Doctor`s blood (EIMZ)
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 第1話は序章とも言う

ニーハオ EIMZです。
今回から新小説を投稿していきます。ヒロインは真姫ちゃんです。気楽に読んでいただければ幸いです。


 天使生誕目録

                  著者 西木野 雄真

 

 『僕が4歳か3歳だったかよく覚えていないが、この頃僕の人生は一転した。この世界に天使が降臨したのだ。そしてその天使様はこの世界では僕の妹として転生なされた。初めて彼女を見たときから僕は魅了されていた。彼女もまだ生まれたながらにしても僕を見た瞬間笑ったのだ。この天使の笑顔には誰にも逆らえない、そう思った。ではなぜそんな天使様が僕の妹としてこの世界に転生してきたのだろうか。答えは明白だ。神が彼女を悪しき者たちから守る役目を僕に与えたのだ。僕は自分の命すべてを使ってでも彼女を守らなければならないのだ。これは天命なのだから。そして僕たちはいずれ結ばれる。これも神が決めた運命なのだろう。そう、僕たちは運命共同体、いや運命兄妹体だ!僕はいずれ彼女のすべてを知り、すべてを受け入れる。かわいく、いとおしく、尊く、愛らしく、美しく、賢く、気高く、まさに女神のような我が妹。そんな女神であり、天使であるかのような僕の妹の名は、

      西木野真k・・・・』

 

続きをパソコンに打ち込もうとした瞬間、背後から頭部に衝撃が走った。足元を見ると分厚い本が一冊落ちていた。どうやら痛みの正体はこれだろう。誰かが頭部にこの本を投げてきたのだろう。こんなことをしてくる人物は僕の知る限り一人しか知らない。

 

「何をするんだ!真姫!」

 

振り返るとそこには赤髪が印象的な少女、僕の妹、西木野真姫が立っていた。

 

「それは私の言葉よ!さっきから何を書いてるのよ!パソコンにそんな集中して

何かを打ち込むなんてどうせろくな物じゃないんでしょ!」

「酷な物じゃないとか言うな!これはだな、我が天使である妹、西木野真姫の誕生を書き記したドキュメンタリー小説だ。きっとこの作品は公正にも残って僕たちの関係は未来にも語り継がれるだろう。そんな僕の傑作になるであろう作品を愚弄するか。たとえ相手が妹であろうとも許しはしないぞ。ここには僕たちの愛が書かれているのだからな。」

「ほら!ろくなものじゃないじゃない。それに私たちの間に愛なんてないんだから!」

「ハハハ。何かの冗談だろう。愛ではなくloveなら存在するとか・・・。」

「違うから!それにloveじゃなくてlikeだからね!あくまでlikeだから!」

「まったく、これだからツンデレは素直じゃないから困るな。でも安心しろ、お兄ちゃんはちゃんと理解してるからな。」

 

そう言って真姫の頭を撫でた。すると妹は頬を赤くしながら、頭を撫でている僕を見てきた。

 

「ちょ、ちょっと!やめてよ、お兄ちゃん!」

「そんなこと言って、本当は嬉しいくせに。ほら、頬は素直だよ。」

 

笑いながら赤くなった頬を突っついた。赤くなったふくらみを触ると柔らかい感触で指を跳ね返してきた。反応も感触の一流だ。まあ、妹以外の頬を触ったことはないんだけどな。それでもわかる、妹以上の存在などいるわけがないんだからな。

 ここで一様妹について自己紹介をしておこう。さっきは途中で邪魔されてしまったからな。まず、今僕に頭を撫でられているのが、天使であり、僕の妹の西木野真姫。成績優秀でこの美貌。まさに完璧な美少女だ。兄は誇らしいぞ。妹は僕と三歳違いで、現在16歳、高校生だ。髪は赤く、瞳はアメジストのように輝いている。あと、学校でスクールアイドルとか言うのをやっている。普段はクールだが、今はおとなしく頭を撫でられている。そんな真姫が何かを思い出したように話し出した。

 

「そういえばお兄ちゃん、ちゃんと論文は終わらしたの?」

「問題ない。5時間ほど前にとっくに終わったよ。」

「ほんと、こういうところはしっかりしてるわね。」

「もしかして真姫、お兄ちゃんを心配してくれたのか?」

「ち、違うわよ!ママとパパがお兄ちゃんを呼んで来いって言ってたのよ!」

「なんだ、そうなのか・・・。」

「そんな露骨にがっかりしないでよ。」

「まあいいだろう。どうせ論文のことだろうしな。」

「大学生も大変ね。」

 

そういえば僕についてまだ話していなかったな。僕は西木野雄真。19歳の大学生で医学部に入っている。顔も頭もい完璧な存在で妹思いな妹バカ。現在は論文を書いている。僕についてはこれくらいでいいかな。妹についてならもっと書きたいが、今は親が待っているリビングに向かうことにした。

 

「おっし、行くか。」

 

リビングに向かうため、真姫とともに自室を絶った。階段を下りてリビングに向かうと、すでに父と母が僕らを待っていた。

 

「雄真、そこに座れ。」

 

僕らの父が自分の向かい側のソファを指さした。

 

「はい。」

 

ここは言われるがまま、父の向かいに座った。すると父は真姫にも目をやった。すると今度は僕の隣のソファを指さした。

 

「真姫も座りなさい。」

 

真姫も父に言われるとおりに僕の隣に座った。やった、自然と真姫と隣になった。ナイス、お父さん。まあ、父はそんなこと考えずに言ったのだろう。そりゃあそうだ。自分の隣には自分の妻、つまり僕たちの母が座っているから、自然と自分たちの前に子供を座らせるよな。

この後しばらく沈黙が続いた。この沈黙を破ったのは父だった。

 

「雄真。大学はどうだ?」

「どう、と言いますと?」

「今の状態で満足しているのかという質問だ。」

「そうですね。成績トップで論文も先ほど終わらせたし、今の現状でこれ以上望むものはないかと。」

 

僕の答えに父も母も同じような表情をした。何かを、決意したかのように。父はまた口を開いた。

 

「雄真、留学に行く気はないか?」

「留学、ですか・・・」

 

ええーめんどくせーー。第一外国に行ったら真姫にも会えないじゃないか。そもそも僕が外国に行っている間に真姫にどこぞの誰かが手を出したらどうするんだ?!馬鹿か!という文句を言いたかったが、父にそんなことを言うことはさすがにできない。仕方なく言葉を飲み込んだ。

 

「・・・しばらく、考えさせてください。」

 

そう告げると、僕は自室に戻っていった。真姫も父も母も黙って僕の背中見ていた。

自室に戻ると扉の前に立ち、部屋を見渡した。18年近くの思い出がこの部屋の詰まっている。しばらく扉の前に立ってから、部屋の端に置いてある本棚へと向かった。ここには小さいころ、主に真姫がこの家に来てからの日記が並べてある。そっと、並べられた日記の背表紙に手を触れた。何年も前に自分が書いた日記。そのの中には、大体真姫に関することが書いてある。僕は4冊目くらいの日記を手に取った。しばらく、昔の思い出にふけることにした。

 

 

 

 




第1話は少し少なめにさせていただきました。他の作品だったり色々と用事をため込んでしまっていて。申し訳ありません。次からはできる限り多く書いていきますので。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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始まりはロリで始まりはツンデレである

 これは遠い昔の記憶。今までは家族三人と使用人数人しかこの家にもう一人の家族がやってきた。ある日突然、一人っ子だったのが兄という存在になったのだ。最初は自覚なんてものはなかった。ただ父に連れられて病院に行くと、そこにはベッドに横になっている母の姿があった。最初は母が病気にかかったのかと思った。しかし僕の予想は外れた。母は僕に気が付くと僕に向かって手招きをした。僕は母のもとに近づいた。

 

「雄真、今日からお兄ちゃんになるのよ。」

 

母はそういうと自分の隣を指さした。その時の僕の身長では母が指さしたものは見えなかった。しかしそのことに気づいた父が僕のことを持ち上げてくれた。父の手を借りて見えた光景には言葉を失った。そこには小さな赤子がスヤスヤと眠っていた。母の父も小さな赤子を黙って見つめている兄と、小さな兄に見つめられる妹の姿を暖かな目で見つめていた。しばらくしてから父の声が後ろから聞こえた。

 

「名前は真姫だ。真の姫と書いて真姫だ。」

 

真姫。妹の名前は真姫。確か僕の名前は真の英雄と書いて雄真だった。ずっと前に父が話してくれたことを思い出した。

 

「雄真、あなたはこれからあなたはお兄ちゃんなのよ。妹はお兄ちゃんが守ってあげなくちゃだめよ。」

 

兄が妹を守る。母は僕が真姫を守ることを望んでいる。そっか、お兄ちゃんは妹を守らなくちゃいけないんだ。父に持ち上げられている僕を見ながら微笑む母の姿を、僕は見つめ返した。

 

「うん!」

 

この時の僕は本気で妹を守らなくてはならないと思っていた。それも真姫が姫だとしたら僕は騎士になるんだ、というくらいの気持ちだった。真の英雄という意味の名前は妹を守るために与えられた名前なんだと思っていた。

 きっとこの時が妹バカな西木野雄真と兄に愛される妹の西木野真姫の誕生だったのだと僕は考えている。

この日は父と一緒に先に家に帰った。その家に帰ってるとき、僕はある決意とともに父に一つの質問をした。

 

「ねえ、パパ。」

「何だ、雄真。」

「人はどうやったら強くなれるの?」

 

いきなりの息子から向けられた予想もしない質問に父は少し動揺していた。そして少し悩んでから答えてくれた。

 

「強さには色々な意味で強くなるというが、父さんの考えで言うと全ては自分に確実的な自信を持っているものが強いんじゃないのかな?」

「確実的な自信?」

「ああ。でもただの自信過剰は強者ではなくただの愚か者だ。」

「・・・どういうこと?」

「いずれわかるときが来るさ。」

 

そいうと父は僕の頭をくしゃくしゃとなでた。この時、父が歩く先には夕日が輝いて見えた。幼いころの僕は父が言ってたことが理解できなかったが一つ確かな目標のようなものだ出来た。この人のように、父のようになれば強くなれるのだと思った。僕たちは再び歩き出した。

 

そしてそれから数日後、母が退院して家に帰ってきた。小さな妹とともに。父からの提案で記念写真を撮ることになった。母と父に挟まれて僕は立って、真姫は母に抱かれている形になった。その時の写真は多分父の書斎に置いてあるアルバムに乗ってあるはず。

その後からはよく覚えている。しばらくは真姫がゆりかごに入っていたのを見ていた。その時にふと思いついたことがあった。真姫の成長を日記にしようと。それから自室に戻り新品のノートを取り出した。

 4月 26日 

きょうも妹の真姫はかわいい。

次の日も

 4月 27日

きょうも真姫はかわいい。

また次の日も

 4月 28日

今日も真姫はかわいい。

 

 ・・・と、以下30ページにわたって同じような内容が続いた。他人からしたら正気の沙汰じゃないかもしれないと思うかもしれない。しかしこれを書いた本人の僕からしたら『そうか、昔から真姫は可愛かったんだな。』としか思わない。あとは字がきれいになっていってるなとか表現の仕方がうまくなっているなとかだろうか。そっと真姫の成長を書き記した僕の成長がわかる日記を本棚に戻した。次にさっきしまった本からだいぶ離れたところに置いてある本を取った。この本は家族で旅行した時の内容を書き記した特別版の日記だ。その日記を開くと予想通りというかぶれないというか、案の定真姫のことしか書いていなかった。どうやらこれは小学校4年生のときの夏休みの内容だった。小4の夏ってなんかのゲームみたいだな。確かこの夏は海が近くがある別荘に行ったんだな。この頃の真姫は小学校1年生くらいか。ロリな真姫も可愛かったな。あの頃は自然と一緒にお風呂に入ったりしたっけな。頭や体を洗ってあげたりしたっけな。・・・いかんいかん。今の真姫の体を洗ってあげるなんていう妄想をしてしまいそうだ。まあ、昔の真姫もよかったんだがな。あの頃は真姫をお兄ちゃんっ子にしようと頑張っていたんだがな、今では結構なパパっ子になってしまった。

 

小学校四年生の夏、お盆になったころ。家族4人で別荘の一つに行った。近くに海もあるから潮風が気持ちい、いわゆる避暑という奴だろう。東京は蒸し暑いがこっちはまだ涼しかった。別荘に一番近い最寄りの駅からは4人で並びながら歩いて行った。僕と真姫を挟んで父と母が歩いた。つまり僕は真姫と手をつなぎながら歩いていた。さすがに恋人繋ぎはしなかったが、真姫の小さく白い手は柔らかくほんのりと真姫の体温を感じた。真姫はまだ小さいから手を握る力はそれなりに強かった。しかしそれだけ兄を信頼しているのかと思うと少し強い力もなんだかうれしかった。

しばらく歩くと目的の別荘に着いた。他の別荘には何度か行ったことがあったが、ここに来るのは初めてだ。初めてが真姫と一緒とは光栄だね。中に入ると、たくさんの家具が置いてあり、家と特に変わらないような気分になった。しかし家と同じようと言えども、家の方が広いここで一つの疑問が頭によぎった。

 

「お父さん、僕らどの部屋で寝るの?」

 

父は僕の質問に少し考えたそぶりを見せたが、すぐに返答した。

 

「一つの部屋に全員寝れると思うぞ。」

「そう。わかった。」

 

たぶんベッドが二つ置いてある部屋だろう。僕と父、真姫と母で一つずつだろう。僕と真姫で一つでいいんだがな。いくら兄妹でも親は許さないだろうな。まあ仕方ない。しぶしぶお父さんと同じベッドで寝てやるよ。そんな考えを持っていると、父が何かを悟ったかのように問いかけてきた。

 

「雄真、一人の方がよかったら部屋があるぞ。」

「?! 本当?」

 

いきなりの血tからの提案に少し戸惑ってしまったが、父の提案に賛同することにした。

 

「じゃあ、一人で寝る。」

 

部屋を決めてから、僕らは海に行くことにした。僕は父と先に水着に着替えて荷物を別荘の前のビーチへ向かった。パラソルにレジャーシート、その他もろもろのものを父がもち、僕まだ軽いドリンクや浮き輪などを持った。

 

「雄真、真姫は海に来るの初めてだから浮き輪を膨らましておいてくれ。」

 

そう言いながらお父さんは含まらすあ機械を取り出し、僕に渡した。

 

「ここに刺せばいいの?」

 

そう言いながら浮き輪の線を指さした。

 

「ああ、ここにこれをさしてこのボタンを押すだけだ。」

「わかった。」

 

浮き輪を膨らまし待っていると、しばらくしてから母と真姫が水着で来た。真姫の水着は白のワンピースでとても愛らしかった。白いワンピース水着を着た真姫の姿はまさに天使のようだった。赤い髪が白い水着で強調されていてとても美しく輝いていた。まぶしすぎる!あ、お母さんの水着はよく覚えてない。興味ないし。

 

「おまたせー」

「待ってるの暑かった。」

 

そういう僕をなだめるかのように僕の頭を撫でた。

 

「ごめんね。でも女の子は色々と時間がかかるの。」

「どうして?」

「いずれわかる日が来るわ」

 

そういうと母はまた頭を撫でた。何だかなだめられたようで少し屈辱。お母さんが僕の頭から手を離すと、お父さんと見つめ合った。

 

「きれいだよ。」

「フフフ、ありがと。」

 

いい年していつまでやってるんだ。そんな親の会話も気にせず真姫がお母さんに話しかけた。

 

「ママ、海。」

「はいはい。あなたお願いしていい?」

「ああ。それじゃあ真姫、行こうか。」

「うん!」

 

真姫はお父さんと海に向かって浮き輪をもって走っていった。そして僕と母はパラソルの下で本を読みながら日光浴をしていた。そして時折海から聞こえる真姫と父の声に耳を傾けていた。そして本の隙間から見えた景色には満面の笑顔で笑う真姫の姿があった。本当に天使のようだ。初めての海で気持ちが高まっているのだろう。その笑顔を見ていると自分の心が浄化されそうになってしまう。自分の心が薄汚れていたように思えてきた。それくらいの威力があったのだあの頃の真姫には。まあ、今も可愛いけどな。

 

小4の時の特別日記はここで終わっていた。ということはこの後真姫に関することは特に起こらなかったということか。わかりやすいな。あの時の海で遊んでいる真姫の笑顔は今でも脳裏に焼き付いている。はあ、あの天使がいまではあんなにもツンデレに成長するとは。まあ、これはこれでいいけど。

今読んでいる章を読み終わるとこの本を片付けた。そしてベッドに仰向けで倒れこむと、最近の思い出を思い返していた。最近というのはもちろん真姫がよくわからないグループに入ってからの記憶だ。まだ新学期になってから1か月たったか立たないかの期間なのに色々なことがあったな。

僕は瞼を閉じて記憶の世界にへと入っていった。




んん~~ロリ!theロリ。めっちゃロリ。
 小さい子を書くのって難しいですね。僕末っ子だから年下いないんですよね。
ああ~妹欲しい。とかリアルで言ったら姉さんにぶたれそう。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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悩みに悩む妹に悩む兄

4月。僕は大学に入り、真姫は高校に入学した。今年から入った僕の通っている大学は、正直つまらない。なぜかって、そんなの真姫がいないからに決まってるだろ。まあ、中学入学も高校入学のときも同じようなことを言ったような気がする。成長しないな。いや、これに至ってはどうしようもないことか、しょうがないね。

今日の大学の授業で習った範囲の復習も、明日の範囲の予習を終わらした。というか今月の範囲の予習は全て終わらしてしまった。大学に入ってから2週間ほどたったが特にやることはなく、毎日に退屈していた。まったく、完璧すぎるもの罪なものだ。なので今は家のリビングのソファに座りながら適当に本を読んでいた。最近は世界の謎に関する本をよく読んでいる。今はクトゥルフ神話に関する本を読んでいた。大学の図書館の奥の隅の方にこっそりと置いてあったのを借りてきた。怪しそうで少し興味をひかれた。昔からこういう本をちょくちょく読んでいた。知り合いの考古学者がよく本を貸してくれたものだ。しかしなぜ今更こんな本を読もうと思ったかと思うと、自分でもよくわからない。しいていえば、何かが起こりそうだったから。僕のこういう時の勘はよく当たる、不吉なほどに。今までだと真姫が生まれる前、後はあいつと出会うちょっと前。この話はまたいつかしよう。僕はそんな妙な予感に包まれるといつも本を読む。それもSF作品が多い。今回もまた何かが起こるのだろうか。

しばらく紙の上に描かれた邪神の物語の世界に浸っていると誰かが階段を下りてくる音がした。父は仕事の出張中、母はキッチンにいる。他の使用人たちも母と一緒にいるはずだから、この足音は真姫のものか。階段からする足音がやみ、リビングのドアを開ける音がした。後ろを見なくとも、電源を切ったテレビの黒い画面に真姫の姿が見えた。真姫は僕が座っているソファの近くまで来ると後ろから話しかけてきた。

 

「お兄ちゃん、お風呂先に入ってもいい?」

「? ああ、いいぞ。」

 

僕の返事を聞くと真姫はすぐに自分の部屋に戻った。着替えを取りに行ったのだろう。しかし珍しいな。真姫が先にお風呂に入りたがるなんて、いつもは僕が入った後に入ってゆっくりするタイプなのに。先に入りたい理由でもあるのだろうか。まさか僕と不純異性交遊を・・・なんて馬鹿な考えはよそう。真姫に至ってそんなことはあり得ない。部屋に戻っていく真姫の表情はいつもと少し違って見えた。どこか悩んでいるような表情に見えたが気のせいだろうか。

 

1時間ほど経過すると、真姫がお風呂から上がったようだ。ドライヤーの音が聞こえる。僕は座って読む体勢に疲れてしまい、少々はしたないがソファに寝っ転がるような状態で読書に耽っていた。本もだいぶ長く読み進み、やっと中間のページに達した。ただでさえこの本は長いので読み終わるのに時間がたってしまう。一度読んだとはいえ、結構ハイペースで読めたと思う。真姫とお風呂の順番を変わらなかったらここまで読み進めることはできなかっただろう。真姫に感謝だな。本から目を離すとドアの前に立っている真姫の姿が見えた。髪をタオルで乾かしながらリビングにやってきたようだ。

 

「何だ、上がったのか。」

「・・・ええ、先に入らせてもらったわ。」

「そうかい。」

「お兄ちゃんも入ったら?」

「もう少し読んだら入るよ。」

「何読んでるの? またわけのわからない神話の本?」

「ああ、クトゥルフ神話な。真姫もいつか読んだら面白いと感じるよ。」

「そんなものかしら? ・・・じゃあ私は自分の部屋に戻るわね。」

「ああ。」

 

やはり、真姫はどこかうつろな表情をしている。何か考え事だろうか。この年の男女は扱いは面倒なんだよな。まあ、真姫が自分だけで解決できなくなったら手伝ってやるか。また本に目を戻すと、視界の端から階段を上がっていく真姫の姿が見えた。お風呂上がりの真姫の背中を見送るともう一度読書を再開した。

・・・・・・ん? お風呂上がりの、真姫? いつもは僕が先に入る。真姫はその後に入る。今日はいつもと逆? つまりいつもは僕が入ったお湯に真姫がつかるが、今日は逆? 僕が真姫が入った後にはいる。 真姫が入ったお湯に僕が入る。 ということは、今お風呂場には真姫が入ったお湯があることになる。 真姫が入ったお湯? 真姫が入ったお湯?! 真姫が入ったお湯!! 読書なんてしてる場合じゃない。はやくお風呂に行かなくては。母が入るより先に入らなくては。さっきまで真剣に読んでいた本をソファに置き、大急ぎで自室に戻ると、着替えをもって全速力でお風呂場に向かった。そして浴室の扉の前に着いた。中には誰もいないことを確認すると、中に入った。そして絞められた浴室の向こう、脱衣所からは不気味は笑いが聞こえてきた。

クックック。ついにこの時がきた。真姫がつかったお湯、それはもはやただのお湯ではなくなる。それは神の水浴び場にも相当するほどの価値になる。効能も疲労回復にセラピー肩こり予防に若返るほどだ。(実際にはそんな効果はないと思います)一度見ただけでですべてのものを魅了する真姫が入ったお湯だ。一口飲めば全てを癒す力を持った万能薬にだってなるだろう。(実際にはならないと思います)このお湯は瓶か何かに入れて永久に部屋に飾っておこう。さあ、この水蒸気で曇った扉の向こうには楽園が広がっているのだ。この奥のバスタブの中には天使の泉が待ち構えている。ここにさっき真姫が入ったと思うと・・・ぐふふ・・・うぇへへ・・・興奮が収まらない。これは相当は覚悟が必要だな。一度深呼吸をしておこう。ふぅー、はぁー。よし落ち着いた。いざ、楽園に参ろうぞ。勢いよく問らを開く真っ先にバスタブに向かった。そしてその勢いのままバスタブに入るとざっぶーんという音とともに水しぶきがたった・・・・・・・はずだった。かわりにガンッという固いものに思いっきりあたるような音がした。それと同時に足の裏に衝撃が走った。数秒何が起こったのか、理解できなかった。なぜお風呂の床に足をぶつけたのだろう。なぜお風呂にお湯が入っていないのだろう。どうしてあるはずのものが無くなっているのだろう。横を見ると、お風呂の線が抜けていた。・・・真姫が線を抜いたのだろうか。もしかして真姫は僕が真姫の入ったお湯に入るのを阻止するために抜いたのか。僕が真姫の入った残り湯を売り飛ばすとでも思ったのだろうか。そしてお湯を抜いてから自分の愚かさに気が付き、僕に謝るためにリビングに行ったはよかったが僕が先に話しかけてしまったため、謝るタイミングを逃してしまった。それで少しうつろな顔をしていたのか。いや、まだそうと決まったわけではない。もしかしたらもっと違う理由があったかもしれない。例えば真姫がお風呂に入っていると、急にお湯の一部がいきなり血に変わり、徐々に赤く染まり始めて、じわじわと赤く染まった部分が広がって、最終的にお風呂一面が血で赤く染まってしまい、真姫のSAN値が減ってしまって、その血に驚いてお湯を抜いてしまった。それでさっきリビングに来た時にうつろな顔をしていたのは、悩みではなく、動揺だった、とか?いや、それはクトゥルフ神話の読みすぎか。いや、自分で考えるよりも真姫に問いただしたほうが早いか。まだ少し衝撃で痛む足を動かし2階の真姫の部屋に直行した。そして真姫の部屋の前に着くと、足を痛めることを覚悟して真姫の部屋のドアを蹴り開けた。少々切れ気味の僕であった。

 

「まぁぁぁぁぁぁきぃぃぃぃぃ!!!」

 

少々ではなくだいぶ切れ気味の間違いだったか。いきなり自分の部屋のドアが開いたことに真姫は驚いたようにこちらを向いたが、こちらを向いていた顔はすぐに赤くなった。

 

「ちょ、ちょっと!お兄ちゃん、服着てよ!!」

 

真姫の発言の意図が分からず、自分の体をに目を落とすと、そこには腰にタオルを巻いただけの自分の体があった。

 

「おっと。」

 

大急ぎで隣の自室に向かい適当に服を着ると、もう一度真姫の部屋に向かった。

 

「真姫!どうしてお風呂の線を抜いた?!」

「えっ?」

 

真姫は訳が分からないというような顔をしたがすぐに自分の行ったことに気が付いたのか、はっとした。

 

「ま、間違えてお湯抜いちゃった。い、いつも最後だから、その癖で・・・。」

「なんだ、そんなことか。」

「そ、そんな事ってお兄ちゃん怒ってたんじゃないの?」

「いや、あれはちょっと行き過ぎた考えだった。」

「何を考えたのよ・・・」

「聞かないほうがいいぞ。SAN値が削れる。」

「そ、そう。」

 

真姫は何かを悟ったようでそれ以上は追及してこなかった。兄の考えが瞬時に理解できるとはさすが我が妹だ。しかし今回はそんな完璧な妹のうっかりミスだったということか。

 

「しかし珍しいな。君がこんなミスをするとは。何か考え事か?」

「別に・・・」

 

何かを隠すように真姫は視線をそらした。そして一瞬だがその視線が机の上に向いたのを僕は見逃さなかった。視線の先のテーブルの上には一枚の紙が置いてあった。すこし遠くて見えないがそこに書かれているのは詩か歌詞かポエムだろう。これが原因なのだろうか。

 

「テーブルの上の紙のことで悩んでるのか?」

「?! な、何言ってるのよ、イミワカンナイ。」

「・・・図星だったか。君の癖はすべて把握している。動揺すると目が一瞬大きく開く、そして高確率で『イミワカンナイ』という。どうやら正解だったようだな。それで、その紙に書かれているのは・・・詩、かな?大方、誰かに渡すか、誰かに渡されたといったところだろうか?それのどこに悩む要素がある?」

「ちょ、それ以上は見ないで!もう!お兄ちゃんには関係ないでしょ!出てってよ!」

 

そういうと真姫は部屋の扉から僕を追い出し、しまいには鍵をかけた。まったくツンデレさんは扱いにくいな。ここまでされては僕もどうすることもできない。しかしテーブルの上の紙の内容は全て暗記さしてもらったよ。フフフ、瞬間記憶にはたけているからね。さて、後はお風呂に入りながら考えるか。

 

一回に降りてお風呂にお湯を張ろうと思って浴槽に向かった。もう一度お湯を入れていると、お風呂のふちにろうそくの溶けたろうが少し残っていることに気が付いた。そのろうから漂う香りをかぐとほのかにバラのにおいがした。これは真姫が好んで使うキャンドルセラピーのにおいだ。そして真姫がキャンドルセラピーを使う時は、緊張と説く時か、何かに悩んでいる時。真姫が何かに悩んでいることは確実だろう。

 

しばらくするとバスタブにお湯がたまったのでさっそくつかることにした。今度はちゃんとお湯が張ってあることを確認してから。お風呂につかりながら今までのことを整理しよう。まず何かに悩む真姫。次にテーブルの上に書かれた詩らしきもの。この二つがファクターだろう。まずあの紙について考えていこう。最初に、あの紙は真姫が書いたのまず書いたのか、それとも他の誰かが書いたのか。この答えは多分他の人が書いたもので真姫に渡したという説が良好だろう。証拠に真姫の机の上においてあった紙の文字は、和風なものだった。真姫が書く文字はもっと楽譜に使うような文字だ。何より真姫が個人的に書くものには自分のサインを書いている。さっきも確認したが、脱衣所に置いてある、真姫専用のキャンドルが入った箱にもしっかりと真姫のサインが入っていた。次に真姫の悩みについてだ。悩むとしたら原因はあの紙でいいだろう。ではなぜあの紙に悩むのだろう。紙を貰って悩むとなると、テストの結果とかだろうか。いやそれはないか、真姫に至ってテストが悪いなんてことない。それに数日前にテストの結果を父に見せていた。では他の紙だろう。例えば、ラブレターとか?でも真姫の入った学校は女子高だしな。たしか国立音ノ木坂女学院高校だったか。女子高についての知識はないが、もしかしてそっち系の子がいて真姫に『私のお姉さまになってください』なんて展開だろうか。いやいやいや、入学したてでそんなこと言うやつはいないだろう。たしか中学から同じ奴も少なかったはず。しかも真姫の学年のクラスは1クラス。その可能性はないだろう。もしかしたらイレギュラーな先輩がいて『君に一目ぼれした。私の妹になってくれ。』とか言った戯けがいたのだろうか。ふざけるな、真姫を妹にしていいのは天命を受けた僕だけだ。でもこのルートは確率が低い。除外してもいいだろう。となると他は他校の生徒か、中学の同級生か。何かを貰うとしたら女子よりも男子の方が可能性委は大きか。とりあえず手っ取り早く全員皆殺しにしてやるか。人の妹に手を出したことあの世で後悔させてやる。・・・・いかんいかん、まだそうと決まったわけではない。落ち着け、決行はまだ早い。とりあえずは先に音ノ木坂に接点を持たないとな。1年生の生徒の兄とかではなく、もっと確実なつながりか、他方からのつながりが必要だな。まずは・・・そうだな、適当な生徒に接触してみるか。

浴槽にはかつてないほどに不気味な笑いがあふれていた。

 

「ククク・・・フハハハハ・・・・アッハハハハ!!」

 

クトゥルフ神話のせいじゃないからご心配なく。




 最近クトゥルフ神話にまたはまったのですよ。3年くらい前は友達と集まってクトゥルフ神話のTRPGやったんですけど、集まってた友達も大半が引っ越しちゃったし、なかなかできない。ああ~また誰かとTRPGやりたいな。SAN値!ピンチ!SAN値!ピンチ!SAN値!ピンチ!ってみんなで言った日が遠く感じるよ。学校に一緒にやる友達はいない。
べ、別にボッチじゃないからね!勘違いしないでよね! というねツンデレの練習もしながら、これからもがんばろー。 
遠く離れた君よ 元気にしているかい。たまにはメールくれ。
すいません、なんか愚痴みたいになっちゃいました。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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サイドテールとストレート~眼鏡を添えて~

真姫の謎の悩み事からはや2週間以上が経った。しかしどれだけ調べても何もわからない。ここまで悩んだのは兄妹で結婚してはいけないという法律の存在意義以来だ。しかしあれからというもの真姫の部屋からピアノの音が聞こえるようになった。もしかして、例のあの詩にピアノの音色で返事をしているのだろうか。・・・それはないか。あの音色、恋を表しているとは思えない。何かと言うと、まるで誰かを応援するような、背中を押して後押しするような音色だった。だとしたら誰を応援するのだろうか。もしかして僕か?ってどこに応援する要素がある。大抵のことはこなせる完璧な僕のどこに応援する要素があるのだ。完璧というものも退屈なものだな。

どんなに考えようとも時間だけは早々と進んでく。そして今は大学で講義を受けていた。やれやれ、どうしてわざわざ理解していることを学ばなくてはならないのだ。よし、寝るか。そう思ってアイマスクをしてしばらく夢に世界に入ろうとすると、隣りに座っている同じく医学部の親友、霧島智哉が僕の頭を叩いた。

 

「何をする智哉。これから僕は夢の王国に旅立って妹しか存在しないハーレムを楽しもうと・・・」

「今は講義中だろ!寝るなよ。主席だろ、お前。」

 

智哉は毎度毎度同じようなことを言わせるなとでも言いたげな顔でため息をついた。こいつは僕が小学校2年くらいからの親友で高校は離れてしまったが、大学で再び再開するという腐れ縁で繋がっている。そしてこいつの主な役目は講義中に夢の世界に入ろうとする僕の妨害行為。なんて奴だ!

 

「・・・今、僕のことを小ばかにしなかったか?」

「・・・・さあ?」

 

こいつは長い付き合いだからか、最近は僕の思考を呼んでくるようになった。プライベートの侵害だぞ。しかも人の健康を維持するために睡眠を取ろうとしているのに、それすらも邪魔するとは。人の健康を邪魔するとは医者志望の鏡にも置けないな。などと考えていたらまた思考を読まれるに違いない。

 

「・・・また僕のことをバカにしていないかい?」

「・・・やっぱりな。」

「何が?」

「別に・・・」

 

智哉のおかげで睡眠の邪魔をされた僕は少し不機嫌になりながらも、真面目に講義を受けた。感想はとてもつまらなかった。

講義が終わると、生徒たちは教室から次々に去っていった。そして教室に残された僕たちは、用意を片付けているところだった。僕はこんなことをしている場合ではないのだがな。などと考えながらけだるそうにノートを閉じると、再び智哉が話しかけてきた。

 

「雄真、次の講義まで時間あるけどどうする?」

「どうしようかね・・・。そろそろ昼だし食堂にでも行くか。」

 

教室を後にした僕たちは、校舎から出てしばらく歩いたところにあ事務棟にある食堂に向かった。いつものことだが、既に食堂にはたくさんの生徒が食事をしていた。彼らが食べているものを見ながら、今日は何を考えようかと考えてるといつの間にか僕たちは前にお盆が並べられている棚の前に着いた。この学校の食堂では注文をするのではなく、既に棚に並べられた食品を取って最後に会計を済ませる形式になっている。ようするに栄養バランスを自分たちで考えて選べ、それくらいできて当然、ということだろう。さっき他の生徒が食べているものと、入り口に貼っていったオススメメニューから今日は海鮮がメインのようだ。徐々に進んでいく列の中、智哉はカニクリームパスタとシーフードサラダを自分のお盆に乗せていた。一方で僕のお盆の上にはトマトとチキンを挟んだサンドイッチと、ツナとチーズの焼きサンド、トマトジュースと、いつもととくに変わらないメニューが乗っていた。それを見た智哉はまたか、というような目で見てきたが、気にせず会計に向かった。合計で500円に達するか達しないかのいつも通りの値段になった。僕よりも列の後ろに並んでいた智哉が会計を済ませると、今日は天気がいいのでテラス席に向かった。春のあたたかな風に吹かれながらの食事はいつもよりもおいしく感じるものがあるからね。

智哉を向かい合う形で座ると、カバンからノートパソコンを取り出した。

 

「また調べものか?」

「ああ。」

 

軽く答えると、右手でパソコンの電源を入れ、左手でサンドイッチを持った。その様子を見て智哉は、あきれたとでも言いたげにため息をついた。

 

「はあ・・・はたから見たら、イケメンで、主席で、医者の息子で、優しくて、完璧な人間。しかしその中身は重度のシスコンで、妹のこと以外、大抵のことには興味を持たず、変な方向にばかり頭を使う残念な天才か・・・・」

「あ?何か言いたい?」

「別に・・・羨ましいなと思ってね。」

「・・・・この顔も頭脳もやらんぞ。」

 

何が言いたかったのだろうか。彼から目を離すともう一度パソコンに目を落とした。すると前から智哉がプライバシーのかけらもない、ご自慢の推理を披露した。

 

「君がそこまで必死に何かを睨むってことは真姫ちゃんがらみのことかい?」

「・・・お前に真姫をちゃんと呼ばれると、少し腹立つが・・・そうだよ。それ以外何がある?」

「・・・色々あると思うけどな。真姫ちゃん、今年から高校生だっけ?」

「ああ、今年から高1だな。」

「音ノ木坂だっけ? 」

「ああ。・・・なぜおまえが知っている?」

「・・・数日前に君が話したろ。」

「そうだったか?」

 

智哉はまたもため息をつくと、今度は自分のスマホを開き始めた。

 

「そっか。真姫ちゃんも高校生か。・・・そういえば、雄真。最近はやっているスクールアイドルって知ってる?」

「スクールアイドル? なんだそれ。」

「最近のJKたちが学生だけで結成したアイドルで大きな大会に出るとかいう、いわゆる部活みたいなものだよ。僕の後輩もやってるんだけど、その後輩が全国でも結構強いらしくてさ・・・」

「ふーん・・・・そういやお前さ、どこ卒業だっけ?」

「UTX。」

「あー。あのチャラそうな私立・・・。」

「チャラそうとか言うなよ。結構最先端の技術揃ってたぜ。・・・あったこれ。」

 

そういうと智哉は自分のスマホの画面に映った女子高校生が歌って踊っている動画と突き出してきた。彼女たちがこいつの後輩ねえ。名前は・・・

 

「A-RISE?」

「そう。UTXのスクールアイドルで僕の後輩。どう?」

「どうって・・・普通。」

「なんだよそれ。もうちょっと感想ないのかよ。」

「ないな。全員真姫には及ばない。」

「本当に真姫ちゃん意外関心がないな・・・」

 

智哉は揺らぐことのない僕の意思に引き下がると、ポケットにスマホをしまい、再びサラダの食べ始めた。

 

「それで、そのスクールなんとかと真姫にどんな関係性があるというのだ?そもそもあいつは音楽には詳しいがそういうチャラそうなのはあまり聞いてないぞ?」

「そうじゃないけどさ・・・この前、僕の後輩の、さっき見せた彼女たちが話してたんだけど、最近近くにダークホースが生まれたって。UTXの周りでアイドルが生まれそうなの音ノ木坂しかないし。もしかしたら真姫ちゃんに何か関係してるかなと思ってさ。」

「・・・真姫がアイドルねえ。」

「真姫ちゃんがアイドルって、結構似合いそうじゃない?クールビューティーって感じで・・・」

「真姫は見世物じゃない!」

「・・・お、おう。ごめん。」

「わかればいいんだ。・・・しかし真姫の美貌ならアイドルに勧誘はされているかもな。」

「とりあえず、調べてみたら?」

「この前、音ノ木のサイトは見たがさっき見たいな動画はなかったぞ。」

 

パソコンに音ノ木坂女学院と検索ワードを打ち込むと、公式サイトが開かれた。その中からさらにスクールアイドルと検索をかけると、この前はなかった数本の動画が検索結果に出た。そのうち一つは女子生徒3人のライブ映像だった。まだまださっきの智哉も後輩に比べると、ダンスも歌も踊っているが、引き付けられる何かを感じた。そういえば、このたれ目の子どこかで見たような気がするな。どこだったか。いやそれよりも問題はもう一つの動画、というよりも音声だった。この音声の最初はピアノの音色だけが流れた。この曲は、さっきの曲の原曲だろうか。そこまでは何も問題はなかったが、ピアノの音色の直後、聞きなれた歌声が聞こた。それはさきほどの3人の度の声とも違っていた。その声はもっと昔から、もっと近くで聞いてきた声だった。そう、この声は我が妹、真姫の声だ。さっきの曲を真姫が歌っている。いや多分この言い方は不適切だ。予想だがこの曲、たぶん真姫が作ったものだ。何となくだが所々に真姫特融の癖が出ている。それに少し前まで真姫の部屋から似たような音色が聞こえたことが何度かあった。そしてこの前、真姫の机に置かれていた紙にもこの曲の歌詞に似ている。僕の頭が回転を続け、次々にピースが埋まっていき真実にたどり着いた。僕の推測の真実は、真姫が学校でピアノをよく引くことがあったが偶然その場にあの三人のうちの誰かが真姫を目撃し、ピアノのうまい真姫に作曲を頼み、あの紙、歌詞を真姫に渡したはいいが、真姫はあまり乗る気ではなく、どうしたものかと悩んでいたが最終的に引き受けこの曲ができたのではないだろうか。つまり悩みの元凶はあの3人の誰かか・・・。という結論に行きついた僕は無言のまま立ち上がった。そしてそのまま大学の校門に向かおうとするも、すぐさま智哉が僕の服をつかみ止めにかかった。

 

「どこに行く気だ!」

「放せ!僕は帰る!」

「何でだよ!午後の授業はどうするつもりだ!」

「知るか!どうでもいいわ、そんなもの!」

「それが主席の発言かよ!」

 

智哉の必死の引き留めに数分反逆したももの、最後には言いくるめられてしまい結局大人しく午後の授業を受けた。しかし授業中の記憶はほとんどなく真姫とあの3人のことで頭が混乱していた。まあ、元から授業は聞いていなかったかもしれないが。

講義も全て終わり、やっと帰れるという時になって、帰りのついでに音ノ木坂の近くを通ってみようと思い付き、帰り道少し遠回りになったが家には直接帰らなかった。そして本来の帰宅ルートから外れること約20分、大きな階段を上った先に真姫が通う、音ノ木坂学院が見えた。この学校は創立100年以上あるらしく、全体的に少し古いイメージがあった。お昼に見たサイトにはこの学校は廃校になるかもと書いてあったこともあってか、生徒の数はとても少なかった。校門から出てくる生徒の中に

あの3人のうち誰かがいないかと見ていたが、結局見当たらなかった。渋々家に帰る途中、頭の中を整理しようと思い、パソコンで表すと、記憶というフォルダの中から真姫、音楽と検索をかけた。結果としては、真姫が小さいころの音楽コンクール、小学校の音楽会、サンタにグランドピアノを頼んだクリスマスの記憶がよみがえった。ただその記憶のなかの真姫はどれも楽しそうに笑っている。そういえば昔、真姫が僕に話してくれたことがあった。『パパやママのことは誇りに思っている。だからこそ医者になりたい』と。真姫は本当は思う存分音楽がやりたいはずだ。それでも我慢して、両親に医者になると告げた。その現場には僕も居合わせたらかよく覚えている。真姫が医者になるといったときの両親の顔はとても誇らしげだった。それにくらべ、真姫は笑っていたが、どこか暗かった。思い返せばあの時から真姫はピアノの道を諦めていたんだな。

そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか家の近くまでついていた。すぐそばに家が見えていた。すると、僕の家、西木野家から西木野家の血族でもなければ、使用人でもない少女が出てきた。その少女は僕とすれ違う際に軽くお辞儀をすると、そそくさと僕が来た道を歩いて行った。そういえばあの制服、、真姫も着てたな。もしかして音ノ木坂の生徒だろうか。だったらなぜここにいるのだろう。まさか真姫の友達?・・・それはないか。家の前に着くと庭の手入れをしている使用人が目に入った。彼女も僕が帰ってきたことに気が付くと、その場に立ち深々とお辞儀をした。

 

「雄真様、お帰りなさいませ。」

「ああ、それよりさっきの眼鏡をかけた子は誰だ?」

「どうやら、真姫様のご遊学の方のようでして、生徒手帳を届けに来たと奥様はおっしゃっていましたよ。」

「ふーん・・・・」

 

少女が帰っていた道に目をやると、使用人に持っていたカバンを渡した。

 

「大学に忘れ物をした。荷物は僕の机に置いといてくれ。」

「あっ、雄真様!・・・・」

 

使用人の言葉を最後まで聞かずに、僕はもう一度さっきの道をたどると、さっきすれ違った少女の姿が見えた。とりあえずあの子が真姫と接点を持とうとしているのかはわからないが、考えるよりも先に体が動いてしまい。彼女を尾行する形になってしまった。今の僕はストーカーに見えているのではないだろうか、という考えが頭によぎったが無理やりにも消し去った。

しばらく歩くと少女は一つの建物に入っていった。もしかしてあそこが家なのだろうか。入っていった建物の前まで行くと、そこには『穂むら』と書かれた看板があった。どうやらここは饅頭屋のようだ。なら、なおさら好都合だ。ここに入って店員から情報が聞き出せるかもしれない。もしもあの子がここの子ならば当然家の手伝いをしているはずだ。相手が女性ならばより好都合だ。僕の顔はこういうときのためにあるのだから。だてに黙ってたら完璧と智哉に言われ続けた僕じゃないぞ。フフフ、見ていろよ。自分も気づかないうちに洗いざらいすべて吐かせてやる。よし、完璧な笑顔よし、声よし、財布よし。いざ!中に入るとそのにはさっきの子はいず、代わりに他の少女が立っていた。どんなイリュージョンだよ。と突っ込みそうにもなるも、そこに立っている少女の顔は見覚えがあった。確か、あの動画のセンターで歌っていたような、違ったような。彼女は自分の後ろに持っていた荷物を降ろすと、太陽のように明るい笑顔で接客をしてきた。

 

「いらっしゃいませー!」

 

なんだろう。彼女の曇り一つない笑顔を見ていると自分の心が薄汚れていたように思えてきた。しかしここで崩れてはだめだ。こういう顔をする奴ほど単純な人間だ。数分も話せば十分だろう。

 

「すいません、お饅頭をひと箱、いいですか?」

「はい!ありがとうございます!」

 

そういうと店員の女の子は棚の中から箱を一つ取り出した。な、なんだと!?動揺すらしない、だと?!鈍感なのか、百合か、二次元か、いやこうなったらさらに奥の手だ。直接聞いてみよう。

 

「ねえ、君。」

「? なんですか?」

「もしかして、スクールアイドルってやってる?」

「はい!もしかして私たちの動画見たんですか?」

 

食いついてきたな、よしこの方向で話を進めよう。このままいけば彼女たちのアジト的な場所がわかるかもしれない。その前に名前かな?

 

「音ノ木坂の子だよね?」

「はい!μ’sっていいます!」

「そっか、μ’sか。これからも頑張ってね。」

「はい!ありがとうございます!」

「ところで君の名前は?」

「高坂穂乃果です。」

「そっか穂乃果ちゃんか。」

 

フフフ見たか僕のコミュ力の高さ。いや今回は相手が単純だっただけか。まあいい、一人目とはこれで接点を持った。残りは3人か、この穂乃果ちゃん経由でもっと調べるか。人の妹を見世物にしようとした罪は重いぞ。

すると今度は後ろの階段からもう一人少女が下りてきた。その子も眼鏡の子ではなく、あの動画の3人のうちの一人だった。

 

「穂乃果!どうして小泉さんがここにいるのです!」

「あ、ゴメン海未ちゃん。私が上がってって言ったの。」

 

海未と呼ばれた少女は怒りながらも穂乃果ちゃんの前に立つとそこでやっと僕の存在に気づき、しずしずと後ろに下がり、ひそひそ声で穂乃果ちゃんに話しかけた。

 

「お客さんがいらしていたんですか?だったら先に言ってくださいよ。」

「ゴメンね、海未ちゃん。それよりもこの人私たちのこと知ってるんだって!」

 

穂乃果ちゃんの発言に少々びっくりしたご様子の海未さんは僕の方に目をやった。そこで僕はスマイルで返すと赤くなり、穂乃果ちゃんの後ろに下がると、今度は少し怖い顔でこちらを見てきた。

 

「あの、つかぬ事を伺いますが、どうして私たちのことをご存じなんですか?」

 

どうやらこの子は穂乃果ちゃんよりも頭が切れるようだ。僕のことを警戒しているのか。借りてきた猫みたいだな。それよりも彼女には妙な嘘をついてもすぐにばれるような気がしたので、素直に話すことを決めた。

 

「紹介が遅れました。僕は西木野雄真と言います。真姫の兄です。」

 

穂乃果ちゃんと海未さんは同時に驚きにまみれた表情になり、自分たちの目の前で笑っている青年をまじまじを見つめた

 

 




遂にほのうみ登場!花陽も少しだけ出て続々とそろうμ’sメンバー。さて、次は誰だろうな。女神たちとの出会いは神のみぞ知るってことで。
ホントに妹以外興味ないな、雄真さん。今回の回で軽く穂乃果ちゃんのディスってるかもしれませんが、ゲームで穂乃果ちゃんのURだけでなくて少々苛立ってますが穂乃果ちゃん好きですよ!ああ~、高校に上がったらマネージャーに穂乃果ちゃんいないかな。もし穂乃果ちゃんがマネージャーだったら、先輩後輩よりも同学年がいい派。何の話だったか・・・そうそう、URが全然でないんですよ!この前目の前で当てられるし・・・アイスフレーバー・・・。
なんだか愚痴になっちゃいました。すいません。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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君の笑顔は私を浄化する

「紹介が遅れました。僕は西木野雄真と言います。真姫の兄です。」

 

雄真を見つめる二人の少女は茫然としていた。まあ、当然だろう。しかし硬直していた空気を先に壊したのは、やはりと言うべきか、サイドテールの穂乃果ちゃんだった。

 

「ま、真姫って、一年生の真姫ちゃん?」

「ええ、今年から音ノ木坂に入学した、西木野真姫です。」

 

雄真が答えると、今度は横でまじまじと見ていた海未さんが口を開いた。

 

「確かに、どことなく雰囲気が似ているような気がします。」

「た、確かに。」

「何なら保険証もお見せしましょうか?」

 

そういった雄真は自分の財布から保険証を取り出した。そこには自分の名前が書かれている。そのカードをさっきと同様にまじまじと見つめた二人は驚愕という言葉がそのまま顔に出ているような表情をしていた。

 

「ほ、本当に真姫ちゃんのお兄さんだ。」

「確かにそのようですね。ですが、お兄さんがどうしてここに?」

 

さすが海未さん。頭が切れるな。しかし君たちがさっきカードを見ている間に偶然入ってきた大学生雄真君の設定は考えてある。

 

「実は、論文を完成させるのに、中々手間取ってしまいまして、糖分が欲しくなったところ、地元に和菓子屋が会会ったことを思い出し、足を運んだ次第であります。」

「へー、じゃあ完全に偶然なんですね。」

「ええ、しかしこれも運命というものかもしれませんね、なんて。」

「そうかもしれませんね。ね、海未ちゃん。」

「そ。そうかもしれませんね。」

 

二人はお互いにアイコンタクトを取ったのか、見合わせると再び雄真に顔を向けた。

 

「あの、真姫ちゃんって家で私たちのことについて何か話してたりします?」

「・・・それが、全く話してくれなくてね、逆に君たちに学校での妹について聞きたいくらいだよ。」

「そうなんですか・・・。実は私たちは真姫さんに曲の作曲を頼んだんですよ。」

 

作曲を真姫に頼んだのか。ということはあの時の紙の内容は曲の歌詞だったのか。そしてしばらくの間ピアノの音色が聞こえてこなくなったのは、作曲を終えてしまったからか。

 

「そうか・・・作曲を。・・真姫についてはそれだけの関係なのかい?」

「・・・・実は、私が学校の音楽室でピアノを弾いていた真姫ちゃんにμ’sに入ってほしいって勧誘したことがあります。断られましたけど・・・。」

「真姫をμ’sに?」

「はい、真姫ちゃんなら可愛いし、歌もうまいからきっと人気になると思うんですけどね。」

「・・・確かにそうかもしれないな。」

「あの、もしよかったらお兄さんからも真姫ちゃんに誘ってあげてもらってもいいですか?」

「僕が真姫に?」

「はい、できますか?」

「・・・・善処してみるよ。」

 

少し考えてからもとりあえずあいまいにも答えてしまった。そこ答えは何となくだが答えが見えてはいるが、紳士は雄真君を演じるにはこの質問は承諾しなくてはならない。しかしその答えは穂乃果を喜ばせるには十分すぎた。

彼女は太陽かと思える明るい笑顔で感謝を述べた。

 

「ありがとうございます!これでμ’sもついに4人だね。」

「穂乃果、まだ入ってくれると決まったわけではありませんよ。」

「きっと、入ってくれるよ。お願いしますね。」

「はい、任されました。」

 

なんとスムーズすぎるとここまで流れを運んでしまうとは雄真も思っていなかったほどの結果だった。あの動画では穂乃果ちゃんがセンターを務めていた。彼女の性格が控えめではなかったので、最初のライブでリーダーがセンターという推理は当たっているだろう。となると、μ’sのリーダーさんとここまで仲が良くなれたことはなかなか好成績だと言えるだろう。しかし今も彼女の隣にいる海未さんはいまだにどことなく警戒しているような目をしている。きっとこれは彼女の家柄や性格が関係しているのだろう。こればかりはどうしようのないかな。残りのμ’sのメンバーとも親密にはなっておきたいが、どうやらここにはいないようだし、今回はあきらめるとしよう。すると、何かを思いついたかのように穂乃果ちゃんが行動に出た。きっと彼女は思いついたら行動するタイプなのだろう。一度裏に戻った彼女は手に自分のスマホをもって戻ってきた。

 

「これを機会にメール交換しませんか?」

「穂乃果!いきなりあったばかりの人とメール交換なんて危険すぎます。」

「大丈夫だよ海未ちゃん。真姫ちゃんのお兄さん優しそうな人だし。」

「しかし人を見た目で判断してはいけません。中身は何を考えているのかわかりませんよ。」

「海未ちゃん、お兄さんに失礼だよ。」

「あっ、すいません。」

「いやいや、君の言っていることは正論だ。確かに知り合ったばかりの相手とメール交換は危険だと僕も思うよ。」

「そっか、残念だな。」

「そのかわり、これからもここでお饅頭を買わせてもらうよ。その時に雑談代わりに情報交換する、ということでどうだい?」

「いいですね、それ!海未ちゃんもそれならいいよね?」

「ま、まあそれなら・・・」

「じゃ、決まりだね。これからはここの常連客で君たちの学校の生徒の関係者ということで。」

「はい!」

「じゃあ、手始めに、さっき頼んだお饅頭ください。」

「あっ!すっかり忘れてた!」

「穂乃果!ダメじゃないですか、お客様を待たせては!」

「あはは。焦らなくてもいいよ。」

 

あせあせとほむらのお饅頭を袋に入れた穂乃果はレジまで袋を持って行った。その袋ごと受け取り、会計を済ませると、二人に別れを告げて再び家に向かって歩き出した。その帰り道は前に通った時とは違い薄暗い道へと変貌していた。普段ならば不気味に感じるような場所だが考え事にふけるには好都合な場所だった。彼女たちは確かに真姫をμ’sに勧誘したと言っていた。その勧誘の話が作曲を頼んだ前なのか、それとも後なのか、そこも注目するポイントかもしれない。作曲を頼んだらその仕事をやってくれたから勧誘したのか。それとも最初は勧誘を試みたが拒否されて仕方なく作曲だけ頼んだということなのだろうか。推測だが可能性が高いのは後者だろう。もしも先に作曲を頼まれたとしたらもっと早い時期からピアノを弾いているはずだ。あいつも普段からピアノは弾いているとはいえ、毎日のように作曲に取り組んだことはない。以上のことから勧誘が先に行われたのであろう。推測での流れは、音楽室でピアノを弾いていた真姫が偶然か必然か穂乃果の目に留まった。そして穂乃果は真姫をスカウトするも真姫は拒否、それでもあきらめきれなかった穂乃果は作曲だけでもと真姫に頼んだ。その穂乃果の熱意か、暑苦しさに負けた真姫は折れて了解した、というのが大体の流れだろう。フフフ、次から次にピースがはまっていく。真姫をアイドルに勧誘だと。ふざけるんじゃない。あいつを見世物にするとはなかなか度胸があるじゃないか。君たちの行動は僕への宣戦布告と受け取らせてもらうよ。相手が女の子だろうと僕は容赦なんてしないからな。存在だけでも消し去ってやる。何よりも真姫はアイドルみたいな軽い音楽はあまり好きではなかったはず。大きな心の変化か覚悟の変化が短時間に起きない限りμ’sに加入することはないだろう。

 

~*~

 

翌日、大人しく大学での講義を受けていた。今日は大学の講義にかつてないほど集中していた気がするな。講義を受けることはこんなにも疲れることなのか。いつものように午前の講義が全て終わったので智哉とともに食堂に向かった。今日の二人のメニューはお互いにラーメンと珍しい日になっていた。窓際の席に座り、最初の一口のいただこうとすると、同じように席に座った智哉が何だか不思議そうな声で話しかけてきた。

 

「今日はいつになく真面目だったじゃないか。何かいいことがあったのか?」

「・・・いいことな。まあ、そういってもいいことが起こったかな。」

「・・・ふーん。君がそこまで言うとは、真姫ちゃん関連のことだろ?」

「まあ、間接的にだがな。」

「!?」

「・・・なんだよ。」

「・・いや、君が真姫ちゃん以外でいいことが起こったなんて言う日が来るとは思ってもみなかったよ。」

「お前は僕を何だと思ってるんだ。」

「シスコン馬鹿。」

「・・・・そんな当たり前みたいな顔するなよ。否定はしないけどさ。」

 

 

こいつ、僕のことをそんな風に考えていたのかと不貞腐れながらナルトにかじりついていると、再び智哉が口を開いた。

 

「で、何があったんだ?」

「まあ、色々な。」

「だから、その色々を聞いてるんだよ。」

「い、色々は色々だ。」

「・・・ふーん。」

「なんだよ。」

「女の子がらみかな?」

「なっ・・・」

「正解かな。」

「・・・そうですよ。昨日まあまあ可愛い女の子二人と出会いました。」

「ふーん、音ノ木坂の子?」

「なんでわかった?」

「何年の付き合いだと思ってるんだよ。君のことなら大概のことは予想が付くよ。」

「・・・プライバシーの侵害。」

「好きでこんな能力得たわけじゃないよ。だけど、ただでさえ何を考えているのかわからない親友のことが知れることはいいことだと僕は思うよ。」

「・・・いくぞ、午後の講義に遅れる。」

 

そういって立ち上がった雄真はラーメンが入っていたお皿が乗ったお盆を持ち返却口へと向かった。歩いていく雄真の背中をしばらく見ていた智哉は自分の腕につけているうで時計に目をやった。

 

「まだ30分以上間があるのに。」

 

~*~

 

大学の講義を終えた雄真は、いつもならすぐさま家に帰るのだが、今日ばかりはそういう訳にもいかず、大学の図書館で同期の友人数人(智哉は含まない)の論文作成を手伝うことになってしまった。彼彼女らとはとくに話すことが多いとはいいがたいが、全く話さないという仲でもなく、今日の午後の講義が終わった瞬間に雄真と智哉は手伝ってほしいと頼まれた。雄真は忙しいと断ろうと思ったが後ろから智哉の殺気を放つような視線を送られてやむなく引き受けた。そして時は流れて講義終了から1時間ほど経過して、雄真の集中力は切れてしまい、自主スペースの下の階にある図書スペースから適当な本を持ってきていた。一気に何冊か持ってきたが、正直何を持ってきたか覚えていない。そんな本の中には和菓子に関する本も置いてあった。昨日のこともあるし今はこの本でも読んでおこうかな。

 和菓子の本の中身は誕生からの歴史や、家庭で作るときのコツ、有名な和菓子店など色々乗っていた。どうやらこの本はこのあたり周辺のことが多く書いてあり、穂乃果の家のことの少しだが書いてあった。彼女の家は古くからある和菓子屋らしい。だからなんとなく古い、基伝統を感じたのか。今まで色々な本を読み漁って様々な知識は蓄えてきたはずだが、まだまだ僕も無知だったということか。

 

「あの、西木野君。これであってるかな?」

「んー? ・・あってるよ。」

「ありがと。」

 

雄真に一人の同期の女子がある質問をしてきたが、軽く確認してまた読書に戻った。その様子を横目で見ていた智哉は、もう少しかまってやれよ、と言いたいかのような目で見てきたが、そんなことは読書中の雄真の頭には入ってこなかった。さっきまで読んでいた本がひと段落したのでさらに次の本へと手を伸ばした。その本は考古学に関するものがまとめられたものだった。その本の中には知り合いの学者のことも乗ってあった。そういえば昔、この学者の子供と遊んだことがあったな。あの時は確か高校一年生だったか。ただ、そのころの僕は結構な中二病をしていて遊んでいた子に色々と中二病の知識を与えていたっけな。あれは思い返すと結構な黒歴史だな。

 

~*~

 

手伝った感覚はあまりないが友人たちの論文も無事に完成した。自主スペースにもってきていた本数冊を元あった場所に返して図書館から外に出ると、辺り一面夕日に照らされて真っ赤に燃えているようだった。そんな炎が広がっているような中をカバンをもって大学を後にした。智哉と別れた後、雄真は和菓子やほむらに向かって足を運んだ。目的の場所の数メートル前に着いた頃には夕日も沈んでしまい、すっかり真っ暗になってしまった。昨日ここから帰ったくらいの時間にほむらに着くと、まだほむらは明るく照らされていた。どうやらまだ営業中のようだ。どうせ中では穂乃果ちゃんは落ち込んでいるのではないだろうか。今日も真姫に勧誘するもあっさり断られただろうな。真姫のことだ、アイドルには興味ないとか言って断っただろう。などと考えてながら中に入ると、そこには昨日のように真姫の通っている高校のスクールアイドルのリーダーさんが立っていた。

 

「いらっしゃ・・雄真さん! ありがとうございます!」

「・・・何が?」

「何ってとぼけないでくださいよ。真姫ちゃんの説得。」

 

何を言っているのだろうかこの子は。僕の予想をはるかに超えるほど真姫に盛大に断られてショックを受けて現実が見れていないのだろうか。そうか、それは大変だな。こう見えて僕は医学部だから見てあげようか。そんなことを考えているも穂乃果は今まで以上の笑顔を向けられた。

 

「真姫ちゃん、μ’sに加入してくれたんです!」

「・・・・・は?」

 




 さあ、本日は12月31日。ついに一年も終わり。この年が過ぎれば遂に高校受験か。そして中学は卒業。さてどうなることやら。勉強もしないとなー、無事に受かったら高校一年生か。はあ、まきりんぱな、よしまるルビィと同い年・・・・。うれしいような、はかないような・・・。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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彷徨える黒山羊

「真姫ちゃん、μ’sに加入してくれたんです!」

「・・・・・は?」

 

 穂乃果の一言に雄真は硬直してしまっていた。しかしどんなに外が止まっていようとも天才ともいえる彼の頭脳はフル回転していた。

 ありえないありえないありえない!真姫が勧誘を承諾しただと。そんなこと天変地異でも起こらない限りないと思っていたのに。まさか、脅迫?真姫の大事なものを取られたとかか。いや、それ以外の可能性もあり得る。じゃあどんな手を使ったんだ。もしかして暴力で要求?それか買収?いやもしかしたら・・・

 外から見たらあっけにとられているようにしか見えない雄真に向かって穂乃果は心配そうな顔を向けていた。

 

「あの、お兄さんが説得してくれたんですよね。」

「えっ?!」

 

そういえばそんな約束を昨夜したような気がするな。あんな適当に言ったこと、完全に忘れていた。ここは話を合わせておいた方がいいだろうか。

 

「そ、そうなんだよ。」

「やっぱり、ありがとうございます!真姫ちゃん、お兄さんの言うことはには素直なんですね。」

「真姫が素直か、それはないかな。学校での真姫はどんな感じなの?」

「この前勧誘した時は『お断りしますっ!』とか『イミワカンナイッ!』とか言われました。」

「あはは、真姫らしいな。」

「お兄さんはこんなに優しそうなのに・・」

「そんなことないよ。内心何考えているかわからないよ。」

 

ほんと、内心では真姫に手を出したやつら全員ミンチにしてやろうかと考えてるよ。このことはいくら智哉でも予想はつかないだろうな。目の前にいるこんなにも優しそうな大学生が心の中で自分のことを痛めつけているなんて君には考えもつかないだろうな。しかし、その部活に真姫が入ったということは穂乃果ちゃんは真姫の先輩にあたるわけか。だったらとことん利用させてもらおうかな。

 

「あの穂乃果ちゃん、頼みがあるんだけど。」

「何ですか?」

「これからも真姫の様子とか教えてほしいだけど、いいかな?」

「いいですよ!じゃあ連絡先交換しましょう!」

「いいよ。じゃあ、これ僕のアドレス。ああ、それとこのことは真姫には内緒にしてもらってもいいかな。」

「いいですけど、何でですか?」

「スパイみたいってことと、真姫が知ったら面倒なことになりそうだから。」

「確かに、真姫ちゃんですからね。」

「あはは、我ながら面倒な妹を持つと苦労するよ。」

 

そんな面倒な妹に手を出したやつにはさらに面倒な兄から制裁を受けるがな。君の一人になるだろうが、今は大事は情報網として生かしておいてやろう。

 

~*~

 

饅頭と穂乃果の連絡先、学校での真姫の情報網といった思わぬ成果をあげた雄真はカバンを片手に帰路を歩いていた。今回何よりも大きい成果と言えるのは、真姫がμ’sい入ったということだろう。こんな事予想もしていなかった。何がどうなっているのか。真姫に何か心境の変化が起こったのか。もしこの勧誘が自分の意志でないものだったとしたら、帰ってから悲しいことに僕ではないが、父か母に相談するのではないだろうか。もし真姫が口止めされているとしたら真っ先にピアノに向かうはずだ。その音色を聞けば何を考えているのかくらいはわかる。すべての答えは家に帰ればわかるはずだ。残念なことに、妹に関すること以外にはフル回転しない雄真の頭脳はこれまでで最大と言っていいほどの回転数をしていただろう。

 家に帰ると、真っ先に自室に戻った雄真は壁越しに聞き耳を立てると、隣りの真姫の部屋から聞こえてくるピアノの音色に耳を澄ませた。その音色は恐怖に負けているという悲しいものではなく、何か試練を乗り越えたというようなすがすがしいともいえる音だった。察するにどうやら脅迫ではないようだ。つまり、μ’sへの加入は、自分の意志だと言いたいのか。真姫が自分から何かをやりたいなんて言ったのはずっと昔に聞いたのが最後だったか。真姫がやりたいことなら兄の仕事はそのやりたいことを見守ること、部外者は見守ることしか出来ないのだ。だったらここからは少し個人的なおせっかいだ。

 部屋を出た雄真はほむらのまんじゅうをもって父がいるであろう書斎に向かった。部屋の扉は閉ざされていて、中の様子はよく見えない。しかし夕食後の父は大体ここにいるが週間のようになっている。その自信とともに書斎の扉にノックをした。

 

「失礼します。お父様。」

「雄真か、こんな時に何の用だ。」

「少し、お時間よろしいでしょうか?」

 

父は自分のテーブルの上を片付けると立ち上がり、使用人に声をかけると、雄真に背を向けながら自室に戻っていった。

 

「談話室で待っていろ。その手に持っているものはその話の本題か?」

「いえ、これは話のつまみみたいなもので、地元の和菓子です。」

「ほう・・。」

 

父は再び使用人に顔を向けた。

 

「後で談話室に和菓子に会うお茶を持ってきてくれ。」

 

自室に戻る父の背中を見つめている雄真だったが、パソコンも持ってきていた方がいいかと思い自室に戻っていった。

~*~

 

パソコンをもって自室から戻ると、ちょうど隣の部屋から真姫が出てきた。今回ばかりは仕組みではなく、本当に偶然だった。

 

「お兄ちゃん、どこ行くの?お風呂だったら私先に入りたいんだけど・・・」

「ああ、違う違う。父さんとちょっと雑談してくる。」

「パパと?何話すの?」

「うーん、世間話とかかな。」

「何よそれ。」

 

真姫はそのまま背を向ける階段へ向かおうとした。階段に向けて歩いていく真姫は足取りも、表情もどことなく楽しそうなで嬉しそうにも見えた。

 

「何だか、ご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」

「べ、別にそんなことないわよ。」

 

真姫の顔はどこか晴れ晴れとしたものだった。真姫からしたらこの家の人は誰も自分がスクールアイドルに加入したなんて誰も知らないと思っているだろうが、今さっきまで君の目の前にいた兄はそのこと知っているのだよ。君の加入したチームのリーダーさんからちゃんと聞いたからな。そのことについて父と話してくるんだよ。君がお風呂に入っている間にな。せいぜい余韻に浸っているといい。

いままでは真姫がμ’sい入ったことに反対的な気持ちを持っていた雄真だったがどこか楽しそうな真姫の表情を見ていると、今の自分の意見が正しいのかわからなくなってきてしまった。もしも今父にこのことを言って止められたら、それは真姫のやりたいことを止めることになるのかな。自分は真姫のやりたいことを抑制していいのだろうか。でもそれは昔、両親が真姫を医者にしようと強制したときと同じなのでなないだろうか。今の自分は正しいことをしようとしているのだろうか。僕は、真姫を助けたい。だけど、今自分がしようとすることは真姫を助けようとしているのだろうか。それとも、・・・。不安が生まれた心を捨て去るかのように談話室に向かった。

 十数分すると部屋のドアが開いた。そこにはいつものように無表情に近い顔の父が立っていた。そのまま父は雄真の目の前のソファに腰掛けた。すると再び部屋のドアが開いた。そこには使用人が一人、お盆をもって立っていた。そのままお盆に乗っていたカップを雄真と父の前に置いた。そこには抹茶と緑茶がブレンドされたお茶が入っていた。父はテーブルの上に置かれたほむらの和菓子を一つ口の放り込むと、話を切り出した。

 

「それで、話とはなんだ。まさか今更医者になりたくないとでも言いだすのか?」

 

その言葉は父の視線と同じで突きつけるよう雄真に向けられた。そこまでして後継者を逃したくないのだろうか。雄真は微笑すると返事を返した。

 

「そんな今あらなことしませんよ。せっかく医学部の大学にも入ったのですから。」

「ふむ、ならば安心して聞けるというものだ。それで、何の話だ?留学なら資金の問題は・・・」

 

父の言葉が続く前に雄真は素早くパソコンにタイピングをして父の言葉を遮った。そしてその検索で出たページを開くと、パソコンの画面を向けた。父はパソコンに開かれた画面に目を凝らした。

 

「音ノ木坂学院のサイト? 真姫に何かあったのか?」

 

雄真は画面を父に向けたままコードをつなげずに使えるワイヤレスのマウスを駆使して画面を見ずにスクールアイドルのページを開いた。

 

「このチャラチャラした部活はなんだ?」

「スクールアイドル。最近有名になってきている部活動です。」

「その部活がどうした?」

 

思った通りの質問を返してきた。きっとこの質問に真姫が入部したと答えると父は否応でも真姫を退部させようとするだろう。その時部屋を出たときに偶然出くわした真姫の表情がよみがえった。あの時の真姫はここ数年で一番楽しそうな顔をしていた。これで答えたら真姫のあの表情は二度と見られなくなってしまうのかもしれない。でもアイドルなんて何が起こるかわからない。それも女子高校生ともなればR指定の漫画みたいな展開だって確率がないわけではない。自分が周りの危なそうなやつらを滅多切りにしたらいい話なのかもしれないが、それは僕に疲労がたまる。それならば根本的に真姫が入らなかったらいい話だ。しかしその行動は兄として正しいのだろうか。でも妹の安否が今の僕には一番大事だ。しかしそれと同じくらい真姫の喜ぶことは守ってあげたい気持ちがある。いやしかし・・・。

 

「どうした雄真、私には言えないことだったのか?」

「・・・国立音ノ木坂女学院高校のスクールアイドルに真姫が加入しました。」

「確かな情報なのか?」

「はい・・このグループ、μ’sと言うらしいのですが、そのμ’sのリーダーから直接聞きました。ちなみにその饅頭はそのリーダーの家の和菓子です。」

「ほう。」

 

父は今自分が半分ほど食べている和菓子に目をやった。すると再び父はパソコンに目を向けた。そのまましばらくサイトを下にスクロールすると画面にメンバー紹介と書かれた欄があった。そこには今は6人の名前が並べられいた。一番目には穂乃果の名前が、二番目には、穂乃果から聞いたことのあるだけのことりという名前の少女が、3番目には一度だけ会ったことのある海未の名前が、そして4番目には西木野真姫と、妹の名前がしっかりと書かれていた。5番目と6番目には星空凛と小泉花陽というまだあったことのない少女たちの名前が書かれていた。それを見た途端、父の目つきが変わった。

 

「確かなようだな。・・・雄真、この部活の主な活動内容はなんだ?」

「主に普通のアイドルのように歌い踊る、彼女たちはいわゆる学校の顔のような存在です。」

「学校の顔、か。普通ならば名誉なことなのだがな。このような形ではあまりいい解釈はできそうにないな。医学の道にこんなチャラい音楽は必要ない。音楽はピアノだけで十分だ。」

 

父はパソコンから視線を外すと眼鏡越しに雄真を見ていった。

 

「雄真、お前に頼みがある。私は明日から再び出張に行くことになっている。私が家にいない間に真姫の足かせを取り除け。」

「足かせ、ですか?」

「ああ、具体的に言うとこの部活から真姫を退部させろ。期間は私が出張に出ている間だ。医学に関係のないものは速やかに取り除くのだ。」

 




皆さんは音楽って何か聞きますか?僕は数学の問題を解くときにアップテンポな曲をよく聞きます。例だと赤髮のともさんのダイヤモンドや、佐香智久さんのキラキラとかですかね。まあ、国語をしている時に聞いたら全く問題が頭に入ってこないのですがね。音楽というのは受験前の学生には少しの心の癒しになってくれるのですよ。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを


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