新幹線変形ロボシンカリオン ふたりのはやぶさ (小田急ロマンスカー)
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ミクとアキタの怖いもの

謎の巨大怪物体と戦うべく、超進化研究所が日本の夢と技術の詰まった新幹線をベースに開発したシンカリオン

そのシンカリオンに乗り込み戦う運転士たちは今

「それっ!」

「なんの!俺の好きな四文字熟語は一球入魂だ!」

リゾートを楽しんでいた

 

事の始まりは運転士の交流を図るべく出水指令長が慰安旅行をすると言い出したこと

運転士たちは超進化研究所の職員たちと共に静岡県へとやってきていた

この場所は東海道新幹線の沿線であり万一に備え清州リュウジのN700Aは浜松工場に停留しているほか残るシンカリオンも出撃できるよう十分な備えはしてある

もっとも、N700A以外は東京駅にて待機状態ではあるが

「なんで東京駅なのかしら」

そんな疑問を口にしたのはあまり鉄道関係に詳しくない運転士の紅一点、発音ミクだった

「東海道新幹線と東北新幹線じゃ電流の周波数が違うからこっちまでこれないんだ」

線路幅は共通なため通れないこともないだろうが日中の時間帯である

万一目撃されようものなら大騒ぎだ

「何もないのが一番だがな、いざとなったら全員でN700Aに乗り込んで東京駅へ行ってから東京湾から海を通って捕縛フィールドに入るしかないだろう」

「面倒そうね」

アキタの説明をばっさり切り捨てるミク

もっとも、その方法を用いる場合東京駅に行くだけで一時間前後かかる計算であり

海を経由するとなると最低でも2時間かかるであろうことは推測される

「俺一人で十分だ」

「そうもいかねぇぜ、格闘戦の得意なN700Aだと戦いにくい相手とかあんだろ」

「んだ、こんあたりならタコさ使って墨さ吐く敵出てもおかしくねだ」

ツラヌキとシノブの言葉に考え込むリュウジ

基本的に近距離戦闘を得意とするN700Aの特性を考えると墨で牽制してくる相手はどうしても戦いにくくなってしまう

飛び道具がないわけではないが奥の手のドラゴンナックルをそう何度も使ってられないだろう

「………」

「ほ、ほら、そう毎日出てこられても困るし、今は楽しもうよ」

タコを相手にした場合の攻略法を真剣に考え始めてしまったリュウジの様子に慌てて宥めるハヤト

偶然話を聞いた三原指導長代理からも釘を刺されたため今は巨大怪物体のことは忘れて楽しもうということになり

ひとまず皆で夏の海を楽しもうという結論に落ち着いた

 

「俺の好きな四文字熟語は全身全霊だー!」

その時々によって異なる座右の銘を叫びながらビーチボールを打つツラヌキ

現在はペアを組んでビーチバレーの真っ最中

「うわっ!」

鉄道一筋でスポーツも学校の授業程度にしかやらないハヤトはツラヌキの打球を受け止めると勢いに負け転倒してしまう

「詰めが甘いです」

そのまま空中に投げ出されたボールをミクが叩き込む

正確にツラヌキとリュウジの間を狙い撃たれそのままボールは地面を転がった

「んだよ、発音の一人勝ちじゃねえか」

「俺もまだまだだな」

悔しそうに砂浜に座り込むツラヌキと頭を抱えため息を零すリュウジ

空手経験者であり年長者でもあるリュウジだが今回はミクに軍配が上がったようだ

「よし、俺達と交代だな」

「こういうのは得意だ」

アキタのビームライフル競技で鍛えた洞察力と忍者として鍛えたシノブの機動力

ミクも健闘したが元々気の合う二人が相手とあって一歩及ばなかった

二戦連続で体力を消耗していたのもあるだろうが

「ごめん、俺足引っ張っちゃったよね」

「気にしてないです」

口ではそう言いながらも汗を拭っていない利き手と逆の手を強く握っているのが見えたハヤトはその心中を察した

「(本当は悔しいんだなぁ………俺ももっと頑張らなくちゃ)」

「気にしないでください、遊びですから」

そんなハヤトの心中を察して表情を崩さないままフォローするミク

自分にも他人にも厳しい彼女だがこうしてみると最初と比べればかなり打ち解けてきているのが分かる

 

その日の晩、出水指令長の提案で肝試しをすることになった運転士たち

昼間ビーチバレーに興じたペアで十分安全に考慮したうえでの開催となった

ツラヌキとリュウジは最初にスタートし順調に進んでいた

が、残る二組は思いのほか苦戦を強いられることになった

シノブとアキタは終始会話のないまま進んでいた

元々冷静な二人だ、会話がないのは不思議ではなかったが

シノブは気になっていた、アキタがやけに周囲の音に敏感になっていることに

「………アキタ」

「うおっ!?な、なんだ?」

ただ声をかけただけなのに異様に驚かれた

その理由に一つだけ心当たりがあったシノブは思い切って口を開いた

「おめ、怖いだか?」

「………」

シノブの問いかけにしばしその場で黙り込んだアキタ

マタギの祖父を持ち山になれたアキタが夜の森の中でこれほど警戒する理由はそれしかない

「おめ、山さ好きなのに霊が怖いだか?」

「好きんんだどもら怖いんだ」

シノブの問いかけにアキタは青い顔で口を開いた

「霊に脅かされるのは山の怒りどご買ってるってことだ」

「なっほどな、かんげぇかたさ色々だ」

怯えるアキタに対して納得しながらも歩みを進めるシノブ

「置いてかねでくれ!頼む、こっちゃある事は内密に、他の奴には知られたくね、おめどんんだどもら話したんだ」

「心配すんな、言わねから」

 

そして霊におびえているのはアキタだけではなかった

多くの山や森が残る北海道には霊の話が多い

故に北海道在住の少女は霊の脅威におびえていた

それでも同い年の少年に悟られないよう青い顔を見られないようにしながら歩みを進めていた

「っ!?」

風で葉がそよぐ音に思わず後退るミク

「大丈夫だよ、出水指令長が安全に十分注意しているって言ってたし、新幹線の安全神話並みに心配いらないって」

「その例えはよくわからないけど言いたいことは何となく伝わります」

青い顔のままため息を零すミク

なんとか肝試しを終えるとスタート地点では三原指導長代理が待っていた

「お疲れ様、さあ、帰りましょう」

三原指導長代理がこちらに手を伸ばしたことで一安心するミク

だが諸君らは気づいているだろうか

いつもならハヤトの傍にいる存在が今はこの場にいないことに

「宿に戻ってみんなと合流するであります」

背後にいきなり現れたシャショットの声に驚いたミク

普段冷静な彼女からは信じられないほどの大きな悲鳴が周囲に響いた

「み、耳が~」

「あわわ」

突然の悲鳴を至近距離で浴びたハヤトと三原はその場で立ちすくんでいたが

「わ!発音さん!?」

悲鳴を上げた張本人、発音ミクがその場で気絶して倒れていることに気付いて慌てて駆け寄る

 

翌朝、漆黒の新幹線の目撃情報を受けN700Aで東京駅へとたどり着いた運転士たち

そんな一行の気掛かりはと言えば肝試しの後から発音ミクが何やらご立腹な様子であること

そしてそんなミクをひたすら宥めるハヤトの姿

気になってツラヌキが声をかけてみた

「ハヤト、おめえ肝試しの時になんかやったのか」

「いや、俺じゃなくてシャショットなんだけど………」

そういえばいつもはよく喋るシャショットが今日は何やらおとなしい

他の運転士たちもシャショットが彼なりに反省している様子はわかった

「いったい何やったんだ?」

「あ、実は………」

ハヤトが言葉を繋ぐより前に運転士たちはミクに睨まれその場で恐怖に竦んだ

同世代の少女とは思えない鋭い眼差しが言葉にせずとも告げている

喋ったら許さないと

 

港区青山に現れた巨大怪物体

変形したシンカリオンが勢ぞろいで並び立ちその姿を見据え

「「うっ!」」

アキタとミクが青ざめた

石のような黒いモノリス状の形状

そしてその背に背負っているのは文字のようなものが書かれた薄い木製の細い板のようなもの

その姿から見える敵の正体は

「コードネーム、グレイブゴースト、全長20メートル」

「グレイブ………」

「ゴースト………」

通信で届いた怪物体の名称を聞き更に青ざめるアキタとミク

更にグレイブゴーストが背負った板を掲げると白い靄のようなものが無数に現れシンカリオンに襲い掛かる

「や!やめろ!来るなぁ!」

とうとうパニックを引き起こしたE6がその靄にフキミリガンを乱射する

H5も必死になってカイサツソードを振り回して靄を追い払おうともがいていた

そんな二人のフォローをするためE5とE3は傍に駆け寄った

 

結局グレイブゴーストの体を構成しているのが石材ということもありN700Aが衝撃を加えてE7のシャリンドリルで正面から破壊する形でグレイブゴーストとの決着はついた

だが

「ううっ」

大宮の超進化研究所の医務室のベッドで横になりながら青い顔で呻き声を上げるミクの傍にはハヤトがついていた

別の部屋では同じようにダウンしたアキタにシノブがついているそうだ

「その………誰にも言わないでくださいね、私がお化けが苦手だってこと」

「(もうバレてると思うけど)」

「それから………ありがとう」

戦闘中恐怖におびえるミクを必死に守ろうとしてくれたハヤト

ミクの眼にはその背中がいつもより大きく見えた

お礼の言葉を告げるとわずかに赤くなりながら布団を深くかぶって丸くなるミクだった



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はじめてのゲームセンター

「というわけで!JSが友達とゲーセンで三本勝負してみた!」

いつものように巨大怪物体と戦った後

今回出現したのが午前中というとこもあり集まったメンバーで何かできないかと話し合っていた時だった

上田アズサに半ば強引に引っ張られハヤトは撮影協力

アキタとツラヌキ、そして今回の戦闘で手を貸してくれたミクがゲーセンのゲームで対戦することとなった

「ごめんね発音さん、彼女強引で」

「いえ、こういったところは初めて来ましたので、いい機会ですし」

両手を合わせて謝るハヤトに落ち着いた様子で言葉を返すミク

 

「だー!」

上田アズサの声がゲーセン内に響く

「ニューレコード!」

シューティングゲームでアキタと対戦した結果完膚なきまでに叩きのめされ頭を抱えるアズサに苦笑するハヤテ

「彼相手に射撃で挑むのは無謀だと思うんですけど」

ミクの冷静な言葉に言い返せず肩を落とすハヤト

気を取り直してツラヌキとクレーンゲームで対戦することとなるアズサ

たまたまゲーセン内にスーパースパイスのぬいぐるみ(公認)の景品があったのでそれで先に景品を手に入れたほうの勝ちということになった

「イナホたんを必ず手に入れる!俺の好きな四文字熟語は有言実行だ!」

「それ、入手した後に言うべきなのでは?」

「まあまあ」

ミクの冷静なツッコミは結果として杞憂に終わった

先攻でぎりぎり失敗してしまったアズサに対して目当ての人形を工事現場で鍛えた観察眼を用いて見事入手したツラヌキは文字通り有言実行することとなった

「意外な特技ってあるもんだね」

ハヤトの言葉にミクが無言でうなずき

アキタは崩れ落ちた上田アズサの肩を優しく叩いた

「シューティングゲームで大人げないことしておいて慰めても傷口に塩を塗るだけだと思うんですけど」

 

最後にミクの出番となりゲーセンに初めて訪れたということもありゲームは上田アズサが選ぶことになった

対戦内容は手元のボタンを押したりタッチスライダーの手元をスライドしたりするリズムアクションゲーム

スコアの高い方が勝利だ

「まあ、初心者だしこの勝負は………」

「勝たなければ全敗、面目丸つぶれだしな」

「二人とも頑張れー」

 

だが、対決は予想外の展開を生むことになった

剣道で鍛えた反射神経を駆使して的確にボタンを押していくミク

はじめてとは思えないその動きに焦った上田アズサはミスを連発

「なんだか意外だな」

「何が?」

もはや勝負が見えてきたころ

ハヤトの呟いた言葉にツラヌキが首を傾げた

「発音さんっていつも落ち着いてるっていうか、あんまりこういうのにも興味なさそうだし」

「まあ、あんなこと言ってるような奴だしな」

はじめてであったとき、摩周丸記念館での会話を思い出し苦笑するツラヌキ

「けど、今はなんだか………」

タッチスライダーで素早く手をスライドさせるミク

その真剣な表情はどこか生き生きして見える

「楽しそう」

「まったくもってその通りだな」

ちなみに同じころ、アキタは勝敗が決したことで興味をなくし先ほどのシューティングゲームに再チャレンジしていた

 

三戦すべて完敗で終わった上田アズサが涙橋を渡った頃

「んじゃ、俺らは帰るか」

「えっ?」

「「「えっ?」」」

まだ遊び足りないといった感じの反応を示したのは意外にもミクだった

思わず口元を塞ぐ彼女に対して

「そうだよな、せっかく来たんだからもっと遊びてえよな」

「今度はあっちのゲームやりましょう、俺まだ何もやってないし」

ハヤトとツラヌキに連れていかれるミク

軽くため息を零してアキタがその後に続く

後には真っ白に燃え尽きた上田アズサだけが残された

 

「うおっ!?マジかぁ」

レースゲームの対戦中ミクの策にハマりスリップしてしまうツラヌキ

そのまま遅れを取り戻せず最下位になってしまい頭を抱えたツラヌキを見てハヤトは声を出して笑い

アキタも呆れたような笑いを小さく漏らした

 

ゲーセンの定番、ホッケーを使いハヤトと対戦するミク

的確にパックを捕らえ隙を見せないミクに歯が立たないハヤトだが対戦自体はとても楽しかった

 

ツラヌキに教わりながらクレーンゲームに挑むミクの表情は真剣だった

隣のクレーンゲームに挑むアズサはもう少しの所で取れそうだった景品が落下してしまいがっくりとした

 

クレーンゲームで獲得した長ねぎを咥えた猫のぬいぐるみをじっと見つめるミク

「猫がネギ食ったら中毒起こすんじゃなかったか?」

「玉ねぎだ、まあ長ネギでも起こすかもしれんが」

「ぬいぐるみにそんなこと言っても………」

 

後日またミクが助太刀に来た際超進化研究所で少し休んでから北海道へと戻ることとなった

「今日は助けに来てくれてありがとう」

「当然のことをしただけです」

そう言ってH5に乗り込もうとしたミク

すると彼女の服のポケットから何か零れ落ちてそれをハヤトが拾い上げた

「あ、何か落とした………」

拾い上げたものを見るとあの時上田アズサと対戦したゲームで使えるカード

あの時は持っていなかったはずなのであれからもあのゲームを何度かプレイしたのだろう

「っ!」

顔を真っ赤にしながらハヤトの手からそのカードをひったくるミク

「………」

「また行こうよ、みんなでさ」

「………考えておきます」



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はじめてのお泊り

この日首都圏に出現した巨大怪物体と戦った運転士たち

発音ミクの助太刀もあって撃退には成功したが

「困りましたね………」

悪天候により青森から北海道へと向かう路線が運休

ミクはこの日のうちに帰る術をなくした

「しょうがないわね、ミクさんはこっちに一泊して、天気が落ち着いてから戻ることにしましょう」

フタバの提案に皆頷く

「あの………それでしたら」

 

「というわけで、よろしくお願いします」

速杉家の玄関で挨拶するミク

ハヤトの母、速杉サクラはその場で震えていたかと思うと

「ハヤトが女の子を連れてきたー!?」

驚いてマンションだということも忘れて大声で叫んでしまった

ちなみに母の隣にいた妹のハルカはと言えばいつもは無表情を貫いているが今日は目を大きく見開いて動かない

 

「けど、なんでハヤトん家なんだ?」

「まあ、お母さんや妹さんもいるし、男の子だけの寮より安心できるでしょ」

「それならフタバの姉ちゃんの所でいいじゃねえか」

ツラヌキの指摘に目を丸くしてドキリとするフタバ

「あ、ほら、私はお仕事あるし」

「話は読めた、忙しくて部屋の片づけをしばらくしていなかったのを知られたくないんだな」

「どきっ」

アキタの鋭い指摘に黙ってしまう

「いざとなったら俺ら、手伝うからさ、俺の好きな四文字熟語は整理整頓だ」

落ち込んでデスクに突っ伏すフタバの肩を優しく叩くツラヌキ

 

「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」

「そういえばミクちゃん、着替えとかは大丈夫?急だったんでしょ」

夕食の直後、サクラがミクに問いかける

「問題ありません、ここに来る前に用意していただきました」

「え?いつの間に」

「なぜお兄が驚くのか不思議なわけで………けほっ、けほっ」

「あれ?ハルカ?」

「この子ってば今朝からちょっと咳っぽくて………」

「ちょっと失礼します………」

ハルカの額に手を当てるミク

「風邪の引き始めかもしれません、まだ症状は軽いようですが」

「夜遅くまでゲームしてるから」

「ハヤト君も人のこと言えないと思いますけど………」

「ギクッ、あ、ほら、じゃあミクに卵酒作ってもらえばいいよ、俺も前にお世話になった………あっ」

自身が口を滑らせていることに気付いたハヤトはゆっくりと顔を上げる

「ハヤト、お風呂上がりにテレビに夢中になって、お母さん何度も注意したわよね………」

「あ、その………」

 

首根っこ引っ張られてハヤトがお説教されているころ

彼の提案通りに卵酒を作り始めるミク

念のため台所を借りる許可はもらっている

笑顔で許可をしながらハヤトを引き摺っていく姿を見てわずかに同情したが

ほぼ彼の自業自得なので心の中で合掌するだけにとどめた

出来上がった卵酒を持っていった後まず熱を確かめてハルカの額に冷却シートを張るミク

熱が上がってきたらしくハルカはミクが看病する間おとなしくしていた

「………優しい」

「え?」

ふとハルカの呟いた言葉が聞こえたミクは首を傾げた

「うちのおっかあはああだし、私もこんな調子、後お兄の身近の女の子といえば上田アズサぐらいなわけで」

「ああ」

ハルカの口にした名前はミクも覚えがある

というか何度かこちらに来た時に顔を合わせたこともある

「女の子らしくて………新鮮なわけで」

「ふふっ、貴方たちのお母さんも十分素敵な人ですよ、怒ってくれるということは、それだけ心配しているということですから、飲めますか?」

最初微笑ましい空気だったがハルカが投げ込んだ爆弾にミクが困惑することになる

 

ハルカの看病をサクラに引き継いだミクはお風呂を借りて入浴を済ませる

丁度リビングではハヤトがテレビを見ているところだった

「ミク、見てみて、ほら」

ハヤトに促されてテレビを見てみるとそこには彼女の愛する地元の街、北海道の函館の景色が

どうやら北海道新幹線の旅を題材にした番組らしい

「ハヤト、お風呂入っちゃいなさい」

「はーい、じゃあミク、俺お風呂入って………」

今まで画面に夢中だったハヤトが顔を上げる

緑色に白の水玉模様が入ったワンピースタイプのパジャマを着た彼女の姿に少し見とれてしまっていた

「ハヤト君?」

「あ、うん、じゃあね」

そんなハヤトの反応を不思議そうに思いながらミクはテレビの前のソファに腰を掛けた

こちらで運転士の仲間たちと過ごす日ももちろん楽しい

だがやはりミクは北海道の地が好きだった

そして思い出していた、先ほどのハルカとのやり取りを

 

「女の子らしくて優しくて、貴方みたいな人がお兄のお嫁さんになってくれたら嬉しいわけで」

「えっ!?ちょっ!?」

「いや、もちろん冗談だけど、その反応はまんざらでもないわけで?」

顔を真っ赤にして慌てるミクの姿に戸惑うハルカ

 

「ハヤト君………」

僅かに顔を赤らめ胸の前で手を握るミク

テレビの声は彼女の耳には届いてなかった

 

「ミク?こんなところで寝ていたら風邪ひいちゃうよ?」

お風呂から戻ったハヤトはソファで眠りこけてるミクの姿に首を傾げた

「それにしても随分幸せそうな顔で、一体どんな夢を見ているのか」

「そういう娘じゃないんだけど………」

そう言って覗き込んだハヤトの耳に微かに寝言が聞こえる

顔を真っ赤にして飛び退くハヤト

「ハヤト?」

「な、何でもないよ、それよりミクをベッドに連れていかなきゃ」

「それもそうね」

肩をすくめてミクを抱き上げるサクラ

「(俺の名前?俺の名前だったよね、いや、でも東北新幹線のはやてと聞き間違えたかも、でも………)」

幸せそうに眠るミクが自身の名を呟いていた

その事実にハヤトはサクラに連れていかれる彼女を無意識に目で追ってしまった

 

新函館北斗駅のホームに入線してくるE5系

その姿を赤子を抱えながらホームの先頭から眺めていたミク

やがて運転席から降りてきた男性に飛びついた

 

「なんて夢を………」

耳まで真っ赤になって布団の中で蹲るミク

朝食の際もハヤトと目を合わせることができなかった

 

「それでは失礼します」

H5の運転席に乗り込むミクをハヤトたちが見送る

「ハヤト君」

「えっ?何?」

「今度は函館の私の家にも是非………今回のお礼もしたいので」

そういって振り返ったミクの笑顔にしばし見とれたハヤト

そのままH5が発車していくのを呆然と見守っていると

「名指しか」

「あいつあんな表情するのな」

アキタとツラヌキに冷めた目で見られる

更に

「ハヤトくんも隅に置けないのであります」

「ちょっ!シャショット!そんなんじゃないって!」

真っ赤になってシャショットを追いかけるハヤト

同じ頃北海道へ向かう路線を走るH5の車内でミクが顔から火が出そうなくらい赤くなって悶絶していた



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はじめてのデート

「チェンジ!シンカリオン!」

「N700A、シンカリオンに変形します」

変形したN700Aが巨大怪物体へ向かっていく

今回は亀のような見た目をしている

E6が弾幕を張っているすきに突撃したN700Aが巨大怪物体に接近すると拳を振り上げ腹側をむき出しにした

「今だ!」

リュウジの言葉と共にE5とH5が剣を掲げる

改札機に閉じ込められた怪物体はその中でバランスが取れずふらついていた

「「ダブルカイサツソード!」」

首の付け根を狙った同時攻撃が決まり巨大怪物体は爆散した

「目標撃退」

 

「ごめんねリュウジ、わざわざ呼び出しちゃって」

「まったくもって申し訳ない」

運転士たちを代表してハヤトが両手を合わせリュウジに謝罪する

「別に気にしていない、ただ、今後は慎重にな」

苦言を呈したリュウジがN700Aに乗り込んで東海支部へ戻っていく

「ミクもありがとう、おかげで助かったよ」

「いえ、偶然ですので」

そもそも今回の発端はすっぽんをもとにした巨大怪物体相手に特攻を仕掛けたツラヌキのE7が見事に返り討ちにあった結果シャリンドリルが手首諸共破壊されてしまったことにあった

駆け付けたミクがたまたま昨夜大沼支部長手製のすっぽん鍋を食べたことから

巨大怪物体を押さえつけて首を狙う作戦は決まったものの

巨大怪物体の首を押さえておけるパワーのあるE7が片手を破壊されていたこともあり

急遽N700Aの救援が要請された

東海支部から到着するまでの二時間の間残された三機は必死に応戦していた

「結果として修理が必要みたいだけど、大丈夫かな」

「ミクさん」

ハヤトが心配しているとなぜか三原指導長代理がミクに声をかけた

「H5なんだけど、結構ダメージひどいみたいで、部品交換とかしないとダメみたい」

「話は読めた、部品交換が終わるまで発音のことを見ているよう出水指令長に頼まれたな」

「あ、まあ、その通りなんだけど………」

「でしたらハヤト君、一緒に来てくれませんか?」

ミクに声をかけられ首を傾げるハヤト

 

ミクとハヤトは超進化研究所の上にある鉄道博物館の館内にいた

展示されている新幹線の車両のことを熱心に話すハヤトとそれを聞いて笑うミク

少し離れたところでそんな二人を見守るのは保護者役のフタバとすることもないのでついてきたアキタとツラヌキ

「鉄道興味ねえんじゃなかったのかよ」

「話は読めてる、以前ハヤトが約束したことを、発音も覚えていたんだろう」

「ハヤトの方は覚えてんのかな?」

「覚えているだろうさ、でなければあそこまで熱心に説明したりしない」

「確かに、いつもより勢いあるもんな」

「ねえ、これって私たち完全にお邪魔………」

「「気にするな」」

 

続けてやってきたのは二階のライブラリー

鉄道関連の書籍や雑誌のバックナンバーが数多く収められている場所

「うわぁぁ」

瞳をキラキラと輝かせるハヤト

ミクも資料の数の多さに圧倒されていた

 

ハヤトが厳選した車両関係の本を一緒に読むミク

アキタとツラヌキは興味なさげに椅子に座って

というかツラヌキは完全に寝ている

「ハヤトも大概だが、そのハヤトについていけている発音もどうなんだ………」

「あはは、まあいいじゃない、楽しそうなんだし」

フタバが見つめる先には楽しそうに笑うハヤトとミクの姿

 

H5の修理が終わりミクは北海道に帰るため乗り込もうとしていた

「今日はありがとう、ハヤト君、とても楽しかった」

「(楽しかった?あれで?)」

「(女子ってのはよくわかんね)」

「今度はぜひ北海道で、北海道にも鉄道にちなんだ観光名所はあるんですよ」

「わかった!三笠鉄道記念館だね!」

「「いや、どこそれ」」

「今度は私が案内します、ぜひ来てくださいね、ハヤト君」

「うん、きっと行こう」

笑顔で約束する二人

「ところで発音」

「俺たちは誘ってくれないのか」

左右からアキタとツラヌキに挟まれ顔を赤くしながら困惑するミク

「あ、えっと………」

「ほら、二人とも意地悪しないの、ミクさん困ってるでしょ」



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瞬間の勝負

「いったぁ………」

小気味いい音が響いてハヤトが頭を抱える

ミクの見事な面打ちを受け蹲っていた

「イタタ、ミクはすごいな、攻撃の瞬間が見えないや」

打たれた個所をさすりながらハヤトがミクを称える

「シノブもそうだけど、お前ら本当に足はえぇのな」

「いえ、私たちが特別速いというわけでもありません」

ツラヌキが感心しているとミクが訂正をいれる

「以前、剣道では下半身の力が重要と話したのを覚えてますか?」

「ああ、うん、攻撃の時有利になるんだよね」

「ええ、ですが剣道において、最も重視されるのは力ではなくむしろ速さなんです」

そう言って足先をトントン鳴らすミク

「もう一度構えてください、男鹿さんは私たちの動きをよく見ていてください」

「あの………おれは?」

ツラヌキの問いかけに対してミクはそっぽを向いて何も言わなかった

「なんか言えよ!」

「せーので打ち込みますよ」

「じゃあ、せーのっ!」

勢いよく振り上げたハヤトだったが次の瞬間ミクの攻撃が顔面を直撃してその場に倒れた

「ふぎゃっ」

「………なあ、お前なんか分かったか」

「話は読めた、二人の違いは足の高さだな」

「ええ、そうです」

「た、高さ?」

「勢い良く踏み込んだハヤトは足が大きく上がっていた、それに対して発音はほとんど足を上げていなかった、細かい理由までは俺にはさっぱりだが」

「すり足と言って剣道の最も基本的な動きです」

右足を前に出したまま構えたミクはそのままほとんど足を動かしてないように見えるにもかかわらず移動して見せた

「剣道は瞬間の勝負、攻撃も防御も一瞬で決まります、ですから少ない動きで無駄なく移動できるためにこのすり足を一番最初に身に着けることになるんです」

少ない動きで移動を繰り返すミクの姿に鼻をさすりながら既視感を覚えるハヤト

「あー!そうだ!シノブだ!」

「シノブがどうかしたのか?今日はいねーぞ」

「そういえば似てるな、二人の足さばき、ちょっと聞いてみるか」

ハヤトの言いたいことを理解したアキタはシノブに連絡を取るため電話を取り出した

 

「んだ、教えてくれて助かった」

シノブとの電話を終えたアキタが電話を切る

「どうだった?」

「シノブの話によると、すり足は剣道だけではなく、相撲や能にも用いられるそうだ、忍者も同様にすり足を使う、利点はさっき発音が見せたように少ない動きで躱せる点と、普通に歩くのと比べて足音が小さいから気づかれにくい、ということだそうだ」

ツラヌキの問いかけに答え終わったアキタは立ち上がるとハヤトたちの元へ歩み寄った

「おいおいどうした?」

「俺にも練習させてくれ、身につけておけば移動しながら狙いを定めることが出来る、E6にとってこの動きは大きな力になる」

「あ、俺は」

「重圧なE7には向かない技能だと思います」

ミクにバッサリと切り捨てられたツラヌキは体育座りで部屋の隅でいじけてしまった

その背中をシャショットがポンポンたたいている中ハヤトとアキタはミクの指導ですり足の練習を続ける

 

「だいぶ様になってきましたね」

アキタとハヤトの動きを見たミクは感嘆の意を込めて息を吐いた

アキタは練習用のライフルを構えながら右に左にと移動して見せる

ハヤトの方も一方的にミクに打ち込まれずかわそうとして

「いて」

失敗した

「完全に躱すのはまだ無理の様ですが、こればかりは慣れですから、シンカリオンでの動きには大きな力になると思います」

すると四人の携帯が鳴り響いた

「これまたタイミングがいい」

 

捕縛フィールドに突入した4人の前に現れたのは細長い体を持つ巨大怪物体だった

体そのものは今までの怪物体よりも小柄だがその銅の長さは圧倒的だった

「コードネーム、マッドスネーク、全長はおおよそ50メートル」

「なるほど、蛇ですか」

H5が剣を構えているとマッドスネークは一瞬で距離を詰め飛びかかった

何とか剣で受け止め弾き返すが二度同じことが出来るかどうか

「なんて速さなんだ」

「蛇の中には全身をばねのように使ってジャンプする種類もいます、夜行性も多く視力はあまり発達していないですが、舌を使って匂いを辿り、地面からの振動を体で感じることもできます」

指令部からの言葉を受けマッドスネークを観察する運転士たち

E7に飛びかかってきたのを何とか弾き返すとシャリンドリルを振るって反撃に移る

だが全身をばねのように使って一瞬で遠くまで

「クッソ、こいつちょこまかと」

「匂いや振動だけではありません、蛇は熱を感じ取る器官を持っています、それ自体は私が何とか出来ますが………」

「話は読めた、フミキリキャノンはまず間違いなく当たらない、懐に飛び込まなければやつは倒せない」

「あいつに気付かれず攻撃するには………」

と、ここでハヤトとアキタは閃いた

「「あれだ!」」

攻略法を思いつき構える運転士たち

「ツラヌキ、もう少しだけお願い、アキタ、リンク合体だ!」

「ああ」

「任せておけ!俺の好きな四文字熟語は電光石火だ!」

だがE7の攻撃はマッドスネークに悉くかわされてしまう

「ミク、熱の方はなんとか出来るんだね」

「はい、後は気づかれず接近できれば」

リンク合体を終えミクに問いかけるハヤト

残った懸念材料を解消する作戦がハヤトたちにはあった

「俺たちに任せて」

「わかりました、ハヤト君たちの作戦を信じます」

H5がカイサツソードを掲げエネルギーを込める

「ユーバリヒートシステム起動!はぁぁ!」

熱のこもった剣を地面に突き刺して温度を上げていくミク

かつてワイヤーに熱を通して破壊したように床の温度を上げてマッドスネークの熱感覚を封じる

地面からの高熱に戸惑う中E5が一瞬で距離を詰めてマッドスネークの懐に入った

「はあっ!」

威嚇のため体を上げたマットスネークの腹を斬りつけるE5

「今だ!」

H5が剣を掲げるとマッドスネークが光で出来た改札に閉じ込められる

「カイサツソード!」

H5に斬りつけられマッドスネークの体が爆散していく

 

「目標撃退」

「でも、どうやって気付かれず一瞬で」

本庄アカギが戸惑っていると出水指令長が眼鏡を光らせ口を開いた

「水平移動だ、右足を最低限の高さを維持した状態で踏み出して左足を地面に密着させた状態で移動する、音をたてないように一瞬で距離を詰めて踏み込んだんだ」

「それでリンク合体を、素早く距離を詰めるためにE6の機動力を加えたんですね」

 

巨大怪物体相手にすり足を上手く活用して勝利した運転士たち

そんな彼らは今

「うう~」

全員ダウンしていた

「いくら熱感知を封じるためっつってもやりすぎだろ」

「言い返す言葉もありません」

ユーバリヒートシステムで高温となった捕縛フィールドの床を伝ってシンカリオン本体にまで熱が伝わった

そのため運転士たちは戦闘中高温にさらされることとなってしまい全員汗だくだった

なにしろその作戦を実行したミク自身も顔を真っ赤にしてタオルを被りながら横になっているぐらいだ

特に最悪だったのが装甲の厚いE7で装甲内部に籠った熱が高温多湿の状態を作り出しツラヌキは脱水症状を引き起こして現在医務室である



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運転士VS魚

今回は公式の人気投票の結果を受けて上位三人を主役に書いてみました


超進化研究所の出水シンペイ指令長は腹の内が読めない人物だ

突然職員たちを温泉旅行に連れ出したり上田アズサが訓練に同行することをあっさり認可してしまったり

突拍子もないことをして三原フタバを驚かせることがある

そして今回もまた親睦を深めるべく企画を用意してきた

「なんで………釣りなの」

海辺の町で釣りに挑戦するシンカリオン運転士たち

だが、試験の近い清州リュウジが不参加

速杉ハヤトと大門山ツラヌキの二名はテストの点数が悪く居残り勉強のため不参加

その結果男鹿アキタ、月山シノブ、発音ミクの三名のみの参加となった

「釣りは初めてだな、おまえらは?」

「川でアユや鮭とったことはあるども海づりは初めてだ」

「私もそうですね、渓流釣りなら何度か」

「おめの場合は経験ある方がびっくりだ」

「ワカサギ釣りの経験もあります」

頭を抱えるフタバとは裏腹に無表情のまま会話を交え釣り船に乗り込む運転士たち

「………ちょっと待って、船?」

 

「うう~」

真っ青な顔で蹲るミク

彼女の乗り物に酔いやすい弱点がこの不幸を呼ぶこととなった

「大丈夫だ、今日は防波堤釣り、降りれば楽になる」

「だといいんですけど」

背中をさするアキタの裾をシノブが引っ張る

何事かとみてみれば

「うぅ~」

船酔いしているのはもう一人いた

「しっかりしろ保護者」

「そんなこと言っても………」

 

防波堤に降りると平然とするミク

フタバはと言えばなかなか船酔いから回復せず安全な場所で待機している

元々物静かな三人だ、特に会話が弾むわけでもない

ミクなど持ち込んでいた書籍を開いて読み始めてしまった

「今日は竹刀を持ってないんだな」

「竹刀を振る音で魚が逃げてしまいますから」

「かかんねな」

アキタの問いかけに本に集中しつつ答えるミク

シノブはじっと竿を見つめていた

「それ、何の本だ?」

「君(×に)〇〇〇たい」※〇=ピー音

「ハヤトだろそれをお前に勧めたの」

「よくわかりましたね」

「いやわかるわ、俺もそれ読んだし」

「お、かかった」

アキタとミクが現実逃避をしているとシノブにアタリが来たようだ

「お、おもて」

「手伝う」

「私もです」

 

「ああ、やっと落ち着いてきた、どう、釣れた?」

「私は坊主です」

「俺も坊主、シノブがアタリ二回来たけど一回逃げられた、後はメバルの稚魚が一匹、それはもうリリースした」

「あれぜって大物だった」

シノブが本気で悔しがっているあたり運転士たちも本気で楽しんでいるようだ

「さ、私も釣り始めちゃおうかな」

 

いつの間にかミクは本を読むことを辞め真剣に釣りに挑んでいた

「おい、海釣りは初めてなんだからそんなムキになることは」

「ムキになってません」

アキタの言葉にムッとしながら答えるミク

あれからしばらくしてアジやメバルが2~3釣れたもののミクだけは未だに坊主

意外と負けず嫌いな彼女は何か大物を釣って見返してやろうと真剣だった

「さ、そろそろ戻るわよ」

「あ、待ってください、あたりが」

「そんな自棄になって」

「ほんとにあたっとう」

釣り糸が力強く引っ張られミクを海に引き込まんとしている

「ねがかりじゃないよな」

「いえ、さっきとは違います」

一度ねがかり(※海藻や岩に釣り針が引っ掛かること)を起こしているミクはその時とは違う感覚であることにすぐに気づいた

「それっ!」

チャンスを見て一気に引っ張るミク

そこにいたのは

 

運転士たち全員集まっての速杉家での夕食会

「うわぁ、結構釣れたね」

「はじめてにしちゃ上々なんじゃねえの?」

「ちなみにお前海釣りの経験は?」

「あのなぁ、俺の地元は海産の豊富な石川県だぜ、あるに決まってんだろ」

「そういえばそうだったな」

男性陣が刺身などを前に話に花を咲かせていると

「まあ、これは全部俺らが釣ったんだども」

「え?じゃあミクは?」

「ひょっとしてあいつ坊主か?」

「ミク髪すごく長いけど?」

「あー、違う違う、魚が一匹もつれねぇこと坊主っていうの」

「違いますよ」

そう言って本日のメインディッシュの乗った皿を持ってミクが台所からやってきた

「え?何これ?」

「うおぉ!?クロダイじゃねえか?何?お前これ釣ったの?」

「高級魚なわけで」

「え!?すごい!?」

ハヤトとツラヌキが驚いているとミクは自慢げな表情になった

「ま、あれ一匹だけだけどな」

「し、言わぬが花だ」



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ハヤトとハルカ 絆のクロス合体

しばらくお休みしててごめんなさい
運転士が増えてその辺確定してからにしようと思っていました
で、今回のお話はそれを踏まえての妄想
だけど昔見ていたあるアニメの影響
ミサイルシールドが右手でシンゴウスピアが左手ってつまりはそう言うことでしょ


家族サービスのため一時的に大宮に戻ってきた速杉ホクト指導長

久々の家族水入らずで過ごす中戦いのダメージが癒えないシンカリオン各機は修理が遅れていた

「巨大怪物体補足、コードネームドラゴンフライ」

「H5と800に救援要請」

捕縛フィールドが射出されドラゴンフライがその中に閉じ込められる

だが修理の終わっていないシンカリオンが戦うのは危険すぎる

ハヤトとホクトは悔し気に携帯を見つめる

「こうなったら………」

懐からホクトが青いshincaを取り出す

だがそれを突如ハルカがひったくった

「ハルカ!?」

「私が行くわけで」

「無茶言うな!危険なんだぞ!」

「それでも………何もできないのは嫌なわけで………」

涙目になるハルカ

その心中を察したホクトはその頭に手を乗せた

「お前が無理することはない、4時間後にはH5が到着し巨大怪物体の対処にあたる」

「何もしないよりはマシなわけで」

「シンカリオンはな、誰でも乗れるわけじゃないんだ………」

「失礼しまーす」

ハルカを引き止めようとするホクト

だが突如としてシャショットが割り込んだことで全員が驚く

「少々お手を拝借」

「おい、シャショット」

「ハルカさんの適合率は89.6%でございまーす」

「おい!」

「行かせてあげましょう」

声を上げるホクトを制したのはサクラだった

「お母………」

「その代わり、ちゃんと無事に帰ってくるのよ」

「はぁ、敵わないなぁ」

「俺もE5の修理が終わったらすぐ駆けつける!」

ウインクするサクラと頭を抱えるホクト

兄も背中を押してくれる

 

500の運転席に搭乗するハルカ

シンカギアにshincaをセットする

「シンカリオン500!出発進行!」

500が勢いよくホームを飛び出していく

「シンカギア起動確認!」

「超進化速度………突入!」

「超進化速度、加速します」

「超進化速度到達!」

「チェンジ!シンカリオン!」

「500、シンカリオンに変形します」

先頭と最後尾の車両が分離し中間車が腕部と脚部に変形

最後尾の車両がシールドと脚部の装甲へと変わった

「シンカリオン 500こだま」

 

ドラゴンフライが空中から500を見据える

その細長い羽を震わせて向かってくるが500はシールドでその突撃を受け止めた

目の前に迫っていたドラゴンフライを見据えながら以前聞いた兄がシンカリオンに乗った理由を思い出すハルカ

「私もお父の役に立ちたいわけで………みんなの夢を………お兄の夢を!守りたいわけで!」

盾を持った手を突き出してドラゴンフライを弾き飛ばす500

「シンゴウスピア!」

「シンゴウスピア」

左手に持った槍を投擲してドラゴンフライに命中させる

 

「やるじゃないか………」

その様子を見ていたビャッコが呟く

「だが」

 

力強く羽ばたいたドラゴンフライ

それによって発生した風の勢いに身動きが取れない500

「このままじゃまずいわけで………」

すると捕縛フィールド内に警笛が鳴り響く

E5とよく似た紫色のラインを持つ機体

「H5!」

「チェンジ!シンカリオン!」

ミクの叫びと共にH5はやぶさがシンカリオンモードに変形する

「シンカリオン H5はやぶさ」

 

「やぁぁ!」

H5が剣を振り上げ高い位置にある足場から飛びかかる

ダメージは与えたものの決定打にはならない

それでも動きを止めることは出来た

「今です!」

「ミサイルシールド!」

500こだまの必殺技がドラゴンフライに襲い掛かる

決まったかに思われたが高速で飛びかかってくるドラゴンフライがH5と500に襲い掛かった

「このままでは………」

「お兄!」

「ハルカ!」

追撃が迫り目を瞑ったハルカの耳に兄の声が響く

カイサツソードを投擲してドラゴンフライの注意をそらすE5の姿が

「間に合ってよかった」

間一髪駆け付けたE5が500こだまに駆け寄る

「お兄………」

「ハヤト!ハルカ!クロス合体だ!」

通信越しに二人の耳に父の声が響く

「クロス!?リンク合体じゃなくて?」

「東西のシンカリオンの力を合わせるんだ、大丈夫だ、お前たちならやれる」

父の言葉に二人は目を合わせ頷いた

出現した500こだまのshincaをかざすハヤト

「「クロス!シンカリオン!」」

変形したE5の手足に500こだまが装備される

「シンカリオン E5クロス500」

 

合体したシンカリオンの手にシンゴウスピアとカイサツソードが合体した巨大な武器が握られる

逃走を図るドラゴンフライだが

「逃がしません」

それより早くH5が剣をかざしその動きを封じた

「カイサツソード!」

H5の攻撃が決まりドラゴンフライに隙が出来る

「今です!」

「「カイサツトライデント!」」

巨大な武器を振るって十字を描くように斬りつける

強力な攻撃を受けてドラゴンフライは爆散する

「目標撃退」

「やったな、ハルカ」

「あ………うん」

 

「酷いっすよ師匠~!」

九州から5時間近くかけて駆け付けた大空レイ

だが駆け付けた時にはすでに戦闘は決着していた

「いや~、ごめんごめん」

「すっかり忘れてました」

「ちょ!」

「冗談ですよ」

ミクにからかわれレイがショックを受けていると500こだまがホームへ戻ってきた

「ハルカ!」

兄とその友人たちに囲まれ質問攻めにされるハルカ

するとそんな彼女にホクトが歩み寄った

「お父、これを返すわけで」

「それはお前が持っていなさい………たく、これじゃあなんのために500こだまを開発したんだかわからないな」

困ったように頭を掻くホクト

「よく頑張ったな、ハルカ」

父に褒められ照れてしまうハルカ

緊張と疲労で限界だったのかそのままふらりと倒れてしまう

「わー!ハルカ―!?」

「医務室だ!急げ!」



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運転士の夏休み

出水指令長の発案でキャンプに出掛けることとなった運転士たち

保護者としていつものように三原フタバと

なぜか出水指令長本人と上田アズサも同行

E7に乗った運転士たちが長野県のキャンプ場へと向かっていた

 

「うっ」

車内で運転士たちとババ抜きに興じていたフタバは顔を青くする

「(話は読めた、引いたな)」

「(引いた)」

「(引いたか)」

「(引きましたね)」

「(引いたんすかね?)」

運転士たちの中で察しのいいメンツはその反応ですべてを悟った

 

キャンプ場についた一同はロッジに荷物を置くと近くの川へと遊びに行くことになった

林に囲まれた場所にあるグループバンガローに宿泊する

E5に似た緑と白の海パンを着たハヤトが川に向かっていくと

「待て、まずは準備運動からだ」

白地に蒼いラインの入った海パンを着たリュウジに肩をつかまれ阻止された

「はーい」

 

準備運動を終え川に入っていくハヤト

「うわっ、冷たい」

川の水の冷たさに足を上下させていると

「それーっす!」

「うわっぷ!」

白地に黒と赤のラインの入った水着を着たレイが

「やったなレイ!こっちも」

「なんの!まだまだっす!」

互いに水を掛け合うハヤトトレイに白いパーカーを着たミクが歩み寄る

「あっ?ミクもやる?」

それに気づいたハヤトが声をかけるとミクはパーカーを脱いで白と緑の二色で構成された水着姿になった

紫色のリボンがアクセントになっていてH5を彷彿させる色合いとなっている

「うっひょぉー!ミク先輩素敵っす!ね、ハヤト先輩………あれ?」

そんなミクの水着姿にハヤトが見とれておりレイが目の前で手を振っても反応がない

「うわっと」

「わっ!」

そんなハヤトの顔面にミクが水をかけるとハヤトは驚いて尻もちをついてしまった

「ぼーっとしてるからですよ」

「やったなぁ」

楽しそうに遊ぶミクとハヤトたち

「それにしてもあれだな、ミクとハヤトの水着色とか似ててお揃い………ふぎゃ!」

その様子を見てつぶやいていたツラヌキに二か所から同時に水がかけられさっきのハヤト以上に派手に転んでしまう

「「もう!なに言ってるんだよ(ですか)」」

犯人は真っ赤になって照れてるミクとハヤトだった

 

「へっへーん、どうよ?JSが川遊びしてみた!やるわよー!」

ピンクをベースに胸元に赤いハートをあしらった水着を着た上田アズサが声を上げるが

「何すんだよ!わっぷ」

「それ!ダブルグランクロス」

「えいえい!」

「H5ってグランクロス使えるのか?」

「さあ?」

運転士たちは水遊びに夢中になっていて全く見向きもしない

がっくりと項垂れるアズサの肩を出水指令長とリュウジが左右から優しくたたいた

 

夕方、水遊びを終えた運転士たちはみんなで夕食のカレーを準備することとなった

シノブ、リュウジ、ミクの三人が見合っている

「牛乳!」

「玉ねぎ」

「漢方薬!」

カレーに入れるものを思い思い掲げる三人

「漢方は難しいだろう」

「問題ありません、大沼支部長に教わりました」

「こればっかりは譲れね」

三人が方針でもめてる一方ほかの運転士たちは茫然とその様子を見守っていた

「君たちも手伝うんだ、結束力を高めるいい機会だからね」

「話は読めた、これも訓練の一環というわけか」

「けどよ、あっちの決着つかねえとまったくもって進まねえぞ」

「あはは………」

 

包丁でジャガイモの皮をむくハヤト

うまくいかず苦戦していると

「どうぞ」

ミクがピーラーを差し出した

「あ、ありがとう」

「じゃがいもはまな板の上に置いて剥くとやりやすいですよ」

そういってミクが自分の持っていたジャガイモをまな板の上に置いてピーラーで上手に剥いていく

その様子をじーっと見つめていたハヤト

「なんですか」

「いや………やっぱりミクって女の子なんだなぁって思って、料理してる姿とかすっごく似合ってるし」

ハヤトに褒められて真っ赤になるミク

「ほめても何も出ませんよ」

「ふふっ、さ、おれもやっちゃおっと」

 

「あっち楽しそうだな、お前はどうよ、女の子」

「うるさい!気が散る!」

バーベキュー用の玉ねぎを切りながら隣の上田アズサに声をかけるツラヌキ

アズサはといえば玉ねぎの洗礼を受け大泣きしていた

「っていうかなんであんたは平気なのよ」

「洗濯ばさみ、お前も使うか?玉ねぎは鼻から入るんだぜ」

「………まじ?つかあんたがそういうの知ってるの意外なんだけど」

「俺だって母ちゃんの手伝いぐらいするっつの」

自分が女子として負けた気がして玉ねぎ以外の理由で涙が出そうな上田アズサだった

リュウジとレイがほかの食材を調理する中

アキタとシノブは火をおこすための薪を割っていた

「こういうのもいいもんだね」

「そうですね………あの、出水指令長」

「ん?」

フタバが困ったように声をかけた先には完全に切れていないニンジンを摘まむ出水指令長の姿があった

 

「うおぉー!うまそう」

バーベキューの食材が焼ける光景を見てツラヌキが声をあげる

「こっちもよさそうですよ」

創言ってミクが声をかけるとカレーの鍋を開け見事に出来上がったカレーを見せた

 

全員であいさつをして夕食を食べる

がっつくツラヌキの様子を見てアキタとシノブがドン引きしている

声をあげ喜ぶレイの口元をリュウジが拭いていた

ほっぺたをおさえ夢中になる上田アズサ

ハヤトとミクも二人笑いあいながら食べていた

そんな子供たちの様子を見てフタバと出水は笑いあっていた

 

簡易カラオケセットで陽気にツラヌキがスーパースパイスの曲を熱唱

歌い終えた後フタバが苦笑しながら拍手を送る

「じゃあ次私が」

「お、ミクか、何歌うんだ」

「ちょっと、教えてもらった曲を」

「またあの支部長に教えてもらったのか?」

「となると、津軽海峡冬景色とかか?」

「アキタ君なんでそんな曲知ってるのよ」

「きらきーらひーかるひとーみが、ゆーめみーるばしょへー」

「「ハヤトにだな!」」

アキタとツラヌキがハモってのツッコミであたりは笑いに包まれた

「さて、俺も………」

「鉄道唱歌はだめだぞ、長いからな」

「ちぇ、じゃあ銀河鉄道999にしようっと」

「それなら、私が本家銀河鉄道999(※1978年版)を披露してあげよう」

「リュウジもなんか歌う?」

「ん?そうだな………じゃあ、やさしさに包まれたなら」

「意外!てかリュウジ君もそれ生まれてないでしょ!」

「いやー、でも知ってると思うよ、一世を風靡した曲だし」

「母の青春時代です、小さい頃よく聴かされてました」

「せんぼんざーくら」←二巡目

 

「ん………トイレ」

夜中トイレに目が覚めたハヤトはロッジの外に出る

「ん?ミク?」

するとロッジの外で竹刀を振るミクの姿を見つけた

「こんなときにも練習?」

「日課ですので、それに、なんだか眠れなくて」

声をかけてきたハヤトに笑いかけるミク

ハヤトも笑い返すと今日一日のことを思い返していた

「すごく楽しかった………」

「また来ようよ、みんなでさ!そうそう、実はさ」

こうして始まったハヤトの話をミクは笑いながら聞いていた

 

仕事の関係で電話していた出水指令長がロッジに戻ってくると

「おや?」

ロッジの外で寄り添って眠るハヤトとミクに気づいた

「こんなところで眠ると風邪をひいてしまうよ」



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ある日のグループメッセ

※今回はグループメッセ風ということを表現するためあえて台本形式になっております


てっぱくリニューアル

ハヤト:E5のシミュレーターやってたらミクが酔った

ツラヌキ:シミュレーターで酔うってまったくもって訳わからん

アキタ:まずそうなった経緯を説明しないと話が読めない

アズサ:なんで当たり前のように女の子とデートしてんのよあんた

故郷の味

アキタ:聞いてくれ

アズサ:なになに?

ハヤト:何があったの?

アキタ:昨日訓練帰りにツラヌキと食料を買いに行ったんだが

ハヤト:ああ、寮生活だもんね

アキタ:あきたこまちを買うかコシヒカリを買うかで大ゲンカ

ハヤト:そんなことで………

リュウジ:いや、コメの品種は大事だ

ハヤト:意外な人が乗っかってきた!?

リュウジ:ちなみにうちはあいちのかおりだ

ハヤト:いやなにソレ!?お米の名前!?

シノブ:女鶴はどうだ

ミク:↑それはもち米です

アキタ:↑山形県産のもち米

リュウジ:↑高級なもち米だろ

ハヤト:知らない俺がおかしいの?

苦手な敵

ハヤト:今日の訓練データフロストツリーだった、スコアすごく落ちた

アキタ:いつもはレイルローダーだがな

ツラヌキ:様々な局面を想定してとか言ってたな

シノブ:↑おらの好きな四文字熟語は臨機応変だ

ツラヌキ:↑盗んな俺のセリフ!

ハヤト:俺本当にあいつヤダ

ミク:お呼びですか

アキタ:確かにミクの得意そうな相手だな

ミク:↑あなたもね

ツラヌキ:俺も今日は結構スコア高かった

ハヤト:↑えっ?

アキタ:↑なん………だと?

ミク:↑ツラヌキ君が活躍………?

ツラヌキ:お前ら俺をなんだと思ってんだ、つか金沢も雪国だからな一応

シノブ:|д゚)

コイバナ

アズサ:唐突だけど運転士の中で彼氏にするなら誰だと思う?

ミク:本当に唐突ですね

アキタ:↑なぜグループで話題を振った

ツラヌキ:↑本人のいないところでしろよそういう話は

シノブ:|д゚)

アズサ:私的には前に助けてくれたツンデレ君とかかっこいいと思うの

ミク:誰のことですかそれ

アキタ:↑リュウジ

ツラヌキ:↑リュウジ

リュウジ:↑↑誰がツンデレか

ミク:まあ、顔立ちでいえば整っている方でしょう、年上ですし頼りになるところもあります

アキタ:↑無視するな

ツラヌキ:↑本人いるのに評価始めたぞ

ミク:しかしあなたのような暴走機関車には彼のような手厳しいタイプは不釣り合いなんでは

アキタ:↑確かに

ツラヌキ:↑確かに

アズサ:誰が暴走機関車よ!ハヤトみたいな例えしないで

ミク:そういえばハヤト君の既読がついてませんが?

ハヤト:宿題に追われているでありまーす

アキタ:↑おいシャショット

ツラヌキ:↑シャwショッwトw

アズサ:↑ジュース吹いちゃったじゃないww

よくいる

ツラヌキ:最近上田アズサ気付くと研究所にいるよな

アズサ:いちゃ悪いか

アキタ:しかし運転士でないお前がどうやって研究所に出入りしている?

アズサ:ゲストカードを出水さんにもらった

ハヤト:出水指令長なにしてくれてんの!

アズサ:それにしても運転士って集まり悪いのね、よくいるのってシノブぐらいじゃない?

ツラヌキ:お前が言うな

ハヤト:まあ山形新幹線なら3時間かからないくらいだから

アズサ:よく知らないけど北海道新幹線も直通なんでしょ?

アキタ:↑ただし4時間

ツラヌキ:↑4時間かかるけどな

ハヤト:↑4時間かかるよ

ミク:↑本当はもっと行きたいんですけど遠いんです

ハヤト:うわっ!びっくりした

シャショット

ハヤト:ハヤト君宿題に苦戦中でありまーす

ツラヌキ:↑おいシャショット

アキタ:↑またおまえか

リュウジ:ハヤトはスマホにパスワードを設定していないのか?

ミク:不用心ですね

ハヤト:そんなものわたくしにかかればすぐわかってしまうでありまーす

アズサ:↑おまわりさんこいつです

ツラヌキ:ダメだろそれ

アキタ:またけんかになっても知らんぞ

ハヤト:口にガムテープ張ってカバンに閉じ込めておきました

職員を労う

アズサ:休憩室で寝てる人発見(写真)

ツラヌキ:よく見えねえけどヒビキの姉ちゃんか?

アキタ:また例の黒い粒子の分析か?

ハヤト:そういえば研究所の人っていつお家に帰ってるんだろう

リュウジ:最初は深夜に巨大怪物体が出現するのが当たり前だったらしい

シノブ:おらお茶入れてくる

アキタ:手元にあるものでよければお茶請けに持っていく

ハヤト:フタバさんに毛布がないか聞いてみよう

ツラヌキ:えっと、俺は何すりゃいいんだ?

ヒビキさんがグループに参加しました

ヒビキ:そこまで気を使われなくても………

アズサ:あ、起きてたんですか?

実は一番大人?

レイ:今日たまたま小倉駅に来てたっす(写真)

ハヤト:うおおおおおおお!ドクターイエローだ!

アキタ:↑落ち着け

ツラヌキ:↑落ち着け

レイ:ところで週末訓練に行くときのお土産これでいいっすか?(写真)

アキタ:↑小倉日記………だとっ!

ツラヌキ:↑お前も落ち着け

ミク:(写真)

アキタ:↑白い恋人………

ツラヌキ:↑張り合うなよ

レイ:あ、H5用に機体安定性を向上させるアイディアもいくつか用意してるっす

フタバ:レイ君って本当に一番年下なの?

動画のアイディア

アズサ:動画のアイディアだれかいいのない?

アキタ:話は読めた、だが断る

ツラヌキ:俺の好きな四文字熟語は敵前逃亡だ

アズサ:またそれか!

ハヤト:新富士駅で新幹線撮ってみたとかどう?

アズサ:↑私の好きな四文字熟語は即刻却下よ

ツラヌキ:↑それ熟語じゃねえし

リュウジ:確か通過時間が5秒前後だったか?

アズサ:んな短いの動画になるか!

オルゴール

ハヤト:そういえばリュウジ

リュウジ:なんだ?

ハヤト:前見てたオルゴール病室に置いてあったけどいつのまに買ったの?

ツラヌキ:話は読めた

アキタ:↑俺のセリフだ

リュウジ:ブラックシンカリオンと戦った後だ、帰る前に店に寄った

シノブ:(写真)

リュウジ:いつの間に!?

シノブ:(写真)

ハヤト:ミクもあのぬいぐるみ買ってたのか………

ミク:(/ω\)

アズサ:忍者みたいなことするわね

シノブ:忍者だ



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今後の展開予想

今回特に捏造激しいお話になっております
様々な作品を見てきた影響で思い浮かんだこうなったらいいな展開です
捏造カップリング(っぽいもの)もございますので注意
しかも今回ミクさん出てきません、ハヤト君もちょっとだけです


ブラックシンカリオンを駆るセイリュウとの戦いから時がたったころ

上田アズサが自らの野望のため今日も超進化研究所を訪れた時だった

「うっ!」

片目が隠れるほどの長い髪の少年が茂みから倒れこんだ

「ちょ!?なになに?」

常識外れな行動で周りを困らせることも多い上田アズサだがこの時ばかりは困惑し行動を起こした

研究所に入り浸るうちに仲良くなっていた職員たちの中から医務職員の久留米ミドリの番号を探して電話をかける

駆け付けたミドリが少年を抱き上げアズサも続こうとする

「あっ、これあの子の………えっ!?」

足元に落ちているものに気付いたアズサはそれを拾い上げようとする

だが直前で手を止めた

そこにあるのはハヤトたちが持っているものとよく似た黒いカード

そう、ブラックシンカリオンのShincaだった

「あの子………」

 

少年を保護した経緯を説明するアズサ

運転士たちもそばで話を聞いていた

「いったい何者なんだ」

「さ、さぁ………私も突然でびっくりしたから」

「せめて何か手掛かりになるようなものがあれば」

ミドリの言葉にドキリとする上田アズサ

背中越しに持っていたものを隠そうとするが

「あっ!」

いつの間にか後ろにいた出水指令長に取り上げられてしまった

「これは何かね?」

「その………それは」

「それってブラックシンカリオンの………」

「恐らくそうだろう」

「話は読めた、つまりこいつは………」

「エージェントのセイリュウ!?」

なぜ助けたのか追及される上田アズサ

「だって、エージェントとか、敵とか以前に!困ってる人放っておけないよ!」

 

出水指令長が折れたことでアズサがセイリュウの面倒を見ることに

意識を取り戻したセイリュウはケガで満足に動けずおとなしくアズサに介抱されることに

彼女との触れ合いを経て戦うことしかなかったセイリュウの中で何かが変わっていた

 

窮地に陥ったシンカリオンを見て起き上がるセイリュウ

「どうする気!?」

「速杉ハヤト………あいつを倒すのは俺だ………誰にも邪魔はさせない!たとえかつての仲間であってもだ」

そんなセイリュウにアズサはブラックシンカリオンのShincaを差し出す

「おかしなやつだ………やつを助けた後そのまま戦いを挑んだらどうするつもりだ」

「でも………」

「そいつは必要ない………」

そう言ってアズサの手に触れるセイリュウ

そのぬくもりに触れてじっと自分の手を見た

「………名前、なんて言ったか?」

「え?アズサ、上田アズサ………」

「アズサ………不思議なものだな、この気持ち………俺には理解できない………だが、この温もりは悪くない」

「(えっ?笑った………)ってうわぁぁ!?」

ブラックシンカリオンのShincaから噴き出すナノマシンに驚くアズサ

そのすべてがセイリュウに集まっていく

 

怪物体形態になったセイリュウが命がけでシンカリオンを救い出す

「速杉ハヤト!」

「えっ?」

「上田アズサに伝えろ………お前との日々、悪くなかったってな」

「セイリュウ………」

「セイリュウ!あんた何をする気!」

力のすべてを振り絞って敵に向かっていくセイリュウ

そんなセイリュウに超進化研究所の指令室から呼びかけるアズサ

「(お前たちと俺の違い………最期の時になってようやく気付けるなんてな………俺たちになかった………ヒトが愛と呼ぶ感情………もっと早くお前と出会えていれば、俺も違う道を歩めたかもしれない………)」

すべての力を解き放ち敵と相打ちで爆散していくセイリュウ

「セイリュウー!」

アズサの叫びだけがその場に響いた

彼女の手の中のブラックシンカリオンのShincaに涙がこぼれる

「ありがとう………アズサ」

セイリュウの最期の言葉がアズサの耳に届いた気がした

泣き崩れるアズサをフタバが優しく抱きしめる

 

決戦に臨むシンカリオン各機だがイザの力の前に窮地に陥っていく

そんな中上田アズサはブラックシンカリオンの操縦席にいた

「セイリュウ、あたしに力を貸して」

Shincaをセットすると機械的な声が響く

「この列車は地下世界行きです」

「ブラックシンカリオン!出発進行!」

アズサの乗ったブラックシンカリオンがハヤトたちの戦いの場へと向かっていく

「チェンジ!ブラックシンカリオン!」



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女子高生 発音ミク

今回は未来捏造に挑戦
昨日の口直しです


道場に響く竹刀のぶつかり合う音

打ち合っていた二人のうちの一人が竹刀を回して巻き上げると一瞬のスキを突いて切り込んだ

「めーんっ!」

一人の声とともに対戦相手は面を打たれ尻もちをついてしまう

「ふぅ、やっぱり強いなぁ、発音さん」

倒れた少女が面をとるともう一人も面をとって頭に巻いた布を引いてほどく

きれいな青緑色の髪がその勢いで靡いた

「いえ、こちらも何度か危ない局面はありました」

 

シンカリオンと滅びゆく種族との戦いを終えた運転士たちはその後も運転士であり続けた

だが運転士たちの適合率は年齢を重ねるとともに下がっていった

運転士たちはもうシンカリオンに乗ることはできない

それでも子供を戦わせていた負い目もあるだろうが超進化研究所とのつながりは消えていなかった

埼玉県内の高校にスポーツ推薦で進学したミクもその一人

もともと北海道に住んでいた彼女がこちらに移住する際の住まいの手配などを援助してくれた

遠く離れた地で暮らすことでの不安はもちろんあった

何より彼女は故郷が大好きだったのだから

それでも充実した環境で剣道に打ち込むことができて二年生になるころには彼女の不安はすべて消えていた

 

「すっげえよな発音先輩」

練習帰りにそう話すのは今年剣道部に入部した一年生の男子生徒だった

「美人で剣道強くて勉強もできるんだろ、完璧じゃん」

「確かになぁ、俺アタックしてみようかな」

「よせよせ、お前じゃ釣り合わねえよ」

「ちぇっ、ん?あ、噂をすれば………」

少年の視線の先にはチャームポイントである長めのツインテールを揺らし校門の方へかけていくミクの姿があった

「あんなに急いでどこ行くんだろう?」

少年たちが視線で彼女を追いかけると校門のところで他校の男子生徒と思われる少年に声をかけるのが見えた

「えっ?」

やがてその少年の腕に抱きついてうれしそうな顔で校門から出ていくミクの背中を少年たちは立ち尽くしたまま見送った

「発音先輩、彼氏いたんだ………」

「そうだよなぁ、あんな美人男ならほっとかねえよな」

「顔はよく見えなかったけど俺だって」

「「無理無理」」

「あれ、あんたたちミクに彼氏いるの知らなかったの?結構長いらしいわよ」

そう言って乾いた笑いをこぼす少年たちに声をかけたのは剣道部に所属する二年生の女子生徒

こちらでのミクの友人の一人だ

どうやら二年生の間では有名な話だったらしい

 

さて、学校を出たミクはといえば先ほどの少年とてっぱくのトレインテラスで二人座り込んでいた

「ここはいつ来ても変わりませんね」

「そうだね………俺も子供のころからこの場所が大好きだよ」

「ふふっ、ハヤト君の場合は新幹線が見れるからじゃないですか?」

そう、この少年こそかつてE5の運転士として中心に立っていた速杉ハヤトだった

現在は子供の頃からの夢であった新幹線の運転士を目指して高校に通いながらこのてっぱくでバイトをしている

「そう言えば昨日、電話で久しぶりにツラヌキと話したよ」

「元気にしてました?」

「元気元気、まあ勉強は大変みたいだけどさ」

「ふふっ、私もこの間試合に行った先で偶然アキタ君と会いましたよ」

「みんな頑張ってるなぁ」

あれからシンカリオン運転士たちはそれぞれの進むべき道、目指す道を走り続けていた

アキタは目指していたビームライフルの強豪校への進学を果たし

競技を続けながら守るために銃を握る道

警察官を目指して勉強しているという

ツラヌキは故郷の金沢に帰りジムに通いながら実家の建設会社を手伝っている

ずっと目指していた道を文字通り貫いていた

「きっとツラヌキがこの場にいたらこういうと思うよ、俺の好きな四文字熟語は」

「「初志貫徹だ」」

二人の言葉がぴったり重なって笑いあう

シノブは故郷で修行を続け受け継いできた技が色褪せぬよう受け継いでいく道を選んだ

彼らがシンカリオンに乗れなくなってから超進化研究所では新たな運転士を選定してきた

E3の運転士候補はシノブの弟弟子だという

超進化研究所山形支部で訓練中とのことだ

「まあ、シノブはまだE3に乗れるみたいなんだけど、本人に続けるつもりはないみたい、引き際を見極めるのもまた忍びの役目、だってさ」

そしてリュウジ

運転士たちの頼れる兄貴分だった彼は母の病気を治すため医者を目指した

現在は大学に通いながら超進化研究所東海支部の一員としても働いて生計を立てている

ちなみに同じようにてっぱくでバイトしながら超進化研究所の一員でもあるハヤトの先輩でもある

ハヤトの高校受験の勉強に付き合ったのも彼だ

「すっごく厳しくて、つらい日々だったけどさ」

空手の道をあきらめきれなかったのか弟妹達がしっかりしてきてからは少しずつ再開してきているという

ちなみに現在中学生のレイは宇宙飛行士の夢を叶えるため勉強を続けている

超進化研究所で技術関連の手伝いを続けながら

去年ごろから成長期に突入したようで電話で成長痛に悩まされながら嬉しそうに報告してきたのをハヤトは昨日のことのように覚えている

必死に背伸びしようとしていた彼が望んだ姿に届く日もそう遠くないようだ

「また去年みたいにみんなで夏祭り行こうね」

「もちろんです」

ハヤトの言葉に笑顔で答えながらミクは彼を見た

ミクは剣道を続け現在でも競技を続けている

首都圏の強豪校にスポーツ推薦で入学を果たし故郷を離れた

ほかの運転士たちと違い彼女には明確な目標はない

剣道は続けていきたい

大好きだった故郷のために何かしたいという気持ちもある

アキタのように守る道を選ぶのもいいだろう

ハヤトやリュウジのように超進化研究所、函館支部に努めてお世話になった大沼指令長に恩返しする道もある

ただ一つだけ言えること

それはどんな道であろうと、大好きな彼が隣にいてくれれば………

「あっ、ハヤト君、H5が」

「本当だ!あ!向こうからE5も」

よく似た二つの新幹線がすれ違う光景を共に眺めながら二人は笑顔になった

そう、自分たちはこれからも走り続ける

新幹線のように夢へと向かうレールの上をまっすぐに………

「はーい、お二人さん、今日も仲良くデートですか?」

「ひゃあぁ!?」

「うわあぁ!?う、上田アズサ!?」」

そんな二人に後ろから声をかけたのは長い髪をサイドポニーにまとめた上田アズサだった

「な、何でここに」

「それはもちろん取材のためー、文化祭用の作品のネタ探し」

彼女はユーチューバーを続けながら高校では映画研究会に所属し作品作りに励んでいた

目下の目標はシンカリオンと滅びゆく種族の戦いを元にした映画を作り大ヒットすること、だそうだ

「にしても相変わらずお熱いですなー、まったくこの時期にこっちまで暑くなりそう」

「余計なお世話だ!」

ちなみにハヤトと同じ高校でクラスも一緒

ハヤト曰く幼馴染の腐れ縁は続いているようだ

「ねえ、せっかくだから研究所の方も見せてよ」

「えー、俺今日休みなのに………」

困惑するハヤトの姿にくすくす笑いながらも助け船を出すべくミクが身を乗り出す

 

「ただいま~」

「お邪魔します」

現在は一人暮らしをしているミクだがこうして時々は速杉家の夕食に招かれることもあった

「お帰りであります~」

シャショットはハヤトがE5を降りた後次の運転士に引き継がれる話もあった

だが彼自身がそれをよしとしなかった

彼はハヤトの相棒であり続けることを望んだのだ

現在はハヤトの超進化研究所での仕事をサポートしながら新たに開発されたE5のインターフェースロボットに先輩として指導している

「お帰りハヤト、ミク君もいらっしゃい」

「お父さん今日は早いんだね」

「ハハッ、たまにはな」

戦いが終わり超進化研究所京都支部での業務を終えた速杉ホクト指導長も単身赴任を終え大宮へと戻った

現在はフタバとともに新たな運転士たちの指導をしている

 

夕食を終えミクを送るべく一緒に歩くハヤト

「楽しみだね、夏祭り」

「夏祭りももちろんですけど、私の試合の応援に来てくれる約束も忘れないでくださいね」

「忘れたりしないよ、俺は時間と言ったことは守る男だもん」

「ふふっ、変わらないですね、そんなハヤト君だから好きになったんですが」

「ミク………」

二人はそのまま見つめ合い、やがてゆっくりと唇を重ねた

 

「ふう、お兄たちも、いちゃつくならもうちょっとマンションから離れてからにするべきで」

そんな兄たちの様子をマンションのベランダからこっそり撮影するハルカの姿があった

後日招かれた夕食の席でその時の写真を見せられハヤトとともに真っ赤になるミクの姿があったという



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ハヤトとヒビキの名古屋日記

ハヤミクの他に実は初期から気になっているキャラクターがいるので
今回はそのキャラクターを主役にしたお話を考えてみました
これもまた捏造入ってます、たぶん本家でそのうち明かされる
ところで皆さん、河野サキというキャラクターはご存知ですか?


これはハヤトが負傷したリュウジに代わって名古屋支部の応援に来ていた時のこと

ハヤトとホクトはリュウジの母である清州カエデのお見舞いのため病院を訪れようとしていた

「しかし、なんでまたこのタイミングでお見舞いに?この間一度来たんだろう?」

父の問いかけにハヤトは苦笑した

「いやー、リュウジがケガしたの俺のためだし、それにこの間はちょっと顔を見せただけで帰っちゃったから、せっかく名古屋に来たんだから一回くらい顔を見せた方がいいかなって」

「そうだな………俺もいい機会だし」

病院の入り口を通ったハヤトとホクト

ふと、受付の方にいた一人の女性と目が合った

「あ、ハヤト君、速杉指導長も」

バスケットを持ったその女性はハヤトたちも知っている人物だったからだ

「え?ヒビキさん?」

「やあ、君も来たのか」

「ええ、出水指令長にたまには休んだ方がいいと言われて、ずっとナノマシンの解析に追われていましたし、一度来ておきたかったので」

普段は白衣を羽織り落ち着いた装いのヒビキだったが今日は私服で訪れているようだった

「えっと、もしかしてヒビキさんもリュウジのお父さんと………」

「ええ、チクマさんは私の先輩にあたる人なの、新人時代、私にいろいろ教えてくれた人でね、今こうして研究チームで働けているのもあの人のおかげ」

過去に思いを馳せるヒビキをじっと見つめるハヤト

 

病室でホクトやヒビキを交えながらリュウジとカエデに会うハヤト

ヒビキがお見舞いに持ってきたお菓子を分けながら話をする

「あの、ヒビキさん」

「ん?わたし?」

「せっかくなので、お父さんたちの昔の話、聞かせてもらえませんか?」

「昔の話?そうね………」

口元にスプーンを置きながら考えを巡らせるヒビキ

 

チクマさんと速杉指導長はとてもいいコンビだったの

熱くなりがちな速杉指導長を冷静なチクマさんが宥めて

「その点で言ったら、ハヤト君は落ち着いてていい子ね」

「カエデさん、そりゃないですよ」

「でも、リュウジはとても落ち着いていると思います」

「んー、でもリュウジ思い立ったら一直線なところあるからなぁ、速杉さんから変な影響受けちゃってるかも」

「ちょ、母さん」

「ぷっ、くくっ」

「三島君、笑ってないで続き」

 

私が超進化研究所に配属されたのは大学を出てすぐの時

当時研究者としてまだ未熟だった私をチクマさんはよくフォローしてくれてたわ

「あのー三島君、俺は?俺も結構手伝ってたと思うんだけど」

「よくマニアックな方向に話を脱線させてチクマさんやキントキさんに止められてたじゃないですか」

鉄道の話に脱線して理解が追い付かなくなり混乱するヒビキの姿

そして混乱させた張本人である当時のホクトはその様子に気づかず話し続けていた

「………」

「リュウジ、なんでそこで俺を見るの?」←すぐに新幹線で例えてしまう人

 

「ヒビキさん、今日はありがとうございます」

「いいのよ、私も懐かしい話ができて楽しかったわ」

リュウジとホクトはもうしばらく話があるということでヒビキがハヤトを名古屋支部まで送り届けることになった

「俺、お父さんのことを自由研究のテーマにすることにしたから、今日はお話聞けて良かったです」

「あ、シンカリオン関連のことは書いちゃだめだからね」

「上田アズサじゃあるまいし大丈夫ですよ」

思わず笑う二人

「けどいいわね、私ひとり身だから、家族を見てるとなんだかうらやましくなっちゃう」

「わたくしもでございまーす、わたくし製作者がだれなのか実のところよく覚えていないのでございます」

ハヤトのカバンからシャショットがつぶやくとヒビキが無言で手を挙げた

「「えっ?」」

「え?」

ハヤトたちが困惑している様子にヒビキも戸惑う

「えっと………ヒビキさんが?」

「そうよ、知らなかった?」

基本設計や開発などはヒビキたち研究チームの管轄

言われてみれば納得がいくというもの

「まあ、完成してすぐ引き渡しちゃったから覚えてないのも無理ないわ」

 

その日の夕方、大宮に戻る前に研究チームへお土産を買って帰ろうとするヒビキ

だがある1か所で立ち止まって周囲を見渡す

「誰も見てないわよね」

ヒビキはそこにかけられていた特撮ヒーローのキーホルダーを手に取った

「これこれ、これも欲しかったのよねぇ、大宮じゃ手に入らないから」

三島ヒビキ研究員

内緒の趣味=ヒーローグッズ集め(主にソフビ等)



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二人だけの北海道

たまにはタイトル通りにと思い新しく考えたお話を
余談ですが先日僕も上野に赴かせていただきました
とはいえ所謂隠れファンな僕には皆様にお声かけさせていただく勇気はなく
ただ商品を物色するだけで帰ってしまいました(しかも音楽を聴きながら)


「え?北海道に?」

突如告げられた用件に目を丸くするハヤト

「そうなの、実はミクさんが………」

「み!ミクに何かあったんですか!」

「お、落ち着いてハヤト君、そんな大したことじゃないの………」

ものすごい勢いで迫る

 

「捻挫?」

「うん、剣道の試合中に足を捻挫しちゃったんだって」

「まあ、そういうこともあるよな、俺だって金沢いた頃は現場で爪割ったりとかしてたし」

「俺も、山に入って時に野草で切った切り傷は何度も作ったな」

「おらも」

「あ、シノブは手にもあるよね、ほら、人差し指と中指の間」

「本当だ、何の傷だこれ?」

「暗器を持つ時に作った傷、まだ未熟だったころのだ」

「暗器………」

 

E5で新函館北斗駅へ降り立ったハヤト

「確か迎えが来ているって………あっ」

「よく来てくれたね」

「お久しぶりです、大沼指令長」

ハヤトとシャショットを出迎えたのは北海道支部の大沼ソウヤ

「えっと………今日はミクは………」

「さすがに松葉杖ではここまで来られないからね、支部で待っているよ、行こうか」

 

大沼指令長と共にはこだてライナーに乗って移動するハヤト

緊張した様子で時折指令長の顔色を窺っていた

「気になるかね?」

「あ、いえ………」

「そう緊張しなくても構わんよ、前に記念館の中を案内しただろう」

確かに初めて函館支部に来た時大沼指令長の案内で摩周丸記念館を見て回った

しかしあのときはアキタとツラヌキも一緒だった

二人きりとなると妙に緊張してしまう

「ははっ、真面目なんだな、そういうところはミクとよく似ている、さすが、同じはやぶさの運転士と言ったところか」

ハヤトの心中を察して笑う大沼指令長

「ミクもね、最初にあったときは君のように緊張していたものだよ」

「そう………なんですか?」

「ミクは小さいころからご両親に連れられてよく記念館に遊びに来ていたんだが、たまに声をかけても親御さんの後ろに隠れるばかりでね」

「へぇ、ミクって小さい頃は内気な子だったんだ」

「意外でございまーす」

「私がミクと仲良くなれたのは、あの子が剣道を始めてすぐのころ、一人で摩周丸にきていてね」

 

その日も大沼指令長は館内を見回りしていた

雪が降るなかお客さんの数もまばらだった

甲板に出てみても外に出ている人はいない、そう思っていたが

「おや………」

甲板の先端で一人柵に寄りかかって泣いているミクを見つけた

 

「女の子だからと通っていた剣道教室でバカにされて悔しかったそうだ」

「そっか、そういえば初めて会ったとき」

初めて会ったときのミクの態度を思い出すハヤト

あれはもしかしたらその時の影響なのかもしれない

 

「いらっしゃい、ハヤト君」

摩周丸記念館にある函館支部にやってきたハヤトはすぐにミクと合流した

「ミク、足は大丈夫なの?」

「このくらいだったらすぐに治ります、避けようとしたときに無理な体勢になってしまって」

ミクの左足にはテーピングが施されサポーターも装着されている

「ですが、捻挫は悪化すると怖いと聞くでありまーす」

「ええ、だからこうして固定して………移動も松葉杖で」

シャショットの言葉にそばに立てかけていた松葉杖を見せるミク

「よろしければシミュレーターで一緒に訓練しませんか?」

「え、でも怪我は………」

「足だけですから、シミュレーターくらいなら………」

器用に松葉杖で移動するミクの様子を気にかけたハヤト

「ずいぶん慣れているけど」

「ああ、試合中に捻挫したのは初めてではないので………剣道は限られた空間で激しく動き回りますから、よくあることなんです」

 

シミュレーターでの訓練を終え一息つく二人

すると警報が鳴り響き真剣な表情で顔を上げた

 

漆黒の新幹線が直線を猛スピードで通過していく

「湯の里知内信号場付近で漆黒の新幹線の目撃情報」

「海にほど近いエリアか」

「大沼指令長」

ミクとハヤトが指令室に入ってくる

「ハヤト君、すぐにE5で出動してくれ」

「了解」

「巨大怪物体確認、コードネーム、クラッシュヴァシルとします」

「あれは………砕氷船!」

「え?大崎から南浦和を経由して大宮まで来ている?」

ハヤトの聴き間違いで指令室の一同は一斉にずっこけた

「ハヤト君、それは埼京線、砕氷船というのは………なんでしたっけ、雪をかき分けながら進む赤い機関車」

「え?DE15形ディーゼル機関車のこと」

「それと同じです、流氷を砕きながら進む船のことなんです」

「へぇ」

「とにかく出動してくれ」

「はい」

ハヤトが駆けだすとともにミクが携帯を取り出しどこかにメールを出していた

「ミク?」

「勝手で申し訳ないのですが救援を」

 

「シンカリオンE5 はやぶさ」

E5が捕縛フィールドに入ると赤と白の体を持つ船の怪物体が猛然と迫ってくる

「赤と白の船体………そうか!あれは初代ガリンコ号」

「だがあれは観光用の砕氷船のはず………しかし」

接近を試みるE5だが弾丸が連射され近づくことが出来ない

ゆっくりと迫るクラッシュヴァシル

何とか回避するが捕縛フィールドの地面が強烈に抉れてしまった

「ひぃぃ!」

「なんというパワーだ」

弾丸をよけながら突進してくるクラッシュヴァシルから逃れるE5

「きりがない………このままじゃいずれ捕まって終わりだ」

「心配ありません」

「ミク?」

「手は打ってあります、もう少し耐えてください」

「わかった、俺、ミクを信じるよ」

クラッシュヴァシルの攻撃から逃れるE5

やがてフィールドのふちに追い込まれ窮地に陥る

「クッ………まだなの」

シャショットの悔しげな声とともに警笛の音が鳴り響いた

ハヤトが顔を上げるとフィールド内を駆けまわるE3の姿が

「シノブ!」

「チェンジ!シンカリオン!」

「E3、シンカリオンに変形します」

変形したE3がE5の隣に並び立った

「ハヤト君、敵が船なら弱点は船底に近い位置にあるエンジンルームです」

「そうか!そこをグランクロスで狙えば」

「だが、そのためにはやつに近づかなければ」

「そのためにおらが来た!」

フィールド内を駆けまわることのできるE3の力が加わればクラッシュヴァシルの懐に潜り込むことが出来る

「「リンク!シンカリオン!」」

「E5、E3、リンク合体します」

E3とリンク合体して素早く駆け回るはやぶさ

砲身がこちらを向くと分身が大量に出現しクラッシュヴァシルの注意を惹きつけた

「いまよ!ハヤト君!」

エンジンに近い位置に潜り込んだはやぶさがミクの言葉とともに構える

「「グランクロス!」」

放たれたグランクロスに貫かれクラッシュヴァシルが爆散する

「目標撃退」

 

「ほら、船のエンジンはこんな風に………」

「なるほど、新幹線のモーターもどの車体でも大体同じ位置にあるから」

「ええ、それで大体の位置はわかっていたので」

摩周丸記念館の展示物を見ながら仲良く話すハヤトとミク

笑顔で話す二人の様子を遠めに見ていた大沼指令長とシノブだったが

「それじゃ、邪魔にならないようにおらはここで」

「ん、協力ありがとう」



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君に出会えて

ハヤト君お誕生日おめでとうと言うことで滑り込み
ここの所ちょっと長い話を書いていて更新遅れ気味ですいません
今日は何としても書き上げなくてはと思い頑張って書きました
それでも当日書き始める羽目になりましたが


特別な日をどうしても直接お祝いしたくて

気づけば遠い地にいる彼の下へ急いでいた

「わざわざありがとう、ミク」

遠い函館から海を越えてやってきたミクを握手で歓迎するハヤト

歓迎を受けたミクは顔を赤くして目をそらした

「あの、それよりこれ………北海道支部の皆さんからハヤト君に」

「ありがとう、うおぉぉ!函館限定北海道新幹線文具セット!大事に使わせてもらうよ」

「あ、あの………それから………」

もう一つミクが赤くなりながら包みを取り出した

「こ、これ………私から」

「ありがとう、あ、いい匂い」

「その………色々悩んだんですけど………クッキーを」

「北海道と言えば白い恋人だな………」

甘いものに眼がないアキタがミクの言葉を聞いて頷くように述べるが

「わぁ、すごい、H5かな?それともE5?」

「あの………ハヤト君の誕生日プレゼントですから………一応E5のつもりで」

二人のやり取りを聞いてアキタとツラヌキはしばしきょとんとしていたが

「話は読めた、そのクッキーは手作りだな」

「まったくもってうらやましいぜ」

アキタとツラヌキの言葉にミクはさらに赤くなって心なしか小さく見えた

「それにしてもミクさんは今日はなんだか照れてばかりな気がしまーす」

そういって覗き込んだシャショットを捕獲したミクは鷲掴みにしたままツラヌキの方へ思いっきり放り投げた

「っと、ナイスパス、今はそっとしておけよ」

「話は読めた、あいつ誰かに手作りクッキーをプレゼントするのは初めてか」

「ハヤトに喜んでもらえるか心配でドキドキしっぱなしなんだろ、かわいいとこあんじゃんか」

シャショットとアキタにニヤつきながらささやいていたツラヌキだったが次の瞬間飛んできた竹刀が頭を直撃しその場に倒された

「竹刀………」

口は禍の元とはよく言ったもので気絶したツラヌキはそのままアキタに引っ張って行かれた

「あの………ミク」

「あ、す、すいません、ちょっとびっくりして」

話の読めていないハヤトはしばしその場で呆然としていた

二人きりという状況にミクの心音はさらに早まっていく

「なんだか、初めて会った時を思い出しますね」

「そうだね、あの時ミクがくれた卵酒、すごくおいしかったし、救われたよ」

「救われたのは私の方です、乗り物酔いを意識しすぎるあまり厳しくなっていた私の心を溶かしてくれた………あなたに会えて本当に良かった」

この日初めて見せたミクの笑顔にハヤトも赤くなった

「ハヤト君、私、あなたが好き………どこまでも真っすぐで、優しいあなたが」

「ミク………」

照れて赤くなりながら頬を掻くハヤト

そっとミクの手を握るとそれを合図に彼女が目を閉じて二人の距離がだんだんと近づいていく

「「「わぁぁ!」」」

次の瞬間入り口のドアが開いてアキタとツラヌキ、さらに上田アズサまでもが崩れるように部屋に流れ込んできた

驚いた二人はその場でぱっと離れる

「もう!せっかくいいところだったのに!」

「お前が前に出すぎたせいだろ!」

「まったくもってその通り………あ」

顔を上げたツラヌキの目の前には怒りの気配を漂わせながらそっと竹刀をケースから取り出すミクの姿が

「ま!待て!落ち着け!」

「話せばわかる!俺の好きな四文字熟語は穏便解決だ!」

「なら、私の好きな四文字熟語を当てて見せてください」

「えっと………すごく嫌な予感がするんだけど………」

「話は読めた、答えは問答無用だ」

「正解」

次の瞬間にはミクは思いっきり竹刀を振り上げていた

「よ!よせ!やめろ!」

「っていうか隠して!あたしたちの位置だと見えてるから!」

「バカ!このタイミングで火に油を注ぐ奴があるか!」

 

「助かった」

阿鼻叫喚が響く中扉が開く直前に避難したシノブは天井にぶら下がったままこっそりとその場を離れた

 

今も逃げ回っている幼馴染の姿に苦笑しながらミクと初めて出会った時のことを思い出す

上田アズサという存在が近すぎゆえにより際立ったあの時の優しさ

体の奥まで染み渡る温かさはとても心地が良かった

上田アズサのようにすぐに噛みつかず優しく自分の話を聴いてくれる

そんな女の子と出会ったのは初めてだった

変わり者としていい意味でも悪い意味でも目立っていたから今まで上田アズサ以外の同年代の女の子と話すことなどほとんどなかった

あんなに楽しい気分で話せたのは、初めてだった

「俺も優しい君が好きだよ、ミク………」

盗み見た制裁に気をとられておそらく気付かないであろう言葉をつぶやきながら先ほど貰ったクッキーを一つ摘まむハヤト

「甘い………」



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クリスマス会の夜

あんまりネタが思いつかなくてお休みしてました
でも今回はクリスマス会にミクちゃん参加ということで復活
あとあっためてるネタが2つくらいあるのでそれも仕上がったら投稿します


「突然ですがかくし芸大会!というわけでリュウジ」

「俺か!?」

クリスマス会のさなか上田アズサの言葉にぎょっとなるリュウジ

「って言ってもリュウジに芸なんかあるのかよ」

「んだ、そゆの率先してやるタイプには見えね」

「お前ら俺のことなんだと思ってるんだ、まあ、とにかくちょっと待ってろ、着替えてくる」

「着替えて?」

 

道着に着替えたリュウジがキントキとナガトの協力でセッティングしたのは瓦割りだった

「か、瓦割り」

「久々だからできるかどうか………せいっ!」

見事5枚の瓦を割ってみせるリュウジ

ちなみにこの瓦、キントキさんがどっかから持ってきた本物である

※瓦割り用の瓦は本来割れやすくできた専用のモノを使います

 

「めをと~じて、かそくす~るよ、ちか~らのかぎり~」

ミクがノリノリで歌っている姿はとても絵になる光景で周囲から拍手が沸き上がった

「ミクも剣道の技とか見せてくれたらよかったのに」

「無理ですよ、今日は竹刀持ってきてないんですから」

「逆に前に来たときなんで持ってた」

歌い終わるとアズサに絡まれ困った様子のミク

「よーし、次は俺が!」

「鉄道唱歌はよせよ」

 

「ビー!アンビシャース!わーがともよー!ぼうけんしゃよー!」

「「なんか意外なのが来た!」」

「いや、確かこれも鉄道関連だったはず………なんだったかな」

アキタとツラヌキが驚く中

年長のリュウジは心当たりがあるようで唸っていたが

「思い出せないんですか?」

「いや、ここまで出かかってるんだがな」

首のあたりで手を振るリュウジにハヤトはなんだか不服そうだ

「もぉ、リュウジはN700Aの運転士でもあるんだから知ってなきゃ」

「N700A………思い出した!だがむしろこの曲に関係あるのは700系だろ!確かこの曲とタイアップした700系が走っていたんだったな!」

「いや、リュウジ君逆になんでわかるんだよ、生まれてるかどうかギリギリだよ」

「生まれてすらいないはずのハヤト君が知ってることに疑問を持たなくなった自分が怖い」

 

ハヤトが先ほどの曲をミクと一緒に歌う中でセイリュウは一人隅でケーキを食べていた

「あんたも混ざって来れば?」

「なぜおれが………」

「いいからいいから」

そういってセイリュウの手を引くアズサ

「いぇーいぇ!どこだってゆける!こたえはーおーっいぇす!」

「おーいぇす」←棒読み

「あふれだすパーワ!」

ノリノリのアズサに対して無表情のまま棒読みで合の手を入れるセイリュウに苦笑する一同だった

 

「プレゼント交換?」

「そう、って言ってもセイリュウは準備してないか………」

運転士たちの間で計画されたプレゼント交換

子供たちで用意したプレゼントをということで各自が用意されたプレゼントを交換する

「いや、そういうことなら………」

そういってどこに持っていたのか箱を渡すセイリュウ

「え?あるの?」

「ああ、本当は別の目的があって用意したんだが………」

 

「お?何だこのふかふかのヘッドフォン」

「イヤーカフだろ、ヘッドフォンではない」

「いえ、ヘッドフォン付きのモノなので」

「あ、ミクが買ったやつかこれ」

「俺のは………CD?あ、これもしかして」

パッケージを見てみたハヤトとそれをのぞき込んだ運転士たちは一斉に一人に視線を集めた

「おう、俺のだ、特典そろえたくて2つ買ったやつだから気にするな」

「うん、ありがとう………帰ったら聴いてみる」

やはりスーパースパイスのファンであるツラヌキの用意したものだったようだ

「あ、私は手袋ですね………これは………あ」

E5系のワッペンが付いていることに気付いたミクとそれに釣られた運転士たちはいっせいにハヤトを見る

「ミクに行くんならH5系にした方が良かったかな」

「いえ、これで大丈夫です」

「なぜ奴は赤くなる」

「セイリュウは気にしなくていいから」

「待て、じゃあ俺のこの新幹線の文具セットは誰だ?」

「すまん、それは俺だ、時間がなかったんでハヤト基準で考えてしまった」

「話は読めた、貰って困るものじゃないから大丈夫だ」

「さて、あたしは誰のかなぁ………あ、これって確か」

見覚えのある白い箱は先ほどセイリュウが持っていたもの

「あ………」

コンビニかどこかで買ったのかケースに入ったケーキが一つ入っていた

「これって」

「ああ、お前だったのか、安心した」

「なによ、安心したって………」

アズサの様子に気付いたセイリュウは彼女に声をかけてきた

「それは最初からお前にやろうと思って持ってきたんだ、その………色々世話になったからな」

素直じゃない様子でそう答えるセイリュウにアズサは赤くなって俯いた

一緒に入っていたフォークで少し切って食べてみる

「うまいか?」

「うん…………ありがとう」

「なぜおまえも赤くなる………うわ!なんだいきなり!」

照れ隠しにポカポカ殴ってくるアズサに戸惑うセイリュウ

「あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったんだ?」

「さ、さあ?」

 

疲れた様子で椅子に座るセイリュウ

そんな彼の隣にはシノブがやってきた

「お前は………銀のシンカリオンの」

「月山シノブだ、礼を言っておきたくてな」

「礼だと?………」

「んだ、おめのおかげでアイアンウイングで駆けつけることが出来た」

「もじもじと悩んでるお前が見てられなかっただけだ」

「ふっ………おらもクリスマスは初めてだ、どだ?おめもクリスマス、好きになれそうか?」

シノブの言葉に談笑を続けるシンカリオン運転士たちを見るセイリュウ

そしてその傍らで話に混ざるアズサの笑顔を見つめた

「そうだな………悪くはない」



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リュウジとミユ

本当はもうちょっとじっくり書くつもりがタツミの参戦が思った以上に早かったので慌てて書き上げた
タツミの参戦話にしようとしたんだけど公式に先越されたので改変
今日のお話で直接出てくるんだろうけど
N700系ひかりのシンカリオンに乗るミユちゃんとかも考えたけど本当に書くかは不明


この日ハヤトは連休を利用して日頃の稽古の成果を見せるべくセイリュウと上田アズサを伴って名古屋支部へと来ていた

名古屋支部の道場では道着姿のリュウジが少女と話していた

「来たか」

「リュウジ、その子は?」

「妹のミユだ、どうしても見学したいというのでな」

「いつもお兄ちゃんがお世話になってます」

「あ、こ、こちらこそ、今日はよろしくお願いします」

礼儀正しく挨拶するミユに戸惑いながら挨拶を返すハヤト

 

「なるほど、ちゃんと稽古は続けていたようだな」

「もちろん、俺は時間と言ったことは守る男だからね」

「ふっ、そうだったな」

軽い組手で互いの調子を確かめ合うハヤトとリュウジ

「へぇ、案外様になってるじゃない………」

「わぁ………」

そんなハヤトの姿に感心していたアズサはふと隣のミユが瞳を輝かせてハヤトたちの方を見ているのに気づいた

「ミユちゃん?」

「あ、ごめんなさい、お兄ちゃんがまた道着を着ているところを見れるのがうれしくて………」

熱心にハヤトを指導するリュウジの姿をミユは夢中になって見ていた

父を亡くした時ミユはまだ生まれたばかり

父の顔を写真でしか見たことが無かった

当時の兄たちがどれほどショックだったか知ることは出来ない

「でも、前に教えてもらったんです、お兄ちゃんは空手と出会って立ち直ることが出来たって、なのに今度は………」

母が倒れ家族のために大好きだった空手を辞めたリュウジ

兄の影響で空手を始めたタツミを見送る目が寂しそうだったのをミユは知っていた

「私はシンカリオンのことも、新幹線のこともよくわからないけど………」

汗を散らしながらハヤトと真剣な表情で打ち込むリュウジを見て笑顔になるミユ

「今、お兄ちゃんがこうして笑っていられるのも、シンカリオンのおかげなんだよね」

 

「ありがとうございました」

稽古を終え礼を行うハヤトとリュウジ

「お兄ちゃん、お疲れ様」

「ああ、ありがとう、ミユ」

タオルを渡すミユとそれを受け取るリュウジ

仲の良さそうな二人の様子を見たセイリュウは不思議そうな表情をしていた

「どうしたのセイリュウ?」

それに気づいたアズサが問いかけるとセイリュウはミユの方を見た

「あいつは………自分に無関係なことで、なぜあそこまで嬉しそうでいられる?」

「無関係ってわけじゃないんじゃないかな、やっぱり家族なんだし」

「家族………」

「あっ………」

 

名古屋支部の食堂で揃って食事を摂るハヤトたち

「これは………」

初めて食べる味噌カツの味に驚くセイリュウ

「セイリュウ、こっちの小倉トーストも食べてみなよ、甘くておいしいよ」

「甘いのか!」

アズサの言葉に目を輝かせるセイリュウ

そんな様子にミユが首をかしげる

「あ、こいつ外国から家にホームステイしてるの、だから色々興味持っちゃって」

「そうなんだ、ねえ、私のも食べる?」

「いいのか?」

セイリュウたちと楽しそうに話すミユの様子にハヤトはこっそりリュウジに耳打ちする

「ミユちゃんすごくしっかりしてるじゃないか、何も心配することなさそうだけど………」

「無理をしているんだ、ミユ、ここ、ついてるぞ」

そういってリュウジが自分の口元を指で突く

ミユが首をかしげながら同じ場所に触れてみると食べかすがついていた

恥ずかしそうにするミユを見て全員が笑いを堪える

「そういえば今日タツミは?」

「あいつは道場で稽古だ、後で合流する」

すでに食べ終わっていたリュウジはそう説明するとトレーを片づけるべく席を立った

「ハヤトさん」

「ん?なに?」

リュウジの姿が見えなくなるとミユはハヤトに声をかけた

「お兄ちゃんたちのこと、お願いしますね、本当は私怖いんです、夏くらいにお兄ちゃん怪我して帰ってきたし、もしお母さんやお父さんみたいになったら」

ミユのその言葉にアズサが飲んでいたジュースを吹いて咽てしまった

「アズサさん!?」

「おい、どうした」

「え?今吹くところあった?」

「ハヤト君、夏の怪我というのはもしや………」

「あっ!」

カバンの中のシャショットの指摘でハッとなるハヤト

夏の怪我というのはブラックシンカリオンとの戦いで負った怪我

つまりリュウジに怪我をさせた張本人はいまミユの目の前にいるわけで………

幸か不幸かセイリュウもミユも全く気付いていないようす

「箸が止まってるぞ」

戻ってきたリュウジが指摘すると4人は慌てて食べ始める

ミユはご飯をのどに詰まらせたようで慌ててリュウジが水を飲ませる

彼女の背中をリュウジがさすって落ち着けているとハヤトたちの携帯からアラームが鳴り響いた

 

「12時15分、名古屋駅付近に黒い貨物列車出現」

「捕縛フィールド射出」

羽島指令長の指示で捕縛フィールドが展開され黒い貨物列車がその中で停車する

と同時にコンテナが開きその中から巨大なひれをもった巨大怪物体が出現する

額のあたりに光る球体を確認した

 

「シンカリオン E5はやぶさ」

「シンカリオン ドクターイエロー」

「ブラックシンカリオン」

 

「あれもクレアツルスなの?」

「ああ、だが少しマズイ」

ハヤトの問いかけに答えるセイリュウの表情はわずかな焦りが

 

「あれって、おっきいエイ?」

「コードネームはランページ・トルペディネとします、全長推定70メートル」

 

クレアツルスの体に電気が帯びて一気に放電されると一直線にシンカリオン各機に襲い掛かる

「何あれ!?エイって放電するの?」

「シビレエイ目に属するエイは捕食や防御のための発電器官をもっています」

驚くアズサの疑問に名古屋支部のオペレーターが答える

「よけられたからよかったが、まともに浴びれば運転士にも危険が及ぶ可能性があるな」

電気を放ち続けるランページ・トルペディネに近づくことが出来ないシンカリオン

引火の危険があるためグランクロスなども下手に撃つことは出来ない

「あっ!」

E5に電撃が迫るが

「検測!レーザーシールド!」

ドクターイエローの展開したシールドでかろうじて守られた

「お前たちはドクターイエローの後ろに」

E5とブラックシンカリオンがドクターイエローの後ろで構える

「セイリュウ、前みたいに跳ね返せないの?」

「無理だな、電圧が強すぎる、孤のシールドもいつまでもつか………」

 

「お兄ちゃん………」

苦戦を強いられているシンカリオンの姿にミユは思わず目をそらしそうになるが

「心配するな、お前が見ていてくれる限り俺は負けない、ミユ、俺たちの戦いを見ていてくれ」

ドクターイエローが力の限り手を広げ電撃を押し返そうとする

しばしの均衡状態ののちドクターイエローが押され始めるが

「なっ」

ブラックシンカリオンがその背に手を置いて支え始めた

「勘違いするな、お前を心配しているあいつのためだ」

「俺も………」

電撃を防御するドクターイエロー

 

「何とか持ち直したか、だが守るばかりでは………」

「俺が行く!」

羽島指令長の言葉を遮ったのは息を切らした状態で入ってきたタツミだった

「兄貴たちがあいつを引き付けてる間に俺が攻撃する」

「よし、シンカリオンN700A、発信準備」

 

「シンカリオン N700Aのぞみ」

 

「エアロダブルスマッシュ!」

ランページ・トルペディネの背後からN700Aが勢いよく突っ込んでいき光を纏った拳とそこから延びる光の刃を突き付けた

それによって一瞬ランページ・トルペディネの動きが止まり電撃から解放される

「よし!」

防御から解放されたドクターイエローが巨大な剣を構える

「レーザーソード!」

ドクターイエローの攻撃を受け吹っ飛ばされたランページ・トルペディネは地面にたたきつけられる

「今だ!」

「ぐっ!」

E5とブラックシンカリオンが左右から鰭に剣を突き刺してランページ・トルペディネの動きを止める

「チェンジ!アドバンスドモード!」

N700Aが変形し更なる姿へと進化する

「ドラゴンナックル!」

拳から放たれたエネルギーがその名の通り竜を象りながらランページ・トルペディネに向かっていく

光の球体を直撃したことでランページ・トルペディネを撃退する

 

「お兄ちゃん!」

「あ、ミユ」

ホームに戻るとミユは真っ先にリュウジとタツミに飛びついた

「お兄ちゃんたちすごくかっこよかった」

「へへっ」

「ふっ」

仲のいい3人の姿を遠目に見ていたセイリュウ

「あれが………家族か」



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笑顔!スザクとアズサ

ずっと書いてたお話パート1
本当はスザクからイザの情報を得る話にしたかったけど書いてるうちに判明しちゃったので変更
慌てて仕上げたので後半とかやっつけ仕事


セイリュウとアズサは買い物のため上野を訪れていた

「なぜおれが………」

アズサの買ったものを抱えながら歩くセイリュウ

「文句言わないの、終わったらケーキ御馳走してあげるから」

ケーキの誘惑に抗えず押し黙るセイリュウ

すると何かに気付いて立ち止まる

「どうしたの?」

「久しぶりだな、何の用だ?」

彼の後ろにはヒトの姿をとったスザクがいた

「最近なんだか楽しそうだと思ってね」

「楽しい?」

スザクの投げかけた言葉に思わず復唱して振り返るセイリュウ

「あら、違うのかしら?」

「いや、以前と違うというのは、俺もなんとなくわかる、しかし、なぜおまえがそれを気にする」

「別に、ちょっとした気まぐれよ………」

「迷っているのか?」

セイリュウの問いかけにスザクは肩を落とした

スザクは軽く手を振り返してそのまま踵を返そうとする

「前に私が言ったこと、そのまま返されるとは思ってなかったわ、お買い物中に邪魔してごめんなさいね」

「なんか………前と雰囲気変わった?って言うかなんか元気なさげ?」

その様子が気になったアズサは思わずセイリュウに問いかける

「なぜ、お前が気にする必要がある」

「だって、あの人もセイリュウの仲間なんでしょ?前にも言ったと思うけど、仲間の仲間は仲間じゃない、元気がないなら励ましてあげなきゃ」

「励ます………どうやって?」

「それはこれから考える!」

「いや、それもなんだが………」

セイリュウが指をさしてみるとそこにすでにスザクの姿はなかった

「って!いないし!」

「ふぅ」

「ちょっと何よそのリアクション!あんたも探すの手伝いなさいよ!」

「ちょ、なぜおれが!おい!引っ張るな!」

 

日暮里の新幹線が見える陸橋

以前セイリュウと話していたその場所でスザクは独り考え込んでいた

そのすぐ下をE5系新幹線が通り過ぎる

「(ビャッコ、ゲンブ………あなたたちが感じたもの………私も知ることが出来るかしら)」

 

「11時35分、日暮里駅付近に黒い貨物列車出現」

「直ちに捕縛フィールド射出」

捕縛フィールドの光を地上から眺めるスザク

その体には黒い粒子が纏われていた

 

「あれは………」

「え?なになに?」

セイリュウがその光を目撃しアズサはそんな彼に問いかけた

 

「シンカリオン E5はやぶさ」

「シンカリオン E6こまち」

「シンカリオン E7かがやき」

「シンカリオン E3つばさアイアンウイング」

鳥の被り物をかぶった戦士のような姿の敵が目の前にいた

「あれもクレアツルス?」

「いや、あれはもしや………」

「待っていたわ、シンカリオン」

「この声!?」

 

「スザク………」

「え!?じゃあ、あの人今ハヤトたちと戦ってるの!?ど、どうしよう」

「慌てるな、おそらくすぐ終わる」

「え?なんで?」

 

「スザク、君はセイリュウの仲間じゃないの?」

「答える義理などないわ、私と戦いなさい、シンカリオン」

そういって向かってくるスザク

その攻撃を何とか避けたE5

アキタのE6が弾幕を張ってその動きを止めるとE3のシュリケンが向かっていく

かろうじて避けたスザクに対してE7が突っ込んでいく

「くっ」

 

「スザクは頭は切れるが、直接の戦闘はゲンブやビャッコ程得意ではない、おそらくすぐに決着はつく」

「っていうかあんたはなんでそんな冷静なのよ!」

 

「グランクロス!」

「くっ!」

E5の放った光に飲み込まれるスザク

セイリュウの言った通りの結果となった

「やつのことだから何か仕掛けているのではと警戒したが」

「特に何もなかったな………」

 

日暮里の歩道橋で寄りかかるスザク

額に手を置き大きくため息をついた

「結局………何もわからなかったわね………」

「あ!居た!」

そんな彼女の耳に聞こえたのは一人の少女の声

「あの子は………(って言うかセイリュウは一体何してるのかしら)」

アズサに手を引かれ振り回されているだけに見えるセイリュウの姿にスザクは半ば同情のまなざしを向けていた

 

喫茶店で3人座るアズサたち

もちろんスザクも人の姿で

「ちょっと………これどういう状況」

「いいからいいから」

運ばれてきた3人分のケーキにセイリュウとアズサは目を輝かせる

「(セイリュウ………あんた)」

ずいぶんと変わったかつての仲間の姿にまたため息を零すスザク

「(何やってんのかしら、私)」

頭を抱えてうずくまるスザク

そんな彼の様子に気付いたセイリュウ

「スザクも食べろ、こいつのことだからそのつもりで連れてきたんだ」

「あんたもわかってきたわね」

「はぁ………わかったわ、食べればいいんでしょ」

半ば呆れながらフォークを使いケーキを食べ始めるスザク

「ん?」

どうやらケーキは彼女の口にもあったようで一口食べた彼女の表情に変化が見て取れた

その反応を見たアズサはセイリュウと(ほぼ強引に)ハイタッチをした

 

続いてアズサたちは宇都宮線の電車に乗り大宮へと向かっていた

「なんで私が………」

スザクの反応を見たセイリュウは思わず小さく笑った

「なによその反応」

「いや、ただ、こいつらと関わるようになったばかりの俺と、同じ反応だと思ってな」

「それがどうしたっていうのよ………」

 

「それで彼女を連れてきたというわけか………」

「特に逃げる様子もない、当分はおとなしくしてるだろう」

考え込む出水に対してセイリュウは落ち着いて答えた

「エージェントゲンブの時のように、彼女が興味を持っていることに触れることが出来れば………」

「それなら心当たりがある」

そういってセイリュウは後ろ指でアズサを指した

「こいつが適任だと思うんだが」

「え?………えぇぇっ!?」

 

大宮駅からほど近いファッションビルでスザクを引き連れてお店を見て回るアズサ

その少し後ろをハヤトたちとともに見守るセイリュウ

「なんで上田アズサに?」

「スザクは以前から人の心を操ったり、覗いたりしてきた、人の心を弱点だと考えていた」

「話は読めた、だからこそ奴は人の心に興味を持つ、そういうことだな」

 

かつてブラックシンカリオンでの出撃を拒んだセイリュウの様子を見たゲンブとスザクが交わしていた会話

それを思い出していたセイリュウ

 

「わからないわね」

ベンチにアズサと共に座りながらスザクがつぶやいた

「どうして私をそこまで気にかけるのよ、私はあなたを利用したのよ」

「ああ、そういえばそんなこともあったっけ」

過去の出来事を思い返して苦笑するアズサ

しかも利用されたのは実質2回である

「でも、お姉さんのおかげでシンカリオンのことを知れたわけだし………」

そういってセイリュウたちの方を見るアズサ

ハヤトがスマホを開いて驚きの声を上げそれを食い入るように見つめる

「セイリュウとも、お姉さんとも知り合えた………ずっと、ありがとうって言いたかったの」

ありがとう、その言葉を初めて受けたスザクは戸惑っていた

「っていうか、あいつら何してんの?」

 

「うおぉぉぉ!間に合ってよかったあぁ!」

大宮駅のホームに泊まる白い新幹線を前に歓声を上げるハヤト

「おお、これが………」

セイリュウもその隣で瞳を輝かせている

「これがどうかしたのよ、銀のシンカリオンじゃない」

「ああ、シノブのE3ね、確かに似てるけど………」

「ぜんっぜん違うよ!これはEastiって言って東北新幹線の検測車両!ドクターイエロー以上に遭遇することが珍しいまさにレア中のレア!俺もこんな間近で見るのは初めてだよ!」

呆れるスザクに対してその手を引くアズサ

「セイリュウのあんな顔、見たことある?」

アズサの視線の先にスザクが目を向けてみればセイリュウはEastiを瞳を輝かせて見つめていた

「ないわね………私たちキトラルザスは滅びゆく種族、自分たちが生きるための道を見つけることしか頭にないもの………」

「私は見てみたいな、お姉さんの笑顔」

「笑顔………」

その言葉にスザクはセイリュウを見た

Eastiを見送って満足げな顔をしている

「私にあんな顔、できるかしら………」

「きっとできる、って言うか、私がお姉さんを笑わせて見せる!」

真剣に言うアズサにスザクは目を丸くした

「(ありがとう、さっき、この子にそういわれたときから、妙にざわつく………これが、心?セイリュウたちもこれを感じた?)」

 

「セイリュウ」

スザクがセイリュウに声をかけるとこちらを振り返った

「あんたやゲンブがこの子たちに何を感じたのかはまだわからない、けど、こうして一緒に居れば、いずれわかる気がする………」

「スザク………」

「だから、そのためにちょっと準備したいの、少しだけこの子と待っていて、幸い私がこの場にいることはソウギョクたちはまだ知らない、きっと帰ってくる」

そういってスザクはアズサの頭を優しくなでた

「きっとあなたの見たいものも見せてあげられる」

 

地底へと戻ったスザクはある部屋で機械のようなものを操作していた

「こんなところかしらね………」

USBメモリに似た小さな機械を手に取ったスザクは部屋を出る

「そこで何をしている」

突如聞こえた声に振り返るスザク

そこにはソウギョクの姿が

「あら、あんた一人なのね」

「こちらの質問に答えてもらおう、しばらくおとなしくしていたようだが、さすがに見過ごせないな」

「何のことかしら………」

「とぼけるな………セイリュウやヒトと接触していたことを私が知らないとでも」

「だったらどうなの」

スザクの体から黒い粒子が湧き出る

 

てっぱくテラスでスザクを待つアズサ

「あいつなら大丈夫だ………」

そんなアズサにセイリュウが声をかける

「あんたも心配だよね………」

するとアラートが鳴り響いて顔を上げる

 

「黒い貨物列車出現」

「巨大怪物体を2体確認、片方は先日確認したエージェントスザクと思われます」

「捕縛フィールド射出、エージェントスザクの保護を最優先だ」

「はい」

 

変形したシンカリオン各機がスザクの前に飛び出し彼女を守るように立ちはだかる

「ソウギョク………」

「まさかこの私が直接出向くことになるとは………」

ブラックシンカリオン紅がソウギョクへと向かっていく

その間にE5やほかのシンカリオンがスザクを保護しようとするが

「おい………お前………」

すでにスザクの体はボロボロだった

「柄にもなく、無茶しちゃったわね………」

「スザク………」

「ぐあっ」

「セイリュウ!」

ソウギョクがブラックシンカリオンの首をつかんで締め上げる

「残念だよセイリュウ、これほどの力、我ら種族の役に立てて欲しかったが」

「ゲンブを利用したお前が………いまさら何を」

「終わりだ………」

ブラックシンカリオンにとどめを刺そうとするソウギョクにスザクが体当たりを仕掛ける

「スザク!?」

「おのれ………裏切者がぁ!」

ソウギョクの放った攻撃がスザクの体を貫いた

「あっ………」

「スザク!」

ハヤトたちの叫ぶ声とともにスザクの体が地面に崩れ落ちる

「チェンジ!バーサーカーモード!」

ブラックシンカリオン紅がバーサーカーモードへと変わりソウギョクに向かっていく

「クッ………」

「ソウギョク!貴様だけは許さない!」

「フミキリキャノン!」

「シャリンドリル!パワードモード!」

「シンフミキリシュリケン!」

「グランクロス!」

シンカリオンの連続攻撃を受けよろめくソウギョク

「くっ」

「セイリュウ!今だ!」

「超へルグランクロス!」

ブラックシンカリオン紅の放った光線がソウギョクを飲み込んでいく

「おのれ………セイリュウううううう!」

「目標撃退」

 

「スザクさん!」

捕縛フィールドが解かれ介抱されたスザクの下へ急いで駆けつけるアズサ

「あっ………」

だがスザクの体はすでに石化が始まっていた

「そんな………」

「そんな顔しないで………私に笑ってほしいといっていた貴女が………そんな顔じゃだめよ………」

顔を上げたスザクは何とか腕を上げてアズサを呼び寄せる

「これを………きっとシンカリオンたちの役に立つわ」

「スザクさん………」

持ってきていたUSBをアズサに手渡すスザク

「ごめんなさいね………結局貴方の期待に応えてあげられなくて」

「やだよ………スザクさん」

「スザク………なぜおれを助けた」

「さあ、………気が付いたら体が動いていたのよ」

アズサとの触れ合いの中でスザクの中にも何かが生まれつつあった

その答えにあと少しでたどり着けるところまで来ていた

「(あんたたちもこんな気持ちだったのかしらね………)」

散っていった者たちに思いを馳せたスザクは自然と口元を緩めていた

「(私も少しは………ヒトを、心を知ることが出来たのかしら………ねえ、ビャッコ、あんたはいまの私を………どう思うかしらね)」

口元を緩めたまま完全に石化するスザク

「(残念だわ………もう少し、この子たちと笑っていたいって………そう、思えたのに)

石化したスザクを前に立ち尽くすアズサの肩にセイリュウが手を置く

「スザクのあんな表情は………俺も初めて見る」

「セイリュウ………」

「お前がスザクを変えたんだ………きっとあいつはお前に感謝している」

崩れ落ちたアズサの肩にセイリュウが手を置いた

「ぐすっ、セイリュウ………」

涙を浮かべたアズサの頭に手を置いたセイリュウ

「スザクさんが、スザクさんがぁ、うあぁぁぁん」

アズサを励ましながらもセイリュウは石化したスザクから顔を背けた

その日、セイリュウに宥められながらもアズサは泣き続けた

心を通わせた相手との別れを惜しむように、ずっと



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ドキドキ!ミクの大宮観光!

今週のシンカリオン本当ズルい
危うく泣きそうになりました
しばらく筆を止めていましたが残りの放送の週に毎週更新できるよう頑張って書きます
最後にはとっておきの話がありますのでそれもなんとか仕上げて皆さんにお届けできるようにしたいと思います
今回はまずミクさん出演の通常回がなかったということで考えてきました
時系列としてはツラヌキの回とリュウジの回の間くらい


いつものように超進化研究所にやってきたハヤトたちが自動扉の前に立つと中には先客がいた

「あ!ミク!」

「皆さんお久しぶりです」

白と紫のストライブのシャツを着た発音ミクが先に来ていたようで彼らに笑いかけた

 

ハヤトの案内で鉄道博物館の館内を見て回っているミク

「以前からハヤトが案内してやるという約束はあったが、ゆっくり見て回る時間がなかったからな」

「まったくもって二人とも楽しそうだな」

新幹線の大きな模型が並ぶ場所で楽しそうに説明するハヤトにくすくすと笑うミク

「って!どういう接待の仕方よ!」

「でもいい雰囲気だべ」

「ん………まあ、ハヤトの話に笑って付き合えるっていうのはすごいと思うけど」

 

広場にあるミニ新幹線に乗りながらハヤトが解説を続ける

「そう言えば俺ら、ミクの好きなもんについてあんまりよく知らねえな」

「やはり剣道だろう、今日も竹刀をもってきていた」

「だども、リスのぬいぐるみ気にしてたこともあった」

「正月に貰ったラーメンは違うのか?」

「いや、それはない………とは言い切れないけど多分ない」

セイリュウにツッコミを入れつつ思案するアズサ

「そうだ、リスの家っていうのがある!そこ行こうよ!」

「リスの家?」

「たくさんのリスを間近で見られるとこ、きっとミクも気に入るって」

 

ハヤトとミクがミュージアムショップで様々なグッズを見て回っていた

「いや、なんでミュージアムショップ?」

「ミクに言ったら、その前にここ寄っておきたいって………」

「話が読めた、今日の思い出に何か買って帰ろうというんだな」

「だからってこんなところで買わなくてもいいじゃん………あれ?セイリュウは?」

「あそこだ」

アキタが指さす先をアズサが見てみると東京駅や車両の形をした箸置きをじっと眺めるセイリュウの姿

「これは………何に使うんだ?」

小さなマスキングテープを手に取って首をかしげている

「あーもう、しょうがないなぁ」

セイリュウのそばによって声をかけるアズサ

マスキングテープの使い方についてジェスチャーを交えながら必死に説明していた

「そう言えばハヤトたちは何を見てるんだ?」

 

「んー………」

少し丸みを帯びた新幹線のストラップを手に取るミク

「それ俺結構おすすめだけど、家の鍵とかにつけてさ」

H5系をモチーフにしたそれを手に取りしばらく悩むミク

「これ、ここにあるだけですか?」

「うん、多分これで全部………」

しばらく他のキーホルダーを調べながら持っていたものを戻すミク

「え?戻しちゃうの?」

「もう少し見てみます………あっ!」

ミクがもう一つのグッズに気付きそちらを手に取る

「これ………」

「ああ、りんりん電車?」

ミクが見つけたのは鉄道をモチーフにした小さな鈴だった

「………あった」

「ん?なにが?」

ミクはその鈴を二つほど手に取って会計に向かうため振り返る

「あっ、あれって………」

「ん?あっちにはカレンダーとかの大きいのが………」

ミクはキーホルダーを持ったままある一か所に向かって歩き始めた

 

そこに展示されていたのは青函連絡船の模型だった

摩周丸以外にも歴代の連絡船4種ほどが展示されている

値札もあることから売り物だろう

「知らなかった、こんなのも売ってたんだ」

「でも………さすがにこれは」

「ん?うえっ」

最初ミクの言っていたことがわからなかったハヤトだったが値札を見てその理由が分かった

この模型は大きく精巧なこともありとても高く小学生に手が出せるようなものがない

「摩周丸はミクの大好きな場所だものね………」

「覚えていてくれたんですね………」

嬉しそうに笑った後ミクはしばらくその模型を眺めていた

「そう言えば………」

何かを思い出したハヤトが携帯を取り出そうとするとアラートが鳴り響いた

 

謎の新幹線が海沿いの線路を疾走する

「五能線内、十二湖駅付近に謎の新幹線出現」

「五能線………となるとオーバークロスE5Mk2で対応するか………」

「巨大怪物体、フロストツリー確認」

「直ちに捕縛しろ」

捕縛フィールドの光が放たれ巨大怪物体を閉じ込める

 

「フロストツリーか………」

「前に俺がやったやつだな、俺とハヤトで出るか?」

「いや、ミクと一緒に行くよ、H5ならユーバリヒートシステムがある」

「私もハヤト君の意見に賛成です、行きましょう」

そう言ってミクはアズサに持っていたものを手渡すとハヤトと一緒に駆け出した

「え?ちょっとこれ………」

「お会計していてください!お金は後で返します」

複雑そうに唸るアズサが手の中のものを見るとH5とE5をモチーフにした二つの鈴があった

 

【シンカリオン E5はやぶさMk2】

【シンカリオン H5はやぶさ】

 

「行くよミク!」

「はい!」

 

【オーバークロス合体します】

 

【シンカリオン E5はやぶさMk2 XX H5はやぶさ】

 

オーバークロスしたE5Mk2が青森県上空を人目につかないよう飛行している

捕縛フィールドに接近しゆっくりと内部に降り立つ

レールの上に着地するとすでに吹雪でフィールド内はほとんど視界の利かない状態だった

 

「やはりE6のセンサーが必要なのでは………」

「司令室、捕縛フィールド内の照明を落とすことは出来ますか?」

「え?可能です」

「では、照明をすべて落としてください、それと、シンカリオンのライトも切って最低限に」

ミクの指示に訳が分からないといった様子だったが司令室は指示通り照明を落とす

「ユーバリヒートシステム起動、ハヤト君、このまま目が慣れるのを待ちましょう」

「うん………」

 

「ミクは何をしているの」

「話は読めた、なるほど、その手があったか」

「おらも話ば読めた」

アズサは訳が分からないといった様子だがアキタとシノブはミクの意図が読めたようだ

「俺もわかったぜ、金沢も雪は多いからな」

「なに?どういうこと」

「雪が降っている中を車で移動する場合、ヘッドライトは切るべきなんだ」

「え!?そうなの?」

「なんでそうなのかは知らねえけどな」

 

「そうか、明るいままだと光が雪に反射して視界が悪くなる、だから照明を落としたんですね」

司令員の小山ダイヤが納得の声を上げる

「フロストツリーもこちらの動きを探知できず混乱して動きが止まっています」

「あとは二人の目が慣れてくれば」

 

吹雪の勢いが強いままだが暗闇に目が慣れてきた

光が反射していない分ある程度フィールド内も見え始める

暗闇の影響で吹雪に隠れきれない大きな影を二人の眼が捕らえた

「そこだ!」

E5Mk2が勢いよくジャンプしてフロストツリーに飛び掛かる

こちらの動きに相手も気づいたがもう遅い

「超カイサツソード!」

ユーバリヒートシステムによって暖められた剣が振り下ろされフロストツリーの動きが止まる

「今だ二人とも!」

「「キコウチグランクロス!」」

オレンジ色の光が放たれフロストツリーを貫いた

「目標撃退」

「やったねミク」

ハヤトの称賛の言葉に頬を赤らめながら笑うミク

 

「さすがだぜハヤト、雪道ではライトを切るっつーことを知ってたんだな!」

「何のこと?」

どうやらハヤトも照明を切った意味が分からなかったようだ

「そんな状態でよくミクについていけたな」

「だって、信じてたから、ミクならきっと何とかしてくれるって」

ハヤトの言葉に照れくさそうに笑うミク

「ううぅ~、ユーバリヒートシステムのおかげで暖かくなっててもやっぱフロストツリーの吹雪はこたえるな」

「なら、研究所で給湯室を借りましょうか、また卵酒を作ってあげます」

「いいの?」

「もちろん皆さんにも」

そう言って笑うミク

彼女の後をハヤトたちもついていく

「卵酒とは何だ?」

「えっとね………」

集団の一番後ろで歩きながら首をかしげるセイリュウにアズサが説明をしている

研究所に預けてあるミクの竹刀袋にはE5系とH5系を模した小さな鈴がつけられていた



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にぎやか函館紀行

先週の話をどうするべきか悩んだんですが本編の時間軸後に函館を訪れるハヤトたちを書くことに決めました
ゲンブとビャッコも復活したていで書いています
色々悩んでるうちに遅刻したのでもう一本はすぐ上がります


新函館北斗駅の新幹線改札口を出たハヤトたち

「おーい!ミクー!」

出迎えに来ていた発音ミクがこちらに手を振っていることに気付いた

「いらっしゃい、ハヤト君、セイリュウ君、それと………」

「新幹線………やはり良いものだ………」

銀色のオールバックの髪型をした大柄な男性が満足げな表情で立っていた

「えっと………多分ゲンブさん?」

「ゲンブで構わない………」

「気にするな、大阪に行ったときもゲンブはこんな感じだった」

「俺たちの保護者ってことで着いてきたんだ」

「それは構わないんですけど………大阪?」

「最初は京都だったんだ、太秦映画村?というところに行ったお土産もある」

そう言ってセイリュウが紙袋を取り出す

「アズサからも撮影を頼まれて、一応記録をもってきてあるが」

そう言ってセイリュウはどこからかDVDのディスクを取り出して見せていた

「まあ、それは後の楽しみに取っておくとして………まず行きたいところは」

「「「はこだてライナー」」」

「ですよね………」

 

「はこだてライナー………良いものだ」

ゆったりとしたはこだてライナーの旅もゲンブはお気に召したようだ

のに

「ハヤトの母から土方歳三の碑、というのを写真に収めてくれと頼まれている」

「函館駅のすぐ近くなので案内します」

 

「ロープウェイ………良いものだ………大阪で乗ったモノレールとも、また、違う………」

体の大きなゲンブは一人で函館山ロープウェイに乗っていた

彼にとっては狭い空間でしかないはずだが思いのほか楽しそうだ

一方、一つ後ろのロープウェイに乗っているハヤトたちは………

「うぅぅ~」

乗り物酔いでグロッキーなミクを心配する気持ちと外を眺めたい気持ちで葛藤していた

 

「これは………」

函館山から眺める景色にゲンブは圧巻されていた

「私はこの景色が………この町が大好きで運転士になったんです」

「青い顔で言っても説得力ないぞ」

「ミク本当に大丈夫?駅の自動販売機で何か買ってくる?」

「ミントティーか何かあったらお願いします」

そう言ってミクが財布を取り出すとハヤトがそれを受け取る

 

「函館市電………良いものだ」

市電の車内でご満悦な様子のゲンブ

「おお………」

そして窓の外を眺め興奮した様子のセイリュウ

「甘いものですか?」

「うん、セイリュウもゲンブも甘いものが好きだし、何か知らないかと思って」

「そうですね………心当たりはあります」

 

「タイ焼き………良いものだ」

ミクに教えてもらったたい焼きを食べながらご満悦なゲンブ

「ゲンブさんずっとこんな感じの気がしますが………」

「普段は大宮支部でキントキさんたちを手伝ってるんだ、ゲンブ体が大きいから頼りになるし、ゲンブ自身もシンカリオンを間近で見られるから気に入ってるみたい」

「寝泊りはどうしているんですか」

「超進化研究所の寮で世話になっている………職員たちとも仲良くしてもらっている」

「ゲンブは一時期研究所にいたことがあったからね」

「先日は職員に誘われて………ストリートバスケ、というものをやってみた」

「なんだかんだ、ゲンブが一番ヒトの暮らしになじんでいる気がする」

「セイリュウも十分馴染んでいる」

「俺セイリュウの元の姿一回見てるんだけどもう思い出せないもん」

言い返せず黙ってしまうセイリュウ

「そう言えばミク、このたい焼きはよく食べるの?」

「ええ、ここは摩周丸からも近くて、うれしいことがあったときとかに自分へのご褒美に」

「新麺会の時にラーメンだったが、それもよく食べるのか?」

「ええまあ………麺?」

「ああ、そこは気にしないで」

 

セイリュウの希望でラーメン屋で昼食を取るミク達

「家族でもよく食べるのか?」

「何かの記念で食べるときもあれば、何気ない時に食べるときもあります」

食事を進めながらゲンブの質問に答えるミク

「そうか………これがミクの家族の味………」

「ちょっと大げさですけどね、家で食べるときはまた違った………」

「ねえミクちゃん」

顔なじみらしい店員さんに話しかけられ首をかしげるミク

「ずいぶん珍しいお連れ様ね………」

「ええ、関東に住んでる友達で………」

「どっち?」

その一言で驚いたミクはラーメンが気管に入り咽てしまう

「な!なに言ってるんですか!大体まだ片あっ!?」

思わず口を滑らせそうになったミクを見て店員さんがにやにやしている

そんなミクを気にかけたのはセイリュウだった

 

帰りの新幹線を待つ間新函館北斗駅で新幹線を眺めて興奮状態のハヤトとゲンブ

そんな二人を眺めつつミクとセイリュウがベンチに座っていた

「あっちに行かなくていいんですか?セイリュウ君も新幹線好きなんですよね」

「ミク………ヒトを好きになるとは、どういうものなんだ?」

「ぶっ!?ゲホッ、ゲホッ」

「大丈夫か………」

「今日だけでなんで………」

飲み物が気管に入ってしまったミクは項垂れていた

「なんで急にそんなこと、しかも私に聞くんですか………」

「………最近、気になっている奴がいてな、だが俺はヒトではない、こんな気持ちになっていいのかと焦ってしまうことがある」

「………誰かを好きになるのは、とても素敵なことだと思います………私も好きな人が出来て、自分自身が変わっていくのがわかりました、まだ片思いでうまく言えないんですけど………」

「………もし………」

「ん?」

「俺が好きなのがハヤトだと言ったら、お前はどうする」

「ぶっ!?ゲホッ、セイリュウ君………ケホッ」

「やっぱりそうか、安心しろ冗談だ」

「色々シャレになってません………」

 

帰りの新幹線に乗るハヤトたちをホームで見送ろうとするミク

「ミク、今日はありがとう」

「俺も楽しかった………」

感謝の言葉を述べながら新幹線に乗り込むハヤトたち

最後にセイリュウが乗り込もうとして、ミクにそっと握手を求めた

ミクも笑顔でそれに応じ、新幹線に乗るハヤトたちを見送った



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