史上最強の弟子二号イズク (自堕落キツネ)
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史上最強の弟子二号イズク

少年、緑谷出久が自分が『個性』を持たない『無個性』であると診断され、大きなショックを受けてから数年後、小学四年生のとある日の帰り道であった。

『将来の為のヒーローノート』を幼馴染の「かっちゃん」こと爆豪勝己に無駄と言われ、「無個性が努力しても無駄だ」とクラスメートにバカにされても、ブツブツと小声で様々なヒーローに関する情報を呟きながら整理しつつ徒歩で帰宅していた。

 

ツルンッ「おわっ!?とっとっとっ!」

 

思考に意識を割いていたため、何故か足下にあったバナナの皮で足を滑らせ、両手をワタワタと振りながら前へとつんのめる。

 

「おっと。」

 

そんな軽い調子で、道着を着た白目とチョビヒゲが印象的な男性に、出久の動きを抑え、危うく道路に飛び出しそうになっていた所を助けられた。

丁度大型トラックが通り過ぎる寸前だったようで、本当に『九死に一生を得る』という場面だったようだ。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「いやいや、君が助かってなによりだ。ところで、コレは君のノートかな?」

 

勢いよく頭を下げお礼を言う出久に、男性は宙をまっていたノートをキャッチし、パラパラと捲りながら問いかける。

 

「へ?は、はい。そうですけど。」

 

「ふむ。コレを見るに君はヒーロー志望かい?」

 

「はい。でも、その、僕は『無個性』なので。」

 

戸惑いながら返事をする出久にノートを返しつつ、更に質問をするが、出久はやや俯きつつ自身が無個性であることを理由にやや諦めたように返事をする。

 

「ほほう。無個性。」

 

『無個性』という単語に男性がキランッと眼の端を輝かせたことに、出久は気づかない。

 

「君の名前は?」

 

「み、緑谷出久です。」

 

「では出久君、ヒーローというのは無個性ではなれないと君は思っているのかい?」

 

「違うんですか?オールマイトやエンデヴァーみたいな強い個性がないとダメなんじゃ?」

 

「君だってあまり強くない個性のヒーローは知ってるだろう?」

 

「それはそうですけど。」

 

「つまりね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、私は思うんだ。」

 

「僕も、ヒーローに?」

 

「そうとも。」

 

目線を合わせる為にやや屈み、出久の両肩に手を置きながら語る男性の言葉に、出久は目を輝かせる。

 

「じゃあ、僕に技を教えてください!!」

 

「ふむ、何故私に?」

 

「さっき僕を助けてくれたのも、その技なんですよね?」

 

「そうだね。」

 

「なら、僕もさっきのおじさんが僕を助けてくれたみたいに、誰かを助けることができる人になりたいです!!」

 

「では、親御さんと話をしないとね。私の武術は柔術というんだけど、流石に無料(タダ)で、という訳にはいかないからね。」

 

「じゃあ、僕が家まで案内します!!」

 

「うん、よろしくね。あぁそうそう、出久君、私はね、岬越寺秋雨というんだ。弟子入りするなら、秋雨師匠と呼んでくれないかな?君の兄弟子に当たる子はそう呼んでるんだ。」

 

「はい!!秋雨師匠!!」

 

「よろしい。」

 

家へと着いた出久は、興奮気味に母、引子へと懇願し、彼女も、出久のヒーローへの熱意と無個性だと診断されたときの涙を知っている為に了承した。

 

「家の子をお願いします。」

 

「はい。任せてください。」

 

深々と頭を下げる母親に、秋雨もまたしっかりと返答した。

 

こうして、史上最強の弟子二号イズクは産声を上げた。

まぁ、ケンイチの時よりは大丈夫な筈だ。年齢的にそんな無理はしないだろう、多分。

 

 

梁山泊のメンバー個性(妄想)

 

師匠達は武術には基本関与しない個性であると前提

 

長老:風林寺隼人

『飲食眠蓄』

 

最大10日分、先んじて飲食、睡眠をしておくことで、その間飲まず食わず眠らずで活動できる。

 

岬越寺秋雨

『天気雨』

 

一定範囲内(半径10m)に雨を降らせる

 

アパチャイ・ホパチャイ

『動物対話』

 

動物と会話できる(原作でも逆鬼に連れられ競馬の馬達と会話していた)

 

逆鬼至緒

『酒精主食』

 

酒さえ飲んでいれば食事も不要。一番効率が良いのが酒ってだけで普通に食べる

 

香坂しぐれ

『水棲適性』

 

水中を自由に活動できる、息継ぎ不要。ただし基本刀を使うため水中での戦闘はしない。

 

馬剣星

『スカウター(女性限定)』

 

女性のスリーサイズを服の上からでも正確に計れる。パットや補正下着なども見抜くため、不評

 

風林寺美羽

『風斬肢体』

 

風の影響を無視できる

 

白浜兼一

『不窮不屈』

 

追い詰められる程、自身の全てが強化される




この世界の出久はオールマイトから個性を継承するのかな?と思う。
『無個性ヒーロー』として名を広めてほしいと思ってしまう。


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いきなり体育祭編へ

多分続きは書かない………筈


緑谷出久が梁山泊に弟子入りしてから数年後、出久は雄英体育祭の開幕式の為に整列していた。

色々あったなぁ。となんとなしに今までを振り返る。

 

梁山泊の人達との出会い、兄弟子ケンイチの仲間で武術家の先輩達との出会いから始まり

人間の限界を突破するような地獄という言葉すら生温い修行の数々

 

憧れのオールマイトとの出会い

幼馴染のかっちゃんを襲ったヘドロっぽいヴィランを、拳圧で吹き飛ばした時の「違法な個性の使用」(これはすぐに誤解とされお咎め無しとなった)

その後のかっちゃんとの軋轢

 

入学試験では0Pの仮想ヴィランを腕を駆け上がり、背中からコアをぶち抜く

個性の使用有りの身体測定ではクラスメートに引けを取らず

マスコミ騒動では長老仕込みの喝破で場を収め

ヒーロー学での模擬戦ではかっちゃんと互角に渡り合い

USJでは防御、回避、受け流しに徹する事で「能無」を無力化した(師匠達の方が遥かに怖いとは出久談)

 

そんな過去(主に修行内容)を振り返り

「よく生きてたな、僕」

と遠い目をしつつ、周りからの視線を無視している。

人の口に戸は立てられない。

ヒーロー科に所属していながら「無個性」であると、密かに知れ渡っている出久は特に注目を集めているからだ。

 

かっちゃんによる「選手宣誓という宣戦布告」も終え、第一種目のスタート地点へと並ぶ。

と、プレゼントマイクのハイテンションな実況の声が辺りに響いた。

 

「さぁ!!実況はこのプレゼントマイク!!そしてぇ、なんと!!解説にはスペシャルゲストとして『ヒーローよりも人間離れしてる』と言われる武術家集団『梁山泊』からぁ!!『哲学する柔術家』の異名で知られる『岬越寺秋雨』が来てくれたぞぉ!!」

 

「よろしくね」

 

ヒゲをちょいちょいと触りつつ挨拶をする秋雨。

予想外の師匠の登場に一瞬だけ出久は硬直してしまう。

 

「デク君、どうしたん?」

 

「ア、イ、イヤ………」

 

その挙動に傍に居た麗日お茶子に問われるも、妙な片言で返してしまう。

 

「なんでも弟子が此処に通ってるとか?」

 

「えぇ、出久君という子なんです。それと彼には師匠として課題を、と思いましてね。」

 

「おぉ!!今注目のルーキーか!!んで、その課題ってゆーのは?」

 

そんな会話から出久へと視線が集まる。

 

「えぇ、この体育祭でベスト8に、出来れば優勝して欲しいですね。もしベスト8に入れなかったら………」

 

「入れなかったら?」

 

ゴクリ、と静まり返った会場で唾を飲み込む音がどこかから聞こえた。

 

「『修羅コース』の修行を一ヶ月」

 

「デ、デク君大丈夫?」

 

『修羅コース』とは何か?と殆どが首を傾げる中、カタカタと歯を鳴らす出久に恐る恐る声をかける麗日。

 

「麗日さん、『地獄の修行』って聞いて思い付く限りの厳しいのを思い浮かべてみて」

 

「へ?う、うん」

 

周りで聞いていた生徒達も連られて思い浮かべる

 

「それが天国だって理解させられるような、例え死んでも黄泉帰りを経験できる。正に生かさず殺さずの修行だよ。それに見会うだけの強さは得られるけどね」

 

ハハハ、と力無く笑う出久に同情の視線が集まるが、それほどの修行をしているからこそ、彼はこの場に居るのだと一部の生徒は気を引き締める。力なき無個性ではなく、強力なライバルとして存在を再確認する。

 

「師匠からの熱い声援は此処までだ!!こっからは公正に頼むぜぇ!?さぁさぁ、気を引き締めていけ!!そろそろ第一種目が始まるぜぇ!!」

 

(あくまで発破をかけただけと勘違いしている)プレゼントマイクの声で全員が意識を向ける。

 

この体育祭で、緑谷出久は世界へ己を知らしめる。

その影にある、財政難の梁山泊を何とかするための師匠達の悪企み(わるだく)を知らずに。



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