無個性な僕は丑の戦士に助けられた (シマユウ)
しおりを挟む

原作前
1話


 世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つ超人社会。『個性』を悪用する敵(ヴィラン)を『個性』を発揮して取り締まるヒーローは人々に讃えられていた。

 

 僕の名前は白井 黒。僕には『個性』というものが無かった。両親は二人ともプロヒーローであり我が子にも個性があるものだと信じていたのだが僕に『個性』が無いと知った両親は僕に無関心になった。しかし僕はそれに悲観する事も楽観する事もなくただ毎日を過ごしていた。

 

 中学一年生のある日の帰り道。なんとなく駅前を歩いていたら私はヴィランに捕まってしまい人質となってしまった。ヴィランは数十人おり、その一人は僕にナイフを向けていた。その時僕はあまり焦りなどもなくどうでも良いと感じていた。ヒーローの到着も遅れており周りは野次馬だらけだ。誰も助けようとはしない。それもそうだ。どうせヒーローの誰かが助けにくる。野次馬にはそんな事を思っていて助けようとはしない。

 

 そんな時、男性が一人こちらに向かって歩いて来た。特徴的な牛の角のような髪型。腰には細いサーベルのような物をぶら下げていた。

 

 それに気づいたヴィランの一人は男性をあしらうかのように手を近づけた。次の瞬間、男性はそのヴィランの腕をサーベルで切り落とした。痛みに絶叫するヴィランの喉を切り裂き絶命させた。これにはヴィラン達も驚きを隠せない。男性は近くに居たヴィランの懐に飛び込み首を切り落とした。この光景に野次馬はその場から一目散に逃げ去っていた。ヴィラン達も様々な『個性』で応戦するも男性は的確に急所を狙い切り落とし、切り裂き、切り刻み、数分もせずに僕と僕を人質にしているヴィランと男性の三人だけになっていた。男性はこちらに近づこうとしたがヴィランは静止するよう言っていた。しかし止まる気配もしなくヴィランは僕の首めがけてナイフを刺そうとした。ナイフは私の首には届かず男性の持っていたサーベルがヴィランの頭に突き刺さっていた。こうして数十人いたヴィランは男性によって倒されていた。辺りは血だらけで数十の死体が転がっている。私も血だらけである。男性は私の目線に跪いて

 

「大丈夫かね、少年」

 

 そう声をかけられた。僕は頷いていた。僕の顔に付いていた血を手で拭って

 

「そうか、しかしキミはあの状況でよく動じなかったね。では私はこれで……」

 

 この人はどこかに行ってしまう。僕はどうしても一つだけ聞きたい事があった。

 

「あ、あの!!」

 

「うん? 何かね?」

 

「ど、どうしたらアナタのような人になれますか?」

 

「私にかね?」

 

「ぼ、僕はこれまでなんとなくで生活していて、何が良いとか悪いとか考えた事もなくて。どうしたらアナタのようになれますか?」

 

 男性はこちらをジッと見つめた。見つめられると少し萎縮してしまう。

 

「……うむ。そういうことはあまり考えたことはなかったんだが……。考えてみようか」

 

 少し考えた後、鞘に使っていないしまったサーベルを手をかけ鞘から刃を、居合いのように抜き空を切った。

 

「私の信条を言うならば『正しいことをただ正しく行う』だ」

 

「正しいことを……ただ正しく」

 

「そう。私はこれに基づいて行動している」

 

 その言葉に僕の中で何かがはじけた。こんな考え方があるんだ。

 

「……ぼ、僕もなれますか?」

 

「なに?」

 

「アナタみたいになれますか?」

 

「私のようにかね?」

 

「は、はい」

 

「うむ……。そうだね、キミがしたいと思うなら、それは頑張るんだな」

 

 そう言われて嬉しかったが僕は悩んでしまった。

 

「キミはコロコロと表情が変わるんだね。どうしたんだね?」

 

「え、えっと、実は僕には『個性』というのは無くて……」

 

「そうか、私もそのような力は無い」

 

「えっ!?」

 

「私は殺すという技を持っているだけだ」

 

「……殺す」

 

「……そうだな時間はあるかね?」

 

「は、はい!!」

 

「では移動しよう。そろそろここに人が集まってくる」

 

 私たちはこの場所を後にした。暫くして警察やヒーローが集まりその凄惨な現場を目撃する事となる。

 

 私は彼の後ろについて歩いていった。どこに向かうのだろうと思っていると彼は立ち止まった。そこは誰もヴィランですら近づかない曰く付きのお屋敷だ。このお屋敷は夜中入った者もしくは近くを通った者はは必ず気絶もしくは重傷になって近くの通りに捨てられている。彼は中に入って行き私もついていった。

 

 外見よりは中は古くはなく人が住めるようにはなっているみたいだ。私がキョロキョロしていると彼は

 

「どうしたのかね? 変わったとこでもあるのかね」

 

「い、いえ。なんでもありません」

 

「うむ、そうか? では少しそこで待っていたまえ」

 

「は、はい」

 

 彼は奥の部屋へ行っていき私は周囲を見渡した。よく見ると使っている部屋と使っていない部屋がある。使っていない部屋は埃や蜘蛛の巣とかがかかっている。そんな事を考えていると彼は戻ってきた。その手には大きな剣を持っていた。それを私に渡した。

 

「私はあまり人に教授することはしたこと無かったのだが……」

 

「え、えっと」

 

「とりあえずその剣をとりたまえ」

 

「は、はい」

 

 私が剣を持った。しかし思っていたより重かったが両手で持つことができた。

 

「それを一度振ってみたまえ」

 

 僕は思い思いに剣を振ってみた。イメージは剣道のように振った。それを見て彼は

 

「なるほど。キミには剣の才能は無さそうだな。………今のままでは」

 

 才能が無いとズバッと言ってのけた。剣を落としそうになるくらい。彼は続けた

 

「聞こえなかったのか? 今のままではと言ったのだ。そうだな……これから一年間で教えてあげよう」

 

 こうして僕は彼の技を教えてもらうことになった。……そういえば聞いていなかった事があった。

 

「アナタの名前はなんですか? 僕の名前は白井 黒」

 

「そうか、名乗ってなかったか。私は……」

 

 丑の戦士『ただ殺す』失井

 

※※※※※※

 

 彼はサーベルを持ち構えた

 

「さぁ、キミも構えたまえ」

 

「えっ?」

 

「どうしたのかね? こういう教えとは実戦が一番だろう?」

 

 彼はそう言うと僕の首めがけて切りかかってきた。いきなりの事で僕は目を瞑ってしまった。しかし痛みは来なかった。彼はため息をついて

 

「何をしているんだね。寸止めに決まっているだろう。これだとキミは一回死んでいるよ」

 

「はい?」

 

「キミは私を殺すつもりで来たまえ。私の動きをよく見るんだ」

 

 見るっていっても速すぎて目では追いつけない。彼に当てようにも当たらない。

 

※※※※※※

 

 最終的に三時間やったが彼に一回も当てることはなくそれでいて息切れだ。対して彼は平然としていた。

 

「この三時間でキミは何百回死んだんだね」

 

「ハァ、ハァ。そ、そう言われても……」

 

「うむ……。この教え方はキミにはまだ早かったのか……」

 

 そりゃあそうだろう。剣なんて一度も持ったことも振ったことも無い。それで彼を当てようなんて出来る訳がない。

 

「まぁ、徐々に慣れていくだろう。さぁ、もう一度構えたまえ。今度は先ほどよりゆっくり切りかかるとしよう」

 

「は、はい!!」

 

 夜になるまでずっと彼と模擬戦という名の一方的な攻撃を受け続け終わる頃には僕は一歩も動けなかった。

 

「うむ。では今日はこれくらいにしておこう」

 

「……は、はい」

 

 僕はゆっくりと起き上がった。フラフラな僕に彼は思い出したかのように付け加えた。

 

「そうだ。キミは筋力とかのそういうのも足りないから頑張るように」

 

「えっと、具体的には?」

 

「うん? そういうのはキミで考えたまえ。私は技術を教えるだけだ。そういう基礎は自分で行うんだな」

 

「はぁ……分かりました」

 

「……そうだな。アドバイスするなら自分の得意な部分を伸ばしてみるんだな」

 

「得意な部分……。何なんですか、僕の得意な部分とは」

 

「それはキミが見つけるんだな。また明日ここで待っているぞ」

 

「わ、分かりました」

 

 今日のとこは僕は家に帰る事にした。今日という日は今まで生きてた中で一番印象的だった。彼に出会って僕という歯車が回り始めたと思った。これから頑張っていこう。そう思いながら帰路についた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

※※※※※※
↑場面や視点の変更の際に使います。



 僕は帰宅すると丁度家に両親が居た。父親は『武器庫』の個性を持っていた。様々な武器を作り出す個性である。母親は『薬効』薬から毒まで作れる。二人から生まれる子供はさぞかし優れた個性で産まれてくると期待されたが産まれたのが無個性な僕であった。両親の期待を裏切った形となった。その後は両親の愛情は注がれる事はなく両親はヒーロー活動に専念しており家に居ないことが多かった。

 

 そんな両親が居ることに驚いていたが見知らぬ男の子が楽しげに話していることにもっと驚いた。誰だそいつは? リビングの入り口に居た僕に父親は気づくと

 

「……なんだ、帰っていたのか」

 

 蔑んだ目であしらわれた。僕は気にせず両親にというか見知らぬ子を指差し

 

「その子は誰ですか?」

 

 すると母親は笑顔で

 

「この子は養子として迎えるのよ。赤っていうの。この子はちゃんと個性をもっているのよ」

 

 ニコニコと笑っていた。するとその養子が立ち上がり

 

「どうも無個性さん。僕の個性は『刀剣』刃物の全てを作れます」

 

「はぁ、そうですか」

 

 養子の自己紹介が終わると母親は続けて話した

 

「だからこの子が居るからアナタはいらないの。この子はゆくゆくは雄英に行かせようと思っているの。出来ればあなたには施設とかに預けたいんだけど……」

 

 なるほど。厄介ばらいという事ですか、分かります。自分たちの個性に近い養子がいれば良いもんな。しかし

 

「嫌です」

 

「「………はぁ?」」

 

 僕は人生初の両親への反抗をみせた。父親はため息をつき

 

「お前はただの無個性だ」

 

「だから? ソイツはたかが刀とか作れるだけ」

 

「……なんだと」

 

「ていうか、よく考えるとあなた達も可笑しいよね。ただ武器とかを作るだ……」

 

 言い切る前に父は僕の首に剣を向けていた。言い過ぎたかな?

 

「無個性のただのガキが、調子乗ってんじゃねぇよ」

 

「………………」

 

 おいおい。これがヒーローの姿ですか。養子もビックリして引いてるよ。でも、この人達より彼の殺意の方が強く印象に残っている。怖くはない。

 

「……一年」

「なに?」

「一年後またこの家に戻ってくるよ。その時決闘を申し込む。勝った方が言うことを聞くってのはどう?」

 

 その提案に両親は話し合っていた。その間僕は二階にある僕の部屋で必要な物をバッグ等にまとめていた。一階に戻る頃には両親の話し合いは終わっていた。

 

「いいだろう。一年の猶予をやろう。その間はお互い干渉は無しだ。資金等も無いと思え」

 

「了解しました。そういうのは適当にやりくりします」

 

「荷をまとめたんだろう。さっさと出ていけ」

 

 僕は重い荷物を持ち出て行く前に

 

「それでは一年後までご機嫌よう」

 

 言い残し僕は清々しい気分で自宅を後にした。行き先は決まっていた。

 

※※※※※

 

「……そう言う訳で日から泊まっても良いですか?」

 

 僕は彼の住んでいる屋敷に来た。道中のコンビニで買ったクッキーの詰め合わせを渡した。

 

 

「……別に構わないが、そういうのは前もって言ってからの方が良いと思うぞ」

 

 一応詰め合わせは受け取ってくれた。

 

「まぁ、さっき説明したとおりです。これからよろしくお願いします」

 

「鍛え教えるのは構わないが……。キミは両親に認めてもらいたいのかね」

 

「どうでしょう……。多分そんな感じだと思います。その後はアナタのようなヒーローになります」

 

「ふっ、別に私はヒーローではないのだがね。今日は遅い。明日から死ぬ気で行う、覚悟してくように」

 

 使っていない部屋を貸してもらい今日は就寝する事にした。明日から頑張ろう。

 

※※※※※

 

 朝、動きやすい格好になりストレッチも終わり、彼の方を見ると明らかに見た目めちゃくちゃ重そうな剣が用意されている。彼はそれを片手で一回素振りをした。

 

「これを軽く500回くらい振ってみたまえ」

 

「は、はい」

 

「それが終わったら軽く20kmを走る」

 

「……は、はい」

 

 なるほど彼は人に何かを教えた事が本当にないんだな。加減と言うのを知らない。

 

「これを軽く5セット行う」

 

「…………はい…」

 

 ……いや、不可能でしょう。

 

「あのぉ、これで強くなるんですか?」

 

「まぁ、恐らくは」

 

「恐らくはって………」

 

 彼は僕に重そうな剣を渡した。……この剣、本当に重いです。

 

「とりあえずは一度やってみたまえ。出来なければ少しは調整する」

 

 そうだ。死ぬ気でやるって決めたんだ。やってやるぞ。僕は勢いで素振りを始めた。その間彼は読書をしていた。

 

 

 ようやく終わりました。夕方になりました。てこを使っても動けないよ。息も絶え絶えな僕に追い打ち

 

「では実戦訓練に入る。そこにある剣を選び持ちたまえ」

 

 そこには様々な種類の剣が並んでいた。その中で彼と同じような剣があった。僕はそれを指差し

 

「あの、これは……」

 

「うん? あぁ、それかね。私が使っているのと同じサーベルだよ」

 

「これが……」

 

 見た目は別段特別な訳ではなくただのサーベルだと感じた。彼は説明してくれた。

 

「このサーベルの銘は牛蒡剣。……と言ってもこれ自体は特別なものではない」

 

「そ、そうなのですか!?」

 

「あぁ、しかし重宝している」

 

「……………」

 

 僕はその、牛蒡剣を手に取った。

 

「ほう、それにするのかね」

 

「はい。アナタを目指すならこの剣にします」

 

 すると彼は剣を鞘から抜きそして構えた。

 

「それでは、よく私の動きをしっかりみるのだな。キミが死なない程度で教えよう」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 実戦形式で行われた。もちろん防戦一方だ。しかし彼の一太刀、一太刀をかろうじて見る事ができた。その防御も甘ければそこを攻撃してくる。全て峰打ちだったがもはやボロボロだった。立っているのもやっとってとこだ。

 

「まぁ、最初にしては良い方だ。しっかりこちらの攻撃を見る事を怠らなかった。しかしそればかりに集中して防御がおざなりだったがね」

 

 いや、ついてくのに必死だったんです。不格好な防御が出来てただけ誉めて欲しいです。彼は評価を終えるとまた剣を構えた。

 

「それを踏まえた上でやってみたまえ」

 

 まだやるんですね。でも彼みたいになるんだ。立ち上がり剣を構えた

 

「お願いします!!」

 

「今度はそちらも攻撃してくるように。……では、いくぞ」

 

 しかしまたも防戦一方だった。せめて一太刀。せめて一太刀と思い攻撃が収まってきた瞬間を狙い仕掛けた。だが彼に当たることもなく避けられた。その後は言うまでもなかった。もはや気力だけで立っている状態だった。それを察してか彼は剣を鞘収め

 

「今日はこの辺にしておこう」

 

「……は、はい」

 

 その言葉に僕は倒れ込んでしまった。

 

「ほら、これを飲みたまえ」

 

 彼にミネラルウォーターを渡された。水ってこんなに美味しいんだなと実感していた。

 

「明日からはもっと長く訓練を行うつもりだ。気を引き締めるんだな」

 

「わ、分かりました」

 

「では、そろそろ夕食にしよう。汗を流してきたまえ」

 

 浴室を教えて貰い汗を流した。所々の峰打ちの箇所が痛い。でもこの痛みを忘れずに明日の訓練に望む。そう思いながら僕は汗を流した。……でも痛い。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

連続投稿すいません
今回は失井さんの台詞を言わせたかっただけです


 彼との生活で彼の事を少しずつ知ることが出来てきた。彼は戦場を歩き戦場では敵陣を例外なく全滅させる、通称『皆殺しの天才』と呼ばれていること。あの時僕を人質にしたヴィランの連中をあっさりと倒し殺してしまうのも納得がいく。ちなみに彼は外食が中心で見た目より良く食べる。

 

※※※※※

 

 1~2ヶ月。トレーニングをやるのもやっとだった。実戦訓練も僕はただのサンドバッグ状態だった。

 

 3~4ヶ月。トレーニングをしてもそこまで息が切れなくなってきた。すると彼はトレーニング内容を二倍に変えた。

 

 5~6ヶ月。実戦訓練は毎回防戦一方の為か防御は上手くなってきた。そして訓練中10回は攻撃を仕掛ける事も出来るようになった。全て掠りもしなかったけど、太刀筋は良かったと誉められた。

 

 7~8ヶ月。トレーニングと実戦訓練のおかげで体つきも最初の頃に比べたら大分変わった。これも彼のおかげだ。

 

※※※※※

 

 9ヶ月目を迎えたある日のこと。僕は日課のトレーニングを終え剣を持って待っていたら

 

「今日から正真正銘の実戦を行う。ついて来たまえ」

 

 彼に言われるがままついて行くと、とあるビルに着いた。そこに入り彼は受付の人と話をしエレベーターに向かった。エレベーターに乗り地下一階のボタンを押した。地下一階には何があるんだろう。そして実戦とはなんだろう。

 

 ………一向に地下一階に着かない。普通なら直ぐに着いても良さそうなのだがまだエレベーターの中にいる。彼の方を見ても彼は目を瞑っているだけだ。するとチーンと音がした。ようやく地下一階に着いたみたいだ。

 

 一番に聞こえたのは大きな歓声。何事かと覗いてみればボロボロで立っている人と、ピクリとも動かず倒れている人がいた。

 

 僕はこの光景に圧倒されていると後ろから彼が声をかけてきた。

 

「驚いたか?」

 

「は、はい」

 

「ここは観客達の道楽場でもある。ここで行われるのは決闘と名ばかりの非合法な戦いだ。ヒーローもヴィランも関係ない」

 

 観客一人一人をみると新聞やテレビで見たことのある有名人や政治家などがいた。ちらほらプロヒーローもいる。するとアナウンスがなった。

 

『白井黒。461番の白井黒様。まもなく時間になります。ゲート入り口に来て下さい』

 

 僕の名前が呼ばれた。混乱していると彼は

 

「呼ばれたぞ。ついて来たまえ」

 

「いや、何で僕の名前が……」

 

「それはエントリーしたからだ」

 

 この人は勝手に何をしているんだ。移動しながら文句の一つでも言おうとしたら

 

「良いかね。これからは個性を使う者達と戦って貰う。君にはまだ経験が足りないからな」

 

 ……な、何も言えない。

 

「基本的に個性は発動型、変形型、異形型の3つだ」

 

「は、はい。それは知っています」

 

「ならば良い。頑張りたまえ」

 

「……出来ればアドバイスを下さい」

 

「そうだな……。相手は何であろうと人間だ。斬れない訳がない。そして相手を良く見ること。……以上だ」

 

 うん、そんな気はしていた。僕は意を決してリングに上がった。

 

『さぁ、初参加にして史上最年少。461番白井 黒選手の入場だぁああ!!!!』

 

 はちきれんばかりの歓声があがる。何を期待しているのだろうね。

 

『対するはこれまで10人を焼き殺した放火魔。35番可燃 炎選手の入場だぁああ!!』

 

 可燃はガスマスクをして何かを背負っている。僕は準備運動をした。すると可燃が笑ってきた。

 

「くくくっ」

 

「……なんすか?」

 

「お前、みたいな、餓鬼を、燃殺する日が、来るなんて……。今日は、良い日だ」

 

 へぇー。そうなのかー。念入りに準備運動をし彼と同じ牛蒡剣を取り出した。それをみて可燃はさらに笑った。

 

「ふはははっ。なんだ、その剣は。それで、俺を、斬ろうって、のか。」

 

「そりゃあ剣だもん。それしか使い方が無いよね」

 

 レフリーっぽい人が中央に集まるように言われた。中央に行くまで相手を注視した。相手の初動を予測。攻撃の予測。個性の予測。予測。予測。予測………。

 

『さぁ、いよいよバトルが始まるぞぉおおお!! ルールなんてものはある訳ない!! 相手を倒す!! ただそれだけだぁああ!! 死んでも言い訳するなよぉおおお!!』

 

 おーおー。実況が凄く仕事しているから観客もそれに応じて凄い盛り上がりようです。

 

『それでは、試合……開始!!!!』

 

 可燃は構えて何かにをしようとしていた。観客も注目していた。でも

 

「………遅いよ」

 

 僕は剣を喉目掛けて勢い良く投げた。

 

『……えっ?』

 

 実況者と観客も目が点になっていた。僕は可燃の首に突き刺さった剣を抜いた。

 

「ゴメンね、斬るじゃなくて刺すだったね」

 

『な、なんていう事だぁあああ!! まさか可燃選手が敗れるとはぁああ!! 』

 

 観客達のどよめきを背に僕はステージを降りた。降りた時彼が待っていてくれた。

 

「うむ、ご苦労様…といった所だな」

 

「どうもッス」

 

「評価を言っても良いがまずは……」

 

 バサッと何かを渡された。どうやらタオルのようだ。

 

「洗って来たまえ。今のキミは血まみれだぞ」

 

 ………本当だ。無傷なのに血まみれだ。血を洗い流せる場所をスタッフの人に聞いた。スタッフの人は怯えていたが場所を教えてもらい血を洗い流した。

 

 ふぅー。さっぱりしたぁ。彼は本を読んで待っていた。僕が戻ってきたのを分かったのか本を閉じた。

 

「うむ、では話そうか」

 

「よろしくお願いします」

 

「キミの判断は正しかった。ああいう手合いの者は動かれる前に先に処理するのが一番だ」

 

「そ、そうですか?」

 

 やった。誉められた。

 

「しかし良く人を殺すのに物怖じしなかったね」

 

 …………あっ。僕、人を……。でも……なんでだろう。あまりにも冷静である。コーヒーを飲んでいる彼に恐る恐る聞いてみた。

 

「僕は……おかしいですか?」

 

「そうだね。キミは常人とはかけ離れていると思う」

 

「そう……ですか…」

 

「キミは相手が殺す気できたからそれに対応した。ただそれだけだろう」

 

「……でも」

 

 そう言われても何だか分からなくなった。これは正しいことだったのだろうか……。すると彼は

 

「キミが悩んでいるのは、先ほどの戦いに正しさがあったか、だろう? ヴィランに正しさを聞くのはどうかと思うがね」

 

 それでも俯いている僕に彼は『正しいこと』について話始めた

 

「良いかね。人は、なんとなく、間違う。流れにそって、悪へと堕ちる。理由もなく、思想もなく、思い切りもなく、気付いたときには、当たり前のように、『道』を誤るものだ。しかしね、それに相反して、『気付かないうちに正しいことをしていた』とか、『いつのまにいた』とか、『うっかりいいことをしていた』とか、そういうことはない――絶対にない。意志がなくては正しさはない。正しい行動には、正しい意志が不可欠なのだ。正しいことは、しようと思わなければ、できない」

 

「正しいことをしていない人間は、できないのではなく、やらないだけということを、自認すべきだがね。キミもまったく、無理に正しいことをしなくてもいいが、それはできないわけではなく、やらないことを選んだのだということを、ゆめゆめ忘れぬことだ」

 

「つまり、正しき者はみな、①すると決めて、②する。きちんと段階を踏む事だ。①の段階にいながらにして、②を悩むのは、愚の骨頂だがね」

 

 ……難しい。だけどもなんとく、なんとなくだが、僕は彼の言うことを理解したいと思った。




なんか無理やりだった気がします。ごめんなさい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

 僕は地下闘技場で様々な相手と戦った。死にかけた事もあった。それも良い経験と思い戦った。そして彼と出会って一年が経った。つまり明日、約束の時がきた。僕は彼に頭を下げ

 

「一年間本当にありがとうございました。明日は必ず結果をだします」

 

 彼はいつも用にいつもの椅子に座り珈琲を飲んでいた。

 

「そうか……。私も明日この町を発つ。そして二度と戻らないだろう」

 

「えっ!? ど、どこに行くんですか!?」

 

「それは言えない。戦士として戦いに赴くだけだ」

 

 そうか、明日で彼とはお別れなのか……。なんだか少し寂しさがある。すると彼は立ち上がった。剣を持ち構えた。

 

「最後だ。これは実戦訓練ではない。全力で相手をしてあげよう」

 

 彼の言葉に僕は剣を構えた。これが最初で最後の彼の全力の戦闘。僕はこれまでのすべてをぶつける!!

 

「よろしくお願いします!!」

 

「では……いくぞ」

 

 二人は構えて一気に駆け出して、剣と剣が交わった。

 

※※※※※※

 

 大の字になって傷だらけで倒れている僕。彼は僕の横に立っている。彼の頬に一筋の傷が見える。これが僕の一年間の成果だ。

 

「私は全力でキミの相手をした。そして私に傷をつける事ができた。見事だ。これならば明日は大丈夫だろう」

 

「ぼ、僕は、アナタの、ように、なりましたか?」

 

「うむ……。それはキミ自身が決めてくれ。本当に私のように、なるのであればより一層強くなりたまえ。そして、正しいことを正しく行うのだな」

 

 本当に最後の最後まで彼らしいな。それでも

 

「なります。僕はアナタのようになります」

 

 最初からそしてこれからも僕の目標だ。

 

「……今日はゆっくり休みたまえ。明日に備えるんだな」

 

 彼は寝室に向かった。僕も手当てをして寝ることにした。

 

※※※※※※

 

 朝起きると枕元に手紙が合った。内容はこの館はどう使っても良い事。ただそれだけが書かれてあった。僕はいつものように朝の運動をして朝食をとりいよいよ対決の時がきた。僕は自宅に向かった。

 

 自宅兼父親の事務所に向かうと父と何人かが玄関先に立っていた。

 

「どうも、あなた方を倒しにきました」

 

「ふん、ほざけ。まずは私のサイドキック達を倒してから言え」

 

 父はサイドキックの人達に向かい言い放った。

 

「相手は子供だが敵だと思え!! 殺す気で戦え!!」

 

「「「「「「「はいっ!!!!」」」」」」

 

 父は個性『武器庫』を使い武器を作り上げ彼ら一人一人に渡した。渡し終えると家の中に入っていった。

 

 僕を囲むようにサイドキック達は武器を構えた。何をされたか分からないが彼らの目は少し血走っている。僕も牛蒡剣を構えた。

 

*父親視点*

 優秀なサイドキックを選び、一人一人の個性に合った武器も渡した。それ以外に妻の個性『薬効』によりドーピングしている。

 これでアイツが勝てる確率なんてゼロに等しい。私たちはサイドキックの連絡がくるまでリビングでくつろいでいた。

 

 時間的に一時間は経つ。連絡がきても可笑しくない。すると部屋の扉をノックする音が鳴った。

 

「入れ」

 

 ようやくきたかと、思っていたら有り得ない声が聞こえた。

 

「なんだ。リビングにいたんだ」

 

※※※※※※

 

 僕は悠々とリビングに入った彼らは、驚きをかくせていなかった。

 

「どうして貴様が……。サイドキック達はどうした!?」

 

「彼らは戦闘不能にしたよ。手足の一本を斬ったから動けないよ。仕方ないよね。相手は殺す気できたんだ。それに対処しただけ」

 

 父は母に目配せし、母はどこかに向かった。恐らくサイドキック達のもとに向かったのだろう。リビングには父とその後ろで養子くんと僕だけになった。

 僕は剣先を父親に向けた

 

「どうします? ここで戦いますか?」

 

 父は場所を移動するそうで「ついて来い」と言った。向かった先は隣接するトレーニングルームだ。ここで日々の鍛錬をしていた。

 

「ここなら良いだろう」

 

「そうですね」

 

 僕は剣を鞘に収め、近くに合った訓練用の木刀を構えた。

 

「……なんのつもりだ」

 

「一応親ですし……。致命傷は避けてあげようという僕の配慮です」

 

「私をなめているのか」

 

「そうですね。これぐらいのハンデは必要だと思いました」

 

 僕の言葉に父親は個性『武器庫』を使い剣を作った。

 

「いくぞ、餓鬼」

 

「(あんたの実子なんだけど)……どうぞ」

 

 僕は父を注視する。戦い方……予測。持っている剣の形状からして……予測。予測。予測。予測。予測。

 

 父はその剣を投擲してきた。僕はそれを軽々と避け、瞬間的に剣の持ち手を握り、逆に投げ返し父親の頬を掠めた。そして僕は距離を一気に詰め父親の首に木刀を突きつけた。

 

「なっ!?」

 

「はい、これで一回死にましたね」

 

 父は舌打ちをし、個性を使い二丁の銃を作りだし距離をとろうとしたが僕は父の作られた銃を叩き落とし、父の首筋に当てた。

 

「これで二回目」

 

「くっ!?」

 

 それから父の攻撃に対して簡単に避けて急所に寸止めで攻撃をした。

 

「………ほら、右腕斬られたよ」

 

「なめるな!?」

 

「次は両足斬られたよ」

 

「くそ!!」

 

「…………」

 

数十分後

 

 僕は攻撃の手を止めた。父も僕が止まった事に気づいたみたいだ。

 

「もう、いいや」

 

「……なに?」

 

「分かっているでしょう。アナタは僕に勝てない」

 

「っっ!」

 

「本気で打ち込んでいたら何カ所も骨折はしている所を僕の温情で寸止めにしていたんだよ。分かる? アナタなんて簡単に倒せると言ったんだ。……それともコッチを使おうか?」

 

 僕は腰にある牛蒡剣をみせた。

 

「………」

 

 父は持っていた武器を手放した。

 

「それとも……」

 

 僕は入り口に向けて木刀を投げつけそこの壁に突き刺さった。

 

「ひぃい!?」

 

「アナタが相手しますか、母さん?」

 

 先ほどから介入しようとしていた母は、腰を抜かしその場に座り込んでしまった。僕はこの場を後にする事にした。そういえば……。

 

「君はどうするの、養子くん?」

 

「……えっ!?」

 

「君も戦うかい? ヒーローを目指すなら親のピンチくらい助けてあげなよ」

 

 養子くんは首を横に凄い勢いで振っていた。少しは戦おうと思えよ。この場には戦意のなくなった父、腰をぬかしている母、戦おうとはしない養子。なんだか不憫に感じた。

 

「僕の勝ちってことで。僕の言うとおりにして貰うよ。基本的に書類とかのサインは必ずやってね。金銭面もよろしくね。後この家では住まないよ。それでも良いですか?」

 

 父も母も聞くことしか出来なかった。僕はため息をして家から出て行った。なんだか不完全燃焼で終わってしまったので地下闘技場で汗を流すことにした。

 

 何回か戦って僕は館に帰宅した。今後はどうしよう。悩んでいるとテレビ番組で雄英高校ヒーロー科の紹介をしていた。

 

「………これだ」

 

 そうだ。次の目標は雄英高校ヒーロー科に入ろう。そう思った来年中学3年になる僕であった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作開始
5話


戦闘シーンは雰囲気でお願いします


 雄英高等学校ヒーロー科を進学したいと先生に言ったら

 

「う、うん。まぁ、一緒に頑張ってみようか、白井くん」

 

 先生から僕の成績表を渡された。うわぁ、何これぇ。これって三段階評価だっけ? 僕はその日から鍛錬の他に勉強も頑張ることにした。寝る間を惜しんで努力した。ちなみに雄英に行くこと、無個性のことを馬鹿にした生徒は次の日から僕の舎弟になっていた。

 

 勉強のストレス発散で行きつけの地下闘技場に毎日通っていたら遂に出入り禁止になってしまった。困った困った。仕方ないから仮面をつけて街中で騒いでいる(ヴィラン)をあしらう事をした。(ヴィラン)がいたらヒーローがくる前に退治して、即座にその場から立ち去る。それを繰り返していたら人々からは仮面ヒーローと呼ばれるようになった。そんな名声を気にせず僕は必死で勉強をした。

 

 模試も良い結果が出るようになった。勉強はするだけ結果がでるよね。頑張りました。

 

※※※※※※

 

2月26日

 僕は『雄英』一般入試の会場に早めに入り席についた。受験番号は4696番だ。机にあったプリントを確認した。実技試験で出てくる仮想(ヴィラン)は攻略難易度に応じてのポイントがある……か。受験生も続々入ってきた。

 

 

『今日は俺のライヴにようこそーー!!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 誰も答えようとはしなかった。

 

『こいつあシヴィーー!!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHH!!!!』

 

 しかし誰も答えようとはしなかった。いやぁ、テンションが高いなぁ。すると隣に座っている男子がボソボソと呟き始めた。

 

「ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ。すごい……!! ラジオ毎週聞いてるよ。感激だなあ。雄英の講師は皆プロヒーローなんだ」

 

 その隣の目つきの悪い男子が「うるせえ」と一蹴していた。まぁ、人それぞれいるもんなと思い何も言わなかったが、質問中のTHE真面目な眼鏡の男子に注意されていた。おぉー怖い怖い。

 プレゼント・マイクは質問に答え終えると

 

『俺からは以上だ!!! 最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう。かのナポレオン=ボナパルトは言った! 「真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者」と!!』

『Plus Ultra!! (更に向こうへ!!)』

 

 僕含め受験生のみんなは気を引き締めたようだ。

 

 演習会場に向かうとみんなやる気に満ちている。僕自身も今は(ヴィラン)と戦う前の感じだ。そのせいなのか、周りに誰も人が一人もいない。そこまで殺気立っていないのに……。しかし始まればどうなるか分からないけどね。

 

『ハイ、スタートー!』

 

 僕はその言葉に反応し駆け出した。すると前から三機現れた。すべて1Pのやつだ。

 

「「「標的補足!! ブッこ……」」」

 

「邪魔だよ」

 

 三機を斬り捨てた。他の仮想(ヴィラン)を探した。三機壊す頃にようやく他の受験生も駆け出した。

 

※※※※※※

 

 ふむふむ、今のところ数えて合計70Pですね。所々で仮想(ヴィラン)2、3Pに襲われていた何人かを助けていた。

 すると大きな地響きがおきビルが倒壊した。大きな大きな仮想(ヴィラン)が現れました。みんなは一目散に逃げ出した。倒れている女子を起こして逃がした。

 

「うむ……、ここは彼女の為に足止めをしておこう」

 ①すると決めて②する

 僕は大型仮想(ヴィラン)へ向かって駆け出した。まずは足から攻略しよう。右足から斬り刻んでみよう。何割か斬り壊していると大型仮想(ヴィラン)のバランスを崩す事が出来た。すぐさま飛び乗り上に上がっていった。

 今いる所は大型の右肩でとても見晴らしがいい。僕は右肩に剣を刺し、地面を滑らせる感じで斬り裂いていった。上手く右肩を斬り落とした。すぐさま左肩に行き、同様に斬り落とした。最後に首を剣を刺し一周して首を落として動きが止まった。それと同時に試験は終了した。

 

 僕は器用に地上に降りた。喉が渇いたので自販機を探しに行った。

 

 残された他の受験生が黒の事を話している。

 

「なんなんだ、アイツ?」

 

「いったい何の個性なんだ?」

 

「あんな大きなやつを倒すなんて……」

 

「あの剣に秘密があんのか?」

 

 様々な憶測が飛び交う中、黒はミネラルウォーターを飲んでいた。

 

※※※※※

 

 筆記試験はなんとかなりました。自己採点でもギリギリ合格ラインは超えた。後は通知を待つばかり……。すると郵便屋がやってきて手紙等を受け取った。その中に宛先が『雄英高等学校』とかかれた手紙が合った。ペーパーナイフで切ると

 

『私が投影された!!!』

 

「うぉっ!? えっ!? オールマイト!?」

 

 “平和の象徴”オールマイトが飛び出してきた。こんな機能で通知してくるとは聞いてないよ。未だに心臓がバクバクしてるよ。

 

『私が何故映し出されているのか、と疑問になったのかもしれない。私は今年から雄英に勤める事になったからなんだ』

 

 オールマイトが教師……雄英すげぇ。

 

『さて、白井少年!! 君の合否だが……敵ポイント70、さらにそこに救助活動ポイント50を加えて合計120ポイントだ!!! 見事一位でヒーロー科入学だ!! おめでとう、白井少年!!』

 

 よっしゃ!! これで僕も晴れてヒーロー科に入学決定だ。今日は嬉しさのあまり敵を5人倒したぞ。助けた子供にサインもしたよ。それぐらい浮かれていた。

 

※※※※※※

 

「実技総合成績が出ました」

 

「受験番号4696番は凄いですね」

 

「あれで無個性とはなあ!!」

 

「しかもアレに立ち向かいそれを破壊するなんて……」

 

「思わずYEAH! って言っちゃったからなーー」

 

「どうしますか? 並みのプロヒーローよりも強い。しかし無個性なのは確かです。ここは普通科に……」

 

「いや、彼はヒーロー科でもやっていけるよ。それにヒーローが無個性ではいけないと法律にも載ってないからね。彼は文句なしに合格だよ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

 記念すべき初登校日。僕は剣を片手に雄英に向かった。雄英の制服と剣のせいなのか道中では注目を浴びた。そして雄英に着き、1-A教室に入ると何人かいるみたいだ。僕は席に着くと

 

「ねぇ、あなた」

 

「うん?」

 

 目の前に女子がいました。でも僕は見覚えがない人だ。誰だろう?

 

「あら、まるで知らないって顔ね。酷いわ」

 

「うっ!? えっと。どこかで会いましたか?」

 

「あの時助けてくれたじゃないの。ほら、実技試験の大型が出た時に手を貸してくれた」

 

 ………あぁ、あの時女子か。ぶっちゃけ大型に気をとられていて忘れていた。

 

「……本当に忘れていたのね」

 

「あはははっ。………すいません」

 

「いいのよ、別に助けてもらったのは本当だし。あの時はありがとうね。私の名前は蛙水梅雨。梅雨ちゃんと呼んでね」

 

 梅雨ちゃんか……ならば

 

「よろしく、梅雨ちゃん。僕の名前は白井黒。黒ちゃんって呼んでね」

 

「ケロ。よろしくね、黒ちゃん」

 

 冗談で言ったのに。そんな普通に言ってこられると恥ずかしい。僕はそんなキャラじゃないのに……。

 

「やっぱりさっきのは無しで……」

 

「あら、良いじゃない。黒ちゃん。それとも白ちゃんのほうがいいかしら?」

 

 名前とかじゃなく、ちゃん付けが恥ずかしいんだけども……。

 

「うん、なんか、呼びやすい方で良いよ」

 

「分かったわ、黒ちゃん」

 

 そんな会話をしていると続々と人が入ってきた。梅雨は「またね、黒ちゃん」と席に戻っていった。僕は周りの人達を眺めていた。本当に色んな人がいる。すると入り口から

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」

 

 寝袋に入っているなにかが居た。全員が黙ってしまった。それが分かると寝袋は立ち上がり、寝袋から何かが出てきた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

 寝袋の人物はどうやら先生のようだ。へぇ、寝袋のヒーローもいるんだな。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」 

 

 そして担任でした。僕の第一印象は、なんか髪が長くて視界が邪魔だろうなぐらいだった。すると先生は寝袋からなにかを取り出した。体操服のようだ。

 

「早速だがコレ着てグラウンドに出ろ」

 

※※※※※

 

『個性把握テストォ!?』

 

 へぇー。

 

「トータル成績で最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」

 

『はあああ!?』

 

「生徒の如何は先生の“自由” ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 ふむふむ。これはどうしたものかな。

 

「Plus Ultraさ。全力で乗り越えて来い」

 

 僕は手を挙げた。するとみんなは僕に注目した。なんか恥ずかしい。

 

「どうした、白井?」

 

「いや、無個性でもテストは受けても良いんですか?」

 

『はぁっ!?』

 

 クラスメイト全員が驚いていた。

 

「マジかよ!?」

 

「無個性でヒーロー科に入れたのかよ!」

 

 みんなはざわついていた。相澤先生は少し考えた後

 

「……分かった。こちらでお前にあったテストを準備をしておく。それまでウォーミングアップでもしておけ」

 

「分かりました。あっ、でも一応体力テスト受けても良いですか?」

 

「あぁ、別に構わない」

 

 先生は携帯でどこかに連絡をして体力テストが始まった。

 

 うむ、中学よりも伸びていますね。個性使用無しの大会なら新記録になるレベルだ。すると梅雨が近づいてきた。

 

「黒ちゃん。あなたって個性無くても凄いのね」

 

「まぁ、一応鍛えているからね」

 

「でも、良いの? このあとアナタだけのテストがあるじゃない」

 

「うん? これくらい大丈夫だよ」

 

 すると何やらガチャガチャとやってきた。鎖にぐるぐる巻きになっているロボットだ。相澤先生が説明してきた。

 

「威力、スピード、耐久性とぶっ飛んでいるから危険と判断され破棄されたロボットだ。これと戦ってみろ」

 

「分かりました」

 

 グラウンドの中心に僕とロボットだけで他のクラスメイトは少し離れた所にいた。合図を待った。

 

「よーい……はじめ!!」

 

 ロボットは鎖を引きちぎり武器を出し僕に向かって猛突進してきた。

 

「標的補足!! ブッ殺ス!!!!」

 

 そのスピードに驚いたが避けた。確かに試験の時のロボットとは一味違う。頬をかすった。正確な攻撃だ。

 

 相澤と皆は少し離れて白井の様子を見る。クラスメイトは危なっかしくて見てられないが相澤はジッと見ていた。すると八百万が相澤に質問してきた。

 

「先生…」

 

「なんだ、八百万」

 

「あんな危ないのと戦わせて良いのですか? もしもの事があったら……」

 

「あいつなら大丈夫だ」

 

 相澤の言葉に飯田が手を挙げて

 

「先生!! どうしてそんなことがいえるのですか!!」

 

「何故ならあいつは実技試験一位で通っているからな」

 

 みんながざわついていると、爆豪が

 

「けっ、どうせ救助ポイントで稼いだんだろう」

 

「いや、敵ポイントでいうならお前に次いで、白井は70P。しかも大型仮想(ヴィラン)を倒している」

 

「なん……だと」

 

「そう言うことだ。無個性だが奴はとんでもなく強い」

 

 そんな話をしていると動きがあった。

 

 僕は装甲が堅い。しかし関節部分をはあまり堅くないので、そこを狙い切り落とした。それでも殴りにかかろうとするので肩から切り落とした。これで攻撃手段を潰したと思った。するとロボットは器用に蹴りで応戦してきた。凄い猛攻だ。その攻撃の一つにカウンターで片足をもらい、そのままもう片方も斬って行動不能にした。

 

「ブッ殺ス!! ブッ殺ス!!」

 

 ロボットは最後の手段と言わんばかりに目? からビームを撃ってきた。

 

「危なっ!?」

 

 それを回避し僕はザクッと首から切り落とし、テスト終了。みんなのもとへ戻った。みんなはざわついていた。

 

「良くやった、白井。では、これを踏まえての結果発表」

 

 そういえば相澤先生はそんな事も言ってたな。少し忘れていた。

 

「口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 順位が投影される。ロボットとの戦闘テストでどの程度反映するんだろう。ワクワク。

 

「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

 相澤先生はニヒルに笑いながらそう言った。何人かは驚いていたが僕は順位に驚いた。7位なのか。まあまあ上位に食い込んだな。こうして個性把握テストは終了した。

 

※※※※※※

 

 今日も帰りに(ヴィラン)退治でもしますか。着替えていつもの仮面を付け屋根を飛び移りながら(ヴィラン)を探す。すると同じ雄英の女子が数名のチンピラに絡まれている。助けなきゃ。

 

「へいへい、お嬢ちゃん」

 

「俺たちと遊ぼうぜ」

 

「大丈夫だよ。楽しませ………」

 

「おりゃ!!」

 

 僕は手前にいたチンピラに思いっきり上段蹴りをお見舞いした。

 

「ぐべばっ!?」

 

 いきなりの事で避ける事も出来ずそのまま気絶した。

 

「なに!?」

 

「誰だ、てめぇ!?」

 

 そんな言葉を無視して僕は剣を抜き流れるように二人の首目掛け斬り……はまずいので峰打ちの容量で首に打ち込んだ。

 

「ぎゃあ!?」

 

「ぐわぁ!?」

 

 チンピラ二人は倒れた。僕はその場から立ち去った。

 

 白井が立ち去った後、気絶しているチンピラと女子生徒だけになった。すると女子生徒は呟いた。

 

「……黒ちゃん?」

 

 追々大変になるのを白井は知らなかった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

 ヒーロー科と言っても午前は必修科目・英語等の普通の授業。授業内容は普通である。一応は勉強は疎かにはしない。後々大変だからね。真剣に取り組んだ。

 お昼は大食堂で一流の料理を安価で食べれる。僕は失井さんとの生活で良く食べるようになっていた。だから片っ端から食べた。今は丼ものを攻めている。他の生徒はコソコソ話している。

 

「おい、あそこの席のやつ。どんだけ食べるんだよ」

 

「見ているだけでお腹いっぱいになるよ」

 

 僕はラストのカツ丼を食べ終え昼食は終わった。食器を片付けの際、『クックヒーロー』ランチラッシュが声をかけてきた。

 

「いやぁ、君は良く食べる子だね。私も作りがいがあるよ」

 

「本当に美味しかったです。今度は麺類を食べてみます」

 

「ウチはどれも美味しいからいっぱいたべていきな」

 

「ありがとうございます。また明日もよろしくお願いします」

 

 僕はランチラッシュにお礼を言って午後の授業に備えた。午後は誰もが楽しみにしていたヒーロー基礎学だ。

 

 チャイムがなり終えると大きな声で

 

『わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!』

 

 ヒーロー基礎学の初授業の先生はオールマイトか。本当に雄英は凄いな。

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う科目だ!! 単位数も最も多いぞ」

 

「早速だが今日はコレ!!」

 

 オールマイトの右手には“BATTLE”と書かれたカードあった。

 

「戦闘訓練!!!」

 

 ほう、最初から戦闘訓練ですか。これは楽しみだ。

 

「そしてそいつに伴って…こちら!!!」

 

 オールマイトがリモコンを操作すると教室の壁からいくつものトランクが収納された棚が出てきた。

 

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた…戦闘服!!!」

 

『おおお!!!!』

 

 コスチュームかぁ。みんな張り切っているな。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!!」

 

『はーい!!!』

 

※※※※※※

 

「始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 いやぁ、みんな個性的なコスチュームだな。オールマイトは一人一人のコスチュームを見ていて僕を見てギョッとした。

 

「……白井少年。その格好は……」

 

「えっ? 見ての通りアデ○ダスのジャージですが?」

 

 僕は他のも良いけど、このメーカーのジャージが好きなんだよね。ロゴやデザインが好き。

 

「う、うん、まぁ、いいか……」

 

((((良いのかよ!?))))

 

 すると蛙水がこちらに近づいてきた。

 

「黒ちゃん……」

 

「うん? どうしたの、梅雨ちゃん? 似合ってるかな。今日はアデ○ダスにしてみたんだ」

 

「そうね、似合ってるわよ」

 

((((((似合ってるとかの問題じゃないよ!!))))))

 

 僕は自分の格好がおかしいのかと心配したけど、そうじゃなかった。良かった良かった。

 

「黒ちゃん」

 

「うん?」

 

「あなた、昨日……」

 

 するとメカメカしい姿の飯田が挙手した。

 

「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

「いいや! もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!!」

 

 へぇ、対人戦闘か。楽しみだな。っとその前に

 

「梅雨ちゃん、何か言い掛けたけど何かな?」

 

「……授業が終わったらでいいわ」

 

 話とは何だろう? でも今はオールマイトの話を聞いておこう。

 

「敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…。このヒーロー飽和社会、真に賢しい敵は屋内にひそむ!!」

 

 ほうほう、なるほど。それだと地下闘技場は裏商売に入るな。オールマイトは話を続ける。

 

「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

 すると梅雨が質問していた。

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知る為の実践さ!」

 

 2対2……。これはペアとのチームワークやコミュニケーションが必要となるかな。

 

 オールマイトに何人かが同時に質問をしていて、オールマイトは焦っていた。先生は大変だな。するとポケットから紙切れを出した。

 

「いいかい!? 状況設定は『敵』がアジトで『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!」

 

(((((設定アメリカンだな!!)))))

 

「『ヒーロー』は制限時間内に『敵』を捕まえるか『核兵器』を回収する事」

「『敵』は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえる事」

 

 なるほど。なんとなくヒーロー組は圧倒的不利な感じがする。まぁ、どっちでもいいか。オールマイトはなんかのBOXをだした。

 

「コンビ及び対戦相手はくじだ!」

 

「適当なのですか!?」

 

 飯田はくじ引きに対して驚いていたが緑谷が説明をしていて飯田は納得したみたいだ。

 

 くじ引きの結果

A:緑谷&麗日 B:轟&障子

C:八百万&峰田 D:爆豪&飯田

E:芦戸&白井 F:砂糖&口田

G:上鳴&耳郎 H:常闇&蛙吹

I:葉隠&尾白 J:切島&瀬呂

 

 僕の所へ芦戸がニコニコしながらやってきた。

 

「わぁ、よろしくね、黒ちゃん」

 

「うん。よろしく、芦戸さん。ところでなんで黒ちゃん?」

 

「だって、梅雨ちゃんがそう呼んでるから、そうなのかなって」

 

「いや、まぁ、そうだけど……」

 

「良いじゃん、黒ちゃん。呼びやすいし親しみやすいよ。私のことも三奈ちゃんでも良いよ」

 

「……まぁ、呼びやすい方で良いよ、三奈ちゃん」

 

「がんばろうね、黒ちゃん」

 

 オールマイトは最後にくじを引いた。

 

「続いて、最初の対戦相手はこいつらだ!!」

「Aチームが『ヒーロー』!! Dチームが『敵』だ!!」

 

 これは見物だな。飯田は加速。爆豪は爆発。それに対して緑谷は凄い力、しかし大怪我をする。麗日は浮かす。これは作戦を立てないと緑谷&麗日は厳しいかな?

 

「敵チームは先に入ってセッティングを! 5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで確認するぞ」

 

 僕達はモニタールームのある地下に移動した。さてさて、どんな風に戦うのかな?

 

 屋内対人戦闘訓練開始

 

 ヒーローチームが潜入し核兵器を探す。すると隣の芦戸が僕に質問してきた。

 

「ねぇねぇ、黒ちゃん。この勝負はどっちが勝つかな?」

 

「うーん。敵チームかな。でもこれはちゃんとチームとして成り立てばの話」

 

「へぇ、敵チーム……。うん? 成り立てば?」

 

「爆豪が連携プレーが出来たらだよ。でも爆豪をみる限りそんな奴には見えない。独断でなんかやりそう」

 

 そんな事を言っていたら、爆豪が奇襲を仕掛けてきた。おぉ、いきなりだね。その狙いは緑谷のようだ。かすりはしたがまだ大丈夫のようだ。爆豪の次の攻撃を緑谷は読んでいたかの如くそれを受け止め背負い投げした。緑谷凄いな。そして上手く麗日を先に行かせたみたいだ。

 

「へぇー、緑谷すげぇ」

 

「緑くん。凄いね!」

 

 しかし、このままだとヒーローチームが勝つには二人で核兵器の所へ行き、飯田を捕まえて、核兵器を回収が理想だが。

 

「それには緑谷が爆豪に勝つという事か……」

 

 緑谷はどうするんだろうな。チラリと五階にある核兵器のある部屋を映しているモニターを見ると飯田の死角に麗日が隠れていた。とりあえずは麗日は身を隠していて……。すると何故か麗日の場所がバレた。なんでなんだろう? 麗日の武器になりそうな物は飯田が処理していて何もない。すると凄い爆発音が鳴り響いた。ビルが倒壊しそうだ。爆豪さんやり過ぎだよ。オールマイトに注意されて訓練再開。緑谷は何か無線で話している。

 

 なるほど……。爆豪という人物は戦闘に関してはセンスが良いね。ちょっぴり戦ってみたいな。

 

「爆豪の方が余裕なくね?」

 

 ふむ……。緑谷と何か合ったのかな? それは分からないが最後のようだ。緑谷は爆豪の攻撃をくらいながら拳を真上に向けてアッパーした。五階に穴が開き、それで壊れた柱と瓦礫を使い瓦礫を打ち出した。飯田はそれに驚き怯んでしまった。その隙に麗日は自分を浮かし核兵器に抱きつく。『核兵器の回収』達成の為

 

「ヒーローチーム…WIIIIIIN!!」

 

※※※※※

 

 講評としては飯田がしっかり仕事した。爆豪は独断の行動と私怨と屋内なのに大規模攻撃はいけない。緑谷も同様で。後、怪我大丈夫? 麗日は気の緩み、最後の攻撃は乱暴。というのを八百万が言っていた。オールマイトの立つ瀬ないね。オールマイトは気を取り直して次の対戦に移った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

「よーし、次の対戦相手はこいつらだ!!」

「Bチームが『ヒーロー』!! Eチームが『敵』だ!!」

 

 よし、僕達の番だ。相手は轟と障子か。把握テストで見た感じでいうと……。僕は芦戸に話掛けた。

 

「ねぇ、三奈ちゃん」

 

「うん? どうしたの、黒ちゃん?」

 

「三奈ちゃんの個性を教えてくれる」

 

「私の個性は『酸』で溶解液が出せるよ!」

 

 なるほど『酸』か。

 

「それって濃度とかって調整できる?」

 

「うん、出来るよ!」 

 

 よし、作戦を立てよう。僕はビルに入りながら彼女に作戦を伝えた。とりあえず5階の東側に核兵器をセッティングした。そして訓練スタート。

 

****

 

「5階東側の広間に1人はいる。そこから動いてはいな……むっ」

 

「……どうした?」

 

「もう1人が居ない」

 

「居ないだと? どういう事だ?」

 

「それは分からないが、警戒はしておくべきだ」

 

 障子の話を聞いた。俺のやることは変わらない。

 

「分かった。外に出てろ、危ねえから」

 

 俺はビル全体を凍らせた。そして五階の東側に向かおうとしたら

 

「なに、轟……うおっ!?」

 

 無線で障子の声が聞こえた。

 

「おい、どうした、障子?」

 

 しかし返答がなかった。何が起きてるんだ。すると後ろから

 

「ヒーローを発見した。直ちに応戦する……なんてね」

 

 振り返ると剣を片手に持った白井がそこにいた。

 

*****

 

 轟は顔には出ていないが驚いているようだ。

 

「白井……。障子はどうした?」

 

「障子くんは確保テープでぐるぐるに巻いてきたよ」

 

 僕は確保テープを見せつけていた。それでも納得がいかない轟だ。

 

「何故凍っていない?」

 

「僕は外に出て剣を外壁に刺して剣でぶら下がっていただけ。そしてビルが凍り始めたから飛び降りた。その後外にいた障子くんを奇襲して確保したのさ」

 

 そうです、僕は外でスタンバイしてました。芦戸に無線で連絡を入れる。

 

「三奈ちゃん。そっちはどう? 核兵器の氷は溶けそうかな?」

 

「うん。何とか溶けれそう!」

 

「それじゃあ、そこからB地点に移動して」

 

「りょうかーい!」

 

 無線している間、ずっと氷で攻撃してくる。突き刺さりそうだ。その氷を切り刻んでいる。

 

「どうする? 降参するかい?」

 

「誰が……するか!!」

 

 さて、このまま時間まで遊んでいても良いけど、時間も有限だしサクッと終わらせよう。

 

 僕は距離を詰めた。轟も氷で応戦するが氷を切り刻みながら進んだ。近づくと轟の顔めがけて突き刺そうとした。しかしこれを轟は避ける。轟の頬を掠めた。

 

「っつ!?」

 

 轟は自分を中心に氷を発生させる。僕は一旦距離をとった。

 

「……おしい」

 

「くそっ!?」

 

 再度氷で攻撃をしてくる。僕はそれを切り刻んだ。

 

「氷ブロックを作ってる感じだよ」

 

「……馬鹿にしてるのか」

 

「そんな事はないよ。……というか君は寒くないのかい?」

 

「…………」

 

「氷の勢いも最初より弱く感じるよ」

 

「……黙れ」

 

「……身体震えてる。それは冷えからきているものだね。それに対する対処くらいあるだろ。それを使えば?」

 

「……俺は左を使う気はない」

 

 ほう、氷以外にも何かあるのか。それを使えば対処ができる。それを敢えて使わない。それが命とりにならなきゃ良いけどね。

 

「じゃあ、次で最後だよ」

 

「やれるもんならやっ……」

 

 白井は先ほどよりも速く走り距離を縮めた。轟には一瞬で近づかれたと思っただろう。

 

「なにっ!?」

 

 白井は剣を振り上げた。轟は死を連想し目を閉じてしまった。

 

「ハイ、終了!!」

 

 轟の首にはご丁寧に蝶々結びで確保テープをつけられていた。『ヒーローを確保』した

 

「敵チーム……WIIIIIIIN!!」

 

 僕と芦戸は合流してハイタッチした。

 

「黒ちゃん、やったねー!」

 

「三奈ちゃんも核兵器の防衛お疲れ様」

 

 二人で労いながらモニタールームに向かった。

 

※※※※※

 

 授業は終わった。緑谷以外は怪我もなく終えた。オールマイトは急いで戻っていった。僕らは着替えて教室に戻った。

 着替え終えクラスに入ると皆が何か話し合っている。僕が居るのを気づいた芦戸が手を振っていた。

 

「あー、黒ちゃん! こっちこっち!」

 

「三奈ちゃん?」

 

「今ね、皆で訓練の反省会をしてたんだ」

 

「へぇー、面白そうだね」

 

「うん。やろうやろう! おーい、みんな~。黒ちゃんきたよー!」

 

 その言葉に僕を囲うようにみんなが集まった。

 

「おめー、すげぇな!! 無個性なのに、推薦組を倒すなんてな。俺ぁ、切島 鋭児郎」

 

「あぁ、僕は白井黒。よろしくね」

 

「あぁ、よろしくな」

 

 他の人とも一通り自己紹介をした。みんな良い人そうで良かった。すると緑谷が入ってきた。みんなで緑谷の所に向かった。僕も緑谷に自己紹介をした。

 

「僕の名前は白井 黒。よろしくね緑谷くん」

 

「う、うん。よろしく」

 

 自己紹介も終わると緑谷は爆豪を探しに教室を後にした。僕らもそろそろ帰ろうとしたら蛙水が僕の方にきた。

 

「ねぇ、黒ちゃん……」

 

「ん? どうしたの、梅雨ちゃん」

 

「アナタ、巷で有名な『仮面ヒーロー』なの?」

 

「ぶっ!?」

 

『えっ、仮面ヒーロー!?』

 

 僕は吹き出してしまった。みんなは僕と蛙水の所に集まってきた。

 

「知ってるよ! 仮面ヒーロー!」

 

「颯爽とヴィランを倒して、そして颯爽と立ち去る」

 

「謎が多いヒーローだね」

 

「仮面つけてるから仮面ヒーローって呼ばれてる。まぁ、安直だけどな」

 

 みんなは夢中になって仮面ヒーローの事を話していた。蛙水は真剣な目で僕を見ていた。

 

「どうしてそう思ったの?」

 

「昨日アナタに助けて貰ったのよ」

 

 昨日………。あの時は確かチンピラを倒した。その際いた女の子の姿は………。

 

「あの時の梅雨ちゃんだっ……」

 

 ヤバい。口が滑った。それを聞きつけてか、話を聞いていたのか、切島含めみんなが

 

「おぉー! 本当に白井が仮面ヒーローだったのか!!」

 

「ねぇ、握手して!」

 

「ついでにサインも!!」

 

 ヤバいヤバい。冷静にならなきゃ。

 

「な、何を言ってるんだみんな? 僕は仮面ヒーローでは……」

 

「じゃあ、コレは?」

 

 蛙水の手にはいつも使っている仮面が合った。目が点になった。

 

「悪いと思ったけど、あなたの鞄の中を探させて貰ったわ。そしたらコレが出てきたのよ」

 

「…………」

 

 何も言えない。まさかバレるとは思わなかった。どうしたものか。騒いでいたみんなも黙って僕と蛙水を見ていた。

 

「それをどうするの? 梅雨ちゃん」

 

「ケロ。ただお礼がしたかったのよ。昨日はありがとうね」

 

「ど、どういたしまして」

 

 助けた人にお礼を言われるのは初めてだ。少し恥ずかしい。

 

「でも何でこんな事しているの?」

 

 難しい質問だな。なんて返すか…。すると

 

「……俺もその話聞きたいな」

 

 その声はまさか!? 教壇を見ると寝袋に包まれていた相澤先生がいた。少し眉間にシワが寄っているみたいだ。寝袋から出てきて僕の方にゆっくり歩いてきた。そして

 

「少し面談しようか、白井」

 

「わ、分かり…ました」

 

 僕は相澤先生が使う捕縛武器によって腕を拘束され教室をでた。向かった先は職員室だ。

 

「YEAH!! イレイザーどうした?」

 

 相澤先生のもとにプレゼントマイクが寄ってきた。

 

「……巷で有名な仮面ヒーローを連れてきた」

 

「HAHAHA。そいつあシヴィー!! 一体どんな……」

 

「あはは。どうも」

 

「マジでかぁーーー!!」

 

「五月蝿い。行くぞ、白井」

 

「は、はい」

 

 僕は応接室に通され椅子に腰掛けた。そして相澤先生を含め何人かの先生が僕の前に座った。面接のような感じだ。

  

「白井。全部喋ったほうがいいぞ」

 

 プレッシャーがハンパない。仕方ない。

 

「……分かりました」

 

 僕はこれまでの事を全て話した。彼の事も話した。

 

「なるほど……、それがお前の強さか、白井」

 

「そうなりますかね?」

 

「キミは子供なんだぞ! こんな事していて良いと思っているのか!」

 

「でも、何十人のヴィランを倒しているのも事実」

 

「私としては地下闘技場ってのが気になるわ。これを放置は危険じゃない?」

 

 すると相澤先生の肩にいた根津校長が聞いてきた。

 

「君はどんなヒーローになりたいのかな?」

 

 どんなヒーロー……。僕の中のヒーロー像は

 

「僕は……正しい事を正しく行えるヒーローになりたいです」

 

 僕はそう言いきった。根津校長は頷いて

 

「……分かったよ。とりあえず今回の件は不問にしておくよ」

 

「校長!?」

 

「ただし、もうヒーロー活動はやらない事。良いね?」

 

「わ、分かりました」

 

 鍛錬の場が無くなったよ。他の先生から口酸っぱく注意を受けた。

 精神的にボロボロになって教室に戻り荷物を取りにいこうとしたら職員室の外で蛙水が僕の荷物を持って待っててくれた。

 

「梅雨ちゃん……」

 

「大変だったわね、黒ちゃん」

 

「まぁ、自業自得かな? いつかはバレる事だし、それが早まっただけだよ」

 

 蛙水から荷物を受け取った。ふむ。これからどうしよう。少し小腹が減った。

 

「梅雨ちゃん、一緒にマックでも行かない?」

 

「ケロ、別に良いわよ。今日の反省もしたいし」

 

 そうと決まれば僕らはマックに行くことにした。お腹も膨れ、反省会もでき、とても有意義な時間を過ごせた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

 オールマイトが雄英の教師に就任したというニュースは全国を驚かせ、連日マスコミが押し寄せる騒ぎになっていた。その根性は凄い。僕には関係ないけどね。

 HRで相澤先生は昨日の訓練のVTRと成績をみたようだ。爆豪と緑谷への注意をした。大変ねと思っていたら

 

「白井、お前もだ」

 

「えっ!? 僕ですか!?」

 

「昨日の事を忘れんじゃねえぞ。またヒーローの真似事をしていたらただじゃすまないぞ」

 

 昨日もう色んな先生から散々言われたから分かってます。許してくださいな。すると八百万が手を挙げた。

 

「先生。白井くんが何かしましたか? それにヒーロー活動とは……」

 

 いや、なんというか。相澤先生はため息をつき

 

「ふぅ。どうせいつかは分かることだから言っておく。白井は『仮面ヒーロー』だったってことだ」

 

 知らない人が僕の方をみた。

 

「仮面ヒーロー!?」

 

「あの噂のヒーロー……」

 

「あの強さなら納得だ」

 

「す、スゴいな、白井くん」

 

 色んな感想を言ってきて照れていると相澤先生は手を叩いた。

 

「問題なのは、学生でヒーロー活動の真似事をしていたとこだ。これがバレていたら警察にもお世話になるだろう」

 

 僕はシュンと肩をおとした。

 

「今回は多めにみると先生達で判断した。しかしまたやるようであれば……分かるよな」

 

「YES。勿論。はい。そんな事はもうしません」

 

 僕は敬礼をして相澤先生に誓った。先生は分かったのか次の話に移った。

 

「さてHRの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…学級委員長を決めてもらう」

 

『学校っぽいの来たーーー!!!』

 

 みんなやる気がある。学級委員長も訓練の内なのだ。飯田の提案で投票で決める事になった。うーむ、誰にしようかな。提案した飯田で良いか。そして結果は緑谷が3票、八百万が2票という結果になった。飯田は自分で入れなかったのか……。

 

 お昼になり僕は急いで大食堂に向かった。今日は何にしようかな? 日替わりが3種類か……。

 

「日替わりをAとBとCをそれぞれ10セットでお願いします」

 

((((((10セット!?)))))

 

「はいよー!! 団体1名きたよー!! みんなはりきるよーに!!」

 

((((((団体1名!?))))))

 

「「「「「りょかいでーす!!!!」」」」」

 

 僕の昼食で1テーブルを埋め尽くした。

 

「いただきまーす」

 

 やっぱり美味しいな。僕的にはAセット。ボリュームがあって美味い美味い。関心しながら食べていると誰が前の席に座った。蛙水のようだ。

 

「むぐ。やぁ、梅雨ちゃん」

 

「良く食べるのね、黒ちゃん」

 

「いやぁ、僕に剣を教えてくれた人が良く食べてたんだ。それが移ったのかな? はっはっは」

 

「ケロ。男の子だし食べ盛りなんでしょ」

 

「うん。まぁ、そうかな?」

 

((((((それでも食べ過ぎたろ……))))))

 

 楽しい昼食を堪能していたらいきなり警報が鳴り響いた。

 

「ん?」

 

「何かしら……」

 

 学校アナウンスがなった。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』

 

「セキュリティ3?」

 

 もぐもぐと食べていた。まぁ、何かあったんだろう。しかし僕のご飯は止められない。

 

「黒ちゃんも避難しないの?」

 

「……ふぅ。御馳走様。さて、この問題は何が入ってきたのかな? よし、外を見てくる。梅雨ちゃんは人の波から離れていてね」

 

「ケロ?」

 

 僕はテーブルを渡り歩き窓側まで着いた。外を見るとマスコミの皆さんが侵入していた。オールマイト目当てだな。……しかし、どうやって入ったんだろう? 僕は蛙水の所まで戻った。

 

「お待たせ、梅雨ちゃん」

 

「どうだったの?」

 

「なんか、マスコミの方々が侵入していたよ」

 

「あら、大変。みんなに知らせなきゃ」

 

「この人ごみを落ち着かせるのか……」

 

 うむ。どうしたものか。考えていると入り口付近から

 

『皆さん……大丈ー夫!!』

 

 飯田の大声が聞こえた。ほうほう。あれならみんなの注目が集まるだろう。生徒もなんとか落ち着きを取り戻していた。そうと決まれば……

 

「どこ行くの、黒ちゃん?」

 

「食後のデザートを求めて」

 

 購買のデザートを買い占めに向かった。シュークリームうまぁー。ちなみに報道陣は警察が到着し撤退していった。

 

 午後は他の委員会決めをする前に緑谷

 

「委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います」

 

 飯田に委員長を指名した。他のみんなも賛成のようで学級委員長は飯田に決まった。僕の見立て通りだな。

 

~数日後~

 

 マスコミ騒動から特に何事もなく生活している今日この頃。現在午後のヒーロー基礎学。教壇には相澤先生が立っている。

 

「今日のヒーロー基礎学だが…。俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」

 

「ハーイ! なにするんですか!?」

 

 先生は小さなカードを取り出した。そこには『RESCUE』と書かれていた。

 

「災害水難何でもござれ、人命救助訓練だ!!」

 

 みんなざわざわしていると先生に一括された。さて、頑張ろう。救助訓練の場所までバスでの移動だ。本当に広いな雄英。

 バスの中では個性の話をしている。これに関しては僕には関係ない。すると切島が

 

「なぁ、白井。救助のポイントとかあんのか?」

 

「えっ、なんで僕が!?」

 

「だって、一応ヒーローっぽい事をしてたろ」

 

「うーん。僕は敵退治をしていたわけであって、救助とは考えてなかったよ」

 

「そうか…。でも敵を倒すなんてお前すげえな」

 

「あははっ。どうも」

 

「もう着くぞ。いい加減にしとけよ…」

 

『ハイ!!!』

 

 相澤先生に注意されつつ、目的地に着いた。

 

「すげーーーーー!! USJかよ!!?」

 

 なんか色んな施設があるな。みんなも興味津々のようだ。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc. あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……『ウソの()災害や(S)事故ルーム(J)!!』」

 

((((((USJだった!!)))))

  

 彼はスペースヒーロー『13号』。災害救助で、めざましい活躍をしている紳士的なヒーロー……と緑谷くんが説明してくれた。ヒーローの事ならなんでも知ってるね、本当に。すると13号が

 

「えー、始まる前にお小言を一つ二つ……三つ」

 

((((((増える……)))))

 

「……四つ……」

 

 多いね。まぁ、それぐらい話すことがあるのでしょう。

 

「皆さんご存知とは思いますが、僕の個性は“ブラックホール” どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

 緑谷はよく知ってるな。麗日はすげえ頷いているな。

 

「ええ……。しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう“個性”はいるでしょう」

 

 13号の言葉にみんなは息をのんだ。確かに人を殺そうと思えば殺せる個性はいる。

 

「この授業では…心機一転! 人命の為に“個性”をどう活用するか学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。助ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」

 

((((((………13号!! カッコイイ!!)))))

 

「以上! ご静聴ありがとうございました」

 

 13号の言葉にみんな拍手や賞賛を送った。僕も頑張らないとね。

 

「それじゃあ、まずは……」

 

 相澤先生が指示を出そうとしたときセントラル広場に黒い霧。その黒い霧が広がりそこから人が現れる。

 

「一かたまりになって動くな!! 13号!! 生徒を守れ」

 

 先生はすぐに僕たちと13号に指示をだす。その間にも続々と現れる。

 

「何だアリャ!? また入試ん時みてえな、もう始まってんぞパターン?」

 

「動くな!! あれは敵だ!!!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

 プロが何と戦っているのか、何と向き合っているのか、それは途方もない悪意。

 

 おやおや、こんな事になるとはね。まさか(ヴィラン)が雄英に侵入してくるとは驚きだ。相澤先生は指示を出す。

 

「13号避難開始! 学校に連絡試せ! センサーの対策も頭にある敵だ。電波系の“個性”が妨害している可能性もある。上鳴おまえも“個性”で連絡を試せ」

 

「っス!」

 

 すると緑谷が相澤先生に

 

「先生は!? 一人でたたかうんですか!?」

 

「いや……。白井!!」

 

「はい」

 

「お前は俺のサポートをしろ」

 

「……分かりました」

 

 その言葉にみんなは驚いていた。

 

「マジか!?」

 

「先生!! それはあまりに危険なのでは」

 

「それなら俺も……」

 

 僕は剣をかかげた。みんなの注目を集めた。

 

「僕は大丈夫。なんたって僕は仮面ヒーロー」

 

 僕は相澤先生の隣に立った。

 

「白井、お前の役目は……」

 

「相手を遊撃し撹乱させます」

 

「……よし、行くぞ!!」

 

 僕は階段を一気に駆け下りた。

 

「おい、見ろよ。餓鬼がコッチに向かってくるぞ」

 

「死ににきたのか」

 

「へへっ、死ねぇ……あれ? 出ね…」

 

 僕に気を取られていたみたいだ。階段を飛び降りてきた相澤先生は手際よく三人を捕縛武器で縛り付けそのまま頭をぶつけ気絶させた。

 

「おい、アイツは……」

 

「あぁ、個性を消すっつう、イレイザーヘッドだ!!」

 

 敵も先生の存在にざわついていた。

 

「消すぅ~~!? へっへっへ。俺らみてえな異形型のも消し……」

 

「シッ!!」

 

「うがぁ!?」

 

 僕はソイツの背後から峰打ちをした。普通なら首の骨は折れているが異形型なら大丈夫だと思う。先生のお陰で敵は連携が遅れている。僕はまた駆け出し、敵を引っ掻き回した。

 

「くそ、何なんだこの餓鬼は!?」

 

「すばしっこい上にやたら強…ぎゃあ!!」

 

「そいつはどうもっ!!」

 

 すると敵の一人が大きい声で叫んだ。

 

「思い出した!! コイツはあの地下闘技場で強すぎた為出入り禁止になった『殺しの天才』だ!!!」

 

「殺しの天才だと!?」

 

「本当に存在したのかよ!?」

 

 いや、殺したのはそんなにいないよー。腕や足を切り落としたくらいだよー。そのお陰か敵の動きが更に鈍くなった。

 しかし戦っている隙にいつの間にか黒い霧の奴がみんなの所に居た。僕は敵が落とした武器を拾い上げ勢いよく投擲したが、どうやら物理攻撃を無効化するみたいだ。そしてみんなをどこかに飛ばしたみたいだ。何とかしてやりたいが、あの霧の奴はあっちに任せてここの敵を減らそう。

 

 なかなか数が多い。峰打ちとかで応戦しているから仕方ないが。

 

「───くっ!?」

 

 先生の様子がおかしい。良く見ると肘が怪我? いや、崩れている。あの不気味な奴にやられたのか?

 

「先生!!」

 

「白井、こっち来るな!!」

 

「でも、っ!? 先生危ない!!」

 

 脳みそ丸出しの化け物が襲いかかり、先生の頭から地面に叩きつけ、腕をへし折った。

 

「対平和の象徴改人“脳無”」

 

 僕は周りにいた敵の何人かの腕や足を切り落とし、相澤先生の方に向かった。敵は僕に萎縮しこちらには来ない。顔や腕に手を付けた奴が

 

「おいおい、ヒーローがそんな事して良いのかよ」

 

「黙れ、相澤先生を離せ。じゃないと殺す」

 

「今度は殺害予告か。……俺ら向きの奴だな」

 

「良いからさっさと離せ!!」

 

 僕は間合いを詰め脳無という奴の腕を切り落とそうとしたが脳無はそのまま僕に襲いかかってきた。

 

「おっと、危ない」

 

 そのおかげか相澤先生は解放され、僕は脳無と対峙する形になった。相澤先生を見ると両腕とも折れていて、意識がない。手を付けた奴は首を掻きながら

 

「やれ、脳無」

 

 指示を合図に僕に攻撃を仕掛けてきた。僕は脳無の動きを見る。攻撃…予測。動作…予測。速さ…予測。

 

「そこっ!!」

 

 僕は紙一重に回避しながら交わし際に急所数ヶ所を刺した。普通ならこれで動けなくなる筈だ。それを見た手の奴は

 

「斬るじゃなく刺しにきたのか。お前頭良いな。だが……」

 

 脳無は僕の方に突進してきた。僕はギョッとしたがどうにか避けた。

 

「流石はオールマイト対策だね。なかなか強いね」

 

「なら、さっさと死ね」

 

「僕は存外しぶといよ」

 

 脳無の攻撃を避けながら飄々と話していた。……敵には悟られないように話した。本当は脳無の攻撃をどうにか避けるので精一杯である。

 

「死柄木 弔」

 

「黒霧、13号はやったのか」

 

 黒い霧の奴が現れた。これは本当にヤバいね。脳無の攻略法が見つからない。強そうなのが二人いる。

 

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして……。一名逃げられました」

 

 つまりは誰かが援軍を呼びに行ったということか。すると手の奴……死柄木は首をかきむしり、大きなため息をついた。

 

「黒霧、おまえ。おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…」

「さすがに何十人ものプロ相手じゃ適わない。ゲームオーバーだ。今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 脳無も動きを止めた。この男は何を考えているんだ。理解出来ない。

 

「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を少しでも……」

 

 辺りを見渡すと水難ゾーンに緑谷と峰田と蛙水が居た。コイツが何をしようとしているのか分かった。僕は死柄木よりも速く三人の前に立った。

 

「チッ、勘がいいな、お前。おい、脳……」

 

「ちょっと待った。取引しないか?」

 

「あ?」

 

 僕は剣をしまい手を挙げた。

 

「もう、脳無とかいう奴の攻撃を避けるのは難しい。対価を支払う代わりに後ろの三人は見逃してくれないか?」

 

 実のところ僕は満身創痍なのは確かである。死柄木は首を掻きながら少し考えた後。

 

「へぇ、それで? 対価は?」

 

「それなら………僕の腕一本ってのはどうだい?」

 

「……ほう」

 

 死柄木の表情は明らかに変わった。無邪気な、そして不気味な笑みをこぼしていた。

 

「腕の落とし方はそっちで決めてよ」

 

 後ろでは「し、白井!?」「白井くん、ダメだ!!」「黒ちゃん!!」と叫んでいる。僕は三人に

 

「良いかい。絶対に動いちゃだめだよ」

 

 僕は少し振り返りニコッと笑った。死柄木も決まったらしく

 

「じゃあ、俺の個性で腕を貰おうか」

 

「どうぞ。遠慮なく」

 

 僕は右腕を前に出した。腕を掴む前に死柄木が

 

「お前、名前は?」

 

「……白井黒」

 

「そうか、覚えておくよ」

 

 死柄木は僕の腕を強く掴んだ。

 

「─────っ!!!!」

 

 僕の腕が崩れていく。痛みで意識を失いそうになるが、痛みで我に帰る。それの繰り返しだ。

 

「やめろぉおおお!!」

 

 後ろから緑谷が飛び出してきて死柄木に殴りかかろうとした。

 

「バカっ!?」

 

 どうにかしたくても掴まれていて何も出来ない。

 

「くくくっ。脳無」

 

 脳無が割って入って緑谷のパンチを受け止めた。脳無は緑谷の腕を掴もうとした。その時入り口のドアが壊された。

 

「もう大丈夫。私が来た!」

 

『オールマイトーーー!!!!』

 

 あぁ、オールマイトが来たのか。すると死柄木は興味を無くしたのか僕の腕を放した。

 

「待ってたよヒーロー。社会のごみめ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

「もう大丈夫。私が来た!」

 

『オールマイトーーー!!!!』

 

 あぁ、オールマイトが来たのか。すると死柄木は興味を無くしたのか僕の腕を放した。

 

「待ってたよヒーロー。社会のごみめ」

 

 僕は痛みと安堵で座り込んでしまった。するといつの間にか僕含め四人は相澤先生の所まで移動していた。どうやらオールマイトが運んでくれたようだ。オールマイトは僕の腕を見て驚愕していた。

 

「大丈夫か、白井少年!!」

 

「オールマイト…。手をつけた不気味な奴が触れたモノを崩す個性。黒いモヤはワープとそれによる物理攻撃無効化。後、あの脳みそは再生があります。他にも剣での突き刺す攻撃以外は効きそうにありません」

 

「あぁ、分かった!! 君たち、白井少年と相澤くんを頼んだ!!」

 

 僕は伝える事は伝え僕は右腕を見た。右腕の状態は筋肉と骨が見えてる。というか、動かない。

 

「………これは酷い」

 

 僕はどうにか立ち上がり、そして相澤先生の捕縛武器を借り右腕をきつく巻く。よし、固定出来た。

 

「……とりあえずは移動しよう」

 

「う、うん。分かった」

 

 僕は緑谷と相澤先生を担いで入り口まで向かった。一際大きな音がなった。

 

「何でバッグドロップが爆発みてーになるんだろうな…!! やっぱダンチたぜオールマイト!!」

 

「授業ではカンペ見ながらの新米さんなのに」

 

 本当にオールマイトの攻撃は派手だね。しかし様子がおかしい。ジッと良く見ると脳無と黒霧の最悪な連携プレーによりオールマイトは拘束された。

 

「白井くん、相澤先生のことお願い!!」

 

「お、おい、緑……」

 

 緑谷はオールマイトのところへ駆け出した。

 

「あの馬鹿は……。梅雨ちゃんゴメンね」

 

 僕は相澤先生を蛙水に投げ渡し緑谷を追った。しかし黒霧が緑谷を襲おうとしていた。その時

 

「どっけ邪魔だ!! デク!!」

 

 爆豪が飛び出してきて黒霧を押さえた。脳無は轟が凍らせてオールマイトは拘束から解かれた。切島は死柄木に攻撃しようとしたがミスったようだ。ドンマイ。僕も合流した。

 

「おっ、白井……って、何だよその腕!?」

 

「うん、まぁ、気にしないで。それより前を見て。敵から視線を逸らしちゃいけない」

 

「お、おぉ、分かった」

 

 すると半分氷漬けになっていた脳無は身体を割りながらワープから出てきた。割れた箇所は再生し始めていた。

 

「本当に再生するのか!!」

 

「そうさ、ショック吸収と超再生……。脳無はおまえの100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 脳無は死柄木の指示で黒霧を押さえている爆豪のところまで猛進してきた。脳無が動く前に僕は爆豪の所駆け寄り爆豪の前に立った。そして剣を構えた。

 

 脳無の拳が迫ってきた。僕はその拳を使えない右腕で受け止め、左でそのまま脳無の両目を剣で一閃した。そのおかげか少し動きが鈍くなった隙に爆豪を抱えて緑谷達の所へ距離をとった。切島が

 

「お、おい白井!? お前腕が……」

 

 やはり脳無の攻撃は凄まじくボロボロだった右腕はもう使い物にはならない。そして脳無も再生が終わったみたいだ。やれやれだ。剣を杖代わりに立ち上がった。轟が

 

「おい、白井、大丈夫なのか?」

 

「まぁ、何とか右腕以外なら至って健康だよ」

 

「……よし、ならこれで3対6だ」

 

 良かった。頭数に入れてもらえた。他のみんなもサポートをするつもりだ。

 

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!!」

 

「とんでもねえ奴らだが俺らでオールマイトのサポートすりゃ……撃退出来る!!」

 

 しかし、オールマイトは

 

「ダメだ!!! 逃げなさい。」

 

 オールマイトは僕らを制止し逃げるよう促した。僕と轟は

 

「……さっきのは俺がサポートに入らなきゃやばかったでしょう」

 

「オールマイト、僕なら大丈夫です。だから……」

 

 しかし、オールマイトは拳をこちらに向けて

 

「それはそれだ轟少年、白井少年!! ありがとな!! しかし大丈夫だ!! プロの本気を見ていなさい!!」

 

 脳無と黒霧はオールマイトに、死柄木は僕らに向かってきた。僕は死柄木に応戦しようとした時オールマイトと脳無の拳がぶつかり、死柄木は距離をとった。オールマイトと脳無は真正面から殴り合いが始まった。それには誰も近づくことは出来ない。勢いは徐々にオールマイトが勝ってきた

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの! 敵よ、こんな言葉を知っているか!!? 更に向こうへ……Plus Ultra!!」

 

 オールマイトはそのまま脳無を施設の壁を壊し外まで吹き飛ばしてしまった。僕らは唖然と見ていた。

 

「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに、300発以上撃ってしまった」

 

 オールマイトすげぇ。あの脳無を真っ正面で力でねじ伏せた。さすが平和の象徴…。オールマイトの鋭い眼光で二人も怯んでいるみたいだ。

 

「さすがだ…。俺たちの出る幕じゃねえみたいだな…」

 

「緑谷! ここは退いたほうがいいぜもう。却って人質とかにされたらやべェし…」

 

 確かに轟と切島の言うとおりだ。僕たちは移動しよう。

 

「ここはオールマイトに任せよう」

 

「だな! 俺たちは他の連中を助けに……」

 

「緑谷?」

 

 轟の言葉にみんなは緑谷をみた。何かを呟いている。そして何故かオールマイトの所へ飛び出した。しかも速い。

 

「な…緑谷!!?」

 

「オールマイトから離れろ!」

 

 僕も駆け出した。恐らく緑谷の狙いはワープを使う黒霧だろう。しかし、

 

「二度目はありませんよ!!」

 

 隣にいた死柄木が黒霧のワープを使い、手だけを緑谷の眼前に移動した。僕の位置からだと間に合わない。

 

 死柄木が緑谷の顔を掴もうとしたが別の何かを掴んだ。それは人の腕だ。死柄木は周りを見渡すとそこには右腕が無い白井の姿だった。白井は自ら右腕を斬り落としそれを投げた。そこから血が流れだしていた。

 

「ナイスキャッチだね」

 

「白井黒……」

 

「約束通り右腕あげるよ」

 

 死柄木の持っていた僕の腕はゆっくりと崩れていった。二人は僕に注目していた。次の瞬間、何発かの発砲音が鳴り響いた。これは……。すると入り口から大声で

 

『1-Aクラス委員長 飯田天哉!! ただいま戻りました!!!』

 

 あぁ、先生方が来たのか。なんかホッとしたらドッと疲れがでて僕は倒れ込んだ。他の三人は僕のところにきた

 

「し、白井ぃい!! お前大丈夫かあ!?」

 

「今はリカバリーガールのとこに連れていくぞ。爆豪、手を貸せ」

 

「チッ、分かったよ。おら、クソモブ!! 起きろ!!」

 

「いや、怪我人になにしてんだよ。早く行くぞ。緑谷あ!! 先行ってんぞ!!」

 

 僕は爆豪に抱えられ入り口に向かった。その際他のクラスメイトの反応は驚愕しかなかった。

 

「えっ、白井くん!?」

 

「う、腕が……!?」

 

「早くリカバリーガールの所へ!!」

 

 はぁ、注目されてる。恥ずかしい。僕は医務室に連れていかれた。すぐにリカバリーガールに治療してもらった。

 

 処置をしてもらい出血等の治療は終わった。しかし僕の右腕はない。リカバリーガールは

 

「あんたはこれからどうするんだい?」

 

 さてさて本当にどうするか……。僕は

 

「……それでも、ヒーロー目指します」

 

 僕はそう言いきると医務室を後にした。医務室を出てくると他のクラスメイトが心配で来てたみたいだ。すると緑谷が

 

「ごめん、白井くん。僕のせいで……」

 

「ん? あぁ、そうだな。緑谷のせいだね」

 

(((((思ったより辛辣ーーー!!)))))

 

「まぁ、お前もオールマイトを助けようとしたんだ。僕もただお前を助けただけだよ。だから気にすんなよ」

 

 僕の荷物を持っていてくれた蛙水が

 

「……右腕はどうするの、黒ちゃん?」

 

「うーん。まあ、それは追々考えよう。今考えても案が出ない」

 

「ケロ………」

 

 こうして救助訓練は終わった。敵の死柄木はスナイプ先生の銃弾により負傷するも黒霧のワープによって逃げられてしまったらしい。仕方ない事だ。今はこうして生きている事に感謝しよう。それしか出来ない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

誤字脱字の指摘ありがとうございます。


 USJ訓練の翌日は臨時休校になった。そして

 

「お早う」

 

『相澤先生復帰早ええええ!!!!』

 

 ミイラ男のような相澤先生が教室に入ってきた。みんなはざわついている。相澤先生ヤバいね。

 

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

 その言葉にみんな緊張が走る。また敵なのか……。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

『クソ学校っぽいの来たあああ!!』

 

 雄英体育祭。日本のビッグイベントの一つ。日本全国のプロヒーローがスカウト目的で観戦にくる。雄英体育祭はトップヒーローになるための最大のチャンスでもある。よし、やる気が出てきた。とりあえずは授業を受けよう。そうしよう。相澤先生が

 

「白井、昼休みに職員室に来い」

 

「は、はい。分かりました」

 

 うむ、なんだろうね。授業が始まった。左手で書くのはそこまで苦ではない。

 

 昼休みになり職員室に向かい相澤先生と合流した。先生はどこかに移動するようだ。僕はその後ろをついて行った。どこに行くのだろう?すると

 

「……その腕は俺の責任だ」

 

「えっ!?」

 

「俺はプロとしても、教師としても失格だな……」

 

 先生……。でも

 

「もし先生があの時一人で飛び出して行ったら、それでも僕は勝手にサポートしに行ったと思うので変わらないと思います」

 

「………そうか」

 

 そんな会話をしていると相澤先生がある扉の前で止まった。

 

「先生ここは?」

 

「ここは開発工房だ。サポートアイテムからコスチュームの改善をしてくれる。パワーローダーには話はつけておいた。義手を作ってもらえ。それじゃあ、俺は授業があるからな」

 

「は、はい!!」

 

 相澤先生は授業へ向かった。この部屋の奥に一体どんな人がいるのだろう。僕は扉をノックしようとした時扉が爆発した。どうにか体勢を立て直した。何が起きているんだ。奥から

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「フフフフ、いててて……」

 

「ゲホッゲホッ……。おまえなァア」

 

 パワーローダー先生と一人の女子生徒がボロボロで出てきた。

 

「恐らくパワー不足でしたね」

 

「違うよ馬鹿。かけ過ぎなんだよ」

 

 話をしていると、パワーローダー先生が僕に気がついたようだ。

 

「うん? あぁ、白井くんだね。話は聞いてる。入りな」

 

 部屋に入るとまるで秘密基地のような工房だった。

 

「さて、その腕だったな」

 

「はい、なんとかなりますか?」

 

「まぁ、義手にも色々あるか……」

 

「何ですか、それ。興味あります!」

 

 その話に女子が会話に入ってきた。

 

「えっと、アナタは…」

 

「発目 明です。よろしくお願いします! さぁ、こっちにきて下さい!」

 

「えっ、ちょっと……」

 

 発目に引っ張っられて部屋の奥に通された。パワーローダーは頭を抱えていた。発目がせっせと持ってきて僕の目の前に置かれた様々な……

 

「さぁ、見て下さい。私のベイビー達を!!」

 

「あのぉ、義手ですよね?」

 

「? もちろんそうですが。どうかしましたか?」

 

 みると腕らしい腕はなく手がフックだったり、なんかビーム的なのが撃てそうなやつだったりと普通のが一つもない。発目が他のを出している間にパワーローダー先生にコソコソと聞いてみた。

 

「あのぉ、彼女は一体……」

 

「アイツは発目 明。サポート科の1年だ。まぁ、変人だ」

 

「変人ですか……」

 

「そう。まぁ1年の中ではやる気は人一倍ある」

 

 へぇ、なんか面白い人だな。すると発目は一つの義手を持ってきた。

 

「では、付けてみましょう」

 

「いきなり!?」

 

「神経繋ぐ際は痛いので頑張って耐えて下さい」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

「えい!!」

 

 バチンという音と同時に幾つもの針に刺された痛みが襲ってきた。

 

「痛ったぁああ!!」

 

「繋がりましたね。さてどうですか?」

 

 腕をみるとメカメカしい腕だ。しかしこうしてみると

 

「なんか、ロケットパンチが撃てそうな腕だね」

 

「良く分かりましたね。ロケットパンチが出来るんです」

 

「撃てるの!?」

 

「しかし、撃ったら戻ってはきません」

 

「撃ったらサヨナラバイバイ!?」

 

 僕らのやりとりを見ていたパワーローダー先生は何かを思いついたようで

 

「そうだ、発目。白井くんの腕はお前に任せるよ」

 

「えっ!?」

 

「おぉー!! それは本当ですか、先生!!」

 

 僕は驚き発目はとても嬉しそうだ。僕はパワーローダー先生に強く質問した。

 

「ちょっと、先生!! それはどういう事ですか!?」

 

「まあまあ、白井くん。そろそろ雄英体育祭が始まるだろ。私はその準備等におわれるから忙しい。そして発目は自分の発明品を企業に見てもらいたい。白井くんなら良い広告塔になってくれるだろうから、二人で頑張ってくれ」

 

「マジっすか?」

 

「マジだよ。じゃあ、発目をよろしく。なんか壊したら直せよ」

 

 パワーローダー先生はそう言って工房を後にした。残された僕と発目。すると僕の手を握りしめ

 

「よろしくお願いしますね、白井さん!!」

 

 発目は目を輝かせながら言ってきた。そんな熱意に負けてしまい諦めて

 

「……よろしく。発目さん」

 

「では、早速今取り付けている腕を取りましょう。痛いですよ。えい!」

 

「痛ってぇえええええ!!」

 

 本当に大丈夫なのだろうか?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話

体育祭です


 発目 明と僕の義手について話し合っていたら放課後になっていた。一旦荷物を取りに戻ると伝え教室に向かった。教室に向かうと何やら人集りが出来ている。何事だろう。

 

「ねぇ、これ何してんの?」

 

「ん? いや、A組を見に来たんだよ。敵襲撃の中でA組の誰かが負傷しながら戦っていたんだってよ」

 

「ふーん」

 

 敵情視察というやつですね。僕は人をかき分け教室に向かった。入り口ではなにやら騒いでいるね。

 

※※※※※※

 

「………調子にのってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー。宣戦布告しに来たつもり」

 

 (((この人も大胆不敵だな!!)))

 

「ゴメンね。通してー」

 

 人混みをかき分けて来たのは白井 黒だった。

 

※※※※※

 

 僕はようやく入り口へ到達できた。鞄をとりさっさと開発工房に戻ろうとしたとき

 

「そういえば、このクラスで敵と戦って腕を負傷した奴がいるって聞いたけど……アンタ?」

 

 男子に呼び止められてしまった。

 

「見ての通りそうだけども?」

 

 腕が無いよアピールをした。

 

「ふーん。アンタか……」

 

 ソイツはまじまじと僕を見ていた。発目を待たせているのを思い出し、僕は

 

「ゴメンね。用事あるからまた今度ね。おーい、ちょっと通してぇ」

 

 ソイツに謝り僕は人混みをかき分けて急いで開発工房に向かった。

 

※※※※※※

 

「お待ちしてました。さあ、やりましょう!」

 

 発目は機材とかを用意しており準備が出来ているみたいだ。

 

「よろしくね」

 

「はい、ではビームの威力を決めましょう!」

 

「うん! 僕は普通の腕にしてくれませんか?」

 

 僕の普通の腕の案に発目は頬を膨らませていた。

 

「えぇー。そんなんじゃアピールになりませんよ」

 

「他でやってよ……」

 

 僕と発目は義手の案を出し合っていた。どうにか体育祭には間に合わせたいものだ。

 

「むうー、分かりました。では義手以外のサポートアイテムを使って貰いますよ」

 

「うーん。使うかわからないが良いよ」

 

 発目の提案を飲んだ。まぁ、使うものは使っておこう。

 

※※※※※※

 

 二週間が経ち体育祭本番当日。控え室からでも観客の声が聞こえる。申請して了承を得た様々なサポートアイテムを手に体育祭に望む。もちろん義手の手入れをしながらその時を待っていた。手入れをしているとなにやら緑谷と轟の話が聞こえる。内容からして宣戦布告のようだ。僕は腕の調子を確認していると

 

「お前にも負けねえぞ、白井」

 

「うん? 僕?」

 

「戦闘訓練では負けたが今度は勝つ」

 

 轟も他のみんなもなかなかやる気に満ちてますね。

 

「良いよ。受けて立ってあげよう」

 

 そして入場の時間になった。

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

『どうせ、てめーらアレだろ、こいつらだろ!!? 敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』

『ヒーロー科1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

 うひょー。観客がめちゃくちゃ居ますね。オラ、ワクワクすっぞ。僕達の紹介は持ち上げられているけど、他のクラスはそんなに紹介していない。他のクラスもちゃんと紹介しようよ。全クラスが集合した。

 

「選手宣誓!!」

 

 おぉ、いつ見てもすげぇ格好。18禁ヒーロー『ミッドナイト』

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか」

 

「いい」

 

 常闇と峰田の会話が聞こえたのかムチを鳴らして

 

「静かにしなさい!! 選手代表!! 1-A 白井 黒!!」

 

 僕が呼ばれた。朝礼台に行くまで周りはざわついていた。

 

「アイツが入試1位……」

 

「食堂でめちゃくちゃ食べる奴じゃん」

 

 僕は食いしん坊で通っているのかな? 朝礼台に登った。

 

「せんせー。僕達、一年生一同、正々堂々競技する事を誓いまーす! 選手代表 無個性の白井 黒」

 

 僕の無個性発言に生徒も観客もより一層ざわついた。気にせず戻った。戻ると蛙水が話しかけてきた。

 

「思い切ったわね、黒ちゃん。みんなアナタに注目しているわ」

 

「まぁ、それも計算の内かな? 発目も喜んでいるし」

 

 サポート科の発目はこちらを見て親指を立てていた。僕も手を振った。

 

「………仲がよさそうね」

 

「まぁ、義手を作って……」

 

 すると蛙水は舌で頬を叩いてきた。

 

「痛い! いきなりどうしたの、梅雨ちゃん!?」

 

「……何でもないわ」

 

「???」

 

 良く分からないがミッドナイトが種目の発表をした。

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう」

「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ。さて運命の第一種目!! 今年は……コレ!!!」

 

 モニターに映し出されたのは『障害物競争』だ。コースはスタジアム外周約4km コースさえ守れば何をしても構わないとのことだ。僕はささっと、スタート地点に着いた。そして

 

『スターーーーーーーーート!!』

 

 スタートの合図がなった。僕は発目から貰ったサポートアイテムの一つを使った。

 

『ザ・ワイヤーアロー拳銃型!!』

 

 僕は天井に向け撃ち込みワイヤーで一気に上がり、その後壁に撃ち込みを繰り返して空中移動した。そのまま地上に飛び降り先頭に出た。

 

 後ろでは轟が地面を凍らせて後続の動きを止めていた。

 

「ありがとう、轟! じゃあ、お先!!」

 

 僕はそのまま走りかけようとすると目の前に沢山のデカいロボがいた。

 

『さぁ、いきなり障害物だ!! まず手始め…第一関門 ロボ・インフェルノ!!』

 

 うむ。邪魔だな。僕は大型ロボットの足元を切り刻みながら駆け抜けた。ロボットは体勢を崩し倒れた。後続の邪魔にもなったし一石二鳥だ。

 

「みんなゴメンねぇー! そしてグッバイ!」

 

 僕は走った。後ろでは轟が追いかける。しかもちょいちょい凍らせようと狙ってくる。僕はジグザグ走行で走っているので大丈夫です。

 

『オイオイ第一関門チョロイってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!!』

『ザ・フォーーーーール!!!』

 

 うん。綱渡りだね。ここは『ザ・ワイヤーアロー拳銃型』を使おう。なんて素晴らしいんだ『ザ・ワイヤーアロー拳銃型』観客に見せつけるように使いここを攻略した。後ろから轟、そして爆豪がやってきた。飯田の綱渡りは面白いな。

 

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!』

『そして早くも最終関門!! かくしてその実体は───』 

『一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!』

 

 地雷原かぁ。これはスピードが落ちるな。するとやはり轟がやってきた。

 

「待ちやがれ、白井!!」

 

「それは無理かなっと!」

 

 剣で小石を弾いて地雷を爆発させる。すると上から

 

「はっはぁ俺は──関係ねーーーー!!」

 

「うぉ!? 爆豪!?」

 

「シロモブ!! てめぇにも負けねぇ!!」

 

「ふははっ、上等だよ!」

 

 トップは今は僕含めて3人だ。

 

『おうおう!! こいつは熱いぜ!! 喜べマスメディア!! おまえら好みの展開だああ!!』

『後続もスパートかけてきた!! 先頭3人がリードかあ!!?』

 

 轟も爆豪も速いな。しかし、地雷原をむやみやたらに駆け出しても危険だ。最善で最短ルートを見るんだ。すると後ろから普通の地雷よりも大きな爆発が鳴り響いた。

 

『後方で大爆発!!? 何だ、あの威力!?』

 

 爆風に乗って緑谷が勢いよく吹き飛んできた。というかこれは……

 

『偶然か故意か、A組 緑谷、爆風で猛追──つーか!!!』

『抜いたあああああーー!!!』

 

 やっべ。抜かされた。他の二人もそれに応じて駆け出した。ならば僕も出口付近に設置してある看板目掛けて『ザ・ワイヤーアロー拳銃型』を撃ち込み、そのまま行こうとしたが……。

 また緑谷が着地寸前で地雷を爆発させた。

 

「あぶねぇ!?」

 

 僕はどうにかワイヤーで移動しどうにか巻き込まれなかった。轟と爆豪は妨害されたみたいだ。

 

『緑谷、間髪入れず後続妨害!! 白井もあの銃みたいなので回避し、二人とも地雷原即クリア!!』

 

 最後はどちらが早くゴールするか……

 

『さァさァ、序盤の展開から誰が予想出来たか!? 今一番にスタジアムへ還ってきたその男────…』

『緑谷出久の存在を!! 次いで白井もゴール!! 僅差だったな!!』

 

 僅差で負けた。後ろから続々とゴールしている。轟と爆豪も悔しそうだ。やっぱり……

 

「コレ外せば良かったな」

 

 リストバンドを見て思った。すると後ろから発目が現れた。

 

「おや、白井さん。それ着けていたのですか?」

 

「うん。やっちゃったね」

 

 その話を聞いたのか切島がやってきた。

 

「なんだそれ?」

 

「うん? 重りだよ」

 

 僕はリストバンドの一つを切島に渡した。

 

「っつ!? 重ぇえ!!? なんだコレ!? 一体何キロなんだよ!?」

 

「一つ20kgぐらい」

 

「はぁああ!!?」

 

 周りはそれを聞いてざわついていた。やっぱりリストバンドを外すとなんだか体が軽い。もう何も怖くない。軽くストレッチをした。さて、次の種目は……。

 

『さーて第二種目よ!! 私はもう知ってるけど~~~。何かしら!!? 言ってるそばから……コレよ!!!!』

 

 モニターに映し出されたのは『騎馬戦』だ。順位によってポイントが振り当てられ、合計が騎馬のポイントになる。騎手はポイントが表示されたハチマキを装着。終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うとのことだ。なるへそ。

 

『予選通過1位の緑谷出久くん!! 持ちポイント1000万!!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

騎馬戦を楽しみにしていた人ごめんなさい


『予選通過1位の緑谷出久くん!! 持ちポイント1000万!!』

 

 ほうほう。1位は大変だなー。2位で本当に良かった。しかしどうしますか……。すると

 

「なぁ、あんた……」

 

 声をかけられた。

 

「うん?」

 

 次の瞬間、何かにぶつかった。気がつくと試合が始まっていて騎馬をやっていた。あ、ありのまま今起こっている事を……。騎手を見ると声をかけてきた男子だった。おやおや。これは。ふーん。なるほど。理解した。

 

「ねぇ、君」

 

「なんだ、解け……」

 

「おおっと、ここからは一方通行で話させて貰うよ。君の個性は人を操る個性で、条件は君の問いかけに答えたらアウトって感じだな」

 

「……………」

 

「いやぁ、これは初見殺しだ。流石に防げなかったよ」

 

「それでどうすんだ……」

 

 僕はその問いかけに応じずにいたら彼はため息をして

 

「操んねーから答えろよ」

 

「ありがとう。とりあえずこのまま終わるのを待つよ。今のところ3位みたいだし。漁夫の利と言う奴で!! あざっす!!」

 

 そんな会話をしていると騎馬戦が終わった。

 結果は1位轟チーム 2位爆豪チーム 3位心操チーム(僕) 4位緑谷チームとなった。最終種目に出場だ。

 昼休みの前に尾白とB組の子が話かけてきた。

 

「お、おい、白井。俺たちなんで3位なんだ? 何がどうなってんだ?」

 

「ん? あぁ、あれは彼の個性だよ。人を操るのかな? それで僕たちは操られていたんだよ」

 

「そ、そんな……」

 

 彼らはうなだれていた。実力で本戦に行きたかったのだろう。

 

「まぁ、それで最終種目に出るのかは君たちの自由だと思うよ。でも僕は出させて貰うよ」

 

 そう言って僕は昼飯を食べに向かった。

 僕は25杯目のカレーライスを食べていると前に誰が座った。心操だった。

 

「やあやあ、これは心操くんではないか。どうしたんだい?」

 

「あんたに聞きたい事があってな。個性使わねえから答えろよ」

 

「まぁ、答えられる範囲でならね」

 

「……本当に無個性なのか?」

 

「うん、そうだよ。発動型でも変化型でも異形型でもない、ただの無個性だよ」

 

「じゃあ、なんでお前はヒーロー科に入ってんだよ!」

 

 心操は机を叩いて聞いてきた。僕はカレーを食べるのを止め

 

「……僕は個性が無い代わりに力を、そして技術を磨いていたのさ。それも血反吐を吐きながらね」

 

「……………」

 

「君の個性は完璧だ。初見なら誰もがかかる。しかし入試ではロボット相手だから通用しなかっただけさね」

 

「……………」

 

「まあ、最終種目で勝ち抜いてみんなに見せつけてみなよ。……後は君次第だよ」

 

 僕は質問に答えて食器を片付けにその場を立ち去った。

 

 昼休憩終了

 

『最終種目発表前に予選落ちの皆へ朗報だ! あくまでも体育祭! ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

『本番アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん? アリャ? どーしたA組!!?』

 

 A組の女子がチアリーダーの格好をしている。おぉこれは似合っていますね。蛙水に近づき

 

「梅雨ちゃん!!」

 

「……黒ちゃん」

 

 ガシッと蛙水の手を握りしめ

 

「似合っているよ! 本当に似合っているよ!」

 

「そ、そうかしら?」

 

「梅雨ちゃんの応援なら僕はレクリエーションで一位になれるよ」

 

 僕はどや顔で言った。すると

 

「……じゃあ、やってみて。応援してるわ」

 

「もちろん。僕の頑張り見ていてね!!」

 

 僕らは中央に集まった。

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション! それが終われば最終種目』

『進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!! 一対一のガチバトルだ!!』

 

 その後ミッドナイトによる説明の前に尾白が手を挙げた。やはり辞退するつもりだ。もう1人も辞めるみたいだ。ミッドナイトは

 

「そういう青臭い話はさァ……好み!!!」

 

 ミッドナイトは二人の棄権を認め、繰り上がりでB組の鉄哲と塩崎という人になった。

 

「組はこうなりました!」

 

 モニターにトーナメント表が映された。僕の初戦の相手は……芦戸のようだ。芦戸を見るとうなだれていて他の女子に宥められている。

 

『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

 

 レクリエーションの種目に参加し、めちゃくちゃ全力で張り切った。すべての種目で一位をとることが出来たよ。さてさて、次はトーナメントだ。すると蛙水が飲み物を渡してくれた。

 

「本当に頑張ってたわね、黒ちゃん」

 

「あっ、ありがとう、梅雨ちゃん!」

 

 水を飲んでいると不適な笑みを浮かべながら芦戸がやってきた。

 

「ふっふっふ、そんなに動いて良かったのかな、黒ちゃん?」

 

「やぁ、三奈ちゃん。僕は全然動けるよおー。対戦楽しみだね」

 

「くそー。でも、私は負けないからねえ!!」

 

 宣戦布告を受け芦戸は戻っていった。関心しながら見送った。

 

「僕準備しなくちゃ。飲み物ありがとね、梅雨ちゃん」

 

「トーナメント頑張ってね、黒ちゃん」

 

「勿論さ。応援してねえ!」

 

 僕は準備の為この場を後にした。

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?』

『色々やってきましたが!! 結局これだぜガチンコ勝負!!』

『頼れるのは己のみ! ヒーローでなくてもそんな場面ばっかりだ! わかるよな!!』

『心・技・体に知恵知識!! 総動員して駆け上がれ!!』

 

 プレゼント・マイクの実況は凄いね。聞き入っちゃうな。ルール説明も終わりいよいよ試合スタート。

 

 第1試合 緑谷VS心操。これは心操の個性にやられたら緑谷の負け確定だな。

 

『オイオイどうした大事な緒戦だ、盛り上げてくれよ!? 緑谷開始早々──完全停止!?』

 

 あらあら、やっぱりこうなったか……。緑谷はゆっくりと場外へ向かっていった。これは終わったな。すると何故か爆風がおき止まった。よく見ると指が折れてる。緑谷の謎の個性でなんとかなったのか!? 緑谷はそのまま押し出そうとしている。しかし心操が逆に押そうとしたら緑谷の見事な一本背負いが決まり……

 

『二回戦進出!! 緑谷出久ーーーー!!』

 

 僕は立ち上がった。近くにいた蛙水が

 

「ケロ? どうしたの、黒ちゃん」

 

「ちょっと野暮用に……」

 

 そう言って僕は席を立った。

 

※※※※※

 

 心操は控え室戻ろうとしたときその廊下に白井が居た。

 

「やぁ、心操くん!」

 

「お前……」

 

「個性無しでよろしくね!」

 

「……………」

 

「とりあえず……ほら」

 

 白井は缶コーヒーを投げ渡した。心操はそれをキャッチした。

 

「とりま、お疲れ様でした」

 

「あぁ……」

 

「プロヒーロー達の評価良かったじゃん」

 

「……そうだな」

 

 少しの間が空いた。白井は缶コーヒーを飲み干し缶を潰した。そして

  

「それじゃあ僕はこれで。そんだけ言いたかったのさ」

 

 白井はその場を去ろうとした。

 

「待てよ」

 

 心操が引き止めた。白井は立ち止まった。

 

「なんだい?」

 

「俺はあんたみたいになれるか?」

 

「それは君次第だよ。まずは筋トレとかしてみなよ。これでも貸すよ」

 

 白井は20kgのリストバンドを渡した。心操に渡すが重かったのか落としてしまった。

 

「うっ!?」

 

「まぁ、それはやり過ぎかもしれないよね。頑張ってね」

 

 白井はそのままどこかに行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話

誤字脱字報告ありがとうございます
今後気を付けていますがあるかもしれません
よろしくお願いします



第2試合 轟VS瀬呂

 瀬呂、ドンマイ、ドンマイ、瀬呂

 

第3試合 上鳴VS塩崎

 上鳴、ウェイ、面白いよ、ウェイ

 

※※※※※※

 

第4試合 飯田VS発目

『ザ・中堅って感じ!? ヒーロー科 飯田天哉 VS サポートアイテムでフル装備!! サポート科 発目明』

 

 おぉー、発目かぁ。とりあえずは応援に向かった。

 

「頑張れよー。発目ー」

 

 発目は僕の声が聞こえたのか手を振っていた。対して飯田の方を見ると……ありゃ?

 

「飯田もサポートアイテム、フル装備じゃあねえか!?」

 

 話を聞いていると発目がサポートアイテムを渡したみたいだ。……あぁ、把握した。僕は苦笑いだ。

 

「発目ー。10分でまとめろよー」

 

「ふっふっふ。もちろんですよ、白井さん」

 

 思った通り、発目はサポートアイテムの売り込みをし始めた。いやぁ、清々しいね。飯田はただの広告塔ですね。すると

 

『そして、第一種目で2位の白井黒くんが使っていたこの『ザ・ワイヤーアロー拳銃型』もお忘れなく!!」

 

 しっかり僕を使い売り込んでるな。しかしプロヒーローは

 

「おぉ、あの無個性くんが使ってた!」

 

「すげぇよな。あんなにぴょんぴょん飛べるなんてよ」

 

 なかなか高評価だよ、発目。そして10分後、やりきった顔で発目は場外に出た。

 

「騙したなあああ!!!」

 

 飯田はマジ切れですね。確かに怒るよね。蛙水が

 

「あの子、凄い根性ね」

 

「だろ、アイツのああいうとこ面白いよ」

 

「……あの子の事好きなの?」

 

「えっ!? うーん。そうだな…」

 

 そういうの考えた事無いな。異性としてみる。そうだな。そうなると……

 

「僕は梅雨ちゃんが大好きだよ」

 

「ケ、ケロ!!?」

 

 その場の空気が変わった。僕らに注目している。しかし僕は気にせず

 

「そろそろ僕は控え室に行くね。応援よろしくね、梅雨ちゃん」

 

 僕はその場を後にした。あっ、ついでに発目に会っておこう。

 

※※※※※※

 

 白井が去った後、残された蛙水は頬を赤く染めてぽけーっとしている。周りのクラスメイトはざわついていた。

 

「えっ、それって……」

 

「おいおい、この場でまさかの告白かよ!?」

 

「キャーー!! 憧れる!!」

 

「白井……すげえな」

 

 女子達が蛙水を囲んでいた。

 

「ねぇねぇ、梅雨ちゃん。どうするの?」

 

「ケ、ケロ!?」

 

「そうだよ! 付き合うの!?」

 

「私応援するよー!!」

 

「そもそも、白井くんとはどんな風にそうなったの?」

 

 試合が始まるまで女子は蛙水を質問責めにしていた。

 

※※※※※

 

「どうですか、腕の具合は?」

 

「うん。今んとこ大丈夫だよ」

 

 発目に義手のチェックをしてもらった。第一第二種目通して問題ないみたいだ。

 

「頼みますよぉ。アナタは私の広告塔なのですから」

 

「アッハイ。任せて下さい」

 

 そうこうしている内に第5試合も終わりそうだ。どうやら常闇の圧勝のようだな。ダークシャドウ凄いね。さて僕の番だ。

 

「頑張って下さいね、白井さん」

 

「おぉー。任せてね」

 

 僕は控え室を出てステージに向かった。

 

『第6試合。あの角からなんか出んのねえ出んのお!! ヒーロー科 芦戸三奈 VS 剣一本でここまでのし上がりやがったあ!! それはどこまで続くのかあ!! 同じくヒーロー科 白井黒』

 

 芦戸は手で目を隠しながら

 

「ふぇーん。これは強敵だよぉ。勝ち目ないよぉ」

 

「それじゃあ、辞めるかい?」

 

「なんのぉ。勝って二回戦に進ましてもらうよお」

 

 芦戸はやる気のようだ。ならそれに応えなければいけないな。僕は剣を構えた。

 

『START!!』

 

「先手必勝だあ!!」

 

 芦戸は酸を使って滑るように僕に向かってきた。そして酸を投げつけた。

 

「甘いよ、三奈ちゃん!」

 

 僕はそれを避けカウンターを喰らわそうとしたが、芦戸は酸を使い距離をとられた。

 

「ふっふっふ。これくらい何ともないよ」

 

「なかなかやるね、三奈ちゃん」

 

 今度は僕から仕掛けた。一気に駆け寄り攻撃した。

 

「ほっと!! よっと!!」

 

 ギリギリだが上手く避けている。なるほどなるほど。

 

「運動神経抜群だね、三奈ちゃん」

 

「それはどうも!!」

 

 芦戸は酸で牽制しながら離れた。酸の使い方も上手い。移動にも適している。というか当たったら溶けるな。

 

「よーし。僕、本気だしちゃうぞお!!」

 

「えっ、何言って……」

 

 僕は前方に剣を思いっきり速く、そして大振りに振りながら地面をえぐるように巻き上げながら駆け出した。

 

『「なっ!?」』

 

『なんだあれーーー!! 地面ごと切り刻みながら、いや抉りながら芦戸に向かっていやがる!!』

 

「うっ!? これでも食らえ!!」

 

 芦戸の投げつけた酸も切り刻んでいるステージの瓦礫が邪魔をして届かない。

 

「ふはははっ、逃がさないよ!」

 

「ひぃーーー!?」

 

『おおっと!? 芦戸たまらず逃げ出したあ!!』

 

『そりゃあ、あんなの食らったら一溜まりもないからな』

 

『そうだが、おまえのクラスやべえな、イレイザー!! あいつ、敵襲撃の際も……むごお!?』

 

『お前は何でもかんでも喋りすぎだ。ちゃんと実況しろよ』

 

 その鬼ごっこの幕切れは早かった。芦戸は逃げるように場外に出た。

 

「芦戸さん場外!! 白井くん、二回戦進出!!」

 

 ヤバい、やりすぎた。僕は芦戸の所に向かうと座り込んでいた。

 

「ふぇーん。本当に怖かったあ!」

 

 今度は本当に泣いてるや。

 

「ゴメンよ。三奈ちゃんが本当に強かったからさ……」

 

「えっ!? 私そんなに強い!?」

 

 僕の言葉に表情が一気に明るくなった。

 

「勿論さ。あの運動神経も良かったし、個性の使い方も上手だった。三奈ちゃんは中距離支援向きだと思うよ」

 

「えへへ、そうかな?」

 

「だから……」

 

 僕は芦戸の頭を撫でながら

 

「今日は僕の勝ちって事で、三奈ちゃん」

 

「う、うん!」

 

 芦戸に手を貸し立ち上がった。よく見ると頬が赤い。うーむ、怒っているのか? 分からん。

 

※※※※※※

 

「うーーーーーん!!」

 

 芦戸は照れと恥ずかしさでいっぱいだった。それは誉められてなのか、慰めてもらったからか、その気持ちはよく分からなかった。

 

「あれ? そういえば、黒ちゃんは梅雨ちゃんが好きなんだっけ」

 

 芦戸は白井が蛙水に告白した場に居たのだ。あの時はハシャいでいたが、それを考えると芦戸の胸がざわついた。なんかモヤモヤした気分で嫌になっている自分に芦戸は気づいた。

 

「こ、コレはまさか……!?」

 

 芦戸は首を振った。その気持ちが本当なのかどうか分からないまま観覧席に戻った。

 

 芦戸は席に着くと隣に蛙水が居た。周りを見れば良かったと芦戸は思った。蛙水は

 

「お疲れ様、三奈ちゃん」

 

「あははっ、ありがとうね。でも黒ちゃん強かったよ」

 

「そうね。黒ちゃんは恐ろしい程強いもんね」

 

 芦戸はまた胸がざわついた。さっきよりもモヤモヤした気分はいっぱいだ。そして

 

「でも、黒ちゃんも……」

 

「梅雨ちゃん!!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 蛙水もその場に居たクラスメイトも芦戸の大きな声に驚いていた。芦戸は

 

「梅雨ちゃんに話があるの……」

 

「な、何かしら?」

 

 芦戸は躊躇したがこの気持ちをどうにかしたかった。

 

「黒ちゃんの事、本当に好きなの?」

 

「ケロ!?」

 

 蛙水はあたふたした。その感じで芦戸は分かった。

 

「……好きなのね」

 

 蛙水は恥ずかしそうに頷いた。芦戸は口を紡ごうにも言葉が先に出ていた。

 

「私も黒ちゃんの事が好きなの!!」

 

「「「「「「ファッ!!?」」」」」」

 

 周りのみんなは変な声を出していた。蛙水は驚きながらも芦戸を見ていた。

 

「……そうなの」

 

「うん。この気持ちは本当だよ。だから……」

 

 芦戸は蛙水に手を差し出した。話したら気分は晴れやかであった。

 

「これからはお互い恋のライバルってことで!!」

 

 蛙水は驚きはしたが芦戸の手を握り

 

「えぇ。私負けないわよ、三奈ちゃん」

 

「ふふん。私だって負けないんだから!!」

 

 芦戸と蛙水は握手をしている中、他の人は

 

「えっ、何、どゆこと!?」

 

「分かんねえけど芦戸も白井の事が好きってことだろ!?」

 

「キャーー!! 何か凄ーーい!!」

 

「こ、これは良いの?」

 

「うおおおおお!! どういう事だよ白井いいいい!! 羨ましいぞおおお!!」

 

 様々な反応を示していた。その頃白井は

 

「へっくしゅん!! はぁ、風邪かな?」

 

「止めて下さいよ。白井さんには優勝目指して貰わないと困りますよ!!」

 

「はいはい、分かりました」

 

「それで、今度の試合には是非コレを使って下さい!!」

 

 控え室で発目にサポートアイテムの説明を受けていた。発目の存在も後々波乱を巻き起こす。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話

 僕は控え室を出て観覧席に向かう途中に切島と鉄哲が担架で運ばれていた。切島達と言うことは、残る試合は爆豪VS麗日になるな。これは見ものだな。僕は急いで観覧席に向かった。

 

「あっ、黒ちゃん!! こっちこっち!!」

 

 僕に気づいた芦戸が呼んできた。芦戸と蛙水の間が空いてるのでそこに座った。すると芦戸が

 

「私も梅雨ちゃんと一緒で黒ちゃんの事が好きなんだ!!」

 

「ウェイッ!!?」

 

 驚きのあまり上鳴の言葉が出てしまった。蛙水と芦戸を交互に見る。彼女たちの目は本気のようだ。しかし、どうしたものか。答えなんて出せるかぁ? そんな事を考えていたら蛙水が

 

「別にすぐって訳じゃないわよ。今は彼女が二人と考えればいいじゃない」

 

「そうそう、ハーレム! ハーレム!」

 

 芦戸は僕の腕に抱きついてきた。照れながらも蛙水も腕に抱きついてきて、二人に挟まれている状態になっている。なんだ、この状況は……。

 

「そ、そろそろ試合が始まるから二人の応援しようか!」

 

 二人はその言葉に名残惜しそうに離してくれた。そうでもしないと後ろの峰田の血涙が止まりそうになかった。しかし、この試合は…。

 

『一回戦最後の組だな……』

『中学からちょっとした有名人!! 堅気の顔じゃねえ ヒーロー科爆豪勝己  VS  俺こっち応援したい!! ヒーロー科麗日お茶子』

 

「お茶子ちゃん、勝てるかしら?」

 

「爆豪が手を抜いてれば勝てるよ。でも……」

 

『START!!!』

 

 麗日は開始と同時に駆け出した。身体に触れば麗日の勝ちは決まる。しかし爆豪は迎撃の爆破をお見舞いした。

 

「やっぱり手を抜くなんてことはしないね」

 

 麗日の煙幕による奇襲にも爆豪は見てから迎撃した。良い反射神経だ。

 

『麗日間髪入れず再突進!!』

 

 しかし、それも迎撃される。爆発音が響きわたる。

 

「お茶子ちゃん……!」

 

 心配なのか僕の服をギュッと掴む。

 

『休むことなく突撃を続けるが……。これは……』

 

 誰もが無謀と感じる戦いになっている。爆豪がいたぶっているように見えたのか

 

「女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」

 

「そーだ。そーだ」

 

 一部の観客からブーイングが出始めた。ブーイングしているプロヒーローは本当にプロなのか? すると

 

『今、遊んでるっつったのプロか? 何年目だ? シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ』

 

 相澤先生の言葉にブーイングするプロヒーローは止まった。

 

『ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろが』

 

 僕は空中をみた。良い武器が出来ている。麗日の作戦は見事だ。麗日は個性を解除すると、空中から瓦礫が降り注いだ。

 

『流星群ーー!!!』

 

 麗日は距離をつめようとした。これで爆豪に触れば麗日の勝ちだ。しかし今日一番の爆発音が鳴り響いた。恐らく戦闘訓練の際の爆破で一蹴した。

 

「………終わりか」

 

 僕の言葉通り麗日は倒れてしまった。キャパオーバーみたいだ。ミッドナイトの判断は

 

「麗日さん……行動不能。二回戦進出 爆豪くん──!」

 

 僕は背筋を伸ばして立ち上がった。芦戸は

 

「あれ? どっか行くの?」

 

「小休憩みたいだし、ちょっと飲み物買いにいってくるね」

 

「うん! 気をつけてね!」

 

 僕は観覧席を後にした。

 

 自販機で缶コーヒーを勝っていると切島VS鉄哲の腕相撲が始まっていた。勝ったのは切島だ。ベスト8は決まったみたいだな。ベンチに腰掛けていると近くの控え室から轟が出てきた。

 

「よぉ、轟」

 

 呼び止めると轟は振り返り

 

「白井か……。なんか用か?」

 

「まぁ、なんだ。試合頑張れよ」

 

「そうだな、これに勝ってお前にも勝つ」

 

「それは決勝で会おうってやつかな?」

 

「そういう意味だ。じゃあな」

 

 轟はそのままステージに向かった。僕はその後ろ姿に向かって

 

「轟、全力で自分の力で戦えよ!!!」

 

 轟は一旦止まったがそのまま何も言わずに試合に向かった。僕も観覧席に戻った。

 

 観覧席に戻ると試合はもう始まっていた。既に緑谷の指は2本折れているみたいだ。僕は急いで席に座った。蛙水に

 

「遅かったわね、黒ちゃん」

 

「あははっ、欲しかった飲み物が売り切れでね。控え室のとこで買ってきた」

 

「そうだったのね」

 

 そんな話をしていると氷を砕く音と同時に冷たい風が観覧席にまで届いた。風圧すげぇ。しかし、これで緑谷の右手は使えない。それを逃さない轟は距離をつめ氷結が緑谷を襲おうとしたが、先ほどよりも強い威力で轟から距離をとった。代償として左も使えなさそうだな。

 

『圧倒的に攻め続けた轟!! とどめの氷結を──…』

 

 すると、また氷を砕く風圧。緑谷は壊れた指で弾いたみたいだ。すると緑谷はボロボロの右手を握りしめ

 

「全力でかかって来い!!」

 

 緑谷の根性すげえ。それに苛ついたのか轟は前に出たが、先ほどより動きが鈍い。緑谷の拳が腹に入った。

 

『モロだぁーーーー。生々しいの入ったあ!!』

 

 轟は反撃しようとするが先ほどよりも氷の勢いが弱まってる。しかし緑谷も拳は握れないだろう。凍らせようとするが、緑谷は頬の内側で親指を弾いた。

 

「期待に応えたいんだ…! 笑って答えられるような……。カッコイイヒーローに……なりたいんだ。だから全力でやってんだ皆!」

 

 緑谷はふらふらになりながらも轟に体当たりをする。

 

「全力も出さないで一番になって、完全否定なんてフザけるなって今は思ってる!」

 

 轟は氷を出そうにも寒さで出せそうにない。

 

「だから……僕は勝つ!! 君を超えてっ!!」

 

 そこを緑谷の拳がまた腹に入る。しかし、緑谷って……。

 

「なぁ、爆豪」

 

「あん?」

 

「緑谷っていつもこんな感じなの? お節介っていうか、なんていうか」

 

「ケッ、知るかよ! クソナードのことなんて」

 

「なんだよ。幼なじみじゃないのかよ」

 

「てめぇ殺すぞ、シロ野郎!!」

 

 するとすごい熱風がきた。なるほどこれが轟の全力か。炎と氷。これが轟焦凍か。

 

「これはすごい……」

 

 決勝に行けば本気の轟と戦えるのか……。そんな事を考えていると一際大きな爆発が鳴り響きそれと同時に爆風がきた。

 

『何今の……。おまえのクラス何なの……』

 

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ』

 

『それでもこの爆風て、どんだけ高熱だよ! ったく何も見えねー。オイこれ勝負』

 

 煙幕が晴れてそこに立っていたのは……。

 

「緑谷くん……場外。轟くん──…三回戦進出!!」

 

 緑谷はリカバリーガールの所に運ばれた。それを心配してか何人かが向かった。僕は立ち上がった。芦戸は首を傾げて

 

「どうしたの、黒ちゃん?」

 

「試合前の精神統一ってやつさ。僕の応援よろしくね、梅雨ちゃん、三奈ちゃん」

 

「もちろんよ」

 

「応援任せてよお!」

 

 僕はその場を後にし控え室に向かった。

 

二回戦第2試合 飯田VS塩崎の試合は飯田が『レシプロバースト』で背を取りそのまま押して場外にした。さて、僕の試合だ。僕は発目に渡されたサポートアイテムを持ち試合に望むことにした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17話

お久しぶりです

誤字脱字あるかもしれません。ご了承ください


『こいつは見ものだぁ!! 一回戦では瞬殺と無敵に近い個性の持ち主、常闇踏陰 VS その圧倒的な力を見せた最強剣士、白井黒』

 

 僕はいつもの剣と他にもう一つ違う剣を持ってきた。

 

『おぉっと、白井はなんか別の武器を持ってやがる!! 申請は……しているみたいだ!!』

 

『見た目は普通の剣だな』

 

『よーし、それでは第3試合……START!!!』

 

「行け黒影!!」

 

 黒影が僕に向かって突進してきた。僕はそれをスライディングで避けて近づこうとした。

 

「黒影!!」

「アイヨッ!」

 

 しかし黒影に阻まれる。ならばと僕は攻撃に転じるがなかなか固い。攻撃もいい感じで、攻守ともに優れている。

 

「常闇、強いね」

 

「お前もな。だが、勝たせてもらう!」

 

 また黒影が迫ってくる。僕は牛蒡剣をしまい別の武器を構えそして斬りかかった。するとバチバチっと放電音が鳴り響いた。

 

『な、なんだあ今のは!? 剣から電気が走ったぞ! 白井は無個性じゃねえのか!?』

 

『それはない。ちゃんと入学資料にも書かれてある』

 

『じゃあ、なんで………』

 

 すると別スピーカーから

 

『それは私が答えましょう。私こと発目明が作りましたアレは『エレキブレード』。敵に当てれば放電で気絶させる事が可能の非殺傷携帯武器。充電は空気摩擦により充電します。何度か振り回せば使用可能になります』

 

 その説明をバックに僕は攻撃を続けた。攻撃の度に放電された。

 

「説明と矛盾しているな。何故何度も放電する?」

 

「ん? あぁ、それはね、僕の一回の剣を振るスピードで充分に充電されているからだよ。だからタイムラグ無しで放電されるのさ」

 

「……まさに、お前に合った武器だな」

 

 何度か斬りつけている内に何故かダークシャドウの勢いがほんの少し弱まっているのが感じた。………なるほど。

 

「黒影にも弱点あるんだな」

 

「何を……」

 

「電気……ではなく、そこで発生する光かな?」

 

「……………」

 

「それは肯定かな? まぁ、予想だけどね。このまま押し切らせてもらうよ」

 

 僕は猛攻に転じた。

 

『あれは、芦戸戦で見せた技だ!! 常闇たまらず防戦一方だ!!』

 

「くっ!?」

 

「ふはははっ!! まだまだいくよ!!」

 

 僕は牛蒡剣も抜いた。二刀流というやつだ。これで手数が倍になった。

 

『なんだよこれ!? まるで暴風の嵐のような剣裁きだなオイ!! 常闇、万事休すか!!』

 

 エレキブレードの電撃の光と日光により徐々に弱まる黒影。そして……。弱り切った所で一気に距離をつめ押し倒し、首もとに剣を当てた。

 

「詰みかな? どうする?」

 

「……まいった」

 

「常闇くん降参! 白井くんの勝利!!」

 

『圧倒的な力を見せつけ白井、三回戦進出!!』

 

「いやぁ、良い勝負だったよ。この武器が無ければ僕の負けだったよ」

 

「それが無くても持久戦に持ち込んだのだろう」

 

「そうかな?」

 

「これが愛の力か……」

 

「ぶはぁっ!?」

 

 吹き出してしまい、訂正しようとしたが

 

「おめでとーう! 黒ちゃん!!」

 

 芦戸の声が聞こえ観覧席をみると芦戸と蛙水が手を振っていた。恥ずかしいが僕もそれに応えるようにガッツポーズをした。

 

「……愛の力だな」

「熱々ダナ!」

 

「………ほっとけ!」

 

 僕はステージを後にし観覧席に戻った。

 

二回戦第4試合 切島VS爆豪

 これは見ものだ。僕は席に戻ると二人が出迎えてくれた。

 

「黒ちゃん、お疲れ様!」

 

「ベスト4、進出おめでとう、黒ちゃん」

 

「応援ありがとう、梅雨ちゃん、三奈ちゃん」

 

「えへへっ。当たり前だよー!」

 

「ケロ!」

 

 二人とほのぼのと会話をしていると爆音が鳴り響いた。

 

『カァウゥンタァーーーー!!!』

 

 しかし切島の硬化により爆豪の爆破は効いてないみたいだ。

 

『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!』

 

 切島頑張っているな。でも個性を維持し続けられるのか? 

 

『また爆豪のカウンター!! ってさっきと違って効いてる!!』

 

 やはり硬化も綻び始めた。そこから爆豪の猛攻が始まり切島は押されていき遂に

 

「とどめ…死ねぇえ!!」

 

 最後と言わんばかりの爆発を浴びせ切島は倒れた。爆豪えげつないね。怖いね。次の相手だね。嫌だね。

 

『これでベスト4が出揃ったぁあ!!』

 

 さてそろそろ行くか。

 

「行くのね、黒ちゃん」

 

「頑張ってね! 私たち応援しているから!!」

 

「任せてね。行ってきます」

 

 僕は控え室に向かった。喉が渇いたので近くの自販機に寄ったら

 

「おっ、爆豪じゃん」

 

「シロ野郎……」

 

 自販機で爆豪と鉢合わせした。

 

「何買うの? 奢ってよ」

 

「なんでてめぇなんかに奢らなきゃいけねんだよ!」

 

「んだよ。ケチだな」

 

「んだとゴラァ!!」

 

 僕は近くのベンチに座った。

 

「次だな」

 

「…………」

 

「ワザと負けてやろうか?」

 

「ぶっ殺すぞ、カス!!」

 

「嘘だよ、冗談」

 

 今にも爆破してきそうな感じであった。カルシウム足りてないね。

 

「………ほらよ」

 

「うん?」

 

 すると爆豪は缶コーヒーを投げ渡した。

 

「ゴチでーす」

 

 開けて飲もうとしたら

 

「奢ってやったんだから本気でかかってこい」

 

「言われるまでもないよ。本気だすからちゃんと負けてくれよ」

 

「誰が負けるかボケが!!」

 

 爆豪は空になった缶ジュースを潰してゴミ箱に投げ捨て控え室に戻った。見送った後僕も戦いに備えた。

 

準決勝第1試合 轟VS飯田

 轟が氷で牽制したが飯田がそれを避け『レシプロバースト』の加速による強力な蹴りを食らわせそのまま場外に出そうとしたが、轟の氷が飯田の排気筒を凍らせ動きを止めて轟が勝った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

18話

誤字脱字がありましたらごめんなさいm(_ _)m


『さあ、これは注目の一戦!! 爆豪VS白井!! 二人ともかなりの実力者、果たしてどちらが勝つんだ!!! 俺でも分かんねーぞ!!!』

 

 僕と爆豪は中央に集まり開始の合図を待った。

 

「お手柔らかによろしくね」

 

 僕は爆豪に手を振りながらおちゃらけて言うと

 

「手抜いたら殺すぞ!」

 

 なんとも殺る気が見える返事が返ってきた。僕も負けないぞい。僕は剣を構えた。

 

『START!!!』

 

 開始と同時に爆豪は爆破を利用しながら高速移動し距離をつめ

 

「死ねえ!!」

 

 爆豪の爆破が僕に迫った。

 

『開始早々爆豪の先制爆撃!! これは直撃………って白井に当たってねぇ!? 何故か白井の横にクレーターが出来てやがる!! どういうことだ!!?』

 

 爆豪にカウンターお見舞いしたが爆破により距離をとらてしまった。

 

「……てめぇ。剣で逸らしやがったな…」

 

「そうだよ。剣先を利用して逸らさせてもらったよ。君の攻撃は単調だから出来る技だよね」

 

 分かりやすいようにキレたみたいだ。爆豪は勢いをつけ向かってきてラッシュを仕掛けた。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 僕はそれをすべて去なした。

 

『爆豪の猛攻にも白井には当たらない!! 白井の前では無力なのかあ!!』

 

「クソが!!」

 

「今度は僕の番だよ!」

 

 僕は逸らしたついでに爆豪を蹴り飛ばした。そして近づき鋭い突きを連続で行った。爆豪は避けれず幾つかの切り傷をつけた。

 

「くっ!? ……オラァ!!」

 

 爆豪は牽制の爆破をしながらまた距離をとった。

 

「本当に派手な個性だね」

 

「うるせえ、だまれ!」

 

 爆豪はこちらに手を向けて

 

「これでもくらいやがれ!!」

 

 麗日戦で見せた特大爆破がこちらに向かってきた。避けようにも間に合わない。僕は防御体勢をとった。

 

『爆撃が直撃だあ!!! 白井、これ大丈夫なのかよ、オイッ!!! てか煙で見えねー!!』

 

「……………」

 

 爆豪が見つめる先には地面に剣を差して爆発に耐えた白井の姿が居た。

 

「ゲホッゲホ。なかなかの威力だよ」

 

「シロ野郎、てめえ……」

 

 白井の姿を見ると爆豪は更に苛立ちを覚えた。

 

『おいおい、ありえねぇ!! あの爆発で普通立ってられっかよ!! 根性あるじゃねえか!!』

 

 やべえな。あの一発貰ってぶっちゃけふらふらだぞ。しかしあの技には少し弱点がある。少しだけど溜めなければいけない……気がする。

 

「くそムカつくなあ、シロ野郎!!」

 

 空中を移動しながら僕に接近した攻撃を仕掛けてきた。

 

「ふっはっは。僕は実は存外しぶといからね」

 

「うっぜえなおい!!」

 

 爆豪ラッシュを僕いなした。

 

「そうかい? ならこれはどうかな!!」

 

 僕は剣の背で爆豪の右腕を思いっきり叩いた。

 

「ぐっ!?」

 

 爆豪は叩かれていない左で僕を払らいのけた。しかし、少しの間右腕は使えないだろう。僕は攻勢にでた。

 

『おおっと、ここで白井が攻め始めた!! 爆豪ピンチかあ!!!』

 

 僕は常闇戦でも見せた剣撃を爆豪に仕掛ける。爆豪も片手で応戦する。徐々に僕が優勢になった。そして倒れた爆豪に切っ先を向けた。

 

「これで僕の勝……」

 

「……何勝手に終わらせてんだ」

 

「えっ?」

 

「こういう意味だよ、バァーカ!!」

 

 左手を僕に向けた。やばっ!? 力を溜められてはいたのか。

 

「遅いんだよ!! くらえ!!!」

 

 またあの強力な爆破が僕を包み込んだ。

 

『またまた直撃だあ!!! これには流石の白井もリタイアかああ!!?』

 

 爆豪は肩で息をしていた。腕も限界に近い。もう爆破は難しいと感じている。しかし

 

『煙が晴れてきたが……。マジかよ……!!!? 白井はサイボーグかよ!! 立ってやがるぞおお!!』

 

 先ほどの攻撃に対し僕は後ろに跳び威力を殺した。こんだけポンポン撃たれたら

 

「髪型がアフロになっちゃうぜ」

 

「シロ野郎ぉお!!」

 

 僕の姿をみたら爆豪は立ち上がった。なかなかの根性だ。僕も剣を構え駆け出した。爆豪も駆け出した。

 

「いくよ、爆豪!!」

 

「こいや!! 白井ぃい!!!」

 

 僕は地面を抉るように剣を高速で振りながら抉るように斬り刻み進んだ。爆豪は無理やり右腕を使い両手を使い空を駆けてそして、勢いと回転を加えながら向かってきた。

 

〖榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!!〗

 

 今日一番の強大爆破が白井を襲った。

 

『超特大爆破に加え勢いと回転を加えまさに人間榴弾!!! てか白井は生きてんのかあ!!?』

 

 爆豪は着地し爆心地をみた。すると煙を切り裂きながら白井が向かってきた。

 

『あ、ありえねー!!! 白井は不死身なのかあ!!! あの爆破に耐えて向かってやがる!!!』

 

『恐らくあの抉りながらの剣撃で壊したステージの瓦礫が爆破の勢いを殺したんだろう』

 

 爆豪は手を構えようとするも動かない。すでに限界のようだ。白井の剣が迫っていた。

 

「くそが!!!」

 

 爆豪は最後の力を振り絞り爆破を出すが白井に剣で逸らされてしまった。そして、白井は剣を振りかぶり、爆豪は防御の体勢をとった。剣は爆豪の横を突き刺さった。

 

「ふぅ。どうする? まだやるかい?」

 

「…あぁ、クソっ!!! 俺の負けだよ!!!」

 

 悔しそうに爆豪は負けを認めた。

 

「爆豪くん降参! 白井くんの勝利!!」

 

『激闘の末、白井の勝利!!! よって決勝は 轟VS白井 に決定だあ!!!』

 

 僕は戻ろうとしたとき爆豪に呼び止められた。

 

「おい、白井……」

 

「ん? なんだい?」

 

「轟に負けたらぶっ殺す」

 

「物騒だねえ。まあ、勝ってみるさ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19話

お久しぶりです
とりあえず体育祭終わります

誤字脱字の報告いつもありがとうございます。気を付けていますが多々あるかと思います。
申し訳ございません。

よろしくお願いいたします



『さァいよいよラスト!! 雄英1年の頂点がここで決まる!! 決勝戦!! 轟VS白井!!』

 

 僕は準備運動をしながら轟を観察した。緑谷戦で使ったあの爆風は食らいたくないね。そして轟が最初に取る行動は……。

 

『START!!!』

 

 氷の大波がこちらに向かってきた。

 

『いきなりかましたあ!! 白井との接近戦を嫌がったか!!』

 

『白井相手なら無理をせず遠距離攻撃で戦った方が倒せるだろう……だが』

 

 その波を木っ端微塵に斬り刻みながら進んでいった。

 

『あいつを倒すならもっと威力のある攻撃じゃないと無理だろう。あれぐらいの氷はあいつはものともしない』

 

 轟は僕との接近戦を嫌ってか氷を出し続けた。それを真っ向から斬り刻んだ。

 

「おいおい、これだと戦闘訓練と同じだよ、轟」

 

「……………」

 

「緑谷の時みたいに左を使ってきなよ」

 

「……………」

 

「うーむ。黙りか……なら」

 

 僕は猛攻を仕掛けた。轟も応戦のように氷結をだすがそれを全て斬り刻んでいった。しかし左を使う素振りは見えない。僕は距離をとった。とりにとって、そして場外ギリギリの所で座った。

 

『ど、どうしたんだあ!? 白井のやつ、場外手前で座り込んだぞ!!』

 

 観客もざわついている。

 

「……なんのつもりだ」

 

「ようやく喋ったね。見ての通りさ。今のキミを倒してもねぇ」

 

「…………」

 

「なんか悩み事? 話ぐらいは聞くよ」

 

 少しの沈黙の後轟は話始めた。

 

「……緑谷と戦ってからいろんな事考えた」

 

「ほうほう」

 

「自分が正しいのかどうか、自分がどうすればいいのか。わからなくなっちまったんだよ」

 

 うーむ。こういうときはどんな言葉をかけるべきなのか。

 

「そうだなぁ。……うん。言葉が見つからないけど、僕の信念は、①すると決めて、②する。きちんと段階を踏む事。①の段階にいながらにして、②を悩むのは、愚の骨頂だよって教わったよ 」

 

「………………」

 

 僕は立ち上がり剣を抜いて構えた。

 

「今は戦ってから考えよう。キミの悩みも全てを僕に全力でぶつかってきなよ。僕はそれを全力でつぶしてあげるから本気でかかってこい」

 

「俺は……」

 

 僕は駆け出し轟の距離をつめ攻撃しようとした。しかしまだ踏ん切りがつかないのか氷結で応戦している。その時

 

「負けるな頑張れ!!!!」

 

 緑谷の言葉に轟の左から熱量が帯びていった。

 

『緑谷戦で見せたあの炎再びだあ!! 轟も本気ってことだあ!!!』

 

 これはなかなか凄いな。ていうか緑谷効果絶大だね。スゴいね。

 

「黒ちゃーーん!! 頑張れーー!!」

 

 チラッと見ると蛙水と芦戸の応援する姿が見えた。そうだよな。僕もカッコいい姿見せないとな

 

『白井も爆豪戦で見せたあの剣撃の暴風で応戦だあ!!!』

 

 炎は避けて氷は切り刻みながら進んだ。

 

「炎の威力は申し分ないが初心者マークだから怖くないね」

 

「チッ!!」

 

「炎ばっかりじゃなく氷も一緒に使うんだ」

 

「んなこと分かってる!」

 

「分かってんならやってみろよ!」

 

『な、なんか、白井が轟にアドバイスしているぞ?』

 

 なるほど教えるのはこんなに難しかったのか。とりあえず伝える事は伝えたし後は……

 

「他にもあるけど最後に君の弱点を教えておくよ」

 

「弱点?」

 

「それは……」

 

 僕は駆け出した。轟は応戦するがそれを全て避けて目の前まで近づいた。

 

「くっ!?」

 

「実は攻め方が大雑把だよ、轟」

 

 僕は剣の柄の部分で轟を殴った。轟はそのまま倒れた。

 

「轟くん行動不能!! よって白井くんの勝ち!!」

 

『以上で全ての競技が終了!! 今年度雄英体育祭1年優勝は…───A組 白井 黒!!!!』

 

 歓声に答えるように僕はガッツポーズをした。それと同時に疲労などで意識を失い倒れた。

 

※※※※※※

 

 目が覚めるとそこは保健室だった。隣には蛙水と芦戸の姿が居た。僕が目を覚めたのを気づくと

 

「「黒ちゃん!!」」

 

 二人は僕に抱きついてきた。

 

「心配したのよ」

 

「ふぇーん。よかったよお」

 

 騒ぎを聞きつけた他の皆がやってきた。体育祭は終わったとのことだった。表彰台にあがりたかったな……。すると芦戸が

 

「はいはーい! それじゃあ、優勝した黒ちゃんにメダルの授与をします!! はい、梅雨ちゃんよろしくね」

 

 蛙水の手にメダルがあり僕の首に掛けてくれた。そして照れながら僕の頬にキスをした。

 

「えっ!?」

 

「おめでとう、黒ちゃん」

 

「あぁー、ずるーい! 私も!!」

 

 芦戸も反対側の頬にキスをした。

 

「うぇい!!?」

 

 変な声を出してしまった。二人も他の皆も笑っていた。そんな中血涙を流している峰田の姿がいた。こうして体育祭は僕の優勝で終わった。

 

 各々もこの体育祭で思う事があるのだろう。それを乗り越えてこそ雄英高校。『Plus Ultra!!』って奴だね。

 

※※※※※※

 

 僕は帰宅すると同時にロビーで倒れ込んだ。リカバリーガールに治癒はされたがそれでも疲れは出る。やはり爆豪戦が一番堪えた。起きあがろうとしたら呼び鈴が鳴った。僕は玄関を開けるとそこには不景気で眠そうな男子高校生が居た。

 

「? あのー、どなたですか?」

 

「白井黒ってアンタの事?」

 

「えっ!? うん、そうだけど……あなたは?」

 

「うん? ……あぁ、こう答えれば分かるみたいだな」

 

子の戦士『うじゃうじゃ殺す』寝住

 

 『戦士』という言葉に僕は失井の事が頭をよぎる。寝住は

 

「とりあえずあんたにコレを渡しておくよ」

 

 渡されたのは僕が持っているのと同じ、しかし使い古された牛蒡剣があった。

 

「……これ……は?」

 

「分かるだろ? コレの意味を……。俺が此処にいるって事の意味を……」

 

 まさか。まさか。まさか。ありえない。彼が……。あの彼が……

 

「彼は……死んだの……ですか?」

 

 寝住は気怠げに頷いた。僕は自分の剣を抜き寝住に襲いかかった。それをあっさり避けた。

 

「おいおい、いきなり何すんだよ」

 

「…………」

 

 僕はなりふり構わず何度も斬りかかった。それをまるで分かっていたかのように避けられる。逆に寝住に足を引っ掛けられて体勢を崩してしまい転けてしまった。

 

「……とりあえず話でも……」

 

「くっ!! うぉおおお!!」

 

 僕は何度も何度も斬りかかった。しかしその刃が届く事はなかった。

 

「気はすんだか?」

 

「……うん………そう、だね」

 

 目が濡れていたがそれを拭いながら僕は仰向けになった。そうか、彼は死んでしまったのか……。

 

「……丑の旦那は最後まで正しい事をしていたよ」

 

「……そうか。なら……仕方……ないな」

 

 いつの日か彼に認められたかった。その時は彼といっぱい話をしたかった。それはもう叶わない。でも彼は彼らしく正しい事をして死んだんだ。涙がまた零れた。

 

「……仕方ないな」

 

 僕は俯いていると寝住は近くの椅子に座った。

 

「俺はそれを渡してと言われただけだ。まあ、それが旦那の最後の台詞だったのも確かだ。あっ、その前に大戦の話が先だったか」

 

「大戦?」

 

 寝住は僕に十二大戦という戦いについて話はじめた。十二年に一度開催される十二支の戦士が集い争う大戦。頂点に立ったものは『どうしても叶えたいたったひとつの願い』を成就する事が出来る。最凶の強敵、憂城とともに潔く散ったこと。

 

「………そして優勝したのは俺だったってわけ」

 

「……彼は何を願っていたのですか?」

 

 寝住はばつの悪そうな顔を浮かべて

 

「………悪い、それについては旦那は教えてはくれなかったよ」

 

「そう……ですか」

 

 彼の願いとは何だったんだろう。それに……

 

「寝住……あんたの願いってなんだ?」

 

「俺?」

 

「叶えたいたったひとつの願いってのは……」

 

 寝住はもっとばつが悪そうな顔をし

 

「……それは考え中ってやつ」

 

「そう……見つかるといいな」

 

 寝住は立ち去ろうとした。一応見送りをした。すると

 

「アンタが旦那のようになれば良いんじゃない?」

 

「僕はあの人のように強くない」

 

「違う。アンタは旦那のような生き方をすればいいだろ」

 

 ………そうか、そうだよな。それこそが彼の意志を継ぐことになるはずだ。僕は決意をし

 

「あぁ。なってみせる。必ず!!」

 

「そう。まあ、影ながら応援してるよ」

 

 寝住は手を振りどこかに行ってしまった。僕も寝住が願うたったひとつの願いが見つかるように願っておこう。家に戻りロビーの惨状は片付けが大変だと思った。その近くに合った彼の剣を拾い上げた。それを見ると彼が本当にこの世に居ないという事実に僕はまた泣いた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話

連続投稿申し訳ございません

誤字脱字がありましたら申し訳ございません

よろしくお願いします


 体育祭の二日後。天気は生憎の雨だ。僕は学校に行く道中様々な人から「優勝おめでとう」と言われた。なんか恥ずかしいな。子供からはサインや写真をねだられて書いた。

 

※※※※※※

 

「超声かけられたよ、来る途中!!」

 

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

 

「俺も!」

 

 教室に入ると僕と同じように他の人も声をかけられたみたいだった。一日で注目の的になるとは雄英すげぇ。チャイムがなるとみんな席につき静かに待った。

 

「おはよう」

 

 相澤先生が入ってきた。すると蛙水が

 

「相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」

 

「婆さんの処置が大ゲサなんだよ。んなもんより今日の“ヒーロー情報学” ちょっと特別だぞ」

 

 特別という言葉に一瞬緊張が走る。皆は身構えていた。

 

「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

 

『胸ふくらむヤツきたあああああ!!』

 

 相澤先生が個性を発動しそれを見た皆は騒ぐのをやめて静かになった。

 

「というのも先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力と判断される2、3年から……」

「つまりは今回来た“指名”は将来性に対する“興味”に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

「大人は勝手だ!」

 

 相澤先生の言葉に峰田は机を叩くがまあそんなもんだろうなと思った。

 

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」

 

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」

 

 黒板に集計結果が写し出される。

 

「例年はもっとバラけるんだが三人に注目が偏った」

 

 体育祭の順位、つまり僕と轟と爆豪に指名が多く集まっていた。嬉しいかったり、不満だったりと様々な反応がでていた。

 

「これを踏まえ……指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

 

 ほうほう、職場体験ですか。

 

「おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験しより実りある訓練をしようってこった」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきたァ!」

 

「まァ仮ではあるが適当なもんは……」

 

「付けたら地獄を見ちゃうよ!! この時の名が! プロ名になってる人多いからね!!」

 

『ミッドナイト!!』

 

 相澤先生の言葉を遮りミッドナイトが教室に入ってきた。

 

「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」

 

 相澤先生は教壇の下からゴソゴソと寝袋を取り出した。この人寝るつもりなのか……。

 

「将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりそこに近付いてく。それが『名を体で表す』ってことだ。“オールマイト”とかな」

 

───15分後───

 

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

 

 発表形式か。ふむふむ。これはなかなか度胸がいるね。トップバッターは芦戸だ。

 

「じゃあアタシね! エイリアンクイーン!!」

 

「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? やめときな!!」

 

「(三奈ちゃん……それは違う)」

 

 僕は心の中で呟きながら映画に出てきたエイリアンと芦戸を足して2で割った姿がよぎった。………ないな。

 

「じゃあ次私いいかしら」

 

『梅雨ちゃん!!』

 

「小学生の時から決めてたの『フロッピー』」

 

「カワイイ!! 親しみやすくて良いわ!! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」

 

((((((ありがとう梅雨ちゃん、空気が変わった!!))))))

 

 みんなからはフロッピーコールが教室を優しく包んだ。それに続いてみんなも発表していった。爆豪の『爆殺王』には吹いた。

 

「残ってるのは再考の爆豪くんと……飯田くん、そして緑谷くんに白井くんね」

 

 飯田は自分の名前にしたみたいだ。緑谷は……

 

「!? えぇ、緑谷いいのかそれェ!?」

 

「うん。今まで好きじゃなかった。けどある人に“意味”を変えられて……。僕にはけっこうな衝撃で……。嬉しかったんだ」

 

 そこには、真ん中に大きく『デク』と書かれていた。

 

「これが僕のヒーロー名です」

 

 いいな。そういうの。なら僕も……。僕はあるもの片手に前にでた。それは修行の一環としてやっていた敵退治の際に使っていた仮面を付けて言った。

 

「今度はちゃんとした名前で活動するよ。仮面ヒーロー『シロクロ』」

 

 するとミッドナイトは

 

「いいわね。でもヒーロー活動は学生のうちにはしちゃっだめよ」

 

「………………」

 

「はい、勿論です!」

 

 なので睨まないで下さい、相澤先生。僕の言葉を信じたのか相澤先生は睨むのを止めてくれた。さっさと席に戻った。ちなみに爆豪は

 

「『爆殺卿』!!」

 

「違う、そうじゃない」

 

 やっぱり面白いな。時間も無いので後日となった。もう『爆心地』とかで良いんじゃないかな。

 

「指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で選択しろ。

 指名のなかった者は予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件。この中から選んでもらう。

 それぞれ活動地域や得意ジャンルが異なる。よく考えて選べよ」

 

 おいおい、この量から選ぶのか。嬉しい悲鳴だよ。

 

「今週末までに提出しろよ」

 

「あと二日しかねーの!?」

 

 うーむ。これはどうしよう。早く決めようっと。……おや? この事務所って、確か……。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。