学園黙示録 ゲンブンオブザデット (ダス・ライヒ)
しおりを挟む

転移する者達
転移する者達


源文勢の参戦編です。


1943年末期のロシアのとある戦線。

 

敵襲(アラーム)!T34の85砲塔だ!」

 

第2SS装甲師団ダスライヒの戦車猟兵がT34/85を指さし叫ぶ。

それに乗じて残りの兵士達もkar98kやMP40、G43、MG42、パンツァーファウストを持って塹壕から飛び出していく。

 

「救援のティーガーはまだか!戦車25両と敵歩兵多数が来るぞ」

 

士官らしき迷彩服を着た将兵が塹壕に居る全兵士に言い聞かせる。

敵とはソ連赤軍のことである。

スターリンの大粛正により、緒戦は次々と敗退したが、新型戦車や新型戦闘機を開発、物量戦、人海戦術で主導権獲得、これによりドイツ軍は東部戦線での敗北することを余儀なくされた。

彼等ダスライヒの歩兵中隊はひたすら援軍を待っているのである。

 

「引き付けろ、T34の前面装甲はパンツァーファウストも弾くぞ」

 

下士官の男がMP40を構えながら言う。

 

「クソォ、これで何度目だ。露助(イワン)めぇ、いい加減に諦めろ!」

 

パンツァーファウストを構えた戦車猟兵が悪態つく。

 

「言うなよ、ハルト。イワンだって疲れてるハズだ」

 

隣にいるkar98kを構えた兵士がその戦車猟兵に話しかける。

ソ連工兵が塹壕の有刺鉄線を工具で切ると、合図を送った。

 

「変だな。イワンの奴ら、砲撃や迫撃砲を撃ってこないぞ?」

 

「砲弾が切れたんだ。突撃で潰そうってこんたんだ」

 

「マヌケな指揮官持ってイワンも可哀想だ」

 

そんな会話が終わると、敵歩兵の1人が地雷を踏んで爆発した。

そしてSマインが地面から飛び出し複数の敵歩兵を命を奪う。

 

撃てぇ(ファイア)!」

 

士官帽被った中隊長が攻撃の指示を出した。それと同時に小火器やMG42の連射が始まる。

指示の数秒後、迫撃砲が発射された後、対戦車砲Pak40も敵戦車に向けて発射される。

敵歩兵は迫撃砲の命中で次々と死んでいく、T34は対戦車砲を弾くが、運が悪い者は装甲の薄い所に命中し、撃破される。

 

「T34が地雷原を突破するぞ!」

 

誰かが叫び、戦車猟兵がパンツァーファウストを持って撃破に向かう。

途中、突破したソ連兵2人がPPs43や銃剣付きのモシンナガンを構えるが、MP40の乱射で撃退される。戦車猟兵はT34/85の側面に狙いを付け、パンツァーファウストを発射した。

 

「ざま見ろ!イワンめぇ!」

 

T34/85は大破した。

しかし、その戦車猟兵は重戦車KV1の砲撃で四散した。

 

「やばい、KV1だ!火力を集中しろ!」

 

中隊長は対戦車地雷を持ってKV1に向かった。

その間にKV1の固定機銃が火を噴き武装SS兵の命を奪う。

 

「喰らえ!」

 

中隊長は地雷をKV1のキャタピラの下に投げた。

地雷は爆発し、キャタピラを破壊できたが、砲塔は回る。

 

「あ、終わりだ・・・」

 

中隊長がそう思った瞬間、KV1が爆発した。

 

「ティーガーだ!味方が来たぞ!」

 

福を逆さにしたティーガーが砲撃したのだ。

そのティーガーはT34/76に8.8砲を向けると、撃った。

T34/76は大破し、砲塔のハッチから戦車長が出てきた。

 

「大尉殿、救援が遅れてすいません。して、戦況は?」

 

「ああ、確認される敵戦車はT34の短砲身と長砲身が14両、KV14両くらい、敵歩兵、およそ一個大隊程。戦況はこちらが不利だ、ティーガー3台で大丈夫か?」

 

「ご心配なく、近くの部隊に応援を頼みましょう。グルフ!国防軍でも、他のSS戦車中隊でも構わん、救援を頼め!」

 

了解(ヤヴォール)戦車長殿(パンツァーコマンダー)。こちら第2戦車中隊のヘルマン、繰り返す、第2戦車中隊のヘルマン、国防軍の部隊でも構わん、至急応援に来られたし、繰り返す」

 

「バートル、少々厳しいぞ」

 

「安心してくれ、ゾーレッツ。地獄の底まで一緒だ」

 

「よし、目標T34の長砲身!徹甲弾装填!」

 

『装填完了!』

 

装填手が徹甲弾を装填を完了し、砲手のバートルにそれを伝える。

そして、戦車長のゾーレッツは砲撃命令を出した。

 

『ファイアー!』

 

その頃、とあるソ連の親衛戦車中隊部隊

 

T34/85の車内で隊長らしき男が騒いでいた。

 

「なに、今すぐ助けに来いだと!?一体何処の部隊だ?」

 

隊長らしき男は無線手に問う。

 

「第9狙撃師団の第8大隊です。同志ゴロドク中尉」

 

「そいつ等の為に親衛戦車隊を動かすつもりか?向こうも戦車くらいは持ってるだろう?」

 

「ええ、相手が武装SSらしくて・・・、タイガー戦車が現れたとか」

 

「なにぃ!タイガー戦車だと!?それはいかん、すぐ出撃だ!親衛戦車隊、前へ!」

 

ゴロドクはハッチを開き、辺りにいる歩兵に怒鳴り散らした。

 

「いつまで寝てる!出撃だ!行け(ダワイ)行け(ダワイ)!」

 

寝てる兵士は飛び起き、T34の後部や装甲車に乗り込んだ。

 

『こちらフェンリアのハーゲン、加勢しに来たぞ。武装SSのティーガーがどうした?手こずってるじゃないか』

 

Ⅲ号突撃砲G型4両が戦場に到達した。

 

『三突が4両か・・・、少し頼りないが長砲身なら安心だ。救援感謝する』

 

『三突で済まなかったな、ヘルマン。目標、T34、徹甲弾装填!』

 

装填手が徹甲弾を装填し、それを確認したハーゲンは指示を出した。

 

『ファイアー!』

 

側面を撃たれたT34/85は大破する。

乗員はハッチから次々と脱出し、逃げるが、迷彩服を着た武装SSの兵士に射殺されていく。

しばらくして戦闘が続き、SS兵士はkar98kを撃った後、ボルトを引き、次弾を薬室に送り込むと、照準を次に向けるが、その兵士は東からの機銃掃射で力尽きた。

 

ハーゲンは「何だ!?」と叫びハッチを開けた。

そこにはT34/85が砲身をこちらに向けていた。

 

「見つけたぞ、ハーゲン。モスクワ戦の時に似ているが、今回は違う。さぁ、覚悟しろ、ハーゲン!」

 

ゴロドクは三号突撃砲から顔を見せるハーゲンを見ながら言った。

その時ハーゲンも三突をT34/85の方へ旋回し、砲撃を命じる。

 

『ファイアー!』

 

発射された砲弾はT34の前面に当たり、弾かれた。

すかさずゴロドクも砲撃を命じる。

 

『射て!』

 

ハーゲンが乗る三号突撃砲は小破し、横転した。

 

「大丈夫か、みんな?」

 

戦車から放れ出されたハーゲンと乗員達、ハーゲンは全員が無事か確かめる。

 

「大丈夫ですぜ、少尉殿。それより、アントンの奴が脚の骨を折っちまったようで・・・」

 

ベテランぽい照準手が脚が折れて痛がる操縦手を指さす。

 

「俺が時間を稼ぐ、あれはゴロドクだ。奴の狙いはこの俺だ。食い止めている間に行け」

 

ハーゲンは残りの2人に脚の折れた操縦手を運ぶように指示した。

見送った後、死んだ武装SSの兵士からG43と予備の弾倉6個とパンツァーファウスト1本を拾い、

残骸から飛び出した。

 

「ハーゲン!死ねぃ!」

 

砲塔ハッチの上から叫びながらPPSh41をハーゲンに向かって乱射した。

転がりながらパンツァーファウストの安全装置を外し、T34の機銃口に向けて撃った。

 

「うわぁー!」

 

機銃手が爆発で息絶える。

 

「のわぁ!いかん!」

 

ゴロドクはT34から飛び出し、雪の地面に顔から落ちた。

 

「これで終わりだ、ゴロドク」

 

G43をゴロドクに構えるハーゲン、だが。

 

「誰が貴様なんぞに!」

 

ハーゲンの足を掴んで転ばせた。

バランスを崩した、ハーゲンはゴロドクに殴れる。

 

「俺が勝ったんだ!」

 

殴るゴロドクだが、ハーゲンも反撃に出る。

 

「イワンめぇ!」

 

両者、そのまま殴り合いとなったが、後ろから政治将校とソ連兵がPPSh41、モシナガン、SVTー40を構え、殴り合いをする2人に近づく。それに気付いたバートルとゾーレッツは救出に向かう。

 

「ゾーレッツ!」

 

「分かった、フェンリアを助ける。ゼール、後は頼んだぞ!」

 

バートルは日本刀を持ち、ゾーレッツはMP41を持ってティーガーから出て行った。

途中、「ちょっと!」と聞こえたが、銃声や爆音でかき消される。

 

「ゲルマンスキー!」

 

2人を見つけたSVTー40を発砲するが、ゾーレッツのMP41に射殺される。

隙を突いて、ソ連兵3名が銃剣付けたモシナガンで突っ込んで来るがバートルの日本刀で全員切り捨てられる。ゾーレッツの後ろから襲いかかる者も居たが、MP41の木製ストックに殴られる。

 

殴り合いをする、ハーゲンとゴロドクの間近に迫った2人であったが、遠くから砲撃音が聞こえ、4人のいる方向に着弾した。

 

「は、ハーゲン!」

 

「もう駄目だ!」

 

「ここで終わりか・・・!」

 

「クソォ!まだ妻と娘には・・!」

 

救援を受けて到達したカンプグルッペzbvだったが。

 

「ふ、吹っ飛んじまった・・・・」

 

眼鏡を掛けた戦車長、ブルクハイト中尉があ然する。

 

『よく、あることだ。それよりも中尉、敵の残存戦力を殲滅したまえ』

 

指揮者用の装甲車から通信を送る、コートと帽子を深く被った男、シュタイナー少佐が冷静に指示を出した。

 

 




序章は源文勢の参戦にしました。
それとファンの方々、122㎜砲を向けるのはお止めください!

回も保存してますが、殆どが書き直されております。ご了承を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転移したウサギ、再び転移

パッキー転移編です。
ちなみに登場人物全員がウサギですw


1978年 カンボジアのとあるジャングル

 

上空に2機のUH-1が東に向けて飛行していた。

何故東に向かうのかは極秘事項であり、このUH-1に乗る全員がもちろんCIAの工作員である。

その中に1人ベトナム戦争を駆け抜けたベテランの戦士パーキンス(パッキー)が居た。

 

「パーキンス、それは奥さんか?」

 

隣の席に座るXM177を持った男がパッキーが持つ写真について質問する。

 

「もちろん、子沢山だ」

 

「幸せそうだな、ラビット3。もうすぐ敵地だ、気を引き締めろよ」

 

パッキーが乗る先頭のUH-1の機内で全員が笑う。

その時、右にいる機銃手の1人が叫びだす。

 

対空ミサイル(SAM)だ!」

 

携帯式対空ミサイル9k32を持ったゲリラが森林から飛び出し、先頭のUH-1に向けてミサイルを発射した。

 

「避けろ!」

 

パイロットはそれを避けようとするが遅く、テールローターにミサイルに命中。

機体はバランスを崩し、地面に落下し始める。

 

「メーデー、メーデー!こちらジャクソン1墜落する!繰り返す!こちらジャクソン1墜落する!!」

 

「全員、何かに掴まれ!!振り落とされるぞ!!」

 

回転する機体の中でラビットリーダーが必死に叫ぶ。

だが、パッキーは振り落とされてしまった。

 

「パッキー!!」

 

必死に彼の手を取ろうとする隊員であったが、もう既に遅かった。

死を覚悟したパッキーは落ちながら心の中で自分の妻と子供達の事を思う。

 

「(ここで終わりか・・・済まなかった・・・)」

 

そのままジャングルに落ちるパッキーであったが謎の光が彼の身体を包み、そして彼をこの世界から消してしまった。

 

 

 




短いですね・・・次はZbv転移編でも書こうかな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

懲罰大隊、行方知れず・・・

Zbvの転移編です。


1944年3月ソ連領内西部の何処か

その地で装甲懲罰大隊Zbvが迫り来るソ連赤軍の機甲部隊に対して迎撃を行っていた。

 

「砲撃が止んだぞ。各中隊損害を知らせろ、イワン共が圧し押せてくるぞ」

 

この首が見えない位に襟を立てたコートと頭の先が見えないほど士官帽を深く被った男は懲罰部隊の長のシュタイナーだ。

無線から損害は軽微と聞いたシュタイナーは「迎撃戦を開始しろ」と手に持つ受話器で傘下の中隊に伝える。

 

「また来やがったぜ、これで何度目だ?」

 

「ここを取らなきゃ殺されるからだろう」

 

ティーガー重戦車の車内にて若い戦車兵のアッシュは呆れたかのように言い、それに大男のコワルスキーが答える。

 

「黙って口を閉じてろ。来たぞ、T34が2個中隊、型は85㎜砲。先頭の奴に撃たせるな、先に潰せ!」

 

ブルクハイトはアッシュとコワルスキーに活を入れた後、一番乗りをしようとするT34/85を砲手のアッシュに撃つように命ずる。

88㎜砲から飛ばされた砲弾は機銃口に命中し、内部爆発を起こす。

僚車からも一斉に砲口から砲弾が放たれた。

 

「10時から多数のT34が突っ込んでくるぞ!狼7、離れ、クソ、やられた。砲を10時に回せ!」

 

ブルクハイトの重戦車中隊は突っ込んでくるT34の群れに砲撃した。

何台かは大破するがそれでもまだ突っ込んでくる。

 

「まだ突っ込んでくるぞ!うぉ!?歩兵が肉薄してくる、機銃を撃ちまくれ!」

 

前部に搭載されたMG34が火を噴き、僚車も突撃する歩兵に機銃攻撃をする。突撃してくる赤軍歩兵は無数に飛んでくる7.92㎜弾でドミノ倒しの様に倒れていく。

ソ連赤軍が不利だが、数では圧倒的だ。

その時ソ連軍の数機の航空機が飛来し、傘下のⅣ号戦車中隊を襲った。

 

戦闘爆撃機(ヤーボ)だ!対空砲は何をしている!?」

 

誰か言った後、対空砲が飛来した航空機に攻撃を開始する。

何機かは撃墜され墜落したが何機かに逃げられた。

Zbvの必死の防戦で膠着状態になる中、突如戦場に濃い霧が発生した。

 

「ン?何だこの霧は・・・?」

 

後方で指揮するシュタイナーが居る場所にも霧が発生する。

霧の所為で戦闘は中断、その後Zbvの移動本部が動き出す。

徐々に霧が濃くなり、やがて残りのⅣ号戦車中隊と一部のティーガーを残してZbvはこの戦場から消えた。




学黙はまだか!と思う人はもう少しお待ちを・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒騎士と小さな女騎士の転移

黒騎士中隊と萌えバウアーの転移です。

炒り豆さん、黒騎士中隊を参戦させて宜しいですか?


1945年5月。

ドイツ第三帝国は首都ベルリンがソ連赤軍の手によって陥落、その後連合諸国とソビエト連邦に降伏した。

この降伏により命令書でドイツ東部軍はソ連赤軍に降伏せよ、と命じられたが口頭命令で連合軍側が居る西側に1人でも多く脱出せよ、とも命じられていた。

英雄的行動をしたエルンスト・フォン・バウアー大尉は連合側に降伏に向かう多くの戦友の脱出させる為、偶然にも手に入ったティーガーⅡと残った1両のパンターG型と共に追撃を行うソ連赤軍に攻撃を開始する。

 

「黒騎士中隊に神のご加護があらんことを!黒騎士中隊、突撃!」

 

眼帯を付けた男バウアーは2両の戦車だけで停止したソ連赤軍の機甲部隊に攻撃を開始した。

前方に居たT34/85がティーガーⅡの71口径の88㎜砲に撃たれ大破する。

中隊の古顔であるクルツが操るパンターも負けじとT34やトラックを撃破していく。

ソ連軍はもう戦争は終わったと思いこんでいたらしく、迎撃態勢が取れていない、その所為でティーガーの重装甲を安全な距離から貫ける122㎜砲を持ったIS-2スターリン重戦車ですらまともに動くことが出来ずバウアーのティーガーⅡの砲撃で撃破された。

 

「目標10時方向にT34、ファイアー!ン、なんだこの霧は?」

 

クルツはT34を撃破したてから戦場の周囲に霧が出てくるのを確認した。

バウアーも前方のIS-2を撃破してからそれに気付く。

 

「視界不良、霧で敵を見失いました!」

 

「気を付けろ、この霧では何所から撃たれるか分からんぞ!」

 

バウアーは砲手に告げ、キューポラの窓を覗いて周囲の索敵を始める。

しかし、謎の光が彼等黒騎士中隊の2両の戦車を包み、この世界から黒騎士中隊を消してしまった。

車内にも光が現れ、中にいるバウアー達は余りの光の強さに目を抑え、驚く。

 

「ウワァ!なんだこの光は!?」

 

それがこの世界でのバウアーの最後の言葉だった。

一方の小さな女騎士の方は3号突撃砲G型に乗り込み、負傷者や難民を乗せて連合側が陣を構えるドイツ西部に降伏のために何両かのトラックを連れて移動していた。

 

「いいぞ・・・分かってるじゃないか・・・」

 

車内では負傷した前任の戦車長が後任の操縦士に言う、その操縦士は第12SS装甲師団所属の少年兵士だ。

 

「はい、ありがとうございます」

 

今、この突撃砲の戦車長は何故か眼帯を付けた少女バウアーだ。

ややこしいことにこの少女の名もバウアーだ。

車体から顔を出しながらいつ何所から敵が来るか双眼鏡を使って索敵を行っている。

 

「そんなにキビキビすんな、敵と遭遇した時に戦闘に集中できないぞ?」

 

「は、はい・・・」

 

頭に包帯を巻いた戦車兵が緊張したバウアーを宥めた。

彼女が後ろを見れば、負傷した兵士や民間人、そして難民を乗せたトラックが西へと進路を進めるⅢ号突撃砲にしっかりと付いてくる。

これを見た彼女への負担は大きい。

その時、上空から米陸軍の数機の戦闘爆撃機P47サンダーボルトが来襲した。

白旗を挙げてるのにも関わらず、そのまま西へと降伏に向かうバウアーの部隊に襲いかかる。

 

戦闘爆撃機(ヤーボ)だ!早く車列を森に隠せ!」

 

「は、はい!」

 

Ⅲ号突撃砲は急いで近くにある森林に身を隠そうとするが、後ろを振り返ったバウアーが見た物は機銃掃射で潰されるトラックや撃たれて死ぬ負傷者や難民達であった。

それを見て恐怖するバウアーに負傷した戦車兵が彼女を我に返す。

 

「しっかりしろ!イワン共に屈辱されるよりマシな方だ。俺達は急いで・・・」

 

戦車兵の言葉の途中でバウアーが乗るⅢ号が火に包まれた。

原因はサンダーボルトの対戦車ロケット砲の攻撃らしい、吹き飛ばされた少女はこのまま死ぬかと思いきや、彼女の身体を謎の光が包み込み、黒騎士バウアー達と同じくこの世界から消えてしまった。

 




やっちまったよ・・・炒り豆さんに怒られないかな・・・

お次は源文勢では無く、有名なゲームの方々の転移です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4人、今度は別世界へ。

あの4人組の転移です。


近未来、月面基地

基地離れた場所に腐敗した死体が多数浮遊しており、その浮遊する多数の死体には銃で撃たれた後が多数残っている。

月面基地を覗いて見ると、4人の男が酒盛りをしていた。

 

「大日本帝国万歳!グビ」

 

大日本帝国陸軍の将校の野戦服を着た男は言った後、日本酒の瓶の中身を飲む。

名前はタケオ、階級は大尉だ。

 

「ジーク・ハイル!そしてドイツの科学は世界一ィィィィィ!!」

 

この頭がやや危なそうな男はビールを勢い良くガブ飲みする。

名前はリヒトーフェン、今は将官クラスの軍服を羽織ってるがこう見えて科学者。

 

「よし、俺も。アメリカ合衆国万歳!」

 

ラム酒を豪快に飲むこの海兵隊員の男はデンプシー、太平洋戦線での優秀な海兵隊の下士官の1人だ。

 

「ウラー!社会主義と共産主義に万歳!」

 

ウォッカ瓶を両手に持って両方とも一気に飲む男はニコライ、ソビエト赤軍に忠誠を誓う共産党員。

 

「かぁ~!ブラックオプス2発売か~それにゾンビモードがさらに強化されたらしいな、ワシ等も出るのかな?」

 

「出るに決まってんだろうが、リヒトーフェン!俺等が居なきゃこのコールオブデューティのゾンビモードは成り立たないぜ!」

 

リヒトーフェンの問いにデンプシーが意気揚々と答える。

ニコライも酔った勢いで呻り声を上げた後、ソビエトの国歌を歌い出す。

 

「喧しいぞ!この共産主義者め!!我が大日本帝国軍の国歌を聞けぇ!!」

 

「んだとこのファシストめぇ!てめぇこそ黙って偉大な祖国を称える国歌を危機やガレ、黄色い猿がァ!!」

 

「おのれ~この言葉、聞き捨て成らん!切り捨てる!!」

 

ニコライの差別発言にタケオがキレて腰に差していた軍刀を取り出し、ニコライに斬りかかった。

 

「オイコラ!刀持って暴れんな!」

 

デンプシーがタケオの止めに掛かる。

それをリヒトーフェンは大笑いしながら見ていた。

そんな状態が続くかと思われていたが、基地中にサイレンが鳴り響いた。

 

『警報!警報!未確認の物体が基地に接近!繰り返します。未確認の物体が基地に接近中!』

 

「なんだこの警報は・・・?」

 

「ああァ?誤作動だろう、兎に角飲もう飲もう」

 

もちろんこれは誤作動ではない、ちゃんと未確認の物体が基地に近付いている。

しかもリヒトーフェン達が居るブロックへ向かってくる。

 

「なんだありゃ?」

 

「どうせ宇宙ゴミ(デブリ)だ、さぁ飲んでr」

 

リヒトーフェン達が居たブロックに突っ込む、部屋の窓が割れて、中に居たリヒトーフェン達は宇宙に吸い込まれる様に飛ばされてしまった。

 

「ギャアアアアアアア!!苦シイィィィィィ!!息ガァァァァァ!!」

 

空気のない宇宙空間に飛ばされてしまった4人はそのまま苦しい出す。

そのまま死ぬと思われていたが4人は謎の光に吸収されてこの月面上から消えてしまった。

 




源文作品、関係ないじゃん!とツッコまないで!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔女と戦乙女、戦場から地獄へ

SEGAの某人気ゲームの最強キャラの転移です。


征歴1938年某日

内乱が治まった小国家ガリア公国にて不可解な事件が起きていた。

第1にスカーフを巻いたパン屋を経営する若い女性が消えた、その女性は生まれたばかりの自分の子を木の小陰で抱いていたが、周囲に突如霧が現れ、女性だけを消してしまった、と目撃者は語る。

 

次にガリア公国の隣国にてまた女性が消息不明に、原因は消えた赤子を残した母親と同じく、霧に包まれて消えた。

 

そして第3にガリア国内にて少女が同等の理由で消える。

公安機関は調査を行ったがこれといった進歩は無く、今の欧州では大戦中である為に打ち切られるとまで検討されていた。

 

消えた理由があるとすれば、彼女等が最強の戦闘民族”ヴァルキュリア人”である事だろう。

 

世界は変わって西暦1945年の大戦終結後の朝鮮半島。

大日本帝国の無条件降伏により、太平洋戦争こと大東亜戦争は連合側の勝利に終結。

その後大日本帝国は解体され、戦中や戦前に手に入れた領土は全て手放す羽目と成った。

当然朝鮮半島も統治下から離れ、南方面(今の韓国)の釜山港からの残留日本人の引き上げが行われた。

だが、一部暴徒化した朝鮮人が引揚者の残留日本人を襲うという事件があった。

南にあるとある地域にて疎開船がある釜山港に向かう日本人の親子が朝鮮人暴徒に襲われていた。

この親子とも女性、母親も若くて美人、その美人の子も幼い美少女だ、捕まればどんなことをされるか分からない、親子はその為に必死に逃げるが、子供が石に躓いて転んでしまう。

一環の終わりかと思われたその親子に天からなのか救いの手が差し伸べられる。

 

「なんだてめぇは!?」

 

包丁を持った暴徒が何所からともなく現れた175㎝の襤褸を纏った者に刃先を向ける。

残りの朝鮮人暴徒もそれぞれが持つ武器を向けた。

 

「このでかさは白人か・・・?それともチョッパリか・・・?」

 

やや戸惑うが、1人が痺れを切らしたのか、彼に襲いかかった。

 

「なんだかしらねぇーが死ねぇ!!」

 

斧を振りかざそうとするがあっさり避けられた挙げ句、背中を刺され、絶命する。

 

「この野郎、良くも!!」

 

もう1人が襲いかかるがこれも避けられ、殺された。

避けたショックで頭に被った布が外れた、そこには雪のような白い肌と赤い目、長い銀髪を持つ女性の顔だった。

それを見た暴徒達は2人の仲間が殺されてるのにも関わらず興奮し始める。

 

「上物じゃねぇーか、コイツも生かして捕らえろ!」

 

リーダー格の男が他の暴徒達に伝えるが、乾いた大きい音が鳴った後、額に穴が開いてその場に倒れ込んだ。

 

「じゅ、銃だ!銃を持ってるぞこの女!」

 

リーダーを失った暴徒達は即座に逃げようとするが、投げられた数本のナイフが全て刺さり、数人が死亡、残りも女性が持つ銃で射殺された。

 

「この世界に来て何人目か・・・」

 

女性は手に持つ銃ルガーP08を仕舞った。

 

「みんな殺したの・・・?」

 

幼い少女が女性に近付いて、殺された朝鮮人達を見て言う。

 

「私が来て、奴らを殺さなければ君と母親は奴らに酷いことをされていた。それで良いのか?」

 

女性は少女の身長の高さまで屈み、少女の顔を見る。

 

「嫌だけど、この人達が可哀想・・・」

 

少女は哀れみの表情をして言った、その後母親が来て、女性に礼を言う。

 

「助けてくれてありがとうございます。今はお礼する物も持ってませんが・・・」

 

「いや、礼をする事はしてない。現に人が死んだところを貴女のお子さんに見せてしまった。それよりも早く向かった方がいい、銃声を聞いた治安組織が来るかもしれない」

 

「あ、はい!さぁ、行くわよ。鏡子!貴女も行きませんか?」

 

「いや、遠慮しておく」

 

女性は誘いを断る、母親は自分の子を疎開船がある釜山港に向かおうとするが、少女が手を引っ張り止める。

 

「待って!私、桜井鏡子!お姉さんお名前は?」

 

女性は少し嬉しそうな表情を浮かべ、名を少女に教えた。

 

「セルベリア、セルベリア・ブレスだ」

 

「東欧の人かな・・・?お姉さんの名前は忘れないよ!」

 

「忘れない」と言った後、少女は母親に手を引かれて釜山港に向かった。

その後、「さようなら」という少女の声が聞こえてきたが、やがて聞こえなくなる。

遠くから、朝鮮語で「銃声が聞こえたぞ」という男の声が聞こえてきた。

セルベリアは直ぐにその場を離れえう。

暫く走った後、誰か居ってくるかと後ろを振り返ってみたが、誰も追ってはこない。

安心したセルベリアは襤褸を頭に被って顔を隠し、親子が向かった方向に歩き出す。

突如視界が塞がれる程の濃い霧が発生した。

 

「この霧は・・・?」

 

彼女は突然の霧に驚くが、慌てることなく街道を頼りに慎重に進んでいく。

しかし、睡魔に襲われ、徐々に視界がぼやけてくる。

 

「こ・・・れ・・・は・・・?」

 

やがてその場に倒れ込んだ。

その後、彼女は謎の光に包まれ、この世界から消えてしまった。

征歴の世界で消えた戦乙女達の様に・・・

セルベリアにも消えた理由もあった、それはかつての世界で魔女と呼ばれ、戦乙女”ヴァルキュリア”人であったからだ。

何故、二度目の世界大戦が終わった世界に何のために転移したのか、その答えは神しか知らない。




はい、また関係ないね。
彼女等が出てくるのは後ほどかと・・・
多分、黒騎士中隊と一緒に出ますよ。多分・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園からの脱出
死者の学園


遂に本編です。


20XX年 春期 何処かの県 床主 藤美高等学園

 

屋根の上に小柄なナチス・ドイツ時代のドイツ国防軍陸軍の兵士が倒れ込んでいた。

身長は150㎝か149㎝程、M41野戦服とM40野戦ズボンを着込み、それに象徴する略帽を被っている。

必要最低限の歩兵装備を身に着け、終戦まで正式採用だった小銃kar98kを右手に握りながら寝息を立てている。

周りから悲鳴や断末魔、人とは思えない呻り声が聞こえ、小柄なドイツ兵は目覚める。

 

「う・・・う~ん・・・・・・・」

 

声からして女性、しかも幼い少女のようだ。

目覚めた瞬間、何所か知らない場所に居たために直ぐに辺りを見渡した。

 

「何所・・・ここ・・・」

 

近くに落ちていたドイツ兵のシンボル的なシュタールヘルム(M40ヘルメット)を手に取って被った。

童顔に白い肌、綺麗な水色の瞳に長い綺麗なブロンドの髪、整った顔立ちからしてかなりの美少女だが、身体的には残念な方だ。

 

「ここは屋根の上、入れるとこを探さないと・・・」

 

少女は口ずさみながらkar98kを持って探し始める。

何所からともなく悲鳴やガラスの割れる音が聞こえてきたが、少女は全く動揺しない、むしろ慣れているようだ。

 

「向こうに窓が・・・」

 

窓を見つけると、自分の身体を見て持ち物を確認する。

武器はkar98kにワルサーPPk、kar98k専用銃剣、折りたたみスコップ、M24柄付手榴弾2個。

持ち物は7.92㎜弾5発クリップ10個、PPk用弾倉4個、携帯食、水筒、コンパス、お菓子袋。

持ち物確認を終えた少女は銃座で窓ガラスを割り、建物内に入った。

窓から入った途端、男子生徒が彼女に襲いかかった。

 

「キャ!」

 

襲ってくる男子生徒の顔を見れば白目を剥き、口から人でも食べたのか周りに血が付いており、一目で正気じゃないと分かる。

必死に振り払おうとするが相手の力が強すぎて中々離れない、強烈な蹴りを入れたら離れたが、また噛み付こうとしてくる。

kar98kの銃座で頭を殴りつけると、男子生徒はその場に倒れて動かなくなった。

 

「死んだ・・・?」

 

少女は動かなくなった男子生徒の身体を銃座で叩いてみたが、何の反応もない。

首筋に指を当てて脈があるか調べてみたが、脈は無い、そして腕の方を見ると、人に噛まれた跡があった。

 

「ゾンビだよね・・・?」

 

少女は一言口にすると次に進んだ。

また男子生徒のような物と遭遇すると判断し、専用の銃剣をkar98kに着剣し、前に足を進めた。

あちらこちらから悲鳴や呻り声、物が壊れる音が外より大きく聞こえてくるが、それでも前に進む。

コンパスを見ながら進み、案内図を見つけた。

 

「ここは5階、階段はこっちに・・・」

 

階段がある方向へ視線を向け、kar98kを肩に掛けて折りたたみスコップを取り出しそこに向かう。

途中に学園の生徒とされる死体が幾つもあったが、なるべく近付かないようにする。

階段に着くと、さっきの男子生徒と同じような女子生徒がこちらに視線を向けて近付いてきた。

ノロノロと近付いてくるために少女はスコップを頭に振りかざし、撲殺した。

糸が切れた人形の様に女子生徒は階段の踊り場に落ちて動かなくなった。

 

後ろを振り返り、窓の内側から外を見た、すっかりと夕暮れが空を覆っていた。

少女は階段で一気に1階まで下ろうとしたが、階段を塞ぐようにゾンビが多数居たために、迂回するしか手がなかった。

持ってる手榴弾で突破するという考えは彼女の脳内にあったが、貴重な手榴弾を消費するのは勿体ないと判断したのだろう。

 

道形を進んでいくと、5体程のゾンビを確認した。

肩に掛けてあるkar98kを取り出し近くに居るゾンビに照準を合わせる。

他に居ないかと後ろを振り返ってみたが、居ない。

後方の安全を確認すると安全装置(セーフティー)を外すと、近い距離に居る1体目の頭に向けて撃った。

銃声が響き、1体目は頭部を撃たれ人形の様に倒れた。

ボルトを引いて空薬莢を排出し、次弾を薬室に送り、次に2体目の頭に向けて撃つ、そして3体目にも頭に合わせて撃つ。

残り2体は少女の元に近寄って来るが、距離があるために十分に狙いを付けられる。

残り2体を始末すると少女はポーチから7.92㎜弾が5発詰まったクリップをkar98kに装填、ボルトを押して、初弾を薬室に送る。

さっきの銃声なのかまたゾンビが少女に集まってくる。

数はさっきより多かったが、動揺することなくゾンビの頭に向けて小銃を撃つ。

弾が無くなれば銃座でゾンビの頭を殴り、棍棒代わりにする。

数分後にはゾンビ達は全滅し、彼女は再び歩みを始めた。

 

こうして彼女とこれから出会う仲間達によるサバイバル生活が始まった。

 

 




やっとの事で本編突入。
さらに書き直しもせんといかんから厳しい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合流

取り敢えず原作通り(?)に行きます。

後、オリキャラは減りましすよ。


学園内をさ迷って既に小一時間、数々のゾンビとの戦闘でkar98kの弾薬は底をついた。

この小銃の利用価値は尖端に装着された銃剣で突くことや木製の銃座で殴るしかない。

少女は返り血塗れなスコップを構えながら壁を辿りながら前に進む。

 

辿りながら進んでいくと話し声が聞こえてきた。

丁度辿っている場所にドアがある。

開けようとしたが、中から何かで塞がれビクともしない。

少女は中の様子を探るためにドアを叩く、直ぐに中から声が返ってきた。

 

「ゾンビか・・・?」

 

窓の隙間を見ると、血塗れな鉄パイプを持った男子高生がドアを見ながら警戒している。

その男子生徒の目を見ればまともとは思えない、隅には短機関銃MP40と専用のポーチ2つが置かれていた。

何とか中に入り、MP40を手に入れたい少女は辺りを見回す、視線を上を向ければ通気口を見つけた。

早速、台になるような物を近くから持ってきて、それを踏み台にして通気口へ入る。

中は数ヶ月おきに掃除でもしているのか、少し綺麗だった。

手を触れてみれば黒い炭が付く、最後に清掃したのは一体何日前だろう。

 

通気口の中を這いずりながらその部屋の鉄格子に辿り着いた。

鉄格子越しから見れば、男子生徒はまだドアの方を向いて身構えている。

 

「気付かれないように気絶させれば良いか・・・」

 

少女は聞こえないように小声で言い、鉄格子をソッと外し、部屋の中に入った。

男子生徒は少女が侵入したことに気付かない。

予備の弾薬が無くなったkar98kの銃座を上にし、男子生徒の頭を少し強めに叩いた。

頭を叩かれた男子生徒は気絶、そのまま少女は隅っこにあるMP40と専用ポーチを手に入れる。

詰める弾薬の無い7.92㎜弾の2つの弾薬嚢を野戦服の下ポケットに入れて、代わりにMP40の専用ポーチを付けた。

人通りの作業を終えて部屋を出ようとした瞬間、部屋に謎の緑の光が現れ、そこから黒い軍服を身に包み、左腕にハーケン・クロイツの腕章を付けたナチス・ドイツの一般親衛隊員が姿を現した。

その親衛隊員の顔は生気が無くて死人に近く、目は不気味に青く光っている。

特徴的な黒服を見れば撃たれた後が残っており、服に血が滲んでいる。

 

暫く呻り声を上げ、青い眼光で驚く少女を視線に収めるや、いきなり奇声を上げて襲いかかってきた。

直ぐにMP40の安全装置を外してその親衛隊員に数十発撃ち込んだが、胴体では効果は無かったらしく、9㎜パラベラム弾が身体に埋め込まれながらも怯みもせずに向かってくる。

 

少女に体当たりし、左手で掴み上げると、右手てで少女の顔を殴った。

その衝撃で被っていたヘルメットとMP40が床に落ちる。

彼女は直ぐに腰に差したワルサーPPkを抜いて親衛隊員の頭に向けて撃つ、眉間に銃弾を撃ち込まれた親衛隊員は断末魔を上げて力尽きた。

倒れた衝撃で少女は親衛隊員に覆い被さる。

 

「う、ハァ!ゴホォ、ゴホォ」

 

死んだ親衛隊員の嗅ぐって見れば、もの凄い異臭がした。

死後一週間って所だろう。

銃座で頭を殴られた男子生徒に目をやってみると、何処かに消えていた。

後ろを振り返ると、先程気絶していた男子生徒が鉄パイプを持って襲いかかる。

 

「死ね!」

 

咄嗟にかわした少女は右手で握っていたワルサーPPkを男子生徒に向けて撃った。

銃口から発射された弾丸は男子生徒の頭部に飛んでいき、彼の命を奪った。

死んだ男子生徒を見つめて少女は荒い息づかいをし、その場に倒れ込む。

 

「殺しちゃった・・・」

 

口で言うが、本当は少女に後悔がない、その後立ち上がって床に落ちたヘルメットとMP40を拾い上げ、部屋のバリケードを外し、廊下に出た。

そして二階からの悲鳴を耳にする。

 

「二階から・・・!」

 

少女は周りにいるゾンビ達を無視して上がる階段を見つけ、直ぐに上がる。

上がった先には電動ドリルでゾンビの頭を突き刺すピンク色のツインテールのスタイルが良い女子生徒が目に入った。

そしてメガネを掛けた小太りな男子生徒がネイルガンを構えて口を開けて唖然中、周りは複数のゾンビ達、少女なら十分に片付けられる数だ。

その場にいるゾンビを殲滅しようとする少女であったが、隣から女性の声が聞こえた。

 

「私は右の2体をやる!」

 

「麗!」

 

「左を抑えるわ!」

 

何が起きたのか分からずに少女は困惑していたが、上がりの階段の方から男女の声が聞こえ、そこから槍に改造したモップを持ったアホ毛が生えた女子生徒と金属バットを持った以下にも不良な男子生徒が飛び出してくる。

再び前に視線を向けると、木刀を持った大和撫子な淑女が目に入る。

3人は的確にゾンビを片付けていく、そして最後の1体は男子生徒の金属バットの強烈な強打で吹っ飛んで動かなくなった。

 

全て片付けたと安心する一同であったが、職員室からゾンビが1体出て来た。

少女は手に持つMP40を新手のゾンビの頭に向けて単発で仕留める。

銃声に気付いた一同、特に眼鏡の小太りが男子生徒が少女の格好を見て興奮し始めた。

 

「あれはドイツ国防陸軍の短機関銃兵!階級章からして東部戦線の方か!着ているのはかなりの美少女だ!!」

 

その軍オタの男子生徒の言葉に一同の視線が少女に集中した。

いつの間にか隣にいる金髪で巨乳の天然そうな女性が少女の姿を見ていた。

MP40の銃声で驚いて、壁に寄り添っていたらしい。

 

「可愛い・・・」

 

女性は少女の顔を見て言った。




名乗るのは次にしよう・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一時的な休息と絶望

職員室前にいたゾンビを全滅させた後、全員が自分の名を名乗り出す。

 

「鞠川校医は知っているな?3年A組毒島冴子だ」

 

「小室孝、2年B組」

 

「去年全国大会で優勝された毒島先輩ですよね、わたし槍術部の宮本麗です」

 

「あ、に、2年B組平野コータです」

 

「そこに軍服の子は?」

 

「知らない、階段を上がったらそこに居た」

 

「私ですか・・・?えっと・・・」

 

小室に質問された少女は首元の認識票を取り出したが、そこに刻まれているのは男性名だった。

仕方なく少女は自分の名を口にする。

 

「ルリです・・・」

 

「愛らしい容姿に愛らしい名か・・・」

 

毒島と呼ばれる女性はルリの容姿を見て納得したかのように頷く、そこにツインテールの少女が立ち上がり、ブツブツと喋り始めた。

 

「なにさ・・・そんなちんちくりんのコスプレ娘の言うことなんか信じて」

 

「なに言ってんだよ、高城」

 

「私はその気になれば誰にも負けないのよ!」

 

強がった発言の後、高城と呼ばれる少女は泣き崩れた。

それを毒島は彼女に近寄り、抱きしめる。

 

「もう充分だ、辛かっただろう・・・」

 

高城は少し泣きながらも自分の着ていた制服を見た。

 

「どうしよう・・・こんなに汚しちゃった・・・ママにクリーニング頼まないと・・・」

 

その後一同は職員室に入る。

 

「よし、こんな物か・・・?」

 

出入り口にバリケードを築き上げて、孝は額の汗を拭く。

 

「みんな息が上がっている。少しここで休憩しよう」

 

毒島が言った後、ルリは幾多もの戦闘で疲れ果てて、その場に座り込み、水筒の水を飲んでいる。

孝と平野は変わりなく、麗と毒島は一休みの感じで息を整えている。

鞠川の方は椅子に座り込み、机にベッタリと倒れていた。

 

平野は高城の姿が見えないことに気付いた。

水の音が鳴る方へ行ってみると、高城が洗面台で顔を洗っている。

先の額にドリルで顔に血を浴びたのでそれを洗っているのだろう、洗い終えた高城は眼鏡を掛けた、平野にとっては異様な光景だ。

 

「高城さん、視力が悪いんですか・・・?」

 

「普段コンタクトレンズだからずれるのよ・・・て、なに?」

 

「ツインテールに眼鏡っ娘・・・萌え・・・!」

 

叱られながらもこの眼鏡を掛けたツインテールの少女に萌える平野であった。

一息ついた所で毒島が口を開く。

 

 

「所で鞠川校医、全員乗せられる車なのか?」

 

その言葉に鞠川はショックを受けた。

 

「うぅ、コペンです・・・」

 

「その言葉からすると仕方がないな。バスはまだあるか?」

 

「は、まだ在ります!」

 

平野が窓から見える駐車場のバスを発見する。

 

「バスのキーはあるか?」

 

「はい、まだ在ります」

 

孝が鍵掛けにあるバスのキーを見せる。

 

「バスは良いけど、何処へ?」

 

鞠川の問いに孝は答える。

 

「家族の無事を確かめます。近い順にみんなの家を廻って、可能ならば一緒に連れて行って、その後は安全な場所を探してそこに逃げ込みます。ルリちゃんは・・・どうしようか・・・?」

 

孝はルリの方を見た、そのルリは首を横に振った後、口を開いた。

 

「私この辺に親戚も親友も居ません、と言うかこの地区は初めてです。迎えは、いつになるか分からないけど」

 

「そうか、じゃあ探す必要は無さそうだな・・・」

 

安心しきって孝は言う。

 

「安全な場所って、あるのかな・・・」

 

平野の発言に高城は答えた。

 

「在るに決まってるでしょ、警察も自衛隊も動いてるようだし、地震とか台風みたいに避難所とか・・・どうしたの?」

 

高城は麗の様子がおかしいことに気付いた。

 

「な、なによこれ・・・!?」

 

麗はテレビを見ながら絶望している。

そこへ一同の視線がテレビに向けられ、毒島はテレビのリモコンを手に取り、音量を上げる。

 

『各地で頻発する暴動に対し政府は緊急対策の検問を始めました。しかし自衛隊の出動に対し野党から反発が相次ぎ』

 

「暴動ってなんだよ!暴動って!?」

 

孝が怒りの声を上げる中、毒島はチャンネルを変える。

 

『米政府はこの暴動に対し、ホワイトハウスを放置。海上で待機している空母へと政府拠点を移転しました』

 

『ドイツでは武装親衛隊の軍服に身を纏った多数の過激派が無差別に人を襲っております。連邦政府は事態収拾の為に軍の出動を許可しました』

 

『地域住民の被害は拡大しつつ、あ!発砲です!警官隊が発砲し始めました!発砲した状況は分かりませんが・・・・・』

 

突然カメラが落ちて映像が一瞬止まったが、また映し出された。

 

『きゃ!いや、なに、嘘!?助け、きゃあああああああ!』

 

女性のキャスターの悲鳴が聞こえた後、画面にはしばらくお待ちくださいのテロップが映し出され、スタジオに変わる。

 

『現場で何か起こった様です・・・引き続きスタジオで』

 

孝がまた怒りの声を上げる。

 

「それだけかよ・・・!どうしてそれだけなんだよ!」

 

「パニックを恐れているのよ」

 

「今更・・・!?」

 

高城は孝に答える。

 

「今だからこそよ!恐怖は混乱を生み出し、やがて秩序の崩壊を招くわ。そしてどうしたら動く死体に立ち向かって言うの?」

 

この答えに孝は何も言えない、少しはマシな情報は無いかと毒島はチャンネルを変える。

 

『えー、現在のドイツ各地では武装親衛隊に扮したネオナチが各地で暴動を起こしています。既に死傷者は多数出ておりその数は計り知れません。現在、政府では治安部隊を送って対処してますが、未だ沈黙しておらず、ますます、事態が悪化しそうです。こう言った現象がアメリカやロシアでも起こっており、アメリカでは州軍、ロシアでは治安部隊を送って対処しております・・・・・・・』

 

これ以上は無駄と判断したのか毒島はテレビの電源を消した。

 

「信じられない・・・朝、ネットを覗いた時はいつも通りだったのに」

 

「たった数時間でこんな事に成るなんて・・・」

 

絶望感に満ちた麗は孝にしがみついた。

 

「ねぇ、そうでしょ。安全な場所が在るわよね・・・?きっといつも通りに・・・」

 

「あるわけないしー」

 

その高城の言葉に孝は怒鳴る。

 

「そんな言い方無いだろう!」

 

「パンデミックなのよ、仕方ないじゃない」

 

「パンデミックって・・・」

 

「感染爆発のことですか?」

 

「頭が悪そうな子にしては良い答えね」

 

高城はルリを見ながら言う、そして続ける。

 

「インフルエンザの様な物よ、まさしく1918年のスペイン風の様にね」

 

ルリはそのスペイン風と言う言葉に記録があったが、敢えて何も言わなかった。

 

「最近だと鳥インフルエンザがあるわ、スペイン風は6億人以上感染して、死者は確か、5000万人くらい?だったと思うわ」

 

「それだったら14世紀の黒死病に近いかも・・・」

 

「どうやって流行が終わったんだ?」

 

「いろいろ考えられるけど、人間死にすぎると終わりよ。感染する対象が居なくなるから」

 

「でも、死んだ奴ら動いているよ」

 

平野は外の窓を見ながら言う。

 

「これから暑くなるし、肉が腐って骨だけになって動かなくなるかも?」

 

鞠川が口を開く、毒島はそれに質問する。

 

「どの位で動かなくなるのだ?」

 

「夏なら二十日で在る程度一部が腐るわ、冬だともっと掛かるかも・・・・」

 

「腐るかどうか、分かったもんじゃ無いわよ」

 

異議があるのかまた口を動かす高城。

 

「どういう意味だよ?」

 

孝の質問に高城が答えようとしたがm代わりに鞠川が答える。

 

「普通死後10分後、死後硬直が起きて加速的に腐る。でも、それがあの・・・奴らには見られないから・・・」

 

「そう言う事よ。動く死体なんて医学の対象じゃないから、下手するといつまでも・・・」

 

「なんだか良く分からない話に成ってるです~」

 

ルリの言葉に毒島はいつまでも続くと判断し、中断するような発言をした。

 

「家族の無事を確認した後、小室君の言う通り何処か安全な場所に逃げ込むしか無いな。好き勝手に動いては生き残れん、ともかくチームだ、チームを組むのだ!」

 

この言葉に一同が納得し、話を止めて出入り口を塞いでいたバリケードを取り除き、職員室を出た。

出た先には3体かゾンビが待ち伏せていたが、ルリは難なく手に持つワルサーPPkで仕留める。

 

「最後に確認しておく。無理に戦う必要は無い、避けられるだけ避けろ転ばすだけでいい!」

 

「連中、音だけには敏感よ!それから普通のドアを破れるくらい腕力があるから掴まれたら喰われるわ、気をつけて!」

 

毒島と高城は一同に釘を刺す、だがしかし階段の方から少女の悲鳴が聞こえた。

 

「早速、大きな悲鳴を上げてますが?」

 

「生き残りは出来るだけ連れて行こう。行くぞ!」

 

こうして一同は悲鳴が上がった階段に向かった。




やっと書けたぜ!

次は脱出かな?

これはどうみても8月中には終わらないな・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

脱出と憎しみ

小室達は悲鳴が聞こえた階段に向かった。

そこには悲鳴を上げた女子生徒と男女数名が複数の“奴ら”に囲まれている。

 

「卓造・・・!」

 

「くそ、下がってろ!!」

 

卓造と呼ばれる少年はバットを奴らに向けるが、彼がバットを振りかざす前にその奴らが突然倒れた。

倒した者の正体を見れば殴ることしかできないkar98kを棒の様に持ったルリだった。

そして残りの奴らも麗、孝、毒島に倒され、最後の1体は銃座での頭を撲殺される。

 

「あ、ありが」

 

「大きな声を出すな、噛まれた者は居るか?」

 

「え、居ません、居ません!」

 

「大丈夫みたい・・・本当に」

 

新たに数人加えた一行は階段を抜けようとするが、靴箱前に何体か奴らが居て進めない。

 

「やたらといやがる・・・」

 

「手榴弾なら持ってますが?」

 

ルリは腰に付いているM24柄付き手榴弾を見せるが、高城に直ぐに却下された。

 

「そもそも、見えてないから隠れることもないのに」

 

「じゃあ、高城が証明してくれよ」

 

「例え、高城君の説が正しいとしてもこの人数では静かに動けん、校舎の中を進み続けた襲われた時に身動きが取れない」

 

毒島の言葉に暫し全員沈黙する。

 

「玄関を突っ切るしかないのね・・・」

 

麗はウロウロする奴らを見て言う。

 

「誰かが、確かめるしかあるまい・・・」

 

毒島が言った後、孝は彼女と目が合う、彼は自分から行こうとしようと口を開く。

 

「僕が「私行きます」っ!?」

 

ルリが志願したことに孝は驚き、行かないように説得を始める。

 

「君は残れよ」

 

「私の方がみんなの中で一番小さいので、自信はあるよ?」

 

そう言うとルリは靴箱へ向かって行った。

目の前に奴らが現れたが、彼女は足音を立てずに避けていく、踊るように奴らを避けていき、靴箱に着く。

見ている全員はルリの事を「バレリーナか?」と思う、ルリは床に落ちていた靴を離れた場所にある警報装置に向けて投げつける。

 

音に引き寄せられ靴箱前にいる全ての奴らは吸い込まれる警報装置に向かっていく、合図をすると全員が玄関へと向かって行った。

全て行程通りに運ぶかと思いきや、刺又を持った少年が金属の手すりにぶつけて大きな音を出してしまう。

その音に学園内に居る全ての奴らが小室達の存在に気付いた。

 

「走れ!!」

 

孝は叫ぶ。

 

「どうして大声出したのよ!黙っていれば手近な奴らだけ倒してやり過ごせたのに!」

 

「だってあんなに音が響くもん!無理よ!」

 

麗が答えた後、高城の後ろに居る奴らを毒島が倒した。

 

「口より足を動かせ!バスまで一気に行くぞ!」

 

武器を持つ一同は次々と奴らを倒しながら前進する。

MP40などの武器を持つルリは頭に向けて発砲しながら徐々にバスの距離を縮めていく、距離が半分に近付いたときに首にタオルを巻いた少年がタオルを掴まれ、奴らの頭を叩こうとしたが、鎖骨に当たり、その腕を噛んだ。

 

「うわぁ・・・あ・・・」

 

その少年の恋人が振り返り、少年の元へ向かうが高城に止められる。

 

「諦めて!噛まれたらもう・・・」

 

少女は高城の腕を振り払って、目に涙を浮かべながら複数の奴らに喰われている少年の元へと向かう、それを見たルリは少年に群がる奴らと少女諸共に向けてMP40を乱射した。

何体かは残っていたが、ワルサーPPkで頭部を撃たれ、全滅する。

少年と少女はまだ息があったが、ルリに「殺してくれ」と目で伝え、彼女は言うとおりに新しい弾倉を換えたMP40の銃撃で少年と少女を撃った。

その後ルリはバスの元へと走る。

 

「ちゃんと教えてあげたのに!どうして戻るのよ!信じられない!」

 

高城はあの少女の行動に納得できないようで、麗が何かを表情をしてると、鞠川が口を開いた。

 

「私、分かるわ。もし世界中がこんなに成ってしまったら・・・好きな人と死んでしまった方が楽だもの・・・」

 

その言葉に麗と高城は驚いた表情をした。

高城は激怒し、叫ぼうとするが隣にいつの間にか居た奴らが倒れた事で、突っ立てる場合じゃないと気付く。

そしてバスに鞠川と高城が到着、遅れて平野が到着し、窓から支援攻撃を始める。

 

ルリは腰に付いた柄付き手榴弾を奴らが多く集まっている所に投げ込んだ。

破片を飛ばさないこの手榴弾は多数の奴らの足下に落ちると、爆発し、多数の奴らを殺傷したが、何体かは這いずりながらバスに向かう孝と毒島の元へ向かってくる。

トドメにMP40で這いずりながら向かう奴らに向けて弾をばらまいた。

腰に付いている最後の手榴弾を人気がない場所に投げ、バスへと一気に走る。

 

爆発音が聞こえ、生者を追っていた死人達は爆破音が聞こえた方へと向かっていった。

もう少しでバスと思った瞬間、突然バランスを失い転んだ。

MP40が少し進めば届く距離にあり、それを取ろうとしたが、何かに足を引っ張られて届かない。

後ろを振り返ると、青い眼光を光らせる上半身を地面から出した奴ら(ゾンビ)が呻り声を上げながら、彼女を引っ張ろうとしている。

ワルサーPPkを取り出してその軍服のゾンビの頭を撃った。

頭を撃たれたゾンビは直ぐに下を向いて動かなくなったが、まだルリの足を掴んでいる。

直ぐにスコップで掴んでいる腕を取り払った。

 

そしてMP40を拾い上げ、バスに向かう。

バスにはもう全員乗り込んでおり、エンジンも掛かっていつでも出発できる。

そこへ遠くから声が聞こえた。

 

「・・・くれぇ!」

 

見れば眼鏡を掛けた教師の男を筆頭にこちらへ向かってくる。

後ろには複数の奴らが彼等を追いかけている。

 

「3年A組の紫藤だな」

 

「紫藤・・・!」

 

麗が眼鏡の男を見て、顔が憎しみに染まっている。

 

「もう出せるわよ!」

 

「もう少し待ってください!」

 

その孝の言葉に麗が声を荒げた。

 

「あんな奴、助けることないわ!」

 

「麗!何だってんだよ、一体!?」

 

「助けなくて良い、死んじゃえばいいのよ!」

 

孝と麗が口論を始めた。

この間にルリは窓を開けて、走る青い眼光のゾンビを銃撃する。

その時、1人の男子生徒が足を挫いて転び、眼鏡の教師に助けを求めたが、顔を強く蹴られ、のたうち回っている内に追ってきた奴らに喰われた。

 

紫藤が最後に乗り込んだのを確認した鞠川はバスを出す。

目の前に青い眼光の軍服ゾンビが居たが、容赦なく跳ね殺し、学園の門を潰して奴らの巣窟と化した藤美学園から脱出した。




原作通りです。
オメガ何処で出そう・・・?
そして源文勢の出すタイミングは・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな問題

バスで学園を脱出してから紫藤は安心しきった顔で毒島に問う。

 

「助かりました、リーダーは毒島さんですか?」

 

「そんな者は居ない、皆の力で協力しあっただけだ」

 

その答えに紫藤は笑みを浮かべて口を開く。

 

「それはいけませんね・・・生き残るためにはリーダーが必要です。目的をハッキリさせ、秩序を守るリーダーが・・・!」

 

「後悔するわよ、絶対に助けた事を後悔するわよ!」

 

麗は孝の腕を掴み、憎しみの表情で言う、この麗の言葉にルリは紫藤という男はとても嫌な奴だと悟った。

だが孝は紫藤の事を知らない、そのままバスは学園を離れていく。

 

「だいたいよっ!」

 

脱出してから周りが安心感が浸ると思いきや、問題が発生した。

コンビニを通過した直後、バスの車内では以下にも不良な少年が怒鳴り散らしている。

 

「何で俺達まで小室に付き合わなきゃならないんだ?」

 

「へ、勝手に乗ってきて良く言うぜ」

 

不良の言葉の後に誰かが小声で言った。

その少年は階段で助けられた1人で、姓だけだが西寺と言う、誰にも聞こえないように言ったので不良の言葉はまだ続く。

 

「お前等が勝手に街に戻るって決めただけじゃねぇか!寮とか学校の中で安全な場所を探せば良かったんじゃないか!?」

 

その言葉に反応したのか、地味な男子生徒が口を開いた。

 

「そうだよ。このまま進んだら危険だよ、さっきのコンビニに立て籠もった方がr」

 

男子生徒の言葉が終わる前にバスは急停止した。

その所為か、誰か悲鳴を上げている、それは嫌みの正論を吐いた西寺だ。

頭をぶつけたのか、運転席に居る鞠川に怒鳴ろうと思ったが、突然温厚で天然なハズの鞠川が激怒したためか、小さくなる。

 

「いい加減にしてよ!これじゃ運転できない!」

 

怒りそうもない彼女が怒ったためか、ルリは不思議がっている。

怒鳴った鞠川を見て不良は黙り込み、次なる八つ当たりをする相手を目で探し、孝に目を付けた。

 

「ならば君はどうしたいのだ?」

 

「んだよ、やろうってのか!?」

 

毒島は不良に呆れながら質問する。

 

「コイツが、気にイラねぇんだよ!偉そうにしやがって!ムカツんだよ!」

 

怒鳴りながら孝を睨み付けた不良、この時平野がネイルガンを不良に向けていたが、高城に止められた。

この無茶苦茶な答えに孝も流石に反論する。

 

「何だよ、僕がいつお前に何か言ったか?」

 

麗が立ち上がろうとするが、ヘルメットを外したルリが突然立ち上がり、不良の前に出たことで行動を止めた。

 

「あっ!?コスプレの餓鬼が何の用rブゴォ!!」

 

ルリは弾が無くなり、拉げたkar98kの銃座で思いっきり不良の腹に叩き込んだ。

金属部分の底で殴られたためか胃液を履いて藻掻き苦しむ。

 

「ルリ・・・」

 

孝は不良を潰したルリを見て言う、そして一部始終を見ていた紫藤が拍手をしながら近付いてきた。

 

「素晴らしい!見事なチームワークです。そこの可愛らしいお嬢さんとお二方!しかしこの様なことが二度と起きない様にしなくては。そう、我々にはリーダーが必要なのです」

 

「で、候補者は1人って訳?」

 

この高城の言葉にやや動揺したが、仕切り直して言葉を続ける。

 

「なにを言ってるんですか、私は教師でよ。貴方達は学生や未成年の部外者です。資格の有無はハッキリとしております。私にはこの一団を責任持って率いる義務があります。どうです?皆さん、私なら問題は起きないことを約束しますよ?」

 

悶絶していた不良がまるで天使を見てるかのように紫藤を見ていた。

後部座席にも彼を舞い降りた天使のように見る学生達もいる。

 

「で、あいつはただの噛ませ犬ってことか」

 

西寺の言葉に紫藤は図生だったのか、小さく舌打ちをした。

しかし西寺の行動が裏目に出た様で、紫藤を崇めていた学生達から睨まれ、孝達の方へと移動する。

この行動を見た紫藤は笑みを浮かべて口を開く。

 

「まぁ、今更遅いようですしね。では皆さん、私がリーダーで宜しいですか?」

 

紫藤は後ろを振り返り、自分を崇めていた学生達を見た。

学生達は紫藤が神にでも見えたのか賛成と言わんばかり手を上げた、満面な笑みを浮かべて紫藤は孝等の方を見る。

 

「と・・・言う訳で、多数決で私がリーダーに成りました。手を上げてないのはあなた方だけですよ・・・?」

 

「出来レースでもしてんじゃないか?」

 

「てめぇ!リーダー様に逆らうつもりか!」

 

勝ち誇った表情を見せつける紫藤に対して西寺は一言吐き捨てたが、不良に睨まれ、また黙り込んだ。

麗も我慢できなくなったのか、叫び出す。

 

「先生開けて・・・私ここで降る!降ります!」

 

「え、でもまだ・・・」

 

鞠川が戸惑っている間に麗は反対側のドアから降りてしまった。

何故か一緒にルリも降りている。

 

「・・・・麗っ!?ルリも!?」

 

孝はルリが止めに行ったと思ったが、彼女は麗と一緒に行動したいだけである。

 

「嫌よ!そんな奴と一緒に居たくない!」

 

嫌がる子供のように泣き叫ぶ麗を見た紫藤は白々しい困り顔で口を開いた。

 

「行動を共に取れないのであれば仕方ないですね・・・」

 

「あんた、何言ってんだ!?」

 

その発言に孝は反論する。

 

「街まで、街まで我慢するだけじゃないか、それに歩きは危険」

 

「だから後悔するって言ったのよ」

 

「だから今は我慢して・・・で、どうしてルリは麗と一緒にバスを降りたんだ?」

 

孝は少し睨むようにルリを見て質問した。

 

「あいつ、気に入らないもん。お姉ちゃんより酷そうだし・・・それに麗ちゃん1人なら危ないもん」

 

「最後が尤もだが、気に入らないって・・・」

 

孝の言葉が終わる前にバスのクラクションが聞こえた。

最初は仲間が乗るバスが戻ってこいと鳴らしてると思ったが、連続して聞こえるので、直ぐに違うと判断した。

向かってくるバスの車内は奴らで溢れかえり、地獄絵図で、奴らに喰われてる運転手はブレーキを踏めないでいる。

 

橋のトンネルの前にいるルリは麗を守るためか、暴走するバスに向けてMP40を乱射した。

だが、フロントガラスを割って中にいる生き残りと奴らに当たるだけで意味がない。

弾切れとなり、次にワルサーPPkを取り出し、再びバスに撃ち続けるも何の意味も無かった。

 

孝は直ぐに麗とルリを庇う、トンネルの方へその衝撃でルリは持っていたMP40とワルサーPPkを落としてしまった。

バスは横転していた車に衝突し爆破し、周りは火の海と化し、橋のトンネルに入ることは出来なくなる。

 

幸いなことに3人はトンネルに入って無傷であった。

毒島がマイクロバスから降りて、無事を確かめるために大声を出す。

 

「小室君!大事ないか!?」

 

その答えに孝は咳き込みながら答える。

 

「警察署で、東署で落ち合いましょう!」

 

「時間は?!」

 

「午後5時!今日が無理なら明日も同じ時間で!」

 

「分かった!鞠川校医、ここはもう進めない」

 

その後、バスのエンジン音が聞こえた。

燃え上がるバスの中から全身に火を纏った奴らが出て来たが、やがて力尽きる。

そして孝、麗、ルリはトンネルから抜け出す。

 

一方、この光景を上空に飛ぶ多目的ヘリUH-60Jから見ている者が居た。

それは日本の国益の為に極秘裏に冷戦終結から設立された極秘特殊作戦部隊オメガ・グループの隊員の1人オメガ7こと小松だ。

彼はバスに乗って去る生存者達を見た後、視線を機内に戻した。

 

「何を見てたんだ小松」

 

オメガ8の平岡が小松に問う。

 

「いや、ただ下を眺めていただけだ」

 

小松はその問いに答えた。

機内には小松と平岡の他にもオメガ20の田中、他にも3人MP5SD6や対人狙撃銃を装備した隊員が居る。

UH-60Jはそのまま目標に向かった。




オメガの目的は今は秘密です。

次は街に入る孝達を書いた後、転移した者達を書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夜の街へ・転移した者達

ようやく源文勢の登場です。


トンネルを抜けた孝と麗にルリは見回しが効く土手まで向かう。

 

「これからどうするのよ?」

 

「これからどうしようにも、足がないな・・・」

 

麗の問いに孝は悩むように答える。

ルリは先程MP40とワルサーPPkを失った為、不要な弾倉やポーチ、拉げて撃てなくなったkar98kと下ポケットに入った弾嚢を捨てた。

軍事マニアに売りつければかなりの高額で買ってくれそうだが、生憎ここには専門家もマニアも居ない。

その時、孝が単車用のヘルメットを被った奴らに襲われた。

 

「この・・・!」

 

上に乗り掛かられて身動きが取れない孝、しかし、麗が後ろからコンクリートブロックで奴らの頭をかち割った。

 

「ありがとう」

 

「いえ、どうする?街まで歩き?」

 

「他に方法が無ければ・・・今の奴メットを被ってたな?」

 

「それがどうかしたの?」

 

孝の思いつきに麗は疑問に思う。

 

「そこら辺にバイクとか在るかも」

 

そう言って、孝は周辺を探り始める。

案の定、直ぐに見つかり、拾い上げて土手まで持ってきたが、ルリの怒った表情を見て困り果てた。

 

「あぁ・・・忘れてた・・・このバイクは3人以上は乗れないし・・・」

 

ドイツ国防陸軍歩兵の基準装備がほぼ無しだが、幾ら小柄なルリでも2人以上はバイクに乗れない、定員オーバーだ。

彼女の真っ赤な顔を見た麗は迷う孝に話し掛けた。

 

「やっぱり歩いていく?」

 

「そうするしか・・・え?何?」

 

ルリが孝に近付き、袖を引っ張る。

そして指を指していた、孝は指を指した方向を見ると、ルリがそこに向かった。

孝はルリについていく。

 

「おい、待てよ」

 

暫ししてからルリが足を止めて、上がってきた方の逆を示した。

孝は彼女の側に行き、下を見た、そこにはサイドカーがあったが、しかし周りには4体の死体がある。

直ぐに麗を呼ぶ。

 

「なに・・・?」

 

「ルリがこんな物を見つけたんだが・・・」

 

「サイドカーに死体!?これに乗るの・・・?」

 

麗がルリの顔見て質問した。

もちろんルリは首を縦に振り、笑みを浮かべる。

その可愛らしい表情に2人は苦笑いをした。

 

土手を降りて、運転席に居る死体を退ける、その死体は体つきからして女性であり、軍服だ。

だが顔面が何かで吹っ飛ばされた後があり、どんな顔だったが分からない。

他の3人も軍服を着ており、全員女性だ。

身体に何かを銃弾でも食らった様な傷跡があり、そこから血が吹き出ていたが、顔の方は無傷だ。

恐る恐る近付いて顔を見てみると、美人で、童顔な幼い顔つきも居た。

 

次に拳銃、短機関銃を調べたが、血を浴びたり折れて使えない、使えるのは拳銃のグロック26だけだ。

仕方なく、予備の弾倉を回収する。

 

「映画で良く見る拳銃だけど・・・使い方は分からないし・・・」

 

孝は唯一無事なグロック26を見ながら言う。

その時、ルリがサイドカーに付着した血を拭き終えたと伝えた。

 

「終わったよ。あ、その銃私が持とうか?」

 

話し掛けられた孝は直ぐに予備の弾倉と共にグロック26をルリに渡した。

そして土手にサイドカーを上げると、直ぐに乗り込んだ。

孝はハンドルを握り、麗は孝の後ろ、ルリは二番席に座っている。

エンジンを掛け、街に向かって走行し始めると孝の後ろに乗る麗が話し掛けた。

 

「免許持ってたっけ?」

 

「無断免許運転は、高校生の特権!」

 

エンジン音を鳴らしながらサイドカーは街へと向かった。

 

その頃、“地獄”に転移した者達は、突然変わった景色に驚きを隠せないでいた。

 

黒騎士の場合

 

「ん?ここはニューヨークか?」

 

日本の床主近くの何処かに転移した黒騎士中隊は景色の変わりように戸惑っている。

パンターに乗るクルツは地図を開いて確かめるもここは第二次世界大戦のドイツでは無いので意味はなく、開いている地図を閉じる。

 

「看板に漢字が書いております。大尉殿」

 

「おそらく上海の何処かだ。クルツ、偵察に出るぞ。残りは車輌に待機」

 

ティーガーⅡやパンターの戦車長であるバウアーとクルツはStG44とM24柄付手榴弾を装備して戦車から降りた、そして近くにあるビルの偵察に向かう。

 

パッキーの場合

 

「ここは何処だ・・・?」

 

転移した場所は床主市。

ヘリから放り出されたウサギことパーキンスは無理もなく景色の変わりように驚く。

 

「どうやらここはカンボジアでは無いらしい・・・」

 

XM177を杖代わりにして立ち上がると、周りを見渡した。

偶然にも鏡を見つけてしまい、自分の姿がウサギではなく“人間”に鳴っていることに驚いた。

 

「人に戻ってる・・・!下は履いてるな・・・」

 

そう言った後、部屋に居ることを確認し、ドアを開けて警戒しながら外に出た。

 

ハーゲン・ゴロドク、逆福コンビの場合

 

1943年の東部戦線から床主市に転移した4人の戦車兵は景色の変わりように驚いている。

そしてハーゲンとゴロドクはいきなり殴り合いを始めた。

 

「このドイツ野郎!一体どんな兵器を使った!?」

 

「知るか!俺はこんな兵器は見たこともないし聞いたこともない!!」

 

殴り合いをする2人をバートルとゾーレッツは止めに入る。

 

「止めろ、止めろ。今は殴り合ってる場合じゃないだろう?」

 

ゾーレッツは2人の間に入り、殴り合いを止める。

バートルは看板を見てここは日本だと、直ぐに分かった。

 

「ゾーレッツ!ここは日本(ヤパーニッシュ)だ!」

 

「なに?ここが日本(ヤパーニッシュ)?中国の上海か香港じゃないのか?」

 

「いや、書き方が違う。間違いなく日本だ」

 

「ホントか?ここが日本(ヤーパン)なのか・・・」

 

「俺達は一体どうしたって言うんだ・・・?」

 

バートルが看板を見てそう断言した後、ハーゲンとゴロドクは殴り合いを止めて、空を見上げた。

 

Zbvの場合

 

日本の何所かの平地

この平地は”奴ら”が発生した時からずっと霧に包まれていた。

何分かするとディーゼルエンジン音が聞こえ、そこからティーガー重戦車4台とSdkfz251装甲兵員輸送車5両にトラック7両が現れた。

そう、彼等はこの地獄に展翅した懲罰装甲大隊Zbvだ。

 

「前方視界不良、いったいここは何所なんだ?」

 

ティーガーの車内で砲手のアッシュが呟く。

 

「何所でも良いよアッシュ、俺達はシュタイナーの奴に地獄まで連れて行かれたんだ」

 

「畜生、シュタイナーの野郎めぇ・・・!何所まで俺達を呪う気だ?」

 

コワルスキーがアッシュと呼ばれる戦車兵と会話する。

それに見かねたのか戦車長のメガネを掛けた無精髭な男が2人を注意した。

 

「アッシュ、コワルスキー!無駄話はやめて周囲を警戒しろ!」

 

怒鳴られたアッシュとコワルスキーは「分かったよブルクハイト」と言って仕事に戻った。

ブルクハイトは首に付いた無線機に手をやる。

 

「こちら狼1、こちら狼1。狼の頭、応答せよ」

 

しばらくして通信が帰ってきた。

 

『こちら狼の頭、狼1どうした?』

 

「どうしたもこうしたもありません。一体ここは何所なんですか?」

 

『知らん。こちらは何人かに偵察に出て貰う手筈だ。それよりも狼1は前方を警戒しろ。交信終了』

 

ブルクハイトは舌打ちし、無線手に通信を始めるように指示した。

 

「無線を開け、近くの前線に交信して情報を集めろ」

 

「分かりました中尉殿」

 

それを見ていたアッシュとコワルスキーはヒソヒソと話し始める。

 

「ブルクハイトの奴、いらついてるぞ」

 

「シュタイナーの奴がまた何かやらかしたのか?」

 

「聞こえてるぞ。さっさと働け、このお喋り共め」

 

喋る2人にブルクハイトは睨み付けながら言った。

次にブルクハイトはキュポーラのハッチを開け、上半身だけを外に出し、手に持ってる双眼鏡を覗いた。

 

「霧で視界不良。ん?前方に煙が見えるぞ・・・前線か・・・?霧が晴れた。ん?これは・・・!?」

 

ブルクハイトが見た物はそこら中から煙や銃声が響き渡る町であった。

これを見た彼は無線に手をやり、部隊長であるシュタイナーに報告する。

 

「こちら狼1より狼の頭へ。凄い物を見つけたぞ・・・おい、止めろ!」

 

彼はティーガーを操縦する戦車兵に止めるように指示した。

しばらくしてこの部隊の全ての乗り物が停止し、部隊長であるシュタイナーがブルクハイトの近くに向かう。

 

「ブルクハイト、凄い物とは何だ?」

 

シュタイナーはブルクハイトに問う。

 

「これです。前方の・・・」

 

シュタイナーはブルクハイトから双眼鏡を受け取り、それを見た。

 

「これは・・・!我々はアメリカか何処かの世界に転移したとでもいうのか・・・!」

 

地獄に転移したことが分かったシュタイナー。

余りにも驚いた表情をしている為にアッシュとコワルスキーは珍しそうに彼の顔を見ている。

こうして彼等、第二次世界大戦の戦士達は地獄へと足を踏み入れた。




CODの変人4人組とヴァルキュリア人達は後で書きます(爆


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

街の中
街の中へ・・・


猫の糞はパッキーだけじゃない・・・
ラッツにボタスキー、チコも参戦します。


街へと進む、サイドカー。

 

上空には航空自衛隊所属のF-4EJが偵察飛行を行っている。

麗とルリはF-4EJに手を振ったが、何の返事もなく、ただ床主上空を飛び回っているだけだった。

 

「さっきの飛行機、なんで無視していったの?」

 

「学校のヘリと同じさ、自衛隊が動いていても僕らを助ける余裕は無い。もしかしたらこれからもずっと・・・」

 

「じゃあ、これからどうするのよ?」

 

その質問に孝は沈黙する。

何の返事もないのか、麗が少し苛ついて言う。

 

「孝っていつもそうよね。大事な時にいつも盛り下がることばかり口にして・・・幼稚園の頃からずっとそう・・・」

 

この言葉に苛ついたのか、孝が急ブレーキを掛けた。

 

「ちょっと、なに止まって」

 

「それと今の騒ぎになんの関係があんだよ!?」

 

「無いけど、あるのよ!」

 

突然の非日常的な出来事で不安や苛立ちが溜まっているのか、口論をし始めた。

サイドカーの荷台で寝ていたルリは起きて、2人の喧嘩を見ている。

 

「痴話喧嘩ですか?」

 

「「違う!!」」

 

そのルリの問いに2人は顔を真っ赤にして、ルリに怒鳴った。

結果は2人とも恥ずかしくなって口論は止めた、次に喉に渇きを覚えたルリは孝に告げる。

 

「喉乾いた」

 

「水筒があったはずだろう。それを飲めば・・・」

 

「でも、無いよ?」

 

水筒を取り出して飲み口を下に向けて振り、中身が無いことを見せた。

仕方なく孝はルリにポケットに入っている釣り銭を渡す。

ルリは礼を言って近くにあった自販機に向かい、ジュースを買って帰ってきた。

帰ってきたのを確認にすると、孝はサイドカーに跨り、エンジンを掛ける。

燃料メーターに目をやると、もう燃料が尽き掛けていた。

 

「そう幾らでも走れないな、スタンド探さないと・・・」

 

「信号2つ先にあったと思うけど」

 

麗が指を指した方向に孝は向かう。

通りでは、猫が2匹、血溜まりに屯していたが、サイドカーのエンジン音に驚いて逃げていく。

 

「猫は襲われないんだな・・・」

 

逃げていく猫を見て孝が呟いた。

 

「誰もいない・・・」

 

麗が見渡しながら言う、それに孝が答える。

 

「逃げたか・・死んだか・・・」

 

「死んだら奴らになるじゃない!」

 

そう叫んだ麗、孝はまた答えた。

 

「生きてる連中を追いかけて行ったのさ」

 

孝が答えた後、麗は何かを見つけた。

 

「孝、右側の交差点!」

 

右を見ると白と黒、赤いランプを上に載せた警察車輌「パトカー」が止まっていた。

 

「無免許、ノーヘル、盗んだバイク。補導されるのは確実だな!」

 

「散々、奴らを相手にしていて今頃パトカーが怖いの?こっちにはこの子、あ、銃器不法所持で捕まるかも」

 

麗が見てみるとトラックに突っ込まれ、車体後部が無くなったパトカーであった。

 

「マジかよ・・・」

 

麗は降りてパトカーの方へ向かう。

 

「麗!何をするつもりだ。パトからガソリンが漏れていつ爆発するか・・・」

 

「役に立つ物が手にはいるかも!孝、ボケッとしてないであんたも手伝いなさい!」

 

パトカーに乗っている警官の死体を漁る2人、ルリはただ荷台で寝てるだけである。

見つけた物は警棒に手錠、日本のお巡りさんの拳銃、S&W社の回転式拳銃M37を手に入れた。

2人は拳銃の使い方を話し合う。

 

「使い方わかる?」

 

麗の質問に孝は手に握られた拳銃を見ながら答える。

 

「テレビで見たのと、ルリが使ってる銃は見たとおり・・・確か撃つときに以外、引き金に指を掛けちゃいけないだよな」

 

「意外と分かってるんだね、後で練習するだけだよ」

 

ルリが突然起きて、グロック26を右手に持ちながら言う。

そして麗からM37を受け取り、持ち上げた。

 

「どうしたの?」

 

「なんかズッシリしてるなって」

 

「これも持ってみる?」

 

いきなりルリが荷台から降りて、グロック26を孝に渡す。

 

「こっちはこの拳銃より重い・・・!」

 

孝はグロック26の重さに驚く。

 

「この拳銃殆どプラスチックで出来てんのに、こっちの拳銃より重い」

 

「弾丸が沢山入ってるから、慣れればこんな風に扱えるよ」

 

ルリは孝からグロックを取り返すと、軽快にグロック26を回す。

その技に驚く、孝と麗であったが、ルリが失敗してグロック26を落とすと、苦笑いをした。

その後、M37の残弾を確認する。

 

「5発しか撃てないのか・・・」

 

「手を出して」

 

麗が孝の手の平に5発程弾を置きこう言った。

 

「もう一人の巡査の銃を握るところが壊れてたけど。弾だけは無事だったから」

 

「凄いな、お前・・・」

 

「お父さんが持ってるのを見せてもらったことあるし、それに今更血が付いて驚くと思う?」

 

「確かにな」

 

そう言った後、麗が金属バットとモップを出した後、これらをどうするか質問する。

 

「これ捨てる?」

 

「いや、銃を撃てるのはルリちゃんだけで、捨てるわけにはいかないだろ?予備もあった方が良いし、銃は練習しないと当たらない」

 

孝が答えると、3人は再びサイドカーに乗り込み、ガソリンスタンドに向かった。

ヘリのローター音が聞こえたが、また無視されるだろうと思い3人は見向きもしない。

そしてその近くの場所にパッキーの存在に気付くことも無かった。

 

「声を掛けるべきだったかな・・・?」

 

パッキーはガソリンスタンドの方へ行った孝達を見て言う。

 

「仕方ない、乗り物を探すか・・・」

 

小さくなるサイドカーを見た後、その場を去る。

 

一方、動物世界から転移したのは“元人間”のパーキンスだけでない、同じキャット・シット・ワンの面々も転移していた。

 

「ボタにチコ!俺達は何でトーキョーに居るんだ?」

 

白人のホワイトことラッツがMP5SD3を構えながら言う。

 

「知らないよ、変な光に包まれたらこの有様だ。それより見ろよ、俺達ズボン履いてるぜ?」

 

黒人のボタスキーが下半身を指で示しながら言う。

 

「ボタスキー、それキャッチ22」

 

ベトナムのノラ族のチコがボタスキーを注意した。

彼等はCIAの言えない任務に参加中にパッキーと同じような光に包まれてこの世界に転移する。

装備はラッツがMP5SD3にSPAS12、S&W社の自動拳銃M59、ボタスキーはM16A1の30発弾倉にSW M29、チコはボタと同じM16A1、コルトM1911だ。

 

「兎に角、辺りを探査しよう。人っ子1人も居ないのが気が掛かりだが・・・」

 

動物世界の転移者達は予想外の再会をすることは思わずに前に進み始めた。




次はパイパーと大佐(巨乳の方ね)達に出会うことを書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パイパー、戦乙女に会う。×ガソリンスタンドでの出来事

始めの視点はパイパーとヴァルキュリア人達との出会いにします。


日本の床主に近い場所にて、武装SSの野戦服を着た男がワルサーP38を構えながら前に進んでいた。

その男は武装親衛隊が理想とする容姿を持ち、長官のヒムラーの副官を務め、虐殺に手を染めない親衛隊大佐の優秀な指揮官ヨアヒム・パイパーだ。

 

「(ヤンキー共に手を上げた瞬間、変な霧に包まれてこの様だ。それにここは何処だ?看板に漢字とひらがなが書かれているからして日本だな)」

 

パイパーは道形を進んでいくと、血が出ている右肩を左手で押さえた若い女性が彼の前に現れる。

 

「どうしましたか?お嬢さん(フロイライン)

 

もちろん彼の喋ってる言葉はドイツ語で女性には分からない、女性はパイパーの背中に隠れた。

女性が逃げてきた方を見ると、呻き声を上げながら複数の男女が近付いてくる。

追ってくる男女の目を見れば、皆白目を剥いており、肌の色もまるで死人だ。

直ぐにパイパーはワルサーP38を向けて警告する。

 

止まれ(ハルト)!止まらなければ例え民間人でも撃つぞ!」

 

パイパーは拳銃を向けながら叫んだが、男女は止まらない。

爆弾を抱えたパルチザンが警告を無視して突っ込んできた経験があった為か、躊躇いも無くワルサーの引き金を引く。

乾いた音が鳴り、飛ばされた9㎜パラベラム弾は先頭の男の胸に命中した。

だが、男はまだこちらに向かってくる。

それは紛れもなく歩く死人、ゾンビだった。

 

「っ!?そんな馬鹿な・・・9㎜弾でもかなりの激痛があるはずだぞ!」

 

男が苦しむことも無く近付いてくるのに対して、パイパーは驚く、心臓に向けて発砲するも、死ぬこともなく近付いてくる。

 

クソ(シャイセ)!こうなれば頭だ!」

 

やけくそ気味にワルサーP38を先頭のゾンビの頭に向けて撃った。

すると、ゾンビは糸が切れた人形のようにその場に倒れる。

 

「(そうか・・・!頭か!)」

 

心の中でそう思うと、パイパーは迫り来るゾンビ達の頭に向けて次々と当てていく。

弾倉の中身の弾が切れると、再装填をせずにナイフを取り出し、ゾンビの頭を斬った。

数秒後には襲ってきたゾンビ達は全滅し、パイパーはワルサーP38を再装填する。

 

「さて、お嬢さん。一体ここは何処でしょうか?」

 

自分の背中に隠れていた若い女性に問いただす。

しかしドイツ語なので、女性は全く理解できない。

 

「No、English(英語は喋れません)・・・」

 

「(英語も喋れないのか・・・)」

 

女性は慌てた表情で答えた、パイパーはその答えに困り果てた。

その時、女性が急に口から血を吐き、苦しみ始めた。

直ぐに寄り添って身体をさするが、パイパーの看護も虚しく女性は力尽きて死亡する。

 

「クソォ・・・一体何が起きたんだ・・・?」

 

悔しながら地面を拳で叩く、直後女性が起き上がり、パイパーの方を向いた。

彼は「ドッキリか?」と思ったが、それはドッキリでもいたずらでも無い、本物だ。

ゾンビと成った女性はパイパーに襲いかかった。

 

「うぉ!なにを!?」

 

パイパーはゾンビの首を左腕で押さえ、噛み付かれないようにする。

振り払おうとするが、腕の力が強すぎて振り払えない。

口から垂涎が飛び散り、今にもパイパーを喰おうとしている。

 

「いい加減に・・・!」

 

右手からワルサーP38をゾンビの頭に向けて撃った。

その場で額に穴を空けて倒れる。

 

「どうなってるんだ・・・?」

 

パイパーは動かなくなったゾンビを見る。

押さえていた右肩を見ると、動物にでも襲われたのか、噛み跡があった。

 

「こいつは・・・!?」

 

右肩の傷を詳しく調べれば、人の歯が肉に食い込んでいた。

 

「どうやらここの地区ではカリバリズムが流行ってるらしい・・・」

 

そう口にした後、目に入った建物に入った。

ワルサーP38を構えながら壁に沿って進んでいくと、ある扉を見つける。

警戒しながらドアノブを握って、扉を開けた。

 

「これは・・・!」

 

パイパーが見たのは部屋の中央で倒れ込んでいる女性達であった。

一人目は頭に赤いスカーフを巻いた青い軍服(?)を着た茶髪の小柄な白人女性、二人目は赤と銀の髪の女性、三人目は長い銀髪の豊満な胸を持った黒い軍服の女性、最後は先の女性と同じ銀髪な少女、その女性の豊満な果実を頭に乗せている。

 

顔を見れば、全員顔立ちが整っており、かなりの美人だ。

彼は早速、女性達を起こすことにした。

 

「お嬢さ方、起きてください。風をひきますよ?」

 

一人目の赤いスカーフの女性を手でさすると、直ぐに目を覚ました。

 

「ここは・・・?」

 

「(英語を喋ってる)失礼、私はドイツ第三帝国の軍属の将校です。しかし貴女方は何故ここで寝ているのです?」

 

「ドイツ第三帝国・・・?それに貴女方って・・・!?」

 

赤いスカーフの女性は、パイパーを見て驚き飛び上がる。

余りの驚きにパイパーは宥めるが、女性は後ろで寝ている他の女性達に気付き、驚きの声を上げた。

 

その頃、孝達はガソリンスタンドに着いていた。

当然街がこんな状況なので店員は来ない、孝はサイドカーのエンジンを切る。

 

「ガソリン残ってるかしら?」

 

「どんなガソリンスタンドでも乗用車千台分が入るタンクを備えてるから大丈夫だろう」

 

2人が会話を行っている中、ルリは荷台から降り、その後2人はも降りた。

 

「セルフ式だからお金かカード入れないと」

 

「だったら入れればいいじゃない!」

 

「また痴話喧嘩ですか?」

 

二度目の口論が始まった瞬間にルリの発言で、止まる。

孝はガソリンを入れようと、ポケットを探すが、ルリのジュースで殆ど残ってないことに気付く。

ため息を付いて麗の方に振り返った。

 

「ルリちゃんにジュース買ってしまったからもう残ってない・・・」

 

「最低・・・」

 

この答えに頭に来たのか、麗に怒鳴る。

 

「悪かったな!僕が永じゃ無くて!」

 

「何よいきなり!いつ永と比べたのよ!」

 

「最低って言ったろう、それを最高が有るってことじゃないか!永のことに決まってる」

 

またもや口論が始まった。

流石にルリもどうするか分からない、必死に頭を回転させてある言葉を思い付く。

 

「トイレ行きたい!!」

 

その瞬間、孝と麗は口論を止まる。

どうやら今争ってる場合じゃないと気付いたのだろう、暫くした後孝がルリに話し掛ける。

 

「ルリちゃん、お金・・・持ってるかな?」

 

言われたとおりポケットを探ってみたが、金銭らしい物は無かった。

 

「無いのかよ・・・麗、お金とか、カードとか持ってるか?」

 

「無いわよ、財布鞄に入れぱっなしだもん」

 

麗の答えを聞いた孝は小声で呟く。

 

「なんだよ、自分のことは棚に上げてたのかよ・・・」

 

聞こえていたのか、ルリが上目遣いで見てるのが見え、孝は恥ずかしくなって顔を赤くする。

そして事務所に目を付けた。

 

「あそこに店員の事務所が在るから、あそこなら多分金の方には困らない」

 

「強盗でもするの?」

 

「まさか、店員1人も出てこないんだぜ?多分誰も居ないよ」

 

孝は笑みを浮かべながら答える。

そして事務所に向かっていく。

 

「なにかあったら叫べよ」

 

「うん」

 

そう言った後、事務所に入った。

ルリは我慢できなくなったのか、近くのビルに向かう。

 

「トイレ?」

 

「うん」

 

「奴らに気を付けて!」

 

麗が言った後、ルリは手を振りながらビルに向かっていった。

2人が去った後、麗に危機が迫ると気付かずに。

その証拠に荒い息をしながら、麗を見る視線があった。




他に源文勢の転移書かないと駄目かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

救え!

麗に危機が訪れているとは知らずにルリは近くにあるビルの女子トイレの個室に居た。

 

「ふぅ・・・」

 

用を足した後、個室から出るルリ。

直ぐに麗の元に向かおうとしたが、床に落ちた9㎜パラベラムの空薬莢が目に入る。

それを手に取り、観察を始めた。

まだ熱を持っており、撃たれたのは数分前だろう、用が済んだ9㎜パラベラムの空薬莢を捨て、辺りを見渡す。

他にも何発か空薬莢が落ちている。

辿っていくと、血だまりを見つけた。

視線を前に向ければ、頭にケブラーヘルメットを被り、重装備をした兵士の死体がそこにある。。

顔を確認すると、ガスマスクをしておりどんな顔をしているか分からない。

恐る恐るガスマスクを取ってみると、綺麗な顔をした女性の顔があった。

衝撃でヘルメットが床に落ち、押さえられていた髪が広がる。

 

「こんなとこに綺麗な女性兵士の死体・・・?」

 

左腕に付けられているワッペンを確認した。

ワルキューレの絵が描かれ、下にラテン語で戦乙女と記されている。

 

その時、麗の悲鳴が聞こえた。

直ぐに彼女は女兵士の持っていた武器の短機関銃UMP45を回収し、麗の元へ向かおうとしたが、何者かに口を抑えられる。

必死に振り払おうとするが、中々離れない。

抑え付けていた相手がナイフを持っているのが見えた。

殺されると感じたルリは思いっきり蹴りを相手の身体与える。

 

衝撃で相手がルリの身体を離す、直ぐに振り返り、グロック26を抜いて相手が死にまで撃つ。

相手の姿はさっきの死体と同じ女兵士だった。

直ぐにUMPを拾って、麗の元へ向かう。

 

向かった先には暴漢が麗を裸締めをし、孝を脅していた。

もうサイドカーにガソリンは入れた後で、暴漢が麗にナイフを押し付けながらサイドカーに向かっていく。

ルリは暴漢に気付かれないように距離を縮める。

しかし、装備の音で暴漢が存在に気付き、舌打ちをしてルリの方を向く。

 

「ち、帰って来やがったか。よぉ!そんな物騒な物を渡して俺の所へ来いよ、この嬢ちゃんと一緒に可愛がってやるぜ!」

 

下品な笑い方をしてルリを見ながら言う。

その笑い方に腹を立てたのか、UMPの安全装置を外して暴漢の頭に照準を合わせて撃った。

銃口より発射された45.ACP弾は暴漢の眉間に食い込み、暴漢の息の根を止めた。

暴漢からの拘束を解かれた麗は直ぐに側を離れ、孝に抱きつく。

孝は麗を抱き返す、暴漢を何の躊躇いも無く殺したルリを見ていた。

 

「なにも殺すことはないだろう・・・!」

 

孝の言葉で麗もルリを憐れな目で見ている。

暫く沈黙した後、遠くから奴らの呻き声が聞こえ、これ以上の長居は無用と判断したルリは口を開く。

 

「ねぇ?そんな事してないで早く行こ」

 

上目遣いで孝を見るルリ、彼は人を殺したのに何とも思わないルリの態度の変わりように恐怖を感じる。

 

「(この娘はどんな考えをしている?それに対してあの変わりよう・・・どんな所で育ったんだ?)」

 

暫くルリを見ていたら、急かされた。

 

「ねぇ、早くしようよ!」

 

顔を見ながらルリは孝の学ランを強く引っ張る。

その時、微かに孝はルリから殺気を感じた。

少し驚いたが、ここで行動を示せば確実に彼女に殺されてしまう。

ルリ聞こえないように麗に耳打ちして先程の殺気を知らせた。

 

「麗、早くしよう。彼女に殺されるかもしれない」

 

「嘘でしょ、この娘が私達を殺すって・・・」

 

孝の行動に対してルリは小首を傾げて見る。

視線を感じた孝は気付かれたと思い、ルリに何でもないと言った。

そんな孝の行動に麗は疑問を抱いた。

サイドカーに孝と麗が乗り込むと、ルリが荷台に乗り込もうとした瞬間、彼女の行動が止まり、銃弾らしき物が地面に落ちた。

 

「どうしたの、ルリちゃん?」

 

止まったルリを見ながら麗が声を掛ける。

彼女が見れば、胸の辺りが赤く染まっていく、その後、ルリはその場に仰向けに成って倒れた。

倒れた場所は血に広がる。。

2人は彼女に近寄ろうとしたが、遠くから銃声が鳴り、2人の足下に着弾する。

 

「もう逃げるしかない、乗れ麗!」

 

「で、でも!」

 

「行かなきゃ殺される!早く!!」

 

麗は戸惑うが、孝の言葉でサイドカーに乗り込む。

そして2人は小さくなっていく倒れたルリを見ながら、後悔しながらその場を逃げ去った。




まだ彼女のライフポイントは残ってますよ。

次はヴィットマンの転移を書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦車撃墜王の転移

まずはオメガ7の面子からです。


ルリが撃たれて孝と麗が逃げた後、その場に小松達ことオメガ・グループも居た。

 

『こちらオメガ11、オメガ7、全員始末したんじゃ無かったのか?敵の増援が着て居るぞ』

 

小松の耳に付いた小型無線機から他の隊員の無線が入る。

 

「このビルに居た奴は全員始末したはずだ。あそこで死んでる軍服少女の所為じゃないのか?」

 

返答した後、ガソリンスタンド近くに居る複数の重装備の兵士達を窓から確認した。

 

「AK系統にM16系統・・・他はブルパップか・・・」

 

「小松さん、AK系統はAEK-971にAKS74u、他のAKは東ドイツライセンス生産のMPiですね」

 

「田中、お前そう言うの詳しいな」

 

M203付きM16A1を持つ田中の観察に平岡が言う。

 

「まぁ、これでも元自衛官で軍オタなんで。M16系はM4のクローンモデルですね・・・最近出た銃器は分かんないです」

 

「え?最近のは知らないのかよ。じゃ・・・ブルパップは?」

 

小松は田中の知識の限界に皮肉り混ぜながら言う、それに対して田中は彼等に見えない様に嫌な顔をして答える。

 

「ブルパップはフランスのFAMASにオーストリアのステアーAUGとAKのブルパップ版のOC-14ですかね・・・?」

 

田中の銃器紹介が終わると、小松と平岡は移動を開始する。

 

「お二方、何処行くんですか?」

 

「命令が出た。屋上まで行って、隣のビルに飛び移るだってさ」

 

「僕はグレラン付きの重装備ですよ?それに間も結構ありそうだし・・・」

 

「そこは気合いでなんとかしようだ。田中、グチグチ言ってないで早くしろ。それに軽歩兵の増援だ」

 

平岡はその場に居る田中に声を掛けた後、小松の後に続いていく。

その場に取り残されている田中は追い着こうと走って、小松等に後に付いていった。

 

その頃、ルリの倒れた場所にMPi-KMを持った何人かの重装備な女性兵士が集まっている。

彼女等が取ってる行動はルリが履いている軍靴やM41野戦服とM40ズボン、靴下を脱がしている。

所謂戦利品の漁りだ。

漁ってる彼女等の顔つきは何処か懐かしそうな表情を浮かべていた。

それを見ていた軽装備のワルキューレの兵士達が口を開く。

 

「あれって・・・死体漁りでしょ?見逃して良いの?」

 

「止めといた方が良いと思うよ?何処からか流れてきた元兵士だし・・・殺されるかもよ?」

 

「怖ァ!で、何か口ずさみながら言ってるけど・・・あれ何喋ってんの?」

 

「まぁ、私ドイツ語分かるから・・・懐かしいとか、昔を思い出すとか言ってる」

 

「元サバゲー部かな?」

 

もう1人は死体漁りを終わりを終えて服とズボンを持ち帰る兵士達を見た後、下着だけが残されたルリに近付く。

 

「可哀想に・・・こんなに可愛いのにね・・・」

 

動かないルリを抱き上げて、哀れみの目でルリの顔を見ながら言う。

死体漁りを終えた兵士達が去った後、ルリの手が微かに動く。

 

「この娘・・・死んでない・・・!?」

 

驚いた女兵士はルリを放し、離れたところからMP5A5で地面に横たわるルリに向けて構えた。

それに続いて周りにいたワルキューレの兵士達も手に持つ自動小銃や短機関銃を構える。

MP5を彼女に向けて構えていた兵士はどうしようかと近くに居る兵士の顔を見たが、「お前が調べろ」と小首を動かす。

額に汗を垂らしながら安全装置を外した兵士はMP5を構えながら、目の前に横たわる鮮やかなブロンド髪な美少女の身体に触れた。

 

「死んでるよね・・・?」

 

身体に触れながら口ずさむと、次は首筋を触り、脈を調べようとする。

突如、ルリの目が見開き、MP5を構えた兵士を見た。

見られた兵士は腰を抜かし、倒れ込む。

彼女を見るルリの目は綺麗な水色から赤い目をしており、不気味な笑みを浮かべている。

周りにいる女兵士達も表情に恐怖を浮かべて手に持つ銃をルリに向ける。

倒れ込んだ兵士は直ぐにMP5を彼女に向けて発砲した。

 

床主市内で銃声が響き渡っている頃、近くに戦車撃墜王ミハエル・ヴィットマンが愛車のティーガーⅠ後期型と共に転移していた。

 

「(英軍(トミー)との戦闘中に謎の霧に包まれて異国の見知らぬ都会に来てしまった・・・それに他の中隊戦車ともはぐれて迷子だ、漢字やひらがながあるとしてここは日本か?)」

 

キューボラから上半身を出して周りのフランスとは違う異形な景色を見ながら思う。

ちなみに彼が転移前の時期はサントーに向かってる最中の英軍との戦闘中にだ。

彼のティーガーは街道を走りながら床主をさ迷っている。

 

「戦車長!前方に街らしき建造物群が!」

 

「よし、直ぐにそこへ向かおう!全速前進!」

 

砲手の報告でヴィットマン等が乗るティーガーは街に向けて進路を取った。

そこで思いもよらぬ出会いをするとは知らずに。




ヴィットマンの視点が短い・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

頭と思わぬ出会い。

暇だから連続投稿。

まずは小さいバウアー、ゾンビを知るから。
ちなみにこの美少女バウアーは黒騎士のバウアー大尉とは血縁関係は無いよ。


その頃、勇敢な黒騎士のバウアー大尉とは違う小さな黒騎士はとあるビルの一室に居た。

 

「うぅ・・・ここは?それにこの音は・・・?」

 

遠くの方から聞こえる銃声で目を覚ました美少女バウアー、直ぐに起き上がり双眼鏡を取って銃声が鳴り響く方向を窓から見る。

 

「ヒィ!」

 

小さい悲鳴を上げて双眼鏡を目線から降ろす。

もう一度見てみると、そこには地獄絵図が広がっている。

1人の少女が軽装備や重装備の兵士を殺している光景だ、その殺し方は異常で、四方が引き千切られ、内蔵が引き抜かれたり、頭が飛ばされたりしていた。

兵士等の血飛沫で周りの建造物に大量の血痕がある。

 

「地獄だ・・・地獄に堕ちたのよ・・・!」

 

双眼鏡を降ろして頭を抱えて震えるバウアー。

その時、彼女が居る部屋のドアを叩く音がした。

不規則に叩いているために、ただノックをしているとは思えない。

使える物が無いかと探し、床に落ちたモーゼルC96に目が入る。

直ぐにそれを手に取り、弾が入っているかどうか確認した後、マウザーC96を構えながらドアに向かう。

 

覗き穴を見れば、白目の男が呻き声を上げながらドアを叩いているのが見えた。

これは明らかに正常では無いと判断したバウアーはドア越しからモーゼルC96を撃つ。

 

薄い金属を7.63㎜マウザー弾が貫き、ドアの前に立つ男の身体に当たる。

倒れたかどうかを覗き穴から確認してみると、男は何ともなかったかのようにドアを叩き続けていた。

銃弾を撃っても倒れない男にバウアーは少しパニックになる。

やがて、ドアの金具が外れると、男がふらつきながら部屋に入ってきた。

潰されたドアから一目散に離れた彼女はモーゼルを男に撃ち続けるが、胴体や心臓に撃ったが死なない。

 

後ずさりながらモーゼルを撃ち続けるが、男は幾ら撃たれても死にはせずバウアーに向かってくる。

やがて逃げる場所が無くなると、拳銃を構えながら壁に凭れながら絶望した。

 

「こ、怖いよ・・・神様ぁ・・・」

 

彼女は迫り来る男(ゾンビ)に恐怖する。

イチかバチか頭に狙いを付けて撃ってみると、ゾンビは糸が切れたかのようにその場に倒れ、動かなくなった。

恐る恐る近付いて、死体をそこら辺に在った棒で突いてみると、何の反応もない。

直ぐに今居る部屋から飛び出し、外へ向かった。

 

一方のパッキーは連続して鳴る銃声の元へ駆けつけていた。

音に釣られたのか、ゾンビが銃声が鳴る方向へと集まっている。

この様子を見ていたパッキーは頭に狙いを定めてXM177を撃った。

 

「やはり弱点は頭か!」

 

頭を撃たれた奴ら(ゾンビ)はその場に倒れて動かなくなる。

感心しているところを他の奴ら(ゾンビ)がパッキーが持っているXM177の銃声でパッキーの元へと集まってきた。

 

「それに音で反応する。無闇に銃を撃つのは厳禁だな」

 

ベトナムで鍛えた鋭い察知で弱点を直ぐに編み出した後、奴ら(ゾンビ)が逃げ道を塞がないうちにパッキーはその場から去った。

 

暫く走って後ろを振り返ると、ゾンビを撒いたことを確認し、喉が渇いたのか水筒の水を飲むパッキー。

少し飲んだ後、XM177を構えながら前進する。

 

「(地図を調べたところ、この前旅行で買った日本地図には存在しない場所だ。おまけにゾンビパラダイスが起きている・・・この地下で何かの実験でもしてたのか・・・?)」

 

そう考えながら進んでいくと、目の前に4つの人影が目に入った。

 

「ン、あれはゾンビか?しかし走っていた・・・」

 

直ぐに人影が居た方向へ向かう、もうそこには人影が無かった。

 

「見間違えか・・・?っ!?」

 

気配を感じたパッキーはその方向にXM177を構える。

そこには特殊作戦装備な白人と黒人、黄色人種がMP5SD3やM16A1を構えていた。

 

「動くな!こっちの方が数は上だぜ」

 

白人はMP5を向けながらパッキーに警告する。

3挺の銃を向けられているパッキーはその声に自分と戦った戦友を思い出した。

 

「その声はラッツか・・・!」

 

「え!?パッキー!?」

 

黒人は驚いたかのように向けているライフルを下げる。

 

「パッキー!パッキー!」

 

「やっぱりパッキーか!お前もトーキョーに来てたのか?!」

 

ラッツはパッキーとの再会に喜び、黒人のボタスキーはパッキーに抱きつきはしゃぐ。

ベトナム人のチコはパッキーの手を取り、再会を喜んでいる。

 

「感動の再会と喜びたいところだが、声を聞きつけてゾンビ共が集まってくるかもしれない」

 

「ああ、そうか。ロメロの創ったモンスター達の事だな?安心しろ、誰も噛まれてない」

 

その言葉にパッキーは胸を撫で下ろす。

 

「良かった・・・」

 

「あんなノロノロしてる奴らに俺達がやられると思ってたのか?」

 

「そんなハズは無い、何たって俺達は元猫の糞(キャット・シット・ワン)だからな!」

 

再会を喜んだ後、キャット・シット・ワンはパッキーが目撃したと言う、4人の人影を追うことにした。

 

そしてルリの方は。

 

「下着がこんなんに成っちゃった・・・」

 

血で赤く染まった下着を見ながら言う。

ルリの今の姿は返り血で全身が赤く染まり、周りにはワルキューレの兵士達の死体が転がっていた。

激しさを物語るように周りの建造物に血が壁や窓に付着し、道路は血で水浸しになっている。

そこら中には内臓や手や足、首が転がっており、とてもテレビでは見せられない光景だ。

 

その中で、生き残ったワルキューレの兵士が這いずってその場から逃げようとしていた。

その女性兵士は両足が無くなっており、小声でブツブツと呟きながら橋がある方向へと向かっている。

それが目に入ったルリは直ぐに彼女の元へ向かう。

 

「何処行くの?」

 

目の前に立った笑顔で彼女の表情は恐怖に駆られてする。

そのまま彼女は頭を引き千切られ、絶命した。

頭を抱えたルリはため息を付いて血で水浸しの道路へ座り込む。

 

「疲れちゃった・・・何処かで休まないと・・・」

 

表情が恐怖に染まった頭を置いたルリは惨劇の場から去っていった。

その光景を見ていたハーゲン、ゴロドク、バートル、ゾーレッツが居たが、それはまた別の話である。




次は原作に戻ろうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二日目へ。

ルリ中心に書こうかな・・・?


市内のガソリンスタンド前をおぞましい光景に変えたルリは返り血を浴びたままその場を去っていった。

 

一方この光景を見ていたハーゲン、ゴロドク、バートル、ゾーレッツは、ルリという愛らしい少女とは思えぬ行為に唖然と恐怖を抱いていた。

 

「間違えない・・・あれは悪魔だ!!」

 

ゴロドクはルリが起こした地獄絵図を見て声を震わせながら叫ぶ、他の3人も額に汗を浸らせながらこの光景を目に焼き付けている。

 

「おいおい、じゃあ・・・あれは皮でも被った悪魔だとでも言うのか?」

 

ゾーレッツの問いにゴロドクは頷いた。

 

「あんなに可愛い悪魔が居るものなのか・・・現に俺達がロシアから未来の日本に転移した。もう不思議じゃないな」

 

「それに死人が歩いてる。これからはこんな出来事が起きるかもしれない」

 

ハーゲンとバートルが冷静に判断する。

 

「取り敢えず使える物を探そう。死人共が這い寄って来そうだ」

 

ゾーレッツの言葉に全員が頷き、血で染みた道路に落ちてる使える物を探す。

 

「駄目だ、みんな血が入って使い物にならねぇぞ」

 

血に染まった短機関銃を取ったゴロドクは引き金を引いてから、弾が出ないと確認するとそれを捨てる。

他にも銃を確認したが、血が機関部にでも入ったのかどれも作動しなかった。

 

「おい、早くしてくれ!死人共が来たぞ!」

 

ハーゲンはG43を構えながら使える物を探すゴロドク、バートル、ゾーレッツにゾンビが来たことを知らせた。

その知らせに3人は直ぐに探すのを止めて向かってくるゾンビ達に銃を向けながら後退する。

使える手榴弾を拾い、何処か適当な場所に投げ込んだ。

投げ込まれた方向が爆発すると、そこへ吸い込まれるように向かっていく、これを見ていた4人はゾンビが音で反応する事を知った。

 

その頃のルリは何処かのマンションでシャワーを浴びていた。

流れる水に身体についた血が混じって排水溝に流れていく、全て流し終えた後シャワーを止めて浴室から出た、掛けてあるバスタオルで身体の水分を拭き取る。

全身を拭き終えたると、それを綺麗な身体に巻いた。

 

そして玄関に向かい、ドアにバリケードを立てた後、寝室に向かう。

寝室には2つのベットがあり、ドアに近いベットの上には短機関銃に自動拳銃と狙撃銃、弾薬と着替え、ショルダーバックがある。

銃器はH&KのUMP45、SIGのP232、狙撃銃はSR-3ヴィーフリ。

弾薬はそれぞれの弾倉に弾丸、着替えはセーラー服に下着だ。

何故セーラ服なのかは真意は無い。

全て確認し終えた後、ルリは身体に巻いたバスタオルを外して全裸になった後、上になにも乗って無いベットに寝ころんだ後、布団を被る。

 

「明日は孝と麗ちゃんか毒島ちゃん達に合流しないと・・・」

 

睡魔に襲われるかのようにルリは直ぐに目を瞑り眠りにつく。

 

そして夜は明けて、地獄が始まってから二日目が立った。

パッキー達はお互いの視界をカバーしながら前に進んでいた。

 

「まだ橋の方が騒がしいな」

 

「治安組織がまだ生きてる証拠だ、そして余計にゾンビを集めてしまってる」

 

ボタスキーの言葉にパッキーはそれに答える。

空には飛行機や報道ヘリが飛び交っていた。

 

「煩いほど飛んでるな、スティンガーがあれば撃ち落としてやりたいが」

 

ラッツは冗談交じりにヘリを見ながら言う。

ポイントマンであるパッキーが、ワルキューレの一団を確認した。

 

「綺麗に2列に並んで行進してやがる。あの動きはどうみても軍事会社や傭兵とは違うな、おそらく組織的な何かだ」

 

パッキーは身を隠しながら言う。

 

「パッキー、ゾンビ」

 

チコはパッキーの肩を叩いて、後ろからゾンビが迫ってくることを知らせる。

 

「移動しよう」

 

パッキーがそう言った後、4人は橋の方向へと向かっていった。




残りの源文勢とヴァルキュリア勢の行動は番外編で書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

探して・・・

橋に近い建造物の部屋で黒騎士ではないバウアーが目覚めた。

右手にはモーゼルC96が握られており、部屋の出入り口は相当頑丈そうなバリケード張り巡らせて外敵からの侵入を防いでいる。

目を覚ました彼女は、乾パンを口に含むと、出入り口のバリケードを退けて最低限の手荷物を持って部屋を出た。

そのまま建造物を出ると、棍棒を構えながら街の中を進む。

 

途中、複数のトラックの走行音が聞こえた。

直ぐにバウアーはそこに向かう。

 

「軍用トラックかな?」

 

目の前を通り過ぎていくトラックを見ながら口を開く、トラックの荷台には物資や兵士を載せている。

その乗っている兵士達はこの時代の完全武装と軽装備、何故かトラックの運転手も含めて皆女性であるが、バウアーから見てみれば軽装備の兵士達しか確認できない。

 

「女性だから軽装備かな・・・?」

 

そう口にした後、助けを求める市民が現れた。

 

「おーい、乗せてくれ!街は危なくてまともに歩けないんだ!」

 

3人の市民はトラックに止まるように言ったが、無視されてる。

 

「クソォ、何だよ!乗せろよ!」

 

1人は通り過ぎていくトラック群に唾を吐く、その時1台が止まり、運転席の窓から軽装備の女性兵士が顔を出す。

 

「あ、女神様。俺達を助けr」

 

自動拳銃ベレッタM950を男の1人に向けて撃った。

乾いた銃声が鳴り響き、気付いた他の2人は逃げだそうとしたが、荷台にいた女性兵士のM4クローン系LWRCM6A1の銃撃で射殺された。

現場に居合わせていたバウアーは即刻ここから離れる。

彼女の存在に気付いた女性兵士達は直ぐに銃撃を加えてくきた。

充分に離れた後、様子を窺おうとしたが、何人かが銃を持ちながら向かってきた。

銃声に釣られてゾンビが女性兵士達に向かってくるが、頭を撃たれて全滅する。

移動しようとした瞬間、隣にゾンビが居た。

 

「・・・どうも・・・」

 

直ぐ頭を棍棒でかち割り、その場を逃げ去った。

一方のルリも目を覚まし、ベランダから見える光景に視線を向ける。

 

「このまま、寝ちゃおうかな・・・」

 

目の前に映る光景から逃げようとしたが、諦めて身体を起こす。

全裸のままで軽く朝食を済ませた後、そのまま浴室に向かい、シャワーを浴びた。

それが終えたら、新しく用意したタオルで身体の水分を拭き終え、上に銃器やショルダーバックがあるベットの着替えを取る。

下着を着用してセーラー服を着ると、髪型をツインテールにしてから身体にガンベルトを装着し、自動拳銃P232をそこへ入れた。

SR-3ヴィーフリとUMP45のスリングを身体に巻き付けると、ショルダーバックに詰め込んだ後、それを背負い、部屋から出た。

バリケードを退けた後、UMPを構えてゾンビが居ないか確認、居ないと確信すると、マンションを出る。

出れば、銃声や悲鳴が聞こえており、空に黒煙が見える。

それを見た後、道路に足を動かす。

 

「まずは橋に向かわないと・・・東だっけ?」

 

コンパスを取り出して方角を確認、東に向かう。

 

「あっちの方向・・・かな?」

 

東橋に向かうヘリを見ながら、それについていく、周りにゾンビは居たが、彼女は無視した。

走りながらついていくが、追いつけるはずもなくヘリを見失なってしまう。

仕方なく東に行く道を探す。

探してる最中に付近から銃声が響いてきた。

直ぐにルリは、銃声がする方へ向かう。

 

「また戦乙女の使い・・・戦ってるのは・・・?」

 

口を動かしながら双眼鏡を取り出して、ワルキューレの兵士達が撃っている方を見る。

そこに居たのはゾンビではなく、何処かの特殊部隊の様だ、彼等も銃を使い、ワルキューレの兵士達に撃ち返している。

 

「これを使ってみよう」

 

ショルダーバックから梱包爆弾を取り出し、導火線に火を付けた後、ワルキューレの居る方向へと投げ込んだ。

応戦に夢中になっているのか、梱包爆弾の事には気付かず、その数秒後爆発、何人かが爆風で死亡した。

残りのワルキューレの兵士達はその場から逃げようとしていたが、特殊部隊に射殺される。

 

「許してね」

 

爆風で吹き飛んだ女性兵士の額にキスをした後、ルリはその場から去っていった。

その後は暫くは街をさ迷う。

 

「う~ん、何処から行けば・・・」

 

東橋への道を探す中、遠くの方に軍服の少女を見つけた。

 

「誰?」

 

双眼鏡をまた取り出し見てみると、それはドイツ国防軍陸軍の戦車兵の野戦服を着た少女だった。

左目には眼帯を巻き付け、士官帽を被っているが、アホ毛が飛び出してしまっている。

棍棒を構え、警戒しながらルリの方へと向かってくる。

 

「この娘、連れて行こうかな?」

 

早速ルリは少女の方へと向かっていった。

ルリの存在に気付いた少女は驚いて、ルリを警戒するが、ルリがドイツ語を喋ってみると、安心して棍棒を下げた。

 

「ドイツ人か・・・私はバウアーです。貴女は・・・?」

 

黒騎士ではないバウアーの方だ、名前を聞かれたルリは直ぐに答える。

 

「ルリです、貴女は異世界から来たの?」

 

「はい、確か避難民を連れて、アーミーの航空機にやられてからいつの間にかこの世界に来てました」

 

その後、ルリとバウアーはそれぞれの情報を交換した。

 

「行き先が無かったら私と来ないかな?あっちの方向で友達と待ち合わせしてるんだけど」

 

ルリは東の方を指す。

 

「うん、じゃあ、ルリちゃんについていく」

 

完全武装でセーラー服を着た美少女についていけば安心と判断したバウアーはルリの誘いに同意した。

 

その後、2人の少女は東橋に向かう。




次こそは・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合流の時と休息の時

原作メンバーと合流編です。(ルリと美少女バウアーの方ね


東の橋へと到達したハーゲンとゴロドクにバートルとゾーレッツのWWⅡ組。

近くの建造物の屋上まで上がり、ハーゲンとゴロドクはそこで様子を窺い、バートルとゾーレッツは建造物の調査を行う。

 

「まるでカイザー通りの大渋滞だな」

 

ハーゲンは双眼鏡で橋の状況を見ながら口にする。

 

「鉄骨の上に銃を持った女が何人か居るぞ。橋に近付いてくる死人を撃ち殺してる」

 

ゴロドクは鉄骨の上から銃を撃つワルキューレの兵士を指で示しながら言う。

その時、建造物の調査を終えたバートルとゾーレッツが戻ってきた。

 

「どうだ、死人か人は居たか?」

 

「いや、誰も居なかった。食料と生活必需品が在るだけだ。ついでに出入り口にバリケードを拵えておいたぜ」

 

「流石は武装(ヴァッフェン)SSだ。良い装備が優先されて国防軍より鍛えてるだけのことはある」

 

バートルとゾーレッツの用意の良さにハーゲンは褒める。

ゴロドクの方は「ファシストの手先め」と陰口で叩く。

 

「それにしてもジェット機や頭にプロペラを付けた飛行機が喧しく飛んでるな。そしてこの時代の装備をした兵士だ、何でみんな女なのか分からない。警官は男ばかりなのに」

 

「さぁな、おそらくあの女兵達は正規軍ではないだろう。多分何処かの組織だ」

 

バートルが言ったことにゾーレッツは付け足す。

そしてゴロドクは「なんでロシア人は俺1人なんだ?」とぼやいた。

 

その頃のパッキー達は、WWⅡ組と同じく東橋近くまで来ていた。

身を隠しながら橋の現状を確認する。

 

「休日と祝日の大渋滞みたいだ」

 

頭を出しながらボタスキーは口にする。

鉄骨の上や橋の至る所に居るワルキューレの兵士を見てまた口を開く。

 

「あっちもこっちも美人兵士だらけだ。特にあの川辺に居る奴は胸が大きい」

 

「ボタスキー、今は駄目」

 

「はいはい、出るなってことだろう」

 

チコの注意にボタスキーは不満げに返事を返した。

パッキーとラッツも様子を窺う。

 

「空は空自の所属と思われるヘリとジェット機と邪魔な報道ヘリ、そして東側のヘリ・・・どうなってんだ?東側の兵器まであるなんて」

 

「分からない、俺の消息を絶ってから5年くらいか・・・日本はPMCでも雇ったのか?橋は渋滞だから川に架橋を組み立てて車輌を街に出入りさせてる。一体何が目的だ?」

 

状況を把握した後、パッキーは後ろに振り返った。

何かを乗せたトラックが橋に向かって行くのが目に入る。

 

「やはり何かあるようだ・・・」

 

自分達に気付かずに通り過ぎていくトラックを見ながらパッキーは口にした。

 

夕暮れが近付き、街中から銃声が徐々に減っていく中、紫藤達と決裂を起こした冴子達は、新たに西寺を加えてバスを降りた。

出た先でワルキューレのミニスカポリス風なMP5kを持った女性兵士3名と年輩の女性兵士1人に止められる。

 

「止まれ!バスを勝手に降りることは許されんぞ!」

 

ホルスターからPMM-12を取り出して冴子達を止めようとしたが、冴子達は無視して、街に戻っていく。

 

「聞こえんのか貴様等ァ!!」

 

安全装置を外して撃とうとしたが、周りにいたミニスカ兵士に止められる。

 

「良いじゃないですか、あの女子高生等戻っていくし。それに無駄に発砲したら警察に怒られますよ」

 

この言葉に腹を立てたのか、年輩の女性兵士は口にしたミニスカ兵士の頭をマカロフのクリップで叩いた。

少し強めに叩いた為か、頭を抑える。

 

「格下の分際で口を開くな、このクズが!」

 

年輩の女性兵士は痛がるミニスカ兵士を罵った。

他の2人も怯えて何も言えず、ただ突っ立て居るだけだ。

痛がるミニスカ兵士を見て鼻で笑った後、年輩の女性兵士はその場を去っていく。

去った後に額を抑えながら起き上がる。

 

「マジであのババア殺す!」

 

ホルスターの拳銃を引き抜こうとしたが、他の2人に止められた。

 

「止めときなよ、この前逆らった子みたいになっちゃうよ!」

 

眼鏡のミニスカ兵士の言葉にそのワルキューレの兵士は拳銃を抜くのを止める。

 

「早くしないとまた殴られたり、盗撮写真ばらまかれちゃうよ。早く行こ?」

 

MP5kを受け取った彼女は他の2人について行った。

 

橋の小さないざこざが終わった後、冴子達はゾンビ達に遭遇した。

ゾンビ達を見た瞬間、西寺が橋の方へ逃げて行ってしまう。

 

「何処へ行くつもりだ!?西寺君!!」

 

「馬鹿野郎、お前等についていったのは紫藤から逃れるためだ!そこで死んでろ、アホ共!!」

 

笑いながら彼は行き先にいたゾンビを払い除けて橋へと逃げ去った。

仕方なく武器を持つ冴子、コータはゾンビと交戦を開始した。

武器を持ってない沙耶と鞠川は避けるように動き回る。

暫し先頭を続けていると、コータが釘打ち機(ネイルガン)の釘が切れると冴子に知らせた。

 

「毒島さん!弾が切れそうです!!」

 

聞いた冴子は手前に居たゾンビの右頬を叩くと、木刀の取っ手をコータに向けた。

 

「これを貸そうか?」

 

「肉弾戦は無理ですぅ!!」

 

コータは木刀を使うことを拒否、そのまま残りの釘を撃ち尽くしてしまい、悲鳴を上げながらゾンビの攻撃をかわす。

そして、ゾンビの攻撃を避けていた鞠川が躓いて沙耶の方へと倒れてしまった。

 

「ちょっと、先生!重いんですけど!?」

 

「ふわぁ~!ごめんなさい!!」

 

鞠川は沙耶に慌てながら謝った。

余談だが、大きな2つのメロンが沙耶の頭に載っている。

その時、遠くの方からバイクの走行音が聞こえた。

 

「平野、退け!」

 

その声は孝だ、荷台には麗がいつでも飛ぼうと身構えている。

偶然なのか、ジャンプ台になっている坂を上がり、飛んだ。

この瞬間を待っていた麗は空中でジャンプし、下にいるゾンビの頭をモップで突き刺す。

 

着地した孝が乗るサイドカーはゾンビを跳ねながらコータの近くまで迫った。

そして孝は、手に入れた回転式拳銃のS&WM37をコータに投げる。

それを受け取ったコータは不気味な笑顔を浮かべて二連射し、ゾンビを片付けた後、決めセリフを吐く。

 

「ダブルタップだぜ!」

 

そのまま孝は冴子の手を取り、空中高くに投げ込む、身体を回転させながらゾンビを一気に3体も仕留めた。

最後の1体が倒れると、全員ホッと息を撫で下ろす。

戦闘が終わると、麗が鞠川の胸に飛び込んだ。

 

「あら?よしよし、怖かったんだね~」

 

「小室君、宮本君、無事で何よりだ」

 

冴子が孝と麗の無事を確認して安心する。

鞠川の胸に顔を納める麗が、孝に近付いた冴子を見て嫉妬していた。

 

「所でルリちゃんは?」

 

「それが・・・」

 

その問いに孝と麗の表情が暗くなった。

安心する彼等に追い打ちを掛けるように旧日本軍の野戦服を纏ったゾンビが襲ってきた。

 

「なんだコイツは!?」

 

孝は大きく開いた青い目を光らせながらこちらに向かってくる日本軍ゾンビを見て叫ぶ。

冴子は直ぐに木刀を日本軍ゾンビに振りかざしたが、木刀を掴まれて蹴り飛ばされてしまう。

次に孝と麗が立ちはだかるが、あっさりと倒される。

小室一行の戦闘が出来る者を全て倒した日本軍ゾンビはコータと沙耶、鞠川に目を付け、呻り声を上げて襲おうとしたが、突然日本軍ゾンビの両腕が吹き飛んだ。

 

「ひゃ、な、なに!?」

 

沙耶は目の前の出来事に混乱する。

その狙撃の正体は狙撃銃SR-3Mを持ったルリと突撃銃RWSMK107を持ったバウアーだ。

コータは、ルリとバウアーが持つ小火器に目を輝かせている。

両腕をもぎ取られた日本軍ゾンビは2人に襲いかかったが、バウアーのMK107の発砲で動かなくなり、その場に倒れ込む。

 

「そんな、あの時撃たれたんじゃ!?」

 

麗は目の前で撃たれたハズのルリを見て叫ぶ。

その言葉に一同と新参者のバウアーは困惑するが、ルリの一言で丸く収まる。

 

「気にしちゃ駄目だよ麗ちゃん」

 

「はっ?」

 

一言で麗は唖然したしまったが、冴子の声で正気に戻る。

 

「ところで小室君、床主大橋は見たかね?」

 

「おそらく渡河するのは難しいでしょう」

 

「そうか、北の上流は?」

 

「駄目よ、雨で増水してるから流されちゃうわ」

 

鞠川が割り込むように手を上げた。

 

「あの・・・」

 

「なに、先生?」

 

「今日はお休みした方が良いと思うの」

 

「お、お休みって・・・」

 

「だって暗くなったら幾ら毒島さんとルリちゃんと・・・ゴメン、誰かな?」

 

名前を聞かれたバウアーはドイツ語で答える。

 

「バウアーです」

 

「えぇ・・・バウアーちゃんも大変でしょ?」

 

「で、何処を陣取るの?」

 

沙耶が鞠川に疑問点を問う。

 

「篭城でもするか」

 

冴子がジョークを口にし、孝を見た。

 

「この人数じゃ足りませんよ」

 

「それに突撃銃と狙撃銃だけじゃ駄目だ、篭城するなら機関銃や対物火器が必要でr」

 

孝が答えた後、コータが付け足したが、鞠川の言葉で止まった。

 

「あ、あのね。使える部屋があるの!」

 

「場所は?」

 

冴子が直ぐに訪ねる。

 

「歩いて直ぐの所」

 

「彼氏の部屋?」

 

沙耶の突然の問いに鞠川が慌てて返す。

 

「ち、違うわよ!女の子の友達の部屋なんだけど、お仕事が忙しくて鍵を預かってるから時々部屋の空気を入れ替えてるの」

 

「マンションですか、周りの見晴らしは良いですか?」

 

「うん、川沿いに立ってるメゾネットだから近くにコンビニもあるし。後ね、戦車みたいな四駆が置きぱっなしなの」

 

平野の問いに鞠川は両手を広げて笑顔で答える。

 

「どのみち我々には移動手段が必要だ、それを使わせて貰おう」

 

「確かに、電気や水道が通ってる内にシャワーも浴びたいわ」

 

冴子のうなづきに沙耶が付け足す。

その沙耶の言葉にコータが良からぬ妄想をして、沙耶に蹴られる。

 

「やったね、バウアーちゃん。お風呂に入れるよ!」

 

「うん!」

 

バウアーは笑顔で頷いた。

 

「じゃあ、これから鞠川先生と確認に向かうから、ルリちゃんにバウアーちゃん、みんなを頼んだ」

 

「いえっさです」

 

ルリは二本指で敬礼する。

そして孝は荷台が外れたサイドカーに鞠川を背中に乗せて偵察に向かった。

後のことはカットして鞠川の案内でメゾネットに着いた一行。

 

「は、ハンビィー!!」

 

コータの興奮はますます止まらなくなっていた。

 

「一体どんなお友達なのよ・・・」

 

沙耶が呆れたように言った後、鞠川が答える。

 

「警察関係のお仕事って言ってたけど・・・もしかして言えないお仕事?」

 

鞠川が首を傾げながら言う。

 

「堀が高いし、奴らは越えられそうもないから安心して眠ることは出来そうね」

 

麗が微笑みながら口にした。

 

「その奴らってのが出来てきてますが・・・」

 

ルリはドアから出てくるゾンビ達を指で示す。

 

「これで良い、孝?」

 

「ああ、充分だ。下がってろ」

 

沙耶からバールを受け取った孝はゾンビ達と向き合う。

 

「お互いにカバーすることを忘れるな」

 

冴子の一言で武器を持つ全員がメゾネットに居たゾンビ達に向かっていった。

 

これで彼等は束の間の休息を得ることが出来た。




次回はお色気満載お風呂回っ!!

※都合により、シュタイナーの入浴に変更になる恐れがあります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

にゅうよく!

と、言うことで女性陣の入浴シーンにします。

シュタイナーの奴に殺されちまう・・・

エロが入るかもしれないから注意することかな・・・?(PAM


鞠川の友人宅に居たゾンビ達を鎮圧した小室一行、先に数が少ない孝とコータの男性陣がお風呂に入浴。

彼等が入浴を終えたところで女性陣が入浴を開始する。

 

「ルリちゃん、余り汗臭くないね。途中でシャワーでも浴びたの?」

 

湯船に幼児の頭くらいある胸を浮かばせながら鞠川が余り臭いがしないルリに質問した。

 

「はい、眠くなったり汗臭くなってきたので市内のマンションの一室を借りました」

 

そうルリは笑顔で答える。

 

「「(ク、この()は・・・!)」」

 

一瞬、ルリに対して麗や沙耶から殺意のような感覚をバウアーは感じ取ったが、当の本人は身体を洗うことに忙しくて全く気付いていない。

そして麗は鞠川の胸を見て悔しがっていた。

 

「くぅ~先生、おっきい!」

 

「うん、良く言われる」

 

悔しがっている麗を余所に鞠川は笑顔で答えている。

余りにも悔しすぎたのか、麗は鞠川の胸を鷲掴みし、揉み始めた。

 

「ひゃ、ダメェ~」

 

「この、この、この!」

 

「ひや~ダメです、そんなことしたらルリちゃんが・・・!」

 

深夜アニメで行われる恒例のお色気回並の光景が繰り広げられているのを見たルリは、自分の胸を見て落ち込んでいた。

バウアーが気遣ったのか、彼女に近付く。

 

「きっと肩がこんで困るはず・・・」

 

ルリがバウアーの美乳な胸を見てさらに落ち込んだ。

 

「へ、どうせ貧乳はこの場に相応しくないんだよ・・・フフフ・・・」

 

その言葉を吐いた少女の瞳は生気が失われて始めた。

胸を揉まれ終えた鞠川は、落ち込んで不気味に笑っているルリに声を掛ける。

 

「そんなこと無いよ、ルリちゃん肌も白いしツルツルで綺麗じゃない」

 

「ふぇ?」

 

可愛げな反応をしたルリの後に周りの女性陣が彼女の身体を見始める。

 

「ただのアホでマヌケでむかつくちんちくりんだと思ったけど、綺麗なブロンド髪と肌の白さと体付き・・・綺麗すぎと言うか、可愛すぎ・・・」

 

「これは女でも見とれてしまいそうだ・・・」

 

美しすぎるルリの身体を見て、沙耶と冴子が言葉を漏らす。

余り見られているルリは顔を赤らめ始める。

 

「そ、そんなに・・・見ないでください・・・」

 

「キャー!ルリちゃん可愛い!」

 

恥ずかしがるルリを見て鞠川が嬉しそうに言う、他のみんなも頬を赤らめている。

頭皮や綺麗なブロンドの髪をゴムで括って、同じく身体を洗い終えたバウアーと一緒に鞠川と麗の間に入った。

 

「中々の美乳・・・」

 

麗がバウアーの胸に触れた。

 

「ひゃ・・・揉むのはお止めください・・・」

 

「私のより小さいけど綺麗に整ってる・・・」

 

胸を麗に触られているバウアーは恥ずかしがっている。

一方のルリは、自分の頭くらいにありそうな鞠川の豊富な胸に自分の顔を埋めた。

 

「どう?ルリちゃん」

 

「お~大きい。パフパフが出来そうです」

 

「へぇ~それなら、えい」

 

胸にルリを挟みながら鞠川は自分の胸を押さえ始め、属に言うパフパフを始める。

それを見ていた沙耶は「何処の深夜アニメよ」と呟く、冴子は鞠川の胸の間にいるルリをずっと見ていた。

 

「どう、ルリちゃん、気持ちいい?」

 

「気持ちいいです、先生。所でなんで女医になったんですか?これならグラビアアイドルになれるのに」

 

「だって・・・芸能界と忙しそうだし、私に夢が在るからかな?」

 

「ふぇ~そうでしゅか」

 

ルリの質問に対して鞠川はそう答えた。

バウアーの胸に飽きたのか、麗は次なる獲物を冴子に定め、彼女の胸を鷲掴みにして揉み始める。

不意打ちを受けた冴子は我慢できずに声を上げてしまう。

この淫獣的な麗の行動を見ていた沙耶は、身震いをし始めた。

 

これ以上続けるとヤバそうな事に成りそうなので視点をパイパー達に移そう。

 

「ふぅ~日本(ヤパーニッシュ)の風呂は最高だな」

 

床主の近くの銭湯で1人男風呂に入るヨアヒム・パイパー、長年の訓練や戦闘で鍛え上げられた見事な身体をしている。

隣ではアリシア、セルベリア、エイリアス、リエラが女湯に浸かっていた。

 

「隣は騒がしい様だな・・・」

 

壁の向こう側から聞こえる喘ぎ声や可愛らしい声が聞こえてくる女湯を見ながら彼はソッと呟く。

 

「覗きは軍人らしくもないから止めるか」

 

と、言ってから湯船に浸かる炎の騎士ヨアヒム・パイパーであった。

そして黒騎士中隊も床主近くの旅館で一時的な休息を得た。

 

「見ろよ、液体石けんだぜ」

 

「お前等、余り騒ぐなよ。死に損ない共が寄ってくるぞ」

 

黒騎士のバウアーは、騒ぐ黒騎士隊員達に活を入れた。

 

「と、言っても。俺も風呂にはいるのは何ヶがぶりだがな」

 

彼が言った後、副官であるクルツと部下達は大いに笑い、浴槽へ浸かる。

 

視点を再び小室一行に戻そう。

銃の弾丸を発見したコータは、ロッカーに目を付けて孝と一緒に開けようとしていた。

そこへ、浴室から女性陣の騒ぎ声が聞こえてくる。

 

「セオリー守って覗きに行く?」

 

「僕はまだ死にたくない」

 

コータの誘いに孝は全力で断る。

ロッカーのドアにバールを差し込んで力一杯引っ張り、ドアを外した。

中には銃器があり、それを見たコータの表情はとても恐ろしい表情をしていた。

 

「あった・・・!」

 

興奮しながら中にある銃器を取っていく。

 

「SR-25、ではなくSR-25風に改造したAR-10か!こっちはセミオートタイプのM14のセミオートタイプのスーパーマッチM1A1か、M14のフルオートなんて弾の無駄だからな!」

 

「お、おい・・・」

 

2つのライフルを握りながら自分の世界に入るコータ、孝は散弾銃イサカM37を手に取る。

 

「それはイサカM37ライオットショットガン、しかもソードオフモデル。ベトナム戦争で活躍したクールなショットガンだ!」

 

「へぇ・・・」

 

そのイサカM37の銃口をコータに向けた。

 

「うわぁ!例え銃に弾が入って無くても銃口は人に向けるな!」

 

「あ、ゴメン・・・」

 

「向けて良いのは・・・」

 

「奴らと僕達を邪魔する者だけだよ・・・」

 

暗い表情をしながら孝は答える。

 

「う~む、ルリちゃんやバウアーちゃんが使うSR-3MやMK107の使う弾頭は違う・・・弾の共通は無理だな・・・」

 

7.62×51NATO弾をM1A1の弾倉やAR-10の弾倉に慣れた手つきで入れていくコータ、そんなコータを孝は苦笑いをしながら見ていた。




苦情が来るのではないか・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

橋での出来事

エロが入るかも知れないので注意!


SR-10やM1A1の全ての弾倉に7.62×51NATO弾を入れ込み終える。

同じく弾倉に7.62㎜弾を入れていた孝がコータに質問した。

 

「それにしても平野、お前こういうのに詳しいな。モデルガンで練習したのか?」

 

「いや、本物だよ。アメリカに居る間に民間軍事会社ブラックウォーターの本社で、一ヶ月教えて貰ったんだ。その担当していたインストラクターがたまたま元デルタフォースの隊員だったんだ」

 

「す、凄いな・・・」

 

もはや彼にコータの話にはついていけない。

 

「これはボウガンか?」

 

ついていけなくなった孝は銃器と同じロッカーに入っていたボウガンを持つ。

 

「それはクロスボウ、ロビンフットの子孫が作った奴だ。バーネット・ワイルドキャットC5で有名な狩猟クロスボウなんだ」

 

コータはクロスボウの説明を終えた後、ルリとバウアーが使っていたUMP45やSR-3M、P232やMK107の弾込めを始める。

 

「グフフ、幻のモーゼルC96じゃないか・・・中国製の十七式拳銃しかないが、まさか生きてる間に生を触れるなんて・・・」

 

M107の弾倉に5.56×45㎜NATO弾を途中で止めてバウアーのモーゼルC96に不気味に笑いながら触れ、その後彼女等の銃を取ってはブツブツと呟いている。

孝に取っては異様な光景であり、引きそうな光景だ。

その時、浴室から女性陣の声が聞こえてきた。

 

「流石に騒がしすぎだろう」

 

「いや、大丈夫なんじゃない?現に騒がしいのは橋の方だし」

 

「それもそうだな」

 

「今こそお約束の時間だ!勇者小室よ!」

 

「だから行かないと言ってるだろ!」

 

孝の突っ込みが終わった後、付け放しにしていたテレビから抗議の声が聞こえてきた。

 

『警察の横暴を許すなぁー!』

 

『許すなー!』

 

直ぐに2人はテレビがあるリビングに向かう。

映像には橋を封鎖する警察とワルキューレの部隊に対する抗議が行われていた。

映像を見た後のコータはベランダに向かい、双眼鏡を取り出して橋の様子を窺う。

 

「地獄の黙示録でこんなシーンが・・・」

 

双眼鏡から見た橋の状況にコータは口を漏らす、孝は映像に映し出されている抗議デモに注目する。

 

『我々はアメリカ合衆国と日本が共同で開発した細菌兵器に抗議する!』

 

「連中、設定マニアかな?」

 

「どちらにしろ目の前から逃げようとしてる・・・」

 

その孝の言葉の後にベランダからコータが戻って口を開く。

 

「目の前から逃げて警察に八つ当たりか・・・これからどうなっていくのやら」

 

橋に視点を移そう。

 

『殺人病患者に暴力を振るうな!』

 

橋の上では左翼団体や街から非難してきた人々が抗議デモを行っていた。

そんな馬鹿げた行動を取っている彼等を見ていた西寺は怒る気にもなれない。

 

「馬鹿な連中だよ、歩く死人をあいつ等をまだ人と呼んでやがる。あそこに参加してる奴らはただのアホか頭のイカレタ奴だけだ」

 

西寺は抗議デモを行う彼等を見ながら憐れな様に言う。

彼が河川敷の方を見れば、ワルキューレの部隊が架けた架橋を無理矢理渡ろうとした避難民が住宅街にある建造物の屋上にある設置されたM1917水冷式重機関銃の銃撃で射殺され、川に落ちた死体が流されていくのが見える。

他に川を渡ろうとした者も居たが、それぞれに設置された機関銃に撃たれて死んでいく。

 

「(架橋と川は無理だな。よし、この手で行こう)」

 

一部始終を安全なところから見ていた西寺は、橋の歩道に居る憲兵や歩哨に声を掛けた。

 

「済みません、僕は日本政府要人の西寺の息子で名前は葦塚と申します。僕のお迎えさんは居るでしょうか?」

 

声を掛けられたスターリングMk4を持った歩哨は日本語が分からないらしく、首を傾げる。

もう一度彼は英語で歩哨に告げたが、英語も分からないらしく苛立ち始める。

 

「だから迎えは来ているのか聞いて居るんだ!」

 

苛立った西寺は、困惑する女性兵士を怒鳴りつけた。

怒鳴られた歩哨は西寺に銃口を突き付けるが、声を聞いた憲兵に止められ、その憲兵が西寺の話を代わりに聞く。

 

「どうしましたか?」

 

「やっと碌に語学の無い受付嬢より言葉の分かる奴が来たか、俺は日本政府要人の西寺の息子善塚だ。それで俺の家の者は向かえに来ているのか?」

 

「確認してみます、しばらくお待ちください」

 

憲兵は無線機を取り出し、本部との確認を開始した。

その伝達を橋を警察と共同で封鎖するワルキューレの本部に届く。

 

「キレイラ16から日本政府要人の家族の迎えは来てるかと来てます」

 

まるでロボアニメに出てくるオペレーターの容姿をした女性兵士が本部内で指揮をするヨットような略帽を被った女性士官に知らせる。

 

「え、日本政府から誰か来る予定なんてあったけ?」

 

言った後、士官はこの橋の封鎖を担当する指揮官が居る部屋に入る。

その部屋には軍服を纏った30代くらいの美しい女性が椅子に座り、靴下を脱いだ綺麗な素足をセーラー服の少女に舐めさせていた。

その光景に士官は少し動揺するが、我に返って西寺の事を報告する。

 

「チェイニー大隊指揮官殿、政府要人の息子が迎えは来ているのかと聞いております」

 

「はぁ?そんな話聞いてないし、どうせ嘘でもついてるんでしょ。殺しときなさい」

 

「ハッ!手早く始末します!」

 

敬礼した後、士官は部屋から出て行った。

 

「ほら、早く全部脱いで私に抱きつきなさい」

 

士官が出て行った後、指揮官は女子高生に「全裸になれ」と命じ、言われたとおり少女はセーラー服を脱ぎ始めた。

 

一方橋では、ゾンビに噛まれた自分の子を抱いた母親が必死に助けを求めていた。

バリケードの前に居た警官達はミネベチアM60やSWM36の安全装置を外して子を抱えた母親に銃口を向ける。

 

「子供だけでも助けて!」

 

必死で助けを求めるも既に息子は手遅れであるために何もすることは出来ない。

彼等に出来ること言えば痛みを感じさせずに親子を直ぐに殺すことだ。

 

「これ以上近付くと発砲します!」

 

警告を行った後、母親が抱えていた子がゾンビ化し、母親に噛み付いた。

直ぐさま警官達は発砲を始め、抗議デモをしていた人々は銃声で悲鳴を上げている。

それでも噛まれながら母親は助けを求めた。

 

「止めてー!撃たないでっ!!」

 

幾ら警視庁が使用される殺傷能力の低い弾丸でもこれだけ撃たれれば流石に人も死ぬ、何十発も撃たれた母親は死亡したが、生ける屍と化した子は母親の肉に食らいついていた。

流石にゾンビが子供とはいえ、警官達は撃つのを躊躇ったが、鉄骨上にいるワルキューレの兵士達は自動小銃や突撃銃を容赦なく撃ち込む。

 

上から放たれる雨のようなライフル弾に生ける屍の子は元の形が無くなってしまった。

そして橋に近付こうとするゾンビ達にもライフル弾や狙撃銃などで倒れていく、もちろん、一部始終は左翼団体に見られていた。

彼等の矛先にワルキューレも向けられる。

 

「無差別に発砲したぞ!我々はあの民間軍事会社に即時日本から出て行くように政府に要請する!」

 

「出て行けー!」

 

「日本から出ろ!戦争屋め!」

 

「虐殺者は出ていけ!」

 

この抗議の声にワルキューレの兵士達は無視するか、ジャップやイエローモンキーと叫けぶだけで終わる。

丁度その時、橋にオメガ・グループが到着した。

 

「煩い抗議デモだ、これじゃゾンビ達が集まってきちまうよ」

 

「高校生の頃、家の前でも似たような抗議をしてたぞ。煩くて勉強も出来やしない」

 

抗議デモを見ながら小松と平岡の思い出話をし始める。

 

「架橋には軽装備なネイちゃん達が一個小隊、河川敷にいるのは軽装備兵多数に重装備兵少数」

 

「橋の上でなんか起きそうだから、起きるまで待つか」

 

現状を確認した彼等は作戦を練る。

短すぎる作戦会議を終えた後、小松は田中に作戦の事を告げた。

 

「分かりました、河川敷にいる女性兵士達はやります。他の隊員に伝えましたか?」

 

「いや、まだだけど」

 

「ハァ~ホントにこの人は・・・」

 

田中が聞こえないようにため息をついて文句を言った後、小松が作戦に参加している全オメガ隊員に通達する。

暫く待ち続けていると彼等の目標である西寺が、ワルキューレの軽歩兵に掴まれながら河川敷に連れて行かれるのを目撃した。

 

「どうする小松、あれは殺されるぞ?」

 

「もうやるしかねぇな平岡。オメガ10、あのデモのリーダー格を・・・」

 

『おい、オメガ7。俺は撃つつもりじゃないぞ』

 

「うだうだ言ってないで早く撃てよ、任務の障害は排除するんじゃなかったのか?」

 

『し、しかし・・・』

 

通信機の向こう側で口論をしている間に、デモのリーダー格の男が年輩の警官に射殺された。

それと同時に設置されていた機関銃が火を噴き、兵士達が持つ銃がデモ隊に向けて発砲を開始される。

彼等は逃げようとするが、逃げる先にゾンビ達が居るので逃げられない。

 

「その必要はないみたいだ、オメガ10。行くぞ、平岡、田中」

 

MP5SD6の安全装置を外すと、小松と平岡は西寺が居る方向へと向かっていった。

田中もM16A1の安全装置を外してから、M203グレネードランチャーで河川敷にいるワルキューレの兵士達に向けて放った。

 

飛んでいったグレネードは何人かのワルキューレの兵士達を殺す。

直ぐに兵士達は警戒態勢に入るが、指揮官や重歩兵が小松や平岡、他のオメガ隊員に射殺されているためにパニックに陥る。

西寺を射殺しようとしていた軽歩兵は手に持つAKS-74uを西寺に撃とうとしたが、小松のオメガ使用のP220に撃たれた。

 

「な、なんだ!?一体何がどうなって!ウ!」

 

敵を倒しながら来た平岡に袋を被らされた後、彼は暴れるが、小松と平岡に抑え込まれる。

西寺を無理矢理抑え込みながら小松と平岡は田中や他のオメガ隊員に援護されながら河川敷を急いで離れた。

デモ隊の掃討を行っていた橋の上の部隊もオメガに気付いたのか、攻撃をしようとしていたが、空高くに撃ち込まれた閃光弾で何人かが麻痺して一時的に混乱状態になる。

 

「早くづらかろう!連中、ヘリまで投入しそうだ!」

 

暴れる西寺を抱えながら小松達は街の奥へと消えた。

 

視点を孝達に戻そう。

 

「橋で一体なにが起こってるんだ・・・?」

 

「うわぁ~吹っ切れて殺しちゃいましたね~」

 

突然ルリの声が後ろから聞こえてきたため、孝とコータは驚いて机に頭をぶつける。

直ぐにルリの方を見た。

ルリの格好は家政婦の服装、今で言うメイド服であった。




お次はヤバイかも・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい生存者

大丈夫かな・・・?と、言うことで今回もエロ有りです・・・


外で銃声が響いているが、今の孝とコータには、目の前にいるメイド服の美少女ことで頭がいっぱいだった。

彼女が着ているのは裕福な豪邸で働いている高そうな生地で出来たメイド服のようで、「これはいるのか」と思うくらい可愛らしいアクセサリーが付いている。

 

「ルリちゃん・・・その服は・・・?」

 

コータはルリが着ているメイド服に対して聞いた。

彼女は、着ている衣服に触れながら答える。

 

「メイド服だよ、マンションでセーラー服と一緒に見つけたんだけど・・・気に障るようなら今すぐ脱ぐけど?」

 

「いや、脱がなくて良い」

 

答えた後に服を脱ごうとするルリに対して孝は顔を赤らめながら止めるように言う。

 

「だってみんなノーブラ状態でタンクトップ着たり、毒島さんは裸エプロンなんだもん」

 

「はぁ・・・?」

 

ルリの言葉に孝は理解できないでいる。

そして先程から気持ちが悪い笑みを浮かべてメイド服なルリを見ていたコータは口を開く。

 

「お兄ちゃんって、呼んでくれても良いかな・・・?」

 

そのコータの表情は、唖然している孝から見れば少し引くような表情だった。

 

「お兄ちゃん♪、これで良いかな?」

 

「OKぃ!!俺は太陽の如く萌えている!!」

 

アニメの美少女ボイスに匹敵するようなとても可愛い声で言ったためにコータはかなり興奮している。

現場に居合わせていた孝は、ただ苦笑いをして突っ立てるだけだった。

 

「孝お兄ちゃんって呼ばれたい?それとも孝君?ご主人様か孝様?」

 

「どっちも断るよ・・・」

 

ルリの何と呼んで欲しいかという要望に対して孝は直ぐ断った、要望を拒否されたルリは頬を膨らませながら怒っていた。

そんな呆れている孝にさらに悲劇が襲う。

 

「こ~むろく~ん」

 

孝の頭部に2つの柔らかい物が接触し、直ぐにそれを振り払った。

そして直ぐに柔らかい物の正体に気付く。

 

「ま、鞠川先生!」

 

正体は鞠川の豊満な胸であり、それを隠しているのは白いタオル一枚のみ、その格好をしている彼女の顔を見れば頬が赤く成っていた。

どうやら風呂上がりにアルコール類を飲んだらしく、余りにも際どい格好な鞠川を見たコータは花地を噴き出してその場に倒れてしまっている。

今度は階段の方から麗が呼びかけてきた。

 

「孝~!」

 

その呼びかけに酔っている鞠川をルリに預けてから麗の方へと視線を向け、唖然する。

 

「麗、お前もか・・・!」

 

彼女の表情も鞠川と同じく赤い、未成年にも関わらず飲んでしまったらしい。

ルリも同じと思って顔を見てみたが、赤くは成っていないようだ。

 

「あー孝は2人居る~!」

 

大分飲んだらしく、錯覚を見ている。

疲れ果てる孝に鞠川が唇を舌で舐めながら近付き、突然彼の頬にキスをした。

ずっと孝の方を見ていた麗は「フン!」と怒りながら下の階へと降りてしまう。

 

「ま、待てよ麗!先生、そろそろ離れてくれませんか?」

 

「えぇ~、だって静香お外が怖いんだもん~」

 

「自分もお願いします!」

 

孝の頬にキスをする鞠川を見ていたコータは、自分にもしてくれるようにとお願いした。

そんな彼の要望に鞠川は妖艶な笑みを浮かべてから可愛らしい声で答える。

 

「は~い♪」

 

そしてコータの頬にキスをした。

キスをされたコータは鼻から噴き出す血を抑えながら見張りをすると言い、ベランダに出る。

唇を舐めると、ルリに近付く、妖艶な笑みを浮かべてルリを見る鞠川に彼女は小動物のように震え始めた。

一方の孝は何も出来ないでいた。

 

「可愛いメイドさんだ・・・フフフ・・・」

 

口にした後、ルリを抱きしめた。

風呂場で挟まれた2つの大きな果実にまた挟まれ、彼女は声を上げる。

 

「く、苦しいです・・・は、放して・・・!」

 

嫌がるルリを見てさらに興奮したのか、彼女の額にキスする。

 

「もう我慢できない・・・食べちゃう・・・」

 

鞠川は荒い息をしながらルリを押し倒し唇にキスをした。

それを見た孝は口を大きく開けて唖然、そんな孝を余所に2人は舌を絡ませ始める。

 

「せ、先生み・・・ルリちゃん・・・?お取り込み中・・・」

 

彼の声など聞こえてもいないのか2人はさらに続ける。

数秒後、鞠川はルリの上に倒れ込んだ。

自分の上に倒れている鞠川を退けたルリに孝は声を掛け、それにルリは唇から垂れる唾液を袖で拭いた後に答える。

 

「一体何をした・・・?」

 

「ちょっと舌使いを。それと孝君は童貞なんだね」

 

「そ、それとは関係ないだろう!」

 

答えたルリの後付に孝は顔を赤らめながら怒鳴った。

倒れ込んで寝ている鞠川を寝室に運び込むと、胸元をさらけ出して寝ている沙耶とバウアーに目が入る。

 

「風邪引いちゃうよ~」

 

ルリは近くにあった布団を2人に被せた後、台所へ出る。

驚くべき格好をした冴子に目が入った。

その格好は、愛情表現の一つ(?)とされる裸エプロンであり、流石に下には下着を着けている。

 

「なんで裸エプロンで調理してるんですか?」

 

「ああ、着る物が無くてな。これで我慢している」

 

笑みを浮かべた後、ルリは冴子の背後に這い寄り、身体に触れた。

 

「ひゃぁ・・・何を・・・!?」

 

「こんな格好してたら誰か欲情しちゃいますよ?」

 

「現に君が欲情してるじゃないか・・・」

 

「このまま私とエッチしますか?」

 

「今は夜食と明日の朝食を作るのに忙しい、何処か落ち着く場所に着いたら好きなだけしても良い・・・」

 

胸を触りながら聞くルリに冴子はそう答えた。

答えを聞いたルリは、冴子の身体を触るのを止める。

 

「はい、お嬢様」

 

そう笑顔で言った後、孝と麗が居る一階へと降りていった。

2人に気付かれない様に物音を立てずに近付く。

 

「(うわぁ・・・キスしてる・・・)」

 

偶然にも2人が唇を交わしている所だった。

そんな孝と麗にルリは興奮しながら2人を見ている。

だが、それを邪魔するかのように外から子犬の吠え声が聞こえてきた。

 

ルリは舌打ちしながら孝と麗に近付いた。

突然メイド姿のルリが現れたのか、麗はビックリして酔いが覚める。

 

「あ、あんた。何所から・・・!?」

 

「子犬の鳴き声ですね・・・始末しようか?」

 

ルリの口から発せられる言葉に2人はもう慣れている。

孝とルリは、様子を窺おうとベランダへ上がる。

ベランダではコータが双眼鏡を持って監視を行っていた。

 

ベランダから見えるのは、水平二連散弾銃を持っていた青年が弾の装填途中でゾンビ達に囲まれて喰い殺されるの見た孝は悔しがっている。

他にもコータが持つ双眼鏡にアパートに入ろうとした男がゾンビ達に掴まれ喰われていた。

 

「クソッ!」

 

「小室、何所へ行くつもりだい?」

 

「決まってんだろう!下に行って奴らを・・・」

 

イサカM37を持ってコータに言う。

だが、その場にいた冴子に止められる。

 

「小室君・・・忘れたのか?奴らは音に反応し、寄ってくる。そして生者は光に反応する・・・君の行動は勇ましさがあるが、我々が救うにも限度がるという事は忘れてはいけない。だからこそこの世界になれておくのだ。そしてこの光景を目に焼き付けておけ、以下に我々が力がないと言うことを・・・」

 

冴子は、部屋の明かりを消しながら孝に告げた。

コータから双眼鏡を受け取り、外の状況を確かめる。

 

「平野」

 

「なに、小室?」

 

「顔がニヤけてた」

 

「そうかい?毒島先輩の格好って刺激が強すぎるんだよな・・・あ、双眼鏡を覗くときはコッソリとね」

 

「ああ、分かってる」

 

子犬の鳴き声がする方を見た。

そこには小学生の少女と父親らしい男がバイクで数秒くらい程の距離にある家の玄関を父親がドアを叩いていた。

だが、父親がいつまで叩いても家の住人はドアを開けない。

強攻策に出たのか父親は血塗れの工具を持って家のドアを潰そうと構えて叫んだが、それは家の住人は溜まらないのかドアの鍵を解いた。

父親は安心しきってドアを開けた瞬間、即席槍に刺されて屏にもたれる形で倒れる。

娘が直ぐに寄り添い、必死に呼びかけるが、出血が酷すぎたのかその場で息を引き取った。

 

少女は、動かなくなった父親に寄り添い必死に呼びかけたが、意味はない。

そこへ奴ら(ゾンビ)は少女に近付く。

 

「ロックンロール!」

 

コータがいつの間にかAR-10を構えながらスコープを覗き、安全装置を外すと、少女に一番近いゾンビの頭を撃ち抜いた。

 

「おい、平野。助けないんじゃなかったのか?」

 

「だって小さな女の子だよ!?」

 

「そうか、じゃあ平野、援護射撃頼んだ!」

 

「その必要はないよ」

 

「どうしてだ?」

 

ルリの言葉に孝は疑問に思う。

 

「良いから」

 

二本指を重ねて孝とコータに振った後、UMP45とP232と予備の弾倉を取ると、一階に降りていった。




次回はありす救出戦です。

遂に・・・遂にウサギが・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウサギから戻った男との遭遇

ようやく源文勢(動物界からの転移者)との合流です。


ルリが一階に降りると、直ぐ玄関へと向かう。

そこへ玄関に向かおうとするルリを見た麗が、彼女に声を掛ける。

 

「何処行くの、それと今の銃声は?」

 

「女の子を助けに。あの銃声はコータちゃんが女の子の周りのゾンビをやっつけているの」

 

「そう・・・じゃあ、ここに奴らが入ってこないか見張ってるから」

 

そう言った後、ルリと一緒に玄関を出た。

外へ出れば何体かの奴らが、少女が居る家へと向かっている。

麗はなるべく音を立てないように戸を開けるが、僅かな音でも奴ら(ゾンビ)は反応し、数体がこちらへと向かってくる。

ルリはUMP45とP232と一緒に持ってきたバールを構え、数秒足らずで始末した。

そして手に持つUMP45の安全装置を外し、道なりにいるゾンビの頭を精確に撃ち抜きながら少女の元へと急ぐ。

 

「バイクも使わずに・・・」

 

ベランダからゾンビを狙撃していたコータはルリの行動に驚き、銃爪から指を離し、狙撃を止めた。

そこへ孝が声を掛けてコータを我に返す。

 

「着いた!」

 

物の数秒で目的の家に辿り着き、少女の周りにいるゾンビの頭を撃ち抜いていく。

最後に一体でUMPの弾倉の中身が尽きた。

即刻P232に切り替え、最後の一体の頭を撃ち抜いた。

 

「終わった・・・ふぅ・・・」

 

額の汗を袖で拭きながら息を吐く、助け出された少女は短機関銃と拳銃を持ったメイド服を着たルリに驚いている。

門から入ろうとした一体に気付いた少女は、直ぐにルリに知らせる。

 

「メイドのお姉さん、後ろ!」

 

直ぐに振り返り、ルリは迫り来るゾンビの口に銃口を突っ込む銃爪を引いた。

 

「ありがとう!」

 

ルリは少女に礼を言う。

少女に抱きかかえられている子犬は礼でも言うように短く吠えた。

その時、家の中から獣のような叫び声が聞こえ、家の住人の悲鳴や断末魔が聞こえてくる。

窓ガラスを割って、全身に電撃や炎を纏った身体の一部が損壊した地獄の番犬の様な犬が数匹程現れ、抱きかかえられている子犬はその犬に対し吠えるが、その犬の獣のような吠え方に吠えるのを止めて震えてしまう。

 

ベランダからコータが援護射撃をするが、犬に対して全く通用しない。

ルリも手に持つ拳銃を雷犬に向けて撃っても、貧弱な拳銃弾はなんの効果も無かった。

精々、少女に襲いかかる雷犬を止める程度だ。

P232の弾丸も尽き、再装填しようとするが、雷犬達が待ってくれるはずもなくルリに覆い被さる。

食らい付く雷犬の頭をルリは必死に抑えて抵抗するが、他の雷犬も彼女の肉を喰らおうと這い寄ってくる。

 

ここで終わりとルリは思ったが、コータが使うAR-10とは違う銃声が響き、同時に覆い被さっていた雷犬が死に、爆発した。

地中から軍服や南アジアの平服を纏ったゾンビが這い出て来るも、何処からの銃撃で倒される。

ルリは起き上がり、銃声が聞こえてきた方向を見ると、XM177やM16A1、MP5SD3などを武装した男4人が、周りにいるゾンビを手慣れた手つきで全滅させると、ルリ達の元へと近付いてきた。

 

「大丈夫か嬢ちゃん?」

 

ブニーハットを被った白人の男がルリに手を差し伸べた。

彼女は男に対し警戒したが、迷っている時間は無いと判断し、彼の手を取る。

少女の方は既に助けられており、他の3人が周囲を警戒している。

 

そして拠点にしていたメゾネットから、駐車場に止めていたハンビィーがエンジン音を鳴らしながらルリ達の方へと向かってきた。

乗っているのは孝やコータと下着だけの女性陣、ハンドルを握っているのは先程タオル一枚だった鞠川だ。

いつの間にか服を着ている。

女子高生とバウアー達は下着のまま(冴子は裸エプロン)だったので、それを見ていた黒人は、えらく興奮していた。

ハンビィーの上に乗っている裸エプロンな冴子がルリに助けた男達の事を聞いた。

 

「ルリ君、その男達は?」

 

「なんだか知らないけど、助けて貰いました」

 

「ねぇ、なんで裸にエプロンなの?」

 

「君にはまだ早い」

 

ブニーハットの男が少女にそう告げる。

それと同時に日が天に昇り、長い夜は明けて朝日が来た。




この後は、キャラ紹介でも書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

高城さんの家へ
これまでの登場人物


登場人物紹介です。

コピペするわけにもいかんな。(一部コピペが有り


原作勢

 

小室 孝

原作、学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEADの主人公。

高校二年生(留年生)、「面倒くさい」を口癖とするごく普通の少年であるが、決断力と行動力に優れている。

この作品ではオリ主のルリに活躍を取られがちだが、一応はリーダー格。

無免許ながらもオートバイやバギーなどを乗りこなせる技術を持つ。

主人候補生なのか、原作ではハーレムのような状態であったが、オリ主のルリの所為でぶち壊されている。

 

宮本 麗

原作のヒロインの一人で、警官の父を持ち、孝の幼馴染み。

高校二年生、非常に勝気な性格で、ヒステリックになりがちな面もあるが、根は心優しく、誰かが支えにならないと生きていけないタイプ。

一行の中で下から二番目の巨乳、ロングヘアーから日本のアホ毛が生えている。

本来ならば孝より学園は上のハズだが、紫藤に留年させられ、それを理由に紫藤を激しく憎んでいる。

ルリのお陰で孝とフラグが成立(?)しつつあるが、彼女が何かしでかさない限り、百合ハーレムは起こることはない。

槍術部に属し、父から銃剣道を習っているため、槍や銃剣が付いた銃などの長柄物を扱える。

 

高城 沙耶

原作のヒロインの一人で、右翼団体を束ねる父を持つ、麗と同じく孝の幼馴染み。

高校二年生、自分で天才と名乗るほどのプライドが高い性格な眼鏡っ娘でツンデレ。

裕福な家庭育ちで抜群のプロポーションを持ち、一行の中で上から二番目の巨乳。

ちなみにコータへの恋愛感情は低い、ルリに惚れる可能性は先ず低いとされる。

 

平野 コータ

孝の同級生で軍事オタク、家族構成も完璧な某吸血鬼漫画の原作者の名前がモチーフで、自前で銃を仕上げるほどの高性能すぎる眼鏡デブ。

普段は温厚で大人しい性格だが、銃器を触れたり握ると興奮し、好戦的な性格になるが、肉弾戦は苦手。

アメリカに在住中にPMCのブラックウォーター社の訓練を会得し、マークスマン並の射撃力を持つ。

銃器や軍関係の知識に詳しく、それを一行に教えるアドバイザー的な役割も担当、源文勢の役に立つだろう(オメガ7の軍オタである田中は90年以降から止まっているため)。

いじめを受けたこともあり、その経験から極限状態に置かれた人間の心理をよく分析・理解している。

 

毒島 冴子

原作のヒロインの一人、スタイリッシュ痴女。

高校三年生、尻まで届くロングヘアを持つ凛とした古風な淑女、二年生時に全国大会で優勝した実力を持つ剣道部主将。

冷静沈着で、一行を精神的に支える存在にもなっている。

一行の中で、最下位の巨乳。

裸エプロンで登場したりする変態淑女(?)だが、天然であり、自信も分かってない様子。

他者を傷つけることを悦ぶサディスティックな性癖を持つ。

原作では孝とのフラグが成立しようとしていたが、ルリの介入によってへし折られる可能性が高い。

 

鞠川 静香

ヒロインの一人(?)。

大学病院から派遣された校医、酒癖が悪いドが付く天然。

沙耶を上回る巨乳や冴子を上回るロングヘアを持つ、プロポーション抜群の美女。

一行で唯一の運転免許取得者のため、自動車の運転手として活躍する。

そして年長者であり、一行一番の巨乳、カウンセリングも担当している。

ルリとのフラグは・・・到底叶いそうも無さそうだが。

 

希理 ありす

小学二年生の幼女。

奴ら発生後、新聞記者の父と逃げ回っていたが、辿り着いた民家に立て籠もっていた一般人に父を殺され、奴らに襲われかけたが、孝達に救出され、以降孝達と共に行動する。

ルリとのフラグについてだが、無いと断言する。

 

ジーク

ありすに拾われた子犬、良く吠える。

決してジークフリートやジークハイルから取っていない。

 

紫藤 浩一

傲慢で非道な代議士の父を持つ教師。

周りから人格者として知られるが、内面はその父の所為でかなり歪んでいる。

麗を留年させた張本人、危険な方向性のカリスマを発揮させる能力を持つ。

ルリは麗の行動で危険な人物と察した。

 

井豪 永

孝の親友で同級生、空手の有段者。

最初に「噛まるだけダメ」の実証例となってしまう。

改訂版前は生き残ったが、ルリが助けなかったために原作通り奴らになってしまった。

名前は永井豪から取っている。

決して兜 甲児や不動 明の様な性格ではない。

 

小林源文勢(順次追加予定

 

クルツ・ウェーバー

小林源文の代表作、黒騎士物語の主人公で階級は軍曹。

しかし、準主人公のバウアーのキャラが強力すぎて若干影が薄い。

転移する前の年表は第二次世界大戦末期のドイツ第三帝国降伏後の友軍脱出支援時、乗車は最後まで残ったパンター中戦車。

 

エルンスト・フォン・バウアー

強力なキャラ印象で、黒騎士物語の主役とも呼べる人物、階級は大尉。

物語第一話で右目を失明し、眼帯を付けて戦線復帰、その時、彼の中で黒騎士が目覚めた。

転移する前の年表はクルツと同じ降伏後のドイツ第三帝国降伏後。

忠実ではIS-2と相打ちに成り、戦死するはずだったが、霧のお陰で生存し、学黙の世界に転移した。

高性能な副官のシュルツは居ない。

原作組との合流は、予定にはなく、主に番外編で活躍する。

乗車は武装親衛隊の整備部隊から物々交換で受け取ったティーガーⅡ重戦車。

 

パッキー(パーキンス)

動物が銃を持って戦争することで有名な小林源文のもう一つの代表作Cat Shit Oneの主人公、いつもブニーハットを被っている。

何と言っても世界一格好いいウサギであり、3D映像化し、可愛げな顔をしているのも関わらず、特殊部隊並みの活躍を見せ、視聴者の度肝を抜いた。

そして、下を履いてない、下半身に見える方は即刻病院に行くことをオススメする。

ベトナム戦争時は特殊部隊員、撤退後以降はSASに所属、階級は大尉、彼の正体については、合衆国大統領でも関与できない最高レベルの国家機密。

残念なことに学黙の世界に転移したときに人間に戻って(?)しまった為に、格好いいウサギの活躍は見れない。

しかし、人間になってもその格好良さは変わらない。

唯一源文勢で原作組と合流した。

 

ラッツ(ホワイト)

パッキーの右腕的存在でメンバーの中で古参、同じく特殊部隊員で、撤退後はCIAの職員、階級は軍曹。

ベトナム語を理解し、通訳を担当、その語学の高さは転移した学黙でも活躍(パーキーも喋れるが)。

 

ボタスキー

メンバーでの通信担当の黒人、だが、メンバーとは違い、特殊部隊の訓練は受けていない。

アジア人嫌い(ただし女は別)であったが、撤退後はアジア人嫌いが無くなり、商売に成功して活躍している。

 

チコ

ベトナム山岳民出身でメンバー唯一の現地兵((ベトナム人))、ボタスキーとは違い、特殊部隊の訓練は受けている。

 

アッシュ上等兵

同作者の作品カンプグルッペZbvの主人公、戦車兵で砲手と操縦士を担当。

脱走兵と誤認され、懲罰部隊Zbv送りに成った。

転移した時期は、壊滅前の4ヶ月前。

 

コワルスキー伍長

アッシュの同期で仲が良い、戦車兵で装填手を担当。

喧嘩強く、整備兵3人を軽く倒し、襲ってきた補充兵を無双できる大男。

 

シュタイナー少佐

この作品における中心人物でZbvの指揮官、無慈悲で決して裏切りは許さない性格。

捕虜まで殺す程の冷酷さを持っている。

元々は大佐で連隊長であったが、モスクワ戦で指揮権を放置し逃走、罰として少佐に降格され、Zbvの指揮官にされた。

常に頭が隠れるくらい帽子を深く被り、首が見えないほどコートを深く被っている。

その為に「頭がない」「首が繋がってない」と噂されている。

乗車は指揮官車型のハノマーク。

 

ブルクハイト中尉

モスクワ戦時のシュタイナーの部下、戦車兵で車長を担当する。

Zbv編入時からの生き残りで、シュタイナーの事をよく知っており、Zbv唯一の常識人。

乗車は「好意」で受け取ったティーガー。

 

シュルツ准尉(曹長)

多分Zbvの古参、アッシュとコワルスキーに嫌がらせをする常習犯。

その為にかなり嫌われているが、妻と息子と娘が居る。

ファンからは汚い方のシュルツと呼ばれていた。

 

エアハルト・ハーゲン

狼の砲声のドイツ国防軍側の主人公、戦車猟兵で階級は少尉、性格は冷静沈着。

乗車をフェンリアと愛称づける。

キャラが濃くないのでイマイチ影が薄い。

あの例の2人は、参戦するかどうか分からない。

 

アナートリイ・ゴロドク

ソ連赤軍側の主人公、ハーゲンとは違いキャラがえげつなく濃く、見栄っ張りな性格の異能生存体。

共産主義者ではないが、親衛戦車軍で中隊長に抜擢されるなどえらく信頼されている様子。

 

川島正徳(バートル)

ハッピータイガーの主人公、戦車兵で砲手を担当、階級は上等兵。

元大日本帝国陸軍の少尉であり、満州でソ連赤軍に敗れた後、モンゴルの遊牧民に拾われたが、ソ連軍の強制徴兵により、助けた恩として自ら志願、最前線でドイツ軍と戦ったが、捕虜と成ってしまう。

特別行動部隊により、殺される所を武装親衛隊曹長のゾーレッツに助けられ、その見返りに武装SSに志願、以降彼のティーガーの砲手を担当する。

転移する前の時期は、1943年終わり頃の東部戦線。

 

ハンス・ゾーレッツ

準主人公、戦車兵で車長、階級は親衛隊曹長。

武装SSの38ある師団の一つである第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」所属の戦車兵で古参。

擲弾兵時、モスクワ戦でバートルに助けられた見返りに、彼をドイツ軍に受け入れる。

何度もバートルに助けられており、彼に信頼を寄せている。

 

小松

オメガ7の主人公。

カード破産して普通に働いても返せない程の借金をしてしまい、オメガ・グループに入った元自衛隊員。

とても人間くさい台詞を吐く。

この世界にオメガ・グループは存在しており、要人確保のために床主に出動する。

コールはオメガ7

 

平岡

小松のパートナーであり、ツッコミ担当である。

戦闘では小松が前衛なら、平岡が後衛だ。

仲間には内緒だが、住宅ローンで苦しんでおり、それでオメガ・グループに入ったとされる。

コールはオメガ8。

 

田中

小松班の後輩で軍オタ。

婚約者も含めて3人ほどを孕ませてしまい、訴えられる。

幸いな事に元自衛官であったために、賠償金を支払うためにオメガに入った。

いつも小松から酒代を払わされている。

コールはオメガ20

 

佐藤 大輔

小林源文作品の常連、階級は二等陸佐。

オメガを裏から操るもう一人の主人公、自衛隊調査部別室に所属しており世界各国で情報収集に当たっている。

そのコネクションはロシアの将軍から南米麻薬カルテルのボスまで極めて広い。

一応は国益に則って行動しているようであるが、表沙汰に出来ないビジネスや、本来の任務に便乗した遊興 (本人いわく「別任務」) にも色々荷担しているらしい。

彼に利用された人間は口封じのためたいてい不幸な結末をたどる(殺害など)。

小松が破産したのも実は佐藤の策略であった。

コーヒーの温度はきっかり85℃、豆にも指定あり。

恐ろしい顔をしているために赤ん坊や猫が怖がられている。

ちなみに学黙の原作者の佐藤大輔とは一切関係ない。

 

中村 正徳

佐藤の部下、階級は三等陸曹、やはり小林作品の常連、強者に弱く弱者に強い性格、佐藤にこき使われ理不尽な虐待を受けている。

またわざと敵に捕らえられる、故意に情報をリークさせられるなどの極めて危険な任務を佐藤に強要される。そのためか常に「畜生!いつか殺してやる!」とつぶやいており一度などは本当に佐藤を背後からワルサーMPLで撃とうとしたが、佐藤に安全装置をかけたままだと見破られ失敗した。

なお、このときはカスはなにやってもカスだとの叱責だけで済んだ。

そんな彼も射撃には優れているのだが、活かす機会がめったに無い、高校中退。

ちなみに小林源文の元アシスタントの中村正徳は一切関係ない。

宣伝になるが、ひたすら中村をしばき続けたり、掘られたり、逆レ○プされたりする劇画、東亜総統特務隊を読むことをオススメする。

 

戦場のヴァルキュリア勢(順次追加予定

 

アリシア・メルキオット

戦場のヴァルキュリア第一作目のヒロイン、赤いスカーフを頭に巻いている、階級は軍曹(以降昇進無し)

麗と同じ配役なので、声的に被ってしまうが、その点は気にしないことをオススメする。

明るく優しい性格で責任感が強い世話好きのパン職人。

最強の戦闘民族ヴァルキュリア人の末裔であり、瀕死状態に陥ったときに覚醒した。

戦後はパン職人のマイスター試験に合格、思い人であったウォルキンと結婚し、子宝に恵まれ、幸せに暮らしている。

転移した時の時期は第二作目の終了後から数年後、一作目の同じ体格と格好で征歴の世界から転移している。

第2のヴァルキュリア人と言われたが、実際には3番目、胸囲も3番目である(笑)。

 

エイリアス

戦場のヴァルキュリア第二作目に登場する銀髪に赤い眼を持つ純血ヴァルキュリア人の少女。

ヴァルキュリアとしての戦闘時は、鞭状にもなる槍と頭についている耳状の飾りが特徴の帝国の戦闘服を着用。

研究と実験のために隔絶された環境で育ったため、一般常識を知らない無邪気な性格。

物語終了後は戦友でクラスメイトのコゼットと一緒に暮らし、改めて公立の学校に入学、そこで一般常識を学んでいる。

花畑で手入れをしている最中、霧にのまれて学黙の世界に、アリシアと同じように第二作目の同じ格好で転移する。

第4のヴァルキュリア人であり、身長も胸囲も4人中最下位。

 

リエラ・マルセリス

戦場のヴァルキュリア第三作目のヒロイン、性格は優しく女神のよう、好物は牛乳で階級は二等兵(懲罰部隊転属のために昇進無し)。

特徴的な外見は赤い眼、赤と銀の髪。

開戦後に志願して義勇軍に入隊したが、配属された部隊が5回も全滅し、彼女だけが常に生き残ったため、周囲から「死神」と呼ばれて忌み嫌われた末にネームレスという懲罰部隊に送られた。

その理由は彼女がヴァルキュリア人の血を引いているからである(後ほど仲間に明かしている)。

そこでクルツと出会い、彼と打ち明け、好意を抱く。

終戦後のどさくさに紛れて古代兵器でガリアを滅ぼそうとするカラミティ・レーヴェンを決着をつけ、クルツと連邦領内か帝国領内の何処かで添い遂げる。

転移したときはアリシアと同じ、それも戦時中の同じ体格で同じ格好である。

常に携帯している祖父の形見のナイフもいつの間にか携帯しており、4人中唯一ヴァルキュリア人になれる。

第2のヴァルキュリア人であり、牛乳好きのお陰で胸囲も身長も第二位である。

 

セルベリア・ブレス

戦場のヴァルキュリアに登場するライバルキャラ、性格は軍人風、趣味は料理で階級は大佐。

ヴァルキュリア人の末裔で強く血を引き継いでいる。

その所為で研究所に連れて行かれた。

始めに覚醒しており、その圧倒的強さを主人公達に見せつけ、ガリア全軍を恐怖に陥れた。

物語途中で覚醒したアリシアに負け、忠誠を誓っていたマクシミリアンに捨てられ、捕虜となり、占領された要塞にてヴァルキュリア人の力を使い、ガリア正規軍の大半を巻き込む形で自爆。

自爆前に友軍の捕虜は義勇軍に輸送して貰った。

研究所での影響なのか征歴の世界で治療に欠かせないラグナイトの光を嫌い、自分で使おうせず、携帯しない。

そのためか、専用の衛生兵か支援兵に持たせて戦場に赴いている。

自爆後は西暦の世界へと転移しており、そこで連合国側の傭兵として活躍、敗戦国に対する連合国の兵士達の蛮行に対して離反、戦後の朝鮮半島にて日本へ帰る日本人達を現地人や連合国の兵士達から守るために奮闘していた。

最後の残留日本人を見送った後、警察や連合軍兵士から追われている途中に霧にのまれ転移する。

転移したときは他の3人と同じく、征歴の世界に居たときの軍服であった。

胸囲も身長も4人中トップであり、その豊満なバストから爆乳大佐やおっぱいロケットなどというあだ名を頂戴した。

 

その他(順次追加予定

 

ミハエル・ヴィットマン

武装親衛隊の38ある師団の一つ、第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラーに所属していた戦車兵、階級は親衛隊大尉。

人類史上最も戦車を破壊した男であり、特に有名なのはノルマンディー戦線のヴィレル・ボカージュの戦いが有名である。

単機でイギリス陸軍の機甲師団を壊滅状態にした。

転移する前の時期は、戦死前にサントーに向かってる最中に遭遇した英軍との交戦中。

相棒のヴォルと一緒に転移した、乗車はティーガー重戦車。

 

ヨアヒム・パイパー

武装親衛隊で最も優れた前線指揮官、階級は親衛隊大佐。

虐殺には手を染めず、ありとあらゆる戦地で活躍、その姿は炎の騎士の様。

転移前は米軍に降伏するところであったが、霧にのまれ転移、同じ場所に転移したヴァルキュリア人と共に行動する。

 

バウアー

黒騎士物語のパロディ、独ソ戦の解説本縞騎士物語またはどくそせん!に登場するバウアーの美少女版。

アホ毛がある。

原作では東部戦線初期から居て、歴戦錬磨の女騎士であったが、解説本では輪○されたりしている。

本作は末期で第12SS装甲師団に属していたが、戦闘には全く参戦せず、負傷した車長や乗員の代わりにⅢ号突撃砲を動かしていた。

転移する前はP-47のロケット攻撃で乗車と共に焼かれていたはずだが、転移したときはその外傷は全くなかった。

まず始めにオリ主と合流している。

幼い顔付きだが、18歳であり、プロポーションも良い。

 

タンク・デンプシー

Call of Duty World at Warの力が入ったおまけモードに登場する海兵隊員。

アメリカ議会名誉勲章を授賞した英雄、階級は軍曹。

ゾンビ発生前は太平洋戦線に属し、日本軍と死闘を繰り広げていた。

リヒトーフェンとは犬猿の仲でいつも喧嘩をしている。プルーンが嫌い。

記憶の一部を失っており、過去の記憶はもとより、語彙も貧弱な状態である。

タケオ曰く「頭空っぽ」、リヒトーフェンとは以前にどこかであったと感じているが、思い出せないでいる。

1960年代以降にタイムスリップしてからはメタ発言が多く、プレイヤーや開発元に対して愚痴をこぼしている。

外見は同ゲームのキャンペーンモードに登場するポロンスキーを流用している。

使い回しの理由については、単にめんどくさがったか、お金が無いかである。

 

ニコライ・ベリンスキー

ウォッカに溺れた憐れなソ連赤軍の兵士、戦前は大工と所属党幹部。

台詞の大半はウォッカに関係し、残りはソビエトと共産主義だ。

政治家であったらしく、所属党ナンバー2の男を殺し、政略結婚をして地位を得たが、失脚。

何度か結婚していたそうだが、酔っ払った勢いなのか、気でも狂ったのか妻を何人も殺している。

何故、逮捕されないのかは不明、考えられるのは警察か党にコネでもあるからか。

同じ大国で同盟国であるデンプシーを尊敬しているが、タケオとは日露戦争を理由にあまり良く思っていない。

外見は復讐に燃えるソ連赤軍の中で唯一人間性を失わかったチェルノフ、どうしてこうなった。

 

正樹 武雄

侍の血を受け継ぐ大日本帝国陸軍の大尉。

ゾンビ化し自身に襲い掛かるかかってくるかつての皇軍の兵士達よりまだ生きている者達と共に戦う事を決めた。

先祖は名のある侍であり彼自身その血を引いていることを誇りに思っており、降伏するなら自決するという信念を持っているが、5歳の時に刀で猫の尻尾を切断したので少し危ない人である。

当初は敵国の兵士であるデンプシー、ニコライを嫌い、同盟国ドイツ第三帝国の科学者であるリヒトーフェンに敬意を払っていたが、1960年代にタイムスリップしてからは過去の記憶が戻ったためか、以前と同じように振るまいながら、 デンプシーの状態に注意を払い、リヒトーフェンの事を警戒していた(ニコライは見込みなしとして見捨てた)。

見捨てられたニコライはそんな彼を見て良からぬことを考えていると嫌っている。

外見は同ゲームの敵である日本兵に紛れて登場する帝国陸軍の将校であったが、何故かCall of Duty Black Opsでは「貴様は強くない」と名言を発した日本陸軍将校になっている。

ちなみに名前の漢字はファンが適当に考えた、公式ではないので注意!

 

エドワード・リヒトーフェン

ドイツ軍の少将(または親衛隊少将)で科学者でもあるとってもエキセントリックなおっさん。

戦前は整形外科医をしていた(何故科学者になったのかは不明)、そして妹が居る。

テレポーターを開発したマクシスの助手であったが、彼が失敗する度に八つ当たりするため、キレて彼の娘共々テレポーターの実験にした。

それが原因でゾンビとヘルハウンドを世に解き放ってしまい、大惨事になる。

転移した原因は、鎮圧した月面基地で酒盛りをしていた場所に隕石が衝突、そのまま宇宙に放り出され、窒息死するはずだったが、不自然すぎるブラックフォールに飲まれて学黙の世界に転移した。

なんでCODのゾンビが学黙の世界に登場し、不気味に黄色く光るのが青色に変わるのは所謂続編であるCall of Duty Black Ops2のrゲフンゲフン。

外見は巷で噂なモリゾーと一緒に敵地に潜入するミッションに似たキャンペーンで狙撃対象であるドイツ陸国防軍将軍のハインリヒ・アムゼル。

何故かこの外見の元となった人物は皆死んでいる。

同一の姿をした人物なのか、果ては彼等の死後の世界なのか、謎は深まるばかりである。




修正、オリ主とオリキャラ勢は何処かで書きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オリキャラ勢(順次追加予定)

続きはだと?
何を言っている、まずはオリ主とオリキャラのr(BAN


ルリ

この作品のオリジナルの主人公もといヒロイン、多重人格者、劣化チート、百合っ娘。

性格は多重人格、何か条件を満たすと性格と人格が変わる、本当の人格は少し天然気味な温厚な方で軽い知的障害を患っている。

身長150?のロリで、美しすぎるブロンドにスカイブルーな瞳、色白どころか雪の如く白い肌、そして貧乳である(笑)。

そして不老不死と言うチート能力を持っているが、本人の戦闘能力はかなり低め、しかし多重人格者の影響で格段に戦闘力が上がることもある。

銃器の扱いに関しては、本編中はかなり長けているが、実際は新兵レベル。

過去にドイツ第三帝国の国民突撃隊に属していた経験もあり、ナチス系の被服に関してある程度の知識を持っている。

その所為か、よくドイツ第三帝国の被服類を身につけている事が多い。

同時に、彼女にとってはとっては、大戦末期のドイツ本土戦はトラウマでもある。

訳語能力が高く、源文勢のドイツ軍人とソ連赤軍兵との会話に役に立つ。

男性が苦手ならしく、良く女性陣の近くに寄り添い、決して近付こうとはしない。

やや女性に興味(?)があるらしく、知らぬ間に会話した女性を落とし、百合ハーレムを完成させている(?)。

生きた人間を殺し続けていると瞳の色が赤く変わり、低かった戦闘力は格段に上がり暴走する。

能力解放をすることも出来、その際身長は格段に伸び、戦闘能力も格段に上がるが、不老不死では無くなる。

攻撃を喰らい、死んだ場合は身長90㎝の幼女として復活、不老不死が戻るが戦闘能力は元の状態よりも弱体化する。

作中において奴ら(ゾンビ)に噛まれても奴らには成らない、そればかりか原作の孝ハーレムを崩壊させる始末。

姓にテト・コリッペルと名乗っているが、出入国検査官に聞かれた際に咄嗟に答えた名前であり、本来はカポディストリアス言う。

ちなみに某ギリシャ第一共和政の大統領との血縁関係は無い。

本人はテト・コリッペルの姓がホントの名前だと信じ込んでおり、いつもこの姓を名乗ってる。

余談だが、原作キャラと転移組の女性陣との百合を思い付けば、18禁の番外編作って書く予定。

武器はkar98k

ワルサーPPk

kar98k専用銃剣

折りたたみスコップ

M24柄付手榴弾2個

H&KのUMP45

SIGのP232

狙撃銃はSR-3ヴィーフリ

SIG SG553 

RPzB 54/1パンツァーシュレック

 

 

西寺 葦塚

日本政府要人の息子。

小室達と同じく学園脱出し、紫藤達と決別の際には毒島達と一緒にバスを降りたが、毒島達が奴らと戦っている最中に逃走。

橋での出来事の際には、自分は政府の需要人物の息子と名乗って橋を渡ろうとしたが、信じて貰えず、そのまま銃殺される所であったが、悪運が強かったらしく、自身の救出任務を受けたオメガのメンツに助けられた。

 

山本

断じてBETA相手にフォークリフトと自動小銃で奮闘した某伍長では無い。

番外編で登場予定である。

 

伊妻后

床主付近の高等学校の男子高生、ただの痛い中二。

 

早嶋鏡子

上の痛い中二の幼馴染み、女子高生。

スタイルの良いヒロインみたいな美少女。

性格は尽くす方。

 

太東利木

上と同じ高校に通う男子高生。

性格は地味な方、主人公ポイのでラッキースケベ。

 

スプリット

ジョジョの奇妙な冒険に登場するダイアーさんにそっくりな人。

人外的な能力を持つ男で、何となく瞬殺されそうだが、その点は気にしてはいけない。

ちなみに波紋は一切使えない。

ルリを連れ戻すべく、学黙の世界にストアーと一緒に転移してきた。

名前の由来はダイアーさんの必殺技をもじった物。

 

ストアー

ジョジョの奇妙な冒険に出てくるストレイツォにそっくりな人。

スプリットと同じく人外的な能力を持つ男、もちろん波紋は使えない。

スプリットと一緒にルリを連れ戻すべく、学黙の世界に転移した。

異世界からやって来た人間を判定できる。

名前の由来は特にない。

登場予定は本編辺りである。

 

ハナ

女子小学生みたいな容姿をしたワルキューレの指令官。

取り敢えず戦力7個師団の指揮を束ねる何か凄い幼女。

しかし、本人は働く気がなく、司令室でふんぞり返ってダラダラと菓子ばかり食べている。

ガルパンの生徒会長の様な性格。

 

アレクサンドラ

BETA相手に戦術機に乗って奮闘し、子供ばかりの隊員のお母さん代わりに成っているジャール大隊の中佐の容姿だが、ラトロワとは断じて一切関係ない。

軍事結社ワルキューレに属する女性指揮官であり、ワルキューレに入る前はロシア軍に属していた将校で、経験も豊富、優秀な指揮官だった。

現場司令官であるハナの余りのダラダラぶりに着任してきた。

 

容姿が某ポンコツに似ている上に性格も一緒なワルキューレの戦闘部隊の指揮官。

文字通り彼女が指揮してれば少数でも勝てる。

 

 

 




次回からは続きを書こう・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

橋の向こう側へ。

猫の糞一号(キャット・シット・ワン)と合流した小室一行。
次に彼等は、沙耶の家がある橋の向こう側へ。


新たに少女ありすとパッキー達を仲間に加えた小室一行、そのまま彼等は橋の方へ向かう。

 

「昨日の惨事が嘘のように消えている・・・これはどういう事だ?」

 

ハンビィーの車体の上で橋の様子を双眼鏡で確認したコータは、昨日の出来事が嘘のように消えていることに驚く。

橋を封鎖していたワルキューレの部隊と警察は煙のように消えていた。

残っているのはゾンビ化して殺されたか、巻き込まれて殺された死体と空薬莢が至るところで転がっている。

そう彼が疑問に思っている間にハンビィーは川を渡河し始めた。

 

「凄いな、この軍用車は川まで渡れるのか」

 

ラッツは川を渡河するハンビィーに驚きを隠せないでいる。

それもそのはず、彼等の時代ではまだハンビィーが採用される前だからだ。

 

「それにしてもなんでわざわざ橋じゃなくて川を渡るんです?あっちの方が早く」

 

ハンドルを握る鞠川は、車体の上にいるパッキーに質問し、彼はその質問に直ぐに返答する。

 

「上に警官も女兵士も居ないとすると、地雷が張り巡らされているかもしれない。もし居たら検問に引っ掛かって日本の警官達に小火器類とこのハンビィーは没収されてしまう。これで理解いただけましたかな?ミス・マリカワ」

 

その返答に鞠川は「へぇ~そうなんだ」と呟いて納得する。

 

「歌が上手いな、ありすちゃん。合唱団に居たのかい?」

 

コータと一緒に歌っていたありすを見たラッツは彼女に問う。

 

「ううん、ありす合唱団に入ったこともないよ」

 

「こいつは驚いたな、そうとすると・・・家庭教師にでも教わったかな?」

 

「家庭教師?ありす家庭教師にも教わってないよ、自分で練習してるの」

 

「HAHAHA、将来は歌手ってところだな、これは!」

 

ありすの才能にラッツは笑いながら納得した。

 

「ありす英語でも歌えるよ」

 

先程のラッツの質問の答えに元気が出たのか、意気揚々と歌い出すありす、その歌を聴いていたコータが何か思い付いたのか。口を開く。

 

「ありすちゃん、とっておきの替え歌があるよ」

 

「どんな替え歌?」

 

興味津々なありすに不気味な笑みを浮かべながらコータは、その替え歌歌い始めた。

もちろん、子供のありすに取っては悪影響なので、直ぐに沙耶とラッツに叱られてしまう。

 

「あんた!子供に変な替え歌教えるのやめなさい!原曲は名曲なのよ!」

 

「こいつはイカれたミリタリーマニアだぜ」

 

車体の上でそうこうしている内に向こう側まで迫っていた、それを運転席にいる鞠川が車体の上にいる彼等に知らせる。

 

「みんな起きて、もうすぐ川を渡りきっちゃう!」

 

そして、ハンビィーは川を渡りきり、車体の上にいたキャット・シット・ワンと沙耶、コータが降りた。

 

「みんな~着いたわよ~!」

 

後部座席で寝ていた孝、麗、冴子、ルリも忘れずに起こす。

鞠川の掛け声で起きた麗は、隣で寝ていた孝の膝元に、涎を垂らし、可愛げな寝顔をして寝ている裸エプロンな冴子とメイド服なルリを目撃する。

麗が孝の膝元で寝ている2人を睨み付けているのを同時に孝が目を覚ました。

 

「良いご身分ね、孝」

 

孝は、麗が言っていることに少し戸惑ったが、下に視線を向けてみると、妖艶な裸エプロンの冴子と、可愛すぎるメイド服のルリを見て眠気が飛んだ。

その驚いた声で冴子とルリが目を覚ます。

 

「おはよう・・・小室君・・・」

 

「あ・・・おはよう・・・」

 

2人ともまだ眠気が覚めてないようで、目を擦りながら身体を起こしている。

孝を睨んでいた麗は、膝元に乗っているルリの身体を退けると、プンプンしながら車内から出た。

それを見ていた冴子とルリは、何のことだか分からないでいた。

車内から出た孝は、まだ車体の上にいるありすに手を差し伸べたが、彼女は降りようとしない。

彼より長身なボタスキーが来たが、一向に降りようともしなかった。

 

「どうしたんだ一体?」

 

「ほら、怖くないからボタスキーお兄さんの所へr」

 

そこへ麗が割って入り、ありすを抱きかかえると、プリプリと怒りながら2人に告げた。

 

「孝と、そこのボタスキーさんは女の子の気持ちが分かってないようね!」

 

「待ってくれよ、ミヤモトちゃん。俺は一応女の気持ちを・・・」

 

そんなこともあって、女性陣は、男性陣が見えない場所で着替えを始めた。

もちろん、ありすも一緒である。

 

「パッキー、橋の所にこれと同じ車。色は一緒だけど、上に機銃が付いてる奴」

 

「ホントか?キーとエンジンが無事か調べに行こう」

 

チコが橋の下に小室達が乗る車と同じハンビィーを見つけたというので、パッキーとボタスキー、チコが調べに行く。

ラッツと孝、コータは周辺からゾンビが来ないか、目を光らせる。

 

「これか・・・っ!?」

 

ハンビィーを見つけたパッキー達は、そのM2重機関銃付きのハンビィーの周辺に人の気配を察知し、警戒し、手に持つライフルと構えながら近付いた。

 

「パッキー・・・ゾンビか?」

 

「ボタスキー、ゾンビ違う、こっちに気付くと隠れた。人が居る」

 

ボタスキーにそう答えると、チコはM16A1を構えながらハンビィーに近付いた。

到達すると、直ぐに車内を確認、運転席には頭を打って死んでいるワルキューレの兵士が一人だけ、パッキーはボタスキーとチコに左右から行くようにハンドサインで指示する。

 

「誰も居ない・・・」

 

「そうか・・・じゃぁ・・・出て来て貰おうか、そこの4人組」

 

後ろに振り返り、XM177を構えたパッキー、気付かれた4人は銃器を構えながら突っ立ていた。

 

「クソ、気付かれたぞ」

 

「お前の足音がデカイからだハーゲン」

 

「もうばれてる、ここは大人しくしよう」

 

後ろの4人は手に持つ二度目の大戦中に使われていた銃器を地面に落とし、手を上げる。

内一人は、ソ連赤軍の戦車兵の野戦服を纏っている、武装SSの戦車兵の一人はアジア人顔だった。

 

「ただの仮装した奴らじゃないな、転移者か?!」

 

英語で告げたパッキー、4人はある程度英語が分かるらしく、答える。

 

「そうだ、俺達は43年真冬のロシアから日本(ヤパニッシュ)に転移したドイツ兵だ」

 

「そのファシストの言うとおり、そして俺様の名はアナトーリイ・ゴロドク。ソビエト連邦の英雄だ」

 

ソ連戦車兵の男の言葉にパッキー、ボタスキー、チコは何となく納得し、機銃付きのハンビィーから死体を降ろし、そのハンビィーと一緒に小室達の元へと戻った。

 

「お~い、みんな。足をもう一つと新しい仲間を連れてきたぞ!」

 

ボタスキーは意気揚々と、見張りをする孝とコータ、ラッツに告げた。

 

「バカ、デカイ声出すな。ゾンビが寄ってくるだろう。それとハンビィーと新しい仲間だと?」

 

ハンビィーを人力で押しながら来るパッキー達を見て、ラッツは驚いた。

 

「出会った早々この中戦車ような車を押させるとは、アメリカ人は酷だな」

 

日本刀を腰に差した武装SSの戦車兵がパッキー達に悪態付く、それに答えてか、チコが言う。

 

「バートル、撃ち殺されないだけマシ。でもパッキー優しいから撃たない」

 

「そうか、人にも色々居るんだな」

 

バートルはチコの答えに笑顔で言う。

 

「あそこで着替えているのは?」

 

「ご婦人達だ」

 

着替えている女性陣に質問したハーゲンにラッツは笑顔で答えた。

そして着替え終わった女性陣が彼等の前に姿を現した、そしてルリの姿を見ると、新しく仲間に加わった4人は驚いた表情を見せた。




ばれたかな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

高城の家へ

着替え終えた女性陣、特に冴子とルリの服装は奇抜であった。

冴子の場合は上は普通の制服だが、下に履いているスカートはとても奇抜、何かするだけで見えてしまいそうだ。

ルリの方はミニスカ迷彩服だった。

 

「おい、ハーゲン・・・あの小娘は・・・!?」

 

「ゴロドク、間違いない、あの給油所を紅く染めた少女だ・・・!」

 

ルリの姿を見たハーゲンとゴロドクは彼女に聞こえないように小声で話す。

ゾーレッツは悟られないように口の動きだけでパッキーに問う、それをありすは不思議そうに見てた。

 

「(おい!あの虐殺娘は何処で拾った!?)」

 

「(虐殺娘っ!?メイド服を着ていた家政婦の美少女だぞ。何故そんなに恐れている?)」

 

「(お前は見てないから分からないだろう・・・多分、赤い目になれば殺し始める・・・兎に角、そうならないように目を見張っておけ!)」

 

眉間にシワを寄せながら声を出さず、口の動きだけで伝える。

パッキーは、「了解した」と告げるように頷く、一方、バートルこと正徳は、冴子から腰に差した軍刀の事を問われていた。

 

「正徳さん・・・その軍刀は・・・?」

 

「これは別れた父が訪問先で再会した際に俺に渡した刀だ。多分、この時代にはもう父は居ないと思うが・・・」

 

「そうですか・・・失礼なことを聞いてすみませんでした」

 

冴子が頭を下げて謝ると、正徳は「いや、気にしてはいない」と一言告げる。

チコが見つけたハンビィーのエンジンが無事だとパッキーが告げると、鞠川は安心して、友人の借り物であるハンビィーのエンジンを掛けた。

そして、土手の方にゾンビが居ないかと、孝とコータが銃器を持って偵察に向かう。

 

「クリア!」

 

「この辺りに奴らは居ません。先生、車を上げてください!」

 

孝がゾンビが居ないと河川敷にいたメンバーに伝えると、機銃無しのハンビィーに乗る鞠川が返事をして、猛スピードで土手を上がる。

それに驚いた孝は直ぐにその場から離れたが、コータは、自分の真上を飛ぶハンビィーに呆気に取られていた。

 

「す、凄い・・・!」

 

そしてスタントカー並の着地、コータはその光景に腰を抜かしている。

 

「凄いスタンドだ、ミスマリカワ。何処で習った?」

 

「え~と、知らない間に出来た」

 

「はっ?」

 

ラッツの問いに鞠川はぼけたような返事をしたので、彼はその返答に解せない。

 

「麗、お前はライフル撃てんのかよ?」

 

孝はM1A1スーパーマッチを握る麗に問う、それに対し彼女は強気で答える。

 

「平野かルリちゃんに教えて貰うから、それにこれM14だっけ?確か銃剣が付けられるのかな?」

 

「ああ、着剣は可能ですよ。それに銃剣もセットで着いてます」

 

麗に質問されたコータは、M1A1専用の銃剣を着剣した。

 

「撃ち方も分からないし重いけど、長いから槍のように振り回せる!」

 

着剣されたM1A1を槍のように突いたり、振り回したりすると、強気で言う。

そしてM2重機関銃付きのハンビィーが土手に上がると、誰が何処に入るかをジャンケンで決めようとしていた。

数分経つと、決まったらしく、それぞれ決められた席へ向かう。

小室一行のハンビィーは、鞠川、冴子、沙耶、ありす、コータ、バウアーが車内に、孝と麗は屋根で見張りをする。

重機関銃付きのハンビィーは、機銃座にラッツ、運転席に正徳、車内はハーゲン、ゴロドク、ゾーレッツ、パッキーにチコ、負けたボタスキーは、車体後部に座れるスペースがある場所、そしてルリは小室一行のハンビィーのトランクである。

 

「よし、出発しよう。道案内は任せたぞ、小室!」

 

「はい!」

 

パッキーの掛け声に孝はそう返した後に、2両のハンビィーは、高城の家に向けて走り出した。

暫く、住宅街を走る中、麗が孝に話し掛ける。

 

「ねぇ、孝。気付いてる?」

 

「何をだ?」

 

「あたし達・・・夜が明けてから一度も出会してないわ」

 

その麗の言葉に、小室一行のハンビィーについてくるパッキー達が乗るハンビィーにも聞こえた。

 

「あの嬢ちゃんの言うとおりだ、今日が始まってからまだゾンビを見てない」

 

機銃座に居るラッツが口を開いた後に、ハーゲンが付け足すように言う。

 

「俺達もそうだ、橋の側面を歩いても死に損ない共の呻き声一つもしなかった。まぁ、それで安心して橋を渡れたがな」

 

「こいつの言うとおりだが、俺は昨日まで眠れないほど煩く飛んでいた飛行機が一機も空を飛んでいない事に疑問に思う・・・これはきっと何か裏があるかもしれん・・・」

 

そう言った後、ゴロドクは頭を抱えて悩み始める。

後部に座っていたボタスキーが通り過ぎていく住宅や店を眺め、不満げな顔をしながら口を開いた。

 

「でも、店と家からも一体もゾンビは現れてないよ。あいつ等確か音に反応するんだっけな?もうウヨウヨと出てくる頃なのに・・・」

 

「馬鹿野郎、今出て来たらえらいことになるだろうが!」

 

ボタスキーの発言にゴロドクが活を入れている頃、小室一行のハンビィーでは、コータがありすにこの地域の店の紹介をしていた。

 

「あれは軍の払い下げが売られてるバイク専門店だ」

 

平野はハンビィーの防弾ガラスの窓越しでありすに無人と化したバイク店を見せる。

ありすは笑みを浮かべてバイク店を見ていた。

それを沙耶は「なんで私より詳しいのよ」とツッコミ風に言いながら悔しがっている。

 

そのまま高城の家まで安全に行けると思ったが、それは叶うことはなかった。

麗が行く先に群がるゾンビ達を発見し、直ぐ皆に伝える。

 

「孝、奴らよ!」

 

「なに、死に損ない共だと!?」

 

知らせを聞いたゴロドクが叫んだ後に、小室一行のハンビィーは急に曲がった。

 

「おい!何所へ行くつもりだ!?」

 

ゾーレッツが叫び、正徳が必死に小室一行のハンビィーのハンビィーを追い着こうとしている中、ラッツはM2ブローニングの安全装置を外し、進路の邪魔になりそうなゾンビに向けて発砲し始めた。

 

「ミンチにされたくなきゃ道を空けろってんだ!」

 

ラッツは叫びながらM2の引き金を引き続け、発射された12.7㎜弾はゾンビ達を引き裂いていく。

小室一行のハンビィーは脇道に沿って、ゾンビを避けようとするが、ゾンビの数は増える一方。

 

「ここもいっぱいよ!もう嫌ァ!」

 

「二丁目に近付くに連れてどんどん奴らが増えているぞ!」

 

猛スピードでゾンビを跳ねながらハンビィーは進んでいる。

必死にしがみつきながら、孝は後ろを振り返ってみると、パッキー達が乗るハンビィーは消えていた。

 

「まずい!先生ェ!パッキーさん達の車が後に居ません!!」

 

運転席にいる鞠川に孝は必死に伝えたが、彼女はハンドルを回すのに必死で孝の声など聞こえてなかった。

そして目の前にある危険な物を誰よりも先に見つけた麗は、直ぐ鞠川に止めるように叫ぶ。

 

「止まって!」

 

この事に鞠川は戸惑い、気付かなかったが、直ぐに気付いた冴子の叫びでハンドルを回した。

 

「ワイヤーが貼られているぞ!車体を横に向けるんだ!」

 

言うとおりに車体を横に向けた、ワイヤーと車体の間に挟まれたゾンビは細切れとなり、コータがそれを見ないようにありすの目を隠す。

 

「血油で滑っている上にタイヤがロックしてます!先生!ブレーキ離して少しだけアクセルを!」

 

「直ぐに言われても無理ぃ~!」

 

コータの助言で直ぐ鞠川は行動に移し、ハンビィーを止めた。

だが、急停止した為に車上に居た麗が飛び出し、ボンネットにバウンドして地面に叩き付けられた。

孝は直ぐに車上から飛び降りて、麗の近くにいたゾンビをイサカM37の木製ストックで倒す、その後イサカM37をゾンビに構えてる。

 

「スライドを引いて・・・撃つ!」

 

そう言うと、M37の引き金(トリガー)を引いた。

銃口から飛び出した弾丸が四方に飛び、ゾンビの身体に食い込むが、頭部には一発も当たってなかった。




次話は戦闘ですぅ。

バウアーを忘れたので修正っ・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

背水の陣とも言える。

「ああ、クソッ!当たらない!」

 

銃口より飛ばされた鉄球が一発も頭部に命中しなかったことに孝は悔しがる。

そんな彼にコータは、魔改造SR-10で一番近い距離に居たゾンビの頭を撃ち抜いてから助言する。

 

「突き出すように構えて、胸の辺りを狙って!」

 

その助言を耳に入れた孝は直ぐにイサカM37を構え直す。

 

「突き出すように構えて・・・胸の辺りを狙って・・・撃つ!」

 

近づいてくるゾンビの脚部に狙いを定めて銃爪を指で引いた。

発射された無数の小さな鉄球は散らばり、何発かが頭部に命中、ゾンビの一体を沈黙させた。

 

「ひょっう!最高!」

 

一体のゾンビを倒して喜ぶ孝であったが、また次のゾンビが近づいてくる。

 

「次もって、あれ?」

 

隣で銃声が3発もして、ゾンビが地面に倒れ込む、孝は銃声が鳴った方を見ると、MK107を構えたバウアーがそこに居た。

次に冴子がハンビィーから飛び出し、近くに居るゾンビ達を木刀で効率よく始末する。

バウアーもこれに負けじと、自身が持つカービンライフルで麗に近づこうとするゾンビ達の頭を撃ち抜く。

2人の少女の戦闘力に見惚れていた孝は、沙耶の声で我に帰る。

 

「孝、後ろ!」

 

「あっ!?」

 

言われて振り返ると、一体のゾンビが彼の背後から襲おうとしたが、孝の反応は高く、直ぐにM37の木製ストックでゾンビを殴り付ける。

そして、トランクに詰め込まれていたルリは、勢い良くトランクから飛び出し、UMP45の安全装置を外し、銃口を丁度頭の辺りに向け、周りのゾンビに銃撃を開始した。

頭部を撃たれたゾンビ達はバサバサと倒れて行く、孝は咄嗟に伏せていた為に無事だった。

 

「気をつけろよ!全く!」

 

「ゴメン!」

 

銃爪を引きながら誤るルリ、孝も近づいてくるゾンビにM37を撃ちながら、ゾンビの掃討に戻り、何か思いついたかのように口を動かした。

 

「平野、パッキーさん達の車に付いてる機銃の銃声は?!」

 

「まだ聞こえてるよ!」

 

「よし、そのままみんな撃ち続けてくれ!」

 

「そんなに銃を撃ってると奴らが集まるぞ!?」

 

「そういう意味じゃないです、毒島先輩!銃声でパッキーさん達に!」

 

「成る程、そういうことか!」

 

孝の考えに冴子はゾンビを片付けた後に納得する。

数時間ほどゾンビと交戦する小室一行であったが、頼みのパーキンス達は一項に来ない。

そればかりかますますゾンビが増えて行くばかりである。

 

「フロイラインサエコ!」

 

「心得た!」

 

バウアーがMK107の再装填をし始めると、冴子はそれを援護するようにバウアーの周りに居るゾンビを排除して行く。

最初の孝の発砲から数時間後、厄介な敵が現れた。

今まで戦ってきた奴ら(ゾンビ)よりさらに強力な青目ゾンビだ、来ている衣服は海賊風であり、潜水服まで着た”物”も居る。

最も前に居た冴子に目をつけると、唸り声を上げて彼女に襲ってきた。

他の奴らとは違ってこの”物”達は走って目標に向かい、奴らよりも強力な腕力で標的を掴み、噛み付くか、引き千切る。

ルリとバウアー、コータはそれぞれが持つ銃器で迎撃を開始した。

何体かは倒せたが、残り4体が、冴子に飛び掛ったが、孝のM37で地面に落ちる。

地面に叩き付けられた4体起き上がろうとしたが、バウアーと近くに居た冴子に止めを刺され沈黙する。

 

「まだ、あのゾンビが!」

 

コータが直ぐに新手の青目ゾンビに気付き、皆に知らせた。

先の海賊風と同じく唸り声を上げて、ゾンビを集め、孝達に襲い掛かる。

圧倒的な数のゾンビに圧された孝は、倒れ込んでいる麗の下へと訪れ、彼女に近付こうとするゾンビを始末し、彼女の近くに寄り添う。

 

「(もう終わりか・・・)」

 

孝は麗を抱きしめながら死を覚悟した。

だが、麗が持っていたM1A1スーパーマッチが目に入り、それを手に持った。

 

「ちょっと、何を・・・!?」

 

麗が孝の行動に疑問に思う、その孝はM1A1を外そうとしたが、しっかりと麗の身体にサスペンダーが巻き付いている。

外すのに時間が掛かると察した孝は、そのまま麗の身体ごと持ち上げ、M1A1を構え、迫ってきたゾンビに向けて発砲した。

反動で麗の身体にダメージが入り、声を上げているが、孝は銃声で気付かず、引き鉄を引き続ける。

 

「当たらない!」

 

勢い良く銃口から発射された7.62×51mmNATO弾が何発か飛ぶが、一発もゾンビに命中しない。

やっとのことで一体仕留めたが、また次のゾンビが2人に迫る。

 

「クソッ、またかよ!」

 

再び構えるが、そのゾンビ等はルリが持つP232で全滅し、彼女がP232の再装填を終えた後に2人の姿を見て、口を開く。

 

「恋人だったら何しても良いんですか?」

 

「うわぁ、ちょっと、まr」

 

笑みを浮かべながら孝と麗を見るルリに孝は赤面し、慌てた。

彼等は救援を待ってひたすらゾンビとの死闘を続けてきたが、一項に頼りのパッキー達は来ない。

それから数時間ほどが経ち、空は夕暮れに染まっていた。

何時間経っても頼りのパッキー達は来ることも無く、徒に体力と弾薬が尽きてゆく、車内に居る鞠川は必死にエンジンを掛けるも、一項に掛かる事は無い。

 

その時、孝がゾンビの攻撃でイサカM37を落としてしまった。

我慢できなくなったのか、沙耶がハンビィーから降りて戦闘に参加する。

沙耶は近くに落ちていたM37を拾い上げると、銃爪を握り、構えようとしたが、目の前に眼鏡を掛けたゾンビが涎を垂らしながら沙耶に噛みつこうとしていたが、コータに助けられる。

 

「高城さん、突き出すように構えて、胸の辺りを狙って!」

 

「言われなくても分かってるわよ!」

 

コータに噛み付きながらも沙耶は、近付こうとするゾンビの胸部に向けて撃ち、ゾンビを倒した。

 

「数が多すぎる・・・!」

 

前で戦っていた冴子はゾンビを切り捨てた後に言う。

高城からM37を返して貰った孝も、焦りを見せ始めた。

 

「先生っ!車まだ動かないんですか!?」

 

「駄目なのっ!さっきからエンジンを掛けてるんだけど、何度やっても全然動かないのよ!」

 

エンジンを掛け続ける鞠川はパニックに陥っていた。

AR-10を撃ち続けていたコータも、ハンビィーの車内で震えるありすを見て、何かを思い付き、ありすに話しかける。

 

「コータちゃん・・・?」

 

「ありすちゃん、ジークと一緒に向こうへジャンプだ!」

 

コータはありすを抱きかかえながらありすに告げた、それを告げられた彼女は周りを怯えた瞳で見渡す。

 

「よし、ならついでに。バウアーさん!」

 

「はい!?」

 

迫り来るゾンビに向けてMK107を撃ち続けていたバウアーにコータは声を掛けた。

 

「ありすちゃんと一緒にワイヤーの向こう側へ!」

 

「〔すみませんが日本語分かりません!〕」

 

バウアーはコータの言っていることが日本語なので分からない、なんとかドイツ語を理解できるルリを呼んで通訳してもらう。

 

「なんでそんなことを?って」

 

「ありすちゃんにジークだけではちょっとっと!」

 

「〔ありすちゃんにジークだけでは不満だそうで〕」

 

「〔それじゃ一緒に行きます〕」

 

「一緒に付いて行くそうです」

 

ダンケ(ありがとう)!」

 

承知したバウアーは、ハンビィーの車体の上に乗り込んで、ありすとジークを受け取ろうとしたが、ありすは拒絶の声を上げた。

 

「嫌っ!」

 

そのありすの目からは涙が零れている。

 

「ありすちゃん・・・」

 

「コータちゃんの顔、パパと一緒!みんなも!!」

 

この言葉にコータは軽いショックを受ける。

その時、ジークがありすから離れ、向かってくるゾンビ達に吠え始め、近くに居たゾンビの足に噛み付いた。

それを見た孝は何かを思い付き、、前に出てゾンビを攻撃する。

 

「一体何を考えているのだ?小室君」

 

息を切らしながら冴子が孝に問い、それに孝は答える。

 

「ジークの真似事!」

 

その返答に冴子は階段を上がって電柱まで向かい、手短な電柱を木刀で叩いた。

何体かは音に釣られて、冴子の方へ向かうが、大部分がまだハンビィーの方へと向かっていく。

 

「よし、僕も・・・!」

 

孝も向かおうとしたが、いつの間にか弾薬を補充していたルリが冴子の下へと向かっていくのを見て立ち止まる。

 

「おい、待て!」

 

その静止を聞かず、ルリは青目のゾンビにUMP45を撃った後、大きな声を上げた。

何体かは2人に向かって行くも、結果は冴子と同じ、彼女等の行動も無駄に終わると思いきや、ワイヤーの向こう側から女性の大きな声が聞こえてきた。

 

「そこの人達!離れなさい!!」

 

突如、ワイヤーの向こう側から防火服を着た集団が現れ、ホースをゾンビ達に構えて放水を開始し、ハンビィーの周りに居たゾンビを水圧で払う。

そして逸れたパッキー達も現れ、それぞれの銃器で孝達の周りに居る脅威を排除してゆく。

しかし、彼女達の退路は瞬く間に新手の青目ゾンビ達に塞がれ、迂回を余儀なくされる。

救出された孝が、何か合図をしているがルリは理解できない、冴子は理解できたようで、ルリの手を取って高城の家からワザと遠のく方向へと向かっていった。




これは・・・普通かな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遠回り

本日二度目の更新、そして見ていたアニメ版の展開に・・・


逸れたパッキー達と再び会えたが、ワイヤーの向こう側へは行けず、迂回するしかなかった。

土地勘の無い冴子とルリは、追ってくる青目ゾンビと遭遇するゾンビを避けながら、ひたすら走り続ける。

 

「毒島さん、私ここに詳しくないよ!」

 

追ってきた青目ゾンビをUMP45の銃撃で片付けながら冴子に言う、その冴子でも、この辺りの地理には詳しくない。

 

「私も同じだ、一旦川まで戻るぞ!」

 

冴子は自分達が元居た方向へと周りに居たゾンビを避けながら走り出した。

UMP45の再装填を終えたルリは、進路に邪魔になるゾンビを撃ちながら冴子の後について行く。

途中に、コータがありすに教えていた無人のバイク店を発見し、冴子を引き止めた。

 

「ちょっと待ってください、ここに何か役に立ちそうな物があるかも!」

 

構えていたUMP45を降ろして、髪に付けていたヘアピンを外し、それでドアの鍵を開けようとした。

 

「毒島さん、開けるまで護衛をお願いします!」

 

「承知した!それと何分掛かる?」

 

「余りやったことないんで10分は掛かるかも」

 

「それでは目から青い閃光を光らせている奴らに食い殺されるぞ?」

 

「そんなの嫌ですぅ!」

 

冗談交じりで冴子が言った後に、ルリは急いで鍵を開けようとする。

そして3分辺りが過ぎると、ドアの鍵が解除され、即刻冴子に知らせた。

 

「開きました!」

 

「良くやった!急いで中へ、奴らの数が多い!」

 

迫ってきたゾンビを倒した後、冴子はバイク店に入った、何体かが入ろうとしたが、ルリの銃撃で入れない。

ルリが入った瞬間、冴子はドアを閉め、直ぐにバリケードになる物をドアの前に置いた。

最後に重い修理道具で塞ぐと、2人は暫し息を整える。

 

「で、ここで何を探すのだ?」

 

「う~ん、ゴムボートありませんか?」

 

そのルリの言葉に冴子は店内を見渡す、そしてバギーがある場所を見てみると、直ぐに見つけた。

 

「これのことか?」

 

「はい、それです!え~と、空気入れはと・・・」

 

空気入れを見つけたルリは、冴子が見つけたゴムボートを広げて、挿入口に口金をセットすると、膨らまし始めた。

 

「それで何をするつもりだ?」

 

「川の小島に上陸しようと思って」

 

「そういうことか・・・」

 

その答えに冴子は、笑みを浮かべ、外の様子を伺った。

外では、青目ゾンビが、普通のゾンビを雄叫びで集めて、ドアをブチ破ろうとしている。

そしてゴムボートの膨らましが十分に成ると、ルリはオールも一緒に載せてそれを持ち上げ、外に出ようとしたが、外にはゾンビが集まりつつある。

 

「わぁ・・・どうしよう・・・」

 

「その大きさではドアからは出られん、ガレージから出よう」

 

直ぐにガレージに移動し、シャッターを開けた。

電動音に気付いた数体が彼女等に向かってきたが、もう遅かったようで、2人は川の方へと向かった。

土手に飛び降りると、直ぐゴムボートを川に投げ込み、浮かばせる。

まずは冴子が乗る、ルリが乗ろうとした瞬間、青目ゾンビが叫び声を上げながらルリに向かってきたが、UMP45の銃撃で、足に命中し、土手から転げ落ちる。

次のゾンビが来たので、ゆっくりと乗っている場合じゃないと判断したルリは、勢いをつけてボートに飛び乗った。

ルリが飛び乗った反動で、水飛沫が起き、冴子の衣服を濡らした、気にしてる暇も無く、オールを渡され、小島まで必死に漕いだ。

 

青目ゾンビは川に入りながら追ってくるが、動きが鈍いゾンビ達は川に入れず、その場に立ったまま。

小島にボートが着くと、ルリは直ぐに川を泳いで追ってくるゾンビ達に銃撃を加えた。

反撃することも出来ず、45ACP弾で死体に戻り、川に浮かんで流されて行く、やがて最後の一体が銃弾に当たって流されて行くと、ルリは空になった弾倉を満タンの弾倉に変える。

 

「ルリ君・・・」

 

「ハァ、ハァ、はい?」

 

「君は私に恨みでも有るのかね?」

 

「へぇ?キャッ!?」

 

冴子に声を掛けられたルリは、彼女の方を見てみると、制服が濡れて下に付けていた下着が露わとなり、豊満で美しい胸の谷間が見えてしまっている。

それを見たルリは赤面し、誤り始める。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「いや、良い。それより着替えになる物を」

 

「あ、はい」

 

ルリが背負っていた背嚢を地面に下ろして着替えを探る中、冴子は濡れた制服を脱ぐ、着替えになるタンクトップを見つけると、直ぐに上半身は下着だけの冴子に渡した。

 

「風邪・・・引いてませんか・・・?」

 

「風邪は引いてない・・・気にしてるのか?」

 

「いえ、ちょっと。寒かったら私に抱き着いても良いですよ」

 

この言葉に冴子は疑問に思う。

そして立ち止まっていたゾンビが河川敷から立ち去ると、彼女達は直ぐにボートに乗り込み、河川敷に到達すると、そのまま高城の家に向かった。

もちろん、冴子の制服は乾いてそれを着ている。

 

少数のゾンビを仕留めながら、この辺の噴水がある公園に到着した。

公園には複数のゾンビが待ち受けており、2人の足音に気付くと、襲い掛かってきた。

直ぐに冴子とルリは迎撃に入る。

少し休憩して体力を回復したが、疲労はまだ癒えていない。

放浪者のゾンビを倒した後に冴子が次のゾンビを倒そうとした瞬間、突然木刀を持っていた手が止まった。

標的のゾンビは幼児であり、生きてる頃からしてまだ幼稚園に入りたてだろう。

冴子がその場に立ち尽くしているのを目撃したルリは、腰に付いているホルスターからP232を引き抜き、幼児ゾンビの頭に向けて撃った。

その銃声で我に帰った冴子はルリを見た。

ルリの顔は普段の怒り顔では無く、まるで恨んでるかのような表情だ。

普段の可愛らしくもない殺意に満ちた表情に呆然としていた冴子は、ルリに手を掴まれて公園から連れ出される。

夕日が落ちて、空が夜に満ちる中、冴子の手を引っ張るルリは山の頂上にある寺へと向かって行った。




次は冴子とルリの過去暴露・・・かな?(変更あり

それとエロい表現入れようかな?例えば寺でルリ×冴子とr(PAM


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

明かされた真実

少しエロ描画が・・・そして百合描画かな・・・?


寺で夜が明けるのを待つことにした冴子とルリ、蝋燭を見つけて明かりを灯すと、一息つく。

 

「この中には人の気配もゾンビの気配も無いよ、それと刀」

 

「ああ、そうか・・・助けてもらい・・・安全を確認させて・・・重ね重ね申し訳ない・・・」

 

安全を確認してから一息ついたルリに冴子は謝る。

 

「いえ、別にあの毒島さんがゾンビとはいえ、幼い幼児に手を出せずにいたから、私が代わりに」

 

手を振りながら答えるルリ、背負っていた背嚢を床に降ろした後、先程手に入れた日本刀を背嚢の隣に置く、返り血で紅く染まった迷彩服とミニスカを脱ぎ出す。

露わになっていくルリの体付きを見て、冴子は見取れている。

そんな冴子にルリは声を掛けた。

 

「毒島さん」

 

「へ?なんだねルリ君?」

 

「巫女服って、下着も外して着る物なんですか?」

 

「いや、そのまま着て良い」

 

その答えにルリは返事をして、捜査中に見つけたと思われる巫女服を着始める。

少し手間取っていたが、数分後には完璧に着こなす事が出来、達成感に満ちた表情を浮かべていた。

 

「どう、似合う?」

 

「ああ、とても似合ってるよ。黒髪なら完全に大和撫子だな」

 

「へぇ~そうですか?」

 

冴子の言葉にルリははしゃぎ始める。

そして冴子はその間にタンクトップに着替えた、はしゃぎ終えたルリは、背嚢から水が入ったペットボトルを取り出し、冴子に渡した。

 

「ご飯は持ってきてませんけど、水なら」

 

「忝ない・・・」

 

渡されたペットボトルを受け取り、中に入った水を飲み始めた。

その間、ルリの視線は開け口を口に含んでいる冴子の唇に集中しており、小さな口を大きく開け、珍しがっている様子、それに気付いた冴子は、ある程度飲んだ後、自分が飲んでいたペットボトルをルリに渡す。

 

「君も喉が渇いているだろう?」

 

「あ、はい・・・」

 

渡されたペットボトルをそのまま受け取り、開け口を暫く見た後、それを口に含んだ。

普通に飲んでいる様に見えたが、小さな口から舌が見え、冴子が飲んだ開け口を舐め回している。

それが見えた冴子は少し鳥肌が立ったが、その可愛らしい唇で治まる。

 

「(子の娘は・・・百合の方か・・・?)」

 

ルリが行ってきた一連の行動を振り返りながら冴子は推理した。

 

「(私の身体に触れた手つきはどうも純潔な少女にしては手慣れた手つきだった・・・そしてそうとは思えぬ数々の行動・・・もしや同姓と経験済みか・・・?)」

 

推理した後、水を飲み終えたルリが一息ついた後、冴子は「美味しいか」と質問した。

 

「美味しかったですよ」

 

「そうか。所で、開け口を舐め回しながら飲んでいるように見えたが・・・?」

 

「ふぇ!?そ、そんなのしてたっけな・・・?」

 

顔を赤らめて戸惑い始めたルリ、どうやら冴子の読み通りだった。

 

「図星のようだな・・・さらに追い打ちを掛けるようだが、君は同性愛者かね?」

 

「へっ?」

 

赤らめていた顔が元に戻り、鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしたルリ、これも図星だったらしい。

 

「・・・・・・気持ち悪いですか?女の子とエッチしてたって」

 

その問いに顔を冴子に見えないように下に向け、口を開くルリ、その行動に冴子は少し戸惑ったが、励ますように言った。

 

「別にそんな意味で聞いた訳じゃない、現に私にも他人を痛め付けて快楽を得る性癖を持っている」

 

突然の事にルリは、顔を上げて冴子の表情を見ると、彼女の表情が狂気かがっており、やや興奮している様子だった。

続けて冴子は口を動かす。

 

「話は変わるが、あれは4年前のことだ・・・夜道の帰りの途中に男に襲われ掛けた私は震えた振りをして誘い込み、持っていた木刀で男の目を目掛けて振りかざしてやった。それ以来は明確な敵を得ることやそれを斬ることに快楽を感じたよ・・・人殺しが正当と化した世界になると、私はとても喜んだ・・・そしてあの子供の奴らを見て、以下に自分が酷くなっているのに気付いた・・・どうだ、怖いか?君の近くにいる私が恐ろしいだろう?!」

 

ルリの肩を掴みながら冴子は彼女に問う。

 

「そんなこと無いよ・・・」

 

「・・・・・・っ!?」

 

「私の方が・・・もっと人を殺して、化け物だもん・・・」

 

ルリの答えに冴子は黙り込んだ、次にルリが口籠もりながらも自分の過去を語り出す。

 

「私は普通の人間じゃなくて・・・神に近いと言うか・・・今の時代よりずっと前に生まれて・・・しかも異世界から来たんです・・・」

 

その衝撃的な発言に冴子は驚きを隠せないでいる、さらにルリは言葉を続けた。

 

「まだ私がその事に気付いてない頃・・・今から70年も前の頃かな・・・?ナチス・ドイツって知ってるかな?生まれてから12歳の頃に国民突撃隊っていう日本で言う子供とか老人を集めた組織に属してたの。当時のドイツはね、負け続けて本土に連合国とソ連が攻めてきて、国防軍と武装親衛隊、国民擲弾兵、国民突撃隊はそれらの圧倒的な軍勢と戦った。初めての戦闘は確か米軍(アーミー)の戦車隊との交戦だったかな・・・アーミーの戦車が近付くまでパンツァーファウストを握ってずっと待ってたよ、そうしてる間に一緒に参加したおじいちゃんと私より年上な男の子が次々と死んじゃった・・・当たる距離に戦車が来たらさ、発射するボタンを押し込んで戦車を壊したよ・・・最初は怖かったな・・・だって壊れて燃える戦車から兵隊が叫び声を上げて、燃えながら出てくるもん。戦闘が終わった後はいっぱい吐いて、とても気持ち悪かった・・・でも次で人を虫と思ったら、人を銃で殺しても何も感じなくなっておかしくなっちゃった。それと自分が不老不死に気付いたのはあれかな?確か優しくしてくれた婦人補助員のお姉ちゃんがロシアの爆撃機の爆弾で死んじゃって、自分でも分からないくらい起こって一人で敵と戦っちゃった。狙撃銃で敵の兵士を殺してる最中にソ連の戦車の砲撃で吹き飛ばされてさぁ、右腕と両足の感覚が無くなって、このまま死んだって思ったの。でも女神様が私を助けて本の身体に戻して不老不死まで付けてくれたの」

 

声のトーンを落とし、上を向きながら語るルリ、冴子は何を言って良いか分からないでいる。

そしてルリは表情を軟らかくしたが、目から生気が失われていた、それでも彼女は続けた。

 

「その後はとても綺麗で金髪碧眼でスタイル抜群の美人のお姉さんに助けて貰った恩でファーストキスをあげちゃった。あの時のマリの唇は煙草とお酒の味がしてた・・・今でも同じ味だけど・・・その後、戦争が終わって・・・その後、どうしたっけ?そうだ、イギリスに渡ってからマーギズって言うおじさんに死ぬと思うくらい鍛えられて朝鮮に送られて朝鮮人と中国人をいっぱい殺したんだ。それと韓国軍の兵隊もいっぱい殺して・・・」

 

「もういい!」

 

自分の過去を語るルリの状態に危険と判断した冴子は、彼女を抱きしめた。

 

「これ以上言わなくて良い」

 

「え、でも、まだ」

 

「もう君の事は知った、もう嫌なことを喋らなくても良い」

 

その冴子の行動にルリは、戸惑ったが、目に生気が戻っていた。

ただ抱きしめられていたルリは、冴子の手から離れて下がり、口を開く。

 

「どう、私の事、嫌いになった?それとも自分の身を守るために私を殺したい?」

 

「いや、私より凄いと思ってずっと驚いていた。君が不老不死でとても私など足元にも及ばない存在と断定した。でも、そんな綺麗で可愛い君が好きだ」

 

顔を赤らめてルリは、恥ずかしそうに俯いた。

 

「こ、告白されちゃった・・・!マリ、簡単に落とされてごめんなさい・・・!」

 

両手で顔を抑えながら恥ずかしそうに口を動かすルリ、そして抑えていた手を下ろして冴子に視線を向ける。

 

「今すぐセックスしますか?」

 

「はぁ?」

 

その衝撃的な発言に冴子は度肝を抜かれた。

 

「だからセックr」

 

「今はよそう、明日には高城君の家へ。早く小室君達と合流せねば」

 

冴子の言葉にルリは、残念そうな表情をする、数分後にルリが用意した布団に2人で一緒に寝ころび、眠りについた。

そして翌朝、朝日が天に昇る中、ルリは血塗れの迷彩服とミニスカに着替え、UMP45を構えながら寺の外に出る、冴子は既に着替え済みだ。

 

「あ、ゾンビ!」

 

下りから寺に向けて無数の奴らが上がってきた。

今のUMP45の弾数では、頭を撃っても全ては倒せない、予備のP232が在るとはいえ、ゾンビを倒す前に全ての弾薬が尽きるだろう。

この圧倒的な奴らの数に冴子は膝を地面に付けて絶望する。

 

「どうしよう・・・こんなにいっぱい居たら、銃の弾がみんな切れちゃう・・・そうだ!毒島さん、刀!」

 

背中に掛けていた日本刀を取り出し、冴子に渡すが、彼女は取ろうともしない。

ルリは諦めずに柄を冴子に向けるが全く取ろうともしなかった、そこでルリは冴子の胸を鷲掴みにして揉み始めた。

 

「突然何を・・・?」

 

「守って!何でも良いから私を守って!冴子ちゃんの性癖もさらけ出して良いから私を守って!多分その性癖もみんなに認めて貰えるから!」

 

上目遣いに泣き顔で願われた冴子は、笑みを浮かべてルリから日本刀を受け取り、鞘を左手で握ると、柄を右手で握り、刀を抜いた。

そして一番近くに居た巫女服のゾンビの頭を斬り裂き、笑みを浮かべた。

 

「この感覚・・・!」

 

呟いた後に次のゾンビを斬る。

 

「たまらない・・・!」

 

水を得た魚の様に軽やかにゾンビを次々と斬って倒していく冴子、自分が気付かない間に数え切れないゾンビを斬り捨てていた。

最後の一体を一刀両断にした後、抜群の笑みを浮かべて叫んだ。

 

「濡れるぅッ!」

 

叫んだ後に、刀身に付いた血を払った後、刀身を鞘に戻した。

その後ゾンビと遭遇し、交戦しながらも目標の高城の家に到着、その家は普通の家では無く、裕福な人間や資産家、成功者が住みそうな邸宅だった。

裏口に着いたらしく、孝と平野やありす、ハーゲン、ゴロドクが裏門の中側から2人を出迎えた。




次回からは番外編です。

始めはオメガ7の面子に。
次は佐藤と中村のコンビがヤンデレの火付け役と交戦?
黒騎士ことバウアー、死人と軍事結社ワルキューレ相手に奮闘!そして日本帝国の最強整備士、山本伍長登場?
パイパーと戦乙女達、原作のモールへ。
Zbv、交戦。

さて、どれから書こうか・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編(佐藤&中村編)
帰還とコンビの出動


最初はオメガ・グループの帰還から。

この作品出る佐藤は原作者とは一切関係ないよ!そして中村も。

後、Zbv再登場です。それとヤンデレの火付け役登場☆!


時は遡り、小室一行がパッキー達と出会う所まで戻る。

目標であった西寺の確保に成功した小松を始めとしたオメガ・グループの面々、少々荒っぽい確保の仕方をした為に回収地点が変更となり、さらに軍事結社ワルキューレの追跡部隊に追い回されていた。

 

「しつこいストーカー女達だ、まったく!」

 

小松はMP5SD6を追ってくる中歩兵などに向けて乱射しながら後退する。

彼の前には頭にボロを被せて脚と腕を拘束した西寺を抱えた隊員2名が必死に走っている。

このチームで唯一の重火器を装備した田中がM203に弾頭を装着すると、敵が密集している方角に撃ち込み、何人かを殺傷した。

 

「小松、新手だ!2時方向から敵兵20人ほど!」

 

「一個大隊でも追ってきてるのか、たく!」

 

平岡の知らせに小松はMP5SD6の弾倉を弾数が満杯の弾倉に替えて弾幕を張る。

そして回収地点に近付くと、長距離無線機を背負った隊員から知らせを聞いた。

 

「おーい!位置を知られる前に皆殺しにしろとか言ってるぞ!」

 

「無茶言うなボケェ!高々一個分隊で大隊を全滅できると思うか普通!」

 

遮蔽物に身を隠して弾幕を張っていた小松は、無線兵にそう返答した。

回収地点の一歩手前まで来ていた小松達であったが、迂闊に自分達の正体を明かすなどと言うマネは許されない。

先程チーム全員に知らせた無線兵が良い事があったらしく、それを皆に知らせた。

 

「航空機を支援に出してくれるらしい、今、こっちへr」

 

無線兵が航空機が来ていると言った瞬間に、上空から航空自衛隊所属のF-2爆撃型6機が現れ、ワルキューレの追跡部隊を一掃した。

 

「始めて空自が無人都市に爆撃演習を行った・・・」

 

その光景を遮蔽物から見ていた田中はそう呟く、回収地点にCH-53が着陸、小松達はそれに乗り込んで行く。

 

「結構ハードな任務だったな?」

 

隣の席に座る隊員が口を開いた、それに平岡は答える。

 

「ああ、それにしても、あの女兵士達は何だ?聞いてないよな田中?」

 

「そんなこと聞かれても僕には分かりませんよ、装備も僕が知らない物を多いし。おまけに数が多いし、予想外な事が多すぎますよ」

 

田中は嫌々と語り始め、皆の共感を集めた。

 

「そうだよな、さて、帰ったらメシ食って寝るとするか」

 

「俺は飲んでから寝るよ」

 

小松が言ったことに始めに口を開いた隊員が付け足す、西寺と小松達を乗せたCH-53は、ゾンビ鎮圧が終わった四国へ進路を取った。

 

そして某県 榊野町。

ここも死者の世界と化していた。

床主と同じく”奴ら”が町を徘徊する・・・その町の住宅街にSUV一台が道路を走行していた。

 

「中村、そこを右だ」

 

後部座席に顔に傷が付き頭にバンダナ巻いた肥満体型の男、佐藤が足を組みながら運転をしている眼鏡を掛け、ブニーハットを被る男、中村に指示をだしている。

 

「はっ」

 

だが、中村は佐藤が指示を出した逆方向にハンドルを回す。

 

「てめぇ、右も左もわからんのか!ボケェ!カス!」

 

佐藤は運転してる中村の頭に蹴りを入れる。

その所為でSUVはコントロールを失い壁にぶつかりそうになるが、何とか体勢を立て直す。

 

「イテェ!(ちくしょう、いつか殺してやる!)」

 

蹴られながら中村は心で思った。

ちなみに2人とも武装してる。佐藤大輔は消音器付きのM4A1カービン、中村はFNミニミと消音器付きMPL。

何故彼等自衛隊の調査別室がこの榊野町に居るのか・・・?

それは佐藤のお友達の頼みである。

小林源文のオメガシリーズを読んでないと分からないが、佐藤大輔は世界中にお友達が沢山居るのだ。

マフィアや軍人、海賊、その他多数。取り敢えず飽きないほど多い。

その中の薬品会社アスタルシャの社長が頼んできたのだ。

彼が言うには「俺に黙ってうちの科学者共が何かウイルスなる物を作っている。何故か知らんが製造している研究所が日本の学校の地下なんだ。それを回収してくれ(以降中略)」と、電話で頼んできた。

佐藤は彼に何度か助けられた恩があるので、頼みは断れない。

オメガに向かわせるつもりであったが、全部隊出動中なので仕方なく忠実なる部下、中村と共に榊野学園高等学校に向かう。

 

「(なんで高校の地下なんかに研究所が在るんだ?何処かの小説じゃあるまいし)」

 

葉巻を吸いながら佐藤は疑問に思った。

次の瞬間、車が急停止した。その衝撃で佐藤は前部座席に頭をぶつける。

 

「中村~、急に停止しやがって。ボケェ!」

 

怒りに満ちる佐藤が中村の頭を何度も殴りつける。

 

「でぇ、でもぉ、二佐殿!ひ、人が!」

 

「ん?」

 

殴るのをやめて佐藤は窓を見る。腕を押さえてる男が助けを求めていた。

押さえる腕からは血が水滴のようにこぼれ落ちている。

 

「た、助けてくれ!あんた等自衛隊だろ?」

 

これを聞いた佐藤は「以下にも」と、答える。

男の顔に希望の笑顔を浮かべ、「だったら乗せてくれ。俺、医者なんだ」と、言う。

佐藤は「榊野学園ってどっちですか?」と、医者の男に質問した。

 

「東に行った先だ。あっちに避難所が在るんだろう?一緒に連れてってくれ、頼む!」

 

医者の男は乗せてくれと何度も頼むが、勿論、佐藤と中村は乗せるつもりは更々無い。

佐藤はポケベル付きのC4爆弾を取り出し男に渡す。

 

「それは救難用の通信機です、このポケベルみたいに引けば救出部隊が来ます。自分等は任務があるので、では」

 

佐藤は窓を閉め、中村に車を出すように指示した。

後ろを振り向き徐々に小さくなる医者の男をずっと見てると、その男はポケベルの紐を引いた。

音がけたたましく鳴り響き、複数のゾンビが男の周囲を囲む、そして佐藤はニヤニヤしながらC4の起爆スイッチを押した。

 

バーン!と、爆破音が住宅地に響き渡り、それに釣られて奴らが凸凹コンビが乗るSUVを無視し、爆破音が聞こえた方に向かう。

 

「音に反応するってホントだったな」

 

彼は納得した顔で言う。

 

「佐藤二佐殿、なんで見捨てたのですか?」

 

中村の質問に「アァ!?」と、呻って中村を殴ったり、罵倒する。

 

「テメェ!俺に死ねと言うのか!あいつ噛まれてただろう?ああ!?噛まれた奴はゾンビに仲間入りなんです!分かりますか?中村三曹ど・の!!」

 

再びコントロールを失うSUV。その数秒後、コントロールを取り戻した。

暫く走ってると空から大きなエンジン音、地上からは銃声や怒号、爆破音が聞こえてくる。

 

「この音は自衛隊の装備じゃねぇーな。まさかライバルの奴らじゃないだろうな・・・」

 

佐藤はそう口にしながら葉巻の煙を吐いた。

そして榊野町に到着。

町中から銃声が響き、それに混じって悲鳴が聞こえる。

 

「民間人まで殺してるのか・・・警察はロクに動いてないようだな」

 

SUVの車内で煙草を吹かす佐藤、中村は運転に集中してる。

 

「二佐殿、人が車の前に出て来ますが?」

 

「あー、轢き殺せ」

 

中村の質問に佐藤は適当に答え、それを聞いた中村はSUVのスピードを上げ、前に出てくる奴らを轢き殺す。

 

「追加だ、あんま轢き殺すな。車が壊れる」

 

「はい」

 

車内で佐藤と中村がこういう風な会話が続いた。

その頃、Zbvは先に榊野学園にコンビよりも先に着いており、学園内を双眼鏡で見ていた。

 

「ふむ、学校内では先程、我々に向かってきた歩く死人で溢れているようだな」

 

シュタイナーはハノマーク指揮車仕様から双眼鏡で学園内の様子を窺っていた、そこに多数の発車煙が目に入る。

 

「ん、発射煙(マズルフラッシュ)?家中調べたがフル・オートのライフルは無かったハズだぞ?直ぐに偵察部隊を編成し、あの学園に向かわせろ」

 

無線兵に指示を出すと、双眼鏡を降ろして、車内に戻った。

そして学園では既にワルキューレの回収部隊と二個中隊にも及ぶ支援部隊が生存者構わず銃を乱射していた。

 

「ヒュー!最高!」

 

FAMAS-F1をゾンビや生きた生徒に向けて乱射しながら叫ぶPASGTヘルメットを被ったワルキューレの兵士、もう一人もMP5A5でゾンビの頭を撃ち抜いた後、その兵士に声を掛ける。

 

「あんまり無駄に撃ってると弾が無くなっちゃうよ」

 

「良いじゃん、上にいる弾薬持ってる奴に弾を借りれば」

 

「そう言う話かな・・・?」

 

軽装備の茶髪でエメラルドな瞳の女兵士は少し悩んだ顔をする。

それを腰に届くまで長い黒髪、豊満な胸を持った少女、桂 言葉が壁越しから見ていた。

 

「(どうする・・・?今飛び出したら確実に殺される・・・そしてここに止まってもゾンビに成った誠君に噛まれてゾンビに成ってしまう・・・何かあれば・・・)」

 

言葉は脳内で考え込むと、周りに使える物は無いか見渡す。

消化器が目に入り、安全ピンを外して消化器を持つと、2人の女兵士が居る方向に飛び出し、ホースを向けた。

2人の女兵士は、それぞれ手に持つ銃を直ぐに向けたが、言葉の方が早く、消化剤が2人の視界を奪う。

その隙に果物ナイフを取り出し、PASGTを被ったFAMAS持ちの兵士の喉を切り裂く。

喉を斬られたFAMAS持ちは口から血を吐いて苦しみ、やがて力尽きた。

茶髪のMP5持ちは直ぐに言葉に銃を向けたが、背後に回られて、拘束された。

言葉はその女兵士の喉元に果物ナイフを突き付け、尋問を開始する。

 

「質問します、貴女達のどうしてここに来て生存者構わず銃を撃つのです、それとこのゾンビ発生と関係在るんですか?」

 

英語で聞いた言葉、しかし、MP5持ちは何のことだかサッパリ分からない。

 

「そんなの知らない!ただ回収部隊の動きを良くするために銃を撃てと言われてるだけよ!」

 

「そうですか・・・所で、他の仲間の位置は?」

 

「屋上に続く道にそれぞれ配置されてる・・・残りは学園内の鎮圧行動してる・・・もう全部話したでしょ?離してよ」

 

言葉は、「フーン」と呟いた後に、ナイフを喉に突き刺し、茶髪の女兵士の息の根を止めた。

そしてその兵士が持っていたMP5A5とMP-443、予備弾倉などを奪うと、誠ゾンビが居る部屋に向かった。

 

「(誠君・・・悪いけど・・・的になってもらいます・・・)」

 

MP-443の安全装置を外して、誠ゾンビの頭に照準を合わせて撃った。

乾いた音が鳴り、空薬莢が床に落ちた音がした後、頭を撃ち抜かれた誠ゾンビはその場に倒れて動かなくなる。

そして言葉はその場を後にした。




次は佐藤中村コンビVS言葉にしようかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

佐藤と中村、榊野学園に入る。

題名がショボくて済みません。


榊野町住宅街を走る一台のSUV、しかし、前方の道がワルキューレの部隊に寄って封鎖されていた。

 

「ん?なんだあいつ等?」

 

運転席に座る中村は、前方で止まれと指示する女性兵士の指示に従おうとしたが、佐藤が中村の頭を蹴る。

 

「突破しろ、中村」

 

「え?でも連中、重火器を所持してますよ?」

 

「いいから走れカス」

 

佐藤は中村をまた蹴り、車を無理矢理進ませた。

そのまま前に出た憲兵を轢き殺し、バリケードを突破。

封鎖している女性兵士等は即座に銃の安全装置を外し、佐藤等が乗るSUVに発砲するが、運転する中村は殺せることができずその場を急いで離れる。

狙撃銃ウルティアマラティオを持つ狙撃兵は発砲しようと構えるが、走行中の車の窓から上半身を出した佐藤の銃撃で狙撃兵は射殺された。

 

「へ、ちょろいちょろい」

 

佐藤は上半身を車の中に戻しM4A1カービンの残弾を確認する。

 

「(これで回収は難しくなるな。まぁ、あいつがヘリを用意してるハズだな。このSUVは捨てるか)」

 

再び後部座席に腰を下ろし、全部座席に足を乗せると、葉巻を咥え、先に火を付けて一服した。

 

そしてコンビの目的地である榊野学園、Zbvの擲弾兵中隊から引き抜かれた一個分隊程度の偵察部隊が学園内を探査していた。

 

「高校時代を思い出すな、俺の母校はこんな風な設計だったんだぜ」

 

MP40を構え、先頭に立った国防陸軍兵が思い出話をする。

他のKar98kやMP41などを装備した兵士達が退屈そうに話を聞いていた。

 

「こいつの思い出話はウンザリするぜ」

 

「ああ、そうだな。ちゃんと調べて偵察しねぇーと、シュタイナーの野郎に殺されちまうよ」

 

長距離無線機を背負い、Kar98kを抱えた兵士が、愚痴をこぼした兵士に答える。

一歩一歩廊下を進んでいると、銃声や悲鳴が近くで聞こえるように成ってきた。

そんな彼等の目の前に、一体の高校生ゾンビが現れた。

 

「見ろ、死人だ」

 

「どうする、殺すか?」

 

「弾が勿体ない、ストックで殺せ」

 

「了解(ヤヴォール)」

 

殿の兵士に指示されたKar98kを持った兵士は、銃座で高校生ゾンビを殴り殺した。

彼等は何も口にせず、黙って前進し続ける。

途中、女性の呻き声が耳に入り、彼等は至急、聞こえた方角に向かった。

 

道中にゾンビと何度か出会したが、一切発砲もせず、銃剣や銃座で倒すだけであり、決して無駄弾を使わない。

そして現場に着くと、ワルキューレの軽歩兵が腰を抜かして倒れ込んでいるのが見えた。

 

「スッコチ!見ろ、女兵士だ」

 

「ホントだぜ、何か怯えているように見えるが・・・」

 

スコッチと言う兵士が喋り終えた後に、その軽歩兵は長い黒髪の少女に刃物類で滅多刺しにされて絶命した。

目撃した偵察部隊は、一歩下がり、MP40やMP41、Kar98kを少女に構える。

 

止まれ(ハルト)!」

 

もちろんこの少女は桂言葉、先程手に入れた銃器は、血を浴びて使えなくなったか、弾薬が底を尽きたかである。

手に持ったテーブルナイフを銃を構えた兵士達に向け、襲いかかった。

銃を構えていた兵士達も銃爪を引き、発砲したが、言葉が早過ぎて狙いが付かず、MP40を持っていた兵士が喉を指されて絶命した。

言葉を近づけまいと、残りの兵士達は弾幕を張るが、素早く回避され、奪われたMP40で4名が射殺されてしまう。

 

「なんだこの子娘は!化け物か!?」

 

「兎に角逃げろ!この嬢ちゃんには勝てない!」

 

残り5名の兵士達は銃を撃ちながら後退するが、言葉は逃げることを許さない。

そして死んだ兵士からナイフを取ると、それをMP41を持った兵士に投げ、殺す。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!化け物だぁ!助けてくれぇ!!」

 

そう叫んだ兵士を含めて残りの兵士達は皆テーブルナイフで動脈部分を斬られて絶命し、偵察部隊は全滅した。

言葉は直ぐに、全滅した偵察部隊の死体から使える物を探り始める。

見つけた物はMP40専用弾倉10本に国防軍支給ナイフ、Kar98k用の銃剣、腕時計、折りたたみスコップ。

後のいらない物を捨てると、「何故この時代にドイツ第三帝国の国防陸軍の兵士が居るのか?」という推理を始めた。

 

「(何故ここにドイツ軍の兵士が居るんでしょう・・・しかもナチス・ドイツの方の・・・ゾンビ発生事件にナチス関連の物も在りますけど・・・これは・・・)」

 

不可解な事に頭を悩ませる中、後ろから女性の声が聞こえた後に、銃声が鳴った。

直ぐに振り返ると、ワルキューレの軽歩兵数名が、近くに居るゾンビを手当たり次第に掃討していた。

 

「(気付かれたらまずい事に成りそうですね・・・知られる前にみんな殺さないと・・・)」

 

言葉はMP40の弾倉を新しい物に替えると、そのまま銃声の発生源の方へと向かう。

その頃、榊野学園前ではSUV一台がその学園前に止まった。

それに乗る佐藤は降りてM4A1を構え周囲を警戒する。

 

「中村、降りてこい」

 

佐藤が指示すると中村は運転席から降り、FNミニミを持って出てくる。

 

「ありゃ~こりゃ地下研究所の奴ら死んでるんじゃないですか?」

 

中村は学園の中庭に止まっているトラックを見て口にする。

その中村の言葉を聞いた佐藤は「これだから学のねぇ奴は」と呟く、すると銃声が学園内から激しく聞こえ、同時に悲鳴や断末魔も絶え間なく聞こえてくる。

それを耳にした佐藤と中村は銃を構えて、警戒態勢に入った。

 

「あの女兵士共、最初からこうする気だったのか。先を越されるぞ!急げ、中村ァ!」

 

「了解です、佐藤二佐殿!」

 

意気込んだ2人は中庭に入った。

すると、G36Cなどで武装した男がこちらに向かって手を振っていた。

 

「なんだぁ、あいつは?」

 

中村は不審に思いその男の元へ向かう。

 

「あんたがミスターサトウか?」

 

男は中村に質問してきた。

 

「俺、サトウじゃない。ナカムラ」

 

肌の色を見る限りアジア辺りの国の男だ、そこへ佐藤が現れ、中村を押しのけ、男に「自分だ」と告げる。

 

「俺がダイスケサトウだ。お前は?」

 

「オレ、雇われた警備兵。話は後、こっちだ!」

 

武装した男は佐藤と中村を学校の裏庭に案内した。

裏庭で男は何かの石像を触り始める、その行動に中村は「なにやってんだ?」と思う。

石像が突然動き、石像があった元に出入り口が現れた。

 

「秘密の出入り口か・・・何処かであったな、こういうの。中村、周囲を警戒しろ」

 

佐藤は中村に周囲を警戒させる、男はその出入り口に入っていき、それに佐藤も入る。

 

「おい、何やってる?置いていくぞ」

 

佐藤に背中を叩かれ、中村も後に続いた。

その後、石像は元の位置に戻り、何事も無かったかのようにそこに佇んだ。

 

そして学園に偵察部隊を送り出したZbvは、その偵察部隊から連絡が途絶えたこと知った。

 

「少佐殿、偵察部隊から連絡がありません・・・」

 

報告を聞いたシュタイナーは、学園を見ながら答えた。

 

「全滅したな。先程MP40の銃声はするが、Kar98kの銃声は一切聞こえない。奪われたな」

 

その冷徹なシュタイナーの答えに無線手は肝を冷やす。

そして学園からは様々な銃の銃声や悲鳴と断末魔が未だに響き渡っていた。




次回は佐藤と中村VS言葉にしようかな?

その次はパイパー大佐とヴァルキュリアーズだ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂気と遭遇

二週間ぶりの更新


何処かのお手製ゲームの様な学園の地下にある研究所に到達した佐藤と中村、早速案内人に現状を聞く。

 

「上の学校でやたら銃声が聞こえるんだが、あれはお前達か?」

 

「俺達じゃなぞ。おそらくライバル会社の差し金だ」

 

「ああ、確かあいつ、ライバル会社があるとか言ってたな」

 

その案内人の返答に納得がいく佐藤、研究施設に入ると、白衣やタクティカルベストを纏った人々が、あちらこちらに横たわっていた。

何人か息があったが、大多数は動かず、息をしていなかった。

佐藤は、この事を案内人に問い詰める。

 

「一体ここで何があった?」

 

「さぁ?警備兵の俺に聞かれても分からん。なにか隕石の研究をしてたみたいだが、突然緑の光が現れて、そこから蒼い眼のゾンビが現れて研究員達を・・・後は犬やら、ゲームに出て来そうな化け物が出て来て誰彼構わず襲ってきた。そしてこの有様だ」

 

話を聞いていた佐藤は、床や天井、壁に飛び散った血を見ながら、その事に納得する。

そして所長らしき男の部屋まで案内された。

 

「あ、あんた達は・・・?」

 

「テメェ等の御上さんの頼みで来てやったぜ。今頃上でバカ騒ぎを起こしてた連中が地下に来る頃だ、さっさと回収物を出せよ」

 

佐藤の威圧的な態度に所長は、怯えながらスーツケースを佐藤に差し出した。

 

「二佐殿・・・それは・・・?」

 

「お前の知能では分からん奴が入っとるんだろう。それで、所長さん。脱出の手段はあるのか?」

 

「ああ、あると言ってもあるが・・・そこはもう駄目だ・・・異世界からの化け物でいっぱいに成ってる・・・あるとすれば地上に上がって脱出をするしかない・・・」

 

「おい、おっさんよ。上はライバル会社の差し金でいっぱいだぜ?どうやって脱出するんだよ」

 

「それもそうだが・・・化け物が現れた時に本社にヘリを呼んでしまって・・・後、十分足らずで学校の屋上にヘリが来てしまう・・・」

 

「オイ、待てよ。上に差し金が居ると知って呼んだのか?」

 

「こんなに早く来るとは思わなかったんだ!それにここの所在がばれてるなんて思いもしなかった・・・」

 

この所長の言葉に佐藤は呆れた、中村は所長に聞こえないように佐藤の耳に口を寄せて話し掛ける。

 

「どうするんですか?二佐殿」

 

「呼んじまったもんは仕方ない、それにコイツ等を連れて街を移動するのは危険だ。取り敢えずヘリに乗って早いこと拠点に戻ろう」

 

中村が「了解しました」と告げて離れた後、佐藤が「脱出するか?」と所長に問う。

その言葉に所長は直ぐに返答し、床に落ちていた護身用のPMマカロフを拾い、佐藤と中村についていった。

 

「学校へのエレベーターは?」

 

「向こうだ、ついてこい」

 

案内人は直ぐに佐藤と中村を地上まで続くエレベーターまで案内した。

途中、何人かの警備兵が彼等の後をついてきた。

 

「なんだコイツ等は。職務放置か?」

 

「多分そうだろう。もう負傷者の事なんてどうでも良いかもしれないな」

 

返答の後に、振り返ってみると、白衣を着た者まで追加されていた。

エレベーター辺りまで着くと、案内人が全員に止まるようにハンドサインで指示した。

状況が分からない中村は、案内人にその事を聞く。

 

「おい、一体何があったんだよ?」

 

「例の化け物だ・・・」

 

その返答に疑問に思い、エレベーター付近を壁越しから覗いた。

そこには、緑色のガスのような物を出す四つん這いの人型と、全身に炎や雷を纏った犬型が徘徊している。

 

「なんじゃありゃ・・・!?」

 

「この研究所を襲った化け物だ、人型は居ないようだが・・・この数ならやれるだろう。サトウとナカムラ、銃の安全装置を外しておけ、一気にたたみ掛けるぞ」

 

案内人の言葉に佐藤はM4A1の安全装置を外した、中村もワルサーMPLの安全装置を外して身構える。

 

「よし、撃ってっ!」

 

案内人の合図で銃を持つ全員が、徘徊していた四つん這いと犬に向かって銃を撃った。

突然の襲撃で対処できず、異世界からのモンスターは蜂の巣に成り、全てその場に倒れ込んだ。

一人の警備兵が、死んだかどうかを確認するために、AK102を構えて、四つん這いの死体を銃身で突く。

 

「クリアッ!」

 

鎮圧したと皆に知らせた警備兵はドアの近くに付けられたボタンを押した。

残りの警備兵と研究者達が、エレベーターに近付いて行く、所長と案内にも一緒だ。

中村も行こうとしたが、佐藤に止められてしまう。

 

「なにするんですか、二佐殿」

 

「おめぇ・・・警戒心っていうもんが無いのか・・・?」

 

「はぁ?」

 

エレベーターの到着を知らせるベルが鳴り、ドアが開いた途端、特殊部隊並みの装備をした黒一色の者達が銃を構えていた。

警備兵と研究者達は、直ぐにその場を離れようとしたが、既に遅く、放たれた銃弾の前に次々と倒れていく。

何人かの警備兵が反撃しようとしたが、相手の方が反応が早く、あっさりと射殺されてしまう。

佐藤は中村を壁まで引っ張り、体制を整えて反撃を開始した。

 

「中村ァ!機関銃で直ぐに反撃しろぉ!」

 

「は、ハイィィィ!」

 

慌てる中村は、佐藤に言われた通り、FNミニミの安全装置を外して、所構わず銃を撃つ武装集団に向けて発砲する。

何人かが倒れていくが、相手の反応が早かったらしく、遮蔽物に成りそうな場所に身を隠す。

その間、中村はひたすらそこにミニミを撃ち続けていた、当然、佐藤の拳骨を喰らう。

 

「馬鹿野郎っ!敵はあそこだ、早く銃身を向けろっ!」

 

言われたとおりに中村は敵兵が隠れている場所に銃を向けて、発砲を再開した。

暫くすると、ミニミのボックスマガジンの弾薬がそこを尽いた。

 

「無駄撃ちしてるからだ、馬鹿たれ!」

 

佐藤は中村を怒鳴りつけた後、飛んできた手榴弾を拾い、飛んできた方向に投げ返す、丁度全ての敵がエレベーター内に留まっていたらしく、1回の爆発で敵は全滅した。

全滅した後、佐藤は直ぐにスーツケースが無事かどうかを確認、無傷だと分かると、中村にエレベーター内の敵を確認に向かわせる。

 

「二佐殿、敵は全滅しました」

 

「おい、しっかりと確認しとけ。おめぇは詰めが甘いからな」

 

「(ちくしょう・・・舐めやがって・・・!)」

 

中村は心の中で文句を言うと、死んだ敵兵の確認を急いだ。

そして全員死んだと判断すると、佐藤に合図を送った。

 

「ご苦労だ、中村。直ぐに上に上がるぞ」

 

「はい」

 

佐藤が乗った後、中村は学校へのボタンを押した。

ドアが閉まり、2人を乗せたエレベーターは榊野学園へと上がって行く。

その頃、言葉は、Zbv本隊が居る裏門辺りまで近付いていた。

 

「(あそこにいるのは・・・ドイツ軍・・・?)」

 

彼女が驚くのも無理はない、なんせ第二次世界大戦下のドイツ軍の機甲部隊がそこに居るからだ。

指揮車の装甲車から頭が見えないほど深く被り、首が見えないほどコートを着込んだ指揮官らしき男が学園を見ていた。

 

「(一体何が起きている・・・?)」

 

言葉がそう思い、この場を離れようとした途端、後ろから銃声が聞こえてきた。

遮蔽物に身を隠し、銃弾を避ける。

 

「(気付かれた・・・?)」

 

相手の姿を確認してみると、中装備をしたワルキューレの兵士で、持っているのはノベンスキーN4だ。

MP40を撃とうとしたが、ドイツ軍の機甲部隊が居る方向から強烈な音が鳴り、その場に伏せた。

肉の裂ける音がした為、こちらに向かってきた中歩兵の方を見てみると、右足がもげて死んでいる。

音が方向を見てみると、20㎜機関砲を装備した装甲車が、言葉に砲口を合わせていた。

直ぐに砲口から20×138㎜B弾が言葉に向かってくる。

それを避けるために言葉は、拾った装備を捨てて、遮蔽物になりそうな場所まで走った。

 

「(裏門から離れないと!)」

 

機関砲音が止んだと同時に、言葉は表門の方向まで走り抜ける。

装填手はボックスマガジンを替えようとしたが、既に目標を見失っていた為、無駄に終わる。

その場から逃げることに成功した言葉は、道中に殺した兵士からMP5A4を手に取ると、何処かへ去った。

 

一方の佐藤と中村はと言うと。

 

「着いたか・・・待ち伏せは無いようだな・・・」

 

M4A1を構えながらエレベーターを出た佐藤、中村もMPLを構えながら出る。

 

「中村、前方にゾンビだ」

 

「仕留めますか?」

 

「馬鹿野郎、消音器がねぇんだ。なんか殴れるもん持って始末しろ」

 

「はい(自分でやれよ)」

 

佐藤の指示で、鈍器のような物を探す中村、角材を見つけると、早速それをゾンビの頭に振りかざす。

倒れた方向に皿が置いていた為に、倒れ込んだ衝撃で皿が割れてしまい音が響いた。

 

「お見事だ、中村。もっと静かに仕留めれば満点を与えてやったのにな」

 

佐藤が指差した方向を見ると、3体のゾンビが2人が居る方へ向かってきた。

 

「見ておけ、これが静かに仕留める方法だ」

 

そう言ってから佐藤はナイフを取り出すと、一体目の頭を刺す、二体目はM4のストックで頭を叩き、最後の一体もストックで沈黙させた。

 

「分かったか、中村。これが静かに仕留める方法だ」

 

余りにも見下した表情で伝えるために中村は心の中で「ちくしょう、いつか殺してやる!」と思った。

最上階まで行けるエレベーターを見つけると、少し調べた後にエレベーターに乗り込む。

 

「辺り一面が真っ赤に染まっているが、何処も同じか。中村、押せ」

 

「うわぁ・・・」

 

「どうした中村?」

 

「血塗れですよ、二佐殿」

 

その言葉に佐藤はキレたのか、中村の耳を思いっきり引っ張る。

 

「ツベコベ言わずに押せ!この度アホ!」

 

「イテテテテッ!はい、分かりましたっ!」

 

凸凹コンビを乗せたエレベーターは最上階まで上がる。

再び銃を構えながら出ると、近くから女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「中村、確認してこい」

 

「はぁ、また俺すっか?」

 

「当たり前だろう、他に誰が居るんだ?」

 

「(こき使いやがって・・・!)」

 

文句を言いながらも中村は悲鳴が聞こえた方へ向かう、その後を佐藤もついて行く。

そして思いがけない光景を目にしてしまう。

 

「佐藤二佐殿・・・」

 

「どうした中村?」

 

中村が指差した方を見てみると、言葉が金槌でワルキューレの兵士を撲殺してるところだった。




次は佐藤&中村VS言葉です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂気VS凸凹

金槌で女性兵士を撲殺していた言葉は、中村の視線に気付き、MP5A4の安全装置を外し、顔を出していた中村に向け、単発で発砲した。

 

「ヒィッ!」

 

悲鳴を上げて倒れ込んだ中村、言葉は手応えがなかったのか、構えながら警告する。

 

「出て来てください、大人しく出てくれば銃は撃ちませんよ?」

 

中村が失禁してるので、変わりに佐藤が言葉を見てみると、表情が狂気の笑みだった。

仮に大人しく出て来ても、あんな顔をしているので、殺されるのがオチだろう。

佐藤は、失禁している中村を蹴り上げて我に返した。

 

「さっさと起きろ、マヌケ。ション便をチビらしてる場合じゃないぞ、直ぐに屋上へ非難だ」

 

そう言った後、佐藤はM4A1を言葉に向けて発砲しながら屋上に向かった。

走りながらの射撃の所為か、弾丸は言葉には一切命中しない。

そして撃たれている彼女は全く恐れもせず、ただMP5を構え、2人に狙いを定めていた。

 

「やはりあの女性達と同じ無地の穴ですね。逃がしませんよ・・・!」

 

銃弾をかわしながら言葉は佐藤と中村を追った。

それに驚いた中村は、悲鳴を上げながらMPLを乱射する。

 

「ヒェ~!来るな、来るなァ!!」

 

パニックに至っているのか、一発の弾丸も言葉に命中しなかった。

当たるのはそこらに居たゾンビか、窓ガラスだけだ。

 

「落ち着け!この度アホ!」

 

走りながらも中村の頭を精確に拳骨を入れる佐藤。

 

「無駄弾を使うな、分かったな?!」

 

「は、はいっ!」

 

悲鳴に混じった返事をしながら中村は、屋上の階段に向けて全力疾走した。

屋上に着き、出入り口の扉を蹴破ると、直ぐに扉を閉めて、バリケードになる物を置いて、自分達も必死に扉を抑える。

 

「来たぞ・・・!」

 

佐藤の言葉に中村は息を呑み、力を入れて扉を抑え付ける。

扉の向こう側から足音が聞こえ、一時的に止まった。

次の瞬間、扉に強烈な振動が起こり、中村が倒れ込んでしまう。

 

「ギヤ・・・!」

 

「馬鹿野郎っ!さっさと戻れっ!」

 

その指示通り中村は直ぐに扉を抑え、力を踏ん張る。

内側から並の少女とは思えぬ力が加えられ、その都度、扉から離れそうになる中村。

佐藤は必死に抑えて、言葉を出られないように踏ん張っている。

暫くすれば、内側からの強力な体当たりが治まり、扉は振動しなくなった。

 

「よし、諦めたか・・・」

 

中村は尻餅を付いて、安心しきっていると、扉の窓ガラスが割れ、言葉の左腕が飛び出してきた。

そしてその左腕にはMP-443が握られており、言葉は適当に発砲し始めた。

 

「クソッ!」

 

舌打ちしながら佐藤はM4を構えて空かさず反撃に出る。

ライフル弾が言葉の左腕を掠めると、持っていた拳銃を放し、床に落としてしまう。

直ぐに腰を抜かしている中村にFNミニミを撃つように命じる。

 

「中村ァ!直ぐに弾幕を張れっ!」

 

「へ、は、はい!」

 

即刻中村はミニミを構え、扉に向けて撃ちまくった。

彼が扉に向けて機関銃を撃ち続けてる最中に、迎えのヘリロシア製のMi-8が見える。

その際に佐藤はポーチからM18発煙手榴弾を取り出し、ヘリが着陸できる位の場所に投げ込む。

投げ込まれた発煙手榴弾は煙を吹き出しながらコロコロと転がり動きを止めた。

それを確認したのか上空で学園の周りを迂回してたロシアの輸送ヘリMiー8が、発煙弾が投げ込まれた場所へと着陸しようと向かってくる。

数分後には、煙が巻かれた場所に着陸し、後部ハッチからAKS74、PKM軽機関銃を持ったタクティカルベストを着たロシア人の男2人が佐藤と中村を手招きする。

 

「あんたがサトウか?!」

 

ヘリのローター音が大きいので大声を出して質問するAKS74持ったタクティカルベストの男。

それに対し佐藤も大きな声で返答する。

 

「そうだ!それと例の物はあの眼鏡猿が持っている!!」

 

男は腰を抜かしてミニミのトリガーを引き続けていた中村を起こすと、PKM持ちに中村を預ける。

 

「一体何を撃っていたんだ?彼は?!」

 

「少女の皮を被った悪魔だ!」

 

その佐藤の答えに男は笑みを浮かべて、扉の窓から中の様子を覗いた。

 

「おい、そんな奴は何処へ?」

 

再び佐藤に問い詰めたが、佐藤はもうヘリに乗り込んだ後だった。

彼もヘリに戻ろうとした瞬間、何者かに首を掴まれて、窓から内側へと引きづり込まれた。

その状況を見ていた佐藤は、パイロットに直ぐに離陸するように指示をする。

 

「早く離陸しろ!あの小娘に殺されるぞ!!」

 

そのドスの効いた指示にパイロットは直ぐに従い、AKS74持ちを残して飛び去っていった。

前に置いていたバリケードが扉が開けられたと同時に、吹き飛ばされると、制服を血に染めた言葉が出て来て、先程男が持っていたAKS74をその場から去ろうとするヘリに向けて発砲したが、小口径の5.45㎜弾ではまるで意味が無かった。

 

「逃げられてしまいましたか・・・でも、流石にこの5.45㎜弾では生物でしか意味がありませんけどね・・・さて、どうすればいいか・・・」

 

段々遠くなっていくMi-8を眺めながら言葉は、左腕や両足に刺さったガラスの破片を痛みを感じさせる素振りも見せず、次々と抜きながら途方に暮れていた。

その頃、Zbvは榊野学園から移動を開始した。

彼等の目的地は偶然にも小室一行達が奮闘する床主であった。




次はバウアー編です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編(黒騎士編)
山本、黒騎士と遭遇


再び更新、短いけど我慢して~


時は小室一行が学園を脱出した後に戻る。

黒騎士中隊の古参が付近にあったビルを調べに向かった先に、山本という好青年が居た。

 

「訳が分かんねぇーよ、現実にゾンビが出てくるなんて・・・」

 

山本の服装は、某伍長が被っていたキャップと作業着を身につけている。

混乱しながらも、尖端が血塗れな工具を構えながら前に進む。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、出てくんなよ・・・出てくんなよ・・・!」

 

そう念じながらひたすら前を進んでいる。

道を念じながら進む中、服に返り血を浴びた年輩の男に遭遇した。

 

「うわぁ!?って、ゾンビじゃないな、あのおっさん。大丈夫ですか?!」

 

不用意に大声で話し掛けてしまう山本、その迂闊な彼の行動に、年輩の男はキレる。

 

「このクソ餓鬼がっ!お前が大声出す所為で気付かれたじゃねぇーか!」

 

何体かのゾンビが、山本と年輩の男に襲いかかってきた。

2人はそれぞれ手に持つ鈍器で、効率よくゾンビの頭を叩いて行く。

数十分程が経つと、ゾンビは全滅、激しい運動をした為に息が切れている。

 

「済みません、ハァ、大声出しちゃって」

 

「その通りだ・・・お前の所為だ・・・」

 

彼は男の言動が理解できないでいた。

暫くすると、男の息が整い、山本を殺意剥き出しの表情で見る。

 

「あの・・・どうしましたか・・・?」

 

「お前が大声出さなきゃ俺は噛まれずに済んだのに・・・お前が大声出した所為で・・・!」

 

怒りを露わにする男の右腕を見てみると、ゾンビに噛まれた跡があった。

おそらく、先のゾンビとの戦闘中に噛まれたのだろう。

山本は自分の不用意な行動に後悔した、必死に謝罪したが、男さらに怒りを増す。

 

「ご、御免なさい!ホントに御免なさいっ!!」

 

「許さねぇ・・・一度噛まれたら終わりなんだぞ・・・?その意味分かってるよな・・・?」

 

男は今にも右腕に持つ釘バットを振りかざそうとしている。

もちろん山本は分かっていたが、まさか噛まれるとは思わなかったらしく、男から逃げようと、後退る。

 

「ホントに噛まれると思わなかったんですよ・・・今、俺を殺しても一体何の得が・・・?」

 

「ごちゃごちゃ煩い奴だ、俺が奴らに成る前に殺してや、ブフゥ!」

 

男は血を吐いてその場に倒れ込んだ。

その隙に山本は立ち上がり、男から逃げる。

 

「逃がさねぇーぞ・・・!待てっ・・・!」

 

体勢を立て直して山本を追う。

そして追われる山本は、階段に辿り着いたが、誰かがトチ狂ったのか、非常扉で塞がれていた。

 

「嘘だろ・・・」

 

絶望する山本、そんな彼に容赦なく男は歩み寄る。

 

「感謝しろよ・・・人間の内に殺してやるんだから・・・」

 

山本は死を覚悟した。

 

「(俺はここで殺されるんだ・・・そう言えば俺の人生・・・ショボかったな・・・)」

 

そう絶望する山本、だが、運命は彼を死なせない。

右側から銃声が聞こえ、男が苦しんでその場に倒れて、そのまま動かなかった。

混乱する山本に、2人のドイツ国防陸軍の戦車兵が彼の元へと向かって来る。

その2人はこのビルを調べに来たクルツとバウアーだった。




三度目の更新!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺が変人に見えるか?

タイトルに困ったからこれに。

最近リアルで忙しい・・・

それと〔〕のカッコは英語だよ。


「(な、なんだコイツ等は・・・!?頭のイカれたコスプレ白人男か・・・!?)」

 

山本は目の前に立つドイツ国防陸軍所属戦車第8中隊通称黒騎士中隊の長のバウアーと、たった一人となってしまった古参のクルツに驚いていた。

一方のバウアー達は、山本の服装について議論している。

もちろん、彼等はドイツ語で喋っているので山本にはドイツ語を理解できない。

 

「大尉殿、この東洋人の男、連合軍の整備兵の格好をしておりますよ?」

 

「ああ、噂では米軍(アーミー)の陸軍に日系専門の歩兵部隊が在ったらしいが、まさか整備兵まで居たとわ。流石様々な民族が住むアメリカでもある」

 

部下のクルツと話し終えたバウアーは、尻餅を付いて倒れ込んでいる山本に手を差し伸べた。

 

「〔大丈夫か?アメリカ人〕」

 

「はい・・・!?」

 

英語で話し掛けられたために山本は、暫し混乱する。

 

「センキュー、せんきゅー・・・」

 

山本は英語を理解できたので、迷わずバウアーの手を取り、礼を言いながら立ち上がる。

 

「〔変な目で君は見ているが、そんなに俺が変人に見えるか?。君、名前は?それと連合国軍の何処の所属だ?私はドイツ第三帝国国防陸軍所属で階級は大尉、名はエンルスト・フォン・バウアーだ〕」

 

突然英語で喋り掛けられた挙げ句、軍属の者と勘違いされた山本。

次にクルツが自己紹介を始める。

 

「〔私も大尉と同じドイツ第三帝国国防陸軍所属、階級は軍曹、名前はクルツ・ウェーバーだ〕」

 

この空気に「名乗らないと駄目かな?」と思った山本は自己紹介を始めた。

 

「〔お、俺の名前は・・・山本っていいます・・・ちなみに俺ぇ・・・軍隊所属じゃ無いし・・・そもそも軍隊はこの国にはありませんし・・・それに俺・・・日本人だし・・・〕」

 

この山本の自己紹介にバウアーとクルツは思ったことと違うので驚く。

 

「〔軍属所属ではないのか・・・と、なると工場関連の所属か・・・〕」

 

「〔整備工所属です・・・はい・・・〕(なんか失礼なこと言っちゃったかな・・・?)」

 

山本はこの空気に暫し戸惑うが、バウアーとクルツ達は彼が何を戸惑っているのか理解できない。

少し空気を変えようとクルツが口を開く。

 

「〔まぁ、これでお互いの事は分かったことだしこれで良しとしましょう。大尉殿〕」

 

クルツが喋り終えた瞬間、バウアーに撃ち殺されたハズの男が起き上がった。

 

「〔ん、急所を撃ったはずだが・・・まだ息があったのか?〕」

 

起き上がった男にバウアーは近付いたが、山本は頭を何かで潰されてない起き上がる死体はゾンビだと分かったためにバウアーを止めようとする。

 

「〔ああ、待ってくださいバウアーさん!近付いちゃ駄目です!〕」

 

「〔一体何を言っているんだ?そいつを片付けないとまた襲われるぞ〕」

 

「〔いや・・・だからその・・・〕」

 

起き上がる男に対して、クルツは突撃銃(Stg44)を向けて警告した。

 

ハルト(動くな)!〔聞こえないのか?!動くなと言っている!〕」

 

「〔ああ、もう!兎に角この歩く死体には頭が弱点なんです!!〕」

 

「〔歩く死体に弱点は頭だと?一体何を言ってるんだ山本・・・!?〕」

 

完全に起き上がった男(ゾンビ)は近くで銃を向けて警告していたクルツに襲いかかった。

 

「〔聞こえないのか?!動くなと言っただ・・・〕」

 

クルツが喋り終える前にバウアーが彼に迫るゾンビの頭部に狙いを定めてStg44を発砲した為、驚いて口が止まってしまった。

 

「〔いきなり発砲するなんて何考えているんですか・・・!?大尉殿〕」

 

「〔なに、山本の言ったことが気になってな。成る程・・・歩く死体に弱点は頭・・・こういう事か・・・〕」

 

どうやらバウアーは山本の言葉の意味を試したらしい、クルツは少し不満であったが、一応上官に礼を言っておく。

 

「この人少し危ないかな・・・?〔ハハハハ・・・まさか曖昧なことを試しちゃうなんて・・・〕」

 

「〔それはそうと何故、最初からあいつの弱点は頭だと言わなかったんだ。俺がお前の言ったことを試してなければクルツが殺されてた所だぞ?〕」

 

バウアーは眉をしわ寄せながら山本を叱る。

 

「〔すいません・・・流石に歩く死体で頭が弱点だなんて最初から言えないっすよ。信じろって言われても信じられる訳じゃないし・・・〕」

 

「〔それもそうだな、現に我々が1945年のドイツから来たと言われても信じられる訳が無いからな。それはそうと、歩く死体は俺が戦前に読んでた架空戦記の小説通り、頭以外何処を攻撃しても死なないのか?〕」

 

「〔まぁ、そう言うことになりますね・・・それはそうとあいつ等音に敏感です〕」

 

この山本の返答にクルツは何かを思い出したかのように口を開く。

 

「〔それを早く言ってくれないと、ここに来る間にデカイ音を立ててしまってる。大尉殿、急いで戻らないと〕」

 

「〔うむ、それはそうだな。では、戦車に戻るぞ!山本、お前もついてこい。我々はこの土地に知識は無い、道案内を頼む〕」

 

「〔え・・・?あ、はい!〕」

 

バウアー達こと黒騎士中隊について行くことにした山本、奇跡的に呻き声はしたが、ゾンビと遭遇することはなかった。

そしてビルから出て、暫く進むと、山本の目の前にドイツ第三帝国が誇る二両の戦車、ティーガーⅡとパンターがそこにあった。

山本はミリタリーマニアの予備軍であった為に興奮する。

 

「す、スーゲー!キングタイガーにパンター戦車じゃないか!〔もしかして・・・ハリボテじゃ・・・〕」

 

その山本の問いにバウアーは笑いながら、自分の乗車であるティーガーⅡの装甲を叩いて答える。

 

「〔これがハリボテに見えるか?!〕ハッハッハッ!ハルトヴィヒ、酔っ払いの様に歩く東洋人は見たか?」

 

答えた後、バウアーは車内にいる乗員に「ゾンビは見たのか」と聞く。

 

「いえ、大尉達が帰ってくるまで人っ子一人見てません!」

 

「そうか。〔山本、俺の戦車に乗れ!〕」

 

バウアーに「乗れ」と指示された山本はその言葉通りにバウアーのティーガーⅡに乗り込む、それと同時にクルツも自分の乗車であるパンターG型に乗り込んだ。

 

車内に入った山本は、今では博物館に展示されて残ってる車輌に中を覗き込まない限り見られない現物の車内がそこにあった。

搭載している砲弾にMG34も全て本物であり、乗員ですら本物のドイツ戦車兵だ。

感情が高ぶった山本は抑えることが出来ず、叫んでしまう。

 

「ヒャッホォォォゥ!最高だぜぇぇぇぇ!!」

 

「〔煩いぞ!山本!!〕」

 

「あ、〔すみません・・・〕」

 

バウアーに叱られた山本は申し訳なさそうに謝る。

暫く進んでいると、砲手が目の前にゾンビが現れたと、戦車長であるバウアーに告げた。

 

「大尉、前方に泥酔した東洋人が複数!警告しますか?!」

 

「〔山本、あれが歩く死体だな?〕容赦するな、奴らは架空戦記の小説に出てくる魔物だ!榴弾を装填しろ!目標はあの東洋人達だ!女子供でも油断するな!それと奴らの弱点は頭だ。他を撃っても手足を引き千切っても襲ってくるぞ!無線手、後続のクルツにも伝えておけ!」

 

「「「「了解(ヤヴォール)!」」」」

 

バウアーの指示で無線手は後ろからついてくるクルツのパンターにそれを伝え、装填手は、徹甲弾を排出して、榴弾を装填した。

それを確認した砲手は、戦車長のバウアーに告げる。

 

「榴弾を装填しました、いつでも撃てます」

 

「よし、目標12時方向、射て(フォイヤー)!」

 

王の名に相応しいティーガーⅡの主砲である71口径88mm戦車砲から発射された榴弾が、走行音で引き寄せられるゾンビ達に真っ直ぐと向かい、着弾し、血煙を起こした。




ワルキューレの戦車隊と戦わせて見ようかな?っと思っている作者。

流石に第1世代や第2世代と戦わせるわけにはいかんな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敵戦車確認!

やっちまったよ・・・ゾンビ物で戦車戦・・・


ティーガーⅡの砲撃で血煙が上がり、榴弾を喰らったゾンビはミンチになった。

まだ何体かはノミと同じようにティーガーⅡとパンターに向かってくるが、砲塔に搭載された汎用機関銃MG34の銃撃でなぎ倒されていく。

後続のパンターも、爆破音で釣られたゾンビを榴弾や搭載されているMG34で始末する。

 

「大方片付いたな。残りに構うな、弾薬の無駄になる」

 

バウアーは首に装着している喉頭マイク(喉に当て直接振動を拾うマイク)で後続のパンターに乗るクルツに指示した。

その指示の後にパンターは正面に砲塔を合わせて、バウアーのティーガーⅡの後について行く。

一方の山本は、一生聞くことが出来ないとされたティーガーⅡやパンターの砲声を耳にしてかなり興奮している。

 

「ヒァッハー!マジモンの砲声だぜぇ!!」

 

「静かにしろ、山本!」

 

「はい・・・」

 

バウアーのお叱りで山本は直ぐに黙り、謝る。

もちろんその大戦後期のドイツ戦車の砲声は、床主で展開していたワルキューレの部隊の耳に入っていた。

とある巡回中の中歩兵の一人がバウアー達の戦車の砲声を聞いていた。

 

「この砲声・・・私達の戦車の砲声じゃない!」

 

持っていたケル・テックPFBターゲットタイプの安全装置を外し、警戒態勢に入る。

隣に居たもう一人の中歩兵が、呆れたように口を開く。

 

「戦車の砲撃音ってどれも一緒でしょう、どうせどっかの馬鹿が撃ちたいが為にぶっ放してでしょ?」

 

そう言うが、米製ブルパップライフルを装備した中歩兵は軍事オタクであったらしく、直ぐにその言葉を否定する。

 

「絶対に違う。この砲声は大戦下のドイツ戦車で尤も有名なティーガー重戦車の8.8(アハト・アハト)の砲声、間違いない!」

 

「はぁ・・・なにいってんだか・・・」

 

興奮する軍事オタクの女兵士に呆れているもう一人は、無線機を取り出し、その事を本部に報告する。

 

「ああ、本部(HQ)我々(ワルキューレ)に存在しない砲声を確認。位置は、どっち?「東」東の方から聞こえました。オーバー」

 

『了解、M5軽戦車2両を確認に向かわせる。貴官は任務を続行せよ、アウト』

 

「確認に行かせるってさ。迂回続けよ」

 

「う・・・うん・・・」

 

軍事オタクの中歩兵は、確認に向かった2両のM5スチュアートが心配でならなかった。

もちろんその彼女の心配事は皮肉にも当たる事となる。

 

その頃、確認に向かったM5A1軽戦車は、バウアー達の戦車が居る方向へと向かっていた。

 

「間違ってたら、その報告した奴は血祭りに上げてやるんだから」

 

砲塔から身を出して、文句を言いながら辺りを確認する女性の戦車長、彼女以外成人した女性は居らず、車内に居る乗員達は皆年端のいかぬ少女ばかり、それも戦車長と同じく整った顔の美少女ばかりだ。

後続のもう1両のM5A1軽戦車は、殿の文句を垂らす戦車長のM5軽戦車に続く。

その後、暫く進んでいると、バウアー達の戦車ティーガーⅡとパンター戦車を発見した。

 

「嘘っ、マジであったの!?」

 

驚いた戦車長は、無線手にバウアー達の戦車を報告する様に指示した。

それと同時に砲手と装填手に攻撃命令を掛ける。

 

「徹甲弾装填!それと後ろのあんたも!確実に仕留めるわよ・・・!」

 

そう言って車内に戻った戦車長。

車内では装填手が徹甲弾を装填し、砲手がそれを確認した後、バウアーのティーガーⅡに照準を合わせて、発射装置を押し、撃った。

砲弾は真っ直ぐティーガーⅡの側面に向かって行くが、53.5口径37㎜戦車砲M6の徹甲弾でも重戦車であるティーガーⅡの装甲を貫けるはずもなく、弾かれて地面に落ちるだけである。

 

「ちょ、側面を狙ったハズなのに何で効かないの!」

 

どうやらこの戦車長にはティーガーの頑丈さが分かってないらしい。

僚車のM5スチュアートも砲撃するが、ティーガーⅡには全くダメージが通らない。

一方、攻撃されてるバウアー達は、直ぐに反撃を開始する。

 

「む、あれはM5軽戦車。米軍(アーミー)英軍(トミー)もこの世界に来てたのか」

 

バウアーはキューボラから自車に攻撃をしているM5A1軽戦車を見ながら言う。

 

「何処の連合国の所属か分からんが敵であることは確かだな。砲塔2時方向、後ろのスチュアートを狙え!退路を塞ぎ、その後手前の奴も()る!」

 

装填手が砲から榴弾を取り出し、新しく徹甲弾を装填、確認した砲手が砲塔をこちらに砲撃をするM5軽戦車に狙いを定めて発射ペダルを踏み込み、砲撃する。

 

後で砲撃をしていたM5軽戦車が88㎜徹甲弾を喰らい、大破する。

前にいたM5軽戦車はその場から逃げようとしたが、運が悪いことに左右に逃げ道がない場所から砲撃していた為に、唯一の退路を塞がれてしまい、袋の鼠となる。

そんな袋の鼠となったM5軽戦車に情けを掛けることも無く、クルツ等が乗るパンターG型の70口径7.5㎝戦車砲kwk42から放たれた75㎜徹甲弾を喰らい、大破した。

 

「これが生の戦車戦・・・!」

 

ティーガーⅡの車内で山本が呟いた。

彼は砲塔のハッチから身を出して、撃破されたM5軽戦車を見る。

 

「M5A1スチュアート軽戦車・・・まだ動いてる車輌があったか・・・それとこのM3、米軍か英軍を示すマークが入ってない。代わりに入ってるのは戦乙女(ワルキューレ)?」

 

山本は撃破されたM5軽戦車の米軍や英軍所属を現しているマークの代わりに入ったワルキューレの兜マークを見ながら疑問に思う。

 

「まぁ、なんれあれ敵であることは変わりない。このまま前に進むぞ」

 

バウアーの言葉で納得した山本は車内に戻る。

彼が戻ったと同時に、再びティーガーⅡとパンターはエンジン音を響かせながら前に進んだ。

戦闘の影響下でゾンビが集まってきたが、バウアー達は無視する。

その歩く屍達は、燃えさかるM5軽戦車の車内で焼け死んだ乗員達の肉を自身が燃えているにも関わらず、食らい付いた。

 

夜明けが近付く中、前へ進むバウアー達にまたワルキューレの戦車隊が襲ってきた。

今度はM5A1軽戦車では無く、M3A5リー中戦車4両だ。

 

「次はオーストラリア軍か?側面に回られるなよ!」

 

「M3A5リー中戦車、また珍しい戦車で来たなオイ」

 

再びティーガーⅡとパンターは戦車戦を再開した。

今度は広い場所で遭遇し、大戦後期のドイツ重戦車や中戦車にとって豆鉄砲同然だった37㎜戦車砲を詰んだM3やM5軽戦車ではなく、アメリカの多砲塔戦車M3リー中戦車だ。

前方右側に搭載された37.5口径75㎜戦車砲M3は流石に前面装甲は撃ち抜けなくても、側面に回り込めばティーガーⅡに勝つことも出来る。

それを見込んでか、4両のリー中戦車は2両ずつ、左右に分かれる。

 

「俺は右をやる、クルツは左をやれ!」

 

それぞれ2両ずつ相手にティーガーⅡとパンターは散開する。

まず最初から砲撃を始めたのはクルツのパンター戦車だ。

一度停止してから相手が進む進路に来るとされる位置に照準し、砲撃を命じる。

予想通り、敵戦車がその位置に来た為に、わざわざ当たってるかのように命中、車体が燃え上がり、その後大破した。

もう1両は上部に搭載されている37㎜戦車砲塔でパンターに砲撃するが、中戦車の割りには前面装甲が重戦車並の装甲を貫けるハズもなく、最初に撃破されたリー中戦車通りに撃破された。

 

続いてのバウアーのティーガーⅡに挑んだリー中戦車が黒騎士であるバウアーに勝てるはずもなく全滅した。

ちなみにバウアーとクルツは一発も外してなどいない。

戦闘が終わり、再び前に進み始めると、今度はM4シャーマン中戦車20両で襲ってきた。

 

「今度は連合軍(アーミー)主流のシャーマンか・・・数は一個中隊、数で潰そうとしているな」

 

バウアーの言うとおり、側面を狙うわけでもなく、ソ連赤軍の人海戦術の様にただ突っ込んでくるだけである。

 

「次はM4か・・・ふぅ・・・居るのはジャンボじゃなくてA1やA2、A3にA6、ファイヤフライとスーパーシャーマン居ないだけでマシか・・・しかしA6は納得できるけど、なんでこんなにシャーマンがあるんだ?さっきのM5といいM3といい」

 

襲ってくる大戦期のアメリカ製戦車に対して山本は疑問に思うばかりだった。

バウアー達は湧いてくるように突っ込んでくる多数のT34中戦車と幾度も戦ってきたので、馬鹿みたいに突っ込んでくる20両のM4シャーマンの殲滅など動作のこともない。

直ぐに砲を前方のM4シャーマンに向けて砲撃し、進出を遅らせた後、残骸を避けようとするM4シャーマンに狙いを付けて次々と撃破した。

最後の一両がその場から逃げようとしたが、あえなく撃破され全滅した。

ちなみに外した徹甲弾の数、2両含めて7発。

 

「またあんな数で押し寄せられたら徹甲弾が持たないぞ。今度からは一発も外さないようにせんとな!」

 

残りの徹甲弾を確認しながらバウアーは口を開く、再びエンジン音を響かせながら人気がしない街を進んだ。

そして明け方、幸いにもガソリンスタンドを発見し、直ぐに燃料補給を開始した。

夜中から昼頃まで、ずっと車内に居た為、慣れない山本には苦痛であった。

停車したのと同時に車外に出て身体を伸ばす。

そして進む方向を見ていたバウアーに英語で質問する。

 

「〔すみません、バウアーさん。このまま前に進んで何処へ行こうと言うのですか?〕」

 

「〔俺には分からん。だが、我々には、向かわなければならないと思う・・・〕」

 

バウアーの返答に山本は首を傾げた。

その後燃料補給が終わると2両のドイツ戦車は再び進んでいた方角に進路を取り、障害物があったら避けていきながら前に進んだ。

道中、ゾンビと幾度もなく遭遇したが、進路場に邪魔になる奴だけを排除して進んで行った。

そして夕日が落ちて、夜になると、銭湯を発見。

そこでバウアー達はクルツと乗員等と共に身体の汚れを落としていた。

山本はと言うと、MP40を持たされてティーガーⅡとパンターの警備をやらされていた。

彼が身体を湯に浸したのは、何週間も風呂に入ってないとされる大戦末期からやって来たドイツ戦車兵達が上がってきた頃である。




M5スチュアートって発射ペダルかな?間違ってたら感想に書いてください。

この後ヴィットマンと合流させようと思ってるけど、皆さんどうですか?

それとパイパーとヴァルキュリアーズに誰か付けようかな?(例えばラッキースケベ的な少年とか、幼女とかrPAM


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

撃破王との出会い

黒騎士編最終話です、ヴィットマンとの出会い。
ゾンビの存在が消えかけている・・・
授受って(じゅじゅ)であってる?


山本の入浴が終えた後、黒騎士中隊は20時を持って山本を戦車の中に入れて銭湯を出た。

流し終えて油の臭いが晴れた身体が再び油の臭いが染みついた。

 

「あ~また油の臭いが・・・」

 

「おいおいそう喚くなよ。ヤパーニッシュはこんな状態でも文句は言わないハズだぞ」

 

「〔僕は太平洋戦争時の日本人じゃありません!〕」

 

山本のボヤキに装填手の男が口を開き、その言葉に山本は英語で突っ込んだ。

周りのバウアー達はその事で大笑いする。

そして床主近くまで来ると、上空にヘリのプロペラ音が聞こえた。

 

「この音は、ヘリという飛行機か!」

 

バウアーの言葉の後に山本は砲塔後部ハッチを開けて、ヘリを確認する。

 

「あ、あれは陸自のブラックホーク!それにチヌーク!一個中隊規模の出撃・・・何かあるな、こりゃぁ・・・」

 

その山本の言葉にバウアーは日本語で喋った為にチンプンカンプンだった。

陸上自衛隊と機体後部に書かれたブラックホーク6機とチヌーク3機が、丁度バウアー達のティーガーⅡとパンターの上空を飛び去る。

一方、偶然にもティーガーⅡとパンター戦車を見た陸上自衛隊員が居た。

 

「おい・・・今の・・・」

 

「何だよ、俺は今仏さんに祈ってる最中なんだ」

 

89式小銃を肩に掛けて、座席に座って授受を持って祈っている隊員に外の様子を見ていた隊員が話し掛けた。

 

「今、キングタイガーとパンター戦車が見たんだが・・・」

 

「たまたまプラモデルかラジコンが落ちてたか?」

 

「違うんだ・・・工場の働いてそうな奴がキングタイガーの上に乗って、キューポラからドイツ戦車兵が上半身を出していた・・・」

 

「はぁ~ゾンビがマジで現れた数時間後にお前の頭にウジが湧いてきたか」

 

その言葉に眼鏡を掛けてFNミニミを装備した分隊支援員の隊員が心配そうに口を開く。

 

「任務が終わった後に、病院を紹介しようか?」

 

「多分、ショックが強くて幻覚を見たと思う・・・ありがとう、今の言葉で目が覚めたよ」

 

黒騎士中隊を目撃した隊員は幻覚と思って見たことにして、バウアー達のことを心の奥に仕舞っておいた。

そして山本はバウアー達が日本政府に知られたことを確信した。

ティーガーⅡの車内で頭を抱えてその事で悩む。

 

「(やべーよ、やべーよ。こんな混乱時にゾンビだけならずしかも大戦後期のドイツ戦車が今の日本に現れたんだ・・・結構ヤバイことに成るんだろうな・・・)」

 

そう悩んでいる間に車内が振動し、山本は現実に戻された。

 

「うわぁ!今度は何だよ!?」

 

「着弾、2時方向から攻撃されたもよう!」

 

「またあいつ等か!懲りない奴らだ!」

 

操縦手から報告を受けたバウアーは直ぐにキュボーラを覗いて敵戦車を確認する。

 

「居た!距離300、2時方向、スチュアート2両だ!」

 

最初に挑んできたM5A1スチュアート様に側面を攻撃してきた。

もちろん同じ事で、対してティーガーⅡにダメージが与えられない。

効かないと判断した2両のM5スチュアートはその場から逃亡を計ったが、黒騎士達が逃がすわけが無く、ティーガーⅡとパンターの主砲を喰らって撃破された。

敵が無力化した後にバウアーは装填手に質問する。

 

「徹甲は何発使った?」

 

「2発です」

 

「2発・・・残り55発と言った所か・・・榴弾も含めると徹甲弾の数が心配だな」

 

この答えにバウアーは頭を抱えて悩む、黒騎士中隊は再びエンジンを吹かせて前に進んだ。

暫く進んでいると、1両のM4A1シャーマンに遭遇した。

山本は「またか」と思い、バウアーは直ぐに砲手に砲撃を命じる。

車体が後ろをティーガーⅡに向けていたために餌食となった。

パンターの砲声も聞こえ、バウアーが後ろをパンターの後ろを見てみれば、1両のM4シャーマンが火を噴いていた。

 

「バウアー大尉!前方にM4シャーマン5両!」

 

操縦手がバウアーに報告、見れば5両の76.2㎜砲塔型のM4A3シャーマンが迫り、砲をティーガーⅡに向けていた。

 

「大尉が!目標M4シャーマン、ファイアー!」

 

戦車長のクルツの指令で砲塔が真ん中のM4シャーマンを吹き飛ばしたが、残り4両の砲はずっとバウアーのティーガーⅡに向けられていた。

その時、突然右側のM4シャーマンが爆発、その数秒後にもう1両が大破した。

 

「大尉は8.8(アハト・アハト)を撃っていないぞ!この砲撃は12時方向、シャーマンの後ろだ!」

 

クルツはキューボラから身を出して双眼鏡を覗いて、砲声がした砲を確認した。

見れば1両のティーガーが88㎜の砲口から砲煙を上げながら次のM4シャーマンに狙いを付けていた。

残りの2両は一目散にこの場から逃げようとしたが、バウアーとクルツが逃がすはずもなく撃破された。

戦闘の爆発と砲声でゾンビが引き寄せられたが、進路場に邪魔になる奴だけを機銃で排除して黒騎士を助けたティーガーの元へ急いだ。

 

「あのティーガーの所属は第1SS装甲師団かな?」

 

クルツは上半身をキューボラから出して、合流したティーガーの所属を確認した。

山本も車外に出てティーガーを見る。

そして3両とも停止させると、ティーガーから出て来た男に驚く。

 

「あ、あれは尤も戦車を撃破した男。ミハエル・ヴィットマン!」

 

最初に口を開いた山本の言葉通り、ドイツ第三帝国のチート人間の一人、ミハエル・ヴィットマンが黒騎士の目の前に姿を現した。




ヴィットマンと会ってこれからと言う時にまさかの終了です。

お次はパイパー編でゾンビ戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編(パイパー編)
死にたくなければ銃を取れ。


パイパー編の始まりです。

その前に追加キャラの一覧を・・・

オリキャラ勢

伊妻后
床主付近の高等学校の男子高生、ただの痛い中二。

早嶋鏡子
上の痛い中二の幼馴染み、女子高生。
スタイルの良いヒロインみたいな美少女。

太東利木
上と同じ高校に通う男子高生。
性格は地味な方、主人公ポイのでラッキースケベ。

二次元

ゲルトルート・バルクホルン
某パンツアニメに登場するあの世界でドイツ空軍軍人で少しヤバイお姉ちゃん(笑)。
訳あって淫獣ミヤフジと一緒に転移、宮藤芳佳を捜すべくゾンビと奮闘する。
ちなみにパンツではない。
他にも参戦させようと思ってます。

実在

クルト・マイヤー
ドイツ第三帝国武装親衛隊第12SS装甲師団長の親衛隊准将。
パンツァー・マイヤーの異名を持つ優秀で才能ある軍人、転移した時期は欧州大戦後直後。

オットー・スコルツェニー
武装親衛隊のコマンドー部隊の指揮官。
錯乱作戦でバルジに展開していたアメリカ軍を恐怖に陥れた。
ヨーロッパで最も危険な男という異名を持つ。


時は孝達がガソリンスタンドに向かう頃に戻る。

炎の騎士ヨアヒム・パイパーは、窓が板のバリケードに寄って塞がれた部屋にて征歴の世界で最強と名が高い4人の戦闘民族ヴァルキュリア人にであった。

 

「一体何が起こっているの・・・!?」

 

赤いスカーフを頭に巻いた女性は今の現状が理解できないでいる。

それに対しパイパーは小柄の女性を宥めた。

 

「落ち着いてくださいフロイライン、私も余りこの現状が理解できません。まずは・・・」

 

小柄の女性が騒いだ所為か、倒れ込んでいた女性と少女達が起き上がる。

 

「ん・・・ここは・・・私は朝鮮に居たはずだが・・・?」

 

身長が欧州の白人男性ほどある軍人風で長い銀髪の女性が辺りを見渡した後、パイパーと小柄な女性を見た瞬間、ルガーP08をガンホルスターから取り出し、それを2人に向ける。

 

「何者!?アリシア・・・!それに貴様はヨアヒム・パイパー!!」

 

その銀髪の女兵士はパイパーの名を口にした。

自分の名を口にした女兵士に対しパイパーもワルサーP38を取り出し、狙いを付ける。

 

「(我が軍に似ているが、あの軍服は何処の軍も使ってはいない)どうして俺の名を知っている!連合国(アーミー)の工作員か?!」

 

パイパーも負けじと女兵士に狙いを定めて問う。

アリシアと呼ばれた小柄な女性は、いつ誰が発砲するかの現状に戸惑っている。

後ほど起き上がった赤と銀の髪を持つ女性もアリシアと同様に戸惑っていたが、女兵士と同じ容姿の少女は寝惚けているのか、現状が全く理解できない。

 

「帝国の軍人に・・・あの私と同じヴァルキュリア人・・・!?それにアリシアさんも・・・!」

 

「ふぇ・・・?コゼットお姉ちゃんは何処・・・?」

 

そんな彼女達を放置してパイパーは額に汗一つ掻かずにワルサーP38の狙いを女兵士の頭に定めている。

女兵士も同様に美しい顔に汗を掻いていない。

次の瞬間外の方から呻き声が多数聞こえた。

パイパーと女兵士はお互いに構えていた拳銃を下げて、窓の方を見る。

 

「あの呻き声は・・・!」

 

「一体何を知っている!?」

 

女兵士は再び拳銃をパイパーに向け問う。

そのパイパーは女兵士を無視して自分が入ってきたドアを開けようとドアノブを握ったが、ビクともしない。

 

「(何者かに閉じこめられた・・・!)」

 

ドアが開かないと判断したパイパーは火薬の臭いがする部屋に向かう。

寝惚けていた少女は窓を塞いでいる板越しから呻き声が聞こえてくる方向を見る。

 

「なんだあいつ等?叫びながらこっちに来るぞ?」

 

少女は指を差しながら近くに寄ってきた赤と銀の髪を持つ女性に言う、アリシアと女兵士も別の窓から叫び声がする方向を見た。

その呻き声を上げてパイパー達に迫ってくるのは、先程パイパーを襲った普通のゾンビではなく、蒼い眼光を光らせ、叫びながら走って標的を襲う特殊なゾンビだ。

一方のパイパーは火薬の臭いがする部屋のドアノブをワルサーP38のグリップで破壊し、ドアを開ける。

そして部屋に置いてある多数の銃器に驚く。

 

「思った通りだ。ダイナマイトが入ってると思ったが、銃が入っていたとは・・・神に感謝しないといけないな」

 

置いてある銃器の中でまずMP40を取った後、壁に血で書かれた文字を見た。

 

「死にたくなければ銃を取れか・・・お嬢さん方にも知らせないとな・・・!」

 

ダイイングメッセージを見た後、パイパーは予備弾倉を多めに取って武器庫から出た。

そして直ぐにアリシア達に武器庫の事を知らせる。

 

「お嬢さん方、今は争ってる場合じゃない。死に損ないが俺達を殺そうとしている」

 

「死に損ないって、あれのこと?」

 

アリシアが呻き声を上げて向かってくる武装・一般親衛隊(勤務服)を着たゾンビ達を指を差して言う。

 

「ああそうだ。奴らを倒すには頭を撃つか、頭を潰す程の堅い物で殴るしかない。細かいことを説明はしてる暇は無いぞ、ご婦人」

 

パイパーはアリシア達に説明をした後に、睨んでいる女兵士に向けて付け足す。

 

「では、あれに話は通じないことだな?」

 

「鋭いなご婦人。それと武器庫はあっちの部屋だ。自分にあった銃を取れ、選ぶ時間は稼いでやる」

 

女兵士が付け足しに答えた後、MP40の安全装置を外し、ストックを立てる。

 

「それとご婦人方、名前を教えてください」

 

窓にMP40の銃身を載せながら、武器庫に向かうアリシア達に名を問う。

 

「え!?私はアリシア!姓名は後で!」

 

アリシアは答えた後に武器庫へ走っていった。

 

「私はリエラ、リエラ・アーヴィング!結婚してるの!」

 

赤と銀の髪を持つ女性リエラが答えた後にアリシアと同じく武器庫へ向かう。

 

「私はエイリアスだぞ。姓名は・・・まぁ、良いか」

 

少女が自分の名前を口にした後に2人に続く、最後に女兵士が自分の名を名乗る。

 

「セルベリア・ブレス、一度死んだ女だ。訳は聞くな」

 

セルベリアはそのまま武器庫へ向かっていった。

そしてパイパーは、窓の向こう側からこちらに向かってくるゾンビ達に向けてMP40をの銃爪を引き、銃撃を開始した。




RUSEのリヒター将軍を本編の方で出そうと思ってます。
他のウィッチメンバーは・・・出そうかな・・・?

そして力不足でごめんなさい!

※追加・修正しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死んでいない親衛隊

久しぶりにゾンビ戦(原作の奴らとは違うけど


アリシア達が武器庫で準備をしている間に近付いてくるゾンビに対しパイパーはMP40の銃口を向けて引き金を引く。

近くに居た一般SSの勤務服を着たゾンビが頭部を撃たれて地面に倒れる。

 

「準備出来ました!」

 

「ああそうか!だったら早く奴らを撃ってくれ!」

 

パイパーが振り向いた先には、小火器を抱えた女性と少女が居た。

報告してきたアリシアの武装はアメリカ製自動小銃のM1カービンにM1A1トンプソン、付けているガンホルスターの中にはワルサーPPが納まっている。

次にリエラはソ連製短機関銃PPs43にM1A1バズーカ、ホルスターの中はベレッタM1934。

エイリアスの持っている銃は同じアメリカ製M3A1グリーズガンにモシンナガンM1891/30の狙撃仕様、拳銃の方はコルト・ポケット。

最後にセルベリアはMG42に持っていたルガーP08、身体に7.92㎜×57弾を巻いている。

また、専用円形型弾倉も多く身につけていた。

 

「全員重装備だな。ご婦人は特にMG42がお好きなようで」

 

「貴様の居た世界で奪って使っていた。陛下、いや、あの男が私に送った機関銃に似ていてな」

 

そうセルベリアがパイパーに告げた後にアリシアが彼女に聞こえないように呟いた。

 

「互いに戦ってきた人と一緒に戦うなんて・・・」

 

エイリアスはこのアリシアの呟きを効いて小首を傾げる。

そして武装(ヴァッフェン)SSや一般(アルマゲイネ)SSゾンビが、平地からこの部屋目掛けて呻り声を上げながら向かって来た。

 

「よし、私が全部倒してやる!この力でみんなを守るんだ!」

 

窓越しから狙撃仕様のモシンナガンを構え、スコープを覗き、照準を近くまで迫って来るゾンビの頭に合わせ、銃爪を引いた。

頭を撃たれたゾンビは地面に倒れる。

 

「やったー!」

 

「上手いな、お嬢ちゃん。だが、人食いはまだ来るぞ」

 

MP40を撃ちながらパイパーは、エイリアスに次の標的を狙うように指示する。

バリケード越しから砲身を出して、密集している場所に目掛けてリエラはM1A1バズーカを撃った。

飛んでいったロケット弾はゾンビが密集していた地点に着弾、何体かは地面に倒れて動かなくなるが、四方の一部が残ったゾンビは地面を這いずりながらパイパー達の所へ向かってくる。

アリシアとセルベリアは向かってくるゾンビ等に対し、容赦ない銃撃を行う。

 

「そのまま銃を撃ち続けろ!人食い共を部屋に入れるなよ!」

 

弾切れになったMP40の弾倉を替えながらパイパーは指示を飛ばす。

ゾンビ等は部屋に入れることもなく次々と銃撃の前に倒れていくが、平面から湧き出るかのようにひたすら呻り声を上げてパイパー達に向かってくる。

しかしゾンビ等が向かってくる場所はここだけではない、別の方角からも来ているのだ。

ゾンビが呻り声を上げながらバリケードの板を外す音をパイパーは聞き逃さなかった。

 

「クソッ、向こうからも来たか!リエラ、君は向こう側を頼む!」

 

「あ、はい!」

 

指示を受けたリエラはM1バズーカにロケット弾を挿入した後、PPs43に切り替えて指示された方向へ向かう。

パイパーが向かった先には、ナチス親衛隊特有の制服や勤務服を纏い、青い眼光を光らせ、叫び声を上げながら窓が見えないほど打ち付けられた板を外すゾンビが窓の向こうに居た。

 

「なんだコイツ等、武装SSや一般SSじゃないか!俺はさっきまで同僚を撃っていたのか・・・それもこの部屋に入るまでに出会った奴とは違う。だが、仲間を襲うなら容赦はしない!」

 

同僚の成れの果てにパイパーは容赦なく9㎜パラベラム弾を浴びせた。

暫くこの部屋で奮闘していたパイパー達だが、弾が無限にあるわけでも無い。

そろそろ弾切れになるという頃に奇妙なサイレンが鳴り響いた。

 

「なんだこのサイレンは・・・?」

 

「嫌なサイレン・・・耳痛い・・・」

 

このサイレンにエイリアスは耳を塞いで不満を漏らす。

武器庫より弾丸の補給を終えたアリシアが、パイパーが入ってきたドアの鍵が解かれるような音がしたことに気付いた。

 

「このドア開いてる・・・?」

 

アリシアはドアノブを握り、ドアを開こうとした。

 

「え・・・開いた・・・?」

 

徐に開けたドアが突然開いた為にアリシアは驚く、ドアの向こう側は眩しくて全く見えない。

この出来事に武器庫に補給に来たパイパー達は驚き、ドアの近くに向かう。

 

「おい、一体何をした!?」

 

「べ、別に私は何もしてないよ!」

 

「どちらにせよこの部屋から脱出出来る。迷っている暇はない、行くぞ!」

 

セルベリアは光差すドアに勢い良く入って行き、消えた。

 

「き、消えちゃった・・・!?」

 

「エイリアスも行くぞ!」

 

武器庫から出て来たエイリアスもドアに向かって行き、セルベリアと同じく消える。

 

「ちょ、エイリアスちゃん!」

 

「イヤー!」

 

「どうやら迷っている暇はないようだな。生き残るにはこのドアに入るしかない!」

 

パイパーもドアに入っていった。

残っていたアリシアとリエラも、バリケードを粉砕して部屋になだれ込んできたゾンビ達の呻り声で部屋に入ることを決意する。

 

「一緒に入ろう!」

 

「ええ!」

 

2人は手を繋いでドアに入り、光の向こう側に消えた。

押し寄せてきたゾンビ等はドアに入ることが出来ず、バタバタと地面に倒れ、そのまま動かなくなった。




ゲルト姉ちゃんの出番はまだかー!って方はお持ちくだされっ!

スコルツェニーとマイヤーは何処で出そうか?そして他の501戦闘団の誰を出そう・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集結予定地

ゲルト姉ちゃん参戦・・・!


パイパー達が脱出した後、彼等の近くに新たな転移者がこの地獄に訪れた。

 

「グ・・・ここは・・・?」

 

その転移者は茶髪の白人少女であり、着ているのはえらく改造されたWWⅡ時代のドイツ空軍の制服だが、下に履いているのは下着だけだ。

綺麗な美脚が露わになっている。

 

「確か私は・・・それより宮藤は!?」

 

気絶した状態から起き上がった少女はある姓名を叫び、辺りを見渡す。

 

「クソ、ここは一体何処なんだ・・・!?」

 

足を動かし、周囲を確認しながら、自分が気絶していた場所を探し回る。

机を見つけた少女は、上に置いてある衣服に目を付けた。

 

「この服は・・・?」

 

徐に服を手に取り、広げて何か無いか調べる。

 

「う~む、中々動きやすそうな服だ。よし」

 

着ていた軍服をそのまま脱ぎ捨て、机に置いてあった衣服を着た。

そして鏡を見つけ、似合っているかどうか確かめる。

 

「思った通りに動きやすい、以前より回避行動が早くなるな。これならマルセイユの奴に勝てそうだ!」

 

アフリカの星と呼ばれた男の名を言った後、一緒に置いてあったSIG社の拳銃P230を手に取る。

 

「501に支給されるワルサーPPkに似ているが・・・今は使える武器が無い。ここの家主には悪いが貰っておこう」

 

そう言いながら、予備弾倉もポケットに入れて、ドアを見つけてここから出ようとした瞬間、自分がズボンを履いてないことに気がついた。

 

「このまま外に出ては何か嫌な予感がする・・・ええい、それでも私はカールスラント軍人か!」

 

自分を叱りながらドアに向かおうとしたが、気持ちが抑えられず、ズボンを履いてP230のガンホルスターを付けた。

そして装備を確認した後にドアを開けて外に出る。

 

「夜中か・・・看板を確認する限りここは扶桑か・・・?」

 

異世界から来た影響なのか、日本のことを扶桑と呼んだ。

P230を取り出して、足を動かす。

 

「宮藤は何処だ・・・?」

 

またその名を口にする。

暫く進むと、その名前の人物を少女は発見した。

その名前の主は中学生位の小柄な少女で日本人だ。

宮藤と呼ばれる少女は気絶しており、周りには人っ子1人居ない。

居るのは少女1人だけだ。

 

「っ!?宮藤!」

 

名を叫びながら宮藤の元へ急いだが、何者かがそれを邪魔をした。

その人物は少女に体当たりし、押し倒して腕を抑える。

 

「クソッ、誰だ!?」

 

少女は腕を抑える人物に強力な蹴りを入れて、自分の身体から離す。

直ぐにP230を拾い上げ、安全装置を外し、襲ってきた者に銃口を向けた。

 

「動くな!私をカールスラント軍人及びウォッチと知ってのことか?!」

 

その襲ってきた者が男と確認が取れると、引き金に指を掛けた。

一方の襲ってきた男は、銃口を向けられているにも関わらず、ゆっくりと少女の元へ歩み寄る。

 

「動くなと言っている!聞こえないのか!」

 

警告をしたが男は従わず、呻り声を上げながら向かってきた。

口での警告は無駄と判断した少女は近、づいてきた男に威嚇射撃を行ったが、それでも男は近付いてくる。

 

「これでもか・・・!ならば!」

 

照準を男の太股に向けて発砲したが、痛がる動作を見せずにそのまま向かって来た。

 

「(コイツは痛みを感じない・・・!?まさか、モルヒネ中毒か!?)」

 

某第三帝国のモルヒネ中毒の空軍大臣の事を心の中で口走った少女。

心臓に照準を向けて再び撃ったが、男は死なない。

ただ呻き声を上げながら向かってくるだけだ。

人間の一つの弱点を撃った少女は頭に照準を合わせて引き金を引いた。

頭を撃たれた男は糸が切れた人形の様にその場に倒れて動かなくなった。

死んだ男の首筋に指を合わせて脈を確認し、指を離して男の死亡を確認した。

 

「死んだか・・・しかし、この臭いからしてこの男は私を襲う前から死んでいる・・・流石にネウロウが人間にこんなことをするという報告はない。だとするとこの地で何が起こっているんだ・・・!?」

 

死んだ(ゾンビ)から離れた後、宮藤の元へ急いだ。

だが、宮藤の姿は何処にも無かった。

 

「何処だ!まさかさっきの奴みたいに!?」

 

やや取り乱しながらも周囲を見渡す、そして遠くの方で宮藤を運ぶ重装備の兵士を見つけた。

 

「おい、そこのお前!待て!」

 

大声で重装備の兵士に声を掛けたが、その兵士には全く聞こえていない。

直ぐに兵士の後を追ったが、それを邪魔するかのようにゾンビ等が少女の前に立ちはだかる。

 

「邪魔をするなら容赦はしないっ!」

 

その場に落ちていた角材を持ってゾンビを吹き飛ばす。

少女は異世界から来たのか、魔力を使えるらしく、身体に魔力を込めた。

その影響なのか、頭部に獣耳と尻に尻尾が生える。

思いっきり近付いてきたゾンビに蹴りを入れた。

蹴りをまともに受けたゾンビは数十メートル程吹き飛んでいった。

最後の一体をパンチで喰らわし、上半身を吹き飛ばす。

 

「宮藤ーーーー!!」

 

凄まじい勢いで宮藤をさらった重装備兵に向かうが、完全に見失い、その場に崩れた。

そして一方のパイパー達はというと、あの部屋から脱出した後、偶然にも銭湯の前に出てきた。

 

「脱出した先がヤパーニッシュ伝統の風呂場とは・・・」

 

余りにも予期せぬ出来事で呆気に取られるパイパー達。

この後、パイパー達は何の躊躇いもなく、銭湯に入り、身体に付いた汗を洗い流したという。

そして大事な存在である宮藤を失った少女も、偶然にも銭湯に到着していた。

 

「これは・・・!扶桑に伝わる伝統の風呂場・・・!やはりここは扶桑か・・・!」

 

少女は直ぐに銭湯に入り、内部を確認した。

 

「誰も居ないようだ・・・ん?中から声が・・・?」

 

女湯の方からアリシア達の声がした為に、少女は女湯にP230を構えながら向かう。

そして脱衣所で置かれているアリシア達の衣服を確認する。

 

「この服装からして私と同じ様な者が居るな・・・少し話をさせて貰おうか・・・」

 

そう言った後に風呂場のドアを開け、風呂場に侵入した。




スコルツェニーとマイヤーは次に出ます。
ゲンブン成分が薄れている・・・早くゲンブンキャラを出さないと・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集合地点は女湯

武装SSの優秀な方々と源文勢の参戦です。


女湯の風呂場の戸を開けてしまった少女。

日本文化特有の巨大な浴槽で騒いでいたアリシア達を発見した。

セルベリアの豊満な胸を鷲掴みにしていたエイリアスは、突然入ってきた少女と目が合う。

 

「・・・?誰か居るぞ?」

 

その言葉に浴槽に浸かっていた全員が少女の方を見る。

アリシア達に見られていた少女は直ぐにその場を去ろうとしたが、アリシアが声を上げてしまった。

どうやら少女のことを男と勘違いしているらしい。

 

「キャー!」

 

その悲鳴は男湯の脱衣所で野戦服を着ていたパイパーにも聞こえる。

そして銭湯近くにいたパイパー達と同じWWⅡ時代からやって来た戦士達にも聞こえた。

 

「ン、女性の悲鳴だぞ?」

 

「この建物からだ!」

 

ドイツ第三帝国国防軍か武装親衛隊の迷彩服を纏い、小火器などを装備した男達が銭湯に警戒しながら入っていった。

直ぐにパイパーと鉢合わせになる。

 

「まさか、パイパーか!」

 

「貴方はクルト・マイヤー少将・・・!ノルマンディーで捕虜になったと聞いたが・・・」

 

「俺にも分からん、レジスタンスに捕らえられたら、辺りに霧がたちこめて、気が付いたらスコルツェニーと一緒に居た」

 

クルト・マイヤーの次にヨーロッパで一番危険な男と呼ばれたオットー・スコルツェニーが、転移した理由をパイパーに告げる。

 

「私も同じく。連合国に降伏した途端、辺りに霧が・・・まぁ、クルト少将と同じです」

 

「そうか。ところで、後ろの2人は?」

 

パイパーは、顔に傷がある男とドイツ軍のマークが縫われたロシア帽を被った男が居た。

1人はドイツ武装親衛隊の迷彩服を纏っており、襟にはちゃんと武装親衛隊を現す刺繍がなされている。

もう1人は末期に支給され始めた迷彩服を纏っていた。

 

「自分はヴェルナー軍曹であります!」

 

「私はハルスSS中尉です」

 

名乗り上げた2人は、ナチ式の敬礼をする。

 

「そうか・・・おっと、フロイライン方を忘れていた!彼女達が軍人とは言え丸裸の状態だ!」

 

「それはいかん!直ぐに行こう!」

 

マイヤーの声で、それぞれの小火器を持って女湯に突入した。

 

「動くな!手に持ってる拳銃を捨てろ!」

 

慌てふためく少女に銃を構えて警告を行う。

 

「へっ!?ちょっと待て!私はゲルトルート・バルクホルン大尉だ!お前達はカールスラント軍人・・・」

 

ドイツ語で話し掛けているらしくパイパー達に通じた。

 

「カールスラント?ドイツ語だが、そんな国名も地名は存在しない!」

 

バルクホルンと呼ばれる少女の問いにそう答えるパイパー。

少女は直ぐに拳銃を床に置いて手を上げる。

 

「よし、良い子だ・・・!」

 

スコルツェニーは、少女に近付こうとしたが、自分達の裸体を見られたアリシア達の飛ばしてきた桶をアゴに喰らった。

 

「うぉ!何をするんだ!?」

 

「中佐!今は危険だ、直ぐにここを出よう!」

 

直ぐにパイパー達は女湯を出た。

バルクホルンは女性なので、女湯に残している。

 

「まさかの女連れか・・・パイパー、あのお嬢さん方は現地で拾ったのか?」

 

「いや、部屋に閉じこめられてアルマゲイネ(一般)やヴァッフェン(武装)の制服を纏った人食い共に襲われました。そこであのお嬢さん方に出会ったのです」

 

マイヤーに質問されたことをパイパーは答えた。

その後、女性陣が服を着て現れる。

裸を見られた所為なのか、アリシアとセルベリアの見る目が何故か厳しい。

先程のバルクホルンも一緒だ。

 

「よし、全員準備が出来たようだな」

 

「ええ、でも・・・あの2人は・・・」

 

リエラの言うとおり、未だにあのことに恨みを持っている。

直ぐにパイパー達は謝罪する。

 

「「「「す、済まない・・・」」」」

 

頭を下げて謝罪した。

それに対しアリシアとセルベリアは、納得。

風呂場の件は水に流すことにするという事で解決する。

その後彼等は床主郊外を進む。

 

「辺りから銃声が聞こえるが・・・一体誰が発砲してるんだ?」

 

「俺はこの辺は全く知らん。それどころか全く聞いたこともない銃声だ」

 

バルクホルンの言葉にハルスは答える。

暫く進むと、ゾンビの呻き声が聞こえてきた。

 

「近いな・・・声の発生数からして、数十体位か」

 

ヴェルナーが耳をすませてゾンビの数を確認する。

それにセルベリアはMG42を構えてどうするかマイヤーに問う。

 

「一気に片付けるか?」

 

「俺達もあれと戦ってきた、あいつ等は音に敏感だ。銃をやたら撃ってると集まってきちまう」

 

「ところであの人食い共の弱点をご存じで?」

 

「もちろん、頭だろ?」

 

マイヤーの返しの後にパイパーはゾンビの弱点を質問したところ、既に交戦済みであったらしく、自分よりもゾンビの特徴を良く理解していた。

先頭にスコルツェニーが立って、正確な数を確認する。

 

「数は46人といったところか・・・集まってくる数も含めると弾の無駄だな」

 

「避けた方が身の為ね・・・」

 

「このスカーフのお嬢さんの言うとおりだ、迂回しましょう」

 

パイパーの言うことにマイヤーは賛成し、別の道に向かった。




次はオリキャラでも出そうかな?

ちなみにマイヤー達の武装はこの通り↓

クルト・マイヤー:MP41、ルガーP08

オットー・スコルツェニー:Gew43、ワルサーP38消音器付き

ヴェルナー軍曹:MP40、ワルサーP38

ハルスSS中尉:Stg44、ワルサーカンプピストル


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

掛かったな、アホが!

このストレイツォ、容赦せん!

実際にダイアーさんもストレイツォも出ません。

出てくるのはそのキャラのパロディだけです。


パイパー達が迂回している頃。

その近くで高校生位の少年少女の生存者達が、ゾンビに怯えながら足を進めている。

しかし率先して前に出る少年は恐怖を感じておらず、手に持ったゴルフバットを周囲に向けて警戒しながら前に進んでいた。

 

「ねぇ、このまま后に任せても良いんじゃない?」

 

何処かの高等学校の制服を着た少女が、以下にもハーレム物に出てきそうな主人公の風貌をした少年に、話し掛ける。

少女の名前は早峰鏡子、スタイルは抜群、そしてアニメのヒロインな容姿で、彼等の通う学校のマドンナ的な存在だ。

その彼女に話し掛けられているハーレム物のアニメの主人公な風貌の少年は太東利木、同じ学校に通う少年で、ラッキースケベである。

 

「うん、それでも伊妻に任せるのは良くないと思うけど・・・」

 

鏡子の問いにそう返す利木、ちなみに率先して前に出て、振り回すかのようにしている少年の名は伊妻后、彼等と同じ学校に通う男子高生だが、痛い中二である。

その証拠に訳の分からない事を喋りながら鏡子と利木の前を歩いている。

 

「いつでも出てこい、アンデット共め。このゴルフバット型ハンマーで全て叩き殺してくれるわ」

 

「映画みたいな事が起きて、頭でもおかしく成っちゃったのかな・・・?」

 

「多分そうなるね・・・」

 

利木が后の状態を心配する鏡子の言葉に応える。

ちなみに伊妻と后は幼馴染みだ。

そんな頭を抱える二人にトドメを差すように数体のゾンビが彼等に向かってきた。

もちろん彼等はゾンビの習性を知らない、頭が弱点としか知らない。

 

「来たなアンデット共!このハンマーをくらいな!」

 

大声で叫んで、近くに居たゾンビの頭に振りかざした后、もちろんこの声の大きさで近くに居たゾンビが集まってくる。

 

ypr(ウラ)ー!」

 

第二次世界大戦時でソ連赤軍歩兵がドイツ軍の防衛陣地に突撃する際に叫んだ言葉を叫びながらゾンビを倒していく后、ソ連赤軍歩兵の野戦服を着ていれば、辺境地から徴兵された兵士に見えるが、学生服であるためにギャップを感じる。

一方の鏡子と利木も、それぞれ持っている角材や鉄パイプをゾンビの頭に振り下ろす。

 

「イヤー!って、数多すぎ!」

 

勢いよく角材で殴った後、かなりの数のゾンビに文句を言う鏡子。

奮闘していた利木も少し息を切らす。

后はいうと、奇声を発しながらゾンビを薙ぎ倒していた。

 

「イェーー!クソッ、このアンデット共を操っている奴は何処にいる!?」

 

ゾンビ発生事件を引き起こした人物は特定できない。

事件が解決するのはおそらく終盤辺りだろう、そして鏡子の角材が折れた所で三人は危機に陥る。

 

「ゴメン、角材折れちゃった!」

 

「えぇ!ここで終わり!?」

 

「クソッ、ゴルフバット型ハンマーが!だがこの后、ただでは死なん!」

 

漫画やアニメで主役級のキャラが死にそうな台詞を吐いた后、もちろん爆薬の類は持ってはいない。

ここまでと思った三人であったが、大柄の男二人が何処からともなく現れる。

 

「トウッ!」

 

蹴りでゾンビの頭を粉々に潰す、ジョジョの奇妙な冒険で瞬殺された男みたいな髪型をした男、一瞬で殺されそうだが、この世界に瞬間冷凍法を使う生物界の頂点は居ないので大丈夫であろう。

 

「ハァー!」

 

そして長髪の男、死んだら男同士の恋愛が大好きな女性に「スト様が死んだ!」と叫ばれそうな容姿をした男が手刀でゾンビの頭を切り落とす。

 

「こいつ等は今まで戦ってきたアンデット系じゃないな。しかしそれよりも貧弱だッ!」

 

口を動かしながら、ゾンビの頭を蹴りで潰す男、それに共感するように長髪の男がゾンビを薙ぎ倒しながら応える。

 

「その通りだスプリット、どうやら数だけで襲うしか頭に無いらしい」

 

「それもそうだなストアー。フン!」

 

二人は息を切らすこともなくその場にいたゾンビを全滅させた。

そんな圧倒的な二人を見ていた三人は、言葉を失い、ただ突っ立ているだけである。

スプリットという男は三人の方を見た。

 

「どうやら生存者みたいだな」

 

「ああ、誰も噛まれてはいないらしいが」

 

ストアーは后、鏡子、利木を観察しながら口を開く。

そして懐から紙切れを取り出してそれを三人に見せる。

 

「直ぐに安全な場所に案内したいが、済まない。この写真に写った少女を探している。この少女は何処にいる?」

 

流暢な日本語で三人に写真の人物を聞き出すストアー、その写真に写った人物は水色の瞳に鮮やかなブロンドの髪を持つスタイルが残念な絶世の美少女ルリだ。

鏡子と利木はその余りの美しさと可愛さに見取れているが、后は美少女な神様と叫んでいる。

 

「まぁ、見かけたか、何処へ向かったかを教えてくれれば良い」

 

補足するようにスプリットが付け足す。

鏡子と利木は、見た覚えが無いためにスプリットとストアーに謝罪する。

 

「済みませんがこんな可愛い娘(こ)は僕達は見てません。ごめんなさい」

 

「見ていないのか・・・案内は出来ないが場所は教えることは出来る」

 

スプリットは地図を出して、赤いペンで印をした場所に指を差す。

 

「ここが避難所だ」

 

「ここってたしか・・・」

 

「ショッピングモールだよね・・・」

 

利木が言った後に答えを言う鏡子。

その言葉にストアーは眉をしわ寄せ、口を開く。

 

「なんだ知っているのか。それならこちらが楽で良い。守っているのは婦人警官が二人だが、何ヶ月かは持つだろう。言い忘れたが、奴らは目が見えないが音には敏感だ。大きな音を出すな。それじゃ、私達はこれで」

 

スプリットとストアーはその場を後にしようとしたが、スプリットが何かを思い出したかのように三人の元へ戻ってきた。

 

「おっと、言わなければならないことを忘れていた。周辺に武装している人間を見たら警戒しろ、そいつ等はお前達の国で言う自衛隊ではない、無法な女兵士共だ。女だからと言って迂闊に近付くな、捕らえられて奴隷にされるか殺されるぞ」

 

心残りが無くなったスプリットは、待っていたストアーの所へ戻り、彼と一緒に何処かへ去っていった。

この圧倒的な二人に后はハイに成っていた。

 

「うぉ~!弟子入りしてぇ~!」

 

「おい!大声出すなよ、またゾンビが集まって来ちゃうじゃないか」

 

利木に叱られた后は、頭を下げ、謝罪する。

 

「あぁ・・・格好良かったなストアーさん。じゃぁ、ショッピングモールに行きましょうか?」

 

鏡子の問いに二人は答え、モールへ向かった。

その頃パイパー達は、后達と同じくショッピングモールへ向かっていた。

 

「まだまだ距離があるな・・・」

 

パイパーは地図を見ながら不満を漏らす。

ヴォルナーがゾンビの首をへし折った後にセルベリアに問う。

 

「そちらは静かに出来たか?」

 

「もちろんだ。女だからと言って舐めてもらっては困る」

 

その彼女の言葉にハルスは小声で笑う。

 

「ハハハ、ただの歌手か女優だと思ったが・・・傭兵としては中々の様だ」

 

「是非うちの歩兵部隊長に任命したいくらいだ」

 

褒めるようにハルスとマイヤーが言う。

その後、エイリアスはあくびをして目をこすり、今にも眠りそうな表情をする。

 

「ふわぁ~あ、ね、眠い・・・」

 

「え~と、何処か寝られる場所は・・・?」

 

アリシアは周囲を見渡し、休息が取れる場所を探し始めた。

 

「あぁ・・・困ったな・・・」

 

スコルツェニーは頭を抱えて悩み始める。

 

「もう少しだ、エイリアスちゃん。あのピカピカな建物まで我慢してくれ」

 

「うん・・・エイリアス・・・頑張る・・・」

 

パイパーの励ましで何とかエイリアスは体勢を立て直して立ち上がる。

その後、一行はショッピングモールまで足を進めた。

 

「っ?誰?」

 

先頭に立っていたリエラはPPs43を蠢く三つの人影に向けた。

もちろんその人影は后、鏡子、利木。

見つかった三人は、変わった服装の女性、リエラに手を挙げながら近付いてくる。

 

「どうしたリエラ?」

 

「現地人と思われる人を見つけましたけど・・・」

 

こうしてパイパー達に新しい仲間が加わった。




続きはどうしようか・・・

あの二名は後々本編に出ますよ~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦闘体勢!

ジョジョのアニメの第二部が始まるそうだね。
ニコ動でジョセフが出るところだけ見たけど・・・安心して見れそうだ。

前半部は自分でも訳が分からない展開が始まります。


また、新たな仲間と出会ってしまったパイパー達。

しかし、パイパー達の中でこの世界出身どころか、この時代の人間は居ない。

そしてパイパー達の姿を目にした后達は、異世界の人間や歴史上存在した人物に驚きを隠せないでいた。

 

「えっ!?どうしてナチスドイツの兵士が・・・?」

 

鏡子はパイパー、マイヤー、スコルツェニー、ヴェルナー、ハルスの野戦服を見て驚く。

利木も彼等の格好を見て驚いている。

歴史上に存在した人物なのだが、誰もパイパー達の事など一切知らない。

格好からしてただのドイツ軍の兵士と認識しているだけだ。

流石の后ですらWWⅡ時代のドイツの英雄達の事など知らない。

 

「うぉぉぉぉ!あんた等はナチス特務部隊か!それとも暗殺部隊か!?」

 

后はパイパー等の格好を見て変な勘違いをしている。

もちろん日本語で喋っているので、彼の言っている事など一切理解できない。

若干引き気味のパイパー達に、バルクホルンは助けるかのように口を開く。

 

「扶桑の言葉は分かるのだが・・・?」

 

「ああ、通訳してくれ。このやけに興奮している少年の言葉を」

 

パイパーは、早速バルクホルンの救援をありがたく頂戴した。

 

「あんた等はナチス特務部隊か暗殺部隊と聞いていると言ってるが・・・」

 

それを聞いたドイツ軍人達は、同時に溜息をした。

 

「はぁ~、あの精神病気味な少年に伝えてくれ。お前は精神患者だと?」

 

ヴェルナーは、后に指を差しながらバルクホルンに伝える。

 

「分かった。この男はこう言っている、お前は精神病患者だと」

 

「な~に、俺が精神病患者だとッ!?このナチ公がッー!」

 

この通訳を聞いた后はブチ切れ、急にヴェルナーに飛びかかったが、あっさりと返り討ちにされる。

 

「タコス!」

 

「ふっ・・・所詮はただの精神病患者か・・・そいつをさっさっと精神病院に返してやれ」

 

ドイツ語で言った為に后には伝わっていない。

鏡子と利木は直ぐに后の近くに寄り添い、彼の身体を起こす。

 

「な、何をするんだァー!許さんッ!!」

 

友人を傷つけたヴォルナーに対し、拳を構えた利木であったが、今まで避けて通ってきた不良とは違うオーラが見えてきた。

全くアリシア達は口を開けず、ただ黙って突っ立ているだけで、エイリアスに対しては、アクビをしてつまらなそうに見ていた。

そして通訳を担当していたバルクホルンは口を開けてただ唖然していた。

 

「小僧、友人を助ける事は褒めてやろう・・・だが、ただボロ負けするだけだぞ?」

 

ハルスは足を振るわせながらヴォルナーに立ち向かおうとする利木に言う。

もちろんドイツ語で言って通じる訳がないが、雰囲気だけは利木に届いたようだ。

鏡子は彼を静止するかのように止めに入る。

 

「や、止めようよ!この人達は兵隊なんだよ!訓練もしてるから勝てるわけ無いよ!」

 

それでも利木は、勇気を絞り出してヴェルナーに立ち向かう。

この現状を見ていたセルベリアは止めに入ろうとしたが、マイヤーに止められてしまう。

 

「それでも・・・友人を傷つけられて、黙ってるわけにはいかない!」

 

声を震わせながら、鏡子に反論した。

この言葉を耳にしたスコルツェニーは、バルクホルンに聞いた。

 

「今、なんて言った?あの小僧は」

 

「え?ああ、友人を傷つけられ黙ってはいられないと言った」

 

「そうか・・・威勢は良い・・・衛生兵にしたいくらいだ。だが、あの小僧は戦場で早死にするタイプだ」

 

スコルツェニーの言葉に賛同するように、マイヤーも答える。

 

「その通り、ああいうのは倒れた戦友を自分の命も省みず助けに行くタイプだ。俺だったら、後方にまわして補給部隊に勤務させるがね」

 

「は、はぁ・・・?(言うなれば宮藤のような奴か・・・)」

 

人間同士が戦う戦場に出たことがないバルクホルンは、何とか理解出来た。

もちろん戦場に出たことがあるヴァルキュリア人にも理解していたが、部隊指揮官の経験があるセルベリアは理解できたが、部隊の指揮経験がない他3名は、バルクホルンの様な見解に辿り着いた。

そして倒れていた后が起き上がり、利木の肩を掴んでいきなり泣き出し始めた。

 

「その俺を思う気持ちに俺は感動したァー!利木ぃ・・・お前は良い奴よぉ~!」

 

「は、はぁ!?」

 

この后の変わりように一同は困惑状態に至った。

その後、后がヴェルナーに土下座して「弟子にしてください」と言ったが、もちろん断られる。

暫くして、一行はゾンビが侵入できないような建造物を見つけ、そこで休息を取ることにした。

黒騎士中隊が戦車戦をやってるなど知らずに。

 

そして翌朝・・・

 

「ん・・・?」

 

利木は、寝惚けて鏡子の胸を鷲掴みしていた。

だが、彼は全く気付いてない。

 

「へっ・・・?」

 

もちろんそ鏡子の拳を喰らった。

勢いよく吹っ飛び、積み上げていた物資に衝突、物音に何事かとパイパー達が駆けつける。

 

「何事だ!?」

 

バルクホルンはドアを開けて部屋に入り、后達の状態を確認する。

 

「一体何があった?」

 

「ただの不要時です・・・」

 

その言葉に部屋に駆けつけた一同は呆れる。

しかし、この騒音が思わぬ敵を呼び寄せてしまった。

近くにワルキューレの部隊が居たのだ。

 

「この音は・・・?」

 

AKS-74を装備した中装備の女兵士が、パイパー達が潜伏する建造物へと足を踏み入れた。

その兵士が入ったのと同時に、何名かが後に続く。

 

「バリケード?誰か中に居る・・・?」

 

バリケードを見つけた兵士はそれを退けて、中に入って行く。

もちろんパイパー達もそれに気付き、警戒態勢に入る。

窓の近くに居た后は、ヴォルナーに頭を掴まれ、床に無理矢理伏せさせられた。

 

「伏せろ、マヌケめ!」

 

ハルスは床に耳を傾けて、入ってきた人数を確認する。

 

「敵は9名・・・一個分隊ほど・・・」

 

「野盗か・・・?お嬢さん方は大丈夫か?」

 

「多分大丈夫でしょう。あの銀髪で赤目の美女、修羅場を潜り抜けてきた目をしている」

 

マイヤーはアリシア達を心配したが、スコルツェニーが「心配する必要はない」と告げた。

一方、侵入してきた敵兵士達は、下手のCQBをしながらアリシア達が居る部屋へと足を進めた。

緊張しきった軍靴の音が聞こえ、アリシア達はドア越しに身構え、待ち伏せ攻撃の準備をする。

スコルツェニーは、鏡の破片を持って窓へ行き、外にいる敵兵の数を調べる。

 

「外には敵兵が複数・・・若い女も居る・・・この時代の兵隊はか弱い女でも志願するのか?」

 

鏡を見ながらスコルツェニーは聞こえないくらいの小声で言う。

それをバルクホルンは直ぐに通訳する。

 

「さぁ、自衛隊とかいますが・・・なんだか自衛隊ぽく見えません・・・映画とかで良く出る銃を持ってるし・・・」

 

「成る程・・・つまりこの国の軍隊ではないと言うことになるな・・・」

 

鏡子が言ったことを直ぐにバルクホルンは通訳し、それを聞いたパイパーが小声で口を動かす。

そして新たにワルキューレの軽歩兵数名がこの建造物に入ってくる足音を耳に入れると、マイヤーは小声で「戦闘態勢!」と、パイパーに告げた。




本格的な戦闘は次回から。
次回で戦車出そうと思ってるけど、この3つの内、どれが良いですか?

1 M3A5リー中戦車

2 M5A1スチュアート軽戦車

3 M24チャフィー軽戦車

どれが良いか感想に書いてください。

断じて構って貰いたい訳じゃないよ!

昨日のチャットで1のM3A5リー中戦車に決まりました。
皆様、ごめんなさい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドイツ軍人はうろたえないッ!

タイトルに意味は無いッ!
パイパー編だけ長く続いてるけど・・・早く本編に入って欲しい?

もちろん答えは本編だよね!

戦闘シーン回です、どうぞ。


迫ってくるワルキューレの兵士達にアリシア達は緊張の余り、息が乱れる。

セルベリアの方は慣れているらしく、息一つ乱れない。

一番前の兵士が筒型手榴弾を投げる素振りを見せた瞬間、セルベリアはMG42を接近してきた兵士達に向け、引き金を引いた。

毎分1200発の連射速度を誇る機関銃から飛ばされる無数の7.92㎜×57弾をまともに喰らい、前に居た女兵士は蜂の巣となる。

後ろに居た兵士達も薄い防弾チョッキを貫通したライフル弾を喰らい絶命した。

咄嗟に遮蔽物となる壁に避難した女兵士等は直ぐに反撃するが、アリシア達の援護射撃で次々と床に倒れるか、壁に身を寄せて怯える。

 

その時、セルベリアが持っていたMG42の弾丸が途切れた。

これをアリシアがM1カービンからM1A1トンプソンに切り替え、短機関銃の連射力でカバーする。

この間に予備の弾薬を取り出そうとするが、身体に巻いていた7.92㎜弾の束も予備の円形型弾倉も無くなっていた。

仕方なくルガーP08を取りだし、無し崩れの弾幕を張る。

 

一方のパイパー達も、この銃声に気付き、スコルツェニーが「始まったな」と小声で漏らす。

外で代わりに見ていたハルスは、外に居るワルキューレの兵士達が慌ただしく動いている様子を全員に知らせる。

 

「お嬢さん方が派手にぶっ放しているお陰で、あちらのお嬢さん方が慌ててらっしゃる」

 

「アルデンヌのヤンキー共もこんな感じだったぞ」

 

ハルスの言葉にスコルツェニーはドアを見張りながら応える。

兵隊でも訓練もしてない后達は、バルクホルンに守られながらただ怯えているだけだ。

そしてパイパー達の所にもワルキューレの兵士達が迫り、窓から銃弾が飛んできた。

 

「誰か頭を上げたな?!」

 

ヴォルナーは真っ先に后達を睨み付けだが、見つかったのは意外な人物だった。

 

「済まない、私が見つかった」

 

「マイヤー准将・・・!?」

 

申し訳なさそうに謝るマイヤーを見てパイパーは驚きを隠せないでいる。

その後「あそこで声がしたぞ!」と女性特有の甲高い声が聞こえ、手榴弾が一つ飛んできた。

 

「素人めぇ、投げるのが早いわッ!」

 

即座に手榴弾を拾い上げ、それを飛んできた方向に投げ返すスコルツェニー。

悲鳴が聞こえた後、手榴弾の爆発音が聞こえた。

 

「もう少し強力な物をくれてやるか」

 

パイパーはM24柄付手榴弾の安全蓋を外して、ピンを抜いた後、それを女兵士等が居た場所に投げた。

 

「なにこれ?」

 

自分達が使う物とは違う手榴弾であった為に徐に拾い上げる軽装備な若い兵士。

もちろん破片を飛ばす方式ではないので爆発。

持っていた左腕と頭が吹き飛び、左腕と頭がない死体はその場に倒れ込んだ。

直ぐにパイパー達は浮き足立っている女兵士達に向けて容赦なくそれぞれが持つ銃を容赦なく撃つ。

反撃できない兵士達は、戦意を消失し、階段まで引き下がり始めた。

そしてこの建物から近い位置に居るワルキューレの戦車隊が銃声を聞き付け、現場に急行した。

 

「映画とかで良く聞く銃声ね」

 

走行中のM3A5リー中戦車の車内にて女性戦車長が口を開く。

無線機の近くにいる少女はヘットフォンから現場の情報を採取し、それを戦車長の女性に知らせる。

 

「報告に寄れば第二次大戦のドイツ軍の軍服を着た男達とコスプレの様な女4名に学生3名と交戦中の模様です」

 

「家の小隊の4両を潰した奴らかしら?直ぐに片付けるわよ!」

 

「ラジャー!」

 

2両のM3リー中戦車はパイパー達の元へと急行した。

その頃のパイパー達は未だ交戦中であった。

銃声を聞き付けて集まってきたゾンビにワルキューレの歩兵部隊。

ゾンビはワルキューレに排除され、自分達が居る建物に次々と敵兵が入ってくる。

 

「弾薬が心持たないな・・・」

 

「そう言わんでください、大佐殿。イワンの連中と比べてみればマシな方です」

 

ヴェルナーが弱気に成ってきたパイパーを励ますように言う。

それに対し、パイパーは笑みを浮かべて「そうだな」と答える。

アリシア達も追い込まれ気味であった。

パイパー達と同様、弾薬は心持たない。

 

「狙撃銃の弾薬が切れてしまった!これじゃ狙撃兵が倒せない!」

 

窓にいたエイリアスは予備の弾薬も切れたモシンナガンを捨てて、M3A1短機関銃を取り出し、弾幕を張る。

PPs43短機関銃を撃ち続けていたリエラも、やや弱気になり始める。

アリシアは、M1カービンを拳銃だけのセルベリアに渡したが、状況は全く変わらない。

ますます悪化するばかりだ。

 

「アリシア、大変だ!戦車が来た!」

 

エイリアスの知らせを聞いたアリシアは「え!?」と漏らし、ドアの応戦をセルベリアとリエラに任せ、窓へ向かった。

彼女が目にした物はこちらに53.5口径37㎜戦車砲M6を向けたM3リー中戦車の姿が。

呆気に取られるエイリアスをアリシアは、直ぐに窓から遠ざけた。

砲声が鳴り響き、アリシア達の居た部屋が爆発した。

それをパイパー達は聞き逃さず、戦車の存在を探知する。

 

「え~い!戦車まで持っているとは・・・!」

 

風塵が舞う部屋で、セルベリアはリエラが担いでいたM1A1バズーカに目を付け、それを手に取った。

 

「借りるぞ!」

 

「あ、待って!弾を!」

 

咳払いをしながらリエラはセルベリアにM1バズーカのロケット弾を手渡した。

「感謝する」と言った後、安全装置を外し、風塵の中で微かに見えるM3リー中戦車に照準を合わせると、後方を確認した後、引き金を素早く引いた。

勢い良くロケット弾が飛び、装甲の薄いM3リー中戦車に見事命中、車体は炎上し、燃え盛る戦車の中から年端のいかない少女が飛び出してきた。

 

「え、子供・・・?どの子も義勇軍に居そうな年頃ばかり・・・」

 

炎上する戦車から逃げ出す少女達を見てリエラはそう呟いた。

戦車が破壊されたショックで再び浮き足立ったワルキューレの兵士達、残り一台のM3リーは隊長車両を失い、混乱状態に陥る。

 

「隊長車がやられた・・・!?」

 

その隙がパイパー達を脱出させるチャンスを生んだ。

空かさずヴォルナーは、先程アリシア達を砲撃して舞った風塵で視界を奪われたMG4軽機関銃を持った女性兵士の首をへし折り、武器と弾薬を奪った。

残りのメンバーも敵兵から武器を奪い、その場から脱出する。

もちろんバルクホルンは后達を連れている。

アリシア達も死んだワルキューレの兵士達から武器と弾薬を取ると、直ぐにパイパー達に合流した。

 

「傷一つも無しで良く生き延びた物だな・・・!?」

 

走りながらバルクホルンは服が汚れただけのアリシア達を見て驚く。

 

「ヴァルキュリア人だから怪我の治りも早いんだ!」

 

エイリアスの返した言葉にバルクホルンは「そう言う問題か?」と小声で呟いた。

次の瞬間、彼等の逃げ道を塞ぐようにM3リーが現れ、副砲の37.5口径75㎜戦車砲M3を発射した。

 

「危ない!!」

 

マイヤーの叫びで左右に散らばるパイパー達、次の副砲の射撃で后達と離ればなれに成ってしまった。

 

「クソッ!まだ一台残ってやがった!!」

 

スコルツェニーは悪態を付きながら叫ぶ。

M1バズーカを担いでいたセルベリアは、直ぐにM3リーに砲口を構えた。

弾頭はリエラが装填し、合図する。

 

「装填したわ!いつでも良いわよ!」

 

「良し、後ろから離れろ!」

 

そう後ろに居た者達に告げた後、引き金を引き、最後のM3リー中戦車を撃破した。

 

「これで戦車は全滅か・・・だが、歩兵や死に損ないはまだ残っている!」

 

戦闘音を聞き付けたゾンビ達がパイパー達の周囲を囲んでいた。

それをパイパー達は、一体一体頭に狙いを付けて始末していく。

圧倒されていた后達もそれに加勢に入るが、后が噛まれてしまう。

 

「グワァ!グールに噛まれちまった!」

 

腕を噛まれた后は、ゾンビに噛まれたらゾンビに成ると分かっていたらしく、先程ワルキューレの兵士達から手に入れた爆薬を身体に巻き付け、手榴弾を取り出した。

 

「しかしこの伊妻后、ただでは死なんッ!貴様等も道連れにしてくれるわッ!!」

 

叫びながら手榴弾のピンを抜き、ゾンビを集めた。

 

「えっ!?后!まさか死ぬ・・・」

 

鏡子の声は届かず后は自爆、手に入れたMP5kを乱射していた利木はその后の最後を見た。

 

「そんな、嘘だろ!?后ー!」

 

「あいつめぇ・・・自爆しやがったのか」

 

「これが噂の大和魂か・・・」

 

そんな后の最後に呆気を取られるパイパー達。

だが、ゾンビとワルキューレの兵士達は、それを逃さない。

 

「后、后!これは夢・・・?」

 

あまりのショックに鏡子は呆然し、瞳に涙を浮かべる。

それをアリシアは鏡子を現実に引き戻そうとしたが、彼女は倒れ、アリシアの腕の中に倒れる。

よく見れば、額に穴が開き、そこから血が溢れ出し、目から生気が失われている。

 

「し、死んでる・・・!」

 

その後、アリシアは鏡子の死体を地面に倒し、見開いた瞳を閉じた。

 

「急げ!この場から直ぐに脱出だ!」

 

マイヤーが退路を塞いでいたゾンビをG36Eに装着されたAG36で一掃した後、交戦していた残りのメンバーに告げた。

一同は直ぐにマイヤーに続いたが、利木は、親友を同時に失ってショックを受けていた。

 

「何をしている!?早くしろ!」

 

バルクホルンが立ち止まった利木に声を掛けたが、セルベリアに連れて行かれる。

利木はワルキューレの兵士達の銃撃を受け、絶命した。

その後、暫くしてパイパー達はモールに何とか到達出来た。

 

「案内役は死んでしまったが、何とか到着できた・・・」

 

そう言ってモールを見渡すマイヤー、一行はモールに入り、そこで立て篭もる事にした。

余談だが、地元の生存者達ではない先客が居たらしく、しかもバルクホルンの親類だったという。




パイパー編が終わりました。
後は本編に進むか、ヴィットマン編をやるかに迷ってます・・・

次のガルパンは新しいチームと戦車が入るらしいね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヴィットマン、無双です!

遂にやって来た本編ではなくヴィットマン無双回!

アメリカ戦車大好きな人はメンタルにご注意!

そしてヴィットマンTUEEEEEE状態に注意!(現実でやってのけてるけど


ゴーストタウンと化した町をひたすら走行するミハエル・ヴィットマン等が乗るティーガー戦車Ⅰ型後期生産型。

マイバッハHL230P45 4ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジンを聞きつけ、ゾンビ等が、ヴィットマンのティーガーに向かってくる。

 

「辺り一面まるで暴動があったかのようだ・・・ん?あれはこの周辺に住む人達か?」

 

ヴィットマンは向かってくるゾンビ等をこの辺に住む住民と勘違い、停車して、ゾンビに声を掛けてしまった。

 

「すみません、我々はこの辺に詳しくないんですが。この辺の地図をくれたら嬉しいのですが・・・」

 

ゾンビが親切に地図を渡してくれるはずもなく、唾液を垂らしながら、ヴィットマン達を仲間に引き入れようと、ティーガーの車体に乗り上がる。

 

「うわぁ!?勝手に乗るんじゃない!」

 

乗り上がって来たゾンビ等に威嚇をしようと、腰に付けられたワルサーP38をガンホルスターからいつでも抜ける準備をする。

 

警告する(アハテゥンク)!降りなければ射殺する!」

 

ワルサーP38を抜いて、構えたが、ゾンビは唾液を垂らしながらただヴィットマンに向かってくるだけだ。

「やもえない」と判断したヴィットマンは近場に居たゾンビの肩を撃ち抜いた。

その衝撃で後ろに偶然居たゾンビ等を巻き込んでティーガーの車体から転げ落ちる。

 

「前進しろ。顔を見てみれば白目を剥いていた。口に血が付着からしてここの住民は人の肉を食べるほど飢えている・・・!」

 

その言葉を聞いた操縦者は、ティーガーを前進させた。

まだ何体かがティーガーに張り付き、ヴィットマン達を仲間に引き入れようとしがみついていたが、ドンドン速度を上げるティーガーに振り解かれてしまう。

直ぐさまこの町を出ようとしたが、彼等の進路を塞ぐかのように多数のゾンビが現れた。

 

「あれだけの人物は突破不可能ですよ!」

 

操縦者の知らせに車内に居た乗員達の緊張が高まる。

キューポラからゾンビの大群の見たヴィットマンは、弾薬室に収められている榴弾を見て、息を呑み、口を開く。

 

「やもえん・・・榴弾や機関銃(マシーネ)を使って突破する」

 

これに対し、砲手がヴィットマンの決断を反対する。

 

「良いのですか?!民間人相手に武器を使っても!」

 

「相手は人食い狂の集団だ!武器を使わなければ我々が死ぬ!」

 

「クッ、了解(ヤヴォール)!」

 

ヴィットマンの返答にヴォルは、どう考えても彼の考えが正しかった。

装填手は、初めから装填してあった徹甲弾を排出、新たに榴弾を装填し、無線手は搭載された汎用機関銃MG34の安全装置を外し、前方に構えた。

 

安全装置解除(ゲッジャーハイト)!」

 

砲弾装填装置の右側に付けられた安全装置を解除した後、砲手に知らせる。

戦車用88㎜榴弾がいつでも撃てることを確認した砲手は照準器を覗き、戦車長であるヴィットマンの指示を待った。

 

「目標81m、人食いが密集している場所だ。よし、撃て(ファイヤー)!」

 

砲手が撃発を押すと、56口径8.8cm戦車砲KwK36大きい砲声を鳴らし、砲口から88㎜榴弾が勢いよく飛ぶ。

そして装填器からからになった大きな薬莢が排出され、装填手が次の榴弾を装填する。

飛んでいった砲弾はゾンビが密集していた場所に命中、着弾した場所から血の煙が上がるが、そこからゾンビがティーガー目指してまたノロノロと向かってくる。

進路を塞がれないように搭載された二挺のMG34が火を噴き、塞ごうとしていたゾンビをバタバタと薙ぎ倒していく。

胴体や四方に当たっても死ななかったが、偶然にも頭に命中し、その場に倒れ込む。

再び砲声が鳴り響き、進路に邪魔なゾンビ群が吹き飛ばされ、また血の煙が上がる。

そのままティーガーは速度を上げて、ゾンビの包囲網から突破に成功した。

戦闘途中に黒騎士ことバウアー達の戦闘音がヴィットマン達の耳に入り、他の転移者の存在を確認した。

もちろん彼等が撃ったティーガーの砲声と戦闘音が、この付近に展開しているワルキューレの歩哨に聞かれていたらしく、直ぐに太平洋上に浮かぶこの軍事組織の本部として使われている最新技術を応用し建設された洋上プラントに報告された。

 

「床主の展開部隊のパトロールが聞いたこともない砲声を確認したそうです!」

 

プラント内部にある司令室にて、通信士官の髪型がポニーテールで美しい女性が指令席に座るまだ20代にも達してない容姿な美少女に報告する。

ちなみにこの場に居る全員美女ばかりなのだが。

 

「分かった。直ぐに出撃可能な戦車部隊送るからそこにいる部隊に対戦車装備させてね」

 

了解(コピー)!」

 

通信士官は、少女の言うとおりに回線を繋ぎ合わせ、命令を伝達する。

菓子を齧りながら少女は、机に備え付けられた受話器を取り、回線を繋ぎ、口を動かした。

 

「あぁ、もしもし?私だけど。そこにいる下級兵士の部隊を出動させたいけど、良いかな?」

 

齧っていた菓子を皿の上に置くと、また口を開く。

 

「反対するのは良いけどさ。危険な所に行かせて、可愛い娘達とか死なせたくないでしょ?ここはレディファーストじゃなくて男が行くべきでしょ?出動させてくれるの?じゃぁ、ありがとうね~」

 

回線の向こうの相手と会話を終えた後、受話器を戻して、再び菓子を口に含んだ。

そして、床主の沿岸近くで待機していた下級兵士の部隊に視点は移る。

この部隊はワルキューレ特有の全員女性では無く、全員アラビア人の男ばかり。

その証拠に245名からなる歩兵部隊は皆中東系のターバンを頭に巻き付け、服装に関しては、女性兵士が着ている品の良い野戦服や迷彩服などの戦闘服とは違い、貧相な野戦服や迷彩服、戦闘服を身に纏っている。

戦車に関しても第二次世界大戦後期でソ連赤軍地上部隊の主力を誇ったT34/85が27両あるだけだ。

対空車両や自走砲などは一両も見えない、あるのは燃料補給車とトラックが数台だけ。

歩兵の装備に関してはヘルメットを被っている者と防弾チョッキを身に付けている者は一人も居らず、安いマガジンベスト、そして小火器の殆どは粗末な中国のコピー生産で固められている。

品質の良いのは隊長クラスがAK47の生産向上版であるAKMだけだ。

指揮官の副官らしい男が、周りにいる部隊長と話し合うこの部隊の長である男に命令書を持って報告する。

 

「アバム司令官、女共より出撃命令です!」

 

「出撃命令か!我々が女共より優れているということを示すチャンスだな!で、敵は何処にいる?」

 

「偵察機の報告によればここから東の方向、我々に近い位置にいます!」

 

「よし、歩兵がトラックや戦車に搭乗が終わり次第、出撃する!アフラム解放戦線、出撃だ!!」

 

「「「了解(ラー)!」」」

 

こうしてアフラム解放戦線は、ヴィットマンが乗るティーガーに向かって進撃を開始した。

この後、地獄を見ることを知らずに……。

視点は再びヴィットマンへと戻る。

 

「もうすぐ夜明けが近いな・・・あの小型飛行機はさておき、ティーガーⅡとパンターの砲声がした方はこっちだな。他に連合軍(アーミー)のリーにシャーマン、スチュアートの砲声が聞こえるからして、あちらは戦闘中のようだな」

 

その小型飛行機がワルキューレの偵察機だとは知らずにティーガーのキューポラから上半身を乗り出して、遠くから聞こえてくる戦闘音の方向へと向かう。

そしてアフラム解放戦線がヴィットマンのティーガーに襲い掛かる。

 

「ん?あれはT34の85㎜砲型!歩兵がタンクデッサイトをしているからしてイワンまでこの世界に転移したか!徹甲弾装填及び砲塔3時方向に旋回!」

 

ティーガーの側面から砲を撃ちながら突っ込んでくるT34の集団。

ヴィットマンは車内に戻り、キューポラから向かってくるT34を見る。

砲手は砲塔を旋回させ、T34に砲を合わせた。

 

「目標76m、撃て!」

 

怒号の数秒後に砲口から88㎜徹甲弾が発射され、前に出ていたT34が撃破される。

廃車となったT34を避けながら、ティーガーを狙うT34の集団。

その横を、歩兵を満載したトラックが通り過ぎるが、MG34の機銃掃射を右前輪に喰らって横転。

荷台から転げ落ちた兵士達も、砲塔に搭載されたMG34で残らず始末される。

次にヴィットマンは射程距離まで近付こうとしたT34を撃破、その後素早い指揮で次々とアフラム解放戦線のT34を撃破していく。

 

「な、この短時間で5両を撃破しただと!?相手はたった一両だぞ!損害に構わず包囲して倒せ!」

 

破壊される味方のT34を盾にヴィットマン達を包囲しようと近付こうとするが、それを先読みされたのか、あっさりと破られてしまう。

歩兵も対戦者火器であるRPG7を撃つ前に機銃で排除される。

そしてT34も次々と撃破されていく、命中しても距離に達してない為にティーガーの厚い前面装甲で弾かれてしまう。

 

「なっ・・・!?こいつ化け物か・・・!?」

 

その台詞を吐いたT34の戦車長は、発言後に撃破された。

アフラム解放戦線の長であるアバムは、信じられない現象に恐怖した。

そもそも相手がヴォレル・ボガージュの戦いで英陸軍第7機甲師団の先鋒に大損害を与えた男なのだが……。

 

「ば、馬鹿な・・・!27両もあったT34が17両・・・!?たったの13分で10両が撃破されただと!?」

 

T34が残り17両となった所で、指揮車両に乗っていたアバムはヴィットマンの不条理な強さに恐怖する。

次の瞬間、一番後ろにいたT34が突然爆発した。

もちろんヴィットマンのティーガーの砲声ではない、アフラム解放戦線のさらに後方にいる者の仕業だ。

アバムは直ぐにキューポラから身を乗り出して、後方を双眼鏡で確認する。

 

「ぬぁっ!?あれは女共の戦車部隊!まさか我々ごと殺る気か!!」

 

アフラム解放戦線の部隊の後方から、ワルキューレの複数の戦車部隊が現れた。

車種はM3M5リー中戦車にM4シャーマン中戦車全タイプ(英国製を除く)、M5A1スチュアート軽戦車とM24チャーフィ軽戦車やM10ウルヴァリン駆逐戦車だ。

どれもティーガーの装甲を貫けない程の低火力な戦車だが、これほど居れば接近を許し、そして砲弾の雨を浴びれば重装甲のティーガーとで流石に持ちはしない。

ヴィットマンは新たな脅威の対策を迫られた。

ワルキューレの戦車部隊は、アフラム解放戦線の残ったT34ごと砲撃を開始した。

 

「グワァァァァァ!!神は何故我々を助けてくれないィィィィィィ!!?」

 

燃え盛るT34/85の車内にてアバムは天井に向かって大いに叫んだ。

一方ヴィットマンは、後ろからエンジンを撃たれて撃破されまくるT34や機銃でバタバタと薙ぎ倒される敵歩兵をキューポラから見ていながら、何の動揺もせず頭を抱えて悩んでいた。

脳をフル回転させ、この状況を打開できる考案を探し、ほんの数秒後で閃いた。

 

「アプト、ヴォル、スコッチ。演習でやった例の戦術で行くぞ」

 

「え、“あれ”ですか!?しかしあの技は総統閣下(マインフィーラー)の前で見せた演習だけで、我々でしかも実戦でやるのは・・・」

 

「あれ以外にこの状況を突破できる技がある物か!生き残りたければ練習したようにやるんだ!」

 

「「「ヤヴォール戦車長殿(タンクコマンダー)!!」」」

 

操縦者は息を呑むと、緊張しきった表情をしながらハンドルを握る。

砲手は砲塔を旋回させるハンドルを握り、装填手は88㎜徹甲弾を抱えて足を踏ん張る。

そしてヴィットマンの指示が飛ぶと、操縦者はティーガーを急発進し、雨のように飛んでくる砲弾の中を突っ切った。

 

「あのタイガー、馬鹿じゃないの?」

 

調子に乗ったM4A1シャーマンの女性戦車長は迂闊にも全速力で突っ込んでくるティーガーに向かっていった。

もちろんその女性戦車長と乗員達は直ぐにティーガー56口径8.8cm戦車砲KwK36で天に召されたが。

 

「側面は頂き!撃て!」

 

M24チャーフィの37.5口径75mm戦車砲M6から発射された砲弾がティーガーの側面に命中しそうになったが、全速力で走るティーガーに命中せず、チャーフィは撃破された。

M3リーの75㎜砲を回避し、そのM3リーを撃破、M10ウルヴァリンも側面を取らせる前に撃墜していく。

側面に近付かれそうになれば、レースカー顔負けのターンを決めて回避し、ワルキューレの戦車を次々と撃破する。

流石のティーガーとで後ろを軽戦車に取られたら一溜まりもない。

その豆鉄砲な砲を持つM5スチュアートがティーガーの後ろを取ったのだ。

 

「これならタイガーだって・・・!」

 

スチュアートに乗る女性戦車長が勝利を掴もうとした瞬間、キューポラからワルサーカンプピストルを持ったヴィットマンが姿を現した。

手に握られている信号弾発射器の銃口には対戦車用の小型の徹甲弾が装着されており、狙いがスチュアートに向けられていることが分かる。

 

「へっ・・・?」

 

キューポラから見た戦車長は何が向けられているのか分からなかった。

ヴィットマンは引き金を引き、スチュアートを撃破する。

直ぐに車内に戻り、彼は指揮に集中した。

 

『な、なによ、あれ・・・化け物じゃない・・・!』

 

『こんなの勝てるわけ無い!』

 

『逃げよ、逃げよ!』

 

猛威を誇るヴィットマンのティーガーに恐怖した残りのワルキューレの戦車部隊は逃げ出し始めた。

次々と撤退していく車両を見て、撃ち続けていたM10ウルヴァリンの戦車長は、声を掛けた。

 

「ちょっと!待って!運ちゃん全力撤退!てった、きゃぁ!」

 

そのままウルヴァリンはティーガーによって撃破された。

最後まで砲を撃ち続けていた戦車も全てヴィットマンに撃破され、残った車両はこの場から逃げる戦車ばかりだった。

 

「追うな!徹甲弾が無駄になる!」

 

「はぁ・・・やっと終わったか・・・」

 

乗員達は緊張が解けたのか、ゆっくりと呼吸し、息を整える。

彼等を見てみれば、頭から血を流し、あちらこちらで擦り傷が目立つ。

これは戦闘で負った傷ではなく単なる何処かにぶつけて皮膚が切れただけだ。

全員が水筒を手に取り、喉を渇かす。

 

「上手く行きましたが、頭をぶつけて目眩がしますよ・・・」

 

「はっはっ、私もだ。余りにも激しく動くから手の甲を切ってしまった」

 

手の甲に出来た擦り傷を見せて笑顔で言う。

その後、彼等の乗るティーガーは近くにあったガソリンスタンドで燃料補給を行った。

道中、幾つものゾンビと遭遇したが、残弾が残り少ない上、榴弾でばかすか撃つとまた中隊規模の戦車部隊と交戦する羽目になるので無視する。

暫くゾンビを無視しながら道を進む中、偶然にもWWⅡ時ドイツ軍の補給部隊を発見した。

 

「あれは友軍の補給部隊じゃないか!ライトで合図を送る、接近しろ」

 

そのまま補給部隊に近付いたヴィットマン達。

だが、その補給部隊は何者かに襲撃され、部隊にいた兵士は皆殺しにされていた。

 

「これは酷い・・・さっきの連中の仕業か・・・」

 

死んでいる兵士の見開いた目を指で閉じ、破壊され、炎上するSd.Kfz.252装甲弾薬運搬車やトラック、護衛の戦闘車両を見ながら彼はその場で立ち尽くす。

死んでいる兵士の服装から迷彩服や独自の野戦服の襟に縫い付けられているSSと言う文字を表すワッペンが付いていることから武装親衛隊と分かる。

 

「戦車長殿、武器弾薬は無事です!食料と燃料、衣服などは全て持ってかれていますが・・・」

 

弾薬を発見した装填手に気付き、振り返る。

 

「そうか・・・では、この戦友達を埋葬してくれ。人食い達に喰われては困る・・・」

 

その命令に装填手は従い、全員で補給部隊の兵士達の埋葬を行った。

弾薬の補充に武器を調達した後、再びエンジンを響かせ、黒騎士中隊との合流を急いだ。

数時間後、戦闘音を頼りに黒騎士との距離を縮めつつ、徐々に近付いていく。

そして、M4シャーマンと交戦している2両の戦車、ティーガーⅡとパンターG型を見つけた。

 

「見つけた!ティーガーⅡとパンターG型、同じ武装親衛隊の装甲部隊だ。敵戦車の後ろに回り込め!」

 

ヴィットマンは、交戦中の黒騎士を助けることにする。

後ろに回り込んだティーガーに、4両のM4シャーマンは気付いておらず、目の前のティーガーⅡとパンターに砲撃している。

 

「気付いてないようだな、ファイヤー!」

 

再び88㎜戦車砲が鳴り響き、黒騎士に近いシャーマンは大破した。

3両のシャーマンは、直ぐに砲をティーガーに向けたが、ヴィットマンの指示は、シャーマンの再装填が終わるよりも早く、撃破された。

残り2両は、ティーガーⅡとパンターの砲撃で撃破される。

邪魔なゾンビを機銃で殲滅した後、ヴィットマン達は黒騎士ことバウアー達との合流に成功したのだ。

ヴィットマンの姿を見た山本はかなり興奮、余りにも五月蠅いが為にバウアーの拳骨を頭に食らった。

そして合流した一同は、バウアー達が目指す場所へと向かったと言う……。

こうして、彼等の物語は一幕終わる。




やっちまった・・・ティーガーで生徒会の38t並に動かしてしまった・・・
そしてアメリカ戦車好きの皆様、ごめんなさい!(土下座)絶対に90㎜砲や120㎜砲を向けないで!絶対に!

ヴィットマンだから仕方がないと言う方に俺の戦傷勲章を授けます。

次回からは本編です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編
視点は少女に戻る。


前回までのあらすじ!

ようやく高城邸に到着した小室一行、ルリと冴子がはぐれてしまうというハプニングに見舞われたが、翌日到着。
安全な場所へと到達できた。
だが、彼等はこの家の者達、いや国枠右翼に呑み込まれようとしていた!

ようやく戻った本編、そして新キャラ追加。
RUSEのリヒター転移からです。


1945年 1月23日 アルデンヌ

 

この日、ドイツ軍の西部戦線における最後の攻勢は失敗に終わり、更なる被害を恐れたドイツ軍司令部は作戦停止命令を出した。

しかし、既に退却は始まっており、戦闘が終わったのは4日後の27日であった。

前線司令部にてこの報告を受けたドイツ国防軍の一将官に視点を当てる。

 

「リヒター閣下、国防軍司令部(OKH)より作戦停止命令であります!」

 

副官であろう佐官クラスの将校が、部屋に入り、将官に指令書を持って報告する。

 

「既に知っている。バストーニュから我が軍が撤退を始めている。もうこの作戦は失敗だな、そして総統閣下(マインフィーラー)は賭に負けた。これは敗北主義的発言だが」

 

「では、閣下も退避を!」

 

脱出を進める副官に対しリヒターは、飛来するB-17を見ながら再び口を開く。

 

「さらに続けるが、精鋭を失った我が第三帝国は後5ヶ月で滅びるだろう・・・日本も例外ではない、根強く抵抗しているようだが、後7ヶ月が限度だ。米ソの国力を甘く見すぎたな」

 

窓から、ドイツ軍陣地を爆撃するB-17を見ながら、副官の勧めを断った。

 

「私は軽駆逐戦車ヘッツァーに乗り込み、迫り来るアメリカ陸軍の機甲部隊を食い止める。君は残った兵力を集めてドイツ本土へ撤退したまえ」

 

このリヒターの言葉を聞いた副官は戸惑い、自分もリヒターについていこうとした。

だが、リヒターは副官を説得し始める。

 

「なら小官も!」

 

「いや、君は言われたとおりに本土へ撤退したまえ。そして力無き者を守るんだ・・・」

 

説得に応じた副官は、敬礼をした後、部屋を出た。

そしてリヒターは、外で待っていた自殺志願者の乗員達と共に軽駆逐戦車ヘッツァーに乗り込み、圧倒的な物量で迫り来るアメリカ陸軍に向かっていった。

 

暫く進んでいくと、先遣隊のM4A3E2ジャンボウ突撃戦車一両とM4A3シャーマン75㎜砲塔型中戦車が三両、M8グレイハウンド装甲車一両が現れた。

リヒターは突撃戦車の横のシャーマンに砲撃を命ずる。

48口径75㎜対戦車砲が火を噴き、リヒターが指示したとおりにシャーマンを撃破した。

僚車が撃破されると、ジャンボウはヘッツァーに向かってきたが、履帯を破壊され、側面を撃たれ、撃破された。

残りのシャーマンも全滅し、残ったグレイハウンドは逃げようとしたが、リヒターが逃すはずもなく、撃破されてしまう。

 

「よし。では、敵陣に突っ込もう」

 

そのまま敵陣へと向かっていったヘッツァー。

しかし、空から飛来してきたP-47Dがヘッツァーを攻撃、リヒターは燃え盛る車内で自分の死ぬのを待った。

 

「ここで終わりか・・・最後にもう一度、シェリダンに会いたかったな・・・」

 

死に際に言った後、目を瞑った。

しかし、彼は謎の光に包まれ、燃え盛るヘッツァーからリヒターは跡形もなく消えた。

そして、この死者が歩き回る世界に、リヒターが転移した。

 

「うう・・・ここは・・・?」

 

床主市、高城邸の近くで転移し、倒れ込んだリヒター。

 

「おかしいな・・・私は確かヘッツァーの車内で焼かれていたはずだが・・・?ここは・・・ヴァルハラか地獄のどっちだ・・・?」

 

辺りを見渡し、状況を把握しようとするが、突然後ろから来た人(暴徒)に気付き、不用意に話し掛けた。

 

「すみません、ここは何処でしょうか?」

 

もちろんパイパー然り、ドイツ語で話し掛けている。

相手が日本人なので通じるはずもないが。

 

「この野郎・・・頭のイカれたコスプレ野郎か。一思いに殺してやる」

 

リヒターも相手が話している言葉すら理解できないので、暴徒は彼に手に持った釘バットで襲い掛かった。

 

「うぉ!?何をする!」

 

いきなり襲われた為に、リヒターは、腰に差してあるルガーP08を取り出し、安全装置を外し、撃鉄に指を掛けた。

 

動くな(ハルト)!私はいつでも君を撃てる」

 

そう告げたが、ドイツ語であるために全く通じるハズもない。

 

「どうせモデルガンだろうッ?!さっさと死にやがれッー!」

 

飛んで、釘バットを振り翳そうとする暴徒にリヒターはルガーを向ける。

 

「(やもえん・・・殺すか・・・)」

 

そして何の躊躇いもなく撃鉄を引いた。

 

「ウゲェッ!!これは本・・・物・・・!?」

 

リヒターは堅いアスファルトの道路に倒れた暴徒に対し、眉間に向けてもう一発ルガーを撃った。

 

「悪く思うなよ・・・?」

 

そう言った後、ルガーを仕舞い、暴徒の死体から地図を拝借した。

 

「漢字とひらがなが書かれているからしてここは日本か・・・私は日本語は喋れないし、読めないのだが・・・」

 

地図に書かれている日本語が読めず、悩むリヒター。

その後、地図をポケットに仕舞い、高城邸に向かって行く。

 

「(ン?あれは白人の女性だ。何故こんな所へ?まぁ良い、欧州の大概の言葉は喋れる)」

 

たまたま見つけた白人の女性?に何の警戒もせず向かっていった。

 

「失礼、お嬢さん(フロイライン)。ここは一体・・・」

 

地図を出しながらよく見る日本に来た外国人の様に質問するが、女性が棒のような物で殴られ、意識が途絶えた。

 

そして翌日・・・・・・。

 

「ふわぁ~、ン・・・」

 

高城邸の中で貸し出された部屋に置かれたベットで目覚める美少女ルリ。

シーツを退けて、着替えを取ろうとする。

 

「顔を洗わないと・・・」

 

着替えを終えた後、ルリは部屋を出て行った。

一方、ワルキューレの本部である海上プラントでは新たな動きがあった。

基地の廊下を以下にも絵に描いたような女軍人が、ミリタリーブーツを鳴らしながら司令室に向かう。

ブロンドの髪を纏め、肌の色からして白人女性と見える。

顔も整っており、美人とも言える。

瞳の色はエメラルドグリーン、美貌もそれなりである。

着ている服は、濃い緑色の野戦服だ。

彼女の姿を見たワルキューレの将兵達はざわつき始める。

その女軍人の正体は・・・・・・!?




次週に続く!

はい、ようやく入った本編です。

今思えばルリちゃんの出番少なくねぇ?(PAM


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リヒター、高城邸へ。

中々投稿できない・・・


高城邸に近い場所にて、この世界に転移したばかりのリヒターは、白人の女性に殴られ、知らない場所の地面に倒れていた。

 

「ぐぅ・・・ここは・・・?そうか・・・私は・・・」

 

頭を左手でさすりながら、立ち上がる。

そして左手にこびり付いた自分の血を見ながら、思い出す。

 

「そうか・・・私はあのフロイラインに頭を・・・」

 

一連の出来事を思い出したリヒターは、辺りを見渡し、ルガーP08を抜こうとしたが、無いことに気付く。

 

「盗まれたか・・・やれやれ、拳か殴れる物で対処しなければならないな」

 

皮肉を言いながら、出口へと向かう。

そこから複数の男の声や銃声が聞こえてくる。

その声が聞こえる方に視線を向けてみると、ただならぬオーラを見せる屈強な男が日本刀でゾンビを次々と切り裂いていた。

 

「これが噂のサムライ・・・!」

 

その男がゾンビを切り捨てる様に釘付けになるリヒター、後ろから近付いてくるゾンビの気配に気付かずに、ただ男が戦う姿をマジマジと見ていた。

男はそれに気付いたのか、リヒターの方へ向かって日本語で叫ぶ。

 

「後ろだ!異国の者!」

 

「!?」

 

男が言っている言葉が分からないリヒター、そして彼から見れば男が襲い掛かっている様にしか見えない。

 

「私は害を与える人間じゃない!」

 

ドイツ語で言っているために男には通じない。

何事にも動じそうもない彼の頬を日本刀の刃先が掠め、後ろから噛もうとしていたゾンビの頭を串刺しにした。

彼の額から血に混じった汗が浸り落ちる。

直ぐに男の顔を見て、息をついた。

その男の表情は、戦場を駆け巡ってきた旧日本将兵の生まれ変わりのような表情をしている。

 

「壮一郎総帥!危ない!!」

 

男の部下らしい黒服の男が、声を掛けた。

リヒターを助けた男の後ろにはゾンビが居り、今にも彼を仲間に引き入れようとしていた。

部下の男はゾンビに体当たりし、地面にゾンビと一緒に倒れ込む。

 

「クソッ、銃が!」

 

体当たりした衝撃で、手に持っていたライフルkar98kを落とし、ゾンビを抑えながら拾おうとしたが、それで抑える力が弱まり、ゾンビに噛まれてしまった。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

壮一郎と呼ばれた男は近くに居たゾンビを排除し、彼の元へ向かおうとしたが、それよりリヒターの行動が早かった。

彼はkar98kを手に取り、ゾンビに肉を食われながらも引き離そうとしている壮一郎の部下を助けるために向かう。

金属類が付いている銃座でゾンビの頭を思いっきり殴り、壮一郎の部下を解放。

そして弾が入ってるかどうかボルトを引いて確認し、狙いを向かってきたゾンビに定め、引き金を引いた。

弾丸は真っ直ぐ頭部に命中、ゾンビは糸が切れたかのように倒れる。

次に狙いを定め、引き金を引いた。

弾丸が無くなるまで撃ち尽くすと、噛まれた男から弾薬を取って装填し、直ぐ狙いを付けて撃ち始めた。

この辺りのゾンビが全滅すると、噛まれた男に壮一郎が近付き、鋭い瞳から涙がこぼれ落ちている。

 

「もう私は駄目です・・・私を檻の中に閉じ込め、見せしめの代わりに・・・」

 

この部下の言葉通り、壮一郎は彼を檻の中に入れた。

彼は家族の名を言いながら、口から血を吐き、暫くしてから息絶えた。

 

「他に噛まれた者が居るか?!」

 

「居ません!噛まれた者は自決しました!」

 

「よし!物資を確保した後、廷に戻るぞ!」

 

「ハッ、総帥!」

 

壮一郎の指示で、部下達はこの辺りの物資を回収を始めた。

リヒターは頭に傷を負っていた為に、彼の部下から治療を受ける。

そしてライフルを持つ彼に英語で声を掛けた。

 

「英語は喋れるか?」

 

「もちろん、少し訛りがあるが」

 

「それなら話は早い、君も付いてきたまえ」

 

物資の回収が終わった後、壮一郎とリヒターは、車に乗り込んだ。

高城邸へ向かう車の車内にて壮一郎が自己紹介を始め、リヒターに質問する。

 

「私は右翼団体の総帥をやっている高城壮一郎と言う者だ。君の名とどうしてその格好をしているか、そして何処から来たのか問いたい」

 

壮一郎がリヒターの将官の野戦服を見ながら問う。

 

「まずは名前から、エーリヒ・フォン・リヒターだ。ドイツ国防陸軍所属、階級は元帥だ。何処から来たかと言うと、信じられないが1945年1月のベルギーからだ」

 

この返答に壮一郎は眉間にしわを寄せる。

 

「信じられないなら私を車から放り出せ・・・」

 

「いや、現状にも死者が歩き回っている。信じられん光景は世界の何処も彼処で起こっている有様だ。タイムスリップしたドイツ人が居るのも不思議ではない」

 

壮一郎が大笑いした後、リヒターもそれに便乗した。

そしてリヒターは、自分の戦歴を話し始めた。

 

「私の初の実戦は大戦前のスペイン内戦だ。士官学校を卒業したてだった私は当時新型のⅢ号戦車の戦車長をしていた。そして次は歩兵でベルグマンMP28を握りながら廃墟と化した戦場を駆け回ったよ」

 

「そうか、では、将官までに出世したのはどうしてだ?」

 

「東部戦線のブラウ作戦だ。あれで私は将官クラスに出世した」

 

転移するまでの経歴を話したリヒター、運転手がリヒターの話を聞いている壮一郎に知らせる。

 

「もうすぐ到着です。総帥」

 

「そうか。では、続きは廷内で話そう」

 

話は終わりと、壮一郎は思ったが、リヒターが思い出したかのように再び口を開いた。

 

「あぁ、忘れていた。済まないが白人の女をこの辺で見なかったか?私を襲ってルガーと帽子を取られてしまった」

 

「いや、見てはいない。それはそうとこの帽子は君の物か?」

 

壮一郎は答えた後、行方知れずとなっていた将官用の制帽をリヒターに渡した。

 

「ありがとう。帽子は見つかったが、ルガーは見つからなかったか・・・」

 

「君には貸しがある。是非部下にその女を捜させよう」

 

「いや、結構。こんな物騒な世の中だ、捜さなくて良い・・・」

 

壮一郎の提案を断ったリヒターは、帽子を被った。

車が高城邸に到着した後、廷内を見渡す。

 

「ようこそドイツの軍人。我が屋敷へ」

 

先に車を出た壮一郎の手をリヒターは取り、迎えの露出の多いドレスを着た彼の妻に、欧州風の挨拶をする。

ここへ避難してきた人々が、壮一郎と妻、そして異国の者であるリヒターに注目している。

屋敷のベランダから視線を感じたリヒターは、ベランダに視線を向けた。

そこには自分と同じドイツ人と敵対国であるソ連ことロシア人にアメリカ人、白人の少女が居た。

他は日本人の少年少女に金髪の成人女性だ。

 

「壮一郎、彼等は?」

 

「知らん。百合子、あのベランダに居る者達は?」

 

壮一郎の妻、百合子はベランダに居る小室一行の事を話した。

 

「そうか・・・では、後で彼等と話そう」

 

そう百合子に告げた後、避難者達を説得するべくある行動に出た。

リヒターは、その行動をただじっと見ていた。




リヒター&壮一郎回です。

次は問題は・・・あるかな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見せしめ

ドイツ語が出ます(は?

そして台詞が改変あり・・・(記録が乏しい・・・


リヒターは、集まる避難民の前で、堂々と立って、演説をしている壮一郎に視線を集中していた。

そしてフォークリフトが猛獣用の檻を壮一郎の元へ運んできた。

中には一体の黒服を纏ったゾンビが鉄格子を叩いて中から出ようとしている。

先の物資調達で壮一郎を庇い、ゾンビに噛まれた彼の部下だ。

ベランダからは小室一行が様子を伺っている。

 

「まさか・・・」

 

壮一郎の行動にリヒターはあることを思いついた。

それは見せしめの為に元部下のゾンビをここの群衆の目の前で殺す事、そして彼の予想通り、壮一郎は鉄格子に囚われていたゾンビを解き放つように近くにいる部下に命じた。

 

夫人(イーレフラウ)百合子、まさかと思うが子供が見ている前で・・・統治者(ヘルシャー)壮一郎はあの生ける屍の首を刎ねるおつもりか?」

 

隣で見守る百合子に質問した。

彼女も分かっていたらしく、それを冷静に答える。

 

「えぇ、壮一郎さんは元からそのつもりでしょうね」

 

「あの者達に取っては、正気の沙汰ではないと思うが・・・」

 

百合子の答えにリヒターは、演説をする壮一郎を嫌な目で見る左翼団体こと市民団体の人々を見た。

そして檻から鍵が外されると、中にいたゾンビは扉を開けて壮一郎に一直線に襲いかかる。

壮一郎は腰に差した刀を抜き、ゾンビの首を飛ばした。

その時、赤子を抱いていた女性が哺乳瓶を落とした為か、壮一郎以外の全員の視線が落ちた場所に向かう。

直ぐに壮一郎に視線を戻したのは、リヒターと百合子だけであった。

頭を飛ばされた死体は壮一郎の前に倒れ込んだ。

赤子が泣く中、ゾンビの頭は廷内の噴水に浮いていた。

ベランダに居る全員は噴水に視線を集中する。

その死体を見た後、壮一郎は集まる避難民に視線を移し、演説を再開した。

 

「素晴らしい友、愛する恋人に家族であった者でもあろうと躊躇わずに倒さなければならない!生き残りたければ・・・戦え!!」

 

演説を終えた後、壮一郎は刀を鞘に戻し、百合子やリヒター、部下達と共に無言で去っていった。

壮一郎の行為を見ていたリヒターは「これは逆効果だ」と市民団体を見ながら彼に伝えた。

 

「失礼、ヘルシャー壮一郎。あれはあの平和主義団体からして、逆効果だ。あの者達は生ける屍をまだ人間と思っている」

 

「承知の上だ、我が友リヒター」

 

答える壮一郎に便乗するように百合子が答える。

 

「壮一郎さんも分かっています。あの市民団体の皆さんがこの世界の現状を理解したくない事を・・・」

 

さらに百合子は続け、リヒターはそれを黙って聞く。

 

「それでも例え一人でも理解できれば、それで壮一郎さんと私達に取っては喜ばしいことです」

 

その答えにリヒターは、感激した。

 

「貴方達は立派な日本人だ、私も敬意を評そう。それよりも今の日本には、軍は存在するのか?」

 

歩きながら壮一郎と百合子に、今の日本について質問する。

第二次世界大戦末期、首都ベルリンをソ連赤軍の津波に呑まれ、ドイツ第三帝国は敗北し、欧州における戦争は終結した。

ドイツ敗北から三ヶ月後、太平洋における戦争は大日本帝国の敗北で終結。

その際日本は屈辱的な条約をアメリカに結ばれ、軍隊を取られてしまった。

数十年後、日本の統治から外れた朝鮮半島で、戦争が起こり、その際アメリカから防衛戦力を再建するように言い渡された。

それが後の自衛隊である警察予備隊の創設である。

そして冷戦の影響下でさらに防衛戦力の拡大に伴い、自衛隊と成った。

冷静終結後の現在隣国の危険性も含めてなのに予算が削減されている・・・・・・。

それとマッカーサーのアテは外れた・・・・・・。

 

一方、ベランダでは、小室一行の一人であるコータの様子がおかしかった。

 

「刀じゃ効率が悪すぎる・・・」

 

壮一郎の行為を見ていたコータはボソリと呟いた。

それを冴子が前に出て意見した。

 

「決めつけが早すぎるよ平野君」

 

「でも、日本刀の刃は骨に当てたら欠けますし、3、4人も切ったら役立たずに」

 

「たとえ剣の道であっても結果とは乗数なのだ。剣士の技量!刀の出来!そして・・・精神の強固さ!!この3つが高いレベルにあれば何人切ろうが刀は戦闘力を失わない!」

 

その冴子に乗じてパッキーが付け足す。

 

「その大和撫子の言うとおりだ。優秀な兵器は、優秀な人材に寄ってさらにその性能を格段に上げる。違うか?」

 

パッキーが日本刀を兵器に例え、意見を述べた後、次に正徳が口を開く。

 

「確かに刀は3、4人を斬っただけで終わる・・・だが、冴子嬢とパーキンスの言うとおり技量と高い精神力があれば刀は何度でも斬ることが出来る!」

 

刀を持つ2人は、コータの意見を否定した。

 

「血油に勝てる訳が・・・」

 

「料理と同じだよ、良い包丁を腕の良い職人が用いた時刃に余計な油が残らない、日本刀と人体でもその理屈はかわらん」

 

「でも、でも銃の方が効率が良い!銃の方が奴らから距離を保てば安全に始末できる!」

 

コータは銃の素晴らしさと効率の良さを口で述べる。

周りにいた軍人達は、そのコータの言動に呆れて物が言えない。

そんな彼を追い詰めるような発言をルリはしてしまう。

 

「でも鉄砲なんて弾が切れたらただの長い鈍器だよ」

 

「ッ!?」

 

その発言に動揺するコータ、さらにルリは続ける。

 

「それに一々整備しないと行けないじゃない。こんな世界でそれをする暇なんてあるの?少ないでしょう。まぁ、弾が切れたら殴ればいい話だけど」

 

愛らしい表情で言われたコータはショックを受けた。

呆然とする彼に孝が声を掛ける。

 

「お、おい。平野・・・もういいんじゃ・・・」

 

宥めようとする孝の手をコータは振り払った。

 

「煩い黙れッ!銃を禄に扱えない奴が言うな!それに小娘共もだ!お前とお前!」

 

コータの堪忍袋の緒がキレたのか、孝を罵倒した後、ルリとバウアーを指差し叫ぶ。

 

「銃を大事に扱えない奴が!誰が整備してやがると思ってんだ!自分の愛銃なら整備しろ!それに鈍器代わりにするな、ボケェ!!それにそんな格好しやがって!ガン少女のつもりか!?この淫売が!!」

 

「平野!あんたいい加減に・・・」

 

それを見ていた沙耶は止めようと思ったが、ルリとバウアーを罵倒した後、部屋を出て行った。

その場の空気が悪くなり、軍人達はコータの行動に唖然する。

原因を作ったルリはと言うと、何が起こったのか分からなかった。




次回は高城のパパとリヒター登場。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

説得

先のコータの行動により、皆が次々と部屋から出て行く。

ベットで寝ていた麗は、孝に呆れており、虫の居所が悪い。

尤も呆れられたのはルリであるが、彼女は全くそのことを分かっておらず、ただ可愛らしく小首を傾げ、幼児の様に人差し指を咥えていた。

退室しなかったパッキーが、そんな孝に声を掛ける。

 

「小室」

 

「なんですか・・・?」

 

「平野のことだが、頼んだぞ」

 

顰めた表情になり、視線をパッキーからそらす。

 

「僕に・・・出来るでしょうか・・・」

 

「出来るさ。お前は今までどれだけ彼と共に戦ってきた?俺の経験からして、意見は食い違いなんて良くあるさ」

 

孝が振り返ったパッキーの表情は笑顔だった。

その後。パッキーは退室する。

 

「お兄ちゃん、コータちゃんと仲直りするの?」

 

隣でありすが孝の腕を引っ張っており、それに対し、彼女の視線まで屈む。

 

「必ず仲直りしてみせるよ」

 

「できるよ!お兄ちゃんもコータちゃんも。沙耶ちゃんのおうちに来てホッとしただけだもん!」

 

その無垢な笑顔で孝は勇気づけられた。

ありすはコータの方へと走っていく。

 

「大した子だよ・・・目の前で親が殺されて、こんな地獄にいるのに笑顔でいれる・・・」

 

「この子もこの子なりに強くなったのね・・・」

 

孝の言葉に麗は便乗する。

 

「さて、ルリちゃんにも一緒に謝って・・・」

 

その場に居たはずのルリを連れて行こうと思ったが、既にこの部屋には居なかった。

 

「麗、ルリちゃんは?」

 

「え?知らないわよ。さっき私の身体を触ってたから、振り払ったら何処かへ行っちゃった」

 

詳細を聞いた後、ルリを捜すのを兼ね備えて部屋を出た。

一方、リヒターは高城邸の屋敷で歴史書を全て通訳を通じて知った後、通訳に礼を言ってから部屋を出る。

 

「(今のドイツは平穏か・・・しかしこの現状では平穏とは呼べんな)」

 

心の中で皮肉りながら廊下を歩き、用意された部屋まで行く。

途中、3挺ほどの銃を抱えたコータと肩をぶつけた。

 

「うわぁ!」

 

ぶつけた衝撃でコータが転び、抱えていた銃が散らばる。

 

「あぁ、失礼・・・」

 

リヒターはコータに謝ったが、彼は銃を拾った後、誤りもせずその場から去っていった。

彼が走ってきた方向から複数の構成員がやって来る。

 

「何かあったのかね?」

 

質問をしてみたが、構成員全員は英語が理解できなかったらしく、リヒターを立たせた後、コータの後を追って行く。

再び自分の部屋に向かうところであったが、途中にルリを見つけた。

 

「(白人の少女・・・在住の娘か?それにしては美しい・・・まるで花のようだ・・・)」

 

ルリの美しさに見取れていたリヒターであった。

直ぐに声を掛けて、彼女の事を聞き出そうとした。

 

「(あの容姿なら母親も大変美しいだろう・・・)失礼、お嬢さん(フロイライン)。今、御暇ですか?」

 

その言葉に一瞬、リヒターの方に視線を向けたが、ルリは急いでいるらしく、彼を無視して、走り去っていく。

 

「軽率すぎたか・・・」

 

自分の行いに後悔するリヒター、再び部屋へ向かおうとしたが、ルリが向かった先から大きな物音が聞こえてきた。

様子を伺う為にルリが向かった先へと足を走らせた。

 

「これは・・・何事か・・・?」

 

向かった先で、壮一郎がルリを猫の様に掴んでいる光景がリヒターの目に入った。

隣に奥方である百合子まで居る。

 

「どうした。美しい少女をまるで飼い猫の様に掴んで」

 

直ぐに壮一郎に質問するリヒター、気付いた壮一郎はそれに答える。

 

「来ていたか我が友リヒター。この娘から武器を取り上げるのに部下が手こずっていたのでな、私が代わりにやった」

 

壮一郎の答えにリヒターは少し混乱したが、床に落ちていたルリが持っていた銃が落ちていた。

彼女の表情を伺う限り、壮一郎に挑んで返り討ちにされたみたいだ。

その証拠に、床には園芸用の鎌が、銃と共に落ちている。

 

「総帥!」

 

突然、部下が、この場の空気を壊すかの様に壮一郎に声を掛ける。

 

「なんだ?」

 

「沙耶お嬢様のご友人が銃を放しません!」

 

「直ぐに向かう!我が友リヒターよ、君も来たまえ。丁度良かっただろう」

 

直ぐにリヒターは壮一郎の誘いに応じた。

もちろんルリは壮一郎に掴まれたままで、その表情は、何かと残念そうな顔をして涙している。

そしてコータが銃を抱えて放さず、複数の男に囲まれている光景に出会す。

 

「君が友人か?!私は高城壮一郎、憂国一心会会長だ!少年、名は?」

 

壮一郎が現れた所でコータの顔が一気に絶望的に変わり、目から涙を流し、鼻から鼻水が垂れる。

一方の壮一郎は、ルリを掴みながらもコータに名を問う。

 

「ひ、平野コータ!藤美学園2年B組!しゅ、主席番号は32番ですぅ!」

 

コータから名を聞いた後、ルリを掴んだ左手を上げ、抵抗は無駄と表す。

 

「よし、コータ!この少女は私に無謀にも向かい、返り討ちにされた!それでも君は銃を渡すのを拒むか?!」

 

「バタン、キュ~・・・」

 

哀れなルリの姿を見たコータは動じず、銃を抱え、蹲る。

 

「イヤです!ダメです!銃が無くなったら・・・・・・俺は・・・・・・俺はまた元通りになる!元通りにされてしまう!自分に出来ることがようやく見つかったと思ったのに!」

 

ルリよりも哀れな醜態を晒しながらも自信の主張を曲げないコータ、それに対し壮一郎も睨みを強める。

そんな彼等を、リヒターは黙って見ていた。

 

「待ってください!」

 

声が聞こえた後、孝がリヒター達に近付いてきた。

それに気付いたコータが、彼の名を泣きながら言う。

 

「小室・・・」

 

「小室・・・なるほど・・・君の名前には思い入れがある。沙耶とは長い付き合いだったな」

 

壮一郎の話を聞きながら孝は前に出た。

 

「はい。ですがこの地獄が始まってから沙耶・・・貴男のお嬢さんを守ったのは貴男の手に捕まっているルリと平野です!」

 

冷や汗を流しながらも言い切った孝、それに対し壮一郎は黙る。

 

「彼等の行動は自分も見ています」

 

孝が来た方向から冴子が来て、声を掛ける。

彼女だけではない、小室一行であるありすがジークを抱えながら来た。

麗は鞠川に抱えながら来ており、沙耶も居る。

それだけではない、1943年の東部戦線から転移した独ソ兵士等やキャット・シット・ワンのメンバー達、末期の第二次世界大戦からバウアーも来ている。

 

「貴男の娘の話を聞いてください」

 

「これはこれは、わざわざ会う手間が省けた」

 

正徳が言った後、その集まりぶりを見たリヒターは感激する。

 

「あたしもよ、パパ」

 

自分の父親の前に立つ沙耶、父である壮一郎は黙って聞いていた。

 

「どうしようもないちんちくりん軍オタだけど、こいつが居なかったら、あたしは今頃奴らの仲間よパパ!」

 

そのまま沙耶は臆することもなく言い切る。

 

「こいつだけじゃない、パパが掴んでるそのムカツク電波娘も何処から来たのか分かんない兵隊達だって私達を守ってここまで導いてくれた!あたし達を守ってくれたのは彼等よ!パパじゃなくてね!」

 

その成長した娘の言葉に母親である百合子は感激した。

 

「壮一郎さん・・・」

 

「よし、沙耶の意見を通そう!銃の所有を許可する!そして私の部下に手を出さないと約束しよう!!」

 

この屋敷の主であり、この地区最大の右翼勢力憂国一心会会長である壮一郎は、ルリを下ろし、小室一行に銃の所有を許可した。

黙ってみていたリヒターは感動し、拍手する。

 

「素晴らしい!君達のその行動、感激した。是非、私にも名を名乗らせてくれ。私の名はエーリヒ・フォン・リヒター、そこにいる転移者諸君と同じく1945年1月のアルデンヌからやって来た。よろしく頼む」

 

「ゲェ!?あのヤーパンに気を取られて気付かなかったが、またファシストが出てくるなんて!」

 

ゴロドクが、気付いたそうそうリヒターに文句を付ける。

ドイツ軍人達は敬礼し、キャット・シット・ワンのメンバー達は聞こえないように小声で話し合う。

末期の大戦から来たバウアーは、ローマ式の敬礼をした。

 

「ジーク・ハイル!」

 

「その敬礼はしなくて良いフロイライン」

 

言われたバウアーは敬礼を止めて、従来の敬礼にし直し、名前に階級と所属を言う。

 

「バウアーです!階級は臨時少尉、所属は第12SS装甲師団です!」

 

「ヒトラー・ユーゲントか・・・こんな少女まで徴兵されたとは・・・末期か・・・」

 

それを聞いたリヒターは、自分の不甲斐なさを悔しむ。

 

「実戦は経験しておりません・・・Ⅲ号突撃砲の臨時車長をしてました」

 

「君のような少女が戦場出てないだけでマシだ・・・さて、そこのフロイライン。質問に答えて貰おう」

 

バウアーの戦歴を聞いた後、次にルリに目を向け、彼女に質問した。

 

「その目は、明らかに戦場を経験している目だ・・・そしてそれなりの人間を殺めている・・・」

 

「へぇ・・・!?ッ・・・!?」

 

この言葉にルリは、下を俯き、動揺する。

リヒターも、周りの視線を悟り、これ以上の追求は自分を追い込める物と判断し、ルリへの尋問を止めた。

 

「これ以上の追求は、私の印象を悪くする。済まなかった」

 

ルリの目の前に立ち、頭を下げた。

一部始終を見ていたゴロドクは小声で「酷い奴だ」と敵であるハーゲンに告げた。

これに対しハーゲンの返答は「知らん」の一言だったと言う。




二回目の更新でございます・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これまでの登場人物2

また登場人物・・・そしてコピペあり。


原作勢

 

高城壮一郎

憂国一心会会長で沙耶のパパ。

大日本帝国時代の軍人で体格が凄まじく、ルリですら恐れるような存在であり、原作勢で唯一源文勢と肩を並べられる程の実力者。

奴ら発生の際に日本政府よりも早く行動し、奴ら侵入を防ぐべく、自信の屋敷を強固な要塞かつ拠点に変えた。

人脈もあり、妻や部下達にも慕われ、圧倒的な強さ、カリスマ性を持っている。

まさにチート的な存在である。

ちなみに中の人は、英国の笑顔の絶えない職場に勤務している現ゴミ処理屋でラスボスみたいな人と一緒。

 

高城百合子

壮一郎の妻で沙耶のママ。

容姿端麗かつ夫と同じく強い、かつてはウォール街で名を馳せた凄腕のトレーダーだった。

管理職の護衛コースで銃器の扱い経験においても壮一郎以上。

それらの手腕を振るって築き上げた高城家では壮一郎の傍に仕え、彼に次ぐ存在として皆を纏め上げている。

高城邸の道中で奴らに追い込まれていた小室一行を、一団を率いて助けた(どうして早く動かなかった?!)。

ちなみに中の人は現ゴミ処理屋の上司で、ヘルシング家の当主。

スタッフめぇ・・・ネタを使ったな・・・!

 

その他

 

桂言葉

School Days のヒロインの一人。

榊野学園高校一年、腰まで届くストレートロングヘアや他のヒロインのバストが、小さく見える程のビックバストッ!(スピードワゴン風に

趣味は読書で、スプラッター映画とホラー映画、後ゾンビ映画を大好き。

虚弱体質なので体育は苦手なのに、この作品ではDIO以上な運動能力を凸凹コンビに見せ付けている。

豪華な一軒家に共働きの両親や妹の心と4人で暮らしているが、その裕福さゆえに家族以外の他人との会話では、稀に金銭感覚の差異が生じることがある。

その容姿の所為で男子達からからかわれ、軽度の男性恐怖症に。

女子達からも嫌われているが、同性との友情を尊ぶ一面も持つ。

本作においては、制作者のゾンビ好きあって、世界共通で登場。

彼女以外の登場人物は皆ゾンビにされるか、学園を襲撃してきたワルキューレの隊員に殺された。

この時、彼女に隠されていた驚異的な能力を覚醒し、同時にディオ以上の残虐性と異常性を身に付け、ワルキューレの隊員を圧倒。

偵察に来たZbvの一個分隊をわずか5分で全滅させ、凸凹コンビを追い詰める。

この先の展開では、吸血鬼状態のDIOの能力に覚醒させる予定。

理由はラストが、ジョジョの奇妙な冒険第一部と同じだからである。

 

宮藤芳佳

パンツアニメで有名なストライクウォッチーズの主人公。

扶桑皇国海軍並び第501統合戦闘航空団が誇る淫獣である。

転移時期はアニメ本編終了後、その他のウォッチと共に転移した。

全く台詞が無かったが、後々登場。

 

ゲルトルート・バルクホルン

第501総合航空団が誇るシスコン、妹が居る。

現実主義者で、固有魔力で大男を吹き飛ばす程の怪力を有している。

模範的なカールスラント軍人だが、妹や、それを思わせる年頃の少女には極端に弱く、それらが絡むといつもと正反対の節操の無い行動に出てしまう。

ルリと会ったら、えげつない事になりそう。

 

エーリヒ・フォン・リヒター

ドイツ軍将校。

スパイ・プロメテウスからの「完璧な情報」を背後に、連合軍やシェリダン率いる米軍と死闘を繰り広げる。

転移した時期はバストーニュの戦いの最終局面。

撤退する友軍の時間を稼ぐべく、圧倒的な米軍に対し、自殺志願者等と共にヘッツァー一両で特攻。

航空機の攻撃で乗車が大破、車内で炎に焼かれるハズであったが、学黙の世界に転移し、高城家にお世話となる。

中の人が藤原啓治で、性格が戦国BASARAのボンバーマンひろしにやや似ているが、そんなに冷酷ではない。

 

 

 




次も書きます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雨の静けさ

その頃、ゾンビ掃討が終わった四国でも新たな動きがあった。

自衛隊が駐在する空港にて、民間軍事会社PMC所有のCH-47チヌーク数機が着陸した。

 

「お、なんだあのチヌーク。空自かアメリカの物か?」

 

駐在していたオメガ・グループの一団の一人、小松がチヌークを見て口を開く。

 

「違うだろ、良く機体を見てみろ。所属が違うだろう」

 

隣にいた平岡が指を差して小松に言う。

二人の後をついてきた田中もチヌークを見ていた。

 

「これは・・・エグゼクティブ・アウトカムズの流れを組むとされるPMC、アーミット社のヘリですよ!」

 

「民間の軍事会社かよ・・・おい、田中。そのアーミット社と言うのは?」

 

田中が言ったことに質問する小松、田中は直ぐに説明する。

 

「エグゼクティブ・アウトカムズ社、通称ED社が潰れてから1年足らずで出来た民間軍事会社です。噂では元ED社の社長か社員が興しただと噂されます。西側の兵器を入れて分かり難くしてますが、実際はED社と変わらず東側の兵器ばかりですよ」

 

この説明に小松と平岡は「へぇ~」と感心するだけであった。

ヘリから複数のコントラクターが降りてくる。

その列の中には若い男女や少女も含まれており、何人か日本人顔も居た。

それが目に入った小松は、直ぐに田中に問う。

 

「おい、田中」

 

「まだなんかあります?」

 

「あれって、労働基準法に違反するんじゃないのか?」

 

「どれどれ?」

 

小松が指を差した方向を見る田中、直ぐに少女を見つけ、口を開いた。

 

「ホントだ、あれは確実に訴えないといけませんね~」

 

それに対し、平岡が口を挟む。

 

「訴えるって、何処の裁判所に申し付けるんだ。ゾンビがわんさか居るこの世界で、何処の裁判所も休業してんじゃないのか?」

 

「確かにな。あ~あ、俺の借金も消えてくれないかな・・・?」

 

「僕も、皮肉にもこの世界に感謝してます」

 

彼等は、アーミット社のコントラクター達を眺めた後、自分達が所属するオメガ・グループの指揮所に戻っていった。

一方、ワルキューレの本部でも、新たな動きがあった。

新しい司令官アレクサンドラが交代で着任し、部隊配置が円滑に成ったからだ。

前任者であったハナは、移動となる。

ハナの倍はある180㎝の高身長な彼女は、元ロシア軍の大尉。

実戦経験もハナの倍であり、戦場のイロハも熟知している。

 

「じゃあ、私はハワイでバカンスしてくるから日本はお願いね~後アニメのグッズにDVDとBDとか、回収しといて。じゃぁ~ね」

 

鞄を持ち、菓子を食べながら司令室を出て行くハナ、見ていたアレクサンドラは椅子に座り、指揮を執る。

実戦経験のある現場指揮官の指示は正しく、これまで鎮圧に時間が掛かっていた地域が僅か一時間に加速し、部隊の行動速度も速くなった。

 

「あの人、指揮力半端無いね?」

 

「可愛く無くなったけど、ちょっと格好いいかも・・・」

 

目に入れても痛くない容姿のオペレーター達が、新しい司令官であるアレクサンドラの指揮の高さを語り合う。

 

「そこ、無駄口を叩くな!現場に指揮を伝達しろ!」

 

感づいたアレクサンドラは、そのオペレーターを注意した。

 

「勘も鋭いね」

 

「うん」

 

注意されたオペレーター達は、彼女に聞こえないように小声で言った後、仕事に戻った。

 

「(それにしても何故あの床主だけ鎮圧速度が遅い・・・?他の県や地域はほぼ鎮圧できてる・・・そしてあの地区だけ被害が多い・・・どういう事だ?)」

 

床主の鎮圧できないことを疑問に思うアレクサンドラ、直ぐに地区担当者に問い質す。

 

「どうしてあの地区だけ、完全に鎮圧できない?それに損害が大きい・・・資料を見る限りとても歩く死人の仕業とは見れんが・・・」

 

この質問に担当者は戸惑う。

暫し担当者は部下達と議論した後、司令官であるアレクサンドラに答えた。

 

「あの地区とその付近で被害が多いのは事実です。偵察機や目撃者の報告によれば、タイガー戦車を見たとか、美少女の姿の化け物が殺し回ったとか・・・色々です」

 

答えを聞いたアレクサンドラは、暫し黙り込み、口を動かす。

 

「その報告書を提出しろ、それに目を通して対策を練る」

 

これを聞いた担当者は、直ぐに報告書の作成に入った。

そして床主の高城邸では、雨が降り注ぐ中、孝と沙耶が避難キャンプに居る市民団体の皆様の説得を行っていた。

何故かゴロドクも居る。

 

「まぁ、あの暴力男の娘ですわ!」

 

三人を白い目で見る女は、キャンプ内に居た他の団体員と一緒に騒ぎ出す。

 

「私達は説得に来ました。決して従わせる為に来たわけではありません・・・」

 

そう沙耶が言うも、市民団体の皆さん方は全く話を聞こうとはしない。

 

「全く現状が見えてないようだな・・・」

 

「仕方ないわよ、世界がこんな状態になったんだから・・・あの人達はみんな今の現状を理解したくないのよ」

 

「そう言う意味か・・・」

 

孝は沙耶の皮肉に納得し、暫し騒ぐ市民団体の虫けら共を眺めていた。

煩すぎたのか、ゴロドクは前に立った。

 

「ふ~ん」

 

大きく息を吸った後、何かを言おうとした。

ゴロドクは日本語なんて喋れない、もちろん英語も、登場で黙った左翼の皆さんに叫んだ。

 

「この敗戦主義社め!現実を見ろ!!」

 

思いっきりロシア語で叫んだ為、全く通じず、当然のことながら非難を浴びる。

 

「この男もあの男と同じ過激思考を押しつけようとしてますわ!」

 

左翼団体は騒ぎ始めた。

逆ギレしたのかゴロドクは拳銃を抜こうとしたが、沙耶と孝に止められる。

これ以上の説得は無理と判断した三人はテントの外に出た。

 

「失礼な連中だ、現実を教えてやってるのに無視しやがる。あんな連中は放って置いて良しだ!」

 

傘を片手に差し、イライラしながら邸宅に入っていった。

ロシア語で言ったので、英語しか分からないあの者達には通じないが。

向かってる最中に、壮一郎の部下に案内される紫藤が目に入り、思わず声を出す。

 

「なんだあのいけ好かない奴は・・・?」

 

言葉の壁に阻まれているので、孝と沙耶からすれば何を言ってるのか分からない。

そのまま三人は、邸宅に入って行く。

入った後、頼んだ張本人である百合子が沙耶に結果を聞いてきた。

 

「どうだった?沙耶ちゃん」

 

「駄目だったわママ、あの人達全く話を聞かない。勝手に来たロシア人のおっさんの所為で失敗よ」

 

百合子はゴロドクと、隣で苦笑いをする孝を見ながら自信も苦笑いして、沙耶に優しく叱った。

 

「いくら言葉が通じないとはいえ、このロシア人の方を悪く言う物じゃありませんよ。沙耶ちゃん」

 

「分かったわよ・・・ママ」

 

「(こいつ等の言ってることがさっぱり分からん。こうならない為にも大学に行くべきだった)」

 

彼等の言葉が分からないゴロドクは心の中で悩むのであった。

隣にいた孝も、そんな彼の状態を直ぐに理解する。

 

「(この人もこの人なりに悩んで居るんだな・・・)」

 

しかし、孝は説得に失敗した事と勘違いしている。

部屋に案内された紫藤は、壮一郎と何故か居るリヒターとの会談を行っていた。




次回、源文勢と紫藤との対決編。

ちなみに死亡フラグじゃないよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゲロ以下の男

スピードワゴン「こいつはクセえーッ!ゲロ以下の臭いがプンプンするぜーッ!!こんな悪には出会ったこともねぇほどになーッ!」

アニメの影響下でジョジョの単行本を買って、年末を過ごそうと考えています。
紫藤制裁回です、はい。

そして最初の部分のエロ注意なのか・・・?


先程は天候が悪く、雨が降り注いでいたが、雨雲が何処かへと流れていくと同時に雨は止んだ。

外では太陽の光が差しているが、孝は麗が居る部屋に居り、もちろん彼女も居た。

互いに目線を合わせ、第三者から見ればそれは恋人とその物であった。

その第三者が自分達が座るベットの下に潜んでいるとは、夢にも思わないが。

そして第三者の正体はルリである。

何処からか拾ってきた鏡で2人が寄り添うところをマジマジと見るルリ、もちろん孝と麗は全く彼女の存在に気付かない。

 

「女の子のルールを教えてあげる・・・」

 

「ルール?」

 

「そう、ルール。女の子は、可愛がってくれる男と守ってくれる男が好きなの・・・」

 

「(ほぉ~このままヤっちゃう?)」

 

鏡から見える2人の行動にルリは期待する。

それは麗が猫の様に孝に寄り添い、ルリから見て、誘っているように見える。

暫ししてから、孝は理性が飛んだのか、麗に抱き付き、キスをした。

もちろんそのベットの下に隠れているルリにもその衝撃が来る。

 

「きゃん・・・!」

 

「今のは麗か・・・?」

 

麗の唇から離した後、孝はルリの存在に感付く。

 

「違う・・・私じゃない・・・」

 

彼女もルリの存在に気付きつつある。

 

「(気付かれちゃった・・・?)」

 

ベットの上で、2人は部屋を見渡し、声の主であるルリを探す。

一方のルリは、鏡で2人の様子を伺い、諦めるのを待ち、「どうか気付かない様に」と息を殺して孝と麗に願っている。

その時、着物姿の冴子が部屋に入ってきた。

身を潜めているルリに取っては有り難いのか、有り難くないのか良く分からない光景だ。

 

「済まない・・・邪魔をしてしまって・・・」

 

「いえ、そう言う事じゃないんです・・・」

 

「(え、これって・・・三角関係・・・?)」

 

気まずい所を見せてしまった孝は、冴子に謝っているが、ベットの下のルリは何か勘違いしている。

そして驚く余り、音を立ててしまった。

直ぐに気付かれ、声を掛けられる。

 

「そこにいるのは・・・?」

 

着物姿のままで冴子が体勢を床まで屈み、ベットの下を覗いた。

 

「君は気配を消すのが上手いな」

 

そこで小動物のように、俯せで震えているルリを見つけた後、彼女を何故か褒めた。

大人しくベットの下から出てくる。

 

「(潜んでいたのか・・・やっぱり何を考えているか分からない娘(こ)だ・・・)」

 

孝は今までルリを怪しんでいたが、この行動を見て自分が考えていた物とは違うと判断した。

立ち上がった彼女はこの部屋に居る全員を見た後、顔を赤らめ、飛んでもない事を発言する。

 

「4P・・・しますか・・・?」

 

この発言で冴子は何を言ってるのか分からなかったが、コータから聞いたことがある孝に、その意味が分かる麗は顔を赤らめ、ルリを叱った。

その後、4人は準備を整え、いつでも出られるような準備をしていた。

孝はリュックサックを担いで、外へ出ようとしており、それが目に入ったM1A1スーパーマッチを持ちながら、麗は声を掛けた。

冴子とルリはと言うと、着替えている。

 

「孝、何処行くの?」

 

「ああ、高城の親父さんと話して、好きにしても良いって言われたから行くつもりだよ。ハーゲンさんとゾーレッツさん、バートルいや、川島さんが協力してくれる」

 

聞いた後、外を見てみると、ハーゲンとゾーレッツ、正徳がストレッチをしていた。

装備も万端で、接近専用の為の軍用スコップが腰に装着され、行く気満々だ。

外されたゴロドクは灰皿片手に寝転びながら煙草を吸って、まだ18歳なバウアーはボールでアリスやジークと一緒に遊んでいる。

 

「随分と賑やかな光景ね・・・」

 

その光景を見ていた麗は、苦笑いする。

キャット・シット・ワンのメンバーはラジオを聞いたり、ポルノ雑誌を見ており、覗きに来たコータが鼻血を吹いて庭に倒れ込む。

彼女の言うとおり、賑やかであった。

 

「私も行こう」

 

「私も、私も!」

 

廊下の方から冴子とルリの声がした為、振り返る孝は驚く。

まず冴子の格好は、外で暇そうにしていた男性陣を声を上げるほどの服装で、腰に日本刀を差している。

セクシー侍っと言ったところだろう。

次にルリの格好は完璧にゴスロリであり、「探す気あんのか、コラ!」と呼べるぐらいの服装だった。

色気も全く無く、ロリコンしか喜ばない格好なので、男性陣は物との作業に戻る。

 

「・・・毒島先輩とルリちゃんもですか?」

 

「ああ、いくら川島さんが居るとはいえ、小室君は川島さんと共に戦ったことはないだろう?」

 

その光景を見ていたゾーレッツと川島は、ハーゲンから離れていった。

通訳にルリと、前衛に冴子が居ればハーゲンと孝だけで純分と考えていたからだろう。

外に出た4名は、麗も一緒にハーゲンの所へ行き、孝と麗の両親捜索のプランを話し合う。

 

「そう言えば親父さんが足を用意してくれるって言ってたしな」

 

「足って?」

 

「さぁ・・・近くで回収したバギーと聞いていたけど・・・まぁ、車庫に着けば分かることさ」

 

「(駄目だ・・・日本語が分からない・・・)」

 

会話を見ていたハーゲンは、理解できなかった。

ルリの方を見て、「通訳してくれ」と表情で要請する。

 

「え~と、バギーでコムッチと麗ちゃんの両親を捜しに行くってさ」

 

ありがとう(ダンケ)、ルリ」

 

礼を言った後、麗の様子がおかしいことに感付き、彼女が視線を向けてる方向を見ると、その方向にはリヒターと紫藤が並んで歩いており、後ろには壮一郎の部下が居る。

その2人は英語で会話していた為に、尉官のハーゲンも何となく理解できた。

麗は表情で怒りを表し、紫藤の元へ向かう。

 

「流石は優秀な教師でいらっしゃる、生き残った生徒達を救出してここまで連れて来られたのだから。おそらく貴男の父親は立派な方でしょう」

 

「いいえ、私はそれでも一介の教師にしか過ぎませよ。それと高城様の吉岡様でしょうか?」

 

「はい、私です」

 

紫藤は後ろにいた壮一郎の部下に振り返り、日本語で告げる。

 

「私のことはよろしいので、せめて生徒達だけでも引き取って貰えませんかね?」

 

「畏まりました、総帥に確かめてみます」

 

「感謝します」

 

礼をしてから再び前に視線を戻し、笑みを浮かべる紫藤。

それを見ていたリヒターは、直ぐにこの男は危険と察した。

 

「中々立派じゃない・・・紫藤せ・ん・せ・い?」

 

「ッ!?み、宮本さん・・・?」

 

突然現れた麗に、紫藤は驚く。

彼女の様子に気付いた、小室一行達が集まってきた。

 

「(こ、こいつ等。生きていたのか!?それに妙な者達まで居る・・・!しかし、ここでは手が出せまい)」

 

心の中で思った後、再び笑みを浮かべ、冷静に振る舞う。

 

「おやおや、皆さん。ここにいらしたのですか。何名か・・・外国人の屈強な男が数人に眼帯の少女と小学生くらいの少女が2人と増えていますが」

 

小室一行に告げる紫藤、言葉は分からないが、ゴロドクが隣のラッツに話し掛ける。

 

「なんていけ好かない奴だ。アメリカ人から見てどう思う?」

 

「あんなのは日本に勤務していた時に居たよ。それとなんで俺に聞くんだ?」

 

ラッツの疑問はさておき、チコは彼を見て、ベトナム戦争時代を思い出す。

 

「パッキー。あいつ、パッキー達とは違う他のアメリカ兵と南ベトナム兵に似てる」

 

「ああ、チコ。あんな奴は本国で見た白人至上主義者みたいな奴だ」

 

紫藤を見ながらボタスキーがチコに賛同する。

他の者達も紫藤を白い目で見た。

不穏な空気が流れている為に、ありすは怖がるが、バウアーが彼女の頭を撫でる。

 

「紫藤先生、人数を数えて貰ったが・・・一人足りないが・・・何処へ行った?」

 

バスから降りた人数を数えていた冴子は、元居た人数が少ないと気付き、紫藤に問い詰めた。

 

「何を言うのですか、毒島さん。(こいつ、気付いたか!)」

 

「おい・・・まさかとは思うけど・・・」

 

紫藤は言った後、心の中で不味いと感じ取った。

そして麗が銃剣を紫藤の頬に突き立て、彼の顔を睨み付けた後、口を開く。

 

「私が銃槍術強いか、先生知ってる?父が県内で毎回優勝しているからよ!父がどんな屈しなかったのに、その父が私に泣いて謝ったのよ!自分の所為で迷惑を掛けたって、泣いて謝ってきたのよ!」

 

瞳に涙を浮かべながらも怒りを露わにし、さらに銃剣を突き付ける麗。

先端から血が辿りながら、地面に落ち、それをありすに見せない為にも鞠川は彼女の視線を両手で塞ぐ。

死の恐怖を感じた紫藤は直ぐに止めるよう彼女に告げる。

 

「(この小娘、本気だ!)さ、殺人を犯すつもりですか?刑事の娘が!?」

 

「あんたにだけは言われたくないわよ!」

 

「(このフロイラインに普通の人間を殺させるわけには・・・)」

 

「ならば殺すが良い!」

 

隣で見ていたリヒターは止めようと、銃剣に触れようとしたが、後ろから壮一郎の声が聞こえ、手を引っ込める。

全員が壮一郎の方へ振り返り、紫藤は「助かった」と心の中で思う。

壮一郎は腕に手を組みながらこちらに向かってくる。

 

「その男とは幾つもの関わりがあるが、今はどうでも良い。殺したいのなら、殺せ」

 

「(な、なんだと・・・!?)」

 

「無論、私もそうする!」

 

その壮一郎の言葉に麗は、銃剣を下ろし、彼を見る。

死の恐怖から解放された紫藤は両手を広げ、笑みを浮かべながら発言する。

 

「いいでしょう!殺しなさい!だが貴女は私を殺したショックで罪と罪悪感を背負っていき、苦しむことになります。私も生徒に自分の命で大切さを教えられるのなら、これも私の人生最後における最高の教育です!!」

 

もの凄い迫力で告げた為に、麗は呆れて紫藤への殺意が失せた。

転移してきた軍人達も呆れて物が言えない。

 

「(た、助かった~)」

 

命拾いした紫藤であったが、この後、屈辱的な出来事が待っていた。

 

「それが君の答えかね?」

 

「はい、あいつに殺す価値、無いんで」

 

「ハッハッハッハッ!それでも良かろう!」

 

銃剣を下ろした麗から答えを聞いた後、壮一郎は高笑いした。

そしてルリはコーラ瓶の中身を飲み干した後、リヒターに近付く。

それに気付いた彼は、体勢を彼女の背まで屈み、話し掛ける。

 

「どうしたのかね?」

 

「おじさんが持ってたライフル知らない?」

 

「ライフル?あれか、何に使うつもりだ?」

 

「それは秘密」

 

愛らしく言った後、リヒターは、壮一郎の部下にkar98kを取りに行くように命じた。

その後、ルリが背中に空になったコーラ瓶を隠して追い詰められている紫藤に近付き、声を掛けた。

 

「せ~んせい?」

 

「なんですか?ああ、中学生の貴女ですか。一体何のよr」

 

ルリは紫藤の身長まで飛び、彼の頭をコーラ瓶で殴った。

 

「グゥ・・・何をするんだ・・・!?」

 

頭の皮膚が切れて出血し、それを抑えながら紫藤はルリを睨み付ける。

 

「なにって・・・仇を取ったに決まってるじゃない・・・?」

 

その紫藤を見るルリの表情は、まるでゴミを見る目その物であった。

 

「こいつめ・・・!悪魔だ!」

 

紫藤は自分の手下である男子高生2名に抱き抱えながらルリに向かって叫んだ。

もちろん避難民はルリを白い目で見る。

そしてkar98kが届いたと聞いたルリは、それを手に取り、弾が入ってるかどうか確認する。

 

「(いつか・・・酷たらしいまでに殺してやる・・・!)」

 

怒り心頭な紫藤であったが、ルリがkar98kの安全装置を外して、構えているのに気付いた。

 

「馬鹿め・・・撃てばどうなるか・・・」

 

ルリを馬鹿にする紫藤であったが、彼女は飛んでもない行動に出る。

バスに視線を戻した瞬間、後ろで銃声が響き、抱き合っていた少女の一人が頭を撃たれて射殺された。

何が起こったのか分からない一同、自分の親友である少女が殺された事に気付いた少女は、ボルトを引いて次弾を薬室に送るルリに視線を向けた後、心臓を撃たれて死んだ。

 

「2人仲良くこの世にさようなら・・・」

 

ライフルを下ろしたルリは、死んだ2人の少女にこう告げた。

驚くべく行動に出た彼女に一同は呆然したが、壮一郎は分かっていたらしく、紫藤達を自信の屋敷から追い立てた。

 

「貴様は去れ!そこの居る者達も同じように!本来ならその腐った根性を叩き直してやってもいいが我々には時間がない。乗ってきたバスでその者達と一緒に去れ!」

軍人達はそれぞれが持つ銃を紫藤達に向けた為に、直ぐにバスに乗り込み、高城邸から逃げるように去っていった。

リヒターはルリの行為を見て、死の恐怖を少し感じた。

 

「(レズビアンの少女を葬ったのは彼女達の為なのか・・・?それにこの少女には何かが潜んでいる・・・)」

 

そう、リヒターは心の中で思いながら、ルリと共に孝達の所へ向かうのであった。




次からは、勝ったッ!アニメ版完!!です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勝ったッ!アニメ版完!!前編

後書きの予告タイトル通り。

年内には終わらんな、こりゃあ。


紫藤等をバスごと高城邸から追っ払ってから、ルリはリヒターと共に小室一行の元へ戻った。

もちろん、人を2人も撃ったので、当然ながら避難民や市民団体から非難を受ける。

 

「ひ、人殺しよ!」

 

「暴力男達は、あの少女に人殺しを教えてるぞー!」

 

kar98kを持ちながら歩くルリを指差す市民団体、彼女はヤジをただの雑音として聞き流す。

一行の前に立ったルリはkar98kをリヒターに預け、芝生に座り込んだ。

 

「あ~あ、何か疲れた・・・」

 

溜息を付いて、そのまま仰向けになる。

彼女が見上げた空は既に夕暮れに染まっていた。

おそらく紫藤の事に気を取られて、時間に気付かなかったのだろう。

軍人達は時間帯を分かっていた様だが、そして黙っていた沙耶が、ルリを叱った。

 

「あんたね!大勢が見ている前でライフルをぶっ放すんじゃないわよ!」

 

仰向けに倒れた状態で叱られた為、直ぐに起き上がり、沙耶に謝る。

転移した軍人達は、ルリのやったことは正しいと述べた。

 

「いや、このお嬢ちゃんがやったことは正しい。もし、やらなかったら、また突っ掛かって来る」

 

「私もだ。あの男はこの国大物の政治家の息子だ、なにか、裏を感じる」

 

パッキーが言った後に、リヒターが賛同して付け足す。

 

「まぁ良いわ、それとルリ。あんな事は二度としないと約束して?」

 

「うん、分かった」

 

それに渋々納得した沙耶は、ルリに言い付けた。

市民団体が煩かったが、ゴロドクが拳銃を抜く素振りを見せると、あっさり退散した。

その時、鞠川が何かを思い出し、急に叫び出す。

 

「あぁ!思い出した!」

 

「うわぁ!?何事ですか、先生?」

 

「どうしたの?」

 

近くにいた孝と、抱き付かれていたありすは驚く。

 

「思い出したの、お友達の携帯番号」

 

「あのメゾネットの主ですか?」

 

コータが聞いた後、鞠川は嬉しそうに首を二回振って答える。

 

「うんうん♪あ、携帯学校に置き忘れて来ちゃった。誰か持ってない?」

 

嬉しそうに誰か携帯を持ってないか見回る鞠川、取り敢えず持ってなさそうな転移組はスルーする。

これを見ていたゴロドクは、ボタスキーに話し掛ける。

 

「何をやってるんだ、マリカワ嬢は?」

 

「携帯って言ってたけど、携帯って何か分かんないよ」

 

40年代と80年代から来た者達には、21世紀の携帯電話は分からない。

孝が携帯を出した後、直ぐにそれを手に取り、友人の番号を打ち始めた。

 

「あの・・・僕が打ちましょうか?」

 

「だ~め、忘れるから」

 

番号を打つのが遅い為か、孝が代わりにやると言うが、鞠川はニコニコしながらそれを断る。

そして打ち終わると、着信ボタンを押す。

 

「あ、もしもし。リカ?」

 

『こちらラビットリーダー、そちらは?」

 

直ぐに間違い電話と判断した鞠川は、電話を切った。

 

「ごめん、間違えちゃった♪」

 

「では、僕が・・・」

 

「小室君、メッ!」

 

一瞬で断られ、苦笑いするしか無い孝。

その頃、世界は滅亡へと進んでいた。

混乱状態に陥ったアメリカ合衆国が、敵性国家である中国・北朝鮮に遠距離型核ミサイルを発射したのだ。

これに対し、報復として同じく混乱状態でロシアと応酬中の中国でも核ミサイルが4発、日本へ向けて撃ち出された。

自国から核ミサイル発射の情報を察知したアメリカ海軍は日本海側に展開している自国海軍所属のミサイル巡洋艦並び海上自衛隊所属の護衛艦全てにミサイル迎撃を命じた。

もちろん、新しい“避難所”を求めて向かってくる中国人民解放軍及び韓国軍に対してもであるが、彼等はそれを無視、そのまま日本へと向かう。

この情報は、ワルキューレの日本本部にも伝えられた。

 

「中央司令部より報告!太平洋を航海中の米海軍所属の原子力潜水艦から核ミサイルが、中国・北朝鮮に向けて発射され、これに対し、中国は報復の為に4発ほど核ミサイルが日本へ発射された模様!」

 

通信士官が、司令官であるアレクサンドラに報告した。

それを予想していたのか、彼女は親指の爪を咥えながら、対策は出来てるか聞く。

 

「遂にこの時が来たか・・・自衛海軍による迎撃は?それとこの施設にEMP対策は?」

 

「ハッ、EMPはバッチリ対策してます!それと海上自衛隊と米海軍の所属艦による迎撃準備も行われています!」

 

知らせを聞いたアレクサンドラは、考え込む。

 

「(迎撃態勢はバッチリか・・・それより日本にトチ狂ってやってくる中国と韓国が気になる)」

 

彼女は核ミサイルの事よりも、避難所求めて日本に攻めてくる中国と韓国が気になった。

 

「(この国も死人で溢れているんだぞ・・・?攻めても問題は増えるだけだが・・・)」

 

考え事をしていた彼女に思わぬ、知らせが届いた。

 

「4発中、3発が迎撃完了!あと一つはアメリカ海軍第7艦隊所属の駆逐艦が・・・あれ?」

 

読み上げるオペレーターの様子がおかしいと察したアレクサンドラは、疑問に思い、それが全て分かった。

 

「(まさか・・・失敗・・・!?)」

 

「迎撃ミサイル・・・発射されませんでした・・・失敗です・・・」

 

これを読み上げたオペレーターの顔が真っ青となり、司令室が混乱状態に陥る。

何故、第7艦隊所属の駆逐艦が迎撃ミサイルを発射しなかったと言うと、艦内のクルーが全て蒼い眼光を光らせた大日本帝国軍の亡霊達に寄って鎮圧されたからだ。

 

「どうしよう!?こっちにミサイルが来ちゃうよ!」

 

「そんな!近くに対空部隊が居るでしょう!そいつ等にやってもらえば!」

 

「でも、間に合わなかったらどうすんの?!みんな死んじゃうんだよ!」

 

「そんなことより早く逃げよ!ここに命中するかr」

 

「静まれぇーーーーー!!!」

 

アレクサンドラの怒鳴り声で、司令室から我先に出ようとしていたワルキューレのオペレーターや、通信士、索敵手が静まり返った。

 

「ミサイル爆破地点を計算し、そこに展開している電磁パルス対策のなされていない兵器を持つ部隊に、退避命令を出せ。そして航空機もだ」

 

彼女の命令で一同は配置に戻り、言われた事を実行した。

かくして、核ミサイル爆破地点に居る全部隊は即刻その場から撤退を始める。

この出来事は、それぞれの場所に身を潜めていた転移者達にも目に入った。

 

「外がやけに騒がしいな・・・一体何が起ころうとしているんだ・・・?」

 

ショッピングモールの屋上から、慌てて撤退するワルキューレの部隊を見て、パイパーはそう呟く。

 

「落ちた者さえ見捨てて逃げている・・・こいつは何か起きるな・・・!」

 

森林で隠れていたZbvの指揮官、シュタイナーもこの出来事を目撃していた。

 

「東部戦線の撤退戦を思い出す・・・」

 

「ふむ、なにか起こりそうだな・・・」

 

黒騎士のバウアーとヴィットマンもそれを見て、良からぬこと起きると察する。

そして、迎撃し損ねた核ミサイルが太平洋沿岸の日本上空で爆発、電磁パルス対策をしていない電子機器はお釈迦になった。

残念なことに高城邸も範囲に入っており、車両や電子機器が故障し、ライフラインも停止する。

 

「イタ!あ、携帯・・・壊れちゃった・・・小室君、ごめん」

 

もちろん小室の携帯もお釈迦になった。

その後、鞠川はありすに頭を撫でられる。

直ぐに持ち主である孝は「イエイエ」と後頭部を左手でさすりながら使えない携帯を返して貰う。

その後、上空に出来たキノコ雲を一同と共に眺めていた。

 

「こ、これは・・・核爆発!?」

 

見ていたコータは直ぐに察した。

転移した軍人達はデカイ爆弾が爆発したのだと思いこんでいたが、パッキー達は分かっていた。

 

「そこのピン毛のお嬢ちゃん!そのM14のサイトはどうなってる!?」

 

ラッツが麗が持つM1A1スーパーマッチのサイトをどうなってるのかを聞いた。

 

「見えません!」

 

「やっぱり・・・」

 

沙耶はいち早くこの状態を理解したが、パッキー達の方は既に答えは出ていた。

 

「間違いない、これは・・・!」

 

「「EMP、つまり電磁パルスだ(よ)」」

 

言ったことがハモる沙耶とパッキー、軍事オタクであったはずのコータは知らなかった様だ。

 

「EMPと電磁パルスってなんですか?」

 

「あんた、軍オタの分際でEMPも知らなかったの?」

 

「すいません、核関連はちょっと・・・」

 

「はぁ・・・仕方ない」

 

沙耶はEMPこと電磁パルスについて説明を始めた。

 

「EMP攻撃、HANE、高高度核爆発とも言うわ。大気圏層で核を爆発させるとガンマ線が大気分子から電子分子を弾き出すコンプトン効果が起きる。飛ばされた電子は、地球の磁場に掴まって、広範囲へ放射される電磁パルスを発生させ・・・」

 

それをパッキーが続ける。

 

「つまり、防護措置をしてないとアンテナを使う物や電子機器の回路が焼けてお釈迦になるって事だ!」

 

ちなみに原理的にも核爆発を起こさなくても、コンテナなどを使えば電磁パルスを超すことも可能で、非破壊・非殺傷目的で使う為にアメリカ軍で開発が進んでいるが、公式では実用されていない。

 

「つまり我々は・・・」

 

ベランダから降りてきた壮一郎に、娘である沙耶は答えた。

 

「そう、もう電子機器は使えない!」

 

「「「えぇー!?」」」

 

この答えに鞠川・バウアー・ルリは驚愕する。

 

「つまり?」

 

「お風呂に入れない!」

 

「身体が汗臭くなっちゃう!」

 

「そんな・・・ありす、お風呂我慢しないといけない?」

 

ありすも入って、4人は絶望するが、正徳の尤もな発言で前向きになる。

 

「命の方が大事だと思うが・・・」

 

固まっていた一同に対して、パッキーが声を掛けた。

 

「直ぐに使える装備を集めろ!ハンビィーならEMP対策をしているはずだ!」

 

彼のかけ声で小室一行は動き出した。

その時、ゾンビが押し圧せてくるの知らせと同時に上空が光りだし、そこから4人の男が落ちてきた。

 

「ば、バリケードが!!」

 

「イテテ・・・な、なんだここは!?ガイド、出て来い!」

 

「お~、飲み過ぎちまって幻覚が見えるぞ~おい!」

 

「どうなってんだこりゃあ・・・」

 

「地球は確か、滅亡したハズ!」

 

その4人の男達の服装は、WW2時代の両陣営の軍服であったが、門の外に居た男の持っていた拳銃の発砲で存在に気付かれることは無かった。

拳銃の男は無数のゾンビに喰い殺され絶命、直ぐに壮一郎は命令する。

 

「早く門を閉じよ!急げ!」

 

「しかし、門の外にはまだ・・・」

 

「今閉じねば全てを失う!やれ!!」

 

電磁パルスで使えなくなったのに気付かないのか、リモコンのスイッチを押し続ける。

やっと気付いたのか、数人係でやっと門を閉じたが、一体のゾンビが敷地内に入ってしまう。

 

「あぁ!!一体がぁ!」

 

「ポケットの中にはビスケットが一つ♪」

 

ベランダからコータがAR-10を構え、素早くゾンビの頭を撃ち抜いた。

 

「ビューティフォー・・・」

 

「すまねぇ兄ちゃん、俺が間違ってた!」

 

コータの射撃を誰かが褒めて、工員のおっさんが謝った。

そして、小室一行と壮一郎はイレギュラー4名の存在に気付き、彼等に銃を向ける。

 

「お、おい!俺達はゾンビじゃないぞ!」

 

「待てぃ!我々は死者ではナァーイ!!」

 

「酒ならあるぞ~?生き残った物同士一杯やろうぜ!」

 

「全員ポップコーンにしちゃうぞ~?!」

 

第二次世界大戦下のアメリカ・ソ連・ドイツ・日本の軍服には似合わない妙な武器を持った4人はそれぞれの言葉で言い訳やら脅しを始める。

ルリはUMP45の安全装置を外し、男達に構える。

その時、大勢のゾンビが、門に押し寄せた。

当然の如く門は壊れ、近くにいた壮一郎の部下は喰い殺され、敷地内にゾンビが溢れ出す。

 

「こらっ!わしに従え!!」

 

「こいつ等はうちの所のゾンビじゃないぞ?」

 

「なんであろうとこいつ等は何処から見てもゾンビだぁ~」

 

「ふむ、制御下では無いなら片付けるまで!」

 

男達は、妙な物を押し寄せるゾンビに向けて撃ち始めた。

 

「な、なんだこれは・・・!?」

 

「これは・・・魔女のバアさんの呪いか!」

 

ベランダにちゃっかり避難していた一行は、イレギュラーの男達が持つ武器に驚きを隠せないでいる。

一見玩具のようなデザインだが、火力は凄まじく、門の所が死体でいっぱいになる。

しかし、さらなる脅威が訪れた。

それは蒼い眼光を光らせ、走り、叫びながら向かってくるゾンビ達であった!

他にも四つん這いのえたいの知れないガスのような物を排出している人型の生物が、多数見える。

地獄は彼等を逃さないであろう・・・




アニメ版完結ならずッ!

後半は戦闘シーン多数で、スピリットとストアー参戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勝ったッ!アニメ版完!!後半

後半です・・・それとチート全開・・・
そしてこれが年内最後となる更新になるはず・・・

と、言うわけでアニメ版完結です。



イレギュラーの男達の参戦により切り抜けたと思われた小室一行。

だが、それに合わせて新たなゾンビやクリーチャーも参戦する。

 

「こ、これは魔女のバアさんの呪いか!?」

 

「ぜ、絶望的すぎるぞ・・・!この状況は・・・!」

 

「うぇ~ん、これじゃぁ私達死んじゃうよ~」

 

絶望しきっている3人。

一方の4名は、迎えが来たと勘違いしている。

 

「お~迎えに来たか!さて、飲み物を持ってr」

 

ドイツ軍の軍服を着た男が、青い眼光の親衛隊服ゾンビに両手を大きく広げたが、噛み付こうとしたので、軽々しく避ける。

 

「な~に!?このわしに逆らうつもりか!そういう奴は死刑だ!ちなみに襲ってくる奴も全員死刑だ!!」

 

ドイツ軍の男は、親衛隊ゾンビをおもちゃみたいな銃で倒した。

そして他の3名もゾンビを、似た感じのデザインの銃を撃ち、次々と薙ぎ倒していく。

また新たな者達がこの場に参戦した。

今度は2人で、人外的な動きでゾンビを倒していた。

 

「凄い!あいつ等いったい何者なんだ・・・!?」

 

誰かが言った後、青い眼光のゾンビ等は呻き声を上げながらイレギュラーの男達に次々と向かっては、倒されていった。

爆音が響く中、小室一行と壮一郎達は脱出準備を行う。

壮一郎の妻の百合子は、部下が持ってきたvz83スコーピオンと予備弾倉を十分に受け取った後、高そうなドレスを豪快に引き千切り、とても高校生の子持ちとは思えない太腿と小型拳銃用ホルスターが現れる。

このドレスを着てみたいと思ったルリとバウアーであったが、破った為にがっかりする。

 

「あらあら」

 

こんな2人を見ていた百合子は女神のような微笑みをする。

そんな百合子様が、もう一つのケースを娘である沙耶に渡し、中身を見せた。

 

「これ、沙耶ちゃんには十分かもしれないけどお使いなさい」

 

中身はルガーP08であった。

断じてリヒターから奪った物ではない、その証拠に専用のドラムマガジンがセットとして収められている。

これを見たコータが大いに喜ぶ。

 

「る、ルガーP08!?ストックとドラムマガジンまで、しかもオランダ植民地軍モデルだ。奥さん」

 

「こんなの、使い方なんて分かんないわよ!それになんでママまで銃なんて持ってんの!?」

 

「ふふ・・・ウォール街で働いてた頃、エグゼクティブの護身コースに通ってたの。弾を当てるのはパパより上手いかもね」

 

そう娘に女神の様な微笑みで、自分の過去を話す百合子様。

周りの日本語が分かる者達は「凄い夫婦だ」と高城夫妻について語り合う。

次にコータの方を見る。

 

「平野君だっけ?娘の沙耶をお願いね」

 

コータは顔を赤くし、敬礼しながら英語で答えた。

 

「Yes、Mam!!」

 

「おばちゃん、一緒に行かないの?」

 

ありすが、百合子様をおばさん呼ばわりするが、女神の器は大きく、許される。

 

「そう、おばちゃん達は一緒に行けないの。だからありすちゃんが沙耶ちゃんの面倒を見てね」

 

「うん、分かった。ありすが沙耶ちゃんの面倒見る」

 

ありすは笑みで百合子と約束した。

これを見て、鞠川はニコニコする。

 

「ケータイとか使えないの?」

 

「ケータイどころかコンピューターとかも全滅!電子制御を取り入れている自動車はまともに動かないし、多分発電所も駄目だわ!EMP対策を取ってたら別の話だけど、そんなの自衛隊と政府機関のごく一部だけの話」

 

「直す方法はあるのか?

 

父である壮一郎が、沙耶に問う。

 

「焼けた部分を変えたら動く車はあるけど、たまたま電波の影響が少なく壊れていない車がある可能性も、もちろんクラシックカーは動くわ」

 

これを聞いた正徳は、「俺達の時代の乗り物は動くな」と呟いた。

その時、人外2名がベランダに飛んでやって来た。

直ぐにベランダに居る者は、2人に警戒する。

2人は拳を抑えて、流暢な日本語で名前を名乗る。

 

「待てぃ、我が名はスプリット。断じて君達に危害を加えるつもりはない!」

 

「同じく、私の名はストアー。そこに居る少女を我が主から連れ戻せと私達は命令された!」

 

「ルリちゃん、あの人達が・・・」

 

「うん・・・」

 

鞠川の背中に隠れながら孝の問いに小さく頷くルリ。

同格と思われる壮一郎が話し掛け、スプリットはそれに堂々と答える。

 

「失礼するが、その主とは・・・?」

 

「ああ、絶世の美女だ。だが、性格に少し難がある・・・」

 

「そうか・・・今はこんな状況だ、迷っている暇は無いだろう」

 

「さて、直ぐに・・・ストアー、どうした?」

 

スプリットは、ストアーの様子がおかしいことに気付いた。

それに鞠川の後ろに居たルリも居ない。

すると、ストアーが自分の持ち物が消えたと、スプリットに告げた。

 

「なに、ルリ様専用の薬が消えた?」

 

「そ、そうだ。ハッ・・・!?まさか・・・!」

 

ストアーが向いた先には、ベランダの柵に立つルリの姿であった。

彼等が言っていた“薬”という物を右手に持ち、それを彼女は飲んだ。

 

「の、飲んでしまったぞ・・・!」

 

冴子が見ながら言う、そして薬を飲み干したルリの身体は光り出した。

 

「と、突然光り出したわよ!?」

 

「僕に聞かれても分からない!」

 

「一体何が起こってるの!?」

 

「これは・・・!?」

 

「うわぁ・・・」

 

光が晴れた後、ルリが居た場所には、絶世の美少女が居た。

右手で顔を隠して、左手でスプリットとストアーを指差し、告げる。

 

「わざわざ異世界まで迎えに来て貰ったのは嬉しいけど、やっぱり今は孝達が心配だわ。愛しいマリには悪いけど、私は事を済ませてから帰ると伝えて貰えるかな?お二人さん」

 

「「ああ、はい・・・」」

 

何かを感じ取ったのか、あっさりと引き下がるスプリットとストアー。

その美少女の美しさは誰もが振り向く物であった。

身長は168㎝、ルリとは大違いのスタイルだが、胸囲はこの場にいる美少女達には負ける。

しかし、それでも美しい。

着ているのは、露出が全くない白を強調した19世紀上流階級の男性用の高価な服装。

それを纏う彼女は、さながら男装の麗人とも言えよう。

 

「ホントに・・・ルリなのか・・・?」

 

余りの美しさに孝は謎の超美少女に質問した。

 

「そうよ・・・私はルリ。ちょっと変わっちゃったけど」

 

両手を上に上げて手を絡ませ、両足も絡ませて、俗に言うジョジョ立ちと呼ばれる立ち方をしながら、全員に告白したルリ。

スプリットとストアーは、ルリの変貌ぶりに驚きを隠せない。

 

「あれが噂の究極形態(ハイパーモード)・・・!」

 

「噂では聞いていたが、まさかこれ程美しいとは・・・!」

 

肩を鳴らした後、強化ゾンビと大激戦を繰り広げる男達の所へ常人の目では捉えきれない速度で向かった。

敷地内で死闘を繰り広げていた男達も、彼女の美しい姿を見取れてしまう。

激戦区へ降りたルリは、何処からともなく取り出した西洋の死神が使う大鎌(デッサイズ)で、周りにいたゾンビを一掃する。

次に左手を横に伸ばし、また何処からかSIG社のアサルトカービンライフルSG553を取り出した。

片手で単発にし、向かってくるゾンビの頭を撃ち抜いていく。

 

「凄い・・・!」

 

「あれはSIG社のアサルトカービンライフルSG553ですよ・・・!見た感じに次元を歪めて取り出した・・・!」

 

「次元を歪めるなんて・・・一体何が起こってんのよ・・・!?」

 

圧倒的なルリの強さと、能力に壮一郎とコータは驚き、沙耶は唖然している。

 

「や、やはり・・・魔女のバアさんの孫娘だったか・・・」

 

「どういうことだ・・・!?」

 

ハーゲンがゴロドクの言ったことに疑問を抱き、問い質した。

 

「何故かは知らんが、魔法を使っていた。間違いない、孫娘だ!!」

 

この言葉を聞いたハーゲンは笑いだし、パニック状態なゴロドクに告げる。

 

「歩く死人が居るんだ、今更あんなのが出てもおかしくない。全員行くぞ!」

 

肩に掛けてあったGew43の安全装置を外し、ベランダからゾンビを撃ち始める。

バウアーも敷地内に降りて、MK107を構え、サイトを覗き、引き金に指を掛けて撃つ。

後に続いて、ゴロドクもPPsh41を乱射しながらベランダを降りる。

 

「小室、僕達も行くかい?」

 

「ああ、行こう!」

 

コータの誘いに孝達が、ベランダから降り、そこら中に居るゾンビに攻撃する。

 

「孝、左に居る!」

 

「クソ、何時の間に!?」

 

奴らなゾンビを倒した麗が、孝に警告する。

 

「イアアアア!!」

 

しかも、軍服ゾンビと同じ青い眼光のゾンビだ。

イサカM37で撃つのではなく、いつの間にかルリから渡されていたH&K社の短機関銃UMP45を乱射した。

 

「うぉ!?きついぞこれ!」

 

暴れる銃身を抑えながら、文句を言う孝。

向かってきたゾンビは、25発もの45ACP弾を浴び、その場で二度と動かなくなる。

 

「やばいな・・・これ・・・是非、使わせて貰おう」

 

銃口から煙を上げるUMPを見て、孝は気に入り、新しい弾倉に取り替えた。

冴子は言うと、麗の後ろから襲ってきた四つん這いのクリーチャーを刀で一刀両断にし、近くにいたゾンビを切り捨てた。

 

「あ、ありがとう」

 

「礼には及ばんさ、宮本君」

 

礼を言った麗に、冴子はそう返した。

その後、圧倒的な強さを持つスプリットとストアーも参戦し、ゾンビが次々と動かない屍に戻されていくが、むしろ増える一方だ。

この爆音や戦闘の所為で、街中にいた奴らなゾンビが一斉に高城邸に向かってくる。

敷地内からも青い眼光のゾンビが、地面から這い出て、増える一方。

おまけに四つん這いのクリーチャーも増え、さらに雷を纏ったヘルハウンドが出てきた。

避難民はそれらに襲われ、奴らと成ってしまう。

 

「た、助けてくれ!ギャ!」

 

「お~、あっちはカオスな事になってるな」

 

WW2時代のアメリカ海兵隊員はルリと同じく何処からともなく、チェーンガンを取り出し、避難キャンプから向かってきたゾンビ等に向けて乱射した。

 

「フェハッハッハッ!最高にハイって奴だぁー!」

 

海兵隊員の男はチェーンガンをぶっ放しながら、気分がハイになっていた。

ベランダに居た壮一郎も、高城邸が落ちるのも時間の問題と察した。

 

「パパ、家に立て篭もって・・・」

 

「守って何の意味がある?!鉄門が破られ、家に立て篭もっても押し入られ、喰われるだけだ!!」

 

娘の勧めを敷地内で暴れるルリ達の爆音に負けず、大いに怒鳴る壮一郎。

そんな2人に、kar98kを持った副官が知らせに来た。

ちなみにリヒターは、H&K社の民間モデルのG3A3を持っている。

 

「2階から確認しました。まだ隣家に配置した者はまだ襲われておりません!門の補強も可能です!」

 

その知らせを聞いた壮一郎は、ベランダに避難した構成員と避難民に告げた。

 

「吉岡、得物を持ってこい!それと避難民を誘導しろ!生き残りたい者はこの男に続け!武器を持てる者は、襲ってくる死者を退けろ!」

 

避難民に告げた後、自分の日本刀を持ってきた部下から日本刀を取ると、妻と共に敷地内に降り、強力な火器を持つ男達と同様の戦闘力を発揮した。

車庫から銃撃していたパッキー達は、高城夫妻の強さに驚きを隠せない。

ボタスキーとチコはM16A1を撃ちながら口に出す。

 

「あいつ等だけでもゾンビ共を全滅できるんじゃ?」

 

「とても強い、強い」

 

「それは無理な相談だ、ボタスキー。目が光るゾンビが増え続けている」

 

パッキーは、XM117を撃ちながらボタスキーの考えを否定する。

隣から襲ってくるゾンビをSPAS12で挽肉に変えたラッツが付け足す。

 

「それにこいつ等は音で感づく、あんなデカイ音を鳴らしながら戦闘をやってる。全滅させるなんてまず不可能だ!」

 

この答えに2人は「全くだ」と言ってから、車庫に近付こうとするゾンビを撃ち殺していく。

そこへ、正徳とゾーレッツに守られながら、沙耶とコータが来る。

いつの間にか、イレギュラーの男達を除く全員が車庫に来ていた。

 

「この車に乗って逃げるつもりですか?」

 

車庫に入ったコータが、リカの家にあったハンビィーと重機関銃付きのハンビィーを見ながら指摘した。

そして、機銃が搭載されてないハンビィーから工員のおっさんが飛び出してくる。

 

「そうでもないぜぇ、兄ちゃん!」

 

出てきた場所が、沙耶の足下であった為に、スカートの下が見えてしまう。

直ぐに沙耶は、スカートを抑える。

 

「失礼、ラッキーですよ、お嬢様。機銃付きは既にEMP対策済み、そしてあの軍用バギーも。しかもお嬢様が乗ってきた車も対策済み、一体どんな持ち主だ?」

 

「じゃあ、この車動くんですね!?」

 

「ええ、でもダメージ受けてるんでちょいと不安ですが。少し手を加えれば動きそうです!その間に時間を稼いでください!」

 

工員が整備をする間に、小室一行は車庫を守る形で外に出て行った。

荷物は既に詰め込み済みである。

ハイパー化したルリは、一斉に車庫に向かってきたゾンビとクリーチャー達に対し、大鎌からパンツァーシュレックに取り替え、それを撃った。

対人用弾頭でも積んでいたのか、一気に血煙が上がり、彼女の白い服が赤く滲む。

正徳は、冴子と共に日本刀で次々とゾンビを切り捨てる。

 

「やるな、毒島嬢!」

 

「そちらこそ!」

 

斬りながら互いにほめ合う正徳と冴子、それを見ていたゾーレッツは、彼等の後ろから迫るゾンビをMP41で片付けていく。

 

「お二人さん、背中にご注意だ!」

 

「済まない、ゾーレッツ!ハッ!」

 

正徳はゾーレッツに礼を言った後、近くに居たゾンビを斬った。

踊るようにゾンビを駆逐していたルリは、冴子が軍服や海賊風なゾンビ等に追い込まれている場面を目撃し、SG553を構えて直ぐに救出に向かう。

僅か10秒で一掃され、冴子を囲んでいたゾンビは全て動かない屍に戻された。

 

「た、助かった・・・感謝する・・・」

 

「イエイエ」

 

助け出された冴子は顔を赤らめながらルリに礼を言う。

異常なほど美しい男装の麗人は、近付いてきたゾンビに振り向きもせず撃ちながら笑顔で返す。

ベランダから投げ出されたダイナマイトの爆発が響き渡る中、夕暮れは無くなり、夜空が広がっていた。

その時、リヒターを襲った白人の女性が現れた。

 

「む?あれは・・・!」

 

真ん中で高城夫妻と共同していたリヒターは、G3A3を白人の女性に向けた。

その女性は茶髪の美人、瞳の色はエメラルドグリーンにルリと同じく透き通るような白い肌。

彼女の手には、ルガーP08が握られていた。

直ぐに引き金を引いたリヒターであったが、銃口から放たれた7.62×51㎜NATO弾は、突如現れた長い黒髪の少女に止められてしまった。

その少女も大和撫子を具現化した様な容姿をした美少女であり、右手には日本刀と左手には鞘が握られていた。

美女と美少女には一切ゾンビは襲わず、ただ孝達に向かってくる。

まるでその2人を主人と上げているようだ。

直ちにスプリットとストアーが2人に襲い掛かる。

 

「貴様等、さては能力者だな?!」

 

勢いよく向かうスプリットであったが、黒髪の少女に斬られ、あっさりと返り討ちに遭う。

 

「グハッ!ぬぇん・・・!」

 

受け身を取って、体制を立て直す。

邪魔なゾンビを片付けながらストアーは、スプリットの隣へ来る。

 

「スプリット、奴は?」

 

「どうやら我々と同じ能力を持っているらしい・・・」

 

傷口を抑えながらストアーに語る。

大激戦をやっていた男達が、謎の美女と美少女に気付き、立ち向かっていった。

 

「美人に美少女か・・・!俺の物にしてやるぜぇー!」

 

「ヒャッハー!美女と美少女だぁ!」

 

「そこの大和撫子!いざ尋常に勝負!!」

 

「俺の妻みたいに・・・醜く殺してやるぜ~!」

 

雄叫びを上げながら勢いよく向かう4人であったが、白人の美女が手をかざしただけで吹き飛んでいく。

地面に叩き付けられた後、爆発したが、4人は無傷であった。

次にハイパー状態なルリが、2人に向かう。

 

「勝ったッ!アニメ版完!!」

 

「ま、待てぇ!その2人は協力ですぞぉー!」

 

ストアーが制止の声を掛けたが、時既に遅く、黒髪少女の日本刀でバラバラに切り裂かれ、肉塊に変えられてしまった。

その光景を見ていた一同は、衝撃を受けた。

 

「る、ルリぃーーー!!」

 

ルリの死を見て孝は叫んだ。

だが、肉塊が一つに集まって光り出し、そこから幼女が現れた。

もちろんその正体はルリである。

 

「いかん!あの少女が殺されてしまう!!」

 

スプリットは叫び、ストアーは一人で美女と美少女に立ち向かっていった。

リヒターはそれに続く。

 

「ぬぁぁぁぁぁぁ!!」

 

勇敢に立ち向かうストアーは、見事幼女から2人を引き離すことに成功した。

リヒターは幼女を抱えて、そこから退避する。

そしてスプリットからあることを頼まれた。

 

「その幼子はおそらくルリ様だ。理由は聞かんでくれ、ともかく我々は奴らを食い止める。行けぃ!」

 

彼の話が終わったと同時に、ハンビィーの整備が終わり、工員の知らせが来た。

 

「出来ましたぜ!お嬢様!」

 

「やっと!?じゃあ、みんな早く車に!」

 

沙耶はルガーP08を構えながら、全員に車に乗るように命じた。

一方、幼女を抱えていたリヒターは、高城夫妻の元へ来る。

 

「我が友リヒターか。貴様も行け!」

 

「しかし、壮一郎はどうするのだ?」

 

「私達はここで足止めします。貴男は彼等についていき、そして見守ってください」

 

この言葉にリヒターは、少し迷ったが、左手で幼女を抱えて敬礼した。

 

「グットラック、ヘルシャー壮一郎とイーレフラウ百合子」

 

敬礼を終えた後、リヒターは幼女を抱えながら小室一行の元へ向かっていった。

それを見送った後、夫妻は戦闘を再開する。

コータがSR-10を撃ちながら後退した後、車庫に入り、自分達が乗ってきたハンビィーに乗り込む。

そのハンビィーの運転席に座る鞠川は、外にいる全員に告げる。

 

「荷物は全部積み終えているわよ」

 

「僕はこっちのバギーで行きます」

 

孝と麗は、軍用のバギーへと乗り込む。

パッキーと転移した軍人達は、機銃付きのハンビィーへと乗り込んだ。

丁度その時、幼女を抱えたリヒターが車庫へとやって来た。

 

「済まないが私も乗せてもらえないか?」

 

彼が抱えている幼女は白いワンピースを着ており、ルリを幼くした感じだった。

 

「あ、この子ルリちゃんだよ」

 

ありすが、幼女をルリと分かった。

 

「あの男達の言う通りか・・・では、行こう」

 

リヒターは軍用バギーに乗り込み、その後MK107を撃ちながらバウアーが乗り、麗が乗る。

機銃付きハンビィーから、ハーゲンとゴロドクがバギーに乗った。

運転するのは孝だ。

機銃無しのハンビィーに沙耶、冴子、ありすが乗ったのを確認した鞠川は、エンジンを掛けて何時でも出せる準備をする。

 

「松戸、あんたも・・・!」

 

「いや、私はここで足止めをします」

 

工員は工具を持って、車庫を出て行った。

それを沙耶はただじっと見ている。

 

「高城さん、もう少し待つ?」

 

「良いわ、出して」

 

運転席に座る鞠川は、沙耶が瞳から涙を流しているのを見て、アクセルを踏んだ。

向かってくるクリーチャーを跳ね殺しながら車庫から出た後、戦っている高城夫妻の隣を通り過ぎる。

後から機銃付きのハンビィーが続いていくが、その間を強引にウィリージープが入り込んだ。

 

「コラァ!何処の馬鹿だ!?」

 

ラッツは運転席から怒鳴るが、そのジープに乗っていたのはイレギュラーの男達だった。

敷地内は辺り一面血で赤く染まっており、その血は誰のかは分からない。

後ろからM2重機関銃の銃声が響く。

 

「うわぁ!いきなり滑ったぞ!?」

 

「血の所為よ!気を付けて運転して!」

 

「そんなの無理だぞ!」

 

一番後ろの軍用バギーは、必死に機銃付きのハンビィーについていく。

門を突破した先には、ゾンビの群れがあったが、ジープから六角形の物体を投げ出された後、ブラックフォールの様なことが起こり、ゾンビがそこへ吸収されていった。

いつの間にか朝日が上る中、バリケードに見覚えのあるマイクロバスが突っ込んでいた。

沙耶達が乗るハンビィーは、鞠川のドライバーテクニックがあったのか、車体を片方に傾け、潜り抜ける。

これは褒めるところだが、今はしている場合じゃない。

 

「あれをなんとかする方法は!?」

 

「無い!」

 

機銃付きのハンビィーの車内でラッツの問いにパッキーは解決策はないと答えた。

しかし、またしてもジープからバズーカのような物を持ったソ連赤軍の兵士が、バスに向けて放った。

謎の風圧がマイクロバスに向かっていき、バスを上空に飛ばしてしまった。

 

「あれは・・・魔法か・・・?」

 

「し、知らん・・・!」

 

バギーに乗っていたハーゲンとゴロドクはそれを見て唖然した。

その後、一行は奴ら(ゾンビ)に遭遇しながらも道なり進み、ショッピングモールへと辿り着いた。

しかし、そこは既に先客が居たのであった。




一万字は誤解であった・・・

祝い、アニメ版完結!

さて、次回からは番外編でも行こうか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友情出演編×Zbv壊滅編
友情出演編×Zbv壊滅編登場キャラ


これが年内最後の更新。
もろプレデター風や絶望的な番外編で行く予定です。

白石様から友情出演者のキャラ紹介です。
後、登場オリキャラも。


鷹山勇治

白石さんの作品、緋弾のアリアの二次元作防人の45口径の主人公

あだ名はタカで、元陸上自衛隊のレンジャー隊員。

防人とは違い、学黙の世界に武装探偵は居ない。

年齢が25歳まで伸び、身長も177伸ばされ過去が若干改変されてる。

ただし性格も能力、家族構成はそのまま。

その為か、容姿は真尋を若干老けさした感じになっている。

自衛隊を辞めた理由は、フランス留学で外人部隊に魅了され、辞めて志願。

少しばかり実戦を経験し、そこからアーミット社にスカウトされた。

以降、コントラクターとして活動する。

ある任務中に光稀と出会い、一目惚れ。

キバオウがキレるほどの壁が必要なほど恋人以上夫婦未満の存在となり、夜の営みもやっている(なんでや!)。

防人と同じく二輪免許や車の免許は持っており、愛車もきちんとある。

ガンダムAEGフリット編に出てきた憲兵まがいなことをやってるおっさんの様にチョコスティックバーを常時に持ち歩いている。

武器はFN FMC(ドットサイトに40連弾倉仕様)

コルト ガバメントシーキャンプカスタム

スパス15

フォールディングナイフ

 

蓼光稀

白石さんの作品、緋弾のアリアの二次元作防人の45口径のヒロイン。

鷹山と同じく年齢が25歳に伸ばされ、身長も174㎝に過去も若干改変されている。

そしてスリーサイズも良い方へ強化された。

ただし、性格と容姿、能力、家族構成はそのまま。

本作では元警察官と言う設定。

上司の不正を検察に告知したところ、口封じの為に警察を辞めさせられる。

その後、ジャーナリストとして戦地へ赴き、現地で取材をしていたが、イスラム原理主義者に捕まり、人質にされる。

そこへ救出に来たアーミット社の元自衛官のコントラクターであるタカに救出され、一目惚れ、恋心を抱き、後を追ってアーミット社に入社、コントラクターとなり、タカに告白。

見事、壁が必要なくらいの関係に成ってしまった。

武器はステアー AUG(カービンカスタム)

ベレッタM84

ダガーナイフ

 

風連希

白石さんの作品、緋弾のアリアの二次元作防人の45口径の戦兄妹。

ほぼそのままの設定で登場、ただし武装探偵ではない。

その為に過去も変わっている。

異常な連続殺人鬼に目の前で両親を惨たらしい程バラバラに解体され、それを見せつけら、自身もナイフを首に突き付けられ、凄まじい暴行を受け、夜尿症ならび失禁症になり、お襁褓が手放せなくなる。

さらに酷いことに残った肉親である兄を同じ殺人鬼に殺され、麻薬取締官の姉がヤクザにレイプされた挙げ句に殺されるなど、防人よりも酷いことになっている。

立ち直って、失禁しながらも殺人鬼やヤクザに復讐を成し遂げ、少年院に入れられる所であったが、アーミット社の社長夫人に拾われ、以降社長夫人のお気に入りのコントラクターとしてまだ未成年の身でありながら、アーミット社に勤務する。

武器はMP5kA4(ドットサイト)

AMT オートマグ44(防人とは違い、社長からの誕生日プレゼント)

特殊警棒

 

ちなみに全員M26破片手榴弾5つ、M84スタングレネード2つ、M18発煙手榴弾2つ。

 

「元の設定を見たくば、防人の45口径を見ることだ」

                         byヨーゼフ・ゲッベルス

 

ジョージ

アーミット社のコントラクターでは無く、バル・ベルデに工場を構える製薬会社の幹部で元グリーンベレーの黒人。

フルネームは公開できない、容姿は完全にカール・ウェザース。

性格は完全にプレデターのCIA職員と一緒だが、断じてあいつとは一切関係ない。

武器はDSA SA58

ベクター SP1

 

ダッチ

アーミット社の黒人のコントラクターで、元コマンドー部隊に属していた。

タカ達が属するチームの隊長、容姿が完全にローレンス・フィッシュバーン。

ジョージとは元同僚。

3人ほど殉職し、代わりにやって来たタカ達を余りよく思ってはいない。

武器はAK107(GP25フルカスタム)

IMI デザートイーグル

 

マック

アーミット社のコントラクターで、元グリーンベレーの黒人。

容姿が完全にビル・ディーク。

完璧にネタキャラだが、断じて元グリーンベレーとレスキュー部隊とは一切関係ない。

ダッチのチームのベテランであり、同じくタカ達を余りよく思ってはいない。

武器はFN M240

チェーンガン

 

ブレイン

アーミット社のコントラクターで、マックと同じく元グリーンベレーの白人。

容姿が完全にジェシー・ベンチュラ。

グリーンベレー時代はマックと戦友でもあり、アーミット社に入社した時も一緒だった。

もちろんタカ達をジョージ以上に良く思ってはいない。

武器はインベルMD

 

ポンチョ

アーミット社のコントラクターで、元米陸軍アフガン帰還兵の白人。

容姿が完全にリチャード・チャペス。

様々な語学に通じているので、日本語はヘッチャラ。

武器はRSAF アーウェン37

AKS-74

 

ビリー

アーミット社のコントラクターで、ネイティブアメリカンの男。

容姿は完全にソニー・ランダム。

第六感の持ち主、もの凄い感知能力を持つ。

武器はインベルMD

 

リック

アーミット社のコントラクターで、元カナダ軍の眼鏡を掛けた白人。

容姿は完全にシェーン・ブラック、ダッチのチームの通信兵。

下品なジョークが好き。

武器はインベルMD。

 

ジェイダー

アーミット社のコントラクターで、ブラジル人の白人女性、上流階級育ちで元軍人。

様々な男を魅了する美貌の持ち主で、両性愛者、通称歩く18禁。

性欲が強い女性であり、例え同じ女でも食ってしまう程。

社長からは「だらしのない女で、子供が何人いるか分からない」と言わせるほどだが、彼女には子供は一人もいない。

ダッチのチームでは無い、彼等が来るまで幾人のもワルキューレの隊員達とヤっていた。

武器はインベルMD

タウロスPT92

 

ヨント

アーミット社のコントラクターで、元韓国陸軍の兵士。

性格に難がある。

一番殺されそうな空気をプンプンさせている。

武器は大字 K2

RDI ストライカー12

 

ユリ

ワルキューレの軽歩兵。

容姿が巨乳ナイスバディでベビーフェイスの見た目美少女の女性だが、男性器がある。

いわゆるふ○なりの女性。

えらくジェイダーから気に入られていた。

 

アルベルト

ドイツ第三帝国武装親衛隊に属する親衛隊中佐。

オーストリアへ撤退中に霧に呑まれ、学黙の世界に自信の戦闘団ごと転移した。

 

ディーター

ドイツ第三帝国国防陸軍に属する戦車兵、階級は中尉。

重駆逐戦車ヤークトティーガーの戦車長で、中隊長。

アルベルトの戦闘団と一緒に学黙の世界へ転移する。

 

志雄平八

旧大日本帝国陸軍に属する大尉。

容姿は武人を表し、軍刀と銃を使い分ける技術を身に付けている。

かの有名な舩坂弘が活躍したアンガウルの戦いに参加しており、彼と一緒に戦場に居たが、はぐれてしまい、偶然にも何名かの部下と共に学黙の世界に転移した。

 

平田佐武郎

旧大日本帝国陸軍に属する戦車兵、階級は大尉。

第四戦車師団所属であり、三式中戦車を中心とした戦車中隊の長。

本土に攻めて来るであろう米軍迎撃の為に演習をしてたところ、転移者達と同じく霧に呑まれ、学黙の世界に転移した。

 

直衛文太

旧大日本帝国陸軍に属する戦車兵、階級は少尉。

九十七式中戦車を中心とした戦車小隊の長、歩兵中隊と共に学黙の世界に転移した。

 

柴田貞夫

旧大日本帝国陸軍に属する中尉。

歩兵中隊の長、同じく学黙の世界に転移。

 




書き終わった・・・でも更新は来年だよ。

WWⅡドイツ陣営しか参戦しないので、大日本帝国勢を追加。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出撃する別世界の防人

年内初の投稿・・・!
白石さんの許可無く、能力設定を追加してしまった・・・許してくれるだろうか・・・

プレデター風に進みます。


東京上空で核爆発が起きる数時間前・・・

 

四国の空港に来たアーミット社のコントラクター達。

その一団の中には年若い少女が混じっていた。

 

「夫妻、お前達はここに座れ。小娘も一緒だ」

 

カール・ウェザースに似た黒人に、待合室の席に座らされる男女3人。

まず、一番初めに座ったのは、日本人として高身長な男性、彼の名は鷹山勇治、あだ名はタカ。

元陸上自衛隊にフランス外人部隊、実戦経験もそれなりにある現PMCコントラクターだ。

さらに、通常の人間が回避できないとされる高速で飛び出される銃弾を回避するという能力を持っている。

それはスローモー。

この能力は自分から見れば、視界の全てがゆっくりと動いているかの様に見えが、第三者から見れば、勇治が高速で動いているのだ。

しかし、その能力にも欠点あり。

凄まじい体力を必要とする為、一回で三分が限度、また気温に影響がされやすく、負傷している場合は体力減少が倍となる。

その為に栄養ドリンクと糖分多めな物を摂取せねばならない。

そしてチョコバーを多めに所持している。

 

隣で座るのは蓼光稀(ミキ)、タカと同じく日本人で、女性としては174㎝の高身長。

驚くことにこの美人はタカの妻であり、スタイルは抜群。

元警察官で、元軍事関係者が集まるアーミット社員では珍しい職歴の持ち主。

彼女も同じくタカと同じ能力者。

能力名はシンクロ。

音や空気に同調し、その場の異物と違和感を察知できる能力。

夫であるタカの事となると、通常の三倍以上鋭くなり、その状態で能力を発揮すれば、瞳の色が水色から緑に変化するのが最大の特徴。

 

そしてこの小動物のようで愛らしい少女の名は風連希。

見た目が美少女なのだが、こう見えてPMCのコントラクター。

しかし、過去の出来事により常にお襁褓が欠かせなくなってしまう。

彼女も能力の持ち主であり、その能力はロードチェンジ。

翻訳すれば進路変更、左右5メートルまで自分の撃った銃弾を自在に進路変更が出来る。

もちろん物体であれば可能、敵の撃った銃弾だけであるが範囲以内なら進路変更可能。

しかし、タカのスローモーより体力をより多く消費する為に、一度に数秒しか使えない。

 

「20分待て、俺はこれからの予定を立て行く。絶対にそこに居ろ、分かったな?」

 

タカ達は同時に「はい」と答えた後、黒人は待合室を出て行った。

その後、タカとミキは寝室まで行く。

 

「あ~、済まない希、これから俺はミキと一緒に向こうで待ってる」

 

「ごめんね、15分くらいベットで待って、シャワー浴びてくるから」

 

「あ、はい・・・ここで待ってます」

 

望はタカとミキがやることを分かっていた。

 

「またやるよ・・・あの2人・・・」

 

2人が寝室に入った後、中からミキの小さな喘ぎ声が望の耳に入る。

その間に希は、持ってきた鞄からお襁褓を多めに取り出し、2人の笑い声が聞こえてくる中、彼女はこれからの任務に備えた。

ベットが軋む音と、喘ぎ声が壁を通じて聞こえる間に予備に持ってきたスターリングMk4を持ち物に加えるかどうか迷っていた。

一方の黒人、ジョージはと言うと、空港内に降りた2機のUH-1はから降りてくる男達を出迎えていた。

 

「この野郎、生きてやがったか!」

 

物騒なことを言うローレンス・フィッシュバーンに似た黒人、ダッチがジョージと腕を組む。

 

「残念ながら生きてるよ!何処かの馬鹿が、お前が適任だと推薦したのさ。ハハハハハ」

 

笑いながらアーミット社の指揮所に移動する一団、ジョージとダッチは他の者を残して指揮所に入り、地図が広げられた机へと案内した。

 

「そういえば、お前は薬品会社に就職したって聞いたぞ。デクスワークで腕が鈍ってるらしいな?」

 

「心配するな、お前を絞め殺すくらいの腕力はある」

 

再び二人が笑った後、ジョージが机の地図に向かう。

 

「ジョージ・ロメロが生み出したモンスターゾンビを知ってるか?」

 

「ああ、知ってる。最近では映画から飛び出してきたのか世界中で仲間を増やしている」

 

「正解だ、そいつ等の所為で世界は滅茶滅茶だ。そしてこの御時世にアニメを見るためにわざわざ日本に来た訳じゃないって、分かってるだろう?」

 

この問いにダッチの表情が真剣になる。

 

「任務は日本のマフィアが占拠した研究所の鎮圧だ。ちなみにこの研究所は俺の職場の物だ」

 

「そうか。で、相手の装備は?」

 

「ああ、偵察機の情報によれば、装備は全て中国のコピー製品。だが、油断は禁物だ。対ヘリ用に対戦車ライフルを持った奴が居る。おまけにRPGまで持ってやがる。全く、最近の中国人は卑劣だ」

 

ジョージから情報を得た後、苦笑いして地図を眺めた。

そしてダッチは、ジョージにメンバーを聞く。

 

「ヘリで聞いたんだが、メンバーが増えてる。何人だ?」

 

「お前を含めて今のチームは、6人だったな?俺を含めて6人追加だ」

 

「お前も参加するのか、後5人は誰だ?」

 

「そうだ。会えば分かる、来てくれ」

 

そのまま指揮所から出るジョージについて行くダッチ。

外では、ダッチのメンバーが、他のアーミット社のコントラクターと会話していた。

 

「戦友ってのは、良い物だよな?」

 

「ああ、そうかい」

 

「俺は一番日本に詳しいんだ。当然風俗店だって知ってる」

 

「おぉ、で、何処なんだ?」

 

「ここを出て、町の北側にあるんだ。だが、ゾンビ共が出た所為で、営業はないけどな」

 

コマンドーに出てくるサリーにそっくりなコントラクターが、眼鏡を掛けた白人のコントラクター、リックに自慢話をする。

しかし「店は開店してない」と聞いた後、舌打ちをしてリックの機嫌が悪くなる。

 

「おいおい、そう怒るなよ。ビールでも飲んでリラックスしな」

 

サリーは、札束をリックに渡す、それをありがたく彼は頂く。

 

「おっ、サンキュー・・・」

 

「まだ、他にもあんだよ。溜まってないかい?」

 

何か良からぬ事を伝えようとするサリー、そのまま続ける。

 

「社長がだらしないって言ってる女を知ってるか?」

 

「ああ、知ってるとも。姿は見たことはある」

 

「分かってくれて嬉しいぜ。その女がここに来てんだよ」

 

「そいつはマジか!?」

 

この話を聞いて大喜びするリック。

 

「ああ、マジだぜ。あんた等の隊長さんを待ってるって所だ。その間にあそこに居る姉ちゃん達とヤリまくってる」

 

サリーの視線と指をワルキューレの駐屯地に向けながら言う。

この話に他のコントラクター達が食いつく。

リックを除くダッチのチームメンバーは、苦笑いしている。

 

「おぉ、マジか!?」

 

「俺にも聞かせろ!」

 

「慌てなさんな、隠しカメラの映像はたんまりある。それと面白い女を見つけたんだ」

 

「どんな女だ?」

 

「見た目が日本のアニメに出てくる・・・美少女だ。おまけに胸がデカイ、あの女のお気に入りでもある。そいつのシャワーを盗撮してきた。これだ」

 

懐から、シャワールームで盗撮したと思われる写真を撮りだした。

一気に見ていた男達が騒ぎ出す。

 

「な、なんだこりゃぁ!?」

 

「イチモツが生えてるぞ!」

 

「落ち着けよ、こいつは列記とした女だ。アソコもある」

 

この答えに一同は、騒然となる。

そんな彼等のほっておいて、ジョージとダッチが、アーミット社に属する韓国人のコントラクターの元へと来る。

 

「こいつはお前の補充、名前はヨント。元韓国陸軍下士官だ」

 

大字K2ライフルの銃身を握っていたヨントとダッチが握手する。

そのヨントの目は、ダッチに取っては何処か不快になる目つきであった。

 

「次に行こう。お次はお嬢さんだ。しかもかなりの美人、お前と同じ社員だ」

 

「ああ、覚えがある。社長に愚痴を言わせてる女だ。名前はジェイダー、ブラジルの上流階級生まれで元海軍兵、かなりの欲求不満の女。顔は合わせたことは無いが、それなりの実力は持つと聞いている」

 

ダッチからジェンダーと言う女性の事を聞いていたジョージは、そのまま彼をワルキューレの駐屯地へ案内する。

 

「噂の悪い戦乙女達か、叩き殺されてないと良いんだが・・・」

 

笑顔で言うダッチに、ジョージも笑い始める。

 

「ほら、あそこに居るぞ」

 

かなり美貌を持つブラジル人の女性が居た。

彼女がジェンダーで、姿を見たダッチは口笛を吹く。

 

「初めまして、ダッチと呼ばれております」

 

余りのジェンダーの美しさにダッチは笑顔で挨拶した後、手を出して握手をせがむ。

これに対しジェンダーも手を出して、彼を大きな手を掴む。

 

「初めまして、私はジェンダーよ。これから貴男のチームの一員だわ、よろしく。あそこでデリケートゾーンを抑えてる可愛い子猫ちゃんは、貴男のメンバーには入らないけど、一応紹介しとくわ」

 

ジェンダーは股間を抑えてる美少女で巨乳なワルキューレの軽歩兵を見る。

 

「彼女の名前はユリ、女の子なのに男性器があるの。胸も大きいし、とっても面白い娘よ。さっき彼女と一戦どころか、何十回も交えてきたわ。彼女、私と会うまでに童貞だったのよ」

 

美しい笑みを浮かべて嬉しそうに話すジェンダー。

ユリと呼ばれる巨乳美少女は「痛い」と連発し、股間を押さえながら他の軽歩兵が集まってる場所へと、恥ずかしそうに向かって行く。

 

「本当にこの女は飢えてるぞ」

 

ジョージがダッチに耳打ちする。

そして二人は、タカ達の元へと向かう。

 

「入るぞ、お前等の隊長さんを連れてきた」

 

待合室に入ったジョージとダッチ、そして一番最初に希が目に入った。

 

「どうして子供がこんな所に居る?」

 

ダッチは直ぐにジョージに問い質した。

 

「あの小娘は社長夫人のお気に入りだ。実戦もそれなりに経験している」

 

「いや、そういう事じゃない。俺の隊には女はいけても子供は駄目だ」

 

この2人のやりとりを見ていた希は不安になる。

暫しジョージによるダッチの説得が続き、なんとか、ジョージはダッチを納得出来た。

丁度タカとミキが寝室から出てきて、ダッチに挨拶する。

 

「貴男が俺達の隊長ですか?」

 

「そうだ、日本人。名前は?」

 

「鷹山勇治っす、あだ名はタカって呼ばれてます。こっちは」

 

タカがミキの方を振り向いた瞬間、ミキが名乗り出す。

 

「蓼光稀です。ちなみに、この人の奥さんよ」

 

この答えを聞いていたジョージとダッチは大笑いする。

これに対し、タカとミキは顔を赤らめる。

最後に希が名乗った。

 

「風連希です・・・今は社長さんの所に引き取られてますけど・・・よろしくお願いします」

 

その後、ミーティングルームにメンバーを全員連れて行く。

もちろんタカ達の事を余りよく思わない者達が居た。

 

「なんでこんな所に餓鬼が居るんだ?」

 

「あぁ、俺もそう思ったぜ。おまけにあの日本人の男女、ベタついてやがる」

 

黒人のマックが、白人のブレインにタカ達の悪口を本人達に聞こえないように告げ口していた。

ミーティングルームに付いた後、ジョージがボードの前に立ち、作戦の説明をする。

ダッチは、メンバーではない他のコントラクターが居ることに異議を唱える。

 

「おい、俺達のチーム以外に何故、他のコントラクターが居る?」

 

「作戦は2チームで行う。指揮官はこの俺だ、一切の疑問を抱くな」

 

ジョージの答えにダッチはいらいらしながら席に座る。

それを見ていた他のチームの隊員達は、クスクスと笑う。

 

「そこ、奴を侮辱はするな。この場で射殺しても良いんだぞ?ではミーティングを始める。スピードが命だ、一日で済ませよう。作戦はブラボー、アルファの2チームで行う。ブラボーはここ」

 

物指し棒を研究所から離れた場所にアルファを指し、ブラボーを下の方に指す。

 

「俺達はブラボーか?」

 

「そうだ。衛星写真によれば、一体のゾンビは居ない」

 

ダッチの問いに、ジョージは付け足して答えた。

そのまま、続行する。

 

「研究所内に居るマフィアはみんな殺せ、皆殺しだ。それと住民も、情に流され助けようなんて思うなよ」

 

睨みをきかせて告げた後、ジョージがボードを叩いた後、ミーティングは終わった。

それぞれが用意されたアーミット社のマークが機体後部に描かれたUH-1のヘリに登場する。

アルファチームは二機でダッチのチームのヘリも二機だ。

希はジェイダーに可愛がられながら、ヘリに乗る。

 

「どうしたの、希。あの女と面白い事でもあった?」

 

「いえ、なんだか小動物みたいだから可愛いって言われてました」

 

「随分とエロい女だ。だが、ミキほどではないけどな!」

 

タカのその発言にミキは照れながら、タカの肩を叩いた。

それを見ていた希は、「またイチャイチャしてる」と小声で呟く。

UH-1の操縦室で、操縦士がラジオをつけ、音楽を掛けた。

副操縦士が笑みで返す。

 

「こいつを聞かなきゃ始まらないぜ!」

 

ノリノリで操縦するパイロット達であった。

一方、タカ達の目標地点に場所で、WWⅡ時代のドイツ軍の混成戦闘団がこの死者で溢れた世界に転移した。

その戦闘団の編成はⅢ号戦車M型十七両(内N型七両)、Ⅲ号突撃砲G型十六両、Ⅳ号戦車J型十三両、パンター戦車G型五両、ティーガーⅠ型重戦車一両、エレファント重突撃砲一両、ヘッツァー二十二両、Ⅳ号駆逐戦車F型五両、ヤークトパンター駆逐戦車三両、ヤークトティーガー重駆逐戦車一両、自走榴弾砲ヴェスペ四両、自走榴弾砲フンメル三両、Ⅳ号対空戦車メーベルワーゲン九両、Ⅳ号対空戦車ヴィルベルヴィント五両、2 cm Flakvierling 38を搭載したSd.Kfz.7/1七両に3.7㎝Flak37搭載のSd.Kfz.7/2五両含めて十二両、SdKfz 251兵員輸送1型六両、24口径7.5㎝砲塔搭載9型三両、三連対空機関砲搭載21型五両、7.5㎝PAK40対戦車砲搭載22型四両を含めて十八両、Sd.Kfz.234装甲車プーマ三両、その他弾薬・兵員・物資輸送用トラック十両合わせたかなりの装甲戦闘部隊だ。

歩兵は擲弾兵・降下猟兵・空軍野戦兵・武装SS・武装SS降下猟兵を合わせて一個大隊ほど、兵員輸送車に乗りきれない分は戦車などに乗っている。

その戦闘団の指揮官であるアルベルト親衛隊中佐は、ティーガーから見慣れない現代日本の景色を眺めていた。

混成駆逐戦車中隊の長で、128㎜長砲身を搭載したヤークトティーガーの車長あるディーターも驚きを隠せないでいた。

その後、彼等は装甲懲罰大隊Zbvと遭遇することになるが、それは日本上空で核爆発が起きた後である。




装甲部隊とは、ドイツ軍で言う機甲部隊です(今更r

後、擲弾兵とはドイツ軍で言う歩兵部隊です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

言葉、覚醒

ヘリの機内でロックな音楽が響き渡る中、全員、煙草を吸ったり、雑談を交わして時間を潰していた。

その時、ヨントがジョージのミリタリーブーツに唾を吐く、このヨントの態度に対し、ジョージは、彼を睨み付ける。

 

「この野郎、人のこと良く見て唾を吐け!」

 

ドスの効いた声でヨントに告げるが、当の本人はヘラヘラしながらジョージを見ていた。

そして韓国語(朝鮮語)で「黒人風情が」とジョージに態と聞こえるように漏らした。

 

「俺が韓国語を分かってないと思ったか、マヌケ。こっちはお前より良い大学を出てんだ。分かったらさっさっとそのライフルの安全装置(セーフティー)を掛けろ、ここで撃ったら跳弾してみんな死ぬぞ」

 

大字K2ライフルの安全装置を外そうとしていたヨントは気付かれたと分かり、安全装置を掛け直した。

その間にヘリは目的地へと到着する。

 

『目的地に到着、周囲に敵影無し』

 

パイロットからの報告を聞いたダッチ達は装備の確認を行い、それが終わったら持っているライフルの安全装置を外す。

機体に付けられたケーブルが地上へと降ろされるのを確認すると、まず初めにタカが捕まる。

 

『降下開始』

 

パイロットが告げ、タカ達は地上へと降下した。

初めに降下したタカが、FN FMCを周囲に向けて、パイロットの死角にいる敵を索敵する。

その後、ヘリから続々とチームメンバーが降下し、全員を降ろしたヘリは帰り道を沿って、四国の空港へと去っていった。

 

「50メートル感覚で前進」

 

リーダーのダッチが命じた通り、約50メートルに開けて前進するメンバー。

人気のない町を警戒しながら向かうタカ達であったが、ヘリの機内で問題を起こしたヨントは、勝手に何処かへ行ってしまった。

 

「おい、何処へ行くつもりだ!?戻れ!」

 

ジョージの制止を聞かず、ヨントの姿はドンドン小さくなっていく。

FN FALの強化モデルDSA SA58をヨントに向けたが、ダッチに止められた。

 

「弾を無駄に使うな、あいつはここで死んだ。そう思え」

 

この言葉にジョージは黙り込み、SA58を下に向けて目的地へ再び歩き始める。

一方、希は道路に落ちていた瓦礫に躓き、大きな音を立てて転んでしまう。

 

「誰も出てこない・・・?」

 

咄嗟に体制を立て直し、MP5kを構えて周囲を確認、敵が居ないと分かった後、安心するが、近くにいたマックに胸元を捕まれ、睨みながら激しく恫喝する。

 

「この小娘めぇ、お前が立てた音で隊のみんなを危険に晒すんだぞ!今度余計な音を出したら絞め殺してやるからな!分かったか?!」

 

マックは恫喝した後、元の位置へと戻っていった。

希はマックに恐怖し、既に失禁していた。

その頃、忘れていた狂気こと言葉はと言うと、凸凹コンビとの戦闘後、学園を脱出していたのであった。

だが、脱出から一日後に奴ら(ゾンビ)に不意を突かれ、左腕を噛まれてしまう。

もう言葉は奴らに成る寸前であり、その証拠に目や口から血を流している。

 

「私の人生はここまでのようです、ね・・・ブハァ!」

 

自分の最期を察し、血を吐いて倒れ込む。

そのまま道路に居る猫を見ながら奴らに成ろうとした瞬間、ワルキューレの兵士を見つけた。

力を振り絞って立ち上がり、その女兵士の元へ近付く。

その兵士の装備はさながら特殊部隊の様だ、バラクラバで顔を隠し、右手にはナイツ社のAR15のクローンSR16が握られている。

女性兵士はSR16を杖代わりに使ってる。

何故なら右足に動物用の罠トラバサミが刺さった後があり、出血しているからだ。

左手には何かのスーツケースが握られており、その女性兵士は急いでいるみたいだ。

相手もまともに動けないと判断した言葉は、持ち物の鉈で襲い掛かった。

 

「ッ!?」

 

言葉に目を付けられた女性兵士はロシア語で叫び、手に持つライフルを撃とうとしたが、バランスを崩し、地面に倒れ込む。

そこを言葉は逃さず、鉈で悲鳴を上げる女性兵士の身体を何度も何度も切り裂いた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ゴホ!」

 

血を吐いた後、女性兵士が持っていたスーツケースの中身を開けた。

 

「何かの薬みたいですね・・・」

 

中身には注射器と、何か良からぬ液体の入った容器があった。

直ぐに容器の中身を注射器に入れ、自分の左腕に刺し、注入しようとする。

 

「どうせ続かぬ我が命・・・それならこの液体を自分に入れてみましょう・・・」

 

そう言った後、液体を自分の体内へと注入した。

 

「やはり無意味でしたか・・・うっ!?」

 

言葉の体内で変化が起き、彼女は声を上げて苦しんだ。

変化は体内だけではない、身体の傷が全て癒え、同時に圧倒的な力を手に入れた。

 

「力が溢れる・・・これは何かの強化薬・・・?」

 

試しに近くにあった壁を力一杯殴った所、壁が見事に吹き飛んだ。

滅多刺しにした死体の腕を引き千切ったりもした。

 

「これは・・・凄い・・・」

 

新たな力を手に入れた言葉は笑みを浮かべて喜び、音を聞き付けやって来たゾンビを全滅させた。

 

「最高・・・!」

 

拳を握りながら、意気揚々とその場を去っていった。

その時、偶然にもゾンビを撃ちまくっていたヨントがRDIストライカー12を乱射していた場面に遭遇する。

 

「(韓国人・・・何故こんな所に・・・?)」

 

身を隠しながら様子を伺う。

 

「そこにいるな?」

 

言葉の視線を感じてヨントは、大字K2を構えて接近してきた。

 

「そこにいるのは分かってるぞ、チョッパリめ・・・!」

 

ヨントは笑みを浮かべながら言葉の隠れる場所へと向かってくる。

咄嗟に言葉は、建物に入り、天井に捕まった。

建物に入ったヨントは、疑問に思う。

 

「居ないぞ・・・何処にいる?」

 

ライフルの銃口を辺りに向けるヨントを見ながら、血塗れになった鉈を構える言葉。

そして、下の位置にヨントが着くと、彼の頭上目掛けて鉈を振り下ろした。

 

「バァ!ア・・・なんだこれは・・・!?」

 

何が起こったか分からないでいるヨント、両方の視線に鉈の刃先が見える。

後ろにいた言葉は、鉈を引き抜くと、ヨントの死体は頭から血飛沫を上げて床に倒れた。

超人的な能力を手に入れた言葉は、その場を去るのであった。




プレ○ター風に成ってしまった言葉。
果たして、タカ達は生き残ることが出来るのか!?後半へ進む!(政宗一成風に


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見えない恐怖

ぷ、プレ○ターだ・・・これ・・・


新しい能力に目覚め、超人的な身体能力を手に入れた桂言葉。

壁など足の脚力を使えば上がれ、天井に張り付くことだって出来る。

負傷しても、脳や心臓が完全に破壊されない限り、驚異的な自己再生能力で直ぐに治ってしまう。

 

「(自分でも怖くなってしまう程の能力です。でも、上手く活用すれば無敵かも)」

 

近くにいた複数の奴ら(ゾンビ)を八つ裂きにしながら頭の中で語る言葉。

ゾンビが全滅するのを確認した後、ワルキューレの兵士が発砲したと思われる銃声が耳に入り、様子を確認しに向かう。

 

「無駄に撃っちゃったら駄目でしょう!」

 

「だって、アーアー煩いんだもん!」

 

木の枝から短機関銃を撃ったとされる2人の軽歩兵が喧嘩する場面を伺いながら、鉈を構え、隙あらば暗殺の準備をする。

その時、M5A1スチュアート軽戦車が言葉の視線に入った。

 

「(あれは戦車?形が随分と自衛隊のと違いますが・・・あの女の人達は何者なんでしょうか?)」

 

車長らしき人物がキューポラから上半身を出して、会話している場面を見ながらワルキューレの正体を思考する言葉。

 

「(ディーゼルエンジンの臭いがしますし、エンジンに火炎瓶を投げ込めば破壊できますね)」

 

短機関銃を持った兵士達が車長との会話に気を取られている間に、自作した火炎瓶で軽戦車を破壊しようと試みる。

 

「あのヘリの事聞いてる?」

 

「知らないよ、もしヘリが来るってあったら無線から連絡がくるもの」

 

「そう、じゃあ、乗ってく?」

 

「うん、巡回も済んだことだし乗るわ」

 

「車内に入れないから、揺れるけど、車体で我慢してね」

 

言葉がスチュアートの後方へと回り込んでいる間に、2人の戦乙女が車体後部に乗ろうとしていた。

火炎瓶はエンジンに直接当てない限り、効果が薄いだろう。

直ぐに火炎瓶をスチュアートのエンジン部に向けて投げ込んだ。

プロ野球選手が投げるボールの如く、火炎瓶が剛速球の様にエンジン部へと飛ぶ。

そして火焔瓶がエンジンに命中、乗ろうとしていた軽歩兵2名の身体に燃え上がり、スチュアートも燃え出す。

 

「アアアァァァ!!熱いよ!熱いよ!!」

 

「水!誰か水ッ!」

 

「わぁぁぁ助けて!」

 

燃え移った炎が美しい戦乙女達の身体を焼き、燃え盛るスチュアートから慌てて抜け出す乗員達。

戦車を操る乗員達の身体も燃えており、火を消そうと必死になって、水を探している。

当然、かなりの大声と音が響くために周りのゾンビが引き寄せられ、燃える戦乙女達に襲い掛かる。

言葉はただそれを見ているだけであった。

数分間燃えた後スチュアートは爆発し、張本人である彼女はその場を去っていった。

一方、目的地へと前進中であるダッチのブラボーチームはM5軽戦車の爆破音を耳に入れた。

 

「爆破音!?誰だ?」

 

この作戦の指揮官であるジョージは、ダッチのチームメンバーを見る。

 

「アルファチームの連中じゃないのか?あいつ等はRPG-7を持っていた」

 

近い距離に居るビリーが、警戒するジョージに告げる。

 

「あいつ等めぇ・・・この作戦が終わったら減給だ」

 

何名かが笑った後、目的地の研究所へと到着した。

ダッチは懐から双眼鏡を取り出し、研究所を占拠している武装した複数の私服の生きた人間を見る。

 

「目が逝ってる奴が多数にジャパニーズマフィアが複数・・・装備はお粗末な物ばかり」

 

近くにいたジョージに告げたダッチは、双眼鏡を渡す。

 

「AK47か・・・?いや、中国製の56式自動歩槍だ。レバーが反対の奴まである。RPG-2、レア物のデグチャレフPTRD1941だぞ。後は民間用と猟銃・・・こいつは驚いたモシン・ナガンボルトアクションライフルまであるぞ」

 

「機関銃は?」

 

「機関銃はRPD軽機関銃、中国製だ。対空用としてKPV重機関銃まである。みんなお粗末なコピーか、メイドインチャイナだ。その内壊れる」

 

笑顔で答えたジョージは、ダッチに双眼鏡を返す。

次はアルファチームの合図を待つだけだが、その合図が一向に来ない。

 

「どうだ、来たか?」

 

「いえ、リックの奴が無線でアルファチームに呼び掛けていますが、何の返事もありません!」

 

ポンチョと呼ばれる副官格のコントラクターが、様子を見に来たダッチに報告する。

直ぐにジョージの所へ戻りる。

 

「どうだ、アルファチームは?」

 

「いや、全く来ない。本当に2チームでやるのか?」

 

「あいつ等、今度こそ減給だ。予定の時刻までまだある。暫し待とう」

 

そうジョージが告げて数分後、アルファチームは一向に来ない。

暇で自販機から飲み物を買っていたタカ達は寝転び、ずっと待っている。

 

「来ないわね・・・」

 

「あぁ・・・」

 

煙草を吸いながらミキの問いに答えるタカ、希は両手にレモンジュースを持って、口に運んでいた。

他のブラボーチームの面々もだらける。

一向に来ないアルファチームに苛ついたのか、ダッチは攻撃を開始しようとする。

 

「もう待てん、俺達だけでも攻撃だ」

 

「待て、この戦力では歯が立たんぞ!返り討ちにされるだけだ!」

 

「相手は銃を禄に撃ったこともないジャンキー共と教養のないアホ共だ・・・勝算はある」

 

ダッチの案にジョージは溜息を付いた後、具体的なことを聞く。

 

「で、どうするんだ?俺達は映画の中のヒーローじゃないんだぞ」

 

「分かっている。俺以外の奴が奇襲に最適なポイントに着き、あの放置されたタンクローリーを門に突っ込ませる。研究所の敷地内にドラム缶が多数、それに弾薬箱もそれなりにある」

 

放置されたタンクローリーを指差しながら言うダッチに、ジョージは呆れた顔をして口を開く。

 

「はぁ・・・後は強行突破か?」

 

「その通り。爆発で浮き足立っている間に、皆殺しだ」

 

指を鳴らしながら笑顔で答える。

ジョージはそれに納得、ダッチはビリーを呼び出し、彼に伝令させる。

 

「お前等、戦闘の用意だ」

 

「ようやく来たか!」

 

「チェーンガンをバックから出しなよ」

 

伝令に来たビリーに、タカはFMCのコッキングレバーを引いて初弾を薬室に装填し、意気込む。

ミキもタカと同じ動作を行い、希も戦闘準備をする。

マックはブレインにバックの中身を取るように伝えた。

ブラボーチームの面々が戦闘準備を完了した後、ダッチはタンクローリーに向かう。

運転席のドアを開けてみると、運転手の成れの果てが彼に襲い掛かる。

 

「この野郎!」

 

ゾンビがダッチの首筋を噛む前に、角に頭を叩きつけられ、沈黙した。

その後、エンジンを掛ける。

 

「燃料が残ってると良いが・・・」

 

ダッチは心配しながら研究所までタンクローリーを走らせる。

研究所が見えると、アクセルを踏み、スピードを上げて門に突っ込もうとする。

 

「うぉ!?誰だ!止まれぃ!」

 

馬鹿な男が56式自動歩槍をタンクローリーに向けて警告しているが、当然ながらダッチは無視、そのまま轢き殺す。

 

「突っ込んでくるぞ!」

 

「構わねぇ!撃ちまくれ!」

 

中国製のアサルトライフルや軽機関銃の銃弾がタンクローリーに命中するが、幸運なことに燃料貯蔵に当たらなかった。

門を突き破り、正面にロケット砲や重機関銃の弾薬箱が積まれた山が見える。

もちろん弾薬箱の山に突っ込む。

充分距離に達した後、ダッチはタンクローリーから脱出、そのまま迎撃に来たヤクザや薬物中毒者をAK107で次々と射殺していく。

その後、弾薬箱の山に突っ込んだタンクローリーは大爆発、これを合図にタカ達が奇襲攻撃を開始した。

 

「やることが派手だね」

 

待機していたブレインが言った後、ヤクザのおっさんが叫ぶ。

 

「て、敵襲や~!」

 

その叫びと共に研究所本棟から続々とメイドインチャイナ製品の自動小銃や軽機関銃、散弾銃を持った一団が出てくる。

ミキと希と共にタカは、道行く先に居る中毒者やヤクザを次々と射殺していく。

 

「エネミーダウン!」

 

「タカ、後ろ!」

 

「この野郎死ねぇ!」

 

タカが3人を同時に始末した後、ミキが小刀を持ったヤクザが後ろから斬りかかっていることを知らせた。

そのヤクザはジョージのSA58で射殺された。

 

「死角をカバーしろ!アホ共がそこら中から沸いてくるぞ!」

 

ジョージが言った後に、宿舎から次々と中毒者やヤクザが出てくる。

 

「二手に分かれろ!油断するな!!」

 

次々と沸いて来るも、タカ達に敵うはずもなく、続々と死体が増える。

 

「アフガニスタンを思い出す・・・」

 

ポンチョがRSAFアーウェン37を撃ちながら昔のことを思い出す。

 

「死ネェーイ!」

 

在日朝鮮人と思われる男がジェイダーの後ろから着剣済みなモシンナガンM1944で突っ込んできたが、彼女が素早く振り返り、右手に持つブラジル軍正式採用のインベルMDを撃たれて射殺されてしまう。

 

「私の後ろから攻めて良いのは、ベットと私の合意を受けた時よ」

 

美しい笑顔で答えるジェイダー。

見張り台に居たヤクザも、上ってきたビリーに投げ落とされ、絶命する。

 

「俺とジョージは本棟内を鎮圧する。お前達は外で暴れていろ!」

 

了解(コピー)!」

 

ダッチに命令されたポンチョとリックはそのまま、敷地内鎮圧に当たる。

タカ達も屋上から出てきた中毒者やヤクザを撃ち殺していく。

 

「アァ~ア~!」

 

「(室内戦しかやったこと無いから怖い!)」

 

この時、希は戦闘の恐怖からか、失禁していた。

そんな彼女に後ろから中毒者が56式を乱射しながら突っ込んで来る。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ死ねぇーーーー!!!」

 

「へ、はぁっ!来ないで!」

 

恐慌状態のままでMP5kA4を中毒者に向けて乱射する希、だが、痛覚を感じないらしく、56式を希に向け、引き金を引こうとする。

直ぐに56式を持つ右手を撃った。

9㎜パラベラム弾が命中した56式を握る指が全て落ち、自動小銃が下に落ちる。

 

「俺の指が・・・このガキィィィィィ!!」

 

残った左手で希に襲い掛かる。

狙いを定めてMP5kの引き金を引いたが、弾倉の中身が無く、何度引いても引き金を引く音しかしない。

さらにお襁褓を濡らした希は、AMTオートマグナム44をガンホルスターから抜き、安全装置を外し、向かってくる中毒者に向けて、引き金を引いた。

大口径の弾丸を喰らい、中毒者の左腕が吹き飛び、第2射目で右脚が吹き飛んだが、中毒者は這いずりながらも向かってくる。

泣きじゃくりながらも、頭部に狙いを付けて引き金を引き、中毒者の頭を吹き飛ばした。

 

「大丈夫、希!」

 

ミキがヤクザを射殺しながら恐慌状態の希に近付いた。

 

「もう大丈夫よ、希。あいつは死んだから・・・」

 

弾切れになったオートマグナム44の引き金を引き続ける希を抱きしめた。

抱きしめられた希は、拳銃を下ろし、何が起こったのか分からないでいる。

その後、タカが来て、彼女達はタカと一緒にダッチとジョージが向かった本棟へと向かう。




まだ戦闘シーンは続きます。
タカ達とダッチ等がコマンドー状態です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見てはいけない物を見つけた

敷地内の戦闘はまだ続いていた。

研究所を占拠した一団は素人や実戦経験皆無な者ばかりで、タカ達の足下などに及ばない一団であるが、数は彼等よりかなり多い。

 

「こいつは参った。30人くらいと思ったが、300人か1000人もいそうだ」

 

「三個大隊が相手か、弾薬が底を尽きそうだな」

 

M240を撃ち続け、愚痴を漏らすマックに、ビリーは賛同する。

ブレインとポンチョは、ベランダからRPDの銃撃で遮蔽物に抑え込まれていた。

 

「クソぉ、あの機関銃なんとかならんか?!」

 

「大丈夫か、血が出てるぞ?」

 

左腕から血を流しているブレインにポンチョは伝える。

 

「ケッ、拭いてる暇なんかねぇーよ」

 

「あいつの機関銃の銃身が焼けたら、手榴弾をくれてやろう」

 

「そうだな」

 

2人がそう決めた後、何名かが向かってきたが、あっさり返り討ちに遭う。

ベランダに居る機関銃手達は、2人を血眼になって探すが、全く見つけられない。

味方の悲鳴が聞こえてくるだけだ。

 

『ウヘッ!』

 

『オワァッ!』

 

『敵はそこ、そこぉ!アァ~!』

 

「ど、何処に居るんだァー!」

 

恐慌状態に陥るヤクザ達は、あろう事か味方に向けて機関銃を撃ち始める。

 

「止めろー!味方だ!」

 

そのまま動く物全てに撃ち始め、中毒者とヤクザは混乱状態になる。

 

「あいつ等、トチ狂って味方を撃ち始めたぞ」

 

「ろくな連中じゃないな」

 

機関銃手の死角に入ったブレインにポンチョは、味方に撃たれる中毒者やヤクザ達を見て笑いながら、M26破片手榴弾のピンを抜いてベランダに投げ込んだ。

弾薬箱にでも破片が当たったのか、破片手榴弾ではない爆発力を起こし、死体が落ちてきた。

 

「大当たりだ!」

 

落ちてきた死体を見て、ブレインは笑みを浮かべる。

一方、ジョージとダッチを追って本棟に入ったタカ、ミキ、希の3人。

廊下には、専攻した2人に立ち向かっていったヤクザと中毒者、不法滞在者の死体が転がっていた。

希の顔が少し不安になるが、タカがフォローする。

 

「心配すんな、こいつ等は襲ってこない」

 

その時、中国語や韓国語、様々な語学が聞こえてきた。

さらに所々から聞こえてくる。

 

「来たな・・・取りこぼしか・・・?」

 

FMCを構えたタカが行った後、部屋という部屋から56式などを持った不法滞在者や入国者達が飛び出してきた。

直ぐに手短な一人の中国人を射殺、ミキもステアーAUGで後ろから迫ってきた中毒者を射殺する。

向かってくる中毒者や不法移住者を希もMP5kで仕留めていく。

 

「室内戦ならこいつの番だな!」

 

背中に下げていたスパス15を取り出し、叫びながら突っ込んでくるヤクザや中毒者達に向けてフルオートで撃つ。

 

「死ねや!アバベッ!」

 

「腕が!俺の腕が!」

 

「いてぇよ~、母ちゃん・・・」

 

「食われれてる!俺の身体が食われてる!!」

 

弾倉の中身が切れた瞬間、人体のパーツがそこら中に転がり、腕や脚を失った者が悶絶し、中毒者は幻覚を見て錯乱状態になっている。

まだ襲ってくる中毒者が居たが、タカが取り出したコルトガバメントシーキャンプカスタムやミキが取り出したベレッタM84でトドメを刺される。

 

「う、ウェ~」

 

余りにも刺激の強い光景であった為に、希は床に向かって嘔吐した。

ミキが嘔吐する彼女の背中をさすりながら、やらかした張本人であるタカは頭をさすりながら困った表情をしていた。

もちろん襲ってきた連中は死体となっている。

丁度その時、ジョージとダッチが階段から下りてきた。

隠れていた不法滞在者達が彼等を襲い掛かったが、あっさりと返り討ちにされ、最後の一人がダッチに、身体をボウガンの矢で突き刺され、壁に突き刺さったまま死亡する。

 

「そこに立ってろ」

 

笑顔で言った後、タカ達と合流、ジョージはSA58を下げて、タカ達に問う。

 

「お前等、生きてたか?!」

 

「生きてますよ!外は激戦です!」

 

「その分だと、外はドンパチ賑やかだな。本棟の一階から最上階まで鎮圧した。後は地下だけだ、そこから蟻みたいに沸いてきやがる」

 

地下へと続く階段を指差しながらダッチは、タカ達に告げた。

直ぐに彼等は地下へと続く階段へと向かうが、行く手を阻むかのように民間用銃器や猟銃を持った一団が襲ってきた。

 

「ほうら、来た!」

 

ジョージはSA58をフルオートに切り替えて向かってきた一団に発砲、タカもスパス15の再装填を素早く終え、引き金を引く。

ミキと希もフルオートで発砲し、ダッチはAK107の銃身に装着されたGP25に専用の擲弾を装填し、躊躇いもなく発射した。

人が発するとは思えない声を上げて襲ってきた一団は全滅し、タカ達は地下へと続く階段へと向かった。

 

「敵兵は居ないようだが・・・」

 

ダッチは地下を見回しながら口を開き、それにジョージが答える。

 

「馬鹿共やジャンキー、不法滞在者や入国者の間違いだろう。そこら中から声がするぞ、二手に分かれよう。お前等は左を、俺とダッチは右に行く」

 

左をタカ、ミキ、希が向かい、右をジョージとダッチが担当する。

地下からでも銃声が聞こえ、外は未だに戦闘中と分かる。

 

「結構、不気味な所ね。ここで銃撃戦をやってないのに血痕が残ってる・・・研究所の職員の血だわ・・・」

 

ミキの発言で希が不安になるが、言った本人が謝った後、警戒しながら先を進む。

至る所血だらけで、空薬莢も落ちており、誰のかすら分からない指まで落ちている。

銃声が近い距離から聞こえてきた為に、遮蔽物になる壁に隠れ、聞こえてきた方角に銃を構えながら警戒する。

 

「ダッチとジョージさんの銃だ。出会い頭に遭遇したと思う」

 

タカがミキと希に告げた後、銃声が連発してくる。

気にせず前進する中、死んだ生き物が発する臭いがする。

 

「死体が発する臭いだな。近くに死体でも置いてあるかもな」

 

死体の臭いを察知したタカは、臭いがする方へと向かっていった。

そこには悪臭を放つ死体が山積みにされていた。

 

「うっ、何よこれ・・・!?」

 

「希、お前は外を警戒しておけ。急用以外こっちに来るな!」

 

通路で警戒する希にタカはそう伝えた。

積み上げられた死体の服装から、ここの研究者や職員の者と思われる。

女性の死体は全裸にされており、男の体液が裸体に付着している。

これを見たミキは、怒りを感じた。

 

「惨いことを・・・!」

 

部屋を後にした後、韓国語が聞こえてきた。

在日朝鮮人・韓国人の者だろう。

 

「タカさん達、敵兵が来ますが・・・?」

 

「殺して構わん」

 

「あ、はい」

 

希は、部屋越しからタカの返答を聞いた後、MP5kの弾倉を新しい弾倉に差し替え、声がする方に構える。

 

『向こうで声がしたぞ』

 

『日本語だ、まだ生きている日本人が居たか』

 

足音と声が大きいが為に、人数は2名と把握できた。

ドットサイトを覗いて、まだこちらに気付かない在日朝鮮人に狙いを定め、引き金を引いて発砲する。

 

『敵が、ア!?』

 

連続で2名を仕留めた希は息継ぎをした後、部屋にいるタカとミキに告げる。

 

「仕留めました」

 

「よし、俺達は別ルートを行こう。最悪なことに通信は出来ないが、ダッチさん達の先回りだ」

 

部屋を出た2人の後を、希はついていった。

まだ銃声は室内に響いているが、タカ達はヤクザや薬物中毒者、不法滞在・入国外国人にも遭遇していない。

地下駐車場に着いた彼等は、鉄製の吊り橋の上から見えるどんでもない物を目撃した。

 

「なんだこりゃあ?JS-3や2にKV-1、T34までありあがる」

 

駐車場にはWWⅡソ連時代の重戦車ISシリーズやKVシリーズ、代表的なT34/85、対空用のZSU-37対空自走砲、ZSU-57-2対空自走砲、第一世代のT-55まである。

さらに89式自走多連装ロケット・システム、VCTP歩兵戦闘車、SU-122-54駆逐戦車まであった。

 

「戦争でも始める気ね」

 

ミキが言った後、一同は先へと進んだ。

道中、アラビア語が聞こえ、タカはミキと希にハンドサインで「銃を撃たず、配置に着き、合図を待て」よ伝えた。

ドアに近付き、話を盗み聞きする。

 

『あの女共は我が友であるアバムを殺した挙げ句、我々まで殺すつもりだ』

 

『アマ共めぇ、今すぐここに集めた兵力で一気に・・・!』

 

『もう無理だ、奴らの刺客がきている。それに連中は強すぎる、しかもたった11人だぞ!訓練を受けてない現地兵ではとても歯が立たん!』

 

『戦力を出し惜しんでいる場合か!直ぐに機甲部隊を投入して、奴らを片付けろ!音でやって来た死者も全滅できる!』

 

『馬鹿者!それでは戦乙女の名を語る雌豚共にバレてしまうぞ!』

 

『恥だが、あの機甲部隊と乗員を地下列車に載せて退避させろ。日本人、中国人、朝鮮人、東アジア人の者達はここに残し、我々は次なる計画のために希望を載せた列車と共に退避する』

 

『いや、玉砕だ!かつてこの地の人間は国のために自らの命を犠牲にしてまで国を守った!今はアメリカの帝国主義者に寄って、腰抜けばかりしか居ないがな!我々も彼等に習おうではないか!』

 

『無謀だ!あれは追い詰められたこと!我々は解放される為に無駄死にするわけにはいかない!』

 

部屋から聞こえてくる口論をタカは聴きながら、「鎮圧する」とハンドサインで送り、ミキと希が配置に着く。

希がドアノブを握った後、タカはM84スタングレネードのピンを抜き、投げる準備をする。

またハンドサインで「声からして7人居る」と伝えた後、希にドアを開けるように命じた。

 

『なんだ?』

 

アラビア語で警備兵がドアに近付いてくる。

この男がドアに近付いた瞬間、ドアが開き、閃光手榴弾が部屋に投げ込まれ、凄まじい光と音が部屋中に響き渡り、居た者は視覚と聴覚が麻痺する。

 

『ウワァ!なんだ!?』

 

混乱状態に陥った中東系将兵達は、まともな反撃が出来ず、突入してきたタカ達に一方的に射殺されていく。

この部屋で響き渡る銃声が止めば、タカとミキ、希しか居なかった。

まだ息のある中東兵が、ミキの足を握ろうとしたが、ベレッタM84で射殺された後、唾を吐きかけられる。

一方のジョージとダッチは、ロシアの輸送ヘリMi-9で脱出しようとするアラビア系兵士達を見つけた。

 

「ロケットランチャーはあるのか!?」

 

「ここに付いてる!」

 

ジョージに聞かれたダッチは、AK107に付いているGP25を指差しながら狙いをコクピットに付け、撃ち込んだ。

コクピットに擲弾が命中したMi-9は床に墜落し、爆発した。

タカ達は直ぐに地下の脱出用列車に向かったが、既に逃げられた後であり、後ろの貨車を見れば、先程駐車場で見た戦闘車両が載せられていた。

研究所内の敵兵力の残りは、脱出用の列車で撤退され、取り残された兵力は全て、タカ達に寄って全滅させられた。

 

「研究所を制圧!」

 

地下から出てきたダッチが、無線兵であるリックに伝えた。

彼の後ろに居たジョージは、研究所内で回収したと思われる書類やアタッシュケースを持っていたが、怪しむ者は、ダッチ一人だけ。

タカ達も出てきた後、指揮官であるジョージに地下の駐車場で見た機甲車両のことを知らせたのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

回収地点まで

グロイです・・・


研究所内を完全に鎮圧したタカ達ことブラボーチームであったが、戦闘の影響でゾンビが集まってきた。

 

「2時方向からゾンビの団体さんが来ております。やりますか?」

 

「いや、弾の無駄だ。リック、迎えのヘリを要請しろ!」

 

ポンチョのゾンビ接近の報告を聞いた後、ダッチはリックに命じた。

 

了解(コピー)本部(HQ)こちらブラボーチーム。任務達成、作戦前にメンバーを一人損失したが、異常は無い。負傷者は?!」

 

受話器を取りながらリックは、ブレインに負傷者の数を問う。

 

「いや、こんなの掠り傷だ。どうってことはねぇ」

 

「負傷者は無し。予想だにしない敵兵力との交戦の為に、弾薬が不足している。迎えの“車”を要求する、オーバー」

 

その間、ダッチはジョージが持っている書類とアタッシュケースを何なのかを問い詰める。

 

「その書類とアタッシュケースの中身は何だ?」

 

聞かれたジョージは、若干額に汗を流しながら目を泳がす。

 

「あぁ、これは俺の会社の書類と大事な物だ。ここを占拠した連中はこいつで会社に金を要求しようとしていたのさ」

 

アタッシュケースを叩きながら答える。

それに対しダッチは睨みを効かせ、ジョージの胸ぐらを掴んだ。

 

「この嘘吐きめぇッ!マフィアだか研究所だのみんな俺達を引っ張り出す口実か!ホントのことを話せッ!」

 

「あぁ!分かった、分かった!離してくれ!」

 

下ろされたジョージは本当のことをダッチに話した。

 

「この任務はこの書類とこいつの回収だ。俺とあの日本人、淫乱女と韓国人でやるハズだったが、衛星写真に写った敵の戦力が多かったんだ!俺達だけじゃ無理だったんだよ!ここの所長は俺の後輩だったんだ・・・仇は取れた。それに任務は成功だ」

 

「だから俺達を引っ張り出したのか・・・で、アルファチームの連中は?」

 

来なかったアルファチームのことを聞かれたジョージは、それにも答える。

 

「連中はそこらでゾンビ狩りをしている。まだ銃声と爆音が聞こえるから、おそらくまだ掃討中だろう。向こうの小さい山で落ち合う予定だ・・・」

 

ダッチの視点から右を指差すジョージ。

彼がそちらの方向に視線を向ければ、小山があった。

 

「あれは演技だったのか(それにしても上手かったな)。では、予定を変更してここに下ろせ」

 

「そいつは無理な相談だ。もうじき日本国防軍の爆撃機か、護衛艦のミサイルで研究所は吹き飛ぶ。あの報告が合図だ、早く回収地点に向かえ」

 

真相を聞いたダッチは、無線手のリックの隣にヘリはどうなのかを問う。

 

「ヘリは回収に来るのか?」

 

「いえ、ここから11時の所にあるあの小山で回収すると言ってます」

 

「そうか。では全員直ぐに出発だ、ここにもうじき爆弾かミサイルが来る」

 

タカ達は「どうしてわかるんだ?」と互いに顔を合わせたが、ダッチが威圧する様な表情をしていたために解体していた銃器を直ぐに組み立て、小山に向かうダッチ達の後に続いた。

 

「リーダーさん、どうしてそんなに急かすの?急かされるのは嫌いじゃないけど・・・」

 

「その綺麗な顔が吹き飛ばされたく無ければ、口を閉じてろ」

 

ジェイダーに質問されたダッチは、口元に指を当てて、目で彼女を威圧した。

 

「そ、そう。分かったわ」

 

目から殺気を感じ取ったのか、ジェイダーは静まり返り、先を行くダッチの後に続く。

 

「ケッ、やれる時間もねぇのか」

 

「残念だったな」

 

舌打ちをするリックにポンチョは笑顔で言う。

人気のない市街地を歩く中、何事もなく通過したが、小規模な森林から草むらが揺れるのをリックが見た。

全員が草むらに銃を向け、リックが確認しに向かう。

 

「俺が向かいます」

 

インベルMDを構えながら草むらへと消えていった。

入ったリックは、地面に血痕が残っていることに気付いた。

 

「なんだこりゃあ、ゾンビでも居るのか?」

 

血痕を見ながら、辺りを見渡すと、女性の微かな声が聞こえた。

 

「(少々時間を食っても大丈夫だろう)」

 

良からぬことを考えながら声が聞こえる方へと向かっていった。

向かった先には、皮を剥がされた人間の死体が木に吊されており、地面や木に返り血が飛びかかった後がある。

 

「なんだこりゃあ・・・イカれてんのか・・・?」

 

周りのスプラッターな光景を見ながら、声の正体を見つけた。

それは顔の形が整い、鮮やかな黒色の髪を持ち、スタイルも悪くない女性であった。

服は脱がされ、身に付けている物は下着だけで、木に拘束されており、怖がる表情の口元にガムテープが貼られている。

 

「へっへっ、こいつはいい女だぜ」

 

イヤらしい顔付きと目付きでズボンのチャックを外し、女性に近寄った。

その瞬間、リックの胸に刃物が出てきた。

血は女性に降りかかり、女性は涙を浮かべて失禁し始める。

 

「う・・・あ・・・」

 

そのまま力尽き、仰向けにされた後、林の方へと彼の死体は消された。

数分後には、死体の処理を終えた長い黒髪を持ち、大きなバストを持つ少女が林から出てきた。

それは超人的な身体能力を手に入れた桂言葉だ。

 

「ご協力ありがとうございました。濡れたままでは気持ち悪いでしょう?替えの下着を持ってきましたから暴れないでくださいね?」

 

女性は恐慌状態に陥っており、近付いてきた言葉が殺すのではないかと思っている。

しかし、彼女が持っているのは替えのショーツであり、刃物ではない。

 

「こんなに汚してしまって、まるで赤ちゃんみたいですよ」

 

ショーツを替えながら言葉は地面に染みる尿を見ながら笑顔で言う。

女性の下着の履き替え作業が終わると、何かを思いついたかのようにリックの死体から回収したM26破片手榴弾を束にして持ってきた。

何をしているのか分からない女性だが、ショーツに線を通して、手榴弾のピンに括り付け、隣に火薬箱をガムテープで付ける。

彼女はブービートラップを仕掛けているのだ。

 

「こんな物でしょう。もう一回付き合ってくれましたら解放しますよ。簡単です、助けてと叫べばいいのですよ」

 

笑顔で語る言葉の頼みを聞きながら女性は、尻に妙な感覚を感じながら瞳から涙を流しながら首を上下に動かした。

 

「近付いてくるのがあの外国の兵隊様な人達で無ければ、私が殺します。安心してくださいね?」

 

もの凄い殺気に満ちた瞳で見られた女性は、ショック死寸前に至った。

口を塞ぐガムテープを外された後、水を飲まされる。

 

「分かった、分かったから。これが終わったら解放してよ?」

 

泣きじゃくった声で告げられた言葉は、可愛らしい笑顔で答えた。

余談であるが、この女性は言葉と出会う前に避難民の列からはぐれてしまい、暴徒に襲われそうな所を言葉に助けて貰った。

もちろん超人的な身体能力を持つ言葉に寄ってである。

暴徒は無惨にも人体から皮を剥がれ、出血して力尽きた。

その異常な殺し方に恐怖し、自分も殺されると思い、暴徒に無理矢理引き千切られた衣服のまま彼女から逃走しようと試みたが、あっさりと捕まり現在に至る。

女性はこれが最後だと願って、言葉の異様な視線を感じながら力一杯助けを呼んだ。

 

「助けてー!」

 

叫ぶように助けを呼んだ女性の声は、リックの帰りを待つタカ達の耳に入った。

全員が女性の元へ向かい、周りの異様な光景に目を奪われる。

 

「ひでぇことしやがる・・・」

 

ポンチョはどす黒い気持ちになりながら銃をありとあらゆる方向に向けて警戒する。

タカとミキは口元を左手で抑え、希は吐きそうになりながらも拘束されている女性の元へと向かう。

 

「大丈夫ですか?」

 

MP5kA4を血で赤く染まった地面に置いた後、女性の拘束を解こうとした瞬間、木の後ろに手榴弾と火薬箱を見たマックが声を上げた。

 

「止めろ!そいつはブービートラップだぁ!!」

 

「え・・・?」

 

気付かずに女性を立たせてしまった希、女性のショーツに通された線が手榴弾のピンを抜いた。

爆発した手榴弾の破片は隣に巻き付けてあった火薬箱に引火、火薬が爆発、木の根本が折れて倒れる。

近くに居た希はビリーに引っ張られて助かったが、拘束されていた女性は、吹き飛んでおり、内蔵が希の身体に飛びかかっており、彼女は恐慌状態に陥った。

 

「ああ、ああああああ!怖いよ!!」

 

自分の身体に付いた女性の内蔵を振り払った希は失禁した。

ジェイダーが希の隣に寄り添い、抱きしめる。

 

「な、なんてことを・・・!」

 

「イカれてる・・・完全にイカれてやがる・・・!」

 

ミキが口を抑えながら言った後、タカが付け足す。

この光景を見ていたビリーは、額に汗を流しながら口を開いた。

 

「俺は怖い・・・それにこんなえぐいことをしでかした奴の視線を感じる・・・!」

 

「止してくれ、恐れを知らぬ戦士だろ!」

 

若干不安な表情を浮かべながらポンチョはビリーに向かっていった。

 

「こんな殺し方をするのは、おそらく相当頭の逝ってる奴だ」

 

銃に掛かった血を拭きながらダッチが口を開く。

そしてマックとブレインが、リックの死体を発見したと報告する。

 

「リックの奴の死体を見つけました。でも、相当えぐく殺されてました」

 

「何というかその・・・皮を剥がされて元の姿が想像できません・・・」

 

「ゲリラだ!特殊訓練を受けたゲリラだ!!」

 

マックとブレインの報告を聞いていたジョージは、叫ぶようにダッチに言った。

これを聞いたダッチは、冷静に返す。

 

「ゲリラか暴徒なら、武器を回収していく。それなのにここに落ちている武器は拾わない・・・」

 

この言葉にジョージ以外は納得、タカ達はリックの犬の首輪(ドックタッグ)を回収し、回収地点へと向かった。

一方のアルファチームは、ゾンビの掃討を終えた後、航空自衛隊の飛行一個中隊によって爆撃される研究所を見ながらタカ達と同じ回収地点へと向かっていた。

道中、ワルキューレの機甲部隊と遭遇、リーダー格の男はマヌケにも声を掛けた。

 

「嬢ちゃん達、何処へ行くのかな?」

 

M4シャーマン中戦車の戦後型、M51スーパー・シャーマン戦車のキューポラから上半身を出す片眼鏡のショートヘアーの女性に声を掛けた。

チームの一員であるサリーが、リーダー格の男に近付いたほんの数秒後に、アルファチームは機甲部隊の機銃掃射を喰らい、全滅した。

その後、機甲部隊は転移してきたWWⅡのドイツ軍の方へと前進していった。




ワルキューレの機甲部隊は、M50/M51スーパー・シャーマン戦車にセンチュリオン中戦車、
歩兵戦車ヴァレンタイン、ブラック・プリンス歩兵戦車、シャーマン・ファイアフライ中戦車、M5A1ハーフトラック、ユニヴァーサル・キャリア、ダイムラー装甲車、M10C 17ポンド対戦車自走砲など。
歩兵の装備は、WWⅡのイギリス陸軍の装備です。

砲兵隊もいるよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

響き渡る銃声

任務を達成し、帰還のために回収地点へと足を運ぶタカ達ことブラボーチーム。

しかし、無線手のリックが言葉の手に掛かって殺されてしまう。

彼等が知らぬ間にアルファチームは、ワルキューレの機甲部隊と遭遇し、口封じのために皆殺しにされる。

一方の言葉は、タカ達を“獲物”としてまるで何処かの宇宙から来たハンターの様に付け狙うのであった。

 

「腕試しにあの方々と戦いましょうか・・・む・・・!?」

 

言葉はタカ達を狙う別の敵を発見した。

建造物からスコープの光が見えた彼女は、直ぐにその場へと向かった。

多少の音は鳴り、タカ達は警戒態勢に入ったが、再び歩みを始める。

タカ達を狙っているのは、二脚を立てた狙撃銃ステアー・スカウトを構えるワルキューレの狙撃兵と双眼鏡を覗く軽歩兵の二人組だ。

距離はやや遠いが、言葉に取っては邪魔されるのが嫌なのであろう。

突然、現れた長い黒髪の少女に狙撃兵達は、自動拳銃Cz75とPP-19ビゾンで迎え撃つも、人とは思えぬ蹴りで、二人とも首を飛ばされる。

凄まじい血飛沫が上がる中、言葉は双眼鏡を覗き、タカ達の位置を確認、直ぐに監視を続行する。

タカ達が森へと入っていくのを確認した言葉は、直ぐに一人ずつ殺す準備を行う。

 

「まるで誰かに見られてる気分だ・・・」

 

後衛を担当するビリーが、言葉の視線を感じつつある。

希に至っては既に失禁済みで「早くお襁褓を替えたい」と表情で表している。

その時、彼等の進行上にワルキューレの小隊規模の歩兵を確認した。

もちろん障害を取り除く為に、直ぐに向かった。

人数は三十人程度、中歩兵が六人、軽歩兵が二十四人、今の言葉なら瞬きする間に皆殺しに出来る数だ。

まずは後ろに居る中歩兵の首根っこを掴み、周りに気付かれないように始末する。

 

「あれ、ディナラさんが居ない?」

 

ブルパップライフルを背中に掛け、頭にフリッツヘルメットを被った軽歩兵が、後ろにいた中歩兵を捜し回る。

だが、言葉に口を塞がれ、林まで連れ去られた後、殺されてしまう。

これ以上は時間が掛かると判断した彼女は一気に殲滅戦と、後ろから襲い掛かる。

 

「て、敵襲・・・」

 

知らせようとした軽歩兵の頭を殴り飛ばし、隣で驚いて動けない軽歩兵を指で刺し殺す。

気付いた戦乙女達が自動小銃や短機関銃の安全装置を外して構えて発砲したが、死体を盾にして、銃弾をかいくぐり、鉈で次々と殺めていく。

木や緑の葉に血が付着し、地面が死体から流れ出た血を吸って赤く染まる。

タカ達が来る前に、手短な死体の皮を剥ぎ取り、立ち去る。

銃声を聞いたタカ達が、辺りを見渡し、言葉に殺され、無惨な姿に変えられた戦乙女達を見た。

 

「まるでハンターだ、しかも皮を剥ぎ取られてる」

 

無惨な姿となった死体を見ながらビリーは隊長のダッチに伝える。

 

「こんなことする奴はトンデモねぇ頭のネジが飛んだ奴だ」

 

「俺達は不死身のコンビだ。こんな奴には負けねぇよ」

 

死体をマジマジと見ながらマックとブレインは意気込む。

 

「次はあの人にしましょうか・・・」

 

木の枝の上から言葉は、ブレインに狙いを付けた。

タカ達が移動した後、わざとブレインの近くで物音を鳴らし、誘い出した。

 

「おい、何処へ行くんだ!?戻れ!」

 

「俺が追います!」

 

ジョージが注意するが、ブレインが無視してそこへ向かい、マックが後を追う。

 

「来やがれ・・・!面見せろ・・・!」

 

インベルMDを構えながらブレインは周りに睨みを効かせる。

言葉は戦乙女から奪ったとされる対物ライフルアキュラシーインターナショナルAW50ををブレインの胸に狙いを定めて、引き金を引いた。

 

「グワァ!!」

 

森に響き渡る銃声が鳴った後、ブレインの胸に穴が空き、インベルMDの引き金を引きながら地面に倒れ込んだ。

弾倉の中身が切れた後、言葉はブレインの死体を回収しようとしたが、追ってきたマックに邪魔をされる。

 

「いたぞぉ、いたぞおおおおお!!!」

 

居場所を全員に知らせる為に叫んだ後、手に持っていたM240機関銃を言葉に向けて撃ち始めた。

 

「化け物めーい!ズァァァァァァァ!!」

 

銃口から発射される7.62mmNATO弾を回避しながら、言葉は林へと消えた。

M240の弾倉の弾丸が底をつくと、チェーンガンを撃ち始める。

 

「ちくしょおおおおおおおお!!うあああああああ!!!」

 

銃声を聞いたタカ達も到着し、周囲に乱射し始める。

ポンチョが放ったRSAF アーウェン37のグレネードを最後に全員が引き金から指を離した。

 

「あれはなんだったんだ・・・?マック」

 

「見ました、見たんです。黒い髪の日本人の小娘だった・・・!」

 

ダッチが再装填を終えて、マックに聞いた後、彼は汗だくになりながら答える。

それを耳にしていたポンチョが疲れ切ったマックに聞く。

 

「ホントか、マック?!」

 

「確かな手応えを感じた。機関銃とチェーンガンをフルバック!」

 

言葉の血が付いた雑草を指差しながら状況を報告したマック、その後地面に倒れたブレインの死体からドックタッグを取った。

 

「埋めてやりたいが時間がねぇ・・・許してくれ・・・」

 

目に涙を浮かべながら、見開いた死んだブレインの目を指で閉じた。

 

「これ程騒いでもゾンビの一体も見かけないぞ」

 

ジョージの言うとおり、森に入ってから“奴ら”の一体も彼等は目にしてはいない。

その理由は、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦が核ミサイルの迎撃に失敗しており、範囲から逃げようとするEMP対策もしていないワルキューレの機甲部隊やヘリ部隊、航空部隊が東へと撤退している最中であるからだ。

自動車や装甲車、戦車が鳴らすエンジン音で、“奴ら”が戦乙女達の後を追うように音が鳴る方へと向かっていく。

 

「まるで何かから逃げているかのようだ・・・」

 

ビリーが言った後に、タカとミキ、希が鳥の群れの様に西へと向かうヘリや航空機などが飛ぶ、空を見上げた。




プレデターネタ炸裂回が冬休み最後の更新・・・さて、明日から学校だ・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

絶望に沈む・・・

ニコ動で久しぶりにゾイドのアニメを見た。

気分良いぜぇっ、昔を思い出さぁ!


また仲間を失ってしまったタカ達、しかし彼等は仲間の死など気にする暇はない。

何故なら恐るべき敵がタカ達を狙っているからだ。

周囲を警戒しながら回収地点へと向かう。

 

「あの・・・?」

 

希が突然、前方を歩くダッチに声を掛けたため、ダッチは銃を構えながら、彼女の話を聞く。

 

「なんだ?」

 

「お襁褓を変えても宜しいでしょうか・・・?」

 

この言葉に全員が呆れた顔をする。

 

「おいおい、お襁褓なんて今変える暇はあるのか?何処から襲ってくるか分からないんだぞ!」

 

ポンチョは希の頼みを否定、しかし、光稀とジェイダーが「自分達が面倒をみる」と言う。

これに対し、ダッチとジョージは呆れた顔をしながら承知した。

 

「4分で仕上げろ。もし4分を過ぎたら置いていく」

 

了解(コピー)!」

 

敬礼した後、女性陣等は茂みへと向かった。

未だ空には航空機やヘリの大編隊が覆い尽くしている。

公道の方からエンジン音も聞こえ、それに混じって銃声も聞こえる。

光稀は、ゾンビや暴徒が居ないか辺りを見渡し、居ないと確認した後、待機していた希とジェイダーに合図を送った。

 

「一人で変えられる?」

 

肩に掛けていた雑嚢からお襁褓を取り出す希にジェイダーは手伝うかと聞いた。

 

「すいません・・・手伝ってください///」

 

顔を赤らめて口を開く希に光稀は、ジェイダーに見張りをするように頼み、野戦ズボンを脱いだ希のお襁褓に手を付けた。

紙製のお襁褓は既に希の尿で湿り、意味はなさない。

直ぐに湿りきったお襁褓を外し、そこらに投げ捨て、雑嚢に入っていたお襁褓を希に履かせた。

 

「出来た・・・時間は?」

 

「3分って所ね。急ぎましょう、置いてかれるわ」

 

ジェイダーが言った後、光稀と希は直ぐに荷物を纏めて先行くジェイダーの後に続いた。

そしてタカ達と合流する。

 

「後20秒だったな」

 

ジョージが口を動かしながら左腕の腕時計を見た後、女性陣に視線を向ける。

到着したと同時に、回収地点へと歩みを再開する。

気が付けば、上空を飛んでいた航空機の群れは消えていた。

公道や道路を走っていた戦闘車両やトラックも一台も見当たらない、見えるのは後を追う“奴ら”だけだ。

 

「嫌な予感がする・・・」

 

ビリーが歩きながら呟いた。

後衛のマックはかなり殺気立っている。

そんな疲弊しきった彼等に、言葉は容赦なく襲い掛かった。

 

「ッ!?」

 

茂みの音に気付いたマックは、手に持つM240の引き金を引き、音がした方へ発砲した。

 

「出て来いクソたっれぇぇぇ!!」

 

「待て!マック、マッーク!」

 

静止を聞かず、そのまま手に持つ軽機関銃を撃ちながら茂みへと向かう。

ジョージがマックが向かった方向へと行く。

 

「俺がマックを連れ戻す。ダッチ、こいつを持って行け」

 

研究所で回収したアタッシュケースを渡した後、マックの後を追っていった。

一方、マックを誘い出した言葉は、殺気立った瞳で探す彼を、木の上から見ていた。

 

「(フフフフ・・・機関銃を持っているのが来て、ホントに助かりました)」

 

AW50のスコープを覗きながら、マックの頭部へ狙いを付ける。

だが、気付かれたらしく、マックを見失う。

 

「おや、何処へ・・・?」

 

スコープから目線を外し、獲物を探し始める。

そこへ、ジョージがSA58を構えながら向かってきた。

 

「マック、マック!何処にいる・・・?」

 

周囲に視線を配らせながら、見渡すが、マックは居ない。

突然、何者かに口を塞がれ、倒木へと引きずり込まれた。

もちろん正体はマックである。

 

「デカイ声で言うな。奴に見つかっちまう」

 

「済まない・・・で、奴は何処だ?」

 

「あそこだ・・・」

 

指を差した方向には、身体に合わぬボルトアクション方式のライフルを持った少女が居た。

 

「あの小娘めぇ・・・俺達を鹿か猪と思ってやがる・・・!」

 

「そうか・・・では、俺達だけでやるぞ・・・!」

 

「ああ、二人であいつを仕留めて、ブレインの仇を取る。そして身体に俺の名を刻んでやる・・・!」

 

自分達を捜す言葉に気付かれず、近付くジョージとマック。

額に汗を滲ませ、銃把を握る手から汗が浸り落ちる。

ここで言葉が姿を暗ましたが、二人は慌てることもなく接近する。

 

「(気付かれましたか)」

 

向かってきたジョージとマックに、言葉は普通の少女では持てない対物ライフルの照準をマックの頭部に定めた。

レーザーサイトがマックの頭部を照らしたと共に、引き金を引いた。

大きな銃声が響き、12.7㎜弾はマックの頭部に命中し、彼の人生に終止符を打った。

銃声に気付いたジョージは、銃声の音源に向かって大口径自動小銃を乱射する。

 

「ッ・・・!?」

 

弾丸は言葉の頭部を掠めたが、傷口は一瞬で塞がる。

手応えを感じたジョージはさらに引き金を引き続けたが、気付かれた言葉の対物ライフルで左腕を吹き飛ばされる。

 

「うぁぁぁ!!あぁぁ・・・!」

 

それでも言葉から目線を外さず、自動拳銃ベクターSP1をガンホルスターから取り出し構えたが、ボルトを引いた言葉が早く、腹に大口径の弾丸を喰らい、断末魔を叫びながら息絶えた。

獲物を仕留めた彼女は携帯を取り出し、現在位置を確認し始める。

 

「もう、隣の県ですか・・・」

 

言葉が自分の位置を確認している間、タカ達はもう回収地点へと着いていた。

 

「あそこにヘリが見えます!」

 

上空を飛行しているアーミット社のマークが入ったMi-8を確認したタカは、ダッチ等に知らせる。

直ぐにM18発煙手榴弾のピンを抜いて、着陸出来そうな場所に投げ込む。

そこへ、ポンチョがダッチにジョージ等がまだ来てないと知らせる。

 

「ジョージとマックがまだ来ておりません!」

 

「先程対物ライフルの銃声が聞こえた。もう二人は助からん、俺達だけでも生き残ろう!」

 

ダッチの答えに納得したポンチョは、ビリーと共にヘリに合図を送る。

だが、またタカ達に悲劇が襲い掛かる。

上空を見ていた希は、中国から発射され、迎撃に失敗した核ミサイルが爆発する所を目撃したのだ。

 

「なんだあの爆発は!?」

 

警戒していたタカは、空中に上がるキノコ雲を見て驚く。

爆発から数秒後にヘリは、撒き散らされた電磁パルスを受け、機能が停止し、コントロールを失う。

 

「ヘリが墜落するぞ!!」

 

こちらに向かって墜落してくるMi-8を見たポンチョは、タカ達に向かって叫び、その場から直ぐに離れる。

 

「伏せろぉ!!」

 

そのままヘリは地面に直撃し、大破。

間一髪タカと光稀、希、ダッチ、ビリー、ジェイダーは地面に伏せ助かったが、ポンチョは飛んできた破片を食らい、負傷する。

 

「グオァァァ・・・ア・・・!」

 

「ポンチョがやられた!」

 

細かい破片が足に刺さり、そこから血が噴き出してくる。

直ぐにジェイダーがポンチョに寄り添い、突き刺さった破片を抜く。

 

「誰か、手伝って!」

 

タカと光稀は直ぐにジェイダーに従い、ポンチョに応急処置を施す。

辺りを警戒する希、ダッチ、ビリーはふと上空を見上げると、多数の輸送機が空を飛んでいることに気付いた。

 

「隊長、あれは・・・?」

 

「間違いない・・・あれは韓国軍の空挺部隊だ・・・!」

 

ダッチは輸送機からばらまかれる大多数なパラシュートを見ながら希の問いに答える。

歴戦錬磨の戦士達が恐怖する姿とこんな状況にも関わらず、侵攻に来た韓国軍の空挺部隊を見た希は、ますます不安が募るばかりであった。




韓国軍と中国軍を本州に侵攻させてしまった・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迫る恐怖!

北朝鮮も追加です・・・


所変わって、日本国本州に降下した大韓民国陸軍所属の空挺部隊。

 

「なんだこりゃあ、チョッパリとウエノムが一匹もいねぇーぞ!」

 

迷彩色のジャンプスーツを身に付け、迷彩色のヘルメットを被った空挺兵が、K2アサルトライフルを周囲に向けながら残念そうに叫ぶ。

他の空挺兵達も周囲に銃器を向け、警戒したが、周囲に敵兵も居ないために手に持つ小銃や機関銃を下ろす。

 

「折角日本人をぶち殺すチャンスだったのに。こうなれば第2軍と本土に残ってればよかった」

 

「そう焦るな、民間人を片っ端からぶち殺せば良い。それに国には海兵隊二個師団が残っているからな。安心しても良いんだぞ?」

 

悔しがる空挺兵に別の空挺兵が助言するかのように言う。

 

「元士殿!日本兵は何処でありますか?!」

 

「知らん!おかしい・・・ここらで日本軍の部隊が展開してるはずだが・・・」

 

新兵に聞かれた下士官は、予想していたことは違う出来事に、地図を見ながら頭を悩ます。

その後、全隊員が降下したのを確認した将校が招集を掛ける。

 

「大隊集合!これより、我が軍が上陸してくる沿岸地区の制圧に掛かる!進撃路は他の部隊が担当する!耳に入れた我が隊の者は早く来い!置いていくぞ!」

 

大隊長は充分に集合しきれて無いにも関わらず、沿岸の方へと向かっていった。

後を追うように所属であろう兵士達が追い着こうとする。

 

何故韓国軍が侵攻してきたのか?

理由は指揮系統の麻痺、生存権の確保、デマなどの様々な憶測であろう。

奴ら発生の際に大韓民国は、政府組織が壊滅状態に陥っており、軍の指揮系統も混乱。

ついには「日本に歩く死者が居ない」と言う嘘まで信じ切ってしまい、現在に至る。

韓国軍の大多数の戦力が日本侵攻に費やされており、国土を守る戦力は僅かながら残っている。

長年に渡る反日教育の所為か、反対する者は奴らの餌食になった為か、遂に侵略という決断をしてしまった。

もちろん韓国だけではない、今も睨み合いが続く朝鮮民主主義人民共和国や、資源が眠る諸島を巡って日本と争う中華人民共和国も、本来奴らに向けるはずの戦力を日本へと矛先を向けたのだ。

当然のことながら日本は宣戦布告など受けてなどいない。

首都の東京は既に放置されており、通告を受ける者などその場には居なかった。

海上自衛隊やアメリカ海軍の核ミサイル迎撃命令を無視したのもこの事であろう。

しかし、この反日国家同盟は、戦力を温存している自衛隊やワルキューレの存在や、ましてや奴らの存在など頭には無いのだ。

こうして反日同盟国家は破滅の道へと進む。

一方言葉は、上空で起きた核爆発や韓国軍の侵攻に、困惑していた。

 

「(上空でキノコ雲が上がった後に、韓国の軍隊の侵攻とは・・・元々ネットで見た時はまさかここまでだとは・・・)」

 

核爆発の影響で使い物にならなくなった携帯を見ながら、言葉は頭を抱えて悩む。

落下傘が降下した地点を双眼鏡で侵略者の数を確認した後、地図を広げる。

 

「(さ~て、何処で身を隠しましょうか。幾ら強くなった私でも、流石に軍隊を相手には出来ませんし)」

 

軽食を取りながら、深く考え込む言葉。

 

「(それに韓国だけ無いとすると、あの北朝鮮や中国も攻めてくると考えると・・・生き残れる自信がありませんね)」

 

彼女が考え込んでいる間に韓国陸軍や北朝鮮人民解放軍が本州に上陸、続いて中国地方にも中国人民解放軍が上陸した。

至る所に爆撃した後、工兵隊が建設した即席滑走路に着陸する。

この無駄と思える爆撃はしっかりとタカ達の耳に入っていた。

 

「本格的な上陸が始まったようだな」

 

「これからここの土地の者は泣きを見るだろう・・・」

 

ダッチが言った後、ビリーが付け足す。

タカと光稀は負傷したポンチョを担ぎながら見ていた。

そして後衛を希とジェイダーに任せ、彼等は四国へ歩みを始める。

 

「あの侵略者達はどうなんだろうな」

 

「さぁ、戦乙女達が片付けてくれるんじゃない」

 

「だろうな」

 

ポンチョを担ぎながら語るタカと光稀、彼等が居る地帯にも侵略軍が迫る。

その証拠に木を薙ぎ倒す音が耳に入ってくる。

ロケット攻撃か、ミサイル攻撃でも行っているのだろう。

巻き込まれないために足を速める。

 

「なぁ、ちょっと聞くが」

 

抱えられていたポンチョがタカに喋り掛ける。

 

「なんですか?」

 

「こういう時に自衛隊ってのは動かないのか?」

 

「もちろん動きますとも。でも本州には自衛隊そのものが居ないみたいで、空自のF-4やF-15Jが一機も飛んでおりません」

 

タカの答えに上を向いた後、古今東西の航空機が飛び回っているのが見える。

数時間もすれば、戦車も来るだろう。

そう思った後、息遣いする。

 

「はぁ、はぁ、足の感覚が段々薄れてる・・・」

 

「壊死してるかもしれない・・・ジェイダーさん、どうすれば?」

 

光稀は後衛を担当するジェイダーに治療法を聞いた。

 

「何処かで止まって血を流さないと・・・」

 

「駄目だ。病院へ行こうにも電磁パルスの所為で電子機器はおじゃんだ、それに空挺部隊も相手にせねばならん」

 

ジェイダーの考案をあっさりと否定したダッチ。

暫くして森を出たタカ達は一時期、死角から襲われるという恐怖から解放された。

だが、言葉は例え状況がどう変化しようが、獲物は逃さない。

 

「フフフフ・・・逃がしませんよ・・・!」

 

ひたすら四国を目指すタカ達を見ながら、言葉は不気味に微笑んだ。

その視線を希は感じ取る。

 

「(なんだろう・・・この視線・・・?誰かに見られてる気が・・・?)」

 

後ろを振り向き、惨劇があった森を見た。

また失禁してしまうのは恥ずかしいので直ぐにタカ達の元へと向かう。

そしてタカ達にまた、恐怖が襲い掛かるのである。

民家や廃工場から先程降下した空挺兵達がタカ達を捕らえた。

 

「日本軍でしょうか?白人や黒人も居ますが・・・」

 

「構わん、白人だろうと黒人だろうと日本に味方する者は皆敵だ。殺せ」

 

「了解であります!」

 

手に持つ小銃や機関銃の安全装置を外した後、タカ達に襲い掛かるのであった。




次は防人陣が能力を使います。

Zbvの出番はどうしようか・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生き残れ!

能力発動回&友情出演最終回です。


韓国空挺部隊が待ち伏せする住宅街へと進むタカ達は気付かずに進む。

直ぐに足の治療が必要になってきたポンチョを抱き抱えながらタカはあることを思い出した。

 

「なぁ、ミキ」

 

「なにタカ」

 

ポンチョの左肩を担ぐ光稀が、タカの問いに答える。

 

「シンクロは使わないのか?」

 

「あぁ、そう言えば忘れてたわ。今から使うからちゃんと持ってよ?」

 

「あ、あぁ・・・」

 

少しポンチョを担ぐ力を抜いた光稀は、シンクロを使い始めた。

周りの空気と振動に感覚を共有し、その先の異物と違和感を感じ取ろうとする。

 

「後ろに凄まじい違和感に、前方に妙な感覚・・・あそこの住宅街に何か潜んでいるわ」

 

「流石俺の嫁だ、完璧だぜ」

 

「タ~カ~///」

 

その知らせにタカが褒めた後、光稀は顔を赤らめて照れる。

そんな彼女にお構いなくダッチが本当なのかを問う。

 

「ホントなのか・・・?」

 

「はい、もちろん。数は二個分隊ほど潜んでいます」

 

「二個分隊か・・・しかし相手は良く訓練された兵士、しかも空挺兵だ。実戦経験がないとはいえ、マフィアやジャンキーを相手にするのとは訳が違うぞ」

 

「迂回しようにもゾンビが彷徨いてますし・・・それに敵に衛生兵が居たら得です。行くしか無いでしょう」

 

戦闘を避けたいダッチは否定するが、ビリーの言葉に納得し、攻撃準備をする。

 

「よし、お漏らし娘、お前はポンチョを守れ」

 

「お漏らし娘って・・・」

 

指示をするダッチが付けたあだ名にショックを受ける希、それでもダッチは気にせず続ける。

 

「ビリー、ジェイダー、タカ、ミキ、お前達は俺と来い。それでミキ、敵の正確な位置は?」

 

「近い場所に七名、右三名、左四人です。後十七人くらいは外で待ち構えてます」

 

「煙幕を巻いて駆逐だ。お漏らし娘はちゃんとポンチョを見てろよ」

 

「あ・・・はい・・・(私って、そんなに漏らしてるのかな・・・?)」

 

希はダッチの付けたあだ名をまた言われ、困った表情になり、頭を悩ます。

そしてタカ達は攻撃を開始する。

その頃、待ち伏せていた韓国陸軍空挺師団の兵士達はと言うと。

 

「クソッたれ、早く来やがれ!小便が近いんだ!」

 

K2アサルトライフルを構えながらぼやいていた。

隣の同じ突撃銃を構える兵士も、落ち着けないでいる。

道路にM18発煙手榴弾が投げ込まれた。

勘違いした兵士が発煙手榴弾に銃口を向け、引き金を引き、発砲してしまう。

 

「馬鹿野郎!誰が発砲した!?」

 

「間違えたんだよ!」

 

「これでバレちまった・・・!」

 

道路に煙が広がる中、タカ達は相手の視界が塞がるまで待つ。

 

「よし、そのまま、そのまま・・・行け!」

 

自分達の姿を隠しきれるまでに成った後、煙の中に入っていった。

韓国語が聞こえる民家や建造物に、M26破片手榴弾を投げ込む。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

小規模な爆発が起こった後、悲鳴が聞こえ、敵兵が持っていたであろう血が付いたK2ライフルがタカの足下に落ちてくる。

 

「お、ラッキー!」

 

K2ライフルからFNCと同じ弾倉を取り、ポーチに入れた。

左側に居た韓国兵等もあっという間にダッチに片付けられる。

 

「待ち伏せ班が攻撃を開始したぞ!」

 

「おいおい、情報違いのゾンビ共が集まってくるぞ。静かにやれ」

 

「それが、待ち伏せ班は全滅したらしい・・・K2の発砲音が聞こえね・・・!」

 

「畜生!仇を取るぞ!」

 

廃工場で集まっていた残りの兵士達もタカ達が居る住宅街に向かっていった。

一方、待ち伏せ班を全滅させたタカ達はと言うと、ビリーがK3分隊支援火器を持ち上げ、向かってくる韓国兵達に向かって引き金を引いた。

前方に立っていた兵士は蜂の巣となり、死亡。

後ろの兵士が足を負傷し、衛生兵に遮蔽物まで引っ張られていく。

衛生兵の存在を確認した光稀は、全員に衛生兵の存在を知らせる。

 

「衛生兵が居ました!」

 

「よし、生かしたまま捕らえろ!」

 

AK107を撃ちながらダッチは命令した。

ジェイダーは光稀のサポートで、出てくる兵士達を次々と撃ち抜いていく。

 

「そこの右にいる!」

 

「OK!ヒュー!ホントにいる!」

 

タカもサポート受けながら、敵空挺兵を駆逐する。

次々と仲間がやられていくのを見た空挺兵達は、混乱状態に陥る。

 

「まるで俺達の動きを呼んでるみたいだぜ!」

 

「クソォ!日本人如きがどうしてこんなに優秀なんだ!?」

 

「おい、増援を呼べ!近くに小隊が居たはずだ!」

 

通信機を持った兵士が受話器を取り、増援を要請する。

僅か数秒の間に衛生兵と三名の兵士となってしまった空挺兵達、彼等は応戦するが、歴戦錬磨の元兵士や能力持ちのコントラクターに勝てるはずもなく、衛生兵しか残ってなかった。

一人になってしまった衛生兵は、近付いてきたビリーに英語で手を挙げながら命乞いをする。

 

「う、撃たないでくれ!俺は衛生兵だ!条約は知ってるだろ!?」

 

「残念だが、俺達はPMCのコントラクターだ。俺達が戦死者に加えられないと同様、条約を守る義理はない」

 

このビリーの言った事に、衛生兵は顔を真っ青にして、失禁し始める。

 

「それでも空挺兵か、このション便たれ!早く治療道具を持ってこっちに来い!」

 

ダッチに胸ぐらを掴まれた衛生兵は、直ぐさまビリーにインベルMDを向けられたまま、ポンチョの元へと向かう。

そして希が守る負傷したポンチョの元へと着いた衛生兵は、早速治療を開始する。

全員が睨みを効かせて見守る中、衛生兵は怯えながら治療に専念する。

 

「どうだ・・・ポンチョの様子は?」

 

「だ、駄目だ・・・!この怪我は野戦病院か設備が整った医療所に運ばないと、足を切断しなきゃならない・・・!」

 

「なんだと!?どうにも出来ないのか!」

 

衛生兵のポンチョの状態を聞いたビリーが胸ぐらを掴む。

 

「うわぁ!落ち着け、応急処置はしておいた。これで暫くは安心だ・・・」

 

胸ぐらを掴みながら「そうか」と呟いたビリーは、ゆっくりと衛生兵を下ろす。

 

「ふぇ・・・まぁ、病院を探す時間は稼いでおいた」

 

衛生兵は息を整えた後、その場を去ろうとするが、ジェイダーにベレッタM92Fのクローン、ブラジル製タウロスPT92を眉間に銃口を突き付けられる。

 

「何処へ行こうというの・・・?」

 

「ヒッ!?」

 

「知ってるよね・・・?ここであんたを逃せば、仲間を呼ばれちゃうわ。それを防ぐための最善の方法・・・分かるよね?」

 

周りにいるタカ達は、止める気配など無かった。

衛生兵は笑みを浮かべて、ジェイダーに偉そうに言う。

 

「お、俺は正規兵で衛生兵だぞ!お前等傭兵如きが正規の軍隊に逆らうのか!?」

 

「お前達に殺されるよりマシだ」

 

ダッチの言った言葉で、衛生兵はまた失禁し始める。

それを見ていた希は、韓国陸軍の衛生兵を見て、自分よりだらしがないと思った。

いつ撃鉄が引かれるか分からない状況に、緊張する中、光稀が「敵が来た」と皆に知らせる。

 

「この感覚は・・・!?一個小隊分、住宅街に向かってる!」

 

「クソッ!ハメたわね!?」

 

衛生兵の眉間に強く押し付け、ジェイダーは睨み付けながら叫ぶ。

 

「ち、違うんだ!」

 

「俺が行きます」

 

突然タカが言った言葉にその場に居た全員が驚く。

 

「お前、何を言ってるのか分からないのか!?」

 

「いえ、俺にもミキと同じく能力を持ってます。行けますよ」

 

このタカの自信に、ダッチは許可した。

衛生兵に銃口を向けていたジェイダーは足を蹴った後、睨み付ける。

そして俯せにして、自分達を見えないような状態にする。

小隊の迎撃に向かったタカは、警戒しながら向かってくる空挺兵達を見ながら懐から出したチョコバーを食べる。

 

「大体四十五人って所か・・・スローモーでも使うか」

 

タカはFNCの弾倉を新しい物に変えた後、神経を集中させ、自分が持つ能力スローモーを発動した。

手榴弾のピンを抜き、それを投げ込み、警戒しながら進む小隊に突っ込む。

 

「なんだあれは!?猪か!」

 

「し、手榴弾!」

 

爆発が起こり、何名かが破片で死亡したのを確認すると、引き金を引き、前にいた数名を殺害する。

 

「うわぁぁぁぁ!前にいた味方が殺された!!」

 

何が起こったのか分からない韓国兵達は、銃を撃てずに次々とタカに射殺されていく。

フォールディングナイフを引き抜き、その場にいる兵士達の喉元を切り裂き、スパス15に切り替え、複数同時に射殺する。

もちろんタカの姿など、敵である韓国兵達には捉えられない。

次々と殺されていく戦友達を見た兵士達は、その場から逃げようとする。

 

「に、逃げるな!たかが劣等人種相手だぞ!」

 

小隊長は逃げようとする部下達を止めようとしたが、タカに頭を飛ばされ、頭がない死体はその場に倒れる。

部隊長を失った小隊は混乱を極め、兵士達も冷静さを失い、戦意消失。

その場から散り散りに逃げていく。

三分が経過すればタカのスローモーは終了し、その場に倒れ込む。

 

「クソォ~きつい!!」

 

息を整え、懐からチョコバーを出して、それを食べた。

それで体力が戻れば、壊滅した韓国兵から弾倉を回収し、パンツァーファウスト3を四本ほど回収した。

ダッチ達の元へ戻れば、一個小隊を全滅させたタカに驚きを隠せない。

 

「お前ぇ・・・どうやって・・・?」

 

「えぇ、俺の女と同じ能力を使いました」

 

「ちょっと、タカ!大丈夫なの!?」

 

心配そうにタカに寄り添う光稀。

 

「大丈夫だ、ミキ。それであの衛生兵は?」

 

それにダッチが答える。

 

「目隠しをして解放するところだ」

 

言ってから指を差した方向を見れば、目隠しをされた衛生兵が怯えている。

 

「なぁ・・・頼む。目隠しを外してくれ・・・!」

 

「駄目よ。そうでもしない限り私達が危ないわ」

 

ジェイダーの冷酷な返しに、衛生兵は怯えながら前に進んだ。

その直後である、ジェット航空機のエンジン音が響き渡り、衛生兵が木っ端微塵に爆発した。

 

「航空機の攻撃だ!」

 

全員が住宅街へ向かい、敵航空機の正体を探る。

 

「見つけた、F-5EタイガーⅡだ!」

 

ビリーが言った後に一同は空を見上げ、敵機の数を計る。

 

「一機か・・・希、能力使う?」

 

光稀に聞かれた希は小首を傾げて、疑問に思う。

タカがいつの間にかパンツァーファウストⅢを希に渡そうと待機していた。

 

「あ、はい・・・使えますが・・・何に使うので?」

 

「あの戦闘機を撃墜するんだよ」

 

上空から獲物を探すF-5EタイガーⅡを指差しながらタカは言う。

希は頭を抱え、数秒間考え込むと、パンツァーファウストⅢを受け取り、決意する。

 

「やります!」

 

「バケはそこら辺に居るゾンビがやってくれる。安心しろ」

 

タカが頭を撫でながら告げると、希は意気揚々とパンツァーファウスト3を抱えて外へと出て行った。

ダッチとビリー、ジェイダーは、タカ達が何を考えているか分からない。

外に出た希は能力の発動準備をする。

F-5Eが自分の範囲に来るまで、構えたままずっと待つ。

 

「(私には出来る・・・絶対に出来る・・・!)」

 

ゾンビを掃討していたF-5Eが、希に気付かず、その真上を通ろうとする。

タイミングを見計らった希は、直ぐに能力ロードチェンジを発動。

安全装置を外して、引き金を握り、速度1459㎞/hの低空飛行で迫るF-5Eに向けて引き金を引いた。

放たれた成形炸裂弾は進路変更を受け、F-5EタイガーⅡの下部に命中、戦車ほどの装甲を持たないF-5Eは大破し、墜落する。

能力を使った希はその場に倒れ込み、やって来たタカ達に抱き抱えられる。

戦闘機を撃墜した少女に、ダッチ達は驚きを隠せない。

 

「はぁ・・・お前等は超能力者か・・・?」

 

ポンチョがビリーに抱えながらタカ達を見ながら問う。

 

「さぁ?高校生の時に気付いた能力ですから」

 

笑顔で答えるタカ、光稀と希も苦笑いで答える。

次の瞬間、銃声が響き、突然ポンチョが倒れ、胸から血が噴き出し、息を引き取ってしまう。

 

「奴だ!奴が来たんだ!!」

 

叫んだダッチはライフルを小山の方へ向け、臨戦態勢を取る。

だが、ビリーが装備を捨て、銃を構えるタカ達を止めた。

 

「あんた達は逃げてくれ。俺は一人であいつと戦う」

 

「何を言ってるの!?あれに適うわけが・・・!」

 

「いや、倒せる自信がある・・・!構わずに行ってくれ」

 

もう二度と戻らないと判断したダッチはビリーを残し、ポンチョの認識票を取った後、タカ達と共にその場から去っていった。

 

「一緒に戦わなくて良いんですか?」

 

希が光稀に抱えながら質問したが、ダッチの返事は無かった。

そんなタカ達を、さらなる悲劇が襲う。

周囲から銃声や爆音が響き、上空では空中戦が開始される。

後衛を担当していたジェイダーの気配が消えたことにタカ達は気付く。

 

「ジェイダーさんは何処に?」

 

振り返った先にはジェイダーは居らず、ビリーの断末魔が戦闘音に混じって聞こえてきた。

死んだと判断したタカ達は、再び走り始める。

一方のジェイダーは落とし穴に落ち、直ぐに這い上がろうとしたが、深く落ちた為に這い上がれない。

そのままタカ達に死んだと思われてしまう。

暫ししてから、穴から這い上がり、ジェイダーは双眼鏡を取り出し、状況を確認した。

 

「あの戦乙女達が戻って、侵攻軍と戦ってる。そして私もどうやら潮時ね・・・」

 

侵攻軍とワルキューレが戦闘を行っているのを見ていたジェイダーは、後ろから近付いてきた複数の軽歩兵に気付く。

腕に縫いつけられたワッペンを見ればワルキューレが描かれていることから、ワルキューレの戦闘員と分かる。

さらにM3A5リー中戦車が来た後、彼女は武器を捨て、降伏した。

タカ達は言葉から逃れるべく足を速める。

 

「大分距離は離せたみたいだが・・・?」

 

「いや、奴はお前達の能力を遙かに凌いでいる。お前達は生き残れ・・・!」

 

「それってどういう・・・」

 

ダッチの言った言葉にタカ達は良からぬ事を予想した。

 

「まさか・・・死ぬ気ですか・・・?」

 

希の問いにダッチは「そうだ」と頷く。

 

「私達と一緒に・・・!」

 

「お前達にもう会うことはない。確か地図で見た時に、洋上空港の連絡橋があったな?そこへ行け。そこへ奴は近付いてこない」

 

「待ってくれ!あんたも一緒に!」

 

「俺が止めなければお前達は死ぬ・・・その為にも行かなくてはならない」

 

止めようとするタカ達にダッチは覚悟をねじ曲げない。

そんな彼に希が近付き、タカから渡されたパンツァーファウスト3を渡す。

 

「ありがとう。お漏らし娘など言って悪かったな、もし次に会う時が来たらその泣き面とお漏らしは直して置けよ?」

 

笑顔で希に言うダッチは、パンツァーファウスト3を受け取った後、数秒後には来るであろう言葉に向かっていった。

その背中はビリーが残るの際に見られなかった覚悟を決めた勇士その物であった。

湧き出る涙を堪えるタカ達が空を見上げれば、いつの間にか夕焼けはもう夜空に変わっていた。

各地で起こる光はマズルノッシュや爆発、見知らぬ銃声や砲声が響く中、ダッチの雄叫びが耳に入ったが、彼等が邪魔する権利はない。

数時間走った後、遠くの方角で橋が見えた。

地図を取り出し、確認すればあれが床主洋上空港の連絡橋だ。

橋のあちこちでは事故を起こした自動車類が入り口を塞ぎ、周囲や上には奴らが多数彷徨いている。

電磁パルスの範囲に入っていた為か、照明は全て消えていた。

様子を見ていた光稀と希は立ち尽くすタカにどうするのかを問う。

 

「タカ・・・」

 

「鷹山さん・・・」

 

「行くしか無いだろうな・・・!」

 

二人の問いにタカはそう答えた後、迷わず床主空港へと足を進めた。

そして自分より遙かに凌ぐ言葉へ立ち向かったダッチの消息は不明と表され、タカ達は無事に空港に展開していた警察特殊部隊に救助された・・・・・・




終わりました・・・
白石さん、キャラ提供感謝いたします!!

次回はカンプグルッペZbv壊滅編です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Zbv、これから死に行く者達との出会い

遂にやってきた装甲懲罰大隊の出番ッ!


時は核爆発前に遡る・・・。

床主へと到達間近となったZbvの前に、電磁パルスの範囲から逃れるワルキューレの部隊を目撃した。

直ぐに森林に隠れ、様子を伺う。

ある程度過ぎ去ったのを確認したシュタイナーは再び床主へ部隊を進める。

 

「ふぅ・・・あの嬢ちゃん達はなんで東に向かってんだ?」

 

「知らねぇな、もしかしたら集団休養かもしれねぇ」

 

中隊長車であるティーガー重戦車、狼(アイン)の車内でアッシュとコワルスキーが、雑談を交わす。

Sd Kfz 250の指揮車型である3型に乗るシュタイナーは、これから良からぬ事が起きると言う予想した。

 

「だ、大隊長殿・・・!イワンがこの世界に転移しております!」

 

「ン?どんな物だ」

 

シュルツの知らせに首に掛けていた双眼鏡を覗けば、ソ連赤軍の部隊が、奴らに囲まれ襲われていた。

ソ連軍だけではない、アメリカ軍も転移しており、同じく奴らに包囲され、襲撃を受けている。

派手に銃声や砲声が鳴っている為、そのつど奴らが集まり、やがて転移者達は奴らの仲間入りを果たす。

 

「放っておけ、我々を見たら攻撃してくるぞ。それに好都合だ」

 

冷徹なシュタイナーの言葉に狡賢いシュルツは納得した。

その瞬間である、先行していたブルクハイト等が乗るティーガーが「日本軍を発見した」という連絡が来た。

 

『こちら狼1、日の丸を確認した。同盟国の日本軍の模様、どうします?』

 

「ほぅ、日本軍か・・・同盟国なら助けるべしだな」

 

直ぐに合流するべく、その位置へと向かう。

一方の日本軍、旧大日本帝国陸軍というと、向かってくるZbvに警戒していた。

この部隊は三式中戦車チヌを中心とした戦車中隊だ。

もちろん本土で展開している部隊である為に、実戦経験は殆ど無い。

 

「中隊長殿!正体不明の物体がこちらに向かってきます!」

 

知らせに来た戦車兵に、中隊長車に乗る平田佐武郎(ひらたさぶろう)が、双眼鏡を取り出し、Zbvを見る。

 

「鉄十字が入ってるからして、ドイツ軍か・・・同盟国だから合流するか」

 

「エェー!!合流するのですか!?もし英軍か米軍、ソ連軍だったら・・・!」

 

車内にいた乗員達が、佐武郎の判断に異を唱えるが、佐武郎は首を横に振る。

 

「安心せい、あれは親父が持ち帰った写真の中にあった戦車だ。それにドイツと我が国は中が良いんだよ」

 

答えた後、佐武郎はZbvと合流するべく移動する。

そしてお互い歩ける距離に着いた後、それぞれの部隊長が向き合う。

 

「ほ、ほんまのドイツ人や・・・」

 

「平田中隊長はドイツ語が喋れんのかね?」

 

自分等の部隊長よりも身長が高いシュタイナーと向き合う佐武郎の姿を見ながら、部下達は心配する。

シュタイナーと佐武郎は互いに右手を出して握手をした。

 

「初めまして。私はドイツ国防陸軍所属、シュタイナー少佐だ。この部隊の指揮官だ」

 

「こちらこそ。私は大日本帝国陸軍第4戦車師団所属、戦車中隊長平田佐武郎大尉だ」

 

お互い英語で名乗った為に、英語が理解できない者達は首を傾げている。

さらに彼等はまた出会う。

突然、茂みから複数の大日本帝国軍人が現れた。

 

「うぉ!?これは夢か・・・?」

 

驚きを隠せないでいる将校、後ろから出てきた兵士達とその将校は、ボロボロの野戦服を着ているので、激戦地から転移したと分かる。

 

「また日本兵が飛び出してきたぞ」

 

「ホントだ、しかも激戦地からだぜ」

 

ティーガーから出ていたアッシュとコワルスキーは物珍しそうに、出てきた日本兵達を見る。

 

「今日はやけにお客が多いな・・・」

 

キューポラから見ていたブルクハイトは、こちらに向かってきた九七式中戦車チハ新砲塔と、歩兵一個中隊を見ながら呟く。

 

「お~これはこれは、激戦地からの帰還者が多い」

 

佐武郎が呟いた後、武人を絵に描いたボロボロの野戦服を着た男が話し掛けてくる。

 

「俺は志雄平八(しおへいはち)大尉だ。一体何が起こっているのか教えてくれないか?」

 

その後、第二次世界大戦の時代から転移してきた枢軸国側の者達がZbvの周りに集まってきた。

ドイツ陸軍からシュトルムティーガー二両、キューベルワーゲン二両、ケッテンクラート三両、BMW/R75四両、トラック四台、MK103機関砲五問、2 cm Flak 30一台、Sd Kfz 2515型三両。

ドイツ空軍野戦師団からは88㎜高射砲搭載Sd Kfz 7三両にパンツァーヴェルファー四両。

大日本帝国陸軍からは、一式装軌装甲兵車ホキ四両、一式半装軌装甲兵車ホハ五両、対空戦車タセ四両、九四式自走対空砲八両、黒金三両とトラック七台、一式中戦車チヘ六両、両軍の補給部隊と合わせて兵員六百名である。

 

「これで一個大体規模と成ったな。では、平田大尉と志雄大尉。我々についていくか?」

 

『ああ、もちろんですとも』

 

平八と佐武郎の返事と共に大隊規模に膨れ上がった機甲部隊は、床主へと前進した。

増大した車両をキューポラから確認しながらブルクハイトは溜息をついた後、口を開く。

 

「見たことがない兵器ばかりだ・・・それに空まで静まり返ったぞ。きっと何かあるな・・・」

 

「冗談は止してくれ、ブルクハイト。正規の部隊まで混じってるんだ、俺達がZbvと知られたらあいつ等、逃げていくぜ」

 

暇つぶしに砲弾を磨いていたコワルスキーから言われ、アッシュが付け足す。

 

「このまま黙っていれば良いのさ。俺達の生き残る可能性が高くなる」

 

これを聞いたブルクハイトは納得した後、車内に戻る。

ありとあらゆる方向から銃声が響いてくるが、転移した連合軍の部隊と判断して向かうことは無かった。

道中、エンジン音を聞き付けた奴らが寄ってきたが、シュタイナー達は無視する。

その数時間後、上空で核爆発が起きた。

上空で起きたキノコ雲に全員が空を見上げる。

 

「なんだあれは・・・?」

 

「どうやら予感が当たったようだ・・・」

 

指揮車から見ていたシュタイナーは、自分の予想が当たったと分かった。

その時、一緒に搭乗していた平八が、大戦末期のドイツから転移してきた混成戦闘団と発見した。

 

「少佐殿、向こうに見えるのは友軍の部隊ではないのか?」

 

直ぐに双眼鏡で確認し、直ぐに味方と判断した。

 

「間違いない、あれは我が軍の戦闘団だ。見たことがない兵器があるがな」

 

そのまま混成戦闘団と合流、自分より階級が上なアルベルトに敬礼する。

 

「ッ!?もしかして君達はZbvか?」

 

「その通りです親衛隊中佐(オーバーシュトルムバンフューラー)殿。今は本国ドイツなど遙か西の方角です。何か問題でも?」

 

「いや、無い。それよりもその日本軍の部隊を自分の参加に加えるとは・・・驚きだ」

 

迷彩服を着た自身よりも階級が上の男に、そう返すシュタイナー。

その後、シュタイナーはアルベルトの傘下に入り、身を隠す場所に向かおうとしたが、上空から日本に侵攻に来た北朝鮮軍の空挺部隊が見えた。

 

「上空に多数の落下傘を確認しました。撃ちますか?」

 

『この世界の軍隊に関わるとろくな事がない。距離が近い奴からやれ』

 

「了解(ヤヴォール)。防空部隊は対空射撃を開始しろ!」

 

アルベルトの指示で、ここから近い距離に降下しようとした北朝鮮軍の空挺兵に容赦なく対空砲や機関銃が放たれる。

機関銃よりも強力な機関砲の弾丸を受けた兵士達は身体を引き裂かれ、地上に肉と血の雨が降り注ぐ。

これ以上の攻撃は弾薬の無駄と判断したアルベルトは、射撃中止を要請。

その後、森に身を隠した。




ルリ「そう言えば、作者さん」

ダス・ライヒ「はい?」

ルリ「私出てないね。どうしてなの?(ジド目」

ダス・ライヒ「いや・・・それは・・・シュタイナーが怖いからだよ・・・」

ルリ「へぇ~そうなんだ・・・(スターリングMk7を用意」

ダス・ライヒ「フッ、冗談はよr(PAPAPAPAM!」

いずれこうなるかもしれん・・・18禁の奴でも書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地獄へと・・・

Zbv壊滅と戦闘シーン回です。


森に身を隠したZbvを含む枢軸国混成連隊。

周囲から侵攻軍の空挺部隊が居るが、一切混成連隊には気付かない。

もちろんこの混成連隊は、ワルキューレの日本支部に察知されていた。

 

「EMPの後にトチ狂った反日国家同盟軍の侵攻、次は枢軸同盟と来たか」

 

森に車両を隠そうとする枢軸国の兵士達を見ながら、アレクサンドラは呟く。

コンピューターに向き合うオペレーターの方へ視線を向けると、指示を出そうとする。

 

「近くに展開できる部隊は?」

 

「腿隊長の部隊がEMPの範囲外に待機してます」

 

「よしそれを動かせ。航空機の使用も許可する」

 

了解(コピー)

 

この指示にオペレーターは送信しようとしたが、士官が異議を唱える。

 

「お言葉ですがアレクサンドラ指揮官、この部隊は二級戦火器部隊です。傘下に最新兵器の部隊がありますが、一個小隊だけです」

 

「相手は第二次世界大戦下の枢軸国軍、数はこちらの方が上だ。問題はない」

 

士官はアレクサンドラの言ったことが、正論であったことから引っ込む。

次に彼女は、侵攻部隊の対処に乗り出す。

 

「沿岸部に上陸してくる侵攻国家の部隊は、我々より数は上だな。周辺国家に展開している部隊はこちらに回せないのか?」

 

「フィリピンやベトナムに展開している重装備部隊七個師団、空挺部隊二個師団、砲撃部隊一個旅団、対空部隊二個旅団、航空部隊五個軍団が借りられますが」

 

アレクサンドラは、煙草に火を付けながら答える。

 

「直ぐに投入だ。九州や四国、北海道にいる自衛軍は動かん。我々だけで本州に居る侵攻軍を片付ける」

 

指示に従った通信士やオペレーターはそれぞれの仕事を始め、司令部からの指示を受けた腿戦闘指揮官率いるM50/M51スーパー・シャーマン戦車二個中隊、センチュリオン中戦車二個中隊、 歩兵戦車ヴァレンタイン三個中隊、ブラック・プリンス歩兵戦車三個中隊、シャーマン・ファイアフライ中戦車一個大隊、シャールBIS三個中隊、ARL44一個中隊、M5A1ハーフトラック三十両、ユニヴァーサル・キャリア四十両、ダイムラー装甲車七両、M10C17ポンド対戦車自走砲一個中隊からなる旅団が、森に潜む枢軸国混成連隊殲滅するべく床主へと向かっていった。

本州に降下した侵攻軍の空挺部隊を排除すべく、他の機甲部隊や歩兵部隊も出撃していた。

航空部隊も一緒である。

 

「戦闘が激しくなってるな、それに空中戦も行われている。何かあるな」

 

上空を見上げたシュタイナーはそう呟いた。

来た方向に地雷原を構築しており、いつでも迎撃の用意は出来ている。

その頃、攻撃部隊の指揮官である腿は、向かう途中に下級兵士二個師団を自分の指揮下に入れ、シュタイナー等が居る森へ、援護も付けさせずに突撃させた。

 

「情報ではあの森に連隊規模の部隊が潜んでいるな。まずは小手調べだ、行かせろ」

 

M51スーパー・シャーマンのキューポラから腿は指示する。

前方で固まっていた様々な人種の男ばかりの集団である。

一人が撃ち殺されたと後にシュタイナー等が居る森へとライフルを持って突っ込んでいった。

 

「俺達は解放されるんだ!!」

 

『オオォー!!』

 

銃剣を付けたモシン・ナガンM1891/30やスペイン製の旧式小銃を持った集団が雄叫びを上げながら森へと突っ込む。

当然ながら彼等の進む道には対人地雷が仕掛けられており、それに気付かず突っ込んだ男達は次々と命を落としていく。

爆発の連鎖が起き、人間が高く舞い上がり、断末魔や声にならない叫び、腕や脚が散乱するというおぞましい光景が作り上げられている。

恐ろしくなって逃げ出す下級兵士も居たが、後方にいる戦車の搭載機銃や分隊支援火器、機関銃で撃ち殺される。

 

「逃げるな!恥を知らずは全員射殺だ!」

 

腿は拡声器を使い、下級兵士等にもっと前に進むように指示する。

もちろんこの爆音はZbv含む混成連隊に聞かれており、迎撃準備も出来ていた。

 

急げ(シュネル)!敵が来るぞ、MG42を早く設置するんだ!」

 

擲弾兵や降下猟兵、武装SSの兵士達が小銃や機関銃を構え、日本兵達も小銃や機関銃を構える。

歩兵支援用の装甲車も機銃や砲を向ける。

地雷原を突破した下級兵士達はそのまま枢軸国軍へと襲い掛かったが、弾丸や榴弾、機関砲の歓迎を受けた。

雨のように降り注ぐ銃弾の前に次々と倒れていくが、沸いてくるかのように下級兵士は現れる。

三脚付きのMG42を撃ち続けていた擲弾兵は、自分の記録を思い出す。

 

「まるでイワン共の人海戦術だ!」

 

「T34やIS-2が居ないだけマシだろう!」

 

隣でStg44を撃っている兵士が告げる。

やがて数時間以上は経つと、下級兵士部隊は一人も残さず全滅、林に夥しい数の死体が転がっている。

何名かは息はあるが、死ぬのは時間の問題だろう。

混成連隊の兵士達の顔に疲労が見えた。

これを予想していた腿は、自分の部隊を森へと前進させた。

 

「こいつ等イワンか・・・?」

 

「いろんな人種が混じってた。それに黒人もいる・・・今度は何が来るか・・・」

 

ティーガーの車内から外の様子を覗っていたアッシュとコワルスキーは気晴らしに会話し、額に汗を滲ませる。

外で小火器を構えていた兵士達は、林の向こうから聞こえてくる戦車の走行音に恐怖する。

 

戦車(パンツァー)だ・・・!」

 

「今度は戦車で来たか・・・勝つ見込みはあるのか?」

 

平八はMP18を構え、昭和一三年正式軍刀を抜く用意する。

日本兵達は、対戦車地雷や梱包爆弾、火炎瓶を用意し、敵戦車に肉追しようと準備をする。

やがてヴァレンタイン歩兵戦車やブラック・プリンス歩兵戦車を先頭にしたワルキューレの機甲旅団がアルベルト混成連隊に襲い掛かった。

上空からも英空軍の戦闘爆撃機ハリケーンが数十機も襲い掛かったが、対空砲の弾幕や高射砲で撃ち落とされていく。

破壊された戦車を避けようとしたシャーマン・ファイアフライが通ろうとするが、対戦車砲に次々と撃破されていき、廃車を増やしす一方。

 

「今度は英軍(トミー)かよ!」

 

降下猟兵がFG42を撃ちながら叫ぶ。

枢軸国軍の歩兵部隊は疲労が溜まっていたのか、ワルキューレの狙撃兵に撃ち殺される。

横からシャールBIS重戦車三個中隊が現れた。

ディーターは直ぐに迎撃に入る。

 

「目標、フランス重戦車!撃て(フォイヤー)!!」

 

ヤークトティーガーの128㎜Pak44L/55砲を防げるはずもなく、前面装甲でさえ、撃破される。

その後ドイツ駆逐戦車部隊の次々と撃破されていくが、別方向からM50スーパー・シャーマンが現れ、Zbvのティーガーが撃破される。

 

「うわぁ!なんだあの長砲身は。シャーマン戦車の新型か!?」

 

ティーガー後期型のキューポラから見ていたアルベルトは、スーパーシャーマンに驚く。

無謀にもⅢ号戦車や九七式中戦車チハが立ち向かうが、後続の戦車にあっさりと破壊されてしまう。

Ⅳ号戦車が撃破された後、ARL44重戦車が現れ、近くで防戦していた三式中戦車チヌもあえなく撃破される。

 

「圧倒的な戦車じゃないか・・・!」

 

次々とやられていく自軍や友軍の部隊を見ながら、佐武郎は絶望する。

対戦車猟兵や日本兵の肉追攻撃で、ワルキューレの戦車は次々と潰されるも、後から来た歩兵に寄って駆逐されていく。

 

「目標はあの知らない型の戦車だ!フォイヤー!」

 

ブルクハイトは、防空部隊に近付こうとするセンチュリオンに砲撃を命ずる。

側面から撃たれたセンチュリオンは大破、燃え盛る戦車から女性戦車兵の乗員が出てくる。

ヴェスペやフンメルの自走砲部隊がスーパーシャーマンに寄って全滅させられると、防空部隊に危機が迫る。

この状況を重く見ていたシュタイナーは、どうするかを考え始める。

平八は向かってくるワルキューレの歩兵部隊に驚きを隠せない。

美人な女性ばかりであり、少し斬るのを躊躇ったが、自分が身が大切と考え、切り捨てる。

 

「どうして女ばかり出てくるんだ!?英仏の男共は何をしている!」

 

一〇〇式短機関銃を撃っていた中隊長柴田貞夫がそれに答える。

 

「さぁ?どうやら敵軍は女ばかりのようで、最初に突っ込んできたのはおそらく使い捨ての兵隊かと!」

 

その答えに納得した平八はM5A1ハーフトラックの乗員を排除し、無力化した。

戦闘は数時間にも及び、平面には両軍の死体が折り重なっていた。

枢軸国軍の装甲車の大半が撃破されており、もはや戦闘能力は失せており、防空部隊の半分も潰され、ハリケーンの襲来を許してしまう。

 

「も、もう駄目だ~!おらは死にたかねぇ~!」

 

一人の日本兵が逃亡したが、ワルキューレの狙撃兵に頭部を撃たれ、地面に顔を突っ込む。

第二次世界大戦最強を誇るティーガーも、戦後型の戦車に勝てるはずもなく撃破され、残りはアッシュ達とアルベルトのティーガーしか無い。

重戦車並の装甲を持つパンターですら歯が立たない、Ⅲ号戦車はもう既に全滅してしまっている。

 

「直衛戦車長!このままでは・・・!」

 

「クソォ、ここまでか・・・!特攻するしかあるまい・・・!」

 

チハ新砲塔型で奮闘していた直衛文太は、圧倒的な高性能重戦車ARL44に突っ込んでいった。

 

「うぉぉぉぉ!!お国のためにぃぃぃ!!!」

 

凄まじい集中砲火を浴びるが、高速で突っ込んでくるために、狙いが合わず、内一両がチハの特攻で大破した。

チハは全滅し、Ⅲ号突撃砲もほぼ壊滅、Ⅳ号戦車の全滅も間近である。

ヘッツァーはワルキューレの歩兵部隊や、援軍に来たAMX-30四両に為す術もなく撃破され、枢軸国軍の壊滅も時間の問題だろう。

指揮車から降りたシュタイナーは、アルベルトが乗るティーガーへ向かったが、ティーガーがタイフーンに寄って撃破される。

キューポラからアルベルトが出てきたので、直ぐに彼を安全な場所に運び込む。

 

衛生兵(サニテータ)!大丈夫ですか?親衛隊中佐殿」

 

「うぅ・・・もうこの部隊は終わりだ・・・」

 

「大丈夫ですか!?中佐殿!」

 

苦しみながら言った後、平八が日本軍の衛生兵を連れて来て、治療させる。

一方、指揮車に残っていたシュルツは、指揮車が撃破されると、直ぐに脱出、卑怯にもその場から逃げようとしたが、目の前に現れたボロボロの幼い戦車兵の少女にH&K社の自動拳銃P9Sを向けられ、命乞いを始める。

 

「ひっ!う、撃たないでくれ!家族が居るんだ!分かるだろ!?」

 

懐から自分の家族が写った写真を取り出し、分かるように少女に伝える。

その少女はシュルツを睨み付ける一方。

 

「(く、クソ!どうしてこの俺がこんな小娘に命乞いをしなきゃいかんのだ!だが銃を向けられていては動けん)あぁ、そうだ!チョコがあるんだ。食べるか?」

 

写真を仕舞って支給品のチョコを取り出したが、少女は全く拳銃を下げない。

しかも撃鉄を引き、シュルツのチョコを持つ右腕を撃ち抜く。

 

「グァァァ!!う、うわぁ!?た、頼む!殺さないでくれ!!」

 

味方が壊滅状態の中、この男は拳銃を向ける少女に失禁しながら、情けないにも程があるほど屈辱的に命乞いをしていた。

まるでゴミを見る目線の様に少女は、シュルツの頭部に狙いを付けると、撃鉄を引こうとしたが、突如ワルサーP38の銃声が聞こえ、少女は糸が切れた人形のようにその場に倒れ込む。

何が起こったのか分からないシュルツは、周囲を見渡し、自分の隊長であるシュタイナーが目に入った。

 

「シュルツ、貴様生きていたのか。丁度敵の攻撃を薄くなっている、脱出するぞ」

 

「え?あ、あれ。あれ?」

 

シュタイナーはそのまま、まだ無事なSdKfz 251とトラックを掻き集め、脱出の準備をする。

気付けば殆どの混成連隊が壊滅しており、防空部隊は全滅、駆逐戦車はⅣ号駆逐戦車、ヤークトパンター、エレファントは全滅、あれだけ居たヘッツァーも全滅した。

ヤークトティーガーのみとなり、ブルクハイト等が乗るティーガーも大破した。

 

「うわぁ、脱出しろ!」

 

大破したティーガーから脱出したアッシュ達は、直ぐにシュタイナーの元へと集まった。

そこには自分等の隊長であるアルベルトが、もうじき息を引き取ろうとしていた。

 

「お、俺はもう持たん・・・そしてこの部隊はもうじき壊滅するだろう・・・これより部隊は解散、生き残って脱出するのも良し、敵に特攻するのも良し、自殺するのも良しだ・・・そう言えば我々は本来死ぬべく存在にだったハズだな・・・では、全隊員の無事を祈る」

 

アルベルトは遺言を残した後、息を引き取った。

見ていたシュタイナーは既に息絶えた彼から認識票を取ると、その場に居た者達に脱出の準備をさせる。

 

「脱出するのは今がチャンスだ。死にたい者は敵に特攻しろ。生き残りたい者は俺についてこい」

 

ディーター、平八、佐武郎、貞夫はシュタイナーについていくことにした。

もちろんZbvメンバーも彼に続き、残りの枢軸国将兵達も脱出することにする。

 

「よし、装備は出来るだけ回収して脱出だ。直ぐに取り掛かれ!」

 

シュタイナーの怒号で装備を掻き集める枢軸国将兵達は、直ぐさま作業に取り掛かる。

アッシュとコワルスキーは、四式自動小銃、九九式軽機関銃、九六式自動砲を回収しながら疑問に思う。

 

「そう言えばコワルスキー」

 

「なんだアッシュ」

 

「シュタイナーの奴は脱出先を分かってんのかな」

 

「多分分かってるだろう」

 

そんな彼等が会話を交わしている間に、ある程度の装備の回収は成功し、生き残った戦闘車を前にしての脱出が行われた。

移送できない重傷者は一人一一年式発煙手榴弾を一個渡され、その場に放置される。

一方の補給と整備をしていたワルキューレの機甲部隊は、混成連隊の残存部隊が脱出していることに気付く。

 

「報告します。敵軍が脱出しております」

 

「この腿から逃げられると思っているのか!よし、追撃隊出撃」

 

「出撃できる車両が少ないです」

 

「煩い!何が何でも追撃だ!」

 

腿の指示通り、動ける車両は直ぐに追撃に出た。

これに気付いた貞夫は時間を稼ぐべく、無謀にも一人で立ち向かった。

 

「ど、何処へ行く気だ!?」

 

「逃げる時間を稼ぐためです!!」

 

三式中戦車のキューポラから佐武郎が、貞夫を静止しようとしたが、彼はスーパーシャーマンに爆弾を抱えて肉追し、シャーマンを巻き込んで自爆した。

前方からセンチュリオン四両があり、先頭に居たⅣ号戦車を撃破、プーマを撃破すると、兵員や物資を載せたSdKfz 251とトラックを砲撃しようとしたが、ヤークトティーガーに前に居たセンチュリオンが撃破し、次にⅣ号戦車、Ⅲ号突撃砲、パンター、佐武郎の操る三式中戦車の同時攻撃で撃破、残り二両はパンツァーファウストやパンツァーシュレックに寄って撃破される。

遂に包囲下を脱出することに成功したシュタイナー等であったが、補給を終えたタイフーンの攻撃でパンターを失う。

 

「前方のパンターが大破しました!」

 

「構うな、進め!」

 

SdKfz251に乗るシュタイナーは冷静に指示した。

その後、空は夜空に染まり、周囲から侵攻軍とワルキューレの戦闘などが見えるが、彼等は気にせず、先客が居るショッピングモールへと進んだ。

燃料切れとなったⅣ号戦車やⅢ号突撃砲、その他の車両は道端に放置し、遂にモールへ到達。

追撃の気配が無いと分かると、そのままモールの中へと足を踏み入れ、思い掛けない出会いをしたという。




Zbv壊滅編終わりました~
なにやら物足りない感がありますが・・・次は本編です。

後、生き残っているのは旧日本軍とドイツ軍合わせて20人足らずです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モール編
着いた矢先


やべぇよ、ここから未読だって・・・!

まぁ、元ネタを知っていればいいや・・・


死者が溢れる高城邸から脱出し、新たなメンバーを加えた小室一行。

新しい休息地を、既に先客が居るショッピングモールに定めた彼等は、直ぐにそこへ向かう。

気が付けば天に朝日が昇り、一日が始まっていた。

モールの屋上で、自然公園での戦闘で壊滅したアルベルト戦闘団の敗残兵の一人、肩にkar98kを担いだドイツ国防陸軍擲弾兵が、双眼鏡を覗きながら、小室一行を捉えていた。

 

「なんだ、あいつ等は。もしかしてさっきの婦警が呼んできた応援か?」

 

屋上にいたもう一人が、彼から双眼鏡を奪って、小室一行を見る。

この男が来ているのは、降下猟兵用の迷彩服を纏い、FG42を担いでいる。

 

「新しい客人のようだ。マイヤー少将に報告だ!伝令!」

 

小室一行の存在を確認した先客達は、一番階級の高いクルト・マイヤーに知らせた。

 

少将(ブリガーデフューラー)殿!妙な奴らがこちらに来ております!」

 

司令室の代わりになっている部屋で、伝令から報告を聞いたマイヤーは、近くにいたパイパーと相談する。

 

「パイパー、今度は枢軸国軍に続いて近代的な軍用車に乗った一団が来ている。少し様子を見るか?」

 

「ヤー、何名かに向かわせ、包囲し、正体を確認します」

 

直ぐに兵士等を集め、停車位置を予想し、遮蔽物になるような場所に身を潜め、小室一行のハンビィー二台とジープ・軍用バギーを待ち伏せる。

待ち伏せ配置が完了したところで、小室一行が到着。

もしもの事を考えて、銃の安全装置を外しておき、構える。

 

「これが未来のショッピングモールか・・・大きいな」

 

ハンビィーから降りたリヒターは、70年後のショッピングモールに驚きを隠せない。

ジープから降りた馬鹿4名は、早速モールに突撃していく。

 

「ヒャッハー!食料に水だぁー!」

 

もちろん待ち伏せしていた先客達に銃を突き付けられ、大人しくなる。

 

「なっ、なんだテメェ等は!?」

 

海兵隊員の男が手を挙げながら叫ぶが、その銃三十八式歩兵銃を突き付けているのは、大日本帝国陸軍歩兵だからだ。

逃げようとしても、後ろも枢軸国の兵士達に包囲され、袋の鼠状態となり、モールへ手を挙げながら入った。

暫し時間が経ち、多数のベットがある清潔な倉庫部屋で、一つのベットに眠っていたルリは目覚める。

 

「あ、気が付いた?」

 

赤いスカーフを頭に巻いた小柄な女性、アリシアがルリが目覚めた後、寄り添う。

 

「あれ・・・ここ・・・何処?」

 

「まぁ、貴女がここに運ばれて5時間ってところかな。女医さんを呼ばないと」

 

ルリの質問に答えた後、アリシアは、壁に凭れ掛かって寝息を立てながら寝ている鞠川を起こす。

 

「あれ・・・宮本さん。もうお昼ご飯?」

 

「違いますって!ルリちゃんが目覚めたんですけど・・・」

 

ツッコミを入れたアリシアに、鞠川は「あっ!」と叫んで、慌ててルリの側に向かう。

 

「大丈夫~ルリちゃん!?突然幼女に成ったりして、そんでもって戻ったり・・・」

 

「僕・・・なんでこんな所に居るんだっけ?たしかもう一つの人格が確か、お高い豪邸に居たんだっけ?」

 

突然体格が戻った挙げ句、一人称が僕に変わった為、鞠川は大変驚き、アリシアは何が何だか分からないでいた。

 

「まぁ、今度は僕っ娘に変わった!みんな~大変よ~!」

 

大慌てで鞠川は部屋を出て行った。

これを見ていたルリと鞠川は唖然し、お互いの目を見て、両手を上げる。

そしてルリも部屋から出ようと、ベットを起き上がろうとしたが、身体に余り力が入らず、ベットから転げ落ちる。

 

「あ、大丈夫?まだ寝ていたほうが・・・」

 

「大丈夫。力は少しずつ戻ってるから・・・」

 

寄り添ってきたアリシアの手を拒み、ルリは机に置かれた着替えを取り、身仕度を始める。

それが終わった後、部屋を出る。

このショッピングモールは吹き抜け天井の二階建ての構造、天井は大半が半円状のガラス窓と成っており、EMPの影響で照明はともされてはいないが、幸いにもガラス窓天井のお陰様で充分な光は確保されている。

何人かの一般人も居るが、一番目に入るのが軍服を纏っている男達だ。

第二次世界大戦の枢軸国の兵士達であり、21世紀の市販の物を物珍しそうに眺める者、煙草を吹かせる者、辺りを彷徨いている者が居る。

二階に行っても、サバイバルに向いた服装をしている少女が椅子に寝転がって寝ているだけだ。

未だに小室一行の誰一人とで会っていない。

 

「駐車場に居るのかな?」

 

そう呟き、位置を確認した後、駐車場に向かう。

そこには時代に合わない第二次世界大戦中の戦車があった。

一番目に入るのはヤークトティーガー重駆逐戦車、128㎜の砲身が柱に引っ掛かりそうだ。

次に実戦に出る前に戦争が終わり、アメリカ軍に研究用に持ってかれた三式中戦車チヌ。

砲頭部に日の丸が描かれた為に、ルリは口を開けて唖然している。

他にはSdKfz251、鉄十字が入った軍用トラックに入ってないトラック、BMW/R75、ケッテンクラート、そして脱出の際に乗っていたハンビィー二両とジープ、軍用バギー。

出入り口を見れば、奴らが侵入できないようにバリケードが配置されており、内側から開けるように工夫されていた。

ここにも居ないと判断したルリは、モール内に戻り、小室達を探す。

 

「え~と、何処に居るんだろう?」

 

辺りにいる人の顔を確認しながら、小室達を探す中、何者かに後ろからぶつけられ、倒れ込む。

 

「あっ、ご、ごめんなさい!本官の不注意でぇ!」

 

声からすると女性であり、しかもルリの頭部にその女性の胸が押し付けられている。

床に顔を押し付けられている彼女は、苦しみながらジタバタし、それに気付いた女性は直ぐに立ち上がる。

 

「ひぇ~!だ、大丈夫!?お嬢ちゃん!それとご免なさい!」

 

必死にルリの身体を揺さぶりながら謝る童顔で巨乳な女性、服装と口調からして婦警であろう。

向こう側から見ていた白人の若い男と大男が大笑いしながら、彼女等を見ていた。

 

「ぼ、僕は大丈夫だよ・・・それじゃあ」

 

「え?あ、はい。無事で何よりです!」

 

婦警は敬礼し、ルリは再び仲間を探すべく歩みを始める。

そして直ぐに帽子を深く被り、首が見えないほどコートを羽織った軍人シュタイナーと共に居る自分の仲間を見つけた。

 

「あ、みっけ!」

 

「ルリ・・・って!あんたいつの間に戻ったの!?」

 

椅子から立ち上がった沙耶は、ルリが戻ったことに驚き、周りにいた孝と麗も驚いている。

 

「うん、でも今までの私の方じゃないよ。僕の方だよ」

 

「はっ?え、ちょっと、口調変わってない?」

 

「君は本当にルリなのかい?」

 

沙耶がルリの変わりように混乱する中、孝は彼女は本人かと質問する。

それに彼女は可愛らしい笑顔で答えた。

 

「そうだよ。大丈夫、記録は共用しているから」

 

「いきなり僕っ娘って・・・貴女二重人格者なの?」

 

次に麗の質問に、ルリは表情を変えずに頷きながら答える。

 

「うん、でも僕だけじゃないよ。この僕には十人くらいの人格が居るんだよ。多重人格者って呼んだ方が良いかもね」

 

「あ~、マジで混乱してきたわ。それとこのおっさんが言ってること分かる?」

 

頭を抱えながら沙耶は、シュタイナーに指を差して、彼が言っていることを翻訳するように頼む。

 

「〔このお嬢さんと少年少女に何のようで?〕」

 

流暢なドイツ語で質問してきたルリに、シュタイナーはこう返した。

 

「〔君達が乗ってきた車両の種類を知りたいっと言ったのだ〕」

 

「僕達が乗ってきた車両の種類が知りたいんだって」

 

翻訳したルリに沙耶は頭を抱え、「平野に聞けば分かる」と告げた。

ルリが翻訳した事を聞いたシュタイナーは、孝から英語でコータの居場所を聞いた後、そこへ向かっていった。

その後、ルリは他の者達が何処にいるのか、孝に聞く。

 

「所でみんなは?」

 

「確か、向こうのバルコニーでパッキーさん達が集まってるよ」

 

「他にも、銀色で髪の長い娘も居るけど」

 

麗の付け足しを聞いた後、礼を言ってから、ルリはそこへ向かっていった。




戦車兵やリヒトーフェン達は、発電所の再生に全力を注いでいます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これまでの登場人物3

オリキャラは含みません。


原作勢

 

小室 孝

原作、学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEADの主人公。

高校二年生(留年生)、「面倒くさい」を口癖とするごく普通の少年であるが、決断力と行動力に優れている。

この作品ではオリ主のルリに活躍を取られがちだが、一応はリーダー格。

無免許ながらもオートバイやバギーなどを乗りこなせる技術を持つ。

主人候補生なのか、原作ではハーレムのような状態であったが、オリ主のルリの所為でぶち壊されている。

 

宮本 麗

原作のヒロインの一人で、警官の父を持ち、孝の幼馴染み。

高校二年生、非常に勝気な性格で、ヒステリックになりがちな面もあるが、根は心優しく、誰かが支えにならないと生きていけないタイプ。

一行の中で下から二番目の巨乳、ロングヘアーから日本のアホ毛が生えている。

本来ならば孝より学園は上のハズだが、紫藤に留年させられ、それを理由に紫藤を激しく憎んでいる。

ルリのお陰で孝とフラグが成立(?)しつつあるが、彼女が何かしでかさない限り、百合ハーレムは起こることはない。

槍術部に属し、父から銃剣道を習っているため、槍や銃剣が付いた銃などの長柄物を扱える。

 

高城 沙耶

原作のヒロインの一人で、右翼団体を束ねる父を持つ、麗と同じく孝の幼馴染み。

高校二年生、自分で天才と名乗るほどのプライドが高い性格な眼鏡っ娘でツンデレ。

裕福な家庭育ちで抜群のプロポーションを持ち、一行の中で上から二番目の巨乳。

ちなみにコータへの恋愛感情は低い、ルリに惚れる可能性は先ず低いとされる。

 

平野 コータ

孝の同級生で軍事オタク、家族構成も完璧な某吸血鬼漫画の原作者の名前がモチーフで、自前で銃を仕上げるほどの高性能すぎる眼鏡デブ。

普段は温厚で大人しい性格だが、銃器を触れたり握ると興奮し、好戦的な性格になるが、肉弾戦は苦手。

アメリカに在住中にPMCのブラックウォーター社の訓練を会得し、マークスマン並の射撃力を持つ。

銃器や軍関係の知識に詳しく、それを一行に教えるアドバイザー的な役割も担当、源文勢の役に立つだろう(オメガ7の軍オタである田中は90年以降から止まっているため)。

いじめを受けたこともあり、その経験から極限状態に置かれた人間の心理をよく分析・理解している。

 

毒島 冴子

原作のヒロインの一人、スタイリッシュ痴女。

高校三年生、尻まで届くロングヘアを持つ凛とした古風な淑女、二年生時に全国大会で優勝した実力を持つ剣道部主将。

冷静沈着で、一行を精神的に支える存在にもなっている。

一行の中で、最下位の巨乳。

裸エプロンで登場したりする変態淑女(?)だが、天然であり、自信も分かってない様子。

他者を傷つけることを悦ぶサディスティックな性癖を持つ。

原作では孝とのフラグが成立しようとしていたが、ルリの介入によってへし折られる可能性が高い。

 

鞠川 静香

ヒロインの一人(?)。

大学病院から派遣された校医、酒癖が悪いドが付く天然。

沙耶を上回る巨乳や冴子を上回るロングヘアを持つ、プロポーション抜群の美女。

一行で唯一の運転免許取得者のため、自動車の運転手として活躍する。

そして年長者であり、一行一番の巨乳、カウンセリングも担当している。

ルリとのフラグは・・・到底叶いそうも無さそうだが。

 

希理 ありす

小学二年生の幼女。

奴ら発生後、新聞記者の父と逃げ回っていたが、辿り着いた民家に立て籠もっていた一般人に父を殺され、奴らに襲われかけたが、孝達に救出され、以降孝達と共に行動する。

ルリとのフラグについてだが、無いと断言する。

 

ジーク

ありすに拾われた子犬、良く吠える。

決してジークフリートやジークハイルから取っていない。

 

紫藤 浩一

傲慢で非道な代議士の父を持つ教師。

周りから人格者として知られるが、内面はその父の所為でかなり歪んでいる。

麗を留年させた張本人、危険な方向性のカリスマを発揮させる能力を持つ。

ルリは麗の行動で危険な人物と察した。

コーラ瓶で頭を叩かれ、高城邸を追い出された後、行方知れずに。

 

井豪 永

孝の親友で同級生、空手の有段者。

最初に「噛まるだけダメ」の実証例となってしまう。

改訂版前は生き残ったが、ルリが助けなかったために原作通り奴らになってしまった。

名前は永井豪から取っている。

決して兜 甲児や不動 明の様な性格ではない。

 

高城壮一郎

憂国一心会会長で沙耶のパパ。

大日本帝国時代の軍人で体格が凄まじく、ルリですら恐れるような存在であり、原作勢で唯一源文勢と肩を並べられる程の実力者。

奴ら発生の際に日本政府よりも早く行動し、奴ら侵入を防ぐべく、自信の屋敷を強固な要塞かつ拠点に変えた。

人脈もあり、妻や部下達にも慕われ、圧倒的な強さ、カリスマ性を持っている。

まさにチート的な存在である。

ちなみに中の人は、英国の笑顔の絶えない職場に勤務している現ゴミ処理屋でラスボスみたいな人と一緒。

 

高城百合子

壮一郎の妻で沙耶のママ。

容姿端麗かつ夫と同じく強い、かつてはウォール街で名を馳せた凄腕のトレーダーだった。

管理職の護衛コースで銃器の扱い経験においても壮一郎以上。

それらの手腕を振るって築き上げた高城家では壮一郎の傍に仕え、彼に次ぐ存在として皆を纏め上げている。

高城邸の道中で奴らに追い込まれていた小室一行を、一団を率いて助けた(どうして早く動かなかった?!)。

ちなみに中の人は現ゴミ処理屋の上司で、ヘルシング家の当主。

スタッフめぇ・・・ネタを使ったな・・・!

 

中岡あさみ

県警の交通課の新人の婦警。

先輩婦警と共にショッピングモールに避難していた。

原作ではたった一人で頑張っていたが、先輩婦警が応援に行く前にパイパー達が来たため、さらに頼りない。

後からやって来たシュタイナー達のこともあって、彼等の暴走を止められず、もはや自分が何をやって良いか分からない始末。

 

田丸ひろし

漫画家の名前をそのまま持ってきた使ったキャラ。

眼鏡と坊主のフリーターで、拳銃マニア、しかし実物は触ったことはない。

パイパーやシュタイナー達が来た途端、目を輝かせたが、睨み付けられ、距離を置いている。

 

小林源文勢

 

クルツ・ウェーバー

小林源文の代表作、黒騎士物語の主人公で階級は軍曹。

しかし、準主人公のバウアーのキャラが強力すぎて若干影が薄い。

転移する前の年表は第二次世界大戦末期のドイツ第三帝国降伏後の友軍脱出支援時、乗車は最後まで残ったパンター中戦車。

 

エルンスト・フォン・バウアー

強力なキャラ印象で、黒騎士物語の主役とも呼べる人物、階級は大尉。

物語第一話で右目を失明し、眼帯を付けて戦線復帰、その時、彼の中で黒騎士が目覚めた。

転移する前の年表はクルツと同じ降伏後のドイツ第三帝国降伏後。

忠実ではIS-2と相打ちに成り、戦死するはずだったが、霧のお陰で生存し、学黙の世界に転移した。

高性能な副官のシュルツは居ない。

原作組との合流は、予定にはなく、主に番外編で活躍する。

乗車は武装親衛隊の整備部隊から物々交換で受け取ったティーガーⅡ重戦車。

 

パッキー(パーキンス)

動物が銃を持って戦争することで有名な小林源文のもう一つの代表作Cat Shit Oneの主人公、いつもブニーハットを被っている。

何と言っても世界一格好いいウサギであり、3D映像化し、可愛げな顔をしているのも関わらず、特殊部隊並みの活躍を見せ、視聴者の度肝を抜いた。

そして、下を履いてない、下半身に見える方は即刻病院に行くことをオススメする。

ベトナム戦争時は特殊部隊員、撤退後以降はSASに所属、階級は大尉、彼の正体については、合衆国大統領でも関与できない最高レベルの国家機密。

残念なことに学黙の世界に転移したときに人間に戻って(?)しまった為に、格好いいウサギの活躍は見れない。

しかし、人間になってもその格好良さは変わらない。

唯一源文勢で原作組と合流した。

 

ラッツ(ホワイト)

パッキーの右腕的存在でメンバーの中で古参、同じく特殊部隊員で、撤退後はCIAの職員、階級は軍曹。

ベトナム語を理解し、通訳を担当、その語学の高さは転移した学黙でも活躍(パーキーも喋れるが)。

 

ボタスキー

メンバーでの通信担当の黒人、だが、メンバーとは違い、特殊部隊の訓練は受けていない。

アジア人嫌い(ただし女は別)であったが、撤退後はアジア人嫌いが無くなり、商売に成功して活躍している。

 

チコ

ベトナム山岳民出身でメンバー唯一の現地兵((ベトナム人))、ボタスキーとは違い、特殊部隊の訓練は受けている。

 

アッシュ上等兵

同作者の作品カンプグルッペZbvの主人公、戦車兵で砲手と操縦士を担当。

脱走兵と誤認され、懲罰部隊Zbv送りに成った。

転移した時期は、壊滅前の4ヶ月前。

 

コワルスキー伍長

アッシュの同期で仲が良い、戦車兵で装填手を担当。

喧嘩強く、整備兵3人を軽く倒し、襲ってきた補充兵を無双できる大男。

 

シュタイナー少佐

この作品における中心人物でZbvの指揮官、無慈悲で決して裏切りは許さない性格。

捕虜まで殺す程の冷酷さを持っている。

元々は大佐で連隊長であったが、モスクワ戦で指揮権を放置し逃走、罰として少佐に降格され、Zbvの指揮官にされた。

常に頭が隠れるくらい帽子を深く被り、首が見えないほどコートを深く被っている。

その為に「頭がない」「首が繋がってない」と噂されている。

乗車は指揮官車型のハノマーク。

 

ブルクハイト中尉

モスクワ戦時のシュタイナーの部下、戦車兵で車長を担当する。

Zbv編入時からの生き残りで、シュタイナーの事をよく知っており、Zbv唯一の常識人。

乗車は「好意」で受け取ったティーガー。

 

シュルツ准尉(曹長)

多分Zbvの古参、アッシュとコワルスキーに嫌がらせをする常習犯。

その為にかなり嫌われているが、妻と息子と娘が居る。

ファンからは汚い方のシュルツと呼ばれていた。

 

エアハルト・ハーゲン

狼の砲声のドイツ国防軍側の主人公、戦車猟兵で階級は少尉、性格は冷静沈着。

乗車をフェンリアと愛称づける。

キャラが濃くないのでイマイチ影が薄い。

あの例の2人は、参戦するかどうか分からない。

 

アナートリイ・ゴロドク

ソ連赤軍側の主人公、ハーゲンとは違いキャラがえげつなく濃く、見栄っ張りな性格の異能生存体。

共産主義者ではないが、親衛戦車軍で中隊長に抜擢されるなどえらく信頼されている様子。

 

川島正徳(バートル)

ハッピータイガーの主人公、戦車兵で砲手を担当、階級は上等兵。

元大日本帝国陸軍の少尉であり、満州でソ連赤軍に敗れた後、モンゴルの遊牧民に拾われたが、ソ連軍の強制徴兵により、助けた恩として自ら志願、最前線でドイツ軍と戦ったが、捕虜と成ってしまう。

特別行動部隊により、殺される所を武装親衛隊曹長のゾーレッツに助けられ、その見返りに武装SSに志願、以降彼のティーガーの砲手を担当する。

転移する前の時期は、1943年終わり頃の東部戦線。

 

ハンス・ゾーレッツ

準主人公、戦車兵で車長、階級は親衛隊曹長。

武装SSの38ある師団の一つである第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」所属の戦車兵で古参。

擲弾兵時、モスクワ戦でバートルに助けられた見返りに、彼をドイツ軍に受け入れる。

何度もバートルに助けられており、彼に信頼を寄せている。

 

ヴェルナー軍曹

パンツァークリークに登場するシュワルツ似の強い国防軍陸軍のおっさん。

MG42の銃身が焼けないという変な能力がある。

作者は狼の砲声で登場した彼を出してるので、イマイチ不足気味。

 

ハルスSS中尉

クールラント1944やベルリン1945の主人公。

若干傷の所為あってスコルツェニー似だが、彼は第11SS義勇装甲擲弾兵師団の所属である。

 

小松

オメガ7の主人公。

カード破産して普通に働いても返せない程の借金をしてしまい、オメガ・グループに入った元自衛隊員。

とても人間くさい台詞を吐く。

この世界にオメガ・グループは存在しており、要人確保のために床主に出動する。

コールはオメガ7

 

平岡

小松のパートナーであり、ツッコミ担当である。

戦闘では小松が前衛なら、平岡が後衛だ。

仲間には内緒だが、住宅ローンで苦しんでおり、それでオメガ・グループに入ったとされる。

コールはオメガ8。

 

田中

小松班の後輩で軍オタ。

婚約者も含めて3人ほどを孕ませてしまい、訴えられる。

幸いな事に元自衛官であったために、賠償金を支払うためにオメガに入った。

いつも小松から酒代を払わされている。

コールはオメガ20

 

佐藤 大輔

小林源文作品の常連、階級は二等陸佐。

オメガを裏から操るもう一人の主人公、自衛隊調査部別室に所属しており世界各国で情報収集に当たっている。

そのコネクションはロシアの将軍から南米麻薬カルテルのボスまで極めて広い。

一応は国益に則って行動しているようであるが、表沙汰に出来ないビジネスや、本来の任務に便乗した遊興 (本人いわく「別任務」) にも色々荷担しているらしい。

彼に利用された人間は口封じのためたいてい不幸な結末をたどる(殺害など)。

小松が破産したのも実は佐藤の策略であった。

コーヒーの温度はきっかり85℃、豆にも指定あり。

恐ろしい顔をしているために赤ん坊や猫が怖がられている。

ちなみに学黙の原作者の佐藤大輔とは一切関係ない。

 

中村 正徳

佐藤の部下、階級は三等陸曹、やはり小林作品の常連、強者に弱く弱者に強い性格、佐藤にこき使われ理不尽な虐待を受けている。

またわざと敵に捕らえられる、故意に情報をリークさせられるなどの極めて危険な任務を佐藤に強要される。そのためか常に「畜生!いつか殺してやる!」とつぶやいており一度などは本当に佐藤を背後からワルサーMPLで撃とうとしたが、佐藤に安全装置をかけたままだと見破られ失敗した。

なお、このときはカスはなにやってもカスだとの叱責だけで済んだ。

そんな彼も射撃には優れているのだが、活かす機会がめったに無い、高校中退。

ちなみに小林源文の元アシスタントの中村正徳は一切関係ない。

宣伝になるが、ひたすら中村をしばき続けたり、掘られたり、逆レ○プされたりする劇画、東亜総統特務隊を読むことをオススメする。

 

戦場のヴァルキュリア勢

 

アリシア・メルキオット

戦場のヴァルキュリア第一作目のヒロイン、赤いスカーフを頭に巻いている、階級は軍曹(以降昇進無し)

麗と同じ配役なので、声的に被ってしまうが、その点は気にしないことをオススメする。

明るく優しい性格で責任感が強い世話好きのパン職人。

最強の戦闘民族ヴァルキュリア人の末裔であり、瀕死状態に陥ったときに覚醒した。

戦後はパン職人のマイスター試験に合格、思い人であったウォルキンと結婚し、子宝に恵まれ、幸せに暮らしている。

転移した時の時期は第二作目の終了後から数年後、一作目の同じ体格と格好で征歴の世界から転移している。

第2のヴァルキュリア人と言われたが、実際には3番目、胸囲も3番目である(笑)。

 

エイリアス

戦場のヴァルキュリア第二作目に登場する銀髪に赤い眼を持つ純血ヴァルキュリア人の少女。

ヴァルキュリアとしての戦闘時は、鞭状にもなる槍と頭についている耳状の飾りが特徴の帝国の戦闘服を着用。

研究と実験のために隔絶された環境で育ったため、一般常識を知らない無邪気な性格。

物語終了後は戦友でクラスメイトのコゼットと一緒に暮らし、改めて公立の学校に入学、そこで一般常識を学んでいる。

花畑で手入れをしている最中、霧にのまれて学黙の世界に、アリシアと同じように第二作目の同じ格好で転移する。

第4のヴァルキュリア人であり、身長も胸囲も4人中最下位。

 

リエラ・マルセリス

戦場のヴァルキュリア第三作目のヒロイン、性格は優しく女神のよう、好物は牛乳で階級は二等兵(懲罰部隊転属のために昇進無し)。

特徴的な外見は赤い眼、赤と銀の髪。

開戦後に志願して義勇軍に入隊したが、配属された部隊が5回も全滅し、彼女だけが常に生き残ったため、周囲から「死神」と呼ばれて忌み嫌われた末にネームレスという懲罰部隊に送られた。

その理由は彼女がヴァルキュリア人の血を引いているからである(後ほど仲間に明かしている)。

そこでクルツと出会い、彼と打ち明け、好意を抱く。

終戦後のどさくさに紛れて古代兵器でガリアを滅ぼそうとするカラミティ・レーヴェンを決着をつけ、クルツと連邦領内か帝国領内の何処かで添い遂げる。

転移したときはアリシアと同じ、それも戦時中の同じ体格で同じ格好である。

常に携帯している祖父の形見のナイフもいつの間にか携帯しており、4人中唯一ヴァルキュリア人になれる。

第2のヴァルキュリア人であり、牛乳好きのお陰で胸囲も身長も第二位である。

 

セルベリア・ブレス

戦場のヴァルキュリアに登場するライバルキャラ、性格は軍人風、趣味は料理で階級は大佐。

ヴァルキュリア人の末裔で強く血を引き継いでいる。

その所為で研究所に連れて行かれた。

始めに覚醒しており、その圧倒的強さを主人公達に見せつけ、ガリア全軍を恐怖に陥れた。

物語途中で覚醒したアリシアに負け、忠誠を誓っていたマクシミリアンに捨てられ、捕虜となり、占領された要塞にてヴァルキュリア人の力を使い、ガリア正規軍の大半を巻き込む形で自爆。

自爆前に友軍の捕虜は義勇軍に輸送して貰った。

研究所での影響なのか征歴の世界で治療に欠かせないラグナイトの光を嫌い、自分で使おうせず、携帯しない。

そのためか、専用の衛生兵か支援兵に持たせて戦場に赴いている。

自爆後は西暦の世界へと転移しており、そこで連合国側の傭兵として活躍、敗戦国に対する連合国の兵士達の蛮行に対して離反、戦後の朝鮮半島にて日本へ帰る日本人達を現地人や連合国の兵士達から守るために奮闘していた。

最後の残留日本人を見送った後、警察や連合軍兵士から追われている途中に霧にのまれ転移する。

転移したときは他の3人と同じく、征歴の世界に居たときの軍服であった。

胸囲も身長も4人中トップであり、その豊満なバストから爆乳大佐やおっぱいロケットなどというあだ名を頂戴した。

 

マクシミリアン

戦場のヴァルキュリアに登場する白ルル(中の人が同じな為)、フルネームは長いので省略する。

中二病感溢れる喋り方だが、時代背景が1930年代なので気にしてはいけない。

徹底した能力至上主義者なので、能力のある者は身分過去前科を問わず取り立てる。

嫁とも呼ばれるセルベリアが転移したので、何故かこいつも学黙の世界に転移、しかもワルキューレの軍門にである。

率いる軍勢の数は女ばかりではなく男も居る。

 

ヨルギオス・ゲルド

一作目に登場する外道。

他者の苦しみを喜び、残虐非道な事が大好きなドS。

こいつも何故か転移し、ワルキューレの下級兵士部隊を率いている。

 

オドレイ・ガッセナール

二作目に登場したガリア革命軍幹部の一人。

敬虔なユグド教信者で、ヴァルキュリア人を崇拝している。

少し吹いてしまう断末魔を上げて死んでしまうが、何故か学黙の世界に転移、しかもワルキューレの機甲部隊指揮官で、理由は彼女が女性指揮官であるからか。

乗車はゲイレルルではなく、第三世代戦車のレオパルト2NLタイプ。

 

ストライクウィッチーズ勢

 

宮藤芳佳

パンツアニメで有名なストライクウィッチーズの主人公。

扶桑皇国海軍並び第501統合戦闘航空団が誇る淫獣である。

転移時期はアニメ本編終了後、その他のウィッチと共に転移した。

 

坂本美緒

扶桑皇国海軍の将校で、豪快な性格な女侍。

魔力の衰えで退役済みだが、要塞を一刀両断にする斬撃は放てる。

その豪快さあってか、一部からもっさんと言うあだ名を頂戴している。

転移したのは宮藤が連れ去れた後。

 

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ

カールスラント空軍所属で、第501総合航空団の隊長。

元々歌手志望であったために歌唱力が高く、部下の自由行動を許す。

常に笑顔を絶やさないが、怒るとかなり怖い。

超感覚で、遠くから聞こえる物音など察知できる。

味覚が凄いずれており、妙な撃破の仕方で勲章を授与された。

ちなみに転移したウィッチはパンツ丸出しではない。

 

リネット・ビショップ

ブルタニア空軍所属ウィッチで巨乳。

少しヤンデレ成分があり、芳佳のターゲットの一人。

基本的に争いを好まない性格。

 

ペリーヌ・クロステルマン

自由ガリア空軍所属のウィッチで金髪眼鏡っ娘、貴族出身。

美緒に心酔しており、淫獣芳佳の事を豆藤と呼ぶ。

お嬢様口調である。

 

エーリカ・ハルトマン

カールスラント空軍所属で、某黒い悪魔がモデルな幼い外見のお嬢ちゃん。

モデルの人物と同じく性格に少し難があり、双子の妹が居る。

バルクホルンとは犬猿の仲。

 

ゲルトルート・バルクホルン

第501総合航空団が誇るシスコン、妹が居る。

現実主義者で、固有魔力で大男を吹き飛ばす程の怪力を有している。

模範的なカールスラント軍人だが、妹や、それを思わせる年頃の少女には極端に弱く、それらが絡むといつもと正反対の節操の無い行動に出てしまう。

ルリと会ったら、えげつない事になる可能性大!

 

フランチェスカ・ルッキーニ

ロマーニャ公国空軍所属のウィッチ、美食屋で昼寝好き、気ままに行動する12歳。

サボりの常連で、胸の大きさで人を判断するという妙な考え方をしている。

 

シャーロット・E・イェーガー

リベリオン合衆国航空部隊所属のウィッチ、部隊一番の巨乳で綺麗好きで機械いじりが好き。

胸を揉まれても動じなず、常にスピードを追い求める。

 

他二名は何処かで出す予定です。

 

その他

 

ミハエル・ヴィットマン

武装親衛隊の38ある師団の一つ、第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラーに所属していた戦車兵、階級は親衛隊大尉。

人類史上最も戦車を破壊した男であり、特に有名なのはノルマンディー戦線のヴィレル・ボカージュの戦いが有名である。

単機でイギリス陸軍の機甲師団を壊滅状態にした。

転移する前の時期は、戦死前にサントーに向かってる最中に遭遇した英軍との交戦中。

相棒のヴォルと一緒に転移した、乗車はティーガー重戦車。

 

ヨアヒム・パイパー

武装親衛隊で最も優れた前線指揮官、階級は親衛隊大佐。

虐殺には手を染めず、ありとあらゆる戦地で活躍、その姿は炎の騎士の様。

転移前は米軍に降伏するところであったが、霧にのまれ転移、同じ場所に転移したヴァルキュリア人と共に行動する。

 

クルト・マイヤー

パンツァーマイヤーの異名を持ち、最年少で親衛隊少将に昇進した武装親衛隊で優れた人物の一人。

1944年9月7日にレジスタンスに捕らわれてしまうが、謎の霧が彼を助け、学黙の世界に連れ去った。

 

オットー・スコルツェニー

武装親衛隊で最も優れた人物で、欧州で危険な男と呼ばれた親衛隊中佐。

ナチス版スネークとも呼ばれている。

中でもアメリカ軍を攪乱したバルジの戦いが有名。

転移時期は、1945年5月の降伏後である。

 

バウアー

黒騎士物語のパロディ、独ソ戦の解説本縞騎士物語またはどくそせん!に登場するバウアーの美少女版。

アホ毛がある。

原作では東部戦線初期から居て、歴戦錬磨の女騎士であったが、解説本では輪○されたりしている。

本作は末期で第12SS装甲師団に属していたが、戦闘には全く参戦せず、負傷した車長や乗員の代わりにⅢ号突撃砲を動かしていた。

転移する前はP-47のロケット攻撃で乗車と共に焼かれていたはずだが、転移したときはその外傷は全くなかった。

まず始めにオリ主と合流している。

幼い顔付きだが、18歳であり、プロポーションも良い。

 

タンク・デンプシー

Call of Duty World at Warの力が入ったおまけモードに登場する海兵隊員。

アメリカ議会名誉勲章を授賞した英雄、階級は軍曹。

ゾンビ発生前は太平洋戦線に属し、日本軍と死闘を繰り広げていた。

リヒトーフェンとは犬猿の仲でいつも喧嘩をしている。プルーンが嫌い。

記憶の一部を失っており、過去の記憶はもとより、語彙も貧弱な状態である。

タケオ曰く「頭空っぽ」、リヒトーフェンとは以前にどこかであったと感じているが、思い出せないでいる。

1960年代以降にタイムスリップしてからはメタ発言が多く、プレイヤーや開発元に対して愚痴をこぼしている。

外見は同ゲームのキャンペーンモードに登場するポロンスキーを流用している。

使い回しの理由については、単にめんどくさがったか、お金が無いかである。

 

ニコライ・ベリンスキー

ウォッカに溺れた憐れなソ連赤軍の兵士、戦前は大工と所属党幹部。

台詞の大半はウォッカに関係し、残りはソビエトと共産主義だ。

政治家であったらしく、所属党ナンバー2の男を殺し、政略結婚をして地位を得たが、失脚。

何度か結婚していたそうだが、酔っ払った勢いなのか、気でも狂ったのか妻を何人も殺している。

何故、逮捕されないのかは不明、考えられるのは警察か党にコネでもあるからか。

同じ大国で同盟国であるデンプシーを尊敬しているが、タケオとは日露戦争を理由にあまり良く思っていない。

外見は復讐に燃えるソ連赤軍の中で唯一人間性を失わかったチェルノフ、どうしてこうなった。

 

正樹 武雄

侍の血を受け継ぐ大日本帝国陸軍の大尉。

ゾンビ化し自身に襲い掛かるかかってくるかつての皇軍の兵士達よりまだ生きている者達と共に戦う事を決めた。

先祖は名のある侍であり彼自身その血を引いていることを誇りに思っており、降伏するなら自決するという信念を持っているが、5歳の時に刀で猫の尻尾を切断したので少し危ない人である。

当初は敵国の兵士であるデンプシー、ニコライを嫌い、同盟国ドイツ第三帝国の科学者であるリヒトーフェンに敬意を払っていたが、1960年代にタイムスリップしてからは過去の記憶が戻ったためか、以前と同じように振るまいながら、 デンプシーの状態に注意を払い、リヒトーフェンの事を警戒していた(ニコライは見込みなしとして見捨てた)。

見捨てられたニコライはそんな彼を見て良からぬことを考えていると嫌っている。

外見は同ゲームの敵である日本兵に紛れて登場する帝国陸軍の将校であったが、何故かCall of Duty Black Opsでは「貴様は強くない」と名言を発した日本陸軍将校になっている。

ちなみに名前の漢字はファンが適当に考えた、公式ではないので注意!

 

エドワード・リヒトーフェン

ドイツ軍の少将(または親衛隊少将)で科学者でもあるとってもエキセントリックなおっさん。

戦前は整形外科医をしていた(何故科学者になったのかは不明)、そして妹が居る。

テレポーターを開発したマクシスの助手であったが、彼が失敗する度に八つ当たりするため、キレて彼の娘共々テレポーターの実験にした。

それが原因でゾンビとヘルハウンドを世に解き放ってしまい、大惨事になる。

転移した原因は、鎮圧した月面基地で酒盛りをしていた場所に隕石が衝突、そのまま宇宙に放り出され、窒息死するはずだったが、不自然すぎるブラックフォールに飲まれて学黙の世界に転移した。

なんでCODのゾンビが学黙の世界に登場し、不気味に黄色く光るのが青色に変わるのは所謂続編であるCall of Duty Black Ops2のrゲフンゲフン。

外見は巷で噂なモリゾーと一緒に敵地に潜入するミッションに似たキャンペーンで狙撃対象であるドイツ陸国防軍将軍のハインリヒ・アムゼル。

何故かこの外見の元となった人物は皆死んでいる。

同一の姿をした人物なのか、果ては彼等の死後の世界なのか、謎は深まるばかりである。

 

桂言葉

School Days のヒロインの一人。

榊野学園高校一年、腰まで届くストレートロングヘアや他のヒロインのバストが、小さく見える程のビックバストッ!(スピードワゴン風に

趣味は読書で、スプラッター映画とホラー映画、後ゾンビ映画を大好き。

虚弱体質なので体育は苦手なのに、この作品ではDIO以上な運動能力を凸凹コンビに見せ付けている。

豪華な一軒家に共働きの両親や妹の心と4人で暮らしているが、その裕福さゆえに家族以外の他人との会話では、稀に金銭感覚の差異が生じることがある。

その容姿の所為で男子達からからかわれ、軽度の男性恐怖症に。

女子達からも嫌われているが、同性との友情を尊ぶ一面も持つ。

本作においては、制作者のゾンビ好きあって、世界共通で登場。

彼女以外の登場人物は皆ゾンビにされるか、学園を襲撃してきたワルキューレの隊員に殺された。

この時、彼女に隠されていた驚異的な能力を覚醒し、同時にディオ以上の残虐性と異常性を身に付け、ワルキューレの隊員を圧倒。

偵察に来たZbvの一個分隊をわずか5分で全滅させ、凸凹コンビを追い詰める。

この先の展開では、吸血鬼状態のDIOの能力に覚醒させる予定。

理由はラストが、ジョジョの奇妙な冒険第一部と同じだからである。

 

エーリヒ・フォン・リヒター

ドイツ軍将校。

スパイ・プロメテウスからの「完璧な情報」を背後に、連合軍やシェリダン率いる米軍と死闘を繰り広げる。

転移した時期はバストーニュの戦いの最終局面。

撤退する友軍の時間を稼ぐべく、圧倒的な米軍に対し、自殺志願者等と共にヘッツァー一両で特攻。

航空機の攻撃で乗車が大破、車内で炎に焼かれるハズであったが、学黙の世界に転移し、高城家にお世話となる。

中の人が藤原啓治で、性格が戦国BASARAのボンバーマンひろしにやや似ているが、兵隊に爆弾背を背負わせて敵陣に突っ込ませる程、そんなに冷酷ではない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

開発に成功!

ご都合主義的な物が完成~


孝に教えられたルリはパッキー達を見つけて、そこへと向かう。

向かった先には人集りが出来ており、高城邸で共に戦った四人の男の一人エドワード・リヒトーフェンが何かの飴が入った瓶を抱えて自慢げにこの飴の事を語っていた。

 

「この飴を食べれば、面倒な語学を一々勉強せずに済む!あっと言う間にこの世にある言葉を理解できるぞぉ~!」

 

「麻薬じゃないだろうな?」

 

全員が疑いの目を向ける中、リヒトーフェンは、偶然人集りの中に居た金髪眼鏡のフランス人の少女ペリーヌ・クロステルマンに目を付けた。

 

「そこのお嬢さん。この飴は如何ですかな?」

 

流暢なフランス語で喋り掛けられたペリーヌは、周囲を見渡し自分だと気付く。

 

「え、私ですか?ですがその怪しい飴はお断りしますわ」

 

「なんか苦そう~」

 

ペリーヌに続いて隣にいるイタリア人の少女フランチェスカ・ルッキーニも、嫌そうな目で飴を見る。

 

「これを食べれば、面倒臭い語学の勉強なんかしなくても聞けば分かるし、話せば通じる飴なんだよ!」

 

必死に飴を食わそうとするリヒトーフェンに対し、見ていた全員が呆れて離れていき、落ち込む。

そんな彼であったが、彼の隣にありすが居ることに気付き、飴を初心な少女に渡した。

 

「いるかい?」

 

「うん、ありすが貰ってあげる」

 

ジークを抱えながらありすは飴を口に含んだ。

何の異変も無いまま彼女はそのまま去っていったが、アッシュとコワルスキーの会話を聞いたありすはリヒトーフェンに戻ってきた。

 

「ありすあの人達の言葉分かるよ!」

 

「なに!?皆の衆、開発は成功だ!全員食べろ!一々言葉を換えずに済むぞ!」

 

リヒトーフェンが大声で叫んだ後、枢軸国の兵士達や少女達が彼の前に殺到した。

 

「安心しろ!全員分のはある!押すな押すな!」

 

これを見ていたルリも飴を取り、口に入れた。

食べた瞬間、押し圧せる枢軸国の兵士達の言葉が手に取るように理解できた。

先程嫌がってたペリーヌとで飴を口に入れて、食べていた。

 

「本当に彼等が喋ってる言葉が分かりますわ・・・」

 

飴を食べた瞬間、ペリーヌは今まで分からなかった言葉が理解できる事に驚いている。

様子を見に来た孝達にも飴が渡され、半強制的に食わされた。

飴は全員分の数が足り、二人分が余った。

新しい着替えを探そうと、ルリは二階へ再び足を運び、被服専用販売エリアに向かう。

気に入った服を見つけたので、それを持って一階に戻ろうと階段まで向かう途中、ニット帽を被った男とぶつかった。

 

「いってなぁ!気を付けろ!」

 

男に睨み付けられたルリは、無言で謝った後、鞠川とありすが寝息を立てながら寝ていたが、無視してセルベリアが何かを組み立てている場所を通り過ぎる。

興味本意でタンクトップを着た彼女に話し掛けた。

 

「なにしてるんですか?」

 

集中していたセルベリアがルリの存在に気付き、自動拳銃P229を後ろから近付いてきた美少女の額に突き付ける。

 

「ッ!?済まない」

 

謝った後、拳銃をガンホルスターに仕舞い、作業に戻った。

蛇に睨まれたカエルの様な状態になったルリは、ガタガタと震え、床に尻餅を着く。

立ち上がり、農具用の販売店に向かい鎌を調達、そして銃器など保管してある場所を日本兵に聞き出し、そこへ向かう。

保管庫代わりにされている倉庫に向かうと、様々な小火器が保管されている。

当然ながらここにも先客がおり、自分の恋人といえる愛銃を整備していた。

その中から自分の武器を探し、ようやくアサルトカービンライフルSG553を見つけた。

ついでにスチェッキンAPBとグロック17二挺の自動拳銃を貰っておく。

机で銃の整備を行っているバルクマンの隣に座り、プラスチックのマガジンに弾丸を入れ始める。

5.6mm×45弾をマガジン内に入れていく中、ルリは隣から目線を感じ取る。

一方の隣で座るバルクホルンは、顔を赤らめながら、ルリの机に置かれている突撃銃について話し掛ける。

 

「あ~うん。その自動小銃は何だ?えらく近未来的だが・・・」

 

咳払いをしながら話し掛けたバルクホルンに、ルリは一度弾倉にライフル弾を入れるのを止めて返答する。

 

「え、これ?マリが僕の為に買ってくれたライフルだよ」

 

「そ、そうか。私達が使うボルトアクションや自動小銃、騎兵銃とは違うのだな」

 

机の上に置かれていた5.6mm×45弾を手に取って、物珍しそうに見た。

この世界の銃に興味があるためか、赤い顔がいつの間にか治まっている。

その時、後ろからジャンバーを羽織った長身でグラマラスな少女シャーロット・E・イェーガーが向かってきた。

 

「よう、バルクホルン。隣にいるのは新しい妹か?」

 

「ち、違うぞイェーガー大尉!彼女は客人の中の一人だ!」

 

知り合いらしかった為に、ルリはシャーロットに話し掛けた。

 

「あの~誰です?」

 

「お、自己紹介がまだだったな。私はシャーロット・E・イェーガー、機械いじり好きだ。よろしく」

 

ルリに挨拶をした後、バルクホルンに気付いたシャーロットは、彼女に変わって勝手に自己紹介し始める。

 

「隣に座ってるのがゲルトルート・バルクホルンだ。いつも妹のことと宮藤のことを心配してる」

 

「なッ!?コラッ!」

 

図星だったのか、シャーロットに突っ掛かるバルクホルン。

全ての弾丸がマガジン内に収まった後、それを肩鞄に全て入れ込み、武器庫から出ようとしたが、シャーロットに止められる。

 

「待ちなよ。これ、君の?」

 

トランクを渡されたルリはそれを受け取って中身を見てみれば、スターリングMk7短機関銃と専用弾倉十八本が入っていた。

 

「ステン・ガンの魔改造みたいな機関銃だな?」

 

ルリが持つスターリングMk7を見ながら、バルクホルンが言った後、シャーロットもそれに納得する。

そして忘れていたのか、彼女に名前を問う。

 

「あ、名前聞くの忘れてた。取り敢えず名前は?」

 

「僕はルリだよ」

 

「外見と同じく可愛らしい名前だな。まぁ、宜しく!」

 

シャーロットはルリの肩を叩いた後、武器庫に入った。

ルリは彼女とは逆に武器庫を出て、冴子かバウアーを探そうとモール内を探検する。

暫く歩いていると、ルリの上に事故で乗り掛かった婦警と偶然にも鉢合わせた。

 

「あっ!先程は失礼しました!床主東署交通課、中岡あさみ巡査です!気軽にあさみとお呼び下さい!」

 

自分より6㎝下の少女の前で自己紹介を始め、敬礼するあさみ。

ルリも敬礼して自分の名前を告げる。

 

「僕はルリです。え~と軍隊の階級的には親衛隊二等兵かな?それとも伍長かな?」

 

顎に人差し指を当てながら悩むルリに、眼鏡と坊主頭で首にアクセサリーにヘッドフォンを掛けた男が、物珍しそうに二人を見ている。

直ぐにルリはその男の名を訪ねた。

 

「あ、そこの人。名前は?」

 

「え、俺?田丸ヒロだけど。所で嬢ちゃんよ、そのトランクに入ってるのはなんだい?」

 

田丸が指を差したトランクに、ルリは中身を見せた。

 

「サブマシンガンじゃねぇか。こいつはステン・ガンの進化形かな?」

 

じっくりとスターリングMk7を見ながら、冷静に解説を始める。

そしてルリの腰に差してあるP232とスチェッキンAPB、グロック17に目が入る。

 

「おっ、映画では美女の御用達であるP232にグロック17、ロシア製のマシンピストルスチェッキンのサプレッサーモデルAPBじゃないか!俺は拳銃には目がないんだ」

 

目を輝かせる田丸は、ずっとルリの腰に刺さってある三挺の拳銃に注目していた。

第四者から見れば、少女の腰を見ている変質者そのものなのだが。

 

「あの・・・その拳銃本物なんだよな?」

 

「はい、そうですけど」

 

「ちょっとだけ触っても、OKかな?」

 

近くで話を聞いていたあさみは直ぐに田丸を止めようとする。

 

「ふぇっ!?ちょっと、何言ってるんですか田丸さん!危ないですよ、それにルリちゃんも!」

 

「いや~ハンドガンマニアとして目の前で本物を見せられたりするとじっとしてられないんですよ。それにこのご時世に本物なんて拝める機会なんて滅多に来ないんだぜ?多めに見てくれよ婦警さん!」

 

田丸の熱弁にあさみは涙目になりながら悔しがっていた。

ルリは素直に拳銃三挺を田丸に渡した。

 

「流石は嬢ちゃんだ!いや~前に来た奴らは頼んでも全く見せて貰えず、酷い場合には拳が飛んできたからな~」

 

大喜びしながら田丸は、マイヤー達の悪口を言う。

 

「なぁ、他にもあんのか?」

 

「う~ん、分かんないよ」

 

「そうか・・・仕方ないから軍オタの坊主に聞くか。にしても羨ましいね。少し近寄り難い奴が多いが、銃で完全武装な上に、ルリちゃんの様に可愛く、エロイ姉ちゃんも居て。じゃあな~」

 

残念な返答があった田丸は拳銃をルリに返し、その場を去っていった。

返された拳銃を抱えたルリは、あさみにグロック17と弾倉数本を渡す。

 

「あさみお姉ちゃんは婦警だからこれね」

 

「えっ?あさみ、自動拳銃なんて持ったこと無いよ~」

 

「一応持っていた方が良いよ。お巡りさんの拳銃より使いやすいし」

 

そしてあさみは泣く泣くグロック17と弾倉数本をルリから受け取る。

突然鞠川の悲鳴が聞こえ、ルリはあさみと共に現場へ向かう。

そこには先程ルリがぶつかったニット帽の男が、鞠川にナイフを突き立てていた。

現場には孝、麗、沙耶、コータ、冴子、ありすが来ており、あさみは貰ったグロック17の安全装置を外さす、人質を取る男に向けている。

 

「クソッ、もう少しだって所を!」

 

悔しがる男の言葉が終わった後に、赤髪の女性ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケがH&KP7の安全装置を外し、男に構えた。

 

「直ぐにその人を離しなさい!さもなくば射殺します!」

 

「撃ってみやがれ!この女に当たっても知らねぇぞ!?」

 

男はドスの効いた声でミーナに告げる。

他にも悲鳴を聞き付けた者達が集まって来て、男の立場がさらに悪化する。

 

「近付くんじゃねぇ!」

 

「す、直ぐに離しなさい!撃っちゃうぞ!?」

 

一切の震えを見せないミーナに対し、あさみは震えながら拳銃を構えていた。

 

「ケッ、臆病者の婦警さんはそこらで指をくわえて見てな!」

 

あさみに対して強く出る男であったが、後ろから来た少女エーリカ・ハルトマンに足下を崩され、鞠川を離し転倒、迫ってきたコータに拳銃を突き付けられる。

 

「な、何様のつもりだ!?このデブが!」

 

「おっと、動かない方が良いよ。いつ撃鉄を引いてしまうか分からないから」

 

冷徹な言葉を告げるコータに、男はナイフを捨て、命乞いを始めた。

鞠川はルリに抱き付いている。

後からやって来た軍人達に、男は喚きながら連れて行かれる。

 

「や、やめてくれ!た、頼む・・・命だけは!」

 

泣き喚く男に、孝はミーナに問い掛ける。

 

「怯えてるように見えますが・・・一体どうなるのですか?」

 

「屋上から落とされるか、良くてもリンチされるかよ。今までは拘束して済ませてたんだけど、貴方達が来る前にやって来た連中が来てから、死者が増えたわ。問題を起こる度にああやって力で抑え付けてる、この前なんて見せしめなんてやったのよ」

 

胸糞が悪い様に語るミーナに、孝はシュタイナー達が相当危険な者達と認識した。

事態は直ぐに収拾され、モールに避難してきた一般人達はざわめき、シュタイナー達から距離を置こうとする。

そして孝達はマイヤーに頼み、許可を得た後、旅支度を始める。

 

「このまま居たら、私の家よりタチが悪いことになるわ。マイヤーさん達が止められ無くなるのも時間の問題よ。それと何人か居なくて、見ない顔が居るんだけど?」

 

一室を借りて、これからの事を語る沙耶は、今まで行動を共にしてない者が居ることに直ぐに気付いた。

その人物はルッキーニにペリーヌ、エーリカ、エイリアスの四人だ。

沙耶は直ぐにツッコム。

 

「ちょっと、あんた等何勝手に入ってきてんのよ!」

 

「だって、これから冒険にでるんでしょ?楽しそうだからついていく!」

 

「エイリアスも同感だ。花を育てようにも水が出ないから外で調達したいぞ」

 

「わ、私は別に・・・出て行ったきり帰ってこない坂本少佐と会うかもしれないという事を信じてついてきた訳ではありませんのよ・・・」

 

「ここは退屈だから暇つぶしに~」

 

周りが苦笑いをする中、新しいメンバーに溜息をつかずにはいられない沙耶、その次の瞬間である。

 

「おい、お前!どうしたのか!?しっかりしてくれ!」

 

老人の叫び声が聞こえ、直ぐさま現場に向かった。

そこには、老人が倒れた老婆を抱えて叫んでいる所であった。




ウィキなどを参考にさせて貰ってます・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰も居ない病院へと

倒れた老婆の診察を行うリヒトーフェン、直ぐに病状が分かった。

 

「あぁ、こりゃあ先進国の老人に多い血漿の輸血が必要な骨髄異形成症候群だな。しかも特別な血漿のな」

 

老婆の顔を見て病状を判断した後、老人の顔に視線を向けて冷たい言葉を掛ける。

 

「ここは病院じゃないからな、助からんわ。御老体、妻は諦めてくれ」

 

「な、この・・・!」

 

最愛の人を諦めろという宣言された老人はリヒトーフェンを睨み、殴りかかろうとしたが、自分で抑え込む。

これを見ていた孝は、老婆を見捨てることが出来ず、助けようと決断する。

もちろん反対の声が上がった。

 

「なに、くたばる寸前の婆さんを助けるために病院へ行くだと!?勝手なことを言うんじゃない!」

 

仮の武器庫の門番をしていたブルクハイトは、孝を怒鳴りつける。

 

「もちろん分かっています。ですが、僕はどうしてもこのお婆さんを見捨てられません!」

 

孝がブルクハイトを説得している最中、シュタイナーとシュルツが通りかかる。

 

「何事だ、ブルクハイト」

 

「これは少佐殿。この小僧がもうすぐくたばりそうな婆さんを助けに武器を寄越せと申しております!」

 

ブルクハイトから孝の要望を聞いたシュタイナーは、直ぐに彼の要望を承知するようにブルクハイトに告げた。

 

「この少年の頼みを聞いてやろう。ブルクハイト中尉、直ぐに武器庫を開けたまえ」

 

「なっ!正気ですか少佐殿!?この小僧殿に武器を渡すなど危険極まりません!」

 

隣にいたシュルツは反対の声を上げたが、シュタイナーはそれを一切耳に入れず、ブルクハイトに武器庫を開けるように再び告げる。

頼みが通じた孝はシュタイナーに頭を下げてお礼し、コータを呼ぶ。

そこへ平八がやって来て、準備をする少年に、冷徹の目線送る男に事情を聞く。

 

「これは少佐殿、この我らの子孫が一体何を?」

 

「行方不明者になろうとしている奴だ。あの眼帯の女と同様にな」

 

「(この男・・・侮れん!)もし戻ってきたら・・・?」

 

「受け入れるさ。そうしなければパンツァーマイヤーが煩い。もし帰ってこなければ老婆を楽にする」

 

シュタイナーの言葉に平八は疑問を抱き、シュルツは避難民が二人ほど減ると確信した。

だが、老婆を助けたい者はまだ他にも居た。

先客の一人である小柄で頭に赤いスカーフを巻いた女性、アリシアが志願したのだ。

あさみも志願し、避難民の一人である田丸も志願する。

その中にはルリの姿もあった。

この集まりを見ていたデンプシーは、近くにいたゴロドクに話し掛ける。

 

「なんだ、この集まりは?」

 

「くたばりそうなバアさんを助けに、病院へ行くメンバーだ。アメリカ人」

 

「自殺志願者って訳か」

 

納得したデンプシーは、煙草を吸い始める。

一応ここの指揮官であるマイヤーが用意した物の説明を受ける救出メンバー達。

 

「余り人は出せないぞ。もし動けなくなった場合は、この信号弾を使え。ディーターがヤークトティーガーに乗って向かってくる。それに銃はもしもの為だ、余り派手に撃ちすぎて迷惑を掛けるなよ?これは輸血パックを保存する鞄だ。こいつはケミカルライトだったか?」

 

「あ、はいそうです」

 

「ありがとう。他にも色々ある。では、生きて帰ってくる事を祈る」

 

マイヤーがローマ式の敬礼をした後、コータもローマ式で返す。

 

勝利万歳(ジーク・ハイル)!」

 

この返しにマイヤーは笑い、コータにある約束をした。

 

「帰ったら騎士鉄十字勲章を見せてやろう」

 

「ありがとうございます!マイヤーさん!」

 

コータの感謝の後、これから病院へと向かう彼等を見送ろうとする者達が集まってきた。

そしてルリの背後に這い寄ったルッキーニは、彼女のまな板のような胸を掴む。

 

「ひゃっ!?」

 

「む、胸が・・・無い!?」

 

これに驚いたルッキーニは、直ぐにシャーリーの元へ行く。

 

「しゃ、シャーリー!ルリには胸がないぞ!」

 

大慌てをする彼女等を余所に、小室一行のメンバーは、孝とコータを心配する。

 

「小室君、私も行こうか?」

 

「いえ、先輩はもしもの時の為に残ってください」

 

冴子が自分も行こうとするが、孝に断られる。

次にパッキー達もついていこうとしたが、スコルツェニーに止められた。

アリシアも心配されていた。

 

「アリシア・・・私も行こうと思ったけど、マイヤーさんが許して貰えないみたい」

 

「エイリアスも行きたいのに、マイヤーがやめろって言うんだ・・・」

 

「良いのよリエラ。あの婦警さんと田丸さんは頼りなさそうだけど・・・新しい三人は頼りになりそうだわ」

 

同じ能力を持つリエラにエイリアスに答えたアリシアは、セルベリアが居ないことに気付く。

 

「あれ、セルベリアさんは何処へ・・・?」

 

「さぁ?外に居るって聞いたけど・・・」

 

リエラが答えた後、そこにセルベリアが姿を現した。

モール内で見なかったリヒターも一緒だ。

 

「姿が見えないと思ったら、銀髪美女とデートしてやがったのか!」

 

ゴロドクが言った後、デンプシー等がリヒターに野次を飛ばす。

そんな彼等を無視して二人は孝達の元へ向かう。

 

「話は聞かせて貰った。周囲から銃声が聞こえるが、遠くの方だ。その所為か歩く死者の数が少ない。病院からご希望の物を取りに行くのは容易だろう・・・しかし、女兵士達が彷徨いている、油断は禁物だ」

 

飴を食べてるので、孝は彼が言葉が分かる。

セルベリアも彼等に伝えたいことがあるらしく、声を掛ける。

もちろん彼女の美貌を見ていた麗は、悔しがっていた。

周囲から「負けた・・・」と言う声も上がる。

 

「君が小室か?」

 

「はい、そうですが・・・」

 

「聞いた話の通りだ。ここまで来たのは君のお陰な様だな。それと、あの少女がルリか?」

 

視線を向けた方向にルリが居たことに、孝は答える。

 

「そうです。ここに来させますか?」

 

「いや、結構だ。(リヒターの言った事が正しいなら、あの少女も私と同じ能力を持っているということになる)」

 

暫し見た後、アリシアにルリの事を伝え、屋上へと向かった。

そして病院へと向かうメンバー、孝・コータ・あさみ・田丸・ルリ・アリシアの六人がモールから出発した。

出る前に見張りから周囲に敵影無しと告げられた後、モールの外を出て、辺りを警戒しながら病院へと向かう。

周囲から銃声が聞こえ、空を見上げれば航空機が編隊を組んで飛んでいる。

 

「空自の航空部隊かな?それにしても型がおかしいけど」

 

コータは上空を飛行する航空機を見ながら呟く。

公道には死体が散乱し、EMPの影響で動けなくなった車も周囲に放置されている。

 

「こんな世の中なのに戦争するなんて・・・正気なの?」

 

消音器しか着いてないM4A1カービンを持ちながらアリシアはこの現状に対して疑問を抱き、声に出す。

その言葉にあさみとルリを除く皆が納得する。

 

「ホントですよね。どうしてこうなったのか・・・」

 

孝はイサカM37を強く握り、この現状に苛立ちを感じる。

それを改造さすまたを担ぐ田丸が彼を落ち着かせ、それにコータも便乗する。

 

「落ち着けよ、兄ちゃん。そんなにイライラしても何も変わらないぜ?」

 

「そうだよ小室。所で後何分歩いたら着くっけ?」

 

「それもそうですね。あぁ、確かあと十分か九分で・・・」

 

言い終わる前に、遠くの方からトラックのエンジン音が聞こえてきた。

直ぐにリヒターの報告にあった女兵士達つまりワルキューレの物と判断した。

あさみと田丸は分かっていないらしく、自分達の存在を知らせようとしたが、アリシアに遮蔽物まで引っ張られる。

 

「どうしたんですかアリシアさん?」

 

「早く隠れて!」

 

何かしらの嫌な予感がしていた孝は直ぐに茂みに伏せて身を隠し、コータも彼の隣に向かい、同じく身を隠す。

ルリはアリシア達が隠れる場所まで向かい、スターリングMk7の安全装置を外して構える。

 

「一体何が来るんですか・・・?」

 

「しー!静かにして」

 

突然の行動にあさみはついてこれず、アリシアに聞いたが、静かにと言われるだけである。

数秒後、M5A1ハーフトラックを前にユニヴァーサルキャリア、兵員トラック三台が孝達の目の前を通り過ぎた。

乗っている全員は全て女性であり、装備は第二次世界大戦のイギリス陸軍の物であった。

これを見ていたコータは直ぐに判断する。

 

「第二次大戦のイギリス陸軍の装備じゃないか・・・!」

 

「あぁ、でもみんな美人だったな」

 

唖然するコータに田丸が便乗、そんな彼等をほっといて孝はアリシアに事情を聞く。

 

「どうして隠れたんですか?」

 

「私達も何度か遭遇して交戦してきたから・・・それとも私達がこの世界の人間じゃないからかな・・・?」

 

小首を傾げて悩むアリシア、気にすることもなく一行は歩みを再開した。

 

「着いたか・・・しかし、かなり荒れてるな・・・」

 

病院へ着いた孝達、田丸が驚きの言葉を上げるとおり、設備の整った病院は奴ら発生の所為でかなり荒れていた。

 

「暗闇で奴らと戦うことになると、結構厳しいな・・・」

 

「一応は明かりを灯す道具は揃ってるけど、懐中電灯とフラッシュライトが無いし、贅沢は言えないね」

 

不満を漏らす孝にコータはそれに答えながら、地面に下ろした背嚢の確認を行う。

白い建造物に見える血痕の後を見たあさみは震え、アリシアも少し不安になる。

その時、ルリが何者かに捕まり、男の声が後ろから聞こえてきた。

気付いた一同は直ぐに振り返り、身構える。

 

「動くんじゃねぇ!この餓鬼をぶち殺すぞ!」

 

ルリを抑えていた男の正体はなんと警察官だった。

後ろにも証拠である制服を着て、S&W M37エアウェイトを構えた警官も居る。

この驚愕の現象に、あさみは絶望する。

 

「え・・・なんで警察官が本来救うべく少女を人質に・・・?」

 

「あ?こいつは交通課の奴か。もうこんな世の中だ、法なんざ意味ねぇよ!」

 

「その通りだぜ!もう法なんて守る必要もない、好き放題やらせて貰うって訳よ!」

 

この現状に孝とコータ、田丸にアリシアは怒りを覚える。

 

「貴方達は本当に警官なんですか?」

 

イサカM37を構える孝は警察官とは思えぬ行動をする彼等に問う。

 

「あぁそうだ、“元”だがな。これからはやりたい放題する無法者だぜ。さぁ、この嬢ちゃんを離して欲しければ食料と武器を置いていきな!」

 

この要求にアリシアは呑んだふりをし、M4A1を首に掛け、手を挙げながら暴徒に近付く。

もちろん孝とコータにはそのアリシアの作戦が分かっていた。

 

「要求を呑むわ。その娘は私の妹だもの」

 

「英語で何を言ってんのが分かんねぇが、妹らしいな。よし、俺も前に立て」

 

ルリを抑え込んでいた大柄の警官にアリシアは近付き、前に立って睨み付ける。

 

「この姉にしてこの妹有りだな。ホレ!」

 

空いている手で鼻を穿っていた警官は、鼻糞をアリシアの頬に付けた。

 

「おっと、済まねぇ、その綺麗な顔の表情にむかついて鼻糞付けちまった。ギャハハハハ!」

 

下品な笑い方をする警官に怒り心頭のアリシア、次にあさみは「何故このような行動をするのか?」と無法者と化した警官達に聞いた。

 

「な、何故そのような事を平気で出来るのですか・・・?貴方達は警察官なのでは・・・?」

 

孝と同じ事を聞いたあさみにキレたルリを抑え込んでいた大柄の“警官”は、彼女に向かって怒鳴り散らす。

 

「うるせぇ!同じ事言わせんな、スカッとするからやってんだよ!ボケがァ!!まずはテメェから犯すぞ、このアマ!!」

 

ドスの効いた声で怒鳴られた為にあさみは尻餅を着いて絶望した。

それを田丸が支え、怒りの声を上げる。

 

「それでも警官か!?お前等は!!」

 

「黙れ!このハゲッ!」

 

拳銃を構えていた“警官”の視線が田丸に向いた。

このチャンスを逃しはしないとアリシアはM4A1を握り、ストックで大柄の男を殴る。

 

「フベェッ!?」

 

鼻を穿っていた指が鼻にめり込んだ為に、左腕が使えなくなる。

右腕からルリの拘束が解かれ、自由になった彼女が大柄の男を、拾い上げたスターリングMk7で蜂の巣にする。

 

「こ、この餓鬼ィ!死ねぇ!」

 

拳銃の撃鉄を引こうとした男にアリシアはM4A1の安全装置を素早く解除し、短発で発砲した。

銃口から飛ばされた5.56㎜NATO弾は男が握る拳銃の撃鉄を破壊し、そのまま右手の指を一つ奪った。

 

「グワァァァ!!指がァ!?」

 

トドメにルリがスコップで首と胴体を切断した。

頭部が無くなった男の死体は地面に倒れる。

これを見ていた一同は、ただ唖然するばかりであった。




次は病院へ・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

病院内は・・・不気味

グロ中尉かな・・・?


無惨な死体となった二体“元”警官、それをやったのはルリとアリシアだ。

返り血を浴びたルリが唖然している孝、コータ、あさみ、田丸の四人に近付き、病院を指差す。

 

「奴らは一体も出てない?」

 

この質問に我に返ったコータは、直ぐに出てないと答えた。

アリシアは警官の死体を孝と田丸と共に、奴らが来そうにも無い場所に捨て、病院内に入ろうとしたが、田丸が先程ルリが発砲したことを疑問に思い、コータに話し掛ける。

 

「なぁ兄ちゃん。先程あの嬢ちゃんが派手にマシンガンをぶっ放したが、大丈夫なのか?」

 

「多分、あの短機関銃は銃声が小さいですから大丈夫かと」

 

「そう願うさ」

 

孝が最後に言った後、彼等は病院内に入った。

 

「うわっ、暗いな・・・まるでホラー映画の病院じゃないか・・・」

 

病院内の暗さに驚くコータ、孝は腰を下ろしてバックから救援用発煙筒フレアーを取り出し、信管を切って火を灯す。

 

「これはこういう時の為の物かな?」

 

「そう言えばザ・ロックのシーンで使ってたね」

 

フレアーを見たコータがそう呟いた後、孝はフレアーを中央に向かって投げ、周囲を照らす。

床には、所々血痕が残っており、ここでおぞましい惨劇が起こったと分かる。

手から千切れた指も何本か落ちており、内臓や腕と脚まで転がっていた。

これを見たあさみは床に吐いてしまう。

 

「だ、大丈夫!?」

 

アリシアがあさみの背中をさすりながら心配する。

 

「だ、大丈夫です・・・本官、このような死体は見たことはありません・・・」

 

「俺も始めて見るが、その婦警さんと同じくゲロをしちまいそうだぜ」

 

辺り一面に転がる人間のパーツをマジマジと見て、口を抑えながら田丸は言う。

暫しして玄関と受付を調べた後、彼等は二手に分かれることにした。

 

「この病院もそれなりに大きいから・・・二手に分かれましょう」

 

「そ、そうでありますか・・・どっちに行きましょう・・・」

 

周囲を見ながらあさみは悩み、決断が出来たのか、ルリが居るチームについていくを決める。

 

「本官は小室君と平野君の方へとついていきます!」

 

「じゃあ、私はルリちゃんと一緒に行くわ」

 

「そうですか。見取り図を見れば、分かると思うので」

 

アリシアがルリと二人で行くと言ったので、孝はコータ、あさみ、田丸の四人で行くことになる。

 

「目印を立てて起きましょう。血漿を入手したか、一時間したらここで落ち合いましょう」

 

孝が目印であるケミカルライトを置いた後、二手に分かれた孝達。

通路には医療器具が散乱し、壁には多くの血痕が残されている。

二人は臆することもなく通路を進んだ。

途中にある部屋という部屋を調べ、血漿が無いか調べ回す。

 

「バリケードが敷かれてるみたいだけど、ルリちゃんは入れる?」

 

板で塞がれた部屋を見つけたアリシアは、自分より小柄なルリに、部屋の様子を調べさせようとする。

 

「うん、この穴なら僕なら入れるよ。持ってて」

 

それに対し、ルリはバックパックをアリシアに預け、スターリングMk7を構えながら部屋に何か無いか調べ回る。

異臭がするので、気になって元を調べたら、ロッカーに辿り着いた。

部屋の出入り口を塞いでいるバリケードを排除した後、アリシアを部屋に入れ、ロッカーの中を確認しようとした。

 

「この臭い・・・何があるのかしら・・・?」

 

バールを取り出した後、アリシアはロッカーを強引に開ける。

ドアが開いた瞬間、滅多刺しにされた男の看護士の死体が出てきた。

死体の腐敗が少し進んでおり、目を見たら既に奴らに成った後で、また殺された後だ。

 

「ここにも歩く死体が・・・」

 

死体をそのまま放置して、この部屋に血漿がないと分かると、次の部屋に移動した。

 

「無いわね・・・次に行きましょう。あれ、なにやってるの?」

 

目当ての物が無いと分かると、部屋を出て行こうとしたが、ルリがピルを大量にバックパックに入れていた。

 

「それ、入れてるけど・・・なに?」

 

「なにって、避妊の薬だよ。男の人が多いから、もしもの時の為に妊娠は避けないと。アリシアさんの世界には無いの?」

 

妊娠という言葉にアリシアは少し顔を赤らめ、次の部屋に向かった。

何かにぶつかっている音が聞こえ、アリシアはルリを後ろに立たせ、部屋を覗く。

 

「この音・・・歩く死者よ・・・!」

 

壁にずっとぶつかっている奴らを見つけたアリシアは、バールで奴らを排除しようと考える。

後ろから足音を立てずに近付き、バールを頭に向けて振り下ろした。

ぶつけた時の金属音が鳴った後、奴らは床に倒れ、動かなくなった。

倒したとルリに知らせ、部屋内を調べてみたが、全く見付からず、直ぐに別の部屋に向かう。

暫く探したが、血漿が未だ見付からず、ただ疲れるだけであった。

 

「全く見付からないわね・・・」

 

写真を見ながらアリシアは呟く、ルリも疲れた表情をしている。

 

『うぅ・・・』

 

「声!?」

 

女性の声が近くで聞こえたので、二人ともその場所へと向かう。

向かった先には、MP5A5を持ったワルキューレの軽歩兵三人ほど居た。

様子もおかしく、身体には噛み傷があり、ずっと下を俯いている。

 

「様子がおかしい・・・」

 

「これ使ってみる?」

 

様子を覗うアリシアに、ルリは空き缶を渡した。

それを受け取ったアリシアは、壁の隅に向けて投げ込む。

 

「うぅ・・・?」

 

三人揃って空き缶が落ちた方向へと向かっていった。

二人は直ぐにその場を通過しようとしたが、ルリが転んでしまった為、気付かれてしまう。

 

「シ、ネ・・・!」

 

気付いた軽歩兵はMP5を構え、引き金を引いて発砲してきた。

彼女等の目は死人その物で、顔も青白かった。

直ぐに遮蔽物になる壁に隠れて反撃する。

 

「撃ってきた!?」

 

アリシアはM4A1を単発で撃ちながら叫ぶ。

短機関銃を持つルリは、身体に向かって撃ち込むが、大した効果も無く、再びこちらに向けて撃ってくる。

 

「死なない!?もしかしてもう死んでる!?」

 

死なない軽歩兵にアリシアは少し慌てたが、頭部に狙って撃つ。

頭部を撃たれた軽歩兵は動かなくなる。

 

「死んだ・・・?頭を狙って!」

 

弱点を聞いたルリは直ぐに頭部を撃って、敵を無効化した。

戦闘終了後に恐る恐る軽歩兵の死体を調べる。

 

「戦う前に死んでる・・・?」

 

死体の臭いを嗅いでルリは、そう判断する。

先程の銃撃戦の所為か、奴らが集まってきた。

直ぐに二人はその場から離れる。

 

ところ変わって別の世界。

ここにはゾンビは一体も居ないが、似たような生物、いわゆる魔物は存在する。

地球に良く似た世界であるが、文明は1940年代に止まっているだろう。

一台のキューベルワーゲンのシャシにセダン・ボディを乗せた車が、悲鳴や断末魔が上がる夜の市街地を通り過ぎる。

その車に乗っているのはスプリットとストアーに運転手を合わせた三名だ。

後部座席に座る身長190㎝台の二人は、外で行われている抵抗勢力や無抵抗の市民の処刑を眺めていた。

怯える市民をシュタールヘルムを被り、ドイツ軍風味のコートを纏った兵士達がkar98b小銃を抱えて並び、将校の合図を待つ。

 

「構え!」

 

合図と同時に兵士達が手に持つ小銃の安全装置を外し、処刑のために集められた市民達に構える。

銃口を向けられている市民達の中には、女性も含まれており、怯えて命乞いをし、叫んだりしている者まで居る。

 

「お、お願いだ!我々は抵抗組織でもテロリストでもない!」

 

「解放して!今回の件で女は関係ないはずよ!」

 

「俺達は関係ないんだぞ!?」

 

必死に「自分達は関係ない」と訴えるが、彼等はそれを一切耳に入れず、将校が「撃て」と叫んだ後、一斉に射撃が行われ、先程叫んでいた市民達が静まり返り、歩道に血を流して息絶えた。

また次の市民達が集められ、再び処刑が行われる。

車内からこの光景を見ていたスプリットは、運転手に問い掛ける。

 

「また市民が処刑されているが、抵抗組織かテロリストが何かやったのか?」

 

「仰る通りです。抵抗組織並びテロリストが兵舎を襲い、元聖帝マリの傘下の将兵13名とその息女であられるこの国の将兵三十七人を殺害。見せしめに市民五百人の処刑を予定しております。そしてテロリストが女性将兵八人を強姦した容疑で、女性百六十人を見せしめとして処刑しております」

 

処刑される市民達に同情の意志がない運転手の返答に、スプリットとストアーは驚く。

 

「おい、前から人が飛び出してきたぞ!」

 

目の前に逃げてきた市民をストアーが注意したが、運転手はそのまま轢いた。

 

「こら!人を跳ねるのではない!」

 

「奴が目の前に逃げたから悪いのです」

 

スプリットが注意するが、運転手は冷たい返答に苛立つ。

轢かれた市民は、追ってきた兵士に殺害された。

そして二人を乗せた車は宮殿に到着、スプリットとストアーは後部座席から降り、門を通って宮殿内へと足を運ぶ。




追加してきました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死を決めつけられた男

中村「はっ?あのデブが学黙の連載を再開するだって?おいおい、冗談は止せよ。どうせ数ヶ月先だろ」

何処かで良くボコられる中村君が、佐藤二佐殿の学園黙示録連載再開を聞いてこう思ってるに違いない。
あの宮殿の続きからです。


斧槍を持ち、コートを羽織った女性衛兵が警備する宮殿内に入ったスプリットとストアー、白髪が目立つ老人の執事が彼等を出迎える。

 

「報告にあったスプリット様とストアー様ですな」

 

「以下にも」

 

二人が本人と分かると、老執事は報告書に目に通して再度確認し、その後口を動かす。

 

「ただいまこの屋敷の主であるマリ・ヴァセレート様は、来訪者と共に我が国の総統閣下と夕食中でございます。それと着替えをお願い致します」

 

メイドが礼服を持ってきた後、二人はそれを受け取り、着替え室まで案内される。

その頃宮殿の外では、爆薬を抱えた平服を着たテロリストが巡回していた装甲車に突っ込み、自爆した。

 

「テロリストの攻撃だーッ!!」

 

巡回していたkar98bを構えながら兵士は存在を知らせる為に叫んだが、マンホールから飛び出してきた抵抗組織の小銃や短機関銃等を装備した構成員達が飛び出し、近くにいた兵士を射殺する。

 

「余所者が!俺達の国から出て行けー!」

 

そう叫びながら構成員達は向かってきた兵士達に向けて銃を撃ち続けた。

近くで戦闘を行っているので、宮殿内に居た者達に銃声が聞こえる。

丁度スプリットとストアーの主は、この国の総統と来訪者と共に夕食を取っている最中であった。

 

「何事だ?」

 

フォークとナイフをテーブルに置いた総統と呼ばれる高貴な礼服を着た老人は、隣に居る白い礼服を着た将官に問いかける。

 

「はっ、ロールデン愛国戦士と名乗るテロ組織とアイスバーンと呼ばれるレジスタンスの共同襲撃です」

 

「また“あの方”の気紛れの所為で禄に食事もとれない・・・直ぐに現地部隊を呼び込み、殲滅させろ。それと構成員の一人生かして捕らえ、アジトの場所を聞き出せ。また襲撃されては適わん」

 

総統の指示を受けた男は、食事室を出て行った。

残ったのはテーブルに付くナチス・ドイツ一般親衛隊黒い制服を着た若い男性が一人と値が張る高価なドレスを着た若い女性二人、年にあったドレスを着た老婆一人に老人である総統一人、青年と同じ特徴的な黒い制服を着た中年の男一人だ。

 

「ここの地区は抵抗組織が多いですね。いっそのこと絨毯爆撃で潰しましょうか」

 

老婆が怖いことを言うが、かなりのルックスを持ち、青年が異議を唱える。

 

「また街を瓦礫の山に帰るのかい?余計に抵抗主義者が増えると思うが・・・」

 

その男に便乗するように総統が口を開く。

 

「彼の言う通りですよ、ミス・マイムグレン。爆撃すれば何名かは消せますが、瓦礫が我々の目を塞ぎ、見つけ出すのが困難になります」

 

「あら?そういうことになるの。歩兵を使って一軒一軒調べるしかないわね」

 

爆音と銃声が宮殿の外から聞こえる中、彼等はどう抵抗組織を片付けるか話し合う。

外から聞こえる銃声に落ち着けない中年の男が、ワインを口に運び、気を紛らわせようとする。

金髪碧眼のかなりのスタイルを持つ美しい童顔のゲルマン系の女性は、気にせず食事を続けていた。

もう一人の童顔で181㎝の長身な金髪でエメラルドグリーンの瞳を持つ先の美女と似た顔立ちの美女は、ルガーP08を取り出し、残弾を確認している。

食事を中止している彼等に取っては、二人の金髪美人の行動が分かった。

 

「まさか奴らを殺すつもりなのかい?衛兵に任せておきなよ」

 

青年は言った後に野菜を口に含み、拳銃を取り出している美女を見る。

 

「ちょっと出て行って直ぐに片付けてくるだけから・・・」

 

エメラルドグリーンの瞳を持つ長身の女は席を立とうとしたが、先に食事を終えた金髪碧眼の美女が立ち上がる。

 

「ユリエ、あれは私にやらせなさい。丁度苛々してたところなの」

 

「へぇ~あんたが殺るの。じゃ、私はワインでも飲みながら気長に待ちますわ」

 

立ち上がったユリエと呼ばれる女は席に座り、ワイン瓶を持ち、コルクを親指だけで開けて瓶ごと飲み始めた。

金髪碧眼の美女が部屋を出ようとした瞬間、老婆が彼女を止める。

 

「マリ、庭の掃除が大変よ」

 

「あ?明日からここを離れるのよ。それにいつ来るか分からないし、それまでに綺麗になってるでしょ?」

 

納得のいく返答したマリと呼ばれるゲルマン美女は、美しい近衛兵に敬礼されながら扉を開け、食事室を出た。

直ぐに玄関を開けて外に出た後、銃声や爆音がする方向へと、ゆっくり歩きながら向かう。

一方戦況は膠着状態であった。

宮殿内に侵入したレジスタンスやテロリストの数が多く、衛兵や警備兵が圧倒されている。

衛兵達の中にはスプリットとストアーの姿もあったが、レジスタンスが持つ軽機関銃で、遮蔽物に釘付けにされている。

そこへマリが歩きながら到着し、気付いた構成員やテロリスト達が銃を彼女に向けて撃ち始める。

 

「死ね!」

 

だが、銃弾はマリを避けるかのようにそれていき、そのまま銃弾は後ろにいた衛兵や警備兵に命中する。

 

「なんだ!?弾が金髪の女を避けてるぞ!」

 

銃を撃ち続ける構成員達は、銃弾が対象を逸れると言うあり得ない現象に恐怖し、手榴弾を投げ込んだが、マリは手榴弾に驚くこともなく、それを持ち上げ、投げた本人に投げ返した。

 

「はっ・・・?アバッ!?」

 

投げた本人は返された手榴弾が爆発し、身体の上部が吹き飛んで無くなり、芝生に倒れた。

これに驚いた構成員はマリを集中砲火するが、銃弾は彼女を避けるばかりだ。

 

「く、来るな!化け物!!」

 

手に持つフランスのMgs38短機関銃をマリに向けて乱射するが、意味はない。

圧倒的な存在であるマリは、右手を拳銃の形にして、機関銃を乱射する男に向けて「バン」と、口にした。

これに対し男は、彼女の奇行に驚き、引き金から指を離す。

 

「な、なんだ・・・?」

 

その男が言葉を口にした後、男の頭部が爆発し、マリに返り血が付着する。

仲間が無惨な死を迎えたのを目撃した構成員達は、再びマリを集中砲火するも効果無し。

指鉄砲で次々とレジスタンスやテロ組織の構成員達を処分していく。

自分達が倒せない敵が出てきた為に攻撃を仕掛けた抵抗組織の構成員達は、我先へと宮殿の廷内から逃げだそうとするが、残った衛兵や警備兵、増援に殺されていき、何名かが活動拠点散策の証人の為に、生かして捕らわれる。

“害虫駆除”を終えたマリは、そのまま宮殿内に入ろうとしたが、スプリットとストアーが目の前で跪き、彼女の行く手を遮っている。

 

「なに、あんた等?」

 

マリは、二人をまるでゴミを見る目で睨み付ける。

 

「我が名はスプリットであります、報告の為にこちらへ伺った所存!」

 

「同じく、このストアーも報告の為、こちらに来訪しました!」

 

スプリットとストアーは、名乗った後、報告を始める。

 

「誠に申し訳ありませんが・・・」

 

「ルリ様を保護できませんでした・・・このストアー、一生の不覚!」

 

頭を下げながら伝えるスプリットに、ストアーが付け足し、さらに彼が続ける。

 

「しかし、ルリ様からマリ様へ伝言があります!『用事を済ませてから貴女の元へ戻る』と・・・」

 

報告したストアーは、息を呑み、スプリットが頭を上げてマリの表情を確認してみれば、乙女のように随分納得している表情だった。

この表情に安心した二人は立ち上がり、その場を去ろうとしたが、彼女が発した言葉に怒りを覚える。

 

「へぇ~そうなの。用事を済ませてから帰るの・・・あ~ぁ、八つ当たりでこいつ等の家族殺しちゃった」

 

「「なん・・・だと・・・!?」」

 

まず、一差し指を顎に付けて悩む金髪美女に襲い掛かったのは、スプリットであった。

自分の家族を単なる八つ当たりの為に殺された男の怒りは凄まじい。

 

「やはり約束は守るつもりもなく、私の家族をそんなことの為に殺したなど!断じて許さん!!」

 

己の怒りと全身全霊の技をマリにぶつけたが、軽々しく指一本で止められる。

 

「ば、馬鹿な!あれはスプリットの最強の技であるはず!何故あの女は止められるのだ!?」

 

友の最強の技が、何の変哲もない一際美しいだけの弱い女性に簡単に止められた事をストアーは驚きを隠せない。

 

「指一本で私の技を防いだだと・・・!?」

 

「私は言ったよね?必ず連れ戻してこいって。それを実行できないなんて・・・あんたもう用済みだわ・・・死ね・・・!」

 

マリはスプリットに告げた後、そのまま腕に触れている指先から謎のエネルギーを放ち、殺しに来た男の身体を爆発させた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「す、スプリットぉぉぉぉぉ!!!」

 

友の死に絶望するストアーは、こちらを振り向いたマリに拳を構え、凄まじい殺気を放ちながら近付いてくる金髪の美女に警戒する。

 

「ねぇ、そこのゴミ。楽に殺してあげるからそこでじっとしてなさいよ。大丈夫、直ぐに終わるから」

 

口を動かし、狂気染みた笑みを浮かべながら近付いてくるマリに、一か八かの勝負を挑むストアー。

常人の目では捉えられない速度でマリの左手を奪う。

 

「あら?私としたことが・・・」

 

彼女の左手をポケットに入れて、捕らえに来た兵士を数名殺害してから、宮殿から脱出する。

数秒後には、マリの左手は完全に修復し、ストアーが逃げ去った方を眺める。

 

「まぁ、どうでも良いや。どうせ誰かが勝手に殺すし」

 

気にすることもなくマリは宮殿内に戻っていった。

 

その頃病院内で二手に分かれた孝達は目当ての血漿を発見し、病院から抜け出そうとしたが、銃声と大きな物音が聞こえた為、逃げ道を奴らに封じられた。

 

「玄関口が封じられたぞ!どうする兄ちゃん?!」

 

「どうするって、別の出口を探すしかないでしょ!?」

 

玄関に殺到している奴らを見た田丸は、孝にどうするかを聞き、それを聞いた彼は直ぐにその場から三人を連れて玄関から離れる。

一方のアリシアとルリは、消音器を外したM4A1カービンとスターリングMk7を乱射しながら、強行突破で孝達の元へと向かう。

 

「M4の銃声!アリシアさん達だ!」

 

アメリカ在住経験があるコータは直ぐにアリシアとルリの存在を銃声で関知し、向かってきた奴らを撃ちながら出迎える。

 

「先程の銃声は!?」

 

「ゴメン。銃を使える歩く死者が居たから撃っちゃった!」

 

「マジかよ・・・」

 

銃を使える歩く死者と聞いた田丸は、息を呑む。

 

「これ・・・反動がきつい・・・!」

 

あさみは退路を塞ぐように現れた奴らを、慣れない手付きで奴らの頭に狙いを定めてグロック17の引き金(トリガー)を引きながら撃つ。

 

「こいつの出番だな!短機関銃と勘違いされるが、立派な自動拳銃なんだぜ!」

 

ここぞと出番ばかりに田丸は、イントラテックTEC(DC)-9Mモデルを取り出し、向かってくる奴らに向けて撃つ。

まれに頭に命中して倒れる奴らも居るが、他は足に当たって倒れたり、胴体に当たって余り効果がない。

脱出の道が開けたら、直ぐに孝達はそこへ向かう。

外からは、目と肌には生気が無く、全身血塗れの軽歩兵や戦車兵、パイロットのワルキューレの兵士達が病院内に入ってくる。

 

「う~ぅ・・・」

 

涙を浮かべるかのように目から血を流しながら来る戦乙女達、そんな彼女達は孝達に向かって手に持つ銃を撃ってきた。

 

「うわっ!?銃を持った敵が居る!」

 

コータはUMP45を、銃を撃ってくる集団に向けたが、その正体がまだ息がありそうな女性であった為に、少し躊躇う。

 

「橋を封鎖してた部隊と同じ戦闘服?だが、敵であることには変わりはない!」

 

躊躇いを捨て、生ける屍と同じような銃を撃ってくる者の頭に向けて単発で撃ち、無力化した。

孝も足に向けてイサカM37散弾銃を胸の辺りに向けて発泡、頭部に飛び散った鉄球が当たり、床に倒れる。

 

「こっちよ!早く!」

 

病院内から脱出できた孝達、「後は来た道を戻るだけ」と思った瞬間、先の兵士達と同じようなワルキューレの身体の一部が無い者、全身丸焦げの戦車兵やパイロット達が、彼等に護身用の拳銃を撃ちながら襲い掛かる。

その中には年端もいかない少女まで混じっていた。

 

「また銃を使う奴らかよ!?」

 

孝は既に死体な戦乙女達に散弾銃を撃ち、突破口を開き、その中を突っ切る。

後に続く者達は、それぞれ手に持つ銃を撃ちながら先行く孝の後へと続く。

グロック17を撃ち続けていたあさみは、引き金を引いても弾が出ないことを不審に思い、弾倉を引き抜いて確認すれば、弾倉内の9㎜パラベラム弾が切れた事に気付いた。

 

「弾倉を入れ替えないと・・・!」

 

手を振るわせ、走りながら弾丸が満載の新しい弾倉を取り出そうとした瞬間、ポケットに入れていた弾倉を全て地面に落としてしまった。

 

「ひ、拾わないと!」

 

「駄目だ、あさみさん!」

 

奴らや死人な戦乙女達が、追いかけて来ているにも関わらず、あさみは立ち止まって、弾倉を拾い始めた。

それをコータが止めようとするが、弾倉を拾うのに気を取られている彼女には聞こえていない。

 

「早く、早く拾わないと・・・!」

 

素早く弾倉を拾い上げていくあさみ、そんな彼女を孝達は掩護射撃をするのだが、別の方向から死人の戦乙女達が現れ、田丸に任せ、孝達はそちらの対処に回る。

奇跡的に全て拾い終えた彼女は立ち上がって、孝達に追いつこうとしたが、強力な腕力に引っ張られ、コンクリート製の道路に叩き付けられる。

 

「痛っ・・・!・・・っ!?」

 

痛がる彼女の目の前には、目と鼻と口から血を流している飛行帽を被った愛らしい顔の美少女が居た。

美少女の腹には割れたキャノピーのガラスの破片が無数に刺さっており、腕や脚にもガラスの破片が刺さっている。

 

「あっ!?こんな肝心な時に!」

 

あさみに近付く奴らや死人な戦乙女をTEC-9で撃ち続けていた田丸だが、彼女が襲われているピンチな時に持っている自動拳銃が弾切れを起こした。

再装填をしている暇はないと判断した田丸は、改造さすまたを持って美少女に向かう。

両腕で強く掴み、あさみを動けなくした少女は、愛らしい口を大きく開け、首に食らいつこうとしたが、田丸の改造さすまたで吹き飛ばされる。

直ぐに田丸はあさみの自動拳銃を取って空の弾倉を外し、新しい弾倉を装填。

再びこちらに向かってきた血塗れな美少女の頭に撃ち、無力化する。

 

「大丈夫かい、婦警さん」

 

「あっ、申し訳ございません!本来市民を守るはずの警察官がこんな失態を・・・!」

 

手を伸ばした田丸に、あさみは飛び上がり、こんな時にも関わらず田丸に頭を下げて謝っている。

孝は信号弾を持つアリシアに、モールに居るマイヤー達に助けを呼ぶ為、信号弾を撃つよう指示した。

 

「アリシアさん、信号弾を!」

 

「えぇ!分かったわ!」

 

アリシアは信号弾の入ったワルサーカンプピストルを取り出し、空に向けて撃とうとしたが、信号銃を持つ右手首に穴が開き、カンプピストルを落とす。

 

「キャッ・・・!」

 

「ッ!何処から!?」

 

コータはこれを狙撃と判断し、周囲を見渡すが、見つからない。

道路に落ちたカンプピストルを取ろうとしたアリシアだが、再び狙撃が行われ、カンプピストルに命中し装填されていた信号弾が爆発、モールからの望みは絶たれた。

 

「ウワァァァァァァ!!」

 

唖然していたあさみの後ろから、まだ成人していない全身血塗れの戦車兵やパイロットを合わせた四人が襲い掛かった。

これに気付いた田丸は直ぐにあさみを孝達の方へ突き飛ばし、彼女の変わりに噛まれた。

 

「グワァァァァァ!!いてぇ・・・!」

 

一気に四人に噛まれ、激しい激痛が体中を駆け回る。

田丸に取り付いた血塗れの戦乙女を振り解こうと、銃を向ける孝達だが、外れれば田丸に銃弾が当たってしまう。

ルリがスコップを取り出して、田丸に食らい付いていた少女の戦車兵やパイロット達を引き剥がす。

 

「あ、ありがとう・・・嬢ちゃん・・・」

 

「早くここから離れましょう!平野、手伝ってくれ!」

 

重傷を負った田丸を孝とコータが担ぎながらモールの方向へと向かう。

残りのあさみと速攻で右手を応急処置したアリシア、ルリは重傷者を担ぐ二人の護衛を務めた。

暫く歩いて担がれていた田丸が、物置小屋で「降ろしてくれ」と言ったので、彼を物置小屋に降ろした。

火力が一番高いライフルを持つアリシアと連射力に高いサブマシンガンを持つルリが、ドアの前で奴らと新たな敵を警戒する。

 

「あ、ありがとう・・・それと爆弾があったらくれねぇか・・・?」

 

言われた通り、梱包爆弾を持っていたコータが鞄からそれを取り出す。

直ぐにコータは田丸に梱包爆弾を何に使うか問う。

 

「一体何に使うつもりなんですか?」

 

「何って・・・自爆に使うに決まってるだろ・・・ゴフッ!」

 

答えた後に血反吐を吐いた田丸、このような状況であさみは、頭を抱えて軽い恐慌状態になる。

孝は奴らに噛まれた人間がどうなるか嫌になるほど分かっていた。

例え奴らでは無くても、あれは学園で最初に見た肌に生気がある奴らと似た“物”であり、田丸がこの先どうなるかは、既に分かっている。

もちろんその話を聞いているコータですら分かっており、田丸が奴らになる前にこの場で殺そうと考えていた。

 

「おい・・・早くしろ・・・ガハッ!俺が・・・奴らに成る前に・・・!」

 

血を吐きながらも田丸は力を振り絞って、コータの梱包爆弾に手を伸ばした。

それを見ていたあさみは小声で何度も何度も田丸に謝る。

奴らの存在を確認したアリシアは直ぐに孝達に知らせた。

 

「奴らが来たわ!数は私とルリちゃんだけでは持ちそうもないかも!」

 

「良いから早くしろ・・・!俺は、ゴハッ!奴らには成りたくない・・・!」

 

アリシアの知らせと血反吐を吐きながら梱包爆弾を要求する田丸に、コータはどうするか戸惑い始める。

そして梱包爆弾に信管を刺して田丸に渡した。

 

「す、直ぐに渡さないなんて・・・素直じゃないな・・・でも、ありがとよ・・・生き残って俺の分まで生き残れよ・・・」

 

笑みを浮かべながら田丸に、孝達は直ぐに物置小屋を離れた。

彼等が行った後、田丸は信管に火を付けて、奴らを引き付ける為、鈴を鳴らす。

音で引き寄せられた奴らは、田丸が居る小屋へと吸い込まれるように向かう。

彼が小屋に入ってきた奴らに対して笑みを浮かべた頃には、孝達はモールの後少しの距離まで到達している頃だった。

そして数秒後には梱包爆弾が爆発、小屋の中にいた田丸は複数の奴らと共に自爆した。

その破壊力は、小屋を木っ端微塵にする程の破壊力であった。




書き溜めていた物を投稿しました。
アニメ第二期の製作発表されると良いね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな転移者と新たな問題。

ようやくルビの振り方を覚えて全話改変。

今回は未来戦記組が参戦します。後、レーザー兵器とかチート過ぎね?自分が言うのは何だけど。


孝達は血漿を手に入れた物の、田原が血塗れの戦乙女に襲われたあさみを庇って犠牲となってしまう。

自分の不甲斐なさで彼を死なせてしまったあさみは深い心の傷を負った。

そして何とかモールに辿り着くが、そんな彼等を出迎えたのは、マイヤーやパイパー、スコルツェニー、リヒターの第二次大戦時のドイツの英雄達だった。

無論、周囲にバリケードなど無い、彼等は奴らに襲われる覚悟でここで孝達の帰りを待っていた。

 

「お帰り、血漿は手に入れたのか?」

 

まず口を開いたのはパイパー、孝の目の前に立つ。

これに対し孝は、頷いてから、手に入れた血漿を背中に掛けていた背嚢から取り出し、彼に渡す。

 

「これです。田丸さんの犠牲を無駄にしないために急がないと!」

 

「まずはそうしなければな。マイヤーにリヒター、反省点はそれで良いですね」

 

「そうだな。さて、老い先短い老婆を助けることにしよう」

 

パイパーに聞かれたマイヤーとリヒターは頷き、モール内へ戻る。

スコルツェニーは双眼鏡を取り出し、周囲を警戒した後、孝達を早くモールへ入るように急かした。

 

「急げ!いつ何処から歩く死人が襲ってくるか分からんぞ!」

 

その頃、また新たな転移者(イレギュラー)達が転移していた。

公道の片隅で身長190㎝程の大男が倒れ込んでいる。

 

「ここは・・・確か俺は・・・そうだ、霧に呑まれて・・・」

 

大男は周囲を見渡した。

その光景は大男にとっては驚きの物ばかりであった。

 

「どうなっている・・・!?外の環境は最悪のハズだが・・・」

 

起き上がり、再び周囲を見てから頬を抓るが、夢でないことに気付く。

 

「どうやら夢ではないらしい・・・外出着も必要なさそうだ・・・」

 

男は自分の服装に装備を確認した後、公道に足を踏み入れる。

 

「核戦争前にタイムスリップしたか?だが、前に見た世界とは少し地形も建造物が違う」

 

一人口を開きながら、男は道に沿って歩みを始めた。

周辺からは銃声が彼の耳に入ってくるので、そちらの方向へと進む。

 

「向こうから銃声・・・なんの騒ぎだ?」

 

何の武器を持たずに彼はその方向へと進んでいく。

そんなこの世界の現状を知らないイレギュラーな男に、暴徒や道を外れた警官達が、彼を囲む。

 

「おいそこのでけぇ外国人、死にたくなければ食料を置いて行きな!」

 

「言葉は分からん。しかし、生憎だが、何も持ち合わせてはいない」

 

棍棒や包丁、二連散弾銃を向けた暴徒達に対し、男は英語で答えた。

 

「この野郎・・・言葉が通じねぇみたいだな?構わねぇ!()っちまえ!!」

 

「「「「「「応!」」」」」」

 

一斉に棍棒や包丁で襲い掛かった暴徒達であったが、この男は軍隊格闘術を学んでいたらしく、あっさりと返り討ちにされてしまう。

 

「なっ!?こいつめぇ!穴だらけにしてやるぜェ!死ねぇ!!」

 

散弾銃を持つ暴徒は引き金に指を掛けて引こうとしたが、他の暴徒が持っていた包丁を、彼が拾い上げ、散弾銃を持つ暴徒に投げた。

真っ直ぐ飛んだ包丁は散弾銃を持つ男の額に刺さり、引き金を引く前に、道路に倒れ込んだ。

まだ息のある道を外した警官が、彼の名前を問う。

 

「うぅ・・・あんた、一体誰なんだ・・・?」

 

彼は散弾銃を持ち上げ、包丁が刺さった暴徒から予備の弾薬を探りながら答える。

 

「俺か?俺はゲイツ、ゲイツ・アーノルド・シュワルツだ。パンツァーゲイツとも呼ばれていた」

 

ゲイツの名前を聞いた警官は気絶した。

そして武器と装備を手に入れたゲイツは、銃声が聞こえてくる方向へと、再び歩み始めた。

もちろんゲイツだけではない、他の転移者は別の場所に居た。

床主の何処かにある小屋で転移者である“彼女”が目覚める。

 

「ここは・・・?」

 

彼女は目覚め、周囲を見渡す。

そして起き上がり、壁を探って何かを探すが、見付からなかったらしく、諦めた。

 

「通信機器が付いてないとすると、ここは船内じゃなくて、地球の小屋のようね。装備一式はあの机に置かれているようだけど」

 

壁に手を付けながら彼女は、机に置かれているサバイバル装備を見ながら言う。

机の上に置かれているのは大きめのリュックサック一つ、PMマカロフ自動拳銃一丁に予備弾倉四本、レーション六パック、飲料水三本、サバイバルナイフ一本、ライターにコンパス一つに地図が一枚。

 

「まるで誰かが来る事を予想して準備してたみたいね。有り難く貰っておきますか」

 

リュックサックにサバイバル装備一式を入れた後、マカロフを握り、頭に緑色のバンダナを巻いて外に出た。

彼女の前に広がる光景は、ゲイツが見たとおりである。

 

「看板を見るからして、ここは日本ね。内戦でもやってるのかしら?」

 

銃声に耳を澄ませながら、彼女は拳銃を構えながら聞こえる方へ進む。

そして目の前に奴ら(ゾンビ)が現れたが、もちろん彼女はこの世界の現状は知らない。

うっかり声を掛けてしまい、奴らに気付かれた。

 

「すみません、アメリカ軍の基地は何処に?」

 

存在に気付いた奴らは、彼女を仲間に入れようとしたが、通りを歩いていた簡素な戦闘服を纏ったワルキューレの軽歩兵が持つ、フランス製ブルパップライフルGIAT FAMASで頭部を撃たれて、死体に戻された。

周りにいた奴らも、駆け付けてきた軽歩兵達に片付けられる。

突然の出来事に彼女は、その軽歩兵達を叱り付けようと近付く。

 

「貴方達!民間人を撃つなんて正気なの!?それと何処の所属よ!」

 

両手を腰に付けて叱る彼女、何処からともなくやって来た謎の女性に、基礎訓練しか受けてない素人な戦乙女達は悩む。

 

「ねぇ、聞いてるの?あっ、そうだわ。私はハイト、アメリカ海兵隊の少尉だわ。そこの長距離無線機を持っている娘、アメリカに連絡して」

 

思い出した彼女ことハイトは、民間人(奴ら)を射殺した長距離無線機を背負った戦乙女に対して指図する。

少し悩んだ彼女達は、手に持つ銃をハイトに向けた。

 

「何のつもり?」

 

この場にいる全員に銃を向けられたハイトは、マカロフを引き抜こうとするが、分が悪いと弁え、逃げ場所を目で探す。

素人な戦乙女達が鳴らした銃声を、聞き付けた奴らが聞き付けて集まってきた。

彼女は一か八かの掛けに掛けて、近くに居たFAMAS持ちの軽歩兵に体当たりを掛け、転倒させてから額にマカロフ拳銃を突き付け、息の根を止める。

前にいた世界で持っていたライフルが、FAMASに似ていた為、ハイトはこれを奪い、周囲で固まっていた戦乙女達に対してフルオートで撃ち込む。

何名かが5.56㎜弾を浴びて地面に倒れ込む中、直ぐに反撃しようとAKの外見と筒型の弾倉が特徴なPP-19ビゾン短機関銃を撃ってきた。

周りから集まってきた奴らに気を取られていた軽歩兵達も、先にハイトを片付けようと銃を向けて発砲してくる。

数十分後には敵軽歩兵は全滅、残るは奴らのみとなったが、どう見ても致死量に値する外見なので、ハイトは頭部に狙いを定めて発砲した。

 

「やはり弱点は頭、これなら・・・!」

 

この場にいた奴らを全滅させたハイトは、死んだ軽歩兵達から装備を出来るだけ奪って、その場を移動する。

ハイトのサバイバル生活が今に始まった。

最後の転移者達は四人だ。

 

「う~ん、ここは何処だい?」

 

「冥府だよ、まっくらだ」

 

未来的歩兵装備をした兵士四名が、芝生の上で目覚める。

 

「いや、よく目を開いてみろ」

 

分隊長らしき男が言って、全員が目を見開いて周りを見た。

そこはゲイツとハイトが見た光景と同じであった。

 

「直ぐにホログラムマップを見てみよう」

 

バックパックから取り出したホログラムマップを置き、開いて現時点を把握する。

 

「なになに、ここは21世紀で、ニッポンだって!?」

 

「ホントか!?STG(軍曹)

 

STGと呼ばれる男は、現時点と自分達が居る場所を把握し、細かい顎髭を生やした男がホログラムマップを見ながら言う。

黒人の男が頭を抱えて叫ぶ。

 

「おいおい!1世紀進んだだけかよ!まだ身体に悪い時期だよ」

 

「そう喚くな、これでも少しは環境に配慮されてる時期なんだぜ」

 

顎髭の男はそう黒人に告げた。

 

「なぁ、STG。もう少し詳しい情報は?」

 

「いや、21世紀としか分からない。詳しい情報は一切無いな。もしかしたら・・・別の世界かもしれない・・・」

 

このSTGの言葉に全員が驚愕する。

 

「二度目か・・・さて、何処へ向かう?STG」

 

「向こう側から銃声がするだろう?そっちへ行こう」

 

STGは他の三名を引き入れて、銃声がする方へと向かった。

道路に出ると、そこらに居る奴らを掃討中なワルキューレの機甲部隊に遭遇した。

 

「お、美人の兵隊さんの集まりだ。それにしても型が古いな・・・」

 

後部にWWⅡ時の英陸軍歩兵装備を乗せたM5A1スチュアート軽戦車五両が、四人の未来的装備の兵士の為に停止する。

先頭車両の戦車長がキューポラから飛び出して、STG達を見る。

 

「なにあいつ等、どっかの愛好家団体?」

 

後部に乗っている旧式装備の軽歩兵達、リーエンフィールドNo4小銃を構えている。

先に彼女等の行く手を阻んだSTGは、声を掛ける。

 

「聞かぬは恥だ。おーい、お嬢さん達!」

 

自分達が分かる言葉で話してきた為、混乱する。

 

「私達が分かる言葉で話してきました!」

 

「ますます危険ね、発砲開始!」

 

M5軽戦車の前方機銃M1919から、STG達に向けて掃射される。

 

「うぉっ!?」

 

「へっ、聞かない?」

 

彼等が纏う防弾チョッキに、戦車長は驚きを隠せない。

STG達は反撃に出て、手に装備された小火器で、M5軽戦車の砲身がやられる。

 

「全員、こいつ等は敵だぞ!」

 

そのまま交戦状態に至る。

戦闘不能に成ったM5軽戦車は、そのまま後退しようとしたが、逃がされるハズもなく、履帯を撃破され、行動不能となる。

乗員は全員脱出し、後続のM5が主砲をSTG達に向けたが、撃つ前に撃破される。

残りのM5軽戦車は37㎜対戦車砲を撃ち込んでくるが、中々当たらず、次々と撃破されていく。

最後に残った戦乙女達は、一目散にその場から逃げ出した。

 

「ちょっと派手にやりすぎたかな?」

 

「STG、民間人の集団がやって来るぞ!」

 

もちろん向かってくるのは奴らである。

彼等は未だこの世界の現状を知らない上、今何が起こっているのか分からないのだ。

 

「なんだこいつ等!体温が全くないぞ!?」

 

「ゴーグルに故障があるんじゃないか?」

 

奴らを発見した男は「違う」と顎髭の男に告げる。

 

「どう見ても普通の人間じゃないな。構えておけ」

 

STGが告げると、全員が武器を構えて警戒した。

そして奴らがSTGが出した左腕に噛み付こうとした瞬間、隊員達が持つレーザーが放たれる。

レーザーを食らった奴らは上半身が吹き飛ぶ。

残りの奴らは僅か三分で全滅、STG達は直ぐにその場を後にする。

 

「STG!アレは何だ!?」

 

「分からん、どうやら何かの生物兵器らしい!」

 

「そんな、そんなの条約違反だよ!」

 

彼等は走りながら、バウアー達が居る方向へと向かっていった。

一方、反省点を洗い出していた孝達。

病院で血漿を取りに行った一人であるあさみは、屋上でずっと病院を眺めていた。

 

「(私が不甲斐ないばかりに市民の一人である田丸さんを・・・)」

 

血漿は間に合った物の、あさみの心には大きな穴が開いたままだ。

彼女の他に、屋上には見張りとして立っている者が居るが、彼女の相談など無視するだろう。

そんなずっと悩んでいるあさみにさらなる悲劇が襲った。

 

「敷地内に死人が入ったぞ!伝令、報告に行け!」

 

了解(ヤヴォール)!」

 

士官帽からアホ毛が飛び出している少女バウアーは、直ぐにモール内に居る者達に知らせに行った。

それが気になったあさみは、バウアーが置いていった双眼鏡を持って、大日本帝国陸軍歩兵の野戦福を纏った見張りが監視している奴らを見た。

その奴らの服装は日本警察の婦警であり、あさみが良く知る人物でもあった。

 

「ま、松島先輩・・・?」

 

自分やマイヤー達に避難民を託して、応援に向かった先輩の成れの果てを見たあさみは、驚きを隠せない。

そして凄まじい後悔があさみを襲い、思考が混乱する。

 

「私の所為だ、私の所為だ、私の所為だ!」

 

頭を抱えて混乱するあさみを見張りは見ていたが、無視して手に持つ三八式歩兵銃を、敷地内に入った奴らに構えた。

帰ってきたバウアーが、息を切らしながら、見張りに告げる。

 

「発砲して良いらしいです!」

 

「そうかい、嬢ちゃん」

 

見張りはバウアーの報告を聞いた後、安全装置を外して、サイトに取り付けられた狙撃スコープを覗き、応援に向かった先輩の成れの果ての頭部を撃った。

銃声の後にあさみはパニックを起こし、バウアーを突き飛ばして、モール内へと駆け込んだ。

 

「きゃっ!」

 

突き飛ばされたバウアーは、パニックを起こしてモール内へ駆け込んだあさみを見ていた。




次回は、襲撃回にしようかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

空港はほぼ壊滅×モールに危機迫る。

床主空港がほったらかしだったので、その視点を前編に・・・
後半はワルキューレ&奴らの襲撃直前です。


あさみがパニックを起こし、孝達とマイヤーを悩ませている頃。

床主空港では、危機が迫っていた。

上空で起きた電磁パルスの影響で電子機器の殆どが使用不可能に至っており、使えるとすれば非常用バッテリーで生き存えた全国瞬時警報システムだけだ。

空港を守っていた特殊急襲部隊SAT並び少数の海上保安庁の特殊部隊SSTの隊員達の顔に疲労が見える。

もちろん空港を守るのは彼等だけではなく、軍事結社ワルキューレの部隊も居るのだが、中国・韓国・北朝鮮の突如行われた侵略に対抗するべく、EMPが終わって再び来たが、最新装備の部隊並び成人女性で編成された部隊は全てその侵略国家群の迎撃に増員され、残ったのは老婆や12~15歳の少女で編成された二級戦部隊にも劣る三つの大隊で編成された連隊であった。

そんな拠点防衛専門の連隊本部にある連隊長室へと、SATの司令官が入ろうとするが、M1ガーランド半自動小銃を持った老婆に止められる。

 

「そこの中年、今は入っちゃ駄目だよ!」

 

「退いてくれ婆さん!こっちは一大事なんだ、新しい避難民がやって来たんだ、それも銃を持ったな」

 

第二次世界大戦時の米軍の作業服のような戦闘服を纏い、M1ヘルメットを被った老婆達はお互いに顔を合わせる。

 

「鉄砲を担いだ避難民だって?」

 

「連隊長に知らせましょうか」

 

視線を司令官に向けると、右側に立っていた老婆がドアをノックして、中にいる連隊長に知らせた。

 

「鉄砲担いだ避難民がやって来たと言う報告が」

 

ドアの向こう側から、別の老婆の声が聞こえてくる。

 

「へっ、鉄砲担いだ避難民?マリア、ドアを開けてSATの司令官を入れておやり」

 

部屋の中の向こう側に居る老婆が喋り終えた後、ドアが開かれた。

ドアを開けたのは、まだ12歳であろう少女だ。

童顔で将来が楽しみだが、着ているのは老婆と同じデザインの戦闘服で、略帽ギャリソンキャップを被っている。

司令官は連隊長室に入った後、書類作業を続ける老婆に敬礼する。

 

「SATの司令官です。昨日、武装したPMC社の傭兵三名が空港に避難してきました。私としては、彼等を仲間に引き入れたい、それには貴女達の許可が必要だ。ご返答を」

 

老婆は眼鏡を何度も掛け直しながら、彼の話を聞いていた。

 

「仲間に引き入れたいね・・・家は信用できないって言うのかい?」

 

「そんな意味で言っては居ません!私の部下達は疲れておるのです、貴女達の様な老婆と少女で編成された部隊との協力は難しいのです・・・!」

 

「そうかい。老人と子供にはこれ以上付き合えないと」

 

書類を纏めた老婆は椅子から立ち上がり、司令官の目線に合わせる。

 

「先程、日本で展開する我が組織の支部から指令が届いた。この空港に空輸部隊に輸送された機甲師団が到着する。それまでに、滑走路に居る奴ら(ウォーカー)を全て始末しろと。あんた達にも付き合って貰うよ」

 

司令官に告げた後、受話器を取って、各部隊に知らせる。

そして待合室で待機していた鞠川の友人で、SATの狙撃手で、小麦色の肌の特徴な美女南リカが寝ていた簡要ベットから起き上がり、知らせに来た同僚の顔を見る。

その同僚は相棒である観測手の田島だ。

 

「起きろよ南。司令殿から新たな指令だぜ」

 

「えぇ、そうらしいわね」

 

田島が滑走路に出る通路へと向かっていった後、リカはH&KPSG-1狙撃銃と装備を調え、滑走路へと続く通路に向かった。

外へ出れば遠くの方で、奴らが複数蠢いているのが分かる。

他のSAT隊員達もMP5N短機関銃を持ち、待機している。

ワルキューレの方は、一個大隊程度のWWⅡ時の米陸軍の装備や小火器を持った老婆と中学生くらいの少女が指令を待っているだけである。

これを見ていた田島は、顎を左手の拳で抱えながら、口を開く。

 

「あれ程居た若いねぇーちゃんと、海に浮かんでいた駆逐艦二隻は何処行ったんだ?今は婆さんに中学生位の嬢ちゃんしかいねぇーぞ」

 

「二千人位残してくれたからマシじゃないの」

 

「それもそうだな。それと、PMCの避難者は?」

 

「疲労が溜まって寝込んでるわ。あの表情から見て、今日も寝込んでるわね」

 

冗談まじりで行った田島の言葉にリカが応え、それに彼が笑みを浮かべながら頷く。

ワルキューレの大隊長らしい老婆がホイッスルを咥えて鳴らした後、老婆と少女達が一斉に動き出し、そこら中に居る奴らに発砲し始めた。

前大戦の小火器の銃声が響き渡る中、SATの隊員達も行動を開始する。

 

「発砲を許可する!周囲にいる奴ら(ターゲット)を殲滅せよ!」

 

「了解!」

 

「リカ、こいつを取れ!」

 

田島は背中に抱えていたM4に似た騎兵銃をリカに渡す。

 

「これは?」

 

89(ハチキュー)騎兵(カービン)型だとよ。俺は本物の89式があるんで!」

 

手に持っている89式小銃を見せびらかしながら、田島は弾倉を六つ程リカに渡した後、他の隊員達と共に奴ら掃討に加わる。

リカはM4風89式小銃の安全装置を外した後、先に奴ら掃討に向かった彼等の後に続く。

掃討作戦は順調に進んでいる様子だが、前より奴らの数は多くなっており、時間が掛かっている。

 

「前より数が多くない?」

 

弾倉内の弾丸が切れて再装填しているリカは、隣にいる田島に話し掛ける。

 

「気のせいじゃないのか?まぁ、気のせいでも無いらしいがな!」

 

近い距離にいた奴らの頭部を言い終える直前で撃ち抜いた田島、リカは再装填を終えれば、直ぐ標的に狙いに定め、撃ち抜き、それを終えれば次の標的に狙いを定める。

こうして次々と奴らは葬られていくも、未だに数は減らない、ワルキューレの拠点防衛大隊の損害が増えるだけだ。

それを見ていた田島が口を開いた。

 

「あの婆さんと嬢ちゃん達、やられてるぞ」

 

「前に出過ぎよ。ちゃんと戦闘訓練は受けてんのかしら!」

 

田島が撃ちながら喋り終えた後、リカは13歳の少女に噛み付こうとしていた奴らの頭部を撃ち抜いた。

暫し銃声が連続して響く中、田島は目に入った給油車を見て、何かを思いつく。

 

「リカ、あれが見えるだろ?」

 

引き金から指を離したリカが、田島が指差した給油車に目線を向ける。

 

「あんた何考えてんの?あれは動かないのよ。上空で起こった事をもう忘れたの!?」

 

「違うって!あの給油車に爆弾くっつけて、何人かに協力して貰って、奴らの大群のど真ん中に放り出すんだよ。丁度あの婆さんと嬢ちゃん達からくすねた爆弾を持ってる」

 

懐から爆弾を出して、アピールする。

この策に、溜息を付きながらリカは納得した。

 

「仕方ないわね、その策に乗ってあげるわよ!」

 

「ありがとよ、相棒!」

 

笑顔で礼を言った田島は、給油車まで向かう途中、ドラムマガジン型のM1928A1トンプソン短機関銃を乱射している老婆に声を掛けた。

 

「あの婆さんが良さそうだ。おーい、婆さん!」

 

引き金ねから指を離した老婆は、リカと田島に視線を向ける。

 

「なんだい、若いの?」

 

「あんた力持ちか?」

 

「あぁ、毎日鍛えてるよ」

 

「よし、じゃあ来てくれ!」

 

トンプソン短機関銃を持った老婆を引き入れた田島にリカは、何故老婆を入れるのか問う。

 

「なんでお婆ちゃんなんか入れたの?他に同僚が居るはずじゃ・・・」

 

「考えたが、全員SATやSSTの隊員で固めようとしても、時間が掛かる。ここは手っ取り早くここらにいる奴に声を掛けるのさ」

 

「ああ、そうなの」

 

田島の答えに、リカは近付いてきた奴らの頭を移動しながら撃ち抜いた。

給油車に向かうまで二十人ほどの人手を集めた田島は運転席に座り、リカは給油タンクの上によじ上って近付いてくる奴らを撃ち抜いていく。

給油車を動かすのは声を掛けられたSAT隊員三名とSST隊員一名、老婆九名に少女七名だ。

田島が「押してくれ」と叫べば、全員が給油車を押し始めた。

近い位置で銃を撃っていた者達は、彼等が何をしているのか分からないでいる。

 

「なにやってんだ?」

 

「さぁ?」

 

MP5A5短機関銃を撃っていたSAT隊員達は、互いに顔を合わせた後、射撃を再開する。

リカ達が乗る給油車の周りには奴らが大量に集まってくる。

タンクの上に乗っている彼女が銃を撃っている所為なのだろう。

押しながらMP5kを片手で撃っているSAT隊員も居る。

 

「充分に集まってきてるな・・・良し、みんなもう良いぞ!後は俺が爆薬をセットするまで援護してくれ!」

 

運転席から降りた田島は爆弾を取り出し、給油車の下部に設置しようとするが、M3A1短機関銃を撃っていた少女の後ろから複数の奴らが来ているの見て、直ぐに助けようと89式小銃を向けるが、弾倉の中身が肝心なときに無かった。

 

「クソッ、後ろだ!」

 

SIGP226自動拳銃を取り出して撃つ。

何体かの奴らは倒すことが出来たが、まだ奴らは残っている。

彼は、少女の後ろに居る奴らを体当たりで弾き飛ばした後、再び発砲して少女の退路を作った。

 

「早く行け!」

 

「あ、は、はい!」

 

田島が作った退路に向かった少女、しかし、彼は這いずってくる奴らに気付かず、左足を噛まれてしまった。

 

「ぐああああ!!こいつ!」

 

空かさず手に持っていた自動拳銃で這いずってきた奴らの頭を撃ち抜く。

田島の声で、彼が噛まれた事を知ったリカは、タンクから降り、周囲にいた奴らの頭を次々と撃ち抜き、彼に寄り添う。

 

「そんな・・・嘘でしょう・・・!?」

 

「グッ、残念だけどこれは嘘じゃない・・・俺はもう駄目だ・・・」

 

足を噛まれた田島は、笑みを浮かべながら爆弾を給油車の下部に設置し始める。

それを残ったメンバーがカバーしつつ、彼が設置を終えるまで目に写った奴らを片付けていく。

 

「設置完了だ!みんな離れてくれ!」

 

「分かった、離れるぞ!」

 

SATとSSTの隊員達は給油車から離れていき、老婆と少女達も銃を撃ちながら後退する。

 

「リカ、お前も離れないと奴らに噛まれちまうぜ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

歯を食いしばりながら、リカは田島が助けられない事を悔しがっていた。

彼の89式小銃と弾倉を持って、その場を立ち去ろうと努力したが、目から涙が溢れる。

近付いてきた奴らを全て葬った後、彼女は給油車から走って離れた。

リカが離れるのを確認した田島は、起爆ボタンを押して、周辺から集まってきた奴ら諸共自爆した。

周囲にいた奴らを焼き払う炎を見ていたリカは、仲間達の為に自爆した田島を敬礼で見送った。

他のSATやSSTの隊員達も彼の勇姿に敬礼する。

彼に助けられた少女が敬礼した後、他のワルキューレの拠点防衛大隊の兵士達も敬礼、田島の勇姿を称えた。

その後はワルキューレのP-47サンダーボルトを中心とした航空爆撃機が空から来襲し、対地攻撃で奴らを一掃した後、何処かへ去っていった。

奴らが一掃された滑走路から、戦乙女の絵が描かれた大型輸送機が着陸してきた。

空港防衛に当たっていたワルキューレの拠点防衛専門連隊は安心感を抱き、大型輸送機から降りてくる第三世代戦車や装甲車、輸送トラックと兵士達を出迎える。

海を見れば、駆逐艦が三隻に増えて戻ってきた。

しかし、避難民救出は行われてはいない。

避難民は輸送機に群がるが、自動小銃を持った重装備兵に止められ、空港内の建造物に戻されて行く。

そんな慌ただしくなった空港を、リカはただじっと眺めるだけであった。

一方、モールは不穏な空気に包まれていた。

パニックを起こしたあさみを説得しているコータであったが、自分達に頼り切っているモールの避難民達を見て、ここから脱出しようと考えていた。

 

「そろそろ、潮時かな・・・」

 

孝が言った後、腕組みをしていた沙耶がそれに答える。

 

「そうね・・・居ればいたで、ここの先客達は私達に頼ってくるし。いい加減に出て行かないとやばそうよね」

 

丁度その時、あさみの説得を終えたコータが彼等に近付いてきた。

 

「はぁ~、終わった」

 

「どうだ、平野君。彼女は落ち着いたのか?」

 

疲れた表情を見せるコータに、冴子はあさみの状態を問う。

 

「何とか落ち着きましたよ。それと、高城さん。あさみさんを連れて行っても宜しいですかね・・・?」

 

この問いに、沙耶は溜息を付いて良いと答えた。

 

「はぁ・・・今度はドジッ娘に婦警・・・良いわよ。取り敢えずあんたが面倒見なさいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

腕組みをしていた沙耶に、コータは頭を下げて礼を言う。

鞠川と一緒にいたありすは、新しい仲間が増えて喜んでいる。

 

「鞠川ちゃん、また新しい仲間が出来たね~」

 

「うん♪今度は婦警さんか、なんだかアニメみたいね~」

 

隣に居た鞠川も、新しい仲間に喜んでいるようだ。

そんな新しい仲間が出来た彼等に、マイヤーがやって来る。

 

「随分と楽しそうじゃないか。それと先程耳に入れたのだが、ここ出るそうじゃないか」

 

マイヤーの問いに、孝は答える。

 

「はい、準備ができ次第出て行くつもりです。出来れば拠点にしたかったのですが・・・」

 

「良いさ、彼女をサポートできなかった我々が悪い。それと我々も出て行くつもりだ、出て行こうにも行き先が無くてな、出来れば君達と同行させて貰えないか?」

 

この言葉に沙耶とコータが、孝に耳打ちでマイヤー達を進める。

 

「あんだけ歴史上の人物で、強いのがいっぱい居るんだから乗った方が良いじゃないの?」

 

「高城さんの言うとおりだよ。あの人達と協力してもらえば、小室と宮本の両親なんて見付かるし、安全な場所だって・・・」

 

「そうだな・・・是非歓迎します」

 

孝とマイヤーはお互い握手する。

これを知ったありすはかなり大喜びしていた。

そしてモールの外では、新たな仲間達を引き入れた孝達の危機的な動きがあった。

FN P90を持った黒ずくめの少数の集団と、迷彩服と最新装備を纏った少年少女がモールへと向かっている。

周辺にいた奴らはモール内へと入っていき、出入り口に建てられていたバリケードに群がり、中に入ろうとしていた。

もうじきモールも地獄と化す。




次回は襲撃回です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悪夢来る

黒ずくめの集団は、成人男性の兵士が突撃銃イジェマッシAK-12フルカスタムに軽機関銃PKM、散弾銃サイガ12、サイドワームはグロックとUSPが混じり合った外見のKBPGSH-18。
成人女性の兵士が、LMTMRP CQB16、FN P90、PP-19ビゾン、PP2000、HK MGS90、サイドアームはグロック26。
子供兵士の方はケチってきたM4カービンフルカスタム、マグプルPDR、FNミニミ、HK MP7、サイドアームはSW シグマSW9GVE。


新たな危機が迫っているのにも気付かず、孝はマイヤー達はモールから出て行く時間帯を話し合っていた。

屋上では、麗がリエラと共に見張り当番をしており、彼女の背中にはリュックサックと銃剣付きのM1A1が掛けられ、いつでも出て行く準備をしている。

リエラは、やや日本の成人男性の身長はあるとはされる少女が肩に掛けている自動小銃の事を聞く。

 

「ねぇ、そのライフル。何処から調達したの?」

 

突然話し掛けられた麗は、リエラにM1A1の事を聞かれた為、それに答える。

 

「先生の友人宅からちょっと・・・元はM14って言うアメリカ軍が使う自動小銃なんですけど、これは民間用タイプです。銃剣が付けられるんですよ」

 

答えた後、肩に掛けていたM1A1をリエラに見せた。

普通の少女に取っては重い長物だが、それよりも重い物を持って戦場を駆け抜けてきた彼女に取っては慣れた物だった。

 

「M1ガーランドに似てるけど、弾倉とか付いて長いから別物ね」

 

そう言って、肩に掛けてあるAK-74をリエラは麗に見せた。

 

「これは確か・・・良くニュースで映ってるAKって言うライフルですか?」

 

「そう。あの平野って言う男の子に聞くまで分からなかったんだけど、扱いが簡単だから直ぐに覚えちゃった」

 

笑顔でAKの操作性の簡単さを物語るリエラ。麗は少し揺れる彼女の胸を見ながら、AKの操作性の良さを知った。

遠くの方を見れば燃料切れで道路に放置されたⅣ号戦車J型とⅢ号突撃砲G型に、電磁パルスの影響下で動けなくなった車から掻き集めた燃料を、乗員達が注いでいる光景であった。

場所は変わって、床主にある造船所。

そこにドイツ武装SSを思い浮かばせるような野戦服を纏い、士官帽を被った男が居た。

その男だけでは無い、造船所には軍服や迷彩服を纏った人々で溢れかえっており、軍用の車両や組み立て式基地がある。

男は司令本部として使われているテントへ足を踏み入れた。

 

「ケストナーだ、入るぞ」

 

司令官らしい女性がこのテント内に居る全員に、男を出迎えるよう立たせて敬礼させる。

 

「総員傾注せよ!」

 

敬礼した後、全員がそれぞれの作業に戻った。

ケストナーは、司令官の前に椅子を持って来て座る。

 

「マクシミリアン軍集団で私が一番乗りかな?所で、侵略国家群はどうなっている?」

 

これに司令官は、書類に目を通して確認した後、ケストナーに伝える。

 

「少し劣勢でしたが、あなた方の軍集団の到着で、海岸まで押し返しつつあります」

 

「そうか、やはりあの男は私の見込んだとおりだ。で、噂で耳にしたんだが、ここのショッピングモールに立て篭もっている連中は何だ?」

 

地図を持ち出して、ケストナーは司令官に、孝達が立て篭もるモールを指差しながら、司令官に問う。

 

「現在偵察機で確認したところ、かなりの戦闘力を持つ武装集団と判断して、対策を考えています」

 

「ふむ、侮れん連中だな。よし、奴らが立て篭もるその建造物に歩兵砲をぶち込め、連中の士気を挫く。そして奴ら(ウォーカー)共に小手調べをさせて、投降を誘うのだ。もし従わなかった場合は、特殊兵一個中隊で鎮圧せよ!」

 

了解(コピー)!」

 

ケストナーの命令を聞いた司令官は、立ち上がって敬礼した後、彼が命令した通りにする為に、受話器を取り、砲兵隊に指令を出した。

指令を受けた砲兵隊と護衛部隊は造船所を出撃、護衛の歩兵分隊が搭乗したトラックを先頭に、M1943 76mm歩兵砲を牽引した砲兵隊と弾薬を乗せたトラックが後へ続く。

一方のモール内では、出て行く準備がほぼ終わりつつあった。

駐車場に止まっている枢軸国の兵士達が乗ってきた車両にも、外から矢モールから調達してきた燃料が注がれる。

モール近くで、彼等の出方を見ていた黒ずくめの集団と少年少女達を中心とした強襲部隊が、部隊長からの合図を待っており、遠距離無線機を背負い、野戦帽を被った少女が受話器を耳に当てながら司令部からの指示を待つ。

射程距離内に近付いた砲兵隊は、M1943 76mm歩兵砲をモールに配置し、砲弾を装填、いつでも撃てる指示を待った。

 

「歩兵砲並び強襲中隊配置に着きました!」

 

「よし、歩兵砲発射!」

 

オペレーターからの知らせを聞いたケストナーは、指示を飛ばした。

遠距離無線機を背負っていた女性から取った受話器から指示を聞いた歩兵砲の隊長は、砲兵達に砲撃をするよう指示する。

 

「砲撃開始!目標、前方のモール。射て!」

 

76㎜歩兵砲は砲声を響かせ、発射された榴弾はモールへと進む。

 

「この音は!?伏せて!」

 

砲声を聞いたリエラは麗を伏せさせ、自分も伏せて、頭を抱える。

命中した榴弾は爆音を響かせ、周囲にいた奴らを集めた。

自分達の車両に燃料を入れていた彼等が、砲撃された事に気付いき、早く戻ろうと、燃料補給を急ぐ。

モール内にも爆音が響いた為、避難民達はパニックを起こす。

 

「な、なんだ!?」

 

「うわぁぁぁ!!あいつ等が居るから攻めて来たんだ!!」

 

パニックを起こした避難民の一人である少年は、悲鳴を上げながら奴らが侵入しようとしている非常口のドアに向かって行った。

もちろん孝達やマイヤー達はこれに気付き、パイパーとセルベリアにミーナが、武器を持って屋上へ上がる。

 

「大丈夫か!?」

 

先に着いたパイパーが、伏せていた麗とリエラの無事を確かめる。

 

「大丈夫です!それより今の砲撃は!?」

 

リエラは立ち上がり、麗を立たせた後、先の砲撃を問う。

直ぐにセルベリアが、首に掛けてあった双眼鏡で、周囲を確認する。

後ろにサイドカーを止め、プラカードを上げた女性兵士が目に入り、セルベリアはそこへ双眼鏡を合わせる。

 

「パイパー、あそこにいる戦乙女達は降伏を迫っている」

 

セルベリアに渡された双眼鏡を手に取ったパイパーは、プラカードを上げている女性兵士を見た。

 

「軍使も寄こさず、降伏を迫るか・・・よし、ミーナ中佐。狙撃銃でプラカードを・・・」

 

「大変だぁーーー!!」

 

パイパーが言い終える前に、その場にルッキーニが突然割り込んできた為に、全員が彼女の方を見る。

 

「どうかしたの?」

 

「お、お化け、お化けが入ってきた!!」

 

「これでは何を言ってるのか分からん、詳しく説明しろ!」

 

ミーナがどうしたのか聞いた後、ルッキーニの言っている事が分からないので、セルベリアが問い詰める。

 

「頭がおかしくなった先客の兄ちゃんがドアを開けて、お化けを入れちゃった!」

 

「お化けって・・・奴らの事?」

 

麗が聞いた後、ルッキーニが素早く頷く。

数秒後には、モール内から銃声が聞こえ、避難民達の悲鳴が響き渡る。

パイパーは、手に持つMP40の安全装置を解除した後、G43狙撃銃を持つミーナに指示した。

 

「取り敢えず返答はしておけ、プラカードを撃ち終えたらモールに戻って我々に加勢してくれ。ミーナ中佐以外は、モールで死人を迎撃だ!」

 

「はい!」

 

指示を終えたパイパーはミーナ以外を引き連れて、モール内に戻る。

残ったミーナはG43のZFK43/1スコープを覗き、降伏を迫る文字が書かれたプラカードを撃ち抜いた。

ケストナーは報告を受けた後、その返答方法を知って激怒する。

 

「強襲部隊直ちに突撃せよ!連中を皆殺しにしろ!」

 

唾を飛ばしながら指示した後、受話器を乱暴に戻した。

指令を受けた強襲部隊は直ちにモール内へ突入し、突入の邪魔をしていた奴らを排除しながら前へ進む。

奴らの迎撃に追われている孝達とマイヤー達は、新たな敵の存在にも気付かないのであった。

そして自分達が足手まといと気付いた老夫婦達は、屋上へと向かう。

屋上で迎撃に当たっていたルリは、屋上から身を投げようとしている老夫婦を目撃した。

 

「おや、お人形さんみたいな娘かい?」

 

老婆が、SG553を構えて撃っているルリに気付き、声を掛ける。

次に老人が彼女に告げた。

 

「良かったら妻を助けてくれたあの子達と、気遣ってくれた軍人さん達に伝えてくれないか?」

 

ルリは頷き、これを見た老人は笑顔で口を開く。

 

「自分達はこれ以上、生きられない。生きていれば、迷惑を掛ける。助けてくれたお嬢ちゃん達には悪いが、先に逝かせて貰うよ」

 

言い終えた後、ルリの目の前で老夫婦は屋上から投身心中した。

それをルリは止めずにただじっと見ていた。




二回に分けて投稿する予定。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敷地に集合。

次回が最後です。


モール内では奴らで溢れかえり、地獄絵図と化していた。

バリケードを作り上げるも、次々と突破されていき、避難民達は次々と奴らの餌食となっていく。

 

「た、助けてくれ!ギャッ!」

 

「やめて、アガッ!?」

 

「怖い・・・」

 

「こんな光景は・・・うぅ・・・」

 

二階から射撃していたリネットは、一階で起こっている見慣れない光景にただ動揺し、ペリーヌは口を抑えて吐き気を我慢する。

奴らから逃れようと避難民達は上に上がろうとするが、枢軸国の兵士達が避難民ごと奴らに銃撃する場面を目撃したバルクホルンが「止めろ」と叫ぶ。

 

「何をしている!?彼等は・・・!」

 

「歩く死人に噛まれたら仲間入りだ」

 

シュタイナーが彼女の後ろから現れ、瞬時に奴ら数体の頭を撃ち抜く。

 

「で、でも・・・あの人達は私達が守るべき・・・」

 

ブレン・ガンの引き金から指を離したリネットはシュタイナーに楯突くも、視線に威圧されてしまい。

小さく悲鳴を上げた後、奴らの銃撃に戻る。

彼にハーネルStg44を向けようとしたバルクホルンは、幼子を抱いた女性の後ろに居た奴らを代わりに撃ち抜いた。

親子はバルクホルンに礼を言った後、屋上へと向かった。

避難民ごと奴らを撃っていたシュタイナーは、撃つのを躊躇っていた者達に声を掛ける。

 

「噛まれれば終わりだ。兎に角撃ちまくれ」

 

モール中から様々な銃声が聞こえ、孝は少し戸惑うが、迷っている暇は無いと判断して、一階から上がってきた奴らをイサカM37の木製ストックで殴り倒す。

階段の方を見れば、多数の奴らで埋め尽くされており、孝に気付いた奴らが多数向かってくる。

 

「おいおいおい!こんなのマジかよ!?」

 

直ぐに階段から離れた後、多数の奴らが孝を追って来た。

そんな彼の前にヴォルナーが現れ、MG42を向けていた。

 

「伏せろ、そこの小僧!」

 

孝は直ぐに床に伏せ、それを確認したヴォルナーは、MG42を撃ち始めた。

毎分1200発にも及ぶ電動のこぎりのような連射力で、奴らの四方が引き千切られていく。

残りの奴らは、駆けつけてきたパッキー達によって排除された。

 

「大丈夫か、小室」

 

「はい・・・大丈夫です」

 

「一体誰が入れたんだよ!守りは頑丈なはずだろ!?」

 

パッキーの手を借りて起き上がった孝、ボタスキーが苛つきながら、一階に居た奴らの頭部を、M16A1で撃ち抜いた。

ラッツが、ボタスキーを宥める。

 

「落ち着け、ボタスキー。そう言えば気が狂った餓鬼が、バリケードの方へ向かっていくのを見た。多分そいつがやったんだ」

 

その答えを聞いたボタスキーは納得、別の場所へ向かおうとした後、チコが見知らぬ銃声を聞いた。

 

「パッキー、知らない銃声が聞こえた」

 

「ああ、俺もだ。一体誰が撃っているんだ?」

 

「何処の馬鹿だか知らんが、俺達を狙っている。兎に角撃退しないと」

 

一階で起きている惨状を見ながら、パッキーがXM177の残弾を確認した後、ラッツの言った事に答え、それを聞いていた孝に、ヴォルナーが彼の肩に手を添える。

 

「人殺しをしたくなければ着いてこなくて良いぞ?」

 

その言葉に暫し悩んだ後、孝は頷いた。

 

「是非、そうさせていただけます」

 

「的確な判断だ。お前達に人殺しをさせる訳にはいかんからな」

 

笑って肩を叩きながらヴォルナーは孝を褒め、銃声が連続して響いてくる方へと向かう。

その時、パッキーが何かを言い忘れたのか、戻ってくる。

 

「そうだ小室、君は仲間を集めておけ。脱出の準備をしろ」

 

言い終えた後、パッキー達は新たな敵の迎撃に向かった。

一方の新たな敵が出てきたエリアでは、ハーゲン、ゴロドク、ハルス、正徳、ゾーレッツ、エイリアスは迎撃の真っ最中であった。

 

「なんだこいつ等は!?」

 

先進国の特殊部隊の動きをする敵兵達に、ゴロドクはPPsh41を撃ちながら叫ぶ。

その兵士達の装備は、どれもこれも最新式の装備ばかりで周辺にいた奴らは一時間も掛からずに全滅し、居るのは黒ずくめの集団だけだ。

後ろからの奴らの迎撃には、正徳とゾーレッツが担当している。

途中から冴子や沙耶、バウアーが加勢する。

Gew43を撃ちながら気付いたハーゲンは、彼女等に声を掛けた。

 

「来たか!こっちは手が足りてる。後ろの死人共をどうにかしろ!」

 

「で、ですが・・・!」

 

「良いから死人を始末しろ!」

 

鋭い目線とドスの効いた声に、冴子達は従い、ハーゲン達の後ろから襲ってくる奴らの迎撃している正徳とゾーレッツに加勢した。

早速奴らを蹴散らした冴子にゾーレッツが側に寄る。

 

「助けか、あいつ等がお前達を戦わせないことが分かるか?」

 

「はい・・・私達に人殺しはやらせたくないと」

 

「察しが良い。しかし戦場では気を抜くな!」

 

後ろから迫った奴らを正徳は軍刀を振り翳し、一瞬で始末する。

アッシュとコワルスキーもMP40を乱射しながら出て、沙耶の後ろにいた奴らを全滅させた。

 

「加勢しに来たぜ!」

 

「よし、聞こえてくる銃声は何だ!?」

 

「ちょっと、あんた等気を付けなさいよ!」

 

ルガーP08を握りながら、アッシュとコワルスキーに怒鳴った。

近代的ライフルMK107を持つバウアーは、エスカレーターから上がってくる奴らを銃撃する。

二人もそれに合わせて目に映る奴らを撃ちまくる。

 

「クソッ、あのライフル欲しいな!」

 

「一階にいる奴らから奪えば良いんじゃないか?」

 

一階でハーゲン達と銃撃戦を行っている黒ずくめの集団を見ながらコワルスキーが答える。

その頃、麗は孝と鞠川、ありすを探しながら二階を走り回っている最中に、身長がやや低い黒一色で固められた装備をした兵士と遭遇した。

 

「あれは!?」

 

兵士は麗を見るなり右手に持ったフルカスタムのM4カービンをいきなり撃ってきた。

直ぐに麗は壁に隠れて銃弾をかわす。

 

「(さっきから聞こえる銃声ってこいつの所為なの!?)」

 

麗は心で考えた後、壁越しから兵士を見たが、アホ毛が飛び出した為、直ぐに銃弾が壁に被弾する。

握られているM1A1スーパーマッチを見ながら、安全装置を外し、引き金に指を掛け、撃つ準備をした。

 

「(私に撃てるのかしら・・・?)」

 

再び兵士を見た後、M4カービンの再装填を行っている所だった。

直ぐに装填を終えた兵士は銃撃を再開して麗を壁に釘付けにし、近付いていく。

「撃つのは今しかない」と悟った麗は、引き金から指を離し、額に汗を滲ませ、壁から飛び出そうと身構える。

 

「今だ!!」

 

壁から飛び出した麗は、兵士の頭部をストックで殴りつけた。

衝撃でACHヘルメットとゴーグルが吹き飛び、そこから長い髪が飛び出してくる。

鼻と口からはマスクで見えなかったが、まだ幼げが残る童顔であり、愛らしい瞳があった。

 

「お、女の子!?」

 

驚いた麗は倒れ込んでいる少女を見て、M1A1を下げてしまう。

少女は直ぐにM4カービンを取ろうとしたが、それに気付いた麗が騎兵銃を蹴り上げ、遠くに飛ばす。

倒れ込んでいる少女に麗はM1A1を向けたが、足下を蹴られ、体勢を崩し、床に倒れ込む。

 

「キャッ、このぉ!」

 

立ち上がろうとした少女の足を掴んで、遠くにあるM4カービンを取らせないようにした。

足を掴まれて取りに行けない少女はナイフを取り出して、麗に馬乗りになり、刺そうとするが、彼女もナイフを持つ腕を掴んで抵抗する。

 

「く・・・!(なんて力なの!?)」

 

少女とは思えぬ腕力に、必死で抵抗する麗。

抵抗する彼女を睨み付ける少女の瞳は、幾つもの人間を殺してきた瞳であった。

麗は空いた左手で少女の顔を引っ掻くも、少女は顔を歪ませるだけで、マスクが外れて顔が露わになるだけだ。

殺意がこもった表情で、少女はナイフを持つ右手を強めるが、麗の左手が少女の顔を掴み、爪を突き立てる。

頬から血が流れる中、少女は麗の親指に噛み付いた。

 

「い、痛い痛い!」

 

余りの痛さに声を上げ、噛まれた親指から血が流れ始める。

そこへ孝が到着し、麗に馬乗りにイサカM37を棍棒にして少女を殴った。

 

「孝!」

 

「麗、無事か!?」

 

麗を起こした孝は、吹き飛ばされた少女を見る。

腰に差してあるガンホルスターから拳銃を取り出そうとしていた。

咄嗟に散弾銃を構え、引き金を引こうとした。

 

「孝!早く撃たないと・・・!」

 

しかし、孝は人を撃ったことはない。

自分が殺したような者達が居たが、直接手を下した事もない。

麗の声が耳に聞こえる中、散弾銃を握る手が完全に震えて撃つこともままならず、彼等を見かけたセルベリアが、少女にトドメを差した。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫です。済みません、ビビって撃てなくて・・・」

 

孝はAKS-74を持ったセルベリアに謝る。

その彼女は、麗が見てる前で孝の肩に手を添えて告げる。

 

「怖かっただろう・・・私もそうだった。私達には合わせなくて良いぞ」

 

「あ、はい・・・はい・・・」

 

目の前にいる絶世の銀髪美女に、孝は顔を赤くしながら答えた。

それを見ていた麗は孝を睨み付けていた。

 

「孝ぃ・・・!」

 

「あっ、ごめん麗!」

 

二人の痴話喧嘩に発展しそうな場面を見ていたセルベリアは、全く意味が分からなかったという。

敷地内へと向かっていたコータとあさみは、何かに追われている鞠川とありすを発見した。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「平野く~ん!変な集団に追われてるの!」

 

「変な集団?」

 

「サーカス団みたいな女の人達なの!」

 

ありすがジークを抱えながら、自分達が逃げてきた方向に指を差した。

そこには人間離れした動きを見せる奇妙な武装集団が、手に持つ銃を撃ってきた。

あさみが屈んで頭を抑え、鞠川はありすを抱きしめ、悲鳴を上げる。

武装集団の着ている戦闘服から見える身体のラインで、女性と直ぐに分かった。

敵兵達のスタイルの良さにやや目が奪われがちなコータだが、にやついている彼にも銃弾が飛んで来る。

 

「うわっ、見取れてる場合じゃない!」

 

遮蔽物に伏せたコータは、SR-10を構え、壁に左手を掴んで、右手でFNP90を撃っている女性兵士に狙いを定めた。

 

「人殺しはしたくはないが、銃を撃っている手を!」

 

言ってからP90を握っている右手を撃ち抜き、戦闘能力を奪う。

 

「ひ、平野さん!」

 

後ろからあさみが声を掛けたが、コータは凄まじい殺気に満ちた表情で振り返る。

 

「何ですか~?」

 

「ひ、ひぃ!こ、殺したんですか・・・?」

 

あさみの問いにコータは表情を笑顔に変えて、答えた。

 

「殺してなど居ませんよ。戦闘能力を奪っただけです。手と足を撃つぐらい出来ます」

 

「そ、そうですか・・・」

 

再び戦闘に戻ったコータに、あさみはホッとする。

自分一人ではサーカス団のような女性兵士達を抑えきれないと判断して、後ろで固まっていたあさみに声を掛けた。

 

「すみません!」

 

「あぁ、はい!」

 

「僕の背中に担いでいるUMP45を取って、迎撃してくれませんか!?」

 

コータは振り返り、背中に掛けてあるUMP45を顎で差す。

 

「分かりました!」

 

直ぐにUMP45を取り、コータから安全装置の外し方を聞く。

 

「左側に着いてるセレクターをフルオートに合わせてください!」

 

「これですか?」

 

目線をあさみに向けながら、コータは頷く。

 

「そうです!鎮圧射撃をお願いします!」

 

「は、はい!」

 

返事をしたあさみは、立ち上がってUMP45を乱射し始めた。

乱射のお陰か、敵兵達が遮蔽物に抑え込まれる。

そんな彼等に平八と佐武郎が救援に来た。

二人は短機関銃を撃ちながら女兵士達を次々と片付けていき、平八の目の前から小刀を取り出して斬りかかってきたが、鬼神のような彼に適うはずもなく、軍刀で斬られた。

壁に張り付いていた兵士達は佐武郎の一〇〇式短機関銃で排除される。

 

「大丈夫か、少年」

 

「はい!大丈夫であります!!」

 

平八の問いに、コータが敬礼しながら答える。

そんな時に奴らが後ろから迫ってきたが、コータと平八に佐武郎にあっさりと全滅させられる。

 

「見た目ながらやや心配したが、どうやら見誤ったようだ。済まない!」

 

突然謝ってきた平八に、コータは慌てる。

弾倉を変えていた佐武郎が、そんな慌てるコータを褒めた。

 

「家の隊に入れたいくらいだ。そうだ、駐車場に行かないのか?」

 

この問いに、コータとあさみは断る。

 

「敷地内で時間を稼ぎます。平田さんは先生とありすちゃんを連れて行ってください」

 

「警官も身でありながら、市民の一人も守れないなんて、警察官の名が腐ります!本官も平野さんと一緒に!」

 

「承知した。さぁ、女医さんとありすちゃんはこちらへ」

 

「じゃあ、平野君と中岡さん。先に行くね」

 

「コータちゃんと婦警さんも無事に帰ってきてね~」

 

「もちろんさ!」

 

鞠川とありすは、駐車場へ向かう佐武郎の後へと着いていった。

それを確認した平八は、コータとあさみを見た。

 

「さて、行くとするか!」

 

「「はい!!」」

 

敷地内へと続く正面口まで走る。

屋上の出入り口に居た孝達は、最後の親子が入った後、閉じようとしている扉を見ていた。

 

「お姉ちゃん達はお化けと戦うの?」

 

扉の隙間から幼い少年と少女が、シャーロットを別れを惜しむかのような視線で見る。

 

「あぁ、お姉ちゃん達はこれからお化けを退治しに行くんだよ」

 

シャーロットが答える中、孝とルッキーニが声を掛ける。

 

「イェーガーさん、早く!」

 

「シャーリ早く!」

 

「そろそろ時間のようだ。生きてたらまた会おうぜ!」

 

「「うん!!」」

 

扉が閉まった後、シャーロットはM1917A1"BAR"を持ち直し、敷地内に向かおうとしたが、右腕にギブスを付けたシュルツがやって来て、屋上へ続く扉を叩いた。

 

「あ、開けてくれ!俺もここで助けを待つ!!」

 

「諦めろシュルツ!一緒に来るんだ!」

 

バリケードを組み立てていたブルクハイトに掴まれ、扉から遠ざけられた。

 

「貴様等はイカれてるぞ!どう考えたってここに避難すれば・・・」

 

凄まじい見幕でシュルツが孝達に告げる中、ブルクハイトがワルサーP38をガンホルスターから取り出し、シュルツに銃口を向けた。

 

「ひ、ヒィ!」

 

「あぁ、イカれてるさぁ・・・それにここに残る義理もないしな」

 

ワルサーP38をガンホルスターに仕舞った後、孝に「バリケードは出来た」と告げた。

 

「分かりました。敷地内へ向かいましょう!」

 

「「「「応(えぇ!)(うん!)!」」」」

 

返事もしなかったシュルツは、泣きながら孝達に続く。

駐車場では、武器を運び終えたリヒトーフェン達が、自分等の乗っていたジープに乗り込もうとしていた。

そんな彼等をリヒターは見逃さず、ルガーP08をハンドルを握っていたデンプシーに向けた。

 

「何処へ行く?」

 

普段とは違う凄まじい視線を向けていた為に、リヒトーフェン達は少しビビった。

 

「何処って・・・脱出に決まってr」

 

「我々のメンバーが揃うまで待て。アクセルを踏めばこの男の頭を撃つ・・・!」

 

「うっぅ・・・分かった。だからルガーを下ろせ。良いな?」

 

「仕方がねぇ~な。ファシストの大将さんの願いだ、聞いてやんぜ」

 

「宜しい。では、アクセルから足を退けたまえ」

 

ルガーP08を下ろした後、リヒトーフェン達は、出入り口から来るであろう仲間達を待った。

そこへ奴らを次々と斬り捨てていく正樹を戦闘に、パイパー、マイヤー、ハルトマン、佐武郎、鞠川、ありすが現れた。

 

「元帥閣下、お待ちになっていたとは」

 

「待っていたぞ。早く車両に乗り込め、敷地内に居る者達が困ってるぞ」

 

パイパーが言った後に、リヒターは車両に指を差しながら、彼等に告げた。

従った者達は直ぐに車両のエンジンを掛ける。

駐車場のバリケードに群がっていた奴らを、ディーター達が操る重駆逐戦車ヤークトティーガーの128㎜砲が向けられる。

 

「榴弾装填、目標10時の方角!」

 

「「了解(ヤヴォール)!」」

 

榴弾の装填を命じられた装填手達が答えて、装填した後、戦車長のディーターに知らせた。

 

「装填完了しました!」

 

「照準良し!」

 

射て(ファイヤ)!」

 

駆逐艦クラスの砲声が響いた後、バリケードに群がっていた奴らは血煙と化す。

その後にシュタイナー達がやって来て、SdKfz 251"ハノマーク"に乗り込んだ。

乗り切れない者達はそれぞれ乗れる場所に乗り込んでいく。

パッキー達も現れ、M2ブローニング重機関銃付きのハンビィーに乗り込み、先頭車のヤークトティーガーに告げる。

車体後部に乗っていたリヒターは、正面を見ながら命じた。

 

「よし、前進せよ!」

 

ヤークトティーガーを先頭にした車列は敷地内へと、エンジン音を響かせながら進んだ。

正面口で銃撃戦を行っていたハーゲン達に、援護の孝達が来た。

コータ達も一緒である。

 

「どうしてこんな所へ立ち止まっているので?」

 

「銃を撃ってくる馬鹿共が居るからだ!」

 

ゴロドクがリロードをしながら孝に答えた。

スコルツェニーもやって来て、銃撃を行っていた黒ずくめの集団にStg44を乱射しながら突っ込んだ。

 

「よし、今だ!」

 

二階で釘付けにされていた者達が、ゴロドクの合図で一階に飛び降り、黒ずくめの集団を圧倒した。

これ以上の戦闘は無理と判断した黒ずくめの兵士達は、直ぐさま撤退しようとしたが、背中を見せた途端に撃たれていき、最後の一人が拳銃を悪足掻きのように撃っていたが、あっさりとスコルツェニーにトドメを差された。

アッシュとコワルスキーが、黒ずくめの集団が使っていた小火器を回収する。

回収を終えた彼等は、敷地内へと出る。

そこには、多数の奴らと、青色からオレンジ色へと変わったゾンビ達が待ち伏せていた。

さらに非常口を開けて奴らをモールへ招き入れた張本人である少年が、囲まれているのであった。




どうしよう、原作通りあさみを・・・

次回、モール編終盤です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死ぬしかない・・・

ウィッチ勢が本気を出します。


圧倒的な生ける屍の数、さらに高城邸で現れた強化タイプのゾンビも居り、最悪なことにあの謎の白人の女性と日本刀を持った長い黒髪の少女まで居る。

この絶望的な光景を見たシュルツは、腰を抜かし、恐怖する。

 

「も、もう・・・駄目だ・・・お終いだ・・・」

 

凄まじい数の奴らやゾンビが向かってくる中、アリシア、セルベリア、リエラ、ミーナ、ルリが到着し、それぞれが持つ武器を構える。

 

「まだ諦めるのは早いわ」

 

リエラは常に携帯していたナイフを取り出し、それを鞘から抜いた。

彼女の奇行に他の者達が、呆れた顔で見る。

 

「おいおい、頭でもおかしくなったのか?」

 

「違うわ。ちょっと驚くような事になるけど・・・これなら状況が打開できるはず・・・!」

 

力を込めてナイフを握った後、突然リエラの身体が青白く燃え上がった。

突然の出来事に、アリシア、セルベリア、エイリアスの三人は驚きを隠せない。

 

「う、嘘!槍も盾も持ってないはずなのに・・・」

 

「まさかあのナイフ、ヴァルキュリアに関する道具か!」

 

「す、凄い!あのナイフは槍だったのか!」

 

彼女達が発した言葉を聞いた他多数は、何を言ってるのか分からないし、何が起こっているのか分からない。

青白く燃えるリエラの赤の髪が、下の銀色に染まっていく。

一番近かったゾンビが、発光した目を光らせながらリエラに襲い掛かったが、彼女が放った一蹴りで、凄い勢いで吹っ飛んでいき、何体かの奴らやゾンビを巻き添えにした。

そんなありえない光景に、ヴァルキュリア人を除く全員が、唖然する。

特にゴロドクのショックは大きかった。

 

「あ、あれが魔女のバアさんの孫娘なのか・・・!」

 

握っていたPPsh41を落とし、青白く光るリエラを見ながら膝をつく。

ミーナを始めとするウィッチ達もリエラに負けずと、体内の魔力を溜め始めた。

 

「カールスラント軍人が、民兵ごときに負けては居られないな・・・!」

 

笑みを浮かべながら言ったバルクホルンは、近くにあった標識を引っこ抜き、複数の奴らを標識で振り払う。

セルベリアも左手を青白く光らせ、全力疾走で突っ込んできたゾンビ達を一瞬ではね除けた。

 

「負けていられん、ハァー!」

 

続いて横から来たゾンビを左腕で思いっきり殴り、胴体を貫通し、それを振り払った。

左手にいつの間にか持っていたFNミニミの引き金を引き、ノロノロと近付く奴らを連射力で薙ぎ倒していく。

 

「あ、あの女、ぶん殴っただけで身体を貫いたぞ・・・!」

 

唖然していた枢軸国軍兵士の一人が、口を開いた。

様々な死地を潜り抜けてきたスコルツェニーも驚きを隠せないでいる。

さらに非現実的な現象が起きる。

レイピアを抜いたペリーヌが、掌に電力らしきエネルギーを溜めていた。

 

「この技は使いたくはありませんが、迷ってる暇はないですわ!トネール!!」

 

「フランス語・・・?」

 

ドラムマガジンのルガーP08を抱えてるしかない沙耶がふと呟く。

その直後、ペリーヌが手をかざした方向に居たゾンビや奴らが強力な電力を浴び、次々とコンクリートに倒れていった。

少し息を整えたペリーヌは眼鏡を掛け直し、周囲にゾンビや奴らが居るにも関わらず、静電気を浴びた髪を整える。

 

「朝方に折角整えた髪が静電気を浴びてしまいましたわ、早く直さないと」

 

「髪が静電気を浴びただけなの・・・?」

 

必死で髪を整えているペリーヌを見た沙耶は、ただ唖然するばかりだ。

驚くべき事は次々と起こる。

 

「シュトゥルム!!」

 

ハルトマンが身体の周りに強力な風を発生させ、勢いを付け、奴らとゾンビの大群に突撃した。

彼女が突っ込んだ辺りに強風が巻き起こり、奴らやゾンビが空高く飛び上がった。

 

「どうやって回転して居るんだ・・・?」

 

人間が高速回転するの見た孝は、思わず口に出してしまう。

次にフランチェスカとシャーロットが何かを始めようと準備している。

 

「ストライカーユニットが無いのが心配だが・・・やるしかなさそうだな」

 

「うん、シャーリー!あれやろう!」

 

「そうだな。よし、行くぞ!」

 

「なにをするつもりだ?」

 

迎撃を行っている全員が、シャーロットがフランチェスカを持ち上げて、助走を付けているという謎の行動を取る二人を妙な目で見る。

そのまま二人は全身に魔力を込め、フランチェスカを持ち上げていたシャーロットが、彼女を奴らやゾンビが集中している地点に勢いよく投げ込んだ。

投げ出されたフランチェスカは全身に魔力を纏い、光熱の弾丸となって、密集地帯に突っ込み、煙が上がる。

そこから見事着地に成功したフランチェスカが両腕を広げ、真剣な表情をしていた。

 

「着地成功・・・!」

 

その後、左右からやって来たゾンビをキックで容易く片付けた後、高速でやって来たシャーロットからベレッタM1938A短機関銃を受け取る。

 

「大丈夫か、フランカ。ストライカー無しでのあれは?」

 

「大丈夫だったよ、シャーリー」

 

「もうなにがなんだか分からないわ・・・」

 

シャーロットの問い掛けに笑顔で答えた後、周囲から続々とやって来る奴らやゾンビを片付けていく。

それを見ていた麗が思わず口に出してしまった。

G43狙撃銃型を持っていたミーナが周囲に耳を合わせ、モールの左側からやってくる襲撃部隊の残党兵を察知し、それをハルスに伝える。

 

「ハルス中尉!後方左側にさっきの襲撃部隊が!」

 

「なに、うぉっ!?本当にいやがった!」

 

ハルスがStg44を構えた先には、フルカスタムのM4カービンを構えた少年兵等を撃つ。

三人でやって来た少年兵等は血飛沫を上げながら、地面に倒れ込む。

排除が完了したと確認したミーナは、次の指示を飛ばす。

 

「次、建物から死人が複数出てきます!」

 

「心得た!」

 

その指示で、近い距離にいた冴子はモールから出てきた奴らを手早く片付ける。

その後、ミーナは銃を撃ち続けながら、指示を飛ばす。

次々と起こるありえない現象に、唖然して居た沙耶とゴロドク、他の者達もただ圧倒的な強さを見せる彼女らに呆然としていた。

そんな時、平八が負けては居られないと言わんばかりに、左手で一四年式拳銃を撃ち、右手に軍刀を持ちながら奴らやゾンビの大群に一人で突っ込んだ。

 

「何をするつもりだ!?」

 

「決まっておろう。おなご共には負けてはいられんのだ!」

 

ハーゲンがG43を抱えながら平八に声を掛け、敵陣に突っ込む彼は、雄叫びを上げながらハーゲンに答える。

平八が言った言葉が、耳に入ったゴロドクはPKM軽機関銃を抱え、奴らの大群に乱射し始める。

 

「俺はソビエト連邦国土防衛英雄、アナートリイ・ゴロドク様だ!女子供が戦ってる前でこの俺様が後ろで指を咥えていられるか!!」

 

勇敢にも彼女等の前に出ようとしていたが、スコルツェニーに止められる。

そしてMG42を乱射しているヴォルナーと並んで、死体の山を築く。

呆然としていたあさみに、リネットは声を掛けた。

 

「あの・・・二脚を持ってもらえませんか?」

 

「え?あ、は、はい!」

 

直ぐにリネットはブレン・ガンの二脚を立て、それをあさみに持ってもらい。

この事態を引き起こした少年の周囲に居た奴らの頭を正確に撃ち抜く。

周囲から胸囲を除かれた少年は殺されると思い、その場から一目散に逃げ出す。

呆然としていた沙耶は、目の前で起こっている現実では見られない現象をただじっと見ており、後ろから近付いてきた奴らに気がつかなかった。

 

「危ない!」

 

アリシアが掛け声にようやく気付いてルガーを撃とうとしたが、アリシアの方が早く、発砲音の後に眉間に穴が奴らが倒れるのを見て、我に返る。

小声で呟きながら、ルガーを構える。

 

「私は天才なのよ、これくらいの現象がなんだって言うの。既に奴らが現れている時点で現実味が・・・!」

 

近い距離で奴らを蹴散らしていた麗や冴子が「遂に頭がおかしくなった」と思っていた。

圧倒的な力を見せつける小室一行であったが、奴らとゾンビの数が減るどころか増える一方だ。

奴らやゾンビが来る方向から銃声が聞こえてくる。

生ける屍に近い状態となったワルキューレの戦闘員達だ。

128㎜の砲声の後に、駐車場の出入り口から出て来た車両を見たスコルツェニーは、モールの敷地内からの脱出を指示する。

 

「全員聞け!これ以上戦っても死人の仲間入りになるだけだ、理解の良い奴は直ぐに敷地内から脱出を優先しろ!!」

 

「分かりました!みんな、敷地外へ急ぐんだ!!」

 

この指示に異を唱える者は居らず、全員が敷地外目掛けて走り出した。

当然、あの洋風美人と和風美少女が見逃すはずがない。

奴らやゾンビに任せずに、自ら小室一行に突っ込んでくる。

 

「き、来たぞ!魔女だァ!!」

 

ゴロドクが再装填をしながら、美女と美少女を見て叫ぶ。

一人トラックに乗ったバウアーは、MK107を構えて空中を浮遊している美女に撃ち続けるが、銃弾がまるで彼女を避けるかのように、全く命中しない。

 

「あ、当たらない!どうして!?」

 

声を荒げた彼女が乗るトラックに魔女のような美女が、銃撃を者ともせずに迫る。

 

「ひや~!キタキタキタキタキタ!!」

 

それを阻止せんと、リエラが美女に高速で体当たりを掛けた。

脇腹に強力な体当たりを諸に食らった美女は、凄まじい早さで地面に叩き付けられる。

美少女の方は、日本刀を鞘から抜いて、奴らやゾンビを次々と死体に戻していた平八に斬りかかるも、容易く封じられてしまう。

 

「小娘も日本刀を使うか!毒島嬢と一緒だな!」

 

振り払った後、拳銃をガンホルスターに戻し、軍刀を突き立て、日本刀を持つ少女に突きをかます。

それを防いだ少女はよろけた後、平八に頭を捕まれ、地面に叩き付けられる。

 

「君はまだ未熟!だが、今は構っている暇はない!」

 

少女に告げた平八は停車していたトラックの荷台に、他の枢軸国軍兵士達と共に乗り込んだ。

木製ストックで奴らを倒したゾーレッツも、平八が乗るトラックに乗り込む。

 

「バートル!次はお前だ、早く来い!!」

 

正徳に声を掛けながら、彼の後ろにいた奴らやゾンビに銃撃する。

 

「急げ、早くしろ!」

 

「分かった!平野にあさみ、早く乗るんだぞ!」

 

数体の奴らを斬り捨てた後、正徳はずっと奴らを倒していたコータとあさみに声を掛けた後、ゾーレッツの手を借りてトラックの荷台に乗り込んだ。

榴弾や重機関銃の攻撃で突破口が開かれ、最初に敷地外に出たのは佐武郎が乗る三式中戦車チヌだ。

 

「掩護射撃を行う、その間に早く敷地内から出るんだ!」

 

キューポラから上半身を出しながら佐武郎は敷地内に居た者達に告げた。

全力を出し過ぎて、禄に動けなくもなったフランチェスカとシャーリーが、互いに肩を抱えながら、鞠川達が乗るハンビィーに乗り込み、その次に奴らを倒しながら沙耶が乗った。

 

「先生、孝達がまだ!」

 

「こんな、キャッ!所で待ってたら、ヒャン!」

 

周囲から爆発音で一々驚く鞠川、沙耶は呆れて狙撃銃SR-3ヴィーフリを持ち、上部ハッチから上半身を出して、狙撃を始める。

標識を振り回し続けていたバルクホルンと、奴らやゾンビを吹き飛ばしていたハルトマンが、蹌踉けながらも戦っている。

 

「どうしたハルトマン、勲章を授与されたカールスラント軍人でもその程度しか持たないのか・・・?」

 

「トゥルーデこそ・・・既にくらくらじゃないか・・・」

 

呼吸を乱しながらも、二人はトラックになんとか辿り着いた。

 

「クロステルぅ・・・もう力が出ないから手貸して・・・」

 

「魔力を使いすぎるからですわ!さぁ!」

 

バルクホルンの方はマイヤーの手に捕まって、なんとか乗車に成功した。

 

「さぁ、お嬢さん(フロイライン)。手を!」

 

「カールスラント軍人である私が・・・す、済まない・・・」

 

次にエイリアスが、孝達が乗る軍用バギーに強引にも乗り込み、麗の膝の上に腰を下ろした。

 

「こっちの方が楽しそうだな、よいしょ!」

 

「ちょっと!強引に乗り込まないでよ!それになんで膝なんかに」

 

「でも、ここしか空いてなかったみたいなんだ・・・」

 

エイリアスが言った後に、後ろに視線を合わせれば、ヴォルナーとハルスが後ろの座席を陣取っていた。

 

「何をしている小僧、早く出せ!」

 

「あぁ、はい!しっかりと捕まっていてください!」

 

ヴォルナーの怒号で勢いよくアクセルを踏み、敷地外へと進むバギー。

後部座席で、ヴォルナーとハルスが、奴らや凄まじい早さで追い掛けてくるゾンビを撃ち続ける。

 

「こいつ等、何故か早いぞ!?」

 

「凄まじい早さだ、近付かせるなよ!」

 

「あんなのありかよ!?」

 

「エイリアスも槍が使えれば、リエラのように・・・!」

 

後ろから凄い早さで追い掛けてくる複数のゾンビに、麗の膝の上でエイリアスは悔しがっていた。

その一方で、力を使い終えたリエラが、アリシアに肩を抱えられながら、マイヤー等が乗っている鉄十字のトラックの荷台に、ミーナの手を借りながら乗せられた。

 

「まだ残っている者は居ますか?」

 

「何だって!?おい、お前等、早くしろ!!」

 

冴子が問い掛けるなり、スコルツェニーは残っている者達に早く車両に乗るように指示した。

コータとあさみ、セルベリア、ルリは、まだどの車両にも乗っては居なかった。

アッシュとコワルスキー、ブルクハイトは、シュタイナーが乗っているハノマークに乗り込んで命拾いした。

ちなみにシュルツも既に登場済みである。

セルベリアとルリはこのまま銃を撃ちながら敷地内まで強行突破するつもりであり、あさみはまた奴らに囲まれた少年を助けようとしていた。

コータは行動に出ようとしている彼女に声を掛ける。

 

「あさみさん、もう少しで敷地外です!急いで!」

 

「少し時間をください、平野さん。本官はあの少年を助けに行きます!」

 

グロック17を取り出して、少年の周囲に居る奴らに発砲し始める。

銃を撃ってくる敵が居るのに、こんなに立ち止まっておいて大丈夫なのかと思うが、そう言う敵は先に敷地外に出た佐武郎達が排除してくれる。

ハノマークに乗るシュタイナーは、kar98kを少年に構え、安全装置を外して引き金に指を掛ける。

他の搭乗者は「奴はあの餓鬼を殺す気だ」と小声で言った。

周囲の奴らが残ったまま、あさみは少年の手を取ってその場から脱出しようとしたが、既に少年は奴らに噛まれており、あさみの苦労は水の泡となる。

 

「え・・・そんな・・・!?」

 

彼女が少年の顔を見た時、発砲音の後に眉間に穴が空いていた。

既に機能しなくなった少年の身体は、道路に倒れた。

その間に「早く来い」と言う叫び声が聞こえてきたが、あさみの耳には入らなかった。

そしてあさみが我に返る頃には、起き上がった少女に退路に塞がれている。

 

「ひっ!もう、逃げ場が・・・無い!?」

 

目の前の日本刀を携えた少女に恐怖するあさみ。

右手に握られたグロックを向けようとしたが、少女の殺気が満ちた瞳に睨まれ、動けなくなる。

さしずめ蛇に睨まれた蛙のような物だろう。

敷地外に近い距離にいたコータがAR-10を少女に向けたが、あさみの視線がこちらに向いていることに気付く。

 

「な、何をして居るんですか!早く逃げ・・・」

 

「私の分まで生き残ってください、コータさん」

 

笑みを浮かべながら告げた後、あさみは勇気を振り絞って日本刀を振りかざそうとした少女の足に蹴りを入れて立ち上がり、大声を上げながらコータ達とは違うモールの方へと走り出す。

コータの方は、無理矢理ブルクハイトにハノマークに乗せられる。

気が付けば他の車両はみんな敷地外へと出ており、最後のトラックの荷台にセルベリアとルリが居る。

最後に残っているのはシュタイナー達が乗るハノマークだけだ。

美女の方は、ヤークトティーガーやM2重機関銃、対戦車ライフルに寄って封じ込まれている。

 

「は、離してください!俺はあさみさんを助けるんだ!!」

 

「黙れ!貴様に何が出来る!?あの女はもう死んだのも同然だ!」

 

シュタイナーは、コータの胸倉を掴みながら恫喝した。

その手を払い除けようとしたコータであったが、今度は拳銃を突き付けられた為、服従するしかなかった。

再びあさみの方へ視線を合わせたが、既にあさみは重傷であり、日本刀を携えた少女に追い込まれていた。

退路も完全に奴らやゾンビに防がれており、出血も酷く、今から助け出しても、治療できるはずもなく大量出血で死ぬのが彼女の運命だった。

死期が迫る中、あさみは立ち上がり、コータが乗るハノマークに向かって警察官らしく敬礼した。

それを見ていたシュタイナーが、あさみに最期を下すようコータに命ずる。

 

「小僧、婦警に最期を下してやれ」

 

「そんな・・・出来ませんよ!」

 

「このまま何もせず、婦警の姉ちゃんがバラバラにされるのを待つのか?」

 

ブルクハイトが口を開いた後、コワルスキーが言う。

 

「生きたまま腕や脚を切り落とされるなんてさぞや苦しいぜ?早く楽にしてやれ」

 

次にアッシュが、コータが持つAR-10を奪い取ろうとする。

 

「いいから早く()っちまえよ!このまま婦警さんに地獄を味あわせる気か!!お前がやらないのなら俺がやるぞ!?」

 

叫びながらAR-10を奪おうとしたが、コータは泣きながらアッシュの手を払い除け、スコープを覗き、狙いをあさみに定め、引き金に指を掛ける。

目線が涙で曇る中、泣きながらコータは引き金を引いた。

発砲音が響き渡り、銃口から放たれた7.62㎜×51NATO弾があさみの額を貫いた後、脳を貫通してあさみの生命は途切れた。

コータから見たその光景は、時間がゆっくりと動いている様に見えた。

そして、あさみが完全に倒れ込んだと同時にコータ達を乗せたハノマークは、モールを後にした。




あさみが死んでしまったよ・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

警察署&家族探査編
補給を優先


最初は宮殿を脱出したストアーの視点からです。

あの世界のモデルはディスオナードのダンウォールです。

短いな・・・


一風変わった先客達を仲間に引き入れた小室一行、モールからの脱出の際に、仲間を一人失ってしまう。

その頃、超大国の傀儡と成り果てた王国では、手負いを負ったストアーが追ってから逃れる為、死体置き場を這いずり回っていた。

 

「(まさか・・・修行を受けていないただの兵士にやられるとは・・・!)」

 

人が入れるほどの配管工の中で、傷口から9㎜パラベラム弾を摘出しながら声に出さず思い、痛みで顔を歪める。

全ての傷口から弾丸を摘出した後、何処からか調達した医療道具で治療し、何とか立ち上がった。

死体置き場周辺を巡回している警備兵の動きを見ながら、隙を見て物陰に移動しようとしたが、頭上の橋でコートを羽織った兵士二名が立っているのが見えた。

行く先に視線を向けながら、小銃を肩に掛けながら会話をしていた。

息を殺して、二人の兵士が何処かへ去るのを待つ。

 

「クソっ匂うな。本当にここは首都なのか?」

 

「さぁな、一昔前は活気ある首都の一角だったが、大地震や疫病が起こってからこの様だ」

 

「成る程、地震が起こった後に疫病が流行ったか?」

 

「あぁ、俺が4歳の頃に地震が起きて、その一年後に疫病の流行って訳だ。そして俺の6歳の誕生日にここは死体置き場に名称変更さ」

 

互いに笑った後、ポケットから煙草のケースを取り出し、一本出して口を咥えながらまた喋り出す。

 

「その時はもう引っ越しした後だったから助かったぜ。それとお前は当時何をしてたんだ?」

 

「俺は田舎出だから親の手伝いをしてたよ。実家は農家さ、俺の代わりに弟が跡取りをする予定だ」

 

煙草に火を付け「そうか」と呟いた後、煙を吸って吐いた。

もう一人の兵士は煙草を吸う兵士を見て、物欲しそうに告げる。

 

「おい、俺にはないのか?」

 

「無いよ。支給品のは全部使ったのか?」

 

「賭に負けちまってよ、煙草も箱事取られた。紙煙草も作ろうにも上手くできねぇよ」

 

兵士の視線が互いの目に向いたのを確認したストアーは一気に走り抜けた。

当然の物音に気付いた橋の家にいた兵士達は小銃を手に取り、辺りを警戒する。

再び配管工の中へと入り、大量の死体袋が散乱した場所に出た。

余りの悪臭に鼻を押さえながら移動した。

 

「なんという悪臭だ・・・!これ程の人間が死んでいるのか・・・?」

 

余りの光景に口を開いてしまうストアー、上の方に視線を向ければ、まるでゴミ収集車がゴミでも排出するかのようにトラックの荷台を傾け、下へと大量の死体袋を落としていた。

周囲には、マスクをした兵士が死体が下にある大量の死体袋を眺めている。

 

「死体が溢れてきたな、向こう側に行けるほど積もるんじゃないのか?」

 

「おい、そんな状態になったらこの国はお終いだぞ!その前にみんな燃やしちまうよ」

 

上から聞こえる声が、ストアーの耳にも入ってくる。

身を底止ながら様子覗っていると、兵士達とトラックは去っていった。

ストアーは立ち上がり、山のように積まれた死体袋を踏みながら進む。

そしてまだ新しい死体袋の中から、見覚えのある女性の手を偶然にも発見した。

 

「この手は・・・!?」

 

声を上げたストアーは直ぐに近付き、死体袋からはみ出ている手を確かめた。

その手の正体は息絶えた自分の妻であった。

何かの間違いだと思って死体袋を開けてみると、自分の妻であり、隣の死体袋の中身は自分の子供達だった。

 

「う、嘘だ・・・こんなの事・・・ありえない・・・!」

 

彼にとっては余りのショックであった。

この救出任務の失敗で主に自分の家族を八つ当たりで殺され、さらには友を酷たらしく殺された。

一連の不幸に、空に向けて大声で泣き叫んだ。

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

暫く泣き叫んだ後、手負いにも関わらず自分の家族の死体全員分を担いで、唯一残っていた地面に埋葬する。

そこへ、叫び声を聞いた追っ手の兵士達がストアーにkar98bを向けていた。

小銃を向けている兵士の顔はガスマスクで覆い隠されており、うっすらと見える眼鏡から細い瞳から目線を感じる。

 

「わざわざ叫んでくれて有り難いぜ。お陰で早く帰れる」

 

「おい、早く撃っちまおうぜ?ガスマスクを付けてても悪臭が抑えられない」

 

「そうだな。さぁ、早く死んでくれや」

 

そう言って、納得した全員が小銃の引き金に指を掛けた瞬間だった。

怒りに満ちたストアーは、小銃を構えていた兵士達を手刀で切り裂いた。

上半身と下半身を切り裂かれた兵士達は、断末魔を上げることもなく息絶え、上半身を失った下半身の根本から血が噴き出して地面に倒れ込む。

全員分の死体が地面に倒れた後、ポケットからマリの左手を取り出して食べ始める。

左手の一部分を喉の奥へと入れた瞬間、ストアーの傷は一瞬で完治、体力も完全に回復して力が漲り、さらに若返った。

試しに近くにあった建物の残骸を粉々に粉砕、自分が一段階強くなったと確信する。

 

「凄いパワーだ・・・!だが、これでもあの女は倒せん。もう少し強く成らねば・・・!」

 

暫し頭を抱えて考え込んだ後、あることを思いついた。

 

「そうだ、ルリを喰えば奴を越える力が手にはいるかも知れない。そうなればあの世界に戻らねば・・・!」

 

家族を無惨にも殺したマリへの復讐の為、拳を強く握るストアー、直ぐに行動に移すことにし、死体置き場から去ろうとする。

道中、ルリが居る世界の奴ら複数と遭遇したが、睨み付けた。

驚くことに道を塞いでいた奴らは、ストアーに道を空けたのだ。

 

「(死体共に命令が出来た・・・?これならあの世界で死者の軍隊を創ることも出来るぞ!)」

 

新たな能力を発見したストアーは、夜の廃墟を進む。

向かう途中、兵士達の会話を耳にする。

 

「確か、あの金髪碧眼の女が来てからこの街は荒れ始めたな」

 

「そうだ。軍装がこのロングコートに変更になったのは、あの女が来るって知らせが入ってからだ」

 

「これは我が国軍新型のロングコートじゃないのか?この弾帯も小銃も」

 

「馬鹿言え、こいつは払い下げだぞ」

 

「新型じゃないのかよ。一体何処の国だ?」

 

「規制が厳し過ぎる国家さ。旅行でつまらないことナンバーワンのな。それより早く奴を見つけて殺そう、ここはマスクをしてても匂う」

 

会話を盗み聞きしたストアーは、異世界へと繋がる扉がある地域へと急いだ。

一方、モールから脱出した小室一行は、枢軸国軍混成戦闘団が壊滅した公園にいた。

激戦を物語るかのように、あちらこちらで枢軸国軍や連合国軍の兵器の残骸がある。

しかも戦後型の戦車まであった。

転がっている死体もそのままであり、奴らに喰われた形跡もなかった。

ここへ彼等が立ち寄ったのは、補給と一時的な休息のためだ。

幸いにもワルキューレは枢軸国軍の兵器は回収されて居らず、自分達の兵器は一部放棄したままだ。

何名かが歩哨に立ち、周辺に気を配る中、モールの脱出で力を使った者達が地面に敷いたシーツの上で寝転がって身体を休めてる。

あさみを射殺したことがショックであったコータは、奴らの集団に目を付けるなや、大きな声を上げなげて突っ込んでいった。

近くで手伝いをしていた孝が、奇行に走ったコータを見て、不審に思う。

 

「なにをやってるんだ平野は・・・!?」

 

「良いから止めろ!」

 

誰かが声を上げた後、一人の日本兵が、叫びながらUMP45を乱射するコータの後頭部を三八式歩兵銃の銃座で殴り、大人しくさせる。

次にドイツ兵がやって来て、コータを回収し、シュタイナーの前に差し出した。

 

「小僧、何のつもりだ?」

 

シュタイナーの問いに黙って一切答えないコータ、隣にいた部下の一人が蹴り付ける。

 

「答えろ、この豚めぇ!」

 

蹴られたコータは、吹っ飛んで仰向けになる。

それと同時に補給が終わり、マイヤーの声が上がる。

 

「出発するぞ、全員車両に乗り込め!」

 

「ふん、どうやら死に急いでいるらしいな。全員、搭乗急げ!」

 

「「「了解(ヤヴォール)」」」

 

孝は仰向けになったコータを担いでハンビィーに乗せた後、自分の軍用バギーに乗り込み、激戦区を後にした。




ここでコータ回復を入れるか、警察署に行くか・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

説得とそれぞれの場面

その頃、攻撃に失敗した挙げ句、小室一行を逃がしてしまったケストナーはと言うと、司令用のテント内で暴れ回っていた。

 

「クソッ!攻撃に失敗した挙げ句にむざむざ逃がしたのか!!」

 

長距離無線機を地面に叩きつけながら、辺りの物に八つ当たりするケストナー。

周りにいたオペレーターや警備兵は、外へと避難している。

 

「おい、歩兵砲部隊はどうしたんだ?チャンスだと言うのに一発も撃たなかったぞ!どういう事だ?」

 

怒れ狂うケストナーに対し、外から指揮官の女性が答える。

 

「先程から通信をしていますが、全く反応しません・・・」

 

「ちっ、背中に気付かず死人共に全員喰われたか・・・こうなれば俺が直接出撃する。ヨルギオスの隊を俺の方に回せ、ここの指揮は任せたぞ」

 

了解(コピー)!」

 

指揮官が敬礼した後、ケストナーは制帽を被り直し、テントを後にした。

ゴーグルを制帽に付け、フォルクスワーゲン・タイプ181に乗り込む。

運転手は女性兵士ではなく男性兵士であり、旧ドイツ軍に似た略帽を被っていた。

後方にはコンドル装甲車六台に自動小銃や突撃銃、迷彩カバーを付けたヘルメット、迷彩服など軍装した男達数名を満載している軍用トラック十台が、エンジンを鳴らしている。

さらにその後ろは、M46パットン中戦車三両が待機していた。

ケストナーが上げた腕を振り下ろした瞬間、部隊は出撃、そのまま小室一行が居る地域まで向かう。

部隊が通るとの連絡を受けたワルキューレの見張り番達は、障害物のバリケードを退け、道を空けた。

そこから続々とケストナーの部隊が通り過ぎていく。

しかし、打倒小室一行に燃える彼は、来る前から捕らえられていた一人の少女が逃げ出したことに気付かない。

基地を警備する歩哨も、欠伸までして仕事を全うして居らず、まんまと少女を基地から逃がしてしまった。

そしてケストナーからの合流命令を受けたヨルギオスは、無線機を戻した後、彼と合流するべく部下達に出撃を命ずる。

 

「あの男と合流せよ、ですか・・・しかし我々には拒否権はありませんね・・・皆さん、合流のために出撃しますよ」

 

自身もBA-64に乗り込み、傘下の歩兵部隊を載せたトラック数台と共に出撃した。

 

「(これ程の戦力を投入するとされると、かなり厄介な敵のようですね・・・まぁ、あの男の傘下に戦車がありますから片が付くでしょう)」

 

風を浴びながらヨルギオスは心の中でそう思うのであった。

一方、小室一行が脱出したモールでは、屋上に避難民が自衛隊の救助を待っていた。

数日間と思われていた彼等の願いは直ぐに叶った。

上空から陸上自衛隊所属のヘリ三機分(護衛のOH-1二機、輸送用CH-47J)が飛来したのだ。

これが目に入った避難民達は自分達の存在を示すためにフレアーを点火してそれを振る。

 

「こっちだぁー!助けてくれ~!」

 

先頭のOH-1のパイロットの目に入り、そこへ後続の二機が誘導される。

 

『屋上に避難民を確認、救出作業開始。オメガ・グループ、ターゲットに備えろ』

 

無線機からパイロットの報告が聞こえてくる。

大型輸送ヘリの機内で、何故か機内にいたオメガ・グループ四人の隊員達に告げた。

そのオメガ隊員の面々は小松に平岡、田中、オメガ9、オメガ11、オメガ15の六名である。

いつものMP5SD6等の隠密装備ではなく、ちゃんとした自衛隊正式採用の89式小銃で、立派な陸上自衛隊普通科装備だ。

 

「ターゲットなんか言ってねぇで、ゾンビって呼べば良いのにな」

 

「小松よ、これは映画やゲームじゃないんだぞ。歴とした現実だ」

 

「弱点はゾンビと同じですけど・・・」

 

装備確認をしながら、小松が言ったことに平岡が突っ込んで、田中が漏らす。

全員の装備確認が終わった後、この班の長であるオメガ9がパイロットに合図を送る。

 

『オメガ・グループ装備に異常は無し、これより救出作業開始』

 

『よし、避難民は二十数人程度、充分に搭乗可能と判断、着陸する。おい、ターゲットを救出完了まで縛り付けとけよ』

 

機長が、小松達に視線を向けながら告げた。

機体がモールの屋上にタイヤが着いた衝撃が彼等に来た瞬間、パイロットが後部ハッチを開き、一緒に乗っていた陸上自衛隊員が、早くオメガ隊員を機体から降りるように指示する。

 

「GO、GO、GO!早く降りて安全確保しろ!!」

 

オメガ隊員達は直ぐに座席から立ち上がり、数秒以内でヘリから降りて周囲の安全を確保するため、周囲に銃口を向ける。

避難民の中に奴らは居ないと判断した彼等は、89式小銃を下ろしてから、機内にいる隊員に知らせる。

 

「クリア!一応、この中には誰も噛まれて居ないみたいだ」

 

「よし!お前等は直ぐに出入り口を見張れ!」

 

安全と確認された判断した隊員は、避難民をヘリの機内に誘導し始めた。

直ぐに班長のオメガ9は、隊員達に指示を飛ばす。

 

「了解、オメガチーム各員、出入り口を見張るぞ!」

 

「は~い」

 

田中が返事した後、奴らが叩く音が休まず鳴る出入り口のドアに、89式小銃を構える。

二機のOH-1は、装備された箱形の二連装ランチャーを、敷地内にいた多数の奴らに撃ち続けていた。

爆音が響く中、避難民達は悲鳴を上げながら大型ヘリへと搭乗していく。

その時、出入り口のドアが遂に耐えきれずに壊れ、そこから奴らが続々と屋上へ侵入してきた。

オメガ隊員達は慌てることもなく、小松がヘリにいる隊員に告げる。

 

「ゾンビ共が入ってきたぞ!」

 

「近付けるな、撃ちまくれ!」

 

「言われなくても!」

 

平岡が言った後、89式小銃の引き金が一斉に引かれた。

連発ではなく単発であり、それも性格にも頭を撃ち抜いている。

的確に奴らは排除されつつあるが、数は全く減らない。

 

「おいまだか?早くしてくれ!」

 

後ろを振り向いた小松が、ヘリに誘導している隊員を急かす。

 

「そんなに急かすな!避難民は訓練されないんだぞ!!」

 

避難民を誘導していた隊員が小松に怒鳴り散らした。

89式小銃に、06式小銃てき弾を装着した田中がドアから湧き出てくる奴らに向けて、発射しようと、全員に知らせる。

 

「擲弾を発射します!破片に注意して!」

 

「みんな伏せろ!」

 

88式鉄帽を抑えながら、平岡が大声で言う。

全員が伏せた後、田中が引き金を引き、ドアに向かって擲弾が発射され、着弾して赤い煙が上がる。

彼等に奴らのパーツが飛んできて、頭に腕や脚が当たる。

 

「やべぇな、こりゃあ!」

 

小松は目の前に、奴らの頭があることに驚く。

暫しの奮闘のお陰か、避難民の収容が完了し、誘導員の隊員が、小松達に告げる。

 

「避難民収容完了だ!」

 

「了解した!全員ヘリに乗り込め!!」

 

オメガ9がMK3A2攻撃手榴弾の安全栓を抜いて、出入り口に投げ込み、ヘリに乗り込もうと走る。

小松達も手榴弾の安全栓を抜いてから、出入り口に向かって投げ込んでから、ヘリに飛び乗る。

最初に投げ込まれた手榴弾の爆破音が鳴った後、他のMK3A2手榴弾が誘爆。

最後の隊員を乗せたヘリは屋上を離陸し、モールから飛び去った。

ようやく救出された避難民達は、肩の荷が下りたかのように、眠りについた。

少しばかりモールの状況が気になった小松は、眼鏡を掛けた30代の避難民の男に話し掛けた。

 

「すいません、ちょっと」

 

「あ、はい。なんでしょう?」

 

「俺達が救出に来る前、モール内はどんな状況でしたか?」

 

「話せば長くなりますね・・・あれは、確か・・・最初の武装した外国人の男女数名が・・・」

 

男の話を聞いた小松達はただ驚くばかりであった。

信じられないことに、ここまで避難民達を守ったのは第二次世界大戦からやってきたドイツ軍の兵士だからだ。

その次に電磁パルスが起こった後、重戦車や装甲車などに乗った枢軸国軍兵士達がやって来た事。

最後に来たのは、軍用モデルのハンビィーに乗った少年少女と屈強な兵士達で、先に来ていた武装集団と同じく手慣れていたとか。

男の言っている事が信じられない小松達は、男に聞こえないように小声で話し合う。

 

「こいつパニックの余り、幻覚でも見てんじゃねぇか?」

 

「あぁ、もしかしたら薬物でもやってんじゃないかな?」

 

小松と平岡が小声で話し合う中、田中が二人に変わって聞いてみることにする。

 

「もしかして・・・薬物の類とかやっちゃってます?」

 

この問いに、男は大声で田中に怒鳴りつけた。

 

「俺の何処が薬物中毒者に見えるんだ!嘘じゃないんだ、本当に見た。エンジン音も一緒なんだ!!」

 

田中の聞き方が悪いと小松と平岡が告げた後、田中は頭をさすりながら謝った。

 

「すいません、僕の聞き方が悪かったです。ちなみにどんな装備をしてましたか?」

 

「写真や映画で見るような物ばかりだったよ・・・あの米軍が使う軍用車が来たときなんか助けが来たのかと・・・」

 

男は俯きながらさらに続けた。

最後にやってきた一行の一人を、避難民の柄の悪い男が襲い、二番目に来た兵士達に連れて行かれた事。

奴らが襲ってくる前にモールが砲撃され、パニックに陥って避難民の一人である少年が恐怖の余り、奴らをモール内へ招き入れた事、謎の武将集団が襲撃してきた事も話した。

彼等が脱出する際は、自分達は屋上に避難して、ずっと救出を待っていた最中に、敷地内で行われている激戦を見ていた事も伝えた。

 

「凄いですね・・・その人達・・・」

 

「もう少し早く来てれば、一戦交えていたかもしれないな・・・」

 

「そ、そうだな。あぁ、遅くて良かった~」

 

もしも「小室一行と事を交えていたら」と、頭に思い浮かんだ三人は、ホッと胸をなで下ろした。

避難民と小松達を乗せたヘリが四国へ向かう中、逆方向へと向かう別のCH-47J二機が隣を通り過ぎた。

窓から見る限り、モールの方へと向かっている。

恐らく搭乗した普通科の歩兵部隊が、完全鎮圧を行うようだ。

完全鎮圧した後には、モールにいた武装集団の調査が行われることであろう。

そのままヘリは、四国の駐屯地へ向かう。

 

一方での、警察署へと向かう小室一行は、相変わらずコータは死に急ぐように奴らを見つけたら、叫びながら銃を撃ち続けていた。

 

「あの豚眼鏡がまたやらかしたぞ!」

 

「止めさせろ!無駄に弾薬を使わせるな!」

 

パイパーの指示で、コータにまた鉄拳が下され、銃を取り上げられる。

このままでは危険と判断したマイヤーが、まもなく到着する所で一時前進を停止し、彼の精神状態を直すように指示する。

 

「このままだと我々は死人の仲間入りだ。彼は即戦力だが、今は新兵の様な状態だ。誰か治療法は知ってるか?」

 

集められた者達の顔を見ながら、彼は告げる。

誰も手を挙げなかったので、付き合いが長いとされる鞠川が手を挙げる。

 

「フロイライン鞠川、何か知ってるので?」

 

「多分、兵隊さんが良く罹る戦闘ストレス反応だと思うの」

 

「確かに、良く新兵が良く罹ってた」

 

鞠川の言った事に反応するように、パッキーが口を開く。

それに続いてブルクハイトやゴロドクが口々に言う。

 

「Zbvに入ってきて一週間目の奴が発症したよ。直ぐにシュタイナーの奴に射殺されたけどな」

 

「俺もそんなのを発症した奴に悩まされたよ。その時は一発ぶん殴って立ち治したが」

 

その意見に全員が悩む中、コータの声が怒鳴り声がまた聞こえてきた。

 

「俺は小室達と別れる!」

 

全員が、コータの方へと向かう。

そこでは、孝とその仲間達が説得している最中だ。

説得は難航しているらしく、いつ誰かがコータに撃ち殺されるか、緊迫した状況だった。

 

「平野、落ち着け!今問題を起こしてどうする!?」

 

「煩い!もう俺は死にたいんだ!仲間が一人減ってお前達は嬉しいんだろう!」

 

コータの言葉に、孝は一瞬黙り込む。

 

「どうしよう・・・行って平野君を立ち治させないと・・・」

 

おどおどする鞠川がコータへ駆け寄ろうとした瞬間、シュタイナーが彼女より先にコータに駆け寄った。

全員が「コータは死んだ」と、心の中で思い、ある者は悩みの種が消えると感じ、ある者は殺さないようにと祈る。

そしてシュタイナーがコータの前に立った瞬間、全員が覚悟を決めた。

 

「殺されるのか・・・?」

 

セルベリアが言った後、コータはシュタイナーに殴り飛ばされた。

勢い良く吹っ飛んだ彼は地面に倒れ込み、起き上がってシュタイナーを睨み付ける。

銃を取ろうとしているコータに対し、シュタイナーは彼に強く告げた。

 

「甘ったれるな。高々婦警一人を助けられず、全員に迷惑を掛けて一人死のうなどと。貴様如きの為に仲間がどれだけ危険にあったか分からんのか?」

 

それを言われて、まだ倒れ込んでいたコータは、全員の目を見た。

心配する目線もあったが、何名かは完全に「早く死ね」と言わんばかりの目線だった。

自分がやってきた行いが全員に迷惑を掛けていると分かり、恥ずかしくなってくる。

そのままシュタイナーは続ける。

 

「死ぬなら静かに死ね。全員を巻き沿いにして死ぬなど迷惑だ。だが、貴様に死なれたら困る者達も居よう。それに貴様は即戦力だからな。貴様が死ねば、戦力が低下し、その所為で死ぬ仲間は、先に死んだ貴様を恨みながら死ぬ事だろう。どうだ?今戻れば、今までのことは水に流してやろう」

 

シュタイナーの言ったことが信じられない者達は、驚きを隠せないでいる。

何せあれだけ敵に背を向けて逃げ出す味方を、何の躊躇いもなく殺す男などだから。

そんなシュタイナーが、コータのことを大目に見ているのだ。

この異様な事に、ブルクハイトは自分の頬を抓り、シュルツは唖然し、アッシュとコワルスキーが小声で会話する。

 

「ありえねぇ・・・あの人殺しが小僧一人を許すなんて」

 

「きっとあの時と同じだよ。覚えているだろ?あの戦いを」

 

アッシュが言ったことにコワルスキーが「ああ、そうか」と、言って納得した。

 

「ただし、断るなら銃を取り上げ、ナイフで自決して貰うが。それが出来なければ俺はお前と学校で共に戦ってきた仲間を全員殺す。どうだ?」

 

シュタイナーが続け様に言った後、コータは立ち上がり、彼の帽子に隠された瞳を見る。

 

「一緒に行きます」

 

コータは、シュタイナーの条件を呑んだ。

どうやら仲間達が自分の馬鹿な行動で巻き込まれて死ぬのが許せず、一生後悔に悔やまれるのだろう。

何とか立ち直ったコータに一息入れた一同は、警察署へ向かう準備をする。




なんか、無理矢理感が・・・

おかしいと思った方は、感想で・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

知らぬ間の別れと警察署内の調査

ここで新キャラ出しても良いかな?


なんとかコータが回復を果たし、ようやく床主東警察署に着いた小室一行。

しかし、窓からは誰一人として彼等を迎える者は居らず、壁には血が付着し、荒れ果てて廃屋と化した署を見て、麗は酷く動揺する。

 

「そ、そんな・・・!折角ここまで来たのに・・・!」

 

「どうやら死人に押し寄せられて落ちたようだな。しかしだ、道路にはここから逃げた痕跡がある」

 

リヒターがフォローするように、道路や駐車場に残された無数のスリップ痕を指差す。

指が指された方向を、孝やシャーロットが見入る。

 

「ホントだ・・・どうやら奴らから慌てて避難したんでしょう。ここには一台も車がありません」

 

孝がスリップ痕を見ながら言った後、シャーロットがスリップ痕を触りながら、いつ頃出来た物なのかを検討する。

 

「これは、結構前からここから逃げ出した様だな」

 

「方向からして、向こうの連絡橋に向かったか、あるいは目立つ場所で避難したか・・・」

 

スリップ痕が続いている方向を見ながら、リヒターは床主空港を繋ぐ連絡橋と小学校を見る。

それを見ていた一行一同は、その憶測に納得する。

突然、連絡橋へと偵察に向かっていたパッキー達が、全員にワルキューレの機甲部隊の事を知らせた。

 

「大変だ、連絡橋を多数の戦闘車両が渡って来てる!」

 

「なんだと、それは本当か?」

 

マイヤーがパッキー達に聞き、リヒターが孝達に「ここで待て」と告げる。

そして何名かがコータだけを連れて、パッキー達と一緒に偵察へと向かった。

物陰に隠れて、橋から内陸部に渡ってくる戦車や装甲車、輸送車両などを双眼鏡で見る。

 

「どうだ、型は分かるか?」

 

隣にいたスコルツェニーは、コータに内陸部に渡って、何処かに集結しようとしている戦車や装甲車などの戦闘車両のことを聞き、双眼鏡を渡す。

軍事オタクであるコータは、渡された双眼鏡を覗き、直ぐに車種が分かった。

 

「戦後型が沢山ありますね・・・しかも東西関係なくアメリカのM60A3戦車にロシアのT-72M戦車など・・・第2世代戦車ばかりだな。自走砲も装甲車、全部統一されていないじゃないか、まるでフィンランド軍の様だ」

 

隣に居たスコルツェニーは、コータの知識の広さに驚きを隠せない。

同じく双眼鏡を覗いていたラッツが、口を開いた。

 

「M16とか、AK74とかに似た突撃銃や自動小銃、ブルパップまで使ってるぞ」

 

「歩兵の装備は、みんな女性兵士じゃないか。しかも先進国の歩兵装備並だ。どう見てもPMCの装備じゃないな」

 

その場にいた一同は、コータの知識の高さに驚きを隠せなかった。

次にパイパーがワルキューレの機甲部隊の数を数える。

 

「戦車数や自走砲と対空型、装軌・半装軌・装輪式装甲車、歩兵の見える数からして旅団規模か・・・戦闘が行われている地域に向かっているとされると、向こうで師団の集結中を行っているという計算だな」

 

彼の言うとおり、車列は微かに聞こえる銃声や爆音の方へ向かっている。

本隊はおそらく戦闘が行われている目前に居るだろう、それも集結中であり、狙うのは今だが、戦車が四両程度で、しかも相手は戦後型が多数、どう考えても勝ち目はない。

 

「こちらが戦闘団規模なら奇襲している所だが、今の戦力では返り討ちだ。手を出すのは止めておこう」

 

的確な判断をしたパイパーは、全員で警察署まで戻る。

敷地内で待っていたメンバーに、床主と空港を繋ぐ連絡橋で、旅団規模の機甲部隊を目撃したと報告した。

 

「ここにヤークトティーガーなど残して置くと、橋の連中に気付かれて攻撃されるだろう」

 

リヒターの言った事に全員が納得し、マイヤーが案を出す。

 

「と、なれば。一行を二つに分ける必要がありますな。一つは署内を調査する、もう一つは何処かに戦闘車両を隠す」

 

出された案は、何の反対もなく全員が賛成、次に警察署を調査するメンバーを決める。

 

「取り敢えず、小室達は警察署(あの建物)を調査する。残りのメンバーは女子供に決定だ」

 

沙耶は、マイヤーが言ったことに異議を唱える。

 

「ちょっと待ちなさいよ。男共の誰かは残らないわけ?」

 

リヒターは顎に手を当てて沙耶に便乗する。

 

「確かに、男では必要だ」

 

「じゃぁ、Zbvの連中はここに残って貰おう」

 

エーリカとリネット、ペリーヌは、驚きの声を上げる。

 

「拒否権はないぞ、あまりダラダラしてると気付かれるからな」

 

反対の声が上がる間もなく、リヒター達は素早く行動し、戦闘車両類に乗り込み始めた。

余り出番が無いリヒトーフェン達は、何処かに向かおうとしていた所を、ありすに止められた。

 

「何処行くの?おじちゃん達」

 

ありすが言った後にジークが吠えた後、一同全員が振り返る。

 

「何処行くって・・・それりゃぁ・・・」

 

「そうだ、ありすちゃん、この飴をミス鞠川の所へ持って行ってくれないか?」

 

デンプシーが言っている最中、リヒトーフェンが割り込んで、翻訳飴が大量に入った大きな瓶を、ありすに渡す。

 

「うん、じゃあ持って行くね」

 

「あぁ、頼むぞ~」

 

ジーク共々ありすが瓶を持ちながら孝達の所へ向かう中、リヒトーフェンは一息ついて、デンプシー、ニコライ、正樹と共に、小室一行からダッシュで離れる。

 

「それ!気付かれる前に逃げるぞ~!」

 

「気付かれたら、惨い殺され方をするからな~」

 

「我々の手立てを悟られたら、連中も只では済まないであろう。この場はひたすら逃げるべし!」

 

「とても(なげ)ぇ砲塔を積んだ駆逐戦車まであるんだ、勝ち目がねぇよ!」

 

走りながら喋るリヒトーフェン達だが、もちろんリヒター達は忙しくて気付かない。

彼等が向かった先には、転送装置っポイ場所に到着し、ニコライがウォッカを飲みながら小室一行に手を振る。

しかし、全く見られておらず、声すら届いていない。

 

「俺達が居なくても生き残れよ~!また会えるとしたら、そん時はウォッカを用意しといてくれ~!じゃあな~」

 

次に正樹が敬礼しながら小室一行に告げる。

 

「これから先、諸君等に様々な試練が降り掛かるだろう。毒島嬢か川島少尉、志雄大と手合わせ願いたかったが、恐らく一生適うことがないであろう。悔いはあるが命には代えられない、健闘を祈る!」

 

デンプシーが次に口を開く。

 

「短いつきあいだったが、悪くはなかったぜ。こんなに早く別れるのは後味が悪いが、俺達にも都合があってな。本当にすまねぇ、だがこれは作者の所為だ。また会う時は事が終わるまで面倒みてやるぜ!あばよぉ!」

 

装置を起動したリヒトーフェンが、最後を締めくくる。

 

「途中離脱で済まんのぉ~しかしワシは急な用を思い出してな、それに脱出手段を見つけてしまった。翻訳飴は出来るだけ多く作ったのを渡しておいたぞ、ただし武器は渡せんがな!生きてたらまた会うことにしよう。それでは皆の衆、行くぞぉ!」

 

周囲に電流が走り、雲行きが怪しくなる。

それが終わる頃には、リヒトーフェン達の姿はなく、小室一行は数時間姿を見せないリヒトーフェン達は逃げたと判断したと言う。

 

「せんせ~い」

 

「な~に、ありすちゃん?」

 

「これおじさんから貰ったの」

 

ありすは鞠川に大量の飴玉が入った大きな瓶を見せる。

これを見ていたシュタイナーは直ぐに、リヒトーフェン達は逃げたと誰よりも先に判断した。

その頃の小室一行は、警察署近くで乗り捨てられていたアーミット社のハンビィー二台(兵員輸送型含め)を見つけ、新たな足とする。

幸いなことにPMC所属のハンビィーはM2重機関銃付きであった。

その近くでM4A2シャーマン中戦車の残骸から無事なM2重機関銃を取り外し、孝達が乗ってきたハンビィーに取り付ける。

 

「これで少しはマシになるだろう。それでは、我々は行くぞ」

 

SdKfz 251兵員輸送1型に乗っていたパイパーは、孝とシュタイナーに告げる。

次に同じく乗っているリヒターが口を開く。

 

「合流地点は小学校前の公園だ。中戦車の様な四駆が三台もあるだろう、大丈夫なはずだ」

 

「室内の探査は慎重にやれ、気を抜くなよ。敵に包囲されたらハンビィーのスピードで突破しろ」

 

言い終えた後に、ワルキューレ仕様のハンビィーに乗っていたパッキーがアドバイスする。

車列はハンビィー三両を残して出発し、リヒター達は合流地点である小学校前の公園へと向かう。

これからとんでもない出会いや発見をすることを知らずに。

残された孝達とシュタイナー達、ミーナ達は小さくなっていく車列を眺めていた。

見えなくなったところで、この中で一番階級の高いセルベリアが仕切る。

 

「さて、我々は探査を始めるか。まずは拠点を決めなければならないな」

 

ちなみにシュタイナーは黙ったままである。

一同はそのまま警察署内へ入り、拠点になるような部屋を探す。

 

「奴らは居ないみたいね・・・」

 

荒れ果てた署内を見渡しながら、麗が口を漏らす。

付け足すように、シュタイナーが言う。

 

「気を抜くなよ・・・死に損ないは何処から出てくるか分からんぞ。武器を片時も離すな」

 

その言葉に全員がゾッとして、身震いを始める。

辺りを警戒しながら、休憩室と書かれた部屋を発見し、ここが調査拠点に最適と判断したセルベリアは、ドアを開けようとする。

 

「開かない。鍵でも掛かっているのか?」

 

「どれ、俺が開けてやろう」

 

「頑張って~!」

 

開かないドアに対し、ジークを抱えたありすに応援されながらコワルスキーが、ドアに体当たりする。

大男に体当たりされたドアはたった一回の体当たりで破壊され、中にいた奴らがコワルスキーに、襲い掛かった。

 

「うわっ!?ヤベっ!」

 

「俺に任せろ!」

 

鉄パイプを持ったアッシュが空かさず入り、部屋にいた奴らを手早く片付けた。

 

「ありがとう相棒」

 

「どうも。ほら、立てよ」

 

アッシュに礼を言った後、コワルスキーは彼の手を借りて立ち上がる。

この動きの早さに、冴子は感激していた。

 

「中々の連携だ、橋での小室君との連携を思い出すな」

 

その場にいなかった者達が感心した。

全員が入れる充分な広さがあると判断したセルベリアは、署内の調査を二人一組で行うことにする。

 

「調査時間を短縮する為、二人一組で行動して貰う」

 

「的確な判断ね、戦えないのはどうするの?」

 

沙耶は判断が良いと褒めた後、非戦闘員はどうするかを問い、セルベリアの代わりに孝が答える。

 

「それは戦える奴が残ればいいだろう。違うか?」

 

「察しが良いわね。それじゃ、あたしと先生は残らせて貰うわ。もちろんありすちゃんもね」

 

孝を評した沙耶は、ルガーP08からドラムマガジンを外して机に置いて、椅子に座る。

それとミーナが防衛を行うメンバーを選び始める。

 

「じゃあ、居残り組を決めるわね」

 

「居残り組って・・・」

 

麗がミーナが言った調査拠点に残るメンバーの名称にツッコム。

聞こえなかったのか、ミーナはそのまま続ける。

 

「私とビショップ曹長はここに残ります。シュルツ准尉も良いですね?」

 

「あぁ?はい、是非残らせて頂きます」

 

「俺も残らせて貰うよ。部屋を一つ一つ見るのは疲れる」

 

「私もですわ。いつ何処から敵が現れる場所なんて、不意打ちを受けて噛まれたらどうするつもりですの」

 

「(怖いんだ、クロステル)」

 

シュルツは敬礼しながらミーナに告げ、それに続いてブルクハイトとペリーヌも残ることにする。

ペリーヌが残ったことに、エーリカが恐がりと思う。

 

「俺も残らせて貰う。文句は一切受け付けん」

 

シュタイナーも残ることとなり、調査メンバーを決めると言う所に、バウアーが手を挙げる。

 

「どうしたの、バウアー少尉」

 

「い言忘れてたんですけど、ルリちゃんがショッピングモールから一言も喋ってません」

 

一同がルリが喋ってないことを、バウアーが言ってから気付いた。

当の本人は、喉に指を差して、喋れないアピールをする。

 

「喉に怪我したの?」

 

「大丈夫か、ルリ?」

 

鞠川がルリの喉に手を当てて、病状を確認し、冴子が心配そうに彼女の顔を見る。

喋れないルリに、セルベリアは調査メンバーから外そうとしたが、ルリが行きたいとメモ帳に書いて告げたので、メンバーに入れることにした。

 

メンバーはこの通り。

1,セルベリア、エイリアス

2,アリシア、バウアー

3,バルクホルン、エーリカ

4,シャーロット、フランチェスカ

5,リエラ、冴子

6,孝、麗

7,コータ、ルリ

8,アッシュ、コワルスキー

 

以下のメンバーが、調査を行うことになる。

 

「大方決まったな。では、調査開始だ」

 

セルベリアが言った後、署内の調査するべく、休憩室を出た。

その前にありすが翻訳飴を全員に渡す。

 

「ありすちゃん、これは一体・・・?」

 

「何かの役に立つと思って、持っててね」

 

有り難く飴を頂戴することにする一同、まずは何処をどの組が調査するのかを決める。




誰か忘れてたら感想で知らせてください。

※追加しました~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

調査開始と新たな出会い

新キャラ登場回です。


警察署内を調査するにあたって、幾つかのチームに分けた孝達。

それぞれセルベリアが決めた担当地区に向かうことになる。

 

「もし、何かあればこの笛を吹け」

 

セルベリアから警笛が全チームに分けられる。

 

「死人は集まるが、その時は援護が来るだろう。準備は整ったな、全員が生きて帰ることを願おう。では、調査開始!」

 

彼女が言った後に、孝を含めた調査チームはそれぞれの担当地区へと足を運ぶ。

3チームほどが二階に上がり、3チームが一階を担当、残りはルリとコータ、リエラと冴子の班は地下担当だ。

 

「私達は向こうを調査する。平野君達は向こうを」

 

「はい!」

 

冴子達は左側の倉庫へ行き、ルリ達は留置所に行く。

室内戦では不利なAK74を持っていたリエラは、警察署付近で死んでいたワルキューレの軽歩兵が持っていたMP5A5短機関銃に取り替えてる。

コータは長物を背中に掛けて、代わりに何処かで手に入れた消音器付きコルトガバメントを構えて前へと進んでいる。

 

「正直、45口径だけではきついな。MP5は無いのかな・・・?」

 

僅かな光を頼りに、足を進めながら今構えているガバメントに文句を付けたコータ。

消音器のお陰様で大きな銃声を抑えられているが、弾倉の中身が少なくて辛い。

ルリはコータの後衛をしながら、奥へと向かう。

突然コータが足を止め、ハンドサインで「奴らが居る」と、ルリに知らせた。

 

「警官だよ。それにラッキーなことにMP5持ちだ」

 

奴らの背中に掛けてある日本警察仕様のMP5Fを指を差しながら言う。

僅かな光しかない暗闇の中で、コータは狙いを頭に定めて、頭を撃ち抜いた後、直ぐに死体に戻った警察官からMP5と予備の弾倉を取る。

 

「警察仕様MP5F。いや、FKタイプだな。MP5kが欲しかったけど、これでいいや」

 

ガバメントをホルスターに戻し、コータはMP5を構えながらルリを連れて、留置所へと足を踏み入れた。

そして新たな出会いをするとは気付かずに。

 

独房の壁に書かれたとある工作員の日記。

暇なので、鍵穴に入らないコンクリートの破片を使って書くことにする。

俺はドイツのベルリンから日本の何処かにワープした。

首都を包囲していたソ連赤軍の砲撃に巻き込まれてワープしたのだ。

初めは地獄かと思ったが、看板に書かれている文字を見て、ここは日本と確信する。

噂で聞いていた日本とはとてもかけ離れており、まるでタイムスリップした感じだ。

てっきりナチスの新兵器かと思ったが、俺の思い過ごしだったようだ。

荒れ果てた家に入って、カレンダーを見たら、西暦を70年経過してることが分かり、タイムスリップしたと嫌でも分かるようになる。

周囲を歩いていたら、俺が戦ってきた物と似たモンスターが襲ってきた。

いつの間にか持っていたM1トンプソン短機関銃を撃ち続けたが、効果無し。

頭部に一発45ACP弾をくれてやったら、動かなくなりやがった。

やはり倒し方が似ていると思い、周りにいた歩く死体を全部、元の死体に戻してやった。

その次は、身体に合わない武器を持った少し蒼が濃い髪の嬢ちゃんが襲ってきた。

暫く銃撃戦をやっていたら、警官達がやって来て、取り押さえられた挙げ句に署で武装解除され、嬢ちゃん共々地下の留置所(豚箱)に放り込まれた。

他にも豚箱に放り込まれた俺達だけではなく、アメリカ海兵隊の三等軍曹やドイツ国防軍陸軍の兵士、etc・・・が別々の豚箱に放り込まれていた。

ちなみに俺が入っているのは、嬢ちゃんの隣の方だ。

ここ暫くは人の声で溢れ、飯も二食抜かれて出されていた。

上の煩さはノイローゼになりかけた程だが、それも突如終わった。

最初の悲鳴が上がって銃声が鳴り響いた。

数十分後には、車のエンジン音が聞こえ、生きている人間の声は地下だけになった。

それから三時間後には、歩く死体が地下にやって来た。

直ぐに鉄格子から離れ、死体共から逃れる。

ひつこく手を伸ばしてきたが、数時間したら諦めて一階に戻っていった。

暫く電機がついていたが、外で何か起きたのか、ブレーカーが落ちたらしく停電し、太陽の僅かな光だけが頼りの生活になる。

人が居なくなった所為か、飯も来なくなり、停電が起きてからこの二日間、飲まず食わずだ。

嬢ちゃんは飢えに苦しんでいることだろう。

隠し持っていた小道具も、前まで居た警官に取られて、脱出する術がない。

あと一日待って誰も来なければ、俺は舌を噛んで自殺することにする。

終わり。

 

そう壁に刻まれた文字を見ながら、男は布団に寝そべっていた。

他に独房に入れられている者達はただじっと俯いているだけで、何もしようとはしない。

そしてここに、ルリとコータが来たのだ。

 

「ン、足跡がするぞ?」

 

独房の中の男は、床に耳を付けて、ルリとコータの存在を知る。

 

「運が回ってきたな」

 

別の独房に居たWW2のアメリカ海兵隊の三等軍曹が呟く。

他に居るドイツ国防兵とタンクトップの少女は、眠ったままだ。

姿が見えるところまで二人が来ると、三等軍曹は声を掛けた。

 

「おい、そこにいる奴。お前だ。死人じゃなかったら返事しろ」

 

予想だにしない出会いに、コータは言われたとおり返した。

 

「独房に捕まっている方ですか?」

 

「どうやらちゃんと生きた人間だな、返事をしてくれて感謝する。手前の独房に近付くな、死人の仲間入りを果たした奴が、噛み付こうとしてるぞ」

 

三等軍曹の言葉に、コータは疑問に思い、距離を取って手前の独房を見た。

奴らが鉄格子越しから仲間に入れようと、呻り声を上げながら向かってくるが、鉄格子が塞いでいるので余り意味はない。

うっかりと左側の独房に近付いたルリは、中にいた奴らに捕まってしまう。

 

「!?」

 

鉄格子にルリの身体が当たる音が鳴ったので、コータは振り返り、コルトガバメントを抜いて、奴らの頭を撃ち抜いた。

助けられたルリは、メモ帳を取り出して、感謝の気持ちを書いた文字をコータに見せる。

 

「どうも、どうも」

 

ぺこぺこしながらコータは照れていた。

そんな彼に、三等軍曹は声を掛けた。

 

「見た目で鈍臭い奴だと思ったが、どうやら違ったみたいだ。紹介しよう、俺はジャック・ローバック。アメリカ合衆国海兵隊所属で三等軍曹だ、今の階級は准尉だがな。ある作戦に参加して、迫撃砲で吹っ飛ばされたら未来の日本にタイムスリップしていた。そちらの方は?」

 

鉄格子から左手を出して、コータの名を問う。

 

「平野コータです!藤美学園の二年生です!」

 

「今の日本人は腰抜けばかりだと思ったが、お前は違うようだ」

 

「感激の余り、返す言葉もありません!」

 

「所で、そこの嬢ちゃんの名は?」

 

ローバックが聞いた後に、工作員が口を開いた。

 

「確かに気になるな。どうやら喋れないみたいだが・・・」

 

この言葉の後に、別の独房に居たドイツ国防軍の兵士が覗きに来る。

名前を問われたルリは、メモ帳に自分の名前を書いて、ローバックや工作員に見せた。

 

「"ルリ"か・・・姓名は無いのか?」

 

工作員は姓名を聞き出そうとするが、ルリは首を横に振って、名乗ることを断る。

 

「それは残念だ。所で銃を持ってたな?それで開けてくれないか?」

 

ローバックが、鍵穴を指差しながらコータに告げる。

 

「分かりました、離れてください」

 

直ぐに手に持つ拳銃で独房のドアの鍵穴を撃ち抜いた。

開けられると確認したローバックはドアを開き、コータ達の前に立って、礼を言う。

 

「感謝するぞ、コータ。他の奴らも出してやろう」

 

「はい!」

 

コータは直ぐに全員の解放に取り掛かった。

最後に少女が入っていた独房の鍵を撃った後、ガバメントの弾倉を取り替える。

ドイツ国防軍の兵士が出てくると、コータはその兵士が誰か直ぐに分かった。

 

「あ、貴方は・・・!ドイツ国防軍陸軍第352歩兵師団所属のハインツ・ゼーフェロー伍長ですよね!?」

 

興奮しながらコータは、ドイツ軍の兵士に質問した。

 

「あ、あぁ・・・そうだが・・・?」

 

日本語を喋っているコータは、ハインツが何を言っているのか理解できないようなので、翻訳飴を彼にあげた。

 

「こ、これを!」

 

飴を食べたハインツは、コータがドイツ語を流暢に喋っていることに驚いた。

 

「本当ですよね!?その1943年型戦闘服を着ているからして」

 

「な、何でドイツ語が喋れるんだ・・・!?」

 

「この飴のおかげですよ。どうしてこうなるのか良く分からないですけど」

 

その答えに納得したハインツは、自分の名を名乗った。

 

「以下にもハインツ・ゼーフェローで、ドイツ国防軍陸軍第352歩兵師団所属の伍長だが、それがどうしたんだ少年?」

 

「ヒャッハァー!パイパーとマイヤー、スコルツェニーと同じ本物だ!!」

 

取り敢えず興奮しているコータに、ハインツは自分が転移する前の事を話した。

 

「オマハビーチから脱出している最中に、霧に呑まれてこの様だ」

 

次に工作員が名乗りを上げる。

 

「俺はウィリアム・J ・ブラコヴィッツだ、言いにくかったら"BJ"とでも呼んでくれ。宜しくな」

 

最後に出て来た少女は、名乗らなかった。

 

「名など名乗るつもりはない・・・」

 

この言葉に全員が驚く、その直後、彼女のお腹が鳴る音が聞こえた。

それを聞いていたルリは、翻訳飴を少女に渡す。

 

「は、腹など減っていないが・・・今は仕方が・・・ない」

 

顔を赤らめながら、少女は飴を口に含んで、ボリボリと噛み始めた。

 

「ボリボリ噛んで大丈夫なのか?」

 

「ある男が飴玉を噛めば落ち着くと言っていた。ハッ!なんでお前は私達の言葉が分かるんだ!?」

 

飴を噛み終えて、飲み込んだ後、ルリからスターリングMk7短機関銃を奪い、それを構えて警戒する。

 

「落ち着け、俺達は今協力するしかないんだ。短機関銃(サブマシンガン)を嬢ちゃんに返せ」

 

少女は周りを見ながら、状況を判断した後、ルリにスターリングMk7を返した。

 

「今は協力することにしよう。異論はない」

 

丁度その時、冴子とリエラの姿が見えた。

ケミカルライトを使って、存在を示す。

 

「な、なんだあの光は!?」

 

「毒島さんだ!大丈夫、味方ですよ!」

 

少女は、ケミカルライトの光に驚きを隠せないが、コータが教える。

二人が見える距離まで近付くと、BJとローバック、ハインツが、彼女達の美しさと美貌に声を上げる。

 

「ここにいる二人とは大違いだな」

 

「あぁ、休暇で見に行った女優を思い出す」

 

ハインツは睨まれた感じを察知したが、後の二人は冴子とリエラに夢中で気付いてないようだ。

充分に見えたリエラの姿を見た少女は、驚きの余り彼女の名前を言った。

 

「リエラ・・・!?」

 

「イムカ・・・!?」

 

やって来たリエラも、少女の名を言って、驚いた表情をして固まる。

 

「知り合いなのですか?」

 

隣にいた冴子は、リエラに少女のことを聞いた。

 

「えぇ、前の世界の戦友よ!まさかこんな所で会うなんて・・・!」

 

「わ、私も驚きだぞ!まさかクルトと結婚したお前がこんな所に居るなんて、べべ、別に嬉しい訳じゃない///」

 

恥ずかしながら言うイムカという少女に、リエラと周りにいた者達は笑い始める。

結婚と言う単語に、冴子とルリは気になったが、今はこんな状況なので、気にしないでおいた。

独房に入っていた三人が、後から来た冴子とリエラに名乗った後、一同は、一階の休憩室まで向かうことにする。

その間リエラが、イムカの事についてみんなに話す。

 

「この()はイムカって言う名前でダルクス人なの。今はそれを表すスカーフはしてないけど、あぁ、ダルクス人はねぇ」

 

「そこまで聞くつもりはない。君とその嬢ちゃんの事について知りたいのだが・・・」

 

ダルクス人について、解説し始めたリエラに横槍を入れたローバックは、前の世界でリエラとイムカとの関係を聞いた。

それを聞かれた彼女は、前の世界にいた事を皆に話す。

第二次世界大戦に似た別のヨーロッパで二度目の戦争を経験し、死神呼ばわりされて懲罰部隊に送り込まれ、そこでイムカと出会った事。

最初は無関係であったが、クルトという新しい隊長のおかげで、少し会話が出来た事や隊に馴染めた事。

仲間の一人が離反した挙げ句、正規軍に追われることとなり、敵である帝国との戦闘を続けていたが、正規軍に追い詰められ、自らの秘密ヴァルキュリア人であることを全員の前で明かし、それが原因でイムカに殺され掛けるが、それが打ち解ける切っ掛けとなった事。

祖国ガリア公国を守る為に、国外にいる敵との最終決戦で見事勝利し、部隊は解散。

その後、部隊長であるクルトと添い遂げるまでのことを話した。

 

「その故郷を焼き払った仇はセルベリアさんだったの・・・」

 

「大変だったんですね・・・」

 

話を聞いた冴子がリエラに共感し、昔のことを思い出したイムカは、少し落ち込む。

ハインツは、彼女達が自分が経験した地獄のような戦場を幾つも潜り抜けてきたに驚き、感心する。

一階に上がった後、ルリが警笛を取り出し、休憩室から離れた場所に吹く。

音に釣られて奴らが集まってくるが、探査に向かった仲間達も来るので、置き手紙を受付に置いておく、

奴らが集まってくる中、急いで休憩室に入る。

 

「お帰り、早かったわね・・・?」

 

四人の見慣れない者達が居たので、沙耶は驚いて、コータに訳を聞いた。

 

「あ、あんた。その人達、誰なのよ・・・?」

 

「地下の留置所で捕まっていた人達です」

 

沙耶はじっくりと、四人の服装を見て、異世界からやって来た者達と判断して、コータを自分の所まで引き寄せる。

 

「なんですか高城さん」

 

「また変なのを仲間に入れたわね?戻ってきた班に説明するのが面倒よ」

 

こそこそと話している二人を無視して四人は、ミーナと待機組に自己紹介し始める。

紹介が終わった所で、休憩室の外から奴らが倒れる音がし、数秒後には調査班の者達が入ってくる。

 

「置き手紙を確認させて貰ったが、あれはどういう・・・!?」

 

「お前は・・・!?」

 

調査班の全員が入り終えた後、セルベリアとイムカの視線が合った。

休憩室内は緊迫した空気に包まれた。

先に動いたのはイムカで、机に置かれていたリネットのFNハイパワーを手に取り、セルベリアに飛び掛かる。

素早い動きでセルベリアが身構える前に、彼女を押し倒し、鼻に銃口を突き付けた。

銃口を向けるイムカの瞳は、殺気と復讐心に満ちていた。




ローバックさんの名字は、中の人ネタでジャックにしました。

そしてイムカに銃口を突き付けられた、セルベリアはどうなる!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

装備を取り戻せ!

「なっ!何をするだァーーーーーッ、ゆるさんッ!!」

 

セルベリアを押し倒して、整った鼻先に銃口を突き付けるイムカに、怒りを表すバウアー。

愛らしい声で叫んでいる為に、大した迫力もないが。

 

「お前ぇ・・・!何故ここに居る!?」

 

殺意に満ちた表情で、セルベリアに問い掛けるイムカだが、銃口を向けている彼女の表情は至って冷静だった。

沙耶と他の者達は驚いている。

 

「あ、あんた等・・・会った早々仲間割れなんてそんなに仲が悪いの・・・!?」

 

「引き金を引けば私を殺せるだろうが、次は貴様が死ぬぞ」

 

告げられたイムカは、後頭部から伝わる堅い感触に気付いた。

そこには、後頭部にワルサーP38を向けるシュタイナーの姿があった。

ローバックも拳銃を奪おうとしたが、ミーナにP7自動拳銃を向けられている事に気付き、手を引く。

 

「動かないで。武器を奪おうとした瞬間、貴方を射殺します」

 

「ちっ、お前等もドイツ野郎の手下かよ!」

 

舌打ちしながらローバックは手を挙げる。

BJの方は、全員が持っている武器を見渡しており、いつ行動を起こすか分からない。

このままでは「ここで仲間割れを起こして、銃撃戦となり、その音を聞き付けた奴らに全員が殺されてしまう」と、察した孝は口を開いた。

 

「仲間割れなんて今はしてる場合じゃないかと思います」

 

彼が言ったことにBJは納得、その後、ローバックが便乗するように言う。

 

「確かに、今はこんな事をしても何の意味もない。ただ歩く死体の仲間入りをしているような物だ」

 

「その通り。この小僧の言うとおり、ここで殺し合いをしても何の意味もない。そう言うことだろ?坊主」

 

「は、はい。その通りです!」

 

孝はローバックが言ったことが自分の言いたい事と全く同じである為、少し動揺するが、何とか持ち直す。

ここでの復讐は無意味な行動と判断したイムカも、銃口をセルベリアから離し、リネットにFNハイパワーを返した。

 

「返す」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

「ここでの復讐は得策とは言えない。全員を危険に晒さすだけだ・・・生き残るには協力するしかない」

 

そう言った後にセルベリアに手を出して立たせた。

シュタイナーも拳銃を腰のガンホルスターに戻し、これからどうするのかを孝に問う。

 

「丸く収まったところだが、新顔に渡す武器は無いだろう。それに我々はそれなりの音を立ててしまった。死に損ない共が仲間に入れようと集まってくるだろう・・・」

 

彼が言った後に、ドアの窓から見える奴らの影を数体見つけた。

しかも真っ直ぐと、休憩室に向かってくる。

 

「どうするんだ、リーダーさん。新参の俺達は手ぶらだぜ。素手で歩く死体と戦えってのか?」

 

孝に向かって、ローバックが告げた。

次にBJが口を開く。

 

「装備はみんなポリ公に取られちまったんだ。ここは強行突破と行くか?坊主」

 

「どうするのよ、孝」

 

BJが言った後に、麗に問われた孝は、強行突破を判断した。

 

「ここは突破しましょう!麗、押収品とか証拠品の保管庫とか知ってるか!?」

 

「えぇ、確か小さい頃に見せて貰った記憶が・・・」

 

「もう!ハッキリしなさいよ!」

 

ヒステリックに沙耶が言った後、麗は思い出した。

 

「そうだ!確か一階の東側にあったとおもうの!」

 

言ったことに、BJは早速行動を起こす。

 

「そうか!そこに俺達の装備があるんだな?そこのグラマラスなお嬢さん、今座っているパイプ椅子を貸してくれ!」

 

「えぇ・・・はい!」

 

鞠川からパイプ椅子を貰ったBJは、両手で持つ。

横からブルクハイトが、大丈夫なのかを問う。

 

「そんな武器で大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ、パイプ椅子でも人は殺せる」

 

「他の奴らはまともな奴を持ってるけどな」

 

ツッコミを入れるかのように、バルクホルンが言った。

他の三人を見れば、モップや角材などを武器にしており、BJだけがパイプ椅子だ。

今更武器を変えるのは恥ずかしいだけなので、そのままで戦うことにする。

 

「準備は整ったよ、小室!」

 

「よし、行くぞ!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「オォー!」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

全員が応じた後、孝は勢い良くドアを開けて、目の前にいた奴らの頭をイサカM37のストックで叩き割る。

開けた先には数体の奴らが待ち受けていたが、お構いなしに麗と冴子が突っ込んで、一瞬で片付ける。

それを見ていたBJとローバックが感激の声を上げた。

 

「熟練の兵隊並みに動くな・・・!」

 

「M14に銃剣を付けた触手の嬢ちゃんと刀を持った大和撫子の嬢ちゃんはすげぇな!」

 

その二人の後ろから、アッシュとコワルスキーが声を掛ける。

 

「ショッピングモールからこんな感じだぜ!」

 

「怒らせると怖いぞ~!」

 

そのまま残りの奴らを鉄パイプやバールで倒す。

ドラムマガジンのルガーP08を持つ沙耶は、不慣れでありながらも、奴らの頭を撃ち抜いていく。

そしてBJとローバックに振り向き、告げる。

 

「言っとくけど、私は天才だからね!」

 

流石にその言葉に動揺を覚える二人であった。

それなりの重さがある自動小銃M1918A1BARを持つシャーロットは、単発(セミオート)射撃で確実にヘッドショットを決めていき、ローバックを驚かせる。

次にフランチェスカが、高い運動能力を生かして、奴らを蹴り倒し、イムカを驚愕させた。

武器を持たない鞠川とありすは、リネットに守られながら、先行する孝と麗の後へとついていく。

新参者のハインツは負けじと角材で奴らの頭部を次々と叩き割っていた。

ルリは銃身が短いSG553のセミオートにして周囲の奴らを片付けている。

 

「女子供に負けるわけにはいなかんな!」

 

孝達に負けじと、BJはパイプ椅子を振り回しながら奴らを退けた。

その次に、鞠川とありすが背後から奴らに襲われる。

 

「いけない!」

 

気付いたリネットは、ブレン・ガンを向けようとするが、狭い通路では取り回しが悪く、間に合わない。

直ぐにイムカはペリーヌのレイピアを奪い、鞠川とありすの元へ急ぐ。

 

「あれ?ちょっと、返しなさい!」

 

レイピアを取られたペリーヌは怒るが、イムカは無視して、鞠川とありすの後ろに居た奴らを手早く排除した。

 

「ありがとう~ツンツンな娘!」

 

「ありがとね、お姉ちゃん!」

 

「今は抱き付いている場合じゃない!」

 

二人に急に抱き付かれたイムカは、鞠川の大きな胸囲が身体に押し付けられている感触を覚えて、引き離そうとする。

次にペリーヌがやって来て、レイピアをイムカから強引に奪い返す。

 

「貴女ね!角材じゃ我慢できないからって、私の剣、ましてや人の武器を奪うとはなんてr」

 

「話は後!早く小室君達についていく!」

 

後ろからM4A1カービンを持ちながら来るアリシアに止められ、仕方なくペリーヌは孝と麗の後についていくことにする。

その後、イムカに向かって舌を出して挑発行為をした。

暫し奴らを倒しながら前に進んで行くと、ようやく押収品や証拠品が納められた保管庫が見えた。

 

「あれよ!あったわ!」

 

麗が指を差しながら保管庫があったと皆に告げた。

MP5FKを単発で撃っていたコータは、直ぐに保管庫のドアに近付き開けようとしたが、鍵でも掛かっているのかびくともしなかった。

 

「鍵が掛かってますよ!」

 

「俺に任せろ、暫く時間をくれないか?」

 

「分かりました。では針金を」

 

BJが保管庫のドアの鍵をピッキングで開けるので、コータは懐から針金を出して、それを彼に渡す。

 

「早く済ませてくださいよ!?」

 

「分かっている!そう焦らすな!」

 

孝がイサカM37を構えながら言った後、BJは返答しながら作業に取り掛かった。

感知魔法が使えるミーナは、直ぐに近付いてくる奴らの数を特定作業に入る。

 

「銃声の所為か、かなりの数が集まってくるわ。外部からも数体が入ってくる!」

 

「えぇー!?そんなに相手できないよ!おじさん早く開けてよ!」

 

「弱音を吐くな!それでもカールスラント軍人か!?ハルトマン大尉!!」

 

「煩いぞ!黙って死人を始末しろ!!」

 

ハルトマンとバルクホルンが余りにも煩い為か、ピッキング最中のBJに怒鳴られる。

数分したら、保管庫のドアの鍵が外れ、中に入れるようになった。

 

「開いたぞ!みんな早く入り込め!」

 

「死人の仲間入りになりたくなければ早く入れ!」

 

BJの知らせの後に、ブルクハイトが保管庫に入るよう急かす。

全員が保管庫に入った後、最後に入ったリエラが閉める。

数体ほどの奴らがドアに殺到し、暫くは耐えられそうもないと判断して、アッシュとコワルスキーがバリケードになるような物をドアの前に置いた。

 

「この感じ、学園の思い出すな」

 

「あぁ、そう言えばあの時と同じね」

 

冴子が言った後、沙耶が思い出したかのように、学園からの脱出前の職員室のことを思い出す。

 

「お二人さん、昔話をしている最中に悪いが」

 

ハインツが水を差すように、沙耶と冴子に話し掛ける。

二人は同じく学園にいた孝、麗、コータ、鞠川、ルリが話を聞いていない事に気付く。

 

「ここは本当に押収品や証拠品の保管庫か・・・!?」

 

「前に見せて貰った時は、こんな物無かったのに・・・」

 

「これが警察署の保管庫・・・?ランシールにあった武器庫と同じだ」

 

「まるで武器庫じゃないか・・・!」

 

保管庫の中を改めて見ると、そこには様々な小火器と兵器がなどがあり、武器庫と化していた。

差し詰めタイムスリップしたのか異世界から転移してきた物を、ここに勤務していた警官が回収していたのであろう。

新参者の四人は、自分の装備を探す。

 

「あった!ポリ公共が、慌てて逃げやがったようだな」

 

前まで東署に居た警官達の文句を言いながら、ローバックは自分のM1A1トンプソンやコルトM1911A1と各種長期任務用装備品を自分に装着し始めた。

最後に迷彩カバーを施したM1ヘルメットを被った後、コータに似合ってるかを問う。

 

「どうだ、決まってるか?坊主」

 

「似合ってますよ。とても!」

 

「ありがとう坊主。そう言えば、まだその他の奴らに名乗っていなかったな。俺はジャック・ローバックだ。合衆国海兵隊曹長、武装偵察部隊通称フォース・リーコンの所属だ」

 

海兵隊(マリーンズ)か・・・」

 

ローバックが所属している軍の名前を聞いたシュタイナーが小さく漏らす。

次に、M1トンプソンを肩に担いだBJが出てくる。

左手には、OSSの隊員が特殊作戦で用意られるISRBウェルロッドMkⅠ消音拳銃が握られている。

 

「貴様・・・その拳銃は・・・!?」

 

「この拳銃を持っていることが示すとおり、俺は工作員だ。お前達は信用できると判断して所属は言わないが、名前は教えてやろう。ウィリアム・J ・ブラコヴィッツだ、気軽にBJとでも呼んでくれ」

 

BJが名乗った後、シュタイナーはウェルロッド消音拳銃を見て、彼は工作員と直ぐに気付いた。

装備品を探していたハインツは自分の装備を見つけ、身体に装着していく。

43年型規格帽を鞄の中に入れ、42年型シュタールヘルムを被った後、kar98k小銃を右肩に掛け、首に7.92㎜弾の束を巻き、MG42汎用機関銃を担いで皆の前に姿を現す。

 

「申し遅れた、自分はドイツ国防軍陸軍第352歩兵師団所属のハインツ・ゼーフェロー伍長です。機関銃手をしております」

 

「イェェェェイィ!!」

 

「この軍オタは・・・!」

 

ハインツが名乗った後、コータは興奮し、沙耶はそれにツッコミを入れる。

自分の装備品を身に付けていたイムカの後ろから、フランチェスカは這い寄って、胸を鷲掴みする。

 

「な、何をする!?」

 

「うわぁ~胸無いぞ?こいつ」

 

「こらこら、あんまり言うな」

 

「そんな物、邪魔な物にしか過ぎない!」

 

シャーロットとフランチェスカが、イムカの胸のことに対して言うが、彼女が巨乳の女性陣に対してトンデモない事を発言した。

それを聞いていたありすが、鞠川に胸の事を聞く。

 

「先生~先生のおっぱいは邪魔なの?」

 

「ちょっと下が見えづらいけど、大丈夫よ」

 

全くイムカが言ったことが聞こえていないか、あえて無視したのか、鞠川は普通にありすの問いに答えている。

セルベリア、リエラ、麗、沙耶、リネットのダメージは大きかったらしいか、膝をついてショックを受けていた。

それをアリシアやバウアーが宥めている。

アッシュとコワルスキーは、イムカの発言に対して、話し合う。

 

「コワルスキーよ、あれは貧乳の戯言だな」

 

「その通りだな。HAHAHAHA」

 

笑いながらアッシュとコワルスキーが語っていたが、何処からか殺気を感じて黙り込む。

青いネームレス専用の戦闘服を着たイムカは、近くに置いてあった自作の愛用武器「ヴァール」を持った。

その異様な武器に、シャーロットが興味を示す。

 

「おい、なんだそのバズーカみたいな奴」

 

シャーロットが聞いた後に、フランチェスカも興味を示すようマジマジとイムカのヴァールを見ている。

 

「おっきいな武器・・・サーニャの持ってる奴に似てる・・・」

 

フランチェスカがヴァールを触りながら感心する。

 

「これか、これはライフルと対戦車火器の機能を持ち合わせた武器だ。白兵専用の剣も装着している。私自作の武器だ、故郷の狩猟具を参考にした」

 

「す、すげぇな・・・」

 

イムカが答えた後、シャーロットとフランチェスカは、ヴァールに対して驚きを隠せない。

最後にイムカが、シャーロットとフランチェスカと共に皆の前に姿を現した。

 

「これは、俺を襲ったときの・・・!」

 

「ちょっと懐かしいわね、イムカ」

 

面識があるBJは、最初にイムカと出会ったことを思い出し、戦友であったリエラは、懐かしの日々を思い出す。

 

「その通りだ、リエラ。しかし、かつて共に戦っていた私ではない。ヴァールはあの時から格段に強くなった。戦車付きの一個中隊を一人で相手に出来る。実力次第では味方の援護はいらない。私はイムカ、元の所属は言えない」

 

「あの時よりかなり強くなってるわね・・・」

 

「今戦ったら、危ういな・・・」

 

リエラはイムカのヴァールの性能強化と成長に関心を覚え、セルベリアは命の危機を覚える。

大きなヴァールに、冴子とエイリアスが「重くないのか」を聞く。

 

「少し聞くが、重くはないのか?」

 

「こんなの対戦車槍よりも重そうだぞ?」

 

「大丈夫だ、毎日丸太を抱えて鍛えている。問題はない」

 

イムカの答えに、全員が感心を覚える。

その後、保管庫の武器を拝借することにした。

 

「平野、この散弾銃、ポンプの部分が無いけど」

 

孝は見つけた散弾銃ベネリM4自動散弾銃をコータに見せた。

 

「あぁ、これ。イタリアの散弾銃メーカー、ベネリ社の軍用散弾銃だよ、アメリカ海兵隊に採用されてM1014として採用してるよ」

 

トカレフ自動拳銃を持っているコータの解説に感心した孝は、予備弾倉と共にベネリM4を取った。

イサカM37をどうするか迷っていたが、ブルクハイトに渡すことにした。

 

「散弾銃は最近使ったこともないが、貰っておくか」

 

一行は保管庫で、押収品の武器で装備を調える事にする。

それが終わり次第、彼等は署内の調査を再開するであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

前から居た転移者

また新キャラ登場・・・


マイヤー達と別れ、東警察署で麗の父親を捜す孝達。

しかし、黒騎士を初めとする転移者達の他に、奴らと呼ばれる歩く死者が発生した直後から床主に転移した者が居た。

その名はカール・フェアバーン、CIAの前身OSSに属していた工作員で狙撃手、味方からはイーグルウォッチという愛称で呼ばれている。

出身は一切明かされてはいないが、狙撃手をしていることから、猟師が盛んに行われている地域の出身とされる。

標的を狙撃する際には、相手の習慣を観察し、周りの状況を把握、自分が有利な状況を作り出す事に専念している。

そもそも彼が転移した時期は朝鮮戦争休戦間近、ソビエト連邦こと東側は彼が朝鮮半島に居ることを知ると、精鋭の狙撃手を軍事顧問と共に派遣。

理由はアメリカこと西側一の狙撃手である彼を殺害してこそ、東側は狙撃に有利になると思ったからだ。

同時に戦時中、彼に殺害された多数のソビエト赤軍将兵の敵討ちや報復とも言える。

次々と送り込んだ刺客がカールによって破られていくが、休戦協定間近で一人の狙撃手が狙撃人生を引き換えにして彼の頭部を狙撃、殺害に成功した。

そしてこの世界に第二次大戦中の姿のままで、この世界に転移したのだ。

 

「今日で一週間目。電機と水が通らなくなったら人が消えた」

 

独り言をしながら、カールはメモ帳に印を付ける。

最初にこの死者の楽園と化した世界へ来た時、数々の地獄を潜り抜けてきた彼は、その経験でこの世界の状況を把握し、直ぐさま奴らと遭遇する。

敵の習慣を長年観察してきた彼は、一目で普通の人間でないことに気付き、人間が即死する急所を撃ち、弱点を誰よりも早く知った。

法が徐々に崩れ始めた世界で、暴徒と化す人々の姿を自身の目で目撃した。

生きている人間は尤も信用できないと察し、ワルキューレの戦乙女達による蛮行も目撃した為、今まで誰の手を借りずに一人で生きてきた。

やがて電磁パルスが日本上空で起こり、電子機器・生活に欠かせないありとあらゆる物が使用不可能となると、反日国家群による日本侵攻が始まる。

カールは侵攻に来た敵兵と何度も交戦や、敗残兵狩りに来た、ワルキューレの掃討部隊の目を盗みながら安全地帯への避難に成功する。

以降、林の奥にある小屋を拠点にサバイバル生活を送っている。

彼は今、東署で止まっていた小室一行を目撃し、東署へと向かっていた。

どうしてカールの気が変わったのか、その理由は彼等が来ていた服装の所為だからだ。

とはいえ、相手はどれも殺害してきた枢軸国の軍服を着た者達だが。

 

「(こんな状況で、戦争なんかしてる暇はないだろう。あのドイツ(ジョルマン)日本(ジャパン)の軍隊の中にロシアの軍服着た奴が混じってたんだ。アメリカ人が協力を頼めば、仲間に入れるだろう)」

 

そう心の中で思っていた彼はスプリングフィールドM1903A4狙撃銃とM3A1短機関銃、ISRBウェルロッドMkⅠ消音拳銃、コルトM1911A1自動拳銃を持って、道にいる奴らを避けながら東署へと足を進めた。

その頃、小室一行を殲滅せんと企むケストナー配下の部隊では。

 

「なに、駆逐艦の主砲を積んだ戦車を見ただと!?」

 

小室一行のヤークトティーガーを目撃した軽歩兵の報告に、ケストナーは驚きの声を上げる。

幼い顔付きを残す自分より20㎝ほど身長が低い女性兵士の両肩を掴んで、再度問う。

 

「本当なのか?それは・・・?」

 

「は、はい!駆逐艦の主砲みたいに長い砲身を・・・回らないみたいでした・・・」

 

睨み付けられた女性兵士は、震えた声で返答する。

 

「ヤークトティーガーだな・・・!やはり奴らだ、間違いない。それとあの警察署付近でパトロールしていた者を連れてこい!」

 

了解(ヤヴォール)司令官(コマンダー)!」

 

体格の優れた男性兵士に連れてこられた小柄の戦乙女二名は、ケストナーの前に出された。

 

「お前達があの警察署付近でパトロールしてた奴らか?」

 

「さ、サー。そうでありますが・・・?」

 

少しビクビクしながら答える童顔の女性兵士、怯える子羊のような彼女達に対して、ケストナーは睨み付けながら尋問を始める。

 

「それで、ハンビィーと軍用バギーを残す戦闘車両群が仮避難所の小学校がある方向に向かったのは確かか?」

 

「サー、そうであります!自分達は味方の車両だと思って隊長に報告しませんでした!」

 

「ハノマークやⅢ号突撃砲、Ⅳ号戦車などの装備は我々には無いぞ。居たとしてもこの世界には居ない!お前達の隊長に厳罰を与えて貰え!とっとと消え失せろ!!」

 

「こ、了解(コピー)!」

 

二名の兵士は敬礼してから原隊の小隊に戻った後、隊長らしい若い女性に叱られていた。

仕切り直したケストナーは、部隊本部の車両に乗り込み、部下達に出動を命じた。

 

「相手の装備は重機関銃搭載のハンビィー三両に非武装のバギー一台、歩兵の数が二個程度か・・・俺とヨルギオスの部隊なら充分にやれるな。全部隊出動せよ!」

 

ケストナーが号令を出した後、ヨルギオスの隊も含めた二個中隊程度の戦力が東署へと向かった。

署内にいる孝達を狙っているのはケストナー達だけではない。

報告が耳に入った腿も、傘下の部隊を向かわせていた。

 

「警察署に敗残兵と武装した民間人が居るだと?」

 

「ハッ、その通りであります。我が部隊のパトロール部隊が見つけました。今、ケストナー隊が殲滅に向かってます」

 

副官の報告に、腿は地図を見て、配下の部隊が一番近いことに気付く。

 

「軽歩兵連隊傘下の中隊が一番近いな。その部隊で警察署内に居る奴らを殲滅してこい、奴ら(ウォーカー)もついでにだ」

 

「はい、承りました。でも、軽歩兵連隊は今韓国軍の空挺兵掃討に当たってますが・・・?」

 

「構わん。一個中隊抜けた所で作戦は出来るだろう?異論はない、向かわせろ」

 

「承りました。連隊本部、聞こえるか。こちらは旅団本部、旅団長からの命令である。傘下の軽歩兵中隊を警察署制圧に向かわせよ」

 

副官は上官の腿に敬礼した後、通信機の受話器を取って、命令の伝達を行った。

その後、向かわせた軽歩兵部隊が壊滅するとは知らずに。

一方、署内の保管庫で装備が整った孝達は、保管庫にシュタイナー達を残して、署内の調査を再開する。

二階にある特殊捜査隊床主分室で、一息つく。

 

「この中にも奴らが居ましたね・・・」

 

コータが椅子に座りながら沙耶に告げた。

 

「えぇ、ここはバリケードになるような物ばかりだし、先生達と護衛を残しておけば良いと思うけど」

 

沙耶も座りながら答えた。

そんな彼女に、コータはここで倒した奴らが持っていたMP5kを渡す。

 

「警察仕様のMP5kです。小さくて反動が少ないので高城さんでも扱えます」

 

「名前で呼びなさいよ!まぁ、平野にしては上出来じゃない・・・」

 

素直に貰った沙耶は、顔を赤くしながらコータに礼を言った。

何名かを分室に残し、三班に別れて行動することにした孝達。

最上階へと上がった孝達であったが、一向に誰も居ない上、残っている少数の奴らしか居ない。

 

「麗のお父さんは一緒に行ったみたいだな・・・」

 

「そうね・・・お母さん、無事かしら?」

 

孝が言った後に麗は自分の母親の心配し、調査を続ける。

残るは通信司令室となり、孝達はそのドアを開けた。

 

「孝、奴らが集まってる」

 

「そのようだな・・・でも、なんでドアに体当たりしてんだ?」

 

疑問に思う孝に、沙耶が告げる。

 

「あそこに生きている電子機器があるってことよ・・・!」

 

「何かの通信機器ですかね・・・?」

 

「言ってみる価値はあるだろう。行くぞ!」

 

全員に告げた後、冴子はドアに集まっていた奴らを瞬時に片付けてしまった。

それを見ていた孝達は、驚きの声を上げる。

 

「「「「早!!」」」」

 

「そんなに早いか?私は8分も掛かっていると思うが・・・」

 

「それでも充分早いわよ・・・」

 

苦笑いしながら麗が冴子に告げた。

そして、非常用バッテリーのお陰で生きていた全国瞬時警報システム、通称J-ALERT(ジェイアラート)を発見した。

 

「ずっと付けぱっなしにしてるようね・・・」

 

沙耶がスピーカーから聞こえる音声に耳を傾ける。

 

『自衛隊による床主市での住民救出活動は、新床第三小学校で行います。予定は明後日の午後14時、それまでに新床第三小学校への集まってください』

 

「新床第三小学校って、確か・・・?」

 

「僕のお袋の赴任先だ・・・!」

 

コータが聞いた後、孝が驚いた表情で言う。

少し驚いた沙耶と冴子が口を開く。

 

「なんか偶然過ぎじゃない?」

 

「一石二鳥だな。救出活動場所が小室君の母君の赴任先とは」

 

「偶然にも程があるわ・・・それまでにお父さんとお母さん見付けないと!」

 

麗が言ったことに便乗するかのように孝が言った。

 

「そうだな。それと、宮本さんのオフィスか何かに行って、新しい避難先を調べないと!」

 

直ぐに孝が言ったことを実行に移した。

麗の父の職場である公安係室に急いで向かう中、ハインツとルリ、ミーナに遭遇する。

 

「貴方達、そんなに急いでどうしたの?」

 

「僕のお袋の赴任先で救出活動が行われるんです!麗のお父さん達が新しい避難場所を探さないと!」

 

ミーナに話し掛けられた孝が答えた後、MG42を担いでいたハインツが告げた。

 

「それは良かったな、坊主。それと警察署内の歩く死体は片付けておいたぞ、今セルベリア達がまだ残ってないか探し回っている」

 

「もう片付けちゃったの・・・!?」

 

「手が早いですね、感謝します」

 

この署内にいる奴らは殆ど居ないとの報告を受けた沙耶は驚きの声を上げ、冴子はミーナに感謝している。

 

「どうも。でも、気を付けて。まだ何処からか出てくるかも知れないから」

 

「分かりました。先生達も呼んで一緒に探して貰おう!」

 

ミーナからの忠告を受けた孝達は、分室に居た鞠川とありすを連れて公安係室に入った。

撤収の際に慌てていたのか、部屋は大分荒れていた。

 

「こん中から探すのって、無理があるじゃない?」

 

「やるしかないだろう」

 

床に大量に落ちている書類を見た沙耶は苦笑いしながら言ったが、冴子が言って、孝達と共に資料漁りを始めた後、「仕方がない」と溜息を告げながら資料漁りに混じる。

それを見ていた鞠川とありすは、壁に貼られた一枚の紙に視線を向ける。

 

「みんな、これじゃない?」

 

「これって何?」

 

「ほら、新しい避難先のお知らせ」

 

質問するありすに鞠川が優しく答え、資料を漁っていた孝達が壁に貼られた紙に注目する。

 

「先生それって・・・?」

 

床に落ちていた資料を捨てたコータが、鞠川に聞いた後、彼女はありすにも分かるように、紙に書かれた文字を読み始める。

 

「うん。えぇ~と、『避難先は床主東警察署から新床第三小学校への変更になりました。大変ですが、そこまでのご避難をお願いします。』良かったね、小室君に宮本さん。小室君はお母さんに、宮本さんはお父さんと再開できるわよ」

 

「良かったね。孝君と麗ちゃん」

 

ありすが喜びながら言った後、孝も安心感に満ちた表情を浮かべ、麗は父が無事であったことに涙を浮かべ、嬉し涙をながしている。

 

「後は麗の母さんの無事を確かめるだけだな」

 

「うん・・・!明日以内にお母さん探さないとね!」

 

同時に署内に居た奴らの掃討が終了したと告げられた後、沙耶は何か良からぬ事が起こると確信していた。

 

「な~んか、上手く行き過ぎな気がするんだけど」

 

「良いじゃないですか。こんなに良いとこ尽くしですし」

 

「何か起こるんじゃないの?」

 

「はぁ・・・?」

 

この後コータは、沙耶の言っている事が本当に起きることを予想だにしなかった。

沙耶、シュタイナー、ブルクハイト、セルベリア、BJ、ローバックは事が余りにも行き過ぎている事に気付き、新たに「何か起こることではないのか?」と予想していた。

シュタイナー以外が気のせいと思っていたが、良からぬ事にその予想は的中してしまうのだった。

屋上で、警察署周囲を監視していたバウアーが、腿が送り込んだ軽歩兵一個中隊の存在を孝達に知らせに来た。

 

「どうしたの、バウアーちゃん」

 

慌てて屋上から降りてきた彼女に、問い掛けるまだ気付いていないありす。

 

「はぁ、はぁ、みんな大変です!あの戦乙女の兵隊がこちらに向かってきてます!」

 

「な、なんだってー!?」

 

「警察署周囲を囲む様に、横一列になってゆっくりと向かってきます!!」

 

その報告に驚きの声を上げるコータ。

しかし、彼等はまだケストナーの部隊が接近してる事なんて知りもしない。

そして新たな仲間、カールの存在ですら未だ知りもしない。




マイヤー達はご都合主義的倉庫で、バウアー・ゲイツ・火星軍四人組・ハイト達と合流予定です。
敵はゲイツのソ連のロボトミー技術を施された兵士達や二足歩行兵器、ハイトの異星人の参戦を考えております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

防戦

敵の追加、オートバイと武装したサイドカー一個小隊、狙撃兵一個分隊。
オートバイ兵が装備してる武器はイングラムM10やM11。
サイドカーに搭載されている機関銃はM1919A4重機関銃、他に乗っている兵士の装備はM1トンプソン、M61手榴弾。
狙撃兵はM1ガーランド狙撃仕様のC型。
軽歩兵中隊の装備はリーエンフィールドNo4、ステンMk3・Mk5、ブレン・ガンMk4、ヴィッカース重機関銃、PIAT、ウェブリーMk6、エンフィールドNo2、ミルズ手榴弾のWWⅡ英軍歩兵装備です。
サイドカーはIMZウラル社の軍用物です。


小室一行が居る警察署を包囲するように第2実世界大戦下のイギリス陸軍軽歩兵が、戦列歩兵のように前進してくる。

その戦列を避けるかのようにオートバイやサイドカーで編成された機動小隊が警察署目掛けて突っ込んできた。

直ちに迎撃する為、保管庫にあった使える物を持ち出す。

 

「迫撃砲があったぞ!でも、本体は使えない・・・」

 

片手で迫撃砲を見付けたシュルツであったが、本体は傷ついて使用不可だった。

そこへ、コータがやって来て、砲弾の入った箱を持ち上げる。

 

「何をする気だ・・・?」

 

「迫撃砲の砲弾はそのままでも使えます」

 

「成る程、ケツをぶった叩いて投げ付けるってことか!」

 

アッシュがコータが先に言うことを当てる。

 

「その通りです。早くハンビィーの所へ行かないと!」

 

「そうだな小僧。直ぐにハンビィーの銃座に着け!足を壊されては何ともならんぞ!」

 

シュタイナーは直ぐに保管庫に居る者達に指示を出し、何名かハンビィーに向かわせた。

警察署を包囲していた軽歩兵中隊本部は、旅団本部に居る腿に降伏を進めるのかを問う。

 

「警察署を包囲しました。中にいる者達に降伏を進めますか?」

 

無線兵が背負う長距離無線機の受話器を持ちながら、若い女性中隊長が問うが、腿は怒りながら返答した。

 

『降伏だと!?そんなの命令してないぞ。合流したバイク小隊と共に早くやっつけてしまえ!!以上!』

 

「こ、了解(コピー)・・・!全隊攻撃開始!」

 

もの凄い怒鳴り声で告げられた為、受話器から耳を離してしまう。

受話器を戻した後、攻撃態勢に入っていた部下達に攻撃命令を指示した。

セッセッと迎撃準備に取り掛かる小室一行に、ヴィッカース重機関銃の機銃掃射が入る。

 

「キャッ!」

 

正規の戦闘員でもない小室一行の者達は、地面に伏せて銃弾を避けた。

ルリが立ち上がって、SG553を構えながら、重機関銃を撃っている軽歩兵を撃ち始める。

バイク部隊が手に持ったイングラムM10やM11を撃ち続けているが、弾がばらけてる為、小室一行に誰一人として命中しない。

M1919A4重機関銃を搭載したサイドカーは撃ちながら警察署へ突っ込んで行くが、屋上でライフルを撃っているバウアー達に、乗員を次々と殺される。

投げ付けられた迫撃砲の砲弾で、次々と倒されていく。

 

「敵は爆弾を投げ込んでくる!」

 

咄嗟にサイドカーから降りたWWⅡ米陸軍装備の女性兵士が、M1トンプソンを撃ちながら、前進中の軽歩兵達に告げた。

次々と軽歩兵達が迫撃砲の砲弾で吹き飛ばされていく中、森林に潜んでいたM1ガーランドC型を構えた狙撃兵が、二階の窓から応戦しているルリに狙いを定めた。

その狙撃兵の護衛は、M1ガーランド、M1/M2カービンやM1トンプソンなどで武装した外見すら米軍装備の女性兵士達だ。

ハンビィーのM2重機関銃に着いたローバックの射撃が行われ、ゆっくりと前進していた軽歩兵達の身体を引き裂いていき、何名かの命を奪う。

 

「ほあ・・・!」

 

隣にいた戦乙女の頭が吹き飛んだのを見た彼女は、指揮官の指示が耳に入らず、そのまま棒立ちの状態になる。

 

「伏せて、伏せるのよ!」

 

ウェブリーMk6回転式拳銃(リボルバー)を持った指揮官は全員に伏せるように叫ぶが、銃声で掻き消される。

ハインツのMG42の機銃掃射も入り、次々と軽歩兵中隊とバイク部隊の戦乙女が地面に倒れていく。

PIATを担いだ戦乙女は、リーエンフィールドNo4を背負った兵士に対戦車弾頭を装填して貰い、ハンビィーに向けて撃とうとするが、アリシアに弾頭を撃たれ、爆死する。

そんな時にルリに狙いを定めていた狙撃兵が、M1ガーランドの引き金を引いた。

飛ばされた弾丸は、真っ直ぐマガジンベストを貫いてルリの胸の肉を抉りながら真蔵を貫通、そのまま背中まで貫通すると、壁に弾丸が突き刺さった。

貫通した部分から血が溢れ出す中、隣で威嚇射撃をしていた麗と沙耶が、ルリの身体を掴んだ。

 

「ちょっと、あんただいじょう・・・」

 

沙耶が起こそうとするが、ルリには何の反応もない。

 

「そんな・・・嘘でしょう・・・?嘘だよね?ルリちゃん」

 

パニックになりながらも、麗はルリの身体を揺らすが、何の反応もない。

綺麗な青い瞳を見れば、生気が失われており、誰から見ても死んだも同然だ。

口元から血が溢れ、床に血が広がっている。

医者である鞠川と衛生兵の役割のリーネが、ルリの状態を確認したが、既に手遅れだった。

ルリが狙撃されたことを知ったローバックとシャーロット、コータは、直ぐに身を隠し、狙撃から逃れようと伏せる。

警察署からの反撃で、大きな損害を被った襲撃部隊の兵士達は、ステンMk3やMk5、ブレン・ガンを撃ちながら退散していく。

逃げていく兵士達に銃撃が加えられ、背中を撃たれた兵士は地面に倒れ、這いずりながらもこの場から逃げようとする。

Gew43狙撃仕様を持っていたBJは、狙撃兵分隊を排除に成功、そのまま重火器を背負った逃げる兵士に追い打ちを掛けた。

これ以上の射撃は弾の無駄と判断したシュタイナーは、射撃中止命令を出す。

 

「射撃中止!撃ち方止め!」

 

「撃ち方止め!敵は退いていく!」

 

シュタイナーに続いてセルベリアが叫んだ後、小室一行の全員が射撃を止めた。

次に被害確認を始める。

 

「各担当被害は?!」

 

「死者一名、あの可愛いお嬢ちゃんだよ・・・」

 

G3A4を持っていたブルクハイトがルリの死を知らせた。

全員が動かなくなったルリの側に集まる。

 

「可哀想に、喋れなくなった挙げ句にこれか・・・」

 

「うぅ・・・ご免ね・・・狙撃兵(スナイパー)の存在に気付かなくて・・・!」

 

哀れむように告げるコワルスキーの次に、泣きながらバウアーがルリの前で謝る。

 

「ルリちゃん死んじゃうの・・・?」

 

「もう手遅れなのよ・・・」

 

「麗・・・」

 

ありすが麗の服を引っ張りながら質問したが、麗は瞳に涙を浮かべながら答え、孝が思い出したかのように彼女を慰める。

彼等が悲しみに暮れる中、ケストナーとヨルギオスの部隊が警察署に接近しつつあった。

ケストナー達が着く前より先に、腿の傘下の部隊が攻撃を始めた為、かなり焦っていた。

 

「司令官、総司令部より伝達です!ルリ・カポディトリアスという少女を生きたまま捕獲せよと!」

 

「命令伝達が遅いぞ!総司令部はなにをやってたんだ!」

 

無線兵からの知らせに、ケストナーは総司令部に文句を言う。

 

「(もし先に攻撃した連中がルリとかいうギリシャ大統領みたいな姓名をした少女を殺していれば、俺が責任を取らされるんだぞ。全く!)」

 

前を向きながら、ケストナーは最悪の事態を予想していた。

もちろんその予想は当たっていたが、後に予期せぬ辞退に発展する。

到着した掃討部隊は、早速音に引き寄せられて集まってきた奴らを速やかに排除した後、120㎜迫撃砲を持った本物の兵士達がそれぞれの配置に着く。

M46パットン中戦車も、それぞれの歩兵と共に配置に向かう。

先程の軽歩兵中隊とバイク部隊、狙撃兵分隊と同じような包囲網を敷いた事に、ヨルギオスは疑問に思って、ケストナーに問う。

 

「どうして同じ包囲網を敷いているのですか?あれでは二の舞になりますよ」

 

その問いに、ケストナーは笑みを浮かべて返す。

 

「こちらは重武装で、それに迫撃砲もある。そして航空部隊を呼んでおいた、憎きイワン共の戦闘機Yak(ヤク)3だ。まずは迫撃砲の砲撃にさらして降伏の軍使を送る。そして10分の有余を与える。それに応じなかった場合は戦闘機で排除だ」

 

「ほぅほぅ、用意周到ですね。それでは自分も攻撃に加わります」

 

ヨルギオスが敬礼してから立ち去った後、ケストナーは長距離無線機を背負った兵士から受話器を取り、攻撃命令を下した。

 

「是非そうしてくれ。迫撃砲、砲撃開始だ!」

 

その指示に従って、迫撃砲に砲弾が入れられ、砲弾が警察署に向けて次々と発射される。

ルリの死で悲しみに暮れていた小室一行は、砲撃を受けて、次なる試練に立ち向かう。

 

「どうやら悲しんでいる暇はなさそうだな・・・」

 

迫撃砲の攻撃を受けている事を知ったシュタイナーは、天井を見ながら口を開く。

冴子がルリの額にキスをした後、立ち上がり日本刀の柄を握って、覚悟を決めた。

 

「そのようです。彼女の分まで戦わないと・・・!」

 

砲撃が止んだ後、双眼鏡を持っていたミーナが、サイドカーに乗って白旗を揚げてやって来た軍使の存在を全員に知らせた。

 

「みんな、降伏勧告の軍使が来たみたいだわ」

 

「あの迫撃砲は我々に降伏を進める為の物か・・・!」

 

拳を握りながら、バルクホルンは怒りを抑えながら言う。

そして軍使がやって来た後、シュタイナー、セルベリア、ミーナが軍使を出迎える。

白旗を持った迷彩柄の帽子を被った迷彩服の軍使が、彼等に告げる。

 

「諸君等は完全に包囲されている。立派に戦った諸君等に我々は戦乙女(ワルキューレ)の名と戦争条約に則り、無条件降伏を進める」

 

「了解した。返答はいつまでだ?」

 

セルベリアが軍使に質問した後、彼は直ぐに答えた。

 

「返答は10分までだ。10分を過ぎて何の反応もなかった場合、容赦なく攻撃を始める。例え投降の意志を見せていようと、容赦なく射殺することだろう」

 

「分かりました。それで、食事と寝床は必ず分け与えて貰えるのですね?」

 

次にミーナが質問し、軍使は直ぐに返す。

 

「もちろんだ。無条件降伏を受け入れれば、食事と寝床、衣服を提供しよう。そうだ、諸君等の仲間にルリという少女はいるか?」

 

軍使はルリのことを彼等に聞いた。

その問いに、シュタイナーが冷静に答える。

 

「残念ながらその少女は先程の攻撃で死んでいる。貴様等の狙撃兵によってな」

 

「そうか・・・では、この時計と白旗を渡す。今から10分後にアラームが鳴るようセットしてある。降伏の意志を見せる場合、駐車場で良く見える場所と屋上に白旗を掲げろ。それが上がっていない場合、こちらは容赦なく攻撃を加える」

 

白旗を渡した後、軍使は時計のボタンを押した。

 

「今から10分後、指定された位置に白旗が上がっていない場合、攻撃を始める。諸君等が小官を攻撃した場合、我が軍は直ちに攻撃を始めるだろう。では、諸君等が指定された位置に白旗を揚げていることに祈る」

 

軍使は時計を渡した後、サイドカーに乗って、ケストナー達の所へ帰って行った。

帰って行く軍使を見ながら、小室一行はこれからどうするか、対策を練る。

小室一行が対策を考えている頃、ケストナー達は毒ガス弾頭の手配をしていた。

 

「降伏に応じなかった場合、毒ガスを使用だ。全員にガスマスクの着用を急がせろ」

 

「しかし、毒ガスの使用は許可が必要では・・・?」

 

部下の一人が毒ガスの使用に異議を唱えるが、ケストナーは笑みを浮かべながら返した。

 

「安心しろ、吸っても身体が痺れる程度だ。規制に引っ掛かってない。それで、ルリという少女は?」

 

「軍使からの報告に寄れば、仲間の一人が死んだと言っております」

 

「ふん、そうか。では、奴らは生かしておく必要がないな。よし、白旗が上がっていても攻撃しろ」

 

了解いたしました(ヤヴォール)司令官殿(ヘル・コマンダー)

 

双眼鏡で警察署を見ながら、ケストナーは部下達に告げた。

毒ガス砲弾の装填準備が行われる中、小室一行で新たな問題が生じた。

それはルリが蘇ったことである。

 

「う、うわぁ!こいつ、行き帰りやがったぞ・・・!?」

 

運ぼうとしたローバックは、驚きの声を上げる。

他の者達も、余りの出来事に驚きを隠せない。

 

「うぅ・・・よく寝た~ここは確か警察署あたりかな?」

 

起き上がったルリは背伸びをした後、周囲を見渡してSG553を持ち上げる。

 

「ルリ・・・君は確か死んでた筈・・・?」

 

孝は戸惑いながらルリに聞いた。

 

「そうだよ、でも蘇ったの。さーて、私達はどうするのかな?セルベリアさん」

 

「一人称が私に・・・?」

 

ルリの一人称が私に戻ったことに、鞠川とありすは驚きを隠せない。

生き返って間もない少女に問われたセルベリアは、少し戸惑いながらも答えた。

 

「徹底抗戦しかあるまいだろう・・・我々にはリヒター達と合流する約束がある」

 

「セルベリアさんの言うとおりです。ここで降伏して楽になっても、後で後悔することになる」

 

セルベリアに続いて冴子が言った後、アッシュとコワルスキー、シャーロットとフランチェスカが「そうだ、そうだ」と言い始める。

 

「どうやら切り抜けるしかあるまいな。それで、勝算はあるのか?」

 

シュタイナーが腕組みをしながら質問した後、早く降伏して楽になりたいシュルツが便乗するよう何回か頷く。

そこへ、ヴァールを抱えたイムカが現れる。

 

「勝算はある。私とヴァールなら戦車付きの歩兵一個中隊なら戦える」

 

「しかしよ、嬢ちゃん。そんなの仮の話だろう?連中は航空機も使ってくるんだぜ」

 

余り乗る気がしないBJが、イムカに異議を唱える。

 

「ヴァルキュリア人が居れば問題はない。だが、今は居ないようだが・・・」

 

イムカは、ヴァルキュリア人であるアリシアやセルベリア、リエラ、エイリアスを見ながら告げる。

 

「降伏するしかないのか・・・」

 

コータが弱音を吐いた後、ルリは明るい表情をしながら、手を挙げた。

 

「私、それ程と同等の力を発揮できるよ?」

 

「嬢ちゃんよ、嘘はほどほどに・・・」

 

ローバックがルリの言っていることを止めようとした瞬間、バウアーが口を開く。

 

「大丈夫です。ルリちゃんはその力で私達を助けてくれました。必ず勝てますよ!」

 

高城邸から脱出してきたメンバーが、疑いの目を向けるモール組に本当のことであるとアピールする。

 

「そこの眼帯の嬢ちゃんが言いたいことが分かった。兎に角やれるんだな?」

 

疑いの眼差しでブルクハイト言った後、バウアーは頷きながら喜んだ。

そして一同は反撃の準備をし始める。

 

「イムカ、気を付けてね。絶対に生きて帰るのよ!」

 

「必ず生きて帰る。心配する必要はない」

 

リエラに真剣に告げられたイムカは、笑みを浮かべながら答えた。

次に冴子がルリの頭に巻かれた布を括りながら、心配そうに問い掛ける。

 

「私は君がまた死にそうで怖い・・・だが、大事な人を見送るのも女の務めだ・・・!」

 

泣きながら言うが、ルリに頭を撫でられて、表情を見る。

 

「大丈夫だよ、冴子ちゃん。私は生きて帰るから」

 

その天使のような表情に、冴子は「問題なし」と判断して、ルリに、保管庫にあったM92FやCZ75を渡した。

 

「ルリちゃんとイムカちゃんも頑張ってね」

 

「ヴァルキュリアの力があれば、あんな奴らイチコロなのに・・・頼んだぞ!」

 

吠えるジークを抱き抱えているありすと悔しがっているエイリアスは、反撃に向かうルリとイムカに声を掛けた。

二人は右手を挙げて、勝利のVサインをした後、装備の点検をし始める。

いつの間にか指定時刻を過ぎていた為、ケストナー達の攻撃が再開された。

 

「時間切れだ、相手は徹底抗戦のつもりだ。毒ガス弾を撃ち始めろ!」

 

撃て(シーセン)!!」

 

指示を受けた迫撃砲部隊は、毒ガス砲弾を砲身に詰め、警察署に向けて発射した。

 

「毒ガス弾を発射するぞ!」

 

次々と発射されていく毒ガス弾、空中で爆発し、毒ガスの煙が警察署内を包み込む。

 

「こ、これは・・・!?」

 

「毒ガス弾じゃないか・・・!条約違反だぞ、クソッたれめっ・・・!」

 

身体が痺れて動かなくなった者達は、床に倒れながら、必死に動こうとしていた。

 

「うぅ・・・身体が痺れて動けない・・・!」

 

「口は動くようだな・・・!」

 

痺れながらも口だけは動かせるので、口を出来るだけ動かす。

 

「まさか毒ガスまで使ってくるとは・・・!」

 

生前毒ガスを使われたことがあるセルベリアは、あの時のことを思い出していた。

あの時は、部下のお陰で助かったが、その部下は今、この世界には居ない。

小室一行が苦しむ中、ケストナーはやって来たソ連の戦闘機Yak3十六機に攻撃に向かわせる。

 

戦闘機(ヤークトフルークツェイク)の編隊に攻撃命令を出せ」

 

「ヤヴォール。戦闘機部隊、警察署に鎮圧射撃せよ」

 

受話器を取りながら指示する副官、Yak3戦闘機部隊は、警察署に目掛けて進む。

もちろん搭乗員は全て男だ、一番先頭の機体に乗る男が調子づいて、引き金を握る。

 

『どうせろくな抵抗も無いんだ、命一杯ぶち込んでやるぜ!』

 

そのまま警察署に向けて機銃掃射を行おうと引き金を引いた瞬間、イムカが撃ったヴァールの銃弾が機体に命中する。

 

『なんだあれは!?』

 

『敵は強力な対空火器を所持してます!』

 

『こんなの話しに聞いてないぞ!?』

 

無線機から聞こえてくるパイロット達の焦り声に、ケストナーはイライラし始める。

 

「どうなっとるのだ・・・?奴らは完膚無きまでに叩き潰された筈だぞ・・・?」

 

その時、信じられない無線が入った。

 

『少女だ!少女が俺の機体に取り付いて、ワァァァァァ!!』

 

なんらかの能力を使って高く飛び上がったルリは、Yak3のキャノピーに両手に握られた拳銃を撃ちまくり、パイロットを殺した。

 

『なんて奴らだ!生身で戦闘機とやりあってるぞ!!』

 

生身で戦闘機を撃墜していくルリに、驚きの声を上げるパイロット達。

ガスマスクをしているヨルギオスと兵士達は、唖然している。

 

「何かの冗談ですか・・・これは・・・!?」

 

対空射撃をし始めている者達もいるが、あっさりとイムカに片付けられていった。

 

「ウワァッ!」

 

「デカイ武器を持った女が襲ってくるぞ!ゴハッ!」

 

G3A3/A4やHK13E、MPi-AK74Nを持ったガスマスクの兵士達が次々とイムカに倒される。

ヨルギオス傘下のAKMSなどを装備した兵士達も容赦なく、殺されていき、煙が充満する中で次々と道路に倒れていく。

 

「うわぁ~!」

 

「た、助けてくれ~!」

 

武器を捨てて逃げていく者達も居るが、イムカが持つヴァールの剣に切り裂かれた。

赤外線スコープで戦況を確認していたケストナーは、イムカの恐るべき強さに恐怖する。

 

「な、なんて奴だ!たった一人で一個小隊を全滅させたぞ!パットンを奴に向けろ!あれは化け物だと思え!」

 

その指示で、M46パットン中戦車が向かって行き、105㎜ライフル砲をイムカに操縦を合わせる。

 

『凄い奴だ、たった一人で歩兵一個中隊を戦ってやがる!』

 

『榴弾で粉々に吹き飛ばせ!』

 

装填手が榴弾を装填した後、砲手が照準をイムカに定める。

 

『照準完了!』

 

撃て(ファイヤー)!!』

 

砲口から榴弾が放たれたが、あっさりと避けられてしまう。

 

『やったか・・・?』

 

戦車長がイムカの姿を確認しようとしたが、正面装甲に衝撃を感じて、警戒し始める。

 

『どういう事だ?奴は榴弾でミンチになったはずだぞ!?』

 

それが戦車長の最後の言葉だった。

第一世代戦車の弱点が変わらず後部と悟ったイムカは、素早くM46中戦車の後方に回り込み、対戦車弾頭を放つ。

エンジン部を攻撃されたM46中戦車は大破、爆発を起こした後、毒ガスの煙が周囲から消えた。

同時にルリが何名かの兵士を片付けた後に、イムカの隣に立つ。

 

「な、何という女だ・・・!毒ガスの中を動けるなんて・・・!」

 

ケストナーとヨルギオスは、二人の圧倒的な強さに驚きを隠せなかった。




次回はカール参戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

反撃

ケストナーの部隊は、西ドイツと東ドイツの装備混同。

ヨルギオスの部隊は、AKのクローン装備です。


圧倒的な強さを見せるルリとイムカの二人。

部隊本部に居るケストナーは、暫し唖然していたが、直ぐに我に返り、指示を飛ばす。

 

「な、何をしている!?早く攻撃しろ!戦闘ヘリ(ガンシップ)ハインドも投入しろ!左右から突撃した部隊はどうなってるか!?」

 

慌てふためくケストナー達を余所に、ルリとイムカは周りに居た兵士達を攻撃し始める。

 

「オワァ!」

 

「グオァ!」

 

ガスマスク越しから聞こえる断末魔を気にすることもなく、彼女達は作業を黙々と続ける。

毒ガスが薄くなったところで、警察署内に居た小室一行はようやく動けるようになり、双眼鏡から二人の活躍を見た。

 

「なんて奴らだ・・・!たった二人で二個中隊の歩兵部隊とやりあってるぜ!」

 

「そればかりじゃねぇ、戦闘機までと戦ってやがる!」

 

アッシュとコワルスキーは、唖然しており、シュタイナーは、左右から接近してくる部隊の存在に気付く。

 

「呑気に観戦している暇はなさそうだ、全員戦闘用意!!」

 

怒号を飛ばしたシュタイナーは、保管庫から持ち出したMPi-KMS72を手に取り、防戦に向かった。

効力が薄れて動けるようになった者達も、迎撃に向かう。

 

「反撃してきたぞ!毒ガス弾の散布を願う!」

 

警察署からの反撃から身を隠したG3A4を持った小隊長らしき兵士が、無線機を取って、再び毒ガス弾の投入を要請していたが、迫撃砲部隊はカールの奇襲で次々と潰されていた。

 

『狙撃兵だ!発射はガハッ!』

 

「クソッ、何処の何奴だ!?」

 

無線機を地面に投げ付けて、応戦し始めた。

RPG-7を持った兵士が警察署に向けて発射しようとしたが、カールに砲弾を狙撃され、周りを巻き込んで爆死する。

 

『狙撃です!やつら狙撃手を何処かに、ウワッ!』

 

「ど、どうなっとるのだ・・・!?こうもあっさり戦局を逆転されるなんて・・・?」

 

次々と起こる最悪な事態に、ケストナーは追い込まれていた。

一方、森林に潜んでいたカールは、狙撃モデルのスプリングフィールドM19103A4のボルトを引き、空薬莢を排出した後、ボルトを押して次弾を薬室に送り込む。

同じ場所からの狙撃は自分の存在をアピールするような物なので、少し移動した後、スコープを覗いて、旧ユーゴスラビアのAKS-74uのコピー品ツァスタバM92を持ちながら指示を出している指揮官の頭部に狙いを定め、周りの風速と距離を確認した後、引き金を引いた。

飛ばされた7.62㎜×63弾は、指揮官の脳を破壊しながら貫通し、隣でRPDで鎮圧射撃を行っていた兵士に当たって止まった。

次の地点に移動し、狙撃地点に着けば、弾丸を一つずつ入れていく。

再装填が終わった後、上空からルリを殺そうとしているYak(ヤク)3が来る距離に狙いを定め、タイミングを見計らう。

 

「到達時刻は8秒・・・左右とも風速は弱し。距離ともに標的の破壊に異常なし」

 

独り言で計算しながら、戦闘機が照準器に着く前に引き金を引いた。

通常狙撃兵は戦車や戦闘機や駆逐艦など相手にはしないが、追い込まれた場合は別だ。

弱点になりそうな部分を撃ってしまえば、いくら強力な兵器でもライフル弾で倒すことも出来るのだ。

真っ直ぐ飛んだ弾丸は機関部の排出口に命中、機体は空中で大破した。

 

『馬鹿な!何の攻撃も!?』

 

何機の戦闘機が警察署に攻撃を仕掛けたが、PTRS1941を構えていたアッシュに一機が狙撃されて撃破された。

 

「やったぜ!」

 

構えていたアッシュが、隣でMG34を担いでいたコワルスキーにハイタッチする。

 

「今度は俺の番だぜ!」

 

コワルスキーは、通り過ぎていくYak3の編隊に対空射撃を行い一機撃破に成功、次の戦闘機に攻撃するも、逃げられてしまう。

 

「逃がしちなったぞ!」

 

「旋回してくるぞ!挽肉にされちまう!」

 

急いで逃げる二人であったが、Kord重機関銃を持ったセルベリアが現れ、旋回して再び攻撃しようとした戦闘機の編隊に対空射撃を加え、全機撃破してしまった。

 

「「す、すげぇ・・・」」

 

セルベリアも、ルリとイムカに負けていないと思うアッシュとコワルスキーであった。

右から攻撃してきた部隊は、シュタイナー達の銃撃に寄って抑え付けられており、M46パットン中戦車は保管庫にあった使い捨てのM72LAW対戦車ランチャーで撃破された。

 

「せ、戦車が撃破されちまったぞ!」

 

「クソったれ!RPGをぶち込・・・ガッ!?」

 

退却を指示しようとしていた指揮官は、シュタイナーの射撃で頭部を撃たれて死亡した。

 

「指揮官と熟練の兵士を優先的に始末しろ。連中の士気を削る!」

 

弾倉を変えながら、シュタイナーは指示を出す。

 

「了解、お前等!動きの良い奴を狙っていけ!」

 

「敵兵はどいつもこいつも動きが良いぞ!?誰を狙えば良いか分からん!」

 

「良いから指示を出している奴と対物火器を所持した奴を殺していけ!」

 

ローバックがどれを狙って良いか分からないと告げたので、ブルクハイトが怒鳴りつけるように答え、パンツァーファウスト44を持った兵士をG3A4のフルオートで排除した。

 

「子供が来るぞ!」

 

「撃ち殺せ、奴も化け物だ!」

 

左から警察署ごと潰そうとしていたM46パットン中戦車にルリが接近してきた為、キューボラに付けられたM2重機関銃で排除しようとしたが、スターリングMk7の銃撃で機関銃手が殺される。

 

「グハッ!」

 

「プレゼント!」

 

砲頭に上ったルリは、安全栓が抜かれた大量のミルズ手榴弾を開けぱっなしのキューボラに落としていったから、飛び降りた。

乗員達は直ぐに戦車を捨てて、脱出用のハッチを蹴り当てて逃げ出していく。

 

「助けてくれ~!」

 

ルリも向かってきた兵士を排除しながら、爆発しそうな戦車から離れた。

数秒もすれば戦車は大爆発を起こし、何名かの兵士が飛ばされた破片で死亡する。

機銃を撃ちながらケストナー部隊の全てのコンドル装甲車がイムカに突っ込んでいくが、あっさりと潰されていく。

 

「オワァ!」

 

二台ほど潰した所で、遮蔽物に身を隠したイムカだが、BA-64装甲車が彼女の後ろから襲ってきた。

 

「クッ、邪魔だ!!」

 

肩に銃弾を掠めたイムカは、ヴァールの対戦車弾頭でBA-64装甲車を撃破した。

燃え盛る車両から、火達磨となった乗員が飛び出してくる。

 

「熱い、熱い!助けてくれ~!」

 

「なんという恐ろしい女なのですか・・・!これは逃げた方が良さそうですね」

 

今も戦っているケストナーや自分の部下を放置して、ヨルギオスは自分一人で逃げようとしていた。

丁度その時、ケストナーが要請していたMi(ミル)-24Dハインド二機が現れた。

もちろんパイロットは全員男である。

 

「おっと、まだ勝敗は分からないようですね・・・!」

 

頭上を通過していくMi-24Dを見ながら、ヨルギオスは笑みを浮かべながら呟いた。

 

「シュタイナーさん!ハインドです!!」

 

「なに!?クソッ、まさか戦闘ヘリまで戦うことになるとは・・・!」

 

コータの知らせにシュタイナーの顔付きが変わる。

 

『こちらハボス中隊所属のハボス5とハボス6、現場に到着しました』

 

ケストナーは縋るように受話器を取った。

 

「お前達は私の救世主だ!助かったぞ!!味方ごとでも構わん、暴れ回る悪魔共と警察署にいるクソ共を吹っ飛ばせ!!」

 

「しかし味方ごとは・・・」

 

「煩いぞ!兎に角適当にぶっ放せ!!以上!」

 

部下の言葉に耳を貸さず、ケストナーは受話器を強引に戻す。

指示を受けたMi-24Dは、搭載機関とロケット砲を撃ち始めた。

標的はルリとイムカだが、パイロットは地上にいる味方の兵士諸共無差別に撃つ。

 

「み、味方だぞ!うぉわっ!!」

 

手を振って味方だと示す兵士であったが、ロケット攻撃で吹き飛ぶ。

一機のMi-24Dはホバリングをしながら搭載機銃はルリを捕捉し、凄まじい早さで12.7㎜弾が飛ばされる。

 

『なんてすばしっこい餓鬼だ、誘導ミサイルをケツにぶち込んでやれ!』

 

パイロットが、ガンナーの男に誘導ミサイルを使いよう指示した。

照準器を覗いて、ルリにロックオンしようとするが、中々狙いを付けられない。

 

『駄目だ、捕らえられない!もっと接近しろ!』

 

ガンナーは捕らえられないとパイロットに告げ、ルリを追うように指示する。

その指示に従い、パイロットはルリの追跡を始める。

もう一機のMi-24Dは、イムカを始末しようと搭載機銃で排除しようとしたが、中々捕らえきれない。

 

『クソっ、遮蔽物に逃げられた!』

 

『ロケットでぶっ飛ばせ!』

 

破壊されたコンドル装甲車の残骸に隠れたイムカは、対戦車弾頭を装填する。

その時、一個分隊程度の敵兵がイムカを見るなり、手に持つ銃で攻撃してきた。

 

「撃てぇ、撃ち殺せぃ!!」

 

「しまった!」

 

直ぐにヴァールを機銃に切り替え、こちらに向けて撃ってくる一団を撃った。

何発か身体を掠めたが、敵兵は排除することに成功した。

 

「あの空飛ぶ兵器は?がッ!?」

 

ロケット砲で残骸が爆発し、イムカが巻き込まれる込まれる形で吹っ飛ぶ。

身体を地面に叩きつけられたイムカは、血反吐を吐き、何とか立ち上がろうとする。

 

「負けない・・・!」

 

ヴァールを杖代わりにして立ち上がり、まだ戦おうとしていた。

そしてルリのロックオンに成功したMi-24Dのガンナーは、誘導ミサイルのボタンを押そうとした。

 

『誘導ミサイルをぶち込んでやるぜ!』

 

笑みを浮かべながらガンナーはスイッチを押そうとしていたが、その前にカールが誘導ミサイルを狙撃した。

 

『うわっ!?ミサイルが!』

 

『どうした?う、うわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

搭載されていた誘導ミサイルが突然爆発を起こした為、爆風に呑まれたパイロット達は断末魔を上げる。

空中爆発を起こしたハインドを見て、ルリは一息つく。

 

「た、助かった・・・」

 

そんな彼女をヨルギオスは、手に持っているAMD65のサイトを覗き、狙いをルリに定めていた。

 

「ヒヒヒ・・・後ろががら空きですね・・・!それではお命を頂戴させていただきます・・・!」

 

自分の存在に気付かない少女に、ヨルギオスは何の躊躇いもなく引き金を引いた。

首を撃たれたルリは、血を吐いて、苦しみ出す。

笑みを浮かべながらヨルギオスは、苦しむルリに近付く。

 

「苦しそうですね。ヒヒヒ・・・では、トドメを・・・!?」

 

ルリがスターリングMk7を自分に向けていた事に驚きを隠せない。

この目でルリが苦しみながら死んだのを見ていたので、信じられない目付きをしている。

 

「まさか不死身だと・・・!?グァァァァァァァァ!!」

 

それがヨルギオスの最後の言葉となり、後は断末魔を上げながら死ぬまでルリに撃たれ続けた。

最後のハインドは、僚機が空中爆発を起こしたことに気付き、カール探索とイムカの始末の為、着陸して機内にいた歩兵部隊を下ろす。

 

『野郎共、この煙では確認できない!小娘とスナイパーを代わりに排除してこい!』

 

AKS-74uを持ったヘリボーン部隊の兵士達は、負傷したイムカとカールの探査を始める。

上空に戻ったハインドは、警察署で抵抗をしている小室一行を排除しようと向かった。

 

『俺達はサツの砦で抵抗している奴らを片付けてやるか』

 

地面に降り立った兵士達は、お互いの死角を補うようにイムカとカールを探し続ける。

 

「向こうで銃声が聞こえたぞ!」

 

一人の兵士が言った後、八名の兵士達はルリの居る場所へと向かった。

爆風の煙で視界が限られている中、イムカはヴァールを白兵専用に切り替え、後ろから分隊を襲う。

 

「後ろからあの餓鬼が!ギャッ!!」

 

「生きてたぞ!」

 

後衛の兵士がやられた後、手に持つカービンライフルでイムカを撃ち続けるが、盾に切り替えたヴァールの装甲で防がれる。

 

「なんだあの武器は!?一体何が・・・!」

 

恐れながらも引き金を引き続けるが、兵士の一人がカールに狙撃される。

 

「狙撃兵だ!散会・・・」

 

指示を出そうとした分隊長をカールは狙撃し、指揮官を失った兵士達は散り散りに逃げようとしたが、イムカに次々と倒されていく。

 

「うわっ!」

 

「フベェ!」

 

「うわぁ、に、逃げろ!」

 

ライフルを撃ちながら逃げようとしたが、機銃で全員始末された。

一方、警察署に爆撃しようとしていた最後のハインドだったが、思わぬ抵抗を受けた。

 

『なんで警察署にRPGがあるんだ!?』

 

『知らん、これでは接近できん!ロケットで吹き飛ばそう!』

 

距離を取ってロケット攻撃をしようとしたが、バルクホルンが投げた梱包爆弾でコントロールを失う。

 

『ウワァァァァ!!操縦系をやられた!コントロールができん!』

 

そのままケストナーが居る部隊本部に向かっていく。

 

「な、何ということだ・・・!?たかだか一個小隊分の戦力に、我が部隊が・・・!」

 

「退却しましょう!これ以上の我が部隊に戦闘力はありません!」

 

絶望するケストナーは、副官の声に耳を貸した後、退却の準備を始める。

 

「クゥ・・・その案に乗ろう・・・!全部隊退却だ!早くしろ!」

 

その指示で部下達も安心したのか、凄まじい早さで撤収作業を終えた。

警察署に攻撃を掛けていた歩兵部隊も退却し始める。

 

「敵が引いていく・・・?」

 

「助かった・・・」

 

BJは引いていく敵を見て、口を開き、コータは壁にもたれ掛かり、安心感に浸る。

逃げようとしたコンドル装甲車は、警察署から放たれたRPG-2の攻撃で横転し、乗員が車両を放置してそのまま逃げ出していく。

そしてケストナーの部隊本部に、コントロールを失ったMi-24Dが来た。

 

「うわぁ!!」

 

「なんたる様だ!!」

 

Mi-24Dはそのままケストナーの本部に墜落し、弾薬箱に命中して大爆発。

運良く生き延びてボロボロになったケストナーは、警察署に向けて怒りの声を上げた。

 

「覚えておれよ、異世界人共!必ず皆殺しにしてやるからな!!」

 

そう言った後、ケストナーは乗用車に乗り込み、敗走する残存部隊と共に去っていった。




次は黒騎士編でも書こうかな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宮藤芳佳のサバイバル
宮藤、空母へ。


なにか読者に飽きられているみたいなので、未だ出ていない淫獣の視点でいきます。
その前にワルキューレ側の視点だけどね。

劇中に出てくる空母はアメリカ海軍のエセックス級航空母艦、艦名はマーリアン。
外見は全く変わらず、船内や兵装は現代空母に近いくらい改装され、防空能力が上がっているが、搭載できる艦載機が減っており、練習空母として使用されている。
マクシミリアンの移動用として使われ、任務を終えた艦は、太平洋側で無差別に領海・領空侵入を計った船や飛行機を落とす任務に就いていた。
搭載されている小火器は↓
散弾銃 ベネリM1 MPS AA-12
回転式拳銃 S&W M27
自動拳銃 SIG シグプロ
自動小銃 ノベンスキーN4CQBモデル M2カービン
突撃銃 AK103 AR-18
短機関銃 MP5k PP-19ビゾン
小銃 リーエンフィールドNo4


ケストナーの部隊が、小室一行の前に敗退した知らせはワルキューレの日本方面軍司令部に伝わった。

 

「報告します、ケストナー下級司令官とその配下の部隊が例の生存者の一団に撃退されました」

 

戦況オペレーターからの報告を受けたアレクサンドラは、少し驚いた表情をする。

 

「例の生存者が、熟練のみの部隊を撃退だと・・・?一体どんな奴らなんだ・・・?」

 

少し頭を悩ませた後、例の一団こと、小室一行の事について、情報士官に問う。

 

「所で、例の一団についての情報は集まっているか?」

 

「ハッ、最初は運の良い学生の一団だと思っていましたが、中に武装した少女が混じってました」

 

「武装した少女だと?」

 

アレクサンドラは、武装した少女ことルリに興味を示す。

続けて情報士官は書類で確認しながら、ここの指揮官である彼女にルリの繊細な情報を答える。

 

「床主の衛星による状況確認で映っていました。画像は荒いですが、ライフルらしき物を装備しております」

 

自分の机から取り出した写真をアレクサンドラに渡した。

 

「これがその少女か・・・」

 

「はい。最初はただの見間違いと思いましたが、例の一団が学園から脱出した際に確認が取れました。これです」

 

情報士官は、彼女が二枚目の写真を見た時に、映っているルリに指を差す。

写真を見ていたアレクサンドラは、ルリが着ている衣服と装備を見て、表情を変えた。

 

「MP40・・・ナチス政権下のドイツ国防軍陸軍歩兵装備じゃないか・・・」

 

「ご覧の通りです。前任者は面白がって泳がせていたようですが、貴女が後任者として司令官になった後には、例の一団よりも他の地域の事に気を取られて、報告が遅れました」

 

「着任した時にも書いてあったな・・・見落としていたよ」

 

見ていた写真を情報士官に返した後、自分のデスクに置いてある珈琲を飲む。

 

「それ以降、彼女と同じイレギュラー達の活動が激しくなり、我々の被害が拡大したという事だな?」

 

「はい、その通りです」

 

「例の一団の監視はどうなっている?」

 

小室一行のことを聞かれた情報士官は、少し悩んだ後、答える。

 

「軽歩兵一個中隊を派遣して、包囲殲滅する予定です」

 

「熟練の部隊を退けた奴らだぞ?一週間の基礎訓練しかやっていない連中に勝てると思っているのか?」

 

「では、中歩兵一個中隊を・・・」

 

「駄目だな、今動かせる師団を使え。そして調査隊を組織し、監視から外れた最中にいつの間にか消えたもう一つの機甲部隊も探せ」

 

了解(コピー)!」

 

アレクサンドラから消えたもう一つの機甲部隊、リヒター達の事を示された情報士官は敬礼した後、仕事に取り掛かった。

動かせる部隊は無いのかと、部隊管理を行っているオペレーターを呼び出す。

 

「今動かせる師団クラスの部隊はあるか?」

 

「あ、はい。ユズコ師団長の軽師団が動かせますが」

 

「軽師団?ドイツ国防軍陸軍ではあるまい、直ぐに動かせるか?」

 

「北朝鮮軍の空挺部隊を排除した後の為、再編成を終えた後、現在待機中です」

 

「よし、直ぐに出撃命令だ」

 

「コピー!」

 

軽師団に出撃命令を出したアレクサンドラは、珈琲をまた口に含んだ。

そして出撃命令を出された軽師団は、床主に向けて師団全部で移動を開始した。

その師団の装備は殆どが大戦中にしようされた兵器ばかりであり、現代の技術は医療・通信・整備機器だけである。

機械化歩兵旅団の装備でさえ、大戦中の小火器やハーフトラックだけだ。

戦車は大戦中で使われた戦車ばかりで、旅団や連隊には纏まってはいない。

大隊で纏まっているのだ。

第1戦車大隊は35t軽戦車中心、第2戦車大隊は38t軽戦車F/G型中心。

第3戦車大隊はM3A3軽戦車中心、第4戦車大隊は九五式軽戦車中心、第5戦車大隊 オチキスH35軽戦車中心。

第6戦車大隊から第8戦車大隊は全てM5A1軽戦車で編成されている。

師団本部大隊は、旧日本軍の中戦車である九五式中戦車チハがあるが、装甲が中戦車とは言えないので、軽戦車扱いを受けているのだろう。

マシと言えば、護衛中隊M24チャーフィ軽戦車だけだ。

床主に到着したユズコ軽師団は、直ちに中隊単位で展開し、腿旅団と共に小室一行に対する包囲網を敷いた。

その頃、床主から少し離れたワルキューレの海上部隊の拠点と化した港で、一人の異世界から来た少女が護送(?)されていた。

 

「は~い、もう少し我慢してね~」

 

何かの施設として使われている建物の外から、背中にAR15系統のクローンであるLMTCQB16を掛けた市街戦用迷彩服を纏った中歩兵装備の女性兵士が、手招きをしている。

何名かの女性警備兵がつきそうで付いており、その表情は少し嫌そうな顔付きだ。

建物から白衣を着た身長150㎝の日本人の少女を抱えた半裸の女性が出て来た。

抱えられている少女は美少女で、半裸で下着だけを着けた女性はかなりのスタイルを持つ美女だ。

抱えていると言うより、少女が女性の胸を下着越しに顔を埋めて擦り、抱き付いているのが正解か。

その巨乳に顔を埋める少女の表情は何とも幸せそうで、まるで赤ん坊のようだが、抱き付かれている女性は余り良い気分ではない。

 

「まだ・・・?ちょっと重いんだけど・・・」

 

「はい、我慢。この娘寝てるし、落としたら私らが怒られるんだから」

 

「そんな~」

 

疲れた表情で、女性は寝息を立てる少女を抱えながらウィリージープまで向かう。

ようやくウィリージープに到着した女性は、寝ている美少女を後部座席に乗せ、一息ついた。

 

「ようやく終わった・・・」

 

隣にいた警備兵から、コートを受け取って羽織り、先程出て来た建造物に帰る。

運転席と助士席に座る二人の女性士官は、少女がグッスリと寝ているのを確認した後、車を停泊しているボートまで運んだ。

 

「どうしてあんなに警戒してるのかな?こんなに可愛いのに」

 

「白衣とか着てるから、余程危ないんじゃないの?」

 

笑みを浮かべながら、ジープは停泊しているドイツ国防軍海軍が使っていた小型ボートの隣に停車した。

ボートには何も積まれて居らず、白衣を纏って胸元を開けた凄まじい妖艶なオーラを匂わせる眼鏡を掛けた赤毛の美人科学者に、舵を取る幼い顔付きの白いセーラー服を着て三角帽子を被った女性水夫と三名の勤務服を着た女性海軍士官が居るだけだ。

角に手持ち用の回光通信機が置いてある。

士官はジープから寝ている少女を抱き抱えて、待ち構えていた海軍将校に渡す。

 

「準備が整ったようね。じゃあ、行って頂戴」

 

美人科学者が、海軍将校に抱えられたのを確認すると、舵を取る水兵に指示を出した。

言われたとおり、水兵はボートのエンジンを掛け、微かに見える空母へと向かっていった。

ボートに運ばれた少女は、女性科学者の膝元で眠っている。

 

「ようやくまともな設備があるところで研究できるわ。そしてこの娘に隠されている謎が分かる」

 

美人科学者は妖艶な笑みを浮かべながら、綺麗な手で少女の頭を撫でる。

少女が纏っている白衣の胸元に付けられた名札を見れば、英語で"宮藤芳佳"と書かれており、下には異世界人と記載されている。

二人の海軍将校は美人科学者の話を暇潰しに聞いており、もう一人は、徐々に大きくなっていく空母を見ていた。

数分もすれば、空母が完全に見え、手持ち型の回光通信機を持った将校が、空母にいる警備兵に自分達のモールス信号で存在を知らせる。

空母からも回光によるモールス信号の返答があったので、回光通信機を下ろした将校が、美人科学者に報告する。

 

「乗船許可が下りました。これからマーリアンに乗船します」

 

その報告で頷いた美人科学者を見た将校は、舵を取る水兵にボートを空母に着けるよう指示を出した。

空母の正体はエセックス級航空母艦だった。

1991年に練習空母を努め、それを最後に退役した空母だが、ワルキューレは何処からか手に入れたようだ。

外見はほぼ変わっていないように見えるが、対空砲や対空ミサイルの数が多い。

飛行甲板には、大戦中を思わせるようにか、SBDドーントレス艦上爆撃機が四機ほどあり、場違いなイギリス空軍のレジプロ戦闘爆撃機ハリケーンが八機やヘリがあった。

甲板を見る限り、女性や少女しかこの空母には居ないようだ。

海上専用の出入り口の前でボートが止まり、そこから案内役の経験の無さそうな艦長の若い女性や副長、担架を持った白いセーラー服を着た少女の水兵四人が出迎える。

 

「セムテ博士、練習空母マーリアンにようこそ。艦長のマルズです。実験施設は整っております」

 

「そう。では、案内して」

 

はい(アモーレ)

 

セムテという女性科学者は、将校達と一緒に空母へ乗り込み、将校に抱き抱えられていた芳佳は、少女水兵が広げた担架に乗せられた。

船内に入ったセムテと芳佳達は、外から対空砲の砲声が聞こえた。

 

「何事?」

 

「不法侵入機がこの船の防空網に入りましたね。ボフォース40㎜機関砲が侵入した航空機に対空射撃を行っております。あっ、エリコンの20㎜機関砲の砲声まで聞こえる」

 

慣れているのか、艦長はマーリアンに搭載されている対空機関砲の砲声を聴き分ける。

普段銃声や爆破音など聞いていないセムテには聞き慣れていない為、少し耳を抑えている。

 

「どうしました?」

 

艦長は振り返って、耳元を抑えているセムテに、問い掛ける。

 

「何でもないわよ。取り敢えず実験室までまだなの?」

 

腕組みをしながら返したセムテは、まだ実験室に着かないのかを問う。

 

「格納庫までちょっと遠いので・・・先に被験者を持って行かせて、博士は休みます?」

 

「まぁ・・・少し船に揺られてたから休むわ。案内して頂戴」

 

「承りました~」

 

質問を質問で返した艦長に、セムテは少しイライラしながらも誘いに応じた。

芳佳を乗せた担架だけは、実験室に連れて行かれる。

運ばれている最中、芳佳は目が覚めた。

 

「ここは・・・?」

 

起き上がろうと手を動かそうとするが、余り上手く動かせない。

運ばれ居ることに気付いて、周囲を見渡せば、自分を乗せている担架を運ぶ差ほど自分とは年が変わらない少女達が目に入る。

 

「貴方達は誰・・・?」

 

問い掛けるが、少女水兵達は全く聞く耳持たない。

実験室に芳佳を運ぶのに忙しいのであろう。

代わりに通路で通り過ぎていく、声を絞り出して乗員達に話し掛ける。

 

「あの、ここは何処の国の空母ですか?教えてください・・・!」

 

必死に声を掛けるが、無視されてるばかりだ。

やがて格納庫に入り、フリッツメットを被ったベネリM3を持った女性兵士が、芳佳を運ぶ水兵達の前に立つ。

他にもAK103等を持った先程のセミオートショットガンを持った女性兵士と同じ装備の女性兵士が何人か居る。

 

「例の少女だな?向こうまで運べ」

 

言われたとおり水兵達は指定された位置に芳佳を乗せた担架を置いた。

去っていく水兵達を見ながら芳佳は、代わりにやってきた放射線防護服の集団にここは何処なのかを聞き始める。

 

「あの、ここは何処の空母ですか?それに貴方達は何処の所属なんですか・・・?」

 

『意識が戻ってるぞ』

 

『構わない、実験室に入れろ』

 

芳佳の言葉に耳を貸すことなく、防護服の集団は仮設実験室に芳佳の担架を運び出した。

周りが組み立て式の防護壁に囲まれた施設に入った芳佳は、少し不安になる。

起き上がろうとしたが、首から下は麻酔でも打たれているのか、全く動けない。

 

「私を解放してください!離してよ!」

 

『黙らせた方が良いのでは?』

 

『被験者を傷つけたら、セムテ博士が煩いからな。口を抑える程度にしておけ』

 

騒ぎ出す芳佳の口を、付き添いでついてきた防護服が大きな手袋で塞ぐ。

防護マスク越しから見えた顔は女性だった。

そのまま、実験室の中央に置かれた実験台の上に拘束されてから置かれ、防護服の集団が去っていく。

ようやく身体の自由が効いた芳佳は立ち上がろうとするが、拘束されていることに気付かなかったのか、諦める。

 

「(私・・・どうなっちゃんだろう・・・?)」

 

天井に着けられた円形型の蛍光灯を見ながら、この先自分がどうなるかを考える。

防護ガラスから机や椅子が置かれているを見た芳佳は、少し露出が多めのセムテが座るのを見た。

 

「(イヤらしい服装の女の人・・・白衣を着ているというと医者か科学者かな?それに胸も大きそう・・・)」

 

拘束されている芳佳は、セムテの揺れる巨乳をマジマジと見ていた。

実験設備が整ったのか、アナウンスが実験開始の知らせを出す。

 

『これより、魔力を持つ少女の実験を開始する。関係者以外の者は、速やかに格納庫から退避せよ。繰り返す・・・』

 

アナウンスが終わる頃には、その場に溢れていた水兵や整備員、海軍将兵が一人残らず消え、代わりにセムテを初めとする白衣を着た女性達や武装した女性兵士などが残る。

芳佳が天井を見れば、強力な光に包まれ、目の前が真っ白になった。




マーリアンの格納庫の中は、仮設実験室が作られております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たなる転移者達

イーディ分隊+妹の参戦です。

重たそうな現代アメリカ陸軍歩兵装備です。


なんらかの実験が始まり、芳佳の視界が真っ白になった後、仮実験室の外では異様な事態となっていた。

 

「なっ、なによこれ!一体何が起こっているの!?」

 

仮実験室内部で起こる強力な光が起こった後、その外の格納庫では雷鳴が鳴り響き、屋内にも関わらず雷が起きている。

一人の迷彩服を着た警備兵が、壁に取り付けられている電話機に走り、受話器を取って、ブリッジに居る者達に何が起こっているのかを知らせる。

 

「こちら格納庫!異常事態が発生しております!船内で雷が、ギャッ!」

 

雷に打たれて丸焦げとなり、息絶えた。

この異常事態に、セムテは机に身を隠し、震えている。

次々と雷に打たれて格納庫にいる者達が死んでいく中、仮実験室からの光はまだ消えない。

格納庫以外でも異常な事態は起きていた。

突如ブリッジに居た警備兵が、手に持つMP5A5をその場にいた艦長を含む乗員達に撃ち始めたのだ。

そのような光景は練習空母マーリアンの至る所で行われ、乗員同士の殺し合いが始まり、船内は地獄絵図と化した。

一部を除いて、生きている乗員達が居なくなった後、仮実験室に全ての電力を奪われたのか、マーリアンは機能しなくなり、ただ浮いているだけとなった。

仮実験室の中にいた芳佳は、外で起こっている惨劇に気付かず、ただ実験台の上で眠っている。

数分後、先程殺し合い死んでいた乗員達が何故か起き上がり、船内を彷徨い始めた。

乗員達の瞳には生気が無く(俗に言うレイプ目)、死人みたいだが、微かに息はある。

しかし、外見からは死んでいるようにしか見えない。

まるでこの世界を無秩序に変えた原因である歩く死人こと奴ら(ゾンビ)だ。

 

「ママぁ・・・怖いよ・・・!」

 

運良く生き延びた白いセーラー服に学生のようなスカートを纏った少女水兵が、懐中電灯片手に暗闇の船内を震えながら歩いている。

その愛らしい顔には血が付いており、白いセーラー服は誰かの返り血で赤く染まっている。

その後ろから後退りながら、M2カービンを抱えた様々な国の海軍が着込む勤務服を纏った事女性務部員と背中がぶつかる。

 

「キャッ!はっ!?キャァー!!」

 

突然、出会い頭に背中をぶつけた為か、お互いに悲鳴を上げる水兵と事務部員。

騎兵銃を持っている事務部員は水兵に構え、引き金を引こうとしたが、小動物のように怯える水兵に、安心したのか、銃を下ろした。

 

「水兵か・・・はぁ・・・」

 

銃を下ろした後に、溜息を付いた後、怯える水兵に手を差し出す。

 

「大丈夫?大分怯えていたようだけど」

 

「だ、大丈夫です・・・漏らしちゃった・・・」

 

スカートを抑えながら立ち上がる少女に、事務部員は苦笑いする。

 

「さーてと、貴女以外に生きてる奴は居ない?」

 

「居ません・・・殺し合いが起こってから、私、隠れてましたから」

 

「そう、じゃあ、甲板に出ましょうか」

 

「そうします」

 

意気投合し、甲板に向かう二人であったが、向かってる途中、鉄パイプや角材、非常用の斧を持った船員達に囲まれる。

 

「あんた達も、甲板に向かうの?」

 

水兵が持つ懐中電灯の光に当てられている血塗れの船員達に声を掛けたが、反応は一切無い。

 

「こ、答えてよ・・・!冗談じゃないでしょ・・・?」

 

声を掛けても反応がない船員達に、少し死の恐怖を感じた二人。

数秒後、船員達は二人に向かってきた。

 

「同行するのね?じゃあ・・・こっちに・・・」

 

事務部員の目の前に来た機関士が、手に持ったスパナを頭に振り下ろした。

頭部に強い衝撃を受けた彼女は視界が(かすみ)、少し蹌踉ける。

 

「ひっ!?た、助けて!」

 

思わず声を上げた少女であったが、後ろから来た血塗れの一団に捕まり、暗闇の中に連れて行かれた。

 

「や、止めて!痛い、噛まないで!」

 

肉を食い千切る音が耳に入った蹌踉けている彼女は、錯乱状態に陥り、M2カービンをフルオートにして乱射し始めた。

 

「キャァァァァァァ!!来るな、来るな来るなっ!!」

 

狭い通路で銃声が鳴り響き、空薬莢の落ちる音や転がる音がする中、銃弾が船員達の肉体に命中するが、彼女達は痛がりもせず、ただ騎兵銃を乱射する事務部員に近付いてくる。

 

「来ないで!来るなクソ共っ!ハッ!?」

 

引き金を引いても銃声が鳴らず、カチカチとした音しか鳴らない。

やがて近付いてきた船員達に囲まれ、彼女は息絶え後、二人は船員達の"仲間入り"を果たした。

一方マーリアンの最下階では、新たな別世界の者(イレギュラー)達が、転移していた。

 

「ここは何処ですの・・・?それになにか身体が重い・・・?」

 

暗闇の船内で目覚めたイレギュラー達、しかし、彼等の服装は、完全に現代アメリカ陸軍歩兵完全装備だ。

アメリカ陸軍の主力戦闘服ACU迷彩服にズボンを始め、陸軍用コンバットブーツ、M16/M4突撃銃用バンダリア、M92自動拳銃用ショルダーホルスターにマガジンポーチ、ラジオポーチ、最低限の生活必需品とM16/M4のマガジンが六本入れる事が出来るポーチ付きバックパック、迷彩カバー並びナイトビジョン用アタッチメント付きPASGTヘルメット、インターセプターボディアーマー、トドメは夜間戦闘用アクセサリー付きM4カービンにA1タイプ、M21対人狙撃銃、M249E4、ベレッタM9A1、使い捨てのFFVAT4だ。

狙撃兵、機関銃手、対戦車兵用にはそれぞれの装備品がなされている。

 

「なんですの、これは・・・?」

 

目覚めた転移者の一人である少女は、自分が着けている装備品と格好を見て驚く。

 

「中々動きやすいですが、装備が重たいですわ」

 

少し身体を動かしてから、アメリカ合衆国陸軍歩兵装備の重さを知り、その後周りで気絶している同じような装備品を着けた者達を起こす。

 

「アレ、どうして僕はここに・・・?それにイーディさん、なんですかその格好?」

 

イーディと呼ばれた少女は、まず同じであるが、分隊支援兵装備な金髪の少年を起こした。

 

「貴方だって同じ様な格好でしょ。それに私は気分がよい日だったのに、突然霧に呑まれた、目覚めたらこの有様ですわ。ホーマー、早くみんなを起こすことよ」

 

「はい、イーディさん。よいしょっと、ちょっと重いな・・・?」

 

M249E4の弾薬を多めに持っているので、イーディよりも装備品が重かったホーマー。

最後にイーディが、同じ装備をした少女を起こそうとした瞬間、彼女は驚いた。

 

「う~ん、確か私は・・・あっ!お姉様!?」

 

「リコルス!?何故こんな所に・・・?」

 

その少女はイーディと少し似ており、リコルスと呼ばれた少女は飛び上がり、イーディと対峙した。

 

「クッ、まさか出し抜いた私を追い掛けて・・・!?て、重い!」

 

「違いますわ!折角気分が良かったのに、霧に呑まれてこんな状態に・・・」

 

起こされた者達は、さぞや不思議だろう。

実際にいたらゲイと呼ばれそうなオカマの大男が声を掛けた。

 

「あんた達、まさか双子なの?」

 

「そうですわ。彼女は私の自慢の妹、リコルス・ネルソンですわ!」

 

「本当に似てるとはな・・・」

 

妹であるリコルスと啀み合っているイーディが答えた後、M21を抱えていた黒髪の以下にも美人狙撃手が言う。

 

「感動の再会ですね!」

 

「話を聞いていましたが、まさかこんなにそっくりだなんて・・・」

 

次に、何かの民族を示すような首にストールを巻いた紺色の女性と、ヒロインなリボンで髪をとめた容姿の少女がイーディとリコルスが似ていることに驚いている。

頭に被っていたフリッツヘルメットを脱ぎ、地面に置いて腰掛け、携帯用ランプを付け、それを囲むように集まる。

 

「なにから始めましょうか・・・?」

 

ストールを巻いた女性が、言った後、オカマの大男が何か思い付いて、全員に言う。

 

「じゃあ、イーディの妹さんに自己紹介でも始めましょうか。私はヤン・ウォーカーって言うのよ、よろしく」

 

「お噂はお姉様から聞いておりますわ。敵戦車からお姉様を含む五人を守った"漢女"だとか・・・」

 

「もう、照れるわね~筋肉があれば戦車の一台や二台なんてイチコロよ~」

 

このリコルスが言ったことに、照れ始めるヤン。

次にピンク色のリボンで髪をとめた少女が名前を名乗る。

 

「スージー・エヴァンスです。実家は資産家でエヴァンスカンパニーという企業経営をやってます」

 

「エヴァンス社のことですね。飴は時々買いますわ」

 

「ありがとうございます」

 

スージーが礼を言った後、ストールを巻いた女性が自己紹介を始めた。

 

「私は分隊で唯一のダルクス人のリィンです。少し差別されるかと思いましたが、受け入れて貰って本当に嬉しかったです!」

 

「流石は私のご自慢のお姉様ですわ!人種差別をしないなんて、理由で差別する連中とは違い、器の大きい女性ですわ。それと恋人とは今も仲が良くて?」

 

「はい!もうじき結婚に近付いたというのに・・・ワァ~!」

 

恋人のことを聞かれたリィンは、突然泣き始めた。

うっかり言ってしまったリコルスが、宥めた後、ずっと変な方向を向いている黒髪の女性に声を掛ける。

 

「そこの貴女、何という名前ですの?」

 

「マリーナ・ウルフスタンだ・・・話はイーディから聞いているだろう」

 

「あっ、分隊の狙撃手様ですわね。なんでも可愛い動物が好きだとか・・・」

 

この言葉に、マリーナは全員から顔を隠す。

次に何故か興奮していたホーマーが名乗り始めた。

 

「最後まで焦らすなんて、凄く興奮したじゃないか・・・!僕はホーマー・ピエローニさ。姉は世界平和の為、世界中の男達を教育する気なんだ・・・」

 

ホーマーの凄まじい興奮ブリに、リコルスは引いてしまったのか、苦笑いしながら、興奮している聞こえないように姉であるイーディに小声で話し掛ける。

 

「ハハハハ・・・そうですか・・・(お姉様、あの人はなんですの・・・?)」

 

「(あれが俗に言うドMと言う者ですわ・・・下手に殴ると興奮するのですよ!)」

 

イーディ分隊全員の自己紹介を終えた後、リコルスが自己紹介を始めた。

 

「私はリコルス・ネルソン、貴方達の隊長であられるイーディお姉様の妹ですわ。お姉様には体力で劣ってますが、歌唱力で勝ってますわ。そのお陰でアイドルデビューに成功し、世界一の工業力を持つ大国で、ライブに向かっていたところ、乗っていた客船が嵐に遭い、海に投げ出されてこんな状態ですわ」

 

プンプンしながらこの世界に転移するまでの経歴を話したリコルス。

それぞれ自己紹介を終えた後、ヘルメットを被って、それぞれ手に持つ武器の点検を行う。

 

「おや、ホーマーとマリーナ以外みんなお揃いのライフルですわ」

 

自分が持っているM4A1カービンを見ながら、イーディは声を上げる。

ちなみにリコルスもイーディと同じM4A1カービンを所持している。

M4カービン所持者は、リィンやヤンにスージーで、M249E4はホーマー、M21対人狙撃銃持ちはマリーナだ。

FFVAT4はヤンが四本も背負っている。

装備の点検を終えたイーディ達は、この練習空母マーリアンの上を目指すことにした。

 

「それでは、イーディ分隊、出撃!」

 

「違いますわ。リコルス分隊、出撃!」

 

「何でですの!?」

 

お互いに喧嘩をし始めるが、妹のリコルスは士官学校卒業者なので、ここに居るメンバーの中で彼女が一番階級が高いことになる。

よってリコルス分隊とイーディ分隊は改称されたのだ。

 

「リコルス分隊、出撃ですのよ!」

 

「クゥ~!」

 

また妹に出し抜かれたので、イーディは悔しがっていた。

一番重要なことに気付いたスージーが、全員に告げた。

 

「この暗闇じゃ、まともに動けませんよ?」

 

「「あっ」」

 

その後、ヘルメットに着けられるアクセサリーライトに気付いたと言う。

そして実験台に眠っていた芳佳は、惨状の後に目を覚ました。




ギャグっぽくなったな・・・
アメリカ陸軍の現用歩兵完全装備は重たそうだね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幽霊船マーリアン

エログロ描画注意!


仮実験室の中で目覚めた芳佳、外の様子を窓から見れば、信じられない光景が広がっていた。

 

「なに・・・これ・・・!?」

 

格納庫はその場にいた者達の血で赤く染まっており、床には人体の一部が散乱していた。

同時に銃声も耳に入ってくる。

 

「聞いたこともない銃声だ・・・外で何が起こってるんだろう・・・」

 

不安そうな表情をしながら、芳佳は立ち上がって、仮実験室の出入り口を出た。

まだ中だったのか、様々な装置や機材が置かれていたが、今の芳佳に調べている暇はない。

壊れた壁から直ぐに格納庫へと出る。

 

「酷い光景・・・こんなの今まで・・・ウゥ・・・!」

 

目の前に広がる悲惨な光景に、芳佳は嘔吐した。

掃き終えた後、セムテの啜り声が耳に入り、彼女の元へ向かう。

 

「あっ、あっちからあの科学者の声が・・・!」

 

裸足のままで駆け寄った為、足の裏が血で赤く変わったが、医者を目指す彼女には慣れるべき光景だ。

そのまま机の下に隠れるセムテに手を差し出した。

 

「大丈夫ですか・・・?」

 

「ヒッ、ヒィィィ!」

 

様子からしてかなり怯えているようで、芳佳の手を払い除け、何処かへ逃げ去ってしまう。

 

「私が気絶してる間に、この船で何が起こったんだろう・・・?」

 

芳佳は慕っていた上官から教わった訓練を思い出し、武器になるような物を探し始める。

ここが惨状に変わる前に、まだ人の形をしていた兵士達が持っていた銃があったが、どれもこれも血が付着して使えなくなっている。

仕方なく、血溜まりの中に落ちていた警棒を護身用の武器にすることにした。

 

「これは、使えるのかな・・・?」

 

警棒を手に取った芳佳はセムテが逃げた方向へと、警戒しながら向かった。

周りからは銃声が聞こえてくるが、もう慣れたのか、今はセムテに何が起こったのか聞き出すのが、芳佳の優先すべき目的らしい。

赤い血で一色となった床をゆっくりと歩きながら、セムテの逃げた先を追った。

 

「一体何が・・・?一刻も早くあの人を探さないと・・・!」

 

少し歩行速度を上げて、格納庫を出た。

通路は僅かな光だけが頼りであり、所からか何かが襲ってきそうな雰囲気だ。

そこも殺し合ったような血痕が多数残されており、時間も数分以上しか経っていない。

芳佳を恐怖心が襲い、呼吸を乱す。

 

「ハァ、ハア、ハァ、ハア、何処に居るんですか?」

 

気を紛らわせる為に、芳佳は声を上げた。

声が狭い通路に響き渡るだけで、返事はこない。

 

「何処にいるの・・・!?」

 

それが芳佳の心拍数と恐怖心や孤独感をさらに加速させた。

 

「怖いよ・・・お父さん・・・お母さん・・・それに坂本少佐・・・」

 

ここには居ない身内や戦友達のことを思い出して、恐怖心を打ち消そうとする芳佳。

ちなみに上官も含む戦友達もこの世界に来ているのだが。

その時、セムテの啜り声がまた耳に入り、孤独感が一気に吹き飛び、急いで彼女の元へ向かった。

 

「やっと見付けた!」

 

芳佳はセムテを見付けた途端、彼女の豊満な胸元へ飛び込み、顔を埋めた。

いきなり自分の胸元へ飛び込んできた少女に、セムテはただ唖然していたのだった。

 

「へっ?あ、えぇ・・・?」

 

「やっと見付けたよ・・・怖かった・・・!」

 

涙しながら頬からセムテの胸の温もりを感じ取る芳佳だが、抱き付かれて少し感じてしまう彼女にとっては少し迷惑だろう。

 

「(こんなの・・・男に抱かれる時と同じじゃない)取り敢えず離れましょうね」

 

取り敢えず芳佳を自分の身体から離したセムテ、今自分達が乗っている練習空母マーリアンで、一体何が起こっているのかを整理する。

 

「(被験者がこんなに泣いてるなんて・・・)まぁ、この空母で一体何が起こってるか話してあげるわ。それと私のことはセムテと呼んで」

 

泣き止んでこっちを見ている芳佳に、セムテは空母で何が起きたのかを話した。

実験開始後、何事もなくデータ解析は続いていたが、突如異常事態が発生し、格納庫内で雷が起きるという超常現象で、格納庫内にいたセムテを除く者達が雷に打たれて内部から爆発し、船内で銃声が多数響き渡り、現在に至る。

仮実験室の中に居た芳佳だけは無事であり、他にも仮実験室の中に防護服を着た集団が居たのだが、中から誰一人として出て来なかったという。

 

「私だけが無事だなんて・・・」

 

「事実よ。それと防護服連中を見なかった?あいつ等、確か実験室の中で機材とか弄くり回してた筈なのに」

 

「そんな人達、私は出る前しか見てませんよ。それと出る時も、一人も見ませんでした」

 

「まさか、ワープしたんじゃないでしょうね・・・?取り敢えず、この船から出られる船とか探しましょう。甲板の滑走路にある飛行機は動かせそうもなさそうだし・・・」

 

ここから移動しよう個室から出た二人であったが、先に出たセムテが何者かに捕まり、何処かへ連れて行かれそうになっていた。

 

「キャー!痛い、離して!!」

 

「待ってください!セムテさん!」

 

悲鳴を上げ、連れて行かれるセムテを必死に追い掛ける芳佳であったが、後ろから何者かに捕まる。

 

「離してください!誰・・・」

 

自分の身体を掴んでいた手は、女性船員だった。

必死に振り払おうとするが、成人女性である船員の方が力が強く、中々振り解けない。

仕方なく、持っていた警棒で足を叩いた。

その衝撃からか、船員は芳佳を掴む手を離したが、悲鳴一つ上げず、ひたすら芳佳を捕まえようと追ってくる。

芳佳の方も、連れて行かれたセムテを追うのに必死で、追ってくる船員には気付かなかった。

 

『助けてー!』

 

「今行きます!」

 

必死に追い掛ける芳佳であったが、何かに躓いて転んでしまう。

 

「キャッ、これは・・・?」

 

暗闇の中で余り彼女からは見えてなかったが、人間、それも女性の死体だった。

気にもせず、芳佳はセムテを追う。

 

『止めて!触らないで!離しなさいよ、小娘共がっ!!」』

 

連れて行かれたセムテは、何かと戦っているらしく、その声が芳佳の頼りとなっている。

ようやく現場に到着した芳佳を待っていたのは、自分と年が二つほど上なセーラー服を着た少女の頭をヒールを履いた足で潰しているセムテの姿だった。

 

「ようやく来たわね。遅かっわよ、あんまり大人の女を待たせるんじゃないわよ!」

 

愛らしい顔であったはずの少女の頭から足を離すと、芳佳に叱り付けるよう言い張る。

目の前の少女を殺していたセムテに、少し信じられなくなった芳佳であったが、「今はそんなことを考えている場合じゃない」と、自分に言い聞かせて謝る。

 

「遅れてご免なさい。大人の女性に身体を掴まれて、直ぐには来られませんでした」

 

「言い訳すんじゃないわよ。それとライフルを持ちなさい」

 

自分の大事に着込んでいた服が血で汚れ、さらに直ぐに助けに来なかった芳佳に苛立っていたのか、偶然にも手に入ったAK103を、頭を下げる彼女に向かって投げ付けた。

 

「痛いです・・・」

 

「それってAKだからあんたにも扱えるわよ。あたしはご免だけど、それともう一度助けが遅れたら、今度は裸になってついてきて貰うわよ?」

 

「はい・・・すいません(なんで怒られてるんだろう?私)」

 

何故、「助けたのに叱られなくてはいけないのか」と、心の中で思う彼女は、自分の世界では見慣れない突撃銃を抱え、左手にS&W M27を握るセムテの後についていった。

 

「(銃なんてネウロイ以外に撃ったことないよ・・・それにセムテさんが持っているあの回転式の拳銃、シャーロットさんがこの前見せびらかしてた拳銃だ)」

 

使ったこともない突撃銃を持ち、心の中で愚痴りながら、セムテにしっかりとついていく。

それから数分間も暗闇の中を移動したが、全く甲板へ出られる様子もない。

セムテは横腹を抑えながら、息を切らし、汗だくのままで移動している。

これ程の美貌を持っているにも関わらず、運動も禄にしていないらしく、肌から飛び散った汗が、芳佳の肌に当たる。

 

「(この人、科学者だから余り運動してないのかな?)」

 

また愚痴った芳佳であったが、次の瞬間にセムテが多数の少女水兵に襲われ、連れて行かれそうとなった。

 

「離せ!このクソ餓鬼共がっ!!」

 

自分の美脚を少女に噛まれたセムテは、M27をゾンビのように群がってくる少女水兵達に乱射し始める。

セムテに向かってくる少女水兵達は皆美少女だが、人体の一部が損傷していたり、顔の穴という穴から血が噴き出している者まで居る。

強力なマグナム弾が、少女達の頭に腕や脚を吹き飛ばしていくが、所詮六発程度しか収まらないので、直ぐに弾切れとなる。

それでもセムテはM27を振り回して、衣服を破ったり、身体に噛み付いてくる少女達を払い除けながら、芳佳にAK103を撃つよう怒鳴る。

 

「そのAKを撃ちなさいよ、早く!イタッ、何処に噛み付いてのよこいつ!!」

 

自分の股に噛み付いた少女を振り払おうと殴り付けるセムテ、それを見ていた芳佳は、クリップを握る手が震え、撃てないでいた。

 

「(もし撃ったら・・・私は・・・?)」

 

人を撃ったこともない芳佳はただ怯えるばかりで、何も出来ず、ただじっと、セムテが少女達に喰い殺されるのを待つだけである。

 

「何でもするから、何でもするから早く助けなさいよ!」

 

死の恐怖が迫ったのか、セムテは半泣き状態で芳佳に助けを求めた。

しかし、当の芳佳は震えて何も出来ず、ただ涙を流して肘をついているばかりだ。

 

「ぎゃぁぁぁ!痛い痛い!噛まないで!痛いよ!」

 

群がって、自分の身体を噛む少女達を引き離そうと暴れるセムテであったが、バランスを崩して床に倒れてしまい、そのまま喰われ続ける。

やがて悲鳴まで聞こえなくなると、肉を食い千切る音や、食べる音しかしなくなった。

 

「あぁぁ、あああぁぁぁ・・・」

 

目の前で起こるカリバリズムに、芳佳は号泣しながら逃げ去った。

一方、芳佳がこっちへ逃げてくるのに気付かないイーディ分隊、ではなくリコルス分隊は言うと、セムテが撃ったM27銃声の元へと向かっていた。

 

「確かここから銃声が聞こえましたわね?」

 

「そうだ・・・それにこの銃声は、かなり大口径な銃だ・・・」

 

リコルスがフラッシュライト付きM4A1カービンを構えながら言った後、フラッシュライト付きM9A1自動拳銃を構えていたマリーナが答える。

また妹に出し抜かれ、まだ根に持っているイーディは、ヘルメットに付いているヘッドライトを頼りに、先行するリィンとマリーナの後へ続いた。

 

「これはなにか・・・興奮するどころか・・・なにかを漏らしてしまう様な気分だ・・・それに危険な物が襲ってくる気がする」

 

妙な気分になっいたホーマーを注意するように、ヤンがヒステリック気味に彼を怒鳴りつける。

 

「ちょっと、変なこと言わないの!こんな暗闇の中から何か出て来たらどうすんの!?」

 

「ヤンさん、こういうの苦手ですか?」

 

「そうなのよ。私ってちょっと暗いのが本のちょっとくらい苦手で・・・」

 

「そうなんですか。私もちょっと苦手かな・・・?」

 

気を紛らわせる為か、スージーがヤンと会話を始めた。

先行しているリィンは、ビクビクしながらM4カービンを腰だめで構え、マリーナにずっとくっついている。

 

「そんなにくっつかれると、少し迷惑だぞ・・・」

 

「冷たくしないで下さいよ!私はこんな暗闇の中で、しかもこんなに狭い所で孤独だと想像すると怖くて歩けません!」

 

必死に伝えたリィンの表情を見たマリーナは、無表情のまま、ずっと前を見据えた。

そして、こちら側に逃げてきた芳佳の足音に気付いたのだ。

 

「っ!?誰か来ます!」

 

「足跡からして裸足だ。しかも走っている・・・!」

 

先行していたリィンとマリーナは、近付いてくる芳佳が来るであろう方向に銃を向けた。

慌ててイーディとリコルスも、M4A1カービンを構える。

それとM249E4を構えていたホーマーは、もの凄く興奮していた。

 

「ハァハァ、さぁ、何が来るんだい?」

 

「そんなに興奮しないでください・・・」

 

スージーがツッコム様に言った後、芳佳の姿が確認でき、全員は銃を下ろした。

 

「子供!?」

 

「それに少女ですわ!」

 

イーディとリコルスが続け様に言った後、AKを握っていた芳佳は息を切らしながら、米陸軍完全武装の歩兵分隊の前に立った。

 

「足跡が血塗れだね・・・」

 

「まさか怪我を!?」

 

芳佳の足跡を見ていたホーマーが言った後、リィンが芳佳に近寄り、怪我がないかを調べ始める。

 

「怪我はないみたいです!」

 

「そのようだな・・・」

 

リィンが知らせた後、マリーナが呟き、イーディとリコルスが芳佳に近付いて、ここは何処なのかを聞き出そうとする。

 

「もしもし、そこの貴女。この船の乗員でいらっしゃいますか?」

 

「違いますわ、お姉様。この娘の服装から見る限り、病室にいような感じですわ」

 

二人が芳佳を何処から来たのか推測しあってる頃、スージーが代わりに聞き始める。

 

「何処から来たの?訳を話してください」

 

「あ・・・はい。実は・・・」

 

芳佳は今まで起きたことを包み隠さずスージーに話した。

 

「そんなことが・・・イーディさんにリコルスさん、ここが何処だか分かりました。空母という軍艦の一種です」

 

「「空母に軍艦!?えぇぇぇぇぇ!!?」」

 

自分達のいる場所が分かったネルソン姉妹は、驚きの余り声を上げてしまった。




次回は脱出編にしようかな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

空母からの脱出

スナイパーエリートV2がゾンビやってたなんて知らなかったよ・・・

本編中に出てくるワルキューレのゾンビみたいなのはあのゲーム出てくるゾンビです。
これからは感染者と呼びます。


芳佳から教えられて自分達がいる場所が、大きな船こと航空母艦だと分かったイーディ達。

驚きの声を上げた後、外に出られる通路はないのかと芳佳に質問した。

 

「取り敢えず宮藤さん。ここが本当に空母という軍艦なら、周りの見渡せる連絡路はあるのですか?」

 

「えぇーと、すみません、私もこの船の構造は知らなくて・・・」

 

「はぁ~。こんなに大きい船で真っ暗じゃあ、もう絶望的ね・・・」

 

その答えに、ヤンは乙女チックに頬を左手で押さえて暗い表情をする。

芳佳が来ているのは白衣一つだけなのか、スージーが道中手に入れたセーラー服を渡す。

 

「白衣じゃあ寒いでしょ?これを着てください」

 

白衣を渡された芳佳は、それを受け取って着替えようとしたが、リコルスに止められた。

 

「貴女は目線も気付かずに着替えるおつもりですか?」

 

「あっ」

 

うっかり男性陣の存在を忘れていた芳佳はリコルスに言われてようやく気付く。

ヤンは顔を背け、何故かホーマーはイーディに蹴られている。

芳佳が着替えを終えた後、それぞれの自己紹介を始めた。

 

「皆さんはガリア系のお名前なんですね」

 

「えぇ、そうですの。それより貴女は何処の出身で?」

 

イーディに聞かれた芳佳は、自身の出身地日本こと扶桑と答えた。

 

「ふ、扶桑・・・?そんな国は聞いたこともありませんわ」

 

「え?ガリア出身って言ってたじゃないですか」

 

「たしかにガリア出身ですが、扶桑という国は知りませんわ。名前からして、極東の辺りですの?」

 

どうやら別の世界のガリアだと悟った芳佳は、自分の世界のガリアのことを話した。

 

「まぁ、そんなに大きい国でしたの!?私達のガリアは小国ですのよ!」

 

「こっちのガリアと私の世界のガリアじゃ規模が違うんですね・・・こういうのを異世界って言う単語かな?」

 

照れながら言った芳佳は鼻をかいた。

その後、イーディ達はバックパックから米陸軍のアタッチメント部品を取り出す。

様々な部品に目を奪われる中、ピカニティーレイルシステム搭載のM4カービンに装着し、構えて試してみる。

 

「どれが良いんでしょうか・・・?」

 

リィンはACOGとフォアグリップ装着したM4カービンをリコルスに見せて、これで良いのかを問う。

 

「う~ん、これならいけそうですわ」

 

渡されたM4カービンを構えて、リコルスはリィンに返す。

他の面々も各自レイルシステム搭載の銃器のカスタムを始める。

その時、マリーナが近くに武器庫があることに気付いた。

 

「隣に武器庫がある・・・」

 

「嘘ッ、何でこんな近くにありますの!?」

 

驚きの声を上げるイーディ、マリーナは言い訳する。

 

「宮藤のお陰で言いそびれた・・・」

 

「まぁ、それは良いとして早く中に入ろうよ。イーディさん」

 

ホーマーが言った後、一同は武器庫に入っていった。

武器庫の大半はリーエンフィールドNo4Mk1ばかりであったが、この時代にあった銃器は揃っている。

入った一同は、隅に置かれたラジオから流れてくる音楽と不気味に光るランプに驚いたが、丁寧に並べられている銃器類に目が行く。

 

「殆ど私達の時代の小銃が占めておりますが、私達が持っているマシンガンの様な銃がありますわ」

 

目に付いたAR-18を手にとって、リコルスがM4A1カービンと見比べる。

殆どリーエンフィールドNo4Mk1に占められているが、散弾銃ベネリM1とMPS AA-12、回転式拳銃S&W M27、自動拳銃SIG シグプロ、自動小銃ノベンスキーN4CQBモデルとM2カービン、突撃銃AK103とAR-18、短機関銃MP5kとPP-19ビゾンなどが丁寧に並べられている。

 

「このラジオから流れてくる音楽は何とかならないのかしら・・・」

 

ラジオから流れてくる音楽が地味に怖い所為か、ヤンはチャンネルを弄くり回す。

 

「この小型サブ・マシンガン、気に入った・・・」

 

取り回しの悪いM21な為、マリーナはMP5kを気に入り、早速自分の装備に加えた。

構えた後、弾倉を数本手に取って、ポケットに入れる。

各々様々な銃器を手に取り、試しに構え、気に入った物を持って行く。

フルオートで散弾が撃てるAA-12をイーディが持って構え、その軽さに驚いた。

 

「まぁ、このライフルなのかマシンガンなのか分からない銃はとても軽い感じですわ!一体どんな構造なんですの?」

 

「試しに撃ってみれば分かるよ」

 

ホーマーの言ったことに乗ったイーディは、武器庫から出て、角に置かれていた消火器に向けてAA-12を発砲した。

350発分の12ゲージ弾が消火器を鉄屑の固まりに変える。

 

「なんですの!この銃は!?」

 

AA-12の恐ろしい火力に、イーディは唖然する。

その後、各々銃を手に入れたイーディ達は、武器庫を後にし、練習空母マーリアンからの脱出を始める。

 

「まずは船を探しますわよ。リコルス分隊、出撃!」

 

リコルスが指揮を執っている為か、イーディはかなり嫉妬している。

フラッシュライトを付けながら船内を進む中、芳佳を追ってきた感染者の一団と遭遇する。

角材やパイプ、スパナ、バール、非常用斧を持ってイーディ達を殺す気満々だが、周りは怪しいと言うが、リコルスは気付いてないらしく、あろうことかその一団に声を掛けたのだ。

 

「もしもし、あなた方はこの船の船員ですか?少し道を案内させていただきたいのですが・・・」

 

血塗れの白いセーラー服の少女が、話し掛けてくるリコルスにスパナを振り下ろした。

 

「きゃっ!何をするんですか!?危ないですわ!」

 

感染者の水兵からスパナを取り上げようとするリコルスであったが、頭にナイフが刺さっていることに気付き、尻餅を着いた。

 

「あ、頭に・・・ナイフが刺さって・・・」

 

リコルスが言った後、後ろにいたイーディ達は少女にM4カービンを構える。

 

「そこの貴女、妹に近付かないでくださる?」

 

少女の頭にM4A1カービンの銃口を向けるイーディであったが、フラッシュライトに当てられた身体に無数の銃痕が写り、相手がとても危険な人物と判断する。

 

「ヒッ、死んでる位の銃創・・・!?」

 

「っ!」

 

驚いて身動きの取れないイーディの代わりに、マリーナがM9A1を素早く取り出し、少女に数発撃ち込む。

 

「何をする・・・し、死んでいない・・・?」

 

突然拳銃を少女に撃ったマリーナに、リィンは聞き出そうとしたが、撃たれた少女が蹌踉けながらもイーディに襲ってくる事に驚いた。

芳佳は感染者のことを知っている為、イーディ達に知らせる。

 

「この人達は人を食べようとしてます!でも、なんで撃たれたのに・・・」

 

倒れ込んでいたリコルスを立ち上がらせたスージーは襲ってくる感染者の一団に威嚇射撃を掛ける。

銃弾は感染者の足下に命中し、床を跳弾するが、怯まずに感染者の一団は向かってくる。

そればかりか、銃を持った感染者がこちらに向けて撃ってきた。

空かさずイーディ達は応戦する。

 

「撃ってきたわ!」

 

「応戦しますわよ!」

 

イーディが指示を飛ばした後に、芳佳を除く全員がそれぞれ手に持つアサルトカービンライフルを発砲した。

向かってきた鈍器を持った感染者達はそのままイーディ達に向かってきたが、ノベンスキーN4から軽機関銃M249E4に切り替えたホーマーに脚を撃たれ、床にバタバタと倒れ込んでいく。

頭を撃つ以外無力化出来ない為か、這いずりながらもイーディ達に向かってくる。

 

「やはり頭を狙わなくては・・・」

 

MP5kからM21に切り替えたマリーナはAR-18を撃ってくる感染者の警備兵の頭に狙いを定めた。

目の前の目標に精神を集中させ、引き金を引いた。

銃口から飛んだ7.62㎜×51NATO弾が額に命中、脳内を破壊しながら貫通する。

銃声が響いた後、頭を撃ち抜かれた感染者はAR-18を落とし、床に倒れ込んで動かなくなる。

 

「弱点は頭・・・なにかの冒険物小説みたいだね」

 

M249E4の弾倉交換をしながらホーマーは呟く。

次々と感染者は頭部を撃たれ、無力化されていくが、銃声を聞き付けた感染者が続々と集まってくる。

 

「敵が増えてる・・・!?」

 

増え続ける感染者に、リィンはSIGシグプロを撃ってくる感染者から身を隠しながら、弾切れのM4カービンからベネリM1に取り替えて、応戦を再開する。

霧がないと察したリコルスは、応戦しているイーディの隣に寄り添って、強行突破することを知らせる。

 

「お姉様、この軍艦の船員を全員相手するおつもりですか?!前に進みますのよ!」

 

この進めにイーディは敵の数を確認して、リコルスの指示に従った。

 

「ここで敵を相手にしてたら霧が無さそうですわ・・・それより貴女が指揮官じゃなくて?」

 

「うっ、そうでしたわ・・・手榴弾投擲!」

 

M67破片手榴弾を投げ込み、前進の指示を出す。

 

「手榴弾が爆発したら皆様前進しますわよ?!」

 

「この数で前進するの!蜂の巣にされちゃうわよ!」

 

ヤンが悲鳴を上げるかのように反対するが、リィンが賛成する。

 

「数が増えたら厄介です。前進して脱出の手段を探しましょう!」

 

M4カービンの弾倉交換(リロード)をしながら、前進が最適とリコルスに進めた。

敵が増えつつある為、これ以上戸惑ってはこちらが追い込まれて皆殺しにされる。

そう頭に思い浮かべたリコルスは、手榴弾が爆発したので指示を出そうとしたが、仲間が被弾すると思ってしまい、指示を滞る。

代わりにイーディが指示を出す。

 

「分隊前進!」

 

新しい弾倉に変えたイーディは、M4A1カービンを乱射しながら前に出る。

全員イーディの指示に従い、手に持つ銃器を撃ちながら遮蔽物から出た。

芳佳はスージーのバックパックを掴みながら、彼女等と共に前進する。

イーディ達が感染者達がバタバタと倒れていき、一気に甲板近くまで来ることに成功した。

 

「他の方々は後ろを頼みますわ!前の敵兵は私達姉妹が抑えます!リコルス、私達だけでやりますのよ!」

 

「はい、お姉様!」

 

M4A1からAA-12に切り替えたイーディは、狭い通路を群がってくる感染者の一団に向けて撃ちまくった。

挽肉器とも異名を持つAA-12の連射力で肉塊に変えられていく感染者達。

リコルスも負けじとM4A1の銃身に取り付けられたM320グレネードランチャーを発射する。

そのまま飛行甲板に出たイーディ達であったが、芳佳以外の者達が驚きを隠せない。

 

「ようやく外に出られましたわ。大きな船ですわね、あそこがブリッチですの?でも、船がらしき物がありませんわ・・・」

 

周囲を見渡しても、動かせないハリケーンやヘリ、ドーントレスしかない為、イーディ達は困惑するが、芳佳がこの空母に搭載されていた揚陸艇を見付ける。

 

「ネルソンさん達、あそこに揚陸艇が!」

 

「変な形の船ですわね・・・」

 

「文句を言っている場合は無いと思うが・・・」

 

飛行甲板のあちらこちらから感染者達が出て来たことを知らせたマリーナ。

ヤンが男口調になって、背中に背負っていたAT4を取り出し、整備兵の感染者達に向けて撃つ。

 

「邪魔じゃボケッ!」

 

本来は個人携帯用使い捨てのミサイルで、敵兵を一人くらいしか殺傷できない筈だが、運良く後ろのドーントレスに命中した為か、大爆発を起こし、感染者達を一網打尽にした。

 

「どうだ!筋肉があれば出来るんだよ!!」

 

「ヤンさん、男に戻ってますよ・・・」

 

「イヤン、もう聞かないでよ!」

 

スージーに注意されて元に戻ったヤン、一同はそのまま揚陸艇に向かう。

感染者達が襲ってきたが、蹴りを入れたりして何とか払い除け、誰一人掛けることもなく上陸艇に辿り着くことが出来た。

しかし、感染者達はM2カービンやベネリM1、AK103、S&WM27、シグプロ、ビゾンPP-19等をイーディ達に向けて撃ってくる。

先に揚陸艇に乗ったリィンが、エンジンが掛かるかどうかを調べる。

その間にマリーナがM21狙撃銃で、リィンを狙う銃を持った感染者達を抑え込む。

 

「エンジン掛かりました!皆さん、乗ってください!」

 

「分かりましたわ!それでは皆さん、乗船しますわよ!」

 

「船から船へと乗船って言えるのかな・・・?」

 

ホーマーが何か言った後、全員が揚陸艇に乗り込むことに成功した。

しかし、ここで問題が起きた。

その問題とは海面に揚陸艇が浸かってないことである。

衝撃を与えれば揚陸艇を海に着水させることが出来るのだが、イーディ達もとい芳佳もそれを知らない。

マリーナが釣り上げてるロープを切ろうとしたので、イーディ達は全力でそれを阻止。

どうやって揚陸艦を海に、そして無事に着水させるをホーマーが興奮する中で、脳をフル回転して考える。

無事に下ろす方法は釣り上げているクレーンの近くにレバーがあるのだが、それを引くのに一人犠牲にならなければならない。

狙撃でレバーを押し上げる手もあったが、揚陸艇から見ればレバーに届かない。

感染者達の声が聞こえてきた瞬間、クレーンを撃つというアイデアが全員の脳に浮かんだ。

 

「そうですわ!あの釣り上げているクレーンを撃てば良いのですわ!どうして直ぐに思い付かなかったのでしょう?」

 

「まぁ、それは良いとして、早く撃ちましょうお姉様!」

 

全員でクレーンに向けて一斉射撃したイーディ達、その結果、海に早く落ちていった。

 

「キャー!無事じゃないですわー!」

 

そのまま水飛沫を上げて海に着水、衝撃で揚陸艇が揺れ、全員が船酔いを起こす。

 

「うぅ・・・陸に向けて出発します・・・!」

 

左手で口を抑えながらリィンは揚陸艇のエンジンを掛け、陸地へと向かった。

その間、全員が井の中を吐いていたが、舵を握るリィンも吐いてしまっている。

体力が消耗した状態で日本本州(しかも床主)に何とか辿り着くことに成功した。

 

「やっと・・・着きましたわね・・・」

 

「うぅ~まさかこれ程船酔いが恐ろしいとわ・・・」

 

「大丈夫ですか?皆さん、少し横になれば酔いが・・・」

 

上陸した後、一同は砂浜で横になって酔いを覚ますことにする。

酔いが覚めた後、一同はコンパスを見ながら、市街地に入り、そこでワルキューレと死闘を演じるバウアー達と合流することとなるのだった。




次回はイーディ達を加えた黒騎士バウアー編に入ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦車での市街地の移動はご用心

スナエリナチスゾンビのゾンビを召還しようと考えてます。

前半バウアー編、後半本編(敵側視点)です。


床主に上陸したイーディ達、彼等はそのままバウアーとヴィットマン達が入った市街地へと進んだ。

市街地に入ったバウアーとヴィットマン達は小室一行に対して包囲網を敷いたユズコ軽師団の一部に奴ら、感染者の集団と遭遇していた。

 

「むっ、あれはチェコの35t軽戦車。何故あんな所にあるんだ?」

 

キューポラからユズコ軽師団傘下の第1軽戦車大隊の35t軽戦車を発見したバウアーは疑問に思う。

ちなみに山本もバウアーの言ったことに驚きを隠せないで居る。

 

「マジかよ!一体ワルキューレってどんな秘密結社だよ!」

 

ツッコミを入れる山本であったが、バウアーから「煩い」と拳骨を食らう。

敵は彼女等だけではない、角材やバール、小火器類なので攻撃してくる奴らに噛まれた戦乙女の成れの果ても襲ってくるのだ。

 

「小銃を持った血塗れの女がこちらに向かってきます!」

 

「死人共の新しいタイプか?放っておけ、今は目の前にいる35tが先だ。徹甲弾装填、目標1時方向、距離九十六m!」

 

砲手が知らせた後、バウアーは後ろから迫ってくる感染者の集団よりも目の前で奴らを掃討している35tの撃破を優先する。

 

「装填完了!」

 

「照準完了!」

 

撃て(ファイヤー)!」

 

徹甲弾の装填と照準完了の知らせの後、バウアーは砲撃を命じた。

71口径8.8cm戦車砲KwK43の砲声が響き、88㎜徹甲弾が35tの装甲を簡単にぶち破り、数秒後、大破した。

脅威を排除に成功したバウアー達は、市街地の中を進む。

 

「クルツにヴィットマン大尉、市街地はとても危険だ。戦車が居たなら随伴歩兵も居るかもしれん、用心して進んでくれ」

 

了解(ヤヴォール)!』

 

市街地を警戒して進むように指示したバウアーは、キューポラから索敵を行う。

クルツのパンターG型とヴィットマンのティーガーⅠ後期型は、バウアーのティーガーⅡの後ろからついてきている。

彼等の戦車には随伴歩兵が居ないので、神経を倍に尖らせ、怪しい場所をマークしていく。

 

「(随伴歩兵が欲しい・・・先程kar98kやMP40の銃声が響いたから、何処かに転移した友軍の歩兵部隊が居るはずだ・・・)」

 

額に汗を浸らせながら、心の中で思うバウアー。

その願いが叶うとは直ぐに知らずに。

一方、随伴歩兵となる軍曹(STG)率いる火星軍の降下兵分隊も、バウアー達が居る市街地に入っていた。

 

「STG、ここの世界はおかしな感染症でも流行っているのか?人が人を食べてるぞ!」

 

黒人の隊員は奴らが死体を貪り喰っている光景が信じられないようで、一人で騒いでいる。

 

「落ち着けよ、どうやら俺達はゾンビ映画の中に入っちまったらしい」

 

「お次はゾンビパラダイスか・・・俺達元の世界に帰られるのかな?」

 

STGが黒人の隊員を宥めた後、顎髭の隊員が弱音を吐く。

 

「STG、排気ガスの臭いがするぞ。それに体温が低い集団を発見、それに戦車も見える」

 

ヘルメットで見えないが、ゴーグルを着けた隊員がバウアー達と感染者の集団を発見し、分隊長であるSTGに知らせる。

 

「戦車か・・・また博物館で見るような型だろう。体温の低い集団?今日は防寒着もいらない暖かい気温の筈だが、何かの感染症かもしれない。警戒して進むぞ!」

 

了解(イエッサー)!』

 

四人は周囲を警戒しながらバウアー達の元へ向かった。

あちらこちらで奴らの死体や、無惨な形に成り果てたワルキューレの軽歩兵や中歩兵の死体が転がっており、黒人の隊員の表情が不安定になる。

 

「ここに長くいたら健康に悪そうだ。早く見付けてここから出ようぜ」

 

「私もだSTG、どうも肉の腐る臭いと焼ける臭いはとても居心地が悪い。センサーをフル稼働しよう」

 

バウアー達を探すSTG達、彼等の前に多数の奴らが立ちはだかる。

 

「人食い共だ!」

 

「応戦しろ!こいつ等はもう死んでいる!」

 

顎髭の隊員が叫んだ後、STGは奴らを排除するよう指示した。

彼等の右手に装着された火星軍正式採用の歩兵用レーザー兵器が猛威を振るう。

次々とレーザーで奴らが切断されていく中、教会の鐘に潜むワルキューレの偵察分隊がSTG達を発見する。

 

「あれ、噂の奴らじゃない?」

 

「そうね。一応師団本部に報告しときましょう」

 

机に置かれている無線機でSTG達の存在をユズコ軽師団本部に知らせる。

 

「あ~こちらオクルス5、軽戦車小隊を壊滅させた四名を発見。どう対処するか指示を願う、オーバー」

 

『そのまま監視を続行し、チャンスがあれば攻撃せよ。アウト』

 

「チャンスがあれば攻撃しろってさ」

 

無線手からの知らせで、狙撃手がフランス製狙撃銃PGM338を構え、観測手がSTG達を双眼鏡で捕らえて、一を把握し、風向きを確認する。

狙われていることを知らないSTG達はと言うと、もう既に奴らを全滅させていた。

 

「ゾンビは全滅したな?それじゃ、先に進むぞ」

 

「待ってくれSTG、戦車がこちらに向かってくる!」

 

「なんだと?美人の軍隊の戦車か!?」

 

「いや、それよりもデカイ戦車だ。見覚えがある」

 

顎髭がバウアー達の接近をSTGに知らせた。

数分後には、バウアーのティーガーⅡとクルツのパンターG型、ヴィットマンのティーガーがやって来た。

 

「ン!?これはドイツ軍の重戦車じゃないか!俺達を追ってきたのか!?」

 

「どうやら違うみたいだ」

 

ゴーグルはキューポラから上半身を出しているバウアーを見ながら呟いた。

STG達とバウアー達は接触し、お互い敵意がないかをアピールする。

 

「バウアーさん、こいつ等大丈夫なんですか?」

 

山本は英語でバウアーにSTG達の格好を見ながら質問したが、隣にいたクルツに「大丈夫さ」と肩を叩かれる。

 

「彼等も兵士だ。ここで殺し合いをしても生き延びることは出来ないと判断して、協力を申し出たのさ」

 

クルツが言ったことに納得した山本は、STGとバウアー、ヴィットマンが互いに向き合って、何かを話し合っている所を見た。

狙撃手が狙っていることも知らずに。

 

「火星軍第12軌道降下兵中隊A分隊隊長です。貴方は?」

 

「ドイツ国防軍陸軍第8戦車中隊、通称黒騎士の隊長エンルスト・フォン・バウアー大尉だ。よろしく頼む」

 

「自分はドイツ武装(ヴァッフェン)SS第101重戦車大隊の隊長、ミヒャエル・ヴィットマン大尉だ」

 

「大尉で大隊長ですか・・・大隊の指揮を任されるなんて、指揮能力が高いですね」

 

お互いの経歴を話し合っている間、ワルキューレの狙撃手がバウアーに狙いを定めている。

狙撃の異常がないと、観測手が狙撃手に知らせた後、引き金に指を掛けた。

だが、狙撃手はマリーナに寄って命を落とすことになる。

 

「なんだっ!?」

 

マリーナのM21狙撃銃の銃声が聞こえた後、全員地面に伏せて、クルツが叫ぶ。

直ぐに視線が教会の鐘に集中し、そこに潜んでいた偵察分隊の存在に気付いた。

 

「あそこに狙撃兵が居るぞ!教会の塔を吹き飛ばせ!!」

 

ヴィットマンは教会の鈴を指差しながら叫び、黒人の隊員が威力の高いレーザー砲で塔を一撃で吹き飛ばす。

 

「凄い火力だ・・・」

 

「すげぇ・・・数十年後はあんなのができるのか・・・」

 

クルツと山本はSTG達が持つレーザー兵器の火力に驚きの声を上げた。

それぞれの自車に乗り込んだバウアー達は早速出発の準備を始める。

STG達はクルツのパンターに乗っている。

数分後、先程の35tの随伴歩兵と交戦しているイーディ達の存在に気付き、直ちにそこへ向かう。

 

「銃声だ!それに聞いたこともない銃声・・・クルツ、確認に向かえ!」

 

「了解しました、中隊長殿!」

 

キューポラから上半身を出したクルツは返答し、STG達と共にイーディ達の元へ向かった。

一方交戦しているイーディ達はと言うと、別の35t軽戦車や複数の随伴歩兵と銃撃戦を行っていた。

火力はイーディ達の方が上だが、数はワルキューレの方が多い。

急いでヤンがAT4を35tに向けて撃とうとするが、ブレン・ガンを持った兵士に抑え込まれ、撃てないで居る。

後ろから奴らの集団がやって来たが、戦闘爆撃機のハリケーンのロケット攻撃で吹っ飛ぶ。

 

「あの航空機の攻撃は凄まじいです!」

 

応戦しながらリィンがイーディとリコルスに向かって叫ぶ。

久しぶりの戦場に、ホーマーはえらく興奮しているが、他の面子はそうはいかない。

ハリケーンが旋回してきた時、確認に来たクルツのパンターに乗るSTGのレーザー攻撃で撃墜され、イーディ達の近くで爆発する。

 

「キャー!これ以上私を痛めつけないでくださいまし!!」

 

空に向かって叫ぶイーディ、彼女等を攻撃していたワルキューレの部隊はパンターG型とSTG達の攻撃で全滅する。

クルツがキューポラから出て、イーディ達に声を掛けた。

 

「そこの兵士達、こちらに敵意はない。生き延びたければついてこい!」

 

イーディ達に告げたクルツは車内に戻り、砲手に砲塔をイーディ達に向けたままにするよう指示を出す。

 

「あちらの嬢ちゃん達がいつ対戦車火器を撃ってくるか分からん。榴弾を装填して、警戒しておけ」

 

車体がバウアー達が居る方向に向いて、砲塔がイーディ達の方向へと向けたままにされた。

乗っているSTG達にとっては迷惑な物である。

 

「うわぁ!俺達の存在に気付いてないか?」

 

慌ててキューポラから上半身を出したクルツは、STG達に謝る。

 

「済まない、これからは声を掛けるよ」

 

「ずっとエンジンの上に座ってたら健康に悪い。砲塔に乗せてくれ」

 

クルツは黒人の隊員の頼みを承諾した。

そしてバウアー達と合流し、イーディ達を迎える。

 

「俺はドイツ国防軍陸軍所属のエンルスト・フォン・バウアー大尉だ。そこにいるのが武装SSのミヒャエル・ヴィットマン、君達を案内したのがクルツ・ウェーバーとSTG達だ」

 

イーディ達の目の前に立って、自分達の紹介をしたバウアー、現用米陸軍完全装備の歩兵の事を山本に問う。

 

「山本、21世紀の米軍(アーミー)はこんな嬢ちゃんでさえ兵隊にするのか?」

 

「アメリカ軍は18から入隊できますけど・・・この人達どう見てもヨーロッパ系ですよ。セーラー服の娘を除いて」

 

STG達と楽しそうに話している芳佳を見ながら、山本は答えた。

次にバウアーがイーディ達の所属を聞き出す。

 

「君達はアメリカ軍のどの所属だ?陸軍か、海兵隊か?」

 

「アメリカ軍・・・?私達はその国の所属ではありませんわ!元ガリア公国義勇軍、第7小隊のアイドル、イーディ・ネルソンですわ!」

 

「あ、アイドル・・・?馬鹿モン、俺は所属を聞いているだ。それにガリア公国義勇軍とは何だ?」

 

バウアーに一喝されたイーディは、即刻事の全てを話した。

 

「成る程、転移して、気が付いたらそんな格好になっていたのか。詳しいことは落ち着いた所で話そう。爆撃機(ヤーボ)がまた飛んできそうだ」

 

耳を澄ませてワルキューレの爆撃機のエンジンを聞き取ったバウアーは、直ぐに移動することを皆に伝えた。

道中、奴らと何度か遭遇したが、無視してそのまま小室一行と別れたリヒター達が居る公園へと進路を取った。

その頃、小室一行に対して包囲網を敷いていた師団本部では、包囲網の中でバウアー達の存在を知る。

 

「包囲網に敵重戦車タイプを多数確認しました。それと問題があります」

 

目に入れても痛くない容姿をした副官の女性が写真を持って、師団長であるユズコが肘を乗せている机の上に置く。

 

「これが問題です」

 

イーディ達が写った写真を見たユズコは驚いて、豊満の胸を上下に揺らしながら立ち上がる。

 

「エェー!?アメリカ軍の兵士じゃない!どうしてこんなところに・・・?」

 

写真を両手にとって見ながら、疑問に思う。

ユズコが着てるのは大戦時のイギリス陸軍将官用野戦服で、その上から黒いコートを羽織り、赤いベレー帽を被っている。

直ぐに頭をフル回転させ、対策を考える。

 

「もう少し増員が必要なようね・・・腿ちゃんは呼べる?」

 

「はい、任務を終えて再編中です」

 

副官は無線手から受話器を受け取り、それをユズコに渡す。

 

「もしもし腿ちゃん、私ユズコ。頼み事聞いてくれるかな?」

 

『その声はユズコじゃないか!それよりも腿ちゃんと言うのは止めてくれ。で、頼み事って何だ?』

 

「貴女の戦車を借りたいんだけど。駄目?」

 

『友人の頼みだ、直ぐに向かわせる。それより相手は強力か?』

 

「キングタイガーとタイガー戦車、パンター戦車が居るの。私の戦車じゃ勝てなくて」

 

写真を見ながらユズコは向こう側の腿に伝える。

 

『よし、M51スーパーシャーマン一個小隊を送ろう』

 

「ありがとう腿ちゃん!今関係ないんだけど、昇格したって本当なの?」

 

心配そうな表情で、ユズコは腿に聞いた。

 

『なっ・・・!?本当のことだ・・・だが、理由は言えん・・・!』

 

「私腿ちゃんのことが心配だよ!士官学校で成績も低いし、問題を人に押し付ける癖なんてあるから」

 

『こ、これ以上言わないでくれ!スーパーシャーマンは送っておいたからな!じゃあ、切るぞ!』

 

「あぁ、待って!変な気を起こさないでね!じゃあね」

 

無線が切れた後、受話器を無線手に返し、不安な表情をしながら腿を心配するユズコ。

数分後には新たな仲間を加えた小室一行が警戒網に入ったという知らせが入ったのだ。




次回は本編です。
ところでタイム・トルーパーの隊員達の名前って誰か分かる?
顎髭のトビーは分かるんだけど。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ワルキューレ

オリジナル組織をここに移転しました。


ワルキューレ

作者の使い回し組織。

いつ、何のために創設されたか分からない謎の組織もとい秘密結社。

分かることは大国がアリに見えるくらいの軍事力を持っている事だけである。

何処の世界にもこの軍事的秘密結社の名があるので、素性がしれない。

構成員は戦乙女の名にちなんで殆どが女性で美人、噂では本物のワルキューレが創設者とされているなど、謎が深まるばかり。

 

基礎訓練しか受けていない将兵が大勢で、人数が多すぎるために最新の装備が不足し、第一次~第二次大戦下の小火器や兵器などの二級戦火器が占める始末だが、特殊作戦、精鋭、エリートクラスは訓練も充実し、良い装備が優先されて配備されている。

規律は特殊作戦、精鋭、エリートなどの上級クラスが高いが、下級クラスは最悪と呼べるレベルで、第36SS武装擲弾兵師団やソ連赤軍と良い勝負である。

 

弱い順からするとこう。

 

下級兵士

占領地区か、何処からか徴兵した奴隷兵士、ワルキューレにしては、全員が男で構成されている。

扱いは凄まじく酷く、主に弾避けとして使役される。

使う装備は粗末な物ばかり、良くても旧式な戦車があるだけである。

 

軽歩兵・中歩兵・擲弾兵

一般兵士と士官で構成されており、全員が女性で美人。

規律の悪い将兵で、唯一規律が保たれているのは擲弾兵だけ。

自分達が不利になると逃げるので、大勢で来られない限り勝てる。

二級戦装備部隊も居り、ドイツの国民突撃隊の様に老婆や少女で編成された部隊がある。

本作においてはやられ役。

容姿は漫画・アニメ・ゲーム女性キャラが多数確認されており、もしかしたらあのキャラのそっくりさんが居るかもしれない。

軽歩兵 リーエンフィールドNo4Mk1、ステン・ガンシリーズ、MP5シリーズ、etc。

中歩兵 アサルトライフル系(ブルパップも含む)、軽機関銃系、対戦車系、対物系。

擲弾兵 中歩兵と同じ。

予備兵 M1ガーランド、M1カービン、M1トンプソン、M1918A2BAR、etc。

 

憲兵

何処の軍隊でもいる軍警察。

一般将兵の美人揃いとは違い、ふつ面やブサイクばかりで中年しかいない。

護衛として一般将兵も付き、検問と交通整理も行う。

とにかく威張り散らし、ケジメと言うことで一般将兵に暴力を振るう。

余りにも乱暴な為か、かなり嫌われている。

 

戦車兵・水兵・パイロット

現代の陸空海軍に必要不可欠な兵科、まだ成人してない少女まで居る。

容姿はガルパンに登場する女性キャラ全て?もしかしたら秋山殿も居るかも。

 

重歩兵・空挺兵

エリート兵で一般将兵とは違い、良く訓練されており、何処からか流れてきたベテランも居る。

かなり洗礼された動きを見せ、まさしくプロの兵士である。

 

特殊兵

こちらは美人ばかりではなく、少年や少女で構成されている。

人間離れした動きや、無駄のない動きをしてくる、もの凄いやばい兵科。

成人男性はベテランの特殊部隊員の動きを見せ、成人女性の方はハーフライフの女暗殺者集団やメタルギアソリッド4のヘイブン・トルーパーの様な身のこなし。

少年少女は成人男性と同じ動きを見せる。

 

陸上兵器

第二次世界大戦時の連合軍。

第一・第二・第三世代兵器群。

 

海上兵器

第二次世界大戦時の連合軍。

第一・第二・第三世代兵器群。

 

航空兵器

第二次世界大戦時の連合軍。

第一・第二・第三世代兵器群。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編2
包囲網からの突破


警察署で行方知れずとなった避難民の手掛かりを探している最中に、ケストナーの部隊に襲撃された小室一行達。

先客四人と始めに転移していたカールの協力によって、見事危険を退けることができた。

新たな五人の生存者を加えた小室一行は、放置されたコンドル装甲車を加えて、リヒター達が待つ合流地点へと急いだ。

 

「なんか軍隊っぽくなったな・・・」

 

バギーの運転を担当する孝が、殿を務めるコンドル装甲車を見ながら呟く。

装甲車に乗っているのはアッシュ、コワルスキー、ブルクハイト、シュタイナー、シュルツ等のZbvと新参者のハインツ、ローバック、BJ、カールを含め九人が乗車している。

ハンドルを握っているのはローバックだ。

ハンビィーや孝達が乗っているバギーにもM2重機関銃が搭載されている為、知識が浅い者が見れば西側諸国の小隊規模の部隊にしか見えないだろう。

先の戦闘で時間を大分食った為、一行は市街地に入って近道をすることにした。

既にその行動はワルキューレに読まれており、市街地に展開しているユズコ軽師団が待ち受けている。

孝達はそれを知る由もなく、迂闊に市街地へと入ってしまったのだ。

市内の入り口の建造物に潜む、偵察兵が孝達の存在を師団本部へ通達する。

 

「ン、何か光ったな?」

 

BJは街の入り口にある建造物の窓に、双眼鏡のレンズの光を見付けた。

 

「まさかな・・・」

 

一人で呟いたBJは、思い過ごしと願っていた。

しかし、彼の願いは虚しく崩れ去ることになる。

周囲から銃声が響き渡り、コンドルやハンビィーの装甲板に銃弾が命中し、車列が止まる。

 

「敵襲だぞ!」

 

「何処から撃ってきてるんだ!?」

 

殿のコンドルの車内で、ローバックが叫んだ後、シュルツが慌てふためく。

対戦車火器を撃たれると判断したシュタイナーは、車列を動かすよう指示する。

 

「早く動かせ。このままでは敵の狙い撃ちだ!」

 

言われたとおり、ローバックはアクセルを踏んで前進した。

それに続いて後ろのハンビィー三両(兵員輸送型一両)、孝のバギーも含めて前進し、銃撃を受けながら市街地の奥へと進んでいく。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「キャー!」

 

防弾ガラスも無いオープントップな為、孝達は頭を下げながら前で重機関銃を乱射しているバルクホルンが乗るハンビィーの後ろを必死に追う。

 

「私達奴らじゃないのに!!」

 

「上に着いてる機関銃の所為で撃たれてるんだ、例え外したとしても僕達も仲間と思われて攻撃されるだろうさ!」

 

「そんな・・・!」

 

隣に座る麗は孝が言ったことで不安になる。

上空からはホーカーハリケーン三機が彼等の頭上を飛ぶ。

 

「や、戦闘爆撃機(ヤーボ)だ!」

 

コンドルの機銃座に座るアッシュが叫び、20㎜機関砲の対空射撃が始まる。

機関砲の射撃音が響く中、孝は周りを見渡し、周囲から奴らが集まってくることに気付いた。

 

「大きく音を鳴らす所為で奴らが集まってきてる・・・!」

 

孝が言った後、奴らの大半が吹き飛んだ。

それにキャタピラの音が聞こえ、ディーターのヤークトティーガーか佐武郎の三式中戦車、或いは自衛隊の戦車が助けに来た、と孝と麗は勘違いしてしまう。

 

「助けが来たの!?」

 

「まさか・・・」

 

そうであって欲しいと願ったが、叶うはずもなく潰える。

キャタピラ音の正体はM3A3スチュアート軽戦車だった。

目の前にいる奴らを搭載機銃で全て片付け、孝が乗るバギーに砲身を向けている。

死の恐怖を感じた孝と麗は、目を瞑った。

機関砲の砲声より大きい戦車砲の砲声が鳴り響き、徹甲弾がバギーに向かって飛んでいく。

幸いなことに上に搭載されていたM2重機関銃に命中しただけで、大事には至らなかった。

 

「わざと外してくれたかそれともただ外れただけなのか、助かった」

 

M2重機関銃が道路に落ちた後、車列から大分離されたことに気付き、急いで追い着こうとする。

後ろからは確実に孝達を始末する為か、一両増えたM3A3スチュアート軽戦車が機関銃を撃ちながら迫ってくる。

 

「孝、後ろから!」

 

「分かってるって、増えてるし!?」

 

振り返った孝は追ってくる一両増えたM3A3スチュアート軽戦車に驚き、バギーのスピードを上げる。

必死に車列へついていく中、前のハンビィーが右に曲がった為、こちらも後へついていくよう曲がり、後へ続く。

次に前の車列が左へ曲がった為、ハンドルを左に切る。

そのお陰か、追ってきたM3軽戦車を撒くことができた。

車列が止まっているのを確認した孝は、バギーを止めて何故止まっているのかをシュタイナー達に聞いた。

 

「すいません、なんで止まるんですか?」

 

「小僧、生きていたか。ブルクハイト等があの38t軽戦車を盗むと言ってな」

 

シュタイナーが指差した方向を見れば、コンドルの行き先を封じるかのようにチェコ製のドイツ戦車、38t軽戦車G型が見えた。

 

「前の世界で我が部隊の装備に38tなど無いが、あそこで盗みに行っている連中は動かし方を知ってるらしい。その援護としてブラコヴィッチとカールが同行している」

 

ブルクハイト、アッシュ、コワルスキーが随伴歩兵達に気付かれずに38t軽戦車に向かってる間、孝達が隠れている壁越しからBJとカールの二人がウェルロッドMk1消音拳銃で随伴歩兵達を一人ずつ始末していた。

随伴歩兵を全員始末した後、盗みに行った三人が38t軽戦車に乗って、砲塔に乗ってノックする。

 

「はい、なに?」

 

キューポラから女性車長がハッチを開けて出て来た為、アッシュがスパナを頭に振り下ろした。

頭部を強く殴られた女性車長は即死し、コワルスキーが車内に乗り込んで、乗員達を車内から放り出す。

放り出された乗員を消音器などを付けた銃を持った者達が始末する。

 

「戦車を盗むことに成功したようだな」

 

シュタイナーはブルクハイト達が38t軽戦車を盗むことに成功した事に関心する。

コータの方は、本物のドイツ戦車兵が乗る38t軽戦車に興奮が冷めないで居る。

エンジンを動かす為にクラッチを回しまくるコワルスキー、数秒後にはエンジン音を響かせ始める。

コワルスキーが車内に乗った後、38t軽戦車が動き出し、それの後に続くように車列は続く。

 

「久しぶりに38tを動かしたぜ」

 

「俺もだ、クラッチを回すなんて何年ぶりだろうな」

 

「静かにしろ二人とも、ここは敵地だ。また敵戦車が襲ってくるぞ」

 

車長と照準手を担当するブルクハイトは二人を黙らせ、目の前に見えた五両のオチキスH35軽戦車を発見する。

 

「フランスの軽戦車だ!連続射撃、行くぞ!」

 

早速ブルクハイトは目の前に居るオチキスH35軽戦車に向けて、48.7口径3.7cm戦車砲KwK38を発射する。

側面からまともに徹甲弾を受けた為、オチキスは大破した。

 

「一両撃破、次!」

 

ブルクハイトの指示で、凄まじい早さで装填を終わらせたコワルスキー、砲塔旋回ハンドルを回し、次の標的へと砲身を向け、空かさず発射、二両目の撃破に成功。

 

「二両目撃破!回避しろ!」

 

「了解!」

 

オチキスも反撃してきた為、回避運動を取る38t。

対戦車ライフルPTRS1941を持つ、セルベリアが端っこにいるオチキスに向けて撃つ。

それほど装甲を持たない軽戦車である為か、正面装甲を貫いて大破、残り二両もブルクハイト等が操る38tに撃破された。

あちらこちらから銃弾が飛び交ってくるが、対戦車火器では無い為に孝と麗、兵員輸送車型ハンビィーに乗る者以外の者達は安心する。

次に九五式軽戦車ハ号が五両ほど飛び出してくる。

 

「あれは旧日本帝国陸軍の九五式軽戦車ハ号!どうしてこんなレアな戦車まで出てくるんだ!?」

 

ハ号を見たコータが驚きの声を上げているが、38tや対戦車火器を持つ者達に砲撃する前にあっさりと壊滅させられた。

今度は38t軽戦車F型が五両も出て来た。

 

「あれはF型!」

 

またもやコータが驚きの声を上げ、中央にいた敵の38tがブルクハイト等の38tG型の砲撃で大破する。

残り四両も反撃するも、対戦車火器であっけなく全滅した。

 

「この調子なら突破できそうだ」

 

ローバックが目の前で歩兵相手に奮闘するブルクハイト等の38tを見て調子づく。

しかし、その当ては上空からやって来た"厄介な物"で崩れ去ることになる。

 

「このエンジン音は・・・!?」

 

20㎜機関砲の銃座に座るBJは聞き覚えのある飛行機のエンジン音を耳にした。

その正体は彼の国、アメリカ合衆国の大戦時の中型爆撃機、B-25ミッチェルだ。

日本本土で初の爆撃を行った爆撃機として有名であり、その爆撃機がこの市街地上空に現れたとすれば、ここに爆弾をばらまきに来たと言うことだ。

 

「おいおい、まさか味方事爆撃するんじゃないだろうな?」

 

コンドルの運転席から上空を飛ぶB-25を見たローバックは、不安そうな表情をしながら言う。

そうはさせまいと20㎜機関砲をB-25に向けて撃ちまくるBJであったが、PIATの攻撃で車内に衝撃が走り、引き金から手を離してしまう。

 

「しまった・・・!」

 

BJが銃座に戻る頃には十個の250㎞爆弾が既に投下された後だった。

周囲からは爆発音と建造物から銃撃を加えていた兵士の悲鳴が聞こえ、兵員輸送型ハンビィーに乗っていたルリが飛んできた瓦礫に当たって地面に叩きつけられる。

目の前で奮闘していた38tが落ちてきた爆弾の爆発の衝撃でコンドルの前まで吹っ飛び、中からブルクハイト等が飛び出てくる。

 

「クソ・・・これで何度目だ・・・?」

 

「骨は折れてないみたいだ・・・」

 

「危ねぇ~」

 

頭をさすりながらブルクハイトは立ち上がり、コワルスキーは自分の身体に異常はないか見て安心する。

アッシュは危うくコンドルの装甲に頭をぶつける寸前だった。

 

「まさか味方ごとやるなんて・・・」

 

味方ごと爆撃して元来た道を帰っていくB-25を見ながら、孝は恐怖した。

一方、瓦礫に当たって地面に叩きつけられたルリは、起き上がって兵員輸送型のハンビィーに乗り込もうとしたが脚を撃たれ、置き去りにされてしまう。

一番後ろに居た孝達のバギーは追ってきたM3A3軽戦車の攻撃を受け、ルリが回収できず、そのまま車列の後へ続いていく。

取り残されたルリは脚が治ったのを確認すると、立ち上がり、一目散にこの場から退散した。

 

「また一人になっちゃった・・・」

 

遮蔽物に身を隠し、ルリを置いていった孝達を追う軽戦車と歩兵の集団を見ながらそう呟く。

周囲から敵影が消えた後、持ち物を確認する。

 

「食料無しか・・・そこらで死んでる戦乙女の使いから取らないと・・・」

 

SG553とP232と専用の弾倉と鉛筆しか無いと分かったルリは、自力で小室一行に追い着こうと決めた。

行こうとした瞬間、突如奴らが死角から現れ、掴み掛かられる。

頭を小さな左手で抑え付けるも、脳のリミッターが外れた奴らはルリの左腕を顔の力だけでへし折って、左肩を噛み付いた。

 

「ぐっ、痛い・・・!」

 

凄まじい激痛が身体を走り、服ごと肉を食い千切られた。

動かせる右手で鉛筆を握って、奴らの頭に突き刺した。

鉛筆で頭を刺された奴らは沈黙し、ルリの上に倒れ込んだ。

 

「治療道具がない・・・」

 

左肩を抑えながら立ち上がったルリ、噛まれた部分の自然回復は遅く、出血が凄まじい。

治療道具を探す為、周囲に転がっている軽歩兵の死体を漁る。

 

「あった、止血剤」

 

瓦礫に頭をぶつけて死んでいたMk2皿形ヘルメットを被り、第二次世界大戦時の英軍に支給さていたP-40戦闘服(バトルドレス)を着た女性兵士から止血剤と携帯食を手に入れ、死体の見開いた目を閉じる。

空き家となったビルに入って、服を脱いでから傷口をアルコールで消毒してから止血剤を巻いた。

 

「治療道具だけ現代なんだ」

 

大戦時に支給されていた物とは違い、現代の国家の軍隊にでも使われていそうな止血剤だった。

左肩だけ破れた服を着て、ルリは小室一行の後を追う。

 

「さて、まずは地図を探さないと」

 

自分だけしか居なくなった市内で、地図を探すことにした。

あれ程居たワルキューレの生きている軽歩兵達は一人も居ないような感じだが、銃声は聞こえてくる。

士官クラスっぽい軽歩兵の死体から地図を手に入れて現在位置をルリは確認する。

 

「確かここから北に行ったところで待ち合わせをしてたんだね」

 

死体から拝借したペンで、合流地点にマークを入れてからポケットに仕舞う。

辺りは暗くなり、上空に見える一機のワルキューレのシンボルマークが付いた飛行船の大型拡声器から日本語の放送が流れてくる。

 

『床主に未だ居る方々にご報告いたします』

 

やはり女性中心の組織である為、声優でも使ってるんじゃないのかと言うくらいのアニメ声で流暢な日本語だった。

 

『新しい避難所を市役所に開設しました。そこには物資も食料に水が十分確保され、防備も完璧です。受け入れ人数は無制限です、自宅や屋内に立て篭もっている方々は市役所に向かってください。道中、暴徒に遭遇しても対処せず、市役所に向かってください。尚、暴徒から噛み傷などの外傷を受けた方は、誠に申し訳ございませんが受け入れる事はできません。そのような外傷が見られた方はこちらで無警告せずに発砲します。次に、新床第三小学校で自衛隊による救出活動が行われます。救出活動予定は明後日の午前14時です。こちらは受け入れ人数に限りがあります、悪しからずに。こちらも避難所と同じように暴徒からの噛み傷などの外傷を受けた方は受け入れられません。同じように無警告で発砲されます、ご注意を。繰り返します』

 

繰り返し放送が行われた為、ルリは移動を再開する。

大音量の放送で奴らが飛行船に向かっており、ルリに気付くこともない。

もうすぐ夜中に入る為か、誰も民家から出て来なかった。

ルリは小室一行が向かった方向へと歩き続けた。




次回はスナエリのゾンビ出そうかと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死者の夜を一人で。

一応主人公なルリの一人旅です。
スナエリのナチスゾンビが召還され、床主が地獄化がさらに加速します。
と、言うか・・・敵の図鑑を作らないと駄目だな、うん。

最初はリヒター達と合流した小室一行視点とご都合主義倉庫の登場です。
ここからMenofWarのソ連編主人公達とCoD3のイギリス勢が参戦します。(キャラが多い・・・
今気付いたらハンビィー一両が無くなっていた・・・破壊されてた事にしておこう。


敵の襲撃を受け、ルリが欠けながらも合流地点の公園に辛うじて到着することが出来た小室一行、リヒターが彼等を出迎える。

 

「遅かったじゃないか。その装甲車を見る限り、なにかあったようだな?」

 

彼等を出迎えたのは、リヒターとソ連赤軍の将校二名だった。

Zbvの面々がソ連軍の将校に警戒する。

 

「落ち着け、彼等は敵ではない。たまたまここに着いたら彼等が居たと言うことだ、彼等も同じく我々と同じ転移者だ」

 

ソ連軍が敵ではないと告げるリヒター、もちろん同じソ連赤軍の者であるゴロドクが居るので、同じように思えば気になることは無かった。

将校達が自己紹介を始める。

 

「アレクセイ・クズネツェフだ、階級は中佐。ドイツ第三帝国を打ち負かし、祖国への帰り道の途中、霧に呑まれて未来の日本にいつの間にか来ていた。よろしく」

 

「俺はヴィクトル・スミルノフ。俺も同じく祖国への帰り道で霧に呑まれ、こっちへ来た。階級は少佐だ、よろしく頼むぜ。ドイツ軍人達」

 

「ソ連軍も同じか・・・ところで、全員の姿が見えないのだが?」

 

シュタイナーがリヒターに聞いた後、彼は公園の真ん中で歪んでいる部分を指差した。

 

「あぁ、それはみんなあそこに居るんだ。信じられないと思うがな。是非行ってみてくれ、面白い事が起きる」

 

リヒターに言われた通り、シュタイナーが歪みに入る。

入った先は深い霧に包まれており、目の前に大きな建造物が見える。

 

「なんだここは・・・?それにあの建造物、形からすると倉庫だな」

 

建造物の正体が倉庫と見破ったシュタイナー、隣からアレクセイが現れ、彼に説明する。

 

「驚いたかドイツ人。僕は神を信じない主義だが、これは神の存在を信じられずには居られなくなった。周囲には歩く死者も居ない、みんなあの中に居る。さぁ、倉庫に自分達の装甲車や車を入れるんだ」

 

アレクセイに言われたとおり、シュタイナーは自分達が乗ってきたコンドル装甲車、ハンビィー二両、兵員輸送型ハンビィー、軍用バギーを歪みの中に入り込ませ、倉庫の巨大な扉を開けた。

 

「お、大きい・・・」

 

「ふわぁ・・・でっかいドア・・・」

 

ハンビィーに乗り込んでいるシャーロットとフランチェスカが驚きの声を上げる。

 

「異世界に行ったときは同じデカイ物体があったが、こんな洋風の倉庫は無かったな」

 

コンドルに乗る色んな物と戦ってきたBJも驚くばかりであった。

同じく歪みに入ったリヒターが、ルリが居ないことに気付いた。

 

「あの美しいお嬢さん(フロイライン)が居ないみたいだが、どうしたのだ?」

 

聞かれた孝は、悔しそうな表情で答えた。

 

「すみません、僕がもうちょっと頑張っていれば・・・!」

 

「そう悔やむな、生き残るためには仕方がない。小を捨てなければ大は生き残れないんだ・・・」

 

「全員は救うことは出来ないんですか・・・?」

 

「そうなってしまうな。だが、これでは彼女が可哀想だ。私と少数の者で彼女を捜す、ここで待っていてくれ」

 

悔しがる孝にリヒターが告げた後、彼等は倉庫の中へと入った。

倉庫の中は驚くべき光景が広がっており、大戦時に使われた兵器群や試作段階で終わった兵器等が置かれまるで博物館のようだ。

このミリタリーマニアに取っては興奮せずにはいられない為、コータは異常なほどに叫んでいる。

別れた者達も居り見慣れない者達まで居たが、孝はリヒター達も誰一人欠けることもなくこの倉庫に辿り着いた事に安心感を抱いた。

その頃のルリは、暗闇に包まれた市内で小室一行が向かった方向へと足を進めていた。

 

「みんなこっちに向かったのかな?」

 

孝達が向かったとされるタイヤの跡を見ながら、それを頼りにして小室一行の後を追う。

だが、唯一の道標は一行を追う戦車のキャタピラによってタイヤの跡は掻き消されており、手掛かり無しで一行を追うしかない。

 

「えぇ!?これじゃ見えないよ!」

 

うっかりと大声を出してしまい、ルリは不安げな表情をして、辺りを見渡す。

ここには奴らが居ないと判断した彼女は周囲に目を配りながら、地図を取り出し、合流地点である公園までの道を確認する。

 

「ここからずっと真っ直ぐ行けば、公園に着けるのかな」

 

コンパスの針が指す方向に進むことにしたルリ、向かおうとした瞬間、ヘリのローター音が耳に入った。

直ぐに身を隠して、ヘリが何処へ着陸するのかを確認する。

月の光に照らされて道路にヘリの影が見えた。

影の大きさからして大型の輸送ヘリと判断したルリは、何処かにヘリが着陸したのを確認した後、コンパスが示す方向に向かう。

一方、ルリが居る市内の数ある一つであるビルの屋上へと着陸したワルキューレのCH-47Dは乗せていた兵員を全て下ろした後、元来た道を帰っていった。

来た方向からすると、四国にある駐屯地から援軍に来たのであろう。

 

「この市内に保護目標である少女が居ると思われる。市内を探査し、見付け次第捕らえよ!」

 

バレットREC7を背中に掛けた女性士官が整列した五十名のMP5A4~A5、RWS MK107、ベネリM4等を持った軽歩兵に書類を片手に告げる。

その軽歩兵の中にはユリが混じっており、どうやら残っているルリを捕獲する為に応援に来たらしく、市内に居た包囲部隊は全て小室一行の後を追ったようだ。

ルリの目の前からSG551やKBP A-91を持った重装備兵二名が現れ、彼女は慌てて身を隠す。

 

「(どうしよう。いきなり現代に戻っちゃったよ)」

 

瀕死状態の暴徒を射殺した重装備兵を見ながらルリは困った表情をした。

辺りを探し回っている戦乙女達を避けつつ、小室一行の後を追う。

そんなルリを遠くから見ている人影があった、その正体はモールを襲撃した白人の美女だ。

何かを口ずさんで、周囲に霧を発生させる。

 

「なんだ・・・?霧なんてこの国には・・・」

 

重装備兵が突然の霧の発生に戸惑っている。

ルリも足下が見えなくなるくらいの霧で、少し震え始める。

 

「(なんだろう・・・?)」

 

壁に張り付きながらルリは辺りを見渡し、ビルの上に白人の美女が居ることに気付く。

 

「あの人は・・・!」

 

ルリが思わず口にした後、建造物の壁に血で描かれた真ん中にハーケンクロイツと謎の魔法陣が浮かび上がり、地面からスコップ、ハンマー、レンチ等の鈍器を持った集団が地面から這い出てくる。

目が黄色く光っていることから学園で襲ってきたゾンビと同じタイプと見えるが、武器を持っている事から違うタイプだと分かる。

生ける屍(ゾンビ)は今までの一般親衛隊(アルマゲイネ)等の勤務服や制服ではなく、ガスマスクを着けている事やドイツ兵の象徴であるシュタールヘルメット、略帽等を被っており、戦闘服や迷彩服などバラバラだ。

這い上がってきたゾンビは近くにいた重装備兵達を見るや否や、鈍器などを持ってフラフラしながら襲い掛かった。

その瞬間、あちらこちらから銃声が響き渡り、悲鳴まで聞こえてくる。

 

「あのタイプのゾンビじゃない。と、言うことはまた新しいゾンビかな?」

 

辺りから銃声や女性の悲鳴、ゾンビの呻き声を上がる中、ルリはこれを機に市内から脱出しようとしたが、何処からともなく狙撃され、遮蔽物に慌てて身を隠す。

 

「(狙撃!?こんな状況で私を狙うなんて・・・)」

 

スコープの光を探している最中に、電気ノコギリのような銃声が聞こえてきた。

銃声がする方向を見れば、軽歩兵達が銃を撃ちながら逃げており、身体に銃弾を巻き、左腕にナチス親衛隊の腕章を付け、頭にシュタールヘルメットを被り、MG42を持った大柄のゾンビが現れた。

大柄のゾンビはMG42を逃げる彼女達に向けて乱射し、銃弾を物ともせずにひたすら目の前の目標を殺すことに集中している。

ルリを撃ってきた狙撃手も軽歩兵達を狙っており、市内にいるワルキューレが全滅するのも時間の問題だ。

目の前で起こる異常地帯にルリはワルキューレの戦車部隊や航空支援が来て、事態が収拾するまで自分が居る建造物の中に身を隠す事にしたが、ゾンビに見付かってしまい、直ぐにその場から離れた。

 

「もう追ってこないかな・・・?」

 

先のゾンビ達が追ってこないかを見て、ルリはホッとする。

このまま夜が明けるのをここで待つことにしたが、寝てる間に見付かったらゾンビのディナーにされてしまうだろう。

覚悟を決めたルリは、SG553の残弾を確認してゾンビに立ち向かった。

一方のユリは足を振るわせ失禁し、泣きじゃくりながら市内に蔓延るゾンビから身を隠していた。

 

「なに・・・なにこれ・・・どうなってんの・・・!?」

 

まだ生き残っている味方は居たが、数で勝るゾンビに次々と喰い殺されていく。

やがて悲鳴が聞こえなくなった後、この市内にいるのがルリと自分だけと判断する。

 

「あれ・・・?銃声がまだ聞こえてくる・・・誰だろう・・・?」

 

泣き止んだユリはMP5A5を握りながら、銃声がする方を壁越しから覗いた。

 

「あれって、保護対象の娘だよね・・・?」

 

多数のゾンビ相手に奮闘するルリを見ながらユリは驚きの声を上げる。

このゾンビも弱点は頭であり、頭以外でも死ぬが、謎の魔法陣が死体の下に浮かび上がってゾンビが蘇る。

ルリについていけば生き残れると判断したユリは、自分の存在に気付かないゾンビの頭を撃ち抜き、ルリとの接触を試みた。

性格に頭を撃ち抜いて、空になった弾倉を満載の弾倉に取り替え、次の標的の頭を狙い撃つ。

ユリの加勢でここに居るゾンビが全滅したのを確認したルリは、食い散らかされた重装備兵の死体からSG553と同じ弾倉を取って自分のポケットに入れ込む。

その作業をしてる最中、ユリに話し掛けられた。

 

「あの・・・!別に撃ったりしないから・・・」

 

一瞬ルリはユリの方に顔を向けたが、作業に戻った。

空かさずユリはルリに声を掛け続ける。

 

「保護しろって命令されてるけど、今は協力しようね・・・?」

 

死体から弾倉を抜き終えたルリは、ユリの方に振り返って頷いた。

 

「(しゃ、写真で見るより可愛い・・・!)で、どっちに向かう?」

 

「まずは街からでないと。コンパスの指す方向に向かいます」

 

ユリにコンパスを見せたルリは重装備兵の死体の近くに落ちていた血塗れのSG551を手渡した。

早速SG551を手に取ったユリは構えて、試し撃ちに引き金を引いた。

銃声が鳴り響き、この銃は異常がないと分かる。

 

「まだ撃てるね。じゃあ、それでお願いします」

 

MP5を巻き付けて、低倍率スコープ付きSG551を持ったユリ。

そのまま先行くルリについていく。

辺りから霧が異常なほど発生し、呻き声が聞こえてくる。

さっきのエリアに到着した二人は辺りを警戒し、次々と上がってくる呻き声が聞こえる方向へ銃を向ける。

 

「うわっ!いっぱいきた!!」

 

目の前からゾンビの群衆が押し寄せてきたが、ルリはここを突破しなければ小室一行に追いつけないと判断して、引き金を引いた。

一番前にいたゾンビの頭に命中して元の死体に戻った後、ユリも銃を撃ち始める。

弾倉の中身が切れたのが分かったルリは近くに落ちていたベネリM3を拾い。

早速、押し寄せてくるゾンビの群衆に向けて試し撃ちをした。

 

「グレネード!」

 

M67フラググレネードの安全栓を抜いて、群衆に投げ付けたユリは、軽歩兵の死体からベネリM3の予備弾を取って、ルリのポケットに入れ込んでいく。

全てのシェルを入れ終えたユリは、SG551からMP5に取り替えて近付いて来るゾンビの頭を性格に撃つ抜いて死体に戻す。

暫しゾンビを片付けていく中、MG42を持った大柄のゾンビと体中に爆薬を巻き付け、こちらに向けて走ってくるゾンビが現れた。

 

「Contact!!」

 

「なにあれ!?」

 

額にハーケンクロイツが描かれた鉢巻きを巻き付けて突っ込んでくるゾンビをルリは足を撃ち抜いた。

数秒後には時限式なのか体中に巻いた爆薬が爆発、近くにいた大柄のゾンビが衝撃でバランスを崩し立ち上がろうとしたが、頭を何発も撃たれて死体に戻った。

 

「勝った・・・!はぁ~」

 

「眠い・・・でも急がないと」

 

グッタリと倒れるユリだったが、彼女より小柄なルリは自分一人でも小室一行を追おうとしていた。

 

「あぁ、待ってよ!」

 

美少女のような容姿の女性を余所にルリは先を急いだ。

二人の美少女が月の光に照らされる中、生ける屍の狙撃手が彼女等に狙いを定め、撃ってきた。

遮蔽物に身を隠してスコープの光を探し、狙撃手を発見した。

その狙撃手はやや目立つ格好をしており防護服を着込んでガスマスクを被り、左腕にはナチス独特の腕章が付いている。

ユリが狙撃手に向けて撃ったが、ゾンビと同じなのか、諸共せずに次のビルに大ジャンプした。

 

「あれも能力者!?」

 

近くのビルまで空中移動をする狙撃手にルリは声を上げた後、ベネリM3で対応しようと考えたが、散弾が届かず、着陸した所をユリに倒して貰った。

もうすぐ市内を出られると思った瞬間、行き先が心臓の部分だけがある骸骨の集団に寄って塞がれた。

 

「今度は骸骨!?」

 

「骨になっても襲ってくる!?」

 

驚きの声を上げる二人であったが、それでも立ち向かうしか無かった。




しかし、良くもまぁ制作スタッフはこんなことを思い付きましたね。
最初は詐欺だと思ったよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敵キャラ図鑑(順次追加予定)

タイトル通り敵の図鑑です。
説明は人の解説風になります。


奴ら

いわゆるゾンビだ。誰かさん達は「奴ら」と呼んだり、日本の警察や自衛隊は「ターゲット」だとか呼んでいる。

頭の中がお花畑な人道団体や平和主義者は「殺人病」だとか騒いでる。どうしてゾンビという名称を使わないのか分からない。映画やゲームじゃないからか?

俺は間違いなくゾンビと呼ぶね、とある飛び切り可愛い嬢ちゃんもそう呼んでるしな。

 

感染経路は至ってシンプルで、噛まれたら仲間入りって訳だ。

噛まれても何時間かは奴らにならないが、吐血や血の涙を流して苦しみながら死んで、奴らになっちまうらしいぞ。ゾンビと対して変わんねぇーな!

 

対処法と治療法は人間である内に死ぬことだとよ。これは噂だが、放射能物質か何かを身体の中にぶち込めば治療できるらしい。

後、感染経路は全く判明してないって話だ。一体科学者達は何をしているのやら、アメリカ合衆国の様にゾンビ発生対策法を全世界で決めてればこんな大惨事にはならなかったのにな。

人間だけ感染して動物は感染しないらしいぞ。等々神様は俺達人間に捌きを下したみたいだ。

 

あのゾンビ、いや、奴らの特徴は聴覚以外の感覚が全部無くなって音だけに異常に反応するらしい。

映画やゲームみたいにフラフラしてるが階段を上がれるぞ。だが、急な坂は駆け下がれず転んじまうらしいな。心臓をぶっ刺したりぶち抜いてもピンピンしてるぞ。そう言うときはゾンビ映画宜しく頭をぶち抜いたりぶっ叩いたりすることだ。そうすりゃあ死体に戻る。後、燃やすって手もあるぞ。

こいつ等は仲間を増やしたいって言う願望が強くてな、仲間を連れて俺達人間を襲ってくるんだ。

複数居る場合は音を立てずに一体ずつ始末しろ、爆発物なんか使うなんて考えるなよ。

同じように馬鹿力を持ち合わせてるから扉なんて軽くぶっ壊して入ってくるぞ。素手で戦うなんて思うなよ、引き離すのが難しいから、したらあいつ等に掴まれて仲間入りだぜ。

 

最初に現れたってゾンビはさほど人間と変わらなかったらしい。酔っぱらいや薬物中毒者(ジャンキー)と見えちまって被害が拡大して今やパンデミックさ。

人間だけを襲って動物は襲わないとさ、まるで俺達人間を地球上から消したいみたいだな。

一部の情報ではゾンビになっても人間の意識が残ってる連中もいるらしい。俺は信じないがな。

記録者 とあるアメリカの青年。

 

ゾンビ(CoD)

ナチが研究していたエレメント115と言う元素に影響されてゾンビになった人間だ。

腐ってるのに人間以上いや、プロのスポーツ選手の運動力を持っている。状況によっては凄まじい早さで走ってくるし、大ジャンプしてくる。奴らよりも恐ろしい"奴ら"だ!

生前の記録があるらしく、叫んだり、回避運動を取ったりする。こいつ等は元の運動もそのままなので、見付かったら仲間を集めて襲ってくるぞ!全くナチのオカルト研究には困ったモンだ。

記録者 とあるフランスの老人。

 

ゾンビクローラー

四足歩行で全裸でNOVAガスを撒き散らしてる迷惑な化け物だ。

情報では誰かの支配が解かれたらNOVAガスを放出しなかったらしい。

代わりにえげつない事になってるそうだぞ。

記録者 とあるロシアの青年。

 

ヘルハウンド

何処かの学者の愛犬だったらしい。崩壊した研究施設のラジオに寄れば、性別は雌だ。

全身に炎なのか雷を纏ってたり、そうでもないタイプもある。時々ワープして出てくるから注意が必要だ。

記録者 ドイツ武装(ヴァッフェン)SSの親衛隊曹長。

 

ミニオン

誰かの支配を解かれたのか毒ガスを出さなくなったゾンビクローラーだ、壁や天井を跳ね回る忌々しい化け物だ!

倒してもガスを撒き散らすことはないから遠慮無く鉛玉をぶち込め!

記録者 とあるドイツの青年。

 

デニズン

童話に出て来そうな小さな人型の生き物。何処からともなく現れて顔に張り付いて爪で引っ掻いてくる。

トウモコロシ畑の中から襲ってきて仲間を一人そいつに殺された。こいつと戦う場合は四人以上で行動しろ。

記録者 とあるアメリカの州兵。

 

アボガドロ

人の形をした水色の電流な電気生物だ。銃弾や爆発物は効かない、近接装備で対処するんだ。うっかり近付たら感電しちまうぞ。電気で攻撃してくるから注意しろ。球体の状態にもなるらしく、しつこく追い回してくる。後、寿命があらしく、逃げ回ってれば自然に消える。

記録者 とあるロシア国内軍兵士。

 

ゾンビアーミー

プランZと言うドイツ第三帝国の逆転計画によって生み出されたドイツ全軍兵士の成れの果てだ。

地中から這い出て、目が黄色く不気味に光り、鈍器になるような物を武器として、呻き声を上げながら生きている者に襲い掛かる。頭以外を撃って殺しても、死体の下に魔法陣が浮き出て復活する。

総統閣下(マインフィーラー)はどうして神をも恐れぬ行為を行うのか、ドイツ国防軍(ヴェーアマハト)の私には理解できぬ。

このお陰でドイツ国内を荒らし回るソ連赤軍の将兵をある程度駆逐できたが、我が軍にも被害が出た。

私には国の為に散っていった兵士達を生ける屍にして戦友にまで戦わせる計画始動の権利を伍長に与えた神を許す事が出来ない。だが、私は生きる為にかつての戦友でも手を掛けるだろう。

記録者 とあるドイツ国防軍陸軍大佐。

 

自爆ゾンビ

まるで追い込まれた大日本帝国軍の兵士の様に体中に時限式の爆薬を巻き付け、雄叫びを上げながら突っ込んで来て自爆するゾンビだ。魔法陣から出てくる。

突っ込んでくる前に脚などなんなり撃つなりしてさっさと殺すことだ。そうすれば爆弾が勝手に爆発して自滅する。

記録者 とあるソビエト赤軍陸軍歩兵。

 

ガイコツ

魔法陣から生み出される心臓だけが残った歩く骸骨。筋肉がないのにどうやって動いてるのかが分からない。こちらに向かってきて、殴ってくる。

心臓を撃ち抜けば、元の骸骨に戻ってバラバラになる。

記録者 とあるドイツ軍国民擲弾兵。

 

ゾンビスナイパー

防護服のような物を着込んで左腕にハーケンクロイツの腕章を付け、ガスマスクをしている狙撃銃を持った死者の狙撃手。

生前の記憶が残ってるらしく、攻撃された後、大ジャンプして場所を移動する。とても厄介な敵だ。

こいつも頭を撃ち抜かない限り、何度でも蘇って、俺達を狙撃してくる。倒すなら頭を確実にぶち抜け。

記録者 とあるソビエト赤軍陸軍狙撃手。

 

マシンガンゾンビ

でっかい図体にやたらと堅い防弾性の高いコートを着込んでシュタールヘルメットを被った完全防備のゾンビ。左腕に腕章を付けて、首に機関銃ようの7.92㎜弾の束を巻いて、MG42をこちらに向けて撃ってくる。とても厄介な奴。

頭を撃ってもまだ動くし、何回か頭に撃ち込まなければならない。ちなみに頭を撃たれると、苦しむらしい。

記録者 とあるソビエト赤軍陸軍将校。

 

オカルト将軍

霊体の一般親衛隊将校、周りに骸骨の頭を浮かせ、バリアを張っている。全ての骸骨の頭を撃ち抜いたら、実体化する。奴がバリアを張る前に有りっ丈の鉛玉を食らわせてやれ!

後、護衛のゾンビアーミーやガイコツを召還することが出来るぞ。

記録者 とあるドイツ武装親衛隊のフランス義勇兵。

 

感染者

奴らやゾンビ(CoD)に噛まれて自我を失い、例えかつての仲間であろうが、生きる者に襲い掛かる戦乙女の成れの果て。なんと、全身火傷や身体の一部が掛けたり、致死量に至外傷をしていても生きているのだ!その証拠に肌の色は生前のままである。

記録もあるらしく、操作が難しい銃器とで生きている以上に使って攻撃してくる。肉が好物らしく、自分の指でも食べてしまうほどだ。尤も生ける者の肉が好きらしい。

集団で居ることが多く、物音を立てれば直ぐにでも攻撃を仕掛けてくる。まれに一人で居ることがあるが、それは近くに感染者が居る証拠。人間と同じだからって、人間が死ぬくらいまで撃ってもこちらに攻撃してくる。奴らやゾンビ等と同じく頭を撃ち抜くことだ。

記録者 とある陸上自衛隊陸士。




なんか登場人物が解説してるみたいになってるな・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏切られる形で。

ガイコツの集団に行く手を阻まれたルリとユリ、狙いを頭に向けて撃つも効果無し。

 

「頭を撃っても死なない!?」

 

ユリが試しに光る心臓を撃つと、ガイコツはバラバラになった。

 

「あの光ってる心臓を撃てば!」

 

弱点が分かったルリはM67破片手榴弾の安全栓を抜いてから投げ、多数のガイコツを撃破、辺りにバラバラになった骨が散らばる。

心臓を中心に狙いを定め、一連の作業のように次々と片付けていき、全滅させた。

 

「これで終わりかな・・・?」

 

ルリは手に持つSG553の弾倉を新しい物に取り替え、辺りを警戒する。

 

「襲ってくる気配はない見たい」

 

周囲に以上はないと分かったユリは、ルリに伝えた後、市内の出入り口まで行き、空を見上げる。

夜は明けつつあり、不気味な霧も晴れつつあった。

だが、彼女達の試練はまだ終わらない。

地面からゾンビが次々と這い出てきて、魔法陣が浮かび上がり、ガイコツや自爆ゾンビが召還される。

 

「いっぱい出て来たよ!」

 

「ここを突破すれば・・・!」

 

小室一行との合流を急ぐルリは全力疾走でやって来る自爆ゾンビを先に狙い、周囲のゾンビを纏めて排除する。

ルリに続いてユリもSG551を撃ち始める。

続々とゾンビの死体が増えたりガイコツがバラバラになっていく中、MG42を撃ってくるマシンガンゾンビまで現れた。

銃弾がユリの左腕を掠め、激痛で射撃を止めてしまう。

 

「痛い、も~う!」

 

SG551は片手でも射撃が可能な為、マシンガンゾンビの頭に向けて撃つ。

その間にゾンビが何体か近付いてきたので、ルリはベネリM3に切り替えて手際よく片付けていく。

弾切れになれば、再装填を行わずにゾンビから拝借したスコップで次々と倒して、それから銃の再装填を行う。

何発かの銃弾でマシンガンゾンビが倒れた後、またゾンビの集団が地面から這い出てくる。

 

「また出て来た!」

 

何とか構えて撃つユリはゾンビの腰に付いていたM24柄付手榴弾を撃って爆発させ、周囲のゾンビを巻き込んで始末できたが、それでもゾンビは増えるばかりだ。

終いには複数のマシンガンゾンビが現れ、弾幕で右脚を負傷し、倒れ込む。

ルリはゾンビを近付けまいと奮闘するも、数が多すぎる上に弾幕が激しく、まともに近付けず、銃弾の前でルリも負傷してしまう。

片手でも射撃可能なSG553を構えてユリに近付いてくるゾンビを片付けるも、数が多すぎて守りきることも出来ない。

 

「(このまま終わりか・・・)」

 

そうルリが心の中で思った瞬間、機関銃の銃声や戦車の砲声が聞こえてきた。

小銃や短機関銃の銃声も聞こえ、頭が砕けたゾンビが次々と地面に倒れる。

マシンガンゾンビも戦車の砲撃で吹き飛び、二人を襲ってきたゾンビが全滅した。

倒れ込むルリの近くまでやって来たP-40戦闘服と女性用ズボンを着用し、イギリス兵の象徴的なMk2皿形ヘルメットを被った英陸軍歩兵装備な童顔の女性兵士がリーエンフィールドNo4Mk1の着剣された銃剣の刃先を顔に向ける。

周囲を見渡せば、同じ小銃にステン・ガン、ブレン・ガンなどの第二次世界大戦の英陸軍装備の軽歩兵が何人もいる。

 

「立ちなさい」

 

銃剣を向けられながら、ステンMk3を持った軽歩兵に立たされたルリは立ち上がり、衛生兵に抱えられているユリが見えた。

マシンガンゾンビを全滅させた戦車は五両のM3A5リー中戦車で、道を塞ぐ整列している。

その後ろには兵員輸送用のトラックやユニヴァーサルキャリアが数台ほど見え、中隊規模の軽歩兵部隊と分かる。

ハンビィーも数台ほど見え、AEK-971を持った防護服の集団も居り、ゾンビの死体を担ぎ、死体搬送用のトラックに載せている。

 

「何をしてるの?早く歩きなさい」

 

ステン・ガンを構える軽歩兵に急かされたルリは、装備を剥がされたまま、手を挙げてユニヴァーサルキャリアに向かう。

M3リーを見れば、子供の戦車兵がハッチから上半身を出して死体を担いでいる防護服の集団を珍しそうに見ている。

輸送車両を見張る歩哨は美少女の捕虜が珍しいのか、ルリに視線を向けていた。

銃を突き付けながら、ユニヴァーサルキャリアに乗せられたルリは目の前に座るベレー帽を被った士官がFNハイパワーを向けている事に驚く。

隣に銃剣付きのリーエンフィールドNo4Mk1を向けた戦乙女が座り、二名ほどの戦乙女が乗った後、ユニヴァーサルキャリアはエンジンを鳴らし出発した。

空を見上げれば朝になっており、上空をホーカーハリケーンやタイフーンが飛び回っている。

オープントップな車両に揺られるルリが外の様子を見れば、大戦時に使われていたイギリス連邦軍の様々な車両が列をなして道路の上でエンジンを鳴らしながら止まっていた。

その横を歩兵が列をなして徒歩で行軍する。

どうやら車列の真ん中のM3ハーフトラックがエンジントラブルを起こして、前に進むことが出来ずに渋滞になってるらしい。

証拠に工兵がエンジンを必死に直そうと努力している。

 

「目の前で渋滞が起きて師団本部に向かえません。ユズコ軽師団の本部に向かいます」

 

「そうして。それと何台かの護衛をこっちに」

 

運転手が告げて士官がサイドカーに乗った女性兵士に指示を出した。

行き先をユズコ軽師団の本部に変えたルリを乗せたユニヴァーサルキャリアは、二台のサイドカーを護衛に付けて向かった。

コメット巡航戦車を通り過ぎた後、ワルキューレの兵士が一人も見えない道路に入ったユニヴァーサルキャリア、茂みにリヒター達が待ち伏せている事も知らずに。

一方、茂みで待ち伏せていたリヒターは双眼鏡を覗いてルリを確認する。

 

「居た・・・あそこの少女だ」

 

リヒターは隣でステンMk6を握る大戦下のイギリスコマンド部隊SASの将校に告げる。

 

「あれだな、可愛らしい嬢ちゃんだ。ドイル、お前はあの娘はイングランド系かスコットランド系、ウェールズ系だと思うか?」

 

赤いベレー帽を被った将校は、ドイルと呼ばれるデリーズルカービンを持った下士官に問い掛ける。

 

「どう見てもギリシャ系だと思いますが・・・」

 

双眼鏡を見ながら答えるドイル、将校は溜息を付きながらウィンチェスターM1912に持ち替える。

民間使用のG3A3を持つリヒターは攻撃に出ると将校とドイルに告げた。

 

「私が援護射撃を掛ける。イングラム少佐とドイル軍曹は突撃してくれ」

 

「分かったフリッツ」

 

「少佐、それはいけませんよ」

 

M1A1トンプソンを構えたドイルはイングラムと呼ばれた自分の上官を注意した。

 

「分かっている。紳士として女と味方の装備を撃つのは気に食わないが、捕まっているお姫様の為だ。女王陛下、お許し下さい」

 

ドイルに答えた後、独り言を呟いて、ルリを乗せたユニヴァーサルキャリアの前に飛び出た。

前に武装した男が出て来た為に、オープントップな装甲車は停止し、サイドカーが前に出てドイルとイングラムを始末しようとしたが、茂みに潜んでいたリヒターが操縦者を撃つ。

操縦者を撃たれてコントロールを失ったサイドカーは横転し、トドメをドイルとイングラムが差す。

もう一台のサイドカーも、ドイルのM1A1トンプソンの連射で運転手と機関銃手が射殺されて運転手が居なくなったサイドカーは横転する。

ユニヴァーサルキャリアの機関銃手は二人を蜂の巣にしようと安全装置を外したが、M1A1トンプソンを単発に切り替えたドイルに撃たれて沈黙、装甲車から降りた二人の戦乙女はイングラムの散弾銃によって同時に射殺された。

士官はFNハイパワーを二人に向けて発砲してくるが、呆気なくイングラムに射殺され、運転手はドイルに殺される。

ルリを人質に取ろうと小銃を持つ戦乙女がエンフィールドNo2を取り出して、彼女の頭に突き付けようとしたがイングラムの方が早く、彼が取り出したウェブリーリボルバーMk6で頭を撃たれて死んだ。

 

「クリア!」

 

「クリア!敵影無し!」

 

「流石はSASだ。手際が早い、総統閣下(マインフューラー)が恐れるわけだ」

 

「だろ?さぁ、立つんだ嬢ちゃん」

 

ルリに手を伸ばしたイングラムは、ルリがその手を掴んだのを確認した後、彼女を装甲車から降ろす。

自分も降りた後、ドイルも誘って自己紹介を始める

 

「おじさんはジェラルド・イングラムでイングランド人なんだ、よろしく嬢ちゃん。そしてこいつが」

 

「自分で名乗りますよ。自分はアイルランド連合王国陸軍、第1SAS連隊所属、ジェームズ・ドイル軍曹です。宜しくお願いします、お嬢さん」

 

ドイルは敬礼しながら名乗り、自分も自己紹介を始めた。

 

「ルリです。姓名は言えないけど・・・よろしく」

 

「姓名を名乗らないとは、謎だな!宜しく頼むよ、ルリちゃん」

 

お互いに握手をするルリとイングラム、リヒターが声を掛けた。

 

「そろそろ出発しなければ、近くの戦乙女が確認に来る」

 

「そうだな。少し揺れるから我慢してくれよ」

 

イングラムは笑顔でルリに告げ、自分達が乗ってきたジープに案内する。

 

「これが馬車だ。さぁ、ドイル。エンジンを掛けるんだ」

 

言われたとおりドイルはSAS仕様のウィリージープのエンジンを掛け、全員が乗ったのを確認した後、アクセルを踏んで元来た道を戻ろうとした。

だが、目の前からM3リー中戦車が現れ、行く手を塞ぐ。

 

「前方に敵戦車!M3リー中戦車です!」

 

「植民地人の輸入品か!」

 

「参ったな、こちらには対戦車装備が無い」

 

「呑気に言ってる場合ですか!揺れますから捕まってください!」

 

ハンドルを切って、M3リー中戦車の攻撃を交わす。

目の前から一体の奴らが出て来たが、M3リー中戦車の75㎜砲の徹甲弾でバラバラになる。

 

「榴弾だったら俺達死んでたぞ」

 

「そのようだな」

 

「この二人は!」

 

ドイルがリヒターとイングラムのやりとりに呆れながら、ジグザグに動いた。

機関銃を撃ってきた為、風除けガラスが割れる。

 

「風除けは倒しておけ!」

 

「無茶言うな!」

 

屈んでいるイングラムが注意すれば、頭を下げながら運転するドイルが敬語を忘れてツッコミを入れた。

その時、目の前からバウアー達のティーガーⅡとパンターG型、ティーガーⅠが見えた。

 

「うわぁぁぁ!ロイヤルタイガーだ!!」

 

「ロイヤルタイガーだと!?うわっ、パンターとタイガーも居るぞ!避けろ!!」

 

「アレは味方かもしれんぞ」

 

リヒターが言ったことが耳に入ってなかったのか、ドイルはハンドルを右に切り、道路を外れた。

彼等を追っていたM3リーは二門もある砲を撃ったが、ティーガーⅡの前面装甲を貫ける筈も無く、あっさりとヴィットマンのティーガーの砲撃で撃破された。

破壊されたM3リーから少女の戦車兵が出て来て、ドイルとルリが撃とうとしたが、イングラムに止められた。

 

「撃つな!逃がしてやれ」

 

バウアー達との偶然にも接触できたルリ達、ティーガーⅡからバウアーが降りてきて、リヒターと握手する。

彼等のやりとりを見ていたイングラムは、同じくやりとりを見ているイーディ達とSTG達の格好を見て、ルリになんなのかを問う。

 

「嬢ちゃん、あそこに居る奴らは何処の国の軍隊だ?」

 

「知りません」

 

手早く交渉を済ませたリヒターが帰ってきて、待っているルリ達に告げた。

 

「彼等も我々の一団に加わる事となった。早速案内しなければ、彼等は弾薬が不足している」

 

早速バウアー達を案内する事にしたリヒター達は、新たに加わった彼等に手伝って貰ってSASジープを道路に戻し、案内を開始した。




バウアー達と合流しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オーバーホール

タイトル通りご都合主義倉庫で小室一行の装甲車両がグレードアップします。

最初は敵側とオメガの視点です、あの戦ヴァルの白い準皇太子が登場。


倉庫まで展開しているワルキューレの戦闘部隊を避けながらリヒター達がバウアー達を案内している頃、静岡県某市のワルキューレの拠点にて金髪碧眼の青年がヘリから降り立った。

 

「総員、傾注せよ!」

 

ワルキューレには珍しい礼服のような軍服を着た男の将官が大声を出し、整列していた兵士達に敬礼するよう指示を出す。

次にもう一人の将官が青年の名を大きな声で口にする。

 

「マクシミリアン・ガイウス・フォン・レギンレイヴのご到着である!全員、敬意を表せっ!!」

 

「あの人格好いいけど、名前長くない?」

 

「うん、私もそう思う」

 

整列している女性オペレーターの二人は聞こえないようにやりとりしていた。

青年の服装は軍服風味のスーツ姿で、王子様な服装をすれば似合う容姿だ。

この指揮所は女性の兵士しか居なかったが、マクシミリアンが来るという予定が入ってからは、男性兵士が多くなった。

故に、整列している兵士の大半は軍隊同様男なのである。

整列する兵士に見られながら、マクシミリアンは指揮所に入った。

中にいる職員が全員立ち上がって、入ってきたマクシミリアンに向けて敬礼する。

 

「ご苦労、楽にして良いぞ」

 

入ってきた青年が言った後、職員達は自分の作業に戻った。

席に座ったマクシミリアンは机の上に置かれた書類に目を通す。

 

「どうでしょうか、日本の現状は・・・?」

 

以下にもゴマすりな容姿の副官が書類を見るマクシミリアンに問い掛ける。

 

「一番見に入ったのはこの報告書だ」

 

青年から渡された報告書を読んだ副官は口を開く。

 

「これは来る途中で報告にあった感染者のことですな!下っ端の女兵士共が油断して歩く死体に噛まれて、似たような状態になって。あれでまだ生きてるのだから驚きですよ」

 

媚びるように言う副官の返答にマクシミリアンは少し苛立ちながら、日本支部の司令官であるアレクサンドラを呼び出すよう女性通信員に指示した。

 

「日本支部に通信を繋げ、この感染者の件を片付けたい」

 

「コピー!」

 

早速日本支部に通信を繋いだ通信員は出来たと報告する。

 

「通信繋がりました。映像に出ます」

 

『こちら日本支部、通信を繋いだのは貴官か?』

 

「この余だ。感染者の件を片付けたい次第で通信を繋がせた」

 

喋り方に不穏に思ったアレクサンドラは、気難し顔をしながら目の前の青年に隔離された感染者の音声無しの映像を見せた。

 

『これが感染者の状況だ。ウォーカーに噛まれた者と疑いがある者は入れて対策を取ってあるが・・・』

 

檻の中には自分の手を食べている感染者と、装備を剥がされた痛々しい傷が残る者や傷口を隠している者が入れられており、中にはまだ成人していない少女の姿まで見える。

右側にはM1919A4機関銃などを構えた軽歩兵が囲んでおり、何か起こった時に備えて衛生兵まで待機していた。

複数の防護服を着た者達が、噛まれた装備がない軍服のままの戦乙女等にAEK-971を突き付けながら檻の中に入れ込もうとしたが、嫌がった戦乙女の一人が逃げ出した。

直ぐさま防護服達が持つ突撃銃が火を噴いて、逃亡を図った戦乙女を蜂の巣にしてしまう。

死体も一緒に檻の中に入れ込まれ、中にいる者達の顔付きが恐怖のどん底に変わり、口の動きで分かるように檻の外にいる兵士達に「出して」と叫んでいる。

 

「酷たらしい光景だ・・・」

 

マクシミリアンが呟いたその直後、噛まれた者の一人が吐血し始め、藻掻き苦しんだ後、息絶えた。

暫く時間が経てば息絶えた筈の者が感染者となって蘇り、近くにいた少女の首に噛み付く。

首を噛まれた少女は叫び声を断末魔の叫びを上げて息絶え、動かなくなった少女の肉を感染者は貪り食う。

辺り一面が血に染まっていく中、檻の中にいる者が悲鳴を上げ、それに気付いた感染者達はまだ感染してない者達に襲い掛かる。

忽ち檻の中は地獄絵図と化し、檻の中から生ける者達の腕が見え、床に血が広がっていき、内臓や人体のパーツ等が檻の中から飛び出してきた。

機関銃を構えた者達が、余りの惨事に嘔吐し始める。

この場にいる者達も吐き気に襲われたのか、映像に目を背ける者が多発する。

 

「ひぇ・・・!恐ろしや恐ろしや・・・!」

 

同じく映像を見ていた副官は呟いており、この場で動じずにこのスプラッター映画の様な映像を見ていられるのはマクシミリアンだけだ。

防護服の集団も耐えきれなくなったのか、その場から退場していく。

見かねた青年がアレクサンドラに指示を出した。

 

「殺せ。見ていたらこっちまで吐きそうだ」

 

『了解した。機関銃、掃射開始』

 

隣にいた士官が頷いてから受話器を取り、機関銃部隊の長に指示を出す。

防護服の集団が全員退避した後、まだ生きている者が居るにも関わらず、右側に配置されていた機関銃が後ろにいた士官の怒号で一斉に火を噴いた。

檻の中にいる感染者達が無数の銃弾を食らってバタバタと倒れていく。

ベルト給弾から7.62㎜×63弾が切れた後、残っていた感染者が起き上がって、機関銃を構えた者達に向かってきた。

空かさず後ろにいた士官がSIG P225をガンホルスターから抜いて、大量出血しながらも檻から手を伸ばす感染者の頭を撃ち抜いた。

映像が終わり、アレクサンドラの顔が映し出される。

 

『見苦しい映像を見せて済まなかった。それで、ウォーカー噛まれて感染した者はどう対処する?』

 

向こう側から問い掛けてくるアレクサンドラに、マクシミリアンは答える。

 

「射殺しよう、そのままにしておけばこちらも被害が拡大するだけだ。全指揮所に通信を繋げ、感染者は射殺せよと。感染の疑いのある者は徹底的に調べろ、以上」

 

アレクサンドラが「了解した」と言った後、支部との通信が終わった。

椅子に座ってから受話器を取って総司令部に連絡する。

 

「余は上級司令官のマクシミリアン・ガイウス・フォン・レギンレイヴだ。聞こえるか総司令部、新たな命令だ。ウォーカーに噛まれた感染者は即座に射殺せよ、疑いのある者は徹底的に調べろ。全世界の支部にこの司令を伝達するのだ」

 

そう総司令部に要請し「分かった」と声がした後、マクシミリアンは受話器を戻した。

次に小室一行の報告書を見始める。

 

「この高校生の一団が気になる。子奴等だけが以上に生存率が高い、どういう仕組で生き残ってるのか興味がある」

 

その言葉で副官の不思議そうな表情に変化したが、青年は気にもせず続ける。

 

「他の生存率の高い集団と合流し、一種の勢力にもなり始めている。早急に手を打つ事だ」

 

小室一行が映っている写真を見ながら口を動かす。

 

「それにしても何故、このような集団になるまで放っておいたのだ?これでは一大勢力となり、我々に牙を剥くぞ」

 

「はぁ・・・どうやら大したことが無いと判断して放っておいた様です。奴らが居る地域に包囲網は敷いているらしいですが、何のダメージすら与えていません。いっそのこと奴らが潜む地域を爆撃した方が早いと思いますが・・・」

 

「おそらく却下されるだろう。連中にも強力な対空兵器があるとの目撃情報がある、飛ばすだけ人員と爆撃機の無駄だ。連中がこの地で用事を済ませ、この安全地帯の三つの内どれかに向かうだろう。それを見越して連中をこの地に閉じ込めて兵糧攻めにすることだ」

 

椅子から立ち上がって、一面に日本全体図が広がった机に向かい、床主がある方向を赤いペンで囲む。

 

「この地を軍規模の兵力で包囲するのだ。第2、3世代主力戦車と兵器群で囲む、歩兵装備も対戦車ミサイルを持ってだ。爆撃機や攻撃機を頻繁に飛ばして敵の兵器と食料や水を見付け次第攻撃させ、連中が疲弊したところを一気に叩く。それが余の考えだ」

 

隣で青年の考えに感心する副官は、早速取り掛かろうとしたが、マクシミリアンに止められた。

 

「だが、これはあくまで空論に過ぎん。実際、我が配下の兵力はそれ程の兵力があるが、兵器群は冷戦中の物ばかり。おまけに侵攻してきた外国軍の対策や新たな化け物の対策で兵力が分散している。それが終わっても、補給が終わるまでに連中が待つとは限らん、脱出されるのが関の山だろう。よって連中の対策は現地部隊に任せる」

 

マクシミリアンは副官に告げてから、司令官の席に戻る。

一方、オメガ・グループは千葉県の東京に近い距離にある敷地内に居た。

 

「ここもゾンビでいっぱいか・・・」

 

「トーキョー・オブ・ザ・デットって感じだな」

 

奴らが蔓延る日本の首都である東京を見ながら呟く小松と平岡、田中はツッコミを入れた。

 

「映画の撮影じゃないんですけどね」

 

他の隊員が装備を整えた後、オメガ・グループの隊長が全員に声を掛ける。

 

「全員集合!梅本司令から司令がある!」

 

「全員集合ですよ」

 

「分かってら」

 

田中が知らせた後、オメガ・グループの隊員が、この部隊の作戦司令官である自衛隊の尉官専用の作業服を着て、眼鏡を掛けた梅本と言う男の前に集まる。

 

「諸君等に集まって貰ったのは他でもない!首都奪還作戦が幕僚会議で決定したからだ、我々は陸自の第1空挺団や第1師団と共に鎮圧作戦に入る!諸君等はヘリで廷内に降りて鎮圧活動に入って貰う。全体の鎮圧は主力の第1空挺と第1師団が担当する。以上だ」

 

「共同作業かよ・・・機密保持はどうなったんだ?」

 

「さぁ、知らね」

 

梅本の作戦説明を聞き終えたオメガ隊員達は喋りだし、それを梅本が怒鳴って黙らせる。

 

「静かにしろ、貴様等!日本の命運が掛かっているんだぞ!!」

 

黙った隊員達は米軍から送られてきた二機の大型輸送ヘリCH-53に乗り込む。

隣の野営地にいた第1師団の隊員達は自衛隊全種に採用されていない大型輸送ヘリを珍しそうに見ている。

 

「あれは米軍のCH-53か!?」

 

「SEALsが作戦に参加するって聞いてねぇぞ!」

 

89式小銃を抱えた隊員達が声を上げる。

窓から隊員達の反応を見ていた小松が、彼等に向かって手を振った。

 

「あいつ等、驚いてやんぜ」

 

「そりゃぁ当たり前だろう。採用もしていないヘリが飛んでいるのだから」

 

機内の席に座る小松と平岡が会話を始め、田中が地上にいる第1戦車大隊を見る。

 

「最新式の10(ひとまる)式戦車がある。このところ殆どミリタリー雑誌を見てなかったんだよな~写真に撮っとこう」

 

カメラを取り出して地上に居る三両の10式戦車を写真に納める田中。

第1空挺団のヘリも見えた為、小松は手を振ったが、UH-60JAブラックホークに乗っている89式を脇に抱えた隊員はそれを敢えて無視する。

少し苛立った小松であったが、東京の廷内に到着してしまい、起こる暇もなくヘリは広い敷地内に着陸した。

 

「降りて周囲を警戒しろ!」

 

リーダーの隊員が告げた後、小松等はカスタマイズされたM4カービンの安全装置を外して周囲を警戒する。

 

「クリア!異常なし」

 

「散会して廷内を鎮圧せよ!」

 

隊長が言った後、四人一組になって、手当たり次第建造物に入っていく。

そして奴らを見付けたら即座に頭部に狙いを付けて引き金を引き、死体に変える。

周辺から連続して銃声が鳴り響き、第1空挺団と第1師団も鎮圧に乗り出したと分かる。

手当たり次第奴らを見付けたら始末していくオメガの隊員達、弱点は既に分かっているので、後は迂闊に近付かないようにして片付けていくだけだ。

最後の二階建ての建物に着いた小松のチームは、入る前にスタンドグレネードの安全栓を抜いてから、建物に投げ入れた。

爆発した後、呻り声を上げながら固まっている奴らの頭を次々と撃ち抜いていき、鎮圧を素早く済ませ、部屋という部屋を調べ尽くし、奴らが居れば排除する。

二階を調べる為に銃を構えながら上がり、出会した奴らの頭を撃ってからまた二階にある全ての部屋を調べ回った。

小松が最後の部屋に入った途端、奴らが飛び掛かってきた為、床に倒れ込み、奴らに捕まってしまう。

 

「クソっ、誰か来てくれ!」

 

一度掴まれたら引き離すのは至難の業だ、小松はチームに助けを呼ぶ。

直ぐに平岡が現れ、小松を仲間に入れようとしていた奴らの頭を正確に撃ち抜いた。

 

「大丈夫か、小松」

 

「大丈夫なわけあるかよ、顔に血付いちまったぞ」

 

「大丈夫ですか、小松さん!?」

 

「おう、生きてたか。田中」

 

田中がチームの一員を引き連れて現れた後、小松が苛つきながら言う。

 

「おせぇぞ田中、こういう時は一秒でも早く来ることだ」

 

「はぁ、すんまへん」

 

申し訳ない表情をしながら田中は小松に謝った。

鎮圧を終えた後、オメガの隊員達がヘリが着陸している敷地内に集合する。

 

「誰一人欠けてないな?!では、引き続き我々は第1空挺団の加勢に加わる!」

 

「はぁ~、これで終わりじゃないのか・・・」

 

新しい指示に小松が皮肉った後、オメガ・グループは第1空挺団が担当する地域に向かった。

倉庫に着いたリヒター達は、早速バウアー達を中に案内した。

 

「すげぇ!第二次世界大戦の兵器が丸揃いだ!!」

 

一応軍オタの端くれである山本はかなり興奮している。

 

「それに露助の連中もいるぞ。あいつ等もここに転移してきたか!」

 

バウアーはソ連赤軍の二個機甲大隊を見ながら言う。

ルリとイーディはさほど興味が無かったそうで、向こうで機械弄りをしている小室一行とウィッチ達の方へ向かう。

機械の音が止むことが無く鳴っている事にバウアーは気付き、そこへ向かう。

 

「リヒター閣下、オーバーホールは分かるが少しいらんパーツがある。あれは何をしているのですか?」

 

直ぐにバウアーはディーターや佐武郎等がやっている事を聞き出す。

 

「見た感じはオーバーホールだが、改造しているのだろう。君達も始めた方が良いかもしれない」

 

「それなら話が早いです。あの8.8㎝PaK43を私のティーゲルに付け替えてきます!ヴォル、行くぞ!」

 

「クルツ、俺達も改造だ!丁度、パーツも揃ってる。中隊急げ!」

 

早速ヴィットマンと乗員達は自分のティーガーⅠを改造しに出掛け、バウアー達もこれに負けじと改造パーツを取りに行く。

火星軍の四人組はウィッチ達の所へ来ていた。

 

「やぁ、お嬢さん達。ここは快適かな?」

 

突然現れた奇抜な格好なSTG達にどん引きしたが、イーディが彼等の事を説明した。

 

「この方達は火星という星からやって来た人達ですわ。私達も最初は驚きましたが、フレンドリーな方達ですのよ」

 

「まぁ、この・・・20世紀人の言うとおりだ。君達も20世紀人かい?」

 

「20世紀人・・・?」

 

「西暦の事ダナ。私はエイラ・イルマタル・ユーティライネンだ、よろしく」

 

STGは長い名前に驚きを隠せない。

 

「エイラ・・・イルマテル・ユーティラネン?フィンランド人の名前は長くて覚え辛いな」

 

「正しくはエイラ・イルマタル・ユーティライネンだ。戦闘機部門の教科書にそれに似た名前の人物が載ってある」

 

ゴーグルを付けた隊員がSTGに告げる。

 

「おぉ、そうか。宜しく頼むよユーティライネンちゃん」

 

「こっちもよろしくナ」

 

お互いに握手をした後、黒人の隊員が口を開く。

 

「しかし良くもこんな健康に悪い所に年頃の少女が居るもんだ。成長期の身体に悪影響を起こすぞ」

 

「まぁ、慣れてるから大丈夫ダ」

 

エイラはそう言った後、ルリの居る方へ向かった。

 

「ルリです、よろしく」

 

「サーニャ・V・リトヴャク、よろしく・・・」

 

こちらも握手した後に、エイラがやって来てルリに挨拶する。

後ろから「芳佳」とバルクホルンが叫ぶ声がしたが、三人は気を取り直して初対面の者達に挨拶し回る。

こうして再会を喜び合う小室一行なのであった。




次は原作に戻らなくては・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

別れるかもしれない。

原作の辺りが良く分からん・・・最後は紫藤に会って、連載休止だっけ?


枢軸国軍の戦車がオーバーホール作業中、孝は事務室で人数や兵器、銃器、食料に水、弾薬等をメモに書き記しているリヒターに話し掛けた。

 

「あの・・・」

 

「なんだね?」

 

「これから麗の母親の安否に向かいます」

 

その言葉を聞いたリヒターはペンを止めて孝の方を見る。

 

「構わんよ。護衛は何人欲しいのだ?」

 

「そちらにお任せします。もしかしたら・・・ここでさよならかもしれません」

 

「そうか・・・」

 

リヒターは暫く黙り込んだ後、孝に告げた。

 

「ここでお別れか・・・短い間だったが、助かったよ」

 

「いえ、自分達はただ足を引っ張ってるんじゃないかと思いまして・・・」

 

「そんな事はない。君達の去り行く姿を決めなくてわな」

 

「はい・・・でも、もしかしたらこっちに帰ってくるかもしれません」

 

「あぁ、その時はこちらに戻ってきても構わんさ、是非歓迎しよう。しかし、私達と居れば殺し合いに巻き込まれるぞ。昨日私達と二手に分かれた後、生きた人間、しかも組織的な者達に襲われただろう。無理をしてついてくる必要はない」

 

困った表情をする孝にリヒターはそう告げ、さらに口を動かす。

 

「これを安全地帯に行けるチャンスと思うんだ。そうすれば狙われなくて済むし、これ以上亡者と戦う必要はない。そして事が収まるまで安全な場所で待て、そしたらいつもの日常生活が戻ってくる」

 

「僕が言っているのはそう言う事じゃありません!」

 

大きな声で否定した孝にリヒターは何の同様もせず、彼の顔を見ていた。

 

「そんなつもりで頼んだじゃありませんよ・・・貴方達も一緒に来れば・・・」

 

「それは無理だな」

 

否定するかのように言った後、マイヤーが事務室に入ってきた。

 

「我々は一種の武装組織だ。正規の軍隊じゃない、テロリストと同じ様な物だ。そんな俺達を君達が言う自衛隊が迎えることがあるのか?異世界からやって来た我々を。武装解除されて乗り物も没収され、牢屋にぶち込まれるのがオチだ」

 

マイヤーの言っている事は正しく、孝も考えてみれば、納得するしかない始末だ。

第二次世界大戦時の兵器などで武装した集団を自衛隊が容易く出迎えるとは思えない。

即座に武装解除して、リヒターやバウアー達を拘束し、監視に置くだろう。

一緒に安全地帯へ彼等を連れて行きたかった孝の願いは吐かなく散った。

 

「諦めろ、我々は君達とは一緒に行けん」

 

「そう言えばさっき、君と同じ様な事をセルベリアやミーナ達が頼んできたぞ」

 

「え!?」

 

マイヤーが告げた後、リヒターが驚くべき発言をした為、孝は驚き、訳を話す。

 

「彼女達も自分達が居る世界に戻りたいのさ。次は恐らく戦勝国の一つであるソビエト赤軍が我々から抜けるだろう。我々の様な敗戦国は幽霊のように、この世界で生きていくしかない」

 

「そんな事って・・・大戦で負けた貴方達が可哀想じゃないですか!」

 

「負けたからだ、歴史は勝者によって作られる物だ。勝者は過去の歴史を変える権限だって与えられ、過去に起こした犯罪行為だって許される」

 

禄に勉強をしてなかった孝であったが、歴史の教科書を思い出してみれば戦勝国は英雄的に記されているにも関わらず、敗戦国は圧政、虐殺行為、その他諸々等、まるで悪者扱いされているようにしか記されていない。

さらに過去の国の為に戦った祖先達を愚弄するような事まで、今の日本では行われている。

ましてや身に覚えのない罪まで擦り付けられて、今も悩まされている始末だ。

経験も教養もあり、幾つもの修羅場を潜り抜けてきた猛者達に言われた孝は頭を抱えることしか出来なかった。

 

「それが我々ドイツ第三帝国と大日本帝国の軍人達に神が新たに用意した罰だ。それが分かったら準備をしろ、我々の分まで生きるんだ」

 

孝にそう告げたリヒターとマイヤーはそれぞれの仕事に戻った。

「自分達が彼等の分まで生き延びなければ」そうするしか無かった孝は、旅支度をする自分の仲間の元へ向かう。

準備が出来た後、オーバーホールを終えたバウアー達がこれから一生会うことで無いであろう孝達をそれぞれの作業をしながら見ている。

孝達にずっと一緒についていくのは、未来の火星からやって来た四人の軌道降下兵と学園脱出からこの時まで一緒だったルリだ。

孝達と同じ現代人である山本はリヒター達の所に残ることにした。

小室一行を見届けるのはパッキーを初めとしたキャット・シット・ワン。

黒騎士のバウアーが孝に近付き、別れの言葉を掛ける。

 

「名前を名乗った以外、殆ど話などしなかったな」

 

「はい。所で、最後に聞くのですが、あのバウアーさんは・・・貴女の娘さんですか?」

 

美少女の方のバウアーは、黒騎士のバウアーに見られた後、ビクビクしていた。

 

「いや、断じて俺の娘でもないし。親戚にも眼帯の美少女など一人も居ない」

 

「そうですか・・・僕の思い違いでした、すみません!」

 

「謝らんで良い。俺達の分まで生き残れよ!」

 

「分かりました!」

 

バウアーは満面の笑みで孝に告げた。

次にヴィットマンとイングラムがやって来る。

 

「何の話も出来なくて寂しいよ」

 

「あんなスタイルの良い美少女や美女を連れてやって来たから、てっきりムカツク小僧と思ったが、まさかこんな良い小僧なんて思ってみなかったよ」

 

イングラムが孝の頭を撫でながら言った後、ヴィットマンがコータを呼ぶ。

 

「平野君、君はとても興味深い少年だ。私の規格帽を授けよう」

 

ヴィットマンから迷彩色の規格帽を渡されたコータはもの凄く興奮した。

 

「ありがとうございます!!本物の武装SSの迷彩色の43年型戦車兵用規格帽だぁ!ひゃーほーい!」

 

「はっはっはっ、予想外の反応だ。それでは、またいつか会えることを願おう!」

 

「俺も同文だ、会えることが出来たら楽しみにしてるよ」

 

「はい!大事にします!!ヴィットマン大尉もお元気で!」

 

号泣しながらコータは二人に別れを告げた。

彼等の次は、芳佳とイーディ達だ。

 

「な、泣いている訳じゃありませんのよ!け、決して!」

 

「(あれがお嬢様のツンデレ・・・泣いてるじゃない・・・)」

 

顔を隠しながら、イーディは涙を浮かべながら孝達に告げ、沙耶が呆れた表情をして心の中でツッコミを入れる。

芳佳が小室一行の女性陣の胸を見ながら近付く。

 

「殆ど話も出来なかったけど・・・楽しかったです!」

 

「うん!こっちも楽しかったよ!」

 

笑顔で芳佳に答えた鞠川は、彼女を抱きしめた。

 

「別れちゃうなんて寂しいよ~」

 

「ありすも寂しいよ・・・」

 

ありすがジークを抱えながら、別れを惜しむ。

鞠川の巨乳を押し付けられている芳佳も、この感触が感じられなくなると分かってしまい、瞳から涙を落とす。

そんな彼女の被害にあった麗、沙耶、冴子は芳佳から距離を置く。

 

「先生・・・私達もついていきたいけど、セルベリアさんが駄目だって言うんです」

 

「大丈夫、私達にはレーザーガン使う人が居るからね?それにセルベリアさんもとっても強いでしょ?」

 

「はい、あの人もとても強いです。だからどうか、お気を付けて!」

 

「ありがとう、宮藤ちゃん。ありすも気を付ける」

 

「ありがとね~」

 

芳佳の頭を撫でながら、鞠川は笑顔で礼を言った。

その次に芳佳は距離を置いた三人の方を向き、お辞儀をする。

彼女達も作り笑いをしながら手を振る。

アレクセイとヴィクトルも孝達を見ていたが、手を振るだけで終わった。

全員に大きな声で別れの言葉を告げた後、孝達はハンビィーと軍用バギーに乗り、同伴者のパッキー達が乗るハンビィーと一緒に倉庫を出た。

 

ハンビィーに乗っているのは鞠川にありす、沙耶、コータ、冴子、ルリ、六人でバギーは孝、麗の二人、STG達は倉庫にあった屋根付きジープに乗る。

機関銃は孝達のだけは取り外されている。

もしもの時に自衛隊に押収されるのを避ける為でもあり、そしてワルキューレに攻撃されない為でもある。

倉庫がある空間から出た後、外は雨が降っていた。

 

「坊主、雨が降ってるぞ!」

 

銃座に着くレインコートを着ている最中のラッツが知らせ、オープントップなバギーに乗る孝達はレインコートを急いで着込み、鞠川達のハンビィーの前に出て、道案内をする。

パッキー達が乗るハンビィーの車内では、雑談が交わされていた。

 

「パッキー、小室達と別れるの寂しい」

 

「俺も寂しいさ。あんなデカパイのお姉さんと一度ヤってみたかったな・・・」

 

「下品だぞ、ボタスキー。この雨の中でもアマゾネスや戦乙女が俺達を捜し回ってるに違いない」

 

ボタスキーを注意したパッキーはハンドルを握りながら周囲を警戒する。

雨降りしきる外を、ボタスキーとチコがずっと見ている。

まもなく麗の母親が居るとされる自宅に着く。

真っ先に麗が自身の母親らしい姿を見付けた為、直ぐに声を掛けた。

 

「おか~あさん!」

 

麗の母親らしい人物は、古い槍を持ちながら何か言い争っていた様だが、娘の声に気付き、そちらの方へ向く。

 

「麗ちゃん!?」

 

バギーが麗の母親の近くで止まった後、麗は母親に抱き付いた。

 

「お母さん!生きてた、生きてたよ!」

 

身内との再会に喜びを隠せない麗、後続の車両も止まり、麗の母親が日本では見慣れない車がやって来たことに驚く。

 

「ちょっと、まずは訳を話して!あれは何なの麗ちゃん!?」

 

優しく麗を離した母親は、訳を聞いた。

 

「あのね!私達、学校を脱出してから色々あって!」

 

「それは貴女も生きてて良かったけれども、もうちょっと具体的なことを教えてちょうだい」

 

落ち着いた麗は、今まで自分達が経験したことを話す。

学園からの脱出のこと、橋のこと、鞠川の友人宅に泊まったこと、沙耶の自宅に泊まったこと、全て包み隠さず母親に話した。

 

「まるで映画みたいね・・・」

 

自身の娘が経験してきた事を少し疑った母親であったが、パッキーとSTG達を見て、本当のことだと確信する。

 

「あの人達を見れば、少しは本当のことだって分かるわ。自己紹介が遅れたわね、宮本貴理子よ。これでも元警察官なんだから」

 

自己紹介をした貴理子、なんの雨雲付けてない事が分かり、体温が低下していることが分かったSTG達は彼女にレインコートを渡す。

 

「STG、あれじゃ風邪をひいてしまうよ」

 

「それにこの世界に雨だ。ずっとあのままじゃ健康に悪い」

 

「奥さん、体温が下がってるじゃないか。これを早く着てください」

 

「あぁ、ありがとう。助かるわ」

 

有り難く貴理子はSTGが手渡したレインコートを着る事にした。

ゴーグルの隊員が貴理子が何故そこにいるのかを聞いた。

 

「失礼だが、奥さん。貴女は何故この家の主と言い争っていたんだ?雨雲付けず、その原始人が使うような槍を持って」

 

「そうだわ。なんでお母さんは十文字槍を持って、雨が降ってる外なんかに・・・」

 

貴理子が持っている十文字槍を、原始人の槍と表したゴーグルに若干悪意を感じたが、訳を彼に話した。

奴ら発生した時、貴理子は近隣の住民と協力し、バリケードを建てて立て篭もっていたが、食料が不足してきたので、調達に出掛けて帰ってきたところ、住民に締め出されてしまった。

中に立て篭もる住民と言い争っていたところに安否確認にやって来た孝達と偶然にも再会したと孝達に告げた。

 

「酷い奴らだな!お隣さんが風邪をひいても良いのか!」

 

黒人の隊員が怒りの声を上げ、トビーとボタスキーも続く。

 

「雨の中に雨具を出さずに放置したんだ。抗議しようぜ」

 

「賛成だ、俺もその経験がある。こんな美人の奥さんを放置する奴らだ、きっと禄な奴じゃない」

 

近くに落ちていた石を投げようした瞬間、パッキーとSTGに注意された。

 

「止めろ!そんなことしたって何の変化もないぞ!」

 

「大尉の言うとおりだ。石ころを投げたって、バリケードは砕けない。暴動の真似事は止すんだ」

 

二人の上官に言われた後、三人は石を道路に落とした。

冷や汗を掻いた孝とコータはほっとし、他の者達も大惨事にならなかった事に安心する。

その時、立て篭もる住民の一人が窓から出て、パッキー達のハンビィーを自衛隊の救援部隊と勘違いして声を掛けた。

 

「自衛隊じゃないか!おーいここだ、助けてくれ!!」

 

「お母さん、あの人達出て来てるけど・・・」

 

「あの人達は・・・!」

 

貴理子は自分を締め出していた連中がパッキー達に助けを求めているのを見て、怒りを覚える。

 

「パッキー、住民が助け呼んでる」

 

「無視しておけ。あいつ等が悪いんだ」

 

銃座に座るラッツはチコに告げて、住民の声を無視した。

 

「孝、ここを離れた方が良い。十二時方向から体温がない移動物体が多数見える」

 

「分かりました。先生、出発します!」

 

「あ、待って小室!宮本さん、これを」

 

思い出したかのように、コータは貴理子に民間用コルト・ガバメントのコンパクトモデルを渡した。

 

「これは正ちゃんの警察署にあった拳銃ね。それと私も連れてってちょうだい、あいつ等と居るのはもう飽き飽きだわ」

 

「孝、お母さんも連れてってよ」

 

「分かったよ、宮本さんはハンビィーに乗ってください。あー、冴子さん。すいませんがありすちゃんを膝の上に」

 

「承知した。さぁ、ありすちゃん。膝の上に」

 

冴子がありすを膝の上に乗せた後、貴理子が空いた席に座る。

 

「おーい、待ってくれ!あんた等自衛隊じゃないのか!?」

 

まだ自衛隊だと思ってる住民、ボタスキーがハンビィーに乗り込む前に中指を上げて住民を挑発する。

 

「全員乗ったな?バックするぞ」

 

全員乗り込んだのを確認したパッキーはバックした。

他の車両も後へ続き、助けを呼ぶ住民を無視して敷地までバックで向かった。

敷地内に着いたパッキー達は周囲を警戒し、奴らが居ないかを確認した後、孝達の車両を招き入れた。

丁度その時、雨が止み、車両を降りた一行はこの先どうするかを見当する。

 

「さて、雨も止んだことだし。小室達は宮本ちゃんの親父の安否を確認する為、小学校へ向かうか?」

 

パッキーが孝に聞いた後、次にSTGが聞く。

 

「それならここでパッキー達もお別れだ。どうする、ここまま戻るか?それとも俺達と一緒に向かうか?」

 

二人の目線を感じた孝は暫く悩み、答えを出した。

 

「麗の親父さんを確認する為、小学校へ行きます」

 

その答えを聞いたパッキー達は、全員整列する。

 

「じゃあ、ここでお別れだな」

 

「そうだな。最初はただの餓鬼共と思っていたが、結構やるな。正規の軍人だったらうちのチームに入れたいよ。しっかり生き残れよ!」

 

ラッツは敬礼しながら告げ、チコの肩を叩く。

 

「みんな・・・楽しかったよ。チコ、寂しい。でも、強く生きないと。死んでいったチコと同族に戦友の分まで生き延びて」

 

チコの瞳から涙が流れた。

次はボタスキーだ、笑みを浮かべながら告げる。

 

「みんなスタイル良くて、少し言えない事で興奮したけど・・・短い間だったけどとても楽しかったよ。サンクス!」

 

最後にパッキーが5.56×45㎜NATO弾の空薬莢を孝に渡した。

 

「本のお守り代わりだ、今はこんな物しか渡せなくて済まない。最後まで着いて行きたかったが・・・」

 

「多分行けるはず!ですよね?宮本さん」

 

孝は貴理子に聞いたが、当の彼女は首を横に振った。

 

「無理よ・・・小学校に続く道は全て自衛隊ではない軍用ライフルを持った何処かの軍事組織に検問を張ってるわ。見た時にたまたま猟銃を持った人が容赦なく射殺されたのよ、オマケに戦車まである。貴方達が向かったら直ぐに殺されるわ」

 

そのことを聞いた孝とコータ、ありすは俯く。

 

「おじちゃん達は一緒に行けないの?」

 

「大丈夫だよ。おじちゃん達が居なくてもレーザーガンを持った強い戦士が居るじゃないか」

 

不安な表情で、ありすに話し掛けられたボタスキーは、STG達に指を向けながら答える。

 

「よし、後のことは俺達に任せてくれ。そしてリヒターとバウアー達に告げてくれ、短かったがありがとうと」

 

「分かった、伝えておく。それとコータ、こいつをプレゼントだ」

 

STGの頼みを聞いたパッキーは、SOGのワッペンをコータに向けて投げた。

 

「これは、ベトナム戦争で活躍した特殊部隊!」

 

「昔の物だ。お守り代わりに持っててくれ、それじゃあ、また会うことを願って・・・!」

 

キャット・シット・ワンの面々が小室一行に向かって敬礼した。

その後、彼等はハンビィーに乗って、倉庫がある公園へと帰っていった。

手を振っていた小室一行は、STGに聞かれる。

 

「そろそろ行こう。救出予定時刻が近い」

 

「分かりました。でも、どうやって検問を抜けるか・・・」

 

「そうだな・・・そのまま行けば確実に戦車砲で粉々だ」

 

別れを悲しんでいる暇もなく、彼等はワルキューレの検問をどう交わすかを考える。

その答えはルリの言葉で直ぐに片付いた。

 

「STGさん達を隠しちゃえば良いんだよ」

 

「でも、どうやって隠すの?こんな戦隊物の服装のおっさん達を」

 

沙耶が言ったことに悪意を感じたSTG達であったが、貴理子が考えた案に乗ることにする。

 

「ハンビィーに乗せて布で隠すのよ。それなら多分バレずに済むわ」

 

貴理子は全員を集めて、作戦会議を開いた。

暫しして、STG達の同意を得ることに成功した孝達は出発した。




次は休止した回かな・・・そこからはオリジナル展開です・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

会いたくない奴との再会。

ヴァレンティーノ「原作の単行本はここで終わりであろー。連載元の漫画雑誌も見ても続きなんて書いてないし、連載再開と言っても再会するのはいつのことであろー」

100話目にして最新単行本の最後まで来ちゃったよ・・・
今回は日本支部司令のアレクサンドラとポンコツベースのクズ、腿ちゃんが小学校に来訪です。

声優ネタ的にキューティクル探偵因幡と学園黙示録のコラボを思い付いてしまった自分・・・
もしかして病気かな?


一方、倉庫に戻ったパッキー達に寄って、小室一行とSTG達が自分達と別れた事を知ったリヒターを初めとする軍人一同達。

彼等との別れることを孝が告げる前に離れることを決めていたセルベリアを初めとする第二次世界大戦と似た世界からやって来た者達は、旅立ちの準備を進める。

エイラが机の上に自身のタロットカードを並べ、これからの運勢を占う。

先に別れた小室一行の無事と自分達が何処へ行けば元の世界へ帰れるのかを占うのだ。

彼女以外の人間はこの部屋には居ない。

皆、自分達の荷物を纏めることや自分の相棒とも言える銃や“愛車”の整備で忙しい。

元々占いが趣味な彼女は暇さえあれば運勢を鑑定する事さえあり、こうして占いが出来るのは早めに荷造りを終えたからだ。

裏向きにされた大きめのカードの束をシャッフルしながら楽しそうに口を開く。

 

「ここ最近全く占いなんてやってなかったからナ。まずは小室達の運勢を見てやろウ」

 

シャッフルし終えたカードの束を机の上に置いたエイラ、一番上のカードをそのまま引いた。

 

「なっ、これは・・・!?」

 

尤も不吉な種類を引いてしまい、表情が青ざめるエイラ。

その引いたカードは太陽から竜巻が塔に命中し崩壊、落ちる人や塔から飛び降りる人が描かれたタロットの大アルカナに属するカード番号は16番の塔だ。

フランス語もスペイン語も神の家と意味するが、ネガティブ的な意味合いを持つ唯一のカード。

正位置は崩壊、災害、悲劇を意味し、逆位置は緊迫、突然のアクシデント、誤解を意味する。

エイラが引いたのは正位置だった為、もし占いが当たれば小室一行はこれから崩壊、災害、悲劇を味わうことになる。

引いたカードの意味が分かったエイラは恐ろしくなり、皆に伝えることもなく、ただ神に小室一行の無事を願った。

その頃、貴理子と再会・合流した孝達とSTG達が目指す新床第三小学校に、日本支部の司令官アレクサンドラが来訪しており、エイラのタロット占いが当たる危険性が増した。

 

「遠いところをご苦労様です!」

 

グランドの中央に降りたロシア製多目的ヘリKa-60カモフから降りたアレクサンドラをこの付近で展開しているいつの間にか来ていた旅団の長である腿が出迎える。

 

「楽にしろ。所で、例の一団の一つである高校生の集団が抜けているのは本当か?」

 

「はい。パトロールからの報告では型落ちの屋根付きジープ一台が増えただけで後は確認できないそうです」

 

周囲から警察署からここへ避難してきた避難民がKa-60に我先にと乗ろうとしているが、同じく小学校にやって来た警察官達に寄って止められる。

中歩兵や重装備兵達が手に持つ突撃銃等を上に向けて発砲し、避難民を威嚇する。

小学校の近くにあった駐車場は腿の戦車旅団に寄って占領されており、周りの家は全て戦車兵達の兵舎として活用されていた。

Ka-60がグランドから飛び去った後、学校の屋上に上がって周囲を見渡し、双眼鏡を覗いて小室一行のハンビィーとバギー、ジープを探す。

 

「あれか?」

 

直ぐに検問所へ向かう小室一行を見付けたアレクサンドラは腿に聞いた。

 

「あ、はい。報告にあった車種です。私の戦車部隊で排除しますか?」

 

「駄目だ、総司令部からこの少女を連れ戻せと命令が来ている」

 

懐から出した命令書を腿に見せながらアレクサンドラは伝え、双眼鏡に目を戻す。

 

「成る程。では、私が歩兵部隊を率いて捕らえに行きます。あの高校生達も我が組織の兵士を傷つけました、充分に敵意を示しております」

 

「いや、待て。検問所に行って確認しに行くだけで良い。あの少女も別れている可能性がある」

 

「そんな・・・クッ、分かりました。確認が取れ次第、自分は元の任務に帰らせて貰います」

 

左手の拳を握りながら悔しがった後、腿は自分より立場が上なアレクサンドラに敬礼し、検問に掛かった小室一行の元へと向かった。

そして小室一行は貴理子の作戦通り、STG達をハンビィーに乗せて武器と一緒に布で隠して、長物の持ち物に見えるよう偽装した後、検問の前に現れた。

検問にいるワルキューレの兵士達は冷戦下のイギリス陸軍空挺兵装備であったらしく、市街戦迷彩仕様のジャンプスーツを着込み、Mk2空挺型ヘルメットを被り、手にはFN FALのイギリス連邦軍モデルの空挺仕様L1A1やブレン・ガンL4、スターリングMk4ことL2A3、PIAT、腰にFN ハイパワーのイギリス軍モデルであるL9A1をガンホルスターに差した分隊規模の女性兵士が小室一行を睨み付ける。

屋根の上にはFN MAGを構えた赤いベレー帽を被った女性兵士が居ることに気付き、バギーに乗った軍オタであるコータが声を上げる。

 

「まるで冷戦下のイギリス陸軍の空挺部隊だ、人数は一個分隊程度か・・・」

 

こちらに向けて止まれと指示を出している眼光が鋭い女性兵士が前を走る孝とコータが乗ったバギーを止める。

 

「何故、動く車に乗っている?ここら一帯はEMPの影響で車は全て動かない筈だが」

 

運転席に座る孝を睨み付ける空挺兵を見ながら、ステン・ガンに似た短機関銃スターリングMk4を持つ空挺兵がバギーを調べる。

コータを見ていた空挺兵がトカレフTT-33の存在に気付き、その自動拳銃を取り上げる。

 

「こいつ等こんな安物拳銃を持ってました!」

 

「貴様等、これを何処で手に入れた?」

 

L1A1の銃口を向ける空挺兵に対し、孝とコータは大人しく答えた。

 

「死んでいるヤクザから拝借しました!」

 

コータが慌てながら答えた後、空挺兵が他に武器は無いのかと質問する。

 

「他に銃器の類は?」

 

「後ろにいる方々も含めて、銃器類はこの拳銃だけです。後は棒と刃物類だけです・・・」

 

他にないかと見渡した空挺兵が孝の答えに納得し、上官に伝えた。

 

「他にないみたいです」

 

「良し、通って良し。次も調べる。早く行きなさい!」

 

指示された孝はバギーを検問の近くに止めてホッとした。

 

「あれがアマゾネスか・・・」

 

「そうだね。きっと、最前線に経つ女性兵士はみんなああなのさ」

 

女性でありながら空挺兵の体格や振る舞いにそう思った孝とコータ、次にSTG達を隠したハンビィーが検問に入る。

 

「この車両は何処で手に入れた?」

 

運転席のドアを開けて、席に座る鞠川に問う空挺兵、聞かれている彼女は笑顔で返す。

 

「お友達から借りました~乗っているのはみんな親戚とお友達です」

 

少し不安になる孝とコータ、鞠川は乗っているありすや冴子、沙耶の事まで話した。

 

「そうか。で、そこで布を掛けている物は?」

 

STG達と銃器類等を隠していた布に気付かれた鞠川達は、少し焦り始め、冷静を保った冴子が答える。

 

「これは私の私物です。そして友人のも含まれております」

 

次に沙耶が笑顔で必死にSTG達と武器では無いことをアピールする。

 

「そ、そうなの!ちょっと高価な物だから布を被せてるの!」

 

「ありすのもあるよ。それとこの子はジークって言うの」

 

助士席に座るありすが抱えたジークを空挺兵に見せる。

空挺兵は暫し車内を見渡した後、布の中身を見せるよう沙耶達に指示する。

 

「その布の中身を見せなさい」

 

「え!?そんな大した物じゃありませんよ!」

 

「そうです。これは私達の私物です!貴女に調べる権利は無いはず・・・!」

 

その指示に少し焦り始める沙耶達、鞠川が誤魔化そうとして声を上げる。

 

「あっ、あそこに奴らが!」

 

「馬鹿・・・もう・・・」

 

見守る孝が鞠川の誤魔化し方に絶望し、一瞬にして見破られる。

 

「嘘を付くな!早く布を退かせ!」

 

「は、はい!」

 

自動小銃の大口径な銃口を向けられた鞠川は大人しく後部座席にある布を捲った。

 

「(不味い・・・!)」

 

「(お終いだ・・・!)」

 

「(ここまでか・・・!)」

 

「(こんな健康に悪い世界が最後なんて!)」

 

布を被って、息を殺して後部座席に潜んでいたSTG達は死を覚悟した。

しかし、布が上から被っていた正体は着替えの入った背嚢と鞄だけだったので、空挺兵は諦めて運転席のドアを閉めた。

 

「通って良し!次!」

 

「お努めご苦労様で~す」

 

運転席から感謝の気持ちを送った鞠川は孝とコータが乗っていたバギーの近くに止めた。

 

「先生、もう良いか?」

 

「あんた等、まだ出ちゃ駄目!」

 

椅子の下から沙耶に声を掛けたSTGに小声で怒鳴りつけた沙耶は落ち着く。

最後は麗と彼女の母親である貴理子とルリが乗るジープだ、ルリはワルキューレに目を付けられている為、全身に包帯を巻いて、全身火傷の患者に扮する。

 

「最後は貴様だな?」

 

「はい・・・」

 

ジープに乗る貴理子は大口径の自動小銃を持った空挺兵にそう答える。

助士席に座る麗と後部座席で全身に包帯を巻いたルリが横たわってわり、車内には緊張感に包まれれ、それを見守る孝達も緊張する。

 

「隣にいるのは貴様の娘か?」

 

「そうです、私の娘です。後ろに寝ているのは・・・」

 

「私の妹です、大惨事の時に病院から連れ出してきたので。全身火傷してるから余り動かさないでください」

 

麗が後ろのルリの事を空挺兵に説明した。

車内を覗いて後部座席にいるルリの惨状を見てから納得したが、十文字槍に目を付けた。

 

「その槍は何だ?」

 

「この槍は、あそこの小学校で警官として避難民を守ってる夫の物で。たまたま動ける車があったからここまで来た手筈です」

 

丁重に説明する貴理子、空挺兵は槍を取り上げようとしたが、麗に止められる。

 

「何をする?」

 

腕を掴んだ麗を睨み、殺気に満ちた声で言った。

今まで戦ってきた戦乙女達とは今まで違うと分かった麗は怯まず告げる。

 

「その槍は私のお父さんの物です。あなた方が没収する権利はないはずです」

 

「れ、麗ちゃん・・・!すみません、娘が飛んだご無礼を・・・!」

 

貴理子はここで問題を起こせば不味いと感じ、空挺兵に謝罪した。

しかし、意外な反応が返ってくる。

 

「気に入ったよ、短期間でそれなりの修羅場は潜り抜けたようだ。通って良し」

 

「えっ?あ、ありがとうございます!」

 

ドアから空挺兵が離れてハンドルを握る貴理子がアクセルを踏もうとした瞬間、小学校から来た腿の声が聞こえた。

 

「そこのジープ、待てっ!」

 

これで試練は潜り抜けたと思いきや、小室一行に新たな試練が科せられた。

腿がFAMAS F1等を持ち、ヘリボーン戦闘服を着てバラクラバを被った中歩兵を数人ほど引き連れて検問にやって来た。

孝達の視線が腿に集中する。

 

「そこの民間人は全員動くな。ボディチェックを開始する」

 

「お持ちを。ここの責任者は私です。あなた方に権限は・・・」

 

「いや、私は支部の司令官に命令されてやってるんだ。ちゃんと命令書はあるぞ?」

 

分隊長が腿に駆け寄るが、命令書を突き付けられてしまい、命令を受けるしか無くなる。

戦車のキャタピラ音も聞こえ、周りを包囲されてしまう。

大人しく手を挙げてボディチェックを受ける。

 

「女は女性兵士の場所へ。男は男性兵士のチェックを受けろ!」

 

気付かない内にAK107等を持ったPMCの様な男達が居た。

男性陣である孝とコータはPMC風味達に連れて行かれ、女性陣はイギリス歩兵風な軽歩兵に連れて行かれる。

 

「(外で何か起こっている・・・?)」

 

STGは外の様子を覗おうとしたが、部下達に止められた。

 

「(行くんじゃない。バレちまう!)」

 

「(熱源ゴーグルには新たな複数の人間が居る。今は出たら皆殺しだ)」

 

「(出たら小室達が皆殺しだ、早く終わってくれ。ここは健康に悪い)」

 

彼等が後部座席の下で息を潜めている間、女性陣のボディチェックが始まった。

 

「はい、スカート捲って」

 

真顔で発言した略帽を被る女性兵士に、沙耶と鞠川は驚きを隠せない。

 

「ちょっと、女性としてもその発言は不味いと思うけど!」

 

「はいはい、早く終わりたければ捲る!」

 

「ヒッ、わ、分かったわよ///!」

 

ステンMk5を突き付けられては従うしなく、沙耶は恥ずかしながらスカートを捲った。

鞠川は何の恥じらいもなく、スカートを捲っていた。

 

「良し!次はその胸に着いている乳袋の中を見せてね」

 

『はぁい!?』

 

確認班のリーダー格の女性兵士の発言に、冴子・ありすを除く全員が驚く。

ありすを抱えた軽歩兵が、上げ下げして何か出て来ないか調べる。

 

「フ・・・異常なし。ご免ね、振り回しちゃって」

 

「う・・・へ・・・」

 

何度も上げ下げされたので、ありすは目を回す。

並ばされたありすを除く、女性陣は胸を触られていき、何も入ってないと分かる。

 

「異常なしです」

 

調べ終えた女性兵士が、腕組みをして麗達を見ている腿に知らせる。

 

「その胸の中に何か入ってると思ったのだが・・・お前達は戻って良し!」

 

ボディチェックが終わった小室一行はそのまま車両に戻ろうとしたが、腿がジープの後部座席に乗ったルリに気付き、そこへ向かおうとする。

 

「まだ一人残ってるじゃないか。あそこの全身包帯のは男か、女か?」

 

「待ってください!娘は全身火傷で安静にしてないと!」

 

「娘と言うから女か。病人でも調べなければな」

 

止めようとする貴理子を払い除けた腿はS&W SW1911を取り出して、ジープの中に入り、全身包帯のルリに銃口を向ける。

 

「何か言ってみろ・・・喉は焼けてないだろう?」

 

包帯に銃口を突き付け、ルリに問う。

対する全身火傷の患者を演じるルリは、相手にそう思わせる為に居たがる振りをした。

 

「痛いのか・・・?ならば嫌と言え、そうすれば止めてやっても良いぞ」

 

真剣な表情で告げる腿に、ルリは喉が焼けたように答えた。

 

「嫌ぁ・・・痛い・・・」

 

「そうか、ただの怪我人か・・・引き上げるぞ。各員撤収し、元の任務に戻る!」

 

腿が以上がないと判断した後、配下の兵達は下がろうとしたが、STG達がうっかりして物音を立ててしまった。

物音に気付いた配下の兵士達が、音源であるハンビィーに向けてFAMASを向ける。

 

「なんだこの音は・・・?」

 

仕舞おうとしていたSW1911のハンマーを下ろして安全装置を外し、ハンビィーに向かう。

 

「お前達はここで待て」

 

配下の兵士達に告げ、腿は一人で音が鳴ったハンビィーの後部座席に向かうが、一人の空挺兵が声を掛けた。

 

「そこは調べましたが・・・」

 

「煩い、今物音が鳴ったんだ。何か居るに決まってる!」

 

「止めてください!それは私達の私物です!」

 

沙耶と冴子が腿を止めるが、自分の考えを否定する様なことを言ったので、遂に堪忍袋の緒が切れたのか、彼女は子供のように騒ぎ始めた。

 

「煩いぞ!私が居ると言ったら居るんだっ!!黙って私の言うことを聞けっ!!」

 

「子供みたい・・・」

 

「そうね・・・あの娘は精神年齢は幾つかしら・・・?」

 

駄々をこねているようにしか見えない腿を見て、ありすが行った後、それに便乗するように鞠川が腿の精神年齢は何歳かを考える。

強引に後部座席のドアを開けた腿は、物音が鳴った椅子の下に45口径の自動拳銃を向けて撃ち始めた。

 

「(うわっ!撃たれてる!?)」

 

「(静かにしろ!ばれるぞ!)」

 

「(俺達死んじしまうよ!出させてくれ!)」

 

「(硝煙の香りだ、健康に悪いぞ!)」

 

当然ながら、STG達の着ている戦闘服は特殊素材で出来ており、機関銃程度の弾丸は受け付けない。

故に、45口径のSW1911が使用する45ACP弾さえ、容易く防いでしまうのだ。

引き金を引いても銃声が鳴らず、カチカチとした音しか鳴らなくなった後、彼女の呼吸が乱れる。

弾倉を外すボタンを押して、空の弾倉を出し、新しい弾倉を差し込んで、スライドを引いて初弾を薬室に入れ込み、ガンホルスターに仕舞った。

息を整え、呼吸を元に戻した。

 

「ただの荷物だ。全員戻るぞ!」

 

腿の指示で、その場にいた配下の兵士と戦車は去っていった。

空挺兵が「もう行って良い」と告げ、有り難く孝達は乗車し、小学校へと向かう。

 

「もう終わったか?」

 

ハンビィーの車内で、椅子の下に隠れていたSTG達が身体を起こした。

 

「ちょっとあんた等、まだ敵地に入ったばっかり何だから隠れてなさいよ!」

 

突然現れた為に、沙耶はSTG達の事を注意した。

 

「分かったよ、お嬢ちゃん。みんな戻るぞ」

 

「やれやれ、また椅子の下か」

 

「しょうがない。これも元の世界に帰る為だ」

 

「敵兵が見えないところに来たら、出させてくれ。身体が痛いんだ」

 

沙耶の指示で大人しく椅子の下に戻るSTG達、ジープの車内では全身に巻かれた包帯を冴子に外して貰っているルリ。

全身の包帯が外れた後、深呼吸をして再び寝転んだ。

 

「ふぅ~疲れた~!学校に着いたら起こしてね」

 

「分かった、君も良く頑張ったよ。しっかり休んでくれ」

 

冴子が頼みを笑顔で聞いた後、ハンドルを握る貴理子は、二人のやりとりを見て少し微笑んだ。

小学校に向かうにつれて、ワルキューレの野営地が見えてきた。

バギーに乗る孝が暇潰しに麗に語り掛ける。

 

「今は関係ないと思うけど・・・僕のお袋の同僚は今も左翼活動やってるのがいてさ。学校で起きたいじめは見て見ぬ振りをするような反戦主義者だったよ」

 

「孝のお母さんの同僚はとんだ反戦主義者ね・・・」

 

話を耳にしていた麗は、M3A5リー中戦車を巫山戯て水洗いをしている自分と年が差ほど離れていない少女な戦車兵達を見ながら言う。

少し退屈そうにしている麗を見た孝は、そのまま続けた。

 

「今向かってる小学校でお袋は一年生のクラスを持ってるんだ。何があっても生徒が居る限り逃げないな・・・そう言う人だ・・・」

 

「そう言えばそうだったわね。それとお母さん左翼系の活動してたっけ?それとも日教組?」

 

「まさか!僕のお袋だぜ?麗も覚えているだろう。若い頃は」

 

『イチャイチャしてますか~?』

 

歩道を歩く自分達より一つ年下な大戦時の米軍のような戦車兵ようの野戦服を着た少女達が孝と麗を冷やかし、語りを強制的に中断させた。

 

「な、なんだよあれは・・・?」

 

突然見ず知らずの少女達に声を掛けられた孝と麗は赤面し、戦車がある方向へと向かっていく少女達を見る。

同時に上空から小学校に向かう陸上自衛隊のCH-47Jが見えた。

彼等に少し希望が沸き、同時に申し訳ない気持ちが沸く。

ようやく目的地である小学校に着いた孝達は、周囲を警戒する警官とそこで自衛隊を待つ避難民を見て、安心感を抱き、麗は自分の父親を探し始める。

 

「着いた・・・」

 

「そうだ、お父さん探さなきゃ。お父さん!何処?!」

 

麗の高い声に気付いた避難民と警官は一瞬、彼女に視線を向けるが、直ぐに自分の作業に戻る。

STG達も出て行こうとしたが、車内には出るなと沙耶に告げられ、そこで身体を伸ばす羽目になる。

何度も呼び掛ける麗に反応したのか、彼女の父親らしい警官が彼女の元へ向かう。

 

「麗・・・お前か・・・?」

 

「あっ、お父さん!」

 

自身の父親を見付けた麗は直ぐに父親に抱き付き、涙した。

 

「おぉ、麗・・・生きていたのか・・・?良かった・・・!それに貴理子も・・・!」

 

「えぇ、締め出されている所を麗ちゃん達に助けて貰ったの。正ちゃん、そっちの方は大丈夫だった?」

 

自分の夫に抱き付く娘である麗を優しく引き離した後、正に元気なのかを聞いた。

 

「あぁ・・・警察署に奴らが大挙して押し寄せてここに避難して、上空でキノコ雲が上がって電気や水道が駄目になった後、とても不安になったがあのPMCの連中のお陰で今は安心だ」

 

「私も大変だったのよ。お父さん、あれから携帯が繋がらなくなって、どれだけ心配した事か・・・」

 

「お前も大変だったんだな・・・済まない、孝君と勘違いしてしまって」

 

麗に謝罪する正の元へ、孝がやって来て事情を説明する。

 

「いえ、あの時のことは気にしてません。兎に角、貴方が無事で良かった」

 

「麗ちゃん、お父さんとお母さんに会えて良かったね!」

 

孝が正に告げると、ありすが麗の近くに寄って、笑顔で言った。

ルリも冴子に起こされて車内に出た途端、二度と聞きたくもない声が聞こえた。

 

「おやおや?あなた方はもしや、小室君達では・・・?」

 

その声がした方向に小室一行の視線が集中する。

そこに居たのは高城邸脱出から一度も見ていない紫藤一行の面々だった。

思わぬ出会いに孝達の表情は憎しみの表情に変わり、紫藤の顔付きに殺意を感じるのであった。




※追加しました。

しかし、ここで終わるとは・・・なにかあるんじゃないのか・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決断セヨ。

銀時「やっぱり100話目で何か起きたじゃねーか。それとここからどうすんだ?コミック出てないから勝手に終わらすの不味いでしょ?まぁ、俺はジャンプ派だから関係ねぇし」

障害に寄って昨日は投稿出来ませんでした。


にやついた表情で小室一行を見る紫藤、麗は正の隣に立って、彼を睨み付けた。

 

「親子ご対面とは、感動的ですね。フフフフ・・・」

 

ワザと嫌な笑い方をして、孝達を挑発する。

車内から出たルリは、ナイフを取り出し、紫藤に向けて投げようとしたが、ナイフを持つ左手が何者かに掴まれ、妨害される。

ジークが吠えて威嚇するも、言葉に見られただけで怖がり、黙り込んでしまう。

 

「こんな所で、しかも自衛隊の方々が見てる前で私達を攻撃するおつもりですか~?」

 

狂気染みた笑みを浮かべて、紫藤はルリに向けて言い放つ。

小柄な彼女の手を掴んでいたのは人間をやめてしまった言葉(ことのは)であった。

眼鏡を掛け直した紫藤は、悔しがる孝達に言葉の事を勝手に語り始める。

 

「申し遅れました。彼女は私達の用心棒をしてもらってます。元々彼女は狙われる立場なのですが、私のコネで助けてあげたのですよ」

 

また笑みを浮かべて孝達を見る。

周りの紫藤についてきた者達も嘲笑っていた。

 

「クソッ、いい気になるなよ・・・!」

 

「おや?ここで手を挙げるのですか?良いですよ。私を殺しても。そうすればどうなるのでしょうね~?ハハハハ・・・!」

 

「小室君、止めるんだ・・・!悔しいが自衛隊が見ている・・・!」

 

紫藤の腹立たしい態度に拳を握りながら孝の腕を押さえた正は、救出活動を行う陸上自衛隊員達を見ながら言う。

 

「そう言えばあの暴力男達は居ませんね~?まさか、別れましたか?」

 

その問いに孝達は答えず、ただ黙って紫藤を睨み続ける。

 

「答えが聞こえませんよ~?ムフフ。そう言えば、あなた方は暴力的なテロリスト集団に荷担してましたね・・・?」

 

「お前・・・!なんでそのことを・・・!!」

 

殺意むき出しの麗は紫藤に掴み掛かろうとするが、正と貴理子に止められる。

睨み付けながらも何もすることが出来ない孝達をムカツクほどの笑みを浮かべながら続けた。

 

「ここまで来るのに2~3人が犠牲になりましてね・・・とても悲しいことですよ」

 

ワザと泣く振りをして、不気味な笑みを浮かべながら孝達を再び見た。

ルリを拘束している言葉に警戒していた冴子は、苛立ちを隠せない。

 

「貴様。犠牲と表しながら自分が生き残る為に・・・!」

 

「人聞きが悪いですね・・・彼等は進んで犠牲になったのですよ。それと意見が合わなかったから出て行って貰った訳です」

 

「狂ってるわ・・・あんた・・・!」

 

吐き気を催す程の紫藤に沙耶は言い放った。

次にケストナーがただ黙っているしかない孝達の前に現れた。

 

こんにちは(グーデンターク)。テロリストの加担者達よ」

 

部下を引き連れてやって来た彼も、笑みを浮かべながら近付いてくる。

コータが近付いてくるケストナーを見て、指を差しながら言う。

 

「お前は警察署の!」

 

「フン、忌々しい餓鬼共め。お前等の所為で私の面目は丸潰れだ!だが、その男を助けた甲斐はあったという事だ。人を助ければ、良い事が起きる。日頃の行いが良いからかな?」

 

そう言いながらありすに近付き、彼女を左腕で掴んで、頭にワルサーP88の銃口を押し付けた。

隣に居た鞠川は地面に叩き付けられ、ケストナー配下の兵士が構えるG3A4の銃口を後頭部に突き付けられている。

ケストナーにジークが飛び掛かってきたが、強力な蹴りを入れられ、凄まじい痛みで暫く間動けない。

 

「みんなご免・・・!」

 

「クソ・・・卑怯だぞ!」

 

孝がケストナーに言い放つが、彼は部下達に向けて、孝達に銃を向けるよう指示を出す。

 

「卑怯だと・・・?何を言うか、どんな手を使おうと軍人は目標を達成せねばならんのだ。安全な場所に居る貴様等民間人が軍にとやかく言うことか」

 

この言葉に孝は黙り込み、次にコータが問い掛ける。

 

「軍人なら・・・民間人に手を出しても良いとでも?」

 

「その通りだ小僧。貴様等はテロリスト共に荷担し、あろう事か我が組織の部隊に攻撃した。立派な犯罪じゃないか。いや、ゲリラとも言うべきだな」

 

コータに答えたケストナーは部下達に小室一行の車両を調べるよう指示を出した。

命令された部下達はハンビィーやジープの車内にある物を全て外に放り出し、バギーも徹底的に調べて、積んであった荷物をそこらに捨てる。

一人の兵士が、ハンビィーの後部座席の下に隠れていたSTG達を見付け、ケストナーに知らせた。

 

「司令官、ハンビィーの車内で怪しい連中を見付けました!」

 

「直ちに連れてこい!こいつは驚いた・・・しかし、俺が絶対的指導権を握っているな!」

 

「因縁の再会だ・・・」

 

STG達はケストナーの前に突き出され、彼のニヤついた顔を見ながら呟く。

 

「また頭を性病にやられた民族主義者か」

 

「やれやれ。異世界に飛ばされてこいつと再会するなんて・・・!」

 

「もうこりごりだ・・・」

 

「黙れ!貴様等のお陰で俺がどれだけ恥を掻いた事か・・・!」

 

ありすを掴む左手の力を強めながら、STG達を睨み付ける。

STGは、孝達の拘束を解くようケストナーに交渉を持ちかけた。

 

「少佐殿、彼等はまだ学生で非戦闘員です。条約に違反しています。我々正規の戦闘員を拘束と同時に彼等女子供の釈放を要求します」

 

「黙れ。貴様等の言い分など聞けるか。こいつ等は武装勢力に荷担したゲリラでありテロリストだ。尋問して武装勢力の居場所を聞き出す必要がある!それに俺は少佐ではない、下級司令官だ!」

 

「頭の固い奴だ・・・」

 

黒人の隊員が行った後、それを嘲笑うかのように紫藤が近付いてきた。

 

「おや?またおかしな人達を仲間に。どうやらあなた方はおかしな物と因果関係にあるようですね?」

 

「この教師むかつくぜ。一発殴っても良いか?」

 

「止めておけ。それに周りは敵兵で囲まれている」

 

トビーが紫藤の顔を見てむかついている所をゴーグルの隊員が止める。

紫藤は怒りが頂点に達している小室一行の面々に知る由もなく続ける。

 

「ハハハハ、これであなた方と一生お別れとは私はとても残念です。もし会えるとすれば、謝っていただきたいですね~」

 

「こいつ。こんな状況じゃなかったらぶち殺してる所だ」

 

「政治家のどら息子を思い出すよ。確かあんな風な男だった」

 

舌打ちをしている孝達を余所にSTG達はそれぞれの思い出を語る。

やがて校門から護送車が入り、周囲を囲まれている孝達の側まで来た後、ケストナーが立つよう指示する。

 

「さぁ、早く護送車に乗り込め。そして貴様等の飼い慣らしていたテロリスト共の居場所を洗いざらい吐くんだ。そうすれば解放してやっても良いぞ」

 

「こんな所で終わりなんて・・・!」

 

「さようなら、小室君に宮本君、鞠川校医。一生会うことはないと思いますが、幸運を祈ってますよ」

 

コータが悔しながら行った後、紫藤が嘲笑うかのように護送車に向かう孝達に言い放つ。

麗を連れて行こうとする兵士達に正と貴理子はそれを止めようとするが、抑え付けられてしまう。

ルリも言葉に拘束されながら護送車に送られる。

小室一行はこれで終わりと思った瞬間、救いの手が差し延べられた。

 

『そこの集団、直ちに武装を解除し、降伏せよ!』

 

アレクサンドラのマイク越しの声が響いた後、上空からMi(ミル)-28N戦闘ヘリが現れ、2A42 30㎜機関砲をケストナー達に向けている。

地上からはM3A5リー中戦車や九五式中戦車チハ、M51スーパーシャーマン中戦車、M24チャーフィ軽戦車等が多数の軽歩兵や憲兵と共に現れ、逃げ道を塞ぐかのように小学校の出入り口を全て封鎖する。

校舎からも、AK107やPP-19ビゾン、サイガ12K、PKM等を持った旧ソ連のスペズナンズを思わせるような兵装備な中歩兵や重装備兵がゾロゾロと出てくる。

屋上を見れば、SV-98を構えた狙撃手も多数居ることが分かり、完全に紫藤とケストナー達の立場が無くなっていた。

 

「ソ連軍!?それともロシア軍か!?でも装備がバラバラで、戦車はみんな旧式だ!」

 

突然やって来たワルキューレの戦闘部隊に、コータは戸惑いを隠せない。

手柄を横取りされると思ったケストナーは、玄関から出て来たアレクサンドラに怒鳴りつける。

 

「このイワンの女めっ!手柄を横取りするつもりか?!」

 

「手柄だと・・・?」

 

ロシア軍の作業服を着た長身のロシア人女性は、ケストナーを睨み付けながら言う。

 

「指名手配中の人物を禄に連行もせず、協力を申し込んだ奴の言うことか」

 

ガンホルスターからスチェキンAPSを抜いて、安全装置を外し、ケストナーに近付き、彼の額に銃口を押し付ける。

 

「な、何をする気だ!?俺は味方だぞ!」

 

「報告もしない奴が言うな。直ちにその娘を捕らえろ!」

 

銃口を突き付けながら、配下の中歩兵や重装備兵に言葉を捕らえるように指示を出すアレクサンドラ。

言葉はルリにナイフを突き付けて、捕らえに来たバラクラバやゴーグルを付け、フリッツヘルメットを被った顔が見えない重装備兵やバラクラバを被った旧ソ連のスペズナンズの集団から離れようとするが、学校の屋上から狙っていた狙撃手に麻酔弾を額に食らって、ルリを離して地面に倒れ込む。

救出されたルリは、重装備兵に囲まれながらアレクサンドラの前に連れて行かれ、ケストナーは部下共々やって来た中歩兵や重装備兵、校門から入ってきた憲兵に拘束される。

 

「ケストナー下級司令官。貴官は我が戦乙女が決めた規則を破り、指名手配中の人物を捕らえたにも関わらず、護送せず。裏取引をして自分の任務に協力させた。よって貴官を規則違反の罪で拘束する」

 

目の前に立った憲兵に手錠をされたケストナーは拘束された。

 

「クソ・・・女狐め!覚えておれ!!」

 

大人しく拘束されたケストナーはアレクサンドラを恨みの声を上げながら自分が呼び寄せた護送車に連れて行かれた。

彼の部下達は手を挙げながら列を作り、小学校から徒歩で出て行く。

地面に顔を無理矢理付けられていた鞠川は、アレクサンドラと共に来ていたユズコに起こされ、拘束を解かれたありすが彼女の元へ寄り添う。

 

「大丈夫・・・先生?」

 

「うん、大丈夫」

 

鞠川が服に付いた土を払いながら答えた後、ユズコの顔を見ながらありすは問う。

 

「お姉ちゃん。先生達捕まえない?」

 

「う~ん。状況に寄ったら捕まえちゃうかも・・・」

 

難しい表情をしながらユズコはありすの身長まで屈んだ後、不安な表情で見る少女に答える。

後ろ盾を失った紫藤は周りを見渡し、後ろからやって来たアレクサンドラに命乞いの様なことを始めた。

 

「私はあの男に脅されたのです!頼みます!見逃してください!!」

 

膝を地面に付けて、アレクサンドラに必死に「見逃して欲しい」とせがむ紫藤であったが、自分に着いてきた一人である以下にも不良な生徒が彼女に横から殴り掛かった。

 

「このクソアマぁ!」

 

当然ながらあっさりと回避され、腹に強烈な蹴りを食らってダウン。

次に色っぽい女子生徒がアレクサンドラにナイフで刺し殺そうとしたが、これも受け止められ、うなじにチョップを食らって気絶した。

次々と紫藤配下の生徒達が彼女に襲い掛かったが、次々と薙ぎ倒されていく。

これを見ていたコータがロシアの近接格闘術システマと分かり、唖然していた孝達に説明する。

 

「これはロシアの近接格闘術システマ!」

 

「そのシステマってなんだよ」

 

「小室、このロシアの武道、軍隊格闘術は実戦的な格闘術だよ。CQCと同じく様々な武器に丸腰でも攻防技術が多く含まれているのさ!ロシア伝統の武術全般の共通理念である全局面戦闘、白兵戦における生存率の向上などを色濃く受け継いでいる。今はロシアのみならずアメリカやドイツ等、各国で普及しており、日本には公式のジムもあるんだ!」

 

「凄い格闘術だ・・・!」

 

「あんたそんな体格なのに。そう言う軍隊格闘術だけは詳しいのね・・・」

 

目の前で実施されているシステマを見ながらコータが解説した後、孝は驚きの声を上げ、沙耶はコータの軍事関連の豊富な知識にツッコミを入れる。

全員がアレクサンドラに倒され、紫藤は隙を見て逃げようとしたが、麗を初めとした宮本家に逃げ場を塞がれ、陥れた相手に泣きながら命乞いを始めた。

 

「た、助けてくれ!私が悪かった!金なら幾らでもやるっ、だ、だから命だけは助けてくれ!!」

 

余りの変わりように麗を初めとした宮本家は哀れな目で、紫藤を見る。

後ろからやって来たアレクサンドラに襟を掴まれ、立たされた。

 

「わ、私は代議士の息子だぞっ!例え嫌われていても」

 

言い終える前に強力なパンチが紫藤の顔面に炸裂し、眼鏡が砕けた。

強烈な音が鳴り、殴った本人であるアレクサンドラの右拳から眼鏡のガラスの破片が突き刺さり、少量な血が流れ出ている。

そのまま地面に倒れ、紫藤の表情は潰れており、数ヶ月は治らないほどの重症だろう。

腿がやって来て、アレクサンドラの右手に包帯を巻こうとするが、払い除けられる。

一部始終を見ていたSTG達は、アレクサンドラを褒め称え始めた。

 

「凄い女将校だ。まさに戦士の鏡だよ」

 

「あんな将校には三回くらいしか出会ったこともないぞ」

 

「拳から血が流れ出ても表情一つ変えないな・・・」

 

「頭をやられた奴を代わりに殴ってくれてスカッとしたよ」

 

彼等の語りは無視したアレクサンドラは煙草を取り出してそれを口に咥え、ライターで火を起こし、煙を吸ってから吐き、紫藤に告げた。

 

「今のは貴様に犯された軽歩兵隊の新人の分だ。そう言えば貴様の飼い犬がまだ成人もしてない戦車兵や負傷兵、それも手負いの戦乙女を何人も犯したらしいな?その飼い主であるお前にも“責任”を取って貰うぞ?」

 

精神的に追い詰めるかのような声色で告げたアレクサンドラに恐怖した紫藤は失禁し、恐怖の余り精神が崩れ始める。

何かを忘れてたのか、紫藤の髪を掴んで立たせたアレクサンドラは口を開いた。

 

「そうだ。貴様の父、紫藤一郎はとっくに歩く死体になって二回殺されたぞ」

 

憲兵に掴まれた紫藤の顔付きが、アレクサンドラが知らせた報告に笑みを浮かべ、狂ったかの様に笑い始めた。

 

「そうですか・・・フハハハハハハハ!アハハハハハ、ヒヒヒヒヒ!!!」

 

「なんだ?恐怖の余り頭でもおかしくなったか?」

 

「ああ言うのを見ていると、こっちまで虚しくなるよ」

 

「これが歪んだ者の最後か・・・」

 

トビーと黒人の隊員の会話の後、冴子は笑い狂う紫藤を哀れな目で見ながら呟いた。

紫藤に恨みを持つ麗と正さえ孝と沙耶、コータ、貴理子と同じ目で見ており、鞠川はありすに見せないように目隠ししている。

アレクサンドラに倒された生徒達は憲兵達に連れて行かれ、言葉は重装備兵に抱えられてながらその場を去っていく。

最後まで紫藤は笑っており、彼の最後を見ていた孝達は後味が悪い感覚になった。

ずっと笑いながら連れて行かれる紫藤を見ていたルリにアレクサンドラは声を掛けた。

 

「確保命令が出ているルリという少女だな?」

 

この問いにルリは頷く、確認したアレクサンドラは指を鳴らして、テレビを持っている女性を呼び出した。

 

「私の前任者が君に会いたがっている」

 

「凄い、手持ちのテレビだ・・・」

 

「何かと凄い連中ね・・・テレビ通信なんて」

 

コータと沙耶が、テレビ持ちを見て驚きの声を上げる。

そのテレビを持つ女性は結構美人であり、持っているテレビと背負う通信機は重そうだったが、慣れているのかボタンを押してテレビをつける。

 

『ヤッホー、君がルリちゃん?私ハナって言うんだけど宜しくね~』

 

テレビに映ったのはアレクサンドラの前任者であったハナだ。

菓子袋の中身を食べながらテレビを見ているルリに話し掛ける。

 

『私あんまり働かないからさ、こんな所に飛ばされちゃったよ。それにしても胸のおっきい美少女と美女に囲まれて我慢できたね~私なら発狂してるよ。それとラッキーボーイだね、主人公みたいなのと眼鏡でデブッチョなのは』

 

「私達も映ってる?」

 

鞠川はテレビ持ちの頭に着いたカメラに気付いた。

 

「もしかして僕のこと・・・?」

 

「初対面でそう言われるなんて・・・」

 

孝は戸惑い、コータはショックを受けている。

 

『それはそうとね。ルリちゃんの出会った人達の調べはとっくに着いてるの。大戦時や異世界からやって来たのは全く情報がないけど。そしておめでとうルリちゃん、ここが終点だよ・・・!』

 

テレビに映る少女は菓子袋を置いて拍手し始めた。

 

『ルリちゃんの保護者から小室君達の面倒を最後まで見るって要請が出たから直ぐに保護命令をここに来るまでに総司令官様が撤回したの。何故かマクシミリアン君は無視してたけど、恐らく狙いはルリちゃんだと思うよ。始めてあったときに変な覇気を漂わせてたから。後、ケーキあるから食べといてね、高級菓子店が作ったケーキだよ』

 

ハナが行った後に、玄関からケーキが載ったワゴンが出て来る。

 

『ここまで誰一人無く欠けずに辿り着けたご褒美。帰りのヘリも用意してるからね~それじゃあ切るよ~バイバーイ!』

 

最後にハナが手を振った後、テレビの映像が途絶え、テレビ持ちが電源を切った。

丁度その頃にはケーキがルリの前に置かれており、コータや鞠川、ありすに校門の外で待つ軽歩兵達が上手そうに見ている。

ずっとケーキを眺めているルリに、アレクサンドラが寄り添い、彼女に話し掛ける。

 

「さぁ、ここから決めるのは君次第だ。君が帰るならば小室孝を初めとする藤美学園を脱出したメンバーは安全地帯に行ける。そこにいる火星連邦の軌道降下兵達も我々の技術で帰れる」

 

吸い終えた煙草を落とし、火をアーミーブーツで踏み消した後、続ける。

 

「逆に断るのであれば、君を強制的に捕らえ、そこにいるメンバーを我が組織の規則違反の男と同じように捕らえ尋問に掛け、軌道降下兵を銃殺する」

 

真剣な表情でルリに告げたアレクサンドラは自分より背丈の低い少女を見ながら告げ、そのまま続ける。

 

「今まで行動を共にしてきた大戦の戦士と異世界の戦士は君達とは関係ない。いずれ我々に降伏することだろう。私は大人しく君の保護者の元へ帰る方を勧めるよ。それならそこにいる全員が安全に暮らせるし、元の世界に帰れる。され、どうする?」

 

この問いにルリは俯き、今まで助け合ってきた軍人達や異世界の者達を思い出した。

ここまで来たのは彼等のお陰だが、“保護者”の元へ帰って、彼等が死ねば後味が悪くなる。

どうするか悩む彼女にアレクサンドラと小室一行、STG達、ユズコ、腿は見入る。




次回は大惨事DA!各員、原作崩壊に気を付けるんだ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

復讐者の来襲

日本兵(BF)「原作が崩壊するぞぉー!」

日本兵(WaW)「あ、あれはなんだぁ!?」

原作崩壊の始まりだよ~後、ケーキは戦乙女の軽歩兵達が美味しく頂きました。

そしてリアリティが欠ける表現があるので注意が必要!


決断を迫られたルリは、全員が見る中ずっと下を俯いて悩んでいる。

そんな彼女を急かそうと、テレビ持ちが頷き、テレビの電源ボタンを押してルリの方を向く。

 

『そろそろ決まってる頃かな~と思ってまた出ちゃったけどまだ決まってないようだね?』

 

映像に映し出されたハナは菓子袋の中身を食べながら告げる。

 

『言い忘れたけど奴ら(ウォーカー)って言うゾンビは全世界で全滅間近だから』

 

「そ、それは本当なんですか!?」

 

「たった一週間で事態が収拾するとは・・・」

 

ハナが言ったことに驚きを隠せない孝と冴子、ワルキューレを除く他の者達もこれを聞いて驚きを隠せないでおり、未だに信じられない彼等にユズコと腿が説明する。

 

奴ら(ウォーカー)の弱点と習性を全世界に知らせて、各国の軍隊・治安機関と協力してここまで全滅できたの」

 

「今残っているのは日本を含むアジアで30万匹程度だ。中国と朝鮮半島の完全制圧が終われば元に戻る」

 

腕組みをしていたアレクサンドラが付け足すように言った。

 

「それと騒ぎに乗じて現れた無法者と過激派の始末だ。そして異世界からの武装集団を排除すれば元通り。地球人口の殆どは歩く死人に変わって大分始末したから食糧問題も消えて、しばらくの間は楽に暮らせる」

 

「そうでした!だから迎えのヘリに乗ることにしろ。お前も小室を含むこいつ等を死なせたくは無いだろう?」

 

腿が言い忘れていた事をアレクサンドラに言われて慌てて敬礼した後、ルリの方を向き、グランドの中央に止まっている迎えのMi-28Nを指差しながら勧めた。

ルリが孝達とSTG達の方を見れば、みんな帰ることを勧めてくる。

もう二度と会うことがないルリにありすが不安な表情で鞠川に問う。

 

「ルリちゃんもう行っちゃうの?」

 

「うん、ルリちゃんのお父さんとお母さんがルリちゃんを待ってるの」

 

こちらを見るルリの方を向いて、ありすは瞳から涙を零す。

同時に孝の母が玄関から出て来て、周りにいた中歩兵に止められるが、ユズコが通すように告げる。

 

「通して!彼女は小室君の母親よ」

 

了解(コピー)!」

 

自分の息子の元へ向かう母親の前から退いた中歩兵達は、ユズコに敬礼し、孝の母親を息子の元へ向かわせた。

 

「孝!」

 

「母さん!」

 

抱きしめた後、母親は何が起こってるのかを孝に問う。

 

「グランドで何が・・・それにあのヘリは自衛隊の物じゃないでしょ。一体何が起こってるの?」

 

「僕にも分からない・・・ただ、ルリの迎えが来たらしい・・・」

 

ただ黙っているルリを見ながら孝は母親に事情を説明した。

それと同時に陸上自衛隊のCH-47Jが上空を飛び去っていき、残されていた避難民は少し騒ぎ出すが、憲兵が上空にはなった一発の銃声で静まり返る。

 

『ヘリは数時間後にまた来ます!それまで騒ぎを起こした避難者の方は警告も無しに射殺します!』

 

メガホンを取って、ルリ専用の迎えのヘリであるMi-28Nに殺到しようとする避難民を静止する憲兵達。

ざわめく声が完全に消えた後、ルリの決断が決まった。

 

「あの・・・!」

 

「どうした、もう決まったか?」

 

二本目の煙草に突入しようとしたアレクサンドラに声を掛けたルリ、孝達は彼女は決断したと息を呑んで判断する。

 

「私・・・戻ります!」

 

その答えを聞いたアレクサンドラと腿、ユズコ、ここより離れた地で見ているハナは笑みを浮かべる。

 

『その答えを待ってたよ!良い子、良い子』

 

「よし、それでは私と一緒にヘリへ」

 

アレクサンドラがMi-28Nに手を翳した後、小室一行を見る。

彼等の表情は羨ましがる物ではなく、感謝の気持ちの表情であり、決してルリを憎んでいる訳ではなかった。

ルリの気掛かりな事はリヒター、バウアー、パッキー達の事だったが、彼等ならこの世界でも力強く生きていられるだろう。

そう思った彼女はアレクサンドラと共にMi-28Nへと向かおうとしたが、そのヘリが突然大破した。

直ぐにアレクサンドラはルリを地面に伏せさせ、残骸から彼女を守る為に抱き締める。

孝達も直ぐにグランドに伏せ、残骸から身を守る。

廃品と化した燃え盛るMi-28Nの中から一人の長髪の男が現れた。

 

「貴方は・・・!」

 

「ストアーさん!?」

 

冴子が先に口走った後、麗が見覚えのある男の名を口にした。

何の道具も使わずにブラックマーケットで売られている対戦車火器でも破壊が難しい戦闘ヘリを意図も容易く破壊したストアーに沙耶は恐怖する。

 

「な、なんのトリックよ・・・?これ・・・!」

 

「足は潰せたが貴様は無事だったか・・・」

 

以前よりも若く感じるストアーを見た孝達は驚きを隠せないで居た。

STG達は直ぐに燃え盛る残骸から現れた男にレーザーガンを向ける。

 

「妙な奴らが居るが関係ない・・・例え赤ん坊でもな・・・!」

 

無表情のままでルリとアレクサンドラに近付くストアー。

背中に少しの破片が刺さっていたアレクサンドラは立ち上がり、ルリの無事を確認した後、スチェキンAPSを引き抜いて、ストアーに銃口を向ける。

 

「何者だ、貴様?!」

 

「口から血が出てるぞ?フン、所詮人間はこの程度よ・・・!」

 

後ろから近付いてきたスペズナンズ風の中歩兵の身体を何の動作もせずに真っ二つにした。

凄まじいほどの血が吹き出る中、これには驚かずにはいられない孝達は声を上げた。

 

「に、人間が真っ二つに・・・!?」

 

「これは・・・夢なのか・・・!」

 

「一体何をしたんだ!?奴は何の動作をしてなかったぞ!」

 

「体温は通常の人間・・・何者だ、こいつは!?」

 

麗が声を上げた後、コータが目を擦ってSTGとゴーグルの隊員はストアーの動きが捕らえきれないことに驚きを隠せない。

人間が真っ二つになるという光景を見てしまったありすは口をがたがたと振るわせ、鞠川が見せないように目隠しする。

 

「後ろから私を殺そうとしたか・・・だが、今の私には通用せぬ。そこの女、死にたくなければそこを退け」

 

「クソッ、化け物め!」

 

素早くハンマーを起こし、安全装置を外して男に向けて引き金を引いて発砲したが、当たったのはストアーの残像であり、そのままこちらへ向かってくる。

スチェキンをフルオートにして再び発砲したが、これも避けきられてしまう。

軽機関銃や突撃銃、自動小銃の射撃も行われたが、ストアーは全てかわす。

 

「銃弾を・・・それも高速のライフル弾さえ・・・避けるなんて・・・!」

 

始めて銃が効かない敵を見たコータは絶望する。

 

「今までの私ならライフル弾は避けれなかったが、今はスロー過ぎて欠伸が出るくらいまでになった」

 

最後の小銃弾を二本の指で受け止めた後、唖然しているテレビ持ちに投げる。

軽く投げた筈なのに小銃弾は銃口から発射された見たいに目標に向かって飛び、テレビ持ちの額に命中し、彼女の人生を終わらせた。

 

「化け物だ・・・!」

 

S&W M36をストアーに向けていた正は絶望感に満ちた表情で言った。

弾倉の中身が無くなったスチェキンを捨てたアレクサンドラはナイフを取り出し、ストアーの顔に向けてナイフで突き立て向かったが、彼が出した左手で止められてしまう。

 

「馬鹿な・・・!?」

 

「ナイフを素手で受け止めた!?」

 

沙耶はアレクサンドラのナイフがストアーの左手の掌に刃が突き刺さっているのを見て、驚きを隠せず声に上げてしまった。

 

「動きは良かったが私を殺すなら剣か刀で挑むべきだったな・・・!」

 

そのまま左手に刺さったままのナイフを押し、アレクサンドラの鍛えられた右腕に圧力を掛けた。

 

「なんだこの力は・・・!?」

 

現役の軍人或いは大男でも意図も簡単に倒すことが出来るアレクサンドラの表情が強張る。

じっくりとストアーがアレクサンドラの右腕に掛ける力を強め、そして両方から来る圧力で彼女の左腕は折れた。

余りの痛みにアレクサンドラは声にならない声で叫び、地面に膝をついて左手で右腕を押さえてしまう。

ストアーは左手に刺さったナイフを引き抜いた後、地面に膝をついているアレクサンドラに近付く。

 

「幾ら鍛えていても貴様は所詮人間だ・・・」

 

ルリの前で右腕を押さえながら地面に膝をついているアレクサンドラの右脚を勢いをつけて強く踏み込む。

肉が裂ける音や骨が砕ける音が鳴った後、またアレクサンドラが声にならない叫びを上げた。

飛んでいったアレクサンドラの右脚は沙耶の足下まで飛んでいき、それを見た沙耶は悲鳴を上げて腰を抜かす。

 

「ひっ、ヒィィィ!!何なのよこれ!?」

 

次々と起こる現象についてこられない孝達、ストアーは自分を怖がるルリに近付こうとしたが、大きめの発砲音が鳴り響き、胸に赤い血溜まりが出来る。

銃口から硝煙が出ているSW1911を構えた腿が居た。

 

「おや・・・?」

 

「どうだ化け物、45ACP弾の痛みは・・・?」

 

ストアーに向けて銃口を向ける腿は勝ち誇った笑みを浮かべて告げたが、ストアーが何の痛みも感じていないことに恐怖を感じる。

 

「どうした・・・無痛症なのか・・・!?」

 

自動拳銃を握る腿の右腕が震え、彼女の表情も段々恐怖に変わっていく。

傷口が消えたストアーは腿の方を向き、手刀を構えて消えた。

 

「な、なに!?何処へ!?」

 

ユズコがMP5kを構えてストアーを探す最中に、腿の身体に穴が開いた。

 

「あ、穴が開いた・・・!?」

 

突然、腿の身体に穴が開いた為に、貴理子は口を抑えて驚き、孝の母は何が起こっているのか分からないでいる。

 

「こ、これは・・・ブハッ!なんだ・・・!?」

 

数秒後、ストアーの姿が現れ、腿は口から血を吐き出しながらストアーの右腕が刺さったまま高く上げられていた。

その場にいた麗と鞠川が口を抑え、他の全員は唖然している。

腿の身体から右腕を引き抜いたストアーは一気に彼女の上半身と下半身を左手の手刀で二つに斬った。

凄まじい血飛沫が上がり、ストアーの身体とルリを血で赤く染める。

まともに動けないアレクサンドラを重装備兵達が連れ去り、ただ恐ろしいストアーを見ているだけしかないルリをユズコが抱き抱えて連れ去った後、左耳に付いたイアホンを使って校門に入った九五式中戦車チハにストアーへ向けての砲撃を命じる。

 

「目標、長髪の黒髪の男!榴弾撃て!」

 

ルリを抱き抱えるユズコが命じた後、チハから放たれた榴弾がストアーが居る場所に着弾する。

焼死体になると思いきや、ストアーが立っている地だけは榴弾の後が残っては居ない。

 

「悪い夢よ・・・これ・・・!」

 

絶望の表情に染まった麗が言った後、ストアーはルリを抱えたユズコの元へ瞬間移動し、なけなしの短機関銃MP5kを撃ってきたユズコの腹に左手を差し込み、肉を貫いてから内蔵を引き千切った。

 

「ガ・・・ハッ・・・!」

 

内臓を引き千切られたユズコの表情は凄まじい痛覚で変わり、声にならない声を上げる。

短機関銃を握っていた右手が力を無くして、地面に落とした後、ストアーはルリが居ないことに気付いた。

 

「何処だ・・・?何処へ消えた・・・?!」

 

未だ苦しむユズコにトドメを差した後、ルリを探すストアー。

周りから中歩兵や重装備兵が発砲してきたが、簡単に避け、高くジャンプし、落下しながらルリを探す。

数秒後には発砲が収まり、異変を感じたストアーが地面に降り立った後、探していた少女が彼の後ろから銃剣を突き立てて、殺気染みた表情で突っ込んできた。

 

「しまった・・・!」

 

回避しようとしたが、ルリの方が早くて間に合わず、右胸に銃剣を突き刺され、そこから大出血しながら地面に倒れ込む。

 

「流石はあの女の飼い猫・・・だがっ!」

 

左腕でルリの身体を掴もうとし、勝ち誇ったストアーが口を開く。

 

「正直、ここで殺されるかと思ったが、どうやら勝利の女神は私の復讐を手伝って下さるようだ!これで貴様も私の血肉となり!あの女を殺す為に私の一部として永遠に生きるのだぁー!!」

 

この間にストアーは全て喋り終えることに成功し、ルリを掴もうとした。

だが、その願いも吐かなくSTGによって阻まれる。

STGがストアーの左腕に狙いを定め、狙撃したのだ。

人体をも切断するレーザーを受けた左腕は宙を舞い、地面に落ちる。

 

「こんな狙撃は真っ平だ・・・!」

 

人の道を外れた男の左腕を切断したSTGは左手で汗を拭った後、声に出す。

空かさずルリはストアーから離れ、いつの間にか取り出したスターリングMk7を構える。

 

「まさかこんな芸当が出来るとは・・・!」

 

手も使わずに起き上がったストアーは時計塔まで大ジャンプし、着地した後、身体に力を入れ、銃剣を手も使わず気合いで抜いた。

 

「ふうぅぅ・・・ハッ!!」

 

切断された筈の左腕が生え、それを見た周りにいた者達は驚くしかない。

まるで映画、漫画、アニメにしか見られない光景に沙耶と鞠川は驚きの声を上げる。

 

「あいつ、何処のナメック星人よ・・・!」

 

「まるでアニメみたい・・・」

 

それをありすも目に焼き付けており、ジークはただ黙っているしかない。

左腕の再生を終えたストアーは、再生したばかりの左腕を慣らす。

 

「左腕の感覚が余り感じない・・・少し油断していたようだ。だが、このストアー、容赦せん!」

 

右腕を翳した後、高城邸から二回ほど襲撃してきた洋風の美女と和風の美少女がストアーの左右に現れた。

 

「あいつ等は・・・!?」

 

「私達を狙ってきた女達・・・!」

 

衛生兵に応急処置をして貰っているアレクサンドラが見て言った後、冴子が答えるようにしてストアー達を睨みながら言う。

さらにその横には拘束されて連れて行かれた筈の言葉が姿を現した。

 

「小娘は厳重に拘束された筈・・・!」

 

「私が解放したのだよ、女軍人。さぁ、ここからが本当の地獄の始まりだ!!」

 

ストアーが言い放った後、学校のありとあらゆる場所から魔法陣が現れ、そこからガイコツやドイツ国防軍や武装SS等の軍服を纏ったゾンビアーミー、マシンガンゾンビが召還された。

空が分厚い黒い雲に覆われた後、妙な声を上げる一般親衛隊の将官用制服を着た男が現れた。

 

「HAHAHAHA、Joey eggplant!」

 

周りに複数の頭蓋骨を浮かばせて霊体化した。

さらにストアーは召還を続ける。

地面から黄色い眼光を光らせるゾンビが多数這い出てくる。

モールで見たクリーチャーも現れ、まだ見たことがないクリーチャーまで召還される。

 

「これだけと思ったか?この国には偽りの恨みを持つ国家が攻めてきたな?」

 

「まさか・・・!そいつ等までゾンビにする気か!?」

 

「その通りだ少年、私は黒魔術をも習得し、蘇らせた死体を使役することに成功した!出でよ!我が僕達!!」

 

ルリがそうはさせまいと小さな短機関銃をストアーに向けて発砲したが、謎のバリアに9㎜パラベラム弾が突き刺さったままになる。

そして地面から鈍器になる物などを持った中国人民解放軍や大韓民国軍、朝鮮人民解放軍の野戦服や迷彩服を着た大多数のゾンビアーミーが、この小学校だけではなく周辺から這い出てくる。

 

「さぁ、どうする?これでも私達と戦うか?!」

 

左手の指を差して問うストアーに、ルリは悪魔的な表情を浮かべ、綺麗な青色から血に染まったかのような赤に変わった瞳で答えた。

 

「もちろん、全部殺してやる・・・!」

 

空間に右手を突っ込んで、大鎌を取り出し、目の前にいたゾンビやゾンビアーミーに斬りかかった。

武器を持ってない孝達は直ぐに隠してあるハンビィーの元へ急ぎ、それをSTG達が援護する。

それと同時にその場に居たワルキューレの兵士達は戦闘を始め、陸上自衛隊員も、相手が先に発砲してきた為、自衛隊法に従い応戦を開始した。




次回は激戦です。

これって・・・一種の無理ゲーかな・・・?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

絶望的な状況

もっさん(SW)がようやく参戦します。


目の前にいた大量のゾンビを大鎌のたったの一振りで惨殺したルリ、そのまま時計台の上にいるストアーに斬り掛かろうとしたが、洋風美女の手から発せられた空気圧を食らって地面まで飛ばされる。

 

「馬鹿正直に突っ込んでくるとは愚かな!」

 

ストアーは手を振り翳し、ルリが落下するであろう地点に自爆ゾンビを複数召還させた。

しかし、ルリは着地して大鎌で回転斬りを行い、全ての自爆ゾンビの頭を吹き飛ばし、爆発する前にジャンプして爆風を回避した。

それを見ていた沙耶は、ひたすら驚いているしかない。

 

「前々から変な娘だと思ってたけど・・・こんな現象有り得るのかしら・・・?」

 

「奴らが出て来てる限り、有り得ない訳が無いでしょう」

 

MP5kを持って、ルリの有り得ない動きに唖然している沙耶に、コータはM654を向かってくるゾンビの頭を性格に撃ちながら答えた。

頭を撃っても死なない(?)ガイコツに正はひたすらS&W M36をひたすら撃ち続けている。

 

「なんだ!?遂に骨になっても動くようになったか!」

 

目の前から群がってくるガイコツの集団に正は叫びながら拳銃を撃ち続けたが、まるで効果が無い。

そこへ麗がハンビィーのトランクに仕舞ってあったM1銃剣付きM1ガーランドを正に向かって投げた。

 

「お父さん!これ使って!」

 

「お、おっと!」

 

M1ガーランドを見事キャッチできた正は目の前にいたガイコツの光る心臓に銃剣を突き刺した。

弱点である心臓を刺されたガイコツはバラバラになり、骨がそこらに散らばった。

 

「この光る心臓を突き刺せばバラバラになるぞ!みんな、ガイコツの弱点は心臓だ!心臓を狙え!」

 

全員に大声で知らせた正、それが耳に入った者達は直ぐにガイコツの心臓目掛けて撃ち始める。

武器を持ってない避難民達は逃げ惑うも、マシンガンゾンビに逃げ道を阻まれMG42の掃射で次々と射殺されていく。

指揮官を失ったワルキューレの兵士達も浮き足立っており、次々と屍の数を増やしていき、外にいた戦車もゾンビの餌食となる。

少数の兵士と陸上自衛隊員達以外まともな戦力になりやしない。

その自衛隊員達も切りがないほど沸いてくるゾンビに焦っていた。

 

「雲霞の如く沸いてきやがる!」

 

「まるでイナゴの大群みてぇーだ!」

 

憲兵に連れて行かれていた紫藤の元にもゾンビの大群はやって来た。

必死に拳銃や短機関銃で迎撃する憲兵達であったが、数が多すぎて対処できず、護衛の軽歩兵も飲み込まれ、憲兵もゾンビに喰い殺された。

 

「ヒッ、ヒィィィィ!!」

 

死の恐怖を感じた紫藤は手錠を付けたまま逃げようとしたが、足に下半身を完全に喰われた軽歩兵が掴む。

 

「た、助けて・・・」

 

「は、離せ!」

 

学園で見捨てた生徒のように、紫藤は童顔の女性の顔に思いっ切り蹴り入れる。

骨の砕けた音が鳴り響き、愛らしい顔がズタズタになり、紫藤の足を掴んでいた手が剥がれた。

空かさず紫藤はその場から生徒を置いて一目散に逃げ出す。

逃げる紫藤が振り返れば、叫び声を上げて複数のゾンビに鈍器で死ぬまで殴られたり、肉を食い千切られている生徒が居たが、自分の命を優先している紫藤には関係ない話だ。

 

「(もうすぐだ!私は生き残れるっ!)」

 

そのまま逃げ切れると思った瞬間、目の前に言葉(ことのは)が現れた。

 

「何処へ行くのですか?」

 

「ヒッ、そ、そこを退きなさい!貴方もあの人食い共に喰われてしまいますよ!?」

 

追ってくるゾンビの集団を指差しながら言葉に告げる紫藤であったが、当の言葉は笑みを浮かべて紫藤に言った。

 

「貴方は生かしては帰しませんよ・・・何故か生かしておくとトンでもない気がしますから・・・!」

 

言い終えた後、言葉は右腕で手刀を作り、紫藤の胸に突き刺した。

 

「グッ・・・!?ガハッ!」

 

思いっ切り胸を突き刺された為、刺された場所から血飛沫が上がり、口から吐血してしまう。

右腕を突き刺しながら言葉は紫藤の心臓を見付け、それを掴んだ。

口から血を吐きながら紫藤は言葉に命乞いを始める。

 

「た、助けてくれ・・・!」

 

「心臓を無理矢理引き抜かれたら、人間は生きているのは数分間だけですよ・・・」

 

命乞いをする紫藤に言葉は告げた後、心臓を引き抜いた。

心臓を引き抜かれた紫藤は道路の上に膝を着き、ずっと空を眺めていたが、左手で手刀を作った言葉に首を飛ばされ、切断された根本から血飛沫を上げながら道路に倒れた。

右手てで持っている紫藤の心臓をどうするか悩んだ言葉は、それを思いっ切り握り潰し、笑みを浮かべて小さく笑い出し、何の意味もなく、その場から去っていった。

小学校で惨事が起こる中、尋常じゃない重傷を負ったアレクサンドラの元に多数のゾンビが襲い掛かる。

必死に応急処置をする衛生兵達を守るように、中歩兵と重装備兵が正確に頭を撃ち抜きながら迎撃を行っている。

このままずっと守りきれるはずもなく、マシンガンゾンビやスナイパーゾンビが現れ、必死でアレクサンドラを守る護衛の兵士達を次々と撃ち殺していく。

為す術もなく武器を持たない衛生兵達も撃ち殺され、致死量に致ほどの重傷を負ったアレクサンドラに容赦なく銃弾が浴びせられた。

それを目撃したルリは、屋上から狙撃するゾンビスナイパーを全て切り裂いた後、品詞のアレクサンドラに容赦なく銃弾を食らわせていたマシンガンゾンビを全て片付け、もう助かる見込みもない彼女に近付いた。

 

「来たか・・・」

 

まだ動く左手で近くに寄り添ったルリの頬を触りながら力を振り絞って口を動かす。

頬から左手を離し、懐から写真を取り出し彼女に渡した。

 

「家族の写真を頼む・・・私が持っていたら汚れそうだ・・・」

 

手渡された写真を見たルリ、そこに映っていたのはアレクサンドラを初めとした彼女の家族写真だった。

ルリが見ている間に空気を読まないゾンビが襲い掛かったが、中歩兵が始末される。

夫らしい人物の隣にアレクサンドラが居り、彼女と夫の前には小学生くらいの男児が一人にまだ幼い女児が一人だ。

その中の女児の容姿がルリに少し似ていた。

恐らくアレクサンドラはルリが敢えてここへ来ることを予想し、わざわざ出迎え、ヘリがストアーに破壊されて爆風からルリを守ったのも、娘の面影を思い出した所為であろうか。

そう思ったルリはアレクサンドラの顔を見た時は既に彼女が息絶えた後だった。

近くで彼女の付き添いの士官が護衛の兵と共にやって来て、自分達の上官であるアレクサンドラの死を知った後、部下達に退却を命じた。

 

「アレクサンドラ日本支部司令官が戦死した!総員退却せよ!!」

 

兵にアレクサンドラの亡骸を運ばせ、ルリから既に息絶えた彼女の家族写真を取り上げ、小学校から退却を始めた。

上空から数機の戦闘爆撃機ホーカータイフーンが編隊を組んで現れ、退路を塞ごうとするゾンビをロケット攻撃で粉砕した後、そこからワルキューレの兵士や戦車が雪崩れ込み、小学校から退却していく。

運良く生き延びた避難民が退却するワルキューレの後を追おうとするが、追ってきたゾンビの餌食になる。

逃げ出していくワルキューレの兵士達を見ながらSTG達は、ゾンビの迎撃で手一杯な孝達に知らせた。

 

「小室!あの女戦士と戦乙女達はここから逃げ出していくぞ!」

 

「嘘だろ、おい!」

 

「そんな・・・!私達を置いていくなんて・・・!」

 

孝はイサカM37を構えながら言った後、麗が絶望する。

和風の美少女と斬り合っていた冴子も、背中を守ってくれるワルキューレの兵士達が居なくなって、後ろから襲ってくるゾンビも相手をしなければならなくなる。

 

「クッ・・・!武士道もないか・・・!」

 

容赦なく斬り掛かってきた美少女に対処しながら防ぐ冴子。

今戦っているのは小室一行とルリ、少数の陸上自衛隊員だけであり、ワルキューレの兵士達は誰一人とでこの場に居らず、全員が撤退していった後だった。

時計台にいるストアーは孤立奮闘する彼等を見て、笑みを浮かべながら告げた。

 

「ハハハハ!頼りの戦乙女が逃げて哀れだな!いつまで銃弾が持つかな?それと非武装な女と小娘の守りががら空きだぞ!」

 

ストアーは鞠川とありすの近くに複数のゾンビを召還した。

周囲を囲まれた鞠川とありすを助けようと小室一行とルリは向かおうとしたが、行き先を地面から這い出てきたゾンビや召還されたヘル・ハウンドに邪魔される。

 

「こいつ等!」

 

それでも向かおうとした孝だが、シャベルを振り翳してきたゾンビに邪魔をされ、地面から這い出てきた手に足を掴まれ、身動きが取れなくなる。

孝の母親が助けようと向かったが、正に止められてしまう。

 

「しまった!」

 

「孝!!」

 

足を掴まれたまま周囲をゾンビに囲まれた孝、そんな彼を助けようとした麗であったが、マシンガンゾンビに頭を掴まれ、さらに首を絞められる。

 

「「麗(ちゃん)!?」」

 

直ぐに助けに向かおうとした正と貴理子であったが、スナイパーゾンビの狙撃で阻まれてしまう。

 

「こんなの無理よ!」

 

ゾンビの迎撃に手一杯な沙耶は周囲から迫ってくるガイコツの迎撃で手一杯で、コータの所にも多数のゾンビが向かってくる。

鬼神のような強さを持つルリとで、分厚い肉の壁で阻まれた為に鞠川とありすの元へは直ぐには迎えない。

ジークは周囲を囲むように迫ってくる鈍器を持ったゾンビアーミーに吠えるが、全く効果無し。

一校の中で高い火力の兵器を持つSTG達とで、数の暴力で圧倒されている。

絶望感に陥る彼等を見たストアーは高笑いしながら彼等に死の宣告をする。

 

「ハッハッハッハッハッハッ!!貴様等はもう終わりだ!我が下僕達にその女と小娘が喰われる様を見て、貴様等も後を追うと良いッ!!」

 

「ありす達死んじゃうの?」

 

「もう分かんないよ・・・」

 

高笑いしているストアーを見て、ありすが鞠川に話し掛け、答えに困った彼女はそう答えた。

このまま鞠川とありすがゾンビアーミーの餌食になると思った瞬間、彼女達の周囲に居たゾンビアーミーの動きが止まった。

 

「どうした?何故動かん!?」

 

突然動きを止めたゾンビアーミーを見て、驚いたストアーは声を上げた。

 

「あれ、お化けの動きが止まったよ?」

 

「本当・・・一体何が・・・?」

 

「その()の目を隠せ」

 

「っ!?」

 

鞠川は隣に黒マントを纏った女性の声が聞こえた。

脳天気な彼女とで、少しは怪しんだが、周りのゾンビアーミーの頭が地面に落ち始めた為、急いでアリスの目を手で覆った。

ストアーはゾンビアーミーの頭が落ちる前から謎の女性の存在に気付いた。

 

「き、貴様!何者だ!?」

 

ゾンビアーミーの頭が落ちた後、謎の女性に指を差して問うストアー、それと同時に学校の校門から日本刀を構えた男子高生が現れた。

 

「坂本さん!早すぎますよ!!」

 

息を切らしながら坂本と呼ばれた黒マントの女性に言う男子高生、その女性は高笑いしながら答えた。

 

「ハッハッハッハッ!少し早すぎたか、それにしても賢治よ。剣道を習ってる者としてこれくらい動けんとな!」

 

フードを取りながら答える坂本、右眼は不思議な模様の眼帯で隠していた。

その容姿を見た孝達は、彼女の容姿を見て思い出した。

それはミーナ達の話に出て来た坂本美緒そのものだった。

直ぐさま腰の日本刀を抜き、孝達の脅威を次々と取り払っていく。

賢治と呼ばれる男子高生も加勢して、小室一行側が少しだけ有利になっていき、ルリもゾンビの肉の壁を突破し、オカルト将軍の周りに浮いていたを頭蓋骨を全てスターリングMk7の乱射で撃ち落とした。

頭蓋骨を失ったオカルト将軍の霊体化は解け、実体が浮かび上がる。

霊体に戻ろうとするが、ルリが逃すはずもなく大鎌で上半身と下半身を切り離され、死んだ。

次に洋風美女がルリに襲い掛かったが、叶うはずもなく大鎌に貫かれた。

 

「クッ、一人殺されたか!」

 

ストアーは空気圧を作ってルリにぶつけ、彼女から距離を取る。

その時、遠くの方から別の銃声が聞こえ、ストアーの頬を掠った。

 

「もしや新手か!?クッ、頃合いを見てもう一度仕掛けるか!」

 

ストアーは校門側から見えたスコープの光を察し、和風美少女を置いて自分一人だけ逃げた。

地面から這い出てくることが無くなったゾンビやゾンビアーミー、召還されることが無くなったクリーチャー達は次々とルリや美緒、STG達に寄って駆逐されていく。

後ろから襲われる心配もなくなった冴子は和風美少女との一騎打ちに集中することが出来、本気を出して和風美少女を追い込んでいき、左腕を斬り付けた。

左腕に力が入らなくなった和風美少女はまだ戦う気で居たが、何処にもストアーの姿がないと分かると、自決しようと試みた。

 

「止せ!止めろー!」

 

美緒が和風美少女の自決を止めようとしたが、間に合わず、既に自分の喉を切り裂いた後だった。

 

「貴様、何故止めなかった!?」

 

立ち尽くす冴子に問うが、当の彼女も何が起きたか分かってない。

和風美少女の肩を抱いてまだ息があるか確かめる。

やがて和風美少女が息絶えたのを確認した後、見開いていた目を美緒は閉じた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地中からの使者

ここに来て新キャラ戦ヴァルから1名、オリキャラ6名が増えます。


和風美少女が自決したのと同時に小学校にいたゾンビは、孝やSTG達、乱入してきた美緒によって一匹残らず全滅した。

膝をついて呆然としていた冴子に美緒が近付き、彼女を立たせる。

 

「目の前で人が死んだのは初めてか・・・?結果がどうあれ君は生き延びた、彼女の分まで生きねばならん」

 

「は、はい・・・すみません、私が不甲斐ないばかりに・・・」

 

「気にするな。この世界では仕方のないことだ」

 

地面に落ちていた村田刀を冴子に渡した後、息絶えた美少女の元へと向かい、右手に握られていた日本刀を取って血を拭く手拭き取り、鞘に戻してから近くまで来た賢治に投げ渡した。

 

「うわっ!?これマジモンの日本刀じゃないですか!」

 

美緒から渡された日本刀を見ながら驚き、賢治は大事そうに抱えながら彼女に告げた。

 

「お前の武器だ、彼女の形見だから大事に扱え!」

 

「何という無茶ブリ・・・!」

 

取り敢えず受け取っておく事にした賢治、大鎌を跡形もなく消滅させたルリはその場で固まる全員の元へ向かう。

孝は美緒の元へ行き、助けてくれたことを感謝した。

 

「すいません、助けていただいて何のお礼も出来ず・・・」

 

「無抵抗な女子供が襲われて我慢できずに飛び出したまでだ。礼はあの少年と一緒に私を君達の仲間に入れてくれるだけで良い」

 

「そうですか・・・」

 

あそこで日本刀を大事そうに抱えてる賢治を親指で指差ししながら言う美緒に孝は苦笑いしていた。

STG達はまだ動くゾンビは居ないか探し回っていた。

 

「ゾンビは何時蘇るか分からんぞ。しっかり確認しておけ!」

 

『了解だ、STG』

 

「僕も手伝います!」

 

コータも加わった後、暫しの残敵探査が行われた。

その間に狙撃の正体を確認するべく、沙耶はハンビィーの上によじ上って、校門の方角を双眼鏡で覗いた。

そこにはこちらへ向かってくるコンドル装甲車に乗ったアリシア達であり、孝達が見えているのか手を振っている。

 

「どうやら助けてくれたのはアリシアさん達のようね・・・みんな、迎えが来たわよ!」

 

大声で知らせた後、自分も降りて孝達の元へ向かった。

やがてアリシア達も来て、それと同時に残敵探査を終えたコータとSTG達が帰ってきた。

全員が揃ったのを確認した美緒は自己紹介を始めた。

 

「たしか小室君と言ったか、私の噂は芳佳達から聞いているな。初対面の者には自己紹介をせねば、私は扶桑公国海軍所属の坂本美緒だ。階級は少佐。芳佳を追っていたら、霧に呑まれ、この世界に迷い込んでしまった。よろしく頼む。そっちは・・・」

 

美緒が賢治の方を向いて、それに気付いた賢治が名乗りを上げる。

 

「どうも、阿波来賢治です。藤見学園の高2で剣道部所属です」

 

「剣道部・・・?」

 

冴子は賢治が自分の高校の剣道部に属していた事を知らなかったらしく、思い詰めていた。

 

「まだ今年からなんで、主将の貴女は覚えて無いと思いますけど・・・」

 

「あぁ、そう言えばいたな。後輩からは影が薄いと評判の・・・」

 

「えぇ・・・俺そんな感じで覚えられていたんですか・・・?」

 

憧れである冴子に言われて落ち込む賢治、ありすがジークを抱えながら慰めている。

正達は賢治の事は理解できたが、美緒とアリシア達の事は理解できなかった。

代わりにアリシアと同行していたカールが説明する。

 

「成る程・・・別世界からのやって来たのか・・・」

 

「まるでSF小説みたいね・・・」

 

カールからの説明を聞いた正と貴理子は納得し、孝の母も、同じく同行していたBJに詳しく問い質して理解した。

次に美緒がルリの方を向いて、先程の戦闘で使っていた大鎌の事を問う。

 

「それとルリと言ったか?」

 

「はい、私ですけど・・・?」

 

「先程、大鎌を使って蘇った亡者共と戦っていたな。あの鎌、いや、あの死神の鎌(デッサイズ)はなんだ?」

 

その瞬間、ルリの表情が若干固まり、BJとカールが眉を細めた。

先程の質問は地雷と悟った美緒は付け足すように続ける。

 

「別に言わなくて良いぞ。人にはそれぞれ秘密を抱えている物だからな」

 

「え・・・はい・・・」

 

美緒の問いにルリは、秘密を言うか言わないかで迷う。

しかし、ここで言えば彼女の信頼を崩しかねない上、それでもいずれか主の為に彼等を殺めるしか選択肢しかない。

敢えて言わなくても信頼は保てるが、自分にとってはなんだか申し訳ない気持ちになってしまう。

どうするか迷っている内に、あることを思い付いた。

それはとても単純な答え、嘘をつくことである。

幸いにもルリの演技力はどんな嘘でも本当のことだと思わせる程、プロの女優顔負けの演技力だ。

どのような設定にするか脳内で模索し、どう演じるかによって信じ込ませるのか良く考える。

脳内に自前の脚本が構築できた後、早速ルリに視線を集中させている美緒も含めた孝達に向けて嘘を話そうとした瞬間、迫撃砲が校舎の上に着弾した。

 

「なんだ!?」

 

「この機に乗じて襲撃か!?」

 

孝達を除く全員が武器を構えて警戒する。

 

「迫撃砲の攻撃だ!お前達は学園の中に入れ!!」

 

セルベリアがG36Kを右手で構えながら、左手で孝達に校舎の中へ入るよう指示を出す。

孝達が校舎の中へ入って行くが、ルリはSTG達と共にこれからやってくる武装組織の迎撃に向かおうとしていた。

 

「おい、君はこっちに来るんだ!」

 

正に襟を掴まれて校舎の中へと連れて行かれる。

アリシア達は迎撃に向かって孝達は校舎の中に避難した。

しかし、その中に地中からやって来たワルキューレの部隊が居るとも知らずに。

 

時はルリが帰るか残るかで迷っている頃、床主の海岸に特殊部隊専用装備をした集団、アメリカ海軍の特殊部隊SEALsの海軍特殊作戦グループ1に属するチーム1の一個小隊が派遣された。

周囲を警戒し、彼等をここまで運んできた輸送ヘリのCH-53Eが飛び去った後、14名からなる小隊は市街地へとお互いの死角を防ぎながら進んだ。

彼等が進む道に街に残っていた数体の奴らが偶然にも現れたが、SEALs隊員達は慌てることもなく消音器付きHK416のダットサイトを覗いて照準を奴らの頭部に合わせ、小隊長の男にマイクで問う。

 

「こちらブラック(フォー)、目の前にゾンビを複数確認。射撃許可を」

 

「よし、許可する。任務の邪魔になる物は全て排除せよ。ただし“静か”にな」

 

「イェッサー」

 

射撃許可が下りた為、それぞれの奴らに狙いを定めていた隊員達は発砲を始めた。

銃声は限りなく消音器(サプレッサー)によって抑え込まられるが、それでも耳が痛くならない程の音量だ、完全に銃声を抑え込めない。

ギリギリ聞こえるくらいの銃声に気付いた奴らが小隊の右側から襲ってきたが、M60E4を負い革で吊した隊員が消音器付きM9自動拳銃を引き抜き、正確に頭部に命中させて排除する。

この市街地にいた奴らが全滅した後、小隊はリヒター達が居る倉庫がある地区まで移動を再開した。

何故、彼等がここにいるのか?その目的はリヒター達の偵察と接触の為である。

彼等を監視していたのはワルキューレだけでは無く、アメリカ全軍の情報局も衛星による監視を行っていた。

監視途中、彼等が突然消えた為、調査・偵察・接触の為にSEALs特殊作戦グループ1に属するジェイコブ・ハドソン率いる小隊が派遣されたのだ。

今、ジェイコブ達はリヒター達が居る倉庫の入り口がある公園を見渡せるビルに居た。

 

「情報部には困った物だ。第二次世界大戦中の枢軸国軍と偵察か接触しろなんて・・・」

 

バラクラバを帽子代わりに被って、素顔を出している小隊長である白人のジェイコブは、双眼鏡を左手に持ちながら副官である黒人隊員のルイス・ゴートンに愚痴を言う。

 

「そりゃあ、誰だって信じられないでしょうに。しかし、写真にはクッキリ映ってますよ」

 

懐から出した写真を上官に渡したルイス、ジェイコブはフルカスタムのSG552を机の上に置いて、写真をじっくり観察する。

 

「ブリーフィングの時は信じられんかったが、まさか事実だとは・・・」

 

「うちのそう言うのに詳しい奴に調べさせたところ、本物だって豪語してました」

 

見終わって写真を返したジェイコブは水筒を口にし、中にある水を飲み始める。

飲み終えた瞬間、若い日系人の隊員、SR-25を背負い、MP5A5を負い革で吊したマイケル・モリタが慌てて入ってきた。

 

「どうした?」

 

「隊長!大変です!外を見てください!」

 

マイケルが言ったとおり、ジェイコブとルイスが双眼鏡で公園の方を覗いてみれば、何もない場所からアリシア達の乗っているコンドル装甲車が出て来た。

 

「なんだこれは・・・!?」

 

「どういう事だ!?」

 

マイケルに問う二人、直ぐに彼は事情を説明した。

 

「サー、自分が見た時は何かの先が飛び出していました。目の錯覚だと思って擦って見てみたらコンドルの先でした!」

 

「一体どうなって居るんだ・・・!?」

 

余りにも信じられないことにルイスは少し動揺したが、落ち着きを取り戻したジェイコブが指示を出した。

 

「お前の分隊はコンドルを追え!俺の分隊はあのコンドルが出て来た場所を調べる!人でを集めろ!!」

 

「アモーレ!」

 

指示を受けたルイスは素早く自分の分隊を纏め、アリシア達が乗る装甲車の後を追った。

ジェイコブを含めて7人の分隊は装甲車が現れた空間の亀裂の元へ向かう。

この頃、小学校で孝達がストアー率いるゾンビの大群と死闘を演じ、空が不気味な色に染まっているが、彼等は動ずることもなく目標へと向かっていた。

 

「ここですか、モリタ兵曹」

 

「あぁ、ここだよ。ここからコンドルが飛び出してきたんだ」

 

長距離無線機を背負い、M16A3を持った白人隊員、アーウェン・ジップスが目撃者であるマイケルに聞き、それを彼が答える。

 

「映画の3Dで見るような亀裂だな?」

 

ポイントマンである黒人隊員のジェシー・フォルダーがHK416の銃口を亀裂に構えながら言う。

後衛担当のパザード・フレッシュマンもM60E4を持ちながら亀裂を見る。

 

「そのようだな。誰か入るか?」

 

周りにいた隊員達にパザードは問うが、全員首を横に振って断る。

 

「はぁ・・・俺がやるか・・・」

 

仕方なくパザードがそこらに落ちていた木の枝の先を亀裂に入れ込んだ。

先が亀裂にはいると、その部分だけが消えており、その場にいた全員が驚き、パザードは驚いた衝撃で木の枝を地面に落としてしまう。

 

「うわっ!?先っちょだけ消えやがったぞ!」

 

「まさか本当に次元の亀裂か・・・?」

 

落ちた木の枝の先を見たジェイコブがそれを見て、亀裂を見る。

 

「どうやら異世界の入り口らしい。先は消えていない、見ろ」

 

落ちた木の枝の先を指差してジェイコブが言った後、それを見たアーウェンが口を開く。

 

「本当だ、先が消えてない」

 

「異世界の入り口なんて映画かアニメ、ゲームしか見たこと無いぞ」

 

短機関銃を持ってない左手で頭を抱えながらマイケルは少し動揺する。

亀裂を見たジェイコブは迷うことなく部下の静止も聞かずに亀裂へと入っていった。

 

「おい・・・隊長が消えたぞ・・・!」

 

一人の隊員が言った後、全員の視線が亀裂に集中する。

暫くすると、ジェイコブの頭が亀裂から飛び出してきて、部下達は驚いて銃口を向けた。

 

「銃口を向けるな、俺だ。ここに入ってみろ、面白い物が見られるぞ?」

 

隊長であるジェイコブの言葉で部下達は亀裂の中に入っていった。

入った彼等が見た物はリヒター達が居る巨大な倉庫であり、初見である彼等は驚きを隠せなかったと言う。

 

その頃、小学校の地中の人工で掘られたトンネルでは、胸元を開けた武装親衛隊(ヴァッフェンSS)に近い黒服を身に纏い、その上からマントを羽織って腰まである長いブロンドの髪の上から士官帽を被った浅黒い肌でスタイルの良い整った顔立ちの女性が笑みを浮かべながら小学校のある地点まで歩いていた。

彼女の名はリディア・アグーテである。

元の世界で戦死した後、何処かの世界に転移し、軍事組織ワルキューレに拾わる。

二度目の転生の初陣で才能を発揮し、実力を見せ付け、下級司令官にまで上り詰めた。

彼女の向かう先はトンネル工事用のシールドマシンを搭載した掘削機型のブルドーザーが止まっており、小学校のある地点に向けてワルキューレの工兵が上にドリルを刺して掘り進んでいる。

 

「あっ、リディア様!」

 

M2ヘルメットを被り、作業着を着た女性工兵が向かってきた女性に敬礼した。

何故、部下に姓名を言わせないのかは元の世界に属していた宗教団から与えられた物で、彼女はこの姓名を酷く嫌って、部下にリディアと様付けで呼ばせているようにしている。

早速リディアは女性工兵に作業の進み具合を問う。

 

「調子はどう?ここは熱くて蒸れるわ・・・」

 

左手で胸元を広げて、豊満な胸を見せ付けるかのようにして右手を内輪代わりにする。

もう少しで見えそうになる為、工兵は赤面しながら答えた。

 

「後4分で標的が隠れている地点に到着します」

 

答えた女性工兵の後ろにはドイツ国防軍の野戦服や迷彩スモック等を着て、頭にドイツ兵の象徴的なシュタールヘルメットを被った旧ドイツ軍装備の二個分隊ほどの人数の擲弾兵が待機していた。

シュタールヘルメットのデカールにはワルキューレの兜が描かれ、下にはラテン語でワルキューレと文字が書かれている。

彼女等の手に握られているのはkar98k、MP40、、MP41、kar43、StG44だ。

腰のガンホルスターにはワルサーP38、ルガーP08、ワルサーPPが収まっており、ベルトにはM24柄付手榴弾が一本挟まってる。

準備が万端と見たリディアは小学校がある地点を見上げて、考え込んだ。

 

「(なんで小室孝を初めとする学園からの脱出組を捕らえるように指示したのかしら?まぁ、私が考える訳じゃないけどね)」

 

視線を前に戻して、小学校への近道が開通するのを待った。

コンクリートの底が見えた為、ドリルを停止してコンクリートの底が見えたことを知らせた。

 

「コンクリート発見!」

 

「良し、行け(ロース)!」

 

MP40の負い革を肩に掛けて、M43戦闘服着てM43ズボンを履き、M43規格帽を被った隊長らしき女性兵士が左手を振り下ろして後ろにいた集団に指示を出し、工兵の声が聞こえてきた穴に入っていった。

吸い込まれるように入っていった擲弾兵達は、工兵が居る場所まで来た。

上のコンクリートがタイル状になっている事が分かった工兵はそれを開けようと、溶接部分をスコップで切り取ってゆっくりとタイルを持ち上げた。

 

「え・・・なに・・・?」

 

偶然にもその部屋にいた鞠川は、突然タイルが浮いた事に驚いて、距離を置いた。

もちろんそのタイルを動かしているのは地中から侵入してきた擲弾兵達を待たせている工兵である。

 

「これ・・・動いてる?」

 

取り敢えず鞠川は四つん這いになってタイルに近付き、ゆっくりと動くタイルを見ていた。

浮かび上がったタイルが隣に置かれた後、そこからMP40を構えた童顔の擲弾兵がゆっくりと現れる。

 

「あっ・・・」

 

「へぇ・・・?」

 

四つん這いになって豊満な谷間を見せるようなグラビアポーズを取る鞠川と、まだ幼さが残る擲弾兵の目が合って、時間が止まったかのように二人は口を開けて固まっていた。

先に動いたのは擲弾兵の方であり、直ぐに鞠川に飛び掛かった。

 

「まだ兵隊さんが地下からー!」

 

叫ぼうとした鞠川の口を抑え、開いたタイルから続々と出てくる味方の擲弾兵と共に暴れる彼女を拘束する。

 

「ウー!ウゥ~!」

 

口を抑えられ、擲弾兵達が出て来た穴に鞠川は連れて行かれた。

鞠川の悲鳴で敵の侵入に気付いた孝達は迎撃に向かおうとしたが、始めに出て来たコータが麻酔弾仕様のkar98kを撃たれ、刺さった麻酔弾を見る。

 

「ウッ・・・?これは麻酔弾・・・!?」

 

その後コータは床に倒れ、擲弾兵達に連れ去られる。

 

「撃たれた・・・?」

 

残る者達も麻酔銃で撃たれ、コータと同じく連れ去られてしまう。

正、貴理子、孝の母は麻酔銃で撃たれたが、そのまま放置されていた。

二階から狙撃しようと考えていたルリは、外敵の侵入に気付き、直ぐに一階へ駆け付けたが、もう既にジークも含む孝達はワルキューレの擲弾兵達に連れ去られた後であった為に間に合わず、最後尾のMP40やMP41を持った擲弾兵達と交戦した。

 

「例の少女です!連れて行きますか?!」

 

kar98kのボルトを引いて次弾を薬室に送っていた擲弾兵が隊長にルリも捕獲するかどうか問う。

 

「いや、早く撤退した方が良い。囮部隊が退却を始めた。銃で抵抗されては連れて行くのに時間が掛かる!」

 

隊長は入ってきた穴に指を差して答えた。

その擲弾兵は納得して穴に入って退却した後、ルリを足止めしていた擲弾兵二名の断末魔が聞こえた。

 

「敵が来る!」

 

ルリが来る前に穴に飛び込んだ後、小さい梱包爆弾に信管を刺してから置き、リディアが居る場所まで戻る。

部屋にやって来たルリは、穴を見付けて入ろうとしたが、梱包爆弾が爆発、孝達を連れ去った擲弾兵達を追うことが出来なくなってしまった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さらわれた後

ルリが地中から侵入してきた部隊と交戦してる頃、小学校の外でワルキューレの重装備歩兵部隊と銃撃戦を行っていたアリシア達は、これが囮とは知らず、ただひたすら目の前の敵に向けて銃を撃ち続けていた。

 

「頭一つ上げれんぞ!どういう機関銃だ!?」

 

IMIゲネブSFを連射してアリシア達の反撃を抑え込む重装備兵を手に入れた手鏡で見ながら、ローバックが叫ぶ。

遮蔽物越しからM1A1トンプソンを乱射したが、向こう側で銃撃を加えてくる重装備兵達には一切命中しない。

頭を上げようにも敵のSUVに搭載された凄まじい連射力を誇るM134ミニガンがあって、遮蔽物から出たら挽肉に変えられてしまう。

裏門に居るSTG達も乗用車一台しか通れない程の狭い道路を通って来たBVP-M80A歩兵戦闘車と交戦していた。

 

「STG!歩兵戦闘車両だ!!」

 

「こんな狭い車線に入ってきやがって!」

 

STGはレーザー発射器をBVP-M80Aに発射し、大破させた。

爆風がSTG達を呑み込み、黒人の隊員が咳をしながら文句を言う。

 

「ゴホッ、ゴホッ!なんて健康に悪い煙だ!」

 

その次に突撃銃や軽機関銃などを武装した歩兵部隊が新手のBVP-M80と共に現れる。

 

「敵の増援だ!ゾロゾロ居るぞ!」

 

トビーが向かってきた敵兵を指差しながら叫び、直ぐに応戦する。

こうして彼等が目の前の敵に夢中になっている間に孝達は捕らえられていくのだった。

アリシア達を追ってきたルイス率いるSEALsの七名からなる分隊は彼女達がワルキューレの重装備歩兵部隊と交戦しているのが見えた。

ポイントマンが直ぐにルリスに知らせる。

 

「目の前で標的がPMCと交戦中、学校の方角から聞いたこともない銃声とAK74の銃声が聞こえてきます」

 

「どうやら本物のようだな・・・!」

 

「どうします?標的に友軍の陸軍歩兵分隊も居ますが・・・」

 

その言葉にルイスは双眼鏡を取り出して、交戦中のアリシア達を見た。

自分達の合衆国陸軍の歩兵装備をしたイーディ達を見て驚いた。

 

「本当だ・・・我がアメリカ合衆国陸軍の歩兵分隊が居る・・・」

 

「通信を入れますか?この距離から十分届きますが」

 

軍用トランシーバーを持った隊員がルイスに問う。

この問いにルイスは自分のトランシーバーを取って、受信ボタンを押す。

 

「俺が通信する。こちら合衆国海軍、特殊部隊SEALsのルイス・ゴートン中尉だ!そちらは陸軍の歩兵分隊と確認した。部隊の所属と任務を表せ!」

 

銃撃戦を行っていたアリシア達を見ながら言った後、返事が来るのを待つ。

イーディは自分のトランシーバーからルイスの声が聞こえてくることに気付いて、それを手に取り、返答する。

 

『もしもし、何方ですか?』

 

遮蔽物に身を隠しながらルイスに応答するイーディ。

突然少女の声が聞こえてきた為、ルイスは驚いて部下達の顔を見て知らせた。

 

「おい、どうなってるんだ!?嬢ちゃんが応答してるぞ!」

 

「陸軍に17歳の少年兵士が前線に出られますが、同年の少女兵士は前線には出られません!」

 

部下がルイスに告げた後、彼は再びトランシーバーに耳を当てた。

 

「分かっている!応答しろ、嬢ちゃん。どうして陸軍の装備をしているか知らんがこれは嬢ちゃんには危ないお仕事だ。俺達が援護するからその間に逃げろ、オーバー?」

 

『嬢ちゃんですって・・・!私はガリア義勇軍の第7小隊のアイドル、イーディ・ネルソンですわ!アウト!!』

 

子供と思われて通信を切ったイーディ、ルイスは部下達に顔を向けて両手を挙げる。

 

「子供じゃないらしい。しかも切り方を知っていた」

 

その場にいた全員が少し笑った後、ルイスはアリシア達を救出する事にした。

 

「聞け、お前等。あそこで銃撃戦をしてる嬢ちゃん達を援護する。敵の戦力はミニガン搭載のSUVと先進国並みの装備をしたPMCが六十名程だ」

 

「一個小隊と一個分隊分の人数か。俺達なら瞬きする間に皆殺しに出来ますね」

 

「あぁ、そうだ。俺達は海軍の最強の特殊部隊だ。アフガンでは四名で百人のタリバンと交戦した」

 

「しかし、あの戦闘では全員数に押されて戦死しました」

 

盛り下がる事を言った隊員を睨み付け、ルイスは続けた。

 

「たかが六十人くらい葬る事なんて俺達には容易いことだ。こうしている間にもあそこの嬢ちゃん達が死んじまう。行くぞ!」

 

SCAR-Hのボルトを引いたルイスは部下達に告げ、アリシア達の救出に向かった。

ハンドサインで二手に分かれることを指示、三名にSUVを破壊することを命じ、自分達はアリシア達に銃撃を加える小隊の殲滅に当たる。

SUVに近付いた隊員達は、消音器が初めから付いているMP5SD6を単発にしてPKMを撃ち続けている重装備兵の首に狙いを定めて発砲した。

首を撃たれた重装備兵は首を押さえて苦しみだし、それを消音器を付けたM16A3を持った隊員がトドメを差す。

周りにいた重装備兵達を全て始末した後、隊員は銃座に着いている敵兵が気付かないと確認し、車体の下にC4爆薬を投げ込んだ。

爆薬を仕掛けたとハンドサインで他の三人に知らせ、ルイスの加勢に向かった。

その間に起爆スイッチを押して、SUVを破壊しておく。

ルイス達は重装備兵達が固まっている場所にM67破片手榴弾を投げ込んだ。

突然後ろから飛んできた手榴弾に気付かなかった爆発の範囲内に居た彼女達は、一回の爆発で全員が地面に倒れ込んだ。

こちらに気付いた重装備兵がAEK-971を向けて発砲しようとしたが、ルイスのSCAR-Hに射殺され、残りはM249を持った隊員に始末される。

 

「なんだ?リヒター達が助けに来たのか?」

 

G36Kを持っていたセルベリアがSEALsの分隊と交戦している重装備兵達を見ながら言う。

 

「敵が引いてるぞ。きっとリヒターおじさん達が助けに来たんだ」

 

P90を持っていたエイリアスが重装備兵達が引いていくのを見て、全員に知らせた。

その隙を逃さないようにカールが遮蔽物から飛び出し、スプリングフィールドM1903A4のスコープを覗き、ビルに居た狙撃手に狙いを定めて、引き金を引いた。

それを援護するかのようにルイスの分隊に居たM14EBRを持ったブニーハットを被ったマークスマンがカールと一緒に狙撃手を始末していく。

マリーナもその作業に加わり、ワルキューレの狙撃手が撤退するまで撃ち続ける。

敵兵が全て逃げ去った後、ルイスの分隊がアリシア達と接触した。

 

「なんだこりゃ・・・?」

 

SUVを爆破したバラクラバの隊員がアリシア達を見て驚く、さらに彼等が驚いたことはローバックとカールの格好だ。

大戦末期のOSS狙撃手装備と50年代のフォースリーコンの装備をした男達が居るからだ。

少し動揺しながらもルイスはアリシア達に指揮官が誰なのかを問う。

 

「この・・・部隊の指揮官は誰か?」

 

「誰も居ねぇよ。一番高い階級と言ったら、そこのデカパイのお嬢さんだ」

 

ローバックがM1A1トンプソンを銃身を肩に担ぎながら首でセルベリアを差す。

マガジンベストを巻いたPMCの様な長い銀髪と赤い瞳、絶大な美貌を持つ彼女にルイスは少し緊張する。

他の隊員はアリシアを含む女性陣の美貌を見て、小声で会話する。

 

「でけぇなおい」

 

「あっちも問題ねぇ」

 

アリシア、セルベリア、リエラを見ながらSEALsの隊員達はほくそ笑んだ。

ルイスがセルベリアと握手してから自分の所属と階級を名乗る。

 

「小官はアメリカ合衆国海軍特殊部隊SEALsのルイス・ゴートン中尉だ。貴官の名は?」

 

「セルベリア・ブレス大佐だ」

 

「失礼しました大佐。理由は聞きませんが、あの公園から・・・」

 

先程アリシア達が出て来た公園の次元の亀裂のことを問おうとしたが、その時ルリが追っていた擲弾兵の隊長が置いた梱包爆弾が爆発音が彼等の耳に入ってきた。

 

「中尉!小学校の一階で爆発が起きたぞ!!」

 

Jesus(ジーザス)!あそこの嬢ちゃん達が陸軍の格好をしていたことが聞きたかったが」

 

小学校で起きた爆発に驚いているイーディ達を見て言った後、アリシア達と共に小学校に向かった。

その爆発もSTG達も聞いており、攻撃してきた敵部隊が引いていくことに気付いた。

 

「ン、敵が引いていくぞ?」

 

「俺達にビビッたんだろう」

 

ゴーグルと黒人の隊員が引いていく敵を見て不思議に思う。

そして爆発音が耳に入る。

 

「小学校から爆発!?」

 

「砲撃か!?」

 

STGとトビーが言った後、彼等は小学校に戻った。

その頃、地中のトンネルに居たリディア達はカートに積まれた孝達が元来た道へ向かっていくのを眺めている。

暴れていた鞠川も黙らされ、カートに積まれて孝達と一緒の場所へと送られた。

もう長いが必要ないと感じ取ったリディアは部下達に退却を命じる。

 

「さぁ、あんた達。帰るわよ!」

 

了解(コピー)!」

 

手を叩いて部下達に告げ、元来た道へと戻っていった。

ブルドーザーもバックしながらリディアが戻っていく方へ向かう。

道中、彼女はこの任務に疑問を抱き、考え込んでいた。

 

「(生存率が高い餓鬼共が見たいからって、機械化歩兵二個中隊を送るなんてね)」

 

最後尾のカートに積まれた飛び出した鞠川の足を見ながら心の中でそう思う。

一方、小学校に居たルリの元にSEALs隊員を加えたアリシア達とSTG達が入ってきた。

 

「ハッ、大丈夫!?」

 

膝をついて呆然としていたルリを見付けたアリシアは、直ぐに彼女に近付いて何があったのかを問う。

 

「みんなが連れて行かれちゃった・・・」

 

ルリは崩壊して出入りが出来なくなった穴を指差して、泣きながら答えた。

 

「賢治はどうした・・・?」

 

「あ、何処行ったけ・・・?」

 

美緒はルリに賢治の事を聞いた後、彼女は賢治を探しに行く。

直ぐに麻酔弾を撃たれた賢治が発見され、美緒は彼の腹に一発蹴りを入れて起こす。

 

「起きろ!賢治!!」

 

「ブヘッ!」

 

痛みで起き上がった賢治は、美緒の前に立って礼を言う。

 

「起こしてくれてありがとうございます・・・あれ、みんなは・・・?」

 

周囲を見渡して孝達が居ないことに気付いた賢治、彼が起きて数分後に陸上自衛隊のヘリのローター音が聞こえてきた。

それに気付いたルイスはセルベリアの肩を叩いて公園に引き上げる様に勧める。

 

「大佐、公園に戻った方が良い。この国の自衛隊にあったら俺達以外武装解除されるかもしれない!」

 

「なんだと?」

 

セルベリアは驚き、STG達はもっと驚く。

 

「なんだって!?俺達の装備を剥ぎ取るのか!それはお断りだ、早くリヒター達の所へ行こう!」

 

STGが言った後、全員がルイスが出した案に納得、トビーが眠っている正達について問う。

 

「どうするんだ、小室達の親御さん達は?」

 

「連れて行くのは危ないだろう、自衛隊とやらに保護させて貰おう」

 

美緒の提案に全員が賛成した後、ルリを連れてリヒター達が居る倉庫の入り口がある公園まで戻ることにした。

賢治が寝惚けて戻ろうとしたが、美緒に襟を掴まれて一緒に連れて行かれた。

その後、陸上自衛隊のCH-47Jが着陸し、降りてきた自衛隊員達に寄って正達は救助されたと言う。

そしてリヒターとジェイコブ達が居る公園に到着したルリ達は、何名かが公園に出ていることに気付いた。

 

「隊長!」

 

「ルイス、そいつ等は追跡していた連中だな?」

 

「サー、そうであります」

 

「紹介しよう、ドイツ国防軍のリヒター閣下だ」

 

ジェイコブがリヒターの事を紹介した後、孝達を失い、新たにジェイコブ達SEALsを加えたリヒター達はこれからどうするのか悩み始める。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自分達だけで行け。

今回はアメリカ陸軍の第82空挺師団が登場します。


ジェイコブがリヒターを初対面のルイス達に紹介した。

 

「初めましてだ、ルイス・ゴートン中尉。私はエーリヒ・フォン・リヒター。所属はドイツ国防軍の陸軍(ヘーア)、階級は元帥だ。宜しく頼む」

 

アメリカ海軍の黒人将校と握手したリヒター、それから倉庫がある世界から来た者達が亀裂から出てくる。

 

「すげぇ、タイガー戦車だ!しかもかなり砲塔が長い!!」

 

パッキー達が出て来た後に、初見のSEALs隊員が叫んだ。

71口径88mmKwK43戦車砲に換装したティーガーⅠが出て来た。

その後からバウアーのKwK68口径10.5cm戦車砲に換装したティーガーⅡ発展型、クルツの変わりないパンターG型、再びティーガーに乗ったバートルとゾーレッツ、ディーターのヤークトティーガー、Ⅳ号戦車J型、Ⅲ号突撃砲G後期型、三式中戦車から四式中戦車に乗り換えたキューポラから上半身を出した佐武郎が出てくる。

他にも続々と出て来て、広い場所へと向かっていく。

 

「言い忘れたが、他にも居るぞ。案内するこっちへ来い」

 

ジェイコブがルイスの肩を叩いて、リヒター達と共に車両が集結する地点に向かう。

そこには驚くべき光景が広がっていた。

 

「スゴーイ・・・!」

 

リエラが驚きの余り声を上げてしまった。

この地の出身者である賢治は尚更驚きは隠せず、呆然としてしまっている。

 

「ここマジで日本なの・・・?」

 

膝をついて見てみれば、コータが失神しそうな光景だった。

手前はドイツ第三帝国の陸上兵器群で固められ、パイパーがメモに目を通して、自軍の戦力を確認しており、最後尾を見てみれば、メーサーシュミットBf109K型が八機、Ju87スーツカD四機、フォッケウルフFw190F8型四機、ヘンシェルHs129B-3一機があった。

奥の方がソビエト赤軍の兵器群で固められている。

砲撃陣地も対空陣地も出来ており、夢のドイツとソビエトの連合軍が現代の日本に誕生した。

しかし、ソ連軍陣地の方で、アレクセイと複数の政治将校達が揉めており、苛々しながらアレクセイがリヒターの元へやって来た。

 

「リヒター元帥、同志バラネフ大佐と政治将校達はあなた方とは協力しないと存じ上げ、聞く耳持ちません!党の連中は話の分からん奴らばかりだ!」

 

「またか・・・なんとしても協力させたまえ!」

 

了解(ダー)!」

 

アレクセイはリヒターに向かって敬礼し、再び説得に戻った。

 

「元帥閣下、どうやら協力体制は取れていませんね」

 

隣に居たジェイコブが言った後、リヒターは頷いた。

 

「うむ、元の世界では殺し合って互いの捕虜を皆殺しにしてきた“仲”だからな・・・理由は分かる。我々ドイツ軍の仲にも協力しないと言う者まで居る」

 

瞳を閉じ、アリシア達に背を向けて今の現状を伝えた。

一方、美緒はストライクウィッチーズの面々と再会し、喜んでいた。

その時である。

上空からワルキューレのP-47の編隊が飛来し、配置された対空砲が火を噴く。

 

『戦闘爆撃機だ!!』

 

誰かが叫んだ後、砲撃陣地がロケットで攻撃され、近くに置かれてあった弾薬が誘爆して配置されていた野戦砲や榴弾砲が全て使い物にならなくなる。

 

「砲撃陣地がやられたか・・・」

 

全員が地面に伏せる中で、リヒターは今も誘爆してる砲撃陣地を見ながら呟いた。

砲撃陣地を破壊したP-47は一機を残して壊滅した。

 

「あ~勿体ねぇ・・・博物館やマニアに売り付ければ高値で買い取ってくれる火砲を」

 

ジェシーは燃え盛る砲撃陣地を見ながら呟き、立ち上がって煙草を取り出し、火を付けて吸った。

立ち上がって埃を払いながら、リヒターが口を開く。

 

「これで砲撃支援無しで戦わなくてはならなくなった。さて、自走砲が残っているとはいえ、かなり厳しいぞ」

 

「ご安心を元帥閣下、第82空挺師団(オールアメリカン)を呼びました」

 

「オールアメリカン?あぁ、アメリカ陸軍の第82空挺師団のあだ名か。兵員の出身者が全48州と言う」

 

笑みを浮かべて告げるジェイコブにリヒターは無表情で答える。

 

「そうです。現在、師団総出でこの床主に向かっております。ジップス!」

 

長距離無線機を背負ったアーウェンが、ジェイコブの隣に来る。

 

「なんでしょう?」

 

「オールアメリカンの連中はいつ頃来るんだ?」

 

「今から5時間後です」

 

「なんだと・・・!?」

 

今まで黙っていたセルベリアが拳を握りながらジェイコブ達を睨んだ。

 

「どうしたお嬢さん。そんなに攻撃が待てないのか?」

 

「少佐、彼女は・・・!」

 

ルイスがジェイコブに耳打ちしてセルベリアが大佐だと言うことを知らせる。

 

「失礼しました大佐殿!しかし、82師団と陸上自衛隊の二個師団が来ない限り攻撃は不可能です」

 

改めたジェイコブの答えにセルベリアは今の戦力を考えれば、孝達のことを助けるのを諦めるしかなかった。

 

「クッ・・・分かった。では、攻撃の準備が出来たら知らせてくれ」

 

そう言ったセルベリアは野営地の場所を聞いた後、アリシア達と共に向かった。

その頃、第二次世界大戦時世界連合軍と対峙するワルキューレの陣地では、さらに軍規模の戦力が集結しつつあった。

 

「韓国軍・北朝鮮軍殲滅作戦、ご苦労様ですオドレイ・ガッセナール軍長様」

 

指揮所として使われている建造物の屋内で、敬礼しながら告げた指揮官は敬礼した後、オドレイと呼ばれる女性が士官帽を机の上に置いて、椅子に座ってからここにある戦力を問う。

 

「報告書にも書かれてましたが、例の一団が師団規模にまで膨らんでいるようですね。先程、戦闘爆撃機が火を噴きながら滑走路に向かっているのを見ました。ここにある戦力は?」

 

「ハッ、5個師団と軽師団と旅団の残存兵力を防衛に当てています」

 

指揮官の報告を聞いた後、オドレイは「配置が間違っている」と指摘し、地図を持ってくるように近くにいた士官に命じた。

 

「そこの貴方、この辺りの地図を」

 

「何をするつもりなんです?」

 

「先程貴方の防衛陣形を見させて貰いましたが、砲撃陣形以外どれもこれも一直線で攻められたら崩れるような陣形です。各部隊それに適した陣形に配置しましょう」

 

ポケットからペンを取り出し、士官が持ってきた地図を受け取って、机に置き、自軍の配置を記し、それが終われば指揮官に渡す。

 

「この通りに陣形を変えてください。敵側にアメリが軍の兵士が居ると聞きますから、おそらく何処かの駐屯地から三個師団程度の戦力が来るでしょう」

 

了解(コピー)

 

敬礼してから地図を受け取り、部屋を出た。

オドレイはペンをポケットに戻し、沈み行く夕日を見ながら近場にいた士官に珈琲を持ってくるよう指示を出した。

一方、美緒を初めとしたストライクウィッチーズが旅支度をして、リヒター達の元から去ろうとしていた。

たまたま野営地から出て行く最低限の護身用の火器を装備した美緒達を見て、ルリとエイリアスは声を掛ける。

 

「何処行くんだ?」

 

「あぁ、ここから出て行くんだ」

 

先頭から戻ってきた美緒は、聞いてきたエイリアスに答えた。

次にルリが理由を問う。

 

「どうして?」

 

「それはな、山から私達の大事な物が見えてな。それを取りに行くんだ」

 

「そうなんだ」

 

エイリアスが言った後、美緒は頷いて笑みを浮かべた。

 

「その通りだ。この事はリヒター元帥にも言ってある。それではまた何処かで会おう!」

 

美緒が先頭に戻れば、美緒についていく彼女達がルリとエイリアスに向けて手を振る。

彼女達は手を振りながらワルキューレが防衛陣形を張っている向かっていった。

大事な物を取りに行く彼女達の姿が見えなくなった後、二人は野営地へと帰って行く。

アリシア達が居る天幕へと帰り、ずっと机の上で肘を付いて、彼女達と一緒に鬱ぎ込まれる。

第82空挺師団が来るまで数分を切った瞬間、ソ連軍陣地から騒音が聞こえた。

何事かと思い、天幕にいた全員が見に来る。

 

「何を勝手な事を!」

 

マイヤーが双眼鏡を見ながら、敵陣地に突っ込んでいく二個旅団を見ながら叫ぶ。

隣にリヒターもやって来て双眼鏡で覗き、舌打ちする。

 

「チッ、余計なことを!」

 

「共産党の連中は身勝手な連中ばかりだな・・・」

 

「そう言わんでください。この世界では協力しなければならないのに・・・!」

 

皮肉るマイヤーに、アレクセイがソ連軍の代表として謝り、敵陣に部隊ごと突っ込んだ指揮官を恨む。

周囲を見たセルベリアは、シュタイナーが何気なく近付いてくるのが分かる。

彼女の隣まで近付き、あることを告げる。

 

「準備はしておいた。後はお前達次第だ」

 

通り過ぎて、リヒター達と共に緊急会議を始める。

それと同時に上空から数十機のアメリカ空軍輸送隊のC-130EとC-17が、落下傘(パラシュート)の雨を降らしているのが見える。

この場にいる者達に聞こえない様、セルベリアはアリシア、リエラ、エイリアスを集めて、自分達だけで会議を行う。

 

「シュタイナーがチャンスをくれた。今がチャンスだ、我々だけで小室達を助けに行こう」

 

「はい。でも、気付かれないでしょうか?」

 

不安げなアリシアがセルベリアに問う。

 

「大丈夫だ、シュタイナーが私の尻ポケットに地図を入れていた。全員装備を纏め次第出発する。エイリアス、漏らすなよ?」

 

「うん、分かった」

 

セルベリアはエイリアスに指を差して告げ、彼女が頷いた後、天幕に戻って野戦用迷彩服に着替える。

ここに間違って落ちた三つの物資の蓋を開けて中身を確認し、中にM16A4やM4・A1カービン、SCAR-H、HK416、M24SWS、M21対人狙撃銃、M14EBR、M82A1、対物ライフル、M249ミニミ、M240機関銃、M9ピストルが入っていることから銃器専用の箱と分かる。

もう一つは携帯式の対戦車のカールグスタフM3とAT4や地対空ミサイルのFIM-92 スティンガーが入っている。

最後の一つは弾薬箱で、弾薬が満載された弾倉ごと入ってる。

早速アリシア達は有り難くその中身を受け取ることにした。

アリシアはM4A1カービンにM14EBR、ずっと持ってたP228。

セルベリアはM249、M82A1、何処からか手に入れたSTIナイトホーク4.3。

リエラはM16A4、カールグスタフM3、M9ピストル。

エイリアスはHK416、FTM-92スティンガー、M9ピストル。

 

『おい、確かこっちに落ちたんだよな?』

 

『あぁ!確かにこっちに三つくらい落ちたんだ。たく、空軍の連中め!適当にばらまきやがって!』

 

悪態付きながら空挺兵がこっちへ来るのが分かる。

素早くアリシア達はこの場を去り、ワルキューレの陣地の向こう側に居るとされる孝達の救出へ向かった。

 

「お持ち下さい、お姉様達!」

 

後ろからイーディの声がした為に振り返ってみると、そこにはイーディ分隊と妹のリコルス、重装備なルリ、Stg44やパンツァーファウストを一本背負った美少女バウアー、M1カービンを抱えた賢治がそこに居た。

 

「貴方達もついてくるの?」

 

リエラが言った直後にイムカの声が聞こえた。

 

「私もついてくる、小室達には少し世話になった。礼をしなくてはいけない」

 

笑みを浮かべて告げるイムカにリエラは礼を言う。

 

「ありがとう、イムカ!」

 

さらに仲間は増える。

 

「俺達も忘れては困るな」

 

そこから出て来たのはBJとカール、ローバックがそこにいた。

さらには平八、STG達までついてくる。

 

「女子供だけで向かわせる訳にはいかんからな!俺も同行させていただこう!」

 

腕組みをしながら言う平八にヤンは凄まじく興奮している。

そして一同は小室一行救出の為、ワルキューレの陣地へと向かった。




明日から労働生活な為、更新が滞る可能性があります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敵地へ

リアルで忙しい・・・


ルリ達がワルキューレの陣地に向かった後、彼女達の姿が見えないことにいち早く気付いたのはスコルツェニーであった。

「おい、セルベリア大佐はどうした?!これから偵察任務に行こうと言うときに・・・」

 

消音器付きのワルサーP38を腰に巻き付けられたガンベルトに差して、身長190㎝代の男が辺りを見渡しながら探している。

その言葉でルリ達が居ないことに全員が気付き、ジェイコブが偶然にもやって来た階級の低い空挺兵達に声を掛け、探させようとする。

 

「お前等、非番なら嬢ちゃん達を探せ!特徴は銀色の長い髪に巨乳だ!!」

 

『サー、イエッサー!!』

 

直ぐに空挺兵達はルリ達の捜索に当たる。

 

「残念だったな・・・彼女達には敵陣後方への情報収集に当たって貰いたかったが・・・」

 

リヒターは柱に体重を乗せているシュタイナーに目を付けながら言った。

その当の本人は帽子を深く被って顔を隠し、ほくそ笑んだ後に第82空挺師団の本部に向かおうとしていたが、リヒターに声を掛けられた。

 

「待て、先のソ連軍の暴走とフロイライン達の抜け駆けは全て君の仕業か・・・?シュタイナー少佐」

 

「もし、そうだとしたら・・・?」

 

「貴重な戦力を削いだ罪で即席牢屋の中で監禁だ。それとこの場で銃殺刑だ」

 

シュタイナーは立ち止まって、リヒターがルガーP08を引き抜いて安全装置を外し、銃口をこの場から立ち去ろうとする男に銃口を向ける。

 

「この場で銃殺刑ですか・・・その件は私には一切知りませんな。取り敢えず自分は作戦会議がありますので失礼させていただきます」

 

こちらに振り返り、何の動揺もしなかったシュタイナーはそうリヒターに告げ、師団本部に向かって行く。

銃口を向けてるにも関わらず、その無愛想な男が立ち去ったのを確認したリヒターはルガーP08の安全装置を起こし、ガンホルスターに仕舞ってからシュタイナーと同じく、師団本部に向かった。

 

その頃、ワルキューレの陣地近くまで来たルリ達は偶然にもゲイツに出会った。

直ぐにセルベリアがM249の銃口を身長190㎝の男に向ける。

 

「分が悪いようだな・・・お嬢さん、撃たないでくれ。俺はゾンビじゃない」

 

ゲイツは直ぐに手を挙げて、BJのボディチェックを受ける。

 

「そちらのお嬢さんにボディチェックを受けたかったが・・・」

 

「ジョークを言うじゃない。タマを吹っ飛ばされるぞ」

 

BJは冗談を言ったゲイツに警告した後、たいした物は持ってないとセルベリアに告げた。

 

「そうか・・・では、貴様はただの生存者か?」

 

「あぁそうだ、生存者だ。これを聞いたら精神病院に入れたいだろう?俺は核戦争後の世界からやって来た」

 

このゲイツが言った事にルリ達は「この男も転移者」と察し、自分達も転移者と名乗る。

 

「あんた等も転移者か・・・で、これから何処へ行くんだ?」

 

「世話になった者達を助けにな」

 

ゲイツの問いにカールがセルベリアの代わりに答える。

 

「世話になった者達か・・・どんな面か見てみたい。一緒に連れてってくれ」

 

ゲイツがルリ達の顔を見ながら頼み込んで来た為、全員が連れて行くかどうかを検討する。

 

「どうする、連れて行くか?」

 

腕組みしながらBJがセルベリアに話し掛け、カールも話し掛けてくる。

 

「大柄な男だ、少し目立つが目付きを見れば地獄を駆け抜けてきた目だ。連れて行こう」

 

全員が階級の高いセルベリアを見ながら問うので、彼女は直ぐにゲイツを仲間に引き入れることに承知した。

 

「仲間に入れよう。役に立つかもしれない」

 

「ありがとう。その言葉通り、役に立たせて貰おう」

 

互いに握手した後、ゲイツを新たに加えたルリ達はワルキューレの陣地近くまで向かう。

陣地近くまで着いた彼女等は身を隠せる程の茂みに隠れ、セルベリアが双眼鏡で陣地を観察する。

 

「戦車が100、型は様々・・・歩兵が多数。機関銃座が多数・・・分かるか?」

 

近くまでやって来たバウアーにセルベリアは問う。

彼女も双眼鏡を持って、敵戦車の車種を確認する。

 

「戦車は私達を襲撃してきた部隊の物です。35t軽戦車、38t軽戦車、M3軽戦車、オチキスH35軽戦車と九五式軽戦車と九五式中戦車があります。銃座は・・・」

 

銃座を双眼鏡で見たバウアーの代わりにカールが言う。

 

「水冷式型機関銃のブローニングM1917やヴィッカース重機関銃だ。トーチかは壊れた駆逐艦の主砲を流用した物ばかり」

 

カールの適切な説明にセルベリアとバウアーは驚いた。

彼の言うとおり歩兵の装備も第二次世界大戦下の英連邦のままで、戦車も軽戦車ばかり、機関銃とトーチカすら大戦前半の物だ。

現用装備の一個大隊にでも攻撃されれば、容易に突破されるだろう。

三人が敵陣を観察している途中、砲声が聞こえた。

 

「この砲声は・・・?」

 

「ソビエト軍のISU-152自走砲の砲声だ。こいつはもう勝負が付いた物だな」

 

カールは砲声が聞こえてくる方向に指を差しながらセルベリアに伝えた。

彼女がその方向に双眼鏡を合わせてみれば、ソ連赤軍の二個旅団がワルキューレの陣地に突っ込んでいくところが見える。

T-34/85中戦車の車上にタンクデサントした歩兵が複数見え、他のKV-85重戦車やIS-2重戦車にもタンクデサントした歩兵が居る。

さらに当時のドイツ兵からスターリンのオルガンと呼ばれたBM-13カチューシャも見え、雨のようなロケット攻撃が開始され、攻撃されるワルキューレの陣地が壊滅していく。

 

「戦闘が始まります!」

 

バウアーが双眼鏡でワルキューレの貧弱な軽戦車と強力な大戦後期のソ連赤軍戦闘車両が交戦しているのを見て、全員に知らせる。

圧倒しているのはソ連赤軍の方であり、ユズコ軽師団の残りと防衛に当たっていた部隊が市街地へと撤退していくのが見え、それを追うようにソ連軍が市街地へと突っ込む。

これを好機と見たBJはセルベリアに陣地に潜入する案を出した。

 

「どうだ。今が絶好のチャンスと思うが?」

 

「そうだな・・・しかし、私は敵陣深くに乗り込んだ経験はない・・・」

 

俯いて悩むセルベリアであったが、そんな彼女にリエラが声を掛けた。

 

「私達はあるわよ・・・」

 

「なに、本当か・・・?」

 

「えぇ、ガリア戦記の時に国外の補給基地を襲撃する時に・・・」

 

セルベリアが聞いてきた為、リエラは前に居た世界で行った極秘任務を包み隠さず話した。

 

「成る程・・・では、直ぐに取り掛かるか」

 

全ての事を聞いて頷いたセルベリアは、待機していた全員に呼び掛け、大規模な戦闘が行われている市街地へと入っていった。

 

「敵戦車が市街地へ入った!対戦車戦闘用意!!」

 

何処から女性の声が聞こえ、PIAT(ピアット)やM20A1B1スーパー・バズーカ、自前の梱包爆弾を持った空挺兵達が敵戦車の接近に備えている。

彼女等が纏っている戦闘服は市街戦用の迷彩服を纏っており、被っているMk2空挺用ヘルメットには偽装ネットが取り付けられ、そこに草等を貼り付け、何時でも攻撃できるようにしていた。

殿を努めるT34/85が、彼女等が持つ対戦車火器の射程内に入ったところで攻撃が始まる。

 

「市街地に敵兵が多数潜んでいる!歩兵の同志諸君は直ちに排除に当たれっ!!」

 

赤軍指揮官が怒号を飛ばし、その命令に従ったモシン・ナガンM1891/30、SVT-40、PPsh41、PPS43、DP28等を持ったソ連赤軍歩兵が戦車から降りて、ワルキューレの空挺兵達と銃撃戦を行う。

自分達の存在に気付いてないと判断したセルベリアは、この隙に市街地を走り抜けようとする。

大人数での行動しているので、いつ見付かるか分からない。

そんな心配をしながらルリ達は銃声が小さく聞こえるくらいの場所まで付いた。

 

『敵の機甲部隊が第二防衛ラインに差し掛かっている。もうすぐ突破されそうだ。手が空いてる者は直ぐに援護に迎え!』

 

カナダ製FN FAL、C1を持った指揮官らしい半袖の女性が一個小隊分の人数に命ずる。

その指示に従った空挺兵達は直ぐに現場に向かった。

辺りに歩哨が居ないと確認したポイントマンのカールは、ハンドサインで「歩哨無し」と後ろにいる全員に伝えた後、次の隠れる場所まで走った。

途中、真ん中を走っていたリコルスが何もない道路の上で躓いて転んでしまった。

現用米軍のゴテゴテした装備が落ちた音が鳴って、屋根の上にいた歩哨が気付いてL1A1の安全装置を外して、ルリ達が居る場所まで様子を見に来る。

 

「早く立て!バカッ!」

 

後衛を努めるBJは直ぐにリコルスを立たせた後、全員が身を隠せる場所まで素早く向かった。

 

「異常なし・・・」

 

痕跡も残さず姿を消したので、歩哨は全く気付かない。

歩哨が元の警備ルートに戻った後、歩兵を車体に乗せたセンチュリオンMk3戦車が、その場を通り過ぎた。

その頃、同じくこの世界に転移したハイトは、ワルキューレの仮設の航空基地に潜んでいた。

 

「ジェット航空機が全て旧式ばかり・・・しかも殆どが化石のレジプロ機・・・どうなっているのかしら・・・?」

 

双眼鏡でそこらにあるジェット航空機や時代に合わないレジプロ機を見ながら呟くハイト。

彼女が見ている視点には、疲れ切った女性整備兵やパイロットがパイプ椅子や組立式ベットに寝ているのが見える。

その中には20代にも満たない少女の姿もあり、疲れているのか、壁に凭れて寝息を立てて寝ている。

おそらく連続した出撃で疲れ切っているのだろう。

そう考えたハイトは機体を盗むのが用意と判断した。

警備兵の位置を確認した後、彼女は何時でも飛べそうな機体を隠れながら探す。

 

「二発の練習機なら飛ばしたことがあるから多分行けるでしょうね」

 

大量に並んでいたカーチスP-40キティホーク4に目を付けたハイトは微笑んで、そこへ向かった。

向かう先にいたM3A1サブマシンガンを持った女性警備兵に首を抑える。

長い期間を受けて鍛え上げられた海軍の女性士官候補生に、高々1~2週間程度の訓練しか受けてない女性が勝てるはずもなく、あっさりとハイトに気絶させられた。

 

「悪く思わないでね」

 

ゆっくりと警備兵を地面に下ろした後、ハイトはキティホークに近付き、機首に描かれたアニメ絵の魔法少女を見て、ふと疑問に思う。

 

「変な塗装・・・この機体のパイロットは何を考えてるのかしら・・・?」

 

少し引いたハイトだが、整備兵やパイロットが来ないうちにコクピットを開けて操縦桿を握った。

 

「珍しいわね・・・こんな化石を今も尚使ってる国なんて・・・」

 

もちろんワルキューレは単なるバカでかい軍事組織なので、この機体を今も尚使っているのはワルキューレか、異世界の国家群だけである。

エンジンを始動したハイトは周囲を見渡し、滑走路に向かった。

組立式の管制塔からは突然動いたキティホークに驚き、女性管制官が拡声器を使って止めようとする。

 

『そこの機体!直ちにエンジンを停止して止まりなさい!!許可の無い発進は許されない!!』

 

警告する管制官であるが、ハイトは無視して滑走路に向かって空に飛び立とうとする。

この機体の主である少女が悲鳴を上げているが、彼女はお構いなしだ。

 

『もう!!対空砲、あの機体を撃墜せよ!!』

 

ボフォース機関砲がハイトのキティホーク4に向けられ、安全装置を外した砲手が、狙いを付ける。

飛び立つ前に撃墜されると判断したハイトは空に飛び立つ為にスピードを上げる。

 

「上がれぇーっ!!」

 

ハイトが叫び声を上げながら操縦桿を上に引き上げた後、キティホーク4が空を飛び立った。

地上にいたワルキューレの航空隊は直ぐに追撃機の用意をするが、恐らく間に合わないだろう。

対空砲の方かを避けながら、キティホーク4に乗ったハイトは安全な空へと逃げ込んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

囚われの者達

一方、新しく日本支部の司令官となったマクシミリアンは小室一行を捕らえた知らせを聞いた。

 

「少し損害は出たが、捕らえることに成功したか・・・ここへ連れてこい。余はその一団に興味がある」

 

報告に来た士官は敬礼した後、部屋を出て行った。

部屋には自分一人しか居なくなったと確認したマクシミリアンは、監視カメラが動いてないことを確認してから、総司令部に通信を繋ぐ。

天井からモニターが現れ、そこに総司令官の顔が映し出される。

 

『マクシミリアン・ガイウス・フォン・レギンレイヴか・・・どうした?』

 

椅子に座る青年のフルネームを言った総司令官の中年の男に無表情で告げる。

 

「フルネームで呼ばんで良い、マクシミリアンで構わん。所で例の男のことはどうなっておる?」

 

『あぁ、現在ウォーカー共は絶滅の一歩を辿ってるよ。研究者共が何体か研究用に欲しがっている。科学者の頭の中はよう分からん』

 

「それが科学者という物だ。知らない物を知ろうとする連中だ。その所為で悲劇を起こすことも知らずにな」

 

マクシミリアンが言った事を画面の向こう居る男が苦笑いした。

 

『ハハハ・・・相変わらず面白い物言いをする男だ。それでこんな話をする為にわざわざ通信を開いたわけでは無いだろう。一体何のようだ?』

 

「そうだったな・・・余は例の男と接触しようと考えておる」

 

『なに・・・?』

 

画面の向こう側の男の表情が変わった。

 

「予想外の反応のようだな・・・まぁ、良い。冥土の土産に教えてやるのだからな」

 

勝ち誇った笑みを浮かべながら告げるマクシミリアンに、画面に映る中年の男は眉を歪める。

 

『どういうことだ・・・貴様頭でも狂ったか・・・?』

 

「狂ってなどいない、チャンスと思っただけだ。そのチャンスを掴み取ろうというのだよ」

 

右手で頭を支えながら続ける。

 

「このチャンスを掴み損なえば、余は一生ワルキューレの戦士として使役される。だが余はこの運命(さだめ)を受けるつもりはない!」

 

右拳を握りながら机を叩いた後、左手で何かの装置を取り出した。

 

『せっかく拾った恩を仇で返すつもりか!?』

 

唾を吐く勢いで画面の向こう側の男はマクシミリアンに向けて言う。

 

「その通りだ。前の世界で成し得なかった我が願い、第二の人生で果たせて貰う!!」

 

椅子から立ち上がったマクシミリアンは叫びながら告げ、左手に握られた装置のボタンを親指で押した。

突如、画面の向こう側の部屋は爆発し、その場にいた男は爆風に呑まれてから断末魔を上げて爆死し、映像が途切れた。

数秒後、士官が報告に来る。

 

「ほ、報告いたします!総司令官殿が自爆テロに遭い、死亡しました!!」

 

「そうか・・・で、次期総司令官は?」

 

椅子に座って自爆装置をポケットに隠し、報告に来た士官に問う。

 

「ハワイに居るハナ前日本支部司令官か貴方です・・・他の支部は諸外国との問題で武装解除されたり、ここかハワイに向けて撤退しております。後は総司令官がテロで亡くなられた後、完全撤退を開始しております」

 

「成る程・・・では、ハナとのいざこざとなるな・・・こちらに来る友軍の大部隊を出迎える準備をしておけ」

 

「ハッ!」

 

マクシミリアンの司令を聞いた士官は敬礼し、部屋を出て行った。

その数分後にストアーが姿を現す。

 

「来たか・・・迎え撃つ準備は出来てるな?」

 

「当然だ、その為にここへ来たのだからな。それよりこの国にいる邪魔な連中を始末せねば・・・いずれハナという娘が率いる軍勢と戦わねばならん・・・!」

 

壁に凭れながら告げるストアーにマクシミリアンは頷いた。

 

「安心して良いぞ。この部屋には盗聴器や監視カメラはついておらん、誰か来るまでゆっくりして良いぞ?」

 

「お言葉に甘えさせて貰おう」

 

ゆっくりとソファーに向かった瞬間、机に置かれていた通信機が鳴った。

 

「済まんな、何処かへ隠れておけ。例の一団がここへ連れてこられる」

 

マクシミリアンが言った後にストアーは姿を消した。

その後、孝が男の衛兵と一緒に連れてこられる。

 

「離せ、離せよ!イテ!」

 

マクシミリアンが肘を置く机の前に出された孝、そして一行が手に入れた銃器類等が彼の後ろに置かれる。

目の前にいる金髪碧眼の青年が誰だか分からない孝は、マクシミリアンを睨み付ける。

 

「連れてきました!」

 

「ご苦労、退出して良いぞ」

 

衛兵は敬礼した後に部屋を退出した。

この部屋にいるのがマクシミリアンと孝なった後、まず机に座る男が口を開く。

 

「小僧、随分と運がよいのだな・・・?一体何がお前を助けているのだ?」

 

「何を言ってるんだ、今はそんなことを聞いてるんじゃない!麗と他のみんなは何処へやった?!」

 

全く話を聞いてないと分かったマクシミリアンはモニターを出すスイッチを押し、孝以外の小室一行がどうなっているのかを見せる。

 

「そうカッカするな。全員、優遇された待遇を受けている。安心して良い」

 

「クッ・・・」

 

マクシミリアンの言うとおり、孝は悔しながらも納得した。

再びマクシミリアンが問う。

 

「それでは再び聞くぞ。随分と運が良いな、どんな協力者が居るのだ?」

 

ただならぬ雰囲気で問い掛けてくるマクシミリアンに、孝は緊張する。

 

「異世界から来た者達です・・・」

 

「して、どんな?」

 

その問いに口篭もった孝、マクシミリアンは疑問に思って問い掛ける。

 

「どうした、言えんのか?」

 

「言えません・・・言えばあなた方は容赦なく捻り潰すでしょう・・・」

 

「ほぅ・・・そうなればこちらも強硬手段を・・・」

 

突然強引に部屋の出入り口のドアが開かれ、そこから士官が慌てて入ってくる。

邪魔されて不機嫌なマクシミリアンは、報告に来た士官を睨み付けながら問う。

 

「何事だ!?」

 

「ハッ、例の一団が残党が二手に分かれて我が陣地内に居ます。目撃者の証言と証拠写真があります!」

 

こちらを振り向く孝の横に立って、資料と写真を手渡す。

それを手に取ったマクシミリアンは書類を読み上げた後、写真を見て驚く。

 

「セルベリア・・・それに他のヴァルキュリア人達も・・・」

 

呟きながら見るマクシミリアン、孝は彼がどう思っているのかは分からない。

対策法を瞬時に打ち出したマクシミリアンは、その士官に指示した。

 

「この一団にはこちらに入りたいと願ってる反ワルキューレ派の連中を差し向けろ。首を届けたら仲間に入れてやると伝えておけ。その一団は軽歩兵二個小隊で充分だ」

 

「あんた・・・!」

 

的確に指示を飛ばすマクシミリアンを睨み付ける孝だが、隣にいた士官に足を蹴られ、バランスを崩してしまう。

 

「この餓鬼ぃ・・・相手は良く見てから言え!衛兵、来い!」

 

ガンホルスターから取り出したグロック17を突き付けながら衛兵を呼び、衛兵が孝を拘束したのを確認した後、マクシミリアンに向けて敬礼した。

 

「承知しました!では、失礼します!」

 

士官は後ろに振り返って、孝を連れて行く衛兵達の後へ続いた。

誰も部屋から居なくなった後。再びストアーが姿を現した。

 

「あれは小学校に居た連中か・・・で、その銀髪の髪の女が居る一団にあの小娘がいるのだろう?」

 

「そうだ・・・心配なら貴様も行けばいい。私はこれから太平洋に向かう。あのハナと話し合いを持ちかけられた」

 

それを聞いたソファーに足を組んで座るストアーはほくそ笑み、呟いた。

 

「話し合いで終われば良いのだがな。では、行ってくる」

 

椅子に座るマクシミリアンに告げたストアーはまた姿を消した。

椅子から立ち上がったマクシミリアンはハナとの交渉の為、部屋を出て、ヘリに乗る。

そして空から日本から少し離れた大きめの島に向かう。

その頃、各地から集まってきたワルキューレの戦力を纏めたハナは、ハワイからマクシミリアンと同じ島へと旗艦ヴァンガード級戦艦に乗って、ロンドン級重巡洋艦一隻、セイロン級軽巡洋艦三隻、C級駆逐艦六隻等で編成された艦隊で向かった。




短くてすいません(汗)。
忙しくなってきたのか、何かスランプに陥り掛けています。

ここからはワルキューレの権力闘争かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

放置された場所へ・・・

最近忙しくて頭が回りません・・・
ヤークトパンターのエース、ヘルマン・ビックスとパンターエースのエルンスト・バルクマン、161両撃破のマルティン・シュロイフを参戦させようと考えてる自分・・・
源文SF作品の敵キャラが参戦します。


パトロールに発見されたことをルリ達は気付かず、ただ敵陣の奥へと進んでいた。

上空にはホーカータイフーン十二機にその後ろからアブロランカスター九機が編隊を組んで彼女達の頭上を通過する。

空を見上げたローバックは驚いて口を開く。

 

「英空軍のランカスターじゃねぇか!俺の時代では空中給油機やパトロールに偵察が主な使い道だった」

 

「そ、そうですの・・・?」

 

イーディは爆撃機など見たことがない為、ローバックの言ったことが理解できなかった。

そのまま何事もなく進むルリ達であったが、後ろから複数のセンチネル巡航戦車が迫ってきた。

 

「戦車だ!伏せろ!!」

 

後衛のゲイツが叫んだ後、全員が茂み向かい、そこへ伏せた。

 

「少し声が大きかったんじゃないですか?」

 

「静かにしておかないと貴様から絞め殺すぞ」

 

目の前を通り過ぎていくセンチネル巡航戦車の車列を見ながら賢治がゲイツの声が大きかったことを言えば、隣にいる大男は脅した。

センチネル巡航戦車の次に、チャーチル歩兵戦車とカンガルー装甲兵員輸送車の車列が現れた。

足の遅いチャーチルを前にして進んでいる為、余りにも通り過ぎるのが遅い。

 

「早く通り過ぎろ・・・!」

 

茂みに隠れたトビーが、早く通り過ぎるよう聞こえないワルキューレの車列に伝える。

最後尾のM16対空自走砲が通り過ぎるのを確認したセルベリアは、手を挙げて全員が出てくるように指示する。

 

「英国の亀戦車だ。足は遅いが、装甲がやたら堅い。最後尾は結構やばい対空自走砲だ。4問の12.7㎜重機関銃は、俺達の身体をミンチにする」

 

アリシアはどれだけM16対空自走砲の攻撃がどれだけ凄いのかをカールから聞いた後、少し身震いする。

M16対空自走砲は別名ミートチョッパーと呼ばれている。

第二次世界大戦では、特に出番がなかったが、朝鮮戦争は地上射撃で活躍した。

人海戦術で押し寄せてくる中国人民解放軍の赤い津波に地上射撃が行われ、敵兵が原型をと止めないほどであった。

これが挽肉製造器(ミートチョッパー)と言う名前の夕来である。

彼女が辺りを見渡せば、まだ回収されていない奴らの死骸が残っており、血の跡が多数残されている。

戦後、自衛隊にも供与され、本車を退役させても銃架だけは使い続けている。

偵察機も車列の気配が無いと思ったルリ達は歩みを再開した。

暫し警戒しながら進み続ける中、真ん中を歩いていたルリが暇すぎたのか、歌を口ずさむ。

 

「何の歌だ?」

 

同じく中央を歩く平八がルリに何の歌なのかを問う。

 

「大戦中に兵隊さんが歌ってた奴です」

 

「そうか・・・みんな、辺りに敵の気配が居ない。歌おう」

 

平八が辺りを見渡して言った後、全員がルリが口ずさんでいた歌を静かに歌い始めた。

少し騒がしくないかとイムカは思ったのだが、リエラが肩に触れた。

 

「一緒に歌お?」

 

「静かに歌えば問題ないが・・・」

 

笑顔で行ってきた為に、イムカも一緒に歌い始めた。

不思議と気分が盛り上がり、ルリ達の足踏みは軽くなっていた。

敵がこのまま出てこないとルリ達は思っていたが、上空からスーパーマリンスピットファイアが一機来襲し、街道を進んでいた彼女等に機銃掃射を仕掛けてくる。

エンジン音を聞いたルリ達は慌てて街道から離れた。

携帯式対空ミサイルスティンガーを持つエイリアスが直ぐに撃墜してやろうとしたが、アリシアに首根っこを掴まれ、脇道に引き摺り込まれる。

 

戦闘機(スピット)だ!身を隠せ!」

 

「スピットって!?」

 

「今撃ってきたあの戦闘機のことだ!!」

 

ローバックが叫び、アリシアがスピットファイアについて聞けば、平八が答えるように叫ぶ。

スピットファイアは暫し飛び回って、ルリ達を探していたが、見つからないと判断して何処かへ飛び去っていった。

 

「ようやく去ったか。撃ち落としてやりたかったぜ」

 

「止めておけ。余計に注目を集めちまう」

 

トビーがレーザーをスピットファイアに向けたが、ゴーグルの隊員が止めた。

ルートを変更しようと考えたが、辺りから戦車の走行音が遠くの方から聞こえ、怒号まで聞こえてくる。

 

「敵が気付いた、こっちに来る!」

 

「それってやばいんじゃないですか?!」

 

STGが知らせ、それを聞いた賢治が大いに慌てる。

 

「落ち着け!しかし進む道は・・・」

 

慌てる賢治を落ち着かせたセルベリアは辺りを見渡し、脱出路を探る。

走行音が聞こえない方向に目を付けた。

 

「あそこに向かおう」

 

セルベリアが指を差した方向には敵影もなく、戦車も航空機のエンジン音も無く、敵兵の気配すら無い。

 

「あそこって、確かに敵兵の姿が見えないけど・・・」

 

「今は迷ってる暇はない。ここはセルベリアの言うとおり行くしかない」

 

向かう先に少し不安げなアリシアだが、イムカが周りの状況を見ながら敵影が無いと言うことで全員が向かうことにした。

 

「何もなければいいけど・・・」

 

リエラも不安だったが、ここに居ても殺されるだけなので、彼女も皆の後へついていくことにする。

それを監視している二人組が居た。

二人ともギリースーツを着ており、茂みに潜んでいる。

イジェマッシュSV-98を持った狙撃兵が一番後ろを歩くリエラに向けたが、もう一人に止められる。

 

「止めておけ。どうせ“あっち”に居る化け物共が始末してくれる」

 

「それもそうだな。本部に報告しておくか」

 

狙撃銃を下げた後、トランシーバーを取り出して自分の耳に当てた。

 

「こちらビギンズ2。羊の群れは狼の巣へ。オーバー」

 

『了解。ビギンズ2、任務は終了だ。帰投せよ』

 

「了解、現状の任務を終えて帰投する。ビギンズ2、アウト」

 

トランシーバーを仕舞ってから相方の肩を叩いた。

 

「帰れるぞ。さぁ、ビールでも飲んでリラックスだ」

 

「そうだな。どうなるんだろうな、あいつと小学生との交渉」

 

「知るか。この世界の総司令官がどっちになったかなんて」

 

マクシミリアンかハナの交渉がどうなるかを語りながら二人はこの場所から去っていった。

その頃、向かっている先が危険地帯だと気付かず、知らずに進んでいたルリ達は既に足を踏み入れていた。

 

「人気がしなくて気味が悪いですね・・・」

 

「変なこと言わないでくださいよ。何か出たらどうするんですか?」

 

辺りからする不気味な気配にバウアーが言った後、賢治が少しうろたえる。

熱源センサーを持っているSTG達が辺りに敵が潜んでいないかを確認し始める。

 

「以上は無さそうだ・・・敵兵一人も居ない」

 

バイザーを上げて全員に伝えた後、黒人の隊員が辺りからする異臭に苦言を漏らす。

 

「それにしても変な臭いがするぞ。健康に悪そうな臭いだ」

 

「ほんとだわ・・・これは何か腐った臭い・・・?」

 

ヤンも辺りからする異臭に嫌な顔をする。

 

「兎に角ここにいても埒があきませんわ。早く前に行った方が良いのでは?」

 

鼻を押さえながらイーディが告げると、セルベリアは周囲を見渡してから前に進んだ。

周りは以下にもゴーストタウンという雰囲気で、バウアーの言うとおり何かが出そうな感じだ。

そのまま前に進めば、何処か様子がおかしい多数の戦乙女が徘徊していた。

それを見たセルベリアはハンドサインで停止を命じ、こちらの存在に気付かない戦乙女達に警戒する。

 

「様子がおかしいな・・・まるで死人のようだ・・・」

 

もちろんセルベリアの言うとおり、この戦乙女は死人に近い状態だ。

しかし、まだ死んで居らず、正気を失っているだけである。

 

「どうします。やっちゃいますか?」

 

静かに隣まで来たバウアーの進めにセルベリアは却下する。

 

「駄目だ、強行しようにも敵の数が多い。何処かに迂回ルートは・・・?」

 

辺りを見渡して他に行く道が無いか調べている間に、上空から奇妙な物体がやって来た。

瓢箪(ひょうたん)みたいな形の真ん中に4枚の刃が回っており、下には機械の足が生えている。

その真下にはカメラのようなレンズが埋め込まれていた。

それを見たトビーは撃ち落としてやろうとレーザーを向けたが、STGに止められた。

 

「止せ、今撃ったりしたら気付かれる」

 

「偵察機だったらどうするんだ?STG」

 

「人間があんなの使うわけ無い」

 

ゴーグルの隊員が言ったことに納得したトビーはレーザーを下ろした。

その時、遠くの方から何かの足音が聞こえてきた。

 

「何の音だ?」

 

「こいつは・・・!」

 

エイリアスが足音に気付けば、ゲイツが身に覚えのある足音だと分かった。

 

「どうしたゲイツ、この足音を知っているのか?」

 

辺りを警戒しながら平八が聞けば、ゲイツは頷いた。

 

「あぁそうだ。こいつは俺が前居た世界の兵器だ」

 

ゲイツが答えた次の瞬間、卵に手足の生えた形をした近未来の戦闘兵器が現れた。

 

「こいつは何だ・・・?」

 

「卵・・・?」

 

カールとスージーが疑問に思ってる間に戦闘兵器の右手に付いた四門の銃口が火を噴いた。

 

「伏せろ!」

 

ゲイツが言うまでもなく射程内にいた全員が伏せ、手に持つ小火器等で反撃したが、全くライフル弾を受け付けなかった。

 

「こいつにこの世界のライフルや重機関銃の弾は効かない!対戦車兵器で応戦するんだ!!」

 

その場にいる全員にゲイツは戦ったことがある襲ってきた戦闘兵器の対策を説明した。

直ちにAT4を持つヤンが早速取り出して、戦闘兵器に構えた。

 

「ぶっ壊れろぉ!卵野郎!!」

 

男口調になったヤンは発射スイッチを押し、発射されたHEDP弾は見事命中、戦闘兵器を機能停止にさせた。

ちなみにFFVAT4は爆風の代わりに塩水を噴出する改良型のAT4-CSである。

道路に倒れた手足の付いた戦闘兵器は倒れ、全員が声を出してしまった。

 

『やったぞー!』

 

もちろんルリ達の行く先を封じていた戦乙女達がこちらに向かってきた。

 

「お客さんだ!撃ちまくれ!!」

 

BJが叫べば全員が手に持つ銃を向かってくる戦乙女達に撃った。

銃器の代わりに角材やシャベルなどの鈍器で襲ってきた戦乙女達は次々と銃弾の前に倒れていくが、頭を撃たれていない者は起き上がって再び襲ってくる。

 

「この嬢ちゃん達はゾンビと同じ類か!?」

 

「知るか!頭を狙え!!」

 

黒人の隊員が言えば、トビーが答える。

ものの数分で片付いた後、周囲を警戒しながら前進する。

 

「この街はどうなってんだ?生存者も居ないし、ゾンビすら居ない。代わりにいるのはゾンビみたいな嬢ちゃん達とヘンテコな兵器だけだ!」

 

STGが警戒しながら言うと、ホーマーがえらく興奮していた。

 

「二足歩行で戦車並みの装甲を持つ兵器に追い詰められるなんて・・・なんだかドキドキする・・・!」

 

「別にお前の性癖を聞いてる訳じゃない」

 

興奮しながら言うホーマーに、BJが冷静なツッコミを入れる。

また足音が聞こえてきた為、一時止まって周囲にいないか確認する。

 

「居た。また例の卵だ」

 

セルベリアが見付けた後、あの兵器についてゲイツが説明する。

 

「あれはソビエトの二足歩行型の戦闘型だ。装甲は戦車並み。操っているのはロボトミー手術を受けた兵士で、躊躇いも一切無い。左腕のマニピュレイターは外出着を着た人間を一突きで殺せる」

 

「何を言っているのか全然分かりませんわ・・・」

 

リコルスはゲイツの言っている事がさっぱり理解できなかった。

パンツァーファウストを持ったバウアーが、安全装置を外し、こちらに気付かない戦闘型に向けて構える。

 

「(こちらに気付かないように・・・!)」

 

発射ボタンに親指をかけた後、後ろに誰か居ないか確認し、誰も居ないことが分かると、発射ボタンを押した。

飛ばされた弾頭は戦闘型の背中に命中し、撃破できた。

 

「撃破確認!調べてきます!」

 

倒れた戦闘型に向かうバウアーに、ゲイツが注意する。

 

「気を付けろ。乗ってる奴は凶暴だ!!」

 

Stg44を上部ハッチに向けて構え、STG達が開ける。

 

「どんな面をしてるんだ?」

 

ゴーグルの隊員がハッチを開ければ、そこから人工眼鏡を埋め込まれた人間が出て来た。

 

「なんだこいつは・・・?」

 

出て来た謎の人間にレーザーを構えたが、体温が感じられないと判断した後、レーザーやStg44を下ろした。

そんな彼等にゲイツが近付く。

 

「そいつはロボトミー手術を受けたソ連の兵士(ソルジャー)だ」

 

「人間をこういう風に改造するなんて・・・」

 

「私達も変わらないだろう」

 

ゴーグルの隊員が言った言葉にSTG達は納得する。

一同は死体を放置して前に進んだ。




次回はヴァルキュリア現るです。
それとゲイツ、ワルキューレを聞きながらコマンドー化。

さりげなくネタバレしちまったな・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヴァルキュリアとワルキューレの歌声が聞こえる時

仕事の忙しさでスランプ気味です・・・


街を抜けたルリ達を待っていたのは多数の旧ソ連時代の様々な戦闘車両だった。

上空には多数のMi-24Vが飛んでおり、歩兵の数も尋常じゃない。

これを双眼鏡で見ていたカールは、セルベリアにどうするか問う。

 

「どうする。強行突破でもするか?」

 

もちろんあれ程の敵の数に強行突破などしない。

 

「するわけがないだろう。だが、ここを潜り抜けなければあの基地には行けない」

 

圧倒的な敵戦力の後ろにある基地にセルベリアは指を差した。

行く手を塞ぐ敵軍をどうにかしない限り孝達もとい小室一行の救出は行えない。

どうするか考えてる間にエイリアスが彼女の隣に来た。

 

「どうした?」

 

「向こうに槍と盾があったぞ」

 

「槍と盾・・・?」

 

それが気になったセルベリアは、監視をカールに任せてエイリアスの後へ続いた。

案内された場所には槍と盾は無かったが、エイリアスが指を差した方向を見ていれば、放棄されたビルの屋上に四人分の槍と盾があった。

 

「あれは・・・!」

 

双眼鏡で良く確かめたセルベリアはそれが見覚えのある物だと気付く。

それは生前自身の秘められた能力を解放するヴァルキュリアの槍と盾であり、形もそのままだった。

直ぐに自分と同じヴァルキュリア人であるアリシアとリエラに知らせる。

呼び出された彼女達は、屋上に今起きている問題を片付けられる物が置かれていることに驚き、直ぐに取りに行こうとしたが、ローバックに止められた。

 

「やめときな、嬢ちゃん達。あれが見えないのか?」

 

ローバックから渡された双眼鏡でビルの周囲を見てみれば、機械と生体が合体した機械なのか生命体なのか分からない物が多数彷徨いており、犬型の戦闘ロボや、先程交戦したソ連の戦闘型も居る。

 

「そんな・・・」

 

「それだけじゃないぜ。向こうも見てみろ」

 

絶望するリエラに、ローバックが浮遊している戦車のような六角形の乗り物が数台ほど彷徨いている。

頼みの綱である槍と盾の入手はもはや絶望的であった。

犬と交戦したことがあるゲイツはこの場にいる全員に対処法を説明した。

 

「あの生命体だか機械だか浮遊する戦車のことは分からないが、犬ことは分かってる。口からレーザーを撃ってくるソ連の索敵型だ」

 

「レーザーを撃ってくるだって?それじゃあ、俺達の防護スーツを貫くじゃないか!」

 

黒人の隊員が、犬型の戦闘ロボがレーザーを撃ってくることを知ると、文句を言う。

 

「そんなの第二次世界大戦まで来るときに何度もあっただろう。忘れたのか?」

 

STGが言った後、黒人の隊員は静かになった。

どうやって敵に気付かれず、槍と盾を入手するのかを考えている間に、女性の悲鳴が聞こえた。

何事かと全員がその場に向かえば、全身銃創だらけのロシア人の女性がワルキューレの軽歩兵の首を掴んで内蔵を引き抜いている所だった。

これまで生き延びてきた賢治とイーディにリコルスであったが、流石にこれは見たことがなかったのかその場で嘔吐している。

 

「あれはなんだ・・・!?」

 

「ソ連のアンドロイドだ。人工皮膚と肉をもった超合金のアンドロイド。以前こいつに俺の部下がやられた」

 

平八が言うと、ゲイツがアンドロイドについて説明した。

その女性型アンドロイドの周りには軽歩兵の死体が多数転がっており、腕や脚が引き千切られて、無惨な死に方をしている。

 

「酷いことを・・・!」

 

「奴らには感情はない。全く誰がこの世界にあんな物を・・・!」

 

BJが口を押さえながら言えば、ゲイツが拳を握り、悔しながら言った。

 

「倒す方法とか、無いんですか?」

 

バウアーがゲイツにアンドロイドの倒し方を聞くと、彼はあると答えた。

 

「あるにはあるが・・・液体ヘリウムが無いと倒せない・・・」

 

そのゲイツが言った事にSTG達は自分らが倒せると分かり、レーザーに指差しながらゲイツに告げた。

 

「レーザーならあるぜ?」

 

「液体ヘリウムで凍らせるよりも、こっちの方が効率が良い!」

 

「それもそうだったな・・・()るなら静かにやってくれよ?」

 

「分かってるさ」

 

視線を向けたゲイツにSTGはピースサインをしながら答え、最後の戦乙女を始末したアンドロイドが居る場所へ向かった。

バイザーの熱源センサーで、アンドロイドの体温を見れば、生きている人間と変わりないことに気付き、ゴーグルの隊員は声に出してしまう。

 

「凄いよSTG。彼女はあれだけ撃たれているにも関わらず、体温は通常の人間と同じだ」

 

「バイオテクノロジーの驚異的進化だな。一斉射撃で仕留める。俺が撃てと言ったら撃て」

 

アンドロイドに気付かれないようにマイク越しで言った後、隊員達は配置に着き、アンドロイドに狙いを付けた。

 

「爆発させるなよ・・・?」

 

レーザーを構える隊員達に告げると、全員が頷いてから数秒後銃口からレーザーが発射され、静かにアンドロイドの撃破に成功した。

それと同時にハイトのP-40キティホーク4が上空から現れ、ルリ達の頭上を通過する。

 

「またワルキューレの空襲か!?」

 

「なんだか違うような気が・・・」

 

驚いた全員が地面に伏せた後、バウアーが頭上を通り過ぎたP-40の様子がおかしいことに気付く。

一方、そのP-40に乗ったハイトは、見覚えのある敵がこの地球に居ることに驚き、声を上げる。

 

「あれは創造主の戦車!?それに歩兵タイプまで・・・見慣れないタイプもいるけど・・・」

 

ハイトは目の前に見える見覚えがある敵に見取れている間に、中東軍の対空砲や、下にいる異性物や戦闘型によるレーザー攻撃を受ける。

 

「攻撃されてる!?」

 

士官候補生時代で学んだ回避術をしながらハイトは敵からの対空射撃を必死に避けた。

当然ながらP-40にフレアが積んでるわけがないので、対空ミサイルが来ないことを彼女は必死に願う。

 

「あれを潰しておけば少しは楽になるかしら?」

 

レーザーを撃ってくる敵戦車の弱点を知ったハイトは敵の対空射撃を避けながら、機銃の安全装置を外し、戦車のフィンに向けて六門の12.7㎜機関銃を撃ち込んだ。

人体を軽く引き千切る12.7㎜弾を何発かフィンに食らった戦車は磁場崩壊を起こし、ただの鉄の塊となった。

 

「やった!徹甲弾が通じた!!次も・・・!」

 

レーザー攻撃を避けながらハイトは次の獲物を狙う。

それを見ていたセルベリアはこれがチャンスだと思い、アリシア、リエラ、エイリアス、イムカと共に槍と盾があるビルに向かう。

ハイトの活躍ぶりに唖然していたBJは彼女達を止めようとしていたが、既に遅かった。

 

「おい、待てよ!行ったら奴らに・・・」

 

その声はルリ達の存在に気付いた中東軍のJS-3の砲撃で掻き消された。

それから連続して中東軍からの攻撃が来る。

 

「敵戦車と装甲車が多数接近!ヘリも歩兵もわんさか来るぞ!」

 

「反撃しろ!スモークを投げろ!!」

 

カールの報告に、ゲイツがセルベリアの代わりに指示を出した。

上空ではハイトのP-40が対空射撃で撃墜され、ヴァルキュリアの槍と盾があるビルの近くまで墜落する。

墜落した機体を調べようと、ビルの付近にいた索敵型や戦闘型、奇妙な機械生命体がハイトの元へ向かおうとしていたが、バレットM82A1に持ち替えたセルベリアが手短に居た機械生命体に向けて撃った。

走りながらの射撃である為か、中心部に命中、辛うじて倒すことが出来たが、索敵型がアリシア達に向けてレーザーを撃ってくる。

 

「クッ、この・・・!」

 

頬にレーザーを掠めたアリシアは、M4A1カービンのフルオート射撃で索敵型を破壊する。

彼女等の存在に気付いたこの時代には合わない兵器群が、一斉にレーザー攻撃や機関銃で攻撃してくる。

バールに徹甲弾を装填したイムカは戦闘型に狙いを付け、引き金を引いて発射。

見事戦闘型を撃破した後、階段へと先に入ったヴァルキュリア人達に先に行くよう告げる。

 

「先に行け、ここは私が食い止める!!」

 

「それじゃイムカが・・・!」

 

「大丈夫だ。この程度の数、どうってことはない・・・!」

 

笑顔で答えたイムカが敵側の方へ振り返った瞬間、飛んできたミサイルがリエラの前に着弾し、イムカを助けられなくなる。

少し火傷してしまったリエラであったが、槍と盾を手に入れない以上、助けられないと分かり、直ぐに屋上へと上がる。

その途中、ナチゾンビアーミーが行く手を遮るように現れる。

無論、彼女達は自分達が持つ銃で行く手を遮るゾンビを撃って強行突破する。

ゾンビは何故かコンクリートの床から這い出てくるが、彼女達は問答無用で撃ち殺す。

そして一気に屋上に到着し、もう少しで槍と盾が手に入る。

一番先頭にいたアリシアが手を伸ばし、槍と盾を持った。

手に取った瞬間、槍に埋め込まれていた青い鉱物が光だし、アリシアの全身を覆い、髪と瞳が銀髪赤眼に変わっていく。

マシンガンゾンビが変貌したアリシアにMG42で撃ったが、全く彼女には効いていなかった。

そのまま槍に串刺しにされ、元の死体に戻される。

中東軍からの砲撃を受けながらもビルの屋上が光っていることに気付いたルリ達は唖然し、中東軍も攻撃を止めて、その光に目を取られる。

 

「なんだあの光は・・・!?」

 

唖然するカール、その光に見覚えのあるイーディが叫んだ。

 

「あの光は・・・ヴァルキュリア人の物ですわ!」

 

「ヴァルキュリア人?戦乙女(ワルキューレ)の一人の名前か?」

 

聞き慣れない単語にBJがイーディに質問した。

 

「違いますわ。私達の世界で、最強の人種と呼ばれている伝説的な民族ですわ!」

 

この場でヴァルキュリア人を知らない者達に説明するイーディであったが、途中でマリーナに止められてしまう。

 

「同時にヨーロッパの覇者と呼ばれている・・・」

 

「台詞を取らないでくださいまし!」

 

自分の上官であるイーディに怒られながらもただ黙っているマリーナ。

粗方、ヴァルキュリア人のことが分かったBJ達は、いつの間にかゲイツが居ないことに気付いた。

 

「おい、ゲイツの奴が居ないぞ!」

 

「あの人ならワルキューレの歌声が聞こえるとか言って、敵陣に突っ込みましたけど」

 

ゲイツを探し回り、声に出すローバックに答えるように、ルリが知らせる。

 

「どうして言わなかったんだ?!」

 

「だって・・・イーディさんが話してる最中だったし・・・」

 

「私の所為ですの!?」

 

ローバックに怒られるルリが答え、イーディは自分の所為にされたと叫ぶ。

そんな彼等は放っておき、槍と盾を入手してヴァルキュリア人に覚醒した四人は、襲ってきたこの時代ではオーバーテクノロジーな兵器達を造作もなく破壊していく。

リエラは真っ先にイムカの救出に向かった。

行く手を遮るように現れたゾンビ達を排除しながら進む。

 

「退けぇー!」

 

光の速さでイムカの元へ着いたリエラは直ぐさまその場にいた戦闘型や索敵型を槍の先端を向け、連続したビームで全て排除する。

一発一発のビームの火力が尋常ではないので、装甲が意味をなさない。

全ての敵を排除したリエラは、イムカに寄り添う。

 

「大丈夫、イムカ?」

 

「問題ない・・・このまま・・・」

 

ヴァールを杖代わりにして立ち上がろうとするイムカの脇腹から血が出ているのを見たリエラは、直ぐに止める。

 

「負傷してるじゃない!それに血がこんなに・・・!」

 

「問題ないと言っている・・・!クッ・・・!」

 

「駄目よ!これ以上戦ったらイムカが死んじゃう!これで止血して!邪魔な奴はみんな片付けたから!」

 

無理をして立ち上がろうとするイムカに、リエラはポケットから取り出した治療器具を渡し、イムカを座らせる。

 

「じっとしててね、直ぐに終わらせてくるから・・・!」

 

壁にもたれ掛かって座り、自分で治療を行うイムカにそう伝え、リエラは戦場に向かった。

ハイト救出に向かったエイリアスは、彼女にトドメを差そうとしている敵を鞭状にもなる槍で次々と排除していく。

浮遊した戦車ですら、立った一振りで大破する。

墜落したP-40から見ていたハイトは、青い炎を纏った少女が自分からしたら難敵だった生命型機械を意図も簡単に粉砕する姿を見て驚きを隠せないでいた。

 

「一体何がどうなってるのよ・・・!?」

 

今、ハイとが言える事はそれしかなかった。

一分もしないうちに敵を全滅させたエイリアスはハイトをコクピットから出す。

 

「助けに来たぞ。お姉ちゃん、大丈夫?」

 

何かに引っ掛かって開かなかったキャノピーを瞬時に外したエイリアスは、ハイトが無事かどうか問う。

 

「大丈夫よ。それより貴方は一体・・・?」

 

自力で立ち上がって、エイリアスに質問した。

 

「う~ん、今は忙しいから後で答えるね。それじゃ」

 

ハイトの質問に答えず、エイリアスは光の速さで戦場へと向かった。

連続した長期現象に、ハイトは頭を抱えてその場に倒れ込んだ。

 

「頭でも打ったのかしら・・・?」

 

後ほど、その超人が実際に存在していることに驚くハイトなのであった。

一方、主戦場に降り立ったアリシアとセルベリアは、中東軍の前に居た。

 

「なんだこの女達は・・・!?」

 

「あ、青く燃えているぞ!」

 

二人の異様さに戸惑う中東軍の兵士達であったが、指揮官の言葉で纏まる。

 

『怯むなぁー!敵はたったの二人だぞっ!!撃てぇー!!!』

 

指揮官がアリシアとセルベリアに攻撃するように拡声器を使って指示を出した。

命令を受けた中東軍は二人に一斉射撃を行う。

T-55の56口径100mmライフル砲D-10T2Sの砲声が鳴り響いた後、連続して122㎜や85㎜の戦車砲が唸りを上げる。

さらにカチューシャによるロケット攻撃も開始され、上空からもMi-24Vのロケットやミサイル攻撃が始まる。

機関砲や小火器による攻撃も開始され、二人が人間ならば、確実に跡形もなく消えているはずだった。

凄まじい攻撃が止み、衝撃で起こった爆煙が晴れていく。

 

「やったか?」

 

戦車兵の一人が言った後、土煙からうっすらと青い光が見えることに、それに気付いたAKMを持った歩兵の一人が叫んだ。

 

「まだ生きてるぞ!!」

 

その直後、爆煙の中から強力な水色のビームが上空を飛ぶMi-24Vに命中し、貫通した後、空中爆発を起こした。

ビームの衝撃で爆煙が晴れ、そこからアリシアとセルベリアが中東軍に突っ込んでくる。

 

『撃てっ!撃ち殺せぃ!!』

 

指揮官が拡声器に叫ぶよう指示した後、時間が止まったかのように固まっていた中東軍はアリシアとセルベリアに向けて一斉射撃が行われる。

ヴァルキュリア人となった彼女達には全くの無意味だ。

一振りで多数の歩兵が吹き飛ばされ、先方に居た数量のT-34/85が連射ビームを食らって大破する。

上空に居たMi-24Vは飛び上がったアリシアに次々と撃ち落とされていく。

重装甲のIS-3ですら意図も簡単に粉砕されていくのを見て、中東軍は恐怖のどん底に叩き落とされる。

 

「ば、化け物だ!」

 

「悪魔だ!青い炎を纏った悪魔だ!!」

 

次々と破壊されていく味方の戦闘車両を見た歩兵は我先へと武器を置いて逃げ出し始める。

指揮車に乗っていた指揮官も、自分の所に来るのではないのかと思ってしまい、叫びながら次々と逃げ出していく兵士達と共に逃げ出す。

 

「うわぁー!助けてくれー!!」

 

指揮官がパニックを起こして逃げ出した為、中東軍は混乱を極め、さらにやって来たリエラとエイリアスに各個撃破されていく。

それを見ていたルリ達は、ただ唖然しているしかなかった。

一方、ゲイツは何処から手に入れたPKMと4連装ロケットランチャーを担いで、前哨基地を一人で襲撃していた。

 

「ワルキューレが聞こえる・・・!」

 

ゲイツの脳内には洋楽のワルキューレが響いていた。

今のゲイツはワンマンアーミー、パンツァーゲイツに覚醒している。

立ち向かった敵兵が次々とPKMの乱射で倒れていき、ロケットランチャーの攻撃で、停車していた装甲車が大破する。

ヴァルキュリア人にも負けないような活躍をしていた。

最後の敵兵が倒れた瞬間、ゲイツはPKMとロケットランチャーを捨て、デザートイーグルを取り出し、基地司令官が居る部屋に突入した。

 

「敵が入ってきたぞ!撃ち殺すんだ!!」

 

部屋の中にいた数人の中東兵がゲイツに向けて56式自動歩兵槍を撃とうとしたが、その前にデザートイーグルで頭を吹き飛ばされていく。

そして最後に残ったのは基地司令官だけとなった。

 

「た、頼む!命だけは!!」

 

命乞いをする基地司令官は机の下から自動拳銃を取り出そうとしたが、あっさりとゲイツに見破られ、その場にあった大きめな木の破片を投げ付けられた。

胸に破片が刺さった基地司令官は呻き声を上げながら崩れ落ち、動かなくなった。




次回は敵陣に攻撃するリヒター達を書こうかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敵陣へ突入

一方のリヒター達は、敵陣に攻撃できるほどの戦力が集まった。

ここに居る全ての部隊の司令官を集め、作戦会議を行う。

テーブルの上に置かれた地図に指を差しながら、リヒターがどう攻撃するのかを説明する。

 

「あなた方の時代の兵器はあなた方で相手をして貰おう。我々は我々の時代の兵器を相手をする」

 

周りにいる部隊の指揮官達に告げた後、パッキーとSEALsの隊員達にスコルツェニーの方を見る。

 

「君達は敵の後方に回り込み、砲撃陣地を破壊してくれ。我々が来るまで持ちこたえてくれ」

 

「「了解(イエッサー)」」

 

了解(ヤヴォール)

 

その後、5分に及ぶ詳しい作戦の説明が行われ、それが終われば攻撃の準備が行われた。

まず、後からやって来た米陸軍の第1機甲師団と陸上自衛隊の機甲部隊は、第82空挺師団と共に現代的な兵器を揃えている陣地を攻撃する。

リヒター率いる第二次大戦の兵器群は同じ時代の兵器を相手にするのだ。

パッキーにスコルツェニー、SEALsは敵後方に回り込み、陣地破壊や攪乱攻撃を行い、リヒター達の到着を待つ。

攻撃準備が充分に整った後、ワルキューレの陣地からB-29、B-17、B-25などの爆撃機を中心とした大編隊が、リヒター達の居る陣地に迫って来た。

 

爆撃機(ボンバー)の大群だ!』

 

対空監視をしていたドイツ兵が叫んだ後、アメリカ軍や自衛隊の陣地かた一斉に対空ミサイルが爆撃機の大編隊に飛んでいく。

 

「この時代の対空兵器は凄いな・・・!」

 

対空ミサイルに当たって次々と墜落していく爆撃機を見て、発展型のティーガーⅡのキューポラから見ていたバウアーが呟く。

慌てて逃げていく爆撃機の残りを追うかのように、韓国から日本の駐屯地に避難してきたアメリカ空軍の第8戦闘航空団のF-16が多数現れ、逃げる爆撃機に追い打ちを掛ける。

これを見ていたリヒター達は、「この時代の軍隊と対峙することになっていたらこうなっていたであろう」と確信した。

その次に米日の連合部隊がまず初めに前進、その次に突撃隊長が乗った先頭のティーガーⅠが敵陣へと進んだ。

後に続くようにバウアーやパイパー達が乗る戦車や装甲車両群がエンジンを呻らせ、先頭のティーガーⅠに続く。

それと同時にアメリカ空軍や航空自衛隊による敵陣地爆撃が行われた。

 

「敵が可哀想になってきた・・・」

 

Ⅲ号突撃砲G型から凄まじい地上攻撃を受ける敵陣を見ながらハーゲンが呟く。

味方の砲撃陣地からも砲撃が始まり、敵の防衛陣地はおそらく地獄絵図と化しているだろう。

パイパーが双眼鏡で敵陣を覗き、Sd.Kfz.251/6装甲指揮車から見る。

 

「歩兵は塹壕に隠れて凌いでるな・・・戦車も塹壕に隠れてまだまだ元気みたいだ」

 

塹壕から湧き出るように、米日の機甲部隊の迎撃に向かう第一~第三世代の戦車を見ながらパイパーは呟いた。

やがて連続した砲声も聞こえ、現代の戦車戦が行われが、戦前の兵器しか持たないパイパー達は参加しない。

 

「このまま簡単に敵陣を落とせれば良いけどな・・・」

 

現代的の戦闘を見ながらパイパーがまた呟いた後、彼等の行く手を塞ぐかのように大戦時に使用されていたイギリス連邦軍の戦車や対戦車車両、航空機などが現れた。

 

「いきなりヤーボで出迎えか!」

 

パイパーが叫んだのと同時に彼等の対空車両や戦闘機が敵航空機の迎撃に向かう。

IS-2重戦車の車長を担当していたゴロドクが、自身の車両に砲を向けるシャーマン・ファイアフライに撃つよう指示を出す。

 

「目標は1時方向にいるあの長い砲身のシャーマンだ。絶対に外すなよ!撃て!!」

 

照準手がシャーマン・ファイアフライに狙いを付けて、引き金を引いた後、122㎜砲弾が真っ直ぐ飛んでいき、英国仕様のシャーマンをスクラップに変える。

 

「凄いな、この122㎜砲は!これならタイガー戦車だって一撃だぜ!!」

 

ゴロドクが122㎜砲の威力に感心している間に、その目の前でハーゲンのⅢ号突撃砲がセンチネル巡航戦車を破壊したのを見て、悔しがる。

 

「あのキャベツ頭のペテン師野郎!俺の目の前で獲物を潰しやがった!次の標的に照準しろ!!」

 

悔しがるゴロドクは乗員達に指示を飛ばす。

一方のハーゲンは次々と目に見える敵車両を手当たり次第攻撃していた。

 

「目標11時の対戦車自走砲、ファイヤー!」

 

側面から砲撃を受けたアーチャーは大破、次にラム巡航戦車に75㎜戦車砲を向ける。

 

「次はカナダのM4もどきだ!ファイヤー!」

 

装填手が徹甲弾の装填を終えたのを同時にラム巡航戦車に向けて、48口径の75㎜戦車砲が向けられたのと同時に砲声が唸り、見事撃破に成功する。

逆福マークを付けた正徳とゾーレッツのティーガーⅠも奮闘していた。

 

「2方向よりM3中戦車!」

 

「目視した!」

 

こちらに向けて砲撃してくるM3A5リー中戦車に照準を合わせ、発射ペダルを踏んだ。

88㎜の砲声が唸り、忽ちM3リー中戦車を鉄屑に変える。

そのまま次の目標に砲を合わせ、再び砲声が唸りを上げる。

 

「ヴィットマンと佐武郎は中々やるな。俺達も負けられんぞ、戦車前へ(パンツァー・フォー)!」

 

次々と撃墜スコアを上げていくヴィットマンとティーガーⅠと佐武郎の四式中戦車を見て、バウアーが微笑み、自信も指示を出して前に出る。

 

「徹甲弾装填、目標は2時にいるチャーチル歩兵戦車だ!」

 

砲を向けて砲撃してくるチャーチル歩兵戦車を見ながらバウアーが指示を出す。

装填手が徹甲弾を装填したのを確認した照準手は、チャーチルに狙いを定めてバウアーに報告する。

 

「照準完了、何時でも吹き飛ばせます!」

 

「よろしい!では、ファイヤー!」

 

バウアーが指示を出したのと同時に発射ペダルが強く踏まれ、それと同時に回避行動を取ろうとしていたチャーチルに命中し、その亀のような重装甲を貫いて弾薬庫に徹甲弾が行き届き、内部爆発を起こさせる。

次にこちらへ向けてPIAT(ピアット)を向ける軽歩兵に砲を向けるよう指示を出す。

 

「英軍の対戦車火器を向けたお嬢さん(フロイライン)が居るぞ!機銃で大人しくして貰え!」

 

その指示に従って砲を急いで回転させた照準手は、照準器にブロンディヘルメットを被ってこちらにPIATを向ける二人組の女性兵士に向けてMG42砲塔搭載機銃で撃ち倒す。

電気ノコギリのようなMG42の射撃を食らった軽歩兵の腕が吹き飛び、直ぐに息絶えた。

それと同時に前面装甲に敵戦車からの砲撃を弾く。

 

「前方にM4シャーマン五両だ!クルツ!こちらに加勢しろ!!」

 

『ヤヴォール!』

 

砲身がシャーマンが居る方向に旋回している間にパンターとは思えない速度でクルツのパンターG型がやって来た。

目の前に居たM5A1軽戦車に体当たりして吹き飛ばし、無理矢理パンターを静止させる。

彼が乗るパンターのエンジンはガスタービンであり、それ故に操縦手にはかなりのドライバーテクニックが要される。

バウアーのティーガーⅡの後ろに回ろうとしたM4A2シャーマンは直ぐにクルツのパンターによって撃破された。

残りのシャーマンも残らず黒騎士中隊の残ったメンバーに撃破されていく。

その頃、敵の後方地帯に潜入したパッキー達は、邪魔な敵兵を殺しながら砲撃陣地に向けて手榴弾を投げまくっていた。

 

「野戦砲ならび榴弾砲全て沈黙!」

 

「よし!パイパー大佐達が来るまで適当に暴れまくれ!!」

 

降下猟兵が知らせた後、スコルツェニーがStg44を乱射しながら指示を出した。

その後、潜入部隊は周囲から湧き出るように出て来る敵歩兵を次々と撃ち殺す。

 

「殆ど前線に回ってるんじゃなかったのか!?うじゃうじゃと沸いて出て来るんだが!」

 

ボタスキーが遮蔽物に隠れ、M16A1を抱えながらMP5SD6を持った隣にいたラッツに聞く。

 

「知るか!パイパー達が来るまで耐え切れ!それと兎に角敵を撃ってろ!!」

 

そうボタスキーに告げ、ラッツは側面から回り込んできた敵兵に向けてMP5を乱射した。

ボタスキーが居る側面からも敵兵が出て来たが、チコのM16A1の乱射で全員地面に倒れる。

 

「ボタスキー、周囲確認を忘れちゃ駄目」

 

「分かってるよ!」

 

遮蔽物に向けて機関銃を撃ち続けている敵兵に向けてM16をセミにして撃った。

頭に5.56㎜弾を食らった敵兵は機関銃から手を離して、地面に倒れる。

パッキーもかなりの数の敵を相手に奮闘していた。

M653をセミにして、次々と出て来る敵を撃ち殺していく。

その時、一人のSEALs隊員が、ルリ達が向かった方向に指を差して叫んだ。

 

「敵の増援だ!」

 

その頃、仮眠を取っていたオドレイは起こされ、指揮所に入った後、大分混乱していた。

外から聞こえてくる砲声や爆発音が聞こえてくる中、彼女は何事かと近くにいた士官に問い質す。

 

「一体何が起きてるのですか?!」

 

「米軍と自衛隊が攻撃してきました!それに後方から特殊部隊の急襲です!!」

 

これを聞いたオドレイは、士官の両肩を掴んで凄い剣幕で問う。

 

「何故後方からの潜入を許したのです!あれ程警戒しろと言っておいたはず!!」

 

「そんなの知りません!」

 

士官はオドレイから腕を退けた後、何処かへ向かった。

戦況を報告する画面を見れば、味方部隊が次々と消えていくのが見える。

オドレイは指揮を執っている副官を呼んだ。

 

「オドレイ司令、お目覚めになられましたか!戦況は」

 

「そんな事はアレを見れば分かります!私は後方に入り込んだ鼠を戻ってきた部隊と共に始末します!貴女にここの指揮を任せます!」

 

「え!?は、ハッ!」

 

副官は敬礼した後、オドレイはそのまま兵器貯蔵庫へ向かった。




次は源文勢VSオドレイかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現代戦車VSWWⅡ戦車

第三世代戦車に第二次世界大戦の戦車は勝てないね。


次々と防衛戦を突破していくパイパー連合部隊、そのままパッキー達が居る本陣まで到達し、彼等を襲う複数のセンチュリオン中戦車Mk5と巡航戦車クロムウェルと交戦状態になる。

 

「気を付けろ!見たこともない型だ!!」

 

Sd.Kfz.251/6装甲指揮車からセンチュリオンを発見したパイパーは直ぐに全部隊に知らせる。

その数秒後には66.7口径20ポンドライフル砲MkⅡの砲声が響き、IS-2スターリンが大破した。

 

「何という火力だ!動き回れっ!!」

 

戦後戦車の火力の高さに驚いたアレクセイは、直ぐに回避行動を取るよう指示を出す。

何台かがセンチュリオンの餌食になっていくが、火力強化されたバウアー達の戦車によって撃破される。

IS-2の車内から状況を見ていたゴロドクは調子付いていた。

 

「ハッハッハッ!焦っちまったが、こいつの砲に掛かればあの戦車も対したことはないな!」

 

次々と破壊されていくセンチュリオンやクロムウェルを見て、大笑いするゴロドクであったが、一発の砲撃で慌て始める。

 

「な、なんだぁ!?一体何処からの砲撃だ!?」

 

車内で周囲を見渡すゴロドクは、こちらへ向かってくる車両群を見付けた。

 

「見たこともない型だ・・・」

 

ハルスが呟いた後、ジェイコブが顔を真っ青にして、一番先頭にいる戦車の名を口にした。

 

「あ、あれはレオパルト2じゃないか・・・!」

 

そのレオパルト2はオドレイが乗るA6ML型である。

ゾーレッツ達のティーガーに乗る山本の顔は真っ青であった。

 

「よりにもよってA6のオランダ陸軍仕様かよ・・・!勝てるわけがないよ・・・!」

 

山本が言うとおり大戦中の戦車が戦後の戦車、しかも高性能な第三世代戦車に束になっても勝てるはずも無い。

レオパルド2の後続の戦車はチャレンジャー1で、随伴歩兵の装備は先進国の兵隊並みだ。

日米同盟軍がここに来ない限りどう足掻いてもこちらの負けは確定である。

それでもパイパー達は戦うしかなかった。

 

「やるしかあるまい・・・!戦車前進(パンツァー・フォー)、右側のを片付ける!」

 

バウアーはこちらに砲を向けるチャレンジャー1に狙いを付けた。

 

「履帯を狙え!そうすれば少しは勝てるはずだ!」

 

照準手に指示を出せば、照準手がチャレンジャー1の履帯に向けて撃った。

動かずにⅣ号戦車J型やT-34/85を片付けていたチャレンジャー1の履帯に105㎜徹甲弾が命中した。

身動きが取れなくなったチャレンジャー1はヤークトティーガーの128㎜戦車砲やIS-2の122㎜砲の一斉射撃を受けて大破する。

 

「見たか!122㎜の力を!」

 

何の攻撃もしてなかったゴロドクが言うが、彼のIS-2はオドレイのレオパルト2A6の55口径120mm滑腔砲Rh120-L55の砲弾を食らって、激しく横転する。

 

「うぉぉ・・・何という火力だ・・・!」

 

激しく燃え上がるIS-2から生き残った乗員達と出たゴロドクは戦後戦車の恐ろしさを知り、驚愕する。

 

「クソぉ、化け物めっ!!」

 

次にハーゲンのⅢ号突撃砲G型がレオパルトに挑んだが、側面を撃たれて激しく引っ繰り返った。

 

「こいつはどんな大砲を積んでるんだ!?教えろ山本!」

 

引っ繰り返った車内で無線機でゾーレッツ達の逆福ティーガーに乗る山本に問うハーゲン、無線手からの知らせで直ぐに山本は答えた。

 

「あぁ、はい!ドイツの第三世代戦車レオパルト2A6です!」

 

「ドイツだって!?あれはこの時代のドイツの主力戦車なのか?!」

 

同じ車内にいたゾーレッツは驚きを隠せないで居た。

他のドイツ軍人達も驚きである。

 

「えぇそうです!しかもオランダに輸入されたMLタイプです!束になっても勝てるかどうか・・・」

 

思い詰める山本に正徳が彼の肩に手を添えた。

 

「やってみるしかないだろう、山本。それと、レオパルトの他にも戦車が居ただろう。何処の国のだ?」

 

質問してきた正徳に直ぐに山本は答える。

 

「イギリスのチャレンジャー1です!」

 

「イギリス?と、言うことは英軍(トミー)の戦後の戦車か」

 

ゾーレッツが周りを警戒しながら言った後、山本が頷く。

 

「そうです。戦後だからと言って、側面の装甲を薄いですし、エンジンをやれば大戦中の戦車でも勝てる見込みが・・・」

 

山本の答えにドイツ軍人達と他の国の軍人達も勇気づけられた。

その間、味方の戦車は次々とレオパルト2やチャレンジャー1、歩兵の最新式の対戦車兵器の餌食になっていく。

 

「この化け物が!側面に88㎜をぶち込んでやれっ!」

 

ブルクハイトが砲身を別のパンターG型に向けているレオパルト2A6に向けて砲撃を命じた。

ティーガーから放たれた88㎜徹甲弾がレオパルト2A6に命中したが、弾かれてしまう。

 

「化け物だ!正面は|皆《みんな)跳ねちまうよ!!」

 

「それに発射速度も違うぜ!あの戦車の装填手が化け物みてぇーに装填が早い!!」

 

アッシュとコワルスキーがブルクハイトに告げた後、彼等の乗るティーガーはチャレンジャー1の砲撃を受けた。

 

「うわぁ、脱出しろ!爆発するぞ!!」

 

急いでティーガーから脱出するブルクハイト達、危機一髪で何とか脱出できた。

クルツが乗るガスタービン搭載型のパンターG型が、チャレンジャー1の後ろに回り込み、ゼロ距離射撃を行った。

 

「ゼロ距離射撃、ファイア!」

 

エンジンを撃たれたチャレンジャー1は大爆発を起こす。

 

「次の目標は10時の方向だ!」

 

次なる標的を味方の装甲車両を破壊しまくってるチャレンジャー1に定めた後、自分の上官であるバウアーに支援を願う。

 

「大尉、支援を願います!」

 

『了解した、クルツ。履帯を狙って、動きを止めろ!』

 

味方の歩兵を襲う敵歩兵を排除していたバウアーはその願いを受け入れ、クルツが狙うチャレンジャー1の履帯に向けて砲撃した。

履帯を破壊されたチャレンジャー1は動けず、砲身をクルツのパンターに向けるが、速度が速い所為なのか照準が間に合わず、エンジンへの接近を許してしまった。

そのままエンジンを撃たれて大破する。

一方のヴィットマンは、彼等の脅威となるであろう敵の増援を食い止めるべく単機でやりやっていた。

 

「これはヴォレル・ボカージュを思い出すな!」

 

十両近くの戦車を相手にしながらヴィットマンは自身が単機でイギリス第7機甲師団の先遣隊と単機でやりやっていたことを思い出した。

 

「はい、あの時は大尉は本当に人間なのかと思いましたよ!」

 

一番先頭に居たシャーマンファイアフライに狙いを付けた照準手はヴィットマンに答えた。

 

「あの時の自分が信じられんよ。照準は完了したか?」

 

「完了しました!それと徹甲弾の装填も完了です!」

 

「良し、ファイア!」

 

88㎜KwK43の砲声が響き、正面に食らったシャーマンが一撃で吹き飛んだ。

次の標的に狙いを付けるよう照準手に命じ、装填手が徹甲弾の装填を終わり次第、砲撃を命じた。

僅か数分程で、オドレイの援軍に駆け付けた戦車中隊は五両を失った。

その頃、猛威を振るうオドレイのレオパルト2にクルツのパンターの履帯が破壊された。

 

「履帯をやられた!」

 

「まだ戦えるぞ、こちらを砲撃した敵戦車に反撃しろ!」

 

身動きを取れなくなったパンターであったが、それでもクルツはオドレイのレオパルト2に砲身を向けるよう指示を出す。

気が付けば、今動いてる戦車は敵の援護に単機で立ち向かったヴィットマンと佐武郎の四式中戦車を除き、頼りのヤークトティーガーは撃破されており、IS-2は全滅、残りは身動きの取れなくなったクルツのパンターとバウアーのティーガーⅡ発展型だけだ。

敵のチャレンジャー1は全滅している。

トドメと言われんばかりにクルツのパンターがレオパルトによって撃破される。

 

『やられました!脱出します!!』

 

「よし、塹壕に急げ!残った戦車は俺達だけか・・・」

 

無事脱出したクルツを見守った後、周りを見渡して自分のティーガーⅡしか残ってないことに気付く。

味方の歩兵隊も敵の歩兵相手に精一杯で助けに来てはくれないだろう。

破壊されたティーガーの残骸からこの対決を見ていたゾーレッツ、正徳、山本は息を呑む。

 

「この対決、勝てるわけがありませんよ・・・!例え王者の名を持つ虎(ケーニヒス・ティーガー)でも後ろに回り込まない限り・・・」

 

「山本・・・!」

 

ゾーレッツの一声で山本は直立姿勢になる。

 

「黙って見るんだ・・・!」

 

続けて正徳が言えば、山本は元の位置へと戻る。

先に砲撃したのはオドレイのレオパルド2だった。

空かさずバウアーが操縦手に回避行動を取るよう指示を出す。

 

「動き続けろ!あの砲を食らえばこのティーガーⅡとで持ちはせん!」

 

回避行動を取ると同時にバウアーは常に動き続けるよう指示を出した。

この行動を見ていたオドレイは無駄な足掻きと捉えていた。

 

「無駄な足掻きを!接近しなさい!」

 

「了解!」

 

オドレイは一気にバウアーのティーガーⅡ発展型を仕留めるべく、接近を命じた。

距離を取ろうとするバウアーであったが、速度が速い第三世代戦車は直ぐに距離を詰めてくる。

 

「照準完了しました」

 

「撃ちなさい」

 

照準手からの報告で、オドレイは砲撃を命じた。

砲弾はティーガーⅡの装甲を擦れ、車内に恐ろしい摩擦音が響き渡る。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「落ち着け!ジグザグに動いて狙いを定まらせるな!!」

 

操縦者はその指示を受けて車体をジグザグに動きながら逃げる。

これによってレオパルト2の照準が定まらず、照準手が車長のオドレイに告げる。

 

「照準が定まりません!」

 

「未来予知射撃を行いなさい。操縦手、速度を落としなさい。砲手は相手のパターンを読むのに専念するのです」

 

オドレイは操縦手に指示を出した後、照準手にジグザグに動くティーガーⅡの動きを読むよう空かさず指示する。

しかし、それが仇となった。

カールグスタフM2を持ったアッシュとコワルスキーがレオパルト2に向けて発射、撃破できずとも側面に命中し、ロケット攻撃を受けたレオパルト2は止まる。

それと同時に煙幕手榴弾がレオパルト2に向けて投げ込まれ、レーザーポイントを封じられた。

 

「煙幕で何も見えません!」

 

「目標、捕捉できず!」

 

「クッ、味なマネを・・・!煙幕を抜けなさい」

 

視界を塞がれオドレイは煙幕から抜け出すよう指示を出した。

物の数秒で煙幕を抜けた途端、バウアーのティーガーⅡがレオパルト2の左側に現れた。

 

「しまった!」

 

オドレイが横から現れたティーガーⅡに驚いている間にバウアーは情けも掛けずに砲撃を命じた。

 

「今だ!目標は正面、喰らえぃ!」

 

105㎜砲の砲声が鳴り響き、レオパルト2の側面に命中した。

それでも尚、レオパルト2は動こうとしていた。

 

「情けは無用だ!あのエンジンを機動しろ!砲身がこちらを向く前に接近する!!」

 

操縦手はバウアーの命令に従い、あるボタンを押した。

エンジンが凄まじい騒音で起動し、第四世代戦車並の速度でレオパルト2に突っ込んだ。

 

「これでトドメだっ!ファイア!」

 

高速で走行しながらバウアーは砲撃を命じ、照準手は躊躇いもなく発射管を押した。

 

「そんな、神よ!」

 

それがオドレイの最後の言葉だった。

砲声が鳴り響き、充分撃破可能な距離から側面に攻撃を受けたレオパルト2A6は大破。

バウアーのティーガーⅡはエンジンから火を噴き出しながらゆっくりとその場に停車した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終決戦編
孝達との再会


終わりに近付いていく・・・


視点は戻り、ワルキューレの拠点前に展開していた中東軍をヴァルキュリアの力を使って排除したルリ達。

そして速やかに拠点まで向かう。

 

「き、来たぞ!」

 

対立しているハナとの交渉に向かった為、今は居ないマクシミリアンの代わりに拠点の指揮を執る副官がやって来た四人のヴァルキュリア人を見て、腰を抜かした後に叫んだ。

拠点の中にいた兵士達が大いに震え上がり、こちらへと向かってくるヴァルキュリア人達に恐れ戦く。

 

「な、何を怯んでいる?!貴様等は無敗の軍集団なるぞ!恐れずに戦わんかっ!!」

 

拡声器を使って士気を向上させようとした副官であったが、拠点内に居た兵士達は持ち場を離れて逃げ出し始めた。

 

『助けてくれぇー!』

 

『死にたくねぇーよ!』

 

中東軍を圧倒的な力でねじ伏せた回があったのか、ここを指揮する士官を含めた将兵達は恐慌状態に陥った。

 

「ま、待て!逃げるなっ!射殺されたいのかっ?!」

 

拳銃を取り出して持ち場を離れて逃げ出していく配下の将兵達に銃口を向ける副官であったが、銃口を向けられているのも関わらず、兵達は我先にと一目散に逃げ出していく。

副官も取り残されることを恐れたのか、自身も拳銃を仕舞って逃げていく一団へ加わった。

暫く経って、ルリ達が誰も居なくなった拠点内に入る。

 

「ふむ、誰も居ないみたいだ。お嬢さん達のあの怖さで皆逃げ出したみたいだな」

 

「あのお嬢さん達と戦うことになったら俺はショック死するね!」

 

熱源センサーで拠点内に敵兵が居ないことを確認したSTGが全員に知らせた後に、黒人の隊員がヴァルキュリア人の圧倒的な強さに自分ならこうなると公言する。

そのヴァルキュリア人であるアリシア、リエラ、セルベリア、エイリアスは少し悩んだ顔をしていた。

失言した黒人の隊員はその彼女達の表情を見て謝った。

 

「済まない、口がすべっちまった」

 

「いや、気にしなくて構わん。それよりここに孝達が囚われてる筈だが・・・?」

 

セルベリアは話を切り替えた後、孝達がどの辺りに囚われているか辺りを見渡した。

「捕虜を捜すなら司令室に向かうと良い」と発言したゴーグルの隊員の言葉に全員が納得し、正面の出入り口にローバックを見張りに立たせた後、司令室に向かった。

その後、敵から奪った装備を身に付けたゲイツが拠点に入ってくる。

 

「銃口を向けるな。俺だ」

 

「何かと思ったら一人軍隊(ワンマンアーミー)のゲイツ様か。その装備は何だ?」

 

M1A1トンプソンの銃口を下ろしたローバックは、ゲイツが身に付けている装備のことを問う。

 

「これは敵からは頂戴した物だ。それよりあんた等の目標は見付かったのか?」

 

「今、探している所だよ。レーザーを持った一人のゴーグルを付けた奴が、司令室に向かうのが良いとか言って、俺だけ残して司令室に向かったよ」

 

「俺のことは何か言ったか?」

 

「爆乳の大佐ちゃんがそれも予て俺に見張ってろとか言ってたさ。合図は光信号で来るんだろうな」

 

それを聞いたゲイツは「成る程」と一言漏らした後、銃器の清掃に入った。

暫く経って、司令室がある場所から合図が来る。

 

「お、来たぞ!行くか」

 

「あぁ」

 

ローバックが言った後にゲイツは答え、司令室へと向かった。

司令室には先に向かったルリ達が居た。

荒れた室内を見たゲイツとローバックには驚きが隠せなかった。

普通、運べない機材は処分され、重要書類も焼却処分するはずだが、ヴァルキュリア人の圧倒的な強さに恐怖したのか、拠点内に居た兵士達はそのまま放置して逃げていった。

これを見ていたBJは「楽で助かる」と、前までここに居た兵士達に感謝の一言を申し上げた。

早速一同は、捕虜に関する書類を探し始める。

その間に負傷しているイムカと連れてきたハイトは何処か安全な所に置き、STG達が持っている治療薬を使った。

 

「凄いですわ!傷が見る見る内に消えていきます!」

 

「バイオテクノロジーの成果さ。後23時間59分20秒経てば、このお嬢ちゃんは元通りだよ。傷も綺麗さっぱり無くなる」

 

「ばいおてくのろじー?」

 

付き添って居たイーディは未来の治療薬に驚いた。

それを使ったトビーは自慢げに話したが、リコルスに詳しく聞かれ、少し悩んだ末に説明し始めた。

それは割愛して捕虜に関する資料が見付かり、同時に捕虜達が収容されている場所も判明した。

直ぐにルリとイーディ分隊に向かわせる。

向かう途中、ホーマーが少し余計なことを言った。

 

「あぁ、捕虜収容所か・・・自分も捕虜にされたら毎日看守に罵られて・・・」

 

もちろんその後、ホーマーはイーディとリコルスにシバかれた。

捕虜収容所に入った後、随分と綺麗にされている事に全員が驚いた。

 

「捕虜収容所と聞いて汚い所だと思っていたけど、随分綺麗にされてるじゃない」

 

ヤンがニヤニヤしながら辺りを見渡した後、ドアの上部にある鉄格子の窓を覗き、孝達が居ないかと探したが、そこに自分好みの筋肉質の男が居た為、ウィンクする。

 

「うっ、この男に見られると何か貞操の危機がする・・・」

 

この場の看守も逃げだし、不安になっていた男はヤンにウィンクされてさらに不安になった。

その後、男は解放され、孝達が何処にいるのかを聞かれる。

 

「解放した後ですが、この方々をご存じで?」

 

イーディはポケットに入れていた孝達の写真が付いた書類を男に見せた。

 

「あぁ、その藤美学園の生徒達なら奥の方に居るよ。所で外はどうなってるんだい?」

 

「ご安心を。ここに居た兵士達はお姉様達の強さに恐れをなし、全員逃げ出していきましたわ」

 

男が聞いた事にイーディは自慢げに話した後、苦笑いした。

目の前に自分の好みが居ることにヤンは、ずっとその男に好意の視線を向けていた。

 

「(やっぱり前の方がマシかも・・・)」

 

男はそう思った後、少しヤンから距離を置いた。

そしてようやく孝達を見付けたのであった。

 

「君は・・・!ルリじゃないか!無事だったのか?!」

 

ドアの鉄格子から孝が覗いていた為、直ぐにルリは孝達の居るドアを開け、彼等を解放した。

孝が出た後、鞠川がルリに抱き付く。

 

「もう見られないかと思ったよ~ルリちゃ~ん」

 

泣きながら強くルリを抱き締める鞠川、抱き付かれている彼女はもの凄く苦しい。

離された後、ルリはその場に倒れ込んでしまい、ありすに看病されている。

その場にいた全員が苦笑いした後、直ぐに全員が居る司令室に向かった。

取り敢えず、他に囚われていた人々は解放しておくことにする。

 

「あれ、貴方は・・・まさかアーノルド・シュワルツ・ネッガー・・・」

 

「残念ながら人違いだ」

 

「あぁ、そうですよね。ハハハハ・・・」

 

コータはゲイツがあの元州知事に似ていたことに驚き、聞いてみたが、違うというので頭を抱えながら笑った。

そして孝はここにあった事を包み隠さすルリ達に話した。

 

「成る程・・・殿下もこの世界へ・・・」

 

「生前の上司だったのですか?」

 

マクシミリアンがこの世界に居たことに驚くセルベリアに、孝がどんな関係なのかを問う。

 

「話しても良いですか・・・?」

 

「良いだ、話そうか。君達が対峙した男のことを」

 

セルベリアの上司であるマクシミリアンの最期を見たアリシアが不安げな顔をする。

そしてセルベリアは包み隠さず自分が死ぬまでのことを話した。

言い終えた後、セルベリアは椅子に座り、STIナイトホーク4.3をガンホルスターから抜いて、机に置いた。

次に話を聞き終えた沙耶が口を開く。

 

「結局の所、あんたは使えないとされて。捨てられた訳でしょ?」

 

「高城!お前、なんてこと言うんだ!」

 

「そうよ!この人だって、辛いことはあるはずよ!」

 

「煩い、名前で呼んでって言ってるでしょ!」

 

言い争いが起ころうとした瞬間にセルベリアが孝と麗に向けて手を翳して静かにさせた。

それと同時に沙耶も黙るが、セルベリアは口を開いた。

 

「そうだ。私はアリシアとの戦いに敗れ、捨て駒にされ、敵の捕虜となり、多くの敵を撒き沿いにしながら自爆して死んだ。あの男は期待に応えられない者は容赦なく捨てる冷酷な男だ」

 

セルベリアが言った事に沙耶は少し動揺しながらも頷いた。

 

「そうよ。あんたはアリシアさんに負けて捨て駒にされたのよ」

 

「では、生き返ったことに何の意味がある?」

 

後ろから突然イムカの声が聞こえてきた為、一同がイムカの方へ視線を集中させる。

そのままイムカは続けた。

 

「これは貴様を捨てた男に復讐する為に生き返った物だと私は思う。間違っているなら否定しても構わない」

 

「何の話しをしてるの?」

 

「多分、元恋人への復讐だ。大人の女は怖いからな」

 

イマイチ話が理解できなかったありすが近くにいたゴーグルの隊員に話し掛け、彼は直ぐに答えた。

さらにイムカは続ける。

 

「別に復讐じゃなくても構わない。捨てた理由を聞けばいい。私達にそれを否定する理由はない」

 

その言葉にセルベリアの中で、何かが吹っ切れた。

彼女は立ち上がり、マクシミリアンが向かった方向を見ながら口を動かす。

 

「そうか・・・では、マクシミリアンに会いに行くか・・・」

 

イムカの声で、セルベリアはマクシミリアンとの再会を決心した。

それと同時に防衛戦を突破したリヒター達がやって来る。

 

「援軍です!援軍がやってきました!!お~陸自やアメリカ軍も居るぅー!!」

 

全員にリヒター達がやって来た事を知らせたコータは、共にやってきた日米連合軍の部隊を見て、かなり興奮していた。




なんか無理矢理感がするような・・・

次回からは最終決戦編です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一人で列車へ

最近、リアルで忙しいからスランプ気味です・・・
どうしよう、来月までに終わるのかな?


リヒター達と合流したルリ達。

司令室に入ってきたリヒター達にここでのことを全て伝えた後、直ぐにセルベリアはマクシミリアンが居る無人島へ向かうことにするが、リヒター等が心配の声を上げた。

 

「そんなに動いて大丈夫なのか?えらく疲労している。そっちの3人も」

 

頭部に包帯を巻いたアレクセイがセルベリアを見ながらアリシアとリエラ、エイリアスがかなり疲労していることを指摘する。

 

「大丈夫だ、私はまだ・・・」

 

セルベリアが動いた途端、バランスを崩した。

咄嗟にドイルが出て来て、彼女の身体を支える。

 

「ほら、いわんこっちゃない」

 

ヴェルナーが倒れるセルベリアを見ながら言う。

見ていたリヒターは溜息を付いた。

 

「はぁー、仕方ない。誰か行ける者を・・・」

 

リヒターはパッキー達に視線を向けたが、ルリと小室一行が手を挙げているのが目に入った。

即刻リヒターは理由を問う。

 

「どうした?そんなに手を挙げて」

 

「僕達は動けます。直ぐに向かってその・・・」

 

孝が言い終える前に右手に包帯を巻いたゴロドクが横槍を入れた。

 

「子供が出る幕じゃないだろう。ここはソビエト連邦の英雄であるこのゴロドク様がマクシミリアンとか言う奴を俺が代わりにぶっ飛ばしに行けば済むことだ」

 

「(そんな手で何が出来る)」

 

左手で自分の胸を叩きながら告げるゴロドクに、ドイツ軍人達は心の中でそう思った。

暫くして、アリシア達を含むSTG達はここで休むこととなり、パッキー達と特殊任務の経験のある者達の同行を条件にリヒターは小室一行とルリがマクシミリアンが居る無人島へ行くことを許可した。

押収した書類の中に、その無人島に行くための船がある港あり、さらに港へ行く為の列車がこの拠点にあることが分かり、直ぐにそこへ向かうことにする。

 

「モリタ、列車はまだあるか?」

 

「はい、逃げてった連中は列車に乗らず、逃げたようです」

 

「列車はまだあるそうだ」

 

ジェイコブがモリタに列車がまだあることを聞いた後、これから向かう小室一行に告げる。

 

「そうですか。では、直ぐに向かいましょう!」

 

孝が言った後、全員が列車の元へ向かった。

列車を引っ張るのはディーゼル車で、その引っ張る車両は客車九両と貨物列車が一両、全部で十両編成の列車だ。

何か罠があるのではないかと思い、ルリと小室一行以外の実戦経験豊富な者達が列車に乗ることもなく、外部の調査を始める。

 

「こんな列車に乗らずに逃げるとは余程慌てていたのだろう」

 

「まぁ、慌てるのは無理ないか・・・」

 

パッキーが列車を見ながら言った後、カールがヴァルキュリア人となった四人のことを思い出しながら答えた。

調査に参加してなかったルリが、最後尾の客車に足を踏み入れようとした。

たまたまそこに居たパザードが止めようとしたが、ルリが乗った途端、列車が勝手に動き始めた。

突然動き始めた列車の調査をしていた者達が、パッキーの声で一斉に離れる。

 

「全員離れろ!巻き込まれるぞ!!」

 

直ぐに降りようとするルリであったが、入ったと同時にドアが固く閉ざされ、出ることが出来ない。

孝はドアノブを掴んで必死で引こうとしたが、びくともせず、ハルスに身体を掴まれて無理矢理列車から引き離された。

 

「あぁ、不味いことになった」

 

独りで動く列車を見ながらパッキーは呟いた。

そして即刻、この事をリヒター達に知らせ、急いで追跡の準備をする。

一方列車に閉じ込められたルリは、背中に掛けてあるスターリングMk7を構え、この列車を引っ張るディーゼル車まで向かうことにした。

 

「また一人・・・」

 

そう呟きながらルリは人の気配もしない車内を警戒しながら進む。

二両目に入った途端、久々に見た複数の”奴ら”がルリを出迎えた。

その奴らの服装は至って普通の服装、おそらく奇跡的に残った物だろう。

ドアを開けたルリに身体を向けた奴らに対して、彼女は慌てることもなく照準器を頭部に合わせた後、引き金を引いた。

先に狙われた一体目の額に穴が空いた後、次の標的に狙いを定めて単発で仕留める。

次を仕留めたが、奴らは狭い通路を通ってやってくる。

それが奴らの殲滅の助けとなり、無駄に弾を消費することもなくルリは奴らの殲滅に成功した。

スターリングMk7をリロードした後、ルリは次の車両へ向かった。

次の車両に入った途端、雷が発生し、そこから蒼い眼光を光らせたゾンビが現れた。

 

「こいつ等も出て来た!?」

 

直ぐにルリはスターリングMk7をフルオートに切り替え、叫んで走りながら向かってくるゾンビに撃ち始める。

頭部に銃弾が当たって何体かが豪快に転ぶ。

これ以上きりがないと思ったルリはM67破片手榴弾の安全栓を抜いて、ゾンビが密集してる地点に投げ込んだ。

破片が飛び散り、周囲のゾンビを殺傷、残りのゾンビは這いずりながらもルリに向かってくる。

空かさずガンホルスターからP232を取り出し、安全装置を外してから這いずりながら向かってくるゾンビの頭を撃った。

全てのゾンビが動いていないのを確認した後、次の車列へ入ったが、休む間もなく次の試練がルリを待ち受ける。

 

「今度はモンスター!?」

 

ドアを開けた途端にゾンビクローラーの強化版であるミニオンとヘルハウンドが一斉に襲い掛かってきたのだ。

直ぐに手に持つ短機関銃で向かってきた異世界のモンスター達を攻撃する。

ずっと引き金を引いていたのか、スターリングMk7は弾切れを起こした。

この状況ではリロードをする時間もないので背中に掛けてあるSG553に取り替え、フルオートで何体かを仕留める。

第一派目を全滅させたが、第二波がゾンビ付きで来た。

手榴弾のピンを抜いて、密集地帯に直ぐに投げ込み、敵を破片で殺傷し、天井に張り付いているミニオンを撃ち殺す。

床にバタバタとミニオンが落ちていくが、そんな物ルリには気にしている暇はない。

動いている物がないか確認したルリは、Sg553を肩に掛けて一息ついた。

 

「よし、全滅!」

 

SG553の弾倉確認(マガジンチェック)をした後、何か武器になるような物はないかと辺りを調べ始める。

 

「お、これは」

 

壁にStg44が立て掛けてあり、弾倉の入ったマガジンケースもそこにあった。

ルリは惜しまなくそれを回収する。

もちろん今持っているSG553やスターリングMk7の弾倉を含めたらかなりの重量になる。

成人男性でも大柄でもないルリは少し蹌踉ける。

 

「重い・・・やっぱり重いけど、これで少しは楽に」

 

なんとかバランスを保ちながら、次の車両へと入った。

やはりそこにも敵が待ち伏せており、複数の奴らと蒼い眼光のゾンビがルリを見るなり襲ってきた。

早速手に入れたStg44の安全装置を外してそれを構え、引き金を引き、撃ち始める。

やはり狭い通路から襲ってきてる為、頭を撃たれた奴らやゾンビがドミノ倒しのようにバタバタと倒れていき、マガジン一つ分で突破できた。

次の車両のドアを開けようとした瞬間、電気ノコギリのような銃声が鳴り響き、弾丸がドアを突き抜けた。

胸に何発か被弾したルリはドアから離れ、遮蔽物に身を隠しながら銃弾を摘出する。

 

「痛っ・・・!」

 

やはり不死身とはいえ、人並みの痛覚がある。

遮蔽越しに機関銃を撃ってくる者を見てみれば、MG42を担いだマシンガンゾンビだった。

MG42を乱射しながらゆっくりとルリの元へ向かってくる。

余り被弾せずに突破したいルリは、屋根から向かうことにした。

登りのに邪魔な弾倉ベストは屋根へ落ちないように投げ込み、三丁の銃も落ちないように投げ込む。

身軽になった彼女は側面の窓を利用して屋根へと上った。

上がった直後に三つの魔法陣が現れ、ドイツ国防軍の戦闘服を着て、鈍器などを持ったゾンビアーミーが召還された。

 

「◎●▲△□★☆▼・・・?」

 

意味の分からないことと喋りながらルリへ向かってくる。

拾う暇もないので、ガンホルスターからP232を抜いて、向かってくるゾンビの東部に向けて銃撃する。

二体が頭を撃たれて死体に戻るが、残り一体はヘルメットをしている為、弾かれてしまう。

弾倉の中身が無くなった後、P232をガンホルスターに戻し、スコップを取り出してゾンビの頭に飛び上がって振り下ろした。

殴られた衝撃でヘルメットが下に落ち、髪がない頭皮が見えれば、空かさずもう一度振り下ろし、最後の一帯を片付けた。

弾薬を回収した後、連絡路でルリに気付いたマシンガンゾンビの頭部にStg44のフルオートをお見舞いする。

頭部は吹き飛び、黒いヘルメットが飛び上がった後、頭が無くなった巨体は列車から落ち、走行中の列車の下敷きになり、骨や肉が砕ける音が鳴り響く。

次の車両へ乗り移り、Stg44で待ち伏せていた多数のゾンビアーミーに反撃を与える間もなく銃撃を加える。

全滅させたら、何か使える物はないか車内を調べ回ったが、何も見付からず、次の車両に入る。

七両目に着く頃にはStg44の弾倉が無くなり、今差し込んである弾倉の弾薬も空だ。

邪魔になるとしてStg44を捨て、八両目に入った。

急に地面を揺らすような足音が鳴り響き、巨体を持つ看守"ブルータス"がルリに向かって鈍い音を立てながら突進してきた。

 

「ワッ!?」

 

ルリは危機一髪で回避、SG553のありたっけの銃弾をブルータスに浴びせた。

 

「グォォォォ・・・」

 

弾倉一つ分の弾丸を喰らっても、ブルータスは未だ動いており、再びルリに向けて突進してこようとする。

トドメを刺そうとスターリングMk7を取り出し、ブルータスに向けて乱射した。

数十発の9㎜弾を喰らったブルータスはようやく力尽き、巨体が床に倒れ込む。

今持っている銃の弾倉を全て取り替えた後、最後の客車に入り込んだ。

 

「フフフ・・・待っていたぞ・・・!」

 

ルリが声のする方へ視線を向ければ、ストアーが腕と足を組みながら右にある客席に座っていた。

ストアーは立ち上がり、勝ち誇った表情を浮かべてルリを見ながら口を開く。

 

「まさか最初に乗ってくれるとは驚きだ。貴様を殺せばこのストアーが不死身だ!」

 

ルリを指差しながら告げるストアー、彼女がスターリングMk7の銃口を向けた後、ストアーは剣幕の激しい表情をした。

 

「さぁ・・・絶望しながら死ねっ!!」

 

手刀を構え、凄い脚力でストアーはルリに突っ込んだ。




なんか、雑魚ラッシュみたいなことになってる・・・そしてこの無理矢理感・・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

列車内での地獄

凄い勢いで突っ込んできたストアー。

ルリは動揺することもなくSG553でストアーに狙いを付けて、引き金を引く。

 

「小賢しいマネを!銃など私には通じん!!」

 

連続して銃口から発射された5.6㎜×45弾を恐るべき手の早さで弾くストアー。

ルリが撃つのを止め、左に飛び込んで、ストアーの蹴りを避ける。

 

「避けたか。しかし、貴様はこの攻撃を逃れられん!」

 

そのまま壁を蹴って、ストアーはルリに再び攻撃を仕掛ける。

間一髪、ルリは避けることに成功し、次元の歪みに手を突っ込んで大鎌を取り出し、一旦距離を取って、ストアーを斬ろうとしたが、刃が天井に突き刺さってしまう。

それを見たストアーは勝ち誇った笑みでルリを見ながら告げた。

 

「馬鹿め!ここが貴様にとってどれだけ不利な場所の事も知らずに!これなら赤子を殺すより楽な仕事よ!!」

 

必死で大鎌を引き抜こうとするルリに、ストアーは容赦ない攻撃を加えようとする。

それを防ぐべく、ルリは右手でSG553をストアーに向けて撃つ。

 

「何度やっても同じだ!私に銃は効かん!!」

 

そう言いながら、飛んできた銃弾を高速で銃弾を弾きまくる。

動きを抑えているルリは左手で大鎌を抜こうとするが、深く突き刺さっているので、中々抜けない。

引き金を引いても弾が出なくなれば、スターリングMk7に切り替えて、再びストアーの動きを抑える。

 

「抜けろ!抜けろ抜けろ抜けろ!!」

 

必死に引き抜こうと、視線をストアーから外したルリ。

それを見たストアーは直ぐさまルリの側面に回って襲い掛かる。

 

「敵から目を逸らしたのが命取りだ!」

 

ストアーはルリが振り返る前に一気に接近して、左手の手刀でルリの脇腹を突き刺した。

 

「ブハッ!」

 

脇腹を強く刺されたルリは血反吐を吐き、刺された脇腹からもの凄い勢いで血が噴き出し、その血がストアーにかかる。

 

「フフフ、大した強さも無かったな。幾ら不老不死とは言え、これ程の激痛に耐えるとすれば、化け物以上だ。しかし、貴様は成長が止まったひ弱な少女。これ程の激痛に耐えられるはずはない」

 

勝ち誇った笑みを浮かべてストアーはさらに脇腹に突き刺した左手をさらに突き刺す。

突き刺された衝撃で凄まじい激痛がルリを襲う。

 

「ぐ、があああああ!!」

 

血を吐きながら叫ぶルリに、ストアーは笑みを浮かべながら告げる。

 

「どうした?不死身の貴様でもこれは流石に痛いか?それとも早く楽になりたいか?だが、私の受けた痛みはこんな物ではないぞ!!」

 

怒りの表情を浮かべながらさらにストアーは左手を心臓の近くまで進め、ルリの身体を持ち上げるように左手を上げた。

その衝撃で気を失うかのような激痛がさらにルリを襲い、彼女は人とは思えぬ叫び声を上げる。

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

「どうだ?一気に心臓まで左手を通された気分は?さぞや苦しかろう・・・貴様の姉は屈辱的な最期を遂げるがな!!」

 

凄まじいほど出血するルリを見ながらストアーはそう告げる。

ルリは両手に握っていた物を離して、ストアーの左腕を自らの脇腹から引き抜こうとするが、全く力が入らない。

その無駄な抵抗を見ていたストアーは気絶するまで突き刺すつもりだったが、ルリの口から予想外な言葉が耳に入った。

 

「ご免なさい。ご免なさいご免なさいご免なさいご免なさい」

 

「っ!?」

 

ルリの表情が泣きっ面に変わり、ひたすらストアーに泣きながら「ご免なさい」と呟いていた。

この呆気ないルリの変わりように、ストアーは驚愕する。

 

「脇腹に刺した左腕を抜いて・・・お願い・・・なんでもするから・・・!早く抜いて・・・」

 

血を吐きながら助けを求める絶世の美少女の表情に、ストアーは罪悪感に包まれた。

 

「(な、なんだこの気持ちは・・・!?あの女(マリ)と同じ化け物に罪悪感を感じている!?そんなはずはない!現にこの小娘も我が一家いや、一族虐殺の加担者!ここでこの小娘を我が肉体の一部としなければ、私のようにさらなる犠牲者が!どうして勝手に左手が抜けるのだ!?)」

 

心でそう思っていても、身体は少女の願いを引き受けてしまう。

徐々に左腕がルリの脇腹から引き抜かれていき、完全に引き抜かれた後、床にルリは床に倒れ込み、暫し脇腹を左手で押さえながら血を吐いていた。

 

「(なんなんだこの気持ちは・・・!?あの小娘のような年頃の娘を持つ親の気持ちか・・・?何を躊躇っているのだ私は?今なら吸収のチャンスだ。さぁこの身体よ、この小娘を受け入れるが良い!)」

 

ゆっくりと常人では死んでる程の重傷を負ったルリに近付くストアー。

全身に異常なほど汗を掻いており、手に掛けるはずの右手を異常なほど震え、呼吸が乱れている。

 

「(どうしたというのだ一体・・・?僅かほんの数㎝足らずだぞ・・・!?)」

 

気が付けば目眩まで起こしており、近い距離に居るルリが遠くに居るような感覚に襲われる。

目の前で苦しんでいた少女は遂に力尽きたか気絶したか、動かなくなった。

それでもストアーの状態は戻らない。

 

「(チャンスだぞ・・・行け、私の身体・・・!)」

 

近くまで来た瞬間、ストアーは右手を振り下ろした。

だが、その右手は気絶していた筈のルリに受け止められてしまう。

 

「な、なに・・・!?」

 

右手に激しい激痛を覚えたストアーは正気に戻り、右手を強く握るルリを見た。

良くルリの脇腹を見れば、内臓まで見えるほど開いていた穴が塞がっている。

死の恐怖を感じたストアーは、自身の右手を握るルリの左手を自分のもう片方の手の手刀で切り落とした後、距離を取った。

 

「一体何が起こってるというのだ・・・!?あれ程の激痛で、直ぐに蘇ってくるとはっ!?」

 

強く握られて出血している右手を左手で握りながら言った後、ストアーはルリを警戒した。

そしてルリは起き上がり、無の表情を浮かべ、睨み付けるようにストアーを見た。

 

「何という恐ろしい表情だ!吸い込まれそうな蒼い瞳が血のような赤い瞳に変わっているっ!!」

 

右手が完全に治ったのを確認したストアーは赤い瞳に変わったルリに身構えた。

訃音気が変わったルリは、次元の歪みの歪みに手を突っ込んで、ショートソードを取り出した。

 

「(また異次元から武器を・・・!しかも間合いのことを考えてショートソードを!直ぐに叩き割ってくれるわ!)」

 

完全に回復したストアーはそのまま一気にルリに接近した。

手刀でショートソードを叩き割ろうとしたが、あっさりとかわされてしまう。

 

「なに・・・!?」

 

驚いたストアーは空かさず次の攻撃に移行しようとしたが、ルリの動きがストアーよりも早く、両腕を切り落とされてしまった。

 

「な、なにぃ・・・!私より早いだと・・・!?」

 

切り落とされた両腕を見ながらストアーは床に膝を突いて、先より戦闘力が遙かに増加したルリに驚愕した。

 

「ば、馬鹿な・・・!先程まで遙かに劣る小娘が何故ここまで強く・・・!?うぅ!?」

 

切り落とされた腕が再生する前に、ストアーはルリの手に握られたショートソードを心臓に突き刺された。

 

「貴様・・・一体何者だ・・・?!」

 

心臓を刺されながらも、ストアーはルリに何者を問う。

だが、赤い瞳に変わった少女はそれに答えることもなく、心臓に突き刺したショートソードの力を強め、ストアーの息の根を止めた。

全く動かなくなったストアーの身体を見たルリは、ショートソードを引き抜き、この列車を引っ張るディーゼル車まで向かった。

大した罠も無く、あっさりと操縦室まで行け、緊急停止(ブレーキ)のレバーを引く。

高速で走っていた列車は急な停止に耐えきれることもなく、線路から客車が外れて、大きな音を立てて脱線。

先頭車に居たルリはディーゼル車が完全に止まるまで、全身を打ち付けられていた。

やがてディーゼル車が止まった後、ルリは頭を打ち付けた衝撃で再び気絶した。




今回は短め。
あぁ、伏線が二つほど残っている・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リーダーを倒せ

駄目だ、思い付かねぇ・・・


暫し時間が経って、雨が降り始めた後、脱線したディーゼル車にて目覚めたルリであったが、更なる危機が訪れた。

脱線した列車を調べるべく、ケストナーの部隊が迫ってくる。

 

「酷い脱線だな・・・中に奴ら(ウォーカー)でも紛れ込んだか?」

 

「そんなはずはない。数時間前に我々の一般部隊が殲滅したはずだ」

 

二人の斥候が互いに会話を交わしながら迫ってくる。

耳に敵兵の声が入ったルリはSG553を構え、敵兵が横転したディーゼル車に近付くのを待つ。

 

「ひでぇな・・・一体誰が運転してたんだ?」

 

「噛まれないように気を付けろよ」

 

G3A4を構えながら一人の敵兵が、ルリが居るディーゼル車に乗り込み、ライトを付けてから辺りを見渡す。

 

「出てくんなよ・・・!」

 

そう呟きながら辺りを見渡し、ルリを見つけた。

 

「礼の小娘がっ!」

 

外にいる仲間に知らせる間もなくルリに射殺された。

銃声を聞いた外にいた調べに行った兵士と同じG3A4を持った仲間が、ディーゼル車に向けて何発か撃った。

 

「クソったれ!生きてやがった!」

 

少し距離を置いた後、無線機を取り出して仲間に知らせる。

その間にルリはディーゼル車から抜け出し、静かに敵兵が向かってきた方向へと向かう。

 

本部(HQ)、聞こえるか本部(HQ)!脱線した列車に生き残りが居た。調べに行った味方の兵士が射殺された!応援を問う!!」

 

『こちらHQ、手負いの敵兵一人相手に人員は回せない。現状の戦力で対処せよ』

 

「クソったれ!」

 

無線機を強引に仕舞った後、M61破片手榴弾の安全ピンを抜いて、ディーゼル車に向けて投げ付けた。

ディーゼル車の中に入った手榴弾は爆発した後、その敵兵はルリがもう居ないことに気付かず、調べに行く。

一方、全世界に居るワルキューレの部隊に新たな指令が下された。

ヨーロッパ方面のワルキューレの本部にて、司令官が命令書を読み上げる。

 

「総本部からの新たな指令だ。以下の命令文を全世界に展開している我が部隊に発信せよ。直ちに現任務を中止し、各方面軍の精鋭・空挺部隊・爆撃隊を持って日本に集結せよ。日本へ近い方面軍は海上戦力も含め、集結するように。不要な戦力は即時総本部へ帰投させるように。総司令官となったマクシミリアンの命令は無視せよ。彼はわがワルキューレの関係者ではない、反逆者である。各自の精鋭を持ってマクシミリアン並び、彼に付き従う反逆者達を抹殺せよ、例え降伏の意志を見せても容赦するな。以下の命令に従えない場合は憲兵隊による排除が考えられる。それと盟友からルリ・カポディストリアスを保護してほしいと要望があった。日本にいる全部隊は見つけ次第、直ちに保護せよ。以上だ」

 

司令官が読み上げた後、それを聞いていた配下の士官達は「やっと帰れる」と思い、命令通りに動き始めた。

不要な戦力は元の世界へ帰って行き、精鋭だけが空港にあった輸送機に乗り込み、日本へと向かう。

それに続いて多数のB-17・B-29戦略爆撃機は燃料補給を途中で繰り返しながら日本へ向かうことになる。

こうして、ワルキューレの各方面の精鋭だけが日本へ向けて飛び立っていく。

残された者達は本部をたたみ、残った兵器や機材は直ちに元の世界へ持ち帰り、まるで最初から居なかったように彼等は去った。

その間にルリは、ケストナーが居る仮設基地へ着いた。

 

「これが敵の本拠地かな?」

 

双眼鏡を取り出して、覗こうとしたが、脱線したショックでレンズが割れて使い物にならなかった。

仕方なく遠目で仮設基地を確認する。

金網の周辺を迂回しているのはヘルメットを被り、AK用マガジンベストを羽織ったMPi-KMを肩に吊した警備兵一人だけだ。

金網の向こう側を見てみたが、見れる範囲では金網から10メートルくらいが限界だった。

基地に潜入しようと、装備を確認し始める。

 

「あっ、曲がってる・・・」

 

脱線した衝撃でスターリングMk7のクリップが大きく曲がっていた。

高い精度と丈夫さを誇るSG553は何処にも以上はないが、スターリングMk7のマガジンは何本か駄目になっている。

 

「基地で何かあるかな・・・?」

 

彼女は基地内で武器を調達することにして、基地へと向かった。

周囲を巡回する歩哨の位置を確認し、歩哨の視線に入らないよう別の隠れられる場所へ移動する。

 

「ン、誰だ・・・!?」

 

MPi-KMを持った歩哨が一瞬通り過ぎるルリの姿を見た。

ボルトを引いて、初弾を薬室に送り込んだ後、最後に見たルリが居た場所へと向かう。

それに気付いたルリは、直ぐに別の場所へと急ぐ。

 

「見間違いか・・・?」

 

ルリを見つけられなかった歩哨は元の位置へと戻っていった。

その間にルリは武器庫を見つけることに成功する。

 

「(あった!でも、見張りが・・・)」

 

物陰に隠れて、武器庫の出入り口の前に警備兵が居るのを見て、どうやって武器庫にはいるか悩む。

数秒間考えてから折れて使い物にならなくなったスターリングMk7の弾倉を投げることを思い付き、早速ポーチから折れ曲がった弾倉を取り出し、警備兵の近くに投げる。

 

「あっ?」

 

間抜けな声を上げて警備兵は持ち場を離れ、ルリが投げた弾倉の方へと向かっていった。

その好きにルリは武器庫の中に入り込む。

 

「ん?」

 

危機一髪警備兵が振り返る前にドアが閉まり、侵入者(ルリ)が武器庫に入り込んだ事を知られずに済んだ。

武器庫に入ったルリは、早速掛けてあるマグプルMASADAを手に取った。

 

「これ、なんだか強そう・・・」

 

MASADAを試しに構えてから呟いた後、スターリングMk7と専用弾倉が入ったマガジンベストを木箱の上に置き、弾倉をある程度ポーチに入れ、スターリングMk7に告げる。

 

「ここの戦いが終わったら、迎えに行くからね」

 

ある程度弾薬を補給し、ベレッタM92とSIG P226を持った後、何処か出られる場所がないか探し始める。

 

「何処にあるかな・・・?」

 

呟きながらルリが探している最中に、外から男の叫び声が聞こえてきた。

 

『報告にあったウィッチだ!撃ち殺せっ!!』

 

その後、連続した銃声が聞こえてくる。

怒号や対空砲の砲声も聞こえ、各地に立てられている拡声器からケストナーの声が聞こえ始めた。

 

『総員対空戦闘用意!魔女が我々を狩りに来たぞ!全力で対処せよ!!』

 

ドアを見張っていた警備兵も対空射撃に加わっている為、ルリに脱出する隙を与えてしまっている。

ルリは有り難くドアを開けて、ケストナーが居るとされる司令塔まで向かった。

敵兵達が何を撃っているのかが気になって空を見上げれば、別の道を歩んだミーナ率いるストライクウィッチーズであった。

魔法で作ったシールドで必死でケストナー配下の兵士達からの攻撃を防いでおり、全く反撃しない。

地上から見ていたルリは「人を殺すような事はしなかった」だと思った。

 

「なっ!貴様何処から入った?!」

 

ルリの存在に気付いた敵兵の一人が手に持つMPi-KMの銃口を彼女に向け、引き金を引いた。

 

「なにっ!?」

 

敵兵が連射した二発ほどがルリの脇腹に命中したが、彼女の反応は痛がる程度、地面に倒れながらマグプルを敵兵に向けて数発ほど撃った。

撃たれた敵兵は回りながら地面に倒れた。

直ぐにルリは起き上がって、司令塔まで向かおうとしたが、仲間がやられたことに気付いた一部の敵兵達が対空射撃を止めて、ルリに向けて手に握る銃で発砲してくる。

 

「侵入者だ!撃ち殺せ!」

 

空からの雨や銃弾の雨に晒されながら、ルリは走りながらケストナーが居る司令塔まで向かう。

 

「到着!」

 

司令塔の出入り口のドアに体当たりして、ルリは司令室の中にはいることに成功する。

外からやって来る敵兵達からの攻撃があるので、壁まで転がり、銃弾を避ける。

少し息を整えるルリであったが、司令塔の中にも敵兵はいるため、声が聞こえた。

 

『侵入されたぞ!早く仕留めろっ!』

 

向こう側の通路から複数の敵兵の声や足音が聞こえてくる。

早速ルリは、補充しておいたM67破片手榴弾の安全ピンを抜いて、向かってくる敵兵達に向けて投げ付けた。

 

『手榴弾だ!』

 

声がしてから数秒後、手榴弾は爆発、敵兵は誰一人殺傷できなかったが、次にルリは白煙手榴弾を投げた。

 

「手榴弾か!?」

 

「違う!煙幕(スモーク)だ!蹴れ!!」

 

敵兵の一人が白煙手榴弾を蹴ろうとしたが、そうはさせまいとルリは蹴ろうとした敵兵に向けてSG553に取り替え、単発にして足を撃った。

白い煙が通路中に撒き散らされ、視界が完全に防がれる。

 

「煙だらけで何も見えない!」

 

敵兵達は少し混乱しており、ルリはマグプルを乱射しながら強行突破する。

 

「殺せ!」

 

何人か撃たれて倒れたが、敵兵は負けじと反撃してくる。

後ろから撃たれながらもルリはケストナーが居る最上階へと急いだ。

もう少しで司令室に到達する所で、防弾チョッキや対爆スーツを身に付け、軽機関銃、短機関銃、散弾銃などを持った複数の敵兵がルリを見るなり発砲してきた。

 

「近付けるな!撃ち殺せ!!」

 

流石に肉が裂けるほどの銃弾は食らいたくないので、ルリは近くにある壁に隠れて反撃の機会を待つ。

階段から上がってくる敵兵達が足音を立てながらルリの元へ向かってくる。

挟み撃ちに遭うと、再生に時間が掛かるほど肉塊にされるので、ルリはありたっけの手榴弾の安全ピンを抜き、出入り口を固めている敵兵達に向けて投げまくった。

無数の破片が飛ばされ、何名かの敵兵が息絶えたが、対爆スーツを身につけた者はまだ動いていた。

 

「この小娘がっ!」

 

対爆スーツを着た敵兵達はRPKやM240をルリに向けて乱射してくる。

直ぐさまルリは対爆スーツを着た男達に向かって突撃した。

相手は気でも狂ったかと思ったが、ルリは武器庫で回収した二挺の拳銃をガンホルスターから抜き、至近距離で対爆スーツを着た敵兵を撃つ。

何発か弾かれるが、掴まれる前に首に銃口を向けて発砲した。

至近距離で首を撃たれた対爆スーツの敵兵達は息絶えた。

残り一人となった対爆スーツの男はルリを掴み、右手から軽機関銃を離し、小柄の少女の首を締める。

 

「死ね・・・!」

 

ルリに向けて告げた敵兵は首を掴む右手の力を強め、絞め殺そうとしたが、ルリが左手からSG553を取り出し、銃口を頭に向けて撃った。

無数の銃弾は対爆ヘルメットを貫通、そのまま頭を撃たれた対爆スーツの敵兵はルリを離して地面に倒れ、力尽きた。

直ぐにルリは司令室に入り、ケストナーの周囲にいた兵士達に発砲し始める。

 

「お前は・・・!?」

 

ケストナーが言い終える前に護衛の兵士がルリの手によって次々と撃ち殺されていく。

 

「クソっ!これでも食らえ、化け物がっ!!」

 

机の上に置いていたパンツァーファウスト44を掴み、ルリに向けて発射した。

飛ばされた弾頭は彼女に向かって飛んできたが、ルリは撃つ前に床に伏せ、爆風から身を守った。

ケストナーの方は後方から排出された高熱ガスを食らって軽い火傷を負っていた。

ルリは直ぐに起き上がり、ケストナーに向けてマグプルを撃とうとするが、ケストナーがホルスターからワルサーP88を取り出して、撃つ方が早かった。

 

「クソ・・・!これでお終いだ!小娘め!!」

 

銃声が鳴り響き、ルリは引き金を引く前に左耳を撃たれて床に倒れ込んだ。

 

「耳に当たったか、直ぐに楽にしてやる」

 

近付いてくるケストナーを見たルリは尻のポーチに仕舞ってある迫撃砲の砲弾を取り出し、右手に持って信管を床に叩いた。

 

「ン、小娘、貴様何を・・・?」

 

ケストナーがルリの右手に握られている物を見て驚き、直ぐさま引き金を引こうとしたが、時既に遅く、ルリはケストナーに向けて砲弾を投げ付けた後だった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!ワシは今度こそ死ぬのかぁー!!?」

 

そう叫びながらケストナーは迫撃砲の砲弾に当たって爆発した。

直ぐにルリは爆風から顔を両手で守る。

爆風が収まった後、ルリはケストナーが居た位置を見た。

 

「あれ、肉片が飛んでない・・・?」

 

驚いたことにケストナーは跡形もなく吹き飛んでいた。

それも肉片は残さず、髪の毛数本だけを残して。

想像していた物とは違う結果となったルリは、訳が分からなかった。

もちろんこの衝撃で、また彼が別の世界に飛ばされたのは言うまでもない。

ルリは起き上がって、外の状況を見た。

地上へと降り立ったストライクウィッチーズが、よく訓練された兵士達を意図も簡単に倒しているのが目に入り、ルリは「これが異世界から迷い人であるウォッチの強みなどだろうか」と心の中で思った。

そして、ルリはストライクウィッチーズと合流に成功するのだった。




ここから暫くボスラッシュが続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次の刺客

次はリディア戦です。


ケストナーを倒し(?)、ルリがストライクウィッチーズと合流した頃、近い場所で野営を取っていたリディアは配下の兵を集め、広場に集合させていた。

 

「(戦車は私のを含めると5両、トラックが3台で歩兵が15人。これじゃぁ、足りなさすぎるわね)」

 

集合していた自分の戦力を数え、苦悩な表情を浮かべて頭を抱えたリディア。

彼女の目の前で集合しているのは士気の低い女性ばかりで、戦車兵に至っては少女が大半を占めていた。

成人女性はM3A5リーとM3グランド中戦車各車の戦車長か、自身が乗るウクライナ製のT-84だけである。

ルリが写っている写真を懐から取り出し、全員に見えるよう高く上げる。

 

「さっきから無線でこの娘を見付け次第保護せよと煩いけど、その指示に従うことにしたわ。マクシミリアンに従うのはもう無しよ。この娘を捕まえてワルキューレに渡せば、私達は戻れると思うわ」

 

リディアの命令を聞いていた兵士達はざわざわし始めた。

どうやら自分達がまだワルキューレに属していたと思っていたらしく、いつの間にか離反していた事など気付かなかったようだ。

気付いている兵士も居たが、度重なる新手のゾンビとの戦闘で散っていき、最後に残ったのが今集合している歩兵15名と戦車兵27、本部付き9名である。

 

「(頭の良いのは殆ど死んじゃったか・・・)じゃぁ、早速任務に取り掛かるわよ!」

 

リディアが手を叩いた瞬間、配下の兵達はそれぞれの持ち場に着いた。

そして、一番先頭にあるT-84のキューポラに腰掛けるリディアの手が振り下ろされると、部隊は一斉に目標地点へと向かった。

一方、ケストナーの基地を壊滅させたルリ達は体術で倒した彼の兵士達をやや強引な手で喋らせ、マクシミリアンが居る無人島への生き方を知った。

 

「どうやら船を使って移動したらしい。港はここからそう遠くないそうだ」

 

両手を縛られて伸びている敵兵達を親指で差しながら美緒は集合している自分の部下達に告げる。

次にミーナが口を開いた。

 

「付近に敵影はないとされるけど、ここに向かってくる物音はあるわ。それが敵であった場合、交戦することになります。目的地まで上空で移動します。ルリちゃんはバルクホルン大尉が抱えて。では、5分後に出発します。解散!」

 

ミーナが言い終えると、全員が屋根のある建物へ避難した。

暫しして、ルリ以外の全員がストライカーユニットの点検を終えた後、レインコートを着用し、ストライカーユニットを足に装着。

腕時計で5分経ったのを確認したミーナは全員に合図を送った。

 

「5分経過、全員移動を開始します!」

 

バルクホルンがルリを抱えた後、全員が雨雲の空へ飛び立った。

もちろん下の辺りはレインコートの所為で、隠れて全く見えない。

目標まで近付いた瞬間、銃声が彼女等の耳に入ってきた。

 

「近くで戦闘をやってるな。何処の連中だ?」

 

美緒が右眼の眼帯を外して、戦闘が行われている場所を見た。

そこにはソ連の二足歩行戦闘型や浮遊してレーザーを撃つ戦車と交戦しているバウアー達の姿があった。

 

「これは驚いた・・・!ミーナ、彼等だ」

 

眼帯を元の位置に戻した美緒から報告を受けた後、ミーナは双眼鏡を取り出して、戦闘の様子を見た。

 

「ほんとだわ、直ぐに助けに行かないと・・・!」

 

そう言ってから、直ぐにバウアー達の元へ急ごうとしたが、真下の森からのレーザー攻撃で封じられる。

 

「クッ、そう簡単にいかないか!全員、地上からの攻撃に注意せよ!」

 

『了解!』

 

避けながら美緒が言った後、全員が返事をしてから散会した。

ルリを抱えるバルクホルンは、彼女を左腕に抱えたまま右手に握るStg44の安全装置を外し、レーザーが放たれている場所に撃ち始める。

 

「そこか!」

 

森の中から銃弾を弾く音が聞こえた。

バルクホルンは一気に接近し、銃身に持ち替えてから魔力を込めて、戦闘型にStg44の木製ストックを振り下ろした。

だが、装甲版が凹む程度であり、戦闘型は直ぐ反撃行動に移る。

 

「なんて装甲だ・・・!」

 

直ぐに戦闘型から離れたバルクホルンは戦闘型の堅さに驚く。

その直後、砲声が響き、左腕に抱えられていたルリが左に指を差しながら叫んだ。

 

「危ない!」

 

左に視線を向けると、砲弾がバルクホルン達に目掛けて飛んできたのだ。

慌ててシールドを張るバルクホルンであったが、シールドは間に合った物の防ぐことが出来ず、吹き飛び、衝撃でルリを離してしまった。

 

「しまっ・・・!」

 

直ぐに戻ろうとしたが、戦闘型の攻撃で迎えに行くことが出来ず、ルリはそのまま地上の森へと落ちていった。

木の枝にぶつかりながらも何とか枝に掴むことに成功し、地面に激突せずに済んだルリ。

自身の身を守るマグプルMASADAが壊れていないか確認する。

 

「良かった・・・壊れて無くて」

 

何処も壊れてないか確認し終えた後、地面に降り立ち、戦闘型に見付からないよう移動する。

その頃、バルクホルンを撃った正体であるT-84に乗るリディアは砲手を褒めていた。

 

「やるじゃない、空中で移く目標に当てるなんて!」

 

「ありがとうございますリディア様。なんか、たまたま当たりました」

 

砲手は照れながらお礼の言葉を述べていた。

 

「元の職場にいたらかなりの大金が稼げたでしょうに・・・じゃぁ、ルリちゃんを捕まえに行くわよ!全車前進!!」

 

右手で指差すリディアの指示で、全車がルリの居る方角へと向かった。

そして狙われていることを知らないルリはリディアが予想する地点へと徐々に近付いている。

その地点にルリが足を踏み入れた瞬間、M3グラントの37.5口径75mm戦車砲M3の砲撃が行われた。

後方に榴弾が着弾し、衝撃でルリは吹き飛び、泥だらけの地面に叩き付けられる。

 

「だっは!」

 

全身が泥だらけになりながらもルリは立ち上がり、直ぐ身を隠す場所まで移動する。

その後も連続してM3各車両の威嚇射撃が行われる。

グラントの車内にて、女性の戦車長が、無線機を使って隊長であるリディアに報告を行う。

 

「ラビット1から女王へ、目標を発見しました。現在威嚇射撃を行い、釘付けにしてます。捕獲部隊の投入を願います」

 

『予想通りね、歩兵部隊が来るまで砲撃を続けなさい』

 

「はい、リディア様。そのまま歩兵部隊が来るまで砲撃を実行、歩兵部隊が来たら砲撃中止」

 

返事をした後、喉マイクに手を当て、砲撃や装填を続ける少女達に命じた。

 

『逃げてないかちゃんと見張っておくのよ。じゃあ私も行くから』

 

「了解、砲撃を続けます」

 

無線を切った後、席に座ってルリが動いてないか確認する。

爆風で殆ど見えてないが、熱源探知レーダーを確認しながらルリが何のアクションをしてないか見る。

一方、砲撃を受けているルリは、どうやって向こう側に向かうか頭を抱えながら悩んでいた。

 

「どうしよう・・・?どうやって抜けよう・・・」

 

頭を抱えながら辺りを見渡し、何処か抜ける場所はないか、探す。

見付けて向かおうにも動いた瞬間、敵が熱源探知レーダーを持っている為、退路が直ぐに砲撃され、全く行けなかった。

不老不死だから一気に向かおうとしたが、今着ている服がズタズタになるのが嫌なので、動くことが出来ない。

ふと、彼女は体中に付いた泥に思い付いた。

 

「映画で見たように行けるかな?」

 

そう思い付いたルリは全身に泥を付け始めた。

その直後、砲撃が一瞬止む。

M3グラントに乗る戦車長は熱源探知センサーにルリの機影が消えて、混乱し、砲撃を止めるよう指示をする。

その隙にルリは這いずりながら砲撃を抜けようとする。

 

「え、消えた!?ほ、砲撃中止!」

 

「占めた!」

 

泥塗れになりながらもルリは素早く移動した。

数秒後には砲撃が再開され、ルリの足に飛んできた石が刺さる。

直ぐ石を抜いてダッシュでその場を離れる。

当然ながら気付かれ、砲撃がルリに集中する。

必死で走って避けながら兵士の死体が複数転がっている場所で、対戦車火器を探す。

 

「あった!」

 

ご都合主義的にもPIAT(ピアット)を見付けてしまったルリ。

対戦車弾が装填されているのを確認し、追撃してきた一台のM3A5リー中戦車に向けて撃った。

無反動ではないピアットの引き金を引いた瞬間、右肩に強い衝撃が来る。

飛ばされた対戦車弾は28.5口径75mm戦車砲M2に命中、全面に付いた主砲を無力化したが、副砲である37㎜戦車砲はルリを捕らえており、まだM3リーは動いていた。

ルリは砲撃を避けるのと同時に別の対戦車火器を探す。

 

「無い、無い!?」

 

だが、こんな時に限って見付からない。

一瞬パニックに陥るルリであったが、迫撃砲の砲弾を見付け、信管を叩き、それをM3リーの履帯に向けて投げた。

砲弾が当たった履帯は切れ、M3リーは行動不能に陥るが、搭載されているM1919A4が火を噴く。

何発か身体に命中したが、彼女は不老不死であり、死にはしない。

それに驚いたM3リーの乗員は射撃を止めてしまい、ルリに対戦車砲弾を探す時間を与えてしまう。

 

「あった、食らえ!」

 

見付けたルリは信管を堅い所に叩き、何の躊躇いもなく対戦車砲弾を投げた。

装甲が脆いM3リー中戦車には効果的であり、砲弾が命中した大破。

炎上するM3リーから、乗員が出て来る。

武器を持っていると分かったルリは、マグプルを彼女等に向けて引き金を引いたが、機関部に泥が入っているので、マグプルは全く作動しなかった。

こちらに向けて撃ってくる行動は見られないので、ルリは逃げる戦車兵達を見逃すことにした。

泥で殴ることしかできなくなったマグプルを捨てた後、周囲に倒れている死体からMP5A5を拝借する。

次のM3A5リー中戦車がグラントを含めて3両も向かってきたので、砲撃にさらされながらもM9バズーカを見付けることが出来た。

機銃を撃たれながら身を隠した後、ちゃんと対戦車ロケットが装填されているのを確認し、直ぐにM3リーに向けて撃った。

一撃で大破し、中から乗員達が飛び出してくる。

次のM3リーを撃破するためにルリは念の為に持ってきた対戦車砲弾を取り出し、こちらを踏みつぶしに着たもう一両のM3リーに向けて投げ付けた。

車体上部に命中した為、突然ながら大破した。

最後のグラントの砲撃を受けて、直ぐにその場から離れる。

機銃攻撃を受けながら、次の対戦車火器に辿り着くことに成功した。

その対戦車火器はまたM9バズーカであり、今度はロケットが装填されていなかった。

袋に入ってるロケットを袋ごと回収した後、直ぐにその場から逃げる。

隠れる場所は全て吹き飛ばされたが、自然に出来た蛸壺に隠れ、急いでロケットをM9バズーカを装填する。

 

「入った!」

 

直ぐにM9バズーカを構え、グラントに撃った。

グラントの側面に命中し、豪快に爆発して大破した。

全て破壊し終えたルリは一息つこうとしたが、今度は歩兵部隊が来襲し、しかもリディアが乗るT-84まで来た。

 

「戦車を全滅させるなんて・・・!あの娘化け物なの!?」

 

リディアは破壊されたM3A5リー・グラント中戦車を見て、苦笑いしながらルリを見る。

銃撃に晒されながらルリはM9バズーカを捨てて、MP5をフルオートにして撃ちまくった。

何名か撃ち倒した後、直ぐに後退する。

丁度地面に落ちていたバレットREC7を回収し、MP5を捨てて、安全装置を外してREC7を構えて、一人ずつ仕留めていく。

ある程度倒せば、元の持ち主の死体から出来るだけ弾倉を回収し、また後退した。

 

「味方の歩兵部隊が壊滅してます!」

 

「分かってるわよ、そんなことぐらい!そう言えばあの娘、撃たれたのに元気に動いてるわね・・・戦車砲で吹っ飛ばしても再生するかしら・・・?目標12時方向、あの娘を撃ちなさい」

 

操縦手からの報告を聞いたリディアは子供のような無邪気な表情でそう思い付き、砲手にルリを撃つよう指示を出した。

その指示に砲手は異議を唱える。

 

「えぇ、でも、殺さずに傷一つ無く捕らえるんじゃ・・・」

 

「良いから撃ちなさい!」

 

リディアは砲手に指示棒を突き付け、砲手を服従させた。

発射ボタンが押され、T-84の51口径125mm滑腔砲KBA-3の砲声が響き、砲弾が真っ直ぐルリに命中。

装填されているのが徹甲弾であった為、ルリの上半身と下半身を引き裂き、凄まじい血飛沫を上げる彼女の後ろで爆発が起きた。

 

「目標に命中・・・」

 

砲手が上半身と下半身が引き裂かれたルリを見て、車長であるリディアに報告する。

 

「まだ息があると思うわ。トドメを刺しちゃいなさい」

 

歩兵部隊に指示を出し、それを受けた一人の童顔の軽歩兵が手に持つLWRC M6をルリの上半身に向けて数発程撃ち、彼女にトドメを刺した。

完全にルリが動かなくなるのを確認した歩兵部隊は銃を降ろして一息付く。

 

「もし外れたら私達、確実に殺されるわね・・・」

 

額に汗を浮かばせながらリディアはルリが見える位置まで接近し、無惨な姿の彼女を見た。

暫く見ていると、リディアの瞳から涙が溢れてきた。

 

「やだ、(あたし)、泣いてる・・・?」

 

涙を拭こうと右手で拭いた瞬間、一人の歩兵の叫び声が耳に入った。

 

「いやぁ・・・い、生き返ってる!?」

 

その叫び声の後に、リディア以外の全員が声を上げる。

 

「え、嘘!生き返ってるの!?」

 

周りの反応を見て、ルリの方を見てみると、彼女の上半身と下半身が繋がっている光景が目に入った。

 

「当たった・・・!ほら、私の言う通りじゃない!」

 

リディアは恐怖ではなく、予想が当たったことを喜び、周囲を見た。

再生した彼女は右手に魔力を込め、充分に溜まればそれをリディアのT-84に向けて放った。

戦後世代の戦車、特に第三世代の戦車はRPG-7のような対戦車ロケットに耐えることが出来るが、この魔力弾は防ぐことは不可能である。

砲手と操縦手が一目散に脱出したが、リディアは決して動くことは無かった。

前面装甲に命中し、飛んできた破片が彼女の腹に突き刺さった。

 

「ガハッ!」

 

T-84は辛うじて耐え抜いたが、車内は火に包まれ、火薬庫にも火が回っている為に爆発までそんなに時間は掛からなかった。

腹に刺さった破片を抜いたリディアはキューポラから外へ出て、ズタズタで素肌が見えているルリに向けて、自分のマントを投げた。

 

「風邪を引くから・・・それでも付けてなさいな・・・それとなんでこんな時に私は敵を心配してんのかしら・・・?」

 

突然マントを渡されたルリは何が何だか分からなかったが、理由を聞く前にT-84は爆発。

リディアはそのまま爆風に呑まれ、影も形もなくこの世から去った。

周りにいた敵兵達は、ルリに恐れをなして、蜘蛛の子を散らすかのように逃げていった。




次も前回に言ったとおり、ボスラッシュです。
それと後数話ほどで終了します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔女対前準皇太子

超展開に無理矢理感が半端無い・・・

セルベリアVSマクシミリアンです。


逃げていく女性兵士達を見ながらルリは、死んだ兵士から衣服を拝借してバウアー達との合流に向かった。

所変わって東京に居たオメガ・グループは、マクシミリアンが居る無人島へと向かう準備をしていた。

 

「また任務かよ・・・全くどれもこれもゾンビの所為だぜ」

 

装備を纏めた小松は悪態付きながら何時でも離陸可能なCH-53へと他の隊員と共に向かう。

 

「もうすぐ終わるだろう。それまで我慢しないとな」

 

平岡は小松の肩を叩きながら笑みを浮かべて告げた。

田中の方はもうすぐこの地獄が終わるとホッとしている。

定員分の人数が乗り込んだ知らせを聞いた機長は、後方ハッチを閉めてから操縦桿を握り、CH-53を離陸させた。

機内で左右の席に座る89式小銃、ミニミ軽機関銃、MP5SD6、AT4等の完全装備のオメガの隊員達は雑談を交わしていた。

 

「これで最後だといいだけどな」

 

「俺もそう思いたいぜ。このところ俺達引っ張りだこだったし、極秘部隊だってのに一般の部隊とまで組まされて事もあったしな。給料はもちろん多額だよな?」

 

腕組みをしながら他の隊員と会話していた小松は平岡の方を向いて、彼に話し掛けた。

 

「分からんぞ・・・ゾンビ発生騒動が起きてから色々と起こってきたから。復興予算で手当なんか出ないかもしれないぞ」

 

平岡の返答を聞いた小松を含めた隊員達は怒りの声を上げた。

 

「おいおいマジかよ、あんだけ使いぱっしりやがって!」

 

「給料が出ねぇ時はマジ止めてやんだからな!」

 

機内で騒ぎ出し始めた為、部隊長であるオメガ6が静止の声を上げ、彼等を黙らせる。

 

「貴様等黙らんかっ!給与はちゃんと出るはずだ。俺が上と掛け合ってみるから、任務に集中しろ」

 

その言葉で騒ぎが収まったが、小松はイマイチオメガ6の言葉を信用していなかった。

 

「(ホントに給与は出るんだろうな?)」

 

睨み付けながら心の中でそう思う小松。

かくして、オメガ・グループを乗せた二機のCH-53はマクシミリアンとハナが向かった無人島へと急いだ。

一方、バウアー達と合流したルリは、そのまま彼等と一緒に目的地である港の近くまで到着。

後数㎞と言う距離までに近付いた途端、意外な人物が彼等を出迎えた。

 

「大尉、前方に不審な男が」

 

「ン、なんだあの男は?」

 

何とか修理したパンターG型に乗るバウアーは、代わりに砲手を務めるクルツの知らせで目的地である港の出入り口前で何かを持って立っている男を発見し、キューポラから出てから双眼鏡で持っている物を確認する。

 

「港の前に右手にデカイ鈍器のような物と左手に盾を持った男が立っている。また連中が変な奴を送り込んできたのか?」

 

全員に知らせ、男の様子を覗うバウアー。

それを耳にしたセルベリアも双眼鏡を取り出し、男の姿を見た。

 

「あ、あの男は・・・!?」

 

セルベリアはその姿を見て絶句した。

港の前で立っている男に見覚えがあったからだ。

その男は右手に持っている長い鈍器のような物をバウアー達に向ける。

 

「何をする気だ?」

 

バウアーは不思議と思い、双眼鏡で長い物の先端を見た。

そこには砲口な様な穴が開いており、そこに青白く光る粒子が集まっていた。

この距離からも充分に青白く光るのが見えた為、見覚えのあるアリシアは声を上げた。

 

「まさかあれは・・・!?」

 

彼女が言い終える瞬間に青白い光る粒子がバウアー達に向けて一気に放出された。

それはアリシア達ヴァルキュリア人と同じ、槍から放たれる強力なビーム砲と同等であった。

直ぐに回避命令を出すバウアーであったが、間に合うはずもなく、一瞬で消されると思った瞬間、芳佳達の魔法のシールドで守られた。

 

「た、助かった・・・」

 

ちゃっかりついてきた山本は今居るⅢ号戦車N型の車内で胸をなで下ろし、近くにもたれ掛かった。

 

「何と強力な攻撃だ・・・!一体奴は何者なんだ・・・!?」

 

「私、分かります」

 

「なに、分かるのか?」

 

アリシアがM4A1カービンを握りながらビームを放った男のことで口を開き、バウアーが男について問い質す。

 

「マクシミリアン・・・まさかあんな物を持ち込んでいるなんて・・・!」

 

その言葉にセルベリアはようやく自分達を襲撃した男、マクシミリアンと対峙する時が来たと判断した。

一気に一網打尽に出来なかったマクシミリアンは舌打ちし、バウアー達に聞こえるような声量で、彼等を褒めた。

 

「よもやあの一斉を防ぐとは・・・見事な物だぞ!だが、時は故に残酷、次は逃れられないかもしれん」

 

マクシミリアンが言い終えた後、彼の後ろから光った巨大な光った球体が現れた。

 

「な、なんだアレは!?」

 

パッキーが巨大な物を見て叫んだ瞬間、その球体が突如爆発、周りが光に呑まれていく。

 

「こ、これは・・・!?」

 

眩しすぎる光に目を手で守りながら、バウアーは乗車であるパンターごと光に呑まれた。

他の者達もその光に呑まれていく。

数分後、光に呑まれた彼等は一部の者を除く武器と弾薬とセルベリアや山本を残してその場に居た者達は影も形も無く消えた。

車内にいたはずの山本は、セルベリア以外の者達が全て消えたことでかなり動揺していた。

 

「あ、あれ!ブルクハイトさんは!?それに俺、確かに車内に・・・!?」

 

動揺する山本を他所に起き上がったセルベリアは、こちらに近付いてくるかつての上官であり、忠誠を誓った主君であるマクシミリアンを睨み付けた。

 

「殿下・・・いや、貴様・・・彼等を何処にやった・・・?!」

 

「主君に向けてその口の利き方とは・・・かつての部下とはいえ、聞き捨てならんな。なに、元の世界に帰って頂いただけだ。あの小娘を除いてな」

 

訳を話した後、マクシミリアンはセルベリアに槍を向けるなり、砲口からビームを彼女に向けて放った。

直ぐに山本は退避し、危機一髪回避したセルベリアはM249を持ち、マクシミリアンに向けて撃つ。

直ぐにマクシミリアンは飛んでくる銃弾を盾で防御し、ヴァルキュリア人と同じ蒼い炎を纏ったが、その前に何発か被弾した。

 

「ぐっ、そんな物で!」

 

盾で防御(ガード)しながら槍をセルベリアに向け、連発でビームを放った。

ビームが放たれたと同時に射撃を止めてビーム攻撃を回避しようとするセルベリアであったが、回避する際ビームがM249に命中、軽機関銃を失った彼女は次に背中に掛けてあったバレットM82A1を取り出し、安全装置を解除して、マクシミリアンに向けてフルオートで撃ち始める。

12.7㎜弾を防いでいるが、流石に対物ライフルのフルオートは防ぎきれるはずもなく、やや怯んでいる。

 

「小癪なマネを・・・!」

 

盾で十発分を防ぎきったマクシミリアンはセルベリアに向けて突進した。

弾切れになったバレッタM82A1を捨てたセルベリアは直ぐSTIナイトホーク4.3を左の脇の下にあるガンホルスターから取り出し、ひたすらマクシミリアンに向けて撃ち続けた。

だが、背中に背負っている装置のお陰で人造的ヴァルキュリア人化しているマクシミリアンには効かず、銃弾が弾かれるばかりであった。

 

「そんな物は効かん!」

 

右手に持った槍で横っ腹を強く殴られたセルベリアは吹き飛んだ。

ボールのように地面に強く何度も叩き付けながら跳ね飛び、暫ししてから止まった。

 

「骨の何本かが折れているな・・・それにその衝撃で全身の骨が折れているかもしれん。それでも私とまだ戦うか?」

 

マクシミリアンは見下した表情で、地面に仰向けで倒れるセルベリアを見た。

それでも尚立ち上がろうとする彼女に小さく息を吐いた後、セルベリアにヴァルキュリア人に成ることを進めた。

 

「その怪我では恐らくまともに戦えんだろう。槍と盾はあるはずだ、ヴァルキュリア人と成り、余と等しく戦え」

 

血反吐を吐きながら立ち上がるセルベリアを見ながら告げるマクシミリアン。

起き上がった泥と血塗れの彼女の手に槍と盾があることを目視したマクシミリアンは笑みを浮かべながら褒めた。

 

「その息だ。そうでなくては拾った意味がない!」

 

ヴァルキュリア人となったセルベリアに向けて槍で集中砲火を浴びせるマクシミリアンであったが、相手は本物のヴァルキュリア人であり、その攻撃は容易く回避される。

 

「クッ、流石は本物。だが、余は負けん!!」

 

どこから来るのか予想して、マクシミリアンは身構えたが、その強力な攻撃は防ぎきれるはずもなく、形勢が逆転した。

 

「(何という激痛・・・これが本物のヴァルキュリア人か・・・!)」

 

少し距離を置いてから反撃に転じようとするマクシミリアンであったが、本物は高速で動ける上、パワーも人造とは桁違いである為、回避された挙げ句、連射ビームを諸に食らった。

防ごうとするマクシミリアンだが、人造とは段違いの火力に耐えきれず、装置が故障。

背中に背負った装置が煙を上げ、結果的にパワーを失ったマクシミリアンは凄まじい副作用に耐えきれず、地面に膝を着いた。

 

「やはりこの人造装置で本物と一戦交えるのは無理であったが・・・こうもあっさりやられるとは・・・無念・・・!セルベリアよ、早くトドメを刺すのだ。激しい頭痛に嘔吐、それと体中が死ぬほど痛い・・・さぁ、怒りに任せて余を楽にするのだ・・・早くしろ・・・!ゴフッ!!」

 

血反吐を吐きながらセルベリアに瀕死の自分にトドメを刺すようせがるマクシミリアン。

だが、セルベリアはトドメを刺すこともなく、ヴァルキュリア人から人に戻って、これから死に行く彼の姿を哀れみを込めた瞳で見ているだけだった。

 

「何故だ・・・何故殺さない・・・?」

 

「私はもう貴方の部下ではない。そして貴方の命令に従う義理はない」

 

「な・・・ん・・・だと・・・!?」

 

マクシミリアンはセルベリアの答えにショックを受けた後、大量の血を吐いて息絶えた。

完全に死んだのを確認した彼女は見開いたまま死んだ彼の瞳を手で閉じ、既に息絶えたマクシミリアンの両手を合わせて、近くにあった花を摘んで、既に動かぬマクシミリアンの上に置き、何処かへ去ろうとしていた。

戦闘が終わったのを見計らって戻ってきた山本はそんな彼女の姿を偶然にも見てしまい、声を掛けた。

 

「あの・・・何処に行くんですか・・・?」

 

「目的地だ。お前は来なくて良いぞ・・・」

 

その声に振り返ったセルベリアは目的地である港に向かうと返し、武器と弾薬を拾って港まで向かった。

その頃、光に呑まれて消えてしまったルリは起き上がった。

 

「あれ・・・ここは・・・?」

 

周りの景色を見て、今まで居た世界とは違う場所と気付き、何処以上がないか、自分の身体を触り始めた。

 

「なんでこの格好・・・!?」

 

触って、さっきまで着ていた服とは感触が違うことに気付き、自分の着ている服を見てみると、初めてこの世界に来た時の格好をに戻っており、彼女は驚きの声を上げた。

武器もkar98kやワルサーP38に戻っており、着ている服も旧ドイツ国防軍陸軍のM43野戦服と野戦ズボン、装備までもが初めてこの世界に来た時の格好に戻っていた。

 

「どうなってるの・・・?」

 

立ち上がって、kar98kを握りながら辺りを見渡す。

 

「何もかもが来る前に戻ってる・・・」

 

ルリはあの世界に来る前に戻っていることに驚き、その場に立ち尽くした。

彼女が居る今の場所は地下にあるなんらかの施設で、所々埃が被っており、壁にドイツ第三帝国を表す鷲が鍵十字を足で掴んでいるシンボルマークがあることから、放棄されたナチス関連の施設と分かる。

そんな立ち尽くして動揺しているルリに声を掛ける人物が居た。

 

「どうしたのですか・・・こんなところで・・・?」

 

それは女性の声であり、年齢からして少女の声だ。

直ぐに振り返って、手に握る小銃を声のした所に向けた。

 

「ヘッ・・・?どうしてここに・・・?」

 

その声の正体はあの言葉であった。

何故、あの世界の住人である彼女が居るのかがルリの脳内を支配していたが、言葉の右手に握られた鉈を見て、小銃の安全装置を外し、引き金に指を掛け、それを引いた。




次はバウアー&パッキーと各参戦作品による主人公勢によるラスボスとの最終決戦と隠しボスである言葉とルリ戦を含めた最終回です。

ただいまエンドイラストを募集中~
バウアーとウサギのパッキーだけ書いて貰えばいいです。はい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話・・・

もうここで終わりです。ここまでこのような作品を読んでくれた皆様に嬉しすぎてお礼の言葉すら出ません!


ルリが言葉と死闘を開始したと同時に奇妙な空間に転移したバウアー達が目覚めた。

 

「うぅ・・・ここは・・・?」

 

パンターG型の車内にてバウアーが第一に目覚め、周囲を見る。

 

「な、なんだ、この空間は・・・!?それに大部分が居なくなってるぞ!?」

 

周囲を見渡して、シュタイナーを始めとしたZbv組と正徳、ゾーレッツ、ハーゲン、ゴロドク、ヴェルナー、ハルス、STG達が姿を消していた。

彼等だけじゃない、イーディ分隊の面々や連合軍からの転移者、イムカ、アリシアを除くヴァルキュリア人達、芳佳を除いたウィッチ達までも姿を消していた。

同じく目覚めたカールは、目の前で倒れていたパッキー達の姿を見て驚く。

 

「ぶ、武装したウサギが・・・!」

 

「な、なに!?うわぁ・・・本当だ・・・!」

 

次に目覚めたゲイツが、元に戻ってしまったパッキー達の姿を見て驚愕した。

元居た世界の動物(ウサギと猫)の姿に戻っており、人が見たら驚かずには居られない姿だった。

 

「い、一体どうなってんだこりゃ・・・!?」

 

幾つものトンデモ無いものを見てきた先程目覚めたBJも驚くしかない。

驚きの声を上げる彼等のおかげでパッキー達は目覚めてしまった。

 

「こ、これは・・・元に、戻っている!?」

 

「お、おぉ~戻った!?」

 

「元に戻ってるぞ。一体どうなってんだ!?」

 

「元の姿に戻ってる・・・?」

 

ラッツ、ボタスキー、チコは元の姿に戻れて喜んでいるようだが、パッキーは残念がっていた。

 

「はぁ~とんでもない混沌(カオス)だわ・・・」

 

目覚めたハイトは、一連の光景を見て、頭を抱えた。

その次に目覚めたアリシアと芳佳は状況が理解できないでいた。

 

「ちょっと・・・これは・・・?」

 

「一体何がどうなっているのですか?」

 

周囲を見渡して、”元”の姿に戻ったパッキー達と周りに広がる真っ黒な光景を見て、キューポラに居るバウアーにアリシアと芳佳は聞いた。

 

「俺に聞かれても分からん。シュタイナー少佐達は消えるわ、武装したウサギと猫が現れるわ、奇妙な空間に居るわ、頭がどうにかなりそうだ・・・」

 

そう答えたバウアーは残った左目を擦って、現実か幻想かどうか確かめた。

未だに信じてもらえないパッキー等は、自分達が人間であった事を必死に伝えてなんとかバウアー達を納得させた。

 

「そうか・・・君達はパッキー達だったのか・・・そしてこれが元居た世界の姿なのか・・・」

 

「その通りだバウアー。俺を含めたラッツ。ボタスキー、チコは特殊な世界に住んでいた住人だ。詳しいことはとにかく言えんが・・・」

 

「まぁ、こんな何処かも分からない場所で長話をしていたら何時何者かに襲撃されるか分からんからな・・・詳しい事情はここが何処だか分かって、安全な場所を確保できてからだ」

 

パッキーの話を聞いていたBJが納得した後、周囲を見渡した。

その数分後、何か奇妙なとてつもなく大きな物体が彼等の前に現れた。

 

「な、なんだよアレ・・・!?」

 

「ありゃあ・・・宇宙人か!?」

 

「あぁ・・・神様・・・」

 

ボタスキーがその物体を見て声を上げれば、ラッツとチコが驚きの声を上げる。

 

「なによ・・・あれ・・・!?規格外じゃない・・・!」

 

「ね、ネウロイ・・・!?でもこんな形をしたタイプは・・・!」

 

アリシアが口を押さえながら言った後、芳佳が元居た世界で戦っていた”敵”と錯覚してしまう。

あのパンツァー・ゲイツや幾多もの奇怪的な物と戦ってきたBJでさえ、これには唖然するしかなかった。

 

「こいつはなんだ・・・?」

 

「分からない・・・俺にはさっぱり分からない・・・」

 

「大尉殿、我々は夢でも見ているのですか・・・?」

 

「お、俺に聞くな・・・夢だったら相当な悪夢だぞ・・・!」

 

ただ単に呆然としているカールが呟くと同時にパッキーも呟いて呆然。

照準器からそれを見ていたクルツは額に汗を浮かばせながらバウアーに話し掛けた。

その奇怪な物体にハイトは見覚えがあった。

元居た世界でそれと交戦した経験があるからだ。

 

「造物主・・・!」

 

ハイトが発した言葉に一同が注目する。

 

「造物主だと!?あの目の前にいるあの奇妙な物体が神だというのか!?」

 

キューポラから今、自分達の前にいるのが神なのかをハイトに問うバウアー。

ラッツ、ボタスキー、チコはあれが神なのかが信じられないでいる。

呆然としきっていたカールも声を出してしまう。

 

「止せよ・・・あれが神だってのか・・・?とても神聖的な姿じゃないぞ、全く」

 

「その通りですよ・・・絵本で見たイメージとは違いますよ・・・!」

 

カールに続いて芳佳も驚きの声を上げた。

彼等が信じられないのも無理がない、自分達が想像していた神の姿とは全く異なるからだ。

その物体から声が機械的な聞こえてきた。

 

『我ハ造物主ナリ・・・別世界カラヤッテ来タ輩ヨ、今スグ裁キヲ受ケヨ・・・』

 

「今すぐ裁きを受けよ?もうとっくに裁きを受けてるのだがな」

 

BJが冗談交じりの言葉を発したが、奇妙な物体は続けた。

 

『オ前達ノ御陰デコノ世界ソノモノガ狂ッテシマッタ。マシテヤ異世界カラ余計ナ者達マデ来テシマイ、本来ノ予定ガ大幅ニ狂ッテシマッタ』

 

「この世界?あの死体がうようよしていたあちらのことか?」

 

『ソウダ。ダガ、修正ハ不可能ダ。オ前達ガ余計ナコトヲヤッテクレタカラナ』

 

「修正が不可能?人をあんな姿に変えて世界を滅茶苦茶にすることが計画だって言うの!?」

 

ゲイツがあの世界のアリシアが”造物主”のおぞましい計画を知り、声を荒げる。

 

『ソレガコノ世界ノ行ク末ダ。オ前達ガ邪魔シタ所為デ、我々ノ計画ガ台無シダ。本来死ヌハズデアッタ人物ガ生キテシマッテイル。コレモ全テオ前達ノ所為ダ』

 

「そんな行く末、間違ってます!」

 

「そうだぜ!人間をゾンビにするなんて頭がおかしい!!」

 

「お前、絶対に神じゃない!」

 

行く末と言う言葉を聞いて、芳佳が声を上げた。

それに続いてボタスキーとチコが造物主を挑発する。

次にハイトが、消えた仲間達のことを聞いた。

 

「ねぇ、あたし達の他の人達はどうしたの・・・?」

 

『本来生キテイル者ハ元ノ世界ニ返シ、死ンデイル者ハ死ンデ貰ッタ』

 

「造物主には慈悲という言葉もないのか・・・」

 

カールが呟いた後、造物主はそれでも続ける。

 

『世界ヲ破壊シタ輩メ。マァ良イ、オ前達ヤ余計ナ物ヲ呼ビ寄セタ発生点ハ排除シタ』

 

「発生源?いったい何のことだ!?」

 

パッキーは”発生源”が何なのかを造物主に聞き出そうとしたが、周りがサソリのような生物に囲まれた。

 

『モウ話スコトハナイ。オ前達ヲ排除スル』

 

「ハナッからそうするつもりだったか!徹甲弾装填、クルツ、目標は目の前にいる神だ!」

 

了解(ヤヴォール)、大尉殿!」

 

バウアーがクルツに造物主に向けて撃つよう命じた後、他の者達は周りにいた奇怪な生物等にそれぞれ手に持つ銃で攻撃を始めた。

 

「こいつ等、脚は脆いわ。まずそこを撃って!」

 

周囲を囲む奇妙な生物との交戦経験があるハイトは、全員に弱点を知らせた。

その助言の御陰で徐々に排除されていき、レーザー銃のような物まで持つ生物も居たが、撃つ前に排除されていく。

 

「あっ!」

 

「なんだ?クソッ、死に損ない共まで呼び寄せたか!」

 

ラッツがM16A1を構えながら、こちらに向けて走ってくるゾンビ等を目撃して声を上げて知らせた後、BJが悪態付いた。

 

「駄目です!全く物ともしません!!」

 

「クソッ、徹甲弾を・・・!」

 

パンターの車内にて、75㎜轍甲弾を物ともしない造物主にクルツの知らせにバウアーはどうやって造物主を倒せるか悔しながら模索していた。

 

「とんだ化け物だ・・・レーザーでもあれば・・・」

 

「だが、連中はもう飛ばされて居るぞ」

 

飛んでくるレーザーから身を隠しながらパッキーがSTG達のことを言ったが、カールは今は居ないと否定した。

だが、応戦しているアリシアと芳佳を見て、あることを思い付いた。

 

「そうだ。メルキオット、例の得物は使えるか?!」

 

カールは直ぐにアリシアにヴァルキュリアの槍と盾が使えるかどうかを問うた。

 

「使えます!」

 

「よし!バウアーに攻撃を止めさせろ!お前と宮藤であいつを倒せ。雑魚は俺達が担当する。お前達は気にせずあいつを倒すのに集中しろ!!」

 

「「は、はい!」」

 

近付いてきた撃ち漏らしのゾンビを始末したカールにアリシアと芳佳は返事をして、それぞれの準備に入った。

パッキーは何故アリシアと芳佳に任せるのかを疑問に思い、ゲイツに話し掛けた。

 

「そう言えばなんでアリシアも何だ?彼女はただの義勇兵のはずだが・・・」

 

「お前はあの時居なかったな・・・恐ろしい物だぞ・・・」

 

「一体どんな物を見せてくれるのか・・・!」

 

応戦しながら答えるゲイツにパッキーは、この状況を打開してくれるアリシアに期待していた。

BJからの伝言でバウアーは即時攻撃を止めた。

 

「ふむ、奥の手を使うのだな?」

 

「そうだ。多分、あの二人ならやれるはずだ」

 

「メルキオットの超人的な力は信じられんが、宮藤という日本人(ヤパーニッシュ)の少女のあれは覚えている。我々は精々彼女達の障害を取り除くか、この場で敵を倒し続けるしかないだろう。クルツ、標的変更。周囲の化け物共を排除する!!」

 

「了解しました大尉殿!彼女等を邪魔をする奴らを片っ端から片付けます!」

 

「うむ、その息だ!」

 

笑顔で答えたクルツにバウアーはお褒めの言葉を彼にやった。

BJがパンターから離れたのを確認したバウアーは、目の前から群がってくる奇妙な敵に攻撃を命じる。

 

「弾種榴弾、目標は目の前の化け物共だ!撃て!!」

 

装填手が榴弾を装填したのを確認したクルツは直ちにバウアーに従い、発射ペダルを踏んだ。

75㎜の70口径の長砲身が唸りを上げ、榴弾が砲口から発射され、敵の群れの真ん中に命中、一気に数体ほど排除できた。

その頃には準備も終わり、ヴァルキュリア人となったアリシアと、ストライカーユニットを足に装着した芳佳は直ぐにでも造物主に接近して攻撃できるような準備が整った。

 

「出来ました!」

 

「こっちも!」

 

準備が出来たとアリシアと芳佳が知らせた後、パッキーは蒼いオーラに包まれて銀髪と赤目に変わったアリシアの姿に驚きながら、直ぐに攻撃するよう指示した。

 

「それがゲイツの言っていた奴か・・・直ぐに攻撃に向かってくれ!後のことは気にするな!!」

 

「え、でも!」

 

「良いから、行け!」

 

「「は、はい!」」

 

パッキーに返事をした二人は直ぐに造物主の攻撃に向かった。

飛び立とうとした瞬間、バウアー達が乗るパンターが敵のパンツァーファウストのような物を撃たれ、側面に被弾して履帯が切れて動けなくなってしまっていた。

 

「バウアーさん!」

 

「バカヤロー、早く行け!!」

 

「こっちは気にするな!ちょっと動けなくなっただけのことだ!!」

 

バウアーとクルツが助けに来た芳佳に気にせずに向かえと告げ、車内に戻ってまだ回る砲塔で戦った。

その間、パッキーとカール、ハイトがアリシアと芳佳の進路上の邪魔になる敵を排除する。

 

「行って神様をぶちのめしてこい!!」

 

ゲイツが言った言葉を聞き入れた二人は猛スピードで造物主に向かった。

向かいながらアリシアは振り返って、飛んできた手榴弾を投げ返すラッツと奮闘するチコ、叫びながらM16を乱射するボタスキー、M240軽機関銃を乱射しまくるゲイツ、同じくFAMASを乱射するハイト、正確にM1A1トンプソンでゾンビを排除していくBJ、狙撃するカール、負傷しながらも未だ銃を撃つのを止めないパッキー、弾薬が無くなるまで奮闘するバウアーとクルツ等を見ていた。

そして目の前に視線を戻し、芳佳と共に造物主へ突っ込んだ。

造物主は向かってきたアリシアと芳佳に強力なビームを放ち、二人を跡形もなく消そうとする。

 

「芳佳ちゃん!」

 

「はい!」

 

芳佳はアリシアの前に向かい、巨大なシールドを張ってビームを受け止めた。

このビームを防ぐのには相当な力と魔力が必要であり、芳佳は体中から来る苦痛に耐えながらシールドを張っていた。

アリシアは芳佳を助けに行こうとしたが、芳佳はそれを断って、自分を気にせず造物主に攻撃するよう悲願する。

 

「大丈夫!?芳佳ちゃん!!」

 

「私のことは気にしないで造物主に攻撃を!」

 

「え、えぇ!!」

 

黒い地面に着地したアリシアは槍の先端に最大のパワーを溜め、狙いを造物主に合わせる。

 

「(この一撃で確実に仕留めなきゃみんなが・・・)」

 

振り向かなくてもバウアーとパッキー達の現状は分かっており、芳佳がどれくらいで脱落するかも脳内で分かっている。

アリシアは全神経を右手に集中させ、狙いを造物主に定めた。

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

叫びながら槍から青白い強力なビームを放った。

槍と先端から発射されたビームは造物主に命中した。

造物主が地面に落ちていくと、彼等が居る空間が眩い光に包まれ、アリシアの目の前も真っ白になった。

その頃、無人島に到着したオメガ・グループは、先に到着していた佐藤と中村との合流していた。

 

「おぉお前等、てっきりゾンビの餌食になってると思っていたぞ」

 

「それはこっちの台詞ですよ、佐藤二佐殿。まさかお前まで生きてるとはな?」

 

「んだとこの野郎・・・!この中村正徳様に向かって・・・!」

 

小松の皮肉混じりの言葉に中村はキレたが、お約束通り佐藤から鉄拳制裁を食らった。

 

「騒動を起こそうとすんじゃねぇ!このボケッ!!」

 

「ちくしょう・・・いつか殺してやる・・・!」

 

そう言いながら、中村は佐藤に殴られた頬を抑えながら仕事に戻った。

 

「中村三曹殿は相変わらず御大変で・・・」

 

「まぁ・・・あの人見た目も馬鹿そうですから・・・」

 

平岡と田中は中村に対して少し辛口なコメントを出した。

 

「まぁ、あいつは馬鹿だからな。それよりもだ。お前達に来て貰った理由がある。それはだ・・・」

 

佐藤が言い終える前に、大きな地震が彼等を襲った。

 

「な、なんだ!?」

 

「じ、地震ですよ!多分震度は・・・!」

 

「冗談じゃないよ!今更地震なんて!」

 

揺れる地面にバランスを崩しそうになる小松、平岡、田中。

無論、中村の方が地震にビビって、地面に伏せていた。

 

「ヒィ~怖いよ~お母ちゃ~ん!!」

 

他の隊員達はバランスを崩さぬよう、必死で動いていたが、佐藤はこれは地震じゃないと気付いた。

 

「こりゃ・・・地震じゃないな・・・だとすると・・・」

 

突然、中村の居る所だけが浮かび上がり、何かが空へと脱出しようとしていた。

 

「おい中村ァ!今すぐそこから離れろ!!」

 

「えぇ!?うわぁ、動いてる!動いてる!ひ、ヒィ~~~~!!」

 

落下したら死ぬところまで来る前に中村は飛んでそこから離れた。

もちろん着地に失敗して、豪快に転んだが。

謎の物体が空へ向けて飛び上がり、周りにいた隊員達と小松等、佐藤と中村はそれをただ見ていた。

 

「な、なんだよあれ・・・?」

 

「UFOじゃないですか・・・?」

 

「あんなUFOなんてあったけ・・・?」

 

天高く飛んでいった物体は成層圏を抜け出し、宇宙まで行くと、ブラックホールに飲み込まれて何処かに消えた。

 

そして、ルリと言葉(ことのは)との決着の場に視点は戻る。

彼女が持つkar98kの銃口から発射された7.92㎜弾の肩に食らった言葉は平然としていた。

 

「私も貴方の同じ様な物ですから・・・!」

 

そう言いながら言葉は右手に握られた鉈でルリに斬り掛かり、彼女は回避行動を取ったが、左胸を斬り付けられ、傷口から噴き出した血が言葉の身体に飛び散り、顔をやや赤く染める。

 

「フフ、逃げな続けなければ永遠に切り裂かれ続けますよ・・・!」

 

もう一度斬ろうとした言葉にルリは右手の小銃で殴り付けた。

怯んだのと同時にルリは、言葉から逃げた。

 

「逃がしませんよ・・・!」

 

直ぐに言葉は追ってこようとする。

その間にルリはkar98kに銃剣を着剣し、物陰に隠れて、傷口が治るのを待つ。

向かってくる足音を聞きながら、地面に落ちた石ころを拾い上げ、適当な場所へ投げた。

 

「そこですか・・・?」

 

石が投げられた方向に向かう言葉にルリは小銃で狙いを付け、躊躇いなく引き金を引いた。

 

「うっ!そこですか!」

 

ステップして一気にルリに接近した言葉は鉈を振り下ろした。

回避しきれず、右肩を深く斬られ、勢い良く血飛沫が上がり、彼女は激痛で声を上げしまう。

 

「痛いですか・・・?でもこの痛みは装置に近付くと消えますよ・・・!」

 

笑みを浮かべながら深く刺した鉈を進め、骨を切断しようとする言葉。

天井がルリの血で赤く染まって、血が水滴のように落ちる中、ルリは言葉に頭突きを食らわせた。

言葉は声を上げて額から血を噴き出して、痛みに悶えながら額を抑える隙に、ルリは銃剣で彼女を連続で刺突する。

銃剣で何度も突かれ、彼女の身体から(おびただ)しい血が噴き出し、辺りを赤く染めていく。

距離を置く為にルリはトドメに銃座で殴った後、直ぐに言葉から離れる。

離れた後に、M24柄付手榴弾を投げ込もうと思い、安全栓を抜いて紐を抜くと、刺されまくって再生中の言葉に向けて投げた。

数秒後には手榴弾が爆発、このタイプの手榴弾は破片を周囲に撒き散らす物ではなくて、爆発するタイプである為、身体の一部を吹き飛ばすことが出来る。

爆発と同時に聞けば卒倒しそうな音が鳴り響き、赤色の煙が上がり、言葉の右足がルリの元へ飛んできた。

 

「うわぁ・・・エイグイ・・・」

 

右足を見ながら口元を抑えて呟いた後、言葉の喋っていたことにあった"装置"を探した。

道中、武器庫に立ち寄って、kar98k専用の擲弾発射機を弾頭と共に入手し、装置の探索を再開する。

 

「装置に近付いたら痛みが消えるとか言ってたから倒せるかも・・・?」

 

独り言を呟いて、装置がありそうな場所を探した。

完全に再生することが出来た言葉は、再び鉈を握ってルリを探し始めた。

その間にルリは装置を見つけ出すことに成功する。

 

「あった・・・これかな・・・?」

 

部屋の真ん中に置かれた四角形の物体を発見したルリは、スイッチらしき物を探す。

 

「やっぱりこれがそうだ。押す前に準備を」

 

銃剣を抜いて、擲弾発射機を装着し、中に装填してあった弾丸を全て抜いて、専用の弾丸を装填した。

それと同時にM42ヘルメットの顎紐を外し、脱いで、何処か適当な場所に投げる。

その音を察知した言葉は直ぐに装置がある部屋まで向かう。

 

「見付けましたよ・・・!装置がある部屋に誘って私を殺すつもりですね?ですが、貴方と私はここで一緒に死ぬ運命なんですよ・・・!」

 

人間とは思えない脚力で喋りながら向かう言葉。

人並みならぬ彼女の足音を耳にしたルリは、出入り口に擲弾発射機を向け、言葉が来るのを待つ。

引き金に指を掛け、自分が居ると知らせる為に口で呼吸し、彼女を誘う。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

そして彼女の影が見えた瞬間、引き金を引き、擲弾を発射した。

爆発が起こり、肉が裂ける音がルリの耳に入った。

だが、言葉はまだ生きており、壁を蹴って、鉈を突き立て、一気に目の前まで接近して来る。

鉈がルリの腹を貫き、右手に握られたkar98kを落とし、着ている服を血で赤く染めていく。

今彼女の腹を突き刺している言葉は一糸纏わぬ姿で、少女とは思えない早熟な体付きが露わになっているのだが、今のルリの脳内にはそれを見ている暇無い。

ワルサーP38をガンホルスターから引き抜き、安全装置を外してから言葉に向けて撃ちまくった。

 

「ブハッ・・・無駄ですよ・・・貴方も同じなんでしょう・・・?」

 

血を吐きながら言う彼女の言葉の後に、ルリは引き金を引いても弾が出ないことを分かると、クリップで殴って言葉を自分の身体から離そうとする。

何度も殴っているが、一向に言葉は鉈を引き抜かず、痛みに耐えながらその手を強めるばかりだ。

どうやって抜け出そうかと痛みに耐えながら考え、左手でスコップを外して言葉の腹に思いっ切り突き刺した。

痛みに怯んだ言葉は鉈から手を離し、血が噴き出す腹を押さえた。

腹に突き刺された鉈を抜いて、それを捨てた後、装置のスイッチを強引に押した。

 

「自ら死を選びましたね・・・?では、一緒に地獄へ行きましょう・・・!」

 

「無理、だってマリお姉ちゃんが待ってるもん」

 

二人が言葉を交わした後に装置が作動、二人共の傷が急速に再生せず、血が止まらなくなる。

ルリは重い装備を捨て、身軽になった後、銃剣を抜いて、言葉が鉈を拾うのを待つ。

 

「おや?こんな状況でフェアーな戦いを・・・?変わってますね・・・貴方・・・」

 

「なんかフェアーに戦いたくなっちゃって・・・」

 

笑みを浮かべながらルリは言葉の問いに答え、蹌踉けながら言葉に斬り掛かった。

 

「へぇ~面白いですね。ルリちゃん・・・では、一緒に・・・!」

 

蹌踉けながら斬り掛かるルリに言葉は突き刺す。

だが、ルリは致命傷の部分を裂けて、言葉にワザと鉈をそこへ突き刺せ、言葉の胸に銃剣を突き刺した。

ルリの顔が言葉の血で赤く染まっていく中、胸に銃剣を刺されながら言葉は自分が負けたと分かり、その場に倒れ込み、遺言を残して息絶えた。

 

「負けちゃった・・・でももうじき貴方も・・・」

 

言葉の瞳から生気が失せた後、ルリは脇腹に刺さった鉈を抜いて、装置を壊すために這いずり、柄付手榴弾の安全栓を外して、氷見を引き抜き、装置の隙間に差し込んだ。

それから残った最後の力で装置から充分に身体を転がしながら壁にぶつかるまで離れた。

 

「やばい・・・死んじゃうかも・・・」

 

先の戦いで恐ろしいほど出血した為、身体が重く感じている。

このまま死ぬんだと思い、瞳を瞑った後、装置の隙間に差された手榴弾が爆発、そしてルリは気を失った。

 

その後、ルリが転移した世界でワルキューレによる一個師団分の戦力を使った彼女たった一人の為の大捜索が行われたが、結局は見付からず担当していた指揮官はマリの怒りを買って、責任を取らされ、銃殺刑と処された。

やがてその世界からワルキューレはまるで最初から居なかったかのように何の痕跡も残さず撤退した。

その後日、立ち入り禁止地域の古びた塹壕から血塗れの軍服を着た少女が現地の警察によって発見され、直ぐに身柄を保護された。

翌日、保護者と名乗る女性が現れ、少女を引き取ったとされる。

そして地獄の世界に転移した者達の経緯は一切不明とされ、彼等と共に行動し、生き残った者達もやがて復興の忙しさの余り、いつの間にか忘れてしまうのであった。




もう終わりです。思えば長かった・・・この二年間・・・
自分としては、なんだかこの終わり方に違和感を感じますが・・・

お気に入りを登録してくださった方々と感想をくれた方々、そして最後まで付き合ってくれた方々、本当にありがとうございます!!

後書きは後日、投稿させていただきますので。

では、自分はこの辺で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あとがき

いや~、終わりました。

話が進むにつれて、マンネリ化が始まり、源文作品とは関係のない作品を参加させて迷走しまくったゲンブンオブザデットが終わりました。

思えばこの作品を始めたのは平成23年の6月頃、思えば長い道のりであった・・・

 

当初はなろうがまだ二次元作を認めていた頃で、連載していたコール・オブ・ザデットと言う題名で書いてましてね。その頃(今での駄文)はまだ書き始めた頃であり、右も左も分からぬ初心者でした。

二ヶ月ほど?休載し、八月になって連載再開、皆様に駄文を見せながら順調に更新していく。

だが、平成24年の六月、ゾンビの生みの親を出していることが運営に指摘され、削除通告を受けて、アットノベルズに移動し、主人公より源文作品のキャラが濃すぎてゲンブンオブザデットに改名。

連載を順調に進んでいきますが、そこでもマンネリ化・迷走と言う壁にぶつかり、スランプになっちまいました。

 

ようやくのことで完結したここ、ハメルーンで連載を再開、一から書き直して、恐ろしいほどに連載が進み、ゾンビ物で戦車戦を行うという自分ですら良く分からない事を書いてしまいます。

さらに源文作品とは関係のない作品のキャラも出してしまって、迷走化が徐々に進んで行く・・・

平成25年に突入したコラボ回では、なるべく失望させるような事は書かないように注意して書きました。

それと終わらせる皆さんを失望させまくった詐欺が始まる・・・

色々混ぜすぎてパンクし、最終章に突入して行くにつれて更新率が徐々に低下。

自分でも良く分からなくなっていく・・・

なるべく早く終わらせる為に、ご都合主義を使ってしまうこともありました・・・

そう言えば、感想が途絶えたのは最終章に入ってから、マンネリ化が相次いで批評のコメントすら来なくなりました。

この時に自分、「俺は見捨てられた」と錯覚し、「もうどうでもいいや」と思って、休日を利用して更新を続けて無理矢理終わらせた次第です。

途中で打ち切りエンドを思い付きましたが、「ここで打ち切りにしても良いのか?」と思い、無理なところはありますが、完結まで踏み切りました。

今思えば、ログインユーザー以外も感想の受付をすれば良かったのではないかと思っております。

 

次の連載物、Weltdrehung des Rächers(復讐者の世界周り)ですが、皆様の胃に穴を開けるかもしれません(笑)。

主人公がクソアマ過ぎて、自分でも大丈夫なのかと悩んでいます。

内容は多重クロス作品で、巷で言う主人公が様々な版権作品の世界を回ってそこで敵と戦う物語です。

ですが主人公、マリの場合、ガチ百合?ガチレズに近いか?様々な作品のヒロインをその作品の主人公から寝盗るかもしれません。

もちろん濡れ場は18禁の方でr(PAM!

脇役や可愛いモブともやりますので、お楽しみを。そしてお嫌いな方は即時バック!

主な参戦作品は、書き方次第でシリアスになるラブコメ物や死屍累々な物、鬱病エンドしかない物等です。

それとコラボの方も考えております。

自分が頼み込んだ作品はコラボ先の登場人物は一切死にません。

殺して欲しいと言えば、殺しますが。

逆にコラボを申し込んだ場合、要請でも無い限り自分の都合によってコラボした作品の登場人物が殺されるかもしれません。

そう言うのがお嫌いな方は、俺の要請を断っても構いませんよ~大人しく引き下がるので。

寄生虫のように頼み込んでくることも無いので。

アンケートはここでやるなと言われてるので、コラボ募集は活動報告にいつか載せておきます。

 

次に学黙の二次元作を書く時は、多重クロスをするつもりはありません。

都合によって変わってしまうかも。(PAM!

それと次にゲンブンオブザデットを書く時は学黙をベースにせず、考えた設定でやる予定です。

もうマンネリ化や迷走はしたくないので。

18禁の短編集で、ルリと女性キャラのsexを書くと言ったな、アレは嘘だ。

嘘です(汗)!次に書く学黙の二次元作でやる予定です!

 

あとがきはここまで。

エンドイラストを募集してましたが、書いてくれるお方が名乗り出ませんでした。

 

やはり俺は見捨てられて居るんだ!!

 

見苦しいのをお見せしましたが、ここで終わりです。

最後にこんな作品をお気に入りに登録してくださったお方、最後の最後まで見てくれたお方、感想をくれたお方、本当に、ありがとうございます!!!

 

では、次の作品でお会いしましょう!

最後まで読んでくれた君達には騎士鉄十字勲章を授けよう!

なに、いらない?受け取りたまえ、これはドイツ軍人にとって名誉な勲章なんだ。

 

 

 

Thank you for reading so far!

If such one's thing which I wrote is enough, please expect it in the next work!

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。