御剣神護は転生者である (レイジャック)
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プロローグ ~転生~

初の投稿でなかなかボタンを勇気が出ないところに、銀の気合いだーー!!!という声が聞こえた気がしたと思って押したのですが......文章が......真っ白になっていた。

軽く二時間ぐらい膝を抱えてじっとしていましたw




 ここはどこだ?

最初に思ったことはそれだった。寒くもなく暑くもない、まるでそんな感覚が無かったかのように感じられる......そんな場所で俺は寝ていた。

当然そんな場所に心当たりはなく目が覚めたら知らない天井......もない見渡す限り白いだけの空間にいた。頭は悪いわけではないがこの時の俺はこれを異常だと判断した。

学校の部活に入らずバイトをしたり、休日には段ボールの活用法の研究をして過ごしているようなほんの少しだけ変わり者ではあるが、それを抜きにしても生きてきた中で培った知識を総動員してもまったくと言っていいほど説明不可能だ。ではここは?本当に現実なのか?頭の中でそんな言葉が浮かび上がってきた。その時いきなり声が聞こえた。

 

『これは夢であり現実でもあるのですよ』

 

四方八方から声が聞こえる。姿も何もないところから声が聞こえたら人はどうするだろうか?答えはあたりを見回し警戒するだ。つまり、どうやら俺は真っ当な人だと言う事だろう。

気が付けば体を起こして周りを見回していた。だが、声の主はどこにもいない。それが分かったのであろう、その声の主が笑いながら話かけてきた。

 

『すみません、驚かせてしまいましたね。それでは......これでどうですか?』

 

目の前が一瞬光った為俺は瞼を閉じた。そして光が収まり閉じていた瞼を開けると、そこには......白布一枚を羽織り天使の翼をつけている女性コスプレイヤーがいた。

 

「コスプレイヤー?」

 

「コスプレではありません!モノホンです!!」

 

女性は何故かコスプレという言葉に対して怒っていた。過去に何かあったのだろう。大人である俺はそのことには触れず、そっとしておいた。

 

「何かその眼差しがとても不快なんですけど......」

 

「気にするな、生まれつきだ......特に意味はない」

 

「絶対それ嘘ですよね!!」

 

女性は俺の発言に対して又も怒っていた、これは単に男が嫌いという事なのかもしれない。認識を今一度改め今後はなるべく穏便にしようとひそかに決意した。

 

「まあ、今回は許してあげます。時間も限られていますし」

 

「慈悲深い心遣いに感謝いたします」

 

「言葉遣いおかしくない?」

 

まだ何か言いたげだったが、諦めたようで代わりに大きなため息を吐いた。やはり乙女心は男性にとって永遠の謎である。女性は何故か自分の頬を叩くと真剣な顔つきになりこちらを見つめていた。

 

「あなたは今の状況をどこまで理解していますか?」

 

「いろはのいも分からない程度には理解している」

 

「それ全然理解していませんよね!?」

 

「何を仰いますかコスプ......女神様よ、無知であることを理解しているではありませんか!無知を無知と理解できていないことよりよっぽどマシですよ!」

 

「ああ、うん、そうなんだけどね......と言うか今コスプレと言おうとしていなかった?」

 

「気のせいですよ~やだな~、ハッハッハッ」

 

「もう面倒くさいから突っ込まないよ......」

 

何とか誤魔化す事が出来た。だが、女神様?は先程より疲れているように見えるが......きっと気のせいだろう。

 

「とにかく!このままだと先に進まないので単刀直入に言います。御剣神護さん、あなたは死にました」

 

「え~~~~~~~なんで~~~~~~~」

 

「何か思っていた反応の斜め上をいっているんだけど!」

 

そんな注文されても困る。ここが常識では考えられない場所なのだから、今の言葉も本当なのだろう。だから、その理由を知りたいが為の態度を示したまでに過ぎないのだ。

癖なのだろう、女性は又もや頬を叩いて気を引き締めていた。ちょっとだけ微笑ましい光景だ......俺の今の状況は真逆だが......

 

「実は貴方がイレギュラーな行動を取った為、死なないはずのあなたが死んでしまったのです。」

 

「イレギュラー?そんな事したかな?俺は某勇者のアニメを劇場で見て涙を流しながら興奮して、横断歩道の小学6年位の女の子がもうスピードの車に轢かれそうだから突き飛ばして、それから......ってもしかして?」

 

「そう、それです。あなたがあの横断歩道にいなければ車は少女を避けてガードレールに突っ込んで車は止まり運転手が少しケガをする程度ですむはずだったんです」

 

「なん......だと......!?」

 

驚愕の事実と聞いた事はあるが、まさか自分がそれを体験する日が来るとは思いもしなかった。

 

「じゃあ、俺は無駄死にで人生終了ってことか?......悪いな爺ちゃん、俺は不出来な孫だったけど楽しかったよ、ベーゴマを使ってメンコ取りした時の爺ちゃんの殺意しかない顔絶対忘れないからな......」

 

「いったい何が......いえ、今はそれは置いておきましょう。本来ならあなたの人生はそれで終わりですが、助けようとして無駄死にしたなんて......あまりにも哀れなので転生してもらう事にしました」

 

「あれ、女神様俺に対してクールすぎない?というか、転生という事は......本当に女神様だったのかよ」

 

「そうですよ、どんなもんですか!」

 

得意げに胸を張るコスプレイヤー改め女神様、まあそんな事すれば布一枚なわけでもう一部が凄い迫力を増している訳で......女神様が凄いという事を嫌でも知らされた。

 

「ああ、あんたは凄いよ。誰もが今のあんたを見れば認めざるを得ないだろう......」

 

「そ、そうですか......あなたには見る目があるみたいですね。それでは特別に転生の時の特典におまけしてあげます!」

 

「転生の特典?ただ転生するだけではないのか?」

 

「そうですね、どうしてもと言うなら特典無しでもいいですけど、特典ありなら可能な限り叶えてあげることができますよ?ハーレム人生にする事も「特典ありでよろしくお願いしまーす!!」いつの間に土下座していたんですかっ!全然見えませんでしたよ!」

 

驚く女神様は俺を終始見ていたのに気づいていなかった。それもそのはず、土下座に関しては日常茶飯事の俺にとって見える土下座は心が最大限にこもっていないものなのだから!

土下座に必要なのは結果だけである。土下座する動作を楽しむゲス野郎相手から学んだ、誰も知らない俺だけの経験だ。

 

「ですが特典があるという事は......今までのような日々ではなく物騒な世の中で暮らす必要があるからですよね?」

 

「鋭いわね、そうよ貴方が転生する場所は平和なだけな世界ではないの......まあ普段過ごす分には今まで通りだから安心して」

 

「それは良かったです。ずっと物騒な中生きていく自信なかったので安心です。......それで特典は何か一つだけ叶えてくれるんですよね?」

 

女神様には転生させてもらうだけでも感謝で一杯なのにこれ以上良くしてもらったら、先程の邪な感情が芽生えた自分を殴らなくてはならない。

 

「そうなんだけど、先程のおまけという事で可能な限りいくつでも叶えてあげるわ「ふんっ!!」って何で自分の顔を殴っているのですか!?」

 

「いえ、殴りたい気分になっただけなので気にしないでください」

 

「はぁ......」と困惑している女神様。絶対に言えない、邪な感情を持った自分を殴ると心に決めていた事は......墓場まで持っていこう。

 

「よしっ!女神様決めました!」

 

「もう?言っておくけど後で変更は不可能だからね?言い換えればその特典とともに生きていくという事だから慎重にね?」

 

「大丈夫です、物騒な世界と聞いてから考えていたので」

 

もちろん嘘である。考えてなどいない、最悪寝て過ごせる事ができるのなら他は適当でいいだろう。最近劇場で見た作品に影響を受けたまま死んだ俺は、まだその余韻が残っているみたいで、その時に考えていたもしもの空想をそのままお願いするつもりだ。

 

「何か紙と書くものもらえますか?それに書くので」

 

「わかったわ」

 

女神様は静かに目を閉じると両手を胸の前に持ってきて、水を掬うようにすると掌が光だし、光が収まるとボールペン一本とB4サイズの罫線が引かれている紙が一枚があった。

それを俺に手渡してきたので粗相のないように受け取ってその場でしゃがみ込み、地に紙を置いて特典内容を箇条書きで書いた。

 

 

・ 定番のイケメンにしてくれ☆☆☆

・ 何でも率なくこなせるようにしてくれ☆☆☆(社会という荒波を生きる為にお願いします!!)

・ 身体能力を悪魔なお兄ちゃん並みにしてくれ☆☆☆

・ デメリットなしの魔眼が欲しいな~☆☆☆

・ 制限なしの『復元する世界(ダ・カーポ)』をくださいな~☆☆☆

 

 

出来上がった用紙をもう一度確認する。これだけあれば平穏無事な生活を送れるだろう。少しというかオーバー気味な感じがするが、あとは女神様の判決次第だ。

 

「出来ました」

 

俺は用紙を女神様に渡す。それを受け取り一通り目を通す女神様、時折難しい顔をしていたがすぐにいつもの柔らかな表情に戻り用紙から俺に視線を向けた。

 

「はい確認しました。これぐらいなら良しとしましょう」

 

「よっしゃー!「ただし」......えーと、何かダメでしたか?」

 

「いえ、そうではなくて最後の項目ですが、これは強力なので使えば前世の、今現在のあなたの記憶が消失するので気をつけてくださいね」

 

「消失?じゃあ、使いすぎればいづれ俺は何も覚えていられないという事ですか?」

 

「そうなのですが、悪魔で消失するのは向こうでの記憶ではなく、こちらで過ごした記憶だけです。よく言えばこちらでの記憶が全て消失してしまえばバンバン使ってもそれ以上は消失しないという事です」

 

それは何とも大きな代償だ、だが俺は転生するのだから本来あるべき姿になるだけなのでは?そう頭で理解はしていてもやはり記憶を亡くしたいとは流石に思えなかった。

これからは慎重に使うことにしよう。

 

「分かりました、他にどうしようもなくなった時だけ使うようにします」

 

「分かればよろしい、その代わりにいくつかランダムで能力をつけておくわね。それと魔眼についてなんだけど......これは自分で見つけてね」

 

「自分で見つけると言われても、どうすれば?」

 

「それはお楽しみという事で、まあ突然閃くと思うからそんなに力を入れなくて大丈夫よ」

 

何が大丈夫なのかと思ったがここで言ってもどうせはぐらかされるだけだろう。とにかく、魔眼は無事叶えてもらえたという事が分かるだけでいいか。

 

「さて、時間も無くなってきたことだしこれで終わりにしていいかしら?」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

「いいのよ、私が勝手にやっている事だから......そうだ、お祝いの印として閻魔刀をプレゼントするわね!」

 

そう言って何もない空間から刀を取り出し俺の体に突き刺した。だが、不思議と痛みはなく突き刺したところを見ると刀が俺の体に吸い込まれていた。やがて刀の姿が見えなくなるともう抜くこともできないとあきらめた。突き刺した本人は特に気にしていない。その後今起きたことを忘れてこれからの人生を送る覚悟をした俺をまるで我が子に接するかのようにほほ笑む女神様、せめて翼さえ見せなければ初対面から敬意をもてただろうが......まあ、好きであの格好なのだから指摘するのは無粋というものか。

 

「それじゃあ、これから先はもう私と会えなくなるけど頑張るのよ」

 

「はい!女神様と会えないのは残念ですけど、俺の人生でこの時のことだけは絶対に忘れません!」

 

特に胸を張った時のポーズだけは未来永劫脳裏に刻み込む所存だ......

 

「ありがとう、私もあなたに会えてよかったは......女神も捨てたもんじゃないわね......」

 

女神様からは多大な苦労があったかのようなオーラが漂っているように見える。ファイトだよっ!女神様!

 

「それでは今から送るわね、眩しいと思うから目を閉じていて」

 

俺は言われた通りに目を閉じる。だが、まだどこに行くか聞いていない事、そしてハーレム人生をお願いする事を忘れていたのに気がつき目を開けると、女神様が現像式フィルムのカメラのシャッターボタンを押しているとこだった。

なぜにカメラを使う!?だが、カメラのフラッシュが驚くほどの光量で目をやられた。

 

「目がぁ、目がぁーーーーーーーーーーー!!!」

 

その言葉を最後に俺の意識は途切れた。最後に「やばっ」という声が聞こえたような気がした。

 

意識を手放してからどれ程の時間が経ったのだろうか。ゆっくりと目を開けるとそこは、知らない天井が見え......なかった。目が見えない、最後のフラッシュで目が見えなくなったのかと思ったが、目だけではなく体も思うように動かない。

この状況が理解できない、何か手掛かりが欲しいが体を動かせず目も見えないのではどうしようもない。

だが、耳だけは機能しているので意識を耳に集中して周りの音を聞く。するとどうしたことかどこからか声がした。そしてその声を聞いていると俺の知りたい今の状況の手がかりを入手した。それが本当であれば......

 

 

 

俺、御剣神護は赤ちゃんになっていた......

 

 

 




これが初の投稿という実感がひしひしと伝わってきています。

今回は転生の事だけで原作関連はあまりない事に気が付きました......
だがこれからは原作に関して書けるので次からが本番という事になるはず!たぶん!

タグにまだヒロインを追加はしていないですが、やはり三ノ輪銀推しの自分は今後そのあたりの絡みを徐々に増やしていくつもりです!
好みの分かれる作品になると思いますが、暇なときは是非閲覧していってください。
※誤字脱字多々あるのでご注意ください。

次回!作者敬語をやめることを決意する!
俺の中では最高にヒーハーしてるぜーーー!!!


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新たなる道へ......

ようやくテンションがマックスになって書いてみたら文章が滅茶苦茶になっていたが、気にしないで投稿しちゃったぜ!!

もうこれ書いてるとき深夜テンションなのであまりにも酷いかもしれんがそっとしてくれよ!

そんじゃあ、あと少しで原作スタートだから読者も辛抱して待て!!

敬礼!!!本日も晴天なり!!


御剣神護は新しい生を迎えて......泣いた。それは赤ちゃんだからか、それとも転生する瞬間の光景を思い出してなのか、それとも赤ちゃんなのに意識があるからなのか、それは分からない。ただ分かるのは、泣きたかったという事だけ......

その日はとにかく泣いて泣いて泣いて泣いて......眠るまで力のある限り泣き続けた。そんな生まれてすぐに悲しくなった時期もあったが、時間が経つのはあっという間だった。

両親がどちらも美形であるのを見て泣いて、兄弟が姉妹が今までに一人も生まれないことに泣いて、ハイハイを出来るようになって父親が嬉しいあまりに俺を抱き上げ高い位置にあげた状態でいきなりくしゃみして、手から離れて床に垂直落下して泣いて、母親が料理の最中に足元にハイハイで気配を消して近づき足元を見ていない母親に蹴られて泣いて、歩けるようになり調子に乗って階段を一段上ってはしゃいで足を滑らして階段から落ちて頭を打って泣いて気絶して......あれ?泣いてばかりじゃね?まあ、そんな泣く人生を歩んできた俺も今では立派な小学5年生になっていた。

 

 

寒い冬も終わり日も長くなって少しづつ暖かくなっている桜舞い散る季節。そう、気が付けば小学校高学年、6年生も卒業したので実質最上学年だ。なかなかの敷地を有する我が家の洗面台にある鏡で今の自分を確認すると、両親ゆずりの整った顔はDNAを受け継いでいるのだからやはりといった感想だが、驚くべきは髪の色である。母は明るめの茶髪でロングヘアーで両サイドの髪を後頭部あたりでリボンで結んでいる。つまり、何が言いたいかというとだな......可愛い、俺の親だという事は重々承知の上なのだが他に感想が浮かばないのだ。怒るとまるで悪鬼の如く変貌するが......

気を取り直して、我が父親だが想像通りというか体育会系な感じな見た目で豪快に笑えば肩をバシバシ叩きそうな少し厳つい顔なのだが非常に整っていることも相まって好青年を少し渋くした感じの少しグレーな感じの色をした髪のかっこいいお父さんだ。だが、忘れてはいけない、この父親は赤ちゃんのときの俺を頭上から手を放して落とした張本人なのだ。絶対に見た目で騙されてはいけない......

そして、その二人とは違う髪の色を持つのがこの俺だ。目を細めればグレーと言えなくもないかもしれないが銀髪だ。両親に聞いてみると、どうやら父親の家系の先祖返りらしい。まあ、髪は父親譲りという事にして、顔は母親譲りらしく厳つい顔ではなく温和な母親の顔に半分男らしいキリッとした顔を合わせた感じでいい感じの顔だ。イケメン万歳!これで人生イージーモードだぜヒャッハーーーーーーーー!

 

 

 

しかし、この時の俺はまさかあんな事になるとは想像もつかなかった......

 

 

 

「今日も~世界は平和だな~、まさかの展開すぐ回避~そんな事できるのは~この世で一人っ、俺だけっだ~ふぅ!」

 

 

 

呑気に歌を歌いながら俺は今日もいつものように休日を過ごしている......そういえば自己紹介がまだだったな!......え?いらないって?バッキャロー!!転生してからいろいろ紹介しているかもしれないが肝心の名前がまだだろ?

そう、俺の新しい名は、ズバリ!

 

 

 

「桜井信悟とは俺のことやで~」

 

 

 

特にキラキラもしていないしDQNな名前でもない。よくあるような名前だ......期待させて悪かったな!!

でも、名前は前と同じ読み方なのでそれほど違和感なく人生を送れているのは感謝だ。

それはさておき、周りに人がいるのを忘れていた俺は、多くの冷たい視線を集めていた。かなり恥ずかしすぎるんだけど!

これで俺についてはもう紹介することがないはずだ......別に赤ちゃんのときから今までどんな事があったか興味ないだろ?それでも聞きたいなら仕方ないから簡単に教えて差し上げましょう!!

まず、幼稚園の時は昼寝の時間があったんだが......寝相悪い子らに挟まれて寝ていたため、いつの間にか安息の時間が俺の上だけに偶然にも5人の子供が乗っていて息ができなくなり二度寝をする日々を過ごしていた。最初のうちは幼稚園に行くのが嫌だったのだが、慣れというものは怖いものでひと月経てば「あぁ、またか......」と受け入れられる程に心の余裕が出来ていた。小学校では入学式に年寄りの先生に他の生徒と間違われて説教をもらい、解放された時には式が終わっていた。

それで終われば良かったのだが、俺が新しい教室に入ると見たこともない人が入ってきて、迷子と勘違いした担任教師が放送室に俺を連れていき迷子のアナウンスをした。その場は呼び出しを聞いて駆けつけた両親が説明した事で何とかなったが、流れた放送は学校全体に響き渡っていたので次の日には学校中で笑われ者になっていた。やはり、無知な人ほど怖い存在はいないと実感したときだった。

 

 

それからも度々不運な出来事が続いた。

登校中には大量の猫に追いかけられ、下校中には新作ジェラートを食べにイネスに寄り道すると、俺に近づいて服の裾をつかみ泣いている迷子の子供が一人また一人と増えていき、この日のために貯めたへそくりが泣き止ませるために一人ずつジェラートをおごって、お金が足りず新作ジェラートを買えなくなった。代わりに醤油豆ジェラートを買って迷子の団体でベンチで食べていると、迷子を探していた親御さんが俺たちに気づきこちらに近づいてきて、迷子の子供たちもジェラートを片手に持ち親もとへ帰る。その後に親御さんたちが俺にお礼を言おうとしたところで同じ迷子の子供の親と何年かぶりの再会を果たしたらしく、お礼するのを忘れ世間話を始める。そんな中俺は一人だけぽつんとベンチに取り残されたので俺もまた

ジェラート片手に音もなくその場を去った。気のせいか帰り道を歩きながら食べていた醤油豆ジェラートはベンチで食べた時よりもしょっぱかった。

 

 

......と、こんな感じに俺の人生はとても濃厚であったが特に面白い話は一つもないのだ。最近では散歩しているときに年寄りに道を聞かれたので親切に教えていた時に、年寄りがかなり年齢のせいかプルプル震えているのだが、周りからは俺が脅しているように見えたのだろう。一人の少女がいきなりドロップキックを俺にかましてきたのだ。俺は当然反応できずそれをもろに受けて地面を転がった。何が起きたか理解できない俺は倒れていた身を起こして周りを見ると、道行く人々が俺を害虫のように見ていた。なぜそのような視線を向けるのか疑問だったが、これ以上ここに居れば厄介ごとに巻き込まれると経験上の勘が告げていたので脇目も振らずにその場から走り去った。後ろからは何やら少女の声が聞こえた気がしたが無視した。

 

 

 

「フッ......少し黄昏てしまったか......」

 

 

 

無理もない、生まれてから俺の人生に平和はあっても平穏はないのだから......

 

 

 

「だが!しかし!BUT!今日は待ちに待った俺の大好きな漫画『ポンコツだからできるかも?』の最新刊の発売日だから、そんな些細な事はどうでもいいんだ!」

 

 

 

今日という日を希望に日々地を這いずるような生活を送ってきたのもこの漫画のおかげだ。これが無ければはっきり言ってやってられない。今俺がヤンキーにならなかったのもこの漫画のおかげと言っても過言ではない!!

先程の視線から逃れた後は、気分を高揚させながらそのまま書店に向かい、無事最新刊を購入して帰宅する。帰ってから手洗いうがいをして、夕飯までゆっくり読む計画をしながら自宅の玄関のドアを開ける。

 

 

 

「たったっただいまっ!......て誰?」

 

 

 

屋台を引きながらラッパを片手にもっているおじさんのイメージソングをアレンジして挨拶をすると、目の前には怪しい格好の人がいた。聖徳太子のような服に不気味なお面をつけた目の前の人物は両親と知り合いなのか、通報もされずに何かを話していたみたいだ。ちょうど話が終わった頃合いに俺が帰宅したらしく、その者は俺に軽く会釈してから家を出ていった。当然何も知らない俺は両親に誰なのか尋ねたが、どちらも後で話すと言うと二人でダイニングルームに行ってしまった。今の俺は最新刊を読むことで頭が一杯なので特に気にせず、素早く手洗いうがいをすませて漫画を読むのに没頭した。

 

 

 

「ふぅ......流石はツコちゃんの並外れた会心のツッコミだ、まさかスイカをわらないで地面を割るとは予想できなかったな......ツンポくんは相変わらず地面すれすれに頭を下げた歩きなんだな~ここまでくると尊敬するよ」

 

 

 

今回も期待の斜め上を行く作品だった。いつの間にか外は暗くなっていて何やら美味しい匂いがしている。もう、夕飯なのだろう。俺は読み終えた漫画を本棚に入れて少しの間外を眺めながら余韻に浸ろうとしたところで、母親からご飯が出来たから降りてくるように言われた。お腹も良い具合に空いていたので余韻に浸るのをやめて一階のダイニングルームに向かった。

 

 

 

その日も毎日と同じように父と母がイチャつきながら、息子はそれを見て涙目になりながらご飯を食べた。他の家庭がどうかは知らないが、我が家では休日の夕飯はこれがデフォルトだ......悔しい!!いつか見返してやる!!

......その後、食べ終えた食器を片付けリビングに向かおうとしたが、両親から大事な話があるからそこに座ってくれと言われたので先程食事していた時の椅子に座る。向かい側に両親が並んで座っているのは変わりないのだが、少し前までのふざけた表情ではなくあまり見たことのない真剣な表情をしていた。しばらくの間静寂に包まれていたが、父親が一息つくと俺を見ながら話し始めた。

 

 

 

「大事な話があると言ったがあれは......本当だ」

 

 

 

当たり前だ、もしも嘘であれば今頃厳つい顔がもっと厳つくなっていただろう。息子が少し物騒なことを考えてるとは知らずに話を続けた。

 

 

 

「信悟も玄関で見たかもしれないが、あの者は大赦の人間だ」

 

 

 

「大赦って、あの信じる者は~救われろ~ってやつ?」

 

 

 

「前々から思っていたがお前は何かおかしくない?そんなの初めて聞いたぞ!?」

 

 

 

「いや~照れるから褒めないでよ~」

 

 

 

「褒めてないからな!?......話が逸れたな、とにかく俺たちは込み入った事情があって信悟がいない間に話しをしていたんだ」

 

 

 

「ふ~ん、でも何で大赦の人が家に来てたの?」

 

 

 

「それはだな......我が家は代々大赦に纏わる家系だからだ」

 

 

 

「は?......なんですとーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

 

「やっぱ驚くよな、まあ大赦の中でも末端だから今までは特に関ることもなかったんだけどな......だが、それもつい先程までの話だ」

 

 

 

「いやいやいやいや!急展開すぎるだろ!それにその言い方じゃ何かあったみたいに聞こえるんですけど!?もしかして、あれか?信託やら何やらで我が家の誰かさんが選ばれたとか?な~んてな!「そうだ」......マジで?」

 

 

 

「マジだ。しかもその誰かさんとは......お前の事だぞ信悟」

 

 

 

「そ、そんな~......俺が何をしたっていうんだよ!」

 

 

 

「それは俺にも分からん、ただ、お前が神樹様に選ばれたと伝えられた。ちなみに、嫌なら断ることもできるがどうする?」

 

 

 

「そう言われても、何をすればいいのかも分からないんだろ?」

 

 

 

「ああ、ただ一つだけ分かっている事がある」

 

 

 

「それは......」

 

 

 

「それはだな......この話を受ければ転校することになることだ」

 

 

 

「......それだけ?そんなんで引き受けるとでも?」

 

 

 

「そうだよな、転校先が神樹館小学校で可愛い女の子が一杯のところってだけじゃ決められないよな......ごめんな」

 

 

 

俺はその言葉を聞き席を立ち父親に向かって騎士の忠誠を誓うポーズになった。

 

 

 

「何を仰いますか父上!父上と母上がそこまで考えて下さっただけで私はとても感謝しているのですよ?だから頭を上げてください」

 

 

 

「あの~私はまだ何も言ってないんだけど「信悟!お前ってやつは!」......」

 

 

 

「はい!父上!私は父上と母上のためにも、その使命是非引き受けさせて頂きます!」

 

 

 

「そうか!そう言ってくれると信じていたぞ!それでは大赦にも引き受けると伝えていいんだな?」

 

 

 

「はい!不甲斐ないですが精一杯尽力いたします!」

 

 

 

ギブ&テイク、世の中はこの言葉で成り立っている。ならば、俺も使命を果たすのもこの言葉に当てはまるものだろう。得るものは転校という新たなる人生の始まりだ、このチャンス逃しはしない!

俺は立ち上がり、父親に手を差し出す。その意図が伝わり父親もまた手を差し出し......握手をした。とても力強いそれはまるでその人の心の内を写し出しているようだった。ようやく、二人の熱も冷め手を離すと周囲が一気に寒くなった気がした。元凶を探すとそこには......普段からは想像もつかない悪鬼が君臨していた......

 

 

熱い握手を交わした後、俺と父親は母親に怒られた。確かに母親抜きで決めてしまったのは悪かったとは思っていたが、まさか一日正座で過ごすように言われるとは思いもしなかった......

母親も本当は心配で、出来れば引き受けて欲しくはなかったようだが、「信悟が決めたことなら反対しないわ......その代わり、一度決めたことは最後まで責任を持ちなさい、いいわね?」と言って応援してくれた。

 

 

次の日には、俺が使命を引き受けることを父親が大赦に伝えた。そして、可能な限り大赦がバックアップするらしい。引っ越しの心配も特にはなさそうだ。

それからは残りの小学5年の学校生活を存分に楽しみ来年度からは会えない友達と、放課後から日が暮れるまで遊んだ。

 

 

それから数日後には大赦から連絡があり、俺の転校する日を教えられた。来年度の春、小学6年の新年度初日に俺は......転校する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転校先は神樹館小学校......そこには無垢なる少女の勇者が在籍している。だが、その事は彼は知らない......果たしてこれから彼というイレギュラーが、今後の未来にどう影響していくのか......

 

 

願わくば......になるように......

 

 




いや~何とか今日中に書けた~~~

やっぱり最初は文章構成気になるんだけど途中から面倒になってとにかく書きたくなったから書いてみたらこうなるよね~ハッハッハ!!!


まあ、次からが本番だから許せ!!

いよいよ原作キャラ登場!!!ここから先は夢想だーーーーー!!!!!

次回 オリジナルソングのネタを探す者
作者がうるさいけどこれからも見てくれよな!!


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新天地......

何かヤバイ......

本当は書く気がなかったんだが気づいたら体が勝手に動いていた......

何を言っているか分からないかもしれないが、これ本当の事なんだぜ?

知らない無意識の行動って本当にあると知れた日が俺にもやってきましたよっと

悪いが今の俺は頭がかなり糖分不足の状態で書いてるから話も結構適当かもしれない......

とにかく!出来上がったので見てくれ!


転校日から数日前、転校するにあたって連絡手段として必要になるスマホを無償で大赦から提供された。実は小学生でスマホを所持している友達が以前通っていた学校にもいて、心底羨ましく思っていたので大赦の株が俺の中で飛躍的に上昇した。マジ大赦さん神対応パネェ!!

もちろん、受け取ってからすぐに電源を入れ同封されていた説明書みたいな本を読みながら必死に操作した。本の項目で何やら勇者アプリとかあったが特に興味がないのでその項目は飛ばしたが、大丈夫だ、問題はない......はずだ。

 

 

スマホを受け取ってから三日三晩、春休みに入った俺は体の一部のように使用していた。朝起きるとスマホにキスをして、朝食の時もズボンのポケットに入れながらニヤニヤしてご飯を食べた。両親から冷ややかな視線を向けられたが気にしない。

昼までの時間はスマホでネットサーフィンをしてサイト『これで君も注目の的!必見!スマホマスターへの道!!』を熟読して猛勉強し、昼食には馬の目の前に人参を吊るすのを応用してスマホを見ながら食べていた。昼食の時はカップラーメンだったが、スマホには美味しい料理100選の画像を写し、それを見ながら食べていたせいか、いろいろな味のカップラーメンになった。やはり料理の見た目というものは馬鹿にできないとこうして実感できた。これだけでもスマホを頂いた甲斐がある。

この時にはもはや両親からの視線も気にならなくなり昼食を終え、今度は散歩に出かける。今まで歩いた事がある道が嘘のように新鮮味を感じ、スマホのカメラを起動して三匹の犬が猫一匹に怯えている姿や、憎むべきイケメン男子を上手く誘導して側溝に足を入れた姿、そして男なら誰しも夢見たであろう階段から降りてくるスカートを履いた人を下から撮った。他にも様々なものを撮ったが、二つほど分かったことがある......

一つはイケメンはどんな時でもイケメンだという事、もう一つは夢は想像するからこそ価値があるという事だ。イケメンの無様な姿を撮ろうと勢い込んでいたが撮った写真を見ると何故か清々しいほどに足以外全てが眩しかった。もはや足を入れてしまったのではなく自分から足を入れたというのが正しい表現の様な写真なのだ。俺は心の中で泣きながらそっと写真を消した......階段下から撮った写真に至っては人物を確認しなかったのがいけなかったのか、撮った写真の人物はなんと......月の戦士に憧れたような格好の青髭おやじだった。

思わずその場で吐いてしまい逆に周りの人にその場を撮られ笑われた。もしも、男の夢を実践しようと考えている者がいるならどうか覚えていてほしい......「その代償は計り知れないから気をつけろ」と、あわよくば次の犠牲者が出ない事を俺は切に願う......

 

 

 

こうして、泥をすするような気分になった俺は足を引きずりながら自宅に帰還する。少しトラウマになりながらも俺は再びスマホを取り出し保存していた曲を流し始める。心なしか気持ちが楽になっていく、だんだんと眠くなってきて目を閉じる。

そして、気が付くと外が暗くなっていた。どうやら相当な精神的ダメージが蓄積していたのだろう、今ではすっかり元気になっていた。俺が目を覚ますのと同時に夕食の準備が整い、母親が呼びにきた。すぐさまスマホをポケットに入れてダイニングルームへ向かう。夕食はいつものように父親と母親がイチャコラしていたが今の俺にはその精神攻撃は通用しない。何故なら俺にはスマホがあるからだ、夕食を食べるのと同時にとあるアプリを起動し、画面に出てきた向こう側にいる女の子と食事する。

 

 

ああ、人は誰かと一緒に食べるとこんなにも美味しく感じるのか......向こう側の女の子と楽しく食事をして天にも昇れそうな至福のひと時を堪能した......が、流石にこの光景は両親に何かが伝わったのか、母親は目にも止まらぬ速さで俺のスマホを奪い取り、それを父親に渡すと今度は父親が風をきるような速さでアプリを削除した。

何が起こったかわからない俺は一人呆然として、父親がアプリを削除し終えたスマホを手渡されたので受け取り、食器を片付ける事もせずスマホ片手に自室に戻る。何故だか心臓の鼓動が早くなりながらも恐る恐るスマホをスリープ状態から解除した。

 

 

ない......いつもは画面左上にあったアイコンが消えている......俺は何度も何度も目をこすり、スマホを上下逆にしたり、スマホに頬ずりをした。他にも逆立ちしながらスマホをいじったり、ブリッジしたり白目になったり1分間瞬きをしないでスマホを凝視したりあらゆる処置をとった。だが、どの方法を取ってもそこにアイコンは復活しなかった。俺が貯めたお金をコンビニの雑誌コーナー近くにあるカードと等価交換し、書かれているコードと呼ばれるものを入力して5桁にもなった数字を全て消費して愛を注いだ俺の魂全てを捧げたアプリが......一度削除すれば一からになる悪魔のようなアプリが......俺のスマホの中から消え失せていた。

 

 

この日、どこかから人とは思えない叫びが聞こえたという都市伝説が生まれた。まるでそれは世界を呪っているような声に聞こえた......

 

 

 

 

俺が声にもならない叫びをしてからの二日間の出来事は覚えていない、だが、気が付けばスマホに関してはまるで息をするかのように扱えるようになっていたのだ。俺はいつの間にかスマホマスターになっていた。

 

 

しかし、どうしてかは分からないが俺は喜ぶ事が出来なかった。それでも時間は過ぎていく、まったく世の中は今日も残酷だ。目から零れ落ちる雫を服の裾で拭き、今日も一日が始まる......

 

世界にとってはちっぽけな、俺からしたら壮大な日から少しの時間が経った。

 

 

 

家の中では両親共に慌ただしく動いている。もちろん、俺だけが優雅なひと時を送ることなど出来ず、お気に入りの漫画や衣服類を段ボールに敷き詰めて玄関先のトラックに乗せる。

 

引っ越しの日、それが今日なのだ。

 

新しい家は両親は事前に見に行っているが俺はその日ずっと部屋から出てこなかったので二人だけで行ったらしい。声をかけたみたいだが俺はまったくと言っていいほど覚えていない。たぶん寝ていたのだろう......そうに違いない!

別に目から汗とか出てないよ?これは今まで動いていたから汗をかいただけのはずだ!......たぶん。

一人気分が落ち込んでいたが、荷物が全て積み終えたのかトラックが走り去っていく。これで家には何もない、備え付けの物しかないがこの後は軽く外食をしてから引っ越し先に向かうため支障はない。先程まで動き回ってバテていた両親も回復し、家族3人で昼食をとるため今まで住んでいた家を去った。ありがとう元我が家、ここでのたくさんの思い出俺は絶対に忘れやしないよ!だから、今までありがとうございました!

 

思い出が詰まった元我が家に一礼してから先に歩いている両親を追いかける、気のせいか、後ろから声が聞こえた気がした。

 

 

 

「最高の人生を歩めよ!......か、そんなの言われなくたってそうするよ」

 

 

 

何だか俺の心が少しだけ軽くなった。

 

 

 

元我が家を出発してからは特に何もイベントはなかった。

三人仲良く食事をし......訂正しよう、両親がイチャつきながら、対して俺は一人静かに食事をしていた。まあ、もう慣れたけどね?本当だよ?

その後は荷物が届くまで時間があるのでイネスでウインドウショッピングをした。父親が無理やり母親に買い物に付き合わされていたが知った事ではない、いいぞ母親!もっとやれ!......俺はそうなる未来が目に見えていたので離脱して一人イネスの中をうろちょろしている。一応別行動をとる前に時間を決め、フードコートで集合するようにしてあるので問題はない。時間までは意味もなく駆け回ったり、エスカレーターを逆走したり、エレベーターの階層全てを押してからすぐさま降りたりしながら時間を潰した。そういえば、途中に腹が減ったのでジェラートを買って食べ歩いていた時にどこかの家族連れの少女がいたのだが、ドロップキックをしてきた少女に似ていた気がした。きっと気のせいだろ、あの日の事は俺にとってそれ程気にしていない日常茶飯事であったし、向こうも気に留めてすらいないだろ。まだあの少女が本人だと分かった訳でもないので俺は仲の良さそうな家族から視線を外して歩いた。

 

その少女が弟に対してマイブラザーと言っていたのが印象に残っていたが、世の中いろんな感性を持った人がいるんだなと思っていたのはここだけの秘密だ。

 

 

 

時間通りに集合場所に行くと、予想通りやつれた父親とツヤツヤとした母親がいた。本当に買い物していたんだよな?

 

荷物の届く時間にはここから歩いてちょうどいい感じなので、両親と俺はそのまま引っ越し先に向かった。ちなみに、母親の荷物は息子である俺と父親で全部持っている。文句を言いたいが今この場でそれは愚策だと分かっているので何も言わず両手が塞がる程度で済んだ荷物を持ちながら新しい我が家へと歩みを進める。引っ越し先もとい新しい我が家はイネスから少々時間があるので、俺はいろいろ聞きたいことがあったので両親に聞いた。

俺が聞いた事は大赦の事と家の事、今も疑問が残る点が多々あるのでこの際聞くことにしたのだが、その答えは俺の想像を遥かに超えていた。

 

 

両親曰く、過去に何代目かの祖先が神樹様から使命を受け予想以上の功績を残して大赦の重鎮になった時があると言うのだ。それだけでなく、極秘事項で詳しいことは分からないが戦いが日常の時代に一人の犠牲者を出さないで勝利したとか、一族のみ使える奇跡のような幻の力が先祖代々受け継がれている事、裕福な生活や結構な敷地を持っているのは祖先の功績が大きいことなど教えてくれた。

祖先は一体何者なのか、知りたいけど知りたくない思いになった。

 

 

「それでも、時代が経つにつれて地位が落ちて今の末端の位置になってるんだけどな!」

 

 

 

「それは自慢する事なのか?」

 

 

 

自慢気に話しながら快活に笑う父親。その姿を見ると無理しているわけではないのが見て分かるのでそっとしておく。母親も父親につられて笑みをこぼす。そうなると、俺はそれ以上言及しようとは思えなかったので別の話をすることにした。

 

父親の自慢にもならない自慢話の後はこれから住む新しい我が家の部屋の話や、転校先の学校の話をする。その間に意外と歩いていたのか、知らぬ間に引っ越し先の新しい我が家に到着した。初めて見る家は以前の建物より一回りぐらい大きな気がした。

やはり、新しいというものは人を高揚させ俺はすこしだけはしゃいでいた。その姿を微笑ましく眺める両親、しばらくして落ち着きを取り戻した俺は恥ずかしくなりながら周りを見渡す。聞いていた話によると荷物が届くはずだが、荷物を載せたトラックはどこにも見当たらない。不思議に思い両親に聞くと、まだ届く時間になっていないようだ。その間まで暇を持て余すことになったので、まずは部屋決めをすることにした。特にこだわりのない両親は後でいいと言ったので俺は迷わず二階の少し前よりも広い一室を自室に決めた。特に異論もないので続いて母親、次に父親と滞りなく部屋が決まる。父親の部屋が決まり各々に部屋についての感想を言い合っているとトラックが到着した。そこからは引っ越し前の作業とは逆の事を業者の人と協力しながら始める。そして、ようやく最後の荷物を運ぶと家族三人で脱力してその場に座り業者の人は一言挨拶するとトラックに乗り帰っていく。

 

 

しばらくの間、座り込んで疲れながらも運び終えた荷物と室内を見渡すと違った景色を見て思わず言葉を漏らした。

 

 

 

「ここがこれからお世話になる家なんだよなぁ......」

 

 

 

今まで見ていた風景と違っていたので少しだけ寂しくなる。両親も同じ心境なのか遠い目をしていた。

体力もだいぶ回復してから、最初に母親が立ち上がり夕飯の支度を始める。材料と調理器具はイネスで購入済みなので、新品の調理器具少しを両手にキッチンへ向かう。材料が無くては意味がないので続いて父親が立ち上がり材料を持ってキッチンに向かう。俺は今日ぐらいは空気を読もうと思い、両親とは反対のリビングに向かいソファに腰掛ける。その後は疲れていたこともあってか、今までと同じく夕食を取り、風呂に入り、湯冷めしないようにすぐにベッドに入った。自分が思っていた以上に疲労が溜まっていたのか、その日はすぐに寝た。

 

 

引っ越してから次の日からは新しいことだらけであり、いつの間にか転校前日の夜になっていた。明日はいよいよ神樹館小学校転校初日だ。初日は大切で今後の人生に大きな影響を与える事を小学校入学式で身を持って体験している俺は大赦から送られてきた制服や買いなおしたランドセル、その中に入れる小物を入念に確認する。

 

 

 

「漫画よーし!ハンドスピナーよーし!腕枕キーホルダーよーし!スマホよーし!筆記用具よーし!教科書は......まだだよな?」

 

 

 

若干......いや、ほとんど学校に関係ないものが入っているがこれは願掛けみたいなものなので目をそらす。

確認も終わり、すでに風呂にも入ったのであとは寝るだけとなりベッドに入る。電気を消して目を閉じるがなかなか眠れない。

 

 

 

「眠れるわけないだろ!ドキドキとワクワクが待っていると分かればいても立ってもいられるか!!」

 

 

 

自分自身を鼓舞させ、余計に眠れなくなる。

 

 

 

「早く寝ないとなんだけどな~......いよいよ明日か、何だか夢みたいだな。まさか転校するなんてあの日の俺は想像もしなかったからな~」

 

 

 

思い返せば変な仮面の人が家にいなければ今頃代わり映えしない日常を迎え、年が一つ増えるだけだったから何とも言えない気持ちになる。

 

 

 

「それもこれも大赦様様だな......あの仮面はあまり見たくないけど、ホラー映画に出てきそうだよなぁ......」

 

 

 

あの仮面はいつ思い出してもデザインが絶妙だ。きっと何か意味があるのだろう、そういう事にしておこう。

 

 

 

「転校先でも上手くやっていけるといいけど、そこはあの方から頂いた特典と大赦から頂いたスマホがあれば何とかなるだろ!......最近他人任せな考えになってきてるけど仕方ないよな。俺は楽な人生を送れるように努力はしているからこれは偶然だ、偶然に違いない」

 

 

 

自分のマダオ化が進行している事に悲しくなるとだんだんと睡魔がやってきた。

 

 

「そろそろ眠れそうだな......まだ見ぬ明日の俺、応援しているぞ......おやすみ」

 

 

 

ようやく眠りにつくと、安らかな寝息をたてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

..................バタン

足音を立てないように階段を降りリビングのソファに腰掛ける。隣には湯上りなのかほのかにシャンプーの香りのする女性が座っていた。

 

 

 

「信悟は寝たみたいだ」

 

 

 

いつもよりも静かな声で寝たことを教える男性。

 

 

「そう。まさか信悟が......今でも信じられないわ」

 

 

女性は少しだけ悲しそうな表情になる。

 

 

「それは俺も同じだ、これは夢なんじゃないかと今も思っているよ」

 

 

 

男も深刻そうないつもの表情からは想像できない顔をする。

 

 

 

「あら、あなたが半分は悪いのよ?信悟をその気にさせるようなことを言うから」

 

 

「俺も悪いとは思っているよ、でも俺はこの日常を守るためなら最後まで諦めない......たとえそれが息子に重荷を背負わせることになっても......軽蔑したかい?」

 

 

 

無理に笑って女性に心情を話す。だが、彼女はそれを気にしたようには見られない。

 

 

「そんなのできると思う?私だってあなたと一緒なのよ?」

 

 

「そういえばお前はそういうやつだったな。俺なんかよりよっぽど強い」

 

 

「そう見えるのはあなたがいるからよ......いいえ、私たちの子があんなだからかしら?」

 

 

 

冗談めかしにいって笑う女性、それにつられ男性も笑う。

 

 

 

「ああ、そうだな。なんて言ったって頭上から手を放して頭から落ちても泣きわめくような赤ん坊だもんな」

 

 

「まったく、あの時はすごく心配したのよ」

 

 

 

笑いごとにならないことをいいながらもまた笑いあう二人。

 

 

 

「でも良かったの?あの子にも引き継がれた事を教えなくて?」

 

 

「いいんだ。せめて今だけでも楽しい生活を送ってもらいたいから、それに時がくれば自然と分かるはずだ」

 

 

「もう!そう言って、本当は伝えるのを忘れていたんでしょ?」

 

 

「あれ?わかった?」

 

 

「当り前よ、何年あなたと一緒にいると思っているのよ」

 

 

「ごめんごめん......でもあいつならそんなもの必要ないさ」

 

 

 

男性は何か確信したように話す。女性も心当たりがあるのか頷いた。

 

 

 

「そうね、あの子なら大丈夫ね......それよりもこれからの学校で上手くいくか心配になるわね」

 

 

「ははは、そうだな」

 

 

 

二人の間に笑いが絶えない、それは二人の子に信頼を置いているから笑えるのである。

 

 

 

「これから先どうなるかなんて俺達には分からない、だから、俺達はあいつがこれから歩む道を見守ろう」

 

 

「ええ、そうね......きっとあの子なら険しい道でも転がっても超えていくはずよね」

 

 

 

途端に二人は静かになる。お互い確認したわけではなくそっと手を繋ぐ。

 

 

 

「だから、俺達は願っている」

 

 

「だから、私たちは願っている」

 

 

 

二人は思いが届くように言葉を紡ぐ。

 

 

 

「「どうかその先に幸あらんことを......」」

 

 

 

時計の針が12のところで二つ重なる。

 

 

 

桜井信悟が小学6年生になる日......

 

 

 

そして、運命の歯車が動き出す......

 

 

 

 

 

彼は一体どんな道を歩むのか......

 

 

 

 

彼の歩む道の行先は光か......それとも闇か......

 

 

 

 

 

 

 

その答えは彼に託された......

 




はい!ごめんなさい!

もはや文章が文章していない......それ以前に自分自身何を言ってるのかさっぱり分からないw


いやね?俺も本当は原作キャラ登場させたかったんだよ?でもさ、そこまで行くには学校に転校した後のほうがいいじゃん?そしたらさ、いろいろ疑問な事が出てきてさ特典もらったのにどこにも複線の一部も見受けられんのよ......

とにかくこのままだと話続けられないという事で急遽執筆しました!
本当にすまん!だがそれもここまでだ!
思えば転校まではおまけのつもりだったが、言葉にするとここまでになるとは予想できなかった......

もはや俺が書きたいのはこの先なのでここまではおまけ程度に受け取ってくれ!

それもこれで終わりだ!次回からはやっと登場だ!嫌でも登場させないと状況なら絶対登場するからこれで安心だ......やり切ったよ......

次回!糖分補給を断った末路を実体験!!

皆は絶対真似するなよ!!


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記憶に残る日......

何と!ついに!原作キャラの登場だーーーーーー!!!!......たぶん......きっと......

ここまで長かった......書きたくなってもすぐにかけず疲れて寝てしまったり、やる気が起きなくて寝たきりになって投稿できない日々もあったが、ようやくここまでこれた......やばい、泣きそう......



 

 

転校初日の朝、楽しみにしていた割には寝坊する事もなく朝早くに起きれた。今ではすっかり日課になったスマホを起動して、今日の天気を確認する。この日は俺を祝ってくれているのか100%晴れの予報だったので少しだけ得した気分だ。

 

 

「おっと、浮かれるのは良いがせっかく寝坊しなかったのにこのままじゃ遅刻してしまうな」

 

 

俺はまだ少しだけ眠いのを一階の洗面台で顔を洗う。ようやっと完全に目が冷めたのでダイニングへいきいつもの席に着く。先に起きていた母親がすでに用意してくれていた朝食を頂く。

 

 

「う〜ん、今日もパンはうまウィッシュ!!」

 

 

ロックなポーズを撮りながら朝食を取っていたが、母親に行儀が悪いと叱られたので静かに食べる。朝食も済ませた後は歯を磨き、自室に戻り昨日から用意していた制服に着替える。一通りの準備はしてあるので再確認せずにピッカピカの重さを感じさせない、まるで羽のようなランドセルを背負い上履きも持つ。時間も登校時間を考えると出た方が良い時間になったので玄関でこれもまたおニューの靴を履いて両親に行ってきますと行って家を出る。

 

 

「今日から俺も小学6年生!!大人への階段をまた一歩上ってしまったか……ふっ」

 

 

1人コントをしているのを登校中の小学生達に笑われながるも気にせず、新校舎に向かった。

 

 

そして、この日の事を俺は絶対に忘れる事はないだろう......この日はとても濃い1日になったのだから......

 

 

 

 

 

 

家を出て1人コントをしてからは特にトラブルもなく校門前に到着した。今日から通い初める小学校、神樹館......

 

 

「ここが学校......なんだよな......敢えて一言だけ言おう。凄く......大きいです......」

 

 

そう、今まで通っていた学校も小さいというわけではないが、大きさだけではなく外観も立派なのも相まってまるで学校と言うよりもお屋敷のようだ。

 

 

「さて、いつまでもここに居たら遅刻になっちまう。確か最初は職員室だったよな……それじゃ行くとしますか!」

 

 

一度、自分に喝を入れてから校門を通り越して昇降口に足を運ぶ。そこで予め聞いていた自分のロッカーに靴をしまい、持参した上履きに履き替え職員室に向かった。

 

 

 

職員室と書かれたプレートがある部屋のドアの前で深呼吸してからノックをして入室する。

 

「失礼します。今日から転校する事になった桜井信悟です。」

 

 

自分の名前を告げて一礼する。頭を上げて周りを見回すと、1人の女性教師が手招きしていたのでそこへ向かう。

 

 

「おはようございます。今日から転校してきた桜井信悟くんですね。私は貴方のクラスの担任ですのでこれからよろしく」

 

 

「はい!これからよろしくです先生!!」

 

 

「あの、そんなに力まなくてもいいのよ?」

 

 

「いえ!これが俺の通常運転なので問題ありません!サー!」

 

 

「サーって、軍人じゃないんだから……まあ、それは置いといて、早速だけど教室へ案内するから着いてきてください」

 

 

「サー!了解であります!サー!」

 

 

「......もう何も言わないわ」

 

 

先生はそれだけ言うと何もなかったかのように席を離れ教室へ向かう。俺も先生の後について行き職員室を出た。歩いている途中他の教師陣から変な子を見るような目を向けられたが、きっと俺が自意識過剰なだけだろ......

 

 

目的の場所である教室へ近づくと中からはこれから同じクラスメイトになる生徒達の声が聞こえてくる。ここが俺の教室になると考えるとワクワクしてくる。そんな事を考えているうちに教室前に着いた。先生には呼ぶまで廊下で待っているように言われたので、俺はその場で待機し、先生だけが教室に入る。

 

 

「そういや、転校なんて初めてだから自己紹介とか考えてもなかったが......。今になって緊張してきたぞ!どうしよう!ええと、確か第一印象が肝心だったよな......となるとあれをやるしかない......よな......」

 

 

自己紹介も一通り決めて、そろそろ呼ばれる頃かと思っているとタイミング良く先生に呼ばれた。ここが正念場である。

 

 

「はい!失礼します!」

 

 

そして、入ると皆の視線が集まり、俺の姿を見た瞬間......全員が驚愕の表情になった。まさに、計画通り!

 

 

その状態からいち早く正気に戻った先生が恐る恐る聞いてきた。

 

 

「あの......信悟くん......一体何しているんですか?」

 

 

「何って、見ての通り......逆立ちしてるんですよ!!」

 

 

「いえ、そう言うことではなくて、何故逆立ちしているんですか」

 

 

「え?第一印象が肝心だってサイトの『自己紹介の達人』に書いてあったので記憶に残るようにと思って、逆立ちで自己紹介しようとしていたんですよ!」

 

 

今の俺はとてもムカつく程のドヤ顔をしながら言っていただろう。先生の表情が少し引きつっていたが、ため息をつくと今度は呆れた表情になっていた。

 

 

「事情は分かりましたが、すぐに逆立ちをやめて下さい。」

 

 

「どうしてですか!先生!どこかおかしいとこでもありましたか!?」

 

 

「その考えがおかしいです」

 

 

「おうふ、今の先生最高にクールだぜ......はいはい分かりましたよ......っと」

 

 

これ以上は先生が怖いので俺はすぐに逆立ちをやめた。

教壇まで歩いて先生の隣に立つとやっと皆も正気に戻る。俺は緊張した心を落ち着かせる為、悟られないように深呼吸してから自己紹介をする。

 

 

「初めまして、転校してきた桜井信悟です。今日からこのクラスで共に学ぶ事になりました。ここでぶっちゃけますが見た目通りこの神樹館に似合わない人となりをしているけど、仲良くしてくれ!頼む!」

 

 

頼み込むときのポーズのまま精一杯の俺の願望も混じった自己紹介に、何人かは笑っていたが快く拍手してくれた。

何とか上手くいった自己紹介のあとは先生に自分の席を教えてもらい、その席へ向かう。これから自分のマイ机にランドセルを乗せマイ椅子に座る。やはり名家のご子息が通うだけあって素材が最高だ、思わず机に頬ずりしてしまう。

 

 

「これからよろしくなマイ机達!それにしてもお前は良い肌触りだな、思わず頬ずりしてしまったぜ......まったく罪作りな奴め」

 

 

俺の行動に周りのクラスメイトが若干ひいていたかもしれないが仕方ない。君達はずっとこれを使っていたからわからないかもしれないがこれはとても良いものなんだぜ!

 

 

その後もクラスメイトから距離を取られながらも朝のホームルームが再開して、一通り今日の連絡が終わると先生が日直に挨拶するように言い、日直である黒髪美少女が挨拶をする。黒髪美少女が......だ。大事なことなので2回言った。

この挨拶はどの学校でも同じらしく戸惑うことなく俺も皆と同じ姿勢をとり、神棚に向かって一礼する。

 

 

その時、突然音が消えた......

 

 

何が起きたのか確認するため視線だけを変えて周りを見ると俺以外の人は同じ姿勢のまま動かない、まるで時が止まったような光景だ......

 

そんな常識外れの異常事態に驚いていると、近くから声が聞こえた。俺の他にも動ける人がいたみたいだ。......だがしかし!これが俺を驚かせるためのサプライズならばサプライズ返しをお見舞いしてやる!

そう考えた俺は、まだ俺が動ける事に気がついてないと信じて瞬きしないで頭を上げて前を見たままの姿勢を保つ......動かざること山の如し......

 

サプライズなこの状況から少し時が経つと、いきなり眩い光とともに教室ごと光に飲まれる。その光の中で瞬きしないでいた俺は、突然の出来事に目を閉じる事に対処できなく直視してしまった。

 

 

「目がぁ、目がぁーーーーーーーー!!!!」

 

 

そんな俺の転生してから初めての悲痛の叫びに意味もなく、世界は光で埋め尽くされた。光が収まった後も、すぐに視力は回復せず、痛みを少しでも和らげるために地面をのたうち回る。

今現在、とても滑稽な姿の俺に誰かが話しかけてきた。

 

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 

それは少しだけ男っぽい口調の女性の声だった......

 

 

 

 

 

そして......残念だがこれが、初めての彼女達との出会いになってしまった......

 

 

 

 

 

 




やっとちょいとだけ登場だ!これからバンバン出るから今回は少しだけの登場にしてみました......

すんません、嘘です.....一昨日から始めたゆゆゆいに熱を入れすぎて内容が薄くなってしまいました......ごめんよ三人とも......

でも仕方ないじゃないか!銀のハッピーバースデーイベントがあったら一から始めた俺は徹夜するしかないじゃない!これは俺にとっての御役目なのだから......

まあ、そんな事もあったりTVアニメの第6話の展開に驚愕してたのでこんな時間になっちゃった、テヘペロ!!

だがここからが本編だからな!みんな!期待してくれ!少しだけ!

次回 宅急便は狙って悪いタイミングに来る!

あれは最早神業レベルだ......もしや天のお告げか......


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無慈悲......

凄い!今までより格段に執筆スピードが上がってる!......誤字脱字もさらに加速しているどね!!

執筆のためにスマートキーボードを衝動買いしたけど予想以上に活躍していて自分でも驚いた!やはり環境は大事だよね!

今回は環境の大切さを学ぶことができるので、参考にしてくれ!


出会い……それはとても印象に残る出来事がほとんどで、どのような出会い方をしても決して忘れられない記憶になるもの……ある人は出会い方一つで今後の人生が決まると言っていた。

 

 

 

だから、俺も出会いというものを大切にしようと昔から心に決めて過ごしてきたはず……なのだが……

 

 

 

 

3人の少女との出会いが、まさか、無様な姿を晒しての出会いになるとは思いもしなかった……どうしてこうなった……

 

 

 

 

運命とは残酷だ、ただ一つ選択を間違えただけで吉にもなり凶にもなる。例えるなら薬と同じだ、適量ならば良い効果を得られるが、過度に摂れば毒になる……今の状況はどちらかと聞かれれば後者になるだろう……それでも何もせずにいれば状況は悪化の一途を辿る。

 

 

 

ああ、どうして世界はこうも理不尽なのだろうか……だが、例え叫んだとしても誰も助けてはくれない……人は常に選択して生きていかなくてはならないのだ、それを他人に任せる事は生きる事を放棄した時だけである。

 

 

 

だんだんと視力が回復する中、現状を忘れる為に現実逃避をしている俺……それなのにどうしても逃避する事は不可能なようで、俺の気も知らずに彼女達は話しかけてきた。

 

 

「なあ、聞こえてるのか?」

 

 

「ああ、聞こえてるからちょっと待ってくれ」

 

 

心配をしてくれているのは正直有難い、もしも俺をいない者扱いされた時には声を大にして泣き叫んだろう……そう考えると少しだけ気が楽になった。

視力も回復し、声をかけてくれていた少女の他に2人の少女の顔もハッキリ見えるようになった。3人の少女達はたぶんクラスメイトなのだろう、特に知らない人を見るような目をしていなかったので少しだけ安心した。

 

 

「おお〜やっと起きた〜」

 

 

先ほどの声とは別の声が聞こえる、少しのんびりとした口調だがとても癒される声だ。声の主を確認する為にそちらを向くと、そこには今まで生きてきた中で見たこともない、可愛いという単語が似合う少女がいた。思わずスイートマイエンジェルと言いそうになったが、その前に別の少女が驚きながら俺を見て言った。

 

 

「そんな、どうして……転校生が勇者なんて私聞いてない……」

 

 

「いや、俺に言われても困るんだが」

 

 

その少女は黒髪の美少女で、今朝は日直だったのもあり印象に残っている。もしも校内ランキングをやれば確実にトップクラスに入る程の人材だ。校内ランキングを頭の中で予想していると最初に声をかけた少女が黒髪美少女を宥めていた。

その少女は一言で言い表すならば活発な少女だ。特にぶりっ子のような仕草もしないで堂々とした立ち振る舞いは、下手すれば男よりも男らしく、女性からの人気も高いだろう。だが、決して可愛くないというこてではない。言葉にするのは難しいが、桜の髪留めもニーソックス!なところも女の子らしく……いや、誤魔化すのはやめて素直になろう……3人とも超がつくほど可愛いです、はい……俺は転校してきて本当に良かった……もう悔いはない……

 

 

美少女達と出会えただけで、俺の心はいつの間にか癒えていた……

 

 

 

 

今日という素晴らしい日を生きていられた事に感激していると、不意に声をかけられた。

 

 

 

「そういえば、私も鷲尾さんと同じでそんな話聞いてなかったんだけど……どういう事なんだ?」

 

 

「えっと……サプライズてきな?」

 

 

「そんなわけないでしょ!神聖な御役目なのに伝えられていないなんてかんがえられないわ」

 

 

「すんませんしたーー!!」

 

 

どうしてか、怒られたので素直に謝ってしまった……解せぬ……

 

 

「まあまあ、落ち着けって鷲尾さん」

 

 

「別に、私は落ち着いているわよ」

 

 

「いや、落ち着いてなかった……ような気もしたけど俺が落ち着いていなかっただけだったわ、ハハハハハ」

 

 

「何だか馬鹿にされてる気がするだけど……」

 

 

「キノセイデスヨ」

 

 

「怪しい……」

 

 

疑いの眼差しを向けらるが俺にとってはご褒……視線が痛いのでとにかく今1番大事な事を確認する事にした。

 

 

「まあ、そんな事はさておき、まずは自己紹介しないか?俺の事は今朝話したけどあんた達の事は何も知らないから、せめて名前だけでも教えてくれないか?」

 

 

「それもそうだね〜、じゃあ〜まずは私から〜、私は乃木園子って言いま〜す。よろしく〜」

 

 

「じゃあ次は私だな、私は三ノ輪銀だ、よろしく転校生!次は鷲尾さんの番な」

 

 

「え?私?」

 

 

「この流れからすると鷲尾さんの番だろ?」

 

 

「そ、そうね……私の名前は鷲尾須美です。よろしくお願いします。」

 

 

「最後は俺だな、改めまして、今朝も紹介したが俺の名前は桜井信悟だ。よろしくな鷲尾、三ノ輪、乃木」

 

 

こうして3人の美少女の名前を知る事が出来た俺はこれからも仲良くしたいと深く願った。

 

 

互いに紹介した後、俺は今までずっと疑問に思っていた事を聞く事にした。

 

 

「そういえば今更かもしれないけどさ、ここどこ?」

 

 

「本当に今更だな……」

 

 

「あはは〜桜井くん面白〜い」

 

 

「桜井くん、あなたって人は……はぁ」

 

 

「ため息つくほどなのか!?」

 

 

本当に鷲尾さんが美少女で良かった。もしもこれが野郎なら即座にしゃがみこみ昇龍拳をお見舞いしていたとこだ。

 

 

「いい桜井くん、ここは樹海といって神樹様が作った結界よ」

 

 

「樹海?樹が海になったのか、それとも海が樹になったのかという哲学か?」

 

 

「違います!」

 

 

「いやいや、桜井も聞いた事あるだろ」

 

 

「愚問だな三ノ輪、そんな話寝ていたから聞いた事一度もない!」

 

 

「そこは威張るとこじゃないだろ!?」

 

 

「いや〜こう言えば納得してくれたりするんじゃないかと思って」

 

 

「納得するか!」

 

 

「ですよね〜、まあとにかくここはさっきまでいた世界とは違う空間って事なんだな」

 

 

「そうだよ〜、何だか理解するのが早い気がするよ〜」

 

 

「そうでもない、俺たち4人以外いないってだけじゃなく周りの風景も違うんだからそう考えただけだ」

 

 

「すごいな桜井……さっきまで転がり回っていたからてっきり馬鹿なんだと思ってたぞ」

 

 

「やめて!そんな事思い出さないで!俺のメンタルライフが0になる!」

 

 

やはり覚えていた……無理もない、誰だって目の前で転がり回っていれば記憶に残るはずだ。少し鬱になりながらもこれからの事について鷲尾が話し始めたので静かにした。

 

 

鷲尾が話してくれた事はほとんどが知らない事ばかりであったので、一言一句漏らさずに聞いた。

曰く、ここ樹海の中で現れる敵、バーテックスという未知なる生物を神樹様に辿りつかせないために神樹様に選ばれた俺たちが勇者になり敵を撃退するという事だった。だが、当然そんな話を一度も聞いたことがない俺は聞いた後も常に理解できずにいた。そもそもの話、神樹様に選ばれた覚えも……いや、あったな……大赦から仮面をつけた人が来た時、きっとあの時に両親に言っていた神託が勇者に選ばれたという事だったのだろ。今さら気づいても遅い、俺は勇者になるしかないようだ。1人真剣に考えている間に3人は樹海の中を見渡して何やらガールズトークをしている。終わるような気配もなかったので俺は邪魔しないように地面の上で人差し指と中指を人の足に見立ててムーンウォークをやって時間を潰した。

 

 

「お役目を果たしましょう!」

 

 

いきなり鷲尾が勢い込んで言った。残り3人の内2人は鷲尾の意図が分かったのかスマホを手に持つ、だが残り1人は今だに分からないまま呆然とする。そう、何を隠そうこの俺だ……ガールズトークに男である俺が入れないのは当たり前で、当然盗み聞きをした時にはカツアゲされることも視野に入れて聞いていなかったのだが、ここで裏目に出た。

1人だけ何もしていないのも気にせず鷲尾は何か唱え始める。

 

 

「あめつちに_____」

 

 

「お、おい?鷲尾?どうしたんだ急に?」

 

 

鷲尾の行動に目を見開いて何事か聞いていると今度は別のところから鷲尾と同じく唱え始めた。

 

 

「かみわがも___」

 

 

「乃木!?お前もか!?」

 

 

1人状況把握が出来ていない俺、何が起きているのか聞こうと残り1人の少女に聞く事にするが……

 

 

「みたまがり_____」

 

 

「三ノ輪まで!?しかも何か物騒な単語が聞こえたんだが!?」

 

 

どんどん混乱していく中でも彼女達は続ける、最後の文を唱えるとスマホにタッチした。すると今度はスマホが光だし彼女達の体を包む。その光景を俺は……目が血走る程に凝視した。

 

彼女達の今の光景はよくテレビで見たことがある、あれは変身……別名お着替えサービスタイムなのだ今も尚光輝いて見えないはずの変身を何故だか俺は見ることが出来ていた。きっと何かの魔眼が開眼したのだろう、グッジョブ女神様!そうこうしている内に3人の変身が徐々に……あ、今見えた!色までは分からないけど彼女達の体のラインを俺は脳裏に刻み込んだ。

……ようやく3人とも変身が終えて姿を現すと、制服から別の衣装に変わっていた。どうでも良いことだが一言だけ今は3人に伝えたいことがあるので3人に向かって頭を下げながら言った。

 

 

「ありがとうございっしたー!!」

 

 

「どうしたんだ?急に?」

 

 

「何、お礼が言いたい気分になっただけだ……」

 

 

「そ、そう……」

 

 

いやはや、眼福眼福!絶好のチャンスとはこの事か……

人生捨てたもんじゃないと考え始めている時、3人は俺を抜いて話していたが今は耳に入らなかった。

 

 

 

「あの〜それでですね、今やったのってどう「よーし!ぶっ倒ーす!」三ノ輪はマイペースだな!おい!」

 

 

「ミノさん待って〜」

 

 

「2人とも待ちなさーい」

 

 

「……お前ら俺の話聞けよ……いや、俺も話聞いてなかったけどさ……」

 

 

俺だけが残り急に寂しくなる、そんな俺を見兼ねたのか鷲尾がこっちを見ていた。

 

 

「鷲尾お前は俺の事を「桜井くんも早く勇者になって来なさいよ」……うん、知ってた。人生そんなに甘くないもんね……」

 

 

結局鷲尾も待っていてくれるなんて事はなく2人を追いかけていく。

 

 

 

俺にどうしろと?勇者に変身するやり方知らないんですけど!?完全に詰んだ……勇者になった事で身体能力が何倍にもなったのか一跳びするだけでどんどん離れていく。これに追いつくなんて勇者になれない俺には成すすべが……

 

 

「いや、まだあったな。まさかこんな形で使う事になるとは思わなかったけど……仕方ない」

 

 

普段は力を抑えていた転生の特典の悪魔のお兄ちゃんの身体能力を3割解放して、3人を追うように俺もまた一跳びしてバーテックスの元へ向かった……

 

 

 

 

 

「いやいや待て待て!このままじゃ紙装甲で戦う事になるじゃん!」

 

 

道中敵に近くにつれて、今の自分では最悪な未来になるのを想像するとだんだんと焦りが生じていた。このままでは本格的に人生ゲームオーバーになりかねない、今一度移動しながらもスマホを弄るがやはり何も分からないので手の内が尽きた。

 

 

「もうばっくれようかな……でも、このままあの3人を見捨てるなんて出来ないし……おお!神よ!いったい俺はどうすれば良いのですか!!」

 

 

俺を転生させてくれた女神様を思い出しどうすればいいのか祈る。そういえばあの時脳裏に刻み込んだあの姿は素晴らしいものであったなぁ……

 

 

その時の魅惑のボディを想像していたら、頭の中で何かが弾けた感覚があった。同時に今までの記憶の中にあった大赦からスマホを頂いた時に同封されてあった説明書を思い出した。

 

 

「そういえば、あれに書いてあった項目で確か勇者というワードがあったはずだ……確か勇者システムというアプリが……あった!これだ!」

 

 

スマホの初期状態から入っていたアプリの中に勇者と書かれたアプリを見つけると歓喜に満ちて思わずガッツポーズをとっていた。これでこの状況を打破出来ると高鳴る鼓動を抑えアプリをタッチしてみた。

 

 

「これで俺も勇者に!……って何だこれは?花?……うんやっぱり華があるだけだ……意味が分からん」

 

 

起動して開いた画面には一つの真っ黒な花が写っているだけで他には何もない、ようやくどうにかなると思った矢先にこれである。これはこの花のように絶望しろという事なのだろうか……再び詰んだ状況になってしまった。

 

 

「持ち上げてか~ら~の~、海よりも深く突き落とされたーーーーー!!!!!チクショーーーーーー!!!!」

 

 

叫ばずにはいられない、どうやら俺の人生もここで終わりのようだ。悲しいかな生まれてからの人生で泣いてばかりの記憶しか思い出せない。ああ、これが人生上手くいかないというやつなのか……もう駄目だ、最後に戦いの最中にどさくさに紛れて胸を揉もう……

 

ドス黒い下心ある行動を取る事を決意すると、スマホの花が光った。

 

 

「急に花が光った!?……もしかして、これは俺の邪な思いに共鳴しているのか?それなら!」

 

 

最後の希望の光が目の前のスマホから見えた俺は、すがるような思いで先程のゲスの様な考えをいろいろ試してみる。戦闘の時に下から覗く事や敵の攻撃を上手く利用してラッキースケベを狙う事、他にも邪な事をいくつも考えると花も光が増していきやがて咲き誇る。

 

 

「やはり俺の考えた通りだ!よっしゃ!後は3人とも変身前にやっていた事をすればいいはずだな……ス〜〜〜ハ〜〜〜〜……よしっ!ポチッとな」

 

 

深呼吸してから3人がやっていたスマホタッチを真似て花をタッチすると、スマホから大量の黒い花びらが飛び出してきて体に纏わりつく……自分の周りの花びらは黒い花びら一枚一枚から対照的な白い光を放ち体を覆う。そして、限界に達したのかその花びら全てが弾け飛ぶと俺の服が制服から黒く所々にアクセントの白が入ったスーツと上から羽織った黒のマントのようなコートになっていた。

 

 

「出来た……これが、邪な力が宿った俺の姿……凄い……さっきまでの俺とはまるで別人のようになった気分だ……」

 

 

それはまるで、己の中に眠る感情が全て反映されてるかの様に黒い……自身を無意識のうちに抑えていた理性という鎖から解き放たれたような感覚が俺を襲う……

 

 

 

このまま身を任せて思うがままになりたい……

 

 

「はっ!?俺は一体何を考えていたんだ!そんな事駄目だろ……」

 

 

身を任せそうになりそうな自分を一度頬を叩いて気を落ち着かせる。何処か温かい感覚にも似ていたが、俺の中でそれを受け入れてはいけないと危険を報せるかの様に鼓動が早くなっていた事に落ち着いてから気付いた。

 

 

「一体これは……今はそんな事後回しだ、あいつらを追いかけないとな!」

 

 

知らぬ間に止まっていた足を動かし急いで追いかける。俺が勇者になってから時間がいくらか経っていたようで、先を移動していた3人は敵と交戦を始めていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ……汝にこの力を授けよう……我は何も望まない……我は何も救わない……

 

 

我は何も要らない……ただこの力を振るうのみ……

 

 

汝よ……汝の願いを……思うがままに……

 

 

 




いよいよ原作突入だ!!



......はい!やってしまいました!

原作のところどころ変わってるけど、これはオリ主が入ったという事で......


それにしても、中二病が発症しちゃったぜ!!

最近読んだ小説がなかなかカッコイイと思ってやってしまったが後悔はしていない......

黒歴史が増えただけだからセーフ......

次回 ミルクティーはメーカーによって味が違う

同じ名前なのに違う味......俺は断然リプトンミルクティー一択だ!


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4人の勇者......

先に言うとネタバレになるので自重するが、この作品の主人公は鷲尾達ではないはず!......

ないはずなんだが、いつもスポットライトがそちらに向くのを無理やり変えてるので上手く照らせないだけなんだ!


ついオリ主に同情したくなるな......


俺が勇者になる事に成功してから、3人が戦っていたが苦戦している。個々の能力は高く倒す事はそれ程苦労する事はないのだが、遠くから見ていて分かったが皆初めての事なのか、誰一人として連携した行動取っていない。それを理解しているのか敵も3人を警戒していない為動きが読めない。とにかく近くにきた者を攻撃してくるので連携していない3人は攻撃を当てる事も出来ずにいた。

 

 

「ボス戦では連携攻撃がセオリーだろ……っと」

 

 

ようやっと3人の元に着いた俺は上空から綺麗に着地すると3人に駆け寄った。3人とも俺に気づいたのか声を掛けようとしていたが制服姿から変わっているのを見ると驚いてその場で目を見開いたまま動きを止めた。

 

 

「よっ、俺を置いていった3人組さん」

 

 

「なっ!あのままじゃバーテックスが神樹様に……」

 

 

「落ち着けって鷲尾さん、置いていったのは事実なんだからさ」

 

 

鷲尾は他にも何か言いたかったが、置いていったのは事実なので何も言えなくなった。

 

 

「ごめんね〜、置いていったのは悪かったと思うけど、あのままじゃ敵が神樹様に辿り着いちゃうから〜」

 

 

「別に置いていった事は……あまり気にしてないから謝らなくていい、俺も悪かったからな」

 

 

「今の間はなんだ?」

 

 

「……少し喉が渇いただけだから気にするな」

 

 

危ない危ない、こんな所で変に気を遣われては困る。今は少しでも遠慮する事をやめてもらわないと危険だ。戦いに遠慮は致命的だからな。

 

 

「それなら〜、あの敵さんから水を貰えばいいよ〜」

 

 

「え?俺に死ねと?流石に酷くない?」

 

 

「ああ、園子は悪気があって言ってるわけじゃないんだ」

 

 

それは、本当なのか?まあ、最初見た時は天使かと思った程だからそんな悪魔の様な事を言う子じゃないだろう。

 

 

「そうなのか……それでその敵さんの水はどんな味なんだ?」

 

 

冗談半分に聞いてみると素直に園子が答えてくれた。

 

 

「それはね〜、ミノさんが言ってたんだけど〜、最初はサイダーで「おお、それは美味そうだな」その後から烏龍茶になるんだって〜」

 

 

「やっぱり俺に死んで欲しいんだな!そうなんだな!俺が何したっていうんだよーーーー!!!」

 

 

「おい、落ち着けって!園子の冗談だって!そうだろ園子?」

 

 

「う〜ん、どうだろ〜」

 

 

「ほらやっぱり!俺は御国のために特攻するしかないんだ!」

 

 

「ああもう!誰かこいつらをどうにかしてくれ!!」

 

 

だがここで、先程まで静かだった鷲尾がストップをかけた。

 

 

「いい加減にしなさい貴方達!もうあそこまで敵は来てるのよ!」

 

 

「いやだって、俺このままじゃ人生終了しちゃう「桜井くんは黙ってて!」……天は俺を見放した!」

 

 

もう嫌だ、俺の立場がそこらにある石と同等の扱いなんだが……俺は思った事を言っただけなのに、表現の自由すら許されない世界とか俺の人生詰んだ……

俺の事など本当に石ころ程度にしか思っていないのか、落ち込んで世界に絶望している時も3人で何か作戦を考えていた。

 

 

「千のか〜ぜ〜に〜、千のか〜ぜにな〜っ〜て〜「桜井く〜ん」……何か?」

 

 

不貞腐れながらも呼ばれたので返事をする。何だろう、呼ばれた事については少し……いや、かなり嬉しかったが嫌な予感がする。

 

 

「あのね〜、ぴっかーんと閃いて良い作戦を思いついたの〜」

 

 

「そうか……俺は影ながら応援してるよ、大丈夫、お前達なら出来るさ」

 

 

「ありがとう〜それでね〜桜井くんにも協力してもらいたいんだ〜」

 

 

「そう言われるのは嬉しいんだが何気にスルーするよね君!?それに絶対面倒な事を俺にさせるんだろ?」

 

 

「大〜正〜解〜」

 

 

「ちくしょう!今ほど不正解になりたいと思った事はないぞ!……因みに拒否権は……」

 

 

「あるわけないでしょ」

 

 

「ですよねー……はいはい分かりましたよ〜」

 

 

地面にのの字を書くのをやめて立ち上がり3人を見る。

 

 

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

 

 

先程とは打って変わって真剣になる。ここからは気を引き締めないと最悪の結末を迎えるかもしれない、それだけは絶対にお断りだ。

 

 

「桜井には囮をやって欲しいんだ」

 

 

「OK、任せろ」

 

 

「早っ!いいのかよ?」

 

 

「良いも何もその作戦が最善なんだろ?それなら断る理由はない……」

 

 

「桜井……何だよ、案外良いとこあるじゃん!」

 

 

「ほっとけ!……だが俺でいいのか?何か理由があるなら聞きたいんだが……」

 

 

「それはね〜桜井くんが無傷でその武器を持っているからだよ〜」

 

 

「武器?もしかしてこれの事か?」

 

 

俺の武器、それは岩の破片を無理やり積み重ねた様なゴツゴツとした大剣……筋肉ムキムキの男が持っているのが似合う大剣は俺の体よりも大きく、俺が持てるのがふしぎなくらいだ。これが一本なら頑張れば持てなくもないかもしれないが、それを黒色の指ぬきグローブを着けている両の手に2本も持てば最早訳が分からない。持ち手の部分は岩ではなく良くある大剣の持ち手と一緒だが刀身は全てが岩の破片なので斬撃ではなく打撃武器になるだろう。いっそ、ハンマーと言っても誰もが納得するはずだ。刀身の付け根から少し上にはよく目を凝らして見ると何やら六角形の宝石が埋め込まれているのだが、これも刀身と同じく真っ黒に染まっていてとてもじゃないが綺麗とは言えない。

 

 

「そうそう、そんなの持ってたら敵だって警戒して攻撃してくるだろ?」

 

 

「その間に私達が隙をついて攻撃する」

 

 

「なるほど、だが1つだけいいか?」

 

 

「どうした?もしかしてビビったか?」

 

 

「いやそうじゃなくて、いや確かに怖いけど……そんな事より、どうやってあいつに近づくんだ?さっきから見てたが近づかせないように攻撃してくるから鷲尾以外攻撃できないんじゃないか?」

 

 

この作戦には問題があった。それは武器が届くのが鷲尾の弓しかないという事だ。例え強力な武器でも当たらなければ意味がない。仮面の金髪の人も言っていたから間違いない!

しかし、それを考えていない訳はない。そもそも俺の武器も近距離なのだから近づく手段があるからこの作戦を考えついたはずだ。

 

 

 

「それはね〜私の武器を使うんだよ〜」

 

 

「?乃木の武器は槍じゃなかったか?」

 

 

「ふっふっふ、今こそ真なる力を解き放つ時……」

 

 

「ま、まさか!?いや、そんな筈は……」

 

 

「そ〜れ〜」

 

 

「な、何ー!!槍が盾になっただとー!?これが乃木の力か……」

 

 

「二人とも真面目にやりなさい!」

 

 

「「ごめんなさい」」

 

 

「まったく、乃木さんの槍が盾になるから防御しつつ敵に近づくのよ、分かった?」

 

 

「サー!イエス!サー!」

 

 

「何でいきなり軍人みたいな返事してるんだ?」

 

 

「何かこうしなきゃいけないと思って……」

 

 

「意味が分からないぞ!?」

 

 

俺もやろうとしてやった訳じゃない、ただ、今の鷲尾にはこう返事しないといけないという使命感になっただけなのだ……鷲尾須美……恐ろしい子!

 

 

 

 

作戦も決まりいよいよ決行になった。まずは鷲尾が矢を放ち攻撃を仕掛け、敵の注意がこちらに向く。敵も先程と同じく水球を多数こちらに飛ばしてくるが4人共これを避けながら敵に近づいていく。やはり近づかせたくないのか、今度は水球ではなく勢いよく水を噴射する。それを乃木の盾になった槍で防御し、4人がかりで槍の柄を握りながら水を押し返すように力を入れて少しづつ前進する。

 

 

「「「オーエス!オーエス!」」」

 

 

前進しながら気合を入れるために掛け声をする。三ノ輪の隣に居る鷲尾が声を出していなかったので、三ノ輪が鷲尾にも掛け声を促す。

 

 

「ほら、鷲尾さんも、オーエス!オーエス!」

 

 

「お、オーエス、オーエス」

 

 

鷲尾も三ノ輪のおかげで小さな声で掛け声を始め、だんだんと大きくなる。俺は1人皆とは違う掛け声に変えて言ったが3人は気づいていない。

 

 

「「「オーエス!オーエス!」」」

 

 

「俺S!俺S!」

 

 

人と違う事をするのに喜びを感じ始めた頃、敵からの攻撃が弱くなってきて鷲尾の合図と共に4人ともその場から動く。俺は囮らしくそのまま水球を避けながら走って前進し、俺以外の3人は上空に跳ぶ。

 

 

「当たらなければーーーー!!!!どうという事はーーーー!!!な……って危な!」

 

 

顔の横すれすれを水球が通り過ぎる。叫ぶ事に少し集中しすぎたようだ。それでも叫ぶ事はやめずに俺に意識を向けるように声を大にして叫ぶ。

 

 

「そのー木!何の木ー!き〜は〜……だから何で最後まで言わせないんだよ!?」

 

 

今度は顔面真っ正面だったので左手に持っている大剣で水球を切る?と水球は弾けて水をぶち撒ける。少しだけ口に入ってしまったが特に支障なく足を止めない。口に入った水を飲み込むと、乃木が言っていた味の通りサイダーの味から烏龍茶の味になった。敵の体はサイダーと烏龍茶で出来ているのか?

 

 

「うんとこしょ〜〜〜!!!」

 

 

美味しくない水を味わっていると、上空から乃木の声が聞こえた。そちらを見ると乃木が槍に掴まっている三ノ輪を思いっきり敵目掛けて投げた。三ノ輪はそのまま水球など気にせず突撃する。三ノ輪に当たりそうな水球は鷲尾が射抜き無力化する。そのまま三ノ輪を送り届ける2人は三ノ輪が辿り着くと気が抜けたのか自身に向かいくる水球に気づいていない様子だ。

 

 

「まったく、リザルト画面が出るまでは戦闘中だって……のっ!!」

 

 

俺の役割も終わったので、特に必要ない武器2つを投げて鷲尾と乃木に当たりそうな水球を無力化する。2人とも目の前にきてやっと気づいたのか身を守るようにして目を閉じていたが、思っていた衝撃がないので目を開けると目の前の水球は消えていた。何が起こったのか分からず下を見ると、武器を投げた後の姿勢で水球にぶつかっていた人物が目に入った。

 

 

「がっ!?」

 

 

いきなりの衝撃に肺から空気とともに声が漏れる。特に泣くほど痛い訳ではないが、反射的に声を出していた。上の2人は心配な表情をしていたが、俺よりも2人の方が重症だからそんな顔はしてほしくない。正直恥ずかしい……

 

 

俺が水球に突き飛ばされている間にも三ノ輪が本体に攻撃していた。地面を転がっていた俺がようやく止まって起き上がると三ノ輪の勇者の力を得て成し遂げた超人的な斬撃の数々により敵は一部だけを残して朽ちていた。

 

 

「どうだー!!」

 

 

三ノ輪の声と共に上から花びらが舞い散る。

 

 

「鎮火の儀……」

 

 

これはどうやら鎮火の儀というらしい。今乃木が言っていたから間違いない!敵が心なしか色が薄くなってゆき、やがて姿を消した。これは撃破というより撃退したという事だと思う、だって、爆発していないから……芸術は爆発……今はやめよう……今は生きている事を喜ぼう……

 

 

 

こうして初めての敵、バーテックスを撃退する事に成功し、4人とも怪我はあるが無事に生き残れた……

 

 

 

 

 

 

これが、俺が後に勇者の御役目であったと知るのはもう少し後になった……

 

 

 

 

 




この展開を書いてみたくなった!!ただそれだけだ!

反省はしてるが後悔はしていない!


そして、この時俺は知ってしまった......

次回 シリアス展開がかけない!!

俺にはシリアルだけで十分なんだーーー!!!


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祝勝会......

......糖分不足で書けなかった......

書いていたんだが変な文になって何度か書き直していたらこんな感じになった......


欲望のままに書いたかもしれないが後悔はない!......はずだ......


初めての戦闘でバーテックスを撃退することに成功した後の事、三ノ輪と乃木は両手を互いに合わせ喜び合い鷲尾は特に喜ぶ素ぶりも見せず空を眺め、信悟もまた無事生き残れた事を実感して拳を握りガッツポーズを撮っている最中周りから花びらが舞い散り、地鳴りがなる。視界いっぱいに花びらだけになると、突如としてどこからか光り始め世界が覆われた。何も見えなくなった視界が徐々に色を持ち始め、完全に視界がクリアになったので周りを見渡す。そこは大橋近くの社がある場所だった……

 

 

4人は帰って来たのだと自覚して少しだけ肩の力を抜いた。

 

 

「そっか、学校に戻る訳じゃないんだぁ」

 

 

乃木は自分達が樹海化する前までいた教室に戻ると考えていたみたいだが、予想を反して別の場所に戻ってきたことに1人納得する。横にいる三ノ輪は自分が上履きを履いているままの事に驚いていた。

 

 

「やっべ、上履きだぁ!?」

 

 

「ホントだ〜!」

 

 

「俺のおニューの上履きが初日で汚れる〜〜〜!!!」

 

 

俺は初日でピカピカの上履きが汚れてしまうと慌て、せめて片方だけでもと考えその場で片足立ちをした。

 

 

「何してるんだ桜井?」

 

 

「何大した事じゃない、これは足を地面から離してるのではなく足が宙を浮いているだけだ……」

 

 

「そ、そうか……」

 

 

何やら三ノ輪はこれ以上関わってはいけないと感じたのか反対側の乃木の方を向く。何とか誤魔化せたような気がしなくもないのだが、急に悲しくなってきた……たぶんあれだろ、照れてるだけであって嫌われた訳ではない筈だ!たぶん!……大丈夫だよな?

 

 

「はっ!ふふ〜ん、樹海撮ったんだった〜♪」

 

 

三ノ輪は俺から反対側を向いた後、樹海化した時に撮った写真を思い出し、喜びながらスマホのアルバムを見ると、樹に覆われた風景はそこにはなく、写っていたのは普段と変わらない街と大橋が写っていた。

 

 

「あれ?樹海じゃなくなってる!」

 

 

隣にいた乃木は三ノ輪の撮った写真に興味を持ち三ノ輪のスマホを覗いてみる。

 

 

「写らないんだね〜」

 

 

俺もその写真には興味があったので気配を消して近寄り背後から覗く。

 

 

「本当に撮ったのか?」

 

 

「うひゃっ!?」

 

 

背後から声がしたのに驚く三ノ輪。

 

 

「いやいやいやいや、驚きすぎだろ……」

 

 

「仕方ないだろ!誰だって突然後ろから声を掛けられたら驚くに決まってる!」

 

 

「確かにそうかもだけど、さっきから三ノ輪の後ろにいるのは知っているだろ?忘れていなければそんな反応しないって」

 

 

「……うん、そうだなちょっと驚きすぎたかもな」

 

 

「ちょっと待てぇい!!今の間は何だ!本当に俺の存在忘れてたのか!!」

 

 

「べ、別に忘れていたわけじゃないぞ?ただ……」

 

 

「ただ?」

 

 

「さっきの桜井に関わらないように意識してなかっただけだ……」

 

 

「おい!俺をそんな風に見ていたのか!?」

 

 

「だってさっきの桜井完全にヤバい感じだったから、つい」

 

 

「やめろぉぉぉぉ!俺にそんな痛い子を見るような視線を向けるなぁぁ!」

 

 

「桜井……さっきのお前は完全に痛い子だったよ……」

 

 

「本人に向かって正直な感想言わないでぇぇぇぇぇ!!メンタル豆腐な俺にそれは辛いぃぃ!!」

 

 

ハートブレイクする言葉のパンチを真正面から受けた俺は、頭を抱えながら膝をつき叫んでいた。

正直、女がここまで容赦なく俺の心にダメージを与える存在だったとは思わなかった。今後俺の中で女に対しての考えを改めなくてはいけないと決意した瞬間であった。

 

 

俺と三ノ輪との一悶着が行われてる中、乃木は鷲尾に声をかけていたらしいが反応一つなかったと、迎えが来る少し前に叫び止んだ時にこちらに戻ってきた乃木から聞いた。

 

 

鷲尾、俺も三ノ輪に構わないで静かにしていればよかったのかな?そうすればここまで酷い仕打ちを受けなくて済んだのかな?

だが、俺の思いは伝わらず何も帰ってこない……

 

 

「おい、桜井……さっきから鷲尾さんのとこ見てるけど、何か今のお前気持ち悪いぞ?」

 

 

否、追い討ちをかけるように再び三ノ輪から手痛い言葉だけが帰ってきた……

もしかして、三ノ輪は俺の事嫌いなのかもしれない……

 

 

 

 

迎えがきてからは、4人とも車に乗って学校に戻った。担任の安芸先生が迎えに来た事もあり、安心したのか3人とも帰りの車の中では表情が柔らかくなっていた。だがしかし、俺だけは違う、安芸先生を見て安心はしたのは他の3人と一緒だが、三ノ輪とのやりとりで心に深く傷を負い、帰りの車の中では1人だけ窓の外を眺めて癒されていた。そのおかげもあって学校に着いた時には元気になっていた。人というのは本当に不思議だ、さっきまで落ち込んでいたのが嘘のようだ……別に、嫌われていると思っていた相手から声を掛けられたから元気になったとかじゃないぞ?本当だよ?

 

 

 

次の日、学校の自分達のクラスに来て朝のホームルームの時間……4人は黒板前に一列に並び、その後は先生によってこれから先、突然いなくなる時があるかもしれないが驚かないでほしいというような、今後の御役目の時のためのフォローをしてくれた。グッジョブ!安芸先生!

 

先生が話している間、鷲尾がちらちらと乃木と三ノ輪と俺を見ていたが何かあったのかな?

 

 

朝のホームルームが終わってからは特に何もなかった……訳でもない!転校初日は自己紹介だけで終わってしまい昨日の戦い……安芸先生から教えてもらったが御役目というらしいのだが、御役目の後は特別に学校に戻らないで家に帰ったので定番の質問攻めがなかったのだ。だから、今日は放課後になるまで男女共に俺の席に押し寄せてきては聖徳太子でなければ聞き取れないように順番関係なしにあちこちから質問された。だが、何を隠そうこの俺は転生特典のそつなくこなす能力を使い全員の質問に答えた。質問内容は様々で、好きな食べ物や好きな場所、趣味や特技などがあった。中には青いツナギの男に興味はないかという質問や貴方はどんな声で鳴くのかしらとか聞こえた気がしたがスルーした……いや、本当に誰だよそんな質問したの?お前ら本当に小学6年か?

 

 

放課後になると皆習い事や遊ぶ予定がある人達はすぐに帰宅する。今日で仲良くなった前の席の瀧沢も他のクラスの連中と遊ぶ約束がある為、俺に「じゃあまた明日な!」と軽く一声かけてから走って帰った。特に急な用事もない何人かの生徒だけが残り、教室の中は寂しくなっていた。窓際の席の俺は瀧澤に挨拶を返してからはずっと、窓の外を眺めていたので気づきもしなかった。

残っていた生徒の中で御役目に興味があるのか、女子生徒の3人は三ノ輪の席へ向かい御役目の内容について聞いていた。

 

 

「ねえねえ、御役目って大変なの?痛いの?」

 

 

御役目は大変だ、何故なら心が折れそうになるぐらいだからな……あれが御役目と昨日知った俺は心構えなどしておらず、心もズタズタにされて痛かったよ……特に三ノ輪に……

 

え?誰と会話してるのか?……女生徒と会話をしているのさ……三ノ輪の席の女生徒とな!!まあ、聞こえてくる話に心の中で答えてるだけなんだが、これは会話だ。これぞ俺の秘技エアートークだ!!凄いだろ?

 

 

「いやぁ、話しちゃ駄目なんだよね〜」

 

 

だが、三ノ輪は本物の会話をして楽しそうにしていた。

くそっ!今すぐそこを変わってくれ三ノ輪!!俺だって女の子と会話して青春したいんだ!!エアートークなんてこれじゃ何の特にもならないじゃないか!俺だって心ぴょんぴょんしたいんじゃ〜〜〜!!!!

少しだけ、暴走する自分を何とかシャープペンをノック連打する事で落ち着かせる。もしも、三ノ輪が男だったら躊躇うことなくシャーペンから芯を少しだけ出して親指の爪で折り、折った勢いで飛ぶ折れた芯を三ノ輪に向けて延々と会話が終わるまでぶつけていただろう。三ノ輪が女で本当に良かった……

転校してきたにも関わらずいきなりの御役目があった事も関係して不満が溜まりに溜まり、どうしようか本気で悩んでいると後ろの席で誰かが勢いよく席を立つ。俺を含めた残っていた生徒はそちらを向くと、そこには鷲尾が自分の席で立っている状態でいた。その中で鷲尾は一つ咳払いすると意を決したのか話し始める。

 

 

「ねえ、乃木さん三ノ輪さん桜井くん」

 

 

「「「?」」」

 

 

「よ、よければ、その……これから祝勝会でもどうかしら?」

 

 

「おっ、いいねぇ!」

 

 

「うん!行こう行こう!」

 

 

すぐに乃木と三ノ輪は了承する。残る1人に鷲尾は喜ぶのを我慢して聞いた。

 

 

「桜井くんはどうかしら?」

 

 

少し遠慮気味に聞いてくる鷲尾に俺は……

 

 

「そのお心遣い……プライスレス!」

 

 

「「「ふぇ?」」」

 

 

瞬間、空気が凍ったような気がした。まさか美少女からお誘いがくるとは思いもよらず変な事を口走ってしまった。

 

 

「あ、いや……コホン、俺も出席させてもらうであります!」

 

 

誤魔化すように敬礼しながら答えると、3人からは苦笑いだけが帰ってきた。

空気が悪くならずに済んだだけマシだと自分に言い聞かせ、帰る支度をする。3人は既に用意出来ているのかその場で待ってくれていた。

最後に机の中にスピンドルをしまってからランドセルを背負った。

 

 

「待たせたな!」

 

 

「何で偉そうなんだ?」

 

 

潜入ミッションのスペシャリストのように返事をすると三ノ輪にジト目で見られたので素直に謝る。一度言ってみたかったんだ……

 

 

「ごめんごめん、待たせて悪かった」

 

 

「まあ、悪いと思ってるなら別にいいけど……」

 

 

「よ〜し、それじゃあイネスに向かって出発〜!!」

 

 

「お!いいね、イネス!」

 

 

「え?イネスなの?」

 

 

「あれ?鷲尾さん、他に行く予定とかあった?」

 

 

「いえ、特には……」

 

 

「じゃあイネスでいいんじゃないか?鷲尾、イネスにはいろいろあるから大丈夫だろ」

 

 

「そうそう!イネスにはいろんなものが揃ってるからな〜」

 

 

「ミノさん凄く嬉しそう〜」

 

 

「そうだな、それで鷲尾、今の状態の三ノ輪をイネス以外に喜ばせるところは思いつくか?」

 

 

「……無いわね」

 

 

「だろうな……」

 

 

俺と鷲尾は喜んでいる三ノ輪を見ながらそう言った。流石にここまで嬉しそうな三ノ輪を無視できないからな……

 

 

「よしっ!それじゃ行こうか!鷲尾さん、園子、桜井」

 

 

いきなりリーダーシップをとり始めた三ノ輪に誰も異論はなく、そのまま4人は歩いてイネスに向かった。

 

 

 

イネスへ来てからはどこで祝勝会をしようか悩むと考えていたのだが、それは稀有だった。イネスには何でもあると言っただけはあり、三ノ輪は先導してオススメの場所に案内してくれた。あとを着いて歩くこと数分、目的の場所であるフードコートに到着した。今の時間はそれほど客も少ない時間帯なので席が空いてるとこが多く見受けられる。その中で4人が座れそうな場所を探すと、4人が座れるテーブルがあったのでそこへ行き、端にあった誰かが補充したままの椅子にランドセルを重ねて置いてから、それぞれ椅子に座る。ランドセルを置いた椅子側から三ノ輪と乃木が隣並んで座り、その反対側の椅子に俺と鷲尾が座る。鷲尾が隣に座る事には驚いたが、よくよく考えると他の2人にはどことなく遠慮している姿を度々見た事があるので、たぶんだが遠慮しているのだろう……俺には強く当たってる気がするのはきっと信頼してるからだよね?俺、信じてるよ……

 

さて、問題なく場所も見つかり席も確保したのでまずは祝勝会に相応しい乾杯出来る飲み物を買いに行く俺。だが、このまま1人だけ席を外すのも気がひけるので皆に飲み物が必要か聞いてみた。

 

 

「ちょっと今から飲み物買いに行こうと思うんだが、3人は何か飲むか?」

 

 

ここで言っておくが、俺が3人に聞いたのは一緒に買いに行くなら一緒に買いに行かないか?と、遠回しに聞いただけである……だというのに、どう勘違いしたのか……三ノ輪が飲みたい物を俺に告げてきた、ここで何故俺にそんなことを言うのか理解していないまま固まっていると、次に乃木が飲みたい物を告げた。ようやっとその意味を理解して待ったをかけようとしたが時すでにお寿司……時すでに遅し、変に気が回る乃木と三ノ輪が遠慮している鷲尾に何が飲みたいか聞いていた。

 

 

「ほら、次鷲尾さんの番だよ」

 

 

「え?でも、そんな……」

 

 

「ほら、須美助は何か飲みたいもの言って」

 

 

鷲尾はその後少し考える。その姿を見てまだ間に合うと思い奢りの未来を変えるために三ノ輪達に誤解を解こうとしたところで、鷲尾が上目遣いしながらこちらを見ている。流石の俺も上目遣いの美少女というインパクトが強すぎる光景を目の当たりにすると何を言おうとしていたか忘れてしまった。

 

 

「あの……私もよろしいのですか?」

 

 

しかも、こんな事を言われたら頷くことしかできない。だから、俺は言った。

 

 

「も、もちろん!せっかくの祝勝会だ!ここは俺の奢りだ!だから遠慮なく言ってくれ!」

 

 

こうなってはヤケになるしかない……

最後に鷲尾の飲みたい物を聞いてから、俺1人でジュースを買いに行き、4人分の飲み物の代金を店員に渡して飲み物をトレーに乗せて席に戻りそれぞれ言われた通りの飲み物を全員に配って席に着く。まあ、まだジュースは安いからセーフだセーフ!

 

 

ジュースも行き渡り準備も整ったので、鷲尾がこの日の為に用意したであろう長文の書かれた紙を取り出して立ち上がり読み始めた。

 

 

「え、えーっと、本日はお日柄も良く、神世紀298年度勇者初陣の祝勝会ということで、お集まりの皆様の今後ますますの繁栄と健康、そして明るい未来を……」

 

 

「堅っ苦しいぞ?カンパーイ!」

 

 

「あ?……」

 

 

長い文章を読み終えるのが待てなかった三ノ輪は最後まで聞かずに乾杯してジュースを飲んだ。三ノ輪……たぶんだが、あと少しで終わってたぞ……それと、鷲尾、ドンマイ……

俺も冷たいうちにジュースが飲みたかったので三ノ輪の次にジュースを飲み始めた。

 

 

「ありがとうね、須美助」

 

 

乃木からの感謝の言葉に鷲尾が少し動揺する。

 

 

「私も誘うぞ誘うぞって思ってたんだけど、でも中々言い出せなかったから、すごく嬉しいんだよ〜」

 

 

「うん、鷲尾さんから誘ってくるなんて初めてじゃない?」

 

 

「へ〜、俺はまだ2日目だから知らないんだが、そうなのか?」

 

 

転校2日目ではその人の事など知らない顔見知り程度な俺は、乃木に聞いた。

 

 

「実はそうなんだよ〜」

 

 

「合同練習もなかったしな〜、それなのに私ら、初陣良くやったんじゃない?」

 

 

「ねぇ〜。私も興奮しちゃってガンガン語りたかったんだよ」

 

 

「確かに、誰かと語り合いたいぐらいに内容が濃かったからな〜」

 

 

3人の素直な気持ちを聞くと、紙を折りたたんで机に置いてから静かに座った。

 

 

「私も……実はその、話をしたくて3人を誘ったの」

 

 

鷲尾からそんな話を聞いて嬉しくなり、乃木と三ノ輪と俺は顔を合わせて微笑んだ。

 

 

「私ね、3人の事あまり信用してなかったと思う」

 

 

「そんな!私とは遊びだったの!?私は本気だっ……すんません、何でもないです……」

 

 

鷲尾からそんな事言われて乃木と三ノ輪の表情から笑みが消えたので、とっさにネタを披露したのだがジト目で見られた……これは俺が悪い……

 

 

「それは、3人の事が嫌いとかそういうことじゃなくて……私が、人を頼る事が苦手で……」

 

 

「須美助……」

 

 

「でも、それじゃ駄目なんだよね……1人じゃ、私1人じゃきっと何も出来なかった」

 

 

それはそうだろう、何せ俺達はまだ小学6年なのだから……中学2年になってプリティーでキュアキュアでもなければ当然のことなんだよ、鷲尾くん!

 

 

「3人がいたから……あの……だから、その……これから私と……仲良くしてくれますかっ?」

 

 

その言葉は鷲尾が話したかった事なのか、とても心に響いた。そして、その言葉は俺の頭の中で木霊して未来予想図が描き出されていく……つまり、イチャラブしようって事だろ?……え?違う?……冗談だ、今のは忘れよう……

 

 

「え?」

 

 

馬鹿なことを考えている俺とは違い、乃木と三ノ輪は驚いていた。だけど、乃木も三ノ輪も同じ考えなのか顔を見合わせた後に、挨拶のようにすぐに返事した。

 

 

「もうすでに仲良しだろ〜」

 

 

「へ?」

 

 

「嬉しい〜、私も須美助と仲良くしたかったんだぁ。ほらぁ、私も友達作るの苦手だったから」

 

 

「乃木さん……」

 

 

鷲尾は乃木の言葉に喜んでいる。

 

 

「須美助も同じ思いだったんだ〜、嬉しいな〜須美助〜」

 

 

「あ、あの……乃木さん」

 

 

「はぁ〜い!」

 

 

「その、いつの間にか言っている須美助っていうのは何?」

 

 

「あぁ、いつの間にかあだ名で呼んでた〜」

 

 

「自覚なかったのかよ……」

 

 

「ほ、本当だ……いつの間にかあだ名で呼んでる……これがステルス能力!?」

 

 

「桜井は気づいてなかったのかよ!!」

 

 

本当に自然な感じで呼んでたから気づけなかった……乃木さん家の園子さん……こいつ、出来る!!

 

 

「嬉しいけど、その……それ、あんまり好きじゃないかな」

 

 

「じゃあ、ワッシーナは?アイドルっぽくない?」

 

 

「もっと嫌よ!」

 

 

「え〜〜〜?」

 

 

「乃木さんも園子りんとか嫌でしょ?」

 

 

「わぁ、素敵〜!」

 

 

「ごめんなさい、忘れて……」

 

 

「あはは……」

 

 

「園子りんって何かどっかの星からきたとか言い出しそうだな、アイドルと言うより……」

 

 

「桜井くんも今のは忘れて……」

 

 

「お、おう、分かった」

 

 

鷲尾から疲れた表情が見えたので、それ以上深く考えるのをやめた。でも、どっかで聞いた事あるんだけど、何だっけ?

 

 

「あ!閃いた!じゃあ、わっしー。どう?」

 

 

「突然の閃きであだ名をつけるのはどうかと思うぞ?なあ、鷲尾」

 

 

乃木の閃きで考えついたあだ名でいいのか聞くと、鷲尾は目を閉じて悩んでいた。

 

 

「ん〜〜〜……」

 

 

どうしようか悩んでいる鷲尾が片目だけ開けて言った本人を見ると、目をキラキラとさせながら見ていた。その表情に根負けしたのか、鷲尾は乃木のつけたあだ名を了承した。

 

 

「まあ、それでいいかな……」

 

 

乃木は鷲尾からの許可を得ると表情が物凄く明るくなる。

 

 

「よろしくね、わっしー」

 

 

「う、うん」

 

 

何とも微笑ましい光景である、俺はジュースを飲みながら目を細めてそのやりとりを静かに見守っていた……

 

 

「よ〜しっ!じゃあ、私のことは銀って呼んでよ。三ノ輪さんはよそよそしいな〜」

 

 

「そうだね〜」

 

 

「あはは、まいっか!」

 

 

「いいのかよ!?……はっ!つい反射的に反応してしまった」

 

 

見守っていた俺は三ノ輪があまり気にしない事に驚いて思わず会話に混じっていた。

 

 

「えっと、それじゃあ俺の事はビックボスって呼んでくれよな!」

 

 

「「「遠慮します」」」

 

 

「少しは考えてくれてもいいだろ!!」

 

 

「いや、だって何か似合わないじゃん?」

 

 

「桜井くんには悪いけど私もそう思う」

 

 

「う〜ん、ビックボスじゃなくて中ボスの方が似合うよ〜」

 

 

「もう分かったから!今のは冗談だから!だからやられ役みたいなあだ名にしないで下さい本当にお願いします!」

 

 

サラリーマンもビックリなくらいの平謝りをしてこれ以上の被害を出さないように強く懇願する俺……本当に中ボスはやめてくれ、あまりいい記憶がないんだよそのあだ名……

 

 

「まあ、冗談はこれくらいにして……俺の事は好きに呼んでくれて構わない。桜井でも信悟でも何でもいいぞ」

 

 

「じゃあ〜中ボ「本当にそれだけは勘弁してください」冗談だよ〜」

 

 

「なんだ、冗談か……良かった……」

 

 

「本当に嫌なんだなそのあだ名」

 

 

「ああ、こればかりは頼むからやめてくれ……頼む」

 

 

誠心誠意を込めた今の俺の頼みに3人は驚いているが、それすら今の俺には余裕がない。ここでそのあだ名になれば生きたまま死んでいるのと同じだから全力を持って阻止する。

 

 

「あはは……まあ、私はこれからは信悟って呼ぶよ。私の事は銀でいいぞ」

 

 

「じゃあ私は〜台所のシンクって呼ぶ事にするよ〜」

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

「冗談だよ〜」

 

 

「乃木の冗談は心臓に悪い……」

 

 

「今のは流石の私も恐怖を覚えた……」

 

 

「今の乃木さんのは冗談に聞こえなかったのだけれど……」

 

 

「鷲尾……それ以上考えちゃダメだ……」

 

 

「そ、そうね」

 

 

乃木の冗談に笑えない3人は深く考えないようにした。

 

 

「あ!ぴっかーんと閃いた!信くんって言うのはどう?」

 

 

「それならノープロブレムだ」

 

 

「それじゃよろしくね信くん!私の事も好きに呼んでいいよ〜」

 

 

「そうか?じゃあ、園子り「さ・く・ら・い・く〜ん?」と言うのは冗談だ!名前で呼ぶ事にするよ!」

 

 

一瞬鷲尾から般若が浮かび上がって見えたが幻か?少しだけちびりそうになった……

 

 

「鷲尾の事も名前で呼んでいいか?」

 

 

「えっと、その……大丈夫です……」

 

 

「?よく分からないが、銀、園子、須美。これからよろしくな!」

 

 

「うん!よろしく信くん!」

 

 

「ああ、よろしく信悟!」

 

 

「こちらこそよろしく、信……桜井くん」

 

 

若干一名とはまだ距離があるが、こうして4人の距離は昨日よりはるかに近くなった。

 

 

「よーし!それじゃあ、今日という日を祝って!皆でここの絶品ジェラートを食べよう!」

 

 

「へ?」

 

 

いきなりの展開についていけない須美、間抜けな声が出ている。

 

 

「安心しろ須美、ジェラートは奢りだ!……信悟の!」

 

 

「へ?」

 

 

須美の間抜けな声もつかの間、次に間抜けな声が出たのは俺だった。突然の銀の提案までは良かったのだが、何故俺が奢らなきゃならないんだ!異議を申し上げる!

 

 

「わ〜い、ありがとう信くん」

 

 

「待て待て!何故俺が奢らなきゃならないんだ!しかも2回目だぞ!」

 

 

「だってさっき言ってただろ?今日は俺の奢りだ!って」

 

 

「いや、確かに言ったけどあれは「それに、真剣な話の途中にふざけたりしてたじゃん」是非私が奢りましょう!いえ!奢らせてください!」

 

 

「す、凄い変わりようね……」

 

 

須美が少しひいていたが当然である。だが、ここで逃げれば今度あった時にさらに酷い仕打ちを受けるに違いない!ならば、最初の内に少ない被害を受ける方がよっぽどいいのでここは素直に従おう……それに、銀が言ったようにふざけたのは悪かったと思っていたのでここでお詫びが出来るのは俺としてもありがたい……

 

 

 

奢る事が確定してから、4人でジェラートを販売しているコッチモとローマ字で書かれた店に行き、それぞれケースの中の種類が豊富なアイスから好きなのを選んで注文する。店員さんが注文通りのアイスをコーンに盛り付けて、完成したジェラートをそれぞれ手渡され最後に代金を支払ってから席に戻る。選んでる最中、店員さんがニヤニヤしてたが、店員さん……見えてるものだけが真実とは限らないんだぜ?

 

席に座ってから4人一斉に食べ始める。俺が選んだのは和と洋が生み出すハーモニー、紅茶味のアイスと抹茶味のアイスの二つである。この二つは味は違うが元を正せば同じ飲み物という分類にわけられるのもあり、特に不味いと言う事もなく意外とマッチしているのでとても美味しい。他の3人も自分の選んだジェラートを食べては幸せそうな顔をしていた。食べてる途中、園子が須美に食べさせてもらい初めての共同作業だねと言っていた事もあったが、今回だけは見て見ぬをしておいた……本当はものすごーく会話に混ざりたかったが、園子の口についたカルピー味のアイスがとても良い働きをしていたので俺はカルピー味のアイスの仕事ぶりを見る事で手一杯だった。カルピー味のアイス諸君、君達の働きに敬礼!

 

 

「どうした信悟?さっきから静かだけど」

 

 

「……ジェラートを味わうのに夢中になっていただけだ……他意はない」

 

 

「なんだ、てっきり変な事でも考えてるのかと思ったよ」

 

 

「ソンナコトナイデスヨ」

 

 

「急に変な喋り方になってるぞ!?」

 

 

「そ、それはだな……このジェラートが絶品だったからだ!」

 

 

「ああ!確かにここのジェラートは絶品だよな!特にこの醤油豆ジェラートは最高だ!」

 

 

何とか誤魔化せたな、それにしても危なかった。銀の言葉は鋭い刃だからもしもバレたら俺は今度こそ立ち直れそうにない……

 

 

「その醤油豆ジェラートって美味いのか?ただアイスに醤油と豆乳かければ誰でも作れるんじゃないか?」

 

 

「はあ!?そんなわけないだろ!これはとても巧妙に作られた物だけあって、誰でも作れるもんじゃないんだ!」

 

 

「そ、そうか……分かったから落ち着け」

 

 

「いいや、分かってないね!ほらこれを食べればこの醤油豆ジェラートの美味しさが分かるはず」

 

 

銀の逆鱗に触れたのか、恥ずかしげもなくスプーンで自分のアイスをすくって俺に差し出す。こ、これは!?

 

 

「なあ、銀もう一度考え直す気は「ない!さあ、食べるんだ」……分かったよ」

 

 

こうなった銀はイネスという単語を聞いた時の銀と一緒で止められない、腹を括って銀から差し出されたスプーンにのっているアイスを食べる事にした。

 

 

「あ〜ん……こ、これは!美味い……だと!?」

 

 

「そうだろそうだろ〜」

 

 

何故か勝ち誇ったような顔をする銀。

ちくしょう!そんな顔されても可愛いから許しちゃう!

 

 

「なあ、信悟のジェラートって美味しいのか?」

 

 

「この抹茶と紅茶のアイスか?美味い不味いで聞かれれば美味いけど……食べてみるか?」

 

 

少しの希望をのせて先程銀が行った行為の意味に気づいて欲しかったのだが……銀は特に理解していなかった……これは俺の考えすぎなのか?最近の小学生はこんなの新婚夫婦のキスと同じくらい日常茶飯事なのかもしれない……それなら、気にしないでおこう。

 

 

「食べる食べる!」

 

 

「……分かったよ、ほら、あ〜ん」

 

 

「あ〜ん……〜〜〜〜美味しい〜〜〜!」

 

 

どうやら銀にも好評価らしいこのジェラート、だが今はそれどころではない。何故なら銀の顔がだんだんと赤くなっているように見えたからだ。これはひょっとすると……

 

 

「なあ、銀。顔赤いけどどうしたんだ?」

 

 

「な、な、何でもない!気のせいだ!」

 

 

そう言ってそっぽを向く銀、それを見て確信した。

どうやら今時の小学生もこんな事は滅多にやらないという事だ。それを知る事が出来たのは非常に大きい。これで俺の今後の青春ライフに希望がある!銀が恥ずかしくなっているのも気づかずにまた自分のアイスをスプーンですくい口に運ぶ。

 

 

今日のアイスは格別に美味かった……

 

 

ジェラートを食べ終えた頃には日も暮れる時間になっていたので、途中まで同じ帰路を今日の学校の事や最近見たテレビの事など話ながら歩いて帰った。3人とは違う道なので途中で銀と別れ、須美と園子と一緒に歩き、今度は3人とも別々だったのでそこで別れて自宅へ帰った。

 

 

 

 

余談だが、その日はジュースとジェラートを食べた事もあり夕飯を残すと、両親が心配になってどこか悪いのか?頭か?頭なんだな?と2人とも言ってきたので無理をしながらも完食してやったという事があったのだ……頭限定で心配するか?普通?……

 

 

 




やはり新しいものになれるまで時間がかかるな~

マウスとキーボードを新調したんだが正直使いづらい、おかげで時間がかかる。

でもでもやる気が上がったから良しとしよう!

そんな事はどうでもいい!やっと砂糖増しぐらいの展開をかけてハイテンションの俺は今目から雫がこぼれている......もうね、原作突入してからは結構考えながら書かないと難しかったんだよ?ですが、やっと三人との絡みが書けたのはうれしくて......

この後からはキャラの口調が崩壊するかもしれないので悪しからず......

次回 温泉宿のテレビは液晶だと浮いて見える気がする!!

やっぱり温泉宿のテレビはブラウン管だよね!


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二度目の御役目......

や~ば~い~......だんだんとトラウマ回が近づいてきて手が止まる~


しかーし!そんなものは問題ナッシング!


それよりも、シリアスと戦闘の描写が上手くかけなくてつらい......


俺達が人類を守る勇者として、初めての御役目を果たしてから半月後、二体目の敵がやってきた......

 

 

 

敵は左右にアンバランスな重りをつけて回転して突風を生み出し、俺達四人の勇者は近づけないでいた。

 

 

「これじゃ身動きとれねーよ!」

 

 

園子が武器を盾に変態して盾の反対方向を地面に突き立てながら踏ん張り、他の3人は銀、須美、俺の順番で前の人にしがみついて飛ばされないようにしていた。

 

 

「こんなの台風何か可愛く見えてくる気がしなくもないな!」

 

 

「どっちなんだよ!?」

 

 

その場から動けない中でも俺と銀はコントをしていた。

確かに銀の言う通りこのままじゃ身動きがとることができない......須美に抱きつく機会なんてこの時以外には絶対にない!

俺はこの状況を堪能して心の中でバーテックスに感謝をした。ありがとう今回のバーテックス、俺お前の事は絶対に忘れない......

 

しかし、バーテックスはただ回転しているだけではなく、敵の足元から徐々に侵食されている。このままでは現実世界に影響が出てしまうので何か策を考えなければならないのだが、1分1秒でも長くこのままでいたい気持ちもあり離しかけていた手を再び掴みなおす。だが、少しでも考えていたのが悪影響し、誤って先程よりも上を掴んでしまっていた......掴んだ場所は須美の小学6年という枠を超えて今も尚、成長を続けている2つのぼたもちだった......

 

 

「きゃっ!」

 

 

「おいどうした須美!」

 

 

銀が何か起きたのかと須美を心配する。

 

 

「いや、須美落ち着け!今は目の前の敵に集中するんだ!」

 

 

多少のトラブルに目を瞑ってもらうために意識を敵に逸らす作戦にでたのだが、俺も男だから欲望のままに手が動いてしまった......

 

 

「弾力の中にも柔らかさを感じられるとは、これぞまさしく人類の生み出した奇跡だ!」

 

 

「桜井くんの~~~、バカ~~~!!!」

 

 

「ぶべらっ!」

 

 

当然そんな行動をとれば予想通り、須美は怒りひじ打ちして、身動きがとれない状態の俺はもろに顔面にクリーンヒットして手を離してしまった。

 

 

「わが生涯に一片の悔いはなぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ!」

 

 

突風に飛ばされながらも魂からの声を叫び3人から遠ざかっていく、敵とは反対方向に飛ばされたこともあり少ない怪我だけを負い、やがて地面に顔から落ちた。

 

 

「......ぷはっ!し、死ぬかと思った......須美は俺を殺す気か!?......いや、さっきのは俺が悪かったな......それにしても......須美は本当に小学生か?今でもこの手にあの感触が残ってる......おっと、鼻からケチャップが」

 

 

顔面から地面にぶつかったので鼻から赤い液体が垂れてくる。決して須美のぼたもちを思い出して垂れてきたわけではない......

服の裾で血を拭い敵のいる方向を見ると、須美が空中から矢を放っていた。だが矢は当然風の影響を受けない特殊なものではないので、敵に届く前に威力を失い突風に飛ばされた。須美は自信があったのか、驚いた顔をしていた。

いやいや、ゼロ距離からなら分かるが距離が遠いんだからそうなるだろ......

 

矢を放った後の事は考えていない須美は、何とか空中で保っていた体勢が崩れ空中では抵抗することもできないため、先程の俺のように飛ばされた。銀と園子は飛ばされた須美を心配していたが、敵との距離が知らぬ間に近づいていたのか重りが2人を襲う。しかし、簡単にやられるような勇者ではない。園子はすぐさま向かい来る攻撃に盾をむけて防いでいた。

 

 

「流石園子さん!俺たちにできないことを平然とやってのける~~!!そこに痺れる憧れ......っと、こんな事してる場合じゃないな」

 

 

膝をついて見ていた俺は、すぐに立ち上がって飛ばされた須美のもとへ向かう。運が良いのか須美は最初上空にいたので地面に落ちる前に受け止めることが出来た。

 

 

「きゃっ!......ってあれ?痛くない?」

 

 

「っと、何とか間に合ったな。大丈夫か須美?」

 

 

「え?桜井くん?」

 

 

衝撃がくると思っていた須美は目を閉じてその時を待っていたが、思っている衝撃はなく疑問に思って目を開けると先程飛ばされたはずの桜井に抱きかかえられていた。

 

 

「よっ!突風の中に突き飛ばされた桜井ですよ~」

 

 

「なっ!?あれは!」

 

 

「冗談だ、さっきは悪かったな......まあ、時間があれば土下座でもしたいとこなんだけど......悪いが須美、立てるか?」

 

 

「え、ええ大丈夫だけど......」

 

 

須美がまだ立っていられるのを聞いてからゆっくりと足から降ろした。降ろした後須美の顔を見たら少しだけ顔が赤くなっていたが、きっと見間違いだろう......

 

 

「さてと、それじゃ俺はいくからここで待っててくれ」

 

 

「行くってどこへ?」

 

 

「決まってるだろ、敵さんのとこだよ。今は園子が耐えてるが、見た感じ無理してるようだからな。それに、試したいこともあるから」

 

 

「そんな無茶よ!あれじゃ敵に近づくことだって......」

 

 

「まあまあ、ダメだったらその時にまた考えれば大丈夫だって!それじゃ!アデュー!」

 

 

「あ!ちょっと!待ちなさい!」

 

 

須美が何か言ってるのも気にせず敵に向かって跳んで行く。須美には悪いが園子の傷がこのままだと酷くなる一方なので今回ばかりは許してほしい。

 

 

途中から風が邪魔して速度が落ちたが何とか2人に声が届く場所まで来れた。早速、試したいことを実践しようとしていたが銀が何か行動を起こしていたので即座に銀のサポートをすることに変更する。

銀の行動はここ半月の付き合いである程度分かっている俺は、銀がこの後ごり押しすると予想し、敵に近づくための隙をつくることにした。

 

敵の重りが園子たちに向かってきていたのでその攻撃を逸らすために、2人から離れた場所から片足を軸にして回転し、回転の遠心力を利用して片方の武器を投げる。投げた武器は回転したまま風を切り裂き真っすぐに進む。あと少しで園子に重りが当たるという距離で銀は上空に自分から飛ばされて、俺の武器が重りにぶつかり軌道を逸らし跳ね返ってくる。軌道が変わったため敵の攻撃は速度を落として園子の盾に当たらず横を通り過ぎていく。だが、このままではまだ銀が飛ばされる可能性があるので、弱まった風の中を敵に向かって走り跳ね返ってくる武器をジャンプしてキャッチしてから、今度は遠くにある反対側の大きな重り目掛けて上空で斜めに回転させた後に、着地のことは気にせず思いっきり両方の武器を両手で投げる。投げた後は回転したときの勢いのまま地面に激突した。痛む体にムチをうって上半身だけ起こして敵を見る。見ると、さっき投げた狙い通り大きな重りの軌道の進路上に向かって飛んでいて、タイミングも狂わずに大きな重りとぶつかり先程よりも大きな音を立てて速度を落とした。

 

 

「銀!今だ!」

 

 

俺の声に気づいた銀は武器を持っている両手に力をいれて握りしめ、雄たけびを叫びながら敵目掛けて落下していく。少しの間速度が落ちていた敵も短い時間で元の速度に戻っていくが、唯一風の影響を受けない中心にいる銀には効果が無く敵は少しづつ銀の攻撃を受けて、やがて体の一部だけになり鎮火の儀が始まる。その後は前回と変わらず敵の姿が消えると樹海化が解かれ現実世界に戻った。戻ってからはひどい怪我と呼ぶのは須美からもらった顔面ひじ打ちの俺を含めた4人は、迎えの車にのって病院にいき治療を受けてから解散となり自宅へ帰った。

 

 

そして、次の日......4人の勇者は先生以外誰もいない教室で向かい合わせに椅子に座って、樹海の様子を記録した動画を先生からスマホで見せられていた。

 

 

「ごり押しにもほどがあるでしょ」

 

 

「「「はい......」」」

 

 

さっそく先生に怒られて全員反省する。一人を除いて......

 

 

「いいえ、ケフィアです」

 

 

「桜井くん!」

 

 

「すんませんしたーーー!!!」

 

 

「はぁ、まったく......」

 

 

ふざけた返事をした俺だけは先生にため息をつかれた......たぶん、2つの果実をお持ちの先生は肩が凝ってため息が出たのだろう......先生、良ければ揉んであげますよ!......どちらとは言わないでおこう......

先生はもう一度動画を確認しながら4人の心配をした。

 

 

「これじゃあ、あなたたちの命がいくつあっても足りないわ」

 

 

まったくだ、トラブルが発生する度にひじ打ちされたら俺も耐えられない......先生の意見に同意するようにうんうんと1人頷いた。

 

 

「御役目は成功して、現実への被害が軽微なものですんだのは、よくやってくれたけれども......」

 

 

「それは、三ノ輪さんと乃木さんのおかげです」

 

 

「あれ?俺は?」

 

 

「桜井くんは邪魔ばかりしてたじゃない」

 

 

「そんな事はない!と思う」

 

 

「ハッキリしないな......」

 

 

銀から苦笑いされたが、その顔は余裕がある奴の顔をしていて俺は少しだけ悔しくなった。

 

 

「まあ、少しだけなら桜井くんのおかげでもあったけど......」

 

 

「え!マジで!やったぜ!ふぅー!」

 

 

「もう!あくまで少しだけよ!......まったく、すぐ調子にのるんだから......」

 

 

後半あたり何か言ってたけど聞こえなかったので俺はガッツポーズをとりながら立ち上がる。だが先生に座るように命じられたのでしぶしぶガッツポーズをやめておとなしく椅子に座った。

 

 

「はぁ......あなたたちの弱点は連携の演習不足ね、まずあなたたち3人の中で指揮を執る隊長を決めましょう」

 

 

「はい!先生一つ質問があります!」

 

 

「何ですか桜井くん?」

 

 

「俺の耳がおかしくなければ3人と聞こえたのですが!」

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

「と、いう事は......銀、ドンマイ!!」

 

 

「何で私なんだよ!?」

 

 

「いやいやこの中ではそうなるだろ?ね?安芸先生」

 

 

「いいえ違います」

 

 

「そんな!?それじゃ、まさか園子か須美のどっちかなのか!?」

 

 

「それはあり得ません、桜井くん、3人の中に入っていないのはあなたです」

 

 

「なん......だと......!?」

 

 

まさかの名指しをされた俺は椅子から崩れ落ちて両手と両膝をついて嘆いた。

 

 

「う、嘘だ......そんなわけない、だって俺チームワークの輪を乱したことなんて今までない......はず......でも、昔から俺だけいつも目の敵にされることが多かったけど別に仲が悪かったとかではないし......あれ?もしかして自分で気づかないうちに輪を乱していたのか?......そ、そんな......」

 

 

ぶつぶつ何かを言っている俺には触れないで話を進めていたので、先生から椅子に座るように言われた時にはすでに隊長が園子に決まっていた......

 

 

「神託によると、次の襲来までの期間は割とあるみたいだから、連携を深める為に合宿を行おうと思います」

 

 

「「「「合宿!?」」」」

 

 

 

 

こうして俺達勇者御一行は連携を強化する合宿をすることになった......

 

 

 

「待ってろよ!!俺の青春ライフーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

「「「「うるさい!」」」」

 

 

「すいませんしたーーーー!!!」

 

 

調子にのって教室の中で叫んだ俺は四人からその後数時間正座させられた......こんなの、あんまりじゃないか......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すまんな、みんな......最近須美助のタペを買ってから好感度が俺の中で上昇してこうなっちまった。分かるだろ?この気持ち?......

ええ、そうですよ~最近自重しなくなったのは自覚してるけれども!俺は自重しない!何故なら俺が、俺たちが勇者だから!

アニメも終わってテンションが下がったのが原因で最近はネタが思いつかない......

もう限界、そろそろ指が疲れてきた......それでも書き続けてみるよ......

次回 某ハンターゲームの受付嬢に一目ぼれ!

嬢という言葉ってなんかこう、グッと心に響くよね!


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合宿!!......

頭が混乱しながらもなんとか今日投稿できたぜ......

知ってるか?俺、今日寝てないんだぜ?

後は頼んだぞ......俺はもうここまでだ......おやす......み......ばたっ......


 

合宿当日、俺は前夜に用意をしていた荷物が必要最低限しか入っていない大きめのリュックを背負ってから家を出る。

 

 

「それじゃ行ってきます!」

 

 

「行ってらっしゃい、くれぐれも女の子を泣かせちゃダメよ」

 

 

「そうだぞ、信悟、TPOはわきまえるんだぞ?」

 

 

「何のだよ!?」

 

 

「それはもちろんスキンシップだ!ボディタッチなんてした事ない信悟には要らない心配かもしれないけどな!」

 

 

「……ああ、そうだな、うん……」

 

 

「おい信悟今のは何だ?まさかお前……嘘だよな?な?」

 

 

「ああこうしちゃいられないんだった〜行ってきま〜す」

 

 

「おい!待て!すぐに終わるから話を……」

 

 

父親の声も最後まで聞かずに玄関のドアを閉める。家の中からは父親の叫び声が聞こえてきたが俺のせいじゃない……あとの事は、隣で微笑んでいた母親に任せよう……

 

 

 

 

家を出てから時間に余裕があるのでのんびりと歩いて集合場所まで向かった。集合時間は俺にとって朝早い時間帯なので寝過ごすとも思っていたが、問題なくこうして集合場所まで時間内に着きそうだ。

 

 

「確かバスで行くんだったな、もうきてるのか?……もしかしてあれか?数人しか乗らないのに20人乗れそうなんだが……まったく、金持ちの考えている事はよく分からん」

 

 

時間より5分程早くに来たが、もう既にバスが停まっていた。俺が1番乗りかと思いきやバスに乗ると先に来ていた須美と隣で寝ている園子がいた。

 

 

「おはよう須美、もう来てたのか」

 

 

「おはよう桜井くん、ちゃんと時間には間に合ったわね」

 

 

「ふっ、まあな……今日の俺は一味違うぜ?」

 

 

「はいはい」

 

 

「反応薄っ!」

 

 

須美には相手にされなかったので取り敢えず俺は園子とは反対側の窓際の席に座った。

 

 

「どうした須美?」

 

 

「なんでそっちに座ってるの?」

 

 

「ふっ、聞くな須美……今日はここに座りたい気分になっただけだ……」

 

 

「そ、そう……」

 

 

須美に苦笑いされたが言えない、俺が席を一つ跨いで窓際に座った理由は他にあるんだが、男のプライドがあるので正直にいうことができない……

深く聞かれる前に話を逸らすため、もう1人の人物について聞いてみた。

 

 

「そういや2人だけなんだな、銀から何か聞いてないのか?」

 

 

「私は何も聞いてないわ……もう時間なのに」

 

 

「まあまあ、今時間になったとこだからもうすぐ来るだろ」

 

 

「そうね……」

 

 

「まあ事故にあってないことを祈ろう……それにしても須美は朝に強そうだよな、修行僧のように朝早くから滝行とかやってそうだ」

 

 

「まさか、流石にそこまでしないわよ。朝は起きてから敷地にある水を浴びて体を清めるぐらいよ」

 

 

「十分凄いことしてるじゃねーか!!」

 

 

「そうかしら?」

 

 

滝行程じゃないけど朝からそんな事してるとは、俺には到底真似できない……尊敬するぜ須美の旦那!

 

銀を待つ間、やる事もなく園子も寝ているので、俺は須美との会話に花を咲かせていた。それから数分経っていたが銀は姿を現さず、ついに須美も我慢が出来なくなり喋らなくなった。

 

 

「遅い!三ノ輪さん遅い!」

 

 

おい銀、頼むから早く来てくれ、俺が出来るのもここまでが限界だ……それと園子お前この状況でもよく寝ていられるな……まさか死んでるんじゃないだろうな?

 

俺の願いが届いたのか、やっと銀がバスに乗ってきた。

 

 

「悪い悪い、遅くなっちゃって」

 

 

「遅い!あれだけ張り切っていたのに10分の遅刻よ!どういう事かしら!」

 

 

「悪い悪い、遅れたのは事実だから、ごめんよ須美」

 

 

「三ノ輪さんは少し気が抜けてると思うわ。勇者として自覚を……」

 

 

「あれ?お母さんここどこ?」

 

 

「ここで起きるのかよ園子さん!マジミラクル!」

 

 

「……はぁ」

 

 

園子のタイミングの悪さにツッコミを入れた俺は、須美に睨まれたあと俺を見ながらため息をつかれた……なんで!?

 

 

俺たち四人が集まったことで、バスは出発し、合宿所である旅館へ向かった。

 

 

 

 

旅館に着いた俺たちは荷物を与えられた部屋に置いてから訓練場の砂浜に集合した。

 

 

「うっっぷ……気持ち悪い」

 

 

「おい大丈夫か信悟?」

 

 

「大丈夫だ問題……あるかもしれない」

 

 

「休んでた方がいいんじゃないか?」

 

 

「大丈夫だ、少し経てば落ち着く……はずだ」

 

 

「はずって、無理な時は言ってくれよ?」

 

 

「分かった、無理なら言うようにするよ……うっ」

 

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

 

バスで酔ってしまった俺は今も気分が悪いままだが、動けない程ではないので訓練に参加した。銀たちから心配されたが折角の合同訓練なので欠席も出来ない。

 

 

「お役目が本格化したことにより、大赦は乃木さん達4人の勇者を全面的にバックアップします。家族のこと、学校のことは心配せず、頑張って!」

 

 

「「「「はい!!」」」……うっぷ、声出しすぎた」

 

 

「……」

 

 

喉元まで上がってきた何かを飲み込んでから深呼吸して気分を落ち着かせる。俺が落ち着いたのを待っていたのか、安芸先生は4人の準備が整った事を確認してから今回の訓練内容について説明した。

内容は至ってシンプルで、砂浜のあちこちに設置されたボール発射装置から飛んでくるボールを銀に当たらないようにサポートし、山道に停めてあるバスまで送り届けるというものだった。近接戦闘の銀を敵に近づかせる事を想定した訓練内容で実に有意義ではあるのだが……

 

 

「先生、何故に俺は園子の盾の前にいるんですかね?」

 

 

「桜井くんにはよく周りの状況を確認出来るようになってもらう為、みんなの事が見える場所に配置したのよ」

 

 

「絶対嘘だ!それなら後ろで良くないですか!?これじゃ俺ただの人間盾じゃないですか!」

 

 

「桜井くん……これは訓練よ、もしもの状況を想定してこうしたのよ……」

 

 

「先生……」

 

 

「ちなみに、桜井くんはボールに当たってもいいからバンバンボールに当たってもいいのよ?」

 

 

「先生!?俺何か恨み買うような事しました!?」

 

 

「まあ、半分くらい冗談はこれくらいにして……これから先、3人が動けない状態になった時に前衛の2人に攻撃を当てない為の訓練よ」

 

 

「半分って……最初からそう言ってくださいよ……」

 

 

「ふふっ、いつものお返しよ」

 

 

安芸先生は楽しそうに微笑んでいた。クッ!美人だから許してしまう!

4人はそれぞれの位置につくとお互いの役割を確認した。

 

 

「須美が援護射撃で園子が盾でボールから銀を守る、そして銀は園子の後ろからついて行ってバスまで一つもボールに当たらないようにする……これであってるか?」

 

 

「うん、合ってるよ〜」

 

 

「須美は……あそこからか、銀、ボールに当たるなよ?」

 

 

「おう!任せとけ!この三ノ輪銀様がボールなんて木っ端微塵にしてやる!」

 

 

「いやいやいや、当たらないボールは無視しろ、無駄な動きをすれば隙が生まれて当たるぞ」

 

 

「分かってるって」

 

 

怪しい……だけど、信じるしかない。俺が出来るのは前方からのボールをどうにかすることだけで横からのボールは後ろの3人に任せるしかないのだから。出来ない事もないがこれは合同訓練、仲間を信じる事も訓練の一つだ……

 

 

「そういえば〜、信くんは何するの〜」

 

 

「俺か?園子の前を走るだけだ」

 

 

「盾の中じゃないのか?」

 

 

「残念だが外側だ……まあ、俺もやるからには当たる気はないけどな」

 

 

「でも、当たっても大丈夫何だよね〜?」

 

 

「当たらないからな!これはフリじゃないからな!……まあ、とにかく、園子の前を走るからよろしく……園子は遠慮せず走ってくれ」

 

 

「そんな事したら信くん怪我するよ?」

 

 

「そこは気にするな、俺の逃げ足だけは世界一だから大丈夫だ。俺が園子に合わせて走るから園子は銀を守ることに集中して走ってくれ」

 

 

「そういうことなら、分かったよ。それじゃ遠慮しないで走るね〜」

 

 

「おう!よろしく頼む!」

 

 

園子を何とか説得する事に成功し、準備する。園子も武器を盾にして構え、須美も弓を構える。銀はここからじゃ盾で見えないが両手に武器を出して構えてるだろう。

 

 

「いくよ〜」

 

 

「園子、うまく守ってくれよ!」

 

 

「先生、ここから動いちゃダメなんですか〜?」

 

 

「ダメよ!それじゃあ、スタート!」

 

 

先生の合図とともにボールが次々と発射されるが、俺は迫り来るボールは両手の武器で切り裂き、園子は俺の進路上以外から飛んでくるボールを的確に弾きながら進む。まだ始まったばかりだがかなり良いペースだ。

 

 

パァン パァン

 

 

時折後ろを確認すると、須美も後ろから矢を放ちボールを射抜いている。これなら行けると思ったのだが……

 

須美の矢が一つのボールに当たらず、銀に当たってしまった。

 

 

「ごめんなさい、三ノ輪さん!」

 

 

『へぶっ!』

 

 

「どんまいだよ、わっしー」

 

 

「呼び方も堅いんだよー、銀でいいぞ銀で」

 

 

「私の事はそのっちで!はい、呼んでみて!」

 

 

2人はそう言うが、須美は恥ずかしくなり視線を外す。

 

 

「はい、もう一回!ゴール出来るまでやるわよ!」

 

 

先生からの声に気を引き締め直すと少し違和感を感じる3人。

 

 

「そういえば、信くんがいないね〜」

 

 

「俺ならここにいるぞ〜」

 

 

「うわっ!どうしたんだよ信悟!鼻が赤いぞ!」

 

 

「銀が当たった後、いきなりボールが飛んできたのに当たっただけだ……大した事じゃない」

 

 

「え?」

 

 

「まあ、どこかから発射されてたボールがまだあったんだろ、次からは油断しないようにするから大丈夫だ」

 

 

その時の俺は偶然の出来事だったと決めつけて再び訓練に励んだ……

 

 

 

今日の練習がようやく終わり4人は浴場で汗を流した。訓練を再開してからも銀にボールが当たる事は無くならず、結局ゴールが出来ないままに終わってしまったが連携は少しずつよくなってきている。俺も油断をしないようになってきたのだが、何故か銀が当たった後からもボールが発射され銀と同じ数のボールに当たった。最初は発射直後のボールだけだったのだが、途中からは明らかに発射前の装置から狙ったようにボールが飛んできていた。最後の方は俺が気を抜いてから時間差で発射する始末である。絶対にこれは意図的にやっている……明日からはもっと気をつけよう……

 

汗を流した後は晩飯を食べる為に客室に向かった。

 

 

「遅いぞー信悟、早く食べよう!」

 

 

「桜井くんが最後ですよ」

 

 

「私はもうお腹ぺこぺこだよ〜」

 

 

客室に入るとすでに3人とも座って待っていた。俺が来るまで待っていたのか料理には手をつけていない。

そろそろ限界な様子の園子だったので、空いている園子の隣に座り、全員が揃ったのを確認してから須美が合図した。

 

 

「それじゃあ全員揃ったので頂きましょうか、せ〜の」

 

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 

まずはどの料理から食べようか、並べられている豪勢なものの中から選んでいると蟹がいた……

 

 

「カニ!?しかも本体のままだ!?」

 

 

「やっぱそうなるよな!安心しろそのカニは生きてないから動かないぞ」

 

 

「動いたら銀にパスするから大丈夫だ」

 

 

「パスするなよ!?てか何で私なんだ!?」

 

 

「ほら、あれだ……銀と言えばカニだろ?」

 

 

「どうやったらそんな考えになるんだ!」

 

 

「冗談だよ……動かないならそんな事しないさ」

 

 

「動いたらやるのかよ!」

 

 

「モチロンサーーー!!!!」

 

 

mの教祖様のように笑顔で答えた。誰だってカニが動けば投げたくなるものだ……俺だけではないはずだ……

 

 

その後は何から食べたのか覚えていない、覚えているのは食べる度に幸せな気分になってすごく美味しかったということだけだ。銀も俺と同じなのか食べ終えた今の顔はとても幸せそうだった。

 

 

「ごちそうさまでした……美味しかった」

 

 

「ああ、美味しかった……信悟が食べてる時の表情凄く輝いていたぞ?」

 

 

「仕方ないじゃないか、こんなに美味しいのは生まれて初めて食べたんだから……」

 

 

「2人ともすごく美味しそうに食べてたね〜」

 

 

「ええ、まさかここまで喜ぶとは驚いたわ」

 

 

「須美、園子、銀、3人には分からないかもしれないが俺にとってこんなに美味しくご飯が食べられるのが夢みたいに感じられるんだ」

 

 

「どんな食事をしているのよ……」

 

 

「ふっ、聞くな……」

 

 

毎晩家では両親のイチャつく姿を見ながらの食事なんて、物心ついた頃から俺にとって苦痛だったんだ……味も本来の味にプラスして砂糖をぶちまけられたような物を食べているみたいでこんなに美味しいのは食べる事が出来なかったんだよ……

 

傷心気味になった俺は、窓の外を見て心を落ち着かせようと顔を横に向ける。そこに必然的にほっぺにご飯粒のついた園子の顔も視界に入る。

 

 

「園子、ほっぺにご飯粒ついてるぞ?」

 

 

「え?どこどこ?」

 

 

園子は両方のほっぺを右手でペタペタと触るが、丁度指と指の間にご飯粒があるので中々取れずにいる。狙ってやっているのか?と思うほど取れずにいたので、俺は仕方なくとってあげる事にした。

 

 

「違う違う、ここだよ」

 

 

右手の人差し指と親指でつまんでついていたご飯粒を取り、MOTTAINAIのでつまんだご飯粒を食べる。

 

 

「はむっ」

 

 

「あ……」

 

 

「?どうした園子?」

 

 

「う、ううん何でもない//」

 

 

「そうか?それにしても、ご飯粒がついてるのも気づかないほど今食べた料理が美味かったのか?」

 

 

「実はそうなんだよ〜あはははは〜//」

 

 

「そうだよな〜今日の料理はめちゃくちゃ美味かったもんなぁ」

 

 

今日の料理はどれも美味しかった、素材の味を活かした味付けも洗練されていて思わずほっぺが落ちそうになった……まさに職人の味だ!

何故か園子は顔を赤くしていたが、どうしたのだろうか?須美と銀に至っては固まってしまってるが、それ程今日の料理が美味しかったのだろう……そうに違いない!

 

 

 

全員が食べ終え、このあとは自由時間になるので誰か暇を潰す道具を持ってきてないか確認するために、全員の持ってきている物について聞いてみた。

 

 

「そういや今回の合宿でみんなは何を持ってきたんだ?」

 

 

そう聞くと、固まっていた銀と須美はようやっと我に帰る。

 

 

「私は必要なものだけ持ってきたわ」

 

 

「わっしー、荷物はあれだけ?少なくない?」

 

 

「そうかしら?」

 

 

園子に言われて須美の荷物が置いてあるところを見てみると、本当に必要最低限な物しかないのか俺よりも少ない。たぶん、遊び道具は一つも持ってきていないだろう。

 

 

「ミノさんお土産買うの早すぎ〜」

 

 

次に銀の荷物がある場所を見ると、荷物と一緒にお土産があった。お土産を買い忘れない事はいい事だが流石に早すぎじゃないか?まだ初日だぞ?

 

 

「そういう園子の荷物はなんだ?」

 

 

銀のコメントにいささか不安を覚えながら園子の荷物を見ると、いつも持ち歩いている枕のサンチョの他にプラネタリウムやうどんを作る為なのか臼があった。よく持ってきたな、重くはなかったのか?

 

 

「どこからつっこんでいいか分からないわ……」

 

 

「今回ばかりは須美に同意だ……何で臼なんて持ってきたんだ?」

 

 

「臼でおうどん作るんよ〜」

 

 

「やっぱりうどんを作るためのものか!?本格的だな!」

 

 

「美味しいものは素材からこだわらないとね〜」

 

 

「将来うどん屋にでもなるつもりかよ……」

 

 

「おお〜それいいかも〜」

 

 

「……すまん、冗談だ」

 

 

どうやら園子を理解するにはまだまだ時間が足りないようだ……いつか理解できる日が来るといいな……

 

 

「そういう信悟は……お前も園子に負けてないぞ」

 

 

「え?そんな事ないだろ、必要最低限な物しか持ってきてないぞ?」

 

 

「どこがよ!こんなにたくさんのハンドスピナーを持ってきている時点でおかしいわよ!」

 

 

「そんな大袈裟な……たったの20個だけじゃないか」

 

 

「多すぎだ!第一、そんなに持ってきてどうするんだよ?」

 

 

「どうするも何もただ回すだけだ……それが俺にできる事だからな」

 

 

「うん、ごめん、意味が分からない」

 

 

「……まあこの際、100歩譲ってハンドスピナーを持ち込み過ぎたのは悪かったとしても、そこまで驚く程でもないだろ?」

 

 

「いいえ、まだあるわ」

 

 

「うっそ〜ん」

 

 

「本当よ……他にもいろいろ聞きたいけど、それよりも何でこんな……ガムが大量に入ってるのよ!」

 

 

「わあ~本当だ~、こんなにたべられるの~?」

 

 

「愚問だな......食べられるわけないじゃないか!」

 

 

「じゃあどうして、こんなに持って来たんだよ!」

 

 

「それは緊急時の為だ」

 

 

「「「緊急時の為?」」」

 

 

3人は驚いているが、ガムの有用性を理解している俺からするとその反応には理解に苦しむ。

 

 

「ガムが役に立つのか?悪いが全然想像つかないんだが......」

 

 

「ちっちっちっ、甘いな銀さん、ガムシロップに砂糖と練乳と生クリームを合わせたぐらい甘い!」

 

 

「そんなに甘いのかよ!軽く吐きそうだな......」

 

 

「うわ~おいしそう~」

 

 

「「「そんなもの園子は食べられるのかよ!?」」」

 

 

完全に予想外の園子の反応は園子を除いた全員が同じ感想だった、園子恐るべし......

 

 

「まあそれはさておき、ガムというのはただ食べるだけじゃなくて、他にも接着剤代わりになるんだ」

 

 

「へ~、そうなのか、初めて知ったぞ」

 

 

「まあ、今の世の中不自由な暮らしをしてないからな。道具が無ければす店で買って用意できたりするから、こんな発想する機会がないからな」

 

 

今の時代、ホームセンターやスーパー、それになんと言ってもコンビニがあれば大抵の物は揃ってしまう。便利なのは良いのだが、工夫した使い方をする人が減ってきてるのは少しだけ残念である。

 

 

ガムの有用性について他にもいろいろと説明した後、他にも合宿に関係ないものがたくさんあったが長いこと話していたので時刻も9時を過ぎ、明日も特訓があるので見逃してくれた。危ない危ない、もしもあれについて聞かれていたら大惨事だった......

 

寝るときは別の部屋の俺は、自分の荷物をもって3人におやすみと告げてから1人部屋を後にした。隣の1人だけ寝るにはいささか広い部屋に着いてから、荷物を端に置いて電気を消して、敷かれていた布団に入りスマホを取り出してタイマーをセットして枕元に置いてから眠りについた......その日は、特訓もなかなかハードだった事もあり、すぐに寝ることが出来た。

 

 

 

次の日から最終日までは変わったこともなく朝起きてから食事をして、その後に日替わりで歴史の授業や瞑想などをやった。先生から合宿の期間中は常に4人行動を共にするように言われたので、最終日までは風呂とトイレと寝るとき以外4人で行動していた......別に最初聞いたときはトイレや風呂も一緒なんて最高なんてことは一ミリとも考えてなかったからな?......すまん嘘だ、先生に言われてから少し時間が経ったときに園子がトイレに行くのを我慢してたんだが......

 

『園子、さっきから落ち着かないけどどうした?まさかあれか?トイレにでも行きたいのか?』

 

『おい信悟、他に言い方はなかったのか?』

 

『そうだな......悪かったよ......さて』

 

『おいどこ行くんだよ?』

 

『そんなの決まってるだろ?トイレだよ!ほら園子行こうか......』

 

『いやいや、何自然に園子を連れて行こうとしてんだよ!?』

 

『おいおい、銀、お前先生の話聞いてなかったのか?』

 

『お前まさか!?』

 

『常に4人で行動しないとだろ?ほらお前らも行くぞ?』

 

『最低......』

 

『信くんそれはいくらなんでも......』

 

『信悟、流石に今の発言は最低だ......』

 

という事があったんだ。その時の3人は、汚物を見るような目で俺を見ていた......もちろん、すぐさま冗談だから許してくれと特技の土下座を披露して何とかなったが、その日の訓練が終わるまでは一言も口も聞いてくれず目も合わせてくれなかった。特訓中には、須美が意図して俺に向かってくるボールだけ矢を当てなかった......反省はしているし後悔もしている、今後は自重するよう努力するとこの日の俺は誓った......だが、絶対にやらないとは言っていない!!

 

そうして、俺にとって肉体的にも精神的にもハードな特訓も今日で最後になり、先程銀がゴールしてバスを粉砕して特訓は終了した。

 

 

 

合宿最終日、いつものように食事が終わって4人で特訓が無事に終了したことに喜び合い、今回の合宿の思い出を語り合った後俺だけ部屋を退出して荷物が置いてある部屋に戻る。

 

 

「やっと合宿も終わりだ~疲れた~」

 

 

俺は今日も敷いてある布団に大の字で倒れ込んだ。

 

 

「まさか俺がここまで頑張るとは、俺はYDK、やればできる子だったのか!」

 

 

自分自身を褒めて調子に乗り、右手の掌を天井の照明が隠れるように掲げる。その掌は特訓で怪我した傷が少しだけあった。

 

 

「3人の美少女とお泊りなんて最高だと思っていたが、まさか最後の最後まで添い寝が無いとは!くそう!これなら風呂場で生まれたままの姿を覗けばよかった!」

 

 

天井に向かって叫んでみたが返事はなく、虚しさだけが心に残った。

 

 

「まあ、3人とも御役目の時の怪我がまだ治ってないみたいだからあまり見られたくはないよな~......男にとっては傷なんて男の勲章だけど、女にとっては違うらしいし」

 

 

何故男と女で考えが違うのか不思議に思ったが、これも乙女心という事にして深く考えない事にした。

 

 

「はぁ......転校してから上手くいくか不安だったけど案外上手くいって良かった、ほんと、最初にあの3人と出会えてよかったな......あいつらには言えないけど感謝しているよ、何があっても3人だけは絶対に、この2度目の命をかけて......って、何言ってんだ俺は!?風呂でのぼせたのがぶり返したか?」

 

 

右手を握りしめながら変なことを言っていた自分が恥ずかしくなり布団に入り掛布団で頭まで隠した。熱も冷めてきたので布団から顔をだして電気を消す。

 

 

「俺にとって大事な友達か......こんな俺にもできる日が来るとはな~、そういや父親が言ってたな......」

 

 

父親から昔、物心ついた時の言葉を思い出す。

 

 

『いいか信悟、これから先お前にも大事な友達ができるはずだ......たぶん......まあそんな些細なことはどうでもいい!もしも、万が一、いや億が一に出来たとしよう。その時にこの言葉を思い出してくれ、後先考えるなお前の全てをかけろ!......まあご先祖様の言葉だけどな!ははは!』

 

 

「相変わらずいい加減な父親だな......『後先考えるなお前の全てをかけろ!』か、何かは教えてくれないんだな......いや、俺が小さいとき死んだじいちゃんから聞いた話だと、先祖はかなりの変人だったとか言ってたから言い忘れただけか......先祖の卒アルの写真に写ってる特定の女子生徒を一人一人指さして子孫に伝えるぐらいだから変人なのは確定だな、何故かじいちゃんも俺に教えてきたし......まだ4歳だぞ?教育に支障がでたらどうするつもりだったんだ......」

 

 

自分の親族に変人がいるから俺もこうなったんだろうかと、目を瞑って真剣に考えていたらいつの間にか寝てしまった。

その日の夜、寝てしまっていた俺は夜中近くになったころにトイレに行きたくなって起きてしまい、布団から出て少し歩いたとこにあるトイレまで歩いている途中に、まだ明かりが点いている3人の部屋からすすきという声が聞こえたが漏れそうだったので、聞き耳を立てずトイレへ直行した。そうか、あいつらすすきに興味あるのか......今度プレゼントしよう......

トイレから戻った俺はすすきについてスマホで調べてから再び眠りについた。

 

 

____________________________________________

 

桜井信悟が部屋から出ていった後の部屋で、3人の少女は寝るときの服に着替え布団を敷き、それぞれの寝床についた。だが、まだ明かりは消していない。

 

 

「お前ら、合宿の最終日に簡単に寝られると思ってる?」

 

 

1人の少女、銀は自分の枕を抱きしめながら2人の少女に向かって言う。

 

 

「自分の枕を持ってきてるから~、簡単に寝られるよ~」

 

 

「それ、名前タコスだっけ?」

 

 

「サンチョだよ~よしよし~」

 

 

「それで、園子さん、その服は?」

 

 

「鳥さーん!私焼き鳥好きなんよ~!」

 

 

そう言ってその少女、園子は個性的な鳥の服の腕の部分を鳥が羽ばたく時のようにばたつかせる。

 

 

「うん、うまいよねぇ」

 

 

「とにかくダメよ!夜更かしなんて!」

 

 

自分の布団をどかして身を起こして少女は、須美はすぐに寝るように注意した。

 

 

「マイペースだなぁ須美......」

 

 

「いう事を聞かない子には......夜中迎えに来るよ~」

 

 

「む、迎えに来る~!?」

 

 

須美が二人を怖がらせるためにポーズを撮りながら雰囲気を出すが、園子の頭の中では須美と違う想像をして怯えていた。

 

 

「そんなホラーはやめて、好きな人の言い合いっこしようよ~」

 

 

「「?」」

 

 

銀はホラーの話よりも定番中の定番である恋バナを2人に勧め、2人も興味があるのか意外と乗り気になる。

 

 

「好きな人って......み、三ノ輪さんはどうなの?」

 

 

「あえて言うなら、弟とか!」

 

 

「家族はずるいよ~」

 

 

「私もいないから、お相子ね。乃木さんは?」

 

 

「ふっふっふ、私はいるよ~」

 

 

自身あり気に笑いながら二人にアピールする園子......

 

 

「おお!恋バナきたんじゃない?」

 

 

「だ、誰!?クラスの人?」

 

 

園子の発言に須美と銀は期待しながら園子に聞く。

 

 

「うん!わっしーとミノさん!」

 

 

「だと思ったよ......」

 

 

よくある無難な回答に須美と銀は脱力した。

 

 

「これでいいのかね~......」

 

 

「いいのよ!私たちには神聖な御役目があるのだから!」

 

 

「あ!」

 

 

突然園子が声をあげ、須美と銀は驚いた。

 

 

「どうしたの乃木さん?」

 

 

「もしかして......他の好きな人でも思いついたか?」

 

 

「う、うん......」

 

 

園子は、声が小さくなりながらそう言ってどことなく落ち着かなくなり下を向いた。

 

 

「冗談で言ったんだが、マジか......」

 

 

「うそ!?誰なの!?」

 

 

「し......」

 

 

「「し?」」

 

 

「信くん......」

 

 

「「え?」」

 

 

「「「......」」」

 

 

数秒の間、3人のいる部屋には静寂だけが残った。

 

 

「「えええええええええええええ!?」」

 

 

「おい園子!何か変なものでも食べたのか!?」

 

 

「早くお札を!悪霊退散!」

 

 

「そんなに驚くの!?」

 

 

今度は2人の反応に園子が驚いた......

 

 

「だってあの信悟だぞ!?ガムを大量に持ってくる奴だぞ!?」

 

 

「そうよ!スピンドルを20個も持ってくる桜井くんよ!?」

 

 

「2人とも落ち着いて!?」

 

 

「ちょ、ちょっと待って......須美、園子深呼吸するぞ」

 

 

「私も?」

 

 

「なんで......」

 

 

「いいから!さんはい!」

 

 

銀と須美は深呼吸をして自分を落ち着かせる。

 

 

「よしっ!落ち着いた!」

 

 

「ええ、どうやら私たちは取り乱してたようね......えっと、乃木さんはその......桜井くんの事が好きなの?」

 

 

「うん、好きだよ~」

 

 

「それは......異性として?」

 

 

「う~ん、どうなんだろ~?」

 

 

須美と銀はずっこけた。

 

 

「なんだそれ?好きなんじゃないのか?」

 

 

「そうなんだけど、異性としてと言われると分からないかな~?」

 

 

「ええと、つまり好きだけど異性としては意識していないという事かしら?」

 

 

「たぶん~」

 

 

「たぶんって......」

 

 

「だってわからないんだもん」

 

 

「はあ......あの、ちなみにどうして好きになったの?」

 

 

「それはね~面白いから~」

 

 

「それでいいのか?まあ、面白いとは思うけど......」

 

 

「他にもあるよ~、いつも明るくて周りに気を配って困ってる時は助けてくれるところとか、一緒にいると楽しいところとかいろいろあるんだよ~」

 

 

「まあ、確かに一緒にいると楽しいわね......あ、いえ別にそういう意味ではなくて!?」

 

 

「ほほ~、鷲尾さん家の須美さんも好きなのかね?」

 

 

「別にそんな事......」

 

 

「おいおい嬢ちゃん正直に言ったほうが楽になれると思うんだがね?」

 

 

「わっしーは信くんの事嫌いなの?」

 

 

「それは!?......嫌い......じゃないかな」

 

 

「「おお~~!!」」

 

 

「//そういう三ノ輪さんはどうなのよ!?」

 

 

「え!?私!?」

 

 

「そうだよミノさん!ミノさんは信くんの事どう思ってるの~?」

 

 

「それは......す、好きだけど......でも!そんなんじゃなくて!?なんて言うかその......」

 

 

「三ノ輪さんも同じ気持ちなのね......」

 

 

「わっしーも好きなんだ~」

 

 

「ええ!?」

 

 

「だって今同じ気持ちだって言ったよ~」

 

 

「あ、いえ、その、これは!?」

 

 

「でも嬉しいな~!」

 

 

「「え?」」

 

 

「だってここにいる3人全員が同じ人が好きなんだもん!」

 

 

「それなのに嬉しいの?」

 

 

「うん!皆が同じ気持ちだったことが嬉しいんだよ!」

 

 

「好きな人はどうしたんだよ......」

 

 

「もちろんそれもだよ~」

 

 

その後突然園子はこぶしを突き上げて2人に宣言する。

 

 

「よ~し負けないよ~」

 

 

「えっと?乃木さん、負けないとは?」

 

 

「それはね~......好きな気持ちだよ!」

 

 

「「好きな気持ち?」」

 

 

「うん!私は2人よりも信くんが好き!」

 

 

「わ、私だって信悟の事2人よりも好きだ!//」

 

 

「私も!2人より桜井くんのことが......す、好き//」

 

 

「おお~!ミノさんもわっしーも大胆~」

 

 

「園子だって大胆じゃないか」

 

 

「そうよ!それにやるからには全力よ!」

 

 

「いいねそれ!これから私たちはライバルだな!絶対負けないからな!」

 

 

「私だって負けないよ!」

 

 

「私も負けないわ!」

 

 

そう言った3人は同じ人を好きになったのに、互いに見合わせた顔は笑顔だった。

 

 

「そういえば何で勝負になってるんだ?」

 

 

「う~んどうしてだろう?わっしーは分かる?」

 

 

「いいえ、覚えてないわね......それよりも今は御役目に集中しましょう!寝るわよ!」

 

 

「これでいいのかね......」

 

 

「今はいいのよ!これで!家に帰るまでが合宿よ!」

 

 

「へぇーい」

 

 

「消灯!」

 

 

部屋が暗くなり3人は目を瞑ろうとしたが、突然オルゴールの音が聞こえ、部屋全体に数多の光の点が現れた。

 

 

「へ?」

 

 

「なんだこれ!?」

 

 

「プラネタリウム」

 

 

「なぜここに?」

 

 

「綺麗だからもってきたの~」

 

 

「消しなさい!」

 

 

「しょぼ~ん......」

 

 

須美に怒られ園子が仕方なくプラネタリウムを消してから、今度こそ3人は眠りについた......

 

 

 

 

 

 

____________________________________________

 

次の日......

 

 

いよいよ合宿も終わり、健やかな朝日を浴びてからバスに乗り込み旅館に来た時と同じ席に座る。

 

 

「やっぱり2人は先に来てるんだな......」

 

 

「当然よ!時間前行動なんて基本中の基本よ」

 

 

「すぴーすぴー」

 

 

先に来ていた須美が当たり前のように言って、横では須美に寄りかかりながら園子が寝ていた。

園子は寝ているが......時間前に来ているから良いのだろうか?

 

 

「まあ、俺は時間ピッタリだけど......別に良いよな?」

 

 

「いいえ、2秒ほど遅かったわ」

 

 

「細かいな!そこまで確認するのかよ......」

 

 

「当り前よ!......でも、今回は特別に許してあげるわ」

 

 

「え?」

 

 

いつもなら説教コース突入するので身構えていた俺は、今回は何も言われなかった事に驚いた。今日の須美は何故か優しいので逆に警戒してしまう、何か俺の弱みでも握っているのか勘ぐってしまう程だ......

 

 

「何か?」

 

 

「あ。いや~その、なんだ......銀はまだ来てないんだな!」

 

 

「?見ればわかるでしょ」

 

 

「あ、はい。すみません」

 

 

「何で謝るのよ......変な桜井くん」

 

 

変な人扱いされた俺を須美は、何がおかしいのか少しだけ笑った。こ、こいつはやべ~!須美からは危険な香りがぷんぷんしやがるぜ!ここは一つ......逃げるんだよ~~~~......なんて出来るはずもなくおとなしく銀の到着を待った。

 

 

銀を待ってから数分経ったが、相変わらず姿を現さないので横で行儀良く座っているお姫様の......須美の不満オーラが段々と強くなってきていた。もうやめて!俺の心が耐えきれない!カムバック!銀ーーーーーー!!!!

俺の願いは誰にも届かずまた数分が経ち、いよいよ限界間近の須美と相変わらず平常運転で寝ている園子、須美の様子を見ないように固まって岩のように動かない俺だけが今だバスの中にいた。園子、お前器用だよな、歴史の授業中も寝てると思っていたらちゃんと先生の質問に答えられていたもんな。......頼む園子、今だけお前のその力をほんの少しで良いから分けてくれ......

 

 

「ごめんごめん、野暮用で」

 

 

その時、女神が降臨した。

 

 

「野暮?」

 

 

「おお!女神が!女神が降臨なさった!」

 

 

「「女神?」」

 

 

やばい!うれしすぎてつい思っている事が口に出てしまっていたようだ......だが、ここが正念場だ。

これから先、また遠出するかもしれないので、俺は今回の様に怯えながら待たないための手段を提案する。

 

 

「何でもない......それよりも、みんなの連絡先教えてくれないか?」

 

 

「はい?」

 

 

しまったーーーー!!!焦り過ぎて率直に聞いてしまったーーーー!!!

 

 

「あ、いや、別に変な意味とかではなくて......ほら、今回みたいに銀が遅れて来た時のためにだよ、うん」

 

 

「どういうこと?」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「あー、つまりだな、もしもこの先今回みたいなことがあっても連絡ぐらいした方が良くないか?今回はたまたま銀だったけどさ、もしかしたらこの中の誰かが次は遅れてくる可能性があるだろ?」

 

 

「なるほど、一理あるわね」

 

 

「そうそう、だから今後のために連絡先を交換したいな~とか思っていたり......いや、無理にとは言わないが」

 

 

「そうね......」

 

 

須美が真剣に考える姿を見て俺は無意識に唾を飲み込む。

 

 

「わかったわ、それじゃ連絡先を交換しましょう」

 

 

「よ、良かった~......いや、何でもない。園子とも連絡先を交換した方がいいよな?」

 

 

「それもそうね、乃木さん起きて」

 

 

須美は園子をゆすって起きるように促す。

 

 

「ん?あれ~お母さん、もう着いたの~」

 

 

園子が起き掛けに須美に向かって言った。

園子は本当に母親が好きなんだな、あれか?最初にマがついて最後にンがつくあれなのか?まあ、俺の家より何倍もマシだからいいか......仲良き事美しきかな......まあ、あえて言うなら......父親ざまぁーーーーーーーーーー!!!!このままじゃ、すぐに嫁にいっちゃうぞ?え?同情?何それおいしいの?

 

 

「違うわよ乃木さん、まだ出発もしてないわ」

 

 

「そうなの~、あ、わっしーおはよ~」

 

 

「「今頃気づいたのかよ......」」

 

 

俺と銀はハモリながら言って、2人同じく苦笑いした。

 

 

「とにかく!今から連絡先を交換するから乃木さんもスマホ出して」

 

 

「はぁ~い」

 

 

寝起きでまだ完全に目を覚ましていないながらも、園子はポケットからスマホを取り出した。

 

 

「それじゃあ、全員の連絡先を交換するわよ」

 

 

「待ってました!」

 

 

「信悟は何でそんなにテンションが高いんだ?」

 

 

「そんな事はない、生まれつきこのテンションだ」

 

 

「なんか嫌だな!そんな子供!」

 

 

失敬な、これぐらい普通だ......普通のはずだよな?俺はまだ変ではない!......そういえば、さっき須美に変な人扱いされたんだ......

 

 

「はぁ......」

 

 

「いきなりため息ついてどうした?」

 

 

「俺、生まれてくる両親間違えたかなと思って」

 

 

「両親かよ!?そこは時代じゃないのかよ!?」

 

 

「え?だってこの時代に不満なんてないし、それに......この時代じゃなきゃ須美にも園子にも銀にも会えなかったから、俺はこの時代に生まれて良かったと思ってるよ」

 

 

「そ、そうか//」

 

 

「3人ともどうかしたか?」

 

 

「な、何でもないって!なあ須美!園子!」

 

 

「え、ええ!何でもないわ!//」

 

 

「う、うん!何でもないよ!//」

 

 

3人は慌てていたが本当にどうしたのだろう?園子に至っては完全に目が覚めたのか、間延びした返事ではなくなっていた。やはり、乙女心とはよく分からないものだ......

 

 

その後俺は、3人の連絡先をスマホに登録してついでにSNS?だったと思うが、リアルタイムで返事が送れるアプリの友達欄にも3人を追加した。やったね!これで連絡先に両親を覗いてアドレスに瀧沢以外の名前が3つも追加されたよ!我、感極まる!

 

連絡先を交換した後、席に座って話をしていると銀が来ないときにトイレに行ってたバスの運転手が戻ってきてようやく出発した。

 

バスが走る間も会話は盛り上がっていたが、1人だけ途中でリタイアしてそのまま到着するまで復帰することはなかった......俺、テンション上がると乗り物酔いするんだった......

 

到着した後はその場で解散となり、限界間近の俺は3人に別れを告げて速攻で帰った。3人に途中まで一緒に帰ろうとも言われたがそれどころではない状態だったので丁重にお断りした......今度お詫びとしてすすきでも差し入れしよう......

 

 

 

こうして、そう長くはないが濃い内容の合宿は終わった......俺が帰宅して吐いて......終わった......

 

 

 

 

 

 

「なんか、トイレから声が聞こえるんだが......」

 

 

「今はそっとしておきましょう、信悟にもそうしたい日があるのよ......」

 

 

「合宿で何があったんだよ!?......そうだ、神棚の上に置いてあったUSBメモリ知らないか?今日掃除してたら無くなっていたんだが」

 

 

「それなら信悟が合宿の前に、『ぷらぐいん、桜井信悟、とらんすふぉーむ』とか言いながらスマホに挿して遊んでたわよ」

 

 

「あいつはなんてことを......一応あれは家宝なんだぞ......」

 

 

「別にいいじゃない、パソコンに挿しても反応しないんだから」

 

 

「それもそうだな......おっと、足元に何か落ちてるな?」

 

 

「あら、あなたが探していたUSBメモリじゃない?」

 

 

「本当だ、何故ここに?」

 

 

「信悟が帰ってきてトイレまで走ってるときにポケットから落ちたんじゃない?」

 

 

「......合宿に持っていってたのか......はぁ、まあいいか特にひびが入ってもいないし」

 

 

「そんな事よりも、今日はカレーを作ってみたのだけど味見してもらえないかしら?」

 

 

「おぉ!今日はカレーか!よし、味見させてもらおう」

 

 

『・・・ぇぇ』

 

 

「言っておくけどつまみ食いは駄目だからね」

 

 

「ははっ、ばれていたか」

 

 

「もう!そんな事したらご飯抜きだからね!」

 

 

『・・・・・ぇぇぇぇ』

 

 

「悪かったよ、つまみ食いしないから許してくれ」

 

 

「ふふっ、冗談よ......それじゃ、キッチンへ行きましょう」

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・ぇぇぇぇぇ』

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

その日、ある家庭では仲が良い夫婦の笑い声とどこからかうめき声が聞こえた......

 

 

 

 

 

「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」

 

 

 

 




もう嫌だ!!!俺に恋愛ものなんて書けないんだ!!知ってたよチクショウ!!


だってさ、オリ主のいいとこなんて全然今のところ、第三者からみたら皆無なんだぜ!?

あってもほとんど御役目の時だけっていうねwwww


次回 作者、恋愛のれの文字をしる旅に出る

こうなりゃDVDレンタルして休みの日ぶっ通しで見てやるぞおおおお!!!


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奇跡の交差......

今回は本編に関わらない話なので気を付けて

流石にいろいろこのままだと話が続けられないので強引にねじ込んでみた!

このノリに君はついてこれるか?





三ノ輪銀という少女がいつも遅れることに疑問をもった須美は、園子を連れて銀が遅れる理由を探るため彼女の身辺調査をしていた……

 

今日は須美からとても魅力的な誘いがあったが、とても大事な用事がある俺は非常に残念ながらその誘いを断った。

 

園子と須美が銀を尾行する数時間前、信悟は大事な用事で別行動をとっていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜あ、俺も行きたかったな〜。憧れの潜入ミッションみたいで楽しそうだし……やっぱり行けば良かった!!」

 

 

大事な用事である場所に歩いている時、約束を断ったことにかなり損をした気分になって叫んでいる少年は、周りからの視線も気づいていなかった。

 

 

「ママ〜あの人変〜」

 

 

「しっ!見ちゃいけません!変人がうつるわよ」

 

 

「聞こえてるんだが……まあ、過ぎた事は仕方ない、大事なのはこれからだ!」

 

 

酷い言われようをされた俺は、気を紛らわせるように本来の目的を思い出す。

 

 

「そう、何と今日は……『ポンコツだからできるかも?』の最新刊発売日なのだ!し・か・も、早期購入特典としてツンポくんライトが貰えるんだから買わなきゃならない!いや、これは俺に与えられた運命なのだ……ツンポくんライトはツンポくんをモチーフにしただけあり、地面すれすれで歩いてるツンポくん特有のポーズになると目が光る仕様になっていてなかなか凝ってるんだよね!流石作者!」

 

 

あまりにも興奮して1人解説をしてしまいまた変人扱いされたが、軽く咳払いして誤魔化した。目的地は何でも揃っているみんな大好きイネス、いつもより速度をあげて一分一秒でも早く購入するために早歩きを始めた……

 

 

しかし、イネスに来てみると店が閉まっていた……

 

 

「な、何故だ!本日定休日なんて張り紙どこにもなかったじゃないか!これは誰かの陰謀だ!そうに違いない!……まあ、朝早く来過ぎた俺が悪いんだけどね……」

 

 

ただいまの時刻は開店時間よりも3時間前で、当然のことながらどこの店も閉まっていた。

 

 

「仕方ないじゃないか……もしかして……とか思うのは俺だけじゃないはずだ!……周りに人1人もいないけどね」

 

 

こんな時間に来るのは精々運送業者が荷物をトラックで運んでくる人だけだが、今日は品物の入荷の予定がないのかそれすら見当たらない。仕方がないので、イネスを後にして開店まで時間を潰すことにした。

 

 

「そうは考えたものの、これからどうするか?家に帰るのはなんかもったいないし……どうせ夫婦水入らずになってイチャついてるから帰りたくない!だから帰宅という選択肢は断じて否!となると、普段行かないような場所に行くというのがいいかな?万が一にも両親に遭遇しないためにも……それがいい!そうしよう!」

 

 

両親のイチャイチャを見てしまえば、せっかくの発売日で喜んでいる俺は絶対に気分が沈むのでせっかくの機会に両親に遭遇しない普段は行かないとこに行こうと考える。

 

 

「ん〜?どこがあるんだ?普段行かないとこなんて……そうだ、あるじゃないか!普段絶対に行かないところが……今年は行くことが一回はあるかもしれないし、下見に行ってみるか!」

 

 

時間潰しの候補が決まった俺は、早速その場所へ向かった。ここから歩けばそれなりに時間も潰すことが出来るので一石二鳥だ。

 

 

「それでは早速、中学校に出発だーー!!」

 

 

距離はそれなりにあり、普段からは考えた事もない道を歩いていたのでいつの間にか、1時間が過ぎていた。

 

 

「いや〜結構歩いた気がするがまだそんなに経ってないのか……それにしても、遠くに見えるあれが中学校なんだよなぁ、今の学校に見慣れたのか普通という感想しか出てこない……まあいいか!確かあの中学校の名前は『讃州中学校』だったな」

 

 

まだ距離があるが視界に捉えられる場所まで来た俺は、目的地の中学校を見ながら身勝手な感想を抱いていた。ここまで来てあと少しという距離まで歩いてから気づいた事がある。それは……

 

 

「そういえば、中学校に行っても部外者は立ち入り禁止だから入れないんじゃね?……俺何しに来たんだよ……ま、まあ時間は潰せたし結果オーライだからセーフセーフ……さっき通った場所で良いとこあったからそこで寝よう……」

 

 

二度の挫折を味わった俺は、先程通った道を折り返し寝心地の良さげな砂浜近くの草原へ歩いた……

 

 

 

 

 

「俺寝てたのか?全然覚えがない……」

 

 

草原に来て大の字で寝転んでからは目を瞑るとすぐに寝ていた。昨日は今日が待ち遠しくて一睡もしていなかったので反動が今になってやってきたのだろう。

 

 

「お姉ちゃん、うどんよく食べれるよね、まだ朝なのに……」

 

 

「あら、何を言ってるの?あれぐらい普通よ、それにうどんは女子力をあげるのよ?」

 

 

「そんな話聞いた事ないよ〜」

 

 

草原に近い道から声が聞こえたのでそちらを見ると、一目で姉妹と分かる2人の女性が仲よさそうに歩いていた。1人は俺より年上だろうか?何というか姉御肌という言葉が似合う女性でもう1人が俺より年下にしか見えない小動物を連想させるような女性が先程食べた朝食について話していた。

 

 

「うどんとか言ってたけど、店で食べたのか?……やばっ!今何時だ!?」

 

 

急いでスマホを取り出してからスマホの時刻を確かめるともうすぐ開店時間になろうとしていた。気持ちよく寝られたので体力に余裕が出来、すぐさま起き上がってイネスに向かって走った。

 

 

体力に余裕があっても心の方は余裕ではなく、特典が貰えないかもしれないと焦っていたので前方にいた男性に気づかずにスマホの時間ばかり気にしてしまい勢いよくぶつかった。

 

 

「うっ!?」

「いてっ!?」

 

 

あまりの勢いにお互いに尻餅をつき、相手の男性は買い物帰りなのか果物の入った袋を落として中の果物をぶち撒けた。

 

 

「すんません!」

 

 

「いや、こっちも考え事をしていて前を見ていなかった。悪いな」

 

 

「大丈夫、俺のスマホは耐衝撃に優れているからな!」

 

 

「いや、お前のスマホを心配したわけじゃないんだが……それより果物を拾わないと」

 

 

「じゃあ俺も拾うよ、俺のせいでもあるしせめてものお詫びって事で」

 

 

「そうか、それじゃ頼む」

 

 

2人は身を起こして落ちた果物を拾い始めた……

 

 

 

「ありがとう、助かった」

 

 

「どいたまで〜す」

 

 

あの後拾い終わった果物を袋に入れてから、近くの公園のベンチに座っていた。

 

 

「何か軽いなお前……」

 

 

「私はそんな軽い女じゃないわよ?」

 

 

「そういう意味じゃねーよ!?」

 

 

「え?でも、俺の体重は平均並みだぞ?」

 

 

「それでもないわ!」

 

 

「おいおい、そんなに怒ってると将来ゲハるぞ?」

 

 

「誰のせいだ!!……はぁ、もういいや……」

 

 

ぶつかった男性はどこか諦めた表情をしてため息をついた。幸せが逃げちゃうぞ?

 

 

「メンゴメンゴ、あ、そうだ!俺は桜井信悟!ピッチピチな小学6年生だぜ!よろしくな!」

 

 

「年下かよ……俺は御神智鵺だ、よろしくな桜井」

 

 

「桜井じゃなくて信悟でいいよ、年下だし」

 

 

「そうか、なら信悟、俺の事は智鵺でいい」

 

 

「了解、よろしくなトムヤンクン!」

 

 

「お前話聞いてた!?」

 

 

「安心しろ、半分は聞いてた!」

 

 

「絶対嘘だ!名前だって言えてないし!」

 

 

「馬鹿だな〜わざとに決まってるだろ?トコヤ」

 

 

「わざとならやめろよな、また変わってるし……」

 

 

「わかったわかった、わざとはやめるよカミキリムシ」

 

 

「最早原型すら無くなった!しかも人から虫にジョブチェンジしてる!?」

 

 

「ははは、悪い悪い年上だから少し緊張しただけだ」

 

 

「嫌な緊張の仕方だな!おい!」

 

 

「本当に悪かったよ、さっきの事といい今の事といい……そうだ!お詫びと言っては粗末かもしれないけど、これあげるよ!」

 

 

「これは?USBメモリ?」

 

 

「そうだ!しかもこれはただのUSBメモリじゃないんだ……実は……」

 

 

「実は?」

 

 

「このUSBメモリ無傷だろ?こいつ、壊れてるんだぜ……」

 

 

「ただの不良品じゃねーか!俺にゴミを押し付けてるだけだろ!」

 

 

「そ、そんな事ないですよー」

 

 

「怪しい……」

 

 

「ホントホント、ホラスマホダシテミテ」

 

 

「お前言葉がおかしくなってるぞ?」

 

 

「ソウカナ?」

 

 

「……まあいい、ほらこれが俺のスマホだ」

 

 

「よーし、じゃあ今から俺の指示に従ってください」

 

 

「何で俺が?「いいからいいから」……はいはいやればいいんだろ」

 

 

「さっすが年上!話がわかるじゃまいか……じゃないか!」

 

 

「今のは素で間違えたのかわざとなのかさっぱりわからん」

 

 

「こほんっ!……それではまずそのUSBメモリをスライドして端子を出してください」

 

 

「えーっと、こうか?」

 

 

「YES!次に右手にUSBメモリを左手にスマホを持ち、端子の方向が向かい合うように持ってください」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

「出来ましたね?それでは最終ステップです。俺の後に続いて声を出してから二つを胸の前で接続してください」

 

 

「え?それに何の意味が?」

 

 

「では始めます」

 

 

「ちょっ!おい!」

 

 

「セットアップ!デュエルスタート!」

「セットアップ!デュエルスタート!って、全然関係ないだろ!!」

 

 

「まあ、ぶっちゃけ言わなくてもいいんですけどね〜」

 

 

「お前な〜!!」

 

 

智鵺が今度こそ怒鳴ろうとした時、智鵺のスマホから耳を防ぎたくなるような超音波と目が痛くなる程の光が出ていた。

 

 

「「目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!耳がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

 

 

スマホから数秒出ていた光と超音波も止んで、スマホはいつも通りのディスプレイに戻っていた。そして、その近くでは2人の男性が地面に倒れていた……

 

 

「おい、大丈夫か智鵺……」

 

 

「ああ、おかげさまでな……今のは聞いてないぞ信悟……」

 

 

「すまん、俺も今のは初めてで知らなかった……俺の時は今みたいにならなかったのに……」

 

 

「……それで、あのUSBメモリは何なんだ?」

 

 

「あれか?あれはだな……俺の家の家宝……らしい」

 

 

「家宝なのかよ!いいのかそんなの持ってて?」

 

 

「大丈夫、隠蔽工作には自信があるのでね……市販のUSBメモリをこれと同じ色に塗ったのが家にあるからバレはしない!」

 

 

「いいのかよ!?家宝だろもっと大切にしろよ!」

 

 

「大丈夫だって。それに、両親も死んだ爺ちゃんも言ってたけどそれ壊れてるからただの飾りだって言ってたし」

 

 

「そ、そうか、それならいいけど……あれ?でも俺のスマホとお前のスマホは反応したんだけどどうなんだ?」

 

 

「ふっふっふ、それはだね……このUSBメモリは勢いつけて差し込めば反応するんだよ!あ、ちなみにこれ知ってるの俺だけだから」

 

 

「は、はあ」

 

 

「でも、特にスマホのアプリもスマホ自体も変化がないんだよね〜」

 

 

「やっぱり壊れてるからか?」

 

 

「そうそう、だからさっきの智鵺のスマホも何かのバグでなっただけだろうね!」

 

 

「……結局お前は何がしたかったんだよ?」

 

 

「智鵺の変なポーズが見たかっただけだが?」

 

 

「悪どいな!」

 

 

「それほどでも〜」

 

 

「褒めてねーよ!!」

 

 

耳鳴りも止んで目も痛くなくなったので2人は再びベンチに座り直した。

 

 

「このUSBメモリはこの公園にあとで埋めといて、さっきのは危険だから迂闊に使えない……」

 

 

「それもそうだな……あとで埋めとくよ」

 

 

「ありがとう智鵺」

 

 

「気にするな……それにしても不思議だな」

 

 

「いきなりどうした?病気か?中学生特有のあれか?」

 

 

「厨二病じゃねーからな!?そうじゃなくて、幼馴染でもないのに初対面のお前とこうして話してると、以前から友達だった気分になるんだよ」

 

 

「そうか?少なくとも俺は感じないんだが?」

 

 

「俺はそうなんだよ、こうやって気兼ねなく話せるなんて風ちゃんぐらいしか思いつかないからな〜」

 

 

「ちっ!この惚気野郎!滅びろ!バーストストリーm「言わせねーよ!!」……」

 

 

「いきなり何を言おうとしてるんだよ信悟……」

 

 

「大した事じゃない、リア充を滅ぼしたかっただけだ……」

 

 

「恐ろしいなお前……」

 

 

「よく言われる……まあ冗談は……冗談じゃないけどこの話はどっかに捨てといて、連絡先交換しようぜ!」

 

 

「冗談じゃないのかよ!?まあ触れないでおこう……ほれ、これが俺の連絡先だ」

 

 

「おう!ありがとうな!親友!」

 

 

「親友?」

 

 

「そうだ!俺たちは親友だ!」

 

 

「あ、そういうのは結構です……」

 

 

「酷いっ!?」

 

 

「冗談だよ……ちょっとだけ」

 

 

「ほとんどそう思ってるって事じゃん!?」

 

 

「ハハハハハ、シンゴハオモシロイナァ」

 

 

「今度は智鵺がおかしくなってる!?」

 

 

「……ふぅ、さっきのお返しだ」

 

 

「いや、別にお返しなんていらないんだけど……」

 

 

「俺がしたかっただけだから気にすんな!そんな事よりこれからよろしくな!親友!」

 

 

「!?ああ、よろしく!……と言っても、学年も学校も違うからあまり会う事ないけどな……」

 

 

「……言うな信悟……」

 

 

「「…………」」

 

 

「そういや信悟、ぶつかった時走ってたけど何かあったのか?」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「うおっ!?どうしたんだ急に?ついにやられたか!?頭が!」

 

 

「頭限定で言うな!そうじゃない、今日は欲しい漫画の最新刊発売日だったんだ!悪いけど俺行くわ!じゃあな!」

 

 

「お、おう。気をつけて……ってもう行ったか……これ埋めてから帰ろう……今日はフルーツロールケーキを作る予定だったんだが、また今度にしよう」

 

 

信悟が去った後、智鵺は1人で近くの木の下に行き、近くにあった子供のシャベルを借りて穴を掘ってUSBメモリを埋めてから帰った。

 

 




そういうわけで、知ってる人物を少し登場させてみました。

勇者の章も始まった訳なので今回はそれを考慮して創意工夫して書いたよ

まあ、早く本編進めろって言いたくなるよねww

だが、これも運命なんだぜ!!☆

それとオリキャラの名前はみかみともやと読みます。

次回 作者壊れる!暗黒魔法!ダークネスヒストリー!

うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁくぁwせdrftgyふじこlp@


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大切な友達......

やっとここまでこれたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!


何とかテレビアニメでは二話目が終わりだ!だけど、劇場版だとまだ一章終わったとこなんだよねー

まだまだ本編にあまり手を加えてないけど、そろそろ変えていくぜ~~ワイルドだろ~~


1時間ほど多く時間を潰してしまい慌ててイネスへ走り出してから30分もしないうちに到着できた。走った勢いを落とさずに中にある書店へそのまま走る。

 

 

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

書店に着いてからは一直線に新刊コーナーに向かいお目当ての漫画を探すと一冊だけ残っていた。特に迷う事なくそれをもってレジへ行った。

 

 

 

イネスへ走ってきたかいがあり、無事目的の漫画を購入する事が出来た俺は、左手に漫画の入ったビニール袋をもちながらご機嫌な様子でイネスの中をクルクル周りながら移動していた。

 

 

「目が回る〜回れ〜回れ〜天まで〜ま〜わ〜れ〜!でも、俺は酔わないんだぜ!!……うえっ気持ち悪……」

 

 

やはり調子に乗ってしまうと酔ってしまうのか、バスの時みたいに胃から何かが込み上げて回る事を中断した。

 

 

「お菓子のようによっちゃったぜ!……おぇぇぇぇぇぇぇぇ吐きそう……」

 

 

口元を抑えながらトイレを探すため歩いていると、落ちている果物が目に入った。

 

 

「この光景はさっきみたなぁ、俺が悪かったんだけどね!……今回は悪くないけど拾いますか」

 

 

まだ気持ち悪いが、このままトイレに行くのも気がひけるので吐き気を我慢しながら果物を拾い始めた。他にも拾っている人がいたのですぐに全部拾い終わり、落とした本人に両手で抱えた果物を手渡した。

 

 

「どうもありがとうね」

 

 

「どいたまで〜す」

 

 

「あれっ、信悟!?なんでここに!?」

 

 

「えっ?桜井くん?」

 

 

「本当だ〜信くんだ〜」

 

 

聞き慣れた声で自分の名前を呼んだ人物を確認すると、予想通り3人がいた……銀はいいとして、須美と園子がいるのはやばい状況だ……どうすんのよ俺!続く!……といいな……

 

 

「いえ、私は桜井信悟ではありません。」

 

 

「いやどっからどう見ても信悟だろ」

 

 

「ワターシハー、ザーック!ウミノゾクノオウニナルオトコデース!」

 

 

「おお〜!何か外人っぽ〜い」

 

 

「ハハハハハ。ソレデハミナサーン、アデュー!「待ちなさい」……ヘイガール、ミーニゴヨウデスカー?」

 

 

「桜井くん、今朝大事な用があると聞いていたんだけどどう言うことかしら?」

 

 

「ナニヲイッテルカイミガワカリマ「さ!く!ら!い!く!ん!」すんませんしたーーーー!!!」

 

 

「おい、今土下座した時の動きが見えなかったぞ?」

 

 

「信くんすご〜い!」

 

 

園子と銀からは褒められたが、肝心の難門である須美は一切視線を逸らさないため逃げる事が出来ない……俺の人生ここで終わるのかな?……

 

 

「はぁ……とにかく場所を移しましょうか、ここでは通行人の邪魔になるわ」

 

 

よしっ!これで俺はここから動かなければ逃げるチャンスがある!……

 

 

「桜井くん何をしてるの?早く行くわよ」

 

 

「はい!分かりました!」

 

 

チャンスとは訪れるものではない、自分でつかむものだという言葉を誰かが言っていたが今身を持って知る事が出来たよ……俺にはチャンスがなかった……

 

 

俺は3人の後ろからついて歩くと、すぐ近くの4人座れるテーブルの椅子に3人が座ったので、空いている銀の隣の席に着いた。さあ、ここから先は俺のターンだ!……尋問される側だけどな!!しかし、3人ともご飯がまだだったのでそれぞれ食べたいものを買いに行った……俺を残して……

 

1人残されたので、スマホをいじる。3人が席を外してから数分ほどで3人共トレーに料理を乗せて戻ってきた。園子に何か食べないのか聞かれたが、まだ気持ち悪かったので遠慮した。

 

 

「さて、それで桜井くんは何故ここにいるの?」

 

 

「えーと、それはですね〜話せば長くなる事もあったりなかったり……とは嘘ですここには今日発売の漫画を買いにきました!」

 

 

須美があまりにも美しく……恐ろしく睨んでいたので正直に話してしまったが仕方ない。だって、命の危険を感じたのだからこれは当然の結果だ。今須美の後ろから般若が見えた気がする……

 

 

「それを最初から言えばいいのに……」

 

 

「そうは言っても、須美のやる気がちょっとひくレベルだったから……ああでも言わないと強制連行されると思って……」

 

 

「そんな事ないわよ、ねえ、乃木さん?」

 

 

「そうだね〜今日のわっしーすごく気合い入ってたから、強制連行したかもね〜」

 

 

「嘘!?私そんなに気合い入ってたかしら?」

 

 

「うん!だって、自前で道具を持ってきてるぐらいだもんね〜」

 

 

「須美……お前……」

 

 

「違うのよ!?これはもしもの時のために持ってきただけで!?……ごめんなさい」

 

 

「あははは……まあ、俺も悪かったよごめん。これからはちゃんと言うよ」

 

 

「桜井くん……私も少し言いすぎたわ、ごめんなさい」

 

 

「じゃあ今回の事はこれでおしまいにしよう!な!」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

「よしっ!それじゃ、次は俺から質問、今日2人は何やってたんだ?」

 

 

「今日はね〜、ミノさんの事を家から尾行していたんだよ〜」

 

 

「えっ!?今日一日!?」

 

 

「それは興味深いな〜どんな事してたんだ?」

 

 

「それはね〜、弟の面倒見たり道行く困ってる人を助けたりしてワイルドだったよ〜」

 

 

「ええ!?2人とも家の前から見てたっての?うぇ、何か恥ずかしいなそれ……」

 

 

「恥ずかしくなんかないよ〜すごいよ〜」

 

 

「ああ、俺には出来ないことだから誇っていいぞ」

 

 

「園子、信悟……ありがとう」

 

 

「遅れる理由はこれだったのね、言ってくれればいいのに」

 

 

「言ってくれればいいのに〜」

 

 

「いや、それは何か他の人のせいにしてるみたいで……何があろうと遅れたのは自分の責任な訳だしさ」

 

 

「昔からそういう体質なの〜?」

 

 

「ついてないことが多いんだ〜、ビンゴとか当たっとことないもん、とほほ」

 

 

「こんな俺に出会ってしまうぐらいだしなぁ」

 

 

「そんな事は!……おっ!?」

 

 

「「!」」

 

 

「これは敵がきたってことか?」

 

 

食事の最中、周りの人や物が動きを止めて音も止みそれから鈴の音がチリンチリンとたくさん聞こえ敵の襲来を知らせる。

 

 

「ほらな、日曜台無し」

 

 

今回のこれは銀の体質とは関係ない気がするのだが?

4人ともスマホを取り出しアプリを開き、いつでも変身出来るようにする。そして、4人が用意し終わった頃に樹海化が始まり4人はスマホに写し出された花をタップした。4人は毎度の様に服装が変わり勇者専用の服になると、既に樹海化したあとの一つの木を足場にして立っていた……

 

 

いつ見てもこの光景には眼福の感想以外見当たらない、ヒャッホー!!勇者になって良かった!!!

 

 

「今日もありがとうございましたーーーー!!!!」

 

 

「いつもながら何故お礼を言っているんだ?」

 

 

「気にするな!これが俺のアイデンティティだ!」

 

 

「お礼する事がアイデンティティなのかよ!?」

 

 

「ダメよ三ノ輪さん、気にしたら負けよ……」

 

 

「あれ、須美さん何か俺を見る目がみんなと違うんだけど?」

 

 

「気のせいよ……」

 

 

「なら何故俺から視線を逸らすんですかね?」

 

 

「……それよりも今は敵に集中しましょう」

 

 

「誤魔化した!今絶対誤魔化した!!」

 

 

「まあまあ、信くんリラックスだよリラックス〜」

 

 

「園子……そうだな、今は考えないようにしよう」

 

 

「来たわ」

 

 

須美がそう言って見ているとこを確認すると、これまた個性豊かなバーテックスがいた。

 

 

「ビジュアル系なルックスしてるなあ」

 

 

「おいおい銀さん、横文字は須美が苦手だから勘弁してやってくれよな?」

 

 

「そんな事は!……あるけど……」

 

 

「ヒュー!イングリッシュがあれば俺も須美など恐るるに足り……ないわけでもないかもしれない」

 

 

「弱気だな!?」

 

 

「いや、何か今の須美は妙に気合が入っててちょっと怖い……」

 

 

「まずは私が……これで様子を見る!」

 

 

「確かにそうかもな……私ちょっと行ってくる!」

 

 

「おう!骨は拾ってやるから全力で頑張れ!」

 

 

「ただ声をかけるだけだ!……まったく」

 

 

そうは言うが、今の須美は敵しか意識していないので本当にどうなるか心配だ……

 

 

「園子、心配だから俺たちも行こうか」

 

 

「うん!さんせ〜い」

 

 

銀と一緒に園子と俺も須美の近くへ向かおうとした。だが、ここで敵からの妨害が入り地面が揺れて上手くバランスがとれない。

 

 

「「「うわぁ!?」」なんだなんだなんだ?」

 

 

「この揺れは!?マグニチュード……どのくらいかな?」

 

 

「そんな事気にしてる場合じゃないだろ!」

 

 

「あの敵のせい?」

 

 

「うぅ……」

 

 

「須美?嘘だろ?須美が……須美が立った!!」

 

 

「ふざけてる場合じゃないだろ!?」

 

 

「僕はふざけるのをやめましぇーん!!」

 

 

「ああもう!こいつやだ!」

 

 

「そんな事より〜、わっしーのとこへ行こうよ〜」

 

 

「そうだな!こんな馬鹿は放っておこう!」

 

 

「それは俺のことか!?……否定はしない!だが、自重もしない!」

 

 

「自重はしろよ!?とにかく一旦集まろう」

 

 

「「ラジャー!!」」

 

 

「お前らな……」

 

 

銀はため息をついてから気を取り直して、園子と信悟と一緒に須美の近くまで向かった。

 

 

「落ち着けって須美」

 

 

今にも矢を放とうとしている須美の肩に手を乗せて銀が呼びかけると、ようやく須美は冷静になれたようだ。

 

 

「胸は大きいのに心の器は小さい、これやいかに……」

 

 

「何か言った信くん?」

 

 

「……早く須美のとこへ行こうと言ったんだよ〜はははは」

 

 

「うん、そうだね〜」

 

 

あ、危なかったもしも聞かれてたら今頃俺はやられていた……一瞬だが、園子の目からハイライトが消えていた気がした……

俺はこの時初めて自重しようと思うのであった……

 

 

「三ノ輪さん……」

 

 

「私達と一緒に倒そう!」

 

 

「乃木さん……」

 

 

「まったく、もう少しで抱きついてでも止めるとこだったぞ……」

 

 

「抱きつくっ!?」

 

 

「信悟?」

「信くん?」

 

 

「な、なーんてな!……んんっ!それで、少しは落ち着いたか?」

 

 

「桜井くん……」

 

 

「合宿の成果をだす、そうだろ?」

 

 

「みんな……」

 

 

須美の顔つきも変わり、ようやく4人は一致団結出来たと思う、さすが俺!見事チームの輪を繋げられた……そんな事したのは銀と園子ですね、分かっていましたよー、どうせ俺はチームの輪を乱す存在ですよー……どうやら俺には自重する事が不可能なようだ……許せ……

 

 

その間にも敵は待ってくれず次のアクションを起こしていた。タコかイカのような足の1本をこちらに向けている。それは明らかに攻撃の合図だと気づき武器を構えると、俺よりも早く園子が皆の前に飛び出して武器を盾に変体させて構えていた。

 

 

「はっ!」

 

 

「危なっ!?ちょっと園子さん!?後ろの持つ手の部分が俺の鼻かすったんですけど!?」

 

 

「うんとこしょ!」

 

 

「ひぃっ!今足に当たりそうだったんですけど!?」

 

 

「よーし!敵に近づくよ!」

 

 

「あれ?無視?流石に酷くない?」

 

 

「了解」

「了解」

 

 

「……誰も俺の心配はしてくれないんですね……はぁ、了解しましたよー」

 

 

誰も見ていないのか、見て見ぬふりをしているか分からないので考えるのをやめて3人の後を追った。

 

 

 

園子達が敵に近づくといきなり敵は空高くにジャンプして、空中で待機した。

 

 

「あっ!」

「あっ!」

 

 

前衛の園子と銀は敵が空中に上がってしまったのに驚いていると、今度は上空から足の一本を使って攻撃してきた。

 

 

「園子!銀!危ないぞ!」

 

 

2人は俺の声に気づいて咄嗟に後方へ跳んで避けた。

 

 

「大丈夫か2人とも?」

 

 

「うん大丈夫だよ、さっきはありがとう」

 

 

「どういたしまして」

 

 

園子に感謝されるほどでもないが今回は素直に受け取っておこう。

俺と園子がやりとりしている最中、須美は上空の敵に向かって矢を放つが、飛距離が足りず矢は当たる事なく落ちていた。

 

 

「制空権をとられた!?」

 

 

「降りてこい!こらぁ!」

 

 

「いやいや、それで降りてきたら苦労しないだろ……って、降りてないか!?」

 

 

「何か、仕掛けてくる……」

 

 

「えっ?マジで?やばくね?」

 

 

園子の言った通り、敵は4本足を合わせると回転させながら攻撃してきた。その先にいたのは……

 

 

「銀!逃げろ!」

 

 

だが間に合わず、銀がやられると思い全力で近づいて銀を突き飛ばそうとしたのだが、銀は武器を背中に構えた。

 

 

「はい?」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「お前の根性半端ないな!?」

 

 

「ミノさーん!」

 

 

「い、1分はもつ。上の敵をやれぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「まじかぁ、1分もつのかぁ、腰大丈夫なのか?なぁ、須美……須美?」

 

 

銀の腰が心配になり須美に聞いてみても返事がないので、須美の顔を見ると目を瞑っていた……あれだな、銀の腰の痛みを想像して目を瞑る程の痛みに目を瞑ってしまったんだな……そういうことにしておこう……

 

 

「私達で、敵を叩くよぉぉぉぉ!!」

 

 

「うわぁ、盾だけじゃなくてこんな事も出来るとは便利だな……頑張れば如意棒もどきが出来るんじゃね?」

 

 

「わっしー!上!」

 

 

「え?りょ、了解!」

 

 

「信くんは!「須美が叩いて落ちてきた敵を更に叩くだろ?」!?」

 

 

「そんなに驚く事じゃないだろ?ほかに攻撃手段がないんだから自然とそうなるだろ?」

 

 

「う、うん!それじゃ、よろしくね!」

 

 

「了解っと、それじゃ、園子は俺の後に続いてくれよ?」

 

 

「了解!」

 

 

「あはは、いつもとのギャップが激しいな園子は……」

 

 

「ぐっ!!」

 

 

「ミノさん!?」

 

 

「銀!もう少しだけ耐えてくれ!」

 

 

これからの行動を確認した後、上空で矢を放ちながら須美が叫んでいた。

 

 

「とどけぇーーー!!!」

 

 

須美の放った矢は敵に当たり、何かしら力を込められた矢から物凄い衝撃を放ち敵の体制を崩した。その時に丁度足の根元に当たっていたので敵の体から分断されていた。体制を崩した敵はそのまま徐々に落下していき、下にいた銀は攻撃を逸らして逃れていた。

 

 

「先手必勝!千載一遇のチャンスを逃しはしない!!」

 

 

俺はそう言って、両手の武器を重ねて剣先を敵に向け足をバネのように使い敵の懐に跳び込んだ。剣は風の抵抗すら無視して切り裂き、速度を上げ、途中から剣と俺の両方から赤黒い光を発し始め、敵に当たった瞬間に剣先から光が放たれて3分の1くらいを球型で削りとった。

 

 

「何これこわっ!」

 

 

まさにブラックホールだ、こんなの自分にまで届いたらそのまま俺も消滅してしまう、そう考えると背中から冷や汗が溢れ出てきた。その後も勢いは衰えないまま敵の残っている部分を貫通すると、勢いよく地面に激突して止まった。

だが、まだ敵は存在しているので第2陣の攻撃が始まる。

 

 

「ここから、出て行けぇ!!」

 

 

園子は武器を槍に変えると、もっとも威力のある突きの攻撃の構えをとる。

 

 

「突撃ーーー!!!」

 

 

まるでロケットのように敵に一直線に跳んで行き、その威力は余程のものなのか、止まる事もなく敵の体を貫通した。だが、その後の着地まで考えていないのか、このままでは勢いが止まらないまま地面に激突してしまう。

 

 

「ご利用は計画的にお願いします!本当に!」

 

 

園子が敵に接触するよりも少し早く、地面と顔面キッスをした俺は体を起こしていた。ここの場所から園子が落ちてくる距離はそこまで離れていないので、すぐに落下地点に先回りする。ギリギリ間に合い、勢いよく落ちてくる園子を少し跳んだとこで正面から受け止める。構えたままの状態だったので槍に少しだけかすったが服が少し破れる程度で済んだ。しかし、勢いは止まらずそのまま後方に飛ばされる。それでも、諦めずに地面に足が着いたらジャンプして少しずつ勢いを無くしていくことにより、何度目かのジャンプの後に地面に両足をつけて靴が擦れながらも踏ん張りようやく止まった。

 

 

「やっと止まった……おい、園子もう大丈夫だぞ?」

 

 

「え?あれ?信くん?」

 

 

「ああ、そうだ……それよりそろそろ離れないか?流石にこの格好はまずいだろ……」

 

 

今の状況は、正面から抱き合っている格好なので正直恥ずかしい。園子に離れてもらうように言ってみた。園子はこの状況をやっと理解したのか慌てて俺から離れる。

 

 

「あ、えっと、その……」

 

 

「悪いがこの話は後だ。あれを見ろ」

 

 

「え?そうだ!敵!」

 

 

見ると先程よりも落ちていて今なら銀が跳べば届く距離に敵がいた。

 

 

「ミノさん!」

 

 

「砕けーーー!!!」

 

 

「3倍にして返してやる!釣りはとっとけーーー!!」

 

 

「銀!俺の事忘れてないか!?」

 

 

敵に向かって跳び連撃を与えている銀に俺の言葉は届く事はなかった……やがて、敵の一部だけになり銀も無理したのかそのまま落下する。敵が一部だけになってから少しすると、鎮火の儀が始まった。

 

 

「へへ、始まった」

 

 

「鎮火の儀……」

 

 

「終わった……」

 

 

「ああ。やっと終わった……」

 

 

 

 

 

鎮火の儀が終わった後、樹海化が解けて3人は現実世界へ戻ってきた。そして、今怪我を負った4人は草原で寝転んでいた。

 

 

「あー、いてててて」

 

 

「ミノさん、大丈夫?」

 

 

「疲れたよー、腰にくる戦いだった」

 

 

「ああして攻撃を受け止めてくれたから私達が攻め込めたんだよ〜、ありがとうね〜ミノさん」

 

 

「そっちこそ凄かったじゃん」

 

 

「だって、ミノさんが1分もつって言ったんだから1分はもつじゃない?それくらいあれば何とかなると思って、長引かせると危険だもんね」

 

 

「危険といえば園子も銀に負けないくらいだぞ?」

 

 

「私が?」

 

 

「突っ込んだ後のことを考えてなかっただろ?あのままだったら、下手すりゃ大怪我しててもおかしくないぞ」

 

 

「うぅ......それは反省してるよ~」

 

 

「でも怪我がなくて良かったよ、次からは気をつけろよ?」

 

 

俺は身を起こして園子に近づいて、申し訳なさそうにしている園子の頭を撫でながら、次回からは気をつけるように言った。

 

 

「次からは気をつけるよ~、えへへ~」

 

 

「本当に反省してるのか?まあ、皆無事に帰ってこれたから良いか......銀?どうしたんだ?怖い顔してるぞ」

 

 

「何でもない!!」

 

 

「?お腹でも空いたんだろうか......」

 

 

確かに食べてる途中に敵がきたのでお腹が空いていてもおかしくはない......撫でていた手を離して腕を組んで考えてみる、その考えが一番可能性が高い......

手を離す時に園子が残念そうな顔をしていたが気のせいだろう、現に今はいつものラブリー......ゲフンゲフン、笑顔になっている。

 

 

「あ~あ、お腹空いたー」

 

 

「うどん食べてる途中だったもんね~」

 

 

いつの間にか機嫌が直っている銀と園子は起き上がり、そんなことを言い始めた。やはりお腹が空いていたという考えは間違えではなかった!!

 

 

「俺もいっぱい動いたからお腹空いたなぁ「うっうっ......」?」

 

 

「うっうっ......」

 

 

「「「えぇ!?」」」

 

 

「どうした須美!?どっか痛いのか?」

 

 

「胸か!?そのはちきれんばかりの胸が痛いのか!?」

 

 

「信悟~~」

「信く~ん」

 

 

「違う違う!どこかでぶつけて痛いのかってことだ!信じてくれ!」

 

 

「違うの......私......ごめんなさい......次からは、初めから息を合わせる...うっ...頑張る......」

 

 

「ああ!頑張ろうな」

 

 

「そうだな!」

 

 

「はい、わっしー」

 

 

「ありがとう......うっ......そのっち......」

 

 

園子からハンカチをもらい涙を拭き、ハンカチから鼻から上だけ顔を出して、恥ずかしそうに須美が初めて園子の事をあだ名で呼ぶと、園子は嬉しくなり、俺と銀は驚いた。ついにきたか......デ・レ・期!!キターーーーーー!!!!

 

 

「もう一回言って、わっしー」

 

 

「そ、そのっち」

 

 

「おお~お!」

 

 

「私は!私は!」

 

 

「あ、ずるいぞ!俺も俺も!」

 

 

「ぎん......」

 

 

「えっ?」

 

 

「銀!」

 

 

「嬉しいな......なんかようやく須美とダチになれた気がする」

 

 

「銀......」

 

 

 

「あの~、お取込み中すいませんが、俺の事を忘れないでほしいんですけど~」

 

 

「あ、桜井くん......」

 

 

「完全に忘れられてた!?こんな時だけステルス性能発揮するとか悲しすぎる!」

 

 

「いえ、そういうわけではなくて......」

 

 

「はいはい、どうせ男の俺は蚊帳の外ですよ~」

 

 

「いえ、その......えっと、信悟......くん......」

 

 

「え?今なんて?」

 

 

「信悟くん......」

 

 

「..................」

 

 

「あ、あれ?信悟くん?」

 

 

「信くん、どうしたの~?」

 

 

「おい信悟どうしたんだよ?何か言え......って泣いてる!?」

 

 

「俺............うっ、須美に初めて名前呼ばれて嬉しくて......うっ......」

 

 

「泣くほど嬉しかったのかよ!?」

 

 

「だって、俺は今まで迷惑しかかけてなくて......皆から嫌われてるんじゃないかって思ってたから......」

 

 

「信悟くん......そんな事ないわよ、私達......友達......でしょ?」

 

 

「そうだよ~私達は信くんの友達だよ~」

 

 

「そうだぜ!私達は信悟の友達だ!」

 

 

「みんな......ありがとう、俺、これからも迷惑かけるけどよろしくな!」

 

 

「そこは自重しろ」

「そこは自重しなさい」

「そこは自重してね~」

 

 

「お前ら容赦ないな!?」

 

 

悲痛な叫びをしている俺を見て3人は笑っていた。こっちは本気で悲しんでいるのに......

 

 

 

この日、ようやく4人は心の底から友達になれた気がした......

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、4人の勇者の物語......

 

 

 

 

神に選ばれた少女達と少年のおとぎ話......

 

 

 

 

いつだって、神に見初められるのは無垢なる少女である......少年が選ばれたのは、蹴った小石がたまたま当たったようなものだが......

 

 

 

 

そして多くの場合、その結末は......果たして少年が選ばれたことで何かが変わるのか......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、信悟が今日買った漫画はイネスに置いてきたのか?」

 

 

「......ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!そうだったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!俺のツンポくんライトがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「今頃捨てられてたりして......」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!ちょっと今からイネス行ってくる!」

 

「おい!信悟!お前も怪我してるんだから後でも......」

 

「悪いな銀......ツンポくんが俺を待ってるんだ!じゃあな!!」

 

「あ、おい!......行っちゃった......怪我は大丈夫なのかよ......」

 

「大丈夫じゃないの?走れるみたいだし......」

 

「もしかして、痛みを忘れてるかもね~」

 

「......あいつならありそうだな......」

 

「否定はできないわね......」

 

「............待ってろよーーーーーー!!!俺のツンポーーーーーーー!!!」

 

「......私たちは病院に行きましょうか」

 

「そうだな......」

 

「さんせ~い」

 

 

この日の俺はよく走ったと自分をほめたい、イネスまで休むことなく走って樹海化前までいたテーブルに行くと、無事に今日買った漫画が置いてあった。それを持ってからやっと安堵すると、全身から痛みが襲ってきて俺はその場で倒れ心配した誰かが救急車を呼び、駆け付けた救急隊員に担架で救急車に乗せられて病院に運ばれた......倒れた時に手から離れた漫画を残して......

 

 

 

「ツンポォォォォォォォォォォォォォォオォォォォ!!!!!!」

 

 

「患者の容態が良くない状態だ!着いたらすぐに手術室に運ぶぞ!」

 

何故か誤解され、病院で手術をすることになった......違うんだ......俺がイネスに来た理由はこの為じゃないんだ......

 

 

こうして、俺の今日という濃い1日は病院に運び込まれて幕を閉じた......手術中もツンポと叫んでいたら麻酔を打たれて、起きたのが次の日の朝だったのは何かの間違いだと信じたい......

 




おいおい、勇者の章が気が付けば始まってしまったではないか!

早くわすゆ編を書き終えなければ!今度は放送中までに勇者の章も書きたいんじゃ~~~~~~~~~~~~~


相変わらず勇者部の顔芸はいつ見ても面白くて良かった!

次回 恐怖の科学者現る!?

果たしてその正体は?


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休日?

あとちょっとなのに、一気にスピードが落ちてきてる気がする......


ゴールまであと少しだから、頑張れ自分......


もう誤字脱字なんて気にしない......


日常

 

どこかの建物で少女たちの声が聞こえる。

 

 

「おらぁ!......そぉい!」

 

 

「えい!......やっ!」

 

 

少女の掛け声とともに風を切るような音が聞こえる中、眼鏡をかけた女性は正座をしながら彼女たちを見ていた。その場所は周りを湖で囲まれ木々が生い茂り、自然豊かな場所で思わず寝てしまいたくなるが、少女たちはそれとは逆に気合が入っている。

 

 

「ハァ......フッ!やっ!はぁぁぁっ!!」

 

 

「うぅぅぅぅぅ!フッ!」

 

 

1人は槍を上段から振り下ろし、身を捻ってから切り上げなどの立ち回りをしていて、もう1人は両手に斧を持ちながら回転し、回転した勢いに乗せて両方の斧を振り切っている。そして、もう一人は湖に浮かぶ的に向かって走りながら矢を放ち、見事ど真ん中を射抜きながらも止まらずに走り、次の的に狙いを定めている。

 

 

「わぁぉぉぉ」

 

 

矢を放つ際に生じた風を浴びて思わず斧を持っている少女は動きを止めた。放たれた矢は的ではなく湖に浮かばせるための土台に当たり、衝撃を与えるとそこから水柱が立ち的が上空に放り出される。そして、上空にある的を狙ってもう一度矢を放つと今度は的のど真ん中を射抜いた。

 

眼鏡をかけた女性のそばにある砂時計が全て流れ落ちると女性は声を飛ばした。

 

 

「そこまで!」

 

 

少女たちは一息ついてクールダウンをしてから、女性のもとへ集まった。先程の合図は訓練終了の知らせであったため、少女たちは肩の力を抜いて年相応の表情になっていた。

 

 

「勇者の力は、神樹様に選ばれた無垢な少女でなければ使えない。あなたたちに頑張ってもらうしかないわ......そこで、つぎの任務は......」

 

 

「ごくっ」

 

 

「しばらくの間しっかり休むこと」

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

「安定した精神状態でなければ変身はできない、張り詰めっぱなしでは最後までもたないからね」

 

 

「いやった!休むのだったら任せてください!」

 

 

「私も私も~!」

 

 

「「いえ~い!」」

 

 

「何する何する?」

 

 

「イネス?」

 

 

1人は休みをもらったことに安堵し、他の2人は手を合わせ喜び合いながら、休みに何をするか決めていた。

 

 

「そうだ!信悟にも伝えておかないと!」

 

 

「それなら三ノ輪さんお願いできるかしら?」

 

 

「はい!任せてください!」

 

 

「信くんがここにいたら絶対叫びまわってたよね~」

 

 

「ええ、信悟くんならそうしていたわね」

 

 

「まったくだ、あ~あ、信悟も今日来れば良かったのに」

 

 

「仕方ないわよ銀、信悟くんは風邪をひいてるんだから」

 

 

「そうだね~直ぐに良くなるって言ってたけど心配だよ~」

 

 

「冗談だよ、まあ信悟の事だから大丈夫でしょ!明日には子供は風の子元気の子!とかいいながら外を走り回ってるって!」

 

 

「ふふっ、そうね、信悟くんならそうするわね」

 

 

「信くんはいつも元気だもんね~」

 

 

「元気なのは良いことなのだけど、学校ではもう少しおとなしくして欲しいわ」

 

 

「「「先生......」」」

 

 

先生から本音を聞かされて同情する3人、それ以外何もしてやれないので3人は、ため息をついている先生をそっとしておいた。

 

 

「あ?そういえば先生一つ質問してもよろしいですか?」

 

 

「ええ、良いわよ。それで、鷲尾さんは何を聞きたいのかしら?」

 

 

「先程、勇者の力は無垢な少女でなければ使えないと仰っていましたけど、信悟くんは男なのに何故勇者の力を使えるのでしょうか?」

 

 

「あ!それ私も気になってた!」

 

 

「私もだよ~!」

 

 

「ああ、その事ね。確かに鷲尾さんたちが疑問に思うのは当然よね.....そうね、みんなは神世紀の初めの頃の都市伝説は聞いたことあるかしら?」

 

 

「「「都市伝説?」」」

 

 

「皆は知らないようね」

 

 

「それってどんなのなんですか?」

 

 

「これは文献にもない話なんだけど、神世紀になった頃にも勇者がいたのだけれど、その中には男性の勇者がいたって言われてるのよ」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

「それは分からない、私も親から聞いた話だから真偽の確かめようがないわ.....でも、もしこの話が本当だとすると、桜井くんはその男性の子孫の可能性があるわ」

 

 

「なるほど~」

 

 

「んん?どういうことだ?それと信悟が勇者になったことに何の関係があるんだ?」

 

 

「それはねミノさん、信くんが勇者になったのは勇者になれた男性の血を引いているからだってことなんだよ~」

 

 

「ええ、乃木さんの言う通りよ」

 

 

「えっと、つまり、信悟は勇者になった男性の血が流れているから勇者の力が使えて、だから勇者に選ばれたってことか?」

 

 

「そういうことよ三ノ輪さん、でも、これは可能性があるというだけで本当の事はわからないわ.....こればかりは神樹様に聞くしかないわね」

 

 

「まあいいじゃない銀、信悟くんが居てくれたから、誰も欠けず私たちは今日もこうして日常を過ごせているんだから」

 

 

「いやそうなんだけどさ.....なんか須美、適当に答えてないか?」

 

 

「なんだか信くんみたいだよ~」

 

 

「そうかしら?」

 

 

「そうだよ~信くんに影響されてるよ~」

 

 

「信悟の事いつも観察してたんじゃないか~?」

 

 

「へっ!?そ、そんな事あるわけないじゃない!」

 

 

「いや、冗談で言っただけなんだが......」

 

 

「冗談?そう、冗談だったのね......良かった......」

 

 

「須美ー、最後何か言ったか?よく聞き取れなかったんだけど」

 

 

「な、何でもないわよ!それより2人は休みにどうするか決めたの?」

 

 

「それなんだけど、全然決まらないんだよね」

 

 

「別に今ここで考えなくてもいいんじゃないかしら?」

 

 

「んー、それもそっか!須美の言う通りだな!」

 

 

「じゃあ、予定が決まったらみんなに教えるのはどうかな~?」

 

 

「流石園子!それいいね!」

 

 

「そうね。私もそのっちの意見に賛成よ」

 

 

「じゃあ、決まったら連絡するって事で!あぁ、何しようかなー?」

 

 

「ミノさんまた考えてる~」

 

 

「まったく銀は......」

 

 

その後、先生に今日の訓練のお礼をしてから解散になった。

 

 

 

 

 

一方、その頃の信悟は......

 

 

「はっくしゅん!......ずびび、バカは風邪ひかないんじゃなかったのかよ......いや待てよ?風邪をひいた俺はバカじゃないってことじゃないか?......いよっしゃーーーーーー!!!「静かに寝てなさい!!」ごめんなさーーーい!!!」

 

 

昨日からこじらせた風邪を治すために母親に看病され、自室のベットに寝ていた。

 

 

「あれ?銀からメッセージがきてる?『明日からしばらくの間は休みになったぞー』......明日には絶対治してやる!待ってろよ!俺のグータライフーーーーーーー!!!!」

 

 

「いい加減にしなさい!!そろそろ怒るわよ?」

 

 

「あ、ナンダカキュウニネムクナッテキタ、オヤスミナサイ」

 

 

俺の第六感が母親から危険を感じ取り、すぐさま布団を被って寝た......最後に見た母親の顔が印象深く残っていて、夢の中まで出てきたのには驚いて、思わずこれが人間のやることか!?と叫んで飛び起きたのは内緒だ......

 

 

 

 

 

次の日、よく寝て安静にしていた事が良かったのか栄養をしっかりとっていたのが良かったのか朝目が覚めた時には風邪が完治していた。閉めていたカーテンを開けると、外から太陽の光が差し込み、その光を浴びてから今度は窓を開けて外の空気を吸う。朝早い事もあり、少しだけ清々しい気分になった俺は今日はいいことがあるといいなぁと呑気なことを考えてから、パジャマのままで自室から出て一階のリビングに向かう。

 

 

「おはよう2人とも!今日もビューティフルでワンダフルな一日の始まりだ!!」

 

 

「どうしましょうあなた、昨日よりも悪化してるわ」

 

 

「素人の俺達にはどうにもできない、今すぐ病院に連れて行こう」

 

 

「ちょっと待てい!俺は正常で風邪も治ってるよ!」

 

 

「正常ですってあなた」

 

 

「正常でこれか......やはり病院に連れて行こう」

 

 

「もうやめて!これ以上は本気で立ち直れなくなるから!」

 

 

「冗談よ」

 

 

「冗談だ」

 

 

「なーんだ、冗談か良かった......ちなみにどれくらい?」

 

 

「「米粒一つくらい」」

 

 

「最早冗談じゃない!?もうなんなんだよ!俺に恨みでもあるのかよ!?」

 

 

「それは......ねぇ?」

 

 

「ああ、ここ最近夜の「言わせねーよ!?」......」

 

 

「何言おうとしてんの!?しかも俺小学6年だぞ!?」

 

 

「それがどうした?年齢以前にお前は男だろ?なら問題ないだろ?」

 

 

「大ありだよ!?男以前に年齢が問題だよ!?」

 

 

「あらあら、元気になったのは本当みたいね」

 

 

「そうだな。これなら安心だ」

 

 

「嫌な確認の仕方だな!?......ぐぅぅぅ......お腹空いた」

 

 

「うふふ、朝ごはん出来てるからみんなで食べましょうか」

 

 

「そうだな、信悟もお腹が空いているようだからな」

 

 

「はぁ......もうお腹空いてるから早く食べよう?」

 

 

「ええ、そうしましょう」

 

 

「よし、それじゃ話はあとにして食べるか」

 

 

「話?......まあ、いいや」

 

 

朝から無駄に大声を出してお腹が空いた。朝食はすでに用意できてるようなので両親と一緒にダイニングへ行き、自分のいつも座る席に座ってからみんなで手をそろえていただきますと言って食べ始めた。

 

食べ始めてから時間が経ち、ミルク!を飲んでる俺に突然父親が話始めた。

 

 

「そういえば信悟、今日の予定は何か考えてるのか?」

 

 

「いや、今日は特にやることと言えば、段ボールを乾燥させて少し水分をとばして強度をあげることくらいだなぁ」

 

 

「つまり暇なんだな」

 

 

「うぉい!なぜその結論になるんだ!暇だけど!」

 

 

「なら別にいいだろ......」

 

 

「いや、ここで認めたら負けだと思って......」

 

 

「そ、そうか......それは置いといて、今日は出かける用事があるんだが予定がないなら信悟も来てくれ」

 

 

「俺も?ハッキリ言って邪魔にしかならないと思うよ?」

 

 

「そんな事言われなくてもわかってる」

 

 

「そこは否定してほしかった!?」

 

 

「......とにかく!今日は一緒に行くぞ!異論は認めん!」

 

 

「ねぇ知ってる?それ、強制連行って言うんだよ?......俺じゃなくて母さんじゃダメなのか?」

 

 

「私は用事があるから行けないのよ......代わってくれるなら行ってもいいんだけど」

 

 

「じゃあ、俺が代わるよ!それでどこに行けばいいの?」

 

 

「あら、ありがとう!実は今日イネスで特売セールがあってね......」

 

 

「よし父さん!今すぐ出発しよう!そうしよう!」

 

 

「そうだな!ごちそうさま!それじゃ母さん俺達は行ってくるけど母さんも気をつけてね!信悟、早く着替えて来るんだぞ?俺は車で待ってるからな!」

 

 

「ごちそうさまでした!それじゃ母さん!俺も着替えたらすぐ行かないとだからあとよろしく!」

 

 

「あ、ちょっと......2人ともひどい......」

 

 

母親が落ち込んでいたが、今回は見て見ぬふりをした。振り返ってはダメだ!イネスのバーゲンはバトルロワイヤルのように殺伐としていて、下手すれば生きて帰ってこれない。この前は1人が重傷、7人が軽いけがをしたと聞いた。そこに行けば確実に、小学6年の俺は犠牲者の1人になってしまう。自室に戻りすぐに着替えてスマホを持ってから玄関まで全力疾走した。

 

 

 

家を出る前にダイニングを覗いてみたが、まだ母親が一人寂しく食事をとっていたのを少しばかり心が痛んだが仕方がないことだと割り切って家を出て、車に乗り込み出発した。許せ母さん......俺もまだ死にたくないんだ......でも何故いつも母親は無傷なんだ?

 

 

 

 

 

 

車で出発してからスマホを取り出してみると勇者4人のSNSにメッセージがきていた。

 

 

「園子からだな、『レッツエンジョイ!カガワライフ!』......これは遊びのお誘い......だよな?」

 

 

その一文以外には何も書かれていなかったが、付き合いもそこそこの俺は意図を察することが出来た。絶対に園子を知らない人が見たらどう返信すればいいかわからないだろう......

 

 

「うーん、今日はこれから用事あるからな~......『悪いな、ちょっとへましちまった......俺はもうダメかもしれない......』よしっ!これでいいだろ!」

 

 

園子のノリに合わせた返事を送ると、すぐに返事がきた。

 

 

『お前のことは』 『一生』 『忘れないぜ......』

 

 

「いや助けろよ!?見捨てるとか酷すぎだな!?しかも連携取れすぎだろ!?」

 

 

園子、須美、銀の順で返事がきたが、打ち合わせでもしていたかのようなタイミングで書かれた内容は3つ合わせると一文になっていた。

 

 

「『ここで合同訓練の成果を発揮させるのかよ!?』」

 

 

あまりの連携に思ったことを書いてしまった......

 

 

「お?今度は銀か?『何か予定でもあった?』......銀は妙なところで気が回るよなぁ......『今さっき予定が出来たんだ、ごめん』っと」

 

 

銀の質問に正直に答えて書くと、今度は『そっかぁ、残念だなぁ。』と書かれていた。他の2人も『そうなんだ~(´・ω・`)』 『そうですか、予定があるなら仕方ないですね』と書き込みがあった。

 

 

「本当に残念だよ......『今度暇なときまた誘ってくれ(`・ω・´)ゞ』これでいいか」

 

 

3人には悪いが今回は予定のほうが先だったので、次回には誘ってもらいたいものだ......そう思って窓の外を眺めていると、何だか見たことがあるような道を走ってることに気づいた。確か誰かがこの道の方向に帰っていたような気がするのはなぜだろう?

 

 

そう考えてる内にもどんどん車は走り、やがて周りに家が見当たらない光景になっていた。これから向かう先は果たしてどんな場所か想像するもまったく見当がつかない......必死に自分の記憶の中からこの光景に心当たりのあるものを探していると車が止まった。

 

 

「どうしたの父さん?もしかしてトイレ?」

 

 

「あぁ。これから向かう前にトイレに行きたかった......」

 

 

「え?ちょっと!?それどういうこと?俺はこれからどんな場所に行くんだよ!?」

 

 

「落ち着け、そんなには驚く場所じゃない......はずだ」

 

 

「はずだって言われても俺知らないし」

 

 

「まあ大丈夫だろ、それよりもここの駐車場からは歩いていくぞ」

 

 

「歩いていくの?......何か嫌な想像しか浮かばないんだけど......」

 

 

「何、心配するな......なるようになるさ」

 

 

「それ諦めてるよね!?」

 

 

「仕方ないんだよ、今回は呼ばれた側だから悪いようにはならないはずだから安心しろ」

 

 

「余計に心配になってきたよ!」

 

 

「ほら、先方には連絡してあるから時間に遅れないようにしないとなんだ......とにかく歩くぞ」

 

 

「......まあ、イネスのバーゲンよりはマシと考えればいいか」

 

 

2人は車から降りて、目的の場所まで歩いて行く。イネスのバーゲンよりマシであるかどうかは到着するまで分からないので今は歩くことだけ考えていよう、きっと大丈夫だ......

 

 

その時の俺はそう思っていたが、今目の前にあるものを見ると自分の考えの甘さに反省した。

 

 

「さあ、着いたぞ」

 

 

「え?ここってもしかして?」

 

 

「そうだ、今日呼ばれたのはここの......乃木家のご両親に呼ばれて来たんだ」

 

 

「乃木って、あの乃木?マギの間違えじゃない?」

 

 

「お前は時々意味のわからない事を言うよな」

 

 

「俺もそう思う」

 

 

「自分で納得するなよ!?......今日は信悟にも以前話したが、大赦での地位について話があるそうなんだ、信悟の行いがあまりにも酷いから縁を切ってほしいとかだったりしてな!......ここまで来たからには腹をくくるぞ!」

 

 

「......もうどうとでもなれ......」

 

 

こうして父親と俺は、乃木家の敷地に足を踏み入れた......すぐに門前で執事が来るまで待つことになったけどね!

 

 

 

執事に案内されて門を通ると、ここは本当に家なのか疑問に思った。家というよりお寺や神社と言われたほうが納得するだろう、乃木の敷地はそれほどまでに広大でとても俺のような少年が居ていい場所ではない。それでも、我慢して父親と一緒に玄関前まで歩いた。そこで改めて周囲を見回すと、手入れされてる木は今日も手入れしたのか枯れたものはなくとても美しい。他にもいろいろ思う事があったが今はそれを考える事も出来なかった......そして、ついに耐えきれなくなり、家の中に入るのを拒んでしまった。

 

 

「もうだめだよ、父さん......俺はここまでのようだ......」

 

 

「何を言ってるんだ?いいから早く行くぞ」

 

 

「そんな!どうして父さんは元気なんだよ!?」

 

 

「それはな......実は父さん、もう死んでるんだぜ?」

 

 

「なん......だと......!?」

 

 

「あの~そろそろよろしいでしょうか?」

 

 

「「すみませんでした!!」」

 

 

「はぁ、分かったよ......もしも用事がある時は呼ぶから、その時は必ず来るんだぞ?」

 

 

「父さん!ありがとう!!それじゃ俺はこの辺りを散歩してるよ!」

 

 

「そうするといい......えっと、息子がこの辺りを散歩しても大丈夫でしょうか?」

 

 

「ええ、構いませんよ」

 

 

「やった!ありがとうございます!」

 

 

「こらこら信悟、もう少し落ち着け。本当にありがとうございます」

 

 

「いえいえ、お礼を言われるほどでもありませんよ。それに、子供は元気なのが一番ですからね」

 

 

「ありがとうございます、そう言って頂けると助かります」

 

 

「父さん父さん、もう散歩に行っていい?」

 

 

「お前はどうしてそんなに元気なんだ?さっきまではあんなに辛そうな顔をしていたのに」

 

 

「ソンナコトナイデスヨ、コレハウマレツキデス」

 

 

「お前言葉がおかしくなってないか?......まあいい、それじゃ俺は行くからくれぐれも迷惑だけはかけるなよ?本当に」

 

 

「ブー、ラジャー!!」

 

 

「......すごく心配になってきた......まあそこまでバカなことはしないと信じよう......すみません、お待たせしました」

 

 

「お構いなく、それではどうぞ中にお入りください」

 

 

「分かりました」

 

 

「いってら父さん!当たって砕けろだ!」

 

 

「砕けちゃダメだろ!?」

 

 

父親は最後まで普段通りの受け答えをしてから、家の中に入り執事も家の中に入ってから玄関のドアを閉める。玄関のドアが閉まるまで俺は手を振って見送った。何だか父親の背中が小さく見えたのは目の錯覚だろう......

 

 

「よし!どうにかぎりぎり間に合った!これで俺は自由だーーーーー!!!!」

 

 

ようやく見えないプレッシャーから解放された俺は、叫びながら庭を駆け回りだした。今の俺を動物で例えるなら、正に犬である!!

 

 

「ばうっばうっ!わんっわんっ!つーっつーっ!すりーっすりーっ!か~ら~の~フォーーーー!!!!!」

 

 

HなGさんにも負けないぐらいに腰を振りながら叫び、今この瞬間を喜んでいた俺は力加減を忘れ、周りのものが見えない状態だった。だからこそ、この建物の窓が天井にしかない事に気づいたのは本当に偶然だった。ある場所から女性の声が聞こえたので建物に近づくと何故か上から聞こえてきたので、そこにジャンプして上ってみると屋根には窓があり、中が見えるようになっていたので自重をしない俺は、躊躇いなく覗いた。

 

 

「ぐっへっへ、さぁーて今回のターゲットはどこのだれかなぁ?おや?これは女の子じゃないかぁ、しかも3人いるぞ~?さてさてターゲットのお顔は?......銀と須美と園子じゃん!?」

 

 

中を覗いた先には、どこかに遊びに行っていると思っていた俺の良く知る3人だった。

 

 

「おいおい、お前らこの年でインドアな遊びをしないでアウトドアな遊びを楽しめよ。大人になるとそんな機会が減るんだぞ?銀を見習って動きやすいスカートを履いて外で......スカート!?」

 

 

よくよく見てみると、銀はいつもの動きやすい服装ではなく女の子らしい長めのスカートを履いていて、髪飾りも何かの華を身に着けていた。

 

 

「おいおい銀さん、こいつはどういう事だよ?いつもの短パンはどうしたよ?......まったく......すごく似合ってるじゃないか!可愛いぞ!あらやだ、惚れちゃいそう!」

 

 

「今信くんの声がしなかった~?」

 

 

「まそっぷ!?」

 

 

「気のせいじゃないかしら?」

 

 

「そうだよ、信悟のやつ今日は予定があるって言ってただろ?」

 

 

「んー、そうだよね~じゃあ気のせいか~」

 

 

「それよりも次の服に着替えましょう!!」

 

 

「おい!須美!?」

 

 

「......ふぅ、危ない危ない、もう少しでバレるところだった......すこし大声を出してしまったが、まさか園子に気づかれるとは......油断できないな」

 

 

気づかれそうになって息を殺してやり過ごした俺は、大声をだしたことを反省して再び覗いた。

 

 

「お次はどんな事をするのかな~って、これは!?噂に聞く、お着替えタイム!?......おお!銀が!今服を!あっ!ちょっと須美、カメラを持って背後でスタンバイするなよ!ここからじゃ重なって見えないじゃないか!くそ~!この角度からしか見えないのに......って、やっとどいてくれたか。ああ、着替え終わってる......それにしても、次の服も可愛いな。特に萌え袖がポイント高いぞ!......おや?もう次ですか?よっしゃ!今度こそは絶対に!って今度は園子かよ!?おいよけるんだ園子!お前がよければ俺は栄光の架け橋を渡れるんだ!だからそこをどいてくれ!......あと少し!ダメだ見えない!見えそうで見えない絶妙なポジションを維持するとは園子、なかなかやるな!......ああ、また終わってた~......今度のは露出が多いな......おっと、鼻からイチゴソースが溢れてきた......よし!ハンカチ持ってきていて良かった~。さあ、拭き終えるのに時間がかかったが今はどうなってるんだ?......え?誰だ?銀はどこいったんだ?」

 

 

途中にハンカチで鼻を拭いてから中を見たら知らない少女がいた。しかも、銀の姿はどこにもなく一体何が起こったのだろうか、真剣に考えてみるがまったく見当がつかない......野郎じゃなければそれで良いやと結論づけてまた中を覗くと、今度は須美が着替えていた。

 

 

「おお!これは知る人ぞ知る某花の名前の展開じゃないか!凄い!凄いぞ!銀が良い働きしている!いいぞ銀!もっとやれ!そこだ!そこで全てを剥ぎ取るんだ!!はっ、はっ、はっく......んん、危ねぇ、もう少しでくしゃみが出そうだったぜ。あ、そうだ!中の様子は?須美が......お姫様になってる!?胸元がセクスィーーーーーーーーーーーーーーーダイナマイト!!」

 

 

「あれ?やっぱり信くんの声だよ?」

 

 

「ああ、今聞こえたな」

 

 

「......」

 

 

「おーい、須美?」

 

 

「は!?」

 

 

「やばい!ここが潮時だな!あでぃおすぐらっしーあ!!」

 

 

流石にさっきの大声には気づかれるのが目に見えたので、気づかれる前に退散した。

 

俺が退散して玄関前に戻ると、玄関から出てきたところの父親に遭遇した。

 

 

「やっほー父さん。もう終わったの?」

 

 

「ああ信悟、丁度今終わったとこで呼びに行こうとしてたんだ」

 

 

「そうなんだ、それじゃ帰ろうか」

 

 

「そうだな、それじゃ帰ろう」

 

 

「執事の人はどうしたの?」

 

 

「いや、お見送りしてくれると言っていたんだが、流石にそこまでしてもらうのに抵抗があって断ったからいないんだ」

 

 

「まあ、そうなるよね......」

 

 

「......帰るか」

 

 

「うん......」

 

 

こうして、重荷が降りた2人は乃木家を後にした。駐車場まで歩いている2人の足取りは来た時よりもはるかに軽くなっていた。そして車に乗って自宅に帰ってる途中の俺は父親に今日の感想を聞かれていた。

 

 

「今日はどうだった?」

 

 

「父さん、今夜はいい夢が見られそうだ......」

 

 

「なぜそんな感想が出てくるんだ!?」

 

 

「ごめん父さん、俺もう眠いから寝るよ......おやすみ」

 

 

「おいおい、もう少しぐらい話に付き合ってくれても......もう寝てる......」

 

 

その後、自宅に着くまでは父親が気を遣って俺を寝させたままにしてくれたので、車の中で寝ていた俺は幸せな顔をしていた。

 




はいはい、もう書くのがつらくなってきたので必殺会話文マシマシマシにしてみました。


どうやら俺は戦闘がある話以外は意欲が湧かないらしい......戦闘シーン書くの下手なのにな!!



もう少しであれが来るぞ......全員用意しておけよ......

次回 洗脳計画!

みんなは洗脳光線に気をつけろよ!!



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計画と準備

すまんすまん、最近忙しくて投稿が遅れた......

というのは嘘だ!!本当はアイデアが浮かばなくてゲームしてたら遅くなったんだ......


だって、アルトリアが良い子すぎるんだもん!ついつい時間を忘れてレイシフト連発しちゃったぜ!!


反省はしているが後悔はしていない!


 

「オリエンテーション……だと……!?」

 

 

教室の中で先生の話を聞いてなかった俺は1人驚愕していた……

 

 

「信悟くんは先生の話聞いてなかったんですか?」

 

 

「寝る事に忙しくてそんな時間は俺にはない!」

 

 

「それは威張る事なのか?」

 

 

「信くんはいつもよく寝るよね〜」

 

 

「園子さん?あなたも人のこと言えないんじゃないかね?」

 

 

「えへへ〜。それでオリエンテーションって何するんだっけ?」

 

 

「一年生と一緒に楽しく遊びましょうって事さ」

 

 

実のところ、オリエンテーションの事については適当に折り紙教室という、誰もやりたいとは思わない催しをして時間潰しを計画していた俺だが、計画も何も考えていないと勝手に決めつけられ園子の席に物理的に強制連行され、現在何をやるか4人で相談している。何故かこの4人でやる事になってるんですけど!どういうこと?

 

 

「人望とは日頃から少しづつ積み重ねて得るものである!」

 

 

「いきなりどうした信悟?」

 

 

「自分の人望の無さに改めて再認識したかったんだ……俺には人望がない、だから後は頼んだぞ……俺に構わず先に行け……」

 

 

「言っておくが信悟、逃げられると思うなよ?須美から」

 

 

「……やっぱり?じゃあ、俺に何をしろって言うんだよ!」

 

 

「いやだから、オリエンテーションで何か良いアイデアがないか聞いてるだろ……」

 

 

「それなら遠くまで飛ばない紙飛行機教室が良いと思いまーす!」

 

 

「何で遠くまで飛ばない紙飛行機なんだよ!?せめて遠くまで飛ぶ紙飛行機にしろよ!そんなの却下だ」

 

 

「そんな〜、他にはもう思いつかないんだ!」

 

 

「もう少し頑張れよ……」

 

 

「そうだわ!」

 

 

俺が銀に注意されてる時、突然須美が声をあげた。何故だろうか、最近須美の発言に体が反射的に震える……もしかして俺......恋に落ちる3秒前かも!……そんなわけないですよねー、恐怖に震えてるだけですよー……女は男より強いと言うのは本当だったんだ……

 

 

「どうしたんだ?須美は奇声をあげる特殊な性癖でもあるのか?」

 

 

「そんなのあるわけないじゃない!信悟くんじゃあるまいし」

 

 

「うん、俺って須美の中ではどういう奴に見えてるんだ?」

 

 

「……とにかく!相手は真っ白な一年生、私達勇者の御役目はこの国を護ること……つまり!将来を見越して愛国心の強い子供達を育成する事も、任務の一貫と言えるわ!」

 

 

「「言えるか?」」

 

 

「なんだか楽しそうだね〜、じゃあ計画を立てようよ」

 

 

須美のやる気と言動に疑問を持ったが計画をしなければ何も始まらないので、まずは計画を立てるために園子が机からノートを取り出そうとする。

 

 

「あれあれ?中にお手紙が入ってたよ?」

 

 

「果たし状か!?」

 

 

「三世からの犯行予告か!?それとも探偵と瓜二つの容姿のあいつか!?」

 

 

「気をつけて!不幸の手紙かもしれないわ!」

 

 

園子は3人の忠告も気にせずに封筒から手紙を取り出して読み始める。

 

 

「えーっと、最近気がつけばあなたを見ています」

 

 

「やっぱり決闘か!?場所はどこだ!」

 

 

「三世か!キッドか!場所はどこだ!伝説の桜の木の下か!」

 

 

「呪いよ、清めの塩が必要かも!」

 

 

「私はあなたと仲良くなりたいと思います」

 

 

「え?」

 

 

「え?協力要請とは酷い文章だな……何か園子の弱みでも握っているのか?」

 

 

「え?ただ呪うよりも恐ろしい文章ね……」

 

 

「御役目で大変だと思いますが、だからこそ支えになりたいと思います。だって」

 

 

「も、ももももももしや、これって?あれじゃないか須美、信悟、始めにらがつく」

 

 

「羅漢像!?」

「雷電!?脊髄を引き抜くつもりか!?」

 

 

「違う!ラブレターだ!」

 

 

「ああ、そう……」

 

 

「なんだラブレターか……」

 

 

「「・・・」」

 

 

「ラ!?ラ、ラ、ラブラブラブラブラブ!?」

 

 

「プレデター!?」

 

 

「信悟だけおかしいぞ!?」

 

 

「す、すまん。発音が似てたから……」

 

 

「似てないだろ!?最早種族すら違うぞ!」

 

 

「わ〜、私ラブレターもらったんだ〜。嬉しいな〜」

 

 

「なんでそんなに冷静なの!?こ、恋文をもらったのよ!?」

 

 

「まさかこの手のものは今に始まった事じゃないのか!?羨ましいなコンチクショウ!!」

 

 

「字とか封筒をよく見ればすぐ分かるよ〜、出した人女の子だよ」

 

 

「え……」

 

 

「なんだ女の子かー」

 

 

「まさか園子、お前は両方……まあ、何か悩みがあったら相談に乗るから遠慮なく言ってくれ……」

 

 

「?ありがとう信くん、その時はよろしくね〜」

 

 

「ああ、出来る限りの事はするつもりだ」

 

 

まさか園子が両方いける口とは知らなかった……これからはもっと園子に優しく接しよう……

どこか間違えた捉え方をしているとは気づかない俺は、園子の頭を撫でる。

 

 

「強く生きろよ園子、絶対に諦めなければ道は切り拓けるはずだ……」

 

 

「よくわからないけど頑張るよ〜、えへへ〜」

 

 

頭を撫でられている園子は笑顔というよりニヤけた顔をしていた。その顔を見て俺は、園子には笑顔でいてほしいからこれからも仲良くしようと深く誓った。

 

 

「あ、手紙で思い出した!」

 

 

「どうしたの信くん?」

 

 

「つい最近、俺も手紙書いたんだよ。ただどんな事かも誰に書いたかも覚えてないんだけどね」

 

 

「どうせ信悟の事だから雑誌についてるハガキに応募しただけじゃないか?」

 

 

「たぶんそうだと思う……まあ、覚えてないんだから大したことじゃないだろ!それより今はオリエンテーションの事を考えよう」

 

 

「そうだね〜」

 

 

「それもそうね……あの、実は1つだけ案があるのだけど」

 

 

「へ〜、それって?」

 

 

「これはそのっちの夢の話を聞いて思いついたんだけど……」

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

「いいんじゃないか?」

 

 

「私も須美の意見に賛成だ!」

 

 

「私もわっしーの考えたのが良いな〜、なんだかとっても楽しそうだよ〜」

 

 

「いいの?」

 

 

「別に問題ないだろ。準備期間も明日から始めれば十分間に合う」

 

 

「じゃあ、私は1年生に見せる紙芝居を描くよ」

 

 

「それなら、俺はちょっとしたサプライズを担当しよう」

 

 

「「「サプライズ?」」」

 

 

「まあ、それは当日までのお楽しみって事で……須美と園子はどうするんだ?」

 

 

「それなら私は衣装を作るわ。そのっちも手伝って」

 

 

「はぁ〜い」

 

 

「よし、それじゃ.....俺はそろそろ帰る!」

 

 

「もう帰るのか?」

 

 

「ああ、いろいろ集めないといけないものがあるからな……じゃあまたな!」

 

 

「信くんじゃあね〜」

 

 

「気をつけて帰るんだぞー」

 

 

「他人に迷惑をかけないで帰りなさいね」

 

 

「だから、須美は俺をなんだと思ってるんだよ!?」

 

 

「歩く災害……いえ、動く災害ね」

 

 

「ワァオ!俺ってば災害認定されてたんだね!……でも否定できない自分がいる!」

 

 

「自分でも認めるのか……」

 

 

「まあね!それじゃまた明日な!」

 

 

 

ランドセルを背負って3人に挨拶してから俺は逃げるようにして教室を去った……下駄箱についた時、目から何か溢れていたのはきっと.....手紙が入っていなくてがっかりしたからに違いない……

 

 

今日も1日頑張った俺はその夜、手紙を書いた宛先を思い出したが、今さらどうすることもできないので深く考えずに寝た。

 

 

次の日、学校でめちゃくちゃ須美に怒られた……匿名の下に小さく書いた名前に気づかれたらしく、須美からの説教を正座をしながら聞かされた……余計な事をしなけりゃ良かったと天を見上げながら思った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日常会話は想像で書いてるからかなりキャラがおかしくなってるww

でも安心してくれ、次はもっとぶっ飛んでおかしくなってるとおもうから大丈夫だ!!


次回 どう話を持っていくか悩んだ末に作者は発狂する!

頭が痛いーー!!!!......ごめん、これ風邪だわww


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国を守る者+α

これを俺は書きたかったんだーーーーー!!!



という事でもないんだけど書いてしまった!完全にバカな作者ですねww





準備を始めてから数日後、本日は雨が降ることもなく、絶好のお昼寝日和。こんな日に寝ないなんてもったいないから今すぐにでも寝たいのだけれど......

 

 

「おい信悟、もう須美と園子は準備できたけどお前は大丈夫なのか?」

 

 

「大丈夫じゃない、問題ばかりだ!」

 

 

「ならさっさと準備しろーー!!!」

 

 

「すんませーーーん!!今から準備しまーーーす!!」

 

 

そう、今日はオリエンテーションがあるので準備で忙しく、昼寝なんてしていられないのだ。できない事もないがその場合、心地よい眠りから物理的に起こされる可能性が99.9%もあるので絶対にやろうとは思わない。しかも、起こされたが最後、須美からの延々と終わりの見えない説教が待っている。そこまでのリスクを負っても昼寝する価値はあるだろうか?......俺なら絶対に価値はないと断言できる。考えてもみてくれ、強制的に眠りから覚めた状態だけでも気分が悪いのに、その後にはもっと気分が悪くなる説教を受けなくてはならないんだぞ?俺には......耐えられない!

 

そんなわけで、今はオリエンテーション開始時間まであと10分を切ったという状況で、何も用意してない俺は、銀に怒られてせっせと準備を始めているのである。

 

 

「いつの時代も男は女に勝てないのだけは変わらないんだな......はぁ......今は考えないで準備しますか!」

 

 

若干憂鬱な気分にもなったが、すぐに気持ちを切り替えて準備を始める。確かに最初はやる気なんてミジンコほどもなかったが、強制的とはいえやる事になったなら全力を尽くすのみだ......

 

 

「まあ、本当は俺も楽しみだったんだよな~。何たって寝る間も惜しんであれを作ったからな......ふっふっふ、果たして須美と園子はどう対処するか楽しみだな......くっくっく、ふーはっはっはっはっはっは!!」

 

 

「ねぇ、今のって噂で有名なあの人だよね?」

 

 

「今笑いながら歩いていた人?」

 

 

「そうそう、いきなり笑いだしたり大声を上げたりしてるって町で有名なのよ」

 

 

「あ、それ私も聞いた事ある!ある時はおじいさんを脅していると勘違いをされてドロップキックをされたとか、迷子の子供たちを引き連れて一人一人にアイスをおごったのに、探していた親からのお礼も聞かずに立ち去った少年がいたって近所のおばちゃんたちが言ってたな~」

 

 

「そうなの?私の聞いた噂と大分印象が違うわね」

 

 

「そうなんだ~。もしかしたら、大声上げたりしてるのも何か意味があるのかも?」

 

 

「まさか~そんな事あるわけないじゃない」

 

 

「あはは、そうだよね」

 

 

「そうだ!あのさ、今日のオリエンテーション何やるか教えてよ」

 

 

「いいよ、私のとこはね......」

 

 

後ろから何やら話し声が聞こえてきた気がしたが、今の俺はこれから起こることに胸を躍らせていたので全て聞き流し、必要なものを取りに仮置きしてある別室に歩いていた。

 

 

 

 

 

「よし!準備は完了だ!さてさて、準備に手間取ったけど今の時間は......ま、まあ、丁度いい時間だな!うん!開始時間過ぎてるけど今から戻れば大丈夫だろ!......とにかく急いで戻ろう......」

 

 

調子に乗って用意した後少し遊んでいたら予定よりも時間がかかってしまい、すでに開始時間を過ぎていた......慌てて用意したもの全てを持って教室に走って戻る。

 

教室の前まで来るとタイミング良く須美が考えた国防体操が終わった後で、一年生たちが声を合わせて富国強兵と叫んでいた。須美よ、お前は一体......一年生に何をさせるつもりだ?

 

 

「そんな事はどうでもいい!さて、それでは始めようか......レッツパーリー!!」

 

 

俺は、今だ熱の冷めない一年生がいる教室に自作の衣装を身に着け、これまた自作の小道具と少しのコインを持って声を上げながら入室する。

 

 

「はーはっはっはっは!俺を忘れないでいただこうか!」

 

 

勢いよく教室の後ろのドアを開けて入ると、皆の視線がこちらに向く。だが、動じることなくそのままゆったりと歩いて須美と園子とは反対側の一年生の後ろへ向かい、やがて一年生の最後尾の人まで数メートルというとこで立ち止まり、須美と園子がいる方向に体を向ける......さて、須美と園子はこのサプライズな展開にどう対処する?

 

 

「な!?貴様は何者だ!」

 

 

須美が意外とノリノリで少し驚き体が固まってしまった。だが、ここで何も言わないと本当に不審者扱いされてしまうので、咳ばらいを一度してからアドリブで演技を始めた。

 

 

「ふっ!何を言っている?忘れたとは言わせないぞ......俺はマネーライフ悪代官、略してマネラだ!!」

 

 

「マネラだって!?そんなまさか!?」

 

 

「一号気をしっかり!」

 

 

「ああ、すまない二号......」

 

 

「おいおい、国防仮面がこのざまか?まったく、こんな奴らに俺の計画が阻止されたとは屈辱的だ」

 

 

「どういうこと?まさか!?あの怪獣はあなたの仕業だったの!?」

 

 

「ああ、そうだ!あの怪獣を使ってありとあらゆるものを我が物とし、綺麗な花を売りさばいて金にしようとしていたのだ!......だというのに、あと少しというとこでお前たちが邪魔をして、薬で変身した怪獣がただのトカゲになって計画は失敗してしまったではないか!」

 

 

「そんな事知ったことか!私達国防仮面は、国を守る事、国の人々を守る事......それを害するものを許しはしない!そのためになら私達は何が相手だろうと戦ってみせる!」

 

 

「そう!私達は憂国の戦士!国防仮面!悪者は私達が裁く!」

 

 

「「「「「「きゃーーーーーーーーー!!!」」」」」

 

 

「ええい、忌々しい奴ら目......だが、それもここまでだ。俺はお前らを長らく観察し、ようやく弱点を見つけ出したのだ!」

 

 

「「なん......だと......!?」」

 

 

「ふふん!それでは今までの恨みを今日この場で返してやるとするか......」

 

 

「おい!マネラ!貴様一体何をするつもだ!」

 

 

「そんな事も分からないのか?仕方ない教えてやろうじゃないか......お前らの弱点、それは......守るべき対象がいるという事だ」

 

 

「それの何が悪い!」

 

 

「守るべきものがある私達に敵うと思っているの?」

 

 

「ちっちっち、甘いな。確かに守りたいものがあるお前たちには勝てないだろう、それなら逆に考えればいいだけだ......お前たちが守ろうとしているものを利用すればいい、だからこうするのさ!」

 

 

近くにいた大人しそうな一年生の女の子を手元に引き寄せて人質にする。まさに!ゲスの極み!

 

 

「・・・うっ・・・あっ・・・ふぇ・・・」

 

 

いきなり人質になった少女は突然の状況に理解できず怯えてしまう。

 

 

「うっ・・・「ごめんな」・・・えっ?」

 

 

いきなりで悪かった、怖かったよな?でも絶対に君を傷つけないから、少しだけでいいから我慢してくれないか?

 

 

怯える少女の頭に手を乗せて、優しく撫でながら怖がらせないように小声で少女にお願いしてみる。

 

 

うっ・・・本当に?

 

 

ああ、約束する......ダメかな?

 

 

......ううん、ダメじゃない......あなたを信じる

 

 

ありがとう。すぐに国防仮面が助けてくれるからそれまではよろしくね!

 

 

うん......よろしく//」

 

 

少女から承諾をもらったのでこれで心置きなく演技に集中できる。少女も先程までの怯えが無くなっている。何故か少しだけ体を俺のほうに寄せているが、これは信頼の証かな?

 

 

「さあこれでどうだ!手も足も出せないだろ?」

 

 

「くっ!なんて卑怯な!」

 

 

「はっはっは!何とでも言うがいい!最早お前たちなど敵ではないわー!」

 

 

「こうなったら仕方ないわね......二号、それにそこのお嬢さんもちょっと来て」

 

 

「私もか?」

 

 

「なになに~」

 

 

「集まったわね、これからあの子を助けるための作戦で協力してほしいことがあるの」

 

 

「「作戦?」」

 

 

「ええ、作戦内容は......」

 

 

何やら銀も混ざって救出するための作戦を考えてるみたいだから、あえて声をかけずに人質の少女の頭を撫でながら待つ。少女からは嫌がる素振りもなかったから大丈夫だよな?おっと、ようやく終わったみたいだ。

 

 

「おう!それなら任せてくれ!」

 

 

「どうした?話し合いは終わったか?それとも、素直に負けを認める気にでもなったか?」

 

 

「いいえ、負けるのは貴様だマネラ」

 

 

「ほう、この状況でよくそんな事が言えるな......」

 

 

「ええこの状況は絶望的かもしれない、だけど私達は絶対にその子を助ける!」

 

 

「やれるものならやってみるがいい」

 

 

「そうさせてもらう......あ!安芸先生!」

 

 

「嘘!?どこどこ!?」

 

 

「銀!今よ!」

 

 

「よっしゃ!おらぁ!」

 

 

「どこにもいないじゃ・・・ぬおぁ!」

 

 

「よし!二号今よ!」

 

 

「了解!」

 

 

俺は先生が来たというハッタリに引っ掛かり教室の後ろのドアを向いて確認してしまい、その間に銀が俺に狙いを定めて持っていたバチを投げた。そして、ハッタリに気づいた俺が顔を正面に戻すと飛んできたバチが顔面に命中して、痛みで顔を両手で隠しながらしゃがみ込む。その隙に二号の園子が人質になっていた少女を救出して一号の隣に戻る。何という訓練された動きなのだろう、これには舌を巻いてしまったではないか!

 

 

うぅぅ、銀のやつ、かなり本気で投げただろこれ......ちぃ!まさかこんな方法を取るとは......それが人間のやる事か!?」

 

 

「そこに助けを待っている人がいるなら、どんな手段を使っても助け出すわ!」

 

 

「そのとお~り!!何があっても絶対に助ける!だって私達は」

 

 

「「憂国の戦士!国防仮面!」」

 

 

「......分が悪いな、今回はこれで引くとしよう、次は必ず勝つ!覚えとけよ~!!」

 

 

三下のセリフを吐いて走って教室から出ていき、そのまま衣装を置いていた別室に逃げ込んだ......

 

 

俺が去った後の教室からは富国強兵万歳!という声が、逃げ込んだ別室まで聞こえてきたのは幻聴であってほしい......

 

 

 

「マネラ様......」

 

 

「どうしたの?何だかぼーっとしてるけど?少し顔も赤いけど大丈夫?」

 

 

「う、ううん!何でもない!大丈夫だよ!」

 

 

「そう?何かあったら言ってね!」

 

 

「うん、ありがとう」

 

 

そして、教室の中で人質に取られた少女が、顔を赤くしていた理由を誰も知らない......

 

 

「......また会いたいな」

 

 

オリエンテーションが終わった後、安芸先生に怒られ銀以外の3人の衣装や小道具は没収され、1人の少年の叫びが校内中に響き渡った......

 

 

「デンジャラーーーーーーーーーーーーース!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうしてだろう?須美たち3人よりも何か気合を入れて書いていた俺がいる......

思うんだけど、神樹館の女生徒かわいい子多すぎじゃない!?まじで!

男子生徒なんて適当にそこらにいそうな感じで、ドラ息子みたいな感じの子が一人もいなくて草生えたwww

次回 え!ん!そ!く!

来たぞ!これが本当に書きたかったんだ!!!
......ちょっと皆には悪いけど、シリアスになるかもしれんが許してくれ......


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楽しかった遠足......

よう!新年明けましておめでとう!


何?涼しい顔してよく言えるなだって?……


更新遅れてすんませんしたーー!!
違うんだ!俺は書こう書こうと毎日思ってたんだよ、でもさ、ほら今って冬じゃん?だから……な?


みんなは分かるだろ?


 今日は誰しも経験があるだろう、とても楽しみにしていた日なのだ。その楽しみにしていたものとは......そう、遠足である。え?そこは宿泊学習だろバカ野郎だって?......俺もそれを期待してたよ!でもこの学校では遠足が一番の楽しみなんだ!だって考えても見てくれよ?この世界にあるのは四国だけなんだぜ?四国ならいつでも行きたきゃ行けるからそんな行事やらない!......という事ではなくて、神樹館に通っている生徒のほとんどが結構なお嬢さんやお坊ちゃんだから、あまり面倒なことにならないために近場で日帰りできるようにしているんだ......というのが俺の考えだ。たぶん、当たってると思うがそこは先生に聞くしかないな......でも俺、この前合宿したし!女の子と一緒に寝たから別にいいもんね!......1人だけ別室だったけどな!!

 

そんな悲しい事はそこらに捨てといて、今はバスの1番後ろの席の1つ前の席に瀧澤と一緒に座って喋っていた。

 

 

「おいおい、遠足って言ったら定番のあのセリフを言うのがお決まりだろ!」

 

 

「急にどうした?……悪い、いつもの事だったな」

 

 

「おい瀧澤!それはどういう事だ!」

 

 

「……いや〜今日は思いっきり体を動かそうかな〜」

 

 

「無視するんですね、分かりますw」

 

 

「本当にお前は何というか、ポジティブだよなぁ」

 

 

「当たり前だ、これは俺の人生経験から得た必須な術だからな!」

 

 

「お前は一体どんな人生を送ってきたんだ?」

 

 

「えっ?聞きたい?」

 

 

「いや、聞きたくはない」

 

 

「少しは興味持って聞いてくれよ!?泣くぞ!」

 

 

「泣け」

 

 

「最近友人が冷たい件について」

 

 

「当店ではそのようなサービスを行っていませんので、回れ右してゴーしやがれです」

 

 

「……ま、まあ冗談もこれくらいにして」

 

 

「ごめん、今の割と本気だった」

 

 

「セリヌンティウス!」

 

 

「なんだその掛け声とポーズは!?」

 

 

「俺の魂が叫んでる、I need more friends!!」

 

 

「正気に戻れーー!!」

 

 

右手の拳を頭上に突き上げた姿勢で俺は目を閉じ、隣の瀧澤は俺の魂を呼び戻そうと揺さぶってくる。

 

 

「ちょっ、揺らすのはやめてくれ……」

 

 

「正気に戻ったか!」

 

 

「ああ、少しだけ意識がとんでいた」

 

 

「危ないな!?まあ、俺もちょっと言いすぎたよ」

 

 

「瀧澤……別に気にしてないさ」

 

 

「泣きそうになってなかったか?」

 

 

「……目にゴミが入っただけだ」

 

 

「そういう事にしておくよ……」

 

 

「ありがとう、感謝する」

 

 

2人の仲が悪くならずに済み、今の事については触れないように約束した。

 

その最中にもバスは目的地に向かって走り、他の生徒達も近くの友達と楽しくはしゃいだり、お喋りをしていた。皆楽しそうだなと自分の事を棚に上げた考えをしている時に後ろの席から声を掛けられた。

 

 

「相変わらず2人は仲良いよね〜」

 

 

「おい乃木、これが仲良く見えるのか?」

 

 

「またまた~、照れちゃって~。瀧澤の照屋さん♪」

 

 

「......そういえばここの窓を全開すれば人ひとりぐらい通れるスペースが出来たよな?」

 

 

「すみません、本当にシャレにならないので許してください!今のは冗談だから!」

 

 

「やだな~、今のは冗談だって」

 

 

「だ、だよな~ハハハハハ」

 

 

「ハハハハハ......だが、やらないとは言ってないぞ?」

 

 

「誠に申し訳ございませんでしたーー!!なにとぞお慈悲をーーー!!!」

 

 

「相変わらず土下座だけは完璧だな......やらないからさっさとやめろ、俺が変な目で見られる」

 

 

「あ、ありがたき幸せ!!」

 

 

「うむ、良きに計らえ!期待しているぞ?」

 

 

「ははー!!」

 

 

「やっぱり仲良しだよ~」

 

 

「そうか?まあ、嫌いではないけどな」

 

 

瀧澤は少し照れながら乃木に答える。その姿をからかおうとしたが、突き落とされる未来しか想像できないので俺は静かに席に座りなおした。

 

 

「そういえば、すごい気になってたんだけどさ、桜井の持ち物大きすぎじゃないか?一体何が入ってるんだ?」

 

 

「?別に普通だろ?お菓子とハンドスピナーと監修、鷲尾須美の旅のしおりと体操着が入ってるだけだ」

 

 

大きなリュックから自分が持ってきたものを言った順に取り出していく。

 

 

「はいストップ!そんな旅のしおり聞いた事ない!なんだよその分厚さ!広辞苑の間違いじゃないのか!?」

 

 

「それは俺も思った......知ってるか瀧澤、世の中には知らなければ幸せな事もあるんだぜ?......だから、これ以上は聞かないでくれ、俺もこれ以上知りたくないんだ」

 

 

「お、おう。そうか、わかったよ」

 

 

「ありがとう、感謝する」

 

 

俺達2人はそれから何も聞かない事を約束し、互いに沈黙した。

 

 

「それで、それは桜井だけ持ってきたのか?」

 

 

「いや、須美と銀と園子も持ってきているはずだぞ?なぁ、園子も持ってきてるよな?」

 

 

「すぴー、すぴー」

 

 

「いつの間にか寝てる!」

 

 

「おい信悟、うるさいぞ。園子が起きちゃうだろ」

 

 

「あれ?何かデジャヴが」

 

 

「何言ってるんだ?どこか具合でも悪いのか?」

 

 

「三ノ輪、こいつの頭が悪いのはいつもだから心配は要らない」

 

 

「それもそうだな」

 

 

「ねぇ。俺何か怒らせるような事した?すごい酷い言われようなんだけど!」

 

 

「だから言っただろ、お前の頭の悪さは世界に認識されている事なんだって」

 

 

「俺の頭は世界レベルで悪いのかよ!?初耳だ......最近の友達は冷たい態度をとるのがデフォルトなのか?」

 

 

「え?友達だっけ?俺達」

 

 

「......もういい、寝る......」

 

 

俺はこの日、自分の殻に籠る術を身に着けた。目的地に着くまでは話しかけられても、誰とも一切話すことなく膝を抱えたまま動かなかったが、痺れを切らした須美に話しかけられた時に命の危険を感じたので殻に籠る事をやめる。その後は何故か須美から説教をされてからバスを降りた。理不尽すぎるだろ......

 

 

 

 

 

目的地到着後、男子と女子に別れ、荷物を置いておく建物で体操着に着替えてから遊具のある場所に集合した。それから先生の話を聞き、昼食には一度調理スペースのあるここに戻ってくるように言われた後、各自自由行動を開始した。

 

 

「作戦内容を更新、これより任務を遂行する!」

 

 

「そうかそうか、じゃあ頑張れ」

 

 

「言われなくともやってやるさ、期待して待っていろ!」

 

 

「はいはい」

 

 

俺はそこで瀧澤と別れ単独行動を始めた。

 

 

「まずは何と言ってもこれ!通称ターザンの遊び場!ロープウェイ!ロープに掴まって地面すれすれに当たらないように移動するスリル満点の遊具だ!これを最初にやらないと順番待ちになって最悪出来ないで帰る事になるからな〜……誰も居ないのはきっと準備運動で手間取って来てないだけだろ、うん」

 

 

予想外に誰もロープウェイに人はいなかったが、これを絶好のチャンスと受け取って1人楽しんだ。

 

 

「何往復したのか数えてなかったけど誰も来なかったな、周りを見れば友達同士でアスレチックコースで遊んでる人がほとんどだしなぁ……俺が避けられてるわけじゃないよね?……やばい、急にアスレチックコースで遊んでない俺が変人に思えて来た!早く行かなきゃ!」

 

 

決して1人が寂しくなったわけではないが、無性にアスレチックコースで遊びたくなったのでそちらに走った。別に、ロープウェイで遊んでた時に須美達3人が楽しそうにしてて仲間はずれにされたから、恨みを晴らすためにイタズラしようと考えてはいない……わけがない!男女共にアスレチックコースで遊べるんだから俺も誘ってくれよ!さっき銀と目があった時、直ぐに目を逸らされたの俺覚えてるからな!覚悟しろよ!

 

 

「はぁはぁ、うっぷ……ターザンの遊び場で遊び過ぎた、気持ち悪い……ふぅぅ、よし!すこし良くなったな。銀達は……もうあそこまで行ってる、早いな。まあ、日頃の鍛錬の方がよっぽど体力使うから余裕なんだろうなぁ。それにしても、あの垂直綱渡りの上にいる男子生徒のポーズは気取ってるよな〜なんかドヤ顔してるし、ちょっとムカつく……いや、かなりムカつく!あいつらさっきからこっち見て笑ってたし、ターザンの力見せつけてぎゃふんと言わせてやる!銀達の相手はその後だ!待ってろよ!秘技、壁登りでそのドヤ顔をマヌケ面にしてやる!」

 

 

何やら物騒な事を考えながらも再度走り、銀達の居る場所に向かう。

 

 

「あと少しで俺の野望が始まる!……さてさて、何も知らない本人達は……うわぁ、銀の奴片手で登るとかどこぞの軍人だよ……おーい、危ないぞー」

 

 

いくら余裕とはいえ流石にあれは危ないのでやめさせようと呼びかけたが、流石は期待を裏切らない我らが銀さん、登ってる最中にいきなり掴んでいた手を離して落下し始めた。直ぐさま俺も近くまで来ていたのでちょっとだけリミッターを外して全力で走り、落下途中に何とか受け止める。

 

 

「フラグ回収おつかれさまです!……っと、おーい銀、生きてるかー?」

 

 

「え?信悟?」

 

 

「信くん!」

「信悟くん!」

 

 

「はいはーい、みんな大好き信悟だよー……嘘だよ!ごめんね!」

 

 

「まさかのノリツッコミ!?」

 

 

「いや、流石に今のは自分でも言い過ぎたと思ってる……そんな事はどうでもいいんだよ!それより銀、怪我はないのか?」

 

 

「へ?あ、ああ信悟のおかげで大丈夫だよ」

 

 

「そうか、それは良かった。それにしても片手で登るとか危ない事するのはいいけど怪我はするなよ?須美がうるさ……心配するからさ」

 

 

「信悟くん、今うるさいって言おうとしていなかったかしら?」

 

 

「そ、そんなことないですよー」

 

 

「はぁ。そういう事にしておくわ」

 

 

「そうしてくれると助かる」

 

 

「まったく……それと銀、楽しいのは分かるけど浮わついてないかしら?お役目の重さよく考えて」

 

 

「……借りは返すよ、そして反省します……口数を減らします!」

 

 

「いやいや、そんなもので須美が納得するわけ「次からは気をつけるのよ」……俺との扱いの差が違いすぎる!?うわぁ〜ん、園エモ〜ン!!!」

 

 

「ええ!?私!?」

 

 

自重が無くなってきてほぼ0に近い俺は周りの目を気にせず園子に抱きついて胸に顔を埋め……たかった!でも、残り僅かな自重の心があったおかげで胸ではなくお腹に顔を埋めて嘘泣きする。

 

 

「鬼の鷲尾が差別する〜どうにかして〜」

 

 

「ええええ……えっと、ごめんね?たぶんもう無理かな〜」

 

 

「そんな!諦めんなよ!もっと熱くなれよぉぉぉぉ!「うるさいですよ信悟くん?」……」

 

 

後ろからオーラを感じたのでゆっくり振り向くとそこには……

 

 

「仁王立ちした鬼がいましたとさ……」

 

 

「銀、ちょっと手伝ってくれるかしら?」

 

 

「ああ、別にいいけど何するんだ?」

 

 

「簡単な事よ、少しお灸を据えるから抑えていてくれればいいわ」

 

 

「どこから取り出したんだよ!」

 

 

「それは乙女の秘密よ」

 

 

「くそっ!はめられた!こうなったら……せめてこれ以上のお灸の増加を阻止する!そのぼた餅に隠してあるはずだ!覚悟しろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

その時の事は今でも覚えてる、ありのままを話そう。俺が焦って須美に飛びついたんだ、まさに3世のようにダイブしたと思う。それに驚いた須美は防衛本能が働いたんだろう、振りかぶるように拳を振ったんだ。しかも目を閉じながらだ。それが俺の頬にクリーンヒットして、どこにそんな力があったのか不思議に思う程の威力があってそのまま殴られた方向に2回、3回転がって仰向けに倒れた。そして、最後に見た光景が晴れわたって雲があまりない綺麗な青空だった。その後の事は覚えていない。気がついたら昼食の時間になっていてお昼に集合する場所のベンチに寝ていた。

 

 

「俺はいつのまに寝ていたんだ?さっきのあれは夢か?物凄くリアルだったなぁ」

 

 

「おお、やっと起きたか桜井」

 

 

「あれ?瀧澤?何でお前がここにいるんだ?」

 

 

すぐ近くに、いつのまにかフライ返しを持った瀧澤がいた。

 

 

「寝ぼけてるのか?もう昼だから全員ここにいるぞ?」

 

 

「昼!?嘘だろ!俺の知らない間に時間が過ぎているなんて……そうか、これは夢かそうに違いない、それじゃおやすみ……「いや寝るなよ!」ああ、夢の中まで俺は寝ることを許されないとは……おお、女神よ、どうしてこの世界は俺に優しくないのですか!!」

 

 

「言っておくが夢じゃなくて現実だからな?」

 

 

「え?そうなの?じゃあ、何故起きたら最初に美少女じゃなくて野郎の顔を拝まなくてはいけないんだ?」

 

 

「よーし、もう一度寝させてあげようじゃないか……二度と起きれないかもしれないけど別に良いよなぁ?桜井」

 

 

「ああ!何だか目が覚めた!いや〜起こしてくれてありがとな親友!」

 

 

「……お前の切り替えの早さには尊敬するよ」

 

 

「褒めても何もでないぞ?」

 

 

「大丈夫だ、お前からは何も要らないから。むしろこっちから願い下げだ」

 

 

「最近俺の扱いがどうなってるのか心配になってきた……」

 

 

「……桜井がどうかは焼却処分しておいて「雑!俺結構真剣に悩んでるんだぞ!」はいはい、それより起きたならさっさと手伝え」

 

 

「もう俺は考えることをやめた……だから、眠りにつくことにするよ」

 

 

「あ!あそこに熱々の鉄板が!あれに顔面キスした人の反応に俺興味あるんだよね!もし、丁度よく寝てる人がいたらその人を実験台にしようかなぁ」

 

 

「それで瀧澤様、私めは如何様になさればいいのですか?」

 

 

「最近お前の扱い方に慣れてきた自分がいる……それじゃ、桜井は紙皿と割り箸を用意してくれ。仕方なくお前の分も焼きそば作っといたからさ、感謝しろよ」

 

 

「我らが瀧澤様に栄光あれ!」

 

 

「やかましいわ!さっさと準備しろ!」

 

 

「今すぐ準備してきます!!」

 

 

瀧澤がフライ返しで今にも殴りかかりそうだったので、急いでその場を離れて皿と割り箸を取りに先生に聞きに行く。俺の周りに暴力を振るう人が多くて困っちゃうぜ!!

 

先生から聞いて皿と箸を取りに行く途中、俺が寝ることになった張本人から声を掛けられた。

 

 

「信悟くん!」

 

 

「はいぃぃぃぃ!!!」

 

 

「何でそんなに驚いているの?」

 

 

「いやいやいやいやいや、ソンナコトナイデスヨ」

 

 

「そう?それよりも、その……やっと起きたのね?」

 

 

「まだ目覚めて間もないけどな……知ってるか?今の俺、まるで生まれたての小鹿の様に足の震えが止まらないんだぜ?」

 

 

「それは気の毒ね……えっとそれでね、その、さっきはごめんなさい!」

 

 

「……さっきとは俺が気絶する前の事か?」

 

 

「ええ、あの時は少しやり過ぎたから謝りたくて……だから、ごめんなさい」

 

 

「あ〜、それはこっちのセリフだ。俺の方こそ流石にやり過ぎた……ごめんな?」

 

 

「信悟くん……」

 

 

「ああもう!こういう空気は苦手だからこの話はお互い様って事で終わり!めでたしめでたし!」

 

 

「強引過ぎよ……でも、そうね。この話はやめにしましょう」

 

 

「そうそう、須美にはそんな顔より笑ってる顔の方が似合うからさ!」

 

 

「私そんなに酷い顔してたかしら?」

 

 

「まあ、普段は見たことない程には……とにかく、今日はせっかくの遠足だからさ、お互い楽しもう!以上!それじゃ!」

 

 

「ちょっと信悟くん!……行っちゃった……でも、怒ってなくて良かった……よし!信悟くんも言ったようにせっかくの遠足なのだから楽しまなくちゃね!」

 

 

須美との会話を中断して走り去ったあと、須美が1人何か言っていたような気がしたが今はこの皿と箸を届けないと冗談抜きで瀧澤に永遠の眠りというなのプレゼントを贈られるので、俺はただただ走った……

 

 

走って戻ってくると待っていた瀧澤に皿と箸を渡す。それを受け取った瀧澤は出来上がった焼きそばを皿に盛りつけ1つを俺に渡してきたので両手で丁寧に受け取った後、2人でベンチに座り美味しくいただいた。

 

 

「ごちそうさまでした。大変美味でした瀧澤様」

 

 

「お粗末様、あとその呼び方やめろ」

 

 

「そんな!それではこれからどうお呼びすればいいのですか!?」

 

 

「いつも通りに呼べよ!」

 

 

「あ、そう?じゃあ、瀧澤ありがとな!美味かった!」

 

 

「そうか、それは良かった……桜井のだけ大量に胡椒入れ過ぎたから内心ヒヤヒヤしてたんだ」

 

 

「それを今聞いた俺の方は冷や汗が止まらないよ!」

 

 

「冗談だ、流石にそんな事するのは申し訳ないからな」

 

 

「瀧澤……お前」

 

 

「材料を粗末にするのは気が引けるからな」

 

 

「だと思ったよ!期待した俺が愚かだった!」

 

 

「まあまあ、落ち着けって?」

 

 

「ペッタンペッタン」

 

 

「餅つけじゃねーよ!?」

 

 

「おお、流石瀧澤!ナイスツッコミだ!」

 

 

「はぁ、桜井の相手は疲れる……飯も食べた事だし午後はどうするんだ?」

 

 

「シルエットを脳内に焼き付ける作業を行おうと思ってる……一緒にどうだ?」

 

 

「やるわけないだろ!……帰りのバスには遅れるなよ」

 

 

「おう!それじゃ早速行ってくるわ!またあとでな!」

 

 

「二度と帰ってこなくていいぞー……まったく、あいつといると暇にならないな」

 

 

「何か言ったか?」

 

 

「言ってない、というかお前はとっとと逝け」

 

 

「あれ?最後の言葉がおかしい気がするんだが気のせいか?」

 

 

「……気のせいだ」

 

 

「本当か?まあいい、それじゃ今度こそ行ってきまーす!」

 

 

若干言葉がおかしかったと思うが、瀧澤が気のせいだと言っていたから気のせいなのだろう。

 

 

瀧澤と別れた後は、俺が午前中に入念にサーチしたベストスポット!からベルを鳴らす女生徒をベストアングルから脳内に焼き付ける作業に没頭した……これこそがこの遠足における最高のご褒美なのだ!さあ!どんどん登ってベルを鳴らしたまえ!

 

 

脳内に焼き付ける作業をしてからどれ位時間が過ぎたのか覚えていないが、生徒達が先生のいる場所に集まっている。俺も非常に残念だが、作業をやめてそこに行く。生徒全員が揃うと先生の話が始まる。話を聞くともう帰るみたいだ、まだまだ俺には余力があったが一番重要な園子達3人組を脳内に焼き付ける事が出来て思い残す事はないので、テキパキ行動して帰る仕度をして1番にバスに乗り込み来た時と同じ座席に座って待つ。いや〜やはり見上げるとは良いものですな、上を向いて歩こうというフレーズの素晴らしさを実感したよ……小学5年といってもやはり女性なのだなと思い知らされた……何が言いたいかと言うと、マジで最高でした……

 

 

帰りのバスではほとんど全員の生徒が、遊び疲れて寝ていた。もちろん俺も特にやることもないので寝た。……夢を見たが鮮明に覚えていない。ただ、パラダイスが目の前に広がっていたという事だけは覚えている……最高の遠足だった……

 

 

学校に到着したあと、少しだけ先生の話を聞きその場で解散となる。俺も夢の続きを見たかったので他の生徒と同じように直ぐさま1人で家に帰る。

 

 

 

「遠足!最高!楽しかったーー!!」

 

 

帰宅中、抑えきれない心の声を大きな声で叫びながら歩く。

 

 

 

「贅沢を言えば、カメラを持ってくればパーフェクトだったな〜……本当に何故持って来なかったのか、少し後悔してる。」

 

 

少し落ち込んだが空を見上げて気持ちを落ち着かせる。だんだんと落ち着いて来たので空を見上げるのをやめようとした……その時突如として周りから音が消えた……

 

 

「ここで来るとか、KYなのか空気を読めるのか判断に困る……」

 

 

ランドセルからスマホを取り出して勇者システムを起動させ、準備を整える。それと同時に樹海化された場所へ飛ばされた。

 

 

そして、いつものようにやってきた敵を探していると予想外の光景を目の当たりにして思わず呟いていた。

 

 

「敵の数が2体だと?……おいおいそんな事今までなかったじゃないか、あれか?赤信号、みんなで渡れば怖くない的な?……そこまで馬鹿ではないから何か策があるのか?まあいい、俺はいつものように4人で撃退するだけだ!行くぞ3人とも……そうだったぁ!須美達と一緒じゃなかったんだーーー!!やばいやばい、もしもあの敵がこっちに来たら2対1で圧倒的に不利だ……そうだ!不意打ちしよう!」

 

 

こうして、須美達がいない現状では不意打ちが最も最善と考え、単独行動を開始した。……正々堂々?騎士道精神?何それ美味しいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやー戦闘シーンまでは書けなかったな〜、シリアスあるかもとか言ってたけどありませんでしたねw

書いてたらどんどん止まらなくなったんだよね、これが。まあ、本当は他のアイデアもあったんだけど書く量がこれよりも半端ないぐらい多くなるからやめちゃった!……別に面倒くさいからではないぞ?俺が書きたかったのはあくまでも次のとこだから時間をかけていられないんだ……


と言うわけで、寒い日は更新遅れるけど気長に待っていてくれよな!『pirorororo!』なんだなんだ!?

こちらから選択を願います
A.シリアス展開にする
B.シリアル展開にする

あらやだ!一文字違うだけで意味が全く違うじゃないですか!

次回 選択は慎重に

果たして作者が選んだ選択肢は?



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運命の分かれ道……

やっぱり寒いと何もやりたくない〜


早く春にならないかな〜、略して榛名〜好きだー!!!もちろん!艦これの榛名だからね!!


俺が単独行動をしてから数分が経つ頃、須美達3人は須美が援護射撃して銀と園子がそれぞれ1体を相手していた。お陰で見つからずに敵との距離が数メートルの場所まで移動できた。

 

 

「ふぅ、何とかここまで来たけど、3人は俺がいる事知らないから連携取れないし……どのタイミングで攻撃すればいいんだ?」

 

 

このまま攻撃すれば運悪く俺が攻撃されてしまう……3人からな!それならバーテックスから攻撃される方がマシだ。冷静に考えて見てくれ、3人の美少女から攻撃されてご臨終になるとか……ありだな……美少女に最期を看取ってもらえるなんて最高じゃないか!ならば迷う事など何もない!!

 

 

「今から始まるのは一方的な蹂躙じゃーーーーー!!!!」

 

 

少なからず恐怖が残るものの、己に喝を入れて叫びながらハエ叩きを身にまとっている敵に向かって突進する。突然の背後からの攻撃に対処できるはずがなく、敵は俺の上段から縦に振り下ろした2本の斬撃が直撃してバランスを崩し、そこに須美が矢を放って追撃をかける。

 

 

「信くん!」

「信悟くん!」

「信悟!」

 

「悪い遅れた!今から加勢するから攻撃の手を休めるな!」

 

「「「了解!」」」

 

 

今の攻撃でやっと3人に気づいてもらえた。今だけはこのステルス性能に感謝している……普段は発揮しなくていいんだけどね!!

 

1体は体制を立て直すのに時間がかかると考え、今のうちにもう1体の団子をつけた敵の相手をする。今はまず一体を確実に倒す事を優先に考え、もう一体から攻撃されないうちに団子を攻撃すれば勝率も上がる……というのが俺の考えだ、何分敵の情報が少ないので慎重に対処しなくてはいけない……あのお団子伸びないよね?飛ばさないよね?

 

 

「お前はもっと色を選べ……よ!!」

 

 

敵の顔面に飛び込んでクロスに斬りつける。斬りつけたときの勢いを利用して一回転し、敵の顔面に足をつけて蹴り後方に飛ぶ。続いて須美が矢を放ち園子が敵に刺さった矢を押し込む。見事な連携攻撃を受けた敵はバランスを崩してのけ反る。

 

 

「お前のその団子は、わらび餅のように透き通った色にしようとして失敗でもしたのか?ギャグセンスあるじゃないか、お前ならR1優勝出来るかもな……」

 

 

「信悟くん!真面目にやって!」

 

 

「すみませんでしたーーー!!!」

 

 

「須美も信悟も今は敵に集中しろよー」

 

 

「信くんは相変わらずだね〜」

 

 

戦闘中にも関わらず余裕がある俺に影響されて3人も少し表情が和らいでいた。やはり、2体の敵を相手にする事に少なからず不安があったみたいだ。だからだろう、警戒を怠ってしまった。そのタイミングを見計らったように遠くから何かが飛んできているのにすぐ気づけなかった。

 

 

「なっ!?」

 

 

「まずい……」

 

 

「みんな!こっち!」

 

 

「あれ!?もう定員オーバーじゃん!……うおぉぉぉぉぉぉ!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!こっちにくるなぁぁぁぁぁ!!」

 

 

3人は園子の武器の盾の中に入って防ぎ、入る事が出来なかった俺は気合と根性と仲間はずれにされた気持ちをバネに自分に当たる物だけを弾いて防いだ。誰が予想出来ただろう、まさか味方も巻き添えにしても攻撃してくるとは……今だ止むことのない攻撃に終わりがある事を信じて俺達は懸命に防いでいたが、突如として団子が動き俺達に向かってなぎ払いをしてきた。俺は1度弾くことを中断して団子の回避に専念し、その場から飛んで避ける。

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

流石に無茶であったみたいで無傷とはいかず、放たれた矢の1本が左肩に直撃してしまった。だが、団子にやられるよりもダメージは少ないのが不幸中の幸いだ。

 

 

「グッ……!?」

「「きゃああ!!」」

 

 

「はっ?」

 

 

声がした方を見ると銀だけは防いでいたが、他の2人は防ぐことが出来ずに上空に飛ばされて吐血し追い討ちで地面に叩き落とされた……まさか、団子が叩くとは考えてもいなかったよ……

 

 

「「須美!園子!!」

 

 

「大丈夫か!園子!須美!」

 

 

「これは……」

 

 

急いで駆けつけて2人を見ると、どちらも大量の血が体のあちこちから流れていた。須美はまだ意識があったが、園子の方は声をかけても起きる気配がない。まさか、ここでぼた餅の真の力を発揮するとは……ぼた餅は偉大なり!

 

 

「……あいつが矢を……」

 

 

須美さんが怖い顔してるんですけど!!ちょっとぶるっちまったよ……でも、今回だけは俺も同じで矢を放った敵を睨みつける。その敵は絶好のチャンスといわんばかりに次の攻撃を用意していた。

 

 

「まずい……銀!今すぐ2人を抱えて安全な場所に行け!!」

 

 

「なっ!?信悟はどうするんだよ!」

 

 

「俺が時間を稼ぐ!早くしろ!お前は友達を死なせたいのか!!」

 

 

「くっ!分かった、直ぐに戻ってくるから死ぬなよ!」

 

 

「当たり前だ!……ぐっ!!」

 

 

敵の放った矢を2本の剣をクロスして防ぐ。今までの矢とは段違いに威力があり、防いだ時に負傷していた左腕は使い物にならなくなってしまう。だが、後ろの3人を守れたのでこれぐらい安いものだ。防いだ時に何故か爆発が発生して視界が悪くなったので、今なら銀達を逃す事が出来ると考え銀に向かって叫んだ。

 

 

「今だ!行け!」

 

 

「分かった!少しの間だけ持ちこたえてくれ!」

 

 

銀は2人を抱えて走り去る。だんだんと足音が遠ざかっていき、煙が晴れた頃、そこには左腕が垂れている俺1人だけの姿しかなかった。

 

 

「さて、お前らよくも俺のダチに酷いことしてくれたな……覚悟はできてるよなぁ!!」

 

 

俺は右手に大剣を持ち3体の敵に突っ込む……

 

 

 

 

 

 

どれほど戦っていたか分からない、ただ怒りに任せて動いていただけなので細かいところまで覚えていないが、1つだけ覚えている……俺は敵を撃退した後、そのまま倒れた……

 

 

この日……1人の勇者が樹海で倒れ伏し、後から駆けつけた3人の勇者の悲痛な声だけが残った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continue?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう無理だよパトリオット……戦闘シーンが書けない……

僕はもう眠いよ……おやすみ、パトリオット……


次回!パトリオットの秘技!パイルドライバー!

次回は一体どうなるのか?また、3人の勇者の今後は!?


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Side of Three Bravers

久しぶりに投稿


ほとんど忘れたからあれだけど、興味ある人は見てくれ!


樹海化した中、1人の少女は大きな音とは逆方向に2人の少女を抱えながら、今も尚走り続ける。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

疲れた体を止める事のない少女、音から遠ざかるにもかかわらず、その表情は険しくなっていた。

今こうして走っていられるのは、ここにはいないもう1人の仲間……その人物を考える度に胸が締め付けられる……しかし、今自分にやるべき事はこの2人を安全な場所まで運ぶ事が最優先なので無理やり考える事をやめてとにかく走る事に集中する。

 

 

長い事走り急な坂になっている樹を滑りおり、敵からかなり離れた場所に抱えていた2人を地面に置く。

 

 

「ぎ、銀……」

 

 

地面に置かれた片方の少女はまだ意識があり、置いた人物に視線を向けて弱々しく呼びかける。呼びかけられた少女は置いた2人の状態をそれぞれ確認していた。

 

 

「動けるのは私……それとあいつだけか……辛いけど、ここは怖くても頑張りどきだろ。私に任せて須美と園子は休んどいて」

 

 

少女は優しく声を掛けてこちらを心配した表情で見ている少女を落ち着かせる。

 

 

「またね」

 

 

まるでいつもの帰り道での挨拶のように、軽い口調でその言葉を告げてから少女は1人で先程の場所へ駆けて行った。

 

 

「ぎ、銀......」

 

 

どうにかして止めようとして声を出したが、少女の名前を言うので精一杯で、今まで何とか意識を持っていた少女に限界が訪れ、そこで意識を手放した。

 

 

 

2人と別れてから少女はもう1人の仲間の元まで急いで駆ける。そして、ようやく敵の姿が見える距離まで来たときこちらに飛ばされてくる何かが視界に入った。

そんな、まさかと思いながらもその飛ばされてきた何かが落ちた場所を見てみると、少女の予感は確信になった。そこには、ボロボロになって体のあちこちから血を流しているもう1人の仲間の姿があった。

 

 

「あいつら!」

 

 

それを見てから少女は頭に血が上って冷静な判断が出来なくなり、仲間の救助ではなく敵の殲滅を優先した。敵の元まで移動している途中、『銀......あれ?俺の事放置ですか?』という声が聞こえたがきっと気のせいだろう。

敵の前まで着くとすぐに武器を取り出し睨みつける。

 

 

「ずいぶん前に進んでくれたけどな......」

 

 

そう言って片方の武器で地面に線を引く少女。

 

 

「ここから先は、通さない!!」

 

 

それを合図に少女は1人だけで敵に向かって駆けだした。

駆けだしたのを確認した敵は、まず初めに一体が矢を放ってくる。頭上から降り注ぐ矢を防ぐため、少女の両手に持つ武器を盾代わりにしながら走るスピードを落とさずに駆ける。

 

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

 

声を上げながら少女は敵に向かって行くが、全部の矢を防ぐ事は出来ずにいくらかの矢が体をかすった。それでも少女は気にせずに走り続ける。

近づいてくる少女が攻撃範囲に入ったからなのか、それまで動かなかった二体の内の一体が盾のようなもので攻撃してきた。少女はその攻撃を飛んでかわし、そのまま攻撃してきた敵に一撃を入れる。

 

 

「その攻撃は覚えた!」

 

 

一撃を入れて地面に着地すると同時にもう一体の尻尾のようなものが襲ってきたが、後方に飛んで回避する。

 

 

「それで襲ってくるのも、見たよさっき!」

 

 

先程と同様に攻撃してきた敵に隙が出来たところで敵に向かって飛び、一撃を入れる。すると、いつの間にか上空に移動していた敵から矢が放たれるが、焦らずに片方の武器を思いっきりに投げてその敵に当たった。

当たった敵はその巨体が傾き、攻撃も中断していた。またもや、尻尾の攻撃が着地と同時に向かってきたが、今度は前に飛んで回避してその尻尾に乗り、それを足場に利用して上空の敵に向かって飛ぶ。

 

 

「何上から見てんだ!」

 

 

飛ばした武器が刺さっている場所に着いてまずは一撃を入れ、刺さっていた武器を引き抜いてもう一度一撃を入れようとしている時、後ろから二枚の巨大な盾が現れた。このままではやられると判断して攻撃を止めその場から飛び降りる。それを最初から待っていたのか尻尾のようなものが少女を狙い向かってきた。冷静に少女は周りを見ていて気づいていのたので地に足が着くとすぐに防御の姿勢になり攻撃を防ぐが多少は勢いは防げたものの体格差とも言うべき威力のある攻撃に耐えられず傷が増し、後方に追いやられた。

 

「や……やったなぁ!」

 

少女は走る……例え矢が降りそそいでこようと構わずに敵へ向かって一目散に駆けた。

 

「痛かったんだぞ!……自分達で、受けてみろ!!」

 

降り注ぐ矢を回避して近づくと、尻尾のようなものの進路を斧でいなして敵自身に尻尾のようなものの先端が刺さる。予想外の攻撃に敵も思わず上体を逸らし、その隙が出来た瞬間を逃さず少女は追撃を入れる。

 

「お前達は、ここから……出て行けぇぇぇぇぇ!!!!」

 

少女は敵の頭上まで駆け上がりながら何度も何度も斬りつけていき、やがてあと少しで到達するところまできた……その時、少女に異変が起こる。

 

「……がはっ」

 

知らぬ間に移動していた盾のような物体が後方にあり、そこに矢を放って反射したものの一本が少女の腹を貫いていた。傷は深く、急に全身の力が抜け、重力に従い地に落ちていく……しかし、それを敵が許すはずもなく落ちる途中に尻尾のようなものが少女を叩き落とした。

 

「……くっ……がはっ……」

 

少女の傷が増す一方で敵の傷は癒えていき絶望的な状況に陥る。

 

「させるもんか……はぁ……絶対……はぁ……させるもんか……はぁ……絶対……っ!」

 

それでも少女は諦めずに立ち上がり、再び敵に向かっていく。例え攻撃を防げなくて傷を負うことがあっても後ろに引かず前進する。

 

「帰るんだ!……守るんだぁ!!」

 

向かってくる尻尾のようなものは避けて斬り落とし、敵に近づいて確実に一撃一撃を入れていく。

 

「化け物にはわからないだろ、この力!!……ぐっ!」

 

右肩が矢で貫かれようと堪えて斧を振り、右足を貫かれても止めずに斧を振り続ける。

 

「これこそが、人間様の……ぐっ!……気合いだぁ!……根性だぁ!……ぐっ!……魂ってやつよぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

幾度となく攻撃を受けようがそれでも手を止めないで斧を振り、体が限界になるその時まで続けていた……

 

 

やがて、少女の体が限界を迎えてきた時敵の攻撃を受けて距離を離された。

 

「……がはっ……ま、まだだぁ……」

 

遂には奇跡的にまだ繋がっている右腕が動かなくなりながらも、ゆっくりと上体を起こそうとするが上手くいかずに倒れる。それでも敵から視線を外さずに睨みつけもう一度上体を起こそうとした……その時、敵と少女の間に誰かが飛び降りてきた。

 

「おいおい、俺が左で銀が右ってどこぞのペアルックですかぁ?いや、ペアルックではないのか?」

 

その飛び降りてきた人物は場に似合わない事をいいながら左手には何も持たず、右手にだけ大剣を持ちながら少女を見ていた。

 

「しん……ご……」

 

「はいはいそうだからそのまま動かないで。傷が酷くなるから……な?」

 

少年はそう言って少女に近づき敵を前にしてるのも気にせず屈む。

 

「しん……ご……どう……して……」

 

「いや、どうしてって言うのはこっちのセリフだ。さっき俺の事見て見ぬ振りしただろ?……まあ、文句はこいつらをどうにかしてからだ。それまで休んでろ」

 

「でも……」

 

「俺1人でも大丈夫だって、なんて言ったって俺は巷で不死鳥と呼ばれているからな!……ごめん。今のは嘘だ……とにかく、どの道お前はこれ以上は限界なんだから俺に任せとけって!」

 

「……わかっ……た……」

 

「素直でよろしい……お前の分まで俺が絶対に守ってやるよ。もちろん銀の事もな……だから、今は安心して寝てろ」

 

少女はその言葉を聞き気が抜けてしまい段々と睡魔が押し寄せてきて、まぶたを閉じた。

 

「ようやく寝たか……相変わらず頑張り過ぎなんだよ、銀……敵に攻撃される前に治療しておくか……『癒血』」

 

少女はまぶたを閉じているので見えないが徐々に体が何かに包まれ、体が軽くなっていく気がした。でも、それに呼応して先程よりも睡魔が増し意識が遠のいていく。

 

「またな、銀……ぐはっ!……ちっ、やはりダメージが大きかったか……悪いがお前らにはツケを払ってもらうぞ!!!」

 

 

少女が意識を失う前、最後に聞こえたのは少年からの別れの挨拶だった……

 

 

 

 

「……ん!……ノ……!」

 

「ぎ……!銀!」

 

近くから少女を呼ぶ声が聞こえ目を覚ます。呼びかけられた方を向くとそこには見知った顔があった。

 

「須美……園子……」

 

「銀!!」

 

「ミノさぁぁぁん!!」

 

「……園子、いきなり抱きつくなって」

 

「そうよそのっち!銀は怪我しているのよ」

 

「うぅぅぅ、だってぇぇぇ……死んだかと思ったんだもん……」

 

「勝手に殺すな……私は生きてるよ園子」

 

「あの後起きたら銀が居なくて心配したのよ!……でも無事で良かったわ……」

 

「悪い悪い、2人には心配かけたな……あれ?信悟はどうしたんだ?」

 

「え?ミノさんと一緒じゃなかったの?」

 

「いや、私が意識を失うまでは一緒だったけど……そうだ!バーテックスはどうなった!?」

 

「銀が撃退したんじゃないの?」

 

「いいや、私じゃあいつらを倒せなかった……」

 

「そうなの?それじゃあ……」

 

「信くんが倒したんじゃないかな?」

 

「そうかもしれない……でもあの時のあいつは怪我をしていた筈だけど……須美、園子、信悟を探そう!」

 

「どうしたのミノさん?」

 

「何か嫌な予感がするんだ、早く信悟を見つけないとたぶん後悔する気がする……」

 

「そうね……バーテックスが居なくなったからと言って安心は出来ないわ。探しに行きましょうそのっち、銀」

 

「うん!……もしかしたら寂しくて泣いているかもね〜」

 

「もしそうならからかってやろう!」

 

「2人ともそんな事言ってないで早く探しに行くわよ」

 

「「はーい」」

 

「そういえば銀、怪我は大丈夫?」

 

「おうよ!何だか知らないけど全然痛みがないんだ!今ならバーテックスが来ても倒せるよ!」

 

「さすがミノさん!」

 

「褒めるな褒めるな。それより2人は大丈夫なのか?」

 

「ええ、心配いらないわ。走るのは無理だけど歩くぐらいなら出来るわ」

 

「私も〜」

 

「別に待っていてもいいぞ?」

 

「また銀が無茶するかもしれないでしょ?それに、バラバラに動いた方が危険だわ」

 

「わっしーの言う通りだよ〜、それに信くんの泣き顔が見れないもん」

 

「園子って意外と酷い事言うよな、と言うか信悟が泣いているのは確定してるのかよ……よしっ!それじゃ行くか!」

 

「ええ」

 

「お〜」

 

「勇者は気合と根性!待っていろよ信悟!絶対にからかってやるからな!!」

 

3人の少女は足取りが遅いながらもゆっくりと歩き、もう1人の仲間を探し始めた……そして、歩き始めてから数分程して目的の人物を見つけた。だが、それは予想とは到底離れた結果として少女達の目に写る。

 

「嘘……だろ……」

 

「そんな……」

 

「信……くん……」

 

そこには剣に背中を預けて座っている少年が、血を流しながら目を閉じたまま動かないでいた。

 

 

 

それを見た少女達は感情を隠しもせず、大声で泣き叫び、それだけが樹海に響き渡った……

 

「信くん……」

 

少女は未だに目を開けない少年の手を握り涙を流し続けた……

 

「信くん……起きてよぉ……」

 

少女の問いに少年は答えてはくれない。それを理解しながらも何度も問いかけ続ける少女……

 

「嫌だよぉ……死なないでよぉ……」

 

結果は変わらずのまま少年に何度も諦めずに問い掛ける少女……そして、握っている手に力が入る……

 

すると、少女の願いが届いたのか、少年の体に変化が現れた。

 

「……生きてる……信くん!!」

 

握っていた手が一瞬だけピクリと動いたのを見て少女は少年の名を呼ぶが、やはり答えてはくれない。

 

「園子?」

 

「そのっち?」

 

「わっしー!ミノさん!信くん生きてるよ!」

 

「え?」

 

「今指が一瞬だけ動いたの!」

 

「それは本当か!」

 

「うん!早く病院に連れて行こう!もしかしたら助かるかも!」

 

「ああ分かった!!須美!樹海化が終わったらすぐに電話してくれ!」

 

「え、ええ!分かったわ!」

 

そして、少年が目を覚まさないまま樹海化が解けていく。樹海化が解けた後、すぐに少女達は119に電話をかけ、駆けつけた救急車に乗せられる少年をその時まで見守った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のは3人の勇者視点でのものなので話は進んでないっす……ごめんな



今は筆休め程度でしか書く暇がないので更新するかどうかも分からんです!


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