やはり俺の高校生活はどこかズレている (葱沢 桐ノ丞)
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原作1巻
1話 とにかく山﨑祐介もひねくれている


新作の投稿です、はい。
急に俺ガイルが書きたくなったから仕方ないね。
ではまたあとがきで


高校生活を振り返って

2年E組 山崎祐介

 

青春と女性は嘘であり悪であり、そして虚無である。

青春と言う者達と女性は常に自己と周囲に偽りの自分を見せる。偽りを演じてこそ自己と他者を繋げ同じ感動を、喜びを分かち合おうとする。それはそれでいい事なのだろう。だが悪い事ばかりだ。

例を挙げよう。彼らは集団で目標を決め、それを執拗に攻撃する。いわゆる、イジメだ。しかし青春を謳歌する者達はこれはいじりでイジメでは無いという。それが内輪ならばいじりで済むのだろう。だが内輪ではない者達に被害が出るのはもはやイジメである。それは青春とはいえないのではないだろうか?そんなことする人間とはどうなるべきか

 

結論を言おう。

人類、滅びろ

 

───────────────────

 

国語教師の平塚静は額に青筋を浮かべ口元をヒクヒクさせながら俺が書いたレポートを読み上げる。ああ、ここはこう表現してこう書いておけばもっと読みやすいな、さっきから平塚先生の口元、ヒクヒクしてるし片側顔面痙攣の初期状態かな、などと考えながら平塚先生の表情を探りながら呼び出された理由を考える。

なるほど分かったぞ。この読みにくい表現をどうにかしろということを伝えるため呼び出されたのか。

・・・ええ、違いますね。知ってた。知ってましたとも。

 

「なぁ、山崎。私が授業で出した課題は何で提出日はいつだったかな?」

「えっと、確か『高校生活を振り返って』というテーマの作文で提出日は先週だったと思いますが」

「うん、そうだな。提出日は過ぎているがやってきたということは認めてやろう。それはこれに比べると些細な問題だからな。で、なぜ君はヘイト文のような犯行声明のような物を書き上げてるんだ?テロリストなのか?それとも差別主義者なのか?はたまた、ただのバカなのか?」

 

平塚先生はため息をつくと哀れみを含んだ目で見つめてくる

やめて、そんな目で俺を見ないで。照れちゃうから

 

そんな事を考えていると俺が書いた作文で頭をはたかれた。

 

「真面目に聞け」

「はい」

「で、この作文はなんだ?こんなふざけた作文を書いてきたのは2人目でうんざりしてるが一応言い訳くらいは聞いてやる」

 

気づいたら平塚先生の口角は吊り上がり素晴らしいまでに込められた目力でコチラを睨みつけていた。怖いよ、この先生。何なの元ヤンなの?

 

「おい、話を聞いているのか?」

「ひゃいっ。お、俺はちゃんと高校生活を振り返ってますよ?むしろ小学生ぐらいまで振り返ったぐらいですよ?と言うか女性のくだりはほぼ小学生の頃ですけどね」

 

早口になりすぎた。人と話すのは苦手で緊張しすぎたせいで最後の方は自分でも何言ってるのか分からなかった

 

「うん、分かったから1度落ち着こうな」

「あ、はい」

 

あかん、テンパりすぎたで。どのくらいテンパりすぎたかというと思考している時につい関西弁が出るくらい

 

「まあ、お前の過去なんてものはこの際、どうでもいい。で、これはどうする?」

「書き直してきます。それで万事OKですね。それでは」

 

そう言って回れ右した俺の頭を平塚先生が掴む。そう、頭皮マッサージのように・・・。って痛い、痛い!どっからそんな力でてんの!?

 

「まあ、まて山崎。お前確か部活してなかったよな?」

「いえ、工作研究会に所属してますが?」

「それは今年度からは廃部になっただろ」

「あ、ああ。そうでしたね。って、痛い!痛い!先生、徐々に力を強くするのやめて!」

 

そう言うとああ、という感じで離してくれた。そして思い出す。去年入っていた同好会が部員人数が足りないのと実績が不明瞭だとかで廃部になったことを。生徒会、ぜってぇ許さねぇ

 

「つまり放課後は時間が有り余ってるって訳だな」

「ええ、まあそうではありますけど俺は帰って積んでいる作業を消化したいのですが・・・」

「ほう、積んでいる作業か。例えば?」

「メタギアとかFFとか」

 

正直に答えると再び視界に肌色の線がよぎり顔の横を風が通り過ぎる

 

「次は当てるぞ?」

「すみませんでした」

「まあいい。とりあえず付いてこい」

 

そう言って平塚先生は職員室から出ていく。そして俺はその後を追いかける。てか先生、歩くスピード早すぎません?追いつくのに軽く小走りしましたよ!?

 

「で、どこに行くんですか?方角的には特別棟の方だと思うのですが」

「来ればわかるさ」

「はあ」

 

リノリウムの床が小君のいい音を響かせる。その音を聴きながら俺は平塚先生の背中から外に視線を移す。ここ総武高校の校舎の形は少し歪だ。空の上から見下ろすと漢字の口によく似ている。道路側に教室棟、その向かいに特別棟があり両棟は二階の渡廊下で繋がっておりこれが四角形を形成する。

その四角形の中には中庭がありそこはリア充共の聖地になっている。だから廊下から中庭を見ると嫌でもリア充共が目に入ってしまう。

マジでウザったい。

しかしそんな事は問題ではない。正直どうでもいいとすら思っている。

問題なのは特別棟に向かっているという事だ。特別棟にはいくつかの文化部の部室があり俺もつい一月ほど前までは毎日のように通っていたが今では授業などで利用するぐらいにしか用がなくなっていた。

もしや平塚先生は俺に授業の準備を手伝えとでも言うつもりなのだろうか?

 

「付いたぞ」

 

先生が立ち止まったのは何の変哲もない教室だった。

プレートには何も書かれておらず今は空き教室だということがわかる。だがしかし、中からは人がいる気配が醸し出されていた。

俺がそれに警戒していると先生はからりと戸を開けた。

まず目に入ったのは教室の後ろに積み上げられた机と椅子だ。それだけ見ればこの教室が倉庫として使われていると思うだろう。

次に目に付いたのは教室の中央より少し前辺りにいくつか机を並べその端と端に椅子を置き、そこに座って本を読む少女と少年の姿だった。

少年は扉が空いたことに気づくと視線をチラリとコチラに向け、また視線を本に戻した。

ふむ、ラノベを読んでるのか。後でどんなのが好きなのか話しかけてみるかな。

その一方で少女は本に栞を挟みこみ顔をあげた。

 

「平塚先生。何度目になるかは分かりませんが入る時にはノックを、とお願いしているはずですが?」

 

端正な顔立ちに流れる黒髪。学校の指定の制服を着ているはずなのに有象無象の女子達とはまるで違って見えた。

 

「ノックをしても君達が返事をした試しがないじゃないか」

「返事をする間もなく先生が入ってきてるんですが?」

 

平塚先生の言葉に本から視線を外さずに少年が答える。

 

「で、そっちは?」

 

俺の事を言ってるのだろう。俺はこの2人を知っている。2年J組の雪ノ下雪乃と2年F組の比企谷八幡。

無論、名前と顔を知っているだけで会話をした事は無い。クラスが違うからね。仕方ないね。

 

「彼は山崎。入部希望者だ」

 

そう、俺は山崎!この部の入部希望者や!ん?入部?どゆこと?

 

「あの、平塚先生?入部希望者ってどゆことです?」

 

というかそもそもここ何部やねん。というか2人しかおらへんのに部なんか?せやったら工作研究会も存続してても良かったんちゃうの?部員俺だけやけど。

 

なんて事を考えながら平塚先生の言葉を待つ

 

「君にはペナルティとしてここの部活動を命じる。異論反論抗議質問口応えは認めない。いいな?」

 

先生は一気に喋り終えると分かったな?と言うように目で威圧してきた。

それに俺はコクコクと頷くことしか出来ない

 

「というわけで、見ればわかると思うが彼もなかなかに根性が腐っている。人とのコミュニケーションの仕方を学ばせてやれば少しはまともになるだろう。こいつも置いてやってくれるか。彼の捻くれた思考体質の更生が私の新たな依頼だ」

 

先生が2人に向き直って言うと雪ノ下さんが面倒くさそうに口を開く。

 

「お断りします。そこの男だけでも苦労しているのに、同属な男がもう一人増えるのは私の精神が参ってしまいます」

 

嘘つけ。そこまでピシャリと言いきれる奴はそう簡単に精神は参らねえよ。

 

「安心したまえ雪ノ下。比企谷と比べるとコミュニケーションが取れるだけまだマシな方だ。まあ世間一般で求められるコミュニケーション能力には程遠いがな」

「いやいや、普通にコミュニケーションは取れてるでしょう?」

「なるほど・・・。それはかなりマシですね」

「なんで俺を引き合いに出すんすか」

 

平塚先生の説得と比企谷くんの実績が功を成したのか、俺が一切望まない形で雪ノ下さんは結論を出す。

 

「まあ、先生からの依頼である以上無碍には出来ませんし、彼よりコミュニケーションが取れるというのであれば・・・。承りました」

 

その微妙な表情で承るのは辞めてくれ。心が痛む

 

「そうか。なら、後のことは頼んだぞ」

 

とだけ言い残しさっさと帰って行ってしまう。

ええぇ、俺はもうこっちに残らなきゃダメなの?

 

「とりあえずあなたも座るといいわ」

「あ、ああ。そうするよ」

 

教室の後方に積み上げられたイスを1つ取りそれに座る

 

「初めまして、山崎くん。雪ノ下雪乃です」

「あ、ああ。始まして。って俺の名前知ってるのか」

「ええ、一応同学年の人達の名前だけは知っているつもりよ」

「俺の事は知らなかったみたいだけどな」

「あら、前にも言ったことがあると思うけれどそれはあなたの矮小さに目もくれなかったことが原因だし、何よりあなたの存在からつい目を逸らしたくなってしまった私の心の弱さが悪い、と」

「だからそうやって俺が悪いと言う結論いたらないでくれ」

 

うん、なんだか色々とカオスだな。というか雪ノ下さん、比企谷君のこと前から知ってましたね。それも悪い意味で

 

「あはは。それでここはなに部なんです?平塚先生には連れてこられるだけ連れてこられてなに部なのか聞かされてないので…」

「お前もかよ…」

「えーと、比企谷君だっけ?確かヒキタニ君とか呼ばれてる」

「ああ、多分そのヒキタニ君ってのは俺のことだろうよ」

 

比企谷君は皮肉めいた口調で返してくる

 

「まあ、説明されないとこの部活がなんなのかわかんねえわな」

「そうね、クイズをしましょう」

「クイズ?」

「ええ。ここが何部か当ててご覧なさいな。ヒントは今、私たちがこうしていることよ」

「またそれかよ。実質ノーヒントクイズ」

 

なるほど。ノーヒントでこの部が何か当てなくてはいけないのか。難しいな

雪ノ下さんは今、こうしている事がヒントだと言った。この人数で廃部となっていないということは生徒会からの部費の補助が必要ないからだろう。その上、平塚先生は俺の更生が依頼だと言っていた。そして今している事はただ同級生と話をしているだけ。つまり

 

「カウンセリング部か?」

「その心は?」

「部員人数が少ないにも関わらず部活として成立している事と平塚先生が俺の更生と言って依頼したこと。そして今している事は話をしているだけだ。つまりこれは俺の更生に必要な事柄を探り出そうとしている。以上のことからカウンセリング部を導き出した」

「やっぱそういう考えになるよなあ」

「そうね、ハズレよ。けれど当たらずとも遠からずといったところかしら」

 

む、ハズレか。しかし遠からず、か。なんか悔しいな

 

「正解は奉仕部よ。ようこそ山崎くん。歓迎するわ」

 

そう言って微笑んだ彼女が俺には輝いて見え、とても眩しかった




ということで第1話でございました
一応数話書きだめてはいるのですができるだけ一定間隔で投稿したいと考えていますのでその辺りはよろしくお願いします

感想、評価、お気に入り登録、誤字報告をよろしくお願いしますお願いしますm(_ _)m

それでは


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2話 元カノとの再会は気まずい。とても

第1話投稿から24時間で315UA…
ありがとうございますm(_ _)m


俺が奉仕部に入部した翌日

 

「それで入部したのか」

「まあな。断ろうとはしたが問答無用だったわ…」

「そいつは、ドンマイとしかし言えねえな」

「お前、絶対楽しんでるだろ?」

「ソンナワケナイジャナイカ」

「思いっきり棒読みじゃねーか!!」

 

そう言いながら俺は親友であり家族以外で唯一、心を許している柏原真樹の腹を殴る。殴った俺の拳は彼の肉壁(脂肪とも言う)にポヨンと擬音を放ったかのように阻まれる。もちろん俺も本気で殴っている訳ではなくいつも通りのただのじゃれ合いである

 

「ハッハッハッ。効かんよ」

「…そうか」

 

フンスとドヤ顔を決める親友に追撃として逆の腕で横腹を刺す

 

「ちょ、横腹はあかーん!!」

「勝ったぜ」

 

横腹に刺さった瞬間少しオーバーすぎるリアクションで後に跳ぶ。ここまでがいつもの流れである。ちなみにどうでもいいことであるが彼は卓球部に所属しているため見た目とは裏腹に素早い

 

「でもなあ、まさかこのスマホに女子の番号を追加する日が来るとは思わなかったぜ…」

「間違っても悪用するなよ?それで。ザキはその奉仕部とやらに行かなくてもいいのか?」

「ん?ああ、行くよ。なんだかんだで楽しそうだしな。あと、悪用のしようがないと思うのだが…」

「そうかじゃあ俺もそろそろ部活に行くとしよう」

「おう」

 

そんじゃまたなと言葉を交わしつつそれぞれの部室がある方へと足を向け別れた

 

♢

 

昨日も聴いた小君のいいリノリウムの床の音を誰もいない廊下に響きわたらせる。外から聴こえる運動部の掛け声に合わせてみるとなかなかに楽しいと思うのは俺だけだろうか?

と、そんな事を考えながら歩いているうちに部室前に着く。扉に手を掛け一息つく。暇な時はだいたい読書をしていると聞いていたので、できるだけ小さな音になるように静かに戸を開ける

 

「失礼しまーす?」

「あら、山崎くん。いらっしゃい?でも、なぜ疑問形なのかしら」

「いや、だってほら昨日入ったばかりで自分の立ち位置わかんねーから。てか雪ノ下さんだけなのね」

「一応ここの鍵を開けているのは私だし、ほかの二人は何をしているのか少し遅し」

「ん?ほかの二人?」

「ええ。ここの部員はあなたを含めて4人よ」

 

あれ?部員って雪ノ下さんと比企谷君だけじゃないの?俺含め全員で4人だったの?とゆうか誰だよこんな部活に入る物好きはさ

そんな事を思っているとガラッと勢いよく扉の開く音が教室に響く。そちらに目を向けると同時にタンッと着地した音が響き、それに合わせて揺れるピンクがかった色の髪が目に付く

 

「ゆきのん、やっはろ〜」

 

「…うわあ、マジかよ。」なんであなたがここにいるんですかね、由比ヶ浜結衣さん

 

「あれ、ユウくんだ」

「山崎くん?今のは?」

「え?もしかして声に出てた?」

「ええ。何か嫌なことを思い出したかのような声音だったわ」

「私のことガン無視!?」

 

やっぱ俺、この部に入部したの間違いだったかも…

 

♢

 

「なるほど、それであんなに嫌そうな声音だったのね」

「ああ、今までできるだけ避けてきたのにこんなところで一緒になるとは思ってなかった…」

「あはは〜、ほんとそうだよね。まさか自分から別れ話を切り出した元カノにこんなところで出会うとは思いもしないよね」

 

そう、今、彼女が言ったように俺と由比ヶ浜結衣は中学の時、付き合っていた事があった。まあ、俺の個人的な理由で半年ぐらいで別れたんだが…

 

「でも気にしないでユウくん。私も全然気にしてないし、また昔みたいに結衣って呼んでくれていいから。むしろまた一緒に通学してもいいんだからね」

「お、おう」

 

ズイッと迫ってくる彼女に圧倒される。

でもね、そう簡単な事じゃないんだよ?なんで避けてたか分かってる?気まずいからですよ?さらに家が近所だから気まずすぎたんですよ、俺が。とゆうか今、この空間がすごく気まずい…。助けてくれ、比企谷君。

という願いが神に届いたのか直後にカラッと軽い音をたてて戸が開く

 

「ウッス」

「おお、神よ、我を救たまえ」

「うっわ、なんだ」

 

俺は気だるそうに入ってきた比企谷君の前に片膝をつき天に祈るポーズをしていた。それを見た比企谷君はかなり引いていた

 

♢

 

「なるほどな。それはどう考えてもお前が悪いよな、うん」

「デスヨネー」

 

事情を知った比企谷君に突き放され俺は棒読みで答える。つらい

 

「でも、まあ、由比ヶ浜が気にしてないって言うのならそれでいいんじゃねえか?」

「うん、ヒッキーの言う通りだよ。私は全然気にしてないしむしろまた仲良く出来るっていうのはいい事だと思うし」

「…。はあ、俺の負けだな。これからまたよろしくな、由比ヶ浜」

「昔みたいに結衣っ呼べし」

「あ、ああ。それはまたおいおい、な」

 

きっと、俺は少し気まずそうな顔をしながら頬を掻くと同時に叫びたくなった。

誰か助けてくれ、と




仕事の決起大会で呑みすぎて二日酔いでございます

新入社員の1人と好きなアニメのキャラが丸かぶりしててとても楽しかったです、はい。彼とは今後ともいい付き合いをしていきたいものです

さて、一応2話目でした。まだまだ探り探りで書いていることろなので表現がおかしかったりするかもしれませんが大目に見てください

また、誤字報告やお気に入り登録などもよければよろしくお願いします

それではノシ


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3話 どこか材木座義輝とは近いものを感じる

前話の感想にて書き方の指摘を受けたのですが既に1巻分は書き終えてしまっているので2巻以降から適応させていきます

これからも頑張りますよ

では3話をどうぞ・:*+.\(( °ω° ))/.:+


 

 

由比ヶ浜との再会から数日、気まずさはあったが一応部室には足を運んでいた。まあ部活とは言っても何をする部活なのかは未だによく分かっていないのだが。聞くところによると生徒のお願いを聞きその手助けをする部活らしいのだが…

 

「行くぞ由比ヶ浜。……第一問、打ち身で出来てしまう内出血の事を何という?」

「青なじみ!」

「くっ!正解だ。まさか千葉の方言まで押さえているとはな……。では、第二問。給食のお供と言えば?」

「みそピー!」

 

と、何故か千葉県横断ウルトラクイズが始まっていた。てか、みそピーって千葉の給食の定番だったのかよ。妙に出る回数が多いなとは思っていたけど…

 

「横断でも縦断でもいいのだけれど1人、ついてこれてないわよ?」

「「え?」」

「すまん。さっぱりわからん」

「えっと、もしかして山崎は千葉出身じゃないのか?」

「ああ、そのもしかして、だ。親の転勤の都合で千葉に越してきたからな。未だに千葉の事は分からないことだらけだ」

 

そう言うと比企谷君と由比ヶ浜は少し驚いた顔をしていた。

ほんと、千葉県横断ウルトラクイズなんてものがあるなんて知らなかった

 

 

♢

 

 

次の日の放課後…。部室へ向けて足を進めていると前に見知った背中を見つけた

 

「よっ、比企谷君」

「ん?ああ、山崎か」

「前から気になってたんだけどいつも読んでるのってラノベだよね?」

「ブックカバー付けてるのによく分かったな…。まさか?!」

「ま、そういうことかな」

 

そう言いながら俺は笑いかける

比企谷君も少し笑う。顔はひきつりかけてるが…

 

そんな感じで一緒に部室に向けて歩いていると雪ノ下さんと由比ヶ浜が扉の前で立ち尽くしているのが目に入る。どうやら少しだけ開けた扉の隙間から中を覗いているらしい。

そんな2人に比企谷君が声をかける

 

「何してんの?」

「ひゃうっ!」

 

あ、今の驚き方すっげえ可愛い。なんつーか本当に心から驚いてて警戒心的なのをむき出しにしてるのがなんとも言えない。最高だわ

 

なんていうアホな思考に囚われてしまう

 

「比企谷くんに山崎くん…。びっくりしたわ…」

「驚いたのは俺の方だよ…」

 

ああ、声をかけた比企谷君もびくってなってましたね。ちょっと挙動不審な人を見てるみたいでいなかったことにしようとしてしまったけど

 

「やあ、雪ノ下さんに由比ヶ浜。部室に何かいる?」

「不審人物がいんの」

「俺からすればお前らのが不審人物に見えたがな」

「いいから。そういうのはいいから。比企谷くん、中に入って様子を見てきてくれるかしら」

 

うわー、雪ノ下さん容赦ないなあ。4人もいるのに比企谷君を先に行かせるとかさ。比企谷君の目がさらに腐っちゃったよ

そんな状態でも行くんだね比企谷君…。君、将来いい社畜になるな…

 

比企谷君が扉を開くと海辺に立つ学校特有の潮風が吹き抜ける。そしてその風に舞うようにプリントが飛び交いさらには中にいる不審人物(?)が着ているコートがはためく

 

「うわあ。めっちゃ痛い人だ…」

 

そんな姿を見てつい呟いてしまう。その呟きが聞こえていたのかどうかは分からないがこちらに気づいた不審人物(?)がゆっくりとこちらに向き直る

 

「クククッ、まさかこんなところで出会うとは驚いたな。───待ちわびたぞ。比企谷八幡」

「な、なんだと!?」

 

いやいや、驚いたのに待ちわびたってどーゆうことやねん。意味わからへんわ…

で、この人誰?というふうに不審人物(?)の言葉にノッた比企谷君を見つめる

 

「比企谷くん、あちらはあなたのことを知っているようだけど…」

「あの、俺を盾にせんといてーや…」

 

雪ノ下さんが俺を盾にし比企谷君に問いながら不審人物(?)と比企谷君に交互に視線を投げかける

不審人物(?)はその視線に少し怯み比企谷君にいたっては知っているが知らないという顔をしていた

 

「まさかこの相棒の顔を忘れたとはな…見下げ果てたぞ、八幡」

「相棒って言ってるけど…」

 

雪ノ下さんに続いて俺を盾にしながら2人にものすごく冷たい視線を投げかける

 

「そうだ相棒。貴様も覚えているだろう、あの地獄のような時間を共に駆け抜けた日々を…」

「体育でペア組まされただけじゃねぇか…」

 

我慢しきれなかったのかこの空気に負けたのかは分からないがついに比企谷君が口を開く

 

体育のペアか。本当にあの好きなやつと組めってのはめんどくさいよな。俺みたいに友達が少なかったり比企谷君みたいにぼっちだったりすると

 

「で、何の用だ、材木座」

「む、我が魂に刻まれし名を口にしたか。いかにも我が剣豪将軍・材木座義輝だ」

「なんだ、ただの厨二病か」

 

こんなところで重症の中二病患者もとい厨二病患者に出会うとは思っていなかった。おかげで俺のひどい記憶も少し蘇った上に少しワクワクしてきてしまうわ…

って、あら?比企谷君?何故こっちを見てるのかな?それもそんな哀しい目で…

 

「あの…、ちゅーに病というのは何かしら?」

「中二病ね。簡単に言うと中学二年生くらいの特に男子によくある痛々しい一連の言動や行動を指すものの事を指すスラングだ」

「その中でもあいつの場合は重症だ。マンガとかアニメとかに出てくる能力や不思議な力に憧れて自分にもそういうものがあるように振る舞う。で、そういった能力を持つ以上必然性を付与するために設定を付与するんだよ。そしてその設定に基づいて行動するようになる」

「それがあの痛々しい格好と言動ってわけ」

 

そう言いながら俺は比企谷君に同属に向ける視線を投げると一瞬固まり視線を逸らされてしまった

その上、今の説明を聞いていた材木座君にも精神的にダメージを与えていたようで少し沈んでいたし雪ノ下さんと由比ヶ浜に関してはチンプンカンプンな上に俺達があまりにも詳しいため少し引いていた

 

「それで、何用かな、剣豪将軍とやら。見るところ、この原稿用紙が関連していると思われるが?」

 

とりあえず2人には引かれても構わないというスタンスで材木座君のキャラ設定に近そうな喋り方で案件を聞き出そうとする

 

「ふむ、我はそなたの事を存じ上げぬが言わずとも通ずるとはな」

「見たところ小説の原稿のように感じるがどうであろうか?」

「ご賢察痛み入る。いかにもそれはライトノベルの原稿である。とある新人賞に応募しようと思っているが、友達がいないので感想が聞けぬ。読んでくれないだろうか」

 

おい、サラッと自爆すんなよ。友達いないことを自ら晒しても心折れない事に関してはすごいとは思うがな

 

「なあ材木座。別に俺達に読ませなくても投稿サイトとか投稿スレとかがあるんだからそこに晒せばいいんじゃねえの?」

「それは無理だ。彼奴らは容赦がないからな。酷評されたらたぶん死ぬぞ、我」

 

ええぇ、そっち方向には心弱ぇのかよ…。まあ確かにそういうサイト読んでるとチラチラと酷評を見かけるもんな。そんなもの気にしてたらキリがないとは思うがな

 

「しかしなあ…」

 

そう言いながら雪ノ下さんの方に視線を向ける

比企谷君もそちらに視線を向けたのか雪ノ下さんはきょとんとする

 

「ああ、たぶん投稿サイトより雪ノ下が方容赦ないぞ?」

 

 

♢

 

 

その夜、材木座君から預かった原稿に少し目を通し読もうとしていたところに電話ががかかってくる

普段、電話がかかってくる事がないため着信音に気付かずなんの音だろうかという疑問を持ったのはここだけの話である

 

「ん?雪ノ下さんから?もしもし、どうしたんです?」

『遅くにごめんなさい。その、山崎くん、これは一体どういうものなのかしら…。この手のものを読んだことがないから全く分からないのだけれど』

「あー、読んだことないなら仕方ないよな、うん。材木座君は素人だから仕方ないとは思うけど面白いものはいくらでもあるよ。まあ、理解出来ないのなら無理に理解しない方がいい」

『そう。ありがとう。少し気が紛れたわ』

「おう、気が紛れたならよかった。無理はしないでね」

『ええ、もう少し読んでみるわ。それじゃあ』

「はいよ。おつかれさん」

 

それだけ会話して電話をおく。やばい、女子と電話なんてこんな話でいいのか…?

そんな事を頭の片隅で考えながら原稿を手に取った

 

 

♢

 

 

「あ〜、ねっむ。ホントなんであんなに強いんだよ。これもF〇Xエンジンの賜物ってか…」

 

絶賛寝不足のなか部室へと足を進める。寝不足の原因は材木座君の原稿ではなくメ〇ギアVであるが…

 

特別棟に入るとやけに元気な声と気だるげな声が響いてくる。この声は由比ヶ浜と比企谷君か。声の調子から由比ヶ浜は原稿読んでないんだろうなあ

そんな声を追いかけながら足を進めて行き部室に入る

 

「比企谷君も雪ノ下さんもおつかれ」

「ちょ、あたしは?」

「由比ヶ浜は読んでねーだろ?」

「うっ」

 

痛いところをつかれむぅっと唸りながら鞄から原稿を取り出す。その様子を見ながら席につきそして寝る体制を取るため机に突っ伏す

 

「なあ、山崎。材木座の原稿どうだった?」

「んー、途中までしかよんでないー」

 

あまりにひどい睡魔の影響で間延びした回答を返す

 

「頼もう」

 

扉がガラリと開かれ古風な呼ばわりと共に材木座君が現れる。その顔にはどこか優越感じみたものがある

 

「さて、感想を聞かせてもらうとするか」

 

そう言いながら空いた席にドカリと腰を落とす。

そんな材木座君を見ていると謎の愉悦感に包まれる。あっれえ、俺、愉悦部じゃないのになあ

 

「ごめんなさい。私にはこういうのはよく分からないのだけど…」

 

そう言って雪ノ下さんは一呼吸置き意を決した表情をする

 

「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」

「げふうっ!」

 

なんて綺麗な太刀筋だろうか。その一言だけで既に材木座君が椅子から滑り落ちそうになっている

 

「さ、参考までにどの辺がつまらなかったのかご教授願えるかな?」

「文法がめちゃくちゃね。なぜいつも倒置法なの?『てにをは』の使い方知ってる?小学校で習わなかったかしら?」

「ひでぶ!そ、それは平易な文体でより読者に親しみを…」

「そういう事は最低限まともな日本語をかけるようになってから考えることではないの?それと、このルビだけど誤用が多すぎるわ。『能力』に『ちから』なんて読み方はないのだけれど。だいたい、『幻紅刃閃』と書いてなんでブラッディナイトメアスラッシャーになるの?ナイトメアはどこからきたの?」

 

うわあ、やっぱ容赦ないなあその辺にしておいてあげないとほんとに死にかねんぞ。まあ、そんな依頼を文学少女という言葉が似合う雪ノ下さんにしてしまったのが運の尽きだよなあ

 

「ぴやあっ!」

 

あ、止め入っちゃった。可哀想に…。椅子から完全に落ちて四肢を投げ出しちゃったよ…

 

「雪ノ下さん、今回はその辺にしてあげて。その謎のルビ振りはラノベだとよくある事だから。キラキラネームみたいなものだから。作者が考えて考え抜いたすっげえカッコイイやつだから」

「そう…。まだまだ言い足りないけどまあいいわ。じゃあ次は由比ヶ浜さんね」

「あ、あたし!?え、えーと。む、難しい言葉をたくさん知ってるね」

「ひでぶっ!」

 

おーおー、一言で切り捨てるとは容赦ないですねえ。まあ読んでないし雪ノ下さんの言葉で既にボロボロになった材木座君をどう褒めるか悩んだ末にひねり出した言葉で悪意がないのは分かるがね…

 

「じゃ、じゃあユウくんどうぞ」

「あのなあ由比ヶ浜。逃げるように俺に振らないでくれよ…」

 

由比ヶ浜の指名につられ材木座君はすがるように俺に視線を向けてくる

やめろ。捨てられた子犬のような目でこっち見ないでくれ

 

「んー、そうさなあ。オリジナルでさらには賞に応募しようという意気込みや、やる気は評価できるポイントか、うん」

 

その言葉を聞き材木座君は「おお」と声を上げながら拳を握りしめて立ち上がる

 

「でもなあ、途中からその後の展開が読めたから失礼とは分かりつつも読むのやめて設定を読んだんだけど…ありがちすぎるんだよなあ。もう少しオリジナル要素追加した方がいいと思うよ」

 

終わりの言葉を聞きガクリと肩を落とす

 

「あとは…やっぱいいや。たぶん比企谷君も同じ事思ってるだろうから。んじゃ比企谷君、絞めちゃって」

「お、おい。締めるの字間違ってないか?」

 

その指摘を受け口笛を吹くフリをしながら材木座君の正面を譲る

 

「は、八幡。お前なら理解出来るな?我の描いた世界が。ライトノベルの地平が」

 

問われた比企谷君はわかっているという顔で材木座君に頷く。それを見て材木座君の目が輝きお前を信じていると告げる

 

「で、あれって何のパクリ?」

「ぶふっ!?ぶ、ぶひ…ぶひひ」

 

材木座君はゴロゴロと床をのたうち回り、壁に激突して動きを止め、そのままピクリとも動かなくなった。彼の頬を一筋の涙が伝ったのが見えたのは気のせいではないだろう

 

「いや〜、比企谷君容赦ないなあ」

「いや、同じ感想抱いてたんだろ?」

「まあね。でももう少しオブラートに包んであげなよ、体育の相方なんだし」

 

まあそんな姿を見ながら愉悦感に浸りかけている俺は相当な悪なんだろうけどさ。あれ、俺って愉悦部に片足突っ込んでね?そのうち材木座君に激辛麻婆豆腐食えとか言わないよな?

そんな事を考えていると材木座君は立ち上がり埃をはらいながら一言呟く

 

「また…読んでくれるか?」

「ん?ああ、俺は構わないけど」

「お前、あんだけ言われたのにまだやるのかよ」

「ドMなの?」

 

素人であろうが誰が書いたものを読むのはこちらとしても楽しいし勉強になるからありがたい。自分自身、二次創作とはいえそういった事をしているのだから

しかし違う視点で見るとそれはもう素晴らしいくらいのドMに見える。あれ?俺も同じ側に立ってね?

 

「我はドMではない、たぶん。しかし、だ。酷評されようともやはり嬉しかったのだ。自分が好きで書いたものが誰かに読んでもらえるということが、感想を言ってもらえると言うのが」

 

ああ、俺は材木座君に対してひとつ勘違いをしていたようだ。彼は厨二病など既に卒業している。卒業してグレードアップした作家病にかかっているのだ

その気持ちは俺にも痛いほど分かる。だから読まないわけがない。彼が突き詰めてたどり着いた境地なのだから。それを諦めずけっして曲げず足掻いた末に形にした証なのだから

 

「また新作が書けたら持ってくる」

 

そう言って清々しい笑顔を浮かべ親指を立てながら去っていく姿に俺は何を見たのだろうか。あれも青春のひとつの形なのだろうか

 

 

♢

 

 

あれから数日がたった。あの後も材木座君は小説を書き続けているようだ

 

「で、山崎は何やってんだ?」

「ん?なんか材木座君を見てたら自分の中で忘れかけていた熱を思い出してね。絶賛、執筆中」

「はあ!?」

「あれ?言ってなかったっけ?一応、俺も二次創作小説書いてるって」

「いやいやいや。聞いてないんだけど?」

「ははは、言ってなかったかあ。まあ、こんな感じで書けるのは彼のおかげかな」

 

俺も二次創作小説の執筆を再開した。そういったところでは彼に感謝しないとな

 

願わくば彼の小説が沢山の人の目に触れますように




感想の返信でも書きましたが僕の中では山崎祐介は比企谷八幡の上位互換として書いているわけではありません

それだけはここでも書かせておいてください

感想、評価、お気に入り登録、誤字報告お待ちしております

それではまた次話でお会いしましょう。しーゆー


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4話 なぜ戸塚彩加はあんなに可愛いのだろうか


久々の更新です

(いるかは分かりませんが)お待ちしていた皆様、本当に申し訳ありません

では第4話をどうぞ


 

4限の終了のチャイムが鳴り響き、クラスメイトの皆は銘々に昼食をとるために動き出す。

俺も柏原と一緒に昼食を食べるために動き始めていたのだが

 

「あ゙あ゙!!購買で買うの忘れてた!!」

「やっちまったな」

「てことでカンパして」

「やだよ命の源、焼きそばパン」

 

と、まあ俺は昼食を購入し忘れ某アニメ会社制作のアニメのオープニングの歌詞で柏原にカンパを募りその曲のまま返された

てかよくまあ焼きそばパン持ってたな、おい

 

「まあとにかく今から購買行ってくるから先食べててくれ」

「おう。きーつけてな。あ、あとついでにコーラ買ってきてくれ」

「はいよー」

 

♢

 

購買でいくつかパンを買い教室へ戻ろうとしていた時、ふと見知った後ろ姿が視界に入る。そちらに向け足を運ぶとやはり彼であった

 

「やあ比企谷君」

「んあ?ああ、山崎か」

 

購買で買ったであろうツナおにぎりを口に運ぶ彼に声をかけ隣に腰を下ろす。女テニの子が自主練をしているのかポンポンと一定の感覚で打たれるボールの音が聴いていて心地よい

 

「…いい場所だね」

「だろ。俺のベストプレイスだ」

 

そんなたわいもない話をしながら俺も自身の食料を口に運ぶ。今日のお昼はメロンパンにした。ふわっとした食感と共に口腔内に広がる甘み。最高である。そんな事を考えているとひゅうっと風が吹く。朝方は海から吹き付ける潮風が、元いた場所に帰るように陸かららの風向きに変わった

 

「あー、すっげえ最高。一定間隔で聴こえるボールの音にこの良い風。ずっとここにいたい…」

「めちゃくちゃ気に入ってるな、おい」

 

くそ。校内にこんな場所があるならもっと早く知っておきたかった

 

「あれ?ヒッキーにユウくんじゃん」

 

落ち着いた雰囲気に眠気を誘われながら風を感じていた時、聞き覚えのある声に呼ばれた。というか聞き覚えどころか毎日のように部室で聞いているし俺と比企谷君を今の呼び方で呼ぶ人物など1人しか知らない。だからあえて聞こえていないふりをする

 

「なんでこんなとこいんの?」

「普段ここで飯食ってんだよ。山崎はたまたまだ」

「へー、そーなん。なんで?教室で食べれば良くない?」

「・・・」

 

おい由比ヶ浜、今の言葉が比企谷君の心をどれだけ傷つけたか自覚あんのか?いや、ないでしょうね、アホの子だし。まあ悪気があった訳では無いのはわかるが

 

「で、由比ヶ浜はなんでここにいんの?」

 

比企谷君が心に少しの傷を負い黙りこくってしまったので仕方なく話題を振る

 

「それそれっ!じつはね、ゆきのんとのゲームでジャン負けしてー、罰ゲームってやつ?」

「俺と話すことがですか…」

 

あっ、比企谷君かなりダメージ受けて自虐に走っちゃってる。これあかんやつや

 

「ち、違う違う!負けた人がジュース買ってくるってだけだよ!」

 

あー、なるほどね。でも雪ノ下さんがそんな物に乗りそうにもない。むしろ「自分の糧は自分で手に入れるわ。」とか言いそうなんだけどなあ

 

「ゆきのん、最初は『自分の糧くらい自分で手に入れるわ。そんな行為でささやかな征服欲を満たして何が嬉しいの?』とか言って渋ってたんだけどね」

 

あ、やっぱり言ってたんだ。てか雪ノ下さんのモノマネが死ぬほど似てないな

 

「まあ、雪ノ下さんらしいね、うん」

「けど『自信ないんだ?』って言ってたら乗ってきた」

 

うっわ、思いっ切り挑発してるし雪ノ下さんもそんな挑発に乗っちゃうのかよ

 

「でさ、ゆきのん勝った瞬間、無言で小さくガッツポーズしてて…、もうなんかすっごい可愛かった…」

 

なん…だと…!?その様子めっちゃ見たかったわ。てか想像してみるだけで可愛いし。目の前で見てみたいものだ…

 

そんな通常の思考からズレたことを考えているうちに何故か話は入学式の事になっていた

 

曰く、比企谷君は入学式当日、犬を助けて事故にあっているらしい。ん?入学式当日に犬を助けて事故?そういや親が誰かがその日に犬を助けてもらって助けてくれた人が車と衝突したとか言う話をしていた事があったな…。あれ誰だったかな。ご近所さんだったような記憶があるんだけど…

 

そんな話をしながら由比ヶ浜は真っ赤になった顔を(なんで真っ赤になってるのかは話をちゃんと聞いてなかったから知らん)誤魔化すように笑ってテニスコートを見る。それにつられて俺も比企谷君も視線をそちらに向けると壁打ちをしていた女テニの子が汗を拭いながら戻ってくるところだった。

 

「おーい!さいちゃーん!」

 

由比ヶ浜が手を振って声をかける。呼ばんでいい、呼ばんで。

その子は由比ヶ浜に気づくと、とててっとこちらに向かって走り寄ってくる。

うん、可愛いからさっきのはチャラにしておこう

 

「よっす。練習?」

「うん。うちの部、すっごい弱いからお昼も練習しないと…。お昼も使わせてくださいってずっとお願いしてたらやっと最近OKが出たんだ。由比ヶ浜さんと比企谷くんと山崎くんはここで何してるの?」

 

うっわ、健気。可愛い上に健気ってもう素晴らしすぎるやん。笑顔も最高だし。守りたい、この笑顔。あれ?でもなんで俺の事知ってるん?

 

「さいちゃん、授業でもテニスやってるのに昼練もしてるんだ。大変だねー」

「ううん。好きでやってる事だし。あ、そう言えば比企谷くん、テニスうまいよね」

 

突然話を振られ戸惑いお前誰的な表情を浮かべる比企谷君。それより先にへーっと感心する由比ヶ浜。おい、由比ヶ浜。そろそろ誰か教えてくれや

 

「そーなん?」

「うん、フォームがとっても綺麗なんだよ」

「い、いやー照れるなー。はっはっはっ。で、誰?

うん。俺もわからん

 

最後の方は由比ヶ浜と俺だけに聞こえるくらいの声で相手に配慮していたため俺もそれに習って答えるがそれをぶち壊しにするのが由比ヶ浜である

 

「っはあぁ!?ヒッキー同じクラスじゃん!体育一緒でしょ!?それにユウくんは1年の時同じクラスでしょ!なんで名前覚えてないの!?信じられない!」

「ばっかお前、超覚えてるよ!うっかり忘れちゃっただけだよ!っつーか、女子とは体育ちげぇだろ」

「そうだぞ、由比ヶ浜。1年の時のクラスメイトだったからド忘れしているだけだ。それも女子だから特に。てかなんで1年の時のクラス知ってんだよ」

 

俺たちの気遣い台無しにしやがって…。俺達がこの子の名前知らないの丸わかりじゃねぇか。まあ比企谷君の場合は現クラスメイトなんだから知らないというのはちょっとあれだけどさあ

 

「あ、あはは。やっぱりぼくの名前覚えてないよね…。戸塚彩加です」

「い、いや悪い。クラス替えからあんまり時間たってないから、つい、こうね、ね」

「ほんとすまない。1年の時なんざ友達と話してること多かったのと親友以外に頼るつもりがなかった上にクラスになんてほとんど目を向けてなかった」

「比企谷くんも1年の時クラスメイトだったんだよ?それにぼく、柏原くんとは結構話をしたことあるんだけどなあ…。やっぱりぼく影薄いから…」

 

おいおい、比企谷君。言い訳出来てな…ん?今なんて?比企谷君も1年の時、同じクラスだっただと!?あっれえ、なんで俺知らなかったんだろうか。そういや確か入学してから1ヶ月ほど休んでた奴いたなあ。覚えてなくてほんとすまない。

てかこの子ぼくっ子なのか。最高やな!!しかし柏原とかなり話したことがあるだと?親友よ、ようやくお前にも春が来たのか?

 

「それにぼく、男なんだけどなあ…。そんなに弱そうに見えるかな?」

「「え」」

 

俺と比企谷君の声がハモり、一瞬、ピタッと動きと思考が停止する。それから2人してバッと由比ヶ浜の方を見る。嘘やんな?え?冗談やんな?と視線で問うと由比ヶ浜はうんうんと頷く

ええ〜、ホントでござるか〜?でゅふふふ、冗談でござろう?え、冗談やんな?え、冗談じゃないってことは男の娘?え、何それ最高やないか。うん

 

そんな疑いと期待の眼差しに気づいた戸塚君(君でいいのか?)は真っ赤な顔で俯いてから、上目遣いで俺たちを見ると手がゆっくりハーフパンツに伸びる。その動きがいやに艶めかしく、さらに期待していまう自分がいる。こふっ。もうダメかもしんない

 

「…証拠、見せてもいいよ?」

 

ガラガラと俺の中で何かが崩壊する音が聞こえ、俺の右耳で聞き覚えのあるキャラの声が囁く。

『いいじゃん、いいじゃん。見せてもらおうよ。もしかしたらすっごくラッキーなことになるかもしれないよ?』うん、そうだな。なかなかあるチャンスじゃあないしな。

『待ちたまえ』おお、来たか。右耳で聞こえたキャラの相方として描かれることの多い似たキャラが。『全く君は何を言ってるんだ?そんな事しなくても彼が男というならそれでいいじゃないか』

『ええー、デオンは真面目すぎるんだよ。どうせなら上も脱いでもらうのはどうかな』おいおい、最初のキャラよ、なんて素晴らしい提案をしてくれてんだ。

俺の理性というものは最初のキャラの影響により半ば蒸発していた

 

「そういう事なら上m」

 

スパーンっと子気味のいい音を発しながら由比ヶ浜に頭をはたかれたことにより俺の発言は途切れてしまう

ええ、最後まで言わせてくれよ。ほら、比企谷君が謝ったじゃないか。まあ瞳にたまった涙をぶんぶんと振り払ってからにっこり笑う姿が可愛いからいいけどさあ。てかあれだな。これはいつか戸塚くんにあのコスプレしてもらいたいな。きっと似合う。だってあのキャラも一応性別不詳だし。これは決定だな。うん

 

そんな暴走している思考の端で昼休み終了を告げるチャイムが聴こえてくる

 

「戻ろっか」

 

戸塚君の言葉に由比ヶ浜も後に続く。あっれ、そういえば何か忘れているような…

 

「あっ」

「ん?どうした?」

「ジュース買ってきてくれって言われてたの忘れてた…」

「あっ!私もだ」

 

♢

 

それから何日か過ぎた放課後。部室のドアを開けると

 

「無理ね」

「いや無理ってお前さー」

「無理なものは無理よ」

 

何故か比企谷君と雪ノ下さんが言い争っていた

 

事の発端は比企谷君が戸塚君から相談された事をさらに雪ノ下さんに相談したことから始まるらしい。

なんでも比企谷君がテニス部に入部して力を貸してほしいと言われたそうだ。それを雪ノ下さんが一刀両断して軽く言い争いのようなものに発展したらしい

 

「なるほど。確かに集団行動に適してない比企谷君が入部したところで意味はあまりないかな。それでも戸塚君の力になってあげることは可能じゃないのかな?」

「くっ、ここにも敵がいたか」

「いやいや、僕は中立だよ?ほら比企谷君、この部活の理念は?」

「そうか、その手があったか。それなら今から」

 

比企谷君が教室から出ようとして戸に手をかけると同時にその戸が開かれる

 

「やっはろー!」

 

そしてお気楽そうな明るい声で間の抜けた挨拶が教室にこだまする。その挨拶に少しズッコケそうになりながら返事をする

 

「おう、なんか今日はやけに楽しそうだな?」

「ふふん、今日は依頼人を連れてきてあげたの。ほら、さいちゃん」

「あ、うん。あ、比企谷くんに山崎くん」

 

とててっと俺と比企谷君の方に歩み寄り、比企谷君の袖口をきゅっと握る。ああ、かわいい。和む。これで男とか世の中どうなってんだか…

 

「ほら、あたしも奉仕部の一員じゃん?だからちょっとは働こうと思って」

「由比ヶ浜さん」

「ゆきのん、お礼とかそういうの全然いいから。部員として当たり前のことをしただけだから」

「由比ヶ浜さん、別にあなたは部員ではないのだけれど…」

「違うんだ!?」

 

あっれえ!?この前部員として数えてたよね?え?どゆこと?

 

「ええ。入部届をもらっていないし、顧問の承認もないから部員ではないわね」

 

あー、そういう事ね。ルールに則った場合はまだ入部扱いじゃない、と。でも心では認めてるんだよな。ツンデレか

 

「書くよ!入部届けくらい何枚でも書くよっ!仲間に入れてよっ!」

 

どんだけこの空間気に入ってんだよ。雪ノ下さんに懐きすぎだろ、おい

 

「で、戸塚彩加くん、だったかしら?何かご用かしら?」

「あ、あの…、テニスを強く、してくれる、んだよ、ね?」

 

最初こそは雪ノ下さんを見ていたが冷たい視線に射抜かれているのに耐えきれなくなったのか語尾に向かうにつれて戸塚君の視線は比企谷君の方へと動いていた。うん、小動物のようでかわいい。比企谷君、ちょっと立場変わってくんね?

 

「由比ヶ浜さんがどんな説明をしたのか知らないけれど、奉仕部は便利屋ではないわ」

「ついでに言うと万事屋〇ちゃんでもな、すいません何でもないです」

 

戸塚君の気を紛らわせようと少し冗談を挟もうとしたが思いっきり睨まれてしまった。怖すぎだろ…

 

「あなたの手伝いをし自立を促すだけ。強くなるもならないもあなた次第よ」

 

その言葉を聞き落胆したように肩を下げる戸塚君。きっと由比ヶ浜に調子のいいこと吹き込まれたんだろうな。ゆきのんがいるから大丈夫とかって

他のふたりは由比ヶ浜の方に視線を向ける。その視線に気づき由比ヶ浜は顔を上げる

 

「へ?何?」

「何、ではないわ。あなたの無責任な発言で1人の少年の淡い希望が打ち砕かれたのよ」

 

雪ノ下さんの容赦ない言葉は由比ヶ浜に襲いかかるが小首を捻る

 

「んん?でもさー、ゆきのんとヒッキーなら何とかできるでしょ?」

 

あら、俺は戦力外ですか。そうですか。まあ、運動苦手だしね。とゆうか嫌いだし、やらないで済むならそれに越したことはないな、うん

 

「・・・・・・ふぅん。あなたも言うようになったわね、由比ヶ浜さん。そこの男はともかく、私を試すような発言をするなんて」

 

ニヤッと、雪ノ下さんが笑う。普段クールな感じなので何故かかっこよく感じてしまう。

しっかしこれはやばいスイッチ入ったんじゃないのか?これは早々に逃げておいた方が身のためだろうな。

そう思いこっそりカバンを手に取り気配を消しながら扉の方へ向かう。よし、バレてないバレてない。今のうちに

 

「山崎くん?どこへ行くのかしら?」

「ひっ!?いや、あの、喉が渇いてきたから飲み物でも買いに行こうかなって」

「カバンを持って?飲み物を買うだけなら財布だけでもいいわよね?」

「いやー、ほら、カバンの中身とか見られると嫌やん?だから」

「あなた1人逃げようたってそうはいかないわよ?」

「・・・うぃす」

 

バレてるー。こうなってしまってはもうダメだ。作戦を変更せねば

 

「戸塚くん、あなたの依頼を受けるわ。あなたのテニスの技術向上を助ければいいのよね?」

「は、はい、そうです。ぼ、ぼくがうまくなれば、みんな一緒に頑張ってくれる、と思う」

 

凍てつく氷の(ような)視線を俺から向けられ威圧されたのか、戸塚君は比企谷君の背中に隠れながら答える。ほんと戸塚君って小動物のような感じだよなと感じながらもどこで逃げるかを思案する。うん、テニスコートへ向かう時にでも姿を消せばいいか。後からが怖いけど

 

「ふむ、戸塚くんは放課後はテニスの練習があるのよね?では、お昼休みに特訓をしましょう。コートに集合でいいかしら?」

 

おっ、お昼休みか。逃げるにはうってつけのタイミングだな。これは勝った

 

「それって、・・・・・・俺も?」

「当然でしょう、比企谷くん。ああ、山崎くん、あなたもよ」

 

うそーん。逃亡失敗やん

 

♢

 

時は流れ次の日の昼休み。俺は昨日の案件からどう逃げようかと考えながらテニスコートに向けて重い足で廊下を歩いていた。そんな時、痛い笑い声と見知った人影が目に入る。おお、あれは比企谷君と材木座君ではないか。よし、上手いこと行けばズラかれる。

 

「やあ、比企谷君に材木座君。こんな所で奇遇だね。何してんの?」

「おお、貴殿は!」

「山崎か。いいタイミングで来てくれた」

 

え?いいタイミング?どゆこと?

 

「俺たちはこれから用事があるんだ。な、山崎」

「あ、うん。そうだね」

「ば、バカな。八幡と山崎殿に予定なんてあるわけが」

「酷い言われようだな、おい」

 

ほんとひでぇや。材木座君は俺の行動パターン知らんやろ?え、もしかしてストーキングしてて知ってるとかあるん?怖すぎやろ

 

「や、ほんと予定あるから」

「た、頼む。このプロットだけでも受けってはくれぬか!?」

「プロット!?読む!今すぐ読むよ!」

「おい。ほんとそろそろ行かねーと氷漬けにされんぞ」

 

んだよ、プロットだぜ?そっちの方が大切やん?

興奮のあまり材木座君の肩を掴んだその時である

 

「おーい、比企谷くーん、山崎くーん」

 

元気な少し高めの声が聞こえてくる。

こんな声のことをソプラノだっけアルトだっけ?と考えていると戸塚君が比企谷君の腕に飛びついているのが目に入る

なんだかなぁ。ほんと男って信じられんよなあ

 

「ちょうどよかった、一緒に行こ?」

「お、おう…」

「あ、俺は材木座君の書いたプロットを読んでか」

「は、八幡…。そ、その御仁は…」

 

材木座君が驚愕の表情を浮かべ比企谷君と戸塚君を交互に見る

 

「き、貴様っ!裏切っていたのかっ!?」

「や、裏切るってなんだよ…」

「黙れっ!半端イケメン!失敗美少年!ぼっちだからと憐れんでやっていれば調子に乗りおって…」

「半端と失敗は余計だ」

「そうだぜ、材木座君。比企谷君は普通にイケメンで美少年だからな」

 

ほんと羨ましいよな。メガネかけたらさらにかっこよくなると思うんだが…。

そんな思考を他所に材木座君は鬼の形相で唸りながら比企谷君を睨みつける

 

「絶対に許さない…」

「材木座君、ステイ。戸塚君は男だ。…たぶん」

「嘘だ!!こんな可愛い子が男の子なはずがない!」

「確かに可愛いがそれが真実なんだ…」

「そんな、可愛いとか、ちょっと…困るな」

 

戸塚君は俺と材木座君の発言に少し頬を染めながら比企谷君の影に半ば隠れる

 

「あの、比企谷君達の、お友達?」

「いや、どうだろうな…」

「どちらかと言うと同業者?」

「ふんっ。貴様らのような輩共が我の強敵でも同類でもあるはずがない」

 

ええ、そんな拗ねないでよ。気持ちは分からんでもないけどさあ。何となく思ってたけど材木座君って超めんどくさいんじゃないだろうか

 

「戸塚、山崎、行こう」

「せやな。遅れたらあとが怖い」

 

そう同意し俺はしぶしぶながらも足をテニスコートに向けて進める。しかし、戸塚君が動かないことに気が付き歩みを止める

 

「材木座くん、だっけ。比企谷くんと山崎くんのお友達なら、ぼくともお友達になれる、かな。そうだと嬉しいんだけど。ぼく、男子の友達ってあんまり多くない、から」

 

そう言って戸塚君は、はにかむように微笑む。かー!可愛すぎかよ。ハニカミ王子なんて目のもんじゃねえ。本当のイケメン天使はここにいる

 

と、またしてもアホみたいな思考に囚われているうちに比企谷君達はテニスコートに向かい始めていたためその後を追う

 

この集団、傍から見るとあれだな。まるでドラクエだな。みんな、雪ノ下さんというラスボス倒すの頑張ろうな

 

 

ちなみにテニスコートに着いた我らがパーティーは死ぬ1歩手前の筋トレにより全滅した





投稿していなかったあいだにバンドリ始めてその影響で二次創作小説探してたらとある方のものにハマりましてね。
その小説のオリ主がなんとまあ救われないことか…。おかげでそういった小説にも目覚めてしまいました


ではまた次回の更新でお会いしましょう。シーユー


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