ある男の飛竜戦艦 (ゴロゴロ鼠)
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ログイン、そして一つの職業の頂点まで
第1話


2043年7月18日。ある男がベットの上で仰向けに寝転がりヘルメットを装着し、あるゲームのスイッチを入れた。

 

「ようこそいらっしゃいましたー」

 

その男は気がつくと自室ではない空間――木造洋館の書斎を思わせる部屋に居た一匹の猫に話しかけられた

 

「お邪魔します」

 

「あれ?驚かないんだね、来た人はほとんど僕が話しかけたらびっくりするのに」

 

「もう先にしている友人が少しだけ教えてくれてね」

 

「なるほどね。じゃあ知ってるかもしれないけど僕は管理AI十三号のチェシャ。よろしくねー」

 

「よろしく」

 

「はーい、じゃあまずは描画選択ねー。サンプル映像が切り替わるからどれが良いか選んでねー」

 

「現実のままで」

 

「オッケー。じゃあ次はプレイヤー・ネームを設定してもらうねー。ゲームの中の名前は何にする―?」

 

「アルスト・コジャーソで」

 

アルストはあるアニメに出てくるキャラの名前の一部を使った名前にした

 

「じゃあ次は容姿ね」

 

そう言うと、マネキンと沢山の画面が現れた

 

「現実の姿にして貰って良い?」

 

「いいよー」

 

アルストは友人に聞いたようにまずはマネキンを自分そっくりにし髪型や目の色等細かい所を変えて終わらせた後エンブリオの説明も聞いた。

 

エンブリオは大まかに言うと

プレイヤーが装備する武器や防具、道具型のTYPE:アームズ

プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー

プレイヤーが搭乗する乗り物型のTYPE:チャリオッツ

プレイヤーが居住できる建物型のTYPE:キャッスル

プレイヤーが展開する結界型のTYPE:テリトリー

 

に分かれてこれ以外にもレアカテゴリーや上位カテゴリーがあるらしい。

 

「じゃあ最後に所属する国を選択してくださいねー」

 

「ドライフ皇国で」

 

「オッケー。ちなみに軽いアンケート何だけど選んだ理由はー?」

 

「作りたい物があって。出来るなら何をしても良いんでしょ?」

 

それはアルストがこのゲームを聞き、始めたきっかけ。五感の完璧な再現やこのゲームの一番の特徴であるエンブリオにも興味を持ったが、デンドロを始めた一番の理由は何でもできるという所

 

「そうなんだー。作れると良いね」

 

「ありがとう」

 

「じゃあそろそろ・・・・君の左手にある〈エンブリオ〉と同じ。これから始まるのは無限の可能性」

「<Infinite Dendrogram>へようこそ。〝僕ら〟は君の来訪を歓迎する」

 

チェシャがそう言った直後、アルストはドライフ皇国の空に放り出されドライフの首都へと落ちて行く

 

「必ず!必ずヴィーヴィルを作ってこの高さまでたどり着いてやるぞー!」

 

アルストはそんな事を言いながら首都へ落ちて行った

 



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第2話

「さて、ここで待っていればいいのかな」

 

アルストは落ちてきた場所でゲームに誘ってくれた友人を待っていると

 

「おーい」

 

「ん?」

 

アルストが声のした方に振り向くと一人の男がアルストに近ずいてきた

 

「よお、相変わらずその名前使ってんだな、アルスト」

 

「そういうお前もだろ、ぶーらんたん」

 

「まあな。付いてこいよ、ジョブクリスタルが有る所まで連れて行ってやるよ」

 

「ジョブクリスタル?」

 

「ああ、ジョブクリスタルでジョブを取らないといつまでもレベル0のままだからな。なりたいジョブとかあるか?」

 

「とりあえず機械を作れるジョブがいいな」

 

「じゃあ【技師(エンジニア)】だな」

 

「ぶーらんたんは何のジョブに就いたんだ?」

 

「俺は【整備士(メカニック)】だ。【技師】が製作メインで【整備士】が機械の修理やバフって感じだな。ティアンの受け売りだけど」

 

「ティアン?」

 

「NPCの総称だな、ここ等へんに居るのもほとんどティアンだぞ」

 

「へ~」

 

辺りを見れば全員本物の人間の様に話たり笑いあったり喧嘩をしている者もいる。これが全員NPCとは

 

「すごいな・・・このゲーム」

 

「だろ。さあ着いたぜ、ここでジョブに就くことが出来るんだ。ここで待ってるから早く【技師】に就いてこいよ」

 

「分かった」

 

アルストが【技師】のジョブに就き戻ってくるとぶーらんたんが自分のアイテムボックスの中から右手に付ける篭手の様な物を取り出しアルストに渡した

 

「これは?」

 

「お前の初インの記念と思ってくれ、俺は使わないしな」

 

アルストが篭手を見てみると

 

【ビームガントレット】

防御力補正+20

装備スキル

《ビーム・キャノン》

MPを消費して手のひらからビームを放つ 。

 

「ちなみにそれ、MP10消費して1ダメージ位の威力しかないで秒間MPを消費すればビームを出し続けることもできる」

 

「・・・使えなくない?」

 

俺まだレベル1でそんなにMPは無いぞ

 

「まあ、消費するMP増やしたらダメージも増えるから」

 

「ダメージが増えてもすぐMP切れになるし、当分使えないぞ」

 

今ありがたいの防御力補正だけじゃん

 

「まあそんな事言わずに一回そのスキルの確認をしてみないか?」

 

「確認?外に出るのか?」

 

「外にはいかない。もしモンスターに囲まれた大変だからな」

 

明らかに戦闘職じゃ無いもんな、【技師】と【整備士】って

 

「じゃあ何処で確認するんんだ?」

 

「付いて来いよ」

 

――――

 

「ここは?」

 

「ここは武器や魔法の練習をする所だ。ちなみに入場は一人100リル」

 

二人は受け付けに200リルを渡し、中に入っていく

 

「結構人がいるんだな」

 

「自分で製作した武器の確かめに来てるんだろ、俺もそうだ」

 

ぶーらんたんはそう言ってアイテムボックスから武器を取り出す

 

「お前はこの辺りでスキルの確認をしててくれ、俺は向こうでこいつを確かめてるから何かあったら俺の所に来てくれ」

 

「ああ、分かった」

 

ぶーらんたんが行くとアルストは近くの的がある所に行き、【ビームガントレット】を付けた右手を的である鎧に向け撃つ

 

「・・・やっぱ弱いな」

 

鎧はビームを受けたが傷一つ付いていなかった。

 

「まあ1ダメージだししょうがないか」

 

アルストがもう一度撃とうと右手を構えて

 

「・・・ん?」

 

左手が光っている事に気が付いた

 

□【整備士】ぶーらんたん

「やべえやべえ、武器の確認に夢中になってあいつの事忘れてた」

 

ぶーらんたんは急いでアルストと別れた所に向かう

 

「ん?何か騒がしいな」

 

アルストが居るはずの近くに行くと周りが何かを話していた

 

「あ、あれか・・・!?」

 

アルストを見つけ、近づくと、この騒ぎの原因が分かった

 

「あの的になってる鎧、《ダメージ軽減》スキル付いてたよな」

 

「ああ、しかも信じらんねえ。使ってる武器【ビームガントレット】だぞ」

 

そう、【ビームガントレット】を知っている者は驚き、《看破》のスキルを持っている者はもっと驚く。【ビームガントレット】で、秒間最低10MPを消費する攻撃を出し続けダメージ10以下を0にする鎧を壊している

 

「お、おいアルスト」

 

「ん?おおぶーらんたん、もう終わったのか」

 

「あ、ああこっちは終わったけどお前どうやって。あの鎧壊したってことは最低100MPを数秒出してたって事だろ」

 

いくら【技師】のステータスがMPが多い方だとしてもレベル1で数百もMPは無い

 

「それはお前と別れた後孵化したんだよ」

 

「孵化したって、<エンブリオ>か?」

 

「ああ、こいつが俺の<エンブリオ>【機構炉心ヘスティア】だ」

 

アルストは左手の炎の紋章と自身の球状のエンブリオを見せながら言う

 




はい!早速エンブリオ登場です。能力等は次回!


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第3話

「・・・ん?」

 

ぶーらんたんが戻ってくる少し前。左手が光ったと思ったら光は消え、代わりに左手で、鉄球の様な物を持っていた

 

「これは、<エンブリオ>か?」

 

アルストは何か書いていないかと『詳細ステータス画面』を見ると『<エンブリオ>』という項目が増えていた

 

【機構炉心ヘスティア】

TYPE:チャリオッツ

到達形態:Ⅰ

 

『保有スキル』

 

《燃料化》

手持ちの物を完全消滅(ロスト)させることでその分のリソースを貯蔵することができる

 

《燃え上がる炉》

秒間MPを12生成し融合した機械に配給する。12秒毎に生成するMPを12増やす(最大生成MPは120)。

一度融合を解除すると生成するMPはリセットされる。

燃料化で貯蔵したリソースを使い、消費したリソースの時間、生成するMPを増やすことが出来る

 

「これが俺の<エンブリオ>か」

 

後でぶーらんたんに聞いた話だが『ステータス補正』が無いのは珍しいらしい

 

「とりあえず、この《燃料化》ってのを使ってみるか」

 

チュートリアルの時に貰った剣をヘスティアに近づけてみると、剣は粒子になってヘスティアに吸収され、ステータス画面を見てみると《燃料化》の所に10という数字が出ていた

 

「じゃあ次は《燃え上がる炉》か、融合ってどうやるんだ?」

 

ヘスティアを【ビームガントレット】に近づけると篭手の表面が水のように波打ち、ヘスティアが中へ入って行った

 

「機械にヘスティアを近づければいいんだな」

 

篭手の中央部分が少し光、一瞬篭手全体に光の線が出ると目の前にウィンドウが出てきた

 

「これは」

 

そこには現在ヘスティアが生成しているMPの量が書いてあった。融合すると自動的にこのウィンドウが出るらしい。

 

「あ、12増えた」

 

ウィンドウに映るヘスティアの生成MP量が増えた後、ウィンドウの隅の『燃料』と書いてあるボタンを押すと使用する燃料の量をどうするか書かれていたので今持っている10ポイントを選択すると確認画面が出てきた。どうやら消費ポイント×12秒の間消費ポイント×1.2倍にしたポイント分生成MPを増すらしい。

 

「よし、もう一回撃ってみるか」

 

ウィンドウを確認すると今、ヘスティアは10ポイント消費して120秒の間、元の生成MP量+12MPで毎秒100MP以上を生成し、今も秒間生成MP量が増えている。

 

<エンブリオ>の確認が終わり、もう一度的である鎧に狙いを定め、ビームを打つと<エンブリオ>が孵化する前とは比較にならない勢いで鎧に当たり、鎧を破壊して見せた

 

「『燃料』分は最大生成MPに入らないみたいだな」

 

ウィンドウを見てみるとそこには秒間生成MP量が120で止まり、その横に(+12)と書かれていた

 

「お、おいアルスト」

 

「ん?おおぶーらんたん、もう終わったのか」

 

「あ、ああこっちは終わったけどお前どうやって。あの鎧壊したってことは最低100MPを数秒出してたって事だろ」

 

「それはお前と別れた後孵化したんだよ」

 

「孵化したって、<エンブリオ>か?」

 

アルストは【ビームガントレット】とヘスティアの融合を解除し、左手の紋章と一緒にぶーらんたんに見せる

 

「ああ、こいつが俺の<エンブリオ>【機構炉心ヘスティア】だ」

 



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第4話

今回は最後にエンブリオの紹介があります


「よお、何読んでんだ?」

 

「魔法機関の事が書かれている本」

 

アルストが<Infinit Dendrogram>を初めて2週間、アルストが技師ギルドで本を読んでいるとぶーらんたんが近ずいてきた

 

「どんな事が書いてるんだ?」

 

「色々な魔法機関の説明が書いてんだよ、酸素の生成や対圧防結界を出すのとか」

 

「へ~いくらしたの?」

 

「250リル」

 

「お前金大丈夫か?会うたびに違うの読んでるだろ」

 

「ちゃんとジョブクエストしてお金は稼いでるよ」

 

「お前今レベルどの位?俺今34何だけど」

 

「俺は36」

 

「超級職はまだまだ遠いか」

 

「先に上級職だろ」

 

「まあな、でも就いてみたいだろ、先着一名だぞ、こうしてる間にも【整備士】の超級職にティアンが就いちまうかも」

 

「そん時は諦めるか違う超級職を狙え」

 

「お前はどうなんだよ、【技師】の超級職だれかに先に就かれても良いのか?」

 

「そりゃあ興味はあるけど俺がこのゲームを始めた目的はヴィーヴィルを作るためだからな。絶対に欲しいって程じゃない」

 

「そうか、それでヴィーヴィルは作れそうか?」

 

ぶーらんたんはアルストのリアルの友人でこれが本気だと知っているので真剣に聞く

 

「ああ、これを見て見ろよ」

 

アルストは今まで見ていた本のあるページをぶーらんたんに見せる

 

「浮揚装置?」

 

「そう、これがあればどんな物でも浮かばせる事ができる」

 

「でもこれでヴィーヴィルを浮かせるとしたら膨大なMPが必要になるんじゃ」

 

「そこはほら、ヘスティアが成長してもっとMPを生成できるようになれば」

 

今一瞬ヘスティアの窓から見えた炎が俺の言葉に反応したように燃えるのが激しくなった気がしたんだけど、ガードナーじゃ無いんだし気のせいか

 

「そういえば、今ヘスティアって第一形態?」

 

「いや、この前第二形態に進化した」

 

「俺まだ第一何だけどエンブリオの進化の速さって皆バラバラなのかね?」

 

「さあ、まだゲーム始まって一ヶ月もしてないんだから分からないよ」

 

「それもそうか。あ、俺もうログアウトしなきゃ」

 

「そう、じゃあな」

 

「・・・さて、またジョブクエストをするかね」

 

ぶーらんたんがログアウトした後、アルストはヘスティアを片手にクエストを受けに行った。

 

□<エンブリオ>説明

 

【機構炉心 ヘスティア】

TYPE:チャリオッツ 

到達形態:Ⅱ

能力特性:MP生成

モチーフ:ギリシア神話に登場する女神〝ヘスティア″

スキル:《燃料化》《燃え上がる炉》

備考:〈マスター〉のアルストが戦闘をしないので今の所、アルストが作ったアルストが持っているMP量では使えない機械を動かす時にしか出番が無い。時々言葉に反応しているような気がする?

 



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第5話

「何だこれ?」

 

「クランの人材募集だな」

 

「技師ギルドに募集をかけるってことは生産系のクランか?」

 

「おいアルスト、この目標見て見ろよ」

 

「えーっと、『人型の戦闘ロボットを作り上げる』!おいぶーらんたん」

 

「俺、このクランに入ろうと思うんだけど、お前は?」

 

「おいおい、決まってんだろ?」

 

目標が人型ロボット作りなら

 

「俺も入るに決まってるだろ」

 

こうして俺とぶーらんたんはクランに入る為人材募集の紙に書かれている場所へ向かったへ向かった。

 

 

 

 

□【高位技師】アルスト・コジャーソ

 

クランに入る為、指定された場所に行くともう数十人が集まっていた

 

「凄い人数だな」

 

「ここが機械の国だからってのもあるだろうけど、いままで無かった人型の戦闘ロボットを作るのが目標なんだ、興味をもつ〈マスター〉は多いだろ」

 

「やあ、集まってくれてありがとう。私の名前はMr.フランクリン」

 

俺達が話していると皆の前に一人の男が出てきた

 

「皆は感じなかっただろうか、ゲームの開始時点でドライフに用意されていた〈マジンギア〉、機械式甲冑の【マーシャル】と戦車【ガイスト】も良いが何かが足りないと」

 

「そう、乗り込める人型ロボットさ!私はまだ存在しないそれを生み出すことを目的とし、クラン〈叡智の三角〉を結成する!」

 

「必要なのは知識と設備と人手と材料と金とイマジネーションとスキルレベルと運と実験台さぁ!」

 

この言葉をきき殆どの者は

 

(((必要なもの多すぎ、でも)))

 

 

(((やってやる!)))

 

そしてクラン〈叡智の三角〉は結成し、リアルで二ヵ月後、人型機動兵器【マーシャルⅡ】が完成した。

 

 

 

「おい、これって」

 

「ああ、正常に動いている」

 

周りの皆が騒ぎ出した時、オーナーであるMr.フランクリンが嬉しそうに皆に言った

 

「これまで様々なことがあった、無数の失敗、素材コスト、離れていくメンバー多くの問題があったが私たちはついに人型機動兵器【マーシャルⅡ】を完成させた!」

 

その言葉にこの場に居たクランメンバーは近くの仲間の肩を抱き合い、喜んだ。

 

これを機に、〈叡智の三角〉はドライフ皇国最大のクランとしての道を歩み始めた

 

 

〈叡智の三角〉が【マーシャルⅡ】のレシピを公開し、リアルで3日経った頃、クランメンバーは何やら真剣な表情で設計図を書いている男に声を掛ける

 

「アルストさん、何の設計図を書いてるんですか?」

 

「これですか?これはですね、私が【叡智の三角】に入るきっかけになったものです。これを作りたいと思ったから私はこのクランに入ったんですよ」

 

「へ~そうなんですか、それで何を作るつもりなんですか?」

 

「戦艦」

 

「・・・は?」

 

男は一瞬、アルストが何を言ったのか分からなかった

 

「ドララガンさん、ナイツ&マジックってアニメ知ってます?」

 

「?はい、前に見たことがありますけど」

 

「あのアニメにヴィーヴィルって戦艦が出るじゃないですか」

 

「はい出てましたね、ってまさか」

 

「そのまさかですよ、私はヴィーヴィルを作ってみたくて〈Infinite Dendrogram〉を始めたんですよ」

 



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第6話

アルストがヴィーヴィルを作りたいとクランメンバーに話した翌日、アルストは人が寄り付かないような森の奥深くに来ていた

 

「ここならだれにも見られずに動かせるな」

 

アルストはアイテムボックスから少し改造し、スピーカーを取り付けた【マーシャル】を取り出し、胸の部分にヘスティアを融合させる

 

「どうだヘスティア、動けるか?」

 

「はい、動けますマスター」

 

ヘスティアは第四形態に進化し、TYPE:アドバンス・ガードナーになった事により、喋れるようになった

 

「マスター」

 

「どうした?ヘスティア」

 

「何故、このような山奥に?私の動作確認ならクランででも出来たのでは」

 

「あー駄目駄目、クランで確認しててクランメンバーに見られたら」

 

『アルストさーん、何やってるんですか?』

 

『え、エンブリオが進化して機械に融合したらエンブリオだけで動けるようになったんですか?』

 

『あの~ちょっとエンブリオを貸してほしいんですけど、いえただ【マーシャルⅡ】の耐久試験に付き合って貰いたくて』

 

 

「とかで何日使われるか分からないからな」

 

「そうですか」

 

「そうそう。ほら、早速動いてみてくれ」

 

「はい」

 

ヘスティアはアルストの指示通りの動きをして見せる

 

「もういいぞ」

 

「はい、マスター」

 

「お前には何時か戦艦を動かしてもらうからなよろしく頼むぞ」

 

「お任せください!完璧に動かして見せますよ」

 

「じゃあ早く完成させなきゃな・・・!」

 

アルストが話していると、近くの木がアルストの方に倒れてくる

 

「マスター!」

 

木がアルストに当たる直前、ヘスティアが木を受け止めアルストはその隙に木から離れた

 

「無事ですか、マスター」

 

「ああ、ありがとうヘスティア」

 

「木が腐ってたんでしょうか、危なかったですね」

 

「そうだな、もう確認も終わったしそろそろ帰るか」

 

 

「マスター、行きにあのような洞窟あったでしょうか」

 

アルストとヘスティアが帰り道を歩いていると、ヘスティアが洞窟を見つけた

 

「いや、気付かなかったな」

 

「如何しますか?」

 

「中を見てみよう、可能性は低いが、もしこれが〈遺跡〉なら何か役に立つ者があるかもしれない」

 

「分かりました、マスター」

 

アルストとヘスティアは洞窟の中へ、入っていく

 

 

それは何者かが内部に侵入したことを感じた、周りに居た仲間、とも呼べる者たちは侵入者の元へ行くがそれは一人になってもその場を離れない。まるで何かを守っている様にその場から動かなかった

 

【高位技師】アルスト・コジャーソ

 

「マスター、これは」

 

「ああ、確実に何かある」

 

二人の足元には襲ってきた機械が散らばっており、それが十数体分ある

 

「前にクランの誰かが言ってたな、こういう所には何かあるって」

 

「ではマスター、ここには」

 

「居るかもしれないね、〈UBM〉。機械関係だったら何とかなるんだけど」

 

二人は話しながら奥へと進んでいく

 

「マスター、気を付けてください、暗くて先が良く見えません」

 

「ああ、じゃあこれを・・・!」

 

アイテムボックスからアイテムを出そうとした瞬間、《危険察知》のスキルに反応があり、横に飛ぶと、先ほどまでアルストが居た場所にレーザーが飛んできた

 

「マスター!?」

 

アルストはアイテムボックスから辺りを照らす魔道具を出し、相手を見て驚く

 

「・・・冗談半分だったんだけど、本当に出るか、〈UBM〉」

 

二人の前には約3メテルの伝説級〈UBM〉【硬化機人 デイラン】が此方にレーザー砲の様な物をこちらに向けていた

 



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第7話

「一旦引くぞ!」

 

「はい!」

 

アルストとヘスティアはまた撃たれないように元来た道を戻るが

 

「・・・追ってこないな」

 

「ですね」

 

二人がデイランの居た場所に戻ると、デイランは動かずに立っている

 

「・・・何かを守っている?」

 

「近づく敵だけを攻撃するみたいですね」

 

二人が顔を出すとデイランは直ぐに構えるが二人が顔を引込めると何もなかったように元の体制に戻る

 

「どういたしましょう、諦めますか?」

 

「〈UBM〉を諦めたくないな」

 

アルストは少し考えた後

 

「・・・ヘスティア」

 

「何でしょうか?」

 

「多分嫌だろうけど、壊れてくれないか?」

 

 

 

 

侵入者がここに来て、レーザーを撃ったが避けて逃げられてしまった。追いかけたいが自分はここを離れるわけには行かない

 

「行くぞ!」

 

「はい!マスター」

 

まあの二人が戻ってきた、二人とも同じような格好をしていて先ほどの男は明らかに動きが違う、あの身に付けている装備品が原因だろう、二人は私が撃つレーザーをかわし、男が私に近づき、男の拳が直撃する

 

 

□【操縦士】アルスト・コジャーソ

 

「・・・傷一つないか」

 

アルストは今、自分が攻撃したところが傷一つ付いていないのを見て、直ぐに離れる

 

「一応ジョブを【ジョブクリスタル】で変えて、この【マーシャル】も改造して結構威力あるはずなんだけど。何かのスキルか?」

 

デイランが使ったデイランの固有スキル《硬化》はMPを注げば注ぐほど体が硬くなり、物理攻撃、魔法に対する防御が上がる単純だが強力なスキルである

 

「さすが〈UBM〉、俺の攻撃なんかじゃ1ダメージも入らないか・・・でも」

 

アルストはデイランの後ろを確認し、叫ぶ

 

「今だ!やれヘスティア」

 

「はい!」

 

そう返事をして、ヘスティアが動かしている【マーシャル】はデイランの後ろから襲い掛かり

 

 

 

 

 

 

それに気付いていたデイランに捕まり握りつぶされた

 

 

 

 

 

私の後ろから近ずいて来ていた者を倒して残りはこの男だけだが、先ほどから私の攻撃を避けるだけで攻撃をしてこない、時々何かを確認するような素振りを見せるが何も起きず、10分ほど経ったとき、再び何かを確認した後

 

「もういいぞ!」

 

男が急にこちらに話しかけてきた、だがそれは私を止める制御コードではないので構わず攻撃をしようと右手を動かそうとすると『了解です、マスター』!何だ今のは、私に取り付けられているスピーカーが勝手に喋るなどありえない!

 

デイランは自分の体をチェックし、気づいた。自分の体の中に異物が紛れ込んでいることに

 

『マスター!早く』

 

「分かった!」

 

男は何か操作の様な事をした後、そのまま逃げ出した

 

デイランはアルストより自分の中の異物をどうしようと考えていると

 

 

 

 

異物があった部分、胸の部分が爆発した

 

 

□【操縦士】アルスト・コジャーソ

 

「・・・いつこの道が埋まってもおかしくないな」

 

アルストがデイランの居た場所に戻ってきたのはある事を確認するためだ

 

『質問する。・・・何を・・した』

 

アルストが声のした方に向けば、そこには頭だけになり、こちらを見ているデイランが居た。

 

「・・・やっぱりまだ生きてたか。簡単だ、お前の胸で俺の〈エンブリオ〉が自爆したんだ」

 

『・・・・』

 

デイランは分からなかった。〈エンブリオ〉というのは先ほどまで自分の体にあった異物だろう。だがどうやって体に入った?デイランはあの時確かに【マーシャル】を握りつぶした・・・・()()()()()()()()()()

 

「あいつには機械と融合するスキルがあるんだ。だが、お前を壊すには時間を稼ぐ必要があったし、お前がヘスティアに気付かないように俺がお前から離れずに逃げ回ってたんだ」

 

どんなに体が硬くても相手が機械ならヘスティアには関係ない、【マーシャル】が握りつぶされた瞬間、【マーシャル】との融合を解除し、デイランと融合したのだ

 

『そうか・・・だが・・・・馬を渡す・・・には・・・い』

 

デイランは〈UBM〉なってからも守り続けていた物をアルストに取られないため、奥へと続く道に仕掛けられてあった仕掛けを起動させる

 

「奥の道が・・・ッ!」

 

デイランが起動した爆弾が爆発し、奥への道を塞いでしまった

 

アルストが生き埋めになる前に洞窟から脱出した後、崩れていく洞窟の中でデイランは

 

『これで・・・煌玉・・・は・・守・・・』

 

その言葉を最後に長年この場所を守り続けた【硬化機人 デイラン】は光の塵になり消えて行った

 

【〈UBM〉【硬化機人 デイラン】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アルスト・コジャーソ】がMVPに選出されました】

【【アルスト・コジャーソ】にMVP特典【はいぱーきぐるみしりーず でいらん】を贈与します】

 



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第8話

「・・・なああれ誰だよ、新しく入った人?」

 

「違いますよ、アルストさんですよ。あそこアルストさんが何時も使ってる場所でしょ」

 

「・・・何であんな格好してるんだ?」

 

二人の〈マスター〉が見ている先では着ぐるみをきて設計図を書いているアルストが居た

 

 

 

 

「いやこれ特典武具なんですよ」

 

「特典武具!?アルストさん〈UBM〉倒したんですか」

 

「はい、ヘスティアも壊してしまいましたけど」

 

「あ、だからいないんですね」

 

〈エンブリオ〉は壊れると復活まで数日間かかるので今日ヘスティアを壊したアルストは数日の間ヘスティアを呼び出すことが出来ない

 

「・・・特典武具ってそんなのもあるんですね」

 

「俺も最初は驚きましたけど、今俺が一番欲しいスキルを持っていたのでおれは満足してますよ」

 

「そうですか、俺も特典武具欲しいな~、何処かに簡単に倒せる〈UBM〉っていないですかね」

 

「自分の〈エンブリオ〉に相性がいい相手だったらどうにかなるかもしれませんけど、難しいでしょうね」

 

「そうですよね」

 

 

 

【高位設計士】アルスト・コジャーソ

 

「よし、これで終わり?」

 

「はい、今終わったので設計士ギルドの依頼分は終わりです」

 

「そうか、じゃあ後は」

 

アルストは【窃盗】対策のアイテムボックスに入れていた書きかけの設計図を出す

 

「マスター、まだクエストを受けていたのですか?」

 

「いや、これはクエスト関係じゃなくて【ヴィーヴィル】の設計図の一部、正確にはアンキュローサの設計図だ」

 

「完成しそうですか?」

 

「後は仕上げでほら、もう完成した」

 

【設計図の作成回数が一定数を突破ししました】

【条件開放により【設計王(キング・オブ・アーキテクト)】への転職が解放されました】

【詳細は設計士系統への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

 

「・・・・・・はい?」

 

「?どうしました、マスター」

 

「・・・ヘスティア、行くぞ!」

 

「え、行くってどこに?」

 

「転職クリスタルの所」

 

 

「なあ、アルストさん見てないか」

 

「さっきいそいで何処かに出かけに行くのを見ましたよ」

 

「そうか。エンブリオを借りたかったんだけど、仕方ないテストパイロットにポーション飲ませて強引に回復させながらテストするか」

 

「ただいまー!」

 

「あ、丁度戻ってきた。なんだかご機嫌ですね」

 

「あ、分かります?ちょっと〈看破〉してみてくださいよ」

 

「〈看破〉ですか?いいですけど・・・ええ!?」

 

「ん?どうかしたんですか」

 

アルストを〈看破〉した〈マスター〉の驚いた声を聴いて周りにいたメンバーが集まってきた

 

「アルストさんのジョブが・・・」

 

「どうしたんです?」

 

「【設計王】になってる」

 

「「「・・・・ええええ!?」」」

 

アルストが超級職になったことは直ぐにクラン中に広まり、【設計王】を目指していた物は悔しがったり、諦めたり、違う超級職を目指し始めたりと様々だった。

 



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第9話

時間軸はアルター王国にグローリアが出た後です。


アルストが【設計王】に就いて数か月後

 

□【設計王(キング・オブ・アーキテクト)】アルスト・コジャーソ

 

「・・・超級職、取らない方が良かったかな」

 

「そんな事言ってるとPKされますよ、【設計王】を狙ってた人も多いんですから」

 

アルストは設計図を描きながらヘスティアに注意される

 

「だって【設計王】になってから設計士ギルドやクランメンバーから設計図を書いてくれって依頼が沢山来てるんだよ。オーナーも同じ超級職なのに何で忙しそうじゃないの」

 

さっき見かけたけど自分用のモンスター作ってたよあの人

 

「モンスター製造の依頼なんてそんなにあるわけないじゃないですか。そんなに大変ならなんで断らなかったんですか?」

 

「報酬が良かったから」

 

一個カルディナからの依頼で設計図一枚で【マーシャルⅡ】が買える位のがあったけど、流石に怖いので受けなかった

 

「ていうか、明らかに【高位設計士】でも良いような物が何枚かあるし、なんで俺に依頼するかな」

 

一応【設計王】という事で依頼料も高いはずなんだけど

 

「【高位設計士】と【設計王】じゃあ格が違うからねぇ、金がある連中は超級職の【設計王】に頼むさ。何より【設計王】が作る設計図通りに作れば失敗しないんだから」

 

「あ、オーナー」

 

オーナーの言った通り、【設計王】が作った設計図を使えば失敗が起こらない。【設計王】のスキル《設計EX》は設計図の不備を起こさない。【設計士】と【高位設計士】の《設計》は自分の思ったと通りの設計図を作ってしまう。たとえそれに実現の不可能な事が書かれていても、《設計》のレベルを上げればもし問題があってもシステムが指摘してくれるがレベルを最大にしても全部を直せるわけではない。しかし《設計EX》は実際に作った時に起こるであろう問題を完全に指摘して、その解決策を見つけ出してくれる

 

「如何したんですか?」

 

「いや、君に会わせたい方が居てね、一緒に来てもらえるかな?」

 

「良いですけど、誰ですか?」

 

「それは着いたら分かるさ」

 

 

そしてオーナーに付いてきて会ったのが

 

「貴方がアルスト・コジャーソさんですね、私は現皇王ラインハルト・C・ドライフ。貴方に聞きたいことがあります」

 

現皇王でした

 

「はい、何でしょうか」

 

「貴方は戦艦を作るのが夢と聞きました。どのような物なのかを説明してくれませんか?」

 

「はい、ではこの設計図をご覧ください」

 

俺は訳が分からない中、【ヴィーヴィル】の設計図を皇王に渡し、説明をする

 

 

「・・・なるほど、ありがとうございました」

 

「如何ですか陛下、これには価値があるのでは?」

 

「あの、オーナーこれは何を」

 

「アルストさん」

 

「は、はい」

 

「もしあなたが私の条件を飲むなら、ドライフ皇国はこの戦艦【ヴィーヴィル】を作るお手伝いをしましょう」

 

「!詳しくお願いします」

 

「今ドライフはアルター王国との戦争の準備をしているのはご存知ですか?」

 

「噂で聞いたことはありますが、本当なんですね」

 

「はい、そこで戦争の時に私の指示通りに戦艦を動かしてくれるのなら製造のための費用も何割か負担しますし私、【機械王(キング・オブ・メカニズム)】も製造を協力させて頂きます」

 

「!!」

 

はっきり言って今のアルストの全財産を使っても【ヴィーヴィル】を完成させることは出来ない、さらに整備士系統超級職【機械王】が製造に協力してくると言うのなら

 

「宜しくお願いします」

 

「決まりですね」

 

こうしてアルストはラインハルトと手を組んだ

 



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飛竜戦艦を作るためにレジェンダリアへ
第10話


「これでよし」

 

「アルストさん、何処かに行くんですか?」

 

アルストが外でガイストの整備をし終えるとマーシャルⅡのテストをしようと外に出てきたクランメンバーが訪ねる

 

「あ、丁度いいところに、俺レジェンダリアに行くので暫くは帰ってこれないと思います」

 

「レジェンダリア?分かりました、お土産宜しくお願いします」

 

「分かりました。行くぞヘスティア」

 

『了解』

 

アルストはガイストと融合したヘスティアにそういうとレジェンダリアに向けて出発した。

 

□■

 

なぜ突然アルストがレジェンダリアに行こうとしたのか、それはもちろん【ヴィーヴィル】を作る為である

 

『マスター』

 

「ん、如何した?」

 

『なぜ急にレジェンダリアに行くと言いだしたのですか?』

 

「ああ、言ってなかったな。レジェンダリアで作ってほしい物があってな」

 

それは昨日の事

 

「いらっしゃいませ。アルスト様、ご注文の品が届いております」

 

「ありがとう、早速見せてもらえる?」

 

「はい」

 

魔王骨董品店の店主はそういうとアイテムボックスから一つの水晶の様な物を取り出し、アルストに見せる

 

「これが」

 

「はい、魔法水晶です。ご要望通りクリムゾン・スフィア並みの威力を出す魔法弾と周りに雷を発生させる二つの魔法が付与されております」

 

魔法水晶とはジェムとは違い、MPを自分で注いで発動しなければならないがMPを流せば何回でも水晶に付与された魔法が発動できると言う物だ

 

「魔法が二つ付与されていると言うが一つの魔法だけを発動すると言う事は出来るのか?」

 

「はい、ですがそれにはまず魔法水晶を加工しなければなりません」

 

「加工?」

 

「はい、このアイテムを使っていた人は杖などに加工して使っていた様です」

 

「加工か」

 

「はい、これだけの品の加工となるとレジェンダリアや黄河帝国などの魔法技術が発達した国に行って加工してもらった方が良いと思います」

 

「分かった、行ってみるよ。それで値段は」

 

「値段は二つの魔法が付与されている魔法水晶を四十九個なので四十九億リルです」

 

「・・・高くない?」

 

「これでも十分安くなっているんですよ。それに、お客さんなら普通に払えるくらいですよ」

 

「・・・払います」

 

そう言ってアルストは四十九億リルを店主に払った。しかし設計図を描き続けてできたお金はまだ残っている、【設計王】様様である

 

「あとこれを、魔法水晶の説明が書かれています、加工するときに相手に渡してください」

 

「ありがとう。加工か、やっぱりここから近いレジェンダリアかな?」

 

アルストは魔法水晶とメモを受け取り店を出るとレジェンダリアに出発するための準備を始めた

 

 

「・・・という訳」

 

『成程、分かりました。目的はそれだけですか?』

 

「いや、もう一つあるが。これはあっちに行ってみなくては分からないからな。第一目標は〈マジンギア〉でも持てる杖を作ってもらう事だ」

 

 

「・・・ここも駄目か」

 

数日後、無事にレジェンダリアに着いたアルストとヘスティア(今は鳥型の機械に入りアルストの肩に座っている)は杖を作ってくれる人物を探していた

 

『また駄目でしたね』

 

「ああ、流石に杖四十九本は無茶かな」

 

しかも〈マジンギア〉に持たせる杖なので一般の杖の何倍もする大きさの物を四十八本となると引き受けてくれる人物を探すのは難しかった

 

『マスター、あそこにはまだ行っていないのでは?』

 

「そうだね、入ってみよう」

 

アルストが十中八九断られると思いながら店に入ると

 

「大丈夫ですよ」

 

『「本当ですか!?」』

 

「普通の杖の数倍の大きさでも」

 

「大丈夫です」

 

「・・・やっと、見つけた」

 

『良かったですね、マスター』

 

「ああ、ここに断られていたら黄河まで行かなきゃいけなかったかもんな!」

 

「あの~」

 

アルストがヘスティアと喜んでいると

 

「すみません、オーダーメイドの詳しい話を聞いても良いですか?」

 

「はい、お願いします」

 

「私、【高位杖職人】のエレナと申します」

 

「【設計王】アルスト・コジャーソです」

 

「あなたが。では、普通の数倍の大きさと言う事でしたが巨人族の方様に?」

 

「いえ、〈マジンギア〉用に作ってもらいたいんですけど。これを使って」

 

そう言ってアルストはエレナに一つの魔法水晶と店主から貰ったメモを渡す

 

「・・・成程、分かりました。しかし、マジンギア用ですか」

 

「はい、僕のエンブリオはMP関係の能力を持っていまして」

 

「分かりました。では杖の大きさや太さなどを決めるために杖を装備するマジンギアを見たいのですけど」

 

「分かりました、何処で出せば良いでしょうか?」

 

「店の裏庭に開いているスペースがあるので付いてきてください」

 

アルストはエレナと店の奥に入って行き、庭に出ると一つのガレージを取り出す」

 

「じゃあ出しますね」

 

アルストが操作をするとガレージが開き上半身だけの奇妙な〈マジンギア〉が出てきた

 

「これは・・・腕がありませんけど?」

 

エレナの言うとおりこの奇妙なマジンギア、【アンキュローサ】は下半身だけではなく肘から先が無く、肩から腕が生えている

 

「はい、このマジンギア、【アンキュローサ】は例えば戦艦などに取り付けて魔法攻撃だけをするためのマジンギアで手で杖を持つのではなく杖を腕にして二本、そして肩のもう二本の腕を使って一体で四本の杖が使えるようにしたいんですけど」

 

その言葉にエレナは一瞬、アルストが何を言っているのか分からなくなった。マジンギアに魔法攻撃をさせるという事だけでも異常だというのにさらにマジンギアを砲台として使うと言う

 

「・・・分かりました、ではそれぞれ持つ杖の大きさを決めるために測っていきますね」

 

エレナは測定しながら思った、これを取り付けた物はまともな形はしていないだろうと。

 



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第11話

アルストがレジェンダリアに着いて五日目、アルストはエレナに頼んだ杖が完成するまでレジェンダリアでヘスティアと自分が作った【マーシャルⅡ】のテストをしていた

 

「調子はどうだ、ヘスティア」

 

『絶好調です、今までの機体よりも素早く動けます』

 

「その機体、【ソードマン】は今まで俺が作った中では上位の機体だ。しかし俺達はレジェンダリアに来て日が浅い、油断はするなよ」

 

『了解』

 

ヘスティアはアルストを乗せたまま慎重に森の奥に入っていく

 

「・・・そろそろ戻るぞ、自然魔力が濃くなってきた」

 

アルストは此処に来る前にエレナに言われたことを思いだす。光の霞を見たらすぐに離れろ、アクシデントサークルが起きるかもしれないと

 

「攻撃魔法が発動して【ソードマン】を壊したくないからな」

 

『了解・・・!』

 

ヘスティアが来た道を戻ろうと機体を動かした瞬間、光の霞が別色を発し始め、アルストは意識を失った。

 

 

『マスター!マスター!』

 

「・・・何だ、ヘスティア」

 

『マスター、起きましたか。良かった』

 

「俺は確か・・・!」

 

【アルスト】はソードマンのカメラが映す映像を見て気付く、外は先ほどまで自分たちが居た場所ではないと。アルストがマップを開くと

 

「精霊の森、か」

 

精霊の森とはエレメンタルモンスターが多いレジェンダリアの中でも一番エレメンタルモンスターが多い場所で〈アムニール〉から離れていることもあって人がほとんどいない場所である

 

「レジェンダリアから離れなかっただけ良かったか。ヘスティア、機体の損傷は?」

 

『はい、損傷は確認できません』

 

「分かった、日が暮れないうちに〈アムニール〉に戻るぞ」

 

『はい』

 

ヘスティアが〈アムニール〉に向けて歩き出そうとすると

 

『!』

 

後ろから矢が飛んで来て【ソードマン】の装甲にあたり弾き飛ばされた

 

『誰だ!』

 

ヘスティアが武器を構え、矢が飛んできた方向に構えると木の影から一人の男が出てきた

 

「マスターか」

 

アルストは男の左手には〈マスター〉であると示す紋章があった。男は手に持っていた弓を地面に置くと

 

「ごめんなさい!」

 

『「・・・え?」』

 

 

 

最近この森にまたあいつらがやって来た

 

如何しよう

 

決まっている

 

安全のために

 

これからも生き延びるために

 

この力で

 

この能力で

 

倒す!!

 

 

 

 

「俺はロビン、さっきはゴメン!モンスターと思って攻撃しちゃって」

 

『ああ』

 

「・・・なに納得してんだよ、ヘスティア」

 

『ですがマスター、初めて見た方はモンスターと勘違いしても仕方ないかと』

 

「・・・」

 

アルストは自分が作ったソードマンをよく見てみる。全身に剣を装備したマジンギア。

 

「あ、俺も突然遭遇したら敵だと思うわ」

 

「でしょ?そもそも何でそんなに剣付けたの?」

 

「・・・趣味?」

 

「どんな趣味だよ」

 

「ちょっとね。それよりもその蛇」

 

「ああ、こいつは」

 

ロビンが自分の腕に巻き付いていた蛇を紹介しようとすると蛇は一人の少女に変わり

 

「ヒュドラと申しますお見知りおきを」

 

「俺はアルスト・コジャーソ。アルストでいいぜ」

 

『私はヘスティアと申します』

 

「宜しく、そういえば何でアルスト達はこんな所に?」

 

「ああ、アクシデントサークルに巻き込まれてな」

 

「成程、転移系の魔法が発動して。でも良かったじゃないか、転移先が近くで。火山の中に転移したって人もいたらしいからね」

 

「ああ、運が良かったのかもな」

 

アクシデントサークルに巻き込まれた時点で運が良いという事は無いが

 

「何でロビンはこんな所に?」

 

「俺はギルドの依頼でな、この森の近くにある村からの依頼で最近この森がおかしいってんで調査に来たんだ」

 

「なにかおかしい所は?」

 

「全然、後は森の一番奥を調査すれば終わりだよ。じゃあそろそろ最後の調査をするかな。じゃあな、また何処かで」

 

「ああ、また何処かで・・・ッ!」

 

二人が別れようとした瞬間、突然森の奥から炎が出てきて二人を襲った

 

「何だ!?」

 

「大丈夫かアルスト!」

 

「ああ!そっちは」

 

「こっちも大丈夫だ。それより」

 

二人の視線の先、そこにいたのは

 

「まじか」

 

「なあロビン、お前倒す自信あるか?」

 

「ねえよ、お前は?」

 

「前に一体倒したことがあるけど、どうだろう」

 

「・・・はあ、何でこんな森に〈UBM〉が居るんだよ」

 

二体の古代伝説級〈UBM〉

 

【三砲精霊 インレイト】【滅界精霊 エステンク】が居た

 



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第12話

「ヘスティア!」

 

『はい!』

 

二体の〈UBM〉が出てくると、ヘスティアは自分の体に付いている一本の剣をUBMに投げる。しかし剣はUBMの前に見える結界によって弾かれた

 

「!!」

 

「厄介だな」

 

「おい、あれどうなってんだ」

 

「何が、攻撃を弾いたところか?」

 

「違う、何であいつ等二匹とも結界の中にいるんだ」

 

ロビンの言うとおりインレイトとエステンクは二体とも結界の中にいてこちらを攻撃してくる

 

「協力、してるんだろうな」

 

「〈UBM〉が、でも〈UBM〉同士って」

 

「ああ、〈UBM〉同士も本来敵同士、だけど見て見ろ、攻撃してくるのは一体だけ」

 

「つまり、片方が攻撃特化、もう片方は防御特化でうまく協力関係が出来たと」

 

「そういう事だろうな」

 

二人が話している間も攻撃を担当しているインレイトは此方に攻撃を仕掛けてくる

 

「どうする!このままじゃやられるぞ」

 

「分かっている、ヘスティア!」

 

『はい!』

 

ヘスティアの動かす【ソードマン】はインレイトが攻撃した瞬間、【ソードマン】が出せる全速力で結界の前まで行き結界を攻撃する

 

『!堅い』

 

「ヘスティア!」

 

ヘスティアはまた炎が来ると思い自分の中にいるアルストを守る様に防御するが

 

『何!?』

 

「ガハッ・・・!?」

 

『マスター、ッ!』

 

ヘスティアがアルストに気を取られた瞬間、今度は雷撃が放たれた

 

「一旦下がれヘスティア」

 

『はい!』

 

「これは・・・毒」

 

アルストは自分のステータス画面を見ると【猛毒】と一つの状態異常が表示されていた

 

「おい大丈夫か!」

 

「ああ、毒と雷撃を食らってHPが二割切ったけど」

 

「大丈夫じゃねえだろ!?回復アイテム要るか?」

 

「いや持ってる」

 

アルストは回復薬を飲むとUBMを映しているカメラの映像、ではなく違う画面を見た

 

「ヘスティア」

 

『はい、申し訳ございません』

 

「?急に何二人で話してんだよ、それよりこの後どうする」

 

「撤退」

 

「・・・はい?」

 

「一回逃げるぞ」

 

「え!?ちょ待てよ!」

 

後ろを向いて勢いよく走り始める【ソードマン】の後に続くようにロビンもUBMを警戒しながら付いてくる

 

 

あいつら逃げていくよ

 

でも安心できない、大勢で来るかも

 

どうする?あいつら左手にマークがあったよ

 

ああ、あいつらは殺しても戻ってくる、でも死んだらしばらくは来ない、あいつ等を殺した後安心して違う場所に移動しよう

 

そうだね、じゃあ()()()手伝って貰わなきゃ

 

ああ

 

 

「おいアルスト、何で逃げるんだ」

 

「攻撃手段が無いからに決まってるだろ、あいつら早くは動けないみたいだな、追ってこない。それに見て見ろ」

 

「これは」

 

「さっき結界を攻撃した時に使った剣だ」

 

「・・・刃先が無い」

 

ロビンが見た剣は刃先の部分が無くなって不自然な形をしていた

 

「ああ、あの結界ただの防御するだけの結界じゃなかったみたいだな」

 

「物を溶かす効果まであるのかよ」

 

「いや、多分違う」

 

「なに?」

 

「この剣、溶けたと言うよりこの部分だけ無くなったみたいになっている。それにあの〈UBM〉の名前を思いだしてみろ」

 

「えーと、攻撃してたのが【三砲精霊 インレイト】だから防御は滅界精霊・・・まさか!」

 

「そう、多分あの結界の能力は攻撃の防御と結界に触った物を消滅させる能力」

 

「そんなの結界の中に入られたら攻撃の使用がねえじゃん」

 

「いや、攻撃の手ごたえはあった、だから休まずに複数の武器を持って戦えば」

 

「・・・つまり」

 

「ああ、俺なら勝てる可能性がある」

 

「でも結界に近づく前に攻撃されるんじゃあ・・・」

 

「そこは気付いた事がある。それよりヘスティア、被害は?」

 

『・・・はい、先ほどの雷撃により右腕が動かなくなりました』

 

「!!」

 

「なあ、ここらへんに機械を修理できるようなところは無いか?無かったら俺はもう何もできないんだけど」

 

「できないのかよ!・・・こっちだ付いて来い」

 

 

「ここは・・・」

 

「この前たまたま見つけたんだ」

 

アルストがロビンに案内された場所は遺跡だった

 

「どうだ、使えそうか?」

 

「うん、材料とかも俺が持ってるから。ロビンはモンスターが中に入らないように上で見張りを頼む!」

 

「ああ、急いでくれよ」

 

ロビンが上に行くとアルストは一枚の設計図とガレージ、そしてジョブクリスタルを取り出す

 

『マスター、この機体を直すのではないですか?』

 

「ああ、あいつに対して【ソードマン】だとちょっと心もとない、だからこの機体を完成させる」

 

『ですがマスター、時間が』

 

「大丈夫だ、あとは仕上げだけだ」

 

アルストはガレージからその機体を取り出し、ジョブを変更すると機体の仕上げにかかる

 

 

やっと見つけた

 

周りも暗くなった、気づかれないうちに攻撃しよう

 

うん、()も見逃してあげてるんだからちゃんとあいつの相手しててよね

 

 

「お待たせ」

 

ロビンが外の見張りをしているとアルストと一体の〈マジンギア〉が中から出てくる

 

「終わったか、如何する?周りはもう暗くなっちまったけど」

 

「探そう、もしかしたら逃げられるかも」

 

アルストがそう言った瞬間、アルスト目掛けて炎の玉が飛んできた

 

『マスター!』

 

しかし炎の球はヘスティアによってガードされた

 

「おいアルスト」

 

「ああ、まさかあっちから来るとはね」

 

炎の球が飛んできた方向にはインレイトとエステンク、そして・・・

 

「・・・おい、一体増えてるぞ」

 

逸話級〈UBM〉【木指揮樹 コーウッド】と複数のモンスターがいた

 

「まさかもう一体いるとは、〈UBM〉三体を同時に相手何てできないぞ」

 

「・・・なあ、あの二体だけなら一人で勝てるか?」

 

「勝てる」

 

「分かった、コーウッドと他のモンスターは任せろ、ただしなるべくここから離れて戦ってくれ」

 

「分かった」

 

それを言うとアルストはマジンギアの中に入り、短剣を数本インレイトとエステンクに向かって投げて自分に注意を引き付けるとロビンから離れて森の奥に走っていく。二体は直ぐに動きだしアルストを追って森の奥に入っていく

 

「・・・ちゃんとお前が残ったか、反対になったら如何しようってちょっと心配だったけど」

 

ロビンはそう言いながら弓に矢をつがえ、モンスター達もそれに合わせるように唸り声を上げながらすぐに動けるように構える

 

「さっさと始めようか」

 

その言葉と放たれた矢を合図に戦いが始まった

 

 

「ちゃんと追ってきているな」

 

『マスター、この後はどうしますか?』

 

「何処か開けた場所に出てくれ、木が多い場所では動きにくくて此方が不利だ」

 

ヘスティアはアルストの指示通りに後ろからの攻撃を避けつつ開けた場所に出る

 

『マスター、ここなら』

 

「ああ、ここで戦うぞ」

 

 

ある森に群れで暮らしているエレメンタル達がいた、エレメンタル達は相手の攻撃を防ぐ結界を作る能力を持っており複数体で結界を作ればその森の中でエレメンタル達を傷つけられる者はいなかった

 

しかしその森に一人の超級職のティアンが現れた。そのティアンはエレメンタル達を簡単に殺していった、その森でどのモンスターも傷つけられなかった結界を簡単に壊しエレメンタル達を殺し何処かに行ってしまった。しかし茂みに隠れており生き残ったエレメンタルがいた

 

そのエレメンタルは何が起こったのか分からなかった、いままで自分たちの結界を壊せるものなどいないと思っていたのに一人のティアンに簡単に壊され、仲間を殺された

 

そのエレメンタルは仲間を殺された怒りよりも先に恐怖を覚えた、自分の結界を壊せるものはあのティアン以外にもいるだろう、そもそも一人だけではこの森のモンスターの攻撃にも耐えられない

 

力がほしいと思った

 

何者にも破壊されず何者にも自分を傷つけられない結界を作り出せる能力を

 

その時、自分の前に何かがあるのに気付いた、エレメンタルはそれが何か分からなかった。確信は無かった、しかしエレメンタルは強く思った、これがあれば自分は誰にも殺されないと

 

エレメンタルはそれに触れてみる、するとそれは抵抗なくエレメンタルに吸収された、すると

 

【デザイン適合】

【存在干渉】

【エネルギー供与】

【設計変更】

【固有スキル《滅防結界》付与】

【スキル《結界強化》付与】

【スキル《MP自動回復》付与】

【死後特典化機能付与】

【魂魄維持】

【〈逸話級UBM〉認定】

【命名【滅界精霊 エステンク】】

 

そしてエレメンタルは高さ二メテル程の大きさの結晶の形をした【滅界精霊 エステンク】となった

 

何が起きたのかは分からなかった、しかし考える前にこの森で一番強い熊の姿をしたモンスターが自分を殺そうと飛び出してきた

 

自分一人ではこのモンスターの攻撃は防げない、しかし本能で自分の周りに結界を張る。簡単に壊されると思っていたがそうはならなかった、熊は自分の結界を壊す事は出来なかった、そして数回攻撃をすると熊は何かに怯え自分の腕を庇いながら結界から離れる。なぜ離れたのか分からなかったがエステンクはそれをチャンスと思いそのまま前に走り熊を木と自分の結界で挟む。なぜそうしたのか自分でも分からなかったが答えはすぐに分かった。木と結界に挟まれた熊の体がどんどん細くなっていった、押しつぶされて細くなっているのでは無い、結界に触れた所から少しずつ無くなっていった。熊はそこから急いで離れようと狂ったように暴れ出すが普通のモンスターが〈UBM〉の力に勝てる訳が無く、そのまま熊は体の半分以上を消され息絶えた

 

熊を殺した後エステンクは興奮した、自分一人だけでこの森で一番強い熊を倒したと言うのもあるが一番はこの力があれば自分は誰にも殺されない、安全に暮らせると喜び平和に生きるためにこちらを遠くから見ていた周りのモンスターを殺していった

 



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第13話

ある森に一体のエレメンタルがいた。そのエレメンタルは自分の魔法に自信を持っていた、自分が魔法を放てば大抵のモンスターは倒せた

 

ある時ティアンのパーティーと遭遇した、エレメンタルは今までのモンスターと同じように倒そうと攻撃するがパーティーにいた【盾巨人】に攻撃を防がれた。どんなに攻撃をしても防がれダメージを与えたと思ってもパーティーメンバーが【盾巨人】を回復し、エレメンタルのMPは無くなりかけていた

 

MPが無くなり倒される、そう思った時、突然モンスターが茂みから出てきてティアンを襲った。エレメンタルは直ぐに逃げ出した

 

エレメンタルはティアンたちからそう遠くない場所で倒れてしまった、ティアンたちがいた方角からモンスターの絶叫が聞こえ何も聞こえなくなった、あのモンスターが倒されたのだ

 

複数名の足音がこちらに向かってきていた。エレメンタルは少しでも遠くに逃げようと這いずりなが移動する、しかし足音は次第に大きくなっていく

 

ここで死ぬのかと思った時、目の前に何かが落ちていた。それが何かは分からなかったが何故かこれがあれば自分は生き延びられると思った

 

エレメンタルは迷うことなくそれを取り込む、すると

 

【デザイン適合】

【存在干渉】

【エネルギー供与】

【設計変更】

【固有スキル《三魔砲》付与】

【スキル《MP吸収》付与】

【スキル《魔法強化》付与】

【スキル《MP自動回復》付与】

【死後特典化機能付与】

【魂魄維持】

【〈逸話級UBM〉認定】

【命名【三砲精霊 インレイト】

 

エレメンタルは0.5メテル程の水晶が三つ繋がった形をした【三砲精霊 インレイト】になった

 

「な!?」

 

「UBMだ!」

 

インレイトが後ろを向くと先ほど自分を追いつめたティアンのパーティーがいた。インレイトは攻撃をしようと【盾巨人】に向けて炎で攻撃をする

 

「《ハイ・ヒート・レジスト・ウォール》!」

 

一人のティアンが【盾巨人】の前に火属性防御壁魔法を出し【盾巨人】を守るとインレイトはまた【盾巨人】攻撃をしようとする

 

「何度やっても無駄です!」

 

また炎だろうとハイ・ヒート・レジスト・ウォールを【盾巨人】の前に出すが

 

「ガッ・・・」

 

「え!?」

 

突然【盾巨人】が血を吐いてその場に膝をつく

 

「どうした!」

 

「こいつ、毒を・・・」

 

「毒だと!?」

 

炎では無く毒、予想が外れてパーティ―が混乱している隙にインレイトはハイ・ヒート・レジスト・ウォールを使ったティアンに雷で攻撃をする

 

「キャアア!」

 

「今度は雷属性の魔法・・・!」

 

彼らは慢心していた、ここ等辺で自分たちを傷つけられるモンスターはいないと

 

しかし〈UBM〉はただのモンスターではない、逸話級ならば自分達でもなんとか倒せるなどと思わず、防御魔法が効いたから倒せる、などと思わずに直ぐに逃げれば生き残れたのかもしれない

 

しかし、彼らは次に何を出すか分からないインレイトに翻弄され殺された

 

インレイトは生き延びれた事に安心し直ぐにその森を離れた

 

インレイトが違う場所に行っては強くなるためにモンスターやティアンを殺して騒ぎになれば近くの森などに身を隠して数年眠るなどの事をしていると一体の〈UBM〉にあった

 

インレイトは知っていた普通のモンスターやティアンを殺すよりも〈UBM〉を殺した方が強く成れると

 

相手もそのつもりなのか結界を自分の周りに出す

 

インレイトはその結界に攻撃するが結界は壊れなかった

 

インレイトは驚いた、前ならばともかく今自分は伝説級上位の力を持っている、その自分の攻撃を防ぐ結界を持つUBM。インレイトは欲しいと思った

 

「なあ、手を組まないか?」

 

「・・・何?」

 

「ああ、俺はお前の力が欲しい、代わりにお前に俺の力を貸してやる」

 

普通ならばUBMがティアン達の様に協力するなど無い

 

「一つ聞かせて」

 

「何だ」

 

「何で結界の能力を欲しがるの」

 

しかしこの二体のUBMは目的が同じだった

 

「決まっている、生き延びるためだ」

 

「僕も!安全に生きるために君の力を使わせてもらうよ」

 

こうして二体のUBMは手を組んだ

 

 

「さあて、行くぞヘスティア作戦は言った通りだ」

 

『・・・イエス』

 

アルストが考えた作戦、その内容を聞いたヘスティアは元気なく返事をする

 

「ヘスティア、これ以外にあいつらを倒す作戦が思いつかなかった、嫌かもしれないが頼む」

 

『・・・あーもう!分かりましたよやりますよ」

 

「よし!お前とこの【死者の剣(デッドマンズソード)】の力を見せてやれ!」

 

「イエス!マイマスター」

 

インレイトはもう攻撃をしており炎がアルスト達に向かって飛んで来ていた

 

『もうその攻撃には当たらない!』

 

しかし【ソードマン】以上の力を持つ【デッドマンズソード】を完全に操作しているヘスティアには当たらなかった

 

ヘスティアはインレイトの攻撃を避け続ける、それが十数分続いたとき

 

「今だ!」

 

『はい!スモークディスチャージャー』

 

今まで敵の攻撃を避け続けていたヘスティアが【デットマンズソード】に付いていた装備でインレイト達から自分を見えなくすると煙の中から突然出てきてインレイト達に向かって走っていく。インレイトは迎撃しようとするが先ほどまでの攻撃と比べて攻撃の回数が減っていた

 

『マスターが言っていました』

 

ヘスティアが結界にたどり着き手に持っている剣で結界を攻撃しながら言う

 

『インレイトが攻撃すると周りの霞が無くなると』

 

『あなた、周りの自然魔力を吸収して攻撃していますね』

 

それはインレイトの秘密、古代伝説級のインレイトでもMPには限りがあり普通ならばあんなに魔法は使えない、それを可能にしているのがインレイトの持つスキル《MP吸収》である

 

『周りには自然魔力がほとんどない、もう先ほどの様には魔法を使えないでしょ』

 

ヘスティアの言葉にインレイトは焦りなどは無かった、ヘスティアでは結界を破れるとは思えないし自然魔力が無くても自分のMPがまだありそれを使えばヘスティアを殺せると分かっているからだ

 

余裕のインレイトに対してエステンクは不安を覚えた、ヘスティアの攻撃が前よりも強くなっている気がするのだ

 

それはヘスティアの新たなスキル《炎により炉は昇華する》の効果でヘスティアの現MP生産量の12分の1をマジンギアのSTR・AGI・ENDに上乗せする事ができるのだ。今のヘスティアは第六形態で最大生成量は6万なので【デットマンズソード】のSTR・AGI・ENDはそれぞれ5千ステータスがプラスされている

 

「ヘスティア!やれ!」

 

『はい!』

 

いつの間にかデットマンズソードから降りて【でいらん】を着ているアルストが一つのアイテムボックスをもってインレイト達の近くに居た

 

目覚めよ我が剣(ウェイクアップデッドマンズ)!!』

 

ヘスティアがそう言うと【デットマンズソード】の動きが先ほどより数倍早くなった。両腕、そして肩にあるサブアーム二本、計四本の腕が剣を持ち結界に連続突きをする、剣が使えなくなれば直ぐに捨て自分の体についている新しい剣を使い結界を攻撃していく

 

勿論インレイト達も見ているだけではなく直ぐにヘスティアを離そうとヘスティアに炎と雷を放つ

 

『ッ!』

 

しかしヘスティアは構わずに結界を攻撃していく。すると徐々に結界に罅が入っていく

 

インレイト達も罅に気付きMPなど気にせずに攻撃、結界を修復していく、しかし修復よりもヘスティアの攻撃の方が早くとうとう結界は砕けた

 

しかし同時にヘスティアも倒れる、とうとう〈マジンギア〉が動けなくなるまでのダメージを負ったのだ

 

二体は結界を壊された恐怖もありヘスティアを完全に殺そうとするが

 

「よくやった、ヘスティア」

 

動きを止め後ろを振りかえる、そこにはヘスティアに気を取られ忘れていたアルストがいた

 

雑魚が一人で何ができる!

 

待って!あれは!

 

インレイトはアルストに攻撃をするがアルストは気にせずにインレイト達へと走っていく、そんな中でエステンクは気が付いた、アルストが持っている者が何なのか

 

「古代伝説級〈UBM〉、これで倒しきれなかったらやばいな」

 

そう言いながらアルストは手に持っているアイテムボックスを短剣で壊し中にある《クリムゾン・スフィア》のジェムをばら撒き

 

「じゃあな」

 

アルスト達三人は爆炎に飲まれた

 

古代伝説級といえど耐久力を犠牲に攻撃・防御結界に特化していたインレイトとエステンクは爆炎を近距離で受け二体は消滅した

 

【〈UBM〉【三砲精霊 インレイト】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アルスト・コジャーソ】がMVPに選出されました】

【【アルスト・コジャーソ】にMVP特典【三砲玉 インレイト】を贈与します】

 

【〈UBM〉【滅界精霊 エステンク】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アルスト・コジャーソ】がMVPに選出されました】

【【アルスト・コジャーソ】にMVP特典【滅結界玉 エステンク】を贈与します】

 

「何とか倒せたか」

 

アナウンスのウィンドウを見るとアルストはそのまま倒れた

 

【致死ダメージ】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

「はあ、何とか勝てた」

 

デスペナルティになりログアウトしたアルストはUBM二体を倒し特典武具を手に入れ機嫌が良かった

 

「あ、ロビン如何しただろう。まあ大丈夫だろうけど」

 

アルストはもう一体のUBMの相手をした人物がどうなったかと思うが直ぐに考えるのを止めた

 

「あいつのエンブリオはあのUBMと相性良さそうだし」

 

アルストはそう言いながらログインしたら何をしようかと考えながら24時間経つのを待つ

 

アルストがインレイト達を倒す少し前

 

 

「よっと、あぶねえ!」

 

ロビンはモンスター達の攻撃をかわし木の上に逃げるとつぶやく

 

「俺前衛職じゃねえんだけど」

 

ロビンが付いているジョブは【大狩人】、間違っても一人でモンスターに囲まれて戦えるようなジョブではない

 

「しかし、あいつは厄介だな」

 

ロビンの視線の先には【木指揮樹 コーウッド】がいる

 

「!!」

 

突然ロビンが立っていた木の幹から槍のように鋭い枝が何本か生えロビンを刺し殺そうとする。先ほどから木の上に逃げるとこうやって攻撃してくるのだ

 

「木を操る〈UBM〉厄介すぎる」

 

ここは森の中、武器となる木は沢山生えている

 

「マスター」

 

アルストが森の中を走っていくと前の茂みから一匹の蛇が出てきた

 

「ヒュドラ、どうだった」

 

ロビンは自分の〈エンブリオ〉であるヒュドラを拾い上げると肩に乗せモンスター達に攻撃されないように動き回りながら聞く

 

「はい、周りにはモンスター以外誰も居りませんでした」

 

「分かった、じゃあ直ぐに始めるぞ」

 

「はい」

 

 

コーウッドは別にインレイト達の仲間と言う訳ではない、森の中でたまたま会い、殺されそうになり殺さない代わりに手下になれと言われてなっただけ

 

インレイト達は今まで住んでいた場所でも最低一体はコーウッドのような手下を作ってきた、囮として使うためである。そして囮の必要が無く、安全に移動できると分かればその手下を自分たちのリソースとして殺してきた。コーウッドもアルスト達が来なければ殺されていたかもしれない、しかしそんな事を知らないコーウッドは殺されない為、いつかあの二体を倒すために目の前の人間を殺そうと木を操ろうとすると人間の矢がコーウッドの右手をかすった、矢がかすっただけだと気にせず攻撃しようとすると周りのモンスター達がばたばたと倒れ始めた

 

「??」

 

辺りをよく見ると紫色の霧がコーウッド達を囲んでいた、倒れたモンスター達は苦しそうにもがき次第に動かなくなっていった

 

毒、コーウッドが気付くがもう遅くモンスター達は煙に囲まれてしまっていた

 

他の毒と気付いた何対かのモンスターは無理矢理突破しようと霧に突進するが霧の中に入り見えなくなるとそのモンスターの断末魔が聞こえてきた

 

「この霧の奥はさらに強い霧の毒が漂ってるから逃げようとしない方が良いよ」

 

コーウッド達が声のした方向を向くと自分たちを囲っている霧が目の前に広がっており、あっというまにコーウッド達は霧に飲み込まれた

 

他のモンスター達が倒れていく中コーウッドはUBMとしての力のおかげで致命傷にはならなかったが先ほどの矢にも毒があったのか動けなくなってしまった

 

「残ったのはお前だけか」

 

霧の奥から一人の人間と肩に乗った蛇が出てきた

 

「死にはしなかったけどもう動けないみたいだな、ヒュドラ」

 

人間がそう言うと蛇は人間の肩から降り動けないコーウッドの上に移動するとコーウッドの体に噛みついた、するとコーウッドは噛まれた所から徐々に腐る様にしかし痛みを感じずに死んだ

 

様々な毒を持ち〈UBM〉すらもやられる毒を使う、『相手が生物ならば毒で弱らせて勝てる』それが【猛毒王女 ヒュドラ】のジャイアントキリングだ

 

【〈UBM〉【木指揮樹 コーウッド】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ロビン】がMVPに選出されました】

【【ロビン】にMVP特典【指木手套 コーウッド】を贈与します】

 

「ふう・・・」

 

「おめでとうございます、マスター」

 

「ああ、お前がいなかったら駄目だったよ、ありがとう」

 

コーウッドを倒すと周りの毒霧は晴れそこにはロビンたちとドロップアイテムだけが残っていた

 

「全部倒したな、アルスト達はどうなったんだろう」

 

ロビンがそういった直後に森の奥、アルスト達が向かった先から何かが爆発したような激しい音が聞こえた

 

「今のは」

 

「マスター」

 

「行ってみるぞ」

 

「はい」

 

そしてロビンが向かった先にあったのは一体の壊れた〈マジンギア〉だけだった

 



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第14話

□〈アムニール〉【設計王】アルスト・コジャーソ

 

デスペナルティを明けレジェンダリアの首都〈アムニール〉のセーブポイントで〈アムニール〉に戻ったアルストは早速ヘスティアを鳥型の機械に入れお礼をする

 

「ヘスティア、本当にありがとう」

 

『・・・どうしたんですか?』

 

急にお礼を言われ困惑するヘスティア

 

「俺の無茶な作戦に付き合ってくれてな」

 

『当たり前です、私はあなたのエンブリオなのですから。それよりこれからどうするんですか?』

 

「ん~、死者の剣も回収したいしロビンがどうなったのか気になるから精霊の森までもどりたいかな」

 

『マジンギア、まだありますか?』

 

「【ソードマン】も【デッドマンズソード】も無くなったから今は【ティラントー】しか持ってないな」

 

『移動には十分です、行きましょう』

 

「あ、待ってヘスティア」

 

『どうしましたか?』

 

「精霊の森って・・・何処?」

 

『・・・・』

 

 

 

「やっと、付いた」

 

『精霊の森、意外と遠かったですね』

 

「前はアクシデントサークルでたまたま飛ばされただけだったからな」

 

精霊の森への道が分からなかったアルスト達はまず完成したと言う杖を受け取りに行きエレナに精霊の森の場所を聞きどうにかエステンク達を倒した場所に到着した

 

「しかし、原型留めてないな」

 

アルスト達の目の前にあったのは古代伝説級〈UBM〉の攻撃を受け続けさらに《クリムゾン・スフィア》の大爆発を受けもはや何だったのかも分からなくなっている【死者の剣(デッドマンズソード)】だった

 

『どうしますか?』

 

「とりあえず持って帰るけど、もう作り直した方が良いだろうな」

 

アルストは【ケージ】に【デッドマンズソード】を直しながら残念そうにいう

 

『彼らはどうなったでしょうか』

 

「ロビン達か、あいつらなら多分・・・」

 

「よお、やっと戻ってきたか」

 

アルストの後ろの木の上、そこから知り合いの声が聞こえた

 

「やっぱり大丈夫だったか」

 

ロビンは木の上から飛び降りるのではなく木に階段を作り降りてくる

 

「まあな、それより見ろよ!」

 

「ああ、無事に〈UBM〉を倒せたみたいだな」

 

「何とかな、お前も二体同時に倒したんだろ?」

 

「何とかな、それより何でまだここに?」

 

「〈UBM〉を倒した後爆発の音が聞こえてここに来たらお前が居ないでこれだけが残ってたからな、当分ここに居ることになったから、お前が戻ってくるまでにモンスター達にこれ以上壊されないように定期的に見に来てたんだ」

 

どうやらロビンは【デッドマンズソード】がモンスター等にこれ以上壊されないように見張ってくれていたらしい

 

「ありがとな」

 

「ただのついでだ、気にするな。それより、ここから離れるのか?」

 

「・・・ああ、元々レジェンダリアには杖の注文に来ただけだからな、杖も出来上がったしドライフに戻るさ」

 

「そうか、いつでも来いよ今度来たときはレジェンダリアを案内してやるよ」

 

「おう、じゃあまたな!」

 

アルストはロビンに別れを告げると【ティラントー】に乗りドライフの方角へ進みだした

 



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第15話

□皇都郊外・〈叡智の三角〉本拠地

 

動く〈マジンギア〉の音・何かが爆発したような音・メンバーの叫び声

 

「相変わらずだな」

 

『そうですね』

 

「あ!アルストさん帰ってきたんですね、どうでしたか?」

 

「はい、目的も達成しておまけに〈UBM〉を二体倒して特典武具を手に入れました」

 

「へえ~特典武具を二つ・・・はあ!?」

 

「特典武具が何だって?」

 

「あ、アルストさんお帰りなさい」

 

そのメンバーの驚きの声にアルストに気付いていなかったメンバーがアルスト達の方を見る

 

「いえ、誰か私の相手をしてくれませんか?新しい特典武具を試してみたいんです」

 

アルストは【ティラントー】を出し右腕と左腕の部分に付いている二つの特典武具を見せる

 

 

結果として思った以上の性能がこの特典武具にはあった。インレイトは〈UBM〉の時と同じように炎・雷・猛毒を出すことができた、エステンクの方も似たような感じだったが一つ、俺が知らなかった能力が一つあった

 

「外からの攻撃無効化、か」

 

クランのメンバーに離れた相手を直接攻撃できる〈エンブリオ〉の〈マスター〉がいてその人が結界を張っているティラントーを結界の外から攻撃したのだが変化は無かった

 

「しかし、ピンポイントに欲しい特典武具が出たんじゃないですか?アルストさん」

 

アルストの隣に立っていたドララガンがそういうとアルストは笑いながら答える

 

「ええ、目的は杖の調達だけだったのですがまさかこの二つも同時に手に入るとは、これで【ヴィーヴィル】の完成にまた一歩近づきました。そろそろあれを作るのを視野に入れた方が良いかもしれません」

 

「あれとは?」

 

「魔力変換機関です」

 

「アルストさん、そこから作るんですか?」

 

「もちろんです、【ヴィーヴィル】を作る為には最高の魔力変換機関を作らなくては、既存の変換機関では【ヴィーヴィル】の性能を完全に発揮できないかもしれません」

 

アルストはアイテムボックスから一つの〈マジンギア〉を出す

 

「これは?」

 

「前に一回だけ作ってみた変換機関を積んだ〈マジンギア〉です、テストをしていなかったので見ておこうと思いまして、ヘスティア」

 

『はい!』

 

〈マジンギア〉と融合したヘスティアは直ぐに生成したMPを〈マジンギア〉に送り込んで動かし、それをアルストが外から確認すると

 

「駄目ですね」

 

「駄目ですか」

 

「はい、あれでは変換効率が悪すぎます、【ヴィーヴィル】は空を飛ぶ鉄の塊、いくらヘスティアがMPを生成する〈エンブリオ〉でもMP消費は抑えたいのです。やはり新しい魔力変換機関を作るしかありませんね」

 

「面白そうな話をしているねぇ」

 

「オーナー」

 

「実は私も新しい魔力変換機関を作ろうと思ってねぇ、君も協力してくれないか」

 

「勿論です」

 

「君ならそう言うと思ったよ」

 

こうしてアルストは遠くない未来にフランクリンと協力し新しい魔力変換機関を作ることに成功した

 



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第一次騎鋼戦争 ~~誕生する鋼鉄の竜~~
第16話


今回は3話連続更新!まだの方は19話からどうぞ!

そしてとうとう王国との戦争へ


□皇都郊外・〈叡智の三角〉本拠地

 

〈叡智の三角〉は皇国最先端技術が集う場であり自由に望むものを創造するクラン

 

このクランには様々な物を作る人たちが居りその中でも多いのがロボット、〈マジンギア〉関連の人たちだ

 

〈マジンギア〉を組み立てるにはスペースが要る、なので〈マジンギア〉を作る為の作業場が〈叡智の三角〉には多数ある

 

その中の一番大きい作業場でアルスト・コジャーソはいままで以上に真剣に作業をしていた

 

「アルストさんここ終わりました!」

 

「ありがとうございます、ドララガンさん達の手伝いをお願いします!」

 

「分かりました」

 

アルストだけではない、周りには多数の〈叡智の三角〉のメンバーが皆真剣に、何処か楽しそうに一つの物を作ろうとしていた

 

『マスター、私は何をすれば』

 

「ヘスティア、お前は出来上がったパーツの中に入って何かミスが無いか確認してくれ」

 

『はい!』

 

そう言うとヘスティアはもう完成している竜の顔を模したパーツ、【ヴィーヴィル】の頭のパーツに入り何かミスが無いか確認していく

 

数日前

 

「近いうちに王国へ宣戦布告します」

 

「・・・ついに、ですか」

 

「【ヴィーヴィル】の製造は?」

 

「明日からでも開始できます」

 

「分かりました、何か必要な物があれば言ってください、私もお手伝いします」

 

「ありがとうございます」

 

「礼など不要です、私はあなたの夢を利用しようとしているのですから」

 

 

 

アルストはラインハルトに【ヴィーヴィ】の製造を開始しろと言われ、〈叡智の三角〉の最初のころから居た信頼できる人たちに【ヴィーヴィル】の製造の手伝いを頼んだ

 

皆がカンストした生産職の〈マスター〉であり、日を追うごとに【ヴィーヴィル】が形になってきた、しかし

 

「・・・予定よりも作業が遅い」

 

作業に参加している〈マスター〉は十数名、いくら全員が熟練した生産職の〈マスター〉でもいつも居られるわけでは無い、リアルの用事で数日来れない人もいるのだ。ヴィーヴィルが大きいので〈マジンギア〉に乗っての作業が必要というのも作業が遅れる原因だろう

 

「どこに〈DIN〉がいるか分からないから大々的に人を集められないからな」

 

戦艦を作ると言う〈叡智の三角〉所属ならだれでも参加したがりそうな事に信頼できる人たちだけにしか声を掛けなかったのは〈DIN〉にこのことが知られ戦争前に王国に【ヴィーヴィル】の情報を渡さない為である

 

『知られても問題ないと思いますけどね』

 

「ラインハルト様の指示だ、従うしかない。それに大々的に集めても変な奴が来ても困るしな」

 

アルストは【ヴィーヴィル】を作る為にラインハルトに様々な援助をしてもらっている、その条件としてアルストは戦争時にラインハルトの命令道りに【ヴィーヴィル】を動かすなど様々な条件を【契約書】で書かされた

 

「しかし、このままだと戦争に間に合うかギリギリだな」

 

とうとう皇国は王国に対して宣戦布告をした、皇国が侵攻を開始するまでこちらの時間で十日後、今【ヴィーヴィル】は約八割が完成したと言う所である

 

「間に合いそうですか?」

 

「!」

 

アルストが後ろを向くとそこにはラインハルトと【獣王】が居た

 

「はい、ギリギリですけど」

 

「分かりました、これを持っていてください」

 

「これは」

 

ラインハルトがアルストに渡したのは一つのジュエルであった

「中には【ブロードキャストアイ】が入っています、当日私はここには来られませんのでこれで指示を出します」

 

「分かりました」

 

 

 

 

十日後

 

ジュエルから出していた【ブロードキャストアイ】が空中に何かを映し出す

 

『完成しましたか?』

 

空中に映った人物、ラインハルトはアルストに対してそう聞く

 

「ええ、ええ!ついに完成しましたよ!」

 

アルストの周りでは〈マスター〉達が眠そうに、しかし興奮したように自分たちの目の前にある〈マジンギア〉を見上げる

 

『では直ぐに旧ルニングス領に向かってください、もうすぐで戦争が始まります』

 

「分かりました、ヘスティア!」

 

アルストは先ほどからヴィーヴィルと融合しMPを生成していた自分の〈エンブリオ〉に声を掛ける

 

『飛ぶ分には問題ありません、しかし攻撃分もとなると』

 

「行く途中までに間に合うのなら良い」

 

『分かりました』

 

アルストがヴィーヴィルの中に入るのを確認すると、【ヴィーヴィル】の頭を吊るしていた鎖が外れる、しかし【ヴィーヴィル】は自分の力で頭を持ち上げ体が少しだが浮き始めた

 

「屋根を開けろ!!」

 

『皆さんありがとうございました!お礼は後で!!』

 

ぶーらんたんが大声で言うと屋根が少しずつ開いて【ヴィーヴィル】が出られるようになるとアルストはそう言い残すともう戦争が始まっているであろう旧ルニングス領へ向かった

 



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第17話

「・・・褒賞でここまで変わるか」

 

アルストが【ヴィーヴィル】に乗り戦場を空高くから見てみると王国と皇国の戦争に参加した〈マスター〉の数は明らかに皇国の方が多かった

 

『しかし、皇国の方が押されている所がありますね』

 

「当たり前だ、皇国側は褒賞につられてカンストすらしていない〈マスター〉も大勢参加している、王国側は人数こそ少ないもののほとんどがカンストした〈マスター〉、しかもほとんどが〈AETL連合〉士気も高いだろうな」

 

ここには【魔将軍】も居るはずだが少し離れた所で王国の騎士団と戦っていた、こちらまで手が届かなかったのだろう

 

『マスター、皇国側の〈マスター〉が押され始めています』

 

「そうか、じゃあそろそろ行くぞ、ヘスティア」

 

『イエス、マイマスター』

 

アルストは一呼吸置くとヘスティアに降下するように指示を出す

 

 

「チッ!あいつらしぶといな!」

 

皇国の一人の〈マスター〉が舌打ちをする、自分達より数が少ない王国の〈マスター〉達に苦戦しているからだ

 

皇国側は褒賞目当てに一人で突っ走ってやられたりするが王国側は三人の王女とリリア―ナ四人のファンクラブで皆が『彼女たちを守る』という考えなので足の引っ張り合いなどは起きずチームワークを駆使して戦っておりこのままならば王国側の〈マスター〉達は勝てはせずとも負けもしなかっただろう

 

 

 

あれが来るまでは

 

 

「・・・何だ?」

 

最初にそれを聞いたのは皇国の〈マスター〉だった

 

「おい、今の聞いたか」

 

「聞いたって何を」

 

「いや、なんかドラゴンの声みたいな」

 

「こんな戦場にモンスターが近づく訳ないだろ「おい上見て見ろ!」なんだ・・・ッな!?」

 

皇国、王国の〈マスター〉達はほぼ同時に気が付いた、上空で自分たちを見下ろしている鉄の竜を

 

 

「皆こっちを見てるな」

 

『当たり前です』

 

「じゃあ早速やるか、ヘスティア」

 

『イエス』

 

 

〈マスター〉達は全員空に浮かぶ鉄の竜がモンスターではないと気付く、竜の体に生えている〈マジンギア〉に見覚えがあったからだ

 

「あれ〈マーシャルⅡ〉か?」

 

「てことは味方?でも誰だ?」

 

「〈叡智の三角〉のやつらか?・・・ッまさか!」

 

それは皇国では一回は聞いたことがある話、〈叡智の三角〉にいる一人の〈マスター〉が空を飛ぶ戦艦を作ると言っているという噂

 

「本当に作ったのか・・・」

 

突然の【ヴィーヴィル】の参戦により動きが止まった王国の〈マスター〉達だが直ぐに自分の〈エンブリオ〉で【ヴィーヴィル】に攻撃を開始する、しかしその攻撃は【ヴィーヴィル】に届く前にアンキュローサにより迎撃され届いても【ヴィーヴィル】の結界で【ヴィーヴィル】には攻撃が届かない

 

【ヴィーヴィル】は頭を王国の〈マスター〉達に向ける口を開けると口の奥が光り、炎の噴流が下の〈マスター〉達を飲み込んだ、10秒ほどで【ヴィーヴィル】は炎を吐くのを止め下を見ると王国の〈マスター〉は殆どがデスペナルティになっていた、残りは〈エンブリオ〉の能力やスキル等で生き残ったようだ

 

【ヴィーヴィル】は生き残った〈マスター〉達を【アンキュローサ】の攻撃でデスペナルティにしていくと〈マスター〉の人数が最初の四分の一程になったところで残りは先ほどから巻き込まれないように少し離れてこちらを見ていた皇国の〈マスター〉達に任せ自分は他の皇国側が負けそうな場所に行き王国の〈マスター〉達を倒していった

 

【獣王】が【大賢者】を、【魔将軍】が【天騎士】を、そしてオーナーが国王を倒して戦争は一日で終わった、しかしそれだけでは終わらなかった

 

 

アルストが艦橋から下を見ていると横に居た【ブロードキャストアイ】が突然何かを映し始めた

 

『聞こえますか』

 

そこにはラインハルトが映っており何かあったのか周りが騒がしそうだった

 

「どうしましたか?」

 

『カルディナがドライフに向けて進攻を開始しました、あなたは一人でも多くの兵を、【魔将軍】は必ず【ヴィーヴィル】に乗せ戻ってきてください』

 

「分かりました、直ぐに戻ります」

 

そう言いアルストが【ヴィーヴィル】を降下させ始めるともう話を聞いているのか下に居た〈マスター〉とティアンが慌てる事無く【ヴィーヴィル】の周りから離れていく

 

「ふん!さっさとしろ」

 

そういうと【魔将軍】ローガン・ゴットハルトは着陸した【ヴィーヴィル】に乗り込んでいく、他の生き残った〈マスター〉達も出来る限り乗り込むと【ヴィーヴィ】は再び空に飛びドライフ皇国を目指し飛んだ

 



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第18話

「みなさーん、着きましたよ」

 

ヴィーヴィルがドライフに着くとカルディナの軍勢がドライフと戦闘をしていた

 

「それじゃあ皆さん頑張ってきてくださいねー」

 

アルストがそう言いと【魔将軍】を始めヴィーヴィルに乗り込んでいた〈マスター〉達も戦闘場所から少し離れギリギリまで降下したヴィーヴィルから降りて戦闘のある場所へ向かう

 

『マスター、これからは?』

 

「アルターの時と一緒だ、味方を巻き込まずにカルディナの軍勢を削っていく」

 

ヘスティアはそれを聞くと一定まで高度を上げカルディナの軍隊がいる所に飛んでいく

 

「よしヘスティア、味方に当たらないように注意しろ」

 

ヘスティアはアルストの指示どうり狙いを定めヴィーヴィルを操作していく。カルディナの軍がヴィーヴィルに気付き攻撃するが全てヴィーヴィルを包む結界によって攻撃が届かない、その間もヴィーヴィルは口を開き炎を吐く準備をしてカルディナの軍に浴びせようとするが、それをする前に上から歌声のような音が聞こえてきた

 

「攻撃中止!結界にMPを注げるだけ注げ!」

 

そのアルストの声にヘスティアは躊躇いなく実行する、ヴィーヴィルの口にあった光が消え、ヴィーヴィルは口を閉じた、するとヴィーヴィルの頭の部分に無数の砲弾が当たる

 

『えー、堅くない?』

 

砲弾は結界に防がれヴィーヴィルは無傷である

 

「・・・おやおや、久しぶりですねぇーAR・I・CA」

 

「・・・誰?」

 

「・・・アルスト・コジャーソですよ」

 

「え!?キャラ違うくない?」

 

「前にクランメンバーに『ヴィーヴィル作って名前にコジャーソって入れてるならオラシオ・コジャーソみたいに喋ってみたらどうですか?』って言われたんですが」

 

『あ~』

 

前に一回コジャーソのロールプレイをしてみたのだが長くは続かなかった

 

「ヴィーヴィルも作ったし折角だからもう一回やってみようと思ったのですが」

 

『まあ、いいんじゃない?アルストが楽しいなら』

 

「そうですよね、すいません、こんな時に」

 

『いいよこれぐらい、元クランメンバーの仲じゃん!』

 

そういってAR・I・CAは自分が今乗っている〈マジンギア〉の【オペラ】の右手でサムズアップするそれに対してヴィーヴィルも自然に頭を下げる

 

「いえいえ、本当に、ありがとうございまし、た!」

 

そういうとヴィーヴィルは勢いよく頭を上げると【オペラ】に炎を浴びせようとする

 

『よっと、危ないなー』

 

しかし【オペラ】は慌てる事無く炎を避ける

 

「チッ!やっぱり駄目ですか」

 

そういうと【オペラ】はヴィーヴィルの周りを飛びながら砲撃を始める

 

『さて、じゃあそろそろ本気でやろっかな』

 

 

「面倒な・・・そう言えば、何で飛んでるんですか?特典武具?」

 

『そう、前にカルディナで倒したの』

 

そういいAR・I・CAはヴィーヴィルの周りを超音速で本来ありえない軌道で飛ぶ

 

「人型で空を飛ぶ、嫌な相手ですねえ」

 

『うん?・・・ああ成程』

 

アルストの発言にAR・I・CAはあるアニメを思いだした

 

『前に見たことあるけど確かになんか似てるね!じゃああのアニメみたいにアルストのその戦艦、私の【オペラ】で落としてあげるよ!』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

アルストはAR・I・CAの言葉に先ほどまでのように軽く返すのではなく怒りを含めて言った

 

「・・・私の前でそれを言うなんていい度胸ですねぇ」

 

『あの、マスター?』

 

「ヘスティア、竜血炉を起動」

 

『ッ!!・・・イエス』

 

ヘスティアはアルストの指示通りにヴィーヴィルの中にある一つの変換機関にMPを注ぐ、すると変換機関は目をさまし大声を上げた

 

竜血炉は【ブルー・オペラ】正確には【ブルー・オペラ】の魔力変換機関とは兄弟の様な物だった。

二つはアルストとフランクリンが共同で開発した魔力変換機関で二つともに欠点があった【ブルー・オペラ】の変換機関は〈マジンギア〉用の変換機関としてはルイを見ない程に秀でた変換効率でサイズもバイクに搭載するエンジン程度という最高の変換機関だが唯一、機関音が大きいと言う欠点があった。それと同じように竜血炉にも欠点があった、まず【ブルー・オペラ】の機関同様に機関音が大きかった、【ブルー・オペラ】の機関の様に常時では無く急な動きをしたりすると竜が吠えるような音がするのだ。

そして【ブルー・オペラ】の機関とは反対に大きかった、車2台以上の大きさが竜血炉にはあった。

さらに食いしん坊でもあった、ある一定以上のMPでなければ動かず最低でも毎秒千はMPと取る。

しかし竜血炉の変換率は【ブルー・オペラ】の機関にも負けていない。

しかしサイズが車2台分と言うだけで失敗作、誰も使えない変換機関にフランクリンは落胆するが逆にアルストは喜んだ

 

「これこそが私が求めていた変換機関ですよ!」

 

アルストは直ぐに竜血炉をヴィーヴィルに組み込んだ、車の何十倍も大きいヴィーヴィルには竜血炉の大きさは関係なかったのだ

 

 

『竜血炉起動、最大化戦闘形態、発動』

 

その声と共にヴィーヴィルの動きは変わった、動きは今まで以上に、結界は堅く、攻撃はより厳しくなった

 

『よっ、はっ』

 

しかし超音速で飛ぶAR・I・CAには攻撃が当たらない

 

「チッ、相変わらず厄介な〈エンブリオ〉だ。以前よりも動きが早い、〈超級〉にでもなりましたか?」

 

『あ、分かる?最近〈超級〉になったんだ!』

 

アルストはヴィーヴィルに乗っているのでAR・I・CAには見えないが露骨に嫌な顔をする。前にAR・I・CAの〈エンブリオ〉はAR・I・ACの危険を把握する〈エンブリオ〉だと聞いたことがある、それが〈超級エンブリオ〉になっているなど攻撃を当てられるのとは思えなかった

 

(必殺スキルも気になる、まず俺一人では無理だろうな。それに・・・)

 

アルストは【ヴィーヴィル】の周りを飛ぶ【ブルー・オペラ】を見ながら冷静に考える

 

「ヘスティア、あいつは無視して下のカルディナの軍を攻撃しろ」

 

アルストがそういうとヘスティアの操作を受けヴィーヴィルは直ぐに体の【アンキュローサ】と頭を下に向けて攻撃の構えをする

 

『どこ見てるのかな?こっちだよ』

 

するとAR・I・CAは先ほどよりも激しく攻撃をするそれを見てアルストは確信した

 

(俺にカルディナ軍を攻撃させない気だな、先ほどの挑発も自分に俺の注意を引き付けるため)

 

ヴィーヴィルは広域殲滅型。ドライフには〝物理最強″である【獣王】を始め大勢の敵に対しても簡単に対処できる者たちが数人いる、さらにそこに上空からの広域殲滅型など対処できないのだろう

 

「ヘスティア、カルディナ軍への攻撃を中止、あいつの相手だ、時間を稼ぐだけでいい相手もそのつもりみたいだしな」

 

アルストはAR・I・CAに聞かれないように拡声装置を切りヘスティアに言う

 

『そうなのですか?』

 

「ああ、カルディナはドライフがアルター王国を併合するのを阻止するためにドライフに進行したんだろう、本気なら〈超級〉がもう少しいるはずだ」

 

今の所下に〈超級〉らしき〈マスター〉は見当たらない、もしかしたらカルディナ側の〈超級〉はAR・I・CAだけという可能性もある

 

「それに、一人で俺の相手をしているのもその為だろう」

 

そもそも砲弾で【ヴィーヴィル】の結界を壊せない時点でAR・I・CAには分が悪い戦いなのだ。いくら〈エンブリオ〉で危険を把握して避けても乗っているのが〈マジンギア〉である以上乗っているだけでMPを消費して動いている、それは【ヴィーヴィル】も同じだが【ヴィーヴィル】は【機構炉心 ヘスティア】の生成するMPで動いているため【ヘスティア】がある限りMP切れを起こすことはない。なのでこのまま戦い続けたらAR・I・CAの負けは確定なのだ

 

「他の攻撃手段や他の特典武具を持っている可能性は高いが、使わないと言う事はこちらを倒すつもりが無いみたいだしな」

 

『この結界堅過ぎ!ぜったい特典武具でしょ』

 

「そうですよ。そろそろ撤退したらどうですか、もう目的は達成できたでしょう?」

 

『あれ、目的ばれちゃった?』

 

今、この戦場には〈超級〉である【獣王】と【魔将軍】を始め攻め落とし領土の駐留軍以外は戻ってきている、目的は達成しているだろう

 

『う~ん、まあ目的も達成したし頃合いかな』

 

そういうとAR・I・CAは空に向かって信号弾を打ち上げた、それを見たカルディナの軍は次々に撤退していく

 

「貴方は逃げないんですか?」

 

『う~ん、そうしたいんだけどアルストを此処で足止めしないといけないからさ』

 

「追撃なんてしませんよ」

 

下を見ると【獣王】が追撃をしていない、逆に撤退する軍を追おうとする【魔将軍】を止めている

 

「【獣王】が追撃しないと言う事はそれはラインハルト様の指示、私がそれを無視したら【魔将軍】みたいに止められるでしょう。まあ、止めるというよりはヴィーヴィルを破壊されそうですが」

 

『そう、じゃあさっさと逃げようかな。フーちゃんによろしくね!』

 

そういってAR・I・CAは超音速でカルディナの方角へ飛んで行った

 

「フーちゃん?・・・・ああオーナーですか。・・・オーナー、AR・I・CAが居なくなったとき寂しそうにしてたんですよねぇ」

 

『あんなフランクリン様は見たことがありませんでした』

 

「ああ、オーナーらしくないミスを連発したりな。あの時はクラン内でどうやったらオーナーが元気になるか皆で話合いがあったりしたな」

 

新型兵器を見せたり、自分たちで作ったアニメを見せたり、オーナーとAR・I・CAの本を見せたりしたが結果は二次創作部がモンスターに食われただけだった

 

「さて、とりあえず帰りますかね」

 

『はい』

 

そして王国との戦争はカルディナの介入により中途半端な形で終わったのだった

 



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戦争後 爆弾を抱える街、ラチス
第19話


アルストさ~ん、また依頼が来てますよ」

 

「何のですか?〈マーシャルⅡ〉ですか?兵器ですか?」

 

「数人の〈マスター〉とティアンが【ヴィーヴィル】を作ってくれと」

 

「無理です」

 

戦争から三日後

 

カルディナ軍を追い返し皇国に戻ったアルスト、そこで待っていたのは数多くの歓声と数多くの依頼だった

 

「【ヴィーヴィル】は私専用の戦艦、ヘスティアがあって初めてまともに動く兵器、先々期文明の動力炉があるならまだしも他のティアンや〈マスター〉には使いこなせませんよ」

 

【地神】ならいけるかもしれませんが。そう言うとアルストは【ヴィーヴィル】の整備に戻ろうとして

 

「アルストさん、実はそれだけじゃないんですよ」

 

「何ですか、まだ依頼が?」

 

クランメンバーの話に足を止める

 

「【ヴィーヴィル】に乗せてほしいという依頼が主に貴族から何件か」

 

「・・・あー」

 

それは想定していた、戦争で活躍し皇王であり【機械王】であるラインハルトが製造を協力した戦艦だ、貴族たちだけでなく整備士、技師系統のジョブに就いている者には見てみたいと思う者は大勢いる。もちろん〈叡智の三角〉のクランメンバーからも見せてくれとお願いされている。中には土下座しながら見せてくれと言ったメンバーも何人かいる

 

「中に乗せたら色々危ないんですよね」

 

【ヴィーヴィル】は普段動かす時は常に特典武具【滅結界玉 エステンク】で結界を張っている。結界の外からの盗賊・強盗系統の攻撃を防ぐためだ、しかし中からなら簡単にスキルを使うことが出来る、アルストを倒し【ヴィーヴィル】を丸ごと盗もうとする者も居るかもしれない

 

「それは考えてみます、陛下とも相談しなければなりませんし」

 

そもそも【ヴィーヴィル】は半分皇国の所有する兵器と言う立ち位置である。国が何割かの資金提供と【機械王】の力を貸す代わりにラインハルトが指示を出したら言う事を聞かなければならない、もし守らなかったら【獣王】に【ヴィーヴィル】を破壊されることだろう

 

「し、失礼しますアルスト様はいらっしゃいますか?」

 

「どうしましたか?」

 

部屋に〈叡智の三角〉で働いているティアンの女性がアルストを訪ね部屋に入ってきた、そしてある人物の来訪を伝える

 

「皇王様の使者がお見えになっております」

 

 

「あなたに頼みがあります」

 

使者はラインハルトからの呼び出しを告げるとアルストを連れて城に戻った。アルストは直ぐにラインハルトの所に向かった、そこにはラインハルトと当然のように【獣王】がいた

 

「まず、戦争では見事でした、【ヴィーヴィル】のおかげで戦争の被害が最小限に止まりました」

 

「いえ、すべては陛下が【ヴィーヴィル】の製造に協力してくれたからこそ。それで、頼みとは?」

 

「暫くの間、【ヴィーヴィル】でドライフ国内を飛んでほしいのです」

 

「・・・他国への牽制ですね」

 

「そうです、戦争で活躍した戦艦が国内を飛んでいればカルディナはもちろん他の国々もうかつに手出しはできないでしょう」

 

わざわざアルター王国に圧勝した国に攻め込む者などいないだろうが念のためだろう

 

「分かりました。それと陛下に相談したい事が」

 

アルストは依頼の事をラインハルトに話した

 

「難しいですね」

 

「そうですか」

 

ラインハルトの返事にアルストは予想通りという風に言葉を返す

 

「しばらくは国内を飛んで欲しいですし飛んでいる間に乗せてもモンスターや他国の〈超級〉に攻撃されない保証はありません。そもそも艦内に人を入れるだけでも危険です、しっかりと身元の確認をし【契約書】を書いてもらわなければ乗せるのは危険です。ですのでその依頼は私が許可するまで受けないで下さい」

 

「はい」

 

 

数日後、アルストはラインハルトの依頼により【ヴィーヴィル】でドライフ内を飛んでいた

 

『・・・何にもありませんね』

 

「そうだな」

 

『たまにはもっと違う場所を飛んでみたいですね』

 

「たとえば?」

 

『カルディナなんてどうですか?景色がガラッと変わって良いかもしれませんよ』

 

「・・・無理じゃないかな」

 

少し前にカルディナの軍と戦ったばかりだ、【ヴィーヴィル】でカルディナ領内を飛んだりしたら大騒ぎになる。もしかしたら〈超級〉も出てくるかもしれない

 

『そうですよねー。・・・マスター、さっきから何を見ているのですか?』

 

「中を見ないでいいから外を警戒しろよ」

 

『してますよ』

 

アルストが近くのカメラに言うと直ぐに返事が返ってくる

 

『現に下も・・・マスター』

 

「ん?どうした」

 

ヘスティアはアルストの前に下の映像をアルストに見せる、そこには数人のティアンと一つの馬車が映っていた

 

「・・・【商人】、ではないな」

 

馬車には数人の子供が拘束された状態で乗っていた

 

『確認しました、やつらは近頃この付近で活動している盗賊団の様です、あのように子供をさらい何処かに売っているので懸賞金がかけられています。どうしますか?』

 

「どうしますかって、もしここで見逃して陛下に『賞金かけられている盗賊団見つけましたけど見逃しました』って言えるか?」

 

『言えません』

 

「ならやることは一つだな」

 

【ヴィーヴィル】は下の盗賊団に向かって下降を始めた

 

結果は戦闘も起こらずに終わった。【ヴィーヴィル】が戦争の時に活躍した話を知っていたらしく盗賊団はあっさり投降した

 

 

 

「どうするかなこいつら」

 

アルストは【ヴィーヴィル】から降りておとなしく拘束されている盗賊と子供たちを見る。子供の拘束はすでに外してあるが皆アルストに近寄らずに一塊になってこちらを見ている

 

「なあ君たち」

 

アルストが声を掛けると子供達はビクッとするが一人の男の子が前に出る

 

「な、何でしょうか」

 

「君たちってこの近くに住んでるの?」

 

「はい、近くのラチスという街です」

 

『この辺りで最大の街ですね』

 

いつもの鳥形ロボットに乗り換えたヘスティアがアルストの肩に乗り説明する

 

『あそこは〈厳冬山脈〉から近いので地竜から身を守る為に近くの村から人々が集まりラチスと言う城郭都市を作ったという話です』

 

「じゃあとりあえずこいつらをラチスへ届けるか。でも【ヴィーヴィル】だと色々めんどくさいし・・・あれ使うか」

 

そういってアルストは一つの【ケージ】を出す

 

 

「【ツェンドリンブル】は問題なく動くな」

 

アルストは新たな機体【ツェンドリンブル】に乗り子供達と盗賊を届けにラチスへと向かっていた。子供たちは一緒に作った荷馬車に乗せ盗賊団は縛ったまま【ツェンドリンブル】が宙ぶらりん状態のまま手で持って運んでいる

 

『マスター、見えてきました』

 

「あれか」

 

アルストの目の前には街を守る高い壁とその上から【ツェンドリンブル】に向けられている砲台・・・・・ん?

 

「そこの〈マジンギア〉止まれぇぇぇ!!」

 

声のした方向を向いてみるとラチスへと入る為の門から一体の〈マーシャルⅡ〉が出てきた

 

「その手に持っている者達、最近ラチスで誘拐事件を起こしていた盗賊たちだな」

 

「ああ、たまたまこいつらが子供達を何処かに運ぶのを見かけてな。こいつらと子供達を運んできた」

 

アルストがそういうと後ろの荷馬車から一人の男の子が〈マーシャルⅡ〉に向かって走っていく

 

「とうちゃん!」

 

「ッ!クルト!!」

 

クルトの父親は自分の子供の姿を確認すると〈マーシャルⅡ〉から飛び降りクルトを抱きしめる

 

「大丈夫だったか?けがは!?」

 

「あの」

 

「!失礼しました、私はこの子の父のエドと申します、私の息子を救っていただきありがとうございました!!」

 

「いえ、お気になさらず。それよりこいつらをどうにかしたいのですが」

 

アルストはいまだ【ツェンドリンブル】によって吊るされている盗賊団を差し出す

 

「盗賊団を捕まえてくださり感謝します。それでは街の中へどうぞ、こいつらの報奨金をお渡しします」

 

そしてアルストはラチスに入るとさらわれていた子供達を家に返し全員を家に送り届けるとエドとクルスの後についていき冒険者ギルドで盗賊団の報奨金を貰った

 

 

 

周りは霧に包まれていた

 

「あれ?思ったより入らないな」

 

その中で男はそう言うと周りに落ちている物を物色し始める

 

「よっ」

 

男がアイテムボックスを壊すと数個のアイテムが地面に落ち、地面の液体が跳ねる

 

「チッ、あんまり持ってないな」

 

男はリルだけ拾うと残りをその場所に捨てる

 

「さて、さっさとここを離れるか」

 

男がその場所から離れる、すると周りの霧がその男を中心に移動を始め霧は男と一緒にその場から無くなった

 

そして男がいなくなり数分後、そこに明かりを持った一人の〈マスター〉が現れた

 

「・・・やはりこの街にいたか、【■神(ザ・■■■■)】」

 

そういうとその〈マスター〉は【■神】に殺されたティアンの死体をアイテムボックスに入れ近くの警備隊の詰所まで持って行った

 



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第20話

祝 デンドロアニメ化!


褒賞金を貰った次の日アルストはまだラチスの街にいた

 

『マスター、如何したんですか?この街にまだ用事が?』

 

「いや、ただずっと空の上と言うのも暇だからな、たまにはこうやって街で羽を伸ばしたいんだよ」

 

『それは良いですけど、伸ばし過ぎると【獣王】様にその羽叩き折られますよ?』

 

「ははは、・・・明日から真面目にするよ」

 

「兄ちゃん!」

 

「ん?」

 

アルストが声の下方向を見ると一人の少年がアルストに向かって走ってきていた

 

「クルスか、どうした?」

 

「あっちの広場にかぼちゃの〈マスター〉が来てるの、一緒に行こ!」

 

「良いけど」

 

「だって!一緒なら良いよね!」

 

「待ちなさい!すいませんこの子が」

 

後から来たクルスの母親によると

クルスと一緒に買い物をしていた

買い物をしていると今日広場でにある〈マスター〉がきていることをクルスが知る

クルスは行きたいと言うが母親はこれから用事があり一緒に行けない

昨日の今日でさすがに一人は心配と言うとクルスがアルストを見つけた

 

「そこで私が一緒で大丈夫だから行きたいと」

 

「うん!」

 

「すみません、ほらクルス駄目でしょ、〈マスター〉さんにも用事があるんだから」

 

「大丈夫ですよ、今日はこの街でのんびりする予定でしたので」

 

「ほら!お母さん良いって」

 

「すみません。クルス、〈マスター〉様の迷惑になるような事はしては駄目よ」

 

「分かってるって。行こ!早くしないといなくなっちゃう」

 

クルスはアルストの腕を引っ張りながら広場へと向かった

 

「結構人がいるな」

 

広場には大勢のティアンの子供達と何かをしている二人の〈マスター〉と彼らの〈エンブリオ〉と思われる者達が数人いた

 

「二人いるけどあの人たちが南瓜の〈マスター〉か?」

 

「ううん、あの人がかぼちゃの〈マスター〉だよ、あのおじいちゃんは知らない」

 

クルスは先ほどよりも強くアルストの腕を引っ張り二人の〈マスター〉へと近づいていく

 

「音楽か、それならそんなに引っ張らなくても聞こえて・・・ッ!」

 

二人が一定の距離まで近づくと、アルストの目の前に一羽の鳥が現れた

 

「わあ!」

 

いや、鳥だけではない、周りを見れば沢山の動物が音楽に合わせるように踊っている

 

「なるほど、幻術か」

 

アルストは自分の手をすり抜ける鳥を見てこの動物たちが【幻術師】の幻術という事が分かった

 

音楽が終わるとすごい拍手が起こりアンコールの嵐が起こった

 

「では次で今日は最後にしよう」

 

老人の〈マスター〉がそういうと皆不満を言わず静かになる。今日最後の演奏を楽しむためだろう

 

「・・・すごいな」

 

音楽にあまり興味が無いアルストだが、この演奏が簡単に出来る物ではないと分かった。

 

(もしかしたら、リアルでも音楽家なのかもしれないな)

 

演奏が終わると先ほど以上の拍手が起こり皆演奏の感想を言いながら広場から離れていく

 

「すごかったね!」

 

「ああ「すいません」ん?」

 

帰ろうかと歩いていると後ろから声を掛けられた、後ろを向くと先ほどまで老人の横で幻術を使っていた〈マスター〉がいた

 

「あ!かぼちゃの〈マスター〉」

 

クルスが大声で言うと周りにいた子供達も気づき集まってくる

 

「話をする空気ではなくなってしまいましたね。ジャック」

 

「お呼びで?」

 

(なるほど、これでかぼちゃの〈マスター〉か)

 

彼が呼ぶと直ぐに彼の〈エンブリオ〉が現れる

 

「この子達と遊んでて」

 

ジャックは頷くと子供達と離れた所で遊び始めた

 

「私に何の用で?」

 

「すみません、少しお話をしておきたい事がありまして。聞いていただけませんか?」

 

「私はあの子の母親からあの子を預かっているのであまり離れたくないのですが」

 

「それなら大丈夫です、ジャックが付いていますしここから離れません」

 

そう言うと彼は先ほどまで演奏をしていた場所に移動する、そこにはまだ老人もいた

 

「驚いた、まさかここで〝皇竜″のアルスト・コジャーソに会えるとはな」

 

老人はアルストを見ると驚いたように声をあげる

 

「ん?まってください、その〝皇竜”と言うのは」

 

「知らんのか?御主の通り名だ」

 

通り名。【獣王】の〝物理最強”【魔将軍】の〝矛盾数式”の様に戦争で活躍したアルストの通り名が決まったらしい

 

「でも、どういう意味だ?」

 

「たしか、皇王の竜だからでしたっけ?」

 

「・・・」

 

アルストと言うよりは【ヴィーヴィル】の二つ名だった。

 

「ま、まあその話は置いておいて。聞いていただきたい話があるのです」

 

「ああそう言えば、聞いてほしい事って?」

 

「まずは申し遅れて申し訳ありません、私はライトと申します。〈エンブリオ〉はあそこで子供達と遊んでいる【守護増火 ジャック・オー・ランタン】です」

 

「私は【奏楽王】ベルドルベル。〈エンブリオ〉はこやつらで名前はそれぞれストリングス、ホーン、クラヴィール、パーカッションだ」

 

ベルドルベルはケンタウロス、ケットシ―、ハーピー、コボルドを順に紹介する

 

「改めて私は【設計王】アルスト・コジャーソです。〈エンブリオ〉は私の肩にとまっている【機構炉心 ヘスティア】です」

 

アルストはそういって肩の鳥形のロボットからヘスティアを取り出して二人に見せる

 

「なるほど、動力炉型の〈エンブリオ〉なんですね、戦艦を動かしている謎が分かりました。それでは話をさせていただきます、超級職であるお二人に依頼を出したいのです」

 

「依頼?」

 

アルストとベルドルベルは顔を見合わせる。超級職であるという言葉から並みの〈マスター〉には依頼できない内容なのだろう

 

「実はこの街にある〈マスター〉が入り込んでいます、お二人にはその〈マスター〉を倒すのを手伝ってほしいのです」

 

「質問をいいか?」

 

「どうぞ」

 

「ますその〈マスター〉の名前は?そしてなぜ私たちなのだ?超級職とはいえ私たちは非戦闘系。普通に戦闘系の〈マスター〉に頼んだ方が早かったのではないか?」

 

「名はレフト、私の実の弟です。弟はレジェンダリアとカルディナで指名手配を受けています」

 

その言葉に二人は驚く。指名手配を受けていると言う事はただの〈マスター〉ではない

 

「なにをして指名手配を受けたのですか?」

 

「・・・ティアンの殺害です」

 

ライトとレフトは双子だった

 

親でさえ簡単に見分けがつかないほどにそっくりで性格も似ていた

 

二人はゲーム好きで〈InfiniteDendroguram〉が発売されると人気で数ヶ月買うのが遅れたが二人とも同じ時期に始められた

 

キャラクタークリエイトが終わりライトはレジェンダリアを選んだ、するとレフトも何も話し合わずに似たキャラクターを作り同じ国を選んだ。しかしただ一つ、違う所があった、ライトは右目、レフトは左目を赤のオッドアイにしたのだ

 

その後二人は一緒にレジェンダリアで共に成長していった

 

しかし、二人が別々に行動を仕出すきっかけが起こった

 

モンスターがティアンを襲っている所を目撃したのだ

 

二人はモンスターを倒しティアンを救うが間に合わなかった者達もいた

 

ライトがもう少し早く着いていればと後悔する近くでレフトはティアンが死んでも何も感じなかった

 

この時、長年一緒に生活し好みや嫌いな物が一緒だった兄弟だが一つの違う物が見つかった

 

ライトは世界派でレフトは遊戯派だったのだ

 

 

「あいつがティアンを殺害した時私はあいつに聞きました、なんでそんな事をしたんだと、そしたら『ティアンの方が同じモンスターより経験値が良いしレアなアイテムを持っているときがあるから』とあいつは言いました」

 

「私はあいつを倒すことにしました。あいつはティアン殺害がばれレジェンダリアで指名手配を受け倒されたら監獄に送られるので私は知り合いの戦闘職の〈マスター〉に頼んであいつを倒すことにしました、しかし倒せなかった。あいつの〈エンブリオ〉と超級職の前に私たちは倒されました」

 

「超級職か、面倒ですね」

 

「何系統の超級職なんだ?」

 

「・・・あいつの超級職は短剣スキル特化型超級職【牙神(ザ・ファング)】です」

 

「「!!」」

 

「あいつは先代【牙神】を倒しその座を手に入れたようです」

 




【牙神】

先代【牙神】は【牙神】の座を狙っていたレフトに見つかりやられ、【牙神】の座を奪われた。もちろん【牙神】の居場所を教えたのは〈DIN〉

〈蜃気楼〉の【牙神】が【舞姫】にやられることが確定しているので使わせてもらうことにしました


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第21話

「楽しかったね!」

 

「ああ」

 

アルストはライトから話を聞いた後、レフトの討伐を手伝うと伝えると周りが暗くなってきていたので先にクルスを家に返し後で二人に合流すると言いクルスを家に送っていた

 

「いいかクルス、家に帰ったら絶対に一人で家を出たら駄目だぞ」

 

「うん、でも何で?」

 

「・・・外には悪い奴がいるかもしれないからな」

 

「大丈夫!悪い奴はお父さんが倒しちゃうから」

 

「そうだな。ほら着いたぞ」

 

クルスの家に着くとクルスの父のエドが家から出てきた

 

「クルス、丁度探しに行こうと思ってたんだ。どうだった?」

 

「うん!楽しかった」

 

「アルストさんもありがとうございました」

 

「いえ、それよりも話しておきたい事が」

 

「何ですか?」

 

「実は・・・」

 

アルストはライトから聞いた話をエドに話した

 

「その話なら聞いております、すでに皇都に指名手配の連絡をしております」

 

「そうですか。では私は用事がありますので」

 

「はい、お気を付けて」

 

「エドさんも」

 

アルストは家から離れると二人が待っている飲食店へと入り直ぐに二人を見つけた

 

「お待たせしました」

 

「いえ、急に依頼を頼んだのは私なんですから。ベルドルベルさんも依頼を受けてくれてありがとうございます」

 

「この街に知り合いも多く出来たからな、【牙神】に殺させるわけにはいかない。それでどうする?レフトが何処に隠れているのか分かるのか?」

 

「いえ、この街にいることは確かなんですが」

 

「地道に探すしかないということですか」

 

「そもそも何でこの街にレフトがいると分かったんだ」

 

「それは〈DIN〉から情報を買ってここまできました、〈DIN〉によるとレフトはある物を手に入れるためにここまで来たそうです」

 

「それは?」

 

「あれです」

 

ライトは街の中央の広場にある大きな塔に指をさして言う

 

「あれ何か貴重な物なんですか?」

 

「はい、あれがあるからラチスは今もモンスターから身を守れているのです。あの塔の中には先々期文明の動力炉が入っています」

 

これにはアルストとベルドルベルも驚いた、先々期文明の品は遺跡からたまに発見されるがMPを自動で生成する動力炉が見つかるのは珍しい

 

「まだラチスという街が無かった頃、このあたりの村の人達は生きていくために協力してこのラチスを作りました。しかし近くには〈厳冬山脈〉、ただ壁で街を囲った所で壁を砕く地竜が現れたら終わりです」

 

「そこで戦闘職に就いていた者達が近くにあった遺跡に望みを託しました、そして遺跡の奥で動力炉を見つけ壁を作り結界を張り魔力式の大砲を取り付け地竜から身を守ったそうです」

 

「なるほど、たしかに動力炉は〈叡智の三角〉でも喉から手が出るほど欲しい物、カルディナにでも売れば大金が入って来るでしょうね」

 

「しかし街から動力炉が無くなればこの街は防衛手段を失いモンスターに襲われたら終わりです」

 

「〈マーシャルⅡ〉だけでは問題がありますからね」

 

「もちろんあの塔には厳重な警備がありますが・・・」

 

「【牙神】をどうにか出来ないだろうな」

 

「とりあえずあの塔の近くに行ってみるか」

 

 

「警備の〈マーシャルⅡ〉が五機しかいないな」

 

「この街に〈マーシャルⅡ〉は六機でもう一機は緊急時の予備機ですからあれで全部ですね。この塔の重要性が分かります」

 

三人は警備に見つからぬよう周りの建物の影に身を潜めながら『テレパシーカフス』で話す

 

「今日来ると思いますか?」

 

「はい、レフトがこの街に到着したのはおそらく昨日、直ぐにでも動力炉を奪ってこの街から離れるでしょう」

 

「・・・おい、来たみたいだぞ」

 

三人が視線を向けると〈マーシャルⅡ〉が霧に包まれ、その中で一人の男が立っていた

 

『何だこの霧は!』

 

『お前の仕業か!』

 

〈マーシャルⅡ〉達が一斉に男に持っていた銃を向け引き金を引こうとするが

 

「無駄ですよ」

 

男がそう言うと〈マーシャルⅡ〉は全機が一斉に動きを止める

 

「全員を一発で【強制睡眠】とかさすが超級職、手に入って運が良い」

 

「・・・信じられんな」

 

ベルドルベルがそう反応したのも無理はない、恐らく〈マーシャルⅡ〉が動きを止めたのは短剣の武器スキルである《スリーピング・ファング》で操縦者が【強制睡眠】にされたからであろう。しかしそれだけなら驚かない

 

「いったいどうやって攻撃を当てたんでしょうねえ?」

 

アルストの言うとおりレフトと操縦者には〈マーシャルⅡ〉という壁がある、操縦者には短剣の武器スキルが当たるはずがないのだ

 

「前と同じです、彼奴は私達に武器すら見せていなかったのに仲間が次々と状態異常にかかり全滅しました、それが彼奴の」

 

「〈エンブリオ〉ですか」

 

「おそらく」

 

「なあ、隠れてないで出てこいよ」

 

三人が話していると突然、レフトが三人の方を向き話しかける

 

「!」

 

「如何するのですか?気付かれている様ですけど」

 

「出て行くしかあるまい。出て行かなければ何をするか分からんぞ」

 

三人が出ていくとレフトはライトを見ると大きく笑い声を上げる

 

「ははははは!兄さんじゃないですか、こんな所で如何したんですか?」

 

「お前を止めに来たんだ」

 

「僕を止めに?ははは、兄さん忘れたんですか?前に同じことを言って僕一人に全滅されたことを」

 

「今回は前とは違う!」

 

「あん?・・・ッち!超級職ですか」

 

レフトは《看破》を使ったのか三人を見ると舌打ちをする

 

「しかし、あなたが居るとは驚きましたよ、〝皇竜〟さん?」

 

「・・・それほんとに広まってるんですね」

 

「兄さん、超級職を二人連れてきたのは驚きましたが二人とも非戦闘系、【奏楽王】は分かりませんが【設計王】はこの街中であの竜を出すわけにもいかない。一体どうやって戦うつもりですか?まあ、もう戦えないでしょうけど」

 

「それは如何かな?」

 

「・・・幻術ですか」

 

レフトが短剣をライトに投げると短剣はライトに当たることなくライトの体をすり抜け地面に落ちる

 

「お前がどうやって状態異常を付与しているのか知らないがこちらの居場所が分からなければ攻撃できないだろう」

 

「それでは私を止められないのでは?」

 

「その心配はいらない」

 

アルストがそう言うとレフトの背後から一体の〈マーシャルⅡ〉【デッドマンズソード】がレフトに攻撃する

 

「先程のティアン達を見ていなかったのですか?〈マーシャルⅡ〉なら状態異常を受けないと思ったのなら大間違いです」

 

レフトは【デッドマンズソード】の中にいるであろうアルストを【強制睡眠】にしようとするが【デッドマンズソード】は動きを止める事無くレフトを攻撃する。他にも【拘束】等動きを封じる状態異常を付与するスキルを発動するが【デッドマンズソード】は動きが変わることなくレフトを攻撃する、それはありえないことだった。

 

【牙神】のパッシブスキル《オールヒット・ファング》は完全な耐性を持たない限り相手に完全に状態異常を付与できる・・・・相手が生物でさえあればの話だが

 

「これは・・・人間が動かしていませんね」

 

『正解です』

 

【デッドマンズソード】と融合したヘスティアがレフトに話す

 

『私は機械と融合した〈エンブリオ〉【麻痺】や【強制睡眠】の状態異常にはかかりません』

 

【デッドマンズソード】の攻撃をかわしながらレフトは周りを見る

 

「状態異常が効かない敵に何処から攻撃してくるか分からない超級職二人。なるほど厄介ですね、ここは一度出直しましょう」

 

レフトは後ろを向くとアルスト達に聞こえるように大きな声で話す、しかし

 

「なんてね」

 

突然、誰も居ないはずの方角からデッドマンズソードに向かって【クリムゾン・スフィア】が飛んできた

 

『!?』

 

ヘスティアが避け【クリムゾン・スフィア】が飛んできた方向を見るとそこには霧に隠れてよく見えないが数人の人影があった

 

「なんだ、あいつらは」

 

「彼らは今回の仕事仲間ですよ」

 

「仕事仲間?」

 

「ええ、詳しくは言えませんが動力炉を手に入れろという依頼でしてね、彼らは僕と一緒に依頼を受けたティアンや〈マスター〉ですよ、まあ後数人いますが」

 

「数人?・・・まて、まさか!」

 

「ええ、兄さんは僕ばっかり警戒しすぎましたね」

 

レフトが笑いながら言っていると動力炉がある塔の中から数人の男たちが出てくる、その中の一人が一つの【アイテムボックス】をレフトに見せ

 

「こちらは完了した、そいつらはどうする?」

 

「僕が始末しておきますよ、あなたは先に依頼主の元へ」

 

「分かった、あいつ等は万が一のために残していくがいいな?」

 

「ええ、要らぬ心配でしょうけど」

 

それを聞くと男は数人の仲間と霧の中へと姿を消した

 

「まずい、あいつらに動力炉を持っていかれたらこの街は」

 

「・・・私が行こう」

 

「ベルドルベルさん」

 

「大丈夫なんですか?いくら超級職とはいえあいては恐らく全員戦闘系ですよ?」

 

「あのくらいなら問題ない」

 

「そうですか、では、ヘスティア!」

 

アルストが呼ぶとヘスティアはアルストの意図を察しベルドルベルの前まで行きデッドマンズソードの操縦席を開きベルドルベルを操縦席に座らせる

 

「AGIではあいつ等には勝てないでしょう、あいつ等の所までヘスティアが送ります」

 

「助かる」

 

デッドマンズソードはベルドルベルを乗せるとレフトたちを無視し逃げた男たちを追い始める

 

「追わせるわけが無いでしょう」

 

レフトは仲間に攻撃するように指示を出すが、皆ヘスティア達を狙わず真上に向かって攻撃を始める」

 

「周りに被害を出すわけにもいかないからな」

 

「ッ!たかが上級職ごときが」

 

レフトは目の前に現れたライトに短剣で切り付けるが切った感触が無くそれが幻影だと気付く

 

「前とは全然違いますね、こそこそと煩わしい」

 

レフトは一旦落ち着き残った仲間に指示を出す

 

「幻術師系統は光と音を騙すだけ、幻影には熱はありません熱感知のアイテムの装備」

 

それを聞いて事前に準備していたのかそれぞれが装備しライトが居る方向をしっかりと見ている

 

「アルストさん、聞こえてますか」

 

「はい、聞こえてますよ」

 

アルスト達が言っているのはそれぞれの声、ではなく街の外から聞こえる声である

 

「モンスターの声ですね、結界が無くなったのに気付いたのか」

 

「・・・アルストさん、外のモンスターを頼みます」

 

「いいんですか?」

 

「はい、こいつらを倒してもモンスターがこの街を襲ったら意味がありません、それに・・・」

 

ライトは【ジャック・オー・ランタン】を出しレフト達に聞こえるように言う

 

「こいつら位俺一人で倒せれますよ」

 

「そうですか、それじゃあ頼みますよ」

 

アルストはそう言うとアイテムボックスからソードマンを取り出し、それに乗りモンスターの声がした方向へと向かう

 

「本気ですか?」

 

レフトは忌々しそうにそう言った

 

「本気だよ、お前は此処で確実に監獄送りにする」

 

「出来るものなら」

 

こうしてライト対レフトとその仲間の戦いが霧の中で始まった

 



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第22話

下に簡単にですがレフトとライトのエンブリオ情報を記載しております。


『到着しました』

 

ヘスティアは動力炉を盗んだ者達の所までベルドルベルを連れてきて〈マーシャルⅡ〉から外に出す

 

「ッチ、早いな」

 

「助かった、君は自分の〈マスター〉の所に戻りなさい」

 

『よろしいのですか?』

 

「私も超級職の端くれ、あいつら程度なら私一人で十分だ」

 

『・・・分かりました』

 

ヘスティアはそういうとそのままアルストの居る所まで全力疾走で戻った

 

「随分舐められた物だな、私達は超級職ではないが全員戦闘系のカンストした者達、いくら超級職でも非戦闘系のお前に俺達が倒せるかな」

 

全員が武器や自分の〈エンブリオ〉を手に持つ中、ベルドルベルは先ほどの言葉に何を言っているんだという表情を見せるが直ぐに納得したというように敵の〈マスター〉達に話しかける

 

「お前達、超級職の者にあった事が無いな」

 

「それが如何した」

 

「そんな考えで超級職の者と戦うと、直ぐやられるぞ?」

 

ベルドルベルが自分の〈エンブリオ〉達を出すと同時にベルドルベルに向かって多数の攻撃が放たれる

 

 

 

 

「ほらほら!如何しました?兄さん」

 

街の中央では霧に紛れてライト達の戦いが繰り広げられていた

 

「〈エンブリオ〉を盾にしているだけじゃ僕たちには勝てませんよ!」

 

レフトの言うとおり今ライトは自分の〈エンブリオ〉を盾にして攻撃から身を護っている

 

「理解できませんね、パーティーを組んでいるならともかく何で一人なのに幻術師系統のジョブに就いたんですか。そのせいで熱を感知するアイテムを装備した僕たちに攻撃されっぱなしじゃないですか」

 

レフトの言うとおり幻術師系統のジョブは何も知らない者には厄介だが対策をすれば簡単に対処できるジョブだ、現にライトは居場所を知られ〈エンブリオ〉であるジャックは罅だらけで今にも崩れてしまいそうだった。一度同じ幻術師系統のジョブで負けた、それなのになぜライトがこのジョブを選んだのかと言うと

 

「このジョブが俺にとって一番相性が良いと感じたからだ」

 

「見る目がありませんね」

 

レフトが投げた短剣、それがライトを庇ったジャックに当たりジャックはとうとう崩れて地面にジャックだった南瓜のかけらが落ちる

 

「これで兄さんを守ってくれる〈エンブリオ〉は居ません。なにが『こいつら位俺一人で倒せれますよ』ですか、一人も倒せれて無いじゃないですか」

 

レフトの仲間の一人がライトにとどめをさそうと近づく、今までの状態から反撃など出来ないと油断しており、下からの攻撃に反応が遅れる

 

「!?」

 

地面の中から先ほど崩れたはずのジャックが出てきてライトにとどめをさそうとした〈マスター〉の足に噛みつく

 

直ぐにジャックに剣を突き立てる〈マスター〉だがそうしている間にさらに複数のジャックが地面から出てきて〈マスター〉に噛みつく、やがて首を噛み千切られその〈マスター〉はデスペナルティになった

 

「・・・ガーディアンではなくレギオンでしたか」

 

ジャック達は一人の〈アスター〉を倒した後他の敵に向かって突撃するが不意打ちでもないただの突進は効果が無く全部のジャックが切り裂かれる

 

「・・・少し違うな」

 

「何?」

 

「これはジャックのスキルだ」

 

「・・・!!全員南瓜を壊すな!」

 

レフトは仲間にそう言うが遅かった、仲間たちは全部のジャックを倒しており、すぐに先ほどの倍のジャックが出てきて襲い掛かる

 

「増殖する〈エンブリオ〉・・・しかしいくら数が多くても・・・!?」

 

レフトが言い終わる前に敵〈マスター〉達に噛みついていた数体のジャックが爆発した

 

喉や頭に噛みつかれたまま爆発したジャック敵の〈マスター〉数人をデスペナルティにしたがレベルが高く耐えた物、爆発する様を間近で見ていた者達は軽いパニックに陥り近くにいたジャックを倒してしまい、また沢山のジャックが〈マスター〉達に群がり、爆発し、敵を減らしていき残るはレフト一人となった

 

「残るはお前だけだな」

 

「・・・フフフ、ハハハ!あいつらを倒した位で調子に乗らないでくださいよ!僕はあいつ等とは違う!また前みたいに簡単に倒してあげますよ」

 

「・・・ハッ」

 

「!!」

 

「どうやらあの時から何一つ成長していないようだな」

 

「・・・何ですって?」

 

「前の様に簡単に倒せると思うな、俺は超級職の座に胡坐をかくお前に負けるつもりはない」

 

「・・・なら全力で潰してやるよ」

 

「こい」

 

周りに漂うは――(ジャック・ザ)

 

守護する者とされる者は――(ジャック・オー)

 

二人は同時に必殺スキルの構えをし

 

危害を振りまく私(リッパー)!!』

 

一体となる(ランタン)!!』

 

周りが先ほどまでよりも濃い霧に包まれ一体の魔人が現れた

 

『どこにでもいるガーディアンの必殺スキルですか』

 

「・・・どこだ」

 

ライトは周りを見渡すが霧で数メートル先も見えなかった

 

「なら」

 

ライトは紋章から複数のジャックを取り出し、全方位に飛ばす、やがて一体の反応が消えたのを確認したライトはそこに全部のジャックを飛ばすがジャック達は一体目のジャックが消滅した地点ではなくバラバラの地点で反応が無くなった

 

「どういうことだ・・・!」

 

突然周りに待機させておいたジャックにタックルされライトは横に倒れた、そして先ほどまでライトがいた位置に居たジャック達は切り裂かれた

 

「〈エンブリオ〉に助けられましたね」

 

「・・・わざわざ出て来てくれて助かるよ」

 

「当たるわけないでしょ」

 

レフトは突進してくるジャック達を軽く避ける、するとそのままレフトの後ろの方向へ飛んで行ったジャック達が切り裂かれる

 

「!!」

 

「おや、ばれてしまいましたか」

 

一体のジャックがレフトの来ていたローブを引き裂きライトがレフトの体を見ると左腕が無かった

 

(ここに来る前に何かと戦って欠損した?いや、大事な作戦にこんな状態で来る位なら24時間我慢して自分からデスペナルティなる様な奴だ・・・まさか!?)

 

「その顔、分かっちゃいました?」

 

レフトはライトにやっと気付いたのかというような笑いを見せる

 

「そう、私の〈エンブリオ〉はこの情報遮断の霧と物を霧化させ好きな形に変える能力」

レフトの周りには何とか見える位に集まった霧が複数の小刀の様な形になり、レフトの周りに浮かんでいる

 

「ただ問題は例えば武器を霧化させ七つに分ければ威力も七分割されて威力が無くなってしまう事でした、ですがある時あるスキルの情報を知りました。相手に接触していれば威力など関係ない短剣スキルです」

 

「そうか、さっきの〈マジンギア〉は」

 

「ええ、空気が入れるほどの穴さえ合あれば霧など簡単に侵入しますよ」

 

「・・・何で俺に話す、話す必要は無かったはずだ」

 

「いえいえありますよ、だって・・・」

 

「!!」

 

グサリ、レフトに気を取られていたライトの足に一本の霧の小刀が刺さった

 

「兄さんの不意を付けたんですから」

 

レフトの周りに浮いていた小刀もライトに攻撃を始める。残ったジャック達は自分の〈マスター〉を守ろうと盾になり何体かも爆発して攻撃する、攻撃されて数が増えればライトが有利になる、しかしジャック達は増えずにただのかぼちゃの様に地面に転がる

 

「攻撃すれば増える、厄介ですが【拘束】すればもう何もできません」

 

得意げにそう言いながらレフトはライトを攻撃し始める、

 

「一応言って置きますが僕を倒さないとこの必殺スキルの霧の中からは逃げられませんよ。まあ、動けないでしょうけど」

 

初めの攻撃で【拘束】の状態異常を付与されたライトは動けずに霧の刃で地面に縫い付けられる

 

「さようなら、兄さん」

 

レフトが小刀でライトの頭を貫き、ライトは光の塵に

 

「フフフ、呆気ないものですね、なにが自分一人で倒せるですか、やられてるじゃないですか」

 

そのまま少しの間笑っていたレフトだが異変に気付いた

 

「・・・霧が晴れない?」

 

レフトの〈エンブリオ〉の必殺スキルは一定時間経つか結界の中に敵がいなくなると自動的に解除される。つまりまだこの霧の中に敵が潜んでいるのだ

 

「本当にお前は成長していないな」

 

レフトは後ろから誰かに抱き着かれた、その声を聴いてレフトは驚愕の声を出す

 

「兄さん!なぜ、たしかにいまさっき目の前で」

 

「俺のジョブを忘れたのか?お前が見ていたのは幻影だ」

 

「嘘を吐くな!この霧は熱感知の役割も持っているんだ、あれには確かに熱反応があった、【幻術師】の兄さんに「【幻術師】?一体いつの事を言っている」・・・?・・・・!?」

 

『熱反応があったと誤認させられた?』レフトは今の考えに自分でありえないと答えを出す、それと同時にある一つの考えが浮かんだ。

本来ありえない熱を持っていたと誤認させられる、【幻術師】にそんな能力はない、しかしそんなありえない事を成し遂げられるジョブを知っている

 

「まさか、まさか!」

 

「俺の今のジョブは【幻術王(キング・オブ・イリュージョン)】だ」

 

幻術師系統超級職【幻術王】、その奥義は単純、生物の五感を限りなくだませ、本物に近い幻影を作り出せるということ、武器の幻影を作れば重さを実感でき、切られれば切られた痛みを感じる。その奥義でライトは自分の幻影を作りレフトがジャックの爆発に気を取られている間に幻影と入れ替わり、奥義で気付かれないようにレフトの後ろまできた

 

「さて、もう状態異常を付与しても無駄だ、即死するような状態異常は対策済み、このままお前事自爆する」

 

「な?本気ですか!?」

 

「監獄で反省しろ」

 

その言葉を聞きレフトは静かになった。諦めたのかと思いきや、掴んでいたレフトの体が消える

 

「ハハハ!残念でしたねこちらにはまだ奥の手があるんですよ!」

 

上を見ると霧が集まり人の形になっていた

 

「自身の完全霧化か」

 

「いくら自爆しても僕には届きません、残念でしたね」

 

「いいや、お前は終わりだ」

 

「何を強がりを「2カ月」?」

 

「リアルの時間で2ヶ月お前を探した、お前は今一人暮らしをしていてリアルの住所は分からなかったからな」

 

「それがどうしたんですか?」

 

「・・・俺の〈エンブリオ〉ジャックは攻撃されればされるほど数を増やし相手を攻撃し俺を守ってくれる。じつはその増えたジャック達、紋章に貯めておくことが出来る」

 

「!!」

 

「今この紋章の中は空だ・・・意味、分かるよな」

 

レフトは周りを見渡す、すると全方位あらゆる所から笑うかぼちゃが出てきてレフトを囲む

 

「その体ダメージが通らないって訳じゃないんだろ?」

 

「そんな・・・ああ」

 

「じゃあな」

 

「ま、待ってくれ兄さん!僕が悪かった!!心を入れ替えるから・・・」

 

レフトが言い終わるよりも前にジャック達はレフトに突進し、大爆発を起こした

 

「監獄で反省しろ、馬鹿弟」

 

レフトがデスペナルティになったことで、〈エンブリオ〉の霧が晴れていく中、ライトはそう呟いた

 




【守護増火 ジャック・オー・ランタン】
〈マスター〉:ライト
TYPE:ガーディアン・レギオン
紋章〝笑う南瓜”
能力特性:再生増殖
必殺スキル《守護するものとされる者は一体となる》
備考:普段は南瓜が宙に浮いている姿だが植物モンスターの様な体を生やす事もできる。ライトへの攻撃を察知すると自ら盾になり破壊されたら数を増やしライトを守る。ライトから攻撃するように指示が出ると単純な動きしかできず突進して噛みつくか自爆しかできない。ライトが必殺スキルを使うと詳しく指示が出せる

【???? ジャック・ザ・リッパー】
〈マスター〉:レフト
TYPE:ワールド・ルール
能力特性:霧発生&霧化
必殺スキル《周りを漂うは危害を振りまく私》
備考:霧を出し、霧の動きなどで敵の位置を知ることができる。武器を霧化させその武器の能力を持った霧を操作できる。レベル制限などで装備できない武器を霧化させて操る事も出来る。体の一部を霧化させジョブスキル等を使うこともできる。必殺スキル使用時は体を完全に霧化でき物理攻撃は無効にするが爆発等は普通に効く


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第23話

『腹が減った』

 

そこはラチスの地下深く、ソレは光が無い暗闇の中そう言った

 

『忌々しい檻も弱くなってきている』

 

ソレは嬉しそうにそう言うと長い年月で痩せた体を動かし檻に近づくと檻を噛み始めた、いままでならそんな事は出来なかったがレフト達のおかげで檻の力は弱まっており楽々と出来るようになっていた

 

『あれから何年たったか、いやそれよりもまずはここから出なければ』

 

そう言うとソレは、【食竜王 ドラグイーター】は檻を食らい始めた

 

 

 

 

ライト達は、いや、ラチス居る者達もこう思っている。昔ラチスと言う街が出来る時、ティアン達は近くの遺跡で動力炉を見つけ魔力式の大砲を壁に設置し身を守ったと、しかしそんな大砲など効かない地竜が生まれたら意味が無い、現に長い時でそんな地竜は数匹生まれている、それでもラチスがまだ残っているのはここら一帯の自分達の祖先を食い物にしていた食竜王への畏怖である

 

 

それではなぜ食竜王がこんな所で檻の中にいるのか、それは食竜王の油断からなる物だ。地竜すらも獲物にする己にとって地竜以下のティアンなど眼中になかった、しかしある超級職によってこの巨大な檻の中に囚われ長い年月を檻の中で過ごし食の竜王に恥じぬ巨大な体はやせ細り力も衰えていた

 

『肉を巨大な地竜の肉を!!』

 

 

まだ外で暮らしていた時食べていた地竜の味を思いだしながら外へと出るために堅い鉄に噛り付くが壊すのに時間がかかりそうだった。

 

長い月日何も食べておらず衰えていると言うのもあるがこの檻が特別製というのもあった

 

 

この檻は元々先々期文明のある生産職が作った物で最初は化身を閉じ込め、化身の力を吸出し、その力で化身を倒すために作られた檻だった。実際は一番可能性があった獣の化身にも勝てず一度も使うことなくお蔵入りになってしまっていたのだが

 

 

『時間を掛ければ出れそうだ』

 

動力炉が無い今、檻の中のモンスターをおとなしくさせるために送られていたMPはもうなく檻の強度でドラグイータ―をこの場に留めているだけでドラグイータ―が外に出るのも時間の問題だった

 

 

 

 

「ライトさん、無事倒せたようですね」

 

「アルストさん。ええ、無事に」

 

周りを見渡すと建物の明かりがつき人々が窓からこちらを見ていた

 

「あんな騒ぎがありましたからね、皆起きたようですね」

 

暫くすると武装した人々がこちらに向かって来る

 

「アルストさん!これは一体」

 

「エドさん、実はこの街の動力炉を奪おうとしていた輩がいて」

 

「なんですって!あれが無いとこの街は」

 

「大丈夫です動力炉なら・・・」

 

「ここだ」

 

「ベルドルベルさん!」

 

声の方に振り向くと無傷のベルドルベルが一つのアイテムボックスを片手に歩いてきていた

 

「無傷とはさすがですね」

 

「あんな奴らにはやられんよ」

 

ベルドルベルは警備隊の人にアイテムボックスを渡す

 

「終わりましたね」

 

「ああ」

 

これで終わり、そんな空気が流れだした時

 

GUAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

一体のモンスターの鳴き声が街中に響いた

 

「今のは!?」

 

「エドさん!」

 

「どうした!」

 

「街の外にモンスターの大群が、〈UBM〉もいるようです!!」

 

 

 

それは若い地竜達の群れ。地竜は今まで決してラチスには近づかなかった、親に食竜王の事を聞かされその恐ろしさを知っているし恐ろしい気配がするからだ。しかし食竜王が暴れていた時代から長い年月が経ち、若い地竜達にはそれを自分達を驚かすための作り話に聞こえたし街からもれる気配も自分たちのリーダー、逸話級〈UBM〉【岩竜王 ドラグロック】には負けると思っていた

 

今日、突然目障りな人間達を守っていた結界が消え、あの気配も無くなった。ドラグロック達はあんな目障りな街など簡単に潰せると気楽に考えていた

 

『ドラグロック様、人間共が私達に気付いたようです』

 

『かまうな、どうせ我々の脅威にはならん』

 

『・・・ん?』

 

ドラグロック達が笑う中、一匹の地竜があることに気付いた

 

『どうした?』

 

『いや、何かに見られたよう・・・』

 

その瞬間、話していた地竜が消えた

 

『な!?』

 

『おい、何処に隠れた、ふざけるのも・・・』

 

また消える、流石にこの異常事態に気付いたドラグロック達は周りを見渡す

 

『何だ、誰だ!』

 

周りは良く見えず、ただペチャペチャと音が聞こえる

 

『おい、この音』

 

『言うな』

 

全員、この音の正体には気付いているしかし誰もその音の正体を言わない、認めたくなかった

 

『う、うわああああああ!』

 

『バカ!戻ってこい』

 

恐怖に負けた一匹の地竜が逃げ出すしかし、それをごちそうを目の前にした食竜王が許すはずが無く

 

『うわ!やめろ、やめろおおおおおお!!』

 

また一匹、餌になった

 

『クソ!襲うのは中止だ、全員散り散りになって逃げろ!!』

 

それと同時に地竜達は逃げ出す

 

『・・・へえ、めんどくさい事を』

 

それからは早かった、遠慮しなくなったドラグイータ―は次々と地竜達を食べていく

 

『ハア、ハア、実在したのかよこんな化け物が』

 

最後に残ったドラグロックは傷だらけになりながらドラグイータ―を睨む

 

『だが、こんな所で食われてたまるかあああ!』

 

ドラグロックは竜王気を身にまといドラグイータ―に攻撃をするが攻撃を当てても直ぐに傷が再生してしまう

 

ドラグイータ―はドラグロックを掴むと口へと持っていく

 

『クソ!クソ!何故地竜を食らう!お前も地竜だろうが!!』

 

その言葉に今まで反応を示さなかったドラグイータ―は初めてドラグイーターを見ると

 

『昔、俺は餓死しかけていた時が有った、しかしその時には近くに食べれるものが無くあるのは地竜のみ、気づいたら周りの奴らを食い終わってたよ。その時思ったね』

 

 

『ああ、何でこんな美味い物が近くに有ったのに今まで食べなかったんだろうってね』

 

その瞬間、ドラグロックは理解した、こいつは地竜何かじゃないと、同族を食らい楽しそうにもっと早くに食べたかったと言う化け物が自分と同じ地竜ではない、有ってほしくないと

 

『〈UBM〉は一回食べたことはあるけど地竜の〈UBM〉は初めてだな、楽しみだなあ』

 

そう言うとドラグイータ―も竜王気をまといドラグロックの竜王気、そして名にもなっている堅い岩の様な体も煎餅を食べるように直ぐに食べ終えた

 

 

「・・・〈UBM〉を食いやがった」

 

一人の〈マスター〉がそう呟く、ドラグロック達を倒すために集まったメンバーは信じられないようにドラグイータ―を見る

 

そんな視線に気付いたのかドラグイータ―はそのまま何処かへと去って行った

 

 

 

 

(昔と比べて地形はあまり変わっていないな)

 

ドラグイータ―は昔寝床にしていた所に行くと長い年月で草木が生えているのも気にせず横になる

 

(久しぶりの豪華な食事だった)

 

極上の食べ物、〈UBM〉を食べドラグイータ―は満足だった、しかし

 

(足りない、食い足りない)

 

食べ物の質が良くても量が少なかった、長い年月でドラグイータ―はやせ細り十数匹の地竜を食べてもまだ腹が空いていた

 

(まずは腹ごしらえだ、この辺りも長い年月が経っているなら何か居るだろう、ある程度食ったら次はあの街だ)

 

ドラグイータ―は自分を長い間閉じ込め空腹を与えたラチスを恨んでいた

 

(あの街に住む者達だけじゃなくあの街もすべてこの腹に収めてやる)

 




【食竜王 ドラグイーター】

数百年も前にラチスの英雄、そして一人の超級職に封印された竜王、前に仲間を食べてその美味さを知ってから地竜をよく食べるようになり気付いたら〈UBM〉になっていた。地竜を殺すと食料がドロップするが地竜の方が美味しいと感じているため地竜を生きたまま食べる。

・ドラグイーターを閉じ込めていた檻
先々記文明の宝物獣の珠の様な物、作ったは良いが膨大なMPが必要だしそもそも化身を捕まえられず一度も使われずにお蔵入りになった。


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第24話

あれから数日、俺はラチスであの〈UBM〉がもどってこないか心配、と言う名目でクルスや街の子供達と遊んだりベルドルベルさんの演奏を聴いたりと楽しく過ごしていた

 

 

 

 

・・・昨日までは

 

『・・・何か言う事は?』

 

「すみませんでした!!!」

 

俺が土下座している相手はこの国の皇王、ラインハルト。勿論通信機での対話のみだ。しかし通信機を持ってきた相手が悪かった

 

『あなたに依頼をして数日、ヴィーヴィルの目撃情報が全然ないのであなたが私を裏切ったのかと思いましたよ?』

 

「はは、まさか、ありえませんよ」

 

『そうですか。まあ良いでしょう。しかし少し厄介な事になりましたね』

 

「どういう事ですか?」

 

『最近、新しい伝説級〈UBM〉の目撃情報があります、名は【食竜王 ドラグイーター】』

 

「!!」

 

『先ほどの報告に会った〈UBM〉で間違いありませんね?』

 

「はい」

 

『この〈UBM〉は近くにある物を片っ端から食べつくしています、モンスター、ティアン、〈マスター〉等関係なく』

 

『このままでは国でさらに餓死者が出てしまいます、早急にドラグイータ―の討伐をお願いします』

 

「私ではなく【獣王】に頼んだ方が早いのでは?」

 

『【獣王】には他の危険な〈UBM〉等の攻撃に対処してもらいます』

 

「・・・分かりました」

 

『頼みましたよ』

 

そう言うとラインハルトは通信を切り、【獣王】も直ぐに帰って行った

 

「ヘスティア」

 

『何でしょう?』

 

「一度ヴィーヴィルでこの辺りを見る」

 

『分かりました』

 

 

「・・・ひどいな」

 

ヴィーヴィルに乗り約1時間、様々な所を見に行ったが至る所でドラグイータ―が暴れ回った跡、地面がえぐれている様な場所複数個所見つかった

 

『マスター、この向きは』

 

「まずいな」

 

アルストは地図を広げドラグイーターが暴れた所に印を付けていくと

 

「ラチスに向かってる」

 

どんどん近づいてきており計算では後数日でラチスに来るところまで来ていた

 

 

「そうですか、あの〈UBM〉が」

 

アルストはドラグイータ―の事をライトとベルドルベルに話し協力してくれないかお願いする

 

「もちろんです、あの〈UBM〉をほうっては置けません」

 

「私もだ、大事な観客を〈UBM〉に食べられては堪ったものではない」

 

「ありがとうございます」

 

「しかしどうするのだ?相手は〈UBM〉、一筋縄ではいかんぞ?」

 

「次現れる場所は予測できます、問題は倒せるかどうかです」

 

「すいません、レフトとの戦いで私の〈エンブリオ〉の手札は使い切ってしまいました」

 

「私も攻撃を当てるには近づかねばならん、しかしそれを奴は見逃さないだろう」

 

「・・・一つだけ考えがあります、ただ少し時間がかかります。次ドラグイータ―が出てくるまでには終わらせますので心配なく。それとベルドルベルさんには街の守りを任せたいのですが、またモンスターが襲ってこないとも限りませんから」

 

「分かった、ならば私はティアンの人々にこの事を伝えておく」

 

「私は出来る限りの準備をしておきます」

 

「お願いします」

 

二人と別れるとアルストは通信機のスイッチを入れる

 

『どうしました?』

 

「お願いと言うか許してほしい事がありまして」

 

『何です?』

 

「ドラグイータ―との戦いの際ヴィーヴィルを壊してしまう可能性が高いのです、それでその・・・」

 

『分かりました、壊れても構いません、〈UBM〉の討伐を最優先にお願いします』

 

「ありがとうございます、必ずや討伐して見せます」

 

アルストはライトと合流するとドラグイータ―が出る可能性が高い場所でドラグイータ―を討伐するための作戦を開始した

 



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第25話

特典武具の名前を【はいぱーきぐるみしりーず どらぐいーたー】から【捕食弾倉 ドラグイーター】に変更しました


『匂う、匂うぞ。旨そうな地竜の匂いが』

 

ラチスへと向かう途中、ドラグイータ―は地竜の匂いを嗅ぎその匂いを辿っていくと一匹の大きな地竜を見つけた

 

『旨そうな肉だ』

 

ドラグイータ―は直ぐに飛びかかるが地竜は姿を消してしまう

 

『消えた?いや、これは』

 

ドラグイータ―は目の前の不思議な現象に覚えがあった、それは遥か昔に自分を封印した人間達の内一人が使った技

 

『幻術か!』

 

「ばれましたか」

 

ドラグイータ―が声のした方向を見るとそこには一人の男がいた

 

「だが遅い」

 

背中で何かが爆発する、後ろを見ると奇妙な竜が魔法でドラグイーターを攻撃していた

 

『何だ奴は、生物ではないな』

 

今までたくさんの生き物を食らってきたドラグイーターはヴィーヴィルが生物ではないと気付く

 

「そのまま攻撃を続けろ」

 

『了解』

 

現在ヴィーヴィルを動かしているヘスティアはアルストの命令通り自分で生成したMPを惜しみなく使いドラグイーターに攻撃する

 

『その程度の攻撃』

 

しかし魔法はドラグイーターに当たる前にドラグイーターの竜王気によって防がれほとんど効いていなかった

 

『効果がありません』

 

「次は実弾だ」

 

ヴィーヴィルは火薬式の銃器で攻撃するもこちらは魔法よりも効果がない

 

『火薬式は完全に防御されます』

 

「やっぱり効果なしか、火薬式は本当にMPが無い時の非常用だな。次はOS弾発射」

 

『了解、発射』

 

ヴィーヴィルが右手に仕込まれた表面にOS弾と書かれたミサイルをドラグイーターに向け発射する

 

しかしミサイルはドラグイーターの竜王気に届くことなく爆発した、目の前の無意味な行動にドラグイーターは不思議に思うがその答えはすぐに分かった

 

爆発したミサイルの中から青色の物体がドラグイーターの上に落ちる

 

『これは、スライムか?』

 

『オキシジェンスライム弾、命中を確認』

 

「よし、撃て」

 

その命令とともにヴィーヴィルは一つの火球をドラグイーターに向けて撃つ、それはドラグイーターに纏わりついていたオキシジェンスライムに当たり大爆発を起こす

 

『ダメージを確認』

 

「うわ~凄いな、オーナーに頼んで一匹作ってもらって正解だったな」

 

従属キャパシティギリギリなだけはありオキシジェンスライムはドラグイーターに深いダメージを与えていた

 

『調子に・・乗るな!』

 

ドラグイーターは自分の上で再生中のオキシジェンスライムを捕まえると冷気など気にせずに地面にたたきつける、【スライム】なので余り効いていないがドラグイーターは力の限りにオキシジェンスライムを投げ飛ばした

 

『かなり遠くに飛ばされました、戻ってくるのに時間がかかるかと』

 

「じゃあそろそろ始めるか、聞こえますか?」

 

『いつでも大丈夫です』

 

 

ドラグイーターがスライムを投げ飛ばしてすぐ、今度はヴィーヴィル自身が突っ込んできた

 

『面白い』

 

ドラグイーターはそれを迎え撃ちヴィーヴィルとの取っ組み合いになるとヴィーヴィルは口を開き中からドラグイーターが丸のみにできそうな地竜が飛び出してくる

 

『こんな小さい地竜に何ができる!』

 

両手をふさがれ行動が制限されたドラグイーターは自身の名にもなっているその口で地竜を一口で飲み込んだ。しかしドラグイーターはその地竜をただの美味しいも食材としか見ていなかったので気づかなかった、その地竜の顔が先日自分が食べた竜、【岩竜王 ドラグロック】だということに

 

『ん?』

 

ドラグイーターが地竜を食べた瞬間、ヴィーヴィルの力が急激に弱くなり電源が切れたように地面に倒れる

 

『なんだ?急に倒れたぞ?』

 

突然の事に困惑するがドラグイーターは食べられないヴィーヴィルにすぐに興味をなくし自分を封印した人間にそっくりの人物を探そうとすると

 

『!?何だ・・・この痛みは!』

 

それは突然、ドラグイーターの腹が痛みと共にどんどん大きくなっていく

 

 

『ご無事で?マスター』

 

「ああ、大丈夫だ」

 

現在アルストたちが居るのはヴィーヴィル、ではなくドラグイーターの腹の中だ

 

「無事に俺たちが乗った脱出艇を飲み込んだな、ライトさんの幻術でドラグイーターは小さい地竜を丸のみにしただけと思っているはずだ。早速こいつを倒して外に出るぞ、お前がいなくなってヴィーヴィルも動かなくなった、食べないとは思うが壊されたら一大事だ」

 

『了解』

 

そういうとヘスティアは現在自分が生成しているMPすべてを【滅結界玉 エステンク】に注ぐ、すると周りに触れたもの全てを消滅させる結界が出現しそれはMPを注ぐ量が増えれば増えるほどどんどんと強度と大きさ、消滅させる力を増しドラグイーターの胃袋を超える大きさになっていく、当然ドラグイーターは何もわからず苦しみアルストたちが腹を破り外に出ると

 

【〈UBM〉【食竜王 ドラグイーター】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アルスト・コジャーソ】がMVPに選出されました】

【【アルスト・コジャーソ】にMVP特典【捕食弾倉 ドラグイーター】を贈与します】

 

 

 



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第26話

設計王の奥義を変えました、他のジョブの奥義を見てたら弱いと思ったので。

奥義《完全なる設計》→《設計》レベルEX

奥義《機巧解析》


「・・・ふう、やっと終わった」

 

ドラグイーターを倒して十日後、アルストは皇都に戻る前に一つの手土産を作っていた

 

『マスター、完成ですね』

 

「ああ、これを持って帰れば皆喜ぶぞ」

 

アルストが十日かけて作った物、それは動力炉の設計図だ。アルストのジョブの【設計王】には《設計》レベルEXとは別に他のジョブと同じように奥義が存在する、それが《機巧解析》対象が人工物であればそれの設計図やアイテム説明等が分かる、【大教授】の奥義の人工物バージョンだと言えば分かりやすいだろう。

 

「しかし疲れた、対象が複雑であればあるほど時間がかかるからな。さすがフラグマン」

 

『発動中は対象を見続けなければならないですしね』

 

「ああ、途中までの解析結果が残るのは助かったな」

 

アルストが外に出るとこの動力炉がある塔の警備をしていたティアンが道を開けて頭を下げる

 

「〈マスター〉様、もうよろしいのですか?」

 

「はい、すみませんこの街の大切な物なのに塔の中に入れてもらって」

 

「あなた方のおかげで動力炉も盗まれずしかも封印されていた〈UBM〉まで倒してくださったのです、上の許可も出ていますのでこのぐらいかまいません」

 

「終わったのか」

 

「ベルドルベルさん、ライトさんも、まだこの街に居たのですね」

 

「私はもう急ぐ用事も無いので、貴方への挨拶を済ませたら各地を旅してみようと思います」

 

「私は君に頼みがあってね」

 

「何ですか?」

 

「君はこの後皇都に戻るのだろう?ならば私も一緒に連れて行ってはくれないか」

 

「・・・皇都に何の用ですか?」

 

「何、私の目的を達成するには皇都、〈叡智の三角〉に居たほうが良いと判断したのだ。安心してくれ、君たちの戦艦を盗もうなどとは考えていないし駄目なら歩いていく」

 

「・・・分かりました、どうぞ乗ってください。クラン入会は私には何も言えないのでそこは自分でオーナーと話し合ってくださいね」

 

「助かる」

 

『・・・マスター、良かったのですか?』

 

「《審議判定》は反応しなかったしあの人の事はこの間の戦闘で分かった、ラインハルト様も超級職の<マスター>を自国の戦力に数えられるなら文句ないだろう」

 

(まあ一応【契約書】は書いてもらうが)

 

「では皆さん、お元気で」

 

「ライトさんも」

 

その後アルストはクルトの家への挨拶を終えるとベルドルベルと一緒に皇都に戻った

 

 

 

 

 

その後ベルドルベルは〈叡智の三角〉のメンバーになり二次創作部の土下座での頼み込みで〈魔神機甲グランマーシャル〉のBGMと主題歌を作曲しクランメンバーと良好な関係を築いていた

 



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第27話

「・・・たまにはこうやってダラ~っとしてるのもいいねえ」

 

皇都に戻ってきたアルストはラインハルトに報告を終えた後ベルドルベルをフランクリンに紹介し〈マジンギア〉の整備を終え忙しく動き回るクランメンバー達を無視して横になりゴロゴロしている。もちろん他の人物がやると整備道具や〈マーシャルⅡ〉が突っ込んでくるのだがアルストは自分のエンブリオを貸しているのでそんなことは起きない、MPを気にせずにテストできる〈エンブリオ〉に嫌われたくないからだ

 

「・・・あなたがアルスト・コジャーソさんですね?」

 

「うん?」

 

声のしたほうを向くと一人の青年と全身白の服を着た女の子と二人とも見たことがない人物だった。

 

「君たちは?どこかで会ったかな?」

 

「彼は私の知り合いでね、まだ<Infinite Dendrogram>を始めたばかりだから初対面だよ」

 

「オーナー」

 

「他の皆さんとは挨拶できたのですがアルストさんは留守だったので帰ってきたと聞き挨拶に伺いました。私はユーゴー・レセップス、こっちが」

 

「TYPE:メイデンwithチャリオッツのコキュートス、よろしく」

 

「俺は【設計王】アルスト・コジャーソ、〈エンブリオ〉は・・・ヘスティア!」

 

『はい』

 

アルストが呼ぶとヘスティアは〈マーシャルⅡ〉と融合したままこちらに来る

 

「こいつが俺の〈エンブリオ〉だ」

 

「普通の〈マジンギア〉に見えますが?」

 

「ああ違う違う、ちょっと出てきてくれ」

 

アルストが言うと〈マーシャルⅡ〉からバスケットボールくらいの大きさの金属の球体が出てくる

 

「俺の相棒TYPE:アドバンス・ガーディアンの【機構炉心ヘスティア】だ、この姿だと喋れないんだ、よろしく。しかしメイデンか、メイデンの〈マスター〉何人か知っているけどチャリオッツのメイデンは初めて聞いたかも。やっぱり戦車とかそういう感じ?」

 

「いえ、コキュートスはそうですね・・・この〈マジンギア〉を借りても?」

 

「ああ良いけど・・・おお!」

 

アルストが許可を出すとコキュートスは自分を粒子へ変え【マーシャルⅡ】に集まると氷の装甲となった

 

「おおお!」

 

「これがコキュートスの能力です、聞いていたTYPE:チャリオッツとは全然違うので少し不思議ですが」

 

「いや、そんなことないぞ」

 

おそらくユーゴーは管理AIに教えてもらったことを言っているのだろうとアルストは自分が始めたときを少し思い出しユーゴーに答えを教える

 

「ユーゴー、ヘスティアのTYPEを覚えているか?」

 

「えっと、アドバンス・ガーディアンですよね?」

 

「そのとおり、二つともハイエンドカテゴリーだが前はチャリオッツだった、もちろん乗り物では無かった」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、コキュートスが乗り物型でも無いのにチャリオッツなのはヘスティアと同じく進化したらアドバンスになるんだろう」

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

「いやいや。それにしても珍しい、〈マジンギア〉の装甲とは、生まれる前から【マーシャルⅡ】持ってたの?」

 

「はい、オーナーから貰いました」

 

「なるほど珍しいタイプだな・・・ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、少し聞きたいんだがこれは【マーシャルⅡ】以外は無理なのかな?」

 

「えっと、どうなんだい?」

 

『かのう、ただしおおきすぎるとむり、たぶんしんかしないと』

 

(【マーシャルⅡ】以外にも使える、例えばそう・・・ヴィーヴィルにも)

 

アルストは少し考える、普段の黒竜のような姿にコキュートスを身に着けたヴィーヴィル

 

「・・・良い」

 

「はい?」

 

「ユーゴー君!お願いがあります!!」

 

「え!?」

 

突然の土下座に驚くユーゴーだがアルストは周りの目も気にせず土下座を続ける

 

「ぜひ君の〈エンブリオ〉を俺のヴィーヴィルに使わせてくれないか!!すぐに終わる、この〈マーシャルⅡ〉の用になったヴィーヴィルを見てみたいんだ!もちろんできる限りのお礼はさせてもらう!!なので・・・」

 

「「「お願いします!!!」」」

 

「何で増えてるんですか!?」

 

もともとそういうのが好きな人が多いクランなのだ、もちろん見たいと思う人は多い

 

ちなみに見たいと思った人たちは当然日本人以外もいたし女の人もいたが全員が綺麗な土下座をしていた

 

あの後ヴィーヴィルを見てもらったがコキュートスが今は無理と言ったので進化したらお願いすることにして確認をしていなかった特典武具を取り出す

 

「・・・あのーアルストさん?」

 

「はいはいドララガンさん?」

 

「あなたの超級職は?」

 

「設計王」

 

「それ以外は?」

 

「ないよ?」

 

「その手に持っているのは?」

 

「【捕食弾倉 ドラグイーター】」

 

「・・・特典武具?」

 

「特典武具」

 

「「「なんでだー!!」」」

 

「なんでこの人戦闘系超級職でもないのにホームを離れるたびに特典武具持って帰ってくんの!?」

 

「アルストさん今特典武具何個目?」

 

「4個目」

 

「羨ましい!!」

 

「アルストさん次にどっか行くとき俺も連れてって!!」

 

「出来たらね」

 

「てかそれどんな能力なの?只の弾倉ってわけじゃないでしょ?」

 

ドラグイーターはレンジ位の大きさの四角い箱の形をして一面に食竜王の時のドラグイータの頭がついていた

 

「まず弾薬を内部に貯めて置ける」

 

「普通だな」

 

「アイテムボックスと同じですね」

 

「《弾丸製造》アイテムを食べさせると普通に作るよりも材料が少なく、大量に作れる」

 

「これも特典武具って割には」

 

「弱いですねえ」

 

「あとは《特性弾製造》これにアイテムを食べさせると食べさせたアイテムの特性を備えた弾丸ができるみたい。例えばこいつに毒が有るものを食べさせたら敵に当たると毒を付与する弾丸を作るとか」

 

「なるほど」

 

「とりあえず今持っている飲んだら麻痺になる毒を飲ませる」

 

「何でそんな物持ってるんですか・・・」

 

「少し待つ。弾丸の強さで作るまでの時間が変わるみたい」

 

「例えば?」

 

「この瓶全部の毒を飲ませたら簡単に抵抗できる麻痺弾が10発、抵抗が難しい麻痺弾を1発を選べるけど抵抗が難しいほうが作るのに時間がかかる。1発の時は普通に飲むときより効果が上がる。それと弾を作るときはアイテム一つだけじゃなくていい」

 

「どういうことですか?」

 

「複数のアイテムを使ってより強力な弾を作れる、例えば複数の猛毒を使って当たったら即死級の猛毒の弾を作るとか、その分製造時間も何倍にもなるみたいですけど。もう麻痺弾ができてるみたいですね」

 

アルストはそういうと自分の手をドラグイーターの口の奥へ入れる

 

「・・・そう取り出すんだ」

 

「一歩間違ったら自分の腕でできた弾丸が出来るかもしれませんね」

 

アルストは出来た麻痺弾の1発を持っていた拳銃に入れると

 

「撃たれたいひと~」

 

「「「・・・」」」

 

「いないの?」

 

「「「当たり前だ!!」」」

 

「じゃあ仕方ない、今度モンスターで試そう」

 

こうしてアルストの近くにいたクランメンバー全員に囲まれながらの特典武具の確認が終わった

 




【食竜王 ドラグイーター】は食べた相手のスキルを一定時間使えるスキルを持っていた、しかし長い封印と封印を破った後の食事はほぼ普通の地竜で使えるスキルが増えずアルスト達はこのスキルに気づかなかった。

実はアルストと戦った時ドラグイーターはドラグロックのスキルを使い防御力が増していたが、内臓までは強化できなかった。


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遺跡に眠る動物
第28話


「オーナーどうですか?」

 

「量産は絶対に無理だねえ」

 

アルストは特典武具の確認を終わらせると帰ってきてすぐフランクリンに渡した動力炉の設計図から動力炉を大量生産できるか聞いた

 

「この設計図に書かれている材料、先々期文明の材料としては運がいいことに全部聞いたことがある物だったし作れる物もある、だが一部作れず実物が無い物がある」

 

「そうですか」

 

「一応代用品を使って強引に作ることもできるがやめたほうが良いだろう」

 

動力炉は何千年も前にフラグマンが作った作品で設計図を持ってきたアルストでも理解できない所が多数有った、設計図通りではないやり方で作れば材料の無駄な消費、最悪の場合大爆発なんてこともある

 

「動力炉を新しく作るためには製造はクランメンバーから技師系統上級職の者や物作りが得意な〈エンブリオ〉の〈マスター〉に頼めば良い。材料は今の所何処かの遺跡から手に入れるしかないねぇ、でも今皇国にはそういう遺跡が見つかっていないから自力で探さなければいけない、今すぐには無理だね」

 

「そうですか」

 

「まあ頑張って探してみなさい」

 

フランクリンはそういうと部屋を後にする

 

「遺跡の情報か・・・どうしよう、前にデイランを倒した遺跡に行ってみるか?結局奥へは行けなかったし」

 

当時アルストは〈マジンギア〉の動作確認が目的で埋まった遺跡を掘り返す道具が無かったのと特典武具を手に入れられたのでまた今度来れば良いかと放置していた

 

「流石に俺一人だと無理だしな、誰かに手伝ってもらいたいよな」

 

『フランクリン様にですか?』

 

「もちろんオーナーにも声をかけるけど中に何があるか分からないから強い人を呼びたいよな、例えば【獣王】」

 

『無理では?』

 

ヘスティアの言葉は【獣王】を知る100人に同じことを言ったら100人が同じ回答をするだろうものだった

 

「いや、あいつは来る」

 

『何故ですか?』

 

「デイランが最後なんて言ったか覚えてるか?」

 

『確か、何かを渡さないとかなんとか』

 

「そう、あいつは馬は渡さないと言った、〈遺跡〉の中に生きた馬がいると思うか?」

 

『いいえ』

 

「ということは〈遺跡〉の中にある何かの機械だろう。先々期文明、フラグマンのいた時代で機械の馬と言ったら?」

 

『・・・!?まさか』

 

「そう、煌玉馬だ。ラインハルト様も煌玉馬は無視しないだろうからラインハルト様から【獣王】に頼んでもらえばついてくるさ」

 

『なるほど』

 

「よし!早速〈遺跡〉の事を伝えるぞ」

 

『はい!』

 

 

直接はさすがに会えないのでもう連絡を取ってみたらもう煌玉馬がある〈遺跡〉の事は知っているらしい。皇国にある古い文献に書いてあるらしい

 

『近いうちにその〈遺跡〉の発掘をしますのでその時には声をかけましょう』

 

「ありがとうございます」

 

そういうとアルストは【ジュエル】に【ブロードキャストアイ】をしまう

 

「早めに言って良かったな、連絡しなかったら俺たちが知らない間に〈遺跡〉が終わってたかもしれん。それにしても・・・」

 

『どうしたんですか?』

 

「いや、【獣王】の〈エンブリオ〉レヴィアタンがなんか〈遺跡〉の事を話した時、俺を睨みつけて小さく「あれは貴方の仕業ですか」って言ってたような」

 

『あの〈遺跡〉で何かあったのでしょうか?』

 

「〈遺跡〉の存在は知っていたって言ってたし【獣王】に調査を任せたけど中が埋まっていて進めなかったとか?・・・さすがに無いか」

 

その通りなのだがそれに反応するであろう【獣王】とは既に通信が切れていた、もし繋がっていても〈SUBM〉の事は言えないので何も言えないのだが

 



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第29話

23時に超級激突編の場所を入れ替えます最新話の所に入れ替えます。内容は変わりません


「おい、見ろよ!マーシャルⅡに使えそうな武装の設計図だ!!」

 

「こっちには明らかにもう手に入らない超レア素材があったぞ!!」

 

あれから数日後、アルストは前にデイランを討伐した遺跡にて他の<マスター>達と一緒に発掘作業を行っていた。中にはほぼ100%煌玉馬が有るので周りの<マスター>は全員裏切り煌玉馬を盗み逃げる可能性が低い、機械に詳しいと言う理由で<叡智の三角>の古参メンバー達だ

 

(まあ【獣王】が居る前でそんな事する阿呆は居ないと思うけど)

 

ラインハルトは他の用事があるらしくこの場所に居ない(皇王なので当たり前であるが)代わりにアルスト達の護衛兼見張りとして【獣王】が居る

 

「おい、そっちはまだ何があるか確認してないから危ないぞ」

 

「平気平気、ここを守ってたやつらも動いてなかったし」

 

長い年月でこの遺跡を守っていたと思われる機械は殆どが壊れたかMP切れで動けず只の鉄の塊だった

 

「デイランが最後の一体だったみたいだな。煌玉馬を保管している場所にしては手薄だが。長い年月侵入者と戦う内にデイランだけ残ったか」

 

アルスト達は奥へと進んでいき一番奥の部屋で煌玉馬を見つけた

 

「おお!」

 

「これが煌玉馬か、初めて見た」

 

「名前は【翡翠之大嵐】か、大昔に作られたのに汚れ一つない」

 

「アルストさん、これ奥義で設計図作って量産「無理ですね」はや!」

 

「奥義でも何も見えません。超級職の奥義を妨害する何かが有るみたいですね。まったく、これといいフラグマンってどんな化け物ですか」

 

これとはこの遺跡にあった資料の一つ。これによればフラグマンは煌玉竜という神話級<UBM>と同等以上の力を持つ兵器を<エンブリオ>も無しに作ったらしい

 

(これはその煌玉竜の一体【瑠璃之蹂躙】の墜落予想地点のデータ。見る限り海の中みたいだしもしかしたらまだ海の中にあるかもしれない。これはオーナーに相談だな。ヴィーヴィルでサルベージは出来るかもしれないけど目立つし)

 

現在〈叡智の三角〉では水陸両用の〈マーシャルⅡ〉を作る計画を立てているが、実用化は当分先だろう、となるとオーナーが深海用のモンスターを作る方が断然早い

 

「この部屋で最後ですか?」

 

「はい、ジョブと〈エンブリオ〉で調べましたが隠し部屋のようなものは見つかりませんでした」

 

「では帰りますか。これから忙しくなりますよ」

 

アルスト達が皇都に戻ると【獣王】は煌玉馬をラインハルトに届けに分かれアルスト達はホームに戻りフランクリンに遺跡で手に入れた資料を渡す

 

「オーナー、それ役に立ちそうですか?

 

「ああ、まさかこんなとんでもない物が眠っていたとは。陛下に頼みごとができたかもしれないねぇ」

 

「もし手に入れられたら私にも少し見せてくださいね。ヴィーヴィルの格闘用竜脚や装甲の強化に使えるかもしれません」

 

「もちろん、名前の通り形は竜だろうからヴィーヴィル強化の参考になる部分は多いだろうね。おや、これは・・・」

 

「煌玉竜とは関係ありませんが遺跡から出てきた別の遺跡の資料です。ただ場所が・・・」

 

「カルディナか・・・もしかしたら手遅れかもしれないね」

 

「はい。しかも何の為の遺跡かも分からず遺跡内がどの様になっているのかが不明です」

 

「不明・・・何もないかもしれないし煌玉竜のような化け物兵器が有るかもしれない。陛下に報告して調査を行う必要があるね」

 

 

その後アルストはフランクリンと共にラインハルトに会いに行き遺跡にあった資料の事を報告する

 

「分かりました、煌玉竜はグランバロアに気づかれないように見かけだけの海軍を作りますのでその間にサルベージを行ってください。遺跡は・・・難しいですね、距離が有りますしカルディナに気づかれたら厄介ですから大勢は送り込めません」

 

「最悪私一人で大丈夫です!」

 

「・・・そうですね、皇国の主戦力は顔も名前も知られていますが貴方は着ぐるみを着ていたので知っている人物も少ないでしょうし貴方に任せます」

 

「はい!・・・あのう、それでお願いがあるんですが」

 

「何ですか?」

 

「【ヴィーヴィル】を持っていくのは駄目・・・ですかね?」

 

【ヴィーヴィル】はアルストの持ち物だがその製造に協力した皇国にアルストは言う事を聞かなければならない、ラインハルトが持ち出し禁止と言えばアルストはヴィーヴィルを持っていくことができないのだが

 

「かまいません」

 

「本当ですか!?」

 

「あれを動かせる者は数えるほどしかいませんし、扱えるであろう【地神】は使う可能性は低い。そもそもあれは貴方の特典武具が無いとそこまで脅威ではありませんので」

 

「ありがとうございます!」

 

「しかし直ぐには行けません。カルディナも戦争が起こったばかりでこちらの監視をしているでしょう。近々やってもらいたいことも有るので」

 

「分かりました、それまでは【ヴィーヴィル】の改良に努めます」

 



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超級激突編
第30話


「すいませーん、レムの実一つくださーい」

 

 

 

「はいよ!一つ50リルね」

 

 

 

決闘都市ギデオンの露店でレムの実を買い、上機嫌で歩いていくロボット、いやロボットの着ぐるみを着ているアルストはそのまま人気の少ない路地に入って行き、3人の仲間を見つける

 

 

 

「あら、私が最後ですか」

 

 

 

「あるすとおそい、もうはなしおわった」

 

 

 

「あ、そうですか、まあ私が居なくてもこの作戦は成功するでしょうしそもそも私は付いてきただけなので何もないなら〈超級〉同士の戦いを見て帰るだけなのですが」

 

 

 

「いやいや付いてきただけじゃないでしょ、作戦が成功したら君にはある人物をドライフまで送って貰いたいからねぇ」

 

 

 

「冗談ですよ、分かってますって。その位はしないといけませんからね」

 

 

 

「じゃあ君の出番の時は合図をするから、【ヴィーヴィル】の準備は出来てる?」

 

 

 

「さっきヘスティアを持って行ったので必要になる時には準備万端になっているはずです」

 

 

 

「じゃあ君は決闘は見ても良いけど作戦が始まるまでに闘技場から離れて【ヴィーヴィル】の所に向かってねぇ」

 

 

 

「はい、じゃあもう少し楽しんできますね」

 

 

 

アルストはそういって人が多い通りへと戻っていった

 

 

 

 

□【聖騎士】レイ・スターリング

 

 

 

「えーと、こっちで良いのかな」

 

 

 

俺が冒険者ギルドで懸賞金を受け取り、ガチャを引こうとアレハンドロさんの店に向かっていると

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

中央闘技場に隣接した広場で見覚えのあるシルエットが

 

 

 

『おおう、大人気クマー!気分は来日スタークマー!』

 

 

 

『あ、危ないメカ!気をつけてのぼるメカ』

 

 

 

・・・見覚えのないシルエットもあった

 

 

 

「・・・・何してんのさ、兄貴」

 

 

 

子ども達のアスレチックになりかけている二人のうち兄に声を掛けると

 

 

 

『む、俺をお兄様と呼ぶのは・・・おおレイじゃないかクマー!』

 

 

 

「クマニーサンも久しぶりなきがするのぅ」

 

 

 

 

 

そして、そのまま兄と少し話しをするが、まだ兄は子供に囲まれており、揉みくちゃのままである。しかも少しもう一人の着ぐるみの人の方に行き、着ぐるみの人が助けを求めているように見える

 

 

 

『はーい子供達―!クマさんとメカさんはそろそろいかねばならぬクマー!お別れにお菓子あげるクマー』

 

 

 

『メカさんはワッフルをあげるメカ』

 

 

 

子ども達はお菓子とワッフルを貰うと「くまさんめかさんありがとー」と言って順に去っていく

 

 

 

「王都でもやってたよな」

 

 

 

『フッ、この着ぐるみで動く時には必須クマ』

 

 

 

じゃあ脱げば・・・って脱げないんだった

 

 

 

「それより兄貴、この人って兄貴の知り合い?」

 

 

 

一緒に子供たちに囲まれていたし

 

 

 

『いや?初対面で名前すらしらないクマー』

 

 

 

『私はたまたま通りがかったらクマさんが子どもたちに囲まれていて着ぐるみを着ていた私もなぜか一緒に囲まれただけですよ・・・あ、メカ』

 

 

 

どうやら「メカ」は兄に合わせてやっていただけらしい

 

 

 

『そうクマか、巻き込んですまなかったクマ』

 

 

 

『いえいえ、いままでこんな事無かったので楽しかったメカ』

 

 

 

一応続けるんだ、それとも気に入った?

 

 

 

「おい、何か残ってるぞ」

 

 

 

『そうだなクマー』

 

 

 

見ると兄の頭頂部分にまだへばりついているものがあった。

 

ハリネズミとかヤマアラシをデフォルメしたような生き物が兄の頭部にへばりついていた。それを見てメカの人は動かなくなってしまったがそういう系の動物が苦手なんだろうか?

 

 

 

「すみません、うちのベヘモットがご迷惑をおかけしました」

 

 

 

ベヘモットが兄の頭から飛び降り、迎えに来た〈マスター〉の胸元に飛び込んだ

 

 

 

「それでは失礼します」

 

 

 

『あ、ちょっと待つクマ』

 

 

 

兄は彼女を呼び止め、アイテムボックスからお菓子を手渡す

 

 

 

『プレゼントクマー。二人で食べてクマー』

 

 

 

『つ、ついでにワッフルもあげるメカ、沢山あるから二人で仲良く食べてほしいメカ』

 

 

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

 

『thx』

 

 

 

ベヘモットと〈マスター〉が居なくなると、メカの人は疲れたように座り込んだ

 

 

 

『緊張したメカ』

 

 

 

『小動物が苦手なんですか?』

 

 

 

おれがそう聞いてみると

 

 

 

『え?ああ!そうなんだメカ!前にちょっとあって小動物が少し苦手なんだメカ』

 

 

 

メカの人は立ち上がると驚いたように

 

 

 

『もうこんな時間メカ!急がないと間に合わないメカ!それじゃあ今日は楽しかったメカまた何処かでメカ~!』

 

 

 

そういうと走って何処かへ行ってしまった

 

 

 

「面白いやつだったのう」

 

 

 

『あいつとはまた何処かであう予感がするクマー』



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第31話

□【聖騎士】レイ・スターリング

 

 

 

「少し早く着いたかな?」

 

 

 

俺が闘技場のチケットに書かれているボックス席に行くとルークとマリーの姿が見えない、まだ来ていないようなので闘技場の中を少し見て回っていると

 

 

 

「なあ、聞いたか?」

 

 

 

「ああ、ドライフの戦艦が動いたんだろ?何処に行ったんだか」

 

 

 

二人の〈マスター〉の話し声が聞こえてきた

 

 

 

「戦艦・・・【破壊王】のような者かの?」

 

 

 

前にマリーに見せてもらった映像を想い出したのかネメシスはそういう

 

 

 

「かもな、似たような〈エンブリオ〉の〈マスター〉かもしれない」

 

 

 

「レイさん、どうしたんですか?そんな所で」

 

 

 

俺がネメシスに答えているとマリーが来た。ルークも一緒なので途中で合流したのかもしれない

 

 

 

「さっき、ドライフの戦艦ってのを聞いて」

 

 

 

「ああ、そのことですか。今ちょっとした話題になってますよ」

 

 

 

「マリーは何か知っているのか?」

 

 

 

「知ってますよ、でもその話は席に着いてからしましょう」

 

 

 

マリーは周りを気にしながらボックス席に着くと、レイとルークに話し始めた

 

 

 

「では説明していきますが、レイさん、ドライフの戦艦って何だと思います?」

 

 

 

「何って、【破壊王】の〈エンブリオ〉みたいな戦艦型のエンブリオ?」

 

 

 

俺がそう答えると

 

 

 

「違います、ドライフの戦艦というのはある〈マスター〉がこの世界で作った物です」

 

 

 

ユーゴ―が乗っていた〈マーシャルⅡ〉みたいに作られたってことか?

 

 

 

「〈マスター〉の名前はアルスト・コジャーソ、聞いたことありませんか?」

 

 

 

「ああ、その名前なら前に兄貴に」

 

 

 

前兄貴にドライフとの戦争の話を聞いた時に【獣王】【魔将軍】【大教授】と共に説明された〈叡智の三角〉所属の【設計王】アルスト・コジャーソ

 

 

 

「レイさん、ナイツ&マジックというアニメを知っていますか?」

 

 

 

「知らない」

 

 

 

「そうですか、実はこのナイツ&マジックと言うアニメに竜の姿をしたヴィーヴィルと言う戦艦が出てくるんですが、コジャーソはその【ヴィーヴィル】をこの世界で作ろうと思ったようです」

 

 

 

「アニメの戦艦をこの世界に・・・」

 

 

 

「当然、製造には色々な課題があったでしょうが、コジャーソはクランのメンバー等の協力により【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】を完成させ、戦争に参加し大勢の〈マスター〉をキルしました。聞いた話では炎やら毒やら雷を吐いたそうですよ。」

 

 

 

本物の竜みたいだな

 

 

 

「しかし、そんな物が動くのかのう、すぐにMPが切れてしまうのでは?」

 

 

 

ネメシスの言うとおり、〈マーシャルⅡ〉も戦闘中は秒間1MPを消費すると言っていた、戦艦と言う事だから当然〈マーシャルⅡ〉の何倍もの大きさだろうしMPが持つのだろうか?

 

 

 

「ネメシスさんの言うとおり、普通はそんな物長時間動かせるわけが無いんです、攻撃手段もほとんどがMPを消費する物なのに。なのでアルスト・コジャーソの〈エンブリオ〉はMPに関係しているのではないかと言われています」

 

 



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第32話

「ただいまー」

 

 

 

『お帰りなさいませ、マスター。決闘はどうでしたか?』

 

 

 

アルストはフィガロと迅羽の戦いが終わると直ぐに闘技場から離れ、隠していたヘスティアの所まで帰ってきた

 

 

 

「凄かったね!二人とも〈超級武具〉使って迫力があったよ!」

 

 

 

『そうですか、それは良かったですね』

 

 

 

「今オーナー達どうなってる?」

 

 

 

『はい、フランクリン様の雪辱戦はフランクリン様の負けになり、今プランC、五万六千八百二十六体の改造モンスターでギデオン殲滅作戦を開始したところです」

 

 

 

「・・・うわぁ、オーナーが味方で良かった」

 

 

 

流石モンスター製造の能力を持った〈超級〉。オーナーが本気を出せばフィガロや迅羽を倒せるかもしれない

 

 

 

「もう俺達のする事なくね?」

 

 

 

あってオーナー達をドライフまで運ぶくらい?

 

 

 

『!マスター新しい敵が』

 

 

 

「うん?」

 

 

 

アルストが中継を見るとそこには一人の男がオーナーに向けって

 

 

 

『お前自慢のモンスターは――この【破壊王】がまとめて″破壊″してやる』

 

 

 

「・・・!」

 

 

 

『どうしますか?マスター』

 

 

 

「・・・他のマスターならオーナーから連絡が来るまで待ってるんだがな」

 

 

 

アルストは画面に映る【破壊王】を見ながら笑いヘスティアに指示を出す

 

 

 

「もう最大生成量に達したな?直ぐにオーナー達のいるジャンド草原に向けて出発」

 

 

 

『イエス、マイマスター』

 

 

 

 

□【大教授】Mr.フランクリン

 

 

 

「あいつ・・・広範囲殲滅型か!?」

 

 

 

今、フランクリンの目の前では戦艦が改造モンスターを倒し続けている。あの火力の前では殲滅も時間の問題だろう。だが

 

 

 

「・・・彼がいなかったらプランCの達成は完全に不可能だったろうねぇ」

 

 

 

彼は合図があるまで待機している予定だが【破壊王】の〈エンブリオ〉、戦艦が出たならばそろそろ・・・!

 

 

 

 

戦っていた一人の〈マスター〉は何処からか音がすることに気が付いた、そしてすぐに色々な所で爆発が起き、仲間の〈マスター〉達がデスペナルティになっていく

 

 

 

「一体何が・・・!?」

 

 

 

その男は、いや周りにいた者達も気づいてしまった、前の戦争で彼らを焼き尽くした上空に浮かぶ竜を模した戦艦を

 

 

 

空中に着ぐるみを着た人物が映ると

 

 

 

『メカメカメカ!会いたかったメカよ【破壊王】!』

 

 

 

 

□【設計王】アルスト・コジャーソ

 

 

 

「メカメカメカ!会いたかったメカよ【破壊王】!」

 

 

 

アルストはフランクリンに貰ったブロードキャストアイの前でそう言う。クマの被り物の様な物を付けた人物が此方を見ながら

 

 

 

「・・・まさかあんたが【設計王】だったとはな」

 

 

 

「それは此方の台詞メ・・・いや、台詞だよ」

 

 

 

アルストは着ぐるみを脱ぎながら

 

 

 

「昔あんたの〈エンブリオ〉が戦艦だと聞いた時に戦ってみたいと思った。俺の【ヴィーヴィル】があんたの〈エンブリオ〉に通用するか、勝てるかどうか!」

 

 

 

そういうとアルストはヘスティアに攻撃の指示を出した

 



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第33話

『!』

 

 

 

ヘスティアに攻撃を命じた瞬間、地上から無数の武器、魔法、〈エンブリオ〉の物と思われるスキルが飛んでくる

 

 

 

「・・・やれやれ」

 

 

 

しかしそれらは【ヴィーヴィル】にたどり着く前に全て【ヴィーヴィル】が張っている結界で防がれる

 

 

 

「俺は【破壊王】と戦いたいだけなんだがな」

 

 

 

アルストはこちらを攻撃してくる〈マスター〉の数を確認すると

 

 

 

「やれ、ヘスティア」

 

 

 

『イエス、マイマスター』

 

 

 

ヘスティアが返事をした瞬間、ヴィーヴィルの体に付いている〈マジンギア〉【アンキュローサ】が地上に向かって一斉に攻撃を放つ

 

 

 

「あれ?半分くらい残ったな、上級のマスターは流石に倒しきれないか」

 

 

 

それなら違う攻撃を、と考えていると先ほどのマスターたちの攻撃より強い攻撃が結界に当たる音が聞こえてきた

 

 

 

「!あれは」

 

 

 

下を見ると一人の〈マスター〉が銃から生物を生み出し、此方に向けて撃ってきていた

 

 

 

「〈超級殺し〉・・・だがその程度ではヴィーヴィルは」

 

 

 

【ヴィーヴィル】が〈超級殺し〉の方に口を開き、炎を吐こうとした時、フランクリンが居る所から凄まじい音が聞こえてきた

 

 

 

『マスター、あれを』

 

 

 

「!」

 

 

 

ヘスティアが映した映像には無数の砲撃を受けているパンデモ二ウムの姿があった

 

 

 

「そんな、パンデモ二ウムには人質が居ただろう」

 

 

 

『いえ、砲撃される前に人質は救出されたようです』

 

 

 

【ヴィーヴィル】に設置されている無数のカメラでパンデモ二ウムに人質の姿が無い事を確認してヘスティアは報告する

 

 

 

『パンデモ二ウムの上に敵〈マスター〉を発見、攻撃しますか?』

 

 

 

「やってくれ、間違ってもオーナーには当てるなよ」

 

 

 

『了解』

 

 

 

そう返事をした後、一体のアンキュローサが一人のマスター、レイに狙いを付け、魔法を放とうとした時

 

 

 

「!」

 

 

 

『下からの攻撃を確認、攻撃元は【破壊王】』

 

 

 

「弟に手は出させないってことか」

 

 

 

これではヴィーヴィルは【破壊王】の攻撃を防ぐことしか出来ない為、レイを攻撃できず、フランクリンと、彼を守ろうとしたユーゴ―がレイに倒され二人とも光の塵になってしまった

 

 

 

『フランクリン様とユーゴー様がやられました』

 

 

 

ヘスティアがそう言い終わると、今度は地上から此方を見ている【破壊王】が

 

 

 

「どうする、まだやるか?」

 

 

 

敵は破壊王以外にも沢山の王国のマスター、さらに闘技場にはフィガロなども居る

 

 

 

「・・・今回は帰るよ、ここで無茶をして【ヴィーヴィル】を失う訳には行かない」

 

 

 

アルストがそういうと【ヴィーヴィル】はドライフの方角に向けて動き始めた

 

 

 

「破壊王」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「今回は戦いはお預けだ、だが!次の戦争で俺はお前を倒して俺の【ヴィーヴィル】が最強の戦艦だと証明してやる!」

 

 

 

そういうとアルストは【ヴィーヴィル】の高度を上げ、雲の中へ消えて行った



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第34話

□皇都郊外・〈叡智の三角〉本拠地 【設計王】アルスト・コジャーソ

 

 

 

「ヘスティア、俺達がドライフから離れていたのはたった数日だよな?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「だよな、何で数日でこんなに依頼が入るんだよ」

 

 

 

アルストの目の前には沢山の【設計王】への依頼の紙が詰まれていた

 

 

 

「【設計王】製の【マーシャルⅡ】なら〈叡智の三角〉で5000万リルで売ってるだろ」

 

 

 

普通の【マーシャルⅡ】はチューンとオプション装備込みで4000万リル、【設計王】製が1000万リル高いのは【設計王】という名声とマーシャルⅡに使う素材が高くなった為である

 

 

 

ちなみに【設計王】製のマーシャルは普通のマーシャルに比べて性能三割増しである

 

 

 

「これ殆どオーダーメイドのマーシャル作ってくれって依頼じゃねえか、他の【技師】や【整備士】に頼めよ。金持ってるやつは変にお金使うな」

 

 

 

普通のマーシャルⅡと設計王のマーシャルⅡどちらが人気かと言うと設計王のマーシャルだ、ただ性能が良いと言うだけではなく設計王のマーシャルⅡはナイツ&マジックのメカを基にしているので外観もナイツ&マジックの幻晶騎士に近い、つまりかっこいいのだ。金がある奴は設計王のマーシャルⅡを買い、金が無い奴もいつか買ってみせると頑張っているのだ

 

 

 

「まあ材料に限りがあるからいつでも買えるって訳じゃないけどね」

 

 

 

「アルストさん」

 

 

 

「ん?よおユーゴ―、デスペナ明けたんだな」

 

 

 

「ええ」

 

 

 

「如何した、何かあったのか?」

 

 

 

「実は・・・」

 

 

 

□■

 

 

 

「旅に出るか、寂しくなるな。でもそれだけじゃないだろう?」

 

 

 

「はい、実は聞きたい事があって」

 

 

 

「聞きたい事?」

 

 

 

「はい、ギデオンでの事なんですけど、アルストさんはオーナーのプランを知っていたんですか?」

 

 

 

「・・・ああ、あれか」

 

 

 

ユーゴ―が言っているのは五六八二六体の改造モンスターでのギデオン殲滅作戦の事だろう

 

 

 

「もちろん知らなかった、オーナーは用心深いからね。まあオーナーなら簡単にするとは予想できるけど」

 

 

 

「そうですか・・・」

 

 

 

ユーゴ―がこの事を聞いたのは何となくだ、同じ姉のプランを知らなかったこの人がどう思ったのかを

 

 

 

「ユーゴ―の言いたい事は分かるよ、君はメイデンのマスターだからね」

 

 

 

「!」

 

 

 

「ユーゴ―、俺はどちらかと言うなら世界派だよ俺はこれを、〈Infinite Dendrogram〉をただのゲームとは思っていない、もう一つの世界と思っている。だからこそ、俺は此処でヴィーヴィルを作りたいと思った」

 

 

 

アルストはそう言い前に作って壁に貼っているヴィーヴィルの設計図を見る

 

 

 

「だがね、俺は()()()()()()()()()()()

 

 

 

「俺は会ったことの有るティアンの子供がマスター等に殺されたと言うなら怒るし、そいつを殺す、でも君なら面識の無いティアンの子供がマスターに殺されても怒るだろう。俺はそこまでは怒らないし怒れない、ただ不愉快だと思うだけだ。ギデオンも知り合いが居た訳じゃないしあそこはアルター王国、敵だ。だからオーナーを不愉快だとは思わないよ、そもそもこれは依頼だったんだし」

 

 

 

「そうですか「まあ」?」

 

 

 

「俺、あそこで子供たちにワッフル配ってたんだよね」

 

 

 

「そうでしたね、目立ってましたよ」

 

 

 

「そん時に「ありがとー」って子供たちに言われてな、流石にその日にその子達がモンスターに襲われたりしたら気分が悪い、だからあの時【破壊王】が来なかったら・・・」

 

 

 

「来なかったら?」

 

 

 

「設・計・ミ・ス・で暴走したヴィーヴィルがモンスターを殺しつくしたかもな」

 

 

 

「・・・ッフ、あなたが()()()()ですか?」

 

 

 

「誰でも失敗はするものだよ」

 

□□

 

 

 

今、旅立とうとするユーゴーの周りに沢山のクランメンバーが集まっていた。ユーゴーが旅に出ることを知って見送りに来たのだ

 

 

 

「いやぁ、寂しくなるな」

 

 

 

「そうだな。・・・腕がいいテストパイロットが減ってしまう」

 

 

 

「またアルストさんに頼む回数が増えるな」

 

 

 

「ちょっと待て、何で俺なんだ」

 

 

 

「だってヘスティアだったら100%の性能出せるじゃないですか」

 

 

 

ヘスティアは機械に融合して動かすので《操縦》のスキルを持っていなくても100%の性能を発揮できるのだ

 

 

 

「貴重なメイデン持ちのパイロットが・・・」

 

 

 

「絵になったんだけどなー。薄い本的にも」

 

 

 

「あ、オーナーとユーゴーさんのとオーナーとアルストさんの新刊出来たら送りますね」

 

 

 

二次創作部・・・あとで燃やそうか

 

 

 

「じゃあなユーゴ―これやるよ」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「前に俺が書いたある物の設計図だ、後四枚が何処かにあるから旅の合間に探すと面白いかもよ?」

 

 

 

「ありがとうございます、暇な時に探してみますよ」

 

 

 

「ああ、それと一枚はカルディナに有る」

 

 

 

「カルディナ、何でですか?」

 

 

 

「カルディナに売ったから」

 

 

 

「・・・これ兵器の設計図とかじゃないでしょうね?」

 

 

 

周りで聞いていたクランメンバーが冷や汗を流している。もしかしたら自分のクランメンバーが作った兵器でここを襲われるかもしれないからだ

 

 

 

「大丈夫、流石に兵器は売らないから」

 

 

 

「じゃあこれは」

 

 

 

「俺が〈魔神機甲グランマーシャル〉に影響を受けて作った合体するロボットのおもちゃだ」

 

 

 

「ちょ!?アルストさん!何で俺達に教えてくれなかったんすか!?」

 

 

 

クランメンバーの過半数がアルストの話に驚く、元々ロボットアニメ好きの集まり。そういう物が大好きなのである

 

 

 

「いや、渡そうと思ったんだけどそん時カルディナが何か作ってくれって煩くて適当に設計図渡したんだけど」

 

 

 

「・・・それがおもちゃの設計図だったと」

 

 

 

「そゆこと、他のは知り合いにあげたから。これ知り合いの名前ね」

 

 

 

ユーゴ―が手渡されたメモを見るとそこには数人の名前が書いていた

 

 

 

「ユーゴ―、集めたら俺達の所に持ってきてくれ、ちゃんと金は払う!」

 

 

 

「わ、分かりました」

 

 

 

数人のクランメンバーに頼まれユーゴーは見識を広める旅と同時に【設計王】のおもちゃの設計図を探す旅に出た

 

 

 

 



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遺跡+犯罪者
第35話


□【設計王】アルスト・コジャーソ

「ヘスティア、行けるか?」

 

『はい、いつでも発進できます』

 

「カルディナの遺跡調査・・・やっとか」

 

数日前にギデオンの件で王国にオーナー共々指名手配されたりユーゴーがクランを脱退したりと色々あったが今は未知の技術との出会いを楽しみに明るく行こう

 

「じゃあ皆さん行ってきます」

 

「いってらっしゃ~い、新しい特典武具楽しみにしてま~す」

 

「次は何だと思う?」

 

「やっぱり【ヴィーヴィル】用の追加パーツとか?」

 

「キグルミじゃね?」

 

「機械製造を手伝ってくれる何かが良いな」

 

「「「確かに」」」

 

「何で〈UBM〉に出会って倒すの前提何ですか!?」

 

超級職とは言え生産職に何を期待しているのか

 

「だって・・・ねぇ?」

 

「説得力ねーよな、今までの事考えると」

 

確かにいままでに何体かの〈UBM〉に出会ってMVPで特典武具貰ったけどただ運が良かっただけ何度もある訳がない

 

「もう行きますね、お土産はカルディナの砂で」

 

「いらねえ」

 

「イセキ・テクノロジー・プリーズ」

 

「エターナル・テスト・パイロット・プリーズ」

 

「ヘスティアの事!?やるか!!」

 

しばらく会わないというのにふざけるクランメンバーに手を振られながらアルストはヘスティアが融合した【ガイスト】でカルディナへ向けて発信した

 

 

『マスター、起きてください。到着いたしました』

 

「ん・・・やっとか、三日ぶりの外だ」

 

ヘスティアがある限りMP切れの無いアルストはあまり目立たないためティアンたちがよく通る道から少し遠回りし途中で出てくるモンスターも【ガイスト】の魔力式大砲で簡単に倒せた(【ガイスト】に簡単なドロップアイテム回収用アームをつけたらヘスティアが拾ってくれるのでアルストは本当に何もしなかった)

 

「〈ガイスト〉はガレージにしまって・・・【でいらん】を着て準備完了、行くか」

 

『はい』

 

一見遺跡に着ぐるみで行くというふざけた行為だがでいらんは特典武具でMPを注げば注ぐだけ防御力が上がるのでこの遺跡のように道が狭く【マーシャルⅡ】に乗れないときアルストはいつもこれを着ている。しかもきぐるみと言っても元が機械だからかアルストにアジャストしたからか【でいらん】は機械と認識されるらしくヘスティアが融合することができる。現在第六形態のヘスティアが最大までMPを生成するとデイランは下手な戦闘系超級職の攻撃でもダメージを受けることは無い

 

「特に何もないな」

 

アルストは暫く警戒しながら歩いているがモンスターやデイランのような警備用の機械は一つも見つかっていない

 

「ヘスティア、頼む」

 

『了解』

 

あるすとは【でいらん】からヘスティアを取り出すと壁の一部が剥がれ外に出た機械にヘスティアを融合させる、一分後ヘスティアは壁から出てきてアルストは再び【でいらん】と融合させる

 

「どうだった?」

 

『かなり広いようです、一分では全体まで見に行けませんでした、すみません』

 

「気にするな、元々融合を使って機会を無理やりハッキングして情報を取るようなものだ、先々期文明の技術を相手に難しいだろう。分かった範囲で何かあったか?」

 

『はい、歩いて15分程の場所に教室一つ分程の大きな空間が有りました』

 

「じゃあ取り合えずそこに行くか」

 

 

『ここです』

 

「ここは・・・素材の保管場所か」

 

部屋には奥が見えないほどのアイテムボックスが置かれ一つ手に取ってみるとかなりの量の素材を入れていることが分かる

 

「これだけあれば色々な物が作れる」

 

アルストは部屋のアイテムボックスを全て回収し終えるとヘスティアの案内で下へと降りていく

 

「ここ、アイテムボックスの中身からして工場系の〈遺跡〉と思うが生産設備が見当たらないな」

 

『どの部屋も何かあったような跡はあるんですが綺麗に無くなっているんですよね』

 

「おまけに何か嫌な音がしてるし、材料は手に入ったしそろそろ帰ろうかな・・・ん?この部屋見たか?」

 

『いいえ』

 

アルストが〈遺跡〉一番奥の部屋を開けると部屋には女性の頭部が一つ

 

「いや怖っ!?」

 

『マスター、生首ではないようです』

 

「え、ああそっか。遺跡にこんな綺麗な状態で生首がある訳ないか」

 

視覚がリアル設定だとこういうのがトラウマになったりするんだよな

 

『それにしても何でしょうかこれ?』

 

「アイテムボックスに入らないし、盗難防止の効果がついてるのか。何かさっきより音が大きくなっているしここを出るか」

 

アルストが地上に出るため部屋を出ようとすると

 

〈ジャンク・ボックス〉(ガラクタ箱)

 

何かを肩に押し付けられたと思ったらスキルの発動、【デイラン】はヘスティアにより防御力が上がっているがアルストは全力で襲撃者から離れる。攻撃も特に何も起こらずダメージも受けていない

 

「ただの動いてる機械かと思ったら特典武具か」

 

「・・・なるほど、どうもさっきから変な音がするし〈遺跡〉にしては機械が少ないと思ったら、お前の仕業か〝遺跡殺し〟(レガシー・デストラクター)

 

それは皇国でも指名手配中の〈超級〉(スペリオル)〈IF〉(イリーガル・フロンティア)の【器神】ラスカル・ザ・ブラックオニキスだった

 



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第36話

昔から書こうと思ってたところだから書くスピードが速いのかもしれない


「お前は・・・皇国の〝皇竜〟か、お前だけか?」

 

「・・・〝物理最強〟でも呼んでやろうか?」

 

「いや、いい。〝監獄〟には行きたくないからな」

 

二人とも超級職だが片方は生産職、片方は一応兵器を出しているが目の前の人物の特典武具には効かないと判断し動けない

 

「あのー・・・そろそろ良いですか?」

 

ラスカルの後ろを見ると一人の女性が壁にもたれかかり座っていた。〈IF〉のマスターかと思ったがヘスティアが警戒しながら喋る

 

『マスター、お気を付けください。彼女から機械の気配がします』

 

「・・・煌玉人か」

 

「正解でーす。私はマキナ、昔は【瑪瑙之設計者】(アゲート・デザイナー)って名乗ってましたー」

 

「!!」

 

その名前はクランにあった資料で聞いた事があった煌玉人1号機にしてフラグマン以上の加工技術や生産超級職以上の制作技術を持っていると言われるDEX特化型の煌玉人。はっきりいって

 

「俺の上位互換来たー・・・」

 

「上位互換?」

 

「こいつのジョブは【設計王】だ」

 

「あーなるほど、確かに私前に何人かの【設計王】に勝ちましたし上位互換って言えなくも無いかもしれませんね」

 

『マスター、今のうちに逃げましょう』

 

「・・・【瑪瑙之設計者】(アゲート・デザイナー)俺が見つけたかった」

 

『マスター!?』

 

二人が話しているうちに逃げるべきとヘスティアは言うがアルストは【瑪瑙之設計者】がもう見つかり所有者がいるという事に少し落ち込んでいた

 

「あらら、見知らぬ男性にまで求められるとは。でもすいません、私はつま先から頭のてっぺんまでご主人様の物なので諦めてください。キャッ、言っちゃった!」

 

「・・・」

 

ラスカルはマキナのテンションにめんどくさそうに見ながらアルストが手に持つ頭部を見る

 

「おい、あれが何か分かるか」

 

マキナは顔をアルストが手に持つ頭部を凝視し先ほどまでの行動が嘘のように無表情で見る

 

「・・・わお、驚きです」

 

声と感情が戻ったマキナは本当に驚いたように声を上げる

 

騒がしいがこんな風にマキナが驚愕する所をあまり知らないラスカルは頭部を警戒する

 

「あれは何だ?もしかして」

 

「姉妹、ですね」

 

「何号機だ、4か5か」

 

2号機は自分のオーナーが所有、3号機は破壊された事は確認済みなのでその二つだろうと聞くが

 

「いいえ」

 

「・・・何?」

 

「妹たちの誰でもありません。顔も違いますし」

 

「どういうことだ、お前は長女だから妹以外いないだろう」

 

「そう思ってたんですけどね。驚きました、フラグマン私を作る前に煌玉人を作ってたんですね」

 

まさかのお姉ちゃんですかー、というマキナを他所にアルストとラスカルは予想外すぎる事実に言葉を失っていた

 

「何かわかる事は」

 

「特に危険は無いですね」

 

アルストより先に我に返ったラスカルにマキナはあっさりと言う

 

「体があるならともかく頭部だけなら兵器は無いでしょうしそもそも私たちより性能が低い、私を作る前のテスト機体みたいですね」

 

「どの位の差だ」

 

「私たちを10として8です」

 

「そうか、回収するぞ」

 

ラスカルはそういうと攻撃用ドローンを出し銃口をアルストに向ける

 

「おとなしく渡すなら攻撃しないが?」

 

「冗談、それを聞いてほいほい渡すか、よっ!!」

 

そう言うとアルストは壁を思い切り殴る。【でいらん】の《パワーアシスト》(MP使用量にパワー依存)によりラスカルのせいで脆くなっていた遺跡は大きな音を立て至る所で崩落していた

 

「!バカなのか!?」

 

「じゃあな!この位しないと逃げられなさそうだからな」

 

アルストは上から落ちてくる岩を気にせず走る。頭に落ちようが岩は固い音を出すか割れるだけでアルストにダメージは無い。道がふさがっていても《パワーアシスト》に任せ力技で進んでいく。そうすると出口の光が見え始めた

 

 



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第37話

「【ヴィーヴィル】のガレージを開ける!直ぐにMPを生成!!」

 

『了解!』

 

アルストは地上に出ると【ヴィーヴィル】が入ったガレージを開け中にヘスティアを放り投げる。ラスカルが持つと言う兵器を警戒しての事だ

 

「燃料を使って直ぐに飛べるようにする」

 

アルストは出てきたウィンドウを操作してヘスティアに今まで貯めてきたリソースの半分を使う。完全では無いが何とか飛ぶことができる程になる。何かが近づいてくる音が聞こえその方向を見ると竜の姿をした〈マジンギア〉がこちらに向かってきていた

 

「別の出口があったか」

 

只の無関係な人物ではないかと言う期待はしない。アルストはガレージの中に飛び込み【ヴィーヴィル】に乗り込む。それを確認するとヘスティアがまず結界を起動しその次に浮遊装置など【ヴィーヴィル】を動かすのに必要な装置にMPを注ぐ、ヘスティアはガレージ内が壊れるのも気にせず推進器にMPを注ぎガレージから飛び出す

 

『逃げますか?』

 

「相手に背中を見せるのは危ないな」

 

相手は兵器運用特化の超級職にDEX特化の煌玉人。まだ結界が薄い今なら簡単に【ヴィーヴィル】を落とすだろう

 

「攻撃は余裕があれば、今は回避優先、生成MP量が増えたら機動力と結界に振って」

 

『了解』

 

「あれが【ヴィーヴィル】か、戦争まで皇国で完全に隠されていたから見たことが無かったな」

 

「すごいですねー。本当に作ろうと思いますか、あんなに重い金属の塊を浮かそうだなんて」

 

「まああいつの〈エンブリオ〉が無いと無理だろうな」

 

「煌玉竜の動力炉とどっちが上なんでしょう?」

 

「あの〈エンブリオ〉だろう」

 

アルストの〈エンブリオ〉はMP生産特化と聞いた事があったラスカルはそう判断する。まだ第六形態らしいので仮に〈超級〉になればMPの生産量はさらに莫大になるだろう

 

【紅縞瑪瑙】(サードニクス)のテストに十分な相手だ、攻撃」

 

「ラジャー!《ラッシュ・ミサイル》」

 

紅縞瑪瑙から十六発のミサイルが飛んでくるがヘスティアは冷静に対処する

 

雷霆防幕(サンダリイグカタラクト)発動』

 

【ヴィーヴィル】に取り付けられた【アンキュローサ】全機が手に持つ杖から一斉に電撃を放ち【ヴィーヴィル】に近づくミサイルは途中で爆発し勢いを大きく削られ結界の破壊には至らなかった

 

「ありゃ?」

 

「おい、俺が整備したときは徹甲弾頭のはずだったが?なんで徹甲焼夷弾頭になっている」

 

「えーと、殺傷力を上げるために交換したんですけど・・・」

 

「徹甲弾だったらあの邪魔な結界を破壊できたんじゃないのか?」

 

「・・・」

 

「帰ったらペナルティだな」

 

「そ、そんなー!」

 

「・・・結構上に行かれたな」

 

「そうですねーここからだとゴマ粒位の大きさに見えますね」

 

「巡航砲撃形態から超越狙撃形態に移行、超長距離狙撃銃砲を使う」

 

「お!とうとう使いますか、あんな竜もどき一発で落としてやりますよ」

 

「煌玉人が壊れる、浮遊装置を壊せ」

 

「アイアイサー」

 

勿論【ヴィーヴィル】を飛竜戦艦たらしめている浮遊装置は【ヴィーヴィル】内の最も攻撃が届かない所に隠されているが今まで数々の物を作ってきた設計者(マキナ)は【ヴィーヴィル】の設計図を見たことがあるように一番重要な場所に狙いを定める

 

「発射~!」

 

放たれた砲弾は少しずれて【ヴィーヴィル】の左足を破壊する

 

「ちゃんと狙ったよな」

 

「はい。超本気でやりましたよ」

 

はるか上空にいる敵に当たったが二人は予想外と言うように話す

 

本来ならDEX特化型の煌玉人の攻撃を避けることなどほぼ不可能なのだ。相手の機体性能を考えて避けられないだろうとラスカルは予想していた。

 

「お前の演算を乱す、予測した何かが有るという事か」

 

「あ~・・・起きちゃいましたか」

 

【紅縞瑪瑙】から攻撃が来る少し前アルストは【ヴィーヴィル】の中でヘスティアに指示を出していた

 

「とりあえず距離を取れ!最悪一発で破壊されるぞ」

 

『了解』

 

「何か見るからに危ない装備してるし。羨ましい、何処かにもう一体位煌玉人居ないかな」

 

アルストがモニターに映る紅縞瑪瑙を見ながらつぶやくと

 

『・・・ここにいます』

 

「まあ確かにいるんだけどね」

 

『マスター誰と話しているんですか?』

 

「え?今ここには俺以外ヘスティアしか・・・」

 

『・・・私がいます』

 

・・・・

 

「動くの?」

 

『・・・少しずつMP貰い何とか。MPください』

 

「あー悪いけど今はちょっと無理だ。戦闘中でな」

 

『・・・手伝います。接続の許可を』

 

「接続?手伝ってくれるなら良いけど」

 

それを聞くと煌玉人・・・仮に0号機は首から無数のコードを出しそれぞれがヴィーヴィルの至る所を這い機械の隙間へと入っていく

 

『!マスターMPを吸収されています!!』

 

『失礼、彼から吸収しただけでは最低限でしたので少し手荒になってしまいました。この戦艦には何の影響もございませんのでご安心ください。現在の状況も簡単に理解しております、下に居る妹からこの戦艦を守り逃げ切ればいいのですね』

 

「そうなんだけど・・・あれ?妹って分かるの?」

 

マキナが言ったことを考えると二人とも存在すら知らないのではとアルストは思ったが0号機は簡単に

 

『私が眠っている間も情報は遺跡に貯めこまれ私の中に保存していました、ですのであなたが〝化身〟の関係者である事も知っています』

 

「〝化身〟?いや俺は皇国のクラン〝叡智の三角〟の・・・」

 

『今話している場合ですか!?』

 

「ああそうだった。手伝うって何をしてくれるの」

 

「まずは・・・攻撃の回避です」

 

そういうとヴィーヴィルは急な体勢の変え方をする。すると直ぐに何かが当たった音がする

 

「何だ!?」

 

『被弾!左足が破壊されました。いま態勢を変えていなかったら重要機関が破壊されていたでしょう』

 

「そうか、左足を壊されたがそれくらいなら大丈夫だな、次も何とか避けてくれヘスティア」

 

『いえ、違います。【ヴィーヴィル】を動かしたのは彼女です』

 

「!!」

 

『緊急事態でしたのでお許しください』

 

「そう言えば『攻撃来ます!!』」

 

アルストが質問しようとした時、下からまたミサイルが飛んでくる。雷霆防幕で防御するが数が多く何発か結界に嫌な音を出していた

 

「あいつら本気出してきたな」

 

『私に火器管制の権限をください』

 

「え?あいつらどうにかできる?」

 

『もちろん』

 

「じゃあおっけー。ヘスティア」

 

『了解』

 

ヘスティアは攻撃が少し途切れたタイミングで【アンキュローサ】の操作を止める、すると0号機は直ぐに【アンキュローサ】の操作権を手に入れ紅縞瑪瑙に向けて攻撃を開始する

 

 

「わあ!撃ち返してきましたよ!!」

 

「回避」

 

「イエッサー!」

 

マキナは言葉とは裏腹に一切のミスが無く【紅縞瑪瑙】を操縦して攻撃をかわす、しかし

 

「・・・おい、掠ってるぞ」

 

「ん~、8なんて言いましたけど厄介ですね。こちらの動きを学習しているような」

 

「何?」

 

厄介な、とラスカルは思ったがそれとは別に十分だと思った

 

「コジャーソに連絡できるか?」

 

『ちょっと待ってくださいね・・・できました!どうぞ話してください』

 

【紅縞瑪瑙】にスピーカーの一つから何やら驚いた声が聞こえる。【紅縞瑪瑙】と【ヴィーヴィル】通信を繋げたと分かったラスカルはそのまま喋る

 

「アルスト・コジャーソ、少し話がしたい。戦いは一旦止めよう」

 

0号機から突然通信が来たと言われ驚いていると【ヴィーヴィル】からラスカルの声が聞こえた

 

『アルスト・コジャーソ、少し話がしたい。戦いは一旦止めよう』

 

先ほどまでと180°の行動に驚きヘスティアと0号機の二人もどうするのかアルストの指示を待つと

 

「・・・分かった、話とは?」

 

『一つ提案だ』

 

「何?」

 

『〈IF〉に入らないか?』

 



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第38話

少し早いですが皆様良いお年を~


「・・・はい?」

 

何故?それしかアルストの頭には無かった

 

「入らないかと言って置いて隙を見て0号機を奪ってキルする系?」

 

『違う正式な勧誘だ、【誓約書】を書いても良い』

 

《真偽判定》のアイテムが反応していないので嘘は言っていない

 

「何故だ?何故〈超級〉にもなっていない俺を?」

 

『もちろん正式加入では無くサポートメンバーからだがな。もちろん資金やアイテムも支給するし出来る限り俺とマキナ・・・【瑪瑙之設計者】が【ヴィーヴィル】や他の兵器の開発、改造を手伝う。お前の夢は【ヴィーヴィル】を作り上げ強者になる事だったな?【機械王】よりこちらの方が夢に近づけると思うが?』

 

『マスター・・・』

 

ラスカルの言う通り〈IF〉に入った方が今よりも【ヴィーヴィル】を強く出来る、しかし

 

「断る」

 

アルストは躊躇い無く勧誘を蹴った

 

『何故?』

 

可能性はあったがアルストが断る可能性は低かった、おまけに予想外の返事の速さにラスカルは理由を聞く

 

「確かに〈IF〉に入れば【ヴィーヴィル】は更に強くなるだろう、予想よりも早く」

 

『ならば何故?』

 

「寂しい」

 

『は?』

 

「確加入すれば【ヴィーヴィル】は更にパワーアップするだろう。だがそこに俺とお前だけは寂しすぎる」

 

『確かに賑やかではないだろう、だがそんな理由で夢への近道をあきらめるのか』

 

「夢に向かって仲間と喋りながら歩く、俺はそういうのも楽しむタイプのゲーマーだ」

 

『・・・そうか、残念だ』

 

「まだ戦うか?」

 

『メンバーにならないのなら』

 

「そりゃ残念」

 

ラスカルはマキナに指示を出し【ヴィーヴィル】への攻撃を再開した

 

「さっきの会話で時間を稼げたと言ってもラスカルが何を持っているか分からない以上結界の防御に頼るのは危険だな」

 

『あちらの機体とこちらの機体とでは搭乗者のジョブでこちらが圧倒的に不利です』

 

「・・・そうなんだよなぁ」←メインジョブ機体強化関係スキル0

 

【器神】には機械専用回復魔法のようなスキルが有る、相手は動力炉を積んでいるはずなのでこちらが持久戦をしても不利になるのはこちらだけ

 

「逃げるしかないか。どうやって逃げるか・・・」

 

単純に高度を上げて、というのは却下だ。他の奴らならそれでいいがラスカル達には全然意味がない

 

『毒はどうですか?』

 

毒か、確かに強化した毒をラスカルが吸えば隙が生まれるかもしれないが

 

『無理ですね、気体が入れるような隙間がある訳がありません』

 

「だよなあ」

 

あれの制作者はフラグマンの助手をしていた煌玉人、そんなミスを犯すはずがない

 

「どうするか」

 

『決断はお早めに。現在の機体性能では永久に攻撃を避けることができません』

 

アルストがのんきに話している間もラスカルは攻撃を続け0号機はそれを何とか避けていた

 

「あとどのくらい持たせられる?」

 

『1週間は』

 

「十分」

 

アルストはそういうとアイテムボックスから一つの黒電話を取り出した

 

ラスカルはアルストとの戦いが少し面倒になってきていた

 

「・・・2時間」

 

それはアルスト達と戦い始めて経った時間こんな長時間の戦闘は少なくとも〈マスター〉相手では初めてだった

 

「私の攻撃はほぼ避けられ相手の攻撃も当たらない、面倒ですね~」

 

「実弾はほぼゼロ。魔力式武器はあるがあれに届くレベルは扱いが難しい。チッ」

ラスカルは自身の〈エンブリオ〉の能力で複数の動力炉を持っているのでヴィーヴィルを破壊できるほどのMPを手に入れることは簡単である。しかしその動力炉は今自分が乗っている【紅縞瑪瑙】とマキナに使っているので高い威力の攻撃をするためにはどちらかのMP配給を少なくする必要がある。もちろんそんなことをすれば攻撃を避けることができなくなるからやらないが

 

「!!」

 

突然マキナが全速力でその場から離れる、急な行動にラスカルが何事か聞こうとすると

 

「!?」

 

先ほどまでラスカル達が居た場所が爆発し暴風が吹き凍る、当然【ヴィーヴィル】がやったことではない

 

「ご主人様下です!」

 

またもマキナが今いた場所から離れると先頭が鋭く回転している一隻の船が砂の下から出てきた

 

「何だこいつら、アルストの事は調べたがこんなことができる仲間がいると言う情報は無かったぞ」

 

ラスカルが考えていると船内から数十名の〈マスター〉が出てラスカルが乗る【紅縞瑪瑙】を上手くいったと仲間内で言いながら見下ろす

 

「〈IF〉のラスカル・ザ・ブラックオニキスだな」

 

『・・・お前らは』

 

「俺はクラン〈デザートカメレオン〉のオーナーをしているスコーピオン。まあ見たらわかると思うが、PKクランだ」

 

『名前カメレオンじゃないんですねー』

 

『黙ってろ。・・・どうやって俺の居場所が分かった』

 

「簡単な話だ、〈DIN〉で売ってた」

 

『・・・は?』『あ、ご主人様』

 

「〈DIN〉がお前の居場所・仲間の人数・攻撃方法の一部を売ってた」

 

『あいつら・・・!』『ご主人様』

 

今のラスカルはマキナの言葉をスルーし〈DIN〉への不満を漏らす

 

『今までもそうだあいつらに情報を売られ失敗、中断しなければいけない行けなかった計画がどれほどあるか。と言うかあいつらはどうやって俺がここにいることを知った?ここに来るまで誰にも見られていないはずだが』

 

『あの~ご主人様?ご主人様』

 

『何だ少し静かに『逃げてますよ?』・・・は?』

 

マキナが指をさす方向を見ると【ヴィーヴィル】はラスカルがスコーピオンに気を取られているうちに全速力でその場から逃げていた

 

『・・・ああ成程、アルストが〈DIN〉に情報を打ってこいつらをここまで連れてきたのか』

 

『なるほど~、さすがの私でも二組同時を無理ですからね~』

 

はっはっはと笑うマキナの後ろでラスカルは何も言わずゆっくりと椅子に深く座る

 

『あ、あのご主人様?』

 

「おい!俺たちを無視するなよ!!」

 

「そーだ!お前たちだけで俺たちに勝てると思ってんのか!?」

 

「余裕かましてんじゃねえぞ!《クリムゾン・・・『潰せ』『了解です!』」

 

ラスカルが本気で怒っていると感じたマキナは余計なことを言わずに行動に移す。誰だって二時間も面倒な戦いをさせられ相手が乱入者を呼んだ挙句に呼んだ本人が逃げれば怒る。

 

ラスカルが怒っていたからか、メンバーの一人が《クリムゾン・スフィア》を使おうとしたからか五分後にはラスカルの姿が無く〈デザートカメレオン〉は全員光の粒子となりそこには砂しか存在していなかった

 




〈デザートカメレオン〉の全滅理由、見方が《クリムゾン・スフィア》を使ったから。もちろん違いますけどね。



実は私最近久しぶりにハーメルンにログインしたのですが新着メッセージに最新は何時になるのですかと言うメッセージが来ていました。

素直に言います。え、何かうれしい私の更新全然していない小説を待ってくれる人がいるんだなって思いました。ですがこれをしたら最悪アカウントロックになる可能性も有りますのでお止めください。私的には別にいいのですが、出来るときは出来るし出来ないときは出来ませんと言うだけなので。

作品の方は未完で終わりにしようとは思っていません、戦争編も書きたいし。

ですが現実でやらなければいけない事が有るのですみませんが気長にお待ちください。


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第39話

「しばらくクランに引きこもる。次ラスカルに会ったら本気で殺される」

 

『じゃあ何であんな逃げ方したんですか』

 

「あれが確実だったんだよ。【瑪瑙之設計者】が居る前で後ろ姿見せるわけにもいかないし」

 

『私もマスターに同意します。現段階では妹に勝てる確率はとても低いので』

 

『・・・マスター、もう着きますけどそれ大丈夫何ですよね?皇国で何か起こって指名手配なんて笑えませんよ?』

 

「大丈夫だろ、俺の事を主と認めたみたいだし、アイテムボックスにも入れられる」

 

『その通りです、私は試作機。もちろんある程度の戦闘などを想定しておりますが妹たちのように〝化身〟に対抗するために生まれたわけではありませんのであなた方を攻撃する理由はありません』

 

『・・・それならば良いのですが』

 

「ただいまー!」

 

「お!皆!アルストさんが返ってきたぞ」

 

「お!意外に早かったな!!」

 

「今回はどんな特典武具を持って帰ったんだ!?」

 

「おいおい今までのアルストさんから考えて強化パーツだろ、一万かけてんだぞ」

 

「でいらんを忘れたのか?着ぐるみだ2万賭けたしな」

 

「大穴狙いの武器に5万来い!」

 

「〈UBM〉にすら遭遇してねーよ!!?」

 

「またまた~そんなこと言ってしっかり持って帰ってきてるんでしょ・・・え?本当にないの?な~んだ少し楽しみにしてたのにな」

 

皆が期待外れと言う風にアルストから離れて行く、それにアルストは少しイラッと来た

 

「へ~返ってきたクランメンバーにそんな態度とるんだ、なら良いよ。皆には今回カルディナで入手したとんでもない物見せないから」

 

「「「すんませんでしたー!!」」」

 

言った直後の見事な手のひら返しにさすが機械の国のトップクランのメンバーだなと思った

 

「そ、それでアルストの旦那、一体どんな素敵機械を持ち帰ったんで?」

 

「・・・あんた確か女性で日本人じゃなかったよな」

 

「細かいところは気にしないで早く早く!」

 

「はあ、これだよ」

 

アルストは少し皆を驚かそうとアイテムボックスから0号機を素早く取り出す。しかし

 

「え?まって、遺跡の中にあった機械よね?これだけ人に近いならもしかして」

 

『初めまして』

 

「「「特典武具より凄いの持って帰ってきたー!!?」」」

 

「さすがアルストの兄貴!!」

 

「俺たちの予想をはるかに超えてきやがる」

 

「あなたが頭だけでも機械でも、いや。機械だからこそ結婚してください」

 

「いや!こんな奴より私と」

 

「いいや俺と!」

 

「「「彼女は俺のもんだー!!!」」」

 

「俺のだよ!!?」

 

「「「そんな、お父様!!」」」

 

「止めろ!!」

 

本気で0号機を嫁にしようとする男三人に少し恐怖を感じたが当の本人は何を思っているのか表情が読み取れなかった

 

『・・・申し訳ありません、私は既にご主人様の物なのです・・・身も心も///』

 

アルストにはこれがちょっとした冗談だと言うのは理解できた、しかし彼女にやられた男たちはそれに気づかず

 

「・・・あ?」

 

アルストに殺意を向けていた

 

「お前ら、必殺スキルで一気に決めるぞ」

 

「「応!!」」

 

「落ち着け!」

 

その後アルストは10分程走る羽目になった

 

 

「つ、疲れた」

 

「大変ですね」

 

「お前のせいでな」

 

結局彼らとは0号機が後日二人っきりでお茶をするという事で話は終わった(後日聞いた話では0号機はお茶を一杯飲んですぐに帰ったらしい)

 

「そういえばお前って名前無いの?」

 

「名前ですか?」

 

〈叡智の三角〉メンバーが持ってきた頭の部分が無い〈マーシャル〉を0号機は自身に接続し動くのを確認するとアルストに一礼をする

 

「今まで名乗らず申し訳ございません。私はフラグマンに作られた煌玉人0号機正式名称【翠玉之改造者(エメラルド・リフォーマー)】と申します」

 

 

「改造者?」

 

「はい、私には妹たちのような強力な兵装はございませんが代わりに自分を含めたあらゆる機械を解析しアップグレード・・・改造する能力が有ります」

 

詳しく聞くと改造者はフラグマンが最初に制作した煌玉人というのもあり妹たちのような超級職の奥義以上の強力な特殊能力などを持たせずに作ったテスト機体だったらしい。しかしフラグマン制の煌玉人がただのテスト機体な訳が無く改造者は自身が手に入れた情報をもとに自身を改造できるように様々な能力を持たされたらしい

 

「「「マジですか!??」」」

 

「何で盗み聞きしてた方が俺より方が先に驚くんだよ」

 

「え?機械であれば何でも?じゃあこの〈マーシャルⅡ〉の問題点とか分かる」

 

「はい」

 

「「「「お父様!娘さんを俺(私)にください!!」」」」

 

「やるか!てかさっきより人が増えてるし!!」

 

 

「てことは材料さえそろえば古代機械を手に入れ放題?」

 

「あ、それは無理です」

 

メンバーの一人が言ったことを【翠玉之改造者】は否定する

 

「え?今まで古代の機械見たことが無いの?」

 

「いえ、見たことはありますし一部ならどの様な構造も知っているのですが一からの製作は出来ません」

 

その言葉を聞いていたメンバー全員の頭の上に?マークが浮かぶ。構造を知っており機械を改造するほどの力が有るのなら機械を制作するほどの能力を持っていても可笑しくは無い。むしろ無い方が不自然だろう

 

「私がフラグマンのアシスト用に作られたのもあるのでしょうが私は煌玉人の一体。他の娘と似た機能は持たず出来るのは自身の名前通り改造だけ。その他の多くは出来ない、出来る可能性が有ってもロックされます」

 

「なるほど、その代わり時間が有れば対象物を分析してその強化策を考え実装するのか」

 

「はい、もちろん素材や技術力。改造元のキャパシティオーバーで出来ないことも有りますが。ちなみに妹は機械を制作できますが私のように幅広い改造は無理でしょうね」

 

「これまたとんでもない物を持って帰ってきたねえ」

 

「あ、オーナーただいまです」

 

「聞きたいのだが君は設計図の段階でも改善点が分かるのかな?」

 

「少しは、現物を見たほうが分かりやすいところもありますが」

 

「フフフ、まったくアルスト君は外に出るたびにとんでもない事をしでかすねぇ!」

 

「えっと・・・ほめてます?」

 

「ああ!君がデンドロを始めた事に少し感謝したくなる位には」

 

「ちなみに、何を作る気で?」

 

「それは悪いがもうしばらく秘密だ、皆びっくりするよ」

 

作り始めたら改造者を貸してねと言うとフランクリンは上機嫌で先ほどまでいた部屋に戻っていった

 



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第40話

皆さんお久しぶりです、遅くなった言い訳という訳ではありませんが一言。





就活は早めから始めないと大変なことになる!(経験談)


ラスカルを怒らせて帰って来たあの日からデンドロ時間で5日。【設計王】として仕事も一段落してクラン内でゆっくりデンドロを楽しもうと考えていたが直ぐに忙しい日常に戻ってしまった。理由は・・・

 

「ご主人様。そこはこのような形で配線を設置すれば多少ですが魔力漏れが少なくなりますよ」

 

このように煌玉人0号機【翠玉之改造者(エメラルド・リフォーマー)】改め『ヴィーラ』が今まで制作した設計図を先々期文明の機械を参考に現在の技術力や素材で改良できるところ見つけ報告してきたからだ。勿論それだけで忙しくならない。設計図も自分のペースで書き直そうとしていたのだがどこからその情報を手に入れたのか〈DIN〉がその情報を売り始めてしまった。すると今までアルストが設計した〈マーシャルⅡ〉を買った人々が〝叡智の三角〟に押し寄せ新しい〈マーシャルⅡ〉に改造してくれと言う。最近疲れていたし書き直しに時間がかかりそうだったのでしばらく先だと断ろうとすると突然ベヘモットとベヘモットの〈超級エンブリオ〉レヴィアタンが来て

 

『書きなさい』

 

と脅してきた。〈マーシャルⅡ〉の改良は皇国の戦力アップになるので早くやれとのことらしい。勿論〈エンブリオ〉はMP生成特化で職業が生産職の【設計王】であるアルストが〈物理最強〉に反抗できるわけもなく設計図の書き直しに努めていた。

 

ちなみにだが『ヴィーラ』の名前の理由は

 

 

『お前にはこれから『ヴィーヴィル』に乗ってその力を振るってもらう予定だし。『ヴィーヴィル』から少し名前を貰って『ヴィーラ』だ!!』

 

『ラはどこからですか?ご主人様』

 

『お前の名前、翠玉(エメラルド)から取った。嫌か?』

 

『いいえ、私は『ヴィーラ』今後この世界がどうなるか分かりませんが最後まで主のために仕えさせていただきます』

 

 

「何で楽しむためのゲームで仕事みたいな事やってるんだろう」

 

『【設計王】も職業の一つだからでしょう』

 

「それ意味違うだろ」

 

「ご主人様、お使いからただいま帰りました」

 

「ありがと」

 

五日前まで頭しかなかったがヴィーラだったがクランメンバーの一人が体を作ってあげるとヴィーラに言った。それにヴィーラは微笑んでありがとうございますと言った。言ってしまった。その結果

 

「何度言えば分かる!こんなに胸部を大きくしたらただ動きづらいだけだ!!やはり胸部に無駄なスペースを作るよりもスマートにペッタンコにするべきだ!!」

 

「ふざけんな!お前らは彼女をよく見てないのか!!彼女にメイド服を着てもらってさらにメイド服から主張する胸部!最高だろ!!」

 

※彼らは睡眠不足・性癖ドストライクな機械女子・初めて見る煌玉人などの影響でハイな状態になっておりますのでどうかご容赦ください。

 

「クソ!まさかここにきてビックかスモールで揉めるなんて!!」

 

「このままではヴィーラさまの体の製作に取り掛かれない」

 

「やはりここは・・・」

 

「「「お父さんはどちらが良いと思われますか!?」」」

 

「何?急に」

 

「いや、ヴィーラちゃんって頭しかないじゃないですか。だからヴィーラちゃんの体を作ろうと思って」

 

「あ、安心してください。体に発信機仕込んだり自分で体を遠隔操作できるようにしようとしてたやつはオーナーの寄生型モンスターの巣になって動けませんから」

 

「さらっと恐ろしい事を聞いたが。体ねえ・・・中間で良いんじゃない?どっちかにするよりは」

 

「う~ん」

 

「まあ、お父様がそういうなら」

 

「いつまでそう呼ぶんだ」

 

「では!我々はこれから制作に取り掛かりますので!!」

 

「まっててねダーリン♡」

 

「はあ・・・、ちょっと待て!今変なのが・・・ってもういないし」

 

少し変なのも混ざっていたが彼らの腕は確かだしあまり深く知りたくないので放置することにした

 

そして数日で体は出来上がった

 

「私の体の為に皆様ありがとうございます」

 

ヴィーラは完成したばかりの体を付け制作人にお礼をする、美女と来ている服がメイド服のおかげか皆だらしのない顔になっていた。ちなみに、メイド服はいつの間にか制作人が目を離した隙に着せられていたらしい。この場所までは入れるのはクランメンバーだけなのだが、なぜこのクランの人間はある分野の事になると高スペックレジェンダリアンになるのだろうか

 

「しかし、これだけのものを数日で作るとは凄いですね」

 

「ああ、それはメンバーのエンブリオの能力です、範囲内の時間を早く出来るっていう」

 

「そうなのですか、本当に多種多様ですねエンブリオと言うのは」

 

「・・・」

 

「ご主人様?私の体をじっと見つめてどうしました?」

 

「いや、何か変な物が付いていないかと」

 

「そんな!お父様私たちはヴィーラさんの事を思いながら愛情を込めて作ったのに!」

 

「先々期文明の素材も使った最高品に仕上げたのに」

 

ちょっとした悲劇は有ったが特に大変な事にはならずにヴィーラの体作りは「ちょっと待て」

 

「どうしました?お父さん」

 

「ナチュラルにお父さんと呼ぶな。ヴィーラ、腹を見せろ」

 

一般女性に言ったら捕まりそうな命令にヴィーラは従って服のボタンを外して腹をアルストに見せた

 

「・・・これ、どっかで見たことあるんだけど」

 

「流石お父さん、もうそれに気づきました」

 

「いざと言う時のための隠し武器、魔力を熱量に変換し至近距離から浴びせる兵装です」

 

「それ前作った【インペリアル・グローリー】の装備スキルじゃねえか!また作ったのか」

 

「はい!前回と比べて小型になったため威力は低くなりましたがその分材料費と使用時の消費力を大幅に下げることが出来ました!」

 

「これにアルストさんの【ヘスティア】と組み合わせれば戦闘系超級職にも引けを取らないはず!!」

 

(そもそもヴィーラは戦闘を視野に入れていない煌玉人だし【ヴィーヴィル】の運営に関わってもらう予定だから相手と直接戦闘の予定は無いのだが)

 

「・・・これ音声入力で動いたりしないよな」

 

「勿論です!間違いでホームぶっ壊したくないんで」

 

「武器はこれだけか?」

 

「はい」

 

「他には変なギミックは付けてないな?」

 

「勿論です」

 

(・・・《真偽判定》の付いたマジックアイテムに反応は無しか)

 

「ヴィーラ、何か余計なものが付いているか分かるか?」

 

「そうですね、動きに支障をきたすような物はありませんが。この服のポケットに入っていたこのメモはなんでしょう?」

 

「私たちは知りませんよ、体を作ることに必死だったので」

 

メモにはクラン内のある場所が丁寧に地図付きで書かれていた

 

「ここに行けってことか?」

 

「この場所って特に何もありませんでしたよね?」

 

 

「ここか」

 

「開けますね、確かここの鍵は・・・これか」

 

ガチャリと鍵を開け部屋の中を見るとそこには

 

「・・・チャイナ服?」

 

「こっちにはバニー服が有りますよ」

 

「ていうか・・・」

 

「「「多いな!?」」」

 

部屋が狭いと言うのもあるがその部屋には数十着以上の服が綺麗に置かれていた

 

「いったい誰がこんなに」

 

「・・・さすがに調べないといけないよな」

 

 

犯人の行動に少し恐怖を覚えたアルストは監視カメラなどを確認して犯人が誰か探そうとした結果

 

「何もわからなかった」

 

何の成果も得られなかったことを皆に報告した

 

「あの部屋の周りに監視カメラ付いてなかったから映像で犯人を探れなかった。唯一分かったのがメイド服とその他の服の製作者は全て同じという事。そしてあの部屋に服の名前を書いた紙を置いておくと三日以内の部屋にその服が置かれているという事だけ。そして着た服は脱いでそこらへんに放置しておくと30分も経たずに消失して後日新品が置かれている。オーナーに頼んで追跡用の超小型モンスターを服に忍ばせておいたが、服が消失すると同時に反応が消え、新品の服と同時に反応が現れる、ちなみにモンスターには数日たっても解除されない【恐怖】の状態異常が付いた状態でだ」

 

「・・・え?怖いんですけど、結局相手が男か女なのかも分かってないんですよね」

 

「ああ、まさかドライフにこんなハイスペックなレジェンダリアンがいるとはな」

 

「・・・実害が無いなら放っておきません?俺関わりたくないんですけど」

 

後日、服の犯人の話を誰もしなくなっていた

 



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遺された希望
第41話


 

『煌玉人0号機 【翠玉之改造者(エメラルド・リフォーマー)】 現在名【ヴィーラ】

 

カルディナの遺跡にて発見、座標は下記に記入。現在遺跡からの脱出時に指名手配中の〈超級〉【器神(ザ・ウェポン)】ラスカル・ザ・ブラックオニキスとの戦闘により崩壊。遺跡内の価値がある物は全て取られていると思われる。

 

【翠玉之改造者】は名前の通り機械などの改造を得意としており、改造前と比較し性能は格段に上がる。しかし、それは素材を選ばなければの話。現在、皇国が安定して得られる素材アイテムでは【翠玉之改造者】が最良と考える改造案を実現させることはほぼ不可能、またはコストが掛かりすぎてしまう。

 

また、【翠玉之改造者】を見つけた時に頭部だけだったのが原因か対象が複雑、又は完成度が高い場合は現在の処理能力では改造できないとのこと。素材があれば現在の体を改造して自身の性能がアップできるとのこと。

 

尚、【翠玉之改造者】は名前が改造者だからなのか妹が機械を作れるように作られているからなのか【翠玉之改造者】は製作者であるフラグマンに【一から機械を作る】という行動にロックを掛けられている。

 

【翠玉之改造者】は自身も改造することが出来るので自身を改造すればこのロックは外れ機械を制作することは出来るようになる。しかし、製作は出来ても素材が無いと結局作れないのであまり意味が無い。そのうえ製作技術に自身のリソースを使うので改造の性能が落ちるのと同時にDEX特化型である【瑪瑙之設計者】には製造では絶対に勝てない。』

 

「とりあえずこんな物か」

 

「私の事を書いていますがどうしたのですか?」

 

「ラインハルト様への報告書だ、ヴィーラは今まで存在すら知られなかった煌玉人0号機だからな、改造者と言うのも含めて色々と気になるんだろう。もしあれを強化できるならこれからの王国の戦争で有利になるからな」

 

「あれ?」

 

「【皇玉座】だよ」

 

【皇玉座】とはドライフの皇都ヴァンデルヘイムに存在する兵器【皇玉座 ドライフ・エンペルスタンド】の事である。その威力はすさまじく、特殊な能力を持っていない限り【SUBM】すら一回の攻撃で倒すことの出来る可能性を持っている

 

「まあ、無理ですね。あれフラグマンが作った物ですし。少なくとも私自身を強化しないと出来るのか出来ないのかも分かりません」

 

「まずは遺跡を見つけて強化に必要な素材を見つけたいが・・・都合よく遺跡が見つかるかどうか」

 

 

「王国で遺跡が見つかったようです」

 

「行ってきます」

 

「待ちなさい」

 

どうやら行って来いと言う意味では無かったらしい。まあ【ヴィーヴィル】は勝手に動かせないので一人で行っても王国の〈マスター〉に瞬殺されて終わりなのだが

 

「あなたは先日のフランクリンの作戦で王国の関係者に顔を見られているのでうかつに行動は出来ないでしょう。あなたが行けば叔父上たちの身の危険になりますので直接〈遺跡〉内へは行かないでください」

 

「直接、とは?」

 

「誰にも知られておらず、戦闘力を持ち合わせた者がいるでしょう」

 

ラインハルトはそういってアルストの横に立っている者を指さした

 



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第42話

□【聖騎士】レイ・スターリング

アズライトと料理を食べ終え、それでも満足できないネメシスにお金を渡して買い出しに出し食堂を出ると

 

「ん?」

 

気になる物を二つ見つけた。一つは食堂に隣接した談話室に宿泊客が集まっていたから。もう一つは

 

「〈マジンギア〉?」

 

人型の機械という王国と敵対しているドライフ皇国にありそうな物だった

 

「それを言われるのは今日だけで十六回目デース」

 

そう言ったのは人型機械の横に座っていた男だった

 

「貴方は?」

 

「ワタシはマリオ、世界中を旅して先々期文明の<遺跡>の調査をしてイマース」

 

「<遺跡>の・・・」

 

「ソシテ彼女は確かに外見は皇国でよく見る〈マジンギア〉かもしれまセンが彼女は〈エンブリオ〉デース」

 

「〈エンブリオ〉?」

 

『私から説明致しましょう』

 

見た感じ手に紋章も無く近くにそれらしい〈マスター〉も居ないのに何故〈エンブリオ〉と二人で行動しているのか疑問に思っているとマリオさんの横にいた〈エンブリオ〉が手を上げる

 

『私の名はゴーレム、本来ならマスターも一緒に来るはずだったのですが急用ができてしまいまして。マリオ様が一秒でも早く遺跡に行きたいと駄々をこねまして、心配した私のマスターが私を護衛に同行させたという訳です』

 

「ハハハ、申し訳ないデース」

 

『私の特性上、機械の体が居るのですが・・・手元にあったのがカルディナで購入したこのドライフ産の〈マジンギア〉しか無く。最近の事もありまして、よくドライフの者と勘違いされてしまうのです。幸い《真偽判定》でドライフの者でないのは直ぐに分かってもらえるのですが』

 

《真偽判定》で確認したのなら彼らは本当にドライフの関係者では無いのだろう

 

その後、レイの持つ煌玉馬を鑑定した後、宿に戻るとマリオはドライフ皇国元帥ギフテッド・バルバロスの顔になると今回の作戦の味方である【魔将軍】と連絡を取り、情報交換を終えるとヘスティアに話しかける」

 

「分かっていても緊張したぞ、《真偽判定》の前で嘘を吐くなど」

 

『新しい仲間からの情報です、《真偽判定》は生物の嘘を吐くと言う思念を検知するのだと。故に私の様に機械の〈エンブリオ〉の嘘は感知できないと』

 

「《真偽判定》の前では嘘は付けない、これは世界の常識だ。この常識を無視できるのは大きいぞ、他にこれを知っている者はいるのか?」

 

「少なくとも煌玉人は全員知っていると考えています。このことを持ち主に伝えているかはわかりませんが」

 

「事前に知れただけ対策を考えることはできるか・・・分かった、明日もマリオの護衛の〈エンブリオ〉として頼むぞ」

 

「了解いたしました」

 



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第43話

□■カルチェラタン・山中

 

そこでは現皇国元帥、【無将軍】ギフテッド・バルバロスにより王国の〈マスター〉達への奇襲戦闘が行われていた。近くには同じ依頼を受けた同業者、相手は複数回の戦闘で対処法は分かる機械と油断している者達にこの世界で壮絶な戦いを繰り返してきたバルバロスにかなう訳が無く次々に〈マスター〉が光の塵へと変えられていく。そこへ一人の男が自分の周りにいる先歩まで手練れの〈マスター〉を次々に倒していった人形など気にも留めずに人形たちの将に声を掛ける

 

「すみません、人目を避けていたら夜中になってしまいました」

 

「構わない、こちらが無理を言って呼び出したのだからな」

 

「しかし、何故私を?話を聞いた限り〈超級〉もいないようですし。バルバロス殿と【魔将軍】だけでも大丈夫そうですが?」

 

「万が一の保険だ、あの〈遺跡〉に眠るのは【エンペルスタンド】と同等かそれ以上の兵器、かなりの大きさだ。持ち出すにしても予想外の事態で破壊するにしても【ヴィーヴィル】が役に立つ」

 

「なるほど、分かりました。私はこのまま貴方に同行すれば?」

 

「そうしてくれ、俺の近くなら奇襲を受けてやられると言ったこともないからな。だが念のため作戦まではあの特典武具を着ていてくれ」

 

「分かりました。ヘスティア、【でいらん】を出すからその〈マジンギア〉から出てきてくれ」

 

『分かりました』

 

ヘスティアは【でいらん】に乗り換えると自分の〈エンブリオ〉としての能力でMP生成を始める

 

『さてさて。古代の兵器、持って帰れればいいのですが制作者は十中八九フラグマン。彼が味方では無い者達に簡単に兵器を持ってかせてくれるかどうか』

 

「まあ護衛が無い訳が無いな。今〈遺跡〉内部は沢山の煌玉兵が動いている」

 

「煌玉兵?」

 

「〈遺跡〉で発見された物だ。特殊装備品としてこの〈遺跡〉で作られ生物を取り込み取り込んだ生物のMPで動いているらしい。しかも人間も取り込もうとするらしい」

 

「それは変ですね、今まで調査した〈遺跡〉やヴィーラからの話を聞いた限り〈遺跡〉は兵器などを生産して当時に存在した何かから人間を守るために作られている。長い年月で予想外のエラーでも出たのでしょうか」

 

アルストは少し考えるが今到着して現在の〈遺跡〉の詳しい事情をしらないアルストが分かるはずもなくアルストの考えは煌玉兵の事に変わっていた

 

「煌玉兵、フラグマンの作品の一つかな。欲しいなぁ、【エンペルスタンド】位の兵器を隠している〈遺跡〉なら只の煌玉兵だけじゃなくて指揮官機やもしかしたら煌玉人もあるかも」

 

「さあな、ただ今はいけないからな。中には王国の〈マスター〉が大勢いる、そんな所に少し前に王国で盛大に顔を見せたお前が行けば瞬殺だぞ」

 

「分かっています。なのでこういうのはどうでしょう」

 

そう言ってアルストがアイテムボックスから取り出したのはローブと帽子に仮面をつけた機械人形だった

 

「さらに左手に適当な紋章の絵を書いておけば少し変わった〈マスター〉の出来上がり。これなら破壊されても痛くありません、逆に自爆機能付きなのでもしかしたら王国の戦力を削げるかも」

 

「・・・確かお前は【人形師】のジョブはとっていなかったと思うが」

 

「ええ、【人形師】など取っていません。これを使うのは彼女です」

 

「はい、お任せください」

 

そう言ってアルストはアイテムボックスからヴィーラを出した

 

「何をするつもりだ?」

 

ヴィーラは機械の改造能力を持つという事しか知らないバルバロスは二人が何をするつもりなのかが分からなかった

「いえ、先ほどの煌玉兵の事を聞いてこれを完成させられるのでは無いかと思いまして。いけそうか?」

 

「はい、周りにあるこれだけの煌玉兵の残骸が有れば十分です。30分程お待ちください」

 

「何を作るつもりだ」

 

「実はあの人形、元々はヴィーラが安心して単独行動できるように作った物でして、距離が離れすぎなければあの人形を遠隔操作できるのですよ。距離的には実用化はまだまだですが目的の〈遺跡〉とここまでの距離なら大丈夫です」

 

「私の人形と同じような物か」

 

「はい、ですが欠点としてあの人形には動力炉が無いので結局ヘスティアがいないと動かせず今回の様にヘスティアを途中で失うことを避けたいときには使えなかったのですが煌玉兵の特性である生物を取り込み動力炉とすることが出来ればその問題も解決できます。体を見られないように隠さなければいけませんが」

 

 

その後、人形の改造を終え、近くの適当なモンスターを探し出し(ほぼ狩りつくされており全く見つからず結局バルバロスの人形が持ってきてくれた)動力とし遠隔操作の準備をする

 

ヴィーラは人形の頭を両手で支え自分の頭とくっ付ける。数秒後、動き出したのは人形で人形はヴィーラを優しく寝かせてる

 

『どうですか、〈マスター〉に見えますか?』

 

「急いで作ったから音声に違和感があるな。まあ、喋らずに短時間だけなら問題ないだろう」

 

『煌玉兵の機能を取り付けるときについでに私を仲間と認識する様にこの人形を改造しました。煌玉兵よりも高スペックの機械には効きませんが』

 

「中へ入るついでに〈遺跡〉内部にある決戦兵器【アクラ・ヴァスター】の格納場所を探しておいてくれ。定期的に連絡が欲しいが」

 

『私が行っているのは遠隔操作なのでこの寝ている私に声を掛けてくれれば直ぐに反応できます』

 

「分かった、なら〈遺跡〉内で何か怪しい物、特に決戦兵器の様な物を見つけたら報告を。定期的に声を掛けるからその時も報告を」

 

『了解、では行ってきます』

 

そう言うヴィーラは〈遺跡〉へと入っていく。入口付近には煌玉兵がいたがヴィーラを仲間と認識しているようで戦闘も何も起こらず中に入っていった。

 



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第44話

就職活動終わりやすごいスピードで書けたので4連続投稿です!


□【翠玉之改造者】ヴィーラ

(特に何もありませんね)

 

ヴィーラは〈遺跡〉に潜り込んだ後、探索を続けたが兵器らしきものは発見できなかった

 

(まだ見てない道はあと一本。しかしあの奥から外では見なかった煌玉兵が道を守り背中には生物を取り込まずとも動けるようにケーブル。恐らくこの〈遺跡〉の指揮官機でもいるのでしょう)

 

『ヴィーラ、聞こえるか?』

 

「どうかしましたか?マスター」

 

『大勢の王国の〈マスター〉達が〈遺跡〉内へ入っていったこの〈遺跡〉を攻略するつもりだろう。しばらくしたら接触するだろうから注意してくれ』

 

「了解」

 

(いくら壊れても良いとはいえこのまま何の収穫も得ずに壊されるのは嫌ですね。とりあえず今の私の体では奥の指揮官機は壊せませんし彼らに倒してもらってから考えましょう)

 

ヴィーラは近くの破壊された煌玉兵の残骸を目立たない所に集めその中へ身を隠す、そして数分後には王国の〈マスター〉達が煌玉兵を破壊しながら奥の道へと進んでいった

 

(〈マスター〉達が奥に進んで数分。そろそろですかね)

 

ヴィーラは残骸の山から出ると音を立てないよう注意しながら奥の道を進んでいく

 

付いた先には〈マスター〉の姿は無くあるのは煌玉兵の残骸、そして

 

 

煌玉兵達の討伐目標『獣の化身』であった

 

「あれ、見られちゃったか」

 

「会うのは初めてですね獣の化身」

 

「そうだね、煌玉人0号機。今はヴィーラだったか。まさか僕たちの知らない煌玉人がいたなんて驚いたよ。さて困ったぞ、僕たちは〈マスター〉やティアンの人たちに存在を知られるわけにはいかなくてね、君が一人だけなら壊して終わりなんだけど。今の君を壊しても意味が無いみたいだし〈マスター〉に所有されている君を壊すわけにも行けない。頼むから僕の存在やジョブリストの事は他人に話さないでね」

 

「もし話したら?」

 

「不自然すぎるけど話そうとしたら君を壊すよ。まあ、ジョブリストの方は既に何人か知っている人もいるし【猫神】とか存在しないはずのジョブの事を誰にも言わなければ良いよ。でもそれは色々な人物が欲しがるだろうからあんまり広めないでね、君のためにも」

 

「・・・分かりました」

 

「助かるよ、僕も〈マスター〉である彼に影響を与えるようなことはしたくないからね」

 

「では・・・その指揮官機、貰っても良いですか?」

 

「良いよ、僕はいらな・・・」

 

獣の化身と話していると、〈遺跡〉内に轟音と激しい揺れが起こった

 

「地震?」

 

「・・・まずいな~」

 

「え?」

 

「君も早く戻った方が良いよ、じゃあね」

 

そう言うと獣の化身は〈マスター〉トム・キャットの姿になると何処かへ走り去ってしまった

 

『ヴィーラ、聞こえるか!?』

 

「はい、どうしましたか?先ほどから凄い揺れが起きているのですが」

 

『決戦兵器が動き出した音だ!何か収穫はあったか』

 

「はい、【ヴィーヴィル】の強化にも使えるかと」

 

『分かった、俺たちが居た場所まで戻ってきてくれ、バルバロス殿はあれを破壊することにしたらしい。俺たちもあいつが外に出た時の準備をする!』

 

「了解!」

 

ヴィーラは近くにあった指揮官機【風信子之統率者】を含む煌玉兵をアイテムボックスに回収すると〈遺跡〉から脱出をする

 

 

 



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第45話

「ただいま戻りました」

 

「ああ、元帥は兵器を止めにいった。早速で悪いが二人とも直ぐに【ヴィーヴィル】を動かす準備を」

 

『「了解」』

 

 

「ただの戦車型かと思ったら戦車と戦艦二つで一つの兵器か」

 

アルストは木に登り出現した決戦兵器をみてそう呟く

 

「あれもフラグマンの作品みたいだしぜひ戦ってみたいが相性が悪いみたいだな」

 

アルストはバルバロスからあの兵器の特性を教えてもらい何らかの理由であれには攻撃が効いていないことが分かった

 

「戦艦は自己修復と謎のスキル持ちで戦車は攻撃が聞かないと」

 

『マスター、準備出来ました』

 

「分かった、すぐ行く」

 

そういってガレージの中に入り【ヴィーヴィル】のコックピットへ向かう途中、凄まじい音と衝撃がアルストを襲う

 

「イテテ、ヘスティア何が起こった」

 

『どうやら戦艦の方の攻撃のようです、金属の塊であるヒレを落とした衝撃がここまで届いた模様』

 

「早くしないとこの辺更地になるな。ヴィーラ、あいつの攻略法分かるか?」

 

「あの決戦兵器相手に遠距離攻撃は難しいです、相手に突っ込んで直接攻撃した方が良いかと」

 

「分かった、全速浮上!攻撃と移動に防御用MP以外全部注げ!」

 

『了解』

 

 

□【煌騎兵】レイ・スターリング

 

地上の兜蟹をアズライトに任せ、空中の鯨を倒すためにシルバーに乗り鯨へと駆けていく

 

「Gyaaaaaaaaa!」

 

突然後ろからモンスターの遠吠えが聞こえて慌てて後ろを振り向く、しかしそこに居たのはモンスターではなく

 

「【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】・・・ッ!」

 

かつてフランクリンと共に王国に侵入しフランクリンと共に指名手配を受けた皇国の〈マスター〉だった

 

ヴィーヴィルはレイを気にも留めずクジラに突撃する。クジラから放たれる無数のビームもヴィーヴィルを守る結界には効いていないようでクジラからの攻撃を気にせずどんどん進んでいきクジラの近くまで行くと二本の足でクジラを殴り始めた

 

『す、すごいのう』

 

「ああ、だけど効いていない」

 

正確にはダメージは届いているが直ぐに修復されている

 

クジラの硬さに諦めたのかヴィーヴィルは頭の向きを変えるとクジラから離れて行く

 

「逃げる気か」

 

『いや違う!マスター急いで離れろ!!』

 

ヴィーヴィルはレイたちの方向へ向けて猛スピードで飛んでくる。予想外の行動に驚くレイだがネメシスを構え近づいてくるヴィーヴィルを睨む。しかしヴィーヴィルはレイたちの前まで来ると静止しヴィーヴィルからアルストの声が聞こえてくる

 

『おい、お前あいつを倒せるか』

 

いきなりの質問だがレイは迷わずに答えた

 

「ああ!」

 

「分かった、あのビームは出来る限り俺が何とかするからお前は本体をどうにかしろ」

 

そういうとヴィーヴィルはクジラの元へ向かって言った

 

『どういうつもりかの』

 

「分からない、分からないけどあのクジラを倒すのに協力してくれるなら今は味方だ。シルバー、あのクジラの上へ!」

 

 

□【設計王】アルスト・コジャーソ

 

「こいつ直ぐ修復するな」

 

何とかヴィーヴィルの攻撃範囲内まで近づいたアルストだったが目の前のクジラの形をした決戦兵器の修復能力を前にめんどくさそうに呟く

 

『アルスト・コジャーソ』

 

元帥閣下、生きていましたか!今どこに」

 

「そんなことはどうでもいい、ヴィーヴィルで破壊は可能か?」

 

「厳しいですね、相手の攻撃から身を守るためにMPを注いでいるため攻撃の手段が減り爪による打撃も効果が薄いです」

 

「ならば〝不屈″を援護しろ」

 

「え?ちょっと将軍!?・・・切れた」

 

『どうしますか?』

 

「はぁ、レイ・スターリングは?」

 

『後方に』

 

「じゃあそこまで移動、本当に倒せるか確認する」

 

アルストはレイの所まで行き返事を聞くと例が戦艦を倒せるようにレイを狙っているビーム兵器を壊していく

 

『自信があるみたいでしたね』

 

「ならばさっさと倒してもらおう。レイ・スターリングが防御出来ない角度にあるやつを優先的に破壊」

 

『了解』

 

「レイ・スターリング落ちてきます。落下して決戦兵器に近づくようです」

 

「無茶するなぁ」

 

これもメイデンの〈マスター〉だからかなのかと最近クランを去った一人の知り合いを思い出し呟く

 

『アクシデント発生!レイ・スターリングが転移してきたかと思ったら戦艦の下に!』

 

「戦艦が距離を変化させるスキルを解除、解除の影響で戦艦と衝突すると思われたレイ・スターリングは煌玉馬のスキルにより瞬間移動をした模様」

 

その後、死角になっていたのでアルスト達は何をしたのか見えなかったがレイ・スターリングが戦艦を巨大なビームで貫いた

 

『戦艦の重要施設破壊を確認。尾びれに当たる部分が落ちて下の戦車型と衝突、中に蓄えていた修理素材のアイテムボックスが壊れたようです』

 

「もったいない、後で回収できないかな」

 

『マスター!』

 

アルストが下の貴重な素材アイテムを残念そうに見つめているとヘスティアが焦りの声を出す

 

「どうした」

 

『戦艦の残った部分の高度が下がり始めました!このままだとカルチェラタンの中心へ突っ込みます!』

 

「レイ・スターリングが戦艦の前方に、墜落を阻止しようとしているようです」

 

「止められそうか」

 

『重すぎてヴィーヴィルの力を合わせても不可能です、このままでは戦艦は爆発。巻き込まれればヴィーヴィルにも酷いダメージが』

 

「さすがにここでヴィーヴィルに傷を付ける訳には。しかし元帥はこの地を守りたい様であったし・・」

 

自分はどう動けばよいのか、アルストが悩んでいるとヴィーラが外の異変に気付き報告する

 

「戦艦再浮上。推進器にかかる負荷による自壊を気にしていない・・・どうやら被害を抑えるため上空へ向かおうとしている模様」

 

「ならばヘスティア、竜脚で戦艦の補助を」

 

『了解』

 

ヴィーヴィルが戦艦の一部を掴み移動の補助を行うがもうすでに限界なのか特に抵抗をすることなく戦艦は空に昇っていく

 

「そろそろ限界の様です、避難を」

 

「分かった、ヘスティア。急いで戦艦から離れてくれ」

 

『了解です』

 

ヴィーヴィルが離れて数十秒後、戦艦は空の上で爆発して木っ端みじんになり、小さな欠片と粉の様な物を地上に降らせた

 

「戦艦の一部でも持って帰りたかったが・・・これでは無理だな」

 

『この粉の様なアイテムも集めるのは困難ですね。王国の〈マスター〉にも見られましたしバルバロス様と撤退いたしましょう』

 

ヘスティアがヴィーヴィルを操作して降下していくか、ヴィーラは戦艦が爆発した場所を見上げ黙祷を行う

 

(化身よりも人々を選んだ優しき弟・・・長い間お疲れさまでした。)

 

『ヴィーラ、どうかしましたか?』

 

「いえ、なんでもございません。それよりも戦車型にもあの粉状のアイテムは搭載しているはずなのでしたの戦車からなら簡単に回収出来ると思います」

 

「本当か。元帥の方はマルチネス大佐がどさくさに紛れて回収して今皇国に帰っていると連絡が来たし王国側がこちらに何かを起こそうとする前にさっさと回収して帰るぞ」

 

『了解』

 

ヘスティアはヴィーヴィルと操縦して戦車型の近くまで行くと竜脚で戦車の一部を破壊してそのまま竜脚で持ったままドライフへの帰路につく

 

『それにしても、少し前にギデオンを襲った敵国の人間の一人に大きな声でお礼言いますかね普通』

 

「まあそこが彼の良い所なんだろう」

 



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第46話

アルストはドライフへと戻ってくるとヴィーヴィルに乗ったままクランのホームへと戻る。最近このようにドライフの空を飛んでいるせいかデンドロ初心者でドライフを選んだ理由がヴィーヴィルが好きだからという者が少なからずいるらしい。

 

「あ~もしもし、こちらアルスト。誰か聞こえますか?」

 

「はいはいこちらドララガンですよ。お帰りなさいアルストさん」

 

「ただいまです。【ヴィーヴィル】用の格納庫の開放お願いします」

 

「了解です」

 

通信を行った後、ホームに作られているヴィーヴィル専用の格納庫の天井が開きヴィーヴィルを格納できるようにする

 

「よしヘスティアゆっくりと頼む」

 

『了解』

 

ヘスティアはヴィーヴィルをゆっくりと降下させ先に竜脚で掴んでいた決戦兵器の残骸を置いた後。クランメンバーがヴィーヴィルを固定して天井を閉じたのを確認するとヴィーヴィルの浮遊装置と最低限の機能以外へのMP供給を停止し待機状態に入る

 

「お帰りなさいアルストさん。早速ですがあれって何ですか!?」

 

「今までいくつか先々期文明の機械を見てきましたけどこんなの見たことがありません。まさか」

 

「決戦兵器ですよ。壊れた一部ですけど」

 

「「「おおおおおおおお!!」」」

 

「これが決戦兵器、フラグマンが化身と呼ばれるとんでもない敵と戦うために作ったと言う」

 

「ほんとに何であんた外に出るたびに超絶レア物を持って帰ってくるんだよ!マジでありがとう!!」

 

「決戦兵器と煌玉竜、どっちを優先するか・・・解析するのが楽しみすぎる。しばらく会社休もうかな」

 

「そうなんですよね、私もどんな機能を持っているのか調べるのが楽しみで・・・今なんて言った?」

 

「え?会社休もうかな」

 

「違う!いま煌玉竜っていったでしょ!え、あるの?どこに!?」

 

「隣の格納庫に」

 

「よっしゃあ!」

 

 

「手足しかねー!」

 

念願の煌玉竜を見ることが出来るとワクワクしているアルストを出迎えたのは煌玉竜の手足、胴体など他の部分は綺麗に無くなっていた。近くに居たメンバーに聞くとオーナーが持って行ったらしい

 

「ええい!それなら先に手足だけ調べて残りは後でオーナーに頼み込んで調べさせてもらう」

 

「失礼、貴方に依頼が・・・」

 

「今忙しいんであと「貴方の都合などどうでもいい、拒否すると言うなら縊り殺しますよ」ッ!」

 

(何でここにベヘモットとレヴィアタンが)

 

後ろからアルストの首に添えられた女性の手、何も知らない者がこの場だけを見たら男女がいちゃ付いているように見えるだろうが声の主の正体が分かっているアルストは冷や汗ダラダラである

 

「返事は?」

 

「喜んで受けさせていただきます」

 

物理最強と呼ばれる【獣王】達を前に戦闘能力が無いアルストは首を縦に振るしかなかった

 

 

 

 




ヴィーヴィルが無いと相手に言い返せないアルストさん(有っても言い返せない場合もある)


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第47話

【獣王】の依頼とは俺が持って帰った決戦兵器を最優先に解析して何か有用な物が無いかを探すことだった

 

場所は叡智の三角の警備が厳重な区画そこで【獣王】の見張り付き。そこに解析系のジョブやエンブリオを持っている古参クランメンバーが集められ誓約書を書かされて参加している

 

そこまで厳重にしている理由は唯一クランメンバー以外で参加している皇王が原因だろう。

皇王が持つ整備士系統超級職【機械王】は整備能力が高く先々期文明の機械も問題なく整備ができる程。アルストの【設計王】の力やヴィーラが持つ先々期文明の知識も合わさり解析が進んでいった

 

「スキルは・・・何これ。《空間固定》ってどう作ったらそんな機能作れるんだよ。アルストさんの奥義でこれの詳細分かります?」

 

「何とも言えないですね。損傷が酷い上にこんな難しい機構、解析にどのくらいの時間がかかるのか分かりませんしその後に作ってみようとしても材料と技術力が足りるかどうか、《相互補完修復機能》に関しても同じくですね。今の所これを手に入れたことで得ることが出来たのは中に保管されていた大量の金属粒子入りのアイテムボックスですかね」

 

「これを見てるとどれだけフラグマンと戦っていた化身が化け物だったのかが分かりますね」

 

「本当に。さて、もうこれ以上の収穫は無いと思いますがどうしますか陛下」

 

「そうですね、時間がある時で良いのでこの二つの機能の解析をお願いします。あとあのアイテムボックスを二つほど購入させてください」

 

「分かりました、値段は後程お伝えいたします」

 

「あともう一つ。近いうちに大きな事が起こると思うので時間があるなら参加をお願いいたします」

 

 

 

決戦兵器の解析が終わった後、アルストはヴィーヴィルの整備に必要な素材を買いに〈マーシャル〉に入ったヘスティアとラインハルトの言った事について話していた

 

『大きなこととは何でしょうねマスター』

 

「カルディナからの邪魔も無くなったし最近のオーナーの王国への攻撃なんかを考えると十中八九王国との戦争関連だろうな」

 

『勝てますかね?』

 

「分からん、前回の戦争で王国が負けたのは〈超級〉が出なかったのが大きな原因の一つ、今度の戦争で〈超級〉が出てくれば前回の様にはならないだろうな」

 

「ねえ、アルスト・コジャーソだよね?」

 

『ッ!』

 

「・・・あー第六になって結構立ってたから油断してた」

 

二人が後ろを見ると立っていたのは皇国の有名人。ドライフ皇国最強のPKクロノ・クラウンだった

 



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第48話

毎度毎度誤字報告をしてくれる方々ありがとうございます。自分でも見逃していることが多いので感謝です。


クロノ・クラウンによる第六形態エンブリオ所持者へのPK。ドライフでは有名なことでこれまでに幾度となく第六形態エンブリオの〈マスター〉を倒してきた彼はいつからか皇国最強のPKと第六形態の〈マスター〉に恐れられていた。

 

そんな彼がアルストを次の標的にした。アルストはクロノに呼ばれ彼の姿を見た時覚悟を決めて・・・

 

 

 

そのままキルされた

 

『いやヴィーヴィルもマーシャルⅡも出す余裕が無いのにバリバリ戦闘系のクロノに勝てるわけないじゃないですか?』

 

後にアルストはクランメンバーにそのような愚痴をこぼした

 

「ただいまでーす」

 

「あ、アルストさんお帰りなさい。ぶーらんたんさんから聞きましたよ。とうとうクロノに捕まったらしいですね

 

「ええ、第六になってしばらく経っていたので完全に油断していました」

 

「お疲れ様です。あーあ、俺も後一回エンブリオが進化したら狙われるのか」

 

「まあアレはね、皇国にいる以上仕方ない事と言いますか。あいつ強いし」

 

「ちょっとそこの二人、話してないで手伝って。特にアルストさん、これあなたが持ち込んだ物でしょうが」

 

「はーい。しかしこれ持ってきておいて言うのもあれですけど良く人工知能の部分が無事でしたよね」

 

「それは奇跡、と言うしかないですかね。この部分が壊れてたら私たちの技術が復元できませんから」

 

アルストはクランメンバーと作業台に置かれた機械を前に話をしながら解析作業を行う。

 

「所でこれ何なんですか?他のとこれだけ色々と違うんですけど」

 

「拾ったヴィーラが言うには無人兵器たちの指揮官機だったようですよ」

 

 

「何をしているのですか?」

 

『・・・新しいマーシャルⅡのテストですが』

 

「それだけですか?テストとテストとは言えない動きをしていましたが。何かに怯え振り払おうとしているような」

 

『・・・』

 

「この間のPKが原因ですか?」

 

『・・・はい。あの時私は何もできませんでした』

 

「それは、仕方のない事では?あなたは動力炉型のエンブリオ。前衛で戦うタイプではありません。ましてや今回の相手はとても速い相手だったと聞きました。戦闘系のジョブではないご主人様と普通のマーシャルに入っていた貴方では」

 

『分かっています。しかしガーディアンとして、あの方のエンブリオとして。目の前であの方が切られるのを見ていることしか出来なかったと言うのが情けなくて。パンデモニウムが羨ましいです。あんなに大きくて自分のマスターを乗せて守ることが出来て』

 

(比べる相手が間違っている気がしますが)

 

「あなたの言いたいことは分かりました。とりあえず言いたいのですが貴方は人を頼りなさい」

 

『頼る?』

 

「そうです。それだけで出来ることの範囲は大きく広がる。私たちが出会った時の【器神】との戦いの時の様に」

 

ヘスティアはラスカル達との戦いを思い出す。確かにあの時ヴィーラがヴィーヴィルの操作に参加する様になってから格段に動きが良くなっているのを感じていた

 

「個人で敵に勝とうとするのでは無くチームとして協力して倒すのです」

 

『チーム・・・』

 

「まあゆっくりと考えてみてください。私はご主人様のお手伝いに行ってきますので」

 

「・・・一人では無く、チームで」

 

 

 

ドライフ皇国に新たな〈超級〉が生まれる日は近いだろう

 



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改造者の力
第49話


「「「はぁ・・・」」」

 

「どうしました皆さん、ため息なんてついて」

 

「いえ、世の中理不尽だなと」

 

「何か悩みでも?私でよければお聞きしましょう」

 

(((あんたが原因なんだよなぁ・・・)))

 

「あなた先日ヴィーヴィルの調整もかねて討伐クエスト受けましたよね」

 

「ええ、純竜級モンスターの群れでしたね〈UBM〉では無かったので簡単な部類の戦闘でしたよ」

 

「非戦闘職が一人で純竜級モンスターの群れを相手に楽な戦闘、なんてことは無いんですがそれは良いです。それでやけに帰りが遅いなと心配してた私達にあなた帰ってきて何と言いました?」

 

「えっと。『ついでに新しく手に入れた【魔装王(キング・オブ・イリーガルエクステリア)】レベル上げをしてきました』って」

 

「あえてまた言いますよ。せーの・・・」

 

「「「なんでじゃー!!」

 

「前から言ってるけど何であんた外に出てくるたびに何かを持って帰ってきて俺たちを驚かせることが多いんだよ!」

 

「下手したら〈UBM〉よりレアだよ!何で超級職!?あんた既に【設計王(キング・オブ・アーキテクト)】だろうが!!」

 

「そうだそうだ!俺今度こそはと特典武具に5万賭けたんだぞ!!」

 

「まだ俺で賭け事してたんだ。何か恒例行事みたいになってない?」

 

「まさかあいつの一人勝ちになるとは思わなかったよ!」

 

「いやーアルストさんのおかげで50万以上儲かりました。あざーっす!」

 

「しかも当てたやついるのかよ」

 

「MPを使用する装備品強化のジョブってそんなのこのクランに居る全員チャンスがあったはずなのに何でピンポイントでアルストさんだったんだ」

 

「あぁ、どうも今までに装備品に使ったMP量が条件の一つらしいんですけどそれが結構な量なんですよね。〈マーシャルⅡ〉に連続一ヶ月くらい乗ってても全然足りないくらい」

 

「ああ、なんか納得しました」

 

エンブリオがMPを生成する動力炉かつ動かすのに毎秒数千単位のMPを食う鉄の竜に毎日乗っているのだ。消費MP量で勝てるわけがない

 

「あ、あとさっきログインした時なんですけど進化しました」

 

「「「は?」」」

 

「ヘスティアが第七に進化しました。〈超級〉の仲間入り」

 

「「「はああああああああああ!!?」」」

 

 

 

アルストが〈超級〉の仲間入り

 

その話は直ぐに皇国中に広がり〈DIN〉によって各地に流された

 

「まあ流れた所で特に何も変わらないんだけど」

 

「一人で何を言っているんですか?時間が無いんですから急いでください」

 

「必要な物資は全て積み込みました。いつでもカルディナへ向けて出発できますよ」

 

「ありがとうございます。まさか王国との会議が迫る中またカルディナに行くことになるとは」

 

「しかも今回はヴィーヴィルに乗ってですからね。一応こっそり行くにしても見つかれば下手したらカルディナとの衝突ですよ」

 

「一応ヴィーラが言うにはこれから向かう場所の周囲には何もないって話なんですけど、そんな所で何をするつもりなのか」

 

アルストが【魔装王】になりヘスティアも第七形態に進化と大幅な戦力アップなのだが

 

『まだいけますね、戦力アップ』

 

ヴィーラはそう言ったと思ったら〈DIN〉などから情報を集め始めアルストにカルディナに行けば更に強くなれる可能性があると伝えた。それを聞いたアルストは

 

「ヴィーラが嘘をつくとも思えませんし、気になるので見てきます」

 

そう言ってラインハルトに土下座をしてヴィーヴィルでカルディナに行く許可を貰った後、クランメンバーに手伝ってもらい速攻でカルディナへと向かう準備を完了させた

 

『マスター、ヴィーヴィル起動可能生成量を越えました。いつでも行けます』

 

「分かった、それでは皆さん行ってきます」

 

「行ってらっしゃい!・・・よし、それじゃあ恒例の賭け始めるぞ」

 

「今度こそ特典武具!」

 

「野良の〈マスター〉!」

 

「化身!」

 

「せめて行ってからやってくださいよ、あと最後のは絶対に無い!」

 

『いやでも他の2パターンはあるんでもしかしたら化身とも遭遇したり・・・』

 

「・・・」

 

これまで得た複数の特典武具に皇国に連れてきたベルドルベルという事があるので「もしかして?」と思ってしまったが流石に先々期文明を簡単に滅ぼしてしまうような存在と遭遇することは無いだろうと賭けの内容を頭から消し去りアルストはカルディナへ向けて出発した

 

 

「まあ、もう遭ってる上に殺されてるんですけどね」

 

アルストに続いてヴィーヴィルに乗ったヴィーラは誰にも聞こえない大きさでそう呟いた

 




・討伐クエスト
ヴィーヴィルが広域殲滅型かつ半分皇国の所有という事になっているので頼みやすいという事で頼まれることが良くある。アルストも資金や素材稼ぎの為に嫌がらずに進んで行っている。そのせいか最近討伐ランキングにアルストの名前が記載されている。


・賭け
アルストが出かけるたびに色々な物を持ってくるので次は何を持ってくるのかと予想していく内にクラン内のイベントの様になった。大体予想の斜め上を持って帰ってくるので見ているだけでも楽しいと思ってるメンバーもいる。

・管理AI12号 ラビット
第六形態のマスターをPKすることで〈超級エンブリオ〉を生み出そうとしている。今回ヘスティアが進化したのもアルストがPKされたことがきっかけの一つとなっている。ヘスティアにとっては進化のきっかけをくれた敵

・【魔装王】
MPを消費する装備品を強化することが出来るジョブ。
アナウンスで取得条件をクリアしたことを知ったアルストは速攻でジョブクリスタルまで行き転職クエストを受けた。先代の【魔装王】を倒せと言う内容だったがヴィーヴィルに乗って持久戦を行い相手のMPが切れたのを見計らって脚でプチっとした

ちなみに魔装王の読みが作中で出ていないためキング・オブ・イリーガルエクステリアという名前は作者が考えた名前。作中で出てきたら変えようと思っているが主要人物が【魔装王】を取得したら話の流れ的に不味いので名前だけ何処かで出ないかなと思っている。


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第50話

「さて、カルディナの領土に入って数時間経ったがまだ着かないのか?」

 

「もう少しです、もう少ししたら目当ての遺跡が有るはずです」

 

「遺跡?先々期文明の兵器でも狙ってるのか?」

 

「いえ、今向かっている遺跡は・・・」

 

『下に砂上船を発見。客船の様で何者かに襲われている様子で船の一部が壊れ壊れた場所からカルディナ所属の〈超級〉マニゴルドを確認』

 

「マニゴルドか・・・めんどくさい相手だ。放っておこう」

 

「いえ待ってください。ヘスティア、彼が戦っている相手は」

 

『はい、以前戦ったことがある【器神】ラスカルの兵器です』

 

「ラスカルか、ますます相手にしたくない」

 

アルストは以前ラスカルに行った行動を思い出し関わりたくないとヘスティアに無視し進むように指示を出そうとすると

 

「待ってください。これから行く場所に彼らを連れて行きましょう、そうすれば成功率がぐっと上がります」

 

「いや、あいつらが素直についてくるとは思えないぞ?前回の事もあるし。何よりあらゆる攻撃を金に換えてその金で攻撃してくる奴をどうする」

 

「隙を見つけて介入するしかないですね」

 

「隙ね、とりあえずチャンスがあるまではこのまま上に隠れてるぞ。チャンスが無かったら諦めろ」

 

「了解」

 

【装甲操縦士】ユーゴー・レセップス

 

私は今余りの展開に頭が追い付いていなかった。

 

〈叡智の三角〉の皆が作った【インペリアル・グローリー】に乗っている敵と戦っていたら出現した紅白の機械竜、彼らは私を脅威とも思っていないようで二機は互いに全力で戦っていた。その場に

 

『上から失礼!ラスカルに用事があるからちょっと拉致らせてね!』

 

『ふざけるな!』

 

今度は空から急降下してきた黒の機械竜が紅白の機械竜を押さえつけている。ていうかあれ見たことあるんだけど

 

「アルストさん!?」

 

「あれ?ユーゴー!え、何でここに・・・あ!そっちには【インペリアル・グローリー】!!?」

 

「その声はアルスト・コジャーソだな、この機体の設計責任者であったお前ならば知っているな。内臓兵器使用時の音声照合をオフにする方法を教えろ!」

 

カーティスは恨みのこもった声でアルストにそういうが

 

『え、無いですけど』

 

「・・・なに?」

 

予想外の答えに一瞬反応が遅れてしまうカーティス

 

『音声照合はクランメンバーが『技名叫んだ方がカッコいいよな!』とかいう理由で搭載した物で機能をオフにする仕掛けなんて無いですよ。〈叡智の三角〉のメンバーは機能とか性能よりも様式美優先で物を作る事が多いので偶にそういう不便な所があるんですよね』

 

「では何らかの意趣返しやラインハルトの手が回っていたわけでもなく」

 

「完全にメンバーの趣味による影響ですね」

 

「ふ、ふざけるなぁぁ!!」

 

そういってカーティスはヴィーヴィルへと向かっていく。ていうかやっぱりあれオフにする機能ないのか。自分の命を預ける相棒が下手したら相手に利用される重大な欠点を抱えている理由が制作者の趣味など激怒して当然だ。少しだけ同情するが怒りで完全にこちらを忘れていたので仕掛けることにした

 

「ニアーラさん!」

 

【魔装王】アルスト・コジャーソ

 

「あらら、何も見えない」

 

「鳥型の機械が爆発したのを確認、爆発の衝撃で確認が取れませんがあの二人の兵器には効果は薄いはずです」

 

ヴィーラの言う通りこれは目くらましにしかならない、ユーゴーもそれを分かっているはずだが何をするつもりなのか

 

「《煉獄閃》!」

 

「新しいスキルか」

 

みればスキルによって生じたエネルギーブレードはラスカルとカーティスの乗る機体に傷を付けラスカルの方は分からないが【インペリアル・グローリー】コックピットまで刃が入り操縦者にダメージを与えているのは確実だった

 

「ご主人様!?」

 

聞こえてきたのはマキナの声、今の攻撃がラスカルに当たったようだ

 

ラスカルの乗る機体は強引にこちらの拘束を振りほどくと猛スピードで離脱していく

 

『申し訳ありません、逃がしてしまいました』

 

「ヴィーラ、本当に今から行く場所にラスカルたちの力が必要なんだな?」

 

「彼ら、というか設計者が居るのといないのでは成功確率が大きく違います」

 

「分かった。ユーゴー、久しぶりの再会だが俺はあいつを捕まえないといけない。またな」

 

「ええ、貴方も」

 

ユーゴーに手を振り俺たちは逃げるラスカル達を捕まえるために砂上船を離れた

 

 

「・・・ん、ここは」

 

『起きたか』

 

凍結が治りラスカルが最初に目に入ったのは最後までいたコックピットでは無くどこまでも続く砂漠。そして上からの声に舌打ちをする

 

「・・・俺をキルするつもりか?」

 

『まさか、それならお前が凍ってるときにするさ。俺が頼みたいのはそれだ』

 

ヴィーヴィルが器用に爪の一本を誓約書を持ったマキナに向ける

 

「どうぞ、ご主人様」

 

「・・・」

 

ラスカルはヴィーヴィル、その中にいるアルストを睨みつつマキナから誓約書を受け取り文章を確認する

 

『それの内容は互いに危害を加えずこれから行く〈遺跡〉に付いてきて少し手伝いをして欲しいって話しだ。ヴィーラが言うにはそこのマキナに頼みたいことがあるらしい』

 

「・・・良いだろう」

 

 

『意外です、彼が素直に受けるなんて。何を考えているんでしょう』

 

ヘスティアはヴィーヴィルのカメラからラスカルの乗る機体を見ながらアルストに聞いてみた

 

「まあ仕方ないってのもあるが多分興味があるんだろうな」

 

『興味、ですか?』

 

「皇国がもうすぐ王国と大事な会議があるってことは当然知ってるはず。そんな大事な時期に最近〈超級〉になった俺が危険を承知でカルディナにヴィーヴィルに乗ってきている。それほどまでの価値がある〈遺跡〉ならどんな〈遺跡〉なのか、誓約書の効果が切れたら奪ってしまおう。とでも思ってるんじゃないか?」

 

『成程、しかしそれはまずいのでは?』

 

「ご心配なく、今から行く遺跡にある物は再使用までにかかる時間が百年単位で必要なので奪われても問題ありません。そもそも私がいないと使えませんから。・・・あ、付きました」

 

「・・・砂漠しか見えないんだけど」

 

「何分重要な場所ですので。入り口を開けられるのは私かフラグマンだけでしょう。ロック解除」

 

ヴィーラが遺跡への入り口のロックを解除すると大きな地響きと共に砂に隠されていた扉が開く

 



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第51話

遺跡の中をラスカルとマキナにヴィーラと四人で歩くアルスト。警備用のドローンなどが襲ってくるのでは警戒していたラスカルとアルストだが遺跡内部には物がほとんどなく異様な数の施錠された扉があるだけだった

 

「ヴィーラ、これはどこまで続くんだ?」

 

「施錠されたいくつもの扉を付けている割には警備用の機械が見当たらない。今までの遺跡とは全く異なる」

 

「その通りです、遺跡のほとんどは何かの工場や倉庫となっておりますがここはフラグマンが実験などのために使っていた地下施設なのです。まあ化身とのあれこれで見つかりにくい場所に施設を移したみたいで見たらわかる通りほとんどの物が無くなっていますが。あ、目当ての物が残っているのは確認しておりますので大丈夫ですよ、この最後の扉の先にあります」

 

そういってヴィーラは最後の扉を開ける。そこでアルスト達が見たものは一つのジョブクリスタルとクリスタルを取り込むように設置された機械だった

 

「周りの機械はともかくこれは間違いなく各地にあるジョブクリスタルと同じものだ。このクリスタルは何か特殊なジョブになれるのか?」

 

「いえ、そのクリスタルで就くことが出来るのは一般的なジョブばかりで特殊なジョブに付くためのクリスタルではありません」

 

「じゃあここには何のために?」

 

「ここにはジョブの強化の為に来ました」

 

「ジョブの強化、【魔装王】のか?」

 

「・・・それまだ広まってないと思ってたが。いったいどこで情報を仕入れてるんだよお前は」

 

「〈IF〉に入るなら教えてやる」

 

「前に入らないって言っただろう。まだ諦めてないのか」

 

「それではお願いしますよ。マキナさん」

 

「は~い。それと私は呼び捨てで良いですよ」

 

互いの主人たちが話している間にヴィーラはマキナを呼び二人で装置を起動させていく

 

「・・・うわー、フラグマンこんなことも考えてたんですか。というかできるんですか?」

 

「私とフラグマンだけでしょうね。あなたも作れないんじゃないですか?」

 

「・・・うん無理ですね。動力炉は作れますがこっちは作ろうとすれば完全に体が動かなくなります」

 

「フラグマンにとってこれは動力炉以上の価値があり万が一にも知らない誰かの手に渡るのを警戒したのでしょう。まあこれを使って行えることを考えたら妥当ですね」

 

「おい、お前たちだけで話してないで俺たちにも教えろ」

 

「ヴィーラ、結局それは何なんだ?」

 

「これはまあ簡単に言うとジョブの改造を行う装置です」

 

「ちなみに~改造されたジョブは持ち主が変わってもそのままでーす」

 

「「・・・なに?」」

 

長年デンドロをプレイしている二人からすればそれはあり得ない言葉だった。皇国に居る【魔将軍】ローガン・ゴットハルトの様にジョブに介入する力を持ったものは少ないがいる。しかしそれはエンブリオを使っての一時的な物に過ぎない。煌玉人達の言う様な完全にジョブを改造する事など出来るはずが無いのだ

 

「まああまりに逸脱した改造は行えないんですけどね。下級職に超級職レベルのスキルを付けるとか系統外のスキルを付けるとか」

 

「見た感じあくまでそのジョブの延長線上。いうなれば超級職を超超級職に強化、みたいな感じですかね?」

 

「・・・その名称はともかくどういうことなのかは分かった」

 

「それでは早速やってみましょう。マスター、そのジョブクリスタルに触れてください」

 

「わ、分かった」

 

「後はこれを装着します」

 

アルストがクリスタルに触れるとヴィーラはアルストの体に様々な装置を付け終わるとコンソールを操作して作業を開始する

 

「ほら、貴方も手伝ってください。これ扱いが難しいんですから」

 

「は~い。ご主人様にも言われていますからちゃんと働きますよ」

 

しばらくヴィーラたちが端末を操作する音だけが聞こえずっとクリスタルに手を付いていたアルストはヴィーラに尋ねた

 

「なあ、こうやってクリスタルに手を付いてるだけなんだけどこれでジョブの改造ができるのか?」

 

「はい、手を離さないでくださいね。最悪【魔装王】が使用不能になりますので」

 

「え、怖いんだけど。何やってるの」

 

「まあ簡単に言いますと【魔装王】所持者のマスターを媒介に〈アーキタイプ・システム〉に介入。【魔装王】関連のシステムを改造しています」

 

「・・・何かとんでもないこと言ってる」

 

「そんなことが可能なのか」

 

「普通は無理ですね、専用の装置と高度な演算装置。後は改造を行える力を持つ物。現在確認されていてそれが出来るのは私かフラグマンだけなのであまりそこは考えなくても大丈夫ですよ」

 

「・・・ますますお前たちが欲しくなった」

 

「俺は〈叡智の三角〉のアルスト・コジャーソだ。他のクランに入る気はない」

 

「つれないな」

 

「・・・あの二人ってなんだかんだ仲が良いですよね。馬が合うんでしょうか」

 

「相性は悪くなさそうですよね。マスター、終わりましたので手を放しても大丈夫ですよ」

 

「ああ」

 

アルストはクリスタルから恐る恐る手を離し体の確認をしてみる

 

「あんまり変化したって感じが無いな」

 

「まあ奥義しか改造していませんからね。大幅な改造も出来ませんし」

 

「【魔装王】の奥義か、確かにお前のエンブリオを考えたらそうなるだろうな」

 

「【魔装王】の奥義を知ってるのか?本当にどこまで手が広いんだよ」

 

「ただ先代の【魔装王】と戦ったことがあるだけだ。それよりこの後はどうする気だ?ジョブの改造が終わったという事はこの場には用が無いんだろう」

 

「ええ、後は帰る私達を攻撃しなければ問題ないので帰ってもらって問題ないですよ」

 

「・・・あれはどうする気だ?」

 

「もう必要が無いですからねえ。欲しいなら持って行って構いませんよ」

 

「おいヴィーラ良いのか?」

 

「構いませんよマスター。しかし先に言っておきますが」

 

ヴィーラは装置と繋がっているジョブクリスタルに近づくと軽くコツンと叩いた。するとクリスタルは罅が入りそれが一気に全体に広がると粉々に砕けた

 

「ジョブクリスタルからシステムに介入していたのでクリスタルの負担は大きいです。貴重なクリスタルを一つ消費してジョブ一つだけなのでそんなに便利な物じゃありませんよ」

 

「・・・それでも貰っていこう」

 

「それでは私たちは先に帰りますので」

 

「じゃあな」

 

そういって来た道を戻る途中、アルストはヴィーラに確認を取る

 

「なあ、本当に良かったのか。あの装置を渡して」

 

「問題ないでしょう。一回ジョブを改造するのにクリスタル一つ。この時点でほぼ使うことは不可能ですしあれを動かせるのは私かフラグマンだけ。あの子、マキナでも扱えませんので〈IF〉がものすごく強くなるなんてことは無いですよ」

 

「なら良いんだが」

 

「そんな事よりもマスター、あなたが考えるべきことは王国との会議ですよ。この場で襲われたらひとたまりも無いのですから集中してください」

 

「ラスカルは契約書があるんだから攻撃できないだろ」

 

「いえそちらでは無く・・・」

 

「これで最後か、無駄になが・・・」

 

遺跡の最後の扉をアルストが空けると

 

「【皇竜】だ!」

 

「おいおい本当にいたぜ」

 

「情報通りだったか」

 

「砂上船で派手に動いたのでカルディナからの追ってでも来る可能性が」

 

「安心しな、俺たちはPKクランの〈デザート・カメレオン〉。カルディナとは無関係だ」

 

「カルディナからの追ってじゃないなら何の用だ。俺一人を狙うよりそれこそ金持ちがなる船でも襲えば色々と手に入るだろうが」

 

「とぼけるなよ。それらと比べても価値が高い物をお前は持ってるだろうが」

 

「・・・狙いは【ヴィーヴィル】か」

 

「大正解。大方【ガレージ】にでも入れてんだろ。おとなしく渡せば見逃してやるぜ」

 

「・・・ふざけるな」

 

「あん?何だって?」

 

「ふざけるなと言ったんだ。なぜおまえたちの様なゴミに渡さないといけない。二人相手にこんな大勢の仲間と一緒じゃないと偉そうなことが言えない小物が」

 

(マスターが起こるのは珍しいですね。まあ理由が理由なだけに無理もありませんが)

 

【ヴィーヴィル】はアルストの夢でありクランメンバーと協力して作った大事な物でそれを価値も分からないやつが渡せと脅迫してきたのだアルスト以外でも怒っていただろう

 

「な、なんだとてめえ!こっちがせっかく穏便に済まそうとしてやってんのに・・・ッ!お前らやれえ!!」

 

「了解!《クリムゾン・・・【デットマンズソード】!

 

 

 

 

 

〈デザート・カメレオン〉対【デットマンズソード】の戦いは敵側の人数が多かった割にはすぐ終わり全滅させたのを確認したアルストは【ヴィーヴィル】を出してドライフへの帰路についていた

 

「早速改造した奥義の効果を試すことが出来ましたね。ほんの少しでしたけど」

 

「あいつら結構な人数がそろってた割に弱かったからな。PKって言っても初心者専門集団だったのかな」

 

(普通に【デットマンズソード】の性能が高くて【魔装王】の奥義がヘスティアと相性が良すぎたからこそ一方的な戦いになったんだと思いますけど、まあそこは言わなくても問題ないでしょう)

 

 




・ジョブ改造装置
初代フラグマンが作ったジョブを改造するための装置。改造と言っても大幅な強化は不可能。できるのはスキルを改造して効果を強めたり効果範囲を拡大させたりなど。
〈アーキタイプ・システム〉に干渉するためにシステムと繋がっているジョブクリスタルが必要。しかしクリスタルを消耗品として使わなければいけないため使い所が難しい。
ラスカルが持ち帰り【器神】で完全に修復したがジョブクリスタルが必要な点とやはり扱いきれないという事でとりあえず保管して放置。その数日後マキナが兵器を作る材料として使用したことでマキナを仕置きされた。


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講和会議編
第52話


X始めました。
ゴロゴロ鼠
https://twitter.com/gorogororat


□【設計王】アルスト・コジャーソ

 

「王国に新しく〈超級〉が加入したか」

 

〈叡智の三角〉所属のアルスト・コジャーソ。彼は設計部門のトップとして与えられた一室で自分がカルディナに行っている間に何が起きていたのか確認を行っていた。そんな時、扉からコンコンと音がして扉が開き一人の女の〈マスター〉が入ってくる

 

「失礼します。ヴィーラさんから例の指揮官機の調整が終わったので来てほしいと。それと例の物ですが制作部門から目標数まであと数日はかかると」

 

「ありがとうございます。それではヴィーラの所へ「お待ちください」・・・何です?」

 

「先にやる事がありますよね?」

 

「・・・ん~?」

 

「とぼけても駄目ですよ。さっさとここにある依頼を全て完了させてください」

 

そう言った彼女が示す先にはアニメなどで見る仕事が忙しい人の机の様に大量の紙が詰まれて作業スペースがほぼ見え無いアルスト専用の作業机だった

 

「・・・」

 

「ちなみに、逃げても無駄ですよ。部屋の外に何人か待機しているので出ればすぐに捕まります。仮に彼らから逃げてもこの依頼は皇王様からの指示でもあるので直ぐに【獣王】に殺されます」

 

「・・・設計部門の誰かに「頼めないのは貴方が一番分かってますよね?」はい・・・」

 

これだけの数の依頼がアルストに集中するのは既に作成されている設計図を【設計王】の奥義によって事前に製作可能な物なのかどうかの確認。そして【設計王】作の設計図通りに作成すると発生する制作物の性能アップが目的だ。会議の内容によっては即戦争開始となるため現在〈叡智の三角〉ではマーシャルⅡ等の兵器の開発・量産が行われていたりと皆大忙し

 

「俺、こんな書類仕事みたいなことするためにデンドロ始めたんだっけ・・・」

 

 

 

 

「やっと終わった・・・」

 

アルストが部屋に軟禁状態にされて二日後、部屋からは疲れた様子のアルストが出てきた

 

「最終的に俺が全部設計図を確認しないといけないとはいえ量が多すぎるだろ」

 

「実はあれでも減った方なんですよ」

 

「ヴィーラか、あれで減った方?」

 

アルストが愚痴を言いながら歩いているとヴィーラが何処からともなく表れた

 

「はい、依頼の内容が多かったため事前に私や他の設計部門の方がチェックを行ったのですが、思いついたことを取り合えず書きなぐったような設計図や趣味に走りすぎて戦闘に全く関係ない物などが多くあれでも3~4割削った量なんですよ」

 

「うちのクランメンバーってなんでそういう後先考えない部分が有るんだろう」

 

「まあそういう人ほど凄い物を作ったりしますし。そういえばあの指揮官機はどうしますか?調整もすべて終わってご主人様の指示でヴィーヴィルに搭載可能です。ですが私としては一度起動実験を行いたいですが」

 

「勿論行う、正常に稼働する事が確認できれば次はポーンと接続してのテストを。後ヴィーヴィル搭載予定の武装も確認する」

 

「指揮官機はともかくポーンと武装もですか?会議が近いとはいえやる事は話し合いですよ?そんなに兵装を使う事態になるでしょうか」

 

「無いならそれに越したことは無い。だけど話し合ってはい終わり、ともならない気がするんだよな。まあ特典武具と【魔装王】だけでも戦力としては十分だと思うからポーンと武装に関しては可能ならってことで」

 

「承知いたしました」

 

二人はそのまま指揮官機と呼ばれる物がある場所へと歩いていく。そこにはアルター王国に遺跡にて発見された煌玉兵の指揮官機が置かれていた

 

「調整済みって聞いたけど何をしたんだ?」

 

「〈マスター〉とバグでティアンを敵と認識していたのでその辺りを変更してご主人様をマスターとして認識する様にプログラムを修正いたしました。あとやはり煌玉人と比べると突発的な状況への柔軟性が欠けるので知能面のアップグレードを行っている途中です」

 

「途中なのか?」

 

「はい。しかし起動して簡単な命令を実行させる分には問題ございません」

 

「それなら良い。じゃあ現時点でどのレベルなのか見ておきたいからそろそろ起動してくれ」

 

「承知いたしました」

 

ヴィーラはアルストの命令を受け指揮官機から伸びるケーブルの先、コンソールを操作して指揮官機に起動するよう命令を送る

 

『・・・』

 

命令を受け取った指揮官機は起動音と共に目覚め目の前にいるアルストを認識すると膝を付き頭を下げる

 

『ご命令を』

 

指揮官機に興味があり周りから見てた者達からおぉと声が上がる

 

「何か違和感は無いか」

 

『動きに問題はございません。しかし前と比べて体の動きが遅く前ほどの戦闘は行えそうにありません』

 

「それに関しては問題はない。後でいくつかテストをさせてもらうからな」

 

『了解』

 

 

その後指揮官機は全てのテストをクリアして無事ヴィーヴィルに取り付けられることになった

 

「近いうちに戦闘が起きる可能性がある、お前はそれまで今の姿での戦い方に慣れておいてくれ」

 

『了解』

 

「そう言えばお前って名前あるの?有るなら呼ぶときに便利なんだけど」

 

『機体登録名:風信子之統率者(ジルコン・リーダー)です』

 

「じゃあこれからはそう呼ぶな。これからよろしく、ジルコン」

 

『了解』

 

 




ジルコンは遺跡に居た時ほどのスペックは無いです。チェシャにボロボロにされた体は修理したけど技術力がフラグマン程無いので。

あとジョブリストについて何も言わないようヴィーラがロックを掛けてます、何かの拍子で【兎神】なんてジョブが無いとか言い出したら大変なことになるし。


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第53話

王国との会議まであと三日。会議に参加予定の者達はそれぞれ準備を進めており皇国のトップクランである〈叡智の三角〉でも会議に合わせて大忙しであった

 

「やる必要があるってのは理解できるけど、これは・・・」

 

〈叡智の三角〉にある試験場の一つでアルストはそう呟く

 

「現段階でどの程度の防御力があるのか他の作品の攻撃威力も試せて一石二鳥じゃないか」

 

試験場からなる砲撃音を背に〈叡智の三角〉オーナーのフランクリン砲撃の威力を確認しながらそうアルストに言う

 

「そうですぜ、ぶっつけ本番で出してアッサリ敵の攻撃でやられたなんて嫌でしょう?」

 

〈叡智の三角〉所属では無いが今回戦車の作成依頼を出し制作された戦車の性能を確認し喜んでいる【車騎王】マードック・マルチネスが続いて言った

 

「・・・二人のいう事は正しいです、ですが!ヴィーヴィルが只の的になっているのは嫌です!!」

 

三人が見る試験場では結界を張り地面から少し浮いたところで静止し集中砲火を浴びているヴィーヴィルがいた

 

「せめて反撃させてくださいよ!あの戦車早いしヴィーヴィルの砲撃の練習台にしたい」

 

「駄目に決まっているだろう?それとクライアントに依頼された物をクライアントの前で壊すとか言わない。ていうかあれ君も制作に協力してるんだから壊したくないとか思わないのかい?」

 

「それは、思いますけど。カッコいいし」

 

「いやあ、旦那のおかげで予想していたよりも性能の良いのが出来て感謝しかありませんよ」

 

「いえいえ、私としても戦車の設計なんて全然やってこなかったので新鮮で楽しかったですよ。収穫もありましたしヴィーヴィルに改造を施したいところですが時間が無いのが残念です」

 

「そういえば会議まであと三日だったねぇ」

 

「ローガンのやつも会議に参加するそうですぜ?」

 

「えぇ、あの人が護衛?無理でしょ」

 

「そうだねぇ、レイ・スターリングあたりに向かって行くだろうねぇ、頑張りたまえよ」

 

「何で俺が止めるの前提なんですか?【獣王】が止めるでしょ」

 

「【獣王】も今回は因縁があるようでねぇ、閣下に構う暇があるかどうか」

 

「えぇ・・・他の人は?」

 

「あの性格の閣下だよ?少なくとも自分と同じ〈超級〉の話じゃないと耳を貸さないし下手したら悪魔召喚しだすよ?」

 

「あんな性格でも力は本物ですからね、【獣王】か旦那くらいしか止められないと思いますぜ?」

 

「・・・悪魔召喚する前にでいらんで首絞めれば行けるか」

 

「説得とかよりも先にキルする方考えるんだ」

 

「まああいつが人の話を聞くとも思えないですからねえ」

 

アルストの思考に二人が少し引く中、アルスト達がいる演習場に大きな爆発音が響いた

 

『ゼルバールさんだから言ったじゃないですか!?一回アルストさんに設計図見てもらった方が良いって!』

 

『だってアルストさん忙しそうだったしこのくらいなら事故も起きないかと・・・』

 

『起きたじゃないですか!・・・ってああああああ!今度ヴィーヴィルに搭載予定だった兵器コンテナが燃えてる!』

 

「何やってんだあいつらあああああああああ!?」

 

事故の内容が聞こえてきたアルストはヴィーヴィル関連の物に影響が出たと知り慌てて事故現場へと走り出す。残った二人は変な空気を払拭するために話を変え会議に話を行う

 

「・・・あ、そういえば何で旦那は会議に参加することになったんですかい?教授は留守番なのに」

 

「一番は緊急時のヴィーヴィルにより人材の運搬だね、【獣王】は走った方が速いだろうけど他はそうじゃないからね。後は純粋に戦力としてかな、彼【魔装王】になって更に強くなったし。まあ【獣王】がいる時点でその他は過剰だと思うけど」

 

「確かに。・・・そう言えば俺旦那が本気で戦っている所を見たことが無いんですがどのくらい強いんですか?」

 

「実を言うと私も良く分からないんだよねぇ。彼の基本職業【設計王】だから引きこもってずっと設計図書いてるし」

 

(書いていると言うより書かされているの方が正しいような)

 

「たまに陛下から厄介なモンスターの討伐依頼を受けているようだけど一人でヴィーヴィルに乗って直ぐに戻ってきているからね。まあヴィーヴィルの基本スペックに【魔装王】のスキル、そして〈超級〉に進化して取得したヘスティアの必殺スキルを合わせて考えると・・・」

 

「考えると?」

 

「彼が戦いたいと望んでいた相手、あの陸上戦艦には勝てる可能性は高いねぇ」

 



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第54話

□【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】艦橋

 

ヴィーヴィルの艦橋には現在三つの人影があった。艦長席に座るのはヴィーヴィルを作った本人、現在の職業は【魔装王】のアルスト・コジャーソ。そして操縦を握るのは煌玉人0号機のヴィーラ、そして専用のコンソールに接続されヴィーラの補佐をしているのが最近発見された〈遺跡〉にて先々期文明の兵器である煌玉兵の指揮官機であった【風信子之統率者(ジルコン・リーダー)】だ

 

「ご主人様、もうすぐ旧ルニングス領です」

 

「分かった、最後まで付近への警戒を行るな」

 

その時、コンコンコンと艦橋の外へと繋がる扉から音がして「失礼いたします」と二人と一匹が艦橋に入ってくる。アルストは席から立つと頭を下げる

 

「クラウディア様。いかがなさいましたか、何か問題が?」

 

「いえ、後どのくらいで到着するのかなと。探検がてら聞きに来たのですわ」

 

「そうでしたか。もうすぐで到着できますよ」

 

「まあ!もうですの?やっぱり空から行くと早いですわね」

 

「そうでしょうか?走った方が速いですよ」

 

「貴方とベヘモットはそうでしょうね」

 

(何か嫌味に聞こえるけど普通にそう思ったから言っただけなんだろうなぁ。レヴィアタンって自分とベヘモット以外を下に見てる感じがして苦手なんだよなあ)

 

話を合わせながら心の中で少しげんなりしているアルストだった

 

□【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】貨物ブロック

 

本来は物資を遠くに運ぶための貨物ブロック、そこには現在皇国の〈マスター〉達が乗っており窓からの景色に声を上げていた

 

「うおおお・・・」

 

「おい、さっきから煩いぞ」

 

「だってよぉ、デンドロで空飛べるなんて思ってなかったからよ」

 

「まあそれは分かるが」

 

男が周りを見てみると興奮していた男の様に窓の外を見ながら近くの者と楽しそうに話している者は多い。ここに居るのはそれなりにデンドロを長期間遊んでいる者達だがそんな彼らも空を飛んだ経験がある物はほとんどいない。それだけこの世界の空を飛ぶと言うのは難しいのだ

 

「まさか王国との会議場所までヴィーヴィルで運んでもらえるなんてな。これだけでも今回のクエストを受けてよかったぜ!」

 

 

今回皇国の〈マスター〉達は皇王に指定された場所に集合してその後クエスト参加者全員で旧ルニングス領まで向かうつもりだった。皇王の方で移動手段を用意して置くとの事だったので【ガイスト】でも準備したのかと思い指定された場所に行くと何も、誰も居らず場所を間違えたのかと集まった〈マスター〉達で依頼書を読み直していると

 

『あー、すみません少し遅れました』

 

そんな声が上から聞こえ上を見てみると、そこには皇国に住んでいる者ならだれでも知っているドライフ皇国最大級の〈マジンギア〉【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】がゆっくりと降下し、地面すれすれまで船体を降下させると生物でいう胴体に当たる部分からタラップが下りてきて『乗ってください』と言う指示が。まさかあの戦艦に乗れるのか!?と〈マスター〉達は興奮し我先にとヴィーヴィルに乗船していった

 

 

「そう言えば、アルストはヴィーヴィルの操縦をしているのでいないのは分かるんですがローガンやベヘモットの姿が見えませんね」

 

「確かベヘモットはクラウディア姫の護衛をしていたから姫と一緒にアルストの所にでも行ったんじゃねえか?ローガンの方は〈超級〉ってことで特別待遇として個室に通されたって聞いたな」

 

「成程、やっぱり〈超級〉は特別待遇か~良いなぁ」

 

「そう言うな、折角の初めての体験をローガンに嫌味を言われながらなんて嫌だろう?アルストのやつはそう言う所も考えてくれたんじゃねえのか?」

 

それを聞いていた者達は確かに首を振っていた。その後、少しの空の移動を楽しんでいるとスピーカーからのもうすぐで到着と言う連絡に下船の準備を始めた

 

□【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】艦橋

 

「は~、疲れた疲れた」

 

アルストは今回の会議に参加する者達を空路で安全に届けた後、連れてきた〈マスター〉達が会議のための場所を作成している間は会議の邪魔にならない様に付近のモンスターを狩るなどをしていたら日が沈みあたりが暗くなっていく。ヴィーラたちに付近の警戒を任せ自分は明日の会議までゆっくりしようと椅子に深く座り込もうとしたとき

 

「ご主人様、姫から通信です。可能なら風呂場を貸してほしいと」

 

「風呂か」

 

ヴィーヴィル内部は全体的に空間拡張が行われており本来かなりの広さを持つ内部は更に広くなり戦艦として必要な施設以外にも来る途中にローガンが居た客室など趣味に走った場所が複数ある。その中の一つが大人数で一緒に入れるほどの大きさを持つ風呂場(男女分かれている)だった

 

「分かった。それじゃあ降下してくれ」

 

「了解」

 

この後、クラウディアとベヘモット、レヴィアタンの三人を風呂場に案内して艦橋へと戻るアルスト。その後寝にくいと〈マスター〉の集団がアルストに相談に来たので貨物ブロックを貸してやったりと色々あったがその日は特に大きな問題はなく、次の日を迎えた。そして

 

「ご主人様、こちらに向かってくる〈マスター〉達を発見いたしました」

 

「来たか」

 

今回の会議の相手、王国のティアンと〈マスター〉が来たことをスピーカーで皆に知らせ艦長席に座る

 

「さて、この会議。最終的にどうなるかな」

 

勿論戦闘など何も起きず終われば良いのだがそうはならないだろうと半ば確信しアルストはヴィーヴィルの武装の最終確認を行う

 




ちなみに皇国の〈マスター〉達が居た貨物ブロック、あれアルストの操作で簡単に切り離せます。勿論全員契約書で縛ってあるのでヴィーヴィル内部で暴れたりは出来ない。


・寝にくい〈マスター〉達
ルニングス内の宿泊施設は一年以上放置されている+もしかしたらこのベットの上でティアンが死んでいたのではと考えてしまい寝る場所が無くなった人たち。野営もモンスターに襲われたくないのでそれならヴィーヴィルの中で寝かせてもらえないかとアルストに相談。無事OKが出て全員で貨物ブロックで寝た。寝る前に合宿みたいな雰囲気になりタイプの人の名前を言い合ったり枕投げをしたりと学生の様になっていた人たち。


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第55話

□【聖騎士】レイ・スターリング

 

「でかいな」

 

もう少しで会場に着くという所で見えてきた目的地の上空に浮かぶ戦艦。現在はドライフ皇国の〈超級〉の一人であるアルスト・コジャーソが所有する戦艦【ヴィーヴィル】に付いてきた王国側の〈マスター〉達がざわめく

 

『さっきから動く気配が無いから安心するクマ』

 

「始めてみたけど大きいね~。まあこっちに危害を加える気ならとっくに【獣王】辺りと襲い掛かってるやろうし取り合えずは問題あらへんやろ」

 

王国のトップランカーである三巨頭の堂々とした態度に〈マスター〉達も落ち着きを取り戻し会議開催場所へと足を運ぶ

 

□興和会議場・貴賓室

 

レイたちは会議を行う場所に到着し早々【魔将軍】に絡まれたりと会ったが特に揉め事は起こらず皇国が用意した貴賓室へと通される。マリーに罠が無いか確認してもらった後は会議の話を行う。もし戦闘となった場合【魔将軍】や【獣王】等の対応を話していく

 

『【魔将軍】は問題なし、【獣王】は俺が相手するとして問題はあいつクマ』

 

「アルスト・コジャーソか」

 

「最近〈超級〉になったやつやねー、それに加えて【魔装王】にもなるなんて厄介やねぇ」

 

「ええ、ドライフの誰かに渡る可能性が一番高かったけどまさか〈超級〉の手に渡るなんて」

 

「アズライト何か知ってるのか?」

 

「先代【魔装王】は王国の貴族だったの。だからどんなスキルを持っているのかは分かるわ」

 

「成程、じゃあ教えてもらっても良いか?」

 

「ええ、【魔装王】のスキルは二つ。一つ目は名前の通り《魔装》、自分が装備している魔力式装備の周りに竜王気の様な物を発生させるわ」

 

「これは魔装師系統が持つスキルですね。発動中はMPを消費し続け消費するMPとスキルレベルに応じて能力が上がっていくと言う話です。【魔装王】は当然レベルEXです」

 

「二つ目はパッシブ型奥義の《強給過多(オーバーエンハンス)》、装備品に使用するMPを倍にすればするほど性能も上がっていく」

 

「こっちは確か消費量2倍で性能が2倍、3倍消費から倍率が0.5ずつ増えて行って。最大で6倍消費の性能4倍だったはずクマ」

 

「それ、使える人いるのか?」

 

「長期戦は無理ね、だから先代は魔力式銃器で6倍消費の超短期決戦を得意としていたわ」

 

「ヴィーヴィルもあの大きさクマ、普通なら2倍消費も難しいんだが・・・」

 

「〈エンブリオ〉か」

 

「はい、レイさんの言う通りそこでアルストの〈エンブリオ〉である【機構炉心 ヘスティア】が問題になります。〈超級激突〉以降調べてみましたがやはり特性はMP生成、動力炉型の〈エンブリオ〉でした。第六までに必殺スキルは発現しなかったみたいで情報が全くありません」

 

「だが今は〈超級〉だ、間違いなく必殺スキルは覚えてる。まあ能力からどんな必殺スキルなのかは検討が付くけどな」

 

「そやね、MP生成量の倍化って所やろ。つまり相手は【魔装王】の能力を時間を気にせずフルで使えるゆう訳や」

 

月夜の言葉に皆頭を悩ませる。【獣王】だけでもギリギリだったのにこれでは決定的に戦力が足りない

 

「一応僕の方で頼りになる人に声はかけています。ただリアルがバタバタしているらしく来られるかどうかわからないとの事でした」

 

「ルークもか、俺も何人かに声を掛けたんだけど忙しいみたいでさ。そのおかげでクロノにキルはされて無いから良かったんだけど」

 

「まあ会議には顔出すやろうし、いざ戦闘となったら本体を即潰せばええやろ」

 

「出てこなかったら?」

 

「あんな大きなもん出して顔出さんとかこれから戦いますってゆうとるもんやろ。出てこんかったら相手にそう言えば出てくるやろうし、あちらさんも初っ端から戦いたい訳やないやろうし」

 

「なるほど」

 

月夜の判断は正しい。王国側には隠密系統超級職などAGIに優れている者達が数人いる。前衛職でもない【魔装王】が生身で目の前に居るのなら簡単にキルすることが出来るだろう。

 

 

 

 

しかしそれは正直に生身で前に出てきてくれればの話だ

 




《強給過多》
【魔装王】の奥義、奥義使用のためのMP量は自分で何倍支払うか調整できる。


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第56話

皆さん感想や評価ありがとうございます。感想を頂くと次も頑張って書こうと励みになります。

私の中で結構ふわふわしていた部分も感想で頂いたコメントを元に自分の中で改めて考えたり小説の中に入れ込んでいるので非常に助かっています。

・・・ヴィーヴィルってステータスどのくらいあるんだろう。他の〈マジンギア〉も純竜級やら竜王級やらで詳しく分からないからどの位のステータスにするか悩む




 

□国境地帯・議場

 

会議は終わった。王国と皇国で結ぶ条約、その裏に潜む考えにレイが気づきクラウディアがそれを肯定した。クラウディアは計画が失敗した事で別の形、王国と皇国の王と〈マスター〉達による戦いを始めた

 

「《絶死結界》」

 

戦いが始まると同時に月夜が発動したスキルにより【獣王】と【魔装王】以外の全員が即死した。ブローチなども意味が無く即死判定の連続でアイテムを無駄に消費した形でデスペナルティとなった。

合計レベルが100以下の人間範疇生物を即死させる超級武具【グローリアβ】と合計レベルそのものを六分の一にできる《薄明》というコンボにより王国と皇国の人数差は大きなものとなった。

超級職を持っていない者はこのコンボを喰らった時点でアウト、【魔将軍】もジョブを振り直している最中だったのは分かっていたのでデスペナルティになっても驚かない。残りは《看破》で合計レベルが分かっていた《獣王》と偽装系のアイテムを使っているのか超級職を二つ所持しているという事からこのコンボでデスペナルティにはならないだろうと判断した【魔装王】

ここまではレイ達も予想の範囲内だった、しかし

 

「・・・」

 

「何や、動かへんの?」

 

今来ている特典武具のキグルミ姿で攻撃してくるでもなく〈マジンギア〉を出すでもなく会議の開始からずっと棒立ちをしている【魔装王】にレイ達は警戒し一定の距離を保ち構えている

 

「・・・ククク、今度は見破れなかったなぁバルバロイ」

 

「私?」

 

突然の名指しに困惑するビースリー。彼女はアルストと会ったことが無いので当然の反応であった

 

「まあ当然だよなあ、これはお前の特典武具じゃねえしこのキグルミも【設計王】が作ったもんだもんなぁ!」

 

アルストは、【魔装王】に変装していた人物はそう言うとキグルミを脱ぎ自分の顔をその場の者達に晒す

 

「ッ!テメエは!?」

 

うっかりバルバロイモードの口調になるほど驚いているビースリー。それもそのはずそこに居たのはアルストでも〈超級〉でも、ましてや前回会った時は皇国所属の〈マスター〉でも無かった

 

「あの後は色々あって皇国に拾われた、運が良かったぜ。【魔装王】に偽装するだけで結構報酬も貰ったし。何より・・・テメエのそんな顔が見られたんだからなあ!」

 

かつては〈ソル・クライシス〉というPKクランのサブオーナーで偽装の〈エンブリオ〉を持つ〈マスター〉ヴァーミンは愉快そうにビースリーを見ながら大きな声で笑った

 

「この!」

 

しかしその声はマリーの放った銃弾により強制的に止められた。しかし本人はこうなる事も予想していたのか光の塵となり消えるまでビースリー達を見ながら笑っていた

 

「やられたわ、会議に出ないんやなくて替え玉を持ってくるなんて。《看破》対策のアイテムは本体とのステータス差を見て怪しまれんようにするため。本物は今頃・・・ッ!」

 

月夜の言葉に正解と答えるように空から、正確に言うならばヴィーヴィルが置かれていた場所から大きな音が聞こえる

 

「・・・これは」

 

「ちょっと不味いね~」

 

シユウと月夜は少し焦った表情でそう呟いた

 

□【魔装王】アルスト・コジャーソ

 

手元の機械がビービーと音を鳴らす

 

(これが鳴ったということは会議は終了。予想通り王国との戦いか)

 

「ご主人様、いかがいたしますか?」

 

「姫から言われてただろう?これが鳴ったという事はそういう事だ。頼むぞヘスティア」

 

『はい、マスター』

 

ヘスティアの声と共に王国側にただ浮かんでいるだけと誤認させる為にスリープモードに入っていた機械がヘスティアが注ぐMPを燃料に動き始める

 

「ずっと融合状態だったから生成量は最大値、コストも十分ある。行くぞ!」

 

「了解、【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】発進いたします」

 




・ヴァーミン
偽装の〈エンブリオ〉を持つマスター。レイを監視していたフランクリンからアルストに情報が伝わり接触、多めの依頼料と【設計王】が作るアイテムを報酬に喜んでクエストを受けた。見た目は完ぺきに特典武具のでいらんだがどの言動で怪しまれてバレてしまうか分からなかったので何もしゃべらず棒立ちになっていた。戦闘となったら正体を明かしても良いと言われていたのでキグルミの中今か今かと待っていた。

実は当初ヴァーミンを登場させようと軽く考えていたがデンドロ読み返してみたら「あれ?あいつステータスとかは偽装できるけど姿は偽装できない?」となったので急遽でいらん(偽)を着て登場

【絶死結界】の中でもデスペナルティにならなかったのは自分の〈エンブリオ〉であるアマノジャクの必殺スキルでアルストの合計レベルを含むステータスをコピーしていたからです。アルストの方がレベルが上なので完璧にはコピーできませんでしたが何とか【絶死結界】の範囲外になりました。


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第57話

□【魔装王】アルスト・コジャーソ

 

クラウディア姫から指示により会議に出ずヴィーヴィルの中で待機。合図が来たので向こうの三巨頭含め全員を相手にする位の気概だった、しかし会議場まで行ったら【獣王】からの『手を出すな、ブチ殺すぞ?』というサイン、意味が分からない。味方じゃなかったのか

手を出したら本当にブチ殺されそうだったのでその場に居なかったクラウディア姫に指示を仰ごうと探した。煌玉馬に乗って王国の王女と戦っていたので援護しようかと近づこうとしたら『ブチ殺(以下略)』じゃあ会議の場に居なかった【破壊王】の所に行こうとしたら『ブチ殺(投石)』が来た

 

・・・俺、ここにいる意味有るんですか?

 

「あ、ご主人様。遠くの方に人影が」

 

「また『ブチ殺』案件じゃないの?」

 

「皇国の人員はもういないので大丈夫か・・・ッ!」

 

「うげ」

 

急な回避行動、体は固定しているので椅子から投げ飛ばされることは無かったが変な声が出てしまう

 

「敵ですご主人様!」

 

ヴィーラはヴィーヴィルの頭を今攻撃してきた者へと向ける、そこに居たのは

 

「・・・成程、これは大物だ」

 

そこに居たのはメイド、勿論ただのメイドではない。背中から翼を生やし結界と《魔装》を展開しているヴィーヴィルにダメージを与えるとヴィーラが判断するほどの強さ

 

「【四大冥土】・・・それにあれは・・・【堕天騎士】か」

 

「他にも地上に多数の〈マスター〉が」

 

「王国側の増援か、成程。こいつらなら『ブチ殺』案件にならなそうだ。ヴィーラ」

 

「了解、《火竜撃咆》(インシニエイトフレイム)!」

 

ヴィーラの指示通りにヴィーヴィルは口を開く、そして喉の部分に仕込まれた特典武具【三砲玉 インレイト】から炎の噴流が出て敵を包み込む

 

「効果ありません」

 

「流石上位ランカーだな」

 

自前のスピード、耐性、アイテムなど色々な手段で被害を最小限にした彼女たち、そして《火竜撃咆》の射程外の地上にいた《マスター》達もスキルや〈エンブリオ〉で攻撃をしてくる

 

「ご主人様、《魔装》の効果で減退させた上でもかなりの威力の攻撃が結界に届いています」

 

「・・・《魔装》の効果を受けていない攻撃もいくつかあるな、能力は弱体化の無効化か?これだから未知の〈エンブリオ〉ってのは。MPの消費率は?」

 

「現在の消費率は8割、攻守ともにギリギリです」

 

「攻撃を減らせばかなりの強さを持つメイドと結界をすり抜けることが出来る闇属性魔法を使う【堕天騎士】が近づいてきて防御を薄くすれば結界が割られて地上の〈マスター〉達の集中砲火をもろに受けると」

 

(やはりランカー上位陣達との戦闘となるとMPの消費が高いな)

 

現在のヘスティアのMP最大生成量は12万、第六から一気に倍の生成量になった。しかし12万と言う膨大なMPでもヴィーヴィルの本当の実力を出すには至らない。

 

(ヴィーヴィルを空へと上げるための浮遊装置・アンキュローサが持つ魔杖計48本・ヴィーヴィルとアンキュローサを動かすための魔力変換機構・結界・《魔装》・《強給過多》、これらを最高の状態で使うにはヘスティアの必殺スキルを使うしかないが・・・)

 

ヘスティアの必殺スキルを使えばこの場の王国〈マスター〉達を倒すことが出来る、しかしヘスティアの必殺スキルはコストが高くそれ以降はヴィーヴィルを動かすことが出来なくなってしまう

「ご主人様、新手です」」

 

必殺スキルと使うべきか判断している時、新たなモンスターが出現、それは翡翠色の雲の様な姿をしたエレメンタル系のモンスターで雲の中央にある大きな眼球でこちらを見ている

 

「【四大冥土】の一体、ッ攻撃中止、《魔装》と結界にMP集中!」

 

エレメンタルは出てきて直ぐ、大雨と雷をヴィーヴィルに落とす

 

「ご主人様、この大雨により敵を見失いました」

 

「結界に気を付けろ、この状態では向こうもこちらに近づいてくるのは難しいはず。6倍消費の《火竜撃咆》であのエレメンタルを倒す。あれを囮にして攻撃中に突っ込んでくるなら雷霆防幕(サンダリングカタラクト)を展開、タンクの保存MPも使用して問題ない」

 

「了解」

 

ヴィーヴィルは頭を上に向けると先ほどと同じように口を開け攻撃準備に入る。バチバチと音を鳴らした後、炎は一気に上に向かいエレメンタルの一部に直撃

 

「―――――――!」

 

強化された《火竜撃咆》が効いたようでエレメンタルは雨を止めてしまう。

雨が止み視界が確保できたヴィーラはヴィーヴィウに取り付けられたカメラを使い索敵を行うが

 

「敵の姿なし、逃げた?」

 

(いや・・・)

 

この状況でそれは無い。地上に降りた、という選択も《火竜撃咆》を見た後ではそんな悪手を取ろうとは思わないだろう、地上ではなく、ヴィーヴィルの周りを隈なく見る事の出来るヴィーラが見つけられないとなると

 

「あのエレメンタルの裏だ!」

 

その瞬間、エレメンタルが消える。【傾国】のジュエルに戻ったのだろう。

エレメンタルが消えるとその奥には【堕天騎士】と一匹のドラゴン、それに先ほどまではいなかった一人の〈マスター〉がドラゴンの背に乗っていた

 

「ッ!急いでここから離れろ」

 

〈マスター〉が誰なのか分かった俺は急いでヴィーラに指示。それを即時に実行しヴィーヴィルの推進器に魔力が送り込まれその場から離れようとする、しかしそうはさせないとドラゴンがこちらに向かって攻撃を行いヴィーヴィルの動きを牽制する

 

「攻撃が強く動けません!」

 

「間に合わないか」

 

外を見てみるとドラゴンの背に乗っていた〈マスター〉、【大海賊】のチェルシーは自身の〈エンブリオ〉である斧を構えている

 

(あの時、〈超級激突〉の時ギデオンで見た彼女の〈エンブリオ〉の必殺スキルは厄介だ)

 

俺が警戒していると警戒しているとチェルシーの持つ斧が消える、ギデオンで見て必殺スキルの準備動作だった

 

(もうすぐ頭上から数万トンの液状黄金が落ちてくる!)

 

「ヘスティア!」

 

『《金牛大海嘯》ポセイドン!』

 

モニターから聞こえてくる必殺スキルを発動する言葉、その瞬間大質量の液状黄金がヴィーヴィルを飲み込んだ

 

 

「・・・やったかな?」

 

黄金を呼び出した本人であるチェルシーはいまだ黄金に呑まれたヴィーヴィルに動きが無いのを見て重さで落ちたのかと思う

 

(落ちたなら地上に居る〈マスター〉達も全力で攻撃できるんだけど)

 

「敵二つの力と無限の可能性の一端を極めし者。半身の至高なる力も解放されておらず」

 

「・・・彼女は何と?」

 

「相手は二つの超級職を持つ〈超級〉、必殺スキルも使っていないみたいだから気を付けてだって」

 

チェルシーは背に乗せてもらっているドラゴン、【傾国】キャサリン・金剛のテイムモンスター【四大冥土】の一匹であるルビエラにジュリエットの言葉を翻訳して伝える

 

(確かに〈超級〉がこんなあっさりやられるとは思えない)

 

〈超級〉とはデンドロにおいて全プレイヤーの内100人にも満たない人数しかいないトップ集団、彼らの持つ〈超級エンブリオ〉は他の同系統の者達の追随を許さない

 

(それに、なんか聞こえた気がしたんだよね)

 

チェルシーが聞いたのは船内の只の慌てた声か黄金に物が潰れる音だったのか、それとも・・・

 

『・・・ッ捕まって!』

 

ルビエラがその場を離れた瞬間、黄金の中からヴィーヴィルが飛び出してくる、ルビ家らがあの場を離れなければヴィーヴィルの突進を受けていただろう。

 

『焦った、ギデオンで貴方たちの戦いを見ていなかったら間に合わなかったかもしれない』

 

「・・・さっきよりも結界も《魔装》も強くなってる。必殺スキルかな?」

 

『ええ、さすが上位ランカーの皆様。警戒はしていたのですが〈超級〉になり少し慢心していたようですな。ここからは、全力でお相手させていただきます』

 

□地上・王国の〈マスター〉達

全力でやると言う宣言後、ヴィーヴィルは槍の様な物を地上の〈マスター〉達に向けて射出。しかしその場にいるのは全員がレベルカンストした上級者、簡単に槍を避けるか破壊して誰もダメージは受けていない

 

「これ位で俺たちがやられるかよ!」

 

ヴィーヴィルはその後もいくつもの槍を打ち込むが〈マスター〉達には全くダメージが通らない

 

「何度やっても聞かねえよ!」

 

一人の〈マスター〉がそう言い降ってくる槍の一つを破壊、すると

 

「ッ何だ!?槍を壊したらロボットが」

 

「中にアイテムボックスを仕込んでたんだ!動き出す前に壊せ!!」

 

〈マスター〉の一人がそう指示するがそれよりも早くロボットが動き出す

 

『起動、接続問題なし、敵勢力の殲滅を開始』

 

「クソッ!いつの間に皇国は無人兵器何て作れるようになったんだ!」

 

「こいつらカルチュラタンの〈遺跡〉に居たやつらに似てる。どっかで手に入れて再利用してるんだ!」

 

その〈マスター〉の考えは惜しかった。このロボットたちはアルストが皇国に持って帰った煌玉兵を解析し量産可能となった新たな煌玉兵。動物を取り込みMPの供給源とする〈遺跡〉の煌玉兵と違い【ポーン】と名付けられたそれらはヴィーヴィルから無線でMPを供給されヴィーヴィルの指令用端末に繋がれた【風信子之統率者(ジルコン・リーダー)】からの命令を受け動いていた。

 

「皆落ち着いて行動しろ!数もそこまで多くない囲まれない様に注意すれば問題ない」

 

その言葉は正しく量産可能になったのは最近、現在の攻撃手段も威力の低い魔力弾を討つことしか出来なく〈マスター〉を【ポーン】だけで倒すことは不可能と言っても良い。

なので今回の【ポーン】の役目は相手を倒すことではない

 

「これで最後!」

 

そう言って〈マスター〉は自身の〈エンブリオ〉である剣でポーンを破壊、周りを確認する

 

「もうロボットはいないか?」

 

「ああ、それは良いんだが。なんだこの光の霞、最初は視界の端に見えるぐらいだったのにどんどん濃くなってるぞ」

 

「このロボットが出てきた時位からこれも出てきたよな。特に状態異常なんかにもなっていないが、何かの状態異常になるガス化?」

 

「一応気を付けておけ、アイテムや〈エンブリオ〉で状態異常を防げる奴ら直ぐに・・・ッ!」

 

直ぐに使用しろ、と言おうとした〈マスター〉はいきなりの爆発により周りに居た〈マスター〉達も含めてデスペナルティとなった

 

「キャア!」

 

「新手か!生き残ってるやつらは集まって全方位の警戒をするんだ!」

 

「ああ!分か・・・」

 

「何だ!急に消えたぞ!?」

 

「これってもしかして・・・」

 

「何だ、何か知ってるのか!?」

 

「ええ、でも王国では起こる訳が・・・」

 

「何でも良いから教えてくれ!何だこれは」

 

「レジェンダリアでよく起こると言われている現象<アクシデントサークル>・・・ッ!」

 

「何で王国に<アクシデントサークル>が・・・」

 

チェルシーはルビエラの背から地上の状態を観察していた。ポセイドンの黄金からヴィーヴィルが抜け出た以上遠距離攻撃の少ないチェルシーはルビエラとジュリエットのサポートに徹するしかない

 

「半身の秘めたる力を顕現した」

 

「うん、多分必殺スキルだよね」

 

チェルシーはジュリエットに返事をしながらここかどうすれば良いのかを考える

 

(また黄金を・・・いや、ほとんどが下に落ちてる。これじゃああの戦艦を落とすことは出来ない。何か弱点は・・・)

 

「至高の力も万能にあらず、いかに美しき杯も中身は限られる」

 

「・・・なんと?」

 

「いくら〈超級エンブリオ〉の必殺スキルと言っても何でもできる訳じゃない、絶対に限界があるはず、だって」

 

(そう、いくら超級エンブリオと言っても限界がある。仮に生成MPの上限を大きく上昇させる必殺スキルだとしても下の状況、おそらく生成したMPを何らかの手段で周りに放出してるんだろうけど<アクシデントサークル>が発生するレベルまで放出してるのに戦艦の方も【魔装王】の奥義で多分最大まで強化されてる。必殺スキルでそんなに生成量が何倍にも上がる物なの?)

 

「・・・いや、前提が間違えてる?」

 

「どうしました?」

 

「もしかして、必殺スキルの効果って生成量の数倍化じゃない?」

 

「え?でも〈エンブリオ〉の特性からしても」

 

(普通の言葉になりましたね)

 

ジュリエット語を忘れるレベルでジュリエットが困惑する、特性から見ても必殺スキルの内容はMP生成関連。じゃあ必殺エンブリオの効果は何なのか

 

「MPの生成量が増えるってのはあってるはず、じゃないとあんな馬鹿気た消費量の説明がつかない。必殺スキルの効果は数倍なんてチャチな物じゃない、ヘスティアの必殺スキルはMPを無限に生成するんじゃないの?」

 

「・・・え?」

 

「・・・ッ!あり得ない」

 

ジュリエットは息をのみルビエラは反射的に否定した。チェルシーが言った事はそれだけ常識から離れた言葉だった

 

「うん、私も自分で行ってて半信半疑。そこのところどうなの?【魔装王】」

 

チェルシーは先ほどから黙ってこちらの話を聞いていたヴィーヴィル、それに乗っていたアルストに話しかける

 

『正解だ。一定時間のMP無限製造、まあ一定時間MP使い放題とでも考えてくれれば良い、同じようなものだからな。それがTYPE:ジェネレートアドバンス・ガーディアン【機構炉神 ヘスティア】の必殺スキルだ』

 

その言葉に三人はショックを受けるチェルシーは自分で考えていたこともありショックは軽い物ですんだ、しかしジュリエットとルビエラはあり得ない物を見るようにヴィーヴィルを、正確にはその中のアルストを見る。長くデンドロプレイしているからこそ。デンドロの世界に生を受け〈イレギュラー〉と呼ばれる存在である者を父に持つからこそ、ヘスティアという〈超級エンブリオ〉の異常性が理解できる

 

「そんなの、〈超級エンブリオ〉でも出力の範囲外のハズ・・・」

 

『まあ色々とコストはでかいですよ。でも必殺スキルを使わないとあなた達は倒せそうにないので。そろそろ再開しますか』

 

アルストがそう言うとヴィーヴィルは三人への攻撃を再開させる

 

「ッ!二人とも耐えて!こんな反則級の必殺スキルなら制限時間も短いはず、時間になれば私たちの勝ちだ!」

 

『まあその通りですけど、私も〈超級〉の端くれ・・・あなた達にヴィーヴィルの攻撃を耐えられますか?』

 




【機構炉神 ヘスティア】
第七形態に進化したヘスティア、名前が少し変わった。TYPEもジェネレートアドバンス・ガーディアンに変化。他の〈超級〉と比較しても強大な必殺スキルを有しておりこの必殺スキルを手に入れるため一部のスキルをリソースにしている

進化前にヴィーラと話したことにより自分の役目(動力炉)に重きを置くようになり操縦や融合した機械の強化などはヴィーラや【魔装王】のスキルに任せてMP生成特化に進化。一応ガーディアンなので意思の疎通は出来る。たぶんヴィーラと話さなかったらジェネレートアドバンスに進化してないしこんな必殺スキルにはならなかった。

・ジェネレートアドバンス
現状ヘスティアのみのオンリーワンカテゴリー。エネルギーの生成に特化したTYPE

・《炉神の加護》
ヘスティアの必殺スキル、発動中生成MP無限。融合している機械にのみ有効
発動に燃料(リソース)が必要。使用リソースに応じて発動時間比例。使用後に使用時間に比例したヘスティアの機能停止。

コスト・対象自身の融合した機械だけに限定・膨大なデメリット・第七への進化時に得たリソースを殆ど・一部スキルを消して得たリソース。


ちなみに必殺スキルの一秒あたりに使用するリソースは1200以上。効果を考えると当然だが【魔将軍】のスキルよりもコストが重い。取り合えずクラン内で出た廃棄物やフランクリンに頼んで大量生産したモンスターやら何でもかんでもリソースとして貯めている。
モンスターはリソースになる時断末魔を上げるので絶えず悲鳴が聞こえるヤバい部屋が完成した


・【ポーン】
煌玉兵を解析してできた兵器、ヴィーヴィルから無線でMPを供給され動く、ジルコンが指揮を執り動かしているがまだ完成したばかりで装備なども整っていないので弱い

・槍
<アクシデントサークル>を発生させた原因。元々は動力炉がある街から無線で他の町にMPを送り防衛力を高めるために考えられた装置だったが効果範囲が狭く範囲も広げられず、送れるMPの効率が悪い(100のMPを送って1のMPが届く)ため作ったは良いが一回も使われなかった。【ポーン】もこれによりMPが供給されている。
突き刺さるとヴィーヴィルからからMPが送られ周りにMPを垂れ流す


まあ一定時間だけとはいえ無限はやりすぎたかな?と思ったけどまあ良いか


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第58話

お久しぶりです。

いやー、安易に無限とか書いたら駄目ですね、どうすれば破綻しないか悩みました。

もう少し早く投稿できるように頑張ります。


そう言えば半年の間にデンドロが無い世界に転生してデンドロを作るみたいな話面白いかなと思いました。何で話の続きは簡単には出ないのにこういうの新しい話は出てくるんでしょうかね。


 

□国境地帯・上空

 

【聖剣姫】と【衝神】の超級職同士が激突する場所から少し離れた場所、【魔装王】アルスト・コジャーソを倒すべく先ほどまで攻撃を行っていた【堕天騎士】ジュリエットと【大海賊】チェルシー、そして【傾国】のテイムモンスターのルビエラだったが。現在ジュリエットは自身のエンブリオによって空を飛びルビエラはドラゴンの姿で背にチェルシーをのせ【魔装王】が乗る特大〈マジンギア〉【飛竜戦艦 ヴィーヴィル】の攻撃を必死にかわしていた

 

「このままではやられるのも時間の問題です!」

 

(相手の事を甘く見ていた!〈エンブリオ〉の情報から〈超級〉になったとしても攻撃能力は〈マジンギア〉だより。追加パーツとして特典武具数個を計算に入れても私の必殺スキルで落とせば勝機はつかめると思ったのに・・・ッ!)

 

チェルシーはルビエラの上で自分の考えの甘さに顔を歪める。勿論あいて(アルスト)を下に見ていたわけではない。しかし自分の必殺スキルを決めることが出来ればあの人造竜は地に落ち地上にいる〈マスター〉達の力も合わせれば簡単とはいかずとも倒せると考えていた。

 

「今は攻撃を避けることに集中して!本当に無限にMPを生成できるとしてもそんな必殺スキルが長時間発動できるはずがない。今は時間まで粘るしか」

 

しかし結果は相手が必殺スキルにより先ほどまでよりも激しい攻撃を始めこちらは逃げるしか現状出来ることが無かった

 

(私とルビエラの攻撃は、情報に合った《魔装》と結界を張る特典武具で通じない。ジュリエットの闇属性魔法も《魔装》で威力を下げられる上に〈マジンギア〉のどこにいるのか分からない【魔装王】に当てるのは難しい)

 

チェルシーは次の手を考えながら気休め程度ではあるがジェムを使いヴィーヴィルを攻撃する。ルビエラとジュリエットもヴィーヴィルの攻撃を避け隙を見つけては攻撃していく。すべての攻撃は結界によって防がれているがずっと周りを飛び回られるのにイラついたのかそれともほかの理由かヴィーヴィルに変化があった

 

「あれは・・・ッ!」

 

ルビエラがヴィーヴィルの変化に気づき大きく距離を取る。ヴィーヴィルは《雷霆防幕》を発動しながら推進器に大量のMPを注ぎ放電しながらチェルシーたちへと突っ込んでいった

 

「何て力業・・・このバカ浪費〈超級〉!いくら魔力が有り余っているからって使い方ってもんがあるでしょうが!!」

 

『量を気にせず使える物を使わずに大事に温存して負けるような愚かなゲーマーにはなりたくないので』

 

チェルシーの言葉にアルストが反応しながらもヴィーヴィルはチェルシーたちへと突っ込んでいく。放電している範囲は広くチェルシーたちはいよいよ回避に専念するしかなくなっていた

 

□管理AI作業空間

 

「・・・」

 

ラビットは自身の〈マスター〉の願いの為、自身を縛ることになる〈戦争結界〉の発動回避のため皇国の〈マスター〉クロノ・クラウンとして王国と皇国の国際問題に干渉。それに管理AIとして過ぎた行いだと同じく管理AI十三号のチェシャがラビットを止める為に戦った。結局チェシャは負けたが色々ありラビットは王国の〈マスター〉にキルされ管理AI達が作業を行う空間へと戻ってきた。

 

(〈戦争結界〉が発動するのはほぼ確定、キルされる最後に良い物が見れたとはいえやっぱりなぁ・・・)

 

ラビットは心の中でため息を吐くと気持ちを切り替えある場所へと向かった

 

「・・・やっぱり来たわね、ラビット」

 

「やっぱり?僕がここに来るのが分かったのかい、ハンプティ」

 

その場所は〈マスター〉に移植される前の第零形態の<エンブリオ>を保管している場所で管理AI2号のハンプティダンプティはこの空間の管理を行っている

 

「彼はあなたが原因で<エンブリオ>を第七形態へと進化させた、それもあって必殺スキルの件が気になって私に聞きに来るんじゃないかと思ったわ」

 

「・・・その通りだよ。超級エンブリオの出力で無限のMPを生成する。そんなことが可能なのかい?」

 

これをチェシャと戦っている時聞いたラビット(とチェシャ)はかなり混乱した。皇国でアルストが〈超級〉になったと知った時はヘスティアの能力からMP生成に関する必殺スキルだとは予測していたが無限のMPを生成できると言うのは予想外だった。なので<エンブリオ>担当であるハンプティダンプティに詳しい事を聞きに来たのだ

 

「不可能に決まってるじゃない。あなたも知っているでしょう?そこまでの出力は<無限エンブリオ>に進化しないと無理だって」

 

しかしハンプティから帰ってきた回答は管理AI全員が持つ常識だった

 

「それは分かってる、じゃあ彼が言った事は相手を怯ませるためのただの嘘だったのか?」

 

「嘘、とは一概に言えないわね」

 

「?」

 

ラビットが頭に?を浮かべるとハンプティは【機構炉神 ヘスティア】の必殺スキルの説明を始める

 

「彼のエンブリオの必殺スキルの効果は簡単に言えば自身が必要とする量のMPを作る能力なの。無限ではなく必要量だけ、必要量が膨大な量でもあのエンブリオはその量を用意する、そういう必殺スキルだしね。だからまあ無限にMPを生成していると言っても良いかもしれないわね、どちらにしろ好きな量のMPが使えるのだから」

 

「なるほど、必要な量だけ・・・でも上限はあるのだろう?」

 

「もちろん、〈超級エンブリオ〉の身ではたとえどのような代償を払おうと上限は存在する。ただ第七形態に進化した時のリソースをほぼ使ってるし必殺スキル使用時に外部コストやスキル使用後の代償もかなり抱えているからよほど無茶な量を要求しなければ上限なんて行かないと思うけど、もし上限を越えたらどうなるのかしらね」

 

 

 

 

始めて必殺スキルを試した時、アルストは見学していたクランメンバーと共に納得した

 

『必殺スキルに代償があるのは珍しい事ではない』

『必殺スキルの効果を考えれば納得のデメリットだ』

 

しかし・・・

 

(可笑しい、不釣り合いだ)

 

ただ一人、クラン〈叡智の三角〉オーナーにしてアルストと同じく〈超級エンブリオ〉【魔獣工場 パンデモニウム】を持つMr.フランクリンだけはヘスティアの必殺スキルに違和感を覚えた

 

(無限のMPを生成、まあ無限と明記されているわけではないが効果としてはほぼ同じ。そんな〈超級〉でも破格の能力が事前リソースの消費と発動時間に比例した全スキルの機能停止、そして必殺スキル使用中の〈エンブリオ〉自体の機能制限。この三つでつり合いが取れていると?)

 

フランクリンは頭の中で考えてみるがやはりあの三つの代償だけでは無限のMP生成とは釣り合わないと考える

 

(考えられるのはヘスティアがMP生成特化型だから。アルスト君にも聞いた感じ進化時に得たリソースはほぼ必殺スキルに使用したとみて間違いない。スキルも一部無くなっているらしいからそれも使ってギリギリ足りたのか・・・それとも)

 

まだ代償があるのか

 

(・・・さすがにそれは無いか。スキルの説明も確認しているしヘスティア自身が詳しく把握しているだろうしねぇ。コミュニケーションが取れる〈エンブリオ〉はこういう時(スキル確認など)楽だよね)

 

自分の考えすぎかとフランクリンはこの話を終わらせた。

 

結論は代償三つが必要な必殺スキルだという判断に終わった。システムウィンドウに記載された説明文も確認し必殺スキルを使用する本人であるヘスティアにも確認を取ったので間違いはない。

 

システムが、ヘスティアの話が正しければ、の話ではあるが

 




前回何で、堂々と無限のMP生成を行う必殺スキルだと言ったアルストの発現が《真偽判定》に反応しなかったのか。チェルシーたちが《真偽判定》を持っていなかったのではなく単純に必要量=無限のMP生成じゃね?と思った結果です。嘘と思って喋ってないから反応しなかったのです。

下手したら馬鹿な奴が何も考えずに詐欺系統の超級職とか取れちゃうかもね。


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