もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について (森野熊漢)
しおりを挟む

出会い

ある程度好きなようにかけるものが欲しくて書くことにしました。
次はいつ書けるかは未定です。


追記…すみません、手違いで早々に消してしまいました。復旧にも少し時間がかかりました。申し訳ありません。


まずい……」

 

俺こと、片梨 輝(かたなし ひかる)は呆然としていた。

 

いや、呆然とせざるを得なかった。

 

だってそうだろう。

 

「わーい!」

「ブーメラン、ブーメラン!」

「もう、当たるじゃない!」

「ほらほら、羊ちゃん。ダメよ飲みすぎたら」

「ひぃーっく、うさぎはうるさいのらー」

「み、水……(ビチビチ)」

 

 

「なんだ、これ……」

 

朝起きると我が家が、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していたのだから。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

事の発端は、俺の謎の言動だったと思う。

俺は昔から学校の友人と「二次元に行けたらな」みたいな、到底叶うはずのないことを真剣に話し合っていたのだが。

まあ、学生時代は終わりを告げ、その後就職したものの、やはりそういうものには憧れが残っていた。だからだろうか。

とある思考に俺は至った。

 

「そうか、二次元をこっちに呼び寄せられたらよくね?」と。

 

 

いや、今考えたら、これまで以上に頭のおかしい発想だったと思う。しかし、この時の俺は天啓でも得たかのごとく、はしゃいでいた。

 

きっと疲れがピークなのとストレスがマッハだったのとその他もろもろが原因だったんだ。しんどいと現実逃避したくなるっていう人間の悲しい性だったんだ。あと酒が入ってた。

 

そこからの俺の行動は早かった。

まず一番俺がこちら側に呼び寄せたい二次元キャラは何か。これを考えるところから始まったのだが。

 

「いやまあ、当然これでしょ」

 

俺はリビングでノートPCを起動し、とあるフォルダを開く。

そこに書かれていたのは。

 

「もんむす・くえすと!ぱらどっくすRPG」

 

一応最近発売された中章である。あ、これ18禁だからね。よい子は18歳になるまで手を出しちゃだめだぞ!

 

一応本編である「もんむす・くえすと!」も同じフォルダ内にあるのだが、まあキャラの多さで言えばぱらどっくすだろうということで、俺の中で呼び出したいゲームはこれに決定。

 

さて、次のステップはというと。

 

「もんむすのみなさん、元気ですかー!」

 

地道に画面に向かって呼びかける。挨拶はやはり大事だからね。営業でもきちんとした挨拶から入らないといけないし。ほら、いきなり「出てこい」とか言われるよりも、きちんと挨拶から入って呼びかけた方が印象いいよね?

 

重ねて言うが、この時の俺は酒が入ってた。酔っ払いだったんだ。明日が休みだからって調子に乗って飲み過ぎたんだ。だからこんな頭の悪い行動をしてたんだ。

 

「うーん、出てこないか―、かといって、ここでプレイしたら余計に出てこないだろうしなー」

 

どうしたものかと考え続けること15分。

 

「あーもう、無理!寝る!」

 

さっさと寝ることにした。

 

PCの電源を落とすのも面倒だったのでそのままにしておく。明日休みだし、起きてから消したらいいや。

 

そう思いながら部屋に戻って布団にダイブ。そのまま寝てしまった。

 

それが大きな過ちだとも知らずに。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「とりあえず、これどうしたらいいんだ……」

 

現在俺は、扉の隙間からリビングの様子を伺っている。

ぱっと見るだけでもリビングにいるメンツは。

 

スライム娘二体。

ハーピィ娘。

うさぎ娘。

羊娘。

頭が魚で下半身が人間な残念なマーメイド。

 

「どうしよう話が通じそうなのが少ししかいない!?」

 

俺の中で話が通じそうなのと言うと、うさぎ娘さんだけである。

何故か。順に理由を上げるならば。

 

スライム娘……夢中でブーメラン振り回してて会話が可能か不明。

ハーピィ娘……襲われそう。

羊娘……酔っ払いは帰ってくれないか。

残念なマーメイド……さっき即死した(戦闘不能)

 

「うわぁ……」

 

なんだろう、自分の家なのに自分が居づらい。

 

「あの、さっきから何されてるんですか?……一応音でそこにいらっしゃるのはわかってたのですが」

「……!」

 

ばれてた。仕方ないのでドアを開けて姿を現す。

 

「わーい」「にんげんだー」

「ん?人間?しかも男!?」

「あらあら、うふふ」

「うーい、人間ー?うえへへへ、つきあえー」

「み、みず……」

 

「…………」

 

最大限に警戒しながら俺は少しずつ近づいていく。

目的はうさぎ娘さんと話すこと、そしてPCを回収することである。

 

だが。

 

「人間だ!交尾するぞ!」

「うぉい!いきなりかよ畜生!」

 

ハーピィ娘にとびかかられ、なすすべなくその場に抑え込まれてしまう。

 

マジか、俺の貞操もここまでか……と半ばあきらめかけたその時。

 

「こら、よそ様に迷惑をかけない!」

「ぎゃん!」

 

ハーピィ娘の頭を誰かが強く叩いたらしく、ハーピィ娘は俺から離れて行った。

何事か、と俺が目を向けるとそこには。

 

「えっと、大丈夫でしたか? うちの仲間がすみません」

「……は?え?うそだろ?ルカさん!?」

 

我らがヒーロー、勇者ルカが立っていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なるほど、ここは僕たちのいた世界とは全く違う世界、と」

 

相手がルカさんとわかるやいなや、即座にお茶をだし、お互いの情報を交換することに決定した。

うさぎ娘さんでもよかったと言えばよかったのだが、他のもんむすが何をしてくるかわからないため、リーダー格であるルカさんと話すことで、俺の安全を守ろうと思った次第である。いや、多分大丈夫だったんだろうけど、そういう建前を使ってでもルカさんと話してみたかったとかそういうわけではないからね!

 

「ああ、で、ルカさんたちこそ何故こちら側に?」

「それがわからないんだ。自分の家……じゃなかった、ポケット魔王城っていう建物の中に、見覚えのない扉があって、そこに入ってみたら、ここの部屋につながってて」

「……君らが出てきたの、おそらくこれなんだけど」

 

言って指差したのはPCの画面。そこには大きな黒い穴が開いていた。

……これ、PC使えないよね。こんな穴が開いてたらもうだめどころじゃないよね。

 

「まあ、なんとか出入りはできるみたいだね」

 

いや、そういう問題でもないと思うんだけど。

 

「だけど驚いたな、まさかポ魔城でこんなことになるなんて」

「まあタルタロスでしか平行世界の移動とかはなかっただろうしねぇ」

 

何気なく言うと、ルカがぎょっとした風にこちらを向いた。

 

「タルタロスで平行世界への移動が可能なの、なんで知ってるの」

「……………………あ」

 

忘れてた!そういえばもんぱらではごく一部の人物しか知らないことなんだっけ!? まずった。

 

「ああ、えーとあれだ、俺も別世界からなんか知らんうちにそれ通り抜けて今の世界に来たみたいだから」

 

やっべ、適当に言ってるけどこれ大丈夫か?

 

「ああ、そういうことか。大変だったね…」

 

納得してもらえたぁ⁉︎ マジ⁉︎

って思ったけど、そうか、ルカさんの世界はタルタロスが多いし、割とそういうのもありな世界なんだろうな。

純粋なルカさんを騙したことに罪悪感を抱きながら、そんなことを思う俺だった。




スライム娘が二体いますが、まあそういうこともあるってことで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

突然の変化には誰もが驚く

いろんな人のキャラが違う気がするけど、まあぱらどっくす世界ってことで。


「そこっ!」

「ぐうっ…!」

 

ガキィンという音が鳴り響き、手に大きな衝撃を感じ、痺れが来る。

 

「まだまだぁ!」

「ちょ、まじかよ!」

「くらえっ!」

 

飛んでくる剣戟に俺はというと。

 

「ちょおおおおぉぉぉっ!?」

 

すんでのところでところで身をかがめ横に転がることで回避できた。

すぐに体勢を整えるものの、こちらから打てる手がないためどうしようもない。

さてどうしたものか、と考えていると。

 

「ふむ、今のも避けるか……。よし、いったん終了だ」

「やっとか……死ぬかと思った……」

 

その場に腰を下ろし、大きく息をつく。

 

「何をこのくらいで音をあげている、軟弱な」

「あんたら基準の能力を誰しもが持ってると思うな!」

「ふん、それだけ喋れるならもう一回」

「頼むから身体能力の差を考えてくれませんかねえ、グランベリアさんよぉ!」

 

ただの一般人に四天王の相手をさせるのは酷いと思う今日この頃でございます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうも、種族人間、職業は社畜の一般人、片梨輝です。

先日もんぱら世界の住民がこちらにやってくるということがあったわけだが。

 

どうやら夢ではなかったらしい。

 

というのも、だ。

 

「おい、朝だ起きろ。この時間まで何を寝ている」

 

乱暴に揺すり起こされる感覚があったからだ。

起こされるだけなら普通、とおもうかもしれないが、俺は一人暮らし、いや独り暮らしをしている。

もうお分かりかと思うが、俺を起こす人などいてはいけないのだ。

 

「……なるほど、いい度胸だ」

 

夢だという淡い希望を抱き、目を瞑り布団にもぐりこみ続けていると、不穏な声が聞こえ。

 

ーーーーザクッ

 

何やら不穏な音が頭の横でした。何事かと思い、薄目を開けてみると。

 

なんということでしょう。大きな剣が鼻先3cmのところにあるではありませんか。

 

「…………………………」

「起きたか。お前が寝たふりなどつまらないことをするから手荒な真似をしなくてはならなかったんだが」

 

冷や汗が止まらない今日この頃、何故かグランベリアさんにさわやかとは言い難い起こされ方をされた俺だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あら、おはよう輝」

「……おはよう」

「待ってて、今パンを焼くから」

 

リビングにグランベリアさんと共に着くと、そう声をかけられた。

どっこいしょ、と席に着くとすぐに目の前にコーヒーを出された。

顔を上げると。

 

「…早いな」

「でしょ?気が利くと言ってほしいわね?」

「さすがですアルマエルマさん。ありがとう」

 

アルマエルマさんがニコニコしながら立っていた。

現在、いつもの若干過激な服装の上にエプロンを着てるため、なんというか普通に家庭的な雰囲気を醸し出してるという状態である。何も知らない人が見れば、奥さんとかに見られる可能性があるよなこれ。

 

 

……うん、平々凡々な俺の奥さんにアルマエルマさんとか、なんだそれ。月とすっぽんすぎるだろ。

もちろん月はアルマエルマさんだ。

 

「気が利くというなら、こいつをもっと早くに起こしてやったほうが良かったんじゃないか」

「そうかしら? 休日なんでしょ? しっかり休ませてあげた方がいいと思うけど」

「休みは確かに必要ではあるが、遅くまで寝ているのはまた違う話だろう。多少眠かろうが、早めに起きた方がいいと思うが」

「まあそうではあるけど……輝の普段から考えたら少しくらいはよくないかしら」

「あの、なんで俺の起きる時間についてそんなに話せてるんですかね」

 

何故かグランベリアさんとアルマエルマさんが俺の休日の起床時間について議論していた。

ちなみに俺はアルマエルマさんに着きます。なぜなら休日はしっかり休みたいからです。

 

「何故って、お前のためだろう。魔物も人間もしっかりとした生活習慣が大事なのは変わりない」

「それは確かにそうだが、平日はしっかり起きてるんだ。休みくらい寝かせてくれ」

「……たるんでるな。ルカを見てみろ。あいつは毎日早起きして鍛錬を積んでいるぞ」

 

……そりゃ、そっちの世界では冒険者はそのくらいしてないとダメなのだろう。経験が、努力が己の今後を左右する生活なのだから。

 

「いや、俺はこっちの住民だし必要ないだろうが……」

 

まあ、こう返すしかないよな。非戦闘員なんだし。

……バトルファッカーたちが普通に戦える戦闘力を有していることに関しては知らん。むこうの住民はみんなサイヤ人だと思ったら解決するし。

 

「お前もこっちに来ることがあるかもしれんからな」

「いや、行かないよ。興味はあるけどさ」

 

興味はあってもわざわざ危険を冒してまで行きたいかと言われると微妙ではある。

 

「ほう、なかなか興味深い話をしているの?」

 

突然窓際から声が聞こえた。目をやると窓から入ってきた日光がよく当たる位置に、ボールが転がっている。

いや、見た目はボールだけどあれは。

 

「何してるのたまも……」

「無論、日向ぼっこじゃ」

 

くるんっとボールから通常形態になるたまも。正式名称は玉藻前さん。

たしか天魔対戦だかなんだかの時から生きてる重鎮だったか。

 

「して、輝はこっちに来ることに興味はないのかの?」

 

通常形態になるものの、ぐでっと寝転がっている彼女を横目に俺は。

 

「いや、もちろん興味はあるけど、そんな俺がそっちに行けるかなんてわかr「よし言質はとったぞ。ご案内じゃ!」「わかったわ」「了解だ」「……ようやくね」待て誰も行くとは言ってないから離してくれそもそもエルベディエはどこから出てきた!」

「……ずっと一緒にいたわよ」

「やっぱり怖いなこの人!だあああああもう離せって!」

 

抵抗も空しく、俺は四人にノートパソコンの穴に放られました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……この空間になぜ来れた」

「いや、俺に訊かれても。そもそも来るつもりなかったし」

 

ぶち込まれた先は冥府でした。

なんでわかるかって?死神さんが目の前にいるからだよ。

 

「……まったく、ルカの知り合いか?にしてもお前はあの連中とはまた違う異質さを感じるが」

「はぁ……そう言われても俺だって初めてきたわけだしわからないんですが」

「……ふむ、この空間では、というよりは私も含めて……か。これは」

 

何やらぶつぶつ呟いてらっしゃるのですが、なんですかこの人。もともと若干不気味な人ではあるけど、こういう意味での不気味さはいらなかったよ?

 

「はぁ、まあいい。とりあえずお前の世界と彼らの世界とがつながるようにしておく」

「えっ、死神さんそんなことできるんですか」

「私だからな。というより、お前が特殊なのと、ここに真っ先にきたということが大きく関係するのだが……白兎の奴も使うか」

「はぁ、まあよくわからんけど頼みますわ」

 

なんか知らないけど直通ルートを用意してくれるらしい。ありがたい。……ありがたいのか?

 

「じゃあそこの魔法陣に乗れ。先に行った奴らと同じ場所に転移させてやろう」

「あー、うん、ありがとう。また来るかもだけどその時はよろしく頼みますわ」

「……いや、来ないでいい……と言いたいが、来そうだな。うん」

 

転移する瞬間、死神さんは遠い目をしていた。

……すみません、たまに憂さ晴らしで喧嘩吹っかけてたからですね。申し訳ない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と、いうことでポケット魔王城へ無事転移。そこからいきなりグランベリアに中庭に連行され、冒頭へと至るわけだ。せめて中の案内とかしてほしかった。

 

「ほら、グランベリアちゃん。もう終わってあげないと輝がボロボロよ?」

「む? 一度も剣を当てていないが?」

「そういう意味じゃないんだけど……ダメだわ、これだからグランベリアちゃんは」

「おいアルマエルマ、どういう意味だ」

 

……なーんか知らないけど喧嘩が始まったぞ。アルマエルマが噛みついてくるグランベリアを適当にいなしながら、こっちにウインクを飛ばしてきた。……本当にありがとうございます。

 

「ふむ、輝よ。いい動きじゃったぞ?」

「……そりゃどうも」

 

こっちはひたすらわたわたしてただけなんだけどね。渡された剣も防ぐためだけにしか使ってないし。

 

「……本当に初めてなのかしら?」

「初めてだよ。なんなら剣道はおろか、格闘技系もやったことないんだけどな」

「それにしてはグランベリアの攻撃をよく避けていたの?」

「ん? まあグランベリアもなんやかんや言いつつ手加減してくれてたんだろうな」

 

グランベリアってさっきまでとか今の言動とかで忘れそうになるけど、凄腕の剣士だったはずだし。

え、本編の終章? 頑張ってたじゃん。決して彼女は悪くない。

 

「……どう思う?」

「確かに最初は。じゃが、中盤あたりからは本気だったと思うのじゃが」

「……後で確認しましょう」

 

二人が何かこそこそ話してるんだけど、全然聞こえなかった。

 

「…っと、アルマエルマさんが時間を稼いでくれとる間にさっさと離れるぞ」

「そうだな、疲れてるのにまた再開されるとか勘弁だわ」

 

エルベディエ含めた三人でその場を離脱。その後は一緒にミニの宿屋で駄弁ってました。

 

ちなみに後でアルマエルマさんにお礼を言ったところ、すっごく頭を撫でられました。

……正直、とって食われるかと疑ってしまいましたごめんなさい。




輝「ところで、アルマエルマさん以外はポ魔城にいないはずなのになんでいるの」
狐、蜥蜴、水羊羹「終章待ちで暇だから」
輝「すっげぇメタな理由だったな」


ってことで、時系列(?)一応終章待ち時点の予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あぶらあげ料理ってどんなのがあるか知らないけど、詳しくなれそう

ついにもんむすたちの現実侵攻が始まりそうです。

いや、別に支配するとかそんな思考はないでしょうけど。

ちなみにお仕事の内容とかは多分こんな感じだろって想像が大半です。


はいどうも、俺です。

先日はいきなり四天王がうちに遊びに来たんですけどもね。その後向こうの世界に拉致られて、無事俺も行き来できることが判明しました。

さて、念願かなって二次元の世界に行けるわけになったのだが、そうほいほいと行けない現実に直面した。

 

何かというと。

 

「じゃあ輝。いってらっしゃい」

「ありがと、行ってきます」

 

アルマエルマに送り出された俺はいつも使っている鞄と共に外に出る。

何のためにって?

 

仕事だよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はよーございまーす」

 

職場に着いて挨拶。帰ってくる挨拶に対応しつつ自分の席に荷物を下ろす。

 

「あ、おはようございます片梨先生」

「おはようございます」

 

隣りの席の同僚の松山先生が声をかけてくる。今の呼び方で気付かれたかもしれないが、俺の仕事は教師である。

一応小学校から高校までの免許はあるが、俺が勤めているのは小学校である。

不肖ながら担任を持っているが、まあなんとかやっている状況である。

 

「そういえば、聞きました? 今日転校生と新しく先生が来るっていう話らしいですよ」

「……は? それマジですか?」

 

思わず素で返しかけた。あ、松山先生は同い年だがキャリア的には俺より先輩の女性である。

 

「ええ、なんでも校長もいきなり聞いたって噂だけど」

「そんな無茶苦茶な話があるんですか? 校長の怠慢では?」

「それがそういうわけでもないみたいよ? なんでも委員会の意向らしいわ」

 

うわぁ、なんて無茶苦茶な。

 

「っと、一回教室に行ってきますね」

「はーい」

 

不満はあれど、やることは待ってくれないのでさっさとやることやらなきゃな。

子どもたちと挨拶し、宿題を出すよう声を上げ、まとめるものをまとめる。

そうこうしていると朝の職員の集まる時間になったので職員室に向かい、席に着いた。

 

「えー、おはようございます」

『おはようございます』

 

校長が挨拶し、職員一同が返す。いつも通りの朝会である。

 

「もう皆さんお聞きになられてるかもしれませんが、今日から新しい先生がここに来られました。……こんなことを言うのもなんですが、連絡ミスとかそういうのではなく、本当に急に上から言われたので、皆さんに十分お伝えすることができなかったというわけです」

 

職員一同は不審な雰囲気を出すものの、教頭が「その通りです」と声を上げると、「あ、そうなのか」という雰囲気になった。

信じていないというわけではなかったのだろうけど、トップ二人がそうだと言うならそうなのだろう、という感じである。まあ、これに関しては嘘を言ったところで何もならないしな。

 

「では、さっそく紹介したいと思いますので……こちらへどうぞ」

 

隣接している部屋が校長室であり、そこで待機させていたのだろう。校長が声をかけるとそこから足音が聞こえ、姿を現す。どうやら女性のようだが。

 

『ほう……』

 

大半の先生が溜息に似た声を上げた。……主に男性だが。

そして。

 

「……えっ」

 

俺は全く違う反応をしてしまっていた。

だってそうだろう。

 

「今日からお世話になります、七尾と申します。色々とお世話になりますが、よろしくお願いしますね」

 

人間に上手く化けてるとはいえ、七尾さんがいたのだから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

仕事がひと段落したあと、家に電話をかけた。

数回のコール音の後、出たのはアルマエルマだった。頼れるお姉さん……いや、もはやおかんである。

 

「あら、輝?どうしたの?」

「どうしたの、じゃないんだが。なんで七尾がここに来てるんだよ!?」

「それはねえ……あ、たまもちゃん、ちょうどいいところに……輝、代わるわよ」

「おお、輝。どうしたのじゃ?ウチの声が聴きたくなったのか?」

「んな理由で電話かけるかよ」

「つれないの……まあ、大方七尾のことじゃろ?っとまだ使い方に慣れておらんのじゃが、声はうるさくないかの?」

 

なんだ、やっぱりたまもの仕業か。そう思いつつ、「大丈夫」と伝える。

 

「まあ深い理由はないんじゃが、七尾が頑張ってみたいと言っておったからの。ウチはちょっと力を貸しただけじゃ」

「いや、ちょっと力を貸しただけでなんで俺の職場に来てるんだよ。しかも唐突に来たから大変なことになってるんだが」

「そこはほれ、こっちの世界の住人のお主のそばなら何かあっても安心じゃろ? それに妖術やらなんやらで特に問題なく入れるようにしたんじゃが、大丈夫じゃったろ」

「……まあそれはそうだが……」

 

事実、唐突に入ってくるってことで慌てはしたのだが、書類やらなんやらは全てクリアされていたから何ら問題はなかったみたいだし。

 

「それに七尾のたっての希望じゃったしな……」

「ん?どういうことだそれは?」

「いや、なんでもないぞ?」

「そうか、まあ七尾はわかった。じゃあ次だ。なんであの子たちまで来てる……」

「ああ、かむろときつねじゃな。あの二人は……まあいうなれば、修行の一環じゃな」

「なるほど」

 

赴任してきた先生が七尾であり、その後の転校生の紹介の時に知ったのだが、来たのは狐一族であるきつねとかむろだった。まああの二人は、いうなればたまもの娘みたいなものだし、七尾にとっても妹分か娘といったようなところ。だから七尾と同じ学校に入れたのだろう。

 

「かむろは……まあうまくやるだろうし、きつねも上手にやっていきそうだな」

「そうじゃな……まあ勝手に上手くやるとは思うのじゃが、様子を見てやっておいてくれんかの」

「まあ、俺のクラスに二人とも入ってきたからな……先に知らせておいてほしかったんだが」

「驚かせたかったんじゃから仕方ないの。三人にも秘密にすることを伝えたら嬉々としていたしの」

 

そういえば、ポ魔城で最近七尾やきつね、かむろの姿を全く見ていなかった気がする。

カラカラと愉快そうに笑うたまも。不思議と怒りはわいてこなかった。

まあ、特に大きな害は与えられてないし、どちらかというと身内が増えたわけだしな。俺としても心強い。

 

「さて、じゃあ仕事に戻るよ」

「そうか、頑張っての」

 

電話を切り、ポケットに入れる。ぐっと伸びをして職員室に戻る。

現在18時を過ぎ、だんだんと仕事をしている人も少なくなってきている中、七尾がくたばっていた。

 

「七尾先生、お疲れ様です」

「あ、ひか……コホン、片梨先生もお疲れ様です……うう、慣れてないんですから笑わないでも」

 

慌てて言い直す彼女に思わず苦笑してしまった俺に文句を言ってくる七尾が可愛い。

 

「それで、どうです?今日初めてここで仕事してみて」

「そうですね、初日だからまだ見て覚えるということが大半ですが、中々に大変そうです」

「まあしばらくは僕の補佐ってポジションですし、何かあったら僕に訊いてください」

「ありがとうございます、頼らせてもらいますね。……っと、まだそれほどやることがないのですが、何か手伝えることはありますか?」

「そうだな……じゃあこれを頼みます」

 

渡したのは、授業中に集めたプリントやノート。いわゆる丸つけ作業である。

もんぱらの世界とこっちの世界での文化の違いがあるのではと最初は思ったのだが、何ら問題ないことがわかったし、何かわからないことがあったら俺に訊くように言ってある。問題はないだろう。

 

そこから2時間ほどやることをやり、帰ろうかというところで、七尾もちょうど終わったみたいだった。

 

「お疲れ様。僕はそろそろ帰ろうかと思うけど、どうします?」

「あ、私も出ます」

 

そう言って、立ち上がった彼女は既に帰る準備を済ませていたようだ。早い。

二人で職場を出て、歩く。バス停まで歩き、バスに乗り、降りた後はまた少し歩く。

 

「……大変ですね、仕事」

「まあ、そうですね。でも助かりましたよ」

 

疲れたというオーラを出しまくっている彼女に苦笑しながら俺は言葉を返す。実際、少し仕事を頼むだけで楽できたし。

 

「それならよかったです……でも、急にお邪魔することになって迷惑でしたよね……?」

 

何故か心配そうな彼女。電話の後に七尾から聞いたことなのだが、俺に内緒で来ることに彼女は反対していたらしい。なんというか、しっかりしているなあ。

 

「まあ、別にびっくりはしましたけど、邪魔とは思ってないですよ」

 

なんというか、身内が増えて安心感が増しましたしと続けると、ほっとした表情を見せてくれた。

うん、別に嘘は言ってないしな。

 

「……明日からもよろしくお願いしますね、輝」

「……ああ」

 

そうこう話していると家に着く。

 

「ただいま」

「ただ今帰りました」

 

二人で玄関に入ると、奥からパタパタと足音が聞こえてくる。

 

「おかえり、輝!七尾様」

「お、おかえりなさい、七尾様、輝さん」

 

きつねとかむろである。そして。

 

「おお、帰ったか二人とも。お勤めご苦労じゃな」

 

たまもがのっそりやってきた。今日は狐一家だな。

 

「ああ、疲れた。飯が食いたい」

「そう言うと思っておったからほれ、二人とも」

「うん!私たちが用意したんだ!」

「お口にあえばいいんですけど……ぜひ、どうぞ」

「アルマエルマに教えてもらっておったの……無論、ウチも少しは手伝ったがの」

 

どうやらきつねとかむろ、言葉通りならたまもも少しだがご飯を用意してくれたらしい。

 

「すみません、二人とも、たまも様」

「よいよい。頑張ってきたのじゃからこれくらいはの」

 

リビングに行くと、いい匂いが充満していた。

油揚げ料理がたくさんなのは、さすが狐といったところだろうな。

油揚げ料理だけでなく、きちんとサラダとかもあるあたり、栄養面の配慮は素晴らしい。

 

「ほれほれ、さっさと着替えてこい。わしらもお腹ぺこぺこなのじゃ」

「そうそう!待ってるから早く!」

「きつね先輩、味見と称してのつまみ食いをたくさんしてたのに……」

「かむろちゃん、それは言わないお約束だよ!?」

 

ほほえましいなあ……。七尾もクスクス笑っているし。こういうの、いいよね。

まるで家族みたいだなって呟くと、何故か七尾がうろたえて、たまもはそんな七尾を見て笑っていたし、かむろは少し複雑な表情をし、そんなかむろをきつねが気にしていた。

 

 

みんなでご飯は美味しくいただきました。味?もちろん美味しかったでござる。




狐一家の中では、七尾が好きです。
きつね一家はまだ出てないのがいるからそのうち出したい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

理解できないと思っていても、いつか理解できる時が来るのかもしれない

なぜこんなに書きにくいもんむすたちを選んだ……?

なお間違えて別小説のところに一回投稿した模様。


はいどうも俺です。最近うちにいろんなもんむすが遊びに来ることが増えています。

その中でもよく来てくれるのはアルマエルマさん。もはや通い妻じゃね?ってレベルです。

 

……ごめんなさい調子に乗りました。アルマエルマさんだけ強調しましたが、四天王はみんなよく来ています。

まあアルマエルマさんは家事やらなんやらしてくれるし、たまもは七尾やきつね、かむろがこっちにほとんどいるからってのもあるからこっちによくいる。この二人に関しては理由がはっきりしてる……いや、アルマエルマさんに関してはほんと助かってます。こっちがお願いしてるレベルだし。

あ、ちなみにたまもも家事は多少やってくれたりしてます。「情夫を養うにはこのくらいできんと!」と言っていたのは記憶に新しい。ついでに全力で顔を背けた水羊羹と脳筋さんのことも記憶に残ってます。

 

さてさて、そんなこんなな毎日なわけですが、今日ばかりは勝手が違った。理由は二つ。

一つ目は、まず休日ということにより、いつも平日に来てくれているメンバーはポ魔城でゆっくりしているらしい。来てくれることには来てくれるのだが、今日は平日はもちろん、いつもの休日よりゆっくり来るらしい。

 

さて、そこまではいいのだが。もう一つの理由がこちら。

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「お腹空いた……」

 

はい、現在アポトーシス軍団がうちに来ているという現実です。恐怖でしかない。

心なしか、部屋の内装が禍々しくなってきてる気がするし!

 

「えっと、ジェイドはロボみたいなものだし……どうすればええんや」

「……充電」

「あっ、はい」

 

とりあえずコンセントにつないどけばいいか。

 

「アルコール……ごくごく、ぷはぁ」

 

リボ・リボはなんか部屋の片隅でじっと佇んでいたから、とりあえず缶ビールを渡しておいた。

食べ物は「不用」の一言でばっさりと弾かれたので渡すことはあきらめた。

……一箱分くらいリボ・リボだけで空けてるんだけどあいつ酔わないのかな?

なんかジェイドがこっちをじっと見てるんだけど、あれか。飲み物を燃料にしてたっけ?

あとで缶ビールで周りを囲っておくか。某音ゲーの事務員さんをとあるグッズで囲んで、ガチャの時の儀式とするイメージで。

 

「お腹空いた……」

「はいはい、ちょっと待ってこれあげるから」

 

イーターにとりあえず冷蔵庫にあったチャーシューを渡して……《グオオオオオォォ!》渡した瞬間なくなったんだけど!というか捕食音鳴らして食べるのやめてよ!怖いから!

 

「絡まりたいわ……」

「そこらの壁にでも巻き付いてて……俺に絡まるの!?」

「……いいでしょ?」

「何もしないというなら別にいいですけど」

 

戦慄してると次はアンフィルに巻き付かれた。といっても、拘束レベルの絡まり方ではなく、緩い絡まり方。街中のカップルが腕を組んでるイメージ。……うん、自分で言っておいてなんだけど例えがあってるか不安だわ。

 

「アハハハハハハハ!」

「シニファはうるさ……元気だなあ……」

 

思ったことを口に出したらなんかものっそい形相をされたのですぐに言いなおした。

怖いよ?何かのカットインと同じ表情だったよ?怖すぎたよ?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうやら今日来ていたのはこれだけのメンツだったらしい。

割と落ち着いている奴らが多いみたいで、飲食を終えたアポトーシスから思い思いの行動をし始めたのだが……。

…………。正直に言おう。

 

「こいつら結構おとなしいな!?」

 

なんというか、正体不明みたいな位置づけにいるため、思いもよらないことをしでかしたりするのではと思っていたのだが、そんなこともなく。

例えば、ジェイドは充電し始めてからずっと沈黙してるし、リボ・リボもぼーっとしているようで、動きがない。

イーターは「お腹空いた」と繰り返しているが、別に我慢できないわけでもないようで、しばらくしたら先の二体のようにおとなしくなった。

シニファはずっと笑い続けているものだとも思っていたのだが、しばらくすると沈黙。相変わらずにっこにこしてるけど。

 

うん、問題ないな。

 

「待って……絡まってたいから待って……」

 

コイツ以外は。

 

「なあ、アンフィルよ……そろそろ離れてもらってもいいですかね?」

「……絡まりたいの……」

「ダメだこいつ早く何とか」

 

何故かアンフィルが俺の腕から離れてくれない。最初は触手だけだったのだが、いつの間にかすごく身体が近い。

いつ取り込まれてしまうかが心配で仕方ない。

 

「あー……うん、また今度とかそういうのは」

「……今がいい」

「マジか……片づけとかしたいから離してもらいたかったんだが」

 

片づけと言うのはもちろん、アポたちの飲食の後片付けのことである。

こいつらが片づけとかしてくれるかと尋ねられたら、みんな首を横に振ると思うんだ。俺もそう思うし。

 

え?ゴミをアポ化?やだよ、俺の部屋が侵食されるどころか、世界の危機だよ。そういうのはタルタロスだけで十分だよ。

 

「……あと少ししたら離す」

 

意外にもアンフィルは離してくれる方向性のようだ。

 

「……今度また絡ませて?」

「しゃーねーな、わかったよ。ただし安全は確保してくれよ」

 

こくんと頷くアンフィル。なんだなんだ、意外にも素直なのかコイツ? ……ちょっとかわいいとか思ったのは秘密な?

……特別に今度、ラーメンでもあげるか。麺類好きだったはずだし。

 

「消去……消去……」

 

なんだろう、すごく嫌な単語、もとい声が聞こえた気がするんだけど。

開けっぱなしのノートパソコン(穴あき)からすっごく嫌な雰囲気を感じるんだけど!

 

「第一種断界接触……排除……!」

 

そして出てきたのは。

 

「アドラ、メレク……!?」

 

前章のボスであり、反省会でもインパクトという名のトラウマを植え付けてきたアドラメレクだった。

しかも排除って……いやいやいやいやいやいやいやいや!

 

(勝手にこっちに飛んできておいて理不尽だなおい!)

 

俺が死んだら冥府送りにされて復活できるのだろうか。そこが心配だ。

イリアス様の反省会でもいいけど……うん、ドブ川様だし。あと時間軸が傷むやらなんやらで現実世界までおかしくなられると困るし。

……もんむすが俺の部屋にいたり、職場に来てる時点でおかしくないとは言い切れないんだけどそこは言及したらダメだと思う。

 

「排除……排除……は、い……!?」

 

俺に手を伸ばし、掴みかかろうというところで奴の動きが止まった。

 

「………座標軸、不明。該当、なし。排除、第三種断界接触に相当。排除中止」

 

排除中止らしい。ということは俺に危害を加えることはないと判断していいのだろう。

 

「特例、断界接触の許可。……混沌化、なし。アポトーシス反応ゼロ。クリア。接触による双方世界への影響ゼロ」

 

やべえ、正直言うともんぱらの話の核であるアポ化だの混沌化だのってのをネタ要素程度にしか把握してないせいで、目の前のアドラメレクが何を言ってるのか全く理解できねえ。

 

「……排除対象の消失による影響……多大。排除対象から護衛対象へと変更。条件……対象の断界接触時による危機。対象への投薬準備」

 

ぶつくさ言いながらパソコンに引っ込んでいくアドラメレクがすごいシュールで仕方ない。

……あ、引っ込んだ。なんか近いうちにまた会いそうな気がする。

 

「とりあえず、こいつらを帰せるようにしとかないとな……」

 

どっと疲れが出てきたものの、いつまでもアポトーシスたちをこっちに居座らせるわけにもいかない。主に俺の精神衛生的に。

 

後から来たルカさんたちに協力してもらいながらポ魔城に帰還してもらった頃には日が傾いていた。

 

 

……疲れた。

 




第一種断界接触……その世界に住む生物が違う世界の生物(アポトーシス等含む)と接すること。
第二種断界接触……違う世界に渡った生物が、その世界の生物と接すること。
第三種断界接触……第二種断界接触を行ったうえで、その世界の生物に殺傷行動等行い世界に多大な影響を与えること。

というガバガバな設定でやっています。少しは調べてみたんですが、正しい意味がわからなかったので……。
もしこうだよっていう方がいらっしゃったら、教えていただけると幸いです。
あとこのように適当かつ駄文な構成ですが、感想等々も頂けると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私の戦闘力は53万もないです

感想をくださった方、お気に入り登録してくださった方。ありがとうございます!
励みになっていますので、こんな感じでよろしければ、これからもお付き合いよろしくお願いします。


残念なもんむすたち、という集団を知っているだろうか。

アミラを筆頭とした集団であり、もともと個性派ぞろいなもんむすたちにさらに輪をかけて個性という名の装備をした最強、もとい最恐集団である。

 

さんとすは、申し訳ないが使ったことがないものの、忍者の職業にデフォルトで就いていたし、アミラはストーリー上必須になってくるキャラでインパクトも一番大きい。ド-メイマ?ああ、あいつなら水不足で戦闘不能になったよ。

 

そして彼らの中で一番最強と言われているのは、そう。ピーハーである。

頭が鳥、下半身が人間という残念すぎる容姿。さらには足だけやたらと美脚というところが余計に残念さを際立てている。見た目もさながらだが、その能力もひどいもので、ステータスは総合して一番低いとかなんとかだったはず。

だが、彼女にはステータスが低くても最強と言われる所以があった。ご存知の方もいるだろうが……そう、異常なまでの回避率である。

なんとこいつ、平常時でも7割ほどの確率で物理攻撃を回避できるというある種のチートを持っているのである。混沌の迷宮1の時にはお世話になった人もたくさんいるとかいないとか。リフレクトリングと天空の踊り、もしくは瀕死時回避アップは必須だったよ……!

 

 

さて、なんでこんな話をし始めたのかというと。

 

「じゃあ、僕はこいつらを連れて帰るから……ごめんね、迷惑かけたね」

「いや、いいんで。早く連れて帰ってあげて」

 

残念なもんむすたちが遊びに来たものの、数秒でド-メイマが水不足で死亡。ついでアミラが何故か呪詛を吐き、ピーハーとさんとすがばたばたと倒れ伏したところで、ルカさんが全員回収して言った次第である。

 

 

もう今回の話、終わりじゃね?

 

 

「おーい、輝。今時間あるかの?」

 

そんなことはなかった。

 

「ん、たまもか。どうしたんだ」

 

部屋の中にはいないので、俺の視線はとある一点に集中する。

そう、例のノートパソコンである。

 

「ほいっ、と」

 

数秒後、たまもがくるくると前方向に回転しながら飛び出してきて、華麗に着地を決める。

あ、少しよろめいた。8点。

 

「いやの、前にグランベリアと手合せしておったろ? あれを見てウチらでちょっと話していたんじゃが」

 

手合せ(一方的)でしたね。嫌な事件だったねあれは。

 

「輝は、こっちでも十分やっていけるのではないかと思っての? 時間があるならちょっとウチらに付き合ってほしいんじゃ」

「えぇ……」

 

正直嫌である。だって、向こうに連れていかれたらまたグランベリアに手加減されてるというのに紙一重でしか回避できない惨めな目にあわされるんだろ?下手したら死ぬところだったろ?

 

「心配せんでも、今日は外を色々と出歩いてもいいと思っておるんじゃが」

「余計に嫌だよ」

「な、なんでじゃ!?」

 

いや、当然でしょ。外ってことはフィールドマップでしょ。つまり俺のこと知らないもんむすと出会うでしょ?襲われたら俺確実に負けるでしょ?ほぼ死ぬでしょ?

ドブ川様の反省会は遠慮したいですね。そもそも反省会があるかどうかもわからないけどさ。

 

「むむむ、とにかく来ればいいんじゃ!『九つの月』!大地の力もおまけじゃ!」

「ちょ、おま、土の力は卑怯だって!」

 

『九つの月』とは言ったものの、されたのは尻尾での全身拘束。大地の力を纏っているものの、優しく抱きしめられているという状態であり、決してダメージを負ったり苦しい拘束を受けているわけではない。

ないのだが。

 

「くっそ、マジで大地の力ってすげぇ……」

 

いや、ほんとすごいんですよ。尻尾はもふもふで気持ちいいのに抜け出そうとすると完全に動けないんですよ。まあ全身くるまれている時点で普通は脱出とか無理に近いんだろうけどさ。

 

「じゃあ、行くぞい。向こうに着いたらとりあえずパーティを組もうぞ!」

「あー……はい、そうですねー」

 

もうどうにでもなれ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「では、なりたい職業を選ぶのじゃ!」

「え、やだよ。俺もともと教師なんだから」

「輝、それはお主の世界の職であって、こっちでの職とは別と考えてほしいの……」

「ちなみにお主は既に学者を経験しておる様じゃな!レベルは……2と言ったところか」

「……なんでそこだけリアルな数字なのかなあ」

 

確かに教師力はまだまだ低いだろうけどさ。

 

あ、今イリアス神殿で職業を決めてるところです。パーティを組む前に先に職を決めた方がいいのではないか、というアルマエルマさんのお言葉を受け、たまもに連れてきてもらいました。

目の前の神官さんとたまもと一緒に選んでるところなんだけど、おもいっきり素が出てたな。うん、気にしてはいけない。

 

「せっかくなのじゃから学者を極めてはどうだろうか」

「あ、いえ結構です。」

 

なるとしたら、戦士系統で戦力をあげておきたいところだし。

 

「なるほど……では戦士などは」

「んー、そうですね。それにしますか」

 

俺、学者レベル2から戦士レベル1に転職。

これ向こうに戻ったときに職が変わってたりしないよね?

 

「では、ゆくがよい……うむ、珍しく種族は人間だけの人物だったな」

「なんか聴こえないように言ってたみたいだけど丸聴こえだからな」

 

多分ルカさんのチームの人間たちは総じてバンパイアになれたり妖魔になれたりXX型アポトーシスになれたりするせいだろうな。神官さんも大変だな。心労が絶えなさそう。

 

「うむ、終わったかの」

 

近くで待機していたたまもが小走りでやってきた。可愛い。いなりずしを片手にぴょこぴょこ動くあたりが大変可愛らしい。

 

「ん、とりあえず戦士で落ち着いた」

「そうかそうか。ではとりあえずイリアスヴィル周辺で輝の経験を積んでいくとしようかの」

「え、別にそんなことしないでいいんですけど」

 

さっきの転職の時は神官さんが大変真剣に考えてくれてたから真面目に考えたけど、別に戦闘とか望んでないから。ポ魔城でゆっくりしてたいから。

 

「ほれ、そう言うと思ってこれを用意した」

 

そう言ってたまもが取り出したのはキメ〇の翼、じゃなかった。ハーピ―の羽だった。

 

「これでイリアスヴィル前に飛ばすからそこで他のメンバーと合流してやるからの。安心せい」

「いやまあ、ルカさんの仲間と一緒っってのは心強いけどさ」

 

そこまでして俺を連れ出したいのかねこやつらは……。

 

「さて、それじゃ行くかの。……かふぇくしゅっ、イリアスヴィルへ!」

「ちょっと待てすごく不思議なくしゃみをしたなああああああああぁぁぁぁぁ……!」

 

たまもが投げつけてきたハーピーの羽に引っ張られ俺はどんどん上昇していく。

上昇して上昇して上昇して……。

 

「……えっ」

 

気付いたときには大地に降り立っていた。いたのだが。

 

「……あれ、たまもが言っていた他のメンバーってのはどこにいるんだ?」

 

少しあたりを見渡してみるものの、見つからない。場所が違ったりするのか?

 

「でもここ、イリアスヴィルだよなあ」

 

場所は合っている。たまもが村から少し離れたところに飛ばしたため、遠目になるがあれは確かにイリアスヴィルの村だ。間違いない。

 

「……少しあたりを散策してみるか……」

 

そう思い歩き出す。まあ、戦士の職に就いたわけだし、イリアスヴィルの近くと言えばスライム娘やバニースライム娘、ナメクジ娘あたりがエンカウントしたはず。うまくやれれば勝てるかもしれないし、最悪逃げることもなんとか出来るだろう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

正直、考えが甘かった。そして浅はかだった。

どうして、他のメンバーがいないことにすぐに危機感を覚えなかったのだろうか。

そして散策を始めて辺りにイリアスヴィル周辺に生息するもん娘の姿が見当たらないことに違和感を感じていれば、こんなことにならなかったのに。

 

「イリアス様の敵、排除する……」

「初めてのエンカウントがラナエルさんってもうこれゲームオーバーだよなあ……」

 

正直絶望しかなかった。




次の話に続きます。できるだけ早くに出せるよう頑張ります。
感想等々よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ソロでエレメントカスタムとエンリカの服だけでもラナエルさんを倒せる偽勇者もいるらしい。

前章の時点でラナエルさんソロクリアは出来たけど、割ときちんと装備を整えたりしたなって記憶が。
工夫次第で倒せる敵が増えるってのは雨白いんですけど脳筋な私には苦手なところです。


たまも視点

 

輝をハーピ―の羽で飛ばした後、ウチも同じ場所……イリアスヴィル前へとハーピ―の羽を使い飛ぶ。

しかし、さっきはくしゃみが出てしまったものの、きちんと羽が発動したから問題ない。今頃向こうで待機していたメンバーが輝をなだめすかしてその気にさせてくれてる頃かの。

なんやかんや言って、あやつも人が良いから、着いてきてくれると思っておる。

 

「さて、と」

 

着地した先に、輝とパーティを組ませるメンツが見えた。

ちょっと早いがメンツを紹介しておくかの。

もちろん、ウチもその一員じゃぞ?

 

~イカれたメンバーを紹介するぜ!~

 

グランベリア

アルマエルマ

エルベディエ

ウチ

アリスフィーズ16世

イリアス

エデン

ミカエラちゃん

ルシフィナちゃん

アリストロメリア

ハインリヒ

七尾

かむろ

アンフィル

ヴィクトリア

 

……………………。

 

「なんじゃこのカオスなメンツは」

「それを今更言うのかしら……」

 

いつの間にかそばに来ていたアルマエルマに呆れた声を出される。いや、だってそうじゃろ。

 

「最初はウチを含めた四天王とかむろ、七尾だけだったはずなんじゃが……」

「ふん、魔王たる余にはその輝とやらの実力を知る必要があるからな。余が気に入れば新四天王に入れてやらんこともない」

「あら、女神たる私の傘下に入るのが当然の理ですよ、幼女魔王」

「ふん!幼女というならお主もではないか、このペタンコ駄女神が」

「…………」

「…………」

 

「「上等だ(ですね)!その喧嘩、買った(買いましょう)!」」

 

「イリアス様……いてて!何をするんですか二人とも」

「エデンの髪を引っこ抜いてたの」

「禿げちゃえー」

「ちょ、可愛い顔してやってることがかなり陰湿じゃありませんか!?」

 

「絡みたいわ……輝に絡みたい……」

「……アポトーシスがこんなに一人に固執することあるのね……まあ気持ちはわからないでもないけど」

「仕方ないから、その槍に絡ませて……」

「……えっ、嫌だけど」

 

「あの、七尾様。私たち、すごく浮いてませんか……?」

「気にしてはダメですよ、かむろ。ルカのパーティを思い出してみて同じこと言えますか?」

「……まあ、あれはあれですごいですけど……こっちのメンツがすごすぎて言葉が出ないというか」

「まあそれには同意しますが……ここで負けてはいられませんので」

 

「カオス、じゃな」

 

なんというか、癖の強いメンツばかりじゃった。いや、普通のメンツもいるはずなんじゃが。

 

「あ、たまも。ようやく来たね」

「待ちくたびれましたわ」

 

そう言って寄ってきたのは、ポ魔城きってのバカップル……もとい、仲間同士のハインリヒとアリストロメリア。

 

「すまんの、じゃあ早速出発しようと思うのじゃが……輝はどこにおるのじゃ?」

 

そういえばさっきから輝の姿が見当たらないのじゃが、どこかに隠れておるのか?

それなら誰かが拘束していてもおかしくなさそうなものなのじゃが……姿が見えぬ。

 

「ん?たまもが一緒に連れてくる物だと思ってたんだけど、予定を変えたのかい?」

「どういうことじゃ?」

「輝はまだ来てない、ということですわ」

「そんな馬鹿な……確かにウチは羽で輝を飛ばしたんじゃぞ?」

 

ウチの声で、さっきまで騒いでいたメンツが静かになった。

 

「お主ら、輝がここに飛んできたのを見てなかったかの?」

「そうですね、女神たる私はそこの自称魔王と喧嘩こそしていましたが、彼が来るのを見逃すはずがありません。つまりまだ来てないということです」

「ソイツに同調するのは癪だが、余も全く同じだ。来たら喧嘩していても気づく。」

「輝が来たら気付くわよね、グランベリアちゃん」

「そうだな、それはお前もだろう、アルマエルマ。それにエルベティエも」

「当たり前……」

「輝センサーが反応しない……絡みたいのに絡めない……」

「いや、何変な能力を開花させてるの……」

 

これだけのメンツがいて、輝に気付かないなんてことはあり得ない、かの。

では、一体どうして……?

 

「たまもちゃん、きちんとここに飛ばしたの?」

「当然じゃ!きちんと、イリアスヴィルと…………。……あ」

「どうした、たまもよ」

 

そういえば。いやでも関係ないじゃろ。

 

「そういえば、イリアスヴィルと言う前にくしゃみが出ての。でもそのくらいで全く違うところに飛んでしまうなんてことがあり得たりするのかの」

 

たしか、かふぇくしゅ、みたいなくしゃみじゃったの、と呟くと。

 

「なんですって!」

「なんだと!」

 

喧嘩してたはずの魔王様と女神が同時に反応した。どうしたんじゃ一体。

 

「魔王アリスフィーズよ、あなたも同じことを考えましたか」

「ああ、できれば外れていてほしい予想ではあるが……おそらく貴様も考えている場所で合ってるはずだ」

 

「「タルタロスを抜けた先にある、異世界のイリアスヴィルに!」」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「神に逆らう者と交わす言葉などないわ……」

「だから誰も逆らってないんだけど……うわぁっ!?」

 

予想通りというか、なんというか。まあラナエルさんが出てきた時点である程度察してはいたけどさ。

 

「ここ異世界のイリアスヴィル近辺だよなあ!」

「神に逆らうものと交わす言葉など」

「今のはお前に言ってねえ!」

 

律儀に反応してくれるのはちょっと嬉しかったりするけど、ずっと同じ反応だし。というかそもそも会話を拒絶されてるからまったく話が通じないし。神に逆らった記憶がないのに、冤罪で襲われて弁明もさせてくれないし。

 

何よりHP16万くらいの相手が最初ってこれどんな死にゲー?ってやつだ。

ちなみに賞賛を送ると好感度が25上がります。しかし100になったところで仲間にもならなければ話を聞いてくれるわけでもないから辛い。

 

「いい加減、断罪されなさい……」

「嫌なこっ……危ねえ!」

 

やだ、かすった!左腕のあたりをテンタクルブラストが掠りましたよ奥さん!

 

「神に逆らうものに奥さんと呼ばれる筋合いはない…」

「パターンを変えてきやがっただと⁉︎」

 

どうでもいいけど、なんか腹立つ!あと神に逆らう云々関係ねぇ!

 

「消えなさい…」

 

無情に飛んでくるテンタクルブラスト。こいつの使う技は物理技であるこれ以外ないのだが、いかんせん威力が高いため、普通のパーティだと毎ターン回復するくらいしないとジリ貧になる。

普通のパーティなら、だ。

 

「うわあああぁぁぁ!」

 

ところが今ここにいるのは俺一人。レベルはわからないがおそらく1。職業もさっき転職したばかりだから戦士レベル1。1続きで悲しくなってきた。

まあ、簡単に言うと、つまりは、だ。

 

一撃でも当たったらほぼ確定で死ぬ。良くて戦闘不能だけど、まあ末路は死ぬことに変わりないだろうな。

 

なんとか避けて避けて、を繰り返しているが…レベル1の俺がこれだけ避けられてるのを不思議に思う人もいるかもしれないな。

 

今の俺の装備は、疾風の服、紅猫の帽子。そしてかっこいいからという理由でつけてたエルフのマントである。ゲーム的に言うと回避率40%上昇してる状態である。前にルカさん一人でラナエル討伐した時も、これに似た回避率重視の装備だった気がする。まああの時はシルフを使って回避をさらに上げて、としてたんだけどね。前章の話だから、帽子が多分違う気がするし。

 

まあ装備でだいぶ避けやすくなってるものの、それでも6割は当たることになる計算なのだが、どうやら前々からのグランベリアとの特訓(と言う名の一方的なイジメ)によって、攻撃の軌道が少し見えるようになってきていたらしい。余裕はないが避けることはできている。

 

まあ、それも俺の体力が続けば、の話なのだが。

 

「ハァ…ハァ…」

 

当たらずにいるものの、掠めたりはしているし、当たったら一撃でやられる攻撃がいつ当たるかという恐怖と緊張でどんどん疲労していく。

グランベリアとの特訓なら、頃合いを見て休憩になるのだが、ラナエルさんがそんな親切を働かせてくれるわけもない。

 

「いい加減、消えなさい…」

 

っと、また来た。避けなければ…⁉︎

 

「ぐぅっ…」

 

叩きつけられた触手が巻き上げた砂が目に入ったことにより視界が奪われた。更にはそろそろ限界が近づいてたのだろう。足が思うように動いてくれない。

そうなると、当然。

 

「ガッ…は、ぁ…っ」

 

直撃。左肩に叩きつけられた衝撃で無様に地面に這いつくばる。

認識が出来てるということは即死はしてない。が、これはある種の不幸でもある。ここはもんむす・くえすと!の世界。敗北した男の末路は一つである。

 

「くっ…そ……?」

 

少しだけ回復した視界に映るのは動かないラナエルさん。なんでトドメ、というか拘束しに来ない…?

 

「対象、発見、補足。投薬準備」

 

背後から聞こえてくる声。なんだろう、凄い聞き覚えがあるんだが。

 

「ガッ…⁉︎」

 

首に鋭い痛みが走る。同時に何かが入れられるような圧迫感。

 

「投薬完了。対象の状態、オールグリーン。効果、想定通り。術式の使用、可と判定。適合率…想定、以上」

 

何をこいつは言って…?

 

(身体が、動く…?)

 

地面に転がっている間に体力が戻ったのだろうか。いや、それにしては身体が軽すぎる。

 

「結果良好。経過、要観察。撤退」

 

何かはそう言い残し、どこかへ去ったようだ。背後からの気配が消えたことによりそう判断する。

 

「さっきのは…なんだ?私が動けないなど…」

 

ラナエルさんが何か言ってるけど、俺はそれどころではなかった。

身体を起こし、相対するが…集中できない。

さっきから頭の中に文がずっと流れていてループする。

 

「我、混沌を呼び覚ま◾️者なり」

 

すっと、口をついて言葉が紡がれる。

 

「全◾️◾️飲み込◾️し原初の◾️沌を率◾️◾️者なり」

「我の名に◾️いて、◾️を◾️喚する」

 

「邪魔が入りましたが、関係ありません。潰します」

 

ラナエルさんが向かってくる。でも、何故だろう。

俺の心は落ち着きを崩さなかった。

 

「身を削ら◾️◾️も、◾️◾️を◾️◾️◾️る◾️◾️持つ◾️◾️、我が◾️◾️◾️け◾️応◾️◾️!」

 

それは、きっと。

 

「◾️◾️◾️◾️レ◾️」

 

(何故かは知らんが、お前が力を貸してくれるとわかっていたからだろうな)

 

「消去対象、天使ラナエル。消去、消去、消去」

「な、お前はさっきの…⁉︎」

 

(なあ?そうだろ?)

 

俺の背後に現れたそいつは、明確な言葉を発さなかったものの、その背中は俺の思いに応えてくれているような気がした。




召喚の詠唱を私が考えたとおりに当てられた人には、死神の「レクイエムリーパー」一年分をプレゼント!奮ってご参加ください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奔放な人ほど心配になる

お久しぶりです。終章が来年まで出ないので、いろんなキャラが想像やらなんやらで好きに動き回ってます。


ーたまも視点ー

 

「よし、着いたぞ」

 

魔王様の言葉通り、ウチたちは異世界のイリアスヴィルに到着した。もちろんハーピ―の羽を使っての移動じゃ。

まずは手分けしてイリアスヴィルの中にいないかを確認する。ウチは自分を含めた四天王の四人で探すことになった。

 

「輝、どこに行ったのかしら」

「あいつは腑抜けてはいるがバカではない。私たちがいないと分かった時点でなんらかの行動を起こして入ると思うが……」

「……入れ違いになった、とかはないかしら?」

「それはなかろう。ウチは途中で勝手に離脱することを懸念して羽は持たせておらんかったからの」

 

しかし、こんな状況になってしまうくらいだったら、逃げようが何しようが持たせておいてもよかったと思う。

 

「こっちにはいなかったよ」

「輝……どこ? 絡みたい……」

「七尾様と探しましたが……こちらにもいなかったです……」

 

 

他メンバーも帰ってきたようだが、どうやらいなかったようだ。

 

「ねえ、ちょっと思ったんだけど」

 

アルマエルマが皆の注目を集める。

 

「輝、もしかして私たちを探して外に出てる……とかあり得ないかしら?」

「それはないのでは?こんな大天使がごろごろ徘徊してるようなところをうろつくとは……」

「それは私たちなら、の話でしょ?」

 

ヴィクトリアの言葉をアルマエルマは途中で遮った。

 

「輝は一人でたまもちゃんに飛ばされた。イリアスヴィル前に来たけれど、合流するはずの私たちがいない」

「そうだ、だからこそ外に出るなんて」

「それが異世界のイリアスヴィル、と知らなかったとしたら?」

「いや、それでも外に出るとは……」

 

「い、いや……あり得る……」

 

ウチは思わず呟いてしまった。おそらく、顔色は真っ青。

 

「あやつ、「まあイリアスヴィル周辺ってスライム娘とかバニースライム娘とかが出るんでしょ? 逃げるくらいなら頑張ったらできるとは思うけど」と言っておったのじゃ……」

「それが一体どう関係すると……まさか」

「そうじゃ、イリアスよ。おそらくあやつはウチたちを探しに先に外に出たのではないか?」

 

全員に緊張が走った、その次の瞬間。

 

「!?」

 

凄まじく禍々しい気配を感じた。この場にいた全員も同じものを感じたようじゃ。

 

「急ぐぞ!場所は……全員わかるな!」

 

グランベリアが声を上げ、走り出す。ウチたちもその声で気をとり直し、後に続いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

到着した場所の感想を一言で言うと、「なんじゃ……これは」であった。

 

異世界のイリアスヴィルは元の世界と比べると、かなり荒廃した世界じゃが……ウチたちが到着した場所は荒廃なんて言葉では生ぬるかった。

 

地面のあちこちがえぐられ、所々深い穴が開いている。よくよく見れば、何かの液体があちこちに付着していたりもする。

 

「風でだいぶ薄れてはいるが……確かに人間の臭いがするな。輝とやらがここにいたのはほぼ確実だろうな」

 

魔王様がかむろや七尾たちとあちこちを嗅ぎまわりながら帰ってきてそう言った。ウチも少しだけだが回ってみたが、かなり薄れているものの、人間の臭い……輝の臭いがした。

それともう一つは嗅ぎ慣れない臭いがしたが……輝め、天使と出会ってしまったの。

 

「あそこの穴の中から、すごく嫌な気配がしました……」

「かむろ、その穴まで連れて行ってくれるかの」

 

絶賛陰陽師の修行をしているかむろは他の者よりも気配に敏感だったようじゃ。

案内してもらったのは他の穴と同じように、底が見えないくらい深い穴じゃったが……。

 

「確かに、何か感じるわね……」

 

アルマエルマが顔をしかめながらそう言う。

 

「……同類、ここにいるの?絡みたいわ……」

 

アンフィルはいつも通り絡みたい宣言をしておるが……はて。

 

「同類、とはどういうことじゃ」

「そのままの意味よ……ああ、絡みたいわ……」

 

はっきりした答えは返ってこなかったが……こやつの同類というと、アポトーシスかの?

この世界では発見したことはなかったとルカから聞いたのじゃが……。

 

「……!? みんな、戦闘準備だ!」

 

ハインリヒの声が聞こえたかどうかというところで、地面が大きく揺れた。

直後、地面から何かが飛び出す。あれは……?

 

「ラナエルに……何故、あれがここに」

「ふん、天使の方はわからんが……確かに何故あいつがここにいるのかというのは余も同感だ」

 

ラナエルという名らしい天使が、共に出てきた何かに消滅させられる。

 

「「アドラメレク……!」」

 

イリアスと魔王様の声に反応したのか。それはこちらを向いた。

 

「敵意、感知。消去、問題なしと判断」

 

「あら、こっちに敵意を向けてるけれど……相手するの?」

「あまり……相手取るのは得策ではなさそうだよね」

 

アルマエルマとハインリヒがつぶやく。

 

「撤退したほうがよさそうですね。全能たる私が言うのですから間違いありません」

「貴様が全能とかは特に関係ないだろう……。あやつ、余たちが相手したときよりも回復しているから、相手取るのは避けるという点は同意するが」

「で、でもルカさんたちは一度勝ったんですよね!? なら、私たちでも……」

 

かむろの言うことは最もだと思う。じゃが、そうはいかないのじゃ。

 

「確かに余たちを含めて、ルカはあやつを退けた。じゃが」

「その時はラ・クロワがアドラメレクの力を95%を削ってくれたからです……全快している今とでは次元がまるで違います」

「そ、そんな……!」

 

「だけど、そうも言ってられなくなったみたいですね……」

 

ヴィクトリアが若干声を震わせながらそう言う。

なぜじゃ、と。そう言おうとして振り返って、目に飛び込んできたのは。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「な……!?」

 

音もなくウチたちの背後をとっていた、異形の者。

 

「な……!?」

「何故あなたが……!?」

 

どうやら魔王様とイリアスはそれが何かをわかっているようじゃが……わからん。

 

「とにかく、逃げるぞ!活路を開け!」

「珍しいわねグランベリアちゃん!最初から逃げの一手を選ぶなんて!」

「これが個人的なものなら逃げるなどもっての外だかだな。今は輝のことがある!そのくらいは私でもわかるさ」

「そうね、私も同じことを考えてたから……はぁっ!」

 

アルマエルマがアドラメレクの破壊の翼を受け止め、カウンターを決める。当て身光掌……相変わらずの威力じゃの。

うちはうちで、九つの月を使ったりして応戦しているものの、なかなかに苦戦しておる状態じゃ。

 

……と。

 

「■■■■■■■■■■■■■■」

「おっと、土の力をもってしてもあぶな……え?」

 

飛んできた爪を回避し、シャドウフレアを月光きゃのんで相殺した瞬間に、見た。見てしまった。

 

「なぜそこに、お主がおるんじゃ!? 輝!」

 

アドラメレクと呼ばれたのとは違う方の謎の敵の胸部に、身体が半分ほど沈み込んだ状態で輝がいた。




「ヤンデレって誰のことですか(2話の後書き)」という質問をいただき、返信して数日後。
「あれ、ヤンデレじゃなくね?」と気づきました。訂正しておきますので、またよろしければ確認してやってください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ボスの増援でボスがくるってなかなかないよね

唐突に評価ゲージが赤くなり、点数が付きました。
それに伴ってなのか、4日の閲覧してくださった方が600に到達……!
目を疑いましたが、嬉しいです!
☆9にめらた様 Meka クマ様 厘音様 chrono club様
☆8にkN_tyata様 てっちゃーん様 USAR様

遅ればせながら、点数を入れてくださりありがとうございます!
そしてお気に入り登録してくださってる方!ありがとうございます!またいつかの機会でお名前をあげさせていただけたらと思います。

長くなりましたが、好き勝手してる作品ですが、どうぞこれからもよろしくお願いします!



ーたまも視点ー

 

「輝!目を覚ますのじゃ!」

 

奴……イリアスと魔王様が言うには、ソニアカオスという名らしい……の攻撃を九つの月でいなしながら必死に呼びかける。

どうやら、ソニアカオスもアポトーシスらしく、XX型アポトーシスとかいうものらしい。

そんな奴に半分くらい埋まっているという現状からして、取り込まれてアポトーシスとなってしまうのではないか。そんな焦りが胸の内で燻る。

 

「私も手伝います」

「手伝うわ……」

 

ヴィクトリアとアンフィルはこちら側に回ってくれている。

 

「輝さん……どういうことですか……」

「かむろ、気をしっかり持ちなさい。私たちで助け出すのです」

 

七尾とかむろも動揺しているものの、なんとか戦えそうじゃな。

 

「さて、僕もこっちを手伝うよ」

「む、アリストロメリアはどうしたのじゃ」

「彼女は向こう側でやるってさ」

 

ハインリヒが言う向こう側とは、つまりはアドラメレクのことだろう。現にすごく楽しそうな声と爆発音が聞こえてくる。……状況をわかっておるのじゃろうか。

 

「にしても、四天王がみんなむこうに回っちゃったね」

「仕方あるまい、さっきはああ言ったがあやつらならなんとか勝てると思ったからの。特に問題はない」

 

早めに片を付けてこちら側に手を貸してもらいたいところではある。なんせウチはどちらの相手もしたことがないからの。手は多いことに越したことはない。

 

「……来るっ!」

 

ハインリヒの声と同時にソニアカオスの腕が伸びてくる。飛び上がって躱したその場所に、鋭い一撃が突き刺さるのを横目に、内心ひやりとするものを感じた。

 

「これがウチの必殺技じゃ!月光きゃのん!」

 

しかし、そんなものに気をとられていては、勝てるものも勝てん!気を取り直して、月光きゃのんを撃つ。

顔に直撃はしたものの、ダメージは……そこまで、じゃな。

しかし、輝に攻撃を当てないようにしないといけないのがなんとも難しいの……。

 

「行くよ、シルフ!来い!ウンディーネ!頼むよ!ノーム!」

 

少し離れたところではハインリヒが精霊を呼び出しておる。伝説の勇者と呼ばれて入る者の、ウチたちが仲間にしたのは黒のアリスを討伐する前のハインリヒ。まだ精霊の扱いをマスターしきれていないのじゃろうな。

 

「力をもらいます!竜剣!」

「…………巻き付くわよ」

 

ヴィクトリアとアンフィルも、縦横無尽に駆け回りながらチクチクと攻撃しておる。ウチの攻撃よりも効いてなさそうではあるが手数は多い。ソニアカオスも若干あやつらの方に意識を持って行かざるを得ないようになっておるの。

 

「先に陰陽術を頼みますよ!私はその後に術を放ちますので」

「はい!いきます、七尾様!」

 

かむろが陰陽術でソニアカオスに弱点を付与し、七尾が的確に弱点属性の術を放つ。

うむ、なかなかにいいコンビネーションじゃな。きっとあの様子ならきつねとも組めるの。

 

「プラズマブレイク!」

「もう一発月光きゃのんじゃ!」

 

ウチたちも負けじと攻めたてるものの……本当に効いてるのか?と疑いたくなるくらいにタフじゃな。

こちらがジリ貧になるのが目に見えておるぞ……。

サポートにサキあたりがいたら少しは楽なんじゃが……!

 

 

「いないものはどうしようもないよ!すー、はー」

「そうじゃな、深呼吸でもして落ち着かんと。わしはちょっと気合をいれるがの」

 

丹田に力を込める。

ヴィクトリアとアンフィルに疲れが見えてきておるし、ここらで一旦こちらに気を逸らさせないといかんの!

 

「次の一撃は少しばかり重いぞ?たまもパンチ!」

 

もちろん、土の力もおまけしておる。そう思ってとびかかったのじゃが……。

 

(まずい、輝に当たってしまうのじゃ!?)

 

張り切り過ぎたのか、拳の着弾予定位置が輝の顔ということになってしまった。しかし、もうウチの拳は止まらない……!

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■」

「なっ?」

 

思いもよらないことに、ソニアカオスが腕で輝を庇った。腕に拳が直撃し、しかも会心の一撃と自負できる当たり方をしたからか、奴の腕にひびが入った。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「んぎゃっ!」

 

庇った右腕ではなく、左腕で地面に叩き落とされた。起き上がる間もなく、ホーリーフレアを叩き込まれる。

全身ボロボロじゃが、まだなんとか戦闘は続けられる、と言ったところ。

もう一度気合を入れ直していかんとな……。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

『なっ!?』

 

直後、ソニアカオスから放たれた異様な雰囲気。それと共にうちの気合が、ハインリヒに宿っていた精霊の気配が霧散した。他のメンツも自己強化をしていたようじゃが、それが失われたのか、戸惑いの声をあげておる。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

体勢を立て直す前に奴が動きを見せた。そして。

 

「私■■び出す■■■、■■な■大変■の?」

「仕方■■■■■、我■主■危機■■■■ら」

 

「そ、んな。このタイミングで」

 

七尾が絶望した表情をしておる。あ奴らは一体……。

 

「ソニアマズダに、ソニアマンユ……」

「姿かたちは図鑑で見たことがありましたけど、まさか私たちが相手することになるなんて……」

「かむろ、やることは変わりません。私たちは足止めしつつ攻撃しますよ」

 

そう言う七尾とかむろもかなりボロボロじゃ……。

 

「そ、そうじゃ!ヴィクトリア!オールメガヒールを!」

「すみません、習得してないです!」

 

そうじゃった!天使が皆白魔法を使えるわけではなかった!

このまま相手取らないといけないか、と覚悟したその時。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「え? 来■■かり■■■もう?」

「その■■。魔力■■■■■」

「主■、■■運■」

 

そう言いあった後、三体のソニアたちは消えて行った。胸部部分に埋まっておった輝が落下してくるも、アンフィルとヴィクトリアが地面にぶつかる前に拾い上げた。

……なんとか、なったようじゃな。

 

「たまも、無事か?」

「グランベリア……なんとか、じゃな。そちらも……なんとか、といった様子じゃな」

「ああ、魔王様とイリアスが奴のことを知っていたからなんとかここまで抑えられたというところだが……」

 

ん?そう考えると一度も相手取ったことない奴らばかりで組んでいたウチたちって結構危なかったのでは。

 

「急にアドラメレクが「魔力切れ……主様」みたいなところまで言ったところで消えてしまったな」

「ノイズが入ってましたが、奴の言ったことはおそらく魔王の推測通りだと思います」

 

そりの合わない経験者コンビもボロボロなものの、まだ元気はあるようじゃな。

 

「エルベティエちゃん、助かったわ」

「……一番頑張ってたから当然」

 

その後ろにいるアルマエルマとエルベティエ。アルマエルマの全身がべとべとしているように見えるのは、エルベティエのスライムヒールか何かのせいじゃろうな。

 

エデン、ミカエラちゃん、ルシフィナちゃんはというと、エデンだけがボロボロな状態でいつも通り二人に弄ばれていた。……大変じゃな。

アリストロメリアも姿が見えないと思ったのじゃが、いつの間に移動してきたのかハインリヒの横に陣取っていた。なんじゃこいつ、全然傷もないぞ。遠距離攻撃してたから狙われなかったのかの?

 

「とりあえず、だ。輝を連れて帰るとするか」

「そうじゃな。ポ魔城で休息をとるとしようぞ」

 

言うが早いか、ハーピ―の羽で元の世界へ。そして急ぎ足でプチの宿屋へと直行した。

 

 

 




戦闘描写が下手すぎたのでちょっと泣きそう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特に理由のない暴力が襲ってくる

お久しぶりですね。
割とバタバタとしていたのとかありまして遅くなりました。
展開はなんとなく決めてたのに、文字に起こすと難しいことこの上ないという……。
これでいいのかな?と悩みながらの投稿です。

☆10にMeka クマ様
☆9にランドリア様
☆8にグラニュー様

評価ありがとうございます!


おかしい、どうしてこうなった。

 

「さて、輝……存分にやりあおうぞ!」

「輝とやりあうの、初めてね? ウフフ、勝ったら何しちゃおうかしら?」

「……輝。私は負けるつもりはないから……」

「訓練で鍛えてきたとはいえ、真剣勝負では関係ない。全力で来い!」

 

「なんでもんくえ中章の四天王連戦の再現みたいなことになってるのかなあ!?」

 

俺は四天王を前に頭を抱えていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

気が付いたら知らない……いや、よくよく見たら知ってる天井だった。

正確に言えば、たまに昼寝に使わせてもらってその時に見ている天井である。

 

「……あれ?ここは……」

 

知ってる天井とは言ったものの、ここがどこか、なんてとっさには出てこず、そんなことを呟いてしまう。

辺りを見渡してもあるのはベッド。他に誰かが寝てるわけでもなし。

仕方ないから少し歩いてみるか、と思い、ベッドから離れたところで、見慣れた姿が目に入った。

 

「お、プチじゃないか」

「あ、ひ、輝!? 起きたの!?」

「ああ、今起きたところだ」

 

なんだかプチの反応が嫌に大袈裟な気がするが、どうしたんだ一体。

「ちょっと待ってて!」と俺に言い残し、ダッシュでどこかへ行くプチの姿を眺めながら俺はそんなことを思っていた。

 

程なくしてプチは帰ってきた。帰ってきたのだが。

 

「なあ、この心なしかポ魔城が揺れている気がして……というか段々と揺れが大きくなってきてない?」

「あ、あー……それは四天王のみなさんに声を『輝!起きたか!』かけたからなんだけ『輝!』ど『輝!』うるさいなあ……」

 

プチよ、お前はここの宿の主なんだからもっと声を大にして言っていいと思うぞ。相手が四天王とはいえ。

 

「とりあえず、おはよう。プチが呼んできたとはいえ四天王勢揃いとは仲良いな」

「仲とかの問題ではないのじゃが……まあ、あの時のメンツで集まりやすかったのはウチを含めたこの四人じゃからの」

「プチちゃんが来てくれた時、タイミングよく私たちもそろってたのよ。もう少し早かったらグランベリアちゃんが間に合ってなかったわね」

「ふん、多少出遅れたところで一番乗りするくらいはたやすいから問題はないがな」

「……たった今たまもとアルマエルマに先を越されてなかったかしら……」

「まあそれは置いといて、だ。なんかすごい勢いで来たけどどうしたんだ一体」

 

首を傾げながら問う。普通人に会いに来るくらいでどたばた騒ぐようなことはないだろう。

 

「そりゃ騒ぐじゃろうて……輝。お主、覚えておらんのか?」

「ん?グランベリアの楽しみにしていたプリンをたまもが食べてしまったことか?」

「ひ、輝!それは「たまも、後で話がある」覚えておれ……」

「プリンのことはどうでもいいから、話を進めてもいいかしら?」

 

さすがアルマエルマさん。みんなのお母さんなだけある。

 

「輝、あなたが覚えてる最後で、プチの宿屋で寝た記憶はある?」

「?」

 

変なことを聞かれた。確かに俺はここで目を覚ましたけど、それなら俺がここで寝たからなんじゃないのか?

……あれ?

 

「そういえば俺、たまもにイリアスヴィル前に飛ばされたあたりから覚えがないんだが」

「そこまでは覚えてるのね」

「輝、お主はそこで誰と戦ったとか覚えておらんのかの?」

「おぼろげにだけど……確かラナエルさんだったような」

 

服をしっかり着てたからあってるはず。

 

「たしかテンタクルブラストに当たって……そこからは完全に記憶がないや」

 

なんか頭の中で走馬灯の代わりに呪文の詠唱みたいなのがよぎったけど、関係ないだろう。

 

「……私たちが輝のところに着いたのは多分そのちょっと後よ……。あの天使が急に現れたと思ったら直後に消滅したから……」

「そうだ。そして消滅させたのが、確か……アドラメレクだったか」

「アドラメレクだって!?」

 

なんで奴がそこに現れるんだよ!?

 

「で、その後にまた別のアポトーシスも来て……」

「お主がそいつに半分くらい飲みこまれておったのじゃぞ?ヒヤヒヤしたぞ?」

「別のアポトーシスって……」

 

アドラメレクときて、別のアポトーシスとくると、それって。

 

「確か、ソニアカオス、じゃったか?」

「マジか」

 

話を全て聞いたところ、俺を追いかけてきたたまも一行はアドラメレク、ソニアカオスと戦ったらしい。ソニアカオスは途中でもう二体の異形……予想はつくけど確信は持てないから名前は控えておくか……を呼び出したものの、直後アドラメレクやそいつら共々消滅?撤退?したらしい。うん、わけわからん。

 

「はー、よく生きてたな、みんな……」

「それは私たちの台詞よ……1日寝たっきりだったから心配だったのよ」

 

それはきっとその日寝不足だったからだわ。多分。10%くらいは。

 

「まあ、なんとか大丈夫だったし……心配かけて悪かったな。ほれ、この通り大丈夫だから」

「ならよかったのじゃ。それなら今からウチたちと本気の手合せをするとしようかの」

「……んん?」

 

今この狐、なんと仰りやがりましたか。

 

「あら、いい考えねたまもちゃん。乗ったわ」

「ふん、私もちょうど身体を動かしたかったところだ。付き合ってもらうぞ、輝」

「……たまには私の暇つぶしに付き合いなさい……」

「え、ちょ、あの、お前らちょっと落ち着け?」

 

俺が戸惑ってる間にグランベリアに俵のように担がれて、ポ魔城の外までドナドナされた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして冒頭に至る。

正直に言おう。絶望しかないんだが。

 

「必殺!たまもパンチ!」

「いきなりだなおい!」

 

まずはたまもか!小さくかわいらしいその右手をぐーにしてこちらにとびかかってきたのだが、いかんせんその威力は……おそらくアレだ、当たったら即ゲームオーバーなやつだ。

 

「ほいっ……と」

 

ラナエルさんと戦った時からつけてる装備のお陰もあり、割と余裕を持って回避できた。

……決して防衛本能が全力で働いたとかはないはず。地面にクレーターができてるのはあれだ、きっとそこだけ偶然地盤が弱かったからだ。

 

「あら、たまもちゃんだけ見てていいのかしら?」

「あれ!? 一対一じゃなかったの!?」

 

いつの間にかアルマエルマに背後をとられていた。これが本当に命のやりとりだったら死んでたわ俺。

 

「さあて、輝はどうされたい?」

「できればこのまま何もなかったことにして部屋でゆっくりしたいんだけど」

「それは無理ね。じゃああまり気が進まないけどちょっとだけお姉さん、バイオレンスになるわね」

「気が進まないとか言う割にノリノリじゃねえか!?」

 

一旦その拳を開けよう?ね?

 

「……そこ」

「あっぶね!」

 

這い寄る混沌……じゃなかった、粘液が足元に来てたのにギリギリで気付いた。

さすがエルベティエ、無駄なおしゃべりなんてせずに攻撃してくるなんて、四天王一クールな奴だ。

 

「龍をも屠る一撃、その身に受けよ!」

「受けたら死ぬからやめろ!」

 

巨剣アレスが迫りくる。屠龍撃って確かグランベリアの技の中ではそこまで威力の高い技ではなかったはずだけど、勢いを見る限りそんなことないよな?

……あ、俺のレベルやらステータスが低いからどれを受けてもダメってだけだわ。

 

「うーむ、やはり輝の回避力は凄まじいの……」

「……そうね」

「私も不意を突いたから近づけたけど、もし正面からだったりしたら確実にダメだったかしらね」

「死剣・乱れ星!」

 

一人延々と攻撃してくる竜人のせいで、他の三人が何を話してるのかわからねえ!

この間のラナエルさん戦の時と同じで、こちらに攻撃手段がないせいでひたすら躱し続けるしかできないんだが!

せめて武器が欲しい……んだが……あれ?

 

「いつの間に右手薬指に指輪なんてついてんだ……?」

「……どこに目を向けている?」

 

やべえ、ちょっと目を指に向けた瞬間を見逃さずに距離を詰められた!

 

「お前の持てる力、自分で理解しきれていなくてもこれは使えると思ったものを存分に発揮してみろ!」

「…………!」

 

なら……さっきから鬱陶しいくらい頭をよぎるこれに縋ってみるか……?

 

「我、混沌を呼び覚ます者なり」

 

そう決めた次の瞬間には口が詠唱のために動いていた。

 

「全てを飲み込みし原初の混沌を率いる者なり」

「我の名に於いて、汝を召喚する」

 

「奥義!乱刃・気炎万丈!」

 

グランベリアの奥義がこちらに向かってくる。俺に躱す手段は、ない。

だが、どこかで俺はわかっていたのかもしれない。

 

「……っ!? なっ!?」

「あれは……ディフレクト!?」

「……輝はクララや電磁アーマーを使えないはずよ……なぜ?」

 

指輪から不可視の盾が現れ、グランベリアの攻撃を防ぎきった。攻撃の終わりと同時に指輪から感じた波導が消える。おそらくディフレクト効果を一時的に失ったのだろう。

だが、おかげで詠唱を中断することはなかった。

 

「身を削られるも、世界を消し去る力を持つ者よ、我が呼びかけに応じよ!」

 

 

「アドラメレク!」

 

名を呼んだ瞬間、俺とグランベリアの間に裂け目が現れた。

 

「やはり、来たか!」

「……あまり当たってほしくはなかったが……ウチの予想通りじゃったの」

 

そしてそこから現れるのは、何度か見た姿。

 

「消去対象、確認。主様の敵と判断。消去、消去、消去」

「……やっぱりあの時助けてくれたのはお前だったか」

「……主様。無事で、安心」

「ああ、ラナエルさんの時は助かったよ」

「断界接触による危機。我、当然の行為」

「まあお前を呼び出せるようになったのってお前が何かしたんだろうけどさ……」

「……予想外の事態。我も困惑」

「お前自身も驚きの事態なのかよ」

 

てっきりアドラメレクはこうなるものとわかってたと思ってたんだが。なんというか、すごい奴だし。

 

「……ふぅ、輝よ。少しいいかの」

 

俺とアドラメレクの会話が一区切りついたところでたまもが声をかけてきた。

……そういや、四天王と手合せという名の一方的なリンチを受けてたんだっけ。

 

「先程話したことじゃが……ウチたちが戦ったのはこいつじゃな」

「……そうなのか?」

「相違なし。我への敵意を確認した」

「ま、まあそりゃあ急にお前が出てきたら誰だってびっくりするだろうな……」

 

つまりはタイミングとこいつへの認識自体が悪かったってことだな。

まあ前章でのラスボスだし警戒されて仕方ないとは思うが。

 

「よしよし、これでウチたちの目的も達成したし、これで手合せは終わりにするかの」

「そうね、グランベリアちゃんもそれでいいでしょ?」

「……そうだな」

「……戻りましょう」

 

どうやら俺がアドラメレクを呼び出せるという予測を立てて、この手合せを開いたと。

俺が、一方的に命の危機にさらされることで。

怖い思いをすることで。

 

「ふーん……なあ、たまも」

「うん?……って、ひ、輝?どうしたのじゃ?」

「どうしたって……何が?」

「輝?なんだか、すごく雰囲気が怖いんだけど……?」

「気のせいじゃないかなアルマエルマさん?」

 

こーんなに笑顔だというのに、ねえ?

 

「ところでさ、アドラメレク呼び出しちゃったんだけど、まさかこれで終わりってことにしないよね?」

『……え?』

「そんなの、アドラメレクもいい迷惑じゃないかな?かな?」

「ひ、輝……それでどうしたいんじゃ?」

「そりゃあ……俺にもやっと味方ができたんだからもう少しだけ付き合ってくれるよな?」

『……うっ!?』

「アドラメレク、消去や排除は禁止で、あいつらと手合せを頼む」

「委細了解。消去、排除禁止。致命傷等禁止」

「素晴らしいな、さすがアドラメレク」

 

俺が言わんとしていることをきちんと読み取ってくれるなんてなんてできた奴だろう。

 

『えっと、輝?』

「じゃあ、始めようか!」

 

この時の俺はすっごくいい顔をしてたと思う。

 

 

この後お互いに疲れるまで手合せは続いた。

 




とりあえずですが、シリアス(笑)は一旦終わりです。

感想、評価等々よろしければお願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

楽しみなことの約束は人を素直にさせるのかもしれない

日常回……というか、前半は説明回みたいになってます。
とりあえず前回までのような感じではないです。


「あー……なんか久しぶりに一人でゆっくりしてる気がする……」

 

俺は現代の自室で寝転がりながらぼやいていた。

つい先日に四天王との手合せ(?)をし、その次の日からまた平日で仕事。正直ある意味充実はしてるが、疲労感が半端ない。休みに休めてないどころか命の危機に瀕していたなんて冗談じゃないぞまったく。

平日の癒しは主に七尾だ。仕事の合間や仕事から帰るときによく話しているが、なんとなく癒しを感じている。

彼女自身、こちらに来て仕事を始めてから一カ月ほどだが、だいぶ慣れてきたようである。もともとたまもの側近ということで有能だからというのもあるからだろうか。

 

かむろときつねは、俺のクラスの児童としてよく頑張ってくれている。二人とも実年齢は相当上のはずなのだが、うまく溶け込んでいる。……かむろはともかく、きつねは素で溶け込んでいるようなのが少々笑えるが。

 

平日はこの三人と過ごしている。時々たまもも様子を見に来てくれるし、ご飯の用意をしてくれたりもするが、一番長く過ごすのはやはりこの三人だろう。かむろの料理スキルがグングン伸びているのもそうだが、意外なことにきつねの他の家事スキルが伸びてきていることに驚きを隠せない。あの子、意外な才能があるのね……。

七尾が二人の家事スキルを目の当たりにして、焦ったように「……これは休日に頑張らないといけないかしら……」とか呟いていたあたり、やはり相当できるようになったのだろう。

「平日頑張ってるんだから、休日くらいゆっくり休みなよ」と伝えると、少し不服そうにしていたのが若干気になったが。

 

んで、その家事スキルは、最近は自分たちで伸ばしているらしいが、大元の基礎スキルはアルマエルマに仕込まれたらしい。もうほんと万能だなアルマエルマさん。なんというか頼れるお姉さんとかでは納まりきらないで、「おふくろ」ってポジションだよ。

 

あ。ちなみにもんむすたちは食事とか洗濯とかはこっちで済ましているものの、寝る時は基本ポ魔城に帰ってる。七尾曰く「テレビで見ましたが、最近は平気で人のプライバシーを侵害してでも報道したがるところがあるから、輝に不利になるようなことはしたくないです」とのこと。

まあ変化して外を出歩いてるわけだし、ゆっくり休む時くらいは元の姿でのびのびしたいだろうし、そっちの方が彼女たちも気が休まるというなら特に口出しする気はない。

 

……まあ、そんな風に気を遣ってくれている七尾には、朝起きたときにきつねやかむろが布団にもぐりこんでいることに関しては、黙っておいた方がよさそうだな。

 

少々長くなったが、こちらの平日はこんな感じである。

だが今日は休日。みんなはポ魔城でゆっくりしているころだろう。

かくいう俺もゆっくりのんびりしているわけだが……うん。

 

「アドラー、いるか?」

「どうした、輝」

「早い!?」

 

なんとなしに呼んでみたら、間髪いれずに返事が返ってきた上に、机の上で開きっぱなしになっているノーパソからアドラメレクが顔を出した。

 

あ、アドラメレクっていちいち呼ぶのがまどろこっしいから「アドラ」って愛称をつけた。彼女もそれに了承してくれた。ついでに俺のことを名前で呼ぶように頼み、口調もシステムチックなものから変えてもらったのだが、すぐに順応してくれた。さすがアドラ、できる女である。

 

「輝に何も起きないか見張っていたから、早くて当然」

「……少なくとも部屋でアドラが心配するようなことは起きないから安心してくれ」

 

そして最近わかったのだが、彼女は案外心配性である。……俺を主と認識しているからなのか?

 

「そういやソニアたちは?」

「今は狭間で休んでいる。世界に顔を出すわけにもいかないから」

「……そうか」

 

そういえば、XX型アポトーシスって世界にとって脅威になってたな。そりゃ気軽にポ魔城とかフィールドとかにはいけないか。

 

「まあ、もし退屈してるようだったら俺の部屋なら来ても大丈夫だって伝えといてくれ」

「……わかった。ソニアたちも喜ぶ」

 

アドラ、ソニアカオス、ソニアマズダ、ソニアマンユの四人が一部屋に揃うってなかなかに絵面がやばそうだけど、まあいいだろう。同じところにいるよりは、多少狭くても違うところの方がいいこともあるだろうし、帰りたかったら別に引き留めるつもりもないし。

 

「そういや、今更だけどアドラたちが来てもこの部屋って何ともないよな」

 

本当に今更だけど、俺の部屋って別世界の人が行き来するわ生活するわ、と実に現代社会から見たら不可解極まりない現象が起きてるんだが、なんというか世界の危機みたいなのが起きる気配はない。

「すべてがアポトーシスになる」ってゲーム中にあったし、なんなら俺が一番にアポ化してもおかしくないんだが、特にこれといった変化はない。

 

「……この部屋は特異点。私たちが存在しても変質しない極めて特殊な空間だから」

「マジか」

 

俺の部屋って一体。

 

「あとこの部屋、我たちにも干渉できない結界が貼られている。外への影響は起きない」

「マジで俺の部屋何が起きてるの!?」

 

いわくつき物件とかじゃなかったよなここ!?

 

「その代わり、私たちはここから外に出られない。世界に拒絶される」

「……それは少し寂しいかもしれないな」

「……別にいい。輝の世界を壊すのは本意ではないから、我慢できる。それはソニアたちも同じ」

 

なんだなんだ、お前らいい奴すぎやしないか!?え、アポトーシスってこんなだっけ!?

断界接触とかそんなのが無い限りすごくいい奴らなの!?

 

けど、それでアドラたちが寂しい思いをするのは違う気がする。

 

「……ここじゃ無理ってならさ。またそっちに行くなり……世界に影響が出るっていうなら、アドラたちがいても問題ないところ……そうだな、行っても大丈夫なタルタロスの先の世界とかでも散歩しようや」

「……必要ない」

「……存外気持ちが顔に出るのなお前」

 

今一瞬だけど、顔がパァッと明るくなって、そこから寂しそうな顔になったのを対面の俺が見逃すと思ったか?

 

「俺と、お前と、ソニアたちと……そうだな、連れて行きたいなら他のアポたちもいいかもしれないな」

「……楽しみに、していい?」

「時々でもいいならな」

 

自分で言っておいてなんだけど、アポたちとの散歩って割と混沌としてるな。主に見た目的な意味で。

けど、付き合いを深めてみると結構面白い奴らだったりもする。多分。おそらく。絶対。

 

 

「我、戻る。ありがとう」

「ん、こっちこそ急に呼び立てて悪かったな」

 

アドラはそう言い残してパソコンに戻って行った。多分だがソニアたちに今の話をしに行くのではないだろうか。

 

「っと……とりあえず今日はまだまだ時間あるし、一日ゴロゴロ『輝、来たぞ!』させてくぐべぇ」

 

パソコンから球形の物が飛び出したと思ったら壁で何回か跳ね返り、寝転がっていた俺の腹の上へ。もっふもふしてるとはいえ、それなりの勢いと重量があるから少なからずダメージはある。

 

「たまも……次からはそれはやめろ」

「む、どうしてじゃ?」

「貴様、どこにダイブしてきたかわかってての質問か?」

 

俺の上に乗ってきた球形の物はたまも玉。つまりはたまもである。

つまりは少女サイズとはいえ人一人分の重量を腹に受けたわけだ。やめろと言って何が悪い。

 

「……輝、大丈夫?」

「ああ……ってエルベティエ。心配するふりをしながら俺の右腕をとりこむな」

「……下半身の方が良かった?」

「ちくしょう『譲歩してやったんだから我慢しろ』みたいな目で見やがって!」

 

エルベティエはエルベティエで、さりげなくちょっかいをかけてくる。……それだけ気を許してくれているのかと思えばまあ悪い気はしないのだが。もんくえとかの初期の彼女と比べると、ね?

 

「……とりあえず、向こうでみんな待ってるから」

「うむ!れっつらごーごー!じゃ!」

「わかった!わかったからとりあえず離せええええええええ!?」

 

どうやら今日一日も、ゆっくり休めないものの、騒がしく退屈しない一日になりそうだ。

そのことに満足している俺がいた。




四天王がほぼ毎回出てるので、そろそろ別の子も出してあげたい所存。

ゲームで使ってないキャラが多すぎるのであまり考えられてませんが、そこらへんは想像でなんとかしましょうか(投げやり)


感想、評価等々よろしければお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

食欲がないからと言って食べないのは間違い

久々に日常回というか茶番回をかけた気がする。

今年の夏は暑いですね。コミケとかもありましたが、どうでしたか。
私はコミケに行きたいという気持ちは持ちつつも、場所が遠いので今年も行きませんでした。代わりにFGOで終わらない鯖フェスをしていますが(まだ4周目)

まだまだ暑いので熱中症にはお気をつけください。




「準備は出来てるかああああ!」

『おおおおおおおおおぉぉぉぉ!』

 

湧き上がる歓声。止まらない興奮。離れた場所からでも感じる熱気。

 

「お前ら!美味い料理を作る気持ちは十分かぁ⁉︎」

『おおおおおぉぉぉぉ!』

「輝に栄養は十分与えられそうかぁ⁉︎」

『当然だあああぁぁぁ!』

「ならば、これより第一回ポ魔城料理大会を開催するぜえええぇぇ!」

『っしゃあああぁぁぁぁぁ!』

 

「……え、何これ」

 

端に設けられた長机の一席にて、俺はそう呟くことしかできなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ん、んん……?」

「あ、輝さん! 起きましたか!」

 

ぼんやりする頭で、見覚えのある天井だなとか思っていると、傍から声がした。

目をやると、そこには黒色のナース帽と服に身を包んだ小柄な少女。

 

「ナビス……?」

「あ、きちんと認識はされてるみたいですね!」

 

ただしこの少女、サキュバスである。

ぼうっと彼女の顔を見ていると、ナビスは慣れた手つきで俺の額に手を当て、温度計を腋に挟み込ませた。

さすがナーキュバス、手際がいい。

 

「……熱はまだ少しありそうですね。食欲の方はどうです?」

「……少しはある、かな」

「なら、症状は良くなっていますね。一安心です。点滴も外せそうですね」

 

言われて初めて気が付いたのだが、左手に点滴が刺さってた。

 

「そういえば、なんで俺はナビスの世話になってるんだ?」

「あー……覚えてませんか? 輝さん、熱中症で倒れたんですよ」

「マジか。ここ数日体調悪かったのって熱中症だったのか」

 

ここ最近はすごく暑かった。プールの水が熱くて入れないということが起こるくらい暑かった。

だというのに、「電力消費を出来るだけ抑えてくれ」という上からの要請により、職場のほとんどが冷房も使えない状態だった。

 

「いや、それでもしっかり水分は採ってたぞ? なのになんで」

「……輝さん、それ本気で言ってます?」

 

なんでナビスは半目で俺を見てるのだろう。

 

「熱中症になる原因として、よく言われるのはなんでしょうか、輝さん」

 

急にクイズが始まった。

 

「ん? そりゃ水分不足だろ」

「そうです、では何故水分が足りなくなるのでしょうか」

「……汗、だな」

 

一瞬それ以外の排泄物のことも頭をよぎったが、まあ一番の理由はこれしかないよな。

 

「はい、それも正解です。では、その汗は水しか含まれていませんか?」

「それはないだろ」

「そうですよね。それが答えです」

「……???」

「わかってないって顔ですね……。ヒントは舐めたらどんな味がしますか?」

「そりゃあしょっぱい……あ、塩分か」

「そうです。まあ実際は塩分だけでなく、色々な栄養素も含まれているのですが……とりあえず、バカ正直に水しかとってなかったから、というのが一番ですね」

 

ここで、はぁ、と溜息をついてナビスは続ける。

 

「さて、話は変わりますが……輝さんはここ最近、ご飯を食べてましたか?」

「ここ最近……?」

「そうですね、体調が悪いと自覚された少し前からです」

 

そうだな、その時はたしか……。

 

「いや、忙しくて時間がなかったのと暑くて食欲がなかったから割と抜いてたな……」

「やっぱり」

 

給食も昼休みに用事が入ったりしてその時間に食べられず、後から食べようにも暑くて食欲が無くて他の先生に頼んじゃったんだよな。

 

「い、一応ゼリーとかは軽く口にはしていたぞ」

 

10秒チャージで有名なアレである。まあ三日おきに一個程度だが。

 

「輝さん、完全に栄養不足ですよ。ご自身が倒れられたあたりの症状を覚えてます?」

「まず俺、倒れたのか……それすら覚えてないんだが……ええと、確か食ってもないのに吐き気が止まらなくて、飲んだ水分を吐き戻してたっけか」

「まさに栄養不足ですね。塩分諸々足りてません。まあ、それも点滴である程度までは回復させることができましたが……」

 

マジか、点滴ってすげえんだな。

 

「しかし、食欲がなかったんだから仕方ないだろう……」

「食欲がないからって、そこで口にしなかったから悪化の一方をたどったんですよ」

 

ぐうの音も出ない。

 

「……まあ、七尾さんたちから相談は受けていたのですが、身体を休めることと栄養を取ることくらいしか、回復手段がありませんからねえ。彼女たちには伝えておいたのですが、聞きませんでした?」

「……はい、毎日のように言われてました」

 

忙しさと食欲のなさを言い訳に、ご飯を少ししか食べていなかった。食欲のなさを我慢してもっとしっかり食べておけばよかったな。

 

「まあ、食欲がない時に食べろと言われても厳しいのはわかります。……では、食欲が無くても「あ、これなら食べれる」とか、「これ食べたい!」って気持ちになれるものがあればどうでしょうか」

「確かに……それなら俺も無理なく食べられるかもしれないな」

 

食欲がないってのは、俺の場合は気持ち的なものだ。それを上回る「食べたい」気持ちを与えてくれるものなら、いいのかもしれない。

 

「なるほど……よし、わかりました。では私は少し席を外しますね。輝さんはまだ万全ではないと思いますから、ベッドでゆっくりしていてください。何かあればメイドさんに言ってもらえれば」

「わかった。トイレとかは勝手に行っても?」

「点滴はしっかり一緒に持って行ってくださったら大丈夫ですよ」

 

そう言って、ナビスはどこかに走り去っていった。それを見届けた俺は、再びゆっくり目を瞑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うん、原因というか、きっかけはナビスか」

「……なんだか心外な言い方をされた気がしますが、そうですね。ただ、ここまでの大事にするつもりはなかったのですが……」

 

俺の横に座るナビスが若干遠い目をしていた。

今さっき気付いたのだが、俺たちが席に着くように言われたここは審査員席らしい。やけに本格的だなおい。

 

「んで、結構席が空いてるんだが、これは?」

「あー、どうやら開会式で挨拶をするために待機させられてるようですね」

 

そこまでするのかよ。どこまでこの取り組みに本気出してるんだ。

 

「あ、ナビスさん、後でこちらにて挨拶をお願いしますね。輝さんも」

「わかりました! よろしくお願いします」

「それでは、後程!」

 

あれ、俺には言うだけ言って返事を返させてくれないの?

さっさと戻っていくデビルファイターのレジーナの姿を見て、心中で涙した。

 

「よっしゃあ!盛り上がってきたところでルール説明だ!」

 

ちなみに、さっきから暑苦しい司会をしているのは妖鬼のくれはである。料理とは無関係そうだけど、きっとこういうので盛り上げるのに適任そうだったからって理由で抜擢されたんだろうな。すごく活き活きとしてるし。

 

「ルール説明はジェネラルマーメイド、ジェシーからさせてもらうわよ」

 

そしてジェシーさん!あんたもノリノリか!

 

「今回のコンセプトは「暑い中でも食べたくなる、栄養のある料理」よ。まあコンセプトっていうか、この大会が開かれた理由がこれなんだけど……。あ、わかってると思うけど、劇物とか、非常識なことは無しよ。この大会に出る以上そんなものを使う奴がいるとは思えないけど……まあ、適当に頑張りなさい。応援してるわ」

『うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!』

 

最後、投げやりだなおい。

 

「……ったく、私も本当なら参加したかったのに……」

 

おい、小声で何か呟いてるのがマイクに入ってるぞ。はっきりは聞こえなかったけど大丈夫か?

あ、歓声で聴こえてないから大丈夫そうだな。

 

「っしゃあ、では今回の参加者を発表するぜ!まずは一番!頼れるうさぎのお姉さん!バーニーだ!」

「うふふふ、よろしくお願いしますね」

 

おっ、バーニーさんが参戦するのか。ポ魔城内のバーでも働いてる彼女は料理も上手だから期待できるな。

 

「続いて二番!その味付けは師匠譲りか?プチラミアのプチだ!」

「頑張るわよ!」

 

次はプチか。割とこの大会は料理の得意な人が出てるのか。思った以上に期待できるかもしれん。

 

「三番!その怪力は自前の料理の賜物か?ミノタウロス娘のミナ!」

「おっしゃあ!まぁかせぇとけえええええ!」

 

なんだろう、彼女が作る料理が大体絞れた気がする。

 

「四番!実は男を落とすために修行中? そんな噂があるぜ! エルフのクローディア!」

「誰よ!そんな噂を流したの!出てきなさい!」

 

……なんだろう、一概に否定できない気がするのは俺だけだろうか。頑張れ、クローディア。俺は応援してるぞ。

 

「さあ、ラストの五番!カサンドラの頼れる懐刀!メイドスキュラのランだ!」

「メイドとしての腕、見せて差し上げましょう」

 

メイドとしての自信がすごいな。……あ、むこうでケイトさんが睨んでる気がするが、一体何があったんだ。

 

「さて、これで出そろって……え、もう一枚?えーっと、怪しげな魔法で何でも解決!ウィッチ……って、ダメだ!」

「なんでだよ、別にいいじゃないか」

「お前は怪しげな魔術やらクスリやらを入れかねないっていうブラックリストに載ってる……と言われてる!」

「なんだよそりゃあ……不公平だねえ」

「……あたしはよく知らんけどな、自分の行いを振り返ってみたらいいと思うぜ」

 

あ、ウィッチが目を逸らした。

そして彼女はそのまま誰かに引きずられていった。

 

さて、そろそろ残りの人の挨拶か。

一番手は……ああ、やっぱりこの手のイベントなら絶対こっち側にいるだろうと思ったわ。

 

「喜べ、余に貴様らの料理を食してもらえるのだからな。存分に腕を振るうがいい」

「……その背格好では、魔王の威厳はやっぱりないですね。ただただ惨めなだけです」

「ふん、貴様も自分の恰好を改めて見るがいい。ここまで力のない奴にふんぞりかえられて、天使共もさぞ不快だろうな」

「……私はこの恰好でもきちんと理解してくれる優秀な部下がいます。あなたとは違うんです」

 

……なんかどこかで聞き覚えのある台詞だな。……そんなことよりも、アリスとイリアスはこの場でも喧嘩か。

 

「うがー、喧嘩はよくないのだ!」

「そうね、というよりみんなの邪魔になってるじゃない……」

「うっ……」

「失礼しました……」

 

なんでパピとヴァニラに窘められてるんだあいつらは……。信じられるかい?あれでも魔王と神なんだぜ……?

さて、次は……ん?誰だあの人。見たことないんだが。

 

「このような会に呼んでいただき、光栄でございます。料理人の一人として、皆さんの作品にしっかりと判定をさせていただきます」

「おう、忙しいのに来てくれてありがとうな!ってことで、ロストルム村のアルフォンソだ! 審査員としてはこれ以上ない人物だ!頼りにしてるぜ!」

「マジかよ、確か伝説の料理人だったよなあの人!?」

 

まずどうやって過去のロストルムから連れ出してきたのかが気になる。

 

「一応宿屋の経営はしてたからそこそこは料理できるけど……今日のこの会で、僕もいい刺激がもらえたら嬉しいよ。頑張ってね」

「ってことで、ルカだ!審査員は頼むぜ!あと、後でアタシと良いことしようぜ!」

「ストレートだね!?」

 

なるほど、ルカさんも審査員、と。

 

「あと今ここにはいないが……ああ、レジーナ。頼んだ」

「はいはい、じゃあみんなのいるところから離れてるけど、こっちを見てくれる?」

 

うわ、大勢に一気にこっちを向かれるとなかなかに圧があるな。もんむすだし。

 

「スペシャルゲスト兼審査員として、輝とナビスに来てもらってるわ。じゃあまずナビスから」

 

え、マジで挨拶しないといけないの?

 

「ええと、まずこのような会を開いていただくようお願いしたのは私ですが……思っていた以上に盛り上がってるようで嬉しいです。今回、私も審査員ということですが、ナースということで、主に栄養面だったり食べやすさだったりと、熱中症の観点から点数をつけさせてもらおうと思ってます。みなさん、頑張ってくださいね!」

「はい、ナビスありがとう。では、輝。お願いね」

 

ええ……こんなしっかりした挨拶の後とかハードル高いんだが?

 

「んーと、なんかナビスが言うには俺が熱中症が原因でこんなことになったみたいで、申し訳ない。まあ、呼ばれた以上は俺も公平な審査を出来るようにするから、頑張ってくれ」

 

俺から言えるのってこれくらいしかないよな。うん。

 

「はい、二人ともありがとう。ちなみに、今回のコンセプト「暑い中でも食べたくなる、栄養のある料理」の審査は、熱中症になった輝の審査が結構な点数を占めることになるっていうのを最初に言っておくわね」

「え、ちょ、それおかしくないか!?」

 

立ち上がって思わず声をあげてしまった。いや、なんで俺の責任が重大になってるんだよ。

 

「もちろん、他の審査員の方々の審査が軽くみられる、というわけではありません。ただ、今回のコンセプト上、まだ食欲が戻りきってない輝が食べられるか、美味しいと思ってもらえるかというのは重要なのでこういう形をとったのよ。だから輝は責任とか考えないでもいいから、素直な反応や感想を教えて? 点数はそこから考えてもらえばいいし」

 

まあ、気負わないでいいって言ってくれるなら、いいか……。

不安は残るが「わかった」と言い、座りなおす。まあ、確かに俺の今の状態はコンセプトにぴったりだろうから仕方ないか。

 

「さてさて、それではそろそろ始めますよ。出場される方は持ち場について!じゃあスタートの合図は、くれはにお願いするわね」

「よしきた! よっしゃ、準備は良いな! 時間は無制限! 料理の質を高めてもらいたいが輝が飽きる前に持って来いよ! じゃあ……はじめ!」

 

くれはの合図を皮切りに、料理対決が始まった。




続きはできるだけ早く出したいと思います。展開は全く考えてませんので、誰が優勝とかも考えてませんが()

評価感想等々、よろしくお願いします。私が喜びますので()


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

料理は愛情で作るのではなく、一般的な味覚と調整する心で作るもの

すごい久しぶりになってしまいました。
展開等々どうしたいのか割と忘れてるのと、文章が安定してないと思われます。
見苦しいことになってるかもしれませんが、よろしくお願いします。


「さて、始まったが……ナビス、この勝負は誰が勝ちそうだと思う?」

 

調理が始まり、選手が各々の作業に移っていくのを見ながら、ナビスに声をかける。

 

「正直難しいですねえ。割と本格的に料理が出来る人が出場されてるので……一部を除いて」

「その一部というのはあえて誰かとは聞かないでおこうかな」

 

決して確実にこってりした肉関係を出してきそうな彼女だろうとは思ってない。断じて思ってない。

 

「ちなみに輝さんはどなただと思ってるんですか?」

「順当に考えればラン、かなあ。メイドだし」

 

メイドといえば何でもできる万能職。執事と並んで万能人が就ける仕事である。ソースは国民的借金執事漫画。

炊事洗濯掃除と全てが万能なはずだから、これは優勝候補だろう。

 

「……でもよく考えてください。ランさんですよ?」

「いや、ランだから優勝しそうだと」

「メイドスキュラ、ですよ?」

「だからメイドだと」

「カサンドラさんの配下ですよ?」

「???」

「カサンドラさん、エミリさんのメインの食事といえば?」

「……なるほど」

 

どうしよう、一気にまともな食事が出てくる気がしなくなったじゃないか。

 

「まあ、一応普通の人間も出入りすることがあるから、一応は大丈夫だとは……一応は」

「余計な不安を煽るようなことはしてほしくなかったなあ!?」

 

彼女たちの食した後のような残りかすとか、人間の干物とかが出てこないことを切に祈るばかりだ。

 

「バーニーさんは堅実なものを作りそうだな」

「そうですねえ、結構魔物だけでなく、人間の皆さんにも受けがいいですから」

 

割ともんむすが入り浸っている(主に羊娘だが)が、人間も来てはいる。俺も偶に顔を出すことはある。

料理は美味かったし、いつも通りに調理できたらそれなりにいいものを作れると思う。

 

「さて、プチだが……どうだろうな」

「? 何か心配事でも?」

「ああ、宿屋を開いてるけどさ、料理する機会なんてあったのかと思ってさ」

「現にポ魔城でやってるじゃないですか」

「まあ確かにそうだけどさ、基本泊まるのって俺くらいだし、なんなら料理はバーニーの所だったり自分の部屋で食べてるからさ」

 

要するに、プチが料理しているところなんて見たことがないということだ。

 

「そこは大丈夫だよ、あたしが一から仕込んだからね!」

 

俺たちの会話に突如大声が入り込んできた。目を向けると、一人の恰幅のいい女性がこちらに歩いてきていた。

 

「えっと、貴女は……?」

「ああ、そういえば初めて顔を合わせたね。あたしはイリアスベルクでサザーランドって宿のおかみをしてる者だよ。審査員に呼ばれたんだけど、所用で少し遅れてしまったから今着いたところでね」

「あ、どうも……ってサザーランドの女将さんですか!」

 

一体どれだけの人を審査員に呼んでるんだ!?

 

「で、アンタたちはプチの料理の腕が気になってるんだろう?」

「は、はい。プチには度々世話になってますが、料理しているところは見たことがなかったので……気に障ったならすみません」

「ハハハ、気にはしないよ! 宿の切り盛りなんて、確かに従業員がいて成り立つものだしね。ウチも調理師を雇って料理は提供してるしね」

「は、はぁ……」

 

サザーランドは通常一泊10万Gである。部屋の良さ、サービスの良さもあるだろうが、提供される食事の品質もかなり高いからこその値段の高さなんだろうな。

俺としては、高級さとかは求めてはいないのだが、俺の部屋よりも広い上にサービスもかなり良いポ魔城の宿をかなりの安さで提供してくれるプチに感謝の念が絶えない。まあ同じところで生活してるのに金とるのかよって思われそうだが、宿泊費を払うことによって、きちんとベッドメイキングだったり間食や飲み物の準備をしてくれる。更には俺が他のもんむすに襲われたりしないようにしてくれてるということも後から知った。

俺は、俺の世界での宿泊施設しか知らないが、今まで泊まってきた中で一番サービスが行き届いてると思っている。だからこそ、特に用が無くてもプチの宿に泊まることが割と多かったりする。

 

「まあ、普段のプチの仕事を見てたら、どれだけ丁寧に仕事をしてるかはわかりますよ」

「そうかい、聞いたところではあまりここに住んでる人らはわざわざ宿泊しに来ないと聞いてたからね。泊まる人数が少ないからプチもやりやすいんだろうね」

 

俺からしたら、プチは十分仕事できているのだが、女将さんからすると人数が少ないから、ということらしい。女将さんの弟子、という目で見たらまだまだなのだろう。

 

でも。

 

「…それなら一度、サザーランドの女将として働かせてみてみるのも良くないですか? 俺がこんなこと言う権限はないのはわかってますが、今のプチはどこの宿でもやっていけると思いますよ」

「なるほど…そうだね。今度声をかけてみるとするよ」

 

しばらく逡巡した後、女将さんはそう返してくれた。

…いかに泊まる人数が少ないとはいえ、それは普段の話であり、偶に大所帯が宿屋に騒ぎにくる。その時でもしっかり、やることをしっかりやっているのを俺は知っている。料理に関してはどうしても手が足りないからバーニーさんや、他のもんむすにも頼ってはいたが…「人に頼る」という力も十分必要だ。プチは自分一人で出来ること、出来ないことをしっかりと把握する力も持ち合わせていると考えられる。

 

「さて、あとは……クローディアはエルフだからって理由だけで野菜とかでヘルシーにまとめてきそうだな」

「今回のコンセプトには結構有利かもしれませんね」

 

クローディアの方を見たときに丁度レタスを手に持っていたのを見た。すごくエプロンが似合ってる。以上。

 

「さて、料理が楽しみだな!」

「あの、輝さん」

「楽しみだなー。さっぱりしたものが食べれるなー」

「あの、ミナさんについてのコメントは」

「……ナビス」

 

俺はナビスの肩に手を置いて諭すようにゆっくりと伝える。

 

「俺の目には、ミナが何をしているかなんて見えていない。いいね?」

「いえ、あの……別に何をしているくらいは目にしてあげても」

「うん、まあ……そう言われたらそうなんだけどさ」

 

ナビスにそう言われてしまっては仕方ない。意を決してもう一度見ることにする。

 

目に飛び込んできたもの→大量の肉塊を嬉々とした表情で捌くミナ

 

「見ただけですごくボリューミーなんだよ!」

「確かにあれはすごいですが……別に大丈夫じゃないですか? ミナさんだからこってりしたものを作りそうっていう偏見からそうなってません?」

 

む、確かに言われてみたらそうだな。確かに偏見だ。

 

「……そうだな、もしかしたらミナも好きな牛肉を使ってさっぱりしたものを作ってくれるかもしれないな」

「そうですよ!楽しみにしてましょう!」

 

「よっしゃ!ここからスタミナをつけてもらうために濃い目に味付けしていくぜ!」

 

「…………」

「…………」

 

濃い目の味付けで油っぽくならないことを祈るばかりだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「全員の調理が終わったな!」

 

相変わらずくれはが司会だが、今更ながら彼女の進行は上手いの一言に尽きる。言葉選びを特にしているわけでもないんだろうが聞きやすいし。

 

「じゃあ順番通りにいくぜ!最初はバーニーだな!」

「ふふっ、はい。こちらです」

 

バーニーの料理が審査員席に配られてくる。なるほど、これは。

 

「なすと、トマト?他にもいろいろあるけどこれは……」

「まあまあ、まずは食べてみましょうよ」

 

一口食べる。なるほど。

 

「ミョウガと……大葉か。なるほど」

「美味しいですねえ」

 

すごくさっぱりしてるし、食べやすい。これは高評価だわ。

 

「さて、次はプチだ!」

「よ、よろしくお願いします……!」

 

ここにきて、緊張してしまったのだろうか。萎縮してしまっているが……並べられた料理を見るに、そんなにならないでもいいと思うんだが。

 

「なるほど、パスタか」

「え、ええ。塩昆布とささみと梅ぼしで作ってみたのよ」

「さっそくいただくよ……む、これは美味いな!」

 

しっかり和風の味つけはついてるけどしつこすぎないし、ささみをつかってるから油っぽさもない。いいなこれ。

プチは安心したのか、ほっと息をついていた。

横目で見た感じ、おかみさんもいい表情で食べている。悪い評価はつかないだろう。

 

「さて、次は」

「やっと私の番だな!」

 

あ、ミナか……。一体どんな料理が来るというんだ……?

 

「さあ、たんと食え!」

「お、おう……から揚げがきたか……」

 

見た限り、さっぱりとは程遠い料理が目の前に並べられていた。

 

「安心しろ!見てわかるとおり、今日は鶏肉を使ってるからな!」

「何を安心したらいいんだい俺は!?」

 

結局油ものじゃねえか!

 

「ま、まあまあ……とりあえず食べてみてからにしましょう?」

「……そうだな」

 

ったく、油っぽいものは食べる気にならないってのに。

そう思いながら口に一つ運ぶ。食べやすいようにどれも一口大の大きさになっているが、ミナの気遣いだろうか。

 

「……!?」

 

そして、俺に電流が走る。

 

「さっぱりしてる……だと?」

 

梅と大葉の風味がさっぱりしており、そして衣の白ごまの風味が香り、非常に美味しい。

これ、晩飯で出されたらご飯が止まらない自信あるぞ。

 

「ミナ……絶対油っぽいものを出してくるって思ってあんなことを言ってしまったわ……ごめんな」

「気にするなって! それより、味はどうだ?美味いか?」

「ああ、そこはもう間違いなく美味いよ」

「へへ、そりゃあよかった!あ、こっちは普通のだが、わさびを入れてるから普段食べてるのよりも多分あっさりしてるぜ? 気が向いたら食べてみてくれよ!」

 

どうしよう、ミナがママに見えてくるよ……。ポ魔城に新しいママが増えるよ……やったねナビちゃんママが増えるよ。

 

「私を勝手に巻き込まないでほしいですね?」

 

おっと、なんか思考を読まれた。

 

気を取り直して、次はクローディア、と。

 

「主菜ばかりだとしんどくなりそうだから、私はこうしてみたわ」

 

そう言って出されたのは汁物。

 

「豚汁だけど、まあ食べて見たらわかるわ。さあ召し上がれ」

「おう、んじゃあいただくとするよ」

 

よそわれた豚汁は何の変哲もない。一口、具と一緒に啜ってみる。

 

「なるほど、これもミョウガに大葉に……なすとトマトだと?」

「ええ、さっぱりした豚汁を目指したんだけど……バーニーと材料が被っちゃったわね……」

「いや、それは仕方ないだろう? 発想が被ったのなら材料だって被るだろうし」

「でも……」

 

クローディアは、もごもごと呟いた後、言いにくそうにくちを開いた。

 

「その、さっきも食べた材料だから、輝的には飽きが来るでしょ? だからバーニーよりも評価が下になるんじゃないかなって……うぅ……」

「確かにさっきも食べた材料だな、うん」

 

事実なので素直に述べると、クローディアの表情は曇ってしまった。……おっと、ナビスよ。そんな射殺すような目で俺を見ないでくれないか?まだ続きがあるんだから。

 

「でもさ、バーニーとは作り方から出来上がりの形まで全部違うだろう? それにクローディアは豚汁って形で出してくれてるんだ。材料被りで評価が下がるとかはないよ。むしろ同じ材料を使っても、こんな使い方があるってことに驚いてるくらいだ」

 

だから、クローディアが不利になるってことはないから安心してくれ。

そう伝えると、見る間に表情が明るくなった。うんうん、美人は笑顔が似合うね。

……何やらナビスがジト目で俺を見ながら「たらしですね……」とか言っていたが、なんでそうなる。むしろたらしだったら今まで彼女いないなんてことないんだけどな?

 

「さて、最後は私ですね」

「う、そういえばランが残ってたな」

 

いかん、さっきのナビスとのやりとりでまともなものが出てこないって思い込みが激しくなってる。

 

「……先に言いましょう。今回は気まぐれを起こして、きちんと人間相手用に料理を作ってるので安心してください」

「人間相手用じゃないのも作る可能性があったということに安心ができないんだけどな?」

 

気まぐれを起こさなかったら本当に人間の干物とか出されてた可能性があるってことに身体の震えが止まらない。

 

「さて、私からはがっつりしたものではありませんが……こちらです」

「これは……大根にりんご?とりあえずいただきます」

 

出されたものは普段は見ない組み合わせだった。

 

「あ、すごいさっぱりしてて美味しいですね!」

「ああ、これはすごいさっぱり感だわ」

「お気に召したようですね。ではデザートにこちらをどうぞ」

 

言って出してきたのは……アイス?

 

「豆腐のアイスです。豆腐とはちみつを混ぜて冷やすだけの簡単なものですよ。仕上げに黒蜜をかけてみました」

「同時に二品作ってたわけか……」

「ええ、一品だけとは言われてなかったので。あ、きなこもあるので、もしよかったら試してみてください」

 

なるほど、きなこも確かにあうな。美味い。

 

「ふぅ……すごくおいしかったですね!」

「全くだ。どれもコンセプト通りのものだったしな」

 

少量ずつとはいえ、出してもらったものは完食してしまったくらいだ。

 

「さて、ここでジェシーに交替するぜ!私も食べたいからな!」

「というわけで、私に代わるわね。では、審査員の皆様に話を聞いてみましょう。まずは魔王様、どうぞ」

「うむ、どの選手もよくここまで美味いものを作り出せた。余の専属シェフにならぬか?」

「お気持ちはわからないでもないですが、選手のみなさんも普段の生活がありますし……たまにくらいならお願いできるかもしれませんので、専属は勘弁してあげてください」

「む、そうか……。まあ仕方ないな」

「ふっ、さすが卑しい魔族の王ですね。欲しくなったらすぐに我が物としようとするその魂胆、実に低俗です」

「そうはいうが、イリアス。貴様もこれを食べて見たらわかるが……ああ、貴様に理解できるかどうかは知らんがな」

「私は全能の女神イリアスですよ?口を慎みなさい。……では、少し失礼して……。………………。」

「……どうだ?」

「選手たちよ、私の専属のシェフとなりなさい。拒否は許されませんよ」

「おいこらそこのへっぽこ女神さっきアリスが言ってた以上に横暴なことを言いだすんじゃねえ」

 

思わず突っ込みをいれてしまうほど、きれいな手のひら返しだった。

 

「さ、さてそれではアルフォンソさん!プロとして、どうでしたか?」

「そうですね、どの選手も非常にレベルの高い料理を作られてました。これは私もうかうかはしていられないですね」

「おお、プロの刺激になることができるくらいにはみんなすごかったようね!ではルカ!」

「え、えっと……うん。僕も料理は割とする方だけど……今まで考え付かなかったようなものが食べられたから、僕もいい刺激をもらったよ。今度挑戦してみたいから、レシピを教えてもらえたら嬉しいな」

「はい、みんな大好き偽勇者も大好評!さてさて、ではサザーランドの女将さん!」

「そうだね、うちの従業員にも食べさせたかったよ。どうだい?うちに働きに来てみないかい?給料ははずむよ!」

「まさかの勧誘!有名宿屋の女将のお墨付きとあっては、もはや疑うべくもない料理レベルの高さといえるわね!」

 

「ジェシー……なんかテンション高くないか?」

「ええ、まあなんとなく察することはできますが……」

「ん?理由を知ってるのか?」

「まあ、一応は……教えることはできませんが」

 

なんでナビスが知ってて俺には教えてもらえないのか。解せぬ。

 

「さて、ではではそろそろ本命!まずはナビス!」

「思わず自分の立場を忘れて舌鼓をうってましたね。それほどに味は素晴らしい。栄養面から言うと、惜しい方もいましたし、素晴らしい方もいました。一品だけなので、本当にこれを食卓に出すとなった場合は他にも付け合わせをきちんと考えられると思うので心配はしてません。ので、実質私はもう医学的に見るとかやめました!」

「えええええええええええええぇぇぇぇ!?」

 

それでいいのか!?なんかもっともらしいことを言ってこの大会を始めるきっかけを作ったのに!?

 

「いや本当に、一品だけだと判断できないのが事実ですよ。主菜になるものもあれば、副菜として出されるものもありますし、ランさんに至ってはデザートですよ。栄養面から点数をつけるとか無理すぎます」

「確かにそうだわ!」

「なので、純粋に味と食べやすさと……まあ、気休め程度に栄養のことも考えておきますよ、ええ」

「なんかやっぱりそこを適当にされるともやっとするな!?」

 

仕方ないとはいえ、もやっとするものはもやっとする。

 

「では、輝。感想をどうぞ」

 

ジェシーにマイクを向けられる。俺は、少し考えて口を開いた。

 

「まずは、出てくれた5人に感謝を伝えたい。美味しい料理をありがとう。どれも本当に美味しかったし、なんなら俺もルカさんと同じで作り方を教えてほしいと思ったよ」

 

作り方が簡単なら、晩御飯とかでしっかり食べられるしな。

 

「では……審査員のみなさん。各選手の料理に順位をつけていただく時間になりました」

 

ああ、ついに来てしまったか。渡されたフリップボードには各選手の名前が書いてあり、すぐ下に点数をかけるようになっている。

 

俺はしばらく悩んだ後、そこに点数を書き込んだ。




今回出た料理は全て検索して出てきたものです。作ったことも食べたこともないです。ので、味とかは想像して書いてます。多分あってると信じる。

今回の料理コンテストの結果ですが、もしよかったら感想等々でこの子に勝たせたいみたいなのがいただけたらと思います。なければなかったで、どうにかしていきますが……。もしお気に入りのことかがいればぜひ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

優勝賞品の使い方 一人目

新年度になってから初めての投稿なので、初投稿です。

お待たせしました。久しぶりすぎて、どう書きたいのかわからなくなってました。スランプですね。


どうもお久しぶりです。高梨輝です。職業は戦士(職業レベル2)です。

なんやかんやあった料理バトルから数日後、俺は自分の世界の街を歩いていた。

 

「ねえ輝。ここからどのくらい歩けば着くの?」

「あー、そうだな、大体10分くらいか」

 

ただし、一人ではない。横に目を向けると眩い金髪が目に入った。

 

「に、しても帽子をかぶってきて正解だったな」

「私はかぶり慣れてないからちょっと違和感があるんだけど」

「そう言うな、耳を隠すのに使えるのがそれしかなかったんだから」

「耳当てでもよかったんじゃない?」

「お前この真夏にあんなの着けるの? 倒れるよ?」

「……そうね、誰かさんみたいなことになったらたまったものではないわね」

「おい、俺を見ながら言うな」

 

まったくこいつは……。……あ、そうだ。

 

「すまん、言い忘れてたな」

「何かしら?」

「その帽子もそうだけど、服装。よく似合ってるよ、クローディア」

 

俺の言葉に、彼女……エルフのクローディアは顔を背けた。

いつもの緑を基調とした服ではなく、白っぽいワンピースタイプの服に大きめの白い帽子。ちょっといいところのお嬢様のような恰好をしていてとてもよく似合っている。腰あたりには小さな肩掛けバッグが揺れている。

 

「そ、そう? 輝がそう言うならそういうことにしといてあげるわよ」

「いや、それ自分で言うっておかしくない?」

「ふん! ほら、早く行くわよ! エスコートしてくれるんでしょ?」

「はいはい、わかってますよ」

 

そんなやり取りをし、俺は彼女の手を引いて目的地へと向かう。

少しだけ、ほんの少しだけど俺の手を握り返してくれるのを感じ、どこか嬉しく思っている自分がいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

到着したのは、映画館。最近巷で流行っている映画を見に来たというわけだ。

ちなみに言い出したのはクローディア。俺の部屋に来た時に偶然、テレビのCMでやってるのを目にし、行きたいと言い出したわけだ。

正直、最初は断った。休日はただでさえ四天王(いつものメンツ)に引っ張りまわされるわ、ポ魔城でなんやかんや騒ぎに巻き込まれるわと、楽しいながらも疲れるからだ。

たまには家でゆっくりゴロゴロしてたいじゃないか。

そう伝えると、クローディアは「……優勝賞品使うから」と宣った。その瞬間俺の休日の一日はクローディアのものになった。

ちなみに優勝賞品というのは、この間の料理対決の時のである。俺はこの存在にしばらくは恐怖して過ごさなければならないのだろう。

なぜか?それは、優勝賞品を手にしたのが五人いるからだ。メンツは参加選手全員。

甲乙つけ難い料理の数々に俺は順位など付けられず、「みんな一番だよチクショウ」と言ってしまったんだ。当然非難轟轟。大ブーイングが起きたさ。

途方に暮れた俺に司会のジェシー(ジェネラルマーメイドさん)が自分にまかせるように言ってきた。

きっとみんなが納得するような案を出してくれると信じて頼むと、彼女は一つの案をみんなに提示した。

 

「優勝者には『一日輝と好きに過ごせる権利』を贈呈」と。

 

これに俺以外のメンバーが大盛り上がり。

俺はというと、その盛り上がりを邪魔する勇気が出ず、見ているしかできなかった……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと、聞いてるの?輝!」

「ふぇっ?」

 

間抜けな声を出しつつクローディアのほうを見ると、眉間に皺が寄っていた。

……どうしたんだ一体。

 

「私の言ってたこと、ちゃんと聞いてたの?」

「あー、すまん、聞いてなかったわ」

 

正直に答えると、ぷくっと頬を膨らませた。かわいい……じゃなくて、どうやら怒ってらっしゃるようだ。いや、かわいいけど。

 

「いやほら、クローディアと出かけるってなったきっかけを思い出しててな」

「きっかけ……ああ、料理対決?」

「……まあ、そうだな」

 

そこから派生した、というか。俺の言動がきっかけになったから間違ってはないな。

 

「輝がみんな一番って言ったから、みんなのお願いを一つ聞くってなったのよね」

「そうなんだよなあ……」

 

割とこれが憂鬱だったりする。無理難題を突き付けられたりしないだろうかーとか。干物にならないだろうかーとか。

 

「輝は……私と出かけるの、嫌だったかしら……?」

 

俺の顔が曇ったからだろうか。沈んだ表情で彼女は問うてきた。

 

「そうだな。お願いを聞くってのは正直気が進まないが……クローディアと出かけるのが嫌とか、そんなことは思ってないぞ」

 

手で彼女の頭を優しく撫でながらそう告げる。

実際、まだ少ししか時間は経ってないが面倒とか嫌とかいう感情は微塵もない。あ、出かけるまでは面倒には感じてたけど、これは予定が決まってからその日の活動になるまでに感じるものであり、相手がどうとかは特にないので勘違いしないでほしい。ゆっくり休める休日を欲する身となってから、何かしらの予定を入れると、それこそ自分で決めた予定であっても面倒と感じてしまうのだ。

 

「そ、そう……よかった」

 

小声で何かしら呟いていたがよく聞き取れなかった。多分怒ってはない……と思う。

いや、怒ってるか? 耳が赤いし。あれか。急に頭、というか髪の毛を触ったからか。

そう思い手を止め、触り心地のいい髪の毛から離れようとしたが。

 

「……もうちょっと」

 

怒ってるはずのクローディアが何故か俺の手を自分の頭の上に抑えてきた。

……もうちょっとって言ってるし、別にいいんだよな?

謎に思いつつも、「……ありがと」と彼女が言うまでそのまま撫で続けるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うぅ、ぐずっ」

「あー、なんかこうなるのは予想はついてた」

 

横の席で泣くクローディアを横目にハンカチを用意する。

お、俺が泣かせたわけじゃないぞ!違うからな!

 

「ほら、使って」

「……ありがと」

 

ハンカチを受け取り、目元を拭うクローディア。

驚くことにハンカチがみるみる濡れていくのがわかる。どれだけ泣いてるんだ。

 

「で、どうだった?」

「ぐすっ、すごく、よかったわ……!」

 

どうやら満足だったらしい。まあこれだけ泣いてるし、まあ不満足ってわけではないとは思ってたが。

にしても。

 

「まさか、ラブストーリーものの映画を見ることになるとは思ってなかったな」

 

クローディアに誘われたのは、恋愛ものだったわけである。

普段まったく映画館にはいかないしレンタルすらしない、某週末にやってるロードショウ的番組のものは国民的人気を誇るアニメ映画くらいしか見ない上にその番組すら最近見に行ってない俺からしたらこのジャンルは初体験であり、新鮮であった。思わず無心で見入ってしまっていたのだが、クローディアは違ったらしい。

 

(映画館で手を重ねられるってほんとにあるんだな)

 

された当時は思わず彼女のほうを見てしまったが、当の本人はというと映画から視線をそらさない。あ、これ無意識なのかって思うと少しでも意識してしまったのが恥ずかしくなったのを覚えている。

 

クローディアが落ち着いたころを見計らって昼食を提案。昼の一時といい時間だったため、反対されることもなく、近くのフードコートに行くことになった。

 

「へえ、ここってすごくたくさんのお店があるのね」

「まあ、そうだな。割といろいろ食べられるな」

 

物珍しそうにあたりを眺めるクローディアに思わず笑いがこぼれてしまう。

その様子が、まるで小さな子供のようであったから……。

 

「で、輝は何にするの?」

「ん? 俺はそうだな、あそこの麺かな」

 

某九州の県の名前で出ているちゃんぽんの店を指さす。

 

「麺大盛りにしても値段が変わらないし、美味いしな」

「ふーん……私もそれにするわ」

「ん?いいのか?いろいろあるんだから好きなのを頼めばいいのに」

「ほら、野菜たっぷりじゃない」

 

そういや、それも売りにしてたな。

 

「それに、輝が美味しいって言うってことは安心して食べられるってことでしょ」

「いや、それは好みとかあると思うが」

「いいの、私も輝と同じのが食べたいって思ったのもあるから。チャレンジはまた今度来た時にするわ」

 

確かに初めての店ばかりってなると、誰かと同じものを食べたほうが安心できるってのはあるな。俺がそうだし。

クローディアに席をとっておいてもらい、その間に俺が注文。タイマーを受け取って席に着き談笑していると、時間になりタイマーが震えた。結構な音量と振動、話に夢中になってたのもあり、クローディアがかなり驚いていたのがツボに入った。真っ赤になった彼女に睨まれたのですぐに謝ったけど。

そして楽しく話しながら注文したちゃんぽんを食べ終わる。

 

「さて、ここからどうすっか」

 

クローディアが行きたがっていた映画館は行ったし、昼食も済ませた。帰ってもいいがまだ時間が早いからどうするか頭を悩ませていると、「ねえ、輝」とクローディアが声をかけてきた。

 

「その、行きたいところがあるんだけど……いいかしら?」

「まあ今から行ける所なら別に構わんが」

「えっとね、ここ、なんだけど」

 

クローディアは自分のカバンからパンフレットを取り出す。

 

「んっと、遊園地?」

「ええ、ちょっと行ってみたいなって」

「……少し待ってくれ」

 

彼女が行きたいといったのは自宅から割と近い遊園地だった。今いる場所からでも電車一本ですぐに行けるため時間的には問題はないだろう。

 

「……何調べてるの?」

「ん?ああ、臨時休業になってないかって」

 

ホームページを見たが、時に何もお知らせはなかったので大丈夫だろう。

 

「じゃあ行くか。もたもたしてたらすぐ閉演時間になっちまうし」

「そうね、じゃあ……はい」

 

急に手を差し出してきた。ふむ。

 

「ちょ、輝!? 何を」

「何って、手のひらをくすぐってるだけ」

 

急に手を出されたからやってみたんだが、どうやら求めているものは違ったらしい。その証拠にむすっとしてしまってる。

 

「んー、じゃあ」

「……次ボケたら叩くわよ」

「……ちなみに現在つけてるアビリティは」

「力40パーセント、乱れ打ち」

 

やばい、4倍返し以上のダメージをくらう。俺死んじゃう。

かといって、何を求められているのかわからない俺は立ち尽くすしかない。

 

「……もう、仕方ないわね」

 

苦笑しながらクローディアは手を伸ばし、そのやわらかい手のひらを俺の手のひらに重ねた。そのままぎゅっと握られる。

 

「……すまん」

「もう、ほんとよ。次からは察してよね」

「善処する」

 

女性と出かけるって経験が皆無だったから仕方ないとはいえ、クローディアには悪いことをしたな。優しいから許してくれたけど、次からは少しは察せられるようになろうと思った俺だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クローディア視点

 

すごく楽しかった。輝と出かけるって決まってから、どんな服を着ていくかとか、どんな話をしたいかとか。そんなことを考えるのがとても楽しかった。

けど、実際に出かけてみると自分が思っていたよりももっと楽しかった。

ほかのもん娘にも少し手伝ってもらったとはいえ、頑張って選んだ服を褒めてもらって。いっしょに映画を見て

一緒にご飯を食べながら感想を共有して。そして一緒に次の予定を立てて行動する。すごく、すごく楽しい。

 

(まあ映画は思い切りボロ泣きしちゃったんだけど)

 

前情報で「感動の大作!涙なしには見られない!」みたいな売り文句は聞いてたけど、まさかあそこまでとは。

何やらほかの子からは「泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ」と、以前何かでおっさんが言ってるのを見た気がするのとまったく同じセリフを言われたんだけど、現実になってしまって悔しい思いをしていたりする。

 

(まあそのおかげで輝の優しさに触れられたんだけどね)

 

親切にも彼は自分のハンカチを渡してくれた。あまりの涙の量にすぐにびしょびしょになってしまったんだけど。

ちなみに私が洗って返す予定にしている。

 

(でも仕方ないわよね。思った以上に感情移入してしまったし。何より題材が「異国の女性とのラブストーリー」だったんだから)

 

思いっきり、自分に当てはめてしまった。だからこそラストの別れのシーンが辛かった。

 

(私は……ずっと輝といっしょにいれるのかしら)

 

そんな不安が去来する。思わず握っている彼の手に力を入れてしまう。

 

「ん?どうした?」

 

私の行動に何かを感じたのか、彼が尋ねてくる。

何もない。ないから大丈夫。

そう彼に伝える。ちゃんと、伝えられたはず。

 

「……そうか」

 

一言そう言うと、私の手を離す。あっと思わず声が出そうになったがぐっと我慢する。

だって、彼はただ手を離したわけではなく、流れるような動作で私の帽子をとり、自然に私の頭に手を置いてくれたから。

 

「なんかあったら言えよ。今日は一緒に楽しむ日なんだろ?」

 

そう言いながら優しく撫でてくれる。

ずるい、ずるい、ずるい。輝はずるい。

私が彼を求めているのをどこかで察知して、きちんと行動に移してくれる。

普段は冗談ばかりなのに、求めているときには迷いなく行動してくれる。

こういうところが彼のずるいところで、彼の良いところ。惹かれているもん娘はたくさんいる。

かく言う私もその一人なんだけど。

 

「ん、わかった」

 

映画館に行く前にしたように、彼の手をつかんで私の頭に固定する。好きに撫でて、という意味ともっと撫でてという意味を込めて。

 

彼はずるい。いつでも頭を触ってもらってもいいって思わせられてしまうくらいに上手にしてくれるから。

彼はずるい。いつでも私たちに優しいから。口では何て言っていても、みんなのことを大事に思っているから。

彼はずるい。みんなが想っているのに気づいていないから。

 

だから今日は。今日くらいは。勝ち取った権利で輝との時間をたくさん楽しむんだ。

 

向かっている遊園地は閉演時間まで三時間ほどしかないけど。

きっとどんな3時間よりも素敵な三時間になるって確信できた。




自分でもどうしてこうなったって感じはある。

あ、評価、感想等々お待ちしてます。
感想くださった方、評価してくださった方、本当にありがとうございます。
返せていませんが、また折を見て返信等々できたらと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いろいろと間違ってる気がする

新元号になってから初めての投稿なので、実質初投稿です。

お待たせしました。
今回はだれも望んでないですが、主人公がチート強化されます。
多分これからもあります。


どうも、俺です。クローディアとのお出かけはすごく楽しかったとです。

遊園地に行った時、内心楽しめるのか?とか思ってたけど、いやあ楽しいのなんの。クローディアがすごく楽しそうだったのもあって俺もすごく楽しめたよね。

アトラクションを存分に楽しんで、定番の観覧車も乗って、その後某安くて美味いイタリアンなお店で晩ご飯を食べて、俺の家で別れたわけだけども。

何も知らない人からしたら、俺が女を連れ込んでるようにしか見えないよな。うわあ。

そんなことをクローディアに話したら

 

「べ、別に私は気にしないし?彼女と間違われたとしても別に何も問題ないし?」

 

とのことだった。顔真っ赤にして顔背けながらだったから、本当は嫌だったんじゃないかなあ。噂相手が俺だもんなあ。

なんか側でクイーンエルフさんやフェアリーズがニヤニヤしてたけど。あいつらあの一部始終を見て笑ってるとか性格悪いわ。俺はいいけどクローディアが可哀想だろ、俺と噂になるとか。

そう伝えると、至極残念な人を見る目をされた。なんなんだお前ら、表情筋の動かし方のバリエーション豊かだな。みんな可愛いから許すけど。

ちなみにクローディアにもその話は伝わっていたらしく、後から「別に嫌じゃないから…」とお言葉をいただきました。社交辞令でもきちんと伝えてくれるあたりやっぱりいい子です。お父さん、嫁にはやらない気だぞ!お父さんじゃないけど!

 

さて、そんなこんなありつつも平和に過ごしてたはずだった。

 

はずだったんだ。

 

「…何、これ」

 

イリアス神殿で、職業選択中にソレを見つけてしまった俺はそう呟くことしかできなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よし、今日はこのくらいでいいだろう」

「ふいー、やっとか」

 

グランべリアの終了を意味する一言をきっかけに、俺はポ魔城の中庭に倒れこむ。ああ、今日もいい天気だ、と空を見上げる。

 

「とりあえずお前が習得した戦士の技はきちんと使えるようだな。だがまだまだ甘いところがある」

「わーってるよそのくらい。つか戦闘のプロと気分転換に模擬戦付き合わされてるだけの奴を一緒にすること自体が間違ってるんだがな?」

 

こちとらグランベリアやアルマエルマさん、たまもといった四天王メンツの四分の三に何故かよく呼び出され、こうして模擬戦めいたことに付き合わされている。呼び出しなんて生易しい表現で済まないことの方が多いがな。今日なんか朝飯食ってる最中に首根っこ掴まれて、気づいたらポ魔城中庭だったからな。過去最悪だなこれ。

 

「…グランベリアはこの先俺との特訓禁止な」

「な、何故だ!」

 

うるさい。俺の至福の朝食タイムを邪魔したんだ。そのくらいは当然だろう。

 

「そういや魔神斬り使えるようになったし、職変えてみるかな」

 

思い立ったが吉日。即刻イリアス神殿に向かった。

いつもの神官さんと少し談笑(主にソニアとルカの進展について)した後、職業選択する。おっ、戦士が終わってるから剣士が解放されてる。よしよし。

 

「他に職って色々あったはずだけど、どんなのがあったっけか」

 

いくらもんぱらをある程度やってたとはいえ、それほど重要視してない職については忘れがちなため、確認のためにざっと目を通す。

なるほど、兵士とかあったなそういや。シーフも忘れがちだけど存在してたわな。

上級職は…あー色々あったな。魔法剣士とかあったあった。いつかはマスターしときたいな。確か最上級職でギガスラッシュ使えるようになるのに必要だった気がするし。いや、俺戦う気はないけど。

 

「…ん?」

そして俺は見つけてしまった。その文字を。

 

「決闘者…?」

 

黒文字で表示されてるあたり、まだ職にはつけないみたいだが…。

疑問点はその表示されてる場所。名前からすると戦士系な雰囲気なのだが、なぜ中盤から後半あたりに置かれてるのか。

 

「なるほど、ギャンブラーとカードバトラーをマスターする必要があるのか…」

 

…いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!

これ、もしかしてアレか⁉︎アレなのか⁉︎

いやまだ決定づけるのは早い。まずはこの職に就いてみないと何もわからない。じゃあどうするか。

 

「熟練度…あげるか…」

 

決意した俺は、戦士から遊び人にジョブチェンジした。

 

戦士レベル1→遊び人レベル5

 

「いや待って⁉︎」

 

なんで遊び人レベルが地味に高いの⁉︎

アレか!こっちの世界で四天王とトランプやらUNOやらすることもあるからか!一応「勝負」の定義になってるから熟練度も上がったってのか!職に就いてないのに!

この事をたまもに話したら頭を撫でられた。もう俺、たまもママ無しで生きていけな…いや、そういう意味じゃないので。寝室に連れ込もうとするのは勘弁してくださいお願いしますから!

 

この後なんとか無事逃げ出した。大地の力使われなくて本当に良かったと今になって思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「やっと終わった……」

 

力尽きた俺はぐでっとその場に寝転ぶ。

なんとか遊び人、カードバトラーの職業レベルを10まで上げることができた。

 

「ようやくか……」

 

そう俺に言ってきたのはグランべリア。彼女も俺と同じように床に伸びている。彼女にしては珍しく憔悴しきった状態である。

 

「ここ数日のことは本当に地獄に思えたぞ……」

「そうね……しばらくは私も遠慮したいわ……」

「…………」

 

同じく付き合ってくれたたまも、アルマエルマさん、エルベティエも伸びている。エルベティエに至っては人型?を保てなくなってしまっている。

 

「まあ今回は職業的に一番いい上げ方がこれだったからな」

「ほんと、もうしばらくは懲り懲りよ……」

 

散らばっているそれを片付けながらのやり取りである。

俺たちがしていたこと、それは。

 

「トランプ、UNO、水道管ゲーム、遊〇王、デュ〇マ、M&W、アルゴ、百人一首、カード型麻雀に他には何やったっけか」

 

俺の職レベルを上げるためにしたこと、それはひたすらカードを使った遊びを延々とすることだった。

 

「うああああああ、思い出させないでくれえ……」

 

今までやってきたものの名前を呟くだけでグランべリアがうめき声をあげた。そこまでか。そこまでなのか!

いやまあ俺もしばらくは自分からはやりたいとは思わないけど。

 

「これなら普通に修行や外で戦闘をしたほうがよかったと思うんじゃがのう」

「馬鹿言うな、遊び人やカードバトラーに戦闘ができると思うか?」

「いや、普通にルカとかはしていたんじゃが」

「ポ魔城の住人と同じスペックに見るのはやめてくれませんかねえ!」

 

一般人舐めんな!戦士とかでも武器をもってようやく戦えるかどうかってところだというのに、カードで戦うとか死ぬわ!修行だとしても!

 

「いや、お主が今回したのも十分常識外れだと思うのじゃが……」

「そうか?」

「いやそうじゃろう。この二日間ぶっ通しで延々とカードゲームをするとは正気の沙汰ではないぞ……」

 

まあ、うん。ちょうど長期休暇が取れてしまったから思わずね。

 

「まあこれでも効率の良い上げ方を見つけたんだから許してくれよ」

「……一応聞くけど、見つからなかったらどのくらいかかってたのかしら……?」

 

アルマエルマさんの言葉にしばらく頭を悩ませる。そうだな。

 

「多分あと一日は要したと思いますよ」

「……見つかってよかったわ……がくっ」

 

あ、アルマエルマさああああああああん!?

 

「まあ方法が見つかったってのはよかったけど……その方法、今回以外ではやらないほうがいいわよ」

「安心してくれ。今回は一番効率が良かったからしてたが他ではする予定ないよ」

「約束してよ……? 私、あなたのイカサマに何回心を折られたかわからないくらいなんだから」

「え、時間じゃなくてそっち?」

「時間もあるけど、私含めてほかのみんなもあなたのイカサマの方に心を折られたダメージが大きかったと思うわよ」

「マジか」

 

いやまあ仕方ないよね?いかに上手くイカサマできたかで熟練度の伸びが大きく変わったんだから。

 

「カードのすり替えから始まり、他の使ってないカードとの交換、手札を隠す、八百長……これだけでも相当なのに勝ちが確定したと思ったところにどんでん返しされるのよ?しかもイカサマってわかってても立証できないようにされてるし」

「バレなきゃ犯罪じゃないっていうしな。バレたとしても証拠がなけりゃただのケチ付けだ」

「もう、本当にやめてよね?グランべリアが何回発狂したかわからないくらいなんだから」

 

あれはあれで面白かったんだけどな。カードでも負けず嫌いを発揮してたから他のメンツ以上に心的ダメージが来たのだろう。途中で勝者が敗者に命令できるってルールも追加したけど、ほぼグランべリアが勝つことはなかったし。俺も職業補正があったからかイカサマは上手くいってたほうだが、たまもは賢い狐らしく上手にズルをしてたし、アルマエルマさんもかなり上手い誘導をしてた。エルベティエもその軟体を上手に活かしてた。

あれっ、そう考えるとグランべリアのトラウマって俺だけのせいじゃなくね?

 

「まあ、もし次遊びでやることがあったらイカサマなしでやるよ」

 

とりあえずこの悲しい事件のことは忘れることにした。ごめんよグランべリア。君のことは晩御飯までは忘れない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ってことで、と」

 

イリアス神殿、大神官様のところで件の「決闘者」を選択した。

 

「うむ、これでお主は……えっ?何これ。け、決闘者?そんなのなかったはずだが!?……ま、まあいいわい」

 

大神官様すら戸惑うってなんだよ決闘者。

 

「んで、やっぱり俺が想ってた通りのものだったと」

 

左腕についたデュエルディスクに目をやる。やはり『遊〇王』のほうらしい。

ちなみにデッキはというとなぜか中身が見られない。というよりデッキがセットされていない。

 

「これどうしろって言うんだよ……」

 

カードがなかったらデュエルできないじゃねえか。アレか?「カードは拾った」ってすればいいのか?

とりあえず家にあるデッキを差し込むかとか考えていると。

 

「輝……この二日間の恨みつらみ、ここで晴らさせてもらうぞ!」

「転職直後を狙ってくるとか卑怯すぎませんかねえグランべリア!」

 

ポ魔城中庭に気づいたら連行されており、グランべリアと対峙していた。

 

「まあお前も職が変わったから試運転したいだろう? 私もお前を叩きのめし……身体を動かしたかったからちょうどいい」

「今叩きのめすって言ったよな?ごまかせてないからな?」

「うるさい!とりあえず大人しくタコ殴りにされていろ!」

「やっぱり嘘じゃないか!」

 

い、一応修行目的のはずだから死にはしないはず……。

 

『ブォン!』

「危ねえええええぇ!?」

 

今の一振りで首が、俺の身体サヨナラバイバイするところだったぞ!?

 

「チッ」

「今舌打ちしたよなあ!?」

 

完全に殺しに来てるぞこいつ!

 

「安心しろ、死んでも蘇生させてやる」

「俺が蘇生できるって確証がないからやめてくれませんかねえ!」

 

確か死んでしまったってあれも実際には戦闘ができないってだけとか、致命傷には至ってないもの限定とかいろいろ聞いたことがあるけど!とりあえず首と身体が分離したらもう無理だと思うんだ!

 

「くそっ、どうしろって……ん?」

 

打つ手を考える最中、デュエルディスクにいつの間にかデッキがセットされていることに気づいた。

このデッキがどこから来たのかとかはわからないけど、そうだ。俺は今決闘者。

 

「あ、そうだ。ついでにこれを装備してみて、と」

 

ルカさんに借りて装備していた「魂のデュエリスト」がいつの間にか手元からなくなっていたが、とりあえず気にしないことにした。

そしてカードを5枚ドロー。ふむ。

 

「いくぞ!グランべリア!」

「ほう、今日は随分威勢がいいようだな。手加減はしないぞ」

 

へっ、言ってろ。

 

「デュエル開始の宣言をしろ!たまも!」

「えっ、ウチ? デュエル開始ぃ!」

 

その場に偶然居合わせたたまもに宣言をさせた。決闘者はこれがないと始まらないな。

 

「屠竜撃!」

「モンスターを裏側守備表示!これで防ぐ!」

 

グランべリアの剣が届く前に、俺の前にセットモンスターのカードが現れる。攻撃を受け、そのカードがグランべリアのほうへ向く。

 

「なんだ、それは……!?身体が!?」

方界胤(ほう〇いいん)ヴィ〇ャムの効果。攻撃してきたモンスターに方界カウンターを一つ乗せる!そのモンスターは攻撃できず、効果は無効化される!」

 

また、ヴィ〇ャムには永続魔法カード扱いとなって場に残る効果もあるのだが、これが関係しているのかヴィ〇ャムが俺の後ろで浮かんでいる。

ってか、初手でヴィ〇ャム引けて良かった。まあ方界カウンターに関しては多分短時間で切れそうだと俺は思っている。何故ならここはもんぱらの世界。ところ変われば効果も変わってくるだろう。

 

「手札から『愚〇な副葬』を発動!デッキから『方〇業(ほう〇いカルマ)』を墓地に捨て、そのままその効果を発動!デッキから方界モンスターを手札に加える!来い!暗黒方界神クリム〇ン・ノヴァ!」

 

宣言していくだけでカードが勝手にその通りに動いていく。ディスクがシャッフルを勝手にしてくれているあたり、結構新しい世代のものらしい。見た目は完全に決闘街編のだけど。

 

「くっ、まだ、まだああ!」

「もう動けるのかよ!」

 

思わずヴィ〇ャムの方を見ると、ヴィ〇ャムも単眼を見開き、驚いたような感じを出していた。

どうやらヴィ〇ャム自身も予想外だったのだろう。

 

「私も戦士という枠に捉われず、様々なことを試してきた。ちょうどいい。こちらも試運転といこう」

 

そう言った直後、グランべリアの身体がぶれた。

 

「忍法、分身……くっ、まだまだか」

「まだまだとか言ってるけど、二人に見えるな」

 

多重影分身でもするつもりだったのだろうか。

 

「まあいい、手札のヴィ〇ャム、方〇業、方界〇ーマを見せ、クリム〇ンノヴァを特殊召喚!」

「させるか!」

 

一刀両断。その言葉以外でないような鋭くも美しい一閃。

 

召喚されたばかりのクリム〇ンノヴァが一瞬で消え去った。

 

「なっ……あっ……!?」

 

嘘だろ?

 

「ふん、どんなものかと思ったがその程度か」

「その程度、だと!?」

 

攻撃力3000のやつをその程度だと!?

いや、ここでは攻撃力の概念はあまり関係ないのかもしれない。なにせグランべリアだ。いろいろ規格外だし。

 

「しかし、どうしたら……ん?」

 

ステータス画面が唐突に浮かび上がってきた。職業の欄が移っているが……。

 

レベル1 カードゲーマー→レベル2 凡骨

 

「おいいいいいいいぃぃぃぃ!」

 

なんか罵倒されてないか!?

そう思った瞬間、次はスキル欄が開く。

 

「! これは!」

 

いくつかスキルが追加されたのを見て、突破口が見えた気がした。

問題は、それを引けるかというところだがまず問題はないだろう。

 

「来い!『時の魔〇師』!」

 

何故なら俺はそれらのカードを一枚もデッキに入れていないのに使えることになっているから。

宣言通り、時の魔〇師が手札に来る。しかし、今出したところで一太刀のもとに切り捨てられるのが目に見えている。

それなら!

 

「俺は時の魔〇師を召喚!続いて攻撃の〇力化を発動!」

 

召喚したばかりの時の魔術師を襲う巨剣が分厚い光の壁に遮られる。

 

「今の内だ!タイ〇マジック!対象はグランべリアの足元!」

 

タイムルーレットが回り始める。今のうちに俺は俺でできることをしておかないといけないが……。

止まった針の先が示すのは髑髏。つまり。

 

「ぐあああああぁっ」

 

タ〇ムマジックが失敗し、時の〇術師が爆発する。その爆風に俺も巻き込まれてしまった。

致命傷ではないが結構な痛手である。

 

「ふん、我が剣を止めたのには驚いたが自爆か」

「仕方ねえだろ、運なんだから」

 

だが時間稼ぎはできた!

 

「いけ!真〇眼の黒竜(レッ〇アイズブラッ〇ドラゴン)!黒〇弾!」

「なっ!いつの間に!」

 

いつってさっきの爆風に巻き込まれた時だよ。ついでに言えば、今の一連の動作の間にも、俺の職レベルが変動しており、

 

レベル2 凡骨→レベル3 決闘街トーナメント参加者→レベル4 神と対峙せし者

となっている。城〇内くん大好きか!

まあそれに伴って俺の使えるカードが大きく増えているんだがな。

 

「いくぜ、魔法カード発動!『エネ〇ーコン〇ローラー』!グランべリアを守備表示にして動きを封じる!コマンド入力は左、右、A、B!」

 

巨大なコントローラーが自動で動き、最後の入力が終わると同時にグランべリアに不可視の圧力がかかる。

少し苦しそうではあるが、すぐに向かってくるだろうし、今のうちに他のこともしておかないと。

 

鉄の騎士ギ〇・フリードとリトル・ウィ〇ガードを召喚したところでグランべリアにかかっていた効果が解けたようだ。

 

レベル4 神と対峙せし者→レベル5 友の行く末を見届けし者→レベル6 学生兼社長

 

だが、ここでまた俺の職レベルが上がったことにより俺はまた違った手を出す!

しかし、ここで学生時代の社長と同等になったか。となるとここで俺が出すのは!

 

「来い!『青〇の白龍(ブルーア〇ズホワイ〇ドラゴン)』!」

 

当然社長の嫁である。しかしこの職のアレから察するに、まだこの時は融合は使ってなかったときのはず。

それなら!

 

「魔法カード『滅びの爆〇疾風弾(バー〇トストリーム)』!」

 

原作では攻撃宣言で使ってたけど、許されるだろ!

二体のモンスターを倒した後であろうグランべリアに白き龍から放たれる攻撃が襲い掛かる。

これで仕留められたら御の字だが……!

 

「なかなか強烈な攻撃だな!だがこれならどうだ!」

 

ーギガスラッシュー

 

そう宣言し放った技は龍の攻撃とぶつかり合い、打ち消しあった。

 

「なんて奴だ……」

「それはこっちのセリフだ、輝。よもやあんな神々しい龍まで呼び出すとは」

「そりゃあ社長の嫁だから……ぐっ」

 

身体が急に倦怠感に苛まれる。おそらく召喚魔法と同じで、何らかの力を使っているからだろう。

良くても次が最後の攻撃になる。これ以上のダメージはやばいって、身体中が悲鳴を上げているぜ。

 

「次で、最後だ!ドロー!」

 

グランべリアが相手だからだろうか。決闘者のレベルがどんどん上がっていくのを感じる。ステータスを見なくてもわかる。

 

レベル6 学生兼社長→レベル7 KCコーポレーション社長→レベル8 闇の人格→レベル9 名もなきファラオ

 

今の俺ならあのカードも出そうと思えば出せるかもしれない。だが猶予はないため俺のとる勝ち筋はこれしかない。

 

「いくぞ……『武藤〇六(じいちゃん)の魂のデッキ』!」

 

デッキと手札が輝く。その輝きが収まった時、手札にあったカードはすべて違うものに変わっていた。

 

「魂のデッキ……もしやアレか!」

 

なんでわかった!?と思ったけど、そういや俺の方の世界で暇つぶしに見せたことがあったんだっけ。

 

「だがそうなると雑魚が多く出てくるはず。その間に勝負を決める!」

 

確かに、そう考えるよなあ。だけど。

 

「勝利は我が手中にあり!」

 

初手で揃っていた5枚のカードをモンスターゾーンに並べる。

 

空間が揺れ、俺の背後から両手両足、そして最後に顔が現れる。

 

封印〇れしエグ〇ディア。

 

さあ、最後の勝負だグランべリア。

 

「エグ〇ート・フレイム!」

「くっ……おおおおおおおおおおっ!!!! 乱刃・気炎万丈!!!!」

 

お互いの技がぶつかり合う。

遊戯王のルールなら、エグ〇ディアがそろった時点で勝利となるが、ここではそうもいかないらしい。

おそらくだが、俺の精神力や決闘者としてのレベルでモンスターの攻撃力や耐久力が変動すると思われる。

なら、ここで俺が倒れてしまったらエ〇ゾディアを揃えたけど負けるという摩訶不思議な現象が起きるわけだ。

それも面白そうだが、そうもいかない。

何故なら。

 

「は、はははははは!さすがグランべリアだな!」

「く、はははははは!ああ、まだ負けるつもりはないからなあぁ!」

 

『お前には負けない』

 

その意地が俺を奮い立たせてくれている。そしてきっと、グランべリアも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一体どのくらいの時間が経ったのか。

ふっと、攻撃が緩んだ。見るとグランべリアは耐えきったようだ。

 

(ああくそ、俺の負けか)

 

かなり本気になってたけど、手合わせでも負けるのは悔しいな。

その思考を最後に俺は地面へと倒れ伏した。

 

その数秒後、剣を握りしめたまま同じように倒れ伏した竜人の剣士がいたという。




過去最長ですね。
その分中身も無茶苦茶です。まあどんな風な強化がいいかとかめっちゃ考えてた弊害と思ってください。まとまりきってないし展開がアレなのは一重に私の力不足です。
ほんとすみませんでした。

これからのチート強化にはいくつか候補はありますが、こういうのもやってほしいってのがもしあったら教えていただければと思います。今のところ、某ソシャゲの魔法使いもさせてみようと思ってます。


あっ、カード手裏剣入れるの忘れてた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

混沌としすぎた迷宮

ちょくちょくは書いてたんだけど、進まな過ぎて笑えなかったので実質初投稿です。


どうも俺です。職業は色々とかじったせいでわからなくなりつつあるけど本職は教師です。

たまにはきちんと自分の本職を思い出しとかないと、なんというか自我が崩壊しそうになってる。うん。なんだよ決◯者って。

ちなみにあの後色々なカオスな職があったから試してみた。黒猫の魔◯使い、時◯勇者、ソ◯ジャー、神◯兵、ポ◯モントレーナー、ガール◯バンド、アイドル◯スター、スクールアイ◯ル、真の◯闘者、Se◯d などなど…。

なんか知らんがゲームとかだけでなく性別まで超越してしまってる気がするんだが、よくよく考えたら俺の育てたルカさんも淫流くノ一をマスターしてたわ。なんならその状態で混沌の迷宮潜ってるわ。色々とアウトな気もするけど。FFもの多いなとか思ってしまったのは仕方ないね。

しかし、ビビったのは真の◯闘者になることで神を召喚出来たことだった。オベリ◯クの◯神兵を召喚した時、その威圧感と破壊力のせいで二度と召喚しないことを誓った。アレはあかん。世界が壊れる。

壊れてもいい世界でならいいんだろうけど。

 

特筆して言ったのは真の◯闘者だが、他のも十分頭がおかしいレベルの壊れ具合だった。戦闘向けじゃなさそうなガール◯バンドとか特にそうだからな?ここで理由を言っていくと終わらなくなるから今は全て割愛するけど。もし要望があったらどこかでそれぞれの職のスキルやらなんやらを教える機会を設けるかもしれないからその時に考えるわ。

 

さて、何故わざわざこんな説明をしたかというと。

簡潔に言おう。

 

俺のいる世界ともんぱら世界が更におかしくなった。

 

いや、そもそも俺の就ける職に変なものが増えてる時点で察するべきだったんだけどさ。気になってどんどん職をマスターしていくことでバグが進行するなんて考えへんやん?つまり俺は悪くねえ!

 

ー職業「身代わりの人形」が解放されましたー

 

なんでや!吉田さんドライブ使えるようになってたまるか!

 

まあそんな俺の職が変な方向に開拓されてることなんてまだ序の口だ。何がやばいって。

 

「輝、終わったよ!」

「まあ、楽だったわね」

「もう俺が出なくていいのは楽なんだけどさ…一言いいか」

「「「「?」」」」

「なんでお前らが俺のとこにいるんですかねえ!ドッペルさんたちよぉ!」

 

現在混沌の迷宮強ボスに位置している、もっと言うならば本編未登場なドッペルさんたちが俺のパーティに入ってるのだった。

 

「不満でもある?」

「不満というか不安しかないわ!どうすんのこれ⁉︎ みんなにどう説明すればいいの⁉︎」

 

流石に本編未登場な奴らを会わせるわけにいかんだろ。混沌の迷宮内の記憶はルカさん以外は保持してないみたいだし。

あ、ちなみに俺が今いるのも混沌の迷宮だ。パーティは、まあ俺がいつも使ってたメンツを連れてるところなんだが、ルカさんがパーティに入れられないため微妙に火力不足である。サキとシュリーのキラッ☆からのミネリの捕食で片をつけてたが…うん。正直ちゃんと見てない。だいぶ後方から追っかけてる状態であるので何も見ていないし聞いていない。

 

ちなみにここにいる理由は職レベル上げとレジェンド装備の開拓だ。

先ほど挙げた職のレベルを上げるのに、前回の決◯者になるためのような方法をしてたら死んでしまうので、やむおえなく、だ。

ん?ミミックアイランドがあるだろって?やだよ、だって現実じゃないか…。下手したら死体が散らばる島になるじゃないか。スプラッタアイランドなんて勘弁だ。

混沌の迷宮に潜ってる理由も、レジェ装備拾いよりも実はそれが大きな理由だったりする。

混沌の迷宮では、倒してもその場から消滅するだけで、残骸とかは残らない。また、向こうからの下ネタ的攻撃も外に比べるとぐっと少ないというわけだ(ないとは言ってない)。その代わりオーバースペックな特技とか魔法を打ってくるんだが、まあ仕方ない。ここでならリアルでなら死んでてもおかしくない攻撃をされても「戦闘不能」となるだけである。痛みは多少あるものの、身体が耐えられないレベルのものはなく(数百万のダメージを受けてもかなり痛いのレベルで済む)、仮に死亡扱いされてもそれは戦闘不能というだけで、実際に死んではいない。なんなら動けるし。全滅したらなんか闇に包まれて入り口まで戻されるわけだが。

 

さて、そんな理由から俺は混沌の迷宮で職レベルを上げてたわけだ。ハードジョブリストは欠かせねえわ。レベルは上げたくないし。

教師やってる時に黒板を間違って叩き割ったりするのでは?という思いにかられたくないってのが一番な理由だけど。

後衛でのんびりしてるから、割と強ボスに挑んだりもした。グランベリアやアルマエルマさんの時は一度戦闘メンバーに参入してみたけど、普段の特訓という名のイジメを遥かに超える力量で押しつぶしにかかられたので速攻で交代した。ちなみに半泣きになった。

 

「んー、まあ適当にしたらいいんじゃない?」

「ふわっとした回答をありがとうホリィ!全く嬉しくねえな!」

 

ケラケラ笑いながらルカ・ホリィがからかってくる。腹立つ。

 

「私たちが付いて行くとなると…輝の部屋あたりまでになるのかしら」

「というより、そこまでしか無理なんじゃないか? 死神が何らかの細工してくるだろ」

「…まあ、私たちにとってもそっちの方が都合がいい。輝に迷惑をかけるのは本意ではない」

 

意外とリノアやキリエが良心ポジションだった。

 

「さて、じゃあ探索の続き行きますか!」

 

元気だねホリィ。そんな君が素敵だよ。

 

この後ワールドなんちゃらさんのサラマンダー式なんとか砲に消し飛ばされました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いやあ負けた負けた!あっはっは」

「笑いごとじゃないんだけどねえ」

「ドッペルとはいえ痛いものは痛いし」

「というか、いつも思うけどアイツの攻撃って四精霊の名前を称してる割に属性耐性無視してる気がするの、私だけかしら」

「うん、お前らが俺の部屋に来るのは知ってた」

 

あの後混沌の迷宮から放り出された俺は自室に戻ってきたのだが、そんな俺を待っていたのは先のドッペル四姉妹だった。いや姉妹でいいのか?いいよな。

 

「しっかし本当にお前らが言うとおりになるとはな」

「でしょ? 私たちがみんなに会うのは時期尚早ってやつだからね」

「それを判断したのは死神でしょう?」

「ホリィが誇ることではないな」

「なにおう!? ハイネに比べたら私のほうがよっぽど知性派だけど?」

「よしホリィ、混沌の迷宮に来い。勝負しようじゃないか」

「戻って早々騒がしいわね……」

 

うん、リノアは見た目通り落ち着いてるし、キリエはなんというか冷たい感じだな。まあ全体でみるとバランスが取れてるんだろうけど。

 

「ねえねえ輝!これしていい?」

 

ホリィが手にしていたのは某swit〇h。ソフトはあの有名なたくさんのキャラが大乱闘するアレである。数少ないリア友とするために買っておいたので、最近は触れられていないもの……だったのだが、どこぞの四天王がどはまりしている現状である。某筋肉竜剣士は「仮想世界で強くなったところで意味などないだろう」と言っていたのだが、お母さんポジションを獲得しているエロい人から「あら?グランべリアちゃんは勝てないからそう言って逃げるの?」という、見え透いた煽りに気持ちいいくらいに乗っかった。後の二人はまあ、みんながやるならやるか、くらいの意気込みで始めたのだが。

 

正直に言おう。めちゃくちゃ四人のレベルが高すぎた。

普段から戦闘面でのエキスパートなだけあり、動体視力や瞬時の判断が並外れていた。

こいつら本当に人間か?あ、人間じゃなかったな、もん娘だわ。

そんなこんなで俺自身はあまりやらなくなってしまった。四天王以外のやつらもうちに来た時に遊んで行ったりするし、なんなら一緒にすることはある。そのため、コントローラーは四人分用意されてる状況になってしまっている。

 

話がずれたな。

 

「ああ、別にいいぞ。ちょうど四人できるし、ドッペル四姉妹でやってみろよ」

「そうだね、やろうよ!」

 

ホリィが意気揚々と用意するが。

 

「そんな気分じゃないからいいわ」

「パス」

「めんどくさい」

「みんなノリが悪い!?」

 

なんということでしょう。同じドッペルだというのにホリィだけが異質な感じなってるよ。

俺とホリィは無言でうなずきあう。どうやら同じことを思ったようだ。

 

「あれれー、そんなこと言って負けるのが怖いんだ?」

「そうなんじゃないか?ホリィに負けるのが癪だからやらないだけなんだろうよ」

「残念だねー、じゃあ輝、一緒にやろう?」

「おう、いいぞー」

 

そんな会話をしながら用意を進め、いざコントローラーを握ったとき。

 

「…………」

「うん?」

 

リノアもコントローラーを握っていた。無言で引っ張ろうとするも、まったく離す気配がない。

 

「えっと、リノアさん?どうしました?」

「……やります」

「は?」

「あんな言い方をされたので、ほんの少しですが頭に来ました。なので私にやらせてもらえますか」

「お、おう。わかった」

 

なんだろう、リノアからやばい雰囲気がするんだけど。

そしてその雰囲気を醸し出しているのはリノアだけでなく。

 

「「…………」」

「……まさか、二人も?」

「「(コクリ)」」

「じゃあ、四人でやりなよ。俺は見てるし」

「えっ」

 

ホリィが少し……いや、かなり絶望したような表情でこちらを見ていた。

仕方ないじゃないか、やりたいって言ってるんだし。俺は持ち主だからいつでもできるから、初めてやる人たちに譲ってあげるのが当然だろう(プレイヤーたちから目を背けながら)。

 

「そ、そういえば操作方法しらないよね、先に教えてもらって、練習しないと」

「あら、そんなの必要ないわホリィ」

「そうだな、別に死にはしないんだから」

「まずはみんなまっさらの状態でやってみましょう?」

 

どうしよう、ホリィ以外の三人から殺気を感じる。

ホリィもそれを感じているのか、どこか小刻みに震えているように見えた。

 

なお、この後4人対戦かつ初めてのプレイのはずなのに、見事に三対一の構図を作り上げた上に、四天王と同等レベルの操作技術でホリィをボコボコにしたことでご満悦な三人と、見事に撃沈したホリィがいたのだった。




感想、評価よろしくおねがいします。

あと、前の話、カード名など伏字にする予定です。

改訂しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

優勝賞品の使い方 二人目 ~前編~

なかなか内容が思いつかなかったので実質初投稿です。

ほんとお待たせしてしまい、申し訳ないです。
毎度読んでくださる方がいるかなって心配になってるチキンですが、どうぞよろしくお願いします。
あとキャラとか口調もぶれてる気がしますが、そこらへんもまた感想等で優しく教えていただけたらと(メンタル弱者)


「さて、準備はこんなもんかなっと」

 

アタシは今日買ってきた諸々を、ポ魔城の自室に広げていた。

ほとんどが食料品だったりするのだが、そればかりではない。

 

「うし、とりあえずこれは後で使う予定として……その前に予定を取り付けないといけないよな」

 

予定を取り付ける。そのことを考えるだけで緊張してしまうアタシがいた。

 

「だーもう!そんなガラじゃねーだろアタシは!いつも通りいけば問題ないっての」

 

そう自分を叱咤するが、慣れないことをするとわかっているからかどうしても意識してしまう。

どう誘うのがアタシらしいのか。それすらわからなくなりかけていた。

 

「っし、まだ時間はあるな。とりあえず誘い文句の練習くらいはしておくか」

 

噛むと恥ずかしいからそのためだよ、と誰が聞いてるわけでもないのにそんな言い訳をしてしまうアタシはその後、6時間ほどひたすら自室で練習しては悶えていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、明日、駅前に集合な!」

 

仕事が終わり、休日が楽しみで仕方ない金曜日の夜。

突如俺の部屋にやってきた彼女はそんなことを言い放ってきた。

ふむ、明日出かける予定が追加か。

 

「らしいぞ、きつね。遅くなるようならちゃんと七尾さんに連絡しとけよ」

「えっ?私?」

 

部屋で俺と某様々なメーカーキャラが出てくるバトルゲーをしていたきつねに話を振ってみた。

 

「いや、どう考えてもきつねだろう。今ここにいるのはきつねと俺だけだぞ?」

「わたし的にはどう考えても輝以外ありえないんだけど!?」

 

いやいや、そんなことないだろ。普通休日って言ったら仲の良い奴と出かけるだろ。

女友達と出かけるのがごく自然なことだ。どこにおかしいと思う要素があるのだろうか。

……おかしいな、なぜか目から汗が出てくるんだが。

 

「そうか、きつねが誰かと遊びに行くっていうことに俺は喜びを感じているんだな」

「ちょっと待って、わたし友達いないって思われてる!?」

「だってお前が誰かと遊びに行くって話を聞いたことがないし。帰ってきたらいつも家にいるし」

「そりゃ輝が仕事して帰ってくる時間を考えたら普通じゃないかな!?一応小学生ってことになってるから仕方ないよね!?」

「……えっ、『一応』ってことは、きつね……お前、小学生じゃなかったのか」

「年齢的にはね!むしろ小学生って思われてたの!?」

「……うちのクラスで割と成績悪いほうの組だよな」

「今まで学校とか行ったことなかったんだから仕方ないよねえ!?わたしは身体を動かすことが得意な代わりにちょっと勉強が苦手なだけだよ!」

 

なるほど、かむろはきつねと正反対で勉強はよくできるが、反面運動が少し苦手だったな。まああくまで体育に必要とされる鉄棒とかのような技術のいるものがって意味だから、体力面とか瞬発力とかそういったところはきつねには劣るものの学年でも良いほうだ。

 

「っと、そろそろいいか」

「ん?」

「その、アタシが誘ったのは、輝なんだが」

「なん、だと……?」

「ほら言ったでしょ、輝の負けー」

 

きつねは一体俺と何を勝負してたんだ。

 

「えと、それで言ったはいいけど、もしかして都合が悪かったりしたか?」

「い、いや。明日は特に何もないが……急にどうしたんだよ」

「その、こ、この前のアレだよ」

「この前のアレ……?」

「しょ、賞品!料理対決の賞品だよ!」

「……ああ、なるほど」

 

つまり、俺への一日命令権の行使ってわけか。

 

「まあそれなら俺に拒否権がなくなるわな、うん」

「そ、そうだな!つまり明日はアタシのために一日使ってもらうぞ!」

「へいへい、了解でござんすよ」

 

どうやら俺に何か命令するために使うって考えたほうがよさそうだな。この間のクローディアは一緒に出掛け、遊園地も一緒に行き、一緒に帰ってくるという別に賞品を使わないでもよさそうなことに使ってきたわけだったが。あれか、持ってても使い道なんてないし、どうせならさっさと使ってしまおうという魂胆か。それはそれで悲しいものがあるな。俺が決めたわけでもないのに。

 

「なに、クローディアがもう先に、だと?本当か?」

「ん?ああ、そうだが……ってもしかして、口に出してたか」

 

尋ねると、大きく頷かれた。マジか。

 

「くそ、先を越されるとは……まあそこまで大きなことをしたわけでもなさそうだからまだ大丈夫か?」

 

何やらブツブツと呟いているが大丈夫だろうか。

 

「いーな、輝とお出かけ。私もしたいな」

「今は黙っててくれませんかねホリィさんや。公に君らのことを知られるのはまずいんだけども」

 

俺の耳元にホリィが小さな空間を開けて話しかけてきたので、小声で対処する。こいつらが帰ったら少しは相手してやることでなんとか気を収めてもらってもらい、空間を閉じてもらう。

 

「? 輝、今誰かとしゃべってた?」

「気のせいじゃないか?」

 

危うくきつねにバレるところだった。危ない。さすが忍者鋭い。

 

「じゃ、じゃあ明日はアタシが迎え……いや、起こしてやるからな!覚悟しろよ!」

「なんかすっげえ物騒な言い方ですねえ!」

 

すごく不安になってしまったが、彼女の笑顔を見るとそんなことはどうでもよくなってしまった。

 

「じゃあ明日はよろしく頼むぜ……ミナ」

 

名前を呼ぶと、彼女……ミノタウロス娘のミナはすごくいい笑顔で部屋から出ていった。

 

「……あいかわらずのたらしだねえ」

「きつね、訳のわからんことを言うほど疲れてるならさっさと寝ろよ」

「……はぁ、こりゃ七尾さまも苦労するわけだ」

 

何故かきつねに呆れられた。納得がいかない。

その後きつねや別部屋にいたきつね一家をリビングのパソコンからポ魔城に送り返すや否や、待ってましたとばかりに飛び出してきたドッペル四姉妹と話とゲームをし、相変わらずホリィが他のメンツにボコられるという結果になった。もんぱら世界って風属性もちのアホの子がこういう扱いになりやすいのだろうか、とふと気になったので、四精霊にも同じゲームをさせてみることをひそかに決意したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「朝だぞ、輝。起きた起きた」

 

シャッという音とともに視界が明るくなる感覚。

 

「ん、あと5時間」

「長いな!? ほら、約束してたんだからしっかり起きてくれよ」

 

約束ってなんだっけ?と思いながら、唸りつつ目を開ける。

 

「お、おはよう輝。朝飯、できてるぞ」

「……!?」

 

2、3秒ぼうっと声の主を見つめてから驚きが走った。

 

「み、ミナ……!?」

「おう、そうだが……どうしたんだ一体、変な顔して」

「い、いや、なんでもない」

 

なんでもないとは言ったがなんでもないことはなかった。

なんだあれは。いつもの「ミノタウロス娘です!」って恰好をしたミナはどこへいった!?

 

「お、おいおい。そんなにじっと見られると恥ずかしいんだが……やっぱり変だったか?」

 

言われて、改めてミナの恰好を観察してみる。

上は変に胸元が開きすぎてない白目のTシャツで、下は涼しげなショートパンツ。

ジーパンとかでもすごい似合いそうなんだが、さすがにこの暑さでは厳しいものがあるのだろうな。

そして腕に巻いてるのは……いつも頭に巻いているバンダナか。

なんというか、すごいオシャレである。クローディアの時も驚いたが、ミナの変身ぶりにはより驚かされた。

 

「いや、変じゃない。というかむしろ似合いすぎててびっくりしてる」

「……ふぇっ?」

「いやマジで、ミナってこういう服を着ないと思ってたからさ。いつもと違うってだけでも新鮮なんだけど、今着てるのがすごいミナに合ってるからさ。すごいスポーティって感じがする」

「そ、そうか。輝はこういうの、好きな方か?」

「まあ俺は好きだと思うが……ミナがしたいファッションでいいと思うぞ」

「そう、だな。でも輝の意見も欲しかったからな」

 

そんなものなのか。もん娘の考えはよくわからん。

 

「俺の意見なんかアテにはならんと思うが、ミナはそういう感じの、アクティブな感じがいいと思うぞ」

 

あくまで俺の適当な意見だがな。

 

「そ、そうか。うん、キャロルたちとも同じ意見だから輝はもっと自分のセンスに自信をもっていいぞ」

「キャロルさんと同じ?」

「ああ、アタシ一人では服はよくわからなかったからな。キャロルたちにも少し手伝ってもらったんだよ」

 

そうだったのか。キャロルさん(ハイミノタウロス)と同じってなら嬉しいものだ。

ジニタウロスのトーラやミズタウロスのオデットとも相談したのか、と尋ねたところ、今回はキャロルだけだったらしい。二人に相談するほどの時間がなかったとのこと。

独特なセンスをしてるからかなあ、とか思ってしまったので申し訳なさでいっぱいになった。

 

「着替えたな?よし、早く食べるぞ!ちなみにアタシが作ったから感想も教えてくれ!」

 

なるほど、机の上にはいつも俺が食べるような朝食ではなく、温かい湯気のたつ見るからに美味しそうな朝食があった。

 

「こっちでは健康的な朝食として、ご飯と味噌汁が基本って聞いたからな。それをベースにしてみた」

「なるほど」

 

ふむ、他には卵焼きにほうれん草のお浸しか?なんというか、ミナだからかなり量を作るのでは、と思ってしまったのだが、控えめだな。

 

「あ、アタシだっていつもいつもガッツリな訳じゃないからな!人に作るときはきちんと合わせるに決まってる」

「ミナ……ありがとうな」

 

思わず礼を言ってしまった俺に「べ、別にそんなんじゃねーし」と顔を赤くしながら明後日の方向に背けるミナが可愛かった。




後編に続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

爪祭り

お久しぶりです。
なんとなくどんな感じで書いていたかってのを思い出すのも含めて、誰も待ってないであろうこちらを久しぶりに更新しました。


もんぱらがバージョンアップした。

それにより、追加イベントだったり混沌の迷宮に新しい難易度が増えたりしたのだが、一言でいうと、分量がやばい。

追加イベントで一番大きかったのは、なんといってもコラボイベントだろう。

 

他のゲームに出てきたキャラクターがもんぱらの世界にやってくる、というもので、コラボキャラ視点のストーリーが展開されたくらいだ。

正直面白かったし、事前にコラボキャラの出てくるゲームもプレイしたよね。

他にも時間ループだったり夏祭りだったりなどもあった。こちらもコラボイベントではあったし、新職業の解放のためもあって進めたところはあった。

 

混沌の迷宮は修羅とかいうのが出てきた。一言でいうとやばい。

武器集めの敷居が下がったものの、5階に強ボスが一体配置とかいう、やりこみ勢垂涎の環境になった上に、銀宝箱5個確定というもう素晴らしすぎる状態になった。

おかげで装備集めが終わらないことこの上ない。装備のスキルも増えたし。

 

さて、混沌の迷宮もバージョンアップしたことで良くなったのは確かだが、良いことばかりではない。

簡単に言うと、敵の強さが天元突破した。HPが億どころか兆や垓まで桁がいってしまった。普段なじみのない単位までいって、正直何て読むんだっけってなってるのが本音だ。噂では無量大数がどうとかいう話も聞いたのだが。

 

さて、そのアプデがされた後、しばらくしてから更にアプデがきた。

これにより色々修正がされたのだが、マスタリーの重複ができなくなったとか、スキルの効果範囲が変わったとかあり、混沌をガンガン潜らないといけない勢の俺からしたら、無理にアプデしないといけないわけではないので、最新アプデの前のバージョンで混沌に潜ったり稼いだりしているというわけである。

 

 

さて、何故こんなことを長々と言っているのかというと。

 

「デスクロー」

「デスクロー」

「デスクロー」

 

「いや、うん」

 

うちの何人かのメンツがデスクロー教とやらを興したら、他のメンバーが入信し始めた。

いや、確かに強いけどさ。なんなら妖術威力アップが何故か乗って、瀕死ダメージのはずが確殺レベルになるし。

うちのアルマエルマさんが、瀕死時3回行動と歌う速攻の装備つけて、適当に歌ってからデスクロー2発とかザラだし。

 

少し話が逸れた。

 

「デスクr…あれ、輝さん? 一緒にやりません?」

「いや、遠慮しとくよ…」

「でもほら、習得できるようになるかもですし」

「…別に絶対欲しいってわけでもないから、うん」

 

デスクローの素振りとか、なぁにそれぇ?な状態である。

ただただ、右上から左下に腕を振り下ろしてるだけだし。

そもそも、あれは妖術士に就いてラーニングすればいいんだけど。

普通なら。

 

「でも輝さん、何故か習得できなかったじゃないですか」

「………」

 

目を逸らす。

そう、言われた通り、何故か俺は妖術士に職を変えてデスクローを目の当たりにしても使えるようにならなかった。

某最後の幻想シリーズだと敵が使ったのをその身に受けないと習得できなかったのだが、もんぱらでは敵、もしくは味方が使ったのを見るだけで習得できるという便利システムになっている。

実際、俺の横で突っ立っていた妖術師職に就いたライムが次の瞬間にはデスクローを放っていたし。

俺は使えなくても別に困ることはないし、なんなら使えないほうが安全まであるのだが……なぜか俺が使えないことを悲しんでいるもんむすがいるという謎の状態が起きているんだが。

なんで?

 

「でも出来たほうが楽しいですよ?」

「まあ、うん。使えたらいいってのはわかってるけど」

 

俺は別にもんむすと普段戦わねえし。

混沌の迷宮? 別に俺は無理していくことねえし。

何もしなくても勝手に無双してくれるイカれたメンバーがいるし。

なんで俺は普通にゲームをプレイしていても現在叶うはずのないパーティを組まされてるんだろうな?

 

「わかってるなら、私と練習しましょう早くしましょう今すぐしましょう」

「いやおかしいおかしい待て待て」

 

そういや俺がさっきから話してるの、エルフのクローディアなんだよなあ。

前に出かけて以来、更によく話すようになった気がするんだが。

まあ変に距離が開いたとかではないからいいんだけど。

あとデスクローの特訓って目の前でやってるじゃねえか。中庭で。

移動する必要ないだろ?

 

「ちょっと待ちなさい」

「そ、そうです!」

 

うぉ、いつの間にか俺の横にジェシーさんとかむろが立ってるだと?

 

「抜け駆けは認められないわね」

「あら、人聞きが悪いわね。特訓と言ってるじゃない」

「特訓なら目の前でやってるでしょ? 別に二人でする必要はないんじゃないかしら」

「……あなたは目の前のこれに特訓として参加したいのかしら」

「……ないわね」

 

ないんだ。俺もないなとは思ってたけど。

 

「輝さん輝さん、今のうちにここを離れません?」

「聞こえてるわよかむろ」

「ずるがしこい狐がいましたわねえ」

「ヒィッ!?」

 

俺の横で謎の威圧感を感じる。やめてくれ、その圧は俺に効く。

 

「おう、輝! 肉食うか特訓しようぜ!」

「ややこしいことになってきたなあ!?」

 

ここでミナがやってきたんだが、これもう俺はどうしたらいいんだい?

 

「ミナ……あなたも輝目当て?」

「お? ……ああ、この集まり、そういうことか」

「理解が早くて何よりね」

「ま、負けませんよ!?」

 

負けないって何にだよ。謎に理解し合った上で睨み合いしてるの本当になんだよ。

 

「こうなったら」

「そうね」

「仕方ねえなあ」

「で、ですね!」

 

なんだなんだ、急に距離を取って腰だめに全員構えて。

……ん? その構え、さっきからよく見てた気がするんだが。

 

「「「「デスクロー!!!!」」」」

 

ガキイイイイィィィン

 

それぞれのデスクローがぶつかり合う。

ってか、クローって言ってるのに、純粋に爪で殴ってるのはかむろだけかよ。

ジェシーは槍、ミナは斧、クローディアは弓って。

弓は殴るためのものですらないんだが?

 

「あーもう、やめろー」

「おおおおおぉぉぉ!」

「もう一発うううぅぅぅ!」

「負けません!!!」

「エルフの名にかけて!」

 

いや、デスクローとエルフに何の関連もないよなあ。

といっても、そろそろやめさせないといけないよなあ。

このままだと俺周辺だけで済まなくなりそうだし。

 

「召喚……はここでやるのはさすがにマズいか」

 

下手したらマズダやマンユでもデスクローで早々に消滅させられかねないし。

デスクロー吸収できるあの人はまだ会えてないから無理だし。

ここは俺専用職からなんとかできる技をするしかないか。

そういや最近新しい職がまた発現した上に、この状況におあつらえ向きな技が初期で手に入ったし。

 

さて、技の準備。腕輪が左腕に現れる。

 

「いくぞ、デー〇ドレイン!」

 

ネトゲを題材にした某ゲームの主人公の技を四人に放つ。

本来ならこれを食らったバグっていない敵は能力が大幅ダウンし、姿もかわいそうなことになるのだが、そのあたりはうまいこと調整できたようで、俺の臨んだデータを吸収できるようになっていた。

 

さて、今この時俺がこの四人からドレインするのは。

 

「デスクローの技を、預かる!」

 

腕輪から伸びた職種のようなものが四人に刺さる。外傷はないが、目的のデータだけを奪い取れた。

 

「……輝、今あの技を使ったのですね」

「エデンさんか。まあやむを得ない状況だったから仕方ないです」

「……まあ、途中からですが見ていましたので状況はわかっています」

 

データを抜かれ、倒れ伏した四人を見ながら呆れたようにエデンさんはため息をつく。

 

「あなたのその技は私たちにとって天敵……下手したらレベルドレインよりも悪質なものですから、私としては使ってほしくないというのが正直な思いです」

「わかってます。俺もよほどのことがない限りは使うつもりはないですよ」

 

 

俺だって、このめちゃくちゃではあるけどこの生活が嫌ではないんだ。ぶち壊すようなことはしたくない。デー〇ドレインは下手したら彼女らの存在そのものを脅かすものになってしまいかねないから、俺としても出来るだけ使わないようにしたい。

俺の返答にエデンさんは安心したような笑みを浮かべた。

 

「さて、そこの四人は頭が冷えましたか?」

「あ、ああ。アタシはなんとかな」

 

ミナが起き上がってきた。続いて他の三人も起き上がる。

 

「今回、輝が止めたからよかったものの、周りに及ぼすかもしれない被害を考えなさい」

「「「「はい……」」」」

 

データを返却しながら萎れたような様子でエデンさんの説教を受ける四人を見るに、しばらくは同じようなことは起こさないだろう。

終わったら食堂に甘味を食べに行くのでも誘ってやろうと思った。

 

なお、なぜか食堂でも席の取り合いで第二次デスクロー祭りが起こりそうになったのだが、笑顔で三邪神を召喚して事なきを得た。




リハビリを兼ねてるから色々忘れてるの図。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゲーム実況動画

12月31日22時から書き始めて年内に投稿するRTA、はっじまっるよー


動画配信。

昨今人気になっているコンテンツであり、そのジャンルは多岐にわたる。

料理配信だったり、散歩動画のようなものからゲーム配信などなど。

個人的に最も人気なのはゲーム配信なのではないかと思っている。

若年層から割と中年の人まで好きな人は多いジャンルだし、動画関係なく幅広い年齢層に人気のコンテンツだからである。

 

さて、ここで俺がやってみたい動画配信とは、まあ例に漏れずゲーム配信である。

というのも、まあここ最近よく見てしまってるんだよね。RTA動画。

しかも自分がやりこんでいて、割と素早くクリアできたと自負していたゲームを様々な仕様の範囲、つまり改造チックなことをせずにクリアしていたのを見て、悔しくなったというわけだ。

まあスピードランに関してはかなり練習しないといけないようなものなので、今回はゲームの良いところを知ってもらえるようなものを作っていきたいと思っている。

ただ、実際に配信をすると色々とまずいから、実況動画という形でとりあえずやってみることにした。

……数人が見てくれたらいいなレベルだから、完全に自己満足の範疇だがいいだろう。

 

 

「ってことで、とりあえずこれでいい感じか」

 

全ての準備を済ませ、一息つく。

今回やるのはPCのゲーム。なのでPCに録画ソフトを入れ、先日買ってきた安めのマイクをつなげる。編集に関しては、まあ初回だし、昔あった実況動画のような感じでカットやら早送りやら程度を入れれたらいいと思っているからPCに元々入っていた編集ソフトで事足りるだろう。

ああ、ちなみにPCは例のもんぱら世界直通のものではなく、あの後別に購入したものを使っている。あっちは完全にもんぱら専用になってしまったが仕方ない。

 

始める前に、部屋を見回し、外からも声が聞こえてこないことを確認する。

 

「……よし」

 

録画ソフトの電源を入れ、動き始めたのを確認して、いざ。

 

「初めまして、輝と申しま「輝うううううぅぅぅ!」ああああああああ!?」

 

唐突に親フラならぬもんフラ(もんむすフラ)が起きた。

 

「聞いてよ輝! かむろちゃんが酷いんだよ!」

「酷いのはお前だ」

「まだ何も伝えてないのにかむろちゃんの味方するんだああああああ!」

 

しまった、気合い入れて録画開始したのに、きつねが飛び込んできて出鼻をくじかれたことに対して言ったことが、会話にかみ合わなくて変な勘違いをさせてしまった。

 

「ああ、違う違う。きつねが急に来たからやりたいことができなくなったからそのことについてだ。んで、何があったんだ」

「ひぐっ、聞いてくれるの……?」

「聞いてほしくて来たんじゃないのか……? 聞かなくていいなら聞かないけど」

「聞いてくだしゃああああああい」

 

わんわん泣きながら胸に飛び込んできたので、頭をなでながら録画を切る。

今回の動画は後で消しておくことにしよう。

 

 

 

どうやらきつねとかむろの間で出かける約束をしていたのだが、かむろが間違った時間を伝え、きつねがそれを信じて行動した結果、かむろに散々に言われたとのことだった。

きつねの話を聞いた後、かむろを呼び出し話し合った結果、かむろが自分の勘違いに気づき、謝罪。きつねに酷いことをしてしまったかむろも大泣きに泣き、きつねもそれにつられてか再び大泣きしたため、俺が二人を慰めることになった。

にしても、二人して俺の胸に抱きついてくるのは何でだ。小学校に通ってはいるものの、精神まで小学生になってないか?

とりあえず泣き疲れて俺の膝で勝手に寝たきつねとかむろを、七尾を呼び出してポ魔城に運んでもらった。……何故か今度、七尾おすすめの油揚げ料理を一緒に食べに行くことを約束させられたのがよくわからなかったが。

 

 

「さて、では気を取り直して」

 

再び録画ソフトを起動。ゲームも起動し、録画開始ボタンを押す。

 

「初めまして、輝と申します。初めてなので私の好きなゲームをやっていきます」

 

まあ、順調な滑り出しではないだろうか。

昔やっていたのもあり、さくさくと進めていく。勿論、その間にもゲームの説明だったりは忘れない。

プロローグが終わり、ようやく操作可能になる。

 

「じゃあここから本格的にゲームスタートですね。こういったゲームは割と最初に自宅の中を調べてアイテムを取っていってしまいますが、このゲームではそれはやらないほうがいいです」

 

「それは何故なんでしょう?」

 

「ああ、実は話が進むとここのアイテムがもっと良いものに変わるんだ。他のゲームではそういうことはない分、割と気づきにくいところなんだよな」

 

「なるほど、気を付けますね!」

 

「ああ、そうしてく……」

 

待て、今俺は実況動画の録画をしてるんだよな? 今誰かと話してなかったか?

 

「へー、何か面白そうなゲームですねえ。今度私もやってみていいですか?」

 

「すずめええええええぇぇぇ!!!!」

 

「ぴいいぃぃぃ! なんですか!? 急に大声出さないでくださいよおおおぉぉ!」

 

「いや、大声も出すわ! 知らない間に隣に座られて急に参加されたらびっくりするわ!」

 

すずめ娘が隣でひっくり返っているが、俺は悪くない。

 

「あれ、一人でゲームやってただけですよね? 何かまずかったですか?」

 

……そうか。あっちではこういうコンテンツはなかったな、

 

「あー、まあゲームしながらゲームの情報とかしゃべってたんだよ。そういう動画を作ろうと思ってな」

 

「動画、というと輝さんがよくこの機械や小さな画面で見てるものですよね」

 

「そうそう、ゲームの実況動画ってやつだな」

 

「面白そうですね!」

 

キラキラした目でこちらを見てくるすずめ。

 

「……今度俺の好きな動画を教えるでいいか?」

 

「いいんですか! ありがとうございます!」

 

やったあああああ!輝さんの好きなものを知れるうううう!とか叫びながらすずめはポ魔城へ帰っていった。

 

「いや何しに来たんだよ!?」

 

またも録画を中断しないといけなくなった。

 

 

とりあえずさっきの動画は途中までは使えるから、その続きから撮っていくことにする。

自宅のアイテム回収、ダメ絶対のくだりを再度して、ゲームを進めていく。

今回やるのはRPGゲームなので、何回かに分けての実況を予定している。今回は最初だし、最初のダンジョンをクリアするところまでにしよう。

 

「さて、順調にここまで来たけど、こんなに大変だったっけ」

 

昔やってた頃より時間がかかった気がする。昔、といっても数年前だが、あの頃は夢中でやってたのと、RTAめいたことをしていたから、その弊害かもしれない。

 

「さて、ボス戦か」

 

回復良し。装備よし。周囲にもんむすの存在、よし。

 

「戦闘突入。うわ、久しぶりだな」

 

最初のボスが画面に現れる。大体のプレイ動画では飛ばされたり、瞬殺されるせいでじっくり見る機会がなかったけど、こうして自分でプレイすると懐かしくなる。

 

「ん? なんか誰かに似てる気がするんだよなあ」

 

じっくり見たからか、そんな思いが芽生える。

 

「うわ! ゴブが画面の中にいるよ!」

「本当だぞ! さっきまで一緒にいたのに!」

「ガオ! ゴブ、いい奴だったぞ……」

「待って? 確かに普段外に出てるけど、今ここにいるよ、ねえ?」

「……あ、そうかゴブだ」

 

序盤の敵ということでゴブリンのボスだったけど、確かにもんぱらのゴブによく似てるんだわ。

 

「ゴブ、いい奴だったのに……」

「惜しくないやつを亡くした……」

「なんとか都合合わせて受ける仕打ちがこれって酷くない? ねえ?」

「この間頼まれたハンマーの代金、まだもらってないのに……」

「パピに至っては、きちんと料金払ったよねえ!? しかもボクのことよりお金の方を心配されてることにショックだよ!?」

「…………」

 

プチ盗賊団 が あらわれた。

コマンド?

 

「輝、面白そうなことしてるじゃない! アタシたちも混ぜてよ!」

「クックック、風のヴァンパイアであり、凄腕の商人候補のヴァニラも混ぜるがよい!」

「ウガ、ゴブにそっくりなのがいるってことは、パピにそっくりなのもいるのか?」

「あれだけボロクソにいじっといて何事もなかったかのように振舞われてる!? ……輝うううううぅぅぅ!」

 

こんなの、動画の続きがとれるわけないじゃない。

 

 

 

 

プチ盗賊団の来襲後も何度か動画撮影にチャレンジしたが、悉く妨害された。

いや、いくつかは仕方なかったと思う。

ジェシーやクローディアは、唐突な用事だったみたいだし、俺が動画撮ってるのを見てすぐに謝ってくれたし。やっぱりあの子たちはいいもんむすだ。

ラミルミレミの三小悪魔は先のプチ盗賊団と同じような感じだった。ラミが肩越しに喋り、ルミが多少おどおどしながらも右腕にひっついてきて、レミはぽやっとしながら膝に座ってきた。なんだろう、ゲームと違って純粋にかわいいと思ってしまった。

 

最後に来た魔王と女神は……うん。

何が「貴様の作る料理が食べたい気分だ。ありがたく思って作るが良い」とか「この女神に料理を作る栄誉を授けましょう」だ。

カップラーメンを投げつけた俺は悪くない。

 

そんなこんなあって、何度も撮り直しを重ねて一本作れた。

まあ動画の最後でも言っているが、環境的に厳しいから続きは作れそうなら作ることにしよう。

 

そう思っていたのだが。

 

「輝、このゲームでならお前は私と戦ってくれるのだな」

「…………えぇ……」

 

脳筋竜剣士に目をつけられてしまったうえ、勝負の動画まで撮ることになってしまったのだが、それはまた別の話。




1時間で3000文字程度。
30分風呂。
15分で紅白見て残りの文字を打つ。

なお酒も数時間前に少し飲んでいたので文章力はいつも以上にアレ。

ですが、2時間で一本(クオリティはアレですが)書けました。
やはり好きなように書けるのっていいですね。


ということで、今年はほぼ更新してませんでしたが、見てくださった方、ありがとうございました。
またちょいちょい機会を見つけて混沌の迷宮を潜って、終章待ちをしつつ更新していきます。
オリジナルの話の方も進みは遅いですが良ければ見てやってください。

それでは良いお年を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終わりの予感

こちらではお久しぶりです。
終章PVの情報量多すぎてほぼ頭に入らなかったんですが、私と同じような人っていますよねきっと。


「ふぅ……」

 

動画の再生が終わり、一息つく。

ここ数年、「まだ続編は出ないよなあ」って友人と話していたのだが、唐突にその続編に関する動画が出てきたのである。

そう、「もんむす・くえすとぱらどっくすRPG 終章」のPV動画である。

前までの俺なら、「ふーん」と、特に何も考えずに見ていただろう。

だが、そうも言っていられなくなってしまった。

 

「これは……みんなには内緒にしないといけないよなあ」

 

何を隠そう、リアルにもんぱらの住人と交流があるのだから。

俺のゲームデータは当然のことながら中章までしかない。つまり現在のゲーム内での情報以上のものは知らないはずなのである。そこに本来知りえないはずの情報を入れてしまうとどうなるか、ということである。

正直情報関係に詳しくはないのだが、良くてデータを読み込めない。つまり理解ができない、もしくは拒絶される。まあこれならマシだろう。

考えたくはないが、悪くてバグが起きる。最悪、あのもんぱら世界が崩壊を始めることまで考えられる。

現実に何故かもんむすたちが飛び出してくるのは(本来あり得ないのだが)いいとして、何故かアポトーシスたちも出入りしたり、挙句には現在混沌の迷宮限定のボス扱いになっている、終章ボスたちまでが出入りしているわけだ。そんな奴らにPVとはいえ、中章までしか進んでいない奴らに教えたりしたら何が起きるかわからないことこの上ない。

 

(案外、終章での役割とかも知っていたりするかもしれないが……まあ不要な危険を冒す必要はないだろうしな)

 

情報を漏らしたら、謎の漏洩を見せる可能性もあることだしな。特にホリィとか、ホリィとか、ホリィとか。

 

(白兎や死神さんはどうなんだろう……いや、これもやめておいた方がいいな)

 

わざわざ、PVの中で名前が挙がるくらいなんだ。白兎に関しては意味深な言葉まで残しているし、やめておいた方がいいだろう。

俺も、まだ知りたくないしな。

 

「……とまあ、そう考えはしてたんだけどさ」

 

足を例のPC……もんぱら専用機となった穴あきPCに向ける。

現在も普通に行き来できるのだが、今日はPVを見ることにしていたため、来ることを拒ませてもらった。

最近気づいたのだが、ノートパソコンだから折りたためるわけで、折りたたんでしまえば、閉じている間は行き来できなくなるということがつい最近わかった。シルフの犠牲が伴ったが、大丈夫だったことも追記しておく。

 

「混沌の迷宮に、と」

 

もんぱら世界に移動し、即座にイリアス神殿の二階へ。冥府に続く扉を開ける。

扉の前にはルカさん一行もいなかった。

 

「お前か。一体どうした」

 

死神さんが俺の急いでいる様子を察してか、声をかけてきた。

いつもなら何も話しかけてきたりしないのだが、そんなにいつもと違って見えたのだろうか。

 

「ええ、ちょっと混沌の迷宮の方に用があって」

「ふむ……察するに、力試しとかではないな。他の仲間に知られてはまずいことか」

「……なんでそこまで察することが出来るんですかねえ」

 

本当にこの人、ゲーム内だけの存在だよな?

 

「まあ今回は稼ぎとかそんなんじゃないんで、ええ」

「……ふむ、そうか。なら、これを着けていけ」

 

言って手渡されたのは、今俺が着ているのと全く同じ服と二振りの剣。いや、そう見えるもの、である。

 

「これって前に用意してくれてた概念装備か?」

「ああ、あの時は要らないと言っていたが……今は必要ではないか?」

「助かるよ」

 

以前、混沌の迷宮に向かう際に、一度手渡されたことがあった。レベル上げや力試しの意味合いがあったから、あの時は断ったのだが、今は必要なときだろう。

改めて装備を調べてみる。まずは服……に見えるもの。

 

「概念:アウター」

混沌世界の意志から生み出された衣服の概念。混沌の全てが詰め込まれている。混沌の力すら跳ね返す。

 

  HP200000

攻撃力150000

守備力150000

 魔力150000

精神力150000

素早さ150000

 

付加能力

全属性反射

時止め中行動可能

混沌マスタリー400%(重複可)

敵行動前に「後より出でて先に断つもの」発動

全属性200%アップ

全種族能力200%アップ

全技威力200%アップ

全印

装備に混沌属性付与。

1ターンに1度、自動蘇生

 

「…………」

 

おかしい。明らかにぶっ壊れなんだが。これ一つで混沌装備全てを賄えるレベルなんだが。

しかも某運命シリーズのやべえ宝具が自動発動されるんだが。グランドなオーダーしか知らんけど。

 

恐る恐る他の装備も見てみる。

 

「概念:帽子」

「概念:装飾」

 

名前と説明が若干違うだけで能力や付加能力が同じだった。

……待って、これver4.1だとマスタリー重複は意味をなさなくなってると思うんだけど、これ無駄になってない? 俺自身が混沌潜るのにそのあたり気にして4.0でずっと潜ってるんだが。じゃないとデスクロー弱体化された中では火力不足でどうしようもないんだ、仕方ない。

 

あとは武器なのだが。

 

「これもぶっ壊れているよなあ絶対」

 

いやまあ、助かるんだけどさ。今回に限っては。一人だし。

 

「概念:武器」

混沌世界の意志から生み出された武器の概念。混沌の全てが詰め込まれている。全ての武器の概念の元。

 

攻撃力 1000000

守備力 200000

魔力  1000000

精神力 500000

素早さ 1000000

 

付加能力

全武器属性付与

全技使用可能

戦闘開始時「カオスドライブ」自動発動

攻撃時、相手の能力上昇、状態変化無効化

全攻撃属性200%アップ

全職業能力200%アップ

全種族能力200%アップ

 

 

「これゲームの方で欲しいんだが?」

 

しかもデフォルトで付いてる能力だけでこれだとすると、ランダム付与されるものがあったら更に物故割れるわけで。

俺のルカさんにこれくらいのAΩが欲しい。ロゴス・マキナは使用回数がカウントされるから使ったことないけど。

何か、使用回数が記録される系の技って使いたくないってなるんだけど、この心理わかる人いる?

別ゲーだと、プリズム〇ターズとかでもそういうの割とあるけど、記録されるのが嫌だからって理由で苦戦するのわかっててもカウントされる系は使えないマンなんだが。

 

話が逸れた。

 

「死神さんや、さすがにこれはぶっ壊れすぎではないでしょうかねえ?」

 

頂いた(借りているだけだが)装備に、能力が良すぎることでケチをつけるというレアな図が生まれた。

 

「もしいつもの腕試しなら渡さないが……今回は違うのだろう? おそらく下手をすると迷宮内でお前が死にかねん」

「いや死んでも入り口に戻されるだけじゃなかったのかここ」

「腕試しならな。だがお前は……どうやら下手をすれば世界を壊しかねんことをしそうだからな」

「……そんなつもりはないんだがなあ」

「なに、私の勘だ」

 

まあ下手なムーブかましまくって終章のことがバレるとかでなければそんなことはないと思うが。

 

「それに、お前にはこんなところで死なれては困るからな」

「え、何? 死神さんがまさか俺にそんなことを言ってくれるなんて」

 

割と死神さんは好みだったりするから純粋に嬉しい。

 

「お前が死ねば……いや、止しておこう。少なくともお前に気があるとかではないから安心しろ」

 

数秒前の僕の純粋な悦びを返してほしい。

 

「へいへい、わかってますよーだ。じゃあちょっと行ってきますよーだ」

 

割と小さくない傷心を抱えながら混沌の迷宮に飛び込んだ。

涙の跡なんて残ってない。きっとそれは心の汗だと思いたい。

 

 

「……お前が消えることがあれば、それは世界が終わる時だからな」

 

姿が迷宮へと消えた後、死神はぽつりと呟いた。

 

 

 

「さってと、出来れば低階層で出てきてくれたらありがたいんだがなあ」

 

適当に敵もんむすを回避しながらダンジョンを突き進む。

いつもやってるゲームと違い、俺視点で進んでいるため、言ってしまえば3Dダンジョンになっているわけだ。そのため、普段ゲームで見慣れているであろうマップでも、最初は現在地がどこかとか、どのマップにいるのかがわからなくなる。

 

「っと、まーたピラミッドか」

 

気のせいか、3回に1回はピラミッドマップが出てきてる気がする。ここ好きじゃないんだよなあ。

地面が砂だし、敵に蜃気楼娘出てくるからデスクロー効かないし。時止めするとほとんどの味方が動けないからキラッ☆→パンドラボアコンボが出来ないし。

まあ今は全力で逃げてるからいいんだけど。

ちなみに強ボスは全て概念装備頼りでなんとかなってくれている。

まさか攻撃を当てられたと思った瞬間敵が爆ぜるとか思わないやん。

オーバーキル過ぎない? 一応混沌のアレとはいえ、知り合いもいるわけなんだが。

 

「っと、白兎だけ……周りは亜空間……来たか」

 

いわゆる強ボスルームにやっとたどり着いた。闘技場と違って白兎による回復が見込めるのがいいところではあるが、回復だけしようと思って話しかけたら魔王殺しさんが出てきてしまって絶望したのはいい思い出……ではないな。今でも嫌だわ。

問題は、割とこの部屋で出てくるのが誰かわからないことなんだよなあ。

今回のお目当ての人たちもここだが、ドッペル四姉妹に魔王殺しさんに天使殺しさんに……あと誰かいたっけ。黒のアリスが三段階目まで連戦だった気もする。

 

「白兎チェックは……セーフ」

 

小突いて回復してもらうものの、魔王殺しさんは出てこなかった。ありがたい。

そうとなると、ゲームでは光っている部分……ちょっと亜空間をのぞき込みやすい立ち位置に移動してみる。まあ力試しでもここに来ることはあるから慣れてはいるのだが。

 

「Hey……Si〇iじゃないし、なんて言えばいいんだ」

 

下手したら検索機関さん出てきちゃうからね。いや、出てきてもいいんだけど、出来れば違うのが出てきてほしい。

 

ズゴゴゴゴゴゴゴ……

 

「この音は……」

 

亜空間を吸い込むような音と共に出てきた一人、いや一機というべきか?

ルカさんに似ている風貌をしているが、何度見てもルカさんからかけ離れてしまった姿のそれが現れる。

 

(目的のワーブレさんが向こうから来てくれたのは助かる)

 

自分の目的の半分が果たされたことに安堵していると。

 

ピカアアアアアアァァァァ

 

「……ゑ?」

 

某古代エジプト王のような声をあげてしまったんだが仕方ないだろう。

なんでワールドブレイカーの横に、天使が降臨するような光が現れているのか。

そしてその光から現れたそれは、ワーブレさんの横に無事降臨なされた。

ルカさんによく似た顔立ちをしているが、こちらも俺の知っているルカさんと違う恰好をしている。

 

「なーんでそうこのタイミングでジャッジメントも出てくるんですかねえ……」

 

なんか俺だけがもんぱらに関わると、仕様で起きえるはずのないことが起きるという事実に、ため息しか出なかった。

 

 

 

 




脳死で書いてたからこの先どうなるやら。話はアレでも続きは書きたい。
終章いつ出るのかが楽しみな反面、また数年待たないといけないかもしれない可能性に震えております。

ちなみにコラボキャラとかも出してほしいとかあったら……感想とかで言ってもらえたら……とは思います(更新頻度が上がる可能性)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「アークインパルスだ!」ってどこから来たんだその名前

正直前回むちゃくちゃな装備を与えたこととか、ワーブレとジャッジメント二人同時出現させたのを後悔した。

なおタイトルはWA4のとあるコンビネーションアーツに対するどこかで見たツッコミ。


単刀直入に言おう。

 

現状、やばいの一言に尽きる。

技が、術が次々に飛んでくる。

視界が常にチカチカしている状態で、落ち着かない。

いや、そんなことはどうでもよくないが、どうでもいい。

 

「あの、もうやめません?」

何回そう言ったかわからない言葉を、また無駄なんだろうなと、半ば諦めながらも口にする。

返事の代わりに返ってきたのは、「照覧せよ、神の力……来たれ、イリアス!」という言葉と共にジャッジメントさんの召喚した女神イリアスの攻撃だったわけだが。ってかイリアスを召喚ってストーリー的にどういう流れでそうなったのかが気になりすぎるんだが、本当に今それどころではない。

 

「マジで死神さん、これを想定してたってことですか」

 

死神さんが貸してくれた装備がまさか本当に役立つとは思っていなかった。

イリアスの放つ光が俺に当たる直前、不自然な角度で跳ね返る。向かう先は、ジャッジメントさんと何故か共闘しているワールドブレイカーさんである。

あ、やっぱりきちんとダメージが入ってるようだ。

どうやら、俺の借りた装備は、反射ダメージにも装備効果が乗ってしまっているらしく、何故か威力が上がって反射されているようである。

しかも、武器効果に乗っていなかったはずの全印効果付与だったり、耐性貫通効果が気が付いたら付与されていたことに関しては、もう見なかったことにしてよい気がした。きっと今回のワーブレさんやジャッジメントさんの耐性が弱いパターンを引いたんだ。きっとそうに違いない。彼らが何に対して耐性を持ってたかなんて全く覚えてないけど。ジャッジメントさんは不思議な踊りでMP枯渇させれば危険な行動がぐっと減る弱点が昔はあったから、それで何とか倒していたけど、デスクローが出たときにその弱点がなくなったんだっけ。あと一回復活するようになったはず。デスクローで全て解決するからいいけど。バージョン上がったら勝てなくなりそうとは思ってる。

ワーブレさんはかつては時止めで殴るしかなかったんだっけ? 混沌の迷宮の修羅が出るまでに、C-環が手に入らなかったから試せてないんだけど、確かそうだったはず。なお時止めできない俺は、ワーブレさんに会ったら黙ってリセットしてた懐かしい記憶。デスクローでかつての苦い思い出を粉砕できた時には謎の達成感があったなあ。なお、バージョンアップで絶望よこんにちは状態だが。

 

「……!!」

 

なんだっけ、ミカエラさんとかがイリアスに使ってたあの技だ。

装備品にもある、えっとえっと。

 

ワールドブレイカーの審判の剣が闇を祓う!

 

「あ、天軍の剣だ」

 

思い出したときには、天軍の剣がジャッジメントさんを祓っていた。

続いて何かよくわからない爆発。多分ナノフレアかな。

これも目の前、というか俺を包み込むように爆発を起こしているはずなのに、何故向こうが食らっているのか。反射の仕組みがよくわからないことになっているんだけど、これが混沌の力というやつなのか。

全部ジャッジメントさんに行っているのをいいことに、ワーブレさんが次々に攻撃を放ってくる。

 

「サラマンダー終式カノン、システム:シルフV2……だっけ?」

 

どこかの情報で、精霊マキナは無属性攻撃で必中ってことを見た記憶がある。サラマンダーって書いてるし、炎耐性あったらいけるやろ!と思っていたら9連発くらってクララとか全部剥がされて消し飛ばされた思い出。

シルフは問答無用だったなあ。バフ全部かけた! ディフレクトも完璧!ってなっているのにシルフV2でディフレクトが反応しなくて、頭が宇宙猫になってた。

ん?でもとある動画ではシルフV2が効かなかったっていう文面があった気がするんだがあれはどういうことだったんだろう。

 

そんなことを考えている間にもオートリフレクが仕事してくれている。仕事しすぎて過労にならないかちょっとだけ心配である。

 

そしてダメージ源になっているのは反射ダメージだけではないんだよね。

絶えずどこからともなく剣?がワーブレさんを襲っている。そのどれもが貫通しているわけで、控えめに言ってやばい。

確か「フラ〇ラック」だったっけ。多分「後より出でて先に断つもの」の効果で出ているわけだが……これ、某型月のソシャゲでは宝具だったよな。

1ターン自分に攻撃が来たら反撃するってやつ。

原作見たりしてないから詳しく知らないけど、とりあえずバゼットさんが好きです。

 

「あとノームとウンディーネもあったはずだけど……いや見たいわけじゃないし、むしろやめてほしいんだけど」

 

なんというか、混沌の迷宮の敵とはいえ、時間をかけてボロボロになっていくのを見ていたいというわけではないんだよなあ。

ジャッジメントさんが俺のそんな気持ちも知らずにタイダルウェイブを放ってくる。ほんとやめてほしい。可哀想だ。ワーブレさんが。

 

「……この世界も壊す……壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す」

「この世界を裁く……裁かなければならない……」

「ほんっと、元があの人なのかってくらい話聞いてくれないな……」

 

一度こっちからも手を出して止まってもらうしかないか?

何をするか、と考えてみる。

一番楽なのはこちらも増援を呼ぶことだが……ホリィたちやソニアたちを呼ぶのは終章絡みでマズいことが起きたりしたら、と考えるとこの選択は却下だ。

では他に何かあるだろうか。

増援を呼ぶ、ということが頭をよぎった時に先ほどからのフラ〇ラックと、ワーブレさんの見た目からロボットみたいという印象、そして混沌空間が宇宙みたいという感想が順々に思い浮かぶ。

……うん、できるかな?

転職の書を引っ張り出し、職業を「カル〇アのマスター」に変更。

召喚したい彼女の姿を明確に頭に浮かべる。

 

「召喚の口上は知らんから適当にやるけど……」

 

手持ちのアイテムに錬金素材の賢者の石があるからそれでいいか。呼符代わりになりそうなものはなさそうだし。

 

「来てくれ!謎のヒロインXX!」

 

声と共に、賢者の石が砕け散る。そしてそこから現れる一つの影。

それはあまりにもメカであった。

 

(まあロボットをイメージしてしまったから仕方ないとはいえ、再臨状態の方がよかったなあ)

 

そんなことを考えている間に呼び出された彼女は即座に構える。

 

『エーテル宇宙、即ちコスモス……』

 

あ、まあそうなるよね。即宝具だよね。もんぱらの仕様的にもそうならざるを得ないよね。

 

『エーテル宇宙、然るに秩序……』

 

力を溜めているXXにワールドブレイカーさんが裁きの炎を放つが。

 

『ゆくぞ!ツインミニアド・ディザスター!』

 

一閃。

それで裁きの炎はかき消え、宙を飛んでいたワールドブレイカーさんも地に落ちた。それを確認すると、XXは退去していった。

 

「ワーブレさん……っとぉ!」

 

ジャッジメントさんの攻撃が飛んできて思わずビビってしまった。いや、今回があまりに異質なことに全攻撃反射なんてことが起きているだけで、普通なら当たるものだし、ビビるのは仕方ない。慣れてないから仕方ない。

 

「ジャッジメントさんはどうするかなあ……」

 

離れたところで力を蓄えているのか、静止しているのを見て呟く。

もう一度召喚するのもありだとは思うが、誰を呼ぶかとか全く考えてないんだよな。賢者の石は使いたくないし。

 

「……ん?」

 

ふと足元に本が落ちているのに気づく。賢者の石を取り出したときに袋から落としたのだろうか。

表紙を見てみると、そこには。

 

『サクセサーオブソウル』

 

「いやなんでこれがあるんだよ!?」

 

完全にワイル〇アームズ4だし、しかも引継ぎしたときのアイテムを合成した奴だよなあ!

でも、今の仲間が欲しいという思いにはうってつけな選択なのかもしれない。

本来なら4人で使う技だが……。

 

「分身、増殖!」

 

全技使用可能の恩恵を使って、4人に増える。

うわ、俺以外に俺がいるってすごい気持ち悪いんだけど。まあ、分身体もまったく同じ表情をしているあたり、俺と同じ思考をしているんだろう。

 

「よし、それじゃあ……」

 

『サクセサーオブソウル!』

 

本がパラパラと勝手に捲れると同時に、3人の人型が飛び出す。

懐かしさを覚えていると、一人……ガンウォーリアーが光球を撃ちだした。

 

俺たちに向かって。

 

『でえええええぇぇぇっ!?』

 

ナンデ!? 一体どういうことなんですの!?

頭をフル回転して思い出す。確かこれ、4人で使う技で……。

 

『そうだ、4人でアレを敵にぶち込むんだっけ!?』

 

手順は正直おぼえていないがやるしかない。

『概念:武器』に大剣の概念を与え、分身一の俺が玉を真っ二つに。

それぞれどこかへ行こうとする玉を分身二と分身三の俺がいい具合に跳ね返す。

ここからどうするんだっけか。

真っ二つにするのはラク姐さんの仕事、跳ね返すのは術師二人だったから。

 

「あとはガンナーの仕事だあ!」

 

コンビネーションアーツ時に発生する謎の身体能力向上が俺にも起きているのか、割と高い位置にある玉のところまで飛び上がれた。

概念をバズーカの形に変形。そこから放つは託された思いが込められた玉と同等の光の玉。

思いが思いを引き寄せ、勢いを増しジャッジメントさんにぶち込まれた。

 

「裁かれたのは……僕の方か……」

 

そう言い残し、ジャッジメントさんも地面に落ち、倒れ伏した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ジャッジメントさんとワーブレさんに対して、無力化らしい無力化が出来てはいなかったものの、どうやら力を使いすぎたらしく、大人しくしてくれていた。

ジャッジメントさん曰く、俺が世界を悪い方向に向かわせる可能性があったらしく、それを阻止するために来たとのこと。ワーブレさんも同じようなことを言っていた。

まあ、二人の正体が世間で予想されているのと同じかどうか、というのを確かめにきた……というのは、まあ中章の世界を壊すことになりかねないよなあ、と思う。

あわよくば直接二人から言葉にしてもらおうとか思っていたわけだが、そのこと自体が世界の危機に陥るならやめておこう。終章が出たらわかることだし。

そのようなことを伝えると、ジャッジメントさんがほっとした表情をしていた。ワーブレさんはわからないけど、多分同じだと思う。武装解除してたし。

 

その後は、いつの間にか現れていた白兎に冥府まで連れ帰ってもらった。

死神さんに装備を返す際、物凄いジト目で見られたんだが、多分何があったかご存じなんだろうな。

今度甘味でも持っていこう。冥府に持ち込めるか知らんけど。




なんか脳死で書いてたから、やりたい放題しすぎた。あんな装備を渡す死神さんが悪い。
ワーブレさんとジャッジメントの攻撃って何があったか忘れたから動画を見る始末だったし。

そして、後半は一体なぁにこれぇ?だと思います。自分でも思ってるし。
サクセサーオブソウルとか、これわかる人いる?
ちなみに自分がきちんとクリアしたのは4だけですので、思い入れが一番強いです。

まあかなりコアな作品の二次創作だし許してくださいお願いしますなんでもはしませんから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コラボ、よかったよね……!

モン娘TDコラボ、楽しかったね……。


「ふぃー……今日のデイリーも終わりっと」

 

PCのタブを閉じてぐいっと大きく伸びをする。

割と今日はさっくり終われたな。

 

「輝、終わった?」

 

ドッペルルカシリーズの一人、ホリィが声をかけてくる。最近当然のように部屋に入り浸っているのだが、今のところ特に何も問題なく過ごせている。

というのも、本編未登場なもん娘たちは察知能力が高いのか、四天王とかが来る前後に姿を消すのだ。しかし急に空間に穴をあけて消えていくのは何回見ても心臓に悪い。寝起きに見たりしたら、部屋の修理を本気で考えるレベル。

 

「んー、とりあえずはなー」

「輝、最近それ毎日やってるよね。楽しいの?」

「まー、楽しいといえば楽しいかな」

 

見せて見せて、とホリィがせがんでくるので再度ページを開きなおす。

別に構わないんだが、当然のように膝に座ってくるのはいかがなものか。

元が男の子であるルカさんのドッペルだからすごく複雑なんだが、大元のドッペルルカの設定が対ルカさんのために女の子になってたから、つまりドッペルシリーズはみんな女の子って認識でいいかな。いいよね。

 

「んー、モン娘TD?」

 

画面を凝視してホリィが呟いたと思ったら、ぎゅりんとこちらに顔を向けて来た。

こわっ。勢いがこわっ。

 

「え、私たち以外のもん娘にも手を出してるの?」

「すっごく言い方に悪意を感じるんだが?」

 

お前らみたいに現実に浸食してきてるわけじゃないんだから別によくない?

いや、浸食してたとしても俺の勝手だよな。

なんでこんな圧をかけられてるのか謎だ。

ホリィだけじゃなく、どこかから残りのドッペル三人も背後に現れて圧をかけてきてるんだけど。なんで?

 

「ふーん、こんな娘たちがいるんだねー」

 

オープニング画面を見ながら、感想を呟くホリィ。そっと膝から降ろそうとすると動きに合わせて器用に身体を動かして落ちないようにしてきた。意地でも降りる気はないらしい。

ならばと思って、残りのドッペル三人に目で助けを求めると、逆にくっつかれるという事態。

あれ? なんでこんな時だけ察しが悪くなるの? 他の時だとめちゃくちゃ不必要なレベルでこちらの考えていることを当ててくるのになんで?

 

「あれ? ここにもあの子たちいるの?」

 

ホリィが指さす先にはタイトル画面。そこには見慣れたメンツがでかでかと表示されていた。

 

「ああ、今コラボしてるからな」

 

そう、現在もんくえコラボしているのである。とはいうものの、一通りストーリーは全て終わらせたし、交換アイテムも全部入手した。チャレンジバトルだけ頑張ってるけど、最後の発狂軍団が安定しないなあっていう状態である。

ガチャ? 課金もして全員手に入れたよ。アルマエルマさんだけ異常に出なくて、初めてメダルで交換しましたけど何か?

といっても、あと少しでコラボも終わるわけだが。

 

「わー、グランべリア以外必殺技が違うんだねー」

「……そこは俺も思った」

 

何なら、グランべリアもその技なのかよって思ったわ。

なんで「乱刃・気炎万丈」じゃなくて「天魔頭蓋斬・焔」を採用したのか。

本編終了してる設定で、技が使えないなんてことはないだろうに。謎だ。

「天魔頭蓋斬・焔」を覚えてなくてサイト見たくらいには忘れてたぞ。

アリスも「魔王の暴虐」とかでよかっただろうし、アルマエルマさんはサキュバスアーツ零式……はさすがに無理か。

たまもはもうサポート役だし、あの技に似つかわしい名前がわからないし、水ようかんもといエルベティエはヒーラーだからなあ。トークン数を増やすだけだからとくに名前はないな。これは仕方ないね。

きつねやライムは……うん、まあここではいいかな。

 

「さっきまでイベント走ってポイント稼いでたからスタミナないんだが」

「やってみせてよー」

 

ホリィがぶーたれるので、仕方なしに必要分だけスタミナ回復アイテムを使い、チャレンジバトルの最難関のものを選択。

こちらのメンツは、まあめんどくさいから省略するが、アリスとグランべリア、たまもは入っている。普通にスキルが強いし。

 

「あっ、魔王やられてる」

「こっちもやられてるわね」

「おいおい、もしかして輝はこのゲーム下手くそか?」

「これ、逐一きちんとやっていたら途方もない時間がかかるわね。だから完璧を求めるのではなく、回転率を上げているのかしら」

 

本編だと本陣へのダメージはクリアのランクに関係するからやり直すが、このチャレンジバトルに関しては別に本陣の残り体力さえ尽きなければ最後までいけるからいいんだよ。それに一応ちゃんとノーダメでクリアはしてるから。ポイント稼ぎはそこまでこだわる必要を感じないから不安定だけど回しているってだけで。

そんなことを考えながらとりあえずクリア。ふむ596体討伐か。最終版で壁が落ちたのが痛かったな。

 

「さて、もういいか? さすがにこのゲーム……というより、このバトルは何回もやるのはしんどいんだよ」

「そうだねー、一回見たらもういいかなって気になったし」

 

ページを閉じると共にホリィが降りてくれた。

やれ幸いと思うと同時に昼飯を食べていないことを思い出し、パソコンを閉じようとマウスを動かそうとして。

 

「輝、助けてくれ」

「アドラ?」

 

なんということでしょう、俺の右手にはマウスではなくアドラの手が握られているではありませんか。

 

「移動しながら説明する。このまま来て」

「え、ちょ?」

 

状況を理解する時間も与えられないまま、アドラに異空間への穴に引きずり込まれた。

 

 

「あれー、これ、トラブってる感じかな?」

「そうね、あれだけ焦っているなんて珍しいことだし」

「ってことは、だ」

「そうね」

 

残されたドッペル姉妹たちは頷きあい。

二人の消えた穴に我先にと飛び込んでいった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「……なるほど、アドラが本領発揮できなくなっている、と」

「第三種異界接触が発生。しかし我、不調。今は何とか別の我が食い止めている」

「なるほど……」

 

どうやらアドラメレクことアドラは、第三種異界接触が起きようとしている現場にて排除作業をしようとしていたようだが、どうにも能力が十全に使えていないらしい。

どうやら使えるのがモンスター呼び出しとメテオ、あとは聖光波らしい。

しかも一定時間ごとにしかメテオと聖光波は出せないとか。

うん、なぜかすごーく覚えのある技というかギミックだよな、これ。

 

「ふむ……もしかしてこっちの四天王とこっちにいないもん娘たちと戦ってるとか?」

「それもある」

 

……ん? それも、ある?

 

「着いた、ここだ」

 

そう言って、下ろされた場所は。

 

「やっぱりコラボイベント最終ステージっぽいところじゃないかこれ」

 

ストーリー最終版の、対アドラメレク戦のフィールドであった。

 

「……来る」

 

不意にアドラが呟くと同時にフィールドの中央に降り立つ。

それと同時に現れてきたのは。

 

「グランべリア、たまも、エルベディエ、アルマエルマ……んだと!?」

 

最初は四天王だけかと思った。それならまだいい。俺の知っているストーリーでもそうだからな。

だが明らかにこれは違う。俺の知っているストーリーにはないことが起きている。

 

「なんで、あいつらがあんなに数増やしているんだ……!?」

 

最初に見えた四天王の後ろには夥しいまでの数の四天王がいた。

アドラが呼び出したモンスターは四天王に接敵すると戦闘し始める。だが悲しいかな、多少殴り合ったところでモンスターが粉砕されていく……?

 

(多少なりとも殴り合えているだと?)

 

これがもんぱらの世界だったらおそらく一撃でアドラの呼び出したモンスターは一瞬で消し去られているはず。かといって、ここがモン娘TDの世界線だったとしても明らかにおかしい。

明らかにあの四天王は弱体化している。その証拠にスキルを全く使ってくる気配がない。

 

(かといって、俺が一人でどうにかできるものでもない……!)

 

おそらく、あの四天王相手でも戦うことは出来たとしても、アドラへの侵攻を防ぎきることは出来ない。

聖光波やメテオは一定時間ごとに撃てるとはいえ、後続がどんどん押し寄せてくるだろう。あまりにも焼け石に水が過ぎる。

 

「わー、すごいことになってるねえ」

「いや、すごいこととかそんな呑気なことを……?」

 

思わずツッコミを入れたが、今俺は誰に対してツッコミを入れた?

後ろを振り返ると、装備を展開している四人組の姿。

 

「これは私たち、大暴れできる感じ?」

 

ふむ。状況を整理しよう。

 

①ここはもんぱら世界ではない。

②明らかにイベントとは異なる戦闘。

③アドラがピンチ。

④原作キャラがいない。

⑤既に第三種異界接触状態。

 

なるほど。

となると、ここでの俺の役割はとりあえず決まったかな。

 

「よし、ドッペル4姉妹は俺の指示で動いてくれ!」

『了解!』

 

主人公くんの立ち位置で、あの軍団を食い止める。




超久々です。
本当はイベントあった時期に書きたかったけどなんやかんや手を付けていなかったです。
そしてこの時期にやることでうろ覚え状態という……。


なんとなくこうしたいっていうのはあるんですが、進みは遅いと思います。
あと書き方とかも忘れていますね、これ。
また感想やら評価がもらえたら嬉しく思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もんむすもんむすもんむすハイハイ!

もんくえコラボ、だいぶ前に終わってるのに本小説では終わらせてないというね。
なんならもんぱら終章の体験版まで出てるのにね。
あ、ちなみに体験版はまだ手を出してないです。


「ホリィ、そこから右へ!リノアは左!ハイネとキリエはそこで迎撃してくれ!」

 

声を張り、ドッペルたちに指示を飛ばす。

今回の勝利条件といえるのは、アドラことアドラメレクの防衛。向かってくる奴らがアドラに殴りかからないようにすることである。つまりもんむすTDでいうところのハートマークのアレである。侵入されたらダメージ喰らうやつ。

 

そしてもんむすTDのようにかぐやドッペルルカたちに動いてもらってるのだが、いやはや強い。

ハイネはおそらくガーディアンクラスであるためか、一度に多数の敵を食い止めている。さっきから偽四天王が定期的に吹き飛んでいるのを見るに大丈夫だろう。

 

キリエはアーチャーだろうか。なんかとんがってる感じだしイメージとはかけ離れてはないだろう。ちょくちょく敵が5体くらい連なって飛んでいくのが見える。

 

ホリィはすばしっこさ代表だからか知らんけど、スカウト職みたいな動きをしてる。ナイフを延々と投げてるわけだが、まあ投げた先から敵が溶けていってる。比喩じゃなく本当に。どんな猛毒仕込んでるんだあの子。

 

リノアは…うん、ヒーラーと思ってたら地味に攻撃もしてない?一人だけ本来のシステムからかけ離れた動きしてない?毒リンことポイズンスライム娘と化したリンよりぶっ壊れてるぞ。ガチャ来たら絶対手に入れるわ。tier1確定だろあの子。

 

アドラは定期的に聖光波を中央で放っており、範囲内の偽四天王はそれを受けて蒸発してる。ドッペルシリーズたちも直撃してるわけなんだが、混沌の迷宮で出てくる時の耐性に「聖属性無効」があるからか、平気な顔をしている。そこもんぱらの仕様引き継いでるの狡くない?いや、助かってるから文句は言ってはいけないんだろうけどさ。

 

「んで、とりあえず落ち着いたわけだが」

 

各々の様子を見てる間に全てが終わっていた件について。

やだもうドッペルシリーズたち怖い。お兄さん、今更ながらに生きる凶器に囲まれてることに気づいたよ。もん娘TDという雰囲気ゆるゆるのゲームでそんなこと気づきたくなかったよ。

 

「とりあえずアドラは…キツそうだな。キリエ、戻るのに時間はかかりそうか?」

「そうね……私たちはともかく、今の状態の彼女が戻るのは難しいと思うわ」

「なら、どうすれば……」

「行くしかないんじゃないかな? ここへ」

 

ホリィが近くの穴を指さす。うっすら見えるのは……もしや。

 

「ゲシュペンス島、か?」

「名前は知らんが、あのゲーム画面に映ってた島と同じ形をしてるな!」

「ハイネにしてはよく見てるわね。ハイネにしては」

「おいリノア、どういう意味だそれは」

 

悪いハイネ、俺もそれは思った。

 

「まあ、アドラの回復のためにもゲシュペンス島に行くのがベスト、か。アドラは……動けそうか?」

「う……頑張る」

 

頑張るとは言うものの、だいぶ使い果たしてしまったようで動くのが厳しそうではある。

さて、どうするべきか。

 

「ハイネは右、キリエは左からアドラを抱えて」

「おう」「わかったわ」

「ホリィは二人のサポートを。足元だったり周囲に変化があったら二人に教えて」

「わかった!」

「……リノア?」

 

ぱちくり、とリノアの方を見ると、ウィンクを返された。

やだ、有能すぎてすごい。

 

「ほら、輝」

 

手を伸ばされる。

意味が分からず首をかしげていると、むぅ、と頬を少し膨らませ、腕を掴まれる。

そのまま腕を勢いよく引かれたと思ったら、リノアに抱きしめられていた。

 

「うぉ!?」

「……ふふっ」

 

少し動揺した俺にリノアは悪戯っぽく笑い、そのまま穴に飛び込んだ。

 

「あ、リノアずるい!」

「……あとで覚えてろ」

「……今回ばかりはホリィとハイネに同意ね」

 

後ろからちょっと不安になる内容の声が聞こえた気がしたけどきっと気のせいだと思いたい。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「……て?輝、起きてー」

「……ううん?」

 

声が聞こえて、目を開けた。

周りは明るいが、眩しくない。

上からのぞき込む一人の姿があったからだ。

 

「……ホリィ?」

「あ、起きた!みんな!輝が起きた!」

「……うるせえ……」

「あ、あ……ごめん」

 

思わず顔をしかめると、ホリィが慌てたあとしゅんと沈んでしまった。

しまった、俺が起きるまで看ていてくれたのに気を遣わせてしまった。

すまん、と謝り手を伸ばしホリィの頭を撫でる。

謝罪の気持ちと感謝の気持ちを込めて優しく、丁寧に。

その気持ちが伝わったのか、ほっとした表情を浮かべてくれた。

 

「輝、大丈夫?」

「調子が悪かったりしないか? 悪くても肉を食えば何とかなるだろ!ほら食え!」

「ハイネ、今渡しても困るだけだと思うけど」

 

どうしよう、ハイネが今更になって脳筋キャラになり始めてるんだが。

肉を頬に押し付けてくるのをやめろ。ちょっといい匂いしてるのが地味に腹が立つ。

 

「リノアたちは何をしてたんだ?」

「私とキリエは周囲の調査ですね。ハイネには狩りを優先しつつ調査してもらいましたが」

「いい魔猪を狩れたぞ!」

「すごく良い環境の島のようですよ。ここが輝の言っていた「ゲシュペンス島」なのでしょうか?」

「……そう言われると俺にもわからん」

 

ゲシュペンス島のことは島全体を見た記憶があるかないかくらいだからなあ。

火山がある、森があるくらいで、地理関係全く分からん。

 

「んー、それならさぁ」

 

ここからどうするかと考えていると、ホリィが声をあげた。

 

「そこにいる子たちに訊いてみたら良くない?」

「え?」

 

ホリィの指さす先に目を向けると、そこには。

 

「………………バレてたの?」

「割と最初から気づいてたよ、君はえっとぉ……」

 

そっかー、と言いながらのそのそと出てきたのは。

 

「えっと……誰だっけ?」

「誰なのかしらね」

「知らんなあ」

「知らないわね」

 

「ちょっと泣いていいかな?」

「かっこつけたホリィが悪いなこれは。確か弓のゴブリンの人だよな」

「私の姿見てそのままの特徴を言われても……」

 

はぁ、とため息を吐いたゴブリン娘。本当に誰だっけ。

 

「ゴブリン娘といえばサポーターのアニシラしか思い出せねえ……」

 

いや、いたのは覚えてるんだが自分が使ったことないからってのが大きいかもしれん。

いや使ってても名前を思い出せないモン娘いるわ。

 

「ふん、いいもんいいもん。というか、あなたたち誰よ!……はっ、もしかして密猟者の仲間!?」

 

いかん、マズい方向に流れが行ってしまってる。

 

「みんな!密猟者!ご主人君はいないけど追っ払うわよ!」

「あー……めんどくせえ。とりあえず黙らせたらいいんか?」

「落ち着けハイネ。まあ迎え撃つ必要はあるが、ほどほどにしてくれ」

 

ドッペルたちが俺の前に展開すると同時に、木陰からゴブリンが飛び出してきた。

おー、ゲームで出てくるゴブリントークンそのままじゃないか。なんか感動。

 

「輝、アドラと一緒に下がってて。あと私たちも通すつもりはないけど、周囲の警戒は怠らないで」

「キリエ、気持ちは嬉しいがゴブリンの方に集中してくれ」

 

なんか適当に放たれた矢がえっぐい角度でゴブリンに突き刺さってるの、結構絵面的に悲しくなってくる。何が起こってるのか全く分からない。ゲーム違っても混沌の迷宮出身ってだけでやばいんだなあ。

 

そんなことを思いつつよくよくキリエの髪を見ると、

 

「……ん?」

 

これまでついてなかったはずのものが。あれは……櫛?

 

「大丈夫よ、これがあるから」

「なんだ? その櫛が関係してるのか?」

「ええ、これは『百発百中の櫛』。名前のとおりのアイテムよ」

「……もしかしてそれ、混沌の迷宮の?」

「いえ、究極納入で偶然手に入ったもの……のはずよ。」

 

命中率アップ系のアクセサリ、そういえばあったか。それの一番強い奴か。

混沌の迷宮でも宝箱から出ることはあるっけ。まあ納入スキルで手に入ったというなら本当にそうなのだろう。

 

「いや何勝手に他ゲームに装備持ち込んでるの!? 効力発揮してるの!?」

「使えてるんだから仕方ないじゃない」

「そうだよ輝。文句言わない」

「なんでホリィに諭されてるんだ俺は……」

 

たまたまそばを通ったホリィにまで言われる始末である。

 

「……っ! 輝!避けて!」

「え……うぉおおおお!?」

 

ホリィの声がした方を見た瞬間に頭を下げて回避行動。直後、頭の在った位置を突き抜けていく複数の短剣。

その短剣は飛び出してきたゴブリンたちの眉間に突き刺さった。

 

「ふぅ、危なかった」

「ほんとにな!俺の首が飛ぶところだったわ!」

 

倒れ伏すゴブリンは目を回しているだけで済んでいるが、これってアレよな。

きっとモン娘関係だから無事って訳なんだろうな。

一般人の俺に当たったら首が搔き消えていたんだろうな。

 

「いや、多分逆にホリィの首が吹き飛ぶところだったと思うけど」

「えっ? リノア今何か言った?」

「いえ、何でもないわ。まあ仮に輝に当たったとしても無事だったと私は思うわ」

「何その変な信頼!?」

 

そしてどうしてホリィは顔を青くしてるんだい? 君が投げたんだよね?

 

「おい、くっちゃべってる間に全部終わったみたいだぞ」

 

そして今まで会話に加わってこなかったハイネが入って来た。

彼女の後ろを見ると、倒れ伏したゴブリンが山のように積み重なっていた。

ゴブリンだけじゃなく、木々も結構倒れているわけだが、どれだけ暴れまわってたんだ。

 

「とりあえずこいつも取り押さえたけどどうする? 処す?」

「うう、放してぇ……」

 

ハイネの右手の触手?にさっきのゴブリン娘さんが捉えられていた。 

とりあえず、落ち着いてお話しの時間といきましょうか。

 

 




次あたりでモン娘TDは終わります。多分。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。