インフィニット・ストラトス「王の歩み」 (新人ガイア)
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プロローグ~逃亡~

《絶対天敵イマージュ・オリジス》

 

突如として地球に飛来したそれは人類の脅威として現れた。

 

これに対抗できる唯一の手段は

《インフィニット・ストラトスIS》だけであった。

 

敵の正体が解らぬまま戦いが続く最中、

この世界に新たな来訪者が訪れるのであった。

 

最悪な災いを連れて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってくれ!それでは話が違うではないか!!」

 

電気の通っていない通路で小年は自分の真向かいにいる男に叫んでいた。

 

「申し訳ありませんが陛下、既に皆が決めたことでございます。」

 

「それがどういう意味か貴公は解っているのかヴェイン!!」

 

ヴェインと呼ばれた少年の前に立っている男は顔色変えず口を開く

 

「解っているからこそ私はこうして此処にいるのです。」

 

「陛下、ヴェイン様もわたくしもそして国民の皆が願ったことなのです。

どうかお聞き届けください。」

 

「リネット!?君までそんなことを言うのか!!」

 

少年の傍で控えている従者リネットの言葉に少年は驚愕した。

その時ヴェインの後ろにある扉の向こうから爆発音が響いた。

 

「ッ!もうここまで追い付いてきたか!!」

 

ヴェインは扉に体を向け腰に携えていた剣を抜いた。

 

「陛下お急ぎください!!此処は私が食い止めますゆえ!!」

 

「待ってくれヴェイン!まだ話はッ!!」

 

「申し訳ございません陛下、、もうこれしか方法が無いのです!!」

 

リネットは少年の腰に手を回し持ち上げ扉の真反対の方角にあるドーナツ状の装置に向かって歩き出す。

 

「ッ、離してくれリネット!!僕は嫌だ!

国を、民を、そしてこの星すら捨てて逃げるなんて嫌だ!!

それを選ぶくらいなら此処で皆とともに戦って死ぬ!!!」

 

「これは国民の皆の願いなのですッ!!

それを王たる貴方が聞き入れないでどうするのです!!」

 

「ッーーー!!」

 

リネットの言葉に少年は歯を強く食いしばり涙を流した。

 

この星、惑星リンドヴルムは滅ぼうとしている。異世界からやってきた異形の怪物《有機無機複合生物アグレッサー》により。

抵抗はした、だが敵の圧倒的な力と数によりたった二ヶ月で星の殆んどを滅ぼされた。

残っているのは此処、「王都」のみ。それも今滅ぼされようとしている。

だから逃がすのだ、国の誇りを、民の希望を、奴らの手の届かない遠い場所へ。

 

「リネット!陛下を頼んだぞ!!」

 

「はッ!!命に代えてもお守りします!!」

 

ドーナツ状の装置に光が灯る、リンドヴルムの技術を注いで作られた次元移動装置「ゲート」

まだ実用段階に移る手前で安全性に保障は出来ないがもはやこれに賭けるしかなかった。

 

扉が吹き飛ばされ、奥からドラゴン型のアグレッサーが現れ、ヴェインに襲い掛かる。

 

「くッ!」

 

リンドヴルムが誇るパワードスーツ《騎士甲冑(よろい)》を纏った

ヴェインが剣で防ぐが力の差で押されている。

 

「ヴェイン!!」

 

「陛下!生きてください、、、我々の誇りであり続け、我らの希望であった貴方様さえ生きて下されば我等に悔いは御座いません!!」

 

「、、、、ゥーーーーー!!」

 

少年は何も言わなかった。それが自信に忠義を尽くし共に国の未来を思っていた臣下への為と思って、リネットに運ばれながらゲートをくぐって行った。

 

 

 

 

「・・・・行ったか、、、、」

 

ヴェインは自身の鎧に搭載されている自爆装置に手を掛けた。

程なくしてピッ、、、ピッ、、、ピッ、、、と電子音が流れ、次の瞬間部屋中を光が埋め尽くしていった、、、

 

 

 

(陛下・・・・どうか貴方の未来が、幸福であらんことを・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グルルルル・・・・・・・・・



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第一話~別れ~

ゲートの中はまるで宇宙の中を高速で動いている、そんなようなイメージだった。

無数の光の粒子が僕の目の前を過ぎていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

声が出ない、目の前に移る綺麗な光景に魅了されているからではない。

王として戦って、守るべき国を、民を守れず全てを失って、、、しまいにはその民たちに守られ、臣下を死なせて逃げることしか出来ない自分の無力さからだ。

 

「!、陛下見えました、出口です。」

 

リネットに言われ僕は自分の鎧「グローリー・クラウン(栄冠)」を纏い、リネットに並走する。

前方に強い光が見える。ゲートの行先は解らない、急いで稼働させ座標の設定もせず始動ボタンを押したのだ。

この先が何があるのか解らないことに恐怖はなかった。国を捨てた身自分にはその資格は無いのだと、、、

 

 

 

 

 

 

「ここがゲートの向こう側、、、」

 

強い光の中に入った途端、無重力だったのが数分ぶりに重力に体を押された。

そして周りを見渡す、リンドヴルムと同じ青い海、、、それだけだった。

 

「どうやら海上の真ん中に出たようです。少し周囲の状態を調査します。」

 

そう言ってリネットは空中に投影されたレーダーで調べ始めた。僕も安全確保の為、携帯していた望遠鏡で周りを見渡していた。

 

「見つけました、2時の方角に原住民がいると思われる島があります。」

 

リネットの言う方が気に望遠鏡を向けると確かに遠いがこの世界の者が作ったと解かる建造物が確認できた。

 

「う~ん、、、アレがこの星の住民の建造物か、、、、なんというか、、、前時代的だね?」

 

「失礼ながら陛下、先の発言は控えるべきだと思います。」

 

見るからに技術レベルが低いものを見てしまいつい本音を出してしまったことを指摘されてしまった。

確かに無用な発言は控えるべきだ、此処はもう未知の領域、必要の無い敵を増やさないよう注意しなければ。

 

「ごめん、以後気を付けるよ。」

 

「いえ、こちらこそ出すぎた真似をいたしました。」

 

リネットが律儀に頭を下げる、もうリンドヴルムの生き残りが僕とリネットの二人しかいないことに胸が押しつぶされそうになる。

 

「とりあえず陛下、あの島の者にコンタクトを取り保護してもらえるよう提案しましょう。」

 

「そうだね、今は行動することが大事だ。」

 

他国との交渉などリンドヴルム史上初めての事だからいろいろと不安要素が残るが此処で動かなくては僕を逃がしてくれた皆に示しがつかない。今は出来る限りのことを尽くそう。

 

「じゃあ行こうか、リネット」

 

「はい!陛ッ!・・・か・・・・」

 

リネットに確認をしようと振り向いた時、僕の頬に生暖かいのが付着した、そして目の前のリネットを見て僕は驚愕した。なぜならリネットの腹部から大きな刃物のような「爪」がリネットを貫いているからだ。

その光景を見て理解した、僕の頬に付いたこれはリネットの血なのだと!!

 

「かッ・・はぁ!?」

 

吐血しているリネット本人も理解している。なぜこうなっているのか、その原因を。

 

僕たちが通ってきたゲートはまだ閉じておらずその場の空間を歪めていた、そしてその奥にいた。

恐らく僕たちの後を追いかけてきたアグレッサーだ。ヴェインが食い止めていたのとは違う10m級の大型だ。

 

「へい・・・か・・・」

 

「ッ!リネット今助ける!!」

 

まだ息のあるリネットを助けようと近づく。

 

 

 

 

 

 

      が!

 

「来てはなりません!!」

 

「!!」

 

血を吐きながら苦しんでいるというのにリネットは救助を拒んだ。

 

「行って・・・・くだ・・さい・・・」

 

「なッ!?何を言っているんだ!!出来る訳ないだろ!!」

 

リネットは僕に逃げろと言っている、その意味は解る。でもまた僕に民を見殺しにしろというのか!?

 

「生きて・・ください・・・私達の為に・・お願い・・・・です・・・」

 

「・・・・・・・ッ!!」

 

胸が張り裂けそうだった、皆の「生きろ」という願いを僕は応えなければいけない。

 

「--------!!」

 

リネットに背を向け僕はその場から離れる。出来る限り遠くへ。

 

                    ◇

 

少年が遠ざかっていくのを見てリネットは安堵する

 

「・・・・ありがとうございます。」

 

虫の息の状態であるリネットは朦朧とする意識の中自分の目の前に投影したタッチパネルに自爆コードを入力していく。

 

(申し訳ございませんヴェイン様、陛下を一人にしてしまいました・・・)

 

リネットの鎧から光があふれ、アグレッサーを包み込み大爆発を起こした。

 

                    ◇

 

「ッ!!・・・・・・リネット・・・」

 

後方から聞こえる爆発音に動きを止めふり返え、少年はリネットが自害したのを理解した。

途端少年の瞳から涙が流れていく、それはまた民を失った喪失感からである。

 

「どうして、どうして僕だけが生き残るんだ・・・結局僕は・・・なにも『ビー・ビー・ビー!!』ッ!!」

 

悲しみにくれている最中鎧から発せられる警告音に驚くと爆煙の中から紫色のビームが少年に目掛けて駆けていく

 

「くッ!!」

 

咄嗟に右にずれ、ビームを回避し爆煙を睨む、爆煙の中から爬虫類を模した腕が出ている。

先程リネットを刺したアグレッサーである、リネットの自爆をゼロ距離で受けたというのにその体は

ただ焼け跡がある程度の損傷しかない。

 

「・・・・・・何故だ・・」

 

少年は今に至るまでの過去を思い返していた。争いの無く科学の発展により実現していた平和なリンドヴルム星。

それが灰燼となりそこに住む民たちが死に、少年を信じて仕えていた臣下も少年を守るためにその身を犠牲にして死んでいった。皆が幸せで笑顔に包まれていた全てが何もかも壊された。

 

(何故だ?)少年は疑問する。全てを失ったことに、星を、民を、臣下を、(どうしてだ?)理由を探す、滅ぶことが無いと皆が思っていた国が滅んだことを、(お前だ・・・)思い返せば返すほどに怒りが溢れかえってゆく。

 

「・・・お前達さえいなければ・・お前たちが来なければ、皆はッ!!」

 

少年はクラウンの主武装である多連装ミサイル内蔵メイス「ティアマ・オーグ」

を展開しアグレッサーに向かって飛んで行く。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

自分に向けて放ってくるビームを体を僅かにズラして回避し距離を詰め、

アグレッサーの目の前まで近づいてメイスを振り上げ、頭目掛けて一気に振り下ろした。

巨大な鉄の塊である凶悪な鈍器をぶつけられたアグレッサーの頭部は勢いよく凹み、硬い外骨格は粉々に粉砕されているが口内にあるビーム砲はエネルギーを溜め、目は少年に狙いを定めていた。



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第二話~コンタクト~

IS学園の作戦会議室にて教師の織斑千冬と山田真耶、生徒会長の更識楯無、

その他専用機持ちの生徒が集まっていた

 

「さて、皆集まっているな」

「千冬姉、じゃなくて織斑先生、緊急の招集って一体何なんだ?まさかまた《絶対天敵》が!?」

「いや今回は少し違う、山田君。」

 

そう言われ真耶は皆に見えるように映像を表示させる。

そこには大きなトカゲのような姿をした生物と機械が掛け合わされたような化け物とそれと対峙する白いISが映っていた。白いISは王を彷彿させるデザインをしておりやや灰がかった白い騎士甲冑に背中になびく白いマント、王冠を模したヘッドギアが特徴であり、手に持っているメイスが凶悪な存在感を放っていた。

 

「この映像は一体?」

「え?この方男性ではありませんか!?」

 

イギリス代表候補生のセシリアが疑問し、タイ代表候補生のヴィシュヌの発言で他の専用機持ち達も驚き始めた。

 

「ギャラクシーの言う通り、この映像はこの学園近郊の海上で確認された物だ、だがいくつか不可思議な物がある。」

「「「不可思議?」」」

 

千冬の言葉に楯無以外の専用機持ちは首を傾げた

 

「実はこの映像を確認した直ぐに該当するISがないか確認をしたのですが・・・」

「このIS、いや、この機体にはISのコアの反応がなかったのよ。つまりこれはISに似て非なる物だと言うことになるわ!」

 

真耶に続いて言った楯無の言葉に皆驚愕の表情を露にした。

 

「それだけではなくこっちの大きな化け物も今確認できている《絶対天敵》に該当するものがなかった。

というよりも見た目からして全くの別物であることがよく解る。」

 

確かに機械的な部分が多い《絶対天敵》と違い、映像の化け物は機械を取り込んだトカゲか、トカゲに機械を植え付けたととっていいゲテモノである。皆がそう思っていると千冬が会議台を叩く

 

「お前たちを呼んだのは他でもない。このISでも《絶対天敵》でもないイレギュラーの調査・解決だ!!

必要なら戦闘も構わん、だが対象の能力が不明な以上迂闊な行動はするな。」

「付け加えるならこっちの人間の方は会話による解決が望ましいわね、向こうにその意思があればだけど。」

「あれ?楯無さんは一緒に行かないんですか?」

「ことが事だからね、私は此処でもしもの時の為に待機しておくわ。」

 

楯無は右手に持っていた扇子開くと中には「ゴメンね♪」と書かれており楯無本人もてへっと舌を出し誤魔化した。

 

                        ◇

 

                      海上上空

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

戦い始めてどれくらい経ったかよく覚えていない。怒りで我を忘れ、力任せに暴れていた。

だから今になって思う。

 

(選択を誤ってしまった・・・)

 

僕が対峙しているあのアグレッサーは驚異的な自己修復能力を有する個体だと言うことを忘れ、無駄なエネルギーを消費してしまった。そのせいで唯一の対処法を潰してしまう事態に陥ってしまった・・・

 

(エネルギーの残量は52%、せめてあと30%あればこのアグレッサーを倒せるというのに!!)

 

とぼやいても後の祭りだ。今はどうやってこの状況を打開するか考えなければいけない。

考えてる間にもアグレッサーは殆んどの傷を治してゆく、戦いが長引けばこちらが不利になるだけだ。

 

「生物でも機械でも必ずウィークポイントがある、動力源たる〈コア〉さえ砕けば戦いは終わる。ならば!」

 

スラスターを吹かし一気にアグレッサーの懐に飛び込む、今までとは比べ物にならない程の加速をし、残像すら残るほどだ。クラウンに搭載されているマルチアビリティ『常時加速』。重装甲かつ重量のあるメイスを振るうクラウンはかなりのウエイトがある、機体のオーバーアシストや重量中和システムによりそれらの問題は解決できているがより速く動けるように一時的に機体の重量をゼロにし常に加速状態にする機能がこの『常時加速』だ。

任意に発動し約5秒間だけ2~3倍の速度を出し敵を圧倒できる利点があるが速過ぎる分常に意識を集中させないと制御不能の激突や距離感を見失い攻撃を外してしまうことがある。昔はよくあったが今では自分のものに出来ている。

 

「せいッ!!」

 

アグレッサーの腹部にメイスを叩きつけ、すぐさま背中、左肩、右足と素早く位置を変えてメイスを叩き込み続ける。

 

「!!!??!‘@#!?!!」

 

今まで声を発しなかったアグレッサーが耳障りな鳴き声をあげ、暴れる。

 

「今の感触は・・・」

 

胸部を攻撃した時、明らかに他の部位とは違う感触がしたと思ったらアグレッサーが奇声を上げた。

もしやと思い胸部を確認すると、胸の装甲の奥に大きな紫色の水晶玉みたいのが存在しそこを起点にエネルギーが流れているのが見えた。恐らくあれがコアだ、アレさえ叩けば奴の動きは止まる!!

 

「ならば!!」

 

ティアマオーグをアグレッサーに掲げ、持ち手部分を右にひねる。するとメイスの平らな先端部分にある六つハッチが開き、中からミサイルが顔を出す、マルチロックシステムを導入した多連装ミサイル、牽制用ではあるがそれでも破壊力は恐ろしい物だ。ターゲットを全部頭に設定しミサイルのトリガーを引く。

六つミサイルが別々の方向からアグレッサーの頭に命中し爆煙を発生させる。相手には大したダメージはないだろうけど、一瞬でもこちらを見失えばそれで充分。その一瞬の隙を突き「常時加速」でコアに近づく。

 

「これで・・・・終わりだ!!」

 

コアにメイスを突き出す。勢いよく放ったメイスがコアにめり込み粉砕する。それを見て僕は勝ちを確信していた・・・・が。

 

「ゴフッ!?」

 

お腹から体全体に伝わる衝撃と圧迫感、気づいた時には僕は吹き飛ばされていた。どうやら殴られたようだ。

だが考える暇もなく僕の目の前にアグレッサーの口から放たれたエネルギー弾が目の前まで迫っていた。

まるで時間が止まっているかのようなゆっくりと進んで見えた。だが非常にも回避する間など無く、光弾が直撃し爆発した。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

焼けるような熱と痛みが全身に伝わるのを堪えながら体勢を立て直しアグレッサーを見据える。

コアは確実に砕いたはずなのに何故動けるのか、その疑問は見ればすぐ理解できた。

アグレッサーのコアが凄まじい速度で元の形に戻っていっていく。

 

(そういうことか・・・!!)

 

ようやく奴の特性を理解した。同時に絶望した。あのアグレッサーの修復能力はコアによるものでなく、アグレッサー自身のモノだ。コアは動力源であり、当然失えば死ぬ。だがカケラが一つでも残っていればそこから瞬時に修復し、新たなコアとして復活する。つまりカケラも残さない「高火力かつ広範囲な攻撃」をしなければ奴を倒しきることは出来ない。

となればなおのこと唯一の対処法を潰してしまったことが悔やまれる。

 

(逃げようにも僅かなエネルギーで逃げ切れるはずはない、戦うにも切り札が使えない・・・・・ここまでか)

 

全身から力が抜けていく、もう抗う気力すら失せていた。皆の想いに応えることすら出来ない自分が本当に嫌になる。何も守れず、失ってばかり・・・悔しくて涙が出てしまう。

そんな僕の様子を察したのかアグレッサーは口を大きく開き、砲撃のチャージを開始する。

 

「皆、ごめん・・・・僕はやっぱり・・・」

 

愚かな王だ・・・

 

何もかも諦め、静かに目を閉じ、死を覚悟しようとしたその時だった。

 

「え?」

 

臨界に達しビームを放とうとしたアグレッサーの砲口を僕の後ろから飛んで来た大きな砲弾が襲ったのだ。砲弾は咆口の中に入りチャージしたエネルギーを巻き込んで大爆発を起こす。当然頭が吹き飛んだがグニョグニョと生々しい肉が湧き出て自己修復を始めていた。

何が起きたのか解らない僕は暫く呆然としていたが、僕の後ろ方角からやって来た鎧に似た物を纏った少女たちが現れ驚いてしまった。

 

 

                       ◇

 

レールカノンの再装填を終えたドイツ代表候補生のラウラのは顔色を悪くしていた、いや他の専用機持ちも同じ表情だった。化け物の頭が木っ端微塵に吹き飛んだというのに首から肉が湧き出て元の形に治り始めているからである。

 

「ちょ、あんなゲテモノを今から相手するわけ!?」

「頭が無くなったのに生きてるなんて、どうやって倒せばいいだろう?」

 

中国代表候補生の鈴とフランス代表候補生シャルロットの言うことも無理はなく、普通頭が吹き飛んで生きてる生物はいない。だが目の前の生き物はその常識の外にいるのだ、「倒すことが出来るのか?」その疑問が皆の頭をよぎる。

 

「だとしても戦うしかないだろ!あの白い奴だって今助けないと絶対危険だ!」

「うん、一夏の言う通り。さっきの攻撃でかなり疲弊してるみたい」

「だとしてもどうすんだ?頭を吹き飛ばしてもまた生えてくるんだぞ?」

 

確かに箒の言う通り、倒す手段が無い事に一夏と簪は返す言葉も出なかった。

 

「ではまず先にあの方を救出し、それから全員で敵の弱点を探るというのはどうでしょう?」

 

ヴィシュヌの提案に皆賛同し、各々の役割分担を考え、一夏を筆頭にセシリアとシャルロットが陽動、ラウラと簪が情報収集、鈴と乱、箒が切り込みを担当することになった。ヴィシュヌは皆が化け物を相手している間に少年を保護する役目がある。

 

「よし!皆行くぞ!!」

「「「オォ―――!!」」」

 

                      ◇

 

僕は目の前の状況に驚いていた、とても不謹慎なことだがこの星の文明レベルは異常だ。

建造物のレベルはC-なのに対し今目の前でアグレッサーと戦っている彼らの装備はAランクを誇るほど大きく飛躍している。

 

「大丈夫ですか?お怪我などはしておりませんか?」

 

彼等の戦闘を眺めている間に僕に声を掛ける人がいた、濃い緑色のショートヘアーに薄紫色の瞳が特徴の綺麗な方だった、そんな彼女も彼らと同じ鎧に似た物を纏っている。

 

「えっと、貴方たちは?」

 

言語が通じることに安心と驚きがあったが、彼らは僕を保護するといい戦い、助けてくれている。

 

「はぁ!!」

「てやぁ!!」

 

紅い方が二本の曲剣みたいなもので右腕を切りつけ、ピンクの方が幅の広い曲剣で左腕に切りかかる。

しかしどちらも大したダメージは与えられず、すぐキズが修復されてしまう。

他にも青い方がビットを使って四方八方から射撃したり、オレンジの方が銃を素早く切り替えながら撃ったり、

黒い方が大きな大砲を放ったりするがどれもかすり傷を付ける程度であった。

 

「駄目だ!全然効果がない!!」

 

白い剣士の男性がそういうのも無理はないです。彼らの武装では勝てない、だから逃がさなければ。

 

「無駄ですよ。アレを倒すにはコアを欠片も残さず吹き飛ばすしか方法はありません。」

「コアは何処にあるんですか?」

「あの胸部に見える紫色の水晶です」

 

先程僕を救助して今肩を貸していただいているギャラクシーさんの質問に答える。もうどうする事も出来ないが。

 

「あんなデカいのを破壊するのかよ!?しかも跡形もなく!?」

 

彼が驚くのは当然だろう、恐らく彼らの文明でもアレを吹き飛ばす大型のレーザー兵器はないだろう。

(在ります)

 

「何か方法は無いのですか?」

 

ギャラクシーさんの質問を聞いて僕は右手に持っているティアマオーグに目を向ける。

 

「僕なら・・・僕ならアレを倒すことは出来ます。ですが、もうエネルギーが・・・」

「エネルギー?エネルギーがあればやれるんだな!!」

「え?」

 

白い方が紅い方を呼びつけ紅い方が嫌々な顔で僕の左手を握る。するとどうだろう!紅い方の鎧がまばゆい光を放ち、クラウンのエネルギーを回復させたのだ。このような特殊機能を持っている機体は初めて見た!!

 

「信じられない!これなら行けます!!」

 

エネルギーが戻り、各機能が正常に働きだしたのを確認しギャラクシーさんから離れる。

紅い方が白い方に何か言っているようでしたが恐らく僕を信用していいかと言うものでしょう。見ず知らずの人に警戒心を持つのは当然です。ですが今はそれを無視してでも終わらせなければいけません!

 

「皆さん!今からアグレッサーに対し攻撃を仕掛けます!!危険ですので僕の後方に避難してください!!」

 

皆さんに聞こえるように大声を上げ、後方に退避させる。全員が僕より後ろに移動したのを確認しティアマオーグを両手で持ち構える。

 

「王の名において命じる。宝剣よ、真の姿を現し、リンドヴルムの威光を示せ!!」

『・・・・承認。』

 

音声認証を確認すると同時に体の奥から何かが持って行かれる感覚がする。正直この感覚は好きではありませんがそんなことを言ってられませんね。認証が終わるとティアマオーグの持ち手から先が分離し量子分解される。

持ち手だけ残ったティアマオーグにクラウンの全エネルギーが注がれてゆき先端から少しづつエネルギーが漏れ始めてくる。それを上空に向けて掲げた時、ティアマオーグに隠されていたリンドヴルムの秘宝は姿を現した。

凄まじい程の勢いで噴射される黄緑色のエネルギーブレードが空を裂くかの如く天へと伸び続けていく。

【宝剣コール・ブランド】リンドヴルム王家に伝わる秘宝、その刃がクラウンの全エネルギーにより膨張したのが今の状態である。

かなりの勢いで放射されるエネルギーの余波で宝剣握る手を放してしまいそうになる。思えばこれを開放するのは4度目になる、経験が足りないと言うことですかね?

余計な考えを振り払って握る手に力を籠める。

 

「これで・・・終わりだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

掲げていた宝剣を振り下ろすと宝剣は鞭のようにしなりながらアグレッサーのもとへ落ちてゆく。

 

「‘@#$%##&・:*%!!!!!!!!!!!!」

 

身の危険を感じたのかアグレッサーは周囲の空間を歪め、見えない障壁を作ったが宝剣はそれをあっさりと砕き、首筋に勢いよく食い込む。往生際が悪いらしく、損傷した部分を急速に再生させ助かろうとしている。だが宝剣の出力の方がアグレッサーの再生能力を上回っておりじわじわと削られていきコアに差し掛かったところで最後の抵抗とばかりに再生能力を増していく。再生と破壊の持久戦、どちらかの集中力が切れた時、勝敗は決するだろう。だから止める訳にはいかない、あと少しなんだ!宝剣を握る力を一層強め、下へ下へ押しやる。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「&#%$&・?:*‘;2#’!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシッ・・・・・

 

 

 

 

何かが割れる、そんな音がしたような気がした。そう思ったとたんアグレッサーの再生活動が無くなり、コアを焼き切ってゆく。いや、溶かしてゆく。

コアが亡くなったのか押し返す力が無くなり宝剣はアグレッサーを両断した。断面部分が真っ赤に溶解し、バチバチと火花を放ち、最終的に大爆発を起こして破壊を確認した。

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

「すっげぇ・・・・・・」

 

後ろにいた誰かがつぶやいていたが疲労感などが押し寄せてきていて誰が言ったのか解らなかった。

 

注がれたエネルギーが無くなり宝剣の刃は消え、再び外装を纏ったティアマオーグへと戻る。それを確認した所で僕の意識は途絶えた。



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第三話~交渉~

多少オリジナル風にアレンジがされています


アグレッサーとの戦闘がおこなわれていた場所からはるか上空にて彼らの戦いを傍観している黒いISらしきものを纏った少女がいた。天使のような見た目のそれは黒い翼を広げ下でおこなわれていた戦いをほくそ笑みながらただただ見ていた。

やがて戦いが終わると、とても愉快だったのか口に手をあて笑いを堪える。

 

「フフ・・実に面白い舞台だった!!。この世界は暫くは面白いのが見れそうだ。さて、《英知を欲する肉塊》から逃れ、この世界でかの王はどう歩むのか・・・・」

(そしてワタシはどうするか?傍観者として結末を見届けるか、はたまたボクの様に殺して対極へと至るか・・・)

「いや、それはないな。ワタシは彼とは違う。自らの死など望まず、あらゆる世界(物語)を見たいのがこのワタシだ!!」

 

少女の笑みはある種の狂気が混ざっている、この世の結末、それにおける破壊と再生の輪廻など悲劇や喜劇を見ることにこだわる狂気があらわとなっている顔である

 

「とはいえ、彼も彼で望んでいた結末を迎えられたようでなによりか・・・フフフやはり面白いな世界(物語)と言うものはw」

 

満足し終わったのか少女は嗤うことを辞め、右手をかざし魔法陣のようなものを展開させる。その魔法陣から瓜二つの分身を召喚し、分身は天高く飛翔し地球から離脱していった。

 

「さて行こうかソルよ、この素晴らしい世界(物語)を見続けるために!!」

 

そう言い少女は翼を広げその場を後にする。しばらくこの世界(物語)を見届けるために・・・

 

 

                     ◇ 

 

戦いが終わったその日の夜、IS学園のとある一室にて織斑千冬と山田真耶はとある検査結果を見て悩んでいた。

 

「山田君、そっちはどうだ?」

「こっちも駄目ですね、武装の構造や技術面においても私達の理解を超えています、唯一解かる事は機体に使われている素材が地球上に存在しない物であることだけです。」

「はぁ、搭乗者の方は体の作りなどは人間と大差ないが、何故か血液型が4つとも該当するとは意味が解らんな。」

 

額に手をあてたい目息を吐く千冬、あれから気を失った少年を回収、持ち物などを検査しているが、出てくる結果は皆「理解不能」な物であった。該当する人物もなく誰が造った物か解らない兵器。進展はなくただただ時間が過ぎていくばかりだった。

 

「もはや本人に直接聞くしかないだろうな。」

「大丈夫でしょうか?素直に話してくれるといいんですが・・・」

「なに、どうしても口を割らんのなら無理やり吐かせるだけさ。」

「で、出来れば、平和的にお願いしますよ・・・」

 

千冬が本当に拳を振るうのではないかと真耶は内心焦りながら少年の身を案じるのであった。

 

                   ◇

 

夕焼けに照らされ、金色に輝く草原の中に若き王は立っていた。潮風が肌を撫で少年をやさしく包み込み、心を落ち着かせる。夕焼けであるが反対側には日の出が登っている。少年にとっては見慣れた光景、五つの太陽に囲まれ、常に光に照らされた黄金の星「リンドヴルム」。

少年は王都からすぐ近くにあるこの海を見渡せるこの草原がお気に入りであった。心地い気分に満たされ、空を仰いでいると後ろの方から少年を呼ぶ声が聞こえる。振り返ればそこには王都から迎えに来た騎士達が手を振りながら歩いていた。少年は騎士たちのもとへ向かおうと足を一歩前へ踏み出そうとしたその時、景色は一変した。

空は雲に覆われ、雨が降っているというのに草原は雨では消えることのないほどの業火に焼かれていた。騎士達は地に転がり、動くことのない屍となり、一人、また一人と業火に焼かれる。この惨状を見ている少年は驚くこともなくただただ見ているだけだった。少年はもう気付いているのだ、これが夢であることに。焼かれていく騎士たちが口々に「陛下」と呼び続けている。

 

            『何故お前だけが生きている。』と

 

                       ◇

 

「はッ・・・・・!!」

 

悪夢にうなされて僕は目を覚ました。初めて見る天上、薬品に匂いがすることからここが医務室だと仮定し上体を起こし隣にある窓を見る。

 

「・・・・・・・・・・・暗い。」

 

外は太陽の光の無い闇の世界だった。童話で読んだことのある夜というのはこういうのを指すのだろうか?

 

「なんだ?もう目が覚めたのか。」

 

部屋の唯一の扉が開き、奥から黒い髪の女性が現れた。ここのところ女の人しか見てないような気がする・・・

 

「体の具合はどうだ?悪いようなら早めに言っておけ。」

 

女性は僕を気遣っているようにみえるが僕はこの人が警戒しているというのが解っていた。いろんな人を見てきてからか、なんとなく相手の感情を読み取ることが出来る。昔は謁見などで悩み相談などに役に立っていたけど、今は争いを回避するために慎重な読み合いをしないといけないかもしれない。

 

「あの・・貴方は?」 

 

まずは相手が何者なのかを見極めなければいけない。その為僕はまず名前を知らなければ進まないと思った。

 

「ん?そうだったな、私は織斑千冬。このIS学園の教師だ。」

 

IS学園?学園というのは聞いたことがある。確か寺子屋の事を指す言葉だ。

 

「お前はあの戦いのあと意識を失って落ちそうになったところを回収されここで治療されたのだが覚えているか?」

 

僕は首を縦に振り理解してることを伝える。

 

「そうか・・・では聞かせて欲しい。」

「・・・・・・・」

「お前は何者だ?」

 

当然の様に僕の素性を聞きにきた、でもどういえばいいか悩む。この世界の文明レベルでは事実を言っても理解されないことは解る。とはいえ嘘を言う訳にもいかない。いえば間違いなく僕は死ぬだろう。悩んだ末僕は・・・

 

「僕の名はラグナ、惑星リンドヴルムの第21代目国王ラグナ・リンドヴルムといいます。」

 

僕は嘘偽りなく事実を話した。国の事、技術関係から滅びるまで経緯、そして今に至る理由を話した。織斑さんは何も言わず僕の話を聞いていた。そして言い終わった後織斑さんが口を開いた。

 

「ふざけているのか?」

 

ですよね~。自分自身でも予想はしてましたが事実ですから言いようがありませんよ。ハハハ・・・

 

「と言いたいが、お前の持ち物などを調べた結果、この星にはない物質・技術で出来ていることや、お前自身の体にもおかしなところがあった。信じ難いが信じるしかないだろう…」

「ありがとうございます。信じて頂けてなによりです。」

「だがこれからどうするんだ?」

 

「どうするんだ?」その意味はあながち想像ができた。だからなのか、額にいやな汗が出てくる。

 

「国が滅び、戻る場所もない。そしてこの星の人間はリンドヴルムと違って友好的とは言い難い。異星人の受け入れは望めないだろう。最悪、実験動物のような酷い扱いを受けるかもしれない。こんな星にやってきてお前はこれからどうするんだ?」

 

残酷な現実、予想は出来ていたがそれでも恐怖心を押さえることは難しいものです。最悪の場合この星を出て行くことを考えなければいけないでしょうね。その先の事は後で考えましょう。

 

「そこでだ、取引をしないか?」

「取引・・ですか?」

「あぁそうだ。じつのところこの星はある問題を抱えている。外から飛来する謎の敵《絶対天敵(イマージュ・オリジス)》の攻撃を受けている。」

「《絶対天敵》・・・」

「こちらも手は打ったが奴らに攻撃が効くのはIS(インフィニット・ストラトス)だけだった。ISはこの星に467機しかなく、付け加えるなら使用できる数にも限りがある。現在はこの学園を対絶対天敵用の前線基地の様な形で戦いを維持している。だが今後戦場が激化する可能性は否めない。そこでだ、ISと同等の性能を有している兵器を所有しているお前に協力してほしいのだが・・・」

 

鋭い目つきで提案してくる織斑さんは真剣だ。今置かれている状況を打破するためなら打てる手は打つ人の目だ。

だからこそ不安なことがある。

 

「・・・・僕に、戦争の道具に成れと、言う事ですか?」

 

余所者である僕を使い捨ての道具にするのではと危惧し、素直に聞いてみる。どの道逃げ場は無いのだから知れることは全て知っておくべきだ。

 

「勘違いするな、私は協力してほしいと言ったのだ。そちらが力を貸してくれるのならこちらはお前の身の安全を保障しよう。さいわいこの学園はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家・組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉を許さないという国家規約がある。お前を学園の生徒として登録すれば当面の安全は確保される。その代わりに戦いに協力し我々を守って欲しい。あいつらは戦えるとは言ってもまだ未熟だ。ヘマをやらかして死なないように助けてくれると有難いのだが、どうだ?」

 

生徒の事を案じる織斑さんは優しい人なのだなと素直に思える。・・・今までの会話で嘘を言っている傾向は無かった、ならば僕が選ぶべきことは決まっている。

 

「わかりました。助けて頂いた恩もあります。その恩に報いるためにも僕は戦います!」

「・・・・・そうか。」

 

僕が了承したら険しい顔だった織斑さんは優しい笑みを浮かべた。緊張の糸が切れたのだろうか先程までの威圧感は消えていた。次第に僕も安堵の表情を浮かべお互いに笑い合った

 

「それにしても驚きました。異世界だから言葉の壁があると思っていましたが、まさかリンドヴルムと同じ言語を話せる星があるとは。」

「そうだな、私達で言うところの日本語に共通しているところがあるのだろう。」

 

天の声(いやそう言う世界じゃないと話にならんだろ・・・)

 

話が一段落した時、再び扉が開き誰かが入ってきた。

 

「あ、織斑先生!もう話は終られたんですか?」

 

ズキュゥゥゥゥゥンっ・・・・・・・!?

 

拳銃のような音が脳内に響き渡りながら僕の心臓に衝撃が走る。体が急激に熱くなり、脈が速くなって胸が痛い!?余りにもの痛みに胸を掴みうずくまる。

 

「!?おいッ!大丈夫か!?」

 

異変に気付いた織斑さんが声をかけるがそれどころではなかった。胸の鼓動は収まることは無く今もなお速く脈打って破裂しそうだ。でも苦しい訳では無い不思議な感覚だ。顔を上げもう一度先程入ってきた人を見る。

優しくおっとりとした顔が特徴的で、エメラルドのような綺麗な髪と目、眼鏡がとても似合う御方・・・なんて、なんて・・・

 

「なんて素敵な御方なんだ・・・」

「「・・・・・・・・・・・・・は?(はい!?)」」

 

織斑さんが呆れたような顔をし、素敵な方は顔を赤らめ狼狽した。嗚呼可愛い。

 

「ッ!失礼しました!!あまりの出来事に取り乱してしまいました・・・」

「それはこちらの台詞だ(呆れ)」

「す、素敵な御方・・・私が!?」

「落ち着け山田君。」

 

山田さんというのか。いけないいけない、『発情』する自分を抑え話を進めなくては・・・

 

「すいません。王家の者は代々世継ぎを生む為に特定の条件がそろう女性にしか『発情』しない特異体質でして、一種の生存本能のようなものなのです。」

「で、その条件がそろっているのが山田君だと・・・(なんだその限定的な体質は。)」

「そ、それは、浮気防止の為とか、そう言う意味がある体質なんですか!?」

(おいおいおい山田君。君まで何をアホなことを口走っているんだ!?今そこは重要ではないだろ!!)

「それもありますが何よりも王位継承権の象徴という意味が強いですね。特定という訳で世継ぎは生まれた子に決まり、優性遺伝子を引き継いで時代の王としてリンドヴルムを繁栄させてきました。」

(いや、お前も話にのるな!確かに異文化交流も大事だが今は違うだろ!!)

 

「んんッ!!山田君。彼は今後この学園の応援要員として協力することになった。学園長方に伝えるため資料をまとめておいてくれ。」

「はっ!はい!えぇと、資料を制作するにあたり、お名前と幾つか話よろしいでしょうか?」

「はい、構いませんよ。僕の名はラグナ・リンドヴルム。異世界の惑星リンドヴルムの最後の王です。」

「ではリンドヴルム君、出来る限りでよろしいのでリンドヴルムの事を教えて・・」

「結婚してください。」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

「はいぃィィィ//////!?」

 

やってしまった。本能を抑えきれず告白してしまった・・・父上、僕は男として駄目な奴なのでしょうか?

 

「ケケケケケケ、結婚って!イ、居、いきなりそんなきょとうぃ!?」

「申し訳ありません!!ですが気持ちが抑えきれないのです!だってあなたがとても魅力的で!だから!」

 

ドゴン!!

 

頭に伝わる強力な痛みに僕の意識はシャットアウトされた。

 

 

                     ◇

 

場が混沌となろうとしていたなか、千冬は冷静にラグナの頭を勢いよく殴り気を失わせた。

 

「まったく、誰が教員をナンパしろと言った。」

「お、織斑先生・・何もそこまでしなくても(汗)」

「スマンが山田君。詳しいことは日を改めて今は手元にあるものだけで資料を制作してくれ。」

「えぇ、はい。あとIS委員会にもこのことを報告しておいた方がいいですよね?」

「そうさな、鎧の事は彼から許可を取るまで伏せておくように頼む。」

 

後日、IS委員会と特定の企業に情報が開示され密かに混乱が起きたが皆「様子見」という見解を示した。

 

 

                     ◇

 

                    某日米国

 

アメリカのとある場所、見た目は西部劇でよく見る木製のデザインの酒場にて女性たちが酒を浴びるように飲んでいた。格好は皆バラバラでショートジーンズにバンダナや胸を包帯で巻いて袖の無いジャケットを着たりといわゆる海賊の格好をしていた。それが小さな樽のようなジョッキを片手にガヤガヤと歌い、笑い、飲みまくっていた。

見た目は海賊だがこれでもれっきとしたアメリカの独立部隊「ハイアデス(別名・誇り無き牛たち)」の隊員である。軍ではあるが構成員の殆んどを傭兵が占めている無法者集団であるがハイアデス誇る特殊兵装と彼等の実力の高さから政府への信頼が高い。

 

「野郎ども!今夜はあたしの奢りだが程々にしておけよぉ?問題起こしたら処理が面倒くさいからなw」

全員「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハw」

 

リーダー象徴らしく海賊ハットをかぶった右頬に大きな傷のある女が部下に忠告をしながらビールを一気飲みし、呼応するかの如く笑う。節度のへったくれもない危険地帯。そんな場所には不相応な黒のスーツを着た筋肉質の男が入ってきた。

 

「相変わらず此処は賑やかで何よりだねぇ」

「よう大将!もう仕事は終わりか?」

 

彼の名はスティーブン・ネオ・アームストロング、アメリカの上院議員であり、彼等ハイアデスのビジネスパートナーだ。

 

「生憎仕事で来たのでね。”君”に頼みたい仕事があるんだよ。」

「あ?あたしだけにかい?なんだいそりゃ、まさかと思うがそっち系か!?」

「残念だがお前さんみたいな生娘は好みじゃないんでね。これが依頼内容だ。」

 

彼女の冗談を軽くあしらいアームストロングは脇に抱えていた茶封筒を渡した。それを受け取った彼女は中に入っていた資料を読み進めていく。

 

「成程・・・冗談だろ?」

「残念だが事実だ。度重なる亡国機業のIS学園の襲撃、挙句には我が国の代表を語った『レイン・ミューゼル』。それらの素材が理由で我が国は亡国機業と結託してるのではないかと噂されている。まぁあながち間違いでもないだろうが、「俺」の国にテロリストを容認する気はさらさら無い!!

ちょうどいいことに今は《絶対天敵》とか言う訳の解らない物が地球を侵略してるようだからな、お前にはそこで小僧共に協力し身の潔白を証明してこい。」

 

彼女が受け取った封筒の中身はIS学園の転校手続きの書類と通っている高校の停学処分解除の書状であった。それを見て顔を引きつるのは暫く酒が飲めないことへの嫌気である。

だが彼女は大人だ。泣き言など言わず、

 

「野郎ども!!あたしは暫く隊を空けることになる!つうわけで・・・・・・今日は酔い潰れるまで飲み明かすぞおぉ!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

懐から札束がギッシリ詰まった大きい財布を取り出し札をばら撒き酒を追加注文する

 

「大将も飲め飲め!!嫌なことも仕事の事も飲んでやわらげるに限るぜ!!」

「やれやれ、上院議員も暇ではないんだがな・・・とびっきり高い奴はあるんだろうな!!」

 

欲望に忠実な真の自由を謳歌する牛たちは次なる戦場に向かう為英気を養う。翌日には二日酔いで一日寝たきりになるが・・・・

 

                       ◇

 

                    同時刻フランス

 

「はぁ・・・・・・・・・金がない。」

 

暗い路地裏で暗い雰囲気でブラブラしている女がいた。

男物の灰色のロングコートに汚れたビジネススーツ、明らかに変なホームレスだ。

 

「まったく何処行っても頭でっかちな女ばっかで男が全然いない職場ばっか、はぁ~吐きそう。たくっ!何が女尊男卑だふざけんな!!社会に男も女もねぇだろクソが!だから女は嫌いなんだよ!!」

 

自分も女であることなど気にせず女性に対しての侮蔑をぶちまけるホームレス?。その姿はとても哀れであった。

 

「噂にたがわぬ女嫌い、貴方がフランスの元代表『世界最速』、(ジャンヌ・ダルク)のグレイ・アングレース様で間違い御座いませんか?」

 

いつの間にか人気のなかった路地裏にホームレス?以外の人物が現れ彼女の素性を確認していた。暗い路地裏故に解らなかったが相手はホームレス?には数年以来のまともな男性だった。

 

「うわ懐かし。どこのどいつだよ俺を祖国の聖女様に例えたのは・・・・で?アンタは何者なんだ?」

「これは失礼。私は【アクシオン社】で働いて頂かせて貰っている者です。」

「アクシオン社か、今さら俺になんの用だ?ずいぶん昔に契約を切っただろ?」

 

アクシオン社とは国際IS委員会直属の企業で、南極に大規模なラボを設立し全国に支店を置く大企業である。

アクシオン社は今の時代では珍しく優秀な人材なら老若男女問わない方針で経営し注目を集めている。彼女はその企業代表としても契約していたが二年も前に解約している。

 

「えぇ、ですが今は何かと物騒ですので我が社は新たなISの開発を行わなければいけないのです。そこで!あの織斑千冬を唯一あと一歩のところまで追い詰めた貴方に、我が社の新型のテストパイロットになっていただきたくお探ししていたのです!!」

「成程ねぇ・・・因みに報酬は幾らなんだ?」

「最低でも20万、良いデータを集めることが出来れば50万ほどになりますね。」

 

ホームレス?ことグレイは悩んでいた。実のところ彼女は借金を背負っている。その額約1千万!!なんの借金かは聞かぬが花という奴だ。だからこそこの話はとても大切なチャンスなのである。だが・・・

 

「でもなぁ~女とか居ないよなぁ?いくらいい条件といっても女と同じ空気なんて吸いたくもねぇんだよなぁ~」

「契約していただければ作業員を全員男にすることは出来ますが?」

「よし乗った!!男だけなら喜んで引き受けるぜ!!!」

(・・・・・ラボにいる間だけで、データ収集はIS学園で採るんですがね。まぁ嘘は言ってないですよ。)

 

女がいない環境という言葉に胸を躍らせながらグレイはかつての学び舎に戻ることをまだ知らない。

 



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第四話~転校生達~

ここからオリキャラが追加されていきます。気に入ってくれると幸いです


アグレッサーとの戦闘から三日後IS学園は穏やかさを取り戻していた。

現在一年一組にて専用機持ちと楯無が集まっていた。

 

「は~い皆!今日は新しいお友達がこの学園やってきます!!」

 

楯無の意気揚々とした発言に皆(またか)とため息をついた。

 

「どうせ新しい専用機持ちでしょう?絶対天敵で各国の代表候補生が集まるて言ってたし。」

「残念!今回は代表候補生ではなく異世界からのお友達なのよ鈴ちゃん 」

一夏達(異世界?)

「じゃあとりあえず来てもらいましょうか。入ってちょうだい。」

 

そういうと教室の皆が教室の入り口に注目する。

 

「失礼します!!」

 

少年の声が扉の向こう側から聞こえ扉が開かれ入って来る。

金色の髪をなびかせながら歩き、コツコツと規則正しく奏でる革靴の音が教室に広がる。

 

「初めての方、初めまして。ラグナ・リンドヴルムと申します。本日よりこの学園で皆様と共にISを学ぶことになりました。初めてのことが多く皆様にご迷惑をお掛けしてしまうかも知れませんが何卒よろしくお願い申し上げます!!」

 

穢れの無い黄金の瞳、礼儀正しいしゃべり方、学生服というより制服のような作りに右肩から左腰に掛けてあるタスキのような物がどことなく貴族の風格を醸し出している。左胸にはIS学園のロゴマークが刻まれたエンブレムが付いており、羽織っているマントがとても目立っていた。

 

「あの楯無さん?このマントはやはりおかしいかと・・・」

 

来ている本人も流石に恥ずかしかったようだ。

 

「あらお気にめさなかった?リンドヴルムではそういうの付けないの?」

「確かに民たちの前では付けて着なれてもいますが、やはり学び舎で着るのはおかしいと思います!!」

 

ラグナと楯無のやり取りを生徒の皆はポカーンと見て置いてけぼりにされていた

 

「という訳で異世界の星リンドヴルムからやってきた王様、ラグナ君がやってきました!!皆も信じられないと思うけど調べた結果、異星人であることが証明されたの。だから、いろいろ思うところがあるかもしれないけど仲良くしてね 」

 

シィーーーーーーン

しばらくの静寂。そして

 

「「「「キャアァァァァァァァ!!」」」」

 

凄まじい女子たちの凄まじいバインドボイスが響き渡る

 

「男子!しかも異世界から!!」

「デュノア君の時とは違う紳士の態度!!あの純粋な目がたまらない!!」

「織斑君とラグナ君異文化交流(意味深)。うんイケるわ!!」

 

騒々しい教室、呆れる教員と耳を塞ぐ専用機持ち。その光景を見ているラグナは微笑ましく笑顔であった。

 

「ずいぶん賑やかですね。いつもこのようものなのですか?」

「いや、普段は静かな方だ。この学園にとって男とは珍しいものだからな。さて、貴様等!静かにしろ!!」

 

千冬の号令に一斉に静まり返る

 

「よし。リンドヴルム、お前の席は織斑の左隣だ。この後はお互いの力を理解するための模擬戦を行う。専用機持ちは直ちに第二アリーナに・・」

 

ビービービー!!

けたたましいサイレンが千冬の話を遮り、大きな地響きが皆に緊張が走る

 

「「「!!!!」」」

「どうやら模擬戦の必要はないようだな。専用機持ちは直ちに戦闘準備それ以外の生徒はシェルターに避難しろ!!」

 

千冬の指示に従い専用機以外の生徒はシェルターに向かう為教室から出て行った。

 

「山田君、状況はどうなっている?」

「第二アリーナに一つ、大型が五機、小型が多数のようです!もう一方は海岸に二つ、こちらは小型のみのようですが数が多すぎます!!」

 

真耶が見ているモニターから情報を伝え、千冬は素早く専用機持ちに指示を出した。

 

「リンドヴルム、お前は海岸の方を任せる。ギャラクシー、更識妹はリンドヴルムの援護に回れ。それ以外は全員第二アリーナだ!!」

皆「了解!!」

「と、その前にリンドヴルム。お前にこれを返しておく。初の絶対天敵戦だ、無理はするなよ」

 

ラグナは千冬からアタッシュケースを貰い中を確認する。中には王冠が入っていた。金色のフレーム、赤い布地がドーム状の形をしており、それを囲うように六つの薄い板が綺麗な曲線を描きながら中央に集まっている。赤や緑の宝石が埋め込まれており絢爛豪華な装飾が施されている。ザックリ言うとイギリス連邦系に近いデザインである。因みにこれはグローリー・クラウンの待機状態の姿である。

 

「大丈夫です。僕はこういうの慣れてますから。」

 

クラウンを頭に被り一礼して教室を後にする。

 

「・・・・慣れているか・・・」

 

まだ若いというのに戦争に成れているという発言に千冬は複雑な心境を憶えるのであった。

 

                       ◇

 

外に出てすぐクラウンを纏ったラグナは指定された海岸に向かって飛翔していた。それをISを展開したヴィシュヌと簪が追いかける形で飛んでいた。

 

「待ってくださいリンドヴルムさん!!一人では危険すぎます。」

「数から考えて此処は私の山嵐で数を減らしてからの方が・・・」

「いえ、それだと周りへの被害がともないます。屋外での爆破物の使用は出来るだけ避け、素早く終わらせるべきだと僕は思います。それを可能にするには・・・ッ!!」

 

通信を切り、さらに速度を上げたラグナはそのまま海岸に飛来した絶対天敵の群れの中に突撃していった。

 

「敵の注意を引き付け、被害を一点に絞るのが最適です。」

 

展開したティアマオーグで螳螂型の絶対天敵を潰し、通信を再開させる。

 

「皆さんは海岸から離れようとする個体がいたら対処してください!しばらくここを動けないのでッ!!」

 

再び通信を切るとラグナはティアマオーグを担ぎ、常時加速を発動させ敵をなぎ倒してゆく。60体ほどいたうち6体を瞬殺。青い残像を残しながら速さを増したラグナは相当な重量があるはずのティアマオーグを軽々と振り回し、潰し・砕き・吹き飛ばしていく。

当然敵もやられっぱなしでいるはずもなくラグナの周りを囲い一斉に跳びかかる。

だがラグナは体をひねり、その回転の力を利用しティアマオーグを振り回した。

結果跳びかかった絶対天敵は胴体の真ん中からえぐり落され爆発する。爆煙で視界を遮られたがその爆煙から螳螂型が現れラグナに切りかかる。

 

「「!!」」

 

ラグナが螳螂型の群れに飲み込まれていくのを見た簪とヴィシュヌは絶句した。

だがうじゃうじゃと蠢く絶対天敵の塊の中でラグナはある程度の確信を得ていた。

 

「こんなものですか。では」

 

ラグナはティアマオーグの持ち手を左にひねる。すると刃の付け根部分がグルグルと回転しだしドリル様に周りを削りだしてゆく。ティアマオーグの特殊機能の一つ「掘削」である。アグレッサーの装甲を削り落としたり貫通させるためにつけた機能でありその「威力」は凶悪の一言に限る。そんな凶器を振り上げ張り付いていた螳螂型が鉄塊と化す。ラグナ自身が自ら回り、まとわりついていた螳螂型を一掃し姿を現す。

全身を切りつけられたにもかかわらずクラウンには傷一ついていなかった。

 

(威力は大したことは無く鎧の防御力が上回っていると言ったところか、装甲の硬さも予想を下回るほど低いる恐るに足りないのは解ったが油断してはいけない。)

 

周囲を確認するとまだ30体以上もの絶対天敵がラグナを取り囲んでおりいつ襲い掛かって来るか解らない。

 

(敵の注意を引き付けたのは良いですがいつもう一方に増援を呼ばれるわけにもいかない。内部に通信機能があれば厄介ですが急いで仕留めた方が良いですね。)

 

考えをまとめ、行動を起こすのはいつも通り速かった。ティアマオーグを一体の絶対天敵に投げつけ反対方向に飛ぶ。ティアマオーグは敵にめり込み同時にラグナはもう一体の頭部を”蹴飛ばした”。

 

「「はぁ!?」」

 

当然先程から見ているだけの二人が驚く。そんな二人のことなど露知らずラグナは絶対天敵を拳と足で流れるように穿ち砕いていく。殴った力を利用し回し蹴り、その力を利用したフック、からの蹴り上げ。どれも攻撃の力を利用した撲殺拳、無駄のなく打ち続けられるそれは対アグレッサー用に考案された格闘術「リンドアーツ」。武器が使えない状態の時に使える肉体武器の一つである。

 

「シャッ!(訳・一)ツゥッ!!(二)ツヴェイ!!!(三)ニャアァァ!!!!(四)・・・次。」

 

作業の様に冷静なまま絶対天敵の頭や胴体を壊していく彼はつまらなさそうな顔をしていた。今まで自分より強い敵としか戦ったことが無かった為か雑魚の相手がこうも危機感のないものだと落胆している。

 

「残り6。終わらせます。」

 

だがそう簡単に終わらせてくれはしなかった。仕掛けようと突っ込んだラグナにロケットパンチが直撃し海に吹き飛ばされたのだ

 

「これは、アリーナから!?」

「リンドヴルムさん無事ですか!?」

「・・・えぇ、少し頭が冷えました。物理的に。なにが起きたんですか?」

『すまないリンドヴルム。アリーナにいた大型の一機がそっちに向かってしまった。恐らく海岸仲間のの数が激変したのに気が付いての事だろう。撃破できるか?』

「わかりました。引き続き戦闘を継続します。」

 

と、通信を切ろうとしようとしたその時だった。

 

『その必要はもうねぇぞ?』

 

ラグナの上を六つのレーザーが通り過ぎ小型を貫いていったのだ。それだけではない。

 

「い~~~やっほおぉい!!」

 

甲高い咆哮が聞こえたかと思うと大型の絶対天敵ノクターン級の横腹に何かが突っ込み海へと吹っ飛び爆発する。

 

「「「!!!!!!」」」

『・・・・・』

 

「ハハハハハ!!なんだなんだぁ?でかい図体してるくせに装甲は地下シェルター並みかぁ?脆すぎてあくびが出ちまうよ!。」

 

大型を仕留めた謎の人物は海から浮上したのち笑いながら悪態をついていた。当然ながら彼女はISを纏っていた。

アメリカのファング・クエイクに似たデザインで黄金色の装甲に両肩にそびえる巨大な角が圧倒的な存在感を放っていた。金牛を彷彿とさせるISと纏った女は装甲に負けない金色の長髪をなびかせながら笑い、酒を飲んでまた笑っている。どうやら酔っているらしい。

 

『戦闘も終わりったことだし詳しいことはヘリを降りてからにするわ。んじゃまた後で!』

 

突如通信に割り込んできた女性はこの状況をスルーし通信を切った。ヘリと言う単語でラグナ達はレーザーが飛んできた方角を見ると空に米粒ほどの点のような物がこちらに向かって飛んでいるのが見えた。

 

「あの距離から狙撃したの!?」

「目測ですが十キロ以上はありますよ!?」

 

簪たちが驚く中ラグナは見事な狙撃だと感心していた。

 

                    ◇

 

狙撃を終え両腕の部分展開を解除したグレイは先程の状況を思い出していた。

 

「戦闘が終わったと同時に酒を飲むとは、噂よりわいるどクレイジーなんだなアメリカの代表さんは。」

「見事な物です!どうですか我が社の新型は?」

 

ヘリの操縦をしている前回グレイを勧誘していた男が性能の感想を心待ちにしていた。

 

「なかなかのもんだと思うぜ?ブレもなく照準も悪くねぇ。だがちとライフルデカくはねぇか?多目的つってもこの長さでアサルトとか出来んのかよ!?」

 

グレイのいうとおりライフルは片手で持てるようにできていながら狙撃やグレネードを打てるようにバレルが長く作られている。本来はこれを片手で持ち撃つのだがバレルが長いせいで空気抵抗が懸念される。

 

「問題ないですよ貴方なら!すぐ慣れてこのままでと言うようになります!なにせ二年前に使ってた機体のデータから設計したので!!」

「そう力説されてもねぇ。あんまり期待すんなよ?二年ものブランクがあんだから・・・」

 

これ以上言っても丸め込まれるのがおちだなと悟りグレイは諦めてヘリがIS学園に着くのを待つのであった

 

                     ◇

 

戦闘から少し経ち一年一組の教室には現在ラグナと専用機持ち、千冬・真耶が集まっていた。

 

「え~と言うことで、予定にはなかったアメリカとフランスの専用機持ちの紹介を始めるわ。入ってきて。」

 

楯無の指示に従い教室に二人の女性が入室してきた。一人目は褐色の肌に金色のロングヘア―水色の瞳、右頬の大きな傷が特徴的だが女性陣はそんなとこより一点に注目していた。

 

                ((((((デカい!!))))))

 

そうデカいのだ、彼女の胸がスイカ以上ににあるおそらくPカップはあるだろう。本人も見せつけるかのように胸元を開け谷間を強調している。さらに身長が高くスタイルもよくバランスの取れたプロポーションである。

 

「ん、まだ胸がきついね。あとで改造しとくか。と!ホルス・スタインだ!!歳は22、O型だ!アメリカの代表であり酒と男と金があれば文句は言わねぇ!!ついでにあたしの胸は天然物だ!!悔しいか小娘どもッ。アハッハッハッ!!」

 

自慢の胸を見せつけ女性陣を挑発し不穏な空気を作りだし第一印象は最悪である。そんな中一夏が思わぬことを言った。

 

「ホルス・スタイン、、、あぁ!略すとホルスタインだ!!」

 

その発言をした直後一夏は吹き飛んでいった。一夏がいた所にはホルスが右ストレートを放った後である。

 

「あたしをその名で言ったヤツは問答無用でぶっ飛ばしてきた。きぃつけろよ餓鬼ども・・・」

 

一夏を素手で教室の壁際に吹き飛ばすホルスの腕力に女子がゾッとする中一人だけ呆れていた。

 

「気に入らないことがあるとすぐ感情的になって手を上げる。あぁいやだねぇ女ってのは、、、、はぁ吐きそう。」

 

灰色のぼさぼさ頭でスーツ風に改造された制服姿の女性。グレイだ。先程から教室の隅で息を潜めている。

 

「ハハッ!噂通りの女嫌い!!それなのによくIS学園に来たもんだねぇ『ジャンヌ・ダルク』!!」

「その呼び名を言うな!!俺はその称号嫌いなんだよ!!」

「はいは~い二人と喧嘩しない!!これ以上騒ぐとおねぇさん怒っちゃうわよ~?」

 

これはいけないと楯無が仲裁に入ろうとしたが喉元に戦斧、眉間にライフルが付きつけられていた。

 

「「三下は下がってろ・・・」」

 

なんとホルスとグレイが一瞬のうちに武装を展開していたのだ。だが二人はそれ以上先をすることが出来なかった。自分たちの後ろにぎゅるぎゅると回転音がしていたからだ。正体は高速回転しているティアマオーグだ。

 

「お二人とも、どちらもこの星の危機に対抗するために来たというのに同士討ちは辞めて頂きたい。貴方たちは国が誇る偉大な方の筈、それが己の感情を優先しうちわもめなど恥ずかしくは無いのですか!!」

「「・・・・・・・・」」

 

ラグナはこの場を治めるために動いた訳では無い。これから共に戦う仲間がお互いを傷つけあうことに怒りを覚え動いたのだ。

 

「かぁ~わかったわかった。悪かったな、くだらないことして。ほら、自己紹介しな。」

 

そう言ってホルスは近くにあった机に腰掛ける。

 

「・・・・はぁ。グレイ・アングレースだ。歳は20、A型。ISは二年前に引退したんだが金銭的な問題で仕方なくフランスの代表に復帰することにした。あとアクシオン社の企業代表も務めてる。言っておくが俺は女が大っ嫌いだ!!だから俺に関わるな。いいな?」

 

さっきから言っていたことをあえて言ってきた。癖の強い代表生の出現に候補生は戸惑うばかりであった。シャルロット以外は。

 

「世界最速と謳われジャンヌ・ダルクとも讃えられたフランスの英雄グレイ・アングレースさんだぁ!!何で!?何でIS学園にいるの!?」

「なぁ、、シャルてあんな性格だったけ?」

「仕方ありませんわ、グレイ・アングレースと言えば知る人ぞ知る伝説級のIS乗りですもの。」

「そうだよ!!若くして高いIS適性を持ち最年少で代表候補生、IS学園一年にはあっという間に国家代表生になるという歴史上類を見ない偉業を達成するだけでなく三年にはあの第二回モンドグロッソ出場!その第一試合で織斑先生を得意の超高速機動で圧倒、あと一歩のところまで追いつめた凄い人なんだよ!!」

「お、おう、、、」

 

興奮するシャルロットの凄まじい圧に一夏はたじろぐ。他の皆はやや引いていたが同時にシャルロットの言うことに共感していた。世界最強と言われる織斑千冬と互角に渡り合うなら出来る人もいるがそれはあくまで相手も攻撃を受ける一進一退の攻防の話。だがグレイは違う。ISのハイパーセンサーですら追うのが難しい超高速移動と射撃を使った遠距離包囲攻撃を行いダメージを受けるリスクを回避した戦術で千冬に攻撃の隙を与えなかったのだ。千冬が仕掛けようなら一気に距離を取られまた全方向からの射撃・爆撃の嵐を受け見る者を圧倒した。だがそんな彼女も一瞬のスキを見せてしまい零落白夜により逆転負けを喫した。

 

「追い詰めた所で負けは負けだ。俺は噂される程の人間じゃねぇよ。」

「そう謙遜するな、私をあそこまで苦戦させたのはお前が初めてなんだぞ?」

「敗者であることには変わりませんよ千冬さん。」

「此処では織斑先生と言え。スタインは三年、アングレースは一年の教室に入ることになる。二年のブランクを取り戻して絶対天敵との戦いに備えろ。今後絶対天敵との戦いが激化するのを見越して各国から代表生が転校することが増えるようになる。皆も代表生に置いて行かれぬよう練度を上げるよ心がけろ!!」

「「「「「ハイ!!」」」」」

(と言って本当の目的はリンドヴルムの技術の調査だろうがな・・・)

 

自己紹介が終わり皆が教室を後にしようとしたその時。

 

「とっ!忘れるとこだった!!あたしはテロリストのレイン・ミューゼルの抹殺依頼を引き受けてんだが奴の事で詳しい奴はいないかい?」

 

ホルスがとんでもない爆弾を投下してきた



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