東方夢現世 (雑草みたいな何か)
しおりを挟む

1.再開

東方Project原作の二次創作になります。
本当ごく稀に残酷な描写などが入るかもしれませんので、そういったものが気になる方は、心して読んで頂くかバックを推奨します。


――目が覚めた。

ざわざわと鳴り合う葉の音が、俺を笑っているかのような不快感を投げ掛けてくる。

暗い暗い森の中。

月明かりが真上から微かに視界を彩り、薄くぬかるむ地面が俺の居場所を教えてくれた。何処かは分からない、ただ森の中に俺は居る。しかも夜も深まり始めた頃合いだろう。

 

「なんで、こんな所に…?いや、それより……」

 

――俺は、誰だ?

 

 目が覚めてから一体どれだけ経ったのだろうか。自分の事も思い出せず、とにかく山を降ろうと一心不乱に歩き続けた。その道中に俺自身について考え、いくつかの事が分かった。それを指折り確認しながら山を降る。

 

「まず一つ。分からないのは自分の経緯だけ。言葉も物の名前もきっと分かる。」

 

ここが『山』であることも分かったし、『月』も『葉っぱ』も分かる。それにこうやって色々と考えたりも出来る。

 

「そして二つ。多分俺は日頃から運動だとかをしっかりしていた。」

 

月がある程度傾いてくるまで歩き続けているが、これといって疲労は感じない。運動をしていたか、そもそも山道に慣れているのか。どちらにしても今それが役に立ってる事に変わりないからいいや。

 

「んで三つ。俺は賢くないらしい。月の傾きとか星だとかで時間やら方角やらが分かるみたいな話は聞いたけど…。」

 

清々しいくらいに分からない。そもそも星座の形も位置も分からない俺にどうしろっていうんだ。

 思った以上の状況の悪さにため息が漏れる。というかそれだけじゃ気持ちが収まらない。なんで俺がこんな目に遭っているんだ。

 

「俺が何か悪いことでもしたっていうのかァ!!ふっざけんなーー!!」

 

心の限りを声にして叫ぶ。思ったよりスッキリした。

ってアレ?もしかしたら今の声を聞いて誰か気付いて助けに来てくれたりするんじゃない?もしかして俺って天才?

 

「いやぁ、知識なんてなくても頭のキレがあれば良いみたいn「オオォォォ……!!」」

 

なんか聞こえた。

明らかに人じゃない何かの鳴き声みたいなん。

今まさに食い殺しに行ってやるぞって感じの獣の雄叫びが。

 

「いやいやいくら山の中とはいえ、今のご時世そんな野生の獣なんて」

「グルルォァッ…!!」

「近付いて来てるゥ!?」

 

クラウチングの構えなんて取る余裕もなく全速力で駆け出す。

 

「まずいまずいまずいまずいッ!!」

 

今の鳴き声狼だもの!

近付いて来てるってことは匂いを嗅ぎ付けられたってこと!

身を隠すんじゃばれる。

山から抜け出さないと…!

 

ガッサガッサ、ばったばった。

木葉や小枝をへし折りながら、死がだんだんと近付いてくる。追い付かれれば確実に喰われ、殺される。それは、絶対に嫌だ。

 

そんな俺の思いとは相反し、獣は着々と距離を詰めてくる。このまま普通に走っていれば追い付かれる。死にたくないなら考えないと。

 

 木の上に登ってやり過ごす。

駄目だ。最初はやり過ごせても仲間を呼ばれれば、囲まれて引きずり下ろされる。

 手頃な武器を拾って向かい打つ。

幸運にも走りながら、良さげな枝を拾い上げ適当に木に打ち付ける。ガン。強度も十分だ。

とはいえ俺の身体能力で応戦出来るか?こんな森の中で。絶対に無理だ、向かい打つならせめてもっと視界が開けていないと。

 逆の発想で山を登ってみる。

これはねえな。登ったって人が居るとは思えない、それに体力を無駄にするだけだ。

 

どうする、考えを巡らせても妙案は浮かばない。さらに追い討ちをかけるように獣ももう真後ろにまで迫っている、気配を感じる!

 

「グルォッ!!」

「ッ、でかっ!?」

 

 俺の気配察知は正しかったようで、後ろの藪から一匹の狼が飛び出す。ただそれは狼と呼ぶにはあまりに大きく、俺の2倍はありそうな大きさだ。

考えている暇はくれないようで、一声唸ると、それは俺に飛び掛かってきた。動きを見切る、ような事は俺には出来ないようで、とにかくがむしゃらに右前方へ飛び出す。

 

「避けたっ…、ぁ?」

 

確かに爪の一撃を避わした。はずなのに、なんでか俺は宙に浮いている。いや、視界がこんなにも速く流れているって事は…。

瞬間視界が暗転した。

次に全身に衝撃が走る。ゴロゴロと地面を転がっているのも、感じた。小刻みに、体中をぶつける痛みから。

音が聞こえない。視界も酷く歪んで、ぼやけている。

 ただ、前に居る、強大な獣だけはハッキリと。はっきりと脳に伝えられた。体が震え、涙が、嗚咽が、込み上げてくる。

 

「死にたく…ない…、」

 

その獣から身を翻して這いずって逃げる。

どこかの骨が折れているのか、上手く体が動かない。それを嘲笑うように、狼、魔狼は、ゆっくりゆっくりと足を進める。

 

「い、やだ…、まだ…」

「死にたく、ない……!」

 

今の顔を、姿を親が見たらきっと泣きわめくだろう。そんな風に格好悪く這いずり続ける。

ドス……、ドス……。

ゆっくりと迫る足音を背後に、ひたすら這いずり続ける。涙で、痛みで、前は見えていない。それでも、とにかく逃げ続ける。

 

ただ、死にたくない。

自分のことも分からないまま、死にたくない。

ここでまだ、誰とも会っていない。

誰にも知られないまま、死にたくない。

俺は、生きたい。

 

その一心で前に進み続けるが、ふと手から感覚が消えた。違う、手から消えたんじゃなく、地面が無くなった。

 

「こんなときに…崖…」

 

ぼやけた視界でも、底が見える。頭から落ちれば死ぬかも知れないが、そう高くない。ただ、痛いでは済まない。でも――。

 

「迷ってる時間なんざ、ねえ!」

 

横に回るように、崖に身を投じた。空を見上げた視界では、魔狼が崖の上。さっきまで俺が居た位置に爪を突き立てていたのが見える。

 

「ハッ、ざまあみろッ…」

 

悪態を吐き、崖から飛び出た岩に横腹を強打される。そのまま横に飛び、再び全身に衝撃が襲った。

 

 今度は視界が歪むだけでは済まない。脇腹の痛みでまともに息が吸えないせいか、目の前がチカチカと点滅し、それに応じてだんだんと暗くなってくる。

 

「このまま死んじまったり…なんてな…ハハッ、笑えねえ…。」

 

横に向いていた体をどうにか仰向けにして、空を見上げた。いつの間にか星は姿を隠し、月も明るさを失い始めている。そしてさっきまでの月と競うみたいに、空が白んできていて――。

生き延びた、そう安心した矢先。

安寧などないと告げるように、魔狼が崖から降り立った。

 

「冗談、だろ…。」

 

もう体は動かない。

ここまでやってもダメだった。そんな諦めもあってか、もう幾分も恐怖は薄れた。ドスドスと近付いてくる魔狼をうっすら眺めながら、それでもやっぱり涙は止まらなかった。

 もし神様がいるんだとすれば、めちゃくちゃ残酷じゃねえか。歯を食い縛り、涙を飲みながら目を閉じる。

魔狼の足音も止んだ。

来るべき衝撃に備え、体を震わせる。

 

「ギャウンッ!?」

 

 俺の耳に届いたのは、肉の裂ける音でも、骨を砕く音でもなかった。魔狼の叫び。それも、痛みに悶えるような、苦しみの叫びだ。

 

 ゆっくりと瞼を持ち上げる。相変わらず暗い視界に、赤っぽいスカートがひらめくのが写った。それはお札を魔狼に投げつけている、巫女?のような少女で。あの巨大な魔狼を、ただそれだけで退けている。ぼんやりと、耳に少女の声が届いた。

 

「ちょっとアンタぁ?夜中に森の中で叫んで暴れ回ってたの。そのせいで私起こされちゃったの、夜もしかも丑三つ時が終わろうかって位の時間に!」

 

あの魔狼を相手に取りながら、そんなちっぽけな文句を並べてきた。正直に言う。意味が分からねえ。少なくとも今言うことじゃねえ。

 

「しかも人ん家の境内にこんなのまで連れてきて、どう責任を取るつもりよ!ちょっと聞いてんの!?」

 

俺に向きながら文句を続ける少女。その一瞬の隙を魔狼は逃さない。今までに見たこともないような速さで、少女に牙を剥く。

 

「避け…、」

 

俺が警告を飛ばすよりも速く、少女は消えた。

ぶれたとかじゃなく本当に消えた。そして魔狼を横から蹴り飛ばし、ドスンと何処かにぶつかった音が微かに耳に届く。俺が唖然としていると、少女は何事も無かったかのようにスカートの裾を叩いた。

 

「それで、どう責任を取るつもりなの?」

 

少女は明らかに怒っているが、俺は魔狼から助かったっていう安心感に、ぷつっと自分を繋いでいた何かが切れた。薄暗かった視界は一気に黒く染まり、聴覚もシャットアウトを始める。

 

「ちょっと!こんな所で寝ないでよ!あぁ、狼も逃げちゃったし…もう!今日は本当に厄日…………、」

ここで完全に意識を手放した。




読んで頂きありがとうございます。
のんびり投稿していきますので、気長にお待ち下さいませ。また気になること等あれば、お構い無くビシバシとお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2.観察

――目が覚めた。

涼しい風が、山独特の土の匂いを俺に届けた。その自然の香りと、自分が寝転がっている畳の臭いが、快く意識を覚醒させていく。

 ゆっくりと、目を開いた。

目の前には木造の天井、手触りや臭いから床は畳。視線を振ると、障子に襖、木棚にだるまと和風屋敷を連想させるようなものばかり。

 

「まぁ屋敷って言うには小せえけどな――」

「悪かったわね小さくて。」

 

突然背後の襖が開き、怒りマークを浮かべた巫女が現れた。その姿を見て、記憶が巻き戻されるかのように蘇る。

 

山の中、魔狼に追われ、死にかけて、崖から落ちた。そうして突然現れた、魔狼を一人で相手にし撃退した、赤い巫女の少女。

 

 フラッシュバックが如く頭に浮かんだ映像から、目を見開いて巫女を見つめる。細く健康的な肢体に、ひらりひらりと舞うスカート。怒りを顕にしても決して崩れない端麗な顔立ちに、リボンで結ばれた綺麗な黒髪。

 

「めっちゃかわいいなお前。」

「何を寝ぼけてん、のよ!」

 

素直に感想を告げると途端に回し蹴りを放たれた。世の中は理不尽だ。そして振り上げられる脚と共に舞い上がるスカート…。ギリギリ…見えない!

巫女の少女に蹴り飛ばされ、縁側でなんとか受け身。四つん這いの形になって声を限りに叫んだ。

 

「くそっ、なんで武道を学んでないんだ俺は…!!」

「本当に訳分かんないわねアンタ…。」

 

お怒り状態だった巫女も困惑している。効果は抜群だ!なんてやってる場合じゃなかった。ガンガンと痛みの響く後ろ頭をさすりながら起き上がる。

 

「いっつつ…。まあアレだ。助けて貰った訳だからお礼が言いたいんだが良いか?」

「お礼…?ああそうね、お礼ね。」

 

ありがとう、と俺が言葉にするのをピシッと止める巫女。どうしたんだ、ってこいつの目の中に金のマークが見える気が…。まさかな、巫女ともあろうものがまさかな…。

 

「感謝の言葉とか、気持ちというのは伝えても上手く相手に伝わらないこともあると思うの。だけどね、形あるものなら、感謝の気持ちもしっかりと伝わるって私は思うわ。」

 

おうこれダメな奴だ。

 

「…お金か?」

「私からそうとは言えないけど!それなら誰にだって大きさも価値も分かるかもね!」

 

確かに命を救われた訳だからお礼はしたいと思ってた。だけど…、これはねえだろ。つーか俺って金とか持ってるのか?

 巫女の様子からも少し不安になって、懐に手を突っ込む。そういえば、別段不思議に思わなかったけど、俺が着てるのも和服だったんだな。

 

「っと、なんかあった。」

 

懐から出てきたのは手のひらサイズの麻袋。ずっしりと重い、この中にお金が詰まっていたりな…とか流石にないか。一人芝居のように思いながら袋を開く。

 

「…あれ?」

「どうしたのよ?まさか無いとか言わないわよね?」

 

巫女から剣呑なオーラが溢れ出す。それを感じてゾッとしたんだが、それ以上にゾッとするのが麻袋の中身だ。

…本当にお金が詰まってやがった。

大判が少し、小判が沢山。その中に小銭も見て取れる。少なくともこれだけあればきっと生きていける。というか、こんな重たいものなんで気が付かなかったのだろうか。

とにかく数枚ある大判のうち二枚を手に取り、一枚を隠すようにして巫女に見せる。

 

「それ、大判…!?」

「とりあえず助けて貰ったお礼はこれでどうよ?」

 

どや顔と一緒にバーンと大判を見せつける。円に直せば云十万、銭に直すと大体その100倍。時代に価値の差はあれ、もの凄く高価なはずだ。あとはこの巫女がどう出るかだけど。

 

「良いじゃない!やっぱり人助けってこうでなくっちゃ!」

 

手放しで喜んでる。めっちゃちょろい。

それですぐにでも大判を奪わんとする巫女を手のひらで制する。空腹の狼のような目で睨んできててコワイんだが。それに怯えながらもなんとかもうひとつ要求があることを伝える。

 

「えぇと、もうひとつ頼みたいことがあるんだ。」

「頼みたいことぉ~?」

「そう嫌そうな顔すんなって…ほら、お礼は弾む。」

 

心底嫌そうな顔を浮かべた巫女に、満を持して隠してあったもう一方の大判を出す。それでやはりというかなんというか。巫女の目の色が変わった。

 

「しっかたないわね!困っている人が居れば、博麗の巫女として助けずにはいられないわ!」

「清々しいくらい欲望に忠実だなお前…。」

「それで、お願いって何よ?」

「あぁ。あんな化け物に襲われた後だからさ。100%じゃなくても良いから、安全な場所か、人が居る場所に連れて行って欲しい。」

 

 近くに他の人の気配が感じられないこの状況。流石に一人で村だか街だかを探しに行きたくはない。それにここが何なのかとか知りたいし、それなら人が多い所で情報を集めた方が良いと思った。

 

「そのくらいなら全然良いわ。人里までの道は比較的安全だけど、それでも昨日みたいな妖怪が最近は出るみたいだしね。」

「ほぁ~…、ここって危ねえんだな。」

 

そこでふと思いつき、巫女に尋ねる。

 

「ところでさっき博麗の巫女とか言ってたけど、お前の名前は?」

「そういえば名乗ってなかったわね。私はこの博麗神社で巫女をしている博麗 霊夢(はくれい れいむ)。霊夢で良いわ。」

「俺は…、えーっと…。」

 

霊夢の自己紹介に返そうと、名乗ろうとして言い淀む。結局のところここに至るまで名前を思い出せてないのだ。困って頬をかきながら言葉を濁すと、霊夢が訝しげな表情を見せる。

 

「どうしたのよ?」

「んや~、実は名前とか覚えてなくってさ…。記憶ソーシツ?みたいなもんで。」

「…名前も何も思い出せないの?」

 

一応親身になる風に声を掛けてくれてるけど、ものすごく面倒くさそうな顔してますよ霊夢さん。厄介なのは分かるけどもう少し隠して欲しい。そんな苦笑いを浮かべながらもどうにか思い出せないもんかと頭を捻る。

 

「名前…、名前~……あっ。」

 

 頭の中に短い単語がぱぁっと浮かぶ。それは誰か、女の子の声と一緒に浮かんできた。だが、

「何か思い出した?」

俺の言葉にすぐ反応した霊夢に考えを遮られた。すると女の子の声は逃げるように再び沈んで、記憶の水面に波紋を残すこともなく消えていった。そこに残ったのは、自分の名前を思わしき、ひとつの単語だけ。

 

「…ソウ。俺のことはソウって呼んでくれ。」

「ソウ?それがアンタの名前なの?」

「分からねえ。だけど、誰かにそう呼ばれていた気がするんだ。」

 

霊夢はへぇ~とあまり興味なさそうに流し、俺の手から大判を回収する。そしてひょいっと縁側から庭に降り立った。ととっと少し歩くと、スカートを揺らしながらこちらへ振り返り、快活な笑顔を向けてくる。

 

「ま、とにかく今は人里に行きましょ。慧音(けいね)に会えば何かしらは分かるだろうしね。」

「そんじゃ、質問とかは道中にさせて貰うってことで。」

 

 俺も霊夢と同じように縁側から降りると、ぐっと背伸びをする。庭には高くなろうとする太陽が燦々と降り注いでいた。それが心地よく俺たちを照らす。それを目を細めて感じていると、霊夢が急かすように声を掛けてきた。

 

「ほら、行くわよ。あまり離れないように着いてきて。」

 

でもアンタって空飛べないからやっぱり不便よねぇ、と続ける巫女。

 ちょっとまて霊夢って飛べるのか。なんだここ。昨日の化け物もあるし、俺はファンタジーか何かにでも迷い込んだのかもしれない。驚愕している俺に不思議そうにしながらも、先を行く霊夢は急かし続ける。そんな霊夢に続き急ぎ足で境内を抜け、鳥居をくぐると階段を下り始めた。

 その時、上からふと視線を感じた。鳥居の上、今は何もないそこに、確かに何かの気配を感じたはずなんだが。

 

「気のせい、か…。」

「ちょっとどうしたのよ?ってあら…?」

「ん?」

 

鳥居を見上げていた俺を、不思議そうな顔で眺める霊夢。どうしたと俺が向かい合うと、霊夢はやっぱり不思議そうにしながら口を開く。

 

「ソウ…だったわね。何処かで会ったことがある気がするんだけど…、ダメね思い出せないわ。」

 

 ほら行くわよと再び背を向ける霊夢に、はてなマークを浮かべながらとことこ着いていく。今の霊夢の反応から、もしかしたら記憶を無くす前の俺はこの世界の住人だったのかも知れない。

ってそういえば、霊夢にもここの事とか色々聞いとかねえと。鳥居で感じた気配についてなんてさっぱり忘れて、霊夢の側に駆け寄ると話しがてら人里へと向かった。

 

 ソウの質問攻めに、霊夢もソウ自身も気が付けない。茂みから二人を見つめる暗い瞳があることに。ソレは、二人が妖怪獣道を抜けるまで、ただただじっと見つめ続けていた。




読んで頂きありがとうございます。伏線回と呼ばれるものでしょうか。あまり進展はありませんでしたが、次回は人里でのお話です。
重ねてになりますが、読んで頂きありがとうございました。次回も読んで下されば幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3.帰郷

 霊夢に話を聞き、ここがまず幻想郷と呼ばれる場所であること。そして幻想郷には人以外にも妖怪やら幽霊やらといったものが普通に居ることや、魔法が使えたり、弾幕ごっこなる遊びがあったりとものすっごいファンタジーなのが分かった。

普通に考えればよく分からねえはずなんだけど、ストンと頭の中で落ち着いたあたり俺がここの住人だった説が強くなってきたな。

 

「でも、外来人っていうのが居るのよ。」

 

 俺がそう思っていると霊夢が告げる。外来人というのは幻想郷の外の世界から、幻想郷の中へと迷い込んだ人間のことらしい。そして服装は違うけど、話し方だとかから霊夢は最初、俺もその外来人なんじゃないかと思っていたらしい。記憶がないから分からねえけど。

 そして、力の強い妖怪や霊夢のような一部の人は能力と呼ばれる特別な力があるらしい。例えるなら、霊夢は空が飛べるとのことだ。まさかぁと思ったら本当に飛べた。

 

「それで、もうすぐで着く人里にもこんな感じの能力持ちが居るわ。」

「うへぁ…、ちなみぃどんな能力なん?」

「相手の歴史が分かるとか、そんな感じの能力ね。」

「それって相手が何してきたのか、とかそういうのが分かるってことか?」

 

そうなるとなんで俺の記憶がないのか、とかそういうのも分かるってことじゃね?ってことは、今の俺の問題もほとんど解決出来るんじゃあ。そこでふと、さっき霊夢が言っていた人の名前を思い出した。

 

「それがさっき言ってた慧音って人?」

「そ。慧音ならアンタのことも分かるでしょうし、人里を仕切ってるから住むところもなんとかしてくれると思うわ。」

「めっちゃ頼もしいなおい。」

「ただ、人里って今はちょっとピリピリしてるのよね。」

 

だからちょっと気を付けた方が良いかもと唐突に言い始める霊夢。よく分からねえんだけど、言ってる雰囲気から案外重要な話みたいだ。少し気になったし、どうやら俺にも関係する話みたいだから尋ねる。

 

「ピリピリしてるって何かあったのか?」

「あった、というか今も続いてるわ。異変って言うんだけど、時々幻想郷(ここ)じゃああるのよ。」

 

そういうと、能力で飛んでいた体をひょいっと地面に戻し歩く。やっぱり軽い話じゃないようだ。

 

「人里の近くで正体の分からない妖怪が出るようになって、それから里近くの妖怪が狂暴化したらしいわ。」

「それが、異変?」

「今回はね。でも今までと少し様子が違うの。」

「様子が違うってのは、どんな風に?」

 

俺の質問に霊夢は顎に手を当てて考える。そうねぇと少し唸って、それから歯切れ悪くも口を開いた。

 

「今までの異変だと、ちゃんとした目的だとか、それぞれがやりたいことをやってるって感じだったんだけど…。今回出た謎の妖怪は、何がしたいのか分からないっていうかなんていうか…」

「無差別にその、狂暴化みたいのをさせて回ってる?」

「うーん、多分そんな感じね。」

 

霊夢は納得のいく答えは出せなかったようで少し気持ち悪そうにしていたけど、まあとにかくと気分を切り替えるように話を戻した。

 

「そんなよく分からない異変だから、きっとアンタみたいに素性も何もよく分からないっていうのは、良くないと思うの。」

「確かに、俺だったらそんな不気味なもん近付けたくねーわ。」

「だから、人里に入ったら私にちゃんと着いてきて大人しくしてなさいよ?面倒事はごめんだもの。」

 

手をひらひらとさせながら霊夢は呟く。その表情にどこか、暗い感情が感じられた。それに気を利かせて黙ってようか、なんて一瞬思ったけどダメ出しダメだ。好奇心には勝てない。

 

「なんか、そーいう面倒事でも前にあったのか?」

「まあ、ちょっとね。」

「気になるから教えて欲しいんだけど。」

「グイグイ来るわね…、ん~大した事じゃないから良いんだけど…。」

 

どうにも言葉を濁す霊夢に、今度はストレートに聞き直す。そんな俺の様子に霊夢は呆れながらも、最後は教えてくれる様で重い口をゆっくり開いた。

 

話をまとめると。

 今の異変が始まってすぐ、人里の子供が行方不明になってしまった。慧音はそれの捜索を博麗の巫女、霊夢に頼みそれを霊夢は引き受けた。

 狂暴化した妖怪達に苦戦しながらもどうにかその子供を見つけた霊夢。ただそれは最高の形とはいかなかった様で。子供は妖怪に腕を食いちぎられた状態で、既に意識はなく、里の近くにある竹林の医者によって一命は取り留めた。だが腕はもうどうしようもなかった。

 これまでの異変では、困ることはあってもこんな風に命を脅かされる事例はほとんど無かったらしい。要するに平和ボケしているところに、急激な一撃が加えられた形になって。人里の人間達はそのやるせない怒りも悔しさも全部、五体満足で助けられなかったからと霊夢にぶつけてしまった。

 

「…随分と自分勝手な話だな。」

 

話を聞いた俺が不機嫌そうに答えると霊夢もそれに強く頷いた。

 

「本当にそうよ!私だって危ない目に遭って、それでようやく助けたっていうのに。」

 

怒りの表情で言っていた霊夢だが最後に小さく、だけどね…と続ける。

 

「…全く責任を感じない訳じゃないから、厄介な話よね。」

「そう、か…。」

 

この話の初めに見せた、暗い感情が霊夢の瞳を濁らせていく。それを振り払うかのように、顔を明るくした霊夢は進行方向を指して話を変える。

 

「ほら、人里に着いたわよ!今言ったみたいな面倒事に巻き込まれたくないなら、私から離れないで大人しくしてなさい。」

「…おう!エスコートお願いするぜぃ!」

 

元気に返事をしながらも、俺は霊夢の言葉に従うつもりなんて無かった。

どうにかしないと人里も霊夢も、崩れて壊れてしまう。それを、俺が(・・)どうにかしないと…と。

 

 人里に着くとまず初めに伝わってくるのは重い空気。広場や建ち並ぶ家屋達から、賑やかな里の風景は連想出来る。ただ今目の前に広がっているものは閑散とした、静かな通りだけだった。そこを霊夢はさっさと抜けて行く。

 

「てっきり絡まれるかと思ってたけど、人…出て来てねぇな。」

「出てないだけでしっかり見てるわよ。窓とかからね。」

 

 霊夢に言われ辺りを見渡すと、確かに。あちらこちらの物陰や隙間から視線を感じる。それもあまり心地良いものではない視線だ。

 

「確かに歓迎ムードじゃなさそうだ…。」

「気にしたってしょうがないわ。」

 

俺が周りの視線に早くも怖じけづいていると、あっけらかんとした態度で霊夢が一掃する。俺としては今すぐにも逃げ出したい位なのに、こうも堂々と出来るなんて凄いと思う。

だが。

やはり暗い表情の霊夢が脳裏にちらつく。

 

「強がり、なんだよな…。」

 

ドンドン先に進む霊夢の背中を眺めながら、誰にも聞こえない位の声で呟いた。霊夢の姿は、強く、それでもどこか孤独を纏っているようにも思える。

ふと気づき、急いでその背中を追いかけた。

 

 人里の中心部にある、一際大きな建物。中世の人みたいに大きな家を権力の見せつけにしてるのかと思い中を覗いてみれば、畳に机、ひいては黒板まで揃っている。所謂、寺子屋が一緒になった建物らしい。霊夢が言うには、慧音という人は独自に寺子屋も開いているとのことだ。

 

「ここまで見て思ったのは。」

「急にどうしたのよ?」

「慧音って良い人な感じがする。」

「まぁ…真面目過ぎるところもあって、私は苦手だけど良い人だとは思うわ。」

 

そりゃあ普通に霊夢の性格が悪いからとは思うけど。霊夢とのこれまでの会話を思い出しながら苦笑する。

 ともあれ、話が通じないような人じゃなさそうでひと安心。あとはどんな見た目なんだろうかと、ひとりワクワクしながら霊夢が玄関にノックするのを見届ける。

 かと思いきや霊夢はそのまま引き戸を乱暴に開くやいなや、入るわよ~の一言。

 

「なんつーフリーな社会なんだ…。」

 

ここでは声を掛けるだけで、家に入って良いんだと驚愕の文化に呆気に取られる。とりあえず着いて行かないとと、霊夢に習ってお邪魔しま~すと入室しようとすると。

 

「声かけをするのなら返事を待て!!」

 

 凄まじい怒号と共に、俺の真横を白い棒状の何かが高速で突き抜けた。速すぎてよく分からなかったが、多分チョークだ。威力的にはチョークのそれじゃなかったけど。

 

「ちょっと危ないじゃない!」

 

瞬間移動からの浮遊という驚異のコンボで見事回避した霊夢。でもその台詞は俺のもんだ。あとちょっとでチョークとぶつかって重症だったんだぞ。言ってる俺でも訳が分からねえよ。

 そんな風に心の中で突っ込みを入れていると、チョークを投げた本人、青色の髪の霊夢よりは年上に見える少女が俺に気がついた。

 

「む、お前は誰だ?」

「これはね今日うちの神社で見つけたんだけど――」

 

霊夢が俺のことを簡単に説明する。その中で記憶のないことも説明して、最後に俺の歴史を見て欲しいことも伝えた。何故か上から目線に。俺の事だから聞いてる俺の方が恥ずかしくなってくる。申し訳ない慧音さん。

 

「ってことでちゃちゃっと歴史見ちゃって頂戴。」

「なんか…すんません。」

「まったく…、霊夢よりこの男の方がしっかりしているじゃないか。それで、ソウだったか。」

「おう。」

 

名前を呼ばれて返事する。霊夢がどういう意味よ!とか叫んでいるが気にしない。というより気にすると面倒だ。

 

「歴史を覗くということは、お前のやってきたこととか全部見ることになるが、良いんだな?」

「そう聞くといい気分はしねえけど、まぁ気にしねえよ。それに慧音さんみたいな美人にプライベート覗かれるんならむしろ喜ぶだろ。」

「「うわぁ…」」

「待て、冗談だから二人して引くな。」

 

 俺が急いで訂正するも、霊夢はないわ~と身を引いている。慧音は呆れたようにため息を吐く。嘘だろ、冗談ひとつで好感度がた落ちとか難易度高過ぎ。俺が驚愕に震えていると、慧音は咳払いをひとつ。

 

「では、歴史を見させて貰う。楽にしていてくれ。」

「お、おう。頼む。」

 

答えるとすぐに慧音はまっすぐ俺を見据える。すると体に違和感が…なんてことは特に無い。なんかきゅるきゅる覗かれるもんかと思ってたけど、一切なにも感じねえや。

 少しして、慧音の表情が崩れる。どこか焦っているような、怖がっているような。ただ一番は驚きの色が強い。

 

「…ソウ、お前は何者だ?」

「は?」

「信じがたい話だが、お前には歴史が無い。」

 

今度は霊夢と俺が声を揃えた。

 

「「はぁ?」」

「霊夢と会ってからの歴史は確かにある。だがそれ以前。森の中で目が覚めるより前の歴史が残っていないんだ。」

「それってどういうことよ?」

「言うなら、森の中で目を覚ましたその瞬間がソウという人間の生まれた瞬間ということになる。」

 

霊夢の問いに答え、そうなればソレが人かどうかも怪しいがな、と締めくくる。

どういう事だ?

俺には、歴史がない?

ってことはなんだ、どういう事なんだよ。

 今まで楽観視してきた自身についての謎が、じわじわと不安に塗り替えられていく。得体の知れないという恐怖を、自分の内側から感じてふと気づく。慧音から向けられる視線にも、ソレがあることを。

 

「…いよいよ道が無くなってきたな。」

「分かっているなら良い。さっさと里から出ていってくれ。」

「ちょっと慧音!そういう言い方しなくたって、」

 

驚いた様子で止めに掛かる霊夢を、慧音は視線だけで黙らせる。その鋭く強い瞳には、確かに何かを守る為の決意が感じられた。

 

「これは里の為でも、ソウの為でもある。いらぬ混乱を招く訳にはいかないんだ。分かるだろう?」

「それはっ…。」

 

霊夢が良い淀み、いよいよ空気が重苦しくなってきた。この空気のまま追い出されるってのは後味が悪い。仕方ねえなと声音を上げ、口を開いた。

 

「俺は大丈夫だ霊夢。それにいざとなれば――」

 

俺の言葉は悲鳴にも似た叫びに遮られた。

 

「出たあぁ!!妖怪だっ、邪神(・・)だァ!!」




3話です。読んで下さりありがとうございます。
次回は戦闘回になることでしょう。
気長にお待ち下さいませ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4.求心

 俺たちが来た方と逆の方から叫び声があがる。妖怪、そして邪神が出たと。

 

「あっちは魔法の森の方…!この前逃がした奴ね!」

 

霊夢は叫び声を合図にすぐ外に飛び出した。それを見て慧音も遅れて動き出す。

 

「私は里の皆を避難させる。ソウ、お前はそこで大人しくしていろ!」

 

 俺に待機を言い渡すと慧音は玄関から出ていった。里からは獣の唸り声や人の叫び声、泣き声が入り乱れ阿鼻叫喚なのが目に浮かぶ。

――それなのに俺は大人しくしてるってか?

ありえねえ。

既に妖怪は里に入り込んでいる。

 

「だけどそれは霊夢と慧音でどうにか出来る…。」

 

この前の霊夢の戦いぶりから、大抵のことは霊夢がどうにか出来るだろうとたかをくくる。それなら俺に出来ることはなんだ。

最初に聞こえた声。邪神がいる場所。

 

「ちッ霊夢も、道中の妖怪退治で到着が遅れる!」

 

邪神というだけあって、この前みたいな獣じみた妖怪とは違う。知能があると考えた方が良い。そうなりゃこの動きの目的は一体なんだ。

 邪神の出現から妖怪の侵入までのスパンの短さ。そして霊夢も慧音も、里の人を助けなくちゃいけない。妖怪は陽動?そうなると邪神の狙いは…。

考えを巡らせ、そうしてひとつの答えに行き着いた。

 

――里の出入口付近での虐殺

 

俺は最初に声のした方へ走りだした。

 たった一人の犠牲だとしても、それだけで混乱が広がり結束は解ける。そうすれば里の崩壊は確かなものとなり、人々は恐怖に負けて妖怪の餌になる道以外を見失ってしまう。そんなのは嫌だしそれ以前に、霊夢の話が頭から離れない。

(誰も、犠牲を出させねえ!)

霊夢のように苦しむ救済者も。

子供のように苦しむ当事者も。

慧音のように苦しむ統治者も。

誰ひとりとしても出したくない。人里(ここ)に関わったからには、全部、不幸になんてさせてたまるか。

そんな(エゴ)だけで、今俺は突き進んでいる。歯を食い縛って、走る速度を上げた。

 

 少しして、里の外に繋がる大きな門が見えた。ただそれは大きな穴があけられていて、向こうに暗い森が見える。そこから再び門の周辺へ目を向けるが争った跡は見えない。ただ近くの矢倉から逃げるような足跡を見つけた。

 

「もう邪神も中に居るってか…。」

 

 幸いなことに赤色も、鉄の臭いもまだ感じられない。前進を止め、足跡に目を光らせる。矢倉の下から通りを抜け、少し外れた家屋の群れ…。そこで目が止まった。

 

ナニカが居る。

何かは分からない。人型で体も腕も細く長いが、頭だけが肩幅と同じかそれ以上に大きい。人とも獣とも言い表せない真っ黒な化け物だ。そしてソレはひとつの家屋の前で何をするでもなく、ただ立ち尽くしている。その家にだけ、灯が灯っていた。

 その灯りは、ソレを必死に追い払おうとするかのように懸命に揺れている。あの家の中に逃げ込んだ人がいるのかもしれない。

 

「早く助けねえと…!」

 

 近くの家に立て掛けられていた斧を手に取る。ずしりとした重みが手のひらから腕へと伝わる。振り回すには不自由だが、それでも威力には期待できそうだ。未だに動こうとしないナニカに走り、斧を振り上げる。

 

「ぅおらァ!!」

 

その瞬間。

今まで微動だにしなかった邪神の首が、ギュルリと俺を見据えた。その真っ黒な頭に亀裂が入る。まるで笑っているかのように。

 

そしてその亀裂から、煙が湧き上がった。霧とは違い、黒い灰のように一切先が見えない。それが俺を飲み込まんと迫ってくる。

 それから逃れようと体に力を入れるが、今まさに斧を振り下ろそうとしていた体は、そう簡単には言うことを聞かない。俺の必死の抵抗もむなしく、俺の周りを煙が包み込んだ。

 

(こいつは、不味いんじゃねえか…。)

 

咄嗟に息を止め、右へ左へ視線を走らせる。ダメだ、何も見えねえ。いきなりのことだったから息もそう長くはもたない。

 

(闇雲でもなんでも、やってやるしかねえか!)

 

さっきまで邪神の居た方へ、やたらめったらに斧を振り回す。この煙から逃れようとするより、原因を倒す方がまだ出来そうだと、直感でそう思ったから。そしてなにより。

 

「人を見捨てて逃げるなんざ、ありえねえ――!」

 

 斧を握る手に力を込めながら、より強く振り回す。その風圧のおかげか、少しずつではあるが煙が晴れてきた、気がする!これを好機と、さらに勢いを増し、前に前に。五歩、六歩と足が進み、ようやく――見えた!

俺はソレに力の限り、手の中の武器を叩きつけた。

パラパラ…

 腕に伝わった感触は枯れ葉を握りつぶすような、軽いものだった。次の瞬間、視界を覆っていた黒い煙が掻き消え、邪神と呼ばれ恐れられていたものが吹き飛ぶ。これで終わりだと言うのなら、あまりにも呆気ない幕引きだな、と。

そんな淡い期待は形になる訳がなく、邪神は飛んだ先でふわりと体勢を立て直した。が、先ほどまでと同様に動く気配はない。

 

「まぁそう簡単には済まねえよなッ!?」

 

 悪態を吐きながら、再び斧を構えようとして気付いた。斧の刃の部分、いや柄の半ばから先にかけてが消えている。さっき殴り付けた時に砕けたり、折れたりという感覚は全く無かった。

 

「くそ、どういう手品か分かんねえが、消しやがったってか…。ハードってレベルじゃねえ。」

 

先が黒くくすんだ斧の柄を投げ捨て、今は目前に迫った家に目を向ける。中には大人一人と子供が二人。霊夢達がここに合流するまで、俺一人でこいつらを守り抜けるか?

(悔しいが、無理だ。)

 自分には特別な能力なんてねえし、何より敵の得体が知れない。さっきの煙をもう一回撒かれりゃ、確実に後ろの三人も巻き込んでしまう。速攻をかけられず、かといって守り続ける耐久もない。そうなりゃ――。

 

「おい家の中のやつ!!」

 

俺の声に反応して人が動く気配がする。

 

「俺がこいつを抑えとく!だからその間に逃げて、霊夢をここに呼んでくれ!」

「そ、そんなこと言ったって…アンタ、武器も何も…」

「うっせえ!あれに殺されたくなけりゃ動け!!」

 

 中から返ってきた男の弱々しい返事に激を飛ばす。家の中の男はそれに一瞬声を詰まらせて、それから家の引き戸を開けた。そこには壮年の男とその横には、泣き顔で怯えきった男の子と女の子が一人ずつ。三人がそれぞれ俺の方を心配そうに覗き込んでいる。それに努めて優しい口調で声を掛ける。

 

「どういう訳かあれはまた動かねえ、行くんなら今のうちだ。早くしな。」

「すまねえ、すまねえ…。絶対に博麗の巫女をここに呼ぶ。だからそれまで、死ぬんじゃねえぞ…!」

 

そういうと男は懐から小刀を出し、こちらに手渡してきた。

 

「せめて、これを使ってくれ。どうか…どうか無事でいてくれぇ…!」

「ぁりがとう…。」「が、頑張れっ!」

 

男の消え入りそうな声と一緒に、子供たちからも小さいながらも暖かな声援が送られる。俺はそれらに大きく頷いた。

 

「おう!ほら行きな。」

 

 そう諭すと、今にも泣き出しそうな三人は全力で里の中心に向けて駆け出した。なんだよ、ちゃんと良い人居るんじゃねえか。

俺の中でただがむしゃらだった『死なせない』が、『死なせたくない』に変わった。それと同時に邪神が顔を上げる。

 

「律儀にも待ってくれてたってか?そんならもう少しばっか待って欲しいんだが。」

「――、―――!」

 

 俺が茶化すように言いながら小刀を抜くと、邪神が金属音のような甲高い叫びをあげた。すると邪神の中からどす黒い球体がいくつか浮き上がる。そしてそれらは全て里の外に向かって飛び出していく。

 

「なんだ…?」

 

俺が呟くと数瞬の後に、周囲の森のあちこちから獣の叫びが響き渡る。昨日に俺が聞いた、殺意に満ちたあの叫びが。

 

「今のが妖怪の凶暴化って奴かよ!」

 

このタイミングで来るとか、最悪だ。こうなると妖怪がここに来るのが速いか、霊夢が来るのが速いかの運ゲーになっちまう。いや、そもそも。

 

「フシュゥゥゥ――。」

「こいつに俺がやられねえかどうかって話かッ。」

 

邪神の頭から再び煙が上がり始める。さっきはあいつを殴り飛ばしたら煙も消えた。だけどその代わりに斧はあのザマだ。そのまま突っ込むのは良くねえ。

 

「そんなら遠距離からならどうだ…。」

 

 近くに落ちている手頃な石を拾い、姿が隠れ始めた邪神に向かい投げつけた。石は鋭い放物線を描き飛んで行く。だが邪神を目前にして不意に消えた。

(いや違う…今のは、呑み込まれた?)

邪神の姿が完全に失せる前にもう一度、今度は手に持っていた小刀の鞘を投げつける。それはまっすぐに邪神へと飛んで行き、邪神はそれにグルリと首を向けて。鞘の煙に触れていた部分から呑み込まれて消えた。

 

「あいつに見られてて、なおかつ煙に触れてるもんが消される、ってところか。」

 

 そう考えて、ふと疑問に思った。一番始めのあの瞬間。俺は確かに邪神に見られて、煙に囲まれていたはずだが、どうして消えていない…?

 

「時間がねえ。ちょっと…賭けてみるか。」

 

もう既に三人の姿も見えない。見届ける者は居ないが、それでも救いたいと思ったものを救うために、覚悟を決めて小刀を構えた。




時間が空きましたが4話になります。
次回に戦闘を持ち越し、戦いはどういう決着を迎えるのか。ゆっくりお待ちくださいませ。
そして読んでくださってありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5.一閃

 邪神の能力をひとまず『煙に触れているものを消す』そして消せる対象は邪神が見ているものと仮定して、小刀を構え姿勢を低くする。俺の予想が外れていれば間違いなく死んでしまうだろうけど、俺の後ろを走り去っていく三人のことを思うと不思議と勇気が沸いてきた。

 

「っしゃ、いっちょ死地にでも飛び込んでやるか。」

 

足元の手頃な石を左手で掴むと、右腕で小刀を隠しながら煙の中に飛び込んだ。

 前回邪神が俺を見ていても何も起きなかったことから『邪神が消せるのは物だけ』と考える。ただしそれに対しての確証なんてないし確認も取れない。さらに間違っていれば即死という非常にデメリットが大きな賭けだ。しかしこのまま何もできず時間切れとなれば妖怪どもに囲まれる。

 

「そんなら勝ちがあるだけ、この賭けは降りるわけにはいかねえ!」

 

 相変わらず先が一切見えない煙を、最後に邪神のいた方角を頼りに直感だけで突き進む。邪神はこれまでどういうわけか全く動こうとしていなかった。あいつ自体の特性なのかなんなのか分からないが、今はそれを利用しない手はない。

 

「は、はっ。そろそろか…!」

 

 少しして前回と同じように煙がだんだんと薄くなってくる。黒色から灰色へとゆっくり開けていく視界に、黒いシルエットを遂に見つけた。正面突破じゃ武器を消されて終わりだ。俺は持っていた小刀を邪神の足下へそっと放るとすぐ、左手に握っている石を邪神に持てる全力で投げつけた。

 

「キイィィィ――。」

 

 しかしそれは金属音のような邪神の声とともに黒い塵となって、薄くなりつつある煙の中に溶け込んでいく。だが足を止めずにまっすぐ邪神の元へ走り込み、俺をまっすぐに見据える頭を空高く殴り上げた。

 邪神の体が大きく仰け反るが、その足は縫い付けられているみたいに地面から離れようとしない。そしてそれはすぐに元の姿形に戻ろうと、その上体を震わせる。が、この隙を見逃さない。

俺は足元に滑り込ませた小刀を拾い上げるやすぐに、その刃を邪神の横腹に突き立てるように切り上げ、勢いのままに振り抜いた。途端に周囲から煙が霧散し消えていく。

 

「――。」

 

邪神は全く動かず、音も何も発しない。だが、あまりの手応えの軽さに、勝てたという感慨は一切沸いてこなかった。それどころか、嫌な予感が胸の内に波紋のように重なっていく。おそるおそる手の内の小刀に目を向けると、その柄より先、刃の部分には何も残ってはいなかった。

 

「くそっ!」

「シュゥー。」

 

俺が悪態を吐くと空気の抜けるような音を出しながら邪神も上体を起こす。それに残った小刀の柄を投げると、やはり邪神にぶつかった途端に霧散した。

 

「こいつの能力は煙だけじゃねえってか…。」

 

 考えが甘かった。多分こいつは、実際に触れたものも消すことが出来る。斧の時だって感覚は軽かったが確かに当たっていたんだ。そのことに気付いておくべきだった。

 

「キキ…キキ…」

「くそ、触れることも出来ねえとか。そうなりゃ魔法かなんかでもなけりゃ戦いにすらならねえ!」

 

 俺からの攻撃は届かない。かといって敵の攻撃には、今のところ実害のあるものはない。敵に何か隠し球でもない限り、お互いに攻め手がない。邪神の相手をするのが俺一人であるのなら、俺は勝つことが出来ず、時間切れで相手の勝ちになってしまう。

 

「ソウ!そいつから離れなさい!」

「霊夢!!」

 

 その声を聞き、急いで後方へ飛び退く。すると俺の頭上を四角い何かが高速で通り抜け、邪神に直撃。しかしそれはダメージを与えることなく黒い塵と化した。それを見て驚愕の表情を浮かべる霊夢に叫ぶ。

 

「あいつの能力がえげつない!」

「どういうものなの!?」

「えぇっと、消える!!そんで来る!!」

「何が!?」

 

 霊夢が間に合って嬉しいのと、邪神の危険を早く伝えないとで、結局何を言ってるのか自分でもわかんねえ。まず伝えなきゃいけないのは邪神の能力だ。

 

「あいつに当たったもんは全部消えちまう!しかも変な煙出してきて、それに当たっても同じだ。」

「っ、厄介ね…。」

「煙はあいつをぶん殴ったら止まった!」

「殴ったって…アレは触れたものを消すんでしょ、アンタは大丈夫だったの!?」

「よく分からねえけど、とりあえず無事。それよりみコイツ、森の妖怪を狂暴化させやがった!もうすぐこっちに来るぞ!」

 

 それを聞いた霊夢の顔が強張る。しかしすぐに強気の表情に戻すと、邪神に向き直った。その瞳には怒りとも、畏れとも読み取れる感情が揺れている。おそらく以前のことを思い出しているんだろう。このままでは感情に任せるままに、無理を押し通すような戦い方をするかもしれない。そうなって霊夢がやられちまうのだって、もちろん嫌だ。俺は霊夢の肩に手をおく。

 

「今回はしっかり村の人たちを守れてる。まだ俺たちはコイツに負けちゃいねえんだ。」

「そんなこと言われなくたって分かってるわよ!甘く見ないでちょうだい!」

「あれ?てっきり怒りで我を忘れてるのかと。」

「そんなわけないでしょ。ちゃんと考えてるわ。」

 

霊夢はそうはっきりと答えると、懐から幾つかのお札を取り出す。

 

「封魔陣ッ!」

 

叫びながら投じられたお札は真っ直ぐに邪神に向かって飛んで行き、目前にまで迫ると途端にその周囲を囲むように展開する。それは瞬く間に邪神を囲む円柱型の陣うぃ築き上げ、朱が混じった明かりを灯す。

その陣の頂上に、いつの間に飛び上がった霊夢が青白い光を発する札を手に構え、叩きつけるようにそれを急降下しながら振り下ろした。次の瞬間、視界を強烈な光が包む。

 

「っつぅ…。」

 

 眩む視界をうっすらと広げ、飛び交う無数の札の隙間から状況を伺う。霊夢は既にその場から離れたようで、そこには黒い例のシルエットが立っている。光の中をぐるぐると飛び交う札は中心に吸い寄せられるようにして、高速で邪神に突き刺さっていく。

 一際強い光が辺りを突き抜けて、思わず目を伏せた。それでも感じる強い光に、霊夢という巫女の本来の実力を垣間見た気がした。

 

「どう、なった…?」

 

 多少の痛みを訴える目をうっすらと開きながら呟く。どんな物理攻撃ですらなに食わぬ顔で受けきり消し去っていた邪神に届き得る神秘の力。心の底から待ち続け、そして予想の遥か上をいったその力を目の当たりにして、一人では諦める他なかった勝利への希望がふつふつと沸き上がってくる。しかし――、

 

「キキキキキキキ!」

 

これまでとはまるで異質な邪神の嗤い声が響き、思わず体が強張る。ゆっくりと色と輪郭を取り戻す視界に写ったものは、口に当たる場所が大きく裂け甲高い音を叫ぶ邪神の姿だった。

 

「なんなの…コイツ……。」

「分から、ねえ。だけど、これは――。」

 

これはヤバイ。

頭が警鐘を打ち鳴らし、体に逃げろと強い指示を発し続けている。が、対する体は本能的な恐怖からかその指示を受け取ろうとはせず、ただその場で小刻みに震えるばかり。

 

「ッ!、次の攻撃をするわ!アンタは離れてなさい!」

「はっ…はぁ…ァ。」

 

 分裂した理性と本能がバラバラな指示を振り撒き続け、結果として霊夢の言葉は俺の頭に届かない。それどころか呼吸すらを忘れ、立ち続けることすらままならなくなってしまいその場に膝を着く始末で。

 

「しっかりしなさいソ…ウ……?」

 

鈍器で強く殴りつけられたような頭痛に顔を歪める。ただ俺の心が一つの言葉を強く訴えてくる。痛みを堪え、その声に耳を澄まして…、

 

――あいつが来る。

 

 その瞬間霊夢の声が途切れ、数多の咆哮が耳を貫いた。ソレは空から、大地から、村を囲む塀を壊しながら、大きな群れを成すようにここへ集結した。血走った眼光をギョロギョロと動かし、呼吸荒く獲物を求める妖怪達のその中心で、邪神は金属を叩き合ったような音を発しながら笑っている。

 

「チッ、冗談じゃ無いわよ!!」

 

悪態を吐きながらも霊夢は再び御札を構える。

 

――あいつが来る。

 

迫りくる妖怪共にを近付けさせまいと四方八方に札は散らばり、対象に触れては光を撒き散らし撃退していく。

 

――あいつが来る。

 

それでも圧倒的なまでの数の差に、霊夢の猛攻も次第に押されてくる。色鮮やかに輝く幾多の札の結界を、一匹、また一匹とすり抜けていき、それに対処する度に少しずつ妖怪の壁が近くなる。

 

――あいつが、来る。

 

妖怪の一匹が霊夢に手を伸ばした。霊夢はそれにまだ気付いていないようで必死な面持ちで札を操っている。このままじゃ霊夢が捕まる。そうなると、この妖怪共の餌食に…引き裂かれ、噛み千切られ、苦しみながら死んでいく。その情景を想像した途端に心臓が高鳴った。これまで動かなかった体が、弾けるように動いた。

 

 コマ送りのようにゆっくりと流れる視界。霊夢に迫る妖怪の腕に間に合うかどうかの瀬戸際、相手よりコンマ1秒早く霊夢を掴んだ俺は、力の限り側に引き寄せ、そして――、

ついさっきまで霊夢の立っていた場所に、音もなく落ちてきた黒い刃を見た。

 

「は…?」

 

もう、声は聞こえない。

代わりに目の前に降り立った一本の刃が、何かがここに来たことを報せている。

 

「なによ…あの刀…。あんな邪悪な気配、初めて見るわ。」

 

引き寄せ、抱き抱えるようにした霊夢が俺の腕のなかで震えながらそう呟く。それに呼応するように、刀が邪神のそれと同じような煙を振り撒いた。あれは、まずい。

 見た目は同じようだが、何かが違うと本能的に感じた俺は霊夢を抱えたまま慌てて距離を取る。妖怪達はあの刀に釘付けになっていて、俺たちが放れていっても何の反応も示さない。そして刀を中心に広がる煙は、妖怪達を呑み込み、十分に距離を取った俺たちよりも手前でその進行を止めた。程なくしてスイッチを切り替えたようにパッと煙が晴れる。

 

「なんだよ…これ、」

「……冗談じゃないわ。」

 

 煙の消えたそこには、先ほどまで中心にあった刀が消えており、暴走していた妖怪達が傷ひとつない骸と化して横たわっていた。そして何より目を奪われたのは、全身バラバラに切り刻まれた邪神が無造作に捨てられていることだ。

 

「あんな……何も効かねえような奴が、こんなあっさり…、」

「一体どんな…っ!右斜め前、何か居るわ!」

 

呆然としていた俺は、霊夢の叫びで慌てて意識を引き戻す。すぐには定まらない視界で、前方の、屋根の上に立つ人影をどうにか捉えた。

 それは全身をズタボロの黒い布で包んだ、黒髪の男。目付きは鋭く、強い殺意を俺に向け睨めつけている。その男は右手で握っている刀をゆっくりと鞘へ収め、その姿を消した。

 

「――なんでお前が…」

 

すぐ後ろで囁かれた声に、霊夢を突飛ばしながら振り向く。が、そこには何も居ない。辺りを見渡すと、霊夢にも声は聞こえていたのか同じように周囲を警戒していた。

 

「…そいつは餞別だが、俺はお前がソウを名乗ることを認めない。」

「は…?おい、それってどういう意味だ!」

 

またあの男の声が響いたかと思うと、訳の分からないことを言い出した。言葉の意味が全く理解できず聞き返すが、それに返事が返ってくることは無かった。

 

 あの声が聞こえなくなってどれくらい時間が経ったか、不意に異音が耳を突いた。

 

「キキ…キキ…」

「あいつっ、まだ生きていたのね。」

 

音の正体に気が付いた霊夢は、邪神の側に駆け寄り様子を伺う。そしてよしっと呟くと、

 

「これだけ弱っていれば私でも簡単にやれるわ。あの変な奴も消えたし、今はとりあえずこいつを退治して終わりにしましょ!」

「お、おう…でも、」

 

そんなんで良いのか?あいつを放っていても良いのか?そう続けようとした俺の言葉を霊夢は遮る。

 

「そんな辛気くさい顔しない!あの男について今考えてもしょうがないでしょ。それよりも今は、コイツ退治して人里の皆を安心させた方が良い。」

 

そうでしょ?

そういって笑顔を向けてくる霊夢に、彼女の優しさだとか、温かさのようなものを感じた。俺がそれに小さく頷くと、満足そうに邪神へと振り返る。

 

「アンタには散々な目に遭わされたから、しっかり落とし前付けて貰うわよ…!」

 

さっきまでの穏やかさとは一変、怒りに満ちたオーラを振り撒きながら長い針のようなものを取り出す霊夢。それを頭上に高々と持ち上げ、怒りのままに振り降ろす。

それは邪神に突き刺さったかと思うと、眩いばかりの光と、バチバチと電撃のような音を散らす。直視できないし、この魔法の名前だろうけど何か言っているのも聞こえない。あんな至近距離で撃った霊夢は大丈夫なのか?そんな疑問も確認をする術はなく、ただ強烈な光から目を守る為に手を翳すのが精一杯だった。

 

「終わったわよ。」

 

やがて静かになるとそう声を掛けられる。目を開けると邪神の姿はどこにもなく、無数の小さな光の粒が辺りに広がっていた。

 

「これは…?」

 

指で触れてみると溶け込むように消えていく。その様子を見て不思議思い、霊夢に訪ねてみるが。

 

「知らないわ。アイツ消したら広がったの。浄化されたあれの一部なんじゃないの?」

「嘘だろ!?なんか吸い込んじゃったぞ俺!っていうか今もいっぱい入ってきてる気がする!」

 

心なしか寄ってきてる感じもするし!

そうやって慌てていると、霊夢が笑い出した。

それを見て俺も、よく分からないうちにだけど、確かに助かったんだという実感が沸いてきて、釣られて笑みを溢す。

 あの男が何者だったのか、そしてこの邪神は一体何なのか、分からないことはたくさんあるが、とにかく今は無事と人里の人達を助けられたことを喜ぼう。そう割りきって、霊夢と笑いあった。




不 定 期 に も 程 が あ る 。
読んで頂きありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。