『ソシャゲ』とか言うクソ個性でどうしろと? (只野飯陣)
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参加出来ないイベントは引退を早める
転生した。
無駄な前置きも冗長なプロローグも無く率直に言おう。俺は所謂転生者だ。
そう。今君が考えているような、猫だか少女だかを助けるために、走行中のトラックに飛び込むイカれた奴等の同類だ。
絶対存在のくせしてミスった阿呆に詫び石貰うかの如く転生を押し付けられ、チュートリアル突破記念ガチャのように特典はランダム、しかも今時限凸素材が同名カードのようなクソ仕様みたいな使えない特典だ。
うん?さっきからソシャゲに絡めた例えが解りにくいだと?
良い着眼点だ。その通り、まさしく俺の言いたい事が伝わったようでなによりだよ。
ここまでソシャゲ押しをしたのには理由がある。
ソシャゲなんだよ、俺の転生特典がさ。
いやさ、待って欲しい、君達のそのポカン顔も納得出来るが、今は俺の話を聞いてくれないだろうか、全てを話し終えた時には君達は理解と憐れみの二つの感情を覚えるだろうから。
先ず前提として、ガチャを特典に貰うのはそれなりにあるが、ソシャゲって、ソシャゲって………っ!!
しかもガチャは阿呆みたいに辛いし、限界突破はムズいし、イベントは基本平日に起こるし、ショップ高いし、装備、スキル、キャラクターが一括ガチャなのに基本装備しか出ないし。
曜日クエストムズくて素材が集まらんし!レベリングは死ぬし!
キャラクター遠征に出そうにも、そもそもキャラクターが出てこないし!
序盤課金必須ですね解ります。
こんなクソゲーもう嫌だ。この世界に転生してから五年、未だに持ちキャラが一体、しかも自我があるからか言うこと聞いてくれない。
要らんところだけ現実に寄せやがって!神はクソ運営、ハッキリわかんだね。
あっでもだね、フレンドガチャは毎日一回だけ無料で回せるんだ。
殆どNだけどね、武器として箸やらお玉やらフライ返しやらが出てくるんだ。
お陰で両親からは物質創造系統の個性だと思われてるよ、ツラい。
個性………うん、そうだよそうなんだよ。個性なんだよ。
特殊能力には作品により様々な名称が付けられる。
スーパーパワーだとか、程度の能力だとか権能だとか、異常や過負荷だとか、念の発だとかだ。
そんな数ある作品能力の中で個性と呼ばれている物、その出展作品は皆さんご存じだろう?
そうだよ!ヒロアカだよ!『僕のヒーローアカデミア』略して『ヒロアカ』!!
すごーい!ヒーローだらけの良い世界だね!!
だとか思ったら大間違いだよ。
良いかい?ヒーローだらけって事はそれに比例して悪党だらけでもあるんだ。
しかもその悪党どもは漏れ無く強力な異能力である『個性』を使いまくる。
ヒーローのお陰で治安が良い?
いやいや、もし本気でそんな事を考えているなら君は原作一話を読み返した方が良いだろう。
巨大ヒーローとヴィランの戦いが間近で起きているにも関わらず、巻き込まれて遅れてしまうと会社に連絡しているリーマンが居るだろう?
それだけ日常的に暴れてるんだよ!!どっちも!!何だよその余裕は、現代日本の癖に犯罪に慣れすぎである。
前世で遭遇した犯罪何て壁の落書きと高校生の喫煙ぐらいだぞ。
それがこの世界だと銃を持った立て籠りが人質に岩の体の男性が居たせいで失敗とかざらにある。
それどころかこの世界では学級崩壊が物理的におこる。
数少ない利点は頭脳特化個性や解析特化個性のお陰で、前世の日本より遥かに科学が進歩している点かな。
まぁそれも悪党にまで恩恵与えてる時点でマイナス要素だけどな!!
原作に登場したヴィランの装備見てみろよ、何人かサポートアイテムみたいなの付けてっからぁ!!
さて、最後にもう一度繰り返そうか。
俺は所謂転生者だ。前置きもプロローグも無く言わせて貰おう。
ソシャゲとか言うクソの役にも立たない個性で、ヒーローにもヴィランにもヤクザにもマフィアにもヴィジランテにも狙われる。
これは、そんな俺の胃と命がチキンレースするようなツラタンな物語だ。
∀∀∀∀∀∀∀
「今日のガーチャはなんじゃーらほーい♪」
などと陽気(投げ槍)な歌を口ずさみながら、空中に現れたレバーを思いっきり引く。
後ろで固唾を飲み見守ってくれやがっている両親は、目の前に不自然に現れたガチャガチャの出口に手を伸ばした俺に期待の眼差しを向けてくる。
「………オルゴールでしたー♪」
名称
オルゴール
分類
武器(術具)
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
MP50
攻撃20
※図鑑登録済み※
レアリティーがノーマルのクソ武器だが、それでも両親の首の皮一枚繋がったのか、後ろの方でハイタッチする音と雄叫びが聞こえる。
ふふっ、個性の無断仕様は犯罪なのにこんなに両親が喜ぶのはおかしいだろって?
それがおかしい事なんて無いんだなぁ。
普通の親なら自分の家の敷地内だから練習としてとかで済ませて、時間を決めて、気長に個性の制御を学ばせようとするんだろうがね、その点ウチの両親は一味違う。
捨て子拾ったよ(転生直後と思われる)→何かレバー出て来た!!(自我の目覚めと思われる)→ネックレス……だと?(初回プレミアムガチャで出て来たR(レア)防具)→よし売ろう(ふざけんなこら)
それからは元手無料で遊ぶ金が手に入る。便利な道具扱い、控え目に言って小悪党のドクズでした。
最近の目標は友ガチャでたまに出てくるRレアリティーで。包丁とか出て来たらこの両親は絶対に殺そうと思っています。
まったくもう。ネグレクトだけなら兎も角虐待までしてくるんだぜ?
お玉とか出て来た日にはしこたま殴られたからね。
一日の始まりに貰えるログインボーナスで友P貯金して、何回か十連ガチャしてるのに、未だに殺傷力のありそうな武器が出てこないしさ。
本当にクソみたいな世界でクソみたいな個性もってクソみたいな親に育てられてさ。
今だって、いくら実の子じゃないとはいえ、子供が腹を鳴らしてるのにまったく気にしないで遊びに出掛けやがるしさ。
くそ。首輪と鎖のせいで部屋から出れないからなぁ……。
近所も近所で、助けを求めて大声出してもガン無視だしな。
もうね。
「みーんな♪みーんな♪しーんじゃえよー♪」
これに尽きるね。
さて、それは兎も角ログボ配給の友Pがやっとそれなりに貯まったから、何回目かも解らないけど十連行きますか!!
因みに、ソシャゲ個性の凄い所は念じるとソシャゲで出来そうな事は大抵出来る所だ。
念じただけで、所持品を不思議空間に仕舞えるし、念じるだけで、不思議空間内部でベース武器と配合武器を選んで強化出来る。
勿論ガチャも念じるだけだ。
「むむむー♪………んむん?♪」
『転生THEヒロアカ五周年特別ピックアップガチャ!!』
いつものように念じると、頭の中にそんなポップアップが浮かび上がった。
さらに続けざまに。
『五周年特別コラボイベント「ドラゴンクエストアカデミア」開催!!』
『ドラゴンクエストのあのキャラクターやモンスターを仲間にするチャンス!!』
『孤高の剣士「テリー」SSR』
『グレートドラゴンSR』
『最強スライム「スラリン」R』
『ロトの剣SSR』
いきなりの事に思わず固まってしまった。
いや、いやいや。
いやいやいやいや。
マジッすか!?
しかもこれ、これ、SSRとかの高望みしなかったとしても、かなり良い排出率じゃないか!?
SR3%とか、何て良心的何だよ!!(麻痺)
こりゃもう引くしか………
「石がー♪たーりない♪」
ってズコッー。
そうだよ!!石が無いよ!!月別ログボで一個しか貰えないのに、1ガチャ三百個必要とかふざけんな!!クソゲー!!クソゲー!!
はぁはぁ………いや、落ち着け、ガチャに拘るな、今回のメインはこのイベントだろ?
イベントクリア報酬は『まどうしのつえSR』か。
確かドラゴンクエスト本編では道具として使うと炎の呪文が使える装備品だったか………?
父親が水を出す個性だから相性は最悪だけど、母親は無個性だから瞬殺出来るな。
上手く事を運べれば両方殺れる………?
よっし、よーし!!希望が見えてきた。
それじゃ早速イベントにしゅっぱーつ!!
ブブッー!!『本イベントはランク10以上、ストーリークエスト第3章クリア済みの方対象です』
「がっでーむ♪かみはーしんだー♪むしろしーねっ♪」
上げて落とすんじゃねーーーよっ!!
クソっ。結局いつもの十連友ガチャかよっ!!これでNのみだったらマジでキレるからな!?
「ガッチャこーん♪ガッチャぽーん♪ぽーんぽーこぽーん♪」
はいはいガッチャとな。
レバーを引くと軽快なドラムロールと共にガラガラとガチャ玉が連続で出てくる。
『ひのきのぼうN』
『ぬののふくN』
『ひのきのぼうN』
『なべのふたN』
『なべのふたN』
『ひのきのぼうN』
『スライムN』
『どくばりR』
『どくばりR』
『ひのきのぼうN』
………………え?
エタりたくない、消えたくないんだ………!!
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ぷるぷる、僕は悪い運営じゃないよ
思考が追い付かなくなった。
目の前には所狭しと散らばる棒っきれと鍋の蓋、それからピキピキ此方を威嚇する青いニヤケ面と、その中でも異彩を放つドクドクしい色の針が二本。
……………え?
何だか素手で触ったら不味そうな液体が付着してる二本の針を、取り敢えずひのきのぼうで突っつく。
「………うーわ♪マージかー♪」
液体が付着したひのきのぼうの先端が煙を吹いている。致死率高そうなドクドクしさだ。
流石にそのまま持つのも躊躇われ、念じて全部不思議空間に仕舞う事にした。
さっきからピキピキうっさい青いジェルも序でに仕舞えば、辺りには静寂が戻ってくる。
さて、さてさて、これはどうしようか、どうするべきか。
先ずは今回の友ガチャの内容だが、明らかにドラクエの装備及びモンスターだった。
一応言っとくと、今回俺は例のピックアップガチャとやらは引いていない、いつも通りの友ガチャだ。
推測になるが、イベントが起こる度にガチャ内容が拡張されるのかもしれない。
流石にポップアップに出て来たようなイベント専用品はともかくとして、それ以外のNからR、もしかしたら一部のSRとかSSRとかも排出されるようになるのでは?
いや、友ガチャだしSRは無いな、我が個性ながらかなりコスイ課金クレ運営だしな。
因みに、このソシャゲ個性のレアリティーは五段階に分けられる。
N、主に友ガチャや無料ガチャのメイン、弱い。
R、友ガチャ排出率8%、プレミアムのメイン。そこそこ使える。
HR、友ガチャ排出率3%、プレミアム排出率8%、使える。
SR、友ガチャでは出ない、プレミアム排出率3%、かなり使える。
SSR、友ガチャは出ない、プレミアム排出率1%、もはや無敵。
ははっマジでふざけんな。
言っとくけどね、ソシャゲガチャの排出率は基本的に十連ガチャで考えた確率何だよ。
わかりやすく言えば、倍率三百倍の学校に落ちたから次の年受けたとしても、変わらず倍率三百倍何だよ。確率は持ち越し出来ないんだよ。
石三百のプレガチャだって、十回引いてもRのみとかざらだろう?
だが十連なら?そう!!確率がダイレクトに反映されやすいんだ!!
………まぁ、それでも、3%だの1%だと、明らかに誤差になっちまうんだけどな。
本当にクソゲー待ったなしな個性です。
まぁ、今回はそんな個性に助けられた訳だし、たまには素直に感謝しようか。
「ふっふっふっー♪今宵のどくばりは血にwayてーるー♪」
だが、確殺するなら二人どうじに仕留めたいところだ。五歳児のリーチでそれが可能だろうか?
答えは否、Nキャラのみで高難度イベントに挑むようなものだ、ほらあれ、イベントレイドの難易度欄にラグナロクだとかウルティメイトだとか書かれてるような。
ではどうするか?
ふっふっふ。我に秘策あり。
敵は二人、どくばりは二本、ならば仲間を用意すれば良い。
幸い今回出て来たスライムは様々なドラクエ世界で確かな知性を見せつけ、更には主人公の仲間になったりするようなまさしく『可能性の獣』と読んでも強ち間違っていないような存在だ。
前回呼び出した奴は明らかに人類に敵対的な種族だったから、思わず不思議空間に没シュートしてしまったが、スライムなら……いける!!(確信)
というわけで不思議空間からスライムを召喚しようか。
手順は簡単、念じて不思議空間に収納されたスライムをデッキに編成するだけ。
ついでに『なべのふた』と『ひのきのぼう』と『ぬののふく』を自分に装備。
今付いてるジョブが『欠食童子』なせいで、全パラメーター常に10%ダウンだからね。「買ったものは装備しなきゃ意味ないぞい」って奴だ。
デッキに編成されたスライムが目の前に現れる。
目線が合った瞬間ハンドボール選手が参加したドッジボールレベルの速さで突っ込んできた。って、え?
「はぐぉ!?」
そのままお腹にシューーーっ!!!!超エキサイティン!!!
スライムの奇襲に録な食事取れてない身体が反応出来る筈も無く、俺は勢い良く壁まで弾き飛ばされた。
ドダン!とけたたましい音を鳴らして壁に激突すると、壁の向こうからもドダン!と音が返ってくる。
おとなりさんはきょうもげんきでうれしいなー(棒)
クソっふざけんなよ、ソシャゲなら手に入れたキャラは問答無用で戦いに駆り出されて、用済みになったら売却されるのが常だろ。
残されるのはお気に入りのキャラぐらいでさ、Nごとき後半だと資金繰りの一環でしか無いんだぞ?
そんなNが、ストーリークエストで無限ポップする雑魚が………
「ふざけけんな………仲間になりたそうな目にさせてやるよ」
ひのきのぼうを握りしめ立ち上がる。
ふふっ、まさか初のバトルがヒロアカ世界のヴィランでも、ましてやクエストの敵でも無く、自分のデッキメンバーとはね、くそったれ。災いあれ。
くそっやってやる、コイツを屈服させて、両親殺して、俺はこの世界ではのんびりイキイキ暮らすんだ。
五年だぞ?五年も耐えたんだ。もう十分だ。
「かかってこいよスライム。ジェルの備蓄は十ぶぐぼあぁ!?」
まぁ、それと実力に関係は無いよね!!
決め台詞的なものを言う暇も無くスライムの殺人体当たりをまたもや腹に食らう。
無理無理無理、これ『ぬののふく』無かったら死んでるよ?
良く考えてよ、ジョブが『欠食童子』になるような虚弱ボーイだぜ?
それがいくらマスコット扱いされてるとは言え、いまだ現役で敵役張ってるモンスターに勝てるわけないって。
でもやるしかない、ああ嫌だ嫌だ、めげたい、投げたい、辛い辛い。
でも、俺みたいなクソみたいな境遇の奴が生き残るには無理を通して無茶を叶えるぐらいじゃないと。
「怖い怖い♪ほんとーにやだなー、でも、うん、もう当たらな……いっ!!」
また話してる最中に襲いかかってきたけども、なんとか『なべのふた』で受け流す。
がら空きになった背中に『ひのきのぼう』を振り下ろすと、スライムは床にバウンドし壁に激突した。
コイツ倒しても経験値1何だよな、そんなのに苦戦する俺って………
いや、考えまい!!
今はただひたすら、両親が帰ってくるまでにコイツを倒して本当の仲間に!!出来ればスラリンやスラぼうみたいな強者スライムになってくれよ!!
「ピキー!!」
まさかの反撃に、壁にベチョリと貼り付いていたスライムが怒りの声を上げる。心なしかニヤケ面も怒ってるような。そーでもないような。
「うるせー……歯向かう奴は悪いスライムだ、従順な奴は訓練された悪いスライムだ♪」
つまりは皆悪いスライムだぁ!!!
今度は此方から飛び掛かり、スライムの上に乗っかる。
バッシュだ!!バッシュだ!!要は『なべのふた』での乱打だ!!
額に珠のような汗を浮かべながら、一心不乱にスライムの上で腕を振るう。
どーでも良いが、今の俺ってば見た目スライムナイトだよな。
などなど、益にもならない考えは限界が近いからか、それとも気分の高揚からか。
俺知ってる、これ人が廃課金ユーザーに堕ちてく時の感覚だ。これ。
何か脳内から怪しい何かが分泌されて、後戻り不能地点も飛び越えるようになっちゃう奴。
自制が大事!抑えて抑えて!
とか色々な思考が脇道にそれてる間に、気付いたらスライムがぐったりしていた。
あからさまにぺけ印にバンドエイドを貼ってる。あざとい。
因みにバンドエイドは地方によって呼び方が変わるよ。
バンソーコーだったり、カットバンだったりね。
俺の前世はバンソーコーちほーだった。
「ピキィ」
疲労からかフワフワする思考があっちにこっちに行き来してたら、下のスライムから非難の声(おそらく)が挙がってきた。
もう襲われないだろうなとドキドキしながらスライムの上から降りると、元気良く跳び跳ねて俺の頭の上に着地する。
そのまま何をするでも無い様子から、どうやら無事に仲間だと認めて貰えたようだ。
良かった良かった。これで心置きなくあのクソ両親を殺害出来るよ。
それどころか、このスライムと一緒ならあの不思議空間に封じた難敵(Nキャラ)も、力付くで従わせる事ができりのでは?
いやいや、欲を出すのは良くない、今は確実にあのクソ両親を殺さなきゃ、そうしないと俺の自由は一生手に入らないのだから。
頭の上に鎮座したスライムを持ち上げ、目の前の机に降ろす。
スライムとの死闘で部屋の中は滅茶苦茶に荒れてはいるが、どうせ両親が死んだら二度と戻って来ない場所だしね。知ったこっちゃないね。
不思議そうに此方を見上げるスライムに、真面目な顔を作り話し掛ける。
「さぁーさぁー、楽しい楽しい悪巧みの時間だよー♪」
そう言って、不思議空間から『どくばり』を二本取り出してスライムの目の前に置いた俺は、きっとこの上無く悪どい顔をしていた事だろう。
実はこの作品、全話を3500字で終わらすようにしてる。
帰りのバスとかで気軽に読める文量がそれぐらいかなって
あと繰り返しになるけど、エタラ無かった、褒めよ(尊大)
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クエストのボスシルエットの秘匿性
日本が誇る世界的に有名なトップヒーローと言えば誰を思い浮かべるかという質問をされたとしよう。
この世界に生まれ落ち血の繋がりがない育ての親から道具として扱われた俺は、テレビや雑誌などを見る機会も無く、残念ながらこの質問に推測以外で答える事は出来ない、だがそれでも俺は答えるだろう。
それは原作を知る転生者だからだとか、しょっちゅう話題にあがるからだとか、そんな話じゃない。
あの時、俺を救い、だけども俺の存在を否定したアイツを、俺はきっと忘れられないから。
鮮烈に記憶に焼き付いたパワー、絶対強者の振る舞い、そして…
これは俺が両親の殺害に挑む話で、アイツの存在を通してこの世界を初めて実感として認識した話だ。
∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀
スライムとは何か、その質問への答えは簡単だ。
一番弱い敵、旨味の無い敵、可愛いだけの敵、つまりは対して強くないモンスターの代名詞、それがスライムだ。
勿論例外は存在する。
ドルアーガの塔とか、ウィザードリィだとかの古いゲームはTRPGの流れを組み、スライムが厄介な敵として描写される。
ただかの国民的ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズのイメージが強すぎて、大多数の人間がスライム=弱いの方程式を持っている。
かく言う俺もスライムなんざ雑魚の中の雑魚、雑魚の王様、キング・オブ・雑魚だと思ってた。
しかし実際はどうだ?スライムは完全武装(N装備)の俺とギリギリの接戦を繰り広げた。
これで雑魚だとどうして言えよう。断言しようか、スライムは強い!
そんなつおいつおーいスライムさんにどくばりを渡し、作戦を伝える。
作戦の第一段階は両親の帰宅を待つ事だ。
殺害対象がいなけりゃやるに殺れないからな、ただしボーッと待つだけじゃない。
待機してる間スライムさんにはこの部屋の天井、それも入り口付近に貼り付いていてもらう。
両親は基本この部屋には一日一回しか入ってこないし、チャンスは自分で作るしか無い。
だから俺は両親帰宅に合わせて適当に『ひのきのぼう』で暴れまわり、両親を呼び寄せる。
そこで作戦の第二段階、部屋に両親が入ってきたらスライムさんが父親に背後から奇襲、背中にどくばりをブスリ。
残りの母親は無個性のただのクソなので、楽に始末出来るだろう。
問題は父親の個性だが、まぁ涙腺から尋常ならざる涙を流す没個性だし、大した驚異にはならないさ。
さてさて、そこまで決まればスライムさんには待機してもらって、俺は今装備している装備の限凸と強化をしてしまおうかね。
ムムムと念じて装備品のパラメーターを確認する。
名称
ひのきのぼう
分類
武器(刀剣)
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
LV1
HP20
攻撃50
※図鑑未登録※
名称
なべのふた
分類
防具(盾)
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
LV1
HP50
防御20
※図鑑未登録※
名称
ぬののふく
分類
防具(服飾)
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
LV1
MP10
防御60
※図鑑未登録※
全部の武器を現段階の最高レベルである20まで一括強化、それから限界突破する。
なにせこのクソ個性は一回レベルMAXまで強化しないと限凸出来ないクソ仕様なのだ。
図鑑埋めに苦労するったらもうね………お陰で実績クリアも捗らない捗らない。
ムムムーと念じて3つとも強化するが、『ぬののふく』だけ素材不足でレベル14止まりになってしまった。
まぁ、『ぬののふく』は限凸素材足りないし後回しも仕方無いよね。
『ひのきのぼう』と『なべのふた』を限凸し、ある程度の強化も終了させた現段階の俺の装備品パラメーターが 此方。
名称
ひのきのぼう
分類
武器(刀剣)
限界
★★
級類
N(ノーマル)
LV31
HP170
攻撃200
※図鑑登録済み※
名称
なべのふた
分類
防具(盾)
限界
★☆
級類
N(ノーマル)
LV30
HP195
防御165
※図鑑未登録※
名称
ぬののふく
分類
防具(服飾)
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
LV14
MP75
防御125
※図鑑未登録※
今までの装備品とあまり変わらない強さだけども、あの国民的ゲームの装備というだけでこの高揚感。
両親の帰宅は日中のお昼時、十二時から午後一時の間が慣例だ。
働けクソニート夫婦とか思っちゃうが、声には出さない、まぁ声に出しても両親のご機嫌取りで染み付いた陽気な喋り方しか出来ないし迫力もないけどな。
さてさて、現在時刻は十時半、残り一時間半は有効に時間を活用出来る。
ならこの時間で何をするのか、決まってる。ソシャゲ廃人恒例のあれだ。
デイリーミッション消化作業。
デイリーミッションとはかなりの確率でソシャゲに実装されている機能で、これをコンプするとゲームによっては石が貰えたりと恩恵の大きな要素だ。
無課金族最後の砦とも呼ばれるこれは、ログボ族や廃課金族からは軽視されやすいが、金を使えない俺みたいな存在にはなくてはならない存在だ。
俺の個性におけるデイリーミッションは全部で五つ。毎日ランダムで内容が変わり、クリアボーナスにガチャ石が貰える。
本日のデイリーミッションは。
デイリークエスト一回クリアしよう
レイドバトルに勝利しよう
キャラクターを強化しよう
所属ギルドに寄付しよう
フレンドに挨拶しよう
ガーッデム!
よりにもよって一つしかクリア出来ない。
デイリークエストは仲間がスライムのみだから無理だし、レイドバトルも同じ理由で無理。
所属ギルドってもさ、ギルドへの入り方が解らないんですがそれは。
フレンドいない。ぼっちちゃうわ。いやぼっちだけど。
キャラクターを強化はスライムさんに不思議空間の肥やしになってる難敵をぶちこめば良いのだが、アレは現状二体しかいないキャラクターの内の一体。餌にするのは躊躇われる。
それに報酬も拠点EXPと現状くその役にも立たないものだし…ん?
つまり今日はデイリーノークリア?
マジか、確かに今までデイリーミッションフルコンプした事無いけど、それでもノークリは流石に初だぞ。
いや、大丈夫だ。今日このクソみたいな境遇から脱出出来たらフルコンプも夢じゃないさ。
それにそもそもストーリークエストだって未だに進められてない、ていうかどうやって進めるのかも…
『プロローグ∀四畳半の大脱出』
ん?
いきなりストーリークエストの情報が解禁されたぞ?
しかも何だか不穏なタイトルだ。
念じて詳しく理解しようとすると、プロローグのラスボス以外の情報が表示された。
『ステージ1∀ボス∀スライム』
『ステージ2∀ボス∀両親』
これは、なんというか、凄い返答に困るんだが、取り敢えず一言。
「人の人生をソシャゲにすんじゃねーっての」
いや、憤る場面なのは分かるよ?分かるんだけど、こんなん見たら両親の殺害が予定調和みたいでさ、何と無く釈然としない気持ちに襲われるんだよね。
いや、いやいや、逆に考えよう。
メインストーリーに組み込まれている以上、両親の殺害はどっちみち成さねばならない出来事なんだと。殺さなきゃ俺の人生がスタートしないって事なんだと。
それにあれだ。イベント充実してるソシャゲだとメインストーリーとかもはや飾りだし、そこまで気にする事は無いだろう。
うん、気にしない、気にしないったら。
にしてもあれだ、プロローグのラスボスのシルエット、どこかで見たことあるような…いや!!気にしないってば!!
色々考えてるウチに両親ももうすぐ帰ってくるような時間になっちゃったし、スライムさんもやる気満々だし。
俺も殺る気満々だ。
いつでも来い。
等と気合いを入れていたら、アパートの鉄製の階段を上る硬質な足音が聞こえてきた。
カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…
次第に大きくなる足音は不意に止まり、玄関のロックを解錠する無機質な音が鳴る。
帰ってきた。
両親の気配を居間に感じた瞬間、手に握りしめていた『ひのきのぼう』を振り上げ………一気に振り下ろした。
普段の俺であったなら逆に手を痛めそうな勢いで振り抜かれた一撃は、それなりに頑丈に見える床を叩き、反動で『ひのきのぼう』が跳ね返る。
下の階に住む住人の怒号を耳にしながら、振るう手は決して止めない。
壁に、窓に、床に、柱に。
目茶苦茶に暴れまわる俺に両親は直ぐに気付いたのだろう。
扉の向こうに気配を感じる。
心臓がバクバクと早鐘を打つように鳴り響き、胸が痛くなる。
内開きの扉を開き、父親が鬼の形相で駆け込んできた。
「オイごらぁ!!ポチ手前何やってやがん」
怒鳴るように声を荒げるが、この部屋に数歩でも入った段階で勝負は決まってる。
父親の背後に降りたスライムさんが『どくばり』を無防備な背中に一突き。
父親は最後まで言葉を喋りきる事も出来ずに白目を向いて、前のめりに倒れこんできた。
ピクピクと痙攣していたがそれもやがて止まり数秒もせずに動かなくなる。
俺は育ての親をひとり………殺した。
ソシャゲに苦しむ読者がこの小説で更に苦しむ、書いてる作者も苦しむ
Win‐Winな愉悦だね
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Nキャラは序盤でも大概雑魚
しゃーないねん、なろうコミカライズむっちゃおもろいねん。
何も言葉が出てこない。目の前で父親が死に、やっと自由になる為の第一歩を踏み出せたのに、親を殺した罪悪感とか、自由を得た喜びとか、耐え忍ぶ毎日からの解放感とか、そういった感情と呼ばれる物の一切合切が抜け落ちたかのように伽藍堂だ。
何故こんなに何も感じないのだろうか。
足元ではスライムさんが父親だった物の上に乗り、『どくばり』を回収している。
ボーッとスライムさんを見ていると、スライムさんの上にタスクバーのようなものが現れ、一気に半分程をオレンジ色のゲージが埋めた。
どうやらこの個性は戦闘でもEXPを得る事の出来るタイプのソシャゲだったようだ。
スライムさんの成長を何の気なしに眺めていると、部屋の入り口に人の気配を感じた。
ノロノロと緩慢な動きで顔を上げると、瞳を見開き口元を両手で覆った母親が立っていた。
驚愕に身体が止まったかのように動かない母親が、遅れて甲高い悲鳴をあげる。
「ひっ、人っ人殺っ…死、きゃああぁぁぁ!!!!」
鼓膜を揺さぶるような甲高いその声に眉を寄せる。
普段から俺は母親の声が嫌いだった。
笑う時も憂さ晴らしに怒鳴る時も、キィキィと軋む蝶番のような不快な声で神経を逆撫でする。
「ピキィ!!」
スライムさんが二本目の『どくばり』を求めるかのように、使用済みの『どくばり』を掲げながら一つ鳴き声を挙げる。
その声にハッと我に返った俺は、逃げられない内に母親を捕まえようと飛び出すように走り出していた。
冷静じゃなかったのだろう。
後数十cm程の距離まで伸びた指は、壁から首輪に向かい伸びた鎖により引き留められ、勢いのついた身体は首に圧迫感を感じたと同時に両足が浮き上がり、次いで背中から床に落ちた。
スライムさんとの戦いからそれほどたっていない事も合いまり、全身に激痛が走る。
ドスンッと勢い良く転倒した音を聞いた母親は、即座に踵を返し逃げ出した。
身体を駆け巡る痛みに顔を歪めながら、スライムさんに『どくばり』を投げ渡す。
「あの女を追って始末して!俺はコイツ(鎖)を何とかするから!逃がすな!行け!」
口速く命令を伝え、鎖を破壊する為に『ひのきのぼう』を振り降ろす。
視界の隅に部屋から飛び出したスライムさんの姿を捉えながら、何度も何度も。
速くしないと、急がないとと、気ばかりが焦り、『ひのきのぼう』を叩き付ける反動で鎖が何度も宙を踊る。
集中的に同じ箇所を殴るなら兎も角、がむしゃらなその行為で破壊出来る筈も無く、俺は無為に時間を浪費していた。
何十何百と殴り続けても壊れる様子の無い鎖に、掌の皮が剥け肩が上がらなくなる。
「駄目だ。N装備程度じゃ壊せなーい………」
この時俺は母親が死んでしまう事に強い絶望を感じていた。
いや。正確に言うのならば、母親がスライムさんに殺されてしまう事、自分の手で殺せない事にこそ強い絶望を感じていたのだ。
嗚呼、どうやら俺はこの世界で本格的におかしくなったのだろう。
両親を殺すのは自由になる為、復讐の為の手段でしかないのに、今ではそれを目的とするかのように心が動いている。
そうだ。だから俺は父親の死を前にして何も感じなかったんだ。スライムさんが羨ましくて。自分のこの手で殺りたくて。宝物を突如失った子供の様に茫然としてしまった。
そもそもこの鎖だってスライムさんなら壊せたかも知れないのに、いくら自分の感情を把握出来ていなかったからって、余りにもお粗末だろう。
駄目だ。一度冷静になろう。
俺は原作に出て来たような『敵』とは違う。欲求を目的にするな。
俺の目的は自由な人生、その為の手段が殺害なんだ。
そうだ、あくまでクレバーに考えるんだ。
先ずは鎖、これは直ぐにはどうにもならない、貧弱なこの身体じゃあどう足掻いても壊せない。
そう、だったら『この身体以外』ならば?
不思議空間に封じたNキャラ、今までの装備品からパラメーターの合計数はレアリティーに依存する画一的な数値だ。
それがNのみの特徴なのかとかは解らないけど………これがキャラクターにも適応されるなら、スライムさんと同じくらい強いって事だ。
「一か八か、やってやんよ♪」
よしっ。よしっ!!
調子が出て来た。そうだよ、俺は本来こういった考えてから衝動的に動く人間何だよ。
方針が決まったら後は行動に移すだけ、強く念じてこの世界で初めて引き当てたキャラクターを目の前に呼び出す。
ゴブリン、数多あるソシャゲの中で常にレアリティーNであり続けた実績ある雑魚………それでも今の俺よりは強い筈だ。
てか強く無いと詰む。精神的にも社会的にも。
死体のある部屋に鎖に繋がれた俺………ハイ!!アウトー!!
こんな所誰かに見られたら速効で牢屋入りだ。
むしろ被害者面するかとも考えるが、どこの世界に終始ニコニコ笑ってる被害者がいるのか、自己防衛とは言え、この素敵フェイスに張り付いたオリジナルスマイルが憎たらしい。
「ギギァ!ギグ!」
とか何か考えながら脳内でゴブリンをデッキ2にセットし完了と念じると、目の前に「僕ゴブリン!!」と言わんばかりのモンスターが現れた。
背丈は今の俺より若干大きく、猫背に丸めた背中と尖った耳を持ち、黄色い眼光は鋭く髪はざんばらだ。
肌は緑色で所々薄汚れているし、身に着けているのも貧相な腰ミノ一枚のみだ。
名称
ゴブリン
分類
キャラクター
属性
闇
限界
☆☆
級類
N(ノーマル)
HP30
MP5
攻撃25
防御20
備考
繁殖力が高く生命力に溢れた魔物、種を通じて悪辣で残忍、繁殖期になると近隣の村や街に攻めこみ女性を狙う。
バトルスキル
繁殖力LV1(相手女性Cのパラメーター2%ダウン)
マスタースキル
繁殖力LV1(女性C一枚消費し同名カードを5枚入手)※使用不能
※図鑑未登録※
いつ見ても社会の敵にぴったりなフレーバーテキストとスキル構成である。
ぶっちゃけこんなのに頼るしかないとか悪夢としか言いようが無い。
「ギグルァ!!」
ドン引きしながら、改めてゴブリンの情報を調べてると、やはりと言うべきかゴブリンが唸りを上げながら襲い掛かってきた。
「あっぶなーい♪」
しかし、このアホゴブリンに襲われるのは初めてじゃない。予期していた俺は鎖でゴブリンの突撃を抑え、そのまま押し倒した。
身長は今の俺と対して変わらない、つまり重量差によるハンデは存在しない、御互いに。
首と右手首を押さえ付けるように鎖で床に張り付け、脱出出来ないように鎖を踏みつけながら立ち上がる。
「僕は!!君が!!屈服し隷属し!!奴隷になるまで!!振り下ろすのを止めない!!」
唐突だが皆さんはタコ突きと言うのを知っているだろうか、建築や土木工事の用語にある点圧、締固めに用いる道具だ。
点圧、締固めとは、掘り返した土を埋め戻す際に、後々沈下しないように事前に木の丸太等を用いて叩いて固めていく作業である。
現代では縦ランマやプレートランマ、もしくはロードローラーや振動ローラー等の振動工具及び特殊重機により行われるこの作業だが、昔はその殆どをタコ突き、つまりは木の丸太で行っていた。
さて、何故いきなりこんな話を始めたのかと言うと………。
「ガッ!ギグッ!グルッ!ギギルグゥウ!!」
ヒントは『装備がひのきのぼう』『平らにしたら気持ち良さそうなトンガリ鼻』『今現在聞こえる悲鳴』だよ。
この作業の優れている所は、持ち上げる時と振り下ろす時以外に力が必要無い事だろうか。
インパクトの瞬間に軽く手を離して添えるだけにすれば、普通に殴るより痛くなる上に、此方の疲労も少なく済むのだ。
「ほらほら、身体で覚えなよ。これから君が鎖相手にやる作業なんだからさ♪」
ドッパンドッパンと重苦しい音をリズミカルに奏でる。
ゴブリンの鼻を狙って何度も上下運動を繰り返すひのきのぼうの先端には鼻血が付着し辺りに飛び散っている。
残った左手で必死に顔を守ろうとしているが、その左手ごと顔面に振り下ろされる鈍器に、指は既にグチャグチャだ。
「はぁはぁ、どうかな?忠誠を誓ってくれるかな?」
荒くなった息を整えながら、ゴブリンの頭上で静止させたひのきのぼうをフリフリと揺らす。
涙とか涎とか血とかで汚れ骨格の歪んだ顔を必死に揺らし肯定するゴブリン君。
「良かった。これ以上は死んじゃうから断られたらどうしようかと思ったよ♪」
完全に心折れてしまったらしいゴブリン君を解放し、ひのきのぼうを装備するように念じる。
一瞬ゴブリン君の右手が光ったかと思ったら、次の瞬間にはひのきのぼうが握られていた。
ゴブリン君はそのひのきのぼうを杖代わりに立ち上がり、俺がやっていたように鎖を踏み締め、ひのきのぼうを振り下ろした。
俺より若干強いだろう力と、ひのきのぼうの攻撃力は、呆気なく破壊して見せた。床を。
にしたもこの主人公ヒーローになるのか敵になるのか………どうしよう(見切り発車)
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