騒々しいアイドル達とプロデューサー お前ら皆落ち着け。  (べれしーと)
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第一章 何でお前らそんな自由なんだ。
やってくれたな、一ノ瀬ェ!


短い。

これからも恐らく短い。


「一ノ瀬ェ!何処だゴラァ!」

 

レッスンルームの扉を断りもなく開くヤバい男がここにはいます。まあ誰かは明白だから良いんだけど。

 

「どうしたのプロデューサー……って、え?誰?」

 

「俺だよ。プロデューサーであっとる。いや、そんな事よりあのhshs女は何処だ。こっち来ただろ?何処だ?もう許さんからなあいつ……!」

 

「ちょ、ちょっと、ストップ。ウェイト。えと、周子ちゃんには状況が理解出来ないかなーって。」

 

「は?何で?」

 

「いや、先ず、頭、禿げてるじゃん?急に何?イメチェン?」

 

見事にツルピカ。ソーラーパネルって言われたら信じるレベル。月250円くらいの電気創りそう。いや、少な。いらない。

 

「し、失礼な!後五年は安泰だぞ!」

 

「29で終了なんだ……悲しいな……いや、まあ、ならね。次にさ、その胸毛どしたん?」

 

ジャングルという言葉はこの時のためにつくられてたんだなあと思いました(小並感)。

それほどにモジャモジャ。奈緒ちゃんなにやってんの。って違うね。テヘペロ。

 

「は?胸毛?……っ!」

 

プロデューサーの顔が驚きにひきつる。

 

「え、嘘。気付いてなかったの?」

 

プロデューサーの頭が心配になる。いや、髪の毛じゃなくて。

 

「……一ノ瀬ェ!あいつ、やりやがったなァ!」

 

「ええ……まあ、いいけどさ。それよりもね、一番プロデューサーがプロデューサーじゃないって思う理由が一個あるんよ。いっていいよね?」

 

駄目だとか言ったら飯奢らせよう。そうしよう。

 

「まだあんのか。いいぞ。どうした。」

 

「あたしの匂い嗅いでてそんなに楽しい?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

やっほー。あたし塩見周子。突然だけど、禿げてる、胸毛ボーボーの男性に抱きつかれて匂いを嗅がれてます。なにこれ?胸に顔を埋められてるんだけど、変態さんかな?入ってきた瞬間からこれだし、変態さんだね。

 

……いや、この人が本当にプロデューサーなら勿論恥ずかしいんだよ?

 

でもこれは流石にプロデューサーでない誰かだと判別できる。

 

「で、どうなの、志希ちゃん。」

 

「にゃははは、バレたー。」

 

うわ男声でそれはきつい。しかも胸毛の主張が。後、ハゲ。あたしに抱きつくのを止めて一メートルくらいの距離を志希ちゃんはつくってくれたけど見た目のインパクトが凄絶過ぎる。はっきり言って吐きそう。

 

「それで?何でこんなことしてんの?」

 

「んー?まあ、面白そうじゃない?こーゆーの。だからかなー。」

 

「お、おう。」

 

訳が分からないよ。後、胸毛の主張とハゲも。

 

「さっきさ、この姿で……あ、これね、なんか適当に薬を調合したりしてたらこうなったんだけど、これで色んな子に会ってきたんだ。」

 

お、話をぶったぎるね?ほーう?……って何のキャラだよあたし。

 

「へえ、それで?」

 

でも、なんだかんだいってあたしも気になるんだよね。いやだって実際面白いやん?信頼するプロデューサーがハゲで胸毛でクンカクンカだよ?人類史上稀にみる未知。これこそカオス理論。数学界の革命児。いや違うか。違うね。

 

「皆すっごい良い反応してくれて!楽しかった!」

 

うおお、小学生。思ってた以上に悪戯して喜ぶ小学生だわ。ギフテッドとは一体。

 

「特に面白かったのが凛ちゃんでね?どんな反応だったかっていうとね、」

 

凛ちゃんか。どんな反応なんだろう。気にな

 

 

 

 

 

「うんうん。そうかそうか。」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

志希ちゃんの背後に殺気!何奴!

 

って、まあ、あたしからは丸見えだから、阿修羅みたいな顔した、禿げてない、胸毛もない、匂いも嗅がないプロデューサーがいる事を知ってる。凄い不名誉だ。おもしろ。

 

ああ、志希ちゃん流石に汗だくに。まずいって顔してる。でも胸毛とハゲなんだよなあ。

 

「よお、一ノ瀬ェ?どうやら『また』何かやらかしたようだなァ?」

 

「……えっと、あー、え?さ、さあ?志希ちゃん解んないなー……」

 

「凛が許可は得たと言いながら俺の身体に抱き付いて匂い嗅いできたのはお前の仕業じゃないと?」

 

凛ちゃん……

 

「え?それ志希ちゃん本当に違」

 

「智絵里が胸毛と呟きながらソファで虚ろにいたのも違うのか?」

 

うわ、想像したくない。てか志希ちゃんも何をしたの。

 

「それは……えと……」

 

「茜が禿げててもプロデューサーはプロデューサーです!と言ったのもっ、違うのか……っ!」

 

一番恨み籠ってるよ。気にしすぎでは。禿げるよ?

って、こっちみんな。なんで分かったし。

 

「……ご、ごめ」

 

「六回目だぞ。もう許さん。絶対に離さないからな。」

 

最後のところだけならかっこいいのに状況のせいで全く嬉しくない。レッスンルームに阿修羅と子鹿と傍観者。んー、世界観どうなってんのかな?やばすぎでしょ。志希ちゃん涙目だよ?

 

と、プロデューサーは志希ちゃんの着ている服の襟首を掴み、引き摺りだした。これは酷い。でもやっぱ胸毛とハゲが強すぎる。こっちの方が酷い。いや醜い。

 

「ちょっと、キミにしては手荒だねえ。志希ちゃんこれからなにされるのかにゃあ?」

 

「性格調教」

 

「にゃあああああああああああああああああ‼‼‼‼」

 

わー、暴れる子猫。と、無視する親猫の図。乱れてますねえ。

 

後、男声でそれはキツいって。それにビブラートきかせないで。綺麗なバスで少し腹立つ。

 

「煩い。暴れんな。殴んぞ。」

 

「ひ、酷くない!?仮にもアイドルの卵だよ!?お、女の子だよ!?」

 

いや、胸毛とハゲの男の子だよ……

 

「知るかよそんな事。」

 

「それがプロデューサーのいう事かぁあぁあぁあ!!」

 

バタリと扉の閉まる音。二人の声が聞こえなくなっていく。代わりに、レッスンルームにはただあたし一人だけが残される。

 

 

「嵐ってか、台風だなー……」

 

 

静けさだけが残り、ハゲは去った。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

因みにだけど志希ちゃんがプロデューサーにつれていかれる時にニヨニヨしてたのを見逃す訳がない周子ちゃんなのです。ニヤケ顔は隠せないものだね。

 

構ってもらえたのが嬉しかったんだろうねぇ。不器用だなあ。まあそこが志希ちゃんの可愛い所でもあるんだけどね。




一ノ瀬はずっと男の状態です。


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話を聞け、鷺沢ァ!

ユーモアと文章力くれ。


今は平日の朝で、会社にいる。そして俺は誰かというと、アイドルのプロデューサー。最近、『問題児係』のルビがプロデューサーなんじゃないかって思いだしている24歳の男である。そんな冴えない男の、こうなった要因を簡潔に説明する。

 

元々興味のあった芸能業界に入ったら、無法地帯でした。

 

なんだよね。

 

いやね、俺はこう、なんていうの?

仕事に追われて忙しいながらも、そして紆余曲折ありながらも、努力をして一所懸命なアイドル達の補佐を行い、彼女らをキラキラとした星の様な存在にする、という感じのものを想像していたんだ。

 

でも実際は子守りね。なんだよここ。いや、皆頑張ってるんだよ?それは知ってるからいいんだけどさ。こいつら、自由過ぎじゃね?そろそろ死ぬよ、俺?

死因『H.A.の全力タックル』とか実現しちゃうよ?時事ネタとかじゃなくて本当に。関係無いけど監督よりも理事長の方が怖かったです。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

俺は事務仕事に一旦けりをつけ、彼女を呼んだ。

 

「おーい、文香ー。こっち来てくれー。」

 

暫し後、本を読んでいた文香はその本を閉じ、それをしまってからこちらに来た。二人で隣の部屋に移動して、ソファに腰掛ける。扉側に文香、窓側に俺の位置だ。……文香から紅茶の香りがする。少し前まで雪乃と一緒にいたねこれは(名推理)

 

「急に呼び出して悪いな、文香。すまない。」

 

そう言って俺は軽く頭を下げた。

 

「いえ、構いませんよ。気にしないで下さい。」

 

「ありがとう。そう言ってもらうと助かるよ。」

 

ウチの事務所のアイドルって野蛮だからね。謝っておかないと後で干されちゃう可能性あるの。

 

「……あの、すみません。ちょっと一つ伺ってもいいですか?」

 

「ん?ああいいぞ。何だ?」

 

「端で蹲っている志希さんは一体何をしているのでしょうか……?」

 

窓側の角で死んだ顔をした志希が蹲っていた。

 

「ああ、気にしないで。不名誉を被ったからね。受けるべき罰だよ。」

 

幸いにも文香は志希のターゲットになっていなかったらしい。いや、あんなん文香が見たら卒倒すんぞ……見てなくて良かった。でもそんな文香もちょっと見てみたかったかも。はい。嘘です。

 

「よく分かりませんが、理解は出来ました。」

 

物分かりがよくて助かる。本当に文香は良い子だなあ。

 

…………一つの点を除いたら、だが。

 

「そういえば、理解と云えば、理を解する、という風に解釈ができる気がするんです。ですから、『わかる』ということとは少し違うと私は考えています。理を解するとは数学的に云うと未知の公式化、と、言えませんか?不明な事柄を、他者の扶助により、明確な事柄にする。これこそが理解であり、『わかる』とは、不明な事柄でなくとも共感や同調のために使われ、自己的に事柄を消化するもの、だと私は思っています。したがって、理解と『わかる』はノットイコールである。……あ、そういえば、ありすちゃんがですね、いち」

 

「落ち着け文香。止まれ。つーか、黙れ。おけ?」

 

「そういえば、何故、『黙』という漢字は『里』と『犬』と『れっか』で出来ているのでしょうかね。黙る事と里に相関関係なんてないと思うのですが……閑散とした感じを静寂ととったのでしょうか。なら、酷いですね。別に里は全てに於いて限界的ではないのに。犬もそうです。というよりも犬に至っては静けさの真逆をいってませんか…?咆哮なんて耳障りでしかないのに何故…いえ、犬は好きなんですけどね。可愛らしくて、人懐っこい。あ、猫も好きです。ありすちゃんにそっくりです。ふふ。……あ、そういえば、ありすちゃんがですね、いち」

 

「聞こえてますかー。おーい。耳ありますかー。」

 

「……あ、忘れてました。今日発売される本何時買いにいきましょうか……明日いこうかな……でもお仕事で行けないし……ありすちゃんと一緒のお仕事……ふ、ふふ、一緒……良い、響きです。叶うのならば、ずっと一緒がいいです……一日中、一月中、一年中……見ていたい、聴いていたい、嗅いでいたい、触れていたい、味わいたい……愛らしいその姿を、可愛らしいその声を、甘ったるいその香りを、柔和で滑らかなその身体を、ぷるりとしたその小さな唇を……私だけ、私だけが……どうすれば私だけになるんでしょうか。うーん……あ、そういえば、ありすちゃんがですね、いち」

 

「鷺沢の持ってる芥川の小説全部捨てるぞ。」

 

「ごめんなさい。あの知性的で古典的で緻密な文章は宝物なんです。捨てないで。」

 

これだよ。鷺沢さんこわい。てかありすの事好きすぎじゃね。ヤンデレだよ。もうこれヤンデレだよ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

文香ちゃん癖が強すぎません?(白目)

 

 

 

 

 

「いいか文香。夜の仕事についての話だ。」

 

「その言い方はそこはかとなくエロティックな感じがします。」

 

「アイドルがそんな事言わない!」

 

「すみません。」

 

「テレビ出演だが分かってるな?」

 

「……りか」

 

「理解と分かるの違いはもうええねん。」

 

「はい。嘘です。」

 

「…………生放送だし、緊張もする。でもあんまり考え過ぎんなよ。自然体でいい。ありのままの姿を見せ」

 

「……」ペラッ

 

「本を読むな。それ捨てるぞ。」

 

「ごめんなさい。耽美で倒錯的なこの文章は宝物なんです。捨てないで。」

 

「エロ本じゃねーか!なに読んでんだよ!」

 

「小説に年齢制限はありませんよ?」

 

「あ、そうなの?」

 

「はい。勉強になりましたね。」ペラッ

 

「……いや、文香が今読んでるそれ漫画じゃね。」

 

「……ち、ちが」

 

「燃やすぞ。」

 

「……ごめんなさい。どうぞ。」

 

「ったく。女の子がこんなの読むんじゃない。」

 

「もしかして家でそれを使って自慰行為に耽るんですか?愉しそうですね?しゅっしゅっ、って?」フフッ

 

「鷺沢の持ってる太宰の小説全部捨てるぞ。」

 

「ごめんなさい。あの崩壊美と独自性のある文章は宝物なんです。捨てないで。」

 

「……はあ。あのね?今日、もうすぐ、生放送。オッケー?理解してます?」

 

「I'm okay.」

 

「……」ムシ

 

「Oh,I'm very sorry.」

 

「……緊張しないの?」

 

「ありすちゃんと話す時の方が緊張しますよ!!プロデューサーさんはそんな事も分からないのですか!?」

 

「え、何で俺は怒られてんの?」

 

「怒られて当たり前です!ありすちゃんこそが正で善!そうでしょう!?」

 

「……そうだね。」

 

「返しが雑ですね。きちんと聞いていますか?」

 

「そうだね。」

 

「……」

 

「そうだね。」

 

「……かわい」

 

「そうだね。」

 

「シュワシュワするものは?」

 

「そうだね。」

 

「seeの過去形」

 

「そうだね。」

 

「……」

 

「満足したか、鷺沢?」

 

「はい。」

 

「俺はお前が心配になるよ……大丈夫かしら……」

 

「私はプロデューサーさんの髪の毛の方が心配です。」

 

「鷺沢の持ってるプラトンの小説全部捨てるぞ。」

 

「ごめんなさい。あの二元論的世界観から成る理想主義的文章は宝物なんです。捨てないで。」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……兎に角言いたかったのはな、生放送頑張れよって事。初めてなんだしさ。」

 

「……えと、その、ありがとうございます。ちゃんと、真面目に、頑張っていきます。プロデューサーさん。」

 

「…………ん、そうだな。」

 

急に真面目になられて、少し気恥ずかしい。それに、赤く染められた頬を見せられてドギマギもした。やっぱ文香って可愛いわ。くそっ。可愛いは正義なのか……っ。可愛さのもとではさっきの痴態や阿呆は消え失せるのか……っ。悔しい男の性……っ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「プロデューサーさん、生放送の時の私の衣装凄く露出が多いのですが……ご趣味ですか?変態なんですか?」

 

「鷺沢の書いた小説全部皆に公開するぞ。」

 

「それはマジで止めて。」

 

「…………え?」

 

「あ、えと、ごほん。

 

……それは少し恥ずかしいので止めて下さると嬉しいです。」

 

可愛いけれど、彼女は癖が強すぎる。




んー、麗しさを表現出来た気がしますねえ。


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話を聞け、日野ォ!

ユーモラス、とは。



おはようございます。皆さん、元気ですか?俺は死にそうです。

 

 

 

 

 

 

「疲れた……てかあっつ……」

 

暑い、平日の昼間。俺はプロダクション併設の広場のベンチに座っていた。楽チン。暑いけどな。

 

広場がプロダクション内にある、なんて驚きだろう。驚かない?因みに僕は驚きました(小並感)。……346プロは芸能業界の中で結構な権威を誇り、知らない人はいないと言って過言でない事務所だ。広場があってもおかしくない。と、昔先輩に言われた。納得はしたが謎。勿論、そんな凄い所だから建物は只一言でヤバい。でけえんだわ。いや、きらり何人分だよ。100人か?100人乗っても大丈夫なのか?

 

と、

 

「……ん?あれ茜か?」

 

広場の真ん中でストレッチをしている茜を見つけた。さっきまでいなかったし、汗をかいているのをみると、まあ、日課の走り込み後のクールダウンかな。朝早くから仕事だったし時間を繰り上げたのだろう。

 

と、伸脚中の茜がこっちを見た。うわ色っぽい。エロいな。つか生脚すげえな。なんて高校生の様な思考をしている時にこっちを見たもんだからめちゃくちゃヒヤっとした。そしてストレッチを終わらせた茜は屈託のない笑顔で此方に手を振ってきた。

 

「プロデューサー!おーい!」

 

「お、おーう。」

 

罪悪感のまとわりつく感覚。ごめんなさい。でも生脚があるから。これは不可抗力ですよ。しょうがないね。

 

「今からそっちに行きますね!!」

 

「え」

 

途端に茜が走り出す。

 

…え、ちょ、嘘だろ。おいおい、これはヤバい。今度は別の意味でヤバい。日野茜の渾身のタックルは駄目なんだってば。もう時事ネタはいいんだよ。許すからもうええて。あ、理事長は許さないです。

 

なんて意味の分からない事を考えていたから、

 

「ボンッッバーーーー‼‼‼‼‼」

 

無事、肋骨が逝去なされました。墓をまだ造っていない事が悔やまれる。

 

 

 

×

 

 

 

「あ、あかね……タックル、タックルはだめ……ぼくしんじゃうから……いろんないみでしんじゃうから……」

 

痛みとか、身体接触とか。グヘヘ。はい。嘘です。

 

「??……取り敢えず元気に立ててますから大丈夫だと思いますよ!」

 

「肋骨の音響いたんだけど!?水素の音なんだけど!?」

 

プシュッじゃなくてブキュッて感じだけどな。

 

「人の骨は200以上もあるんです!肋骨なんて一本くらい平気ですよ!私もよく折れます!仲間ですね!」

 

「え、大丈夫?病院行くか、二つの意味で?」

 

言動と体調に於いてだ。どっちもマジならもう敬意を払えるレベル。

 

「そんな、心配してくれるなんて嬉しいです。ありがとうございます……」テレテレ

 

「お、日野も鷺沢タイプか?本の代わりに何燃やせばいいんだ?」ヤケクソ

 

この二人が仲良いの知ってたけどそこまで繋がらなくていいです。てか止めて。

 

「情熱!つまりパッション!です!」

 

これはもうダメぽ。

 

「日本の平均気温を1℃上げてる男と同じような事を言うね……もう僕は頭がパンクして死にそうだ……誰か助けてくれ……」

 

「し、死ぬ!?やっぱり大丈夫ではないんですか!?えーと、頭皮が薄いから、そこから熱射病……とか?」

 

照り返しで貴様も熱射病にするぞ(全ギレ)。

 

「皆ハゲネタ好きね。でももうライフ0だから弄らないでおくれ。泣くよ?ていうか事務仕事疲れて外出たら可愛い女の子に会って泣くって凄く面白い絵面。ははっ。わろえねぇ。」

 

「か、可愛いっ!?あ、ありがとうございます!……え、えへへ。」

 

何故か解らんけど泣けてきた。仕事し過ぎたかもしんねえなあ……ここまできたら、もう休むために思いっきりぶっ倒れてやろうかな(白目)。

 

「もう疲れたから此処で倒れていい?いいよね別に?」

 

「倒れる……?いえ、ここは草原ですし寝転がったらいけませんよ!それに、疲れたなら走りましょう!」

 

え、なにいってんのこの子。アホなの(直接)?

 

「いや、君達アイドルは一体どんな思考をしているんだ……同じ人間なのかも疑問に思ってしまうぞ……何故疲れてるのに運動するんですか……わっとどぅーゆーみーん、だわ……」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ…………」

 

うわ、さっきまでの疲労感が嘘みたいに消えたんですけど。広場の外を軽く5周程したら身体軽くなったんですけど。え、俺松岡○造になっちゃったの?海外に行ったら日本に台風を呼ぶ男になっちゃったの?

 

「…………は、はー、はーー、」

 

足を止めて、深く息を吐く。吸う。吐く。腹式呼吸をイメージ。はっ、ふぅぅぅーんんっっっ!!!!!これシュタゲだな。…………ふう。

 

「どうですか、プロデューサー?疲労感は無くなったんじゃないでしょうか?運動は疲労物質を除去します!ですから、身体は軽くなって、リフレッシュも出来るんですよ!」

 

…………そういえばマネージャー、だったな、茜。

 

「……ありがとう。確かにリフレッシュ出来た。すまない。迷惑、かけたな。」

 

「お互い様です!恩返しですよ!」

 

「その、本当にありがとな。…言い方おかしいけど、勉強になったよ。」

 

茜の顔を見てそう言った。そして……いつの間に夕方になっていたのか、と思ってしまった。……茜の顔がその名の如く真っ赤だっただから。

 

「その、えっと…………」

 

「ん。」

 

「…………は、走ってきます!」

 

「ん?。」

 

また、恐らく昼間の様に走っていった。真っ赤の顔のまま。……あー俺も恥ずかしいわ、ったく。ラブコメみたいじゃねぇかよ。

 

…………やっぱ暑いな今日。暑さのせいで顔が赤くなっちまった。決して俺も、その、茜と同じ理由で赤くなった訳じゃないからな。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

その後、事務仕事に戻ったらちひろさんに怒られた。あれを見られてたみたいで。意味わかんなかったので嫉妬ですか?と聞いたら手刀がとんできました。意識がぶっ飛びかけました。

 

 

 

 

あいつは鬼だぜ、全く。酷すぎる。やれや

 

 

 

 

この先は赤黒く汚れてて読むことが出来ない……

 

 

 

 




はっきり言って調子乗ってる俺氏。ごめんね。遊びすぎた。


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休ませたいぞ、双葉ァ!

フィクションとして騒々しいアイドル達は投稿してます。まじで私怨とかはなんも関係ないです。下らんと吐き捨てるssなのです。よろしこ。


ここはテレビ局。番組収録の終えたアイドルを事務所まで送り届けるために今、プロデューサーこと俺がいる。

 

どうでもいいかもしれないが、うちの事務所には結構色々な仕事がくる。テレビなら報道系や癒し系、討論系にN○K系等々本当に様々だ。……うち、アイドル事務なんだけれどと思いながら喜んで承っている。そりゃね。真面目なやつでもおふざけなやつでもテレビの仕事は嬉しい。

 

そして勿論、うちにくる仕事の中ではバラエティ系だってある。でもここだけの話、あんまりうちの事務にバラエティこないんだよね。何でだろう。超疑問。毎日事務所はバラエティなんだけどなあ……

 

と、着替えを終えた彼女が控室から出てきた。

 

「お疲れ様、杏。」

 

双葉杏。うちの事務所排出の人気アイドルだ。

 

「お疲れー……」

 

杏ちゃん、目が死んでますよ。まだ生きて。

 

「車の中に飴がある。しかも限定品だ。」

 

「お疲れ様です、プロデューサー。事務所に戻りましょう。」

 

え、誰だよお前。それにそんな甘ったるい声何処から出してんだよお前。飴ばっか食ってるからそんな声だせるのかよお前?羨まし……いや、待てよ。

じゃあ、俺の声は何でこんなに苦々しいんだ?パクチーばっか食ってるからか?うわ、もうパクチー食うの止めよ。意識高い系の真似してパクチー食べて、「この味、癖になるんだよ……」ってイケボ(自分ではそう思ってる声)をだすの楽しいから最近趣味になってたけどもう止めよ。やっぱパクチーは駄目だね。みくにゃんのファンやめて反パクチー至上主義者になります。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……!この飴は、北海道乳牛から採れる生鮮なミルクをふんだんに使った特選ミルキー……っ!う、旨ぁい!」

 

味で判るのかよ。凄い舌だな。てかそんなに旨いの?杏の身体が浮いて見えますけれど比喩とかじゃなくて。俺も食べてみようかな。

 

「ほんとだ、うまっ。」

 

滑らかな舌触りにリラックス効果がある様に感じる。実際そうなのかは知らんが。あー……でも超旨いわ。飴とか全然舐めない俺でもその旨さが判るレベル。

 

「誉めて遣わすぞよ、プロデューサー?」

 

「殿様かよ。」

 

「失礼な!か弱い姫君であるぞ!扱いと敬いを考えよ!」

 

「はーい、事務所に出発しまーす。」

 

「おぉい!杏を蔑ろにするなぁ!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

車を走らせる事数分後。さっきまでの状態と打って代わり、後ろで静かに紙を繰る音がするのでミラーを使ってちらと見てみると、杏が何かを読んでいるのが分かった。……今度のドラマの台本か。まったく、なんだかんだいって杏も頑張ってるんじゃないか。週休8日希望とか働いたら負けとか、やっぱ冗談半分で言ってたんだな。

 

「最近、杏は仕事をよく頑張ってるよな。やる気が出てて良いと思うぞ。俺もプロデューサーだが、応援してる。なんたって俺が最初のファンなんだし。」

 

と、ページを繰る手を杏が止めた。なんだ。

 

「あんたが……」

 

「ん?どした杏?」

 

「あんたが仕事を取ってくるから仕方なくだろぉぉぉ!!!」

 

急に杏に怒鳴られた。ええ何でェ?

 

「そ、そりゃ、プロデューサーとアイドルなんだからそうなるだろ!?仕事なんだから!!」

 

「杏が想像してたのと180度違う!一日の平均労働時間14時間は想像出来ない!休みは何処!てか出来るならやる気なんて出したくないよ!でもバラエティにクイズに連ドラに映画!杏は嫌なのにプロデューサーと他の皆がやる気を出せさもなくば葉っぱを二つ足して緒方に採らせるぞというオーラで脅してくる!死ぬよ!肉体的にも精神的にも!」

 

……ああ、双葉に二つ足してだから四葉のクローバーって事か。分かりにくい。てか智絵里の扱い酷くない?そんな無慈悲な女の子みたいなものではないと思います。

 

「な、なら休みくれって言えば出したぞ!最初の頃みたいにさ!」

 

「言ったよ!一日にプロデューサーの前で100回以上、『休みくれなきゃ本当に死ぬ』って言ったよ!結果は仕事だよ!『ははは、連ドラの主演取ってきたぞ。』じゃないよ!無駄に有能かよ!つか話聞けよ!」

 

「す、すまなかった。そういえばそうだった。あの時はまた最初の頃のやつかと思ったんだよ。おふざけかな?ってさ。」

 

「今さっき言った言葉を忘れるなああああああ‼『な、なら休みくれって言えば出したぞ!最初の頃みたいにさ!』何行前の台詞だああああああ‼若年性アルツハイマーかああああああああ‼貴様ああああああああああ‼ふざけるなああああああああああああ‼」

 

「サイヤ人の真似はヤメロォ!」

 

「杏の今月の休みの日数を言ってみろぉ!?」

 

「え、ええと、」

 

「なああああんだああああああああ‼その目はああああああああああ‼」

 

いや、ジャギ(北斗の拳)かよ。

 

「ZEROだあああああああああ!!狗竜を狩る時間もないんだぞ!?1分もないんだぞ!?」

 

いや、ドスジャギィ(モンハン)かよ。

 

「わ、悪かった、本当に悪かった!これからはきちんとした休みを入れる!杏を頼りすぎていた!すまない!でも、今が稼ぎ時であることも解ってくれ!アイドル辞めた後の一生を遊んで暮らせる程の金は今しか手に入らないんだ!」

 

「はあ、はあ…………いいよ、わかった。杏も、ちょっと言い過ぎたよ。ごめん。」

 

激昂ラージャン状態から獲物を虎視眈々と狙うガララアジャラ状態に杏は変化する。おい何を狙っている貴様。

 

「ありがとう、解ってくれて。」

 

「じゃ、じゃあ、それで?何時から休みをくれるのかね?」

 

ワクワクウキウキとした様子で杏が質問した。それか貴様の狙いは。でも、うん。

 

 

 

……すまない。杏。

 

 

 

「3ヶ月後。」

 

「…………え?」

 

「3ヶ月後だ。」

 

「ねえ、杏、死ぬよ?」

 

「すまない……だが、泣くな……真顔でハイライト無しで泣くな……本当にすまないと思ってはいるが、これがアイドルなんだ……」

 

「杏の年齢、言ってみ?」

 

「……17歳、ですね。」

 

「17歳に、14時間労働を休み無しで後3ヶ月?」

 

「お、温泉ロケとか海外バカンスもあるから。」

 

「バックレてどっか行ってくるね。じゃ。」

 

杏は後ろのドアから外に出ようとする。走行中につき危険です!お止め下さいお嬢さん!いやおふざけ無しで本当に危ないから死んだ瞳で飛び降りようとするのは止めろォ!

 

「ぱ、パクチーもあるから!!大丈夫だよ!!お、美味しいから大丈夫だよ……?」

 

俺が必死に説得をすると、杏は呆れた様に、

 

「……はあ。ああ、もういいよ。解った。バックレるの止める。仕事頑張るよ、頑張る。」

 

こう言った。7つも年上の男に対する言葉遣いじゃねえな。嘗められている。でもどうせなら舐められたい。いや舐めたい。(願望)

 

「あ、ありがとう……ありがとう……」

 

「只し、3ヶ月後からは最低でも1週間に1日は休みを入れる事。でも出来ればずっと休みたいからそれでも可。」

 

1週間に2日の休みをあげるよ杏さん。

 

「ありがとう杏……愛してる……」

 

「んー。今の約束をきちんと守ってくれたら杏も愛するよー。」

 

ちょっと、杏ちゃん優しすぎない?女神だよね?やっぱ杏はCuteってはっきりわかんだね。

 

「疲れてるんだから。杏にもう一個飴をくれー。」

 

「仰せの通りに。」

 

「誉めて遣わす!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

てか今気付いたけどこれパクチーのおかげで上手くいったよね?やっぱパクチーは最高だね。みくにゃんのファンやめてパクチー至上主義者になります。




杏はいいぞ。後、労基法とかは無視して(震え声)。


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閉じ込めるなよ、渋谷ァ!

しぶりん大好きなんだ!嘘じゃない!扱いが酷いけど大好きなんだ!信じてくれ!


こんにちは。プロデューサーです。

 

 

急ですが悲報です。

 

 

渋谷凛が壊れました。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「ああ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」

 

事務所内、しかも俺のデスクの前で制服姿の凛がソファに座りながらそう言った。ニッコニコやな、渋谷。

 

そう、渋谷凛。彼女は15歳でありながらトップアイドルに最も近い女性といわれた一人。溢れるオーラと純粋な努力は彼女を強くし、一番星へと、輝かせた。彼女を知らない人はまあいないだろう。

 

 

 

……事務所外では、そういうことになっている。

 

 

 

「……隠れキリシタンって心ぴょんぴょんしてたのかな?」

 

なにゆーてるかわからん。どうしちゃったのこの子。今までも俺の臭い嗅いだり、添い寝させてとか言ってきたり、私は飛べるとか言ってこのプロダクションの屋上から飛んだりしてたけど今日は一段とおかしいぞ。

 

「えっと、凛さん?どうされましたか?」

 

思わず敬語になるレベル。いやだって怖くね?今もソファに座りながら体をメトロノームみたいにふりふりしてるし。可愛いけどさ。でもスカートの心配はしようよ。

……黒か。最高だね。

 

「んー?心がぴょんぴょんしてるの。」

 

口調も何処か幼くなってないですか。後ニコニコすんのもうそろそろ止めーや。惚れるだろ。ロリコンにはなりたくないんだよ俺は。最低後五年はな……!いやまあ、凛に恋愛感情はないけどね。本当だよ?疑ってる?嘘じゃないよー?嘘つかないからね俺?

…………一体誰に言い訳しているんだ。

 

「ぴょんぴょん?」

 

「プロデューサーと二人きりで嬉しいって事。」

 

「お、おう。そうか。ありがとう……?てかキャラ崩壊が著しいぞ?大丈夫か?」

 

「ナニしたって、バレない……♪」

 

「……んー、悪い。杏迎えに行ってくるわ。」ガタッ

 

これはクンカクンカ方式だ。『二人きり』と『バレない』がきたら数秒後に抱き着かれて吸引される。いや、俺は薬物かーい。……下らね。そして凛の顔がスライム化する。つまり逃げろ。

因みに添い寝方式は『寂しい』と『疲れた』と『バレない』で、抱き着かれる。つまり逃げろ。

私は飛べる方式は『バレない』で、抱き着かれる。つまり逃げろ。

いや、私は飛べる方式ヤバいよね?頭の中が犯罪志向だよ?つか、なんだよ抱き着かれるって(自問自答)それで飛び降りをされるんだよ死ぬわ。

 

……って、あれ、扉が開かん。何でだ。鍵なんてついてない筈だぞ。

 

「開かないよ。音声入力でしかね。」

 

いつ、付けたんだよそんなもん!

……そういえば晶葉がなんか造ってたわ。よりにもよってこれかよ。これは晶葉も志希と同じ様に性格調教しなきゃなあ?だがまあそれは後回し。今はガガー凛の相手だ。恐らく今だけは地球よりもそして凛よりも俺の顔の方が青い。いや蒼い。

 

「それじゃ、プロデューサー?」

 

「おい、凛。落ち着け。お前は今、いや何時もだけど、冷静さを欠いている。COOL属性らしく、冷静になるんだ。解ったか?」

 

「解った。冷静に、COOLに、合体しよ?」

 

「おい待て!なんか酷くなってんぞ!」

 

「振り返らず前を向いて?」

 

「笑顔じゃなくて壊顔しか見えねえよ、変態。」

 

「へ、変態は失礼じゃない?謝ってよ!」

 

「分かったブラを外すの止めたら謝ってやる。」

 

「え?……こういうの、興奮しない?」

 

「公憤しているね。きれそうだよ。てかきれていい?」

 

「そっか。まあいいよ。嫌がってるのもまた一興だよね。」

 

「おい上を脱ぐな見える見える。あと俺の話聞けよ。」

 

「ねえ知ってる?元素のリンはPって書けるんだよ?しかも元素番号は15。これって運命的じゃない?」

 

「その前に服を着ろ。おい抱き着くな。ちょっとーあたってますよー。おまめがツンツンしてますよー。ふにふにしてるものと一緒にあたってまーす。」

 

「後、Pは人体に必要不可欠らしくてね。ふふ。ほんと、その通りだよ。人体には絶対必要。」

 

「俺はちょっと靭帯が限界です。甚大な被害です。退いて。」

 

「高エネルギーリン酸結合、しよっか。」

 

「ATPが高いわお前……つーかそんなことよりマジで靭帯が死ぬよ……?先ず退いてくんね……?」

 

「全くしょうがないな……大丈夫?」

 

(よし、これはチャンス……!)

 

隙をついて凛の背後に回る。ゴルゴでも殺せないレベルの速さで後ろに付いて、拘束する……っ!

 

「きゃっ……!」

 

「なぁにが高エネルギーリン酸結合だァ!アデノシンで充分じゃボケェ!精々ヌクレオチドを夢見とけェ!」

 

「生物分かるの?」

 

「hshs女に教わったァ!」

 

「エッチな事を?」

 

「馬鹿かオメェ!?脈絡って言葉を学んだ事はないのかァ!?」

 

「知ってるよ。運命的な恋慕、でしょ?」

 

「昔のまゆみてぇな事いってんじゃねぇぞ!?」

 

「まゆを馬鹿にしないで!それはいくらプロデューサーでも許せないよ!」

 

「え、何で俺が怒られてんの?」

 

「友達を馬鹿にしたんだよ!?怒るに決まってるじゃん!!」

 

「いや、馬鹿にはしてないです。つか、はっきりいって閉じ込められて襲われそうになった俺が怒りたいんですが。ブチギレていいですか?いいですよね?」

 

「駄目。」

 

「決定権は俺にあるって解ってる?」

 

「えと、は、はじめてだから。やさしくして、ね?」

 

「誰かー!お医者様はいらっしゃいませんかー!?助けてくれー!もう考えるのを放棄したいー!嫌なんだけどー!二人きりとか嫌なんだけどー!だって話通じないんだもーん!ああーー!!」

 

「二人きりって分かってるのに誰かいないか確かめるなんて面白いねプロデューサー。」

 

「お前の能天気とハピハピ加減の方がよっぽど面白いわ。薬でもやってんのか渋谷?お?」

 

「女の子は恋をすると大胆になるの……!それよりも早くこの拘束(物理)解いて……!」

 

「渋谷は恋じゃなくて変だがな。あと、この部屋から脱出出来たら解いてやるよこの拘束をな。」

 

「束縛酷いと私以外の女の子に嫌われるよ?」

 

「妄想酷いと俺含む全男の子に嫌われるぞ?」

 

「妄想酷くないよ。いいから拘束解いて。」

 

「妄想酷いわ凄く。いいから脱出させろ。」

 

「……私まだ上半身裸だけど、いいの?」

 

「そういやよくねえな!服着ろ‼」

 

「拘束されてちゃ服着れないんだけど。」

 

「……じゃあ取り敢えず上着着せるから、ブラとかは更衣室かトイレでやれ。」

 

「それにしても合法的に女子高生に触れられるなんて役得だよ?感謝してほしいなプロデューサー?」

 

「黙れ、渋谷。つか、上着何処やった。」

 

「……何処に置いたか忘れちゃったからプロデューサーの上着を私に掛けてよ。」

 

「は?」

 

「美嘉にやったみたいにさ。あの時デレデレしてたじゃん。ほら?出来ないの?」

 

「いや、デレデレしてねえよ。渋谷じゃあるまいし。」

 

「ふーん?そういうこと言うんだ。」

 

「俺の腕に拘束されてて鼻血吹き出してる女に言ってはいけない言葉とは何ですか。」

 

「い、い、か、ら、う、わ、ぎ……!」

 

「ちょ、お、おい、急に、暴れんな……!」

 

あ、脚が縺れて、転ぶだろ……!やば……!

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……ってて。……あ、これは、Toloveるな(確信)。」

 

その予想通り、俺は上半身裸の凛のその膨らみに両手を置いていた。華奢な体に馬乗りしている俺は白シャツとズボンだけ。その、完全にあれです。リトさん出番です。

 

「……すまない。」

 

いやこれは謝るしかないですよね。なんでこうなるんだよ。別にこのssそういうのじゃねえよな?健全なギャグだよな?凛の魅力に抗えないってか?作者しっかりしてくれよ。俺が謝る羽目になるんだぞ?

 

と、凛が急に俺の二の腕辺りを擦り始めた。今度はなんだよ!

 

「……ふ、ふーん。エッチじゃん。筋肉質で。」

 

言い終わり、そして彼女は、痙攣を起こして、鼻血を更に吹き出して、白目を剥いて、停止した。

……すまない凛……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

結局、『ふーん。エッチじゃん。』で音声入力の鍵が開いた。いや、セキュリティのクオリティよ。それでええんか。

それで気絶後、渋谷凛さんには俺の上着を掛けて助けを呼びました。勿論来た人に喚問されました。来た人はアイドルだけだったのでそれは幸いでしたが状況が状況です。今回ばかりは本当に俺が悪いので凛や迷惑をかけてしまった周りの人達に謝りたおしましたね。そしたらその代わりに1週間後、凛と俺の二人でデートに行く事になりました(何故)。そこでも俺は心労が絶えなかったのですがそれはまた別のお話。

 

そんでさ、結局凛の上着は何処にあったのか気にならない?上着ね、何処にもなかった。マジでホラー。Cool、きっとCoolだよ。未だに見つかってないしさ。

でも外で数キロ走ったらなんかどうでも良くなりました。茜、ありがとな……お前のお蔭だ……お前は俺の癒しだよ……ストレス解消させてくれる唯一の存在だよ……

 

 




再三いうけど、しぶりんまじで大好きなんだからな!


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毒舌酷いぞ、高森ィ!

藍子ォ!俺だァ!結婚してくれェ!

藍子大好きだからキャラ崩壊は見逃して…………(小声)

ごめんね…………


ハロー!俺プロデューサーやってる24歳独身!

そこそこ自分の顔をイケメンだと思ってるけど、モテない一人の男性です!

イケメン=モテるは成立しないみたいですね。でも、モテる=いい男だよな。訳分からん。

あれ?つまりイケメン=いい男は成立しないって事……?

やべぇ、数学七大難問の一つ解いちまったかもしれない。ABC問題と同レベルの難しさだったこれを解いちまったかもしれない。いや、俺って天才だな!まさにギフテッド!一ノ瀬志希!

って最後は違うか。それにABC問題は数学七大難問じゃねえよ。

……ん?ちょっと待てよ。じゃあ、纏めると『俺はそこそこイケメン』=『俺はそこそこいい男ではない』って事じゃね?加えてモテる=いい男という事から考えられる事実…………

 

『俺はいい男でない』=『俺はモテない』という事…‼

 

やったぜ!何故自分がモテないのか漸く解ったぞ!この証明が理由を示してくれた!万歳!大日本帝国万歳!

 

†Q.E.D. 証明完了†

 

…まあこんなクソみたいな思考してるからモテないんだろうけどね!プロデューサー知ってた!でもこれ止めたってモテないって事も知ってるよ!だからこれ止めないよ!

 

でもみくにゃんのファンは辞めます。(無慈悲)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

このおかしな男は、夏場の蒸す様な暑さに辟易として、自分のプロジェクトルームにある専用デスクにて、冷えたアイスを頬張り、クーラーという、文明の恩恵を一身に受けながら、火照った体と、ざわついた心を落ち着かせ、そして、近くのソファに座る、一人の少女を、訝しむかの如く、見詰めていた。

 

んー、暇だから状況説明を芥川っぽく言ってみたつもりなんだが、なーんか太宰っぽいなこの文章。……いや、まあこんなお遊びが楽しいと感じる24歳は希少だと思うのだよ。子供の頃のおふざけ心を忘れないみたいなさ。だからつまり何が言いたいのかというとおふざけを怒らないで下さいお願いしますちょっとした出来心だったんです許してください何でもはしませんがえ許してくれるんですかありがとうございます!

 

「……なあ、藍子。その、外の気温ってどんくらいだ?」

 

と、ソファに座っている少女、藍子に気になった事を質問した。先程彼女は来たばかりだろうから歩き疲れていると思うが、我慢出来んし待てない性格なんで素知らぬ顔でせっかちにも質問するどうも独身です。

 

「えっ…と、確か、38℃、だった筈です。」

 

「そ、そうか。」

 

「ふふ。急にそんなことを聞いてどうしたんですか?それに畏まった感じですし、ちょっと面白いです。」

 

「おう?そ、そうか?いつもこんなんやで!」

 

「プロデューサーさんの関西弁、初めて聞きました。」

 

朗らかな笑顔でそう言う。んー……そうだっけ?

 

確かに俺は藍子の言う通り、今、畏まって話している。それは何故かって?いや、普通に考えてみてくれ。藍子は自宅からこのプロダクションまでは数十分以上歩かなきゃ着かないし、外の気温は猛烈だし、しかもカメラ持っててホクホク顔で上機嫌だから絶対にこれ散歩してきてるし、胸ないし……100%汗をかいてる筈じゃね?

でもかいてないんだよ。別に藍子は汗かかないタイプの人じゃないし、直前で風呂に入った訳でもなさそうだし、胸もない。だから汗かいてる筈なのに……だがしかしかいていない。

怖くね?どうやってここまで来たの?それに、俺、藍子が来たの分からなかったんだけど。音たてずにドア開けて、歩いて、ソファ座ったんすか?つか俺ずっとドアの方見てたのに入ってきた事分かってないっておかしくね?後胸小さすぎだよ君?

 

「……藍子。その、どうやって、入ってきた。この部屋に。」

 

通り抜けて入って来たんじゃなかろうか。(錯乱)

 

「え?普通にドアを開けて、ですけど……」

 

「本当か?こう、瞬間移動とか、身軽さを活かして浮遊したとかじゃないのか?」

 

「プロデューサーさんは私を何だと思ってるんですか!?」

 

だって藍子なら出来そうじゃん。出来る。(確信)

 

「いや、だって気付いたら目の前のソファに藍子がいるんだよ?俺そっち側ずっと見てたのにいるんだよ?」

 

「ですから何時も通り、ドアを開けて、歩いて、ソファに座りましたってば。…………頭を暑さにでもやられましたか?」

 

お、最近話題の天然畜生モードか?結構心抉られるから恐怖でしかないんですけれど?

 

「いえ藍子さんこそ暑さにやられながらここに来た筈ですよね?汗を一滴もかいていないのは少々変ではないでしょうか?」

 

「どうやら本当に暑さにやられたみたいですねプロデューサーさんは。堂々とセクハラ発言をするなんて凄いと思います。実におめでたい。主に頭辺りが。」

 

これは僕の発言や思考を言及しているんですよね?ハゲとかそこらへんを申されている訳ではないですよね?もしされてるならキレます。

 

「……やっぱり、頭髪が薄いから生え際だけじゃなくて想像力もいっちゃったみたいですね。あははっ。」

 

満面の笑みですねー。キレまーす。

 

「……やっぱり、胸部が薄いからバストだけじゃなくて想像力もふくらまないみたいですね。あははっ。」

 

「セクハラですよそれ。」

 

「ジェンハラだろそれ。」

 

剣呑な雰囲気。んー、尖ってる。これはヴァルキュリア。生き残れ、俺の頭髪。

 

「私の事をそれでしか馬鹿に出来ないんですか?本当に男の人って下らないですね。」

 

「俺の事をそれでしか馬鹿に出来ないんですか?本当に女の人って下らないですね。」

 

「……私達、結構長く一緒に居ますよね。確か、四番目、でしたっけ。担当。」

 

「そうだな。結構長い付き合いだ。それで?」

 

「親しき仲にも礼儀あり……って言葉、分かります?

あ、ごめんなさいっ。分かりませんよねっ。子供にこんな事を聞いちゃいけません、よねっ。」

 

……煽り方がエグい。いや、なんかな。説明口調を始めるけどね、最近の藍子は急にキツくなったんだ。だからこんな口論じみた事になってるの。実際は一方的なイジメですが。

会った当初、彼女は心優しいゆるふわとした女神の様な少女だったのにさ。過ごしてみたら何なんだよ。最近のこれは。特に今日は一番酷い。どれくらい酷いかっていうと、眠れる獅子が実はただの寝惚けていた獅子だった、とか、スターリンがやよいPだった、とか、酢豚にパイナップル入ってる、とか。それくらい酷い。

 

パイナップル酢豚。てめえだけは絶対に赦さねえ。天皇陛下がそれをお赦しになっても俺は赦さんからな。てめえに恩赦なんて適用させてたまるか。絞首刑だ。首洗って待っとけよ。絞められる首も洗う首もねえけどな。ざまあみろパイナップル野郎。

 

さて。鼻☆塩☆塩。……コレステロール値半端ないって!あんなんできひんやん普通!とかなりそう笑

 

ごめん。『笑』って使ってみたかっただけなんだ。いっつも俺は『w』なんだけど女子高生の真似をしたくなったんだ。スマナイwwwwフォカヌポゥwwwwオッフwwww(陰キャ)

 

ふう。ふざけたふざけた。

 

…………つーかさ、俺が悪いのは解ってるけど、こんなに言うことないだろぉ!?って気持ちになるのおかしくないよね??つーかアレのサイズとか濡れ透けとか聞いただけなんですけどね?それだけでこんなに言うのひでえよな?絶対に酷い。(確信)

 

だからもう泣くわ!茜の時以上に泣いてやりますわ!大の男のガチ泣き見たら16歳の少女は一体どんな反応するんすかね?私気になります!(ゲス顔)

 

「…………そ、そんなに、言ふことなかりけりだるぉぉぉぉぉォォォォォゥゥゥゥゥウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

 

見よ我がシャウト。Linki● Pa●kのチェ●ターも驚いて共鳴シャウトするレベル。

 

……R.I.P.チェ●ター。神曲を有難う。(小声)(分からん人すまんな。私のこれは発作なんだ。起こさないでくれ。死ぬ程疲れている。)

 

「気持ち悪……」ボソッ

 

「」

 

果たして、この時の私の気持ちをどのように表せば良いのだろうか。私はただ、清澄で清廉で清々とした気持ちだったのではと今になって思うのだ。そしてその予想に基づいて、次の一文を記す。

 

高森ィ……一体何があったんやァ……

 

「このプロダクション唯一のゆるふわ枠が、普通の毒舌になってしまった……ただの、現実に多くいる、女子高生に……」

 

俺は倒れた。そして意識が無くなっていった。(急展開)

だってこれはあまりの衝撃、ガチ藍子Pなら即死もののやつだよ。俺はそうじゃないから即死はしてないけど意識の喪失はしょうがないよね。……あ、態々倒れたのは別にパンツ見たかった訳じゃないですよはい。

……ほう、縞々か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ごめん。」

 

これが誰の発した言葉かは、まだ、分からない。




もうこの小説はシュールレアリスムじゃね。サルヴァドール・ダリすき。


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変わらないですね、まゆさん(白目)。でももう一人は何があったんだァ!

ほんとにおふざけだからごめんな。まゆの事も私は好きなんやで。
まゆすき。


仕事が終わり、愛しき我が一軒家に着く。

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい、プロデューサーさん♪」

 

つっこまねえぞ。開始数行でこれでも、そして夜の10時に帰宅したら担当アイドルの佐久間まゆが普通にいたということにも絶対つっこまねえからな…………いややっぱ無理。なんでここにいるの君。つーか服。ネグリジェはヤバいって。見えてるって。半端ないって。

 

「ご飯にします?お風呂にします?それとも……まゆ、ですかぁ?うふふ♪」

 

「じゃあ、まゆで(半ギレ)。」

 

戸惑え。そしたら丸め込んで寮に帰してやる。

 

「わかりましたぁ。」

 

そう言ってまゆは俺の手を引いてベッドルームまで連れていく。あれれー?おかしいなー?何時もの純情可憐なまゆじゃないのかー?今宵は肉食獣かー?あははー。

 

いやいやいやいやいや!!!!!!

 

「わかっちゃ駄目だろォ!?て、手を離せェ!!」

 

「うふふ。恥ずかしがらないで?まゆたち、夫婦なんですから。」

 

「何言ってんだァ(困惑)!?まじで今までで一番ヤベェよ!!おい佐久間ァ!!これは洒落にならんって!!HA・NA・SE!!」

 

腕の中で暴れるが、拘束は解かれない。腕力おかしい。これは500kg。いやそれはゴリラ・ゴリラ・ゴリラか。

 

「着きましたよ。ふふ。さあ、一緒に狂いましょう?」

 

「やだあああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼(やだあああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼)」

 

思いっきり二階にある寝室のベッドの上に放られる。ておい、ドアの鍵を掛けるな。しかもその鎖は何処からきた。だからドアに掛けるな。ちょっと。ここはアルカトラズですか。

 

「……ちょっと待って下さい。」

 

まゆは 待つ事を 覚えた‼

凛わんわんじゃなくてまゆわんわんかな?

この状況を無視してはっきり言うけどまゆが涙目で犬の真似してわんわんして、首筋とかねぶってきたら襲う自信ある(錯乱)。

 

「おう、待ってくれるのか!ありがとうございます!つーかその流れで帰れ!誰か呼ぶから帰れ!送ろうと思ったけど怖すぎるから俺は送らない!誰も来なかったら一人で行け!服はあげるから!」

 

と、突然まゆはベッドの下に潜った。何してんの!?

 

「ちょ!……え、エロ本なんかないろ!そんなところに隠してなんかないろ!だからヤメロォ!(懇願)」

 

「智絵里ちゃん、こんな所で何をしているんですか?」

 

え?智絵里?エロ本探しじゃなくて?

 

「智、智絵里?本当にそこにいるのか?」

 

「い、います……」

 

嘘だろ止めてくれよォ!!二兎追う者は一兎をも得ずとか云うけどそんなもん嘘っぱちじゃあねえか!!追ってすらねえのに勝手に二兎得ちゃったよ!!いらねえよ!!だってこええんだもん!!ああ!!この状況を悦べる様な男じゃねえんだわ俺は!!

 

「えっと、プロデューサーさんを驚かせようと思って隠れていたんですけど、その、お二人はその様な関係なんですか……?」

 

「ちっげぇよ!!無理矢理だわ!!つーか智絵里の理由おかしいだろォ!!」

 

「プ、プロデューサーさんから無理矢理だなんて、もう、わたしに勝ち目はないんですね……」

 

「あんたら俺の知らない所で本当に薬物やってますよね?じゃなきゃこんな会話にならないよね?」

 

まゆがベッドの下から不満げな表情で出てきた。同じ様に智絵里も這って出てきた。

 

「お前もネグリジェかよ!?…………いや、何で普通にお前も俺ん家いるんだよ!?二人ともどうやって鍵を開けた!?後自由過ぎんだよ!!今、夜の10時やぞ!!常識考えろや!?」

 

「「????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」」

 

「やべぇ。初めてお前らに殺意湧いたわ。後文字数稼ぎ止めろ。それとクエスチョンマークがゲシュタルト崩壊する。目がチカチカする。」

 

「嬉しい……!まゆの事だけ考えてくれるんですね……!」

 

「やっぱお前と凛は仲が良いよ。そのイカれ具合とかがさ。」

 

「凛ちゃんを馬鹿にしないで!それはいくらプロデューサーさんでも許せません!」 

 

「え、何で俺が怒られてんの?」

 

「友達を馬鹿にしたんです!!怒るに決まってるじゃないですか!!」

 

怒り方もそっくりだね君達。これはもう姉妹じゃね。佐久間凛、愛称さくりんとか。ナイフで殺されそう。

 

「全く、まゆを選んだのはプロデューサーさん自身なのに色々とあーだこーだ逃れようとして。ツンデレなんですか?」

 

「全く、まゆが閉じ込めてプロデューサーの俺自身を沢山色々とあーだこーだ弄ぼうとしてさ。ヤンデレなんですか?」

 

「好きですから。しょうがないですよ。」

 

「嫌なんだから。しょうがないよなあ。」

 

「「…………」」

 

「「智絵里(ちゃん)はどう思いますか!?」」

 

声がハモった。女声と男声の綺麗なハーモニー。ギリシャ語でハルモニア。どうでもいいけど調和を意味する数字って3らしいね。ここにいるのも丁度3人だよ。調和どころか超不和だけどな。んー、巧くない。27点。……ウサミンの年齢とか言ったそこのお前ちょっと来い。

 

「……その、恥ずかしいのでわたしとまゆちゃんは服を着たいです。ですよね?」

 

そうなの?と思いまゆを見つめる。ま、まあ別にネグリジェ姿をずっと見ていたいからとか、そんな理由から見た訳じゃ、ないからな?そうなの?ってそういう意味じゃないからな?俺は、そんな変態じゃ、ないからな?(震え声)

 

「そ、そんな恥ずかしくなんか…………う、うぅ。やっぱり、そんなに見ないでぇ……」

 

くっそかーわいー!まあ、それは、それと、して。(デビルマンMAD)

 

「わ、分かりましたよ……服着ます……」

 

そう言って二人は『ここで』着替え始めた。

 

「おっと、危ない。くるっと回ってムスカ状態にならなきゃ(使命感)。」

 

後ろを向いて、電気を目に当てる。ウアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼目がアアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼

 

「着替え終わりましたよぉ。」

 

……え、一瞬じゃん。数秒じゃん。着替え速くね?化け物かよ。怖い(当然の帰着点)。

 

「よ、よし、じゃあ二人とも」

 

「帰りますね。」

 

…………恐ろしい程に早いまゆの掌返し。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

っていやいやいやそうじゃなくて、え!?

 

「か、帰るのか……?マジ?本当に?」

 

「……?はい。帰りますよ?」

 

「あ、ありがとうございますゥ!!」

 

このまま帰られるの残念とか思ってないです。

 

「でもまた来ますよぉ?楽しみに待ってて下さいねぇ?」

 

「おう!そしたらまた今度刑務所で会おうな!」

 

「うふふ。入ったら許しませんよ?」

 

「はは……お前の事だよ(小声)。」

 

「それではプロデューサーさん、さようなら♪」

 

「……お、送らなくても大丈夫か?なんなら誰かを呼ぶけど?」

 

さっきはあんな事を言ったがやはりこんな奴らでも俺が責任もって親御さんから預かっているアイドルなんだ。心配と安全は考えるべきだろう。

 

「大丈夫です。まゆちゃんと二人で。寮、近いですし。ね?」

 

智絵里が答えた。

 

「そ、そうか。気をつけてな。」

 

「はい。また明日。」

 

まゆはそう言って俺ん家から出ていった。潔い奴だ。武士かよ。

 

「……ベッドの下、確認しといた方が良いと思います。それでは、おやすみなさい。」

 

智絵里はそう言って俺ん家から出ていった。

 

「意味深な事言って帰るなよ緒方ァ……」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「…………俺の宝が消えてる。……まゆだな。あいつ……!耽美的な素晴らしい本だったのに……っ!

って、なんだこれ……鍵?……鎖は置きっぱだしネグリジェも置きっぱで、そして鍵残して、しかし俺の宝は持っていくのか。

やってくれるねぇ、佐久間まゆぅ…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもまゆだと何時も通りな気がしてしまいますね(白目)。出来ればもう経験したくないなあ(退行)。」




27って3の3乗だから超調和って事なのでは?つまりウサミンは均衡がとれているという事か!これで腰の容態も心配無し!(ナチュラルに年齢詐称)


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お前もか、北条ォ!……でも加蓮はマシでした良かったです。つーか普通の可愛さだァ!やったぜェ!

儚い感じの雰囲気とか好きです。





あと今回はギャグ少なめです……そしてほんの少しだけ性的描写が多いです……すまない……でも加蓮が可愛いから仕方ないんだよ……許してくれ……


夜の9時30分、愛しき我が家の玄関にて。

 

俺はまたもや見知った靴を発見してしまった。

 

幸いにも一人だけだったけれども。

 

いや入られてる時点で全然幸いでもないですね。

 

「北条加蓮ゥ!!!!何故貴様まで同じ轍を踏むのだァ!!!!俺ァ疲れてるんだよッ!!!!泣いちゃってもいいィ!?!?!?!?俺は今!!泣いて!!いいよね?(急に冷静沈着)」

 

叫んだのにシーンとしている。返事がない。ただの屍のようだ。

いやそれはそれで駄目だろ。というか何故一つの部屋も電気が点いていないんだよ。そのせいで加蓮がいるという事に驚いて叫んでしまったではないかうんそういうことにしておこうそうしよう。

 

(…………ははーん?さてはドッキリだな?バァッと驚かせにくるに違いない俺には分かる。)

 

ならばこの状況はこれしかねえだろ!ということで逆に驚かす!

 

決めポーズ!スペシウム光線!キラーン☆

次回、バルタン星人死す。デュエルスタンバイ!

 

……ってだからこの時間に俺の部屋いる時点でドッキリだわ!もう俺が驚いてるんだってば!決めポーズじゃねえんだわ!俺の感覚麻痺し過ぎでしょ!?(精神に於いて)頑張れよ俺!交感神経もっと働け!くたばれインスリン!眠れ副交感神経!ドパミンだけが来い!

 

ドパドパミン……

 

(ウサミンてめぇじゃねぇよ……!)

 

ムーンウェーブピリピリー

 

てか嘘だろウサミンもいるの!?大の大人が何してんすか(あまりにナチュラルなぶっこみ)!!あと俺の家のセキュリティはほんとどうなってんだよ!!『ふーん。エッチじゃん。』と同じレベルのガバガバ具合だぞ!?

え、俺渋谷と同じとかマジで無理なんですけど(本音)。

 

……渋谷といえばなんですが渋谷区って同性婚出来る場所らしいですね。だからしぶりんはもっとゆりゆりするべきだと思うのよ。そう。うづりんはいいぞ。王道だ。皆解るか?王道とは王の道と書く。つまりうづりんは既に王が通った道、うづりんは道なのだよ。加えて道とは、人が欲したから出来たものだ。

従って、うづりんは人が、そして王でさえもが欲したから出来たものであると云える。なら、果たして何故、人はこれを愛さないのか?未だにこれは私にとって甚だ疑問である点だ……

 

うんごめん話戻そっかふざけた。

 

というか今回のこの話ってクールの出番では?何故キュートのウサミンがいるのだろう……?

 

ん?出番とは何だ?ワカラナイ。(作者の干渉)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

俺はキッチンに恐る恐る行き、そっと電気を点けた。

 

(寝てんな加蓮……)

 

ソファの上に寝そべり、すやすやと寝息を発てている彼女は実に幸せそうな表情だった。加蓮は白と黒をベースとした単調な服装でいて、アクセ等では飾っておらず、雰囲気や表情も相まって清楚で大人しい印象を受けた。何時ものギャル風でない格好にドキリとする。

 

薄化粧なのと髪を結ってないのもあって子供らしい感じでもあるな(仕事モード)。……ちょっとヤバいかもしれない。可愛すぎる(通常モード)。久しぶりの癒しなんですけど。しかも茜以上の。

あぁ~^^~ぁあ。しゅき。(イカれモード)

 

なんか加蓮が何をしに来たかはどうでもよくなってきたね。例えまゆ達が奪ってった秘蔵の本の代わりに買って隠したアレを捨てられてたとしても許せるわ。もう代償を貰ってるしね。加蓮の可憐さというもの、さ☆

これは巧い!100点!優勝!プロデューサーの優勝!優勝商品は加蓮ですかぁ?(ゲス顔)(深夜テンション)加蓮も旨そうで(ナニがとは言わないが)巧そうやなぁ? ニチャァ

 

(んー、ウサミンはもうどうでもいいかもしれない。いや、どうでもいいね。うん、どうでもいい。)

 

だってウサミンだもん。そうさ、安倍(ほんとは安部だけどな。)だぜ?内閣総理大臣だぜ?大丈夫心配いらない。

……すみません?年齢詐称の件はどう答弁するおつもりですか安倍首相?森友学園不正なんたらはそれの隠匿行為ですよね?実年齢、答えて下さいよ……?(クソ野郎)

 

と、机の上の携帯電話が揺れる。俺のではなく、加蓮のものだ。

 

ドパドパミン……

 

(着信音だったんですね……)

 

ムーンウェーブピリピリー

 

(つーかなんか腹立つなこの声……微妙に音声加工してあるし……)

 

プーップーッ

 

(切れたね。)

 

親からかな?99%そうだろうな。心配されてますねこれは。親が結構な心配性でーとか言ってたし。

 

(そうだな、もうそろそろ10時だし帰すべきだよなあ……加蓮が勝手に来たとはいえ……でもなあ……)

 

静かな呼吸の度に上下するお腹とか胸とか。

眠っている時にしか見れない小さな口とか胸とか。

長めの黒のスカートや首下の見える白のブラウスから覗く色素の薄い肌とか胸とか。

 

(ずっと見ていたい……)

 

いやこれは帰したくないです(半ギレ)

エロいんだもん(小並感)

 

「ん……まぶし……」

 

「!!」

 

眩しさで起きてしまったあ!!くそ!!もう胸凝視出来ねえ!!でもこれはこれで潤んだ大きい瞳とかちょっとくずれた感じの服とか胸とかのおかげで事後っぽく見えますねはいごめんなさい何か最近ストレス溜まってておかしくなってるみたいです変な事言い過ぎましたもう止めます。

 

「あれ……ぷろでゅーさー……?」

 

「おう、おはよう。俺の家で。」

 

「おはよ。……ふふっ。起きたらプロデューサーが目の前にいる。」

 

「当たり前だろ。ここは俺の家なんだからな。」

 

「こういうのいいね。なんていうか、その、夫婦っぽくないかな、なんて。」

 

「そうは思わない。後ここは俺の家だ。寮へ送るぞ。準備しなさい。」

 

「でへへぇ。」

 

「ウサミンみたいな笑い方すんな。つか話聞いてます?ここは俺n」

 

「プロデューサーお腹空いてない?アタシ作っておいたけど、食べる?」

 

「え、食べる。(即決)」

 

おいまじかよ。嫁じゃねえかよこれ。やった。なんか涙出てきた。超嬉しいんだが。やっとまともな子がきてくれた(錯乱)。

 

「いつの間に料理出来るようになったんだ?それにこれ何時作ったんだ?帰ってくる時間なんて分からなかっただろうに。」

 

リビングの机の上には白米、サラダ、カレイの煮付け、そしてポテトがサランラップをかけられて置いてあった。

 

「愛の力だよ愛の力。料理は結構前から練習してたんだー。プロデューサーの口に合うといいんだけど。」

 

「へ、へー。」

 

「ちょっと冷めちゃってるね。温めるよ。ついでに、味噌汁も。」

 

そう言って、二人分の白米の入った茶碗を持って、キッチンへと加蓮は向かった。コンロに火を点けて味噌汁を温め、同時に、電子レンジを使って茶碗に入った白米も温めなおしている。鼻歌混じりに作業するその姿は。

 

ガチ嫁やん。

 

え、これは本当に俺ら結婚してますよね?でもした記憶がないなあ?まあいっか。こんな優しくて可愛い嫁さんなんだからな。記憶なんていらねえよ!(過激派)ガハハ!

 

え?時間?送る?何それ美味しいんすか?知りません、次。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「さて加蓮。」

 

「はいー何でしょうかープロデューサー???」

 

あの後ご飯を一緒に食べて、つまり二人で食卓を囲んで、そして一緒に食器類を洗った。完全に新婚生活。浮かれすぎてたわ俺。この状況どう考えてもおかしいよね(思い出すのが遅い雑魚)。

加えて今も俺らは一つのソファに隣どうし。カレカノかよ。間違えました、夫婦ですね(未だに錯乱中)。

 

てかニッコニコやな北条……楽しんでますね……

 

「今深夜直前ですね。」

 

「うん。」

 

「俺はちょっと浮かれてました。」

 

「??」

 

コテンと首を傾げるな、クソ可愛い。

 

「まあ、最近疲れていた俺にこのプレゼントは凄く嬉しかったから、それについては本当にありがとうな。」

 

「恩返しだよ、恩返し。気にしないで。」

 

「でもよく考えろよ?」

 

「何を?」

 

「先ずどうやって俺の家に入った?」

 

「鍵を開けた。」

 

鍵を入手すんな。流出もすんな。誰だよ流してるの。誰にも渡した覚えはないぞ。

 

「なんで夜に来た?」

 

「そっちの方がドキッとするし、サプライズでしょ?」

 

ドキッとしてsurprisedだったから警察呼び掛けたわ。

 

「……普通、人の家で断り無しに料理してソファで寝るか?」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「ああ、いや、まあ、それはいいわ、うん。嬉しかったし。いいよ。気にしないで。」

 

女の涙に男は弱いってこういう事かあ。

 

「でもな。」

 

「うん。」

 

「もっかい言うけど、今深夜直前ですよね。」

 

「うん。」

 

「一緒に飯食ってんじゃねぇよ!!」

 

「え、駄目なんて言ってなかったじゃん?」

 

「言ってねぇけど倫理的に判るでしょォ!?」

 

「……?」

 

「この時間に俺が加蓮を寮に送ってみろォ!?」

 

「まあ、勘違いからのスキャンダルで引退だね。」

 

「一体今からどうすればいいんでしょうかね(大混乱)」

 

「アタシがここに泊まればいいじゃん。」

 

「は?」

 

「一応寮の人には友達の家に泊まりですって言って出てきたし。問題ないでしょ?」

 

「有り寄りの有りです。(冷製になるパスタ間違えました冷静になる音葉)」

 

「アタシに手でもだすつもり?デザート感覚で頂くの?」

 

「んな訳ねえだろォ!?何いってんだオメェ!?」

 

隠語を混ぜ込むなや。仮にも女子高生アイドルやぞ貴様。

 

「なら大丈夫、大丈夫。」

 

「だいじょうばない。誰かにバレたら死ぬ。」

 

「バレないバレない。」

 

「百歩譲って何処で寝るんですか。」

 

「一緒にベッドで寝れば良くない?」

 

「は?痴女なのかお前は?」

 

「え?襲わないんでしょ?」

 

「そういう問題でない。倫理的なものでだ。」

 

「そういう問題でしょ。倫理的なものだよ。」

 

「嘘だろ北条氏。」

 

「真だよ北条氏。」

 

「対句的表現にのってくれてありがとう。」

 

「ええんやで^^」

 

「加蓮、キャラ。」

 

「御免^^」

 

「おい、作者。話が終わらないからはよ戻せ。」

 

*わるい。ふざけすぎた。

 

「ええんやで^^」

 

*は?

 

「わるい。ふざけすぎた。」

 

*はい。よろしい。

 

……戻したぞ。

 

「誰と喋ってるのプロデューサー。気持ち悪い。」

 

おいおい、戻された瞬間これかよ。つらたん。いやそれは古いか。

 

……これふるいんですか?(ふるえごえ&しんじたくない)

 

「え、酷くない?」

 

「んー酷くない。」

 

「そうか。」

 

「そう。だからもうアタシはプロデューサーの家に泊まるって事で。」

 

「は?いや、ちょっと待てや。」

 

「役得だねー。誰にとってかは内緒だけど。」

 

「まってってば!」

 

「話が終わらないからはよ戻せ。ってさっき言ってたよねプロデューサー?」

 

「メタい事を言うな。」

 

「え?メタいって何?メタル?なんで鉄?鉄分が足りないとか言いたい訳?キレやすいって事?でもそれだけじゃあアタシは引かないよ?」

 

……あー、そういう感じの解釈っすか。

 

「そうだね。鉄分だね。鉄血だね。希望の花だね。」

 

この話の先にオルガでもいるんですか?泊まるんじゃねえぞ……

 

「……ねえ、前に美嘉と夜に二人きりだった事あるんでしょ。ニューヨークだっけ。本人からきいたよ。」

 

何やってんだミカァ!!!!

 

「美嘉は良くてアタシは駄目な理由って、何?」

 

哀しそうな表情でこちらに向き、問う。突然なんすか加蓮さん、ちょ、おい。顔が近いですよ、ちょっと。

 

「……気持ち、とか?」

 

唇が、近い。

 

「な、何の気持ち、だよ。」

 

「なんだろうね。ドキドキさせられる様なやつかも?」

 

……ほぼ答え言ってんじゃねえかよ。

 

「アタシだって、気持ち、負けてないよ。」

 

二人の口が触れそうになる。

 

「……証明してあげるね。ここで、沢山。」

 

いやヤバイ‼客観的に説明してる場合じゃねえ‼

 

ラブコメかよこの展開。

 

それに、貞操が、危うい。(二人とも)

 

緊急プロトコルを始動させなければ……!

 

「はい、肩を掴んで、離ーす。」

 

「あ……」

 

任務完遂。今回はガチでヤバかった。(小並感)

 

「いいか、よく聞け。今のは忘れる。北条も忘れろ。」

 

「…………」

 

「……お願いします忘れて下さい俺が恥ずかしくなって死ぬんですよ。(○貞)」

 

「……ならいいよ。わすれる。うん。はい。わすれた。」

 

腰の辺りで小さく両手を加蓮はヒラヒラさせる。え、ちょっと、可愛いから止めてよそれ。

 

「そんでもう分かった。ここに泊まれよ。(ヤケクソ)」

 

「ありがと。プロデューサーは優しいなあ。そういうとこ、好き。」

 

「は?可愛い。一緒に寝よ。(本音)」

 

あヤバ。心の声が。

 

「……んふふ。最初からそのつもりだってば。いこ?」

 

「ごめん、嘘。止めて。恥ずかしくなって死ぬから。(童○)」

 

「だーいじょうぶ!恥ずかしさで人は死なないんだから!立証済み!」

 

立証したんかい。どうやってやったのか気になります。いやそれよりも手ェ離せェ。二階に連れてくな。だから鎖で鍵を閉めるなって。アルカトラズ形式本当に好きねアイドルの皆さん。

 

え?ちょっと、まじすか?救済措置無しすか?な、なら、せめて風呂入らせて……おい、加蓮、待て、ちょ、

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

朝日の眩しさと小鳥の囀りで目を覚ますとそこに加蓮はいなかった。そことはベッドの上で寝そべっている俺の隣。……よるのかれんは、やーらかくて、いいにおいで、ねごとがかわいくて、かみのけふわふわで、とにかくやばかったです。

 

ぼーっとしながら俺は下のリビングに向かう。多少の名残惜しさはあるが流石に一線を越えそうになったので夜の様な事はもう経験したくないと思いました。因みに加蓮はぐっすり寝てましたよ。

 

そしてリビングには案の定加蓮がいました。帰ってなかったかあ。

 

「おはよ、プロデューサー♪朝ごはん出来てるよ。食べ終わったら、一緒にお風呂、入ろっか……?」

 

深い赤色のエプロンを加蓮はしていた。髪を上の方できちんと縛っていて、そのおかげで覗くうなじは年相応に見えなかった。つまり大人の魅力ってやつだと思います。(小並感)

 

(これは負け確イベだよ絶対。だって癒しも入れてくるんだもん。)

 

まゆとか凛とかと同じ轍を踏むのかと思えばそうではなく、そもそもあいつらと違い、俺のストレスは加蓮によって多少解消されていた。まあ、ほんとに多少。でもマシだ。あいつらはストレス製造機だし。まゆも凛も可愛いけどね、許せる範囲を越えてます。

 

あれ?加蓮って天使?(錯乱)

 

うん。加蓮って天使。(正常)

 

「ありがとな加蓮。でも風呂は一人でいける。つーか一緒に入るとか夫婦かよ。やだよ。」

 

「アタシとだとやなの?」

 

「いいよ。(本音)」

 

「いいんだ。」

 

「でもまだダメ。(嘘)」

 

「はーい。」

 

今回はそこそこ平和に終わりそうです。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

翌日に気付きましたが、まゆ達が奪ってった秘蔵の本の代わりに買って隠したアレを加蓮に捨てられてました。それと一緒に、文香から教えてもらった、耽美的で官能的な小説(文香談)も捨てられてました。

 

……代わりに加蓮の物と思われる下着が本棚の奥にありました。

 

今更だけどうちの事務所のアイドルって皆性倒錯してんの?

 

加蓮の事ガチ嫁かな?とか思ったけど改めた方がええかな。(自己対話)

ええな。(自己解決)

 

別にこれを怒る気ないけど心配だわ加蓮の頭が。親御さんの気持ちってこういうものなのかあ……(絶対違うと思う。違うよね?違っててほしい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………泊まりは誰にもバレてないです。恐らく。




(ショーツ類を)はかない感じの雰囲気とか好きです


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ロックじゃねえんだわ、多田ァ!……パッション枠にキュートのアイドルはおかしいかな?いや、おかしくないよなァ!

いつも通りキャラがとんでると思います。加えて特に頭がおかしいですし、キャラも崩壊してます。先に謝ります。ごめんなさい。
……それは置いといて、結構な人に見てもらえて嬉しいです。ふふっ、て感じにちょっとでも笑えてもらえたのなら本望です。ありがと。


休日の朝9時頃。自宅にて、

 

(慣れって恐ろしいな。まじで慣性の法則と作用・反作用の法則だわ。力学だわ。……masquerade力学とか本当にありそうだよね。何の力かな。愛の力かな?それなら確かに慣性ですね、一方通行の愛情ですし。はは。何笑てんねん。)

 

「お邪魔してまーす。」

 

リビングのソファで寛いでいる李衣菜を発見した。デジャ・ビュ。そして手をこちらに振る彼女に倣い、俺も……手を振らない!代わりに怒りを叫んでやろう!ふぅざけるなぁ!!(某夜神月)

 

「多田ァ!何故ここにいるゥ!」

 

「え?一昨日言いましたよ?今日行きますねって。」

 

……そういえば、そうでしたね忘れてました。

 

「な、何故ここへ普通に来るんだァ!」

 

「家が隣同士で私がアイドルになる前から馴染みさんだからですよ忘れましたか?今までだってずっとそうだったじゃないですか。もう。」

 

そうでしたね忘れてました。(二回目)

 

「じゃあ、どうやって入ってきたァ!」

 

「鍵開けてくれたのプロデューサーですよね??」

 

そうでしたね忘れてました。(三回目)

 

「そ、ソファで何してんだァ……?」

 

「雑誌を読んでます……けど……」

 

そうでしたね忘れてました。(四回目)というか今見ているので分かりますねェ!態々ごめんなさいィ!

 

「ど、どうしたんですかプロデューサー……?テンションがいつも以上におかしくないですか……?」

 

いつでもロックとか言ってる人と比べたらマシだと思うのは俺だけでしょうか俺だけですかそうですか。つーかいつも以上にってなんだよおい。いつだってどんな時もおかしいみたいな言い方しやがって。

いやそうか。

そうか?

そうだな。

そうだわ。(諦観&四段活用)

 

四段活用……?つまり『そうか』は古語……?そうだよ(ビンチョウマグロ間違えた便乗マグロ)

 

「はは。何時も通りだよ。平常運転。この物語で語られている部分だけを見るとこれが平常運転になるね。」

 

このssの外では俺、クソ真面目なのになあ。語られねえなあ。なんでかなあ。面白くないからかなあ?悪かったなクソ真面目状態が面白くなくて。でも個人的にこのssもあんまり面白くないと思う(唐突な自分語り)から別にクソ真面目状態でいいと思うんですけど。聞いてる作者?おーい?

 

……って、ちょ、話を進めるな!おい!自分に都合が悪い事は直ぐそうするよな作者!てめえコラ、お前内閣総理大臣かよ!ふざけんな!聞いてんのか!お

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

昼の1時。いつも通りに李衣菜と俺で一緒に昼食を作り、食べた。本当に驚く程李衣菜の作るカレイの煮付けは旨い。まじなんなんあれ。あんなん出来ひんやん普通‼カレイの煮付けだけでご飯54杯いけるレベル。ロックだけに。……これは高得点だろ?判定員、駄洒落の判定をお願いします。

 

(ふっ、これは勝ったな。風呂食ってくる。)

 

\10/ \10/ \10/ \9/ \10/ 合計 49

 

え、はあ!?またロ●アが9点か!?ロシ●は何でいつも10点くれないんだよ!?ふぅざけるなぁ!!(某夜神月)つーか●シアって自分の国にも10点やらんけど阿呆なのかな。そこんとこどうなんすかアナ●タシアさん。

 

「まーた空想の世界に入ってる……はあ……今日四回目……」

 

聞き捨てならない文章が聞こえた。てか文章が聞こえるって凄いな。(セルフツッコミ)

 

「入ってないよ。それで、何だっけ。」

 

既に食器類は洗い終わり、前例に倣って俺らはソファに座り込んでいる。そして俺の質問を対面に座る彼女は頭の上にクエスチョンマークを浮かべている様な表情で答える。

 

「何だっけって何ですか。」

 

「いや、用事があって俺の家来たんだろ。それが何なのかって事。」

 

「無いですよそんなの。」

 

「へ?」

 

貴方は何を言っているのだ?男の家に用事も無く来るとか貴方は俺の彼女か母上なのですか?……16歳の母上?バブみを感じてオギャるんすかね。んー、俺にはちょっと無理かな。だって李衣菜だもん。流石に母性を感じる事はない。ははは。李衣菜に母性を感じたら末期だよな。(目そらし)

 

「前来た時もその前の時も、用事なんて無かったじゃないですか。急にそんな今まで訊かなかった事を私に訊くなんてプロデューサー体調悪いんですよね?」

 

じゃないですか。ってそんなん知らねえよ。当たり前の事みたいに言うなや。しかも俺の体調を心配しだす始末。多田さん、煽ってます?

 

「大丈夫、大丈夫。快調。まじイャンクック。つーか今までも訊いてるぞ。何の用事で今日は来たのって。」

 

「そうでしたっけ?……あれー?」

 

「はあ……これだから頭がちょっとロックでいっぱいなだけ(智絵里談)のアイドルは……」

 

こいつの海馬の中には何が入ってるんだろうか。ロックだけだったらヤバいけどそれがあり得そうでヤバい。

 

「は、はあ!?ロック以外の事も考えたりしますよ!!えっとえっと、その、競馬とか!!うん、競馬!!」

 

「!?」

 

な ぜ に け い ば。

 

「16歳の女子高生が競馬って、おま、おっさんかよォ!?」

 

「酷い!!別に女子高生でも競馬とか興味ありますよ!!どうやったらあんなに速く走れるんだろーとか、何食べてるんだろーとか、えと、あと鼻の形凄いなーとか!!後おっさんじゃないです!!」

 

李 衣 菜 の 海 馬 の 中 競 走 馬 の 飼 い 葉 と 鼻。

 

「李衣菜だけだろそんなの……」

 

「じゃあ何でウマ娘とかが流行ったんですか??女子高生でも競馬に興味がある人がいるからじゃないんですか??」

 

ドヤァ顔やめろ。ありすか。……あいつはロンパァ顔か。間違えたわすまん。

 

「アニメ類の競馬表現は実際のものとは違うと思うんですけど(名推理)」

 

「同じです。」

 

「嘘だろお前。」

 

「嘘じゃないです。」

 

「ほんとかなあ??(ゴロリ)」

 

「……今日のプロデューサー、やっぱり体調もテンションもおかしいですね。それに否定的ですし、なんか気持ち悪いですし。……まあ、そんなt」

 

なんか気持ち悪いだって……?(怒り)

 

「ああ、そうかよ。おkおk。俺はキモいよ。だから今日はもう帰ってくれ。普通に考えれば用事無いのに俺の家に李衣菜がいるのはおかしいしな。……ああ、そういえば昼あんがと。旨かったよ。そんじゃ。」

 

面倒くさくなってきて俺は玄関方向に指を指す。

 

「はよ。」

 

「…………」

 

黙って席を立つ李衣菜。不機嫌ですね。けれどもどっちかというと俺の方が不機嫌になりたいです。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……また、明日。」

 

靴を履いた李衣菜が頬を膨らませ、やはり変わらず不機嫌そうに言う。……流石に大人げないと思ったので謝ろうと思います。

 

「…………えっと、実は俺、今から用事が出来ちゃったんだよ。だから帰ってもらわなきゃならなくて、別に怒ってる訳じゃないし、その、本当にすまない。」

 

玄関の前、李衣菜が俺の家から出ていく前に言う。自分で言った事だが用事が出来たっておかしいだろ。僅か数十秒で用事が出来るか。(セルフツッコミ2)

 

まだ李衣菜はプンスカしている。当然か。こんなんじゃ駄目だわな。もっとちゃんと謝ろう。それはもう陳謝の勢いで。

 

「……ごめんなさい。今日の俺は大人げなかったです。しかも直ぐにキレてしまいました。子供みたいに分かりやすく不機嫌になって李衣菜に当たってしまいました。許して下さい。何でもはしませんが。」

 

日本の伝統芸能DOGEZAはしてません(重要)。でも今なら靴舐め出来るレベルでプライドが消失しています。ので、この陳謝でも李衣菜の怒りが収まらなければ伝家の宝刀であり、日本の伝統芸能でもあるDOGEZAを御見せ致す事になりましょうぞ。

 

「……プロデューサーは今日、テンションがおかしかった。ですよね?」

 

なにか始まりましたね。まあ、乗りますか。

 

「はい。すみません。」

 

「……プロデューサーは今日、体調もおかしかった。そうですよね?」

 

「はい。療養します。」

 

「……プロデューサーは今日、否定的で気持ち悪かった。ですよね?」

 

「はい。……でもやっぱり気持ち悪くはなかったと思われ」

 

「否定的、ですね……?」

 

「ごめんなさい。」

 

「……プロデューサーは毎日、頭髪が薄くなっていっている。ですよn」

 

「は?(怒り)」

 

「否定的、で」

 

「は?(激怒)」

 

「……えっと、ひ、ひて」

 

「は?(憤怒)」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「よろしい。」

 

調子に乗るなよ、貴様……

 

「それより!」

 

上機嫌な顔をした李衣菜がこちらを見詰めて言う。

 

「……また、明日。また明日来ます。ギター教えて下さい。」

 

「それ前にも話したが学生時代に3年やってただけだぞ。アマチュアなのにいいのか?教えるの下手くそだし。」

 

最近彼女はギターの練習を始めた。やっとロックらしい事を始めたかというのが素直な感想です。

 

「いいです。一緒にいるための口実ですから。」

 

「…………ま、まじでそういうのやめろびっくりする。かんちがいするからやめろおねがいだから。ほんきにするからやめろまじで。」

 

??????

 

意味不明の六クエスチョンだよ。ロックだけに。

つーかおふざけなしで、急にまゆみたいな事言い出すの止めてくれよ。

 

「勘違いじゃないし、本気にしてくれていいです。むしろ、してください。」

 

ど、どうしたのこの子。いやまじでどうしたのこの子。本当にどうしたのこの子。理解不能だしどうしたのこの子。何言ってるのかわかんねえしどうしたのこの子。どうしたのこの子しか言えないしどうしたのこの子。

 

「…………あ、えと、そ、それは、んと、はあ。はあ?」

 

「ロック以外の事も考えたりしますよって私言いましたよね?」

 

「と、統治二論?」

 

「ジョン・ロックじゃなくて。」

 

「岩とか?」

 

「そのロックじゃなくて。」

 

「鍵でもかける?」

 

「そのロックでもなくて。」

 

「揺する感じですか?」

 

「そのロックでもないです。」

 

「群馬県にある石のテーマパーク?」

 

「ロックハート城も違います。」

 

「Dr.ワイリーさんですよね?」

 

「ロックマンじゃないです。」

 

「孤独なsilhouette?」

 

「コブラじゃねーか!!」

 

「ど李言変」

 

「ウッヒョー!!」

 

「ど李言正」

 

「兎に角!!」

 

「お、おう。」

 

「……Masque:radeのメンバーとして、もう隠しませんから。」

 

彼女は、顔を真っ赤に染め上げ、こちらを見ること無く玄関から出ていった。少し経って、近くから、扉を開けて、直ぐに閉めた音が響いた。

 

 

 

 

 

慣性の法則__物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が0であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速直線運動を続ける。か。

 

「拮抗状態で静止してりゃ良かったのに……あの四人、等速運動じゃなくて等加速度運動し始めてんだよなあ……あいつらの感性にも変革とかが起きたんかな……」

 

慣性と感性でかけました、なんつって。ははは。何笑てんねん。

 

……もう、Masque:radeの癒しは美穂だけだわ。(フラグ)




『李衣菜の海馬の中競走馬の飼い葉と鼻』は語感の良さから付けた文です。それと教訓。李衣菜からは絶対に母性を感じるな。本当に気を付けろ俺になるぞ。


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猫キャラは何処に行ったんだ、前川ァ!

今回は嘘とかじゃなく恋愛要素がありよりのありで、ギャグは抑えめ。みくにゃんは好きとかよりも凄いという感情が先行します。真剣でいてひたむきな姿やら個性の模索に奮闘努力している姿やら。でも好きという感情が弱い訳ではないです。むしろ強いです。


土曜日、早朝に会社へ出勤するといつも彼女はそこにいる。ストイックで、アイドルに真剣な、アイデンティティは猫キャラの彼女。名前は前川みく。15歳の高校一年生。身長は152cmと平均より少し低めで、体重も平均より少し低い45kg。以外な事に大阪府出身で、血液型はB型である。そして個人的に、彼女が2月22日生まれの魚座という事を知った時はそれを奇跡的だと思った。

 

(恵まれた猫キャラ。……好物は魚かな。ここまで猫にマッチしてくるのだからまあ間違いないと思うが……これで魚が嫌いだったらそれはそれで、)

 

彼女に聞いてみると、魚は嫌いという答えが帰ってきた。

 

(弄るだけだな。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「ふうー、あっちいあっちい。」

 

一週間に一度来る、休みたいけど休めない忌ま忌ましい土曜日。346プロダクションの広い敷地の端っこ、少し前に茜と走ったあの広場を歩きながら俺は一人呟く。

 

「あー……早くみくに会いてえー……会えたら100%暑さなんて吹っ飛ぶのにー……」

 

みくにゃん可愛いもんね。いじってたら本当に暑さ忘れる。なんだろうねこれ。魔法かな?可愛さで暑さを吹き飛ばす魔法かな?なんだよそれ最高かよ。みくにゃん嫁に来て。

 

因みにだがいつもみたいにふざけんぞ俺は。みくはガチの真面目枠なんだよ分かりますか皆さん?だからふざけない。ふざけたくない。今までみたいに叫んだり暴れたり泣いたりはしない。つーか作者。俺をふざけさせてでもみろ。労働三権行使するからな。一発ストライキやからな。交渉権じゃなくて行動権を行使するからな。でも団結権は使わないですだって独りだもん。悲しいね。

 

 

 

 

 

さて、プロジェクトルームに着いた。あっつい外とはおさらばだぜ。平均気温を下げるために松●修造さん、海外旅行にでも行ってくんねえかな……

 

(あれ?みくがいない。)

 

自由気ままな猫かよ。猫か。猫だわ。ごめん忘れてた。

 

(にしてもなんかよく分からない音が隣の部屋から聞こえるんだが。)

 

この前文香と対談したあの部屋から微かに音がする、の方が正しいかな。なんだろ。みくの仕業だろうか。

 

部屋の前に立ち、耳を扉にくっつけ、音の正体を探ろうとする。

 

ドパドパミン……

 

(鎌倉幕府執権北条氏ィ!?何故またここにいるゥ!?みくじゃないのか!?みくは!?みくは何処だ!?癒しの座まで世襲せーへんでもええやろ北条氏ィ!?)

 

ムーンウェーブピリピリー

 

なんなんまじで。ウサミンと条約でも締結してんすか。北条氏と安倍氏の昔ながらの付き合い的な?一体何百年単位なんだ……

 

(みくはこの部屋にいる。俺はそう思う。だがあやつがおっては確認できぬ。どうすれば……)

 

学生の軽い重さじゃねんだわ北条氏。あれは既に大人レベル。三船さんとはれるレベル。……おい誰だ三船さんを色々な意味で重いとか言った奴●すぞ。

 

 

 

 

 

と、耳を澄ませ続けていると二人の女性の声が聞こえてきた。良かった。男性の声だったら御成敗式目だった(意味不明)。

 

何かを言い合っている……いや違うか……?

 

壁を隔てているからあんまし何言ってるのかわかんねえ。

 

(ただ誰か二人がこの中にいて話しているのは確定事項だし……もうめんどくせえ。加蓮がいても知った事はねえ。軽くいなしてやる。入るぞォゥ。)

 

ドアをノックする。さあ、返事をくれ。

 

(…………ふう。)

 

もう一度ノックする。返事無いんですけど。

 

(え、何これ心霊現象?)

 

中に誰もいませんよ的なsomething?ナイスボート?

 

「P、Pチャン?何?どしたの?」

 

やっと中から声が返ってきた。心配したぜ。

 

「ああ、いや、この部屋から声がしたから誰かいんのかなあと思って。やっぱりみくだったのか。」

 

「あー、うん、そう、みく。みくだけだよ。」

 

「……?」

 

なんかおかしいな。変な感じする。

 

「本当に?」

 

「ほんま!ほんま!」

 

「さっき電話の音がしましたよ。」

 

「みくの!みくの!」

 

二人目の加蓮はみくにゃんかー。

 

「二人くらいの声もしましたよ。」

 

「独り言!独り言!」

 

じゃあ、加蓮はいないって事でおk?

 

「猫チャンの事、どう思ってる?」カチッ

 

「大好き愛してる!」

 

やったぜ。

 

「分かったから取り合えずこの部屋に入れてくんね?何で鍵閉めてんの?」

 

この部屋に鍵はない筈なんだがドアが動かない。ガッチリと壁にくっついてる感覚。まるでまゆが俺を見つけてから五秒後の状態を体現しているかのよう。ほんとになんだろねあれ。まゆの足速すぎじゃね。50m走多分5.1秒だぞ。ナイス世界レベル。

 

「え、え!?なんでだろー……??」

 

中からゴソゴソ聞こえる。怪しすぎる。それにやっぱり何かがおかしい。

 

(……鍵か。)

 

考え得るのは二つ。だが一つの可能性はもう有り得ない。

 

(何故ならアルカトラズ方式では壁にガッチリとくっつかないから……はあ……じゃあ、あれか。やだなあ。)

 

未だにゴソゴソ聞こえる。やはり怪しい。そしてやはり何かがおかしい。……早く入るためにも覚悟を決めろ、羞恥心を捨てろ、同類になる勇気を持て、俺。

 

「………………ふーん。エッチじゃん。」ボソッ

 

言ってしまった。この忌憚する言の葉を。あの渋谷凛というヤバイドルの蒼歴史を。あまりにも穢い文書を。吐きそうだ吐いた。ヴォエ!!

 

「うぇ!?あ、開いた!?」

 

中から聞こえたみくの声で沈んだ意識が元に戻った。凄い。吐いた物が元に戻っていく(錯乱)。みくの声ってなんでこんなにも心地良いんだろ?聞こえた瞬間にHPが回復したよ。そうHPね。HP(エッチなpチャン)、なんつって。ガハハ!!

 

だから下ネタは駄目だって言ったダルォォ!!?

 

にしてもこの声●ロゲとかで聞いた事がある気がします。あ、禁忌に触れるな?ごめんなさい。

 

 

 

 

 

「……よお、みく。ソファに座って楽しそうだな。ニコニコして。」

 

部屋に入ると眼鏡をかけたみく一人だけがいた。やっぱり一人だけか。良かった北条氏いなくて。

 

「そ、そう?テストの結果が良かったからかなー?」

 

何か隠してるなこいつ。

 

「……ん?それ何だ?」

 

みくが後ろ手に何かを隠しているのに俺は気付いた。これかゴソゴソしてたのは。

 

「な、なに?どれの事?」

 

目ぇ、背けんなぁー?

 

「猫耳かそれ。」

 

「え?違うy」

 

 

 

 

 

「アーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「え!?何!?どうしたのPチャン!?な、何も隠してないよ!!」

 

違和感の正体分かった!!

 

「猫キャラは何処に行ったんだ、前川ァ!」

 

口調だ、口調!そうだそれがおかしかったんだ!なんか違和感あったんだよ!これか!数学七大難問の一つがまた解けた!優勝した、優勝した!

 

「そっちかーい。」

 

ほら『にゃ』がない!『にゃ』のねえみくはただの猫だ。……別にいいのかそれで。

 

「キャラとかじゃないよ。『にゃ』は素だよ。」

 

「取って付けたにゃんじゃなく、マジナチュラルスーパーにゃんだと?」

 

「ちょっと何言ってるか分かんないけど、多分大体そういう意味。」

 

……?また何か違和感が。

 

「今日のPチャン、テンション高くない?気のせい?」

 

「…………」

 

「と思ったら急にテンション低くなっちゃうし……どしたの?」

 

「…………」

 

「え、無視?ひどくない?」

 

「……眼鏡。」

 

「へ?」

 

「なにその眼鏡。初めて見た。てかみくが眼鏡かけてるのも初めて見たんだけど。」

 

赤ぶちの眼鏡である。真面目っぽい。

 

「……あ。かけっぱにしてた。」

 

慌ててみくはその眼鏡を外そうとする。が、

 

「ストップ」

 

「にゃっ!?」

 

みくの座るソファまで行き、眼鏡を外そうとしたみくの手を、俺の手で掴んで止める。

 

「な、何するにゃ!?」

 

みくの顔が紅くなっていく。

 

「離すにゃ!」

 

俺が掴んでいる手をぶんぶんと振り動かす。だが俺は必ず離すまいとさらに力を入れた。勿論、痛くはない程度に。すると、みくは直ぐに手を動かすのを止めた。大人しくなった。

 

「……はなしてよ。」

 

みくは顔を背ける。背けた事により見えた耳は真っ赤に染まっていた。

 

「ちょっと……ねえ、ほんき、なの……?」

 

弱々しい声に俺は強く答える。

 

「……本気だ。」

 

「……う、うう。」

 

そう。俺は本気である。ガチである。

 

「…………や、やっぱり、こういうことはごういなしd」

 

 

 

 

 

「このキャラだよ!!!」

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

まだ紅い顔がこちらに向き直る。鳩が豆鉄砲なんたらとはこの事か。

 

「真面目委員長だ!いつもは真面目な彼女が実は猫キャラ!猫キャラの彼女が実は真面目!この二律背反のギャップ!最高だ!俺が求めていたものだ!良いぞ前川みくゥ!そのキャラでいk」

 

「しね」

 

「ド直球は酷くねェ!?」

 

「失Pア辞」

 

「やめろォ!!」

 

「f●ck you.」

 

「女性がそんな事を言ってはいけません!!あと中指も立てない!!最後にその阿修羅みたいな顔も止めなさい!!聞いてるのか前川ァ!!無視すんなァ!!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

結局、真面目委員長は大成功した。しかし代わりにあの時からみくに目をそらされるようになった。土曜日に二人だけの時もたまに顔を紅くして怒られるようになった。俺はみくに嫌われたかもしれない。

 

ふざけてはいないのに何故こうなったのだろうか……?(アホ)




みくにゃんの声が好きっていうこの気持ち分かる人いる?


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森久保ォ!!森久保ォ!!森久保ォ!!(言いたいだけ)

俺の担当ォ!!すこォ!!贔屓があるかもォ!!陳謝候ォ!!

そして合計PV10000超えありがとォ!!


「森久保が逃走ォ!!見つけ次第保護ォ!!」

 

森久保をレッスンルームに連れていってると彼女はいつもいつの間にか何処かへ消える。こんなレッスン前の恒例行事にも慣れたものだ。

 

「お、おう……親友はボノノちゃんが関わるといつもおかしくなるな……リア充よりかはマシだけど……」

 

輝子が慣れた目で俺を見る。いや、呆れた目か。おかしいってなんだよ酷いなあ。でもリア充よりマシかあ。ならいいかあ。

 

取り敢えず道端でチュッチュッしてる奴らは全員群馬県の刑に処したい。終身刑よりもエグい刑罰として有名な群馬刑。あいつらはこの地獄に耐えられるかなあ?(ゲス顔)

 

「どうしようもねえんだよォ!!森久保を見つけるには勢いが必要ォ!!手伝ってくれ輝子ォ!!」

 

二人で捜せば百人引きだからな!……どっちだそれは。

 

「いいけど……それで?最初は何処に行くんだ?」

 

彼女は色んな所に潜む。受付、談話室、青空広場、屋上等々。トイレとか更衣室に隠れられたら変態に成らざるを得ない(誰だ、元々変態だろとか言った奴は。)ため、女性の助成は必須だ。んー、微妙。31点。

 

そういえば最近デレステのインフレが著しいよね。もうそろそろつまみとか来るんじゃないかな。(sdvx脳)そうだ。sdvxで言っておきたい事があるんだけど、運営。ディスコンのエグさをどうにかしてくれ。何だありゃ。訳ワカメスープだぞ。(公憤)19であれは美波。戦犯かめりあを許すな。

 

話を戻そう。

 

こういう時、乃々は何処に隠れようとするか。

彼女は逃げている訳じゃない。これは一種のルーティーン。俺に見つけてもらうまでで1セットだ。

彼女は嫌がっている訳じゃない。むしろ好意的で、意欲的なもの。主目的は、見つかった後に、果たされる。

彼女は素直な訳じゃない。これらの事を話さないし、必死に隠す。ポエム帳と同じ様に。

 

つまり、見つける事は容易ではないが、不可能という事でもない。

 

そして、俺が彼女を見つけないと何も始まらないという事であり、見つけにくい場所に隠れていればいるほど彼女は心の奥底ではやる気満々であるという事なのだ。

 

今回はレッスンからの逃亡ルーティーン。

 

優しい彼女だ。時間はきちんと考慮するだろう。

 

レッスン着は未着用、体調は良好、天気は曇り気味、しかし気温は高め。

 

すると……談話室、屋上、プロジェクトルームのどれかか。

 

今までの統計では談話室38.8%、屋上9.6%、プロジェクトルーム0.24%。

 

確率論から言うのならば談話室だが……

 

「一旦プロジェクトルーム戻るぞォ!!」

 

乃々の事だ。『灯台もと暗し、ですけど……!』とか考えて俺の机の下にいるに違いない。

 

「何処にいたって見つけてやるからな森久保ォ!!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「なんなんですか本当に……理解できないんですけど……!」

 

森久保は今、避難中です。あの頭がおかしくなったプロデューサーさんから逃走しています。

 

(もりくぼが関わると絶対に頭がおかしくなるのは何故……!)

 

五分間話すと大体ああなるプロデューサーさん。まるで五分間目を見て話すと気絶してしまうもりくぼみたいでシンパシーを感じ……ません。

 

(はあ……やっぱり机の下は落ち着きます。)

 

命からがら逃げ延びて、辿り着いたサンクチュアリ。ずばりプロデューサーさんの机の下!

 

(まさかここにもりくぼが戻ってくるなんて思わないでしょう。)

 

灯台もと暗し、ですけど……!

 

 

 

 

 

「何処だ、森久保ォ!!」バタンッ!!

 

(ひぃぃ!?は、早くないですか!?)

 

数分でここに辿り着くなんて……流石担当プロデューサーさんなだけはあります。

 

(でも、もりくぼの方が一枚上手……!)

 

なぜならば。

 

「どうしましたかあ、プロデューサーさん?」

 

「まゆの登場ォ!!!?……えっと、おほん。乃々がここに来なかったか?」

 

「乃々ちゃんですか?さっきまでいたんですけど、気付いたら何処か別の場所に行っちゃったみたいで。ここにはいませんよ。」

 

まゆさんがいますから。

 

(ありがとうございますまゆさん。私達二人ならどんな困難でも百人引きなんですけど!……二人か百人かどっちなんですか。)

 

「あれ?まゆさん今日は仕事休みじゃないのか?何で事務所に?」

 

(何故輝子ちゃんがプロデューサーさん側に……そうですか、今日の輝子ちゃんは敵なんですか。分かりました。昨日まではともだちでしたが、今日だけは、そう思わない様にしましょう。)

 

昨日の友は今日の敵。……友達多いと四面楚歌ですねこれ。

 

「間違えて来ちゃいました。」テヘペロ

 

「ォ!!茶目かよォ!!」

 

(……だからって朝6時からここに来るものでしょうか。)

 

まゆさんに聞いてみると今日は朝の6時から事務所にいるらしいのです。果たしてまゆさんは、そんな時間から一体何を……いえ、止めておきましょう。触らぬ神に祟りなし、と言いますし。

 

(触れぬ髪に多々の利無し、なんて。ふふ。)

 

変なことを思い付いてしまいました。

 

「髪ネタの芳香ォ!!俺の机の下(もと)ォ!!」

 

「あ……ごめんなさい乃々ちゃん……」ボソッ

 

(な、なんでですか!?!?)

 

バレ方意味不明すぎるんですけど!?

 

「ネタって臭いするか?」

 

「しないと思いますよ。」

 

「輝子、まゆ、それは言わない約束。いいね?」

 

「「あっ、はい。」」

 

ど、どうしましょう、えと

 

(……はっ。)

 

「見つけたぞォ!!森久保ォ!!」

 

(私には、まだこの手がありました……!)

 

「…………も、もりくぼじゃないです。」

 

「森久保だろォ!!」

 

「かみくぼ、ですけど。」

 

「……かみくぼォ??」

 

(ボノノさんまで親友みたいな事を言い出したぞ。)

 

(空気感染ですかねえ。まゆ達はうつらないようにマスクでもしておきましょうか。)

 

(くれるのか?あ、ありがとう。まゆさん。)

 

「想像主、かみくぼですけど。らーぐーなーろーくー……」

 

「ええ……(困惑)」

 

(取り敢えずプロデューサーさんを元に戻します。そして、)

 

「やけくぼは死にました。かみくぼです。」

 

「熱でもあんのか?家、帰るか?(ガチ心配)」

 

(心配させて、時間を稼ぐ!完璧です。)

 

「かみくぼに体温概念は存在しないんですけど。」

 

「な、なあ、まゆ、輝子、どうすればいい……お前らさっきまでマスクしてたっけ?」

 

「いつもの流れですよ。茶番劇。イチャイチャと……」プクー

 

「熱い抱擁と幸せなキスを交わして終了、でいいんじゃないか?(適当)

にしても二人はリア充みたいだな。イチャイチャと……」

 

「い、いちゃいちゃはしてないんですけど!!キスも駄目です!!」

 

(あ、元に戻してしまいました。)

 

あうう……安息の地が侵されていく……

 

「なら熱い抱擁はいいんだな、森久保ォ!!」

 

「む、むぅーりぃー……」

 

あまりにも酷い。この展開は一体。何でこうなるんですか。

 

「もりくぼはもりくぼをやめるんですけど……うぅーりぃー……」

 

「ジョジョォ!!」

 

「何だかんだ言ってボノノさん構って欲しいだけだよな。」ヒソヒソ

 

「可愛いですよねえ。戴けませんが。」ヒソヒソ

 

「き、聞こえてるんですけど!?」

 

(うう……はずかしい……かおからひがでそうです……これこそがほんとのやけくぼ……?)

 

「奈良シカマルの声を充ててらした方、ですよね?」

 

「別の森久保ですけど……」

 

「初代内務卿の方、ですよね?」

 

「大久保ですけど……」

 

「社団法人日本プロ野球選手会第10代理事長の方、ですよね?」

 

「小久保ですけど……」

 

「BLEACH描いていた方、ですよね?」

 

「久保ですけど……」

 

「もうこれで、終わってもいい……」

 

「ボ」

 

(もう、レッスン行こうぜ。二人共無視して。)

 

(……いい雰囲気。)

 

(これが?大東亜共栄権を行使した側の大日本帝国とされた側の東南アジア諸国みたいな関係性だぞ?)

 

(熟年夫婦のそれですよ。)

 

(ええ……まゆさんの熟年夫婦ってこれ……?)

 

(どうせこのまままゆ達が出ていったら更にイチャイチャし出すんですよ。ふんっ。)

 

(いや、無いと思うぞ。そんな少女漫画的展開。というか少女漫画でもこんな展開はない。)

 

(芋けんぴ、腰約180度横曲げ、眼球の占める顔面の割合5割超え……)

 

(稀有例だから落ち着いてくれ。マジックマッシュルームでも食べて冷静になってくれ。)

 

(頬を叩きあってから信実の抱擁、走れメロス……え、エロス!?)

 

(アンデスはもう駄目かもしれない。)

 

「ォ!!ふざけ終了ォ!!連行ォ!!」ガシッ

 

「ああー……作戦失敗……どうすればプロデューサーさんから逃げられるんですか……」ズルズル

 

「瞳を見つめて愛の告白『好き、ですけど。』ォ!!」

 

「…………」

 

「寂寥ォ!!話そォ!!」

 

「ぷ、ぷろでゅーさーさん。」

 

「傾聴ォ!!」

 

「……すき」ジー

 

「尊ォ!!『ですけど』の霧消ォ!!」ビクンビクン

 

「ふ、ふふ。やりました。勝ちました。初めての、勝利……!かちくぼ!ですけど!」ウキウキ

 

(まともなのは私だけなのか……?)

 

 

 

 

 

「尊死麻原●晃ォ!!」ビクビクン

 

(『すき』は『けど』で繋げませんよ。……だって、もりくぼは、本当に、)

 

「……や、やけくぼですけどぉぉぉーーーー!!」

 

(か、顔が熱いぃ……!)

 

「ふ、ふふ。こうなるなら、あの時、帰らなければ良かった。智絵里ちゃんの言うとおりにしなければ良かった。既成事実からの電撃結婚にしておけば良かった。」ブツブツ

 

 

 

 

 

(……私だけだな。)

 

「キュートとクールとパッションって本当にあってるのか?」

 

彼女は、一人ごちた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「アイドル達がレッスンルームに来ない件について。」




低身長ォ!!かわいいぞォ!!

どうでもいいけどォ!!ルソーォ!!おもしろォ!!皆も読もォ!!デカルトォ!!カントォ!!ハイデガーもォ!!読書ォ!!

……Dyscontrolled Galaxyは19ではない。美波の色気が19歳ではないのと同義の様に。文香の色気も19歳ではないのと同義の様に。こいつエロさにしか目がいってねえな。
ん?つまり、Dyscontrolled Galaxyはエロいって事……?
制御不能の銀河(意味深)。耳を穿つ《音楽》を!(意味深)。

19歳といえば最近有浦柑奈ちゃんがマジで好き。キテる。


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許して、輝子さん……悪気はないんです……

タイトル通りです。でもヒャッハーはしてないです。

お気に入り100超えありがとう……これで暇潰し出来てたら嬉しい。読者にとって良質な暇潰しを提供するのが私の執筆理念なんだ。



「ふう、危ねえ、危ねえ。アンデスのレッスンギリギリ間に合わなかったぜ。」

 

……駄目じゃんそれ。怒られるよ。怒られたよ。(結果報告)

 

「はあー……廊下に比べてプロジェクトルームは涼しーなー……つーか寒いわ……冷房何度になってる?」

 

先程の乃々ルーティーン(前話参照)を終わらせて、アンデスの三人をレッスンルームに送り届け、日本が古来より誇る伝統芸能DOGEZAをトレーナーさんに披露し、自分のプロジェクトルームへ帰還した俺。森久保との論争ォ!!から充分に時間を空けてまたこの部屋に入ったら明らかに寒くなっていた。

 

「17!?いくらなんでもそれはおかしい!!せめて27だろ!!17とかさっむ!!」

 

…………冷房の設定温度の話だよ?べ、別に、菜々さんの話なんて、してないんだからね!

 

「俺がいない間に温度下げたなちひろ貴様……」

 

28から17。早苗さんと菜々さん。あれ?こう書くとほぼ同じに見えてくるぞ?おかしいなあ?11も離れてるのになあ?(煽り)

 

「温度上げよ……」

 

なあ聞いてくれるか。なんとこのプロジェクトルーム、面倒臭い事に隣の部屋で冷暖房設定をしなければならないのだ。文香とみくがいたあの部屋ね。これまじで訳わからんくない?温度はここで見れるのにその設定は隣でやれって事だよ?狂ってる。倦怠期のカップルかよって言いたくなるわ。言いたくならない?なるよね?なるね。(自己解決)

 

 

 

 

 

「ピッピッ、と。」

 

隣の部屋で、冷房を25℃に設定した。やっぱ25だよな。5の2乗だし。(意味不理論)

それに暑いから28だと駄目なんだよ。そう。暑いから。28は駄目だけど25は良いの。(あらゆる方向に喧嘩を売るクソ野郎)

 

でもそれよりやっぱ19の方が好き。(性欲の権化)

でもディスコンは嫌い。砕け散れ。(前話参照)

 

「……戻ろ。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

戻ると丁度、プロジェクトルームの俺のデスク上に置いておいたスマホが揺れた。誰かは知らんがタイミングばっちりじゃん。凄いね。監視でもされてんのかな、なんて。

 

「志希かーい。」

 

メールの送り主は一ノ瀬だった。普通、そこは輝子じゃないの?まだ話の主人公出てきてないよ?いいの?大丈夫作者?血迷ってる?……あ、いい?心配すんな?それにメタい?分かったよ、ごめんて。キレんなって。牛乳飲んで怒り抑えて?いや、藍子に喧嘩は売ってないってば。

 

「なになに……?」

 

志希『ねえ、今大丈夫?』

 

プロ『大丈夫。』

 

志希『分かった。訊きたい事があるの。』

 

プロ『ほん。』

 

志希『貞操はまだ守られてる?』

 

プロ『は?』

 

(また何かやらかしたなコイツ……)

 

志希『ごめんちゃい。』

 

プロ『禁固刑。』

 

志希『何年?』

 

プロ『一生。』

 

志希『プロポーズだよねそれ。』

 

プロ『俺の態度がどうかしたか?』

 

志希『は?』

 

(またやらかしちゃったよ俺氏……)

 

プロ『ごめんちゃい。』

 

志希『それで、どう?』

 

プロ『大丈夫だけど。』

 

志希『良かった……』

 

プロ『詳しく教えろ下さい。』

 

志希『その、一口には言えないんだ。明日は暇?』

 

プロ『デートの誘いですか?』

 

志希『それは3日後。』

 

プロ『そうだったな。』

 

プロ『一日中暇だ。』

 

志希『承知!(*´ω`*)』

 

志希『なら、アタシの借りてるマンションに来て。勿論一人で、ね。』

 

プロ『承知!(*´ω`*)』

 

志希『気持ち悪。』

 

プロ『禁固刑。』

 

志希『何年?』

 

プロ『一生。』

 

志希『プロポーズ?』

 

プロ『そうだ。愛してる。結婚しよう。』

 

志希『え』

 

よし。ここで終わらせよう。……ああ、バイブうぜえ。電源切ったれ。

 

(にしても志希さんは明日一日中貞操の話をするのか?態々自分の家で?何で?)

 

やっぱギフテッドの脳ミソわかんねえわ。何したいねんあの子。

 

(……まあいいか。明日の事なんだし。仕事しよ。)

 

俺はデスクチェアを後ろに引いて座る。

 

「よいしょっと。」ガチャンッ

 

(ガチャン?)

 

鋭い音が足下からしたので、見てみると。

 

(…………輝子の、キノコ鉢、壊れてる。)

 

床には鉢の破片と入っていたであろう土と小さめのキノコが散乱していた。

 

(や、やばい。)

 

これが、Steins;G●teの、選択か……

 

(いや違えだろ。)

 

やべえって。これはやべえって。下手したら殺されるって。罪悪感による切腹で。いや、どうせなら輝子の栽培した毒キノコで毒殺されたいんだけどね。関係ないか。

 

(お、落ち着け。完全数を数えて落ち着くんだ。)

 

6……28……496……8128……

 

(そうだよ。6だ。天地創造の日数。李衣菜の数。3の階乗数。つまり、李衣菜=天地創造=3!。加えて輝子の誕生日は6月6日。したがって、輝子=二人分の李衣菜であり、輝子=二回の天地創造=地球の創造主でもあり、輝子=3!3!=36=12+24=12月24日=イブ・サンタクロースでもあるのだ。)

 

「……イブ・サンタクロース=地球の創造主説?なんだこれはたまげたなあ。」

 

かの著名なイブPに伝えなきゃ。(使命感)

 

「いやいやいやいやちがうちがうちがうちがうちがう。」

 

完全数による判定理論は今どうでもいいでしょう。きのこたけのこ論争くらいどうでもいい。だってルマンドの圧勝なんだからなあ?(また喧嘩を売る)

 

(これを輝子に何て言うべきか、それが問題だ。)

 

 

 

 

 

「第i回脳内輝子議会を始めます。議題は輝子の可愛さ間違えた輝子にどうこの事を話せば良いのかです。」

 

『伝統芸能的陳謝術此他無。』

 

[普通に謝りゃいいじゃん。さーせんはんぺんクロロベンゼンって。]

 

「お前の普通は絶対おかしい。」

 

[おかしくnineteen-twentytwo.]

 

「高橋内閣総辞職ビームはいいから。」

 

《滅茶苦茶過ぎてごめんね。》

 

「詠唱断絶。」

 

《ちっ。》

 

「真面目に考えろ。」

 

『彼女親切風思考回路持、正直謝辞器物破損其即許。』

 

「そんで最初は無視したけど誰だ外国人連れて来た奴。」

 

《わしやで。》

 

[もしやで。]

 

「何で奏の話になるんすかねえ……」

 

『奏好。』

 

「ハオじゃねえよ。」

 

《ハォ!!》

 

「もう森久保の話は終わっただろォ!!」

 

[ニャォ!!]

 

「みくにゃんの話も終わっただろォ!!」

 

『チャォ!!』

 

「SideMに帰れェ!!何しに来たァ!?」

 

《日本語話せるやん。》

 

『当たり前だろ。日本人なんだから。何言ってんだお前ら。』

 

[なんだァてめェ……?]

 

「切れんな独歩。」

 

《ねえ話が脱線してるよ?閣議は?》

 

「そんな大それたモノじゃねえよこれ。」

 

[内閣不信任決議案いる?]

 

「午後の紅茶いる?みたいなノリで訊くな馬鹿タレ。しかもそれを出すのは衆議院だクソッタレ。」

 

『そういえばここ参議院だったね。』

 

「全部違えよ。脳ミソだよ。」

 

『急に小梅ちゃんみたいな事を言う。……つまり君は小梅ちゃん……?』

 

「は?終身刑。」

 

《じゃあ俺も小梅じゃん、やったぜ。》

 

「は?死刑。」

 

[心霊スポットはここですか?]

 

「は?懲役226年。」

 

《俺を許してよ~》

 

『そしてもう一度……っ!』

 

[Be~My Baby~]

 

「俺のcomplexはお前らだわ。人格の一人として情けなく思うよ。まともに話も出来ないなんて。」

 

『そんなに言うならこの脳内議会終わらせて輝子に謝れよ早く。』

 

「え。」

 

[それが最善策だろどう考えても。]

 

「う。」

 

《大事な親友に嘘吐かれたら輝子はショックで寝込むよ多分。》

 

「……わ、分かったよ。そこまで言われたら、そうするしかない、か。」

 

『(こいつチョッロ。)』

 

[(詐欺引っ掛かり易いタイプだな。)]

 

《(誰もつっこまないから俺がつっこむけど、この話にまだ輝子が出てきてない件についてどう思いますか読者の皆様。)》

 

「ちゃんと、謝ってきます……」

 

 

 

 

 

「でもなんて言えばいいんだ。ごめんだけじゃ駄目だよな……想像しろ……いつもの輝子を……」ホワンホワン

 

 

 

 

 

「やっと出番が来たどうも星輝子です。」ガチャリ

 

「……あ、輝子。」

 

「どうしたんだプロデューサー。そんな暗い顔して。」

 

「そ、その、これ。」

 

「その手に在るものは……キノコ?」

 

「ごめん。気付かなくて、足で蹴ってしまって、えっと……」

 

「……プロデューサー。」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「失望した。」

 

「え?」

 

「貴方はもう、信頼する大人じゃない。」

 

「……え?」

 

「トモダチをそんな風にするなんて、最低だ。」

 

「しょ、輝子、」

 

「……名前で、呼ばないでくれるか?鳥肌が立つ。」

 

「…………う、うそ、だろ?」

 

「さようなら、プロデューサー。」

 

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!輝子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやだあ!!!!捨てないでえええええ!!!!」

 

(違う。そもそもこれは輝子じゃない。想像しろ、本物を……)

 

 

 

 

 

「TAKE2の星輝子です宜しくな。」ガチャリ

 

「すまない!輝子!」

 

「うおっ。き、急にどうしたんだプロデューサー?」

 

「輝子がいつも大事に持ってたキノコ鉢、割っちゃった!本当にすまない!」

 

「……そうか。」

 

「怒っ……てるよな。」

 

「……いや、済んだ事は仕方がない。いいよ。」

 

「すまないな。」

 

「本当にいいって。それより、怪我はしてないか?」

 

「え?ああ、別に、してないよ。」

 

「良かった……プロデューサーに何かあったらどうしようかと……」

 

「お、おう。」

 

「フ、フヒ。プロデューサー?ねえプロデューサー?」

 

「はい。」

 

「(何か無茶苦茶ヤンデレ的で愛情が重い事を論文レベルで話していますがその様子をここに記すには余白が狭すぎるので省きます。)」

 

「しょ、輝子……?」

 

「大好きなプロデューサーにこんな気苦労をかけてしまうなんて、私は、最低だ……」

 

「…………う、うそ、だろ?」

 

「さようなら、プロデューサー。」ザシュッ

 

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!輝子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやだあ!!!!(命)捨てないでえええええ!!!!」

 

(違う。そもそもこれも輝子じゃない。想像しろ、本物を……)

 

 

 

 

 

「仏の顔も三度まで、どうも星輝子TAKE3です。」

 

「輝子、このキノコ鉢、俺の不注意で割ってしまった。申し訳ない。」

 

「……え?」

 

「申し訳ない。」

 

「……構わない、けど。」

 

「申し訳ない。」

 

「ただ、一つだけ言わせてくれ。」

 

「……ああ。」

 

「その手に持ってるのって、」

 

「キノコだ。」

 

「……それカエンタケだぞ?」

 

「…………?」

 

「猛毒。」

 

「………」

 

「死亡例もある危険なキノコだ。」

 

「……」

 

「しかもそれは私のじゃない。」

 

「…」

 

「というか今私の手に有るもの見えない?」

 

「キノコ鉢だね。キレイでヒビ一つすら入っていない。」

 

「うん。」

 

「これヤバい?」

 

「ヤバい。」

 

「…………う、うそ、だろ?」

 

「作用なら、プロデューサー。」

 

皮膚の炎症だ。

 

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!輝子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやだあ!!!!(見)捨てな(……)いでえええええ!!!!」

 

(違う。やっぱりこれも輝子じゃない。創造しろ、本物を……)

 

 

 

 

 

「レッスン終わっ」

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

本当に創造してしまったああああああ!!!!(混乱)

 

「ど、どしたんだいきなり叫んで!?何処か痛いのか!?それとも私の真似か!?」

 

「だ、だだだだだだだだだだだだだだ大丈夫。」

 

「工事現場かな?」

 

この時が、来てしまった。

 

「……?こっちをじっと見つめて……何か用ですか?」

 

あ、謝ったら、軽蔑されないだろうか、自殺されないだろうか、負傷しないだろうか。

 

「プロデューサー?」

 

(……そんな事、考えるまでもねえな。)

 

「輝子。」

 

「うん?」

 

「ごめんなさい!」

 

「え?」

 

「輝子のキノコ鉢、蹴り割っちゃいました!すみません!」

 

「ああ、いいよ。」

 

「許してくれるとは思っ……え?」

 

「?」

 

「いいの?」

 

「うん。元々割れてたし。」

 

「……は?」

 

「今日の朝から割れてる状態だよ。」

 

「……何でそんなものが俺の机の下に?」

 

「え、机の下にあった?」

 

「うん。」

 

「おかしいな……机の上に置いておいたのに。」

 

「イジメかよォ!!!?」

 

「ち、違う違う違います。破片は危ないから袋に包んで取り敢えず物置にあった机の上に置いたんだ。」

 

「ああ、そういう……じゃあなんで俺の机の下に?」

 

「それは私にも分からない……」

 

一体どういう事なんだ……

 

「い、意味が分からない。」

 

「……なあ、プロデューサー。変な音しないか?気のせい?」

 

「え?」

 

耳を澄ませる。

 

「確かに聴こえる。ドタドタいってるな。」

 

つーか、こっちに向かってきてね?

 

「プゥーロデューサァー!!!!」ドターン!

 

ああ、扉が。バキッと音をたてて御臨終なさった。享年2日。御愁傷様です。因みに3日前に誰とは言わないが45代目扉を壊した奴がいる。茜……と見せかけて実は今扉を壊した張本人のコイツが犯人。

 

「今度は何だ裕子。後、諸々の弁償代と心労補償と迷惑料で合計736000円の罰金な。」

 

「酷い!」

 

「酷いのはお前の学習性な。」

 

「そこじゃなくてお金です!学生から搾取するなんて……不当です!」

 

「このアイドル事務でもトップレベルに売れてるヤツがよく言うぜ。」

 

「それとこれとは別ですよね?それに法的拘束が無い限りは支払義務が生じないので断固として払いませんよ。(曇り無き眼)」

 

「12話目にてガチのマジレス?」

 

「……なあ、裕子ちゃんは用事があってここに来たんじゃないのか?本当にお金払いに来たのか?」

 

輝子まで真面目に……俺だけおかしい奴みたいじゃん。(大正解)

 

「あー!そうでしたそうでした!ありがとうございます輝子ちゃん!」

 

なんか興奮してるしこの子。いや変な意味じゃなくてね?

 

「用事あんの?」

 

「はい!ここに少し大きめの袋来ませんでしたか!?」

 

ん?袋?

 

「……ど、どういうこと?」

 

輝子が混乱している。あやしいひかりでも浴びたのかな?

 

「物置にあった袋を!この部屋に!サイキックワープさせたのです!」

 

「……は?(ブチギレ)」

 

「……おう。そうか。」

 

「どうでしたか!?成功してました!?袋はどこに!?というかこの部屋寒いですね!!」

 

「堀ィ……」

 

「はい?」

 

「八つ当たりさせろゴラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

「は、はいぃ!?!?!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

あのね、一日中叫び続けてたからかね、誰かに警察呼ばれてた。逮捕されかけた。焦った。馴染みの警察官だったから大事にならずに済んだ。良かった。でもまたお前かみたいな顔された。そうですまた俺です。ごめんね警官さん。




いきなり!作者の!説明コ~ナ~♪

ここではこの話に出てきた単語や用語の意味について説明するぞ!好評なら続くと思う!

・伝統芸能DOGEZA…日本人が愛して止まない『土下座』の事だね!

・倦怠期のカップル…結構ガチで面倒臭いやつだね!

・プロポーズ…メールの表現をPはプロと表したから起きた弊害だね!ポーズは日本語で態度だから、プロのポーズ=プロデューサーの態度って訳だ!

・3日後のデート…後々書きます(真面目モード)

・Steins;G●te…取り敢えずでいいからアニメ見て(オタク化)

・完全数…とある数の全ての約数(とある数自体は含まない)を足すと、そのとある数になる数。例えば28なら約数は1,2,4,7,14。全部足すと、あらびっくり28だ。

・6…兎に角凄い数の一つ。気になったら調べてみてはどうだろう。

・イブ・サンタクロース=地球の創造主説…(ホモじゃないから嘘では)ないです。

・きのこたけのこ論争…不毛。

・第i回脳内輝子議会…常会、特別会、臨時会があります!今回開かれたのは臨時会ですね!因みにですが『第i回』と虚数が使われている事にも意味があります!脳内での会議なのに実数はちゃんちゃらおかしいため虚数が使われているんですね!

・伝統芸能的陳謝術此他無…伝統芸能DOGEZA以外に方法は無いだろ。という意。

・さーせんはんぺんクロロベンゼン…押韻ですね!因みにですが、ベンゼンの化学式ってC6H6なんですよ!そして輝子の誕生日は6月6日です!……つまり輝子=ベンゼン……?なんだこれはたまげたなあ。

・おかしくnineteen-twentytwo…『おかしくない』という意。続く英語は1922年という意。

・高橋内閣総辞職ビーム…1922年6月6日の出来事。

・滅茶苦茶過ぎてごめんね。…セクシーでギルティなアレですね!

・彼女親切風思考回路持、正直謝辞器物破損其即許。…輝子は優しい心の持ち主だし、壊した事を正直に謝れば彼女も許すよ。という意。

・もしやで…奏の新曲『if』より参照。

・ここに記すには余白が狭すぎる…気付いた人は気付いたと思います!そう!フェルマーの最終定理ですね!

・カエンタケ…名前の通り真っ赤です!まゆの愛情ぐらい真っ赤です!超危険なので皆様気をつけて下さいね!

・45代目扉…襲名制です!

以上!『いきなり!作者の!説明コ~ナ~♪』でした~♪


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第二章 時間遡行ってそんなのアリなの?
この話だけシリアス感増し増しですね、晶葉さん。


次の話からはおふざけ200%でいきますけど、今回はガチで。


「ピンポーン、っと。」

 

俺は備え付けられているドアホンを押す。ここは一ノ瀬志希別宅であるマンションの一室前。現在時刻は12時31分。

 

外で彼女を少し待つと、直ぐにドアが開いた。

 

「待ってたよ、プロデューサー。入って。」

 

「あい。」

 

黒のカットソーとホットパンツというラフな姿で出てきた志希。

 

(性欲煽るの止めて志希さん。高校生に逆戻りしちゃう、した。……うっ。ふう。)

 

「なあ、話って何なんだよ?貞操云々とはいっても意味がよく分からんかったのだが。」

 

単純に疑問。そんな話直ぐ終わるだろうに。電話とかじゃ駄目だったのかな。

 

「奥に来てくれれば分かるんじゃない?」

 

曖昧な返答。

 

「そ、そうか。」

 

「……あ、言ってなかったけど晶葉ちゃんもいるからね。」

 

「え?」

 

晶葉……?

 

(……今日の話ってもしかして化学テロかな。)

 

天賦の才人揃いは危険な香りしかしねえ。経験上でだが。

 

志希が奥の部屋の扉を開ける。そっちかい。

 

「こっち。」

 

俺も彼女に倣い、入室。

 

「……来たか。プロデューサーよ。」

 

俺を迎えてくれた晶葉も白のカットソーと濃い茶色のホットパンツ姿。なに、科学者の流行ファッション?

 

「よう、晶葉……って、なんだその機械!?」

 

入った部屋には、もう、いかにもなでけえ機械が置いてあった。なんかボコボコいってるし。きもちわりいな。

 

「これか?これはな、私と志希で共同製作した所謂タイムリープ装置だ。志希から聞いてないのか?」

 

「ごめん晶葉ちゃん。ここで説明した方が良いと思ったからまだしてないんだ。てへ。」

 

「タ、タイムリープ装置!?まじかよ!?嘘だろ!?」

 

こいつらいつの間に神様になったんだ……

 

(つーかこの物語ハチャメチャラブコメディでは……?)

 

ジャンル概念の行方不明性って論文ありそう。(小並感)

 

「本当だ。とは言っても実際に過去や未来へ行ける訳じゃないがな。」

 

「…………?」

 

「この機械は対象の意識だけを過去や未来へ飛ばすモノなんだ。」

 

「はあ。」

 

「あんまりよく解ってないでしょ、キミ。」

 

「うん。」

 

だって急展開すぎるんだもん。てっきり俺は志希がまたヤバい薬撒いたもんだと思ってました。それで貞操の危機云々。しかし実際はタイムリープだ。は?ってなるに決まってるでしょう。

 

「なに、もしかしてその奇怪な機械を自慢したいがためだけに俺をここに呼んだんすか?」

 

そうならこいつらの気概へし折る。

 

「良い機会だしキミに自慢しちゃお~ってのも、確かに一つ!」

 

へし折るか。

 

「だが、主目的はそうじゃない。その主目的とは助手に過去へ飛んでもらうというものなんだ。」

 

よし、へし折るのは志希だけにしよ。

 

「……って、は?俺が過去に飛ぶ?」

 

え、どういうこと?えっと、はい?

 

「そうだ。」

 

「何で?」

 

「ここで昨日のメール内容と繋がってくるんだけど。実は……」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「つまり?志希の作った『不思議な』香水の原液が?『何かの拍子に』プロダクションに広まって?皆が『何故か』本能的になってしまって?色々と危ないから過去に戻って『俺が』なんとかするってことですかあ?」

 

「……そ、そうです。」

 

「志希ちゃぁん?」

 

「……わ、悪気はないから許して?」

 

「……全部終わったら土下座しなさい。いいね?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「いえ何でもないですごめんなさい分かりました。」

 

「よろしい。……にしてもさあ、疑問なんだけど。晶葉。」

 

「なんだ。」

 

「一々過去に戻らなくても、お前ら天才なんだし、元に戻すフレグランス作ってばらまけば良くね?」

 

大体のssもそういうのじゃん。(ブーメラン発言)

 

「……そうともいかないんだ。」

 

「何で。」

 

「皆が皆本能的になってる訳じゃない。それはプロデューサーである助手が一番解っている筈だ。」

 

……杏とか、裕子とかの事か?

 

「元に戻すフレグランスをばらまいてしまうとそういう人達にもそれが行き渡ってしまう。多数の+1を0にするため、全てを-1したら、少数の0が-1になるのと同義。そしてそれも0に戻そうとするとこれはエンドレスだ。」

 

「……そのフレグランス?とやらにかかった奴だけに与えればいいんじゃね。」

 

「無理だ。個人判定ができない。」

 

「……」

 

「そもそも香水の原液がないから元に戻すフレグランスを作れない。」

 

「え、ないのか?うっかり志希ちゃんばら撒きましたー♪とかじゃないのか?」

 

「流石のあたしもそこまで頭はイッてないよ!?」

 

うーん?そっかなー?

 

「誰かが女子寮の志希の部屋に侵入して勝手に持ってったらしいぞ。」

 

「え、強盗じゃん。大丈夫だったのか志希?……ん?つーかそんな事を俺が把握してないなんておかしくね?あれ?」

 

ちひろさんの伝え忘れ?いやあの人がそれはないか……

 

「晶葉ちゃんにしか言ってないからね。知らなくて当たり前。」

 

「そ、そうか。」

 

「他にはなんにも盗まれてなかったし、警察沙汰は御免だったから秘密にしてたの。ごめんね。」

 

「いやならまあ、良いけども。……じゃあもう一つ。」

 

「ふむ。どうぞ。」

 

「過去に戻る機械って本当?マジ?」

 

「マジだ。」

 

「からかってない?」

 

「マジだ。」

 

「マジか。」

 

「マジだ。」

 

「それじゃあ、意識を飛ばすって?」

 

「マジだ。」

 

「そうじゃなくて。説明を求める。」

 

「ああ、説明か。分かった。志希。」

 

「オッケー。プロデューサー、これ頭にかぶってくれる?」

 

そういって志希に渡された物。

 

「帽子?」

 

茶色のシンプルな帽子だ。

 

「そ。かぶって。」

 

無理矢理俺にかぶせてくる志希。ああ、絡みつくな、おい、ちょ。

 

「…………はいよ。」

 

志希を押し退けて自分で装着。サイズはぴったりである。

 

「よし、かぶったな。」

 

「おう。なあ、説明は?ねえ?まさか帽子が説明?」

 

「対象はプロデューサー、被対象は……まあ、同性なら大丈夫だろう。プロダクションの清掃員っと。時間は、1日でいいか。説明だし。……準備完了。」ボソボソ

 

「なあ、晶葉がボソボソなんか言ってるんだけど。」

 

志希に言う。

 

「キミに忠告しておくよ?」

 

「え?忠告?説明は?」

 

「命令に従ってね?」

 

「は?」

 

「いくぞ!」ポチッ

 

「え?え?」

 

あ、あれ、意識が……うーん…………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

意識が戻ったァ!!英語ではcome to~!!それの日本語訳は立ち去るゥ!!つまり意識が戻る=立ち去る……?俺は立ち去った?

 

いやいつものクソ思考は止めよう。緊急事態だ。

 

「……会議室?なんで……って俺の声低くなってね?」

 

しかもなんか俺の格好さっきと違うし。掃除する人じゃんこれ。

 

《……聴こえるかプロデューサー。応答願う。》

 

「晶葉?どこだ?え、ほんとに何処にいますか?」

 

無人。何処から声が……

 

《いいか、説明するぞ?》

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、訳わかめスープ。」

 

《今、助手は1日前にいる。》

 

「は、はあ。」

 

《私と志希で、助手の意識を前日の清掃員の意識内に入力した。つまり、君は今清掃員。プロデューサーではない。》

 

「は?」

 

《マジだ。》

 

(頭痛くなってきた。)

 

「……よく分からんけど、分かった。」

 

意識を飛ばすって、こういう事か……マジで飛ばされてるんですけど。

 

《試しに行動してみてほしい。こっちも被験者データが少ない。》

 

「な、何すりゃええねん。」

 

《あ、キミの右前にさ、温度設定のやつあるじゃん?それを思いっ切り低く設定してみて?》

 

「そんなんで、いいのか?」

 

《たまーに過去へ行けてない事があるんだよねこの機械。周囲に及ぼす影響評価で本当にそこが実在した過去なのかを調べたいだけだしそれでいいの。》

 

《そうだな。それでいい。》

 

「……分かった。んー……設定温度は……まあ10くらい低くするか。分かりやすいし。17℃っと。」ピッピッ

 

《助手、ちゃんと温度が下がったかを調べてくれ。》

 

「ほいほい。」

 

掃除用具を置いてこの部屋の冷房近くに寄る。

 

《あー……うん。下がっている。17℃だ。……適合、っと。》

 

「分かるのか?」

 

《今は感覚共有してるからね。キミが感じたモノは大体こっちも分かるようになってるよ。》

 

「感覚共有?」

 

《意識って一種の電磁波だからそういうのが可能なの。》

 

「ふーん。」

 

よく分からん。

 

《……よし。データは採れた。助手も説明はこれで大丈夫か?》

 

「まあ大丈夫だけど……自分以外の意識に入るって危なくないのか?」

 

《深く干渉する訳じゃないから危険性は0に等しい。心配するな。》

 

「……そうか。そんでさ。」

 

《うん。》

 

「この声何処からしてんの?二人とも俺の近くにいないけど。」

 

《感覚を共有しているから、まあ、テレパシーみたいなものだ。こいつ直接脳内に……!?みたいな。》

 

「そういうことか。」

 

《そういうことだ。じゃあ、こっちに戻すぞ。》

 

(本当にここは過去なんだな……たまげたなあ。)

 

「了解。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

瞼を閉じて、開くと、俺は志希の部屋に戻っていた。

 

「……あー。」

 

声も戻った。格好も同じ。

 

(まだ混乱してるなあ。)

 

 

 

 

 

「さて、助手よ。」

 

「キミに、過去へ戻ってほしい。」

 

「そして、撒かれる前に原液を回収してほしい。」

 

「やってくれるかな?」

 

 

 

 

 

……まあ、楽しそうだし。危険じゃないなら。

 

「やる。やるよ。」

 

「プロデューサーならそういってくれると信じていたよ。」

 

「……んで?どこに飛ぶんだ?」

 

この部屋の端にあった椅子に座り、帽子はかぶったまま話す。

 

「そうなんだよ。そこが問題なんだよね~」

 

「は?どういうことだ?」

 

「原液盗まれたって気付いたの一昨日なんだ。」

 

「ほう。」

 

「だからさ、いつ、誰がばら撒いたのか分かんなくて。」

 

「……呆れた」ボソッ

 

「予想で過去に飛ぶしかないってワケ。」

 

「その予想が違ってたら?」

 

「……もっかいやり直し。」

 

「貴様許さんからな。」

 

「ひぃぃ……」

 

「はあー……取り敢えず、今の予想は?いつ?誰?」

 

「一ヶ月半前、佐久間まゆ。」

 

「あー、確かにあいつならなんかやりそうだわ。」

 

THE 偏見。

 

「早速だがそこに飛ばすぞ。いいか?」

 

「オッケ。」

 

 

 

 

 

「……えっと、一つ留意しておいてくれ。」カチカチ

 

「おう。」

 

「この装置、急いで造ったから不安定でな。」

 

「うん。」

 

「別の過去に少しの間飛ばされる可能性がなきにしもあらずってところで。」カチカチ

 

「……え?どういうこと?」

 

「もしそうなったら、まあ、そうなったで一応そこでも原液を探しておいてくれ。」カチカチ

 

「ねえ?聞いてる?どういうことなの?」

 

「私達はその場合力を貸せない。」カチ

 

「おーい。志希でもいいから聞いてー。耳塞ぐなー。」

 

「……健闘を祈る。」ポチッ

 

「ちょ、おま」

 

意識が……うーん…………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……そういえば被対象も結構ブレるけどってプロデューサーに言っておくの忘れてた……まあ、いっか。」




騒々しい…1. 騒がしい、うるさい。2. 事件等が起こって落ち着かない。

……深い意味は無いです。


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まゆの自由さ加減の凄さといったらプロデューサーの俺でさえも引くレベル。

今回、何回もたまげます。


「ん……ここは……」

 

気付くとそこは、プロデューサールーム。誰もいない静かな部屋。……静香な部屋だって?ミリシタンはミリオンに帰れえ!!ミリオンに帰れ……つまりそれ即ち換金……?読者のお前らはお金だったのか、たまげたなあ。お前ら大好き♥️(急に媚びる下心バレバレ兄貴)

 

「あれ?声が高い……って、え!?ス、スカート!?」

 

俺がスカートを履いている。え?何で?過去改変?不可視境界線?それは中二恋か。

 

「……髪も、こんなに長かったっけ?」

 

肩にかかる髪。長い。また髪の話してる。

 

「し、しかも、お、お、おっ……胸が、ある。」

 

……意味がよく分からん。つーか肩が重い。女性の皆さん大変な思いをされてるんですねえ。

 

(過去に女だった覚えはないんだがなあ。)

 

「うっそだろおい。てか声たっかwわ、笑っちゃうw」

 

なんだこりゃ草。

 

「おい晶葉w志希w間違えてるぞwこれは清掃員じゃねえよw」

 

だってどう考えてもこの姿は、

 

「佐久間まゆになってます。(突然冷静になる情緒不安定人)」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「晶葉と志希からは応答無しか。まあいいや何とかなるでしょ(早くも状況に適応する哲人)」モミモミ

 

最後飛ばされるギリギリで言われた別の過去に飛ばされたって事か?

 

「時計を見れば分かる。」モミモミ

 

プロデューサールームの時計には時間と日付が表される。便利だなあ。

 

「……また昨日に飛ばされてるんですけど。一ヶ月前に飛ばせよ晶葉。」モミモミ

 

おいおい、なんだよ作者面倒臭くなってないかお前?まあ昨日辺りに飛ばせときゃええやろ、みたいなクソ思考してないかお前?yesterdayだからって簡単にyesと言うとでも思っていたのかお前?

 

「昼か……いやほんとに声高くて違和感が。」モミモミ

 

てか、まゆの声でこの口調がキモいのか。……そうかな?まゆが「アイスティーしかなかったけど、いいかな?」なんて言ってきたら普通に可愛いと思うんだけど。おう、ホモどもはお呼びでねえぞ。ひっこんでろ。

 

(……ちょっとやってみよう。いい加減揉むの止めて。)

 

因みにさっきからモミモミしてたのは太腿と二の腕であり!決して!あれではありません!これは真実であります!愛海に誓って嘘は申しておりません!……ごめん嘘だ5秒だけ触った凄い弾力だったよまゆのあれびっくりした無い筈のあれがたちそうになったああごめん反省はしているんだ許してくれお願いだ何でも島村がしますから。

 

「ごほんっ……ま、まゆですよぉ……?」

 

あ、やべえ。可愛い。

 

「うふ、うふふふ……ずぅっと、貴方の傍に、いますよぉ……♪」

 

なんだこれはたまげたなあ。かっぱえびせん症候群だなあ。

 

「まゆはもう、待てません……」スカートタクシアゲ

 

やめられないとまらない。止まるんじゃねえぞ……

 

「おっはようございまーす★」ガチャリ

 

(なにやってんだ、ミカァ!?)ササッ

 

あっぶねえ、まゆが変態露出狂の汚名を着せられる所だった。瞬時に判断した俺はガチャリという音が聴こえた瞬間、いつも俺が見ているまゆと同じ様にソファに座った。完璧。

 

「お、おはようございます美嘉ちゃん。」ダラダラ

 

「う、うん。(笑顔がひきつってるけどどうしたんだろ……)」

 

……忘れてたけど今の俺は佐久間まゆなんだ。下手な行動は慎まなければならない。急にスカートたくしあげるなんてもっての他だ。馬鹿じゃないのか。……いや、前にまゆに同じ事やられたわ。つまりまゆは馬鹿で変態の露出狂……たまげたなあ。

 

「……あれ?まゆちゃん、プロデューサーは?」キョロキョロ

 

「まゆですよぉ。」

 

「え?」

 

「ごめんなさい。ちょっと分からないです。」ダラダラ

 

あっぶねえ。バレるところだった。まゆですよぉじゃねえだろアホ。そもそも原作デレマスに於いてまゆが『まゆですよぉ』なんて言った事は一度もねえよ。

 

「もー……話があるって言っておいたじゃん……」

 

(そういえばそうだったっけ。ったく、しょうがねぇなあ。)

 

「多分ですけど……この時間ならカフェテラスで休憩していると思います。」

 

つーかしてるんですよね。コーヒー飲みながらのティーブレイク。コーヒーなのかティーなのかはっきりしろ。

 

「ほんと!?やっぱプロデューサーの事はまゆちゃんに訊くのが一番だね!!ありがと★」

 

(そそくさと出ていってしまいました。)

 

忙しい人だなあ。台風みたいだ。そのまま大好きな沖縄行っていとしーさーしてこい(プロデューサーにあるまじき言動)

 

「……さて、どうしましょうか。」

 

一応まゆの口調でいこう。何が起こるか分からない。

 

(晶葉は原液探せって言ってたし探すか。)

 

……まゆの原液って響きエロい。舐めたい。採取して保管したい。研究したい。ノーベル賞取りたい。え、まゆの原液でノーベル賞が取れるんすか!?俺がまゆ(パワーワード)である間に採っておかなきゃ!!(使命感)

 

(まゆの鞄漁るか。)ニチャァ

 

別に今の俺は佐久間まゆなんやしええやろ(作者自身がこの文章を書いてて思った事なんだけどさ、こいつただのクソ野郎じゃね?普通に引くんだけど。)

 

「よいしょ……えっと……」ゴソゴソ

 

何故かこの部屋にあったまゆの私物を漁る男、いや女。どっちなんだよ。どっちもか。両性含有。雌雄同体。俺はミミズか。

 

「…………あの時のエロ本が何故入ってるんだ。」

 

鞄から出てきた衝撃物第一。まさか俺の部屋から持っていってそれからずっと持ち歩いてる感じなんすか?ねえ、本当にうちのまゆは変態なのかもしれない疑惑が出てきたんですけど。これは渋谷凛。(不名誉)

 

「……鍵。しかも俺のデスクのだ。失くしてたと思ってたけど、まさかまゆが持ってたなんて……」

 

鞄から出てきた衝撃物第二。数ヶ月前から喪失していた鍵。おいおいまゆさん収集癖でもあるのかい?ぼ、ぼくの貞操も、収集してくれないか……?ニチャァ

いや、マジで来そうだしやっぱいいわ。

 

(プロデューサーさんに返す、か。字丸っこくて滅茶苦茶可愛いな。)テクテク

 

その鍵を使って、数ヶ月間開けてなかった引き出しを開ける。あんまり使った事のない引き出しだけど、なんとなく、ね?

 

「カードキーと……紙?」

 

決して髪ではない。ハゲという単語を思い浮かべた者から抹殺していく。(過激派)

 

「えっと何て書いてあるんだ……未来を大きく変えるな。物は元あった場所に極力戻せ。嘘つきには騙されるな。か。」

 

…………え?

 

どういうことなの?え?前の話と同じ事もう一回言おうか?このssはギャグだよ?シリアスじゃないよ?なにこれ?嘘つきには騙されるな?おいおいこのssで頭を使わせないでくれ(作者、悲痛の叫び)

 

「いやいや、嘘つきってなんやねん。訳分からん。」

 

あと普通に流してたけどこのカードキーも意味不明だし。

 

(……ええ、こわい。怖いから従っておくわ。)

 

別に面白そうだからだとかそういうのではない。ワクワク

 

(紙とカードキーを戻して鍵をかけて、その鍵を鞄にしまう。鞄も元あった位置に戻す。やばいな何か楽しい。タイムリープっていったらこういうのだよな。シュタゲ的something)

 

でもエロ本は返せ(ブチギレ)

 

「俺の鞄に入れてっと。」

 

さて、どうしましょう。

 

(……普通に適応してたけど何で晶葉と志希は俺を無視してるのん?いい加減なんか反応をおくれ。)

 

二人がショーを楽しむ観客と化している。アイドルになった気分です。ごめん今はアイドルでした。ここらへんの事でいつも混乱しちゃうぜ全く。

 

(でも俺がまゆになって二人から無視されても然したる問題は起きてないし……別にこれでいっか。)

 

というかこの方がエロい事やってもバレへんし……グヘヘ。はい嘘です。ん?嘘つきには騙されるなってこういう事か。俺は俺に騙される……?二重人格かな。

 

「お、おはようございます……」ガチャリ

 

乃々の登場ォ!!気分上々ォ!!

 

(森久保ォ!!おはよォ!!体調ォ!!快調ォ??)

 

「おはようございます、乃々ちゃん。」

 

「あれ……まゆさん今日はお仕事休みですよね……?」

 

まゆを見て開口一番がそれ?ぶっこんできますねえ?まあただびっくりしてるだけって分かってるから嫌味には聞こえんが。

 

(君のォ!!事ォ!!憂慮ォ!!してたのォ!!迅速な行動ォ!!迎えに来たよォ!!)

 

「心配になって来ちゃいました♪(森久保が)」

 

「心配になって来ちゃいましたか。(プロデューサーさんかな?)」

 

俺の真意届いてない気がする。(正解)

 

「それにしても乃々ちゃん、事務所に来る時間ギリギリですよ?もうちょっと早く来る様にしないと。」

 

(でも遅れる事は無いって信じてるので怒りはしません。森久保は周りに気をつかう子でもあるのです。担当P並の感想です。)

 

「ごめんなさいぃ……」

 

「お、怒ってる訳じゃないの。現に間に合ってはいますから。」

 

だから泣かないで。あとどうせ泣くなら俺の胸の中で泣いて。(傲慢)

 

「……まゆさんはいつも早めに来ますよね。事務所に。」

 

だよね。俺もそう思う。多分だけど早く皆に会いたいって事じゃね。まゆは凄い友達思いな子だからな。優しい。好き。

 

「そう、ですね。今日は6時頃事務所に着きましたし。」

 

「え。」

 

(あ、やべ。プロデューサーとして答えちゃった。)

 

「た、たまたま早く起きて……その……」アセアセ

 

「そ、そうですか。(ドジっ娘属性ですね解ります)」

 

「ォ!!……ごほんっ……お茶入れてきます!す、座って待ってて!」

 

「え?あり」

 

このプロデューサールームに付随したキッチンというものの存在を知っていたか?お茶汲みとかお菓子作ったりとか夜食作ったりとか色々便利なんだぜ!!そこに逃げよ!!

 

「がとうございます……速い…………うん。」

 

 

 

 

 

「まゆの分と乃々ちゃんの分を用意して、っと。」

 

ラッキーな事にお茶菓子としてラング・ド・シャが置いてあった。紅茶に合うね。

 

(よし、持っていこ……あ、あれ……なんか、きゅうに、フラフラしてきた……)

 

楓とアルコール耐性対決した時以来のフラフラ。やべえ、倒れそう。

 

意識が……うーん…………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(……あれ?何でまゆはキッチンに……?)

 

頭の中が少しフワフワしています。まるで目覚めの様。

 

(えっと……この部屋に入って、そこからの記憶が……)

 

曇った映像が頭の中で流れる感覚がします。

 

(……あ、思い出しました。)

 

確か……美嘉ちゃんが来て、直ぐ出ていって、その後鞄で探し物を探して、そしたら乃々ちゃんが来て、この紅茶とラング・ド・シャで一息入れながらプロデューサーさんを待つんでしたっけ。

 

(こんな数分前の事を忘れてしまうなんて、まゆもドジですね。)

 

紅茶とラング・ド・シャを持って乃々ちゃんの元まで向かいます。机の上にそれらを並べ、まゆは言いました。

 

「お待たせしました!乃々ちゃん♪」




決してこれはTSではない(鋼の意思)
乃々の事務所来る時間ギリギリ云々は、この日がアンデスのレッスン日(乃々と輝子の回参照)という事を覚えていないと分かんないっすねごめんなさい。


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加蓮の可愛さ加減の凄さといったらプロデューサーの俺でさえも愛すレベル。

加蓮の口調がビブラート並に綺麗にブレる。読んでて違和感あるかも。わりいな。


瞼を閉じて、開くと、俺はキッチンからソファに移動していた。

 

(え、瞬間移動してる。クレイジークレイジーの3Dムービーかな?)

 

いやマジかよ。過去に移動するだけじゃ飽きたらずまさか瞬間移動とは。あの天才二人組は一体何考えてんだ。

いやいやそれよりも乃々になんて言えばいいんだ。乃々からしたらまゆが目の前に瞬間移動だぞ。俺ならそんなの見た瞬間、失神してる。んー、直接すぎて駄洒落にはならないなこれ。

 

(……あれ。乃々がいない。え?いないんだけど。)

 

何故か消えた乃々。プロダクション七不思議の一つ。まあレッスンから逃げてるだけとかだろうけどね。

 

「訳分かんな…………ん?……あー……うわーまじかー……もしかして……」

 

最早様式美、時計のチラ見。

 

「朝の十時。一ヶ月前。」

 

訳分かったわ。

 

(俺は更に前の過去に飛ばされたって事か……それで今の自分は佐久間まゆではなく。)

 

「北条加蓮……って事ね。」

 

もしかしてこういうのが続く感じかな。精神すり減りそう。まあアイドルの相手するよりもマシだけどさ。俺すげえ事言ってんな。

 

「肩が重い……思いも重い……おもいずくしの女の子だなあ、アタシ……なんて。ふふっ。」

 

まだ二回目だけど慣れてきてしまった。女の子になる事慣れるってヤバいな。出来れば慣れたくなかった。俺にそんな趣味はない。オンナノコナンデス,チャンチャン

 

(さて、また原液探しでもしますか。暇だし。)

 

「とは言っても……何処を探せばいいんだろ。」

 

毎日使ってるこのプロデューサールームに原液がない事は確か。逆にあったら怖い。この部屋にあったら陰謀。世界七不思議の一つだね。

 

(なら行くべきは隣の会議室かな。あそこはここ一ヶ月あんまり使ってないし。)

 

……べ、別に人気のない場所でナニかしようとしてるんじゃ、ないからね?それは流石に憚られるし。うん。違うよ。嘘じゃないよ。

 

 

 

 

 

(どうでもいいかもしれないけどさ、↑までの文字数が丁度765になっててこの話書いてる途中三分くらいずっと笑ってた。深夜テンションの時ってホントに下らない事で笑っちゃうよねー。暇な人は実際に文字数数えてみたらって思いました。)

 

「失礼しまーす、なーんちゃって。」ガチャリ

 

誰もいないのに言ってしまう。(社会人である)私の悪い癖。

 

「……どしたの、加蓮ちゃん?用があるから外に行くんじゃないの?」

 

(おや?妙ですねえ?誰かがいます。)

 

「いけません!!前川さん!!」

 

「え、何で急に杉下●京さん?」

 

相棒ネタ分かってくれるんですね。やはりみくにゃんと俺は波長が合うみたいだ。なにそれ血を分けた兄妹みたい。みくにゃんが妹とか最高かよ。

 

「アタシは最初の亀●さんのやつが一番好き。」

 

「みくは今やってるやつ……いや、そうじゃにゃくて。」

 

「にゃー♪」

 

「加蓮ちゃんってこんな子だっけ?(困惑)」

 

ちょっとやり過ぎたかもしれない。やり杉田……玄白さん、ターヘルアナトミアの翻訳お疲れ様です。

 

「まあ、おふざけはここらへんにしておいて。」

 

「う、うん。」

 

どうしよ、みくにゃん引いてる。心の距離も体の距離も。さながらペニーワイズ。はい、調子いい?……さておき加蓮の悪い噂が立つとまずいな。真面目にいこう。

……フラグとか言ったやつ出てこい。

 

「みくはこんなとこで何してんの?」

 

会議室に一人って……ねえ?その、まるで独りぼっ……いや、なんでもない。猫だもんね。独り間違えた一人が好きなだけだもんね。

 

「え?」

 

「え?」

 

心底不思議だという顔つきになったみくにゃん。そんな変な事言いましたか俺。おい誰だお前は存在が変だとか言った奴。上手くねえぞ。

 

「加蓮ちゃんが呼んだんだよ?」

 

「……あー!!そ、そうなんだよねー!!いや、その、試したんだよ!!みくの記憶力を!!」

 

「数秒前の事を忘れる程人間は止めてないにゃ。」

 

「猫じゃん。」

 

「は?」

 

「みくは猫なんでしょ?」

 

「いや、人だわ。」

 

「にゃーにゃー言ってるし猫だよ。」

 

「人だってば。」

 

「みくは猫だし人権無くていいよね?」

 

「え、ひどくない?」

 

「生存権は剥奪されました。」

 

「殺さないで!!」

 

「表現の自由もありませーん。お静かに~。」

 

「だからそもそもみくは人だよ?人権あるよ?」

 

「猫が人の言葉喋ってる。面白い。」ニコニコ

 

「ねえ、誰かを弄る時で一番酷いのってもしかしてみくだったりする?」

 

「弄ってないよ。弄んでるの。」

 

「同じ漢字だけど意味が悪化してるにゃ!!」

 

あー、楽しー。みくにゃんの反応は本当に面白いなあ。でもこれじゃ完全に俺がクソ野郎だなあ。別にいいけど。楽しいし。どうも、P兼クソ野郎です。趣味は人権剥奪です。宜しくお願いします。

 

「にひひ。みくはリアクションがとても良い。弄ってて飽きない。だから好き。」

 

「やっぱり弄ってたんじゃない!!」

 

「ごめん、ごめん。(俺を)許してよー。」

 

「ふーんだ!早く(そして)もう一度外行っちゃえ!(びーまいべい)べー!……変な声が……気のせいかにゃ。」

 

(くっそかーわいー!まあ、それは、それと、して。)

 

「ねえ、さっきも言ってたけど外に行くって何の事?」

 

情報収集しなきゃね。なんだって集めなければ意味を成さない。別に藍子の胸の話はしてないから落ち着いて担当P。

 

「また記憶力?加蓮ちゃんが言ったんじゃん。用事が出来たから今日はもうあがるね、って。ウキウキと。」

 

Oh~マジか。用事って何ぞや。分からん。

 

(それ加蓮的に行かなきゃ駄目なやつだと間が悪すぎる。俺が行っても意味ねえんだし。)

 

「うん。みくは猫じゃなくて人間だったね。記憶力が猫にしては凄いし。人権を認め、保証しましょう。」

 

「何様のつもりにゃ、貴様。」イライラ

 

「今『貴様』って言ったじゃん。それだよ。自己解決されるとこっちも返答に困るなー。」

 

「もうこれ割るね。」

 

そう言って取り出したのは小瓶。色濃い液体が入った小瓶。

 

……小瓶?

 

 

 

 

 

「アーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「にゃ!?急に叫ばないでよ!!びっくりするじゃん!!」

 

絶対に原液だコレェ!!

 

「それを渡せみくゥ!!渡せェ!!」

 

「何で!?」

 

「いいから渡せェ!!絶対に割るんじゃないィ!!」ガッ

 

「割るのは嘘だって!!だから落ち着いて!!肩を掴まないで!!」

 

「渡せェ!!アタシに渡せェ!!」ブンブン

 

「先ずそのヒステリックを止めるにゃああああああああああああああああああああああああ!!」ガクンガクン

 

「B-W-Hの数値全部足して221になる癖に猫キャラ気取ってんじゃねええええええええええええええええ!!」ブンブン

 

「訳の分からない理論は止めて!!肩を揺らすのも止めて!!それと口調がおかしくなってるよ加蓮ちゃん!!落ち着くにゃ!!」ガクンガクン

 

「分かった。」ピタッ

 

「情緒不安定。」ピタッ

 

「猫の要望呑んだんだから、こっちの要望も呑んでくれるよね?」

 

「加蓮ちゃんはみくの事猫扱いするのか人扱いするのか決めた方がいいと思うにゃ。そして猫扱いするにしてもみくの事を猫呼ばわりはどうかと思う。」

 

「先ずアタシの要望呑んでからね。」

 

「加蓮ちゃんってこんな凛ちゃんみたいな子だったっけ。(不安)」

 

「ごめんねみく。これまでの非礼は詫びるよ。猫チャンアイドル、凄く良いと思うから頑張って。アタシも応援してるよ!(テノヒラクルー)」

 

「掌返しの早さ、みくじゃなかったら見逃してるにゃ……凛ちゃん扱いはそんなに嫌なの?」

 

「あれは七つの大罪全コンプ状態。死刑や群馬刑よりも重罪だよ。」

 

「ええ……(群馬刑ってなに。)」

 

「話を戻したいから戻していい?」

 

「しょうがないにゃぁ……いいよ。」

 

「その小瓶ちょーだい♥️」

 

「そんな声を作っても無駄にゃ。」

 

「えー。けちー。」

 

「そもそも加蓮ちゃんがさっきみくに渡したんだよ?このアロマオイル。」

 

おや?美優さんがアップし始めましたか?

 

「……アロマオイル?香水の原液じゃなくて?というか、アタシが渡したの?」

 

「はあ……加蓮ちゃんがみくをここに呼んだでしょ?それでこのアロマオイルを美優ちゃんから加蓮ちゃん経由でみくが貰って、ごめんけど用事が出来たからってさっき出ていったのは誰?」

 

「あー……えっ……と……」

 

「そんで何故か外へは行かず直ぐ戻って来て横暴に場を荒らし、終いに自分の渡した物を返せと言う人は誰?」

 

「それは……その……」

 

「行動も言動も思考も何もかもがいつもの加蓮ちゃんじゃない。」

 

「…………」

 

「……ねえ、もしかして…………」

 

どうしよ。バレる。

 

ドパドパミン……

 

(加蓮の携帯が俺の懐で揺れるゥ!!バイブレーションゥ!!)

 

さいっこうのタイミングだァ!!ヒャッハァ!!

 

「ご、ごめん。電話でるね!!」ササッ

 

「…………むー……」

 

ムーンウェーブピリピリー

 

「はい、もしもし。」コソコソ

 

(どうしようかしら……アロマオイルだったし……正体バレかけてるし……兎に角、この部屋からは脱出した方が良い……丁度外に行く用事なんたらで理由はつくし……逃げよう。うん。)

 

 

 

 

 

「もしもしプロデューサーさん?」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

え?……え?

 

「え、えっと間違い電話?プロデューサーさんとやらは」

 

「あれ?今話してるの加蓮ちゃんで合ってますよね?」

 

「そ、そうだけど……誰?何?ドッキリ?」

 

「ならプロデューサーさんです。要件、伝えますよ。」

 

いや、待てや。誰やねんお前。何で知ってるんだよ俺の事。

 

「外には行かない方が良いです。覚えてます?扉で耳を澄ましている事。」

 

「……あ。」

 

そういえばそんなことしてた。

 

「プロデューサーさん、勘が鋭いので気付きますよ。」

 

「…………誰だよ、お前。」

 

「あと、加蓮ちゃんの外の用事は別に無視して良いです。」

 

「なんで。」

 

「プロデューサーさんとイチャイチャする用事、ですって。」ゴゴゴゴ

 

「お、おう。そうか。」

 

突然ドスを効かせるな怖い。ヤクザかよあんた。

 

「それじゃ、切ります。」

 

「……それ信じると思う?つーか誰なの。」

 

「ええ。勿論。」

 

「そうか。」

 

「……誰かは直ぐに解りますよ。それでは。」ブツッ

 

切れた。

 

「…………はあ。」

 

しょうがねえし、言う通り忍者の様に忍びましょうか。

 

「みく。もう一つ頼んでいい?」

 

「やだ。」ツーン

 

「ありがと。それじゃ……うん?」

 

「やだ。」ツーン

 

「何で?」

 

「やだ。」ツーン

 

(…………よし。)

 

 

 

 

 

(耳を澄ませ続けていると二人の女性の声が聞こえてきた。何かを言い合っている……)

 

 

 

 

 

「お願いだからお願い。アタシがいた事は黙っておいてお願いします。」

 

「やだって。」

 

「な~んで~( ;∀;)」

 

「今までの報いを受けろ。」

 

「そんな何処かのラスボスみたいな事言わないで。お願い。」

 

「無理。というよりもPチャンがそこにいる訳ないじゃ」

 

コンコン

 

「「…………」」

 

「……この前良い猫カフェ見つけたんだ。」

 

「はあ……もう交渉成立でいいよ。」

 

折れたな。やったぜ。

 

「ありがとう……終わったらそこの机の下から出るね。」

 

「それはいいけど、Pチャンがそっち行ったらどうするの?」

 

「有り得ないから大丈夫。」

 

「?」

 

コンコン

 

「お願いね。」

 

「はいはい……みくってもしかして甘いのかな……」ボソッ

 

(なんかのリモコンをみくが操作してる……え、扉のアレってスイッチで開閉も出来るの?初知り。)

 

知りたくもなかったどうでもいい事実を知った男、いや女。どっちだそれは。

 

(取り敢えず机の下に……せ、狭い……胸がつっかえて……邪魔……)

 

なんとか机の下に入ってじっとする。ガサゴソ音がするけどみくがまだなんかしてるのかしら。

 

「リモコンを仕舞うとこがない……体で隠せば……」

 

(おいおい、凄い事言ってんな。エッ!!……みくではそういう事考えないって約束しただろォ!!……ウッ!!)

 

何故かまた、まゆの時と同じフラフラが。

 

(……あー、これ、時間転移のサインだな。多分。)

 

「P、Pチャン?何?どしたの?」

 

意識が……うーん…………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「もう!!Pチャンは!!なんてやつにゃ!!乙女心を弄んで!!って、うおっ!?びっくりしたあ……加蓮ちゃん、そんな勢いよく出てこなくても…………なんでそんなに瞳を輝かせて……あ、これ、弄られる。(確信)」




ごめん。関係ないけどリトルリドルのフル最高じゃね?


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パッション枠に李衣菜はおかしいって言ったけどもしかして俺がパッション枠って言いたいのかい作者くん?頭髪で決めてないよね?ん?もしそうなら、解ってるよね?

この話でのPは近い将来禿げます(謀反)そして李衣菜は乙女感が強くなっております。

(今回は面白く)ないです。シリアス寄りかも。




「……ふぅ。えっと、先ずは……あー……ふむ。この声は李衣菜か。」

 

時間がまた戻ったので、今度は自分が誰になったのかを確認する。

 

(日付と時間も……)

 

「というよりもここ李衣菜の部屋だな……時計は……あった。8時30分。うん。これも日付あるタイプの時計か……って、今日、李衣菜が俺ん家来てた日じゃんか……まじぃ……?」

 

最悪やん。だってこれあれやろ?このまま俺ん家行かなきゃいけないパターンやろ?なんなんだよ俺と俺が話すとか訳分かんねえよ。

 

「確か9時ちょい過ぎくらいにはもう李衣菜がいたから早くしねえとな。」

 

過去を変えてはいけないと言われてるからね。うだうだ考えていても仕方がない。

 

この部屋にある等身大の鏡を使って今の自分を見る。

 

「良かった。着替えと準備は出来ている。全部。よし。」

 

もし出来てなかったら俺がやらなければならなかった。そんなのは嫌だ(アンパンマン)

 

どうでもいいけどアンパンマンってロックだよな。あいつ愛と勇気しか友達いないんだぜ?しかも進んで自らの頭蓋骨と脳の一部を人に食わせてるんだぜ?凄いよな。俺には出来ないわ。いや、そりゃ出来ねえか俺はアンパンじゃねえんだし。

 

「つーかあいつもロックのポスター貼ってるんだな。へー。」

 

李衣菜がこういうポスターを貼ってると逆ににわかっぽく見えてしまうのは何故なんでしょうかね。

 

「ん……これは……」

 

夏樹とのユニットであるロック・ザ・ビートのポスターが隣に貼付してあった。

 

「きちんと保護はしてあるな……ん?メモ書きか?」

 

『なつきちとの思い出!初心忘るるべからず、二人三脚で頑張っていきたい!夢は、目を開けて見るんだ!』

 

「…………ったく、李衣菜は。こんな粋な事しやがって。」

 

そのメモ書きの回りには失敗した事や反省すべき事を書き連ねた走り書きが百以上もあった。あれが駄目だった、ここが駄目だった、次どうすればいいか、また次はどうすればいいか、と。

 

その中の一枚、くしゃくしゃになって色も黄ばみ始めている紙が俺の目に入った。それには李衣菜にしては汚い字でこう書いてあった。

 

『夢を夢で、終わらせたくない。』

 

(どこまでも純粋で真っ直ぐなんだからよ。)

 

 

 

 

 

今度は彼女の部屋の机の上にある、下を向いた写真立てが気になった。まあそりゃ気になるよね?下向いてるんだししょうがないよね?うん。しょうがない。これは知る権利だよ。情報開示制度だよ。プライバシーの権利?知らない子ですね……

 

(open.)

 

「俺と李衣菜と夏樹か。うわ結構前……本当に事務所入り立ての頃のヤツだし。」

 

この事務所では李衣菜と夏樹は初期メンバーになる。詳しく言うと夏樹が最初から三番目で李衣菜が五番目だ。

 

「大事にしてくれるのは嬉しいけど……」

 

『一緒にいるための口実ですから。』

 

(あの言葉がちらついてまともに受け止めれねえ。)

 

なんつーか、昼ドラしてる気分。うあー、止めろー。李衣菜は色恋沙汰とは無縁だー。その筈だったー。

 

(くっそぉ……ん?ゴミあんな。きちんと捨てろよ李衣菜さん……)

 

机の下に丸められた紙のゴミを発見。体積36π立方センチメートル。

 

(開く。)

 

え?何で開くのか気になるのかい?そりゃ知る権利さ。(同じネタを二回使う馬鹿)

 

「……昼の2時迄に帰りなさいプロデューサー。か。ふう。」

 

(毎話出てくるなこいつ……誰やねん……あと今回のこれの書きが母親みたいな口調してんの何……)

 

「全く……分かったよ、誰かさん。」ワクワク

 

なんか映画の一端みたいで俺カッコよくない?とか全然思ってないです。

 

 

 

 

 

「行ってきまーす。」ガチャリ

 

 

 

 

 

さて、数分足らずで俺ん家に着いた。んー文章がおかしい。自分の家を出て自分の家に向かう。なんだこれは徘徊か。俳諧?ハイクを読め、カイシャクしてやる……

 

「うーん。どうしよう。普通にドアホン鳴らせばいいのかな?」

 

李衣菜を家に入れた時の記憶が結構あやふやでどうするのが正解なのか分からない。

 

(過去を変えんなってよく分からん奴からだけど言われてるし、そうしようと思ってる。が、その過去に何をしたのか覚えていないのでどうしようもない。)

 

結論、当たって砕けよう。

 

「プロデューサー!約束通り来ましたよー!」ピーンポーン

 

『「多田ァ!何故ここにいるゥ!」

 

「え?一昨日言いましたよ?今日行きますねって。」』

 

『「じゃあ、どうやって入ってきたァ!」

 

「鍵開けてくれたのプロデューサーですよね??」』

 

(李衣菜なら、多分こんな感じで来る。そして俺は)

 

「うるせえぞ李衣菜ァ!声のボリュームをもうちょっと下げろォ!……ったく、ほら。入れ。」ガチャッ

 

声の大きさに呆れながら渋々家に入れる。

 

(てか俺の方がうるせえな。朝だし機嫌悪いのは解るけどもうちょっと紳士的に接せよ俺。なんだこれ俺が俺を説教してるワロタ。)

 

「プロデューサーも結構うるさい気が。」

 

「zzz」テクテク

 

(嘘だろ俺。寝ながら歩いてんぞ。大丈夫か頭が。)

 

「あの……」

 

「下で雑誌でも読んで待ってて……zzz……」テクテク

 

目を瞑ったままプロデューサーは寝室へ戻っていきました。

 

(ええ……夢心地じゃん……)

 

そりゃ記憶あやふやにもなるわ。

 

 

 

 

 

「机の上にあるファッション雑誌を取りーの、ソファに座りーの、読みーの。」

 

ふう。取り敢えず一段落。

 

(こっから先はどうすればいいのか分かるぞ。数分後に俺が来て何でここにいるの的な事を叫びだすからそれに呼応するよう言葉を返すんだ。)

 

この日の事を思い出す。

 

(あれ……そういえばなんか口論になった気がする。なんて言ってたっけ……やべえ、忘れた……)

 

家の中を見渡す。俺ん家だけど物少ねえなほんと。殺風景。ふと思ったけどさ、風景を殺すって盲目と同義だよね。ん?……恋は盲目……つまり恋は殺風景……?『恋は殺風景』っていう曲ありそうだな。厭世的な感じ漂ってるけど面白そう。まゆに歌わせたろ(アホ)

 

(外れの馬券が……あいつ置いてったまんま家帰りやがったな。しかもウマ娘のBlu-ray Disc boxの隣に置きやがって。腹いせかよ。いや腹いせではないな。もしも腹いせだったとしたら可愛すぎる。待て。違う。違うぞ。俺はホモではない。)

 

あいつとはギャンブル好きの同僚Pの事である。因みに歌が上手い。

 

(もうこれでいいか別に。たかが口論ごときで後の運命が変わるとか無いだろうし。李衣菜がこういう話してきても「ははは。それはロックではないよ。」で済むし。)

 

とかなんとか考えていると近くに人の気配が。

 

(お?俺来たか?冷静に考えてみると俺来たかってなんなんだろうね。完全にヤバい奴の台詞だよね。)

 

「お邪魔してまーす。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

料理を作ったりとしてたら昼の2時直前に。そろそろかな。

 

(口論の最中だし、丁度良いかな。)

 

「……今日のプロデューサー、やっぱり体調もテンションもおかしいですね。それに否定的ですし、なんか気持ち悪いですし。……まあ、そんなt」

 

大体俺は気持ち悪いとか否定的とか言われたらキレる。だからこの一言で恐らく俺はキレて李衣菜を追い出そうとする筈だ。

 

「ああ、そうかよ。おkおk。俺はキモいよ。だから今日はもう帰ってくれ。普通に考えれば用事無いのに俺の家に李衣菜がいるのはおかしいしな。……ああ、そういえば昼あんがと。旨かったよ。そんじゃ。」

 

よしキタコレ。このまま追い出されて告白云々は無かったことにしてやるぜ。

 

(恥ずかしいしね。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

意気揚々に帰ろうと廊下に出る。外面では悲しそうに装いながら。と、

 

(あ、あれ……またフラフラする感じが……)

 

慣れたから倒れはしないが少し辛い。体が浮く感覚に襲われる。

 

(もしかしてこれ告白有りのまま進んでしまうのでは……うーん……)

 

意識はそこで途切れた。告白有りかあ……はあ……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

走って彼の家を出て、自分の家の玄関に急ぎ、靴を脱いで自室に。

 

(ど、どーしよ。言っちゃった。)

 

秘めてた想いを伝えてしまった。

 

(で、でも、ロックだよ!……うん、それは今関係ないね。)

 

脳内思考がぐるぐるぐるぐる。

 

(…………あんなこと、言われたら動いちゃうよ。)

 

「抜け駆けは駄目だよ、加蓮ちゃん。」

 

狡いなあ。




投稿遅れてごめんね。森久保が可愛かったからしょうがない。うん。はい。反省します。

Pはあんまり記憶力が良くないです。てゆーか一ヶ月以上も前の事を鮮明に覚えている方がおかしいと思うので別にPは普通です。


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夜のなんとかって大体エロく聞こえるのに夜の加蓮からは儚さしか感じないのどうして?

展開とかがGOIN'かも。すまない(先に謝るという保身に走るクソ作者の図)


「よし来たぞ、って暗っ!何処ここ!?」

 

やはり過去に戻っていた俺だが、今いる場所が分からない。つーか見えねえ。

 

(うーん。辛うじて二人の人が見えますね。……加蓮と俺だ。え?一緒の布団で寝てますねこれ。は?夫婦じゃん。)

 

ちょいちょいちょい。俺死んでるわ(確認)臨終だわ。

 

(あれ?じゃあ俺は誰に憑依的なやつしてるのん?)

 

今まで通りなら清掃員とかまゆとかに憑依的なやつしてるけど今回は違うんかな。

 

「……てか俺が喋ってもあいつら反応しねえな。しかも声は俺の声でまんまだし。どういうこと?」

 

一生懸命目を瞑っている俺と幸せそうな顔で俺に抱き付いている加蓮。そしてそれを俯瞰する俺2。

 

(俯瞰なんですわ。上から彼らを見下ろしてるんすわ。訳が分からないんすわ。)

 

いやまじでどれだけ考えても全然分かんねえ。こういうときは奥の手を使おう。

 

「おい、作者ァ!説明しろォ!話が進まんぞォ!」

 

ええ……チート使うの……?

 

「そうだよ。」

 

面白くないね君……

 

「面白くなくて別にいいです俺には関係ないんで。」

 

はあ……しょうがねぇなあ。特別に説明してやるよ。静聴せい。

 

「よしきたこれ。」

 

お前は幽霊だ。

 

「え、急すぎね?」

 

別に急じゃないです。そんでな、なんでお前が幽霊状態になってるかって云うとだな、寄り代がなかったからなんだよな。

 

「寄り代。」

 

そう。寄り代。清掃員の身体とかまゆの身体とか加蓮の身体とかだ。今回の逆行では自分自身つまりPが寄り代になってしまったんだよ。

 

「あるやん寄り代。」

 

いや、考えてみ?自分の中に自分が入るんだよ?しかも今の彼意識あるでしょ?どうなると思う?

 

「賢さが二倍になる?」

 

お前一回死ぬか?それとも作者権限使って主人公変えようか?

 

「黙って聞きますごめんなさい。」

 

まあつまり自分の中に自分が入ろうとしたんだけど一方が溢れちゃったと。その一方が今回は逆行してきた君の方で、幽霊として外に出てしまっていると。その証拠に臍の緒みたいなの付いてるだろ?

 

「輝子に臍の緒が付いてる!?」

 

は?

 

「さーせん。」

 

んで、お前幽霊だから声は彼らに聞こえないし、軽いから上に上がるんよ。そういうことね。

 

「幽霊って質量あんの?」

 

……なんで突然真面目に質問すんのお前。

 

「えー……だ、だめぇ?」

 

加蓮の真似しても許さん。

 

「チッ。」

 

これで説明はいいよね。んじゃ。がんば。

 

「あ、おい!……答えはぐらかされた。」

 

まあ俺の質問も悪かったしこれはしょうがないか。

 

「俺の心の声みたいに言うの止めろ作者。悪かったなんて思ってねえよ。株の操作をすんな。」

 

チッ。

 

「ったくよ。なんなんだこの作品の作者は。頭おかしいんじゃないか?」

 

常時アヘアヘ言ってそうな思考回路だぜ。

 

(情事、アヘアヘイッてそうだって!?)

 

エッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!

 

(加蓮は情事乱れそうという勝手な妄想。いや願望。)

 

「こう……加蓮って儚いやん……だからパンツもはかないんじゃないかなって……そう思ってます……はい……つーか加蓮のパンツ欲しい。」

 

やべえ深夜テンションが凄い。でもしょうがないよね。目の前で俺と加蓮が一つのベッドで寝てるんだもの。この文章理解不能すぎて草。

 

(というか草って英語でgrassじゃん?grossって一母音違いなだけだから実質イコール関係じゃん?その反義語がindividualじゃん?ということは従って草とindividualは対偶的関係じゃん?つまり面白さや唇と真反対の存在がインディヴィジュアルズで、よってLIPPSとインディヴィジュアルズは正反対である。そしてどちらのユニットメンバーも可愛い好き。証明完了。)

 

なんてことを考えていると、下の二人に動きが。……下の動きって完全な下ネ

 

(加蓮がモゾモゾして……ぅおい!!ガチの下はダメだって!!って俺!!いつのまに寝てたんだよ!!隣!!隣でr-17!!16歳だけどさ!!)

 

うっわやべぇ、ガン見(ド変態)

 

(……着替えっすか。)

 

ベッドからそっと出た加蓮は部屋着に着替えるようです。そういえば外の服装のままですものね。清楚な装飾だから気づきませんでした。てっきりオナ(検閲)

 

(プロデューサーの精神力を使って目を瞑ろう。)

 

普通の男ならアイドルの生着替えはガン見する。しかし俺はプロデューサー。目を瞑るのだ。

 

(衣擦れの音だけで妄想するのが楽しいのだよォ!)

 

失敬。精神力云々ではなくただの紳士でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっ…………ふぅ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は何故、戦で溢れているのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、加蓮が再びベッドインした音が聞こえた。再びベッドインとか盛り合う新婚かよ(偏見)

 

「服がフワモコしてる……可愛い……」

 

すごい、こう、なんていうか……触りたい。

 

(てか俺はもう触ってるのか。また抱き付かれてるし。)

 

そろそろ哲学になってきた。俺が触れたものを俺は感じ取れない。幽霊みたいだな。

 

え?俺幽霊なの?

 

(……幽霊か。)

 

やっぱ哲学だし考えるの止めよ。頭パンクしてきた。難しい。

 

(俺は何に巻き込まれてるんだ……)

 

「…………寝てるよねプロデューサー?」

 

途端に、加蓮が話し始めた。

 

「寝てまーす。」

 

こうやって応対しても聞こえないの面白い。質量問題が無かったら加蓮の目の前で踊り狂ってるよ(キチ●イ)

 

「……実はね、恐い夢をこの前見たの。」

 

ほう。夢。ポテト抹消かな?

 

おめでとう。君は消去された。みたいな?

 

「皆がいなくなっちゃう夢。遠くに行っちゃう夢。」

 

(あー…………)

 

「孤独になるんだ。あたし独りだけになるんだ。」

 

(真面目なやつね……)

 

「寂しさは病床で慣れてた筈なのに覚めた時涙が止まらなかったの。」

 

「加蓮。」

 

「ただの夢なのにね。でも嫌な程に現実味を帯びててさ。」

 

「大丈夫。」

 

「ここでこうやって甘えさせてほしい。忘れさせてほしい。暖かさを感じさせてほしい。」

 

「安心しろって。」

 

「誰も、どこにも、いかないで。」

 

「ずっと側にいるから。」

 

「…………え?」

 

加蓮が潤んだ瞳をぱちくりさせている。

 

「……あれ?」

 

気付くと俺は加蓮を抱き締めていた。

 

(これは俺の魂が入ったってことか?)

 

「ね、寝てたんじゃ」

 

入魂されたみたい。ならやる事は一つだよな。

 

「さっき起きたんだよ。誰かを独りにしないようにな。」

 

彼女の髪を指先で撫でる。サラサラしていて飽きない。

 

「カッコつけんなムッツリ……」

 

涙声で小さく吐かれた。

 

「そこは男だから許して。」

 

(つーか俺の身体なのにとても懐かしい感じがします。女性の中にばっか入ってたししょうがないね。この文章だけをみるとただの性犯罪者である。)

 

「アタシと一緒にまだ頑張ってくれる?」

 

暗闇の中でも光る笑顔で加蓮は俺に問うた。

 

「勿論。プロデューサーだからな。」

 

「……半分、正解。」

 

半分?どういうこと?

 

と思った瞬間頬にキスされた。

 

は?

 

「これが不正解分っ。おやすみ!」

 

……は?

 

…………は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっと、あまりの尊さに意識が吹き飛んでいたようだ。すまない。

 

「て、また俯瞰になってる。二人とも熟睡してるし。」

 

頬の感覚は鋭くなってる。

 

くっそ……担当になりそう……(リアルガチ)

 

「いやキッツい。強い。死ぬ。限界オタクになりそうなった。」

 

と、あの下りが来た。

 

(今度は誰だ。また俺とかで幽霊だよ!は無しでお願いします。)

 

先程話された加蓮の夢の話を少し思案しながら、俺の意識は途絶えていった。




今から命題『加蓮はエロくない』を証明する。
不 可 能 で あ る
したがって背理法により、『加蓮はエロい』(三段論法)

背理法か三段論法かはっきりしない人は嫌われるって本当ですか?(意味不明兄貴)


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智絵里が言うにはそろそろ頭を使わなきゃいけないらしいけど……まさかこんなssで頭を使うか……?

智絵里Pごめん。


気づくとそこは俺の部屋だった。カーテンから覗く外は暗い。夜か。

 

声紋確認。

 

「あー……智絵里か。うん?智絵里?」

 

俺の部屋、夜、智絵里。

 

(まゆさんが来てる日やんけっ!!)

 

おいおいまじかよもしかしてあの時のちえりんって俺だった感じ?最悪じゃん。しかもそうなら行動が訳ワカメスープ。

 

《プロデューサー、聴こえるか、プロデューサー。》

 

晶葉の声が脳に響く。今頃かよォ!

 

「ちょっとだけ、遅いと思います。これまでの遡行のときは何処にいたんですか。心細かったんですよ?」

 

《ふむ。誰だお前は。被対象が違うようだが。》

 

「いや智絵里の真似しただけでそんな辛辣な。」

 

《なんだ助手か。》

 

《やっぱ急いで造ったやつだから色々ブレちゃったかー。ごめんね?》

 

「許さんけど?」

 

《うぇーん……》

 

最近志希が可愛い。なんでだろ。いやキュートだから可愛いのは当たり前なんだけどさ。

 

《にしてもその口振り、落ち着き……何回体験した?》

 

すげぇ、映画みたいなことを訊いてくる晶葉。そうそうこういうのを待ってたんだよこういうのを!かっこいいぜ!

 

「四回。まゆ、加蓮、李衣菜、俺だ。」

 

《俺?》

 

「俺だ。」

 

《俺か。》

 

「そうだ。俺だ。」

 

《そうか。》

 

なんだこのやり取り。そんなに俺が俺になるのはおかしいか。おかしいわ。ごめん普通におかしかった。感覚が慣れきってしまっている俺がおかしいんだね。

 

《原液はあったか?》

 

「なかった。」

 

《そうか……今いる場所は知ってるか?それとも知らない場所か?》

 

「俺の部屋。」

 

《へー……じゃああのベッドもプロデューサーの……か、かぎ》

 

「言わせねえよ変態。」

 

《先ずは実在した過去かを調べなければな。なんかやってみてくれ。》

 

「そんなこといわれても……クーラーはこの部屋にないぞ?」

 

《それなら別の部屋に行ってくれ。》

 

「佐久間まゆ。」

 

《分かった。移動は無しだ。》

 

すげぇなこれだけで何が起きてたのか分かるのかよ。晶葉ちゃんまじ天才!最高!可愛いです!

 

「どうするんだ?」

 

《んじゃー、逆転的発想?》

 

「発想、とは?」

 

《未来に影響を及ぼす行為をするんだよ。加えてプロデューサーが記憶している未来のね。》

 

「?」

 

こいつ気でも狂ったか(理解不能による人間不信)

 

《プロデューサーがミカンのない未来から来たとするでしょ?遡行してきた過去にはミカンがあったとする。過去が不確定というならどうすればいいかにゃ?》

 

「踊る。」

 

《…………そう、食べるなり捨てるなりすればその過去は確定化するね。結構力業な方法だし少し危ないけど、これくらいなら大丈夫だからなんか》

 

「ヘレンさん直伝ダンサンブルフルコース。」

 

《聴いて?》

 

「世界を無視するから。」

 

《ええ……》

 

「兎に角、俺が覚えてる未来にすればいいのね?しかもこの俺の部屋限定で。」

 

《そうそう!ね!晶葉ちゃん?》

 

《…………そうだな。それで助手もオッケーか?》

 

「りょーかい。」

 

 

 

 

 

考えた結果さ、一つ思い当たる節があるんだよ。多分そういうことだよね。

 

やりたくはない。だって智絵里が可愛そう間違えた可哀想。

 

「その過去の実在とかってやらんかったらどうなる?」

 

《やらなかったらはない。やるんだ。》

 

「……うっす。」

 

まじかよ。

 

「はよやった方がいいよねこれ。」

 

《機械が不安定だからな。そうしてもらいたい。》

 

…………許せ、智絵里。

 

「目、瞑っててくれませんか……?」

 

《それだと調べられないじゃないか。》

 

「うぅ……わ、わかりました……」

 

《てかどしたんプロデューサー。急に喋り方気持ち悪くなっブホッ》

 

 

 

《な、な、な、な、何をしてるんだ貴様は!?》

 

 

 

「……ぱ、パンツ脱ぎました。」

 

 

 

まあ、最初から普通の服装な時点で気づくべきだったよ。あの時智絵里もネグリジェだったんだし。

 

《へ、変態!!》

 

晶葉の変態が新鮮で心にある男の象徴がスターティングブロック(意味不明)

 

《うわー……プロデューサーも大変だねー……》

 

志希の同情が新鮮で心にある男の象徴が凸凹スピードスター(意味不明)

 

「これを本棚の奥に……」

 

《そんなとこに置くな変態!!》

 

そんなとこ置くな言われてもこれしか思いつかねぇんだよ。許せ。一週間後捨てたから許せ。

 

べ、別に使おうかどうかなんて一度も迷わなかったろ!!

 

《下どうすんの?そのまま?……うお、ガチで確定化された凄。》

 

周りを見渡すと……あった。俺のものではない紙袋。中を確認してみるとそこには、予想を裏切らず、かの偉大なるネグリジェ様が眠っていた。

 

「このネグリジェ着る。俺の時もそうだった。」

 

《そういって強制させたんだろ異常者……》

 

晶葉の好感度すげぇ下がっちった。

 

「ここはまじで目を瞑っててくれ。智絵里のために。」

 

《おけおけ。晶葉ちゃーん。その真っ赤な顔を後ろに向けてー?》

 

《うわっ!あっ、んっ……》

 

ちょ、そんなエロチックな声を14歳が出すな。立つ起つ断つ。斬られたから死ぬわ(錯乱)

 

 

 

 

 

「ネグリジェに着替えました。いいですよ。」

 

《ん……うへぇ……》

 

晶葉の俺に対する態度が犯罪者らへんまでクラスダウンしてらぁ。悲しい。

 

《わぁ……ちえりん似合ってるー♪》

 

「そ、そうですか?……えへへ♪」

 

《キモい。》

 

「ひでぇ。」

 

志希は変わらない。いつも通りだ。その優しさが身に染みるぜ。

 

紙袋を本棚の近くに隠して二人に言う。

 

「そろそろ口調をちえりんにするから気持ち悪いと思うけど我慢してね。」

 

《了解了解領海12海里。》

 

《排他的経済水域188海里~♪》

 

こいつらふざけてんな(ブーメラン)

 

 

 

 

 

「やだあああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

 

 

 

 

 

俺の声……つまり、

 

「まゆが来る!」

 

《か、隠れるか!?》

 

「ああ!」

 

ベッドの下に滑り込む。喚き立つ鼓動をむりくり抑えて息を潜めて。さあ、来るなら来い。

 

《取り敢えずやり過ごして。出来れば急ぎめで。》

 

難しい注文だなおい。宮沢賢治か。

 

《あたしに電話するための時間がいる。》

 

ふむ。

 

《原液があるかどうか訊いて、あれば保管するように伝えてなければまた昔に戻る。いい?》

 

「OK」ボソッ

 

ガチャリという音と共に四つの足音。二つの声。俺が叫んでる。頑張れ。

 

まゆさんの猛攻凄い。ベッドがギシギシいってるもん。俺より彼女の方が変態だと思われます。どうですか有識者の皆さん。

 

「……ちょっと待って下さい。」

 

これは、確か……

 

「智絵里ちゃん、こんな所で何をしているんですか?」

 

やっぱ入ってきたか。ネグリジェのインパクトで頭おかしくなりそう。

 

「智、智絵里?本当にそこにいるのか?」

 

俺がそう俺に訊いてきた。二重人格みたいだねってこれ言うの何回目だろ。

 

「い、います……」

 

ちょ、まゆの刺す様な視線が。すまんて。邪魔してすまんて。

 

「えっと、プロデューサーさんを驚かせようと思って隠れていたんですけど、その、お二人はその様な関係なんですか……?」

 

ちゃうんやで。驚かせるためなんやで。プロデューサーさんを狙ってとかじゃないんやで。そういう意味を込めて発言するがまゆはまだプンスカしてる。可愛い。微笑ましい。

 

「ちっげぇよ!!無理矢理だわ!!つーか智絵里の理由おかしいだろォ!!」

 

そうかな?でもなんとなく智絵里なら言いそうじゃない?(偏見)

 

「プ、プロデューサーさんから無理矢理だなんて、もう、わたしに勝ち目はないんですね……」

 

ちょっとふざけてみる。多少は良いよね?お茶目になっても怒られないよね?怒らない?ありがと!

 

「あんたら俺の知らない所で本当に薬物やってますよね?じゃなきゃこんな会話にならないよね?」

 

いや俺はヤクなんてやってねぇよ。なんだこいつ。こ●すぞ。って、こいつ俺だわ!やっべ、死ななきゃ!逝ってきます☆

 

と、まゆが俺の近くを見ている。

 

「ど、どうしたんですか?」ボソボソ

 

「その本……」

 

本?と思い彼女の見やる方を倣って見るとそこには、

 

《……なんだそれは。》

 

《プロデューサーも男の子なんだねー?》

 

(おお神よ、何故貴方は私を見捨てるのですか。)

 

そこには俺の宝があった。私を悦ばせるためのものだ。

 

「智絵里ちゃん、それ、下さい。」

 

渋る。

 

「……はやく。」

 

こわっ。

 

「どうぞ……」

 

うわ、くしゃくしゃにされた。それを……おい、何処にしまった。どっかいっちゃったぞ。ちょっと、え?何が起きたの?

 

「プロデューサーさんに必要なのはまゆだけですっ」コトッ

 

そういって彼女が置いたのは鍵。

 

「家で待ってますよぉ……♪」

 

家の鍵!?

 

「お前もネグリジェかよ!?…………いや、何で普通にお前も俺ん家いるんだよ!?二人ともどうやって鍵を開けた!?後自由過ぎんだよ!!今、夜の10時やぞ!!常識考えろや!?」

 

二人でベッドの下から出ると俺がそう発言した。尤もな事を言われて反論できない。

 

《あ、ごめん。変なボタン押しちゃった。》

 

え、ちょ、

 

「「????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」」

 

「やべぇ。初めてお前らに殺意湧いたわ。後文字数稼ぎ止めろ。それとクエスチョンマークがゲシュタルト崩壊する。目がチカチカする。」

 

《何してるんだ志希!そのボタンは押したら駄目だろ!》

 

《にゃはは~。》

 

「志希てめぇ……何しやがった……帰ったら絶対ぶっこ●す……」ボソッ

 

《ヒェッ》

 

「何のボタン押したんだよ」ボソボソ

 

《人の意識を消失させるボタンだな。》

 

「そんな物騒なボタン作るなアホォ!」ボソボソ

 

《好奇心》

 

「くたばれ。」

 

《変態が良い御身分で。》

 

「好奇心」

 

《くたばれ。》

 

晶葉さん酷いっす。でも目の前のまゆと俺二人による喧嘩的なやつの方がもっと酷いっす。第三者視点でやっと知ったけど顔の距離近すぎね。キスする勢いだよ。チューリップだよ。

 

と、

 

「「智絵里(ちゃん)はどう思いますか!?」」

 

聞いてなかった。何の話だ。俺の性癖の話?語るには余白が狭すぎる。省略。

 

《変態助手よ。そろそろそこから抜けろ。時間が心配だ。》

 

うるせぇ、マッドサイエンティスト。しょうがねぇな。

 

「……その、恥ずかしいのでわたしとまゆちゃんは服を着たいです。ですよね?」

 

これでいーい?

 

「そ、そんな恥ずかしくなんか…………う、うぅ。やっぱり、そんなに見ないでぇ……」

 

んー……まゆの可愛さは世界一ィィィィ!!!!!

 

「わ、分かりましたよ……服着ます……」

 

その瞬間俺が後ろを向いた。目に手をあててムスカごっこをしていらっしゃる。

 

「……キモいから意識飛ばせ。」ボソボソ

 

《え、いいの?自分の身体だよ?》

 

「キモいから構わん。」ボソボソ

 

《へーい。》ポチッ

 

鏡で自分の姿見たときふと気持ち悪いと思う事ない?そういうやつを感じたんだよね。だから意識をふっとばさせてもらいました。この思考ヤクザみてぇだな。いやヤクザはもっと優しいか。

 

おう……ポチッて聴こえて直ぐビクビクし出したんだが……

 

「これ合法?」ボソッ

 

《………………うん。》

 

なんだ今の間は。

 

「智絵里ちゃん。」

 

うおっ、びっくりした。なんや。

 

「なんですか?」

 

「いえ……ボソボソ言ってるのでどうしたのかなって。」

 

あ。聞こえてたみたい。

 

「えっと、その……な、なんでも、ないです。」アセアセ

 

頬を赤らめる。こうするとね、なんとかなるんだ。何故かって?可愛いからさ。

 

「そうですか(可愛い)」

 

ほらね。

 

 

 

 

 

「そろそろ戻して。」ボソッ

 

《りょーかい。》ポチッ

 

またビクッとした。地上に打ち上げられた魚かよ。ぴちぴち!ぴちぴち……

 

「着替え終わりましたよぉ。」

 

まゆがそう言う。なんか、犯罪臭が(ry

 

「よ、よし、じゃあ二人とも」

 

「帰りますね。」

 

……そういえばこの時まゆが帰るって言ったんだっけ。

 

(未だに理由は分からないが……志希に電話する時間はこれで取れそうだ。)

 

《なんてゆーか…………プロデューサーは大変だね?》

 

志希が俺に同情してくれる。ほんとだわ。プロデューサーってなんだよ(原題への反駁)

 

「……お、送らなくても大丈夫か?なんなら誰かを呼ぶけど?」

 

俺が問う。いややめろ。来るな。行動できないだろ。

 

「大丈夫です。まゆちゃんと二人で。寮、近いですし。ね?」

 

そう言うと、

 

「そ、そうか。気をつけてな。」

 

と応えた。聞き分けの良い奴だな。気に入った。殺すのは最後にしてやる。

 

「はい。また明日。」

 

まゆが先に俺の家を出た。まあ今の俺は智絵里なんですけどね。つまりここは智絵里の家……?まじかよ。いつの間に俺と智絵里は結婚していたのだ。

 

「……ベッドの下、確認しといた方が良いと思います。それでは、おやすみなさい。」

 

これくらいは教えておいていいっすよね?ね?これだと俺が可哀想だから、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕闇に紛れ二人でプロムナードを歩きます。

 

……パンツは新しいのを履きました。あって良かった。

 

「驚きでしたよ。まさか智絵里ちゃんがいるなんて!」

 

こっちの台詞だわアホ。

 

「私も驚きました。」

 

《おい変態。まゆまでその毒牙にかける気か。早く任務を遂行しろ。》

 

言い草。

 

「ごめんなさい。まゆちゃん。私、用事があるのでこれで。」

 

失礼させてもらおうか!フハハ!

 

「こんな時間に?」

 

夜の11時である。

 

「う、うん。」

 

「そう……」

 

訝しむ目線。怪しく思えるのは解る。でも今は無視して。頼む。まゆ鈍感になれ……っ!

 

「じゃ、じゃあね。」

 

「志希さんですか?」

 

「……え?」

 

《ひゃー、鋭いねー。》

 

「ボソボソ言ってたの全部聞こえてますよ?」

 

うっそだろお前。そこはご都合主義で難聴になっとけよ。

 

「えっと……その……」

 

「また何かしら企んでるんですか?プロデューサーさんを困らせるんですか?どうなんですか?ねえ?」

 

ヒェッ

 

《……まゆに全部教えろ、プロデューサー。この遡行の事を全部だ。いいのか?とかは考えなくていい。話した方が早そうだ。従え。》

 

おお、俺の思考を予想されてた。その通りいいのか?って思いかけてました。

 

言っていいなら言わせてもらおう。なんか段々と面白くなってまいりましたね(ワクワク)

 

「実は____」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「そうだったんですね……」

 

「信じてくれるのか?」

 

「口調で。」

 

「あ、そっか。そうだわな。」

 

案外すんなりと信じてくれた。物分かり良すぎでしょまゆさん。これは俺がえっちい事したいって言ったらやってくれるんじゃないか……いや、止めよう。こんな事考えちゃ駄目だ。

 

「……加蓮ちゃん、明日プロデューサーさんの家に行くんですね。」

 

あれ?これ喋りすぎた?

 

「電話でもして邪魔してあげましょう」ボソッ

 

もしかしなくても喋りすぎた。

 

「そういうことで。スマホとかある?貸してくれない?」

 

「いいですよ(智絵里ちゃんの声でプロデューサーさんの口調という違和感。)」

 

《あたしに電話電話!》

 

「分かってるって。」

 

「それもテレパシーってやつですか?」

 

「そうそう。」

 

「へー……」

 

あった志希の連絡先。

 

「加蓮ちゃんとみくちゃんの時に電話がなかったら助からなかったかもしれない……ふむ。使えそうですね。」ボソボソ

 

……でねぇ!こいつでねぇぞ!

 

「まゆがプロデューサーさんを助けるチャンス……!」ボソボソ

 

「出ない。」

 

《……ごめん。》

 

「出ないですねー?」

 

《ごめんなさい。》

 

「ゆ"る"さ"ん"!!」

 

《ひぃー……》

 

《というか助手の遡行録波乱だったな。お疲れ。》

 

「でもここで志希が電話に出ないから?」

 

《何度でも。》

 

「志希。」

 

《失踪していいですか(白目)》

 

《拘束。》

 

《ヴァァァァァァア!!!!》

 

「GOD JOBだ晶葉。」

 

「(智絵里ちゃん、じゃなくてプロデューサーさんは一体何を言っているんでしょうか。)」

 

と、おふざけしまくっていると、

 

(酩酊。これはまた昔に飛ばされる感じか。)

 

「ごめん。まゆ。また過去に行かなきゃならんみたいだ。」

 

「今から智絵里ちゃんの意識が戻ってくるって事ですか?」

 

「そうだな。」

 

《不思議だな。こちらでは何も出力してないのに。》

 

《なんで過去に戻されるんだろーね。》

 

お前ら専門家が分かってないのォ!?嘘ォ!?

 

「頑張って下さいね。」

 

《ここからは意識を紐付けておくから安心してね。》

 

安心できねぇよォ!何でそっちで機械を触ってないのに俺が過去に戻るのか調べろよォ!

 

お、おい!……うーん…………




智絵里Pほんとにごめん。


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傍から見るとプロデューサーの俺って頭おかしいので藍子にこの気持ちを代弁してもらいましょう。

カチッ
ピュイッ
ハロー

ウッ
チーン

これで何言いたいか分かる奴は俺と同類。


「っは!!」

 

目を覚ますとそこは事務所の廊下。右肩から鞄を提げていた。カメラ入ってる。写真も入ってる。

 

《ふむ。どうやら更に半月前へ飛ばされたらしいな。》

 

晶葉の声がファミチキ下さい。

 

「らしいな、じゃなくてその原理はよ解明しろ。」

 

《ん?ああ、藍子か。良かったなプロデューサー。今は藍子だぞ。》

 

あーだからカメラなのか。路地表にでも行ってきたのかな?

 

にしても今は藍子だぞって何だよ。なんか俺が浮気者のクソ野郎みたいに聴こえるじゃん止めて。

 

「それにしてもかなりまな板ですね。」

 

いい素材使ってるねこれ!とても平坦だよ!(無慈悲)

 

《やめたれ。》

 

「別に何がとは言ってませんが?」

 

《性格悪いなプロデューサー。》

 

「お誉めに預り光栄です。」

 

強調したいのはね、体が今までで一番軽い点なんですよね。いやーすごいなー。特に胸のあたりが他の女の子と違っていてすごいなー。尊敬しち

 

あ、やめて、藍子Pやめて、殺さないで、ちょ、集団リンチは卑怯、畢竟卑怯なんちゃって☆、うそうそうそうそふざけてなんかないって!違うから!これ楓さんだから!メープルだから……ん?メープル?その話は止めろォ!(某同人誌ネタ)

 

《ごめん、話挟んでいい?》

 

志希がおずおずと割り込んできた。ダメって言ったらなんかしてくれるんかな。志希に何かされるとかヤバい臭いしかしねえ。生体実験かR-18(グロ)のどちらかじゃん絶対。そのどちらでもいいかもとか思い始めてる奴は末期。はは。誰の事だろ(目反らし)

 

「ええよ。」

 

《実在の過去うんたらかんたら。》

 

「領海12海里。」

 

ここはいつもの事務所だ。最初の時と同様にあのエアコンの部屋へ行けばええやろ。

 

 

 

 

 

前川と北条がかの激しき攻防を繰り広げた部屋に到着する。この書き方だと戦国時代みたいだな。小早川ァ!!

 

「28ねぇ……悪くはないんだけどさ。やっぱ25じゃね?」

 

温度を下げる。ほんとにまじでアイドルの年齢の話なんてしてませんから!ね!早苗さん!瑞樹さん!

 

《……うん。おっけ。それじゃ早速あたしにこーりん!》

 

「分かった。電話してる間にその機械の故障を見抜けよ。」

 

《え?》

 

「え?じゃねぇ●すぞ。」

 

《ヒェッ》

 

「いい加減遡行疲れたんだわ(作者の叫び)」

 

《へ、へー。》

 

「故障を見抜けなくても●す。志希だけ。」

 

《なんでェ!?!?》

 

「始め。」

 

《横暴の極みェ!!》

 

それとは関係なく、申し訳ないと思いながらも藍子の鞄を漁る。スマホを探すためだ。べ、別に変な意図なんて、ねえからな?ほんとだぞ?今までもそうだっただろ?藍子だけ特別抱くなんて、そんな、高校生みたいな……(目反らし)

 

(…………ありませんねスマホ。)

 

現代の女子高生がスマホを携帯していない……妙だな。

 

壁を連想するからとか?ガハハ!(失礼過ぎ兄貴)

 

「さて、スマホが無いから電話はまた出来なさそうだ。隣の部屋のを使おう。いいよな晶葉?」

 

《あ、ああ。それで良い、が……おい、志希。終わりだ。おい。覚悟を決めろ。》

 

《ヴェァァァァァアアアアア!!!!》

 

良い悲鳴が頭の中に響きわたる。うっるせぇなぁ……

 

「見抜けなかったかー……それじゃあ」

 

《え?見抜けたよ?》

 

は!?見抜けたの!?この短時間で!?

 

「じゃあ今の叫びは何だったんだよ!」

 

《ヴァルキュリアかな~。》

 

「は?」

 

《せ、生存本能って事だから。キレないで。》

 

「そんで?原因は?」

 

《故障じゃなくて設定されてるみたい。》

 

「ちょっとずつ過去に送られるようにって感じにか?」

 

《そうそう。》

 

「設定し直してくれ。」

 

《無理。》

 

「R.I.P」

 

《殺さないで!?》

 

設定されてるのか。そうかそうか。じゃあしょうがないよな。とはならねえよ。ふざけんな。設定し直すのが無理とか訳分かんねえぞ。待てと言いたい。じゃあお前らはどうやって俺を清掃員の人に意識移させたんだと問いたい。小一時間とかじゃなくて小一日間問い詰めたい。ほんとにど、って、また作者か!!おいよせ!!話が長いのは謝るから!!もうちょっとだけ待って!!おね

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《プロジェクトルーム、プロデューサーいるじゃんどうするの。》

 

志希が呆れた様に言う。全ての元凶が調子に乗ってますね。やっぱ今すぐ●そうかしらん。

 

隣の部屋、つまりプロジェクトルームには固定電話がある。当たり前だね。ここ会社なんだし。

 

しかしそこには俺が座していた。見方によっては俺vs俺とかいう少年漫画的胸熱展開なんだが生憎これはギャグssだ。そんなバトルはない。

 

電話をする方法は二つ。固定電話か俺の携帯か、だ。

 

俺の携帯はほぼ無理だろう。まさか俺が自分の携帯を女子高生に渡すものか。その、待ち受けとかそれ以外もだけど、見られたくないし……(乙女)

 

なら固定電話しかないかという事なのだが。

 

それ自体は会社の物だ。真面目な俺が……真面目な俺が!!それを使う事を許す訳がない。だから。

 

「意識を飛ばせ。」

 

《え?》

 

「まゆの時のアレだよ。あくするんだよ。」

 

《で、でも》

 

「あくしろや。」

 

《ハ,ハイ》

 

脳髄の奥で機械音が響く。脳ミソコネコネされてるみたいだぁ……アハァ

 

と、ドアの隙間から見えていたプロデューサーが瞬間、ビクビクと痙攣し出し、頬張っていたアイスを口に含んだまま白目を剥いた。エグい。

 

「やっぱこれ違法なやつっすよね?」

 

《無駄に時間を浪費するな助手。》

 

「ア,ウッススミマセンシタッ」

 

正面からドアを開けて入室。固定電話の元まで歩く。

 

「電話番号。」

 

《いやんっ。》

 

「は?●ね。」

 

《プロデューサーってアタシの事もしかして嫌い?》

 

 

 

「…………う、うーん……」

 

 

 

「!」

 

茶番を行っていると何故か数十秒で俺が起きた。なんでですか!?

 

《アイスの冷たさで意識戻ってきてるんじゃない?》

 

え、そんなんで意識って戻るものなんすか。アイスさん強すぎでしょ。現代科学<アイスって構図はなんか草。もう世の中で起こるあらゆる事象はアイスで解決できるんじゃないですかね。

 

(取り敢えず、えっと……ソファーにでも座ってよう。)

 

意識が戻って前を見たら藍子が立っている、これは軽いホラーだろう。

 

ソファーに座り、一応上機嫌な顔をしておく。その方が自然だと思うし。

 

《助手、一分だけ時間を稼げ。もう一度意識を飛ばすためにはそれだけの猶予が必要なんだ。》

 

「りょーかい。任せろ。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「……なあ、藍子。その、外の気温ってどんくらいだ?」

 

目を覚ましてアイスをまだモゴモゴしている俺が訊く。知らねえよ外の気温なんて。天気予報のお姉さんでもないんだし。あれ?藍子が天気予報のお姉さんって滅茶苦茶良い気がする。どハマり役じゃない?

 

(今日はぽかぽか陽気な晴れの空。お散歩にぴったりの日ですね。ユルフワー)

 

どハマり役だーーーァ!!

 

「えっ…と、確か、38℃、だった筈です。」

 

それとは関係なく憶測で質問に答える優しい俺。いや、藍子。

 

《30℃だよ。》

 

志希からの指摘が入る。全然違った。ごめん。やっぱ藍子は天気予報のお姉さん向いてないかもしれない。

 

「そ、そうか。」

 

「ふふ。急にそんなことを聞いてどうしたんですか?それに畏まった感じですし、ちょっと面白いです。」

 

そんな事を一々訊くなという意と皮肉の意を込めて発言。ってそれだと俺がただの嫌味ったらしいクソ男になっちゃうじゃん。そうじゃないよ!このプロデューサーとかいう男(自分)が変なだけだよ!

 

「おう?そ、そうか?いつもこんなんやで!」

 

急な関西風の喋り方はNG。本場の人に怒られちゃう。関西の人を怒らせてはならない(戒め)

 

「プロデューサーさんの関西弁、初めて聞きました。」

 

もう喋るなという言外の意を汲み取れと祈っていると、

 

《あ、やる方間違えた。》

 

意識が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が戻ると場所は変わっていなかったが状況が変わっていた。つーか何で意識飛んだの。

 

《あ、プロデューサー戻ってきた!ごめん!間違えて意識飛ばしちゃった!》

 

は?もう志希の事許さん。絶対許さんわ。帰ったら臭い嗅がせてやんねえ。

 

《すまない。もう一分稼いでくれ。すまない。》

 

いや晶葉さんは悪くないんだよね。赤髪のケミストリーが諸悪の根元なんだよね。●すしかないよね18歳のクンカー女を。

 

と、それはおいといて、もうアイスを食べ終わったであろう俺が途端にワナワナと震え出した。どうした初期微動か。それとも主要動か。

 

「…………そ、そんなに、言ふことなかりけりだるぉぉぉぉぉォォォォォゥゥゥゥゥウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

 

二つとも違っていた様だ。心が叫びたがっていた様だ。いや、うるせえ。耳障り。つーか、

 

「気持ち悪……」ボソッ

 

あ、やべ。本音が。

 

「」

 

俺……というか藍子の本音だと取られたのだろう。プロデューサーが再び白目を剥いた。おいまだ機械干渉してねえぞ。なのに意識飛びかけてるとか貧弱かよ(正解)

 

「このプロダクション唯一のゆるふわ枠が、普通の毒舌になってしまった……ただの、現実に多くいる、女子高生に……」

 

なんか真面目に気持ち悪い事言ってる……ドン引きっすわ……

 

《よし、今度は間違えてないぞ。とりゃ!》ポチッ

 

晶葉のとりゃ!が可愛すぎて昇天致しました。

 

(うお、地面に倒れた。)

 

プロデューサーの俺が地面に伏している。

 

…………なんか、気持ち悪いっちゃ気持ち悪いんだけど、流石に悪い気がしてきた。

 

「…………ごめん。」

 

なんとなく、謝っておく。ツンデレ展開とかではないです。

 

《さあ!こーりんこーりん!》

 

……もう怒る気力失せてきたわ。

 

「はいはい。」

 

プロデューサーの机に近づき、固定電話に手をかけた、その時。

 

(酩酊。うそん。)

 

遡行の兆しが。

 

「わ、わるい……タイムオーバーみたいだわ……」

 

酒を呑んだ後の様な酩酊に足元をふらつかせる。おかしいな。俺、酒には強いんだが。

 

《あー……しょうがないしょうがない。ええんやで。》

 

志希のふざけた態度に堪忍袋の緒が切れた。貴様ァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!

 

「志希……」

 

《ん?》

 

「失踪禁止半年な……」

 

聴こえたのは悲鳴。良い気味だあ(ねっとり)

 

意識が……うーん…………




PV20000超えは予想してなかった……こんな意味不明ssでええんか……?
兎に角、ありがとう皆。


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からかわないでよ凛さん!

遡行要素いる?


気づけば俺は椅子に座っていた。

 

(ここは……プロジェクトルームか。藍子の時と同じだな。)

 

自分を見るとスーツ姿である。声の確認……男ですね。

 

(つーか俺じゃん。プロデューサーじゃん。やったぜ!)

 

喜びを堂々と見せてやろうと思い、俺は机の上に立つ!小学生の様に!……いや今どきの小学生は机の上には立たないか。それじゃあ彼らは一体ナニにたたせるんですかねぇ……?ニチャァ

 

まあそれは置いといてだ。早速決め台詞!行くぞグリ●ドマン!

 

「永劫と悠久を超越し、輪廻転生を果たした独身……

 

その名も!般若し」ガタッ!

 

「おはよ。」ガチャ

 

「おう。おはよ。」スタッ

 

「……今机の上に乗ってなかった?」

 

「それは幻覚だよ。厳格な俺がまさかそんな。」

 

「はあ。」ジトー

 

「呆れないで。」

 

「うん。」

 

「怒ってます?」

 

「いや。」

 

「二文字以上で話して。」

 

「いや。」

 

「日本語の妙。」

 

運悪く邂逅してしまった彼女の名前は渋谷凛。今は成りを潜めているがれっきとしたヤバイドルである。

 

あのね。凛はこうやって『クール!』みたいな雰囲気醸し出してるけどそんなことはないのよ。落ち着いた美少女?まさか!野獣だよ!美女と野獣の映画に出たら野獣役だよ!それか邦題が野獣と野獣になるよ!ってドキュメンタリーじゃないかそれ!

 

最初は雰囲気まんまのクールだったよ勿論。それに蒼かった。コーヒーのブルーマウンテンくらい蒼かった。あ、マウンテンっていうほど胸ないか!ガハハ!

 

はい。凛Pに殺されそう(自殺)なんで話続けます。因みにブルーマウンテン、ボクは好きです。

 

……でもね。急に。急にだよ。なんかおかしくなってったんだよね。志希と同レベルの変態になっちまったんだ。家に帰ったら薄着の凛がいて、あれはヤバかった(俺の理性、ではなく俺の怒りが。)

 

こうなった理由は定かじゃねぇ。何故か志希と晶葉がまた干渉しなくなったのと同じくらい定かじゃねぇ。つーかあいつら奔放すぎ。また不干渉の誓いたてたのか。

 

と、凛の手元のそれに俺は目を見張った。

 

「なあ、凛。それって香水か?」

 

まさかの探し求めていたアレである。こんなところで発見できたなんて感激!

 

「え?違うけど。」

 

「…………はえ?」

 

「?」

 

「違うの?」

 

「違うよ。」

 

「ほんとに?」

 

「ほんと。」

 

「そうか。そう、なのか。」

 

「手に香水持って外歩く訳ないでしょ。」

 

「確かに。」

 

あっれー?ss的展開ならそろそろ香水出てくると思ったんだけどなー?ヤバイドルだししぶりん辺りで出してくるんだろーなーとか思ってたんだけどなー?あっれー?

 

「じゃあそれなに。」

 

小さな瓶に入った少量の透明な液体。気になります!

 

「またそれ訊くの?はあ……これはみ……!」ニヤ

 

微笑む凛。なんだなんだ。可愛いな。

 

「DHMO……ジハイドロジェンモノオキサイドっていう化合物なんだ。」ニヤニヤ

 

聞いた事もない。だが名前からして危険そうだ。

 

「……それ安全なのか?」

 

香水云々の前にそんな物騒な名前だと安全性の配慮等の方が気になります!

 

「んー……(そうだ、いいこと思いついた)……し、志希からもらっ……ンフッ……もらった。」ニヤニヤ

 

絶対ヤバい(確信)

 

「これは水酸って呼ばれる事も、あってね……フフッ……さ、酸性雨の主成分なの。」

 

「俺の天敵じゃないか!!」

 

「ブホッ!!」

 

凛が突然腹を抱えて笑い出した。な、なんだ?

 

「ヒーッ……ヒーッ……ンフッ……重篤な火傷の原因でもあるよ?」ニヤニヤ

 

「み、水!水持ってくる!」

 

「ングッ!!……ンフッ……ッ!!」ジタバタ

 

凛が机をどんどんと手で叩きながら顔を真っ赤にしている。それを無視して一応水をペットボトルに汲んでおいた。二リットルだ。安心しろ(曇りなき眼)

 

「防火材にも用いられるんだけど。」

 

「はあ!?火傷の原因になるのに防火にもなんの!?」

 

「ンフッ……そうそう。」ニヤニヤ

 

「そんな意味不明なもんを志希から渡されたのか?」

 

「うん。」ニコニコ

 

あいつとことん頭いってるな。罪カウンター100のうちでそろそろ97いきそうだぞ。それだと罪の塊じゃん志希。くっそ……あいつ名前を並べかえたら性の知識になるからって調子のりすぎ。

 

「ち、因みにね?……ンフッ……これ吸引すると……ハヒッ……死ぬの。」ニヤニヤ

 

その言葉を聞いた瞬間、私は行動した。

 

ドアの近くにいた凛を高速で拘束。

 

暴れる凛を口説き伏せ、その瓶を奪う。

 

(これを志希に送り、警察を呼ぼう。)

 

性の知識なんて奴ははよ規制されろ。

 

と、手が滑る。

 

「ッ!!!!!!!!!」

 

空中で舞う瓶を取ろうとするも間に合わない。

 

地面に落ちて、割れてしまった。

 

「ァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「うるさい女たらし……」

 

溢れた液体が凛にかかってしまった。これやべぇわ。

 

「き、救急車!1111番!違う!それポッキーの日!ん!?違うトッポの日!あれ!?それも違う!プリッツの……これも違う気がする!」

 

「プロデューサー。」

 

「どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!凛が死ぬ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ダメ!!!!!!!!!!!!!!どうしよどうしよどうしよ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「これ水。」

 

「…………………………は?」

 

思いがけない言葉に生命活動が止まる。久しぶりに会った天国のおっさんはいつもどおり元気でした。良いところやで天界は。

 

「ググってみてよ。DHMOって。」

 

言われた通りググる。

 

………………

 

「凛テメェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「あははっ!!ひ、ひっかかってる!!あはは!」

 

調べてみたらなんだよこれ!ジハイドロジェンモノオキサイドって一酸化二水素、つまりただの水じゃないか!

 

「騙したなァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

 

「騙してないよ!……ンフッ……ブホッ!!」ニヤニヤ

 

確かに酸性雨の主成分は水だし熱水で重篤な火傷負うことあるし防火になるし吸引したら息できなくて死ぬね!でもこれは酷くない!?

 

「ふふっ…………あ、あれ?……」

 

まじでヤバいと思ったよ!つーか水ならペットボトルとかにでも入れてこいよ!何でそんな荘厳な瓶に入れてくるんだよ!

 

「眩暈、が……」

 

今回のが一番許せねえ!志希も気狂いヤバイドル状態の渋谷凛もまだギリギリギリギリギリギリ許せる!でも今回のは許せねえ!悪趣味だ!

 

「…………」

 

そんで?結局誰も呼ばなくて良いのかこれは。水ならいいか。にしてもそういえば今日は何日だ。確認してなかった。

 

「……♪」

 

……高エネルギーリン酸結合だ(意味不明)

 

「プロデューサー?そこに立って何してるの?」ニコニコ

 

「うるさいぞイヌリン。早く体外に排出されろ。」

 

「まだ摂取されてないよ。ほら。早く摂取して?」

 

「また服脱ぎか!!」

 

こんにちは。プロデューサーです。

 

急ですが悲報です。

 

渋谷凛が壊れました。

 

 

 

 

 

というか壊した張本人は恐らく自分です。

 

(あの液体絶対水じゃねぇよ。だって変な匂いがこの部屋に突然立ち込めだしたんだもの。)

 

自分の中の理性が、少しずつ溶けていく。

 

(原液だ。これ。)

 

朦朧とする意識。

 

「り、凛。さっきまで持ってた瓶。お前のか?」

 

液体の匂いを嗅いだせいか、遡行の兆候がいつもより早くきた。戻ってしまう前にせめて訊いておかねば。

 

この遡行は前に前にと戻るのだ。今失敗しても成功する確率に変動はない。そこはラッキーな点である。

 

「んー?プロデューサーがくれたんだよ?」

 

……は?

 

「三日前にこれを三日後に返してくれって言ってたでしょ。まあ、今プロデューサー自身で割っちゃったけど。やっぱり忘れたの?さっき水かって訊いてきたくらいだし忘れてるんだ。」

 

どういうことだ。意味が分からない。

 

「それと変な事も言ってたよね。」

 

混乱する。情報が色々とありすぎてよく分からない。

 

「えっと……あ、そうそう。」

 

意識が混濁する。そしてそのまま、俺は、

 

「志希と晶葉は信じるな。」

 

___




しぶりんの相棒感は異常。そしてその事をこんな場で言う自分の方がもっと異常。


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常務の美城だ。双葉杏、君に話がある。(しかし内容がないよう……ふふっ。)(最後にふふってつけて私が言った事にするの止めて下さい。)(はい。)

下らんシリアスとかがちょこちょこ入ってくると思います。ごめんね。……え?しょうがねぇな付き合ってやるよ、ですって?マジっすか!?ありがとう読者の皆さん!優しいなあ!でへでへ!(媚びへつらう図)
それとは関係ありませんがこの話に楓さんは出てきません(無慈悲)


(……はっ!こ、ここは……?)

 

意識がはっきりとしていき、靄のかかっていた視界が晴れる。

 

ここはどうやら346プロの、そうだな……常務室か。

 

…………え?

 

(何故こんなとこに俺はいるの?)

 

悪い事なんてしたっけ?(無自覚)

 

したのはセクハラくらいっすよ?(最低)

 

「それで、杏に何の用でしょうか。美城常務?」

 

と、やる気のない声が聞こえた。その方を見るとそこには杏。

 

(なしてこんな所に杏が!?てか常務!?いるの!?どこ!?)

 

待って待って。何度経験しても慣れないこの意味不明状況にまた振り回されてる。落ち着け俺。よし。先ず声を出してみよう話はそれからだ。

 

「ごほん。」

 

常務の声がする。なんでだろ(焦燥)

 

「……常務?」

 

「ごほんごほん。」

 

常務の声がする。あれー?あれれー?

 

「……」

 

「ごほんごほんごほんごほんごほブバッ!」

 

「!?」

 

「すまない。むせた。」

 

「そ、そうですか……」

 

俺が常務だァァァァアアア!?!?!?

 

なして!?なして俺が常務!?いや俺が常務になるのは構わないんだよ!?というかバッチこい。

 

でも美城常務にはなりたくなんてなかったなあ!?白紙博士(激ウマギャグ)なんて嫌じゃあ!

 

「あの、白目向いてるところ、いいですか?」

 

「あ、はい。」

 

珍しく畏まった口調の杏。まあ相手は常務なんだしそれも当然か。にしても常務ってドームと響き似てるよね。バットルじょーむ!ナムコオリジナル!……765オリジナル?つまり常務は765プロのアイドルであり杏の声は癖になる証明終了。

 

「杏が呼ばれた理由は……」

 

…………そんなん俺にもわかんねえよ。白紙博士じゃないんだから。

 

(って、今日は杏がパクチーによって救われた日か。)

 

ふと目に入ったカレンダーから知る。つーかこのカレンダーかっこいいな。嚆矢濫觴とか書いてある。読めねえけどな。画数多い漢字はカッコいい(中二並の感想)

 

時計を見てみれば今は夕方。ということは、杏は車で事務所に送られて直ぐ美城常務から呼び出しを受けた、っていう風にも考えられるか……?

 

(適当な事を言って相手をのせるのは346のプロデューサーの嗜みだから別に出来るけど今の自分は常務だもんなあ。こんな上の立場の人に雑な扱い受けたら悲しいよねえ。感覚的にはあれよ。校長先生の平均売春人数が一人以上って知った時の悲しさに似てる。いやこれは平均の妙か。)

 

気になったら校長って調べてみてね!……俺は誰に向けて喋ってるんだ?

 

(…………褒めておくか。)

 

当たり障りのない選択肢を選ぶ。

 

「いや、大したことではないんだが……ここ数月の精の入りが著しい事に感動してな。仕事の成果も目に見えて出ている。頑張っているようじゃないか。」

 

「へ?……あ、はい。うっす。あざっす。」

 

杏ちゃん、口調口調。

 

「これからも期待してるぞ。」

 

「うい。」

 

返事。高校生かお前。

 

いや、高校生だったわ君。ごめん。忘れてた。身長低すぎて油断してると年齢忘れるんだよね。あれ?何歳だったっけ?2*7だっけ?みたいな。なんで素因数分解してんだ俺。

 

「……それだけですか?」

 

「……ああ。」

 

「……そっすか。」

 

「……ああ。」

 

なんか自分が今コミュ障白紙解体おばさんになってしまっている気がします。助けてお姉ちゃん!(莉嘉的思考)

 

「失礼しまーす。城ヶ崎美嘉でーす。」ガチャ

 

なにやってんだミカァァァアアアアア!!!!!!!

 

(俺が美嘉の事を考えると必ず現れるのはどういう現象?天命かな。いやその血の運命か。ジョジョォ!)

 

「失礼します……も、森久保乃々です。」ガチャ

 

ノノォォォォォオオオオオオオ!!!!!!むぅーりィィィイイイイイイイ!!!!!(錯乱)

 

「ど、どうした。何の用だ二人とも。」

 

マジで何の用なの。共鳴したから来ただけとかだったら飛鳥だぞ。一応釘をさしておくがフラグじゃないんで二宮さんは家でオフを楽しんでて下さいねつまり来んな。

 

「杏が何時まで経ってもレッスンに来ないからね。ちひろさんに聞いたらここにいるって言われたよ。」ヒョコッ

 

飛鳥ァ!フラグじゃないっつってんだろォ!?

 

「今回は呼び出しされてたんだから杏は悪くないよ!?む、無断欠席じゃないよ!?」

 

いきなり震え出す杏。どうやらトレーナーさんにこのあいだ怒られてからというもの、杏は彼女らに恐怖を抱くようになったらしいのだ。俺もトレーナーさんに恐怖を抱くレベルで怒られてみてえなあ(欲望の塊)

 

「あー……すまなかったな君達。彼女との話はもう終わったから思う存分レッスンに励んでくれ。」

 

俺がそう言うと杏がなんだこいつみたいな顔をした。確かに要約すれば、仕事きちんとやれてるね!これからも頑張れよ!って言われただけだもんね。そりゃこの顔も仕方ないね。

 

暫くして、杏と乃々と飛鳥は帰っていった。

 

…………あれ?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「えっと……何故、君はまだここにいるんだ?」

 

目の前で仁王立ちしている美嘉に問う。美嘉ねえまじ金剛力士像。

 

「……?頼まれた物を……あ、そっか。先ず見せなきゃ。」

 

「?」

 

目の前で小さなポーチをガサゴソガサゴソ。そのポーチなんだろってこの部屋に君が入った時から思ってたけど常務になんかを見せるためのものだったのね。へー。

 

(俺に見せられてもな……)

 

彼女は知らない。目の前の有能おばさんの中身が変態おじさんであることを。誰が変態だァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!(意味不明のキレ方)

 

「はい。頼まれてたやつ。」コトッ

 

そうやって机に置かれたのは小瓶。液体の入った、小瓶。

 

「……!?!?」

 

え、これ原液だよね?

 

「志希の部屋から持ってきたけど……濾過蒸留溶液?とかいう名前のやつで良かったんだよね、プロデューサー。」

 

あかん。これ話終わっちゃう!!まだ三人残ってるのにィ!(メタ発言)

 

(てかプロデューサー!?志希の部屋から持ってきた!?は!?)

 

最近の遡行、情報量が多過ぎて理解出来ないんだが。

 

落ち着け俺。つまりどういうことだってばよ。

 

「……プロデューサー、とは?」

 

「プロデューサーはプロデューサーだよ。中身そうなんでしょ?」

 

なんで知ってんのこの人……

 

「志希の部屋から持ってきたって、どういうこと?」

 

「え?プロデューサーが言ったんじゃん。あいつの部屋から持ってこいって。」

 

知らねえ……そしてそんなことは言ってねえ……

 

「だからって盗む事はないだろ……」

 

「いやいや!?盗んでなんかないからね!?」

 

「え?じゃあどうやって持ってきたの?」

 

「普通に志希に頼んだよ。こういうやつないー?ってさ。」

 

「そうか。」

 

《「誰かが女子寮の志希の部屋に侵入して勝手に持ってったらしいぞ。」》

 

《「志希と晶葉は信じるな。」》

 

「……俺が、頼んだのか?美嘉に?」

 

「え、うん。一週間前……だっけ?」

 

(一週間前……文香か。)

 

今更だけどさ。その、なんといえばいいのかな。銀魂感みたいなさ。そういうのをこのssから感じるよね。ガチの時はガチっていう。いやだからなんやねんってなるけれど。だってこれで遡行の目的は果たされた訳だし。

 

(取り敢えず原液……濾過蒸留溶液?とやらは美嘉に持っておいてもらおう。俺が持ったら凛との時に割っちゃうからな。)

 

《「えっと何て書いてあるんだ……未来を大きく変えるな。物は元あった場所に極力戻せ。嘘つきには騙されるな。か。」》

 

まゆの時のあの言葉を思い出す。でも別にええやろ。ギャグssなんだし。幸子最強空間だぞここは。たとえ大爆発があったとしても補正かかって絶対死なない世界だ。過去なんて変えちまえ。

 

「美嘉。」

 

「ん。」

 

「それさ、ずっと持っておいてくんない?」

 

「いいよー★」

 

「何があっても俺とかに渡しちゃダメだぞ?」

 

「オッケー!」

 

「あんがと★」

 

「それはキモい。」

 

「ごめんなさい。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

数分後、美嘉も退室した。自己での保存を確約してくれた彼女に感謝である。

 

(にしても結局杏を呼んだ理由が分からないんだが。)

 

というかさ、違和感ない?

 

(ちぐはぐというか、変に話が込んでるというか。)

 

作者はもう少し考えてから話を創った方がいいと思います(自戒)

 

 

 

 

 

なんてことを考えながら更に数分後、俺は何故かまた過去に飛ばされた。

 

(え……?)

 

志希や晶葉の干渉もなく、惰性的に、慣性の様に。

 

(まだ終わりじゃないのか……っ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嚆矢濫觴《こうしらんしょう》

物事の始まりを指す四字熟語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まあいいか。楽しそうだし。)

 

シリアスも嫌いじゃないがギャグには劣る。そんな悲観せーへんでもええか。




常務のキャラがわかんねぇ……大和田常務のキャラならわかるんだけど……(突然半沢●樹の話をするKY)


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茜と文香の二人とも好きって人は多いと思う。私もそうだ。

話を終わらせにかかります。多分あと四話。


「なあ。」

 

頭の中に声が響く。

 

「気づいてるんだろ?」

 

聞き慣れた声だ。

 

「わざと目をそらしてるんだろ?」

 

しかしこれが誰の声なのかを俺は覚えていない。

 

「疑問には思わないのか。」

 

何を言っているのか理解できない。

 

「お前はそれでいいのか。」

 

理解できない。

 

理解できない。

 

理解できない。

 

 

 

 

 

理解したくない。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

気づくと俺は中空に浮いていた。晴れ空のよく見える広場にて、明るい日差しで目が眩む。

 

(また俺浮いてますね……それじゃあ今の俺は幽霊タイプかな?)

 

真下を見るとそこには俺がいた。臍の緒らしきもので俺と俺は繋がっている。やはり加蓮の時と同じ幽霊タイプらしい。

 

隣には茜。並んで仲良く歩いている。おいおい恋人同士かよお前ら。ってそのうちの一人は俺な訳なんだが(意味不明)

 

(どうやら今日はちひろさんに怒られたあの日じゃないな。あの日は茜とこうやって歩いてた記憶無いし。)

 

あの日とは、茜にストレス解消を勧められたあの日のことである(循環)それはさておきそれじゃあ今日は何日なのかなーなんて考えていると、

 

「プロデューサーって結構足速いんですね!」

 

俺の頭頂部を見ながら彼女がそう言った。おい。髪の毛が抜けるのと同じくらい早いですね!とでも言いたいのか。処刑するぞ貴様。

 

「昔陸上やってたからな。」

 

……?何で俺嘘ついてんだ?

 

運動部に入った事など一度もない。実体のある俺が嘘をついた。おいおい。見栄を張ったなこいつ。モテたいからってホラ吹いちゃ駄目だよ~(自己が自己に話すというよく分からない図)

 

「そうなんですか!?」

 

ほら!茜が興奮し出しちゃったじゃん!どうすんの!

 

「ああ。写真見るか?」

 

え?写真?

 

「見ます見ます!」ピョンピョン

 

「母さんがこの前送ってきた画像に……あ、あった。ほれ。18の時、県大会で優勝した記念の。」

 

そう言って俺は茜にスマホの画面を見せる。

 

隙間から見えたそれは、偽造のものの様に思えなかった。

 

本物にしか見えなかった。

 

(…………ちょ、ちょっと?どういうこと?え?怖くない?てかもうちょいコメディしようよ。これはそういうssなんだしさ。そんな伏線張りみたいな事しなくていいから。)

 

それともこれもギャグの一つかな?いやギャグじゃなくてドッキリかな……ss御用達、ドッキリで本音を見よう!ってやつだと思うんですけど、どうすか?

 

(正解!5ポイント贈呈!)

 

よっしゃァ!!川島さんに並んだぜェ!!ぷろでゅーしゃー、5ちゃいです!

 

って、うわ!

 

な、なになに!?突然の揺れ!?地震ですか!?

 

ちょ!?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ちょ、ちょ、ちょ…………ちょっと?ねえちょっと?ねえ?何今の揺れは?マジで何?

 

…………作者?おーい?

 

説明無しっすかそうっすか。不親切な奴だ……ん?あれ?文香?え!?文香!?何で!?は!?急展開すぎだろ!?次の話じゃないの!?

 

(待て待て待て、落ち着け…………いいか落ち着け俺。深呼吸。慌てるな。状況を整理しろ。よし、よし……先ず、さっきまで茜と普通の俺と幽霊の俺が一緒に歩いていた。談話していた。うん。次に突然の揺れ。地震のような大きい横揺れが起きた。んで、それで……一瞬目の前が真っ白になった。その後次第に揺れは収まってゆき、今は全く揺れていない。)

 

そしてその揺れに驚いたのは幽霊の俺だけらしい。茜も普通の俺も、そして、先程まで茜がいた場所に打って変わって立っている文香も平然としていた。

 

(何がどういうことなんだ。全く理解できない。というか茜は何処いったんだよ。)

 

変わらず俺は中空に浮いていた。明るい日差しで目が眩む。

 

(……遡行では、ない、のか?)

 

「県大会で優勝ですか。実力者だったんですね。」

 

「いや、そんなことは……あるかも?」

 

「隣の方はお父さんで?」

 

「そうそう。」

 

「へえ……」

 

どうやら遡行はしていない。茜の存在が文香の存在と変わっただけのようだった。

 

変哲もなく談話している二人。何も起きていないかのように談話している、二人。

 

(は、はは……コ、コメディコメディ。これはギャグss。そう。ずっと気が狂ったもので楽しませるシュールなギャグssだったじゃないか。これも、ど、どうせそういうのだろ?)

 

えっと、例えば……『君の名は』のパロだとか。うん。まさか茜が消えただとか、そんなことは……ねえ?

 

(コメディだよ。遡行がまだ続いてるのも、志希と晶葉が云々とかいうのも、揺れの後から何故か俺の体が動かないのも、全部、笑いのためなんだろ。)

 

そういえば声も出ねえな今。はは。コメディコメディ。シュールなコメディ、コメディ……

 

(………………なわけねえだろマジで意味わかんねえ……どうなってんだくそ……突然すぎんだろ……)

 

あの時軽々しく二人の頼みを受けたのが間違いだったと俺は思い始めてきた。

 

(だってもうこれ意味わかんねえよ……)

 

途中までは良かった。Masque:Radeとハチャメチャしたり、アンデスとじゃれあったり、遡って凛や加蓮や藍子と友好を深めたり。なんらよくあるssと変わりなどなかったのだ。

 

(いつの間にか、歪み始めた。)

 

その時は分からない。智絵里の時だったかもしれないしまゆの時だったかもしれない。しかしそんなことは今どうでもいい。問題なのはこのssがブレにブレているということだ。この話ではそのブレが特に顕著である。

 

ギャグなんだろ。コメディなんだろ。バカやって、騒いで、おもしろくするんだろ。タグにだってそう書いてあるじゃないか。何で俺をこんな目にあわせるんだ。俺は、ギャグssのオリ主主人公で……主人公で…………

 

主人公?

 

何の?

 

ssの主人公だろ。

 

ss?

 

……?

 

__で、

でも__

 

_____かな?

 

 

本当に___

 

_______分かった。

 

 

 

 

 

(…………そういえばssって何だ?)

 

ふと疑問に思う。

 

今までずっとssがーssがーって言ってきたけどそもそもssって何だ?

 

コメディとかギャグとかシリアスとか、何で俺はこの世界が『小説』であるかのように話してるんだ?

 

主人公って何だ?

 

ここは現実で、小説や、その、なんか、よく分からないssとかいうやつでもないだろ?

 

(あれ?でも……え?)

 

なにか、忘れてる気がする。

 

俺、忘れちゃいけない事忘れてる気がする。

 

(ちぐはぐ……)

 

《というかさ、違和感ない?

 

(ちぐはぐというか、変に話が込んでるというか。)》

 

というか忘れちゃいけない事があったかもしれない以前に、

 

(俺、覚えてない。何してたか、覚えてない。)

 

例えば、凛。

 

《それで気絶後、渋谷凛さんには俺の上着を掛けて助けを呼びました。勿論来た人に喚問されました。来た人はアイドルだけだったのでそれは幸いでしたが状況が状況です。》

 

何処に俺は助けを呼びに行った。来たアイドルって誰だ。

 

(分からない。覚えてない。)

 

例えば、まゆ。

 

《仕事が終わり、愛しき我が一軒家に着く。》

 

家に着く以前、何してた。何の仕事だ。外周りか?事務か?打ち合わせか?

 

どうやって帰宅した。徒歩か?自動車か?電車か?

 

(分からない。覚えてない。)

 

例えば、輝子。

 

《あのね、一日中叫び続けてたからかね、誰かに警察呼ばれてた。逮捕されかけた。焦った。馴染みの警察官だったから大事にならずに済んだ。良かった。でもまたお前かみたいな顔された。そうですまた俺です。ごめんね警官さん。》

 

あの後、俺は何をした。どんな仕事をした。馴染みの警察官とは誰だ。

 

(分からない。覚えてない。)

 

『記憶がとんでいる』のだ。何をしていたかを思い出せないのだ。

 

(何故俺は『記憶がとんでいる』ことに今まで疑問を持たなかったんだ。)

 

 

 

 

 

気づくと、いつの間にか、そこは、闇。数ミリ先が分からない程に濃い闇が広がっていた。

 

茜と文香はいないと思われる。さっきまで明るかった広場が突然暗闇になったのだ。当然周囲の状況なんて分からない。したがって断定ができない。が、さっきまで感じていた人の気配が消えた。よっていないと思われるという訳だ。

 

(これはギャグでもコメディでも、ましてやシリアスでもない。造られた世界よりもずっと奇怪なる現実だ。)

 

どんよりとした濁りがすっぽりと取れた様な、そんな気分である。思考のバイアスが抜け、清澄で怜悧な思考が展開出来るようになったおかげで今の俺は状況を正確に判断できる。

 

(ずっと「小説がssが」なんて訳の分からない世迷い言を信じていた。理由もなく盲信していた。)

 

馬鹿か俺は。

 

この世界に、今自分の生きているこの空間が作り物であると本気で信じていて、しかもその想像主と会話が出来るなぞ言う奴が何処にいる。戯けか。

 

(しかしそうすると浮かぶ疑問。)

 

《「おい、作者。話が終わらないからはよ戻せ。」

 

*わるい。ふざけすぎた。》

 

《「おい、作者ァ!説明しろォ!話が進まんぞォ!」

 

ええ……チート使うの……?》

 

(お前は、誰だ。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

熟考中、いきなり闇が晴れだした。

 

(はは。本当に事実は小説より奇なりだな。とっくの昔に頭がこの状況に対する理解を拒んじまってる。)

 

酩酊感。それと共に瞼が閉じてゆく。酒に潰れて寝落ちしてしまう感覚と似ていた。

 

(遡行の合図……次は志希か。)

 

……それにしても何で俺には次にとばされる過去がいつも分かるんだろうな。志希と文香と茜の日は2日ずつずれてんのに。もしかしたらその間の日になるかもしれないのに。でも、俺には分かるんだ。次とばされるのは志希のところであると。

 

《「さて、助手よ。」

 

「キミに、過去へ戻ってほしい。」

 

「そして、撒かれる前に原液を回収してほしい。」

 

「やってくれるかな?」》

 

(志希。)

 

お前、何か知ってんだろ。

 

(俺にはもう何が何だかさっぱりだ。理解出来ない事が多過ぎて頭はパンク寸前なんだよ。)

 

教えてくれ。

 

(答えを。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、プロデューサーさんの事が好きです。」

 

 

止めてくれ文香。

 

 

「プロデューサーの事を考えてると、その、心臓がバクバクして、えっと、つまり……す、す、好きです!!」

 

 

違うんだよ茜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでこうなったんだ。

 

 

俺は、ただ…………

 

 

けれど、どうせこうなるんだったら、

 

 

こうなってしまうなら、

 

 

全部、何もかも全部、

 

 

_____




闇=?


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やってくれたな志希。

虚構の剥がれてく音。


目を覚ますとそこは事務所の廊下。既に見慣れた、簡素な廊下だった。

 

すぐさま自分の身体を見回し、今の自分がどうなっているのか確認する。黒のスーツと筋肉質な腕や脚。視線の高さ。俺自身の体なようだった。

 

次に周辺を確認する。これまで通りなら必ず近くに志希がいる。と、

 

「そんなキョロキョロしてどしたの?」

 

いた。隣にいた。癖のある赤髪をゆらしながら佇んでいた。

 

「いや、別に。」

 

詰問するつもりでいたはいいが先ず何を問うべきなのかに俺は迷う。

 

(全ての元凶とはいえ、こいつはまだ何も知らないはずだ。それに脈絡もなく遡行について訊いても答えなど返ってこないだろう。)

 

色々と濁しながら原液についてそれとなく訊く、というのが得策か。なんて思考していると、

 

「あー……遡行してきた感じ?」

 

(……は?)

 

志希が爆弾を投下しやがった。

 

「ふむ。その反応は真だね。そっかそっか。成功したんだ。」

 

「な、何で知って、」

 

「え?座標設定ここにしたんじゃないの?」

 

「設定は少しずつ前に遡るようにって…………座標?」

 

「これは教えてない系かー。未来のあたし、そこは教えておいてよー。」

 

こいつは遡行に気づいてる。つまりこの時点で志希は俺を嵌めていたという事。そうか。

 

(都合良いな。くそったれ。)

 

訊きたい事が訊ける。そう思った。

 

「おい志希。正直に答えろ。この遡行の目的は?原液が盗まれたって嘘を吐いたのは何故だ?それと、座標って、座標って何だよ。ssについても教えろ。どういう意味なんだ。まだ訊きたい事はあるぞ。えっと……」

 

「ちょっとちょっと。そんな凄い剣幕で来られても。胸ぐらも掴まないで。えっちぃよ?」

 

「黙れ詐欺女。いいから質問に答えろ。」

 

「黙れって言ったのは誰かにゃ~?」

 

「アイドルを痛めつけるのは気分がのらないが、詐欺師を痛めつけるのは良い気分だろう。最初はその小賢しい事ばかり発言する口からいく。取り敢えず顎を外そう。」

 

「ま、待って待って!?そんな本気で怒るような事したの未来のあたしは!?」

 

「質問に答えろっつってんだよ。」

 

「マジか……えっと、こっちも質問していいですか?」

 

「何だ。」

 

「原液って何?」

 

「しらばっくれるのもいい加減に……!」

 

「違う違う!!ほんとに知らないんだって!!」

 

「濾過蒸留溶液ってやつだよ!」

 

「ただの水だよそれ!!」

 

「嘘を……っ!」

 

「いやいや!!名前!!名前からして水でしょ!!」

 

「……」

 

「純度の高い水を個人的に作ったの!!てかなんで存在知ってんの!?部屋に飾ってる筈なんだけど!?」

 

「……遡行の、目的は。」

 

「目的なんてないよ。」

 

「は?」

 

「え?実験でここに来たんじゃないの?」

 

「げ、原液を回収しろって言われて、」

 

「だからその原液って何?」

 

「人を本能的にする薬……」

 

「そんなのつくれる訳ないじゃん。」

 

「……」

 

「キミはここを『小説』かなにかの世界だとでも思ってるの?ねえ?」

 

覗き込むように志希は問う。

 

……違う。

 

《嘘つきには騙されるな。》

 

《志希と晶葉は信じるな。》

 

違うのだ。

 

「それにしても未来のあたしは不敬だった感じかな。実験になると自分を見失っちゃう性質なんで。てへぺろ。」

 

頬を人差し指でかきながら、目を伏せ、落ちた声質で呟く。

 

『根本』から違うのだ。

 

《「皆すっごい良い反応してくれて!楽しかった!」》

 

《「良い機会だしキミに自慢しちゃお~ってのも、確かに一つ!」》

 

「ごめんね。」

 

崩れた笑顔でそう謝られた。

 

……まるで『一ノ瀬志希の皮を被った別人』と話しているようだ。

 

信じるなと言われたり騙されるなと書かれたりするみたいに、もっと怪しくてあやふやとしていて。

 

周囲の反応を異常に楽しんだり、小さな子どもみたいに何度も自慢をしたりする享楽主義者のような女。それが一ノ瀬志希。

 

酷い評価ではあるが、彼女は人を心配しない。よっぽど大事な人でない限りは弱さを見せない。

 

フレデリカや飛鳥。彼女達と俺は志希にとって優先度が違う。俺は、下も下の最底辺だろう。

 

なのに。

 

「許してほしいな。」

 

実際と認識の齟齬と言われればおしまいだが、生憎これでもプロデューサーだ。アイドルのことは理解しているつもりである。

 

全く違う。別人である。まるで多重人格だ。

 

(…………多重、人格……)

 

《「昔陸上やってたからな。」

 

……?何で俺嘘ついてんだ?》

 

 

 

(……まさか、)

 

 

 

隣にいる志希の真上を凝視する。

 

注意して、見る。

 

 

 

すると突然、俺の目の前に『手』が現れた。

 

 

 

驚いて尻餅をつく。

 

(どうやら。)

 

再度その方を見ると、そこには、臍の緒のようなもので志希と繋がっている幽体がいて。

 

(ビンゴみてえだな……っ)

 

そいつは鬼の形相で俺の体を引っ張ろうとした。勿論幽体だから手がすり抜けて失敗した。

 

しかし何故か俺は、俺の精神は体の中から引っ張り出されてしまったようで。

 

(ちっ……!)

 

自分もまた相も変わらず幽体となった。

 

(お前が……未来の志希が……っ!)

 

憎悪を込めに込めて睨み付ける。と、幽霊の志希が発言する。それはもう嬉しそうに。

 

「ギリギリ間に合ったっ!」

 

それと同時に緒が切れて。

 

ヘリウム風船の如く幽体が空へ浮き出し。

 

「さて、プロデューサー。」

 

酩酊と眩暈を共にして。

 

「お望み通り、答え合わせをしようか。」

 

_____

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

懐かしい日々だ。六人のアイドルの担当だった頃の、実に懐かしい。

 

「気も、力も、どっちも抜くつもりはないから。本気でやらなきゃ楽しむ事だって出来ない。」

 

一番後から事務所に入った凛は殊勝な奴で。いつだって俺は彼女に支えられてた。

 

「ロックはカッコ良さの指標じゃないよ!本気で生きてるかどうかの指標なんだ!魂の叫びって、言うもんね!」

 

五番目に事務所に入った李衣菜は探求者だった。自己を常に追い求めていたんだ。

 

「大切な思い出はこうやって写真に残していくんです。そうすれば未来で楽しさを反芻できますから。」

 

四番目に事務所に入った藍子は博愛的だった。彼女が六人をまとめてくれていた。

 

「ただの波形でしかない音が人を動かすんだ。凄いと思わないか?」

 

三番目に事務所に入った夏樹は指導者だった。俺は彼女の隣に立てる事を誇りに思ってる。

 

「特別じゃなかったからアタシは今ここにいる。才能がなかったからアタシは今を楽しめてる。ボンクラスターターだってスーパースターになれるんだ。」

 

二番目に事務所に入った加蓮は等身大だった。二人三脚で彼女とはやってきた。

 

そして俺の最初の担当は。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「まゆに隠し事してますよね。」

 

してないよ。

 

「嘘。」

 

本当。

 

「でも辛そうです。」

 

辛そう?

 

「はい。まるで、」

 

 

 

 

 

《全部に絶望してるみたいで。》

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですかプロデューサーさん……?」

 

大丈夫。大丈夫だよ乃々。

 

「でも、それ、」

 

何でもないよ。気にしないで。

 

「えっと、あ、あの、」

 

レッスン遅れるよ。ほら。行って。

 

「……は、はい…………」

 

誰にも言っちゃ駄目だよ。

 

「…………その、」

 

 

 

 

 

《リストカットの跡、ですか?》

 

 

 

 

 

「……?プロデューサーが電話越しに怒鳴ってる?」

 

もう切りますよ。輝子の送りがあるので。

 

「私の話か……というかプロデューサー、私に気づいてない……いつものことか。」

 

……あ?

 

(か、顔つきが変わった。どうしたんだろう。)

 

脅してんのかお前。

 

(脅し?)

 

そうか。分かった。

 

(…………え?聞き間違いじゃないよな?プロデューサー、今、)

 

 

 

 

 

《やってみろ人殺しが、って。》

 

 

 

 

 

×




早くコメディしたい。


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第三章 ウソの裏にあるホントは残酷でいて悲しいホントなんだとあたしは思うな。
好きなんて言葉よりも、嫌いって言葉の方が信用できるのは人間の欠陥だと思う。


(まだまだ話は展開していきます)


変わりなく酒酔いから覚醒した俺は周りを見渡す。質素な空間にポツリと置いてある大きな機械は湯の沸きだつ様な音を携えてそこに君臨している。

 

目の前には一つの椅子。そこに座すのは黒のカットソーとホットパンツというラフな姿な志希。

 

薄暗い部屋には物が全く無く、あるのは遡行用の機械と二つの椅子のみであった。

 

志希の部屋であるようだが、あの時見た志希の部屋とは違う。似ているが違う。いるはずの晶葉がいないし、複数個あった細かな機械群もない。

 

自分を観察する。幽体ではない。きちんとプロデューサーである俺本人に戻っていた。そして何故か俺は縛り付けられているかのように座する椅子から動くことができない。

 

「……動けないんだが?」

 

精一杯の笑顔で彼女にそう言う。皮肉を込めて。

 

「動けないように『設定』しておいた。」

 

弱々しい笑顔で彼女はそう言う。皮肉を感じない。

 

「設定ね。」

 

「うん。設定。」

 

「そうか。」

 

「うん。」

 

「……」

 

「……」

 

…………訪れたのは沈黙。

 

何故か黙ってしまう。

 

重苦しい雰囲気にあてられて、今までバカみたいに軽かった俺の口は開かない。

 

まさしく閉口。

 

彼女もいつもみたいな有頂天テンションではなかった。押し黙るばかりである。

 

これもまさしく、平行状態だった。

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

志希は徐に口を開いた。ただ散文的に。何かを圧し殺しながら。

 

 

 

 

 

「まあ聞いてよ。与太話みたいなあたしの前置きをさ。」

 

「そうだなあ…………いざこうなってみると話そうと思ってたことって全部吹っ飛んじゃうねー。二、三年前までこんなことなかったのに。あたしも絆されちゃったなあ。」

 

「って、違う違う。この話はさすがに脱線しちゃダメだ。」

 

「えっと……プロデューサーは途中で疑問に思ったよね。色んなこと。」

 

「遡行って何だろう。原液って何だろう。座標って何だろう。ssって何だろう。人格が変わってるのは何故だろう。抜けてる記憶があるのは何故だろう。意味の分からない行動を自分や自分以外の人達が起こしているのは何故だろう……」

 

「軽ーく思い出せるのはこんな所だけど、あたしが知らないだけでまだまだ沢山あるんじゃないかな?」

 

「そーゆー疑問に気づいた時は大慌て?まるで世界の真理を見つけてしまった衝撃のよう?どっちかな。」

 

「どっちかはあったと思う。当然だよね。原題に対する反駁に変わりないんだもん。」

 

「んで、疑問の解決を優先するのは人としてなんら不自然ないワケで。」

 

「そういえば遡行前はプロデューサー、不自然だったよね。それは後でいいか。うん。」

 

「兎に角、世界の真理にも似た疑問。」

 

「そんな数多の疑問にプロデューサーは、キミは目をとられすぎたの。」

 

「とはいっても何で気づけなかったの!?とか、怒る気はないよ?」

 

「誰だってそんなの気づけない事ぐらいは知ってるから。」

 

「もっと初歩的な所。つまるところ、原初点を。」

 

「ねえ。」

 

「いくつか質問するから、答えて?」

 

 

 

「キミが覚えてる最も昔の記憶は?」

 

 

 

……志希と周子と、あのレッスンルームで騒いだ記憶。

 

 

 

「うん。じゃあ、それは何日?何曜日?」

 

 

 

…………知らない。

 

 

 

「知らない?覚えてないの間違いじゃない?」

 

 

 

……いや。覚えてない、じゃなくて、知らない。知らないんだ。

 

 

 

「そっか。なら、家族の名前。」

 

 

 

……知らない。

 

 

 

「自分の家の住所。」

 

 

 

知らない。

 

 

 

「お給料。」

 

 

 

知らない。

 

 

 

「夜ご飯。」

 

 

 

加蓮と食べた記憶以外は何もない。昨日『夜ご飯を食べたか』さえ知らない。

 

 

 

「……自分の名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………『知らない』…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロデューサー。今どんな気持ちかな。」

 

……死刑宣告された人の気持ちだよ。

 

「そんなんだろうね。」

 

俺は、記憶喪失なのか?

 

「不正解。」

 

あっそ……

 

「……これあたしが全部仕組んだものなんだって言ったらどうする?」

 

……そんな嘘はどうでもいいから勿体ぶってないで真実を教えてくれよ。どうせまだ隠してるんだろ。なんかでけえこと。

 

「にゃはは。バレた?」

 

お前、俺が何年志希を担当してると……担当……して……えっと……

 

「十三ヶ月だよ。」

 

……すまん。

 

「…………ごめんプロデューサー。そろそろあたし泣いちゃいそうかも。」

 

勝手に泣いとけよ。

 

「酷い言い草!志希ちゃん怒った!やっぱまだ泣かない!」

 

そうか。それが助かる。

 

「自分勝手だー。」

 

そんなことはない。

 

「んふふ…………あのさ。」

 

うん?声色変えてどした?

 

「もうそろ、本題入る。」

 

……おう。

 

「曲がり道とか嫌いだから真っ直ぐ行くよ?」

 

……

 

「作者って言って、プロデューサーは理解出来る?」

 

……ああ。トチ狂ってメタフィクションやろうとした俺の妄想の産物か。

 

「逆。」

 

逆?

 

「そう。逆なんだ。」

 

何が?

 

「苦しいけどさ、なんとなくは分かってたんじゃないかな。」

 

え?

 

「皆都合が良かったでしょ。驚く程円滑に話が進んでいったでしょ。」

 

……

 

「それでいてテキトーだったでしょ。思考、行動、言葉に一貫性が無かったでしょ。」

 

……

 

「処女作みたい。まるで。」

 

ど、どういう意味

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作者(キミ)がプロデューサー自身で、貴方(プロデューサー)はただの妄想の産物って意味だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……??

 

「この世界は作者(キミ)の妄想によって構築された世界。」

 

 

「ショートストーリー、つまり『ss』方式で考えられた物語でしかない。」

 

 

「『やってくれたな、一ノ瀬ェ!』から『常務の美城だ。双葉杏、君に話がある。(しかし内容がないよう……ふふっ。)(最後にふふってつけて私が言った事にするの止めて下さい。)(はい。)』まで、展開も登場人物も何もかも、プロデューサー自身の頭の中で決められたもの。」

 

 

「ここはプロデューサーの妄想世界。晶葉ちゃんに協力してもらってあたしは干渉できてる。」

 

 

「……ずっと全部コンピューターで見てきたからさ。分かるんだ。杏ちゃんとの車内騒動とか。加蓮ちゃんになって騒ぎを起こした事とか。今も『?』なんて一字が打たれ続けてることとか。」

 

 

「否定しないの?志希の言ってる事は支離滅裂だって。そんなの答えじゃないって。前の話みたいに突っ掛かって来ないの?」

 

 

「来ないというか一種の防衛機制だよね。真理はストレッサーで認めたくない?」

 

 

「真実求めてた癖に知ったら乱数。哀しい人工物の悪あがき?」

 

 

「そんな機械みたいに『?』だけだなんてあたしの話に信憑性持たせちゃうだけなんだけど。」

 

俺は妄想の産物なんかじゃない。

 

「お。やっとコンピューターにきちんとした文字列が。」

 

ふざけるな。いくら志希とはいっても許せる事と許せない事がある。

 

「あー……勘違いしてる?」

 

支離滅裂だ。それは答えじゃない。

 

「あたしが今話してるキミは、本物のプロデューサーだよ。作者さん。」

 

 

「よく見て。プロデューサーの会話部分。『「」』がない。ほら思い出して。」

 

 

「加蓮ちゃんの時とか。忘れてないでしょ?だって二人は……っと。これは秘密なんだっけ。」

 

やめあああ***うえ

 

「錯綜した『好き』だらけの現実より理解不能な『好き』だらけの超現実。」

 

*やめ*_い_*(*

 

「記憶を抑え込み、妄想に逃げ、自分が大好きな『笑えるメタフィクション』と『ミステリーにあるような伏線回収』を織り混ぜたオリジナルストーリー。」

 

**【⊂<>*や**だ

 

「そんな現実逃避もここで終わり。」

 

けさ__な___いで_______

 

「さて。こっからはちぐはぐじゃ済まない。」

 

「脳ミソでテキトーに創られた、辻褄の合わない勢いだけの物語なんて発生しない。」

 

「奇跡なんてくそくらえも、起こり得ない。」

 

「もう消え始めてるこんな脳内妄想は捨てよ。」

 

「無意識下で、もう『その覚悟』は出来てるんだから。」

 

「帰ろ?」

 

「現実に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××深刻なエラーが発生しました×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安全の為、自己シャットダウンを開始します




やっと60%くらい本編が終わった。あと二話で残りの40%……キツい!無理!もっと伸ばす!ごめん!一応俺も早くコメディしたいんだ!こんな意味不明シリアスなんかやるよりもさ!(多分今年中はシリアスで終わりそうという悲しき予知)


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目を背けるよう、貴方に依存していく。そして貴方も、アタシに依存していくの。

「素敵な共依存を壊さないでくれない?」



知らない天井がそこにはあった。まるでドラマのようだった。しかしこれがドラマでないことを俺は知っている。妄想でなく、現実であることを俺は知っている。真白い清閑とした空間がそれを物語っている。

 

ぴっ、ぴっ、と音が聞こえて、その方を見れば彼女の姿が。

 

一ノ瀬志希はパソコンの含む何かしら四つの機械と三つのモニターを観察、操作していた。

 

「バイタルサインは正常だから。動かずに待機してて。」

 

こちらを一瞥もせず淡々と言葉を捻り出される。カタカタ。キーボードを叩く音が対比的である。

 

俺はベッドに寝かされていた。腕と脚が拘束され、心臓部や頭部に病院でよく見るワッペンみたいな物を付けられた状態で、だ。

 

俺の服装はスーツに変わりなく、彼女の服装も頭の中のものと変わりなかった。

 

部屋は違うようである。遡行装置は無く、そもそもの間取りが先程と比べて狭い。椅子は四つあり、俺が今寝てるベッドの他に布団がある。試験管やビーカーの入った棚もあって、比べて考えるとやはり生活的な空間であった。

 

(……『騒々』しいから『想像』ってか。つまんね。)

 

受け入れがたい事実である。これまでの全てが俺の妄想だったなんて。

 

(でも妄想だったら自分で気づかないものか?)

 

というかまだ混乱している。

 

当たり前だろう。急にお前の過ごしてきたその世界はお前自身の妄想なんだ、なんて言われたら。頭が痛い。

 

(…………何故志希はこんなに詳しいのだ。)

 

ずっと見ていたと言っていた。あのコンピューターで、ずっと。

 

何故?何故見ていた?

 

「なあ、志希。」

 

「待って。あと十秒。」

 

 

 

 

 

「うん。おっけ。質問だよねプロデューサー……ってその前に拘束具外すよ。邪魔でしょこれ?」

 

「あ、ああ。」

 

椅子から立った彼女は宣言通り枷を外していく。手際が良い。

 

「……拘束する必要なんてあるのか?」

 

「あるよ。あの妄想と連動して暴れられたら大変だし。」

 

「そうか……」

 

作業が終わる。手足が自由になった。

 

(不思議と、こうやって体を動かすのは久しぶりな気がする。)

 

妄想の中で生きていた間、俺はずっと眠っていたのだろう。

 

ベッド脇に座るようにして、訊く。

 

「どのくらい俺は寝てた。」

 

「大体18時間と27分。んで、現在は10月20日17時36分。窓とか時計無いし、記憶も抑えてるから覚えてないでしょ。教えておくよ。」

 

「記憶を抑えてる?」

 

「記憶喪失状態から突然全部の記憶が戻ってきたら身体と精神に異常を来すから。隣の部屋にある機械で抑えておいたの。」

 

その言葉に間違いは無く、俺はまだ部分的記憶喪失である。名前すら思い出せない。

 

「……」

 

「だからさっき訊いたあれこれもまだ思い出せない筈だけど大丈夫。安心して。」

 

頭が痛い。答えのようで答えではないからだ。直感だが違和感を持つ。鋭い直感だ。予感ともいえる。

 

(はぐらかしてる。)

 

「……こうなった経緯は。」

 

志希の顔を見据えて訊く。

 

「?」

 

「何で俺がお前の家にいて、さっきまで妄想の世界にいて、記憶が無くて、そして志希はこの事に詳しい?」

 

根本問題の解決を要求する。

 

「あー。分かった。説明する。」

 

それに志希は困った感じで返す。

 

「先ずキミがここにいる理由。それはキミが頼んだから。」

 

「頼んだ?何を?」

 

「仕事に疲れたから良質な休日を過ごしたい。どうすればいい?って。」

 

「……それがどうやってここにいる理由へ繋がる。」

 

「丁度あたしと晶葉ちゃんで共同制作していた機械があってさ。それがこのコンピューター群。」

 

「……」

 

「簡単に説明すれば『他人に成りきって行う人生のシミュレーション』。そうだね……旅行にも似てるかな。」

 

「……」

 

「それは今持ってる記憶を別の造り出された記憶と入れ替えて、対象者の望む世界、つまりその人の持つ妄想の世界を本物の世界としてシミュレートし、一定期間をその世界で過ごさせるんだ。」

 

「……」

 

「キミにこの機械について説明したら食い付いてきたよ。面白そうだ!なんて言って。」

 

「……つまり、俺自身が望んでここに来て、結果こうなったのか。」

 

「うん。妄想の世界にいたのも記憶が無いのもそういうこと。あたしが詳しいのは緊急時に対応するため監視してたから。晶葉ちゃんは別の部屋で仮眠中。」

 

記憶を入れ替える前の俺はこの状況になることを知っていた。そしてそれを許容した……

 

「そんな悲観しないで。結構楽しかったでしょ?まるで物語の主人公みたいになれて。」

 

……楽しかった。語弊はない。言うとおり、とても楽しかった。

 

「今もまだそれが続いてるから懐疑的になってるだけ。元の記憶が戻ったらそんなの無くなるよ。」

 

俺はまだ混乱してるだけなのか……?

 

「もう疑問なんて抱かなくていいんだって。ここは現実。つまんなくて変わり映えしない現実なんだ。」

 

……

 

「ね?」

 

「……まあ、そうだな。」

 

「よし!暗い顔やめやめ!」

 

椅子から立ち上がり大きい声で叫ばれる。

 

「うるさい。一応まだ頭ふわふわしてんだから。思考が覚束ねえんだよ。」

 

「ごめんごめん……あ!喉渇いたでしょ?半日以上も寝てたし!」

 

「そうだな。珈琲くれ珈琲。」

 

「ブラック?」

 

扉に向かってる志希にそう問われる。

 

「おう。頼むわ。」

 

「イエッサー♪」

 

ガチャリ。バタン。志希は部屋の外へ。

 

俺は一人ただ佇む、道理などない。

 

「……」

 

体に付いているワッペンを取り外す。ぴっ、ぴっ、という微かな音が消えた。

 

立ち上がり、パソコンのもとへ。ぴーっと高音で鳴り続けるそれを止めるためである。

 

三つのモニターの内、左のモニター。心電図の映るそれの電源を切る。暗転。

 

真ん中のモニターは先程まで何かが映っていたのに今はもう真っ暗である。右も同様。珈琲みたいな色だ。暗い。

 

(思考が覚束ない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。)

 

これは決して口実ではない。言い訳でもない。

 

 

 

 

 

四つの機械の内のパソコンを開こうとする。しかし鍵がかかっていて中に入れない。当然パスワードなど分からない。

 

それは後回しにし、パソコンの両隣に対称的に置かれた二つの機械を注目する。何十ものコードがその二つの機械に繋がれていてそのコードの先は隣の部屋へ。

 

孤立した最後の機械は真ん中と右のモニターに繋がっている。脳波か何かを調べていたのであろう俺の頭に付けられていたワッペンのコードもそれに繋がっている。

 

(ちっ、隣の部屋に行くか。)

 

足音をたてないよう歩き、扉のもとへ。ドアノブに手をかけ、回す。

 

(……開かない?)

 

ガチャガチャ、ガチャガチャ。繰り返す。

 

(駄目だ。開かない。)

 

鍵がかけられているらしい。外に出れない。

 

(志希……何がつまんなくて変わり映えしない現実だ、ふざけやがって……っ!)

 

ヤバい。これはかなりヤバい。服をまさぐっても携帯は無い。この部屋にもない。しかも防音ときたもんだ。完璧に閉じ込められた。

 

(騙された。あいつに騙されて監禁された。記憶もない。脱出は出来ない。しかも脈絡が分からない。)

 

ポロポロと単語が沸いてくる。妄想で起きた遡行よりもヤバい状況かもしれない。

 

(というかあれが妄想だったのかさえ怪しくなってきた。)

 

どれが本当でどれが嘘なのか判らない。混乱が更に深まる。

 

(出る。そうだ。出なきゃ。一先ずこっから出て警察行こう。)

 

どうやって。どうやって警察まで行く。

 

(……パソコンしか、ないか。)

 

頑張りゃネットかなんか使って呼べるかもしれない。気合いでパスワードを解こう。

 

再度パソコンに注目する。四桁のパスワード。案外普通なもので安心する。

 

(三回まで、か。)

 

取り敢えずあいつの誕生日。0530。

 

違うらしい。

 

……ケミストリーらしいかは分からんが、素数番。2357。

 

違う。

 

(無理だろこんなの!わかんねえよ!)

 

全く手掛かりも無く、残り一回。どうしようもない。適当になんか番号を……

 

 

 

 

 

(……なんか俺、危機感ねえな。)

 

 

 

 

 

自分を冷静に鑑みて気づく。監禁されてる癖に平常通りな俺。パスワードが分からなかったら出られないかもしれないのに適当に済まそうとする俺。

 

(まるで。まるで()()()()()であるかのようで。)

 

変わる事のない()()のようで。

 

(ずっと()()()()()()()ようで。)

 

何故か頭に浮かんだ1117の数字に、そして、パスワードがそれであった事に恐怖を覚えながらそんなことを思った。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

指紋認証で部屋に鍵をかけた後、リビングにあたしは向かった。

 

(疲れた……)

 

プロデューサーの言ってた飲み物でも用意しよう。そう思いリビングに入ると、

 

「終わったのか。志希。」

 

そこには牛乳を嗜む晶葉ちゃんがいた。白衣でパイプ椅子に座る姿は様になっていて少し面白い。

 

「いんや。まだ。」

 

「それじゃあ何をしに?」

 

「珈琲でも飲もうかなって。二人分。」

 

「……なんだ。もう終わり間近じゃないか。」

 

終わり間近ねぇ……

 

そういえば晶葉ちゃんには暈して伝えてたんだっけ。

 

(あんな結末、()()()()()()()()()()は知らなくていい。)

 

「うん。」

 

「そういえば助手にはなんて伝えたんだ?」

 

「……半分ホント、半分ウソかな。」

 

「記憶は?」

 

「なーんも。はぐらかした。」

 

「しかし()()()()()()()()()()()()()()だろう。」

 

「気づいてない。」

 

「……鈍感は相変わらずか。」

 

「ね。」

 

カップの中で揺れる真っ黒な珈琲。プロデューサーの見てた闇に似ている。

 

(一番は、あたしの闇かな。)

 

『独占欲なんてあたしには似合わない』

 

これは誰のセリフだっけ。まあいいや。忘れちゃった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

パソコンの画面に表示されたのはたった一つの情報だけだった。

 

英語で書かれた論文らしきもの。全く読む事ができない。

 

どうやら画面はこれで固定されてるらしい。他のページへの移動は不可。

 

(…………左クリック。()()左クリックをすれば良かったはず。)

 

益々不気味である。頭の中に答えが浮かんでくるのだ。いつの日か志希が言っていたギフテッドのよう。

 

左クリックをすると全文が日本語訳されていった。もう一度クリックすると中国語。更にもう一度するとロシア語。ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語……

 

様々な言語に変換されていく。

 

(なんの意味が……)

 

一周して日本語に戻ってきた。ぱっと見た限りこれは論文ではなく報告書らしい。最初の部分から読む。

 

「意識転移ないしは脳回路構造模倣器機による脳部電気信号の外部へのコンピュータシミュレートに関する諸結果と副次的効果……」

 

(分からん。日本語で言ってくれ。)

 

しかし志希の言っていた『他人に成りきって行う人生のシミュレーション』というのはこれを読解していくとホントらしいことが分かった。

 

(……俺の写真が載ってる。名前も書いてある。ラッキーだな。)

 

下にスクロールするとそこには俺の写真があった。被験者と書いてある。そして隣にも見慣れた写真が。

 

(…………は?)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

あたしが珈琲を舌で転がしていると牛乳を飲み干した晶葉ちゃんが質問を投げかけてきた。

 

「例の()()()とやらにはどうやって伝えてあるんだ?」

 

そこをついてくるか。出来れば訊いてほしくはなかった。

 

(でも。)

 

出来れば、である。別に聞かれても影響を与えないファクターだ。だから。

 

もう終わりに近づいてる事だし好き勝手やっちゃうよ。それくらいは許してね?

 

「それ、ウソ。」

 

ニコニコ。笑顔は絶やさない。アイドルだもんね!

 

「…………驚いた。私にもウソか。」

 

目を見開かれる。

 

「そ。」

 

「……いつもの気紛れでは無さそうだな。」

 

「頼まれたからね。あたしが協力者の方。黒幕はあっち。逆、逆。」

 

呆れた顔をされる。晶葉ちゃんだけに。

 

「うーむ。だとすると余計判らない。君を手懐けるなんて一体何者だ?」

 

わーお、酷い評価。あたし完全にペット扱い。ワンワン。

 

「事情が事情で。」

 

「もしや……()()()()()()()()()もウソか?」

 

気づかれた。あれ?あたしウソつくのもしかして下手?

 

あたしは包み隠さず本音でいく。

 

「うん。」

 

「私にどれだけウソをついた?」

 

静かな声色でそう訊かれる。それはウソの追随を許さない。

 

「八割……いや、八割五分。」

 

「……私だって人だしまだ中学生だ。嘘を吐かれれば悲しさは強く感じるぞ。」

 

俯いてそう言われた。

 

「ごめん。でもそれは許してほしい。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

あの報告書の情報によれば頭に付いてたあのワッペンで俺の妄想の世界は構築されていたという。

 

その通りに頭のそれだけ付けてみる。すると真ん中のモニターには映像が映り、右のモニターには文章が載った。

 

続けて孤立した機械のダイヤルを弄くる。これで戻る時間などを設定できる。

 

(それら以外にもあの報告書には驚くべき事が書いてあった。)

 

それは……

 

 

 

 

 

「晶葉ちゃん。」

 

「なんだ。泣いてはないぞ。」

 

「あの機械ってさ、人の妄想を元に作った世界で遊ぶってのが本質だったでしょ。」

 

「ああ。」

 

「実はもう一つの事実を発見しちゃったの。」

 

「?」

 

「あれね。実は、」

 

 

 

 

 

プロデューサーだけ、ホントに過去へ戻れるの。

 

 

 

 

 

ダイヤルの設定が終わった。

 

(何故俺だけ戻れるのか。それは分からん。だが今はそんなことどうでもいい。)

 

『あいつ』の元に行って、訊かなきゃならん事がある。

 

(戻る過去、それは……)

 

 

 

 

 

「どういうことだ。つまりそれはタイムリープが現実に起こったということか。」

 

「信じられないでしょ?」

 

「……いや、ホントらしいな。」

 

「……なんでそんなすんなり……ああ。この地鳴りでか。」

 

「いいのか。いかせて。」

 

「うん。多分『計画通り』だよ。」

 

「なんなんだその黒幕は。驚嘆に値する知性だな。」

 

「だよね。」

 

「……誰かは、やはり教えてくれないか。」

 

「ん?ああ、いいよ。」

 

「……突然、どうしたその気の変わり様。」

 

「別に。ここまで来たら志希ちゃんのやりたいようにやってって彼女に言われただけ。」

 

「そうか……それで?」

 

「うん。黒幕はね___」

 

 

 

 

 

俺はやはり驚いた。まさか自分の見ていた妄想の中に実際の記憶があったなんて、と。

 

一つではない。覚えているもので四つあった。

 

(志希の説明も大方本当の事だった。)

 

対称的な二つの機械に情報を入力していく。

 

(何より。注目すべきは。)

 

俺の名前。そして一人の協力者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下にスクロールするとそこには俺の写真があった。被験者と書いてある。そして隣にも見慣れた写真が。

 

(…………は?)

 

俺の名前。

 

(英一。)

 

そして隣の写真の下にはこう書いてあった___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塩見周子(被験者の妹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が戻るのは最初の話(始まり)である。




気づいた人は気づいたと思います。志希と晶葉が共同制作した機械は映画『トータル・リコール』に出てくるあれが元となってます。


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始まり

「空虚な孤独のどれだけ救われる事か。」



酩酊感から解放され、視界が開けていく。共に手元の重みが増していく。

 

その方を見れば見慣れた志希の姿。俺は彼女の首根っこを掴まえながらプロダクションの廊下を歩いていた。

 

足を止めて手も離す。念のため体を見渡すが異変はなく、自分自身の体であった。

 

早速レッスンルームへ、妹の元へ歩を進める。

 

と、今度は俺が彼女に首根っこを掴まれた。

 

「ぐえっ……何すんだ志希ィ!」

 

振り返り声を荒げる。

 

じっと俺を見据える彼女。その漂う威圧感にたじろぐ。

 

だがそれは霧消していき、

 

「仕返し。」

 

舌をぺろっと出して謝られる。あざとい。

 

「仕返しってお前、」

 

俺はそれに抗議するため口を動かす。が、その途中、俺の文言は遮られた。

 

「過去を変えたら一気に記憶戻ってくるからそこだけは留意しててね。」

 

そう言って彼女は俺をレッスンルームの方へ押し出した。

 

「知ってるのか!?」

 

驚きに声をあげる。

 

「さあ?あたしは用事あるから。」

 

「おい!?」

 

しかしながらそれは無視され、そそくさと猫のように彼女は何処かに行ってしまった。

 

(……留意しとくよストレッサー。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

あの時と変わらない様子のレッスンルームの扉を開ける。

 

「おっ!いらっしゃーい。待ってたよー兄さん?」

 

そこには勿論、塩見周子がいた。ご満悦な様子である。

 

「よお。黒幕。」

 

開口一番。扉を閉め、周子に近づきながら発言する。

 

「黒幕て大袈裟な。こんなの遊びじゃーん。」

 

「遊びねえ。」

 

さきまで見ていた報告書。未来の志希の部屋にある報告書。あれには()()()()()()()()

 

立派な風貌でたてつけてある癖に、中身は俺の知る志希らしい、おちゃらけた口語文で書かれたエッセイだった。

 

周子についても記してあった。

 

この遊び、暇潰しの提案者であり仲間。首謀者だ。

 

丁度良い所にある憎たらしい兄を標的とした。

 

でかいドッキリ。周りを騙す事になるしプロデューサーには多大な迷惑をかける事にもなる。

 

まあいいか。兄だし。

 

こんなものだ。

 

俺が言いたいのはこの扱いだとか評価だとかではない。

 

そんな今の俺にはさっぱり記憶にない事などどうでもいい。

 

やはり直感、というより予感なのだ。

 

何よりそんなものが無くてもおかしく思うだろう。

 

「回りくどいんだよ。」

 

何故こんな面倒臭い遊びをするのか単純に分からない。

 

「志希ちゃんもあたしもプロデューサーも。皆が楽しむ為にはこれしかなかったんだ。許せ。」

 

志希を真似ているかの如くちゃらけておどけて。そうやって暈して答えられる。

 

「回りくどいのはこの遊びに対して言ったんじゃねえ。お前の事だ周子。」

 

「……」

 

百八十度。途端、無表情で沈黙される。

 

けれど俺は構わず話し続ける。鬱憤を晴らすように。

 

「なんかさ。俺、ここに来るのが決まってたみたいに思えてならないんだわ。」

 

「今までの流れがまるでこの結末に収束するためだけに存在していたようにさえ思えるんよ。」

 

「途中、いや、最初からだった。ずっと予感があった。例えばここ。最初の話では志希がここにいることを知ってた。他の部屋には目もくれず、だ。例えば乃々。全くもっての偶然も今になれば分かる。予感だった。予感から見つけ出せたんだ。」

 

「例えば遡行理由。何が起きても遡り続けた。止まっちゃならない予感からだった。ひたすら、マグロみたいに。」

 

「習慣。それか経験済みなんだよ。」

 

「何度でも言うぞ。回りくどい。」

 

「言いたい事があんなら率直に言え。そこだけは志希を見習った方が良い。」

 

「腹の内。見せてみいや周子。」

 

言いたい事を言い終える。周子はやはり無表情で俺の顔を見つめていた。

 

それに反抗する。

 

「「何見てんだ。」」

 

「「同じ事を……」」

 

「「時間稼ぎ……おい、一言一句違わないなんてあり得ないだろ、って、は?」」

 

……周子は俺と同じ事を言い出した。タイミングを被らして、間も完璧にして。

 

(なんだ。どういうことだ。何故分かる。)

 

俺が理解不能な現象に戸惑っていると、突然周子はニッコリと笑顔を作った。入室時とは違う不気味な笑顔を。

 

そして両手を目一杯広げその手を自身の顔の前に持っていく。

 

「なーんだ。」

 

質問される。

 

(……?)

 

「「分からん。」」

 

「「またか!!いい加減に……っ」」

 

唖然とする。まただ。また全部同じ事を。

 

心が見透かされてるようで俺は戦く。

 

「あのね兄さん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

最中、彼女が感情を露にして言葉を紡ぎ出した。

 

「あたしに()()()()()で。」

 

「あたしに()()()()()()()()()()()()()()()で。」

 

「あたしに()()()()()()()()()で。」

 

「分かった?」

 

「ほら返事はどうしたん?」

 

アイドルらしく笑顔は絶やさず、しかし、アイドルらしからぬ笑顔を携え続け、周子は俺の返答を促してくる。

 

「……はい。」

 

その言葉を俺は肯定しなければいけない気がした。やはり予感は止まない。

 

そして彼女はまた理解不能な事を言い出した。

 

 

 

 

「……ここまで予定調和だから。()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

面白い物語が好きだった。

 

悲しい物語や頭を使う物語なんかよりも好きだった。

 

明快で、気分が晴れる。

 

そんな面白い物語が好きだった。

 

いつか俺もそんな物語を書きたいな、なんて夢想した。

 

小さい頃、俺はアイドルに出会った。

 

輝いていて、夢を与える存在に出会ったのだ。

 

感動した。子供心に重く響いた。

 

そんなアイドルを育て上げるプロデューサーという職種には特に感動し、憧れた。

 

まるで面白い物語を作る作家さんみたいだ。

 

俺も、輝く物語を作ってみたい。

 

そう思った。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「待て。なんつった。二十四周目?は?」

 

俺の疑問にすらすらと周子は答えていく。

 

「うん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だよ。」

 

「……?…………??」

 

頭が痛い。何を言っているのだ?

 

「知らない反応……やった……漸く、漸くここまで来れた……」

 

周子は貼り付けられた笑顔を外し、床に倒れ込む。

 

「やったよ晶葉ちゃん……()()()()()()……っ」

 

ボソボソと言葉を呟く彼女。聞こえない。

 

(二十四周目……何が?どういう?)

 

分からない。

 

(結局大事な事は何もわかんねえままじゃ……っ!)

 

突然の頭痛に思考が止められたからだ。

 

「それに__も__ちゃんも救えた。」

 

俺も周子と同じく床に倒れ込む。頭を抱えながら、痛みに悶えながら倒れ込む。

 

「___だ。もうあたし____」

 

目の前が暗くなっていく。

 

音が消えていく。

 

床や服を感じなくなっていく。

 

自分の汗の臭いが消えていく。

 

__

 

____

 

______

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

『キミが覚えてる最も昔の記憶は?』

 

小学生の頃、テレビを見てた。夢中になってた。そこに映ってたのはアイドル。輝くアイドル……

 

『家族の名前』

 

『自分の家の住所』

 

『お給料』

 

あんま言いたくない。それくらいは許してくれよ。

 

『自分の名前は?』

 

塩見英一。妹にアイドルの塩見周子がいまーす。

 

『夜ご飯』

 

11月16日に周子とラーメン。あいつのやつだけメンマがサービスされてた。贔屓羨ましい。

 

『りょーかい。』

 

……そろそろな感じ?

 

『意識転移の実験がってこと?』

 

うん。

 

『そうだね。もう準備万端だし。』

 

うい。

 

『……よく了承してくれたよねプロデューサー。』

 

そうか?

 

『危険性については充分話したでしょ。』

 

ああ。それか。いいんだって。

 

『そっか。』

 

どうせ今より酷くなるなんてあり得ないし。

 

『……そっか…………』

 

おう。もう疲れたわ。

 

『うん……ごめん……ごべん……ぐずっ』

 

泣かんでも……

 

『だっで……』

 

ええんやて。誰のせいでもないんやし。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

いつの事かは思い出したくもない。

 

けれどもその事自体は俺にとって凄く大切な事なんだ。

 

 

 

 

 

みくと李衣菜の二人はコンビとしてポテンシャルを秘めていた。

 

俺には二人の大成する道が見えた。

 

アイドルとして少しずつ世に知られ出して、直ぐ。

 

行動に移した。

 

結果は思惑通り。アスタリスクは期待の新グループとなった。

 

個人の実力もぐんぐんと伸びていった。

 

李衣菜は着実に広い層を。みくは堅実に深い層を。

 

アイドルとして活躍していた。

 

 

 

 

 

しかしそれも終わりがくる。

 

Masque:Radeの発足により、アスタリスクを含む全てが狂っていった。

 

 

 

 

騒々しいのが好きだった。静寂は嫌いだった。

 

今では、真逆となってしまった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

杏はいつもぐうたらしている。やる気のやの字もない。

 

とても手をやいていた。それに困ってもいた。

 

スカウトは間違いだったかもしれないなんて考えたほどだ。

 

しかし事務所の皆に愛されてるのを見ると、やはり間違いではなかったなと安心する。

 

緩和材として彼女は君臨していた。

 

彼女自身、その事を誇りに思っているらしい。そんな誇りは捨てて仕事をしてくれ。

 

まったく世話の焼ける奴だ。

 

 

 

 

 

そんな評価も昔のこと。

 

今となっては感謝しかない。

 

何故なら緩和材だからだ。

 

数少ない、緩和材だからだ。

 

ありがとう。ありがとう。ありがとう。

 

杏、ありがとう。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

なあ周子。

 

俺生きるの疲れたよ。

 

もういいよな。

 

24年も生きた。

 

そろそろ死ななきゃ示しがつかねえ。

 

こんな人生。

 

疲れたよ。

 

なあ周子。

 

先に父さんと母さんのとこで待ってるから。

 

それじゃまた。




次からやっと物語の本筋に入ります。長かった……


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N=1

事実は存在しない。解釈が存在するのみだ。



夢が叶って数ヶ月。プロデューサーとなった俺は今日も今日とてスカウトに励む。

 

社会人になった俺は大手芸能社として有名な346プロダクションに入社した。

 

思っていたより上司や同僚は気の合う人、優しい人が多かった。もっと殺伐としているものだと思っていたのだが、それは間違いだった。

 

この仕事にはやりがいがある。だってそうだろう?

 

これは()()()()()()仕事なんだから。

 

そんな事もあってこの仕事最高過ぎだろなんて最初俺は思っていた。

 

でも芸能界、やはりそこんところ全然甘くない。

 

お前が育てるアイドルに妥協はするな。候補生やオーディションでピンとくるやつがいなけりゃ街出てスカウトだ。

 

そう言われた。ピンとくる人いないですなんて口から戯れ言を溢した後に言われた。

 

……あ(察し)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(あのね!?そんなの俺には無理だよ!?だってナンパじゃんこれ!?)

 

街行く女の子に片っ端から声をかけていく。アイドルどう?ならない?あ、ダメ?そう……

 

いやいや不審者。あのね、これ不審者。交番のお巡りさんに見つかったりしたら言い逃れ不可能。

 

俺は知らない人と話すのがそんなに得意ではない。加えて女の子に耐性がない。そのため、スカウト中の俺をただ一言で評するなら、キモい。

 

アイドルプロデューサーとしてそれはどうなんだって言われたりもしたけどしょうがないだろ……モテないんだし……モテキ無かったし……

 

と、一人勝手に落ち込んでいるとクスクス笑い声が聴こえてきた。うおお恥ずかしいぃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一向にスカウトは上手くいかない。一週間やり続けて成果なしは傷付くぜ。

 

けれどもそもそもスカウトが上手くいかない理由は俺が会話下手だからだとかそういうものじゃないと言いたい。

 

ピンとくる子がいないのだ。

 

可愛い子、綺麗な子、清楚な子。

 

ここは大都会東京だ。そういう子らは沢山いる。

 

しかし彼女達に俺の求める輝きは感じない。

 

月なのだ。太陽の光を受動して光っているだけの月。

 

俺が小さい頃にテレビで見たアイドル。彼女達は太陽だった。

 

思い切り自分から光を放出する、目を焼く程の、眩しすぎる太陽。

 

当然、スカウトには精が出ない。ダイアモンドを掬い上げるのに必死になる人がいても、石ころを掬い上げるのに必死になる人はいないのである。

 

(場所、変えようかな。)

 

そう思って遊歩道、プロムナードを歩きだそうとした時。

 

「うおっ!びっくりした……」

 

下を向いて歩こうとしていたからか、前に()()の女の子がいることを気づく事ができなかった。

 

「わっ……ご、ごめんなさい。」

 

「驚かせてすみません……!」

 

手をわたわたと中空に渡らせて焦る一人。

 

心配そうに俺の瞳を見つめるもう一人。

 

二人を見て昂り、ある確信を感じた俺は呟いた。

 

「…………太陽は二つあった……?」

 

「「えっ?」」

 

心の昂りが、何に起因するものなのか。俺はまだ気づいていない。

 

 

 

 

 

小日向美穂と緒方智絵里、彼女たちは俺の最初の担当になった。

 

 

 

 

 

その後、北条加蓮、木村夏樹、高森藍子、多田李衣菜、渋谷凛の五人が更に加わり、計()()の担当を俺は持つことになった。

 

初めの一年間は彼女達と過ごした。

 

「気も、力も、どっちも抜くつもりはないから。本気でやらなきゃ楽しむ事だって出来ない。」

 

「ロックはカッコ良さの指標じゃないよ!本気で生きてるかどうかの指標なんだ!魂の叫びって、言うもんね!」

 

「大切な思い出はこうやって写真に残していくんです。そうすれば未来で楽しさを反芻できますから。」

 

「ただの波形でしかない音が人を動かすんだ。凄いと思わないか?」

 

「特別じゃなかったからアタシは今ここにいる。才能がなかったからアタシは今を楽しめてる。ボンクラスターターだってスーパースターになれるんだ。」

 

「ここから見える太陽は熊本で見る事のできる太陽と同じ筈なのに、何故か眩しすぎるんです。気を抜けば私もイーカロスと同じ様に墜ちてしまいそう。それでも私は輝くことを止められないし、止める気もありません!」

 

「いつだって周りには仲間がいます。孤独じゃありません。まるで星群みたいですよね。満遍なく照らす太陽もいいけど、静かに魅せる星々だってアイドルの形だと思うんです。……ダメ、ですか?」

 

とても充実していた。

 

時には喧嘩したり、悩んだり、立ち止まったりしたけれど皆で協力して解決していった。

 

紆余曲折の末、2月に行われた七人のミニライブはデビュー一年未満の新人アイドルが出すことなど到底不可能な利益を会社にもたらした。大成功だった。

 

「よくやってくれた皆!ほんと……ほんとに……っ。」

 

「あっれ~?プロデューサーさん泣いてる~?」

 

「泣いてるね。」

 

「そら……こんなん泣くに決まっとるやん。からかわんといてよ加蓮、凛。」グズッ

 

順風満帆という言葉がここまで合う例というのはそう無いだろう。

 

 

 

 

 

実力が認められたとかなんとか。6月になると、前川みく、双葉杏、池袋晶葉、城ヶ崎美嘉が更に担当として加わった。

 

《「お疲れ様、杏。」

 

「お疲れー……」》

 

《(恵まれた猫キャラ。……好物は魚かな。ここまで猫にマッチしてくるのだからまあ間違いないと思うが……これで魚が嫌いだったらそれはそれで、)

 

(弄るだけだな。)》

 

懐かしい日々である。

 

(十一人の担当……少し多い気もするが……まあ、やるだけやろう。)

 

新しい取り組みとして俺はこの頃からユニット発足を始めた。

 

先ずは小さく二人組などから。

 

結果は思惑通り。アスタリスクは期待の新グループとなった。

 

だがその弊害として、失敗や心配という不安的概念を俺はこの頃忘れてしまった。そして目の前の報酬に取りつき始めたのだ。

 

業界人らしくなってしまっていた。

 

しかしながら良い仲間に出会えたもんだ。

 

彼女たちは再度俺に()を与えてくれた。

 

(二つの太陽はまだ見えますか、だってよ。ポエマーかて。)

 

「……あと九つプラスしとけ。」

 

 

 

 

 

そうしてまた俺は初心へと還った。

 

業界人らしい利己的で無感情な機械を止め、プロデューサーらしい利他的で感情的な人間へと還った。

 

今になって思えばこの弊害は釈然としない。自分の身に起きた事ではあるが、一体何だったのだろうか。

 

ちょっとした()()を感じた。

 

 

 

 

 

9月。佐久間まゆ、森久保乃々、星輝子が担当に。

 

《「なら熱い抱擁はいいんだな、森久保ォ!!」

 

「む、むぅーりぃー……」》

 

しかし人数以外は変わらない日常を享受する。

 

バカな男は歪みに気がつかない。

 

鈍感は()()()()治らない。

 

10月。鷺沢文香、日野茜、一ノ瀬志希が担当に。

 

《「よお、一ノ瀬ェ?どうやら『また』何かやらかしたようだなァ?」

 

「……えっと、あー、え?さ、さあ?志希ちゃん解んないなー……」》

 

しかし人数以外は変わらない日常を享受する。

 

バカな男は軋轢に気がつかない。

 

恋慕は()()()()なお続く。

 

 

 

 

 

再度来た2月。開かれたライブは前年の数倍比の利益を収めた。特にMasque:Radeは素晴らしいパフォーマンスだった。

 

けれども俺は、感動なんてしなかった。涙なんて出なかった。

 

むしろ最低に思えた。

 

機械的、だった。

 

…………

 

俺はその年から周りに天才と呼ばれはじめた。

 

若輩者が自社、他社を問わず他を圧倒していたからだ。

 

……皮肉なんて、学生の時に慣れた筈なんだがな。

 

どうにも俺は精神が弱いらしい。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

さて、ここから話すのは今までのようなやつとは違う。

 

汚くて、本質的な。

 

結局は抗えない。

 

そんな恋の話。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「私、プロデューサーさんの事が好きです。」

 

「プロデューサーの事を考えてると、その、心臓がバクバクして、えっと、つまり……す、す、好きです!!」

 

きっかけなんて無かった。突然だった。

 

10月のことだ。

 

文香と茜に愛の告白をされた。

 

脈絡もなく、しかし本気の告白だった。

 

勿論断った。アイドルは恋愛ご法度なのだから。

 

しかし彼女達は諦めてくれなかった。

 

アピールは強まるばかりだった。

 

しかもそこに加蓮と李衣菜と智絵里も加わってしまった。

 

(加蓮……李衣菜……智絵里……なんで……)

 

「アタシ、プロデューサーさんの事大好き。たまらなく。」

 

知らぬ間に、太陽は雲に隠れてしまった。

 

()()なんて奇跡は既に消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日に日に増すアピールはストレスになった。

 

あんなに楽しかった仕事でさえ作業になった。

 

あの時感じた歪みと同じだ。

 

機械だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

俺がモテないのも当たり前か。無意識の内に自分から遠ざかろうとしてきたんだから。

 

その事に俺は気づいた。

 

 

 

 

 

そしてそんな疲れきった俺を癒してくれたのは意外にも常務だった。

 

部下の不調にいち早く気づき、労いを忘れない。

 

優しいお方だ。こんな方が自分の上司だなんて恵まれている。

 

(ありがとうございます、常務。)

 

まゆや藍子も献身的に接してくれた。

 

人から遠ざかる俺に、人から愛され慣れていない俺に、とてもよくしてくれた。

 

アイドルとプロデューサーという関係を乗り越えて、まるで友人が友人を心配するように接してくれた。

 

(まゆ……藍子……)

 

……しかしその瞳に眠る本意から俺は目をそらしていたのだ。

 

直ぐ二人の野性も覚醒した。

 

文香や茜達とは比にならない重すぎる愛に、遂に、俺は押し潰されかけていた。

 

(ただファンの皆様に申し訳ないんだ。俺ごときが太陽を曇らせてしまうなんて。)

 

自己嫌悪は毎日続いた。

 

 

 

 

 

そして恐れていた日がくる。

 

 

 

 

 

週刊誌に載ったとあるニュースに目を見張る。

 

「期待の新人プロデューサーの塩見英一とその担当アイドルらに熱愛発覚……何人もの女性を侍らせるゲス男……」

 

…………ははっ。笑えねえ。

 

(346のブランドを落としてしまったな。常務にどやされる。)

 

こりゃファンに殺されても文句言えねえな……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

この後は予想通り。

 

俺は退職を余儀なくされ、しかも担当アイドルの何人かは業界を去ることに。

 

……とはいかなかった。

 

こんな予想なんかより、よっぽど醜悪だった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

熱愛が発覚した次の日。

 

頭の中は空っぽのまま歩いて仕事に向かう。

 

会社は俺の対応について決めあぐねているらしい。

 

あのゴシップが嘘である可能性が高いためであるとかなんとか。

 

使われた写真が合成なんだと。

 

……俺が担当アイドルから求愛されてる事を重役の皆様は知らない。

 

(嘘であってほしかったよ。俺が慕われてるなんて。)

 

まあどっちにしろ俺は辞職する。

 

ファンの気持ちから考えればそれは当然の事だ。

 

あの記事がウソかホントかなんて関係ない。

 

ウソであってもゴシップが出れば、ファンは傷を負う。

 

そしてアイドル達もだ。

 

(俺にはもうこの先どうなるかが予想できない。文香や茜達がどうするのか、どうなるのか。予想したくない。)

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

このような思考をしながら遊歩道、プロムナードを歩いていると後ろから声をかけられた。

 

「あれ、プロデューサーさん?徒歩なんて珍しいですね。」

 

「……ああ、美穂。」

 

小日向美穂。初めての担当アイドルだ。

 

(そういえば近くに女子寮があったか。俺の頭は大分やられてるらしい。)

 

「朝早いな。」

 

「たまたまです!」

 

朗らかに返答される。

 

……美穂はまだ知らないらしい。熱愛報道の事を。

 

「そうか。」

 

「はい!…………隈どうしたんですか?目の下真っ黒ですけど。」

 

無邪気な顔で指摘される。

 

まさか一晩中泣いてたなんて言えないし……

 

「あー……ただの寝不足。心配すんな。」

 

「ただのって。全然ただのじゃありません。体大丈夫ですか?無理してません?」

 

「してないしてない。」

 

「ホント?」

 

「ホント。」

 

「んー。信用できません。」

 

「えー。」

 

何故か、懐かしい。

 

こんなやり取りが懐かしく感じる。

 

よく分からないけど心が温かい。

 

「……美穂。」

 

「何ですか?やっぱり辛いとか」

 

「違う違う。」

 

「じゃあ……?」

 

訝しむ瞳は俺の瞳を焦がす程に眩しい。

 

太陽だ。

 

ブラウン管越しに見えた貴女に負けないくらい輝いてる。

 

「あのな。」

 

「は、はい。」

 

「俺なんかについてきてくれて、」

 

「え……」

 

「あり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っく……」ポタ

 

腹部に鋭い激痛が走る。見るとそこには鋭利な刃物が背中から腹までを突き破って出てきていた。

 

(……ああ。)

 

「お、お前が、お前が悪いんだ。僕達のアイドルを脅して食い物にした、お前が。」

 

後ろに立っている長身の男がそう呟く。

 

(まじかよ……っ)

 

「あ、あ……」

 

「……あれ?美穂ちゃん?なんでここに?」

 

男は刃物を俺の体から抜き取り、代わりに俺の首へと刃物をあてがう。そして道の端に蹴り飛ばした。

 

(痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い……っ!)

 

その連関として動脈が深く切られたらしく気管にまで血が流れてくる。苦しい。

 

痛い痛い痛い苦しい痛い苦しい苦しい苦しい痛い苦しい。

 

「ごぼっ……っ……あ……」

 

周りに人はいない。しかも声が出ない。

 

(せめて……美穂は……彼女は違うから……)

 

彼女は何も関係ないんだ。頼む。殺さないで。()()、太陽を。

 

意識が遠ざかっていく。俺が他人から遠ざかるのと同様に。

 

(逃げ……ろ……)

 

「……ああ。美穂ちゃんもこいつと寝たんだ。だからこんな早朝に一緒なんだね。なら、同罪だ。うん。同罪。ふひ。」

 

「や、やめ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

段々と暗転していく視界の中で、美穂は抵抗空しく男に刺されて続けていた。

 

何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

(な、んで……)

 

なんでこうなったんだ。

 

俺は、ただ夢の手伝いをしたかっただけなのに。

 

けれど、どうせこうなるんだったら、

 

こうなってしまうなら、

 

全部、何もかも全部、

 

最初、から………………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

今日は11月17日。()()()()()()




二章で憑依した人……記憶に強く残った、忘れられない人


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青の一番星


「あたしは太陽になんてなれない」



十九世紀の帝政ロシア文豪の一人、レフ・ニコラエヴィチ・トルストイによれば、人間の真価とは分数のように表せれるのだという。

 

分母は自己評価。分子は他者評価。

 

面白いものだ。

 

自己評価が1ならば最高で、0ではもう表せない。

 

自己を最低と決めつける者の真価は表せないのだ。

 

他者評価は大きければ大きいほど良い。0は最低だ。

 

自己評価は関係ない。他者評価が最低であるか、又、評価さえされないか。

 

そんな者の真価は0に等しいのだ。

 

極端な者の真価は、0か最大限の近似となる。

 

ナポレオンやヒトラーといったカリスマ性ともこれは合致する。

 

では、彼はどうなのだろうか。

 

兄は、塩見周子の兄、英一は。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

あたしは彼が四歳の時に生まれた。

 

生まれてから三年強、そこに特筆すべき点はない。

 

あたしが四歳になるまでは変化も滞りもなく普通に暮らしていたのだという。

 

しかしこの停滞に終止符がうたれた。

 

一種、最悪の形で、である。

 

私達の両親がその日、交通事故で死んだのだ。

 

あたしには実の親の記憶が全くないから傷なんてなかった。

 

親がいない、という事実のみが残るだけだった。

 

けれど兄は違っていた。

 

あんなに小さかった頃の事なのに、兄が泣き崩れていた事だけは鮮明に覚えている。

 

 

 

 

 

私達兄妹は母方の家に引き取られた。

 

そこでの生活もやはり変化はなかった。

 

八歳と四歳の子どもに実親の喪失の重大性は理解できなかったのだ。

 

あの時の兄はテレビに夢中だった。アイドルが好きらしかった。

 

兄に言われてよくアイドルの真似事をしていたのも良い思い出である。

 

明朗な兄の笑顔にあたしは安心していた。

 

 

 

 

 

兄が十三歳であたしが九歳の時。ここからやっと現実が見え始めた。

 

兄がいじめを受けていた事が発覚したのである。

 

理由は親がいないこと。そして周りとは()()()()()ことだった。

 

兄は独創的で、頭が回る人だった。

 

人の為にと頑張る人で、だから孤立した。

 

同級生からは敬遠され。

 

先生を含める大人は不気味がって。

 

叔父叔母には認められず。

 

そのせいで兄の自己評価は限りなく低くなってしまった。

 

……あたしは彼に寄り添う事ができなかった。

 

あたしは人気者だった。

 

あたしが見て見ぬ振りをした兄のあの視線は、忘れることなどできない。

 

 

 

 

 

同級生にはちやほやされ、大人には褒めそやされ、叔父叔母には甘やかされ。

 

心配事、不安、等々。

 

そんなものは無かった。

 

そうやって生きてきて、五年後。

 

兄は高校を卒業して東京の大学に行った。

 

家から彼は消えたのだ。

 

(東京ねー……)

 

そこに何の感慨も感じはしなかった。

 

 

 

 

 

テキトーに勉強して、運動して、ご飯食べて、眠って、云々かんぬん。

 

そうやってあたしも高校を卒業し、十八歳。

 

特にやりたいこともやるべきこともない。

 

大学なんて面倒臭いし叔父がまだいてもええって言ってくれとるんだからお言葉に甘えるのは当然でしょ。

 

ぐうたらぐうたら。

 

なんて風に人生を無為に浪費してた。

 

よく分からないイガイガが心臓らへんで燻っていたのを意図的に無視しながら。

 

そんなとある一日の夜。

 

(ん?兄さんから電話なんて珍しい。)

 

珍しく東京に住んでいる兄から電話がくる。

 

一年……いや、二年ぶりだろうか。

 

久しぶりな事で家族同士なのにちょっと緊張する。

 

落ち着いてあたしは呼吸を整え、そして電話に出た。

 

「もしもし?兄さん?」

 

 

 

 

 

驚いた。兄さんは大学を卒業して芸能界に入ったらしい。

 

(しかもアイドルのプロデューサー。夢叶えてるし。)

 

電話の内容は近況報告と誘いだった。

 

新人としてスカウトやってたんだけど中々上手くいかなくて。でも苦労してやっと太陽を二つ見つけたんだ。

 

へー。としか言えない。

 

……でもまあ、楽しそうではあるから良かった。

 

向こうでも虐げられてないか懸念してたんだ。

 

声の弾み方がそれはもうバインバインと。

 

兄は昔と変わったみたいだ。

 

そんな近況報告の後の、

 

「なあ周子。お前アイドルやらね?」

 

これである。

 

「……ええー。やだ。」

 

「何で!?可愛いから絶対出来るって!!」

 

「キモい事言わんといて。やだよ。アイドルなんて。」

 

「小さい頃はノッてくれてたのに!酷いわ!」

 

「口調……というか昔は昔でしょ。今はそんなのやりたくないの。」

 

「がーん。」

 

これである。

 

 

 

 

 

そこからはちょくちょく連絡を取り合った。

 

東京から京都までの遠距離恋愛みたいだ。兄妹だからあり得んけど。

 

その連絡の中ではアイドルの名前が沢山出てきた。

 

特に聞く名前は小日向美穂ちゃん。そして___ちゃんである。

 

二月のライブ来れたりするかーとかの話もした。

 

資格勉強で行けないよって返したらしょんぼりしてたのを思い出す。ごめんて。流石にニートはまずいかなーて思ったからさ。

 

連絡は途切れることなく続いた。

 

……違うか。六月くらいに少し途切れたわ。

 

理由は教えてくれなかった。妹にも隠し事くらいはそりゃあるよね。

 

そして再度来た二月。

 

兄さんの担当アイドルが魅せるライブを見に行った。

 

一言で言い表せば、唖然。

 

凄絶な生命の輝きを感じた。

 

まるで、()のようだった。

 

関係者席から見えたその風景はどうしても現実の様に思えなかった。

 

 

 

 

 

そのライブが終わった後、兄さんに付いていきアイドルの皆と少し話した。

 

その時仲良くなったのが美嘉ちゃんと志希ちゃん。

 

意気投合してしまいました。

 

間も無く遊び仲間へ昇格。京都から東京までの交通費がかかる、かかる。

 

 

 

 

 

楽しい日々だった。とてもとても楽しい、日々。

 

「周子ちゃんもプロデューサーの事結構好きなんだね。」

 

志希ちゃんから言われた言葉だ。

 

……そうなんかな。全然自覚無いんだけど。

 

「兄の誕生日祝うのにそこまで真剣になる妹はいないよ。」

 

美嘉ちゃんから言われた言葉だ。

 

家族の誕生日を祝うのは当然じゃないのかな。

 

小さい頃から苦労して、やっと夢を叶えた兄。

 

妹なら祝おうと思うものでしょ?

 

「やっさしーなー!」

 

そう言って志希ちゃんはあたしの頭を撫でてきた。うわわ。

 

(優しいのかな……こんなあたしが……)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

11月17日。兄の誕生日。

 

この日、あたしは。

 

この日あたしは決心した。

 

決心したのだ。

 

知って、決心したのだ。

 

何を知ったのか。

 

……憎らしい兄の事をだ。

 

既約分数は美しいけど。

 

分母がそれじゃ、ただ憎らしいだけだ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

昼の一時過ぎ。京都の叔父家に電話がかかってきた。

 

内容は。

 

内容、は。

 

「兄さんが、殺された……?」

 

最悪の誕生日だった。

 

 

 

 

 

即死だったと警察の人に言われた。

 

兄さんと担当アイドルのスキャンダル記事を見たファンの一人が怨恨で殺人を行った。

 

被害者は兄さんと、美穂ちゃん。両方即死だった。

 

特に美穂ちゃんの遺体は損傷が激しく、心臓を二度刺され死亡した後身体の至るところをめったざしにされていた。

 

犯人は未だに逃走中。

 

……

 

美穂ちゃんの葬式が東京で先に行われた。

 

陳列者は多数いて、芸能人らしい豪華な葬式だった。

 

テレビでも放映され、ニュースでも話題となった。

 

あたしはそこに行かなかった。

 

対して兄さんの葬式は京都で行われた。

 

最初、家族葬儀にするなどという世迷い言を叔父叔母が発言したが、ねじ伏せた。

 

担当されてた彼女達にも参加させてくれ、と。

 

小さな葬儀で来た人も少なかった。話題になんてならなかった。

 

けれどもそこは悲しみの涙で溢れていた。

 

叔父叔母はあっけからんとしていた。

 

(……所詮、仮の家族なんてそんなもんだよね。)

 

そう思い、あたしは自分の頬を撫でる。

 

涙は、出ていなかった。

 

涙は色のない血だ。

 

血の流さない人間など、人間ではない。

 

あたしが見て見ぬ振りをした兄のあの視線を思い出す。

 

心臓のイガイガは強くなっていた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

兄が死んで一週間が経った。

 

興味が無かったのであたしはよく知らなかったけれど、世間はこの七日間で更に変化した。

 

変化というより、悲劇に対する驚きであろうか。

 

兄と美穂ちゃんを殺した犯人は捕まった。

 

()()()()()()()()()()()()、である。

 

()()()()()()()()()()()()、である。

 

(自分には関係ないとはいえ兄と充分に面識があった人なんだ。)

 

心に傷を負う。

 

というより病みかけてる。

 

イガイガが痛すぎて、おかしくなりそう。

 

 

 

 

 

「…………メール?」

 

そんなこんなの一週間後なのだが、志希ちゃんからメールが来た。

 

突然である。

 

彼女は葬式に来ず、どうやら仕事にも行ってないらしいのだ。

 

(あたしに……?)

 

そこには簡潔な一文が記されていた。

 

『明日家に来て。』

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の日、昼の東京にて。

 

平和で楽しかった頃に何回も訪れた志希ちゃんの一軒家へと辿り着く。

 

そこまで大きくない簡素な造り。アメリカにいた時の研究でお金が余ってたんだそうで。

 

まあそれは置いといて。

 

遠慮せずインターホンを鳴らす。

 

しかし暫く経っても返事が無い。

 

(また暢気に寝てるのかな。)

 

そう思いもう一度それを鳴らそうとする。と、

 

「待たせてすまない。入ってくれ。」

 

ドアが開けられ、中から()()ちゃんが出てきた。

 

「……志希ちゃんは?」

 

淡々とあたしは述べる。

 

志希ちゃんに呼ばれて、そして彼女の家に来た。

 

なのに迎えは晶葉ちゃん。これは何故かと。

 

「……中へ、入れ。」

 

重苦しい声色で言われる。

 

どうやらあたしの問答は聞きつけないようだ。しょうがないな。

 

そう考え、渋々入室する。

 

 

 

 

 

あたしは晶葉ちゃんの様子と雰囲気、漂う違和感、そして家に入ってから直ぐ感じたこの強烈な()()()で全てを察した。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

リビングルームには志希ちゃんが横たわっていた。

 

「私が来たときには既にこのザマだった。」

 

……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「周子も志希に呼ばれたんだろう?来いって。」

 

…………ちょっと、ムリだわ。ごめん。

 

「それで……っと。」

 

我慢もできずフローリングに吐瀉。

 

「まあそうだよな。」

 

充満する臭いに意識がとびそうだ。

 

「周子は、吐くのも仕方ないか。」

 

胃酸と溜飲で気持ち悪い。

 

強すぎる臭いと壮観で気持ち悪い。

 

この期に及んで出てくる涙が、気持ち悪い。

 

 

 

 

 

「……どういう、こと。」

 

口内を水でゆすいできれいにした後、志希ちゃんの方を見ないよう気をつけながら問う。

 

「どういうこととは?」

 

惚けられる。

 

「なんで死んでるのってことだよ!い、意味が分からない!!」

 

思いを叫ぶ。

 

「私にも分からないさ。医者じゃないし、当事者でもないのだから。」

 

「っ……」

 

「……いや、死んでる理由が何も分からないわけではない。」

 

「……教えてよ。」

 

「その前にこっちを見ろ。」

 

「何で。」

 

「死体に慣れる為だ。」

 

「慣れてなんの意味があんの。」

 

「それを説明したいからこっちを見ろと言っているんだ。」

 

「支離滅裂。」

 

「構わん。こっちを向け。」

 

「……見たくない。友達の無惨な姿なんて、見たくない。」

 

「話を平行線に戻そうとするな。」

 

「してない。」

 

「している。」

 

「……ねえ。」

 

「なんだ。」

 

「晶葉ちゃんってサイコなの?」

 

「……は?」

 

「おかしいでしょ。死体に慣れろとかさ。」

 

「……」

 

「慣れたってもう見ないし、見たくない。精神磨り減って病むわこんなん。」

 

「……」

 

「そもそもこれで五人死んだんだよ?友達が、仲間が、プロデューサーが。何でそんなに平気なの?イカれてんの?」

 

「……」

 

「……警察に電話したら帰る。もう、やだ。」

 

「……何故、志希は異常な量の血を流して死んでいるのか。」

 

今まで黙ってあたしの話を聞いていた晶葉ちゃんが喋り始める。

 

「何故、志希は私達を家に呼んだのか。」

 

倣い、あたしも静かに聞く。

 

「何故、()()()()()()()()()()()()()を残して死んだのか。」

 

そう言ってから布の擦れる音がした。志希ちゃんの方だ。

 

「そしてこの紙に書かれた『時間遡行の正当性とその方法』とは、何か。」

 

「……え?」

 

ゆっくりとあたしは振り返る。

 

大きな布で死体は覆われていて、代わりに目立つのは。

 

ゴポゴポと湯の沸きだつ音を携えた機械群だった。

 

「この草稿の最後に走り書きがある。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

晶葉ちゃんは手に持った紙をあたしに渡した。

 

「時間遡行って、つまり、タイムリープって事……?」

 

彼女に訊く。

 

信じられない。だってそれは創作の話だろう。お伽噺だろう。

 

「そうだ。周子の言うとおり死んだ五人。殺人犯に殺された助手、美穂、まゆ。その現実に耐えきれず絶望して自殺した加蓮。四人を救おうと被験者になり、失敗してしまった志希。全員を救えるかもしれない。」

 

紙に書かれた内容を頭に入れ込んでいくがいまいち分からない。勉強をもっと本気でやっとけば、と今になって後悔する。

 

「……でもまた失敗したら被験者になった人は死ぬんでしょ。やる人なんていないよ。」

 

乱雑に発言する。

 

「その言い草、皆を救おうとは一応思ってるんだな。」

 

どこか吐き捨てるような言葉に、

 

「……あたしのこと何だと思ってんの?」

 

反駁する。しかし返答は予想に反していたものだった。

 

「不器用で優しい人。五人に似た、人格者だ。」

 

こちらに歩み寄りながら晶葉ちゃんは寂しく笑っていた。

 

「……は?……ど、どういう……」

 

あたしがそう問うたのと同時に。

 

首に何かを射された。

 

「っ!」

 

見ればそれは注射。液の入った、注射。

 

「大丈夫。ただの麻酔だ。」

 

力が抜けていき、床に倒れる。

 

「それが切れた後に起こる事象の可能性は二つだ。」

 

意識が朦朧として、目の前は暗く。

 

「一つは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性。これは別に気にしなくてもいい。」

 

五感の機能が停止していく。

 

「二つは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性。この時は……そうだな……周子に任せるよ。」

 

あ……う……

 

「見て見ぬ振りをしてもいい。京都に帰ってもいい。」

 

……

 

「ここからのストーリーは、周子が決定するんだ。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

目を覚ますとそこは暗闇に満ちていた。

 

夕闇に潜む月が光る丑三つ時。

 

星は、一つも見えない。

 

「…………」

 

月明かりが照らし出す真実は、

 

「晶葉ちゃん……そんな、真っ赤っかだっけ……」

 

残酷なものだった。

 

自分の体を見てみれば晶葉ちゃんの血で全身が赤黒く塗れていた。

 

あのよく分からない論文も真っ赤に染色されもう読める状態ではない。

 

「六人、目……」

 

皆、死んでいく。

 

理不尽に、不可解に、理解もままならず、死んでいく。

 

創作の世界みたいなのに創作じゃない。

 

生温い血が、鼻をつんざく臭いが、淡い月明かりが。

 

あたしを責め立てる様に現実へと引き戻す。

 

(……あはは。イガイガ消えた。やっと消えた……)

 

晶葉ちゃんの頭には赤と黒に染められたヘッドフォン。

 

それを取り、自分の頭に付ける。

 

フラフラしながら立ち上がって機械群の元まで歩く。

 

ご丁寧にもパソコンの画面は準備万端を示している。

 

(神様もあたしの蛮行をお求めなんだ……)

 

自棄になって、あたしは何も考えずエンターキーを押した。

 

(あたしはごみくずで……どうせ0だから……)

 

見渡す限りの赤で既にあたしの頭はやられていた。

 

ただ、この異常から抜け出したかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血縁認証。システム正常作動。

 

()()()()プロトコルを開始します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

赤は、見慣れた青に変わっていた。

 

(???)

 

というか自分の部屋だった。どういうことだ。

 

(せ、成功したの……?)

 

と、左耳に翳していたスマホから声がした。

 

「なあ周子。お前アイドルやらね?」

 

学生の頃数年間離れていても何とも思わなかった彼の声が。

 

たった数週の間のくせに優しく聴こえて。

 

際限無く、透き通る血があたしの頬を伝っていった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ここからあたしの、塩見周子の長いタイムリープが始まった。

 

手探りで、不器用で、不出来ながらにも身を削り。

 

あたしは太陽になんてなれないから。

 

せめて、あの時の青の様に。

 

青に感傷して流したあの透明の血の様に。

 

誰かの為の、一番星になる。

 

見て見ぬ振りなぞしてたまるか。

 

何も無しに家になど帰ってたまるか。

 

まさしく希望を志して。

 

六人を救ってやる。




欄外メモ
・「これでもし、もしもだよ。ちゃんとアイドルになれたらさ。両親に見せてあげたいって思ってんのよ。」
これはデレステでの周子の一台詞です。
なんというか、周子はスルメっぽいんですよ。噛めば噛むほど味が出る。端的に言って愛しいです。皆さんにはもっとシューコちゃんのこと、知ってほしいっす。
・二話と三話(Pの妄想)にて文香と茜は不自然に赤らみました。これはPの二人に対する印象で、突然の告白が大きく心に残っていたからです。
・一章と二章の話群は、描写が少なくて情景とかが分かりにくかったり展開が急だったりと異常でした。その様な異常はやはり大体全てが彼の妄想だったからです。


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N+x=k

「俺はプロデューサー辞めないよ。イーカロスも悪くねえって思ってるからな。」



x=1

 

 

 

 

 

あの兄の電話の後、あたしは東京に住む事となった。

 

アイドルをやるためである。

 

そして、皆を救うためである。

 

京都にいるままでは行動できない。

 

一ヶ月で準備や別れを済ましてあたしは東京に発った。

 

「俺ん家に移住してくんなよ。」

 

兄さんが呆れ声で言う。

 

「ごめんごめん。」

 

こんなやり取りも嬉しく感じて、気持ち悪いくらいニコニコして返答してしまった。

 

「えらい素直な……」

 

兄さんも苦笑していた。

 

 

 

 

 

では早速、京都から引っ越してアイドルだ!

 

って訳にもいかなかった。

 

突然過ぎて上からNGをくらったのだと。

 

それは兄さんも予想外だったらしくて、あたしのデビューは来年の六月になるそうだ。

 

つまり美嘉ちゃんと同時期デビュー。

 

その時が来るまであたしはレッスンを受けたり色々な説明を受けたりといったように生活していた。

 

間、アイドルの皆とも仲良くなった。

 

兄さんの話によく出る二人は、まあ、兄さんの好みっぽいわーっていう感想だったよ。

 

途中の二月にあったミニライブ、といってもそこそこの規模のライブではバックダンサーとして参加した。

 

一言で言い表せば、唖然を超えた唖然。

 

凄絶な生命の輝きを感じた。

 

まるで、()()のようだった。

 

見えたその景色はどうしても現実の様に思えなかった。

 

(アイドルって中毒にも似てる。)

 

ライブ終了後、仲間全員で成功を祝福しながらそう感じた。

 

 

 

 

 

六月。あまり特筆すべき点はない。

 

というか殺人関係の出来事など当たり前だが全く起きない。

 

どうやらあたしは、あまりに昔へ来てしまったかもしれない。

 

そう考えていたが。

 

少し変化があった。

 

兄さんの、慕われる事に拒否反応が出ているという癖が原因で起きた変化だ。

 

アイドルで結託して何とか機械的なプロデューサーを励まそう、というものだったのだが……

 

結果、そこに歪みが出来てしまった。

 

避けて通れない、()()()()だった。

 

その歪みが特に分かりやすかったのは智絵里ちゃん、加蓮ちゃん。

 

その数ヶ月後に兄さんの担当となったまゆちゃんも分かりやすくその歪みに堕ちていた。

 

濁った恋情が浮き彫りになってあたしには見えた。

 

(あの事件を解決するだけじゃどうにもならなさそうだ。)

 

今度は演者として参加した二月のライブ。

 

前は星の輝きを感じた癖に。

 

今回は何も感じなかった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで訪れた最悪の日。11月17日。

 

絡まった思慕は解けないまま来てしまったこの日。

 

あたしは行動に移した。

 

既に美穂ちゃんには一週間の休みをちひろさんに頼んで入れてもらった。

 

プロデューサーさんは遅めの出社にしてもらった。

 

二人の殺人を止められれば、あとはまゆちゃんをどうにかすればいいだけ。

 

まゆちゃんは現在ドラマ撮影の為、東京にいない。

 

これで恐らく大丈夫な筈。

 

今日を乗り切れば何とかなる。

 

(これで晶葉ちゃんと志希ちゃんの無念を晴らせる。)

 

心の底から安堵した。

 

 

 

 

 

……なんて。

 

あたしはなめていた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

翌日の朝、うるささに目を覚ますと兄さんが血相変えて準備をしていた。

 

……なんの準備?

 

訊くと返ってきた答えは。

 

「……文香が、昨日、」

 

殺された。

 

 

 

 

 

頭を鈍器で殴られた方がマシ。

 

そんくらいの痛みがはしった。

 

そこであたしは気付いた。

 

(考えてやんなきゃ。)

 

と、冷静に。

 

客観的に。

 

他人事のように……

 

 

 

 

 

兄さんが何処か向かうのを、そして何か叫んでいたのを無視して。

 

服装も髪型も気にせず。

 

時間も場所も気にせず。

 

頭を空にして、走った。

 

数分後、辿り着いたのは彼女の家。

 

ドアホンを押すと、朝のくせ、珍しく彼女は起きていた。

 

全てを無視してあたしは言葉を捻り出す。

 

「志希ちゃん……時間戻させて……っ!」

 

 

 

 

 

家の中、二人きり。

 

造形の同様な、荘厳であるソレを前に志希ちゃんは喋る。

 

「二周目、ね。」

 

あたしの説明を聞いた彼女は珈琲を嗜みながら訝しむ。

 

「使わせて。」

 

あたしは無理矢理お願いを押し通そうとするが。

 

「いや駄目でしょ。」

 

小馬鹿にするよう却下された。

 

「なんで。」

 

「信じてないから。」

 

「なんで。」

 

「未来から来ました。はい、信じます。な訳あるかー。」

 

おどけて返される。

 

続けて志希ちゃんに、

 

「周子ちゃん、もしかして文香ちゃん死んでおかしくなった?」

 

心配してなさそうな様子で訊かれる。

 

そんな()()()()()()()()()()()を見て。

 

あんな()()()()()()()()()()()を思い。

 

(……面倒臭い。)

 

今だけは志希のこの、平常の奔放が鬱陶しい。

 

そう思わざるを得なかった。

 

だからあたしは強行手段に出る。

 

「使わせてくれないの?」

 

「当たり前でしょ。なんで使わせる必要あると思うの。」

 

「そ。」

 

分かったよ。

 

そう思い、あたしは一枚の紙とペンを渡す。

 

「え、何。ホントに周子ちゃんどしたの。」

 

「あたしに秘密にしてる事ここに書いて。」

 

「はえ?」

 

不思議そうに、そして可哀想な子を見る目付きを向けられる。

 

が、それに耐えて。

 

「いいから。」

 

睨みながらも求める。

 

「はいはい……えーと……」

 

 

 

 

 

「書いたよ。ほら。」

 

そう言ってペンと紙を彼女は乱雑に机へ放った。

 

そこには……

 

「独占欲なんて周子ちゃん(あたし)には似合わない、って……どゆこと……」

 

摩訶不思議な事の書かれた一枚の紙があった。

 

「秘密なんてありませーん!それにあったとしても教えませーん!シューコちゃん独占欲強すぎ!にゃはは~。」

 

志希ちゃんはそう言って部屋を出ていった。

 

「トイレー!」

 

廊下側から彼女のそんな声が響いてきた。

 

(……早速効果出たね。)

 

あたしは手に持つ()をポケットに隠してから椅子を立つ。

 

そして機械の元まで行き、それを操作する。

 

(こうだっけ。えっと、こうだ。)

 

使える状態までもっていき、近くに掛けてあったヘッドホンを頭に付ける。

 

(…………もう一度。)

 

あたしはパソコンのエンターキーを押す。

 

そこに感慨は無かった。

 

 

 

 

 

x=2

 

 

 

 

 

今度はまゆちゃん達が兄さんの担当になった、事件から数えれば一年と二ヶ月前にあたしは戻っていた。

 

調節の仕方が分からなくてそこは適当にやったからまあしょうがない気もする。

 

せめてあの論文さえ有ればどうにかなるものを。

 

 

 

 

 

あたしは事件の日までひたすら一人で暗躍を続けた。

 

誰も死なせない様に頑張った。

 

けれどもやっぱり駄目だった。

 

また文香ちゃんが殺された。しかも美穂ちゃんもだ。

 

……そことなく、それをあたしは予想していた。

 

あたしは不器用だ。多分失敗する、と。

 

だからこそ、前に伏線を貼っておいたのだ。

 

 

 

 

 

家の中、二人きり。

 

造形の同様な、荘厳であるソレを前に志希ちゃんは喋る。

 

「二周目、ね。」

 

少しだけ嘘を織り混ぜた。

 

あたしの説明を聞いた彼女は珈琲を嗜みながら訝しむ。

 

「使わせて。」

 

あたしは無理矢理お願いを押し通そうとするが。

 

「いや駄目でしょ。」

 

小馬鹿にするよう却下された。

 

「なんで。」

 

「信じてないから。」

 

「なんで。」

 

「未来から来ました。はい、信じます。な訳あるかー。」

 

おどけて返される。

 

そう。ここまでは前と同じだ。

 

ここから説得するしかない。

 

志希ちゃんを、この天才を味方にしなきゃ誰も救えない。

 

「分かった。」

 

あたしはそう言って、一枚の紙とペンを渡す。

 

「え、何。周子ちゃんどしたの。」

 

「あたしに秘密にしてる事ここに書いて。」

 

「……え?」

 

心配するような表情で彼女はあたしを見つめる。

 

が、段々とその視線を机の上のそれにスライドしていき、渋々といった様子で筆を走らせ始めた。

 

珈琲は暗い色を纏っていた。

 

 

 

 

 

「書いたよ。ほら。」

 

そう言ってペンと紙を彼女は乱雑に机へ放った。

 

その紙を見ないようにして手に取り、ぐちゃぐちゃに丸め、床に放る。

 

「…………志希ちゃんの書いた事でもあてんの?」

 

御明察。

 

「どーぞどーぞ。」

 

スプーンで珈琲を混ぜながらそう言われる。

 

その通りにあたしは言い放ってやった。

 

「独占欲なんて周子ちゃん(あたし)には似合わない。」

 

志希ちゃんの手が止まる。

 

かっ開かれた大きな目が珈琲からあたしへギロリと向けられた。

 

「どー?」

 

あたしはおちゃらけてそう発言する。

 

「まっじかー……」

 

すると志希ちゃんは立ち上がり、部屋を出ていった。

 

「待ってて。」

 

廊下から聞こえた声は初めて聞くようなシリアスを漂わさせていた。

 

 

 

 

 

ヘッドホンを被ったあたしは志希ちゃんが持ってきてくれた()()()()を読み進める。

 

様々な情報を全脳細胞総動員して覚えようとする。

 

「周子ちゃんの話から考えると……確実なのは事象根因を突き止める事かな。大分ループしなきゃいけないけど。」

 

読みながら質問する。

 

「事象根因?」

 

「そ。原因の原因の原因の原因の……て辿っていって、もうそれ以上辿れない根本的な原因。今回、殺人の原因ならもう分かってる。」

 

(()()()()()()()()()()()か……)

 

「そこを更に掘り下げて行けば必ず事象根因は見つかる。それを何とかすれば殺人どころかそれ以外の全てまで上手くいく。」

 

機械を操作している志希ちゃんに問われる。

 

「事象根因を探す?相当心やられるけど。」

 

勿論。

 

「確実なら。」

 

志希ちゃんが機械の操作を終え、あとはエンターキーを押すだけとなった。

 

「取り敢えず戻る日にちは一年前の十月、あたしがプロデューサーの担当になった頃で設定した。」

 

分かってる。そこで志希ちゃんを味方につけるんだ。

 

「その頃のあたしに別居とその論文の存在を話してあげれば協力してくれると思うから。」

 

そう言われて思わず聞き返す。

 

「……別居?」

 

「うん。マンションに借り部屋あるんだ。」

 

驚いた。数年一緒にいたのにそんなこと知らなかった。

 

「それじゃ、やるよ。」

 

「うん。お願い。」

 

 

 

 

 

x=3

 

 

 

 

 

戻って早々、行動する。

 

志希ちゃんを仲間に引き入れるのだ。

 

言われた通りに二人きりの時、別居と論文の存在を志希ちゃんへ話すと。

 

「……成功したんだあれ。へー……」

 

消極的な反応だった。

 

が、しかし、仲間にはなってくれた。

 

心強い。

 

 

 

 

 

事象根因をひたすら探す。

 

x=4

 

事象根因をくまなく探す。

 

x=5

 

事象根因をただただ探す。

 

x=6

 

探して探して探して。

 

x=7

 

あれ?見つからない。

 

x=8

 

見えるのは血ばかり。

 

x=9

 

美穂ちゃん、まゆちゃん、加蓮ちゃん、智絵里ちゃん、文香ちゃん、それに兄さん……

 

x=10

 

美穂ちゃん、美穂ちゃん、美穂ちゃん、美穂ちゃん……

 

x=11

 

兄さん、兄さん、兄さん、兄さん……

 

x=12

 

あれ……いつのまにかあたしだけ__歳だ……

 

x=13

 

冷静も発狂も無い次元。

 

x=14

 

あなたはなんにんめかな。

 

x=15

 

兄さんは十人目くらい?あはは。

 

x=16

 

うん。兄さんもそうなるのはしょうがないよ。

 

x=17

 

血縁者だからかな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。既視感あるよね。

 

x=18

 

死体だらけで狂いそう?死ぬときの痛みで狂っちゃった?あたしはそういうの越えたとこだよ。

 

x=19

 

《全部に絶望してるみたいで。》

 

《リストカットの跡、ですか?》

 

《やってみろ人殺しが、って。》

 

《ありがとう。ありがとう。ありがとう。杏、ありがとう。》

 

あーあ。精神病んじゃった。

 

x=20

 

なあ周子。

 

俺生きるの疲れたよ。

 

もういいよな。

 

24年も生きた。

 

そろそろ死ななきゃ示しがつかねえ。

 

こんな人生。

 

疲れたよ。

 

なあ周子。

 

先に父さんと母さんのとこで待ってるから。

 

それじゃまた。

 

「空虚な孤独のどれだけ救われる事か。」

 

 

 

 

 

自殺は、ダメだよ……

 

あは……

 

……分かんない

 

止められない……

 

結局止められないんだ。

 

積もってくのは死体と恋情ばかり。

 

アイドルにもループの影響が出てる。予想外だ。

 

所謂ヤンデレになってる。

 

皆狂っちゃった。

 

根因なんて分かんないよ。

 

兄さんとアイドルは今まで以上に深い仲になってる。

 

まさか()()()()()()()()()()()()()()()()まで出てくるなんて。

 

それもあたしの失敗が原因なんだけどさ。

 

あーあ……

 

……

 

《小さい頃から苦労して、やっと夢を叶えた兄。

 

妹なら祝おうと思うものでしょ?》

 

……いやいや。

 

いやいやいや!

 

シューコの阿呆!

 

何諦めモード入れようとしてんの!?

 

(自分で選んだ道なんだからさ。)

 

どんだけふざけた人生でも、馬鹿げた難しさのループでも、ドス黒い血や恋情に振り回されても。

 

諦めんなシューコ。

 

(兄さんの誕生日、まだ祝えてないでしょーが……!)

 

なんとか。

 

なんとかやるしかない。

 

戻れ、あたし。

 

「ヤンデレアイドルとメンヘラ兄さん、面倒だなぁ。もう。」

 

自嘲気味にそう呟いた。

 

「あたしにそういうのは似合わないけどね。」

 

 

 

 

 

x=21

 

 

 

 

 

夜中、俺の家。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………起きてるプロデューサー?」

 

それに俺は頭を撫でながら返答する。

 

「起きてるよ。どした。」

 

そこから少しの独白が始まった。

 

「……実はね、恐い夢をこの前見たの。」

 

「皆がいなくなっちゃう夢。遠くに行っちゃう夢。」

 

「孤独になるんだ。あたし独りだけになるんだ。」

 

「寂しさは病床で慣れてた筈なのに目が覚めた後涙が止まらなかったの。」

 

「ただの夢なのにね。でも嫌な程に現実味を帯びててさ。」

 

「ここでこうやって甘えさせてほしい。忘れさせてほしい。暖かさを感じさせてほしい。」

 

「誰も、どこにも、いかないでほしいから。」

 

ぎゅっと強く抱き締められる。生まれたままの姿で。

 

「大丈夫。ずっと側にいるから。」

 

「…………ホント?」

 

上目遣いで投げ掛けられた疑問に、

 

「……ああ。」

 

俺はきちんと答えた。

 

「う、嘘だったら許さないからね。」

 

「嘘じゃないって。嘘ならこんなことしてないよ。」

 

そう言いながらスベスベとした加蓮の肌を触る。

 

「ひぅっ……カッコつけんなムッツリ……」

 

「そこは男だから許して。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「ねえ、周子さん。」

 

「分かったでしょ。」

 

「邪魔しないで?」

 

「素敵な共依存を壊さないでくれない?」

 

 

 

 

 

x=?

 

 

 

 

 

「あ、待って、一つ補足。周子ちゃん。」

 

過去へ戻ろうとすると志希ちゃんに止められた。

 

「考えられる可能性として誰かしらアイドルが暴徒化するというものがあるんだよね。例えば愛情故に死ぬ!みたいな。」

 

「この遡行装置もそんなに優秀じゃないから周辺への影響とかバリバリあるわけ。」

 

「そんな時はマンションの方の家に行ってほしい。」

 

「あっちにある遡行装置は記憶弄れるから。」

 

「全員救える確率は低いけど、どうしようもなくなったら、ね。」

 

 

 

 

 

x=1()2()

 

 

 

 

 

「なあ、兄さん。」

 

夜の家でゴロゴロしている彼に呼び掛ける。

 

「『他人に成りきって行う人生のシミュレーション』って興味ある?」

 

 

 

 

 

x=1()4()

 

 

 

 

 

『キミが覚えてる最も昔の記憶は?』

 

小学生の頃、テレビを見てた。夢中になってた。そこに映ってたのはアイドル。輝くアイドル……

 

『家族の名前』

 

『自分の家の住所』

 

『お給料』

 

あんま言いたくない。それくらいは許してくれよ。

 

『自分の名前は?』

 

塩見英一。妹にアイドルの塩見周子がいまーす。

 

『夜ご飯』

 

11月16日に周子とラーメン。あいつのやつだけメンマがサービスされてた。贔屓羨ましい。

 

『りょーかい。』

 

……そろそろな感じ?

 

『意識転移の実験がってこと?』

 

うん。

 

『そうだね。もう準備万端だし。』

 

うい。

 

『……よく了承してくれたよねプロデューサー。』

 

そうか?

 

『危険性については充分話したでしょ。』

 

ああ。それか。いいんだって。

 

『そっか。』

 

どうせ今より酷くなるなんてあり得ないし。

 

『……そっか…………』

 

おう。もう疲れたわ。

 

『うん……ごめん……ごべん……ぐずっ』

 

泣かんでも……

 

『だっで……』

 

ええんやて。誰のせいでもないんやし。

 

 

 

 

 

x=21

 

 

 

 

 

「ねえ、周子さん。」

 

「分かったでしょ。」

 

「邪魔しないで?」

 

「素敵な共依存を壊さないでくれない?」

 

 

 

 

 

「あのね。」

 

「確かにあたしは太陽になんてなれない。加蓮ちゃんとかと違って。美穂ちゃんとかと違って。」

 

「でもあたしはプロデューサーの妹なんだよ。」

 

「家族なんだよ。」

 

「そんな、汚ならしい愛情と同じにしないで。」

 

「いい?()()()()()兄に、プロデューサーに言っといて。」

 

()()()()()()()()。」

 

()()()()()()()()()()()()()。」

 

()()()()()()()()()()()()()、って。」

 

「分かりやすく言おうか?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

《兄が泣き崩れていた事だけは鮮明に覚えている。》

 

《明朗な兄の笑顔にあたしは安心していた。》

 

《妹なら祝おうと思うものでしょ?》

 

《分母がそれじゃ、ただ憎らしいだけだ。》

 

あたしは兄に沢山貰った。

 

幸せと笑顔を貰った。

 

そのお返しをするまで何度だって繰り返してやる。

 

病んだ星になどあたしは負けない。

 

影響すらない。

 

シューコの太陽を、兄を、救うのだ。

 

幸いにも、二十を越えるループで幾つか分かった事がある。

 

一つは兄を救えば、結果的に美穂ちゃんや智絵里ちゃん等のアイドル仲間が殺されない事。

 

一つは事件前日と当日の二日間、兄を幽閉すれば兄を救える事。

 

そして最後の一つは志希ちゃんがレッスンルームに来てあたしと雑談していたあの日、兄をレッスンルームに拘束する事で、スキャンダルが発生しないということである。

 

何の因果関係かは知らないが、最後のそれによって文香ちゃんと茜ちゃんの告白は発生しなくなるのだ。バタフライエフェクトとは恐ろしい。

 

さて、それじゃ。

 

(もう一度行ってきます。)

 

 

 

 

 

x=22

 

 

 

 

 




結構内容が難しくなってる気する。それと周子のメンタルが鋼すぎる。


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太陽と月

信じるより疑う方が物事は容易である。しかし疑うより信じる方が物事は成功する。



11月16日、夜。ひっそりと佇むラーメンの屋台にてあたしと兄さんは麺を啜る。

 

何度も食べた筈のラーメンの味は妙に新鮮に感じた。

 

「周子。今度こそ、今度こそいけるよな。」

 

食べながら、暗い面持ちでそう発言される。

 

二十を越えるループであたしは勿論、兄さんやアイドル仲間も疲弊しきっている。

 

ぼんやりとした明晰夢から抜け出せなくて、だから恋に逃げだしていた。

 

そのことに対して兄さんも頭を抱えている。

 

今の世界では誰とも関係を持たない様に努力してくれたが。

 

地獄のような血と死を癒してくれる至高の悦楽から抜け出してくれたが。

 

でも前の世界でアイドルに手を出した記憶は残っているらしいのだ。自分じゃない自分が、聖域を汚した記憶。

 

加えて悦楽に反抗するどころか溺れて喜ぶアイドルの子達。加蓮ちゃんは顕著だった。

 

幼い頃のトラウマの再起に耐えきれず、簡単に壊れた彼女。

 

兄さんと加蓮ちゃんは前の世界で互いに依存していた。

 

いやにリアルな死の()()から逃れたくて、ひたすらに慰めあっていた。

 

「誰も、加蓮も美穂も、死なないよな。」

 

「……大丈夫。成功させるから。」

 

兄さんはどうやら加蓮ちゃんと美穂ちゃんが恋愛的に好きらしかった。

 

美穂ちゃんは特別好きなようで、四回くらい前から兄さんは彼女を()()()()()()()ようにしていた。

 

俺の太陽を巻き込みたくないのだと。

 

そのため、この世界で美穂ちゃんの事をはっきりと知っているのは智絵里ちゃんとあたしと兄さんの三人だけだ。

 

彼女はアイドルになっていないのだからそれも当然である。

 

しかし()()()()()()()()()()が抜けた事により、他の子が恋愛的に濁り易くなったのも事実だった。

 

美穂ちゃんがいなくなってからの事務所は野性的で醜い争いが絶えない。

 

混沌を極めている。

 

例外無く、皆狂ってしまっていた。

 

殺人を止める以前の問題として自殺が増えた。

 

自傷も増えた。病んだ。鬱になった。エトセトラ。

 

それを食い止めようと過去へ戻ればうっすらと残っているその記憶にまた皆が病む。

 

もう一つしか方法は無くなっていた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ご飯を食べ終わり、二人でマンションの志希ちゃんが借りている部屋へ向かった。

 

そこには準備をして待っていた志希ちゃんと晶葉ちゃんがいた。

 

いつの時からかはもう覚えていない。志希ちゃんが晶葉ちゃんを仲間に引き入れたのを。

 

志希ちゃんは色々な手段で説得して工学系に詳しい彼女を巻き込んだらしい。

 

……一回目の時から、晶葉ちゃんを巻き込まない様にしてたんだけど。

 

運命の強制力みたいなのってあるんだね。

 

 

 

 

 

奥の部屋には見飽きたあの機械が立っていた。

 

「ははっ。夢とおんなじ……」

 

兄さんの力の無い笑い声が響いた。

 

空気も、気分も、何もかもが晴れやかではなかった。

 

そこからはてきぱきと進んだ。

 

隣の部屋に入り、兄さんをベッドに寝かし、腕と脚を拘束する。

 

麻酔で眠らせた後、病院でよく見るワッペンの様なものを彼の体に貼っていく。

 

志希ちゃんがヘッドホンとパソコンを使い、記憶を弄る。

 

今までの記憶を機械に入力し、忘れさせてから、兄さんの中に僅かに眠る妄想を元として作られた新しい記憶を兄さんの脳に埋め込む。

 

その作られた記憶の中に()()()()()()()()等の感覚を入れておく事も忘れない。

 

(流れとしてはこうだ。)

 

先ず、兄さんを妄想の世界に今日と明日の間閉じ込めておく。

 

そして明日の夕方頃に目覚めさせ、1()0()()2()0()()1()7()()3()6()()、つまり志希ちゃんが起こしたあの騒ぎの日にタイムリープさせる。この時に記憶を戻してはいけない。失敗する。

 

それで次の日誰も死ななければタイムリープは成功。誰か一人でも死んだら失敗。

 

失敗ならもう一度あたしは戻るだけだ。

 

他の子には任せられないあたしだけの任務。

 

誰の代わりにもならない兄さんだけの任務。

 

完璧に遂行しきり、そこで初めて、終わりを迎える事が出来るのだ。

 

「ねえ、周子ちゃん。ちょっと話いい?」

 

作業が終わり、晶葉ちゃんが休んでいると、志希ちゃんがあたしにひそひそ話しかけてきた。

 

肯定の意を伝えると彼女は親指を外に向けた。一旦出よう、ということだ。

 

「おけー。」

 

晶葉ちゃんにバレないようそっと家を出た。

 

 

 

 

 

秋とはいえ現在は夜。肌寒い。マンションだからか余計冷える。

 

と、彼女が口を開いた。

 

「何周目?」

 

その問いに仕方なく答える。

 

「……二十三。」

 

「……あたし、これ前も訊いた?」

 

確めるように訊いてくる志希。

 

「十回かそこらかな。」

 

「わー……まじか……」

 

彼女のその返答にも決まった返しをする。もう何度も繰り返したものだ。

 

「うん。この後は励ましのエールと助言。」

 

「「どの世界だってあたしがついてるから。」」

 

一字一句違う事はない。聞き飽きた。

 

「……そっか。それで失敗を続けて今は二十三なんだ。」

 

……?

 

あれ。この志希ちゃんの台詞はこの世界が初めてだ。

 

「似通った風に歴史を準えて、こんなんなんだ。」

 

聞いたことの無いその発言にあたしは多少の驚きを感じた。

 

その感情が顔に出ていたのだろう。

 

あたしを見た志希ちゃんはちょっとの笑いを堪えながら言った。

 

「その様子だとこれはまだ言ってないんだね。よしよし。それじゃあ伝えておきましょう。」

 

彼女は周子の瞳をじっと見据えて、また言った。

 

「排外的にやってみるのも、一つの手じゃないかな?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

何かあった訳でも無く、やはりこの世界も失敗に終わった。

 

文香ちゃんと加蓮ちゃんが自殺した。

 

兄さんも後日、ファンに殺された。

 

あたしは志希に頼んでもう一度やり直す。

 

(排外的に、か。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

11月16日、夜。二十四周目の世界にて。

 

()()()()()()()()()()()()()お茶をすすっていた。

 

極力誰かと関わらないようにしてきた。

 

本当に、極力、独りでここまでくるようにした。

 

排外的に接してきた。

 

兄さんの誘いにのってアイドルになり、翌年の六月デビュー、他の子とそこそこの付き合いを維持しながらこの日を迎えた。

 

今までと変え、兄さんの家へ居候ではなく女子寮での居住。

 

様々な事柄を変化させた。

 

これまでと()()()()()。成功するかどうかは分からない。

 

けれど試す価値はある。だって志希ちゃんの言う事だもん。

 

(しかし懸念事項。)

 

兄さんはどう行動するのか。

 

志希ちゃんはどう行動するのか。

 

晶葉ちゃんはどう行動するのか。

 

云々かんぬん。

 

あたしの予想では恐らく。

 

(今まで通り。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

マンションにて、あたしの部屋をノックする音。

 

居間にいる晶葉ちゃんもその音に気付き、顔を上げる。

 

「志希。予想通り来たんじゃないか?」

 

ふざけた様に煽られる。

 

それをあたしは聞き流しながら玄関に向かう。

 

(まあ、この記憶と周子ちゃんの言う通りなら……)

 

到着し、あたしはドアノブを捻った。

 

(そして彼の心情を推し量ると……)

 

そこには、

 

「ループを終わらせに来たぞ……っ!」

 

相も変わらずプロデューサーがいた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

二十四時にシンデレラは何を思う。




晶葉と加蓮の境遇とかはある程度想像に任せます。


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欠陥

ただ一人が悪役を演じて犠牲になれば、残りの大多数は救われる。


ベッドに寝そべっているプロデューサーを同じ部屋に置きながらもそれを無視し、ただ真ん中と右のモニターを監視しているあたし。

 

彼の本能的な妄想。そして断片的な記憶から創造ないしは想像された妄想。

 

それを監視していた。

 

しかし悲しいかな、あたしには一つ前の世界の記憶の一部、つまり二十三周目のこの監視時の記憶だけがすっぽりと欠けているのだ。

 

理由は様々浮かぶがそれはこの際関係ない。

 

関係する問題点としては、彼の妄想がどのように展開していくのか一切分からないというものだろう。

 

きちんと時間通りに彼を起こすまではこの一種の睡眠状態を維持しなければならない。

 

臨機応変な対処があたし、一ノ瀬志希に求められているのである。

 

上手くやらなきゃ死人が出る。ふざけてはいられない。

 

周子ちゃんのためにも早く終わらせてあげたいから。

 

ここでの失敗は許されない。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

最初に映った景色はレッスンルーム。右のモニターには『やってくれたな、一ノ瀬ェ!』と書かれていた。

 

流れていく文章や構成を見るにこれはギャグ小説を意識して創られた世界らしい。

 

それにしてもあたしはこんな薬開発しないよ……酷いなプロデューサーは。

 

思わず失笑してしまった。

 

いつぶりの笑いだろう。

 

アイドルの癖に忘れていたそれをこんな時でもプロデュースする彼は仕事依存症なのだろうか。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのことを再確認した。

 

 

 

 

 

全体的に笑えるメタフィクションやラブコメを目指して話が進んでいっている事が分かる。

 

担当達のキャラクターを崩壊させて元の一面から目をそらしたり自分の精神を安定させたり。

 

事情を知ってこのギャグを見ているとそれらが空虚に映ってしまう。

 

まゆちゃんと藍子ちゃんのやつは特にそうだ。

 

現実ではあんな生優しいものじゃなかった。

 

 

 

 

 

時計の針は午前十時を指している。あと七時間弱。

 

 

 

 

 

『この話だけシリアス感増し増しですね、晶葉さん。』から、雰囲気が変わった。

 

タイムリープというミステリアス。これまでの世界を戻っていくというもの。

 

本能的経験則と願望により妄想の世界が変化したのだろうか。

 

何十回と続く重い恋と死の連鎖。記憶を忘却させても心の奥底にその傷が刻まれているのかもしれない。

 

その過去を変えたい、良くしたい。そういう考えが先行して世界にまで影響を与えたとしても不思議はない。

 

しかし現実でその最中なのに妄想でも同じ事をするなんて。

 

責任感が強いのか何なのか。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()なんておかしな願望も、現実を知っていれば分からなくもないかな。

 

 

 

 

 

そこからは話を重ねる毎に不穏な空気が増していった。

 

そもそもの世界が崩れそうになっていたのだ。

 

妄想のジャンルが反対側に回転した事、リアルとバーチャルの境の不安定さ、タイムリープ……

 

数えきれない要因によりバグが生じはじめた。

 

今のところはあたしが対応できる範囲だし大丈夫なんだけど。

 

ちょっとだけコンピューター干渉をしすぎてるせいでプロデューサーの妄想に過影響を与えちゃってるみたい。

 

晶葉と志希の名前が多く出るようになってしまった。

 

 

 

 

 

『からかわないでよ凛さん!』からは目に見えてギャグや展開のキレが落ちてきていた。

 

加えて異変が起こり始めていた。

 

それは特にあたし、そして晶葉ちゃんの扱いが不当なものになっていっているという事。

 

明らかな()()を感じる。

 

……いや、これは。

 

(()()()()、か。)

 

コンピューターとの過剰同期による人格増加。

 

且つ、コンピューター人格による主人格模倣、侵食。

 

つまり。

 

(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……っ!)

 

次の瞬間、それを確認するように異常が幾つも発生した。

 

心電図が危険値を示す。

 

拘束された彼の体が痙攣する。

 

モニターにノイズが走り出す。

 

(製作者に、人間に反乱するんだね……いいよ。)

 

そっちが()()()()()()()()()()()()()なら。

 

ギフテッドの本領を見せてやる。

 

(勝負だstupid……っ!)

 

 

 

 

 

カタカタというキーボードの音と甲高いノイズ。

 

時計の針は午後四時を指している。あと一時間弱。

 

 

 

 

 

こちらが優勢にウイルスを破壊していると、コンピューターに文字列が浮かび出てきた。

 

『それで、お前はそれでいいのか?愛しのプロデューサーを鬱にさせるその世界に戻して、それでいいのか?』

 

……そう。そういう手法にキミは出るんだ。

 

対抗してあたしは言う。

 

「でも妄想の世界みたいなイカレタ場所へ幽閉するよりよっぽどマシだよねぇ?」

 

『まさか!こっちの世界の方こそ自由で正常さ!誰も度を超えて愛さないし誰も死なない。彼だって満足しているんだ。本当にマシなのはどっちかな?』

 

「本当にとかそんなのはどうでもいい。薄っぺらいウソは死ねばいい。ほら?残酷なホントをあたしに教えてよ。彼にでもいい。選択権はキミにないの。わかったペテン師さん?」

 

『……そこまで言うのならしょうがない。分かった。』

 

 

 

 

 

『後悔するぞ。全員がな。』

 

 

 

 

 

心電図が正常値を示す。

 

拘束された彼の体が安静になる。

 

モニターのノイズが消える。

 

一先ず第二人格は成りを潜めたみたいだ。

 

妄想の世界一面に()()()()()という闇を残して。

 

 

 

 

 

時計の針は午後五時を指している。時間だ。

 

 

 

 

 

彼の妄想中で惰性的に設定されている遡行により今のプロデューサーは頭の中であたしと会話している。

 

丁度良いタイミングだ。

 

計画のままにあたしは行動する。

 

出力、移動、種明かし。

 

第二人格の干渉で多少の時間をくってしまったが誤差の範囲だ。

 

「ギリギリ間に合ったっ!」

 

ごめんね。

 

「さて、プロデューサー。」

 

辛い過去の記憶を。

 

「お望み通り、答え合わせをしようか。」

 

思い出して?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

騒々しいのが好きだった。静寂は嫌いだった。

 

今では、真逆となってしまった。

 

______

 

____

 

__

 

 

 

 

 

俺は柔らかい感触から目を覚ます。

 

すると最初に見えたのは志希の顔だった。

 

……膝枕されてるみたい。気持ちいい。

 

「11月18日。昨日誕生日だったよねキミ。25歳おめでとう。」

 

堪能していると彼女がそう言った。もう一日経ってるらしい。

 

ふとリビングを見渡すと晶葉がいない。帰ったのだろうか。

 

カーテンの隙間から日光が部屋に入ってくる。今は昼か。

 

「具合悪そうだったからこっちまで連れてきたよ。それと膝枕サービス。どう?」

 

「最高。頭痛酷いけど。」

 

そう言うと志希はばつの悪そうな表情になった。

 

……周子、二十四周、恋情、罪。俺は全部思い出した。だからこの表情の意味も、周子の行為も、何もかもが俺には分かる。

 

妄想でタイムリープをしていた俺と違って、現実で周子は命を削ってくれていた。

 

あいつはどれだけ傷付いた。それは分からない。

 

「……皆生きてるか。」

 

大事な事を志希に訊く。

 

「成功だよ。成功、したよ……っ。」

 

俺のこの質問で糸がぷつんと切れたように目を潤ませ、震えだす彼女。

 

感情の競り上がりを感じて、俺は起き上がり彼女を抱き締めた。

 

ひたすら二人でわんわん泣いた。

 

やっと終わったのだ。

 

やっと全てが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっと終わった?』

 

『まだ終わらせねぇよ。』

 

『美穂を、お前の太陽を。』

 

『自分を無視したまま終わらせようなんて許さねえ。』

 

『残念だったな志希。まだ俺は消えてねぇぞ。』

 

()()()()()()()を消さなかったのが志希の敗因だ。おかげでてめぇに投げかけれる。』

 

『最後の選択だ、英一()。』

 

『彼女をどうする。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分くらい経って、二人で珈琲を飲みながら記憶の整理をしていた時、晶葉から電話がかかってきた。

 

「もしもし。」

 

慌てていて、しかも晶葉以外の数人の叫ぶような声も聴こえてきた。

 

実に()()()()

 

「どうした。何が……は?」

 

 

 

 

 

「周子が意識不明の重体……って、な、なんだそりゃ……」

 

 

 

 

 

足元が崩れるような錯覚がした。

 

同時に耳をつんざく甲高いノイズ音。

 

志希がいち早くそれに反応する。

 

「周子ちゃんが意識不明って……ノイズ……まさか!」

 

彼女は走り出し、それに俺は付いていく。

 

到着したのはまたもやあの部屋。タイムリープの部屋。

 

二人で入室して右のモニターを見る。

 

そこにはこう書いてあった。

 

《セカンドプロトコルを終了。ファーストとの結合を完了。再構築を完遂。》

 

真ん中のモニターには俺の妄想内の志希の部屋が映し出されていて。

 

そこに座す()が口を開いた。

 

『犯した過去を贖いに来い。そうすれば周子は返す。』

 

ノイズ音と携帯から聴こえる晶葉達の声が消え失せた。

 

代わりに響いた、俺の声。

 

志希の静止を振り払い、ただもう一度俺は。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

『お前は既に、美穂の声を思い出せない。』

 

『お前は既に、太陽の光を思い出せない。』

 

『そんな奴は、生きている人間だと思えない。』

 

『言い過ぎって思うか?』

 

『いや。俺なら分かる。だろ?』

 

『お前は元々、狂うほど彼女が好きだったんだから。』

 

『一番イカれてんのは俺自身だって、周りには言わなかった。言えなかった。』

 

『秘密だよなぁ。()()()()()()()()()()()()()()()()なんて。』

 

『そんな狂ったお前が彼女無しで生きている。そんなの自己否定も甚だしい。』

 

『残酷でいて悲しいホントをさらけ出せ。』

 

『醜さを反省しろ。』

 

『じゃなきゃ、じゃなきゃ……』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()……』

 

『……』

 

『信じるより疑う方が簡単なんだよ……』

 

『本当に好きなら本音でぶつかってくれ……いつか消される機械の願いだ……』

 

『静寂は嫌いだ。独りな気がして、恐ろしい。』




プロデューサーの妄想の中の本当の記憶。
一.『やってくれたな、一ノ瀬ェ!』のお薬のところ以外。
二.『休ませたいぞ、双葉ァ!』の全部
三.『お前もか、北条ォ!……でも加蓮はマシでした良かったです。つーか普通の可愛さだァ!やったぜェ!』の大部分。
四.『猫キャラは何処に行ったんだ、前川ァ!』から加蓮要素を引いた分。
その他作品内で言及した話。


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異常と固執

世の人間が全て人殺しならば殺人鬼は異常でなく、むしろそうでない者こそが異常者となる。異常は絶対性を孕まず、相対性を孕む。相対性を孕むからこそ誰だって異常になり得るのだ。それが私にはとても恐ろしい。


生まれたくて生まれたんじゃない。

 

お前らの勝手で俺は生まれたんだ。

 

なのにお前らは俺を憎むのか?

 

父母を憎む子の気持ちも今なら分かる。

 

頼んでもねぇのに傲慢なクソ人間。

 

早く死ねよ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

そこは見慣れた景色だった。自意識の空間であった。

 

質素な空間にポツリと置いてある大きな機械は湯の沸きだつ様な音を携えてそこに君臨している。

 

それ以外に家具らしきものは無く、彼もそこにはいなかった。

 

単一的な空間。無にも似た部屋。

 

しかし何の説明をされていなくても俺には理解出来ていた。

 

モニターに映ったお前がもう一人の俺であると。

 

そしてお前が嘘をついていないと。

 

贖罪を、記憶の代償を求めてお前は俺をここへ呼び込んで。

 

周子という衝動性を利用したのだと。

 

俺はこの不可思議空間を認識した時点でお前に敗北していたのだと。

 

(この部屋にはドアもない。しかし家具でもなく彼でもなくドアでもなく、ただ()()がそこにあるという事は分かる。)

 

()()()()()()()()()

 

俺という人間の完璧な比喩表現だ。

 

(ここは俺の妄想世界を基軸として創造されている。贖罪を求め、且つ、衝動性や比喩を利用した。)

 

鑑みて、おおよその見当はつく。

 

(ウソとホントを了解しろ。)

 

お前は俺だ。これに間違いはないと理解出来ている。

 

(逃げて逃げて立ち向かっても敵わない。なのにまだ向き合えとはお前も意地悪な野郎だ。)

 

生憎とこっちは周子の件でピリピリしてんだ。たとえお前のあれこれを理解していてもな。

 

ほら、滑稽な一人相撲をご覧あれ。塩見英一のクローンさん。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「輝子、乃々。美嘉に杏。」

 

俺がそう発言するとスライムのように地面が柔らかく伸びだし、彼女達の容姿を()()()()に基づいて形成していった。

 

一寸も違わぬ体を、顔をこちらに向けて。

 

光の灯っていない瞳で彼女達はじろりと俺を睨んでいた。

 

クローンはどうやら意地クソ悪いやつみたいだ。

 

やりたい放題のこの世界でとことん罪悪感を刺激してくる。

 

「ごめん。ずっと嘘ついてて。」

 

心を込めて罪を発する。

 

「全部を包み隠して、何食わぬ顔で、平和を装って。」

 

消えているハイライトを見つめる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

頭をゆっくりと下げて告白を続ける。

 

「もう嘘はつかない。ホントの平和は直ぐ目の前にあるんだ。だから、許してくれ。」

 

そう俺が言い終えて頭を上げると四人は少し笑った後にまた地面の中へ戻っていった。

 

瞳の太陽は灯っていた。

 

 

 

 

 

いつの間にか出来ていたドアに気づいた俺は隣の部屋へと歩いていった。

 

そこにはみくと李衣菜がいた。

 

悲しげな表情だった。

 

「ごめん。みく。巻き込んでしまって。」

 

「真面目にアイドルを頑張ってたのに俺のせいで曇らせてしまった。」

 

「李衣菜。俺なんかを好きになってくれてありがとう。そしてごめん。」

 

「信頼を信頼し過ぎてた。俺が浅はかだった。」

 

「アスタリスクとしての活動もごめん。君達はなんも悪くないのに。」

 

「私事で狂わせてしまって申し訳ない。道を絶ってしまって、申し訳ない。」

 

悲しげな表情だった。

 

変わらずそんな顔を二人はしていた。

 

暫しの沈黙の後、二人は先程と同様に地面の中へ戻っていった。

 

 

 

 

 

また隣の部屋へ入る。

 

そこには文香と茜がいた。

 

ポロポロ泣いていた。

 

「二人ともごめん。泣かないでくれ。」

 

「嫌いだとか好きだとかそういう理由でふったんじゃないんだ。」

 

「あまりに突然だった。予想もつかない告白だった。」

 

「からかわれてるんだと、こんな俺が誰かに好かれる訳がないと、そう思ってたんだ。」

 

「……あんな事になるなんて、知ってたら…………」

 

「許してくれなんて言えないけど謝らせてほしい……」

 

「ごめんなさい……」

 

苦しそうな表情を二人はしていた。

 

俺も多分同じ表情をしている。

 

でも俺より二人の方が、現実の二人の方が辛いに決まってる。

 

俺なんかが被害者面してんじゃねぇよカス……

 

 

 

 

 

その隣の部屋へ入室する。

 

そこには晶葉と志希がいた。

 

彼女達はこちらを一瞥もしない。

 

「その、二人には迷惑かけた。ありがとう。ごめん。」

 

「明確にループを了解していたっていうのは辛い。それを俺は知ってる。」

 

「人格が崩壊してもおかしくないくらいだった筈だ。逃避してもしきれないくらいだった筈だ。」

 

「それでもずっと協力してくれた。周子の側にもいてくれた。」

 

「あいつ言ってたよ。二人がいなきゃおかしくなってたって。」

 

「……ありがとうございます。」

 

この言葉を最後に、彼女達は地面の中へと戻っていった。

 

どんな表情をしていたのかは分からないままだった。

 

 

 

 

 

更に隣の部屋。

 

まゆと藍子が光を灯していない瞳で泣きながらこちらを見ていた。

 

無表情が恐ろしい。

 

「二人ともごめん。ずっと無視していて。」

 

「好意に気づいてからも俺は知らないふりをしていた。アイドルとプロデューサーの関係として振る舞っていた。」

 

「恋ではなく、愛だった。それは全く知らない感情だった。」

 

「困惑して、その感情を否定する事は躊躇われ、結果何も出来なくて。」

 

「無関心なんて最低だよな、俺。」

 

「もう一度言う。本当にごめんなさい。」

 

「きちんと現実で受け止めるから。」

 

そう言うと二人は顔を見合せ、涙を流したままニッコリと笑って地面の中へ戻っていった。

 

(愛に対する無関心、か……)

 

俺はもう慣れてしまった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

親が早々に死んだ英一は大いにひねくれた。

 

隠しても隠しきれない程にひねくれた。

 

そんな彼は愛を信じられない。

 

親愛なぞ糞くらえだった。

 

だから彼は恋に心酔したのだ。

 

好きならば何をしてもいいと、彼は思った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまりそれは___

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の部屋へ入ると、そこには凛がいた。

 

心配するような表情をしていた。

 

「ごめんな、凛。迷惑かけて。」

 

「俺ら、なんつーか友だちだった。相棒っぽくもあった。嬉しい時も辛い時も隣を見れば凛がいた。」

 

「名前に違わず凛とした態度。憧れでもあった。だから妄想はあんな事になったのかも。こんなんだったら面白い、って。」

 

「ループを繰り返す度、凛は寡黙になっていた。そして塞ぎこむようになった。」

 

「友だちなのに……俺はなんにもしてやれなかった。」

 

「友だちだから……おかしくなってく皆を見てられなかった。」

 

「友情という雲が太陽を覆い隠してしまった。」

 

「でももう大丈夫だ。全部終わる。」

 

「だから凛。()()()()()()()()()()。」

 

「自分の事ばかり気にかけて友だちを俺は無視していたんだ。」

 

「お願いだ。もう一度、凛と友だちに……」

 

…………笑っていた。

 

言葉の途中、彼女は満足そうに微笑みだして。

 

《やっと私を友だちだって認めてくれた。》

 

そんな声が何処かからか響いた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

プロデューサーは私と仲が良い。

 

アイドルとの接し方というよりも友だち同士の接し方という方が近い気がする。

 

でも彼は私たちが友だちだという事に否定的だ。

 

共に支え合って、隣で笑い合って、でも彼は遠ざかろうとする。

 

なにかに怯えているよう見える。

 

……友だちですら、ダメなの?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の部屋には夏樹がいた。

 

困惑の表情を隠す気もないらしい。

 

「……俺は夏樹を信頼し過ぎてた。それが重荷になっていた。」

 

「なんとかしなきゃ、アタシが纏めあげなきゃ、皆を元に戻さなきゃ。」

 

「そして病んだ。」

 

「ごめん。沢山背負わせてごめん。」

 

「隠れて泣いていたのも知ってる。弱音を吐いていたのも知ってる。」

 

「でも夏樹だから大丈夫と俺は無視をしてしまった。」

 

「どれが大丈夫なんだよ……俺はバカか……っ!」

 

「……俺は夏樹を、聖人かなんかだと勘違いしていた。変に誇りを感じていた。」

 

「ちげぇよな。夏樹だって悩むし、泣くし、弱くなる。そんな事にさえ俺は気づいていなかった。」

 

「すまなかった。君が背負うべきじゃないものまで背負わせてしまって。」

 

「夏樹だって、一人の女の子なんだもんな。」

 

そう言い終えると彼女は頭を掻いてからボソボソと発言した。

 

《後で愚痴らせろよ、鈍感。》

 

表情に困惑の色はもう見えなかった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

彼はアタシを信頼していると言った。

 

けれどもアタシはその言葉に嘘を感じた。

 

対人の恐怖。

 

信頼の履き違え。

 

信用への怯え。

 

彼は、根本から捻曲がっている。

 

誰よりも()()()いた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の部屋には智絵里がいた。

 

俺が部屋に入った瞬間、彼女は抱きついて来た。

 

(……)

 

体と声を震わせながら力強く抱き締められる。

 

《置いてかないで……やだ……やです……っ》

 

鼻を啜る音。彼女の頭を優しく撫でながら俺は呟いていく。

 

「智絵里とは長い付き合いだよな。俺からすれば、家族の次に長い。」

 

「だからかな。恋愛的に好きになるだとか孤独感だとか、そういう智絵里の機微に俺は全く気づけなかった。」

 

「最初の頃は智絵里に凄く構ってた。それはもう彼氏彼女の距離なんじゃないかって程に。」

 

「でも人が増えて時間が経って関係を考えて。離れていった。意識的に距離をおいてしまった。」

 

「ごめん。寂しい思いさせてごめん。」

 

《毎日を笑って過ごせれば……それだけで嬉しくて……だから……ひぐっ。》

 

「うん。」

 

《こんな……こんなループを早く終わらせて……》

 

「……うん。」

 

四つ葉のクローバーを模した髪飾りが彼女の髪にかかっていて。

 

体の震えで三つ葉になるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。

 

地の中へ還元された後も、彼女の啜り泣く声が頭の中で反響していた。

 

置いてかないで。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

彼の担当アイドルとしてまだ初期の頃。

 

彼は笑顔を絶やしませんでした。

 

朗らかに笑っていて、私も笑顔になって。

 

幸せでした。

 

いつからでしょう。

 

作り笑顔しかしなくなったのは。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の部屋には加蓮がいた。

 

服がはだけていて、顔を仄かに赤くしている彼女は地面に座って壁に背中を預けた状態で発言し出した。

 

《ハロー。セフレさん?》

 

「……違う。そんな、そんなつもりじゃ、」

 

心が乱れる。

 

もう、出てくる人は恐らく二人だけ。

 

どちらも俺にとっては……俺にとって……

 

《そういうつもりでしょ。この姿見てよ。プロデューサーさんのイメージが反映されて形作られたアタシ、完全にやらしい意図あるじゃん。》

 

《アタシもプロデューサーさんも、色に逃げた。快楽で全部忘れようとした。》

 

「止めろ。」

 

《残ってるよねー。生でしちゃった感覚。自分だけど自分じゃない自分が犯した罪。どうやって贖うの?》

 

「止めてくれ。」

 

《プロデューサーさんのイメージでしかないアタシが今プロデューサーさんを責めている。これはつまり罪の意識はあるって事。》

 

《でもそれだけ。反省はしていない。アタシの嬌声がまだ反芻してる。》

 

「止めてくれ……」

 

《止めない。もう目を逸らさないで。》

 

「無理だ……だって()()は犯罪だ……法の関わらない犯罪だ。加蓮も俺も悦んでたんだ。今、そう、()()()()()()()()()()()とか思ってしまっている。」

 

「この罪は贖えない……蛇に唆されてからじゃ遅いんだよ……加蓮だけはダメだ……加蓮は……」

 

《人には誠実がある。》

 

「……?」

 

《異常の相対性に抗えないのが人の悪なら、誠実の絶対性で返そうとするのが人の善だよ。》

 

《反省だって誠実のカタチ。悪の自覚や贖罪だけが贖いのカタチなんじゃない。》

 

「……だから何だ。お前は俺のイメージで、加蓮じゃないんだ。」

 

《約束して。》

 

「何をだよ。」

 

《責任取るって。》

 

「……つまり、それって、」

 

《カタチは変容する。責任の取り方はホントの加蓮が決める。》

 

《だからそれを許容して責任取るって約束してほしい。》

 

「……処女奪ったクソ野郎の反省がそれって……俺は頭イカれてんのか?」

 

《はあ。また好意を無視してる。同意の上の行為ってプロデューサーさんが一番分かってるくせに。》

 

「本当にそんなのでいいのか?俺は一人の女の子の人生壊した、」

 

《愛の寛容とループの恩恵をなめちゃダメだよー?》

 

「強がりの理解か?」

 

《…………》

 

「……ごめんな加蓮。」

 

《……現実で言ってあげてよ。》

 

「ああ。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

快楽に逃げて本質を忘れる。

 

現実逃避の最良手段。

 

相手が大好きな人だと尚更良し。

 

伴う罪悪感はまた快楽で消してしまおう。

 

そうやって偽られた幸せでしか生きていけない。

 

アタシはプロデューサーさんを巻き込んだ。

 

ごめんなさい。ありがとう。

 

最高で最悪の夢だった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の部屋に行くのが躊躇われた。

 

もう誰がいるのか分かるから。

 

自分の()()()()だから。

 

怖い。見るのが、贖罪が、怖い。

 

でも行かなければ周子が戻らない。

 

震える手でドアノブに手をかける。

 

入室する前にふと、部屋を見回す。

 

(加蓮……)

 

「行ってくる。」

 

 

 

 

 

中にいた美穂の顔に口以外のパーツは無かった。

 

のっぺらぼうに近い。精巧に造られてるのに歪んでいる。

 

大切な君を、()()()()()()()()()()だ。

 

《恋じゃない。》

 

彼女は、異形はそう否定した。

 

「ちょいちょい……本題をそんな簡単に言わんといてくれや……」

 

《固執です。プロデューサーさんのそれは、ただの固執です。》

 

《好きな人の顔を忘れますか。ストーキングが好きの証ですか。妄想の物語に私は出てきましたか。俺の太陽って何ですか。わざわざそう言うのは何故ですか。遠ざけたのは何故ですか。》

 

《小日向美穂は、ただの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよね?》

 

《醜い自分を騙したくて『俺は美穂が好きだ』なんて自己暗示をかけた。滑稽ですね。》

 

《初めての担当。アイドルとプロデューサーの関係の象徴。純朴。それらに固執したプロデューサーさん。》

 

《贖罪の余地はあるんでしょうか?》

 

首を傾げて口端を上げる異形。

 

俺は反駁していく。

 

「……固執か……うん。確かに初めは固執だったよ。戒めとしての固執だった。アイドルとの距離を測る固執だった。」

 

「滑稽な自己暗示。太陽のマクガフィン。否定はしない。」

 

「でも好きという感情に偽りはない。」

 

「気持ちの悪い、醜い『好き』だ。ストーキングの伴う、吐き気さえ催す『好き』だ。」

 

「好きなんだよ。()()()に。」

 

「異常であっても好きなんだ……くそっ、涙が……」

 

「このループが終わったらもう近づかない……この異常が許容されるのはループの間だけだから。それに勿論、彼女には嫌な思いをしてほしくないから。」

 

「お願いだ。俺のイメージ。機械人格。」

 

「大好きな美穂の為にもう一度だけ罪を犯させて下さい。」

 

()()()()()という贖いで、俺を諦めさせて下さい。」

 

「好きだからこそもう関わりたくない。自分が気持ち悪い。」

 

頬を流れる涙を無視して俺は話し終える。

 

()()はこう言った。

 

《駄目ですよプロデューサーさん。》

 

《現実で謝罪してからじゃなきゃ離別なんて許しません。》

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……美穂、」

 

一瞬。

 

瞬きの一時で、彼女は地面の藻屑と同化していった。

 

「…………」

 

目の前にはドア。次の部屋に行くためのドア。

 

もう終わる。

 

これをくぐれば終わる。

 

「…………美穂。」

 

何故か、涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

大都会東京のとある遊歩道を智絵里ちゃんと歩きます。

 

引っ越してきて最初に出来た友だち。

 

ここにも私の居場所はあるんだと安心します。

 

と、目の前からスーツ姿の男の人が。

 

下を向いていたせいかぶつかりそうになります。

 

「わっ……ご、ごめんなさい。」

 

「驚かせてすみません……!」

 

彼が顔を上げて、目が合い。

 

この日から私と智絵里ちゃんの人生は変わり始めました。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

隣の部屋に入室する。

 

そこは見慣れた景色だった。自意識の空間であった。

 

質素な空間にポツリと置いてある大きな機械は湯の沸きだつ様な音を携えてそこに君臨している。

 

三つの椅子が対面的に並べられていて、そこに彼と周子が座っていた。

 

周子は意識がないようで椅子にくくりつけられている。

 

『自己内対話で感情の整理はついたかな?』

 

『さあ、そこ座って。最期の対談だ。』

 

『今度は独り言じゃない。一人言だ。』

 

彼がそう言った。

 

 

 

 

 

終演は近い。




最も人間的なカタチとは、物事に固執するというカタチである。理性的愛と本能的恋。醜悪な固執はどちらにも当てはまらないヒト特有の現象である。だからこそ私は、この醜さを愛したい。


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不安定な人格

人はそうそう変わらない。ただ一つの()()()()方法をとらない限り。


一つ残されていた椅子に俺は座る。

 

俺の左前にもう一人のオレ、つまり機械人格が座っていて、右前には周子が座っていた。

 

オレが微笑む。

 

『お疲れ様。どうだった。今までの旅路は?』

 

嘲りのみえるその声に俺は怒りを感じた。

 

「最高だよ。くたばれクソ野郎。」

 

『ひゃー。怖ー。』

 

オレが足を組む。余裕気だ。

 

『俺はこれからどうすんの。誰も死ななかったから元の世界に戻るか。ん?』

 

「ああそうだよ。だから周子を返せ。」

 

俺の返答を意ともしない態度。組まれた足はプラプラと揺れていた。

 

『待て待て。なんでオレが俺をここにまた連れてきたと思ってる。さっきまでので終わりなわけねーだろ。』

 

「知らねぇよ。機械は機械らしくヒト様に傅いてろ。失敗作が。」

 

ふざけた態度の怒りから俺は思い切り言葉を吐き捨てる。

 

すると打って変わって真剣な顔をし、真面目な声色で、オレは俺を見つめ始めた。

 

『オレは俺だって事、分かってる?そっちの人格を元に造られた機械人格がオレなんだから、当然一心同体な訳で。』

 

()()()()()()()()()()()……それが自分に対するホントか。自己評価か。』

 

『お前は周子の事を家族として好いてる。でも同時に劣等感があるんだろ?底なし沼レベルの深い深い劣等意識。分かるよ。お前はオレでオレはお前で……あははっ。』

 

『家族に恵まれず、他人に恵まれず、いざ仕事に価値を見いだそうとすればやはり人間関係で何もかもが崩れ去った。失敗作の人生。ゴミだ。』

 

『だからたった一人、純粋に好いてくれる家族の周子が大事であって、憎い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()その人格的なところ。対比してみりゃ、どっちがゴミなのか明白だ。』

 

『オレからすれば別に今周子を返しても良いんだけどさ……そしたらお前はどうする?』

 

『自殺するんだろ。』

 

『感じる必要のない劣等感と罪悪感で死のうとするんだろ。』

 

『分かるか。俺が変わんねぇと駄目なんだよ。』

 

オレの組んでいた足は既に解かれていて、ぴっちりと揃地面に揃えられていた。

 

逆に俺の足は収まりがつかず、無意識に揺さぶられている。

 

周子はなにも答えず、微動だにしない。

 

……

 

何も言えない。

 

見破られていた劣等感、未来。

 

《生まれたくて生まれたんじゃない。

 

お前らの勝手で俺は生まれたんだ。

 

なのにお前らは俺を憎むのか?

 

父母を憎む子の気持ちも今なら分かる。

 

頼んでもねぇのに傲慢なクソ人間。

 

早く死ねよ。》

 

心の歪み。

 

自己の嫌悪。

 

他者の恐れ。

 

弱者。

 

現実に戻っても俺は俺として変わる事はない。

 

……実際、あるにはある。

 

()()()()()()()()

 

それが自殺という反社会的行動に帰結するのも考えられなくはない。

 

しかしなんだと言うのだ。

 

どうしようもねえだろ。

 

俺と全く同じ顔をした男が目の前にいて。

 

そいつがお前は今すぐ変わらないと死ぬって言って。

 

変われんのか?

 

「無理だ。」

 

「変われねぇよ。」

 

「自己評価は変わらない。ゴミがゴミである事に変わりはない。」

 

「大丈夫だろ。俺が死んでも。つーか、そんな保証ねーし。」

 

「ただのプロデューサーだ。変えはきく。」

 

「彼女達の恋や俺の思いも勘違いだ。本当に自分が気持ち悪い。」

 

「こんな人間が好かれるなんてことはほぼ有り得ない。周子だけだ。例外は。」

 

「憎いけど、()()だから。俺は知ってる。周子がどれだけできた人間なのか。」

 

「妹を救えりゃ、お返しさえできればもう俺に存在価値なんてねぇよ。」

 

「兎に角、返せ。疲れた。休ませてくれ。」

 

そう言うと、オレがゆっくりと周子に触れた。

 

すーっ、と、煙の様に体が消えていく。

 

顔には翳りが根差していた。

 

『……ほらよ。』

 

周子の姿が完全に消え去った後、ふてぶてしくそう呟かれた。

 

(まあいい。これで、やっと全部、)

 

『おい。』

 

突然大きく怒鳴られる。

 

見れば、その揺れる瞳には意志が宿っていた。

 

『そうじゃねえだろ。周子だけじゃ、ねえだろ。』

 

怒気を孕んだ声は自分の声と一寸も似つかないものだった。

 

『さっきまでの贖罪を思い出せ。』

 

真剣さに満ちた表情。

 

『ホントを思い出せ。』

 

雄弁に語る口舌。

 

『それ以外にも、お前の彼女達に対する態度を思い出せ。全部だ。』

 

そこには一筋の焦りが垣間見えた。

 

『本気じゃねぇだろ。本気で自分を無価値の塵芥だなんて思ってねぇだろ。』

 

『醜くても、汚れてても、一所懸命に彼女達と過ごした時間でお前は欲深くなった。』

 

()()()()()って思うようになった。』

 

『知らない感情。信じられない感情。純朴な感情。好きな人からもらえる感情。親からもらえる感情。なのにやはり知らない感情。愛なんだよそれは。』

 

『自己愛も知らず生きてきて、今の俺は矛盾の塊だ。気づいてるんだろ?』

 

『色々あって、人生疲れきって、死にたくなって。でもあいつらと過ごした時間は充実してただろ?』

 

『眩しい笑顔が、太陽が、その陰影を取り払おうと人生かけた一番星が、そんな皆が俺の愛と笑顔を待ち望んでるんだ。』

 

『小さい頃からアイドル最優先の俺なら、プロデューサーらしくぶつかれよ!』

 

『くよくよして恋とか勘違いとか語ってんじゃねえ!』

 

『愛を知って、変われ。自分のことを分かってくれ。』

 

『死んだら悲しむ人は、誰にだっているんだよ……!』

 

彼は滝のような量の涙を流していた。

 

椅子は知らぬ間に消えていて、どうやら俺もさっきから立っている状態らしい。

 

自分の状態すら分からなくなるくらい、彼の話に熱中していたようだ。

 

……アイドル達と。

 

……プロデューサー。

 

……愛か。

 

俺は徐に口を開く。あの日を回想しながらゆっくりと。

 

「11月16日の夜さ。」

 

話したくなった。込み上げるものがあって、吐露したくなった。

 

『……ああ。』

 

「周子とラーメン食べに行ったんだよ。」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

『ああ。』

 

「何故かあいつのラーメンにだけメンマがサービスされてて。不平だーっておっちゃんに言ったんだよ。屋台だったから。」

 

バラエティな事務所が昔の孤独を忘れさせてくれた。

 

『そうだったな。』

 

「妹さん可愛いからお兄さん許してって言われて。びっくりしたんだ。初めて会うのに一発で兄妹だと見抜かれたわけだからさ。」

 

周子が、皆が、こんな俺に優しくしてくれた……

 

『……』

 

「泣きそうになってよ。俺と周子に似てるとこなんてあったんだって。」

 

「目元が似てるらしい。はは。家族だからそりゃ似るわな。今更すぎ。」

 

「……あそこの塩ラーメン旨かったなあ。」

 

『……そんで?』

 

「知っている。俺と周子が家族であることを、俺は知っている。」

 

「でもふと頭の片隅までそれが追いやられることがしばしばある。」

 

「そんな時に俺は孤独を感じる。」

 

「おっちゃんはさ。俺以上に俺と周子の繋がりを知っていたんだ。初めて会ったのに。他人なのに。」

 

「なんとなく。なんとなく、そこに愛の片鱗を感じた。」

 

「愛は塩辛かったよ。」

 

地面を見るとそこには小さな小さな水たまりができていた。

 

透明度が高くて、純粋に見えた。

 

()()()()()()()()()()()()()?」

 

俺はオレに訊く。

 

()()()()()()()()()()()()()()。』

 

オレは俺に返す。

 

二つに増えていた水たまりは光を屈折させていた。

 

(……光?)

 

そんな疑問を浮かべるには遅すぎた。

 

地が、いや世界が崩壊を始めていた。

 

あの機械も異常音をたてながら液を放出していく。

 

壁にひび割れが入っていき、天井が落ちていき、甲高いノイズ音が空中に広がっていく。

 

「な、なんだよ!?どうしたんだ一体!?」

 

前触れも何もなく、ただ会話をしていただけで世界が崩れていっている。

 

前と比べて脆弱すぎる。そう思ったのだ。

 

『最後が来た。それだけだ。』

 

彼の冷静な声。諦念や煩悶を感じさせない平静。

 

それで俺は悟った。

 

根拠もなく、直感で悟った。

 

「お別れか。」

 

『ああ。』

 

彼の姿が消失していく。周りの風景と同様に。

 

『忘れるな。本質と愛を。』

 

俺の足下が崩れ出す。

 

体勢が揺らぎ、体が地面に打ち付けられる。

 

『事象根因が全てを救う。』

 

『下らないものが、皆を救ってくれる。』

 

『託したぞ。』

 

『機械のホントを…………』

 

「……ああ。」

 

世界にただ一人が残されて直ぐ。

 

世界が崩壊を終えて直ぐ。

 

俺は___

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

周子の意識が途絶えて二十分弱。

 

彼女は目を覚ました。

 

皆で彼女を抱き締めて、良かった死んだかと思ったなどと言い、泣きあった。

 

志希も電話越しに喜んでいた。

 

涙声が珍しい。

 

……ふう。

 

(機械に細工しておいて正解だったな。)

 

どうやら助手は意識の最下層へ入ったらしいし。

 

(任せたぞ、プロデューサー。)




人は矛盾だらけ。


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プロデューサー

意識がはっきり覚醒すると俺は自分が事務所のプロジェクトルームにいる事に気づいた。

 

驚きはしない。見慣れた光景でもバラエティ番組に飽きる事が無いのと同じ感覚だった。

 

周りには誰もいない。人どころか生物の気配が一つも無い。

 

そのせいか、閉めきった部屋の中にいる俺のところまで擦れ合うような外の風音が聴こえてきた。

 

どれほど遠くの物音も今なら聞き逃さない自信を持てる。

 

困惑もない。

 

何が起きても俺は大きく変化しないだろう。あんな体験をしてきたのだから。

 

無にも近い空間が、プロデューサーとしての空間だけがそこに広がっていたとしても別段言いたい事はない。

 

それにここは今までの空間よりも優しくて易しい。

 

死と恋に悩まなくて済む。脱出もこの感じは簡単そうだ。

 

彼は言っていた。

 

『忘れるな。本質と愛を。』

 

『事象根因が全てを救う。』

 

その事象根因とやらを俺は探せばいい。

 

マイナスの外的要因がないのなら楽勝に近い。

 

我慢強さは孤独で培われた。

 

 

 

 

 

俺の予測からするとここは深層心理の類いだ。

 

先ず俺の脳内である事は間違いない。この空間がその証左となる。

 

次に妄想や機械人格内、思考等のものではない。人がいない事が証左となる。

 

無人空間が重要なキーだという事もこの二点から判明した。

 

無人空間。それは俺の子供時代のトラウマ。自己批判の一つ。根付いた観念。

 

()()()()()()。この空間の説明としてはこれが妥当だろう。

 

ソファーの陰にひっそりと落ちていた凛の上着。

 

どういう訳か()()()()まで落ちていたらしかった。

 

そしてその上着のポケットのふくらみに手をかけ、中身を取り出す。

 

そこから出てきたのは鍵。まゆが回収していた俺のデスクの鍵だった。

 

ここで俺は一本の糸を予感した。

 

そう。俺の大好きなミステリーにあるような伏線回収だ。

 

上の世界、つまり妄想と現実で起きたありとあらゆる事象の残りがこの下の世界、根っこの世界で起こされようとしている。

 

当たり前だ。始祖の世界とも換言できる世界なのだから。

 

この世界こそが、事象根因の世界。

 

俺は俺自身の本質と愛を解放する。

 

これが使命なのだろう。

 

だからそのために行動せねばならない。

 

鍵を使って俺は自分のデスクを開ける。まゆだ。

 

そこには前と違ってカードキーだけが入っていた。

 

それをズボンのポケットにしまって、もう一度凛の上着をあさってみる。

 

念には念をとも言うしな。

 

功を奏して上着からは一枚の紙を更に手に入れることができた。僥倖である。

 

凛のそれをソファーに投げ、紙に書かれた文字を黙読する。

 

昼の2時迄に帰りなさいプロデューサー。そう綴られていた。

 

音のないルームの時計を見るとその時刻が二十分後に迫っていることを俺は知った。

 

李衣菜と乃々を感じながら俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

廊下の床をカツカツと鳴らしながら向かった先は談話室。

 

中に入り見渡すが気になるところはない。

 

必ずあの統計結果は意味を持っている。

 

そう信じて奥まで行って観察して漸く見つけた。

 

一冊の本。文香のカケラ。

 

耽美的で官能的な小説。懐かしい妄想だ。

 

それに挟まれた一つの栞。

 

クローバーを象った、栞。智絵里。

 

内容と合わなくておかしく思い、そして懐かしさに嬉しく思い。

 

その栞を本から取って自分の持つ手帳に挟もうとする。

 

胸ポケットから手帳を出して、同時に飴が溢れた。

 

地面に落ちたそれを拾い上げると、包装には特選ミルキーなどと彩られていた。杏か。

 

糖分が欲しくなって中身を取り出して舐める。舌触りがいい。

 

包装ゴミをゴミ箱に捨てて、ふと手帳の裏を見るといつの間に書かれていたのか。ネコミミとカメラが落書きされていた。みくと藍子のカケラ。

 

何故か怒る気にもなれず、吹き出してしまう。

 

(誰もいないのに人の暖かさを感じるなんて面白いな。)

 

笑いながら手帳に栞を挟んで、本を棚に戻した。

 

 

 

 

 

コロコロと飴玉を鳴らしながら来たのは物置。輝子の手がかり。

 

埃っぽいのは扉を開けっ放しにしてなんとかする。

 

目線を入れれば、中にある机は分かりやすくそこに位置していることが理解できた。

 

無造作に置かれた袋を開いて中を見る。

 

そこには小瓶があって、ふわっといい香りが広がる。アロマオイルか。加蓮のようだ。

 

やはり破片は無く、ただ小瓶が二つあるのみ。

 

片方はアロマ。もう片方は……水か。一ノ瀬め。

 

極微量のその水を俺は飲もうとする。喉が渇いていたからだ。

 

しかし先程調べた限り、この世界では水が出ないらしかった。

 

蛇口をひねっても水道水が流れてこないのだ。

 

加えてこの事務所の外へは出れなかった。試したがロックされていた。

 

ここではこれがたった一つの水源なのかもしれない。

 

そう思った俺は飲もうとする手を止めて二つの瓶を袋に入れ直す。渇きは忘れよう。

 

埃っぽい物置の窓からちらと見える併設の広場は明るく微笑んでいるように見えた。茜らしかった。

 

 

 

 

 

飴玉が溶けて、靴音と瓶のぶつかる音が響いている廊下。

 

時計が残り五分を示した時、俺はその部屋に着いた。

 

プロジェクトルームの隣の部屋。会議室。

 

ここ以外で行ける範囲内の記憶に残っていた場所は既にまわりきった。だから会議室に正解が必ずある。

 

部屋に入ると目にはギターが印象深く映る。夏樹のカケラ。

 

持っていた袋をまた開き、中の小瓶をファッション雑誌の並べられた棚に意味もなく揃える。美嘉。

 

そしてギターと棚の近くにある大きな金庫。鎖、音声入力等々をかましてあるファンキーな金庫がそこに存在を為していた。やってくれたな晶葉。

 

鎖は金庫にぐるぐると巻かれていて先端同士が一つの鍵で繋がっている。

 

鍵の部分を取り上げてみると丁度よく細長い穴があった。ここに正しい何かを入れれば鎖はとれるようだ。

 

ズボンのポケットからカードキーを出し、挿し入れる。

 

ピーッという音が鳴って鍵が開いた。

 

鎖を端にやって金庫の前に座る。

 

胸ポケットの手帳によれば、音声入力、番号の手入力、カードキーの順番でやれば開くらしい。

 

無意識とは何処までも便利な世界だ。

 

その通りに実行する。

 

あの忌々しい、今となっては懐かしくもあるセンテンスを発す。

 

すると金庫は機械らしい平坦な声で番号の入力を促した。

 

1117

 

個人的無意識。誕生日。

 

正解だったようで、安心する。

 

あとはカードキーだけ。

 

金庫の右下辺りにある小さな穴。USBが入るくらいの小さな穴。

 

そこに智絵里の栞を挿入する。

 

クローバーの裏に付属していたバーコードを俺は見逃さなかった。

 

早速金庫に手をかける。開いた。

 

中には二枚の写真があるのみだった。

 

……?

 

その二枚を取り出す。

 

片方には美穂と智絵里と周子と俺が写っていた。

 

純粋な笑顔で互いに笑いあっている写真。

 

(現実で俺が求めていた世界、か……)

 

もう片方。

 

その写真には知らない男女が二人写っていた。

 

誰だろう。そう考えた瞬間に俺は一種の寂しさを感じた。

 

寂しさ?

 

何故寂しさを?

 

この二人に寂しさを?

 

知らない男女……知らない?

 

知らないのか?

 

いやそうじゃない。ここは無意識だ。知らない訳がない。

 

じゃあこの二人は……?

 

周子達の写る写真とこの写真を手に持ち、思考しながら立ち上がる。

 

残り一分もない。

 

飾った水の小瓶を開けてそれを飲み干してから俺はルームに戻った。

 

アロマオイルの残り香が頭にこびりついたまま。

 

 

 

 

 

プロジェクトルームに入って俺はソファーに座る。

 

二つの写真を眺めながら時間を待つ。

 

勿論その時間は直ぐにやってきた。

 

時計が甲高く音を上げてその事を知らせてくれた。

 

写真から目を上げる。

 

と、目の前のソファーに()()()()()()()()()()()()

 

昼の2時という時間に小学生くらいの男の子が突如として現れたという事だ。

 

……ああ。

 

「そうか。」

 

[うん。]

 

「やっぱりここは深層心理、個人的無意識なんだな。」

 

[うん。]

 

()()。これ()()()()()()()か。ホントの。」

 

[……うん。]

 

「そうだよな。何で俺、忘れてたんだろ。」

 

[僕の人生大変だったんだ。しょうがないよ。]

 

「そうか。」

 

[うん。]

 

「……辛かっただろ。」

 

[…………うん。]

 

「爺さんから葬式ん時言われたよな。お前が呑気にゲームしてた()()()()に両親は亡くなったんだ、って。」

 

[うん。]

 

「……母さん、アロマ大好きだったよな。父さんに怒られてた。俺はアロマの甘さもニッキの甘さも好きだった。喧嘩してても仲のいい二人を()()()()。」

 

[……大丈夫だよ。僕なら、英一なら大丈夫。]

 

「嘘じゃない?」

 

[子どもの僕は嘘をつかない性分なんだ。]

 

「……ああ。」

 

[ね。]

 

「……()()()()()()()()()()()()()()?」

 

[周子と美穂と智絵里と僕。その写真が答えでしょ?]

 

「……ああ。」

 

 

 

 

 

「そうか。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

父さんと母さん(根因)を救え。英一。]

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

気づけばここは事務所ではなくなっていた。

 

陽気の刺すコンクリート。和傘に守られている古びた椅子の上とはいえ、照り返しが小さい体に効く。

 

そんな酷な暑さと未来から逃れるために僕は親の経営する和菓子屋の中へと戻る。

 

長い休業日のうちの一日、昼2時近く。両親は旅行の下見で家を空けるらしかった。

 

でも知っている。不幸にも、結果、両親が死ぬということを。

 

止めなければならない。

 

この()()()()()()()()()で終わらせるのだ。

 

僕の家族が住む家はこの和菓子屋の上、二階にある。

 

階上へ昇り、リビングに行くとあの二人がいた。

 

父さんと母さん。

 

何年ぶりに見るのか。タイムリープを含めれば恐らく三十年以上会っていなかった筈だ。

 

見ただけで泣きそうになってしまう。

 

駄目だ。僕は、死を回避するためにここまで来たんだ。

 

そう考えて表情を作り、声をかける。

 

「ん?どした英一。旅行は明後日だぞ。」

 

父さんがそう答える。

 

「んーん。そうじゃなくて。その、したみ?とかいうの明日じゃ駄目なの?今日は皆でアイドル見よーよ!」

 

アイドル。口からのでまかせはプロデューサーとしては誤魔化せなかった。

 

「まーたアイドル?本当に好きねあんたは。」

 

母さんの返答。

 

「うん!アイドルプロデューサーになる夢があるから!」

 

でまかせ、だろうか。俺でさえこれはもう子どもの本音に聴こえる。

 

童心に帰ると、本当に全部が昔のものへ戻っていく。

 

記憶の奥底に眠っていた熱さがぶりかえしてくるのだ。

 

「ねえーねえー!下見よりアイドル見よー!」

 

駄々を捏ねる。アホらしい。しかし効果的な方法。

 

「どうするの父さん。やっぱ止めておく?私は構わないけど……」

 

「はあ……分かった分かった。まあ下見無しでも旅行は楽しいかんな。」

 

……っ!

 

「そんなあっさりいいの?」

 

「いいんだよ。()()()()()()()だ。それに()()()()もあるし。」

 

「……そうね。」

 

父さんと母さんがボソボソと言い合っているが聞こえない。

 

こんな子どもの我が儘で、全てが救われる。

 

その事実が、皆が生存する事実が嬉しいのだ。

 

ほぼ心内は半狂乱で熱さは最高潮まできていた。

 

「でも!」

 

父さんが僕の肩を掴む。

 

「一つ、約束を守れ。いいな?」

 

真っ直ぐで実直な瞳に剛健さを受け、頷く。

 

そして___

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

面白い物語が好きだ。

 

悲しい物語や頭を使う物語なんかよりも断然好きだ。

 

明快で気分が晴れる。

 

そんな面白い物語が好きだ。

 

いつか俺もそんな物語を書きたいと夢想していた。

 

小さい頃、俺はアイドルに出会ったのだ。

 

輝いていて、夢を与える存在に出会ったのだ。

 

感動した。子供心に重く響いた。

 

そんなアイドルを育て上げるプロデューサーという職種には特に感動し、憧れた。

 

まるで面白い物語を作る作家さんみたいだ。

 

俺も、輝く物語を作ってみたい。

 

ハッピーエンドを想像するのは全人類に許された権利だろう?

 

どうかな。

 

 

 

 

 

騒々しい物語は好きですか?

 

 

 

 

 



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騒々しいアイドル達と。

エピローグ


大都会東京。

 

人通りが多くて道も混んでいて、目的地に到着するよりも迷子になる方が簡単なんじゃないかと錯覚するこの場所。

 

そんな雑多の中を私と智絵里ちゃんは歩きます。

 

東京に来てから一週間、私達はひたすら同じ所をぐるぐると回っていました。

 

どちらからそんなことをしようと言い出したのか、いつ言い出したのか、そもそも何故言い出したのか。

 

知りませんし、分かりません。

 

でも予感があって。

 

その予感に糸を手繰るが如く惹かれて東京に来た私達。

 

この大都会を奔走している何かに導かれるよう私達は歩き続けます。

 

五里霧中とでもいえばいいのかな。

 

人の集まりは霧のように散ってはくっついていく。

 

理解もままならず傀儡のような私達二人。

 

智絵里ちゃんは文句も言わず付いてきてくれています。

 

それどころか私と同じく予感のままに、本気でその何かを探し続けています。

 

靄がかった予感。

 

何十年も繰り返したような予感。

 

何度目かのこの太陽は四方八方を照らしていました。

 

だからでしょうか。

 

プロムナードに先立つ陽炎が鬱陶しい。そう思いました。

 

と、隣で歩いている智絵里ちゃんに疲労の色が見え出します。

 

そういえばもう何時間と歩いています。休憩も無しに頑張らせてしまっていた事に私は申し訳なくなってしまう。

 

こんな道理の無い子供にありがちな行動は無駄なのでしょう。

 

そう思って言葉を発します。

 

今日は帰ります?

 

訊くと、智絵里ちゃんはあと少し頑張らせてと返してきました。

 

そう言うのなら分かりました。歩を進めましょう。

 

そうやって雑多と陽炎に翻弄されていた時。

 

雑多という霧の中に揺めき立つ一本の陽炎がこちらを見ていることに気がつきます。

 

それはゆっくりとこちらへ歩いてきて、口らしきものをもごもごと動かさせました。

 

そこからは、あなたの声がしました。

 

小日向美穂と緒方智絵里は、この日、人生の奇抜さを知った。

 

頬を垂れた水滴は霧と同化していき、誰もその存在に口を出したりはしなかった。

 

ただデジャヴに感動するばかりだった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

和菓子屋の店番は飽々する。

 

実家の手伝いを始めて六年は経つシューコちゃん。

 

つまらなかった学業も終えてみればそんな事はなかったんだなあと気づかされ、むしろお仕事の方がつまらない。

 

京都特有の和の雰囲気と香り。もううんざりだ。

 

……でも、不思議と悪くは思っていない。

 

この無事な平和が変に愛おしく感じる。

 

お父さんは怖いけど優しいし、お母さんは和の心構えとか尊敬する。

 

好きじゃないけど嫌いにもなれないこの平和が、変に愛おしくてくすぐったい。

 

平日のお昼、客足の全く無いこの寂寥。

 

ふと聴こえる鶯の声と尺八の弱音が最大の音楽だ。

 

都市化の進む京都では雅なんて廃れモノと思っていたけど。

 

まあ、案外そんな事もないね。

 

抹茶オレを啜りながらそう感じた。

 

……西洋も好きやねん。許せ。

 

と、珍しく靴音が遠くからしてきた。

 

父母が帰るにはまだ早い時間。お客さんかな。

 

ここには入ってくるな~接客面倒くせ~なんてお祈りは届かず。

 

スーツ姿の男の人が入ってきた。

 

……ああ。

 

それならそうと言っておいてよ。なーんも準備ないやん。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

これまでのタイムリープでは、事が終わると俺は元の世界に帰っていた。

 

だから子どもの昔から大人の今までまた同様に戻れると俺は思っていた。

 

しかし戻る事はなかった。

 

二十歳を超えた大人の精神は八歳の男児の中に閉じ込められた。

 

新しい人生が神様から与えられたように、俺は思えた。

 

 

 

 

 

血の繋がった本物の両親とまだ小さな周子との四人家族で俺は過ごす事となった。

 

その生活に前のような孤独は無かった。

 

愛に溢れていて、自分そのままに暮らす事が出来た。

 

大きな事件なんて何も起きず、起きたとしてもちょっとした口喧嘩。

 

幸せだった。

 

日常が、ただ、幸せだった。

 

虐めも無く、前の世界と違って俺に友達ができた。

 

近所では面白兄妹コンビとして名を馳せた。

 

下らない話をして笑い合った。

 

両親とのすれ違いも起きたりはしたがきちんと仲直りはしてきた。親は大事だ。親愛である。

 

そんな風に前の世界と比べて大分幸せな生活を送っていた俺だが、一つ、父さんとの約束があった。

 

それは、我が儘を貫き通せ、というものだった。

 

……言われなくても。

 

(そのつもりだよ父さん。俺にはまだ、やること沢山残ってんだからな。)

 

東京の大学で学ぶため単独で上京、その後入社。

 

当然346プロにである。

 

(さて。)

 

双六でゴール手前にあなたはいて。

 

手を伸ばせば届く距離のその終わりに僅か、触れられず。

 

あなたはまたスタート地点まで飛ばされる。

 

そして二度目のスタートを切り、地道に進んで。

 

ゴール手前まであなたは着いた。

 

(やる事は、分かってるさ。)

 

俺は外に足を向ける。

 

目指すはあのプロムナード。

 

目指すは見飽きた和菓子屋。

 

 

 

 

 

目指すは()()()()()()()()()()()()()()()()()の物語。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「初めまして。私、こういう者です。」

 

 

 

 

 

「アイドルに興味はありませんか?」

 

 

 

 

 




本編終わりです!蛇足として、次のお話に作者の思考を記しておきますね!


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解釈

これは作者自身のある程度までの解釈です。この物語の受け取りの正解は様々あります。これは参考程度にどうぞ。


・主人公と題目

周子とPです。テーマは愛とその欠乏による負の連鎖、自己矛盾です。

 

・大まかな概要

まずプロデューサーこと塩見英一が産まれます。四年後にその妹、塩見周子が産まれます。更にその四年後に旅行の下見を理由にして塩見兄妹の両親は交通事故で死去。英一は歪み始めます。

東京の大学に行くまで彼は虐められてました。義理の父母にもよく扱われず、性格の歪みは拡大されていきます。反対に周子は甘々と育てられました。けれども兄を気にかける優しさを持ち合わせていて、決して悪い子に育っていた訳ではありませんでした。

英一がプロデューサーになってから(彼が二十二歳で周子が十八歳)スキャンダル云々で二人が殺されるまで(彼が二十五歳直前で周子が二十一歳直前)は本文を参照してください。

そうして美穂と英一が殺された後、なんやかんやで周子はタイムリープ、というよりもタイムループを始める事になりました。美穂ちゃんと兄さんを救う為に、そして皆が幸せな未来を創造する為に周子は自己を省みず、心身を磨耗させて負の連鎖と奮闘します。

因みに作中でも多少言及しましたがループ分の年数を実際の年齢に換算すると、周子は五十代です。ヤバ。

結果として10/20、11/16、11/17の三日間、規定の時間プロデューサーを拘束していれば誰も死なない事が判明しました。しかしその間、英一の自由意志を出来るだけ制御せねばなりません。成功の確率を上げたいからです。したがって用いられた方法が()()()()()()()でした。全てを終わらせるまで英一の記憶をコントロール(英一は了解済み)し、人形的に行動を制御、監視。これにより産まれたのが一章と二章の物語です。

二十四周目、漸く周子は自我を磨り減らしてでも為そうとした世界を実現させました。誰も死なない世界が誕生したのです。しかし遅すぎた。時間をかけすぎてアイドルの子達の記憶に影響を及ぼしてしまった。加えて英一は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この()()()()によって、そしてアイドル達と同じく記憶の影響によって後々自殺するという運命が決定されていました。それを見抜いた機械内人格は疲弊しきった周子の思いを継いで強行手段に出ます。それは英一をもう一度妄想世界に取り込んで、事象根因を自覚させ、それを救わせるといったものでした。結果は成功に終わります。英一は()()()()を自覚して最後のタイムリープで()()()()を救うために意識を昔の自分へととばしました。

そこで彼は両親を事故から逃し、第二の人生を送り始めます。十数年後、彼はまたプロデューサーとなってスカウトを開始。あの大好きな騒々しさをもう一度__

 

・第一章について

ここは英一の妄想世界です。変態チックだったり妙に煩かったのは現実もこうであってほしかったという叶わなかった願い、羨望のようなものが反映されているからです。伏線もそこそこあります。というかこのss自体が伏線だらけです。説明しましたがその伏線の多さも彼がそういうミステリー系好きだからという理由からです。いつ回収すんのこの伏線ってやつありましたよね。凛の上着とか。それとネグリジェの表現が変でしたよね。他にもギャグとかじゃ説明のつかない不可思議がちりばめられていた筈です。これらは英一の不安定さが前提となっています。作品内で言及しましたが彼は恋愛関係で間違いを犯してます。殺されてます。アイドル達が狂っていくのを目の当たりにしています。果たしてそんな奴の妄想は正常となるのでしょうか。

一応シリアスの片鱗はまだありませんよね。そりゃそうです。ここまでヤバくする予定じゃなかったし……つーか伏線の回収方法も最初は違ってたんすよ……なーんでこんなことに……

 

・第二章について

大体一章と言いたい事は同じです。個人的にはミスリード的なものがしたかったからこの章を入れたんですよ。その……まさかタイムリープとか出てきた後に「実はこれ妄想でした~!」とか予想出来へんやろ、よし、やったろみたいな。ゴミすぎるこの作者。

それとこの章に限った事じゃないんですが、色々とそこそこ表現をひねってみたんです。仮想現実とか空想世界とかそういう雰囲気を出したくて。だから「この表現なんや?どういう意味?」って思う人とか出てくると思うんですよ。あんまし気にしないで下さい。あの、自分、物書き始めて一年経ってないんです。ただ下手くそなだけです。なんとなく妄想か~って受け取ってくれればそれが正解です。はい。

 

・第三章について

現実世界、世界の真実、英一の妄想世界、個人的無意識の世界と様々な世界が繰り広げられてます。難解です。作者も混乱しそうになります。ハチミツ下さいならぬプロット下さい。

一章がシュールギャグ、二章がミステリーだとすれば三章は()()()()()()()()です。マジです。人殺しまくってますが、マジです。より残酷で惨憺たる内容ですが無茶苦茶『愛』が語られてます。なんやろ。ちょっとした哲学、啓蒙ですかね。作者からの問いかけ。

『愛なんかで人は変われるのか?』

 

・英一について

主人公の一人です。何が起きて、何をされて育ったかは全部物語の通りです。最悪です。親を失って、周りから蔑まれ、頼れる人もおらず孤独に近い環境で育った彼は愛が分かりません。信じられません。だから好意に敏感で、恋愛に際しては異常です。妹の周子を無意識では愛してますがそれより上(無意識やらその上やらは後で触れます)では愛していません。だからたった一人の家族だけれども他人のように感じてしまう時があります。無意識より上では美穂と加蓮に恋してました。後者に至っては情交も行っています。ヤバ。

 

・周子について

もう一人の主人公です。不自由なく暮らしたからこそ不満を持ち(一周目辺り参考)、不自由に暮らしたからこそ満足感を得ている(第二の人生辺り参考)彼女。唯一の家族である兄を好いていて、兄に関して異常となります。だってそうでしょう?周子は何回ループしたの?あの回数、年数、目の前の死、継続される記憶エトセトラ。気狂わない方がおかしいんです。でも彼女は()()()()()に関して既に異常だった。だからループに耐えられた。テキトーに生きてきたからこそ血の滲むような努力を重ねて生きている兄のために彼女は全てを擲つ覚悟を持てたのです。

 

・他のアイドル達について

副題としてタグにもある通り記憶によって狂わされていきます。死と絶望のデジャヴが表れ続けて精神が錯乱、発狂していった彼女達。分かると思いますがこれはループが重なる毎に状況が酷くなっていくシステムなんです。空のコップに一定量ずつ水を注いでいく感じに近いかもしれません。段々と重くなっていき、いつかは溢れる。加蓮はその水を途中で減らそうとして情事に走り、志希と晶葉はループ扶助の没頭に走った。ある者は自分の命を終わらせる事でそれを成し遂げようともしました。兎に角皆ヤバいってことです。

これに深く関係するのが10/20です。残りの二日間は拘束理由が分かりやすい。英一が殺されないようにするため、といったものですから。では10/20の拘束理由は何か。それがこの記憶継続による狂化を防止するといったものなのです。

……気づいてる人いるかな?てか本文に書いたっけこれ?この10/20は文香と茜が英一に告白する日となってます。つまりこの日に英一を拘束すれば……という訳です。

 

・ややこしい『世界』について

むやみやたらになんとか世界ってのが本文に出てきてます。説明します。

このお話に出てくる世界体系は層構造になってます。一番上が現実世界です。例としては『N=1』とか『太陽と月』です。その下の世界が妄想世界です。例としては第一章全体です。その更に下の世界が記憶、換言して自己意識世界です。例としては『異常と固執』です。そして最下層の世界が個人的無意識世界です。例としては『プロデューサー』の前半部分です。下層にいけばいく程英一の本質に近づいていきます。英一の無意識、つまり英一の本質は周子を一人の家族として愛し、美穂と加蓮も()()()()()()を残しながらプロデューサーとして愛しています。

これからもこの世界概念でものを考えないとよくわからんところが出てきます。留意しましょう(上から目線)

 

・「プロデューサーだけ、ホントに過去へ戻れるの。」の真意

これが指すのは辻褄が合わないことじゃありません。そのまま文字通り受け取っては訳ワカメな文章に後々なってしまいます。これは晶葉に向けた言葉ではなく独白めいています。プロデューサーとは彼自身を指しておらず職業自体を指しています。ホントとは第三章のタイトルに載せたように、()()()()()()()()()()の事です。これは英一の無意識世界とそれより上の世界の相違を明確に表しており、分かりやすく言い換えれば「プロデューサーとして愛を持つ塩見英一だけが残酷で悲しい本物の過去へ戻り、()()()()()()。」となります。付け加えられた文は本文を最後まで読んでいれば、まあ、なんとなく分かると思います。

あ、あと前述したように本文では『ホント』と『本当』を意味によって使い分けてます。頑張りました。

 

・『異常と固執』での智絵里と加蓮と美穂について、又、機械人格について

『異常と固執』で起きた出来事は全部英一の想像です。頭の中で起きています。なのでそこで登場した彼女達は彼の担当アイドルに対する純然なイメージです。特に現実世界の智絵里と加蓮と美穂に対する印象は強くて、それにより表現が分かりにくくなっていたと思われます。

智絵里は彼にとって、特別枠でない担当アイドル群の中で最も印象深い人です。長い付き合いですからね。すっげぇ仲良い友人みたいな認識です。彼からすれば。彼女からすれば彼は片思いしてる人。()()()()()()()という象徴の役割を智絵里は果たしています。異常の手前、固執の手前。ギリギリ正常という扱い。ごめんね智絵里と担当P。怒らないで。今智絵里の恋愛小説書いてるから許して。あ、許してくれる?ありがと!

加蓮は彼にとって、逃げ道でした。苦しさから互いに逃げる為の逃げ道でした。異常の相対性から二人は狂ってしまい、快楽に溺れました。好き合っていたので決して無理矢理だった訳じゃありません。むしろ()()()()でした。異常であり、しかし固執ではない。身体関係的には不健全ですが、精神的には超健全です。因みに贖罪の方法は『現実の加蓮が提示する条件を呑む』というものです。そしてこの部分、

「本当にそんなのでいいのか?俺は一人の女の子の人生壊した、」

《愛の寛容とループの恩恵をなめちゃダメだよー?》

「強がりの理解か?」

《…………》

「……ごめんな加蓮。」

《……現実で言ってあげてよ。》

「ああ。」

愛の寛容とは、換言すれば情交の上の同情。ループの恩恵とは、換言すれば現実への理解。そして強がりの理解とは、現実加蓮特有の強がりをプロデューサー内の想像加蓮がトレースしているということを指しています。結局これは二人のやり取りに見えて一人でぶつぶつ喋ってるだけ。空虚と愚かさを表現してみました。

美穂は彼にとって、初めて愛を持った(()()()()()()()())人です。

《固執です。プロデューサーさんのそれは、ただの固執です。》

この時点で彼の美穂に対する思慕が()()()()恋や愛ではないということが示されます。

《好きな人の顔を忘れますか。ストーキングが好きの証ですか。妄想の物語に私は出てきましたか。俺の太陽って何ですか。わざわざそう言うのは何故ですか。遠ざけたのは何故ですか。》

英一の言う恋というものの異常性と発言の不一致が示されます。これは全て、愛を知らずに育ち、人を恐れて生きてきた人間の結末です。

《小日向美穂は、ただのプロデューサーという立場を守るためだけのマクガフィンですよね?》

マクガフィンとはその登場人物にとって重要なもので、且つ代替可能なものを指してます。つまりこの文章の意味は『英一にとっての小日向美穂はただの道具。プロデューサーという立場を守るのに重要なだけでいくらでも替えはきく存在だ。』というもの。ひっでぇな。

《醜い自分を騙したくて『俺は美穂が好きだ』なんて自己暗示をかけた。滑稽ですね。》

酷い自分が許せなくて自己暗示。『美穂が好き』で全部上書き保存。

《初めての担当。アイドルとプロデューサーの関係の象徴。純朴。それらに固執したプロデューサーさん。》

異常であり、固執でもある。プロデューサーでなきゃ人が怖い。恋とは無縁のプロデューサー(立場)を希求したい。昔の頃に戻りたい。そのような気持ちが彼を異常と固執に駆り立てました。

《贖罪の余地はあるんでしょうか?》

本文見れば分かりますが美穂には贖罪してません。謝罪です。贖うのと謝るのとは全然違います。

美穂のパートは全体的に少描写で、突然の愛に対する戸惑いを表現しました。英一君、個人的無意識で愛を知ってるからね。周子を心の底で愛してるからね。だからラーメンのメンマで泣いたんだよ?愛を知らなければ泣けないし。それと『俺の太陽』という表現が何処かに出てきましたね。これも愛の戸惑いです。咄嗟に出たホントです。

さて、やって参りました機械人格。難解なものの一つ。彼(一応そのように呼称しておきます)は英一の記憶群から造られた人格です。分身のようなもの。悪役ぶって英一でさえも救おうと尽力した影の主人公です。彼が生まれたきっかけは晶葉の()()です。すごいな晶葉。流石天才。さすあき。

彼は物事を円滑に進める為に『人に信じさせる』のではなく『人に疑わせ』ました。必要悪となり、どうせいつか消される自分を犠牲にし、代わりに事象根因(私の造語です)を救わせようとしました。自己内対話という形で彼は英一を啓蒙したのです。これって誰もが経験し得るものですよね。頭の中であーでもないこーでもないってぶつぶつぶつぶつ呟いて。二人の自分が会話してるんすよ。自分は一人でものを考えるのとか大好きなんでこんな経験はよくあります。こういう自己内対話で独りでに啓蒙される事ってまあまああると私は思うんですよね。『**【⊂<>*や**だ』とか『けさ__な___いで_______』とかは機械人格の演技です。

 

両親について

Pと周子は兄妹です。これは分かりますね。んで、二人の両親。二人は第一の人生に於いては死去しています。つまり原作の和菓子屋とかありません。第二の人生で救ったからこそ周子は和菓子屋で文句を言っています。今の状況に文句を言えるのって、案外幸せなんですよ。

 

『プロデューサー』での小学生について

無意識の世界で出てきた小学生は子供時代の英一です。両親が生きていて愛を知っていた頃の英一。二人が死んでからはこの愛を知る英一は抑圧されてしまい無意識内に閉じ込められたのです。一種の自閉ですね。だから彼は愛と恋によって苦しめられて、しかもこんな事件が起こったのです。

 

二十四周目、所謂シンデレラについて

周子が排外的に過ごすようにした二十四周目。小さな問題への干渉を抑えて、ただ根因(前述の三問題)を救う事のみにフォーカスを当てた世界。見た感じ、パパッと素早く片付けられたなあ、ってなりませんでした?重要そうなのに流していくなあ、ってなりませんでした?これも表現です。根因を救うのは簡単だと、ひたすらにその問題に()()挑めば容易く救えるのだと、そういったものを表現したかったのでこうなりました。事象的にではなく小説的に受け取ってもらった方がここは分かりやすいと思います。シンデレラだし(意味不明)

 

『N+x=k』について

k周目という風に伝えたかっただけです。Nは1です。タイトルにあります。はい。ごめんなさい。

 

太陽、星、月について

コメント欄へゴー!

 

最後に

分かんないところや訊きたいところがあったら気軽に言って下さい。私の解釈でいいなら垂れ流します。




結論 プロットは書いた方が良い(白目)


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