Fate/GrandOrder Quatre Inconnus de Magiciens (オレン・オラージュ)
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序章
人理保障機関カルデア


約1年振りの小説投稿になります、Fateの方では初めまして。セルヴィです。
なんだかんだ活動報告の方でこれやろうあれやろうとか言いながら、その度に飽き性とネガティブな性格が発生してしまい、そのままずるずる引きずってたら1年経っていました。

これはいけないかなと思い、リハビリで二次創作に手を出しました。
基本飽き症なので不定期更新にはなるかもしれませんが、よろしくお願いします。


では、どうぞ!


 人理継続保障機関『カルデア』

 

 魔術師の貴族であるアニムスフィア家が管理する機関。魔術だけでは見えない、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐための各国共同で成立された特務機関。

 

 政府や魔術協会公認の国連組織だが、それを怪しく見る者も少なくはない。そのためにカルデアを調査しに、マスター候補生として侵入しに来ている人がいる。

 また、カルデアのマスター候補生の中には本人の意志の有無に関わらず選抜された者もいる。

 

 

 

 彼女、キャリス・K・ハーミットはその1人である。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

  「すかーっ、んごーっ」

 「あ、あの、起きて下さい!もう説明会始まってしまいます!」

 

 私、キャリス・K・ハーミットは約10分程、眠りこけてしまった同じ候補生を起こそうと苦悩しているところです。

 

 カルデアに呼ばれたマスター候補生のシミュレートが終わって疲れてしまったのか、この候補生の方はソファに座った瞬間眠り込んでしまいました。

 他の人は既にいってしまいましたが、私は心配だったので急いで起こしにかかったのですが、全然起きる気配がありません。

 

 こ、このままでは初日早々遅刻という羽目になってしまいます……!!そ、それだけは避けなくてはいけません!!

 

 内心でわたわたと焦りながら、起きて下さいと呼びかけていると。

 

 

  「どうかされましたか?」

 

 とても綺麗な人が後ろにいて固まってしまいました。正確には私より年下の人なのでしょうが、美少女とはこの子のことを言うんじゃないかと思う程にかわいらしい人でした。

 ………とかじゃなくて!今はそう言ってる場合じゃなくて!

 

  「あなた方は確かマスター候補の方達ですね?どうかしましたか?」

 「あ、あの、さっきからこの人が寝ているので、起こしているのですが全く起きる気配がなくて……」

  「おかしいですね。ならそろそろ目を覚ましていただかないと……」

  「フォウ!」

 

 すると少女の周りをうろついていた四つん這いの狐?ウサギ?みたいな動物が彼の肩に乗っかって頬を叩きました。

 

  「だ、ダメですよフォウさん。そんな乱暴に叩いては……」

 

 どうやらこの子はフォウと言うらしいです。とてもかわいらしい名前ですが、この子も使い魔なのでしょうか?

 そう考えていたら、少女が何かをひらめいたようにそっと言いました。

 

  「先輩、起きて下さい先輩!」

  「!」

 

 するとさっきまで微動だにしなかった人ががばりと起き上がりました!

 

 「ひゃっ!!?」

 

 私は驚いて思わず尻餅をつきます。

 

  「ふぁい!出席……じゃなくてマスター適正者48番!!藤丸立香で―――」

 

 彼はハッとして辺りを見回しました。少女を見つけると、彼は首を傾げました。

 

  「……あれ、ここは…?」

  「中央管制室へ向かう通路脇の休憩所です。立香先輩」

  「管制室!?そうだ、説明会にいこうとして………、あ、あれ、君!?大丈夫か!?」

 「あ、あはは、大丈夫ですー………;」

 

 い、いきなり大声を出されてびっくりした、とかそういうのじゃないんです。ええ、本当にそういうつもりじゃありません!

 私は立香さんの手を貸してもらって、立ち上がりました。

 

  「そういえば、君も適正者の1人?」

 「は、はい!キャリス・K・ハーミット!マスター適正者47番です。よろしくお願いしますね、藤丸立香さん」

  「よろしく、キャリスさん」

 

 

 

 

 

  「マシュ、断りもなしで移動するのは…………っと。先客がいたんだな」

 

 私達にそう声をかけて来たのは深緑色のシルクハットとスーツを着た男の人でした。人の良さそうな笑みを浮かべているのですが、何故か寒気がするのは、私だけ、でしょうか?

 

  「見ない顔だ。今日から配属された新人さんかな?私はレフ・ライノール。ここの技師の1人だ」

  「藤丸立香です」

 「あ、きゃ、キャリス・K・ハーミットです!」

 

 レフさんとおそるおそる握手を交わし、ついでマシュと呼ばれた少女とも握手をかわそうとしましたが、本人から拒否されてしまいました。慣れていないという理由で拒否られたのは、初めて経験しました……。

 

  「魔術の名門からの38人は既に揃っているから……、君は一般枠か。訓練は大変だっただろう?」

 「え?」

  「訓練……?」

 

 そう言われて私と立香さんは首を傾げました。訓練とは何のことでしょうか?

 

  「訓練を受けていないのですか?」

  「ああ、そういえば緊急で用意した数合わせの枠があったな」

 

――グサッ

 

 何だか心にぐさっと来ました。いえ、半ば強制だったので!強制だったので知らなかったんです!!数合わせも否定はしません!!

 半泣きになってる私を見て、慌ててレフさんが言った。

 

  「いや、けれど悲観しないでほしい。今回のミッションには君達全員が必要なんだ。魔術の名門と才能ある一般人合わせてなんとか48人のマスター候補を集められた。この2015年において霊子ダイブが可能な適正者全てをね。これは喜ばしいことだ」

 

 レフさんの言葉に何となく納得しながら、ふと48人のマスター候補が集まっていると聞いて忘れていたことを思い出しました。

 

 「そ、そうです立香さん!そろそろ説明会の時間です!」

  「おっと、引き止めて悪かった。所長に睨まれたら大変だ」

  「そうだった!!か、管制室はどっちだっけ!?」

  「レフ教授、私も説明会への参加が許されるでしょうか?先輩の体調が気がかりです」

  「隅っこで立っているくらいなら大目に見てもらえるだろうけど」

 

 レフさんとマシュさんの会話を聞いていると、立香さんがマシュさんにあることを聞きました。

 

  「そういえばマシュはここの職員なのか?」

  「いえ、私は先行部隊。ファーストミッション担当のAチーム所属です。研究員でもありますが」

  「私は別の用事があるからこれで失礼するよ。マシュ、君を1人にすると所長に叱られるから立香君とキャリス君と一緒にいるように」

  「はい」

 

 そう言ってレフ教授は立ち去って行きました。何だかいまいち信用出来ないイメージが強過ぎて、自分でも何故そう思うのだろうと首を傾げてしまいました。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕の興味をひくものと言えば今回のカルデアで行われるレイシフト、そして共に選ばれた同級生のみ。あとには興味がない。

 

 正直説明も何も、僕は事前に彼女から聞いているだけだ。だから、今聞いている説明も流している。

 

 

 

 

 まあ、そんな感じで最前列であくびをしていたら当然ながら所長に怒られ、更には追い出されてしまった訳だけど。

 

 

 

 

 

 

 「ふあぁぁぁぁ……」

  「えぇっと、君も眠いのかな?」

 「ああ、まあね。そういう君は立ちながら眠るなんてすごいな」

  「い、いやあそれほどでも……」

 

 僕は隣で立ちながら寝たせいで、僕と同じく会議から追い出されてしまった隣の男性と話していた。

 紫髪の女性……おそらく、この施設の職員だと思われる彼女に、僕達は部屋を案内してもらっていた。どうやら僕の隣が彼の部屋らしく、会議が終わるまで僕は暇つぶしとして居座らせてもらうつもりだ。ちなみにそのことを話したらあっさり承諾された。彼、見た目日本人っぽいけど、お人好しな性格じゃないかな。

 

  「そういえば、先輩の名前は聞いていましたが、まだあなたの名前を聞いていませんでした」

 「ああ、失礼。僕はシュミット。マスター候補生です」

  「俺は藤丸立香、同じマスター候補同士、よろしく」

  「マシュ・キリエライトです。よろしくお願いします」

 

 改めて自己紹介をし、僕は立香君と握手をかわし、マシュ君とも握手をかわそうとしたが、本人から拒否を示されてしまった。

 

 「?」

  「あ、いえ、私がそんな………握手だなんて」

 「社交辞令だと思ってくれればいいですよ」

  「社交、辞令………ですか?」

 「そう、社会では挨拶代わりに握手をする人も多いので。ご存知ありませんでしたか?」

  「………すみません、そういったものはよく分からなくて」

 

 ……どうやら思ったよりも込み入った事情があるようだ。今はあまり聞かない方が良さそうだけど、気になるなぁ。この不思議な感じ、何かしらの違和感がある。なんと言うか、人間であることがよく分かっていないような………よくホムンクルスに見受けられるような反応だ。

 

 そんな感想を抱いた僕はマシュ君に連れられ、立香君の部屋の前にやってきた。

 

  「それでは私はファーストミッションがあるのでこれで。管制室へ戻ります。運が良ければまたお会い出来ると思います。それでは」

 

 そう言って彼女は来た道を戻っていった。

 そうか、彼女も一応マスター候補の1人だったのか。締め出しをくらった僕達とは違って、彼女はファーストミッションがある。急がなければミッションが間に合わないと判断したんだろう。

 

  「いい子だったなぁ……」

 「おや、君はあのような清楚で礼儀ただしい子供が好みなのですか?」

  「なっ、ご、誤解だよ!!」

 

 ニヤニヤしながら問いかけると、立香君の顔が真っ赤になった。これは揶揄うネタが増えた。しばらくは退屈しなさそうだ。

 

 

  「フォーウ!」

 

 足元で鳴き声があがった。声のした方を見れば、自分の足元で首を傾げている、栗鼠のような動物がいた。

 僕は動物図鑑もたまに読み込む方だけど、これは正直初めて見る類いの動物だ。

 

 「これは、見たことがない動物ですね」

  「フォウって言う動物なんだって。知らない?カルデア内を動き回っているんだけど」

 「ほう……」

 

 興味深そうに僕が見ていると、フォウはプィッと顔をそらし、立香君の足元をうろうろし始めた。立香君にはどうやら懐いているらしい。

 

 「なら彼のことも教えてもらいましょうか?」

  「えぇーっ、そんな話すことはほとんどないよ?」

 

 そう話しながら、部屋の扉の前に立つと扉がシュッと軽快な音を立てて開いた。

 

 

 

 

 なるほど、自動ドアですか。と納得していると、立香の部屋に先客がいることに気づいた。

 ゆるふわな髪をポニーテイルにし、白衣を羽織った男性。僕や立香君より年上の男性ですが、首からかけられている小名称がカルデアの職員であることを物語っている。

 そんな男性が、無人のベッドの上に座ってのんきにケーキを食べている。

 

 「………」

  「………」

 

 両者無言。口が開く気配はなし。

 

 これは………。

 

 

 「明らかにさぼり現場ですね。通報しましょう」

  「待って!待ってくれ君!!っていうか誰なんだ君達はぁ!!?ここは空き部屋だぞ、僕のさぼり場だぞ!!?」

 

 堂々とさぼり場と宣言した!この人やる気がない人で間違いない!!

 というか通報なんて冗談に決まってるでしょう?ええ、冗談ですとも。不審者だと思ったことに否定はしませんけど。

 ……ニッコリ笑ったら、立香君が何故かジト見で見てきましたが。

 

 はあ、とため息をついて立香君がおそるおそる職員の男性に話しかける。

 

  「あ、あの、ここが俺の部屋だと案内されたんですが……」

  「君の部屋?ここが?あー……、そっかぁ、最後の子が来ちゃったかぁ………」

 

 あからさまに落胆した様子を見せる男性に、僕は苦笑する。どこかうさん臭い雰囲気があるけど、悪い人ではなさそうだ。

 

  「じゃあ、そこの君は?」

 「僕は彼の隣室の者です。ところであなたは?」

  「ああ、予期せぬ出会いだったから自己紹介してなかったね。ボクは医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。何故か皆からDr.ロマンと略されていてね。理由は分からないけど言いやすいし、君達も遠慮なく読んでくれていいとも。実際ロマンって響きがいいよね~。かっこいいし、何処と無く甘くていい加減な感じがするし」

 

 あ、ダメ男って奴ですか。いや、ゆるふわ系の方があっているのか?

 

  「あれ、何か悪口言われてる?」

 「気のせいですよ気のせい」

  「うわすごく棒読みだ!それより僕は名乗ったぞ!次は君達の番だ!」

  「え、えっと、俺は藤丸立香です。それで、こっちが」

 「僕はシュミット・ヴェラータと言います。お休みのところ、失礼致しました」

 

 先にお辞儀をした立香と同じようにお辞儀をすると、Dr.ロマン……ドクターが目を丸くしてこちらを見て来た。

 

  「君は、ヴェラータ家の者だったのかい!?話には聞いていたとはいえ、思ったより若いよ」

 「僕としては医療部門のトップがここまで若いことに驚きました」

  「悪かったね!どうせ三十路だよ!!」

 

 あ、三十路だったんですか。思ったより若い。

 僕の名字を初めて聞いた立香君が首を傾げて僕を見ていた。

 

  「えっと、ヴェラータ家ってそんなに有名なの?」

  「有名も何も、魔術師関係では一度は誰だって聞く名前だ!優秀な魔術師達を排出しているヴェラータ家は他に政府のお偉いさんとかゲーム会社の社長などにも通じていてね。有名なゲームも実は彼らが作っているとまで言われているんだ!!」

  「えぇっ!?そ、そーだったの!!?」

 「そこまですごい家柄でもありませんよ。一族が積み上げて来た者が功を成しているだけですし、正直僕の父上はろくでなしで情けない男です。ですから僕のことは気にしなくて良いですよ」

 

 にこやかにそう言うと、立香君が「ナチュラルにディスってる!?」と驚きの声をあげ、ドクターが「気のせいか君から黒いオーラを感じるよ……」と何故かドン引きの声をあげていました。

 別に黒いオーラを放っている訳ではないんですけど……ただ事実を言っただけですし、何故引かれたんでしょう?

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

  「なるほどね、君達も僕と同じように所長に追い出された訳か」

 「同じようにと言いますと、ドクターもですか」

  「そうそう。もうすぐレイシフト実験が始まるのは2人とも知ってるね?スタッフは総出で現場に駆り出されている。けど、僕は皆の健康管理が仕事だから。正直やることがなかった。霊子筐体に入った魔術師達のバイタルチェックは機械の方が確実だしね。所長に「ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!」って追い出されて、仕方なくここで拗ねていたんだ」

 

 拗ねていた割にはのんきにケーキを食べていたことについてつっこんだ方がいいでしょうか。

 

  「これも何かの縁。所在ないもの同士、ここでのんびり世間話でもして交友を深めようじゃないか!」

  「えっと、シュミットはカルデアのこと知ってるんだったよね。魔術とか、レイシフトとか、よく分からないんだ……」

 「君は事前に知らされていなかったのですか?」

  「………えぇっと、まぁ……」

 

 曖昧に濁す立香君に深くは首を出さず、僕とドクターでカルデアについて説明した。

 

 人類が最も土地に手を出していない場所、南極。標高6,000メートルの雪山に作られた地下工房。それがこのカルデアだ。

 

 カルデアは様々な技術を駆使して、魔術と科学両方の観点から百年先までの人類史を観測してきた。それを可能にしたのが地球環境モデル『カルデアス』とレフ・ライノール教授が開発した近未来観測レンズ『シバ』

 

 しかし、半年前からカルデアスは変色。文明の明かりが消え、未来の観測が困難になってしまった。つまり、人類は2016年を持って絶滅することが確認、証明されてしまった。

 

 カルデアはこの半年間でこの異常現象、未来消失の原因を調べて来た。結果、観測されたのが『特異点F』

 カルデアはこれを人類全滅の原因と仮定し、霊子転移実験を国連に提案、承認された。

 レイシフトとは人間を霊子化させて過去に送り込み、事象に介入すること。まあ、言ってしまえば過去への時間逆行ということだ。

 

 僕達が呼ばれた理由はこの特異点Fにレイシフトで行って、未来消失の原因の調査をすること。そして最終的にはこれを破壊するのが僕達のミッションとなる。

 

 

 

 「とまあ、こんな感じかな」

  「なるほど……」

  「それにしても、君は確かCチームだっただろう?割り振りで言えば。レイシフトから外れたのは残念だったね」

 「そうですね……同じチームにブリーテンリッヒ家の者がいたのですが、彼女とともに戦えないのが残念です。一応唯一の知り合いなので」

  「あー、ブリーテンリッヒ家かぁ」

 

 どうやらドクターはブリーテンリッヒ家について知っているようだ。

 

  「えっと、そこも有名なんですか?」

 「はい。元々魔術には多種多様の魔術があるのですが、その中でも誰も使おうとはしないマイナーな魔術『強化』を彼らは極め続けていると聞きます。『武』を極めた魔術師と言えば真っ先にブリーテンリッヒ家があげられます」

  「あれ、魔術って俺のイメージだとこう、ファイアボール!とか火球を放ったりするイメージがあげられるんだけど……」

 「そうですね。だから周りは彼らを異端呼ばわりするんですけど、実力はあるので何も言えなかったりするんです」

  「でも、驚いたな。ブリーテンリッヒ家はこういった魔術関連の話には興味がないと思っていた。何せ武を極めるだけあって魔術にはとんと興味がない家だったからね」

 

 ドクターがそう言うのを聞いて、確かに意外だなと僕は思った。彼女達は武を極めていたが、逆に魔術研究といったものにはとことん興味を持たなかった。だからカルデアのレイシフト実験には興味を持たないものかと。

 

 

 するとドクターの通信機がなり、そこから声が聞こえて来た。

 

  『ロマニ、あともう少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?』

  「何かあったのかい?」

  『Aチームの状態は万全だが、Bチーム以下慣れていない者に若干の変調が見られる』

  「なら、麻酔をかけにいかないとね」

  『急いでくれ。今医務室だろう?そこからなら2分で到着出来るはずだ』

  「オッケー」

  『遅れるなよ』

 

 そうして通信は切れてしまった。

 ………というか、今の会話。

 

   「ここ、医務室じゃないですよね」

 「さぼるからですよ」

   「うっ、ここからだと5分はかかるぞ……!!」

 

 慌て出すドクターだったけど、それも数秒で元の緩い空気に戻っていった。

 

  「ま、少しぐらいの遅刻は許されるよね。Aチームは問題ない様だし」

 

 それでいいんですかと内心でつっこむ。本当にやる気の無い人がトップになれたなぁ、と薄々思う。

 

 そういえば、と気になることを僕は聞いてみた。

 

 「さっきの人はどなたですか?」

  「ああ、彼はレフ教授。さっき話したカルデアを観測するための『シバ』を作った魔術師だ」

 「そんなすごい人だったんですか!?今の相手……私も聞いたことがありませんでした」

  「ちなみに、レイシフトの感知システムを構築したのは前所長。その理論を実現させるための疑似量子演算器を提供してくれたのがアトラス院。多くの才能が集結して行われるんだ。僕みたいな平凡な医者が立ち会ってもしょうがないけど、お呼びとあらばいかないと。おしゃべりに付き合ってくれてありが……」

 

 ドクターが「ありがとう」と言おうとした、その時。

 

 

 

 

 

 突然部屋の電気が消え、真っ暗になってしまった。

 

 

 

 

 




とりあえずリハビリがてらこんな感じで進めていきたいと思います。

主人公は立香の他に3人います。(1人はまだ話に出て来ただけで未登場ですが)
FGOのサーヴァントについてはまだ明確には決めていません。一応このキャラに対してこういうサーヴァントかな?というイメージがつけているだけで本当に決めていません。というかキャラが掴めていないので口調が迷子になるかもしれません、先に言います。ごめんなさい。

方針としては楽しく、そしてふざけ半分でやっていきます。時々ギャグに、時々シリアスに。不定期なので完結するのか分かりませんが、今後よろしくお願いします!





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カルデア事変


皆さんこんばんは、バレンタインよりもホワイトデーの方に期待していますどうもオレンです。
先日のバレンタインイベントは楽しかったですね!初参加だったので、鯖の皆さんから概念礼装を頂きました。中でもつぼったのがトリスタンの概念礼装・・・ぜひ、生ボイスで聞きたいですね!実装まだですか!!(*ないです)

今回は短いです。やたらと時間がかかった割に短い理由は上記のイベントを周回していたのとテイルズのアプリを始めたのと、今までの物語を復習していたからです。FGOって、奥が深いですね・・・考えれば考える程謎が浮かんで来て頭がパニックになってます。皆さんどうしたらそんな考察出来るんですか!


では、どうぞ!


 

 「なっ……」

  「部屋が真っ暗に……」

 

 立香君の部屋が突然暗闇に包まれ、闇の目に慣れていないこの目では2人の姿を認識することさえ出来ない。

 

 これは停電?そんな言葉が頭に過る。

 しかしそんな考えを途絶するように突然、轟音と震動が僕達を襲う。直後、サイレンとともにアナウンスが入る。

 

 

 ――緊急事態発生。緊急事態発生

 ――中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました

 ――中央区書くの隔壁は、90秒後に閉鎖されます。

 ――職員は速やかに、第二ゲートから退避して下さい。

 ――繰り返します。中央発電所、及び――

 

 

 「火災……!?」

  「今のは爆発音か!?一体、何が起こっている……!?モニター、管制室を映してくれ!皆は無事なのか!?」

 

 ドクターが通信機に応答を求めるが、通信機からの応答は1つもなく、沈黙している。

 

 ふと、僕の頭に思い浮かんだのは2人の少女。

 僕達をこの部屋まで案内してくれたマシュ・キリエライト、そして僕の同級生の―――。

 

 そこまで考えて、僕と立香は顔を見合わせ、部屋を飛び出した。

 

  「な、何をしているんだ君達!早く第二ゲートから避難しなさい!!」

 

 ドクターの避難命令と制止を振り切り、マシュの戻っていった道を全力で駆けていく。後ろからドクターも追いついて来て、3人で並走して中央管制室の扉を開いた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 『ソレ』は突如として発生してしまいました。

 

 コフィンに入ろうとしたその時、爆発音とともに天井が崩落しました。

 

  「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

  「うわああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 悲鳴や怒号、絶叫などが飛び交い、私は慌ててコフィンから離れる。瓦礫が私達の元に降り注ぎ、ある者は押しつぶされ、ある者は火災によって焼かれ………と周りは地獄へと化していました。

 

 「な、何が、ど、どう、なって、いるんです……!!?」

 

 全身の震えが止まらず、腰を抜かしてしまいました。目の前で起きている惨状が理解出来なかった。

 

 

 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。

 

 赤い、赤い、炎が燃え上がって。辺りを包み込んでいって、天井から瓦礫が降っていて。

 

 

 

 

 

  「危ないっ!!!」

 「!?」

 

 茫然自失となっていた私を呼び戻したのは、危険を知らせる一声だった。

 

 次の瞬間、突然私の周りが少しだけ陰が指す。見ると、横の瓦礫が私の方にむかって倒れて来て………。

 

 いきなり誰かに突き飛ばされ、私とその人はもつれるようにそのまま床に転がり、その人は私に覆い被さるようにして倒れていた。

 

 「えっ……」

 

 覆い被さっているその人は、金髪の女性だった。カルデアの制服を着ているのでおそらく私と同じマスター候補生の1人だと思います。

 

 「あ、あの、大丈夫ですか!?」

  「え、ええ……どうにか間に合いましたわ。あなたは大丈夫?」

 「は、はい……」

 

 その人は目を開けて、ホッとした顔を見せた。けれど、頭から血を流していて私は血の気が引いた。

 

 「あ、あの!血、血が、血が流れてます……!」

  「へっ?ああ、このくらいなら平気ですわ。それよりも」

 

 話を続けようとした女性の声を遮るように、爆発音が怒鳴るように聞こえて来て私はびくりと震えました。

 女性はそんな私を守るように抱きしめてくれました。

 

 「あ、あのっ……」

  「大丈夫です、私が絶対に守ってみせますわ」

 

 痛みにこらえるように女性は顔を顰めたけど、それでもニッコリ笑って言いました。

 何故こんな状況になって笑っていられるんだろう、と私は不思議に思いましたが、そこへ。

 

 

  「キャリス!マシュ!!」

  「ガーレン!返事をして下さい!!」

 

 知っている声と知らない声が耳に届き、私はガバッと顔をあげました。1つは間違いなく立香さんの声でした!

 

 「立香さん!!」

  「シュミットさん!!」

 

 私とガーレンさんは2人の元へいこうと立ち上がりましたが、金髪の女性はまだ身体中が痛むのか、すぐにしゃがみこんでしまいました。

 

 「だ、大丈夫ですか?」

  「え、ええ……少々、腰が抜けただけですわ」

  「見つけました!」

 

 瓦礫をかき分けて来たのは立香さんではなく、ガーレンさんより濃い金髪の男性でした。

 その人は女性の膝裏と首に手を回し、横抱き・・・というか『お姫様抱っこ』のような要領で彼女を抱き上げました。

 

  「!? しゅ、シュミットさん!!」

  「ああもう、ガーレンは本当に無茶をするんだから」

  「降ろしてください!こ、このくらい自分で歩けますから!!」

 

 ………これは私、要らない人でしょうか。何だかすごく会話に入りづらい空気になっているような……。

 

 

 すると、炎とは違う赤い光が中央管制室を照らしました。光を放つ方に目を向けてみれば、今まで黒一色になっていた球体——カルデアスが赤く染まっていた。

 

 

 ——観測スタッフに警告、カルデアスの状態が変化しました

 ——シバによる、近未来観測データを書き換えます

 ——近未来百年までの地球において、人類の痕跡は 発見 出来ません

 ——人類の生存は 確認 出来ません

 ——人類の未来は 保障 出来ません

 

 絶望的なアナウンスが、炎が燃え盛る管制室に鳴り響きました。

 

 

 

 人類継続保障機関だというのに、人類の未来は保障出来なくなってしまったのです。

 

 

 

 「そんなっ………!!」

  「カルデアスが、真っ赤に……」

  「嘘……」

 

 私達は驚きとショックで、声を震わせて呟きました。

 その後に続くように、アナウンスが響く。

 

 ——中央隔壁 封鎖します

 ——館内洗浄開始まで あと180秒です

 

  「しまった、隔壁が……!いえ、まずは立香君と合流しましょう」

 「そうです!マシュさんは!!?」

 

 私達は急いでマシュさんと立香さんのいるところへ走り出しました。

 

 その先には頭から血を流し、下半身が瓦礫の下敷きとなってしまったマシュさんと、瓦礫を退かし助けようとする立香さんの姿がありました。

 

 「立香さん!!マシュさん!!」

  「皆、さん……もう、外には……」

 

 マシュさんは苦しそうな表情を浮かべ、私達の方を見ます。

 

 この傷では、もう………。

 

 死への恐怖と絶望で、私は震える身体を手で押さえつけました。見ると立香さんもかすかに震えていました。

 そんな恐怖をかき消すようにガーレンさんが声をはりあげました。

 

  「隔壁ならどうにかなります!まずはこの人を助け出しましょう!!」

  「そ、そうだよ!生きていればどうにかなる!!」

 

 

 ——コフィン内のマスターバイタル、基準値に達してません。

 ——レイシフト定員に達していません

 ——該当マスターを検索中……発見しました

 ——適応番号14 ガーレン・ブリーテンリッヒ 適応番号15 シュミット・ヴェラータ 適応番号47 キャリス・K・ハーミット 及び 適応番号48藤丸立香 を マスター として再設定 します

 ——アンサモンプログラム スタート

 ——霊子交換を開始 します

 

 

 「……あの、皆さん、手を握ってもらって、いいですか?」

 

 マシュさんの言葉に私達は顔を見合わせ、揃ってマシュさんの手を握りました。

 

 

 

 

 ——3

 

 ——2

 

 ——1

 

 ——全行程 完了(クリア)

 

 ——ファーストオーダー 実証を 開始 します

 

 

 そして、私の身体がなくなるような感覚に襲われ、意識を失いました。

 





ようやくもう1人の主人公登場、これで4人とも揃いました。管制室でも奇跡的に生きている人って多分いると思っています。原作ではマスター達は全員コフィン内にいると思いますが、キャリスはまだコフィンに入ってません。多分避けられたんだから幸運EXぐらいはあるんじゃないかと。ガーレン?・・・彼女はコフィンを危機感を察知して自力で破って来たんじゃないでしょうか。


前回より短かったですが、いかがだったでしょうか。
期間が空いてしまいましたが、今後もマイペースにいきます。気長にお待ち下さい。まだ未熟なので、もし何か感想や意見があるのならよろしくお願いします。



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炎上都市冬木
炎上汚染都市冬木


はい皆さんこんにちは、ホワイトデーピックアップでプーサー、更にその前の円卓のピックアップでガウェインとアルトリア(槍)が来てヒャッハーっ!!と歓喜していたら風邪にかかってしまったオレンです。
そのホワイトデーピックアップでの出来事で面白かったものを1つ。友人2人が大人しく動画を見ている私の横で『エーミーヤ!エーミーヤ!(時々料理名)』という呪詛を呟きながらホワイトデーピックアップ10連に望んでいたところ、☆4以上を5体(プーサーとトリスタン2枚、エミヤオルタ含む)を引くと言う神引きを見て『嘘……だろ……』と私は某死神代行のような反応をしました。しかもその子、ほとんど鯖を引いていました。恐ろしい、FGOのガチャはいろんな意味で恐ろしい


さてそれは置いといて、今回は初の立香視点からです。普通の青少年をイメージして書いているのに、私の青少年のイメージはどこかズレている気が、しなくもない。あと、オリ鯖登場です。

では、どうぞ!


 

 

 俺は藤丸立香。

 18歳。元高校生、現在は何故かカルデアという組織のマスター候補生。

 

 俺はさっきまで炎に包まれた管制室の中にいた。そしてキャリス達と一緒にマシュの手をつないでいた。

 

 そう、繋いでいた、はずだった。

 なのに。

 

 

 

 「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 気がつけば何故か炎に包まれた街で、数体剣を持った骸骨に追いかけられていた!

 

 あり得ない!!何かあの骸骨カタカタ動くし、どっかのスプラッターホラーじゃないだろうな!?ゾンビが出て来たらバイオハ○ード間違い無しだろここ絶対にラクーンシティだろうが!!

 というかマシュや他の皆はどこへ行ったんだ!!?皆無事なんだよな!?というかここ何処だよ!!

 

 頭が混乱しつつも、後ろから追いかけて来る何かから逃げるために俺は走る。ふと間合いを確認するために一瞬だけ後ろを振り向くと、あの骸骨の剣士が飛び込んで来た。

 万事休すか、と思ったそのとき。

 

 

  「やぁぁぁっ!!」

 

 突然上から何かが飛んで来て、骸骨の剣士が粉砕された。

 見ると、身の丈に合わない程の盾を持った紫髪の女の子が………って。

 

 「マシュ!!?」

  「先輩はこのまま私の後ろに。戦闘を開始します!」

 

 さっきとは違う服装になっているマシュは持っている盾を振り回し、骸骨の剣士を粉砕していった。

 大人しそうな雰囲気に見えてたのに、骨を砕く程のパワフルな行動に俺は唖然としてその様子を見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 最後の1体も盾で粉砕し、マシュはふうと一息つく。

 俺はその様子を見て破れに帰り、急いでマシュに駆け寄った。

 

 「マシュ!け、怪我はないか!?」

  「はい、大丈夫です。先輩こそ怪我がないようで何よりです」

 

 管制室にいた時は瓦礫に挟まれて、頭から血を流していたのに、いつの間に治療してたんだろうか……。

 

 「それにしても、こいつらは一体何なんだ?まるでファンタジーに出て来るモンスターだ」

  「モンスター、という点は間違っていないと思います。おそらくここに出現するものかと」

 「ここ?そういえばここはどこなんだ!?」

  「おそらくここは特異点F、2004年の日本冬木市です」

 「えっ!!?」

 

 言われて驚く。俺達はいつの間に特異点に飛ばされていたんだ!?しかも、日本の冬木にこんな大火事は………。

 

 そこまで思い浮かべて俺はハッとする。

 確かドクターはここに来る前に、観測出来ない領域『特異点』が見つかったと言っていた。

 特異点は過去・未来から独立した異空間で、人類史を侵すあってはならない領域のことを指す。

 

 つまり、ここは特異点なのか………!!?

 

 「い、いつの間に俺達は特異点に来ていたんだ?」

  「ここへのレイシフトは作戦通りでした。事故発生後も生き残った機能が、既に発動していたレイシフトのプログラムを続行させたのでしょう」

 

 俺の問いにマシュは冷静に答えた。だけど、さっきからかすかだけど震えているのが見える。

 多分、実はさっきの戦闘がすごく怖かったのかもしれない。あんな恐ろしい化け物と戦ってたもんだもんな。俺でさえ怖かったのに、普通の女の子のマシュだったら尚更だ。

 

 そう考えていると、何かがマシュに飛びついて来た。フォウだ。

 

  「フォウ!」

  「フォウさんもこちらに来られたのですね。ご無事で何よりです」

  「フォーウ!」

 

 元気よく返事をするフォウを見て、俺は思い出した。確か、あそこには俺の他にも……。

 

 「マシュ、もしかして他にもキャリスやシュミット達がいるんじゃないか?」

  「そうですね。レイシフトの最中に何かしらの誤作動が起きて、離ればなれになってしまったのかもしれません」

 「それ、結構まずくないか!?」

  「はい、まずいです!」

 

 そんなはっきり言わなくても………。

 俺がうろたえていると、

 

 

 

 

 

  「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 突然、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

 

 「! マシュ、今のは……」

  「生存者がどこかにいるのかもしれません!いってみましょう!!」

 「あ、ああ!!」

 

 俺は走り出していったマシュを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「はぁっ、はぁっ……きゃあっ!!」

  「所長!くっ……」

 「………ああっ!!」

 

 俺達がその場へ駆けつけると、倒れている所長とその所長を守るように立っている金髪の女性……多分俺と同じ服装だからカルデアの職員の誰かなんだと思う。っていうか、あの人どこかで見たような気が……?

 そして、その2人に近づく、鎌を持ち、黒いフードを身につけた女性の姿があった。あの女性からはとてつもなく怖い雰囲気しか感じない。

 

  「オルガマリー所長!!」

  「え?マシュ!?あなた、その姿……」

 

 所長が驚いた様子で俺とマシュの姿を見つめる。マシュは女性の姿を視認すると、盾を構えて俺に呼びかけた。

 

  「あの『サーヴァント』を敵性存在と判断します!マスター、指示を!」

 「えっ!?あの、マスター!?指示って何!!?」

 

 いきなり呼びかけられてもよく分からない!というかサーヴァントって何!!?あの女性のことなの!?

 

 俺が混乱していると、金髪の女性が振り向いて叫んだ。

 

  「お願いします!ひとまず時間を稼いでください!!」

  「はい!」

 

 マシュは女性の言葉に従って黒いフードの女性に向かっていった。黒いフードの女性が鎌を振り下ろそうとする前にマシュが盾で防ぐ。

 俺は急いで2人の元へ駆け寄ったけど、所長に何故か文句を言われた。

 

  「あなた、よく見たらあの一般人じゃない!それに何でアンタなんかがマスターに!?あの子にどんな乱暴を働いて言いなりにしたの!?」

 「え、そ、そんなことを言われても意味が……」

  「右手を見なさい!」

 

 言われて、俺は右手を見た。いつの間にか右手に見慣れぬ紋章があって、俺は驚いた。

 

  「その『令呪』がアンタとあの子が契約した証拠じゃない!」

 「うわっ、何だこれ!?」

  「所長、誤解です……!強引に契約を結んだのは私の方で……!」

 

 マシュが戦いながらフォローをしようとするけど、あの女性が鎌をマシュに振り下ろして攻撃した。間一髪マシュが盾で防いだものの、攻撃が強かったからか急いで後退していた。

 

 「マシュ!」

 

 俺はマシュに駆け寄ろうとするけど、そこで金髪の女性に右手を掴まれた。

 

  「いけません!サーヴァント同士の戦いに飛び込むのは危険です!!サーヴァントというのは魔術世界における最上級の使い魔。人類史に残った様々な英雄、偉業、概念。そう言った星の記憶を霊体として召喚したものです。それに割って入るのは自殺行為です!」

 「でもこのままじゃマシュが……」

 

 そこまで言って気づく。サーヴァント同士と言ったけど、それって。

 

 「あれ、じゃあマシュはどうなるんだ?」

  「……彼女は、デミ・サーヴァントよ」

 「でみ、さーゔぁんと……?」

 

 所長の言った言葉に俺が首を傾げていると、金髪の女性が目を見開いた。しかし、それも一瞬でスッと真剣な顔をして言った。

 

  「霊体であるサーヴァントを現世につなぎ止めるための楔になっているのが契約したマスターの魔力。今あなたが死ねば、あの子も道連れになってしまいます。ここで指示を出すのが懸命だと思います」

 「!」

 

 マスターである俺が死ねば、マシュも消える……。

 それを聞かされて、俺はグッと右手に握りこぶしを作った。知らず知らずと、身体が震え始める。

 俺がしっかりしないと、マシュが死ぬかもしれない………そんな緊張感が、俺を襲う。

 

 そんな俺を元気づけるように、女性が俺の肩を叩いて来た。

 

  「大丈夫!私があなたのことを守って差し上げますわ!私、こう見えてもとても強いですから!!」

 「いやいや、そんな無茶しなくてもいいからね!?さっき危険だといったのどこの誰ですか!?」

  「それは普通の人や魔術師の場合の話よ!」

 「そっちも結構ボロボロになってるよね!?」

 

 見た目俺より可憐、というかどう見ても戦いに向いてなさそうなのに既に怪我をしているから余計に心配だ。しかもさっきから左手で右腕を抑えているってことは、右腕が動かせない程の重傷を負っているんだろう。

 それなのに戦うなんて、いくらなんでも無茶が過ぎる。本音を言うのなら、女に守られる男って情けないだろ!!今もそうだけど!

 

  「きゃあっ!!!」

 「マシュ!!」

 

 マシュの悲鳴が聞こえた。さっきよりも息が絶え絶えになっていて、立っているのもやっとの状態だ。

 さすがに見ていられないのか、女性も手元にあった短剣(いつの間に取り出したんだろう?)を構えた。

 

  「これで終わらせてあげる!!」

  「っ……!!」

 「マシュ!!」

 

 

 

 万事休すなのか、と思ったそのとき。

 

 

 

 

 

 

 どこからか何かが駆ける音が聞こえ、次に。

 

 

  「ちょぉぉぉぉっと待ったぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 そんな怒声とともに、黒いフードの女性とマシュの間に一振りの槍が突き刺さる。槍が飛んで来た方向、俺達の後ろを振り向くと何かがこちらに向かって来ていた。

 

 

 それは、一頭の馬。

 栗毛の馬が、こっちに向かって来ている。

 

 

 「って、馬ぁ!?」

  「な、何よあれぇぇっ!!?」

  「きゃあぁっ!!」

 

 俺達は慌ててその場から離れ、何とか馬に蹴られることだけは回避した。

 栗毛の馬の背に乗っていたのは、赤を基調とした鎧を纏った騎士のような人物。その右腕には小さめの丸型の盾がつけられている。

 

 騎士のつけていた兜が粒子のような光になって消えていくと、そこから端正な顔立ちが現れた。よくアニメとかで見かける『イケメン』の顔立ちの男の人だった。炎の光に照らされて輝く緑髪に、つり気味の青い瞳。全体的に何故かキラキラしているように見えるのはなんでだろう。

 

 男の騎士は黒いフードの女性を見て、ニヤリと笑って言った。

 

  「『ランサー』のサーヴァントかぁ!こいつぁ面白え!!美人だし骨のある奴に見えるな!!」

  「そういう貴様は『ライダー』か……?だが、今回の聖杯戦争での『ライダー』は貴様ではないはず。何者だ」

 

 黒いフードの女性……『ランサー』は鎌を構えて、『ライダー』と呼ばれた騎士の男に問うた。

 ライダーは「やっぱりそう聞かれると嬉しいねえ!」と笑って、マシュの前に立ってはっきりと名乗りを上げた。

 

 

 

  「サーヴァント『ライダー』……円卓の騎士が1人、『ラモラック』!さあ、さあ!戦いを楽しもうか!!」

 

 

 

 

 

 




はい、本作最初のオリジナル鯖のラモラック登場です。
第2部の六章にあからさまに円卓の騎士が登場しそうな雰囲気だったのですが、我慢出来ず作りました。これでもし六章にラモラックが出て来ても、このキャラで突き通して行くつもりです。(そもそもラモラック自体がFateの円卓の騎士にいないらしいので出ないかもしれませんが…)

そして今回も5000字以内。短すぎね?と思っています。書いているうちはあれ、長いかなぁ?とか思ってるのに、なんでだろう。区切りをつけるところがよく分からないです。


次回はvsランサー。どこかで多分見ているだろうあの人も登場する予定。次回もお楽しみに!




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赤の騎士と青の魔術師


皆さんどうも、月に1度の更新となりつつありますオレンです。
新学期が始まりましたが、なかなか忙しくて大変です。特に私はまだ学生ですが、授業時間が延びたので結構大変です。特に哲学、よう分からん。

FGOの方では第2部が始まりましたね!一章は本当に泣かせに来てましたね。あと剪定事象関連の話はくっそ重いのに加えAチームの様々な事情と言いますか。この先が不安だけど楽しみにしています……!
あと、先日バサランテとアヴィケブロンを引きました。現在育成中ですが、そろそろイベントが来ないと素材不足ががががが……。種火不足?いつものことですよ?

今回も立香視点から。戦闘シーンはぶっちゃけ苦手なので主に漫画を参考にさせてもらっています。なので戦闘シーンが漫画に似てるとかいうツッコミは無しの方面で。
ではどうぞ!


 

 「らも、らっく……?」

 

 そう名乗ったライダー…ラモラックはこっちを見て誇らしげに笑っていた。ランサーは舌打ちを打って、何と鎌を無言でラモラックに振り下ろして来たのだ!

 それに気がついたマシュが盾を持ってその攻撃を防いだ。

 

  「大丈夫ですか!?」

  「わるいな嬢ちゃん。っていうか俺ちゃんと名乗ったぞ!?お前も名乗れ!!」

  「素直に真名を言う奴がどこにいる!!?」

 

 真名?何だそれ。

 俺が首を傾げていると、そんな俺に気づいたのか丁寧に金髪の女性が説明してくれた。

 

  「真名っていうのは、その名の通りサーヴァントの本当の名前ですのよ。本来の聖杯戦争中は真名を隠し通すのが筋。敵対しているサーヴァントに本当の名前がバレたら弱点も自分でばらしてしまうの」

 「弱点?」

  「サーヴァントっていうのは英雄や偉業が霊体という形で召喚されたものだと、さっき言ったわね。相手に真名が知られるということは、英雄の残した伝説・伝承が知られるということ、その弱点に繋がる情報をさらすことにもなってしまうの。例えばアキレウスだったら?」

 「………あっ!アキレウスはかかとだけ不死じゃなかったから、踵が弱点であることが相手にバレてしまうんだ!」

  「正解!」

 

 俺がそう答えると、女性はニッコリ笑って言った。その俺達の会話を見ていた所長が大きなため息をつく。

 

  「緊張感がないわねあなた達……。今どういう状況か分かってるの?」

 「あ、はは……すみません」

  「いいの、分からないことがあれば私に聞いてちょうだいな。今はどうにかして一緒にランサーを打開しましょう!」

 

 笑顔でそう言う彼女は、どう考えても今の状況に不釣り合いな程の明るさを持っていた。その笑顔に、震えていた身体が自然と収まって行くような気がした。

 

 そんな2人の様子をチラッと見ていたラモラックが相手の鎌を槍で抑えながらこっちに叫んだ。

 

  「おいそこの2人!どっちかでいいから指示を出してくれ!もう片方は嬢ちゃんに指示を頼む!」

  「分かりましたわ!」

 「ああ!」

  「それと嬢ちゃん、あんたはランサーより肝が据わっている!その根性の差をあのランサーに見せつけてやれ!!」

  「はい!」

 

 ラモラックの鼓舞に俺達は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 と、そこにまた新たな声が響く。

 

  「いいねぇ、いいねぇ!なかなかいい心意気じゃねえかお前らぁ!!」

  「その声は……!」

 

 突如上空から炎が飛来し、大きな爆発を起こした。俺達は慌てて顔を腕で覆い、爆風を防ぐ。

 両腕の隙間から前方の様子を見ると、爆発で起きた煙の中から誰か立っているのが見えた。

 

 青色のフード付きのコートを羽織り、木の杖を持った男のようだ。

 

  「俺はサーヴァントのキャスター。故あって奴らとは敵対中でね。敵の敵は味方って訳じゃないが、今は信頼してもらっていい」

 「キャスター?」

  「魔術を得意とするサーヴァントですわ。でもこの配置なら戦いやすいですわね。あなた、マシュの指示をお願い出来る?」

 「君はあの2人を?」

  「ええ。マシュには囮として、ラモラックにはその隙をついて攻撃してもらいましょう」

 「分かった。マシュ!あいつは機動力がある。こっちから懐に入り込んで動きを制限してくれ!」

 

 俺がマシュに呼びかけると、マシュは不安そうにこっちを見て来る。

 多分さっきまで劣勢になっていた上、戦いが怖いっていうのもある。それらを押し殺して、マシュは戦っていたんだ。

 なら、俺に出来ることは。

 

 「大丈夫。ついさっき骸骨達から俺を助けてくれたじゃないか。だからきっと、大丈夫だ!」

  「! ……はい!了解しました、マスター!」

 

 マシュは俺に向かって頷くと、ランサーの方に向かって行った。同時に女性の方も声を張り上げてキャスターとラモラックに呼びかけた。

 

  「ラモラック、マシュと一緒に相手をひっかきまわして!!キャスターは詠唱の準備を、大きいの一発お願いしますわ!」

  「了解した!!」

  「おうよ!!」

 

 ガーレンの指示通りにラモラックはマシュとともにランサーに攻撃し、キャスターは俺達じゃ聞き取れない程の小さな声で何かを唱え始めた。

 ラモラックは槍を時に突き、時に回るようにして器用に振りながら、ランサーに攻撃して行く。

 

  「そのいたいけな虚勢、すぐに突き崩してあげましょう」

 

 ランサーはその攻撃をさらりとかわし、ラモラックの腹を蹴り上げる。ラモラックはどうにかこらえ、後ずさりする。そんなラモラックとかわるように、マシュが盾を思いっきりランサーの顎に向かって振り上げた。

 ランサーは間一髪でそれをかわすが、ついで態勢を立て直したラモラックが槍の先で思いっきりランサーを突き刺した。

 

  「がはぁっ!!」

  「あらよっと!!」

 

 ライダーは血反吐を吐くランサーを、そのまま空へ蹴り上げた。放り出されたランサーは目を瞬きさせたが、次の瞬間目を見開いた。

 

 

 それと同時に、俺達の目の前で詠唱を続けていたキャスターがニヤリと笑った。その手元には、複数の文字が宙を浮かび、赤く光っていた。

 

 次の瞬間、その文字は全て火球になり、空中に放り投げられたランサーに全て向かって行き_____焼き尽くした。

 

 

  「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ランサーの絶叫が響き渡る。

 俺は思わず身体を震わせた。人が間近で燃えるところを見るなんて、映画であっても現実ではあり得ないことだと思っていた。

 でも、それは今間違いなく目の前で起きていて。

 

 ランサーは絶叫を挙げながら、遭えなく燃え尽きて行った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

  「敵サーヴァント消滅……戦闘、終了です………」

  「やったな嬢ちゃん!」

 

 敵がいなくなったことでホッとしたマシュに、ラモラックが肩を回した。

 

  「きゃっ!?」

  「いやあ盾をぶん回す奴を見るのはあいつ以来だ。あと、お疲れさんだったな!」

  「え、い、いえ、ラモラックさんもありがとう、ございます……」

  「いやあどういたしまして!可愛い子ちゃんのためなら何だって出来るぜ俺!」

  「か、可愛い子ちゃん?」

 

 そんな感じでさっきの戦いが無かったかのように、マシュとラモラックは話し始める。というより、ラモラックが一方的にマシュに突っかかっているようにも見えるが……。

 

 俺はさっきのランサーの死に様を思い出し、吐き気がこみ上げて来たが何とかこらえる。

 それに気がついたキャスターが俺の方に駆け寄って来た。

 

  「大丈夫か?坊主」

 「す、すみません……ちょっと、こう、緊張感が抜けたと言うか………」

  「無理もないわ。あなた、戦い慣れていないでしょう?」

 「お、お恥ずかしながら………」

 

 俺がそう言うと、女性はクスリと笑って言った。

 

  「ふふっ、やっぱりそうね。あなた、シュミットと一緒に追い出されてた子でしょ?」

 「え、シュミットのこと知ってるんですか?」

  「まあ、昔から妙な縁がありましたというか。私はガーレン、ガーレン・ブリーテンリッヒと言いますの」

 

 ブリーテンリッヒ………!!ロマニやシュミットが話していた『武』を極めた魔術師の一家……!!

 俺は驚いた。ここまで華奢な女性が、まさかブリーテンリッヒ家の女性だったとなんて。

 

  「あなたの名前はなんて言うのかしら?」

 「あ、お、俺は藤丸立香、立香って言います。あなたは、確かシュミットの言っていた人、ですよね?」 

  「ええ。どのようなことを言ったのかは知りませんけど、これからよろしくお願いしますわ!」

 「は、はい!」

 

 華やかな笑みを浮かべたガーレンと緊張感で固まっている俺は握手を交わした。キャスターがニヤニヤしながらこっちを見ているけど無視安定。

 こんなお嬢様っぽい人が武を嗜んでいるなんて、何だか信じられないなぁ。

 

 

 

  「ああ〜〜〜〜もうっ!!なんだって突然サーヴァントに襲われなきゃいけないのよ!!?」

 

 すると和やかだった空気を壊すように、所長が癪癖を起こしたかのように頭を抱えて叫んだ。

 

  「これからどうすればいいの?カルデアは?他の適正者達はどうなったの!?通信も繋がらないし、どうしてこんなっ……」

  「落ち着いてください、所長」

 

 マシュが所長を宥めていると、ガーレンがそういえば、と首を傾げてラモラックに問いかけた。

 

  「そういえば、あなたにはマスターはいませんの?」

 

 そう問いかけられたラモラックは、一気に顔色を青くさせた。

 

  「しっ……しまったぁぁぁぁぁぁっ!!!マスター置いて来ちまったぁぁぁっ!!!」

  「はいぃっ!!?」

 「え、えぇーっ!!?」

  「おい、それでいいのかサーヴァント」

 

 なんと言う間抜けな答え。俺とガーレンは愕然とし、キャスターは苦笑いのような、失笑を浮かべる。所長は更に頭を抱え、その様子を見たマシュがオロオロしていた。

 

 サーヴァントって、マスターの使い魔なんだよな?そのマスターから離れていていいのか?

 

 そんな疑問が思い浮かんだが、とりあえずガーレン達が呆れている辺り、よっぽどいけないことだったらしい。

 

 

 

 

 

 

  「ら……ライダぁぁぁぁっ!!どこにいるんですかーっ!!!」

  「君のサーヴァントは馬鹿なのか!!?アホなのか!!?」

 

 聞き慣れた女性と男性の声が俺達の耳に届く。声のした方向を見ると、暗がりから2人の人影が見えた。

 

 黒く長い髪の、赤い額縁の眼鏡をかけた女性に、整った金髪の男性。2人ともカルデアの制服を着ていて……って、

 

 「きゃ、キャリス!!シュミット!!?」

  「ガーレン!!」

 

 真っ先に走り出したのはシュミットだった。シュミットはそのままガーレンに飛びつこうとするが、ガーレンはそのままサッと避ける。シュミットは受け止めてくれる人がいなかったため、転んでしまった。

 

  「ひ、ひどいじゃないかガーレン!!」

  「あっ、ご、ごめんなさいですわ!いきなり飛びかかって来るとは思わず」

  「そんなっ、ここは受け止めるべきところだろう!?感動の再会という奴じゃないのか!!」

  「え、でもシュミットが無事だって思ってましたもの。しぶといですし」

  「ひ、ひどいっ!!!」

 

 ガーレンの冷めた言動に、シュミットは泣き真似をし始めた。何か、さっきまで部屋で話していたシュミットとは違って残念そうな雰囲気が漂っている。というかどれだけガーレンが好きなんだろう。

 

 俺は苦笑いでその様子を見ていると、キャリスがラモラックに駆け寄った。

 

  「ら、ライダー!!どこへいってたんですか!?し、心配しました!!」

  「悪いマスター!ちっと戦闘に行っていて」

  「お、お願いですから無茶しないでください!わ、私、心配したんですよ!?何かあったらどうしようとか、思ってて」

 

 ラモラックは本当にすまん!と何度も謝りながら半泣きになっているキャリスの頭を撫でる。なんというか、慣れた手つきで撫でてるから、ラモラックには年下の女の子とかに弱いのだろうか?

 

 ふと所長とマシュの方を見ると、2人とも何故か驚いたような顔をしてキャリスを見ていた。

 

  「………あなた、確かもう1人の一般候補枠の子よね?」

  「え?あ、オルガマリー所長!?」

 

 キャリスは今ようやく気がついたかのように所長に振り返る。所長は愕然としながらラモラックを指して、言った。

 

  「あんた、いつ、どうやって、サーヴァントを召喚したのよ………!!?」

 「え?」

  「あっ」

 

 そういえば、何気なく聞き逃してたけど、ラモラックはキャリスのことを『マスター』って………えっ?

 

 

 

 

  「あれ、そういえばマスター、こいつらと知り合いなの?」

  「じ、事情を聞かないで走って行くからですよぉぉぉぉぉぉっ!!!ライダぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ラモラックの問いに、もう涙腺が崩壊寸前のキャリスの叫びが町中に響き渡った……ってような気がした。

 

 

 

 





今回でようやく登場のキャスター、そしてキャリスとシュミット再登場です。これで主人公4人揃ったよ!やったね!!

ここからは個人的な感性の話になりますが、ガーレンやシュミットは生粋の魔術師なのでまだしも、立香やキャリスに人理焼却とか普通怖いと思います。一般人である立香は死体を見ると吐き気を催したり、命がけの戦いには不安を覚えます。でもマシュを守らなきゃ、助けなきゃって言う使命感と責任感が彼を突き動かしている。そんなイメージです。
ランサーの死に方は多分一般の感性で見たら惨い。まだ漫画のようにマシュがぶん殴った方がマシというもの。

所長は空気をシリアスに戻す担当。ちょっと空気読めなさ過ぎやしませんかねとか言うかもしれませんが、普通ならこんな異常事態にパニックにならない方がおかしい。


そしてラモラックのマスターはキャリスでした。次回はキャリスとライダーの出会いを掘り下げつつ、現状把握に戻ってきます。今のところキャリスと立香がメイン視点になっているなぁ。


では、次回もお楽しみに!






*どうでもいい雑談*

ここだけの話、オリ鯖を増やそうとして学校の勉強を頑張る傍ら、改めて歴史を勉強中ですが……元々苦手分野だったので悪戦苦闘中。アーサー王伝説だけは理解したけどその他はまるっきりダメだった。これで果たして大丈夫なのか………。



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一方での戦い sideキャリス&シュミット


皆さんどうも、五月病には要注意!オレンです。
どうもレポートやら何やらが増えて来ていますが、元気にやっています。ですが、最近グロ画像を面白半分で見てしまい、それを思い出してしまって微弱な吐き気と腹痛が止まりません。そのため癒しのために飯テロ動画などを見ています。誰か気分が和やかになる小説を紹介してください(切実)

最近立香視点となる漫画『FGO turas realta』を買ってそれを参考にしながら今回は書きました。マシュ視点のものと立香視点のものでも原作とは戦闘シーンが大きく違って面白いです。特にキャスター、あんたかっけえよ……。

今回は立香とは違い、立香達と再会する前のキャリスとシュミット達の方からです。

では、どうぞ!


 

 

 

 それは、立香が目覚める数分前のこと………。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

  「………!…………い!!起きてください!!」

 

 誰かが僕を呼んでいる。ガーレンとは少し高い、ような声。でも、何か焦っているような声だ。

 僕は固く閉じられていた目を重くこじ開けた。

 

 僕の前にいたのは、眼鏡をかけた黒い瞳の女性だった。黒髪と黒い瞳………生粋の東洋人のようだ。

 ……ん?

 

 

 「君は、確かあの時いた……?」

  「は、ははははい!キャリスと言います。あの、大丈夫ですか?」

 「あ、ああ、うん………?」

 

 身体を起こして辺りを見回すと、ようやく今の状況に気づく。

 僕達がいたのはタタミが敷かれ、ショウジやフスマのある………確か東洋で言う『和室』と呼ばれる部屋だった。何も置物らしいものはなく、ショウジから見える赤い光が部屋の中に差し込むくらいだ。

 

 さっき僕達がいたのは、確かカルデアの管制室にいたはずだった。なのに、何故……?

 

 「キャリスさん、と言いましたね。何故僕達がここにいるかは?」

  「わ、分かりません!ただ、側にマシュさんや立香さんがいなかったんです。そ、それに、何だかとても危険な感じがして、とりあえずあなたが起きるまで待っていたんです」

 「確かにね……」

 

 先ほどからちりちりと何かが燃える音が聞こえる辺り、この部屋から出たら多分あまり良くない光景を見ることになるんだろう。何となく想像がつく。

 

 「とは言っても、ガーレンや他のお2人を見つけてここがどこか把握しなくてはいけません。移動しましょう」

  「い、移動するんですか!?」

 「何か問題でもありますか?」

  「え、い、いえ、ない、です、けど……」

 「ならいいでしょう」

 

 僕としては早くガーレンを探して助けなきゃいけませんし、と声に出さず呟く。

 キャリスは俯きながらおどおどしている。かすかに震えているところを見ると、今の状況が怖いんだろう。確かに見知らぬ場所に放り出されれば恐怖を感じるのが人間だ。

 まあ、僕の場合は恐怖云々よりもガーレンの無事の方が心配だ。

 

 

 ふと嫌な気配を察知して、キャリスにかがむ様に身振り手振りで指示をする。キャリスは僕の様子に気づいたのか、涙目になりながらこくりと頷く。

 

 そのままかがんでいると、障子に黒い影が映り込んだ。2m以上はあるであろう巨体だ。ギシ、ギシ、と足音を立てながら廊下を歩いているのだろう。

 普通の人間ではあり得ない巨体ではあるし、もしかしたら何かの魔術師が生み出した魔獣の類いなのかもしれない。

 それを考えると、どうもここは本当に危険なところであるようだ。

 

 

  「危ないっ!!!」

 

 するとキャリスさんが僕の身体を横倒した。次の瞬間、僕のいたところが突然崩れた。

 見ると、あの黒い影の正体と思われる髑髏の仮面をつけた大男が拳を振り下ろして障子ごと破壊したようだ。もし僕があの場にまだいたらと思うと、さすがにゾッと背筋に寒気が走る。

 

 「キャリスさん、こちらです!!」

  「は、はい!」

 

 慌てて大男の横をすり抜けて、そのまま廊下から外へ飛び出した。どうやら日本家屋の庭園に出てきたようだ。

 僕達はそのまま大男から離れようとした。念のため『防御』の呪文もこっそりかけておく。

 

 ………そこに。

 

 「なっ!!?」

  「嘘!?」

  「……!」

 

 目の前にもう1人髑髏の仮面をつけた男が現れた。そのまま腕を振りかぶって僕とキャリスの方に振り下ろして来た。

 僕とキャリスさんはそれぞれ横跳びで回避するものの、どうやら大男は2人とも僕の方に向いている。つまり、狙いを僕に定めたのだ。

 

 さすがに2人は分が悪い、かといってキャリスさんに標的を向けるのもまずい。

 

 ひとまず身体強化の魔術を全身にかけておく。

 僕はガーレンとは違って魔術の邪道とも言える武道を使って戦う訳ではない。むしろどちらかと言えば策を練るのが得意な方だ。

 

 まず、ここを打開するには……。

 

 「『Garedez-le Ferme(閉じ込めろ、焰)』!」

 

 魔術回路を回転させる。フランス語の短い詠唱を唱え、人差し指を立てて、大男2人に向ける。すると大男2人の周りに炎の檻が形成され、閉じ込められた。

 その隙に、呆然としているキャリスさんに呼びかける。

 

 「キャリスさん!今のうちにガーレンを探して来てください!!」

  「えぇっ!?で、ですが………」

 「いいから早く!ここは危険です!!僕も隙を見つけたら退避します!!急いで!!」

  「そ、そんなっ……わ、私は………」

 

 狼狽えているキャリスさんに発破をかけようとしたところで、大男が檻を手で破壊し、こちらに近づいて来た。

 あの馬鹿力、やはり人間ではない!というか炎で形成されたのに火傷1つ負ってる様子すら見せないとは……!!

 今ようやくになって冷や汗が出て来る。だけど、ここで引き下がる訳にはいかない。

 

 「行ってください、キャリスさん!!」

  「っ…………す、すぐ戻りますぅ!!!」

 

 最後の一声で、キャリスさんは素早く踵を返して立ち去って行った。日本ではああいうのを脱兎の如く、というんでしたっけ。

 

 キャリスさんを見届けた後、僕は大男に向き直る。

 

 

 さて、どうやってこの状況を打開しようかな………。

 僕は拳を握りしめ、大男2人を睨みつけた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 「ガーレンさん、立香さん……!!」

 

 急がなきゃ、急がなきゃ、急がなきゃ。

 私はそんなことばかり考えて走っていた。今はあの人が引き止めているとはいえ、早く見つけないとあの人が危ないです……!

 

 

 辺りを見回して2人の姿を探しながら、ふと考えた。

 なんで1人で逃げたんだろう。一緒に逃げることだって出来たはずだった。私の『力』で逃げようと思えば逃げることが出来たはずだった。

 なのになんで、今、私は1人で走っているんでしょうか………。

 

 いえ、私が早く探しに行かなければあの人が危ないですし、それに私があの場にいても役に立てることなんてない……。

 

 いくら考えても悶々とした気持ちは無くならず、しかもガーレンさんや立香さんが見つからず私の中で焦りが募って行くばかりです。

 このまま見つからずにいたら、あの人は………。

 

 「ああああああやっぱり私にはレイシフトなんて向いてなかったんです……!!」

 

 困り果てて思わず頭を抱えていると、ふと影が指しました。嫌な予感がして後ろを振り返ると、

 

 そこにいたのは黒い露出度の高い服を纏った赤い髪の女性が剣を持って立っていて………。

 

 「っ!!?」

 

 慌てて横の方に転がると、私のいたところに女性が剣を振り下ろしてきました。殺気が先ほどのあの大男達と同じくらいで、身体がすくみあがりました。

 

 震える足を無理矢理動かして、私は走りました。とりあえず身を隠そうと曲がったところで、屋敷の中にある倉庫のようなところに入り込み、すぐさま扉を閉めました。

 

 

 「は、はぁっ、はぁっ………」

 

 息切れしながらどう逃げ切ろうか考え込む。あの様子だと、とても強い上級の使い魔の類いなのは間違いないでしょうけど……。

 

 そこまで考えて気づいた。レイシフト前に所長の話で何の説明をされた?

 そもそもレイシフトの際、マスター候補生達はまず何をするべきだった?

 

 

 歴史に遺した偉人達『サーヴァント』を召喚することだったはず。

 

 あの使い魔達は、もしかしてこの特異点に召喚されたはぐれサーヴァントだとすれば……?あの大男も、あの女の人も、サーヴァントだとしたら…………。

 

 そこまで考えて、ふと顔をあげる。荷物の奥の方で何かが赤く光っていた。

 私はそろーっと荷物を退けてその光の根源を見る。

 

 

 あったのは、床に円のように描かれた術式だった。その術式が赤く光っている。

 術式に関しては私の唯一の取り柄だったから覚えてる。この術式は、『サーヴァント』を召喚するための術式だ!

 

 ガァン、ガァンと何かが破壊される音がする。多分女の人が近づいて来ているのだと思う。

 

 

 迷っている暇はありません!

 私はおそるおそる指を噛みちぎって、その血を床に垂らし早口で唱えます。

 

 「『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公』」

 

 正直サーヴァントを本当に召喚するとは思ってもいませんでしたし、ほとんど唱えきれるか自信はありません。

 

 「『降り立つ風には壁を。四方の門はとじ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』」

 

 でも、それでも。あの男の人達と戦っているあの人を、立香さんやガーレンさんを、

 

 「『閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)』」

 

 助けられるのなら、賭けをしなくては。

 

 「『繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する』!」

 

 

 瞬間、後ろで爆発音がしました。扉が破られ、何かが近づいて来るような足音がします。それでも、急いで唱え切るために詠唱に集中する。

 

 「『告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の件に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うのならば答えよ』」

 

 何かの風が切る音がして、私は身体を横に反らしました。後ろにはさっきの女性がたっていましたが、怯まずに必死になって睨みつけます。

 

 「『誓いをここに!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪よ来たれ、天秤の守り手よ_____』!!」

 

 

 

 

 女性が私に剣をふりかざした瞬間、術式から漏れる赤い光が増しました。思わず剣が振り下ろされるのを見て、思わず目をつぶりました。

 

 

 

 瞬間、何かの金切り音とともにザシュッ、という何かが引き裂かれる音がしました。

 

 

  「召喚に従いこのライダー『ラモラック』、参上致した。マスター、大丈夫か?」

 「………ほえ?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 「ぐあっ!!!」

 

 強い圧力で敵に吹っ飛ばされてしまい、壁にぶつかる。その衝撃で脳天が揺れ、目眩が起こる。

 視界がぐらぐらと揺れながら、目の前にいる敵を睨みつける。さっきから魔術で攻撃しているものの、あっさり躱される。防護の魔術を身につけていても正直きついものがある。

 さっきぶつかった衝動で頭から血も出ている。ちょっと、いやこれは本格的にまずい。

 

 とはいえ、正直今の僕の魔術でどうにかなるようなものではない気がしてきた。日本ではこういう状況のこと、万事休すって言うんだったかな。

 

 大男は最後の一撃を加えようと腕を振り上げる。せめてもの最後の抵抗に、と僕は重くなった腕を大男に向けて『ガント』を放とうとする。

 

 

 

 そこで、ふと風が切るような音がした。

 

  「おらおらおらぁっ!!!そこを退けぇぇぇぇっ!!!」

 「っ!?」

 

 突如大男の後ろから飛んで来た槍が1人の大男の身体を貫き、僕の顔の横の壁に突き刺さった。

 ………正直、今生きた心地がしなかった。これであと数センチズレていたらどうなっていたことだろうか。最悪頭蓋の貫通だってあり得た。

 

 貫かれた大男は粒子状となって消えて行き、その後ろが見えた。後ろには槍を投げたと見られる緑髪の鎧を纏った男が立っていた。

 もう1人の大男が振り向いた瞬間に、緑髪の男は踵落としで頭蓋を破壊し、そのまま横に蹴り飛ばす。

 

 また新手か?と腕を降ろさずに敵を睨みつける。

 

  「ま、待って下さいライダー!その人は敵じゃありません!!攻撃しないでください!!」

 「きゃ、キャリス!!?」

 

 はぁ、はぁと息切れして走って行ったはずのキャリスが緑髪の男の後ろから現れた。

 

 ……というか、今彼女はなんと言った?ライダー?ってことはこの男、あの噂に聞くサーヴァント!!?

 

  「何だよマスター、知り合いだったのか?」

  「は、はい、そうです、というか急に飛び出していかないでくださいぃぃ!」

  「悪い悪い、何だか敵の気配がしたもんだからよ。つか案外弱かったな」

  「あれで弱いとか言えるんですかぁ!?」

 

 ライダーとキャリスの会話を聞きながら、さっきの敵について僕は考えた。そういえばあの大男も実はサーヴァントだったのかもしれない。それなら、あの床を陥没させたり、強力なパワーと強靭な身体も納得がいくというもの。

 それにしてもどうしてサーヴァントが召喚されているんだ?あの様子ではマスターの命令に従っていたとは思えないし………。

 

 悶々と考えていると、ライダーがおっ、と顔を上げる。

 

  「どうやらまだ近くに敵がいるみてぇだ!ちょっくら倒しにいって来るぜ!!」

  「えぇっ!!?」

 「はっ!!?」

 

 僕達が止める間もなく、ライダーは塀を飛び越えてどこかへと行ってしまった。

 残された僕達は、愕然とするばかり。

 

 「………あー、キャリスさん?」

  「わ、わわわわ私のせいじゃないです!!ライダー戻って来てください!!ライダあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ……何だか、無性にガーレンに会いたくなって来た。

 半分現実逃避をしながら、ひとまずライダーを追おう。そう考えた僕であった。

 





vsアサシン、そしてライダー召喚回でした。
ここでちょこっとだけ今回出て来たキャラの説明を。

キャリスは性格は臆病なのですが、詠唱が得意です。契約の呪文程度なら大体30秒もあれば余裕です。魔術師としては立香程とはいわないとはいえ、原作の序盤の衛宮士郎レベルじゃないでしょうか。こう、特定の魔術が人外レベルに通り越しているところとか………(ゴニョゴニョ

シュミットは作中でも言っていた通り、策士な性格で戦うのに向いていません。いや、魔術師が体術を使うのもおかしな話ですが(それを言ったら原作は相当ぶっ壊れのような気もしますけど……)
本編では炎の檻を造り出す魔術を使っていました。これは彼の得意魔術の1つです。炎の檻を造り出すだけですが、常人なら普通動けなくなるところ。ただ相手が悪かった。

ラモラックは基本的にあるキャラを元にして書いているので、戦闘狂です。敵がいればどこへでも飛んで行きます。あと伝説の通り、彼は馬上戦で本領を発揮しますが、乗っていなくても強いです。緑髪の騎士って書くとどうしても最近実装されたアキレウスを思い出してしまうんですけどねぇ……彼との差別化を今後追求出来たらなと思います。


次回は戦いが終わった後。やっとドクターと話せるよぉ!!あと改めて自己紹介とともに、新たなサーヴァント召喚………かも?
次回もお楽しみに!




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一時休息

皆さん1ヶ月ぶり、ぐだぐだ帝都聖杯奇譚楽しんでいますか?セルヴィです。

こちらはせっかく溜めていた10連分を見事にエクステラピックアップで使ってしまい、慌てて電源を切ったが時既に遅し。やってきたのは李先生とバサスロット、そして礼装でイマジナリアラウンドでした。……なんとも言えない気分とはこのことを言うんですね。礼装はまだしも☆4鯖・・・エミヤさんはまだですかー。

あとまだイベントは序盤なんですが序盤で初見殺しとはこれ如何に。終章クリア後のイベントマジパネえ。


今回は一旦休息。キャリス達の話を聞いてからの皆の様子です。ぶっちゃけ説明回になる………かな?

では、どうぞ!



 

 シュミットとキャリスの話を聞いた俺とガーレンは話の渦中にあったラモラックを見た。ラモラックは気まずそうに、こちらから目をそらしている。

 マシュは気の毒そうにキャリスとシュミットを見ていて、所長はジト見でラモラックを見ている。

 

 なんと言うか、話を聞く限りラモラックは、なんというか。

 

 「戦闘狂………?」

  「お、よく分かったな!」

  「よく分かったじゃないでしょう」

 

 もういっそ開き直ったかのようにラモラックはサムズアップを俺に向けて来た。もうシュミットは怒る気が失せたのか呆れているし、キャリスは何か迷っているのかオロオロしている様子だった。

 すると所長が深くため息を吐き、「もうそれは構いません」と区切りをつけた。

 

  「ひとまず候補生のあなた、サーヴァントの召喚ご苦労様でした。あなた達もよく頑張りましたね」

 

 「頑張りましたね」の辺りで、所長が僕を見て苦々しい表情を浮かべられた。何だか地味にショックだなぁとか内心で思った。確かに一般人ですけど―。

 ガーレンは顎に手をあてながら考え込むような仕草をして言った。

 

  「それにしても偶然とはいえ、本当によく召喚出来ましたね」

  「い、いえ、たまたま魔方陣があっただけで、あとは無我夢中だったので………ラモラックさん、改めてありがとうございました」

  「いいってことよマスター!」

 

 キャリスが頭を下げると、ラモラックはそのキャリスの頭をくしゃくしゃに撫でた。嫌がるキャリスを他所に、俺もキャスターに頭を下げた。

 

 「さっきはどうもありがとうございました」

  「ご丁寧にどうも。それより話を聞く限りだと、どうもあんたらはこの時代の本来の様子を知ってるんだな?」

 

 本来の様子?と首を傾げていると、所長が説明してくれた。

 

  「ラブラス(使い魔)による観測では2004年の冬木で特殊な魔術儀式…『聖杯戦争』が行われたと確認されているわ」

 「せ、聖杯戦争?」

  「聖杯戦争って言うのは7人のマスターがそれぞれサーヴァントを使って戦い、最後に残った人が聖杯……所有者の願いを叶える万能の力を手にするための戦争だよ。まあ、僕は興味ないけど」

 

 所長に代わって、シュミットが聖杯戦争について説明してくれた。何だか複雑な表情をしているのは何故だろう?

 それにも疑問を思いながら、キャスターの言葉に耳を傾けた。

 

  「だが、俺達の聖杯戦争はいつの間にか違うものにすり替わっていた。街は一夜で炎に覆われ、サーヴァントだけを残して人間は消え去った」

 

 するとキャリスがラモラックの元から抜け出して、キャスターに問いた。

 

  「ま、待って下さい!マスターがいないとサーヴァントも消えるんじゃ無いんですか!?」

  「そうなんだが……今の俺は別の何かにつなぎ止められているって感じだな。そんな仲、真っ先に聖杯戦争を再開したのがセイバーだ。奴さん、水を得た魚みてえに暴れだしてよ。次々とサーヴァントを倒して行きやがった。残ったのは俺だけだ。セイバーに倒されたサーヴァントは真っ黒い泥に汚染されて奴の手駒になった」

 「ってことは、さっきのランサーも……」

  「それだけじゃない。僕達が戦った髑髏の仮面を付けた奴も……元は聖杯戦争のサーヴァントだったってことかもしれない」

 

 それを考えると、まだ他にも敵がいるかもしれない。そう考えて恐ろしく思えて来る。隣にいたマシュがなるほど、と頷いて言った。

 

  「残ったサーヴァントはセイバーとキャスターさんだけ。では、キャスターさんがセイバーを倒せば……」

  「この街の聖杯戦争は終わるだろうよそのために動いていたんだが、戦力が足りなくてな……」

  「それならある意味僕達にとっても都合がいいですね。所長」

 

 話を聞いていたガーレンが所長を見て、所長は何かを察したかのように頷いた。

 

  「ええ。正常な時間軸から逸脱した特異点、そこで起きている狂った聖杯戦争……この特異点を終結させれば私達の任務達成にも不可欠な要素になるでしょうね」

  「それじゃあ決まりだな。共同戦線ってことで。よろしくなマスター達!」

 

 キャスターがニカッと笑うと、俺達もお互いに頷き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校のようなところでひとまず休憩していると、ふと俺はあることを思い出した。

 

 「………そういえば、まだ全員の名前把握してない」

  「「へ?」」

  「そ、そういえばそうです………私、まだお2人の名前を聞いていません!」

  「そういえば僕も聞いてなかったなぁ」

 

 俺の場に相応しくない発言に所長がずっこけかけたが、キャリス達もどうやら思い出したようにあーっ、と頷いていた。

 俺は一応全員の名前は聞いていたし、所長も所長の呼び方でいいとは思ったんだけど、他の皆はどうなんだろう?と思って口を出してみたら、案の定だった。特にキャリスとシュミットは面識が飛ばされた時で初めてだったはずだし、ガーレンと俺もドタバタして自己紹介していたとはいえ、忘れてたような気もする。

 

  「あのねぇ、今の状況でのんきに自己紹介してる場合で」

  「ねえ君、名前はなんて言うんだい?」

  「人の話聞きなさいよ!!」

 

 何だろう、今のわざとらしく所長の言葉を遮ったような気がするよ、シュミット。あのやってやったぜみたいな笑顔って絶対確信犯だよね?

 

 聞かれたキャリスは戸惑いながら、自己紹介した。

 

  「え、えっと、キャリス・K・ハーミットと言います。キャリスって呼んでください!」

  「顔は立香君と同じ東洋人だね。でも名字はイギリス系統とは珍しい」

  「それは多分、私がハーフだからだと思います。私はイギリスと日本の血筋が入っているので……」

  「なるほどなるほど、同じ魔術師なら何か得意分野とかあるかい?」

  「え、えっと、少しの結界術なら得意です。未熟なので、そう長くは保たないんですが……」

  「結界の使い手か。珍しい分野を学んでいるんだね。どっかの誰かさんとは大違い」

  「その誰かさんとは誰のことでしょう?」

 

 シュミットが含み笑いでちらりとガーレンを見て言うと、ガーレンは拳をぼきぼき鳴らせながら黒い笑みを浮かべていた。

 なんと言うか、この2人って案外仲が良いんだなぁ……と再確認した。

 

 冷や汗を若干流しながら、シュミットが切り出した。

 

  「つ、次は僕だね。僕はシュミット、シュミット・ヴェラータと言います。以後お見知り置きを」

  「ヴェラータ家は財閥としても有名だと聞いたことがあります。あと、一部のゲーム会社にも精通しているとか」

  「それは事実ね。彼、経済に力を入れているとも聞いているわ。また、魔力回路も並みではなく、魔術の方も若き天才とも言われている」

  「所長に知ってもらえて光栄です」

  「だからといってセクハラが許されると思わないでください」

 「あー………」

  「何だそりゃ」

 

 そういえばシュミットが作戦から外された理由ってセクハラ発言してたからなんだっけ……。

 微妙な空気が流れる中、ガーレンがコホン、と咳払いをして空気を変えるように言った。

 

  「私はガーレン、ガーレン・ブリーテンリッヒと言います。よろしくお願い致しますわキャリス!」

  「は、はい!こちらこそっ……ってあのブリーテンリッヒ家ですか!?うわっ、本物です!魔術師としてだけではなく、武道の達人とも聞いております!わあっ、本物です~!!私、憧れなんですよ!!ブリーテンリッヒ家の長女はとっても強く美しいと噂されていたので!」

  「い、いえ、それほどでもないですわよ……?」

 

 ブリーテンリッヒ家の名前が出た途端、キャリスがさっきまでのおどおどとした雰囲気を捨てて目を輝かせてガーレンに飛びついた。ガーレンは頬を赤く染めながら、それでもまんざらでも無い様子を浮かべる。

 

 「やっぱり魔術師で武道って凄いことなのか……」

  「魔術師で武道は邪道とされているんですが、同時にこなせるとなるとトップレベルの魔術師に近い存在なのです。私も同時に武道も魔術も扱える人はブリーテンリッヒ家以外に聞いた事がありません」

  「ほほう、あの嬢ちゃん見た目に寄らず魔術も得意なのか。そいつぁすげえ」

  「後で手合わせでも頼んで見るか?」

  「ぜひお願いします!!」

 

 ラモラックが呟くと、今度はガーレンが目を輝かせて言った。何だろう、さっきまでのおしとやか?な雰囲気が一気に吹っ飛んだような気がする。

 

 どうしたんだろう、と首を傾げているとシュミットがそういえば、と手を叩いて言った。

 

  「ガーレンの憧れは円卓の騎士なんだ。いつか騎士のような人物になりたいって騎士道精神を学び始めたくらい。確か中ではガウェインとランスロットが憧れって言ってたかな」

  「嬢ちゃん、悪いことは言わねえ。やめておけ、あの2人だけは絶対にやめておけ」

 

 何故か必死の形相でラモラックがガーレンの肩を掴んで止めた。ふとマシュの方を見ると何故か盾をぎしりと握りしめていた。

 

 「ま、マシュ?どうかした?」

  「何故でしょう、その言葉を聞くと胸騒ぎが起こると言うか、ラモラック卿に同調したくなります」

 「え、何で!?」

 

 

 

 

 するとピピッという音がどこからか聞こえて来た。手首の方を見ると、ドクターに渡された通信機のようなものから発せられたと分かる。キャリス達もそれぞれの手首につけている通信機を見た。

 

 と、突然薄い画面が現れ、そこに映し出されたのは………。

 

 

 「ど、ドクター!!?」

  『こちらカルデア管制室!ああやっと繋がったよ立香君!シュミット君も無事のようだね!!よ、良かったぁ……!!』

 

 管制室へ行く前で分かれたドクター・ロマンの顔が映し出されていた。その後ろではバタバタとカルデア職員らしき人達が動いている。

 

  「無事だったんですね、ドクター」

  『あのあと異常の会った地下の発電所に向かっていて、運良くね。皆、とにかくコフィンなしでよく意味消失に耐えてくれた。本当に良かったよ』

 

 すると話を聞いた所長が焦燥を浮かべて、俺の手首を掴み、通信機に呼びかけた。

 

  「ちょっとロマニ!なんで最初に出て来るのがあなたなの!?レフはどこ!?」

  『ぎゃああああああっ!!?しょ、所長!!?レイシフト適性もマスター適性も無かったのにあの状況の中よく無事で……』

  「いいから!レフを出しなさい!!」

 

 所長の言葉にドクターの表情はさっきとは違って暗くなった。

 

 

 

  『レフ教授は、管制室でレイシフトの指揮を取っていたでしょう?あの爆発の中心にいた以上は生存は絶望的だ』

 「「「「「…………!!!!」」」」」

 

 皆、その言葉を聞いて息をのんだ。更にドクターの言葉は続く。

 

  『現在生き残ったカルデアの生気スタッフはボクを入れて20人に満たない。ボクより上の階級の生存者がおらず、今はボクが作戦指揮を任されています』

  「じゃあ他の適性者達は!?」

  『44人全員が危篤状態です。医療器具も足りず、全員を助けることは……』

 

 そこまでドクターが続けると、所長が怒りの表情を浮かべて言った。

 

  「ふざけないで!すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、死なせないのが最優先よ!!」

  『し、至急手配します!おい、誰か……』

 

 ドクターが画面の向こうで何か命令する声が聞こえる。所長の方を見ると、親指を噛んで歯噛みしていた。

 

  「大体44人の命なんて、私に背負えるはずないじゃない……!」

 

 小さいけれど、とてつもなく苦しそうな声が、俺の耳に届いた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

  『なるほど、状況は理解しました。こちらはレイシフト設備の復旧を急ぎます。………それにしてもキャリス君、だったかな。最初っからサーヴァントを召喚出来るとは』

  「い、いえ、土壇場だったので、そ、そんな、まぐれですよ……」

  「マスター、いくらなんでも弱気すぎね?もうちょい自信持てよ!何せこのラモラックが応えたんだからな!!」

 

 ドクターの称賛に照れたキャリスを、ラモラックが励ますようにその肩を叩いた。

所長は気に入らなさそうな顔をするが、ふとシュミットとガーレンを見た。

 シュミットとガーレンはそれを見て首を傾げる。

 

  「………何ですか?所長」

  「私達の顔に、何か?」

  「……そうですね。マシュ、宝具を触媒にして召喚サークルを設置して」

  「分かりました」

 

 マシュが盾をかざしている間、ドクターが『なるほど!』と言った様子で所長に聞いた。

 

  『所長、もしかして2人にもサーヴァントを召喚させるんですね?』

  「そうよ。今現時点で私達の方に3体のサーヴァントがいます。だけど、特異点である以上、この先の状況次第では彼らだけで戦うのは不利。ましてやセイバーが残っている以上、油断は出来ません。よってシュミット、ガーレン、あなた達にもサーヴァントを召喚してもらいます」

 

 ああ、なるほど。戦力増強ってことなのかな?

 俺が納得していると、マシュが何か疑問に思ったのか所長に聞いた。

 

  「所長、それに関しては賛成ですが、懸念点が1つあります。魔力はどうするんですか?この先宝具の使用も考えると、立香先輩やキャリス先輩の魔力だけでは些か足りませんし、シュミット先輩とガーレン先輩にも魔力がそう無尽蔵にあるという訳ではありません」

 「宝具って何だ?」

  「サーヴァント達が持つ概念や武器のことよ。いわば必殺技とか、切り札みたいなものね。ほら、有名なアーサー王とかだとエクスカリバーがその宝具になるわ。だけど、宝具を使用するには契約者とサーヴァントの魔力を大量に消費するの。でも消費する魔力が多い程、その宝具は強化されるわ」

 「はー……」

 

 なるほど、とガーレンの説明を受けていると、ラモラックが丁寧に例を切り出してくれた。

 

  「例えば俺が乗って来た愛馬も宝具の一種に入るし、この槍だって宝具に入る。更に真名を解放することでその真の力を発揮するんだ。この槍も真名を解放したらすっげえ強くなるんだぜ?」

 「へえー……ラモラックって何でも知ってるんだな!」

  「いや、これサーヴァント共通だから」

  「坊主はちと魔術の方面に賢くないんだな」

 「う、うるさいなぁ!!」

 

 どうせ俺は魔術師じゃありませんよーだ!!

 ラモラックとキャスターの言葉に拗ねていると既に説明を終えたのか、シュミットとガーレンがいつの間にか出現していた魔方陣の前に立っていた。

 

 ふと、キャリスがシュミットとガーレンに聞いた。

 

  「あの、2人はどんなサーヴァントがいいんでしょうか?」

  「今の状況で最適なのは近距離系と奇襲要員……そうですね、セイバーかアサシンが最適でしょう。ライダーは槍の使い手ですし、真っ向から敵と戦うより場を乱す方に優れていそうです。それならセイバーがいれば強力な一撃を加えることが出来ますし、アサシンなら誰にも気づかれずに不意打ちをかけることが出来ると思います」

 

 シュミットの的確な言葉に、俺とキャリスは思わず感心してしまった。

 話に出て来たセイバーとかアサシンとかよく分からないけど、今は所長がいるし後でガーレンから聞こう。ともかくセイバーは白兵戦が得意で、アサシンは不意打ちが得意なんだな。覚えておこう。

 

  「そうですわね。戦略的に考えるのならおそらくセイバーかアサシンでしょう。ですが、アーチャーで遠距離を狙うのも有りですわね。……とはいえ、サーヴァントとマスターにも相性というのが存在します。とりあえず自分が今来てほしいと思う人物を思い浮かべてみますわね」

 「今来てほしい人物?」

  『サーヴァントは聖杯によって呼ばれるんだけど、召喚儀式を実行したマスターに相応しいサーヴァントが選出されるんだ。特定の英霊を指定したいなら触媒が必要となってくるんだけど、今はそれがないからね』

  「ええ、それでこれを使います」

 

 すると所長が懐から七色に輝く宝石のようなものを取り出し、シュミットとガーレンに渡した。

 

  「それは聖晶石と言うの。何が出て来るかは博打になるけど、触媒の代わりとしては最適なものだから、今後集めておいて損は無いと思うわ」

  「分かりました」

 

 石を受け取ったシュミットがまず魔方陣の前に立ち、詠唱を唱える。

 日本語の詠唱らしいが、呪文がいまいち長過ぎて俺じゃチンプンカンプンだ。というかよく唱えられるなぁと俺は思った。

 

 徐々に魔方陣の中心に光が集まって行き、人の形を成して行く。

 

 そこに現れたのは………。

 

 

 




久々に5000字突破したぜやったー!!とか言ってみる。中途半端に切ったのはまだ登場させるサーヴァント誰にするか決まってないんだ……。ごめんなさい。

ガーレンは決まったんです。ただシュミット、シュミットなぁ………。彼は某円卓の騎士の王様やってたマスターをイメージして作ってるから、どうも彼に似てしまう。
歴史に疎い私は彼に合う鯖を探してwikiやらぼくがかんがえたサーヴァントなどを参考にして探しています。ですが鯖はよく分からず。
なので多分次回は投稿が遅くなる、かも。何か意見などがありましたらどうぞ送って下さい。採用するかもしれませんし、今後の参考にもなります。


次回で英霊召喚を行い、その次で登場人物の紹介+サーヴァントのマトリクス解放になります。冬木が終わるのはいつ頃か………今年中に終わらせて第1特異点に入りたいところです。

ではまた次回!お楽しみにー!





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サーヴァント召喚

皆さんどうも、3周年イベントを楽しみにしつつガチャに恵まれないオレンです。今回は早め早めの投稿になります。タイピングが進んだおかげで約半月で終わったよやったね!!
気づけば石の欠片が10連分出来る程度には溜まっているのですが、なかなか使うタイミングが掴めません。そもそもそこまでガチャが傾いてないです。むしろ呼符使って☆3出るだけ・・・くっ!!
近況を報告しますと、もうすぐ期末試験だうばぁぁぁぁって感じになっています。胃がキリキリと痛むぜ!でもここで乗り越えれば私は自由だー!!と思いながらどうせ今年も夏休みはロクなことにならないんだろうなぁとか思っています。あと皆さん、熱中症には注意してくださいね。水分補給はこまめに!

今回はサーヴァント召喚、シュミット視点からになります。どう考えても予想外過ぎるサーヴァントが登場します。

では、どうぞ!


 サーヴァント。

 

 魔術師が召喚出来る使い魔としては、最上級の使い魔になる。何故ならその正体は神話や伝説の中で為した功績が信仰を生み、その信仰を持って人間霊である彼らを精霊の領域にまで押し上げた『英霊』なのだから。

 

 普通ならば人間が使役するには不可能な存在を、僕は今召喚しようとしている。

 

 もし、自分がサーヴァントが召喚出来たならば。聖杯戦争について調べていたら、自然とそう考えたことがある。

 

 

 七騎のクラスの中でセイバーかアサシンがいいと僕は言った。しかし、僕が呼び出してみたい英霊は特にいない。

 ただ、僕の指示に従ってくれるもの。それならば誰だって構わない。強固な信頼関係だけでなく、何よりも軍略と知識がなければ、この戦いから生きて帰ることは出来ない。

 

 

 「『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!』」

 

 最後の詠唱を終え、魔方陣が輝きだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔力が溢れ、光が形を為して行き、光が収まると立っていたのは1人の男だった。

 

 

 癖のある、銀色まじりの黒髪。

 曇りなき、青空のように澄んだ瞳。

 薄暗い空間の中で、彼の羽織る白いマントと銀色の鎧は自ら光るかのように輝いている。

 

 少年ではない、が僕やガーレンと近い年代の男だろうか。

 

 その腰にあるのは剣はヨーロッパで使われている儀礼剣のような形をしている。

 

 

 その武器を見て確信した。おそらく彼は『セイバー』だ、と。

 

 セイバーは高らかに、叫ぶ。

 

  「サーヴァント・セイバー、真名はシャルルマーニュ!あんたが俺のマスターか?」

 

 見た目に反さず、予想通りと言うべきか明朗快活な性格だった。

 

 シャルルマーニュと言えば、有名なのはフフランスの皇帝『カール大帝』だろう。フランス語でシャルルマーニュとも呼ばれたカール大帝は死去するまで単独の国王として長く君臨し、領土を広げたと言われている。

 その全盛期が、まだ青年だった彼なのだろうか。

 

 ともかくセイバーである上に、元皇帝なら心強い。

 

 「そう、僕が君のマスターだ」

  「そっか!契約成立だな!!」

 

 契約が完了したことを確認すると、様子を見守っていたドクターとガーレンが興奮したように説明し始めた。

 

  『シャルルマーニュ……フランスに全盛期とも言える黄金時代を呼び寄せたカール大帝の別の呼び名だよ!!それをセイバーで召喚するなんて、凄いじゃないか!!』

  「ええ。あのカール大帝とお会い出来るなんて感激ですわ!あれ、でも何故シャルルなんですの?」

  「えーっと、俺の全盛期は騎士だった頃みたいなんだ。この状態なら思う存分力を振るえるからとか・・・よく分かんねえけどさ!」

  「わ、分からないのですか!?」

 

 どうやら彼は楽観的な性格のようだ。ラモラックに近い感じだが、彼には明朗快活という言葉が似合う。

 僕はセイバーに近づき、彼に右手を差し伸べた。

 

 「僕はシュミット、君のマスターの名前だ。マスターでもシュミットでもどちらでもいいよ、セイバー」

  「ああ。よろしくな、マスター!」

 

 セイバーは僕の手を握り返して来た。これでひとまず僕の方はいいだろう。

 改めて僕は右手を見て、令呪が宿ってあることを確認する。僕の令呪は何かの植物か、花と葉を象った令呪のようだった。立香君やキャリス君の令呪とも違う形だし、やはりこういうところで違いが出て来るんだな、と思った。

 そして、僕はガーレンの方に目を向けた。

 

 「次は君だよ、ガーレン」

  「え、ええ!」

 

 ガーレンが僕と交代して、魔方陣の前に立つとセイバーが辺りを見回して首を傾げた。

 

  「あれ、そういえばここどこなんだ?なんかすっげえ嫌な匂いがするんだけど、なんでだ?」

  「あの、今の状況が理解出来ていないのですか?」

  「いやさあ、それが曖昧なんだよなぁ。なんというか、記憶っていうかデータって言うの?が煙がかってるみたいにぼやけててさ」

  「もしかしたら特異点の影響で召喚の際に、何らかの異変が起こっていたかもしれないわね。まあいいわ。ガーレン、あなたのサーヴァントを召喚して頂戴。あなたのサーヴァントも同じような状況になっていたらまとめて説明した方が早いもの」

  「分かりました」

 

 ガーレンが所長の言葉に頷くと、同じく詠唱をし始めた。

 立香がその間にシャルルの方をまじまじと見ているのに僕は気づき、話しかける。

 

 「どうかしたのかい?立香君」

  「いや……こう、なんかラモラックに似た雰囲気だなぁって思って」

  「ラモラックって………え、あんたラモラック卿なのか!?あの円卓の騎士の!?」

  「おう、そうだが?」

  「うっわーっ、本物だ!本物の円卓の騎士だ!!えっとサイン!サインをくれ!!」

  「は!?」

 

 『ラモラック』という名前を聞いてセイバーがはしゃぎだした。そんなに珍しいのだろうか?と思ったが、確かアーサー王伝説の大分後になってカール大帝の歴史が現れたのだから実際に会えて嬉しいのかもしれない、と考え直した。

 だけど、ああやってセイバーがラモラックに構っているのを見るとあれだ、兄弟に見えてくるな。出身地違うけど………。

 

  「あ、あの、皆さん!もうすぐガーレンさんの詠唱が終わりますよ!」

 

 マシュのかけ声で、僕達はガーレンを見る。魔方陣が光を増し、その姿を象って行く。

 

 

 瞬間、召喚陣の周りに金色の光が漂い、小さいながらも静電気が発生し始めた。さっきはなかった現象にキャリスと立香が慌てだす。

 

  「え、あ、あれ!?なんかおかしくなってない!?」

  「故障ですか!?」

  『いや、違う。多分これは……!』

 

 ドクターが何か言いかけたところで、光が止みその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立っていたのは黒いローブを纏い、フードを深く被った人。

女性らしい体型をしているから、多分女性なんだろう。ただ、深く隠せてないのか、前髪のくせ毛が飛び跳ねている。

 片手に魔導書らしき本を持っている。

 

 ただ、セイバーやラモラックとは違う、不思議な雰囲気を持つ彼女に僕は不信感を覚えた。

 なんというか、ただただ信用してはならない。そんな感じだ。

 

 女性は本を持っていない手でフードを外し、その素顔を現した。額に赤色の宝石をつけ、澄んだ青色の瞳を持った丹精の顔が露になる。

 そして、彼女はその口を開いた。

 

 

 

 

 

  「モーガン・ル・フェイ・オルタ。クラスはキャスター、どうかあなたの力になれるよう尽力しますわね」

 

 

 

 

 

 

 にっこりと微笑んだ彼女を見て、僕達は愕然とした。

 

 告げられた名前、モーガン・ル・フェイと言えばラモラックと同じ『アーサー王伝説』に出て来る魔女で、叛逆の騎士モードレッドの母親だといい、国家の転覆を謀ったと言う悪質な女性だ。

 

 そんな女性が英霊?反英霊の間違いじゃないのか?

 

 

 最も素早く我に帰ったのは、彼女と同郷だというラモラックだった。この時の彼の顔は何だか漫画でよくある目が飛び出しそうな顔をしていた。

 

  「え、ちょっ……はあ!!?あんたモルガン!?モルガンなのか!!?」

  「あら、ラモラック卿。あなたも召喚されていたのね」

  「誰だあんた!?モルガンはもっと陰湿な笑顔をしてくるぞ!!っていうかあんた王に似てない!!?」

  「陰湿ってどういう意味か説明してくれるかしらラモラック」

 

 ぎゃーぎゃーと騒ぎだす2人を見て、ガーレンが口元を引きつらせてこっちを見て来た。僕は肩をすくめ、キャリス君があわわわわとさっきよりも尋常じゃない程に慌てている。

 所長ははあぁぁぁ、と深いため息をつく中、立香君だけは首を傾げた。

 

  「………モーガンってアーサー王伝説の人だよね?何で皆そんなに慌てているの?」

 「立香君、君はモーガンがどれだけ悪質な女性か知ってて言ってるのかい?」

  「………えーっと、さあ?」

 

 とぼけているとも思えない立香君の反応に思わず脱力してしまった。しかも画面越しでドクターも一緒に。

 所長はジト見で立香君を睨みつけて、呟いた。

 

 

  「……あなた、少しは歴史を勉強したらどうなのよ」

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くしてようやくラモラックも僕達も落ち着きを取り戻し、マシュが早速という感じでモーガンに疑問を投げた。

 

  「あの、あなたは英霊なんですよね?ラモラック卿と同郷の……」

  「ええ。同じブリテン王国の出よ」

  「なのにオルタってどういうことかしら?」

 

 所長が聞くと、立香君が首を傾げてこちらに疑問の目線を投げかけて来たので僕は補足も含めて説明する。

 

 「オルタ化って言うのは、まだ諸説でしか知らないのだけど、何らかの理由で反転状態になっているサーヴァントのことだよ。サーヴァントの別側面、もう1つの可能性みたいなものって言った方がいいかな」

  「聖杯を守っているセイバーも何らかの影響を受けてオルタ化しちまってる。あいつが良い例だろうよ。オルタ化しちまうと、善良だった部分が非情になっちまうってことだ」

  「それじゃあ彼女もそういうことなのか?」

 

 立香君にそう聞かれて、僕は唸る。正直何とも言えない。

 そもそもサーヴァントの召喚自体今回が初めてで、オルタ化は実際見たことがないし、善良な英霊から非情な英霊へという事例は理論としては成り立っているものの、その逆は聞いたことが無いからだ。

 

 唸っている僕らを見て、モーガンがクスリと笑って立香君に近づく。

 

  「あなたはいい質問をするのね。お名前は?」

  「え、えっと、藤丸立香、です!」

  「東洋名なの。ちょっと変わった瞳をしているのね。……オルタ化というのは様々な事情で反転してしまうの。それは善であれ、悪であれ同じこと。私はどちらかというとケルト人のドルイド信仰や湖の乙女とか、そういった妖精の側面が強い方なのよ」

  「………あんたが、妖精?」

  「……ないわー」

  「そこの2人、喧しいわよ」

 

 ラモラックとキャスターがこそこそとモーガンを見ながら陰口を叩いているのを聞いていたのか、モーガンが魔導書を2人に向けて怪しい笑みを見せる。2人はそれを見て、貝のように口を閉じてしまった。

 セイバーはふーん、と腕を頭の後ろで組んで、頷いて呟いた。

 

  「そんじゃ、あんたは良い英霊ってことでいいのか?」

  「そう!今回は何だか特別な事例みたいだし、後方支援ながら頑張らせてもらうからタイタニック号に乗ったつもりでいてちょうだいな!」

  「それは尚更安心出来ません!?」

 

 キャリス君のツッコミに僕と所長がうんうんと頷いた。

 タイタニック号って最終的に沈没した船の名前だよね?それに乗ったつもりでってことはいつか沈むって言いたいのかな?それ安心出来る要素何1つないよ?

 

 すると今まで黙っていたガーレンが右手を彼女に差し出す。

 

  「あの、今後ともよろしくお願いします。モーガン」

  「………」

 

 何故かそれを見てモーガンが固まってしまった。皆が疑問符を浮かべていると、モーガンが手で目を覆い隠すように泣き始めた。……いや、嘘泣きに聞こえて来るけど。

 

  「うぅっ、ここまで健気なマスターは私にとっても嬉しい限りだわ。ええ、よろしくねマスター!」

  「え?え?」

  「……なんだろう、胡散臭さが増したような気がするわ」

 「奇遇ですね所長。僕もです」

 

 この先ガーレンがあのサーヴァントといて大丈夫だろうか……と先が不安になり、僕は思わずため息をついた。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、立香君が肩を叩いてきた。

 

  「ま、まあ、大丈夫だよ!何とかなるさ!!」

 「君はもう少し歴史と魔術を勉強しようか」

  「うぐっ」

  「しゅ、シュミット先輩、立香先輩を虐めないでください!」

  「虐めてるつもりはないから!?」

 

 何だか盛大な誤解をしてるけどそんなつもりはないよマシュ君!!皮肉を言っただけさ!!

 

  「なんつーか、バラエティにとんだ戦力になってきたな」

  「だ、大丈夫でしょうか……」

  「俺はモーガンがまーた変なことしないか不安だぜ……」

 

 皆それぞれがコメントを流す中、画面越しで見守っていたドクターがコホン、と咳払いをして話を切り出した。

 

  『と、ともかく!これで皆のサーヴァントは揃った様だね。それじゃあ改めて状況を説明すると』

 

 

 

 

 

 

 瞬間、何かの魔力が急速に近づくのを感じた。それはサーヴァント達も同じらしく、キャスターが所長を、マシュが立香君を、そして各々のサーヴァント達がそれぞれのマスターを抱きかかえ、窓から教室を飛び出した。

 

  「うわあああっ!!?」

  「きゃああああああっ!!!」

  「きゃあっ!!」

 

 立香君達が悲鳴を上げる中、さっきまでいた教室が突然爆発したのだ。

 これはまさか、とセイバーに向けるとセイバーは頷いた。

 

  「どうやら遠距離から敵襲みたいだぜ、マスター!!!」

 「ああ、どうやらそうらしいね!」

 

 遠距離、ということはアーチャーだろうか。そう思いながら、撃って来たであろう方向を僕は睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その先にいた弓を携えた男は住宅の屋根から飛び降りた。

 

 

 

 

 




という訳でシュミットのパートナーにシャルルマーニュ、ガーレンのパートナーにモーガンが来ました!
シャルルを選んだ理由としては前衛として誰か必要だったのに、歴史が疎い私にはピンと来るものがなく、結局シャルル君になりました。エクステラリンクでのシャルル君格好良過ぎです(動画でしか見ていないけど)騎士とか忍びとか従者系サーヴァントって誰だろうと考えたけど全然思い浮かばなかったです。でも書いてみたら案外面白そうなコンビになりました。

モーガンは実を言えば当初から決まっていました。第6章では大幅に修羅場を与えるつもりなので、更に(円卓の騎士に)追い打ちをかけるためにモーガンを登場させています。どっちかって言えばモーガンは『マジックツリーハウス』という本のモーガンをイメージ(むしろそっちの方が強い)して書いているので、茶目っ気のある魔女みたいな感じになっているんですよね……。今後実装されることを考えたら間違いなく反英霊(悪・混沌属性)になるので、それを考えると妖精や巫女の側面が出たオルタ化になるかなあと……。万が一出たらモーガンは英霊のオルタ化と考えておいてください。『モルガン』ではなく『モーガン』なのはあえて差別化を図っているからです。(昔私は『モードレッド』のことを『モルドレッド』と呼んでいました)

オルタ化(というより黒化?)の概念に関しては完全に捏造です。皆オルタ化する可能性があるんだったら当然悪属性にもあるよね!みたいなノリで書いています。FGOもあまり詳しいとは言えないので、そもそも魔術師達に黒化について知れ渡ってるのかなぁと考えたけど、ここでは理論上ではあり得るけど実例はないということにしておきました。その方が自然のような気がする。


完全にオリジナル感が出ていますが、二次創作だしこんな感じでいいですよね!ちなみに立香君が度々空気になるのはご愛嬌。
とりあえずこれで主役メンバーは揃いました。これで好きなときに番外編が書けます。特に今後出るイベントによってはギャグ満載(の予定)の番外編が書けそうです。
次回は登場人物のマトリクスかあの弓兵とのバトルを予定しています。前者の方が確率は高いんですが………。メモ代わりになって書きやすいですし。



では、次回もお楽しみに!


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登場人物紹介


FGO3周年おめでとう!と夏イベやらが近づく中、ついに課金を促す夢を見たオレンです。確かに課金しなきゃ欲しいサーヴァントもテイルズの魔鏡も手に入らない・・・しかし、私は無課金(福袋引いてる時点で無課金ではない)を貫くと決めたんだ・・・!!

それはそうと最近シグルドかワルキューレ引くために30連したんですが、爆死しました。・・・うぅ、シグルドとワルキューレが尊いのに出せなかった・・・・!!!あとメモリアルイベント鬼畜過ぎやしませんか。あの亜種特異点3の悪夢が再び。

今回は前回も言った通り登場人物紹介になります。ラモラックとモーガンに関しては『ぼくのかんがえたサーヴァント』より拝借しています。場合によっては変更がある・・・かもしれません。大まかに決めただけで実はあんまり考えていません。特にモーガン、物語上仕方ないとはいえ悪役のイメージしかないって一体。


では、どうぞ!




 

 

主要登場人物

 

藤丸立香(男)

 

人理修復機関『カルデア』の遺されたマスターの1人。一般枠として入ったため、魔術師としては未熟な部分が多く、また歴史にも疎い。17歳で、カルデアへ来たのもバイト感覚のつもり(なのだが、何者かによって拉致されたのが本当の理由)童顔や低身長なだけあって周りのサーヴァントによくいじられてしまう不遇さを持っている。マシュ大好き。4人の中で人を無意識に惹き付ける力と、頑固さが強み。あんまり褒められたものではないのは自覚してるけど、それでも皆の役に立とうと必死に頑張る。、決して物覚えは悪い方ではない、らしい。でも普通の人間の感覚なので殺し合いはあまり見たくないのが本音。

シュミットのことは唯一の同性マスターなので気が合う友達。ただしいじられる。キャリスは同じ苦労人仲間で、暇があればサーヴァントについてよく相談し合う。ガーレンのことはちょっと無茶をするけど頼りになる先輩と言う認識。

彼のパートナーとも言えるマシュは先輩後輩の仲だが、互いに信頼し合えるパートナーだと思っている。マシュに対して過保護とも言える態度を取るのは大切な後輩だから。

 

 

 

キャリス・久留美・ハーミット

 

没落した魔術師の家系ハーミット家の長女で、時計塔でも鬱陶しがられている気弱な少女。立香と同じ17歳。日本人とイギリス人のハーフでもあることから周りに嫌われて来たらしい。元より今回のカルデアでの選抜も親が勝手に決めたもので、本人の意志はなかったという。強みは『巫女』としての力を利用した札の魔術。本人曰く『強いて言うなら妖術』らしい。結界などを張ることを得意としている。

立香とは同じ日本人の血が入っている者同士何か通じるものがあうのか仲が良いものの、シュミットから隙あらばからかわれているため苦手としている。反面、常に強気で頼り甲斐のあるガーレンには尊敬の目を向けている。

最初に来たサーヴァントのラモラックからはやはりいろいろといじられている。でもいざとなったら力になってくれたり、相談に乗ってくれたりと頼りがいのある兄貴だと思ってる。

 

 

 

シュミット・ヴェラータ

 

名門のヴェラータ家の長男。天才の名を有しており、遠坂凛に近い頭脳と力量を持ち、その上魔力回路も並みではないためマスター候補としては優秀な部類に入るらしい。19歳で、時計塔に通っている。今回の選抜では本人のカルデアへの興味のためである。純粋な現実的主義者で、現実的思考をすることが多い。強みは4人のマスターの中でも幅広い範囲での知識を有し、尚かつ軍略にも長けているところ。あと攻撃系の魔術も得意としている。

ガーレンは時計塔での同年代の旧友。2人を揃えれば怖いもの無しと周りに言われており、シュミットは彼女に片思いしているがうっとうしがられているのが現状。キャリスは揶揄い甲斐のある少女と認識しており、立香は不思議な魅力を持つ少年だなと興味を持っている。ただし彼をマシュ関連でいじるのは面白い。

最初に来たサーヴァントのシャルルマーニュに関して疑問に思っている部分が多く、召喚されるとしたらカール大帝の方だと思っていた。とはいえ、カッコイイ云々の話を除けば彼は頼りになるサーヴァントだと考えている。

 

 

 

 

ガーレン・ブリーテンリッヒ(女) 

 

ブリーテンリッヒ家の長女で、若き女魔術師。多くの騎士道物語に憧れており、自らも騎士のようになりたいと志している。ぶっちゃけ魔術よりも剣術が得意。19歳で、シュミットとは同年代。カルデアへの選抜ではキャリスと同じく親族の希望によって送り出されていた。天然な性格が混じっているが、どのような戦況でも屈しない心強さを持つ。強みは魔術で身体強化させ、剣を取って戦う。その力量はサーヴァントと同等と戦える力を持っているため、時々サーヴァント達と鍛錬する様子が見られる。

立香のことは不思議な雰囲気を持つ少年で、一般人だからか守るべき存在。キャリスは唯一の同性なので面倒見が良い。シュミットは同年代であり、同じく栄誉ある魔術師の家系の出だと考えており、同じ時計塔の友人として接している。ちょっと苦手意識はあるが。

最初に来たサーヴァントのモーガンにはちょっと不思議な部分が多いなとか思っているけど、いろんなことを教えてくれるので安心する。ただ、イタズラや過度な干渉はやめた方がいいのではと考えている。ラモラックに関しては予想外な性格だった。(しかし、彼女はまだ知らない、円卓の闇がどれだけ深いか…)

 

 

 

 

マシュ・キリエライト(女)

 

 

エクストラクラス『シールダー』のサーヴァントにして、デミ・サーヴァント。真面目で純粋、天然なところもあるが、立香を『先輩』と呼んで慕っている。元々カルデアの局員だったが、爆発で巻き込まれたものの爆発で消滅しかけていたサーヴァントと取引を交したことでデミ・サーヴァントとなった。

マスター達には基本先輩呼び。立香には「敵意も脅威も感じなかった」と信頼を寄せ、シールダーとなってからもそれは変わらない。キャリスやガーレンとは同じ女の子同士気が合う部分も多いらしく、女子会を一緒にするほど。シュミットは常に立香をからかっているから警戒心があるものの、マスターとしては彼が一番だと考えているようだ。

何故だか最初に会った時からモーガンのことは融合しているサーヴァントのせいかいい印象を持ってはいない。ラモラックの件に関しては尊敬している騎士の1人であるものの、この人の頭大丈夫?と何故か考えている。シャルルマーニュには頼りになる人だろうとは思っている。

 

 

 

 

 

 

 

パートナーサーヴァント

 

ラモラック

 

ライダーのサーヴァント。マスターはキャリス。円卓の騎士の中では戦闘狂で、馬上戦を得意としている。事実伝説に置いてもラモラックの戦歴や勝利の大部分が騎馬戦によるものであり、馬上戦で、大怪我を負わせたのはアーサー王ぐらいだった。しかしその死因は悲惨で、ガへリス達によって暗殺されるというもの。その最後はガへリス卿を中心としたガウェイン達兄弟によって疲労していたところを襲撃され、暗殺される。ランスロットやトリスタンに次ぐ、第三の騎士とも呼ばれていた。

激情家。頻繁に他人と争いを起こすことから円卓のトラブルメーカーとも言われている。喧嘩っ早い性格で短気と欠点が目立つような性格だが、ブラックな事情を持つ円卓の中では親しみやすい方だったらしい。どっかの兄貴と似たような感じだけど、年齢層的に低めの年齢をイメージ。モーガンとはかつて愛し合った仲と言われているが、単純に仲が良かっただけ。だが、他の人から誤解を受けている。また、トリスタンとは良き仲であったらしく、彼の相談事には乗ってやったとかいう話もある・・・らしい。

マスターキャリスは妹のような存在で、守ってあげたくなる存在らしい。でも、戦闘狂なので時々マスターを無視して敵を片付けて行くこともよくあるため、キャリスもしょっちゅう困り果てている。

 

 

属性:中立・中庸

 

 

ステータス

 

筋力 A

耐久 C

敏捷 A+

魔力 D

幸運 C

宝具 B

 

 

クラス別スキル

 

対魔力 D

 

騎乗 B

 

 

固有スキル

戦闘続行 B

 

 

勇猛 A

 

 

 

宝具

 

円卓の速き巨槍(メタルナイト・ラモラック)

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:3~40

円卓の騎士の中でも馬上最強と謳われたラモラックを象徴する馬を含む騎馬戦用の完全武装一式。

銀色の巨大な無いトランスと紅い大盾、銀色の重装甲冑、そして馬鎧で完全武装された軍馬。

この完全武装状態から繰り出される駿馬の突進と槍の突きは敵軍の猛攻をはねとばしながら進み、いかなる敵をも寄せ付けないと言われている。

 

 

 

激怒する赤盾の騎士(ヒート・ナイツ)

ランク:B

ラモラックのシンボルとも呼べる紅の盾に怒りの力。激情家であるラモラックは自身が激昂している間だけ全ての能力値が瞬間的に売価した状態になる。また、馬上にいる状態でこの宝具が発動すると全能力値が三倍になる。

怒りによって強化されるため、当然熱が冷めると効果は消失する。

 

 

 

 

 

シャルルマーニュ

 

セイバーのサーヴァント。マスターはシュミット。シャルルマーニュ十二勇士の盟主であり、ローラン、オリヴィエ、アストルフォなどが仲間にいたという。別の名で『カール大帝』と呼ばれていたらしいが、その英名とは裏腹に、口調は王であったとは思えない程フランクでぶっきらぼう。本人はカール大帝の名で呼ばれたくないらしく、王であった頃の話題も避けているらしいが…?

行動と美的基準を「かっこいいかどうか」「ダサいかどうか」におき、自身やマスターに取って不利であっても気にしないという若干問題のある性格をしている。他のあらゆるサーヴァント達に敬意を払っている様子が見られ、ラモラックのことも時々であるが卿づけで呼んでいる。モーガンのことは本来の歴史とは違うため、それほど抵抗が無い様子。周りからは『シャルル』と呼ぶよう頼んでいる。

シュミットに対しては「王様みたいにカッコイイ主」と思って慕っており、また信頼している。今のところ他の2騎のサーヴァントと比べてそれ以外の感情はないらしいが、正常なマスターとサーヴァントという関係ではこの2人が一番近いだろう。

 

属性:善・秩序

 

ステータス

 

筋力 A

耐久 C

敏捷 B

魔力 A

幸運 A

宝具 A+

 

 

クラススキル

 

対魔力:A

騎乗:A

 

 

保有スキル

 

聖騎士帝:EX

 

魔力放出(光):A

 

王道踏破:C

 

 

宝具

 

王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣(ジュワユーズ・オルドル)

史書や年代記には登場せず、武勲詩などで語られる名剣。武勲詩『ローランの歌』にも登場している。また柄の中には聖遺物として聖槍ロンギヌスの穂先が収められていると言う。名前はフランス語で「陽気、楽しい」の意味。

真名解放の際には聖剣・ジュワユーズが十二勇士の持つ武器それぞれに変化、連撃を放つ。

 

我が儚き栄光(シャルル・パトリキウス)

彼が保有する空中要塞の名。詳細は不明。

 

 

 

 

 

 

モーガン・ル・フェイ・オルタ

 

キャスターのサーヴァント。マスターはガーレン。伝承通りなら『妖女』や『魔女』というアーサー王伝説上の悪女として挙げられてもおかしくはないのだが、彼女はオルタ。本来なら更に悪い性格をしているはずなのだが、本人の属性はなんと『善・混沌』というオルタ化の定義は何なのかと問いたくなる程変わり果てている。

それでも生前の因縁からか、円卓の騎士勢を筆頭にいろんな人からかなり煙たがられているのでよくガーレンに慰めてもらっている(自業自得だが)本人もかなりのことがなければ関わらないようにはしているが、ガーレンがアーサー王伝説に憧れを抱いているため、嫌でも接触してる模様。

通称『モーガン』ちょっと面倒見がいいように見えて、実は確信犯。どうやら彼女はケルト人に伝わるドルイドの信仰や湖の乙女、妖精などの側面が強く、良き性格になったらしいが、イタズラ好きであることに変わりは無いようだ。シェイクスピアと共同で何かやらかしそう。マーリンはライバル。Fate軸にも『モルガン』が既に存在するため、こちらでは『モーガン』とする。後方支援を得意としており、直接表に出るよりも援護を得意としている。

ガーレンのことはどうやら特別な感情があるらしく、大分可愛がっている様子。いざとなったらガーレンのために何でも頑張る!という気になるらしい。本人はそれを疑問に思っているらしいが、果たして彼女には何があるというのか。

 

 

属性:善・混沌

 

ステータス

 

筋力 E

耐久 E

敏捷 B

魔力 EX

幸運 B

宝具 A

 

クラス別スキル

 

 

陣地作成:A

 

 

道具作成:A

 

 

固有スキル

 

妖精文字:A+

人ならざるものであり、世界の触媒たる妖精との意思疎通。呪文・魔力回路を介さず直接世界に干渉し、魔術以上の奇跡を体現する。

 

 

 

 

宝具

 

全て追想なりし理想郷(クイーン・オブ・アヴァロン)

 

キャスターがアルトリアに捧げるはずだった王者の外套。理想郷の名を冠したもう1つの宝具。この外套で完全に身を覆っている間、装備車の外界との繋がりを全て遮断され、文字通りこの世界から完全に姿を消すことが可能。その間は他者に一切干渉されることが無い代わり、外界に一切干渉出来ない。そして一度身に付ければ持ち主であるキャスター以外は取り外しが出来ないと言ういわば究極の監獄とも言える。

 

 

 

 






・・・ひとまずこんなところでしょうか。オリ鯖を書いている人は想像力が凄まじいと改めて尊敬します。私では知識を借りるのに精一杯です・・・・。

実はここだけの話、ワルキューレを出してもいいかなと考えていました・・・いえ、考えていた時期がありました。まさか本編で実装される日が来るとは・・・・もしや円卓の実装もあり得るということか!!?



とりあえず今月中に出せて良かったです。と、同時にもしかしたら更新が遅くなるかもしれません。咳がここ2週間ぐらい続いててしんどい。
皆さん熱中症もしくは風邪には本当に気をつけてください。私は病院にでも行ってこようかなと考えています。


では皆さん、次回もお楽しみに!



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vsアーチャー


皆さんどうも、夏バテから無事帰還してきましたオレンです。今年は大雨が酷かったり、なのに気温が猛暑日を越えたりとか死にそうな季節が続きますね……!エアコンがある人はエアコンを必ずつけること、無い人はある施設へ避難しましょう。夜中でも油断はしないようにしてください!

FGOの夏イベントは、爽快ですね!主に男性の水着姿が追加が楽しかったです!同人誌とか言っててネタとしてやりたくなった。ぜひ来年は男性鯖の実装も……。
テイルズの方ではなんとコラボが開始されましたね。知ってる奴があると尚更嬉しくなります。しかも相変わらず豪華で何より。

話を戻しまして、今回はあの襲撃者との対決からです。戦闘描写が相変わらず下手過ぎて………。あと弓兵が弓兵やってません。もうあいつはセイバーでいいんじゃないかと常々思います。

今回はガーレン視点から。では、どうぞ!




 

 

 

 「今の攻撃は……!」

 

 私は地上に降ろされた後、先ほど爆発が起こった学校の方に目を向けた。他の皆さんもそれぞれサーヴァントに降ろされた後、学校の方に目を向けている。

 キャスターは杖を出して、空を睨みつけていた。

 

 

 すると、向いていた先から何かが流星の如く飛来して来るのが見えた。咄嗟にマシュが私達の前に立って盾を構え、それを弾き飛ばした。

 

 その正体は白と黒、二対の短剣のようなものを構えた白髪の男……サーヴァントだった。

 

  「珍しく表に出て来たな、セイバーの側にいなくていいのかい?信奉者さんよぉ」

 

 キャスターがそう言いながら、持っている杖をサーヴァントに向ける。サーヴァントは私達を睨みつけて皮肉げに言った。

 

  「信奉者になった覚えはないがね。だが、、つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

  「しつこい男は嫌われるぞ!セイバー、迎撃を!」

  「あいよ!!」

 

 シュミットが素早くセイバーに指示を出し、セイバーはそれに答えようと剣を引き抜いてサーヴァントに飛びかかった。

 私も懐からしまっていた剣を抜いて、モーガンに指示を出す。

 

 「モーガン、セイバーを援護してください!」

  「分かってます!」

 

 モーガンが聞き取れないほど小さな声で何か詠唱を始めると、周りに炎が浮かびそれらが全て白髪のサーヴァントに飛んで行く。

 サーヴァントはセイバーの剣を受け流し、続いて放たれたモーガンの炎を全て斬り捨てた。

 

 使い慣れた剣捌き………まさか、彼はセイバーですの?

 

 「あれは、セイバーですの?キャスター」

  「いや、クラスはアーチャーだ」

  「え?ですが、アーチャーは弓とかを使うのでは?」

  「うん、俺もそう思った」

 

 キャリスと立香が首を傾げているのを見て、聞いていた私も苦笑を禁じえなかった。

 

 確かにアーチャーと聞くと弓兵、という印象が強いのかもしれない。そうじゃなくても遠距離が専門だと思うだろう。だけど中には剣を使うアーチャーもいる………という噂。実際に見るのは初めてだけど、本当にいるとは思わなかったのが本音だったりする。

 

 それはともかく。

 

 「シュミット、ここは私達で止めますわよ。立香、キャリス!あなた達は先へいってくださいな!」

  「えぇっ!!?」

  「そ、そんな、ですがシュミットさんとガーレンさんは!?」

  「僕達なら大丈夫。君達は先にいってくれ!特異点の元凶がどこかにいるはずだ!」

 

 私とシュミットで2人に呼びかけ、更に私は呆然としている所長に声をかける。

 

 「所長、私達のことはお気になさらず!所長は特異点Fの元凶の特定をお願い致します!」

  「……!………分かりました。2人とも、素早くそのサーヴァントを倒して合流しなさい。いいですね?」

 「「了解!」」

  「行くわよ、藤丸、ハーミット」

 

 所長が苦々しげにこっちを見てから、走り出す。立香は「絶対に無事でいろよ!」と声をかけてくれ、キャリスも「また後で会いましょう!」と言ってから所長の後を追って行った。マシュやキャスターも後にするけど、ただ1人、ラモラックだけが援護に集中しているモーガンに声をかけていくのが見えた。

 

  「モーガン」

  「何かしら」

  「……出来るだけ遅くに来い。その間に奴は片付ける」

  「ええ、その前に私達が先にアーチャーを倒すわ」

 

 何やら言葉を交わしてからラモラックは凄まじいスピードでその場を立ち去った。さっきの会話の意味が凄く気になるところだけど、今は目の前のアーチャーに集中することにする。

 

 アーチャーはご丁寧にも大人しく待っていてくれたらしい。

 

  「別れの挨拶は済ませたかね?」

  「はっ、ジョーダン!仲間を庇って残るって何かかっけぇだろ!」

  「シャルル、気をつけなさい。相手はそれなりの手慣れよ」

  「わーってるっての」

 「シュミット、準備はできていますわね?」

  「ああ!いくよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

  「所長、本当に2人を残して来て大丈夫なのでしょうか………!?」

  「正直不安しか残らないわ。でも、あなた達に比べてあの2人は時計塔でも実力者。そう簡単に死なない……と思いたいわ」

 

 マシュの言葉に、所長が不安そうに返答する。

 確かに、あの爆発の威力からしてもサーヴァントの力は強大だ。でも、今は信じるしかない……あの場に残っても、足手まといなのは俺達、なんだろう。

 

  「だ、大丈夫でしょうか……死んだり、しませんよね………」

  「え、縁起でもないことをいわないでちょうだい!」

 

 キャリスが涙目になって走りながら言うその言葉に、所長は怒鳴って黙らせる。するとラモラックが走りながら、2人の頭をこづいた。

 

  「ま、あのモーガンがいるんだ。それにあの2人は魔力を多く持ってる。それなりの実力はあるし、大丈夫だろう」

  「随分とモーガンさんを信頼していらっしゃるんですね、ラモラック卿」

  「そりゃあな。やるときゃやる。……まあ、遅めに来るようにはいっといたから大丈夫だろうけどさ」

 「え、なんでだ?」

 

 ラモラックの言葉に俺達が首を傾げるが、ラモラックはその言葉を無視して話題を切り替えるかのようにキャスターに声をかけた。

 

  「キャスター、まずどこへ向かえばいい?この特異点って奴の元凶がどっかにいるんだろ?」

  「ああ、ついてきな。アーチャーをあの2人が抑えてくれてるなら、今奴を討つにはうってつけってことになる」

 「元凶?」

  「この特異点を造り出した何らかの原因を造り出した黒幕がいるということです。その黒幕を討てば、この特異点は崩壊し、元の時代へ帰れると考えられます」

 

 なるほど、つまり黒幕を早いところ討てばいいってことか!

 

 俺が頷いていると、キャリスが心配そうに先を見据えて言った。

 

  「で、ですが、その黒幕って一体……」

  「ああ、俺でも単体じゃ正直言って叶わねえ。それくらい強いってのは確かだ」

 

 キャスターが先ほどよりも真剣そうな顔で言う。ラモラックも何だか進むに連れて顔が深刻そうになっているし、よほどまずい相手なのだろうか………?

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

  「はぁっ!!」

  「その程度か、セイバーのサーヴァント!!」

 

 シャルルとアーチャーが互いに互角に戦い、私とシュミット、モーガンで援護しているとはいえ、好転する気配がない。

 先ほどからシャルルがアーチャーの双剣を何度砕いても、まるで最初っからなかったことのように手元に戻って来てしまってる。

 

 あれは……魔術?

 

 「魔術を使うアーチャー、ということでしょうか?シュミット、どう考えます?」

  「あまり考えたくない推察だけど………おそらく投影魔術だ」

 「と、投影魔術!!?」

 

 投影魔術。それは魔術の中でもマイナーの部類に入る、オリジナルの鏡像を魔力で物質かさせる魔術だ。話にしか聞いたことがなく、しかも非常に効率の悪い魔術だからか私もあまり知らない。

 

 けれど、まさか………。

 

 「それを使用するサーヴァントがいるなんて……彼はもしかして、魔術師ですの?」

  「分からない。でも、キャスターが魔術師であるとは限らないだろう?多分それと同じ、彼は魔術師でありながらアーチャークラスとしての適正を持ったサーヴァントだ」

 「なるほど……」

  「でもマスター、そう考えると彼はとんでもないわ。本物のレプリカを、まるで本物のように扱っている………しかも、それを瞬時に複製し、射出出来る」

 

 そうモーガンが解説した瞬間、何かが突然飛来した。しかし、モーガンが杖を振りかざして造り出した結界によって防がれる。

 けれど、威力が凄まじかったのか、結界にヒビが入っていた。

 

 あれが直撃していたら……と考えると冷や汗が出たような気がした。

 けれど、それはシュミットも同じのようでお互い顔を見合わせて、笑みを浮かべた。

 

  「……敵にとって不測なしだね。セイバー!遠慮は要りません!!彼に追撃をかけなさい!!」

 「モーガン!シャルルが有利になるよう隙を作ってください!!」

  「あいよ、任せろマスター!!」

  「ええ!」

 

 シャルルはシュミットの言葉に応えるかのように、魔力を放出させ、先ほどよりも凄まじいスピードでアーチャーに攻撃を仕掛けて行く。その間にモーガンがいくつもの火球や水球を造り出し、アーチャーに放つ。

 アーチャーはシャルルの攻撃をギリギリで避けたあと、後ずさってモーガンの攻撃をかわし、双剣を投げる。

 

  「当たるか!」

 

 シャルルは投げられた双剣を避けるけれど、私とシュミットは嫌な予感がして、私は持っていた短剣に魔力を込めて強化魔術を施し、シュミットは詠唱を唱え始める。

 

 案の定、双剣がこちらに飛んで来た。

 

  「『Librement La flamme(放て、炎)!』」

 「やぁっ!」

 

 私は短剣で飛んで来た白色の剣をたたき落とし、シュミットは炎の魔術を放ち、黒色の剣を落とす。

 アーチャーは再び投影魔術で双剣を創成する。

 

  「だーもう、キリがないな!あの武器、何度壊しても復元する!!」

  「……シャルル、もう少し持ちこたえなさい!」

  「ああ、何か策があるなら早くしてくれ!!」

 

 モーガンの言葉にシャルルは頷き、もう1度アーチャーに飛びかかる。

 モーガンは杖を霊体化させ、手元にあるものを出現させた。

 

 「………え!!?」

  「えっと、モーガン……それは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルルとアーチャーは派手に剣の打ち合いをする。騎士や皇帝として剣を持ち合わせているシャルルの方が有利のように思えるが、アーチャーも負けてはいない。双剣が壊されると、今度は長い刃を持った双剣が作られ、シャルルに斬り掛かる。

 

 鍔競り合いを行っていると、アーチャーがシャルルの耳元で囁いた。

 

  「ほう、『紛い物の騎士』であるとはいえ、なかなかの技術を持っているようだな」

  「……………っ!!?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、シャルルは驚きで目を見開いた。力を一瞬抜いた隙をついて、アーチャーがシャルルの持っていた剣を弾き飛ばした。

 

  「うわっ!!」

 

 そして逃さないようにアーチャーはシャルルの首に剣を当てる。その間、僅か数㎝でアーチャーが僅かにでも動かせばシャルルの首は搔き切られるだろう。

 シャルルは苦々しく、アーチャーを睨みつける。

 

  「………どこで、それを知った?」

  「何、考えれば分かることさ。シャルルマーニュと君のマスターは呼んでいたが……そもそもそれは、『史実には存在しない』名前ではなかったかね?」

  「さあ?それはどうだろうな?」

 

 シャルルは口角をあげ、さも余裕があるような表情を浮かべた。

 アーチャーも口角をあげ、止めを刺そうと手元にある剣を動かして………。

 

 

  「『ガンド』!」

 

 シュミットはその瞬間を狙い、アーチャー……正確には彼の脇腹を狙ってガンドを放った。

 アーチャーはそれに気づき、ガンドを避けようと後ずさった瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「なっ…………」

 

 何かが飛び退いたアーチャーを貫いた。

 

 貫いたアーチャーの腹から刃が飛び出ていた。鈍く金色に輝く、刃。後ろを見て、アーチャーは目を見開く。

 

 そこにいたのは、手元に剣であろう柄を握りしめているモーガンの姿があった。

 

  「マーリンに出来て、私に出来ないことはないのよ。今時のキャスターは剣を使うのが主流なのよ?」

  「……フッ、なるほど。まともなサーヴァントではない、ということか………」

 

 アーチャーはそう呟いて、粒子となって消えて行った。

 私は無事に戦闘が済んだことに安堵し、ホッと息を吐く。シュミットは素早くセイバーの方に駆け寄った。

 

  「セイバー、大丈夫?」

  「ああ、サンキュなマスター。………ってそうじゃねえ!!モーガン、何だそれ!?剣なのか!?あんたセイバーだったのかよ!!?」

  「あら、違うわよ?マーリンがアーサーに剣を教えていたものだから、負けたくなくて私も剣をやってみたの。暫くして飽きたけど」

  「飽きたのかよ……」

  「でもその私のおかげで助かったでしょ?」

  「それは、そうだけど……」

  「………いいとこ取りしてくよなぁ。ちぇーっ」

 

 何となく納得の行かないシュミットとシャルルを見て、私は苦笑した。初めてのサーヴァントとの連携だったけれど、何気なく上手くいっててよかった。

 

 あと本当にサーヴァント達は多種多様だと思ったのは秘密だ。もちろんいろんな意味で。

 

 「少し休憩したらすぐに立香達の後を追いましょう」

  「そうだね。キャスターがいるとはいえ、立香君やキャリス君が心配だ。黒幕が誰なのか気になるところだし……」

  「確か残ってんのは……えーっと、あと何人だ?」

 

 シュミットとキャリスが相対したのはアサシンとライダーだと聞いている。そして私と立香、そしてマシュが対峙したのはランサー。少し聞いたキャスターの話だと、バーサーカーはその辺りで暴走しているらしく、少なくとも遠い方だと聞いた。

 残るのは………。

 

 「セイバー……が黒幕、ということでしょうか?」

  「おそらくね」

 

 モーガンはフードを深く被り、俯いて呟いた。その声は、何か嫌そうに、苦悩を抱えたような声に聞こえた。

 

 

 

 

  「私の考えに間違いが無ければ、あまり良くない相手でしょうね………」

 

 

 

 





モーガン「マーリンだって出来るのに、私に出来ないことなんてないわ!!」

はい、こんな感じで終始書いていました。魔術師としての本領を発揮する前に剣を使いました。オイ、それでいいのかモーガン。

という訳で今回は本職セイバー、そしてセイバー(本職魔術師)vsセイバー(本職弓兵)の戦いでした。戦闘描写の方は頑張っていきますのでどうかご容赦を……。
初見の際にアーチャー=弓を使う人だと思っていたのに、Fateではその概念を覆されたのには驚きました。ええ、今では石を投げたりイルカを投げたりするのが普通ですもんね………。

あとシャルルについては原作を知っている人には多分分かります。彼のこと、どの辺りで入れようかなぁ……ラモラックとモーガンに関してはあのブラック円卓が大集合しているあの六章でやると決めているんですが、彼はフランスだから1章なのかな?うーん………。


次回はセイバーとの戦いです。ええ、セイバーです。円卓の騎士達にとって胃痛がやってくる(実質どこかの黒騎士は胃痛要員らしい)あの方の登場です。モーガンとラモラックは既に勘づいている様ですがはてさて、どうなることやら。


では、次回もお楽しみにー!



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vsセイバー


皆さんどうも、やっぱり戦闘シーンの描写が一番きついなと思うオレンです。槍の戦い方の描写難しくて、今回のラモラック苦戦しました。あと地味にキャスターが空気。

FGOはイベント満載。そんな中先日ようやくトリスタンがレベルマを達成しました!噂のWスカディシステムを使いたいところですが、スカディ持ってなかったのがここにきて悔やまれるとは・・・。
ところで今度のイベントはどうやらニューヨークのようですね。今の今まで登場しなかったのが今回ついにくるのでちょっと楽しみです。アメリカが舞台ということはあのライオン頭の人の出番が・・・!!?


今回はvsセイバーとはいえ、サブタイトルは『宝具解放』です。題名のセンスがない私にはこれが精一杯です。いつになったら小説のタイトルが変わるんだろうか・・・。

FGOの序章の最終決戦です。では、どうぞ!


 

 

 

 俺たちがキャスターに連れられてやってきたのは、どこかの山にある寺の裏手の洞窟の奥深くだった。

 

  「全員準備はいいか?」

 

 キャスターの呼びかけに俺たちは頷き、さらに奥深くへと入っていった。

 歩いていく中で、キャリスが落ち着かない様子で辺りを見回す。

 

  「なんだか、怪しげな魔力が漂っていて嫌な気配がしますです……」

  「ああ、それは頷くぜ。この威圧感はこんなに遠く離れていても威圧感が伝わって来るな」

 

 ラモラックも槍を握りしめて、先を見据えてキャリスの言葉に頷いた。その言葉が気になったのか、マシュがラモラックに聞く。

 

  「あの、サー・ラモラック。この奥にいると思われるセイバーの威圧感を感じ取っているんですか?」

  「ああ、あの人の圧力ってのは本当にすごいもんだぜ?」

  「その言い方だとまるで、セイバーが誰か知っているみたいな言い方ね?」

 

 所長の言葉に、ラモラックは目を閉じ、また開いて先を睨みつけた。

 

  「ああ、嫌という程な……じゃなきゃモーガンは自ら望んで残ったりはしねえだろうな」

 

 モーガンが、自ら?と俺たちが首を傾げていると、俺たちはいつの間にか開けた場所に出ていた。

 

 

 

 

 

 そこで目撃する光景に、キャリス達が息を飲む。ちょっとした丘のようになっている場所で、金色の光を放つ器の前に誰かが立っているのが見える。

 

 黒い鎧に身を固め、バイザーを身につけた色素の抜けたような金髪の少女が、黒く染まった剣を握って、静かに佇んでいた。

 全身鳥肌が立ち、俺はひそかに身震いした。

 

 するとラモラックが俺たちよりも一歩先に出て、呼びかけた。

 

 

  「サー・ラモラック、ここに参上したぜ!『アーサー王』!!」

 

 

 そう槍を少女・・・アーサー王に向けて叫ぶラモラックに俺たちは驚きを隠せなかった。

 

 アーサー王、それはかの有名な『アーサー王伝説』の主人公で、聖剣エクスカリバーを携え、ブリテンを導いたと言われてる伝説の王だ。その名は世界中でも広まっているし、ゲームでもその名や物語が採用されてるから歴史に疎い俺でもよく知ってる。

 

 

 知ってる、んだけど。

 

 「……アーサー王って、女性じゃなかった?あれが本当にアーサー王なの?」

  『おそらく、間違いないだろう』

 

 すると今まで沈黙していた通信機から、ドクターロマニの顔が映し出された。

 

  『何か変質しているようだけど、彼女はブリテンの王、聖剣の担い手アーサーだ。伝説とは性別が違うけど、何か事情があってキャメロットでは男装をしていたんだろう。ほら、昔は男子じゃないと玉座にはつけなかっただろう?お家の事情で男のふりをさせられていたんだよ』

  「そ、そんなっ……」

 

 ドクターの言葉に手で口を覆い、ショックをあらわにするキャリス。

 けれどおそらく目の前の少女は王の重荷や孤独に押しつぶされているようには見えず、まさに王の如き覇気が俺に突き刺さる。

 マシュやキャリスもそれは同じようで、マシュは険しかった顔をさらに険しくし、キャリスは俺の後ろに隠れた。キャスターは杖を構え、俺たちの前に立つ。

 

  「見た目は華奢だが、甘く見るな。あれは筋肉じゃなくて魔力放出だけでかっ飛ぶ化け物だ。一撃一撃がばかみてえに重い。気を抜くとてひどくやられるぞ、嬢ちゃん」

  「理解しました、全力で応戦します!」

 

 マシュもかすかに震えながら、ラモラックの隣に立った。

 

 

 

 

 と、こちらを見つめたまま動かなかったセイバーの口がようやく開いた。

 

  「ほう、面白いサーヴァントがいるな……。それも、2人」

  「なぬ!?てめえ喋れたのか!?今までだんまりを決め込んでやがったのか!!」

  「ああ、何を語っても見られている。ゆえに案山子に徹していた。……ラモラックよ、今一度問おう」

  「なんだ」

 

 ラモラックは槍を下げることはせず、アーサー王の問いを待つ。

 

  「我が下へ来る気はないか?貴様は我が円卓の1人であろう?」

  「断る。そういうのはむしろランスロットやガウェインに言うもんだろ?俺としてもこっちの方が正直言って面白いし、何より……今のあんたとは『これ』で話し合ったほうが早いだろ?」

  「そうか。ならば、死ぬがいい」

 

 そう言った瞬間、アーサー王は一瞬にしてその姿を消し、次の瞬間ラモラックの前に現れ、その剣を振りかざした。

 ラモラックは片手で槍を振るい、アーサー王の攻撃を受け流した。

 

 そのまま剣戟へともつれ込み、アーサー王が魔力放出で勢いをつけた蹴りをラモラックに放つものの、ラモラックはそれを紙一重で避け、逆に槍を横薙ぎにふるえばアーサー王は飛んで宙返りをし、ラモラックの攻撃を防いだ。

 

  「おぉっと!俺を忘れてもらっては困るな!」

 

 するとある程度俺たちから距離を取っていたキャスターが炎をアーサー王に放った。アーサー王はそれに気づき、剣で炎をかき消し、迫っていたラモラックの顔面に蹴りを入れた。

 

  「がっ!!」

 

 それでもラモラックはあとずさりながらも体制を立て直し、アーサー王に向かっていった。アーサー王は剣圧を放ち、キャスターを含めた周囲の味方を薙ぎ払った。

 その剣圧が俺たちにも襲いかかろうとした時、マシュがその盾を持って防いでくれた。

 

  「先輩、大丈夫ですか!?」

 「ありがとう、マシュ!」

 

 俺がお礼を言うと、マシュは頷いてアーサー王へ向かっていった。

 

 ラモラックが槍で攻め、キャスターは一歩下がった位置から魔術をアーサー王に向かって放ち、2人に攻撃されそうになった際にはマシュが盾で防ぐ。

 3対1の戦いにもかかわらず、アーサー王は全く苦戦しているようには見えない。

 

 

 始めよりも激化した戦いに、俺は不安を覚えながらマシュ達の戦いを見る。

 

 

 

 ああ、何もできないのが歯がゆい。こんな、生死と隣り合わせの戦いが、怖い。

 こんな激しい戦いが現実で起こると、こんなに 寒気がして、怖いものなのかと改めて認識する。

 

 未だ震える体を押さえながら、俺はマシュ達の戦いを見るしかできなかった。

 

 

 

  「その程度か、ラモラック!」

  「まだまだに決まってんだろぉ!」

 

  「ったく……そろそろとっておきを見せる時か!」

 

 さらに戦いが過激化するのを見て、キャスターが業を煮やしたのか手を地面につける。

 

 瞬間、アーサー王の足元から炎が噴き出し、そして

 

 

 「な、なんだあれ!!?」

  「木の人形!!?」

 

 巨大な木の人形がアーサー王の足元から現れる。さすがのアーサー王やそれを間近で見ていたラモラックも驚きを隠せず、

 

  「な!?これは……」

  「我が魔術は炎の檻、荊の如き緑の巨人。因果応報、人事の役を清める社–-–」

 

 剣を構えながら人形の腕の上をかけるアーサー王だったが、人形の手に捕まりそのあまま檻のような人形の中へ入れられた。

 

 

 

  「倒壊するは焼き尽くす炎の檻!おら、善悪問わず土に還りな!!!」

 

 

 

 いつの間にか燃えていた地面にアーサー王を入れた人形は倒れ、大きな爆発音とともに崩壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………勝った、のか?」

 

 俺は呆然としたような声で呟く。

 あのでかい木の人形を出した(と思われる)キャスターはとても疲れた様子だったが、満足げな笑みを浮かべていた。

 

 その表情をしたということは、

 

 

 「勝ったんだな、キャスター!!」

  「やりましたね、先輩!」

  「……まさか、本当にアーサー王を倒すなんて……」

  「でも、これで特異点Fはどうにかなりますよ!やりましたね、ラモラック卿!」

 

 各々がそうねぎらいや驚きの声をあげる中、そうキャリスがラモラックに声をかけるが、ラモラックだけは眉間にしわを寄せ、アーサー王が倒れたと思われる場所を睨みつけていた。

 

 

 

 

 瞬間、

 

 

  「マスターあぶねえっ!!!」

 

 

 ラモラックがキャリスを突き飛ばし、いつの間にか現れていた紅を基調とした大盾を構えた。

 

 

 

 すると、大きな音ともに盾を構えていたはずのラモラックが奥の壁沿いまで吹き飛ばされた。

 

 

  「ぐあぁっ!!」

  「ら、ラモラック卿!!」

 

 

 

  「まったくだ、あの程度火傷にもならん」

 

 キャリスが立っていた場所に、なんとさっき倒していたはずのアーサー王が黒い聖剣を持って立っていたんだ……!!

 

 突き飛ばされたキャリスは涙を流して、震えているのを見て俺は慌てて彼女に駆け寄り、マシュとキャスターが俺たちの前に立つ。

 

  「ったく、まーだ生きてやがったか!『宝具』を打ったくせに、しぶといな!」

  「かまえろ、その盾を私に見せてみるがいい」

 

 ゆったりとしたアーサー王の歩みと同時に、ゆっくりと振り上げられた黒い聖剣には膨大な魔力が収束されていく。

 マシュが一歩前に出て、盾を構える。

 

 

  「魔力反応増大!藤丸先輩!キャリス先輩!所長!私の後ろに!!」

  「嬢ちゃん!!」

 

 

 

 

  「_______光を呑め、約束された勝利の剣」

 

 

 

 

 アーサー王から放たれた光の濁流が俺達に襲いかかる。マシュが盾を構えて、その膨大な魔力を防いでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 怖い、怖い、怖い。

 

 死ぬのは怖い、このまま終わりたくない。

 

 

 そんな恐怖が俺の中に渦巻く。身体中が震えて、冷や汗がにじむ。

 けれど、でも。

 

 

 

ーまだ、死にたくない……生きたい…!

 

 

 

 気づいたら、俺は両手でマシュの手を重ねて盾を握っていた。

 

  「先輩……!」

 「あの攻撃を、防ぐぞマシュ!!!」

 

 

 瞬間、俺の体の中に流れる『何か』が流れ、壮絶な痛みが身体中を走る。歯を食いしばってその痛みに耐える。

 

 

 

  「仮想宝具、擬似展開!!!」

 

 

 

 瞬間、眼前に展開された障壁が黒く染まった極光を防いでいく。

 

 

  「ぁぁぁぁああああああッ!!!!」

 

 

 マシュの叫びがこだまする。

 

 

 

 

 

 

 数分が経ったような気がした。いや、そんなに経っていないのかもしれない。それでもあの光の濁流は消えない。

 

 

 

 

 足元がふらつき、意識が朦朧としてくる。流れる『何か』が止められない。

 身体が沈みかける。

 

 

 

 けれど、それでもマシュの力になるんだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

  「アーサー王、覚悟ぉ!!!」

 

 

 

 

 その勇ましい声とともに、凄まじい風がなびき、何かが俺たちの前に通り過ぎていった。

 

 瞬間、俺たちに襲いかかっていた濁流が途切れた。

 

 

  「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 勇猛な叫び声とともに、濁流の中を駆けて行く『何か』が見えた。

 俺は盾を構えなら前方を見た。

 

 

 

 紅色の魔力を放ちながら重装備の鎧をまとった騎士が銀色に輝く馬鎧をまとった馬を走らせ、その手にある巨大なナイトランスを前に突き出して濁流を突き出していた!

 

 

 

  「何!!?」

 「え、あれって………」

  「ああああああああああああああああっ!!!!!」

 

 騎士は大声をあげながら、馬に乗って極光を突き進んでいく。アーサー王も驚いて、極光を消して迫り来る騎士の馬を斬ろうとした、が。

 

 

  「遅えんだよ!!!」

 

 

 振り下ろされる前に騎士はその巨大な槍でアーサー王の身体を貫いた。その衝撃で、バイザーが左目の部分だけ砕け、目を見開くアーサー王の表情が見えた。

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

  「–−–−まだ生きていたか、『ラモラック』」

 

 貫かれたアーサー王は騎士……ラモラックを睨みつけて、そう呟く。

 騎士の兜をかぶったままのラモラックはしっかりとアーサー王を見据えて、言った。

 

  「ああ、ようやく一本だ」

  「己が執着に傾いた挙句、この有様……私を笑うか?サー・ラモラック」

  「笑わねえよ。あんたは馬上戦で俺に勝った唯一の王だ。こうして一本取ったとはいえ、あんたは強い。キャスターの宝具を受けたままの傷がなかったら負けていたさ」

  「………はっ」

 

 すでに粒子化を始めているアーサー王はそう言うラモラックを鼻で笑い、何か耳に囁いた。

 

  「___________」

  「………っ!」

 

 俺には何を言っていたか聞こえなかったけど、ラモラックが息を飲む声がした。

 

 

 アーサー王は何か不敵に、しかしなぜか寂しげに微笑み、そのまま粒子となって消えていった。

 

 

 

 






アーサー王が女だって知った時のラモラックの心境

ラモラック「あれ、この人モルガンに似てね?っていうか女性だったの!?え、まじかよ!?・・・あ、でも強いから楽しませてくれるよな!!」


多分こんな感じで内心慌ててたけど、戦いたいという気持ちの方が優先的。つまり女性だと知ってもそんなのどーでもいいみたいな。



モデルとなってるキャラクターのイメージのせいか、ラモラックがやたらと短気になったクー・フーリンになってきている今日この頃。

補足すると槍で突撃していくラモラックは若干我を忘れています。多分激情でキレたためだと。地味に宝具を解放してますが、また後日。

『アーサー王伝説』では他の円卓の騎士の誰よりも騎馬戦では最強でしたが、トーナメントでアーサー王に負けたという話があるらしいので、多分ラモラックがアーサー王に向けている感情は『忠誠心』だけでなく、『負けたくない』というライバル心とか競争心のようなものがあったのかもしれないと私は(勝手に)思っています。

カムランの戦いの前に彼は死んでしまったので、円卓の崩壊に関しては多分無関心を装って、なんでそうなるんだよ!!と内心で激怒してるんじゃないかと思います。



はてさて、円卓好きの語りは置いといて、次回はいよいよあの男が登場です。他の二人とも合流していよいよ序章も終わりです。


次回もお楽しみに!




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人理焼却


ちょっと遅れちゃったけど、皆さんもうすぐハロウィンですね!とオレンです。
FGOは石を集めるのはいいんだけど、まーた次のピックアップで消費しちゃいそうだなぁ・・・と思いながら石のカケラだけで20連分貯めました。あとファイナルファンタジー始めました。テイルズとファイナルファンタジーのコラボ・・・案外合う、かも?個人的にはクラウドとノクトが好きです。リメイクはよ!!!



今回は例のあの人登場。ある人の小説だとフルボッコにしていましたけど、私も初プレイのときはやりたい気持ちが収まらなかったです。誰かロケランもってこい!!!


では、どうぞ!



 

 

 

 倒した。

 俺たちの敵だったアーサー王を、生きてたラモラック卿が倒した。

 

 その事実が俺の中に染み渡り、喜びを抑えきれなかった。

 

 「やった!!俺たち、勝ったよマシュ!!」

  「は、はい……やりましたね、マスター」

 

 思わずマシュの手を握って俺は飛び跳ねる。マシュも戸惑いながらも、戦いが終わったという緊張感の解放からか安堵の表情を浮かべた。

 

  「はい、やりましたね先輩」

  「ラモラック卿!!」

 

 しゃがみこんでいたキャリスもふらふらと立ち上がり、歩いてくる自分のサーヴァントのラモラックに駆けつけた。

 

  「わりぃマスター、心配かけたな!」

  「し、しししし・・・心配したんですよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!うわあああああんっ!!!」

 

 戦いが終わったという安堵か、はたまたラモラックが無事だったからか、キャリスは大粒の涙を流して叫んだ。

 ラモラックはそれを見て、慌ててキャリスの涙を止めようとする。

 

  「わわわっ、マスター!!泣くんじゃねえよ、俺ここに生きてるだろ!?」

  「だ、だって、だってぇぇぇぇっ・・・」

  「ほんと、本当に悪かったから!!頼むから泣き止んでくれって!!」

 

 一方は泣いて、一方は泣きやませようと焦る2人の光景を見て、俺とマシュは顔を見合わせて笑いあう。

 所長はへたりこんだまま、深いため息をついた。

 

  「ああ、もう………のんきね、あなた達は」

 「所長、やりましたね!」

  「………ええ」

 

 所長が微笑んだあたりで、体が突然重くなって俺はしゃみこんだ。

 

 あれ、体が重い………というか、なんか疲労がさっきよりも溜まってる?

 

  「藤丸さん!?どうしたんですか!?」

 「い、いや、なんか安心したら身体の力が抜けちゃって……」

  「多分マシュが宝具を使った分、足りない魔力をマスターから供給されたのね」

 

 所長がやれやれといった感じで説明してくれた。ほーぐ?って何だ?って首を傾げていると、マシュが説明してくれた。

 

  「宝具というのは英霊達が持つ道具や概念が奇蹟として再現されたものです。いわばサーヴァントの切り札、と言いましょうか。先ほどのラモラック卿の槍や鎧もおそらく宝具の一種かと思われます」

  「ああ、『円卓の速き巨槍(メタルナイト・ラモラック)』のことだな」

 

 なるほど、つまりサーヴァントの必殺技みたいなものか!

 納得していると、所長が「そんなこともわからずに魔力を注いでいたのかしら……」と呆れた目でこっちを見て来て、思わず目をそらした。

 

  「でも真名なしの宝具は使いづらいでしょうね。呪文を考えないと………」

 

 所長が少し考え込んだ後、その言葉を口にした。

 

 

 

  「『ロード・カルデアス』なんてどうかしら?」

  「ロード・カルデアス………!」

 

 その名を聞いて、マシュが嬉しそうに顔をほころばせた。

 それを見てて俺たちもなんだか笑顔が浮かんだ。戦いが終わった、今はそれが安堵の元になっている。

 

 

 あとは聖杯を回収して、元の時代に帰るだけ______________、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「吐き気がするな」

 

 

 

 そう思っていた俺たちに、冷酷な一言が辺りに響いた。

 驚いて辺りを見回すと、そこには俺たちの知っている人物が立っていた。

時代遅れのシルクハットにタキシード、少し赤みがかかるぼさぼさの挑発、どこか遠くを見ているような細い目つき。

 作りもののような笑顔を浮かべた、

 

 「レフ、教授……?!」

 

 そう、金色の器を持ったカルデアの技術顧問が、そこに立っていたのだ。

 

  「レフ………ああ、レフ!レフ!!生きていたのね!!」

 

 所長が嬉しそうに駆け寄ろうとしたが、ラモラックが所長の腕を掴んで引き止めた。マシュやキャスターも俺たちの前に出て、武器をそれぞれ構える。

 キャスターは杖を教授に向けながら、言った。

 

  「てめえ、何者だ」

  「セイバーが退去した今、君の出番は終わりのはずだ」

 

 そう教授が言った瞬間、キャスターの体が徐々に透け始めた。

 

  「げっ、強制帰還!!?確かに聖杯戦争は終わったけどよぉ!!」

 「キャスター、体が!」

  「キャスターさん!!」

 

 俺とキャリスがキャスターに呼びかけると、キャスターはしょうがねえと言わんばかりにこっちに振り向く。

 

  「チッ、しょうがねえ。あとは任せるぜ、坊主、嬢ちゃん達。次があるんだったらその時はランサーとして呼べよな!」

 

 そういってキャスターは消えた。

 どうして消えるんだ?とかランサーとして呼んでくれってどういうことだ?とかいろいろ考えたが、ラモラックが「別れを惜しんでる暇はねえぞ!!」と俺たちに発破をかけた。

 

  「いや、まさか君達のような無能がここまでくるとはね。計画の想定外にして私の寛容さの許容外だ」

 

 以前会った時よりも冷酷な反応に、俺の背筋に嫌なものが走った気がした。教授の目があの友好的なものではなく、冷ややかな反応だったことに驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

  『レフだって?レフ教授がそこにいるのか!?』

 

 いつの間にか繋がっていたのだろうか、通信の向こうからドクターの声が聞こえた。

 そういえば、教授は爆発に巻き込まれて死んだってドクターが言ってた。それじゃあ何故、彼はここにいるんだ?

 

  「その声はロマ二か。君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室にきて欲しいと言ったのに。君といい、時間通りにコフィンに入らなかったそこの無能といい、どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらないな」

 

 見開いた目から侮蔑の表情が伝わってくる。

 キャリスは恐怖からか「ひっ」と悲鳴をあげて涙を流しながら、俺の後ろに隠れ、俺はその彼女を守るように立つけど、怖気が全身を駆け巡る。

 あれは人じゃない。人の姿をしているが、何かが違う。そんな気がした。

 

  「れ、ふ……?」

 

 所長も今までの教授と様子が違うことに気がついたのか、ラモラックに掴まれたまま静止する。

 

  「ああ、予想外のことばかりで頭にくる。爆弾は君の足元に設置したのにまさか生きているなんて」

 

 その言葉を聞いて、皆の間に戦慄が走った。

 さらに教授の言葉が続く。

 

  「いや、生きているとは違うな。君の肉体はもう死んでいる。だが、トリスメギストスはご丁寧にも体を失った君の残留思念をここに転移させてしまったのだろう。適性のない君の肉体では転移できないはずだからね」

 

 絶望が鋭いナイフのように突きつけてくる。

 

 それじゃあ所長は最初っから死んでいた。今までは、幽霊みたいな存在だったということだ。

 

  「だがせっかくだ、面白いものを見せてあげよう。生涯をカルデアに捧げた君に、今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう。

 

 偽りの笑みを顔に貼り付けたまま、教授が指を鳴らした。

 すると突然水晶体が彼の手元に現れ、同時に水晶の頭上の空間が歪み、何かの映像を映し出した。

 

  「嘘っ………!!?」

 

 それを見たキャリスが小さく悲鳴をあげる。俺も驚愕の表情を浮かべてそれを凝視した。

 

 『カルデアス』………巨大な地球儀、この先の未来を証明するはずだったという地球儀。

 それがこの世の終わりを示すかのように紅蓮の炎に焼かれている。

 

  「見た前、人類の生存を示す青色はどこにもない。あるのは燃え盛る赤色だけだ。これが君の引き起こした結果だよ!マリー!!」

 

 その言葉を突きつけられ、所長の顔に絶望の顔が浮かぶ。

 

 

 瞬間、不可視の力がいつの間にかラモラックから離れていた所長の体を突然宙に持ち上げた。

 

 「「所長!!?」」

  「しまった、おい!!」

 

 ラモラックが慌てて所長の手をつかもうとするが、あとわずかのところで届くことがない。

 

  「せっかく君のために空間を繋げてあげたんだ。”君の宝物”で死ぬといい。カルデアスは高密度の情報体。ブラックホールか太陽か……いずれにしろ、人が触れれば分子レベルで分解される。生きたまま無限に死に続けるだろう」

 

 

  「いや、いや………助けて、誰か助けて!!!まだ、私認められてない!どうして、どうしてこんなことばっかりなの!?誰も私のこと評価してくれてなかった!!私は、やだ、やめて、いや、いやっ……誰か、誰か………」

 

 

 泣き叫びながら吸い込まれていく所長に俺とキャリスは思わず手を伸ばした。しかし、カルデアスの引力の方が強いのか、俺たちの方からあっという間に離れていく。

 

 

  「いやああああああああああああああっ!!!!」

 

 

 そして所長がカルデアスに吸い込まれ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「るわけないじゃない!ヒーローは遅れて登場するって聞いたことあるでしょう?つまりはそういうことよ!」

 

 所長の腰に金色っぽい何かが巻きつき、どこかへ引っ張られる。

 教授が引っ張られて行く所長に向けて不可視の力を放とうとしたが、その瞬間右腕に何かが爆発した。

 

  「ぐあっ!」

 

 不意打ちだったのか避けれず、教授は聖杯を落とした。地面に落ちていく聖杯を誰かが飛んで、聖杯を掴み綺麗に着地した。

 

 

 

 

 

 そう、その2人を、俺たちは知っている………!

 

 

 

 

 

 「ガーレン!!シュミット!!」

  「ふふっ、間一髪ってところかしら?」

  「2人とも、大丈夫かい?」

 

 そう、ガーレンとシュミット。アーチャーとの戦いを勝って出た2人が、ようやく俺たちと合流したのだ!

 

  「ぶ、無事だったんですねガーレンさん、シュミットさん!!」

  「こっちもいるぜ、お前ら!」

 

 聞き慣れた声のする方を見ると、金色の鎖を腰に巻きつけたまま呆然としている所長を姫抱きにしているシャルルマーニュとふふんと誇らしげにしているモーガンが立っている。

 

  「私の妖精文字を甘く見ないでちょうだいな。これでも私、凄腕の魔術師でしてよ!」

  「いやあ、ひやひやしたぜ。モーガンがいきなり鎖を出すわ、マスターが炎を放った瞬間にガーレン様が飛び出すわ……って俺の見せ場なくね!!?」

  「君の見せ場は戦闘でしか輝かないからね!」

  「なんかそれ悲しくね!!?」

 

 この緊張感漂う空気の中でやいのやいのと会話する4人を見て、ちょっとだけ安心感が戻ってきた。

 しかし、それを許さないものがいる。

 

  「おのれ……見逃してやったというのに、まだいたか」

  「あえて隠れて様子を見ていて正解だったよ。隙あらば奇襲をかけて殺すつもりでいたけど、その前に所長を狙うなんてねー」

  「女性の涙を誘うなんて、最低な人ですわね」

  「いや、それ論点が違うと思いますよガーレンさん………;」

 

 口元は笑っているけども目は全く笑っていないシュミットとジト見で教授を睨みつけるガーレン。

 その2人の様子に所長もはあぁ……とため息をついた。なんというかまだ出会って間もないはずなのに、なんでかいつも通りなんだなーって思えてきてしまう。

 

  「まあいい、私の使命はすでに完遂している。これならば我が王もお怒りにはならないだろう。では、さらばだ諸君。私には次の仕事があるのでな。このまま時空の歪みに飲まれるがいい!」

 

 そのまま金色の粒子となって教授が消滅した。チッ、とかすかにシュミットが舌打ちする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「っ!!?な、何だ!?」

 

 突然地震が鳴り響き、瓦礫のような、それとも岩のような何かが降り注いで来た。

 

  『まずい!特異点の崩壊が始まった!!時空の歪みに飲み込まれるぞ!急いでレイシフトだ!!』

 

 遠くで焦るドクターの声がする。すると俺たちの体が光の粒子に包まれて行く。

 それを見たシュミットがおもむろに呟く。

 

  「強制送還だ。おそらく僕たちはすぐにカルデアへ戻ることになるだろう。……おそらくサーヴァントたちも一緒に、けど所長は………」

 

 そう言って俯いたままの所長を見る。ガーレンはきつく唇を結び、キャリスは嗚咽を出しながら涙をこれ以上こぼさないよう必死にこらえている。俺は泣くこともできず、ただただじっと手を握りしめる。

 すると所長はシャルルの腕から降り、そのまま4人の前に立った。その表情は、やはりというかどこか暗い。

 

  「………ここまでのようね。レフに何か仕返しの1つや2つしておきたかったけど、このままじゃどうにもならないわね」

 「所長………」

 

 所長は首を横に振って、次顔を上げた時には行く前に見たキリッとした真剣な顔になっていた。その目にはこぼさないようにと涙をこらえている。

 

  「ロマニ・アーキマン!あなたに私の後任としてカルデアの全権を任せます!スタッフ全員聞きなさい!!我々の希望、人類最後のマスターたちを全力でサポートすること!決して逃げることも負けることも死ぬことも許しません。誰1人かけることなく世界を救いなさい!!」

 

 その言葉に、俺たちは神妙な面持ちで頷いた。キャリスも流し続けている涙を手でぬぐい、うんうんと何度も頷いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ただ1人をのぞいて。

 

  「あら、生きることを諦めるのかしら?」

 

 先ほどから笑みを絶やさない、それどころかその笑みを意味深に浮かべる妖女がここにいた。ラモラックがそれを見て、キッとその妖女を睨みつける。

 

  「モーガン、何のつもりだ?」

  「えぇーっ、私は哀れな女の子に聞いてるだけよー?」

  「あんたのその顔じゃ何を企んでるかよくわかんないんだけど、すっごい不安だぞ?」

 

 シャルルからも怪しげな視線を向けられるが、その笑顔はますます怪しくなって来るばかり。

 

 

 

 

 その真意を問おうとして口を開いたところで、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 「ふふふふふふふふっ…………」

   「あ、あなた、何を企んでいるの……?」

 

 マスターや他の皆さんが先に帰ったのを見届けて、私はそのままの笑顔を所長に向けた。所長はびくり、と肩を揺らした。

 それを見て、私はクスクスと笑い声をあげた。

 

 「イタズラ」

  「い、いたずら?」

 「ええ。それはもう、とびっきり面白い『イタズラ』よ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーそもそも私の原点を妖精であることを、お忘れなく。

 

 

 





さて、モーガンは一体何を企んでいるでしょうか?(白々しい)

アーサー王を倒してひと安心。うちの立香君はまだゲーム感覚なところが残ってるので、もう少し勝ったことを喜んでもいいんじゃないかと思った結果。あとキャリスは今回で泣き虫確定です。まあ普通だったら泣いちゃうよね、自分のサーヴァントが生きていたりとか。

原作では戦いの前から多分宝具の説明はされていたけど、今回はされてなかったのでここで説明を。もう少し込み入った説明は立香の勉強会という形でやっていこうかなぁと考えています。私自身把握しきれていない部分もあるのでそれも兼ねて。


ラモラックは多分レフの怪しさに気づいてもおかしくないよなーって思って所長を引き止めました。ドクターが空気なのは単純に存在を忘れていたからなんだ・・・すまない。
あとちゃっかりガーレンとシュミットは聖杯を奪い取っています。目的は果たしましたがどちらかというと所長について衝撃的だったんです。多分皆忘れてる。

シリアスブレイカーことモーガン。はてさて、彼女は一体何を企んでいるのやら・・・。



次回は序章の最終話、その後のお話になります。幕間として先ほど言った勉強会などをやろうとしています。
それで第1章ですが・・・すみません、第1章から第3章は原作とは違う形で練り直そうか考え中です。まあどちらにせよ来年の話になりますが。フランス関係ならシャルル君必須だよなーとか海賊ならあのカリブの海賊出してもいいかなーとかいろいろと考えています。



では、また次回!



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Grand Order 始動


皆さんどうも、スマブラの発売まであともう少しですよどうもオレンです。やったぁスマブラだー、とか思ってたら気になってたWOFFが楽しい。

FGOの方はすり抜けでアルテラが来てクリスマス復刻のために来てくれたのか!と思ってしまった。あと1500万DLでケイローンゲットです!やったぜ。先日友人がFGOで500連(全部無課金です)をやったのを見て恐怖したのは内緒のお話。これで欲しいものが出てこなかったらどうするつもりだったのか・・・私には無理です。

今回は序章ラスト。特に言うこともありませんが、しいていうなら前回のモーガンが何をしていたかわかります。


では、どうぞ!


 

 

 

 気がついたら見知らぬ天井だった、とかいうどこかのライトノベルにありそうな展開は本当にあったんだなと思った。

 

 目を覚ましたらどこかのベッドの上で寝ていたみたいだ。

 

  「おや、最後の1人が目覚めたようだね」

 

 俺の寝てたベッド横に見知らぬお姉さんが座っていた。知らない人………のはずなのに、どっかで見たことがある顔だ。

 

  「おはよう、こんにちは藤丸立香君。意識はしっかりしてるかい?」 

 「あ、はい………」

 

 誰だろう?片手がゴツゴツしているし、なんか変なものが肩に乗ってるし・・・なんでだ?カルデアのスタッフじゃ、ないよな?

 

  「なに?目が覚めたら絶世の美女がいて驚いたかな?わかるわかる、直になれるよ!」

 

 自意識過剰かよ、と思ったけど口に出したら吹っ飛ばされる。女は怒らせるべからずと言う言葉が世の中にはあるからな。

 

 

 

 

 

 

 

  「気がついたのかい?立香君」

 「シュミット!」

 

 部屋にシュミットとシャルルが入って来た。どこかけがをしたのか、シュミットの頰にガーゼがつけてあった。

 

 「どうしたんだよ、それ!」

  「君が言えるセリフじゃないよ、立香君」

  「ははっ、確かに!」

 

 え?と首を傾げていると、シュミットが女性に丁寧にお辞儀をして言った。

 

  「レオナルド女史、立香君も起きたことだし管制室にいくよ」

  「うん、いってらっしゃい!彼女たちによろしくね〜」

  「フォウフォーウ!」

 

 フォウが俺の肩へ登って来たのを見届けて、俺はベッドから出てシュミット達と一緒に部屋から出た。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 「そういえばあの女史?って人知り合いなのかシュミット」

  「知り合いも何も、彼女もサーヴァントだよ」

 「えぇっ!!?」

 

 ぜ、全然気がつかなかった……。

 シュミットが何か上機嫌なのか、気分良く説明してくれた。

 

  「レオナルド・ダ・ヴィンチ、カルデアの協力者らしい。前もってカルデアにはサーヴァントを何人か呼んでて、彼もその1人らしい」

 「へえー………」

 

 そういえばレオナルド・ダ・ヴィンチってどこかで聞いたことがあるような………あ、絵画の人か。

 

 その考えを呼んだのか、シュミットが呆れた目で俺を見て来た。

 

  「………君、まさかレオナルド・ダ・ヴィンチを知らないのかな?」

 「絵画の人だよな?」

  「どんな絵画を描いた人?」

 「…………えっと、なんだっけ・・・もな、モナ・・・・モナカ?」

  「君、ブリーフィングが終わったら歴史の授業やろうか」

 「えぇーっ!!!」

 

 なんでだよ!!俺歴史苦手なのに!?

 シュミットがやれやれと肩をすくめている横で、シャルルがくくっと笑いながら言った。

 

  「歴史は学んどいて損はないぜ立香。これからたくさんサーヴァントに会うんだからな。サーヴァントのことを知っていくって言う意味で重要だと思うなぁ」

 「うーっ………俺暗記苦手なのにー」

 

 はあぁ、と肩を落として、ふとあることを思い出した。

 

 

 特異点が崩壊していく中で俺に手を伸ばしていた…………、

 

 

 

 「そういえばマシュは!?あの後どうなったんだ!?」

  「今思い出したのかい?安心して、管制室で君のことを待ってるよ」

 

 そんな会話をしていると、管制室の前にたどりついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「先輩!!起きたんですね!」

  「立香さん!!」

 

 管制室へ入ると、マシュとキャリスがすぐに飛び込んで来た。マシュはホッとしたような安心した顔をしていて、俺もそれを見て微笑んだ。

 

 「2人とも、無事でよかった」

  「あなたが最後でしたのよ。こっちに戻って来ても全然目が覚まさなかったからマシュがつきっきりで看病しようとしてたわ」

  「が、ガーレン先輩!」

 

 どうやら相当心配かけてしまったらしい。反省しなくては。

 

 マシュは冬木でのサーヴァントとしての姿ではなく初めて会った時のような制服姿で、ガーレンは所長が着ていたようなマント付きの服装だった。

 

  「コホン、再会を喜ぶのは結構だけど今はこっちに注目してくれないかな?」

 

 するとドクターが咳払いをしたので、俺はピシッと背筋を伸ばしてドクターを見る。ドクターの後方にはラモラックとモーガンが立っていた。

 

 「すみません、ドクター!」

  「まず、生還おめでとう皆。そしてミッション達成お疲れ様。なし崩し的に全てを押し付けてしまったけど、君たちは勇敢にも事態に挑み乗り越えてくれた。そのことに心からの尊敬と感謝を送るよ」

 「い、いえ、別に俺は……皆がいたからこその、勝利だと思っていますし…………」

 

 そう言われて、俺は照れて、皆を見て俺だけじゃないと否定した。

 これは事実だ、俺だけじゃ絶対に勝てなかった。マシュを信じてなかったわけじゃなかったけど、ガーレンとシュミットが、モーガンとシャルルが足止めしてくれなかったら、ラモラックが助けに来てくれなかったら。

 

 それを考えて、ふとあることを思い出した。

 

 「…………あの、所長は……」

  「ああ、そのことなんだけど」

 

 モーガンがあっ、と手を叩いてどこかへいってしまった。

 しばらくして「ちょっと離しなさいよ!!」と聞き慣れた声が聞こえ、俺はえっ、と目を見開いた。

 

 

 

 

 

 戻って来たモーガンの手に抱えられていたのは、所長がふた回りどころかだいぶ小さくなったような、二頭身の人形だった。なぜかモーガンの腕の中でその人形が離れようと暴れている。

 

 「………………え?」

  「まあ、そういう反応になるよね………」

  「はわわわ……」

  「あはははっ…………」

 

 俺が呆然としている中、ガーレンははあぁとため息をつき、キャリスはオロオロとした様子で慌て、シュミットは苦笑いになっていた。

 

  「いいから離しなさい!モーガン!!」

  「あら、とっても可愛いと思わない?こんな姿になれたんだからもうちょっと気楽にいきましょうよ〜」

  「いやよ!というかもっとマシな人形はなかったわけ!!?」

  「えぇーっ、だってそれぐらいしかちゃんとなかったし〜」

 

 モーガンと人形が会話しているのを見て、俺は驚きの声をあげた。

 

 「えぇっ!!?しょ、所長!!?所長なんですか!!?」

  「気づくの遅いわよ馬鹿!!!」

 「え、どうしてこうなってるんだ!!?」

 

 人形………もとい所長はピョン、とモーガンの腕から降りると説明してくれた。

 

 

 特異点の崩壊で俺たちが先に退去した後、どこからかモーガンが人形を取り出し、降霊術?とやらで所長の魂を人形に移されたらしい。それでモーガンがそのまま人形と一緒に帰還し、結果的に所長は肉体的には死んだものの人形に乗り移るという実にホラーでよくありそうな展開になっていたという。さっき会ったダ・ヴィンチ女史によれば現状特に問題はないけど、人間というよりは幽霊に近くなっているだろうね、とのこと。

 

 ちなみに俺として気になるところはあれ?この人死んだんじゃないの?とかいう疑問じゃなくて、所長そっくりの人形をいつから持っていたのかとか思ってたり。あと本人としては地味に動きづらいらしい。

 

 

 

 「………なんかゲームによくある展開だなー。さすが魔術師」

  「あら、もっと褒め称えてもいいのよ?」

  「やってることは命の摂理ってもんを乱してる悪行だよな」

  「なんというか……ちょいかっこいいかな?」

 

 俺とラモラック、そしてシャルルで口々に誇らしげにしているモーガンを見ながらコソコソ言っていると、所長がコホン!とわざとらしく咳払いをした。

 

  「ひ、ひとまず!私がまだここにいる以上、指揮はいつも通り私がやらせていただきます!カルデアスの状況から見るに、レフの言葉は真実でしょう……。カルデアから外に出たスタッフも戻ってこないと聞いています。外の世界は死の世界になっています。……この状況を打破するまでは、ね」

  「……ということは」

 

 所長の言葉に、シュミットが納得したように頷いた。打破するまで、ということはそれは打破できるということを示している。

 

 ドクターはうん、と頷いて言った。

 

  「ああ、もちろんある。君たちが冬木の特異点を解決したにも関わらず、未来は関わらなかった。それはつまり、他にも原因があるということ。そう僕たちは仮定した。人類のターニングポイント………『この戦争が終わらなかったら?』『この航海が成功しなかったら?』『この発明が間違っていたら?』・・・そういった現在の人類を決定づけた究極の転換点が特異点となった時点で未来は決定しまった。レフの言う通り人類に未来はないだろう。けど、僕らだけは違う。カルデアはまだその未来に達してはいない。僕らだけがこの間違いを修復できる」

 

 ドクターは一度言葉を切り、所長を見て頷いた。所長も頷き、唇を噛み締めた後キリッとした真剣な顔で言った。

 

  「この7つの特異点にレイシフトし、歴史を正しい形に戻す。それが人類を救う唯一の手段となります。マスター適正者はあなた達を除いて全員凍結。………この状況で言うのは酷ですが、それでもカルデアの所長として問います。マスター適正者14番ガーレン・ブリーテンリッヒ、適正者15番シュミット・ヴェラータ、適正者47番キャリス・K・ハーミット、そして適正者48番藤丸立香。あなた達4人に人類の未来を背負う覚悟はあるかしら?」

 

 真剣な表情で俺たちを見て所長は問いかけた。俺はすぐに答えられなかった。

 

 

 

 俺に、俺なんかに人類の未来を背負うことはできるだろうか。

 あのランサーと戦った時みたいな怖い思いをしなきゃいけないのだろうか、そう考えた。今でもあの恐怖を思い出すと、体が自然と震える。

 

 

 

 

 

 けど、その思考を遮るようにアルトボイスが室内に響いた。

 

  「愚問だよ、所長」

 「シュミット」

  「何のために僕たち適正者がいると思っているんだい?立香やキャリスはまだしも僕はこのために来たんだ、そうだろう?」

  「ええ、そうですわね。……人類を救うための戦い、私達が請け負います。私たちが守りたいと思うもののために」

 

 シュミットの言葉に続いてガーレンも頷く。そして二人は俺たちの方を見て言った。

 

  「僕らは無理にとはいわない。本来なら君達は一般人としてあるべき存在なんだ、魔術師ではないからね。……人類を救うためじゃなくていい、君達がどうしたいのかを聞かせてくれ」

  「ええ、戦わなくても別の道がありますもの」

 

 そういったシュミットの目は俺を見通していた。

 多分俺やキャリスの悩んでいることなんてわかっていて言ってるんだ。別に前衛で戦わなくてもいいと。後方で支援してくれてもいいのだと。

 

 

 

 

 そう言われたら、逃げられないじゃないか。……何より、格好がつかないのは嫌だ。

 

 キャリスも何か考えて、目に涙を浮かべて言った。

 

  「私は、人類を救済なんて、そんな大きなことはできません。でも、私には助けたい家族がいます。家族を取り戻すために、私は戦います」

 「………俺にできることなら、俺も未来を取り戻すために、戦います」

 

 俺は力強く胸を張ってそう答えた。

 そう、誰かの助けは待ってられない。ちゃんと取り戻せる可能性があるのなら、俺がそれを掴んでみせる。

 

  「……ありがとう、その言葉で私たちの運命は決定したわ。

 

 

 これよりカルデアはこの私オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り人理継続の尊命を全うします。これはカルデア最大にして原初の使命。我々がこれから立ち向かうは歴史そのもの、それは挑戦であると同時に過去に弓引く冒涜になるでしょう。ですが、我々が生き残るにはこれしかない。

 

 

 作戦名:『Grand Order(グランドオーダー)』魔術世界において最高位の使命を以て我々は未来を取り戻します!!」

 

 

 

 

 ーたとえ、どのような結末が待っていたとしてもー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして俺たちの長い長い旅は始まった。

 

 

 旅の行き着く先は”果て”

 

 

 

 これは、その箱庭を彩る物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで所長、その格好で言われても格好がつかないような」

  「うるさいわよ!!!」

  「立香さん、なんというかいつもシリアスな空気を壊して行きますよね………」

  「ある意味すごいわ」

  「あれ、一種の才能じゃないのかな」

 

 

 





と言うわけで序章終了。

モナ・リザは実際私が中学生ぐらいの頃まで知らなかった経験談の元でやってます。FGOやり始めた頃はモナ・リザに全然似てなくね!?とか思っていましたが、今思えばすっごく似てます。何を以てモナ・リザになったのかさすがダ・ヴィンチちゃん。

所長の人形のイメージはリヨ所長のつもりでやってます。漫画特に読んでないけど、リヨ所長のイメージってリヨぐだ子にいじめられてるイメージしかないんだよな・・・。あと最近WOFFをやっているせいか、そのキャラのイメージが強くなっている私です。無駄に頭がでっかいプリメロ所長です。

他の二次創作とかだとマーリンがいろんなところでいたずらをしているし、モーガンは原作でアーサー王の治療もしてるし、なんかマーリンに次いで何でもできるイメージです。魔術関連なら降霊術にも手を出してそうって感じで。実際Fateでもホムンクルス作ってるし・・・。


普通人類を救ってくださいと言われても、「はい、やります」と言えない。それがうちの立香。多分先にシュミットとガーレンが言わなかったらずっと黙り込んだままだったと思われます。あそこでノーって言える状況じゃないってわかってるんですけどねー・・・。



と言うわけで序章は終了!次回は幕間を挟んで、そしてお待ちかねの第1章になります!これ、いつになったら終わるんだろうかとか考えず、のんびりやっていきますのでよろしくお願いします!


では、また次回!


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幕間
召喚、新たな英雄達



みなさんどうも、クリスマスはやはりカオスだったとオレンです。蘭陵王を狙って30連ガチャをしたら、項羽を出してしまった・・・マジですみませんとしか言いようがない。ネタバレになるからいいませんけど三章は思ったよりバッドエンドじゃなかったよ!!ただ非常に申し訳なかったけどね!!終わった後にあの方を引こうと思ったのは私だけじゃないはず。

今回は召喚パートです。ストーリー変更に支障がない程度かつマスターの相性的なものを考えました。いやあ、サーヴァント決めだけでこんなに時間がかかるとは思いませんでしたよ・・・途中でどう考えても関係ない鯖を出そうか本気で悩んだくらいには。スマブラとFFマジでたぁのしぃー!!(オイ


では、どうぞ!


 

  「よーし、まずは引くわよ!!」

 「え、何を?」

  「え、英霊ですよ英霊!」

 

 

 俺たちは今、守護英霊召喚システム・フェイトに隣接した召喚実験場という……なんか、英霊を召喚するための部屋に来ていた。

 なんでもカルデアの戦力強化のために英霊召喚を行うとか。

 

 今回はガーレンやシュミットだけじゃなく、俺とキャリスもやることになった。理由は従える英霊が多い方がいいのと、いざというときに逸れても片方さえいればどうにかなるから………とのことらしい。

 

 

  「それじゃ、君たちにはカルデアの戦力強化のために英霊召喚をしてもらう。べ、別にマシュたちの実力を疑ってるわけじゃないんだよ!?だからサー・ラモラック槍を向けないでください!!」

  「じゃあなんのためだよ?敵なら俺がぶっ飛ばしてやるぜ?」

  「相変わらずあなたは戦闘狂よね……」

  「これからの特異点には何が待っているかはわからないわ。もしかしたら予想だにしない不測な事態もあるかもしれないからね。そのための英霊召喚よ」

 

 ドクターと所長の説明になるほどと俺は頷いた。

 

  「それではまず、一発目はあなたからいってちょうだい!立香!」

 「え、お、俺から!?」

  「まあこういう爆死は君が一番だよね」

 「爆死する前提なの!!?」

  「が、頑張ってください立香さん!」

  「応援してます、先輩!」

 「何を頑張ればいいの!!?」

 

 思わず4人にツッコミをかけながら俺は前に出た。ダ・ヴィンチちゃん(本人からそう呼んでくれとおど……コホン、言われたので)から呼符と呼ばれる聖晶石を圧縮したものを受け取る。

 ………一瞬ゲームに出てくるいわばガチャチケットというものが頭によぎったけど、何も言わないでおこう。

 

 

 召喚術式の前に立って、俺はその呼符を術式の中心に置いて少し離れた。

 すると魔力が吹き荒れ、だんだんと視覚化されて3本の光の円環へと変わった。

 その円環は徐々に回り出す。

 

 

 だんだんと光の強さが大きくなり、俺は両腕で顔をかばうようにしてその光から目をかばった。

 

 

  「おっと、今回はキャスターでの現界ときたか…………ああ、あんたらか。前にあったな?」

 

 聞き慣れた声がして俺は腕を下ろした。術式には青いフードを深く被った、青髪の男……………って。

 

 「キャスター!!」

  「よぉ、またあったな」

  「こんにちは、キャスターさん!」

  「ああ」

 

 どうやら俺の初めてのサーヴァントはキャスターだったようだ。よかった!初対面で兄貴分すげえとか思ってたけど本当にきてくれるなんてよかった!!

 

  「そういえばまだ君の真名を聞いていなかったよね。よかったら教えてもらえるかな?」

  「あ?そーいや言ってなかったか……まあ別にばらしても問題ねえ事態だしいっか。俺は『クー・フーリン』だ」

  「「「「うえぇぇっ!!?」」」」

 

 キャスター………クー・フーリンの真名を聞いて驚きの声を上げる皆。俺はただ一人首をかしげるばかりだった。それに気がついたマシュがこっそり俺に教えてきた。

 

  「せ、先輩、ご存知ないのですか?魔槍『ゲイ・ボルグ』を所持したアイルランドの光の御子です!」

 「巫女?え、でも男じゃ」

  「そっちの巫女じゃありません!御身の子と書いて『御子』です!!」

 

 なんかキャリスに怒られた。ああ、うん、わかってたよ?そうだよね、御子だよね。

 どうやら相当有名な人らしい……そんなすごい人だったんだぁ。

 

 ほー、と頷いていると、クー・フーリンが俺の方を見て、マシュに耳を当てて何か聞いた。

 

  「なあ、坊主ってもしかして・・・」

  「えっと、どうやら先輩は歴史が苦手でして・・・」

  「・・・坊主、時間あったら勉強しような」

 「ひえっ!!?」

 

 なんか死()の宣告をされた。マシュ、何を言ったんだ!!?あと俺は勉強が苦手だから勘弁してくれぇぇぇぇぇぇっ!!!

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

  「そ、それでは次は私ですね!」

 

 この後が嫌だなぁと思いつつ、キャリスが呼符を陣に放り投げるのを俺は見ていた。

 再び光が溢れ、消えるとそこに立っていたのは赤いコートをまとった白髪の男だった。日に焼けたような黒い肌だから黒人かな?と思った。

 

 隣にいたクー・フーリンことキャスニキ(兄貴と呼ばせて欲しいと頼んだら許可をもらったので略した)がげぇっ、と嫌な顔をした。

 

  「サーヴァント・アーチャー、召喚に応じ参上し………」

 

 アーチャー、と言った男がキャスニキを見ると、同じく顔をしかめた。キャリスがあれ?と首をかしげていると、キャスニキが皮肉った笑みを浮かべて言った。

 

  「よぉアーチャー、てめえも召喚されたか」

  「おや、どこかで見覚えのある猟犬がいるようだが、気のせいか少しは理性を取り戻したようだな?」

  「そういうお前はあいっかわらずだな……!!」

 

 なぜか二人の間に火花が散っている気がするのは俺じゃないはず。

 キャリスがおどおどとした様子でアーチャーに話しかける。

 

  「あ、あの〜……」

  「おっと、君がマスターか。あの猟犬に手を焼かされていないか?何かあったら言ってくれ、すぐに捨ててくる」

  「いや捨てんじゃねえよ!!つか俺もまだきたばっかだ!!」

  「………これが東洋でいう犬猿の仲ってやつかい?」

 「まあ、うん……」

 

 どうやら二人は仲が悪いようだ。けど、何か接点があるのかな?

 俺と同じことを考えたのか、ガーレンがアーチャーに聞いてきた。

 

  「あの、アーチャー。クー・フーリン殿とは何か接点があるのでしょうか?クー・フーリンと敵対していたのはそれこそ女王メイヴやフォルガルを思い浮かべるのですが………」

  「あー、いや……彼とは腐れ縁という奴だ、気にしなくていい」

  「ああ、あんまり首を突っ込まないでくれよ」

 「はぁ………」

 

 どうやら並ならぬ因縁があるらしい。これ以上聞くとなんか、いろいろとまずそうだし、やめておこう。

 ドクターがコホン、と咳払いをして気まずかった場の空気を平常に戻した。

 

  「えぇっと、クー・フーリンの知り合いということは彼の兄弟弟子だったフェルグスが真名かな?」

  「一応『エミヤ』という名があるが、気にしないでくれていい。なにせ歴史に残るほど相応の英霊ではないからね」

  「エミヤ?聞いたことがないな………」

  「歴史上に残されている名前ではなさそうね……?」

 

 シュミットとオルガマリーが首を傾げているけど、エミヤと呼ばれたアーチャーは肩をすくめて答えをはぐらかすだけだった。

 

  「まあこうしていても仕方ありません。次は私の番ですわ!」

 

 ぽーい、とガーレンが召喚陣に呼符を投げる。………気のせいかだんだん呼符の扱いが雑になっているような気がするのは俺だけかな。

 

 光が現れ、また消えると今度は白い服をまとった金髪の女の子が立っていた。その手には白い刃が光る剣がある。

 

  「はじめましてマスター。まだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィとお呼びください。これから末長くよろしくお願いします」

 

 セイバー・リリィといった女の子の顔、どこかで見たことがあるような……?と考えていたらどこからかガァンという音が聞こえた。

 音の出先を見ると、モーガンとラモラック、そしてエミヤが壁に思いっきり頭をぶつけていた。……え?

 

  「あ、あれ、ラモラック卿!!?」

  「モーガンまでどうしたの!!?」

  「エミヤさん!!?」

  「………そこのマスターは一体どんな縁の持ち主なんだ……!?」

  「王が、王が小さくなられた……だと………!」

  「ああ、アルトリアが……かわいいアルトリアがいるわ……!!」

 

 なんか悶えている3人を見て、シュミットがもはや突っ込む気が失せたかのように呆れた表情をして言った。

 

  「……さっさと召喚済ませちゃおうか。いろいろと突っ込んでたらキリがないよ、立香君」

 「え、で、でも、いいのか!!?」

  「いや、これは放っておいて大丈夫だ。直に治る」

  「えぇっ!!?で、ですが、体調が悪そうですよ……?」

  「ありゃぁ、かっこ悪いな………」

 

 シュミットだけでなく、キャスニキやシャルルまで呆れた表情を浮かべている。俺もキャリスもリリィもマシュも戸惑っているが、ガーレンも苦笑を浮かべている。

 そんな俺たちをよそに、シュミットは呼符を放り投げた。

 

 

 今度はどんな英霊が来るんだろか?と考えていると、現れたのは小さい青髪の

眼鏡をかけた男の子だった。………ん?

 

 「え、こ、子供?」

  「え、嘘」

 

 俺とシュミットがそれぞれコメントをすると、男の子はため息をついて声を出した。

 

  「三流サーヴァント、アンデルセンだ。本棚の隅にでも放り込んでくれ」

 「「「「声渋っ!!!」」」」

 

 今、初めて全員の心が重なった瞬間だったと思う。いや、見た目男の子なのに声渋くないか!!?あれだよ!?某悪役とか某探偵に出てきそうな声だよ!!?

 

 全員で突っ込む声を聞きながら、ドクターは深々とため息をついて呟く声がした。

 

  「………なんか、賑やかになりそうだなぁ」

 

 ため息交じりのその声が、ちょっと楽しそうに聞こえたのは俺だけだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

*NGシーン*

 

立香「よし、引くぞー!!」

ポォーイ、ドォォォォォン

セフィロス「・・・アヴェンジャークラス、セフィロス。貴様に絶望をくれてやろ」

立香「い、今すぐに帰ってください!!!」

セフィロス「ほう、俺に指図するか?」

立香「令呪を持って命じるので今すぐ帰ってください!!!」

セフィロス「おい!!」

シュンッ

全員「・・・・・・・・・・」

オルガマリー「・・・今の、何」

立香「さあ仕切り直しましょうか!!!」

シュミット「あれ、確か某FFのラスボスじゃ」

立香「シュミットそこまでだ!これ以上言ったらいろんな方面から鯖がやって来るから!!な!?」

シュミット「え、あー、うん・・・そう、だね?」

ガーレン「なんの話ですの?」

キャリス「というか、返して大丈夫なのですか?」

立香「いやむしろ帰さなきゃ俺たちが危ないから!!!あれは人殺しの目だから!!中二病のマザコンでラスボスとか笑えないから!!」

ドクター「り、立香君、彼を知って」

立香「知ってますけど原作(FF7)やってからを推奨します!!」

ドクター「お、おう」

シュミット(そりゃあ言えないよね・・・そこまで深くやったことないけど、あれはダメな類だと僕も思うよ)

 

 





思ったより短く終わってしまった・・・セイバー・リリィのくだりはやっているとめんどくさいので(主にエミヤとモーガンが)省略しました。あとこれで口調あってたよね・・・?

人選として新たにキャスニキ、エミヤ、セイバー・リリィ、アンデルセンが仲間に入ったよ!やったね!!これでランサー、アサシン、バーサーカー以外は全員います。アンデルセンはカルデアに常駐する予定。
非常に今回ギャグが多かったんだけどどうだったかな?正直物足りない感があるのですが、会話が長続きしないんですよね・・・精進します。

NGシーンは・・・うん、これがやりたかっただけなんだ。ピクシヴではセフィロスが鯖になる話がたまにあるのですが、実際に召喚されたら確実にアヴェンジャーだよなあの人と思いながら書いています。そしてどう考えても人類に絶望しか与えません。主にあの異星生命体のせいで。
ネタが思い浮かび次第、NGシーンとして今後も出していきたいと思います。外部のキャラクター出すだけでこんなにも楽しいんだなぁ・・・。




多分今年最後の投稿になると思います。いよいよ来月で1年が経つわけですが、全然進んでおらず申し訳ない。ですが今のペースでなら、多分2回できるかどうかのレベルですが今後ともよろしくお願いします。

次回はマスターと鯖との交流パートになる予定です。もしくは立香の(復習という名の)勉強会。

次回もお楽しみにー!


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第1回カルデア内部勉強会

はい、予定より1日か2日遅くなりましたどうもオレンです。
現在進行形で定期試験の真っ最中ですが、息抜き代わりに小説投稿です。新年初がこんなに短い話でいいのかと・・・。

みなさんはFGOの福袋を引きましたか?私は始皇帝が来てまず出てきたことに驚き(完全にキャスター狙いでした、まる)、次にイベントの最中で性別:朕というところに驚き、続いて女性鯖のみのクエストで女性陣の中にさらっと紛れ込んでいる始皇帝に腹筋崩壊しました。この人笑いを取りに来てるなぁ・・・。
見事に三章夫婦も出てきたので次のイベントまでガチャは取っておきます。・・・今年の運、全部ゲームで使い切ってそうで不安ですが。

私はFate/zero,Fate/staynight, unlimited bladeworks , apocryphaのアニメは視聴し、Fateの漫画も読みましたが魔術に関して全く理解が追いついていません!なので今回の魔術についての説明に割と(?)捏造を入れている部分もあるのでご了承ください。

では、どうぞ!


 

 

 

 

 「うぅっ………」

 

 どうせこうなるとは思ってたよなんとなく………畜生。

 

  「ま、まあ私も専門の魔術以外はよくわかりませんし、一緒に勉強していきましょう立香さん!」

 

 成績不純だった俺が、まさかここで勉強することになるなんて……!!しかも俺の最も苦手な歴史が関連してるとかまじ勘弁!!

 さっきからキャリスが励ましてくれてるけど逆に胸に痛みが……!

 

  「そこ!さっきからうなだれてないでキビキビしなさい!!」

 

 人形になった所長がこっちを指差してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

 サーヴァントの召喚を終えた俺たちは1日の休憩を挟んで、次の特異点に備えることになった。最初はサーヴァントとマスターの交流会をやろうとガーレンから提案された、のだが。

 

  『ああ、交流会なら勉強をしながらでもできるよね?』

 『………え?しゅ、シュミット?何言って』

  『あまりに歴史を知らない立香君のためだし、キャリスさんも魔術に関しては詳しくないだろう?』

  『え、そ、それは』

  『ならちゃんと、今後のために、勉強していかないとね?』

 

 

 あの時のシュミットの表情は漫画でよくあるマッドサイエンティストみたいな笑顔だった。いや、あれは真っ黒だったよ。

 しかもそれを見てたキャスニキも『ほー、坊主は勉強不足かぁ。ダメだぞちゃんとやらなきゃ』みたいな感じで便乗してくるし!!

 

 ガーレンも苦笑いしてるけど止めないあたりいい性格してるよ、畜生!!

 

  「だ、大丈夫です先輩!私がきっちり説明しますので!!」

 

 マシュが一生懸命俺を励まそうとしているが、それとは反対に俺のテンションはどんどん下がっていく。後輩にも慰められる俺って一体………。

 凹んでいる俺を見て苦笑しつつ、教壇に立って額縁メガネをかけたガーレンが指揮を取り始めた。

 

  「では、早速第1回カルデア内部勉強会を開いていきます!」

  「はい!よろしくお願いします!!」

 

 俺とキャリスの他に講義を受けているセイバー・リリィが元気よく手をあげた。さらっとシャルルマーニュも混じっているところを見て驚いたのは内緒だ。

 

 講師役にはガーレンとシュミット、キャスニキ、そしてモーガンだ。エミヤは何か食堂でやることがあると留守にしており、アンデルセンは早速自室に引きこもっているそうだ。それ以外のサーヴァントは一応部屋に集まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「それではまず、基本中の基本から参りましょう。藤丸立香、魔術というのはどこまでご存知で?」

 「え?えーっと……魔力を使って詠唱とか唱えて、それで科学的にはありえないことができるんだよな?」

  「そうですわ。人為的に神秘や奇跡を再現する術の総称を魔術と言います」

 

 ガーレンはそう言いながらホワイトボードに『魔術』と書き込んでいき、隣に『魔法』と書いていく。その間には=に線が引かれたマークが書かれた。

 

  「世間では魔術と魔法が同一視されますが、実際には違うのです。万能のイメージがあるのだけど、基本的には等価交換で成り立つのです」

 「等価交換?」

  「そう。一見して何の触媒も使わない魔術でも、魔力を使わなければ魔術は使えません。そして自然に干渉する魔術も自然に満ちる大きな魔力なしでは発動することができず、個人でやるには限界があるのです」

 

 おっと、早速わからなくなって来た。俺はノートに魔術について書きながら考える。

 

 とりあえずわかるのは等価交換、つまり何か……それは魔力もだし、触媒とかもそう、それらがなければ魔術ができないこと。また個人でやるにも限界があるということだ。

 

  「魔術と魔法の違いについてですが……そうですわね、キャリス。わかりますか?」

  「は、はい!「魔術」と「魔法」はその時代の文明の力で再現できる奇跡かどうかで線引きされているんですよね?」

 「線引き?」

  「そう。世界のあらゆる事象の出発点となったものを私たちは『根源』と呼んでいます」

 

 そう言いながらガーレンは魔術と魔法の下に『根源』と書き足す。

 

  「『根源』とは……そうですわね、わかりやすくいれば何でも知り得る『究極の知識』といったところでしょうか。全ての始まりであるがゆえに、その結果である世界の全てを導き出せるもの。ありとあらゆる事象はこれから作られたと言われていますわ」

 「えーっと……ってことは何でも知ることができるってこと?」

  「そう。この『根源』への到達を目標とする人種のことを魔術師と呼ぶのです。まあ簡単に言えば学者のようなものですね」

  「とは言っても根源を至る手段に魔術を用いるから魔術師と呼ばれているだけで実際に深い意味はないんだ」

 

 根源への到達を目標とする人種のことを魔術師………、と。

 するとマシュが「あの」とガーレンに声をかけた。

 

  「何でしょう?マシュ」

  「ガーレン先輩、根源などそういった話は先輩には難しいかと……」

  「ああ、そうだね。まだ彼にはそういった話はわからないか」

 

 シュミットの毒ある発言が俺の胸を抉っていった気がした。さらっとそういうことを言ってくれるよなぁこの人!!

 でも事実なので何も言えず、ぐぬぬぬと歯噛みする。

 

 するとそれを見たシャルルがポン、と肩を叩いて来た。

 

  「大丈夫だ、俺もよくわかんなかった!」

 「シャルル………!!」

  「そうだな、んじゃ魔術の使い方を説明しといたほうが後々有効だろ。根源とかそこらへんはまた今度でいい」

 

 そうキャスニキが言うと、所長が「そうね、あまり時間がないもの」とうなずいた。……なんだろう、すでにメンタルがボコボコになってそう。

 

 凹んでいる俺を見てモーガンがクスクスと笑いながら言った。

 

  「そもそも立香はどんな魔術があるかのほうがきっと興味があると思うわ。そのげーむ?というものよりも現実の魔術の方がよっぽど面白いから」

 

 モーガンの言うとおりです。思いっきり言い当てられていて恥ずかしくなった。俺そこまでわかりやすかったっけ……。

 ガーレンも頷いて、ホワイトボードに書かれた字を全て消して、「『魔力』という字を書いた。

 

  「魔術師には魔力回路って呼ばれる、魔術師が体内に持つ魔術を扱うための擬似神経がありますの。生命力を魔力に変換するための『炉』になりますの。最初は眠っているのですけど、一度開いてしまえばあとは術者の意思でオンとオフの切り替えができますのよ」

 「へえー……じゃあ俺の魔力回路は今閉じているってことなのか?」

  「もう君はすでにマシュとの契約時に魔力回路を開いているから、今はオフの状態だね。でも魔術を発動させるためには基本的に呪文詠唱が必要になるんだ」

 

 ああ、やっぱりゲームでもおなじみの詠唱が必要になってくるんだ。

 頷いているとセイバー・リリィがはい!と手を挙げた。

 

  「呪文詠唱と言っていますが、基本的にはどのような詠唱があるのでしょうか?」

  「同じ魔術でも魔術師ごとに呪文詠唱の文句の内容は異なるよ。魔術回路を効率よく起動・作動させる方法の1つとして詠唱が必要になる、いわば自分を作り変えるための決まり文句なんだ。人によってその工程も違ってくる。例えば……」

 

 パチンッ、とシュミットが指を鳴らすと彼の人差し指に炎が灯される。おぉ、あれも魔術なんだ!

 

  「魔力を通すだけで魔術を起動させる一工程(シングルアクション)……要は詠唱なしで発動させる魔術もあるし、1つの事柄を自身の中で固定化する一小節、つまり短く唱えることで発動する魔術行使も存在する。魔術師として成長することで詠唱は短縮されるからこの辺りは全て実力次第だね」

 

 並大抵の魔術が発動するのは難しい、ということか。そう考えながらノートに魔術について書き加えていく。

 キャリスもノートに書き加えていくのを横目で見ていると、だいぶ真剣な表情で書いているのが見えた。

 

 俺たちが書き終えるのを見ると、キャスニキが杖を出して言った。

 

  「魔術ってのには『魔術礼装』って呼ばれるものが存在する。ようは魔法使いの杖みたいなもんだな。役割は2つ、魔術師本人が行う魔術そのものを強化する『増幅機能』と礼装自体が高度な魔術理論を帯び、魔術師の魔力を動力源として起動して定められた魔術を実行する『限定機能』がある」

  「この魔術礼装については今あなたたちが身にまとっているカルデアの制服がそうよ」

 「えぇっ!!?こ、これも礼装の1つなんですか!?」

  「そう。だから大事に使いなさい。その服を身にまとっていれば極寒の地にいても平気な様に仕上げられているんだから」

 

 すげえっ、カルデアの技術にそんなものが組み上げられてんのか……!!ってことはやろうと思えば俺も魔術が使えるかな!?

 

 そんな期待を抱いていると、所長が「ただし!」と俺の考えを遮る様に言って来た。

 

  「当然これにも詠唱が必要になります。よって特異点でも使えるように徹底的に覚えなさい!!今から1時間後にテストします!!」

 「「えぇっ!!?」」

  「あ、リリィはいいのよ?制服着なくて」

  「え、えぇっ……」

  「当然合格点に至らなかった場合は課題を出しますのでよろしく!!」

  「……所長、なんか怒ってない?」

  「現地で参加できないから僻んでるんじゃない?」

  「そんな陰口叩いているあなたたちも特別テストを受けてもらうから!!」

  「えぇぇぇっ、私何も言ってませんわよ!!?」

  「陰険所長………」

 

 ぼそりとシュミットがそう呟くのが聞こえ、嫌な予感がして俺とシャルルはすかさずキャリスとリリィを掴んで机の下に隠れる。マシュもラモラックによって別の机の下に引っ込んでいる。

 

 瞬間、ドォンという音が聞こえ、続いて何かが爆発するような音が聞こえた。それとともに所長の叫び声が聞こえた。

 

  「表に出なさいシュミット!!!あなたさっきからなんのつもりかしら!!?」

  「嫌だなー僕は正論を言っただけだってばー!!」

  「あなた少しは自重なさい!陰口悪口は治せと教授にあれほど言われたはずです!!」

  「そんなの興味ないね!」

  「カッコつけるな!!こら、待ちなさい!!」

 

 ドォン、ドォンという何かが当たる音とともに所長とシュミット、そしておそらく巻き込まれたのであろうガーレンの声が聞こえてくる。この感じだと多分魔術での喧嘩でもしているんだろう。

 

 

 とりあえず今回の授業でわかったことで1つ。

 

 

 「絶対に所長とシュミットを合わせちゃダメだ…………」

  「それに関しては同感です、先輩」

  「マスター元気があるよなぁ」

  「元気があるというか、おちょくってるだけなのでは………?」

 

 

 

 

 

 

 その後、部屋が魔術によってめちゃくちゃになり、何事かと駆けつけてきたエミヤとスタッフに怒られるという事態に発展するのはまた別の話。

 

 

 

 

 人理修復の旅はまだ始まったばかりであり、前途多難な道のりになりそうである。

 

 

 

 





魔術と魔法の説明ってこんなもんですかね・・・ウィキペディアからいろいろと引っ張ってきたんですか立香と同じでよく理解できなかったです。間違っていたらご指摘お願いします。

生徒側にリリィがいるのは、多分マーリンに魔術を教わっていても多分?マークが浮かばせながら学んでると思ったので。シャルルはどこかで本好きだと聞いたことがあるので本好き=勉強もある程度できるのでは?みたいな感じです。ただしセイバーなので魔術についてはからっきし。

ちなみに魔術礼装についても調べたんですが、メディアの杖も礼装に入るんですね・・・それじゃあキャスニキの杖も礼装なのかな?と思っています。Fateは奥が深すぎて私には早かったようだ・・・(遠い目)


次回はいよいよ第1特異点・・・の前に、cmでよくやる予告的なものをやっていこうと思います。Fateのcmがあまりにかっこいいので真似したくなりました・・・・。あくまで大筋の予告なので予定がずれるかもしれません。
そしてそれと同時に、待っていた方々非常にお待たせいたしました、約1年経っての題名変更です。ようやく納得のいく題名ができたので、次回の投稿と同時に変更していきたいと思います。

どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。では、次回もお楽しみに!


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ーPreavvisoー


はい、予告だけなのに前回の投稿から1週間空けてしまったどうもオレンです。投稿が空いた原因は期末テストと風邪です。みなさん、インフルエンザには要注意ですよ!!

原作ではプリズマ・コーズが復刻され、アーツパの要とも言えるクロエが手に入れられるチャンスですね!私は概念礼装狙って爆死しましたよ、ええ・・・(遠い目)


では、予告編どうぞ!


 

 

 第1特異点 『邪竜百年戦争オルレアン』

 

 正式なグランドオーダー初めてとなる舞台は、西暦1431年のフランス。

 

 百年戦争の休止期間中にして、聖女と謳われたジャンヌ・ダルクの火刑からさほど時間が経っていない時代。

 

 しかし、レイシフト先でいきなりのトラブルが発生。

 

 

 「あ・・・あっ、のバカシュミットぉぉぉっ!!」

 

 

 なんとシュミットたちとはぐれてしまうところから旅はスタートしてしまう。

 

 

 ひとときの平和を享受しているはずだったフランス。しかしそこでは邪竜たちの蹂躙が行われていたのだ。

 

 

 現地にいるはずのないワイバーン、キメラを倒しながら彼らが進む中、彼らが出会ったのは一騎のサーヴァント。

 

 抑止力として召喚されたジャンヌ・ダルク。

 

 しかし、今のフランスは悪魔と契約し蘇った、”竜の魔女”ジャンヌ・ダルクによって蹂躙されているという。

 

 一体何が起きているのか。

 竜の魔女とは何者なのか。

 

 

 

 フランスの騎士が参上した時、絶望にあふれた地に希望の光が指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第2特異点『永続狂気帝国セプテム』

 

 

 

 激しい騒乱の末、フランスの特異点を修正した立香たち。

 

 次なる特異点の場所は西暦60年の古代ローマ帝国、皇帝ネロがまだ生きていた時代。

 

 そこではローマ帝国の人間が同じローマ帝国の人間と戦争をするという光景があった。

 

 

 皇帝ネロ・クラウディウスと客将達の前に、すでに死したはずの歴代皇帝が立ちふさがる。

 

 そして聖杯戦争はさらに激化する_____!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第3特異点『封鎖終局四海オケアノス』

 

 

 

 少女は奪われることをを嫌う。

 

 少女は争うことを嫌う。

 

 

 そして、少女は海を嫌った。

 

 

 

 

 

 二度の特異点を乗り越えた立香達。しかし、その矢先でシュミットとガーレンが体調を崩すという自体が発生。

 

 エリート魔術師抜きで行われる次の特異点はなんと海、しかも海賊船の上だった。

 

 

 しかし、特異点が進むたびに恐怖に襲われるキャリス。彼女らしからぬままならない指示に立香たちが疑問を浮かべる。

 

 

 

 彼女の過去には、海賊にまつわる略奪の悲劇があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第4特異点『死海魔霧都市ロンドン』

 

 

 

 1880年。聖杯をめぐる戦いは魔の霧に眠るロンドンへ。

 

 歴史と伝統が石畳の街では人体を蝕む死の霧に包まれていた。

 

 立香以外のマスターたちは霧の毒に倒れ、モーガンの加護なしでは先へ進めない状態に。

 

 唯一マシュの加護のおかげで耐毒体質を得ていた立香はマシュとともに探索を進める。その最中、彼らを襲ったのは小さい銀髪の暗殺者。そして立ちふさがるは何人もの魔術師たち。

 

 

 

 少年少女たちの前に、ついに黒幕がその姿を現す・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第5特異点『北米神話対戦イ・プルーリバス・ウナム』

 

 

 広大な大地で行われていたのはケルト人による蹂躙。それに対抗するは現地に住まう大統領たちとその配下たち。

 

 古代の戦士と機械兵軍団。

 

 双方の血が流れる大地を、白衣の天使と呼ばれたサーヴァントが駆け抜ける。 

 

 

 神話の戦いが、ここに開かれる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第6特異点『神聖円卓領域キャメロット』

 

 

 『ー何を犠牲にしようとも、私は今度こそこの手で、我が王を殺すんだー』

 

 

 第六の聖杯探索は1273年。

 

 多くの人々の信仰のよるべとなる聖地エルサレム・・・の、はずだった。

 

 そこはすでに「あってはならない歴史」が確立されつつあったのだ。

 

 円卓の騎士の殺戮。それを目の当たりにしたガーレンの前に、太陽の騎士が現れ、彼女を連れ去ってしまう。

 

 カルデアに戻されたはずのモーガンはただ一人、彼女を救出するために聖都へ乗り込み、ラモラックは隻腕だったはずの友人と再会する。

 

 

 そして、騎士の口から語られる前日譚。

 

 

 

 「陛下、あなたの思惑・・・私が止めます!!」

 

 

 

 理想を描いた少女騎士は疾る。それは全て______を止めんがために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第7特異点『絶対魔獣戦線バビロニア』

 

 

 舞台は神代。神秘残る最後の時代。

 

 英雄王ギルガメッシュが帰還し、賢王として君臨する繁栄の時代。

 

 しかし、バビロニアの地は三柱の女神と数多の魔獣によって滅亡の危機にあった。

 

 彼女たちは確実に人類を消していく女神たち。

 

 

 

 万全の状態であっても苦戦を強いられる立香たち。

 しかし、追い詰められた状況で少女は賢王すら驚く類い稀な才能を開花させる。

 

 

 「この戦局、私が変えてみせます!!」

 

 

 魔獣巣食うウルクの地で、最大の悪が目を覚まし、軍師がその才を振るう。

 

 

 

 





ちなみに予告が外れる可能性は大です。特に第2特異点と第4・・・印象が薄すぎて改変しようか悩んでいるくらいです。いや、ぶっちゃけ第6特異点以外はほとんど未定なんですけども・・・((

題名のPreavvisoはイタリア語で『予告』という意味です。ちょくちょく外国語を取り入れるのが好きですが、学びたくない部類です。外国語って難しいですよね・・・うっ、頭が。


というわけで次回はいよいよ第1特異点に突入です。早速予告の時点で不吉な匂いしか感じませんが、みなさんどうぞお楽しみに。

それでは、また次回!


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第一特異点:邪竜百年戦争
邪竜百年戦争 Interlude



皆さんバレンタインは過ぎたけど楽しかったでしょうか、私はバケツ並みのパフェを食べて死にかけたどうもオレンです。場のノリって、怖い。

肝心のバレンタインイベントは、FGOで思いっきり楽しませていただきました!主にフルボイス、トリスタンの残念さが漂うボイスやらバレンタイン激重四天王の意味を初めて知った時の衝撃など盛りだくさんでしたね。ですが高難易度クエストだけはクッソ難しかったです・・・。

今回は第1特異点に入る前のプロローグになります。ちょっといつもより短くなってしまいましたが、キリが良かったんです・・・!!

では、どうぞ!




 

 

 俺は目を開ける。見えたのは白い天井だった。

 現実だ、何もかも。

 

 人類が滅亡して、生き残っているのは俺やカルデアの人々、それから俺と同じマスターたちしかいない。

 あの赤く燃え盛る部屋は決して嘘でも何でもない。レフ教授が言っていた人理焼却も嘘ではなく、本当のこと。

 

 今でも思い出す、目の前に黒い影のサーヴァントが消えていくところ。

 

 

 アニメやゲームとは違う、本物の殺し合いだった。それがこれからも続く。

 そう、命のやり取りが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「立香君おはようございまーす!!」

 「どうわあっ!!?」

 

 突然、耳元で何かが弾ける音がして飛び上がった。クラッカーのような音だった。

 慌てて辺りを見回して部屋の入り口を見た。黒いマントを羽織った魔術師が立って、本を開いて人差し指をこちらに向けていた。

 

 「………モーガン、一体なんのつもりだよ」

  「ふふっ、目覚ましよ。ドクターが呼んでも全然起きないから」

  「ちょっとモーガン!何をしてますの!?」

 

 その後ろから、同じマスターであるガーレン・ブリーテンリッヒが入ってきた。が、昨日の見慣れた制服姿とは全く違う姿をしていた。

 

 「……ガーレン、どうしたの?それ」

  「ええ、持ってきていた魔術礼装ですの。所長に許可をもらって、お披露目ができましたわ!」

 

 

 彼女が身にまとっていたのはまるでラモラックが着ていたような白と黄緑色を基調とした騎士のような服だった。ただ鎧をまとっているというわけではなく、ファンタジーに出てきそうな軽い服装に緑色のショートマントを羽織り、両手両足には騎士がつけていそうな籠手と具足をつけている。腰には細剣のような細い剣がある。

 

 ……………………なんというか、

 

 「騎士っていうか、傭兵………?とか、そういう感じだな」

  「うっ、ひ、否定はしませんわ・・・お兄様たちから魔術礼装をいただいたのはよかったのですが、なぜかこんな軽装でした。騎士であるのならば防御を高める鎧をつけるべきでしょう!!」

  「女性が鎧をつけるのもどうかと思うわよ?マスター」

 

 全くもってモーガンの言う通りだ。女性でラモラックのような鎧を着る・・・重くないんだろうか。

 

 けれど今日は特異点出発なのだ。専用の魔術礼装を着るあたり、ガーレンも気合が入っているんだろう。

 俺も頑張らなくては!と、自分で頬を叩いて起きあがってパジャマから着替えようとして・・・気がついた。

 

 「…………あの、お二人とも?いつまでいるんだ?」

  「え?」

  「え?」

 

 僕が声をかけると、心底わかってないような顔をするガーレンと笑顔を向けたままわざとらしく首をかしげるモーガン。……どう考えてもモーガンはわかってやってるよな、これ。

 

 「いや、着替えまで見る気なのかなーって…………」

  「……………………………………はっ!!」

 

 俺がそう指摘すると、ガーレンがようやく気がつき、みるみると顔を赤く染めて、

 

  「し、失礼しましたわ!!!」

 

 そう叫んで部屋から出て行ってしまった。………俺、悪くなくね?

 そういえばもう一人いたよな、とモーガンに目線を向けてみれば、モーガンはピースサインをして笑っていた。

 

 「あの、部屋でてってくれます?」

  「あらっ、そんな反応をするなんてもしかして立香君ってばどう」

 「うるさいです!!!」

 

 

 俺はそばにあった枕を投げてモーガンを追い出した。モーガンは出て行くところでやーん!と変な悲鳴をあげていった。

 ………なんというか、モーガンは本当に変な人だ。

 

__________________________________

 

 

  「遅いわよ新入り!!」

 

 管制室に入って早々所長から怒鳴られた。管制室にはすでにドクターやキャリス、シュミット、マシュたちの姿がある。ニマニマと笑っているモーガンの後ろには頬を赤らめたガーレンの姿もあった。

 

 「す、すみません………」

  「それはいいんだけど立香君、君ガーレンに何かしたのかい?さっきから様子がおかしいんだけど心当たりはないかな?」

 

 シュミットが穏やかな顔で俺に話しかけて来た。本当に何気なく聞いて来てるつもりなんだろうけど、後ろから妙な黒いオーラが漂ってくるのは俺の気のせいじゃないはず。

 なんかマシュの目線も痛いし、キャスニキとモーガンはニヤニヤしてるし、俺は何1つとして悪くないよな!!?

 

  「皆元気そうで何よりだね。よし、それじゃあ早速ブリーフィングを始めていくよ」

 

 ドクターはそう言ってパネルを操作し、カルデアの管制室のメインパネルを展開した。正面には様々な情報が映し出され、何らかの数値にグラフが描かれるとともに、一番上には『フランス・オルレアン』と書かれた。

 

  「今回修正する特異点はフランス、年は1431年となる」

  「おぉっ、俺の国だ!!」

  「その年って確か、百年戦争の最中だね。ジャンヌ・ダルクが処刑された日でもあるね」

 

 ドクターの言葉にシャルルとシュミットが反応する。俺はよくわからなくて、マシュに「百年戦争って何のこと?」って聞いた。

 

  「マスターにわかりやすく説明すると、まず百年戦争は簡単に言ってしまえばイギリスとフランス間との戦争です。もともと王位継承問題に始まって複雑化したものが、領土問題にまで発展した戦争のことです」

 「え、100年も戦争していたのか!?」

  「いいえ、何度か休戦していますし、今回レイシフトする年もちょうど休戦中のはずですわ。ジャンヌ・ダルクはフランスを救国した聖女として知られていますの。彼女は普通の村の娘だったそうですが、ある日神様のお告げを受けてフランスのために救国の旗を掲げ立ち上がり、劣勢だったフランス軍の勢いを取り戻し講和にまでこぎつけたと言われていますの」

 

 俺が驚くとマシュに続くようにガーレンが説明してくれた。するとシャルルがあっ、と何かに気づきガックリと肩を落とした。

 

  「どうかしましたか?シャルルマーニュ」

  「あ、いや………実際に生きてるジャンヌ・ダルクに会えるのかなぁって思ってたんだけど、そうか。死んでるんだよなぁって思って」

  「シャルルさんの時代はもっと後になりますから、シャルルさんはすでにご存知なんですね」

  「ああ!聖女に会えるかもしれないって考えると楽しみだったんだがな、いやあ残念残念」

 

 シャルルがうーん、と残念がっているとドクターが咳払いをして話を切り出した。

 

  「君たちにやってもらうことは2つ。1つは特異点の調査と修正、その時代における人類の決定的なターニングポイント。それがなければ我々はここまで至れなかったっという人類史における決定的な事変だ。聖杯は膨大な魔力を蓄えた遺物で、レフは何らかの形でそれを手に入れ悪用していたと僕らは考えている。これを回収しなければ修正された歴史が再び特異点化する恐れもある。それが第二の目的だ、ここまではいい?」

 「は、はい………」

 

 俺は少々不安になりながらも応える。キャリスも不安そうな表情をしているが、ガーレンとシュミットは慣れているからかキリッと真面目な顔をしている。やっぱりエリート魔術師はそういうところも違うらしい。

 

  「それともう1つやってもらいたいことがある。霊脈を探し出して召喚サークルを作って欲しいんだ」

 「召喚サークル?」

  「レイシフトは基本的に一方的でかつ不安定なのよ。時流の流れや待機中の魔力などの様々な要因で通信すら不安定になりかねない。それを安定させるために拠点を作るのです」

 「あぁ、ベースキャンプってことか!」

  「なぜそこは通じるのかしらこの新米魔術師………」

 

 要は某狩りゲーでいう拠点を作るんだな!と納得しているとなぜか所長が握りこぶし(両手指はないけども)を作りながらこっちを睨んでいた。

 まあまあ、とドクターが宥めるとふんっと顔をそらして所長は言った。

 

  「とまぁ、ブリーフィングはこんなところよ。今回はきちんとあなたたちのコフィンを用意してあります。レイシフトは安全かつ迅速に行うことができます。向こうについたらこちらは連絡しかできないため、その時代に対応してからやるべきことをやりなさい。……健闘を祈ります」

 

 そう締めくくり、俺たちはコフィンに入ろうとして、隣のコフィンに入っていくシュミットの姿を改めて見た。

 シュミットもガーレンと同じく、カルデアの制服とは違う服装をまとっていた。昨日まで所長が着ていた礼装とよく似ているけど、中の服は所長の黄色とは違う、赤色だし、まとっているショートマントには金色の線が施してあった。

 

 キャリスは服装の変更とかはしてなかったみたいだけど、見慣れないポーチを腰につけていたし、皆きちんと用意してきているんだなと場違いなことを俺は考えていた。

 

 

 

 特異点先で聞いてみるか、とコフィン内で考えていたらどこからか機械じみた声が聞こえてきた。

 

 

 

 

  『アンサモンプログラム スタート。霊視変換を開始 します』

 

  『レイシフト開始まで あと3、2、1………』

 

  『全行程完了。グランドオーダー 実証を 開始します』

 

 

 

 





我が家の藤丸君はちょっと臆病者の一般人です!多分一般感性は入っている・・・はず。

原作との変更点として、まず一部の人は別の衣装に着替えています。ガーレンとシュミットは自分用の魔術礼装ぐらいは持ってきていそうだなぁと思っていたところで、原作でも主人公たちは着替えてたし事前に着替えることも可能だよね!ってことで。描写が下手くそなのは本当にすみません。
シュミットは男主人公の魔術協会の服装、ガーレンは騎士ベディヴィエールの服装をイメージしています。
ガーレンがなぜ細剣を持ってきているのはまた次回。ちなみにガーレンにはお兄様(少なくとも複数)いることが判明していますが、彼女は兄弟でも末っ子になります。いつかその話も掘り下げていけたらなぁと思います。

次回はようやく特異点へ入っていきます!・・・が、嫌な予兆が見えてきています・・・・?


次回もお楽しみに!



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フランスの異変


みなさんどうも、最近デビルメイクライなるスタイリッシュアクションゲームを買ったせいで危うくこっちを忘れかけたオレンです。スタイリッシュアクションゲームたーのしー!!そして操作が難しいー!!誰か同士はいませんか!

まあそれは置いといて、先日からFGOではイベントが続いていますね。プリズマコラボ復刻にバレンタインデーイベントにCCCコラボ復刻にホワイトデーイベント・・・運営側はユーザーの財布を死なせたいのかなと思ってしまいます。ホワイトデーに念願のプロトアーチャー来てくれるんじゃないかなって思ってたけど見事に外れました。プロトコラボ早よ!!そしてプロトアーチャー早よ!!


原作はストーリーに進まずそんなこんなな状況ですが作中はまだ序盤の序盤。
では、本編をどうぞ!




 

 

 急な浮遊感と加速感覚の後に穏やかな風を感じて、目を開けるとそこには広大な草原が広がっていた。辺りを見回してガーレンやキャリス達も無事に来ていて安心した。

 

 「よかった、無事につけたみたいだね」

  「は、はい、安心しました………」

 

 キャリスが大きくため息をついてホッとしており、ガーレンは大きく伸びをしている。他のサーヴァント達もいるみたいだし、安心した。

 

  「フォウ!」

  「きゃあっ!ふぉ、フォウさん!!?」

 

 するとマシュの背中からぴょん、と飛び出して来たものがあった。フォウだ。

 

 「またついてきたのか?こいつ」

  「コフィンにでも紛れ込んでいたのでしょうか?」

  「というより、この子何科の動物でしょうか?」

  「職員の誰かが作った魔法生物、というのがドクターの見解らしいですわ。であれば、レイシフト適性を持っているのも納得がいくかと」

 

 ってことはもしかしたらフォウみたいな動物がカルデアの中に結構いるってことか?それはそれで嫌だな………。

 

  「あ、あの、先輩?上のあれを………」

 

 すると盾を持ったマシュが指で上を指して、俺達もつられて上をみあげた。

 そこには空にかかった極大な光の輪のようなものがあった。

 

  『やあ藤丸君、キャリスちゃんにガーレンちゃん、どうやら無事フランスにつけたようだね……って皆してどうしたんだい?』

  「ドクター、映像を送ります。あれはなんですか?」

 

 マシュの言葉の後、ドクターの驚いたような声が聞こえてきた。

 

  『光の輪?いや、衛星軌道上に展開した、何かの魔術式か・・・?』

  「おいおい、あんなの俺の師匠でも無理があるぜ」

  「モーガン、何かわかりますか?」

  「うーん、残念っ、私にもわからないわねー」

  「私の師匠にもわかりそうにないです・・・」

 

 どうやら一番魔術師っぽいキャスニキやモーガンも心当たりがないらしい。

 同じキャスターならアンデルセンはどうだろう?と思ってシュミットの姿を探してみたけど、今気がついた。シュミットやシャルル、アンデルセンの姿がない。

 

 「……あれ、そういえばシュミット達は?」

  『あーうん、その話をしに来たんだよね藤丸君………』

  「何かありましたの?」

 

 ドクターが画面の向こう側で何か気まずそうにしている。首を傾げていると、エミヤとキャスニキが何か察したような顔をしている。モーガンはもう笑いをこらえているように腹を抱えている。

 これは、まさか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『いや、実はシュミットだけかなーり遠い場所にレイシフトしてしまったみたいで……うん、レイシフトは失敗したみたいなんだよねぇ』

 「「えええええええええええええええええええっ!!!!???」」

  「あんのっ………バカシュミットぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 騎士姫に似ても似つかわしくない、ガーレンの珍しい怒声が草原に響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

  『……まあレイシフト率83%って数値でもこうなるわよねー』

 「なんだい?それは僕に文句でもあるのかな?」

  『別に何も。ただ藤丸に比べたらしょうがないわよ。ガーレンやキャリスとも違って彼100%だったし』

 「ふうううん………」

 

 レイシフトしてすぐ気づいたことは、立香君達がそばにいないことだった。光の輪もこちらで確認しているけれど、それよりもかすかに聞こえて来たガーレンの声(多分カルデアに届いた声)があまりにもひどすぎてちょっと落ち込みそう。

 バカシュミットって僕悪くないんだけど!レイシフトに関しては僕悪くないよね。

 

 っていうか!!

 

 「彼そんなレイシフト率高かったの……」

  『ええ………半分でも、いいえ半分以上でも!わけてほしかったわ!!』

 

 人形姿の所長が思いっきり悔しがるところを見るのはかなり楽しいんだけど、立香君にそこまでの適応力があるとは僕も正直思わなかった。

 彼の経歴から見ても普通の一般人だというのに、適応力だけは他と違って段違いに高いとは。魔術協会が聞いたら黙っていないだろうなも思う。

 

 そこまで考えていると、偵察に向かわせていたシャルルマーニュがこちらに戻って来た。ちなみにキャスター・アンデルセンは偵察を放棄して手帳に何かを書き上げているところだ。

 

  「マスター!ここから北西に街があるみたいだぜ。行ってみるか?」

 「情報も集めなければなりません。所長、合流は後でも構いませんか?」

  『ええ、構わないわ。藤丸たちも別の近い街へいくところだし、違う情報が集められるかもしれない。迅速な行動を頼むわよ、シュミット』

 「はいはい。それじゃあ案内してくれ、シャルル」

  「あいよ!!」

 

 僕は通信機を切り、シャルルの案内に従って森の中を歩き始めた。すると今まで黙っていたアンデルセンがムスっとした顔でメモ帳を閉じた。

 

  「つまらん!!」

 「え?」

  「もっと刺激的な展開が欲しいぞマスター!ここはレイシフトすぐに魔物に襲われるというトラブルだろう!!」

 「いや知らないよ。というか1431年代にモンスターがいるとは思えない。これが幻想種のいるアーサー王とかの時代ならまだしも、この時代は歴史的事実が明確な方だからね。まあ、特異点となっている以上何が起こるかはわからないけれど」

  「はんっ、そのうちドラゴンが現れるかもしれんぞ?」

 「さすがにそこまで飛躍的にはならないよ」

 

 幻想種。

 多くの伝説・神話に登場する生物のことだ。竜という種はその中でも頂点に君臨する。ただ召喚すら困難な部類に入る上、手のつけられない相手だ。名のある個体ならサーヴァントでは太刀打ちできない位だと本で読んだことがある。

 そこまで考えて、いいや、と思った。レフ教授、カルデア以外の世界を滅ぼし、歴史まで歪めさせた男。聖杯の力を使えばなんだってできそうだ。

 

 すると突然わしゃわしゃと頭を撫でられる感触を感じた。見上げるとシャルルが笑ってこっちを撫でていた。

 

  「ま、難しいことは考えずにいこうぜ、マスター!!そういうところはカッコ悪いぜ?」

 「言うね。この程度で恐れていてはガーレン達に申し訳が立たないだろう」

  「惚れた女にいいところを見せたいか。せいぜい思いが実るといいな!」

 「当然」

 

 

 

 

 

_________________________________

 

 

  「シュミット………こういう危機的状況に限って本当に空気読みませんわよね……!!」

  「お、落ち着いてくださいマスター……!」

 「はははは……」

 

 シュミットがレイシフトの失敗で俺たちとはかなり遠い地点に到着したことをドクターから教えてもらったガーレンはなぜか頬を膨らませていた。多分、一緒にいられないことへの不服なのか、それとも一人だけ単独行動をとっていることへの不服なのか俺にはわからないけど、とにかく刺激したらまずいということだけはわかった。

 

 

 

 現在俺たちは到着した地点より少し近かった村……といっても、何者かによって焼き払われた『ドンレミ村』という場所から離れた街『ヴォークルール』にやってきていた。

 

  「オルガマリー所長の話ではシュミットさんも別の街で情報を集めているんですよね……大丈夫でしょうか………」

  「特に何事もなければいいけどそう簡単にはいかないでしょうね」

  「ああ、見てみたまえマスター」

 

 エミヤの言われた方向を見ると、兵士たちであろう人たちが傷だらけになっているのが見えた。砦らしきところはあちこち崩壊しているおり、壁も崩れているところが見えた。

 

 「あれ、負傷兵って言うんだっけ……」

  「今は戦争中ではないはずです。1431年、フランス側のシャルル七世がイギリス側についたフィリップ三世と休戦条約を結んだはずです」

  「小競り合いはそれなりに多いはずですけど……」

 

 

 

 

 

 すると一人の兵士が俺たちに気づいたのか、武器を構えて何か他の兵士たちにに叫び始めた。

 

  「De nouveau, des personnes suspectes!(また怪しいやつらが来たぞ!)」

 「え!?」

 

 その兵士の言葉とともに他の兵士たちもこっちを取り囲み始めた。

 

 「え、なにいってんだ!?」

  『あ、ちょっと待ってくれ。自動翻訳機能つけるの忘れてた!!』

 「えぇぇぇっ!!?」

  「ち、違います!私たちは敵じゃありません!!」

  「まずったな、峰打ちしておけばいいか?」

  「先走るなキャスター!」

  「どうする?マスター」

 

 向こうが完全な警戒態勢になって俺とキャリスがどうにかして誤解を解こうとうろたえていると、ガーレンが前に出て一人の兵士の前に立つ。

 

 

 「Nous sommes en voyage. Pourriez-vous me passer?」

 

 

 突然の流暢なフランス語が出て来て俺とキャリスは揃って?マークを浮かべた。

 ガーレンはそのままなにやら兵士たちと会話を始めた。

 

 「……えっと、なにをいってるかわかる?皆」

  「さ、さあ……私やラモラック卿はブリテンの出ですので……」

  「どうやら旅人だとはいっているようだが、それ以外は無理だ」

  「俺もだ、訛りがなさすぎてわからん」

 

 すると兵士が何かいった後、周りを囲んでいた兵士らしき人たちは多少警戒を残しながら剣を下ろし、砦に戻って行った。

 

 俺もここへ来られる程度には英語は習っているし、キャリスもそれなりにできる方だと思う。サーヴァントたちはどうかわからないけど、けどあそこですぐさまフランス語はできないと思う。

 

 兵士たちが戻ったあとガーレンが俺たちの方へ戻って来た。

 

  「一応旅人ということにして戦闘は回避しましたわ!」

  「す、すごいです……マスターはフランス人なんですか!?」

  「いいえ、私のお兄様フランスに留学していたことがありましたの。それで一時期お兄様に伝授してもらいましたの!」

  『う、うん……カルデアの自動翻訳を起動する前に話が終わっちゃったから全部は把握してないけど、それでも土壇場での流暢なフランス語はさすがだよ。名門ブリーテンリッヒ家は魔術師の中でも秀才だとは聞いていたけどここまでとは驚いたなぁ』

  「ああ、すごいな!」

  「ほ、褒めてもなにも出ませんわよ!」

 

 尊敬しているラモラック卿に褒められて嬉しいのか、頬を赤らめる。キャリスはおどおどとしたがら言い出した。

 

  「え、えっととにかく今は事情を聴きましょう!今なにが起こっているのかわかれば、聖杯が関わっている手がかりもつかめるかもしれません!」

  「キャリス先輩に賛成です。今はフランス軍の兵士たちについていって話を聴きましょう」

 

 マシュの言う通りだ。状況を把握するために、俺たちは兵士たちに続いて砦の中へ入っていくのだった。

 

 





現在長期の春休みなので原稿を書くどころかまともに文章を書くのが久しぶりすぎて感覚を取り戻すのに時間がかかりました・・・定期的に何か書いておかないと本当にダメになりますね、これ。


補足説明としてシュミットは魔術適正が他3人に比べて高い割にレイシフト適正だけ他4人より低いという点があります。どれだけ高ければ完全にレイシフトできるんだろうと考え、原作では立香は100%だったのを考えて他3人はもうちょい下げておこうと思いました。Aチームは100とは行かずともレイシフト率がかなり高いと考えたのですが、実際どうだったんだろう・・・。

ちなみにアンデルセンのことはしょっちゅう忘れます。多分この人、カルデアにずっと引きこもっているとしか思えないんだよなぁ・・・。大丈夫です、ちゃんと活躍はありますから(多分)

今回は翻訳機能に大変お世話になりました。フランス語が難しスギィ!!

最後に、ガーレンには、フランスに留学していた兄の他にもう一人います。多分今後の回想や話にしか出て来ないと思います。が、作者的にはガーレン一家の設定がかなり楽しいのでどっかで出す、かも・・・・。


次回は事態の把握と戦闘に入っていきます。シュミットはしばらく引っ込みますが、ほか二人の魔術も見ていただきたいところ。
次回もお楽しみにー!!


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ヴォークルールの襲撃



皆さん新学期はいかがでしょうか?オレンです。
新学期が始まって戸惑うことも多いでしょう。実際私も新生活には慣れきってません。毎週のレポート発表は緊張するんだよー・・・。

小説の進行状況(と言う名のやる気)もかなり停滞してきていますが、新章公開も近いと予想して頑張っていきます!FGOのcmやbgmをエネルギーにして!!

今回はフランス最初の戦闘シーンも込みです。では、どうぞ!




 

 「ひどい、有様だ………」

  「まったくですわ………」

 

 俺たちは街『ヴォークルール』にいる兵士やどこからか避難してきたのであろう町の人たちから話を聞いていた。

 

 彼らの話によれば、処刑されたはずの聖女と呼ばれた『ジャンヌダルク』が蘇り、数万のドラゴンを引き連れてフランスを蹂躙しているという。フランスの国王であるシャルル7世が殺され、国家機能は麻痺していて、各地で抵抗は続けていても一方的な虐殺になっているという話だった。

 

 「なあ、竜を使役するってありえないことなのか?」

 

 俺が歯噛みしているガーレンに聞くと、ええ、とうなずいた。

 

  「私たち魔術師の間では多くの伝説・神話に登場する生物を「幻想種」と呼ぶのだけど、竜という種はその中でも頂点に君臨するのよ。名前のある個体はサーヴァントでも太刀打ちできるかわからないのだけど………」

  「問題は、そもそも15世紀のフランスには竜なんて存在しないはずなんです。つまり、聖女ジャンヌ・ダルクは竜をこの時代に呼び寄せたのかもしれません」

  「つまり、聖杯はその聖女が持ってるってことか」

 

 ガーレンに続いて、キャリスとラモラックが声に出す。

 あまりの惨状に俺は俯くが、ふと疑問に思ったことを俺は口に出した。

 

 「なあ、そのジャンヌって人が蘇るってさ、魔術でもできるのかな?ほら、黒魔術ってこう、生贄を出して死者を蘇るーなんてゲームとかでよくあるけどさ」

  「そ、そうなんですか?私はゲームに詳しくありませんが、魔術でもできるにはできるそうですが………」

  「はっきり言えば、不可能だろうな」

 

 マシュの話を遮るように、周囲の警戒をしていたエミヤが割り込んできた。

 

  「古来から死者の蘇生は試みられてきたが、完全な成功には至っていない。わかりやすいのはフランケンシュタインとかだな」

 「えーっと、フランケンシュタインって科学者が生み出したものだっけ?」

  「そうだ。加えて、古代でもドラゴンの使役は行為の魔術とされていたからな。だが、聖杯があれば可能だろう」

  『うわーん、全部説明されてるー!!僕の立場がないじゃないか!!』

 

 通信機から涙声でつぶやくドクターの声が聞こえてきて俺は苦笑する。

 けど聖杯って死者の蘇生もできたりドラゴンも召喚できたりってある意味チートだなぁ。

 

  「それにしても聖杯が絡んでいるとなるときっと、サーヴァントにでもなっているのかしら?ほら、『アヴェンジャー』クラスとかで召喚されているかもしれないわ!」

 「あゔぇんじゃー?」

 

 聞き慣れない言葉に首をかしげると、まさかとガーレンが肩をすくめた。

 

  「まさか!あれは特例中の特例ですわモーガン。その特例が召喚されるなんてありえないと思いますけど……」

  「いいえ、ありえるわよこれは。ジャンヌは確か最期は魔女と罵られて死んだのでしょう?聖杯も絡んでいるんだし、本当にやってきてもおかしくないわ!」

 

 モーガンはなぜかやたらワクワクしながら言ってた。さっきからモーガンが話を聞くたび面白そうにしているのがやけに気になる。一体何があったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、通信機から慌ただしい声が聞こえてきた。それと同時にサーヴァントたちも何やら身構えて上を見上げる。

 

  『待て!急速に接近してくる反応がある!!しかも多いぞ!!』

  「敵襲!敵襲ー!!」

 

 瞬間、馬に乗っていた兵士が声を張り上げる。俺たちもつられて空を見上げると、ドラゴンみたいな奴らの群れがこっちへ襲いかかってくるのが見えた。

 

 ガーレンがそれを視認すると、突然のことで固まっていた俺とキャリス、そして他のサーヴァントたちに声をかけた。

 

  「皆さん迎撃しましょう!ここにいる人たちに手出しはさせません!!立香、キャリス、指示を!」

 「え、う、うん!マシュはキャスニキにワイバーンの群れが来ないようにタゲをとって!!キャスニキはその間に攻撃してくれ!」

  「はい!戦闘を開始します!!」

  「おうよ!」

  「え、えっと、エミヤさん!数はわかりますか!?」

  「おおよそ60だな」

  「かなり多いが、だが面白い!本物のドラゴンはまだかなぁ!!」

  「無茶はしないでください!!ラモラック卿はえっと、戦場を撹乱してください!エミヤさんは高い場所から弓の攻撃をお願いします!!」

  「おうよっ!!」

  「了解した」

 

 ガーレンの掛け声でサーヴァントとマシュが武器を構える。俺はすぐにマシュにタゲ取りを、キャスニキにマシュの援護を指示した。

 キャリスもエミヤとラモラックに指示を出していく。

 

 するとガーレンが腰のレイピアを抜き、小さく何かの詠唱を唱えるのが聞こえた。

 瞬間、レイピアを真っ白な光が覆い、光り輝く光剣と化した。

 

  「マスター!その魔術はなんですか?」

  「ただの強化魔術ですわ。ですが、この魔術礼装は一味違いましてよ!『Slash(斬れ)』!」

 

 短く唱えレイピアを突くと、レイピアの先に光が集まり光線となって重なっていた数体のワイバーンの翼に穴を開けた。

 

  『す、すごい!!ワイバーンに傷をつけるなんてすごいよ!』

  「今のうちにお願いします、アルトリア!」

  「は、はい!せやぁぁぁっ!!」

 

 アルトリア・リリィが飛び上がってワイバーンに剣を振り下ろして攻撃を加えていく。モーガンはそれをふふふ、と笑いながら見て、自らも杖を出す。

 

  「本当に面白くなってきたわ。私もちょこーっとだけ本気を出すわね」

 

 モーガンが小さく杖を振ると、彼女の目の前に青色の魔法陣が現れいくつもの氷が放たれる。氷はエミヤの攻撃をすり抜けてきたワイバーンの群れにぶつかるとたちまち凍りつき、まともに体がうごかせなくなったまま地上に落下した。

 その隙をついてラモラックが槍を突き刺し、続いてキャスニキのルーン魔術がぶつかる。

 

 あんな芸当をできるなんてさすがはエリート魔術師だなぁ、と感心していたら悲鳴が聞こえて慌てて振り返った。

 

  「ママ〜!どこー!?」

 「っ!!?」

 

 子供が泣きながら歩いているところを見て、俺は息を飲んだ。それに気が付いたのか一頭のワイバーンが子供に襲いかかるのが見えて、俺はいてもたってもいられず駆け出した。

 

  「先輩!!?」

  「立香さん!!」

 

 マシュとキャリスの声が聞こえたけど、今の俺にはそんなもの目もくれなかった。

 どうにか子供の前に出ることはできたけど、すでに鉤爪をこちらに向けていて、せめて子供だけでも守ろうと子供を抱きしめて屈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「させません!!!」

 

 途端、背中を押すようにとても強い風が後ろから吹き荒れた。おそるおそる後ろを振り返ると、ドラゴンの腹わたを貫くように槍……?いや、旗?を突き刺した人物がいた。

 

 金髪に、ボロボロのマントを羽織った女性だった。どこかで見たことがあるような顔をしていたけど……どこか、この世の人間ではないみたいだった。

 

 もしかして彼女は……、

 

 

 

 「君は、サーヴァント……なのか?」

  「大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「先輩!お怪我はありませんか!!?」

  「ったく、無茶をするぜ!!」

  「なぜあのような無茶をしたのですかもう!」

  『あああああヒヤヒヤさせないでくれ立香君!!』

 

 ワイバーンの群れとの戦闘が終わって、金髪の女性の「一旦街から離れましょう」という言葉通りに俺たちはウォークルールの人目のつかない郊外まで来ていた。

 

 

 とはいえ、子供をかばって危うく死にかけた俺は他のサーヴァントやマスターから説教を受けていた。さすがに子供をかばうのは無茶があったようで、皆の顔には心配と呆れの表情が浮かんでいた。

 

  「まったくもう、無茶をするのね立香」

  『ああ。ちゃんと言っておくけど、君たちはこの時代では死んではならない人間だ。特異点というのは他の時代から切り離され、隔離された時代。修復すればそこで起きたすべてのことがなかったことになる。その時代の人間が死んでも問題はない。今ここで死んでいけないのは君たちなんだよ』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが呆れと論すような声で話してくる。

 確かにこの時代を修復すれば死んだ人も元に戻るかもしれない、けど俺は。

 

 「………死なせたくないんです。それじゃ、ダメですか?」

 

 そう、ただそれだけ。目の前で消えていくかもしれない命を俺は放っておけなかった。

 

 そう言うと、キャスニキがやれやれと言った感じで俺の頭を乱暴に撫でてきた。

 

 「わわわっ!」

  「ま、お人好しもいいところだが今度は気をつけろよ。なんのためのサーヴァントなのか、ちゃんと考えるこった。あと、嬢ちゃんとキャリスにはちゃんと謝れよ。すでに泣きかけてる」

 「あ」

 

 キャスニキに言われて二人を見ると、マシュはまだ涙をこらえているものの、キャリスはどばーっと滝のように涙を流し続けていた。

 

  「べ、別に私は泣いていませんクー・フーリンさん!!」

  「私も別にっ………うわあああんっ、心配しましたー!!」

  「まあ、マスターのことも考えて今後は行動を控えたまえ、藤丸立香」

  「はい!マスターたちを守るのが私たちの役目です!」

 「はい、すみませんでした」

 

 エミヤとリリィにトドメの言葉を言われ、俺は素直に頷いた。

 

 話が終わったのを見計らったところで、ガーレンがこほんと咳払いをして先ほど助けてくれた金髪の女性を見た。

 

  「それで、あなたは何者なんですの?急いで郊外へ出てくださいと言われて街から離れて来ましたけども……」

  「すみません、言うがままについてきていただいて。故あってあの場では顔と真名を晒すことはできませんでした。ここならば他の人もいない、大丈夫でしょう。私はサーヴァント”裁定者”『ジャンヌ・ダルク』です」

 「「「「!!!」」」」

 

 ジャンヌ・ダルク……まさか、今回の黒幕の!?

 思わず俺とマシュが身構えると、それを遮るかのようにガーレンが前に出た。

 

  「ワイバーンたちを連れて来たのはあなたですの?」

  「いいえ、違います。私がこの時代に現れたのは、数時間前。なので物理的にもフランスを襲う竜の魔女にたり得ませんし、もちろんそのような記憶もありません。その…私の記憶が正しければ、の話ですが」

  「なぜそのような曖昧な言い方をするのですか?」

 

 リリィが首を傾げて聞くと、通信機からドクターの声が聞こえて来た。

 

  『彼女の霊基………存在が不安定だからだろう。聖女ジャンヌ、あなたの能力は軒並み低くなっている。本来持っているスキルや知識も使えなくなっているんじゃないか?』

  「理由はわかりませんが、おそらく。お恥ずかしい話ですが、自分が英霊であると言う自覚が薄く、まるでサーヴァントになりたてのようです」

  「ジャンヌ、あんたの目的は一体なんだ?」

 

 ラモラックがそう聞くと、ジャンヌはまっすぐ見据えて答えた。

 

  「再びオルレアンを解放し、竜の魔女を排除します。啓示はなくとも、ここで目を背けるわけにはいきません」

 

 気合の入ったジャンヌの言葉に、俺達は顔を見合わせて頷いた。

 

 

 「それじゃあ次は俺たちの番ですね。俺は藤丸立香って言います。話を聞いて信用してもらえたら、俺たちと一緒に戦ってくれますか?きっと、俺達とあなたの目的は一緒だと思います」

  「……わかりました、話を聞きましょう」

 

 

 

 





今回、というかしばらくは漫画を参考にしながらハイスピードで進めていく予定です。早く1章から3章を終わらせたい欲が出て来ていますが、どの章もかなり魅力的な場面もあるのでそこを中心に進めていきます。


ドクターの出番をさらっと奪っていくサーヴァント達の図。キャラをバランスよく出すのって難しいって改めて思いました。

何度考えても雑魚戦って書くことが案外少ないですね。マスター達ってどうやって指示出してるんだろうと思いながら書いています。戦闘描写についてはサーヴァントはゲームでの戦闘描写を、ガーレンとモーガンは当然ながらオリジナルです。リリィの戦闘モーションの変更まだかなーとか思っていますが、多分インビジブルエアとかはまだ使えないと予想。

ガーレンは強化魔術を中心とした剣術とそれを組み合わせた魔術が得意です。やろうと思えば擬似アルトリアみたいな攻撃もできます(いや、武器的にベディヴィエールかな?)原作の凛もキャスターとはいえサーヴァント相手に格闘戦をかましたり、新米とはいえ士郎もエミヤや英雄王と戦えたんだからFate世界の魔術師はワイバーンと戦えてもおかしくないって思ってます。
キャリスの魔術についてはまた今度。いつになったら出番が来るのか………。

後半に出てくるダ・ヴィンチちゃんの説教セリフは漫画からの引用ですが、多分立香の心配とグランドオーダーの重要性のことを言ってるんじゃないかなぁって思っています。一般人の彼を気遣っての言葉ですから、重要だと思って掘り下げました。
とはいえエミヤの言葉は立香にはフラグにしかならない模様。



さて、あとがき(と言う名の補足)が長くなりましたが、次回は例の鯖とのご対面となります!次回もお楽しみに!


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夜の独白、ドラゴンの群れによる襲撃

皆さんこんにちは、令和初の投稿になりますオレンです!平成が終わってから2週間あまりたちますがみなさんどうお過ごしでしょうか。FGOはストーリーが半年ほど更新されていないのでそろそろ痺れが切れそうです。貯めてある石が夏休みのイベントに使っちゃいそうで……私にも我慢の限界がががが。

そうそう、UA10,000ありがとうございます!!まさかこんなにも読んでいただける人がいたとは、感無量です。10,000突破した瞬間ガッツポーズでしたからね。今度の目標は50,000!頑張っていきますよ!!

今回はジャンヌ・ダルクと話した夜の話になります。では、どうぞ!



 俺たちは聖女ジャンヌ・ダルクに今までのことを話した。未来で人類が滅ぼされたこととか、俺たちがカルデアという組織の人間であること。自分たちは別の時代からやってきて、未来を取り戻すために戦っているのだということも、全て。

 

 ジャンヌは真剣な眼差しで俺たちの話を聞いて、協力してくれると言ってくれた。今後のことはひとまず、はぐれてしまったシュミットと合流することだったが、日が暮れてしまったため日が明けてから合流しよう、ということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして月が真上に登ったあたりの頃。

 

 昼頃のワイバーンとの戦闘を思い出して、俺の目が冴えてしまっていた。男女別々でテントに入っているのだが____まあ男子のマスター俺一人だけだから実質一緒に寝ているのはラモラックだけだけど____、まったく眠れず俺は横たわったまま天井を見ていた。

 他のサーヴァントはテントに入っていたり、キャスニキとエミヤは見張りをしてもらっている。

 

 ワイバーンとの戦闘………子供を助けて無事だったからよかったものの、キャリスたちのいう通り、確かに危なかったな。

 ゲームとかだとよく勇者が剣を持ってドラゴンに立ち向かう、という構図はあるものの、俺にはキャリスやガーレンみたいな魔術は使えない。ジャンヌがいなかったらどうなっていたことか。

 

 正直に言って、怖かったのは事実だ。今でも体が震えるほど、怖かった。だけど、あそこで庇えたのは良かったって思ってる。もしも、俺がいなかったら、あの子供は………。

 考えて、俺は冬木の時で目の前で殺されたシャドウライダーを思い出して激しく身震いした。

 

 (…………ダメだ、考えないようにしないと)

 

 今後も、そういうことはたくさん起きる。ワイバーンだけじゃなくて、ドラゴンだって出てくる。そして、この特異点の黒幕とも、いつしか戦うことになるんだ。

 

 

 ………そうなったら、俺は誰かを、本当に守ってあげられるだろうか……。

 

 

 不安がよぎったけど、今は俺のできることをやろう。そう思って、俺はもう一度目を閉じた。

 今度は悪い夢など見ないことを、願いながら。

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、寝つけられなくて目を開けると、横で寝ていたジャンヌさんがいないことに気がつきました。

 気になってテントの幕を上げると、ジャンヌさんが一人焚き火のそばで当たっている様子が見えました。その顔は、何かを考えてるように俯いていました。

 気になって、私は声をかけました。

 

 「……ジャンヌさん?起きているのですか?」

  「あ、ガーレンさん。すみません、起こしましたか?」

 「いえ、寝つけられなかっただけですの。ジャンヌさんこそ寝ませんの?」

  「……いえ、今の私には睡眠も大事ですから、早めに寝ます」

 

 そういうジャンヌさんの顔はなぜか影かかっていてました。何か気になることでもあるのでしょうか。

 心配になってその顔を見ていると、ジャンヌさんが首を傾げてこちらを見返して来ました。

 

  「どうかしましたか?」

 「あ、いえ、なんでもありませんわ!」

 

 ……きっと、英霊にも英霊なりの、悩みというものがあるのでしょう。すぐにそう私は直感しましたわ。

 

 

 

 

 

 竜の魔女のこともですが、きっとあそこの街にいた老婆のことをジャンヌさんは気にかけているのだと思いました。

 

 街から立ち去る時、ジャンヌさんに呼びかける一人の老婆がいたからです。

 

 

 

  『ジャネット!ジャネットなんでしょう?もう一度、もう一度あなたの顔を……』

 

 

 

 

 

 そう言って引き留めようとする老婆の声を振り払うかのように、ジャンヌさんは足早に立ち去ってったのです。

 ジャネット、というのはジャンヌさんの幼名だったはず。きっとそう呼ぶのは、おそらくジャンヌさんの身内だけ……なのでしょう。今もまだ生きている、処刑された後のジャンヌさんの………。

 

 「………必ず」

  「え?」

 「必ず、フランスを救いましょう。ジャンヌさん!」

  「………はい!」

 

 必ず、ジャンヌさんが、聖女ジャンヌ・ダルクが生きたこのフランスを救おう。シュミットが生まれた国を消されるわけにはいきませんし、聖女が成した偉業をなかったことには、したくありませんもの!

 

 そう改めて、私は心に誓いました。

 

 

 

 

 

 ふと、近くの木陰に気配を感じて後ろを振り向くと、クスクスとモーガンが微笑んでこちらを見ていたことに気がつきました。

 

 「……モーガン…………」

 

 危害を加えるつもりはないのでしょうけど、こっちに親指を立てて盗み聞きするのはあまり良くないと思うのですが。

 

 ……いえ、それ以前に彼女いつからいたのでしょう………?リリィと一緒に寝ていたはずですよね?と、モーガンへの疑問が尽きないのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま朝を迎え、俺はテントの中で着替えをしていたときだった。ドクターが夜のうちに所長からシュミットの今の様子を聞いたらしい。

 

  『どうやらシュミットたちは『ラ・シャリテ』と呼ばれる街にいるそうだ』

 「ラ・シャリテ?」

  『百年戦争中に戦場となった街だよ。その時聖女ジャンヌも従軍していたそうだね』

 「ここからどれくらいなんだ?」

  『数km先だよ。歩けば間に合っ………』

 

 ドクターの声が途中で途切れ、急いで何かタイピングをする音が聞こえた。「どうしたんだ?」と聞いてみると、すぐにドクターの声が聞こえて来た。しかし、その様子はどこか慌ただしい。

 

  『数km先で巨大な生命反応を確認した!!場所は……なっ、ラ・シャリテ!?そんな、あそこにはシュミット君が』

 

 俺はそれを聞いてすぐにテントを飛び出した。ガーレンとキャリスも聞こえていたようで、キャリスは特に焦っている様子だった。

 

  「り、立香さん!」

 「ガーレン!キャリス!」

  「……ラモラック卿!宝具を使って急いでいただけませんか!?この中で一番早いのはあなたです!」

  「それはいいけど、マスターは」

  「マスターなら私が守ろう。君はその間にラ・シャリテへ行って他のマスターとの合流を急いでくれ」

  「わかった!!」

 

 キャリスが声をかける間も無く、ラモラックはいつの間にか召喚した馬に乗って走っていった。

 ガーレンはそれを見届け、俺たちに声をかける。

 

  「私たちもグズグズしてはいられません!急ぎましょう!!」

  「けど、ここからじゃかなりの距離がありますよ!?」

 

 確かにキャリスの言う通りだ。俺たちの足で向こうまでたどり着くかわからない、それまでに間に合うか……と思った瞬間、

 

 

  「マスター、失礼します!」

 「へ?……うわぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 突然マシュに横抱きに抱き上げられ、そのまま凄まじいスピードで走り出してしまった!

 サーヴァントの脚力すごい!こんなに早いものなんだ!!?

 

 舌を噛まないように口を閉じつつ、あたりを見回すとどうやらキャリスはエミヤに、ガーレンはキャスニキに担ぎ上げられているようだ。サーヴァントってやっぱり人間離れしているんだな、とつくづく思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森を突き抜け、平原へ出ると遠くに街があるのが見えたけど、その上空を見て俺は息を飲む。

 街の真上を覆うように、黒い何かが空に浮いていた。その中心にはそれらよりもひときわ大きい、ドラゴンが見えた。

 

  「なんて数ですの!?しかも、あの大きさは………!?」

  「巨大な、ドラゴン……!!?あれが………!!?」

 

 遠くからでも見えるドラゴンの口元に黒い何かが溜まっていった。それを見てガーレンが息を飲む。と、同時にドクターからも制止の声がかかる。

 

 

  「いけない、ブレスですわ!!」

  『口腔部に魔力反応……!!?ダメだ、間に合わない!!』

  「やめ……やめなさい!やめて!!!」

 

 

 ジャンヌが悲鳴をあげた瞬間、ドラゴンから巨大な魔力の奔流が放たれ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 る、かと思われたその時だった。

 街から突如虹色に輝く閃光が空を覆うワイバーンの群れとドラゴンに向かって放たれ、巨大な爆発を起こした。

 直撃して少しでも効いたのか、ドラゴンが唸り声をあげて動きを止めた。

 

 「な、なんだ!?」

  『これは……まさか、シュミット君のサーヴァントの宝具!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、数分前の出来事。

 

 

  「マスター!!近くにまでドラゴンの群れが来てる!!」

 「!」

 

 どうやら北にいた難民達がこちらへ避難して来ていることを敵は認識しているようだ。今のところ兵士たちの避難誘導で早めに避難は始めているものの、このままでは街を追撃されている可能性があるだろう。

 

  『シュミット、あなたもすぐにこの街から離れなさい!!』

  「はあ!?この街の人たちはどうなるんだ!?」

  『必要な情報は既に手に入れているわ修復すればなかったことになるんだから、この時代の人間が死んでも何の問題はないの。今重要なのはあなた達マスターが生きていることなのよ!』

 

 所長の声が通信機から聞こえて来て、正直耳障りだ。

 確かにこの時代の人間が死んでも特異点を修正すればなかったことになるだろう。歴史が修正されればそれまでの歪みが正されるのだからそれは間違いではない。

 

 けど、ここで見過ごせば魔術師以前に人間としてどうなんだろう、とは思わなくもない。

 そう考えていると、シャルルマーニュが俺の肩を掴んで言った。

 

  「マスター!!この街の人だけでも避難させよう!」

 「セイバー」

  「これ以上フランスを、奴らの好きにさせていい訳がないだろ!!ここで人々を助けなきゃかっこ悪いってもんだろ!!」

 「君の基準はかっこよさだけなのかな?」

  「当たり前だろ!?俺が守って来たフランスがこんなことになっているんだ!それを見過ごすなんて黙っていられねえよ!!」

  「まあ、それは別にいいが俺をまきこむな。原稿が書けん」

 

 うん、君はこっちに来てから変わらないねアンデルセン………。口を開けば原稿だとかネタ探しだからね。

 とはいえ、セイバーは本気でこの街を救おうとしている。

 

 ………だが、ドラゴンに対抗するのであればそれなりの用意と武力が必要だ。特にあの群れを蹴散らすほどの力が。

 

 「………セイバー、君の宝具には対軍宝具は存在するかい?」

  「? あ、ああ。ある。あれだけの群れを足止めするくらいなら、なんとか」

 「キャスター、君はセイバーの力を増強できるようなスキル、あるいは宝具は使えないかい?」

  「肉体労働をさせるのか貴様は!!こんな状況でできるものか!」

 「どちらにせよこのままじゃ僕らも巻き込まれるのは目に見えている。なら、ガーレン達が駆けつけ、避難誘導を終えるまで時間を稼ぐ」

  『ば、バカ言ってるんじゃないわよ!!今すぐやめなさいシュミット!』

 

 所長の制止する声が聞こえたけどそれを無視して、僕は二人の顔を見る。セイバーは口角をあげて頷き、キャスターはフンッ、と拗ねながら本を書いているが、その様子は真剣そのものだった。

 

 僕も二人の顔を見て頷き、街の一番高い建物まで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外壁の天辺までセイバーに連れていってもらい、向かって来るワイバーンの群れを見据える。だが、違うのはワイバーンの群れの中に一際でかいドラゴンがいることだ。

 遠くから見てもわかる威圧感に、僕は冷や汗を描く。けれどここで失敗するわけにはいかない。

 

 

 「キャスター、セイバーに力を」

  「いいだろう、少しばかり誇張して書いてやる」

 

 そう言ってキャスターの魔力がセイバーに渡っていくのを見て、僕は右手の手袋を外し、令呪をあらわにする。

 令呪に魔力を込めている間、セイバーが剣をつきたて魔力を解放させる。

 

 「キャスター、セイバー、準備はいいかい?」

  「ああ、!!」

  「もう締め切りか、仕方ない。短編だが、ここにフランスの皇帝の物語をかき上げよう」

 

 二人が頷くのを見て僕は令呪2角を利用して呟く。

 

 

 

 

 

 「『令呪を持って命令する、セイバー、キャスター、宝具解放』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間僕の体の力が抜け、思わず地面に跪くが同時にセイバーとキャスターの身から肌でも感じるほどの魔力があふれ出した。

 

 キャスターはそのまま本の一ページに何かを書いてページを破き、宝具を発動させる。

 

  「ではお前の人生をかき上げよう。タイトルは……そう、『貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)』だ」

 

 キャスターの宝具の力がセイバーを包んでいく。

 セイバーはその剣を携え、剣を横に振るう。瞬間、彼の背中から翼のようなものが浮かび上がり、同時に彼の持つ光の剣の周りに様々な形の剣が浮かび上がる。

 

  「一夜一時の幻といえども、ここに我は楔を穿つ!」

 

 そう叫んだ瞬間、七色の光が剣を覆っていき、それは巨大な剣と化す。

 

  「伝説よよみがえれ!我が剣に彼らの力を!!」

 

 力を宿した十二の剣とセイバー自身の光の剣が並び立ち、ドラゴンを見据える。

 そう、それは武勲詩『ローランの歌』にも登場し、無双の御佩刀と讃えられ、日に三十回色が変わると書かれた名剣。

 

 

 …………その名は、

 

 

 

 

 

 

 

 

  「『王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣《ジュワユーズ・オルドル》』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 宝具の真名解放とともに、十二の剣の群れが閃光となってワイバーンの群れへ放たれ、そのまま敵を蹂躙していった。

 

 

 




うん、宝具解放はまだ先だと私は思ったんだけど、ジャンヌのお母さん救うためだもん、仕方ないネ!と言い訳をしてみます。漫画ではジャンヌのお母さんが最後までジャンヌのことを気にかけているんだなぁと思って読んでたので、街ごと消滅されたのは悲しかったです。

数kmって書きましたけど、実際ライダーの敏捷Aランクでたどり着くまでどのくらい時間がかかるんだろうって思いました。かなりのスピードでしょうけど、それでも一瞬ってわけじゃないですし、staynightのランサーもかなり早かったとはいえエミヤもついていけてたし……?と首を傾げています。まだまだ勉強が必要ですね。


さて、次回はかなり詰めようかと考えます。これでは来年に持ち越してしまいそうで怖いので。
では、次回もお楽しみにー!


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黒のジャンヌ

みなさんどうも、マスター勢はインドを進めていますか?とオレンです。
2日かけてインドを疾走した感想は、インド勢すげえでした。カルナとラーマすげえ、あの赤いアーチャーすげえ、大いなる石像神すげえ!!とか思いながら進めてました。特に後半は王道展開とは言え涙必須でしたね!
なおガチャ結果はピックアップ2に出て来るであろうキャスターのことを踏まえてラクシュミーを引くにとどめました。お医者さんだー!

今回は黒ジャンヌとの初のご対面。なかなか先へ進めなくてこっちがじれったくなってます。

では、どうぞ!


 

 

 「っ……!お疲れ様です、セイバー」

  「お、おうっ……!!思った以上に、体にくるな・・・・!!」

  「まったく、重労働をするなとあれほど言ったはずだが、なんだその無様な姿は!」

  「うるせえっ!!これがかっこいいんだろ!?街の人を守ったんだぜ!?」

 

 ワイバーンとドラゴンの群れに攻撃を与えたまではよかった。だが、こちらもかなりの魔力を使ったらしい。僕もセイバーも膝をついてしまう。

 それでも、ワイバーンたちの何体かは墜落させることができたようだ。これで避難もある程度用意に進むことだろう。

 

 ドラゴンとワイバーンはどうやらこちらへ向かってきているらしい。だが、先ほどの派手な攻撃でおそらく、彼らには見えていただろう。だから援軍は直に来るだろう。

 

 とはいえ、戦闘向きのサーヴァントのセイバーは大幅に魔力を消費してしまった。しばらくは戦えない。キャスターも少し疲れている様子だし……どうしたものか。

 

 「ひとまずここにいては敵のいい的になります。街の中へ移動しましょう」

  「いや、そんな悠長なことを言ってる場合じゃねえなマスター!!」

 

 

 

 瞬間、複数の巨大な魔力の接近を感じてすぐにガントの構えをとってセイバーと背中合わせになった。

 

 僕とセイバー、キャスターを挟み込むように何かが飛来してきた。それはワイバーンの群れでも、魔術の秘術として伝えられてきたホムンクルスとも違う、人の形を持った………、

 

 

 

 「サーヴァント…………!!」

  「俺たち以外にもサーヴァントを召喚した奴がいるのか!?」

 

 そう、僕たちを挟み込んでいたのは計5体のサーヴァント達。そのうち2体僕と向き合っている。

 どこかの貴婦人のような姿をし、レイピアを手にした女性(?)のサーヴァントと巨大な十字架を手にした気品溢れる女性だ。

 ……前者が?マークなのは、どこか顔立ちが男にも似ているからだ。男性で、女性にも見えるサーヴァント、どこかで………?しかも、心なしか何か様子がおかしく感じる。

 

 「セイバー、持ちこたえられますか?」

  「2対5はきちぃかなぁ。お相手さん、かなり強そうだぜ?」

  「残念だが俺は戦力に数えるなよ」

  「えぇーっ!!」

 

 軽口を叩ける程度には二人とも元気らしい。いいことだけど、それで状況が良くなるわけじゃない。

 さっきので令呪を2回使ってしまった。カルデアの特殊仕様で1日で1画回復するとはいえ、いざという時の緊急離脱は難しいところだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その考えに追い打ちをかけるように、冷酷な女性の声が聞こえてきた。

 

  「まさかこんなことが起こるとは思わなかったわ。なんてちっぽけで、哀れなのかしら」

 

 前にいる二人のサーヴァントの後ろから、冷酷な笑みを浮かべた女性が立っていた。黒い衣装を纏い、旗を持って邪悪な笑みを浮かべている。

 

 背筋にピリリと何かが走るような気がした。あれが、おそらく立香達の言っていた………、

 

 「あなたが、もう一人ジャンヌ・ダルクですか」

  「なんだって!?」

  「あら何、もう他の私にあってるわけ?なーんだ、つまんないの」

 

 肯定した。おそらく、彼女の魔力からしてサーヴァントなんだろう。

 通信機から切羽詰まったような所長の声が聞こえる。

 

  『聞こえるシュミット!!?急いで逃げなさい!!これだけの敵性体、しかもサーヴァント5人を相手に戦うのは無理があるわ!こんなところで終わるわけにはいかない、すぐに撤退よ!!』

 「この戦力差でむしろ逃げられるかの問題ですよ?」

  『冷静に判断するな!!』

  「強がりですか?そんなちっぽけな脳で何か考えられるんですか?」

 

 安い挑発だ。乗らないに限る。現に僕にはちゃんと策がある。ガーレンもそのつもりで、『彼』を送ってきたはずだ。

 

 さて、あとは時間をどう稼ごうか思案しているとセイバーが僕の前に出た。その顔は彼らしからぬ怒りに満ちていた。

 

  「あんたがジャンヌ・ダルクだって?なんでフランスを襲ってんだあんたは!!」

  「はんっ、この国に救う価値なんてあると思ってる方がおかしいわ。あなたこそ何?こんな国に救いがあると思って?あははっ、馬鹿馬鹿しい!」

  「なんだと………!!あんたはフランスを救うために立ち上がった、聖女じゃなかったのか!!?」

 

 そうセイバーが叫ぶと、黒いジャンヌは笑顔を消し、憎しみと怒りをあらわにした。瞬間、強大な魔力の圧力が僕たちを襲う。

 

  「黙りなさい、あなたに私の憎しみの何がわかるのよ。何が聖女だ、何が救世主だ?フランスを救おうとした聖女を殺した国を、救えって!!?馬鹿馬鹿しい!!むしろ今ここで、ドラゴンの餌食にしてくれるわ!!」

 「っ………!」

  「じょうっだんだろ……!」

 

 絶句したような表情を浮かべるセイバーだが、ここで意気消沈している場合じゃない。

 僕は圧に屈しそうになるのを我慢しながら、ニヤリと笑みを浮かべる。黒いジャンヌはそれを見て眉をひそめた。

 

  「……何、その顔」

 「残念ですが、おしゃべりもここまでのようです」

  「それは、どういう」

 「セイバー!キャスターを担いで飛び降ります!!」

  「!」

 

 

 すぐに外壁の外側に向かって走った。すぐにどこからか弾幕が放たれたものの、セイバーが全て撃ち落としキャスターを担いで僕とともに10mとはあるであろう外壁から飛び降りた。

 

  「な、血迷ったのですか!?」

  「逃すか!」

 

 後ろから槍が大量に降ってきたものの、それらは遠くから飛んできた一筋の巨大な矢によって全て防がれた。

 

 瞬間、僕の体がガシリっ、と担がれ、そのまま浮く感覚があった。

 

  「あんたら大概無茶するねぇ」

 「当然です。すでにドラゴンが来ていることにカルデアは気づいていましたから、すぐに援軍でも向かわせたのでしょう。ガーレンなら放っておくことはできないでしょうから、すぐに敏捷の高いサーヴァントを向かわせる。僕らはあなたが見える位置でドラゴンとワイバーンの群れを足止めし、あなたたちに位置を気づかせて、降りたタイミングで回収してもらう。ね、計算通りでしょう?『ライダー』」

 

 僕を担いでいるライダー、ラモラック卿ににこりと微笑んで見せると、「あんた本当にたくましいマスターだぜ」と肩をすくめられた。

 

 そのまま地面に着地すると、セイバーも同じように無事に着地したみたいだ。キャスターが泡を吹いているみたいだが気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、どうやら向こうも逃がしてくれるつもりはないらしい。そのまま同じように外壁を飛び降りて僕たちを追って来ている。

 

 「ライダー、他の皆は?」

  「もう来てるっての!!」

 

 そう言うが否や、複数の炎が走る僕らの横を通り抜けて後ろに向かっていった。前を見ると何人かの人影がある。かなり遠いがライダーはともかく、セイバーのスピードではすぐに追いつくだろう。

 

  「! マスター後ろから来てる!!」

 「!」

 

 担がれたまま後ろを振り向くと、確かに緑色の服を着た女性のサーヴァント………弓を持っているからアーチャーだろうか?彼女がある程度のところで止まると弓を空に向かって引きしぼり、光の矢を放った。放たれた無数の矢の雨がこっちへ降ってきた。

 

 「っ!セイバー避けなさい!!」

  「いや無理があるだろうってマスター!?」

  「いよいよ本気だな!」

 

 軽口を叩くことはできるものの、これでは当たるかもしれない。防御だけでも、と口で詠唱を唱えようとすると、

 

 

 

 

ーーボォォォォォォォォォォォォォォォォッ

  「「!!?」」

 

 途端、僕らの頭上を世にも珍しい青色の炎が覆った。その炎は矢の雨を全て焼き尽くしていく。

 

 そして、僕らの耳に聞こえてきたのは気品のある、元気な声。

 

  「フランス万歳(ヴィヴ・ラ・フラーンス)!!!!」

 

 矢の雨のなくなった空の上を、ガラスで作られたのであろうガラスの馬車が駆けていく。そこから、透き通るような歌声が聞こえてきた。

 

 「これは、歌……?」

 

 ふと後ろのサーヴァントを見ると、動きが止まっているのが見える。もしかして、歌声が発する魔術の強制力だろうか。

 ただ、これはちょうどいい。

 

 「セイバー!最後の辛抱です!!全力で駆けなさい!!」

  「おうよー!!!」

 「ラモラック卿!頼みますよ!!」

  「わかってるっての!!」

 

 

 

 

 僕らはそうして謎の援軍とともにリヨンから離脱したのであった。

 

___________________________________

 

 

 

 あの後シュミットたちと無事合流して、ジュラの森の中まで逃げ込んだ。

 途中謎のガラスの馬車の主人とも合流し、互いに無事を喜び合った。あらかじめ霊脈も見つけておいたので、これでカルデアからの補給が受けられるようになった。

 

 ガーレンとキャスニキ、モーガンが魔獣や悪霊を追い払う結界を構築し、どうにか安全な場所は確保できた。今日はここでキャンプをすることになる。

 

 

 

 

 ……で、肝心のシュミットはというと、

 

  「………………あの、ガーレン?なんでそこまで怒る必要が」

  「ありますわよね?何故いつも無茶を計算に入れるのかしら?」

  「いやこっちもサーヴァント6体は予想外だったんだけどナー」

  「ここは特異点ですのよ!?一歩間違えてたら死ぬところでしたわ!!しかもなんですのあの矢の雨は!?串刺しにでもなるおつもりですか!?」

 

 ガーレンからお説教を受けているところだった。二人分の宝具を発動した上に複数のサーヴァントと相対していたということで、ガーレンからお叱りをしているというところだ。

 

 「でも、シュミットのことだから計算づくかと思ってた」

  「あれ、立香さんご存知ありませんか?」

 「え?」

  「シュミットさんって時計塔でも無茶をしての計算も入れるって聞いたことがあります。……おそらく今回もガーレンさんが、ラモラック卿が来ることも見通して、です」

 「あー……」

 

 キャリスの言葉になんとなーくだけど納得してしまった。つまるところあれだ、付き合いが長いからこそ相手の思考も読めて、ここまで計算を建てられるってところだろうか。

 

 ……案外魔術師の友人っていうのは甘く見ない方がいいかもしれない。俺の直感だけど。

 

  「おぉー!!本当にあなたがあのマリー・アントワネット王妃か!!?すっげえっ本物だ!!サインくれ!」

  「あら、初めましてミスター・シャルルマーニュ!あなたの伝説は聞いていましてよ!」

  「へえ、君がかの皇帝の。若い姿で召喚されるものなんだね」

 

 

 

 そうそう、俺たちが会ったガラスの馬車の主人についてだ。

 ガラスの馬車の主はフランスの王妃マリー・アントワネット。他にアマデウスとエリザベート、そして清姫というサーヴァントたちだった。

 マリー・アントワネットって言えば、あの有名な『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』とか問題発言をしていた人だったっけ。アマデウスはモーツァルトという、偉大な音楽家。エリザベートは……確か、アイアンメイデン?の開発者だったかな。清姫はわからないけど、日本の伝説の登場人物らしい。(マシュから聞いた)

 

 

 

 

 ………前者はともかく、後者がかなり怖いのはなんでだろう。

 

 

 

 

 

 それから、アマデウスの話によるとどうやら彼らにはマスターがいないらしい。と、いうのもすでに黒いジャンヌが聖杯を持っている。聖杯戦争において聖杯を手にするのは最後の勝者だけなので、その矛盾を解消するために聖杯自身が彼らを読んだのだと思われるらしい。……簡単に説明すると、フランスの滅亡を企む彼らに対抗するためにマリーたちが召喚されたとか。

 

  「だが、相手はかなり強いと見ていいだろうな。数的な戦力でなら勝っているかもしれんが、こいつらの半数は音楽家や王族といった戦いに無縁な奴らだ。向こうは圧倒的な戦闘向きのサーヴァントと見ていいだろう」

  「うーん、見た感じだと一人はアーチャーなんでしょうね。あの矢の使い手はエミヤ君より優っているわ」

  「はっきり言わないでくれ、モーガン」

 

 キャスニキ、モーガン、エミヤの後にアルトリア・リリィがしかも、と言葉を続けた。

 

  「向こうはあのでっかいドラゴンがいます!他のワイバーンとは違う、とても強い感じです」

  「問題はそこですわね。ワイバーンの数はともかく、遠くからでもあのドラゴンはただならぬ圧力を感じましたわ。せめて、それを打開する策を考えなければ、キリがありません。シャルルマーニュが防いでくれたとは言え、そうなんども防げるわけがありませんし」

 

 説教が終わったのかガーレンが話に入ってきた。確かにあれだけすごい宝具を撃ってもドラゴンは倒れなかった。っていうか本当にドラゴンなんているんだなぁ、と感心してしまった。

 

 もしかしたらドラゴンを倒せるサーヴァントが召喚されているかもしれない、とマリーの言葉に頷き、明日からも情報収集はしようという方針をまとめたところで今日は解散となった。

 サーヴァントと違ってマスターである自分たちは休息を取る必要がある。特に今回の先頭で無茶をしたシュミットやそのサーヴァントたちは十分に休む必要があった。

 

 マシュはジャンヌやモーガンといった女性陣の話に加わっており、マリーの高い声が森の中に響いていた。

 

 

 どうやら彼女たちはいい友達になれそうだ、と少しホッとすると同時に、シュミットの疲れた表情を思い出して足がすくんだ。

 

 

 ………もし、あそこにシュミットがいなかったら、今頃リヨンの街は、人々はどうなったんだろうか。

 

 

 そう考えると、背筋が急に寒くなってゾッとした。もしかしたら思っている以上に、大変なことになっていたんじゃないか。そう考えるとシュミットや他の人が無事で安心したと同時に、きっとシュミットやガーレンの魔術師の機転があったからこそ切り抜けられたんだなぁと感心してしまった。

 

 

 

 俺もできること、探して見ないと。

 

 

 




敵側になぜかもう一人サーヴァントがいるような気もしますが、気にしないでください。彼女ぐらいしか追えないと思った結果です。

実際シャルルマーニュが黒いジャンヌや他のフランス勢に会った時ってこんな感じのような気がする。特に黒いジャンヌには驚くんじゃないかなぁ。マリーやモーツァルトには喜び半分、印象違いすぎて驚き半分だと思ってます。
なお飛んできた青色の炎はきよひーのものです。

以前感想欄でシュミットはかなり無茶をする人?って聞かれましたが、彼は無茶をしての計算づくですからなお質が悪いです。多分立香と気が合う部分があるんじゃないかと思っています。付き合いが長いからこそ相手の思考がわかってしまう、付き合いが長いって時に恐ろしい。


相変わらずの投稿はスローペースであまり見所がないと自分でも思ってますが、今後も続けていきたいと思っているのでよろしくお願いします!

では、次回もお楽しみに!


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旅の幕間のお話


普段より遅くなって申し訳ございませんと、オレンです。
体調不良にテスト期間が重なって重症になってました。去年も似たようなことがあった気が・・・。正直執筆する気が起きないほどダウン状態になっていますが、なんとか間に合わせました。皆さんも熱中症や夏風邪には注意してください!

今回はそんな経緯もあってかなり省いてます。マルタ先生、すまない。本当にすまない。

では、どうぞ!


 

 

 一夜が明けた。

 

 その間に起こってきた出来事を話すと、夜中突然ライダー、聖女マルタが襲ってきた。

 救世主の教えを受け、後に悪竜タラスクを鎮めたジャンヌ・ダルクとは別の聖女。その彼女が最後に残した言葉は、リヨンに向かえという導きの言葉だった。

 

 

 竜の魔女が操る竜に俺たちは勝てない、竜を殺すのは竜殺ししかいない。

 その竜の名は『ファヴニール』数多の神話や物語にその名を残して来た伝説のドラゴン。それに勝てる竜殺しが、リヨンにいる。

 

 

 その竜殺しを探しに、マルタに教えてもらった『リヨン』という街へやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………が、しかし。

 

 

 「これって………っ」

  「………」

  「そんなっ………」

  「うっ」

 

 リヨンの街はすでに崩壊してしまったあとだった。家屋は倒壊して瓦礫の山となり、生存者はそこにはいない。代わりにあるのは老若男女構わず、四肢の一部や頭部が破損した死体ばかりだ。

 直にそれを見て俺は吐き気を催したが、口元を抑えることでどうにかこらえた。キャリスは怯えて俺と同じように口元を抑えている。ガーレンとシュミットも俺たちほどではないとはいえ、気分が悪そうだ。

 

 反面、やっぱりサーヴァント達は慣れている方なのか、平気らしい。それでも顔はしかめているようだったけど。

 

  「ひっでぇなこりゃぁ……これもサーヴァントの仕業か?」

  「おそらくな。しかし、この様子では襲撃のせいでいない可能性も否定はできない……」

  「そんなっ………」

 

 エミヤの言葉にキャリスが動揺した声を上げる。しかし、シュミットは確かに、とエミヤの言葉に頷いた。

 

  「そう考えたほうがいいだろうね。竜殺しは期待できない、かな」

  「で、でも、まだ隠れているだけかもしれないです!さ、探して見ましょう!」

  「そうは言っても、かなり難しいところよ。いつ敵がきてもおかしくはない状況だもの」

  「それなら我々で偵察へいってこよう。いいな、ラモラック」

  「あいよ、マスターもそれでいいな?」

  「お願いします!」

 

 エミヤの提案で彼とラモラックは遠くへ偵察に行った。昨日の魔力が回復しきっていないシャルルは瓦礫の山を見て、唇を噛み締めていることに気がついた。

 

 「シャルル、どうかしたのか?」

  「……あんまりいい気分じゃねえな、これを見てると」

  「そうね、私もそう思うわ」

 

 シャルルの言葉に、いつの間にか近くに来ていたマリーが共感を示した。マシュもそれを聞いて頷く。

 

  「……早く、この特異点を解決しなければいけません。聖杯を回収して、必ず元の歴史に修復しなければ………」

  「もうっマシュったら。肩を抜いてちょうだい。こういうときはリラックスが大事よ!」

  「うーん、マリーは落ち着きすぎだと思うなぁ」

 

 マリーが女神のような微笑みでマシュに話しかけているのを見て、アマデウスがやれやれといった感じでため息をつく。

 死体が周りにあるとはいえ、マリーのいつもと変わらない表情は少しでも安心感をもたらせてくれるものだった。さすが王妃、こういうときも動じないというかなんというか。まあアマデウスのいうとおり落ち着きすぎていると思うけど。

 

 キャリスの方はガーレンやリリィに何やら声をかけられているところだった。

 

  「キャリスさん、大丈夫ですか?」

  「だ、大丈夫です………死体は見慣れていないので」

  「見慣れないほうが一番いいわ。あんまり無理はしないようにね」

  「はい……」

 

 

 

___________________________________

 

 

 

 しばらく探索してはみたものの、死体が蘇って某ホラーゲームのゾンビみたいにこっちを襲って来たりして収穫は特になかったため、俺たちはリヨンから出てその周辺にキャンプ地を設置することになった。

 

 「はぁ……」

  『お疲れのようだね立香君』

 「ああ、うん、まあね」

 

 テントの中で横たわっていると、通信機越しにダ・ヴィンチちゃんに話しかけられた。ふむふむ、と俺の体を見て何か頷いている。

 

 「どうしたんです?」

  『身体検査さ。一応こちらでもパラメータは管理しているけど、直に見なければわからないときもある。今の所は問題ないけど、無茶はするんじゃないよ』

 「はい」

 

 俺はおとなしく頷くと、テントの入り口の布がめくれ、キャスニキが入ってきた。

 

  「よぉ坊主。結界は張って来たぜ」

 「キャスニキありがとー」

  「いいってことよ。ところで坊主」

 

 キャスニキに声をかけられて、ん?と首を傾げているとキャスニキが俺の横に座ってきた。

 

  「今はあのバーサーカーの女や他の嬢ちゃん達が給仕をやっているところだが、暇なお前さんにちょいと授業をしようか」

 「げぇっ、こんなときに?」

  「こんなときだからこそだ。お前は他のマスターたちに比べちゃいろいろ足りないものが多すぎる。キャリスって嬢ちゃんもそうだが、一般的に何が足りないかお前にはわかるな?」

 

 笑顔でそう聞いてくるキャスニキは俺はしかめっ面を隠さなかった。

 一般的に何が足りないか、と聞かれてもむしろ足りないものが多すぎて困る。魔術のことは当然だけど、サーヴァントのことを知る英雄達について知らないことはあるし……。かといって運動能力がただただ低い。

 

 総合的にでも俺はやっぱりいろいろ足りないが、とりあえずこれを答えるべきか。

 

 「うーん……やっぱり知識とか?」

  「そうだな。というわけで授業の時間だ。お題はそもそもなんでフランスが特異点になったか、だ」

 「フランスが?」

  『それはいいお題だねぇ!いいとも、ここは私が教えてあげよう!』

 

 するとダ・ヴィンチ女史が胸を張って何か言い出した。やめてくれ、それは多分寝る。

 えぇー、と顔を歪ませているとなお笑顔を深めて話し始めた。

 

  『話は君のいる1431年から300年以上未来のこと。1789年のフランスである宣言がされた。『人間と市民の権利の宣言』通称『人権宣言』だ。『人は生まれながらにして自由かつ平等の権利を有する』というあまりにも有名な条文から始まる宣言だ。この宣言を以ってフランスは歴史上初めて現代に通じるこの理念を謳った国となった。これらの権利を成立が遅ければそれだけ文明が停滞していただろうし、認められなければ君たちは今でも中世と同じ生活をしていたかもしれない』

 「でも日本はフランスとは関係ありませんよね?多分年代的にはまだ戦国……だったような?」

  『そうかもしれない。それでもフランスがが滅んでしまえば歴史の土台が崩れてしまうことは間違いないだろう』

 

 あれ、気のせいか俺かなりプレッシャーかけられてる?

 

  『ちょっとレオナルド、あまり立香君にプレッシャーを与えないでくれないかな』

  『ええー、私そんなつもりはなかったんだけどなぁ』

  『そんな駄弁ってないで早く調査進めなさいレオナルド!!』

  『はーい。それじゃあ立香君、今日の講義はここまでだ。またねー!』

 

 ドクターと所長に呼ばれてか、ダ・ヴィンチ女史が通信機を切っていった。

 

 ………本当、プレッシャーが重いなぁ、と不思議と肩が重くなった気がした。

 すると、俺の背中に打撃音とともに強烈な痛みが走った。

 

 「っだぁっ!!?」

  「そう気張るんじゃねえよ。なんのためにサーヴァントがいるか考えてみなって」

 

 叩いて来たのはキャスニキだった。ニカリ、と白い歯を見せる明るい笑顔で俺を励ましてくれたのだ。

 未だ痛む背中をさするものの、少しキャスニキのおかげで元気が出た気がする。

 

 

 「……ありがとう、キャスニキ」

 

 

 

___________________________

 

 

  「〜♪」

 「どうかしましたか?マリー王妃」

 

 エミヤさんやガーレンさん、清姫さんが料理をしている間、私とマシュさんが薪を持って来ているとマリー王妃がとても嬉しそうにこちらを見ているのに気がつきました。

 

  「清姫やエミヤが料理を作ってくれているもの!清姫は料理がとってもお上手なのよ!」

  「それは当然エミヤもですわ。食堂の料理当番をしばらく担当してほしい、ってスタッフから大好評だったもの」

  「やめてくれ。私の本業はサーヴァントだと言うことを忘れないでほしい。ああ清姫、その塩はもう少し入れておいた方がおいしくなる」

  「あら、そうなの?教えてくれてありがとうございます」

 

 清姫さんにアドバイスをしている時点でかなりすごいと思うのですが……。確かに食堂でエミヤさんのご飯を食べた時スタッフの皆さん感動の涙を流していましたね…。

 

  「家事力の向上には四年がありません。いつ理想の旦那様に出会えるかわかりませんから。だというのに聖杯に召喚されるなんて……竜の魔女もマスターですが、あんなのは問題外です。だから灼くことにしました」

  「あら、物騒ね。エリちゃんはやっぱり?」

  「とうっぜん!未来のアタシをぶっ飛ばすのよ!!」

 

 モーガンさんと一緒にお肉を焼いていたエリザベートさんがそう言います。ですが手元の肉がどう考えても黒焦げになっているのに気がついて、止めようとすると清姫さんが真っ先に気がついてエリザベートさんに威嚇にかかりました。

 

  「ちょっと何をやっているのですかエリマキトカゲ!!貴重なお肉が黒焦げになったじゃないですか!!」

  「何よ!手伝ってあげたのに!!」

  「まあまあ、肉なら大量に取って来てやったぜ」

 

 二人がいがみあっていると、横から片腕に猪を持ってきたラモラック卿が割って入ってきました。……………って。

 

 「ど、どうしたんですかそれ!?」

  「ああこれか?近くでウロウロしてたから狩ってきたんだ。なかなかの上物だぜこりゃぁ」

  「これは捌き甲斐がありそうだな。どれ、私がやってごらんにいれよう」

 「え、今から捌くんですか!?」

  「うふふ、お願いしますね。どこかのトカゲのせいで肉が無駄になりましたし。どこかのトカゲのせいで」

  「二度も言うな二度も!!」

 

 もうすでにエミヤさんがどこからか取り出したのか包丁を構えていてやる気満々になっていて、私は思わず目と耳を塞いでその現場から目をそらしました。

 動物が解体される瞬間はいつ見ても痛々しく、酷いものです………うぅっ。

 

  「キャリス先輩?大丈夫ですか?」

 「だ、大丈夫じゃないです………」

  「あらあら、魔術師はこういうの見慣れているものじゃなくて?」

 「わ、私は結界とかが主流なんです!動物解体は黒魔術とか使う人が得意でしょう?というかなんでモーガンさんやガーレンさんは平気なんです!?」

  「私は魔術関連じゃなくて、ペットの死という意味ではまあある程度……」

  「私は魔術師ですもの。そういう実験はある程度……ね?」

 

 ああ、お二人もそういえば上級の魔術師だということをすっかり忘れていました……!時計塔の魔術師というのは本来こういうことを得意としている人ばかりだと聞いたことがありますが、まさか本当だったとは……。

 

 私の心の中を読み取ってか、ガーレンが慌てたように言い始めた。

 

  「ちょ、ちょっとお待ちなさいキャリス。あなた何を考えましたの?」

 「い、いえ、お二人はすごい魔術師だなぁと改めて感心しただけですよ……?」

  「な、なんですかその意味深な言葉は!!」

 

 

 

 

 

  「ねえ、恋バナをしましょう!」

 

 それは、唐突な言葉だった。一瞬固まってしまったのも無理はないと思います。

 その言葉を言ったのは、マリー王妃でした。しかも、とても、キラキラとした綺麗な笑顔で。

 

 私たちや解体をしようとしていたエミヤさん達だけでなく、先ほどまで喧嘩していた清姫さんとエリザベートさんでさえも固まってしまっていました。

 

 しかし、その笑顔は変わらず、むしろ輝きが増したような気さえしてきました。

 

  「女の子ばかりだもの。恋バナしたいわ!これって女子会トークと言うのでしょう?」

 

 するとハッとエリザベートと清姫も我に返って先ほどの険悪な空気はどこへやら、マリー王妃とキャッキャッ話し始めました。

 

  「いいわねマリー!楽しそうだわ!!」

  「恋のことなら私、深い造詣がありまぁす!」

  「あら、なら私も参加するわ。リリィもどう?」

  「え、で、でも、私、そういうのはまだお早いような……?」

  「いいのよ。恋のお話は女子の特権だもの!!」

 

 

 

 (((…………すごい、一瞬で皆さんがどうやって旅をしてきたかわかりました)))

 

 

 

 

 多分あの3人といつの間にか混ざっていったモーガンさんとリリィさんを除いてここにいる全員の心が初めて一致したと思います。マリー王妃の笑顔とドクターとは違うキラキラした雰囲気、それは誰も叶いませんよね。

 





マルタ先生、改めてすみませんでした。多分、今度の水着イベントで出させます・・・多分。

やっぱりサーヴァントが多いと空気になる人おおいですね。今回はアンデルセンでしたが、ちょっとどうしようか悩んでます。が、その前にリアルの問題をどうにかしなきゃです。

FGOでは4章開幕、ぐだぐだファイナル、水着復刻、4周年と、課金地獄ですね!!イベント周回が碌にできないのが辛いところです。



話はリアルについてになりますが、最近はいろんな意味で物騒ですし、豪雨も酷くなるときがあるので皆さんも気をつけてください。特に京アニのことは驚きましたよ、ええ・・・。

次回はちょっと未定です。このあたりで自分なりのまとめというなのQ&Aをつけるか、続編を書いていくか・・・悩んでます。まあ、とりま次回!ではお楽しみに!



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王妃の決断、騎士姫の思い

みなさんどうも、猛暑が続いていますが熱中症対策はできていますか?とオレンです。完全に夏休みモードに入ってて投稿が遅くなりました、すみません!

そしてまずはっきり言わせていただきます。4周年イベント、まさかガレス実装が来るとは私完全に予想外でした!!しかもあんな健気な子供だったなんて!!(イアソン以上の衝撃)
いやそれ以上にもっと大人のイメージで来るかと思っていました!!それがっ、こんな健気で癒される存在とは……ものすごく可愛いです。推しの一人です!

いや、そうじゃなくて円卓関連の第6章やるとなると、将来やる(やれるかな?)第6章で間違いなく壁になってきます。6章までだいーぶ長い期間があるのでそれまでにはどうにかするつもりです。が、来月からはかなり忙しくなるので更新が遅くなることをあらかじめお伝えしておきます。急いで「第1章終わらせよう」「終わらせなきゃ」と焦燥感にかられていますが、どれもマスター達やマシュにとって大事な成長要素なので外したくない!という欲求が多く、とかなり悩んでいます。ひとまず今年中には第1章終わらせるぞー(遠い目)


さて、今回はキャリス視点からになります。では、どうぞ!



 恋話をした(とこっそり聞き耳を立てていたアマデウスから聞いた)翌日の朝、俺たちは事前に捜索の組み分けを決めていた班に分かれた。

 

 

 立香さんとマシュ、清姫さんとアマデウスさん、そしてシュミットさん達がティエールという街へ。

 ジャンヌ・ダルクさん、マリー王妃、エリザベートさん、ガーレンさん達、そして私キャリスとサーヴァントはモリソンという街へ向かうことになった。

 

 ちょっとだけ偏りがあるような気はしないでもない、主に班の男女比のことで。

 

 

 

 

 

 なお、その恋話を聞いていたアマデウスさんがかなりのセクハラサーヴァントだったことは置いておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ともかく、数日をかけてモンリュソンという街へ到着しました。

 張り合いがなくてエリザベートさんのテンションが下がっていたこともありましたが、道中は特に問題もなく……いえ、敵が出てきたとしても主にガーレンさんの指示力が的確すぎて私の出番ありませんでした。

 

 

 

 「ここはまだ侵略されていないみたいですね」

  「民も落ち着いた様子ですわね。みなさん、とても不安でしょうに……」

  「モンリュソンという街は……元々は軍事上の要衝として発展した街だと聞いているわ。戦争中でもきっと落ち着いていたから、どうにかなったんじゃないかしら」

 

 マリー王妃の言葉にモーガンさんが辺りを見ながら頷いていました。エミヤもふむ、と様子を見ながら言います。

 

  「いつの時代にもいるのだろうな。反抗勢力というものが、どこにでもな」

 「はい。しかし、こちらにその竜殺しがいるとよろしいのですが……」

 

 私が不安げに見回していると、リリィが立ち止まって「あ!」と声をあげるのが聞こえました。

 

  「あそこの人……!」

 

 リリィが指した方向を見ると、路地裏の方でフードを被ったこちらの様子を見ていました。しかし、私たちが気づくとすぐに路地裏の方へ引っ込んでしまいました。

 ただ、この魔力反応はどこか覚えのあるもので……。

 

  「あれは、サーヴァントか?」

  「! もしかして、例の竜殺しじゃない!?よかったぁ、ようやく見つけたわ!」

  「え、エリー!?待ちなさい!」

 

 路地裏の奥へ引っ込んでしまったエリザベートさんを追って、私たちは路地裏の方へ入って行きました。

 

 

 

 

 

 

 薄暗い路地裏に入ると、先ほどのフードを被った男の人が立ち止まってこちらを向いていました。

 

  「ようやく見つけたわ竜殺し!あなたの力が必要なのよ!」

 「え、エリザベートさん!?そんな危険なことしないでください!!敵だったらどうするんですか!?」

  「ええ、大丈夫よきっと!多分!どうにかなるわ!」

 

 信用できませんよそんな簡単に!!?

 

 ハラハラとした面持ちでフードを被った男の人を見ていると、はぁとため息をついてガーレンさんが前に出ます。その手はいつでも剣が抜けるよう、鞘に手をかけたままです。

 

  「聞いてもいいかしら。あなたが竜殺しでしょうか?」

  「いいえ、残念ながら。……どうやらそちらのサーヴァントは狂化されていないご様子」

  「どういう意味ですか?」

 

 リリィが首を傾げて聞くと、にこりと彼は微笑んで言いました。

 

  「ラ・シャリテの情報はこちらにも届いています。あなた方でしょう?一瞬でもドラゴンに不意をついた人たちは」

 「!」

 

 それを聞いてハッと思い浮かんだのは、シュミットさんのサーヴァントであるシャルルマーニュさんでした。確かにシャルルさんはラ・シャリテの防衛のために宝具を使って戦っていました。それについての情報がもう飛んで来たとは……あれ、こちらの連絡手段って考えたらどうなっているんでしょう?

 

 ふとそんなことを考えているとガーレンさんがええ、とうなずきます。

 

  「私たちではありませんけど、私たちの知り合いがやっていましたわ」

  「そうでしたか。……おそらくあなた方と私たちの目的はきっと同じだと思います。どうかあなた方の話を聞かせてはもらえませんか」

 

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

 ライダーのサーヴァント『ゲオルギウス』さんの案内である民家に連れてこられた私たちはその事情を彼に話しました。

 事情を聞いてゲオルギウスさんが頷いて、そちらの事情も話していただけました。

 

 どうやら彼はすでに竜殺しとともに避難できていたというんです。

 

 しかし、状況はとても厳しい者でした。

 リヨンにいた竜殺しは竜の魔女の配下との戦闘によってひどい手傷を負っていたというのです。正確には複数の呪いをかけられ、聖人達が唱える『洗礼詠唱』でこの呪いを解呪しない限りは竜殺しの力を振るうどころか戦うことすらままならないというのです。

 おそらく手負いを受けながらもモンリュソンへ来られたのは聖女マルタのおかげなんだろう、とジャンヌさんが推測していました。

 

 

 

 別の班でティエールという街へ向かっていた立香さん達にも連絡を取り、今までの話を聞くことができました。

 

  「ですがご安心ください。私とゲオルギウスには解呪の力があります。二人でなら時間がかかりますが、呪いを解くことはできると思います」

  『そっかぁ!!よかったぁ、かの英雄『ジークフリート』に直で会えることもそうだが、そっちの班が無事にたどり着けてよかったぜ。なあ?マスター!』

  『なんで僕に降るんだい』

  『え、だってマスターあんだけガーレンのこと心配して『セイバー?ちょっと口を閉じようか?』いや、なんでもないっス!』

  「そっちはそっちで相変わらずのようね……」

 

 シュミットさんとシャルルさんの会話に呆れたガーレンさんが眉間のシワを揉んでいるのが見えて私も自然と苦笑いが出て来ました。

 

  『それにしても解呪の力を使える人が二人もいるって……いや、ありがたいんだけど、なんで使えるのかな。やっぱりジャンヌは聖女だから?とか?』

  『おいおい、ゲオルギウスについても知らんのか坊主』

  『ゲオルギウスさんは聖人として語り継がれている人物です。聖人や聖女と言った神に仕えてきたサーヴァント達には洗礼詠唱と呼ばれる詠唱が使えると聞いたことがあります。日本の仏教でいうお経、のようなものでしょうか』

  『へー………』

 「エミヤさんにはそのような逸話はあるんですか?」

  「いや、残念ながら私にはそのようなものはないぞ」

 

 興味本位で聞いてみたらなぜか否定されました。エミヤさんの逸話は全然聞いたことがなかったのでこの機会に聞いてみたかったのですが、ちょっと残念です。

 

 すると立香さん達の方で何かうなり声のようなものが聞こえたような気がしました。立香さんたちもどうやら空の方を見上げています。

 

  『今のはなんでしょうか?』

  『なんだか嫌な音が……しっ、皆隠れるんだ!』

 

 アマデウスさんの指示で茂みに隠れる皆さんの声が聞こえてきます。不安になって思わず画面の方を凝視していると、突然画面が切り替わってドクターの顔が出て来ました。

 

 「ふえ、ど、どうしたんですか!?」

  『緊急事態だ!すぐに避難するんだガーレン、キャリス!今立香君たちの頭上を邪竜が通ったんだが、こちらで侵攻ルートを割り出した。邪竜が向かっているのはオルレアンの方向じゃない、君たちのいるモンリュソンだ!!』

 「「「!!?」」」

 

 ドクターの言葉に私達は驚きました。するとラモラック卿が慌てたように身を乗り出して聞きます。

 

  「ちょっと待て!?一体どうやってここがわかったんだ?」

  『それについてはわからない!ただ、今の状態で邪竜と戦うのは不利だ。至急この街から避難してくれ』

  「待ってください、それではこの街の市民はどうなるのですか!?」

 

 リリィが聞くと、ドクターが苦虫を潰したような表情になって口をつぐみます。その先の言葉は私も予想がついて、さっと青ざめました。

 

 ドクターが口を開こうとすると、その言葉の続きを言うようにモーガンさんが声を出します。

 

  「見捨てることになるわね」

  「モーガン、それは……!」

  「事実でしょう?私たちは人類を救うためにあの黒いジャンヌを打たなければいけない。そして今私たちの最大の障害とも言える邪竜を倒せるのは竜殺ししかいない。ここで私たちが倒れることはできないわ」

 

 モーガンさんがいつにも増して厳しく、そして冷酷な表情で言いました。あまりの冷たさにエリザベートさんと私は息を飲みます。

 それに追い打ちをかけるようにエミヤさんも頷きました。

 

  「不本意だが、同意だな。我々には為すべきことがある。そのための犠牲、と言うには酷い言い方かもしれないが、時間がない。抗戦すれば全滅は必須だろう」

 「そんな、他にまだ方法が!」

  「では何かね?邪竜に対抗できる策があるとでも?現時点での我々では邪竜だけでなく、そのあとに来る他のサーヴァントと太刀打ちするのは難しいと思うが?」

 「それはっ………」

 

 エミヤさんの言葉に思わず反論しましたが、逆に聞き返されて黙り込んでしまいました。

 

 邪竜の攻撃はあの時感じた通り、とてつもなく強力だと思われます。あの時はシャルルさん達が身を以て止めてくれましたが、それがなんどもできるとは思えません。

 私もそれは理解できます。理解は、できているんですが……本当に、市民を見捨てて私達が逃げていいものか、分からない。

 

 

 

 

  「……モーガン、あなたの力でも無理なの?アーサー王伝説の伝承なら……って竜殺しの逸話はあなたにはないんだったわね」

  「そうよ。尚これはラモラック卿にも言えることね」

  「けっ、悪かったな」

 

 ラモラック卿が悪態をつきます。すると、「そうはいきません」とゲオルギウスさんが立ち上がりました。

 

  「私は市長からこの街の守護を任されています。市民の避難が終わっていない以上この役目を放棄するわけにはいきません」

  「いいえ、あなたは必要になるわ。竜殺しの呪いを解呪出来るのはあなたとジャンヌしかいないもの」

 

 

 

 

  「でしたら、私にその役目、お譲りくださいな」

 

 フランスを愛する少女はそう言いました。なんてこともない、まるで歌を歌うように。

 

 それがどういうことを意味するか、わからない私たちではない。

 邪竜だけではありません、いずれ来る竜の魔女や配下のサーヴァントも来るはずです。

 それはきっと、無事で済むものではない。

 

 

 「待って下さいマリー王妃!!それではあなたがっ」

  「いいのよキャリス。市民の避難が済むまでこの街を守る。残った方はアマデウス達と合流してそれぞれの役目を全うする。うん、そうなると必然的に残るのは私になるわ」

  「待ってください!待って、ねえ、マリー!!」

 

 ジャンヌさんがうろたえたようにマリー王妃に詰め寄ります。ですがマリー王妃は依然として微笑んだままです。

 

  「マリー、一緒に戦いましょう!一人ではダメでも二人なら」

  「ノン、だめよジャンヌ。貴女には貴女の役目がある。私はきっと、このために召喚されたの」

 

 そう、彼女は言います。

 敵を憎み倒したりするのではなく、人々を守る命として喚ばれたのだと。

 今度こそ大切な人たちを守るために、正しいことを正しく行うのだと言ったのです。

 

  「……それがあなたの誇りなのね、マリー・アントワネット」

  「ええ、そうよ。私は嬉しいわ。ジャンヌの旗の下で、シャルルマーニュという皇帝とともに、戦えたことが光栄でした」

  「……待ってますから」

  「アタシも、待ってるから。友達よ、アタシ達は」

  「ええ、すぐに追いつきます」

 

 そう言って彼女は部屋を出ていきました。

 

 心の底から嬉しそうに微笑んだ彼女の顔を、街の外へ走る背中を、私は忘れることはないと思います。

 花のようにほころび、英雄のように市民を守ろうと走る背中を、人々は『英雄』のようだと言うのでしょう。

 

 ですが本当に、これでよかったのでしょうか。もっと、他に何か、出来たはずだった。ですが、私達が生きなければ世界は救えない。ですが、市民を切り捨てるわけにはいかないのです。ですが、それでも。

 答えが出ない疑問が、私の胸の中から消えることはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「………認めませんわ」

 

 ただ一人を除いて、は。

 

  「……?どうかしましたの?」

 

 モーガンさんが首を傾げて俯いているガーレンさんの顔を覗き込みますと、ギロリといつもの穏やかさを捨てモーガンさんを思いっきり睨みつけました。

 その眼光がいつにも鋭く、私は「ひっ」と悲鳴をあげて思わずラモラック卿の後ろに隠れました!先ほどの雰囲気とは打って変わった様子に皆さんも戸惑いを隠せませんでした。

 

  「王妃を、市民を守れなくてマスターなんてやっていられませんわ。当然です。市民もですが、王妃も守るべき対象の1つ。であれば、騎士が立ち上がらなくてどういたしますか!」

  「……ですがガーレン殿、ここはマリー王妃が」

  「知ったことですか!!」

 

 ゲオルギウスさんの言葉を遮って、パシリと一喝します。

 

  「私は魔術師であり、民と主君を守る騎士です。確かにサーヴァントという身であれど、マリー王妃はかつて国とともにあった王妃。それなのに騎士が王妃を見捨てるなど私にはできません」

 

 人を見捨てることを厭わない、ガーレンさんの意志。凛として話す彼女は、本物の騎士のようでした。

 はっきりそう言ったガーレンさんはモーガンさんに目もくれず、剣を持って部屋を飛び出しました。

 

 「待ってください、ガーレンさん!!」

  「マスター!お待ちください!!」

 

 リリィが慌てて後を追います。モーガンさんははぁ、とため息をついて頭を抱えました。

 

  「……戦力差は絶望的だっていうのに、マスターったら………」

  「いいんじゃねえの?」

  「ラモラック、あなたわかっているの?この状況。どう考えてもまずいに決まってるでしょう?」

 

 心底呆れた、というような表情にラモラック卿は不敵な笑みを浮かべて言いました。

 

  「確かに無辜の民を守るってのは騎士道だ。だが、健気にもその市民を守ろうとする王妃様を見捨てるってのも騎士道としてどうかと思う。だからガーレンのあの判断は正しいと思うぜ?」

  「…………」

  「というわけで、どのくらい解呪に時間がかかる?」

  「へ?」

 

 ラモラック卿がその笑みを崩さないままジャンヌ・ダルクさんとゲオルギウスさんに目線を向けました。呼ばれたジャンヌは少し考えてから、唇をかみしめて言いました。

 

  「……全力でやったとしても、数時間はかかると思います」

  「そうだなー、俺の『円卓の速き巨槍(メタルナイト・ラモラック)』でも無理がある。旦那はなんかないの?」

  「………それは時間稼ぎで、という意味でか?」

  「それ以外にないだろ」

 

 ジト見でエミヤさんを見ると、エミヤさんは大きくため息をついてしぶしぶと言った様子で言いました。

 

 

 

 

 

  「………なくはない、がいくつか難題があるぞ」

 

 

 




もうガーレンさんが主人公でいいような気がしてきましたオレンです……。いや、もう立香君の影があまりにも薄く感じていて………!!

さて、オリジナル要素といえば街の様子とか、ゲオルギウスとの出会いの部分。第1章は前にも言った通り漫画を参考にしながら書いているのですが、漫画は出会いの部分など詳しく書かれていないので、かなり大雑把ですがこのような形に。
そしてゲームでエリザベートときよひーが出会う場所ってティエールだったんだなと最近漫画を読んで思い出しました。

あと補足です。
エミヤとモーガンは正論を言うと思います。全てはマスターの安全のため。それでもマスター達を生き延びらせるために市民を見捨てての撤退を促してます。人類を救うための犠牲だから致し方ないし、特異点を修復すれば助かると思っています。
それに対して市民もマリーも救いたいと願うのは、騎士道の心を持ったガーレンと本物の騎士であるラモラック。サーヴァントといえど王妃は王妃、フランスを治めた王の妻なのだから、見捨てることはできない。諦めることなんてできない、みたいな感じ。

キャリスは「自分は生きたい、けど市民とマリーを見捨てていいの?」みたいなはっきり言えない、みたいな感じの中立です。リリィはマスターの意思に従います!けど、市民を見捨ててよかったのかと言えばそうでもない、みたいな。曖昧ですが彼女も中立。


勝手ですが、キャリスとガーレンの対比するものってなんだろう?と考えながらこういった立場をあらかじめ決めています。
男性陣についてはまた次回のあとがきで。



毎度のことながら小説を書きながら先人様達は本当にすごい、と感心しています。その上で月1のペースで急いで書き上げるよりも、投稿期間長くてもいいからより良いものを書き上げたほうがいいんじゃないかという葛藤が私の中に常に渦巻いています。
ひとまず来月の資格検定のため、投稿は遅くなります。なるべく早く投稿していきたいとは思いますが、よろしくお願います!


それでは次回もお楽しみに!



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狂った処刑人


どんどん投稿スペースが遅くなっていくー、と長い長い夏休みの終わりを告げられたオレンです。ずっと寝てられなーい朝早く起きるのがつらーい。試験がつらーい。

FGOはいよいよ来週からアニメが始まるとのこと。7章はみなさんのトラウマがぎっしり詰まっているのですが、一番の楽しみは現在ボックスイベのショップに出て来ているあの方ですね……すごく楽しみです。


今回は別行動をしているはずの立香視点からです。
では、どうぞ!


 

 

  「……先輩………」

 

 マシュが不安そうになって俯かせる俺に呼びかける。

 突然ガーレンたちとの通信が遮断されてしまった。ファヴニールはガーレンたちのいる町へ向かったのだろう。

 そうだとしたら、このまま放っておくのは………。

 

 「急ごうマシュ!馬を走らせてくれ!!」

  「え、先輩!?」

  「待つんだ立香君!!」

 

 俺が馬に乗ろうとすると、シュミットに腕を掴まれて止められた。俺は振り返ってシュミットの顔を見る。

 

 「けどガーレンやキャリスが、皆危ないんだ!」

  「今君が行ったところで何ができる!?下手したら僕たちも巻き添えになってしまうかもしれないんだよ!!」

 「それならこのまま放っておけと!?」

 

 シュミットがこちらを睨んで来たため、僕も思わず睨み返した。マシュがオロオロと慌てている中、誰かが俺とシュミットの頭を軽く小突いてきた。……軽くとはいえ、かなり痛かったけど。

 

 頭を小突いて来た人物を見ると、呆れた顔をしているキャスターがいた。

 

  「一旦落ち着け坊主達」

 「けどキャスター………!」

  「頭に血が上りすぎだ、少しはあいつみたいに羽を伸ばそうぜ?」

 

 キャスターがそうふあぁ、とあくびをするアンデルセンを指しながらそう言った。いや、あれは緊張感がなさすぎの部類だよ!!?と内心で突っ込むのを忘れない。

 

 シャルルがウズウズとしながら、馬に乗ろうと足を引っ掛けたり降ろしたりしている。

 そしてしびれを切らしたのかシュミットに声をかけて来た。

 

  「なあマスター!俺たちもいこう!!民が危ない!!」

  「避難はすでに執り行われているはずです。ゲオルギウスがいるのなら、この事態を想定していなかったわけがありません。一般市民の方は問題はないでしょう。問題なのはファヴニールを誰が足止めするか、についてです」

 「えっと………ガーレン達全員じゃ難しいってことだよな」

 

 確かめるようにいうと、シュミットはこくりと頷いた。

 

  「キャリス君のアーチャーもガーレンのセイバーにも、竜殺しの逸話があるとは思えません。現状、ファヴニールに対抗できるのはジークフリートだけだ。ですがそのジークフリート自体呪いをかけられてうまく動けない状況。そうなると一体誰が足止めをするか、が問題です。……ガーレンの性格上、まさかファヴニールに突っ込んだりしませんよね………」

 

 シュミットが遠い目になりかけながらいうのを見て、マシュが首を傾げて言う。

 

  「あの、ガーレン先輩はそこまで無茶をする方ではないような気がしますが」

  「ああ、言ってなかったね。彼女、あれでも騎士の家系の生まれなんだ。フランスだったかイギリスだったか、由緒正しき騎士と、魔術師の間に生まれている。だから魔術師の中でも異端と呼ばれているんだ」

 「異端………?」

 

 俺はまだ魔術師のことはよくわからないけど、異端なんだろうか?ガーレンは俺よりもすごい人だけど、異端とは思えない。

 

 シュミットがハッと口を閉ざし、深くため息をついて馬に乗る。

 

  「ジークフリートが見つかった以上、間に合うにせよ間に合わないにせよ合流はするべきでしょう」

  「間に合わせてみせる!!ほらアンデルセンいくぞ!」 

  「おい!勝手に持ち上げるな!!というか下ろせ!!」

 

 シャルルマーニュもシュミットが行くことが嬉しいのか口の端を上げながら、アンデルセンを担いで馬に飛び乗って走っていった。アンデルセンの悲鳴が聞こえた気がしたが、気にしない。

 

 「俺たちも後を追おう」とマシュに声をかけた。マシュが頷いて馬に乗り、俺も続いて乗ろうとすると、今まで黙っていたアマデウスがため息をついて呟く声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

  「いやしかし、遠いね。マリアがやられるまでに間に合わないね。多分」

 

 そう呟く声が、俺には聞こえてしまった。

 え、とアマデウスを見やると、清姫が恐ろしい形相で扇子をアマデウスに向けていた。

 

  「理由次第では燃やします。マリーのことが好きではなかったのですか」

  「……彼女に対する情熱はない。僕にとって大切な分岐だったけどね」

 

 極めて冷静にいうアマデウスに清姫が冷たい目で睨みつけるのがすごく印象的だった。マシュが「先輩?」と呼びかけてくれるまで固まって動けなかった。

 アマデウスが「ほらマスター、急ぐんだろう?」と声をかけるまで、俺はその場から動くことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

_______________________________

 

 

 

 

 

 

 

  「お待ちくださいガーレン様!!」

 

 後ろからリリィの声が聞こえましたが、それを気にする余裕は私にはありませんでした。住民たちが避難している横をすり抜け、別の門へ走ります。マリー王妃が向かったであろう場所まで一気に。

 

 街を出るとすでに何かと戦う音が聞こえてきました。そこにいたのは、傷だらけのマリー王妃と、

 

 「あれは、サーヴァント……!!?」

 

 黒いコートをまとった白髪の男でした。どこかで人を殺してきたんだろうか、身体や顔、手は血で濡れていました。

 息を飲んで立ち止まると、マリーが水晶の盾を召喚して攻撃を防ぎながらこちらを振り返りました。

 

  「! ガーレン!?どうしてここに!?」

 「援護しますわ!!『ガント』!」

 

 北欧の魔術『ガント』を放ち、黒いコートのサーヴァントを無理矢理にでも下がらせます。

 彼は私の存在に気づき、怒りを目に宿らせながら憎しみをこちらに向けました。

 

  「僕と、僕とマリーの邪魔をするなぁ!!!」

 「っ!!?」

 

 マリー王妃の横をすり抜けこちらに攻撃を仕掛けてきましたけど、私は間一髪でそれを避けます。横に転がりながらポシェットから短剣を抜きます。

 

 さらに追い討ちをかけようと剣を振りかざす彼とそれを防ごうとする私の間に別の誰かが割って入ってきました。

 

 「!?」

  「やぁぁっ!!」

 

 勇ましい声とともに剣を振ってサーヴァントの剣を弾いたのです。

 そこにいたのは息を荒くさせて剣を構える、リリィでした。

 

  「もうマスター!!勝手に行かないでくださいってば!心配したんですからね!!」

 「え、ええ……ってあなた前!」

 

 再び襲いかかってくる攻撃を、リリィは何度も弾いている。男のサーヴァントの方が背は高いはずなのに、打ち合っている姿を見て『サーヴァントの筋力って基準どうなっているのかしら』と思ってしまいます。

 (*ちなみに筋力はリリィがC、サーヴァントの方がDの模様。魔術でならサーヴァントのステータスも一応読めますのよ?)

 

 キィン、キィンと打ち合いを続けているのを見ながらどこで援護をしようか考えているとマリー王妃が駆け寄って来ました。頬を膨らませながらこっちを睨んできているのを見る限り、相当怒っているようです。

 

  「なぜ来たの!ここへ残るのは得策ではないことぐらい、あなたはわかっていたはずよ」

 「魔術師でありマスターでもある前に、私は騎士ですわ!!民も王妃も守ってこその騎士です。ここで引き下がってあなたを見捨てることなど、できませんわ」

  「……………」

 

 はっきりそう言うと、マリー王妃がくしゃりと悲しそうな顔をしてしまいました。驚いて私が「どうしたのですか?」と聞くと、マリー王妃は「どうして、」と言葉を続けます。

 

 

  「どうして、そのようなことをするの?一歩間違えればあなたは命を落とす。けれど、あなたはここで死んではならない人間、それは自分でもわかっているはずよ」

 

 

 そう諭すように言われ、ハッと口をつぐみます。

 確かに軽率な考えだったのかもしれない。魔術師的に考えれば、サーヴァントを一体失ったところで想定内と所長や周りの人たちは言うでしょう。

 

 けれど、私ではなくとも。

 私は王妃の手を取って口を開きます。

 

 「王妃、私は騎士の家系です。確かに私は人類が残した希望の1つ、けれどそれは他の3人にもできることだと考えています」

  「そんなっ……」

 「確かに特異点が直せば、この戦いで亡くなった人々も戻ってくるかもしれません。けれど、だからって味方であるサーヴァントを見捨てることなんて、私にはできないわ」

 

 そう微笑んで言うと、マリー王妃は「……そう」と顔をうつむかせてしまいました。

 どうしました?と声をかけようとすると、「一体誰だ……」と、おぞましい声が聞こえて来てマリー王妃の前に出ます。

 

 

  「誰だ、マリーにそんな顔をさせる奴は。誰だ、誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ」

 

 

 血まみれになった剣をかざしながらふらりと体を揺らせる男のサーヴァント。ぎろりとこちらを睨み、濃厚な殺気が肌をピリピリと指します。

 

 これは、まずいっ………。

 直感的にそう判断する。その嫌な予感は、的中してしまったのです。

 

 

 

  「マリーを悲しませるものは、許しはしない!!宝具展開!」

 

 サーヴァントが魔力を放出させると、彼の後ろに大きく、禍々しい門が現れました。

 するとグィ、っとマリー王妃が私の手を掴み、いつの間にか出現していたのだろうガラスで作られた馬の上に一緒に乗りました。馬はそのまま空を駆け出し、空を飛びます。

 

 瞬間、門とともにギロチンが現れ、そこから黒い手がこちらへ伸びて来たのです。

 

  「『死は明日への希望なり(ラ・モール・エスポワール)』」

 

 馬はその手から逃げるように空を飛びますが、黒い手もこちらを追って来ます。あれに捕まるのはいけない、と瞬間的に判断しました。

 

 「リリィ!全力で避けてください!!」

  「は、はい!きゃああっ!!」

 

 リリィが全力で逃げているのを見つつ、私は後ろから追いかけてくる黒い手を追い払おうと指を構えます。ただ、スピードが速すぎて狙いが定まりません。

 

  「………ねえ、ガーレン。私は、本当に嬉しいのよ」

 「え?」

 

 不意に、マリー王妃がそう呟きました。

 

  「私も死ぬのは、とても怖い。二度目のはずなのに怖いの。でも、今はあの時とは違います。私はまだ必要とされている」

 

 マリー王妃の言葉に私はおとなしく話を聞きます。

 

 

 

 

 

 

 マリー・アントワネット。14歳の時に後の国王ルイ16世と政略結婚、王妃となった彼女を待っていたのはベルサイユでの華やかな生活と陰謀渦巻く孤独な戦い。それでも王族として民にもよく尽くし、子にも恵まれた彼女の生活は幸せだったはずだ。

 しかし、革命の熱狂に浮かされたその民衆によって、彼女は処刑されることになった。

 

 

 それこそ亡くなった経緯で言えばジャンヌ・ダルクとそう変わらず、それこそあの黒いジャンヌと同じように誰かを憎んでもおかしくはないはずです。

 なのに、彼女は穏やかに笑うのです。

 

 

  「私は今度こそ間違えず、大切な人と大切な国を、あなたを守るために、正しいことを正しく行うことができる。それが、たまらなく嬉しいのです」

 

 

 

 

 彼女は私の方へ少し振り返って、笑いました。

 確かにその姿は『民を思う本当の王族』でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「だから、今は」

 

 マリー王妃は手を胸にかざし、魔力を放出します。私は何をするのか気づいて同じように手を重ねて静かにパスをつなげます。王妃は頷き、手にはめている指輪はさらに輝くを増します。

 

  「この輝くを束ねて。さんざめく花のように、陽のように」

 

 一気に魔力が吸い取られる感覚がして、歯を食いしばって耐えます。馬は一気に旋回し、門へと突っ込んでいきます。

 

 

 

  「『百合の王冠に栄光あれ(ギロチンブレイカー)』」

 

 

 それは、栄光のフランス王権を象徴とした宝具。

 

 ガラスで構成された馬は光となって襲ってくる黒い手をかいくぐり、そして出現したガラスの結晶が取り囲んだサーヴァントの脇腹を貫いたのです。

 

 

  「僕、は……もっとうまく首を刎ねて、もっともっと最高の瞬間を、与えられた、のなら………君に、許してもらえると……」

 

 サーヴァントは何事かを呟きながら倒れ伏しました。彼の魔力が消えたのか宝具の門やギロチンまでも消えて行った。

 

 マリーはため息をついて馬を下りながら呟きます。

 

  「もう、本当に哀れで可愛い人なんだから。はじめからあなたは、私に許される必要なんてなかったのに」

 

 マリー王妃の呆れたような、けれどようやく終えることのできた、そんな安堵の息を漏らしました。

 

 

 あのサーヴァントはマリー王妃の生前の知り合い、そして彼の『首を刎ねる』という言葉……彼は、処刑人『シャルル・アンリ・サンソン』なのかしら。

 ここまでわかりやすい真名表示はないですわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「令呪を以て命ずる。”アサシンよ、城へ戻れ”」

 

 瞬間、冷徹な言葉が辺りに響き、アサシンのサーヴァント『サンソン』はその姿を消した。

 その声にすぐにリリィが駆け寄ってきて私の前に立ちました。

 

 マリーも疲れ切った表情で、その声の主人を見ます。

 

 

 

 

  「令呪……サーヴァントへの絶対命令行使権はそんな風にも使えますのね。それにしては遅い到着でしたのね、『竜の魔女』さん」

 

 

 

 

 

 その目線の先にいたのは、ジャンヌによく似た女性……『竜の魔女』もう一人のジャンヌが立っていたのです。

 

 





今回はかなりぶつ切りになってしまいました……。最近はモチベがなかなかあがらず困ります。なんとかモチベをあげようとイベントは頑張って周回しています(遅くなった原因がこれだろうとか思った人、正解です((

まだ中学生の頃、ある漫画でシャルルを女性の名前で見かけたのでシャルルは女性名という印象がとても強いです。今ではシャルルと聞くと男性名にも女性名にも聞こえるので言葉って不思議です。アシュリーが女性名だとか、正直今でも間違えそうになります・・・。

ではいつもの補足。
アマデウスの耳はかなりの距離を聞くことができるそうなので、下手したらマリーが身代わりになっていることぐらい知ってるんじゃないかなぁと思って書いています。立香は恋心云々とかあらかじめそういう話を聞いていたので、マリーに対して愛情がないアマデウスに驚いています。

そしてガーレン、彼女は多分衛宮士郎とは別の意味で破綻しています。具体的にどう、とかはまだ語れませんが今のところ彼女が一番主人公らしいですわ……と内心で考えたり考えなかったり。

かなりのスローペースですが、いよいよ第1章も佳境に入りつつあります。
今年中に終わることを期待したりしなかったり、けれどゆったりまったり投稿していくのでよろしくお願いします。


では、また次回!




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