その鋭い眼で少年の瞳を射抜いてしまう。だが、少年は怯みながらも決して目を逸らすことなく、鶴千と視線を交わし続けていた。

 

「……なぜ、そこまでBURKに入ることを望む。何がお前をそうさせている」

「お、俺は……姉ちゃんを守りたいんですっ! 父ちゃんと母ちゃんが怪獣災害で死んでから、姉ちゃんはずっとバイト漬けで……! だから俺、早くBURKに入って、姉ちゃんに楽させてやりたいんですっ!」

「……そうか」

 

 かつて、姉を怪獣に殺された者として思うところがあったのだろう。鶴千は少年の言葉を聞き終えると、BURK隊員の証である胸のバッジを迷いなく外し、それを少年の胸に付けてしまう。

 その行為に姉や少年が瞠目する中、鶴千はゆっくりと立ち上がり、踵を返していた。そんな彼の行動に、見守っていた荒島達は「やれやれ」と苦笑を浮かべている。

 

「あ、あの、これっ……!」

「その覚悟があるならば、お前はすでにBURKの一員だ。故にこれより、先任隊員としての命令を伝える。……姉ちゃんを守れ」

「……!」

「そしていつか、お前が大人になった時……そのバッジを返しに来い。BURKの門を叩いてな」

「はっ……はいっ!」

 

 感極まり、ぼろぼろと涙を零す姉に抱き締められながら。少年は鶴千から託されたバッジを握り締め、力強く声を上げる。

 そんな彼に背を向け、表情を見せないように立ち去って行く鶴千は――優しげな微笑を浮かべていた。そんな彼の両隣に立つアルマとナターシャは、あまりに「不器用」な戦友の姿に苦笑を溢している。

 

「……そういえば、いつの間にか胸のバッジを『紛失』してしまったな。後で始末書を書かねばならん」

「ふふっ……じゃあ、半分くらいは手伝ってあげるよ。私もきっと、同じことをしてたと思うし」

「さっさと片付けて、次の休みには夢乃と珠子に会いに行こうよ。契もずっと、あの子達のことは心配だったんでしょ?」

「……済まんな、アルマ。ナターシャ」

 

 全ての戦いを乗り越え、穏やかに笑い合う隊員達。彼らを見下ろす太陽の輝きは、その勇姿を燦々と照らしていた――。

 

 ◇

 

 そんな中。かつてはBURKオーストラリア支部きっての天才と謳われていたシャーロット博士は現在――母国の片田舎で、独り静かな隠遁生活を送っていた。

 

 雄大な自然を一望出来る故郷に身を寄せた彼女は、平和を取り戻した地球の美しさを噛み締めるように、穏やかな日々を過ごしている。今となっては、士道が手に入れたホピス星の花の研究だけが生き甲斐となっていた。

 

 ――数年前にホピス星で目の当たりにした、非情にして絶大な破壊と殺戮。その光景に地球の「未来」を視た彼女はあの戦いの後、人工ウルトラサイン発信装置「イカロスの太陽」の開発に着手していたのだ。

 ウルトラマンを「捕獲」し、その存在を「生物」として解析した上で、「兵器」として運用する。そのような神をも恐れぬ狂気の研究に、独り身を投じていたのである。

 

 それも全ては、弘原海をはじめとするBURKの隊員達を破滅の未来から救うためであった。

 

 あれほどの破壊を齎す侵略者に、ウルトラマン達が勝てるとは限らない。彼らが勝ち目のない戦いに命を賭けてくれる保証もない。彼らにとってはこの地球でさえ、数ある星々の一つに過ぎないのかも知れないのだから。

 ならばやはり、地球は地球人の手で守り抜かねばならない。例えその地球人達から、弘原海達から悪魔と謗られようとも、自分がやらねばならない。

 士道達のような、前途ある勇敢な若者達をみすみす死なせるようなことこそ、あってはならない。その未来を変えられるなら、自分は喜んで悪魔に魂を売ろう。

 

 それが、シャーロットの信念だったのだ。そして彼女はその狂気にも似た執念を糧に、「イカロスの太陽」を完成させたのである。

 だが、当然ながらその運用計画は凍結。狂気の研究に手を染めていた彼女は、BURKそのものから追放されてしまったのだ。

 

 今の彼女にはもう、何の地位も名誉も無い。だが、故郷の教会に足繁く通っている今の彼女の貌は、「憑き物」が落ちたかのように晴れやかなものとなっていた。

 

 悪魔に魂を売ってでも完成させた「イカロスの太陽」は、無事(・・)に凍結された。その開発に手を染めた自分は、然るべき報いを受けた。そしてウルトラマンカイナをはじめとする6人のウルトラ戦士達により、地球は救われた。

 その「未来」こそが、5年半に渡りシャーロットが背負い続けて来た「荷」を下ろしてくれたのである。教会の天井に描かれたイカロスの翼を仰ぐ彼女は、力無く笑みを溢していた。

 

「……天に近付き、翼を焼かれた傲慢なる愚者。まさしく、私のことだったのね」

「そうでしょうか。イカロスはその過ちで命を落としましたが、あなたはまだ生きていらっしゃいます。それはきっと、神の思し召しでございましょう」

「……そうかしら。でも、そうだといいわね」

 

 そんなシャーロットに声を掛ける金髪のシスターは、修道服に隠された白い爆乳をどたぷんっと揺らして、華やかな微笑を浮かべていた。日々懺悔に訪れるシャーロットを、いつも暖かく迎え入れている彼女の存在も、「翼を焼かれた愚者」が足を運んでいる理由の一つとなっている。

 全ての罪を赦し、受け入れてくれる聖母の如き修道女。そんな彼女の存在が、全てを失ったシャーロットの希望を、この教会に繋ぎ止めているのかも知れない。

 

「きっと、そうですよ。神も、私も……そう信じております。あなたに償えない罪など、無いのだと」

「……ありがとう。明日また、ここに来てもいいかしら」

「もちろんですわ。教会の子供達も、早くあなたに勉強を教わりたいと、大はしゃぎしておりましたから」

 

 信念という名の呪縛から解放されたシャーロットは、懺悔を終えて席を立つと。笑顔で見送るシスターに手を振りながら、教会を後にして行く。

 そして今日も、澄み渡る青空を仰ぎ――安らぎに満ちた微笑を浮かべるのだった。

 

 

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「……ありがとう、ウルトラマン。そんなにも、人間を好きになってくれて」

 

 こんな自分すらも含めた、全ての地球人のために命を賭してくれたウルトラ戦士達。彼らへの、果てしない感謝の想いを込めて。

 





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 今回の外星編「ウルトラホピスファイト」はこれにて完結となりました!(*≧∀≦*)
 本章を最後まで見届けてくださった読者の皆様! 募集企画にご参加頂いた参加者の皆様! おかげさまで、特別編「ウルトラカイナファイト」に繋がっていくこの物語も無事に完結を迎えることが出来ました! 誠にありがとうございます!(๑╹ω╹๑ )
 今回倒したのは満身創痍のキングジョーだけでしたが、その先に居る真の敵は次代のウルトラマン達がやっつけてくれます。その辺りのエピソードはすでに特別編の方で描かれておりますぞー(о´∀`о)

 ちなみに今話で新たに名前が出て来た「BURKクルセイダー」につきましては、魚介(改)先生が公開されている3次創作「ウルトラマンザイン」で初登場しております。こちらもぜひご覧くださいませ!(*≧∀≦*)
 加えて本日からは、平均以下のクソザコ野郎先生原案の荒島真己を主人公とする3次創作「荒島 真己のスキキライ」の連載もスタートしております! こちらも必見でございます!(*^ω^*)

 次回作については今のところ特に大きな予定はないのですが、またこういう企画を開催できる機会がありましたら、お気軽に遊びに来て頂けると幸いです(*´ω`*)
 ではではっ! またいつか、どこかでお会いしましょう〜。失礼しますっ!٩( 'ω' )و


Ps
 「シン・ウルトラマン」をきっかけに色んな人がウルトラマンに目を向けてくれるようになってくれたのが何よりも嬉しい。皆! ウルトラマンはいいぞー!(*≧∀≦*)


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銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 前編

◇今話の登場メカ

◇BURKプロトクルセイダー
 BURKセイバーの後継機として開発が進められている、次期主力戦闘機「BURKクルセイダー」の先行試作型。GUYSガンクルセイダーを想起させる曲線的なフォルムが特徴であり、メインパイロットとナビゲーターに分かれた複座式となっている。リーゼロッテをはじめとする女性パイロット達が搭乗する。
 ※原案は魚介(改)先生。


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※こちらのイラストはたなか えーじ先生に有償依頼で描いて頂きました! 空を駆け抜けるBURKプロトクルセイダーと、その僚機の側を飛んでいるリーゼロッテの姿をカッコ良く描いた珠玉の1枚! たなか先生、この度は誠にありがとうございました!



 

 ――ホピス星の戦いから、約半年後。地球では再び怪獣や異星人らによる侵略が頻発するようになっていた。

 弘原海(わだつみ)駒門琴乃(こまかどことの)をはじめとするBURKの隊員達は皆、毎日のように戦場へと駆り出されるようになっていたのである。

 

 そしてこの当時、そんな彼らと肩を並べ、地球を守り続けている光の巨人が居た。ウルトラマンカイナに続いてこの地球に降着した第2の戦士――ウルトラアキレスだ。

 

 19歳の大学生・暁嵐真(あかつきらんま)の身体を借りてこの地球に常駐していた彼は、地球の守護を担う当代のウルトラ戦士として、怪獣や異星人の侵略に何度も立ち向かっていたのである。

 

 これは、そんな戦いの日々が始まって間も無い頃のことであった。

 

 ◇

 

「それは本気で仰っているのですか、綾川(あやかわ)司令官ッ!」

「……これほどタチの悪い冗談を、このような場面で口にすると思うかね。残念だが、これは内閣総理大臣の決定だ。我々には従う義務がある」

 

 BURK日本支部の基地に設けられた、作戦司令室。そこに響き渡る弘原海の怒号に対し、綾川司令官は眉一つ動かすことなく冷酷な「指令」を告げていた。

 

 ――約10時間前。地球近辺の宙域をパトロールしていた駒門琴乃のBURKセイバーが、とある宇宙怪獣の襲撃を受けたのである。

 

 クラゲ状の身体と7本もの触手を持ち、「円盤生物」とも呼称されているその怪獣の名は、シルバーブルーメ。

 ドイツ語で「銀の華」を意味するこの怪獣は、防衛チーム「MAC(マック)」を壊滅させた凶悪な生物として記録されている魔物なのだ。

 

 しかもこの個体は、救援に駆け付けて来たウルトラアキレスを撃退してしまうほどの戦闘力を有しているのである。シルバーブルーメの体内に取り込まれた琴乃機を救出できないまま、未熟な真紅の巨人は7本もの触手によって叩き落とされてしまったのだ。

 基地の医務室で眠り続けている暁嵐真は起き上がることすら困難なほどの重傷であり、例え意識を取り戻したとしても万全に戦える状態には程遠い。日本支部は今、ウルトラアキレスの敗北という残酷な事実に直面している。

 

 そんな中。その事実を受けた政府から日本支部へと、冷酷な「指令」が通達されたのである。

 

 ――シルバーブルーメが大気圏を突破して地球に降下して来る前に、大型レーザービーム砲「シルバーシャーク」で迎撃、これを撃破せよ。

 それは事実上、シルバーブルーメに取り込まれた琴乃を見殺しにするという判断であった。

 

「シルバーブルーメの体内に取り込まれた駒門のBURKセイバーから、生命反応が出ていることは司令もご存知でしょうッ!? アイツはまだ生きているんですよッ!」

「だからと言ってこのまま奴の降下を許せば、地上の市街地に甚大な被害が出る。……MACの全滅後に起きた惨劇は、君も知っていよう」

 

 超獣を撃破した実績もあるシルバーシャーク砲ならば、確かにシルバーブルーメも容易く倒せるだろう。だが、琴乃が搭乗しているBURKセイバーは確実に助からない。

 故に弘原海は隊長として、人間として、断固として反対しているのだ。綾川司令官はそんな彼の想いと怒りを承知の上で、彼の怒号を一心に浴びている。

 

 遥か昔、シルバーブルーメの急襲によりMACが全滅した直後。当時の市街地に設けられていたデパートが、その円盤生物の襲来を受け、為す術もなく蹂躙されるという事件が起きていた。今回の決定を下した総理大臣の身には、その惨劇で家族を喪った遺族の血が流れているのだ。

 

 シルバーブルーメが地上で起こした、凄惨たる怪獣災害。その地獄を味わった遺族を先祖に持つ彼が、今回の決定に踏み切るのは必然だったのだろう。その過去を知るが故に、綾川司令官は総理の判断を恨むことすら出来なかったのである。

 

「……私を殴って君の溜飲が下がるのなら、そうすれば良い。私を殺せば駒門隊員の命が救われるというのなら、この老耄の首など喜んで差し出そう」

「司令……!」

「それでも私は牙無き人々を守るBURKの司令官として、然るべき決断を下さねばならんのだ。ここで業を背負えぬようでは、それこそ梨々子(りりこ)に合わせる顔がない」

 

 より多くの市民を救うため、自分を慕っていた部下を殺す。その深き業を背負い、シルバーブルーメを討つという覚悟を決めた綾川司令官は、一歩も退くことなく毅然とした佇まいで弘原海と向き合っていた。

 大切な愛娘を想う1人の父親として。より多くの人命を預かるBURKの司令官として。葛藤という道のりをすでに乗り越えた、1人の大人として。彼は、全ての重責を背負う決意を固めていたのである。作戦司令室のデスクに置かれた灰皿には、彼の苦悩を物語るかのような、吸い殻の山が築かれていた。

 

 そんな彼の悲壮な信念を目の当たりにした弘原海は、怒りとも悲しみともつかない表情で唇を噛み締める。この会話を琴乃が耳にしていれば、自分に構わず撃ってくれと懇願していたのだろう。そこまで想像がつくからこそ、苦しまずにはいられないのだ。

 

 そして言葉を失った弘原海に対し、話は終わりだと言わんばかりに綾川司令官が踵を返した――次の瞬間。この一室を満たす暗澹とした空気を浄化するかのような、甘い匂いが吹き込んで来る。

 

「そんな業を独りで背負おうなんて、思い上がりが過ぎるんじゃないですかぁ? あの喧しい乳牛女が居なくなったら、それはそれで張り合いがなくてつまらないんですけどぉ?」

「……! お、お前達は……!」

 

 作戦司令室のドアをノックも無しにいきなり開き、ずかずかと押し入って来る無礼な集団が現れたのである。だが、弘原海の表情を染め上げたのは怒りではなく、驚きの感情であった。

 かつてのBURK惑星調査隊に参加していた女性隊員にのみ支給されていた、赤いレオタード状の特殊戦闘服。鼠蹊部に深く食い込んでいるそのスーツを纏う美女達が、「久方振り」に弘原海の前に現れたのだ。

 

「久しいな、弘原海隊長。このような状況下で言うことではないかも知れんが……壮健なようで、実に何よりだ」

 

 艶やかな黒髪を靡かせ、100cmもの爆乳をどたぷんっと弾ませている、ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル。

 

「駒門隊員のピンチとあっては、私達だって黙ってはいられませんからねっ!」

「……あなたが黙ってたことなんかないでしょう、八木(やぎ)

 

 拳を握り締め、勝ち気な笑みを浮かべている八木夢乃(やぎゆめの)と、そんな彼女を嗜めている望月珠子(もちづきたまこ)

 

「多くの実戦経験を持つ熟練隊員の殉職は、残された隊員達の士気にも関わる。……怪獣災害の終わりが見えない今、彼女を捨て石にするという判断は合理性に欠けるわ」

「……要は駒門が心配だって言いたいんだろ? いちいち理屈っぽいんだよなぁ、アリアは」

「あなたが感覚に頼り過ぎなだけよ、クーカ」

 

 アリア・リュージュの「分析」に苦言を呈する、ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス。

 

「駒門隊員は私達の大切な仲間なんだから、見捨てるなんてあり得ないよっ!」

「……僕も同意見だ。パイロットが減ると、その分だけ僕達の仕事も増えてしまうからね」

「もーっ、だめだよ! こんな時まで意地悪言ったら!」

「ふふっ……これは失礼。だけど、死なれたら困るという気持ちは本物さ。……彼女は、これからのBURKに必要な存在なのだからね」

 

 アルマ・フィオリーニに可愛らしく叱咤され、飄々とした微笑を浮かべている劉静(リウジン)

 

「皆の言う通り、琴乃は大事な仲間だし……これからのBURKには絶対に絶対に、必要な人なんだよ! こんな形でお別れなんて、私は嫌だからねっ!」

「私も……彼女を見捨てることなんて、このまま指を咥えて見ているなんて……出来ませんっ!」

 

 勢いよく声を上げるナターシャ・ジャハナムと肩を並べ、懸命に琴乃の助命を懇願するエリー・ナカヤマ。

 

「ふふ〜んっ……ほーら、私の元部下達もこう言ってるんですよぉ? いいんですかぁ〜? 本当にこのままでいいんですかぁあ〜?」

 

 そして――くびれた腰に手を当て、102cmの爆尻をばるんっと揺らしているリーゼロッテ。

 

 かつてBURKセイバー隊として、弘原海や琴乃と共にホピス星で戦っていた彼女達10名が、この作戦司令室に勢揃いしていたのである。リーゼロッテをはじめとする女傑達は皆、自信と決意に満ち溢れた表情を浮かべていた。

 

 雄の情欲を煽る豊満な乳房と巨尻がぷるんと弾み、むちっとした肉感的な太腿をはじめとする瑞々しい柔肌が、芳醇な色香を放つ。ホピス星の戦いを経て、彼女達の肉体はより「成長」していたらしい。

 駒門琴乃にも劣らぬ濃厚な色香の持ち主であり、BURK内外を問わず数多くの男達を、すれ違うだけで魅了して来た絶世の美女達。彼女達の柔肌から漂う蠱惑的なフェロモンは、暗く澱んでいた作戦司令室の空気を一変させていた。

 

「お前達、どうしてここへ……! というか、ここまで一体何しに来やがった!?」

「ふんっ、相変わらず頭の回転が鈍いゴリラですねぇ。……総理の決定に納得していないのは、あなただけではないってことですよ」

「……政府から直接命令を受けた部隊はすでに、シルバーシャーク砲の発射準備を始めている。予定通りに準備が完了し、砲撃が開始されるのは時間の問題だ。君達ならばその前に、あのシルバーブルーメを倒して駒門隊員を救出できるというのかね?」

「私達10人だけ……では無理でしょうねぇ。でも、黙ってられない人は他にもいるみたいですよぉ?」

「……!」

 

 綾川司令官の言及に対し、小生意気な微笑を浮かべるリーゼロッテ。そんな彼女の背後に現れたのは――上半身に包帯を巻いたまま、ここに足を運んでいた暁嵐真だった。

 全身傷だらけになりながらも、燦然と輝くその双眸は闘志に満ち溢れている。その手に握られたアキレスアイも、出番を待っているかのように煌々と輝いていた。

 

「弘原海隊長、俺も戦います……! 琴乃さんをこのまま見殺しになんて出来ないし、させるわけには行かないッ! この人達もそのために、世界各国の基地から駆け付けて来たんですッ!」

「……って、ウルトラアキレスご本人も言ってるみたいですよぉ? うだうだ迷ってる暇なんて、ありませんよねぇ?」

 

 琴乃の窮地と日本政府の決定を聞き付け、世界各国の支部から急行して来た10人の女傑。そして、傷付いた身体を奮い立たせて再戦の意思を表明したウルトラアキレスこと、暁嵐真。

 これだけの条件が揃った今ならば、可能かも知れない。琴乃の救出と、シルバーブルーメの打倒。その両立を実現出来る光明が、差し込んだのかも知れない。

 

「司令……!」

「……君達の信念、よく理解した。だが、私の権限でも発射そのものを止めることは出来ん。せいぜい、発射時刻を少し遅らせる程度が関の山だ。それで構わんか?」

「ふふんっ、上等ですよぉ綾川司令。その僅かな誤差で、この運命……変えて見せようじゃあないですかっ!」

 

 やがて、そこに希望を見出した弘原海と綾川司令官が互いに頷き合い、リーゼロッテが高らかに声を上げた瞬間。駒門琴乃の救出を視野に入れた両面作戦が、幕を開けたのだった。

 

 ◇

 

 生理的嫌悪感を煽る、禍々しい色の粘液が視界の全てを覆い尽くしている。周囲の景色はその粘液によって歪められ、逃れられない「死」の瞬間が近付きつつあることを示していた。

 

 そんな絶望感な世界――シルバーブルーメの体内に囚われていた駒門琴乃は、憔悴し切った様子でその光景を眺めている。

 パトロール中に突然襲撃を受け、乗機のBURKセイバーもろとも体内に取り込まれてから、すでに10時間以上が経過しようとしていた。

 

「……どうやら、私の悪運もここまでのようだな」

 

 彼女を乗せたBURKセイバーの装甲はシルバーブルーメの体液によって徐々に溶解し始めており、原型の維持すら困難なほどにひしゃげていた。

 

 何も出来ず、ただゆっくりと迫り来る死を受け入れるしかない。そのような状況に長時間置かれれば、厳しい訓練を受けたBURK隊員の精神力でも耐え切れないのだろう。

 

「だが……私とて、人類の矛たるBURKの隊員だ。このままタダで死んでなるものかッ……!」

 

 一種の自暴自棄なのか。虚な目で自爆スイッチに視線を移した彼女は、救助を待たずしてシルバーブルーメを内側から吹き飛ばそうとする。

 だが、彼女の震える指先はどうしても、その先にあるスイッチを押し切れずにいた。やがて自嘲の笑みを浮かべ始めた彼女は、力無く手を下ろしてしまう。

 

「……ふ、ふふっ。何がBURKの隊員だ、笑わせる。ただの学生だった嵐真をウルトラマンとして戦わせておいて、自分は死を恐れるとはなっ……!」

 

 ウルトラアキレスとして地球を救う宿命を帯びてしまった青年、暁嵐真。ただの学生だったはずの彼を戦いに駆り出していながら、BURKの隊員である自分が死を恐れている。

 その現実に直面した彼女は己の弱さを嘆き、悔しさに拳を震わせていた。

 

「……!?」

 

 そんな時。聞き覚えのある轟音が遥か遠くから響き渡り、彼女はハッと顔を上げる。それはまさしく、BURK製戦闘機のエンジン音だったのだ。

 

「こ、この音は……まさか!?」

 

 その「音源」が凄まじい速さで近付いてくる。しかもそれは、1機や2機ではなかったのだ。

 琴乃がその異変に気付いた時にはすでに――地上の基地から飛び立ったBURKの戦闘機部隊が、宇宙を漂うシルバーブルーメの姿を捕捉していたのである。

 

 しかも。純白に塗装された流線型のボディを持つ、その機体は――ただの宇宙戦闘機ではなかったのだ。

 

 BURKセイバーの後継機として開発が進められている、次期主力戦闘機――「BURKクルセイダー」。

 その先行試作型として僅か5機だけ生産された、複座式宇宙戦闘機「BURKプロトクルセイダー」だったのである。

 





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 今回から始まった「銀華編」は、「外星編」で描かれたホピス星の戦いから約半年後の地球を舞台としており、ウルトラマンカイナに続いて地球に降着したウルトラアキレスが、「主役ヒーロー」として常駐していた時期のエピソードとなっております。本章は前編、中編、後編の3部作構成となっており、次週公開予定の中編では、かつてウルトラマンに変身していた男性メンバー達もちょっこし再登場する予定ですので、どうぞお楽しみに!(о´∀`о)
 ちなみに、BURKプロトクルセイダーから完成した制式採用機のBURKクルセイダーは、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」で本格的に活躍しております。そちらの作品も是非ご覧くださいませー!٩( 'ω' )و


Ps
 今回のシルバーブルーメの被害者枠としては、当時19歳のアメリアにしようかなーという案もありました。……が、リーゼロッテ達が本気出す理由付けとしては琴乃の方が適任だろう、ということで今の形になりますた。彼女は作中のどの時期でも第一線で戦っている設定なので、めちゃくちゃ使いやすいんですよねー(´Д` )


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銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 中編

 

 BURK日本支部の地下基地に設けられた、広大な格納庫。そこに眠っていた、数十mにも及ぶ巨大な砲台が天へと向けられ、「発射」の時を迎えようとしていた。

 

「システムオールグリーン。隊長、いつでも発射可能です」

「よし……駒門隊員には気の毒だが、これも政府の決定だ。我々BURK日本支部には、命令に従う義務がある。……予定時刻通りに、シルバーブルーメへの砲撃を開始するぞ。いいな、お前達」

「……了解しました」

 

 その最終調整を終えつつある隊員達の報告を耳にした隊長格の男は、同胞を犠牲にしなければならない現実を受け止めながらも、BURK隊員としての責務を果たそうとしている。彼の視線の先に聳え立つ砲台は、宇宙から迫りつつあるシルバーブルーメを迎え撃つための、最後の希望なのだ。

 

 ――シルバーシャーク砲。

 かつてウルトラマンAと、当時の防衛チーム「TAC(タック)」が共闘していた時代に初めて実戦投入された、大型のレーザー砲だ。

 

 20世紀から始まったその技術の系譜は現代のレーザー砲にも活かされており、当初は車両で運搬出来る程度の大きさだったのだが、現在運用されている最新型は非常に大型化されたものとなっている。

 

 当然ながら射程距離も火力も当時のものを遥かに凌駕しており、大気圏外を浮遊している宇宙怪獣を地上から狙撃することも可能となっているのだ。

 政府から直接の命令を受けた部隊の隊員達は、地下に格納されていたその超兵器を目覚めさせようとしていた。

 

「相手はあのウルトラマンレオですら、地上への被害を阻止出来なかったと言われている円盤生物だ。ウルトラアキレスが敗れた今、地上を守れるのは我々BURKと……このシルバーシャーク砲しかないのだ」

「隊長……」

「……弘原海は絶対に俺を許さんだろう。だが、それで良い。この砲撃で地球が救われるというのならば、俺はBURKの隊員として喜んで業を背負う」

 

 だが、政府からの勅命という錦の御旗を渡されてもなお、隊員達はどこか躊躇いがちな表情を浮かべていた。琴乃はその美貌とスタイルもあって、他部隊の隊員達からも絶大な人気を集めていたのである。

 隊長格の男も、弘原海の怒りと悲しみを承知の上で、自分に言い聞かせるかのような言葉を並べていた。例え誰にどれほど恨まれようと、自分達は命令を実行するしかないのだと。

 

「そこまでだ! お前達、即刻発射を中止しろッ! 駒門隊員が助けを待っているというのに、シルバーシャーク砲を撃たせるわけにはいかないッ!」

「……!?」

 

 するとそこへ――他部隊の隊員達が毅然とした佇まいで、格納庫内へと駆け込んで来た。

 政府の勅命により、シルバーシャーク砲の運用を託されたこの部隊以外は、格納庫からの退去を命じられているはず。にも拘らず11名もの男性隊員達が、ここへ一斉に突入して来たのだ。

 

「お、お前達は……!」

 

 その顔ぶれを目にした隊長格の男は、部下達と共に瞠目してしまう。彼ら11名は紛れもなく、半年前のホピス星調査に参加していた、「BURK惑星調査隊」の元選抜メンバーだったのだ。

 

「嵐真君とリーゼロッテ達が立ち上がっているという時に、全てをぶち壊すような真似をさせられるか……! 皆、全力で止めるぞ!」

「……お前の暑苦しい振る舞いには毎度反吐が出る思いだが、今回ばかりは同意せざるを得んな。政府の犬に成り下がったBURK隊員など、畜生にも劣る」

「こいつらとも握手さえすればダチになれる……と言いたいところだが、その前にちょ〜っとばかしケンカする必要がありそうだなぁ? いっちょ俺達でかましてやろうぜ、士道(しどう)! 鶴千(つるせ)!」

 

 熱く拳を握り締める士道剣(しどうつるぎ)の隣で、冷たく毒を吐く鶴千契(つるせけい)。そんな2人の間に立ち、獰猛な笑みを浮かべている手力握人(てぢからあくと)

 

「……全く。政府の決定に逆らえ、とは綾川司令官も無理難題を仰る。一度、この現場をご覧になって頂きたいものだ」

「良いではないか、多月(たつき)。どの道、この決定を容認出来る利口な人間など、我々の中には1人もいなかったのだ。好き放題に暴れられる、良い機会を貰ったと考えようではないか」

「ふっ……それもそうだな。たまには綾川司令官にも、喧嘩っ早い部下を持った上官の苦労というものを味わって頂くとしよう」

 

 綾川司令官から通達された命令の内容に辟易する多月草士郎(たつきそうしろう)と、そんな彼をフォローする木場司(きばつかさ)

 

「さぁーて、どいつからブッ飛ばしてやろうかな? 嵐真とリーゼロッテ達が頑張ってるって時に、水差すような真似しやがって……全員タダじゃ置かねぇぞッ!」

「やれやれ……私としては、このような豪快過ぎるやり方は不本意なのだがね。元調査隊メンバーが、荒島(あらしま)君のようなタイプばかりだと思われるのは心外だよ」

「ここに来る途中、警備兵達を一瞬で投げ飛ばしてた人が何を言ってんですか……。(かのう)先生が『その気』になったら、誰にも止められないって皆も分かってるんですからね?」

 

 拳や首の骨を鳴らし、好戦的な微笑を溢している荒島真己(あらしまみこと)。そんな彼の隣でため息を吐きながらも、静かに臨戦態勢に入っている叶亥治郎(かのうげんじろう)

 

「シルバーシャーク砲を撃たせてしまったら、せっかくの『両面作戦』も水の泡になってしまう……! 俺達に希望を託してくれた綾川司令官のためにも、絶対に負けられないッ!」

「……ふん。まさか機械のような奴と言われて来たこの俺が、よりによって政府の決定にまで逆らうことになるとはな。俺も随分と、甘くなったものだ」

 

 シルバーシャーク砲の巨大な砲身を、剣呑な表情で一瞥している日ノ出新(ひのであらた)氷川雄一郎(ひかわゆういちろう)

 

「……目ん玉開いてよーく見ときな、前田(まえだ)。対テロ部隊で嫌というほど叩き込まれた、対人戦闘のイロハってヤツをよ」

「はい……! 勉強させて貰います、シゲタさんッ!」

 

 対テロ部隊に所属していた頃の経験に基づき、無駄のない構えを取っているシゲタと、四股を踏みながら彼の佇まいをつぶさに観察している前田力也(まえだりきや)

 

 彼ら11名の男達は皆、調査隊時代に装備していた赤と黒の隊員服をその身に纏い、白のヘルメットを被っている。それは政府の命令に背いてでも、かつての仲間を絶対に救うという固い決意を示していた。

 

「馬鹿な……! お前達、駒門隊員のためとはいえ……政府の決定に逆らうつもりなのか!? これは国家に対する重大な叛逆だぞッ!?」

 

 そんな男達の姿を目の当たりにした隊長格の男は、わなわなと肩を震わせている。政府の命令に反くBURK隊員など、前代未聞であった。

 だが、士道達は彼の剣幕を目の当たりにしても全く動じていない。彼らは皆、全て承知の上でここに来ているのだから。

 

「ハッ、政府の決定だぁ? そんなもん知らねぇな、俺達の上官(カシラ)は綾川司令官なんだぜ? その綾川司令官が、お前達を止めろって言ってんだよッ!」

「綾川司令官の命令だと……!? そんなはずはない! この決定には司令官も納得されていたはずだ! だから我々はッ……!」

「今、シルバーシャーク砲を使わずに奴を倒すための『両面作戦』が始まっているんだ! 駒門隊員を殺したくないという気持ちが僅かでも残っているのなら……今すぐ発射を中止しろッ!」

 

 政府の圧力がどれほど強くとも、あくまで指揮系統を握っているのは綾川司令官なのだと豪語する荒島。そんな彼に続く士道も綾川司令官の代弁者として、隊長格の男に発射の中止を要求している。

 

「ど、どうすればいいんだよ、俺達……。両面作戦なんて、聞かされてないぞ……!」

「俺達だって、駒門隊員を殺したくなんかねぇよ……! 俺なんて、まだ1回も声掛けたことねぇんだぞ……!」

「ち、ちくしょう、どうすりゃ良いんだ……! 俺だって、あのおっぱい揉みてぇよッ……!」

「だけど、政府の命令に逆らうわけには……!」

 

 政府に命じられるまま、シルバーシャーク砲の発射準備を終えようとしていた隊員達は、互いに不安げな表情で顔を見合わせていた。

 琴乃を犠牲にしない方法が本当にあるというのなら、自分達の行いは本当に正しいのだろうか。その疑問から抜け出せなくなっているのだ。

 

「……ええい、お前達! こんな奴らの戯言に何を躊躇っている!? 我々はBURK隊員として、命令を遵守しなければならない立場なんだぞ! 迷うことはない、全員即刻つまみ出してやれッ!」

「りょ、了解ッ! うおぉおおッ!」

 

 だが、自分達はあくまでBURK日本支部の隊員。ならば、最上位の存在である日本政府の命令には服従せねばならない。

 

 葛藤の果てにその結論に至った隊長格の男は、怒号を飛ばして部下達に「排除」を命じてしまう。彼に命じられるまま、士道達を基地から追い出そうとする部下達は、その表情に迷いの色を残していた。

 「仲間殺し」を忌避するあまり、光線銃を抜こうともしない。その程度の覚悟しか持ち合わせていない連中に、元調査隊メンバーのフィジカルエリート達が押し負ける道理などない。仲間の犠牲と引き換えに得る勝利など、誰一人として(・・・・・・)望んではいないのだから。

 

「へへっ、後に退けなくなったからって実力行使かぁ? 上等だぜ、政府の犬っころ共がよぉッ!」

「……駒門隊員のことは、嵐真君とリーゼロッテ達がきっとなんとかしてくれる! 行くぞ皆ッ!」

「いちいち仕切るな、鬱陶しいぞ」

 

 好戦的な笑みを浮かべて拳を鳴らす荒島が真っ先に飛び掛かる中、士道と鶴千も仲間達を率いて走り出して行く。かくして地下の格納庫を舞台に、シルバーシャーク砲を巡る隊員同士の大乱闘が繰り広げられたのだった――。

 

 ◇

 

 ――そして。そんな男達の戦いを、遥か遠くの宇宙から静かに見守っている者達が居た。

 

 半年前、ホピス星で士道達と共にキングジョーと戦っていた、12人のウルトラ戦士。彼らは今もこの世界の果てから、かつての戦友達の生き様を見つめていたのである。

 

 ウルトラマンシュラ。

 ウルトラマンメディス。

 ウルトラマンミラリ。

 ウルトラマンアトラス。

 ウルトラマンヴェルゼ。

 ウルトラマンリード。

 ウルトラマンポーラ。

 ウルトラマンヘリオス。

 ウルトラマンアルミュール。

 ウルトラマンブフ。

 ギガロ。

 そして――彼らを引き連れていた、ブルーマン。

 

 彼ら12人は、地球と宇宙の両方で展開されている人間達の戦いを見つめ、安堵の表情を浮かべていた。

 かくなる上は再び掟を破ってでも、自分達が動かねば――そう思っていた彼らは、人間達の底力に確かな「希望」を見出したのである。

 

 世界の平和は、その世界に生きる者達の力で掴み取ってこそ価値がある。そのように語っていた宇宙警備隊隊長の言葉も、今なら理解出来る。

 ウルトラマンカイナも、ウルトラアキレスも、彼らに続くことになる次代のウルトラマン達も、まだまだ戦士としては未熟。だが、だからこそ地球人達と共に成長し、新たな可能性を切り開いて行けるのだろう。

 

『……シュウワッチッ!』

 

 ならば自分達はこれ以上、この次元の宇宙に干渉するべきではないのかも知れない。その結論に達したシュラ達は互いに頷き合うと、両手を広げて次元の彼方へと飛び去って行く。

 

 ――士道達を信じると決めたからこそ、彼らは光の国へと帰って行くのだ。

 BURKの隊員達ならば、この先に待ち受けている「最大の侵略」にも、絶対に屈しないのだと。

 





【挿絵表示】


 今回はちょっと場面を変えて、地上でシルバーシャーク砲の発射阻止に動いていた、士道達男性メンバーにスポットを当てる内容となりました。読者応募ウルトラマン達も、宇宙の向こうからこの世界を見守っておりますぞー(*´꒳`*)
 ちなみに士道達が着ている調査隊仕様の男性隊員服は、MATのものとスーパーGUTSのものがベースになってるイメージですね。作者の趣味全部盛りでございますぞ(*´ω`*)
 さてさて、この銀華編も次週公開予定の後編でいよいよ決着となりますので、どうぞ最後までお楽しみに! ちなみにシルバーシャーク砲は魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン」の方で本格的に活躍しております。そちらの作品も是非ご覧くださいませー!٩( 'ω' )و


Ps
 「シルバーシャーク砲の発射スイッチを押させるなァアーッ!」「いいや限界だッ! 押すねッ!」


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銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 後編

 

 ――GUYSガンクルセイダーを想起させる、曲線的なフォルム。

 その白いボディを特徴とするBURKプロトクルセイダーには、BURKセイバーのものと同じレーシングバイクのシート状のコクピットが、前後に二つ設けられている。

 

 故にそこに跨っている前席のメインパイロットは、後部座席のナビゲーターに向けてむっちりとしたヒップを突き出すような格好になるのだ。

 だが、このBURKプロトクルセイダーのテストパイロットを務めて来た女傑達が、今さらその体勢を恥じらうことはない。

 

『……あれが、我が祖国(ドイツ)にも伝わっている伝説の怪獣……「銀の華(ズィルバァブルーメ)」か。いいだろう、相手にとって不足はないッ!』

『さぁ……ここからが真打ち登場ですよぉっ! 10連装ロケットランチャー、安全装置解除! 攻撃開始ぃいっ!』

 

 リーゼロッテとヴィルヘルミーナを乗せた1号機を筆頭に、シルバーブルーメへと急接近して行く5機のBURKプロトクルセイダーは、両翼下部に装備された10連ロケットランチャーを同時に連射していた。

 だが、シルバーブルーメは7本の触手を変幻自在に振り回し、その弾頭の豪雨を全て撃ち落としてしまう。彼はこの圧倒的な打撃力と手数を活かし、ウルトラアキレスを撃退したのだ。

 

『やはりこの程度では通じませんか……! 各機、散開ッ! 作戦通りに引っ掻き回してやりますよッ!』

『了解ッ!』

 

 だが、リーゼロッテ達BURKプロトクルセイダー隊に、動揺の色はない。初撃のロケットランチャーが迎撃されたと見るや否や、彼女達の乗機は即座に散開し、各々で攻撃体勢を立て直して行く。戦闘時におけるその速度は、マッハ4が限界だったBURKセイバーのそれを遥かに凌ぐものであった。

 オーストラリア支部のシャーロット博士が開発主任を務めた、このBURKプロトクルセイダーの最高速度は、マッハ8にも及んでいるのだ。

 

『……ッ! やっぱりこの加速、殺人的ですねッ……!』

『ふふっ……! シャーロット博士も、なかなか良い仕事をしてくれるッ……!』

 

 レーシングバイクのシート状のコクピットに身を預ける美女パイロット達は、その全身に甘い匂いの汗を滲ませ、扇状的な肉体をシートに擦り付けている。

 押し付けられた乳房はむにゅりと形を変え、突き上げられた安産型のヒップがぷるんっと躍動する。艶やかな唇から漏れる吐息も、蠱惑的な香りを放っていた。

 

『ふふんっ……全く、駒門隊員には困ったものですねぇ〜っ! 私達に、この先行試作型を使わせるなんてっ!』

『おやおや……この機体でなければ駒門隊員を救えないからと、シャーロット博士に無理を言って全ての試作機を引っ張って来たのは君ではなかったかな? いつまでも素直じゃないな』

『ヴィ、ヴィルヘルミーナッ! 余計なこと言ってないで、レーダー監視に集中してくださいッ!』

 

 1号機の主な操縦を担当するリーゼロッテは、レーダー監視を担う後部座席からニヤニヤと見守っているヴィルヘルミーナに対し、顔を真っ赤にして怒号を飛ばしていた。だが、そんな反応など見慣れているヴィルヘルミーナは全く意に介していない。

 

『そうしたいのは山々なのだが、君の大きなお尻が視界に入って気が散るのだよ。また一段と「成長」したようだな?』

『んなっ!? ど、どこを監視してるんですか、もぉお〜っ!』

 

 そればかりか伏臥式の操縦席である以上、どうしても強調されてしまうリーゼロッテの爆尻についても言及していた。100cmを超える安産型の白い臀部には、レオタード状の戦闘服が特にきつく食い込んでいるのだ。

 

 そんな自分のヒップを揶揄われているリーダーは、悲鳴を上げながらも巧みな操縦で触手をかわし続けていた。一方、望月珠子と八木夢乃を乗せた2号機は、素早く伸びる数本の触手に追尾されている。

 

『望月先輩! 4時の方向から2本です! 同時に来てますよぉッ!』

『了解……! しっかり掴まってなさい、八木! 最高速度で一気に振り切るわよッ!』

『分かってます……ってばぁッ!』

 

 望月は急加速と共に激しく機体を旋回させ、乗機を音速(マッハ)の世界へと導いて行く。一方、そんな先輩の豪快かつ強引な操縦に振り回されながらも、八木は体勢を崩すことなくレーダーを監視し続けていた。

 

『クーカ、6時の方向から4本追って来てるわ! 上昇して振り切りましょう!』

『オッケー、任せときな! 俺達の機体を捕まえようなんざ……2万年早いぜッ!』

 

 その頃、ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントスとアリア・リュージュが搭乗している3号機も、複数の触手に追われていた。鞭のようにしなる数本の触手を上昇しながらかわし、彼女達を乗せた3号機はシルバーブルーメを撹乱して行く。

 

 シルバーブルーメに急接近し、触手攻撃を誘っている1号機、2号機、3号機の目的は、本体を無防備にするための「陽動」にあるのだ。全ては、残る2機のBURKプロトクルセイダーによる攻撃のための「布石」だったのである。

 

『1号機と3号機が上手く引き付けてくれたようだね……! アルマ、仕掛けるなら今だよッ!』

『りょーかいッ! スペシウム弾頭弾、発射ァアッ!』

 

 3機の陽動によって触手による防御が手薄になり、本体が「丸裸」となった瞬間。アルマ・フィオリーニと劉静を乗せた4号機が一気に突入し、機体下部に搭載された大型のミサイルを発射する。

 

 両翼下部の10連装ロケットランチャーとは別に積まれていた、「真打ち」の弾頭――スペシウム弾頭弾。そのミサイルが、シルバーブルーメの本体下部にある触手の「付け根」に直撃し、その箇所から伸びていた数本の触手が無惨に千切れ飛んで行く。

 

 無論、これだけで終わる彼女達の攻撃ではない。ナターシャ・ジャハナムとエリー・ナカヤマが駆る最後の5号機が、「2発目」を叩き込むべく急加速していたのである。

 

『ナターシャさん! 2号機を追っている触手が、完全に伸び切っていますッ! 今なら私達が仕掛けても、シルバーブルーメはすぐに対応出来ないはずですッ!』

『よぉーし……! 行くよエリー、スペシウム弾頭弾……発射ァアッ!』

 

 後部座席のレーダーから状況を観測していたエリーの言う通り、陽動に徹していた機体を追尾している触手は伸び切り、本体の防御が疎かになっている。その僅かな隙を、5号機は虎視眈々と狙い続けていたのだ。

 

 前席のナターシャが操縦する5号機は素早くシルバーブルーメの懐に飛び込み、スペシウム弾頭弾を発射する。その弾頭が本体の下部に炸裂した瞬間、残っていた触手全てが「根元」から爆ぜてしまうのだった。

 

「み、皆っ……!」

 

 その爆音だけで「外」の状況を察していた琴乃は、溶解が進みつつあるBURKセイバーの機内で、独り頬を濡らしていた。このまま座して死を待つしかなかった彼女にとっては、彼女達こそが最後の希望なのである。

 

『よし、邪魔な触手は全部千切ってやりましたねっ……! こうなったらシルバーブルーメも、デカいだけの木偶の坊同然ですっ!』

『だが……奴め、もう再生を始めているようだなッ……!』

 

 一方、BURKプロトクルセイダー隊の攻撃によって、全ての触手を千切られてしまったシルバーブルーメは――無駄な足掻きだと言わんばかりに、触手の「再生」を始めていた。

 少しずつではあるが、根元から爆ぜた7本の触手は、再び本体から放り出されようとしている。このままでは、リーゼロッテ達の攻撃も徒労に終わってしまう。

 

『……ふふっ、無駄な足掻きですねぇ。それが徒労に終わるとも知らないで……可哀想なことです』

 

 だが、リーゼロッテをはじめとする10人の女傑はこの光景を目の当たりにしても、狼狽えることなく勝ち誇った貌を覗かせていた。

 彼女達にとっては、このシルバーブルーメの再生こそが――「徒労」だったのである。

 

 ◇

 

 その頃、リーゼロッテ達の戦闘を地上の基地から観測していた弘原海達は、「全ての触手の切断」という絶好の好機を目の当たりにしていた。

 

「隊長! プロトクルセイダー隊が、7本の触手を全て切断した模様! 再生中の今がチャンスですッ!」

「よぉしッ! 嵐真、駒門のこと……頼んだぞッ!」

「……はいッ!」

 

 観測員の切迫した叫び声に、弘原海が声を上げた瞬間。彼の隣で待機していた嵐真はアキレスアイを手に、傷だらけの身を押して通信室の外へと飛び出して行く。

 黄昏時の空を仰ぎ、変身体勢に入った彼の脳裏には――出撃前のリーゼロッテ達と交わした言葉が過っていた。

 

 ――7本の触手全てを、プロトクルセイダー隊の攻撃で切断……!? 大丈夫なのか、君達だけで……!

 ――ふふんっ、私達の心配なんて2万年早いですよぉ。生憎ウルトラマンのお守りなら、私達は経験済ですので。

 

 

【挿絵表示】

 

 

(……ありがとう、リーゼロッテ。ありがとう士道さん、皆! 必ず応えて見せるよ、俺とアキレスで!)

 

 宣言通りに自分達の使命を果たしたリーゼロッテ達や、シルバーシャーク砲の発射阻止に奔走している士道達に応えるべく。女傑達が待つ空の彼方を見上げる嵐真は、アキレスアイを掲げ――

 

「デュワッ!」

 

 ――力強い掛け声と共に、双眸を覆うように装着する。

 その箇所を中心に、ウルトラアキレスの姿へとみるみる「変身」して行く彼は、瞬く間に真紅の巨人へと変貌するのだった。

 

 変身を果たした彼はそのまま勢いよく地を踏み締めると、両手を広げて地上から翔び立ち――音速を超越した速さで、成層圏を一瞬のうちに突き抜けて行く。

 

 一度敗北し、深い傷を負っている今のアキレスでは長時間の行動は不可能であり、真っ向からシルバーブルーメと交戦することさえ難しい。故に彼はこの瞬間のみに残された全エネルギーを集中させ、光の矢の如く突撃しているのだ。

 残りのエネルギー全てを、リーゼロッテ達が作った一瞬の好機に懸けて。真紅の巨人が宇宙へと飛び出し、流星の如くシルバーブルーメ目掛けて突っ込んで行く。

 

『ダァァアーッ!』

 

 その気配に気付いた邪悪な円盤生物は、再生中の未成熟な触手でアキレスを迎撃しようとするが――彼はその悉くを、紅い拳で叩き落としてしまう。

 

『いっ、けぇえぇ〜っ!』

『かましてやれぇえッ! ウルトラアキレスッ!』

 

 残る無防備な本体では、もはや回避も防御も不可能。約束された「チェックメイト」へと向かって行くアキレスの背に、リーゼロッテとクーカが声援を送る。他の隊員達も、固唾を飲んで巨人の突撃を見守っていた。

 

「……!」

 

 そして――そのまま本体下部の口腔に飛び込んで行ったアキレスが、体内で溶解寸前となっていたBURKセイバーを抱き抱えながら、最高速度で拳を突き上げた瞬間。

 

 アキレスの姿を視認した琴乃が、瞠目するよりも疾く。BURKセイバーを抱えた真紅の巨人がシルバーブルーメの本体を突き破り、大宇宙の海原へと脱出したのだった。

 

 刹那、体内を一気に突き破られたシルバーブルーメの本体に亀裂が走り――その全てが爆炎に飲まれ、跡形もなく爆ぜて行く。それは紛れもない、ウルトラアキレスの勝利を意味していた。

 

『シルバーブルーメの爆散を確認……! 駒門隊員は……生きていますッ! 生きてますよぉおッ!』

 

 そして、アキレスの腕に抱かれていたBURKセイバーからは、今もなお生命反応が発せられていたのだ。そこから導き出された結論に、リーゼロッテは涙ながらの歓声を上げる。

 

「よっ……しゃあぁああッ!」

「ふぅっ……! な、なんとか間に合った……! シルバーシャーク砲は、どうなったんだ……!?」

「標的の消滅により、先ほど政府から発射の中止が命じられたらしいぜ……! 綾川司令官がギリギリまで粘ってくれたおかげだよ……!」

 

 その報告から伝わる喜びが伝播するように、地上の基地でも歓喜の声が広がっていた。標的を失ったことでシルバーシャーク砲の使用も中止が決定され、通信室に居る隊員達は安堵の息を漏らしている。発射準備を終えていた砲台もすでに、士道達によって制圧されているらしい。

 

「……そうか、分かった。皆に良くやってくれたと、君からも伝えてくれ」

 

 独り作戦司令室に篭り、政府との電話交渉を続けていた綾川司令官も。シルバーブルーメの沈黙と琴乃の生還という現場からの報告に安堵し、背凭れに身を預けている。

 

「聞いての通りです、(あかつき)総理。……御子息のお力添えが無ければ、この大難は乗り越えられなかったことでしょう。ご協力に、感謝致します」

 

 彼と通話していた当時の首相――暁天真(あかつきてんま)総理大臣も電話の向こう側で、1人の息子を想う父親として同様の反応を示していた。ウルトラマンという過酷な宿命を背負った我が子を想うが故の、非情な決断は実行されることなく終わったのだ。

 その元凶たる銀の華は、宇宙の果てにその命を散らしたのだから。

 

「……ありがとうよ嵐真、リーゼロッテ、皆っ……!」

 

 そして砲撃命令が白紙となり、士道達の叛逆も不問となった頃。

 通信室を去り、黄昏の空を独り仰いでいた弘原海は――その頬に熱い滴を伝わせ、拳を振るわせるのだった。

 

 ◇

 

 ――やがて、この戦いから約5年後。シルバーブルーメの体内からも生き延びてみせた駒門琴乃は、弘原海の除隊後に再編成された新生BURKを率いて行くことになるのだった。エリー、劉静、アリアの3人もこの後、それぞれの乗機――BURKクルセイダー、BURK烈龍(リィエロン)、BURKワーマーに己の命運を託し、テンペラー軍団との決戦に臨んで行くこととなる。

 その未来が、元調査隊メンバーの奮闘よって紡がれたものであるということは、この作戦に関わった全ての隊員が知っているのだ――。

 





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 今回の後編で、銀華編「ウルトラクルセイダーファイト」は完結となりました! 最後まで本章を見届けて頂き、誠にありがとうございます!(о´∀`о)
 本章はMegapon先生原案のウルトラアキレスを主役としつつ、魚介(改)先生の案から始まったBURKクルセイダー……の試作型にもスポットを当てたエピソードとなりました。アキレスは作者的にもかなり思い入れのある読者応募ウルトラマンだったので、ここでガッツリとスポットを当てさせて頂きましたぞ( ^ω^ )
 それから特別編「ウルトラカイナファイト」part9、part11、part13にも、エリー、劉静、アリアのことをちょっこし加筆させて頂いております。彼女達の古巣であるアメリカ支部、中国支部、フランス支部については特別編の頃から登場していたので、それ繋がりで彼女達にも「先行登場」して頂く構成となりました(*´ω`*)

 ちなみに嵐真の父親である暁総理は、この銀華編から約3年後の出来事である「ウルトラフィストファイト」の時点では、「戦闘時の火災に焼き尽くされた」ことになっています。つまりその時までにはどこかのタイミングで、内閣総辞職ビームを喰らっていたのかも知れませんね。琴乃を犠牲にしようとしていた因果が、そこに巡って来たのでしょう……(´・ω・`)
 シルバーブルーメはFE3にも登場するほど(トラウマ的な意味で)人気な怪獣なので、思い切ってここで登場することとなりました。未遂に終わったこととは言え、あやつがやらかしたことを考えたら、政府の決断もあながち間違ったことではなかったのでしょうねー……(ノД`)

 外星編のちょっとした後日談となった本章でしたが、最後まで楽しんで頂けたのであれば何よりであります。次回の更新予定は現状皆無なのですが、もし新たに書いてみたい小話がふわっと浮かんで来た時は、いつの間にか更新されてたりするかも知れません。その機会がありましたら、またお気軽にお越しくださいませー。ではではっ!٩( 'ω' )و


Ps
 シルバーブルーメの溶液に10時間以上耐えていたBURKセイバーの装甲が1番のチート。


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鉄拳編 ウルトラアキレス&アラシマファイト

◇今話の登場メカ

◇BURKセブンガー
 過去の防衛チームが残した運用データを基に、オーストラリア支部のシャーロット博士が基礎設計を担当した対怪獣用試作ロボット兵器。ドラム缶のようなずんぐりとしたフォルムとウルトラマンカイナを想起させるカラーリングが特徴。試験運用を担当した荒島真己(あらしまみこと)が搭乗する。



 

 リーゼロッテを筆頭とするBURKプロトクルセイダー隊の活躍により、シルバーブルーメが撃破された日から、さらに約2ヶ月後。

 地球の命運を背負ったBURKの隊員達とウルトラアキレスの戦いは、より激しさを増しつつあった。

 

「……今度の戦闘でも、嵐真の奴はかなりギリギリだったな。このままじゃ、いつかブッ倒れちまうぜ……あいつ」

「しかし……BURKセイバー以上の兵器となると、簡単に使用許可が降りないものばかりです。5機のBURKプロトクルセイダーも回収されてしまいましたし、一体どうすれば……」

 

 連日のように続く怪獣や異星人との戦闘に、アキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)は消耗する一方であり――弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)隊員は、彼に休息を与えられずにいる現状に危機感を覚えていた。

 だが、BURKセイバーやBURKプロトクルセイダーの攻撃力では、怪獣に決定打を与えられないことも事実であった。シルバーシャーク砲のような強力過ぎる兵器はその破壊力故に使用手続きも煩雑であり、即応性を要求される多くの現場にはそぐわないことが多い。

 

「くそッ……! 確かにあいつはウルトラアキレスだけどよ……! 19歳なんて、俺らに言わせりゃまだまだガキじゃねぇか! 良いのかよ、俺達大人がこんなことで……!」

「弘原海隊長……」

 

 それでも何か策を講じなければ、アキレスの消耗を抑えられないことも事実であった。このままでは地球に平和が訪れる前に、アキレスが先に力尽きてしまう。

 せめてほんの一時でも、彼の疲弊を抑えることが出来れば。弘原海と琴乃が、そんな考えを巡らせていた――その時。

 

「よぉ弘原海隊長、駒門隊員ッ! 『そんなこともあろうかと』って感じで、良いニュースを持って来てやったぜッ!」

「……荒島君、少しは落ち着きたまえ。どう見てもそんな声を掛けられる空気ではなかっただろうに」

「荒島隊員……!? それに、叶隊員まで……!」

 

 ブリーフィングルームの自動ドアが開かれ、目の下に隈を作った2人の男が現れる。かつてBURK惑星調査隊の一員として共に戦った、荒島真己(あらしまみこと)隊員と叶亥治郎(かのうげんじろう)隊員だ。

 研究者としての側面も持っている彼ら2人はシルバーブルーメ戦の後、およそ2ヶ月間に渡って地下基地での研究に没頭していたのだが――その2人が、久方振りに地上に現れたのである。

 

「荒島隊員、良いニュースとは一体何だ……!?」

「おおっと駒門隊員、半径5m以内には近付かないでくれよォ。何しろ今日ばかりは着ぐるみ着てる暇もなかったんだ、あんたの匂いでニュースどころじゃなくなっちまうぜ」

「お、お前なぁ……!」

「地下の研究施設に篭っていたお前達が持って来た良いニュース、って言うことは……シャーロット博士の新兵器が完成したのか!」

「えぇ、その通りです。苦労しましたよ……通常のペースでは、実用可能なレベルまで進めるのに半年は必要でしたから」

 

 荒島と琴乃が睨み合う中、弘原海の問い掛けに叶は深く頷いていた。荒島と叶はこの2ヶ月間、オーストラリア支部のシャーロット博士から送信された設計図を基に、彼女が考案した「新兵器」を開発していたのである。

 本来ならばどれほど急いだ突貫工事でも、半年は掛かると言われていたのだが。この2人の天才は、たったの2ヶ月でその実用化に漕ぎ着けて見せたのだ。彼らの目の下に出来ている隈が、その苦労を物語っている。

 

「おぉ……! まさかアレ(・・)がもう戦闘に使える段階に入っていたとは! さすがですね、叶先生!」

「おいコラ駒門隊員、ちょっとは俺も褒めろ! 体張って試験運用してたのは俺なんだぞッ!?」

「……とは言え、急造機には違いありません。フルパワーで稼働出来る時間は、およそ1分間が限界と言ったところでしょう」

 

 荒島の叫びを完全に無視しつつ、琴乃は叶の働きを称賛する。だが、当の叶自身は突貫工事故の不安要素を実直に告げていた。

 それでも弘原海は、リスクを承知の上でその「新兵器」の運用を視野に入れている。アキレスが消耗しつつある今は、それだけが頼りなのだ。

 

「そうか……だが、シャーロット博士の設計思想通りならば、嵐真の負担も少しは和らげることも出来るだろう。いつまでもウルトラアキレスにおんぶにだっこ……とは行かんからな」

「私も同じ思いですよ、弘原海隊長。私も荒島君も、そのためにアレ(・・)の開発を進めて来たのですから」

 

 嵐真と同年代の娘が居る叶にとっても、アキレスの戦闘力に依存しているこの状況に対しては深く思うところがあったのだ。

 

 ウルトラ戦士の圧倒的な力に頼っているばかりでは、活路は開けない。それにリーゼロッテ達も、常にこの日本に駆け付けられるわけではない。

 日本支部だけでも出来ることは、やり尽くさねばならない。荒島と叶はその一心で、シャーロットから託された新兵器を建造していたのだ。

 

 そして――その新兵器の「出番」が訪れたのは、この会話から僅か数時間後のことであった。

 

 ◇

 

 東京から遠く離れた山岳地帯に出現した、「髑髏怪獣」レッドキング。その巨大な体躯から繰り出される力任せの一撃は、ウルトラアキレスの巨体を容易く吹き飛ばしていた。

 

『ぐぁああッ!』

 

 特殊な能力を一切持たず、純粋な膂力のみでウルトラ戦士をも圧倒する髑髏怪獣の剛力。その力に物を言わせたラリアットに吹き飛ばされ、アキレスは岩壁に背を打ち付けている。

 胸部のプロテクターに備えられた長い六角形のカラータイマーは、すでに点滅し始めていた。だが、レッドキングは一切の容赦なく、大岩を持ち上げ投げ付けようとしている。

 

『くッ……トロイレーザーッ!』

 

 しかし、アキレスもやられっぱなしではない。頭部のビームランプから撃ち放たれた細い光線がレッドキングの腕部に命中し、髑髏怪獣は思わず大岩から手を離してしまう。

 大岩はそのままレッドキングの足に落下し、予期せぬ激痛に悲鳴を上げる髑髏怪獣は、忌々しげにアキレスを睨み付けていた。ダメージを与えることには成功したが、それ以上に彼を怒らせてしまったらしい。

 

『くッ……!』

 

 岩壁に追い詰められ、エネルギーも消耗しつつあるアキレスは、それでも屈しまいとファイティングポーズを取っている。だが、それが虚勢に過ぎないことはレッドキングにも看破されているようだった。

 アキレスを嘲笑うように、髑髏怪獣はじりじりと近付き、彼を追い詰めている。――その慢心こそが、己の敗因になることなど知らぬまま。

 

『……!? なッ、なんだアレ……!?』

 

 次の瞬間。遥か遠くから高速で飛来して来た謎の「巨大な鉄人」が、レッドキングに痛烈な体当たりを仕掛けたのである。

 その凄まじいタックルを浴びた髑髏怪獣の巨体は、意趣返しの如く岩山に叩き付けられてしまった。

 

『BURKセブンガー、着陸します。ご注意ください』

 

 警告アナウンスの音声と共に、背中のジェットを噴かしながらゆっくりと着地して行く鉄人は、「どんなもんだい!」と言わんばかりに両腕を振り上げている。

 

 ――その鉄人の容貌は、異様という一言に尽きるものであった。

 

 ドラム缶のようなずんぐりとした胴体に、眠たげな半開きの双眸。不恰好な両手脚に、ウルトラマンカイナを想起させる赤と白の模様。

 それはまさしく、過去の防衛チーム「ストレイジ」で運用されていた特空機第1号「セブンガー」をベースに急造された、BURKの新兵器――「BURKセブンガー」だったのである。

 

『……いや本当に何だアレェ〜!?』

 

 ウルトラマンカイナに代わり、アキレスと共に肩を並べて戦う。その設計思想に基づきシャーロット博士が考案したこの機体を、荒島と叶が急ピッチで建造していたのである。

 その存在を知らされていなかったアキレスこと嵐真は、思わず驚愕の声を上げていた。一方、レッドキングの前に立ちはだかったBURKセブンガーは、外見の割にはどこか頼もしい後ろ姿をアキレスに見せ付けている。

 

『よう嵐真、助けに来たぜ! ここからは俺に任せなァッ!』

『その声……荒島さんですか!? そのイマイチ覇気の無い面相のロボットは一体……!』

『お前まで酷くない!? ちくしょー、こうなったらこいつの凄さを実戦で証明してやらァッ!』

 

 外観の評判が今一つであることに怒りを剥き出しにしているパイロットの荒島は、その矛先をレッドキングに向けていた。彼が操縦する鉄人は、のっしのっしと髑髏怪獣ににじり寄って行く。

 一方、立ち上がったレッドキングも怒り心頭といった様子でBURKセブンガーに迫ろうとしていた。やがて両者は真っ向から取っ組み合い、力勝負を始める。

 

『……!? す、凄い……!』

 

 その決着が付いたのは、僅か数秒後のことであった。アキレスをパワーで圧倒していたレッドキングが、あっさりと押し負けてしまったのである。

 アキレス自身が戦う前からすでに消耗していた点を差し引いても、BURKセブンガーの馬力がずば抜けていることは明らかであった。少なくとも純粋なパワーにおいては、ウルトラマンカイナに匹敵していると言える。

 

『……どりゃああぁあッ! これがBURKの……人類の底力だぁあぁあッ!』

 

 そして、腕力だけでレッドキングの巨体を持ち上げて見せたBURKセブンガーは。その勢いのまま、一気に投げ飛ばしてしまう。

 吹っ飛ばされた髑髏怪獣はまたしても岩山に顔面から突っ込んでしまい、悲鳴を上げてのたうち回るのだった。それでもレッドキングは戦意を失うことなく、立ち上がろうとしている。

 

『嵐真、荒島! BURKセブンガーは1分間しか持たねぇんだ、さっさとケリを付けちまえッ!』

『2人とも、頼んだぞッ!』

 

 そこへ上空から急降下を仕掛けて来た2機のBURKセイバーが、両翼下部からミサイルを発射していた。その弾頭が起き上がったレッドキングの顔面に命中し、かの髑髏怪獣を大きく怯ませている。

 弘原海と琴乃による決死の急降下爆撃が、レッドキングの反撃を阻止したのだ。

 

『……荒島さんッ!』

『おうよッ!』

 

 その隙に並び立ったアキレスとBURKセブンガーは同時に頷き合うと、一気に髑髏怪獣目掛けて突っ込んで行く。

 

『はぁあぁあぁあッ!』

『でぇりゃあぁあッ!』

 

 やがて、両者がレッドキングとすれ違った瞬間。逆手に構えられたアキレスラッガーの刃が髑髏怪獣の首を斬り落とし、BURKセブンガーのボディブローがその胴体を貫通して行くのだった。

 

 何としても仕留めるという絶対の信念を帯びた、同時攻撃。その全てを受けたレッドキングの骸は大きくよろめき、ついには轟音と共に倒れ伏してしまうのだった。

 

『う……ぐぉっ……!』

『荒島さんっ!?』

『へ、へへっ……ざまぁ見やがれ。俺達の……BURKセブンガーの勝利だぜッ……!』

『……えぇ、そうですね。俺達の……勝ちです』

 

 そこでとうとう力尽きてしまったのか、全身から黒煙を噴き上げたBURKセブンガーの機体が大きくよろめき、アキレスにその身を預けていた。

 そんな機体の中で不敵な笑みを浮かべる荒島の言葉に、アキレスこと嵐真は深く頷いている。上空を飛んでいる弘原海と琴乃も、コクピットの中から親指を立てていた。

 

 ――ウルトラ戦士達の強大な力に比べれば、人類の戦力など微々たるものかも知れない。だが、彼らは決して万能の神ではない。

 彼らといえど、たった独りで戦い抜くことなど出来ないのだ。故にBURKの隊員達はその命を賭して、ウルトラ戦士達とその肩を並べているのである。

 地球の平和は、地球人の手で掴み取ってこそ価値のあるものとなるのだから――。

 

 ◇

 

「回路が全部焼き切れてるゥ!? ちくしょうシャーロット博士め、設計ミスもいいところじゃあねぇかッ!」

「君の無茶な操縦が原因で回路がショートしたのだろうが! もう少し機体にも気を遣いたまえ!」

「スンマセンっしたッ!」

 

 ――その後。機体に掛かる負荷の軽減よりも、アキレスの援護を優先した荒島の強引な操縦により、BURKセブンガーの回路は戦闘に耐え切れずショートしてしまったらしい。

 

 叶の叱咤に荒島は頭を下げるばかりだったが、もはや手遅れだったらしく、BURKセブンガーはこの一度の出撃で機能停止に陥っていた。急造機故の脆さが、回路の耐久性に現れてしまっていたのだろう。

 かくしてBURKセブンガーの活躍は結局、この時限りになってしまうのだった。だが、今回の援護により体力の消耗を抑えられたおかげで、アキレスは次代のウルトラマンザインに地球防衛のバトンを繋ぐまで、辛うじて戦い抜くことが出来たのである。

 

 例え1回限りでも。BURKセブンガーと荒島の尽力が、次のウルトラマンへと未来を繋いで見せたのだ。それが人類にとって必要不可欠な道のりであったことは、後の歴史が証明している――。

 






【挿絵表示】


 今話を最後まで見届けて頂き、誠にありがとうございました! 今回は「ウルトラマンZ」で大活躍して以来、人気が上昇し続けているセブンガーを題材とするエピソードとなりました。来月発売予定の「ウルトラ怪獣モンスターファーム」にも登場するとのことですし、今後ますますの活躍に期待が高まるところですなー(*^ω^*)

 同作には早期購入特典でウルトラマンカラーのセブンガーも登場するらしく、今回のBURKセブンガーはそこも参考にしておりました。当初は弓弦を乗せる予定だったのですが、子供を戦わせることに葛藤している弘原海の台詞にそぐわない展開になってしまうため、そのまま荒島に乗ってもらう運びとなりました(о´∀`о)
 彼は本作とリンクしている3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」でも主役として活躍しております。平均以下のクソザコ野郎先生が執筆されているこちらの作品も、是非ご覧くださいませ〜(*´ω`*)

 次回の更新は今のところ未定……ですが、今話のようなちょっとした小話が浮かんで来る時があれば、こうして形にして行きたいなーと思っております。ではではっ!٩( 'ω' )و


Ps
 「1分間しか戦えない」「攻撃手段が近接打撃のみ」という点は「レオ」当時のセブンガーに寄せた設定でした。急造機ですからね、仕方ないね……(´・ω・`)


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米国編 ウルトラセイバーファイト 前編

◇今話の登場ヒロイン及び登場メカ

◇アメリア
 BURKアメリカ支部の若きエリート隊員である、金髪碧眼の勝気な爆乳美女。巨大軍事企業の社長令嬢にして、アメリカ支部の司令官からもその将来を嘱望されるほどの才媛……なのだが、自信過剰で高慢な性格が玉に瑕。当時19歳。
 スリーサイズはバスト102cm、ウエスト60cm、ヒップ93cm。カップサイズはK。

◇エリー・ナカヤマ
 かつてBURKアメリカ支部から惑星調査隊に参加したこともある女性パイロットであり、現在はアメリアの副官を務めている。高飛車な彼女のフォローに日々追われている苦労人だが、時には先任パイロットとしての厳しい言葉を投げ掛けることもある。当時25歳。
 スリーサイズはバスト78cm、ウエスト56cm、ヒップ84cm。カップサイズはC。
 ※原案は非常識先生。

◇BURKセイバー
 BURKアメリカ支部をはじめとする多くの支部で制式採用されている現役の単座式宇宙戦闘機であり、F-86セイバーを彷彿させる後退翼が特徴。アメリアの父が経営している軍事企業が、主にその製造を請け負っている。


【挿絵表示】




 

 ――ウルトラアキレスが地球防衛の任に就いてから、およそ半年。ホピス星の戦いから、約1年が経過していた頃。

 BURKの面々による手厚いサポートを受け、着実に実戦経験を積み成長して行ったアキレスの戦闘能力は、すでに着任時の頃からは比べ物にならないほどの域に達していた。

 

 BURKとの連携も安定し、民衆からの信頼も獲得したこの頃のアキレスは、多くの人々が認める「ヒーロー」となっていたのである。

 

 だが――中には、それを快く思わない者もいた。

 

 ◇

 

「ふんっ……情け無いわねぇ、どいつもこいつもアキレスアキレス……。『地球は地球人の手で守る』っていう気概を持ってる奴は、もうどこにも居ないのかしら?」

 

 ――アメリカ合衆国最大の都市、ニューヨーク。その郊外に設けられているBURKアメリカ支部の航空基地で、1人の爆乳美女が雑誌を広げていた。

 

 艶やかな金髪を靡かせる彼女の、蒼く透き通るような瞳は――アキレスの活躍を讃える雑誌の記事を、「嘲笑」の色で見つめている。

 白く瑞々しい肉感的な柔肌から漂う、芳醇な女の香り。その芳香は、油の臭いが絶えないBURKセイバーの格納庫に仄かな彩りを添えていた。

 

 100cmを優に超える豊穣な乳房とくびれた腰回り、そして安産型のむっちりとしたヒップは、レオタード状の特殊戦闘服を内側からむっちりと押し上げていた。

 その露わにされたボディラインからは、彼女の「女」としての確かな自信が窺える。

 

「おい、あれってやっぱり……!」

「あぁ間違いねぇ、最近この基地に着任したばかりだっていう例の女だ……! 噂以上に、たまんねぇカラダしてやがるぜ……!」

「あの乳、あの腰、あの脚、あのケツ……! あぁちくしょう、一度でいいからああいう女を隅々までしゃぶり尽くしてやりてぇ……!」

「あれが……あのギャビン司令官も認めたっていう『女傑』……アメリア隊員か……! くーっ、あのぷっくりとした唇もたまらねぇなァ……!」

 

 そんな彼女を遠巻きに見遣る、男性整備士達は。スラっとした白い脚を組み、パイプ椅子に腰掛けている彼女――アメリア隊員の肉体を、舐め回すように凝視していた。

 男の本能を絶えず刺激する暴力的な色香は、欲望を隠し切れない雄の視線を独占している。身動ぎするたびにぷるぷると揺れるKカップの爆乳に、整備士達は揃って鼻の下を伸ばしていた。

 

 だが、誰も迂闊に彼女に手を出そうとはしない。それは彼女が、過去最高の成績で訓練課程を修了したエリート隊員だから……という理由だけではなかった。

 

 彼女はアメリカ支部のトップであるチャック・ギャビン司令官から、将来を嘱望されたエースパイロットであるのと同時に。BURK関連の兵器製造を長年に渡り請け負って来た、巨大軍事企業の社長令嬢でもあるのだ。

 

 それほどの「高嶺の花」である故か、本人の男勝りな性格故か。彼女は齢19でありながら、未だに「男」を知らない処女(バージン)であった。が、本人は軟弱な男共を嘲笑うかのように、敢えて無防備に己の乳房を揺らし、雄の本能を翻弄している。

 整備士達の視線に気付いていた彼女は、挑発的な笑みを零しながら、わざと腰をくねらせて足を組み替えていた。その蠱惑的な腰の動きと乳房の弾みに、整備士達はさらに沸き立っている。

 

 だが、このニューヨーク基地に居る全ての隊員が、彼女に意見出来ないわけではない。腰にブランケットを巻いた1人の美女は、アメリアの尊大な振る舞いを怪訝な表情で見下ろしている。

 

「……アメリア隊長、整備士達をからかうのもその辺にしてください。彼らも仕事にならないでしょう」

「ふんっ、この私に意見する気? 元調査隊メンバーだからって、調子に乗らないことね。エリー」

 

 かつてはリーゼロッテ率いるBURKセイバー隊の一員として、ホピス星の調査任務にも参加していたエリー・ナカヤマ隊員。彼女の雷名を知りながらも、自分の方が階級が上であることを鼻にかけているアメリアは、不遜な笑みを浮かべていた。

 

 一方、そんな上官の振る舞いにため息を溢すエリーは、先ほどのアメリアの発言に眉を顰めている。ウルトラアキレスの「正体」と、その「人柄」を知る数少ない1人として、彼女の言葉は見過ごせなかったのだ。

 

「地球は地球人の手で守り抜かねばならない、という意見には私も同意です。しかしアキレスは、まだその理想に届かずにいる私達のために、力を尽くしてくれているのです。彼の働きを否定する発言は看過出来ません」

「ふんっ、だったらその理想をこの私がすぐに実現してあげるわよ。もうこの地球に、ウルトラマンなんか要らないわ。地球を守る力は、BURKだけで十分。私もパパも、そのためにずっと努力して来たんだから!」

「アメリア隊長……」

 

 現代の合衆国を率いている、スコット・マスターソン大統領。アメリカ支部のトップに立つ、チャック・ギャビン司令官。そして自分の才能を見出した、ベス・オブライエン教官。

 彼らの期待を一身に背負い、エリートとしての誇りを糧に努力を重ねて来たアメリアは、エリーの言葉にも全く耳を貸そうとしない。そこに彼女なりの強い想いがあることを知っていたエリーは、それ以上の言葉を紡げずにいた。

 

 世界最大の軍事企業を率いるトップとして、BURKセイバーの開発にも携わっていた父の背中を見て育って来た彼女にとって。自分達のアイデンティティを揺るがしかねないウルトラアキレスの存在は、決して無視できるものではないのだろう。

 

 決して、単なる功名心や自尊心だけが理由ではない。地球を守るという崇高な信念を持った父を深く尊敬しているからこそ、彼女はアキレスへの対抗心に燃えているのだ。

 

 ――その時。このニューヨーク基地に、緊急警報がけたたましく鳴り響く。それは、怪獣の接近を報せるものであった。

 

緊急事態発生(エマージェンシー)! 緊急事態発生(エマージェンシー)! ハドソン川付近に宇宙怪獣が接近中! 各パイロットは直ちに緊急発進(スクランブル)――!』

「……ッ!」

「ふふんっ……どうやら、さっそくその時が来たようね! 行くわよエリー、私達の『理想』を実現するためにッ!」

 

 整備士達や他のパイロット達が、その警報に動揺する中。冷や汗をかきながらも不敵な笑みを浮かべるアメリアは、自身のBURKセイバーに颯爽と飛び乗って行く。

 

「くッ……!」

 

 そんな彼女に続くように、エリーも下半身に巻いていたブランケットを勢いよく脱ぎ捨て、自身の乗機に向かって駆け出していた。露わにされたレオタードの食い込みに、男達がおおっと声を上げる。

 

『さぁ……全世界に見せてあげるわ! このアメリアが、パパのBURKセイバーが、ウルトラアキレスを超える瞬間をねっ!』

 

 そして、ニューヨーク基地に配備されていた全てのBURKセイバーが、滑走路に並び発進準備を整えた時。戦闘機隊を率いる若き女傑は、舌舐めずりしながら操縦桿を握り締めていた。

 

 ――それが、屈辱的な敗北への切符であるとも知らずに。

 




 今回は特別編や女傑編で活躍していたアメリカ支部のBURK隊員・アメリアと、そんな彼女を支えているエリー・ナカヤマにスポットを当てるエピソードとなります。本章は前編、中編、後編の3部作構成となっており、次回の中編は日本に居る嵐真達にスポットを当てる予定です。ちなみにアキレス時代のアメリアについては、「ウルトラバークファイト」でもちょこっとだけ語られておりますな(о´∀`о)
 アキレスのヒロイン候補であるアメリアですが、この当時はまだまだ未熟でプライドが高いだけの世間知らずです。そんな彼女が如何にして、後にアメリカ支部を代表するほどの隊員に成長出来たのか。その片鱗に触れて行くエピソードとなる予定ですので、どうぞ最後までお楽しみにー!٩( 'ω' )و

 また、現在は特別編で初登場したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」が連載中となっております!
 加えて、外星編で初登場したウルトラマンリードこと荒島真己を主人公としつつ、BURK隊員達の日常を描いた平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」も連載中です!
 さらに、X2愛好家先生が公開されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」では、外星編で初登場したウルトラマンメディスこと鶴千契にスポットを当てた物語が展開されております!
 機会がありましたら、是非こちらの作品群もご覧くださいませ〜!(*≧∀≦*)


Ps
 1/72セイバー戦闘機のプラモ購入記念(?)として本章を執筆させて頂きました。あの「ザ☆ジェット戦闘機」と言わんばかりのシンプルなシルエットが個人的にはすごーく刺さるのですよ(*´꒳`*)


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米国編 ウルトラセイバーファイト 中編

◇今話の登場ヒロイン

駒門琴乃(こまかどことの)
 BURK日本支部きっての女性エースパイロットであり、部下達からの信頼も厚い質実剛健な女傑。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女。当時23歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

八木夢乃(やぎゆめの)
 かつては惑星調査隊にも参加していた、明るく快活なBURK日本支部の女性パイロットであり、浅栗色のサイドテールが特徴。当時18歳。
 スリーサイズはバスト85cm、ウエスト55cm、ヒップ81cm。カップサイズはF。
 ※原案は魚介(改)先生。

望月珠子(もちづきたまこ)
 かつては惑星調査隊にも参加していた、冷静沈着なBURK日本支部の女性パイロットであり、ショートボブの髪が特徴。ややぽっちゃりとした体型の持ち主。当時20歳。
 スリーサイズはバスト90cm、ウエスト65cm、ヒップ89cm。カップサイズはG。
 ※原案は赤犬先生。

辻凪(つじなぎ)あやめ
 都内の有名私立中学校に通っている中学生の少女であり、その巨乳故に多くの男子達から言い寄られている。漫画が趣味であり、黒のボブカットと眼鏡を掛けた愛らしい容姿の持ち主。当時14歳。
 スリーサイズはバスト89cm、ウエスト54cm、ヒップ85cm。カップサイズはF。
 ※原案はリオンテイル先生。

沢宮遊里(さわみやゆうり)
 都内の有名私立中学校に通っているあやめの同級生であり、明るく快活なギャル。溌剌とした笑顔と、金髪のサイドテールが特徴。当時14歳。
 スリーサイズはバスト85cm、ウエスト53cm、ヒップ87cm。カップサイズはE。

沢宮杏莉(さわみやあんり)
 都内の有名私立中学校に通っている遊里の妹であり、姉とは正反対のしっかり者。黒のロングヘアと、歳不相応に怜悧な美貌の持ち主。当時13歳。
 スリーサイズはバスト83cm、ウエスト51cm、ヒップ88cm。カップサイズはD。


【挿絵表示】




 

 ――ニューヨークに迫る侵略者の影。その存在は、東京に設けられているBURK日本支部の基地にも報されていた。通信員の口から聞かされた第一報に、弘原海(わだつみ)隊長は眉を吊り上げて振り返っている。

 

「ハドソン川上空に宇宙怪獣だと……!? 確かなのか!」

「はい、すでに現地の戦闘機隊が出撃しているとのことです! データによると、この熱源反応は……ベムスターです!」

「ベムスターか……! アメリカ支部の物量なら、最終的にはどうとでもなるだろうが……あの基地から即応出来る第1陣の航空戦力と言えば、そのほとんどがBURKセイバーだろう。無事に持ち堪えられれば良いんだが……!」

 

 シャーロット博士が開発を進めている次世代戦闘機のBURKクルセイダーは、まだ量産化出来る段階ではない。そのため現在もBURKセイバーが主力戦闘機として運用されているのだが、日々強力になって行く怪獣達の脅威に対して、徐々に「力不足」な部分が見えてきてしまっているのだ。

 

 それでもアメリカ支部の精鋭達ならば、最後には勝つことが出来るだろう。だが、その勝利を得るまでに彼らが払う犠牲の数と重さは、決して無視出来るものではない。

 

(ナカヤマ……!)

 

 その懸念には、弘原海の個人的な感情も含まれていた。

 かつて、共にホピス星の調査にも参加していたエリー・ナカヤマ隊員が、そこに居るのだとしたら。調査隊を率いていたリーダーとして、その現実から目を背けるわけには行かなかったのである。

 

「弘原海隊長、現場がニューヨークだっていうのなら……そこにはエリーが居るはずです! 私達も加勢に行きましょう!」

「シルバーブルーメの時は、彼女達に駒門隊員を助けて貰ったんです……! 今度は私達が行かなくてはッ!」

「私も同じ気持ちです、隊長……! 彼女達をこのまま放っておくわけには行きません!」

 

 それは当然、他の隊員達にとっても同じであった。

 駒門琴乃(こまかどことの)隊員、八木夢乃(やぎゆめの)隊員、望月珠子隊員(もちづきたまこ)隊員。日本支部に属する彼女達3人は豊穣な乳房をばるんばるんと弾ませ、必死に出撃を進言している。

 

 仲間を想うが故に流れている焦燥の汗が、その瑞々しい柔肌をじっとりと濡らしている。弘原海に詰め寄る爆乳美女達は、安産型の桃尻をぶるんっと蠱惑的に躍動させていた。

 通信員をはじめとする周囲の男性隊員達が、その暴力的な色香に喉を鳴らす中。彼女達の願いを真摯に受け止める弘原海は、重々しく口を開く。

 

「……お前達の思いは分かっている。だがな、お前達の機体はいずれも修理中でまともに飛ばせる状態じゃねぇんだ。俺は助けに行けとは言えても、死にに行けと言うわけにはいかねぇんだよ」

「し、しかしッ……!」

 

 つい先日に起きた怪獣との戦闘で、琴乃達のBURKセイバーは激しく損傷してしまったのだ。現在はかなり修理も進んでいるのだが、それでも遠方に駆け付けることが出来るほどの段階とは言えない。

 

 琴乃達は己の非力さを悔やみながら、拳を振るわせることしか出来ずにいた。部下の命を重んじる弘原海の考えを理解しているからこそ、やりきれない思いを抱えるしかないのである。

 それは弘原海も同様であり、彼は部下達の友情に応えられない自分の不甲斐なさを呪うばかりであった。そんな彼らの前に――1人の青年が進み出る。

 

「分かりました……それなら、俺が行きます!」

嵐真(らんま)……! 無茶言ってんじゃねぇ、お前だって昨日の戦いの疲れが取れてねぇはずだろうが!」

 

 ウルトラアキレスこと、暁嵐真(あかつきらんま)。彼の身を案じるが故に発せられた弘原海の怒号が、この一帯に響き渡る。

 それでも若きウルトラ戦士は一歩も引き下がることなく、弘原海の鋭い眼差しと真っ向から向かい合う。その瞳からは、疲れの色など微塵も見られなくなっていた。

 

「それでも……今すぐ動けるのは俺だけのはずです。俺にとってもエリーさんは大切な仲間なんです、行かせてください!」

「嵐真……」

「……地球の平和だとか未来だとか、そんな大それた理由を抱えられるほど、俺は大人じゃない。それでも俺はただ、少しでもたくさんの人達に生きていて欲しいから……アキレスになったんです! シルバーブルーメの時に皆が力を貸してくれたのも、レッドキングの時にBURKセブンガーが来てくれたのも、こういう時のためでしょうッ!」

 

 BURKの全面的なサポートがあったからこそ、残っている余力。そのリソースを今こそ行使するべきなのだと熱弁する嵐真は、すでに19歳の青年ではなく――「戦士」の貌になっていた。

 

「……」

 

 その眼差しに宿る力強さを見た弘原海は、逡巡の果てに決意する。もうこの男を、ただの若者と見るのは止めなくてはならない。1人の戦士として、対等の戦友として見なければならないのだと。

 

「……分かった。だが、一つだけ命じておくぞ。何があろうと、必ず生きて帰って来い。ナカヤマのことを思うのなら、必ずだ! いいな!」

「はいッ!」

「済まない……! 頼むぞ、嵐真!」

「嵐真君、頑張れーっ!」

 

 仲間のためを思えばこそ、生き抜かなければならない。その厳命を帯びた嵐真は琴乃達に見守られながら、基地の外へと走り出して行く。

 そして、大空を仰ぎながらアキレスアイを天に翳し――

 

「デュワッ!」

 

 ――真紅の巨人へと「変身」するのだった。自分の戦いを支えてくれた仲間達の思いに、今こそ報いるために。

 

 ◇

 

「……はぁ」

 

 その頃、東京都内のとある住宅街では――眼鏡を掛けた1人の美少女が、朝から深いため息を溢していた。彼女が路上を歩む度に艶やかな黒髪が揺れ、歳不相応に発育した巨乳がぽよんと弾む。

 

 その通学路を静かに歩んでいる彼女の名は――辻凪(つじなぎ)あやめ。都内の有名私立中学校に通う女子中学生であり、一部の男子からは絶大な人気を博している人物だ。

 思春期を迎えて間もない中学生男子達にとって、彼女の瑞々しい肉体から漂う色香と乳房の躍動は、劇薬に等しい。告白された回数は両手の指では足りず、強引に迫られた回数はそれをさらに上回っていた。

 

(別に私は……誰かとそんな風に(・・・・・)なりたいなんて、考えたこともないのに……)

 

 そんな自分の色香に対して無自覚だったあやめにとって、その好意の数々は苦痛でしかなかったのである。

 

 だが、少なくともこの当時の彼女は誰とも男女の契りを交わしてはおらず、その貞操は純潔そのものであった。そんな彼女の友人である「美少女姉妹」が、不埒な男共を彼女から遠ざけていたのである。

 

「おっはよーあやめっ! 相変わらずのぷるるんおっぱい、堪りませんなぁっ!」

「きゃあぁっ!? も、もぉ、遊里(ゆうり)ちゃんったらぁっ!」

 

 その美少女姉妹の姉――沢宮遊里(さわみやゆうり)は、今日も(・・・)背後からあやめの双丘を鷲掴みにしていた。制服を押し上げる乳房を無遠慮に揉みしだかれ、あやめは思わず悲鳴を上げる。

 

「……おぉっ!? もしかしてあやめ、また大きくなった!? ブラ変えたでしょ!」

「だ、だってもうEでもキツいから……!」

「なんと……! 張りも柔らかさもずっしりとした重量感も全部パワーアップしてるし、道理で! これも私の日頃のおっぱいマッサージの賜物ですなぁぐへへへ……!」

「や、やぁあ……! そんなこと朝から大声で言わないでぇえ……!」

 

 金髪のサイドテールを軽やかに弾ませ、親友の背にむにゅりと乳房を押し当てる遊里。

 学内ヒエラルキーのトップに君臨している彼女がこうしてあやめ(の乳房)を独占しているため、男子達は迂闊に手出し出来ずにいるのだ。

 

 最近になってFカップに成長したのだという彼女の報告にますます高揚し、遊里は親友の乳房を厭らしい手つきで揉み続けている。

 しばしば「ギャルの皮を被ったおっさん」と揶揄されている彼女自身も、Eカップに相当するかなりの巨乳なのだが、当人はあくまであやめの乳房に執心していた。

 

「良いじゃないの減るもんじゃないし! ……あぁ〜っ、やっぱりこの揉み心地サイコー! こんな極上の果実、そこいらの男に渡すわけには行かないねっ! やっぱり私がこの手で守護(まも)らねば……あいだぁっ!?」

 

 だが、遊里にとっての至福のひと時は。背後から脳天に振り下ろされたチョップによって、敢えなく強制終了となってしまう。

 

「1番危険なのは姉さんでしょう。……すみませんあやめ先輩、うちの姉が毎度毎度」

「あ、あはは……ありがとう、杏莉(あんり)ちゃん」

 

 思わぬ不意打ちに涙目になっていた遊里の背後では、彼女の妹である沢宮杏莉(さわみやあんり)が冷ややかな表情を浮かべていた。

 艶やかな黒のロングヘアを靡かせる彼女も、姉と同様に女子中学生らしからぬスタイルの持ち主であり、その歳不相応に怜悧な美貌は、同性のあやめも思わず息を呑んでしまうほどであった。

 

「いったぁ〜! ちょ、ちょっと杏莉っ! 少しは加減しなさいよぉ〜っ! この私の明晰な頭脳が損なわれたらどうすんのよっ!」

「万年補習のおバカさんが何を言ってるんだか。こないだの中間テストだって、あやめ先輩に付きっきりで面倒見て貰ったのに赤点連発だったし。あやめ先輩に申し訳ないと思わないの? ていうか、思え」

「……うわぁあん! あやめぇえ! 杏莉がいじめるぅ〜! 慰めてぇ! あやめのおっぱいで今すぐ慰めてぇ〜!」

「あ、あはは……」

 

 彼女達「沢宮姉妹」は学内でもトップクラスの人気を集めているヒエラルキー上位者であり、中学生らしからぬ安産型の桃尻は学内のみならず、他校でも話題になるほどであった。その美貌とスタイル、そしてカリスマ性故に友人や知人は非常に多く、発言力の強さも並外れているのである。

 そんな彼女達が友人として側に居るからこそ、あやめの豊穣な肉体は守られているのだろう。沢宮姉妹に喧嘩を売ったら全方位から潰される、という噂はすでに学生間のコミュニティには深く浸透しているのだ。

 

(……いつか、私にも……誰かとそんな風に(・・・・・)なりたくなる時が、来るのかな)

 

 その沢宮姉妹に守られながらも、この動乱の時代を健やかに過ごしているあやめは独り――いつか来るのかも知れない「未来」に、想いを馳せていた。

 

 自分の全てを委ねたいと思えるような相手。そんな男が、いつか自分の前に現れるのだろうか。もし本当にそんな時が来たら、自分は上手く想いを告げられるのだろうか。

 

「あー……やっぱりあやめのおっぱいは癒されるなぁー……。この柔らかさ、この匂い……堪んねぇー……」

「いい加減にしなさい姉さん、あやめ先輩が困ってるでしょっ! あやめ先輩も気を付けてください、ちょっとでも気を許したらうちの姉はどこまでもつけ上がるんですからっ!」

 

 まだ見ぬ運命の人に思いを馳せるあやめは、自分の乳房に可憐な顔をぐりぐりと擦り付けて来る遊里の頭を撫で、遥か彼方の青空を仰ぐ。

 

(……あれは……)

 

 その先には、両腕を広げて天空を駆け抜けている、ウルトラアキレスの影があった。

 それこそが「運命の人」との出会いになるとは、この当時の彼女には知る由もなかったのである――。

 

 ◇

 

 ――そして、色恋の類には全く関心が無かったこの沢宮姉妹も。約5年後には、元調査隊メンバーの男達が持つ圧倒的な「雄」のフェロモンに魅了されてしまうのだった。

 





【挿絵表示】


 今回はニューヨークの危機を受けて動き出したBURK日本支部の動向と、特別編「ウルトラカイナファイト」でアキレスのヒロイン候補として登場していた、リオンテイル先生原案の辻凪あやめにスポットを当てる回となりました。
 アキレス時代を舞台にするからには、当時のあやめについてもどこかで触れておきたかったなーという思いは前々からありましたので、これを機会に書かせて頂いた次第です。ちょうど彼女と同い年である毒ヶ丘有彩(ぶすがおかありさ)(過去編に登場したザインのヒロイン候補)とも絡めたかったのですが、上手くお話として纏められずお見送りに……(ノД`)
 その代わり……というわけではありませんが、外星編の最終話で調査隊メンバーの男達に熱を上げていた「名無しの美少女姉妹」改め「沢宮姉妹」に、ここで明確な設定を用意する運びとなりました。彼女達もあやめと同世代だったので、中学時代からの友人という設定に。あやめがアキレス=嵐真に恋したように、沢宮姉妹も最終決戦の後は、調査隊メンバーの誰かにガチ恋してる……のかも知れないですね(*´ω`*)

 また、現在は特別編で初登場したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」が連載中となっております!
 加えて、外星編で初登場したウルトラマンリードこと荒島真己を主人公としつつ、BURK隊員達の日常を描いた平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」も連載中です!
 さらに、X2愛好家先生が公開されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」では、外星編で初登場したウルトラマンメディスこと鶴千契にスポットを当てた物語が展開されております!
 機会がありましたら、是非こちらの作品群もご覧くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 本章も次回で完結となりますので、どうぞ最後までお楽しみに! ではではっ!٩( 'ω' )و


Ps
 「オタクに優しいギャルが居たんです! 信じてください、本当なんです!」「お前は謹慎だ!」


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米国編 ウルトラセイバーファイト 後編

 ――その頃。この世界とは異なる次元の宇宙から、地球に迫る宇宙怪獣の影を観測している者達がいた。

 

 無機質な機械音と共に開かれた地下シャッターから、続々と飛び出して来る4人の巨人達。小惑星を改造して建設された「基地」に身を置いていた彼らは、草一つない灰色の地表を真っ直ぐに駆け抜けていた。

 

 先頭を走るウルトラマンシュラ。その後ろに続くウルトラマンリード。さらにその後方のウルトラマンアルミュール。そして、最後尾のウルトラマンブフ。

 いずれもBURK惑星調査隊メンバーのために戦ってくれた、ウルトラの戦士達だ。ホピス星の戦いの後、本来の持ち場を無断で飛び出した責任を問われた彼らは、宇宙警備隊の管轄下であるこの辺境の観測基地に「左遷」されていたのである。

 

『あの次元の宇宙に侵入者が現れた!』

『なんだ、なんの怪獣だ!?』

『ウルトラマンジャックすらも退けた宇宙大怪獣……!』

『ベムスターが出たのだ……!』

 

 ウルトラアキレスとBURKに託された地球。そこに迫ろうとしている宇宙怪獣の実態を、彼らはいち早く感知していたのだ。

 「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャックすらも追い詰めたと言われている、「宇宙大怪獣」ベムスター。その生命反応を観測していた4人のウルトラマンは足を止め、互いに顔を見合わせる。

 

『行こう皆、アキレスを助けに行かねば!』

『いくら何でも、今のアキレスには荷が重過ぎるッ!』

『待つんだアルミュール、ブフ! 私達はすでに厳罰を受けた身だ、これ以上あの次元に干渉し続ければ……今度こそ左遷では済まなくなるぞ!』

『止めるなシュラ! 俺達は、ベムスターを殺すッ!』

 

 特に若く血気盛んなリードを筆頭に、アルミュールとブフはアキレスを助けに行こうと躍起になっている。そんな3人の前に両手を広げて立ちはだかるシュラは、同胞を思うが故に彼らを制止していた。

 

『リード、冷静に考えろ! もし私達が再び無断出動で裁かれた時、最も傷付くのは誰だ! 我々がそうなることを、アキレスが望むと思うか!』

『しかしシュラ……!』

『……我々はあの星で見たはずだ。決してウルトラマンに依存することなく、自分達の力で活路を開こうとしていた地球人達の勇姿を。あのBURKという精鋭達を!』

 

 まだウルトラ戦士としては幼いアキレスを案じる余り、気持ちが逸っている3人を懸命に宥めるシュラ。彼は仲間達を抑えながらも、この観測基地の頭上に広がる無限の星空を仰いでいた。

 

 遥か先の次元に在る、アキレス達に託された地球。その星に棲まう人々ならば、凶悪な宇宙大怪獣にも決して負けないのだと信じて――。

 

 ◇

 

 夜のハドソン川に出現した「宇宙大怪獣」ベムスターには、腹部に存在する五角形状の口腔――「吸引アトラクタースパウト」で、あらゆるエネルギーを吸収する能力がある。

 それはまさに、機首部のレーザー銃を主武装とするBURKセイバーにとっては「天敵」とも言える特性であった。

 

 戦闘機隊の総攻撃はまるで通用せず、アメリア機とエリー機を除く全てのBURKセイバーは、ベムスターの角から放射される破壊光線によって敢えなく撃墜されてしまったのである。

 それは戦闘機隊がニューヨークに侵入しようとしているベムスターを捕捉してから、僅か数分後のことであった。

 

『ひ、ひぃいぃいっ! なんで、なんで私達の攻撃が効かないのよぉおおっ! こんな、こんなはずじゃあぁあっ!』

『アメリア隊長、しっかりしてくださいッ! 理想を実現するのでしょう!? 最後まで諦めてはいけませんッ!』

 

 撃墜されて行く仲間達の悲鳴を幾度となく聞かされ、非常な現実に打ちのめされてしまったアメリアは、恥も外聞もなくコクピット内で泣き叫んでいる。それでも破壊光線の連射をかわし続けているところを見るに、パイロットとしての資質は本物なのだろう。

 

『ふっ、ぐっ、うぅ……! ちくしょう、ちくしょうっ、こ、この私が、こんなぁあぁあ……!』

 

 だが、すでに彼女のプライドは耐え難い恐怖によって、ズタズタに痛め付けられていた。

 レーシングバイクのシート状になっている操縦席に肢体を擦り付け、懸命にしがみ付いている彼女は――その下腹部に、女としての尊厳を破壊する湿り気(・・・)温もり(・・・)を残していた。ぷりんっと突き上げられた安産型の桃尻は、その「屈辱」を物語るようにぷるぷると震えている。

 

(まずい、このままでは……!)

 

 そんな彼女を懸命に励ましているエリーも、コクピット内で焦燥に駆られていた。BURKセイバーの燃料にも限りがある以上、このままでは自分達も時間の問題だからだ。

 

『ダァァアーッ!』

『……!?』

 

 ――その時。遥か遠方から迫り来る真紅の巨人が、ベムスターの顔面に痛烈な飛び蹴りをお見舞いした。

 

 ハドソン川の水面が天を衝くような水飛沫を上げ、宇宙大怪獣の巨躯が豪快に転倒する。日本からはるばる駆け付けて来たウルトラアキレスが、その大河に降り立ったのはそれから間もなくのことであった。

 

 神話の英雄を想起させる名を冠した、新時代のウルトラ戦士。そんな彼の勇姿を目撃したニューヨークの市民達は、避難も忘れて大歓声を上げていた。

 闇夜に輝くアキレスの双眸は、実際の姿よりもさらに荘厳な印象を与えている。夜のハドソン側に立つ真紅の巨人は、その煌めく両眼でベムスターを射抜いていた。

 

『ウルトラ……アキレス!? まさか、ニューヨークにまで来たっていうのっ!?』

 

 その光景を上空から見下ろしていたアメリアも、目の敵にしていたアキレスの登場には思わず瞠目している。いつか必ず超えてやる、と息巻いていた相手が突如目の前に現れたことで、彼女はごくりと生唾を飲み込んでいた。

 

 ――だが、日本からここまで急行して来たアキレスこと暁嵐真(あかつきらんま)にとって、ニューヨークへの道のりは決して気楽なものではなかったのだろう。体力の消耗も厭わず全速力で飛んで来たためか、胸のカラータイマーはすでに赤く点滅し始めていた。

 

(嵐真君っ……!)

 

 その現象から、嵐真が無理をしてここまで駆け付けているのだと理解したエリーは、唇を噛み締め、操縦桿を握る手を震わせている。彼をこれほど追い詰めてしまった自分の至らなさを、悔いるように。

 

『デヤァアッ!』

 

 一方、アキレスは即座に倒れたベムスターに飛び掛かると、マウントポジションからの手刀の連打をお見舞いしていた。両腕をはためかせてその場から脱した大怪獣を追撃するべく、彼は額のビームランプからトロイレーザーを発射する。

 

 だが、腹部の吸引アトラクタースパウトによって細い光線はあっさりと吸い込まれてしまい、アキレスは疲労のあまり片膝を付いてしまう。

 

『いけませんアキレス、ベムスターに光線技は通用しないのです! アキレスラッガーを使わなくてはッ!』

『デュッ……!』

 

 エリー機からの呼びかけに反応したアキレスは、力を振り絞るように立ち上がるとベムスターから距離を取り、頭部のアキレスラッガーを投げようとする。だが、ベムスターの角から放射される破壊光線の嵐が、アキレスの反撃を執拗に阻んでいた。

 

 回避に徹すれば、その動きの分だけニューヨークの街を巻き込んでしまう。避難が完了していないこの状況では、大勢の市民が犠牲になりかねない。それ故にアキレスは避けることも叶わず、ただ両腕で破壊光線を防御する一方となっていた。

 命を削るような無理を重ねて、ここまで来たというのに。このままでは、アキレスまで負けてしまう。その戦況にますます唇を噛み締めていたエリーは、意を決するようにアメリア機へと声を掛けた。

 

『くッ……! アメリア隊長、我々も攻撃を仕掛けましょう! アキレスの宇宙ブーメランなら、ベムスターを攻略出来るはず! 私達で、そのチャンスを作るのですッ!』

『む、無理よエリー……! だって、だって私達の攻撃なんて一度も……!』

 

 だが、ベムスターの圧倒的な力に心を折られてしまっていたアメリアは、攻撃に踏み切れずにいた。

 BURKセイバーによる総攻撃も全く通じなかったのに、今さら自分達に何が出来るというのか。そんな諦観が、弱々しい声色に表れている。

 

『……いい加減にしなさいッ! その顔はなんですか、その眼はなんですか、その涙はなんですかッ!』

『……!』

『私達がやらずに、誰がアキレスを助けるのですか! 誰がこのニューヨークを守るのですかッ! あなたの涙で、ベムスターを倒せるのですか!? お父様と、あなた自身の理想を実現出来るのですかッ!』

 

 そんなアメリアに、エリーは眉を吊り上げ怒号を飛ばしていた。常に淑やかで滅多に怒らない彼女らしからぬ叫びに、アメリアは思わずハッと顔を上げる。

 自分が、愛する父が、今日まで全力を尽くして来たのは何のためだ。こんな無様な醜態を晒すための19年だったとでも言うのか。

 

 そんな自問自答を経て――若き女傑は、失いかけていた誇りを取り戻し、凛々しい笑みを浮かべる。

 

『……誰に向かって物を言ってるのよ。分かってるわよ、言われなくたって分かってるわよッ! エリー、奴の角に1発ぶちかましてやるわよ! しっかり付いて来なさいッ!』

『……了解ッ!』

 

 そんな彼女の気勢を耳にしたエリーはふっと笑みを溢し、操縦桿を握り直す。

 彼女達のBURKセイバーは同時に急上昇すると、そこから豪快に宙返りし始めていた。さらに、その体勢から背面飛行での急降下を仕掛けて行く。

 

 ベムスターの弱点は、吸引アトラクタースパウトによる吸収能力を発揮出来ない、背面にあるのだ。

 これまでは破壊光線の弾幕に阻まれ、背後に向かうことすらままならなかったが。ベムスターがアキレスにのみ気を取られている今なら、死角を突くことが出来る。

 

 地球人の兵器など取るに足らないと侮り、隙を見せた今が最初にして最後のチャンスなのだ。人類を無礼(なめ)た宇宙大怪獣に目に物を見せるべく、2機のBURKセイバーはベムスターの頭部に照準を合わせて行く。

 

 2人の美女はその肉感的な肢体を操縦席に擦り付け、むにゅりと乳房を押し潰し、安産型の桃尻をばるんっと後方に突き出していた。身を乗り出すようなその姿勢は、「絶対に仕留める」という女傑達の固い信念を物語っている。

 

『はぁあぁあぁあーッ!』

 

 そして、射程圏内に飛び込んだアメリア機とエリー機が、同時に機首部のレーザー銃を撃ち放った瞬間。背後から頭部の角を撃たれ、その発射器官をへし折られてしまったベムスターが、甲高い悲鳴を上げる。

 

 時間にして、僅か数秒。だが、その数秒の隙が、ベムスターにとっての命取りになったのである。アメリア機とエリー機の攻撃に怯んでいた隙に、アキレスは頭部の宇宙ブーメランに両手を掛けていたのだ。

 

『……ダァァアーッ!』

 

 次の瞬間、念力によって舞い飛ぶアキレスラッガーの刃が、ベムスターの首を刎ね飛ばしてしまう。それが宇宙大怪獣の最期であることは、誰の目にも明らかであった。

 一瞬のうちに命を絶たれ、力無くハドソン川に沈み行くベムスター。その骸を一瞥したアキレスは戦いの終焉を確信し、夜空の彼方へと飛び去って行くのだった。

 

 嵐真の献身とエリーの叱咤、そしてアメリアの奮起が功を奏して――ニューヨークで起きたこの戦いは、人類の勝利で幕を下ろしたのである。

 その瞬間を街中から見届けていた大勢の市民は爆発的な歓声を轟かせ、飛び去って行くアキレスに手を振り続けていた。背面飛行から体勢を立て直し、ニューヨークの上空を飛んでいるエリーも、安堵した様子で微笑を溢している。

 

『ふぅっ……やりましたねアメリア隊長、お見事でした。……隊長?』

『……負けないわ。もう私、絶対に負けない。この借りだっていつか、必ず返してやるんだから……見てなさい、ウルトラアキレスッ!』

 

 だが、悔し涙で頬を濡らしていたアメリアは、唇を噛み締めながらアキレスの背を睨み付けていた。感謝の想いと対抗心が混ざり合った、複雑な表情を浮かべている彼女の横顔を、エリーはキャノピー越しに静かに見守っている。

 

『……えぇ、そうですね。いつか必ず、私達で返しに行きましょう』

 

 今はまだ、地球人の力だけで地球を守り抜くことは出来ない。だからこそ、その理想に向かって自分達は戦い続けねばならない。

 

 その苦い現実に直面し、それでも立ち上がった彼女ならば。きっといつかは、ウルトラ戦士に頼らずとも地球を守れる戦乙女に成長出来るだろう。

 そう信じることに決めたエリーは、これからも自信過剰なお嬢様の副官として、彼女を側で支えて行く決意を固めたのだった。

 

 ――そして、約5年後。テンペラー軍団の侵略に立ち上がった彼女達は、最終決戦の舞台でこの日の借りを返すことになる。

 






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 今話で米国編も完結となりました。最後まで読み進めて頂き誠にありがとうございます! 成長したアメリアの活躍については、すでに公開されている特別編や女傑編を参照ですぞ(*^ω^*)
 アメリアも内心ではアキレスを認めてはいたのでしょうけど、プライドの高い彼女がそれを表に出せるようになるまでには、5年くらいの時間を要したのでしょうね。彼女が嵐真ラブになっていたのはその反動なのかも知れませんな。エリーも彼女の成長ぶりにはホクホクでございましょう(*´꒳`*)

 拙作の中で明確なエピソードとして形になったのは今のところアメリアだけですが、イヴァンナもザイン時代に、凛風もエナジー時代に、オリヴィアもアーク時代に、エレーヌもジェム時代に、それぞれが同じような屈辱を経験しています。その苦い記憶をバネにしていたからこそ、特別編や女傑編での活躍があったのだと思って頂ければ幸いです(о´∀`о)

 また、現在は特別編で初登場したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」が連載中となっております! こちらの作品では、ザイン時代のイヴァンナも登場しておりますぞ!
 加えて、外星編で初登場したウルトラマンリードこと荒島真己を主人公としつつ、BURK隊員達の日常を描いた平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」も連載中です!
 さらに、X2愛好家先生が公開されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」では、外星編で初登場したウルトラマンメディスこと鶴千契にスポットを当てた物語が展開されております!
 機会がありましたら、是非こちらの作品群もご覧くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 作者としてはあらかたやりたいお話はやり切った感もありますし、次回の更新は今のところ未定……ですが、今話のようなちょっとした小話が浮かんで来る時があれば、こうして形にして行きたいなーと思っております。ではではっ!٩( 'ω' )و


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Ps
 冒頭のシュラ達のシーンは「レオ」客演時のゾフィー、マン、ジャック、エースの動きを意識しておりました。最近は「俺達はアストラを殺すこうざん」がツボ過ぎて毎日リピートしてます。


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暗躍編 ウルトラレディーズファイト 前編

◇今話の登場ヒロイン

◇シャーロット
 かつてBURK惑星調査隊に参加していた女性科学者であり、現在はドイツ支部の最新設備を借りてとある研究に注力している。ウェーブが掛かったプラチナブランドのボブヘアーが特徴の、妖艶にして蠱惑的な美女。27歳。
 スリーサイズはバスト115cm、ウエスト65cm、ヒップ98cm。カップサイズはM。

◇ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル
 BURK惑星調査隊にも参加していたドイツ支部出身のエースパイロット。腰まで届く黒い長髪を纏めたポニーテールが特徴であり、蒼氷色の瞳と白い爆乳の持ち主。19歳。
 スリーサイズはバスト100cm、ウエスト76.2cm、ヒップ88cm。カップサイズはF。
 ※原案はG-20先生。

劉静(リウジン)
 BURK中国支部から惑星調査隊に参加していた爆撃機隊の女性パイロットであり、ボーイッシュな顔立ちと紺髪金眼が特徴。22歳。
 スリーサイズはバスト94cm、ウエスト60cm、ヒップ91cm。カップサイズはG。
 ※原案は俊泊先生。


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 ――ウルトラアキレスが暁嵐真(あかつきらんま)と一体化し、この地球を守護するべく怪獣や宇宙人達との戦いを始めてから、半年以上が過ぎる頃。

 ハドソン川の戦いを経て全米からの支持を得るようになった真紅の巨人は、地球の救世主たる絶対的ヒーローとして、その名声を一身に集めるようになっていた。

 

 そんな中、BURKドイツ支部のベルリン基地に籍を移していたシャーロット博士は――地下深くの研究施設にて、とある「女傑達」との再会を果たしていた。

 

「……それは正気で仰っているのでしょうか、シャーロット博士」

「返答次第では……僕達でも容赦は出来ませんよ」

 

 久方振りに顔を合わせた「戦友」に対する態度とは思えない、殺気に満ちた眼差し。

 その眼光でシャーロット博士の背を射抜いているのは、元惑星調査隊メンバーの女性パイロット――ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル隊員と。教導のためベルリン基地に訪れていた、中国支部の劉静(リウジン)隊員であった。

 

 上官にして幼馴染でもあるリーゼロッテと共に、ベルリンの空を宇宙戦闘機「BURKセイバー」で守り抜いて来たヴィルヘルミーナ。現役爆撃機「BURK風龍(ファンロン)」を駆り、上海(シャンハイ)基地を拠点に各地を転戦している劉静。

 そんな女傑達は今、ホピス星で共に戦った戦友とも言えるシャーロットに対し、冷たい「怒り」を露わにしている。

 

 ヴィルヘルミーナの特殊戦闘服を内側から押し上げる100cmの爆乳と、レオタード状のスーツに深く食い込んだ88cmの巨尻が、一歩踏み出す度にどたぷんっと躍動する。

 蒼氷色の知的な眼差しに対し、その女体から漂う色香は暴力的ですらあった。

 

 腰まで届く漆黒のポニーテールと、白く瑞々しいその柔肌。そしてぷっくりとした艶やかな唇からは、雄の情欲を掻き立てる女の芳香が滲み出ていた。その張りのある豊穣な果実を、透き通るような柔肌を、心ゆくまで味わい尽くしたい――と猛る男性隊員達は後を絶たないと言われている。

 

 中性的な美貌と男性的な立ち振舞いから「中国支部の王子様」とも呼ばれ、女性隊員達から絶大な人気を博している劉静も――その戦闘服にぴっちりと密着したボディラインで、己の肉体が紛れもなく「女」であることを示していた。

 

 94cmの爆乳はたわわに揺れ動き、91cmの白い巨尻はレオタード状の戦闘服に深く食い込んでいる。M字バングに近しい紺髪のショートヘアと、怜悧な金色の瞳はまさしく「王子様」のようであるが、その凹凸の激しい肉体は雄の情欲を掻き立てる「女」そのものであった。

 引き締まった腰に対して、豊穣に膨らんでいる乳房と臀部。そして白い柔肌に滲む甘い芳香は女性のみならず、男性隊員達の理性も幾度となく狂わせてきたらしい。

 

「その指摘は尤もだわ。正気では考え付かないことでしょうね、私がやろうとしていることなんて」

 

 蒼氷色と金色の鋭い眼に背中を刺されながらも、当のシャーロットは何食わぬ顔で眼前のコンピューターと向き合っている。

 夥しい数のコンピューターや書類が積み重なっているこの研究室は、モニターの発光だけが灯りとなっている薄暗い牢獄のようであった。無数の機械を同時に稼働させているためか、空調が止まっているわけでもないのに、この研究室内の空気はかなり温度が高くなっている。

 

「それにしても、さすがは世界随一の科学力を誇るドイツ支部だわ。私の『研究』がこれほど捗ってるのも、ひとえにここの最新設備のおかげね。この基地の設備がオーストラリア支部にもあれば、荒島隊員と叶隊員に造らせたBURKセブンガーの設計も、より早く済んでいたのに……」

「……オーストラリア支部に所属していたあなたが、わざわざこのベルリン基地に異動して来たのも……その『研究』を完成させるためだったのですね」

「BURK風龍を遥かに凌ぐという、新型爆撃機の設計を引き受けたのも……僕達に恩でも売って、見逃して貰うのが目的だったのですか?」

「ふふっ……そうねぇ。それで見逃して貰える程度の『業』なら、私ももっと気楽にやれたのかも知れないわね」

 

 自身の背後で拳を震わせ、怒りに身を焦がしているヴィルヘルミーナと劉静を一瞥しながら。プラチナブランドのボブヘアーを掻き上げるシャーロットは、おもむろに白くむっちりとした脚を組み替えていた。

 その弾みでMカップの白い爆乳がぷるんと揺れ動き、ミニスカートの下に隠されていた際どいパンティが僅かに覗いている。彼女の熟れた極上の肉体から漂う芳香は、すでにこの殺風景な研究室を甘い香りで満たしていた。

 

 雄の本能を激しく揺さぶる蠱惑的な爆乳と、安産型の巨尻を持つ美女達の匂いは、この部屋全体をむわりと包み込んでいる。3人の汗ばんだ「谷間」の深淵には、劣情を苛烈に煽る甘い香りが染み込んでいた。彼女達の豊満な肉体とその貞操を常日頃から狙っている男性隊員達がこの場にいれば、匂いだけで即座に冷静さを失っていたことだろう。

 だが、そうなっていたとしても、その手の連中の欲望が叶うことはない。彼女達のくびれた腰や細い肩に手を回し、寝室に連れ込もうと企んだ男達は皆、痛烈な「お仕置き」をその場で食らって来たのだから。

 

 そんな暴力的な色香とは裏腹な、怜悧な眼差しで――2人と向き直ったシャーロットは、その知的な瞳をスゥッと細めていた。椅子を回転させた弾みで、再び彼女の爆乳がばるんっと躍動する。

 各国支部の男性隊員達や高官達が目を付け、いつか必ず手に入れてやると息巻いている115cmの乳房が、僅かな身動ぎ一つでゆさゆさと揺れ動いていた。彼らに何度も狙われた98cmの白い桃尻も、椅子に押し付けられむにゅりといやらしく形を変えている。

 

「ホピス星に現れた12人のウルトラマンから発せられていた、特有の脳波。その波形を解析したこのデータを使えば、彼らの『信号』――即ち『ウルトラサイン』を人工的に再現することが出来る」

「それを使ってウルトラマンを捕獲し、あわよくば生体兵器に……?」

「そのような所業、僕個人としてもBURK隊員としても、決して許してはおけません」

 

 彼女がこれから造り出そうとしている、新兵器。その「実態」を本人の口から聞かされたヴィルヘルミーナと劉静は、人の道から逸脱している彼女の「計画」に、BURK隊員としての義憤を燃やしている。

 

「……それが『正しい』反応よ。ルーデル隊員、劉静隊員。やはり、あなた達2人を選んだ私の目に狂いはなかったようね」

「何を……言っているのですか」

 

 だが、シャーロット自身はそんなヴィルヘルミーナと劉静の態度を、むしろ歓迎しているようであった。

 得体の知れない女科学者の微笑に2人の女傑は顔を見合わせ、眉を顰めている。扇情的な唇から漏れる甘い吐息は、同性の彼女達すらどきりとさせていた。

 

「聡いあなた達なら、すでに理解していることでしょう? その怒りを燃やしている『正しさ』では、あの星を滅ぼした元凶に勝つことは出来ない。『正しいまま』でこの地球を守り抜くには、人類はまだあまりにも幼い。例え、ウルトラマンが付いているとしてもね」

「……それは今、あなたのような人間も含めたこの星の人類全てを守ろうとしている、ウルトラアキレスへの冒涜です」

「そして……あなたの造る兵器を信じてきた、仲間達への裏切りです」

「そうね、その通りだわ。……だからこそ、あなた達のような『正しい人間』が必要なのよ」

 

 自分に対して敵意を露わにするヴィルヘルミーナと劉静。そんな彼女達の根底にある「正義感」こそが必要なのだと、シャーロットは静かに、そして力強く訴える。

 

 ――彼女の目論見は、決して許されることではない。だがそこには、確かな「信念」が灯されていた。

 





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 今回はシャーロット博士の思惑を改めて掘り下げる、ちょっとしたシリアス回となります。このお話は彼女達3人の会話劇が主軸となっているため、実は戦闘らしい戦闘はありませんのでご注意ください。次回の後編にも続きますぞ〜(´-ω-`)
 ちなみに今回のお話で触れられたBURK風龍という爆撃機のデザインは↓の通りとなっております。特別編「ウルトラカイナファイト」のpart11でもちょっこし触れたことのある機体ですね。俊泊先生、デザインありがとうございました(о´∀`о)


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 また、現在は特別編で初登場したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」が連載中となっております! こちらの作品ではザイン時代のイヴァンナも登場しておりますし、BURK風龍も本格的に活躍しておりますぞ!
 加えて、外星編で初登場したウルトラマンリードこと荒島真己を主人公としつつ、BURK隊員達の日常を描いた平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」も連載中です!
 さらに、X2愛好家先生が公開されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」では、外星編で初登場したウルトラマンメディスこと鶴千契にスポットを当てた物語が展開されております! 今話で触れられたBURKセブンガーと、そのパイロットの荒島隊員は、こちらの作品でも大暴れしておりますぞ!
 機会がありましたら、是非こちらの作品群もご覧くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 それから、現在こっそ〜りと新章&新企画を準備し始めている「機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-(https://syosetu.org/novel/223795/)」もどうぞよしなに……(>人<;)
 ではではっ、次回の後編もお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 「ウルトラマンザイン」に登場したバルタン星人のエヴェトくんに影響されて、拙作に登場していたバルタン星人にも初めて個体名が付きますた。「ウルトラレグルス&ドクテラファイト」に登場していたバルタン船団の無名リーダー改め、ラスヴァーダくんをどうぞよろしく(?)


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暗躍編 ウルトラレディーズファイト 後編

 

 シャーロットの研究室を照らしている無数のモニターの中には、ごく一般的なテレビも紛れている。そこでは日本に居るウルトラアキレスが、怪獣と熾烈な格闘戦を繰り広げているニュース映像が中継で流されていた。

 「ミイラ怪獣」の異名を取るドドンゴの背に跨ったアキレスは、その頭上から一方的にチョップの連打を見舞っている。

 

 すでに彼の実力は、一流のウルトラ戦士と呼んでも差し支えない域に達しているのだろう。だがシャーロットはそれでもまだ、地球に迫ろうとしている「脅威」を排除するには遠く及ばないのだと「分析」していた。

 

 1年前のあの日――BURK惑星調査隊がホピス星に辿り着いた頃には、すでに惑星全域が焦土と化していたというのに。星を焼いた大爆発に巻き込まれていたはずのキングジョーは、星が滅びた後も継戦能力を維持していた。

 そのキングジョーは傷付いた状態でありながら、12人のウルトラマンとBURKセイバー隊を同時に相手取り、互角以上の勝負を繰り広げていたのである。全てにおいて、規格外であるとしか言いようがない。そして、それほどの怪物ですら、ホピス星を滅ぼした「元凶」には歯が立たなかったということなのだ。

 ここ最近は、あの12人のうちの1人である銀十字の紅き戦士(ウルトラマンメディス)が度々この地球に現れ、アキレスを手助けしているようだが。他の戦士達がほとんど現れていないところを見るに、ホピス星で遭遇した彼らを常駐戦力として数えることも難しい。

 

 ――アキレス1人が一流になったところで、何の保証になるというのか。その冷酷な評価が、シャーロットの結論だったのである。

 

 このドイツ支部も、世界屈指の科学力を活かした新兵器を続々と開発しているようだが。それらの兵器群でも、ホピス星のキングジョーすら蹴散らした「元凶」の力に届くとは、決して言い切れないだろう。

 BURKセブンガーを凌ぐ火力を誇る、ドイツ支部の最新鋭大型戦闘機――「BURKケルベロス」でも、必ず勝てるという保証は無い。その機体を駆る「ツェルベルス隊」の美しき女傑(パイロット)達が聞けば気を悪くするかも知れないが、それが事実なのだ。 

 伝説の怪物の名を冠するその大型戦闘機は今日に至るまで、このベルリンに現れた怪獣達を何体も駆逐して来た。機体そのものも、それを操る強く気高き美女達も、間違いなくドイツ支部の一翼を担う存在と言えるだろう。恐らく純粋な戦力としては、リーゼロッテとヴィルヘルミーナのBURKセイバーを遥かに上回っている。

 

 ツェルベルス隊とBURKケルベロスは紛れもなく、「最強格」と呼ぶに相応しい。彼女達はその評価に値するだけの戦果を収めてきた。それを疑う余地はない。

 だが、その戦果は全て地球に現れた怪獣に対するものでしかない。この地球の外側に犇めいている、まだ見ぬ宇宙の強者達にも通用するとは限らないのだ。ホピス星の惨状と死闘を直に目撃したシャーロットの見解としては、いかにBURKケルベロスが強力であろうとも、ツェルベルス隊が精強であろうとも、楽観視は出来ないのである。

 

「私の『過ち』を正しく理解し、それを許せないと正しく怒ることが出来る。……私はそんな人間にこそ、全てが終わった先の未来を導いて欲しいの。あなた達も、ツェルベルス隊も……こんな時代の犠牲にさせるわけには行かない」

「全てが終わるまで……僕達に、指を咥えてあなたの所業を見ていろ、とでも?」

「弘原海隊長や駒門隊員では出来ないことでしょう? 彼らも決して鈍いわけではないけれど……あなた達ほど、『大局』が見えているわけではないもの」

 

 そんな彼女が溢した言葉は、決して許容出来るものではなかった。

 仲間を愚弄するようなシャーロットの物言いに、冷酷な殺意を駆り立てられたヴィルヘルミーナと劉静は、鋭い激情に身を委ねるようにホルスターからBURKガンを引き抜く。その弾みで、爆乳美女達の熟れた果実がぶるんっと躍動していた。白く瑞々しい柔肌に、ぴっちりと隙間なく張り付いている特殊戦闘服は、その張りのある豊穣な乳房を蠱惑的に強調している。

 

「――ッ!」

 

 そして。テレビの中継映像に映されているアキレスがイーリアショットの一閃でドドンゴを粉砕し、現地の報道陣の歓声が画面越しに響き渡って来た瞬間。

 ヴィルヘルミーナと劉静は躊躇うことなく――引き金を、引くのだった。発砲の瞬間、2人の白く豊穣な爆乳と巨尻がどたぷんっと揺れ動く。男達が幾度となく喉を鳴らし、組み伏せようとしてきた極上の女体が、発砲の反動で甘い匂いの汗を散らしていた。

 

「……無礼(なめ)られたものですね。リーゼロッテも、ツェルベルス隊の皆も、その言葉を聞けば私達と同じ気持ちになるでしょう」

「僕達はあなたの思想に共感などしていなければ……理解を示した覚えもない」

 

 その銃口から放たれた二つの熱線は、白く艶やかなシャーロットの脚――の間近に着弾していた。だが、足元に光線銃を撃ち込まれても女科学者は全く動じていない。

 2人が銃を抜くことも、自分を殺すことまでは出来ないということも、全て理解しているかのような貌であった。これまで幾度となく、命と貞操を脅かされてきた経験の豊富さ故か。彼女は何もかも見透かしたような眼で、2人の爆乳美女を見つめている。

 

 ――決して許しはしない。だが、その言い分を理解出来ないわけではない。だからこそ「理解」を示すのではなく、「利用」することに決めた。

 

 それが、ヴィルヘルミーナと劉静が下した決断であった。

 そしてそれは、シャーロットの思惑通りでもあったのである。

 

「ただ、その『信念』を汲むだけのことです」

「あなたの『業』を、赦すつもりはありません」

「結構よ、それで」

 

 

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 蠱惑的な微笑を崩さない女科学者に対して。その真意を知った女傑達の貌は、どこまでも冷たかった。

 

 ◇

 

 ――その後、人工ウルトラサイン発信装置「イカロスの太陽」は実証試験に成功。

 

 だが試験の成果を受けて、実用化が検討され始めた直後。ヴィルヘルミーナと劉静の告発によって、その悪辣さが露呈した運用計画は凍結。

 ほどなくして、開発責任者のシャーロットはBURKそのものから追放されてしまうのだった。彼女の美貌に執着し、殺すには惜しいと声を上げた高官達が居なければ――その頭脳を危険視され、即座に暗殺されていたことだろう。

 

 しかし、シャーロット自身にとってはそれすらも「シナリオ通り」だったのである。

 2人に告発される直前、発信装置の本体をドイツ支部から日本支部に移していたため、「イカロスの太陽」はそのまま日本支部の管轄下で封印されることになったのだ。

 

 ウルトラマンの力を兵器に利用する。それほどの悪事にも使えてしまう「イカロスの太陽」が無ければ、人類はホピス星を滅ぼした巨悪に打ち勝つことは出来ない。

 だからこそシャーロットは、せめてその力を正しく使える人間――即ち、弘原海に託したかったのである。

 

 そんな彼女の真意を理解し、その上でBURK隊員として彼女を裁くと決めた2人の女傑に、シャーロットは「イカロスの太陽」の処遇を委ねたのだ。

 その目論見通り、装置が日本支部に移されたタイミングでシャーロットの「狂気」を糾弾したヴィルヘルミーナと劉静は、彼女の「置き土産」を弘原海へと繋ぐことに成功した。

 

 質実剛健という言葉を体現してきた弘原海や琴乃では、このような清濁を併せ呑む道は選べなかっただろう。

 故にシャーロットはそれが出来る2人に、自分に引導を渡す役を任せたのだ。そしてヴィルヘルミーナと劉静も、不本意ながらその思いに応える形となったのである。

 

 その後間も無く、BURKを去ったシャーロットは事前に開発していたレーダー撹乱装置で行方を眩まし、消息不明となる。

 彼女を手に入れるために声を上げていた高官達は、ここぞというところで極上の獲物を取り逃がしてしまうのだった。張りのある豊満な乳房も、安産型の桃尻も、蠱惑的な唇も。終ぞ、誰のものにもならなかったのである。

 

 やがて。彼女達の策により「イカロスの太陽」を託された弘原海は、この数年後――世界の命運を左右する「決断」を下すことになるのだった。

 それは決して、万人から賞賛される道ではなかったが。少なくとも彼は紛れもなく、世界を救える道を選んでいたのである――。

 





【挿絵表示】


 今回は前回に引き続き、シャーロット博士の思惑を改めて掘り下げる、ちょっとしたシリアス回となりました。彼女のしでかしたことは決して許されることではありませんが、その信念無くして地球は救えなかったこともまた事実。そんなやるせない現実と向き合いながらも、精一杯正義に邁進しようとする爆乳美女達のお話となりました(´-ω-`)
 おかしい……! 私はこの3人がえちえちなピンチに遭う話を書こうとしていたはずなのに……! かくなる上はおまけイラストでそれっぽいのをお出しするしか……!(ノД`)

 また、現在は特別編で初登場したウルトラマンザインこと椎名雄介のルーツを追う、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」が連載中となっております! こちらの作品では、ザイン時代のイヴァンナも登場しておりますぞ!
 加えて、外星編で初登場したウルトラマンリードこと荒島真己を主人公としつつ、BURK隊員達の日常を描いた平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作作品「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」も連載中です!
 さらに、X2愛好家先生が公開されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」では、外星編で初登場したウルトラマンメディスこと鶴千契にスポットを当てた物語が展開されております! シャーロットが今話で触れていたメディスの活躍は、こちらの作品でボリュームたっぷりに描かれておりますぞ! 今話で存在が明かされた「BURKケルベロス」や、その機体に搭乗している「ツェルベルス隊」の美女パイロット達についても、こちらの作品でガッツリと描かれております!
 機会がありましたら、是非こちらの作品群もご覧くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 それから、現在こっそ〜りと新章&新企画を準備し始めている「機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-(https://syosetu.org/novel/223795/)」もどうぞよしなに……(>人<;)

 最近は「ウルトラ怪獣モンスターファーム」等に掛かりっきりですし、次回の更新は今のところ未定となっております。ウチのファームのBURKセブンガーはまだまだ未熟です故……。ですが、今話のようなちょっとした小話が浮かんで来る時があれば、こうして形にして行きたいなーと思っております。ではではっ!٩( 'ω' )و


Ps
 あ……ありのまま今知ったことを話すぜ! 拙作由来の2次創作及び3次創作の作品総数がすでに「20作品」を超えていた……! な、何を言ってるか分からねーと思うが、とにかく応援ありがとうございます……!((((;゚Д゚)))))))


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聖夜編 ウルトラファンロンファイト

◇今話のヒロイン及び登場メカ

駒門琴乃(こまかどことの)
 BURK日本支部きっての女性エースパイロットであり、部下達からの信頼も厚い質実剛健な女傑。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女。当時23歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

劉静(リウジン)
 BURK中国支部から惑星調査隊に参加していた爆撃機隊の女性パイロットであり、ボーイッシュな顔立ちと紺髪金眼が特徴。22歳。
 スリーサイズはバスト94cm、ウエスト60cm、ヒップ91cm。カップサイズはG。
 ※原案は俊泊先生。

◇BURK風龍(ファンロン)
 BURK中国支部をはじめとする多くの支部で制式採用されている現役の複座型爆撃機であり、Tu-22Mを彷彿させる鋭角的なシルエットが特徴。翼下のハードポイントにはスペシウム弾頭が搭載されている。
 ※原案は俊泊先生。


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 ウルトラアキレスが暁嵐真(あかつきらんま)と一体化し、この青い地球を守り抜くための戦いに立ち上がってから数ヶ月。

 

 数多の死闘を経て、救世主としての名声を不動のものにした彼は、ようやくこの年の白き聖夜(ホワイトクリスマス)を迎えようとしていた。戦いの日々に疲れ果てた心を、ほんの僅かでも癒すために。

 

 ――だが、侵略者達には地球人の都合など通用しない。例えクリスマスだろうと年の瀬だろうと、彼らは己の野望に従い攻撃を仕掛けて来るのだ。

 

『デュウワッ!』

『フォオッ!』

 

 純白の雪が降り積もる、東京の遊園地。

 先ほどまで艶やかなネオンに彩られていたその敷地内の設備を次々と薙ぎ倒しながら、遥か遠くの星から来た巨人達は、真冬の夜に苛烈な格闘戦を繰り広げている。

 

 幾多の死線を潜り抜け、一流のウルトラ戦士に成長したアキレス。

 そんな彼とも互角の勝負を繰り広げているのは――古くから「宇宙忍者」の異名で恐れられている、永遠の宿敵ことバルタン星人だった。

 

(こいつ、バルタン星人なのに分身もテレポートも使っていない……! そんな力に頼らなくても、俺なんて簡単に倒せるって言いたいのかッ……!?)

 

 影分身やテレポートといった特殊能力を得意とするはずの彼は、敢えてその一切を使おうとせず、真っ向からの肉弾戦だけでアキレスと渡り合っている。

 

 だが、その佇まいには常に「余裕」の色があることから、決してその手の能力が使えないわけではないようだ。

 アキレスが察している通り、バルタン星人は能力に依存することなく彼を倒そうとしているのだ。

 

 両者の殴り合いによって半壊した遊園地。その敷地内で辛うじて破壊されずに残っていた設備に灯るネオンの光が、真正面から組み合う巨人達を照らし上げている。

 

『フォオッフォオッフォオッ……!』

『デュッ……!?』

 

 その設備すらもグシャリと潰されてしまったのは、それから間も無くのことだった。

 アキレスの両腕を鋏で捕らえたバルタン星人が、組み合いの体勢から急速に身を引いたのである。巴投げの要領で投げ飛ばされてしまったアキレスは宙を舞い、設備の上に叩き付けられてしまうのだった。

 

『フォッフォッフォッ……』

『デュ、ウゥッ……!』

 

 能力になど頼らずとも、お前を殺すことなど容易い。言外にそう告げているかのように、バルタン星人は特徴的な声を上げてアキレスの姿を嘲笑っている。

 

 一方、設備に叩き付けられたアキレスはダメージの蓄積が激しいのか、その場から上手く立ち上がれずにいた。そんな彼を踏み付けてやろうと、バルタン星人は地響きを立ててアキレスの背に迫ろうとする。

 

『……! あれは……!』

 

 ――だが、そうはさせじと1機の爆撃機が空を切って飛び込んで来た。

 

 Tu-22Mを彷彿させる鋭角的なシルエットを特徴とする、現役爆撃機のBURK風龍(ファンロン)だ。

 

 BURK中国支部で主に運用されている機体であり、そのうちの1機が試験的に日本支部にも配備されていたのである。

 翼下のハードポイントに搭載されている高性能スペシウム弾頭「神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)」は、すでに発射体勢に突入していた。

 

「アキレス、そのまま伏せるんだッ! ここは私達に任せろッ!」

 

 レーシングバイクのシートを想起させる、伏臥式のメインコクピット。

 そこに座している駒門琴乃(こまかどことの)隊員は、Lカップの白い爆乳をシートにむにゅりと擦り付けながら、安産型の桃尻をばるんっと突き出し、亜麻色のロングヘアを艶やかに振り乱して声を張り上げている。

 

 その豊満な肉体に滲む甘い女の香りが、狭いコクピット内に充満していた。よほど強靭な理性を持っている男性隊員でなければ、今の彼女を前にして平静を保つのは難しい。

 

「待たせたな、アキレス! 中国支部から仕入れたコイツで……目にモノ見せてやらァッ!」

 

 その後方に座していた弘原海(わだつみ)隊長も。眼前に突き出された琴乃の爆尻と、そこから漂う蠱惑的な芳香に気を取られることなく、鋼の理性を駆使してアキレスを鼓舞していた。

 

 並の男性隊員なら、琴乃のむっちりとしたヒップに目を奪われていたところだが。そんなことでは、爆乳美女揃いの日本支部での隊長など務まらないのである。

 一部の隊員から「ゴリラ」と揶揄されることも多い質実剛健な巨漢は、目の前の巨尻も意に介さず、「戦友」であるアキレスの窮地にのみ目を向けていた。

 

「僕達が来たからには……もう安心だよ、アキレスッ!」

 

 そして――さらに後方のブリッジから2人を指揮していた、中国支部出身の劉静(リウジン)隊員も、アキレスを励ますように凛々しい声を上げている。鋭い金色の眼は、バルタン星人の巨体を勇ましく貫いていた。

 

 鋭い切れ目の眼差しと、琴乃にも劣らぬ圧倒的なプロポーションを誇るボーイッシュな爆乳美女。そんな彼女は日本支部にBURK風龍の運用方法を教導するため、中国支部から一時的に来日していたのだ。

 

神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)……発射ッ!」

 

 ナイフのように鋭い眼光でバルタン星人を射抜く彼女が、白い手を前方に振って指示を飛ばす。

 その仕草の弾みで、Gカップの乳房と安産型のヒップがどたぷんっと躍動し。扇情的な女体に滲む甘い匂いの汗が、紺色のショートヘアから勢いよく飛び散る。数多の男性隊員を狂わせて来た彼女の肉体から滲み出る芳香が、このブリッジ内を満たしていた。

 

 その瞬間、彼女の気品溢れる声色に応じて発射されたスペシウム弾頭が、バルタン星人目掛けて襲い掛かって行く。

 バルタン星人にとって、スペシウムは最大の弱点。当たれば当然、タダでは済まない。

 

『フォオッ……!』

 

 自身の「天敵」であるスペシウムで精製された弾頭を目の当たりにした宇宙忍者は、焦燥を露わにその場からテレポートで移動するのだった。

 

 これまで特殊能力に頼らずアキレスを圧倒していた彼は、とうとうそれまで保っていた「余裕」を失ったのである。そして外されたスペシウム弾頭は、アキレスの近くに着弾しようとしていた。

 

「不味い、このままじゃアキレスにッ!」

「いいえ隊長、これで良いのです。……彼になら喜んで貰えることでしょう。僕達からの、ささやかな『クリスマスプレゼント』なのですから」

「な、なに……!?」

 

 その危機的状況に、琴乃と弘原海が焦りの声を上げる中。劉静は独り蠱惑的な微笑を浮かべ、玉座のような指揮官用の大きな肘掛付きの椅子に腰を下ろし、白く肉感的な両脚を組んでいる。安産型のヒップはむにゅりと形を変え、白い乳房もその弾みでぷるんっと揺れ動いていた。

 

 女性を惑わす中性的な美貌と、雄の本能を掻き立てる芳醇な色香とプロポーション。

 その両方を併せ持ち、その肉体から絶えず甘い芳香を振り撒く「中国支部の王子様」は、優雅な佇まいで真紅の巨人を見下ろしていた。

 

『デュッ……!』

 

 幾人もの男性隊員達の情欲を煽って来た、挑発的にして蠱惑的な劉静の微笑。

 その妖艶な笑みを遠方から目撃したアキレスは、彼女の「意図」を察すると即座に上体を起こして、スペシウム弾頭に指先を向ける。

 

 彼の指先から発せられた念力が、「弾道」を捻じ曲げたのはその直後だった。

 

『……デュァァアーッ!』

 

 そして、バルタン星人がテレポートで逃げた先へと――スペシウム弾頭を向かわせたのである。

 

『フォオオオーッ!?』

 

 念力による軌道変更までは予測出来なかったバルタン星人は、とうとうスペシウム弾頭に直撃してしまうのだった。

 凄まじい爆炎が天を衝き、宇宙忍者の巨躯を飲み込んで行く。

 

「ふふっ……どうやら、我々の『クリスマスプレゼント』は正しく届けられたようですね。弘原海隊長も駒門隊員も、ご協力頂き感謝致します」

「劉静隊員、お前は初めからそのつもりで神虎炸裂誘導弾を今の発射角から……?」

「人が悪いぜ、全くよぉ……!」

「うふふっ……それはそれは。お褒めに預かり光栄です」

「……はぁ〜」

 

 その光景を優雅に見届けている劉静は、初めからアキレスの念力も作戦に入れて、スペシウム弾頭を撃つよう指示していたのである。

 自身の予測通りに動いた2人の巨人を見下ろす女傑は、得意げな笑みを浮かべて背を反って胸を張り、長い脚を組み直していた。一方、弘原海と琴乃はそんな劉静の振る舞いに顔を見合わせ、深々とため息を吐いている。

 

「敵を騙すには、まず味方から。ふふっ……僕の好きな言葉です」

 

 艶やかな笑みを溢す劉静が、白く優美な脚を組み替える際。引き締まった腰を少しくねらせただけで、豊満な乳房がぷるぷると揺れ、大きな桃尻がむにゅりと歪んでいた。

 

 同僚の男性隊員や上層部の高官を含む多くの男達が、我が物にしようと虎視眈々と狙い続けている極上の女体は、その隅々に濃厚な香りを滲ませている。

 

『……』

 

 そんな彼らを他所に、アキレスとバルタン星人は未だに睨み合いを続けていた。

 

 弱点であるスペシウム弾頭をまともに喰らったというのに、このバルタン星人はなおも生き延びていたのである。

 

『……よもや、我にこれほどの深傷を負わせる者共が地球に居たとはな。ウルトラ戦士の貴様さえ倒せば、後は烏合の衆に過ぎんと思っていたが……!』

『BURKの皆を侮っていた時点で……すでに勝負は決まっていたんだ。もう退け、バルタン星人! そして2度と、この地球に現れるな!』

 

 その尋常ならざるタフネスから、この個体が並々ならぬ「強豪」であることを理解していたアキレスは、ここで決着を付けるのは困難であると判断し、撤退を促している。

 

 だが、スペシウム弾頭を浴びてもなお両の脚で地を踏み締めているバルタン星人は、ふらつきながらも首を振って「拒絶」の意を示していた。

 

『ふっ……そうは行かん。我には……この星を制し、来るべき「決戦」に備えるという使命があるのだ。それが果たされる日が来るまでは……我は断じて、この星を諦めはせん!』

『決戦……!? どういうことなんだ、それは!』

『……貴様がこの先も生き残り続けていれば、自ずと分かることだ。覚えておけ、我が名は「ラスヴァーダ」! いつか貴様達を滅ぼし、この惑星を掌握する覇者の名だ!』

 

 ラスヴァーダと名乗ったバルタン星人は、よろめくように数歩引き下がると――再びテレポートで忽然と姿を消してしまう。

 今度は短距離の移動ではなく、星そのものから離脱するほどの長距離転移であった。

 

『ま、待てッ! ラスヴァーダッ! 「決戦」って……一体、どういうことなんだ……!?』

 

 咄嗟に手を伸ばすも、空を掴むだけに終わってしまったアキレスは、バルタン星人ことラスヴァーダの気配が完全に消失したことを悟り、独り夜空を仰ぐ。

 

 しんしんと降りしきる白い雪と、艶やかなネオンに彩られた夜景に彩られた聖夜。

 その夜空の下に立つ真紅の巨人は、戦いに疲れた心を癒す間も無く、紅い拳を握り締めていた。

 

 彼が言い残した「決戦」という言葉には、どのような意味が込められているのか。その意味が分かる時、自分はまだ生きているのか。頭上を旋回飛行しているBURK風龍に見守られる中、アキレスは独り思案する。

 

 それら全てが解き明かされるのは、この戦いから約5年後のことであった――。

 





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 今回登場したラスヴァーダは、過去編「ウルトラレグルス&ドクテラファイト」に登場したバルタン星人と同一個体だったりします。「覇者になる!」と息巻いていた彼も約2年後には、アキレスの2期後輩に当たるエナジーの手でやっつけられてしまうということですな……(ノД`)
 ちなみに今回活躍したBURK風龍のデザインは↓の通りとなっております。俊泊先生、本機のデザインありがとうございました!(*´ω`*)


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Ps
 なんで急に個体名を付け始めたのかと申しますと、「ウルトラ怪獣モンスターファーム」で拙作由来の個体を作りたいな〜というのがきっかけでございました。BURKセブンガーならすでに3号機まで居ます(作者自ら設定無視して行くスタイル


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雪辱編 ウルトラアキレスファイト

◇今話の登場ヒロイン

駒門琴乃(こまかどことの)
 BURK日本支部きっての女性エースパイロットであり、近接格闘の心得もある質実剛健な女傑。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女。当時23歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

八木夢乃(やぎゆめの)
 かつては惑星調査隊にも参加していた、明るく快活なBURK日本支部の女性パイロットであり、浅栗色のサイドテールが特徴。当時18歳。
 スリーサイズはバスト85cm、ウエスト55cm、ヒップ81cm。カップサイズはF。
 ※原案は魚介(改)先生。

望月珠子(もちづきたまこ)
 かつては惑星調査隊にも参加していた、冷静沈着なBURK日本支部の女性パイロットであり、ショートボブの髪が特徴。ややぽっちゃりとした体型の持ち主。当時20歳。
 スリーサイズはバスト90cm、ウエスト65cm、ヒップ89cm。カップサイズはG。
 ※原案は赤犬先生。


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 ウルトラアキレスが暁嵐真(あかつきらんま)と一体化した瞬間を契機に、地球の命運を賭けた戦いの日々が始まってから数ヶ月。

 BURKの精鋭達と共に数多の強敵達を打ち破ってきた彼らの力量は、すでに一流のウルトラ戦士と呼べる域にまで到達していた。

 

 ――にも、拘らず。

 

「アキレスが、嵐真が、負けた……!?」

「こんな、馬鹿なッ……!」

 

 バルタン星人のラスヴァーダを撃退して新年を迎えたこの日。ウルトラアキレスはシルバーブルーメ戦以来となる、「敗北」を喫したのである。

 その瞬間を、制式戦闘機「BURKセイバー」の機内から目撃していた弘原海(わだつみ)隊長と駒門琴乃(こまかどことの)隊員は、真紅の巨人が「凶刃」の前に斃れる光景に戦慄していた。

 

 ウルトラアキレスを打倒した侵略者の名は、「奇怪宇宙人」の異名を取るツルク星人。その両手の刃は、アキレスの各部位を防護しているプロテクターすら穿つほどの切れ味を秘めていたのだ。

 破壊された街の中央で倒れ伏したアキレスの巨体が、真紅に耀く光の粒子と化して霧散して行く。ダメージの蓄積により変身が維持出来なくなっているのだろう。

 

「隊長、すぐに嵐真を救出しなくては! あのまま放置していては、踏み潰されるのも時間の問題です!」

「……あぁ、分かってる! 駒門機、八木(やぎ)機、望月(もちづき)機の3機で陽動に掛かれ! その間に俺が下に降りて嵐真を助け出すッ!」

 

 BURKセイバーでの援護射撃に徹していた弘原海と琴乃は、その光景をただ見ていることしか出来なかった。だが、ただ歯噛みしているだけでは何も変わらない。

 

「りょ、了解っ! 嵐真君、生きてるかなぁっ……!?」

「やめなさい八木、縁起でもないッ! あれくらいで彼が死ぬわけないじゃない、あれくらいでッ……!」

「狼狽えるな八木、望月! 今は嵐真を救うために我々が最善を尽くす時だッ! 各機、ミサイルで一気に仕掛けるぞッ!」

 

 八木夢乃(やぎゆめの)隊員、望月珠子(もちづきたまこ)隊員、そして琴乃。彼女達3人の爆乳美女が駆る3機のBURKセイバーは、両翼下のミサイルを連射してツルク星人の注意を引き付けていた。

 

「対怪獣ミサイル、全弾発射ァッ!」

 

 アキレスの敗北という事態は彼女達の肢体に極度の緊張を走らせ、その柔肌から濃厚なフェロモンが分泌されて行く。抜群のプロポーションを誇る彼女達の身体は、しとどに汗ばみ蠱惑的な匂いを振り撒いていた。

 

 レーシングバイクのシート状の操縦席に下腹部を擦り付け、豊満な乳房をむにゅりと押し付けている彼女達は、安産型の巨尻をばるんっと後方に突き出していた。

 白い柔肌に隙間なく張り付き、彼女達のボディラインをぴっちりと強調しているレオタード状の特殊戦闘服には、爆乳美女達の汗がじっとりと染み込んでいる。出撃前に指先で食い込みを直していた桃尻からも、輝かしい汗が飛び散っていた。

 

「この際効かなくたっていいから……ちょっとは私達のことも見なさいよねッ! BURK日本支部きっての、綺麗どころが揃ってるんだからぁあッ!」

 

 そんな甘く芳醇な汗の香りがコクピット内を満たす中、焦燥を隠し切れない爆乳美女達は、操縦桿をギリッときつく握り締めていた。その1人である八木は軽口を叩きながらも、恐怖に抗おうと吠えている。

 一人前のウルトラ戦士に成長したはずのアキレスでさえ敗れた相手に、BURKセイバーの装備が一体どこまで通用するというのか。そんな考えが、頭から離れないのだ。

 

「もう少しだけ耐えてくれ、駒門、八木、望月……! 待ってろよ、嵐真ッ……!」

 

 一方。彼女達の奮闘に乗じて、近くの平地に移動していた弘原海機のBURKセイバーは、そのまま垂直に緊急着陸していた。そこから即座に飛び出して来た弘原海は、瓦礫が散乱している戦場の中心で倒れている嵐真を発見する。

 

「ちくしょう……! しっかりしろ嵐真、嵐真ァアッ!」

 

 頭から大量の血を流し、白目を剥いて気絶している嵐真。その凄惨な姿に胸を痛めながらも、弘原海は必死に呼び掛け続けていた。

 

 ――この後、嵐真の救出を終えた日本支部のBURKセイバー隊は即座に退却。ツルク星人の侵攻を阻止出来なかった日本支部は、一つの小さな街を失うことになるのだった。

 

 ◇

 

 それから数日後。意識を回復させた嵐真は何とか歩ける状態にまで持ち直していたのだが、彼の心は街を守り切れなかったことへの悔しさに激しく苛まれていた。

 まだ傷が完全に癒えていない彼の護衛として、共に住宅街の夜道を歩いている琴乃は、そんな彼の沈痛な横顔を神妙に見遣っている。BURK隊員として1人の大人として、嵐真とアキレスに重責を負わせていることへの罪悪感に、彼女も人知れず拳を震わせていた。

 

「くそッ……! 俺のせいで、俺のせいであの街がッ……!」

「……もうよせ、嵐真。幸い、住民の避難は完了していたのだ。お前とアキレスが身体を張って時間を稼いでいてくれたおかげで、多くの人命が救われた。……失ったものに気を取られるのは、そこまでにしておけ」

 

 頭に巻いた包帯に手を当てながら、悔しさに顔を歪める嵐真。そんな彼の背にか細い手を添える琴乃は、歩むたびにLカップの爆乳をたぷんたぷんと弾ませている。冬場に合わせた厚着でも全く隠し切れない彼女の乳房は、セーターを内側からはち切れそうなほど押し上げていた。

 

「それに今は……奴に対抗するための格闘術を授けてくれる『教官役』を、ある達人に頼んでいるところだ。彼から技を教われば、きっとツルク星人にも対抗出来るはずだ」

「……ありがとうございます、琴乃さん。ところで、その達人って……どんな人なんですか?」

「あぁ、それはだな……んッ!?」

 

 ――すると、次の瞬間。夜の東京を照らす月の明かりを遮るように、人間大サイズの異星人が宙を舞って2人の前に現れた。

 

「あ、あいつはまさかッ……!」

 

 両手に刃を持つその異星人は、姿形こそ全く違うが――先日の戦闘でアキレスを退けた巨人と、全く同じ殺気を纏っている。嵐真も琴乃も、遭遇した瞬間に本能で理解していた。

 

 今目の前にいるこの異星人は、あの時のツルク星人なのだと。

 

「……! 嵐真、逃げろッ!」

 

 即座に臨戦態勢に入った琴乃は、飛び掛かって来たツルク星人の両手首を掴んで斬撃を阻止する。その揉み合いの中で琴乃は嵐真を逃がそうと必死に叫ぶが、ツルク星人は容易く彼女の拘束から力技で脱出してしまう。

 その弾みで琴乃が体勢を崩し、隙が生まれた瞬間。瞬時に立て直したツルク星人は琴乃に向けて両手の刃を激しく振るい、斬撃の嵐を浴びせる。

 

「うぁあぁッ……!?」

「琴乃さんッ!」

 

 だが、この夜道に血飛沫が上がることはなかった。ツルク星人は敢えてすぐには殺そうとせず、彼女の衣服だけを切り裂いていたのだ。月明かりに照らされた扇情的な下着姿に、嵐真は思わず声を上げる。

 安産型の巨尻を地面にぶつけた琴乃は、立ち上がろうにも足腰に力が入らないことに気付く。絶望的な力の差による恐怖には、歴戦の女傑ですら腰を抜かしていたのだ。

 

「あうッ……!?」

 

 ツルク星人の戯れは、それだけでは終わらない。彼の刃は琴乃の肌を傷付けることなく、白い爆乳を覆っていたブラジャーだけを斬り飛ばしてしまう。

 皿に落とされたプリンのように、琴乃の白く豊穣な乳房がどたぷんっと放り出されていた。「先端部」を辛うじて死守している最後の砦(ニプレス)まで露わにされ、琴乃の精神は羞恥と恐怖に翻弄される。

 

(や、やられる……! 今度こそッ……!)

 

 極度の緊張に汗ばむ琴乃の白い肉体から、ブラジャーから解き放たれた特大の爆乳から、濃厚なフェロモンがむわりと匂い立つ。白い柔肌を伝う汗は、凹凸の激しい彼女のボディラインをなぞるように滴っていた。

 

 頭から爪先に至るまでの全ての肌から汗が噴き出し、その汗の一滴一滴が琴乃の肉体を伝って行く。特にブラジャーから解放された二つの巨峰からは、その「内側」で熟成されていた女の芳香がむわっと立ち込めていた。

 数多の困難を踏破して来た、白く肉感的な美脚からも。亜麻色の艶やかなロングヘアからも。汗がじっとりと染み込んだ赤いパンティからも、雄を誘う芳醇な匂いが滲み出ている。

 

 それらの匂いは全て、琴乃の緊張と恐怖から生み出されたものだと、ツルク星人は理解していた。それ故に彼は琴乃を嘲笑うかのように、尻餅をついたまま動けない彼女に「とどめ」を刺そうとしている。

 

 

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 「死刑」を執行する刃を罪人に見せ付け、恐怖を煽る「見せ槍」。ツルク星人の腕部を形成しているその切っ先が、尻餅をついている琴乃の白い柔肌に向けられていた。

 この刃が、これから貴様を貫くのだと言わんばかりに。

 

(嵐真、お前だけでもッ……!)

 

 もう自分は助からない。それを理解した上で琴乃は、恐怖に囚われながらも嵐真の命だけは助けねばと考えていた。しかし当の嵐真は敵わないと知りながらも、この場でアキレスアイを引き抜いて変身しようとしている。

 

 このままではどちらも助からない。万事休すか。その結末を予想してしまった琴乃が、きゅっと瞼を閉じた――次の瞬間。

 

「たあぁあッ!」

「えっ……!?」

 

 琴乃の柔肌を隠すように、何者かのコートがふわりと彼女の身体に被される。その温もりに思わず彼女が顔を上げた瞬間――突然現れた1人の少年が、ツルク星人の顔面に痛烈な飛び回し蹴りを放っていた。

 予期せぬ奇襲に一瞬怯んだツルク星人は、乱入して来た謎の少年から始末しようと刃を振るう。だが少年は、ツルク星人が刃を振り抜く前に懐に飛び込み、渾身のボディブローを突き入れていた。

 

「す、凄い……! でも誰なんだ一体、ツルク星人をあんなに圧倒するなんて……!?」

 

 その間に琴乃の側に駆け付けていた嵐真は、ツルク星人を相手に丸腰で圧倒している謎の少年の異様な強さに、生唾を飲んでいた。ブレザー姿であるところを見るに都内の高校生のようだが、どう見ても只者の動きではない。

 

「……そうか、来てくれたか……!」

 

 一方。被せられたコートを握り締めている琴乃は、落ち着きを取り戻したように呟いている。彼女は、少年が何者であるかを知っているのだ。

 あまりの手強さに分が悪いと判断したのか、ツルク星人は少年に背を向けて逃げ出して行く。その超人的な足の速さで、彼は瞬く間にこの夜道から姿を消してしまうのだった。

 

「……ふぅっ。危ないところでしたね、琴乃さん。それと……暁嵐真さん」

「あ、ありがとう、助かったよ……。でも、君は一体……!?」

「……流石、としか言いようがないな。丸腰であのツルク星人を撃退してしまうとは」

「えっ……琴乃さん、彼のこと知ってるんですか!?」

 

 深追いは出来ないと判断したのか、ツルク星人の背を見送った少年は黒髪を靡かせ、嵐真達の方へと向き直る。嵐真が困惑している一方で、琴乃は懐かしい「旧友」との再会を果たしたかのように、微かに頬を緩めていた。

 

「オレは風祭弓弦(かざまつりゆずる)。あなたのことは琴乃さんから聞いていますよ、暁嵐真さん。それとも……ウルトラアキレスとお呼びした方がよろしいでしょうか」

「まさか、こんな形での紹介になるとはな。……彼がお前に技を教えてくれる『教官役』だ、嵐真」

「えぇっ……!? こ、この子がっ……!?」

 

 少年の名は風祭弓弦。今は亡きBURK最優秀隊員風祭勇武(かざまつりいさむ)の息子にして、弱冠14歳で入隊試験に合格したこともあるエリート高校生。

 そして――今から約1年前、ウルトラマンカイナと一体化して恐竜戦車の侵攻から地球を救った人物でもある。彼こそが、琴乃が言っていた格闘術の教官役なのだ。

 

 静かに2人の前に歩み出た弓弦は、琴乃と頷き合うと嵐真の目を真っ直ぐに見つめる。17歳の少年とは思えないその眼付きに、嵐真は思わず息を呑んでいた。

 

「彼の父……風祭勇武は、BURKでその名を知らぬ者は居ないと言われている伝説の隊員であり、現代のBURK式軍隊格闘術を編み出した『開祖』でもあった。その息子である彼自身も、父が作った格闘術の真髄を完璧にマスターしている。私や弘原海隊長も格闘術の心得はあるのだが……達人などと呼べるほどの域ではなくてな。そこで、隊長が彼に声を掛けて下さったのだ」

「……あのツルク星人の脅威は、誰にとっても他人事じゃないんです。協力させてください、暁さん」

「……」

 

 2人の言葉に嵐真は拳を震わせ、ただ俯いている。だが、それは恐れによるものではない。人々を守り抜ける力を欲していた彼にとっての「希望」が、ようやく現れたことへの昂り――武者震いによるものであった。

 

「……嵐真でいい。頼みたいのは俺の方だよ、弓弦君。今すぐにでも教えてくれ、君とお父さんで作り出した……格闘術をッ!」

 

 ◇

 

 ――それから、さらに数日後。

 

 東京湾に再出現したツルク星人は街一つを滅ぼしただけでは飽き足らず、今度は東京を蹂躙しようとしていた。

 東京ゲートブリッジに迫るツルク星人の凶悪な面相に、人々は悲鳴を上げながら我先にと避難している。

 

『デュワッ!』

 

 その侵攻を阻止せんと現れた真紅の巨人――ウルトラアキレスは、前回の戦いからは想像もつかない動きの冴えを見せ、ツルク星人の刃をかわしている。海に足を取られている状況でありながら、彼は上体の捻りだけで斬撃を回避していた。

 

『デュッ! ダッ、ダアァアッ!』

 

 刃の軌道を見切り、刀身の腹に手刀を当てて斬撃をいなし、その隙を突いてチョップの乱打を繰り出す。そんな彼の戦い振りは、1年前の戦いで恐竜戦車を打ちのめしていたウルトラマンカイナを想起させるものであった。

 

 ゲートブリッジの上から、その戦況を独り見守っている弓弦は――頼もしい「後輩」の成長に、微笑を浮かべている。

 

「……さすが、ウルトラアキレスに選ばれた人だな。オレの格闘術をほんの数日でほとんどマスターしてしまうなんて」

 

 1年前の戦いでも、接近戦の技が未熟だった当時のカイナは、一体化を通じて弓弦の格闘術を会得したことによって飛躍的なパワーアップを遂げていた。

 そして今度は、アキレスが依代としている嵐真が弓弦から格闘術を学んだことにより、ツルク星人にも負けない身のこなしを体得している。不思議な縁で繋がったものだと、弓弦はふっと笑っていた。

 

『デュッ……!』

 

 だが、殺意を研ぎ澄ませたツルク星人の一閃が、アキレスの肩部を守っていたプロテクターを斬り飛ばしてしまう。

 劇的なパワーアップを遂げたとは言え、付け焼き刃の特訓だったことに変わりはない。身に付けた技に肉体が追い付いていない今のアキレスでは、カイナほどには弓弦の技を引き出せてはいないのだ。

 

「伏せろアキレスッ! 神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)、全門発射ァッ!」

 

 ――しかし、彼は独りで戦っているわけではない。カイナと弓弦の時がそうだったように、アキレスと嵐真にはBURKの仲間達が付いている。

 

 それを証明するように、弘原海が率いる現役爆撃機「BURK風龍(ファンロン)」の編隊が東京湾の上空に飛来していた。中国支部製の爆撃機で編成された航空機の群れが、空を切ってこの東京湾に馳せ参じている。

 

 そして、翼下のハードポイントに搭載されている高性能スペシウム弾頭「神虎炸裂誘導弾(シェンフーミサイル)」が、ツルク星人の頭上に降り注いで行く。その爆撃を咄嗟に防御しようとしたツルク星人は、アイデンティティでもある両腕を爆炎で吹き飛ばされてしまうのだった。

 

『デュアアァーッ!』

 

 そうなれば、もはやツルク星人に勝ち目などない。爆炎を掻き分けて眼前に飛び込んだアキレスは、頭部のアキレスラッガーを引き抜き――これまでの返礼だと言わんばかりに、斬撃の嵐を見舞う。弓弦との特訓で会得した格闘術の動きが、その刃の軌道に顕れていた。

 細切れになるまで徹底的に切り刻まれたツルク星人の身体は無数の肉片に変わり果て、そのまま東京湾の海中へと水葬されて行くのだった。

 

「ツルク星人、完全に沈黙! アキレスの、俺達の勝利ですッ!」

「よっ……しゃああッ!」

 

 アキレスの完勝を見届けたBURK風龍の編隊は、賛辞を送るように何度か彼の頭上を旋回した後、基地に帰投するべく青空の彼方へと飛び去って行く。

 

『……デュワッ!』

 

 そして、人々の歓声をその巨体で浴びていたアキレスも。橋の上から自分を見守っていた弓弦と頷き合った後、両手を広げて天の向こうへと飛び去って行くのだった。

 

「……見てるかな、カイナ。君のおかげで、オレも彼らも……前に進むことが出来たみたいだよ。ありがとうな……」

 

 そんな真紅の巨人の背を見届けた弓弦は独り、橋の手すりに背を預けると。「後輩」の成長に頬を緩め、優しげに呟いている。

 だが、彼はまだ知らない。カイナからアキレスへと繋がっているこの戦いのバトンが、まだ始まったばかりに過ぎないのだということを――。

 





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 今回は久方振りに、最初の主人公である風祭弓弦が帰って来る回となりました。弘原海や琴乃は物語開始時から今に至るまで何度も登場して来ましたが、彼がまともに出て来たのは恐らく「ウルトラカイナファイト」以来になるのではないでしょうか。最初の頃の設定を再利用したりと、なんだか書いていて懐かしくなるようなお話でございました……(*´꒳`*)

Ps
 今話のツルク星人は舐めプ大好きな変態紳士個体でした。原典個体だとスプラッタになっちゃうから……(ノД`)


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新兵編 ウルトラルーキーファイト 前編

◇今話の登場ヒロイン

駒門琴乃(こまかどことの)
 BURK日本支部きっての女性エースパイロットであり、近接格闘の心得もある質実剛健な女傑。亜麻色のストレートヘアを靡かせるスタイル抜群の美女。当時23歳。
 スリーサイズはバスト108cm、ウエスト62cm、ヒップ91cm。カップサイズはL。

◇アメリア
 BURKアメリカ支部からやって来た若きエリート隊員である、金髪碧眼の勝気な爆乳美女。若くしてアメリカ支部のBURKセイバー隊を率いている才媛であり、近接格闘においても非凡な才能を持っている。当時19歳。
 スリーサイズはバスト102cm、ウエスト60cm、ヒップ93cm。カップサイズはK。

凛風(リンファ)
 BURK風龍(ファンロン)の開発に投資している大富豪の令嬢であり、自身も爆撃機パイロットになることを目指している勝ち気な爆乳美少女。空に対する純粋な憧れが、彼女をパイロットの道へと駆り立てている。当時14歳。
 スリーサイズはバスト86cm、ウエスト54cm、ヒップ90cm。カップサイズはF。


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 真紅の巨人・ウルトラアキレスがこの次元の地球に降着し、暁嵐真(あかつきらんま)と一体化してから約数ヶ月。人類が新たな1年を迎える中、強敵であるツルク星人を打倒した彼らは、ますます戦士として飛躍的に成長していた。

 

 無論、地球防衛を担うBURKもただ彼らに頼っているばかりではない。最も怪獣災害が多発している日本支部を支援するべく、アメリカを筆頭とする世界各国の支部は、より積極的に自国の兵器を「供与」するようになっていた。

 各国支部で独自の発展を遂げたBURKセイバーの派生機や、BURK風龍。「完成版」の研究が進みつつあるBURKプロトクルセイダーに、ロシア支部製の戦車。さらにはイギリス支部製の艦艇やフランス支部製の大型輸送機に至るまで、多くの兵器群が日本支部の東京基地に続々と配備されている。

 

「見てくださいシゲタさん、各国支部の兵器があんなにたくさん……!」

「ここまで来ると、世界規模の兵器博覧会のようだな……」

 

 その様子を東京湾上空から見守りつつ、全方位を警戒している日本支部の哨戒機や観測ヘリコプターの部隊は、澄み渡る青空の上で大きく旋回し続けている。その内の1機に搭乗している前田力也(まえだりきや)隊員とシゲタ隊員は、世界各国の兵器群が続々と集まっている壮観な光景に、ただ感嘆していた。

 

「おいおい……見ろよ鶴千(つるせ)。ありゃあ最近、アメリカ支部でロールアウトされたばかりだっていう『BURKセイバードッグ』に、攻撃ヘリの『BURKアパッチ』じゃねぇか? なんだってそんな新型まで、わざわざ俺達日本支部に……?」

「人間同士の戦争に関与するなら、供与する兵器の選定についてはより慎重になるものだろうが……俺達が殺り合っている相手の多くは、知性など無い怪獣共だからな。仮に異星人に鹵獲されたとしても、機密に関わる部分は即座に自壊させられる機能もあると聞いている」

「俺達が流す血には、そんな手間をかけるだけの価値がある……ってことかァ。世知辛いぜ」

「文句を言うな荒島(あらしま)、連中も必死なんだ。……俺達が滅びれば、次はいよいよ自分達の番なのだからな」

 

 観測ヘリの機内から東京基地の様子を見下ろしていた荒島真己(あらしまみこと)隊員と鶴千契(つるせけい)隊員も、供与された兵器群の「ラインナップ」に目を細めている。様々な新兵器まで運び込まれている光景から、供与を決定した各国支部の意図を察していた2人は顔を見合わせ、神妙な表情を浮かべていた。

 

 ――豊富な実戦経験を得やすい日本で自国の兵器を運用すれば、より正確なデータを収集出来る。その思惑もあり、各国の支部はリスクを承知で、東京基地に多くの兵器を輸送しているのだ。さらに各国はただ兵器を供与するだけでなく、選りすぐりのエリート隊員達で構成された教導隊を派遣し、自国の兵器の使用方法を日本支部の隊員達に伝授している。

 世界中の国々からはるばる来日して来た、屈指のエリート部隊。ホピス星から生還した元惑星調査隊メンバーも含めた、日本支部の精鋭隊員達。彼らの合同訓練から始まった今回の「教導」は、日本支部の戦力を大幅に底上げしていた。

 

 そんな中。アメリカ支部最強の航空部隊と謳われている同支部のBURKセイバー隊は、数多の死線を潜り抜けて来た日本支部の有名隊員に「稽古」を申し込んでいた。

 彼らの本業はあくまでパイロットであり、日本に来た理由も供与する戦闘機の運用方法を教導するためだったのだが――「レクリエーション」を好む彼らは、東京基地内にある訓練場での格闘訓練を希望したのである。

 

 異星人の中には人間と同じサイズで活動し、白兵戦を仕掛けて来る者達も居る。そんな連中にいつ狙われるか分からない以上、パイロットが本分だからと言って格闘訓練を怠るわけには行かない。

 ……という目的自体は、紛れもなく正論なのだが。アメリカ支部の男性隊員達が、ある隊員との格闘訓練を切望した理由は、それだけではなかった。

 

 日本支部屈指のエリート隊員であり、国内外の支部で絶大な男性人気を集めている駒門琴乃(こまかどことの)

 ハイレグレオタード状の特殊戦闘服を押し上げる特大の爆乳と、安産型の巨尻をどたぷんっと弾ませている彼女の存在が、筋骨逞しい男達のリビドーを焚き付けていたのである。

 

 琴乃の強さと美しさは広報部の情報を通じて、海の向こうにまで広く伝わっていたのだ。訓練場に集まったエリート隊員達は皆、写真や映像よりも遥かに美しく、扇情的な琴乃の美貌とボディラインに大興奮していた。

 引き締まった腰回りに対してあまりにもアンバランスな爆乳と巨尻は、僅かに身動ぎするだけで大きく揺れ、男達の視線を独占していたのである。

 

 そして――そんな(ある意味)素直な男達の姿に苦笑を浮かべながらも、琴乃は真っ向から全力で迎え撃ち。僅か数分で、全員を叩きのめしてしまったのだった。

 

 激戦区を生き延びて来た日本支部屈指の女傑とは言え、所詮は女。体格で優っている自分達なら、簡単に組み敷いてしまえる。そんな微かな油断が、命取りとなったのだ。

 

 先日のツルク星人の件然り。BURK隊員はいついかなる時でも、異星人との白兵戦を想定せねばならない。本業はパイロットだから、整備士だからという言い訳は、実戦の場には通用しない。

 ツルク星人の刃に手も足も出ず、ただ辱められる一方だった時の屈辱。その苦い過去の記憶が、琴乃の格闘術をより精強に練り上げていたのである。

 

「……どうした? そんなことでは、世界最強と謳われたアメリカ支部の名が泣くぞ」

 

 憔悴した表情で倒れている屈強な男達を一瞥する琴乃は、凛々しい佇まいで腕を組み、Lカップの爆乳をむにゅりと寄せ上げていた。

 白く透き通るような柔肌は「激しい運動」に汗ばみ、亜麻色の艶やかな髪がそこに張り付いている。甘い吐息と肌に滲む汗からは濃厚な女の匂いが漂い、輝く汗の滴が露出した肌を滑るように滴り落ちて行く。

 

 豊穣な乳房の白い谷間へ滴が滑り落ち、その深淵からはレオタードの内側で熟成されていた特濃の芳香がむわりと匂い立っていた。

 ぴっちりと肌に密着したレオタードに染み込んだ汗の匂いは、琴乃の周りに倒れている男達の鼻腔を刺激し、その頬を緩ませている。

 

「んっ……」

 

 白い指先をレオタードの内側に滑らせ「食い込み」を直した弾みで、雄の本能を煽る桃尻もぶるんっと揺れ動いていた。

 凛とした顔立ちに対して、あまりにも蠱惑的なその女体の色香に、男達は倒れたまま釘付けとなっている。レオタードの食い込みによって強調されている鼠蹊部のラインも、彼らの眼差しを惹き付けていた。

 

(まだまだ……だな。この程度の鍛錬では、風祭弓弦(かざまつりゆずる)には遠く及ばん。いや、「付け焼き刃の特訓」を受けただけの嵐真にも敵わないだろう)

 

 一方。当の琴乃は、数でも体格でも圧倒的に有利だったエリート隊員達を一捻りした直後だというのに、その勝利を誇るどころか、自身の「未熟さ」を噛み締めるかのように天を仰いでいる。

 

 ツルク星人の件で格闘術の重要性と、自身の弱さを改めて思い知らされた琴乃は、より厳しい鍛錬を己に課すようになっていたのだが。彼女自身は今でもまだ、風祭弓弦や、彼に鍛えられた暁嵐真には及ばないのだと肌で理解していた。

 

 もう2度とあのような屈辱を味わうことがないように、自分はまだまだ強くならねばならない。その想いが琴乃をさらに鍛え抜いていたのだが――苦い記憶を糧にしていたのは、彼女だけではなかった。

 

「はぁ、はぁっ……! 私達と同じで、パイロットが本業のくせに、なかなかやるじゃない……! けど、これくらいでギブアップなんてしないわよっ……! 新兵(ルーキー)だと思って、甘く見ないでよねっ……!」

 

 激しく息を荒げながらも、なんとか立ち上がって来る金髪碧眼の爆乳美女――アメリア隊長だ。

 

 BURKセイバーの製造を担う大企業の社長令嬢にして、アメリカ支部のBURKセイバー隊を率いる隊長でもある、若き女傑。

 彼女は安産型の白い巨尻をぷるぷると揺らしながらも、琴乃の前に立っている唯一の挑戦者として対峙している。

 

 最も信頼している部下であり、かけがえのない戦友でもあるエリー・ナカヤマ隊員に母国の守りを託し、海を越えてこの東京基地に訪れていた彼女は、何度投げ飛ばされても諦めることなく、「格上」の琴乃に挑もうとしていた。

 

 アメリカ支部仕様のレオタード状戦闘服を着用している彼女は、部下の男達が次々と倒されて行く中でも、挫けることなく両の脚で立ち上がっている。

 白い柔肌に滲む濃厚な汗の匂いは周囲にむわりと漂っており、その香りを鼻腔で堪能する男達は倒れ伏したまま、隊長(アメリア)の芳香に満面の笑みを浮かべていた。

 

 綺麗に手入れされている腋の窪み。肌に密着している戦闘服を内側から押し上げている、爆乳の谷間。そしてレオタードが深く食い込んでいる、白く肉感的な太腿の付け根。

 汗が溜まりやすいそれらの箇所からは特に、アメリアの甘い匂いがむせかえるほどに滲み出ていた。

 

 それほどの濃厚なフェロモンを全身から振り撒き、息を荒げている彼女だが――その蒼い双眸は、どんな強敵にも屈しないという気高い輝きを宿している。

 ハドソン川でのベムスター戦で味わった屈辱が、彼女の精神を大きく成長させていたのだ。敵わない敵を前に泣き言を上げ、失禁(おもらし)までしていた弱い彼女は、もうここには居ないのである。

 

「……男性優位の風潮が未だに根強いアメリカ支部で、花形と言われている今のBURKセイバー隊を率いているのが女性だと聞いた時は、少々驚いたものだが……今の君を見ていると、納得せざるを得んな。アメリア隊長」

「ハッ……見え透いた世辞はそこまでにしておきなさい、駒門隊員。花形だの隊長だの、そんな肩書きなんて何の価値もない。価値があるのは、実戦で役に立つ『力』だけ! そうでしょうッ!?」

 

 そんなアメリアの気高さに、確かな信念と品格を見出した琴乃は素直に賞賛する。

 だが、苦い記憶を通じて「力」こそが真に価値のある名誉なのだと思い知った女傑は、勝気な笑みを浮かべて虚勢を張り、琴乃に組み掛かろうとしていた。くびれた腰に対してむっちりと実っている安産型の巨尻が、踏み込みの衝撃でばるんっと弾む。

 

 女性であるアメリアが、男所帯であるアメリカ支部のエリート部隊を率いているのは、単なる「コネ」による恩恵ではない。一見か細いようにも見える彼女の「腕っ節」は、屈強な部下達でも敵わないほどのパワーを秘めているのだ。

 その実力と努力と才能をフルに発揮しているアメリカ支部最強の処女(バージン)は、文字通り部下の男達を「力」で御している生粋の女傑なのである。

 

「でぇやあぁあぁあ……あっ!?」

 

 だが、相手の肩を押さえ込もうと伸びた腕は、そこまで届く前に琴乃の手で掴まれてしまい。アメリアは一瞬のうちに、体勢を崩されてしまう。

 次の瞬間、彼女の視界は――女の匂いが深く染み込んだ琴乃の股間で覆い尽くされていた。白く肉感的な彼女の太腿が、瞬く間にアメリアの頭部をガッチリと挟み込んでいたのだ。

 

「ちょ、待っ……!」

「実戦では、『待って』など通じんぞ」

 

 鼻腔に突き刺さる濃厚な女の香り。琴乃の股間から漂って来るその匂いから焦燥の声を上げるアメリアの言葉を遮り、日本支部最強の女傑は非情な一言を告げる。

 やがてアメリアの顔面に、琴乃の柔らかな股間がむにゅりと押し付けられ――そこから特濃のフェロモンがぶわっと匂い立ち、芳醇な香りがアメリアの嗅覚を至近距離から埋め尽くしてしまう。そして両者の身体がふわりと浮き上がった次の瞬間、視界を絶たれたアメリアの背中に強烈な衝撃が走る。

 

「ふぐっ、あっ……!」

 

 相手の頭部を太腿で挟み込み、バック宙の要領で後方に投げ飛ばすフランケンシュタイナー。その要領で放つ「大技」を食らったアメリアは、為す術もなく床に叩き付けられてしまったのだ。激しい衝撃に彼女の爆乳と巨尻がばるんっと弾み、瑞々しい汗が勢いよく飛び散る。

 その衝撃でより深く、琴乃の股間に顔面を密着させられたアメリアは、むせ返るような彼女の匂いを否応なしに堪能させられていた。レオタード越しとは言え、至近距離から鼻腔を通して脳天に突き刺さる濃厚なフェロモンの威力は凄まじい。

 

 男の理性を一瞬で吹き飛ばすその芳香は、同性であるアメリアですらたじろぐほどの甘美な香りであり――めり込むように押し付けられた股間から迸る熟れた女の匂いが、対戦相手の集中力を大きく削いでいた。汗が深く染み込んだレオタードが深く食い込んでいるその箇所は、琴乃のフェロモンが特に強く滲み出ているのだ。そこを顔面に押し付けられているのだから、たまらない。

 

 この勝負に決着を齎した、必殺の投げ技。その衝撃で両者の爆乳と桃尻は同時にどたぷんっと弾んでおり、彼女達の柔肌から飛び散る汗の匂いを嗅いだ男達が、恍惚の笑顔を咲かせている。今まで、彼女の白く豊満な身体を組み伏せようとして来た彼らは皆、この「幸せ投げ」で1発KOされていたのだ。

 レオタードが深く食い込んでいる股間から迸る、特濃の芳香。その芳醇な香りに翻弄されるがまま、彼らはアメリアが先ほど体感したものと全く同じ「絶景」と「感触」と「匂い」を心ゆくまで堪能し、そのまま撃沈されたのである。

 

 だが、彼らの表情に「悔しさ」の色はなく、アメリア以外は皆、満足げな笑みを浮かべている。このような負け方ならば、「本望」だったのだろう。

 勝利への渇望を失えば、どのような強者であろうと容易く敗北の道へと転落して行く。琴乃の「幸せ投げ」に敗れた男達の晴れやかな表情が、その無情な現実を証明していた。

 

「あ、がっ……!」

「……だが、価値があるのは実戦で役に立つ『力』だけ……というのは良い言葉だな。君の言う通りだ。そして君が死んだのは、これで13回目になる」

「そ、そんなに負けてないわよっ! ……10回目、いや9回目くらいだからっ! もう一丁っ!」

 

 だが、隊長のアメリアだけは違う。もう何度投げられたのか分からないが、心が負けを認めない限り本当の敗北は訪れない。

 その気高さを武器に立ち上がったアメリアは、不屈の精神で再び琴乃に挑戦しようとしていた。そんな彼女の勇気に微笑を浮かべる琴乃も、その闘志を汲み、油断することなく距離を取って構え直している。

 

「面白そうなことしてるわね! 私も混ぜなさいっ!」

「……?」

 

 だが、その時。

 2人の前に飛び出して来た1人の美少女が、低い身長に反した豊かな乳房と桃尻をぷるんっと弾ませ、快活に声を張り上げる。

 

 艶やかな黒髪のロングヘアをふわりと靡かせるその爆乳美少女は、くびれた腰に手を当て胸を張り、歳不相応に発育した張りのある乳房を強調していた。

 深くスリットが入っている赤く扇情的なチャイナドレスが、彼女の白く肉感的な美脚を蠱惑的に際立たせている。

 

「……やれやれ。まさか君も日本に来ていたとはな」

「全く……今いいところだったのに、邪魔しないでよぉ」

 

 思わぬ「乱入者」の登場に手を止めた琴乃とアメリアは互いに顔を見合わせ、同時に深々とため息をつく。厄介な子供が来てしまった、と言わんばかりの反応であった。

 

「ふふんっ……!」

 

 そんな2人の様子など、まるで意に介さず。黒髪の爆乳美少女は流麗な動作でカンフーの構えを見せ、勝手に臨戦体勢に移ろうとしていた。

 

 可憐な容姿とは裏腹に、彼女の構えは洗練され尽くした達人のそれであったが――以前からの「顔見知り」である琴乃とアメリアは、その技巧を目にしても動じていない。

 艶やかな黒髪と白い柔肌から、甘く芳醇なフェロモンを漂わせているチャイナドレスの美少女は、高らかに名乗りを上げる。

 

「光栄に思うことね! 未来の中国支部最強のエースである、この凛風(リンファ)様が……直々にあなたの力量を測ってあげるわっ! 覚悟しなさい、駒門琴乃っ!」

 

 中国支部製の制式爆撃機「BURK風龍(ファンロン)」。

 その開発に出資している大富豪の令嬢でありながら、自身も爆撃機のパイロットを目指しているという、上流階級きっての「変わり者」。それが彼女、凛風に対する周囲の評価であった。

 

 元調査隊メンバーである劉静(リウジン)隊員を筆頭とする、中国支部の教導隊。彼女達を乗せた大型輸送機に便乗する形で来日していた彼女は、民間人の立場でありながらスポンサーの娘という地位を利用し、この東京基地にまで入り込んでいたのである。

 





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 今回の新兵編は前後編に分かれており、特別編や女傑編で活躍していたエリート女性隊員達の過去にちょこっと触れて行くお話になります。アキレス時代の彼女達はBURK隊員になったばかりの新兵だったり、もしくはまだ隊員になれる年齢でもなかったりとまだまだ非力です。アメリアについては教導官が務まるくらいにはすでに優秀なのですが、単純な技量面や経験値ではまだ元調査隊メンバー達には遠く及びません。しかし、そこから約5年後の時期に相当する特別編と女傑編ではエースとしてバリバリ活躍しています。機会がありましたらそちらのエピソード群もどうぞよしなに〜(*´ω`*)
 また、今話冒頭にチラッと登場した荒島真己と鶴千契の2人は、平均以下のクソザコ野郎先生が執筆されている「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」と、X2愛好家先生が執筆されている「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス〜(https://syosetu.org/novel/298255/)」の2作品で、それぞれ主人公を務めております。そちらの作品も是非ご一読くださいませ!(*≧∀≦*)

 書き終えてみるとちょっと微妙に長くなってしまいましたので、このお話は次週公開予定の後編に続きます。ではではっ!٩( 'ω' )و

Ps
 行きつけのプラモ屋でF-86セイバーのプラモが手に入らなかったので、妥協(?)してF-86Dセイバードッグの方を購入。「BURKセイバーの派生機」という唐突な設定が生えて来たのはそれがきっかけでした。ちくしょうめー!( ゚д゚)(←でもなんだかんだで愛着が湧いてる


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新兵編 ウルトラルーキーファイト 後編

◇今話の登場ヒロイン

◇イヴァンナ
 BURKロシア支部からやって来たエリート戦車兵であり、戦車隊の教導のため日本支部に訪れていた金髪ポニーテールのクールな爆乳美女。恋人が出来た試しがない生真面目な堅物だが、子供には優しい。当時18歳。
 スリーサイズはバスト97cm、ウエスト59cm、ヒップ91cm。カップサイズはI。

◇オリヴィア
 BURKイギリス支部の艦隊司令官を父に持つ可憐な美少女であり、自身も未来の司令官としての高度な教育を受けているエリート候補生。当時11歳。

◇エレーヌ
 BURKフランス支部の陸軍司令官を父に持つ小柄な美少女であり、将来は立派なBURK隊員として父の仕事を手伝うことを夢見ている。当時10歳。


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 14歳という年齢からは想像もつかない発育と色香を見せ付けている凛風の肉体からは、すでに大人の女性でも敵わないほどの色香が滲み出ている。

 その芳香に鼻の下を伸ばしていた男達は、隊長(アメリア)にひと睨みされるや否や、萎縮するように縮こまっていた。

 

「……怪我をしないうちに帰りなさい、凛風。BURK風龍の製造に出資している名士のご令嬢が、こんなところに来て何になる。パイロットの何たるかを知りたいのなら、お父上にでも頼んで座学から始めることだ」

「そんなもの、とっくの昔に頭にぜ〜んぶ叩き込んで来たわっ! 大反対してたパパも根負けしちゃうくらい、徹底的にねっ! 伊達に大学を飛び級で卒業してないんだからっ!」

 

 どれほど才能豊かであろうと将来有望であろうと、現時点の彼女はあくまで民間人の少女でしかない。それ故に琴乃は凛風を嗜めようとしていたのだが、凛風は一歩も引く様子を見せず、カンフーの構えを取り続けている。

 出会った時から変わらない頑固ぶりに再びため息をつく琴乃は、アメリアと視線を交わしていた。これはもう、テコでも動かないかも知れない、と。

 

「……何故そうまでして、パイロットに拘る。何が君を空に駆り立てる」

「ふんっ! 空への憧れに理由が必要なの? 日本支部最強のエースパイロット様のくせに、無粋なことを言うのねっ!」

「ふっ……なるほど、そういうタイプか。実に子供らしく、単純だな。だが、まぁ……嫌いではない」

 

 呆れ返るほどに純粋に「空」を求める凛風の言葉に、琴乃はただ苦笑を浮かべるしかなかった。これほどの無垢な熱意を無碍にすることは出来ない。

 

 だが、無碍にしない以上は然るべき対処をせねばならない。

 そう判断した琴乃はアメリアと頷き合うと――「本気」の構えを見せていた。対戦相手への「礼」を尽くすその姿勢に、凛風も口元をにんまりと綻ばせる。

 

「……凛風。言っておくが、この訓練場に踏み込んで来る以上は大人も子供もない。良家の子女だろうと、忖度は期待するなよ」

「上等っ! むしろ手加減なんかしたら、承知しないわよぉ〜っ!」

 

 そして、憧れのエースパイロットに「稽古」を付けてもらうべく。凛風は勢いよく地を蹴り、乳房と桃尻を揺らして琴乃に飛び掛かって行くのだった。

 すらりと伸びた凛風の白い蹴り脚が、防御に徹した琴乃の腕に命中する。その衝撃で再び、若き女傑達の乳房と桃尻がぶるんっと躍動していた。

 

 そんな彼女達の勇姿と、飛び散る汗の香りに男達が歓声を上げる。彼らはチャイナドレスのスリットから窺える凛風の美脚に見惚れながら、紅いパンティを必死に覗き込もうとしていた。

 その直後、アメリアに頭を掴まれアイアンクローの制裁を受けたのは言うまでもない。

 

「……あーあ、私は知らないからね」

 

 部下達の頭をギリギリと握りながら、若き女傑は深々とため息をつく。

 そして、彼女の懸念通り。威勢ばかりで未熟なカンフー美少女は、数えるのも億劫になるほど何度も投げ飛ばされてしまい、徹底的に「わからされて」しまうのだった。

 

 琴乃と対峙した者達が男女問わず味わわされた「幸せ投げ」の洗礼は、その恐ろしさを理解していなかった彼女にも、容赦なく襲い掛かったのである――。

 

 ◇

 

 その頃。訓練場近くの渡り廊下を歩いていた1人の爆乳美女は、その方向から響き渡って来る凛風の悲鳴に眉を潜めていた。

 

「ん……?」

 

 プラチナブロンドの艶やかな髪をポニーテールに纏め上げている彼女は、怜悧な眼差しで訓練場の方向を一瞥している。

 雪のように白い彼女の柔肌に密着しているレオタード状の戦闘服は、彼女のボディラインをありのままに浮立たせていた。

 

 鍛え抜かれ、引き締まった腰回りに対して豊満に飛び出しているIカップの爆乳。むっちりと実り、存在感を発揮している白い巨尻。

 そして――肉感的な太腿の付け根にきつく食い込み、鼠蹊部のラインを際立たせているレオタード状の戦闘服。その薄い繊維に染み込んだ甘い女の香りが、濃厚なフェロモンとなって滲み出ていた。

 

 知的で気品に溢れた美貌の持ち主である彼女だが、その白く豊満な肉体から漂う色香は娼婦のそれすら遥かに凌駕している。

 戦闘服の奥でじっとりと熟成されている白い谷間や、腋の窪み、深くレオタードが食い込んでいる太腿の付け根辺りからは、特に濃厚な匂いが漂っていた。

 

「……日本支部の駒門琴乃隊員が、アメリカ支部のパイロット達に稽古を付けている……とは聞いていますが。それにしても、随分と騒がしいですね」

 

 戦車隊の教導官としてロシア支部から派遣されていた、イヴァンナ隊員。

 日本支部の陸戦部隊を「教育」するべく来日していた彼女は、絶え間ない凛風の絶叫に思わず足を止めている。

 

 通路を歩むだけで東京基地の男性隊員達を魅了して来た絶世の美女は、その薄い桃色の唇を静かに開いていた。一歩踏み出すたびにぷるんと揺れる安産型の白い巨尻も、食い込みによって蠱惑的に強調され、見る者の視線を強烈に惹きつけている。

 色事の類とは無縁と言わんばかりの怜悧な顔立ちだが、無意識のうちに桃尻を左右に振って歩いている彼女の腰の動きは、あまりにも妖艶であり、扇情的であった。引き締まった腰のくねりに応じて躍動する臀部の揺れは、彼女の教導を受けている戦車隊の男性隊員達の注目を大いに集めているのだという。

 

 後に陸戦部隊へと正式に入隊し、「ウルトラマンゼファー」の依代として戦うことになる、若き戦車搭乗員の卵――江渡匡彦(えとくにひこ)候補生も、その1人であった。

 まだ基礎訓練を始めて間もない純情な若者に、イヴァンナの色香は刺激が強過ぎたらしい。戦車隊に重きを置いているロシア支部の精鋭隊員から直々に「教導」を受けられる貴重な機会だというのに、彼は煩悩を絶とうとするあまりほとんどイヴァンナの話が頭に入っていないようだった。

 

「いえ……騒がしいのはあそこに限った話ではありませんでしたね。どこに行っても……困った男共は居るものですから」

 

 その美貌とスタイル故か、来日してからまだ日が浅いというのに。イヴァンナが基地内の男性隊員達から声掛け(ナンパ)された回数は、すでに50を超えているらしい。そんな身の程知らず達がその場で叩きのめされた数も、その数値と一致しているのだとか。匡彦のように、煩悩と戦おうとしている殊勝な隊員の方が全体としては遥かに多い……はずなのだが、雄の本能を隠し切れない隊員も決して少なくはないのだろう。

 

 ――ドイツ支部から出向して来たBURKセイバー隊のリーゼロッテ隊長や、その側近であるヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル副隊長も似たような目に遭っているという話だが、彼女達による「制裁」はイヴァンナのそれよりも遥かに苛烈なものであるらしく、邪な感情を抱くどころか畏怖の念すら抱くようになった男性隊員達が後を絶たないのだという。中には、彼女達の御御足に踏まれる悦びに目覚めてしまった者もいるという噂もある。

 イヴァンナのような名門出のエリート達も深く尊敬している、元惑星調査隊メンバー達。彼らは全員選び抜かれた精鋭中の精鋭であり、今現在も世界各地で出現している怪獣や異星人達の多くを、ウルトラアキレスに頼ることなく撃滅している猛者揃いなのだ。可憐な容姿に油断して侮った男達は皆、その場で股間を蹴り飛ばされるという痛烈な「授業料」を払わされている。

 

 それでも彼女達はその美貌と抜群のスタイル故、以前からこの手の「トラブル」が日常茶飯事なのだという。リーゼロッテやヴィルヘルミーナに限らず、ホピス星の惑星調査隊に参加していた女性パイロット達の多くは、(約2名の合法ロリを除けば)雄の本能を激しく狂わせる特濃の色香と絶世の美貌、そして邪な欲望を掻き立てる蠱惑的なプロポーションの持ち主ばかり。豊満に飛び出した特大の爆乳に、引き締まった腰周り、そして安産型のむっちりとした巨尻。その扇情的過ぎるボディラインを剥き出しにしているレオタード状の特殊戦闘服は、男達の獣欲を絶えず刺激しているのだ。

 しつこい声掛けやボディタッチなど序の口。時にはシャワールームや更衣室に盗撮用のカメラを仕掛けられたこともあり、上官からは「夜の接待」に誘われたこともあったらしい。挙げ句の果てには媚薬まで盛られてベッドに組み敷かれ、「貞操の危機」に陥ったことすらあるのだという。そんな下劣な連中には片っ端から、股間への強烈なキックをお見舞いして来たという話だが――もはやセクハラどころの騒ぎではない。その燃え滾るような執念は怪獣や異星人に向けてくれ、というのが彼女達に共通している率直な感想であった。

 

「本当に……困ったものです」

 

 勇猛さと引き換えに品性を欠いてしまっている隊員というのは、どこの国にも居るものなのだろう。イヴァンナは日本に来ても絶えることのない獣欲塗れの視線に、ため息を吐くばかりであった。そんな彼女の背を後方から見つめる「2人の男」は、互いに顔を見合わせている。

 

 ――ロシア支部戦車大隊の司令官を父に持つ、名門出身のエリート。そんなイヴァンナを含む、各国支部から日本に集まって来た精鋭達の主任務は、怪獣災害が特に頻発している日本支部に自国の兵器を供与し、その運用方法を教導することにある。

 彼女の後ろを歩いている2人の男性は――その供与を決定した、「上層部」の人間であった。

 

「ふふっ……それにしても確かに、あそこの訓練場は特に騒がしいな。しかし、無理もあるまい。何しろ、あの伝説の隊員・風祭勇武(かざまつりいさむ)を輩出した日本支部の隊員なのだ。さぞかし凄まじい試合を繰り広げているのだろう。かつては我がイギリス支部にも、風祭の雷名が轟いていたものだ」

「新たな怪獣頻出期と言われている今の時代でも彼が健在だったならば、各国支部の隊員達の士気も、より高まっていただろうな……。彼の教導が無ければ、我がフランス支部の陸戦歩兵部隊も、今ほどの練度には達していなかったことだろう。実に残念だよ」

 

 整然とした青い軍服を纏うイギリス支部の艦隊司令官と、緑色の軍服に袖を通したフランス支部の陸軍司令官。彼ら2人は肩を並べてイヴァンナの後に続いており、それぞれの胸に飾られた幾つもの勲章が、その経歴と名声の凄まじさを物語っている。

 

 そんな2人の高官がイヴァンナと共に歩んでいる、ガラス張りの渡り廊下。その外側からは戦術輸送ヘリのローター音が響き続けており、機内にはフランス支部とイギリス支部を中心とする歩兵達が待機しているようだった。どうやら、ヘリの着陸に合わせた突入訓練の最中らしい。着陸と同時にBURKガンを構えて飛び出して来た屈強な男性隊員達は、まるで機械の流れ作業のようなスムーズな動作で地上を移動している。

 さらにその中には両支部の隊員達だけでなく、元調査隊メンバーの士道剣(しどうつるぎ)隊員、手力握人(てぢからあくと)隊員、日ノ出新(ひのであらた)隊員、木場司(きばつかさ)隊員、多月草士郎(たつきそうしろう)隊員の姿もあった。叶亥治郎(かのうげんじろう)隊員と氷川雄一郎(ひかわゆういちろう)隊員は戦術輸送ヘリのパイロットを務めており、日本支部を代表する弘原海(わだつみ)隊長が彼らを統率している。

 

 そんな若獅子達の勇姿を一瞥し、かつて自国の隊員達を教導していた風祭勇武の背中を思い出していた2人の高官は、微かに切なげな表情を浮かべていた。高官達が見せたその僅かな憂いから、2人の胸中を察していたイヴァンナは、彼らを励ましたい一心で気丈に胸を張る。その弾みで、Iカップの爆乳がぶるんっと弾んでいた。

 

「……ご心配には及びません。このイヴァンナが必ず、風祭勇武に代わる新たな英雄として……この地球を守り抜いて見せます」

「うむ……頼もしい限りだな、イヴァンナ」

「君の活躍、期待しているぞ」

 

 上流階級同士の社交界で知り合って以来、幼い頃から父と同じように慕って来た2人の高官。そんな存在である2人を気遣おうとしている彼女の姿に、当の高官達は顔を見合わせ、表情を綻ばせている。

 

 ――名門の娘として厳格に育てられて来たイヴァンナは、その生真面目過ぎる堅物な性格のため、今まで恋人が出来た試しがない。言い寄って来る不埒な男達は全て手酷く袖にして来たし、強引な手合いは父直伝の格闘術(システマ)で叩きのめしたこともある。

 

 だが、下衆な男ばかりが言い寄って来るから恋人を作らなかった、というわけではない。

 絶世の美貌と抜群のプロポーションに加え、名家出身のエリートでもある彼女はこれまで、数多の有力者達からその極上の肉体を虎視眈々と狙われ、幾度となく求婚されて来たのだが。父の期待に応え、立派な戦車兵になることのみを目指して来た彼女には、道半ばで諦める選択肢など最初から存在し得なかったのである。

 

 それ故に18歳を迎えた今も、彼女は男を知らない生粋の処女であり。当然ながら、恋を経験したこともない。

 そんな彼女の将来を、2人の高官は密かに案じていたのだが――その「鋼鉄の女」がやがて、「第3のウルトラ戦士(ウルトラマンザイン)」となった男を愛するようになるとは、夢にも思わなかったのである。

 

 その高官達はイヴァンナの後ろを歩きつつ、傍らに1人の可憐な美少女を連れている。彼らの愛娘であり、将来の幹部候補でもある2人の少女が、父親の任務に同伴していたのだ。

 愛らしい容姿を持つ彼女達の視線に気付いたイヴァンナはポニーテールと乳房を揺らし、ゆっくりと振り返っていた。相変わらずの無表情だが、少女達を見下ろすその眼差しは、他者を慈しむ優しさに満ちている。

 

「……どうかしましたか?」

「あ、いえ、そのっ……!」

「イヴァンナお姉様、カッコいいなって、ずっと思ってて……」

 

 艶やかな金髪の持ち主である2人の少女の名は、オリヴィアとエレーヌ。イギリス支部とフランス支部の高官を父に持つ未来のエリートであり、すでに将来に向けた「英才教育」を受け始めている才媛であった。

 

 だが、そんな彼女達にも年相応な「憧れ」の感情があったのだろう。凛とした佇まいを見せているイヴァンナの背に惹かれていた彼女達は、もじもじと白い指を絡ませながら、ちらちらと敬愛する女傑を見上げている。

 

「あ、あのっ! 私達、いつかお父様のお手伝いが出来るような、立派なBURK隊員になるのが夢でっ……!」

「私達にも、いつか……イヴァンナお姉様のような、強くてカッコいい隊員になれる日が来るのでしょうかっ……!?」

 

 やがて彼女達は勇気を振り絞り、イヴァンナを見上げて可憐な声を張り上げていた。

 打算の類など一切感じられない、純真無垢な敬意。その真摯な思いに触れた「鋼鉄の女」は、無意識のうちに頬を緩めてしまう。

 

「こらオリヴィア、イヴァンナ隊員を困らせるようなことを言ってはならんぞ。司令官たる者、常に周りを冷静に見詰める観察眼が大切なのだと、いつも教えているだろう?」

「エレーヌもだぞ。そう言ってくれるのは父親としては嬉しい限りだが、お仕事の邪魔になるようなことを言ってはいかん」

 

 2人の男は愛娘達を嗜めようと声を掛ける。だが当のイヴァンナはそんな彼らを遮るように片膝を着くと、2人の美少女に目線を合わせ――優しく抱き寄せていた。

 

「……良いのです。あなた達なら、きっと……いえ、絶対になれますよ。いつか必ず、私と共に戦ってくれるような……頼もしい仲間に」

 

 それは、紛れもない本心からの言葉。オリヴィアとエレーヌの将来に対する、純粋な期待故の言葉だったのだが。

 その言葉通りの期待に応えた彼女達が、自身と肩を並べる「女傑」に成長する日が、僅か約5年後のことになろうとは。この時のイヴァンナには、想像も付かなかったのである――。

 





【挿絵表示】


 惑星調査隊の元メンバー達もこの「教導」に参加していることに触れつつ(エリーだけはアメリカでお留守番ですが……)、今回の後編を以てこのエピソードも完結となります! 最後まで読み進めて頂き、誠にありがとうございます。現時点ではまだまだ未熟なアメリア達ですが、このアキレス時代から約5年後の時期に相当する特別編と女傑編では立派な戦力として活躍してくれています。機会がありましたら、そちらのエピソード群もどうぞよしなに!(*^ω^*)
 それから、このお話で存在が触れられたイヴァンナと江渡匡彦については、魚介(改)先生の3次創作作品「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」にも登場しておりますので、そちらも是非ご一読くださいませ〜!٩( 'ω' )و

Ps
 琴乃の幸せ投げ、荒島が食らったらセットアップの時点で気絶しそう……(ノД`)


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完結編 息子達と博物館

 お久しぶりです! 今回もちょっとしたおまけ話をお届け致しますぞー! 今回は主人公達の「息子」にスポットを当てる小話になりまする(*´ω`*)



「はぁー……やっぱ壮観だよなぁ、こうして見てみると」

 

 ショーケースに並べられた、歴代のウルトラ戦士の立像。雄々しく立ち並ぶ、その像の群れを前にして――風祭竜流(かざまつりたつる)は嘆息していた。彼をはじめとする中学生達は今日、このウルトラ記念博物館の見学に訪れているのだ。

 

 テンペラー軍団との戦いの後に修復され、今年で創立120周年を迎えたこの博物館には、かつて地球の危機に立ち向かったと言われる伝説の巨人――「ウルトラマン」の歴史が刻まれている。

 怪獣や異星人達との戦争に明け暮れていた時代が過去のものとなった現代においても、その勇姿と名誉は次の世代へと語り継がれているのだ。竜流をはじめとする少年達は、幼い頃の憧れを思い出すかのように、目を輝かせて像の巨躯を仰いでいる。

 

「なぁ竜流、お前の父ちゃんってBURKの司令官なんだろ? やっぱり生ウルトラマンとか見たことあんのかな」

「どこまでホントか知らないけど、一緒に戦ったこともあるって言ってたよ。ウチの母ちゃん、父ちゃんのこと喋り出したら止まらねぇんだよなぁ……」

「いいなー……最後の戦いって、俺らが産まれてくる直前だったんだよなぁ。1回でいいから、『本物』を見てみたいぜ」

「えー、でもそれってまた戦争が始まるってことでしょ。僕はこのまんまの方がいいかなぁ」

「まぁーたそんなつまんねぇこと言って! いいじゃねえか、ちょっとくらい怪獣が出たってよぉ。ウルトラマンとBURKがいりゃあ、何とでもならぁ」

「怪獣が出て来る事態は『ちょっと』じゃねーだろ……お前授業聞いてなかったのかよ、昔はアホほど街が壊されてたんだぞ」

 

 いつも竜流とつるんでいる5人の友人達も、思い思いに平和を謳歌していた。

 暁進(あかつきしん)椎名弾(しいなだん)覇道秀樹(はどうひでき)八月朔日星司(ほずみせいじ)荒石光太郎(あらいしこうたろう)。彼らは戦争を知らない世代ならではの語らいを楽しみながら、6体の巨像の傍らを通り過ぎていく。

 

 その6体の巨像は、今年から新たに「追加」された若きウルトラ戦士達の勇姿を象っていた。

 ウルトラアキレス。ウルトラマンザイン。ウルトラマンエナジー。ウルトラマンアーク。ウルトラマンジェム。そして、ウルトラマンカイナ。

 今から14年前、テンペラー軍団の脅威から地球を救った彼ら6人の功績は今や、博物館にも展示されるほどの「伝説」として認められているのだ。そんな彼らと、自分達の「父親」の繋がりを知らぬまま、少年達はカイナをはじめとする「6兄弟」の巨像を後にしていく。

 

「……隊長、本当にあのままでよろしいのでしょうか」

「竜流の坊ちゃん、司令官殿(おちちうえ)のことは何も知らされていないようなのですが……」

「それで良いんだ、江渡隊員。真壁隊員。……彼らも私達も、いつかは『過去』となっていく。それは今のような平和が続いて行かなければ、成り立たないことだ。いたずらに蒸し返す必要などない」

「そういうものですかね……」

 

 竜流達を陰ながら見守っているBURKの隊員達は、彼らの父親達が掴み取った「平和」の重さを知る世代として、歯痒いものを感じているようであったが。その指揮を取っている「隊長」と呼ばれる妙齢の美女は、涼しげな面持ちで竜流の横顔を遠くから見つめていた。

 

「うぇえ、ぇえぇんっ……パパ、ママぁっ……」

「君、どうしたの? 迷子?」

「この感じはそれっぽいなぁ……おいおい竜流、まさか今回も親御さん探しかぁ? まーた回る時間無くなっちまうじゃねぇか」

「僕らはいつもそんな感じでしょ。今さらだよ」

「それな……。しょうがない、この辺から探してみるか。ご両親も心配してるだろうしな」

「おい坊主、男ならメソメソしてんじゃねぇ。親父とお袋ならすぐにお前を見つけてくれる。だからお前も信じて、ドッシリ構えてな」

「お前はどの立場で物を言ってんだよ……」

 

 その頃、啜り哭いている迷子の幼児を見つけた竜流達6人は、見学を中断して親探しを始めていた。彼らが、こうして困っている人達を助けるために動き出していくのは、今回に始まったことではない。

 父親達の過去を知らずとも、その身体と心には確かに、平和を愛する「ヒーロー」の血が流れている。迷子の小さな手を握り、励ましている竜流達の姿を目にした隊長は、その確信を得たかのように頬を緩めていた。

 

「あっ……パパ! ママぁっ!」

「ああっ! どこに行ってたんだ、全く……!」

「あなた達が見つけてくださったのですか!? あ、ありがとうございます、ありがとうございますっ……!」

「はは、別に良いですって、慣れたもんですから。……良かったな、坊主。俺らの言った通りだったろう?」

「……うんっ! お兄ちゃん達、ありがとうっ!」

 

 それから、10分も経たないうちに。竜流達の尽力が功を奏して、親子は無事に再会を果たしていた。彼らは6人の若きヒーロー達に何度も頭を下げると、家族3人で手を繋いで立ち去っていく。

 

「あの子達はあの子達なりに、父にも負けない『ヒーロー』になる。……私は今でも、そう信じている」

 

 その後ろ姿に手を振る少年達の晴れやかな貌は、BURKの隊長――弘原海琴乃(わだつみことの)にも希望と確信を与えていたのである。

 今の夫と共に見つめて来た、ウルトラ戦士達の背を彷彿とさせる少年達の姿に、歴戦の戦乙女は優しげな微笑を浮かべていた。

 

 ◇

 

「まぁ……隊長がそう言うなら、俺達も信じるしかありませんねぇ」

「確かに、あの子達の邪魔になるようなことはしたくないですものね」

「だろう? では、一旦ここは任せるぞ。私は司令に現状を報告して来る」

「とか何とか言って、また旦那さんと長電話する気でしょ。行かせませんよ」

「先月の監視任務中、後ろで2時間もノロケ話ばっかり聞かされたこと……まだ俺達、許してませんからね」

「ギ、ギク……」

 




 今回は第1話のセルフオマージュを中心に、弓弦達の息子が登場する小話をお届け致しました。当初の予定では特別編最終話のラストシーンにするつもりの内容だったのですが、いざ書いてみるとなかなかしっくり来る形に詰め込めなかったため、こうして別の小話としてお送りさせて頂いております。竜流以外の息子達の名前については、分かる人には分かるネーミングとなっておりますなー(о´∀`о)
 もしかしたらこの先もちょびちょび小話を書くことはあるかも知れませんが、どんな内容でも最終的にはこの完結編に行き着くことになるかと思われます(´-ω-`)
 ではではっ、この度も読了ありがとうございました! またどこかで皆様とお会い出来る日を楽しみにしておりまするー!٩( 'ω' )و


Ps
 よくよく考えたら、竜流と同級生の息子がいる要と磨貴は10代でパパになったということになりますね。か、要は働ける年齢だし磨貴は実家がめちゃくちゃ太いし! 何とでもなるはずだー!( ゚д゚)


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