へっぽこコミュ障は幻想郷でなにを魅る (泉原)
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第一章
気がついたら死んでて転生とか…


主人公は百合好きです。一話目は東方要素皆無ですね。


日々を過ごしてると退屈になってくる。

 

同じことの繰り返しで代わり映えのしない日々。

 

刺激がほしくなって、考えたりしてると色々思うことがあるだろう。

 

異世界転生したいなぁ。

 

なんて、そんな風に思ったことはないだろうか。

 

ちなみに私はある。

 

何度も何度も。

 

でも、まさか、ねぇ。それが本当になるなんて思っても見なかった訳で。

 

 

 

「うんうん。そんな喜んでくれて嬉しいよ。転生させ甲斐があるね。」

 

 

 

いや、喜んでってか戸惑ってるけどね!?

 

現実逃避のために軽く独白してみたがあまり意味はなかったらしい。

 

私の前に立ってるのは金髪に蒼い目をした王子様系女子。

 

自称神様だ。

 

まぁ、心を読んでくる時点で嘘じゃないと思うけどね。

 

転生とか言ってる時点でお察しだが、私は死んだ。

 

原因はたぶんアレだ。

 

疲れ過ぎてて湯船につかりながら寝てしまったこと。

 

溺れてることにも気がつくことなく、熟睡していたらしい。

 

まさか、自分がそこまで文字通りに、眠りに命を掛けてるなんて思いもしなかった。

 

結果、数分程度の仮眠の予定が永眠に刷り変わったわけだが…。

 

ざまあないな。

 

ちなみに私は黒髪に黒目な一般的な日本人だ。

 

心を読むことは出来ない。できたらいいのになとは思うけど出来ない。

 

できるなら友達作りももっとうまくいったかもしれない。

 

いや、逆に人の闇を見すぎて人間不信になりそうだな。私のことだから。

 

 

 

「とにかく、君を転生させようと思う。どんな所がいい?」

 

 

 

二次元とかでもいい感じッスかね。

 

ゲームとかアニメの世界とか。

 

 

 

「あぁ、構わないよ」

 

 

 

それなら、生前から転生できたらって妄想してた世界がある。

 

東方project。

 

シューティングゲームの腕が壊滅的すぎて原作をプレイすることを断念せざるおえなかったアレだ。

 

出会いは『百合 幼女』ってキーワードで画像検索してた時にレミフラの画像を発見したことだった気がする。

 

今はレミフラよりレミ咲派だが…ってそんなことはどうでもよくないけど、まぁいい。

 

俗にいう、にわかだという自覚はあるが、あのキャラ達や幻想郷を愛する気持ちはそう変わらない自信がある。

 

実際に彼女達に会ってみたい。

 

出来れば友達になりたい。

 

私は東方projectの世界に行きたい。

 

 

 

「じゃあ、そうしようか。転生するんだし、すぐ死ぬことがないように能力を与えておくよ。」

 

 

 

ありがとうございます。

 

それなら、あの世界でもなんとかなるかな。

 

強キャラけっこう多いからなぁ。

 

そうじゃなくとも妖怪ってだけで実は脅威だしね。

 

 

 

「じゃあ、転生させるよ。」

 

 

 

あ、そういえば、アレ聞いておきたいかも。

 

 

 

「なんだい?」

 

 

 

なんで、私を転生させようと?

 

 

 

「んー、なんとなく…じゃダメかな。」

 

 

 

なんとなく、なんとなくかぁ。

 

そっかーなんとなくで転生するのか私。

 

 

 

 

 

まぁ、いいか。




一話目、短すぎたか…?


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能力の開花

 

「んぅ…」

 

どうやら私は寝てたらしい。

あれは夢だったのか?

あり得ない話じゃない。

普通に考えたら、私が転生なんておかしいしな。

それにしても、私は昨日、森の中でなんて寝てたっけな。

森林浴とか?

いやいや、やってないやってない。

 

ちょっと待て。

 

森…?

家の近くに森なんてない。

これで私が知らず知らずに夢遊病を発症してて森に来た可能性は0に限りなく近くなったはず。

あと、考えられる可能性は一緒に住んでた親に森に捨てられた説だが…。

これもないだろう。

いくらコミュ障が酷くて、バイトもしない娘だからといって、ポイされるほど親子仲は悪くないし。

 

…悪くないよね?

 

「なにやってるの?」

 

わかった。

まだ夢を見てるんだ。

じゃないとルーミアが私の前にいるなんてあり得ないし。

金髪に赤い瞳、同じように真っ赤のリボン、黒い服。

うん。確実にルーミアだね。

なんの能力もない人間からしたら危険度高めの妖怪のはずだ。

 

 

「あなたは食べてもいい人類?」

 

よし、わかった。

今度こそ、ちゃんと理解したよ。

あれは夢でもなんでもなくて、私はリアルに風呂場で死んで、今まさに転生してきたってことか!

 

ならば、私が今言うべきことはただ1つ!

 

 

『食べていいわけがあるか!私は転生できたばかりなんだよ!』

 

 

うん、無理!

 

言えない!

だって、初対面だし。

心の準備できてないし。

あと、10分くれたらNOくらいは言えるんだけど。

 

「食べてもいいの?」

 

待ってくれないよね!

知ってた!

 

えぇい!

ここはアレだ。

よくある転生モノの主人公みたいにチートで倒すぞ!

 

私の中に力を感じる。

集中して縛られてる力を解放させる。

掌をルーミアに向けて。

弾幕を出すイメージで、そう、紅い弾幕。

行け!なんかよくわかんないけど私の能力!

 

その瞬間、勢いよく掌から紅く丸い物体が出てきた。

 

これは弾幕出たか!?

 

その赤は重力に従って落下した。

 

「リンゴが出てきたわね」

 

うん。リンゴだね。

私の掌からリンゴ出てきたよ。

 

って!リンゴ!?

 

慌てて自分の中に感じる能力に集中する。

わかれ!能力の名称!

 

『飲食物を生み出す程度の能力』

 

わかった!

けど、これどうしたらいい?

 

「…くれるの?」

 

え?

あぁ、リンゴをってことかな。

 

落ちたリンゴを拾って、パーカーで拭く。

一応言っておくと私の服装はヘタレと書かれた黒のTシャツの上に白いパーカーを着ている。下はジーパンだ。

白いパーカーだから土で少し汚れてしまったのがわかりやすいが、下に落ちたものをそのまま渡すわけにもいかない。

 

「ん!」

 

私はトトロに出てくるかんたの如くリンゴを付きだした。

 

「もらっていいの?」

 

コクコクと首を縦に振ってみせる。

 

私、気づいてしまった。

食べていいか聞かれたときにも首を使って伝えればよかったんじゃないかと。

もちろん、振るのは横にだが。

 

「ありがとう!私、お腹空いてたのよ!」

 

お礼の言えるいい子だ。

私もありがとうとごめんなさいだけは初対面でもすんなり言える。

躾の賜物だね。

シャクシャクとリンゴを齧るルーミアは幼い子供のようだ。

とても人食い妖怪には見えない。

あ、私ってば食べられそうなんだった。

 

「ごちそうさま!このリンゴ美味しいわね。どこにあったの?」

 

どこにっていうか私の中からっていうか。

こればっかしは言葉にしないと伝わんないわけで。

頑張れ私!

 

ほら、『私の能力で出したんだよ』っていうだけだから。

 

 

「…能力」

 

 

これしか言えないのか私は!

大幅カットしたな!

私は削減のしすぎだと思うなぁ。

 

「能力?」

「私の…能力。『飲食物を生み出す程度の能力』」

 

うん。今回は頑張ったね、私。

 

「そんな能力あるのね。初めて聞いたわ」

 

そうだね。私も今日、初めて聞いたよ。

 

「それで、あなたは食べてもいいの?」

 

必死に顔を横に振る。

能力でリンゴをもう1つ出して突き出し、頭を下げる。

マジで勘弁してください。

 

リンゴの重みがなくなり、クスっと笑う声が聞こえたので、顔を上げた。

 

「冗談だよ」

思わず眉が八の字を描く。

 

「全然、冗談、聞こえない」

 

 

単語単語で話せるようになってきた。

ようやくなれてきたみたい。

 

「リンゴのお礼になにかしてあげる」

 

むしろ食べないでもらえてお礼したいのは私の方なんだけど、森の中で迷子は流石に困るし、ここは甘えようか。

 

「森から出たい」

 

切実な想いは他の言葉よりすんなりと出るように出来てるらしい。




主人公の能力が判明しましたね。
実は主人公の能力はこれだけじゃありません。
東方キャラの能力って自己申告制らしいからね。
主人公が死なないように神様がくれた能力はもう少しあります。
でも、主人公に戦闘能力は皆無です。


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なんで次々と狙われるかね

主人公はへっぽこだけど、へっぽこなりに頑張ります。
まじで、あたたかい目で見てあげて。


「グルルルッ!」

 

これ、あれだよ?

お腹の音じゃないからね。

いや、マジで。

 

「お腹空いてるのね」

 

うん。よだれダラダラだもんね。

そう、私の前には一匹のよだれを垂らした大人二人くらいは全然乗れそうな狼がいる。

めっちゃ、私を狙ってるよね!

私って狙われやすいのよね。

前世でも動物園でガラス越しにメスライオンが興奮しながら、私が右へ行くと右へ、左に逃げると左へ目を爛々と輝かせてついて来ていたことを思い出した。

私って美味しそう?

ねぇ、ルーミア。

君も食べていいか聞いてきてたよね?

 

「うんうん、わかるわ。優愛(ゆあ)はなんだか美味しそうだもんね。」

 

そうかい、そうかい。

私が聞く前に答えが返ってきたよ。

私達はあれから森を歩いていた。

けして速くない私の速度にあわせてくれてるから、何時間も歩いていることになる。

私の心の壁もかなり崩れて、ルーミアとならそこまで緊張せずに話せるようになってきた。

だんだんと考えたことを口に出す前にアイコンタクトで伝わるようになってきた。

ルーミアいわく、私がわかりやすいらしいが。

途中で名前も教えあった。

 

 

いや、今にも飛びかかりそうな巨狼の前でこんなこと考える余裕があるのかというと、無いにきまってるよね!

現実逃避だよバカ!

いない誰かにあたっても仕方ないので解決策をない頭で必死に練る。

 

私にあるのは何もないところから食べ物を出すことだけ…。

目の前には私を食わんとする腹ペコ狼。

なんとなく私を庇ってくれてはいるものの、呑気なルーミア。

 

ん…?

 

 

飲食物を生み出す程度の能力。

腹ペコ狼。

 

 

…一か八かだよね。

やらずに死ぬよかマシか。

めっちゃ、怖くて手が震えるけど。

 

よし、イメージしろ。

目の前に巨大な肉の塊が存在するイメージだ。

テレビでしかみたことないような肉の塊を。

出てこい!牛肉!

 

「ルーミア、そこ退いて」

「私が退いたら確実に食べられるわよ?」

「大丈夫。きっと」

 

「ガウッ!」

 

ルーミアが退くと同時に飛びかかってきた狼。

次の瞬間、狼と私の間に巨大な肉の塊が出てきた。

私に食らいつこうと開けていた大口は牛肉に突っ込むこととなった。

 

ムシャムシャムシャムシャ

 

「まさか、餌付けするとはね。」

「お腹膨れたら、襲ってこないかもって。」

 

牛肉の塊に夢中な狼を眺めながら会話を交わす。

なんで牛肉なのかって?

そりゃあ、あれだよ。

私の好み。

好みといえば、この狼の毛皮の色は中々に好みだ。

綺麗な銀色をしている。

私がアバターを作るときは大抵銀髪になるのはもはや宿命とも言えようが。

 

「ウォン!」

 

食べ終えた狼は、帰ればいいのになぜかその場に座り込み、こっちを見つめている。

君、でかいんだからさ。

至近距離で見つめられると怖いんだけど。

 

なんで、私は立ち去らないかって?

それはね。

腰抜けちゃってさ。

しょうがないじゃん。

怖かったんだから。

ルーミアがおぶってくれるとも言ってくれたんだけど、女子高生が小学生くらいの身長の子に背負われるのはね。

流石に遠慮しました。

 

 

「この狼、そろそろ妖獣になるね。」

「そんなこと、わかるの?」

「私も妖怪だもん」

 

そういうものなのか。

ルーミアいわく、この狼…。

既にかなりの理性を持っているらしく、恩返ししたいと考えてるらしい。

え、動物の言葉わかるのも妖怪だからなの?

違うよね。

え、じゃあ、既に心通わせる仲なの?

 




何気に主人公の名前公開。
主人公は心を許した人には全然話せるタイプです。
ただ、長く会ってないと、緊張から片言で言葉を話します。
単純で相手をすぐ信じて心を許すので、仲良くなるのは簡単。


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私、理科は好きだったよ?

はい。
なんだこのサブタイトルと思いましたよね。
私も思ってます。


「よーし、銀。スピードアップよ!」

「ウォン!」

 

巨狼に銀と名をつけて、背中にのせて走ってもらっている。

ルーミアの指示により、グングン加速していく。

風を切り、木々の間を駆け抜ける。

ルーミアのかなり楽しそうな声が耳に届く。

そんな中、私は

 

「ちょっ!まっ!銀!私、落ちそう!落ちそう!」

 

絶賛大ピンチだった。

 

銀はでかい。

それゆえに走ったときに体が揺れる幅も必然と大きくなる。

ルーミアは平然と乗りこなしているが、騎乗スキルもなければ運動神経もない私は、銀の腰辺りに振り落とされないように必死にしがみついている。

ふと、前世の乗馬体験で馬が走りだすと落ちないように必死になったことを思い出した。

あの頃は、もう二度と走ってる動物の上に乗るのはごめんだと思っていたが、そんなことはすっかりうっかり忘れて、私は銀にまたがってしまったのだ。

体があのとき乗った馬よりも大きいためうまく跨がれなかったこともこの危機的状況の大きな要因かもしれない。

「ほんとストップ!私、とんでって木にぶつかりそうだよ!?ねぇ!聞いてる!?私の声聞こえてる!?」

 

「仕方ないわね。銀、ストップだって」

 

「ウォン!」

 

ピタッ!という音が聞こえそうなほどにしっかりブレーキをかける銀。

いや、実際は下からズササササー!と聞こえてくるから多少滑ってはいるんだろうけど。

 

ところで、慣性の法則というものを知っているだろうか。

中学の理科で習う内容だが、わりと日常的に感じることのできる法則だ。

外から力が作用しなければ,物体は静止または等速度運動を続けるという法則。

こういうと難しく聞こえるがこうイメージしてほしい。

猛スピードで走っていた車が急ブレーキをかけた。

すると、どうなるか。

え?事故る?

まあ、そうだな。

事故るだろうな。

って、そうじゃなくて!

イメージさせた状況が悪かったな。

じゃあ、全力で峠を攻めていた車がガードレールに衝突したとする。

どうなるかイメージすると

ガードレールをぶち破り、フライアウェイ…。

うん。これも不味いわ。

まぁ、今、私の身に起こってることを見てもらえば慣性の法則を完璧に理解してもらえることだろう。

 

「ーーーーっ!ーーっ!」

「ちょっ!優愛!?」

 

銀が急ブレーキをかけるとほぼ同時に、足が凄い勢いで舞い上がり、あっという間にうつ伏せだった体勢が仰向けに変わっていて、その衝撃で銀の毛を必死に掴んでいた手の力が抜け、足元から進行方向だった方向へ吹っ飛んでいく私。

恐怖のあまり声も出ず。

口を鯉やなんかの魚のようにパクパクと開閉させ、先程まで銀が進んでいたスピードを保ちながら宙を滑っていく。

これこそが慣性の法則だ。

 

 

 

 

もうそろそろお気づきだろうけど、慣性の法則云々は現実逃避だよ!?

 

誰か助けてーー!

 

私、死んじゃう!

死なないとしても大怪我するって!

痛いのやだよーー!

 

ルーミアが助けようと手を伸ばしながら飛んで来てくれてるけど、流石に間に合わなさそうだ。

 

せめて、近くにぶつかりそうな木がないことを願って進行方向(足元)を見ようとする。

 

次の瞬間。

私の足元に大きな黒い空間が口を開いた。

空間のなかから大量の目玉がこちらを見ていた。

 

「ーーーっ!?ーーっ!ーーーーっ!」




この作品の主人公は作者が『私みたいなの』って認識で書いてるので、主人公が持ち得る知識は、作者が普段から持っている知識くらいなので変な方向に偏りをみせます。
作者の不幸体質までも、受け継いで産まれてしまっているので、これからどうなることやら。


さて、この話の最後に出てきたのは?
って、わかりますよね。


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スキマの中にて

一人になると独り言多くなるのは必然だよね!
優愛の場合は心の中の声も多くなる。


私は黒い空間に吸い込まれた。

端からみたら自分から飛び込んだように見えただろうが、あれは進行方向に急に時空の割れ目的なのが口を開いたからだ。

けして、自分の意思ではないということだけは断言しておこう。

この黒い空間。

いや、もうスキマと呼んでしまおう。

私の制御の効かなかった体はスキマに入った瞬間、減速していき、最後には尻餅をついて着地した。

それにしても、見渡す限り、目、眼、瞳。

しかも、揃いも揃って此方を見ているときた。

これはなんとも気持ちが悪い。

絵とかではさほどわからなかったが、ものすごく気味が悪い。

 

とりあえず、コミュ障なうえに視線に恐怖を覚える私は、パーカーのチャックを途中まで下ろし、パーカーを上にずり上げて、またチャックを上げる。

 

秘技!視線は集まるけど、自分は見えない簡易個室空間!

 

小学生の時からよく教室の隅っこでやっていた技だ。

心を落ち着けるにはこれが一番だ。

狭いところって落ち着くよな…。

ん?技名長くないかって?よくやってたなら秘技じゃないだろって?

いいんだよ。そんなこまかいことは!

 

よし、自らにツッコミをいれる余裕が出てきた。

 

ルーミア達の元へ戻りたいところだが、私が中に入りきると同時に、スキマは閉じてしまった。

閉じていくスキマから見えたルーミアの表情は焦りと、驚きと、悲しみ、そんな色んな感情が渦巻いているようだった。

 

というか、このスキマに私を招いたのは明らかにあの人だ。

妖怪の賢者、スキマ妖怪の八雲紫。

彼女はいつも上品に笑っている。

強者ゆえの余裕から来るものなのかなんなのか。

紫というキャラクターはどんな小説を読んでも、大抵何処かに含みのある人物だ。

なんの用事も無しに私を、というか関わりのない人間をスキマで捕らえるとも思えないけど。

たまに聞くことのある。

人里以外では人間を襲ってもいいってルールに基づいた犯行じゃなければ。

 

そう考えるとルーミアってホントいい子だな。

リンゴやらなんやらで襲わないでいてくれるなんて天使かよ。

あ、妖怪だった。

 

にしても、もし私を食料としてスキマに入れたんだとしたら。

私にできることは精々土下座くらいだ。

プライド?

そんなもの、生き残るためならかなぐり捨てる!

それが、私の生き様だ!

 

うん。最低だなって自覚はある。

でもね。

小説でよく見る転生者のように、強いわけでも、鋼の心を持ってるわけでもなくて、頭もよくないし、本当に何処にでもいるような、中の下または下の上くらいの人間で、できることなんてたかが知れてるんだ。

でも、そんな私でも、やっぱり自分が可愛いんだよ。

 

 

それに、なんか、ルーミアが待ってる気がするんだよね。

決して付き合いは長くないけど、そんな気がするんだ。

ルーミアに案内してもらってる途中だしね。

これが私の思い上がりじゃないことに掛けて、私はなんとしても生き残らないと!

 

「あら」

 

ビックゥ!

背後から声が聞こえたよ!?

既に心折れそうなんだけど!

ルーミア!ヘルプ!!SOS!!

とりあえず、土下座だ!

 

「ーーーでっ!」

「貴女、何してるの?」

 

土下座に失敗しました。

チャック閉めたまま土下座しようとしたから、バランス崩して額から着地。

おでこをおさえて悶絶中なり。

 

もう、本当に誰か助けて。




あれ、ほぼ紫出てなくね?
主人公もほぼ喋ってなくね?
いや、主人公は通常運転か。


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美人って眼福だよね

チャックを下げると目の前に目玉。

思わず気を失うかと思った。

いや、失いたかった。

 

そのまましっかりと土下座をしなおす。

 

『お願いします。殺さないでください。私、まだ生きたいんです。』

 

とりあえず、このくらいは言えると上出来だろう。

よし、勇気を振り絞って。

 

「頼む。殺すな。死ねない。」

 

うん。なに言ってんだこいつ。

なんだよ。死ねないって!

これじゃあ、見逃してくれるものも殺されるよ!?

 

「妖怪対して警戒するのは結構なのだけど。私、貴女を殺す気はないわよ?というか、話しづらいから顔を上げなさいな」

 

ホントか?

嘘の可能性も…。

とはいえ、逆らってもどうにもならんか。

はぁ。なんか考えすぎて疲れたし、信じとくか。

 

なんとかなる…だろ。

 

顔を上げると辺り一面の気味の悪い目玉なんか、一切気にならなくなるほどの美女、いや、美少女がいた。

 

紫色のドレスを身に纏い。腰近くまであろうかという金髪を何ヵ所か赤いリボンでまとめ、名前と同じ色をした、少し細められている瞳にどこか呆気にとられたような表情の私が写っている。

口元には笑みを浮かべ、瞳と相まって怪しい笑みと表現するほかない。

だが、その笑みは確かに怪しいのだが、その中のある妖艶さに私は囚われてしまった感覚に襲われた。

妖艶な笑みを浮かべるその顔には、どこか未成熟なあどけなさも感じた。

だから、私は美女ではなく美少女と言い直したのだ。

なんなんだこれは。

これが魔性というものか。

 

 

そんな風に見とれていると私は気がついてしまった。

そもそも、命乞いの前にお礼を言わなければいけないのではないかと。

あのままいっていれば、少なくとも大怪我はしていただろう。

 

先に抱いていた紫という人物像など、早速どうでもよくなった私は、彼女に礼をすることにした。

例え、利用する気で連れてこられたとしても、私にできることなどたかが知れてる。

食べられるって可能性はかなぐり捨てておこう。

 

『順番が逆でした。まずは助けていただき、ありがとうございます。』

 

これで完璧だろう。まぁ、今さらちゃんと言葉にできるとは思っていないけど、頑張れ私!

 

「逆だった。ありがとう。」

 

「えっ?」

 

これってさ。何に対しての礼か全然伝わんないよね!

あと一言頑張れよ!

ゆかりん困ってるしょや!

 

「助けてくれて…。ありがと」

 

「あ、あぁ、どういたしまして。貴女って変わってるわね。土下座して命乞いしたかと思えば、じっと見てきて、笑顔で急にお礼を言ったかと思えば、突然困った顔になって、困った顔のまま、助けてくれてありがとうなんて」

 

え、そんな百面相してたの。

私ってたしかに顔に出やすいらしいけどそこまで!?

 

 

「えっと、あの、それで、なんか用?」

 

「ええ、貴女はどうやって幻想郷に入ってきたの?急に結界内に現れたから警戒してたんだけど」

 

「え、急に、現れた?」

 

「ええ」

 

うん。神様さ。

そこら辺の処理しっかりしてくれないと私、あっさり死んじゃうよ?

 

「うーん、どうやってかは、わかんない。私も気がついたら、ここにいたから。」

 

嘘はついてないよ!

気がついたら転生し終わってたんだから。

 

「でも、本人がいうのもなんだけど、そんなに警戒しなくても大丈夫だと思う。私、戦う力とかないし。……ん?」

 

私、なんか変だなぁとは思ってたけど気づいてしまったわ。

言おうと思ったことがすごいスムーズに言葉になるんだけど何事!?

 

私、ついにコミュ障脱却か!?

 

「話しにくそうだったから、少しだけ境界を弄ってみたのよ」

 

「なるほど」

 

私の力ではなかったか。

なんとなくそんな気はしてたけどさ。

でも、今の私なら初対面の相手でもクーデレ風には話せるってことか!

 

なんだよ。クーデレ風って。




ゆかりんの魅力に圧倒される回でした。

主人公自身はコミュ障を治したいと考えてる。
コミュ力って生きてく上で大切だもんね!


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やる気だしたら空回りすることってあるよね

永き時を経て回帰!

泉原氏、突如やる気の消失が起こる。
しかし、時間は掛かったものの、完結させると決めたからには有言実行目指して、復活!


 紫は扇子で口元を隠しているので、表情は読めない。

 まぁ、私ってば人の表情から意図を読み取るとか凄い苦手だから、たぶん隠してなくてもわからないだろうけどね。

 それに紫の性質もあるだろう。

 彼女の浮かべる微笑みはその真意をわからなくさせる。

 だからこそ、警戒すべきなんだろうけど…。

 

 仮にも助けられたわけだし。

 深く考えるの苦手だし。

 よし、自分の直感に従おう!

 

 いや、うん。

 ここにお母さんがいたら『アンタの直感は毎度ろくなことにならないでしょ』なんて言われそうなものだが。

 私からそんなお母さんに言わせてもらうとするならばこう言わせてもらおう。

 

 そんなことないし!私の勘だってたまには当たるし!

 

 ということで、紫に対しての私の警戒度はほぼゼロだ。

 

 そもそも、私は生まれてこのかた疑うことに成功した例がない。

 何かを誤魔化されても疑いもしないので

 小さいときは私が怒っていても『ほら外見てー、ウシさんいるよー』なんてお母さんに言われたら、『えー、どこー?ほんとだー!』という具合に怒っていたことを忘れてしまうことが多々あった。

 

 周りに素直な子だねと言われて育ち、高校に入学後も素直ないい子と言われていた私。

 

 

 …いや、正直こう思っただろう。

 それって素直っていうか、ただのバカじゃね!?

 

 うん。私もそう思う。

 

 とにかく!

 そんな天才と紙一重な私が考えても、あまり意味はない!

 

 早々に結論づけて紫を信じることにした。

 

 でも、その前に!

 

「さっきも言ったけど、私、戦う力ないよ?」

 

 命乞いの途中だったからね!

 とりあえず作戦は『いのち だいじに』で行こう!

 

「そんな言葉を易々と信じるようでは、この幻想郷は守れませんわ」

 

 ですよねー!!

 はーい、知ってますともさ!

 でもさ、でもさ。

 こんなのどうやって説得すればいいのさ!

 語尾が全部○○さになる前になんか打開策を…。

 

 

 あ、そうだ。

 

「どうしたら、証明できる?」

 

 聞けばいいんじゃん。

 いや、普通は相手に聞かないだろって?

 だって他に聞ける人いないし。

 なにより私が思い浮かばないし!

 えへん!参ったか!

 

 …虚しくなってきた。

 

「…それを私に聞くの?まぁ、いいでしょう。そうね、あなたの能力を見せてくださいな。あの暗闇妖怪にしてたやつ」

 

「え」

 

「なにか問題でも?」

 

「いや、問題っていうか…。…りんごで、いい?」

 

「えぇ」

 

 なんで、ここでりんご(以外の飲食物も可)製造機としての能力を…。

 

 …ハッ!

 さてはお腹減ってんだな!

 なるほど、なるほど!

 よし、それなら大きいりんごをご馳走しようじゃないか!

 

 紫に当たったりしないように左側を向いて。

 

 出てこい!巨大りんご!

 うんと大きなりんご!

 それでいてめちゃウマなりんご!

 

 ドスンと音がした。

 目の前にあるのはそれはもう大きなりんごで…

 高さ1.5メートルはくだらない上に、横幅は私が腕を回しても全然届かないだろう。

 

 うん。ちょっとやり過ぎたかな!

 なんか右側(紫がいる方)から、ジトっとした視線を感じる気がするなって、思ったり、思わなかったり、やっぱり思ったりしたりしてね。

 

 …えへへ。

 

「貴女ねぇ。りんご出すとか言っておいて、なんでこんなクリーチャー産み出すのよ…。」

 

 えっと…

 

「…味はいいと思う。」

 

「そういうこと言ってるんじゃないわよ!」

 

「ごめんなひゃい!」

 

 ゴッ!

 

「~~~っ!」

 

 思わず土下座しようとしたら焦りすぎて滑っておでこぶつけて悶絶中パート2。

 

「…まったく、なにやってるのよ。なんか疑うのが馬鹿らしくなってきたわ。人間のようで、どこか人間とは違う変な存在がやって来たと思ったら、中身の方が変だなんて…。能力もおかしなものだけど…。」

 

 …ん?

 今なんか重要なこと聞いた気がする。

 中身が変だとか、かなり失礼なこと言われてたけど、多少は変わってる自覚あるからいいよ!

 

 いや、それよりさ。

 

「私、人間じゃないの…?」

 




待っていてくれた方が一人でもいるならごめんなさい。
これからも急に更新なくなる時がくるかもしれませんが、生きている限り、また再開しますのでよろしくお願いします。
応援していただけるとよりいっそう励みになりますので、おねがいします。


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