アカム武器なめんな。 (糸遊)
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第1話 攻撃力370 会心率45% 切れ味レベル+2で青ゲージ10

気分転換で書きました。

たま〜に更新する予定なので、気楽にお読みください。




 

 

「アンタもモノ好きねぇ…。なんでそんなナマクラばっかり使うんだか…。」

 

 

俺の相棒である隣にいる女ハンターが、俺の背中の大剣をみてそんな言葉を呟く。

 

 

「アーッハッハッハ!

……それ以上この武器をバカにしたらこやし玉投げるぞ?いいか?本当に投げつけるからな?」

 

 

そこまで言うと、ウカムX装備を身につけた彼女は溜息を吐きながら黙り込んだ。

 

 

「じゃあ逆に聞くが、そんな金ピカのサーフボード担いで『私ってばかわいい!』なんて思ってるのか?

 

そんなサーフボードは周りの奴らがみーんな装備してるわぁッ!

 

なーにが『真名ネブタジェセル』だ!

ネブタ祭りってか!? 全然面白くないわ!」

 

 

そう言い返すと彼女は呆れた様に頭を抱える。

 

ふっふっふ。何も言い返せないようじゃないか。

この勝負、俺の勝ちだな!

 

 

「あぁ…、このバカと話してると本当に疲れる…。

 

あ、ほらいたわよ。貴方の大好きな金ピカゴリラ。」

 

 

「なぬぅっ!? よし、こうしちゃいられねぇ!

 

ウルスもなにボサッとしてるんだ!? 早くいくぞ!」

 

 

 

そんなお喋りをしているうちに俺の大好きなムキムキゴリラが現れた。

 

 

 

 

 

「今行くよぉぉぉぉお!

待っててねぇぇぇえええ!俺の大好きな全身弱点ゴリラさぁぁぁぁぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずえりゃぁぁぁあああああ!!」

 

 

相棒に向かって口からビームをぶっ放してるゴリラの後脚めがけて溜め斬りをぶち込む。

 

ゴリラはダメージに耐えきれず、転倒した。

 

 

「ウホッ!いいケツしてんなぁっ!弱点特効が好みのいいケツだぜ!

俺が炎のクリティカルをぶち込んでやるから覚悟しやがれぇっ!」

 

 

すぐにブレイヴステップで近づき、横殴り、そして強溜め斬り。

 

その全ての攻撃に会心の手応えを感じる。

 

 

「ムッハーーーッ!この手応え、たまんないねぇ!

まったく…ゴリラのケツは最高だぜ!」

 

 

ふと相棒を見ると、手を顔に当て空を仰いでいた。

 

体調でも悪いのかね?

 

 

「おーい、ウルスー。 体調悪いんなら無理すんなよー。」

 

「そんなんじゃ無いわよ…。あぁ…もうヤダコイツ…。」

 

 

大丈夫みたいかな?そんじゃあ俺は遠慮なくやらせてもらうぜ!

 

 

「くらえやクソゴリラァァァッ!

 

もう一度、俺にそのケツ晒しやがれぇぇぇぇえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふい〜っ!今回もいい狩りだったぜ!クリティカルがバンバン出るのは気持ちいいねぇ!」

 

 

ゴリラを倒し終わり、俺達はベルナ村でゆっくりしていた。

 

 

「いやぁ、やっぱりアカム武器はいいよなぁ!この破壊力はロマンの塊だぜ!」

 

「あぁ、全くだ。まさか俺と同じ価値観を持ってるハンターがいるなんて思っても無かったからさ。」

 

 

俺は加工屋のオッちゃんとそんな話をしていた。

 

 

「最近は、狩技の普及によって切れ味を維持するのも難しくは無くなってきているからね。

頭の痛かった問題の一つである、切れ味関係のカバーが楽になった。

それに『鈍器』スキルなんてのも普及してきている。

アカム武器にとっては追い風だよ。」

 

「ふーん…。まぁ知らんけど、アカム武器は強くなったってことなんだろ!」

 

「あぁ、そうさ。 一流ハンターに大人気の大剣は『真名ネブタジェセル』だけれども、君の持っている『覇神剣イクセエムカム』は条件次第ではあの忌まわしいサーフボードを超えることだって難しくないという計算結果も工房で出されたしね。」

 

「へぇ…。加工屋のおじさんがそういうなら間違いはないのね…。

正直信じられないわ…。」

 

「うん、ウルスさんがそう思うのも無理はないだろう。

カタログスペックだけみたらネブタジェセルは相当なものだ。

安定性ならピカ一だろう。

 

だけど…、最近はみんながその武器ばっかりだ。

 

『大剣の装備は?』なんて聞いたらどいつもこいつもブラックX一式にネブタジェセルさ。嘆かわしい話だよ。

 

そんな中で、アカム武器を使うカルム君が俺の前に現れた。

これはもう運命だと感じたね。

 

僕のもてる力を全て注いで、カルム君のために頑張ったよ。

 

今ではカルム君は『覇王』なんて称号を持ってくれた。

これより嬉しいことはないな。」

 

 

「いや、オッちゃんのアドバイスがなければ俺だってここまでは来れなかったさ。

前は弾かれてばっかりで、使いにくさは感じてたしな。

 

狙う部位なんかのアドバイスをもらえたから、俺は頑張れたんだよ。」

 

 

「そう言ってくれて嬉しいよ。それじゃあ、そろそろ乾杯をしようか。

カルム君、掛け声はいいかい?」

 

 

 

「あぁ、ばっちこいだ! それじゃあ……せーのっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「グラビモスを許すなッ!」」

 

 

 

 

 

そんなちょっと変わった掛け声と共に、達人ビールの入ったジョッキが打ち鳴らされた。

 

隣でウルスが頭を抱えていたのは気にしないでおこう。

 

 

 

 



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第2話 それでも刃薬なら……刃薬ならきっと何とかしてくれる……!!

 

 

『難攻不落』

 

そんな言葉を体現したようなモンスターと俺は戦っている。

 

斬りつけた時の感覚は例外なく浅く、むしろ弾かれる時の方が多い。

 

 

「ハハッ…やるじゃねえか…!

 

けれど、俺もコイツを使っている時に負けるなんてのはまっぴらゴメンなんでね…!」

 

 

残り時間も迫って来ている。

 

 

……だけど

 

 

 

 

まだあわてるような時間じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

最後のラッシュのために、俺は白い色の薬液を取り出す。

 

 

 

 

 

時間はギリギリ。

 

 

それでも仙d、刃薬なら……刃薬ならきっと何とかしてくれる……!!

 

 

 

俺の片手剣が刃から白い炎のようなオーラを吹き出す。

 

 

 

 

 

 

 

「さあいこーか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いこーか、じゃないわよッ!

アンタ、流石に頭湧いてんじゃないの!?

宝纏に切れ味よくない無属性片手剣で来るとかキチガイもいいとこだわ!?」

 

「うっせーよ!俺だって本当は覇撃槍とか覇壊斧で来たかったわ!

だけど、この間のグラビモス大量発生でウチの固定ダメージ武器ちゃん達はヘトヘトなんだよッ!

ガンランスとチャアクは敏感な武器なんですよ!?もっと優しくしてあげてよ!?ねえ!?グラビモスな季節なんざクソ食らえだ!」

 

「あーもう、頭痛い…。あっ、転がって来たわよ。

 

……ゲッ、なんか撒き散らしてるし。」

 

 

私は宝纏を相手にしながら、相変わらず残念な頭のコイツと軽く言葉を交わす。

 

 

「こんの糞モンスターがぁぁぁあ!

文字通り汚物撒き散らしてんじゃねぇぇぇぇええ!」

 

「アンタも充分クソハンターよッ!

 

そもそも無属性片手剣ってのがニッチすぎるじゃない!なんで水片手剣とか毒片手剣で来ないのよ!?」

 

「フハハハハッ!

んなもんとっくに売っぱらったわ!

 

アカム武器を愛する俺にとってアカム武器以外はゴミ同然! 天眼片手も紫毒姫片手も当の昔にオサラバよ!」

 

「あぁ…もうダメだコイツ…。」

 

「オラァ!そこの宝石箱!

そのピッカピカの顎をぶち壊してやらぁぁぁぁぁ!」

 

「ちょっ…!?なんで硬い顎を狙うのよ!?」

 

 

 

そう言ってあのアホは宝纏に突貫。

 

けれども宝纏はその体から睡眠性のガスを吹き出した。

 

 

「えっ…?あ、あふっ…。

や、ヤバイ…。たすけてウルエも〜ん!」

 

「うっさいわよ!勝手に突っ込んどいて自業自得でしょ!?

そこで地面とキスしてなさい!」

 

 

あんまりに呆れてきたので、私はアホを放っておくことにした。

 

 

「な、なんてこと…!?

そうやってアタシが寝た隙に襲うつもりなんでしょ!エロ同人みたいに!

たっ、助けてぇ!既成事実作られるぅ!

 

あっ…、意識が……。」

 

 

 

けれどアホはそんなことを口走る。

もう私はブチギレた。

 

この際クエストは失敗してもいい。

宝纏にこやし玉を当てまくり、無理やりエリア移動させる。

 

宝纏がいなくなったのを確認してから、私は大タル爆弾を抱えて寝ているアホの場所へ。

 

そして呑気に鼻提灯を出しているアホの傍で、盛大な寝起きドッキリをかました。

 

 

 

 

 

 

「アァんッ! ウルスさんったら激ししゅぎぃ!

 

く、悔しい……。でも感じちゃう…!

 

ウルスさんになら…アタシ、体を預けても…

 

 

 

ってそんな展開になるわけねえだろボケがっ!

なに睡眠爆破を味方にかましとるんじゃ!」

 

「うるさいわよッ! いちいち耳に障るようなこと言っといてエライ口を叩くなッ!」

 

 

 

醜い言い合いが始まった。

 

アホの口からはやれアカム武器をバカにするなだの、諦めたらそこでクエスト終了ですよ?だのとアホらしい言葉が。

 

私の口からはアホのせいで今回のクエストが長引いてもう失敗確実だのと悪口が。

 

 

そんな言い合いをしていると、クエスト残り時間はいつのまにか残り5分に。

 

 

 

「……ふぅ、なんだか不毛だわ…。もうやめにしましょう。

 

あぁ…イライラする。」

 

 

「あぁ…、変なところで気があうな…。

 

このイライラを何かモンスターにぶつけれたらいいんだけどな…。」

 

 

 

そんな事を口走った途端。

 

 

背後からゴアーガキンガキン、と特徴的な音が。

 

 

私達は瞬時にそちらを向いて叫ぶ。

 

 

 

「「こんのクソモンスターがッ!みんなテメェのせいだッ!ぶっ潰してやる!!」」

 

 

 

私達はノコノコ戻ってきた宝纏に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、まぁこの鈍器ーコングにかかれば二つ名主任なんざ敵じゃないってこった。」

 

「アンタ今回全然活躍してないでしょうが。

天眼片手の私が7割以上ダメージ稼いだと思うわよ?」

 

 

私達は残り時間30秒という状況で見事に宝纏狩猟を達成した。

 

 

あぁ…、このアホと一緒は本当に疲れる…。

 

 

なんで龍識船の集会酒場のマスターは私とコイツを組ませたんだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あら。今回は流石に厳しいんじゃないかと思ってたんだけど…。

こんな状況でも貴方達ならあっさりクリアしちゃうのね。」

 

「フッフッフ…。まぁこの鈍器ーコングにかかれば朝飯前ですね…。」

 

「アンタ今回活躍してないでしょうが…。罰として高級お食事券で奢りね。」

 

「うげっ…。まぁしゃあない…。んじゃあ先に行ってるぞー…。」

 

 

 

そう言ってカルムは食事テーブルの方へ向かって行った。

 

 

 

「……マスター。なんで私とあんなアホが一緒に組むことになったんですか?」

 

 

「あら。そんな事を聞いてくるなんて珍しいわね。

 

…………まぁ秘密にしておくわ。」

 

 

「……あんまりじゃないですかね。」

 

 

「ほら、『覇王』の彼も待っているわよ。

クエストクリア後のお食事デートでもしてきなさいな。」

 

 

「……んなッ!? ア、アイツとそんなわけ…」

 

 

私の言葉も聞かずにマスターは歩いて行ってしまった。

……腑に落ちないなぁ。

 

まぁいいや。お腹空いた。今日はキングターキーでも食べようかな。

 

私はアホが座っているテーブルへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『覇王』と『雪姫』…。

 

まるで対となる『黒き神』と『白き神』の様じゃない…。

実際、貴方達お似合いよ?ウフフ…。」

 

 

 

 

酒場のマスターは遠目に2人のハンターを見て微笑んでいた。

 

 




正直、アカム片手剣はなかなか使い所が見つからない…。

オススメはしません。作成にも覇導玉2つ使いますし。

あと、宝纏に無属性武器で行くのは見事に禿げ上がりますのでご注意を…。

大剣やハンマーじゃない限り、無難に水属性や毒属性で行くのが良さげです。


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第3話 達人ビールと薄幸美人

新しいキャラが登場します。

ただ、()()()()()()今回限りの登場です。

あと、カルムさんはほぼ出ません。



 

 

 

 

「ウルスさん。私、彼氏が欲しいです。」

 

「いや、急に何を言いだすのよ。」

 

 

大空を駆けるハンターたちの拠点『龍識船』の中にある酒場『ホーンズ』で、私は友人のハンターに呼ばれてお話をしにきた。

だけど、いきなりなんなんだ。彼氏が欲しいとか私に言われても困る。

 

 

「だって…だってさぁ!なんで私は独り身なんだ!?

正直スタイルや顔立ちはいいだろう!?なんで男が寄り付かない!?」

 

 

目の前にいる銀髪の彼女は涙を流しながらそんなことをのたまう。彼女がお酒に強いことはよく知っているから、達人ビールで酔っ払ってはいないんだろうけれど既に呑んだくれの様な言葉遣いになっている。

 

 

「いや、なんで相手が見つからないって言われてもね…。」

 

 

涙をちょちょぎらせ、鼻水だって流れ始めている残念な顔の彼女を見る。整った顔立ちが台無しだ。

綺麗な銀髪のロングヘアー、スタイルは抜群。

出る所はボンッと出て、締まる所はキュッと締まっている。野郎どもが好みそうなスタイルはしている。

けれど、男どもが寄り付かない。まぁきっとその理由はこの一言に尽きるだろう。

 

 

「アンタ強すぎるのよ…。いくら容姿端麗でも二つ名や獰猛化モンスター出現の報告を聞いたら、嬉々として突撃していく様な女性に寄ってくる男はいないと思うわ…。」

 

「んがああぁぁあ!何でだ!?ハンターなら強敵に挑めることはこの上ない喜びだろう!?」

 

「だからって限度があるわ。聞いたわよ?

アンタこの間、二つ名ディノバルドを防具無しで討伐したみたいじゃない…。正直ドン引きレベルだわ…。あの酒場のマスターですらちょっと引きつった笑いを浮かべてたわよ?」

 

 

とまぁこの彼女は見た目は問題ないのだが、その性格に問題がある。

早い話、戦闘狂なんだ。

いくら美人だからって強敵相手に尻尾振って突っ込んでいく様な女性だと、彼氏の方の身がもたない。

彼女、ハンターの彼氏がいい!とかほざいているし…。

 

 

「うっ…。でも!わたしはもう25なんだ!

四捨五入したら30!元のパーティのみんなはピチピチの10代20代なのに私だけオバさんになっていくのは嫌なんだ!

 

知り合いハンターから届き続ける、『私達、幸せになります。』のお手紙!結婚式への招待状! そしてそれを眺め、1人枕を濡らす私…。

 

結婚だなんて言わない!せめて彼氏くらいは作っておきたい!」

 

 

う〜ん、必死すぎる…。

でもこの彼女は見た目はいいほうだから、30直前でも大人のお姉さんって感じで通用すると思うけれど…。

なんかズレているよなぁ。あの赤い髪の子はよくこの彼女をまとめていたと思う。

 

 

「怒り喰らうイビルジョーをソロで狩れる様な人なら理想なんだが…。

ウルスはそんな人を知らないか?」

 

 

ほら見ろ、ハードルが高すぎる…。

………ん?でもそれならウチのアホがちょうどいいんじゃないか?

 

 

「あぁ、ウチのアカム武器狂いはちょうどいいんじゃない? アイツを引き取ってくれるなら私としても好都合だわ。」

 

 

彼女にそう持ちかけてみる。

けれど…

 

 

「ん?だってアカムの彼はウルスの彼氏じゃないか。」

 

 

そんなことを言われて、私は達人ビールを噴き出した。

な、何を言いだすんだ…。

 

 

「いやだって…。ウルスは私に会う度に彼の話ばっかりじゃないか。

アカム武器を使ってあんな強敵を倒していただの、何だかんだで頼りになるだの、惚気話を聞かされるこっちの身にもなってくれ…。」

 

 

の、惚気話……!?

嘘だ。私がアイツのことをそんな風に言うはずがない。

 

 

「やめてよもう…。そんなこと言ってないって…。」

 

「まぁ、どうでもいいか…。

でも私は彼にいい印象を持たれてないんじゃないか?

私ったら以前、『アカム武器とかwww』と彼に言ってしまったじゃないか。

いや、普通に強い武器もあるというのにあんなことを言ってしまうとは早計だったな…。」

 

 

あぁ、そうだ。 彼女とあのアホは仲があんまりよろしくないんだった。

アホはこのことを根に持ってはいないようだから簡単に仲直りは出来そうだけど…。

 

 

「そういえば、その彼はどこにいるんだい?

この機会に仲直りを…なんて思っていたんだが…。」

 

「アイツは遺群嶺にジンオウガの狩猟に行ってるわ。

『覇爆砲で蜂の巣にしてやるぜ!』なんて叫びながら1人で突撃。 私が行けるまで待っていればいいのに…。 怪我とかしてないかしら?」

 

 

私がそう言うと、彼女はクスリと笑った。

 

 

「ほれみろ、やっぱり彼のことが気になってるんじゃないか。

やっぱりウルスと彼はなかなかお似合いだと思うぞ?」

 

 

うっ…。この間、マスターにもそう言われた。

た、確かによく思い返してみるとここ最近はアイツのことをよく考えている気がする…。

 

 

「まぁ彼氏云々については自分でどうにかするよ。

私だって『英雄』パーティの一員なんだ!それくらい乗り越えてみせる!

いざとなったらパーティメンバーに恋愛事情に詳しそうなヤツもいるしな…。

あの黒髪娘はお淑やかな女性の皮を被ったムッツリスケベだし…。」

 

 

こらこら、パーティの人をそんな風に言うんじゃないよ。

というかこんなポンコツ女が副リーダーで『英雄』なんて呼ばれて大丈夫なのかな…?

 

 

「……まぁ頑張れば素敵な出会いもいつかは来るでしょ。

私、あのアホからアイテムボックスの整理を頼まれてるからそろそろいくわね。」

 

「おっ?そんなことを頼まれてるとは…将来はいい奥さん間違いなしだな!」

 

「………うるさいってば。 貴女はこれからどうするのよ?」

 

 

とりあえずこの流れを無理矢理に断ち切ることにする。

 

 

「私か…?まぁ次はベルナ村に滞在する予定かな…。

メンバーから連絡があってな。久しぶりに全員で揃うことができるらしい。それに…紹介したい人もいるだとか…。

まさか私にいい人を連れてきてくれたなんてことがあったり……?

ともかく期待が持てそうなんだ。」

 

 

う〜ん…。何故だろう…?修羅場の予感がするのは私だけなのか…?

 

 

「そう、それじゃあルファールも頑張ってね。

じゃあ私は行くことにするから。」

 

「あぁ、今日はありがとうな。またいつか。」

 

 

そう言って私は席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う〜ん…、アイツと私がお似合いだっていうのが気にくわない…。

こちとらアイツと一緒にいるのは疲れるから願い下げだというのにな…。

 

そんな考え事をしながら歩いていたせいなのか、私は影から出てきた人に軽くぶつかってしまった。

 

 

「あっ…すみません。ちょっと考え事を……」

 

「んん?ウルスじゃんか。ジンオウガ終わらせてきたぞー。

やっぱり覇爆砲はガチで強いな!雷ワンコをキャインキャイン言わせてやったぜ!」

 

 

………そこにはアホがいた。

 

 

「……なんか浮かない顔してんなぁ?

あれか?恋する乙女はどうたらこうたらってヤツか?

ふっふ〜ん、だったら俺が相談相手になってやろう! そんじゃあ酒場で達人ビールでも一杯…」

 

 

…あぁ、疲れる。

とりあえずなんかイラっときたので、私は右の拳を強く握りしめる。

 

 

そしてカルムのアホ面めがけて渾身の右ストレートをかました。

 

 

「……え?ウルスさん何を… ボヘァッ…」

 

 

カルムは一発でダウン。

うん、いいストレートだった。

今の私だと、アオアシラくらいなら素手で勝てそう。

 

ピクピクしているアホを見ながら私は言葉を落とした。

 

 

「……本当にアンタと組んでるのは疲れるわ。

 

まぁ…たまには楽しいな、なんて思うことだってあるんだから、しょうがなく組んであげてるのよ?

だからあんまり私を困らせないようにしなさいね?」

 

 

ふぅ…なんかスッキリした。

 

 

 

 

……今の私がコイツに抱いている気持ちがどんなものなのかは自分でもわからない。

好意とも思えるけど、それともまた違う何かのようにも思える。

 

まぁ、わからないことを考えたってしょうがないか。

とりあえずコイツと組んでクエストをこなしていれればそれなりに満足なんだ。それで充分。

 

 

そんなことを考えながら、私はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 




覇爆砲については、次回にカルムさん視点で別に書きます。

そして、作者の別の作品の宣伝を入れていくスタイル…。
気になったら目を通して見てください。

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第4話 覇爆砲で“しゃがめよ。“

何を血迷ったのか、今回はモンスター視点です。



我輩はジンオウガである。

 

『無双の狩人』との呼び名に恥じぬような強さを身につけるために、世界を旅している次第だ。

 

今まで旅をしてきて、様々なモンスターやハンターに出会った。そして、幾多の強敵にも遭遇した。

それらを全て撃ち倒し、今の我輩がある。

 

最近では、ハンター達が我輩のことを『じーきゅうこたい』だの何だの言っているが知ったことではない。

まだ我輩は強さを極めてはいないのだ。まだまだ強くなれる素質が自分にあると我輩は思っている。

 

 

 

 

 

 

そして今日。

また目の前にハンターが現れた。

 

今までもハンターは幾度となく相手をして、退けてきた。

だが、今回の相手は今までとは一線を画しているようだ。

 

身に纏っている黒い装備からはまるで覇王の如き威圧感が放たれ、我輩の身体を緊張させる。

 

 

「て、てめぇ…。ちょこまかと逃げ回りやがって…。遺群嶺は一方通行の飛び降り移動箇所が多いんだよ…。 何度も行き来させるんじゃねえ!おかげで時間ギリギリじゃねえか!」

 

 

何か言っているがそんなことは関係ない。

これは全力で挑まなければ、討たれるのはこちらだ。

我輩はそのハンターに向かって吼える。

 

 

「さぁて覚悟しやがれ…! 覇爆砲の圧倒的破壊力を見せてやるよ! 通常弾の弾幕でキャインキャイン言わせてやるから覚悟しなぁ!」

 

 

 

 

 

 

そして闘いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

黒い装備を纏ったハンターはその手に持った武器で、我輩の頭部目掛けて弾丸を撃ち出してきた。

弾丸が直撃し、ハンターは不敵な笑みを浮かべる。

 

だが、肝心の弾丸はとてもじゃないが我輩に通用するものではなかった。

こんな貧弱な弾丸で我輩を倒そうというのか。

実に愚かだ。 今すぐ叩き潰して………何ッ!?

 

 

先程貧弱な弾丸が直撃した場所で、何かが炸裂した。

なるほど…!先程の弾丸はこれが狙いか…!

 

ハンターは同じ物と思われる弾丸を再び撃ち出してきた。 この炸裂弾を弱点である頭にもらうのはなかなかに痛手だ。

我輩は後ろへ跳び、尻尾でその弾丸を受け止める。尻尾なら防御力も高く、この程度の炸裂なら充分耐えられる。

 

ハンターを見ると、次の攻撃の準備をしているようだ。

すかさず突進でハンターに突っ込む。

しかし、ハンターはうまく我輩の突進をいなしたようだ。

 

やはりこのハンターは手練れだ…。我輩がここで散り果てる可能性だって充分にある。

こうなったら我輩も全力を出しきるしかない。

 

我輩がフルパワーを出すためには膨大な電力がいる。そのために、周りにいる雷光虫を背部へ集めて電力を溜めないといけない。

我輩はすぐに背中に雷光虫を集め始める。

 

 

「おっしゃ、隙あり! これでブレイヴ状態突入だオラァ!」

 

 

雷光虫を集めている間にも、ハンターは我輩に向かって弾丸を撃ち続ける。

ぐっ…。 攻撃に怯んでチャージが途中で途切れてしまった…。

 

そして、ハンターの身体から青白いオーラが溢れ出た。

まずいな…。 我輩の本能が危険を訴えている。

 

 

「さぁて、準備は整った…。

弱点特効に超会心、おまけに見切り+1、さらに通常弾強化…。

さらにさらに、今回は暴れ撃ちに射撃術の特盛フルコースだ!

今からバ火力ボルテージショットを顔面にしこたまぶち込んでやるから覚悟しやがれぇ!」

 

 

ハンターはそう叫ぶとその場にしゃがみ、我輩を狙って凄まじい勢いで弾丸を撃ち始めた。

 

うぐっ…ぐああぁっ!?

 

まずい…!? なんて威力だ!?

このままだと何も出来ずに倒される…!

 

我輩は痛みを訴える身体に鞭を打ち、無理矢理雷光虫を集め始める。

 

 

「アーッハッハッハ!そんな隙を見せて無事でいられるとでも思っているのかこの犬ッコロがよぉ!

このまま撃ち続けて……ちょっ、ガブラス邪魔っ……ぶふぇ、毒った…。」

 

 

近くで飛んでいた小型の飛竜がハンターを小突いているようだが、そんなのはどこ吹く風。

ハンターは遠慮なく我輩に向かって弾丸を撃ち続ける。

 

 

 

………来た!

 

 

 

全身に電力が駆け巡り、我輩の力が十全と発揮される準備が整った。

 

すぐさまハンターの元へ近づき、前脚を全力で振り下ろす。

だが、その攻撃はハンターに軽くいなされた。

 

さらに、ハンターは自らが重厚な武器を抱えていることを忘れたかのような速さで我輩から走って離れる。そして再び弾丸を雨のように撃ち始めた。

 

ぐうっ……!? まずい…攻撃に怯んで雷光虫がいくらか我輩の制御下から抜けてしまった…!

 

 

そのことが我輩の生存本能を刺激した。

 

このままでは我輩はここで散る運命だ。

 

ならば最後に最高の力を出し切って終わりたい。

 

 

そう考えた途端、全身を迸る電気が青みを帯びた。

我輩はその全能感を感じつつ、天に向かって吼える。

 

 

「ハッ、怒り状態か! 最期に全力出そうってか? そうゆうの…嫌いじゃないぜ!」

 

 

ハンターは遠慮なく我輩に向かって弾丸を撃つ。

 

我輩はそれを気にすることなく、ハンターに向かって全力の突進を仕掛ける。

だが、ハンターはその攻撃すら簡単にいなしてしまった。

 

……ぐっ。

……ダメージのせいなのか、意識でさえ朦朧としてきている。

 

 

恐らくこれが最後の攻撃になるであろう。

 

 

我輩は背中に迸る電気を活性化させ、全力で跳び上がった。

 

 

 

「背面ボディプレスか! 惜しかったな!

そんなもんイナシてしまえばへっちゃらなんだよ!

そんじゃあここら辺で幕引きとさせてもらあばばばばばばばばばば」

 

 

 

何か聞こえたような気がするがそんなことは気にしない。

我輩は全身全霊の力でハンターを叩き潰した。

 

 

………手応えはあった気がする。

 

 

すぐさま起き上がり辺りを確認すると周りには大雷光虫が浮遊しており、ハンターは忽然と消え失せていた。

 

今までもハンターを倒したと思ったら忽然と消え失せていたので、今回もなんとか倒せたということだろう。

 

 

 

 

………強敵だった。 まず間違いなく、今まで我輩が相手取った中では最強であろう。正直勝てたのが驚きだ。

 

世の中、上には上がいるものだな…。

 

だが、我輩はまだまだ強くなる。

 

今回は生死を彷徨うような死闘だったので得られるものも大きかった。これで益々我輩は強くなれる。

 

感謝するぞ、強きハンターよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、雷狼竜は遺群嶺から立ち去っていった。 更なる強さを求めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このジンオウガが今回の経験を糧にして強さを磨き続け、遠い遠い場所にある地方で

 

『極み吼えるジンオウガ』

 

と呼ばれるようになるのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 




ウルス「いや、何負けてんのよ。前回の流れからして勝ってるもんだと思ってたわ。」

カルム「俺悪くないもん!悪いの大雷光虫の麻痺とガブラスの毒だもん!」



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第5話 無属性双剣(笑)

ウルスさんの称号を変えました。
進行に支障をきたすことはないですが、報告です。

それでは本編どうぞ。




 

 

 

「ハイハイハイハイハイハイハイハイ、ハイッ!」

 

「やかましい!斬りつける度にハイハイ言ってんじゃないわよ!」

 

「えぇっ!? みんな言わない!? なんかそっちの方が…アレじゃん、アレだって。」

 

 

アレが何なのかは知らないけれど、斬りつける度にハイハイ言うのは双剣使ってる時だとうるさすぎる。もっと静かにできないのだろうか。

 

 

「よっしゃ。 オラオラオラオラオラオラオラオラ、オラァ!」

 

「このアホは…もう…。」

 

 

コイツとクエストに出ると、私はいつも頭を抱えてる気がする。 アレなの? コイツの頭はもうどうにもならないの?

 

 

「おっ!ダウンゲットォ! おい、ウルス!チャンスなのに何ボサッとしてるんだ!」

 

 

そんなことを考えてたら、あのアホがガムートからダウンを奪ったみたい。 むむ…、案外やるじゃない…。

 

 

「はいはい…。今行くわよ…。」

 

 

私はダウンをしてもがいているガムートへ向かって駆け出した。

早い所ガムートを終わらせて、ベリオロスの狩猟にも向かわないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても…無属性双剣ってどうなのよ…。」

 

 

ガムートを倒し終わった私は、カルムにそう尋ねる。

今回コイツが担いでいるのは『覇尖爪イクセアムカム』。 双剣というカテゴリーで無属性、切れ味悪いのデメリットはかなりの物だと思うのだけど…。

 

 

「ん? まぁ悪くはないんじゃないか? なんか工房のオッチャンが言ってたけど、『鬼人化してれば斬り方補正が〜』とかなんとかで切れ味黄色でもなんか弱くないらしいぞ。俺にはよくわからん!」

 

 

き、斬り方補正…? なんだろうそれは…。

武器のプロフェッショナルはやっぱりいろんなことを知ってるなぁ…。

 

 

「ふ〜ん…。でもさぁ、同じ無属性双剣でも鎧裂双剣の方が切れ味もいいし使いやすいんじゃ…。」

 

「はい静かに。手数武器使ってる前で鎧裂の名前を出すんじゃねぇ。頼むから、お願いだから…。」

 

 

あっ…。 なんか泣きそうだ…。 やっぱりアカム武器の特徴がマッチしない武器種ってあるよね。

 

 

「うわぁぁぁああん! 俺だってどうにかしてコイツを強くさせてやりたいよぉぉぉぉおお!

だけどぉ!ドヤツザキとかいう目の上のたんこぶがどうにもならないんだよぉぉぉおお!」

 

 

うわぁ…なんか泣き出したわ…。めんどくさいなぁ…。

 

 

「大体なんでアカム片手剣は開発されたのにアカムハンマーは出てこないんだ!武器工房なんとかしろやぁ!」

 

 

あ〜、確かにアカムハンマーとか出たら案外使えそうだ。

大剣が結構強いんだから、ハンマーもなかなかの強さになりそう…。いや、それでも何とも言えないような…。

 

 

「……まぁ、モンスターを倒せないってわけじゃないからいいんじゃない? 別に1番優れた武器で来い、って強制してるわけじゃないんだしさ。」

 

「……どうしたよ。 今日はなんだか尖ってないな?」

 

 

カルムが訝しげに聞き返してきた。 ……何よ、いつもの私は尖っているというのだろうか?

 

 

「いや、アンタはよくアカム武器を使い続けれるなぁって思ってさ…。 私、ウカム武器が好きで一時期使ってたんだけどさ。あまりの扱い難さに放り投げちゃったんだよね。」

 

 

私の脳裏に苦い思い出が蘇る。 以前は私だってコイツと同じようにお気に入りの武器を使っていた。 だってその武器が好きだったから。

 

白き神の力を宿すという武器。 その肩書きに心を惹かれて使っていた時期もあった。

 

けれど、そんな武器を使っているハンターは少ない。 あの頃は私だけだったのかもしれない。

 

 

「なんでそんなナマクラ武器使ってるんだ、って言われちゃった。 その言葉を言われてから、もうなんか嫌になってウカム武器は放り投げちゃったわ。 今ではボックスの奥で眠ってる。

だから、アンタは凄いなぁって思っただけよ。」

 

「ほ〜ん。お前にもそんな時期があったんだなぁ〜。なんかいっつも王道の武器使ってるイメージあったけど…。」

 

 

まぁそうでしょうね。 普段からコイツのアカム武器に文句を垂れてるハンターが、似たような武器を使ってたとは思わないでしょう。

 

 

 

「でも……、勿体ねぇなぁ…。」

 

 

………勿体ない?

 

 

「………どういう意味よ?」

 

「いや、お前って相当強いハンターじゃんか。

そんなハンターが愛用してる武器が一癖も二癖もあるウカム武器!とかだったらなんかロマン溢れてないか?

こう…、そんな武器を使いこなせるのか!って目で見られて尊敬されると思わない?」

 

「それに、俺だってただアカム武器を使ってるわけじゃない。アカム武器を使って、活躍してこそ意味があると思ってる。 それこそ、この武器をバカにした奴らを見返せるようにさ。

そんな思いで頑張ってたら、いつのまにか『覇王』なんて称号持ちさ。」

 

「だから、お前が好きな武器を手放したのは勿体ないなぁ…って思った。ただそれだけ。」

 

 

……このアホからこんな言葉をかけられるなんて思ってなかった。

 

脳裏に好きだった武器達が思い浮かぶ。私のお気に入りで、手入れも丁寧にしてた。 いつかこの武器で高みに辿り着けると思ってた頃を思い出した。

 

 

「………俺みたいなへっぽこハンターがアカム武器を使って頑張れてんだ。 今ならお前がどんな武器を使ったってバカにされやしないさ。」

 

 

……ああもう、自分でもよくわからない気持ちになってしまった。

 

 

「………とりあえず、アドバイスとして受け取っておくわ。」

 

 

そう返すと、カルムはいつものアホっぽい顔で笑った。

 

 

「おう!ハンターやるなら楽しんでナンボだろ!

ほれ、ベリオロス来たぞ! パパッと狩って打ち上げだ!」

 

「ちょっ、先走るな!」

 

 

ベリオロスに向かって突っ込んでいくアホの後を追って私は駆け出した。

 

……ウカム武器か。 久々にアイツらを使ってみるのもいいかもしれないかな?

 

カルムの後を追いながら、私はそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「G級個体の紅兜アオアシラ…。 これはあの2人位しか頼めないわね。」

 

 

腕の立つハンターが集まる、空飛ぶ集会酒場『ホーンズ』。

そこのマスターである女性が、流れてきたクエストの処理に追われていた。

 

 

「あら、噂をすれば…。丁度いいわ。」

 

 

そう呟くと、酒場の隅の一角に設置されたテーブルに近づいていった。

そして、そこに座っているウカムルXシリーズを身に纏った女性に話しかける。

 

 

「『雪姫』さん、ご機嫌いかがかしら?

ちょっと受けてもらいたいクエストがあるのだけれど…。」

 

「はいはい…。どうせ、獰猛化モンスターか二つ名なんですよね? 1人だとキツイのであのアホ呼んできますよ…。」

 

「それなら話が早いわ。よろしく……。

あら?随分と珍しい武器を担いでるじゃない。」

 

 

酒場のマスターは、彼女が持っている武器をみて少し驚いた。

 

その白く巨大な武器は大剣というにはあまりに異質な形状。

切るというよりは、「叩く」「潰す」「削り取る」ことに適したような形をしていた。

 

 

「ああ、これですか? 久し振りに使ってみようかなって…。

私、この武器好きなんですよ。」

 

「フフッ、素敵な武器じゃない。 それなら今回も簡単にクリアできそうね。」

 

 

そう言葉を送ると、彼女は笑った。

そして、いつもの相棒を呼びに歩いていった。

 

 

 

「あの様子なら、今回も大丈夫ね。

本当に頼もしい2人だわ…。」

 

 

どこか晴れやかな笑顔を見せていた彼女の背中を見ながら、酒場のマスターは言葉を落とした。

 

 

 

 




好きな武器を使うのは楽しいです。
ですが、ただ『好きだから使う』…ではなく、『好きだから強い使い方を見つけ出して使う』という人が増えてくれたらなぁ…なんて思ってます。
適当な装備でアカム武器なんて担いでオンラインに行った日には、蹴られても文句は言えません。 一癖ある武器だからこそ、専用のスキルを組んであげて使いこなす…、その必要があると思ってます。

この小説を読んで、そういったモンハンの楽しみ方をする人が増えてくれたら作者は幸せです。


さて、少しだけ用語解説を…。

・『斬り方補正』
名前の通り、『斬り方』によって発生する補正です。 『切れ味補正』ではないのでご注意を。

モンハンにおいて近接武器で攻撃する際には、攻撃の「振り始め」「中間」「振り終わり」の3種類のタイミングがあります。
このうち「振り始め」「振り終わり」には、切れ味を減算する補正がかかります。
シリーズによって異なりますが、この補正は元の0.3〜0.7倍という尋常じゃない程のダメージ減につながります。更に、切れ味も減算されるので弾かれやすくなるという踏んだり蹴ったりの仕様です。

ここまでダメージに影響があるならもっと話題になってもいいんじゃないか?と思われる方もいるかもしれませんが、まず話題には上がりません。

なぜかというと、この補正。
切れ味ゲージが緑色以上なら一切無視してしまえるという性質があるのです。
つまり、この補正に苦しめられるのは緑ゲージが少ないゲーム最序盤のみということになります。 上位以降なんてあって無いようなものですね。

ですが、アカム武器などで鈍器運用をする場合は注意しないといけません。
黄色ゲージで鈍器運用する場合、この斬り方補正をしっかり考えながら、攻撃をベストのタイミングで当てるという制約が加わります。
正直言って全く安定しないので、アカム武器を鈍器運用する際でも緑ゲージは維持した方がいいかと。

また、緑ゲージ以上なら補正を無視できると言いましたが、それ以外にも斬り方補正を無視できる方法があります。
例えば今回出したように、双剣の鬼人化中は斬り方補正を無視できます。 この性質を活かして、クロス時代にアカム双剣でタイムアタック記録を打ち出した猛者がいるとかなんとか…。

と、まぁこんなところです。
簡単にまとめると、鈍器運用する場合でも緑ゲージは維持した方がいいよってことですね。


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第6話 下克上に下克上


以前出さないと言いましたが、やっぱりルファールさん出すことにしました。

それではどうぞ。



 

 

 

 

「えっ…?いい人が見つかった…?」

 

「ああ!ついに私の人生にも春が来たぞ!このまま寂しくハンター生活を1人で歩んでいくのかと思っていたけれど神は私を見捨てていなかった!」

 

 

龍識船の酒場で少し興奮気味にまくし立てる、知り合いである女性ハンター。

『英雄』と呼ばれるパーティの一員で、副リーダーさえ勤めているその女性の口から衝撃的な言葉が飛び出した。

 

 

「いや…、えぇ…? どんな人なのよ?」

 

 

正直、目の前にいるハンター…ルファールにいいお相手が見つかるとは思えなかった。

 

半年ほど前に、ベルナ村にある彼女のマイハウスにお邪魔した時にはあまりの酷さに頭を抱えた。その時には一応片付けてあげたけど、その後にもまた散らかしてしまってるんだろう。服とかをそこら辺にほっぽり出して半年くらい放置させてそうだ。

 

腕っぷしは生半可な男なら敵わず、生活はガサツそのもの。 そんな女性にくっつく物好きな男性がいるとは…。どんな人なんだろう。

 

 

「う〜んとな…。 怒り喰らうイビルジョーをソロで倒したと聞いてるな…。 あとは料理とかの家事全般ができちゃう! これは素晴らしすぎる!一目見た時にこの人しかいないと思ったさ!」

 

 

コ、コイツ…。 その人に自分が出来ないことを任せるつもりだ…。 女としてそれはどうなのだろうか?

ルファールの家事は悲惨の一言に尽きる。 キノコのパスタを作り、それをカルムが食べたら痺れてぶっ倒れたのは記憶に新しい。

 

……というか怒り喰らうイビルジョーをソロで? とんでもないハンターじゃないか…。

私やカルムだって出来なくは無いだろうけど、そんなハンターはそうそういるもんじゃ無い。

 

目の前にいるルファールやそのパーティのメンバー…。 いや、その中でも経験豊富な赤髪の子や黒髪の子ぐらいだろう。

 

 

「と、とんでもない人がいたもんだわね…。

 

………というかさ、そんな優良物件を他の人が黙って見ていたの?

たしか貴女のパーティのリーダーさんとかも、まだ若いとはいえ独り身よね?」

 

 

そうルファールに尋ねると彼女はピタッと身体を硬直させた。

 

………これは何かあるな。

 

 

「え…えっとだな……。

実は…その…レイリスとかクルルナとかとはもう出来てたんですよね…アハハ…。」

 

「………は? えっ? じゃあ…どうゆうことなのよ?」

 

「………だから……その。 彼女達の仲間に入れてもらいました……。」

 

 

………マジか。

 

 

「………なんなのよ、その話。 みんなその男に騙されてるんじゃない?」

 

「あっいや、それはないと思う。 むしろ彼が騙されているというか…。」

 

 

………んん? 男の方が騙されてる?

 

 

「いや…3人で彼の事を襲ったからさ…エヘヘ…。」

 

 

……とんでもない悪男に誑かされてるのかと思ったらそんなことはなかった。むしろその人は被害者だった。

女性3人に襲われると書けば野郎にとっては夢のようなのかもしれないけれどそれは相手が可憐な女性の場合。 今回は見た目は可憐だけれど、その中身は豪傑とも言える女性ハンター3人。 まるでイビルジョーのような女性3人に襲われるなんて悪夢以外の何物でもないだろう。

あれか、これが最近話題のイビル嬢か。

 

 

「……もう深くは聞かない。とりあえずその彼が無事な事を祈るわ…。」

 

「あっ。それについては大丈夫。 彼がヤバくなったら秘薬とかをぶち込んで無理やり起こしてるからな!」

 

 

………秘薬をそんなことに使うな。 それは精神的に大丈夫じゃないって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ゲッ。なんで行き遅れ女がいるんだよ…。」

 

 

そんなしょうもない話をしていると後ろからいつもの声が。

そちらの方を向くと、案の定アカム武器を担いだカルムがいた。今日は太刀なのか。

 

 

「おい!行き遅れとはなんだ!私にはもういい人が見つかったんだ!二度とそんなことは言わないでもらいたいね!」

 

「んな!? お前に男だと!?

い、いや!そんなはずはねぇ! どうせ迷子になってそうな男の鳩尾に1発ぶち込んで無理矢理に迫ったとかそんな感じなんだろ!俺わかるからな!」

 

 

……このアホの頭でも大方正解なのが恐ろしい。

つまりルファールにはそれくらいしかいい人を見つける手段がないということに…いや、今は関係ない話か。

 

 

「はいはい、喧嘩はそこまで。 私達、これからライゼクスの狩猟があるから。」

 

「おっ!ライゼクスか! ついていってもいいか? ちょいとブレイヴ太刀でスパーンとカウンターをしたい気分でな!」

 

 

まぁ、こうなるだろうとは予想してた。 彼女は本当に戦闘狂だからなぁ…。

 

 

「残念でしたぁ〜!!今回のブレイヴ太刀は俺1人十分だ!二つ名カエル刀の出る幕なんざ無い……痛ったぁ!?」

 

 

ギャーギャーうるさいカルムの頭に拳骨を落とす私。

 

 

「うるさいわね…。2人より3人の方が楽に決まってるでしょうが。

それじゃあルファールも一緒にいくことにするわね。」

 

「やっぱりウルスは話がわかるなぁ!下克上の力を見せてやるぞ!」

 

 

 

 

というわけでライゼクスの狩猟へこの3人で行くことになりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カエル刀になんざ絶対負けないからな……!」

 

 

カルムは未だにブツブツ言っている。うるさいわね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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遺跡平原のエリア7。

高低差の激しい断崖地帯となっている場所で、私たちはライゼクスと戦っていた。

 

 

 

 

 

「「アーッハッハッハ!これがブレイヴ太刀の力だぁッ!」」

 

 

………カルムのアホもうるさいけれど、ルファールもこれまたうるさいなぁ。

ブレイヴ太刀の何が彼らをあそこまでハイテンションにさせるのだろう。いや、確かにカウンターが楽しいのはわかるっちゃわかるけど…。

 

 

「おっしゃあ!ダウン! 見たかカエル刀め!これがアカム太刀の底力じゃあ!」

 

「うるさい!さっき尻尾をぶった切ったのは下克上だろう!」

 

 

ライゼクスの攻撃をバンバン捌きながらも軽い口喧嘩をする2人。 ちょっとやかましいけれど見てて楽しいかもしれない。

 

 

ライゼクスは尻尾を地面に突き刺して放電をする構え。 そこへ太刀の2人は素早く駆け寄った。

 

 

 

「「鏡花の構えぇぇ!」」

 

 

そして2人同時に狩技を発動。 辺りに綺麗な衝撃波の様なものが舞い散った。

ライゼクスはたまらず墜落。 2人は更に連撃を加える。

 

 

「おーいウルスー。 ぼーっとしてないで早い所終わらせようぜー。」

 

 

カルムにそう言われて、初めて自分がぼーっとしていたことに気づく。 いや、アンタ達が強すぎるからじゃないの…。

 

……まぁ私も一発くらいぶち込んでやらないとね。

 

 

私はダウンしているライゼクスの頭部へと駆け寄る。

そしてブレイヴ大剣特有の抜刀強溜めの構えを取る。 両手で握るのは、白く巨大で異質な形をした大剣。

 

その大剣を全力で振り下ろす。

 

 

「もう一丁……!」

 

 

そこから全身で大剣を捻るように引っ張りあげる。

そして、大剣を横薙ぎに渾身の力で振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふうっ! いい狩りだった! まぁ…今回は引き分けとしておいてやるか。見せ場を作ったのは同じくらいだったしな。」

 

「ちょいと納得できないけど、まぁ今回はそうしておいてやるよ…。 次は絶対にギャフンと言わせてやるからな!」

 

 

無事にライゼクスの狩猟を終えた私達は、龍識船の酒場で一杯あげていた。

ルファールとカルムも機嫌がいいようで険悪なムードにもなってない。普段からずっとこうなら、面倒じゃないからいいんだけれど…。

 

 

「さてと……。それじゃあ私はベルナ村へ戻ることにするよ。 他のみんなもそろそろクエストを終わらせて帰ってきてる頃だろうしな。」

 

「ん?帰るのか。 それじゃあ俺もちょいと工房のオヤジさんのとこに行ってくるよ。 アカム武器運用の研究は日々続いてるんだぜ?」

 

「ほほう?言うじゃないか。 それじゃあ次に会う時を楽しみにしているよ。」

 

 

ルファールのその言葉を聞くとカルムはニヤリと笑い、そして工房の方へと歩いていった。

 

 

「さて…と。それじゃあ飛行船が出るから私も行くよ。是非今度はベルナ村に来てほしい。 ウルス達にも彼にあってほしいからな。」

 

「えぇ、気が向いたら行くことにするわ。 楽しみにしてる。」

 

 

私がそう言葉をかけるとルファールは笑い、そのまま飛行船の発着場へと歩いていった。

 

 

だけど、途中でなにかを思い出したような顔で帰ってきた。どうしたんだろう?

 

ルファールは私の傍へ来ると、耳元で囁いた。

 

 

 

「早い所、ウルスも自分の気持ちを伝えないとだな! がんばれよ!」

 

「…………ンなッ!?」

 

「ハッハッハ! それじゃあまたな!」

 

 

 

ルファールはそう言い、笑いながら去っていった。

………よくも最後に1発ぶち込んでくれたな?ベルナ村に行った時は覚えてなさいよ?

 

 

 

 

「…………自分の気持ちねぇ。 ……どーなるんだか。」

 

 

 

 

私の口からは思わず溜息が漏れた。

 

 

私がアイツに抱いている気持ちはよくわからない。好きなのか嫌いなのかもよくわかってない。

 

 

でも……一緒にクエストに出ている今の生活は悪くない。

 

 

とりあえず今はこのままやっていけたらいいのかな…?

 

 

酒場の真ん中で立ち止まった私は、1人そんなことを思った。

 

 

 





戦闘シーンが短いのは仕様です。ご了承ください。

アカム太刀は…どうでしょう。 使おうと思えば全然使えるんですが太刀には業物が多いので…。 ドヒキサキとかメルセゲルとか下克上とか…。

まぁそれでも自分はソロの時にちょくちょく使います。
なんで使うのかって? 愛とロマンだよ。


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第7話 滅龍ビンなめんな。


滅龍ビンなめんな(笑)




 

 

 

 

「ずばんっ!ずばんっずばんっ!」

 

 

 

 

 

ダウン中のラギアクルスに向かって、私は両手に握ったスラッシュアックス『真名アナトカルナイム』で連撃を加える。 大丈夫、冷静にだ。

 

 

 

 

 

「がしゃんっ! どしゅどしゅっ!どしゅっ!」

 

 

 

 

 

もうすぐでラギアクルスはダウンから復帰するだろう。 私はフィニッシュを決めるために属性解放突きの構えを取る。

 

 

 

 

 

 

「しゅっ! ずごごごごご………

ここだッ!! どっかぁぁ

 

「うるさいわよッ! いくら狩技ぶっ放してる最中だからって少しは静かにできないの!?」

 

………ぁぁん」

 

 

 

…………ちなみにさっきからズバズバドシュドシュ言ってるのはもちろん私ではない。何時もの通り、カルムのアホだ。

 

今回は、あのアホもスラアクを担いで来ている。もちろんアカム武器。

さっきのガシャガシャほざいていたのは狩技『トランスラッシュ』をぶっ放している最中だったかららしい。

 

 

「あのねぇ……1人でやる分には何も言わないわ? けどね? 隣に別のハンターがいる時くらいはバカ丸出しの振る舞いはやめた方いいわよ?」

 

 

ラギアクルスが瀕死になって寝床へと逃げていったので私達も一休み。

落ちた斬れ味を回復させたり怪力の種を齧ったりしながら、私はそんな言葉をカルムに投げかけた。

 

 

「いや……俺だって見境なくあんな振る舞いはしないって。 まぁ…お前の前くらいじゃないか? あんな自由にできるのはさ」

 

 

………私の前だけ…ね。 なんか複雑な気分だ。

 

 

「というかさ……なんでお前はまたカマキリ武器なわけ? ウカムル武器が泣いてんぞ!?」

 

「いや…だってラギアクルスって氷属性通らないじゃない。相手が氷弱点ならウカムル武器も担ぐけどあんたみたいに無属性武器じゃないんだからなんでもかんでもってわけにはいかないわよ?」

 

「おいコラ、覇裂斧を無属性と言いやがったな?

違います〜! アカムスラアクは『滅龍ビン』という至高のビンが搭載されてるんです〜!

 

圧倒的攻撃力!飛び抜けた会心率! 更に龍属性!

弱いわけがない! 」

 

「そんなに物理火力が高いのなら同じような性能で『強撃ビン』のついた宝纏スラアクの方がいい気が……」

 

「だまれぃ!なーにが『剣鬼形態』じゃ!なーにが『エネルギーチャージ』じゃあ!

スラアク使いなら黙って『トランスラッシュ』だろうがよぉ!

スラッシュアックスのことスラッシュソードって呼んだやつ絶対許さないからな!

 

ううぅぅ……誰か滅龍ビンに救いをくれよぉ……」

 

 

………なんか勝手に愚痴をこぼし始めたかと思ったら今度は急に泣き出したぞ?

こっちが疲れるから情緒不安定な反応はやめてほしいところなんだけど…。

 

 

「いや…大丈夫だ…。 今は無理でもいずれ滅龍ビンが輝くときがくる…!

こう…無属性武器にしか乗らないスキルと龍属性を両立できたり、なんか龍を封印する力を貰ったり、なんか特殊なゲージが溜まりやすかったり…ともかくそんな感じになる日は絶対くる!

俺はその日まで滅龍ビンを愛し続けるからなぁ!

 

おっしゃあ!やる気出て来た!

よし、ウルス!早い所ラギアクルス倒して帰るぞ!」

 

「ちょっ…いきなり走り出すな!」

 

 

本当に感情の起伏が激しいヤツだ…。

最近は私もコイツに振り回されるのに慣れてきてはいるけれど、それでも相変わらず疲れる。

ちょっとよくわからない笑顔を浮かべてラギアクルスの寝床へと走り出すカルムを、私は少し呆れた思いで追いかけ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「………カマキリスラアクってさ、ちょっとアカム武器っぽい名前してないか?」

 

 

無事にラギアクルスを倒した私達。

剥ぎ取りなどを終え、ギルドからのお迎えを待っている時にカルムがそんなことを呟いた。

………言われてみれば似てなくもない。確かに『覇裂斧アナトカルナイム』とか普通にアカム武器っぽい気がする。

 

 

「いや……まぁ確かにそうだけど。それがどうしたのよ?」

 

「スラアクはネセト武器に名前似てるから紫ゲージをくれていいんじゃないかな? 俺はそう思う。」

 

 

………突拍子も無い事をほざき始めたぞ?

 

 

「……仮にそうなったとしたらみんなアカム武器を担ぎ始めるわよ?

アンタがそれで満足ならいいんじゃない?」

 

「うっ…。 それだと俺はただのテンション異常なハンターになっちまうな…。 やっぱアカム武器は今のままでいいや…」

 

 

なんかしょぼんとしてしまった。悪いことしたかなぁ…。

 

 

「別にアンタが周りと同じ武器を使ってるからって私は軽蔑したりはしないわよ?アンタはアンタなんだしさ。

むしろそのままアンタらしくいてほしいわ」

 

「ん? どうゆうこと? そのままってことは…。

 

はは〜ん。さてはウルスさんったらとうとう俺の華麗な実力に魅せられてメロメロになっちゃったとか?

アッハッハ! 俺もとうとう周りにチヤホヤされるハンターになった……あいたぁ!?」

 

「………うっさい! ほら、ギルドの迎え来たわよ! 早い所帰る帰る!」

 

「ちょちょちょ…そんな怒んなって…。冗談だからさ…。 カリカリしてたら美人が台無しだぞ〜?」

 

 

この男は…もう…。

 

私は足早に迎えの飛行船に乗り込んだ。

早い所このアホから距離を置いておきたいところだ。

 

 

「お疲れ様です〜。 あ、あれ…? ウルスさん、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですけど…」

 

「いっ…!? だ、大丈夫! とりあえず個室で休んでるわね!」

 

 

迎えのギルド職員さんからそんな事を言われてしまった。

恥ずかしくて死にそうになる。

 

私は個室に入り、防具を脱ぎ捨てて身軽になると個室に設置されている寝台に飛び込んだ。

そして、胸の奥から込み上げてくる恥ずかしさを隠すように布団の中に丸まった。

 

 

夕食の時にアイツにあったらぶん殴ってやる…。

 

茹でダコのような真っ赤な顔になりながら、私は心の中でそんな決断をした。

 

 

 

 




ワールドのビン調整は自分はいい感じにしてくれたと思ってます。
ワールドにアカムトルム実装されないかなぁ…。


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第8話 物理がダメなら榴弾ビンでいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

地底火山のエリア8。

灼熱の溶岩が流れるそのエリアで、2人の狩人と1匹の竜が戦いを繰り広げていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「俺なりのォォォ! エーリアールスタァーイル!!」

 

 

う、うざい…。

私は頭上から聞こえてくる声に我慢しながら、地道にグラビモスの脚を斬り続ける。

今回はアイツも私もチャージアックス。

アイツはいつも通りアカムの武器だけれど、私が使っているのは『角王盾斧ジオブロス』

圧倒的な物理攻撃力を誇り、切れ味もなかなかに鋭い。さらにその物理攻撃力から繰り出される榴弾ビンの威力は凄まじい、という銘品だ。実際、コレを愛用する狩人も多いみたい。

 

 

「おいコラグラビモスゥ! てめぇ、さっきはよくもマグマの中に引きこもりやがったな!? 一方的にグラビームぶっ放しやがって! お陰で覇壊斧の属性強化状態が切れちまったじゃねぇか!

ノコノコ陸に出てきた今、お前は覇壊斧の榴弾爆発の前に散るしかないのだぁ!

オラァ!とっとと爆発の前にひれ伏せ…あっ、ちょっ…ガスはやめっ…アッツゥ!? 」

 

 

………何をしているんだろうアイツは。

本当にクエスト途中の口数が多すぎる。最近のアイツなら、採取ツアーで時間切れになるまでずっと喋ってるとかしそうで少し恐ろしい。

 

 

「んにゃろう! 背中破壊されたお返しってか!? 俺はもうブチギレたからな!?

ォォォオレナァァリノォォォンヌゥゥエリゥァルストゥァァァイル!!」

 

 

………せめてちゃんとした言葉を喋ってほしい。何と言っているのだろう…ヌルヌルスタイル? 本当に訳がわからない。

 

 

「ナーッハッハッハ! 見ろ!この爆発の嵐をォ!」

 

 

…というか結構強いのがまた困る。アイツはひたすらにジャンプ高出力属性解放斬りを繰り出している。

榴弾ビンの爆破エネルギーがグラビモスの背中に蓄積され、爆発するのだけど…これが強い。 下手したらジオブロスを凌駕する威力の榴弾爆発なんじゃないだろうか? ともかく、あれほどの威力の榴弾ビンは見たことがなかった。

そのおかげでグラビモスはほぼ怯みっぱなし。 私もグラビモスの足下でひたすら攻撃を続けることができた。

 

 

「おーい、ウルス! 腹の部位破壊は終わりそうか!?」

「え? あ、ええ! 今終わるわ!」

 

 

いきなり声をかけられたので少しだけ驚いてしまったが、すぐに正気に戻る。

さっきも言ったけどグラビモスはかなりの頻度で怯んでいる。 そのおかげで私はグラビモスの腹部に攻撃を叩き込めた。 結果、腹部は部位破壊寸前。 肉質の柔らかい甲殻の内部が露出し始めていた。

 

 

「いち、にの……さんっ」

 

 

私は壊れかけの腹部の甲殻へ高出力属性解放斬りを放った。 攻撃は無事腹部にヒット。 遅れて、榴弾ビンの爆発がグラビモスの腹部を襲う。 そして、腹部の甲殻は見事に弾け飛んだ。 よし…破壊完了。

 

 

「カルム!破壊したわ!」

「ナイッスゥ〜! オラァ!クソ肉質野郎! イクセエムカムの必殺の一撃をその豆腐みてーな腹で食らいやがれやぁぁあ!!」

 

 

そう叫びながら、カルムはジャンプしながらの超高出力属性解放斬りをグラビモスの腹部に叩き込んだ。

凄まじい榴弾爆発の嵐がグラビモスの体で巻き起こり、その後グラビモスは動かなくなった。

ふぅ…あっさりおわったかな…。

 

 

「おっし!いっちょあがり!腹減った!帰る!」

「え…ちょ、待ちなさい!置いてくな!」

 

 

剝ぎ取りを恐ろしいほどの速さで終えたカルムは、よほど腹が減っていたのかすぐさまベースキャンプに走り出した。

 

 

「なんだよ〜、俺は腹が減ってるんだよ〜…。 奢ってもいいから早くしてくれよぉ〜…」

「あら?奢ってくれるの? 言質は頂いたわよ?」

「おう、最近景気がいいからな! メシの少しくらいかまわねぇさ!」

 

 

コイツが自分からメシに誘うなんて珍しいなぁ…。

まぁ悪い気はしないし、ありがたく頂くことにしよう。

 

そう考え、私達は少し急ぎでベースキャンプへ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「え゛っ……?私に用事ですか?」

「えぇ、そうなの。 これから2人でお食事だというのに本当に申し訳ないわ…」

 

 

酒場に戻った途端、私は酒場のマスターに捕まってしまった…。

くそう、少しだけ楽しみにしてたのに…。

 

 

「あ〜…。じゃあ今回は無しだな…。 ちっくしょう、覇壊斧の魅力をたっぷり話してやろうと思ってたのにな…」

「カルムくんもごめんなさいね…。これだけはどうしても外せなくって…」

「じゃあ、俺は1人で食うことにするよ。 腹が減ってしょうがねえや」

 

 

カルムはそう言って立ち去っていった。

う〜ん、今回は私も少し残念だなぁ…。 最近忙しくて2人でクエストに出るのも久しぶりだというのに…。

 

 

「それで…マスター。急用ってなんですか?」

「えっ?……あぁ、それなんだけどね…?」

 

 

んん?なんか様子がおかしくないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はい、ギガントミートお待たせしました」

「おう!ありがとな! しかし、受付のおっちゃんとこうしてのんびり話せるのも久しぶりだな!」

「えぇ、そうですね。ですが 『覇王』の肩書きを持つ程のカルムさんなら各地に引っ張りだこなのでしょうがない話ですよ」

「う〜ん…。そうやってチヤホヤされるのはそんなに好きじゃないんだけどなぁ…」

 

 

目の前に出されたギガントミートを頬張りながら、俺は酒場クエスト受付のおっちゃんとお喋りをする。

 

 

「そういえば今日はウルスさんとお食事の予定だったとか…。 残念でしたね」

「まぁしょうがないさ。 アイツだって一流のハンターなんだ。 急に嫌な依頼が入ったって何も不思議じゃないって」

「おや?まるで自分も経験したことがあるような言い草ですね」

「ハハッ、どうだかな」

 

 

うん、やっぱり受付のおっちゃん…ウェーナーさんは話してて楽しいな。 加工屋のおっちゃんに並ぶくらいだ。

 

 

「そういえば、なかなかの武器をお持ちですね。 アカムトルムのチャージアックスとは、強力な逸品だ…」

「おっ!? この武器の魅力がわかるのか!?」

「えぇ、それはもちろん。 うまく使いこなせれば相当な業物ということも知っていますよ?」

 

 

これは驚いたな…。

おっちゃんがアカム武器の魅力をわかってくれる人だとは思ってなかった。

よし…こうなったらカルムさん、アカム武器の魅力を余すことなく喋っちゃうぞ?

 

こうして、俺と受付のおっちゃんとのアカム武器談義は始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、カルムさんは本当にアカム武器が好きですね。 覇竜の武器…私も現役なら使ってみたいものです」

「おっちゃんは現役引退しちまってるのがもったいないなぁ〜。 おっと…もしかしてあんまり触れられたくない話だったか?」

「いえ、昔の話ですので…。

そういえばカルムさん。 最近『雪姫』の彼女さんとはどうなんですか? 相変わらず仲は良いみたいですが…」

「どうなんですって言われてもなぁ…」

 

 

おっちゃんから少し難しい質問をされてしまった。どうなんですってどういうことだよ…。こっちが聞きたいわ。

 

 

「まぁ楽しくやれてるんじゃないか? 最近アイツがいきなり慌てだしたりするけどさ。 ともかくアイツが楽しけりゃ俺はそれで構わないよ」

「ふむ…そうですか…」

 

 

な、なんなんだ…? いつもと様子が違う感じだぞ…?普段ならこんな質問はしてこない人だし…。

 

 

「こう…お付き合いしたいな〜なんて思ったりはしないんですか?」

「ブフッ…ゴッ…ゲハッ……」

 

 

そんなことを考えてたらおっちゃんから爆弾を落とされた。 飲み物噴き出しちまったじゃねーか。

 

 

「なななな…何を言いはじめるんだよ…」

「いや…お2人がなかなかお似合いだったもので。 この受付に立っていると、そういったことにも興味は湧いてくるものなのですよ。で、どうなんですか?」

 

 

お、おっちゃんの押しがすごい…。これは逃げられそうにないかもな…。

 

 

「アイツねぇ…。まぁ確かにべっぴんさんだよなぁ。アイツとお近づきになりたい!なんて野郎はそこいらじゅうに溢れてるんじゃないか?

……まぁきっとそん中にいい人がいるだろうよ」

「おや? カルムさんが雪姫…ウルスさんのことをどう思ってるか聞いたつもりですが…」

「お、俺? いやぁ…どうったってなぁ…」

 

 

一体今日のおっちゃんは何なんだ…。実は酔ってたりするんじゃないだろうな?

 

 

「いえ、別に酔ってなどいないですよ」

「読心術かよ…。 アイツをどう思ってるか、ねぇ…」

 

 

俺がウルスのことをどう思ってるか。 改めて考えるとなかなか難しいことに気づいた。

ぬぬぬ…これはどう答えるべきだ…?

 

 

「………まぁ、こんな俺とクエストだけでも付き合ってくれて感謝してるかな。普通なら俺みたいな奴は願い下げ、って奴らの方が多いからアイツみたいに存在がそばにいてくれるのはそれだけでありがたいよ」

「ふむふむ…やっぱり美人で綺麗な方がそばにいてくれるのは嬉しいものなのですね」

「なんかズレてないか…?」

 

 

相変わらずどこか様子のおかしいおっちゃんだけど、俺が足りない頭で考え抜いた結果を口に出してみた。 まぁ…ありのままを答えただけなんだけどさ。

 

 

「好きか嫌いかで言えばどちらですか?」

 

「な、なんだよその質問…。

 

 

……………アイツの事は……ま、まぁ…す、好きだよ」

 

「ふむ、ありがとうございます。いいデータが取れましたよ」

「アンタは一体なんのデータを集めてるんだ…。

……疲れたから俺もう帰っていいか?」

「おや、結構な時間を奪ってしまったみたいですね。ほんのお詫びですが、代金を割引して起きますよ」

「おっ、サンキュー! まぁ割引してくれるなら悪い時間じゃなかったかもな!

そんじゃおっちゃん! またメシ食いに来るからな!」

 

 

なんだか少し落ち着かない食事だったけれど、まぁ気分は悪くない。

メシを食ったから、あとはゆっくり休んで英気を養うことにしよう。

そう考えると、多少なりとも疲労の溜まっていた足も軽くなった。

俺は軽くなった足でマイハウスへの帰路を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……………」

 

「……マスター、これは流石にあんまりな仕打ちなんでは…?」

「ふっ…ふふっ…あっはっは! 何よ!彼も案外ピュアな心の持ち主じゃない!

『アイツの事は好きだよ』ですって!ふふっ…あぁ可笑しい! 貴方達両想いじゃない!」

 

 

私は真っ赤な顔になりながら、酒場のマスターに散々イジられ、煽られていた。

急用だと聞いて着いてきたらこれだ…。 なんでアイツの本音をクエストカウンターの裏で聞かないといけないのだろうか…。

 

 

「これはもう貴女が勇気を出して突撃しちゃいなさいよ! 彼だってあんな感じなんだからきっと成功するわよ!」

「だーっ! マスターさんは黙っててください! これは私の問題なんです!」

「そういっていつまでも進展しないじゃないの…。せっかく助け舟を出してあげたんだからこの機会にアタックしてみたら?」

「ぬ、ぬぐぐ……」

 

 

なんで私がこんな恥ずかしい思いをしないといけないんだ…!?

 

 

「き、今日は帰ることにします! アイツにも変なこと教えないでくださいよ!?」

「あっ、ウルスさん少々お待ちを…。 荒れた心を沈めるのにはセレブリティーを飲むのが1番です。 お持ち帰り用をご用意させて頂こうと思ったんですがどうしますか?」

「いただきます!とっとと帰りたいので出来るだけ速くお願いします!」

 

 

ともかく、こういう時はマイハウスのベッドの中で丸くなるのが一番だ。

 

 

「はい、セレブリティーお待ちどうさまです」

「ありがとうございます! コラァ! マスターさんはいつまでも笑ってるんですか!?」

 

 

ちなみに、酒場のマスターは私が酒場から立ち去るまで笑い止むことはなかったみたい。

本当にやめてほしい。 恥ずか死してネコタクのお世話になってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………でも、

 

 

 

 

アイツが直接ではないにしろ、『好き』と言ってくれたのは嬉しかったかな?

 

 

 

 

 

 

 




おい、アカム武器要素がねーぞ。どーなってやがる。

集会酒場のマスターと受付さんの名前はそれぞれ『ラヴァンダ』『ウェーナー』のはずです。

アカムチャアクは普通に強武器だと思ってます。
実際、上手い方のプレイ動画でちょくちょくアカムチャアクを見かけることがあるくらいです。


感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第9話 はきゅん、ほうきゅん、ずっきゅ〜ん

 

 

 

 

 

「……ここっ!」

 

 

連続殴りの隙を狙って、ラージャンの頭を射抜く。

構えた弓から放たれた拡散矢は、全弾命中とはいかなかったものの5本中4本が氷の結晶を撒き散らしながらヒット。

そして、ラージャンの頭の角が片方だけ砕け散った。

 

うん、なかなかいい感じだ、私は。

今回の依頼は原生林で激昂ラージャン2頭の狩猟。ギルドとしても想定していなかったラージャンの同時出現らしく、私とカルムの2人が急遽クエストに駆り出される事に。

まぁ確かに激昂ラージャンは強敵だ。

だけど、私達が相手ならそこまで難しいクエストではない。いつも通りの調子なら。

 

 

………そう、いつも通りの調子なら。

………いつも通りの動きをあのアホがしてるなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァークッソォー! ナンテツヨイラージャンナンダー! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あのアホの動きが随分と良くない。

ラージャンにアカム弓…の時点で物申したいところだけど、100歩譲ってそれはまだ許せる。龍属性が死ぬけど物理火力があるわけだし。実際、既に狩猟した1頭目を相手取った時はいい動きをしていた。

 

だけど今は溜め1をペチペチと放ち、辺りに悲しい威力の拡散矢をばら撒いている。

そもそもラージャンにヒットしていない。というか私に当たっている。迷惑なことこの上ない。

 

しかもあのアホ、このクエストで2回も力尽きた。 それも2頭目を相手している間だけで。

詰まる所、このクエストはあと1回力尽きた時点でクエスト失敗。とてもじゃないがそんなのは勘弁願いたい。

 

 

「ねぇアンタ!ベースキャンプで待機してろって言ったわよね!? なんで来てるの!?」

「…………」

 

 

アイツにしては珍しく口数が少ない。普段通りの動きでそれなら万々歳なんだけど、今は全然嬉しくない。

 

2回力尽きた後のプレッシャーは今までと段違い。 私1人で戦った方がまだマシなのでベースキャンプで待機してろとカルムに言ったのに、何故かノコノコ狩場に現れる。

バカか?バカなのか?あぁうん、バカだったなそういえば。

 

こうなったらしょうがない。

念のために持ち込んでおいた生命の粉塵をガンガン使いまくって、アイツを死なせないようにしないといけない。

カルムは向こうでクンチュウ4匹に絡まれてそれに手間取っている。応援は一切期待できない。

味方がいることで逆に足枷となる。随分とおかしな状況だ。

 

だけどやるしかない。

今回は私も久々にウカム武器。 ラージャン相手ならウカム弓はなかなか最適な武器なはず。だからきっと大丈夫。

たとえ私は一人ぼっちでも、酒場のマスターの期待に応えることができ…

 

 

「あいたっ」

「あっ…」

 

 

カルムから矢を当てられた。ラージャンには一切当たらず、私だけに。

 

そして、ラージャンは気光ブレスの構え。

えっ、ちょっと待って…?

空に向かって吠えた金獅子は口から光のレーザーを放ち、私に向かってぶっ放した。

これは……避けられない。

 

私の体がレーザーに飲み込まれ、全身に激痛が走る。

あっ…つぅ…。こんな大技をマトモに喰らうのは久しぶり…。最近はうまく立ち回ってたから、久方振りの痛さを味わった。

これはあまりいいものじゃないかな。

 

 

「か…回復しなきゃ…」

 

 

回復の隙を見つけるために、ラージャンの方を見る。

だけど、そこにいるはずのラージャンは消え失せていた。

………え?

 

エリア内にはまだ緊張感が漂っている。つまり、ラージャンは戦闘状態でいるということ。そして私は狙われているということ。

 

………どこから?

 

 

「上ッ…!」

 

 

すぐさま体を投げ出す。

次の瞬間、私の立っていた場所に向かってラージャンが回転攻撃を上空からかましてきた。

 

まだだ。G級個体のラージャンは連続で回転攻撃をする。だけど、その猛攻を乗り越えれば隙を晒してくれるのが嬉しい。

ここを乗り切れば…。

 

2回目の回転攻撃も回避。よし、いける。

3回目の回転攻撃も同じように……。

 

 

 

そこまで考えたところで…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に、こちらに向かって転がってきているクンチュウが見えた。

 

 

 

 

「え?あたっ…」

 

 

 

空気を読まずに転がってきたクンチュウは、見事に私にヒット。

私は一瞬だけど怯んでしまった。

え、ちょっと待って?このままだと…。

 

 

 

 

そう思って上を見上げると、体を回転させてこちらに突撃してくるラージャンが見え……

 

 

 

 

私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うにゃっ……」

 

 

ネコタクから乱暴に振り下ろされ、原生林ベースキャンプの湿った地面の上にしたたかに体を打ちつける。

 

 

「あ〜…いったぁ…。 え?ちょ、ちょっと待って…」

 

 

私を運んで来たネコタクアイルーが、ベースキャンプに設置されている発煙筒を使って青い煙を上げた。

………も、もしかして失敗?

 

 

「ね、ねぇアイルーさん…。もしかして今回はクエスト失敗?」

「うニャ〜…残念だけど今回はそうなるニャ。惜しいところだったけど、ボク達もラージャンの攻撃を掻い潜って救出するのも一苦労なんだニャ。申し訳ないニャ〜」

 

 

ネコタクアイルーさん達はそう言うと、地面に潜って姿を消した。

あ、あはは…。

……クエスト失敗? 待ってよ…あと少しだったのに…。 私はいい動きをしてたのに…。

 

…………あのアホのせいだ。こうなるなら、ベースキャンプに引っ込んでもらっておいた方がマシだった。

アイツが戻ってきたら1発ぶん殴って…

 

 

そこまで考えたところで、ベースキャンプに緑色の煙が上がった。

煙が晴れると、そこにはアホが佇んでいた。

………やっと来たか。

 

 

「…………ねぇ、どうしてくれんのよ。アンタのせいでクエスト失敗よ。 ねぇ!どうやって責任とるのよ!?」

「…………」

 

 

思わず声を荒げる私だけど、カルムは黙ったまま。あぁ…イライラする。

 

 

「なんで黙ってるのよ!? なんか言ったらどうなの!?」

「………」

 

 

………ねぇ、なんで黙るの? これ以上私をイライラさせないでよ!?

 

 

「ちょっといい加減にして……」

 

 

そう言いながら、私は黙ったままのカルムに近づき────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルムが私を押し倒した。

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 

カルムの息が荒い。

私の胸の辺りで荒い呼吸を繰り返し、腕で私の肩を押さえつけてくる。

 

 

「ちょ…ちょっと……なんの冗談よ…?」

 

 

カルムの息が熱い。

荒い呼吸をしながら、私の頬に掌を当ててくる。

私の体はカルムにのしかかられ、身動きができない。

ちょ、ちょっとこれはマズイ場面なんじゃないだろうか…?

 

 

「ねぇ!ふざけてるならいい加減にしないと…」

 

 

そこまで言ったところで、カルムが更に私の体を地面に押し付ける。

私の片腕と肩はカルムの両腕で押さえつけられ、身動きが取れない。

目の前には荒い呼吸をするカルムの顔。

熱い息が私の顔を撫でる。

 

 

思わず、ドキリとした。

 

 

 

「ね、ねぇ…?聞いてる…? ちょっと…!?そういうことするならこんなとこじゃないでしょ!? ねぇ!お願いってば! ダメ!今下着ダサいんだって────」

「………………」

 

 

私の願いはカルムには届かなかったみたい。

カルムは熱い息を吐きながら、私の顔に迫る。

 

思わず目を瞑った私。

熱い息が顔を撫でて、私の唇に向かって────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ちょっと待って?

息が熱すぎる。目を閉じて感じることができるのは、熱すぎる息と、荒く…弱々しい呼吸。

 

そして、ドサリと重いものが私の体に倒れかかった。

 

 

「…………え?」

 

 

目を開けると、顔を真っ赤にしたカルムが私の体の上で倒れていた。

 

 

「ちょ…ちょっと!?大丈夫!?」

 

 

カルムにそう問いかけるが、返事は一切なし。念のため、カルムの額に手を触れてみる。

すると、触れた額には相当な熱がこもっていた。

 

 

「ちょっ……酷い熱じゃない!?早く寝かせないと…」

 

 

なんとかカルムの下から這い出て、倒れたままのカルムをベースキャンプのベッドに運び、横に寝かせる。

横になったカルムの額からは、かなりの量の粒汗が現れていた。

 

 

「ふぅ……バカは風邪ひかないってのは嘘だったのかしら…?

さて…と、汗拭いてあげた方いいのかな…?」

 

 

そう呟きながら、私はベースキャンプに備え付けられている布と手ごろな大きさの容器を手に取った。

あいにく今回は原生林でのクエスト。ベースキャンプには綺麗で冷たい水が流れてきている。

 

 

「これならまだラクになるわよね…?」

 

 

水を汲み、布を浸して絞る。

そして、ヒンヤリとした布でカルムの顔に浮かんでいる汗を拭き取った。

顔から幾分か熱が引いたような気はする。けれど、カルムの呼吸は依然として荒いままだった。

 

 

「な、なんで……。

…………あっ、防具外してあげた方楽かしら?」

 

 

………コイツの防具を外すのか。

い、いや…別にやましい理由なんて一切ない。

ただ、苦しそうだから汗を拭いてあげる…それだけだ。

 

そう自分に言い聞かせて、私はカルム自慢のアカム装備を脱がせ始めた。

 

 

「な、なかなかいい体してるのね…。

おっと、何言ってるんだ私は…」

 

 

装備を外すと、数々のクエストをこなしてきたハンターにふさわしい体が目の前に露わになった。 正直いい体をしてると思う。 流石は『覇王』の異名を持つといったところだろうか。

 

 

「さて…と、さっさと拭いてあげなくちゃね。………私もちょっと疲れてるんだ、動きやすい格好になったって文句ないでしょ」

 

 

腕と胴当部分の防具を外して身軽になった私は、無言でカルムの体に浮き出ている汗を拭く。………なんだろう、誰も見てないはずなのに何か恥ずかしいな…。

 

一通り拭き終わると、カルムの呼吸も幾分か穏やかになったような気もする。

うん、良かった。

 

 

「あとは…活力剤でも飲ませておけばいいかしら?」

 

 

というわけで、活力剤をカルムに飲ませることに。

今回は難しいクエストだったから、いにしえの秘薬の調合素材を持ってきておいたのが幸いした。 自然回復力を高める薬だから今回みたいなケースでも有効だろう。

 

 

「ほら……飲みなさいよ。少しはマシになるってば…」

 

 

カルムの口に活力剤を流し込む。 管のようなものがあれば1番いいんだけれど、残念ながらそんなものはなかった。

 

 

「……ゴ、ゴボッ、ガハッ……」

「あ……ご、ごめん……」

 

 

………むせてしまった。顔色も少し悪くなったみたい。

う〜ん…ちょっと悪いことしちゃったかな…?

でも…活力剤を飲ませてあげられれば、バッチリだと思うしなぁ…。

 

 

「寝てる相手にうまく薬を飲ませる方法ねぇ…。ハンターノートにでも乗ってるかしら?」

 

 

とりあえず困った時のハンターノートだ。

月刊誌『狩りに生きる』に並んで、ハンター稼業を勤しむ人ならこまめに目を通すべき書物の一つだと思う。

 

 

「………もともとギルドの迎えも少し遅くなるっていってたしね…。薬を飲ませてから私も一休みかな…。さて、薬の飲ませ方〜っと…」

 

 

パラパラとページをめくり、目的の箇所を探す。そして、回復薬を始めとしたいろんな薬が並んでいるページに辿り着いた。

 

 

「飲ませ方………………………………えッ!?」

 

 

薬の飲ませ方を見て、思わず声をあげた。

手に活力剤を持ったまま、寝ているカルムを見て固まってしまった私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「カルムさ〜ん。大丈夫ですか〜?」

「ん…………ぐっ…………」

 

 

誰かから呼びかけられ、重い体を起こす。

…………重い体?いや、そんなに重いわけじゃないな…。

 

 

「あ、あれ…? 俺寝てた…?」

「そうですよ〜。ウルスさんがそばにいてくれたみたいですね〜。うふふ、仲良しですね〜!」

 

 

どこかのんびりした口調のギルド職員さんからそう言われる。

あれ…?クエストはどうなった?

 

 

「あ、クエストは残念ながら失敗してしまいました〜…。ですが一頭は狩猟してくれたので、次の対応もかなり楽になりましたよ〜!ありがとうございます〜!」

 

 

あ、あぁ…失敗したのか……。

…………俺のせいだな。体調悪いのに無理して来たから…。

 

 

「とりあえず、今は龍識船に戻りましょう〜。 私は先に行ってるので、ウルスさんを起こしてあげてください〜」

 

 

ギルド職員さんは、のんびりとした口調のまま歩いて行ってしまった。

 

 

「んっ………。 あれ?体、軽くなってる?」

 

 

体を伸ばした時、一切重さを感じなかった。

あれだけ体調が悪かったのが嘘のようだった。………ウルスが?

 

 

「お〜い、ウルス〜。ギルドの迎え来たぞ〜」

「んん…」

 

 

ベッドのそばでウトウトしていたウルスに声をかける。

 

 

「あひゃっ!? カ、カルム!起きてたんだ!?」

「…………どしたい?そんなに慌てて…」

 

 

俺に起こされたウルスはなぜか慌てた様子。

どうしたんだ一体……。

 

 

「あ〜…。すまん。俺のせいでクエスト失敗しちまった。 本当にスマン。

なんとか埋め合わせはするから、許してほし…」

「あ〜〜!大丈夫、大丈夫!全然気にしてないから!ほら!早く帰りましょう!」

 

 

…………なんだか変だなぁ。

 

ふと、ベースキャンプの机の上に置かれている、空になった活力剤の容器が目に入った。

 

 

「あっ、もしかしてあれ飲ませてくれたのか?助かったよ! お陰で体がすっごい楽で……」

「良かったわね!それじゃ帰りましょ!」

 

 

………いや、ホントどうした。

 

 

「なぁ、ウルス。大丈夫か?顔が真っ赤だけど……」

「全ッ然大丈夫だから!ほら、早く帰るわよ!」

「あ、おう…?わかりました……?」

 

 

とりあえず帰ることにしました。

残念ながら今回はクエスト失敗してしまった。次は絶対に成功させてやる。

目を合わせてくれないウルスの背中を見ながら、そんな決意をした俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ウルスの口から活力剤の香りがしたけど、アイツも飲んでたのかな?

 

 

 

 

 

 

 





アカム武器要素がないじゃねーか、どうなってやがる。

………アカム弓は、ダブルクロスでは優秀な龍属性連射弓というポジションにあるかと思います。どんな相手にも担いでいけるような物理火力は持ってないので相手を選ぶ武器になりましたが、それでも龍属性連射弓としてはかなり優秀かと。
ウカム弓はまぁ……スキルをしっかり揃えてラージャンに担ぐならいい武器だと思います。

本編でアカム武器要素が少ないので、こちらでしっかり解説するスタイル。

感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第10話 はぴーならできる。そう、はぴーならね。



お久しぶりです。


 

 

「3ヶ月放置ってどういうことだァァァァ!!」

 

 

 

そう叫びながら、ウラガンキンの顎に向かって狩猟笛の振り下ろしをブチかます。

弾かれ無効効果を持つ旋律を自分にかけているので、ウラガンキンの硬い顎でも弾かれることはない。

 

そして、顎に振り下ろしを喰らったウラガンキンはスタン。横に倒れ込み、もがき始めた。

 

 

 

「1話平均3000文字なんだから、サッサと書けやァァァァ!!」

 

 

 

納刀継続からの後方攻撃、さらに納刀継続へと繋げてまた後方攻撃。

強力なコンボをガンガン頭部に叩き込む。

連撃を喰らったウラガンキンの顎は、とうとう砕け散り、弱点が露出した。

 

 

 

「あのクソ作s……」

「おい待てウルス!それ以上はいかん!お前のキャラがおかしくなる!

そーゆーのは俺のポジションなはずだぞ!?」

「ハッ……!? わ、私は一体何を口走って…?」

 

 

 

カルムに呼び止められ、ふと我に帰る。

な、何を叫んでいたのだろう私は…。何かこう…『3ヶ月も放置された鬱憤を晴らしてやる!』的な一心で叫んでいた気がするけど…。よく覚えていない…。

 

 

 

「それ以上攻撃すると、俺のアカム笛の出番がないまま終わる!それだけは作品のテーマぶち壊しだからやめてくれ!」

「え、えぇ…わかったわ…」

「おっしゃ!俺のターン!

はぴーの圧倒的物理火力を受けてみろや、顎野郎がァ!」

 

 

 

カルムが叫びながら、ウラガンキンの顎に連続攻撃を叩き込む。

ビカビカと会心の一撃が発生し、カルムが最後の叩きつけを放ったところでウラガンキンは動かなくなった。

 

……うん、終わってしまったみたい。

アカム笛のいい所は見せずじまいだったような気もするけど…。

 

 

 

「カ、カルム?大丈夫…?」

「ふぐっ……」

 

 

 

そっと横からカルムを覗き込むと、目には薄っすらと涙が浮かんでいた。

……いや、そんなにか。

いくら出番が少なかったとはいえ、そこまでか。大の男が泣くほどか。

 

 

 

「3ヶ月ぶりなのに!3ヶ月ぶりなのに!

こんな扱いはあんまりだろ!?

アレか!?アレなのか!?作者はアカム武器が嫌いなのか!?」

「好きな方だけど、使用頻度はそこまででも無いらしいわよ?」

「クソッタレがぁぁぁああ!!」

 

 

 

カルムが吠える。

あーあー、本当にやかましいやつだ。

1を聞かれて10返す…というよりは、0でも勝手に10喋ってるイメージ。

1を聞いた日なんかには100くらい返してくる事だろう。

 

だけど、私もこういうのには慣れてしまった。

たしかにうるさくて疲れるのは確かだけど、飽きることがない。

以前はソロで活動してることが多かったけれど、パーティを組むとここまで飽きないものなんだなと改めて認識させられた。

ルファールがパーティを組むことをやたら勧めてきていたのも今ならわかる。

 

 

「おいウルス!この後続けてまた別のクエスト行くぞ!」

「えぇ〜…。もう休みたいのだけれど…」

「知るか!アカム笛はアカム武器の中でも数少ないメジャーどころなんだ!

それをこんな扱いにされてたまるかぁ!」

「はいはい……。わかったわよ……」

 

 

ウラガンキンの剥ぎ取りを終え、そんな会話を交わす私達。

別に次のクエストに行くのは構わないのだけれど、都合よくクエストは来ているのだろうか?

 

 

「ねぇカルム。クエストを続けるのはいいんだけれど、いい感じのクエストは来てたわけ?」

「おう!確か宝纏ウラガンキン2頭のクエストが…」

「却下」

「なんでじゃ!?」

 

 

当たり前だ。前に片手剣で宝纏に行った時も地獄を味わった。

あんなのは2度とゴメンだ。

 

 

「当たり前じゃない!

宝纏に切れ味悪い無属性武器って選択が頭沸いてるわ!?」

「切れ味は関係無いしぃー!?

弾かれ無効があるから無理やり攻撃通せますしぃー!?

顎が壊れたら弱点になりますしぃー!?」

「そういう問題じゃないって言ってるでしょうが!あんたそこまでアホなの!?」

「『あんたそこまでアホなの!?』とかいう人の方がアホなんですぅー!てめー、攻撃370に会心40、さらに攻撃防御強化小アップ吹けるアカム笛なめんなよ!?アカム笛ならできる!そう、アカム笛なら!」

「宝纏の笛だって攻撃370で攻撃大吹けるの知ってんのよ!?」

「ぶぁぁぁぁあああ宝纏武器の話はやめろやぁぁぁぁああ!!」

 

ギャーギャーと喚く私達。

まぁ……飽きないことは確かなのだけれど、ストレスが溜まることだってある。

その辺りを、このアホにはよくわかってもらいたいのだけれど……まぁ無理な話なんだろう。

 

 

結局、喚き合いはギルドの迎えの人達が来るまで続いたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クエストを終え、龍識船のマイハウスで仮眠をとる私。

………なんだかんだで次のクエストにも行っちゃうだろうし、しっかり体力は回復させておかないといけない。

 

 

 

「はぁ……たまにはアカム武器以外も使えばいいのに……。ほんとアホね……」

 

 

 

ブツブツと独り言を垂れ流す私。

頭のなかでは、どのように宝纏のクエストへ臨むか考えていた。

 

 

 

「やっぱり属性はいるわよね…。

毒か水か……。あのアホのことをしっかりサポートできるようにか……」

 

 

 

………今、私はアイツとペアでパーティを組んでいる。

私は真面目な装備で、アイツはアカム武器。

1人はふざけているようだけれど、それくらいが騒がしくてちょうどいいのかもしれない。

実際私だってそんな心地は悪くない。

 

 

 

「……ふふっ、本当に飽きないわね。

なんだかんだで、顎を破壊とかしちゃうんだろうなぁ」

 

 

 

そんなことを呟いていると、玄関からノックが聞こえた。

なんとなく相手は予想できたけど、玄関に向かう。

ドアを開けると、そこにはニンマリと眩しい笑みを浮かべるカルムがいた。

う〜ん、少し嫌な予感。

 

 

 

「おいウルス!いい知らせだ!」

「……何?内容次第では殴るけど?」

「おぉふ……まぁこれはきっといい知らせだ!」

 

 

 

満面の笑みを浮かべたまま喋るカルム。

いい知らせか…。宝纏2頭が宝纏単体クエストになったとかだったらうれしいのだけれど…。

 

なんてことを考えていたら、カルムは言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと、宝纏2頭のクエストにグラビモスが現れたらしい!

お陰で宝纏2頭、グラビモス1頭の3体狩猟になっちまったぞ!

こりゃ腕がなるな!アカム笛の威力をモンスター達に……ウルス?」

 

 

 

右手の拳をグッと握りしめる。

狙いは満面の笑みが浮かんでいる顔面。

このアホには一発ぶち込んでやらないといけないという使命感に駆られた。

 

 

 

「カルム……?

せめてチャージアックスかガンランスを担いで来なさい?」

「えっ……ちょっ、顔が怖……ぶごぉぉ……」

 

 

 

満面の笑みを浮かべているカルムに、私も満面の笑み。

そして、握りしめた拳でカルムの顔面をぶち抜いた。

 

 

 

これで少しは反省してくれれば……いや、無理だろうなぁ。

望み薄の期待をしながら、私はマイハウスのドアを閉めた。

 

 

 





実に3ヶ月ぶりでした。
彼らにしばらく我慢させてしまい、申し訳なく思っています。
ただ、残念なことに更新頻度が上がるというわけではないと思うのでご了承ください。
ですが、今回のように3ヶ月空けるようなことはできるだけ避けていきたい所存です。

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第11話 物理がダメならフルバーストでいいじゃない。


のんびり更新です。




 

 

「ククク……!」

 

 

 ………一体今度は何だ。

 戦いの最中だというのに急に笑い出した。それもいつものようなクソうるさい大笑いではなく、何か悲願を達成した時の悪者のような感じで。

 

 

「クックック……!」

 

 

 猛烈に突っ込みたい衝動に駆られるけど、今は我慢。

 目の前ではグラビモスがダウン中。ラッシュをかけてこのまま一気に終わらせたいところ。

 

 

「クックック……!イャンクック……!」

「だあああああ!なんなのよそのクソ寒いギャグは!?もう黙りなさい!この後に宝纏2体が控えてるんでしょうが!?」

 

 

 あぁうん、ダメだ。もうツッコまずにはいられなかった。すぐにアホに向かって砲撃をぶっ放す。

 忌々しいことに、アホはそれをイナした。なんて反射神経してんのよ…。

 

 

「フハハハハッ!!俺は今、最高に機嫌がいいのだァ!!」

 

 

 私の砲撃をイナしたカルムはすぐさまグラビモスへと攻撃。

 クイックリロードから叩きつけ。そして、凄まじい威力の爆風がグラビモスを襲った。

 頭部の甲殻が弾け飛び、グラビモスは動かなくなる。

 

 アイツが今回担いでいるのはアカムガンランス。たしか砲撃タイプは通常型Lv5だから、フルバーストの威力は眼を見張るものがあるけど……最後を持っていかれたのは少々癪だ。

 

 

「あっ…終わった…。

 ……で?どうしてアンタはそんなに機嫌がいいのよ?」

「フッフッフッ…聞きたいかね?

 いいだろう、本来なら高級お食事券3枚で手を打つところだが俺とお前の仲だ。タダで教えて…

「ああ、じゃあ別にいいわ。どうせロクなことでもないでしょうし…」

「あっ、ごめんなさい。聞いてくれたら嬉しいです」

 

 

 最初から言いなさいよ…。

 

 

「……で?何があったのよ?」

「フハハハハ!聞いて驚け!なんとだな…。

 

 作者がメインで書いていた作品が遂に完結したのd

「ごめん、ちょっと待って」

 

 

 待て待て。確かに前回は私もメタいことを喋ったけれど、今回もそんなノリか?

 流石に勘弁願いたい。そういう発言してると、この作品の趣旨であるアカム武器が二の次になってしまうことをコイツは理解しているのだろうか。

 

 

「長かった……!

 感想の数とかだとこっちの方が上だし、アカム武器とか10種類しかないんだからパパッと書いて終わらせろよとか思ってたけど、遂にこの話も終わりが見えて

「待って!ホント待って!」

 

 

 ヤバい、このままだと収拾つかなくなる。

 

 確かにこっちの方の更新に力が入るようになるのは嬉しいけれども、それをこうも露骨にアピールするのはいかがなものだろう?

 

 どうすればこの暴走を止められる……!?

 

 

「活動報告見たか?

 俺とウルスって、あの冴えない操虫棍使いよりハンターとしての力量は上っぽいぞ?

 いやぁ〜アカム武器みたいなキワモノ使いがそんないい身分についていいもんだろうk

「お願い!ちょっと黙れ!」

 

 

 ヤバいヤバいヤバい…!どうする!?

 一体どうやってコイツを止めれば…!?

 

 

 なんて私が焦っていると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高笑いしているカルムを、宝纏が転がり攻撃で吹き飛ばしていった。

 正直ビックリした。だっていきなり来るんだもの。反応ができなかった。

 

 

「ぶれぁぁああ!?

 おいゴラァ!?てめぇ俺が話してる途中だろうがよォ!

 おーし、わかった。 てめーもアカム銃槍のフルバーストで燃え尽きやがれゴラァァ!!」

 

 

 咆哮をあげる宝纏に向かって啖呵を切るカルム。転がり攻撃を喰らったのなんてなんのその。元気いっぱいに宝纏へと突っ込んでいった。

 うん、なんとか乗り切った。

 メタい話は対応に困るので、正直勘弁して欲しいのだ。

 

 

「あっふぅ……。ウルスさぁん!? 睡眠ガスを喰らいそうだから助けて欲しいな〜〜!?なんて思って、ぶふっ…」

 

 

 おっと、いつのまにか突っ立ってしまってたみたい。 カルムが私に助けを求めてきた。

 どうやら睡眠ガスを喰らったようで地面に突っ伏している。

 

 

「っと、ぼんやりしてる場合じゃないわね…。私だって戦わないと…」

 

 

 突っ伏しているカルムへ駆け寄って抜刀。

 私が担いでいるのは、『ウィルギガンキャノン』

 矛砕の素材を使った、凄まじい物理火力と高い砲撃性能を両立させた逸品。ただ、アイツの武器程ではないけど斬れ味には少々難があるガンランス。

 即座に砲撃へ繋げ、カルムを吹っ飛ばす。少々手荒だけど…まぁ丁度いいだろう。

 

 

「おふっ……ナイスゥゥ!!」

 

 

 ほら、やっぱりこれくらいで丁度いい。

 宝纏は頭を大きく振り上げる。そこへ私はバックステップで近づく。

 宝纏はそのまま顎を地面に叩きつける。発生する振動をクイックリロードのガードポイントでガード。そして叩きつけ、フルバーストへと繋げる。

 

 狙うは前脚。

 クソ肉質と名高い宝纏の中では比較的柔らかい部位。そこへ斬撃を叩き込む。

 続けて、銃槍から青い爆炎が迸った。

 

 カルムも通常型Lv5のガンランスだけど、こっちだって通常型Lv5。ブレイヴフルバーストの威力なら負けてない。

 凄まじい勢いの爆炎を浴びた宝纏は堪らず怯んだ。

 

 

「怯んだなクソ肉質野郎!

 見てな!今からブレイヴフルバからのブレイヴ竜撃砲をかましてやるぜいくぜいくぜおおぉぉぉおおあああああああFOOOOOOOO!!!」

 

 

 …………宝纏を挟んだ向こう側では謎テンションのアホが爆炎の爆ぜる中で絶叫していた。

 以前も似たようなことがあったのだけど、聞いたところによると

『アカム武器のロマン×ガンランスのロマン』

 が成せる御業らしい。まぁ野郎の考えることはよくわからない。

 

 と、まぁそんなこんなでチクチクバンバンしていたら宝纏は5分もしないうちに脚を引きずり始めた。なかなか順調だ。

 

 

「なんか随分あっさり終わりそうだな。

 もうちょい歯応えあるもんだと思ってたけど…」

「別にいいでしょ。 早く終わって悪いことなんてないわ? 宝纏と延々と戦うなんてごめんだし…地底火山の地形はストレス溜まるし…」

「まぁそんなもんか!うし、ちゃっちゃと終わらせよう!」

 

 

 カルムの一言と同時に、アカム銃槍の放熱板が格納された。

 ……うん、これは宝纏が寝てるところに龍撃砲ぶっぱフィニッシュだろうなぁ。

 

 ものすごくワクワクした顔をしながら走るカルムを見ながら、そんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、聞いた? ルファールのパーティ、なんかギルドの方から推薦かなんか来たみたいよ?なんか…新しい大陸の調査?みたいな…」

「ふーん。どうでもいいや。アカムトルムがいないなら行きたくもないな」

 

 

 なんだ……反応悪いなぁ……。

 ちょっとくらいアカム以外のことに耳を傾けたっていいだろうに…。

 達人ビールをちょびちょびと飲みながらそんなことを考える。

 

 

「……そういえば、最近アカムトルムの依頼とかないわね」

「そうなんだよ!そろそろ戦いたくてウズウズしてんのにサッパリ出てこねぇ!

 もう宝纏とグラビモスはウンザリだ!」

 

 

 たしかに宝纏にはウンザリしてきている。

 肉質もクソだし、地形もクソだし…。

 あんまり戦いたくないのだけれど、酒場のマスターはどうも私達に宝纏のクエストばかり回してきている気がする…。正直やめて欲しいなぁ。

 

 なんてことを思っていた時だった。

 

 

「ハローお二人さん。宝纏2頭とグラビモスの狩猟お見事だったわ、お疲れ様。

 これは私からの奢りよ?」

 

 

 宝纏のクエストを出してくる元凶、酒場のマスターが登場。その手にはサイコロミートらしき、いい匂いを漂わせるステーキの皿があった。

 

 

「肉!マジですか!?それじゃあいただくぜ!」

「ふふっ、遠慮なく食べて?

 

 で、食べながらでいいのだけれど、何個か話したいことがあってね…。

 ウルスちゃん、聞いてくれるかしら?」

「えっ、あ、はい」

 

 

 私もお肉欲しかった……。

 まぁしょうがない。ちょっと重要そうな話だし…。

 

 

「ウルスちゃんなら、彼女達…。『英雄』パーティが新大陸に行くことになったって知ってるでしょ?」

「えぇ、ルファールから聞きました。

 それがどうかしたんですか?」

「それに、貴方達2人はどうかしら?って思ってるんだけど…」

 

 

 ………推薦、か。

 新大陸ってことは、今まで見たことのないモンスターもいるんだろう。

 それらを相手取れるようになるなら、ハンターとして是非とも受けたい話だ。

 

 

 ………だけど。

 

 

 私は、此方の話になんて全く耳を貸さずに夢中で肉を頬張っているカルムを見た。

 

 

「ルファールから聞いたんですよ。

 聞いたところによると、新大陸の方ではアイツの好きな相手……『覇竜』は確認されてないんですよね?

 そうなら、アイツは行かないっていうと思います。 で、そうなったら私もその話はお断りさせてもらおうかな…なんて思ってます」

 

 

 私はハッキリと酒場のマスターに言った。

 

 なんだかんだで私はまだアイツと組んでいたい。

 正直うるさいし大変な時もあるけれど、それ以上に楽しいから。

 

 だからハッキリ言った。

 

 

 マスターはそれを聞くと…微笑んだ。

 

 

「そう……。まぁ、なんとなく予想はしてたわ。

 あまり期待しないで聞いたものだから、気にしないで?貴方達は2人がお似合いだものね」

「お、お似合いって……」

「ええ、とってもお似合いよ?」

 

 

 思わず顔を伏せてしまう。カルムに聞かれたり見られてないのが幸いだ。

 

 

「それじゃ、このことについては終わりにしましょう。

 で、もう一つ相談……というか、依頼があるのだけれどね…?」

 

 

 マスターは少し深刻そうな顔に。

 こんなマスターの顔を見る機会はなかなかない気がする。そんなに厄介な依頼なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「溶岩島にちょっと手のかかるアカムトルムが現れたのよ…」

 

 

 

 

 

 




用語解説

・『英雄』
この世界でも有名な、めちゃんこ強いパーティ。
男1に女5というアンバランスなパーティだそうです。
女性に囲まれて、男は羨ましそうですね。

・ルファール(人名)
カルムさん、ウルスさんの知り合いで、英雄パーティの一員。
めちゃんこ強いです。


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第12話 横行覇道



覇道を行くあなたに、覇道のクエストを。




 

『得意なモンスター』というのは、それなりのレベルのハンターなら1匹や2匹いることだろう。

 

 自分の武器、スタイル、戦い方がカチリと噛み合う相手。そんなのが大抵1匹はいる。

 

 私の場合、それに当てはまるのは『ウカムルバス』

 それまでは無敗でハンター街道を突き進んでいた私が初めて敗北を喫した相手。

 初めて負けた相手は自分にとって、いつの間にか特別な存在となるらしい。

『もう絶対に負けない』『そっちの攻撃は喰らわない』なんて考えて相手をする内に、戦うのが少し楽しくなっていた。

 

 いつのまにか私は『雪姫』なんていう大層な通り名で呼ばれ、ウカムルバスの相手なら右に出るものは無いなんて呼ばれるようになった。

 

 他のハンターにとっては十二分に危険な相手だけど、私にとっては楽しい相手。

 ウカムルバスは私の『得意なモンスター』となっていた。

 

 

 

 そして、あのアホにも『得意なモンスター』というものはある。

 得意になった理由を聞いたら、どこか私に似ていてイラッとした。

 

 と、まぁアイツも同じような感じで『覇王』だなんて大層な通り名を持つようになった。

 

 

 

 

 

 ………ただ『得意なモンスター』にも例外はある。

 

 

 偶にだけど、普通だと考えにくいような強さを誇る個体が現れたりする。

 制限時間ギリギリまで攻撃し続けても、生半可な攻撃だと決して倒れることのないタフネスを持つ個体。

 G級の最前線での使用に耐えうる防具を以ってしても、一撃でハンターをベースキャンプ送りにし得るような圧倒的攻撃力の個体。

 

 

 

 

 そして………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何があったのかは知らないけど、常に怒り状態の個体なんかもいたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ! 粉塵ありがとッ!」

「来るぞ!」

 

 

 いつもみたいに無駄口を叩いてる余裕がない。

 すぐさま私とカルムはその場から離脱。間髪入れずに、赤黒い巨体がその場を凄い勢いで走り去った。

 

 身に纏った防具からはシュウ、と白い煙が上がり、悲鳴を上げている。

 ……ちょっとヤバいかもね。

 

 

「なぁ。勝てる見込みとかついてる?」

「………全く」

「あーチクショウ!心強い返答ありがとよッ!」

 

 

 珍しく少し弱気なカルム。身に纏った防具からは、私と同じく白い煙が上がっている。

 

 

 酒場のマスターから依頼されたアカムトルムの狩猟。

 通常より遥かに強力で異常な個体だってのは聞いてたけど、まさかこんなにヤバいやつだとは思ってなかった。

 

 あらゆる攻撃が重い。 回復なしなら2発程貰えば即ネコタクだろう。

 体力だっていつものアカムとは比べ物にならない。かれこれ40分近く戦っているけど、全く倒れる気配がない。

 また、何故か常に怒り状態となっているらしく、酸性の唾液が私達の防具の防御力を著しく下げる。そうなったら、もともと重い攻撃がさらに重く…それこそ一撃でBC送りレベルに。

 長期戦となっているから、忍耐の種も切れてしまった。

 

 そして…なぜか溶岩の噴出が尋常じゃない頻度で行われる。アカムトルムに溶岩を操ったりする能力は無いはずなんだけれど…。

 

 

 

「クソ…また潜りやがった! 場所は……あっちだ!走るぞ!」

「また遠くに…! 溶岩の噴出だってバカにならないのに…!」

 

 

 

 潜ったアカムトルムを地響きの音を頼りに追う。

 地面からの溶岩噴出に気をつけながら、走り続ける。

 

 既に私達は2回力尽きている。あと1回でも力尽きたらクエスト失敗。それだけはなんとしてでも避けたい。

 

 

 

「あそこだ! 顔面にブチ込むぞ!」

 

 

 

 カルムの指差した先では、アカムトルムが地面から現れていた。

 走れば頭に一撃入れれそうな距離。牙も一本は砕け、残りの片方もヒビが入っているように見える。

 

 

 

「溜め斬りいくわ! 合わせて!」

「あいよ!」

 

 

 

 アカムトルムの頭部へと近づく私達。

 溜め斬りを1発ブチ込むだけの余裕はありそうだ。

 カルムはアカム大剣を腰だめに構えて力を込める。私も同じように体を捻りつつ、アトラル・カの大剣を握る手に力を込める。

 

 

 

「1…2の…さっ、えっ!?」

「ふぁっ!?」

 

 

 

 力を溜めきり、いざ解放…しようとした瞬間、足下から溶岩が勢いよく噴出された。

 私とカルムは仲良く空中へと打ち上げられる。

 

 

 ………ヤバい。

 ………ヤバいヤバい!

 

 

 アカムトルムは今、地面から現れた。

 これは、ある大技を放つ前の前兆。

 溜め斬りを当てて怯ませるはずだったのが、溶岩噴出のせいでおじゃんとなってしまった。

 

 頭から地面に打ち付けられる私とカルム。

 すぐには体勢を立て直すことができない。

 

 

「うっ……くぁ……」

「がふっ…」

 

 

 なんとか体勢を立て直す。早く回避の準備をしなきゃ…!

 

 

「ソニックブラスト来るわ!早く!」

 

 

 カルムにそう一言かけ、再びアカムトルムの方を見る。

 アカムトルムは大口を開け、既に私達に狙いを定めていた。

 

 

「あ……」

 

 

 世界が少しずつ歪み始め、アカムトルムが溜めた力を解放する。

 

 

「………クソッ!」

 

 

 次の瞬間、世界が振動と圧力に包まれる。

 驚異的な威力を持った音波を喰らいながらも理解出来たのは、私の体と意識があまりにあっけなく吹き飛ばされたこと。

 それと、カルムが私を守るように掴んでいてくれたことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。まぁ…今回は相手が悪かったと思って? こっちで出来るだけ対処はしてみるから」

「……すみません」

「大丈夫よ、謝らないの」

 

 

 クエストを失敗したというのに私を労ってくれる酒場のマスター。

 そんなマスターに一言謝罪を述べ、私は酒場を後にした。

 カルムは先に自分のマイハウスへと戻っている。私より疲れたらしい。まぁ…最後とか庇ってくれたし…。

 

 クエスト失敗とか、いつ以来だろう…。

 ここ最近は失敗とは無縁だったから、かなりショックを受けていると自分でもわかる。

 

 

「ハァ…。私も帰ろう…」

 

 

 切り替えないといけないのはわかっている。

 だけど、どうにもそんな気分にはなれない。

 帰ったらまず眠ろう、と考えながら、トボトボと歩く私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、帰ったか。久々のクエスト失敗はどうだった?」

「いや……なんでいるのよ……」

 

 

 肩を落としながらもなんとかマイハウスへと到着した。

 だけど、ドアを開けるとそこには見知った顔のハンター…ルファールがいた。

 長い銀髪をたなびかせ、身に纏うのは暗めの銀色に輝く防具。たしか…最近各地に現れるようになったバルファルクとかいう古龍の防具らしい。たぶん外装だけそれにしているんだろうけど…。

 

 

「なんでって言われてもなぁ…。 偶然龍識船を訪れたら、マスターからお前達がクエスト失敗したと聞いてさ。慰めに来てあげたってわけだ」

「……自分のパーティはどうしたのよ」

「先に帰ってもらった。なに、私とお前達のことならわかってくれてるさ」

「……そう」

 

 

 椅子に座っていたルファールの前を素通りし、ベッドへと飛び込む。

 気を使ってくれているのか、私に声はかけないでいてくれた。

 

 

「………アンタ達にちょっと助太刀頼むかもしれないわ、ちょっと悔しいけれど」

「気にするなよ。あのクソ師匠も言ってたろう?困ったら協力するのが1番手っ取り早いさ。

 麻痺ガンでも閃光フィーバーでもなんでも任せとけ!」

「流石にそういうのは嫌だけど…」

 

 

 麻痺ガンはちょっと勘弁願いたい…。アレはハンターとしての腕が鈍る。

 以前やってもらった時はまぁ…楽なのだけど釈然としない部分も多かった。カルムもちょっと不機嫌な様子だったし。

 

 

「それに…そろそろウチの操虫棍使いも紹介したいと思ってたところさ。彼ならガチンコバトルでも相当な腕があるし、力になってくれると思うよ?」

「まぁ…期待しておくわ。ごめん、今日は疲れたから寝ることにする」

「うん、ゆっくり休め。次のクエストでは呼んでくれるのを期待してるよ〜」

 

 

 軽口を叩きながらルファールは出て行った。

 ……今回ばかりは力を貸してもらうしかなさそうだ。流石にあのアカムを2人だけで相手にするのはしんどい。

 

 ……操虫棍使いか。どんな人なんだろう。案外冴えない感じだったりして。

 

 くだらない考え事をしながら、私はベッドの上で目を閉じた。

 

 

 

 

 




次回、友情出演…?
月1ペースでのんびり更新予定です。

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第13話 覇を見てせざるは浪漫無きなり

更新が遅くなってしまいすみません。本当に忙しかったです。
前回更新の直後にMHWを購入し、マムタロさん以外のソロクリアを終えるまでに約2ヶ月…。
そして、ニンテンドーSwitchを購入し、どハマり。ブレスオブザワイルドヤバいです。

何気にリアルの方でもいろいろと追われる毎日…。なかなか執筆の時間が取れませんでした。
ストーリー構想的なのはもう出来ているので、もう少しだけお付き合い頂ければ、作者は幸せです。




「だああああぁぁっしゃぁぁぁああああい!

 リベンジじゃオラァァァァァァァァァァァァァ………」

 

 

 よし、話の通じないバカは落ちてった。これで話の通じる3人で話せる。

 今、私達がいるのは溶岩島のベースキャンプ。

 この間負けてしまったブチギレアカムトルムのリベンジということで、助っ人を2人お願いした。

 

 1人はまぁ、私やカルムとも馴染みのあるルファール。携えているのはスキュラ弓。

 常時怒り状態のモンスターが相手ということでスキルをそれ用のモノにしたらしいけど…彼女はまぁ、そっちがモンスターだろというレベルに強いので問題ないだろう。

 

 

 そして、もう1人なのだけど……。

 

 

「な、なんか降りて行っちゃいましたよ…?大丈夫なんですかアレ?」

「ん?あぁ…大丈夫だろ。いつもあんなんだし。何だかんだでピンピンしてるさ」

 

 

 どうにも頼りにならなさそうな顔の操虫棍使いのハンターにルファールが答える。

 聞いたところだとこの子がルファールのパーティの新しい一員らしいけれど、なんとも冴えない感じの雰囲気を醸し出している。

 携えているのはハイアーザントップ。まぁ操虫棍は手数も多くて乗りもしやすい武器だからいいんじゃないのだろうか?

 ただ…。

 

 

「えと…ナギ君でいいのかしら?貴方、スタイルは何にしているのだっけ?」

「あっ、ブレイヴスタイルですね」

 

 

 なんやねん、ブレイヴ操虫棍って。

 アレって全然ジャンプも出来ないスタイルだった記憶があるんだけど。いいから乗れよ。

 

 今回のパーティの武器構成はカルムがチャアク、私が大剣、ルファールが弓、そして目の前のこの子が操虫棍。

 私の理想としてはこの子がガンガン乗って、その隙に私達で攻撃を叩き込むのがいいのだけど…。

 

 

「………ちょっとルファール、こっち来て。あっ、そっちの子はいいから」

「………どうした?」

 

 

 小声でルファールを呼び寄せる。

 ナギ君とやらには聞こえないように小声で喋りたいところ。

 

 

「………あの子、本当に大丈夫?

 私としては、あの…レイリスちゃんとかクルルナちゃんとか…。その辺りを連れてきて欲しかったんだけど…。

 何よアレ?失礼だけどすっごい弱そうじゃない。 しかもブレイヴ操虫棍って…。聞いたこともないマイナー武器なんだけど?」

「ひ、ひどい言い草だなぁ…。

 大丈夫だって、彼はレイリス並みのハンターさ。集中したら私より凄いし」

「………いまいち信じられないのだけど」

 

 

 ルファールより上とかいうのはとてもじゃないが信じられない。

 そもそも私の知りうる限り、ルファールより強いハンターなんて聞いたこともない。そんなルファールよりも、あの冴えない顔をした操虫棍使いの方が技量があるとは思えなかった。

 

 

「まぁ一回見ればわかるって。今回は強敵なんだろう? なら、彼も相当いい動きをするはずさ。

 それに…そろそろカルムも1人だとしんどいんじゃないか?」

「ハァ…。じゃあ貴女を信じることにするわ?

 まぁ、最悪3人でもなんとかなりそうだし…」

「まぁ騙されたと思って彼を連れて行ってくれよ。悪いようにはならないさ」

 

 

 うーん…まだ納得しきれないところはあるけれど…。まぁいいのだろうか。

 最悪ナギ君のハンデを背負っていても、他3人でなんとかなるような気はしている。

 ………しょうがないか。

 

 

「よし、それじゃあ今回は安全に立ち回る意識を強く持って。頑張りましょう」

「あぁ、行こうか」

「わかりましたー」

 

 

 イマイチ気合の入らない返事を返してくれたナギ君。

 やっぱり不安だ…。

 

 煮え切らない気持ちを抑えながら、私は溶岩島のベースキャンプから飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっし!麻痺入りそうです!」

「ナイスだヘナチョコ!」

 

 

 狩猟が始まって15分が経過、もう20分に差しかかろうという時間だろうか。

 今のところ、誰も力尽きてはいない。前回よりはマシ……というか、予想以上に楽に進んでいる。

 

 

「麻痺の後に睡眠入れる! 剣撃エネルギー貯めとけ!」

「おうよ!」

 

 

 もちろん、ルファールがいるのは大きい。初っ端から毒ビンでアカムを毒状態にし、そこからはブレイヴ弓特有の剛連射をバシバシ叩き込んでいる。腕が赤く光っているので挑戦者も発動しているらしく、まぁアホみたいなダメージをアカムに与えているだろう。

 

 ただ…ハンターが大きなダメージを出すだけでは、ここまで快適にはならない。

 

 そう、今回の狩猟はとても快適に行えていた。

 相手はアカムトルム。しかも超強化されている個体。

 ルファールがいただけではここまで快適に狩猟を行えてはいなかっただろう。

 

 なぜここまで快適なのかというと…まぁ……。

 

 

 

「よーし、寝ましたね。皆さん、爆弾は残ってますか?」

 

 

 

 ………この操虫棍使いのおかげなのだろう。

 

 今回の狩猟で、彼は既に2回の乗りと3回の麻痺を奪っている。

 2回の乗りはまだわかる…といいたいところだけど、彼は今回ブレイヴスタイル。乗りにはさっぱり適していないスタイルで、2回も乗ったのには驚かされた。

 そして、もっとヤバいのが3回の麻痺を奪ったこと。

 いや…手数多すぎでしょ。しかも全然攻撃を喰らっていないみたいだし…。

 

 拘束時間が長いお陰で、前回はあんなに鬱陶しかった溶岩噴出も全然発生していない。

 私が今回装備しているのはブラックX一式だから、W抜刀術が発動しているので、アカムチャアクのカルムと一緒に一回はスタンを奪った。ただ、操虫棍使いのナギ君に比べれば特筆すべきほどの活躍ではない。

 ダメージを出しているのは私たち三人だけど、彼がいないならここまでのダメージは出せていないだろう。

 

 

「じゃ、カルムさん、お願いしまーす!」

「あいさぁ!俺の最終奥義を見せたらぁ…!

 ブレイヴ☆オーバーリミット超高出力属性開放斬りぃぃぃぃァァァァ!!」

 

 

 しこたま騒がしい掛け声とともに、アカムトルムの頭部が大爆発に呑み込まれる。

 今回はナギ君がサポートに徹してくれると聞いていたので、カルムもひたすらにロマンを追い求めた装備にしたらしい。なんでも、超高出力属性開放斬りを連発するための装備らしい。おかげで、狩場には度々爆風が吹き荒れていた。

 

 大爆発がやんだ後、アカムトルムは二回目のスタンに入ったらしく、もがいていた。爆発があったから、頭へ近づくのが遅れてしまったけど、抜刀溜め→薙ぎ払いのコンボは入った。カルムも剣撃エネルギーをしっかり溜め終わったらしい。

 

 

 さて…あと少しだとは思う。

 いくら強化個体だからといって、G級の最前線を往く四人で20分以上攻撃し続けているのだから、もう一押しなはず。頑張ろう。

 

 

「乗れるか…な? っっと、乗りました!」

 

 

 ……一押しがはいった。これはもう勝った気がするなぁ。

 ナギ君は全く危なげを感じさせず、アカムから乗りダウンを奪う。ダウンと同時にアカムの頭部へ駆け出す私達。

 

 

「これ以上長引くと面倒だ!決めろ!」

 

 

 ルファールが矢を番えながら叫ぶ。いわれなくともそのつもり。

 

 ダウンしたアカムの目の前で、大剣を腰だめに構える。

 そして、最も力が込められるタイミングで一気に開放。全力で振りぬく。

 会心の手ごたえが伝わってくるけど、まだ終わらない。

 

 左足を回転の軸にして、渾身の力でもう一度振りぬく。ガツンとした手ごたえを再び感じた。

 よし…これでそろそろ…。

 

 

「ウルスさぁぁん!吹っ飛ばしたらごめんなさぁぁい!!」

「えっ…?はっ?ちょっ!?」

 

 

 ……後ろから、カルムが超高出力属性開放斬りをぶちかましてきた。

 榴弾ビンの凄まじい大爆発に巻き込まれ、吹っ飛ばされる私。それがアカムの頭部に吸い込まれたと同時に、アカムの身体はゆっくりと地面に倒れ伏した。

 

 

「おっしゃあ!ラスト頂きィ!」

 

 

 私のことなど気にする様子もなく、そんなことをぬけぬけと言い放つカルム。そんな私達を、ルファールとナギ君は引き攣った顔で見ていた。

 

 

「さ〜て、狩りの後のお楽しみ!剥ぎ取りタイムといきますかァ!

 ほれ、そこの2人も変な顔してないで剥ぎ取れよ?」

 

 

 ……私を吹っ飛ばしたことなどまるで眼中になかったかのようなセリフを放つカルム。

 

 よし、キレた。

 

 なんとか満面の笑みを顔に浮かべながら、ツカツカとカルムに歩み寄る。2人が青ざめているけどまぁ気にしない。

 

 

「おい、脳みそ鈍器野郎。歯ァ食いしばれ」

「ん?ウルス?随分とドスの効いた声に…」

 

 

 刹那、私の右ストレートが煌めく様な速さでカルムの顔面にぶち込まれた。

 カルムの首からはゴギンッ、というちょっとアレな音がして、3メートルは吹っ飛んだ。まぁ…向こうでピクピクしてるから死んではいないだろう。

 うん、いいパンチだった。今の私ならブラキディオスにも殴り勝てそう。怒りは人を強くする。

 

 

「さて、剥ぎ取って帰りましょうか」

「あ、あぁ…。いいパンチだったぞ…」

「お、お疲れ様でした…」

 

 

 一連の出来事を見ていた2人はかなり顔が引きつっているが、気にしないで欲しい。アイツが悪いんだ。

 

 

 そんなこんなで、アカムトルム強化個体の討伐は、強力な助っ人2人の力もあって無事に終了した。

 

 

 

 

 ちなみに、カルムは顎が外れ、首もイッていたらしく、しばらくはマイハウスで寝たきりの生活を余儀なくしたらしい。

 ざまあみろ。

 

 

 




ワールドの榴弾チャアクはこんな戦い方ですが、よく考えたらダブルクロスでも出来るじゃんと。
というわけで、ブレイヴスタイルオーバーリミット超高出力属性解放ブッパ方式に。

別作品の主人公を登場させたりしましたが、扱いやすくて便利です(ゲス顔)

恐らくですが、次かその次あたりで最終話かと。
アカム武器も全て紹介しましたし、アイスボーン発売までに新大陸の物語も書いてみたいかなぁと。

何はともあれ、この作品とはもう少しお付き合いいただければ幸いです。

質問、感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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昔話~1~



お久しぶりです。




「しかし何度見ても…奴が住んでいるにしては、随分と質素な作りに思えてしまうのぉ。らしいといえばそれまでなのじゃが…」

 

 村のはずれに位置する場所に建っている、何の変哲もない質素な家。その玄関先に佇む竜人族の老人が言葉を落とす。

 この老人、かつては伝説的な活躍をしたハンターであり、彼がモンスターを狩ることを生業としたことが現在のハンター業の始まりと言われている。つまり、この老人はハンター業の祖といった存在だ。

 ハンター業を引退してからは、後世のハンター達の拠り所を作りたいと考えこのココット村を興した。村人たちの協力もあり、今ではアイルーが営むキッチンやハンター業に役立つ資源を育てる農場、ハンターズギルドが管理・運営する集会所もある。新世代の狩人を養成する訓練所も設置され、見事にハンターが集う村としての役割を果たしている。

 

 そんなココット村の村長を務めているこの老人だが、今日はある理由からこの家を訪れていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「おぅ、お邪魔するぞぃ」

 

 

 既に家主とは旧知の仲である。村長は家の中へ躊躇なく足を踏み入れた。中には衣類を畳んでいる最中の麗しい女性が一人だけ。村長に気づき、口を開いた。

 

 

「あら、珍しい。ちょっと待ってて、今お茶でも…」

「いや、手短に済ませるから気にせんでいい。旦那はどうしておる?」

「ん~、寝てる…かな?寝てたら村長からもビシーッと言ってやってください、もうすぐお昼だぞーって」

「相変わらずだの…」

 

 

 軽く言葉を交わしながら、部屋を見渡す村長。そして溜息を吐いた。

 

 

「やはり、この勲章は凄まじいの…。何度見ても圧倒されるわい」

「そうですか?そろそろ慣れるころだと思ったけど」

「あれが2つ並んでいるなんぞ、いつまで経っても慣れまいよ」

 

 

 ハンターの祖であるからこそ、かつて『英雄』と謳われた村長だからこそ、気づくことの出来る勲章がそこにはある。

 

 『天地狩猟ノ覇紋』

 

 並ぶものが無いほどの高みに到達した狩人のみに贈られるという、黒い龍の彫刻が施された勲章。この広い世界を見渡してみても、この勲章を得た狩人は10人にさえ満たない。下手をしたら、5人いるかすらも怪しい。

 そんな勲章が一か所に2つ並んでいる。ハンターの世界を深く知っている村長だからこそ、この光景にはいつまで経っても慣れることは出来ない。

 

 

「さて…ちょいと話をつけてくる。オヌシには関係のない話…というわけではないのだが、くるかの?」

「いえ、ひとまずウチのに言ってみてください。結局彼次第ですかね~」

「旦那次第か…。夫婦仲はどうなのだ?」

「まぁぼちぼち楽しんでますね。時々ちょっとした喧嘩とかありますけど…」

「それくらいで丁度良い。いまのオヌシはいい表情をしているからの」

「あら、嬉しいこと言ってくれますね」

 

 

 少し言葉を交えた後、村長は本題に入る。

 

 

 

「では話をつけてくる。なに、家庭の時間を奪うような頼みではないからの」

 

 

 

 女性が畳んでいる子供用の衣服を目に入れつつ、言葉を落とす。旦那が寝ているであろう家の二階へ、足を運ぶ村長だった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「この部屋にしても、相変わらずとんでもない…」

 

 

 先ほどに続いて、またしても溜息を吐きながら村長は部屋を見渡す。目に入ってくるのは数々の武具であった。

 角竜系のモンスターの角を削り出して作られたのであろう大剣。砂漠に棲息する牙獣素材を用いたらしいハンマー。山の如き巨大龍の素材を使ったと思しきヘビィボウガンや弓。素材の主だったモンスターの、怒髪天を衝く怒りが伝わってくるような金色の鎧。

 中には目を逸らしたくなるほどに禍々しい雰囲気を醸し出す、暗黒や深紅、純白色の武具もあった。

 

 村長はこの場にいるだけで緊張する。だというのに、そんな中で呑気に寝息を立てる男がいた。

 

 

「おい、ツジ。用があって邪魔しておるぞ」

 

 

 寝息を立てる男に声をかける村長。決して大きくはない声であったが、その一声で男は目を覚ました。

 

 

「んぁ…、えっ、村長じゃないですか。こんな朝早くにどうしたんです?」

「なにが朝早くか…昼まで起きてこないとオヌシの女房が小言をこぼしておるわい」

「あ~もうそんな時間か…。まぁ勘弁してください。ハハ…」

 

 

 寝ぼけ眼で喋るツジを横目に見る村長。黒髪もボサボサの状態で、威厳なんてものは微塵も感じられない。だが、この部屋に置かれている屈強な武具は全てこの男が自らの力で作成したものだ。

 つまり、このツジという男も、あの『天地狩猟ノ覇紋』を受け取るに相応しい実力を備えたハンターということになる。しかし、目の前にあるどこか力の抜ける光景から、そんなことが想像できるはずもない。

 

 

「さて、クレールは飯作ってくれてるかな。村長は朝飯…というか昼飯どうします?俺は今から食べますけど」

「話があるといっておろうに…。まぁいい、頂くことにするかのぅ」

「自分で言うのもなんですけど、アイツの料理はかなり美味いんでご堪能あれ。なんつって」

「どの口が言えたものか…」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「で、話ってなんです?シュレイドで何か動きがあったりしましたか?」

「安易にその言葉を口にするな…。安心せい、モンスター相手にどうこうしてほしいという話ではないからの」

 

 

 昼食を終え、ツジの自宅の庭で話を始めた二人。周りには人気もなく、ツジが口にした言葉を耳に入れることが出来る人物もいるはずがなかった。

 

 

「話…というよりは頼みじゃな。ツジに…いや、オヌシら夫婦に預けたい者達がおっての」

「預ける…?えっ、養子的な?いや、勘弁したいっす。息子のセフィで手一杯なんで」

「違う違う」

 

 

 若干焦った様子のツジに村長が続ける。

 

 

「預けたいのは、ハンター見習いの少年少女達なのだ。三人がすでにこの村に滞在しておる」

「いや…そういうのは訓練所の仕事でしょ。面倒なんですけど…」

「最後まで話を聞け」

 

 

 面倒な様子を見せるツジに、村長はまだ言葉を続ける。

 

 

「その三人なのだが…凄まじい逸材なのだ。正直、訓練所の教官の手には余る程でな…。訓練過程で相手にできるモンスターどころか、ちょっとした飛竜程度なら相手にならんらしい」

「ほうほう」

「そこで、白羽の矢が立ったのがオヌシ達だ。なに、長期間家を空けろ等といった話ではない。オヌシ達の息子に対しても申し訳ないしの。ただ、次世代の狩人育成の為に少しばかり協力してほしい。儂の顔に免じて、承諾してもらえないだろうか?

 

 

 ツジは黙り込み、少しばかり考えた。本当に少しばかりだった。

 

 

「わかりました。ただ、その金の卵達と会ってみないことには始まらないです。今からそいつ等と会うことってできますかね?」

 

 

 ほぼ即答といえる返事に、村長はニヤリと笑った。

 

 

「オヌシならそういうと思っていた。安心せい、その者達ならすぐ近くに待機させておるよ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「で、あそこで息子と戯れてるのがそうなんですかね?」

「う、うむ。オヌシの息子もなかなかの器量がありそうだの…」

 

 

 

 ハンター見習い達が待機している場所へやってきたツジと村長の目に入ってきたのは、追いかけっこをしている少年少女達の姿だった。

 追いかけっこといってもなかなか異様な光景であり、四つん這いになって獣のようにそこいらを駆け回る少年。その背中に特に幼い男児が乗っていた。そして、それから逃げる二人の少女。なかなかのインパクトだった。

 

 

「あっ、とーさん!みてみてー!ケルビごっこしてるんだー!ひとをあごでうごかすのってたのしいんだね!」

「おー、それはいいな。その年にして人の上に立つ悦びを知ってしまったか息子よ。お前は将来有望だ」

 

 

 父親と嬉しそうにお喋りをする男児。その横では三人の少年少女達がぜぇぜぇと息をあげていた。

 

 

「「な、なんなんだこのクソガキ…」」

 

 

 黒髪の少年と銀髪の少女が口を揃えて呟く。瞬間、ツジはその二人の頭を儂掴みにした。

 

 

「おい、お前ら。人様の可愛い息子に向かってクソガキ呼ばわりはあんまりじゃないか?よーし、セフィ。この兄ちゃんはお前から見てどうだった?」

「うーん。かんがえることができないおばかってかんじ!」

 

 

 屈託ない笑顔で容赦のない言葉を放つセフィ君。それを聞いた少年はカンカンに起こり叫んだ。

 

 

「いで、いでで…。ふっ、ふざけんじゃねー!お前がケルビごっこしたいとかいうからつきあってやったんじゃねーか!そしたら、そのステップはケルビじゃないだの抜かしやがって!」

 

 それに続けて銀髪の少女も叫ぶ。

 

「そうだそうだ!挙句の果てに『今からキリンね』とかいって私達に攻撃を始めたじゃないか!」

「あっ、このおねえちゃんはざんねんなひとってかんじだったよ。おかあさんがよくいってる『けっこんできないおんな』ってかんじー。おっぱいおおきいけど、あせくさかったし…」

「はああああああ!?おぼえてろよ!?このクソガキ!」

 

 

 ギャーギャーと騒ぐ少年少女の頭を掴みながら、二人を観察するような目で見るツジ。そして、すぐに頭から手を離した。

 

 

「「あ…ありがとうございます?」」

「よし。こんなもんだろ。しっかりお礼を言えるのは偉いぞ君たち。

それじゃあセフィ、俺はこの未来ある若者たちと話をしていくから村長と家に帰ってなさい。いいね?」

「はーい!」

 

 

 父親からの指示をまぶしい笑顔で返すセフィ君。

 

 

「そんじゃ村長。この件は前向きに検討するんでセフィお願いします」

「うむ、期待しておるぞ」

 

 

 軽くやり取りをした後、二人は自宅へと戻っていった。

 

 

 

「うし…じゃあ自己紹介といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 自己紹介つっても…とりあえず自分からか。

 

 

「ではまず俺からいこう。俺の名前はツジ。今はあんまり活動してないけどハンターだ。ハンターとして、お前たちにハンターとしての力を養わせるくらいの力はあると思ってる。あと、結婚もしている。そこの少女達には悪いが、先生と生徒の禁断の恋なんて展開はありえないと思っておいてくれ」

「「そんなもんあるか!」」

 

 少女二人が鋭く返す。うん、元気がよさそうで何よりだ。

 

「まあ今のは冗談だ。というかそんなことあったら嫁に消されるからな。

では、次に君たちから自己紹介をしてもらおう。とりあえず名前だけで構わない。ではそちらのケルビボーイから順にいくか」

「誰がケルビボーイじゃ!」

 

 

 いやぁ、若いっていいね。元気と気力に満ち溢れている。

 

 

「ったく…。俺の名前はカルムだ!いずれ世界中のモンスターを制する男だからな!覚えとけ!」

 

 

 いいね、それくらいの気概があるなら教えがいもあるってもんだ。よし、次。

 

 

「私はルファール。強くなれると教えられてここに来た。さっきのはまだ若干根に持ってるけど…。まぁよろしく頼む」

 

 

 うん、よろしくね。俺の指導があればその期待には応えられると思うから。はい、ラスト。

 

 

「えっと、ウルスと言います。ちょっと二人の影に隠れがちだけど…精一杯頑張るのでよろしくお願いします」

 

 

 この子が一番常識ありそうだなぁ。三人ともキャラが濃いと大変だし、これはありがたい。

 

 

「よーし。それじゃあ、本格的な指導は明日以降にする。いきなりで悪いがそれくらいは我慢してくれ。

 

 自分で言うのもなんだが、俺の指導はかなり風変わりだ。まるで()()()()()()()()()()ように感じてしまうかもしれない。

 だから三人には今までの常識を捨てて臨んでもらいたい。君たちのハンターライフの糧になることは保証するよ。

 それでは…カルム!ルファール!ウルス!明日からよろしくな」

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

 

 うん、いい返事。いやぁ、この3人にはかなり期待できる。

 

 思いがけない出来事だったけど、これから楽しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





リハビリがてら、過去編です。
いろいろ書きたいこともあるので昔話で書いていけたらと思います。
時間軸的にはMHP2Gの後くらいです。武器とか懐かしいですね。






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