この力、この世界で役立つか? in 魔法科高校の劣等生 (zaurusu)
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追憶編
第1話


プロローグはISの第1を少し改編したものです。


例え、大きな力を手に入れたとしてもそれを有効に使うことが出来なければ、何にも意味がない。

 

そう、まさに俺こと八神次狼のことを言っている。

 

実を言うと、俺、転生者なんだ。

 

生前は高校生三年生で、登校の時にトラックに轢かれそうになった猫を身を呈して助けて死んだ。

 

そしたら、その助けた猫がまさか神様のペットで、助けてくれたお礼に転生させてもらったのだ。

 

転生の際に、特典をあげるからそこのくじを引いてと言われて、引いて見たところ

 

漫画トリコのノッキングマスター次郎の技術と技、力を得る。おまけに、再生屋の技術をプレゼント。

 

なんて、書かれていた紙を見たときはびっくり仰天してしまった。

 

神様いわく、おみくじで言ったら中吉ぐらいなんだとか。

 

これで、中吉となると大吉とかどうなるんだ?と疑問に思ったのは言うまでもない。

 

まぁ、特典はいいとして気になったのは転生先だった。俺としては、この力を生かせそうな世界がいい。ONE PIECEとかHUNTER×HUNTERの世界がいいなと思っていた。

 

そう思っていた時期がありました。

 

「ちくしょう!狼王ギネスパンチ!」

 

絶賛、只今ミサイルを数発撃ち落としています。

 

なぜ、こうなっているかって?

 

転生先はこんなのがいいなと、考えている時に、神様が適当に転生先を選んで、いきなり、「良き人生を!」なんて、言った瞬間辺りが暗くなって気付いたら、砂浜で寝そべってました。

 

てか、転生って言ったから赤ちゃんからやり直すのかと思ってたのに、姿そのままで、「転生じゃなくて、転移だ!」と叫んでしまった。でも、若干若返った気がする。制服が少し緩い感じもするし。

 

そんでもって、やたら辺りが騒がしいなと思ったら、実はそれが避難警報で、遠くの方からから女性の声が聞こえるなと思ったら。

 

「大東亜連合の艦隊が沖縄に侵攻!近くの住人は速やかに退避してください!繰り返します!大東亜連合がわが国に対して宣戦布告しました!近くの住人は速やかに……」

 

なんて、とんでもないことを言っていた。携帯を見ても、避難の指示が表示されていた。

 

てか、この携帯、俺が死ぬ前に使ってたやつだった。

 

まぁ、それは置いといて。大東亜連合の艦隊沖縄に攻めてきた話などが俺は、一つしか知らない。

 

海の家を見つけて(不法侵入だが、この際しかたない)テレビをつけてみると、

 

間違いない。

 

ここは、魔法科高校の劣等生の世界だ!!!!!!!!!!!!!

 

よりにもよって、魔法科高校の劣等生かよ!!

 

魔法科高校の劣等生が嫌いなわけではない、話は面白いし、アニメもヒロインが可愛かったから、小説も何巻か購入していた。何より、主人公の達也くんがチートすぎてたな。

 

だがしかし

 

「この世界じゃ、こんなの役に立つか!!!!」

 

魔法をバンバン使い、熱い戦いと青春がメインのこの物語に、なんに役立つのこの力!

 

せめて、Fateの宝具とか、魔術を使えるようにして欲しかった!

 

いや、あのチートなお兄様のことを考えたら案外使えるんじゃ……

 

と思っていたら、目の前にミサイルが落ちて海の家が吹き飛びました。

 

俺?全然大したことなかったです。

 

流石は、ノッキングマスター次郎。この時だけ、この特典で良かったと思ってしまった。

 

で、よく見たら上空にこちらめがけて、ミサイルが飛んできているわけ。

 

わぁー、ミサイルの流星群や!!

 

と、グルメレポーター風に言って見たが、そんな美しいものじゃ無いです。

 

どうしようかと思ったら、懐から何故か狼王ギネスの牙がついた、グローブが見つかった。

 

嵌めてみたところ、ぴったりでした。

 

やることはただ一つ。ひたすら、ミサイルを撃ち落とすことじゃ!!!!!

 

「おりゃ!ギネスパンチ!!」

 

ドルルルルァアアア!!

 

最初は、変な方向へ行ったりしてミサイルに全然当たらなかったが、次第にコントロールに慣れ、二発に一回は当たる様になった。

 

でも、加減しないと原作通り本当に星まで喰らいそうな威力だった。

 

最初に打った一発が思いっきり振りすぎて、一瞬で遥か彼方への消えていって、ポカーンとしてしまった。

 

どっかの島とかに当たったりしないよな?

 

幸い、あの方向には誰もいなさそうだし。

 

「まぁ、いいか」

 

取り敢えず、今はこのミサイルの大群をなんとかしないといけないし。

 

そう思い、ギネスパンチを放つ。

 

だが、次狼は知らなかった。最初のギネスパンチが飛んでいった方向に丁度、究極の分解魔法を行使しようとしている人物がいることを。

 

 




主人公を魔法科高校に通わせるか通わせないか迷っている。入れらんなら、二科生に入れるつもりです


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2話

追憶といっても、作者は小説3巻とアニメ知識しか持っていないので沖縄海戦の話はごちゃ混ぜになってるかもしれません。というか、オリジナルに近いかもしれません?
あー、なんで消しちゃったのかな。ものすごく後悔してる。


達也side

 

大亜連合の侵略によって、一時、基地での待機せざるを得なくなったのもつかの間、仲間の裏切りによって深雪を失うところだった。

 

だがそれもつかの間、達也と風間大尉率いる独立魔装大隊の活躍により大亜連合は撤退を余儀なくされ、岸から20キロ先の沖合にて大亜連合の艦隊が密かに沖縄から撤退していた。

 

しかし、それを許すほど甘くはない。

 

「成層圏監視カメラとのリンクを確立」

 

藤林響子が端末で敵戦艦の位置を確認。

 

達也の精霊の目(エレメンタル・サイト)を通して、脳内に敵の情報が事細かく分析されていく。

 

そして、大型ライフル型の特化型CAD、「サード・アイ」を構え、引き金を引いた。

 

「マテリアルバースト発動」

 

刹那

 

膨大な熱エレルギーと閃光が艦隊を包み隠さず飲み込む。

後を追うかのように、耳をつんざくような爆音が鳴り響き、爆風と地響きが20キロ離れたここからでも伝わってきた。

 

「敵戦艦、消滅を確認しました」

 

成層圏監視カメラからの映像はマテリアルバーストの影響でノイズが走っていたが、しばらくすると回復し、確認するとそこには綺麗な円状に広がる波以外何も写っていなかった。

 

「ご苦労、大黒竜也特尉」

 

一部始終を見ていた、風間大尉が達也に労いの言葉をかける。

 

「いえ、自分はこれくらいのことしかできませんので」

 

仮面越しだが、達也は無表情でそう答えた。

 

「風間大尉、本隊からの連絡です。敵工作員及び、裏切り者を捉らえたそうです」

 

「そうか、捕虜は逃さぬように厳重な警備のもと、独房に入れておけ。裏切り者に関しては後で私の元に連れてくるように」

 

「わかりました」

 

本隊からの連絡をうけ、風間大尉に伝え、そして、新たに命令を本隊に伝える。

 

こうして、後に沖縄海戦と呼ばれる戦争は日本の勝利に終わったのだ。

 

しかし、彼らにはまだやることがある。

 

捕虜及び裏切り者への尋問と言う名の拷問だ。

 

捕虜はまだいいとしても、裏切り者に関しては大尉自ら尋問を行うことを考えると、極刑も当然だろう。

 

少なくとも、今は戦争に勝利した余韻に浸りたい。誰もがそう思っていた。

 

その時、

 

基地に帰ろうとすると、不意に達也は何かを感じとり、その方角へと向いた。

 

そして、響子が持っていた端末にもそれは反応していた。

 

「大尉!! 何かきます!!」

 

「なに!? 敵か!?」

 

「いえ、未知のエネルギー反応です。それにとんでもない速度でこちらに向かってきています!! しかし、このエネルギー量は……」

 

マテリアルバーストと同等かそれ以上の……そう言う落とした時

 

ドルルルルァアアア!!

 

獣のような雄叫びをあげ、思わず耳を塞ぎこむ。

 

一体なにがと、振り返るとそれはすぐそこにいた。

 

大きな口を開けた狼が今にも自分達を喰らい尽くそうとする姿を。

 

気付いた時には既に遅かった。自分達はもう死んだも当然だと誰もが思った。

 

しかし、一足先に気づいていた達也は咄嗟に全員を魔法で地面に倒し自身の固有魔法である分解を使おうと思ったが、展開が間に合わないと判断し

地面に伏せた。

 

 

「くっ!」

 

しかし、全員に魔法をかけたのがあだになり、頭上部をかすめ、衝撃が体全体へと響き渡ってしまった。

 

達也はすぐに体勢を立て直し、その魔法が飛んできた方向を精霊の目を使い発動者を探索したが、見つからなかった。

 

恐らくはBS魔法か固有魔法による攻撃、術者は既に逃亡。

 

達也はそう結論づけた。

 

スッと、達也から力が抜ける。

 

スーツを脱ぐと、やはり頭部分は先ほどの攻撃でごっそり削られていた。

断面が鮮やかなこともありあの魔法の威力がうかがえる。

 

あと、コンマ数秒避けるのが遅かったら自分は死んでいただろう。

 

再生が使えるとはいえ、今の攻撃に自身の再生が間に合うのだろうか。

 

達也はこの時、初めて死という恐怖を感じた。

 

だが、それと同時に、これ程の魔法を使う魔法師に興味を持ち始めた。

 

知らずのうちに口元がにやけている事にに達也自身は気づかなかった。

 

取り敢えず、叔母上にこのことを報告し、反応を伺う事にした。

 

「………さて、どう説明すべきか」

 

あっけにとられている、独立魔装大隊をよそに達也は真っ二つに割れた海を見ながらそう思うのだった。

 

 

side out

 

 

 

 

次狼side

 

「あれが、マテリアルバーストか……もう、チートだね」

 

マテリアルバーストは小説とアニメでチラッと見て、凄いなーとしか思わなかったけど、実際に見るととんでもないチート魔法だった。

 

音はうるさい、爆風で飛ばさせるそうなるなど、もう核兵器とかいらないと思った。

 

あれで、非公式の戦略級魔法師なんて信じられない。

 

いくら、自分がノッキングマスター次郎の力を持っていたとしても、使い方もまだわからない上に、戦闘経験がない今だと確実に負けるであろう。

 

あー、色々考えたら疲れてきたな。この話はやめ。

 

取り敢えず、今はこのあたりで隠れよう。戦争は終結したが住民はしばらく落ち着くまで避難所ですごすだろうし、そんな中、街を出歩いて偶然、軍人に会って仕舞えば怪しまれるかもしれないからそれだけは勘弁だ。

 

幸い、海の家も無事だし、ここで釣りかなんかしてすごす事にした。まぁー、ここの主人にあったとしても逃げ遅れたとか言って誤魔化せばなんとかなるだろう。

 

「さて、食材確保と行きますか。」

 

不幸中の幸いと言うべきなのかはわからないが、マテリアルバーストの影響なのか魚がプカプカ浮いている。死んで、そんなに立ってないだろうし大丈夫だろう。

 

そんな感じで、次狼の沖縄海戦は終了したのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメ見るまでは、マテリアルバーストを勘違いしていた。

エヴァンゲリオンの陽電子ライフルの発射みたいに思っていた。

あれでしたね、スマブラの亜空間爆弾みたいでした。


見てみて、まぁー、驚いた。


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3話

最近、原作にFateをクロスオーバーさせてる作品にハマってるので自分も書いてみようかと考えています。
特に、サーヴァント達との日常を描いた平和な話とか面白かったので、書くならそういう系がいいと思っています。

あと、何気に俺ガイルの八幡を使ってる人が多いですね。まぁ、面白いので好きです。私も八幡が主人公の話が書けたらいいなと思っています。割と万能キャラなんですね八幡って。捻くれてるけど……

それでは、本編どうぞ!


なんやかんやあって三年経った。

 

え、適当?

 

なんとも濃ーい、出来事のオンパレードで説明しきれない。

 

大きく変わった事と言えば、魔法師に対する世間の目だ。

 

沖縄海戦での勝利をもたらしたのは、なんといっても魔法師達のおかげといっても良い。

 

そのせいなのか、国は更に魔法師育成に更に力を入れるようになった。魔法師の適性があれば、国からの補助を受けることができるようになったり、様々な面で優遇されたりなどあっという間に日本は魔法師優遇社会となっていた。いや、もとから優遇されていたので、更に強くなったという方が正しいだろう。

 

だが、そのことが仇になり、魔法師に対する世間の目が冷たくなっていった。

 

魔法師が優遇され、一般人は蔑まれる。

 

代わりと言って、魔法師には独特の制約や法律があったりするのだが、正直ちゃんと機能してるのかわからない。新聞やテレビで魔法師関連の犯罪を取り扱った所を見たことがない。というか、魔法師が活躍した場面しか見たことがない。

 

魔法に対抗するには魔法しかない。それを出来るのは魔法師だけ。

 

世界的に魔法師に対する不満の声が上がっている。

 

特に、魔法先進国の日本はその傾向が強いこともあって、国内には魔法師に対して過激な思想を持った者が集まる反魔法政治団体によるテロが近年、数えきれないくらい増えている。

 

「魔法師は人間じゃない。世間から排除するべきだ!」や、「第三次世界対戦が起こったのは魔法師達がいるからだ!」とか極論もいい所だ。

 

とは言え、魔法師自体が悪いのではなく、国が魔法師に頼りすぎてるのがいけないだけであって、彼らを責めるのはお門違いだ。

 

もし、戦争が起きれば魔法師は最前線で戦い、死を覚悟しなければならない事や常に過激派に狙われ、海外旅行にもいけず、幼き頃から国から徹底的に管理されていることを考えると優遇されてもいいのではないかと次狼は思っていた。

 

魔法師には魔法師なりの大変さがある。わかり会えば、共に生きていけると俺は思っている。

 

 

それは、そうと話を戻そう。

 

まず、この世界で俺がやったことは資金集めだ。海の家で数日間を過ごした後、近くの安い旅館で寝泊まりし、家具家電センターで手頃なパソコンを買った。

 

仮装型だとかスクリーン型だとかよくわからないので、キーボード式のノートパソコンを買ったのだが、店員から「そんな、アナログでいいんすか?」と聞かれたのだが、俺の世界じゃこのパソコン、某林檎社の最新型だぞ?

 

それが超旧型扱いで、一万円とか、安すぎて不安だったが流石は世界的企業。なんの問題もなく、とても使いやすい。

 

古すぎて、売れないから博物館へ寄付する所だったらしく、在庫処分ができるとあってかなりまけてくれた。

 

ついでに、ハードディスクも数枚貰った。

 

そして、それらを使って何をやるのかというと、投資である。

 

まぁ、沖縄海戦が終結して多少は落ち着いたとしても株価は大暴落。まぁ、仕方がないことだ。

 

でも、これから達也君がトーラス・シルバーのシルバーとして活躍することがわかっているので、彼が所属しているFLT社や十師族が経営する企業への投資した。

 

特に、トーラス・シルバーがループ・キャストを世界で初めて実現し、特化型CADの起動式展開速度を20%向上させ、非接触型スイッチの誤認識率を3%から1%未満へ低下させるなど、目覚しい功績を次々と上げて魔法界全体の進歩させた時なんて、株価はバブル顔負けで上がる上がる。

 

所持金ゼロから始まった俺の手には、腐る程の資金が集まった。そして、落ち着いた頃に、沖縄を出て、将来達也達が通う国立魔法大学付属第一校から車で15分くらいの所にある家を買った。

 

家も買い、貯金もたんまりある俺が何をしてるかというと

 

「この食材の再生方法は……」

 

特典のおまけとして貰った、再生屋の力を活かして再生屋をしていて、過去に人間の勝手な都合により絶滅した、動物や植物を蘇らせている。

 

ついでに、トリコの世界の食材を再現できないかと日夜努力している。つい先日、フグ鯨を再生に成功したばかりだ。

 

その他にも、再生した素材からいろんなもの作って売っていたりもした。家庭用品やら調理器具など多種多様な中、特に魔法師を中心に武器がよく売れた。

 

どうやらトリコの世界の素材はこの世界の想子やら霊子と相性がいいらしく、魔法演算領域の拡大や魔法処理能力の向上、更に、CADと組み合わせて使えば凡用型を使いながら特化型を超える速度で魔法を発動することができるとあって、瞬く間に魔法師の間で広がり、次狼の元には連日、製作依頼の電話や手紙が後を絶たない。

 

最近は、大手CAD開発企業から共同で武装型CAD開発しないかと誘われたりもしていのだが、次狼の仕事は絶滅動物や食材の再生が主な為、あまり乗り気はしなかったのだが次狼もCADを作る技術が丁度欲しかったので、技術交換を条件として協力することにした。

 

そして、できたのが神器シリーズである。

 

従来の武装一体型CADよりもはるかに展開速度がはやく、誤認識率もほぼゼロに近い。

種類も多種多様で刀や剣などのオーソドックスなものや斧や槍、変わったところで、三節棍や弓、籠手、双剣などもある。

 

完全受注製の為、時間もかかる上に、値段もそれなりにはる。それでも、依頼は後を絶たない。性能がいいことも理由だが、大半の理由は武装一体型CADを作る企業が少ないことにある。

 

特殊な技術が必要で、エンジニアが足りない事とコストが高く、買い手が大体、CADマニアか金を持て余した魔法師ぐらいだからで、殆どの企業は需要がある軽くて持ちやすいタブレット型や拳銃型に移行する。

 

まぁ、次狼趣味で作ってる程度だからそんなことを気にはしていない。

 

だけど、そんなことを言ってる場合ではなくなることが起きてしまった。

 

それは、いつものように食材の再生を行なってる時だった。

 

ピンポーン!

 

インターホンがなったので、扉を開けるとそこには

 

「やぁ、君が次狼君かね?はじめまして、私の名は九島烈。突然の訪問で申し訳ないが、少し話があってここにきたのだが……お時間よろしいかね?」

 

かつて、世界最巧と言われた魔法師がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




早くも九島烈登場

果たして、どうなるやら。

突然ですが、次狼の相棒をどうしようかと考えています。IS版ではバトルウルフでしたが、どうせなら他のやつを出したい。
なにか、こいつがいいとかありましたら、募集していますのでよろしくお願いします。




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4話

アンケートありがとうございます!

次狼についてですが、苗字は考え中です!後ほど設定の時に説明したいと思います!

サラダはどうぞ!


九島烈のことを知らない日本人は恐らく一人もいないだろう。

 

十師族という序列を確立した人物であり、本人は十師族の一角、九島家の前当主。約20年前までは世界最強の魔法師の一人と目されていた人物だ。

 

当時は「最高にして最巧」と謳われ、「トリック・スター」の異名を持ち、もうすぐ90歳を迎えると言われてはいるが、言われなければわからないと言っていいほど若く見える。

 

家督を息子に継がせ、第一線を退いてからは、殆ど人前に姿を現さなくなったが、毎年夏に行われる、全国魔法科高校親善魔法競技大会にだけは顔を出している。

 

数々の偉業や功績から日本の魔法師からは敬意を込めて「老師」と呼ばれるなど、まさに生きる伝説なのだ。

 

そんな大物がわざわざ自分の家に訪問してきたのだ。それもアポなし

 

あまりの出来事に心臓が止まるかと思った。

 

「大丈夫かね?」

 

しばらくの間固まっていたのを見て、心配したのか話しかけられハッ!となり、現実世界へと戻ることができた。

 

目の前に、黒塗りのリムジンが現れるだけでも違う意味でドキッ!とするのに、まさか九島烈さんが直々に訪ねてきたのだから、無理もない。トイレを借りにきた人が偶々有名芸能人だったとかのレベルならまだしも、自分に用があってわざわざお越しになったとか、普通の人ならぶっ倒れてもおかしくないのだが、少し固まるだけだった次狼はある意味大物だろう。

 

なら、せめて連絡の一つくらい取って欲しかった。

 

わざとなのか、偶々なのか。いや、原作でイタズラ好きな爺さんと言われてたから、恐らく前者なのだろう。

 

とりあえず、ここにいては話にならない。

 

「あ、すみません。どうぞ中へ」

 

「では、失礼する」

 

先程から、通行人や近所の人が黒服の人達を見て、怯えてるので、取り敢えず招くことにした。

 

あー、これは絶対、奥様方のうわさ話のねたになること間違いなし。

 

どうやって、言い訳するか考えながら、次狼は九島烈を客間へと案内した。

 

ちなみにだが、烈を客間に通した時、黒服の人の目が光ったり、小型のピンマイクに「計画通り進めろ」と話しかけてた気がするが……きっと気のせいに違いない。知らない方がいいこともある。うん、それ正解。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「散らかってますが、どうぞ」

 

「いや、こちらが勝手に来たのだ。それに、仕事中だったなら仕方ない。どれ、君たちも片付けを手伝ってあげなさい」

 

「は! 了解しました」

 

黒服の護衛と一緒に散らかってる道具を片付け、綺麗になったのを確認し、ソファーに座ってもらい、手伝って貰った護衛にも礼を言ったところ、

 

「いえ、こちらこそ突然の訪問で申し訳ない。なにせ、閣下はサプライズが好きな方なのでね。私も今朝聞いたばかりで……」

 

と言われた。

 

せめて、護衛の人には言った方がいいと思います。

 

妙に親近感を覚えた次狼だった。

 

「いま、お茶を出しますね」

 

「おお、それは有難い。歳をとると、どうも喉の渇きが早くてね」

 

烈から感謝の言葉をもらい、キッチンへと向かう。

 

キッチンには、今まで次狼が再生させた食材がわんさかあり、お茶っ葉だけでも数十種類ある。その中からどれを選ぶべきか迷ってしまう。

 

お気に召さないものを出して、殺される……なんて、ことはないだろうからどうせなら、いいものを選ぶ……いや、ここは変わりどこを選ぶべきか……

 

「お、これにしよ」

 

次狼はそのお茶っ葉を取り出し、急須にとお湯を入れ、烈の目の前に置く。

 

ついでに、茶菓子もそえて。

 

「…………」

 

湯飲みに茶を注ぐと、何やら烈の目が少し鋭くなった気がするので、どうかしたのか聞いて見たところ

 

「いや、これはなんとう言う茶かな?少なくとも私の記憶にはない香りがしての」

 

毒が入ってるのではと疑ってるのだろうか、それともただの興味なのか。

 

まぁ、そんなことするわけ無いのだが、鼻がよろしいことなので、説明することにした。

 

「あー、これは静か茶って言うものですよ」

 

「静か茶……聞いたことない茶じゃな」

 

「ええ、一般どころか市場にも出回ってないものですから」

 

「ほぉー、それは興味深い。どれ……」

 

そう言うと、烈は茶を飲み始めた。それも、スポーツドリンクを飲むかのようにゴクゴクと。

 

入れたばかりで熱いはずなのだが……どうやら、全然気にしてないようで。

 

あれか、よっぽど喉が渇いてれば火もまた涼也と言うやつか?

 

一応、真似て見たが、舌を火傷してしまった。良い子は絶対に真似しないように。

 

「うむ、素朴な味だがどこか奥深く、その名の通り、静かで落ち着く感じが心に響く……素晴らしい茶だ」

 

「お気に召して何よりです。よろしければ、いくつか譲りましょうか?わたしはあまりお茶を飲まないので」

 

「おお、では遠慮なくもらうとする」

 

次狼が烈に出したお茶は静か茶。

 

他の茶っ葉に比べ、苦味が多少強く素朴な味だが、どこか懐かしさを感じる不思議なお茶だ。

 

場を和ませるには、これ程適しているものはないと考え、出して見たのだが、上手くいって何よりだ。

 

「さて、私がここに訪れた理由だが……」

 

しばらくして、烈が今回の目的を話し始めた。

 

「実は、わしの孫、九島光宣がもうすぐ誕生日でな。いつもは忙しくて何もしてやれんのだが、今年こそはと思ってるのだが……私はサプライズが大好きだから、孫の驚く顔が見たい。そこで、CADをプレゼントしようかと考えていたのだが……どうせなら変わった物がいいと思って、そこで白羽の矢が君に立った。君の作る武装一体型CAD、神器シリーズには光宣も興味を持っていてね。忙しいことはわかっているのだが、どうか一本、作ってもらいたい」

 

その為に、ここにきたのだと烈ははっきりと次狼に行った。

 

次狼は少し困惑した。

 

何故なら、次狼の本業は絶滅動物や食材の再生なのだ。武装一体型CADを作ったのはただ単にCADの製造技術とライセンスが欲しかっただけで、今は単なる趣味となっており、たまに作る程度。

 

他にも理由がある。

 

それは、九島烈が軍需産業に関わっていることだ。

 

軍需産業ということは、人を殺すための武器を作ることを意味する。

 

そして、それは人間ではなく多くの自然や生態系を破壊する物であることを示す。

 

次狼の再生屋というのは、人間の勝手な都合によって破壊された生態系や生物を甦らすことにある。

 

そう、ここにいる二人は相対する仕事関係なのだ。烈は知らないだろうが、複雑な事情がこちらはあるのだ。

 

かといって、相手は引退したとはいえ十師族。断ればどうなるかわからない。

 

下手に、敵にすべきではない。

 

そこで、次狼は賭けにでてみることにした。

 

「烈さん、少しいいですか?」

 

「うむ、なんだね?」

 

「ここは、二人っきりで話し合いませんか?色々と積もる話もあるので」

 

少し、威圧する感じで話しかける。

 

「そうだね、君達は外で待機していてくれないか?丁度、私も君と二人きりで話がしたかったところなんだ」

 

それを感じ取った、烈は目元が一瞬鋭くなるがすぐに、口元をニヤリとし、笑うと護衛を全て外へと待機させた。

 

「さて、話とはなんだね?」

 

「ええ、私が言いたいことはただ一つ」

 

二人だけの空間だが、ヒリヒリとした緊張感が漂っている。

 

「正直に言います。私は貴方達十師族が好きではありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




テンポよく行くつもりが、シリアスに……どうしようか



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5話

まさかの言葉に、烈は驚きを隠せなかったのか言葉が出なかった。

 

殺伐した雰囲気が嘘のように静かになり、なんとも言えない空気が二人を包む。

 

十師族が好きではない。

 

そのような考えを持つものは、大勢いる。

 

これは、明らかなことだ。

 

しかし、烈が驚いたのはそこではない。

 

かつて世界最高と謳われ、十師族の長だった自身に向かって包み隠そうともせず、正直にはっきりといったことに烈は驚いたのだ。

 

もし、ここに護衛がいたなら間違い無く「無礼者!」と言われ、殺されてもおかしくはないのだ。

 

彼の態度からして、それは承知の上だろう。

 

さては、過去に十師族絡みの事件に巻き込まれたのか……もしくは数字落ち(エクストラナンバーズ)

 

はたまた、反魔法団体の一員か……

 

何か理由があるのだろう。

 

そうでなければ、わざわざ二人っきりで話そうというわけがない。

 

「そうか、十師族が嫌いか……それはなぜかね?」

 

烈は次狼を試すかのように、威圧を込めて聞き返した。

 

並みの人間なら大抵は怯んでもおかしくないのだが、次狼はそんな様子は一ミリも見られず、落ち着いてるようだった。

 

この事から、烈は次狼がかなりの実力者と言うことを確信し、何があってもいいように、体勢を整えた。

 

何を言われようが、必ず手玉に取る。

 

見せてもらおうか、君の本性を

 

烈は、激しい討論が繰り返される事を予想し、その打開策をいくつも構築していた。

 

しかし、次狼から出た言葉は意外なものだった。

 

「別に、私は十師族そのものが嫌いなわけではありません」

 

「……ほう?」

 

予想外の答えに、烈は思わず声を上げる寸前までいったのだが、なんとか止めることができた。

 

「どちらかと言うと、十師族の制度はいいと思います。魔法師が国家権力によって使い捨てにされないようにする。その考えは賛成です」

によって使い捨てにされないようにする。その考えは賛成です」

 

十師族には、日本という国家に対し、魔法師代表としての口答えをする為に作られたという一面もある。

 

それとは他に、互いに牽制し合うことで特定の人魔法師が暴走するのを予防する役割もある。

 

一見、なんの問題も無いように見えるが実際は問題だらけだ。

 

そうなったのには、時代が関係ある。

 

魔法には魔法で対抗するしか無い。

 

この考えが今の世界基準。

 

特に、その傾向が強い、日本は国防に関しては魔法師に頼りきりだ。当然、その中でもずば抜けて高い能力をもつ十師族に力が働くわけで、表向きは政治に関与してないとはいうが、実際は司法当局よりも強い権力と特権を持っている。

 

関与してないわけがない。

 

「しかし、今の時代、魔法に頼りすぎています。特に日本は魔法先進国なだけあって、その傾向が強い。必然として十師族が力を持つようになったのはいうまでもありません」

 

「……」

 

烈は、年端もいかない若造にここまで的確に、偏見を持たないで、十師族の問題点を言われたことに感心した。

 

十師族の話題といえば、どれも偏見を持った者たちによる批判がほとんどだからだ。

 

しかも、それが魔法師ではない一般人。

 

「それに、やたらと魔法技術を秘匿しようとするのが少し問題あると思うんです」

 

先程言った、魔法には魔法で対抗するしかない。という考えは国防にも大きくかかわっている。

 

敵が新たな魔法を作った。それなら、こちらも対抗策として新たなる魔法を作ろう。

 

やってることは、ソ連とアメリカを中心に、核開発で互いに牽制しあった冷戦とやり口が似ている。

 

それは結果として、失敗し、国が崩壊しているのに、なぜ学ばないのか不思議である。

 

 

「秘匿にするんじゃなくて、オープンにすればいいと思うんです」

 

これは、あくまで次狼が思っていること。

 

しかし、軍人である烈にはその考えはあまり納得できない。

 

「だが、それでは自国の国防が明るみになるのではないのかね?」

 

国を守る軍人としては、自国の軍事力が明るみになるのは避けて通りたいところなのだ。

 

秘匿に秘匿を繰り返し、結果としてはUSNAをも凌ぐ魔法先進国になったのだ。

 

その結果、今の同盟がある。

 

次狼がいう事をすれば、その関係が崩れる可能性があるのだ。

 

しかし、次狼はそのことは想定済み

 

「それは、承知の上です。なので、互いにメリットのある関係を作ればいいんですよ」

 

「ほう、例えば?」

 

「貿易なんてどうでしょうか?こちら、魔法技術を提供をすることによって、向こうから物資や資源を提供してもらう。特に、CADに使うレアメタルなんかは資源の乏しい日本は特に不足してますし、互いに依存し合う経済関係を作れば、睨み合ったり牽制し合う必要も無くなると思うんです。」

 

諺に、敵に塩を送るという言葉ある。

 

これは上杉謙信が、今川・北条の塩止めで苦しんでいる武田信玄に塩を送ったという逸話からきているが、上杉謙信が武田との争いを避ける為に、行ったとも言われている。

 

当時、塩は大変貴重なエネルギー源であったのだが、武田信玄が治めた甲斐の国は内陸だったために塩をなかなか手に入れることが出来ず、信玄が領土拡大を目指した理由の一つに塩を手に入れるためと言われるほど、塩は貴重だった。

 

牽制し合うのではなく、助け合う。それが重要だと次狼は考えている。

 

「……成る程」

 

烈は今まで、そんな事考えたことがなかった。

 

それは、軍人としての誇り、多くの命を守るという自身の使命があったから故。

 

よく考えれば、子供でも考えつく内容である。

 

互いに牽制し合うことしか考えてないから、こんな簡単な事も思いつかない。

 

灯台下暗しとはこの事である。

 

「他にも、魔法師と一般人の交流を深めるイベントをしたり、魔法を芸能、建築、医療とかにも役立てることだったできるはずなんです。そうすれば、魔法も身近になって、魔法師に対する険悪感も無くなると思うんですよ」

 

「……」

 

烈はそれを黙って聞く。

 

想像したよりも遥かに常識的な考え方だったのだが、烈には相当なものだったのだ。

 

価値観の違いもあるのだろうが、次狼の考えは相当的を射ていた。

 

自身よりも70歳も若い若造に、教えられる羽目になるとは思わなかった。

 

「まぁ、自分勝手な考え方ですが、こんなものですかね。話が長くなってすみません」

 

「いや、こちらも色々と学ぶことができた。ふふ、まさか君みたいな青年に教えられるとは……人生、何があるかわからないものだ」

 

先程とは違い、烈の顔は柔らかくなっていた。

 

「いえいえ、こちらも見ず知らずの若者の話をお聞きくださり、ありがとうございました。それと、お詫びと言ってはなんですが、CAD製作の件、無料で承りますよ」

 

「おお、それは有り難い!……だが、無料というのはこちらも気が引けるのだが……いや、今回は君の好意を受け取らせてもらおう」

 

「ご丁寧に。では、商談に入りましょう。まずデザインや色、どの武器を一体にしますか?」

 

「うむ、デザインや色は君に任せるとしよう。ただ、光宣は病弱での……あまり重いものは控えてほしい」

 

「わかりました。では、短剣かナイフ辺りということですよろしいですか?」

 

「うむ、それにしよう」

 

「ありがとうございます。では、出来上がり次第、お届けしますので、連絡先は……」

 

「それなら、ここに電話するといい。私の部下が受け取りに行く」

 

そういうと、烈は名刺のようなもの(電話番号が書かれているだけの簡素なもの)を次狼に渡す。

 

「完成はいつ頃かね?」

 

「そうですね、大体、二ヶ月ぐらいだと思います」

 

「二ヶ月か……意外とかかるものなのか」

 

「武装一体型はかなり特殊ですからね。自分の場合は一体になる武器から自作するので」

 

「わかった。では、そろそろ会議の時間なので失礼する」

 

「こちらこそ、貴重な時間をありがとうございます」

 

商談を終えると、烈は護衛を呼び戻し、車に乗り込むとそのまま、何事もなかったかのように去っていった。

 

「九島烈……想像以上の人物だったな」

 

ポッと出たその独り言は風によってかき消された。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

side 烈

 

「次狼君か……中々面白い青年もいたもんだ」

 

車で移動中、烈の頭の中では次狼に対する興味でいっぱいだった。

 

話を聞いた時は、恐れを知らない大馬鹿もかおもったがそれは勘違いだった。

 

彼から漂うただならぬ、暴獣のような気配。そして、圧倒的な強者の匂い

うまく、隠しているようだが私の目は誤魔化せない。

 

いや、隠しているというより、抑え込んでいるといったほうがいい。

 

しかし、彼は魔法師ではない。

 

一体彼の力はなんなのか。

 

考えると気になってしょうがない。

 

彼なら、私の理想を現実に出来るかもしれない。

 

幸いなことに、ほかの十師族はまだ彼に気づいていない。

 

今のうちから、こちら側に引き込んでおいたほうがいいかもしれない。

 

まぁ、そんな簡単にうまく行くとは思えない。

 

たが、彼とはなんとなく彼とは気が合いそうだ。

 

仲良くしといて、そんはないだろう。

 

携帯を取り出し、ある連絡先へかける。

 

「もしもし、響子か、少し、調べてほしい人物がいるんだが……」

 

さて、君の正体を暴かせてもらうぞ

 

次狼くん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか、敵対することだけは避けれた。

シリアス展開は難しい。出来れば、今後は日常系にしたい。

それと、原作キャラとどうかかわらせるかも考えないと

あー、考えることがまだ沢山ある

次回もお楽しみに!


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中学編
6話


コメントで次狼の髪型はリーゼントと質問があったのですが、一応、リーゼントではない予定です。

その辺は後日、設定で説明したいと思います。


九島烈の訪問から一ヶ月が経った。

 

何故かは、わからないが、あれから着々と烈さんが家に訪れるようになった。

 

仕事とか関係なく、プライベートでわざわざ九島秘伝の仮装行列(パレード)を使ってまでと、本当に何したいのかよくわからない。

 

本人は世間話をしにきたとか、茶を飲みにきた、たまたま近くを通りかかったとか、いろんな理由なんだけど、多分、何かしらの理由があるんだろう。

 

まぁ、ぶっちゃけ暇だから付き合え

 

そんな感じだと思う。

 

そんでもって、たわいのない世間話をする中、学校に行ってない方を言うと

 

「君みたいな人材を放っておくのはもったいない」

 

と一括され

 

学校へ通うよう説得され、俺に両親がいない事を確認すると

 

「なら、私が何とかしよう」

 

と後日、戸籍や経歴を作ってくれた。

 

次狼

 

京都府出身 14歳

 

両親なし、身内なし

 

東京都内の一軒家に一人暮らし

 

出身小学 京都府市立小学校卒業

 

保護者 九島 烈

 

ざっくり紹介するとこんな感じだ。苗字は自分で考えてそれを登録するようにとの事。

 

その後は、近くの中学校に編入手続きを行い、ただ今、絶賛学生生活を謳歌しています。

 

中途半端な時期の編入に最初は変な目で見られたりもしたのだが、とある男子生徒のお陰で事なきを得た。

 

その男子生徒と言うのが

 

「よう、次狼。相変わらず眠そうな顔だな!」

 

「あー、レオか。おはよう……」

 

レオこと西城レオンハルトだ。

 

レオとの出会いは、編入初日に魔法科の生徒と合同で体育を行った時に、声をかけられたのが始まりである。

 

俺が一般科でも気にしないで話しかけてくれるし、昼飯もよく誘ってくれる事もあり、その甲斐あって、今では沢山の友人が出来た。

 

更に、俺が一人暮らしで親がいない事を知ると、家に招待され、夕食をご馳走にもなった。

 

気さくな人柄で、頼れる兄貴分みたいな感じだ。

 

実際に、後輩からレオの兄貴って呼ばれてるみたいで、めちゃくちゃ親しまれてる。

 

ただ、本人は少し恥ずかしいらしく、からかってみたら、全力で追いかけられ、パンツァーされるところだった。

 

まぁ、途中で教師に捕まってみっちりと絞られたけど

 

ちなみにだが、レオ曰く、俺は学園屈指のトラブルメーカーと認識されているらしい。

 

放課後に、実験室で試作品の武装一体型CADをレオに試させて、崩壊させ、後片付けする羽目になったり

 

またある日には、観葉植物に成長を促す作用の薬を誤って落として、大量にかけ、学園全体を草や花で覆ってしまい。後日、魔法科の生徒に駆除を手伝ってもらうなど、きりがない。

 

まぁ、全部事故なので今のところは反省文だけで済んでいる。

 

ただ、教師の目線がものすごく鋭い気がするのだが……気のせいだと思いたい。

 

今日は何事もなければいいな〜(棒)

 

「なんだ、またやからしたのか?相変わらずだな」

 

「あー、今回は特に何もやってないよ。ただ、剣術部の奴に試作品の武装一体型CADを試させただけだってのに……」

 

「今朝、体育館が真っ二つになったて聞いてたが、やっぱりおまえだったのか……」

 

「いやな、俺は軽く振って、起動させるだけでいいって言ったのに、あいつらカッコつけて、思いっきり振りやがってやがって……おかげで、放課後は修繕をする羽目になったよ。それに比べて、剣術部の奴らは、魔法の不正使用はなかったからお咎めなしだぜ?酷くないか?CADも没収されたし!」

 

「俺が教師だったら、振っただけで体育館を真っ二つにするものどうやって作ったか知りたいところだな」

 

「それは企業秘密です」

 

やっぱり、レオドラゴンの牙はやり過ぎたか。デロウスやギネスの牙よりはマシかと思ったんだが……もう少し、材料の質を落とすか。

 

「まぁ、なんだ。手伝ってやるから元気出せ。なんなら、他のクラスの連中にも声をかけるからよ」

 

「ありがとうレオ!持つべきは親友だな!!」

 

「ただし、寿々苑で焼肉食べ放題な」

 

「任せろ!一人でやる事を考えたら、安いもんだ!」

 

「あそこ、肉なら最低でも一皿3500円するんだが……」

 

そんな事はしらん。多くでも人が集まるならなんだって構わない!

 

放課後、レオが魔法科の知り合いを数人読んでくれたおかげで3時間で治すことができた。

 

後日、約束通りレオ達を連れて寿々苑に連れてったんだが、みんなが体育会系であったばかりに、肉ばかり頼み、食べるに食べた結果、20万円奢ることになった。

 

解せぬ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




体育館を真っ二つして、20万円で済むなら安いかもしれない

今回は短めです

レオくんの登場。ここでは、次狼と同じ中学で魔法科に所属している設定です。


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7話

「さて、何か言いたいことはあるのかしら?」

 

「いや、その……」

 

いきなりで悪いが、今の状況を説明する。

 

俺は今、尋問されています。

 

さて、どうしてこうなったのか?

 

事の発端は、数日前に遡る

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「おはよう、次狼!」

 

「あー、おはよう、レオ」

 

教室に着くと、やはりレオがいた。相変わらず眩しい笑顔だ。

 

「昨日はご馳走様!」

 

席に着くと、いきなり肩を強く叩き始める。それも、かなり強い力で。

 

「お前、何気に一番食べてたもんな……」

 

少し皮肉を込めてみたが、いかんせんレオは空気を読めない男なため理解はできてはいなかった。

 

「おう、お陰で力がみなぎったぜ!やっぱ、男は肉を食うべきだよな!!」

 

見ろよ、この筋肉!

 

と言わんばかりに制服の裾を曲げ、上腕二頭筋が露わになる。

 

「おお!」と反応する面々もいれば

 

「いい筋肉だ……」となんか、スネークみたいな声が聞こえてきたり

 

「ぐひひ、今年の主役は……」と一部の女子がよだれを垂らしてたり

 

「レオ×次狼。今年はこれね!」と……誰だ今言ったやつ!

 

捕まえようとしたが、既に遅かった。

 

絶対に捕まえてやると決意した時、レオが何かを思い出したかのように次狼に話しかけた。

 

「そういえば、次狼、今週から風紀強化期間があるのは知ってるか?」

 

「あー、そういえばそんなこと言ってたっけ?なんやら、最近、校舎や実験棟の破壊行為があとを絶たないから取り締まりを強化するとか……まったく、迷惑な奴もいたもんだな」

 

「それ、殆どお前のことだと思うのは気のせいか?」

 

「気のせいだ!……多分

 

あれは全部、事故だから。問題はないはず……あれ、なんか自信がなくなってきた。

 

なんか、そこはじゅうから「お前だよ!」的な視線を感じるが気のせいだと思いたい。

 

泣きたくなる衝動を抑え、なんとか立ち直るとレオが真剣な顔をして忠告してきた。

 

「気をつけろよ?お前はきたばかりで知らないかもしれないが、ここの風紀委員会は他校とは比べ物にならないくらいの権力を持ってるんだ」

 

「え?風紀委員会て学校前で荷物検査して、違反してるものを没収した、遅刻者を注意したりとかする、あの風紀委員会だろ?」

 

てか、この学校に風紀委員会ていたんだ。初めて知った。

 

風紀委員と聞いて、前世で見ていたアニメで「破廉恥な!」とか言って自分が一番破廉恥な女性を思い出した。

 

なんか、風紀委員会の委員長=女性でエロい

 

との法則と偏見をもった俺を許してほしい。

 

こほん、気を取り直して

 

なんか、みんなの視線がすごい痛い「あー、何も知らないのか……」と哀れみが読み取れた。

 

というか、レオも頭を抱えていた。

 

「まぁ、いい。時期にわかる。俺から言えることはただ一つ。絶対に風紀委員会に捕まらないこと!特に、風紀委員長の鳴神勇人だけは怒らせるなよ!何が起こるからわからないからな!!」

 

「お、おう……」

 

あまりの真剣さにたじろいでしまう。

 

てか、そこまで真剣になるなんて過去に何かあったのだろうか?

 

なんか、クラス全員も虚を向き始めてる。

 

「あぁぁぁぁああ!!」

 

とか

 

「あの鬼め!」

 

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

など、もはやカオス。

 

特に鳴神勇人とか言ったけ?名前からして男(少しショック)だと思うが、名前だけでここまで恐れられるって、一体何したんだろうか?

 

逆に気になる

 

「鳴神勇人ね……なんか会ってみたいな」

 

シーーーン

 

あれ、なんかさっきまであんな状態だったのが嘘みたいにしらけた。

 

「え、俺、変なこと言っ……」

 

バシ!!

 

突然、レオに肩を掴まれた。

 

「今夜、おれの家へこい。お袋に頼んでお前の好物のアイスバインを作ってもらうからよ。最後の晩餐ぐらい好きなもの食べたいだろ?」

 

なんだ、レオが、もうすぐ、天国へ行くのをを暖かい目で見送る人の目になってるぞ!

 

ちなみに、アイスバインはドイツの伝統料理の一つである。

 

レオの母親に作ってもらって以来、一二を争うくらいの大好物だ。

 

それはさておき

 

色々とめんどくさいので冗談という形で終わることにした。

 

「冗談はよせよ、心臓に悪い」

 

「悪かった……」

 

そういうと、レオは落ち着いて席に座った。

 

ちょうど担任も入ってきたので、みな授業の準備をする。

 

ただ

 

「「「「「あいつ、絶対何かやらかしそうな気がする!!」」」」」

 

とクラスメイトのほとんどは次狼を見てそう思っていた。

 

これが、良くも悪くも現実になることはクラスメイトも本人もこの時は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




しばらく、オリジナルの話が続きます。


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8話

昼休みに入った。

 

学校での楽しみといえば、給食が挙げられるのだが、今の時代、その文化は殆ど機能していない。

 

殆どの学生は弁当か学食で済ませる。

 

申請すれば給食も出るのだが、あまり美味しくないらしい。

 

次狼としては、なんでなくなったのか。と少しさみしい思いだった。

 

給食当番を変わる代わりに嫌いな物を食べてもらったり

 

牛乳瓶の蓋を開けようとして失敗して牛乳が飛び散ったり。

 

牛乳を飲んでる時に笑かして来るやつがいたり。

 

誰かが休んで、余った惣菜を取り合ったり。

 

サラダドレッシングを最初のやつがかけすぎて後の人の分が無くなって喧嘩になったり

 

と色んな思い出があり、揉め事も起きたりもしたのだが、普段あまり喋らない人と話す機会が出来て、仲良くなったり、クラスメイトとの絆が一段と深まったりなど、最も効果のあるコミュニケーションだと思っている。

 

現に、この教室でも魔法師は魔法師と一般人は一般人としか飯を食う光景が多く見られる。

 

例外もいるが、距離を置かれているのが現実。

 

同じ釜の飯を食う事と互いに食卓を囲む大切さを学ぶべきだと思う。

 

そういうところから意識を変えていかないと、いつまでたっても変わらない。

 

以前、烈に話したこともそうだが、なんで、こんな小学生でも思いつくことが出来ないのか理解不能である。

 

それはさておき、本題の戻ろう

 

次狼はレオに誘われて、屋上で昼食をとっていた。

 

次狼とレオ、そしてこの前体育館の修繕を手伝ってもらった際仲良くなった体育会系の魔法科所属の生徒10人。

 

合計で12人とかなりの人数だ。

 

その中で一般科なのは俺一人だが、疎外感は感じない。

 

「その唐揚げよこせ!」

「やるかバカ!」

 

とか

 

「隙あり!」

「あ、俺の卵焼き!!」

 

 

「セロリやるからその肉巻きベーコンと交換しようぜ?」

「お前、セロリ嫌いなだけだろ」

 

など、どこにでもいる中学生同士のやりとりから、全くそうは思わない。

 

平和だなーと思っていると、後ろのドアが開く音がしたので振り返るとレオがいた。

 

その手には、大量の惣菜パンを抱え、手には重箱をぶら下げでいた。

 

「おお、やってるな」

 

「遅いぞレオ」

 

「わりー。ほら、これやるからよ」

 

といって、パンを俺めがけて投げてきたので、それを掴む。

 

テリ玉トンカツサンド……文字通りテリ玉とトンカツをサンドし、ハンバーグとトンカツを同時に食べることができる、あるようでなかった夢のコラボサンド。

 

なんじゃこりゃ。

 

他にも、レオが買ってきたパンの中には焼きぞばパンならぬ焼きうどんパンや麻婆豆腐が入った麻婆パンなど多種多様な物があった。

 

ここの学食は大丈夫なのだろうか?

 

まぁ、レオ本人は美味そうに食べてるし、俺も食べて見たが、案外美味しかった。

 

ただ、レオが苺ジャムならなぬ梅ジャムパンを食した時は悶絶してたのは余談だ。

 

そんな悶絶したレオを皆が大爆笑しつつ、皆がそれぞれ最近の出来事や話題について語り合う。

 

とは言っても殆どがアレについてだ。

 

「そういえば、去年の7月だったか?2年B組の綾崎が風紀委員会に捕まったの」

「あー、知ってる。下校時にゲーセンで遊んでるところを現行犯逮捕されたらしいな」

「あー俺のクラスも三人が逮捕されたっけ。理由が買い食いしてたからとかおかしくねぇか?」

「他にも、髪型が乱れていたから、丸刈りにされた奴もいるらしい。後から聞いた話だが、それはただの寝癖だったらしい」

「地獄の3ヶ月だったよな。仲には司法取引を持ちかけて仲間を売ったやつとか、スパイ活動してる奴もいて、クラスの雰囲気とか正気の沙汰じゃなかったぜ」

「強化月間が終わるまで、一言も喋らなかった……いや、喋れなかったクラスもあったしな」

 

風紀委員会の強化月間の話だ。

 

なんか、話してる全員が上の空だ。

 

特に最後の二人の話は本当かと疑ったが、レオ曰く本当にあったらしく、なかには停学になった生徒もいるらしい。

 

何故、そこまで風紀委員会が権力を持っているのか聞いて見たところ、レオが答えてくれた。

 

「それはな、学校の格を上げようとする過激派の教師陣の息がかかってるからだ。特に風紀委員会顧問の教頭はその筋では有名だぜ?」

「教頭?…….あー、あの爽やかイケメンね。たしか、二十九(つちや)家の次期当主だっけ?」

「そうそう、百家の一員とあって、誰も奴には逆らえないのさ。影の校長なんて呼ばれてるよ」

 

風紀委員会の顧問、教頭二十九信春。

 

十師族専属のボディーガードの家系で百家内の序列は低いが多種多様な魔法を使いこなすことでライバルを蹴落とし、成り上がった家系だ。

 

特に次期当主の信春は二十九家の歴史において最高傑作と言われるほどの実力者だ。

 

だが、この男、色々と怪しいのだ。

 

次狼は学年集会ぐらいでしか見たことないが、壇上に出てきた時にはどす黒い底なし沼を感じさせさ、何やら邪悪な気を感じた。

 

魔法科の生徒からはかなり信頼されているみたいだが……きみがわるいというか、時々差別するような発言をするなど、ここにいる皆は教頭の事が好きではないらしい。

 

友達がバカにされた気がして、許せないんだとか

 

お前ら……

 

あれ、なんか目から汗が……

 

何やともあれ、俺はいい友達を持ってよかった。

 

次狼は放課ギリギリまで友との会話を楽しんだ。

 

 

 

 

 

だがここで思わぬハプニングが起きた。

 

それは、昼食を食べ終わり皆がそれぞれの教室へ戻る際

 

「げ、こんな時にか……」

 

「どうした?」

 

腹を抱え込んだ俺をレオが心配し始めた。

 

腹が痛くなったとか、ではなく、突如、腸が活性化し始めたのだ。

 

これは間違いなく、完全にあのテリ玉トンカツサンドだ!

 

授業まで後5分しかない。今トイレに行けば遅刻してしまう。だが、限界が近い。

 

ええい、背に腹は変えられん!!

 

「レオ、済まないが俺は行かねばならない場所(トイレ)に向かう!先に行くといい!」

 

「おう、わかった。後は任せておけ(なんとかごまかしておく)。早く戦ってこい!」

 

「レオ、すまねぇ!」

 

物凄いかっこよく言ってる気がするが、要はトイレが我慢できないので行くということである。

 

急いで、男子トイレに向かい、その勢いで扉を開けると

 

「……え?」

 

そこには、男子にしては妙にほっそりとしたスレンダーな体系を持ち、今まさに男子の制服に着替え中だった、下着姿の女子生徒がいた。

 

この出会いが波乱の幕開けだったのを今の次狼は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、この男子の制服に着替えていたこの女子生徒の正体とは……何やら厄介ごとのにおいがプンプンする

次回お楽しみに!!


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9話

感想、誤字脱字報告ありがとうございます!


「………」

「失礼しました」

 

そっと扉を閉めて、入口へと戻る。

 

「男子トイレだよな……」

 

女子トイレと間違えたかと思い確認したが間違いなく、男子トイレだった。

 

では、俺が見たのはなんだったのだろうか。

 

幻覚にしては妙にリアルだった。

 

それに、ちゃんと声も聞こえたから少なくともそこに人がいたのは間違いないだろう。

 

トイレで着替えるのは別におかしなことではない。体育の時間とかで利用する生徒もいるので、学校ではよくあること。

 

ただ……男子トイレでまさか着替え中の女性下着を着けた生徒を見るとは思わないだろう。

 

「なんで、女性の下着なんかつけてたんだ?」

 

そもそも、なんで男子トイレに女性がと思うところがあるのだが、今の次狼にはその事でいっぱいだ。

 

一瞬見たときはスレンダーな女性かと思ったが、男子の制服を着てる途中で、何より声が男の子ぽかったから男子生徒なのは間違いないだろう。

 

となると……あれしかない

 

「うん、多分彼は特殊な性癖の持ち主(ヘンタイ)なんだろう」

 

次狼はそう結論づけた。

 

随分強引な気がするが、それ以外理由が思いつかないのだ。

 

とりあえずこれ以上深く考えるのはやめよう。趣味は人それぞれだからとやかく言う理由はない。

 

「やべ、もう10分経ってる!」

 

ふと、時計を見ると知らずのうちに時間が過ぎていた。

 

トイレに駆け込んだのが五分前だから、授業が始まって五分は立っている。

 

知らぬ間に、出るものも出なくなったので、このまま教室に行こうとした

 

その時

 

「見たな……」

 

後ろから、ドス黒い声がしてきたので、思わず、ギギギと振り返るとそこには先程の男子生徒がいた。

 

「あ……その……」

 

「見たな……」

 

禍々しいオーラを放ちながら一歩、また一歩と近づいてくる。

 

冷え汗が止まらない。

 

「ん、確か君は……次狼……そんな名だったな?」

 

どうやら、向こうは俺の事を知っているようだ。

 

なぜ、知っているかはともかく、この場からいち早く逃げたいと思う衝動から次狼は黙り込んだままだ。

 

「黙るのか……まぁ、それはいい。僕が聞きたいのはただ一つ……」

 

ゴクリと生唾を飲む

 

「お前、僕の下着を見たな?」

 

ああ……やっぱり。

 

彼にとって、あれは見てはいけないものだったのか。

 

「もう一度聞く、僕の下着をみたな?」

 

「さぁ?俺は何もみてない……ぞ?」

 

「なんで、最後が疑問形なんだ?」

 

「え、えっと……」

 

素直に言っても無事じゃ済まなさそうだから、誤魔化そうとして思わず疑問形が出たとか言えるわけがない。

 

「舐めるように僕の身体を見つめてたのにか?」

 

「アホ!誰が好き好んで変態野郎の下着なんか見るか!!」

 

「ほら、やっぱり見たんだな?」

 

「……あっ!」

 

あっさりと誘導尋問に引っかかってしまったために、もうごまかせなくなった。

 

ここは一旦落ち着いて話し合いで解決するのが良案だ。

 

「と、とりあえず話を……」

 

「黙れ、変態」

 

どうやら、向こうにはその気はないようだ。

 

「ついでに、君には色々と聞きたいことがあったんだ。ここで、拘束させてもらう!!」

 

制服の袖をめくると手首のCADがあらわになった。

 

それを見た次狼は確信した。

 

「CAD!まさか、風紀委員会か!」

 

校内でCADの携帯が許可されるのは教員かごく一部の生徒のみ。それ以外の生徒は基本校内では所持する事が禁止となっている。

 

ごく一部の生徒というのは、生徒会か風紀委員会に所属している者たちの事を言う。

 

しかしそれだけでは、この生徒が風紀委員会所属とは限らない。生徒会役員の可能性もある。

 

だが、基本的な生徒会は荒事はしない。

 

それに、生徒会役員は全員が美形で顔が知れている。

 

次狼はこの生徒を見たのが初めてなことと、CADを携帯している事から風紀委員会の役員ではないかと思ったのだ。

 

「ああ、その通りだ!!」

 

見事、その予感が的中したのだが……出来れば外れてほしかったと思ったのは余談だ。

 

CADを操作し、術式が構築。それが発動する。

 

次狼は魔法師ではないため、想子の活性や魔法の術式を読み取りそれが何魔法かを判断することは出来ない。

 

一瞬にして距離を縮め、次狼の脇腹めがけて拳を放つが

 

「おっと、危ないな」

 

それを難なくかわす。

 

かわされたことに驚いたのか、相手は目を見開き一瞬だけ止まってしまった。

 

だが、その一瞬を次狼は見逃さない。

 

「一般人相手にやりすぎだ、少し反省してろ」

 

人差し指をおでこに当てると、相手は全身に電流が走ったような衝撃と共に身動きが取れなくなった。

 

「悪いな、これ以上遅れるわけにはいかないからな。安心しろ、五分でとける」

 

そういうと、次狼はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

僕は訳あって男子生徒として学校に通っている。

 

その間、女性だというのは絶対にバレてはならない。

 

なので、細心の注意を払っていたのだが、油断していた。

 

しかも、その相手が前々からマークしていた問題児、次狼だった。

 

彼は、僕の身体を舐め回すかのように見物した後、逃げるようにトイレから出て行った。

 

しばらくボーっとしてしまったが、気を取り直し、急いで着替えて彼を追った。

 

運がいいことに、彼はすぐ近くにいた。

 

最初は僕の下着を見てないと言っていたが、見事誘導尋問に引っかかって自爆した。

 

僕が女性だということはどうしてもバレてはいけない。

 

見たところ、彼は一般人だが僕の秘密を守るためならやむを得ない。

 

CADを見せると彼は少し、驚いた。

 

その間に、術式を構築。魔法師ではない彼にはわからないが、私が発動するのは加速魔法だ。

 

加速魔法で次狼との距離を一瞬で縮め、脇腹めがけて拳を放つ。その間に、拳に硬化魔法をかける。

 

すでに、間合いに入っているから避けるのは不可能。

 

そして、あまりの痛さに悶絶してるところを、重力魔法で床へ押し付けその間に拘束する。

 

そして、今日の記憶を消させてもらう。

 

これが僕の考えたシナリオだ。

 

すぐに終わる。

 

そう思っていた。

 

「おっと、危ないな!」

 

彼は身体を少しひねり、紙一重でかわしたのだ。

 

バカな!避けれるはずがない。

 

驚きのあまり、一瞬止まってしまった。

 

それが仇になった。

 

「一般人相手にやりすぎだ。少し反省してろ」

 

先程よりも強い口調になっていた彼が僕のおでこを少し触れると電流が流れたかのような痺れと共に気づけば身体の自由が奪われていた。

 

何をされたのかわからなかった。

 

「悪いな、これ以上遅れるわけにはいかないからな。安心しろ、五分でとける」

 

そういうと、彼は去っていった。

 

必死で後を追おうとするが、身体がいうことを聞かない。

 

結局、彼のいう通り、五分経つまで僕のこの身体が動くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少しだけ戦闘シーン

次回、この生徒の正体がわかります。多分、ほとんどの人がわかってると思いますが……お楽しみ!

ちなみに、この話はあるアニメの1話のシーンを元に前々から合わせて見たいと思いやってみた限りです


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10話

遅刻はしたが、レオの弁明のお陰で授業には参加することができたのだが、そのかわり、授業中の質疑応答は全て次狼がすることになった。

 

「お疲れさん。ほら、これやるよ」

 

「お、レオにしては気が利くな!」

 

「一言余計だ!!」

 

と投げ出されたキャラメルをキャッチし、それを口にする。丁度、甘いものが欲しかったので、これはとてもありがたかった。

 

キャラメルの味を堪能しつつ、次狼はレオと軽く世間話をする。

 

とはいっても思春期男子の会話が殆どで、ごく稀に風紀委員会についてだ。

 

しばらくすると、チャイムが鳴り、皆が席に戻る。

 

次は確か、数学だったなとタブレットで専用のアプリを開こうとしたところ、学内メールが届いた。

 

どうやら、クラスメイト全員にも届いているようで、何事かと心配したのだが、内容は次の数学の授業は担任の先生が急遽用事ができたので自習になったとのこと。

 

特に緊急性はなかったので、一安心だ。

 

さて、この突然出来た時間をどう潰そうかと考えていると、いつのまにか後ろにいたレオに話しかけられた。

 

「次狼、自習時間はどうすんだ?」

 

「んー、工房に行こうかと思ってるよ。新しいCADを試そうかとおもってね」

 

「お、いいな。俺も暇だしついていっていいか?」

 

「ああ、丁度レオに試してもらいたいとおもってたしな。じゃ、今から教務課に行って申請してくるから先に工房に行っててくれ」

 

「わかった!」

 

そう言って、席を立ち上がると

 

ピンポンパンポーン!

 

突然、校内アナウンスが鳴った。

 

先程まで、談話していた生徒も会話をやめ、何事かとアナウンスに注目し始める。

 

「お知らせします、2年6組、次狼。繰り返します、2年6組、次狼」

 

その瞬間、クラスメイト全員が俺をみる。

 

その目は言わずとも語っていた。

 

今度は一体何をやらかしたんだ……と。

 

全く、なけるぜ!

 

そんな中、レオはいつもの事かといった調子で次狼の肩にポンと手を置いた。

 

「なんだ、次狼?お前、何かやらかしたのか?」

 

「まさか、今日は何にもやらかしてない……はず」

 

「はっきりしないところが、怪しいな。お前は、話題が絶えないしな」

 

なまじ否定できない。

 

しかし、今回は本当に心当たりがない。

 

あるとしたら……昼間のトイレのことぐらいか。

 

でも、あれは個人の趣味の問題だから呼び出される訳がない。

 

でも、何故かさっきから悪寒がしてならないのは気のせいだろうか?

 

「風紀委員会会長、鳴神勇人がお呼びです。直ちに風紀委員会本部に来てください。繰り返します。風紀委員会会長、鳴神勇人がお呼びです。直ちに風紀委員会会長に来てください。繰り返します……」

 

「……………」

 

「……………」

 

無慈悲にも放たれたそのアナウンスに次狼を含めた、クラスメイト全員が固まった。

 

レオもどう言葉をかけていいかわからないのか、目を見開いていた。

 

「……さてと」

 

誰よりも早く立ち直ったのは、呼び出された本人である次狼だった。

 

ここは言われた通り、素直に風紀委員会本部へ

 

ガラガラ

 

と向かうのではなく、何故か窓ガラスを開けると

 

「あばよ!」

 

とここが三階にもかかわらず飛び降りて逃げ出した。

 

「「「「………えぇぇぇええええ!!」」」」

 

その光景に全員が驚いた。

 

「おい!あいつ、逃げたぞ!!」

 

「てか、ここ三階だぞ……」

 

「……って、あいつ足早!!」

 

風紀委員会の恐ろしさを知っている彼らは、アナウンス通り素直に従うかと思っていたのだが、逃げるという次狼の行動には驚きを隠せなかった。

 

「おい、追い駆けるぞ!!」

 

真っ先に行動に出たのはレオ。

 

「もし、あいつが逃げたら……俺たちが匿ったとかでとばっちりを食らうかもしれないんだぞ!!」

 

「「「「「それだけはいやだ!!」」」」」

 

レオは真っ先に窓から飛び降りて次狼を追いかける。それに続く形で他の生徒も窓から飛び降りる。

 

ちなみにだが、、窓から飛び降りたのは魔法科の生徒であり、一般科の生徒は階段を使った。

 

そして……

 

「「「「「まぁぁぁぁあてぇぇぇええ!!」」」」」

 

「うぉ!? 」

 

全員、目が充血して血まなこになって追いかけてくるとは……

 

そのあまりの必死さに驚いてしまった。

 

つか、なんで追いかけてくるのだろうか?

 

「待ちやがれ次狼!お前が逝かないと俺たちに矛先がむくんだ!!」

 

先頭はまさかのレオ。

 

しかも、自己加速術式でスピードを上げている。

 

てか、そのほかの魔法科生徒も使用していた。

 

校内での魔法使用は授業以外では基本禁止じゃなかったのか!?

 

それよりも、行くっていう字が違う感じがする!

 

みんなには悪いが、俺は捕まるわけにはいかないのだ。

 

なんとしても逃げ切ってやる!

 

と、思っていたのだが……

 

「やべ、つった!足つった!」

 

左足がつり、その勢いで倒れる。

 

「捕まえろ!」

 

それをチャンスとばかりに次々と次狼の上に覆いかぶさって逃げないようにしがみついてきた。

 

「離せ!離せばわかる!!」

 

「それをいうなら、話せばだ!」

 

「というか、何をしたんだ!」

 

「何もしてない!!」

 

「じゃ、なんで逃げたんだ!!」

 

そりゃ、お前らがあんだけ風紀委員会は恐ろしい言うからだと次狼は叫びたくなったが重みで叫ぶことができない。

 

というか、苦しいから早くどいてくれ

 

「おい、次狼。本当に何もしてないのか?」

 

耳元でレオが本当かどうか確かめるかのように質問してきた。

 

「してないよ!」

 

「じゃ、なんで逃げるんだ?」

 

「だって……お前が散々関わるなっていうし、なんか面倒しかない予感がしたからさ!」

 

「それについては謝る。でも、何もしてないなら大丈夫だろ?ただの呼び出しかもしれないし、それにお前、会いたがってたろ?」

 

成る程、その可能性もある。

 

俺が会いたがっているというのが鳴神勇人に伝わって、呼び出したのかもしれない。

 

なら、仕方ない。これ以上、騒ぐわけにもいかない。

 

「それもそうだな……」

 

「わかってもらって何よりだ。それと、タックルして悪かったな」

 

「いいよ、逃げたこっちが悪い。みんなもごめんな」

 

謝罪すると、皆がどいてくれた。

 

次狼は埃まみれになった制服を叩いて埃を落とす

 

綺麗に夏またのを確認すると深呼吸し……

 

はるか上空に指をさして

 

「あ!空飛ぶおにぎりだ!!」

 

と言って、再びダッシュで逃亡!

 

しかし……

 

「逃すか!!」

 

颯爽とレオに捕まった。

 

「そこは振り向くとこだろ!!」

 

「空飛ぶおにぎりなんてあるわけないだろ!!てか、そんなんで振り返るなんてアホしかいねぇよ!!」

 

皆が頷くが、若干数名の生徒が振り向いたのを次狼は見逃さなかった。

 

だが、一番引っかかると思っていたレオが引っかからなかったのは意外だ。

 

「よし、じゃ、連れてくぞ!」

 

結局ロープで縛られて、泣く泣く連行される羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして……

 

「いてて、あいつら強く縛りやがっで……」

 

身体がギシギシ言って色々な所が痛い。

 

結局あの後、騒ぎを聞きつけた先生が来たのだが、先生いわく、何かしたから呼び出されたのではなく、鳴神勇人本人が前々から次狼に興味があり、次狼本人も会いたがっているとの噂を聞いて呼びだしたそうだ。

 

だから、罰則とか説教の話ではないらしく個人的に話し合いたいんだとか。

 

全く、飛んだ勘違いだった。

 

案内された通りに進むと、風紀委員会と書かれた看板を見つけた。どうやら、ここが本部のようだ。

 

「思ったよりも普通なんだな……」

 

目の前の扉は次狼の教室にあるものと同じもので、もっとゴツゴツした金属の自動ドア的な物があるかと思ったのだが、思いの外、普通であった。

 

ネクタイが曲がってないか、制服がたるんでないかを確認して扉をノックする。

 

「入りたまえ」

 

凛とした声が扉越しに伝わる。

 

「失礼します!」

 

恐る恐る扉を開けると……

 

「やぁ、先程ぶりだな。次狼」

 

「え?」

 

「僕の名前は鳴神勇人。君は来たばかりで知らないだろうが、風紀委員会会長だ」

 

くるっと椅子が回転するとそこには、先程トイレで出会った女装趣味の変態(あいつ)がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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11話

「まぁ、座りたまえ」

 

正直いうと、今すぐにでもここから逃げ出したい。

 

だが、それはやめたほうがよさそうだ。

 

既に、扉の向こうには何人か待機しているのが気配でわかる。

 

恐らく、逃げ出さないように警戒してるのだろう。

 

逃げれなくもないが、下手に敵対するわけにはいかない。

 

まぁ、既に目がつけられるのだが……

 

ここは、素直に従うことにした。

 

「今、お茶を出そう」

 

そういうと、戸棚から湯呑みと茶瓶を取り出し、お茶っぱを手に取り、ヤカンに水を注ぐ。

 

しばらくすると、水が沸騰し、ヤカンから蒸気が出る。

 

茶瓶に葉を入れて湯を注ぐ。

 

ただ単純な行動なのに、彼の動きは洗練されたものだった。

 

恐らく、相当仕込まれたのだろう。

 

そして何より、美しかった。

 

こんなものを見せられては、そりゃ、モテるわけだ。

 

しかし、次狼は彼が下着限定の女装趣味野郎(へんたい)という事を知っている。

 

ゆえに、勿体ないなと心の底から思った。

 

「なんだ、その変なものを見る目は?」

 

どうやら、向こうもそれを感じ取ったようだ。

 

「いや、今時珍しいと思って」

 

「あー、たしかに今時、こんな古風なものは滅多に見ないからな。これは、癖みたいなものだ。昔、母上……母さんに仕込まれてな」

 

今、母上と聞こえた気がするが……それはさておき

 

やはり、親からの仕込みだったか。

 

見た感じ、相当厳しかったんだろうな。

 

「成る程、どうりで美味しいわけか」

 

一口飲むと、茶の香りと程よい苦味が口全体に広がる。こんな美味しい茶を飲んだのは烈さんに京都に連れてかれて、休憩がてら寄った老舗和菓子店で飲んだ時以来だ。

 

「そうか、そう言ってもらえると僕も嬉しい」

 

と言って、鳴神も自身の湯呑みに茶を注いで飲み始める。

 

しんみりと、ゆったりとした空気がながれ、その甲斐あってか、先程まで緊張していた空気が嘘のように軽くなった。

 

しばらくして……

 

「さて、君を呼んだ理由についてだが……」

 

飲み終わったのを確認すると、先に話し掛けたのは鳴神からだった。

 

呼び出した理由……もう、あれしか思いつかない。

 

「もちろん、僕の秘密についてだ」

 

思った通りで、思わず現実から逃げたくなる。

 

いっそのこと、あのパンチを食らって、その時の記憶を無くしたことにすればと良かったと今更だが後悔している。

 

「君も見た通り、僕は……」

 

「あー、大丈夫だ。言わなくてもわかる。趣味は人それぞれだし、それを責める権利なんて俺にはない。ただ、学校ではやめたほうがいいと思うぞ? 事故とはいえ、他の生徒に見られる可能性があるからな。人によっては、脅して、貢がせることだってあるからな。まぁ、俺はそんな事しないから安心して……」

 

と言いかけたその時

 

物凄い殺気を感じ、咄嗟に身を躱す。

 

すると、いつのまにか拳が通り過ぎた。

 

それを放った本人は物凄い剣幕だった。

 

冷や汗が止まらない中、彼は静かに首を動かしてこちらを見る。

 

「君は、僕を変態かなにかと勘違いしてないか?」

 

まさに、その通りです。

 

なんて、正直に言えるわけがなくどうやって誤魔化そうと考えてると

 

「僕は正真正銘の……」

 

拳を再び握りしめると

 

女だ!!

 

と次狼の顔面目掛けて再び拳を振り下した。

 

それを聞いた次狼はというと……

 

「ぇぇぇええ!!!!」

 

驚きのあまり絶叫した。

 

そして、難なく彼から放たれた拳を避ける。

 

「避けるな!!」

 

「無茶言うな!!」

 

殴る避けるの繰り返し。

 

前のようにノッキングで大人しくさせようと考えたが、鳴神勇人が女であるとカミングアウトした為、若干ためらいが出来てしまったので取り敢えず、落ち着かせることにした。

 

しかし、鳴神の方はアドレナリンが出すぎたのか狂戦士(バーサーカー)状態で手遅れかもしれない。

 

結局、二人の攻防は30分は続くのだが、その間、狂戦士とかした勇人が机を持ち上げてそれを投げたり、ガラスを割ったり等、此処が風紀委員会本部という事などお構いなく暴れた。

 

これ以上、施設を破壊するのは自分にとっても彼女にとっても都合が悪くなる。そう考えた次狼は仕方なく、彼女をノッキングをする羽目になった。

 

一応、女性であるからなるべく痛みを感じにくいところを狙った。

 

思いの外、ノッキングが効いたのか、力が抜けたかのように、こちらに向かって倒れてきたので優しく受け止める。

 

そのまま、ソファーに寝かしつけても良かったのだが、彼女を支えた時に違和感を感じ取った次狼は念のためにと、保健室へ運ぶ事にした。

 

どうやって運んだかは想像に任せる。

 

一言言えることがあるとすれば、後日それを知った鳴神勇人は顔が真っ赤になり、次狼に八つ当たりするとかになるのだが、まだ、それを誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し、短めです


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12話

「さっちゃん先生!」

 

「あら〜ジロー君じゃない。どうかしたの?」

 

保健室に着くと、担当医である風宮佐知子。通称、さっちゃん先生が優雅にお茶をしていた。

 

「また、先生達に追われてるの?」

 

「違います。怪我人です!」

 

抱えている生徒を見せると、「あらあら、じゃー、その子をベッドに寝かしといて〜」と相変わらずのテンションでささっと、ティーセットを片付け、白衣を着始める。

 

「あら、勇人ちゃんじゃない。また、無理をしたのね」

 

どうやら、面識があるらしい。

 

「また、無理をした」と言っていたことから、何度かはお世話になっているようだ。

 

「うーん、熱は無いみたいだけど……恐らく、過労かしら?ここで、一休みした方が良さそうね。」

 

「過労?」

 

「ただの、過労じゃなくて、魔法の酷使によるものね。念のためだから、栄養剤の点滴をした方が良さそうね」

 

先程、彼女の体を抱えた時の違和感はそれだったのか。

 

そう言えば、この前の授業でレオが調子に乗って硬化魔法を使用しすぎて、想子が枯渇しかけて、保健室に運んだ時と症状が似ていたな。

 

思いの外、ノッキングが深く効き過ぎたのかと心配したが、大丈夫だったようだ。

 

「これで、大丈夫よ」

 

ベッドで寝たからなのか、栄養剤が効いているのか、彼女の顔は先程よりも明るくなり、スヤスヤと寝息も聞こえてきた。

 

こうしてよく見て見ると、本当に女だ。

 

後で、変態だと疑ったのを謝っておこう。

 

許してくれることを願って。

 

「でも、おかしいわね〜。勇人ちゃん程の実力者が想子が枯渇するまで魔法を行使するなんて……」

 

「そう言えば、そうですね……」

 

あのキレのある動きと魔法式の展開速度。

 

魔法師の中でも相当な実力者であることは間違いない。

 

それに、風紀委員会会長となると持っている想子の量もそれなりに多いはず。

 

しかし、彼女が使った魔法はCADを操作した回数で考えると4回。それで、何を展開したのかは分からないが、一つは確実にわかるのは自己加速術式を使用したこと。

 

後は、机とか椅子を軽々と持ち上げて、投げつけてきたことから重力ベクトル操作といったところだろうか。

 

とは言え、それだけで想子が枯渇仕掛けるとは思えない。

 

極端に普通に比べて消費量が多いとか、元々の想子が少ないとかは別として。

 

「ん〜、まぁ、理由は彼女が起きてから聞きましょう」

 

「そうですね……って、今、彼女って言いました?」

 

今、紛れもなく彼女とはっきりいったような気がしたのだが?

 

「他の先生方は気づいてないようだけど、私の目はごまかせないわよ。だてに保険医やってるわけじゃないのよ?それに、ジロー君だって、気づいてたんでしょ?」

 

「まぁ、なんとなくですけど……」

 

まさか、下着に着替えているところを見て、呼び出されて、なんやかんやあって勇人自身が自分から暴露したとかアホすぎて言えるわけがない。

 

取り敢えず、適当に取り繕っておくことにした。

 

「ジロー君は知らないだろうけど、鳴神ちゃんは古式魔法の名家、鳴神家の子なの」

 

「鳴神家?」

 

「聞いたことない?歌舞伎十八番の一つに鳴神って話があるんだけど?」

 

「あー、あの鳴神ですか?」

 

詳しくは知らないが、天皇が寺院建立の約束を破って、怒った鳴神上人が雨を降らす竜神を呪術で竜壺に封印して、雨を降らなくさせて土地を干ばつさせる話だ。

 

「でも、それって神話じゃないんですか?」

 

「ええ、まだ、はっきりとしてないんだけど、鳴神上人という人物は実際にいたと文献にも書いてあるわ。精霊魔法なんてものもあるのだから、強ち本当かもしれないじゃない?」

 

「そう言われると、納得できますね」

 

実際、魔法が体現されてから、神話とか伝説とか物語として語られていたものが実際にあった話と確認され始めているのを考えると納得がいく。

 

「で、その鳴神家なんだけど、やっぱり名門故、古い思想が残ってて、代々、当主の座は男と決まってたんだけど……」

 

なんとなく、だがわかってきた。

 

だがここはもう少し聞いてみることにした。

 

「勇人ちゃんが8歳の頃に両親が交通事故で亡くなったのを皮切りに、彼女の生活は一変したのよ」

 

先生の口調がつよくなる。

 

「当時、鳴神家では現当主が死んだのを境に後継者争いがおきたのよ。それも、嘘にまみれた騙し合いのね」

 

人は権力を求める為にはどんな手も使う。反応を見る限り、相当な争いがあったのだろう。

 

「一番の候補だったのが。鳴神貞夫。勇人ちゃんの父親の弟……叔父にあたる人ね」

 

まぁ、常識的に考えて、直系にあたる人物が選ばれるのは当然だ。しかも、男が継ぐという仕来りがあるのを考えるとなると。

 

「でも、鳴神貞夫はとんでもない屑野郎だったのよ。彼は徹底した魔法至上主義者で、家の名を使って暴行、脅迫、賄賂、好き勝手し放題。挙げ句の果てには、先々代当主の怒りを買って、破門されるはずだった」

 

「だった?」

 

「ええ、名門故のプライドというやつね。一族から追放者……それも、直系からとなると家の名が落ちる。なんとしても世間に明るみになってはならないということで、修行という形で九州のある寺院に左還したのよ。まったく、聞いて呆れるわ」

 

聞いていて、あまり気分がいいものではない。先生も怒りに震えているのがわかる。

 

「そんな奴が、当主にでもなったらどうなると思う?」

 

「嫌な事しか想像できませんね」

 

権力片手に暴走するのは間違いない。

 

「そうよ。それを知っていたから先々代当主が再び当主の座につくことになったの。でも、先々代当主も若くはない。なんとしても家を守る為に、苦肉の策として出したのが……」

 

「鳴神勇人を男として育て、次期当主にする」

 

「そういうことよ。運がいい事に貞夫は左遷されてて兄に子供がいるのを知らなかった事と……彼女が中性的だったことが相まって、今の結果になったのよ」

 

「彼女にそんな過去が……」

 

そう言えば、母上の話をしていた時、少しだけ目が悲しんでいたのはそういう事だったのか。

 

凛とした彼女からは想像もできないものだった。

 

幼くして、両親を亡くし、挙げ句の果てには権力争いに巻き込まれ、女性としての暮らしを奪われた……

 

一生、男として生きていかなくてはならない。

 

それが、家を守る唯一の方法……

 

「……胸糞悪い話ですね」

 

知らずのうちに拳に力が入っていた。

 

「本当にそうよ」

 

どいつもこいつもろくな奴じゃないと先生の目は語っていた。

 

「先生、勇人は……」

 

「失礼します」

 

と、質問しようと仕掛けたその時、ふいにガラガラとドアが開く音がした。

 

振り向くとそこには教員らしき男性がいた。

 

たしか、あの人は……

 

「あら、教頭先生、何かごようですか?」

 

「いや、教え子が急に倒れたと聞きましてね」

 

相変わらずさわやかな笑顔。

 

教頭の二十九屋信春だ。

 

「あらそうですか。でも、教頭自ら来るほどのことではないのでは?」

 

「いやいや、自慢の教え子が倒れたとあってはいてもたってもいられないのは教師として当然では?貴方は冷たい人ですね」

 

笑ってはいるがどうやら、この2人は犬猿の仲っぽいな。

 

「まぁ、それはさて置き。君が保健室まで運んでくれたらしいね。どうも、ありがとう」

 

「いえ、当たり前の事をしただけです」

 

笑顔で握手を求めてきたので、ここは素直に返した方がいいと考え、差し出した手を握る。

 

「おっと、そろそろ授業の時間じゃないか。私は佐和子先生と大事な話があるから、早く行きなさい」

 

ーッ!? こいつ

 

一見、優しそうに言ってるけど目を見ればわかる。

 

部外者はとっとと消えろ。

 

やっぱり、いけすかないな。

 

しかし、下手に逆らうといけないので「ありがとうございます」と礼を言って出て行こうとしたら

 

「いや、君はここに残りなさい」

 

と先生の一声で足止まる事に。

 

「何故、止めるんですか?学生の本分は勉強ですよ?少しでも遅れれば大きな痛手となり、他から置いていかれる。このご時世特に彼のような一般人は特に……」

 

それっぽいこと言ってるつもりだろうが、馬鹿にしてるのが丸わかりである。

 

「少なくても、彼には知る権利があると思ってのことです。なんせ、彼は

鳴神勇人が女だと気付いていますから」

 

「ーッ!?」

 

明らかに動揺している。

 

まるで、計画が狂ったような顔をしてこちらをチラチラと見ている。

 

しかし、直ぐに笑顔になって

 

「次狼君だったね?どうして、鳴神勇人が女だと分かったのかな?」

 

と聞いてきた。

 

「彼女を運ぶ時に、男にしては妙に軽かった事と、それに肉つきがどうも男性のものとは違いましたからね。それで、佐和子先生に問い詰めたら正直に答えてくれましたよ」

 

「佐和子先生……」

 

何故、バラしたと思っているのだろうな。

 

すごい形相だ。

 

しかし、流石は佐和子先生。そんなのまったく動じない。

 

「下手に噂を流されて校内に知れ渡るよりははっきりと1人に真実を教えた方がいいと思いましたね。それに次狼君は口の硬い方ですから気にする必要はありません」

 

彼は秘密を守る男だときっぱりと言い切った。

 

そう言われると、なんか照れて来くる。

 

「はぁー、佐和子先生は食えないお方だ」

 

言い切られた信春はというと、言葉が出ないのかしばらく黙り込んだのち、何処か諦めたというか、やれやれと言った気持ちで鳴神勇人の方に近寄り始めた。

 

「まぁ、どうせいつの日か明るみになる事ですしね。彼には特別に今ここで教えるとしましょう」

 

勇人を見る信春の目が何処か変だ。

 

まるで、愛しい恋人を思うかのようなあの仕草

 

もしかして……

 

「私は鳴神勇人の許嫁。つまり、私と勇人は婚約者なのですよ!」

 

「ぇぇぇええ!!」

 

開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアス……なのか?



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13話

もうすぐ夏休みですね

今年はどうやって過ごそうか


衝撃の事実を知る羽目になった後、教頭は次狼に遅刻理由書を渡し、速く授業に参加するよう促したので、ここは素直に、その紙をもらい、保健室から出て行った。

 

その時の教頭の顔は、「これ以上お前に話すことはないからとっとと消えろ」と言わんばかりだった。

 

出来れば、もう関わらない方がいいかもしれないな。

 

だいぶ関わってしまった気もするが……まぁ、教頭の目に俺は全然映ってないようだったから、問題はないか。

 

さて、今日の事は忘れて、なんか美味いものでも食べに行くか。

 

レオあたりでも誘って……

 

 

 

 

 

と思っていた時期があった。

 

授業が終わり、放課後になるとさっちゃん先生が次狼の教室に訪ねてきて「少し、話したいことがある」との名目で呼び出されたのだ。

 

ちなみにその時のクラスメイトは「今度は何をやらかしたんだ」と一斉に次狼の方をみた。

 

そして、一部の男子生徒からは殺気に近い視線を感じ、半ば逃げるよう先生の後をついて行った。

 

その時のさっちゃん先生はというと

 

「やっぱり、ジロー君のクラスは面白いわね〜」

 

と相変わらずのテンションに癒された……というわけではなく、頭痛がしてきた。

 

そして、なぜかわからないがとてつもなく嫌な予感がする。

 

正直いうと今すぐ帰りたい。

 

先生には悪いが今日はここでおさらば……。

 

「逃げちゃだめよ〜?」

 

しようかと思ったが、どうやら、無理みたい。

 

思わずため息をつきながら、次狼は保健室へと向かった。

 

 

 

 

「ちょっと待っててね〜」

 

保健室に着くと、扉の前で待機するように言われた。

 

中から何やら、話し合う声がかすかに聞こえるが先客がいるのだろうか?

 

ケンカ……というわけではないが、結構、言い合っている気がする。

 

時々、悲鳴に近い声が聞こえた気もするので、本当に何をやっているのか?

 

おもわず気になって、扉に耳を当ててみると

 

「本当にこれを私が……」

 

「ええ、そうよ〜?」

 

「わ、私にこんなのは……」

 

「そうかしら〜?似合うと思うのだけど?」

 

何やら、女子生徒と話しているようだ。

 

怪我の手当でもしているのだろうか?

 

しかし、話からしてそんな風には見えない。

 

それ以前に、この声何処かで……

 

「盗み聞きはだめよ、ジロー君?」

 

「うわぁ!?」

 

突然、扉が開いたため、ダーッ!! と流れ込む形でこける次狼。

 

その姿ときたら、思いのほか体重がかかり、扉が外れて、覗きがばれてしまった男子生徒みたいだった。

 

今回は盗み聞きという事ですあながち間違ってはないかもしれない。

 

「あらあら、大丈夫?」

 

開けた本人は倒れるとは思ってなかったのだろうか、少し心配していた。

 

「大丈夫です……」

 

鼻を抑えながら、立つ。

 

思いっきり鼻を打ったが、大したこともなく、鼻血も出てない。

 

「よかった」

 

それを聞いて安心した先生。

 

わかってたんなら、急に開けないでほしいと思わず言いかけたがなんとか堪えて押し止まる。

 

しかし、問題はそこではない。

 

「なぁ!?、き、き、貴様は!!」

 

先生の後ろに控えていた女子生徒。

 

突然顔を真っ赤になり、口をパクパクし始めたと思ったら、まさかの貴様呼ばわり。

 

一瞬、なんだこいつと思ったが……

 

「も、もしかして……鳴神!?」

 

次狼は直ぐにその女子生徒が鳴神勇人だという事に気がついた。

 

何故か、女子の制服を身につけていた。

 

「ち、違、違うわよ!」

 

必死でごまかすが、声でバレバレだった。

 

しかし、こうしてみると、本当に女なんだな。

 

突っかかってきた時に凛々しさは微塵のかけらもないし、それ故なのか、声もほぼ女の声だ。

 

顔も整っていて、体形もスレンダーで、出てるところは出ているし、文句のつけようがないくらいの美少女だ。

 

そういえば、魔法師には美形が多いとレオから聞いたことがある。

 

さっちゃんの話だと鳴神かは古式魔法の名家だというし、血筋からいってそうなるのは必然かと思うと納得がいく。

 

そのせいか、彼女をまじまじと見てしまった。

 

「み、見るな!!」

 

余程恥ずかしいのか、カーテンの端にくるまってしまった。

 

信じられるか?つい3時間前までは、彼女は拘束しようとしてきて容赦なく腹パンしようとしてきたんだぞ?それも、二回に渡って。

 

 

それが、今、カーテンにくるまってるなんて誰が想像できるか?

 

できるわけない。

 

しかも、かすかに泣いてるみたいだ。

 

なぜか、罪悪感が半端なく込み上がってくる。

 

泣きたくなるのはこっちだというのに……

 

「んー、とりあえず勇人ちゃんはそのまましておいて、取り敢えず座りましょう?」

 

先生のこの言葉には救われた気がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

10分ぐらいだろか?

 

カーテンに来るんだ勇人を落ち着かせ、なんとか先に座らせることができた。

 

しかし、相変わらず睨まれてはいるが。

 

まぁ、それはさておき本題に移ろう……と思ったが、それ以前に聞きたいことがあるのでそれからだ。

 

 

「先生」

 

「なにかしら、ジロー君?」

 

「先生はどうして、鳴神が女だっで知っていたんですか?」

 

そう、次狼が気付く前から彼女はその正体を知っていたのだ。

 

しかも、それを隠すことなく次狼に言った。

 

それに付け加え、鳴神家の世間には知れ渡っていない極秘といってもいいくらいの情報と過去。

 

あまりにも知りすぎている。

 

この人は一体……

 

「それについては僕が説明する」

 

何者なんだと思った時

 

口を割ったのは意外な事に鳴神本人だった。

 

「佐知子先生は鳴神家を代々守護してきた、風宮家の一員なんだ」

 

「風宮家?」

 

「一般的にはエレメンツだと言われてるが、本当は影で鳴神家を支えてきた一族だ。先生は風宮家現当主のひ孫で、僕の護衛兼師匠でもある」

 

エレメンツと聞くと原作キャラの光井ほのかが光のエレメンツの末裔だったな。

 

苗字に風とついてることから風のエレメンツということだろうか?

 

「君の事だから、風宮は風のエレメンツの末裔と思っているだろうけど、それは間違いだ。魔法師が世間に出回る前から風宮家は風を操る一族として鳴神家に仕えていたんだ」

 

「へぇー、じゃ、なんでエレメンツ末裔なんて言われてるんだ?」

 

「恐らくだが、そんな風に噂され始めたのはエレメンツの事が明るみになってからだな。ほら、エレメンツの末裔にはその属性の名や苗字が付いているだろ?」

 

「成る程、要は誤解されているわけか」

 

「ああ、それに古式魔法の家に従事していたからずっと秘匿されてたんだ。名前が知られるようになってのも数年前からだから、信憑性を持ってもおかしくはない」

 

たしかに納得のいく話だ。

 

「でも、いいのか、そんなにベラベラ喋って?」

 

「問題ない。君の事は師匠から聞いたからな。ずいぶん可愛がられてるというか……いや、この場合は信頼されていると言うべきかな?」

 

そう言われると、なんか恥ずかしい。

 

「まぁ、いざという時は師匠にどうかしてもらうから心配はない」

 

さらりと怖いことを言った気がするが、ここはあえて聞かなかった事にしよう。

 

「あらあら、うふふ」

 

笑っているけど、逆効果でものすごく怖い。この人なら本当にやってしまうんではないかと思えてきた。

 

「それと、だな……」

 

おもむろに立ち上がる勇人。

 

そして

 

「僕は君のことを誤解していた。君の話を聞こうともせず、殴りかかって……挙げ句の果てに魔法を使ってだ。いくら風紀委員会でも一般生徒に向けて魔法を放つのは犯罪だ。それを僕は2回もしている。だから、この場で言わせてもらいたい」

 

といい、一方下がると

 

「殴っても構わない。僕はそれだけと事をしたんだ。でも、これだけは言いたいんだ」

 

頭を深々と下げて

 

「すまなかった!」

 

謝罪した。

 

深々とそれもずっと下げたまま。

 

その一連の動作に次狼は……

 

「……」

 

黙ることしか出来なかった。

 

まさか、謝罪されるとは思っていなかったからだ。

 

勇人の性格からして、先生との話が終わったらまた捕まえようとしてくるんだろうなーと思っていた矢先のこれだ。

 

混乱するほかない。

 

彼女の言うとおり、一般人に魔法を使用するのは度がすぎる行為だ。次狼はそこまで、気にはしていなかったが、普通に考えれば、犯罪で大怪我をする恐れがあるのだ。

 

でも、元の原因は次狼が勇人の下着を覗いた事にあり、変態だと勘違いした事だ。

 

いえば、五分五分だ。

 

でも、勇人の性格だとケジメはキチンとつけるまでは納得いかないだろうな。

 

どうしようかと悩んでいる時

 

「ジロー君、ちょっと耳貸して」

 

先生が手招きしてきたので、なんだろうと思ったらどうやらなにかあるらしい。

 

言われたとおり、耳を貸す。

 

「ここはね……して……すればいいのよ?」

 

「でも、それだと……」

 

「殴るわけじゃないから大丈夫よ。それに、このままだとお互いうやむやになるわよ?そんなの嫌でしょ?」

 

「そうですね……わかりました。その手でいきます」

 

先生に感謝を述べ、鳴神の元へと向かう。

 

鳴神本人はずっと頭を下げたままだ。 何かをするか、言うまでは頭をあげそうにない。

 

「鳴神、取り敢えず頭を上げろ」

 

そう言うと、鳴上は頭をあげる。

 

ただ、殴られると思っているのか拳に力が入っている。

 

次狼が鳴神の額に手を伸ばすと、目をつぶりブルブルと身構え始めた。

 

恐怖のあまり、泣きそうな雰囲気だ。

 

本当に前の凛々しさはどこに行ったんだか

 

 

そして、次狼は……

 

拳を振り上げ

 

それを下ろす

 

パチン!

 

「ーッ!?」

 

なんてことはなく、鳴神の額を人差し指で弾いた。

 

デコピンだ。

 

「これで、ちゃらだ」

 

それ以上やる必要はない。

 

本人がちゃんと反省しているからだ。

 

「え、あ、そ、その、あ、え!?」

 

本人はまだ、状況を掴めてないようだが。

 

しばらくすれば、状況を理解したが、彼女はまだ不満そうだった。

 

「本当にこれだけいいのか?」

 

「元はと言えば、俺のせいでもあるからな。それに、お前はキチンと謝ったじゃないか。反省もしてるみたいだしな。なら、なんの問題もない」

 

この言葉が意外だったのか、勇人は多少驚いていた。

 

そして、気づいた時には笑っている自分がいた。

 

「君は変わった奴だな」

 

「よく言われるよ。それにさ、よく言うだろ?(レディー)を殴る男は最低(クズ)だって」

 

勇人みたいな美少女は尚更ね

 

「だから、デコピンか?」

 

とおでこをさする勇人。

 

結構綺麗に入ったからか額の一部が赤くなっている。

 

「まぁ、佐和子先生の案だけどな」

 

「だからか、僕もよく無茶したりやり過ぎた時は師匠にやられたものだ」

 

成る程、受け売りだったんだ。

 

それを聞いた先生は笑顔で何か懐かしむようにこう答えた。

 

「だって、勇人ちゃんみたいな可愛い子は殴れるわけないじゃない?」

 

おっしゃる通りです。

 

「だけど、本気でやらなかったか?まだ、ジンジンするんだが……」

 

「上手く入ったからじゃないか?」

 

まぁ、それなりには入れた……かもしれない。

 

 

それはさておき……

 

「ところで、佐和子先生。話とはなんですか?」

 

「あら、いつもみたいにさっちゃんでかまわないわよ?」

 

いや、もうあんな事聞いたら呼ぶことなんてできない。

 

見た目に限らずとんでもない人物なのだから。

 

「まぁ、いいわ。話……というよりはお願い事かしら?すこし、ジロー君に頼みたいことがあるの」

 

「俺に頼みたいことですか?」

 

「うん、最初は無理かなとおもったけど、これなら大丈夫だってわかったから」

 

はて、何が大丈夫なのか?それに、無理とはなんだったのだろうか?

 

色々と気になるワードが……

 

「師匠!もしかして、例の話の相手って……」

 

と、ここで勇人がまさかと言った表情で佐和子先生に詰め寄る。

 

それに、チラチラとこちらを見ている。

 

「うん、そうよ?」

 

何が、そうなのだろうか?

 

当の鳴上は顔を真っ赤にした瞬間、頭から湯気が出はじめ、椅子に座ったまま、固まってしまった。

 

なんか、わからんがとんでもないフラグが立ちそうな気がする

 

案の定それは

 

「えっとね、頼みっていうのはね……ジロー君に勇人ちゃんの彼氏役をやってもらいたいの」

 

無慈悲に落とされた。

 

「えぇえええええ!!」

 

フラグ乱立宣言(バクダン)であると同時に

 

更なる波乱を呼び寄せるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さっちゃん先生の正体は鳴上家専属の護衛。そして、勇人の師匠でもある。
それなら、鳴上家の事情を知っていてもおかしくはないは……ず?

次回は 偽物の恋人 略して ニセコイ!! なんてなるかも?

あれ、鳴上勇人は校内だと男と認識されてるはず……てことはまさかの!?

教頭とは?許嫁なんじゃないの?一体どうなるの!?

お楽しみに!!



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