俺は、更識楯無が好きだ! (haze)
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二人目

新規さんこんにちは
以前から見てくださった方お久しぶりです。

本当にお久しぶりです。

こちら改訂版になります。


(もうすぐ高校一年目は終わりか)

 冬休みに学校で未だ旧式の灯油ストーブの前で英語の課題プリントをしながら、ふとそう思った。

 誰もいない教室で…

 

 

 

 

 

 思い返してみれば、高校の入学式当日。

 

 俺は新たな日常への希望に胸を膨らませ少し早めに家を出た。

お気に入りのシアンブルーとパープルホワイトで塗装されたロードバイクに颯爽と跨り、ニヤけそうになる口元を引き締め、高校への通学路を感慨深く眺めていた。

 だから、普通なら気が付くであろう、道交法をブッちぎって走る車にさえ気が付かなかった。

 

 そして

 俺は大切な物を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺のロードバイクが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その結果、俺は相棒を失い、病院で検査を受けるため入学式は欠席となった。

 そして、初日から休んだ俺は元々の人相もあり、あまり素行のよろしくない生徒と言うレッテルを貼られた。そうして希望に満ち溢れた高校一年は、孤高のボッチとなったのだ。

 HAHAHAHA。悲しくなんてないよ……ほんと

 

 

 「さて、英語の課題の続きをしようかね」

 

 二学期に赤点を取ってしまったため、この日は丸一日学校で過ごした。

 

 

 

 課題も終わり、3日間降り続け雑踏に踏み固められた雪を踏みしめながら帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 家に着きすぐさま着替る。今時あまり見なくなった詰襟の制服はだらだら過ごすには全くもって適していない。

 何をするでもなくゴロゴロTVを見ていたら世界初の男子でISを動かしたと言うニュース速報が流れた。ISは、女性にのみ動かすことができるというのが今までの定説である。故に世界は騒然とした。

 

 インターネット上では某掲示板が大盛り上りになり、報道番組ではコメンテーターが興奮した様子でこれからの展開について独自の見解を好き勝手に言い立てる。

 

 それから、世界各国のお偉いさんやらが「探せば他にも男性で動かせる人間がいるのではないか」という考えが広がった。

 そして、世界各地で一斉に緊急ミッション「男性操縦士をさがせ」が発生することになる。

 

 

 さて、全世界で行われるこのミッション発生から約3週間後の冬休みの最中の事、幸い降り続けた雪も溶け、小春日和の今日、俺の学校にもようやくミッションの実行日がやってきた。

 このミッションも約半数が終わり、多くの希望に燃える熱き男たちが無残にも敗れていった。

 

 体育館に名簿順に一列に並ばされる。

 大体真ん中辺りの俺は、冬休みということもあり夜更しをしていた。というより昼夜逆転の生活が身についていたのである。その為か、久しぶりの日光が眩しく眉間には深い皺が刻まれているのが自分でも分かる。

 

 「どうせ動くわけねぇんだ、早く帰らせろよ」

 

 わざわざ、休みの日にまで学校に呼び出される学生の身になってほしいものだ。

 とはいえ、教師陣も授業のない冬休みの真っただ中に騒がしい学生共の相手をするのも同じくらい面倒かもしれないと考えれば、まぁ彼らも彼らで面倒だと思っているのかもしれない。

 

 ちなみに、俺は常に眉間に皺を寄せ、睨んだような、不機嫌そうな顔になっているらしく、周りの生徒は、怯えて前後約1.5mほど離れた位置で並んでいる。

 これがまた地味に傷つくんだよ。取って食うわけじゃないんだから。

 

 

 さて、、前の奴が終わり俺の出番となった。

 

 ここで、ミッションの説明をしよう。

 このミッションは単純明快、停止状態のISに触るだけ。

 みんなわかったか?

 

 

 とはいえ、このミッションに成功した人間は今まで一人目君以外は誰もいない。

 俺も、動かせないだろうと思うし、休みの日にわざわざ呼び出されて少々不貞腐れていたのもあり待機状態のISに拳をぶつけることにした。

 拳を握りしめ、腰の入った正拳突きを叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の拳が待機状態のISに触れた瞬間、このISの基本操縦、装備武装、エネルギー残量やらが直接、脳内に流れ込んできた。余りに突然の事で事態が全く呑み込めない。人間余りに想定外のことが起きると思考停止に陥るということを身をもって知ったのである。

 

 気を取り直して周りを見てみると、みんなして呆けた表情で固まってる。

 

 そして、固まったのも束の間、すぐさま役員は携帯を取り出し引っ切り無しに連絡を行い、二人目が見つかったことを通話相手にまくし立てていた。

 

 

 

 

 




改訂版では、一話一話手直しを加えつつ執筆し、尚且つ以前から書き直したい箇所を手直ししつつ進めていきます。
本当ならば、今までの作品をそのまま進めようと思いましたが、改めて自分の作品を見直すことと心機一転という意味を含めて新しく始めていこうと思います。

よろしくお願いいたします


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家族

再構成終わり次第順次投稿します。
大まかな筋書きは変えないつもりです。


 それからすぐに、政府のお役人の方々から話があるから来てくれと半ば強制的に連れて行かれた。

 急かされながら黒塗りのクラウンに押し込まれ、市役所に連れて行かれる。

 腰が沈み込むような椅子に座り待たされていると扉が弾け飛ぶように開かれどこかで見たような顔のおっさんが登場する。

 入るなり俺の手を掴みブンブンと振り回しながら、まさか貴重な男性IS操縦者がこの街から出るとは市長として誇らしいよ、とまくし立てている。おやおや市長さんでしたか。

 興奮しながら話を続ける市長を秘書の方に引き剥がしてもらい、担当者の方にこれからについての説明をしていただきく事となった。

 

 その話の中で俺は新学期から新しくIS学園とやらに行かなくてはならないらしい。

 そして次の日には制服と鈍器になりそうな参考書を笑顔で渡された。

 

 

 必読と書かれた鈍器のような参考書を前に俺は、暫し立ち尽くした。

 

 

 というかいつ制服のサイズ図ったの?ピッタリなんだけど?ねぇ?

 

 ちなみに、1人目の時は自宅待機だったのだが、大量のマスコミや遺伝子工学の学者や明らかに怪しい宗教の人間が一人目の自宅に殺到したので、政府の方でIS学園入学まで部屋を用意してくれるらしい。だから、IS学園に持っていく荷物などを今日中に準備しておいてくれと申し訳なさそうに言われたが、実際、自宅待機も家から出られず、常に野次馬に囲まれているので、逆に部屋を用意してくれてありがたいと言っておいた。

 

 

 

 

 ちなみに、IS学園での俺は1年生からだそうだ。そりゃ、そうだよな。2年生にいきなり編入しても通常授業はなんとかできても、ISの専門授業となればお手上げだ。

 ましてや、1年でもIS学園に入学しているような女子の一般生徒は、もっと前からISについて学んでいるのだ、1年生の授業でさえ危ういかもしれん。

 とはいえ、もう一度同じ授業をやり直すのは面倒でもあるし、編入という形でのIS学園での生活は非常に胃の痛くなる生活になりそうだ。人間現状の生活に慣れてしまうと突然の環境の変化は受け入れ難いものである。

 とはいえ、IS学園への編入は嫌だといって拒否できるものでもない。むしろ、このまま現状維持しつつ生活するのは困難であることなど明白である。

 

 

 

 とりあえずは、思考の海に潜るのはやめて明日に迫る転居のために荷物整理を始めなくてはならない。転居先には電化製品や家具等の最低限のものは揃っているとの説明を受けたので持っていく荷物は比較的少なく済みそうだ。 

 キャリーバック一つに必要最低限のものを詰め込み、学園編入までの転居先へ移動する為に車を呼ぶ。

 学園編入までは、家族も同行する事になった。

 

 保護先は都内の某有名ホテルの最上階だった。普通の一般家庭の俺でさえそこいらにある花瓶一つで親父のひと月の給料が吹き飛んでも足りない価値のある物だとわかる。家具にしても、ひと目で高級品とわかるようなものばかりで、ソファに座ることさえためらいを覚える。

 しかし、親父には関係ないようだ。

 この部屋の飲み物は、すべて無料と聞くや否や、ワインセラーから如何にもな年代物のワインやらを取り出し容赦なく飲みだした。

 これにはさすがのボーイも苦笑いをしていた。

 親父は上機嫌だが、俺はこんな親父をもっていて恥ずかしくてたまらない。

 親父は、見た目はいかにもなダンディな男であるが、言動ですべてを台無しにしている。本当黙って動かなきゃいいのにな。

 母さんは、ボーイさんが下がるや否や、親父を殴り飛ばしていた。いいぞ、もっとやッちまえ。 

 妹はいつの間にか着替えて寝ていた。

 お前は、何時でもマイペースだな。兄さんはそんな妹が羨ましいよ。

 

 

 両親がOHANASHIをしているのを背景に、俺は時間のある限り鈍器のような参考書の内容を頭に詰め込む作業を始めた。

 

 

 

 

 そうして、ついにIS学園へと向かう日となった。

 保護も兼ねるので初日から寮生活だ。いくつかの荷物は先に送って、生活必需品のみ自分で持っていくことにした。

 

 

 

 

 いつもうるさい親父が何故か静かだったので流石に泣いているのかと思ったが、親父はただの二日酔いだとほざきやがる。ふざけるな!息子より酒かよ!

 

 母さんは、ただ「がんばってね」の一言だったが、目に涙を溜めながら言うのを見て俺にとっては、それで十分だった。

 

 妹は、

 「………」

 何も言わずに抱きついてきた。

 ほとんど無表情な妹だがこんな時だけ泣きながら抱きつくのは反則だろ。と一人思った。直ぐに離れた妹だったが、涙を見せないように俺に背中を向け母さんの手を握る姿を見るといつもはなんとも思わない妹がとても愛おしく、可愛らしく見えた。

 

「行ってくる」そう言って俺は、少ない荷物を持って歩き出した。 

 

 そんな俺の背中に、親父が

 「頑張れよ。馬鹿息子が」

 とボソリと言った。二日酔いだなんだと言っていたが酒に強い親父が二日酔いという時は大体が照れ隠しだということは家族内での共通認識である。何年家族やってると思ってんだよ。バカ親父。

 

 

 

 そして、俺はもう一度

 「行ってくる」

  と小さく呟いた。

 

 

 




今日中にあと三話くらいは投稿しておきたいです


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入学初日

早く今まで書いた分までは投稿しておきたいです。


 これは、精神的にキツいものがある。

 どこを見ても女子、女子、女子。

 正面の教卓前に見るからに「緊張してます!」って感じのイケメン君が一人。イケメン君の方はほとんどの女子の視線を受けている。まだ学園が始まり初日にも関わらず、廊下にも人が溢れている。初日くらい大人しくしておこうぜ女子諸君。第一印象は、今後の人間関係形成過程の上で結構なweightを占めるって誰かが言ってたぜ!、と心の中だけで呟く。

 

 ……まぁイケメン君がんばれ!

 

 

 

 さながら珍獣を見るかのような興味に満ち溢れた視線に耐えつつデジタル時計を親の仇の如く睨みつけること30分、お待ちかねのチャイムが鳴った。

 そして、一人の女性が入ってきた。小柄な体型に非常に大きな胸部装甲をお持ちの上から読んでも下から読んでも「やまだまや」と言うこのクラスの副担任だそうだ。担任は会議があるらしく遅れてくるそうだ。

 ちなみに、女子生徒の皆さんはイケメン君を穴が空くほど凝視しているため、俺以外ほとんど先生の話を聞いてませーん。先生少し涙目になってきてるし。かわいい。

 泣きそうな山田先生に気がついた生徒たちが、先生の話を聞き出した頃、山田先生から名簿順に自己紹介をお願いしますということで自己紹介が始まった。

 

 

 ちなみに、俺は「大神」なのでイケメン織斑と近いのだが、あいにく、俺が一番後ろの席でイケメン君は一番前だ。そのため必然的に彼のほうに視線は集まる。

 

 

 とうとう俺の番がやってきた。

 席を立ち上がる。クラスメートの視線にさらされると思ったが織斑の目線を除きほとんどの生徒は下を凝視していた。誰とも目線が交差しない。ワタシ コワクナーイ ミンナナカヨク

 これは、また違った意味できつい。ここは今まで女子高のようなものだったのだ。男性に対する免疫がないにしても、こりゃねーわー。

 山田先生は、怯えながらも、チラチラとこちらを見たり見なかったり、見なかったり。

 こういう時は、手短にするのが一番だ。

 

 

 

 「…大神 亮だ。よろしく頼む。」

 

 

 手短にするのが一番とかいってごめんなさい。正直、緊張してこれ以上喋れませんでした。普段から家族以外とほとんど会話しない俺にこれ以上求めないでくれ。これでも、最大限努力したんだ。

 

 

 

 「ちなみに彼は、皆さんの一つ年上ですが、ISについては初心者なので、1年に編入しています」 

 

 山田先生の補足がありがたいが留年生みたいでなんとなく居心地が悪い。まぁ、確かに英語の成績は非常に留年の危機を味合わせてくれるくらいには素晴らしいことになってましたよ?でもね、それ以外はどちらかというと優秀だったんだよ?

 

 

 

 

 さて、気を取り直して、次はイケメン君だ。がんばれ!イケメン君、お前ならできる!絶対できる!今日から君は富士山だっ!

 

 イケメン君は深呼吸を一度してから立ち上がり、クラス全員を見渡せるように後ろを振り返る。

 

 「織斑 一夏です。」

 

 イケメン君は、ひと呼吸置き、

 

 「……以上です!!」

 

 と、とても達成感に満ちた表情で言い切った。だが直後、後ろから出席簿が振り下ろされ、イケメン君の頭で実に痛そうな音をたてた。

 

 イケメン君を叩いた女性は「お前は自己紹介もまともにできないのか」といったが俺の挨拶も彼とそう変わらない。やめてあげてよぉ。彼は彼なりに全力を出したのよ!

 

 

 その後、織斑一夏を叩いた女性である織斑先生の自己紹介だったのだが実に唯我独尊的だった。そして、クラスの女子の声が音響破壊兵器レベルで響いたため鼓膜が破れるかと思った。

 

 

 

 




ヒロイン早く出したいですね。
今まで「俺は更識楯無が好きだ」を非公開にしました。
改訂版が今まで投稿していた話まで投稿が済めば改訂を消そうと思います。


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決闘(笑)

できる間にどんどん書いていきます。



 休み時間になり、イケメン君が俺に話しかけようとしていたがポニーテールの女子生徒に何処かに連れ去られていった。リア充かよ。織斑一夏よ、貴様は今日から俺の敵だ。

 

 俺?誰も話し掛けてきてないよ。一人ボッチでしたよ。はいはい。いつものことで最早慣れている。

 

 

 

 

 

 

 さて、授業が始まったのだが通常授業はなんとかなる。だが、ISの専門授業については正直ギリギリだ。あの参考書の内容全て覚えろなんざたかが数ヵ月では厳しすぎる。これについては、毎日予習復習をしておかなければ冗談抜きでヤバイ。誰か教えてくれないかなー。まぁ誰もいないよな。

 しかし、俺よりひどいのが織斑だった。参考書を電話帳と間違えて捨てるって、大丈夫かよ。もちろん織斑先生の出席簿アタックを受けてました。いやぁいい音出るなぁ。

 その後、俺に教えてもらえと言っていたが、俺もギリギリなので丁重にお断りした。織斑よ、そんな絶望した顔をしないでくれ。自業自得だ。捨てた貴様が悪いのだ。君になら周りの女子生徒が教えてくれるだろ。

 

 

 なんとか、地獄のような授業が終わった。初回の授業はISについての基礎知識の確認などだけだったので今日のところは問題はなかった。とはいえ、基礎の確認でギリギリというのは非常に不味い。確実にこれからの授業は理解できないだろう。在籍中は勉強漬けの日々が続くだろうな。

 

 

 

 これから先の生活に辟易しつつボッチで過ごす休み時間。窓の外ではまだ少し冷たい風が新芽の出始めた木を揺らしていた。

 視線を教室内に戻すと、織斑が俺に話しかけようとした。しかし、同じクラスの金髪ちゃんが織斑に話しかけ織斑は俺のもとへ到達することができなかった。

 さて、金髪ちゃんは織斑と話しているがどうもいい雰囲気ではないようだ。どうやら、金髪は男性操縦者がお嫌いなようだ。しかも、織斑は、代表候補生さえ知らなかったようで、金髪ちゃんをさらに怒らせた。斯く言う俺も最近知ったから余り織斑のことを言えないが。

 金髪ちゃんは、近年台頭してきた典型的な女尊男卑思考の持ち主のようだ。ああいったタイプの人間には、関わらないほうがいいだろう。無駄な事に首を突っ込むほど俺は暇じゃないんだ。

 逃げたわけではないのだよ?ただ、無用ないざこざを避ける為の手段なだけ。平和大事。

 

 

 

 

 

 そして、金髪ちゃんと織斑の話はチャイムという救世主の乱入により一時休戦と相成った。

 次の時間は、なにやら、クラス代表を決めるらしい。

 織斑が推薦されてる。

 頑張れよー、なんて呑気なことを考えてたら、

 

 「俺は、大神を推薦する!」

 

 なんてことを言い出した。

 

 「あ゛ぁ?」

 

 あの野郎、俺を巻き込みやがった!

 

 「ひぃ!?」

 

 隣の子が怯えているが、今は無視だ。それどこれではない。

 

 おっと?なに巻き込んでくれてるんだい?冗談にしてはキツいぜ、織斑。

 授業についていくだけでも必死なのだ。

 俺は、辞退しようとした矢先、

 

 「俺はやら「納得がいきませんわ!」」

 

 金髪ちゃんがいきなり喋りだした。被せんなよ。この野郎。野郎じゃないけど。

 

 (邪魔すんな!金髪!俺は、やりたくねーんだよ。てめーらで勝手にやってろ。)

 

 と言いたいが俺は小心者で臆病者でマイナス思考で見た目だけがいかつい人間なのでそんなこと言える訳もなく、せめてもの抗議として金髪(名前は知らん。一度の自己紹介で全員の名前なんぞ覚えられるわけねぇ)を睨みつけてやった。

 しかーし、当の本人は、織斑との口論に夢中で気がついていないがな!憎らしい事この上ない。

 その口論だが、途中からお互いの祖国の悪口を言い合うだけになっていたが。

 

 

 その後、織斑先生の鶴の一声によっていつの間にか織斑、金髪、俺の三人で決闘することになった。

 ん?俺も入ってんの?なんで?why?

 

 

 

 

 ちなみに織斑には、専用機が来るらしい。俺にはないけど。

 国際IS委員会やら世界各国からすれば、俺にも専用機を与えより多くの男性操縦者のデータを集め、何故、男でISが動かせるかのメカニズムをより早く解明したいらしい。しかし、コアの方に余裕が無いらしく今のところは訓練機だとか。また、ISを動かした際には、その時のデータを必ず委員会に提出するように、と言われた。あと、なにやら、常時ではないが護衛役?がつくらしい。

 

 

 

 

 そういえば、決闘って日本では法律で禁止されてなかったっけ?

 えっ?ここは、IS学園だから、どこの国からも干渉を受けないから問題ない?

 あっ、そうですか。わかりましたー。

 特記事項って便利だなー

 

 

 

 

 

 さて、俺が現実逃避しているうちに決闘に日程が二週間後の放課後になった。

 俺の意思は?えっ?関係ない?あっ、そうですか。

 

 正直に言おう。勝てるわけねー。金髪って代表候補生だろ。専用機もあるらしい。今まで、ISと何の関わりのもない人間にどうやって勝てと言うのだ。無理ゲーじゃね?始まりの村の村人が魔王倒しに行く感じだな。

 それにしてもさ、織斑、何でそんなに自信有りげな顔してんの?二週間で出来ることなんかたかが知れてる。精々、無様に逃げ惑うことしかできないだろうなと思うと、入学して早々、陰鬱な気持ちになる。

 

 

 

 さて、放課後になったのだが、……俺の部屋はどこにあるんだ?

 寮の鍵渡されていない。なにこれイジメ?

 途方に暮れる俺に、初めて織斑が話しかけてきた。織斑が自己紹介してきて、俺も気軽に織斑とコンタクトを取ろうと口を開きかけた時、絶妙なタイミングで山田先生が寮の鍵を持ってきてくれた。そして、結局、織斑とのファーストコンタクトの際、俺は一言も言葉を発することはなかった。

 えっ?山田先生の話の後に織斑に話しかければよかったって?でもね、彼、山田先生の話を聞き終わった頃には、荷物やら部屋のことで頭がいっぱいで俺のこと忘れて何処かに走りだしたから。

 ……後ろから多くの女子生徒に追いかけられながら。

 

 

 自分の部屋も決まったので荷解きをするために、俺も帰るか。

 

 

 ちなみにこの時、山田先生にこの時これからお世話になるので挨拶をしたのだが、見事に怯えられ、俺の心に深い傷を残してくださいました。しかし、怯えながらではあるが、

 「困ったことがあればなんでも相談してくださいね。私、先生ですからね。」

 と言ってくれた。いい人だねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、その様子を見ていた女子生徒が

 「大神君が入学早々、山田先生を脅迫していた」

 などと言う情報を流し、本人の預かり知らぬところでこの噂が流れたという。後にこの事を知った大神が人知れず枕を濡らしたのは、もう少しあとの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮への帰り道の最中、俺は綺麗に切り揃えられた芝生を眺めながら、二週間後にある決闘について考えていた。

 ISの実技授業などまだ受けてさえいないので決闘のビジョンさえ思い浮かばない始末だ。ましてや、相手は代表候補生なのだ。相手の情報が全くない状態では対策の取りようがない。

 結局は解決策など思いつくはずもなく一発くらいは叩き込みてぇなー、とぼんやりしながら、寮に向かって歩いた。

 

 

 

 

 さて、寮に着いたのだが何故か誰一人としていない。さっきまでいたよね?だって外にまで声聞こえてたんだよ?(この時すでに大神が山田先生を脅迫したという噂に尾ひれがついた状態で蔓延していた)

 

 静まり返った寮の中で俺は一人、自分の部屋を探した。

 

 




一気に投稿すると前書きも後書きも特に書くことないです

そういえば、最近オーストラリア産のビールにはまってます。


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「よろしくね」彼女は、俺にそう言った。

ヒロイン登場
ようやくここまで来ました。

ビールおいしい
朝からビール飲めるとか休み最高


 

 

 「今日からルームメイトになる更識楯無よ。よろしくねっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、俺は・・・・・・初めて、       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっと、俺の寮の部屋は1112号室か。惜しいあとひとつ前でゾロ目だったのに。

 寮に入り、寮棟の管理者の方に寮での基本的なルールなどを教えてもらった。大浴場は男性の利用時間を現在調整中なので使用できないので行かないでいださいと言われた。行かねーよ。そんなことをするのは、織斑くらいだ。

 管理人がその後に

 「わからないことがあれば、ルームメイトに聞いてください」 

 と言っていた。

 

 俺はこの時、ルームメイトが織斑だろうなーと一人思ってた。てか、織斑に聞いても多分あいつもわからんだろうがな。まぁ、朝に配られた寮生案内の冊子を読めばわかるだろうが。織斑には、教えてやらん。あいつは俺を道連れにしやがったのだ。決闘(笑)の恨みは忘れんぞ。俺は、根に持つタイプだ。俺を敵に回したことを後悔するんだな。ふははははは。

 管理人の話を聞きながら、そんな愉快なことを思っていた。

 

 管理人は去り際に俺に向かって

 

 「決して問題だけは起こさないでください」

 

 と言ってきた。

 

 

 えっ?なんなの?俺って初日から問題児扱い?なしてー?

 

 

 話が終わると、さっさと管理室に引っ込んだ管理人の背中を見ながら、暫し立ち尽くした。

 

 

  

 それからなんとか気を取り直し俺は管理人室の隣に掲示されている、ステンレス板の寮案内図の中から、自分の部屋を確認し歩き出した。

 

 

 その途中織斑を見かけた。あっれー?なんであんなとこにいるんだよ。お前の部屋は俺と同じだろ?

 そんなことを思っていたら織斑の後ろの扉が開き浴衣を着たポニテ少女に木刀で打ち据えられ、そのままポニテ少女の部屋へ連行されていった。

 ……おい、織斑、初日から女子の部屋に入り浸るとは、お兄さんは君のことが心配になってきました。

 まー、連行されてった彼のことは助けないけどね。織斑とポニテ少女は知り合いみたいだし。それに、あのポニテ木刀少女に近づくと危なそうだから。あんなのを最近の切れやすい若者っていうのかね。というか俺より織斑のほうが問題児じゃね?

 

 ……扉に木刀が貫いたであろう穴を見ないようにして、俺は再び歩き出した。織斑、お前が何をしたか知らんが、強く生きろよ。

 

 

 

 

 

 

 部屋に行く前に、急遽作られた男子トイレやら食堂、売店を確認しながら歩く。食堂は、寮はかなり広々としている。食堂は海に面しており、壁一面ガラスが嵌め込まれ、なかなかの絶景だった。売店は、俺の想像していたこぢんまりとした感じではなく、とにかくさまざまなものが置いてあった。デザートなどの甘味商品が多めに置いてあるのは、ここがほぼ女子だからだろう。

 さて、部屋に行くまで時間がかかったのだが、ようやく、これから三年間世話になるであろう部屋の前に立った。

 鍵を取り出し開錠して、いざ、new my place!

 

 ………開かなかった。…えっ?

 

 

 もう一度鍵を取り出し鍵を回す。ドアノブを握り回す。……開いた。

 どうやら、初めから鍵は開いていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の中に入ると広々とした空間が広がっていた。20畳は超えているであろう部屋は、実家の俺の部屋より広い。

 室内は実用性を重視し余計なものは何もない、磨き上げられシンク、広々とした滑らかな質感のするデスク。そして身長が180ほどの俺が寝ても余りあるサイズのスプリングの効いたベッドなど実に素晴らしいではないか!

 予想以上の設備に俺は自然と口角が上がる。小学校の時の自分なら、何の躊躇いもなく、ベッドに飛び込み、その上で散々跳ね回っていることだろう。あいにく、この年になってまでそんなことはしないがな。

 

 

 

 

 設備に関しては何ら問題ないはずなのだが、意識の片隅に何故か引っ掛かりを感じるのだ。おかしい。何かがおかしい。よく見れば、俺の荷物が既に荷解きされている。

 俺はまだ、荷解きを何ひとつ終わらせていない。しかし何故か部屋の隅に折り畳まれたダンボールがあるんだ?何故、食器棚の中に俺のお気に入りのコーヒーカップやらが仕舞われているんだ?キッチンには、俺の持ってきたコーヒーメーカーなどが置いてある。

 それにしては、片方のベッド脇は俺のじゃないバッグが置いてある。もちろん俺のではない。俺のは、親父のお古のボストンバックだ。

 

 

 ダレカイル

 

 

俺の頭の中が疑問符で埋め尽くされそろそろショート寸前になった時のことだ

 不意に、俺の後ろの扉が開く音がした。突然のことで驚いた為、慌てて振り返るとそこには、一人の女子生徒が立っていた。

 

 そして、彼女は俺に向かって、

 

 

 「あっ、やっと帰ってきたのね。今日からルームメイトになる更識 楯無よ。よろしくねっ♪」

 

 

 

 と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 照明の暖かな光に照らされた、空色の柔らかそうな、短く切られた髪が揺れ、

 

 

 

 そして、俺よりも遥かに小さな体をした彼女は、まるで舞うかのようにして俺に近寄ってくる

 

 

 

 そして、彼女は、茜色とカメリア色の輝く澄んだ瞳で俺をみつめる

 

 

 

 そして、再び、

 

 「よろしくねっ♪」

 

 そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、そんな彼女に

 

 

 今日初めて会った彼女に

 

 

 ただ、一目見ただけで

 

 

  見入ってしまった

 

 

  見蕩(みと)れてしまった

 

 

 

  見惚(みほ)れてしまった

 

 

 

 

 

 

 

  俺は、その時、彼女に一目惚れしてしまった。

 




そういえば、なぜオーストラリアビールにはまったかというと、南半球のとあるお国でガチで石油王と知り合いになり彼からもらったオーストラリアビールが異常なまでに旨かったからです。

さて、作品についてですがあとここからあと三話は今日中に投稿できそうです。


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ヒレカツ様

今日中にあと二話更新するぞー
今まで書いていた分に書き足したり削ったりするだけの作業なので比較的早く出来ますね。


 

 

 

 俺こと、大神 亮は孤高の存在だ。

 言い方を変えるとただのボッチだが。

 

 そんな俺が誰かに特定の感情を、持つことなど今まで一度たりとなかった。

 何故なら、他人になんらかの感情を抱くに至るまで友好関係が進むことが無かったからである。故に今まで家族を除きその他の人間に特定の感情を持つことがなかったのだ。

 それ以来、俺は周りからは一歩引いた立ち位置でいることが多くなり口数も極端に少なくなった。最終的には、常に一人でいるというのが普通になった。

 誰かと仲良くなろうとしなかった訳ではない。努力はしたのだ。しかし、結果が実を結ぶことはなかった。だからかもしれない。俺はいつの間にか自分から誰かに関わるのをやめてしまった。

 

 

 

 

 

 そして、いつの間にかボッチになっていた俺が誰か一個人に対してこれほどまでに強い感情を抱いたのは、彼女がはじめてだった。

 

 

 

 

 俺は会って間もないこのルームメイトに一目惚れをした。

 何故はわからない。ただ、見蕩れてしまった。

 この感情に、いったいどのような言葉で言い表せせばいいかわからない。

 今まで他人にここまで強い感情を抱いたことはない。故に俺は、自分の抱いている感情を上手く言葉に出来ないでいるのだ。

 それ以前に何故、このような感情を抱いたのかさえわからない。

 

 

 しかし、だだ一つわかっていることがある。この感情は、とても心地いいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから、俺は、俺の目を真っ直ぐに見つめている彼女に一言、

 

 「……よろしく。」

 

  そう言った。

 

 

 

 ああ、こいつは、俺と目を合わせてくれるんだな。

 

 

 

 

 

 

 この出会いを後になってから思い返すと。俺はふと思った。

 普通ならまず最初は何故織斑ではなく見ず知らずの彼女と同じルームメイトになったのか、ということに疑問をもつはずだ。だが、俺の中で彼女に対する印象があまりに強く、そして、そんな彼女とルームメイトになるということに意識が行っていた為、彼女に何故、俺とルームメイトになったのかを説明されるまで、俺はそんな疑問を抱くことさえなかった。

 

 

 

 

 

 

 その後、しばらくし更識楯無と名乗る少女から何故このような部屋割りになったのか聞かされた。

 

 一つ目は、俺にはISに関する知識が圧倒的に足りないためそのサポートをするため。

 

 二つ目は、少なくとも俺が安全なのはこの学園にいる三年間だけなのでそれまでに自衛できる位の力を付けるための指導者役であるから。

 

 三つ目は、織斑と違い何の後ろ盾もない俺の護衛役だそうだ。

 

 

 俺は彼女にそれだけの力があるのかと疑問に思ったが、彼女はロシアの代表生であること。もちろん、専用機もあるとのことだ。

 そして、このIS学園の生徒会長だといっていた。この学園の生徒会長は、学園最強である証でもあるらしい。

 

 

 

 そして、話の最後には他言無用の重要事項として二つの事を聞いた。

一つは更識という家について

 更識家は日本政府を裏から支える暗部に対する対暗部組織であり、彼女は17代目当主の楯無だそうだ。楯無という名は、更識家当家が代々襲名する名前であるということ。

 ちなみに、俺の家族を裏から護衛しているのは、更識の家の人間らしい。護衛の方々、ありがとうございます。

 

 そしてもう一つ、現在亡国機業ファントム・タスクという秘密結社について。

 組織の目的、規模などの詳細が不明で謎に包まれた組織であり、数少ないわかっていることは、第二次世界大戦中に発足したこと。組織の指揮系統が幹部会と実働部隊に分かれていること。イギリス及びアメリカの新型のISを強奪したのがこの組織だということ。だそうで、警戒が必要だと言っていた。

 

 

 本来、更識家及び、亡国機業ファントム・タスクについては機密事項らしいのだが、世界に二人しかいない男性IS操縦者は狙われる危険性があるため、己の立場がどれくらい重要なのかを知ってもらうために情報を伝えたと言っていた。最後の話については、もう一度他言無用と釘を刺された。

 正直に言って、あまりに規模の大きな話であまり実感しづらかった。

 

 

 

 

 重要な話が終わり後は俺の今後についての話をした。なんでも、俺の早期実力向上の為にこれからの特別プログラムを組んでくれたらしい。ありがたいことだ。

 消灯時間までは、その確認を二人でしたり、俺の好きなことや趣味、家族について聞かれた。妹の話をした時、何故か更識の表情が僅かに曇っていたが、俺は余計な詮索をしなかった。

 話の最後に趣味のコーヒーの話から今度、俺の淹れたコーヒーを飲んでみたいと上目遣いで言われた。わざとではないのだろうが、俺と更識の身長差から自然とそうなったのだろう。

 そして、俺は、そのお願いに間髪入れず了承し、明日の朝にでも淹れようかと言った。その返事を聞いて「ありがとっ!」と嬉しそうに言った更識はとても魅了的だった。

 

 

 ちなみに、今日は、更識は大浴場の方に行かず、部屋のシャワーで済ませるようだ。その際、

 

 「覗かないでねっ?」

 

 と脱衣所から顔だけを出していった。俺が、突然のことに目を白黒していると彼女は、

 

 「一緒に入る?」

 

 「ぶっ」

 

 流石に、これには噴き出さずにはいられなかった。俺を見ていた彼女は悪戯が成功したような満足そうな顔をして、脱衣所に引っ込んだ。上目遣いも実は狙ってやったのかもしれない。絶対そうだ。

 

 

 その後、着替えを忘れた更識がバスタオル一枚で出てきた。

 濡れた髪と上気した顔、僅かに見える鎖骨のラインがなんとも艶かしい。

 

「てへっ♪着替え持って行くの忘れちゃった♪」

 

 

 

 俺は、ベットに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから直ぐにベットに入り寝ることにした。就寝間際、更識がとんでもないことを口にした、

 「大神君、夜は狼にならないでね?」

 と言われた。俺はすぐさま、

 「そんなことはしねぇよ!」

 と力強く言い返してやった。そうしたら、衝立の向こう側から、笑いを押し殺したような声が聞こえてきた。

 どうやら、更識は、人をからかうのが大好きなようだ。

 

 

 ……いつか必ず仕返ししてやる。俺は、一人決意した。

 

 

 今日は、久しぶりに家族以外と話をした。今日更識からかわれてばかりだったが楽しかった。

 

 その後、更識はようやく笑いが収まったようで、俺に「お休み」と言った。俺も、更識に「……お休み」と言い、目を閉じた。

 ……が、女子と同じ部屋で寝るのには、抵抗を感じ全く眠れなかった。ましてや、出会った時に彼女は、俺が見入ってしまうほどの強い印象を与えたのだ。なおさら、眠れなかった。そうして、俺は、IS学園初日の夜を一睡もすることなく過ごすこととなったのである。

 

 

 

 

 翌朝、一睡も出来ず目の下に大きな隈をつくった俺は更識との約束を果たすため、一人キッチンに立ち悩んでいた。寮に入ってすぐなためコーヒーと共に出すような食べ物がないのだ。その為、どんなコーヒーを出すか一人悩んでいるのだ。

 暫し考えたあと、いつもの珈琲豆を買わせてもらっているマスターが俺がIS学園に入学することを知り、入学祝いに頂いたブレンドコーヒーを淹れることにした。このブレンドコーヒーはマスターが、ブラックでも砂糖やミルクを入れずに飲めるようにと長年の研究の末に完成したブレンドだ。花のような香りが非常に立つブルーマウンテンを中心に四種の豆をブレンドし、酸味とコクのバランスを整えたマスター特製のブレンドコーヒーである。

 ちなみに、俺は二種類の豆をブレンディングするだけで精一杯だ。

 俺は早速、ガラス瓶の中から、二人分の豆を取り出す。時間があるので手動のコーヒーミルで豆をゴリゴリと挽く。そして、中挽きにした豆をコーヒーサイフォンで抽出する。この時間は、いつも抽出されるフラスコを眺める。フラスコ越しに、更識が起きたのが見えた。どうやら、半分ほど寝ぼけていて、猫のように目を擦っている。俺は、その様子をすぐさま瞼の裏に焼き付けた。

 抽出も終わり、温めたカップにコーヒーを淹れた頃、更識がベットから出てキッチンにやって来た。果たして、更識の口に合うかどうかわからないが、俺はそっと彼女にコーヒーを差し出した。更識は、一度コーヒーの香りを一度嗅ぎ、そっと口をつけ一口飲んだ。小さな喉が少し動いたのが見えた。俺は、そんな更識に感想を聞いてみた。

 「・・・・・・うまいか?」

 すると、彼女は驚いたように顔を上げ、大きく頷いてくれた。 

 満足してくれたようで嬉しい。

 ここで不味いなんて言われたら、立ち直れなかったかもしれない。

 

 マスターありがとう。おかげで更識のいい表情が見れました。俺、今日頑張れそうです。

 

 そんなこんなで、朝のモーニングコーヒーを飲み終え、そろそろ食堂が開き朝食を食べに行く頃となった。更識が先の脱衣所で制服に着替え、入れ替わりのようにして、俺が、脱衣所に入り着替えた。更識は先に行ってるだろうと思ったが、脱衣所を出て見ると、部屋の扉の前にまだ更識がいた。そして、彼女は俺に、

 

 「一緒に行きましょ?」

 

 と声を掛けてきた。あまりに予想外過ぎて、俺は固まった。そうしたら、更識は俺が嫌がっていると思ったのか、

 

 「ごめんなさい、昨日の今日で馴れ馴れしいわよね。先に行っておくわ。」

 

 と俯きながら言った。

 

 俺は慌てて声を掛け更識を引き止めた。

 

 そしたら、立ち止まった彼女は俺の方を振り返り、

 

 「ふふっ♪、早く来ないと置いてくわよ。」

 

 そう言って身を翻し颯爽と歩きだした。

 

 

 

 俺は直ぐにそんな更識の背中を追いかけるように歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂に着いたのだが、やはり俺は他の生徒に警戒されているようだ。更識はというと俺の隣でニコニコしている。俺は、券売機でヒレカツを頼んだ。

 更識と共に席に着き食べ始めようとしたとき、不意に、更識に声を掛けてきた生徒が二人いた。

 「おぉーい。たっちゃーん」

 一人がこちらに大きく手を振りながら、もう一人は、近くに来てから

 「おはようございます。お嬢様。」

 と更識に向かって言った。

 その後、更識が二人の紹介をしてくれた。

 大きく手を振りながら来たのが、黛 薫子で新聞部副部長らしい。取材させてくれと言われた。

 更識をお嬢様と呼んだ方が、布仏 虚で生徒会会計をしているらしい。昨夜、更識に聞いた更識家を支える家系の人だった。

 俺は、しどろもどろになりながら、自己紹介した。なぜ、ここには、美少女しかいないのだろうか?

 

 その後、四人で朝食を食べた。

 食事中、黛から、取材と称して様々に質問を受けていた。その途中、更識が

 

 「大神君、そのヒレカツ、ひと切れちょーだい」

 

 「いやいや自分の朝食があるだろ」

 

 「む〜、だって、そのヒレカツおいしそうなんだもん」

 

 と言った。なにが「だもん」だ。可愛いなおい。

 俺は仕方なくひと切れ更識にやった。それを見ていた黛が、

 

 「大神君って噂通りのもっと怖い人かと思ってたけど、本当は、優しいんだね。やっぱり自分で取材しなくちゃ、わからないものなんだねー。」

 

 と一人納得し、布仏も「そうですね」と頷いていた。

 それから、いろいろと話していると布仏には、俺と同じクラスに妹がいるらしい。

 

 

 ……ん?ちょっと待て!さっき黛が噂って言ってたよな?いったいどんな噂が流れてるんだ?!

 

 

 

 

 

 

 

 俺が、一人悩んでいるといつの間にか俺のヒレカツ様はひと切れも残ってなかった。

 

 「ごめんねっ♪てへっ♪」

 

 隣を見ると、満足そうに微笑む更識がいた。

 

 

 



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特訓開始

今日はあと一話かな


 先に言っておこう。

 俺は今、かなり機嫌がいい。今なら、専用機持ちの金髪に生身で勝てるかもしれん。

 

 

 

 更識にヒレカツすべて食われた俺だが、

 なんと!!お詫びに今度、昼食の弁当を作ってくれるらしいのだ。

 いよっしゃぁぁぁぁぁぁーーーー!!!やったぜぇぇぇーー!へっへっへー!俺の時代だぁぁぁーーー!!!

 

 その後、意気揚々と部屋に戻り、今日の授業の用意をした。その時、更識から、今日から俺の強化プログラムを始めるから、放課後になったら、武道場にきて、とのことだ。

 

 

 ちなみに強化プログラムの大まかなスケジュールは次の通り、

 

・朝…ランニングなどの基礎体力向上

・放課後…夕食まで更識先生による戦闘技術向上訓練

・夕食後…更識先生による座学、IS授業

・アリーナ使用可能時…更識先生とのIS操縦訓練

 

 

 たまに生徒会の仕事などがある為、変更はあるが、基本はこの形で続けるそうだ。ほとんど、付きっきりで教えてくれるようだ。

 

 

 そろそろ、登校時間が近づいてきたので出ることにした。更識と布仏は生徒会の仕事があるらしく朝食を食べ終えたら、直ぐに登校していった。黛は、新しい記事がどうのこうの不気味な笑いしていたので直ぐに別れた。

 部屋を出て寮のホールを歩いていた頃、織斑に出会った。せっかくなので前回出来なかった自己紹介を改めてここでしておいた。

 そんな俺に織斑は、爽やかな笑顔で「一夏って呼んでくれ」と言ってきた。よろしくな!一夏!

 その際、一夏の隣のポニテ少女の名前が篠ノ之箒という名前だと分かった。そんでISを発明した篠ノ之束博士の妹である。

 なんか、めちゃくちゃ警戒されているんだが…

 

 そんなこんなで一夏と話しながら登校した。ほとんど一夏が俺に話掛けていただけだが。

 …篠ノ之そんなに不機嫌そうな顔をするな。……あぁ、なるほど、こいつは一夏のことが好きなのか。一夏によると篠ノ之は幼馴染らしい。

 俺は篠ノ之がずっと睨んでくるので、明日からは、一夏に朝会わないように気を付けよう。頑張れよ、篠ノ之。応援だけしといてやるから。

 

 教室についたので、織斑と別れ席に着いた。早速、女子に囲まれ質問攻めにあっている。

 

俺は、毎度のこと、ボッチだよーん。やべ、今日のテンションおかしい。更識の弁当のことが嬉し過ぎてテンションが高くなってる。いやっふーーー。ボッチでなぁにが悪い。むしろ上等じゃ!

 

 

 と思ったら、なんか来た。袖が長すぎて手が出ていない制服を着ていて雰囲気がなんかぽわぽわしてる生徒だ。なんか和むな〜。そんなことを思っていたら、その生徒が口を開いた。

 

 「えへへ〜、はじめまして〜、みーくん。布仏本音だよ〜。よろしく〜」

 

 なんだ!この子!すんげー癒されるんだけど!

 ん?布仏?聞いてみるとやはり布仏虚の妹らしい。似てねーな。しかも、みーくんて俺のこと?そんなことをつらつらと考えていたら、いつの間にかこの子を俺の手を握りブンブン振り始めた。

 

 「……なにしてんだ?」

 

 「えへへ〜、握手だよ〜。本音って呼んでね〜。みーくんってあんまり怖くないんだね〜」

 

 嬉しいことを言ってくれるではないか。この子は。

 

 ちなみに、みーくんの由来は、

 

 「んとね〜、大神だから、みーくん」

 

 だそうだ。原型ほとんど残ってないな。ま、いいや。

 

 

 その後、予鈴がなり、全員席についた頃、本音は周りの生徒に

 

 「大神君になにか酷いことされなかった?」

 「大神君に脅されなかった?」

 「大丈夫?本音ちゃん?」

 「本音ちゃん!?怪我してない?」

 「手、握りつぶされてない?布仏さん?」

 

 とか、聞かれていたがあの子はのほほんとした表情で

 

 「ん〜、みーくんは優しいよ。あとね〜手がとってもおおきかったよ〜」

 

 と答えていた。

 

 つーかお前ら、俺と本音の会話聞いてただろ?俺なんもしてないじゃん。

 

 

 だが、今日の俺は機嫌がいいのだ。気にしないでおいてやろう。

 

 さて、授業についてだがまだ始めの方ということもありまだ問題ない。しかし、本格的に始まれば今のままではおそらくついていけないだろう。しかし!俺には、講師役に更識がいるのだ。教えてくれる更識の為にも、俺、頑張ります!

 

 

 ISを使った授業での実習は、クラス代表を決める決闘(笑)のあとぐらいから始まるらしい。まずは、基本的な知識を確認してから、だそうだ。基礎知識の足りない俺と一夏にとってはありがたいことだ。

 授業は、女子の独特のノリと山田先生の分かりやすい講義によりつつがなく進んでいった。

 ただ、山田先生、女子にしかわからない説明をするのは、勘弁してくれ。

 

 

 休み時間には、一夏とわからない箇所を二人して確認していたのだが、一夏と話したくて堪らない、現在乙女街道まっしぐらの篠ノ之の機嫌が急降下してきたので、一夏に適当な理由をいい、早々に撤退した。・・・・・・それにしても、篠ノ之は些か嫉妬深すぎではないだろうか?

 広い心を持とうぜー。篠ノ之。

 

 

 

 

 ふーむ、今日は、授業の間ずっと変なテンションだった。

 いやー、参っちゃうね。みんな真面目に授業受けてんのに、一人だけやけにハイテンションだから。まあ、気づくのは妹くらいだから周りには普段と変わらないように見えたと思うが。

 ちなみに今、俺は武道場に向かって歩いている。

 

 

 

 

 武道場に着いたのだが、更識がいない。……あっれー?早く来すぎたのか?そんなことを思っていると、

 

 「だーれだ?」

 

 急に視界が暗くなり、目の当たりに暖かく柔らかな感触を感じた。なかなかのものをお持ちである。

 俺にこんなことをするのは、一人しかいない。

 

 「…更識か?」

 

 「ふふっ♪正解よ♪」

 

 更識は手に持っていた扇子を開いて言った。扇子には、[ご名答!]と書かれていた。

 

 

 

 

 

 その後、武道場で今現在、俺にどの位実力があるのかを見てもらった。

 二週間後に決闘(笑)があるため、あまり悠長なことはしていられないとのことだ。

 そして、更識と組手をすることになったのだが、「嫌だ」と渋った俺に、彼女は、それなら、俺の強化プログラムを白紙に戻すと言われた。

 彼女がここまで言ってくれたのだ。これ以上拒むのは、あまりにも更識に失礼だろうということで長考の末、改めて俺の方から、頼んだ。

 

 結果、俺が心配するほど彼女は弱くなかった。むしろかなり強かった。手刀や貫手を中心の手技を中心に攻撃を繰り出す俺の技を更識は、なんの苦もなく受け流した。

 格闘技は、喧嘩と中学の授業、近所のケンちゃんに教えたもらったぐらいなのでかなり我流が入っている。

 感想を聞いてみると筋は、いいらしい。後は、無駄な動きを削っていけばいいとのことだ。思ったより高評価で嬉しかった。

 

 

 

 組手が終わり、基本的な俺の現在のポテンシャルがわかったところで、ISに乗るために、生身の体の重心のブレなどを少しでも治す為の訓練をした。

 簡単に言うとISは、人間の体をそのまま大きくした様に装着するので、重心がブレたままでは、ISに乗った時にそのブレが大きくなるので、今のうちに矯正するらしい。

 俺は、中学の時に左の踵の骨が割れたことがあった。その為、体の重心がやや右に傾いているらしい。よく見ただけでわかるな。

 今日の夕食までの訓練はひたすら、重心を矯正するために時間を費やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食の時間になり更識と共に部屋に戻った。今日は、俺が早くシャワーを使えるように更識は、大浴場に行くそうだ。その後、一緒に夕食を食べに行こうと言ってくれた。

 その時、

 

 「なぁ楯無。なんでお前は俺にそんなに構うんだ?」

 

 「IS学園には、男性が二人しかいないじゃない?だから、少しでも、早くここに馴染めるようにしてあげたいかなーなんて♪」

 

 少し恥ずかしそうにしながら言ってくれた。 

 

 なんていい奴なんだ。惚れてしまうだろうが。既に惚れているのだが。

 あいにく、俺は、人並な言葉しか言えないが

 「ありがとう」

 と一言伝えた。

 

 更識は、そう言った俺に背を向け、

 「うん、また後でねー」

 と言い去っていった。

 

 俺は、シャワーを浴びた際、筋肉痛にはなっていなかったが太腿の筋が張っていたので、明日に響かないように入念にマッサージをしておいた。マッサージしなきゃいけないくらい運動したのは、久しぶりだ。

 

 

 

 

 

 

 シャワーを浴び、暫く部屋でだらだらしていたら、更識が帰ってきた。

 僅かに湿気を含み上気した顔の更識は今日もとても艶やかで俺は少しドギマギした。

 その後、二人で食堂に行き今回は布仏姉や黛とは会わなかったので更識と二人きりだった。

 夕食を食べ終え部屋に戻る。暫し休息を取った後、座学IS授業になった。正直、ほとんどわからなかったが、更識が一つ一つ丁寧に教えてくれたので俺でも十分に理解できた。

 この時、更識の先生口調があまりにもおかしく笑ってしまった。そしたら、更識が拗ねてしまった。

 

 「もう怒った。そんなに笑うならもう教えてあげないわ」

 

そんなことを言う彼女を子供っぽいところも可愛いなーなんて思っていたが俺があまりにも笑いすぎたらしくなかなか機嫌を直してくれない。このままでは、更識が拗ねたまま消灯時間になりそうだったので、俺は笑いを堪え何度も更識に謝った。

 その際、明日もコーヒーを作ってくれたら、許すと言われた。あれがよほどお気に召したようだ。すぐさま、了承し再び勉強を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 消灯時間になったので勉強も終わり明日に備え寝ることにした。

 明日からは朝の体力作りが始まるので早く起きなくてはならない。寝る前に「お休み」と声を掛け眠りについた。今日は疲れも溜まっていたので問題なく寝られた。

 

 

 

 今日の拗ねた時の更識可愛かった。



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みーくん

区切りのいいところまで行きたい

改めて自分の作品を読み直すと誤字が多いなぁ




 やあ、朝だよ。うん。今日も頑張ろうか。

 更識も丁度今起きたようだ。まあ、同じ時間に目覚ましをかけたので当然だが、俺は、ベッドから降り、伸びをしたら、背骨が「ゴキゴキッ」となった。熟睡できたようで目覚めがいい。

 

 

 さて、朝のジョギングだが更識も付いて来てくれるらしい。外の気温はあまり高くないが走りだしたら温まるので半袖だ。更識も半袖でなんとも健康的な体が眩しい。あまりジロジロ見るのも失礼なので直ぐに目を逸らし、二人揃って寮を出た。

 

 

 前の高校では陸上部長距離に所属していたのでジョギングにはある程度自信のあったが、夏の終わりに踵を骨折してからほとんど走っていないのでフォームは安定しないし呼吸は乱れるわで散々だった。私生活の時でも腹式呼吸を心がけ少しでも呼吸器官を活性させられるようにしようと思う。

 なんで長距離かって?一人で延々と走ってりゃいいからな。

 

 

 

 走り終わってから軽くウォーキングを挟む。その後、部屋に戻ってシャワーを浴びた。先に更識が入りその際にまた、

 

 「一緒に入る?」

 

 と、聞いてきたので無言で近づきデコピンをお見舞いしておいた。ふはははは、二度も同じ目は食わん。

 

 って!おい!着替えを持っていけ!!

 

 

 

 

 

 更識が風呂に入っている間、今日のコーヒーを選んで豆を手回しミルでゴリゴリ挽いて直ぐに抽出できるように準備をしておいた。今日はアイスにするつもりなので豆は深煎りのフルシティローストだ。更識が上がったので俺も直ぐにシャワーを浴びた。まだ春先だがかなり走ったのでそれなりに汗をかいていた様だ。シャワーから流れる冷水が気持ちいい。

 その後、挽いておいた豆をサイフォンに入れ抽出しているのを更識は興味深そうに見ていた。サイフォンは内部の気圧を利用して抽出するので見ていてこれがなかなか面白いのだ。

 コーヒーを飲みながら更識が

 

 「明日から朝食は部屋で摂りましょう♪」

 

 「……は?」

 

 「だって、朝練を早めに切り上げて、朝食を食べに食堂に行く時間がもったいないじゃない?その時間を朝練に回したほうがいいからね♪」

 

 

 つまり、毎日更識と二人きりで朝食を食べられる。ふむふむ、everyday更識とbreakfastをeatできる。という訳か。………はははは。なんということだろう。いいではないか!!

 すぐさま、俺は更識に

 「そうしよう」

 と半ば更識に迫るように彼女の提案に賛成した。ちなみに、食材は、売店に生鮮品コーナーがあり、そこで買える。

 

 

 

 

 あとね、悲しいお知らせです。

 昼食の弁当の件だが、弁当の容器がないので、作ってもらえるのはまだ先のようだ。売店に一応売ってはあるのだが、如何せん女物の小さな手乗りサイズしかないのだ。

 

 

 

 今日のところは食堂に行くとして明日からが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、放課後だ。えっ?授業はどうしたかって?もちろん、真面目に受けたさ。不真面目に見えるのは見た目だけだ。更識との予習で次の日の授業内容はほぼ完璧だ。そして、放課後は重心の矯正だ。基礎を疎かにしたままではいくら才能があれども、己の実力を最大限発揮することは不可能だ。今日は夕食までの時間の半分を重心の矯正する。もう半分は安定した姿勢制御の訓練をした。内容は太極拳である。は?なにしてんだよ!って思うだろ。でもな、あれはキツイ。動き自体はかなりゆっくりなのだが故に一つ一つの型をしっかりしなければ、直ぐにバランスを崩してしまう。また、動きのすべてが呼吸と連動している為、つま先の向きや腕の位置、呼吸のタイミングなど様々なことに気を配らなければならない。

 更識に見本として、演武してもらったが言葉が出なかった。動きの全てにキレがあり演武特有の鋭さがあった。

 ちなみに太極拳の型の中に、首、こめかみ、鳩尾、鼻、金的など狙いの場所がえげつない型が多かった。最後のは絶対に喰らいたくない。金的はダメだ。

 

 

 

 

 そういえば、前半と後半の間の休憩時間に隣の剣道場が騒がしかったので見に行ってみると、一夏が篠ノ之に竹刀でボコボコにされていた。あれ?なんか既視感がある。その際、俺の後ろから覗いていた更識が

 

 「ふふっ♪大神君もあんな特訓がして欲しいのかしら?」

 

 となんともいい笑顔をして聞いてきたので丁寧にきっぱりお断りしておいた。俺には、一夏と違い、あんな被虐趣味は持ち合わせていない。

 

 

 

 

 

 夕食の時二日ぶりに布仏姉と黛と出会った。布仏姉に妹あった事を伝えたら

 

 「妹がすいません。迷惑かけてませんか?おかしなあだ名を付けられませんでしたか?」

 

 と聞いて来た。全く迷惑は掛けられてないが「みーくん」というあだ名を付けられたと言ったら、

 

 「やっぱり。あの子は昔からいろんな人におかしな名前を付けるんです」

 

 おお、妹のことをよく知っていらっしゃる。

 この時、黛は何やら血走った目で

 

 「男性IS操縦者大神君の新情報ゲット」

 

 といつの間に出したのか手帳になんか書いていた。

 そして、更識は

 

 「みーくんって、ぷぷっ!変なあだ名ね。それじゃあ、私も今日からみーくんって呼んであげましょうか?ねぇ、みーくんっ♪」

 

 更識、マジでやめてくれ。また、変な噂が広がっちまうだろうが!!

 

 

 帰りに売店により明日からの朝食の食材を買っておいた。

 

 

 

 売店で買い物を食べ終え部屋に戻った俺と更識なのだが、

 

 「さて、今から更識先生のIS特別授業を始めるわよ♪みーくん♪」

 

 「……………」

 

 「どうしたの?。具合でも悪いの?みーくん」

 

 「……………」

 

 「返事してくれないと、お姉さん、みーくんのあだ名をみんなに広めるわよ〜♪」

 

 「………わかったから、広めるな。」

 

 「んふっふ〜♪よろしい♪」

 

 つーか、お姉さんって歳は一緒だろうが!!

 あと、その「みーくん」って書いてある扇子はやめろ!!いつ、書いたんだよ、まったく。

 

 

 

 

 ちなみに消灯まで俺は更識に「みーくん」と連呼され続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝からはランニングを終えた後は部屋で朝食となった。昨夜に売店でいろいろ買ったのでこれからコーヒーお供のバリエーションを増えそうだ。

 今日の更識との初の朝食はフォルシュマーク、ラッソーリニクに俺の淹れたシナモンコーヒーだ。

 フォルシュマーク、ラッソーリニクはロシア料理だそうだ。なんか朝食がめちゃくちゃ豪華なんだけど。料理は家族以外では初めて作るらしい。やったね!みーくん。

 

 「ねぇ、お味はいかが?」

 

 更識は料理の感想を俺に言って欲しいそうだ。

 ………ほほぉ、これは、反撃のチャンスかもしれん。俺は更識の視線に気づきながらも無言で食べ始める。

 ………ああぁ、なんか更識の表情がだんだん泣きそうになってきた。目が潤んでいて可愛い。ふむ、少し意地悪すぎたか。

 

 「美味しい」

 

 相変わらず、言葉は短くてすんません。でも長々と褒めるより一言で伝えたほうがいいかなって思ったからさ。

 更識に感想を伝えたら、一気に花が開いたような笑顔になった。可愛いなー。そういえば、俺も初めて、自分でコーヒー淹れた時、母さんと妹に美味しいって言ってもらって嬉しかったなー。

 親父?ああ、親父は飲めればどれも一緒だからさ、論外。

 

 そうして、俺たちは豪華な朝食を食べ今日の授業の準備に取り掛かった。

 今日の放課後の特訓は、昨日のうちにアリーナの使用申請を俺の知らないうちにしておいてくれたらしく、放課後は、アリーナでISを使うそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、放課後になった。

 えっ?授業?ああ、一夏が織斑先生の出席簿アタックくらってた。あと本音が相川清香と鷹月静寐って生徒紹介してくれた。これから仲良くしてくれたら…いいな。

 アリーナについて、これから俺と一夏専用になる1番ピットでISスーツに着替え更識が待っているIS整備室に言った。

 

 ……更識はいた。……いたんだが、女子のISスーツってなんか……その、男子にとって刺激が強いと思うんだ。しかも、更識みたいにスタイルのいい人間が着ると余計にそのスタイルの良さが強調されていろんな意味で困る。こう…色々と来るものがあるわけよ。仕方ないよね男の子だし。

 

 「大神君、こっちよ♪」

 

 「……ああ、今、行く」

 

 

 

 さて、今日はご覧の通りISを使った訓練だ。学園の訓練機はフランスのデュノア社製ラファール・リヴァイヴと、日本の国産ISの打鉄の二機だ。機体の大まかな説明は前者が、マルチロール式の機動型、後者が、耐久力と近接攻撃力の高い格闘型の認識でいいらしい。

 今日はラファール・リヴァイヴを使って訓練する。

 装着して、まず初めに感じたことは高揚感だ。小さい子供が親に新しい玩具を買ってもらった時の言葉で言い表せない幸福感に似ている。

 まず、初めは歩行訓練から始めた。最初は動きがぎこちなかったが時間が経つにつれ体に感覚が馴染んできた。そのうち生身の体で歩くのと遜色なく動けるようになった。

 その後、調子に乗った俺はISに乗ったまま走り足をもつれさせ派手に転がった。更識が言うには見事なこけっぷりだったようだ。こう「ズザッーー」ってかんじに。と爆笑しながらいわれた。

 その時、急に更識がうずくまったので、

 

 「大丈夫か?」

 

と声をかけたのだが、

 

「ふふっ、大神君、あまり私を、笑わせないで」

 

 笑い過ぎて横隔膜が痛くなったらしい。

 笑いすぎだろ!!おいっ!

 

 

 その後、俺は、ISを装着したまま走り続け、数十分後には、足を縺れさせることはなくなった。

 

 

 

 

 地上での歩行訓練が大体終わり、次にPIC制動を使った空中での訓練をするそうだ。今までに感じたことのない感覚に戸惑ったが空を飛ぶ感覚はとても楽しい。今ならライト兄弟が執拗なまでに空を求めた気持ちがわかる。常に俺たちは、地球の重力に引っ張られているが今この時だけはそのしがらみから解放されているのだ。PICを使った制動を慣れないことで戸惑うこともあったが、これがなかなか面白い。途中からは更識も自分のISを展開し訓練の最後に二人してISに乗りこのIS学園を空から見ていた。いつも見る風景でも視点が変わるだけで感じるものが違う。

 

 

 

 

 訓練も終わり今日の礼を更識に伝え部屋に戻る。風呂に入るので途中で更識と別れシャワーを浴びる。その後、夕食を食べに行った。

 

 夕食を食べに行く途中に布仏姉と黛にに今日も出会った。俺たちと、夕食を取る時間帯が同じのようだ。その時、更識が今日に俺に訓練の中でのこけっぷりを二人に話していた。

 やめい!!

 

 




一応本日の目標話数までの改訂版書き終わりました。
改訂版では、物語の終わりに綺麗に収束していけるようにところどころ手直ししつつ進めていきます。


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新たなる志と進展

再開して多数のお気に入りを頂きまして、読者の皆様には感謝致します。
また、活動報告や感想を頂きまして大変うれしく思っております。

久しぶりの執筆ということで酷評されたらマジ死ねるわーとか思って明日が温かいお言葉で再び迎えていただきました。

予定より一話多く投稿です。



 

 

 時間が過ぎるのは早いもので今日の放課後は1組のクラス代表を決める日である。

 

 今日、部屋を出るときに更識に

 

 「今日はがんばってね。期待してるわ♪」

 

 と言われた。

 

 

 俺のIS操縦技術についてだが毎日更識が教えてくれたおかげで機動については一年の中ではなかなかだと言われた。武装については、当たり前だが今まで日常生活で使ったことなどないので、あまり芳しくはなかった。いくらハイパーセンサーがあっても所詮使うのは生身の人間なのだ。さて、一夏についてだがこの二週間剣道場で篠ノ之に竹刀でしばき倒されて過ごしたそうだ。

 今日はクラスの代表決めの決闘が行われるということもあり、雰囲気は何やらそわそわとしていた。一番挙動不審になっていたのはほかでもない山田先生だった。なぜ?

 

 

 放課後になりまずは金髪ことセシリア・オルコットと俺の試合からだ。俺が終わり金髪のISの点検、及び整備を休憩時間として置き織斑が試合をするのが今日の予定だ。

 この時の俺の武装だがラファールに乗り、両腕に対BTシールドを装備である。射撃武器については、ライトマシンガンである。相手の機体が遠距離型ということなので、ライトマシンガンで弾幕を張り接近し近接戦に持ち込むというのが今回の作戦だ。後付装備イコライザには、近接武器以外は増設ブースターを入れている。

 少しは、更識の期待に応えられるようにしたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 負けた。

 

 

 決闘が始まり、最初の方は上手くシールドを使い相手のBT攻撃をいなしマシンガンでの弾幕を張って接近しようとした。相手は手に持っている狙撃銃だけしか使っていないので比較的簡単に防げた。

 しかし、15分ほど経った頃だろうか痺れを切らせた金髪が機体名にもなっている特殊兵装のブルー・ティアーズを使い始めた。多方向からくる攻撃に俺の対応は後手に回った。途中、金髪は特殊兵装を使うときに特殊兵装の制御に意識を割かないといけないので制御中は動けないことがわかったがなかなか接近できなかった。

 そんな俺に気を良くしたのか金髪はやはり男は弱い、情けないやら様々な言葉で男というものを貶していた。別に俺、弱くても情けなくてもいいと思うのだ。それが人なのだから。欠点の何ひとつない人間などそれは、もはや人ではない。

 そして、別に俺自身のことがいくら貶されようとも、気分が悪くなることはあれど、特に怒るようなことはしない。それが他人から見た俺の評価だから甘んじて受け入れようとさえ思う。そんなことを思いながらこれからどうするかの突破口を考えていた。

 

 だが、金髪には何も言わない俺を見てそのまま言葉を続ける。

 

 

 

 そして、俺は金髪が言ったその言葉でキレた。

 

 

 

 

 

 両手で構えていたマシンガンをその場に捨てあいつを馬鹿にした金髪を睨みつける。ビットの攻撃を受けながら突進し右腕の対BTシールドで本能のままに殴り飛ばす。

 突然の突進に驚いた金髪は装備していたミサイルを俺に向けて発射し俺はそれに巻き込まれシールドエネルギーが尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ〜あ、負けちまった。期待してもらってたのにな。

 戦いの途中で冷静さを失うことも最悪だ。しかも捨て身の突進など決して褒められたものではない。後先考えない行動など評価対象外だろう。

 

 ピットに戻った俺に一夏が一言声をかけてくれた。そして、俺はそんな一夏に「頑張れよ」と言っておいた。

 一夏の試合を見て俺はただ羨ましかった。あいつには俺にはない強い志があった。今の俺にはそんなものはない。夢のような、不可能にも思えるようなことを言い切れるあいつが眩しい。

 

 一夏の試合が終わりピットに一夏が帰ってくる少し前。

 俺は織斑先生に次の一夏と俺の試合をなしにしてくれ、と頼んだ。もちろん理由を聞かれたが、なんの志もない人間が一夏の前に立つのはあいつにとって失礼だ。と伝えたら、織斑先生は、少し考えたあと了承してくれた。

 

 

 

 その後、一夏が戻ってくる前に俺はアリーナを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は四月というのに気温が低かった。俺の心情を表すかのようにこの時期に似合わないほど冷え切っている。ISスーツから着替えたとはいえ薄着では風邪をひいてしまうかもしれない。

 

 部屋に戻るにしても、更識になんて言えばいいか分からず、合わせる顔がないので、俺は一人学園の敷地内にある人工林の芝に寝転がりこれまでのことを考えてみた。

 自分の感情を制御できず荒れていた中学時代、何をするにも無気力だった高校1年。今でも時々我慢が限界に達した時、俺は自分を抑えられなくなる。つまりはただのガキなのだ。我慢の利かない身勝手なクソガキである。

 

 一夏の試合を見た後に逃げるようにしてアリーナを去った俺はあまりに情けなかった。自分で自分が嫌になる。

 

 目を瞑りそんなことを考えていると自然と言葉が出てきた。

 

 

 「……最悪だ」

 

 「こんな自分が嫌になる」

 

 一夏にあって俺にないもの、それは自分という一個人の根本を支える志だ。望みだ。目的のない生き様など無駄である。

 

 「………志……か。俺にはないものだ。」

 

 こんなことを一人考えている自分を改めてみると余計に惨めになってしまった。

 

 「なら、私を、更識楯無を守れるくらい強くなるって言うのはどうかしら?」

 

 そりゃ、いいな。面白そうだ。あー、こんな変なことを考えるほど、俺はおかしくなってしまったようだ。

 

 「ねぇ、どう?いいと思わない?」

 

 「……そうだな。それなら、楯無の隣にいられるからな」

 

 自分一人だけで会話している俺は、もし、ここに見ず知らずの誰かが通りかかれば、さぞ不気味に映るだろう。

 

 

 

 少し疲れた。ここで少し眠ろうかと考えていたら不意に俺の頭を誰かが優しく撫でた。驚きに目を開いてみるとそこには更識がいた。うむ、黒か。

 ん?なんでいるんだ!?動揺する俺は、なんとか、言葉を搾り出し、

 

 「……いつからいた?」

 

 「ふふっ、あなたがアリーナを出た後からずっとよ。大神君ってば、私が声を掛けたのに気づかずに素通りするんだもん。だから、着いてきちゃった♪」

 

 「…………………つまり、今までのことを全部聞いたわけか?」

 

 「うん♪」

 

 「……………」 

 

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

 更識に全部聞かれていた。こんな時はどうすればいいのだろうか?話を逸らすか?…そうしよう。

 

 「なあ、更識、今日の夕食はなん「ねぇ、大神君」……なんだ?」

 

 「さっきの話だけど」

 

 俺は、失敗したようだ。

 

 「私を守れるくらい強くなってね♪」

 

 ん?それは、俺ではない俺が言ったのではなかっただろうか?

 

 「む〜。さっき聞いたときにいいって言ったじゃない。」

 

 …あれは、しっかり楯無が俺に聞いたことだったようだ。

 

 「ねぇ、さっきの言葉は嘘だったの?」

 

 それは……うむ、悪くない。いや、いいな、それ。

 

 「いや、嘘じゃない」

 

 「そう。なら明日からも頑張りましょう。私は大神君がここに来てからずっと頑張ってるのを一番身近で見てたのよ。あなたの今までは決して無駄ではないわ。」

 

 そう言って、楯無は立ち上がり、俺に手を差し出した。

 

 「じゃあ、外は冷えるからさっさと行きましょう」

 

 俺はそう言った楯無の手を取り、そろそろ暗くなり始めた林を抜け橙色の暖かい灯がつき始めた寮へと二人並んで帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度、風呂に入るため別れ、その後二人で食堂に向かい、二人して同じメニューを頼んだ。

 

 「ねぇ♪みーくん、その豚の生姜焼きひと切れちょうだい♪」

 

 「自分のがあるだろう。あと、みーくん言うな」

 

 「む〜、みーくんのケチ」

 

 「なにがケチか。同じメニューなんだから、自分のを食え。みーくん言うな」

 

 「ちぇ、みーくんのくせに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後部屋に戻り座学をして寝ることにした。

 

 「みーくん♪おやすみ。」

 

 「みーくん言うな。……おやすみ」

 

 

 その時、俺は、直接顔を見ては言えそうにないことを今言う事にした。

 

 「……更識。その……今日はありがとう」

 

 「…うん。どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、何やら更識の調子がおかしかった。朝のランニングではいつもと違い息切れを起こしていたし朝食をほとんど食べなかった。そして

 

 

 

 「おい、更識っ、大丈夫か!!」

 

 

 

 

 登校間際着替えに入ったままなかなか脱衣所から出てこないので脱衣所の扉をノックしたのだが反応がない。今日はなにやら様子がおかしかったので、心配になって扉を開けてみると、更識は壁にもたれるようにして倒れていた。

 急いで更識を抱え、ベッドに運び誰か呼ぼうとしたら止められた。

 

 「生徒会長は、他の生徒の見本にならなきゃいけなの。だから言わないで。ただ疲れが溜まってただけだから、大丈夫。おねがい」

 

 「…」

 

 「ごめんね。大神君」

 

 昨日は、今の時期にしては気温が下がっていた。それに俺を探してずっと外にいたから風邪を引いたのかもしれない。これは俺のせいだろう。更識にまで迷惑をかけてしまった。

 だから、そんな申し訳なさそうな顔をしないでくれ。いつもみたいにみーくんっていってからかってくれよ。お前をそんな状態にした原因は俺なんだから、俺に頭を下げないでくれ。謝るのは、俺の方だ。生徒会の仕事や楯無としてのがあるのにそれなのに、毎日毎日、俺に付き合わせてしまった。なのに体調の悪いお前にこんな状態になるまで気づいてやれなかった。何が更識の隣に立てるようにするだ、守るだ。全然できてないじゃないか。

 

 

 「ごめんね」

 

 

 やめてくれ。そんなことを言わないでくれ。お前の足手まといになっている俺に謝らないでくれ。そんなに優しくしないでくれ。俺には、そんな優しくしてもらうようなことは、何も出来ていないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、俺は

 

 「私のことは、大丈夫だから。行ってきて。」

 

 「嫌だ、お前をこんな風にしたのは、俺の責任だ。だから、行かない」

 

 と行け、行かないと言い合っていたのだが

 

 「行ってくれないと、私、これから大神君のことは無視するわ」

 

 と、言われ渋々登校した。だが、更識は学校に行けとしか言っていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園は、朝9時から一時間目が始まる。チャイムが鳴り授業が始まり直ぐ俺は、

 

 「山田先生、今日は体調が悪いので早退していいでしょうか?」

 

 「でも、大神君まだ一時間目でs「早退していいでしょうか?」」

 

 「っ!!わ、わかりました。そ、そういえば、おおおががみみ君、ちょっと顔色が悪いですね。織斑先生には、私の方から伝えておきますね。ごっ、ごごめんなさい。」

 

 「謝らなくて結構です。あと先生、俺の名前は大神です。では、体調が悪いので早退します。」

 

 

 

 少々強引だが、まあいいだろう。山田先生には少し酷いことをしてしまったが。戻る途中、売店で解熱剤と冷えピタを買って部屋に戻った。

 

 

 

 

 「ねぇ、大神君?私は、学校に行ってって言ったわよね?」

 

 「ああ」

 

 更識は、少々怒っているようだ。笑顔が怖い。

 

 「じゃあ、なぜ、ここにいるのかしら?」

 

 「……早退した」

 

 「えっ?」

 

 「更識は、俺に学校に行けといった。だから、俺は仕方なく登校した。だが、偶然たまたま、急に体調が悪くなってしまった。先生に言った所、早退することになったんだ。今はもうなんともないのだが全く困ったものだ」

 

 「………」

 

 更識は固まってしまった。

 

 「おい、大丈夫か?」

 

 「はぁー、今更大神君を学校に行かせるのは無理そうだし。それなら、仕方ないわね。…看病をお願いしていいかしら?」

 

 「ああ、そのつもりだ」

 

 「ありがと」

 

 そう言って更識は、微笑み、目から涙を零した。

 突然のことに俺は、どうすればわからなかったが、更識は

 

 「ありがとう」

 

 と何度も口にした。

 それは、そんな更識の頭を泣き止むまで撫でてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は、一日中部屋で更識の看病をしていた。

 

 「ねぇ、みーくん。林檎が食べたいの。切ってくれない?もちろんうさぎさんがいいな♪」

 

 「みーくん言うな。林檎は切れるが、うさぎさんなんて形には無理だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ、みーくん。食べさせて」

 

 「嫌だ」

 

 「え〜、今日は一日中看病してくれるって言ったじゃない。ねえ、はやく〜」

 

 「……………ほら、口あけろ」

 

 「やった」

 

 




次回は、改訂版更識楯無視点でお送りいたします。

次あたりから糖分高目で参りますので、お手元には、ブラックコーヒーかビールをお持ちください。


少し早いですが、カンパーイッ!!!!


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更識楯無の心情風景と大魔神降臨

今回は、更識楯無視点でお送り致します。
どうしてもここまでは一気に投稿しておきたいと思っており、どうにか今日中にここまでは執筆が終わったので投稿します。

お気に入りや評価、感想等一つずつ見させていただいております。ありがとうございます!



 私は初めて彼に会った時、まったく何を考えているのか読めない無表情な人、そう思った。口数も少なく不機嫌そうな顔で、余計にわからなかった。

 学園長に彼のことを頼まれた時は、あまり乗り気ではなかった。

 でも、更識家17代当主として依頼された。

 

 資料を見たときその経歴からあまりいい人には思えなかった。中学の時には学校で大暴れして「大魔神」と呼ばれるほど恐れられていたようだし。何をすれば、こんなあだ名がつくのだろうか?

もちろん、一般人に負けるほど私は弱くない。でも、一緒にいたいとは思えない。

 

 

 初めて自己紹介した時、彼は私を見たまま何も言わず私はどうすればいいかわからなかったけれど少ししてから「よろしく」と言ってくれた。

 出会った当初は距離感が掴めなくて苦労した。

 でも、その日二人で話してみると彼は資料に書いてある人と大違いだった。私がからかっても無表情ながら乗ってくれた。そのあと、シャワーを浴びたのだけど私も少し緊張していたようで着替えを持っていくのを忘れてしまった。

 うう、恥ずかしい。

 夜寝るときに、もう一度からかってみた。念のため、夜は寝ずに警戒していたのだけど、彼は私を襲うような素振りをまったくしなかった。私って魅力がないのかしら。安心したけれどなんだか釈然としない気持ちになってしまった。

 翌朝、彼は趣味でよく淹れるコーヒーを淹れてくれた。言葉が出ないほど美味しかった。虚ちゃんの紅茶と双璧をなすほどね。今度から彼の淹れたコーヒー以外飲めないわ。

 その日、一緒に朝食を食べに誘った。初めは迷惑だったかな。と思ったけれど、「いいよ」て言ってくれた。私はその時に初めて彼から表情を引き出せた。

 

 朝食の時、虚ちゃんと薫ちゃんに会ったのでお互い自己紹介していた。なんだか私だけ会話に入れてない。

 べ、別に寂しくなんかない。その代わり残りのヒレカツ全部もらうから。

 その後、お詫びにお弁当を作ってあげるって伝えたら無表情だけどどことなく嬉しそうに見えた。

 その日の夕方、なんでそんなに私が大神君のことを気に掛けるのかを聞かれた。言葉にして改めて伝えてみるとなんだか恥ずかしいわね。

 その時、初めて笑って「ありがとう」って言ってくれた。嬉しかった。笑ってくれた。

 そんな彼の笑った顔を見たときだろうか、私が彼のことが気になり始めたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜にISの知識を教えていた時急に彼が笑い出した。なんでも私の口調が面白かったそうだ。こうして、一緒にいると彼はとても感情が豊かだ。でもそれを表情で表すのが苦手なようで今まで勘違いされていたみたい。

 そんなことを考えていたら、まだ彼は笑い続けていた。

 む〜流石に笑いすぎよ。

 拗ねたフリをしていたら、彼が慌てて謝ってくれた。

 

 

 

 朝食を部屋で一緒に食べないか提案してみた。それっぽい理由を付けたけど、本当は、彼が楽しそうに笑ったりしている姿を他の生徒に見せたくなかった。彼には悪いことをしたと思う。ごめんね。

 朝食の件は、直ぐに快諾してくれた。断られたらどうしようかと思ったけれど、よかった。彼にわからないように私はそっと安堵した。

 

 

 

 

 

 ふふっ♪面白い情報聞いちゃった♪大神君、本音ちゃんにみーくんって呼ばれてるみたい♪今度からみーくんって呼んじゃおう♪

 

 

 二人で売店に朝食で使う食材を買いに行った。男の人とこうやって歩くのは初めての事でもし私が誰かと結婚したらこうして毎回誰かと歩くのだろうか?今まで男性と関わるようなことは無かったし更識の家の人間としてそんな時間はなかった。私がそんなことを考えているとき、大神くんが私に声を掛けてきてビックリしてしまった。この時、おそらく私の顔は、真っ赤に赤くなっていたと思う。大神くんにバレないように「朝食で使う調味料忘れたからここで待ってて」そう声を掛け私はその場を離れた。

 

 

 

 翌日、初めて家族以外に食事をつくった。大神くんは私が感想を言って欲しいのをわかっているのに、見て見ぬフリをしていた。

 

 む〜、みーくんのいじわる

 

 でも、そのあと、「美味しい」って一言だけど言ってくれた。ただ、一言だけど、美味しそうに食べておかわりまでしてくれた。

 

 

 

 初めてISの訓練をした時のこと。

 ISスーツははっきり言ってとても露出が激しい。操作性を最大限まで効率化する為というのはわかっている。今までは、女の子しかいなかったからそこまで気にしていなかったけれど、今年は男子が二人いる。

 一度自分の恰好を意識してしまうと変に気を使ってしまう。大神君はどう思うのかしら。ちょっぴり気になった。

 なのに、彼は、無表情だった。そんなに私は魅力がないのかしら。胸も他の生徒より大きいし、体型も維持しているのに。

 

 

 彼のIS操縦技術は体で覚える方が得意なようで習得は早かった。流石に乗ってすぐはよくコケていた。急に走り出し、ズッコケた時はあまりに見事なコケ方で笑い過ぎちゃったけれど。

 

 

 

 

 

 

 そして、ついにクラス代表決めの日になった。

 彼自身クラス代表にはなりたくないそうだが負けるのも嫌だと言っていた。

 放課後、私は彼にバレないようアリーナの端の方から試合を見ていた。

 最初はシールドをうまく駆使して対抗していた。ビットが展開してからは防戦一方になっていたけれど致命的な攻撃は全て防いでいた。しばらくして対戦相手のイギリス代表候補生の子が、彼のことを馬鹿にしていた。

 私は、それを聞いて、彼の努力を何も知らない対戦相手に一言、言ってやりたかったけれど、今は彼の試合だ。邪魔をする訳にはいかない。だから私はそんな気持ちをぐっと堪える。

 

 何も言わない彼に対戦相手は、更に彼を貶しだした。その中で、代表候補生の

 

 「あなたに指導したという上級生の方はさぞかしダメな方なのでしょうね、そんな方に指導を受けるあなたも哀れですわね」

 

 次の瞬間、遠目に見ても彼の雰囲気が変わったのが分かった。

 

 「お・い、も・う・一・回・い・っ・て・み・ろ。今、な・ん・つ・っ・た?」

 

 「だ、だから、あなたを指導した上級生はダメな方であなたもかわいそうと言ったのですわ」

 

 「・・・俺はさ、自分のことならいくら馬鹿にされても構わん。でもよ、流石に俺のことを毎日助けてくれている更識のことまで馬鹿にされるのは我慢できねぇや」

 

 大神君は私のことを馬鹿にされたことが許せなかったみたいだ。

 

 「な、ならば、どうなさるのですか?もう、あなたの機体のシールドエネルギーは、ほとんど残ってないというのに」

 

 「あぁ?だからどうしたってんだよ?勝ち負けなんざどうでもいい。ただ、俺は、何も知らねぇお前が更識まで馬鹿にしたことが許せねぇだけだ。お前如きが、語っていいような女じゃねーんだよ。俺の大事な奴を侮辱したんだ。覚悟はいいな?」

 

 そこには、いつも知っている大神君はいなかった。そこには、人の形をした何かがいた。

 そのまま彼は緩慢ともいえるゆっくりした動きで両手で持っていた唯一の武器を捨てた。そのまま、ゆっくりと顔を上げた彼に私は恐怖した。ただ怖かった。いつもと同じ顔なのに。

 

 その後は、相手の選手に同情するくらい大神君の攻撃は苛烈だった。

攻撃自体は素手なのだが相手のISに情け容赦なく殴り続けていた。殴り飛ばし衝撃で体勢の崩れた敵を掴み、引き寄せながら、蹴り飛ばし、空中に打ち上げられた相手にも追撃をして、相手の狙撃銃を素手で握りつぶし、残ったBTビットで撃とうとしても、回避され、彼の投擲したシールドに潰され爆発四散した。ここに「容赦」の二文字はなかった。抗うことさえできないのだ。ただ、過ぎるのを待つしかない嵐のようだ。今の彼は、私でさえ今の彼の正面に立ち戦いたくない。ISの操縦は正直言って無茶苦茶だったけれどそれが逆に次への動きを読めなくしている。

 

 私は、ここで資料に載っていた「大魔神」の意味がようやく分かった。

 

 それから、相手が自爆同然で放ったミサイルビットの攻撃により彼の乗るラファールのエネルギーが切れ試合が終わった。

 終わったとき、私は彼のことが怖かった。でも、彼があそこまで怒ったのは私の為だったと思うと大神君の相手の子には悪いけれど嬉しかった。なんだか胸が暖かくなった。

 

 

 試合の終わった大神君はピットに戻った後どこかに行ったみたい。

 私は大神君を探すためにアリーナからに出た。季節外れの冷たい風が頬に吹き付ける。大神君の試合が気になって今日の天気予報を見忘れていたので結構肌寒い。声をかけてみたけれど大神君に無視された。なにやら、先ほどの試合で何やら思うことがあったらしく、彼は私に気づかないまま、歩いていった。少し心配になって付いて行った。彼は、自分の試合の後、織斑君の志を聞いて自分にはそんなものはなく、ただ相手に対して八つ当たりのように闘ったことを悔いているのだ。だから、私はそんな大神君に拠り所を志を与えてあげた。

 そのあとの彼は、今までで一番かっこよかった。その時、私は、あぁ〜、私、大神君のことが好きになっちゃったな〜なんて他人事みたいに考えていた。私ってこんなに惚れやすい女だったかしら。

 

 

 

 

 

 次の日のこと。

 私は、最近無理をし過ぎていたようだ。頭がぼーっとする。食欲が出ない。でも、大神君に迷惑をかけないようにしようとした。でも、無理だった。

 私は大神君に抱き上げられ、ベットに運ばれた。

 

 ごめんね。大神君迷惑掛けちゃって。ごめんね、心配かけて。大神君のせいじゃなの。私が自分の体調管理をしっかり出来なかっただけだから。そんなに自分を責めないで。本当にごめんなさい。

 

 

 

 

 そのあと、私は大神君を無理矢理送り出しベットに潜り込んだ。

 学園で一時間目が始まった頃かな。大神君はちゃんと授業受けてるかしら。大神君、ちゃんと授業に着いていけてるかしら。大神君にちゃんの私は教えてられてるのかな。そんなことを考えていると、不意に部屋の扉が開いた。

 そこには、私が今考えていた彼が立っていた。

 「……なんでここにいるの」

 嬉しかった。でも、彼は私との約束を守ってくれなかった。少し怒りながら聞いてみると、早退したらしい。大神君のことだ。少々無理矢理早退してきたのだろう。彼に話しかけられて、NOとはっきり言えるのは織斑先生くらいだろう。ちなみに織斑先生は、今日のこの時間は、会議でいない。

 彼の言っていることは屁理屈だけれどそうまでしてここに戻ってきてくれた彼のことが私は好き。

 私は嬉しくて泣いてしまった。大神君はそんな私を見てオロオロしていたけど、私は嬉し過ぎて暫く涙が止まらなかった。

 そんな私を大神君は、泣き止むまで不器用なのに撫で続けてくれた。

 

 

 

 

 大神君、いえ、亮君、私をこんな気持ちにさせたのだから、責任はちゃんと取ってもらうわよ。もう絶対逃がさないんだから。

 




今後もちょくちょ楯無視点を交えていきたいと思います。
とりあえずは、ここで一区切りです。

今日中に間に合ってよかったです。


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不器用な二人

早くも多くの読者様に読んできただき日間ランキングにも入ることができました。

作品の導入から最初の大きな区切りまでは一気に投稿したのでここからはゆっくり進めていこうと思います。




コーヒーの準備はよろしいか?…ビールでもいいよ


 

その日の夜には更識の体調も回復した。

 念のため夕食は部屋で摂ることにした。いつもはからかってくることがほとんどなのだが、看病をするために戻ってきた後くらいからよく俺に甘えるようになった。まるで喉をゴロゴロ鳴らしながら擦り寄ってくる猫のようだ。初めは新しいからかい方かと思い警戒したがそうでもないらしい。うん、可愛い。

 

 「ねえ、亮君、食べさせて?」

 

 「もう自分で食べれるだろ」

 

 「嫌よ、亮君が食べさせてくれないと美味しくないもん」

 

 「…なんだそりゃ」

 

 「ねぇ、はやく」

 

 「……………ほら」

 

 「ふふっ♪ありがと」

 

 そういえば、いつの間にか、更識が俺を呼ぶとき「大神君」から「亮君」になった。家族以外で「亮」という名前で呼ばれたのは初めてだ。名前の呼び方が変わるだけで更識との距離が今までより近くなれたようで頬が緩む。夕食を食べ終わり、更識が「抱っこして」と甘えてきた。仕方なく、本当に仕方なくだが、更識を椅子からベットまで運んでやった。女性特有の甘い香りと抱えた時の柔らかさにクラっと来た。

 直ぐに更識をベットまで運んだ後、食器を片付けてくると言ってキッチンに向かった。

 

 

 キッチンに向かった俺は食器をシンクに置き、大きく息を吸う。

 両手をキッチンに付いて目を瞑り先ほどの出来事を回想する。

 

(なんなんだ!!更識のあの異常なまでの可愛さっ!!甘えて来てくれるのは、両手を挙げて喜びたい。だが!だが、あのまま部屋に居ては、俺の理性が持ちそうにない。)

 

 猛る気持ちをどうにか落ち着けようとした。

 

 

 

 猛る気持ちを押さえつけ無理やりいつもの表情を取り繕う。そうしてもう一度大きく深呼吸をしてから部屋に戻った。

 

 

 

 

 そのあとは今日の俺のクラス代表決定戦の記録映像を二人で見た。

 

 「………………………」

 

 俺は、相当恥ずかしいことを口走り、その後、ラファールで突撃していた。恥ずかしィーーーー!!そして、俺は対戦相手を今の俺でも引くくらいボコボコにしていた。うわーーないわ。人としてどうなのよ。

 そう思い更識にも引かれてるだろうなと思い隣に座る彼女を見てみると、ニコニコして幸せそうだった。

 っ!!おい、俺の会話シーンだけ、連続再生しないでくれ!やめろぉぉぉぉ!

 

 

 

 消灯時間になり、俺の羞恥動画上映会も終わり寝ることにした。その間更識はずっとニコニコしていた。早く今日のことは忘れてくれ。

 

 

 

 翌朝になっても更識はずっとニコニコしたままだった。朝練は更識は病み上がりの為、部屋で待機させておいた。彼女にはもっと自分の時間を大事にしてもらいたい。

 

 朝練も終わり、部屋に戻ると既に朝食が準備されており、二人で食べた。その際美味しいと伝えたら、

 

 「ありがとう♪亮君」

 

 なぜ更識はこんなにも可愛いのだろうか?朝から俺は、心拍数が上がりっぱなしだ。

 

 

 

 

 

 

 それから、クラス代表は一夏に決まったようだ。一夏に祝福の言葉をかけていると、金髪ことセシリア・オルコットが俺に声を掛けてきた。かなり怯えながら俺に謝罪をしてきた。俺としても、あの戦闘映像を見た後だとかなり申し訳ないことをした。相当の恐怖を味わったそうな。こちらも一言謝っておいた。それから、今日の夜にクラス代表決定の打ち上げをするので来てくれと言われた。クラスのイベントには少し位顔を出しておかないと、これから一年間気まずいままなので参加しようかなと思う。

 学校のことについては、他にこれといった事はなかった。強いて言うならオルコットが一夏に惚れたようだ。どうも俺が帰った後の試合で何かあったようだ。一夏と話している時は、なんか頬を赤らめうっとりしたような顔でいる。その後ろでは、篠ノ之が悔しそうな顔で立っていた。このままでは、いつか一夏は後ろから刺されるのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 放課後の特訓は更識に無理をしないように言い座って見てもらっていた。特訓も終わり、今日の夜にクラスの打ち上げがあるから行くことを伝えておいた。そしたら、

 

 「そうね……クラスに打ち解けるのも大事よね。いってらっしゃい。」

 

 と言ってくれた。その後、更識は生徒会の仕事があるからと言いいつもより早く別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の特訓が終わり打ち上げまで時間があるので部屋で待っていたが更識は戻ってきていない。また、無理をしていないか心配だ。でもまぁ生徒会室には布仏姉がいるから大丈夫だろう。

 そんなことを思っているとノックが聞こえ出てみると一夏がいた。なんでも今から打ち上げに行くからと俺を誘ってくれたようだ。嬉しいのだが、後ろに控えるオルコットと篠ノ之が怖い。もう少ししてから、行くと伝え、申し訳ないが断った。というか混ざりたくねぇよ。その後、一夏が去ったのを確認した後、違う通路を使い打ち上げ場所の食堂に向かった。

 

 

 

 

 さて、打ち上げをしているのだがやはり俺はボッチだ。まぁ少しずつ馴染んでいきたいと思う。

 更識は、今頃何してんだろうな?そんな事を考えていたら見知った顔の二年生が織斑めがけ突撃をかましていた。あれって黛だよな。よくあの女子密集地帯に突撃していけるな。しかも、取材がかなり強引だ。あの一夏が若干引いている。

 

 その後、一夏の取材が終わった黛は俺の方にやってきた。

 

「やっほー、大神君、クラスには上手く馴染め………てはないようね。」

 

 「まだ、馴染めてないだけだ。希望はある」

 

 こいつとは同い年でもありいろんな所でも会うので比較的話しやすい。というかこいつを含めて数人しかいない。

 

 「まだ、なのね。馴染もうとはしてるんだ、メモしとこっと」

 

 「おい、何でもかんでも記事にするなよ。まさかとは、思うが捏造なんかはしてないだろうな?」

 

 「そ、そんな事するわけないじゃない。ははっ、大神君は変なことを聞くのね」

 

 怪しい。まぁ俺に被害がない限りいいが。

 

 「あぁー、そういえば、大神君ってばたっちゃんのことほったらかしにしたでしょ?」

 

 「?」

 

 「ちゃんと部屋に戻ったらフォローしときなさいよ。わかった?絶対よ!」

 

 「あ、ああ」

 

 「ならいいわ。さぁ、二人しかいない男性IS操縦者のツーショットをとるわよ。ついてきて!さぁーいくわよ」

 

 更識をフォローしろ、か。

 

 俺は、黛に引っ張られ一夏たちと写真を撮らされた。その後、打ち上げ自体はまだ続いていたが、俺は更識に会いたくなったので帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………ただいま」

 

 帰ってきた俺が目にしたのは制服のままベッドにうつ伏せで倒れている更識だった。

 

 「更識体調が悪いのか?」

 

 

 「……ちがうわ。」

 

 「ならどうした?」

 

 「………なんでもない」

 

 ふむ、俺は一体どうすればいいのだろうか?そう考えながら俺は恐る恐る更識のベットに座り、うつ伏せに寝ている更識の髪に触れる。俺の針金のような硬い髪ではなく更識の髪は柔らかく艶めいている。

 

 「ねぇ、打ち上げは終わったの?」

 

 「んあ?まだ続いてる」

 

 「どうして帰ってきたの?」

 

 「それは………楽しくなかったからだ」

 

 「楽しくない?」

 

 「ああ、椅子に座ってぼけっとしてるより、俺はお前といた方が楽しいし、落ち着く」

 

 本当は更識に会いたいから帰ってきた、なんて恥ずかしくて言えない。

 俺は、一夏のように鈍くない。更識が俺に対して少なからず好感を抱いてくれていることくらいわかる。というか嫌われてたら死ねる。打ち上げの場で黛が俺に言ったフォローしろということの意味が分からないでもない。

 もちろん、更識にも俺がどう思っているか位は分かっているだろう。だが今まで他人と関わってこなかった不器用な俺では上手く口にすることができない。だから、しばらくは俺たち二人の関係は少し特殊なままだろう。だが、それでもいいと思う。俺は今のままでも十分だ。

 

 そんなことを思い、更識の頭を撫でるのをやめ俺は立ち上がった。

 

 「更識、コーヒーでも飲むか」

 

 「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、互いに互いを意識しているが、まだ素直に伝えられていない不器用な俺ら二人だが、今を十分楽しんでいる。今俺たちは二人で並んで座りコーヒーを啜っている。更識は猫舌のようだ。少しずつ、コーヒーを啜っている姿が可愛すぎる。抱きしめたいくらいだ。

 

 「そ、そういえば、明日中国から代表候補生が転入してくるの」

 

 「そうか」

 

 「亮君は興味ないの?」

 

 「ないな」

 

 「私、写真で見たけど可愛い子だったわよ?」

 

 「たとえ、そうであっても興味はないな。俺には、他にとても気になる奴がいるからな」

 

 「ふふっ。そう、ならその子に愛想尽かされないようにしないとね?」

 

 「そうだな。善処しよう」

 

 そう言って俺たちは、二人して笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 消灯時間になり二人共ベットに入り、眠る間際のこと

 

 

 「なぁ、更識、今日俺がいなくて寂しかったか?」

 

 「・・・・・・うん」

 

 「そうか。俺も実はお前に会いたくてすぐ戻ってきた」

 

 「えっ!?」

 

 雰囲気さえどうにかなれば、案外素直に言えるようだ。俺は、その後すぐ、気恥かしさを隠すため無理矢理目を閉じ眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝からは更識にまた倒れて欲しくないので今日から朝は一人で走ることにした。俺と違って更識には、他にもやらなくてはならなことがたくさんある。渋る更識をどうにか言いくるめ俺は一人外に走り出した。

 

 いつも通り朝練を終え部屋に入ると、

 

 「おかえりなさい。お風呂にする?ご飯にする?それとも、わ・た痛っ。痛いじゃないの」

 

 更識がしょうもないことを言ったのでデコピンをお見舞いしてやる。そしてそのまま俺は通り過ぎ風呂場に直行した。からかわれるだけの俺ではないのだ。人間は進化するものだ。ふっはっはっはっはっ

 

 

 

 風呂を上がった後二人で更識の作った朝食を食べてコーヒーを飲み登校時間まで時間を潰していた時、俺はもう一度無理はするなと釘を刺しておいた。頼むからもっと自分のことを大事にしてくれ。更識がしっかり頷いたのを確認したあと二人で登校した。何気ない会話を挟みつつの登校だが俺はこの上なく心地がいい。昇降口で別れ教室に向かって歩き出しす。

 

 自分の教室についたのだか入口に……なんかちっこいのがいた。

 邪魔なんだが。

 

 「っ!!ごめんなさい。……また、後でくるからね。逃げないでよ一夏!」

 

 どうやら邪魔と思ったのが口に出ていたようだ。しかもまた一夏の知り合いのようだ。あっ、廊下走ってったから織斑先生の出席簿アタックくらってるし、俺はまだくらった事はないがどう考えてもただで済むような威力ではないと思うんだが。あと出席簿ってあんなに頑丈なんだろうか?叩くため用の特注品とかだったりして。

 

 

 

 その日の休み時間に一夏があのちびっこは中国の代表候補生だと言っていた。一夏の知り合いって有名な奴ばっかだな。

 

 

 

 

 

 さて、今日のホームルームでは今度クラス対抗のイベントがあることを聞いた。優勝商品は、食堂のデザート券のフリーパスだそうだ。女子は大盛り上がりだ。俺は……更識と二人で食べに行こうかな。まぁ、一夏が優勝したらの話だが。

 

 

 

 放課後になり、武道場で更識の監修のもと今日も俺は特訓した。最近は筋肉痛にならず、体も全体的にスマートになり、自分でも動きにキレが出てきたと思う。さて、今日はメニューもいつもより早めに終わり、更識も生徒会の仕事がないようなので少し早いが帰ることにした。こんなに充実した生活を送るのはいつぶりだろうか?西の水平線に沈んでいく太陽を見ながら俺は、ふと思った。

 

 

 「どうしたの?みーくん、早く帰りましょ♪」

 

 「ああ、今行く。あとみーくん言うな」

 

 

 

 

 

 

 




予約投稿便利ですね。
昨夜は休みのはずが出かけることになったので予約投稿使ってみました。



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二人きりの外出

読点の位置がおかしいという指摘を受けまして、昨日は投稿済みの分を見返して修正していました。うん。確かにくどいくらいあるね。PCで打つとどうしても文の間で打つ癖があるようです。

さて、本編についてですが、糖度は高めです。


 

 次のイベントであるクラス対抗戦だが出場するのは一夏だけで俺を含めクラスの連中は特にすることがなく普段とさして変わらない学園生活となる。

 そんなクラス対抗戦までのとある木曜日のこと。

 俺は部屋で更識といつものように他愛もないことを話していた。その中で俺は入学してからまだ一度もこの学園から外出をしていないことに気がついた。そして、気がついたが為にこの学園が少し息苦しくなった。そんなことを更識に話してみると、

 

 「なら、来週の日曜日に外出しない?」

 

 「いいのか?」

 

 「うん。IS学園の周辺なら大丈夫よ。それに私もいるしね?」

 

 「そうか。今日から待ち遠しいな。」

 

 「ふふっ、そうね」

 

 こうして、俺たちは週末に二人で出かけることにした。

 

 

 

 

 

 

 日曜日までの二日間、俺は一日千秋の思いで待った。また、日曜日のスケジュールは更識が言うに特に決めていないらしい。まぁ、俺は更識と出かけられるだけで十分だ。そういえば、授業についてだが最近は周りの生徒と遜色ないほどには知識がつき更識と夜の座学は、復習を少しするくらいになった。そして、消灯までの時間は、二人で歓談するようになってきた。大抵は更識が今日あったことを話して俺が聞く。更識の話は俺がいない間更識が何をしているのかが聞けて面白い。今日は生徒会の仕事をしていたようだ。そして、あまりの多さに逃げようとしたら布仏姉につかまり終わるまで監視されていたようだ。無理矢理座らせれ駄々を捏ねながらも渋々仕事をする更識の姿が目に浮かぶ。思わず笑ってしまった俺を更識はポカポカと叩いてきた。

 

 「そんなに大変なら、俺が手伝おうか?」

 

 「本当!なら明日からよろしくね♪そうと決まれば、虚ちゃんにも伝えておかなくちゃ………あっ、虚ちゃん、明日からなんと生徒会に新しく役員が入りまーす。誰だと思う?ふっふっふー、それは、なんと、りょ…大神君よ。」

 

 やっべ。実は冗談でしたなんて…言えない。

 でもまぁ、いいか。今まで更識に面倒見てもらってばかりだったから少しでも更識の負担を減らせられるならば。そうして、嬉しそうに電話をしている更識を見ていた。

 そうして俺は、次の日から生徒会の仕事を手伝うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、まちに待った日曜日なのだが、俺は一人でいる。

 IS学園からモノレールで繋がっているレゾナンスという大型ショッピングモールにある大きな噴水の前のベンチに座っている。時折、女尊男卑をそのまま体現したような女が見知らぬ男をパシリ扱いしていた。そういえば俺はああいう奴にパシリ扱いされたことないなー、そんな事を思いながら更識が来るのを待っていた。なんでも初めて私服を俺に見せるから恥ずかしいだそうだ。初々しいやつめ。

 

 

 「お、おまたせ」

 

 ベンチに座っているとそんな更識の声が後ろからした。

 

 「おう、来たか。さて、どこにいk……」

 

 「に、似合うかな?」

 

 おいおい、なんだこの可愛い子は。抱きついてもいいか?

 いつもの人をからかう時のような表情ではなく頬を赤らめ恥ずかしそうに見上げている。そして服の裾をぎゅっと握っている。今日の更識の着ている服は膝下まである白いワンピースに小さなポーチを持っている清楚な感じの服装だ。俺はそんないつもと違う更識に打ちのめされた。やっべー。可愛すぎるだろ。服装もそうだが何より恥ずかしそうに見上げてくる更識の表情が可愛すぎる。

 

 「やっぱり、似合ってないよね」

 

 俺は少し自分の世界に入りすぎて更識の質問に答えるのを忘れていた。だから、俺は、慌てて答えた。

 

 「そんなことはない!似合ってるぞ。今直ぐにでも抱きしめて持ち帰りたいくらいだ!………あっ」

 

 やらかした。あまりに焦りすぎさっき思っていたことをそのまま口にしてしまった。あー、更識が顔を真っ赤にしてうつむいている。どうしよう。

 

 

 「…うれしい。ありがと♪亮君」

 

 「お、おう。なら良かった」

 

 「うん。いこ」

 

 耳まで真っ赤になりながらも微笑むの更識はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人でショッピングモールを歩いている時のこと。俺は更識と腕を組んで歩いている。手を繋いでではない。腕を組んでいるのだ。

 

 

 「なあ、腕を組む必要あんのか?」

 

 「うん♪あるわよ、護衛だから」

 

 「手を繋ぐのではダメなのか?」

 

 「嫌よ」

 

 「なんで?」

 

 「亮君と腕を組みたいから。亮君のもっと近くにいたいから。周りに見せびらかしたいから。だめ?」

 

 「…………そうか」

 

 「ふふっ、嬉しい?」

 

 「…ああ、いいもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここレゾナンスには様々なものが置いてある。俺たちはその中に、珈琲豆を売っている店を見つけたので行ってみることにした。更識は、店に置いてある豆を興味深そうに見ていた。

 

 「ねえ、どうして同じ豆なのに別々で売られてるの?」

 

 「ん?ああ、よく見てみ。豆の濃さが違うだろ。焙煎度の違いで味が変わるんだよ。焙煎が浅いと酸味が強くて、濃いと苦味が強いんだ。ちなみに、焙煎度は八つに分けられるんだよ。あとは、豆の挽いた時の大きさなんかも味に関係してくる」

 

 「ふ〜ん。そうなんだ。亮君がいつも淹れてくれるカフェ・オ・レはどんなのを使ってるの?」

 

 「カフェ・オ・レって牛乳を混ぜるだろ。だから、コーヒーの味がしっかり残るように深煎りの豆を使う。八つの内、深煎りの方から数えて二つ目のフレンチローストの豆だ。これがカフェ・オ・レに丁度合うんだ。それから、……どうした?更識」

 

 「ふふっ♪亮君って趣味の話になるとよく話してくれるね」

 

 「そ、そうか?」

 

 「うん。そうよ。あっ、そうだ。ここで豆を買ったあとに亮君がこれから使うお弁当箱買いに行きましょ。まだ、お昼を作ってあげる約束果たせてないからね♪」

 

 「そうだったな。明日からが楽しみだ」

 

 「そうね。楽しみにしてなさい。みーくん」

 

 「楽しみにしておく。あと、みーくん言うな」

 

 

 その後、豆を買い終わったり更識と弁当箱を買いに行った。買いに行く道中こちらを見る視線がかなり多い。そりゃ、ねぇ。こんなに可愛い子がいたら見るよな。しかも、めちゃくちゃニコニコしてる。俺を見る視線?そんなのないな。みんな更識に夢中だから。

 

 

 「ねぇ、亮君どんなのがいい?」

 

 「更識が選んでくれるならなんでもいい」

 

 「ふふっ、それじゃこのピンクのにしちゃおっ♪」

 

 「やめろ」

 

 「む〜、なんでもいいって言ったじゃない。なら、一緒に選びましょ?」

 

 「んじゃ、これ」

 

 「嫌よ。だってこれひとつしかないじゃない。私は亮君とお揃いのを買いたいの」

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 そんなこんなで午前中いろんな更識に悶えつつ昼食を食べる時間帯になった。近くにある美味しいと評判のパスタ専門店に入った。この店は一つ一つが個室になっていて通路との間に暖簾が掛けられ他の客から見えにくくなっている。正直嬉しい。俺としてはこんな可愛い更識を他人に見せたくない。俺は独占欲が強いらしい。

 

 「ねえ、何にするの?私は、クリームスパゲッティにエビのカルパッチョにする。亮君は?」

 

 「和風カルボナーラとムール貝の白ワイン蒸し」

 

 「亮君の料理も食べたいから食べさせ合いっこしよ♪」

 

 「嫌だ」

 

 「いいじゃない。ここなら他の人に見えないんだから」

 

 「・・・・・・・・し、しょうがないな。いいだろう」

 

 「ふふっ相変わらずね。あっ、オーダーお願いします。」

 

 更識は相変わらずだ。まあ今日はいつも以上に可愛い。正直可愛いと言う言葉では足りないくらいだ。

 

 「あっ、それとこのカップル限定ドリンクもお願いします」

 

 「ぶふっ!・・・・・・ごほっごほっ」

 

 「どうかしたの?亮君?」

 

 「おい、最後にオーダーしたのはなんだ?」

 

 「へてっ♪来てからのお楽しみってことで」

 

 更識は、いたずらっ子のように微笑み小さく舌を出した。

 

 それからしばらくしてオーダーした料理がきた。そして、最後に店員が持ってきたのが大きめのグラスにストローが一本挿してあるドリンクだ。

 

 「こちらカップル限定ドリンクになりまーす」

 

 なんかめちゃくちゃ笑顔の店員がムカつく。このストロー先が二つに分かれていて同時に吸わないと飲めないのだ。現実でこんな代物を見るのは初めてだしまさか自分がこれを使うとは思ってもいなかった。

 

 「さぁ、料理も来たことだし食べましょ♪」

 

 「………そうだな」

 

 

 

 

 「ねえ、亮君、食べさせて♪」

 

 「……ほら」

 

 

 

 食事中、俺はできる限り無駄に存在感を放つグラスを無視していたら、

 

 「ねえ、亮君、私喉が渇いちゃった。これ一人じゃ飲めないの。一緒に飲も?」

 

 「俺は遠慮する」

 

 「え〜、亮君のケチ。……あっ!そっか、亮君は私に口移しで飲ませて欲しいのね」

 

 「ごほっ、違う。わかったよ。飲めばいいんだろ」

 

 「うん♪」

 

 その後のことはあまり覚えていない。ただ更識が嬉しそうにしているのでいいとする。正直、料理の味なんかは覚えていない。食事中の更識のふとした仕草なんかでも、俺は満足するのに今日は朝からずっと一緒なのだ。そろそろ、俺は暴走しそうである。セーフティーは朝からずっと外れかけである。

 昼も過ぎまた気温も暖かく外にいても快適である。レゾナンスに併設している小さな芝生のある公園を通った時のこと

 

 「亮君、ちょっと休憩しようか?」

 

 「そうだな。あそこのベンチでいいか?」

 

 「うん。行きましょ♪」

 

 ベンチに二人で座り暫し休憩を取ることにした。

 

 「ねえ、亮君楽しい?」

 

 「ああ、楽しい」

 

 「ふふっ♪ならよかったわ」

 

 「更識はどうなんだ?」

 

 「私は……幸せ」

 

 そう言って更識は俺の肩に頭を預け恐る恐るしなだれかかってきた。そのまま俺たちの間には会話はなく人がまばらな公園を眺めていた。温かな風は頬を撫で落ち着いた気持ちにさせてくれる。

 

 

 

 

 

 俺はいつの間にか寝ていたようだ。どれくらい時間が経っただろうか?そろそろ移動しようかと思い更識に声を掛けようと思っていた俺が横を見てみると更識はあどけない表情をして寝ていた。いつも寝顔を見ることはなく更識の寝顔を見るのは初めてだ。俺の肩に頭を預け規則正しく呼吸をしている更識をみて俺はゆっくりと彼女の頭を撫でた。いつも、助けてくれてありがとな。今は、ゆっくりしてくれ。

 

 そろそろ日が傾き始めた、そして、俺の尻が痛くなりだした頃、更識はゆっくりとした動きで起きてきた。少し寝ぼけた顔いつも子猫のように可愛らしく目を擦っている。まじで寝起きの更識はいつ見ても可愛い。異論は認めん。

 

 「あれ?亮君、私どのくらい寝てた?」

 

 「3時間くらい?」

 

 「えっ!?嘘!ごめんなさい」

 

 「謝らなくていい。俺も寝てたから」

 

 「う〜、せっかくのデートが」

 

 「デートか。ま、今度また来ればいいじゃないか」

 

 「そ、そうね。また今度来ればいいわね。また今度。さて、今日はもう帰りましょ」

 

 「そうだな」

 

 

 

 

 その後、俺たちは二人で腕を組みながら帰った。影が一つになるくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 「なぁ、更識。当たってるんだが」

 

 「ふふっ♪当ててるのよ」

 

 「確信犯かよ」

 

 




昨晩は、修正作業と何を思ったのか新作を書いていました。
アイマスを知ったのはつい最近であまり詳しくないですが書いてみたいなぁと思ったので試しに書いてみたら案外いい感じに書けたのでそちらも投稿しました。

さて、こちらは相変わらずの糖度です。


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疑問

感想欄で最新話の読点がおかしいとして受けまして確認しましたところ投稿済みの話を修正前してストックの話を直すのを忘れてました。

さて、こんかいは、原作キャラがようやく追加です。
それと原作イベントはさらっと流されます。


 今日は10時過ぎているにも関わらずまだ部屋にいる。

 本来ならクラス対抗戦の日で10時を過ぎた今自分も含めてほとんどの生徒はアリーナに集まっていることだろう。

 

 ここで問題なのがなぜ俺が部屋にいるのかということである。

 

 

 

 

 

 調子に乗って風邪をひいた。

 

 

 

 

 

 ことの始まりはクラス対抗戦の前日の朝である。俺は妙にその日目覚めがよくいつもより長い距離を走った。しかし、その日は生憎朝から雨だったのだ。走り始めた頃はまだ雨もまばらでそう冷えることもなかった。しかし、途中からいきなりゲリラ豪雨状態になりびしょ濡れになり体温も一気に下がった。

 更識によると帰った直後の俺はまるで幽鬼のようで顔色も悪かったようだ。部屋の扉を開けてもらった時いわれて初めてなぜ驚かれたのかの意味が分かった。その時、俺は驚いた更識も可愛いな。なんて思っていた。ベタ惚れだな。俺って。ちょろいちょろいよ俺。

 

 そして、次の日には熱を出したというわけである。

 

 さて、そんなこともあり俺は風邪を引いたのだ。風邪をひくのは実に5年ぶりくらいになるのだろうか。こんなことを考えながら、ベッドに潜り込みシミ一つない天井を眺める。

 

 更識についてだが当然の如く看病をすると言い張り動こうとしなかった。しかし、更識が倒れたときと違い、今日はクラス対抗戦があるのだ。生徒会長が欠席するなどということはあってはならない。しかし、更識はそう説得しても嫌だと言い張る。嬉しいのだがさすがに今日更識を休ませるわけにはいかない。

 だから、俺はある人物に連絡した。

 そう布仏姉である。俺は布仏姉に電話をして無理矢理更識を持って行ってもらった。アドレス等についてだが、先週生徒会に新しく入った際に更識がよく仕事から逃げるから役員内でネットワークを構築して早く連れ戻すようにするためだそうだ。しかし、俺が布仏姉に連絡を取るのは初めてだ。俺が手伝いに行くようになってから更識が仕事から逃げることがなくなった。なんでも「早くみーくんと部屋に帰ってお話したいのよ」だそうだ。嬉しいことを言ってくれる。だが、みーくん言うな。

 

 

 さて、その為俺は今一人なのだ。一人、つまりボッチである。最近はいつも更識が俺の隣にいてくれたので一人でいることが少なくなっていた。久しぶりの感覚だ。慣れていたはずなのだが、今では少し落ち着かない。物足りない感じがするのだ。俺のなかで更識の存在が随分と大きくて大切なものになっていたようだ。

 人間そうすぐには変わらないと思っていたのだがそうでもないようだ。俺は更識のおかげで変われたと思う。いまだに、友好関係は広いとは言えないが黛しかり布仏姉しかり、更識のおかげで仲良くなれたと思う。この学園で、もし更識が俺を助けてくれなければ俺はいまだに一人でいただろう。改めて考えると俺は更識の世話になってばかりなのだ。これから、少しずつだが更識を助けていけるようになりたいと思う。まぁ、今日みたいなことは今後ないように気をつけなくてはいけない。

 

 そろそろ早く治すために寝ることにするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた時にはもうすぐで日が落ちそうだった。俺寝過ぎである。昼食さえ食べていないのだ。さすがに腹が減った。何か口に入れようかと思ったとき右手に何やら感触を感じた。ふと見てみると更識が俺の手を握って寝ていた。更識の手は俺より暖かく柔らかい。更識の手をにぎにぎしていたら更識も起きたようだ。

 

 「あら、おきたのね。調子はどう?」

 

 「悪くない」

 

 「そう、お腹減ってない?何か作ってあげようか?」

 

 「ああ、頼む」

 

 「まっかせなさ〜い♪」

 

 夕食は更識が作ってくれるようだ。やったね。

 さて、更識が今日のクラス対抗戦のことについて話してくれた。なんでも一夏と中国の代表候補生のチビッ子の試合の際、未確認ISが乱入して対抗戦は中止だそうだ。しかも、そのISは無人機だったそうだ。今、更識はそのISの情報が来るのを待っているとのこと。俺が寝ている間にそんなことがあったとは。更識に怪我がないか聞いておいた。更識は怪我がないようで安心した。もし、更識が怪我をしていたら、俺はこれから先ずっと後悔することになっただろう。大事な時に呑気に寝ていたのだから。

 怪我がないか聞いたあと、更識は、おかゆを作ってくれた。

 ……のだが、

 

 「蓮華を渡してくれ、更識」

 

 「嫌よ、亮君は今病人なのよ。大人しく食べさせられてなさい!」

 

 怒られた。あれー?なんで?

 

 「ほら、亮君、口を開けて。はい、あーん♪」

 

 「む……」

 

 「はやく、ほら、あーん♪」

 

 「……あむ」

 

 「どうどう♪美味しい?」

 

 「うまい」

 

 「じゃあ、もう一回、はい、あーん」

 

 今日は絶好調の更識だった。その後、もう一回が最後まで続き全て更識に食べさせてもらった。その日以降、雨の日のランニングはなくなり朝は二人でキッチンに立つことになった。正直エプロン姿の更識は破壊力抜群だ。俺の鋼の精神がすごい勢いで削られていく。というか毎日削られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて俺が寝込んでいた日であり、クラス対抗戦の日であり、未確認ISが乱入してきた日でもあるこの日は、学園の人間にとって大いに印象に残った。それから幾日かが過ぎた夜のこと。俺もすっかり体調は良くなり、いつかの日のように二人してコーヒーを啜っていた日のこと

 

 「そういえば、明日、亮君のクラスに転校生が来るわよ」

 

 「また転校生か。この時期に?」

 

 「うん。しかも二人。フランスとドイツから」

 

 「それで?」

 

 「それでって。はぁ、ほんと亮君て自分に関係ないこと以外興味ないのね」

 

 「まあな、前に言ったろ。俺には他にとても気になる子がいるって」

 

 「そうね。まぁ、私もとっても気になる人がいるのよね♪あっそうだ。でも今から言うことは亮君に関係あるかも」

 

 「なんだ?」

 

 「実は、転校生の内一人は男の子なのよ」

 

 「ほぉ、三人目か」

 

 「まぁ、そうなるわ。でも、本当にそうなのかしらね〜?」

 

 「?」

 

 「あっそろそろ消灯時間ね。お休み、みーくん」

 

 「あ、ああ、お休み。おい、どさくさに紛れてみーくん言うな」

 

 

 その後、ベッドに入ったのだが更識の最後に言ったことが気になり、なかなか寝付けなかった。まぁ、転校生が明日来るのだからその時にまた考えればいいだろう。そうして、考えることを放棄した俺は直ぐに眠りについた。

 その日のは、夢を見た。親父が酒を一升もってこちらに笑いかけている夢だ。ムカついたので殴り飛ばした時俺は目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝は綺麗に晴天だ。雲一つない。これなら雨が降ることもないだろう。もちろん天気予報でも確認済みだ。最近は夏も近くなり昼間の日差しがつよくなってきた。しかし、早朝はまだ涼しく走りやすい。

 そういえば、昨夜変な夢を見た気がする。……まぁ、いいか。

 さて、今日も更識と共に登校した。最近は更識が俺と仲良くしてくれているおかげで入学当初のような一般生徒の俺に対する異常なまでの警戒心がなくなり、ごく稀にだが俺に挨拶をしてくれる生徒も出始めた。ありがたやーありがたやー

 

 そんなことを思いながら登校している今日この頃である。

 

 

 

 

 教室に入り何やらクラスの雰囲気が落ち着かないことに気がついた。あぁ、そういえば、今日転校生がくるんだったな。

 

 「ね〜みーくん。今日はね〜このクラスに転校生が来るんだよ〜」

 

 クラスを見渡していた俺に声を掛けてきたのは、布仏姉妹の妹こと、布仏本音である。

 

 「知ってる」

 

 「む〜、なんで知ってるの〜?」

 

 「ねぇ、大神君、転校生がどんな子か知ってる?」

 

 次に俺に話しかけてきたのは、鷹月静寐である。かなり前に本音の仲介を経てから、少しずつだが、会話をするようになったのだ。

 

 「フランスとドイツから来るらしい」

 

 「ふえ〜、なんで知ってるの〜?」

 

 「ルームメイトに聞いた。あぁ、そういえば片方は男らしいぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 音が止んだ。

 

 

 さっきまでわいわいがやがやとみんな騒いだいたはずなのだが、俺が今言ったあとに皆の動きが止まった。しかも、全員が俺の方を見ているのだ。無音状態のクラスで全員から見られている俺。……怖いんだが。

 だが、そんなことも束の間普段は怯えて近寄ってこない連中を含めクラスの連中全員が俺に集まってきた。

 

 「ねぇ、男ってほんとなの!大神君!」

 「大神君、転校生が男ってほんと!」

 「ふふっ、これで新しく本が書けるわ。ふふっふふふふ」

 「男!男が来るの!どんな子なの?」

 

 

 入学当初の一夏ってこんな感じだったんだな。しかも三人目がめちゃくちゃ危なそうなんだが。しかも、あまりに大人数に話しかけられどれに答えればいいかわからない。ああ、本音が集団から弾き飛ばされてるし。

 

 「おい、貴様ら何をしている!SHRを始めるぞ。席に着け」

 

 ここで織斑先生登場である。全員すぐさま散らばり席に着いた。ここで逆らえば、出席簿アタックの餌食になるからな。しかし、全員俺の方を見るのはやめてくれ。どうせ今から転校生が来るんだから大人しく待ってろよ。ほら、山田先生も困ってんだろ。

 

 「み、皆さん今日は新しくこのクラスに転校生が来ます。しかも、二人ですよ!」

 

 なんか皆を驚かせようとしたようだが皆にはその情報が行き渡っているため、おい、早くその二人出せよ、片方男なんだろ、みたいな雰囲気で山田先生は涙目になっている。そして、皆のリアクションが思いのほか無かった山田先生は、渋々転校生を教室に入れた。

 

 

 「失礼します」

 

 「……………」

 

 その後二人の転校生が入ってきた。金髪のフランス人がシャルル・デュノアで銀髪ドイツ人の眼帯ちゃんがラウラ・ボーデヴィッヒだそうだ。

 デュノアが男なのだが、………前日に更識が妙なことを言っていたためどうも怪しい。なんの前情報もなければ、そんなことを思うこともなかっただろうが、一度気になってしまえば、どうも怪しいと疑ってしまう。本当に男……なのか?

 そんなことを思っていると眼帯ちゃんが俺の前まで来た。座ってる俺と立ってる眼帯ちゃんが同じ目線とは…ちゃんと飯くってるか?

 

 「お前が織斑一夏か?」

 

 「違う」

 

 

 

 「「………」」

 

 

 俺がそう言うと眼帯ちゃんは何事もなかったかのように一夏の方に行き、何かを言ったあと平手打ちを食らわせていた。また、一夏か!女性問題も大概にしとけよ。まじでいつか刺されるぜ。

 

 その後なんやかんやざわついたものの出席簿アタックで鎮静化した。その後は実習ということで男三人で更衣室に行くことになった。その途中、デュノアの自己紹介を受けたのだが、俺はどうも本当に男なのかと疑惑の目を向けてしまった。それでデュノアを少し怯えさせてしまったようだ。俺は直ぐに謝っておいた。今日帰ったら更識に本当にデュノアが男なのか聞いてみることにしよう。

 移動中一夏とデュノアだけなら女子生徒に囲まれることがあっただろうが、俺がいると違う。俺が先頭をあるくとさながら氷を砕いて進む氷砕船の如くスムーズに進むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 今日の実習のまとめ

 ・一夏セクハラ

 ・山田先生にイギリスと中国の代表候補生がボコられる。以上

 

 

 

 

 

 

 ふはははは。聞いてくれ。ついに昼食だ。しかも今日から更識の手作り弁当だぁ!

 今日は新しく男性操縦者が増えたので男三人で昼食を食うことになったのだが、当然の如く一夏には各種様々な女子がついてくるわけで一緒に居づらい。というわけで俺とデュノアは少しだけ離れた位置で昼食を摂っている。更識の弁当マジうまい。これからずっと食べられるなど最高だ。うまい、うまいぞぉぉ!

 

 「ねぇ、大神君、一夏っていつもあんな感じなの?」

 

 「ああ、そうだな」

 

 「「・・・・・・・・・・・」」

 

 会話が続かないっ!俺がよく話せるのは更識とあと数人くらいなのだ。というか基本的に俺は自分から誰かに話しかけることは無い。それに正直何を話せばいいかわからない。お前って本当に男か?なんていくら何でも失礼すぎるだろ。こういったときはどうするべきなのだろうか?

 

 「あーデュノアは弁当じゃないんだな」

 

 「え?あぁ、うん。まだ来てすぐだから、時間がなくてね?そういう大神君は、自分で作ってきたの?」

 

 「いや違うぞ。作ってもらった」

 

 「へぇ、そうなんだ」

 

 「なぁ、デュノア、「なぁ!二人共そろそろ更衣室行こうぜ」」

 

 失礼にならない程度に女みたいって言われないか?と聞こうとしたのに…いや、これも結構アウトだな。なんていいタイミングで一夏は声をかけてくるんだ。というか一夏の顔色がかなり悪いんだが…まぁ、いいか。多方なにか変なものでも食わされたんだろう。

 

 「ああ、今行く。行くぞ、デュノア」

 

 「えっ。あ、う、うん」

 

 




後書きをお借りしまして毎回誤字脱字修正前の指摘をしてくださる方々に感謝申し上げます。書き直した箇所の削除ミスやタイピングミスなんかが結構あるみたいです。




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救いか罰か

それじゃあ、原作のストーリーのほうも進めて行きましょうかね



 転校生二人が転入して来た日の夜、俺は更識にデュノアのことを聞いてみた。

 いつもの夜の復習を終え、二人で勉強机の椅子を引っ張りだして向かい合うように座る。

 更識の手には、両手で包み込むようにマグカップを持ちコーヒーを啜っている。おい、マグカップそこ代われや。

 

 

 

 

 「なぁ、更識、デュノアって実は女なのか?」

 

 「うん。そうよ」

 

 「それはつまり一夏もしくは俺の情報を得るためのスパイってことか」

 

 「まぁ、そうなるわね。でも、いろいろと事情があるみたい」

 

 「どういうことだ?」

 

 「話すと長くなるわよ?いいの?今更だけれど、それに聞いたら色々と後戻りできなくなるのよ?」

 

 更識はそう言って、少し俯く。世の中知らなくていいことのほうが多い。世の中自分が思っている以上に汚れているし冷徹である。彼女からすれば、心のどこかで親しくなっていく俺を巻き込みたくないという風に思っているのだろう。

 

 「構わない。俺は、世界に二人しかいない男のIS操縦者だろ。そうなった時点で普通でいられないことくらいはわかっているさ」

 

 もうIS学園に入学した時点で自らの重要性と立場は理解しているつもりだ。今から普通の人間に戻れない事くらいわかっている。

 

 「それにな」

 

 「?」

 

 不思議そうな顔をして更識が顔を上げる。

 うん。可愛い。上目遣いが俺の理性を削り取る。

 

 「どうせ普通じゃいられないってんならお前の近くで過ごせるほうが楽しいからな」

 

 「っ!!」

 

 流石に、「普通じゃいられないならお前と一緒に居たい」とかはね、彼氏でもないのにここまでは言えねぇよ。ほら、更識ってあんまり男子と関わったことなさそうだろ?彼女の俺に対する思いがlikeなのかloveなのかはわからないだろ。そんな状態でそこまでは言えねぇわ。手堅く行こうや。

 ……待てよ。俺も今まで女子と関わったことなんかねぇわ。なら、俺の気持ちは果たしてどこに当てはまるのだろうか……

 

 「…く……りょ……亮くん!」

 

 いかんいかん。自問自答していたら思考の沼に嵌ってしまった。更識が俺の顔を覗き込んでいた。

 

 「どうしたの?急に黙り込んじゃって?」

 

 「いや、何でもない」

 

 「本当かしら。もしかして、熱でもあるんじゃないの?」

 

 そう言って更識は俺の額に手を当てる。

 ちょ、なんかいい香りするし、手柔らかいし、近い!マジで近い!こう不意に近寄られると心の準備がですね…

 

 「大丈夫だ。本当に大丈夫だから」

 

 身を乗り出して俺の額に手を当てる更識をさり気なく遠ざけて俺は心の平穏を保つ。

嬉しいけどさ、ほら、やっぱり男女の適切な関係をですね。やっぱりIS学園といっても学びの場であるからして健全にあるべきだと思うね。うん。

 

 「やっぱり亮君熱あるんじゃない?」

 

 俺がもしかしたら嘘をついているんじゃないかと思っているらしく更識は立ち上がり腰に手を当ててご立腹のようだ。

 とはいえ、更識のことがどう好きなのかなんて言えねぇし、不意に近くにいたから色々と熱くなってたなんて言えねぇわ。

 

 俺は、ごまかす様に詰め寄ってきた更識の頭をわしゃわしゃと撫でまわした。

 

 「きゃ、ちょっと!もう。髪が乱れちゃったじゃないの!」

 

 ぐしゃぐしゃになった髪を手で梳きながら更識が抗議の声を上げる。そして、俺に背を向ける。

 

 「いや…すまん」

 

 拗ねている更識可愛い。

 

 「ふーんだ」

 

 もしかして、本当に怒ってらっしゃる?

 もしや、安易に髪を触ったのがダメだったのか!髪は女の命って言うしな。これは不味い。ごまかす為って言ってもこれは、やりすぎたのかもしれない。

 

 「すまん。更識もうしないから許してくれ」

 

 背を向けている更識に向かって頭を下げる。例え相手が背を向けていようと、しっかり頭は下げておくべきだと思う。

 

 「ちょっと!?亮君、やめてよ!べ、別に本当に嫌だったとかじゃないのよ。むしろ、よかったというか、その、急だったから、私もちょっと驚いちゃったというか。だから、亮君頭を上げてよね。」

 

 頭を下げる俺にオロオロしながら頭を上げてという更識。

 

 「もう、頭を上げてくれないならこうよっ!」

 

 そう言って更識は、頭を下げているので更識の前にある俺の髪をかき回した。そして、そのまま更識は、俺の頭を掻き抱くようにして俺の耳元で呟く。

 

 ……あのですね。更識さん。その状態で頭を抱え込まれますとね貴女の胸部装甲が押し付けられて……はい、最高ですね。

 

 「あのね、亮君。私は亮君に触ってもらえるならいいのよ。むしろ……その…」

 

 言いかけて、更識は言葉に詰まる。急に言葉に詰まった。俺は、不思議に思い顔を上げるとそこには、耳まで真っ赤に染め上げた更識の顔がある。

 

 「可愛いな、おい」

 

 可愛いな、おい

 

 「もう!折角人が真剣に話そうってしてるのに亮君はっ!」

 

 おっと、心の声が漏れていたようだ。でも可愛いよな。最高だ。

 

 「亮君のバカー!」 

 

 更識は、真っ赤な顔のまま更識はそう言い放ち自分のベッドに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 今日も相変わらず最高だな。……そういえば、結局何の話してたっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識がベッドに飛び込んでから一時間ほど経って、顔から赤みが引き、どうにか機嫌を直してもらった更識には本題のほうを話してもらった。

 更識の話では、デュノアは、フランスのデュノア社社長の妾の子で母親はすでになくなっていること。そして、フランスのデュノア家での彼女の立ち位置は非常に危うく、半ば迫害されるように過ごしていたようだ。今回のスパイ容疑については、デュノア社が経営不振に陥っているため、脱却の足がかりにするために強制的にデュノアを送り込んだらしい。

 

 

 「んで、あいつの処遇についてはどうするんだ?」

 

 「まぁ、デュノア社については、それなりの罰を受けさせるわ。シャルロットちゃんについては、そうね、もしこのIS学園に残りたいなら、この学園の生徒会長として一生徒を守るわ。でも、もしIS学園に対して彼女が害意をもって何かするというのなら私は彼女にも罰を与えなくちゃいけないわ」

 

 「そうか、彼女次第だな」

 

 「そういうこと♪」

 

 「ねぇ、彼女が白か黒か確かめるために一芝居うってみない?」

 

 「面白い。いいだろう」

 

 その後、更識と俺は、デュノア社に対する詳しい制裁内容やデュノアに対する様々な対応策を話していた。また、デュノアについては、学年主任以上の教職員には既に女ということが知られているらしく、対応については、生徒会長であり、この学園の守護を任されている更識家当主の更識楯無に一任されているとのことだ。

 そして、俺にはデュノアがスパイ行為をしているかなどの監視をしてくれと頼まれた。

 

 

 次の日から俺は、できる限りデュノアのことを視界にとどめるようにしていた。しかし、どうやら、デュノアはスパイ行為に対して消極的で全く何かをするような気配を出さなかった。それどころか、時たまデュノアは一夏と話している時にとても苦しそうな顔をするのだ。ちなみに一夏についてだが、あいつはデュノアが男だと信じて疑っていないようだ。普通同室でいつも一緒にいるならわかるだろう。デュノアの隠蔽能力が高いと褒めるべきか、一夏の鈍感さに感心するべきかは俺にはわからん。…絶対一夏が鈍感なだけだろうな。

 そういえば、眼帯ちゃんについてだが、いつも一人らしい。また、一夏に対して何やら私怨があるようだ。昨日の放課後は、一夏に戦いを申し込んだらしい。そして、今日の放課後には、オルコットとチビッ子をコテンパンにしたようだ。コテンパンなんて言っているが実際は、IS損傷ランクCのかなりの被害だったようだ。バトルジャンキーなのか?凶暴なボッチは嫌われるぞ。経験者からの親切なアドバイスだ。

 ああ、あと忘れていたが、学年別トーナメントが明日らしい。しかも、タッグ戦らしい。やめてくれよ。ボッチには少しばかり厳しすぎる。と思ったら、手を差し出してくれる奴がいた。

 

 「みーくん、明日のタッグマッチ一緒に出ようよ〜」

 

 「いいのか?俺で?」

 

 「うん。いいよ〜。そうそうみーくんって結構人気なんだよ〜。なんかね〜頼りになるお兄様みたい〜だって〜」

 

 「そうなのか?」

 

 「うん〜。でもね〜、みんな、最初は避けてたみーくんになんて声をかければいいかわかんないんだって〜」

 

 「そうか」

 

 今までずっと嫌われていたと思っていたがそうではなかったようだ。お兄さん泣きそうだよ。ここの女子生徒の中にはいいやつがたくさんいるんだな。

 

 

 

その日から、俺はこのIS学園が少し違って見えた。自分でも思うが俺ってちょろいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてさて、デュノアの問題についてだが、案外早く決着が着きそうだ。

 本音とタッグの申請を終えたあと部屋に戻った俺が更識と楽しく談笑していた時のこと、俺たちの部屋にデュノアと一夏が来た。

 俺は二人を招き入れ要件を聞いたのだが、どうやら更識のことを気にして話を切り出せないようだ。仕方がないので俺から聞くことにした。

 

 「お前たちは何の用で来たんだ?」

 

 「それは……」

 

 「えっとね……」

 

 そう言って一夏とデュノアが顔を見合わせる。というか、デュノアの胸部装甲様が出てる。さらしかなんかで隠していないようだ。これは一夏もついに知ったということか。

 

 「デュノアが実は女だということか?」

 

 「どうしてそれを知ってるんだ!?」

 

 「はぁ、一夏よく見たらデュノアが女だと直ぐにわかると思うんだが。あぁ、あと俺のルームメイトの更識楯無だ。このIS学園の生徒会長をしている。ちなみにデュノアが女だと初めから知っていた」

 

 「こんばんわ♪一夏君にシャルロットちゃん。更識楯無よ。気軽にたっちゃんって呼んでね」

 

 「はぁ、よろしくお願いします」

 

 「よ、よろしくお願いします」

 

 「ねぇ、亮君、二人共とっても緊張してるみたいよ」

 

 「そりゃあ、これからデュノアの処遇についての話を内密にするつもりできたのに、既に他の連中に知られているんだから少し動揺するだろう。今のままではスパイ容疑で刑務所行きだからな」

 

 「待ってくれ!シャルは悪くないんだ。父親のせいで無理矢理やらされただけなんだ!」

 

 「なら、どうするんだ?」

 

 「特記事項第二一があるだろ!それでなんとか「まて、一夏」……なんだよ」

 

 「確かにそれなら学生としてデュノアは守れるだろう。しかし、スパイについてはどうする?いくら特記事項があっても犯罪者は守れんぞ」

 

 「犯罪者って、だからシャルは無理矢理やらされたって言ってるだろ!」

 

 「それでもだ。スパイとしてこの学園に入ったんだ。それ相応の罰は受けるべきだ。悪いことをしたやつには罰を与える。こんなことはガキでも分かるぞ。それに学園側としては、ここを守るために動かなくてはならない」

 

 「でもっ!そんなのおかしいだろ!」

 

 一夏は、俺に掴みかからんばかりの勢いで俺に詰め寄る。一夏は、比較的直情的で感情が表に出やすい。今一夏の中では、俺にこうして言い寄るくらいしか感情の寄る辺がないのだろう。とはいえ、たった数日一緒になっただけに人間に対してでもここまで親身になって助けようとする姿勢は一夏の美点だと思う。場合によっては、一夏も立場を危うくする危険性も孕んでいる。それでもなお、ここまでできる馬鹿正直なところが危うく感じる反面羨ましい。

 

 だが、それでも俺は、一夏の前に立ちはだからなくてはならない。

 

 「一夏、お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?犯罪者を庇っているんだぞ!お前もただじゃすまねぇんだぞ」

 

 「もういいよ。一夏。こうなることはわかってたから」

 

 「でも、シャル。それじゃあ、お前……」

 

 俺に詰め寄る一夏をデュノアは止めようとする。その目は、これからの暗い自分の未来を受け入れようとする悲痛な覚悟を感じさせる。まぁ、そう思うよな。協力してくれるかもしれない人間にここまで言われりゃ諦めたくもなる。とはいえ、これで少なくとも、今までの情報と合わせて今のデュノアの行動で彼女の考えが分かりそうだ。

 

 「デュノアが犯罪者である限り学園は彼女を守らない。守れない。犯・罪・者である限りな」

 

 さて、これで気がつくだろうか。相当ヒントは与えたのだ。更識の方を見ると彼女は白でいいようだ。

 

 「犯罪者、犯罪者ってさっきからそればっかりいいやがって………待てよ、犯罪者じゃなきゃいいんだろ?」

 

 気が付いたようだ。俺はニヤリと笑い、もう一つヒントを与えてやった。この時の俺の表情は更識が語るに悪役のような笑い方だったらしい。

 

 「そうだ。犯罪者でなくなればいいんだ。デュノアについているスパイと言う肩書きを書き換えてやればいい」

 

 「書き換えるの?どうやって?」

 

 「一夏わかるか?」

 

 「えっと、スパイの肩書きを逆手に取るってことか?」

 

 「ああそうだ」

 

 

 

 

 

 

 その後どうすればいいかを話した。

 シナリオはこうだ

 デュノア社のスパイ行為を受けさせられたシャルロット・デュノアは表向きデュノア社に従い、IS学園に到着後、自分がスパイとして送り込まれた事を生徒会長に話す。そして、その場で自分の事を含め、デュノア社の不正を暴露する。そして、自分は、スパイとして送り込まれたのは本社に対する偽装であり、より安全に内部告発を成功させる為に止むなくこの手段を使ったと話す。そうすれば、シャルロット・デュノアはIS学園に対するスパイではなく、IS学園に保護を求めてきた一生徒であり、内部告発者として対処できる。

 それにまだデュノアがIS学園に来てからデュノア社や父親を含め外部と一切連絡を取っていなかったのが功を奏した。

 

 

 「どうだ。これならデュノアは、世間からIS学園にスパイとして送り込まれたのではなく、学園に保護を求めてきた一生徒であり、自ら親の会社の不正を訴えた勇気ある人物として受け入れられる」

 

 社会的に抹殺されることは死と同じだ。相手にされないだけではない。存在そのものを否定されるのだ。もし仮に特記事項で3年間守れたとしてもそれ以降の彼女の人生は悲惨なものになるだろう。

 

 「おい、なんか言えよ」

 

 俺がせっかく長く話したのに二人は俺の顔を見て固まったままだ。あぁ、喉が渇いた。そう思っていたら、更識が水を出してくれた。ありがとう。

 

 「い、いや、亮がそこまで考えてくれてたなんて」

 

 「僕、さっきまでもっとひどいことになると思ってたから」

 

 つーか、こいつら言ってること何気にひどいな。俺は、暖かな血潮流れる心優しき人間だぜ。

 

 「まぁ、もしデュノアが本当にスパイ行為をしていたのなら、相当悲惨な未来が待っていただろうな。まぁ、そうじゃなくて良かったな。生徒会は生徒を守る義務がある。助けを求められたなら答えるさ。だが、一つ問題がある。デュノア、わかるか?」

 

 俺の問いにデュノアは、暫し思案する。

 

 「……僕が内部告発することによってデュノア家そのものを破壊することと、内部告発によるデュノア社そのものに与える損害かな」

 

 「ああ、そうだ。だが、デュノア社に対する損害は気にしなくてもいい。まだまだ未開拓市場で現在のデュノア社の経営基盤が悪かろうと早々社内への被害は出ないし、出さないようにする。そうだろ?更識生徒会長さん?」

 

「ええ、もちろんよ。IS学園生徒会長の名においてそこは保証するわ」

 

 「だそうだ。だが、デュノア家については、そうもいかない。君の父君には、責任を取って引責辞任をしてもらう。そして、役員会からデュノア家にはご退場してもらうことになる。少なくとも、そいつらには恨まれることになるだろう。それを受け入れる気はあるか?別に一人で全部背負いこむ必要はない。バカ正直に助けようとしてくれたそこのバカもいる。」

 

 俺の恨まれるという言葉に息を飲み俯いたデュノアだが、すぐに顔を上げて真っすぐ俺のほう向き、視線を合わせてきた。

 

 「うん。大神君お願いします。僕を…助けてください」

 

 「おう。とはいっても実際に動いてくれるのは更識だがな」

 

 そんじゃまぁ、あとは更識に任せよう。

 

 「更識、あとは任せた」

 

 「は〜い、お疲れ様、亮君。二人共ひどいわね〜。亮君ってわかりにくいけどとっても優しいんだから。シャルロットちゃんの意思を確認する為に汚れ役まで引き受けてくれたのよ」

 

 その後は、更識がデュノアのこれからについて詳しく話していた。俺は、その話を聞きながらコーヒーを入れていた。

 もし、このシナリオをデュノアが受け入れたなら、少なくとも社会的にはデュノアは大丈夫だろう。しかし、少なくとも、デュノア社のある特定の関係者から恨まれる事になるだろう。まあ、仕方ないだろうが。そのことを更識が説明したのだが、デュノアはそれでもいいと即答していた。彼女にとってそれは一生付きまとう。例え、彼女自身が何も悪くなくても誰かから恨まれなくてはならない。生きていくということは如何してこうも苦難に満ち溢れているのだろうか。

 

 

 その後、コーヒーを三人に出し、四人で話していた。話が終わる頃にはデュノアの表情から陰がなくなっていたようで良かった。大丈夫だデュノアお前はもう一人じゃないんだ。

 コーヒーを出すときに、なぜ俺に相談しに来たのか聞いてみると、俺が前の昼休みに聞きかけた言葉で女だとバレたと思ったから協力をしてもらおうとして来たらしい。まぁ、来なかったらこちらから行ってデュノアの処遇について更識と話すつもりだったし。

 

 

 

 

 二人が帰り、更識と二人で今日のことについて話していた。実は今日のこのシナリオを更識と事前に決めていたのだ。話の中で俺は二人の気を引き、更識がデュノアの事を観察して、デュノアに本当に悪意などがないのかを見るという役割分担をしていた。場合によれば、デュノアには罰を与えなくてはならなかった。

 

 「亮君、お疲れ様」

 

 「ああ、疲れたな。更識以外にあんなに話したのは初めてだ」

 

 「ふふっ♪そうなんだっ」

 

 「どうだった?俺の演技は?」

 

 「ふふっ。犯罪者を連呼してたところが悪役みたいで似合ってたわ」

 

 「それ、褒めてんのか」

 

 「もちろん」

 

 「嬉しくないな」

 

 「冗談よ。わざわざありがとね。それと汚れ役させてごめんなさい」

 

 「気にするな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そういえば、明日のトーナメントのタッグ組めたぞ」

 

 「えっ、そうなの」

 

 「ああ、本音が組んでくれた。あと、本音の話だと俺はあまり嫌われていないようだった」

 

 「……本音って呼んでるんだ〜。ふ〜ん」

 

 「ああ、二人いるだろ布仏って、だから下の名前で呼んでくれって言われた」

 

 「……そう。私のことはいつまで経っても更識のくせに」

 

 「んあ?なんて?」

 

 「なんでもないわよ。明日がんばってね」

 

 「おお。頑張る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………私だって刀奈って呼んで欲しいのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、次の日、トーナメント当日なのだが、俺は午後の三番目に試合があるようだ。一夏とデュノアの試合は一番始めで対戦相手は篠ノ之と眼帯ちゃんらしい。

 この日の朝見た二人の表情は生き生きしていた。その時デュノアにお礼を言われた。それから、女だという事実は内部告発と同時に行うそうだ。

 

 

 

 

 トーナメントについてなのだ、何やら一夏の試合の最中にトラブルが起こったようで、俺たちに試合は、後日にデータ取りだけになった。

 生徒会に回ってきた情報によるとドイツの代表候補生のISにVTシステムとか言うのが入っていたらしくISが暴走したらしい。

 

 

 

 そして、後日データ取りが終わり、よく晴れた一時間目のこと、眼帯ちゃんが一夏にキスをしていた。お暑いね〜。と見ていたら、二組のチビッ子がISを展開して乱入してきた。おいおい、一夏の女性問題は俺らに被害のない範囲でしてくれないか。

 あぁ、あと一夏はデュノアが女と知っていながら昨日の夜二人で大浴場に行っていたらしい。ばっかじゃねーの?何してんだよ。まじでいつか刺されるぞ。というか一度一夏は痛い目にあって学ぶべきだ。

 

 そんないつもと変わらない一夏がボコられる日常だった。

 

 

 

 

 あぁ、更識に会いたいなー。この殺伐とした教室から出て癒されたい。そういえば、もうすぐ、臨海学校だったっけ、更識いないからなー。でも、さすがにサボったら織斑先生の出席簿アタック喰らいそうだな。でも、俺織斑先生より身長高いから頭じゃなくて顔面叩かれそう。やだなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、俺も更識と一緒に風呂に入りたい……いやダメだ。途中で理性が崩壊しそうになる

 

 

 

 

 




改訂版では、もうそろそろ物語の筋道が原作と違った方向にしようと思っているので次回あたりから少しづつ手を加える割合が多くなりそうです。


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二度目の外出

二度目の外出のお話です。



 

 

 「そういえば、海パンないな」

 

 俺は、唐突にそう呟いた。

 

 「ほんと!なら、また二人で出かけない?」

 

 「そうだな。前に二人で出かけてから…二ヶ月は経ったな」

 

 「お昼も外で食べて午後も二人であそびましょ」

 

 「ああ。楽しみだ」

 

 「うん」

 

 もうすぐ臨海学校なのだが俺は海パンを持ってきていないのだ。まあ、ここに来るときに臨海学校があることなど知らなかったが、そのおかげでまた更識と出かけられる。

 海か〜。IS学園は海に囲まれてはいるが泳いだことはないから久しぶりだ。ああ、そうだ。

 そういえば昨日アレが出来たって連絡が来ていたな。丁度いいから取りに行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、最近は気温も上がり始め、寮内でも薄着の女子が増え、目のやり所に困る季節になってきた。風呂上りで胸元を扇いでいる更識など艶やか過ぎて見ていられない。最近、俺の鋼の精神がすごい勢いで削られていっている。

 さて、そんなギリギリの状態の俺だが、今日は更識との久しぶりの外出だ。行き先は、なんでも揃っているレゾナンスだ。そして、前回の如くまた俺は一人噴水広場のベンチにいる。

 ふと、広場から見える二階を見上げると一夏とデュノアがいた。そして、その後ろ数m後ろをこそこそとしながら尾行するチビッ子、オルコット、眼帯ちゃん。明らかに尾行組が目立っている。というか、見た目が目立つ連中なので尾行組のほうが目立っている。しかし、周りの人間は巻き込まれたくないのか見て見ぬ振りをしている。

 なにやってんだか、あいつらは。そんな彼女たちを眺めていたら、

 

 「だーれだ?」

 

 前にもこんなことされたよなー。そして、勿論おれこんなことをするのは一人しかいない。

 

 「更識」

 

 「せいかーい♪」

 

 振り返った俺が見たのは、前回と違い、腰に手を当て、ニンマリと笑う更識が立っていた。ホットパンツにTシャツというシンプルな服装だ。更識が着ていると道行く人も振り返って見とれてしまうほどだ。ホットパンツから出る細くしなやかな足にTシャツから出る白い腕になんとも艶かしい鎖骨が見える、そして淡い空色の髪がキラキラと太陽と光を反射している。前回と違い活発そうな服装をした彼女がいた。

 

 「どう?」

 

 「ああ、似合ってる。可愛いな」

 

 「あぅ……あ、ありがと。それじゃ、行きましょ」

 

 ニンマリとした笑顔から一転頬を赤く染めて嬉しそうにはにかむ。それから顔を上げた彼女は、俺の手を握った。さすがにこの季節腕を組むには暑すぎる。更識は、楽しそうに俺の手を引く。非常に機嫌が良さそうだ。

 そして、俺たちは海パンを買いに行く途中にもいろんな店舗を見ながら歩く。まぁ、俺はいろんな店を見てはしゃいでいる更識を見ているがな。はしゃいでる更識もいいな。俺は手を引っ張られながらそんなことを考えていた。ショーウインドに並ぶ商品を見る彼女のカメリア色の瞳はとても輝いている。こうしてみるとどこにでもいる一人の少女にしか見えない。

 

 更識家のことについて俺は、軽く聞いた程度である。しかし、日頃から忙しそうな彼女を俺は、毎日見ている。今の俺にできることなどそう多くない。だが、少なくとも今だけは、彼女に少しでも楽しんでもらいたい。

 

 俺は握られた手を見つめながらそう思った。

 

 「どうかした?」

 

 ショーウインドを見ていた更識が振り返る。小首を傾げて微笑みながら問いかける。そんな彼女に俺は何でもないと返す。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、水着コーナーに着いて俺の海パンを買い終わったのだが、俺たちにはチラッと一夏とデュノアが二人で試着室に入るのを見てしまった。そして、隣を見ると如何にもなにか企んでいますというように微笑んでいる更識がいるわけで。

 

 「ふふふっ、亮君、行きましょ♪」

 

 俺はそのまま腕を引かれて付いていった。そして、更識は一夏たちが入った試着室の前で咳払いを一つして、

 

 「お客様、水着のサイズはいかがでしょうか?」

 

 こいつ!変声術をマスターしてやがる!いつもの声と全く違う。俺も更識が声を出しているのを隣で見ていないとわからないくらい上手い。さて、試着室の中はというと、ガタガタと動揺して二人して体をあちこちにぶつけているようだ。

 

 「あっ!いえ、その、だ、大丈夫ですよ。は、はははは」

 

 中からはなんとか持ち直したデュノアの声が聞こえた。そして、そんな彼らに更識はさらなる追い打ちを如何にもいい笑顔で仕掛ける。

 

 「いえいえ、お客様しっかりと水着は着ないとスタイルを崩す原因になります。私がお手伝いします」

 

 「いやいや!本当に、ほんっとうに大丈夫ですから!気にしないでください!」

 

 中に入れないように必死にデュノアが答える。

 

 「そうですか。では、ここでお客様の試着が終わりますのをお待ち致します」

 

 「あっ………、そ、それは…え〜っと」

 

 これ以上はもうデュノアが持ちそうにないようだ。まぁ、更識もこれ以上は持ちそうにない。もう笑いを抑えることができないようだ。

 まぁ、俺は優しいのでもちろん………悪乗りさせてもらうっ!

 

 「どうかしましたか?」

 

 俺は警備員の振りをして声を変え、更識演じる店員に話しかける。更識も俺の意図がわかったようで

 

 「あっ!警備員さん。どうも。ここのお客様が先程からずっと篭もりきりなので、もしかしたら体調を崩されたのかもしれません」

 

 「そうですか。……失礼ですが、一度試着室から出ていただけますか?」

 

 さあ、どうする?デュノア、一夏。

 

 暫くして、デュノアが恐る恐る顔を出してきた。

 その瞬間、更識が一気に試着室のカーテンを開けた。中には、水着姿のデュノアと壁に張り付いている一夏がいた。

 

 「えっ!更識会長と大神君?……店員さんと警備員さんは?」

 

 「俺たちがやっていた」

 

 「どうだった?」

 

 そう言った瞬間デュノアは膝から崩れ落ち、一夏が壁に張り付いたまま首から上だけをこちらに向けた。デュノアは安心して腰が抜けたようだ。一夏は、汗をダラダラと流し顔が少し青ざめていた。ちなみに更識はさっきから腹を抱えて笑っている。

 

 「ホッしたら腰が抜けちゃったよ〜」

 

 「亮と楯無さん?はぁー、良かったー。本当に警備員が来たかと思ったぜ」

 

 

 

 さて、これからもう少しからかおうとした所で更識に腕を引かれ、慌てた様子で一夏たちが傍を離れた。あぁ、まだ弄り足りないのに

 

 「どうしたんだ?更識?」

 

 「しー、織斑先生と山田先生が来たわ」

 

 そう言って俺と更識は商品棚の間から覗いてみた。俺は更識の上から頭を出した。あ、丁度一夏たちが見つかったようだ。怒られてるし。まぁ、二人で一緒に入っている時に見つからなくて良かったのだろう。そして、尾行していたガールズも見つかっていた。その間に俺たちは退散することにした。

 

 「ねぇ、亮君、面白かったね♪」

 

 「そうだな。一夏のほっとした顔とか最高だった」

 

 「それと亮君って結構Sよね」

 

 「お前ほどじゃないさ」

 

 さて、そんな風にさっきの悪戯のことを話し合いながら歩いていたら、

 

 「あっ私、亮君に選んで欲しいのがあるの」

 

 「なにを?」

 

 「あれよっ♪」

 

 「…………あれは無理だ」

 

 「む〜、なんでよ〜」

 

 いや、普通に考えてアレは無理だろ。下着は。

 

 「それより、更識腹減ってないか?減ってるよな。よし!少し早いが昼食にしよう。行くぞ」

 

 「え〜、みーくんのケチ〜」

 

 この際、もうみーくんでもなんでもいい!あんなところに入るくらいならな。

 俺は、そのまま更識の手を引き、前の日にリサーチし、予約しておいた洋食店に向かった。途中までは、俺に引かれるままだった更識だが、途中からは俺の隣に立ち、これから何処に行くのか興味津々で付いてきた。かわいい。

 

 洋食店に入った時、更識が目を見開き感嘆の声をあげた。

 

 「すごい。綺麗」

 

 そう。ここの洋食店は海側が一面ガラスで見晴らしのいい隠れた絶景スポットなのだ。

 

 そこで俺たちは、風景を見ながら昼食を食べた。

 

 「亮君、はい、あーん」

 

 「……なあ、他の客にめちゃくちゃ見られてるんだが」

 

 ここの店は、前回と違い他の客との仕切りがないのだ。更識は可愛い。つまり、現時点でかなり目立っている。オーダーを聞きに行ったボーイが途中で見とれるほど。

 

 「いいのよ♪見せつけてるんだから」

 

 「…………」 

 

 だが、更識には関係ないようだ。はぁ、更識には敵わないな。いつもこの笑顔にやられる。

 

 「ほら、は〜や〜く〜」

 

 「……お、おう。……あむ」

 

 「おいしい?」

 

 オレハ アナタヲ タベタイデス

 

 「ねぇ、どう?」

 

 「オイシイヨ?」

 

 「?……そう♪あっそうだ。後で写真撮りましょ」

 

 「ソウダn。んんっ。そうだな。そうしようか」

 

 さて、途中俺がおかしくなったがなんとか持ち直した。いやぁー、更識が可愛すぎてそろそろ持たないかもしれない。

 そう決意して俺は、更識と共に彼女に魅了された洋食店から出た。

 

 

 海のすぐ脇の遊歩道に俺たちはいる。更識はここで写真を撮りたいらしい。

 

 「さぁ、亮君ここで記念写真とりましょ♪」

 

 「ああ」

 

 どうやら、更識のスマホで写真を撮るようだ。

 

 「ほら、亮君早く早く。もっと寄って、じゃないと写らないのよ」

 

 そう言って更識は俺にグイグイと体を寄せてくる。あぁぁ!俺の鋼の精神がぁぁ!あ、あたっておるではないか!しかも、半袖だから腕が直接触れ合ってるし、なんだかいつもより更識を近く感じる。

 

 「じゃあ、いくわよ。はい、チーズ」

 

 そういえば、なんで写真を撮るときは、はい、チーズなんだろうか?俺は、理性を保つために無理矢理現実逃避をしていた。

 

 「………うん♪撮れた撮れた。ふふっ待受にしちゃお♪あっ亮君にも送るわね」

 

 そして、暫くしたら俺のスマホにも今撮った写真が届いた。笑顔の眩しい更識の隣には……引き攣った表情の俺が写っていた。まぁ、更識が喜んでるみたいだしいいか。

 

 「あーそうだ、更識、ちょっとトイレ行ってくるからここで待っていてくれないか?」

 

 「えっ……うん。分かったわ。早く帰ってきてね。みーくん」

 

 「ああ、直ぐに帰ってくる。あと、みーくん言うな」

 

 

 

 そして、俺は歩き出す。

 そこから、角を一つ曲がり更識が見えなくなってから走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「む〜、亮君ったら私に何か隠してるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はちょっとした用事を済ませてから急いで更識を待たせている場所に戻ってきた。……だが、何やら更識は三人の男に囲まれていた。見た感じナンパだろうか。まぁ、あんだけ可愛けりゃナンパもしたくはなるよな。分かるよ……ハハハッ何してんだよ。おい。

 

 俺は、大股で更識のもとに向かう。

 

 「待たせたな。楯無。お前ら何してんだ」

 

 三人の男に囲まれている更識の手を握り自分のもとに引き寄せる。

 

 「えっ、あ!亮君」

 

 引き寄せた更識が俺を見る。そして、そのまま寄り添ってくる。それを見た男たちが不機嫌そうにこちらを向く。

 「あぁ、誰だおめぇ……って、大神!」

 

 「あぁぁあぁ、……な、なんで、大神がここにいるんだよ」

 

 「ひっ!だ、だ、だ、大魔神!」

 

 おやおや、懐かしい顔である。どうやら中学校の頃にお会いした同級生さんたちではないか。数少ない俺に話しかけてくれる学友である。あの頃は、自分も荒れていたのでよく肉体言語で語り合ったものだ。

 でも、許さない。

 

 

 「なにしてるって。き・い・て・ん・だ・よ。あぁ?」

 

 「ごごごめんなさぁぁぁぁぁぁい。」

 

 「い、いやだぁぁ。死にたくなァァァい」

 

 「ママァ、助けてぇぇぇぇぇ」

 

 「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 「え〜っと、亮君?あの人たちと知り合いなの?」

 

 「・・・・・・ああ、中学の時の大魔神の原因になった奴らだ。なんでこんな所にいるんだ?」

 

 「なるほど。だから、あんなに怯えてたのね」

 

 「それより、更識!大丈夫か!変なことされてないか!」

 

 俺は更識の方を掴んでこちらを向かせる。

 

 「大丈夫よ。ふふっ亮君心配しすぎよ」

 

 「そうか。はぁ、よかった。もし指一本でも触れていたら俺は奴らを殺しに行かなくてはならなかったからな」

 

 「・・・・・・・・・冗談よね」

 

 「…半分くらい」

 

 

 

 

 

 

 

 それから、俺たちは、二人でレゾナンスのいろいろなところを回って時間を潰していた。

 

 「ねぇ、亮君!ゲームセンター行きましょ!私行ったことないの!ほら、早く早く」

 

 そう言って両手で俺の手を掴みぐいぐいと引っ張る。

 

 「わかったわかった。そんなに急がなくてもゲームセンターは逃げないから」

 

 

 

 

 

 「ねぇ、これってどうやるの?」

 

 「コインを入れて上に付いてるアームがあるだろ?それで台の上にある景品を掴んでここの穴に落とすんだよ」

 

 「ねぇ亮君。あれ取ろうよ」

 

 「あれか?コーヒー豆男君取るのか?こっちには、コーヒー豆次郎もあるぞ」

 

 「コーヒー豆男って言うんだ。安直なネーミングね。ん〜、豆男くんがいい」

 

 「了解。更識やってみるか?」

 

 「うん。やるやる。どうしたらいい?」

 

 「まず、100円入れて……じゃあ次にその左の横マークのボタンを押して……ん〜ちょっと行き過ぎたかな。じゃあ最後に縦マークのボタンを押してくれ。……よし、さて、どうかな」

 

 更識の動かしたアームは少し右に行き過ぎていたようで惜しくも取れなかった。

 

 「惜しいな。もう少し左だ。俺がやろう」 

 

 「む〜、あと少しで豆男君取れたのに〜」

 

 悔しそうに景品を見つめる更識を見て俺は頬が緩むのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、暫くした後、見事豆男君をゲットした。そして、豆男君が取れた後、更識と俺は、豆次郎も取りに行った。

 それから、IS学園の外出門限に間に合うギリギリまで二人で遊び続けた。

 帰りの更識は、俺と手を繋ぎながら豆男君をずっと抱いていた。

 おいっ!豆男!その位置を変われや!

 

 「亮君には、豆次郎君をあげる。はい」

 

 「おう。ありがとう。」

 

 

 

 

 

 寮には、門限ギリギリに到着して、二人して笑いあった。その後、豆男と豆次郎を互のベットの脇に置き二人で夕食を食べに食堂に向かう。更識を先に部屋から出してから荷物を置くそれから鍵を持って部屋から出る。

 

 夕食を食堂で食べながら俺たちは今日の事を二人で話し合った。一夏とデュノアをからかったこと。昼食のこと。ナンパしてきた奴らのこと。ゲームセンターのこと。そんな事を話していた。話をしている間、更識はずっとニコニコしていた。今日のことが余程楽しかったようだ。

 

 

 「あっ、薫ちゃーん!」

 

 「おぉ、たっちゃんと大魔神君じゃない」

 

 「大魔神じゃない大神だ」

 

 黛め、どこから大魔神のことを聞きつけやがった?

 

 「おろ?大魔神君どうしたの?あぁ、大魔神の出所がきになるの?ふふふ、新聞部を舐めないことね」

 

 えー、なにこの新聞部。俺の過去の経歴まで把握済みなのか?プライベートについてもう一度考える必要があると思うぞ。

 

 「そういえば、たっちゃん、今日はえらくご機嫌だね。何かあったの?」

 

 「ふふっ♪秘密」

 

 「むむ、いい記事になりそうな予感。大魔神君、たっちゃんに何があったの?」

 

 「教えない」

 

 「大神様教えてください。おねがいします!」

 

 先ほどまでの得意顔から一転獲物を見つけた狩人のような目つきに変えて俺に言う。

 

 「ふっ(笑)」

 

 「は、鼻で笑われたっ!くっなら新聞部の総力を挙げて調べるのみ!待ってろー!直ぐに見つけて記事にしてやるんだから」

 

 黛はそう言って走り去っていった。…忙しないやつだ。

 

 黛が走り去って一息ついてから、俺たちも食器を片付け部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校当日の朝

 

 「更識、それじゃあ行ってくる」

 

 「うん、いってらっしゃい。気をつけてね」

 

 「おう………更識、俺、臨海学校が終わったらお前に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるか?」

 

 「えっ!………うん。わかったわ。待ってわ」

 

 「んじゃ、行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識と出会ってからもう三か月以上になる。ここに来るまでの日々で俺の更識に対する思いは日増しに強くなっていた。とはいえ、その気持ちを勢いに任せて言うのも俺の性に合わない。まぁ、こんなことを言っているがただ単に臆病なのだろう。

 そういった訳で一度臨海学校を利用し覚悟を決める。その為の準備もしたのだ。手筈は整えた。あとは己の覚悟だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 




原作でもキャラが外出してたのでそれに合わせて二人もの行ってきてもらいました。
さて、次回からは臨海学校に行ってもらいます。
それと今後の投稿はストックが減ってきたので無くなり次第随時に変更する予定です。


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臨海学校初日

ストック無くなったぜ!
次あたりから手直しする箇所が一気に増えてきました。



 

 

 

 さて、更識に臨海学校から帰った後に気持ちを伝えると言ったヘタレな俺は、今クラスの連中と一緒にバスに乗り目的地に向かっている。俺としては目的地について遊んだりするよりこうやってバスに揺られながら車窓から外の景色をボーッと眺めている方が好きだ。ただ。ただもう少しバスが静かならもっと嬉しい。

 そう思いながらゆっくりと視線をバスの中に戻すと、いつもと違う雰囲気でテンションの上がっているクラスメイトがいたり。まぁ、このくらいなら微笑ましくていいのだが、一夏周辺になると話は変わる。篠ノ之、オルコット、デュノア、眼帯ちゃんの四人が一夏を巡り激しく火花を散らし、それに気づかない一夏。なんなんだ!あいつは!朴念仁にもほどがある!

 そんなこんなでいろいろとカオスな空気を一夏周辺で作り上げながら、俺たちの乗ったバスは進む。ちなみに俺の隣は本音なのだが、バスに乗って直ぐに寝た。さっきから念仏のように寝言が聞こえてくる。お前は一体どんな夢を見ているんだ?

 

 あぁ、更識に会いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらいバスに乗り続けただろうか?カオスすぎる空間にいた為、時間感覚が狂ったようだ。

 暫くすると長いトンネルに入った。そしてそこを抜けると大海原が目に飛び込んでくる。この時ばかりは皆会話をやめ、一様に海に見入っていた。

 俺の実家は日本海側にあるためまず初めに思ったのが海の色が違う。そう思った。日本海側の湾内にある俺の家から見える海はすこし緑の濃い色をしている。植物性プランクトンが多いため、海の色がそう見えるそうだ。変わって、今見えている海は、青い。同じ海なのにこんなにも違うのかなんて一人感心していた。そうだ。写真撮って後で更識に送ろう。

 

 「ふえ〜、みーくんもう着いたの〜?」

 

 どうやら、本音が起きたようだ。

 

 「いや、まだもう少しかかるようだ」

 

 「そうなんだ〜。ありがと〜。あ〜海だ〜」

 

 寝起きでも話し方が変わらない。と言うことは、いつもの話し方が素なのか!

 俺はここでも一人感心していた。更識がいないとまともに話すやつがいない。違う、話してくれる奴がいない。

 それから、暫く海を見ながらバスに揺られること十分ようやく臨海学校の宿泊先となる旅館に到着した。そこで、一夏と俺が何故か挨拶をすることになった。なんで?えっ、二人しかいない男だから?それって挨拶と関係あんの?

 それと、挨拶の時に気がついたのだが俺の髪は結構伸びているようだ。ふむ、今度切りに行くとしよう。

 そんなどうでもいいことを考えていたら部屋割りが発表されていた。

 えーっと、俺は………一夏と同室で、女子の過ごす本館から離れた離れの部屋か。まぁ妥当だろうな。そこはかとなく部屋が離れというのは教師陣の心遣いが垣間見える。

 

 

 各自部屋に荷物を置いたら、今日の午後は一日中遊んでいいらしい。

 

 「なぁ、亮。早く荷物置いて泳ぎに行こうぜ!」

 

 自分の荷物を部屋へと放り投げた一夏が外に出たくて仕方がないといった様子で話しかけてくる。

 

 「ああ。わかった」

 

 いいな。若者は。って言っても一歳しか変わらないが。

 その後、離れにある自分たちの部屋に荷物をついて窓からのぞく景色を堪能する。ここの場所がいい。なんというか、某ブラックでジャックな闇医者の家のように崖の上に建っている。落ちたらヤバそうだな。そんな事を考えていたら一夏が早く海に行こうと急かしてきた。はいはい、今行きますよ。

 

 

 

 

 それから、一夏に急かされながら、砂浜に着いたのだが、どこを見ても、水着の女子ばかりで目のやりどころに困る。あーいい天気だなぁ。

 

 「み〜く〜ん、泳ご〜」

 

 この呼び方は間違いなく本音だ。振り返って見るとなんかいた。ん?なんでこいつは着ぐるみ着てんだ?

 

 「なぁ、本音。なんで着ぐるみなんて着てるんだ?」

 

 「む〜、みーくんもそんな事言うの〜。これは水着だよ〜」

 

 えー、冗談きついぜ。ほら、後ろ見てみろよ。相川も鷹月も苦笑いしてるじゃねーか。

 

 「そうか。俺はもう少ししてから泳ぐから三人で遊んできな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本音たちと別れた後、俺は、彼女たちを通して他のクラスの連中と打ち解けるチャンスだったことに気づいたがもう遅い。

 過ぎたことは、もう忘れ俺はここら一帯を散策することにした。ここの砂浜は結構広いらしい。海を見渡してみるとここから離れた海上にポツンと島があった。遠泳してみようかと思ったがさすがに遠すぎるので諦めた。それにあまり皆と離れるのもよくないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここらの散策も終わり、泳ぐことにする。

 俺は、海が好きだ。泳ぐことも好きだ。釣りができるし、水中では息の続く限り地上ではできない動きができる。水中は地上とは全く違う世界が広がっている。例えば、生き物なんかを例に上げるとタカアシガニなんかがそうだ。あの蟹は、地上では、立つことすらままならない。水中にのみ適応した形をしているのだ。水中を泳ぐと改めてこの地球には、様々な生き物が生きていると改めて実感する。そういえばISの海中での性能はどうなっているのだろうか。地球の深海はまだまだ未到達の場所のほうが多い。やサイドスキャンで探査できる範囲など高が知れている。

 

 それから30分ほど俺は海面を波に流される海藻のように漂い続けていた。

 

 

 更識とも海に来たいと思う。更識の水着姿見たい。いや、でも他の人間には見せたくないな。

 

 

 俺は、そんな事を考えながら漂っていた。

 

 そろそろ息が苦しくなってきたので顔を上げ呼吸をしてのだが、俺の目の前で着ぐるみ一つとそれを引っ張りあげようとする二人の女子が溺れていた。慌てて着ぐるみを海面まで引き上げ、着ぐるみと一緒に溺れていた二人を引っ張り上げ、砂浜まで戻ってきた。

 

 「なぁ、本音なんで、溺れてたんだ?着ぐるみなんか着てるからだよな。そうだよな?」

 

 「えっとね〜みーくんが溺れてると思ったから〜助けに行こうとしたんだよ〜。そしたらね〜この水着が重くてね〜沈んじゃった〜」

 

 あくまで、着ぐるみのことを水着と言い張る本音。そして、なぜ、溺れていたのかの理由が俺だという。心配してくれて感謝すべきなのだろうが、着ぐるみのままの本音を見るとなんか素直に感謝しづらい。

 

 「まぁ、そのなんだ。心配してくれてありがとな。本音。鷹月と相川もありがとう」

 

 「ど〜いたしまして〜」

 

 「う、うん」

 

 「か、感謝されるようなことはしてないよ」

 

 今回のことは、俺が逆に助けることになった訳だが。そうなった理由も俺な訳だが。俺の事を心配してくれる子がクラスにもいることが分かって良かった。

 

 その後の俺は、テントの下でぐーたらしていた。一夏や眼帯ちゃんやらがバレーボールをしているのを見ながら過ごす。ボールは狙ったかのように一夏の顔面へと吸い込まれていく。それから暫く経った頃、織斑先生も水着で登場した。そして、それを見た一夏が顔を赤くしてガールズにまたボコられていた。一夏って重度のシスコンなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、いつしか日も落ち空が茜色に染まってきた。もうすぐ夕食の時間なので皆撤収を始めたので俺も帰ることにした。風呂に入って今日の疲れを癒した。男は一夏と二人だけなのでかなり広々と使用できる。極楽〜極楽〜。そういえば、俺ってまだIS学園の大浴場使ってないな。男子用に大浴場を使用出来るようにしてもらったがまだ一度も行っていない。時間のある時に今度行ってみるか。

 

 

 

 

 さて、夕食なのだが嬉しいことに海鮮料理だった。刺身なんかはIS学園ではあまり出ない為、久しぶりに食べる。俺はワサビを多めにつけ刺身を食べた。くぅーうまい。俺が一人黙々と食事を進める中やはりというべきか朴念仁の一夏何やらまたやらかしたようだ。お前らは静かに出来んのかっ!あ、織斑先生に怒られてる。出席簿が無いため今日は素手でのチョップである。

 

 

 

 

 

 夕食を堪能した後、離れの部屋に戻り更識へメールを送る。今日は海藻のように波間を漂ったことや夕食で刺身が出たことなんかをいくつかの写真と共に送った。その後、一分と経たず返信が返ってきた。

 [今度は、一緒に海にいきましょ]

 俺は、直ぐに[もちろんだ]と返信しておいた。

 そんなやり取りをしていたら、一夏が帰ってきた。

 

 「あっ、亮、俺、今から千冬姉ぇのとこに行ってくるよ。消灯時間までには帰ってくる」

 

 「わかった。行ってこい」

 

 いってらー。俺は一人さっき来た更識のメール見ながら悦に浸ることにするから。

 一夏が出て行った後暫くして、俺は部屋の電気を消し、窓を開け縁側でごろりと横になる。IS学園は、夜間でも外は警備のために明るくなっている、その為夜空に瞬く星は明るいものくらいしか見えない。そういえば、夏にはペルセウス座流星群が来る時期だっただろうか。そんな事を考えながら一人部屋に寝転がり星を眺めていた。あれが、デネブでアルタイル、ベガ、はい、夏の大三角形完成。それくらいしか知らん。オリオン座は…ありゃ冬か。

 そんな馬鹿な事をやっていたのだが、何やら部屋の襖の向こう側が騒がしい。おそらく一夏ガールズだろう。すこし脅かしてやるか。そう思い非常用ライトを手に取り自分の顔を下から照らして、音を立てないように襖に近寄り、一気に開いた。

 

 「何の用だぁ!」

 

 「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」

 

 

 これ楽しいな、おい。

 一夏ガールズは揃って腰を抜かしたようだ。眼帯ちゃんでさえも腰が引けている。それから、俺は直ぐに部屋の明かりを付けた。

 

 「んで、何の用だ?」

 

 「大神君、脅かさないでよ〜」

 

 「それは、無理だ。デュノア。こんなにも脅かし甲斐のある機会をみすみす逃がすなど愚の骨頂だからな」

 

 俺の性格は、結構更識に近い。人を驚かすのは結構好きだ。

 

 「あ、あんたって結構いい性格してるわね」

 

 「ん?どうした、チビッ子?そんなに怒って。そんなに怒るから背が伸びないんだぞ」

 

 「チビッ子言うな!私の名前は鳳鈴音よ!あと、身長はこれから伸びるのよ!」

 

 こいつ!なかなか弄り甲斐があるぞ。今度、更識にも教えてやろう。

 

 「お、大神さん。驚かさないでくださいまし」

 

 「おお、すまんな。オルコット。俺には皆して俺に驚かされたいから襖の直ぐ傍にいるのかと思ったんだが違ったようだな」

 

 「大神さん、最初に会った時と随分印象が違いますね」

 

 「そうか、篠ノ之?ふむ、そうだな。まぁ、本来の俺はからかうことが大好きな人間だからな」

 

 更識にはからかられることのほうが多いのだが。

 

 「……心臓が止まるかと思ったぞ、大神よ」

 

 「はは、そりゃ脅かし甲斐があった」

 

 今日の俺は更識がいないためしゃべり足りないようだ。昔は全く喋らなくても平気だったのだがこの数ヶ月で俺はすこしお喋りさんになってしまったようだ。

 

 「んで、なんで来た?まぁ、わかっているが一夏に会いに来たんだろ?」

 

 「そうよ、一夏は何処に居るのよ!教えなさい!」

 

 「おい、チビッ子。それが人にものを尋ねる態度か?」

 

 「うぐっ。また、チビッ子って言った。ぐぐぐ、い、一夏は、何処にいるんですか?おしえてください」

 

 「すまない。お前があまりにも小さくて声が聞こえなかった。もう一度言ってくれないか?」

 

 「きぃー。一夏は何処にいるのでしょうかっ!教えてくださいっ!」

 

 「うるさいぞ、そんなに声を出さなくとも聞こえている。織斑先生の所にいったぞ。この部屋に戻ってくるのは消灯時間になる少し前くらいになるんじゃないのか?」

 

 

 そう俺が言うや否や、一夏ガールズは慌ただしく去っていった。ふぅ、面白かった。あのチビッ子、改め鳳はいいな。からかいやすいし反応が面白い。そんな事を思いながら俺は彼女たちを見送った。頑張れよ。あの朴念仁には大抵のことでは気持ちは伝わらんぞ。

 俺もこの林外学校が終わったら更識に気持ちを伝えるか。これ以上は我慢できそうにないしな。

 さて、少し早いが寝る準備するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亮が海で漂っている頃に生徒会室

 

 「お嬢様、携帯ばかり眺めずに仕事をしてください」

 

 「む〜、わかったわよ。あと、少ししたらするわ」

 

 「はぁ、さっきもそんな事をおっしゃっていましたよ」

 

 

 




ここ数日で一気に冷え込んできましたね。皆様も体調にはお気をつけください。
さて今週の投稿予定ですが、土日まで少し忙しくなるので今までのように毎日というのは難しいかもしれません。

とはいえ、皆様からのご感想を楽しみながら少しずつ書き進めていこうと思います。


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二日目と銀のIS

ビールおいしい


 朝、俺は目覚めいつも通りの行動をしようとした矢先ここがいつも更識といる部屋ではなく臨海学校の部屋だということに気がついた。そして、同じ部屋にいるのが可愛らしく寝息を立てる更識ではなく間抜けな顔をした一夏だった。まだ、皆が起き始めるには時間が早すぎる。その為俺はここの周りを歩くことにした。俺や一夏のいる離れは、ブラックなジャックの家のように崖の直ぐ傍にある。暇なので俺はその方向に歩いてみた。ここの崖の真下には暗礁が多数あるようで白波がさざめきたっている。視線をあげて見ると丁度太陽が水平線から覗き込んできた。風が少し強く体感温度が低く感じるのが難点だが景色は良かった。その後、俺は旅館の周りを散策し7時になる頃に部屋に戻った。

 

 部屋に戻った俺がまず見たのは、一夏の寝ている布団に群がる一夏ガールズたちだった。なにを朝っぱらからしてんだよ。俺は少しだけ開いた襖を閉め、どうしようか考えた。うむ、どうからかってやろうか。そうだ。

 

 「織斑先生おはようございます。………一夏ですか?………まだ寝ているようですよ。起こしましょうか?………えっ?先生が起こす?わかりました。では、こちらへ」

 

 俺は誰もいない廊下に向かって声をかけた。案の定、襖の向こう側ではドタバタと隠れるために無駄な努力をしている音が聞こえる。やべーな。楽しすぎる。さて、どうしようか?

 

 「えっ?篠ノ之たちがいない?…いやいやまさかここにはいないでしょ。………いたら容赦しない?……そうですか。まぁ、いないと思いますがね。いたらひどい目に会うでしょうから」

 

 俺は、襖を開けると同時にもう一度誰もいない廊下に向かって話しかけた。そして、セリフの「容赦しない」の時に押し入れの中から音が聞こえた。

 

 「ん?今、なんか押し入れの中から音がしなかったか?」

 

 俺は足音を立てながら襖の前に立ち、襖を開けようと手をかけた。だが、まだだ。ここで終わらせん。

 

 「織斑先生?どうかしましたか?…用事が出来たので一夏を起きすのは任せたと。はぁ、了解です。……篠ノ之たちがもしこの部屋にいたら報告ですか?了解です」

 

 そう言って俺は襖の前から離れた。おそらく、押し入れの中の彼女たちは安堵していることだろう。さて、そんな彼女たちは実にからかい甲斐があるのでもう少し遊ばせてもらおう。その為に一夏には退場していただこう。

 

 「おい、一夏、もうすぐ朝飯だ。起きろー」

 

 俺は一夏の脇腹をひと蹴りして起こしてあげた。

 

 「痛っ!……お、おはよう。亮。なんか脇腹痛いんだが」

 

 「ん?気のせいだろ。それより飯だ」

 

 「あいよ。一緒に行こうぜ。亮」

 

 「おう。俺は今日の準備をしてから行くから先に行っといてくれ」

 

 「わかった。んじゃ、先行くわ」

 

 

 

 

 さて、この押入れの中の連中をどうするか。

 

 「あー、そういえば、篠ノ之たちは見なかったなー。まー、俺に見つかれば織斑先生に報告しなきゃならんし、あいつらにとってはよかったなー。何やら容赦しないなんてことを言っていたしなー」 

 

 ガタッとまた押入れから音がした。こいつら隠れるのが下手すぎやしないかい?それとも容赦の言葉に反応しているのか?……新聞部マル秘情報では織斑先生はブラコンのようだし、もしかしたら昨日の夜、織斑先生と彼女たちの間で何かあったのかもしれん。

 さて、締めはどうしようか。

 俺は、意味もなく自分の荷物をわざと大きく音を出しながら弄り、

 

 「さて、そろそろ俺も行くか」

 

 

 そう言って襖を開け、そのまま、閉めた。

 

 

 ゆっくりと押入れの方を見ていること30秒ほど、押入れの襖が開いた。

 

 「よう。どうだった?押入れの中は?快適かい?」

 

 パシャリ。証拠写真ゲット。

 

 「「「「「………………」」」」」

 

 

 

 

 ヤバイ、おもしろすぎる。押入れから安堵して出てきた後の俺を見つけた彼女たちの表情が面白い。一夏に見せようとしたのだが、阻止された。

 

 

 

 

 

 さて、朝から大いに楽しんだ俺は更識がいないため知らずに溜まっていたストレスを発散出来て機嫌がいい。

 今日の予定だが午前は座学で午後からは一般性とはISを使ってのデータ取りだ。ここ周辺では射撃武装は使えないので主にISに乗って近接格闘能力を計測するらしい。

 

 「つまりISで殴り合いをするのか」

 

 「お、大神さん。前回のクラス代表決定戦の時のようにはしないでくださいませんか?」

 

 オルコットには、あの戦いがトラウマのようだ。まぁ、自分でもアレはやりすぎだと思ったのでもうしない。オルコットには安心しろ、と言ったが微妙な顔をされた。なぜ?

 

 

 

 さて、午前中は海岸沿いにこの旅館が建っていることもあり、日差しは強かったが風があるので涼しく授業は受けやすかった。また、内容についてだが更識のおかげで全く問題ない。と言うか更識とやった範囲のほうが先を行っているためここでやっていることは復習になる。

 

 昼食を挟んで午後からはISを使ってのデータ取りだ。楽しみだ。俺はISで空を飛ぶのが好きだ。人間は空を飛ぶことができない。だから、過去の人物たちは空を渇望し目指した。それが今、IS一つで空を思い通りに飛べるのだ。生憎戦闘に関しては徒手格闘以外殆どしていないが。

 

 

 

 さて、待ちに待ったISでの訓練なのだが機材を搬入しさぁこれからだと言うタイミングで何やらあったようだ。山田先生が申し訳なさそうに今日は一日旅館の中で待機してくださいと言ってきた。まじで。今の時間だと更識授業だしメールもできない。つまり暇な時間になる。一夏ら専用機組と篠ノ之は何やら呼び出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ、いっくん。もう一人の男って何処に居るの?」

 

 「え?俺と同じ部屋だぜ。あの旅館の離れのとこ」

 

 「ふ〜ん、そうなんだ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、待機を命じられて何時間たっただろうか?そろそろ、日が傾いてきて、綺麗な夕焼けが見える。更識に写真撮って送るか。備え付けのスリッパを履いてスマホを掲げた。

 

 「ん?」

 

 なんか海上に何かがキラリと光った。目を凝らしてその正体を見極めようとする。……銀色……IS?見たことない形だな。

 

 

 

 

 

 

 次に俺が目にしたのは、俺の方に向かって来る無数のエネルギー弾だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 福音事件詳細情報

 

 本日、アメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)がハワイ沖にて試験運用中に暴走。現時点では、原因不明のため解明中。また、このIS(これより先は福音とする)は、IS学園、専用機部隊により鹵獲作戦を展開するも第一接触時にIS学園生徒、織斑一夏の操縦する白式が撃墜されたため、第一鹵獲作戦は失敗。失敗の原因は現在解明中。その後、04時53分まで福音は同海域にて移動せず。その後、06時25分に再び福音の可動を確認。進行方向はIS学園の臨海学校宿泊先あり。直ちにIS学園所属IS警備隊出動。防衛戦を展開。戦闘開始から32分後、警備隊の戦闘継続能力の消滅を確認。福音その後、直進。同時刻IS学園生徒専用機持ち生徒による迎撃を確認。この際、福音の攻撃による周辺の被害を確認。当旅館の施設が破壊された模様。後の被害状況報告の際、男性IS操縦者大神亮が行方不明と判明。同時刻大神亮は破壊された施設にいたと思われる。施設の破壊状況は旅館の離れを中心に損害が見られる。

 その後、第二形態に移行したISを含むIS専用機部隊により福音の沈黙を確認。

 

 

 負傷者及び行方不明者

 負傷者 14名

 行方不明者 1名

 

 

 以上が現段階で判明している情報である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




爆発はやっぱり最高


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途絶

今年はゆっくりできると言ったな。あれは嘘だ。
来週から東京だよ畜生め




 

 もうすぐ亮君は臨海学校だって言うのに準備を何一つしていない。でも、そのおかげでまた二人で出かけられる。ふふっ、今度は二人でどこへ行こうかしら?写真とか二人で撮りたいわね。

 私は、亮君と出かける約束をした日からの授業中ずっと出かける日のプランを考えたりしていた。

 

 

 

 

 

 「ねえ、虚ちゃん。例えばの話よ?男の人と出かける時の服ってどんなのがいいかしら?」

 

 「今度、大神さんと出かけるんですか?」

 

 「だ、誰もりょ……大神君と出かけるなんて言ってないわよ」

 

 「お嬢様、バレバレですよ。何年一緒にいると思ってるんですか。それに生徒会室でのお二人の様子を見ていたら嫌でもわかります」

 

 「………む〜、まぁ、虚ちゃんならいっか。そういえば、昨日、亮君がね「お嬢様」……なによ?」

 

 「今度のデートのコーディネートの話はよろしいんですか?」

 

 「デ、デートって私たちまだ付き合ってないわよ」

 

 「はぁ、まだっておっしゃってるじゃないですか。つまり、これから付き合うんですよね?」

 

 「…………む〜」

 

 「お互い好意を抱いているというのにお二人揃って不器用過ぎです。さて、今度のデートのコーディネートでしたね。お嬢様ならなんでも似合うと思うのですが」

 

 「不器用でもいいもん。………なんでもいいって……何にするか困ってるから相談してるのに〜」

 

 「はぁ、では前回のデートとはまた違った雰囲気の服で行ってみてはいかがでしょうか?」

 

 「そうね。前回は大人しい感じのコーディネートにしたから………今度は少しもうすぐ夏だし少し大胆に行ってみようかしら。そうよ、夏だし、少しくらい大胆でも」

 

 「僭越ながら、あまり露出の激しいコーディネートでは、大神さんに引かれるかもしれませんよ。ここは、シンプルにまとめてみてはいかがでしょうか?」

 

 「うっ。そうね。そうするわ。ありがと、虚ちゃん」

 

 「いえ、これくらい大したことではありません。それより、今度のデート楽しんできてください」

 

 「うん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人で出かける予定の日曜日。やっぱりまだ少し恥ずかしいので亮君には先に行ってもらった。今日の私の服のコーディネートのコンセプトは活発で元気そうな雰囲気の服装でシンプルにまとめた。その後、鏡の前に立ち軽く頬を叩き気合を入れてから亮君のいるレゾナンスに向かって歩き出した。

 前回と同じベンチに亮君は座っていた。今日の私の感想を聞いてみたら、「可愛いよ」って言ってくれた。いつもはこんなこと口にしてくれないのに。む〜反則よ。

 

 

 

 その後、二人で水着を買いに行った時一夏君とデュノアちゃんがいたのでからかってみた。亮君は止めるかなって思っていたけれど一緒に乗ってきてくれた。また、新しい亮君の一面を見つけた。

 そのあと、冗談半分でランジェリーショップに誘ってみたら面白いくらい動揺してた。私の手を引いて歩く亮君の耳が少し赤くなっていた。

 今日の昼食は、亮君がリサーチしてくれたお店だった。テラスから見える景色がとても綺麗で思わず口から感嘆の声が漏れてしまった。席に座るときさりげなく椅子を引いてくれた。そんな細かな心遣いのある亮君が私は好き。

 その後は二人で食べさせ合いっこをした。他の客から見られていたけれど私は亮君と二人でいられるだけで充分。だから、気にせずに食べさせ合いっこをしていた。初めは恥ずかしがっていた亮君だけど吹っ切れたのか途中から気にしないようになっていた。なんだかんだ言う亮君だけど最後はちゃんと食べてくれる。

 

 

 昼食を食べ終わった後二人で写真を撮ることにした。亮君と写真を撮るのはこれが初めてだ。写真を撮るという口実で亮君に思う存分密着できる。恥ずかしくて鼓動が高鳴る。亮君に気づかれてないわよね?

 写真を撮り終えたあと撮った写真を二人で眺めた。私の携帯で撮った写真を二人で眺めたから自然と二人の顔が近くになって、その事に気が付いた私はとたんにまた胸が高鳴った。亮君は写真を見るのに夢中で気が付いていないようだ。そんな事を考えていたら、亮君が不思議そうな顔をして私を見てきた。どうやら、私は、亮君の顔をずっと見ていたようだ。うぅ、何してんのよ〜私は。

 

 

 

 それから、分かりやすい嘘をついて亮君がどこかに行った。嘘に気づいたけれど敢えて気づかない振りをした。なぜなら、亮君が何やら私に隠れて準備しているのを知ってるから。寮にいるとき亮君はバレないようにいつもネットで何かしていた。不思議に思って一度だけ聞いたことがあった。その時、亮君は

 

 「更識にサプライズをする準備をしてる………あっ!言ったらサプライズじゃないな」

 

 少し間抜けな所もあるけれど、私はそんな亮君も好き。

 

 

 

 

 

 亮君が何かをするために去ってから私はさっき撮った写真を眺めていた。ふふっ、亮君のこの何とも言えない顔。学園にいるときはいつも厳しい顔をしているけれど亮君は私の前ではいろんな表情を見せてくれる。小さな事だけどそんなことでも私は嬉しい。そして、そんな亮君の隣にいる私は笑顔でいられる。学園にいるときの更識楯無としてではなく更識刀奈として私は笑顔でいられる。亮君と会う前の私では考えられないことだ。私の中でどんどん亮君の存在が大きくなっているのを感じる。亮君のことを考えるだけで胸が熱くなって苦しい。今はまだこの気持ちを我慢できる。でも、もうそろそろ限界かもしれない。

 そして、私がそんなことを考えて、早く亮君に会いたいな、なんて考えていた時のこと

 

 「そこのお嬢さん。俺達と一夏のアバンチュールしないか?」

 

 「しないか〜い?」

 

 「togetherしようぜ?」

 

 なんか来た。せっかく亮君のことを考えて幸せな気持ちに浸っていたのに。どうしようかな?できるだけ穏便にすましたいし、そんな事を考えていたら彼らの向こう側に亮君がいるのが見てた。その瞬間、私はどうしようもなく嬉しくなって笑顔になった。しかし、私に声を掛けてきた三人組は、なにを勘違いしたのか私が了承したと思ったらしい。

 そして、そのまま私の手を掴もうとしたとき亮君が来た。二度目の大魔神降臨。三人組はすぐさま逃げ去った。私は、三人組に絡まれている私を見て全速力で助けに来てくれた亮君にありがと♪と伝えた。自分で対処もできたけれど亮君が助けてくれて嬉しかった。今まで私の周りにいた人は、私をIS学園最強の生徒会長、更識家当主としてしか見てくれなかった。だから、私が危険な状況に陥っても助けようとしてくれる人物はいなかった。でも、亮君は同じ更識楯無でも一人の人間として見てくれる。私が更識家当主であることを知った上で私と関わってくれる。いつか更識楯無としてでなく更識刀奈として見てもらいたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、私は初めてゲームセンターに行った。ゲームセンターと言うものは知っていたけれど実際に行ったことは無かった。亮君と手を繋ぎながら私はいろんな事を亮君に質問した。そんな私に亮君は嫌な顔一つせずに一つ一つ丁寧に説明してくれた。その後、二人で豆男君を取ったりした。アームの動き一つに一喜一憂したり上手く取れたときなんかは二人でハイタッチしたりした。今までゲームセンターって何が面白いんだろう?なんて思っていた自分を叱りつけたい。こんなにも楽しいものだなんて私は知らなかった。でも、こんなにも楽しいのはきっと亮君がいるから。一人でここに来ても何も楽しくないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、二人で門限に間に合うギリギリの時間まで遊んだ。今の私はとっても幸せ。今日一日ずっーと亮君といられた。亮君はずっと私の隣で手を繋いでいてくれた。そういえば、今日の外出の目的って臨海学校の準備だったわね。うぅ〜いや〜亮君、私を一人にしないで〜………あっ!だめだめ、ダメよ、私、しっかりしなさい!そうよ!亮君が帰ってきたら存分に甘えればいいじゃない。うん。そうしましょ。ふふっ。

 

 

 

 

 

 

 

 それから、ギリギリで寮に到着した。それから、二人で夕食に食べに行った。そして、今日あったことを二人で話していた。話している途中に薫ちゃんを見つけた。呼んでみるとまた取材がどうの言い出した。む〜、亮君と楽しそうに話してる。そう思っていたら、薫ちゃんが私に機嫌が良さそうだけどどうしたの?って聞いて来た。ふふっ、教えない。今日のことは私と亮君だけの秘密だから。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、臨海学校当日の早朝。

 臨海学校でお世話になる旅館はIS学園からかなり離れた場所にある。だから、昼頃に到着するにはここを朝早くに出発しないといけない。亮君は朝早いから見送りはいらないと言っていたけど私は見送りしたい。だから、朝は亮君と一緒の時間に起きた。

 

 

 出発直前に亮君が私に伝えたいことがあるって言ってた。私もあるのよ。だから、早く帰ってきて。

 

 

 

 亮君を送り出してから私は一人部屋に戻った。キッチンには亮君がいつも淹れてくれるコーヒーサイフォンがあって、食器棚には私と亮君の食器がある。もちろんお揃いのお弁当箱も。ベッドには枕の脇にあの時に取ったぬいぐるみがそれぞれのベッド脇に置いてある。こうやって改めて見回すと私って亮君と出会ってからずっと一緒にいたんだ、って改めて思った。早く帰ってきてね。

 私は、亮君をさっき送り出した所だけどそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 寂しい。亮君がいない。

 亮君はあまりメールなんかを送ったりしない。夕方くらいに連絡をくれるって言ってた。授業の邪魔にならないように考えてくれたようだけど私は何時でも連絡をいれて欲しい。私は今日ずっと携帯を握りしめている。早く連絡来ないかな。

 そしてやっと待ちに待った亮君から連絡が来た。その内容は海でしたことなんかが書かれていた。それと一緒に砂浜の写真なんかが一緒に送られてきた。今度は二人で行きたいな。そう返信したら直ぐに[もちろんだ]って返信が返ってきて私は一人微笑んだ。

 

 

 

 あと、最後に、中国の代表候補生がいじり甲斐のある面白い子だという内容のメールが来た。ふふっ、面白そうな情報ね。今度私も一度お話してみようかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 む〜。亮君のいない部屋は寂しい。私は、今日の授業のが終わり、夕食を食べ終え、一人部屋に戻った。今日は、なんとなくシャワーで済ませる。シャワールームには、いつも亮君の使うシャンプーなんかが置いてある。私はそれらをなんとなく眺めながらシャワーを浴びていた。

 それから寂しさを紛らわすために豆男君を抱いてベットに倒れ込んだ。いつもならここで亮君と二人でお喋りしたりするのだけれど、いない。消灯時間までまだ時間は残されているけれど、私は早く寝ることにした。その際、亮君のベット脇にある豆次郎君を拝借して豆次郎君を抱きながら目を閉じた。

 

 おやすみ、亮君。

 

 私は、今は遠くにいる亮君に向かって一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、起きた時にメールが来ていた。送り主は亮君で[おはよう]の一言だけだったけど私は嬉しくて朝から機嫌がとっても良かった。もちろん直ぐに『おはよう』って返信をしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、臨海学校に行った彼からの最後の連絡だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビール美味しい。


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天災

新年あけましておめでとうございま…した

久しぶりの更新ですね
というのも、改訂前からはこの話を境に大きく流れが変わるかと思います。改訂前をご存知の方はとあるキャラの変化に「!?」ってなるかもしれません。

なお、タイトルの「改訂版」については、話がここから変わるのを機に消そうと思います。


 事の始まりは、臨海学校二日目の夕方。

 

 

 

 

 待機を命じられてもう三時間以上が経った。……暇だ。というか、なぜ待機なのかもわからん。一人しりとりでもするか。……やめとこ。惨めになりそうだ。

 そういえば、今日はまだ朝以外に更識に連絡一つしてないな。丁度夕日が見えるからそれを添付しようとするか。

 俺は、ふとそう考え離れから出る。スマホだけを持って外に出る

 

 その後、俺が見たのはこちらに迫り来る無数のエネルギー弾だった。

 

 

 俺は、崖の端の方に立っていたために直撃はしなかったが、さっきまで俺のいた離れに着弾した弾が建物を吹き飛ばした。その際の爆発の衝撃で弾けとんだ建物の残骸と共に崖から海に落ちていった。俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 痛い。体中が痛い。おそらく、吹き飛んだ時に何処かでぶつけたのかもしれない。死ななかっただけマシか。左腕が痛ぇな。

 痛みのあまり目を覚ました。痛む左腕を見てみると二の腕には包帯が巻いてあった。誰かが手当てしてくれたようだ。

 その後、辺りを見回すが何もない。薄暗い部屋にリノリウムの床でまるで病院もしくは研究所のようだな。

 どこだ?ここ?

 状況を整理してみても訳がわからない。吹き飛ぶ→海にダイブ→?(今ここ)

 

 とはいえ、何時までもこのままでいるわけにもいかず俺は、唯一ある扉に向かって歩き出した。

 スライド式の扉の前に立ち、ドアノブを握って開けてみた。鍵が掛かっているかとも思ったが扉はすんなり開いた。閉じ込められている訳ではないようだ。

 薄暗い廊下を部屋から顔だけ出して廊下を覗いてみる。廊下も部屋と同じく薄暗く点々とついている赤い非常灯以外何も見えない。

 靴も無くなっていたので俺は裸足で外に出る。窓一つない廊下に俺の足音だけが微かに響く。

 

 

 しばらく代り映えしない廊下を歩いていると、廊下の先に一か所だけ部屋から明かりの漏れている場所があった。隙間から中を覗くとカタカタとキーボードを打つ音が聞こえてきた。

 そっと、部屋を覗いてみると、女がいた。変なやつ。フリフリした服に変なカチューシャ?付けたみたいな女。

 

 俺はこいつを知っている。これは俺に限らずこの世界にいる人間なら誰しもが知っている。

 

 

 

 篠ノ之束博士。IS造った人。

 

 

 

 何時までもここでのぞき込んでいるわけには行かない。一応扉をノックして見るが相変わらず、キーボードを打つ音は止まらない。埒が明かないので扉を開けて中に入る。

 

 

 篠ノ之束は、俺が中に入ってもカタカタしてる。よくわからんが、投影ディスプレイには、DNA構造の二重螺旋構造が回ってたり、染色体が解析?されてたり、同じようなディスプレイが二つあるから比較でもしてるのかもしれん。おそらく、俺のDNAと誰かのを。

 

 ディスプレイを眺めていると気が付けば篠ノ之束がこちらを見ていた。

 

 「どうも」

 

 「………ねぇ、なんでこんなとこに居るの?」

 

 「なんでって、こちらとしてもどういう状況か把握しておきたかったので」

 

 「ふ~ん」

 

 「説明してくれる気はあります?」

 

 「なんで束さんがバグなんかの為にそんなことしなくちゃならないの?」

 

 バグとは、俺の事か?

 

 「束さん、バグってほんとに嫌いなんだよ。何処にでも湧いてくるしさ。いい迷惑ってやつだね」

 

 そう言いながら篠ノ之束は俺の方を見る。いや、こいつは俺という存在を見てはいない。言葉の通りに俺というものをバグという存在としてみているのだろう。決して、人間同士で会話するときに向ける視線ではない。

 

 だが、ここで言い返すにしてもまだ篠ノ之束という人物について情報が不足している。

 

 「本当はISに乗れるのはいっくんだけのはずだったのに。まさか、たまたまいっくんに合わせて作ったISの搭乗プログラミングが誤認してバグをうんじゃうなんてね」

 

 いっくんとは、一夏の事か。そういえば、前に一夏が篠ノ之束について言っていたな。彼女は、興味のあるもの以外は見ていないと。まさにその通りのようだ。おそらく、織斑一夏、織斑千冬、篠ノ之箒以外は篠ノ之束には見えていないのだ。

 こういう人間には話し合いは通じない。

 

 「まるでガキだな」

 

 「んん~?何かな?この天才束さんに何か言った?」

 

 「ガキだって言ったんだ。あんた、なんで旅館に攻撃した?」

 

 「それはね、箒ちゃんにプレゼントする為とプレゼントを使うきっかけの為だよ」

 

 「死人が出てもか?」

 

 「何言ってるの?いっくんも箒ちゃんもちーちゃんも近くにいないのは確認してたし、それ以外がどうなろうと知らない」

 

 少なくとも俺には理解できない考えをしている為に言葉が出ない。こうして話している俺にさえこいつは興味がないのだ。

 

 「それで?なんで束さんがガキなのかな?君よりは賢いよ」

 

 「確かにあんたは賢いさ。だがな、それに行動が伴わない。その有能な知恵をガキの我儘に使っているだけだ」

 

 「そう。でもそんなのはバグの考えでしょ?束さんは束さんのやりたいようにやるから」

 

 「そうか。なら、精々一夏たちに見限られない様にすることだ」

 

 そう俺が言った瞬間、不意に膝が抜けた。遅れて太ももに焼けるような痛みと視界が白く染まる。

 

 「ぐっ」

 

 「おおーすごいね。悲鳴上げないんだー」

 

 歯を食いしばり脂汗をかきながら顔を上げるとそいつは手に拳銃を握っている。手のひらに収まるくらいの小さなデリンジャーだ。

 

 「っぐ。てめぇ」

 

 「おおー怖い怖い。でも、君もひどいな。束さんだって怒るよ。有象無象に束さんといっくんたちの関係についてまで言われたくないなぁ」

 

 にやにやと笑いながら篠ノ之束はいう。一見服装も相まってふざけたように見えるが彼女の目はその奥に怒りを宿している。

 

 「そう…か…でもな。俺だって一夏とは親友なんだよ。あんたと違って知り合ったのは最近だ。でもな、あんたみたいなのがいると迷惑なんだ。俺だけじゃねぇ。一夏が迷惑なんだよ。お前にとっちゃ一夏しか見えてねぇ。なら、今回の旅館の攻撃の時の様に一夏の知り合いが被害を受けて見ろ。一夏は無傷でもあいつの親しい人間が傷つくんだよ」

 

 「そう。でも束さんには関係ないね」

 

 「そうだな。でも、一夏からすりゃお前のせいで周りの人間が傷つくんだ。今はまだお前の関与を知らねぇ。だが、これから先はどうだ?」

 

 「………」

 

 「あいつは優しいからな。疑いだけでお前を弾劾するようなことはしないだろう。でもな、それが確信に変われば、たとえあんたでもあいつは許さねぇだろうよ」

 

 「……うるさいなぁ。うるさいんだよ!バグの分際で!束さんが何をしようが束さんの勝手なんだから口出ししないで!」

 

 そう言って篠ノ之束は大声を上げる。俺はそのすきを見逃さずに駆ける。撃たれた左の足を庇うように右足で地面を蹴って篠ノ之束を抑え込む。狙いはこいつの持つ右手の拳銃だ。

 突然の俺の行動に篠ノ之束は驚いた表情をする。構わず俺は飛び掛かり、手から拳銃を奪い取る。

 

 「きゃ!」

 

 右手で拳銃を奪い、左手でそのまま束を倒してその額に銃口を突き付ける。

 

 「お前が好き勝手するってなるとな。俺の大事な奴も迷惑を蒙るんだよ。そうなるようなら俺はお前を殺す」

 

 篠ノ之束をあまりの展開にぽかんとした後、笑う。

 

 「あははは。束さんここで死んじゃうのかな。天才発明家ここで終了ってね。いいよ。殺してよ」

 

 先ほどまでの感情を露わにした表情から一転落ち着いた表情をしてそう言う。

 

 「…俺としては、今後自重してくれると最も助かるんだが」

 

 「だって自重しろって言われても束さん今までずっとこの生き方してきた訳だし。君の言う行動を取れるかなんか分からないよ」

 

 銃口と突き付けたままの俺を真っすぐ下から見上げながら篠ノ之束はそう言う。 

 

 「…なら誰かに聞けばいいだろ」

 

 「何言ってんの?束さんにはそんな人いないよ」

 

 「…織斑先生とかいるだろ?」

 

 「あーだめだよ。ちーちゃんは脳筋だからね」

 

 「それでも相談するくらいすればいい」

 

 「君は分かってないなぁ。この天才束さんが誰かに相談するなんてこと今まで一度もしてきたことなかったからやり方が分からないのさ」

 

 そう言いながら決め顔をする。先ほどまで割と真剣に話していて、今も俺が銃口を突き付けているというのに話と現在の俺たちの格好がどこかちぐはぐになっている。

 

 「あんた、ほんと色々とダメだな」

 

 「何をー!その分はこの胸と頭脳に行っているのだよ。………とまぁ、ふざけるのはここまでにしようか」

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの楯無の更新ですねぇ
年末にデレステを2作品急に書こうと思って始めてました。









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