三代目 F Soul Hokage (シズネ)
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原作開始前
目覚め


「うわ…マジで転生しちゃったよ。いや、NARUTOは大好きだけどさ、流石に死亡フラグ満載のこの世界で生きるのは勘弁だわ」

 

1人となった病室で呟く。そう、俺はこのNARUTOの世界に転生したのだ。しかも憑依転生、その憑依先とは…

 

「しかも三代目火影かよ!ジジイじゃねえか!!ったく20歳からもうすぐ寿命が来る好々爺になっちゃったよ!!!」

 

 

ーーーー15分前ーーーー

 

「……………」

 

「火影様!!良かった。お目覚めになりました!」

 

「三代目!!!」

 

「猿飛先生!」

 

目が覚めると白衣を着た数名の人々と、白髪の歌舞伎役者みたいな者が顔を覗き込み、安堵の表情を見せていた。中には涙ぐんでいる者もいた。

 

(うわ、本当に来ちゃったよ。六道のジジイが言ってたのマジだったんだな…。あ、自来也じゃね?自来也だこの人)

 

「火影様、覚えておられますか?一時は本当に危なかったのですよ!」

 

「え!?あ…うん。なんとか大丈夫っぽい」

 

「火影様?」

 

(そうだ、俺ジジイなんだ。気を付けなきゃ)

 

「うむ、問題ない。俺…いや、儂の身体は大丈夫だ…じゃ」

 

「流石です三代目!ただ、実は……」

 

「先生の奥さんのビワコ様と、四代目夫妻が殉職した」

 

自来也が神妙な面持ちで告げた。

 

(ビワコ…?ああ、ヒルゼンの妻だったっけ。てか俺の妻か)

 

「そうか…他にも多くの犠牲者が出たのだろう。大変なことになったのう」

 

「ああ、とりあえず里の復興を第一に、あとそれを指揮する者、つまり新たな火影が必要だ、先生」

 

「そうじゃのう…。自来也、お前がやってみるというのはどうじゃ?」

 

「それはちと厳しいのう…。儂はミナトの代わりができるような器じゃねえ。旅をしながら執筆活動に勤しむってのが性に合ってんだ。だけど、それ以外にできることがあるなら何でも言ってくれ」

 

(そう言うと思ったよ。まーこれは原作通り、俺が火影になるって感じかな)

 

「わかった。とりあえずは儂が指揮しよう、身体も問題なさそうじゃしな。儂はひとまず身支度を整えてから火影邸に向かう。とりあえず皆の者下がって良いぞ」

 

「「「押忍」」」

 

ーーーーーーーーーーー

 

とりあえず何とか自来也と会話成立したけど、ここからどうしようか…。えーと、ここから何があるんだっけ?

 

まず原作開始前だと…

 

ヒザシ死亡…はもう終わって…無くね?確かヒナタが2,3歳とかの時で、ナルトは生まれたばかりって考えると、あと2,3年の話だ。

 

うちはクーデタ未遂…もまだだな。というかその大きなきっかけとなった九尾襲来がついさっきの出来事だったな。

 

パッと出てくるのはこれくらいだな。そして何が一番やばいかって…

 

「木の葉崩しで俺死ぬじゃん!教え子のオカマに()られるじゃん!!」

 

どうしよう。これだけは避けなきゃいけない。本当に死ぬのは勘弁、ついさっき俺死んだらしいけど。

 

うーん、まずやらなきゃいけないのは里の復興だ。それと木の葉崩しはそもそも起こるのを防ぎたいけど…もし起きちゃった場合を考えると里の戦力を上げるしかない。

 

そのためには…

 

「うちはを味方に付けて壊滅を防ぐ、がいいかな。あとヒザシの命も救いたい」

 

原作通りに行くと九尾襲来の嫌疑をかけられて、うちはの不満が高まるんだよな。あ、てかダンゾウが大体悪いんだっけ。

 

ヒザシの方は今から取り急ぎ準備することも無さそうだし。まずはうちはの件…と何より里の復興が第一だな。




初投稿です。まだよくわかってないとこが多いので、良かったらご指摘ください。


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相棒との出会い

「ふう…とりあえず何とか終わった」

 

初めての火影の仕事を終えてきました。正直、判子を押したり許可出したりするのが多くて、あんまり頭使わない。というか部下がみんな有能だわ。

 

「久しぶりの火影はどうだったか?」

 

「え?あー、まあ少し疲れたかな」

 

「ヒルゼン、お前目覚めてからたまに変な口調になるな。何かあったのか?」

 

「!いや、別に何もないんだ…じゃが。気のせいではないか?」

 

「そうか、なら良いのだが。まだ身体は万全ではないんだ。しかも年齢が年齢だ。気を付けろよ」

 

「うむ、ありがとう」

 

そしてこのホムラとコハルが色々助けてくれたのも良かったわ。原作ではなんか保守的で綱手の神経を逆撫でする感じだったけど、今日は大分助かった。

 

さて、さっき思い出したんだけど、ヒルゼンって猿魔を口寄せにしてるんだったよな。多分俺になる前のヒルゼンが死んだ時は猿魔も一緒だったはず。心配してるよな?

というか猿魔だけには俺の事情話してもいいかも。というか話すべきかもな、俺の為にも。

 

ホムラとコハルはもう退出したし、人払いしてから口寄せしてみるか。

 

えーと印は…こうだったかな。

 

「口寄せの術」

 

「…! ヒルゼン!お前生きておったのか!!」

 

「うむ…何とかな」

 

「そうか…しかしどうやって?あの九尾の攻撃を食らって、儂の口寄せも切れたから一度は死んだはずじゃが?」

 

鋭い。なんか原作ではそこそこ頭切れそうな感じだし、てか猿魔だし。話しておいた方が良いな。

 

「そのことでのう…お前に話しておきたいことがある」

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

目覚めると、そこは何もない真っ白な世界だった。

 

「…ん?ここは?変な空間だな。もしかして夢の中か?おー、夢の中で夢だと悟ることって本当にあるんだな!感動だわ」

 

でも本当に何もない。怖くなってきた。

 

「おお、やっと気付いたか」

 

「うわっ!え、誰すか?急に出てきた」

 

何もない空間に急におっさん登場。怖すぎ。こんな夢見たことねえ。

 

「驚かせてすまんのう、ここは確かにお主の生きる現実世界とは違う空間じゃが、夢というのも少し違うかの」

 

「え、急に何?…てか、あなた、見たことあるわ。えーと…あ、そうだ。六道仙人だろ!え、何で?」

 

「儂のことをそう呼ぶ者もいるみたいだな。儂の名は大筒木ハゴロモ。実はお主に話がある。お主は死んだ」

 

意味がわからない。俺が死んだ?

 

「は?え?何急に。変なこと言わないでよ。え、は?どういうこと?」

 

「話すと複雑で長くなるのだが、簡単に言うとお主の魂が異世界の人物に憑依することとなった」

 

うわ、ハーメ○ンのよくあるやつじゃん。

 

「え、いや俺そういうの知ってるけどさ、嘘だろ?馬鹿言わないでくれよ」

 

「すまんな、異世界でちとイレギュラーがあってのう。まだ死なない筈の人物が死んでしまったんじゃ。そこで儂がお主の魂を呼び寄せ、その人物の肉体に憑依させた。勝手で申し訳ないのだが、そういうことなのじゃ」

 

「うわー、なんかマジっぽい」

 

「マジじゃ、すまんのう」

 

「で、誰が死んだの?あんたが出てきたってことはNARUTOの世界なんだろ?」

 

「猿飛ヒルゼン。或いは三代目火影と言えば良いかの。つい先程起こった九尾襲来の際、里の人々を守る為に戦っておったのじゃが、九尾の攻撃を受けてな…」

 

「三代目が?え、四代目はどうなってんの?」

 

「猿飛ヒルゼン以外の顛末はお主が想像しているのと変わらん。まあその分民間人への被害は多少減ってはいるがな、多少じゃ」

 

「そうなんだ…え、てか俺は三代目に転生するのか?ジジイじゃん。俺20歳なの知ってるよね?」

 

「そこは何とかする。身体機能、チャクラ、筋肉等は彼の20歳の頃に戻すくらいはしてやれる。ただ、外見はどうにもできん」

 

「マジかよ…ジジイになるのかよ…。てか身体が若返っても俺は忍のイロハなんて心得てねえし、すぐ死ぬんじゃないのか?」

 

「そこも心配するな、お主は猿飛ヒルゼンとして、生前の猿飛ヒルゼンが自ら把握していた忍としての能力を共有することはできる」

 

「あーつまりそこは何とかなるのか。20歳の若さを持ち、人々に教授(プロフェッサー)と呼ばしめる程の豊富な忍術があるってチートにならない?」

 

「問題はお主の精神じゃ。民間人と忍者の最大の違いは運動能力ではなく精神力だ。幾ら豊かな才能を持っていても、それを発揮するには覚悟が必要なのだ」

 

「そーなんだ。じゃあ、術とか運動は何とかなるけど、その使い所は俺次第なんだ。ジジイの経験と勘は共有されないと」

 

「そういうことじゃ。そして今お主はこのような状況じゃ」

 

頭の中に映像が映し出される。そこには猿飛ヒルゼンが病院のベットの上で昏睡状態になっており、周りを医療忍者が囲んでいる。

 

「えーと、この状況から目覚めたら、俺の異世界転生が始まるのか?」

 

「そういうことじゃ。そろそろ儂も限界じゃ。本当に申し訳ないが、この世界を守ってくれ。お主は色々と知っているようじゃからのう」

 

「はあ…急だけどわかったよ。NARUTO好きだし、何とか生き延びてみるさ」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……って感じなんだ。だから俺はお前が知ってる猿飛ヒルゼンじゃない」

 

「むぅ…俄かには信じ難いが、お前が生きているとすればそのような理屈でないとおかしいのかもな。わかった。とりあえずは信じよう」

 

「てことで宜しく頼むよ、猿魔。お前にしか教えてないし、もちろんこの先誰にも言うつもりはない」

 

「お前に改めて宜しくと言われるのも変だな…だがわかった。ところでお前はこの先に起こることを知っているかのような言い方だったが、一体お前は何者なんだ?」

 

「あー、そっか。実はさ、俺はこの世界を一つの文学作品として知っているんだ。でもそこでは三代目火影は九尾襲来で死ぬことはなかった」

 

「文学作品!?そんなことが異世界にはあるんだな…イレギュラーとはそういうことか」

 

「そういうことなんだ。そこで、色々協力して欲しいことがあるんだが、手を貸してくれるか?」

 

「お前が以前の猿飛ヒルゼンでなかろうと、儂は“猿飛ヒルゼン”に仕えることを選んだのじゃ。勿論だ」

 

「ありがとう。とりあえず、俺は実戦経験をとにかく積んでおかなくちゃいけないんだ。チャクラがあるから影分身の維持も何とかなりそうだし、本体が火影の仕事をしてる間、影分身を逆口寄せして俺を鍛えてほしい」

 

「そういうことか、確かに九尾襲来の時も身体が少し鈍っていたのは否めない。全盛期のお前に戻すことを目指してやってみるか」

 

「ああ、宜しく頼む」

 

「おう。あと、儂の前では良いが、その口調何とかしとけよ?」

 

こうして、火影の仕事をこなしながら、忍者としての経験を積む生活が始まった。




陣の書読んだのですが、享年が69歳で、ナルトが当時12,3歳なので、現時点では56,7歳ですかね。思った程老いぼれてない。


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オッサンの会議

オッサンばっか出てるので一人称が「儂」ばっか。読み辛くてすんません(笑)


翌日、今後の体制を決める会議が開かれた。参加者は俺とダンゾウ、ホムラ、コハルと、他上忍数名。上忍は全然知らない人ばっかり、猪鹿蝶の親父達はまだ上忍じゃないのかな?シカクは特に有能だから、近いうちに調べておかなきゃな。

 

「ヒルゼンよ、お前は本当に大丈夫なのか?九尾の攻撃を受けてから復活したとはいえ、もう以前のように動けるとは思えん。そろそろ潮時じゃないのか?」

 

あーそうそう、ダンゾウってこんな嫌味なやつだったっけ?木の葉への想いは人一倍あるとはいえ、火影への執着は目に余るな…。根(性格的な意味)は良いやつだと思うけど。

 

「冗談はよせ、ダンゾウ。儂は今全盛期を思い出す程に絶好調じゃよ」

 

さっさとダンゾウを適当にあしらって、会議を始めよう。

 

「さて、今日集まってもらったのは他でもない。今回の九尾襲来に伴う甚大な被害の収拾をつけるべく、今後の体制を話し合おうということじゃ。ただ、皆の者が昨日からすぐ里の復興に貢献してくれている。木の葉の里の復活は思ったより早くなるかもしれんのう」

 

「火影様。確かに現在迅速な対応が進んでいるのは事実ですが、多大な犠牲が出た現状を考えると、人々の精神的な傷はそうすぐには癒えるとは思えません」

 

確かにそうだよな…。当たり前だわ、一応俺だって妻を亡くしてるし。

 

「それは最もじゃ。さて、四代目亡き今、暫定的に儂が火影を行うことになると思うが、それで「五代目を早く決めるべきだろう」

 

ダンゾウが割り込んできた。悪いけど、今後起こる出来事を知っている俺が火影の座を退くつもりはないよ。

 

「ダンゾウよ、確かにそれも一理あるがのう、ただでさえ混乱している今、新たな指導者を立てて更に混乱が生じてしまえば状況が悪化するだけじゃ。最悪の場合、火の国の混乱を受けて他国が攻め入り、第四次忍界大戦勃発なんてこともある」

 

「ヒルゼン、それは考え過ぎではないか」

 

ダンゾウしつけえ…

 

「最悪の場合じゃと言っておろう」

 

「ヒルゼンの言う通りだ。これ以上の混乱を防ぐために、三代目が再び火影の座について復興を進めるべきだと思うぞ。五代目を立てるのはそれからでも遅くはなかろう」

 

「私もそう思うぞ」

 

「……わかった。一先ずはそれでよいだろう」

 

ナイス!ホムラとコハル!とりあえずこれで収拾ついたかな…

 

「…ただな、今回の九尾襲来は、何が原因なんだ?今までは時代時代の節目に発生する天災と考えられてきた。もしかしたら近いうちに何か大きな転換が起こるのかもしれないが、今のところそういう兆候は見られない」

 

やっぱ痛いところ突いてくるな。原作ではここでうちはが疑われるって訳だ。何とかしたいけど、昨日は色々ありすぎて対策考えられなかったな。

 

「儂が根の者を遣って調査してこよう」

 

「その必要はない、ダンゾウ。もう既に儂直属の暗部に調査を命じてある」

 

「本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「ああ、任せておけ。責任を持って儂が調べ上げよう」

 

本当にここでうちはの仕業だとする証拠をでっち上げて来られたらたまったもんじゃない。ハッタリでも何でも今はダンゾウの暴走を防ぐのが大事だ。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…とりあえずこれで良いだろう。ダンゾウ、ホムラ、コハル以外は下がってよいぞ」

 

「ハッ!!」

 

さーて、これからが一番大事な話。そう、九尾を封印された金髪の男の子、ナルトの処遇についてだ。

 

「ミナト達の子供のことじゃ」

 

「九尾を封印されているみたいだな。どうするってお前、当然里の管理下に厳しく置く必要があるだろう。男なのだから出産に伴う封印の緩みの心配はないが、今回のようなことが二度と起きてはならん」

 

ダンゾウの言うことは全くその通りだ。ただ、今後ナルトはこの世界において大変重大な役割を担う忍者になる。そのための障害は俺が何としてでも取り除いてやらねばならない。憎しみに支配されるような環境も当然忌避すべきだ。俺のイレギュラーがあったんだ。ナルトの身に何が起こるかもまだ分からない。

 

「そうじゃがな、ダンゾウ。あの子は1人の人間じゃ、この里の人間として、幸せな人生を歩む権利がある」

 

「ただの人間ではない、人柱力だ。ヒルゼン、お前は九尾襲来を受けてもなお平和ボケか?」

 

「言葉を慎めダンゾウ。確かに人柱力というのに間違いはないが、それ以前に彼は大切な木の葉の子、儂にとっては家族も同然じゃ。この子は儂が面倒を見よう」

 

「それはわかったがヒルゼンよ、この子の姓はどうするつもりだ?波風かうずまきか、これは重要な問題だぞ」

 

ホムラが真剣な表情で尋ねた。

 

確かにな、原作ではうずまきの姓を名乗り、四代目の息子であることを隠したがために、多くの憎しみを直接受けるような形になってしまった。

 

もし波風ナルトとすればどうなるか?それは彼が人柱力であることを他里に示すような者だ。自分で自分の身を守れない子に他里から狙われ続ける運命を背負わせることになる。

 

そう、つまりこれは苦渋の選択。どっちを選んでもナルトが辛い運命を背負うことに変わりはないのだ。それならば、火影としての判断は、里に混乱・被害がより及びにくい選択をすること。自明である。俺は答える。

 

「勿論うずまきナルトだ。波風の姓を名乗るのは自らが人柱力だと他里に示すようなものだ」

 

 




ここは原作通り、うずまきナルトになりました。別にダンゾウが特に嫌いって訳ではないのですが、成り行き上、こんな感じになりました。


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天災か、事件か

一先ず会議は何とか思い通りにいった。火影の座には着けたし、一時的ではあるがうちはへの疑いも誤魔化せた。ナルトも保護できた。

 

ナルトはまだ赤ん坊なので基本的には俺の影分身が世話をしている。他の者に任せるのはあまりにもリスキーだ。流石火影だけあって、ヒルゼンの全盛期のチャクラ量はかなりのものらしい。勿論ナルトには遠く及ばないが、それでも火影の職務、ナルトの世話、猿魔との修行を並行する程度なら問題ない。

 

 

さて、次に俺がやることは「うちはを木の葉の味方に作戦」だ。

 

木の葉崩し、そして約16年後に勃発する第四次忍界大戦に備えて木の葉の里の富国強兵策を俺は考えている。確かに"以前の"ヒルゼンと同じく俺は木の葉の里の皆を家族として守り続けたく思う。しかし、俺は彼みたいに甘くなるつもりはない。木の葉の戦力を上げるつもりだ。その中で、大きな戦力ダウンになるうちは壊滅は何としてでも避けなければならない。

 

そこで、俺は色々細工を仕掛けた。これで、とりあえずはうちはにかけられる嫌疑を消せるはず。さて、そろそろ暗部が来るかな…

 

コンコン

 

「入れ」

 

「ハッ!火影様。四代目の亡くなった場所で、何かの巻物が見つかりました!封印がかけられています。その複雑さ故、四代目が書いたものではないかと思われます」

 

よーし完璧!!とりあえず暗部は四代目の遺した巻物と思っているみたいだ。

 

「何じゃと!?貸してみろ。…ほう、この封印はうずまき一族のものだな。恐らくミナトがクシナから教わったのだろう…」

 

白々しい演技をしてしまった。では巻物を開いてみるとするかな。

 

「とはいえ、儂も伊達に教授(プロフェッサー)と呼ばれてはおらん。このレベルの封印なら何とか…」

 

自分がかけた封印なんだから解けて当たり前です。

 

「良し。恐らくミナトは儂に何か重大なことを伝えるためにこのような形で遺したのだろう…」

 

巻物には今回の謎に包まれた九尾襲来の原因を明らかにする、衝撃の事実が記されていた。

 

「…!!何じゃと!?あいつが…おい!至急ダンゾウ、ホムラ、コハルを呼び寄せるのじゃ!!」

 

「ハッ!!」

 

計画通り…これで何とかなりそうかな…

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…何じゃと!?マダラが九尾を呼び寄せたじゃと!?」

 

コハルが驚きの表情で尋ねた。

 

「ヒルゼン、これは本当に四代目が遺したものなのか?」

 

ダンゾウも少し動揺しているようだ。

 

「間違いない。筆跡もこれはミナトのものだ。そもそもこんな嘘を付ける奴がおるか?事実は小説よりも奇なりってことじゃ…」

 

筆跡は、四代目の記した書類から何とかなりました。というかそこまで怪しまれてない。それ以上にマダラという存在が余程衝撃なのだろう…マダラ、恐るべし。

 

「これで分かったじゃろう、ダンゾウ。これはうちは一族の仕業ではない。彼らはマダラを見捨て、マダラの方も木の葉を恨んでいる。そもそもうちはが里の政から遠ざけられているのはマダラの仕業じゃろう。それをこの時代まで引きずってきた儂らにも責任がある」

 

というか先代が卑劣なだけだろ、うちはに、というかマダラに。

 

「うちはが危険なのはその排他的な性格故だ。政にはそもそも合わないからそうなっただけだ。…しかし、確かに今回の襲来はうちは一族が起こしたとは考え辛いな」

 

ダンゾウも渋々認めたかな。原作ではうちはの仕業と決めつけていたが、四代目の遺言とマダラの存在が出てくると流石に考えは変わるみたいだ。

 

「いずれにせよ、これは極秘事項じゃ。マダラの存在はあまりにも危なすぎる。…もしかするとこれは、マダラからの宣戦布告ではないのか!?もしそうであれば本当にまずいぞ!」

 

ホムラも最悪の事態を想定したのか、狼狽えている。よし、このまま畳みかけよう。

 

「儂も同じことを危惧しておる。仮初めの平和の下にある今、マダラの逆襲が起これば、木の葉の壊滅は免れまい。そこで、我々に必要なのは、里の戦力の強化じゃ」

 

「富国強兵策ということか、ヒルゼンにしては中々過激な考えだな。一度死にかけて人が変わったか?」

 

ダンゾウさん、イグザクトリィ!!!!

 

「平和の維持には、不断の研鑽が不可欠。それを今回痛感しただけじゃ。そして、儂はうちは一族を他の旧家と同様に政に参加させるべきだとも思っておる。少なくともフガクには、この巻物の件を伝えるつもりだ」

 

「ヒルゼン!これは極秘事項だと言ったばかりじゃろう!」

 

「だからこそじゃ。これをうちはのトップ、フガクだけに伝えることで、うちはと里の繋がりは強まる。うちはの者がどれだけ優秀かはお前らも心得ているはずじゃ」

 

「まあ確かに、カガミのように里に尽くす者もおったしな。最近ではシスイとやらも頭角を現して来ているみたいだ」

 

コハルが賛成してくれてるみたい!良かった!

 

「今回の事件を機に、我々は新たな風を取り入れるべきなのじゃ。その一つに、うちはとの連携強化が必要だということだ」

 

「儂は完全に賛成はしない。しかし、木の葉を守る為なら、多少こちらの譲歩も止むを得んな。ただ、この後のうちはの動きには注意しておく」

 

ダンゾウは渋々…と言った感じだ。でも「木の葉を守る」ってことを強調すれば、意外と寄り添ってくれるかも。

 

「すまんのダンゾウ。ただ、他にも戦力強化策は一応考えておる。そこではお前の意見も取り入れたいと考えておる」

 

「ほう、他に何か考えでもあるのか?」

 

「今考えているのは、アカデミーの教育カリキュラムの見直しじゃ。戦時中でない今こそ、じっくり将来の忍を鍛え上げるべきだと感じておる」

 

そう、俺はずっと、アカデミーでチャクラコントロールをもっと教えるべきだと思っていた。水上歩行は無理だとしても、とりあえず木登り程度は全員できて当然までの水準までは上げたい。

 

「それは儂も同感だ。根の組織をもっと充実させるためにも早期教育はあっても良いな」

 

やっぱそういうことも考えてたよね…根も何とかしたいけど、ダンゾウと明らかに対立するのは絶対避けたい…。

 

「う、うむ…」

 

ーーーーーーーーーーー

 

とりあえず3人の考えを変えることができた…

ちなみに巻物には、仮面のやつがマダラで、こいつが九尾口寄せした的な内容です。ペイン戦でミナトがナルトに伝えたこととほぼ同じ。

 

フガクに四代目の巻物を見せると、超驚いていた。ポーカーフェイスだったから、少し面白かったです。

まあでもそれで俺がうちはを政に参加させると言った時は少し驚く一方で、何かまだ疑っているような雰囲気が感じられた。ただ、これからお互いに歩み寄りたいという姿勢は見せられたかな、と思う。

 

 

さて、これで九尾の一件は落ち着いたかな。

 




ボルト世代とか普通にサラダが水上歩行できかけてたよね。平和になった割には教育水準上がってません?


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猿飛先生


誤字報告ありがとうございました。

前半は閑話みたいな感じです。


九尾の事件から3年経った。最初はどうなることやらと思ったが、3年経つともうこの世界には慣れた。

 

原作では語られていない猿飛ヒルゼンの人間関係だったり、火影としての職務だったりで最初の約3ヶ月はマジで大変だった。

大名との食事とかはすげー緊張したが、色々リサーチしてお寿司を振舞ったら喜ばれた。

人間関係も苦労したが、皮肉にも先の大戦で同僚の多くが亡くなっていたため、大きなトラブルには繋がらなかった。

 

ナルトは3歳になり、何とか事件は無く、無事やって来れたが、如何せん俺くらいとしか関わりがない。俺自身、影分身として面倒は見てる分手間はそこまでかからないが、友達がいないのは少し寂しくないか?

と最近は思っている。勿論他の子供達と公園で遊ぶとなったらその親が黙っていない。大変なことになる。

 

個人的には、イタチに子守をさせるなどして、たまにはサスケと遊ばせるとかすればいいかなーとか考えてる。今度フガクに頼んでみようかな。うん、これもうちはとの歩み寄りだ、歩み寄り。

 

あと、俺のそばにいるからか、はたまた哀しいかな、俺以外には存在すら認められていないことを子供なりに悟っているのか、火影になって里中の皆から認めてもらうことを目標にしているみたいだ。3歳で既に決意してたのか、すげえよ。

一応俺がそばにいて相手をしているが、ナルト自身は修行(という名の遊び)で自分の実力を高めているつもりらしい。可愛い。ただ、原作よりは強くなってるんじゃないかな、まだ何とも言えないけど。食事には気を使っているので、背は伸びるかな?

ラーメンはまだ食べたことないです。今度一楽連れて行ってやるかな。

 

 

俺はといえば、猿魔との修行である程度実践経験を積んだつもりだ。彼曰く、今俺の実力は当然トップクラスなのだが、経験による勘や判断能力を踏まえると、まだ以前の"ヒルゼン"の全盛期には遠く及ばないらしい。そこで、更なる実践経験を得るため、新たな試みを始めた。

 

それは、分身が己の暗部として任務に当たる、というものだ。最初はバレないかハラハラしたが、ずっと面を着けているし、感知タイプの忍びを同行させないことでなんとか問題なく行えている。

やはり実際の任務は大変だった…けど、思ったより精神的負担はなかった。「人を殺す」というのは当然初めてで、ぶっ倒れるのではないかと心配したが、本能レベルでそれに対する耐性は「猿飛ヒルゼン」に備わっていたみたいで、任務に支障はきたさなかった。忍って、やっぱり凄い。

 

そしてなんと言ってもここ3年で一番凄かったことと言えば、孫ができたことだ。孫だ。俺は20歳でここに転生、そして3年が経ち、実年齢23歳だ。孫ができた。意味わかんない。

そしてまさかと思ったが、俺が名付け親になるよう頼まれ、原作通り「木の葉丸」と名付けた。新鮮な体験だった。まさか俺が彼の名付け親になるとは…

まあまだ0歳の赤ん坊であるので、「おいジジイ!勝負だコレ!」とかはなっていない。もう少し大きくなって、ナルトを兄ちゃんと呼んで慕うような関係になっていればいいなと思う。

 

 

そして、政治の話になるが、アカデミーの教育カリキュラムを新たにした。これにはダンゾウの意見も取り入れた。具体的には、「チャクラコントロールの徹底教育」「体術の基礎を身体に覚えさせる」だ。

 

前者で言えば、以前はアカデミーでは「チャクラを感じて、分身や変化程度の簡易な術を発動できるようになる」が最終方針であったが、もう少し踏み込んで、より効率良くチャクラの運用をできるようにするような教育方針にした。

これを最終方針とすると、両親が優秀な忍である場合と、そうでない場合とで今後の大きな差が出てきてしまう。木登りができるようになるのは絶対、できる子は水上歩行も、と言った形にした。

アカデミー教師についても、よりチャクラコントロールの造詣を深めるように指導した。結果、今年の卒業生は全員木登りができるようになった。また、卒業試験の難易度もその分上がったが、落第する生徒はおらず、木の葉の子供の能力とアカデミー教師の指導力は素晴らしいものだったと言う他ない。

 

後者で言えば、ただ闇雲に走らせたり、戦わせたりするのではなく、正しいフォームで無駄なく動けるような基本動作の習得を徹底させた。招待講師としてマイト・ガイに授業をさせたこともあったらしいが、あまり思わしい結果ではなかったみたいだった…女子の感想の殆どが「あの眉毛の先生暑苦しい」だった。勿論本人には伝えてない。あまりに可哀想過ぎる。

だが、やはりここも優秀なアカデミー教師の指導によって、生徒の基礎運動能力の向上は達成されたようだった。

 

ダンゾウがもっと精神訓練を課すべきだとも言ったが、流石にそれは止めた。一応学校なんだし、楽しい環境じゃないとね。でも、この教育カリキュラム変更を俺とダンゾウの二人の名で以って発表し、成果が上がったからか、少しダンゾウは丸くなった気がする。マジでほんの少しだけど、多分。

 

そして、まさか言うべきか、流石と言うべきか、このように教育水準を上げてもイタチは難なく7歳で首席卒業、当然水上歩行も完璧にこなしていた…

 

 

まあこんな感じで色々良い出来事を並べてはいるが、勿論止められなかったこともある。大蛇丸の里抜けだ。

 

原作の様に、隠れて実験施設で禁術開発をする大蛇丸を見つけることは出来たのだが…

 

ーーーーーーーーーーー

 

「大蛇丸!お前こんなところで…!」

 

「あら、見つかってしまいましたね…」

 

「最近里の忍や子供が行方不明になっているのはお前の仕業だったのだな!こんなことはやめるのだ!」

 

「猿飛先生…あなたの目指す強い木の葉のためには、この様な術の開発も必要なのではないんですか?今更ワタシは木の葉がどうなろうとどうでもいいですけど、先生との利害は一致してますよね?」

 

「馬鹿言うな!戦力強化は手段じゃ!木の葉の皆が平和に暮らすことが最も大事なのだ!貴様は手段を目的化し、真の目的を見失っている。目を覚ませ!」

 

「見解の相違ね…私の目的はこの世の全てを解き明かすこと。それは全ての術を知り得ることに他ならない!あなたの目的とワタシのそれとは相容れない関係にあるってことですね…さあ、ワタシを殺すんですか?先生」

 

「残念だが、儂は火影として貴様を葬り去らねばならない!」

 

"猿飛ヒルゼン"として、初めて闘うこととなった。暗部としては幾度か任務を経たが。

 

「風遁・大突破!」

 

「クッ!」

 

やはり、経験は大蛇丸が勝り、儂と暗部よりも早く術を発動させてしまった。暗部はかなりの威力に吹き飛んでしまう。何とか俺は持ちこたえることができた。

 

「口寄せ・猿猴王・猿魔!」

 

「ヒルゼン!お前、大蛇丸とケリつけるのか!」

 

「猿魔まで口寄せするとは…本気なのですね、猿飛先生!」

 

地下の密室で、下手に大きな術を発動するとこの場所が崩壊しかねない。大蛇丸は俺より器用だ。地の利は向こうにある。2対1にはなったが、当然油断は出来ない。

 

「潜影蛇手!」

 

激忍でよく使ってたな…って、避けられねえ!何でだ!?

この程度のスピードなら猿魔との修行で散々反復練習したはずなのに!

 

「チィッ!!やられた…!」

 

「ヒルゼン!(くそっ、無意識レベルで過去のあいつの思念が残ってるのか!)油断するな!お前は恐らくこいつ相手ではどうしても手加減してしまうんだ!」

 

クソが…此の期に及んで俺の魂とこの肉体の間に摩擦が生じるってことかよ…!

 

「あら、先生。腐っても教え子、ってことかしら?手加減なさらない方が良いですよ。ワタシも一応三忍が一人ですからねえ…潜影多蛇手!!」

 

さっきと蛇のスピードと数が桁違いだ…!クソっ、間に合わねえ!

 

「ヒルゼン!おい!しっかりしろ!」

 

「待て…大蛇丸!クッ…」

 

脚をやられてしまった。これじゃあ追うこともできない。

 

 

 

「だから手加減なさらない方がいいって言ったんですよ。さよなら、猿飛先生」

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

こんな感じで、大蛇丸拘束は失敗に終わった。まあ過ぎたことはどうしようもできない。今後に備え、火影として木の葉を、そして俺自身を強くするしかない。

 

そして、雲隠れの忍頭の来訪が明日に迫っていた。

 

トントン

 

「入れ」

 

「ハッ!火影様、私に何か用でしょうか?」

 

「ヒアシよ、明日は何の日か分かっておるな?」

 

「雲隠れの忍頭の来訪日でしょう。それがどうかしました?」

 

「それはそうじゃが、日向家でも大切な行事があるのじゃろう」

 

「ああ、ウチのヒナタの誕生日です。恐縮ですが」

 

「最近火の国周辺で他里の忍の目撃情報があってのう、それが雲隠れの忍の可能性がある。これは儂の勝手な心配かもしれぬが、一応日向家の防御を固めておいた方がいいと思っての。もし必要ならば暗部を配置するが、どうじゃ?」

 

「最悪のケースを考えて、ということですね、分かりました。ですが暗部は不要です、こちらでしっかり対処するように致します」

 

あー理解があってよかった。てかあのセリフ聞きたいな。

 

「本当に暗部は大丈夫なのか?数名そちらに向かわせるくらいならこちらの心配は要らんぞ?」

 

「いえ、必要ありません。なぜなら、日向は木の葉にて最強ですので」

 

 

 

 




大蛇丸の里抜けは防げませんでした。残念(?)。まだヒルゼンは大蛇丸と渡り合える程の経験・勘がないです。

そしてヒアシさん、火影に対してもさらっと言うんですね。流石です。

ノックの表現って難しいですね
なんかシズネの忍豚が急に出てきた感じになってるので、変(笑)


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祭りの後に

 

 

今日は長年木の葉と争ってきた雲隠れの里の忍頭が、同盟条約締結のために来訪する日。それで盛大に行われたセレモニーには木の葉の忍び全ての者が参加していた。ただし、ある一族を除いて。

 

条約締結の取り次ぎは滞りなく行えた。それは当然だろう、彼の真の任務はこれではないからだ。

そう、彼は日向家の嫡子を誘拐し、その血継限界「白眼」を雲隠れの里に持ち帰るために木の葉の里に来ていたのであった。

 

 

「あ、本体のじいちゃん!おかえり!お疲れ様だってばよ!!」

 

「ただいま、ナルト。お腹空いたじゃろう、夕食にするかのう」

 

「うん!俺ってば今日チャクラを感じることができるようになったぜ!修行の成果が出てるってばよ!」

 

やっぱり四代目の子供だけあるよなあ。まともな食事を与えて、一生懸命修行すればこんなに早くチャクラを感じることができるんだな。ただ、九尾のチャクラが反応して上手くチャクラコントロールができなくなるだろうから、これからはまた大変だろうな。

 

「そうみたいじゃのう。ナルトよ、今日はご褒美に美味しい店に連れてってやろう」

 

「え!いいの!?…あ、でも外出るのはちょっと怖いってばよ…」

 

「大丈夫じゃ、儂が付いている。それにな、今日行く店の大将は誠実で信頼できる人じゃ。ナルトもきっと気に入るぞ」

 

「せいじつ…?きっと良い奴って意味なんだろ!じいちゃんがそういうなら、行くってばよ!」

 

 

 

手を繋いで目的地に向かった。

 

「じいちゃん!良い匂いがするってばよ!」

 

「そうじゃろう。…着いたぞ、ここじゃ」

 

「なんだ!?ラーメンいち…」

 

「いちらく、じゃよ。ラーメン食べたことないじゃろう?美味しいぞ」

 

「へいらっしゃい!おお、火影様!今日はお疲れ様でした。ささ、こちらへどうぞ!」

 

「こんばんは…だってばよ?」

 

少し怯えながら挨拶をするナルトにラーメン一楽の大将、テウチは元気に応えた。

 

「おーいらっしゃい!ラーメン好きか?」

 

「食べたことないけど、じいちゃんが絶対気に入るって言ってたってばよ!」

 

「大将、じゃあ儂とこのナルトに味噌ラーメンを頼む」

 

「ヘイ承知!おめーさんナルトってんだ!折角だからナルトサービスしてやる!」

 

「じいちゃん、このおっちゃん良い人だってばよ!ラーメン楽しみだ!」

 

他人の負の感情に敏感なナルトも、テウチの淀みのない優しさを感じて、安心したみたいだ。

 

 

「ヘイお待ち!この渦巻き状の食べ物がナルトってんだ!召し上がれ!」

 

「いただきまーす!」

 

さて、ナルトの記念すべき初ラーメン。感想は如何に!?

 

「!めーーっちゃ美味いってばよ!!!こんなに美味しい料理初めてだってばよ!!」

 

「おおー本当か!!そりゃあ良かったぜ!よっしゃ、ナルト、お代わりサービスしてやるよ!沢山食べな!」

 

「いいのか、おっちゃん!?嬉しいってばよ!」

 

「ナルト、そんな急いでもラーメンは無くならないんだから落ち着いて食べるんじゃぞ」

 

やっぱりナルトはナルトだった。ラーメンを口にした時の幸せそうな顔はとても可愛らしかった。

 

「じいちゃん、こんな美味いものがあるなら、もっと早く教えて欲しかったってばよ!!」

 

「ハハハ、そうかそうか。気に入ってくれて何よりじゃ」

 

 

…さて、そろそろかな。お、来た来た。見張りに行かせていた暗部から合図が出された。

 

「ナルト、儂は少し煙草を吸ってくるからのお、ゆっくりラーメン食べておけ。もし3杯目が欲しかったら、ここにお金置いておくから、食べてもいいぞ。テウチよ、ちょっと失礼する」

 

「わかったってばよ!!」

 

さて、ヒアシがやり過ぎていないといいが…

 

ーーーーーーーーーーー

 

「火影様!雲の頭が日向の嫡子を誘拐し、森の方へ逃走しました!只今暗部3名と日向ヒアシ殿が追走中です」

 

「よし、わかった。暗部には下手な処理はするなと伝えてあるからの。任せておこう。お前は万が一を考え日向家の警護に当たれ」

 

「ハッ!!」

 

さて、これでヒアシが下手なことをしないといいんだけど…まあどっちにしろ、これから仕事が増えるな…はぁ

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

その後、雲隠れの忍頭は重傷を負った状態で拘束。こちらへの被害は暗部2名が軽傷のみで、ヒナタも無事確保できた。

 

「火影様。尋問部からの報告です。忍頭はやはり雲隠れの里からの極秘任務として、日向家嫡子の誘拐及び白眼の奪取を命じられたとのことでした」

 

「やはりそうか、わかった。下がってよいぞ」

 

「ハッ」

 

とりあえず殺さずに終えることができた。ヒアシにあの名言言わせておいて、暗部を予め用意していたのはなんか申し訳なかったかな。まあでもこれで雲は木の葉に負い目ができる、ということで良かったか。

 

「火影様。今回は火影様の取り計らいのお陰もあったためか、無事ヒナタを救うことができました。感謝申し上げます。

しかし、私日向ヒアシは日向家の長として、今回の事件は看過できません!然るべき対応を望みます!」

 

"お陰もあったためか"って暗に"日向家で解決できる問題だっただろう"を含んでるな…まあいいや。

でも後半のヒアシの言い分は最もだ。

さて、今までは里内の問題として解決を試みてきたけど、対外的な問題はどうすればいいんだろう…。

 

「ヒルゼン、儂も宣戦布告を提案したいところだ…しかしこちらも九尾襲来から3年経ったとはいえ、人々の心の傷はまだ癒えていない。ここは賠償金を取る形で収拾を図るべきではないか?」

 

あれ、なんかダンゾウ丸くなってね?確かに、木の葉を想う気持ちから出る考えではあるけどな。あ、てかマダラの恐怖も終わった訳では無いから、それを気にしてもいるのか。なんか事を大袈裟にし過ぎたかな、でも13年経てばそうなるし、嘘はついてないよ。

 

 

「そうだな、では忍頭の引き渡しの代償として、賠償金ということで良いな?」

 

「火影様!お言葉ですが雲との同盟条約は破棄しないのですか?また木の葉へ刺客を送ってくるかもしれないのですぞ!?」

 

「ヒアシ、同盟条約なんぞ口約束、それ以上でもそれ以下でもない。冷静になれ」

 

「ダンゾウ様…はい、分かりました」

 

「すまんのう、ヒアシ。下がってよいぞ」

 

「ハッ」

 

何とかこれで収まったかな…これでとりあえずは安心かな。

 

「ありがとうな、ダンゾウ」

 

「しかしヒルゼンよ、お前があの忍頭の画策を読んでいたとはな…以前なら、はなから信頼して何も気にせんかったろうに」

 

「来訪日と日向家嫡子の誕生日が一致しており、かつここ最近火の国周りで雲隠れと思わしき忍びの目撃情報があったのだ。いくら儂とはいえ、疑わぬ訳が無かろう」

 

「それはどうか…いや、なんでもない」

 

なんか最近、ダンゾウがこちらの反応を伺ってるそぶりがチラついてるというか、怪しまれてるかも?え、流石に俺が以前のヒルゼンじゃないってバレてないよね!?いや、無いだろ…うん。やめてよ?

 

 

 

 




ヒザシ生存ルートでした。


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イタチとナルト

イタチが中忍選抜試験に10歳で合格した。しかも単独参加で。

 

勿論そうなるのは知ってはいたけどさ、異常だわ。一応原作よりは木の葉の下忍は強くなった筈だが、それでもイタチは彼等に遥かに勝る。やっぱイタチってすげーよ!!

 

 

…ただ、ここで一つ懸念がある。そう、うちはクーデターを防いだ今、うちはイタチはどのように生きていくのだろうか?ということだ。

きっとこのまま時が流れれば、直ぐに実力を認められて上忍に昇格し、木の葉の里に更に尽くしてくれることになるだろう。

しかし、原作のイタチの苦労人人生を知っている俺からすると、もう少し他人との繋がりを感じながら、幸せになって欲しいなと感じてしまう。これは単なる俺のエゴかもしれないが、里の将来を見据えた火影からすると、もしイタチの忍としての哲学を共有し、継承する者が続けば、それは大きな木の葉の財産になると思ってもいる。

 

いずれにせよ、後の木の葉崩し、暁襲来、忍界大戦に備えた木の葉の戦力強化のためにはイタチをどう登用するかは大きな鍵となることは間違いない。彼はそれ程の逸材なのだ。

 

「お呼びですか、火影様」

 

「うむ、イタチよ。中忍昇格おめでとう。流石といったところか」

 

「ありがとうございます。ですが大したことではないです」

 

「まあそう謙遜なさるな。儂がイタチを呼んだのは、お主に重要な任務を任せるためだ」

 

「…任務ですか?」

 

「そうじゃ。うちはイタチ、お主を儂直属の暗部に任命する。そして、うずまきナルトの監視を命ずる」

 

「俺が暗部…ですか?」

 

「まあそう硬くなるな。監視というのは名目じゃ。今は儂の分身がナルトの世話をしているのじゃがな、儂もこの歳じゃ。そろそろ分身を維持するのもちとキツくなっての。そこでお主にその役目を頼みたいのだ」

 

勿論こんなのは口実作りに過ぎない。分身の1体や2体の維持なら問題なくできる。

 

「勿論、丸一日世話をするという訳ではない。ナルトも4歳、あと2年でアカデミーに入る。それまで一日辺り3〜4時間程一緒にいてやって欲しいのじゃ。他にも暗部としての任務は入れるが、部隊長にもこの件は伝えておくからあまり負担のある任務には割り当てないつもりだ」

 

「そういうことですか。分かりました」

 

「先程も言ったが任務とは名目、実際は儂の個人的な頼みじゃ」

 

「何が仰りたいのです?」

 

「お主にも弟がおるのじゃろう、ナルトと同い歳の。ナルトも友達がいなく、寂しい思いをしてるからの。偶には連れてきてやってくれ」

 

「サスケですか…まあ時機を見てやってみます」

 

これで兄弟の時間も無理やり作ることが出来るかな。暗部はかなりのブラックだからね…。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

ドアを叩く音がする。

 

「入れ」

 

「三代目。お呼びですかね?」

 

「うむ。面を取って良いぞカカシ」

 

「はい。急にどうしたんですか?」

 

俺はイタチの件をカカシに話した。

 

「!彼は10歳ですよね?それで暗部に入隊させるのですか?…まあ確かに優秀ですが。成る程、ナルトの監視ですか」

 

お前も大体そんな歳くらいで入隊してなかった?まあいいや。

 

「もしかしてお前も志願するなどということはないか?一応恩師の遺した唯一の…」

 

「頼まれたら引き受けるつもりでしたが、俺が子守ってのもねぇ…ま!イタチに任せますよ」

 

「そうか。ではイタチのこと、くれぐれも任せたぞ」

 

「御意」

 

まあカカシは、ナルトが下忍になったら担当上忍になるだろうしな。これでいいだろ。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「じいちゃん。俺一人で留守番するの寂しいってばよ」

 

「ナルトよ、お前はこれから強い忍者になるのじゃろう。儂にばかり頼るのではなく、一人で留守番くらいはできるようになっておけ」

 

4歳の子供にはそこそこ酷なことかもしれないけど、その境遇故に親しい人に執着するようになる可能性もあるしな。

 

「じいちゃんがそういうなら頑張るってばよ!不安だけどな…」

 

「まあそう言うな。儂もただ無責任にお前を見放すつもりはない。入ってこいイタチ」

 

ドアの外で待っていたイタチを迎え入れる。

 

「はい」

 

「じいちゃん、この人誰?」

 

「これからお前の家庭教師となるうちはイタチじゃ」

 

「うちはイタチだ。よろしく頼む」

 

「家庭教師!?俺ってば勉強は苦手だってばよ…ってか兄ちゃんってまだアカデミー生じゃねーのか?」

 

「イタチは優秀でな、7歳でアカデミーを卒業し、今となっては中忍じゃよ」

 

「すげーな!イタチの兄ちゃんってば!」

 

「大したことはない」

 

「じゃあイタチ、宜しく頼むぞ。ナルトも言うことを聞くんじゃぞ」

 

「御意」

 

「わかったってばよ!じいちゃん行ってらっしゃい!」

 

10歳で暗部の任務に従事させるのは俺も心が痛むが、少しでもここで穏やかに過ごす時間を与えてやれればいいな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「イタチの兄ちゃん、これよく分かんないってばよ!」

 

4歳の子供が整数の加減乗除を覚えるのは、この世界は当たり前のことらしい。

 

「もう少し落ち着いて考えろ。掛け算と割り算を先にやるのを忘れるな。…これが解けたら身体を使ったちょっとした遊びをしよう」

 

「わかったってばよ…あ!違う!遊びじゃない、修行だってばよ!」

 

「フッ…修行、だな」

 

ナルトをイタチは自身の弟のサスケと重ね合わせていた。「兄さん、兄さん」と高い声で自分を慕うサスケも、自分が「手裏剣ごっこをしよう」というと「兄さん!手裏剣ごっこじゃない!立派な修行なんだよ!」と強く主張するのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…なるほど、うちはも木の葉に首輪を付けられた負け犬に成り下がったって訳か…これではクーデターも起こりそうにないな。少し計画を変えるか」

 

 

 

木の葉の里のとある木陰にいた仮面の男は、そう呟くと、突然姿を消した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「長門、小南、そろそろ暁の活動を本格的に開始する」

 

「貴様の指図を受けて動くつもりはない。お前の予想も外れたみたいだしな」

 

「うちはのクーデターなんてやっぱり起こりそうにないんだってね。あなた、一体何を考えているの?」

 

「木の葉の里に妙な動きがあるかもしれん。うちはが急に木の葉へ忠誠心を向けるなど今までの仕打ちからして考えづらい」

 

「言い訳はもういい。さっさとメンバー集めをするぞ」

 

「少し予定とはズレたが、勧誘するメンバーは大きくは変わらない。まずはーーーー

 

 

 




オリ主のせいでマダラの扱い酷くなりましたね。


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閑話:ダンゾウとうちは

ダンゾウ、フガク、イタチそれぞれの視点からの語りです。




最近、ヒルゼンの様子が変な気がする、というか絶対変だ。

 

以前のあいつの相手を心から信じ、その為に甘い対応をしてしまうような性格が少し変わったのだ。

 

その変化は間違いなく九尾襲来後、危篤状態から急に回復した時だった。

 

最初はいつも通りのヒルゼンかと思えば、少し口調が変になる時があった。しかし、それは本質的な変化ではない。その証拠にここ1,2年は以前と同じ口調で変わらないのだ。

 

儂が驚いたのは、四代目の巻物が発見された時だった。

 

あいつは儂が根を遣るよりもずっと早く直属の暗部を調査に送るなどいつもより迅速な対応をしていた。火影を引退しほぼ隠居状態となっていた者が急にこんな風になるだろうか。

ただ儂が更に驚いたのは、この事件を受けてヒルゼンが富国強兵策を唱えたことだった。

 

確かにあいつはこの木の葉を愛し、人々を本当の家族として扱い、彼らを守ることを最も重要視する人間だ。

しかし、仮初めの平和の下で平和ボケしており、あまり自里の戦力の如何を気にしている様子ではなかった。他里との勢力均衡を考え、周辺国に刺激を与えるような強硬策を取ることも決してない。むしろそのような汚れ役は儂が引き受ける形であったのだ。

 

その中でアカデミーのカリキュラムを再検討し、儂の意見も取り入れて新たな教育方針を確立した。アカデミー講師を信頼し、積極的な発言をしなかったあいつにしては随分と啓蒙的な活動ではなかったかと思う。無論、儂も富国強兵には同意するため、これは良い傾向だと言える。

 

他にもうちはとの連携強化、雲の忍頭の画策の事前察知など、将来の我が木の葉を見据えた、洞察力に富んだ積極的な行動。平和ボケしたジジイがすることではない。

 

確かに、うちはは木の葉に更に尽くすようになり、特に警戒すべき点は今の所見つからない。強いていうなら、うちはイタチといったところか。まだ下忍だが、あいつの才能は計り知れない。しかし任務完遂に従事し、木の葉への忠誠心も高いとの評価を得ている。やはりあいつも特別不安視する点は思いつかん。寧ろそれ程に優秀過ぎるのが少し気になるくらいだ。

 

もしかしたら、儂はうちはに偏見的な態度で接していたのかもしれん。ヒルゼンとうちはの行動を見ていると、最近そう感じるようになった。

 

 

これまで儂はどこか心の底で、あの時に二代目様が儂ではなくヒルゼンを火影に指名したことを羨ましく思い、そして、その後平和ボケして甘くなり、火影として積極的な行動を取らない火影としてのあいつに不満を感じていた。儂が火影であればもっと里を良くすることができる、そう信じて疑っていなかった。儂の組織した根によって、木の葉は支えられている。儂は尊い犠牲の元に平和を支えている、影の立役者なのだと。

 

しかし、最近は火影としてのあいつの行動に憤りを覚えることは無くなった。勿論具体的な決定で異議を唱えることはあるが、あいつなら必ず将来を見据えた選択でこの里を導くことができるのではないかとは思っている。

 

その中で、儂が火影になりたいという思いも徐々に小さくなってきている。不思議なことに、儂が最も里に貢献するには、三代目火影ヒルゼンを支え、あいつが冷静に判断を下せるようにしてやることが必要なのだとさえも感じている。

 

もしかしたら、舌の呪印で縛り付けられ、絶対的忠誠を誓う根という枠組みをあいつならより高い次元へ導き、明るみの下で木の葉の平和を支える新たな組織に作り変えることもできるかもしれない。その判断が正しいかどうかは別としてだ。

 

そして、儂自体も年長者としてヒルゼンと同じように若いのを育て、導くような存在となるべきなのかもしれない。

 

全ては木の葉の恒久的平和のためだ。現在の仮初めの平和で胡座をかいている老害にはなりたくないものだな。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

三代目から、四代目の巻物を見せられた時、俺フガクは今までに無い衝撃を覚えた。

 

うちはと道を違え、木の葉と道を違え、独りとなったマダラはその後初代火影様との戦いに敗れ、死んだと伝えられていた。

 

しかし、事実は異なるものだった。奴はまだ生きており、九尾を復活させ木の葉を襲わせ、その原因をうちはになすりつける事で自身を裏切った両者に対する復讐を図ったのだ。

 

四代目の決死の封印術により九尾は封印されたが、里には多大な被害が及んだ。その原因が写輪眼により九尾をコントロールできるとするうちはではないかと考える上層部の者も少なくなかっただろう。

こちらもそう勘繰られると想定し、謂れなき罪を着せられた際にどう出るかも考えていた。

 

 

しかし全てマダラの思惑通りという訳にはいかず、四代目の遺した巻物によりうちはが咎められることとはならなかった。

それどころか三代目は、うちはの政治的な発言力を強めることができるよう上層部に提言してくださったのだ。

皮肉にも、今回の事件が我々うちはと木の葉隠れの里を近づけさせる結果となったのだった。

 

この三代目の対応はうちは内部でも衝撃的なものと捉えられ、中には木の葉上層部の思惑を探らんとする者も少なくなかった。

 

しかし実際はどうであろうか。うちは代表として上層部の会議に呼ばれる回数が格段に増え、我々の意見を少なからず汲んでくれるような場面も出てきたのだ。木の葉上層部を疑心暗鬼に見ていた者も次第に任務に真摯に従事するようになり、うちはと木の葉の繋がりは厚みを増した。

 

我が子イタチが中忍選抜試験に単独で受験することを、木の葉上層部から薦められた時は驚いたが、イタチがそれに応え、合格したことで我々としても里への誠意を見せることができたと思う。

 

マダラの生存による恐怖は今もまだ去ってはくれぬが、木の葉が一体となれば必ずや奴にも打ち克つことはできるだろう。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

俺は小さい頃三代目を初めて見た時は、とても優しく、木の葉の人々を本当の家族のように慕う好々爺といった印象を抱いた。

 

暗部に任ぜられ、三代目の下で働くことが増えた今もその認識は変わらない。しかし、また新たな印象を抱いた。

 

俺は周りより物事の飲み込みが早かったからか、小さい頃から忍となり任務に従事し、周りからの期待も高かった。

 

その分、「あいつは天才だから」「できて当たり前だろう」というように「イタチは優秀だから出来て当然だ」という色眼鏡をかけて見られていた。

特にそれを嬉しいとも不快だとも感じたことはない。俺はただ里の平和の為にできることをやっているだけだからだ。

 

しかし中忍になって初めて三代目とお会いした時、この人からは自分が「一人の子供」として、時には「小さい弟を持つ兄貴」として見られてるような心地がした。

 

そんな風に見られたことは今までなかったからとても不思議な感じだった。

正直シスイにも「年相応」には見られていない自負はあったのだ。

 

三代目は俺にうずまきナルトの家庭教師を依頼し、暗部としての仕事はその分軽く与えているようだった。

 

あまり下忍の時と働く時間は変わらず、里にいる時間はむしろ増えたためサスケの相手をする時間が増えたのはとてもありがたかった。

 

しかし、俺だけがこんなに恵まれた環境にいて良いのだろうか?他の忍の方々は一日中里の為に働いているのだ。俺は今贅沢をし過ぎている。

 

そう思い三代目に任務の追加を打診したが、その返答は驚くようなものだった。

 

「イタチ、お前は何でも自分一人で抱え込んでしまう癖があるようじゃな。木の葉の人々は互いが互いを助け合い、繋がりを深めている。その中で火の意志が芽生えるのじゃ。お前ももう少し他人を頼れるようになれ。相手を信じることができない限り、相手から信じてもらえることはないぞ」

 

他人を頼る?俺は冷や水を浴びせられたような心地だった。そんなこと今まで考えたことすら無かった。そのようなことはせずともここまでやってこられたからかもしれない。

…考えてみると、そんなのはあまりにも傲慢だな。

 

俺は「人間は皆思い込みの中で生きている。それを現実という名で呼んで」という俺自身の哲学的思想を信じていたが、その「人間」に俺自身を含むことをすっかり怠っていたのか…

 

相手を信じる…か。

この世界が真の平和を得るには、それが必要なのかもしれないな。

 

暗部の部隊長から学ぶ事も大変多いが、三代目はまるで俺のことを俺以上に知り尽くしてるかの如く、俺に適切な助言をかけてくださる。あの人には木の葉の里、そしてこの虚構の上に築かれた平和の世界がどう見えているのだろう?

俺もまだまだだな。

 

 

サスケももうすぐ5歳になる。やや内向的な性格だが、俺は彼を信じてみよう。きっと、ナルト君とは仲良くなれるはずだ。

 

 

「サスケ、今日の昼は暇か?」

 

「うん、空いてるけど兄さんは任務でしょ?」

 

「ああ。ある子供の家庭教師をやっているんだ。きっとサスケも友達になれると思うぞ。一緒に行ってみないか?」

 

「え、兄さん家庭教師やってるの!?ズルいぞ、俺との時間はあんまり取ってくれないくせに!わかった、俺がそいつに色々教えてやるよ!兄さんの凄さをな!」

 

 

 

 

 



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不審な動き

 

 

とある雨隠れ近辺のアジトにて

 

 

「…マダラ、貴様の言っていたメンバーは一人を除き全て揃えることができたが、うちはイタチはどうする?」

 

「奴はこちらに来ることはない。別の者を考えてある。お前にペインとして勧誘してきてもらいたい。我々と利害が一致するはず、上手く誘えばこちらに入るだろう」

 

「ほう…良いだろう。それでその者の名は?」

 

「大蛇丸。伝説の三忍と呼ばれた一人だが、今は既に抜け忍となっている」

 

「大蛇丸?何処かで聞いた名だな…ああ、あの時か」

 

「あの時?」

 

「貴様が知る必要はない。最も、俺も思い出したくない過去だがな…」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

大蛇丸の第三アジトにて

 

「あら、ワタシのアジトが分かるなんて一体どなたかしら?」

 

大蛇丸は急な来客にも一片の動揺も見せず対応するも、同時に並みの中忍では立ち続けるのすら無理な程の殺気を放った。

 

しかしその客も少しも怖気付くことなく、淡々と言葉を発した。その冷徹さは、まるで心を持たない者のようだった。

 

「お前が大蛇丸か、俺の名はペイン。単刀直入に言おう。我々の組織『暁』のリーダーとしてお前を勧誘しに来た」

 

「『暁』?さて、聞いたこともないわね…まあ少なくとも、ワタシの部下の見張りを物ともせずここに一人で辿り着いたってことから、ただの忍者ごっこではないってのは認めてあげるわ。けどね、ワタシは組織に縛られるのが嫌いでねェ…折角のお誘いだけど断らせてもらうわ」

 

「お前はこの世の全ての術を知り尽くすことが目的であるみたいだな。我々の課す仕事をこなす限りは、ある程度の援助はしてやる」

 

「あら、よく知ってるのね。でもそれだけじゃないのよ。最近は他のことにも興味が出てきてねェ…それに手を貸してくれるなら少しは考えてあげてもいいわよ?」

 

「ほう、それは何だ?」

 

「聞く気はあるのね。実はねェ…」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

ドアを叩く音が鳴り、入室を許可するとそこに立っていたのは自来也だった。

 

「ほう、自来也か。旅行から帰ってきてたのか」

 

「猿飛先生、ワシは別に遊んでただけじゃねえっての。情報収集をしてたらのォ、大変なことを耳にしてしまったんだ」

 

自来也は真剣な表情となった。きっと重大な何かがわかったのだろう。

 

「ほう、それは何じゃ?」

 

「大蛇丸の居場所のことだ…あいつは今、『暁』という名の組織に所属しているらしい」

 

あれ、こんなに早かったっけ?細かいことは覚えてないけど、大蛇丸が入るのはイタチの写輪眼を得るためだった筈だから、原作通りだともう少し先の話のはず。

 

というかイタチはこのままだと木の葉に居続けるだろうし、そもそも大蛇丸は暁に入る意味があるのか?

 

あーなんか原作改変したせいで風向きが変わっちゃったかもしれないー

 

まあ暁の活動が本格化するのはもう暫く先の話だしな…

今こちらから何か仕掛けることは当然できないから、暫くは様子見かなぁ。

 

「『暁』?それはどういう組織なのじゃ?」

 

「あまり具体的な情報は集まらなかったが、傭兵として各地の争いに手を貸してるっていう噂は過去にあったみたいだ。それとな、大蛇丸以外にS級犯罪者が数名所属しているらしい。そいつらの名は全くわからなかったが…」

 

「そうか…それだとこちらからはまだ動けそうにないのう。ご苦労じゃった。引き続き何かわかれば報告してくれ」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

…さて、よくわからない展開になって来たけど、もしかして

 

大蛇丸が暁を抜ける理由が無くなる

音隠れの里を創設することがなくなる

木の葉崩しが起こらなくなる

猿飛ヒルゼン生存!!!

 

というのはロジカルかな?ちょっと無理あるかな?流石に前提が不完全かな?

 

ちょっと無理があるか…てかどちらにしろペイン襲来は避けられそうにないしね。

 

 

…いずれにせよ、予想不能な事態に備えて兎に角木の葉を魔改造しないと。やっぱ水上歩行もアカデミーで必須項目に入れるか?あとは何があるかな…性質変化の適性は流石にやり過ぎかな。それは忍者になってから担当上忍に任せるかね。

 

この軍縮の御時世に、あからさまな軍拡を進めたら他里との緊張が高まるからなあ…武器や兵器の充実よりは、組織の内部改革とかにフォーカスして富国強兵を進めるしかないかな。

 

いや、政治難しいっす。正直な話。

 

ダンゾウ達に相談してみるか…あいつらしか富国強兵の真の意義を知らないもんなあ。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「傭兵集団『暁』か…よくは分からぬが、重罪人を抱える組織ならそう易々と見過ごせる話ではないかもな」

 

あれ、ダンゾウって暁のこと知ってたよね?雨隠れの半蔵と手を組んで壊滅企ててませんでした?

まあ多分俺が転生する前後の話で、流石にそこまでは頭回ってなかったから働きかけることはできなかったけどさ…

今度2人の時に追及してみようかな♪

 

「マダラとの繋がりは不明なのじゃろ?」

 

ホムラが俺に尋ねた。いや思い切り繋がってるんですけど、流石に現時点では言えないわ。

 

「まだわからんの。そもそもマダラがまだ生きていることを知っているのは儂らとフガクだけじゃろうて」

 

「どちらにせい、木の葉への恐怖が増えたと考えるのが自然じゃ。以前から引き続き、木の葉の戦力強化に働きかけるべきではないか?」

 

コハルが良いとこを突く。そうそう、そのことについて相談したかったんだよ。

 

「儂もそう考えていてのお、やはり水上歩行もアカデミーで必須項目に入れるべきなのではないかとは思ったのじゃが、それ以外に具体的な案が思い浮かばんくてな」

 

「確かに、儂らの教育改革後は下忍の質が向上したという評価が多く聞かれたからな。中には水上歩行もやらせて欲しいとする者もおった」

 

心なしかダンゾウが嬉しそうにしているように見える。可愛い。…いや、冗談よ?

 

「アカデミー講師も、自由課題の水上歩行での生徒の失敗例をパターン別に分けて、それぞれで指摘する箇所を整理したら成功率が上がったと言っていたな。必須項目化は問題ないのではないか?」

 

皆このアイデアについては賛成してくれてるみたいだし、正式な会議でしっかり提言してみるか…

 

「そうだな、他に何かいい案はあるか?」

 

「そうだな。例えば…」

 

 

その後も、いくつか具体的なアイデアが挙げられて、全てが全て現実的なものではなかったが、今後の戦力強化に生かせそうなものも出てきた。

 

 

来年はナルトがアカデミーに入学する。イタチとも上手くやっているようで、サスケも偶に来て一緒に修行しているみたいだ。

ナルトは「あんな奴より俺の方が強いってばよ。いや、前回は油断して負けちまったけど、次は絶対勝てるってば、じいちゃん!!」とか言ってて、やっぱライバルなんだなあと思った。

 

イタチから聞くところだと、やっぱり勉学とチャクラコントロールは苦手だけど、体力はサスケよりも少し多いくらいみたいだ。だから体術は荒削りだけどなんとかサスケと張り合ってるらしい。

原作よりかなり優秀なんじゃないかな?ナルトも仲の良い友達ができて、以前より笑顔が増えた気がする…

 

 

…俺はといえば、猿魔との修行、暗部としての任務で段々実力に経験が追いついてきた。勿論まだまだだけど。

猿魔めっちゃ強い、何年生きてるんだ!?って感じ。

他の暗部も優秀ですね。「お前は多彩な術を持ち、その質も申し分ないが、判断力に欠ける。もっと経験を積むべきだな」って部隊長にアドバイスされました…俺火影だぞ!

 

そして分かったことは、猿飛一族は何か特有の血継限界はこれといって無いんだけど、基本的に多くの性質変化を扱える一族みたいだ。確かに、五遁はどれも大差なく自在に扱えていると思う。まあ、強いて言うなら火遁が得意かな。

 

 

チャクラの量は多いし、チャクラコントロールもかなり上手い自負があるから仙術も習得してみたいけど、如何せん場所がわからん!妙木山、龍地洞、湿骨林どこですの!?

 

確かに自来也に頼めばいいとは思ったんだけど、唐突過ぎて怪しまれるし、俺が若返ってるの知らないから火影と両立できるなんてのも信じてくれないだろうしな…。勿論俺は火影の座を降りるつもりはないです。

 

 

 

ま、こんな感じで今の所大きな事件はないですね。その予兆は否めないけど。

 

アカデミーでナルトが楽しく過ごしてくれればいいなー



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入学式

俺ってばうずまきナルト!将来三代目のじいちゃんを超える火影になる男だってばよ!!

 

今日はアカデミーの入学式、じいちゃんが勉強量が増えるって言っててちょっと不安だけど、何だかんだ学校は楽しいとも言ってたからきっと大丈夫だってばよ!

沢山友達できるといいな!

 

「おいナルト、何ダラダラ歩いてんだ。チンタラしてると兄さんと先に行くぞ!?」

 

「おーい!待てってばよ!!」

 

こいつの名前はうちはサスケ。何をやるにもクールだけど意地っ張り。超ムカつくけど、根はいいヤツ…だと思う。

 

まあ簡単な言えば、俺の初めての友達…じゃなくて、ライバル!!

 

俺ってば元々こいつの兄ちゃんに家庭教師してもらったんだけど、そのイタチの兄ちゃんがある日こいつをウチに連れてきたんだ。

そしたら急に「お前か!俺の兄さんを色々困らせてるナルトって奴は!お前は兄さんがどれだけ凄いか分かってないだろ!」とか言って俺に飛びついてきたんだ!

そこからは取っ組み合いの喧嘩、まあ最後はイタチの兄ちゃんが止めてくれたけど、そのままやってたらきっと俺があいつをコテンパンにしてたってばよ!

 

それからイタチの兄ちゃんがこいつを紹介して、その後もたまにウチに連れて来て、一緒に勉強や修行をしてきたって訳なんだ!

 

「おいサスケ!ここがアカデミーか!おー、もう沢山来てるんだな!」

 

「そうみたいだな…。兄さん、あそこに行けばいいんだよな?」

 

「そうだ。ナルト、サスケ、俺はここまでだ。父兄席があっちだからそこに向かうよ。2人とも、行ってらっしゃい」

 

「おう!行ってくるってばよ!」

 

「じゃあ兄さん、後でな!」

 

「ナルト、今日は母さんが家でごちそうを作るみたいだから、終わったらサスケと一緒にウチに来るんだぞ」

 

「マジで!やった!!絶対行くってばよ!!!」

 

 

ミコトさんの料理スゲー美味いんだよな!!

フガクのおっちゃんは最初はちょっと怖えー感じがしたけど、本当はスゲー優しい人だったってばよ!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

何なんだ…?ちょっとこの入学式変じゃないのか?

 

周りの女子が俺のことジロジロ見てきて目障りだけど、それ以上に大人から出る雰囲気が気に入らねェ…。

 

あれ?何か隣のナルトも何か変だ…。さっきまであんなにはしゃいでたのに、スゲー怯えてる…こんな奴じゃなかったよな?やっぱり何かおかしい…

 

ん?ちょっと待てよ、あの保護者達の冷たい視線、ナルトに向けてないか?どういうことだ!?確かにこいつはギャーギャー騒いでうるさかったけど、そこまでする必要あるのか?

 

いや、というかあいつらの眼…幾ら何でも冷酷過ぎないか?まるで人じゃない何かを睨みつけてるような…

 

絶対何かある。ナルトは皆に恨まれるようなことでもしたのか?あいつとはあいつん家か俺ん家でしか一緒にいたことないからな…

 

帰ったらまずは兄さんに聞いてみよう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

今日はサスケとナルトの入学式で、三代目も俺に休みを与えてくれた。母さんが作った料理をナルトは幸せそうな笑顔で沢山食べて、「お腹いっぱい…もう食べれないっではよ…」と満足気な表情をして帰って行った。

 

 

 

「サスケ、もう寝る時間だ。灯り消すぞ」

 

「兄さん、俺、聞きたいことがあるんだ」

 

「ん、どうしたサスケ?」

 

「ナルトって、過去に何か悪いことでもしたのか?今日の入学式で、大人達が凄いナルトに冷たい視線を向けてたんだ!」

 

サスケも気付いていたか…しかしこれは掟として、里の子供達には教えてはいけないことになっている。それにしても我が子の晴れ姿を折角見に来たのに、態々ナルトにそんな視線を向けるとは、一体保護者は何をしに来たんだろうか。人のことをあれこれ言うべきではないが、少し心の貧しさを感じてしまう。

 

「そんなことがあったのか…。サスケ、お前はナルトのことをどう思っている?」

 

「俺がナルトのことをどう思ってるか?それは…あいつはいちいち俺に喧嘩ふっかけて、何事も張り合って来る負けず嫌いなめんどくせー奴だといつも思ってるよ」

 

確かに大体勝負をふっかけるのはナルトの方だが、絶対サスケはその勝負に乗るんだよな…自覚してるのかは分からないが。

 

「…でも、別に嫌な奴ではないぜ?俺がコテンパンにしても『俺は火影になる男だ!』って言って何度も立ち上がって向かってくる、諦めの悪い体力バカ。あのド根性は流石に俺も認めるさ。ま、俺のライバルって呼ぶにはまだまだだけどな!」

 

確かに、俺もナルトの根気強さには頭が下がる。

サスケも、ナルトのことはある程度は認めてるんだな。

 

「最近は段々ナルトがサスケに勝ち越す日も増えてるが、まだライバルではないのか?」

 

「まあ確かに最近あいつも頑張ってるとは思うけど…それでも通算ではまだまだ俺の方が上だ!まあ、次の組手の実力次第ではライバルって認めてやってもいいかな…」

 

「そうか。ならそれでいいじゃないか」

 

「え?どういうこと?兄さん」

 

「お前は自分が信じるままにナルトと向き合えばいいんだ。他人の『常識』に縛られて、自分の認識を変える必要はない」

 

「そっか…そうだよな!俺、ああいう集まり初めてだったからちょっと周りのこと気にし過ぎてたかもしれない。他の人がどう思おうが、ナルトはナルトだよな!」

 

 

「ああ、じゃあもう寝るぞ。明日からお前も授業だからな」

 

「兄さんに教えて貰ったからきっと大丈夫さ。おやすみ!」

 

 

サスケは納得したみたいだが…これで良かったのだろうか。

 

 

あの日の九尾の襲来…俺はあれは人為的なものだと考えている。

 

図書館で読んだ本によると、過去に九尾が現れたのはその時代の節目であったとのことだ。つまりその時代の終わりを告げる天災として考えられて来たのであったという。

 

しかしあの時から大きな時代の変化があったかと言われると、俺には思い当たるものはない。

 

確かにうちはが里の政に参加するようになったのは歴史的にも大きな変化だと言える。

だかこれは元々そうなる運命ではなく、九尾の襲来を受けたことが要因となって起こったのだ…俺はそう考える。

 

密かに調べたことだが、あの日うちはは里の危機を前にして現場に赴かず、待機を続けていたらしい。

『写輪眼は九尾をコントロール出来る』

これを根拠にうちはを木の葉から隔離するため、上層部がうちはに待機命令を下したのではないか。それまでのうちはと木の葉の確執を考えると、この発想に行き着くのは自然だろう。里の非常事態に優秀な警務部隊を動員しない理由が他に考え辛い。

 

つまり皮肉にも、九尾の襲来はうちはを隔離するための絶好な理由になったのだ。

 

 

…しかしそうはならなかった。それどころか三代目はうちはとの連携を強化したのだ。当然これはうちはからしても驚きの措置だった。寝耳に水と言っても過言ではないだろう。

 

 

この矛盾した木の葉の行動を支える根拠とは…

 

そこで、『木の葉を脅かす程の存在』が出てくる。

 

九尾の発生がそれによるものだと判明したら…木の葉は里内の混乱・確執を解決し、里の戦力強化・体制見直しを徹底するのが妥当だろう。そこで、うちはとの関係も改善する必要があった。最近のアカデミーの教育カリキュラム見直しもその方針の一環として納得がいく。

 

一体何者が九尾を操り里を襲ったのだろう…。九尾をコントロール出来るのは写輪眼を持つうちはのみ…もしかして、里外にうちは一族の生き残りがいるのだろうか。

いや。そもそも里内のうちは一族の生き残りという可能性は…考え過ぎか。

 

勿論これは俺の仮説に過ぎず、中忍の端くれの俺がその真実を知る資格も当然ない。

 

ただ、俺はこの木の葉の里が好きだ。その平和を脅かすものがあれば、俺はこの命を賭してでも守り抜く覚悟がある。

 

 

明日からは仕事が全て暗部のそれになる。考え事はやめ、俺もそろそろ寝よう。

 

 




イタチは家庭教師としてナルトと仲良くなってるんで呼び捨てで呼んでます。ってかやっぱり聡いな…イタチ。

次回から原作です。というかこれと言って原作前に書けそうなイベントがもう…


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原作開始後
原作開始!



時間軸的にはタイトル通りなのですが、回想多めなので全然進みません(笑)



明日はナルトのアカデミー卒業試験。つまり、今日があの大人気漫画「NARUTO」の原作開始日なのだ。

 

 

ナルトがアカデミーに入学してから特に深刻な問題は無く、悪く言えばやや退屈、良く言えば平穏な日々を送っていた。

 

この世界線でもナルトはやはり問題児で、ほぼ毎日廊下にバケツを持って立たされていたらしい…が実技の成績は、毎回サスケと1位を争う程であったとか。というか2人が頭抜けていたと聞く。イタチェ…何を教えたんだ…

 

運動神経が良いと頭の回転も良くなるとよく言うが、ナルトはイタズラの発想が豊かになったらしく、イルカ先生が大変手を焼いていた。

 

あ、残念ながら座学はドベ。おい、何でだよ!

 

 

それでナルトの問題のチャクラコントロールなんだけど…

確か1,2年くらい前のことかな。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

ある日、ナルトが俺に聞いてきた。

 

「じいちゃん、俺ってば最近変な夢を見るんだ。暗い部屋みたいなところに、超でけえ狐みたいなのが檻に閉じ込められてるんだってばよ。『四代目ェ…』とか『マダラめ…』って何度も呟いてるんだけど、なんか知ってる?」

 

真実を話すのも難しいけど、九喇嘛とナルトが和解するのは早ければ早いほど良いよね。

 

「お前はその狐とやらに話しかけてみたのか?」

 

「いや、恐くて近寄れてないからまだだってばよ」

 

「ならとりあえず自己紹介をして、名前を聞けば良いのではないか?友達になれるかもしれんぞ?」

 

「そっか!シカマルやチョウジと同じだな!」

 

流石少年ジャンプの主人公。ナルトはこうでなくっちゃ!

 

 

 

そして数日後…

 

「じいちゃん、あの夢の狐のことなんだけどさ、話しかけてみたんだけど全然相手にしてくれねえんだ!」

 

やっぱまだナルトは認めてもらえてないのかな…。九喇嘛って名前教えてあげたいけど、それだと本当の信頼関係は築けないよなあ。悪いな、ナルト。

 

「そういう奴にはしぶとく、しつこく、じゃ。儂の経験から間違い無いぞ。正面からぶつかるのじゃ」

 

「わかったってばよ…俺、もう少しやってみる!」

 

 

それからまた数週間後…

 

 

「じいちゃん!あいつの名前わかったってばよ!九喇嘛って言うんだってさ!」

 

おー!遂に認められたか。流石はうずまきナルト!

 

…さて、そろそろ俺も火影として話をつけるか。

 

「ナルト、儂もその九喇嘛とやらと話したいのじゃが、良いか?」

 

「え?でもあいつは夢の中でしか会ったこと無いってばよ?」

 

「大丈夫じゃ。いいか、ナルト。目を瞑り、腹の中に神経を集中させ、ゆっくり深呼吸をするのじゃ」

 

「わかったってばよ…」

 

暫くして、ナルトが精神世界に入り、気を失った。そこで俺もナルトのチャクラの流れを感じながら、ナルトの腹に手を触れる。

 

「ここがナルトの中の…」

 

「あ!じいちゃん!どうなってんだ!?」

 

「おおナルト、とりあえず儂を九喇嘛の居場所に案内してくれないかの?」

 

「おう!こっちに着いてきてくれってばよ!」

 

ナルトに連れられてある大きな広い部屋に着くと、そこには今までに感じたことのない程の禍々しい、甚大なチャクラを持つ、巨大な狐が此方を睨んでいた。やべえ…漏れそう。

 

「貴様は…三代目火影か。ほう、あの日にこのワシの一撃を喰らってもなお生き延びたジジイだな。思い出したぞ」

 

いや、あれが原因で猿飛ヒルゼンは一度死んでおります。本当人に喰らわす攻撃じゃないですよ、知らないけど。ってか殺気凄え…

 

「殆ど死にかけになったがの…九死に一生を得たってところじゃの。九喇嘛よ、日頃からナルトが世話になっておるな」

 

「あの小僧から名前を聞き出しやがったか…いけ好かねー野郎だ。貴様ら人間がワシを封印したんだろうに」

 

「じいちゃん、どういうことだってばよ?」

 

「貴様ら人間のことなど知ったこっちゃないが…この小僧に全ての憎しみを背負わせ、恰も全てが収まったかのように錯覚する、醜い生き物だな。その頂点に立つ火影というのは偽善者代表のことなのか?」

 

ぐうの音も出ない。この世界に来てから十数年…火影の座に居座り、大好きなNARUTOの世界の原作改変を満喫して来た。そしてナルトに対しても、幸せに過ごせるよう色々取計らった…つもりだった。でも、それは全て「立派なナルトの保護者役」という自分の立場を守ることを前提とした行動。偽善者、今の俺に相応しいな。

 

「おい九喇嘛!お前が何言ってんのかわかんねーけど、火影を馬鹿にするなってばよ!」

 

「よせナルト、あやつの言うことは最もじゃ。儂もケジメをつけなきゃならんのう…」

 

「じいちゃん?」

 

「ナルト、儂は今までお前に明かさずに隠してきたことを今から全て話す」

 

「え!?何のことだってばよ?」

 

「それは…お前が産まれた日のことじゃ」

 

「俺が…産まれた…日?」

 

 

そして俺はナルトの精神世界で全てを話した。

 

ナルトが産まれた日、里に九尾が襲来したこと。それを四代目火影が自分の息子に封印したこと。しかし彼とその妻は死んでしまったこと。

 

そして…ナルトがその2人の子であること。

 

 

「…ということなのじゃ。ナルト、本当にすまなかった。儂はお前が他人に対して恐怖心を抱いてることを知ってたのに、保護者として何もしてやれんかった」

 

「仕方ないってばよ…じいちゃんは火影として里の皆を守らなきゃならねえのは俺もわかってるからよ…でもよ!何で父ちゃんは俺に封印したんだよ!?こうなるって予想してなかったのかよ…」

 

さて、無理矢理あの封印札を剥がしかけさせてミナトを出させて問いただすってこともできるが、流石に危険過ぎるよな…

 

「確かに儂も最初はミナトが何故息子のナルトに九尾を封印したのかは分からんかった。じゃがな、少し経ってから衝撃の事実が判明したのじゃ…」

 

「衝撃の事実?何だってばよ!?」

 

ミナト、正直すまん。真実を伝えるために嘘をつく。

 

「ミナトとクシナが発見された場所で巻物が見つかったのじゃ。そして、それがミナトの残したものだとわかった」

 

「…父ちゃんが残した巻物?」

 

「これじゃ」

 

俺は懐にしまっていた巻物を取り出し、ナルトに投げ渡した。ナルトはすぐにそれを開き、黙々と読んだ。

 

「えーっと…つまり、どういうことだってばよ?」

 

おいっ!今シリアスな展開だろ!ここで馬鹿ひけらかすな!!

 

「…ふぅ。つまりうちはマダラという初代火影様の宿敵が実はまだ生きており、そいつが九尾を操って里を襲ったのじゃ。そうじゃろう、九喇嘛?」

 

「うちはマダラ…ああ、忌々しい奴だ…ワシを一度のみならず二度までも貶めやがって」

 

「あー、そういう意味だったのか。でも、それと俺に封印したのには何の関係があるんだ?」

 

「ここからは儂の予想なのじゃが…きっとミナトはそのマダラが今後我々の脅威となる存在と悟ったのじゃろう。そして、自分の息子が九尾…いや、九喇嘛の力をコントロールしてその脅威に立ち向かうことができると考えたのではないかと儂は思う。ミナトは無駄なことはしない男じゃったからの…」

 

「ってことは、父ちゃんは俺のことを信じて九喇嘛を…」

 

「親ってのはいつまで経っても子供を信じるものじゃ」

 

「そっか…そうかもしれねえ。いや、きっとそうだってばよ!父ちゃんは俺のことを信じて託してくれたんだ!」

 

「フハハハハ!三代目も落ちたな…四代目がこんな小僧がワシの力を引き出せるとでも思ってたというのか?」

 

「九喇嘛よ…儂はナルトを信じておる。此奴は憎しみで繋がった人間とお主ら尾獣の関係を新たなものに作り変えてくれるとな。そして、儂はまた、お主のことも信じておるのじゃ。憎しみだけが尾獣のもつ感情ではなかろう?」

 

「何を言うかと思えば…人間がワシを信じる、か…。貴様、よっぽど変わった人間だな。まあ貴様がどう考えようが、全てはナルト次第。こいつが面白い奴だったら、力を貸すか考えてやらなくはないかもな…。まだ口煩くてしつこい餓鬼としか思ってないが、まあそのしぶとさだけは認めてやる」

 

「そうか…九喇嘛よ。これからもナルトのことを宜しく頼むのお」

 

「…フン」

 

「じいちゃん。俺ってばそろそろアカデミー行かないと遅刻しちゃうってばよ!じいちゃんも火影の仕事あるんだろ?」

 

「そうじゃな、では戻るとしよう」

 

 

そして俺とナルトは現実世界に戻った。さて、そろそろ仕事しに行くか…

 

「じいちゃん、俺ってば色々ビックリしたし、落ち込んだこともあったけど…四代目の息子だから、我慢するってばよ!」

 

「そうか、それなら儂も安心じゃ。アカデミー行ってらっしゃい」

 

「おう!じいちゃんも火影の仕事頑張れよ!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

こういうことがあったんだ。そこからナルトのチャクラコントロールは格段に良くなって、分身の術は勿論、木登りや水上歩行もできるようになった。影分身の術は、卒業祝いに伝授してやるかな。

 

ちなみにまだ完全に九喇嘛とは和解してないらしい。「ワシのチャクラを使うにはまだ小僧過ぎるな」って言われてるんだって…てことは成長したらチャクラを貸すのは吝かではない、ってことだね!

 

 

さてさてナルトはそろそろアカデミーから帰ってくるかなー。俺はもう一仕事があるから、水晶の術でちょちょいとな。

 

お、イルカ先生と何か話してるぞ。ナルトめっちゃ喜んでる。ってことは…イルカ先生のおごりでラーメン行く感じか。ならナルトの夕飯は考えなくていいか…丁度いい。今日最後のタスクに集中できるな。

 

さて、水晶の観察対象を里の中心部からかなり離れた森の中へ…お、やっぱいたか、ミズキの奴め…

 

んー、誰かと話してるけど、額当てしてないな…抜け忍か盗賊とかかな?佇まいからして忍では無さそうだな。でも何の取引だ?今回のアカデミー卒業候補生は皆優秀で、卒業確実って聞いてるから落第生は使えないよ?

 

…ちょっと不安だな。今手の空いている忍は…あ、こいつでいいや。呼び出すか。

 

 

 

少しして、ドアを叩く音がした。

 

「入れ」

 

「火影様、お呼びでしょうか?」

 

「うむ、お前にミズキの監視を頼みたい」

 

「ミズキさんって…確かアカデミーの人気講師ですよね?」

 

「そうじゃ。ここ最近怪しい動きをしておる。特にアカデミーの子供達に接する際は注意して監視せよ」

 

「はあ…分かりました」

 

「宜しく頼む。…ところで例の件、何かわかったことはあるか?」

 

「はい。火影様の仰る通りでした…あの大企業ガトーカンパニーの裏側…。もし他里と手を組んだりしたら、かなりの脅威になりますね」

 

やっぱ偵察のセンスあるなあ。気配を消し、素早く動くから見つからない。やっと見つけたと思えばいつの間にか幻術の中。もしくは幻術で情報を吐かせてから光のように消え去る。

 

「やはりそうじゃったか…流石じゃな。自来也ですら得られなかった情報をいとも容易く入手してくるとは」

 

「火影様が俺の才能を見抜いてくださったお陰ですよ…最も、交渉術には長けてないので自来也様には敵いませんが…」

 

自来也…そろそろ戻って来ねえかな。ナルトの修行頼もうと思ってんだけどなあ。

 

「取り敢えずガトーについては様子見じゃ。ではミズキの監視、くれぐれも頼んだぞ」

 

「御意」

 

 

 

さて、これで何とか大丈夫だろう。

そろそろナルトも帰って来てるかな…俺も帰ろ。

 



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卒業試験

さあ、今日はアカデミーの卒業試験。前にも言ったが今年の卒業候補生は皆優秀だから、余程のことが無ければ大丈夫だろうということだ。

 

俺が見に行っても良いんだけど、一応ミズキの件はあいつに任せてるし、担当上忍の割振りの確認とかもあるので仕事します。

 

「じいちゃん!行ってくるってばよ!」

 

「卒業試験しっかり合格してくるのじゃぞ」

 

「勿論だってばよ!いよいよ俺ってば忍者だ!」

 

まあ、卒業試験は実技だからまず落ちることはないよな。

俺も仕事に行くとしますかね。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「グットモーニングだってばよ!」

 

ナルトの声が教室に響く。そこでやる気の無さそうな男の子とポテチを食べてる膨よかな男の子が反応する。

 

「朝からテンション高過ぎだぜナルト…今日は卒業試験でただでさえめんどくせーのによ」

 

「僕は合格したら父ちゃんが焼肉食べ放題連れてってくれるから張り切っちゃうよ」

 

「俺らってば明日から忍者になるんだぜ!もう楽しみでたまんねーよな!」

 

「忍者も忍者でめんどくさそーだけどな。それにしてもナルト余裕だな…まあ実技はお前なら問題ないもんな」

 

3人が話していると、担任の先生が教室に入ってきた。

 

「おーい朝礼始めるぞ〜。席につけ、ナルト」

 

「イルカ先生!何で俺だけなんだってばよ!?」

 

「周りを見てみろ!ナルト、お前しかうろついてるやつはいない!」

 

「ハハハハハ!周り見えてないで何が忍者だよ!」

 

「うるせえってばよキバ!!」

 

実はチョウジとシカマルは既に席についており、ついさっき来たナルトは彼らのいる席の周りで立ち話をしてたのだ。つまり席についてないのはナルトだけだった、ということだ。

 

「よし、みんなおはよう!今日はついに卒業試験だ。出席番号順に行うぞ。試験内容は『分身の術』だ。まあお前らなら問題ないだろう。20分後に秋道チョウジから始めるから準備しておけよ!」

 

教育カリキュラムこそ変わったものの、その過程で十分忍としての適性が評価できたので、今や卒業試験はほぼ形骸化している。

 

「ではこれで朝礼を終了する。自分より2人前の人が呼ばれる頃には廊下で待機するように!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「次!6番うずまきナルト、入れ!」

 

「押忍!」

 

試験教室には最終学年の2クラスのそれぞれの担任うみのイルカとミズキが座っている。

 

「ナルト君か、実技の成績は申し分ないし大丈夫だね」

 

「よしナルト、分身の術だ。やってみろ」

 

「任せろってばよ!分身の術!」

 

ボン!と鳴ってから教室一杯一杯にナルトの分身が出現していた。

 

イルカはその分身の数に少し驚いたが、すぐ表情を戻し、ナルトに告げた。

 

「5体で十分なんだけどな…流石だナルト、合格!」

 

「っしゃあ!俺ってば忍者だってばよ!」

 

「おいおい、まだアカデミーの卒業が決まっただけだ!…まあいいか。ナルト、お前を説教するのももう無くなるんだな…」

 

「え、イルカ先生ってば俺のこと叱り足りねえのか?んー…仕方ないってばよ、最後に俺のとってきおきの術を見せてあげるってばよ!…変化!おいろけの術!」

 

そう言うとナルトは忽ち、ナイスバディなセクシーお姉さんに変化した。

 

「ブバーーーッ!!!おいナルト!お前は此の期に及んでなんてくだらん術を!…わかった、そこまでするなら今日の放課後、この階全部残り掃除だ!」

 

「えー!!それは無いってばよ!!イルカ先生勘弁してくれってばよ…」

 

「自業自得だ!ほら、まだ残りの生徒が待ってるんだ。教室に戻って大人しく自習してろ!」

 

「ちぇ…」

 

そしてナルトはとぼとぼと退出していった。

すると近くで待機していた次の生徒、うちはサスケが話しかけた。

 

「おいナルト、何落ち込んだんだ?」

 

「お、サスケ。いや、試験は受かったんだけど…イタズラして居残り掃除になったんだってば…」

 

「フン、お前のことだ。そんなところかと思ってたぜ」

 

「うるせーってばよ。まあ、お前もしっかりやれよ!」

 

「ああ」

 

そう言ってサスケは試験教室に入って行った。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ふう…これで全員ですね。皆問題無く合格で良かった…あれ?イルカ先生、額当てが一つ残ってますよ?」

 

「数ぴったりと聞いてたんですけど…あ!ナルトに渡すの忘れてた!」

 

「そういえばナルト君受け取ってませんでしたね。僕が渡してきますよ。イルカ先生は職員室に報告をお願いします」

 

「あ、そうですか…?分かりました。よろしくお願いします」

 

ミズキが自らナルトに額当てを渡すのを申し出たことに少し違和感を覚えつつも、イルカは職員室に戻っていった。

 

「よし、これで準備は整った…ナルト、今迎えにいってやるからな」

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…ったくイルカ先生ってひどいってばよ。ちょっとからかっただけだのによー」

 

ナルトが退屈そうに箒を掃きながら、愚痴をこぼしていたところにミズキがやって来た。

 

「ナルト君、お疲れ様。ごめんね、僕も流石にイルカ先生厳し過ぎるかなって思ったから止めようかと思ったんだけど…」

 

「ミズキ先生!いや、別に大丈夫だってばよ。俺ってば他の奴らと違って祝ってくれる父ちゃん母ちゃんいねえからどうせ暇だったしな…」

 

「そっか…。あ、そうそうナルト君。大事なコレ、忘れてたよ!」

 

そう言ってミズキはナルトに額当てを見せた。

 

「あ!なんか忘れてると思ったらそれだってばよ!サンキューミズキ先生!」

 

そうしてナルトはミズキの元へ額当てを取りに行ったが…

 

ミズキはそこで素早くナルトの首元をトンと叩いて気絶させた。

 

「全く、こいつは少し優しく扱うだけで直ぐに警戒を解く…愚かな奴だ」

 

そういうとミズキはナルトを抱え、木の葉の外れの森に向かった。

 

 

 

暫くしてイルカはナルトがいた教室に向かった。

 

「ナルトー、そろそろ掃除を終えたかー?…ナルト?どこにいるんだ…。!この額当ては…ミズキ先生!いらっしゃいますか?ナルトの額当てがここに!」

 

イルカは教室の入り口近くに落ちていた額当てに気づくと、何か嫌な予感がしてミズキ先生を探すがその気配はない。

 

「…不味いな。そういえばミズキ先生がわざわざナルトに渡すなんて妙だったんだ…。万が一も考えた方がいいかもな、火影様のところに報告だ」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「は?ナルトのおいろけの術で気絶してミズキを見失ったじゃと?」

 

「…面目無いです。気づいたら試験教室には誰も…」

 

おい、こいつにこんな意外な弱点(むっつりスケベ)があったとはよ…。ってかミズキの野郎、やっぱり何かしでかしたか。

 

「馬鹿者!…まあ儂もあの術を初めて生で見せられた時は…いやいや、そんなことはどうでもいいのじゃ。それまでに怪しい動きは見られかのか?」

 

「いえ、自分が監視を始めてからはこれといって怪しい動きは…」

 

突然、ドアが豪快に開かれた。

 

「ノックもせずに、一体何事じゃ!!」

 

「すみません火影様。しかし、大変です。ミズキ先生とナルトがアカデミーから居なくなりました!自分が教室に戻った時には既に…」

 

「やはりミズキはナルトを…」

 

「火影様?」

 

「恐らくミズキがナルトを誘拐した。奴は外部の輩と関係を持っている。もしかすればナルトを…」

 

「ミズキ先生…ミズキがナルトを!?クソっ!俺がしっかりしていれば…」

 

「落ち着くのじゃイルカ。多分ミズキ達は西の外れの森に向かった。イルカはそこにいる暗部と奴等を追うのじゃ」

 

「イルカさん、行きましょう」

 

行きましょう、じゃねえよ!

お前がドスケベじゃなければこんなことには…

 

まあ正直そこまで心配はしていない。九喇嘛はナルトと和解していないとはいえ、徐々に心を開いているようだ。本当にやばかったら力を貸してくれるはずだ。

 

二人は直ぐに退出し、森へ向かった。さて…俺も様子を見てみるか、水晶の術、っと。

 

どれどれ…あ、いたいた。ミズキと商人を装った2人の男が何か話している。その横でナルトは眠っている。この距離ならあと2,3分で2人は到着するかな…

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

時を同じくして、里の外れの森では…

 

「ミズキよ、こいつが本当に九尾の人柱力なのか?ただの小せえ餓鬼にしか見えねえが…」

 

商人を装った男が眠ったナルトを見て怪訝な顔を浮かべた。

 

「いや、こいつがあの九尾襲来の日に四代目が九尾を封印した赤子だ…確かに里の戒厳令で外部には知られないようになっているから疑うのもわかるが、間違いないぜ」

 

「兄貴、こいつが本当の人柱力ならこの後直ぐに里が混乱するはずだぜぃ。とりあえずさっさとここから離れちまった方が…」

 

「それもそうだな。じゃあミズキ、一先ずお前の入隊を許可する。さっさとここを出るぞ」

 

「ああ…行くか。…!」

 

ミズキはそう言った瞬間に背後の気配に気づいて振り向いた。

 

「待て!ミズキ!」

 

振り向くとイルカと1人の暗部がもう直ぐ追いつかんとしていた。

 

「イルカ!?何故ここが…」

 

「おいミズキ!お前はここは安全だと言ってたではないか!」

 

ミズキと共にいた男は慌てだした。

 

「おいミズキ!やっぱりお前がわざわざナルトに額当てを渡すなんて変だと思ってたんだ!早くナルトを返せ!」

 

 

 



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ミズキの思惑

「チッ…まあ見つかっちまったからには仕方がねえ。こっちは俺しか戦えない上に、イルカは暗部付き…。でもなあ、こうするとどうかな?」

 

そう言うとミズキは寝ていたナルトの首にクナイを近付けた。

 

「………」

 

暗部は何も言わず、しかし警戒態勢を崩さない。

 

「クソっ…ミズキ!お前は一体何故こんなことを…!?」

 

「平和ボケしたこの里は俺の実力をちっとも認めてくれやしねえ!アカデミーの教育改革のために扱き使われるばっかりだ!だからな…俺は里を抜け、もっと刺激的な環境に身を置こうと決めたんだよ!」

 

確かにヒルゼンは教育改革を始めてからアカデミー講師への要求を高めた。一方でそれは彼等に初心に帰って身も心も洗練させる機会をもたらし、中にはその成果が認められて上忍となる者もいた。つまりミズキの言い分は御門違いも良いとこなのだ。

 

「それはお前の勝手じゃないか!何故ナルトを攫う必要があるんだ!」

 

「イルカ、お前は特に平和ボケしたな…外の世界を何もわかっちゃいねえ。闇の深い集団に入るにはな、それ相応の覚悟を見せつけなければならない。スパイなど掃いて捨てるほど寄ってくるからな」

 

「それでナルトを!…ミズキ、お前も墜ちたな」

 

「アカデミーで飼い殺しにされる木の葉の犬に成り下がるよりはマシだよ、イルカ。さて、お喋りはこれ位にして.どうする?この状況ではお前は何も手を出せないもんなあ!」

 

「クソっ、ナルトさえ何とか出来れば…」

 

「それが出来ないから立ち尽くしてるんだろ?ほらほら、こんな感じで首を少しクナイで…ぐっ!!!」

 

ミズキはナルトへ更にクナイを近づけようとすると、突然後ろから何者かに吹っ飛ばされた。

 

「誰だ!?お、お前は…瞬身のシスイ!」

 

「シスイ!?何故君が此処に…もしかして暗部の正体って…」

 

ミズキを吹っ飛ばしたのは、うちは一族が誇る木の葉随一の瞬速忍者、うちはシスイだった。

 

「バレちゃったら仕方ないっすね…イルカさんが上手くミズキさんを引きつけてくれたので何とかなりました。おい、ナルトー、起きろよー」

 

「…ん、ここは…あれ!?シスイの兄ちゃん?どうしてだってばよ、確か俺は教室で掃除を…」

 

「ナルト!大丈夫か!?」

 

「あれ?イルカ先生!ミズキ先生もいるってばよ…ミズキ先生ってさっき教室で会った気が…あれ、よく思い出せねえ」

 

「ナルト、お前はミズキに眠らされて攫われたんだよ!怪我はないか?」

 

「え!?どうしてミズキ先生がそんなこと…俺の身体は大丈夫だってばよ」

 

「それなら何よりだ…とりあえずミズキとその仲間を捕らえる。シスイ、頼む」

 

「おい、やめてくれよ!イルカだけならまだしも流石に上忍相手には…」

 

ミズキは慌てだしたが、it's too late.

シスイの幻術によって3人は直ぐに倒れた。

 

「瞬身のシスイの幻術が生で見れるとは…」

 

「大したことないですよ、イルカさん」

 

「ちょっと待った!いや、シスイの兄ちゃんは確かに凄かったけど、俺ってば何が何だか…」

 

「簡単に言うとミズキが里に対して反逆してたってことだ!それもそうだがナルト、お前に渡す物がある。ちょっと目を瞑れ」

 

「え、うん、わかったってばよ…」

 

イルカは自分の額当てを取り、ナルトに着けた。

 

「…よし、これでいいか。目を開けていいぞ」

 

「…額当てだってばよ!俺ってば木の葉の額当て着けてる!」

 

「お前はイタズラばかりする生徒だったが…真摯に努力に励んで己を磨いてきた優秀な俺の生徒だ。少し寂しくなるが、忍者になっても俺はお前の味方だ」

 

その言葉は、アカデミーである程度友達に恵まれながらも大人の冷たい視線を受け続けて色々辛い経験をしてきたナルトにとって非常に心強いものだった。三代目やサスケの両親以外にも自分を認めてくれる大人がいることに気付き、ナルトは自然と涙を流していた。

 

「イルカ先生…俺ってば…」

 

「一端の忍者がすぐ泣くんじゃない。まあ…今日はお祝いだ。特別に一楽のラーメン奢ってやる」

 

「…イルカ先生!!」

 

「うぉ、おいナルト!鼻水が服に付く!」

 

イルカの温かい言葉にナルトは思わず抱きつき、イルカも驚いていたが、とても嬉しそうだった。

 

「さて…俺はお邪魔かな。とっととこの三人連れて火影様のところへ行くかね」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…報告は以上になります」

 

「そうか、ミズキの取り巻きの尻尾が掴めたと思えば芋づる式で犯罪集団が出てきて全て捕まったということじゃな…しかしシスイ、無事に収まってよかったのう。里の為にも、お主のためにも、な」

 

まだ忍でない一少年の術で上忍が気絶して任務失敗、人柱力も奪われる。ってなったらやばかったな。こいつよくこれまで何とかやってこれたよな。無茶苦茶優秀だけれども。

 

「…返す言葉がありません」

 

「ハッハッハッ、最後のは冗談じゃよ。御苦労であった。下がってよいぞ」

 

「…はい」

 

ミズキによるナルト誘拐は何とかイルカとシスイによって事なきを得た。取り巻きの集団も大した集団ではなかった。…まあ暁や大蛇丸ならこんなヘマをするはずがないもんな。あ、大蛇丸も暁にいるんだったな。

 

さて、こうしてアカデミー卒業生の内忍者を志願した下忍候補27人が揃った。間も無く上忍達に改めて担当の割振りを伝える会議が始まる。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…以上が第6班じゃ。呉々も宜しく頼む」

 

「御意」

 

「そして第7班。担当上忍はたけカカシ。班員はうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ」

 

俺がそう告げるとカカシは少しダルそうな表情で返答した。

 

「…はい。しかし火影様、この班だけ少しバランスが偏ってませんか?首席卒業のうちはサスケに、実技1位タイのうずまきナルト、座学、チャクラコントロール1位の春野サクラって流石に強過ぎじゃあ…」

 

「うむ。カカシの言う通り、第7班は残り8班と比べて戦力が頭一つ抜けている。じゃがの、寧ろそれが一番良いのだ。下忍のスリーマンセルは仲間との連携の基礎から覚え込ませなければならない。その場合に3人の中の格差があまりに大きいとその基礎を疎かにしてしまう下忍が出てきてしまうからの。異論があれば遠慮なく申してみよ」

 

これは自分でも正論だと思う。勿論原作通りの流れを崩し過ぎないことは俺にとって非常に重要だが、自分自身暗部で仕事をしてきた中で仲間と連携する能力の重要性は何度も痛感してきた。

 

やっぱり、どの上忍も何も言ってこなかった。

 

「…異論はないようだな。カカシも大丈夫だな?まあこの場合はお主が一番大変になる感じになりそうじゃの…頑張ってくれ」

 

「はぁ…仕方ありませんね。第7班担当、引き受けました」

 

「そして第8班。担当上忍夕日紅。班員は犬塚キバ、日向ヒナタ、油女シノ」

 

「はい」

 

紅…そういえば俺の息子と付き合ってるんだっけ。ぶっちゃけ2人とも殆ど私的な絡みはないんだよな。父親になったことないからわかんないけど息子が大人になるとこんなもんなの?

 

「紅、お主はまだ上忍になったばかりで難しいこともあるだろうが儂はお主ならできると思っておる。宜しく頼むぞ」

 

「御意」

 

「最後に第10班。担当上忍猿飛アスマ。班員は奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジ」

 

この里では九尾を想起させる「9」という文字は忌避される傾向にあるので第9班や9号室などといったものは基本的には見られない。よって1〜8,10班という構成になる。

 

「…はい」

 

何か全然目合わせて来ねえ…もしかして俺違和感ある?流石に息子にはバレちゃうのかな…。まあまだ何も言ってきてないし、放置で。

 

「こちらも第7班と同じく例外的な処置だ。奈良家、山中家、秋道家の伝統的な三位一体戦術を尊重したという訳じゃ。アスマ、宜しく頼む」

 

「…御意」

 

「以上で担当上忍の任命を終わる。次に下忍昇格の判断基準について今一度確認をしておく」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

ふう…色々大変だったけど何とか原作第1話は完了した。さてさて帰宅すっかね。

 

 

 

「ただいま、ナルト」

 

「じいちゃんおかえりだってばよ」

 

「ナルト、こんな時間まで起きてたのか。先程は大変じゃったのう。無事で良かったぞ」

 

「心配かけたってばよ。でも俺ってば大丈夫だ」

 

「さて、儂からまだナルトに卒業祝いをあげてなかったのう?」

 

「え?じいちゃんなんかくれるのか!?」

 

「勿論じゃ。とっておきのものを授ける。二代目火影様が開発された術じゃ」

 

「え!?二代目火影の術…じいちゃんそんな凄い術俺に教えてくれんのか!?」

 

「そうじゃ。ただな、これは本来上忍クラスの術じゃ。そこらの下忍が使えば忽ちチャクラが無くなり、最悪の場合…死ぬ」

 

「!俺ってば…」

 

「大丈夫じゃ。お前は母クシナから受け継いだ豊富なチャクラと九喇嘛の膨大なチャクラがあるからの」

 

カカシも原作で言ってたけどマジでこいつのチャクラ量やべえ。九喇嘛なしで俺の3倍くらいかな?

 

「そっか!で、それで一体どんな術なんだってばよ?」

 

「では実際にやってみるとするかの。印はこれだけじゃ。影分身の術」

 

俺は術を発動し、影分身を1体出した。

 

「じいちゃんが2人…ってこれってばただの分身の術じゃねーか!」

 

「馬鹿、よく見ろナルト。残像では無いぞ?」

 

「え?…わ!マジだってば!本物だってばよ…」

 

「己の実体を作り出す術、それが影分身の術じゃ。実際の使い方も色々あるが、一遍に言っても混乱するだけじゃ。まずはとにかくやってみるのじゃの」

 

「わかったってばよ!」

 

 

 

こうしてナルトは夜遅くまで修行を続けた。俺はもう眠くて寝てしまったが。

 

朝起きたら家にナルトが50人くらいいて夢だと勘違いして二度寝して遅刻してホムラに怒られたのはまた別の話…

 

 

 

 

 

 




原作1話、終わりました。


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木の葉丸

今日は新たな下忍(候補)への説明会等で慌ただしい。…今は顔写真の撮影をアカデミーの教室で行ってるが、ナルトが妙に拘りを見せるせいで中々進まない…

 

「なんじゃこの写真は!」

 

前の世界で言うところの歌舞伎役者のようなメイクを施して写真撮影に臨んだナルト。

 

「これは俺のアートだってばよ!」

 

「こんなの忍の写真になるはずがなかろう!撮り直し!」

 

これで3回目だ…ナルト、こんなとこで主張出さなくても十分その髪の色で目立ってるさ…

 

そうしてため息をついていると、突然教室の扉がガラッと開かれた。

 

「ジジイ!勝負だコレ!」

 

「…ふぅ」

 

またため息をついてしまった。気配からわかってはいたが、入ってきたのは俺の孫の木の葉丸。今9歳だったはずだが、3年頃前にアカデミーに入学してから俺にやたらとこんな感じで絡んでくるようになった。理由は分かりきってはいるが。

 

「何だってばよ?…ああ、木の葉丸か」

 

「今日こそジジイを倒すんだコレ!!」

 

そう言って俺に向かい走り出した途端に木の葉丸は床に滑って転んだ…ということはなく、きっちり台詞を言い切った。昨日は学年最後の日でワックスを床にかけたから、まあ普段よりはツルツルではあるが…

ハッキリ言ってアカデミー生の身体能力、それも教育改革のなされたこの時代においてのそれなら滑ることは考えられない。ちなみに木の葉丸はやはり身体能力は学年でもトップレベルらしい。

 

自分の今までやってきたことによって、このように原作と少し変わった情景が見れたことを興味深く感じていると、木の葉丸の家庭教師、エビスが遅れて入ってきた。

 

「火影様!…大変申し訳ございません。木の葉丸君、修行に戻りますよ!」

 

そう、実は木の葉丸は今や周りの大人、とりわけエビスから「火影の孫」という目で見られることは無くなっていきつつある。これについては俺も後々知って驚いたのだが、実はナルトが俺の家に住んでいるので木の葉丸の相手を度々していたのである。ちなみに偶にサスケも一緒に相手をしていたらしい。

 

そこで、自分を「火影の孫」ではなく一人の人間「猿飛木の葉丸」として見てもらいたいがために、その手段として火影を目指す彼に対してナルトがあの原作の如く説教をしたらしいとのこと。そこで改心した木の葉丸は基本はエビス、偶にナルトやサスケと修行をつけてもらうようになり、実力に関しては既に並の下忍を凌ぐ程になったということだ。それを見て大人達も親の七光りというような認識を改めるようになっている。

 

…ちなみにその過程でお色気の術もあいつから伝授されたらしい。

エビスも修行中にお見舞いされて大変だったと聞く…

 

さて、それなら何故俺に噛み付いてくるのかという話だが…

 

「ジジイ!今日こそ手裏剣影分身の術を教えてもらうんだなコレ!」

 

実は先日、「儂に一撃でも喰らわせられたら手裏剣影分身の術位なら教えてやっても良いぞ?」とか伝えてしまったんだよね…

 

「じいちゃん、木の葉丸に教える約束したのか?」

 

「儂に一撃与えられれば、という条件での」

 

「そっか…あ!そうだ!木の葉丸、ちょっと耳貸せ」

 

「何だよナルト兄ちゃん?……なるほど!その手があったかコレ!」

 

え、何だ?まだ木の葉丸は術自体はあまり覚えてないから多分無理だよ?

 

「ジジイ、喰らえ!…お色気の術!」

 

そう言うと木の葉丸は大変けしからぬ身体つきをした裸の女性に変化、因みに大事なところは上手く煙で隠れていた。

 

「むっ!?」

 

やべえ、木の葉丸の成長スピードが半端無い…ここまで精緻なイメージを得るためにどれ程の修行を…

 

と色々気を取られていると急に背後から気配が。直ぐに振り向けども…そこにはクナイを向けた木の葉丸がいた。

 

「木の葉丸…」

 

「やっぱ大人は皆この術に弱いんだなコレ!変化した瞬間に影分身を1体出して後ろに向かわせてたの気づかなかったのか?ジジイ!」

 

「ナルト、木の葉丸に影分身の術を教えたのか?」

 

「えーっと、まあ…でも3体までっていう約束はさせたんだってばよ!」

 

「ほう。まあいずれ教えようと思っていたから良いが…それにしても木の葉丸、今のは中々じゃった。約束通り、手裏剣影分身の術を伝授しよう。10分後西の森へ来い」

 

木の葉丸を認めてやることで、情けなくもお色気の術に嵌められたことを流すことができた。

影分身を向かわせれば仕事に支障は出ないから良いだろう。

 

「よっしゃー!ナルト兄ちゃんありがとうだコレ!」

 

そう言って木の葉丸は教室を出て行った。さてさて、仕事再開しなきゃ。

 

 

 

 

 

「じいちゃん、木の葉丸がお色気の術やってからエビス先生ずっとぶっ倒れてるんだけど…どうするんだ?」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

何とかエビスを起こして下忍の写真撮影を片付けることができた。そして木の葉丸にも術の概要と修行方法を伝えたので後は彼次第だ。

 

さてさて、下忍候補全員が説明会に向かったので俺も作業を…おっと、そろそろやってくるかな。

 

「入ってよいぞ、自来也」

 

「先生、急に帰って来いって…一体どうしたんだ?」

 

「悪かったのう…実はナルトがアカデミーを卒業しての、お前が修行をつけてくれないかと思ったのじゃ」

 

「ミナトの子…あれから12年経つのか。まあそれは考えても良いが、それだけでワシを呼び戻した訳では無いだろう?先生」

 

そう自来也が聞くと、俺は真剣な顔をして答えた。

 

「ナルトを強くすることを『それだけ』として片付けるのは少し不味いのじゃ…」

 

「どういうことだ?」

 

色々と考えたところ、俺が原作知識を持っている分自来也を暁の調査に向かわせるのは非効率ではないか?という疑問に至り、それならもう暁を丸裸にして自来也にも木の葉の強化に尽力して貰おうじゃないか、という結論が俺の中で出た。

 

「お前が調べておった暁。儂も独自のルートで色々調べてみたのだが、大変なことが分かったのじゃ」

 

「先生も調べていたのか!?それでその大変なこととは?」

 

「前にお前は暁が傭兵として各地の争いに加担していたと言っておったが、恐らくあれは最初に自分達の名を裏の世界で広めるためであろう」

 

「…つまり?」

 

「この後奴らは『目的』に向けて活動を本格化するということじゃ。ボランティア活動をするために態々S級犯罪者を集めたなんてことは考えづらい」

 

「そこまでは当然思い浮かぶことだ。先生よ、早く言ってくれ」

 

「最近ビンゴブックで懸賞金の高く付いた者が殺され、死体が消えている事件が各地で見られているのは知っておるか?それを行なった者が暁の一員だという可能性が高いということがわかった」

 

「何だって!?それは全く聞いたことが無かった…だがそれとナルトのことにどんな関係性があるんだ?」

 

「今暁はビンゴブック狩りで『目的』のために資金を貯めているということだ。そしてその『目的』とは?」

 

「何か分かりそうだが、ちっとも浮かんでこねえ…」

 

そろそろ核心に迫っていこう。オッサンを焦らすのは趣味じゃないし。

 

「自来也よ。輪廻眼というものを知っておるか?」

 

「輪廻眼?ああ、伝説の六道仙人の眼のことか」

 

「暁の首謀者はその輪廻眼を有しているということがわかった」

 

勿論これだけは俺の原作知識。

 

「何だと!?」

 

「六道仙人の伝説は知っておるはずだ。十尾を一尾から九尾に分けて、この世界の各地に置いた。そして今我々がそれを人に封印し人柱力を作り上げている。正直六道仙人からすれば我々の尾獣に対する態度、行為は忌々しいものじゃろう」

 

「そうだな…まさか、首謀者はその秩序を壊そうとしているということか?それが『目的』なのか?」

 

「儂はそう見ておる。つまり当面の奴らの目標は尾獣を集め、十尾を復活させるというとこじゃろう」

 

「六道仙人の話から正直眉唾ものだったが、輪廻眼の件が本当なら無理な話でもないのう…ちなみに先生よ、その情報はどうやって得たのだ?」

 

やはり自来也は疑ってくるか。さりげなく論点を変えて誤魔化すしかないな。

 

「儂もただ火影室の椅子でのんびりしている訳ではないからの。影分身を外にやって調査してるのだ」

 

「おいおい、もうその歳じゃ流石に無理があるだろう」

 

「ほう、儂を年寄りと馬鹿にしておるのか?それなら後で久々に手合わせをしてみようかの」

 

「先生…本気で言っているのか?」

 

「本気も本気じゃ。ただ明日下忍選抜のサバイバル演習があるから演習場をグチャグチャにするのはまずいからの。明後日なら良いじゃろう」

 

「先生が最近修行しているのは姿勢や立ち振る舞いから何となくわかっていたが…そこまでなのか。わかった、先生を信じるぜ。…つまり、暁はいずれナルトの中の九尾を狙いに来るから修行をつけろ、ってことだな」

 

「そういうことじゃ。呉々もよろしく頼むのう」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

火影室を後にした自来也は温泉街に向かいながら考え事をしていた。

 

「輪廻眼か。先生の言っていることが本当なら…いやいや、彼奴らはとっくに死んだと聞いているからあり得ない。だとしたら一体誰なんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





自来也帰らせました。


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新たな下忍達

下忍選抜サバイバル演習はカカシ、アスマ、紅の班が合格を勝ち取り、その9名は晴れて下忍になった。彼らはまずは子守やペット探し、農作業の手伝いなどのDランク任務に従事している。しかしながらこれでは実力がつかない。そのため俺はその上忍三名を呼び寄せた。

 

「さて、部下達は任務をしっかりこなしているようで問題はなさそうじゃの?」

 

俺がそう聞くと、彼らは話し出した。

 

「まー、ウチの班はナルトとサスケが早くも文句を言い出しましたね…確かに彼奴らは下手な中忍よりも実力はありますし、早くもDランク任務では役不足かなあと。サクラも退屈がってますね」

 

「あんたのとこもやっぱりそうなのね、カカシ。私の方も感知タイプが揃っているからDランク任務はあっという間に片付いちゃって、キバが全然満足いってない感じだわ」

 

「お前ら大変だな…こっちはそもそもシカマルがやる気ねえし、チョウジものんびりやってる。いのは少し退屈そうだけど、お前ら程不満は溜まってなさそうだぜ」

 

カカシと紅の班はなるほど当然だなと思ったが、アスマ班はそこまでなのか…

 

「アスマのとこは別としても、やはり実戦的なことを行いたく思ってるってことじゃのう…出来れば各々の得意分野に基づいて修行メニューを具体的に考えることをしたかったのじゃが、それを披露できる場も与えなきゃならないか…」

 

「Cランク任務を割り当てるつもりですか?」

 

「それも悪くないのじゃが、これと言って今良さそうな任務が無くての」

 

シスイの報告などから考えるに、波の国の任務はあと1ヶ月程先のようだ。

 

ここ数年は新人下忍にも早めにCランク任務を経験させて、モチベーションの向上や短所と長所の把握などに繋げてきたが、この世代は今までに無く優秀だ。去年のガイ班の時にも同じことを思ったが、それより上かもしれない。

 

しかしながらCランク任務で大したものがない…ナルト世代はこれからの成長がかなり重要になってくる。そして来たる中忍試験で大蛇丸が何か画策していると仮定すると、それまでにある程度実力を上げさせておきたいのだ。

 

「…わかった。ではこれはどうじゃろう。儂直々に三班それぞれにAランク任務を与える」

 

「「「…Aランク任務!?」」」

 

我ながら良い案だと思う。

 

「その内容は……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

カカシは火影室を出てから家でゆっくり食事をとって部下のところに向かった。

 

「お前ら、おはよー」

 

「「「遅い!もうお昼!!」」」

 

9時集合なのに12時過ぎに来たクソ上司に対しナルトら3人は怒るも、カカシはそれを流しながら話し出す。

 

「悪いねー、でも面白い任務貰ってきたから許せ」

 

「何だってばよ?どうせまた子守とかペット探しだろ?」

 

「いやいや、そんなDランク任務じゃないよ」

 

「え?私達ついにCランク任務やれるの?」

 

3人は先程のイライラした態度から一転、ワクワクした顔をする。

 

「実はね…Aランク任務貰ってきちゃったのよ」

 

そしてワクワクした顔がカカシの言葉により一変、驚きと焦りを見せ始めた。

 

「Aランク任務!?それって上忍がやるようなものでしょ?私達にできるわけないじゃない!」

 

「いやー、これ火影様直々に命じられた任務だから断れないのよねー」

 

「じいちゃんが?どうしてだってばよ」

 

「内容は一体何なんだ?三代目も何も考えなしに俺たちにAランク任務は与えないはずだ」

 

サスケがいち早く冷静になってカカシに問い詰めた。

 

「内容は至ってシンプル、三代目火影の影分身を倒すこと。勿論俺は参加しない」

 

そう、ヒルゼンはそれぞれの班に自分の影分身の撃破というAランク任務を課したのだった。

 

「じいちゃんを倒す?それならお色気の術で一撃だってばよ!」

 

ナルトが笑いながらそう言った。

 

「それは火影様が戦闘モードじゃないからでしょ…ぶっちゃけ言って忍界で五本指に入る実力だからな」

 

「火影様ってそんなに凄いの?知らなかった…」

 

「面白いじゃねえか。直ぐ終わらせてやるぜ」

 

サスケが乗り気になってそういうと、カカシはこう告げた。

 

「サクラもサスケも本当に火影様の実力分かってないのね…一応言っておくけど期間は1ヶ月。俺は敗因を分析してお前らに修行メニューを課す」

 

「負けるのが前提になってるじゃねえか!おかしいってばよ」

 

「おかしいのはお前らだよ…ま、何れにせよ直ぐ思い知るさ。本当にあの方、年齢を重ねるにつれ更に強くなってる気がするよ。だからこそ3体も影分身出して下忍の相手できるんだろうな」

 

「3体ってことは俺らは1対1で闘うのか?」

 

「いや、そんなことしたら10年経っても勝てないよ。8班と10班にも同じ任務が課されてるってわけ」

 

「そうなのか!なら俺ら第7班が一番に任務完了させてやるってばよ!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「下忍達の実力を底上げするのに火影と闘わせる、か。ヒルゼンよ、中々面白い発想だな」

 

火影室に来たダンゾウは俺から先程の件を伝えるとそう述べた。

 

「そうじゃろう。他の下忍達が優秀だからCランク任務が大体消化されてしまってのう」

 

「ガイのところか。そういえば彼奴らは何故前回の中忍試験に合格しなかったのだ?」

 

「確かに中忍になるのに十分な実力はあったのだが、今の木の葉だとそのレベルの忍は沢山おる。彼らはルーキーじゃったから、経験の差で僅かに届かず、先輩が合格を勝ち取ったという感じじゃったかのう」

 

「そうだったのか。なら今回は問題なく上がれそうだな。彼らにも同じ任務を課してみたらどうだ?流石に身体が持たぬか?」

 

ガイ班もやるのか…悪くない。勿論俺の身体は心配ない。

 

「そうじゃの。ガイ達が今の任務から帰ってきたらそうしよう」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ…全然当たらねえってばよ」

 

「どうしたナルト、まだまだその程度じゃったか。自来也にも折角色々教えてもらったのに」

 

「エロ仙人は何か取材とか行って全然教えてくれてねえんだってばよ!」

 

「え、そうなのか?全く…後でしっかり言っておこう」

 

それにしても、第7班。動きは悪くない。ナルトとサスケが基本的に隙を作ってサクラが何とかして一撃を入れる、というプランのようだ。カカシがサバイバル演習で鈴を取られたのも納得だ。

 

ただ、こっちは火影。しかも影分身を潰すほどの一撃を喰らわせる必要がある。

 

「さて、そろそろ良いかの?少しは足りないとこが分かったと思うから、終わらせてやる」

 

そう言った瞬間、俺は一瞬でサクラの背後に回り、首元を軽くトンとやって眠らせた。あまりに一瞬過ぎて戸惑いを見せた二人にも続けて同じことをして、終了。

 

「勝負あり、ですね」

 

遠くから見ていたカカシがそう言ってこちらに近づいて来た。

 

「チームワークは悪くないが、精度がまだまだじゃの。まずナルトとサスケにサクラが付いてこれてない。サクラには基礎的な体術じゃ。次にナルトは数を使った多彩な攻撃を放ち、発想も豊かだ。サスケも火遁や手裏剣術に長けており中々手強い。しかし二人とも決定力に欠ける。チャクラ感応紙で適性を調べ、性質変化の修行をやってみてはどうじゃ?きっとサスケもまだ秘められたものを持ってるはずじゃ」

 

「仰る通りです…サクラは性質変化よりも基礎的なことからですね。ナルトとサスケに性質変化の修行ですか…俺一人で何とかなるとも思えませんが、やってみます」

 

「一応班毎に別々の任務となっているが、効率化できるならまとめて修行つけるのでも良いぞ。…ナルトは自来也に任せてもよいの。あとこの任務、ガイ班も加わった」

 

「ガイが?…はあ、また何か言われそうですね」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

とりあえず最初の三班の1戦目は終わった。カカシ班は先の通りだが、紅班はもう少しチームワークから見直した方が良さそう。キバをかなりキツ目に絞ったから、改善されると良いが…

そして実はアスマ班が一番良かった。シカマルの分析力とチームワークが半端ないので、個々の戦闘力は別に鍛える余地があるが、一番早く終わるんじゃないかな。

 

と考えていると、ガイ班の方も終わったようだ。

まあここは1年先輩な分洗練されたチームワークで一番苦戦した…当然手は抜いているが。

ヒザシが生きているからか、ネジは原作ほどひねくれていない。リーと切磋琢磨して二人とも体術は一級品だ。

ただ、体術中心の近距離タイプが2人もいるので3対1だと少しやりづらそうな印象。テンテンの中距離からのアシストが鍵になるな。

 

 

ではでは、彼らの成長を楽しみにしますかね。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「じいちゃんってこんなに強かったのか…知らなかったってばよ…」

 

「チッ…全く見えなかった…本当に70手前の爺さんなのか?」

 

「ごめん二人とも…私が足引っ張ってばっかりで…」

 

最強ルーキーの呼び声高い第7班は三代目火影に字の如く子供扱いされたことにひどくショックを受けていたのだった。

 

「ま!こんなもんだと思ったよ。サクラもそう落ち込み過ぎるな。これからお前らには修行を課す。サクラとサスケはとりあえず俺と、ナルトは自来也様と修行する」

 

「え!サスケ君と?頑張らなくちゃ!!」

 

さっきまで凄く落ち込んでいたサクラだが、サスケと修行できると知って急にテンションを上げた。

 

「え?俺だけカカシ先生じゃねーのかよ!あのエロ仙人ってば全然修行つけてくれねーんだぞ!」

 

「まあそう言うな。火影様がさっき話をつけてくれてたみたいだから、大丈夫だよ。恐らく温泉街にいるから、向かってくれ」

 

 

この様な形で他の三班も敗因を分析してから各自修行に取り組み始めた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「エロ仙人…じいちゃんの教え子って聞いてたけど本当に凄い忍者なのか?ただのスケベジジイにしか見えないってばよ」

 

「何を言っておる!儂は里の英雄四代目火影の師だぞ!」

 

「え!?父ちゃんの師匠なのか?」

 

「何、お前はミナトのことを聞いているのか!?」

 

「2,3年前にじいちゃんが教えてくれたってばよ。この中の九喇嘛のこともな!」

 

実はヒルゼン、自来也にナルトのことについてはあまり伝えていなかったのであった。

 

「九喇嘛…九尾のことか?」

 

「九尾は勝手に人間が付けた名前だってばよ。あいつの名前は九喇嘛だ!」

 

「まさかナルト、お前は九尾…じゃなくて九喇嘛と話せるのか?」

 

「まあな!まだ完全には認めてもらってないけど、俺は友達だと思ってるってばよ!」

 

「そうか…ならやることは決まりだのう」

 

「何するんだってばよ?」

 

 

自来也はナルトに彼が持っている2種類のチャクラについて説明した。しかしナルトは今まで命を懸けた戦いの経験が無く、今までその2種類目のチャクラを感じたことはなかったようだった。

 

 

「その九喇嘛のチャクラを引き出すことができれば、猿飛先生の影分身に一撃喰らわせるかもしれん」

 

「そうなのか!?九喇嘛ってやっぱスゲーんだな」

 

「まずはとにかくやってみようかのう。今からやるのは自分のチャクラを使い切ることだ。あそこの池に1,2時間ほど立ってろ」

 

「いきなりそんな退屈な修行かよ…」

 

 

こうしてナルトと自来也は修行を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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修行の成果

「カカシ…これで良いんだな?」

 

「ああ…まさか2戦目の火影様の手裏剣影分身の術で写輪眼を開眼するとは思わなかったよ。これで千鳥も完成だ」

 

サスケはカカシのオリジナル忍術「千鳥」を教えてもらい、遂に今日、巨大な岩を打ち砕いて完成となった。

 

「そうか…俺に雷遁の適性があったとはな」

 

「ただ、まだお前のチャクラ量じゃ1日2発が限界だ。そこは絶対守れよ?」

 

「ああ…ナルトやサクラは順調なのか?」

 

「ナルトは自来也様のお陰でどうやら順調みたいだ。サクラも苦しい修行だったけどよく頑張ってくれたよ」

 

2人が話していると、女の子がそこへ向かって来た。

 

「カカシ先生。何とか完成しました!」

 

「おおサクラ、早かったな。サスケも今成功したところだ」

 

「サスケ君も?良かった…」

 

「今日はもうこんな時間だ。とりあえずナルトのとこへ寄って、明日の決戦に備えて作戦会議をするぞ」

 

「うん!」

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

森の中…

 

ギュイイインンン!!!!ドカーーン!!!

 

と大きな音がなって、大木が倒れた。

 

「ハァ、ハァ、エロ仙人…これで…」

 

「ああ、螺旋丸の第三段階『留める』はこれで達成だ。…まさか2週間で完成させやがるとはのぉ」

 

「へへっ。俺ってば四代目火影を超える忍になる男だからな!」

 

ナルトは自来也との修行でまず口寄せの術を習得する過程で九喇嘛のチャクラを引き出すことを覚えた。まだ完全な和解がなされていないことから自来也は封印の鍵を使うことはしなかったが、ナルトは檻から九喇嘛のチャクラを一部引き出せるようになった。

 

しかしそれでもヒルゼンを倒すだけの決定力は得られず、二戦目もコテンパンにやられた。

 

そこで自来也は多くのチャクラを引き出せるナルトを見て、ミナトの術の螺旋丸を伝授することを決断した。ナルトは第二段階まで3日で完了したが、最終段階の『留める』には苦戦していた。チャクラを放出しながら、同時に密度を高める為にそれを圧縮するという行為は一流の上忍にとっても難しい技術なのだ。

 

「しかしまさか影分身を使って放出と留めるを分担するとはな。意外性は既にミナトより高いか…というかクシナ譲りかのう」

 

自来也がナルトをミナト夫妻と重ね合わせてしみじみとしていると、サクラとサスケがやって来た。

 

「ナルトー!修行の調子はどう?」

 

「サクラちゃんとサスケ!今俺ってば新術を完成させたところだってばよ!」

 

「お前もか…俺らもさっき完成させた。これで準備万端か」

 

「2人も修行上手くいったんだな!じゃあ明日に向けて作戦会議だってばよ!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

やばい…再戦から2週間しか経ってないのにナルト達強くなり過ぎてる。これは少し本気を出さないと不味い…

 

「手裏剣影分身の術!」

 

俺が術を発動するも、サスケの写輪眼はそれを全て見切った。

 

「全部見えてるぜ!…というか俺に気を取られ過ぎじゃないか?」

 

「何…?」

 

そして振り向くと、サクラにいつの間にか距離を詰められていた。

 

「木の葉旋風!」

 

「むっ!サクラが体術を…中々やるのう」

 

正直ナルトとサスケの足手纏いとなっていたサクラも基礎能力を徹底して磨いたのか、油断できない1人の忍となっていた。

 

「俺もいるってばよ!!」

 

そうすると、次は上から3人のナルトが襲いかかって来た。連携の速さだけでなくパワーも格段に上がっている。本当にこいつらルーキーの下忍なのか?

 

ナルトとサクラの体術の応酬に対処していると、後ろからチチチ…と鳥が鳴くような音がし始めた。

 

「この音は…まさか…」

 

「サクラちゃん、左に回避だ!」

 

「わかった。2人とも後は頼んだわ!」

 

そう言うとサクラは戦闘から離脱した。

 

「じいちゃん、じっとしててくれってばよ!!」

 

3人のナルトはそう言って俺を掴んで身動きが取れないようにしようとした。

しかし俺もそう簡単にやられるつもりはない。両手を掴むナルトを振りほどいて手が自由になった。サスケが左手に雷遁の性質変化を施したチャクラを携えて全速力で向かってくる。

 

「喰らえ、千鳥!!」

 

「これじゃあ流石に避けれないのう…じゃが跳ね返すことならできるか。サスケよ、お主に性質変化の優劣について教えてやろう…風遁・大突破!」

 

ナルトは残りの両足を掴んで俺を動かないようにするも、印を組めれば問題ない。雷は風に劣る。しかもこの火影の風遁だ。下忍の雷遁など話にならない。

 

「!…フン」

 

しかしサスケが風で吹っ飛ばされる直前、彼の口元が心なしか緩んだ気がした…けど気のせいだろう。

 

そう思っていると、次は背後からギュイインと音が聞こえた。…え、まさか。嘘でしょ?

 

「じいちゃんまたサスケにばっか目がいってるってばよ!喰らえ、螺旋丸!!!」

 

なんと俺のことを掴んでいたナルトは全て影分身で、本体は別に隠れていたのだった。そして本体のナルトは完全にチャクラを留め切った螺旋丸を俺にぶつけにきた。

 

完全に油断していた。仮に避けることができても後ろからサスケかサクラが追撃してくるだろう。

 

「成長したな…」

 

そう告げるとヒルゼンの影分身は螺旋丸の衝撃で煙となった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…!第7班に今倒された」

 

影分身の経験が還元され、ナルトの螺旋丸でやられたことがわかった。

 

「ほう…やはり一番早く倒したのはカカシ班だったか」

 

「ああ…まさかナルトが螺旋丸を習得していたとは思わなんだ…」

 

そう言うとダンゾウは驚いた顔をした。

 

「螺旋丸を!?下忍になって1ヶ月程でAランク忍術を…もしかすれば四代目を超える忍になるかもわからんな」

 

「だから言ったじゃろうて。ミナトはナルトを信じて未来を託したのじゃよ」

 

「…未来か。ヒルゼンよ、折り入って相談があるのだが」

 

ダンゾウが俺に相談を持ちかけるなど今まで一度もなかったことだ。意外に思うが、聞いてみようと思う。

 

「ほう?珍しいの。一体何じゃ?」

 

「根のことだ…教育改革後の『表』の忍を見ていて、徐々にその在り方に疑問を感じることが多くなった。今まで儂は忍とは庶民の生活を裏で支える名も無き平和の立役者だと思っていた。いや、立役者と言うよりは平和の為の道具と言った方が良いか」

 

「確かに根は過酷な精神訓練を受け、任務を全うすることが全てというような組織ではあるの…」

 

「そうだ。勿論儂は根の者は他の木の葉の忍に劣らず優秀だと思っている。…しかしな、彼らが道具として祝福や感謝を受けることもなく唯々任務に死力を尽くしている状態での『平和』は、真の平和と言えるだろうか?同じように任務に尽力する他の忍と同じ幸せを享受できないのだろうか?という疑問が儂の中で生じてきたのだ」

 

『忍の本分は自己犠牲』と今まで何度も口にしてきたダンゾウがまさかこんな事を言うなんて想像してもいなかった。

 

正直、これは大変難しい問題だと思う。今ここで根の解体を進言して、それをダンゾウが受け入れたとしよう。今まで根が受けてきた過酷な任務は誰がやるのだろうか?俺は木の葉の忍は優秀とは言えど、任務内容を見るに根がやっていることは彼等以外にできる者は殆どいないと思う。

「皆が平等に平和を享受できるように根を解体しよう」なんていう綺麗事では済まされないことなのだ。

 

「そうじゃのう…今迄木の葉の人々が平穏に過ごせてこれたのは、それを脅かすものを先んじて根が処理していたからだと言っても過言ではない。ダンゾウと根には感謝してもし切れないのう」

 

「いや、儂は別にそういうことを言ってる訳では…」

 

「分かっておる。じゃがこの現状がこの先ずっと続いて良い訳でもなかろう。あの事件から12年、ここまで色々と変化を取り入れて、木の葉はより良くなったと思っておる。きっと今なら根もより良い道をみつけることができるかもしれない。そうは思わんか?」

 

「そういうことだ。だから儂は他でもないお前に相談しているのだ」

 

意外とダンゾウには信頼されているようだ。

…しかしどうしよう。根の解体は現実的ではない。それ以外の方法となると…その構造自体を作り変えると言ったところか。それなら…

 

「例えばじゃが、木の葉の警務部隊はうちはが全体的に務めている。しかしこれもまた保守的で良いものとは言えぬじゃろう。一般的な忍として活躍するうちはも増えてきたし、警務部隊もこれからうちはだけではやっていけるとは思えん」

 

「…つまり、根と警務部隊を統合するということか?」

 

「例えばの話じゃ。警務部隊を里内の治安維持のみならず、治外法権的なものが絡むような対外問題をも対処する組織として作り変えれば、根もそこで活躍できるのではないかということだ。暗躍や裏取引はお手の物じゃろう」

 

パッと思いついたのを言ってみただけだからよく分からないが、ダンゾウの反応は…

 

「…悪くないな。それなら警務部隊という名目で今までの活動を続けられる。人々もその働きを認知するようになるだろう」

 

悪くないな、と言っていたが、ダンゾウの表情から察するにかなり良い感触だ。嘘から出た真ではないが、思ったことを言っただけで進展するとは、不思議なものだな。

 

「では、フガクに進言してみるかの?」

 

「そうだな、もう少し案を固めてから会議を開くぞ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

一週間が経ち、カカシ班以外の三班も無事任務完了。担当上忍達もかなりの成果を実感したらしく、満足そうにしていた。

 

紅班はまずキバには冷静な対処をすることを、ヒナタにはチャクラコントロールの強化による柔拳の決定力向上を、シノにはサクラと同様に体術強化による近距離戦能力向上を徹底させたみたいだった。その上で連携を磨いたらしい。

 

シノが冷静に戦況を見極めてキバに的確な指示を出し、キバと赤丸はシノを信じて獣人分身を駆使し俺に多彩な攻撃を仕掛け隙を作り、その隙をヒナタが柔拳によって文字通り突く。

 

キバがとどめを刺す作戦だろうと思っていた俺はヒナタの攻撃に対応できず、一撃喰らって終了。見事な連携だったと言える。

 

 

アスマ班は元々一番チームワークが優れていたが、個々の秘術を親から徹底的に鍛えられたことと、身体能力がアスマによって磨かれたことでそのパフォーマンスは劇的に向上した。

 

その修行に時間を割いた分、二戦目ではシカマルによる完璧な策略に俺はまんまと嵌められチェックメイト。猪鹿蝶の秘術を何も知らなければ一流の上忍でも初見対処は困難を極めるだろう。

 

 

ガイ班は実はカカシ班が俺を倒した翌日に任務を成し遂げた。流石永遠のライバルと言ったところか。

 

リーは今までの重りの倍の重さがある物を身に付けるようになった上に、アカデミーの教育カリキュラムを復習して基礎的な技術の確認から行うというかなり精神的にも肉体的にも辛い修行を行なったようだ。はっきり言って重りを付けた状態でも下手な上忍より速いです。重りを外したら多分俺も負ける…

 

ネジはヒナタと共にヒアシ、ヒザシと柔拳の修行に励んだようだ。実はガイの影響で剛拳の造詣を深めており、それを利用して柔拳をさらなる高みへ持って行ったそうだ。もしかしたら日向は木の葉にて最強はそろそろネタに出来ないかもしれない。

ハナビが彼らに影響されて原作より実力を上げたというのはまた別の話…

 

テンテンは飛び道具の威力を決定付ける要素の一つの速度を高めるために、適性とわかっていた風遁の修行をしたらしい。というのも猪鹿蝶が秘術修行をしている間暇になったアスマが少し教えていたようであった。忍具と風遁の掛け合わせ…原作のテマリ戦を知っている俺からすると大変興味深い。

 

一年先輩ということもあり少し俺も他よりは力を入れたのだが、このように下忍にしては圧倒的な修行を積んだ3人には結構あっという間に倒された…

 

 

 

こんな感じで下忍のAランク任務は完了した。

 

そして根と警務部隊の件は何とフガクも賛成のようでどんどん話が進み、根は名目上は解体されたが、呪印は解除されて晴れて警務部隊に異動することになった。

 

実際うちはも警務部隊志願者が減っており、渡りに船だったらしい。また統合の結果予算も節約できたので、里としてもまた嬉しいことであった。

 

ダンゾウはというと、根の異動に伴い警務部隊に新たに設置された主に里外問題を処理する第二部の部長となり、フガクと警務部隊の2トップとなった。これで以前よりも印象が良くなったのだろうか、ダンゾウへの期待が高まったらしい。良かった。

 

 

そして今日、遂にあの「Cランク」の依頼が届いた。

 

「火影様、間違いなくこれは虚偽の依頼ですね。ガトー絡みの任務となるでしょう。良くてBランク、悪くて…」

 

「そうじゃな。しかし今ここで依頼を拒否してしまえばそれはガトーの思うつぼじゃ。とりあえずはCランク任務として受理しよう。これは第7班にやらせるつもりじゃ」

 

「ナルト達に!?火影様、お言葉ですが幾ら何でも下忍が対処できるものではないですよこれは…スーパールーキーとは言えども…」

 

「ああ、儂もこの任務はかなりの危険を伴うものだとも承知しておる。だからシスイ、お前も暗部として護衛に向かって欲しい」

 

「成る程、分かりました。しかし俺は依頼人の警護とガトーの情報収集のどちらを優先すればよいでしょうか?」

 

原作通りなら今の7班とシスイで十分過ぎる位なんだけど、何か嫌な予感がするんだよな…

しかしこれ以上下忍班を加えたら機動力に欠けるし、何よりタズナが勘付くだろう。

 

イタチが暁に入ることがなくなったこの世界線で何が起こるか本当にわからない…あ、なるほど。それなら…

 

「もう1人暗部を付けよう。シスイは情報収集を、もう1人は護衛をやってもらう。お前の相方は…イタチだ」

 

「イタチですか?それなら俺もやりやすいです」

 

「うむ、そういうことじゃから、イタチに伝えておいてくれ」

 

「御意」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ペイン、今回は一体何の用だ?」

 

「角都、お前が何度も相方を殺すせいで人員が不足している。スカウトして来い」

 

「…彼奴らが俺を怒らせるのが悪いんだ。それで、誰をスカウトするんだ?」

 

「少し前から抜け忍として裏で有名になっている霧隠れの鬼人、桃地再不斬だ。噂によるとそいつの付き人も血継限界の氷遁使いののことだ。見極めて良さそうだったらそいつも連れてきてくれ」

 

「十蔵の首斬り包丁があの再不斬の小僧の物になっていたとは…面白いですねえ。角都さん、私も御一緒させてください。…彼がどこまで成長したか削って確かめてみたい」

 

「…良いだろう。だがあまり調子に乗るなよ。殺すぞ」

 

 

 

 




サクラは木の葉旋風等の基礎的な体術を高い精度で習得した感じで、特に必殺技とかはまだ無いです。

十蔵というのは、以前まで暁に所属していた忍刀七人衆の一人、枇杷十蔵です。アニメのイタチ真伝で出てきました。この後は登場しません。

次回から波の国編です。やっと。


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最悪の依頼人



ヒルゼンが主人公なのですが、ここから暫くはナルト達の描写が多くなるのでヒルゼン語りが減るかと思います。


「じいちゃん、俺らってばもうDランク任務は受けなくて良いんだよな!?」

 

ナルトは先日のAランク任務達成で自信が付いたようだ。

 

「コラ、ナルト!お前はまだ下忍なんだ!火影様にそんな偉そうな態度取るんじゃない!!」

 

イルカがナルトを叱るも、俺はもとよりDランク任務を割り当てるつもりはない。

 

「まあよせイルカ。カカシ班にはこれからCランク任務を行なってもらう」

 

「本当か?やったってばよ!」

 

「三代目、どんな内容ですかね?」

 

「ある人物の護衛じゃ」

 

俺はカカシの質問にそう答えた。

 

「え?もしかして大名?お姫様?」

 

「とりあえず入ってきてもらおうかの。タズナ殿、こちらへどうぞ」

 

そして扉を開けて入ってきたのは、酒瓶を片手に持った白髪のオッサンだった。

 

「なんだァ?超ガキばっかじゃねーかよ!…特にそこの金髪の超アホ面…お前それ本当に忍者かぁ!?」

 

俺がしっかり栄養あるものを与えていたからか、ナルトの身長は女の子のサクラよりも高かったのだ。

 

「何だと!?ぶっ殺す!!!」

 

そう言って今にも依頼人に飛びかかろうとするナルトをカカシは止めた。

 

「これから護衛するじいさん殺してどーするアホ」

 

「わしは橋作りの超名人、タズナというもんじゃわい。わしが国に帰って橋を完成させらまでの間、命をかけて超護衛してもらう!」

 

「ということでお前達にはこのタズナさんの護衛をしてもらう。出発は2時間後、各自準備をするように!…あとカカシ、お前は残ってくれ」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「三代目、どうしたんです?」

 

「実はの、この任務のことじゃが…」

 

そして俺は裏でのガトーカンパニーの活動に伴う今回の任務の危険性とそれに伴う暗部2名の同行について伝えた。

 

「成る程…これじゃあ下手したらAランク任務ですか。でも、もうアイツらの実力は中忍レベル。俺と優秀な暗部2名がいるなら問題ないでしょう」

 

「うむ。しかし相手が手練れだとすればかなりの危険を伴う…暗部には何かあれば伝書を里に送ることを頼んでいる。カカシは暗部といつでも連携が取れるようにしておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

第7班の「Cランク」任務が始まった。三代目はかなり深刻そうな顔をしていたが、そこまで心配することだろうか?

 

というのも、確かにガトーカンパニーが忍を雇うことはあってもタズナさんの()()を目的とすればそこまで人数をかけることはできない。精々手練れが2人といった所だろう。俺と暗部がいればきっと対処できる筈だ。

 

 

 

暫く歩いていると水溜りが道沿いにあった。ここ数日は雨が降っておらず、今日も快晴だ。明らかに怪しい。

3人に目配せをしてみると、やはり皆勘付いているようだ。

 

これが本当にCランク任務なら様子を見るが、今回は例外だ。早めに対処しておこう。

 

「詳しく話を聞かせてもらおうか…雷遁・雷獣追牙!」

 

「「グハアアアァァァ!!!」」

 

やはり、水溜りから二人の人間が出てきた。盗賊ではなく忍のようだ。

 

「カカシ先生!これってCランク任務ですよね!?忍との戦闘なんてあり得ないはずじゃ…」

 

そろそろこいつらにも伝えておくか。依頼人ももう嘘を突き通すことはできないだろうし。

 

「いや…実は今回の任務は唯のCランク任務ではないんだ。ですよね?タズナさん?」

 

「ああ…既にバレておったか…」

 

そうして俺はナルト達に今回の任務の概要を話した。ついでに拘束した忍からも情報を得たが、三代目から伝えられたことと殆ど変わらなかった。

 

「…という訳だ。ただ、火影様はお前らの実力を信頼してこの任務を割り当てたんだ。俺もできると思ったから受けた。…この任務、続行するということで良いな?」

 

「そういうことか!任せろタズナのおっちゃん!」

 

「勿論止める気はない。やっと実戦か…」

 

「うん、今の私達ならきっとやれるわ!」

 

…流石だ。こいつらなら当然そういうと信じていたよ。

 

「超すまん…騙しておって。そして超感謝する!!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ぐちぐちうるせーよ。今度はオレ様がこの首斬り包丁で…そいつを殺してやるよ」

 

「…ほっ…本当に大丈夫だろーな…!敵もかなりの忍を雇ったようじゃし…そのうえ鬼兄弟の暗殺失敗で警戒を強めているとなると…」

 

「このオレ様を誰だと思ってる…霧隠れの鬼人と呼ばれたこの桃地再不斬をな!」

 

 

大刀を持った男と、サングラスをかけた小柄な男がアジトらしき所で話しているのを、シスイは目撃した。

 

「…成る程。これはAランク任務以上だな。早くイタチの所へ知らせに行こう」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…桃地再不斬?あの霧隠れの鬼人が?」

 

「ああ、そうだ。恐らくもう直ぐ仕掛けてくるだろう。イタチ、お前とカカシさんがいれば問題ないか?」

 

「油断は出来ないが、対処不可能な相手でもない。俺はカカシさんに伝えてくる。シスイは里に伝書を送ってくれ」

 

「了解」

 

カカシ一行が歩く道の外にある森の中で暗部の面をしたシスイとイタチは情報を共有し、また分散してそれぞれの持ち場に戻った。

 

「カカシさん、報告があります」

 

イタチは急に森から出てきてカカシ達の前に現れた。暗部の存在を知らないカカシ以外は驚いていたが、カカシの名を言ったため、敵ではないと分かったようだった。

 

「…!びっくりしたってばよ…暗部の人か」

 

「ガトーが雇った忍が判明しました」

 

「何だって!?一体誰なんだ?」

 

「桃地再不斬。霧隠れの抜け忍です」

 

「鬼人再不斬か…お前と俺なら何とか対処できるか」

 

「再不斬だけなら何とか…奴に仲間がいるのかなどの他の情報はまだ分かりません。とりあえずいつでも対処できるように準備しておいて下さい」

 

「わかった」

 

「カカシ先生、何かあったの?」

 

二人の会話の内容が気になったサクラが質問した。

 

「ああ…実はな、もう直ぐ交戦状態に入りそうだ。相手の忍が待ち構えているらしい」

 

「漸く実戦か…」

 

サスケが不敵な笑みを浮かべた。

 

「恐らくかなりの手練れだ。俺一人で確実に倒せるレベルの忍ではない。基本的にはお前らはタズナさんの護衛、戦闘は俺と暗部が引き受ける」

 

「チッ…分かった」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「なるほど…こりゃあいつら鬼兄弟レベルじゃ無理だ…木の葉隠れのコピー忍者、()()()のカカシがいたんじゃなァ…」

 

そう言うと桃地再不斬は持っていた刀をタズナに向かって投げつけた。

 

…がカカシら4人の忍者はそれを待っていたかの如く直ぐに刀に身体を向けた。

 

「そこか!土遁・土流壁!」

 

カカシは土壁を出して刀の衝撃を吸収した。

 

「何っ!?」

 

「やはり桃地再不斬か…さあ、刀はこっちだ。どうする?」

 

「クソッ!…まあ問題ねェ。直ぐに取り返してやるからよぉ…忍法・霧隠れの術」

 

再不斬が術を発動すると、辺りは急に濃い霧に包まれ、全く周りが見えなくなった。

 

「何も見えないってばよ!」

 

「お前らはこの地にまだ慣れてねえからなあ…木の葉には霧が無いだろう?」

 

そう言って再不斬がカカシ達の元へ近づこうとしたその時…

 

「…風遁・大突破」

 

誰かがそう唱えると、突然強風が吹き、霧は全て掻き消された。

 

「クソッ!誰だ?」

 

「この風遁…まさか…兄さん?」

 

「助かったぞイタチ…」

 

そうカカシが言葉を放った直ぐ先には、面をしたイタチが現れていた。

 

「暗部なので名前は勘弁して下さい…」

 

「やっぱり…ってことはずっと兄さんは俺らといたのか?」

 

「サスケ、そんなことはどうでもいいだろう。任務に集中しろ」

 

「お前は、あの"幻術のイタチ"か…!クソッ、分が悪すぎる!」

 

暗部なのに直ぐに正体を味方から明かされて少し困ったイタチは面を取った。

 

「もうこの面は意味ないですね…全くカカシさんにサスケまで…」

 

「え?サスケ君のお兄さん!?やっぱカッコいい…」

 

「イタチの兄ちゃん久しぶりだってばよ!」

 

「あーお前らうるさい。俺が悪かったから。戦闘が始まってるんだから集中してくれ」

 

カカシがそう言って場の緊張感を戻そうとしていると、後ろから突然千本が飛んできた。

 

「危ないタズナさん!!」

 

カカシがそう言うも、既に千本はタズナの脳天を直撃する直前…

 

しかし、突然現れた手裏剣に千本は撃ち落とされ、タズナは事なきを得た。

 

「中々やりますね…そこのイタチというお方。見向きもしないで死角からの僕の千本を手裏剣で撃ち落とすなんて…しかし…」

 

「刀は返してもらうぜ!」

 

先程の千本を投げたと思われる面を被った忍が現れイタチ達の注意を引いたのを利用して、再不斬は瞬身の術で刀の元へ移動して持ち上げて、直ぐに距離を取った。

 

「しかし、上忍が2人もいるんじゃちとキツイな…白、アレだ」

 

「はい」

 

そう言って独自の合図をすると、再不斬は印を組んだ。

 

「悪いがここは退かせてもらうぜ…水遁・水鮫弾の術!」

 

突然近くの川から鮫の形をした水が、まるで意志を持っているかのようにカカシ達を襲う。

 

「くそ、間に合わない!イタチ!」

 

「風遁・大突破!」

 

「ナイス!土遁・土流壁!」

 

そうしてイタチが風遁で水を何とか一時的に止め、その間にカカシが土流壁で水遁の攻撃を防いだ。

 

「今なら何とか間に合う!外に出るぞ!!」

 

そしてカカシは土流壁を解除して外に出ようとするも、周りは先程の水鮫弾が氷で固められていた。

 

「チッ…俺らに時間を取らせて退避時間を稼いだのか…」

 

サスケが悔しそうに言った。

 

「そうみたいだな…まあでもあの2人だけならこの後も対処できるだろう」

 

「皆!超助かったぞ!ま!ワシの家でゆっくりしていけ!」

 

タズナがそう言うと、暗部の仕事に戻ったイタチを除いて皆はタズナの家に向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「おい鬼鮫、本当にあんな腰抜けコンビがリーダーの所望するものなのか?」

 

「ええ…ですが木の葉の方は恰も再不斬達の存在を想定してたかのようでしたからね…それが本当なら流石に苦戦はするでしょう」

 

「まあそうか…しかし氷遁使いか。中々面白いな。それにはたけカカシ、確か四千万両の高額賞金首だったはずだ」

 

「流石に私達もあの人達の相手をするのはキツくないですかねえ?」

 

「おいおい…確かに2人は上忍だが、あとは小僧と爺さんだぞ?寧ろ足手まといがいる分やり易いに決まってるだろう」

 

「言われてみたらそうですねえ…でもまずは目的通り、再不斬達のスカウトへ行きましょうか」

 

「そうだな…」

 

 

 

 

 






風遁の一つや二つ、彼なら出来るでしょうと思って(笑)


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接触

「…!これはシスイの鳥か」

 

シスイが何か情報を伝えてきたみたいだ。どれどれ…

 

「ガトーはタズナ殿の暗殺のために桃地再不斬を雇っていた、か」

 

俺にとって真新しい情報は無かった。それだけならあのメンバーで行けば問題ないはずだ。ただ凄く嫌な予感がするのは何故だろう…

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「火影様!ナルト達がCランク任務に行ったって本当ですか!?俺達にも行かせてくださいよ!」

 

「ちょっとキバ!火影様に何て口聞いてるのよ!!」

 

「しかしキバの言うことに俺も同感だ…何故なら俺達もナルト達と同じくAランク任務に成功した経験があるからだ」

 

「ナルトくん…大丈夫かなぁ」

 

この世界ではキバが一方的にナルトとサスケをライバル視しているらしい。アカデミー入学前から既にナルトとサスケがライバルだったからなのと、その二人の実力が図抜けていたのが原因だろう。

シノとヒナタは原作通りみたいだ。ヒナタについては多分ナルトが俺が知らない時にヒナタが虐められているところを助けに行ったのだろう。いじめっ子に勝ったかどうかは分からないが…

 

「確かにお前達も先の任務で実力をつけた。それは儂もよく分かっている。だから勿論、第8班にもCランク任務をやってもらう」

 

「やったぜ赤丸!俺ってやっぱりすぐに出世しちゃうな!!」

 

「火影様…すみません」

 

「いやいや、元より紅やアスマ達にもCランク任務を割り当てるつもりだったのじゃよ」

 

…とは言うものの、恐らくナルト達の「Cランク」任務とは一味も二味も劣るものにはなるだろう…

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

カカシ一行がタズナの家にたどり着くと、距離を取って護衛をしていたイタチがカカシの前に現れた。

 

「カカシさん、俺はシスイのところへ合流してきます。今夜は護衛をお任せしても大丈夫ですね?」

 

「ああ、俺らだけゆっくりする感じになって申し訳ないねえ…」

 

「この任務は態々兄さん達まで出なきゃ行けない程のものなのか?あの二人だけなら俺らだけでも…」

 

「どうだろうな…火影様が直々に命じたのだから何かあるのかもしれない。サスケ、呉々も油断するなよ」

 

「ああ、こっちは任せてくれ」

 

「イタチの兄ちゃんまた後でな!」

 

「お兄様…お気をつけて行ってらっしゃいませ!」

 

サクラが少し恥ずかしそうにしながらも、何とか好きな男の子のお兄さんに気に入られようとアピールをした。

 

「ああ。ナルトもサクラさんもサスケを宜しく頼む」

 

そう言ってイタチは颯爽と消えて行った。

 

「おう!」

 

「は、はい!」

 

「ったく…余計なお世話だぜ」

 

サスケはそう言いながらも、兄と一緒に任務を行えることにとてもワクワクしているのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「全くあのクソ餓鬼め…俺様の片手をよくも…」

 

「ガトー様、あんな奴らを雇う意味があるんですか!?部下も負けて、本人達まで撤退を余儀なくされたというのにあの態度…」

 

「まさか!あいつらが仕事をしてくれようがくれまいが、ギリギリになって契約を切るつもりだ。抜け忍風情に払う金なんか無いからな。あの感じだと仮に木の葉の奴らとやり合ってタズナを殺せたとしても、その身は満身創痍になっているだろう…そこに俺達がトドメを刺す。どうだ、完璧だろう?」

 

ガトーは再不斬達が出て行った後で、手下とその後の企みについて語っていた。

 

 

「…まさかなあ。ガトーの腹がここまで黒いとはねえ…」

 

そしてまたもやシスイの偵察は見破られることなく、ガトー達は知らずのうちにシスイに重要な情報を提供することになった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

その夜、波の国の外れの森でイタチとシスイが落ち合っていた。

 

「イタチ、そちらはどうだった?」

 

「再不斬達と交戦した。お前の情報のお陰で全員無事だったが、逃げられた…」

 

「再不斬()、か。俺もさっき目撃したが、やはり一人付き人がいたということだな?」

 

「ああ、妙な忍だ。直接は見ていないが、水遁を凍らせていたようだった。…もしかしたら氷遁使いなのかもしれない」

 

「血継限界持ちか…手強いかもな。あ、そうだ。こっちも驚くべきことが分かったんだ」

 

そう言ってシスイは先程目撃したガトー達の会話についてイタチに伝えた。

 

「ガトーが再不斬を裏切るつもりということか?」

 

「ああ…その可能性が高い」

 

「もしそれが本当なら…俺達はそもそも再不斬達と戦う必要が無いんじゃないか?」

 

「それはそうだが…俺達が取引をしたとして、向こうにどうやって信じてもらうんだ?」

 

イタチは少し考えたが、あまり良い案は浮かばなかった。

 

「できる限り戦闘は避けたいが、難しい問題だな…一先ず火影様に報告だ。俺達も近くの宿で休もう」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ふう…久々に夜遅くまで仕事したな。そろそろ帰ろうかな…あれ?」

 

火影室から出ようとすると、窓から鳥が嘴でつつく音がした。またシスイの鳥だ。

 

「次は何だ?…ああ、またこれも原作通りか…」

 

ガトーの再不斬に対する裏切りが前もって分かったか…しかしそれが分かったところで交渉するには向こうからの信頼が絶望的ということみたいだ。

 

確かに難しいな…しかし鬼人と氷遁使い、もし木の葉の忍になれば戦力は格段に上がる。非常に魅力的だ。

 

…よし、決めた。シスイ達に任せてみるか!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「再不斬さん、流石にあの人数じゃあ中々難しいですね」

 

「…それもあるが、彼奴らは何故俺の刀に反応できたんだ?あの距離からあの初速だ。予測してないと身体が追いつかない筈だ。気配も完全に消してたはずだったんだが…」

 

「はい。少なくとも僕達の居場所に気づいているような素振りは見せてませんでしたからね…確かに護衛任務故に全体的な警戒はしていたでしょうが…」

 

再不斬と白が自分達の隠れ場で話していると、二人の大男がゆっくりと現れた。

 

「さっきは見っともなかったですねえ再不斬。同じ忍刀七人衆として恥ずかしいですよ…」

 

「!!お前は…干柿鬼鮫!」

 

再不斬と白は直ぐに立ち上がり戦闘態勢を整えたが、二人の大男は全く戦うような素振りは見せない。

 

「俺達は貴様らと戦いに来た訳じゃない。交渉に来た」

 

「一体何だ?その額当て…滝隠れの抜け忍か?」

 

「俺の名は角都。単刀直入に言う。俺達の組織『暁』にお前ら二人をスカウトしに来た」

 

「再不斬さん…本当に戦うつもりではなさそうですが、全く信用できません」

 

「ああ、暁だ?…聞いたこともねえな。鬼鮫、お前は里を抜けてそんなよく分からない集団に身を置いてたのか」

 

「中々悪くない所ですよ…まあ、ガトーの犬に成り下がるよりはずっと良い環境ではないかと思いますねえ」

 

鬼鮫が再不斬を挑発したが、再不斬は鬼鮫の実力を知っているからか、無駄に噛み付くようなことはしない。

 

「言ってくれるな…そもそも何を目的に動いている?俺にどんな利益があるんだ?」

 

「そうですねえ…今の所はS級犯罪者の抜け忍を集めた傭兵集団が賞金首を狩って資金を貯めている、位までならお伝えできますねえ。貴方にとっての利益ですか…逆に聞きますが、再不斬、貴方は今何のために生きている?」

 

「は?何が言いたい?」

 

「水影の暗殺に失敗して情けなく里を抜け、その後各地を転々として追い忍を撒きつつガトーなどとの裏取引でその日その日の生計を立てる…明確な目的を持って生きているとは考えづらいですねえ」

 

鬼鮫の言葉が図星だったのか、再不斬は返答に戸惑った。

 

「それは…」

 

そんな再不斬に白は声をかける。

 

「再不斬さん。僕はこの人と再不斬さんがどんな関係にあるのか知りませんが、この人の言うことを間に受けないでください!」

 

「別に貴方がこの先どうなろうと私にはどうでもいい…ただ、暁に入れば自分が真に望んだ世界へ行ける。それだけは言っておきましょうか」

 

「鬼鮫、まだ入るとも言ってない奴にベラベラ話すな。…返事は3日後まで待ってやる。…最も、お前に選択肢があるとは思えないがな」

 

そう言うと角都は鬼鮫を連れてそこから去って行った…

 

 

 

「再不斬さん、僕は貴方の言う通りに従います。…しかし、本当にその暁とやらに入るつもりですか?」

 

「白、俺は今一体何の為に生きて…いや、何でもない」

 

再不斬は鬼鮫の言葉に感じるところがあったのか、二人が去った後もその場で立ち尽くしていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

波の国の見すぼらしい宿にて

 

 

「…シスイ、起きろ」

 

「ん…何だ?まだ早くないか?」

 

「火影様から伝書が来た…」

 

「そうか!貸してみろ!」.

 

イタチから伝書のことを聞いたシスイは飛び上がって起きて、ヒルゼンからの伝書を読んだ。

 

「これは…。火影様は正気か?」

 

「何て書いてあった?」

 

「桃地再不斬とその付き人と交渉して、ガトーとの契約を破棄させ、木の葉の里に迎え入れよ、だってよ…」

 

「…成る程、そういうことか」

 

「どういうことだよ?流石に破天荒過ぎないか?」

 

「いや、寧ろ火影様の考えからすれば自然なことだ。虚偽のCランク任務で被害を出す可能性を最小限に抑え、その上血継限界持ちを含む手練れ二人を里に迎え入れることで戦力増強を図る…三代目らしいお考えだ」

 

「そういうことか。でも俺交渉は全然やったことないんだよな…迎え入れるのが究極目的なら、上忍待遇とかにしても問題ないよな?」

 

「火影様がそこまで言及していなければ、問題ないだろう。確かにあの二人は上忍待遇にしてもやり過ぎではない。…ただ、向こうが拒絶して戦闘状態になるのが最悪のケースだ。俺も同行しよう。先ずはこの件をカカシさんに伝えてくる」

 

「ああ、頼む」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…成る程。俺達がここで休んでいる間にそんなに事が進んでたとはねえ…」

 

「はい。なので今からシスイと交渉に行ってきます。カカシさん達は引き続き依頼人の護衛をお願いします」

 

「色々済まないな…こっちは任せておいてよ」

 

イタチはカカシに現状報告をすると、直ぐに瞬身の術で消え去った。

 

 

「うーん…結局暗部に任せっきりで、俺達にとっては本当にCランク任務で終わるかもしれないな…まあそれが何よりなんだけどね」

 

 

 

 

 

 

 



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葛藤

「再不斬さん、そろそろガトーから命じられた仕事しますか?」

 

「…ああ」

 

再不斬は暁との接触以来、己の生きている意味について悩むようになり、ここ暫くまともにガトーからの依頼のことを考えてすらいなかった。

 

「再不斬さん、昨日から様子が変ですけど大丈夫ですか?僕は…再不斬さん!!」

 

白が再不斬のことを心配して声をかけていると、突然向かって来る気配を感じ、警戒を強めた。

 

「ったく…次から次へと何なんだ!」

 

再不斬がイライラしてそう言うと、二人の面を被った忍が現れた。

 

「驚かせてすまない。我々は木の葉の暗部。貴方達と交渉をしに来た」

 

「お前…もしかして昨日の!」

 

「うちはイタチ…」

 

再不斬と白は暗部の片方が昨日交戦したうちはイタチであると分かり、武器を持って戦闘態勢に入る。

 

「待ってくれ。我々は戦うつもりはない」

 

「巫山戯るな…俺は昨日からイライラしてるんだ。今ここで殺し「ガトーはお前達を裏切るつもりだ」!…何だと!?」

 

斬りかかろうとした再不斬に対し、イタチは冷静にそう放った。

 

「何が言いたいんですか?」

 

本当に戦う気がないことを悟った白は冷静になって尋ねた。するとそれまで黙っていたシスイが口を開けた。

 

「貴方達がガトーに雇われてタズナさんの暗殺を試みているのは知っている…しかし昨日ガトーのアジトに侵入して盗み聞きしたところ、奴は再不斬と白…貴方達をタズナさんが死んだ直後に襲うつもりだと言うことが分かった」

 

「はっ…馬鹿馬鹿しい。そんなこと俺が信じるとでも思ったのか?」

 

「…これを見てくれ」

 

疑ってかかる再不斬にシスイはヒルゼンの書いた巻物を投げ渡した。

 

「何だ…!これは!!」

 

「これは火影様が直筆で書かれたもの…つまり木の葉のトップが直々に貴方達のことを必要としている」

 

「…成る程。これを見せられたら、まあ信じてやってもいいか。それならカカシ達が俺たちの襲撃を予測できてたのにも納得がいく」

 

「再不斬さん?」

 

「これを見てみろ…」

 

「…!これは本当に…」

 

再不斬も白も、ヒルゼンが自分で書いた巻物を見てシスイの言っていることが本当だと思うようになった。

 

「しかし一体火影は何故こんなことを?」

 

再不斬はそもそもの疑問を投げかけた。

 

「…火影様は以前より俺をガトーカンパニーへの偵察に命じていた。その時から今回のタズナさんの任務が明らかに危険なものであると分かっていた。そこで火影様は我々に任務の危険性を最小限に抑えた上でガトーの裏での活動を暴くことを命じた。…それと、貴方達の実力を評価して里の戦力にしたがってもおられる」

 

「ガトーの真の姿を既に知っていたのか…表のトップにしては中々やるじゃねえか」

 

「僕達のことを評価…」

 

「こちらの考えは分かってくれたと思うが…答えは聞けるか?」

 

「再不斬さん…?」

 

シスイに答えを聞かれた再不斬は、昨日の暁のことを思い出し、悩んでいた。それを見てイタチはこう言った。

 

「今すぐに答えを出さなくてもいい…ただ、タズナさんの暗殺を巡って争うのは無意味なことだ…お互いにとって」

 

「そうですね。こちらにも利益がありませんし…」

 

「ああ、ガトーとの契約は取り敢えず切る。お前ら木の葉と交戦することはしない」

 

「それは非常に助かる。答えは3日後に聞けるか?」

 

「いや、2日で十分だ…」

 

「そうですね…」

 

「?…分かった。では2日後また来る」

 

再不斬が2日後で良いと言った意図がわからなかった二人はその場を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

再不斬と白の居場所から去ったイタチとシスイは一先ずカカシ達の元へ向かっていた。

 

「なあ…イタチ、どう思う?」

 

「こちらに付いてきてくれるかということか?」

 

「ああ。好待遇だし信用があれば二つ返事で来てくれると思ったが、何か微妙な反応だったよな」

 

「そうだな。彼らにも何か事情があるのかもしれない。何れにせよ俺達には待つことしかできない」

 

「それもそうか。取り敢えず火影様から連絡が来るまではカカシさん達と合流して待機といったとこだな」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「再不斬さん…まさか立て続けに二度もスカウトが来るとは思いませんでしたね」

 

「………」

 

「再不斬さん?」

 

「白、お前はどう思う?」

 

「え、僕ですか?僕は…再不斬さんの選ぶ道と同じですよ」

 

まさか再不斬が自分に意見を聞くとは思わず白は驚いた。少なくともそれほどに再不斬は己の道に悩んでいるということだった。

 

「確かに鬼鮫の言う通り、このまま抜け忍としてその日暮らしの生活を続けていてもとは思うが…」

 

「つまりどちらかの誘いに乗るつもりということですか?」

 

「ああ…」

 

「それなら僕は木の葉の方が良いと思います」

 

「ほう…何故だ?」

 

「火影からの直々の要請ということで信用できる…霧隠れとの共謀とは流石に信じ難いですから。あのイタチなら先程我々を幻術に嵌めることは出来たはずです。それに待遇もこの上なく良い…」

 

「そうだな。確かに俺らを陥れるつもりは無さそうだったが…余りにお人好し過ぎないか?他里の抜け忍に対してここまでやるのか木の葉は」

 

「…もしかしたら何処かの里と対立状態にあるのかもしれません。とにかく里の戦力強化が必要なのかも」

 

「そうか…まあ、明らかに暁よりは条件も良いからな。追い忍と遭遇するリスクも減る。自明な選択だな」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

ーー波の国の街中にて

 

「全く…シケた国だなここは」

 

「そのガトーとやらの支配で波の国は大名ですら大して金を持っていないみたいですね」

 

「少しくらい金になるのがあるかと思ったが…これじゃあ無理だな」

 

「そうですねえ…となると」

 

「ああ…はたけカカシしかねえな。建設中の橋にいるだろう。さっさと行くぞ」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

第七班は建設中の橋でタズナ達の護衛を続けていた。

 

「カカシ先生ー、全然敵出て来ねえからつまんねえってばよ!」

 

「馬鹿言うなナルト、何もないのが一番だよ」

 

再不斬と白との接触以来ガトーからの刺客の来襲は無く、タズナ達は橋作りに勤しんでいた。

 

「カカシ先生、もう私達は本当に再不斬達と闘う必要はないの?」

 

サクラがカカシに質問する。

 

「イタチの話からするとそのようだ…な、サスケ?」

 

カカシはサクラに答えながら、遠くから異様な気配を感じ、サスケに顔を向ける。

 

「ああ…分かってるぜ」

 

サスケもそれに勘付いたのか、戦闘態勢を整えながら、タズナ達作業員の方へ向かう。それに気付いたナルトも準備を整え出した。

 

「あれ、皆なんか急に雰囲気変になったけど…!!」

 

3人の纏う雰囲気が一変したのをサクラも疑問に感じたが、直ぐその理由を理解して、警戒態勢に入った。

 

暫くして、2人の大男がカカシ達の前にゆっくりと姿を現した。

 

「…案外直ぐ勘付かれてしまいましたねえ。はたけカカシ以外の3人も、少なくとも忍者の端くれってことですか」

 

「…ったくどこに来ても金の匂いがしねえシケた国だ。さっさと仕事してここから出るぞ」

 

「誰だってばよお前ら!」

 

ナルトが2人に向かってそう放った。

 

「お前はまさか…霧隠れの怪人、干柿鬼鮫!」

 

カカシは思ってもいない強敵の登場で驚いた。

 

「ほう…私の名前も案外知られているのですね、写輪眼のカカシにまでも」

 

「干柿鬼鮫…?」

 

まだ忍になって間も無いサクラが知るはずもなく、思わず口に出してしまった。

 

「霧隠れの抜け忍だ…水の国の大名殺しや国家破壊工作を行なったS級犯罪者。まさか、お前らもガトーの手先か?」

 

カカシがサクラに答えつつ、鬼鮫達に尋ねる。

 

「あんな雑魚に仕えるなんて、再不斬じゃないんですからね…」

 

「おい鬼鮫、俺のことを放っておいてグダグダ敵と話してるんじゃねえぞ…まとめて殺ってやろうか?」

 

我慢出来なくなった角都が周りに殺気を出した。

 

「おっと失礼…そちらは知らない顔だが、一体何の用だ?」

 

カカシが軽く殺気を流しながら、二人の目的を尋ねた。

 

「俺の名は角都。大した用はない…ただ暇潰しに賞金首でも狩って行こうかとな…」

 

「それって俺のことだよね…やっぱこの任務受けなきゃよかったなあ…」

 

再不斬達がもう手を出して来ないだろうと言うことでただのCランク任務になったと思いきや、この二人の大男。干柿鬼鮫は言わずもがな隣の男も再不斬より明らかに強い雰囲気を纏っている。部下の3人もその実力はもはや下忍のそれでは無いと言うものの、流石にここまでの敵が来るとは想定外である。

Aランク…いや、もしかするとこれはSランク任務と言ってよいかもしれない。

 

 

…そうカカシが考えていると、その優秀な部下がカカシに尋ねた。

 

「カカシ先生!よくわかんねえけどとっととこの訳わかんねえ黒コートのおっさん倒せばいいのか?」

 

「待てナルト。こいつらは前回の奴等と格が違う…今のお前らでもタズナさんを護りながら闘うのは無理がありすぎる」

 

「だがカカシ…向こうはそれを望んでるみたいじゃねえか。それに俺達も退く訳にはいかないだろう?」

 

サスケの言う通りである。波の国の作業員がいる手前、これは防衛戦と言ってよい。少なくともこちらは相手を退けるしか手は無いのだ。

 

「サスケ、お前の言う通りだ…だがそれでも今回ばかりは厳しい闘いになる。サクラ、お前はタズナさんの護衛に回れ。ナルトとサスケで大刀を持っている方を相手にしろ。再不斬と同じく忍刀七人衆の一人だ…近距離戦には警戒してくれ。もう一人は俺が引き受ける」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 



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圧倒的な差

 

火影室にて

 

「…ナルト達は大丈夫かのう」

 

「あの第七班だぞ?それにイタチとシスイも付いている。寧ろガトーの心配をしてやっても良いくらいではないか?」

 

ダンゾウの言う通りではある。再不斬と白相手に対しては余りにも十全たる準備だ。

 

「確かにそうではあるが…何やら胸騒ぎがしてのう」

 

「だからイタチとシスイを遣ったのだろう。問題無いではないか。では儂は仕事に戻るぞ。お前ほど暇ではないからな」

 

そう言ってダンゾウは退室していった。彼は自分では気づいていないだろうが、とても充実した生活を過ごせている雰囲気が最近すごい。とりあえずうちはとの関係強化の過程で根とダンゾウにも働きかけることができたのは良かったようだ。

 

…胸騒ぎがする一方で優秀な忍を多数抱えるこの里の火影はやる事があまり無いので暇である。影分身が猿魔と修行をしているが、本体の俺は本当にやる事がない。

 

「…ああ、これだこれ。やっと見つけた、禁術の巻物…」

 

原作一話でナルトが火影亭から盗んだかの巻物だが、ミナトは「ヒルゼン」よりも物の管理をしっかりしていたらしく、禁術の巻物は普通に探しても見つからないような場所に隠されていた。周りの人に聞くこともできないのでここ最近部屋を掃除がてら色々探索してみていたが、やっと見つける事ができた。

 

「なるほど…今の俺なら会得できそうなものもあるかな…あ、これは…」

 

軽く巻物を開いてみると、ある一つの術に目が止まった。それは、ミナトが命を賭して里を九尾…否、マダラから守った術。そして何より原作での猿飛ヒルゼンを死なせた禁断の封印術、屍鬼封尽である。

 

「…嫌だ。絶対覚えたくない。こんなの知らない」

 

命を賭けたミナトと原作の「俺」には悪いが、こんな恐ろしい術はどんな状況下でも使いたくない。

 

「『封印せし者とされし者の魂は共に死神に喰われ、その魂は決して成仏せず、死神の腹の中で永遠に絡み合い、憎しみ合い、そして争い続ける』、か。いや、異世界に来て成仏できないとか何事。絶対覚えない。大蛇丸は俺が別の手で何とかする」

 

こんな自分勝手なことを考えながら、仮初めの平和の下で暇を持て余す三代目火影であった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「成る程…餓鬼の割には結構やりますねえ。木の葉の里の戦力が九尾襲来以降みるみる強大化してるという噂は本当だったのでしょうか」

 

「クソっ、ダメだ…全然隙がねえってばよ」

 

「チィ…」

 

鬼鮫は目の前の2人が"下忍にしては"優秀であることに少し関心しつつも、全く呼吸を乱すことなく適当に攻撃をいなしていた。一方ナルトとサスケは前回の三代目火影に一撃喰らわした要領で連携攻撃をし続けるも、それを全て躱されるという鬼鮫の圧倒的な実力に脅威を感じていた。

 

「次はこちらから行かせてもらいますよ!」

 

そう言うと鬼鮫は自慢の鮫肌を使って我武者羅に向かって来るナルトを斬った…否、削った。ナルトは瞬時に避けるも間に合わず、少しだけ左腕が鮫肌からの攻撃を受けた。

 

「おい…ナルト!」

 

「へへっ、大丈夫だってばよ。大した刀じゃないから全然痛くないってばよ。気を取り直して影分身の…あれ?チャクラが全然練れねえ!」

 

「鮫肌を喰らってしまいましたね…私の鮫肌は斬るのではなく、削る。その中でチャクラを喰らう。気を付けた方がいいですよ…フフフ」

 

「チィ…厄介な武器だな。これじゃあ接近戦はリスクがあり過ぎるぜ…」

 

鮫肌の真の恐ろしさを知ったサスケは近接攻撃が悪手だと悟る。

 

(正直俺の千鳥かナルトの螺旋丸をぶつけないと決定打は与えられない…というかそもそも攻撃を当てることさえ難しいな。ナルトは中遠距離攻撃を持ってない。となると俺の手裏剣術か…)

 

「ナルト!奴と一旦距離を取れ!これ以上鮫肌を受けるともう闘えなくなるぞ!」

 

「そうだけど!じゃあどうやってコイツを倒すんだってばよ!?」

 

「とりあえず俺が中距離攻撃で時間を稼ぐ。おまえはその間に練れなくなったそのチャクラを何とかしやがれ!」

 

鮫肌を受けたナルトが再びチャクラを練れる保証も無く、手裏剣攻撃もいずれジリ貧となることは分かっていたが、サスケはライバル(ナルト)の意外性に賭けるしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「フッ…四千万両の賞金首にしては淡白だな。まあ楽に稼げるに越したことはないか」

 

「こんな知らない術ばかり使ってくる謎の相手にいきなり仕掛ける訳ないでしょ…」

 

(不味いな…見たこともない術ばかり。そして滝隠れの抜け忍…全く情報がない。鬼鮫と同じ服、抜け忍集団か?こんな危険な集団がいるなんて聞いたことないぞ…)

 

カカシはあらゆる性質変化を駆使している大男の分析をするために防戦一方だったものの、中々打開策を見つけられないでいた。

 

ただでさえ部下が超上忍クラスの抜け忍と闘っているのに、このままでは自分がジリ貧でやられる…という最悪の状況。各個撃破でさえ困難を極めるが、そのような相手を二人に同時に対処―依頼人を護衛しながら―は第七班にとっては絶望的なものであった。

 

「あーやだやだ。再不斬と氷遁使いの次は化け物コンビとかとんでもないCランク任務だよ…」

 

カカシは愚痴を零す。そのくらいの余裕を取り繕っておくことで精神的な安定を保つというカカシのやり方であるが、それでも流石に焦る気持ちは拭えない。

 

「向こうは黒髪のガキが手裏剣で防戦一方、チャクラを削られた金髪のガキは使い物にならないか。これでは時間の問題か。では俺もそろそろ終わりにするか…」

 

(あいつらを守るにはこっちを片付けないといけない…なら逆に好都合だ。これに賭ける!)

 

 

「ならばこちらも本気で行かせてもらおう。写輪眼!」

 

「ほう…やっと『写輪眼のカカシ』の本領発揮か。退屈凌ぎになれば良いがな…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まだかナルト!」

 

「ちょっと待てってばよ!」

 

「そろそろ飽きてきましたね…下忍にしては上出来の手裏剣術ですが、手裏剣は陽動にしかなりませんよ?何の目的もない陽動など…」

 

鬼鮫はサスケの手裏剣攻撃を適当にやり過ごしていたが、向こうで行われている角都とカカシの闘いが佳境に入ったことを察すると、自分の方もそろそろ終わらせようとし始めた。

 

「では終わりにしますか…!」

 

そういった瞬間鬼鮫は軽く殺気を放つ。軽くといっても、経験の浅い下忍の二人がたじろぐには十分なものだった。

 

サスケが殺気により手裏剣攻撃を止めたことで生まれた一瞬の隙を鬼鮫が見逃すはずもなく、鬼鮫は高速で印を結び始めた。

 

(やべぇ…何とかしなきゃ!)

 

(今回はちぃとマズそうだな、ナルト)

 

この絶望的な状況に焦るナルトの腹の中から声が聞こえた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「九喇嘛!助けてくれってばよ!」

 

「…チャクラを貸すのは構わんが、どうやってあいつを倒すつもりだ?螺旋丸は鮫肌を喰らうリスクが大きいぞ?」

 

「…口寄せでガマオヤビン呼ぶってばよ!」

 

「馬鹿か!そんなことしたら橋が崩れるぞ!」

 

「あ!そうだった…」

 

「…とりあえずワシのチャクラで奴の術を相殺してやる。その後は何とかしろ」

 

「サンキュー九喇嘛!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…水遁・水鮫弾の術」

 

鬼鮫は地の利で圧倒的な勢いを伴った水遁を発動し、鮫を象った水の塊がサスケとナルトを襲う。

 

 

「…終わったな」

 

カカシと相対する角都は向こうの決着がつくのを悟った。

 

「くそっ…ナルト!サスケ!」

 

「サスケ君!ナルト!」

 

もうカカシにもサクラにも助太刀する余地は無い。

 

終わった。

 

 

と思ったその時、今まで感じられなかったチャクラが、恐ろしいほど強大なチャクラがその空間へ具現化した。

 

 

 

 

…メラメラメラ、、、グシャーーン!!!ズバババババババーーーーン!!!!

 

 

 

「…こんなとこで負けてたまるかよォ!!!!」

 

 

そのチャクラは大きな音、迫力をもって外部化すると、巨大な鮫(水鮫弾)を軽く呑み込んだ。

 

 

「…水鮫弾が呑み込まれただと?」

 

霧隠れの怪人の会得難易度Bランクの忍術は規模・威力共に申し分ない筈だった。

 

「ほう…あの金髪、木の葉の人柱力だったのか」

 

ただ、少年の中に居る化け物(九喇嘛)は、鬼鮫の想像を優に超えていた。

 

(まさか…九尾の封印が解けたのか!?)

 

カカシは部下が一先ず助かったことに安堵する暇もなく、新たな懸念を抱えた。

 

 

(なんだこのナルトのチャクラ…朱いし、具現化してやがる)

 

「遅えーよウスラトンカチ」

 

味方であるサスケも内心驚きつつも、ライバルの復帰を頼もしく感じた。

 

「へへっ。早速だけどよ、作戦があるから耳貸せ」

 

「作戦?お前が?…なるほど、試してみるか」

 

アカデミーで座学ドベのナルトであったが、サスケはその意外性No.1のアイデアに賭けてみることにした。

 

 

「さーて 暴れるぜェ…」

 

 

「まさか私の水鮫弾を軽く防ぐとは…削り甲斐がありそうですね。もう少し楽しんでみましょうか」

 

 

 

 

 







お久しぶりです


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