バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ (バナナの木)
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【一期】第1章「椎名と仲間達編」 第1話「勇気を継いだ少女!」

 

 

 

 

 

 

 

ーバトルスピリッツ!

 

世界各国で人気を集めるこのカードゲームは今や娯楽の領域を遥かに超えていた。

 

その中でも特に希少だったスピリットカード、【デジタルスピリット】はこの10年で大きく発展した科学技術により、大量に生産されていた。

 

そして、世界各国では新たにプロのバトラーを育成する教育機関、【バトスピ学園】を9年前に高等学校に建設、今ではプロへの道の登竜門的存在となってる。

 

ーこれは1人の少女がその学園生活の中で仲間や好敵手と共に切磋琢磨しながら成長していき、ある英雄を越えるまでの物語。

 

 

 

******

 

 

 

「む、う〜〜ん…………ぐげっ!」

 

 

ある朝、1人の少女が寝ていたベッドから寝ぼけてその身に毛布を巻きながら床に落っこちる。そのアパートの一室からは目覚まし時計の無機質な音が部屋の空間の隙間を埋めるように鳴り響いていた。少女は起き上がると直ぐにその目覚まし時計を眠そうな目を手で擦りながら叩くように止める。

 

 

「……よし!学校だ!」

 

 

少女は気持ちを切り替え、一瞬のうちにぼさついた寝癖を直し、寝間着から学校の制服に着替えた。そして小さめのレザー製の手提げ鞄を持ち、年季の入ったゴーグルを首からさげ、アパートの一室を飛び出していった。

 

彼女の名は【芽座椎名(めざしいな)】現在15歳、今年で16、この春に【バトスピ学園ジークフリード校】に入学したばかりだ。とある遠い島出身の彼女は古ぼけた小さなアパートを借りて1人で暮らしていた。

 

パッチリとした二重に加えて白い肌、髪の色はオレンジに近い茶髪、腰までしなやかに伸びており、やや癖毛気味、特徴的に飛び跳ねた音符のような毛がある。そしていつも年季の入った砂塵ゴーグルを首から下げていた。

 

【バトスピ学園】とは、その名の通りバトスピについて専門的に学ぶ学園のことである。今から9年前に世界各国で建設された。この日本の都市においてはその学校は6つに区分され、それぞれバトスピの代表的なスピリットの名前を刻まれている。椎名が通う学園は赤属性の初代エックスレアカード、龍皇ジークフリードだ。各々の学園が呼称される場合はその名前で呼ばれる場合が多い。

 

 

「おはよう!真夏!」

「おお!おはようさん、今日も朝っから元気やね〜」

 

 

学校のクラスルームに入った椎名が友達らしき関西弁の訛りが強い女の子と会話する。彼女の名は【緑坂真夏(みどりざかまな)】関西出身のバトラーで黒髪の背中まで伸びたポニーテールがよく似合う女の子だ。椎名とは入学試験からの中で、何かと縁があり、今こうして友としての間柄となっている。

 

 

「あっ!そや!椎名!ちょっと頼みごとあんねんけど、」

「ん?なに?」

「今日、近くのショップよらへん?あのカードもう学校の購買には売ってないんよ〜〜買えたらデッキの組み方見てくれへんかな?」

 

 

合掌して頼みごとをする真夏、この学校でできた初めての友達の頼みを、椎名は断るわけもなく承諾した。

 

 

「いいよ!ショップは通り道だしね〜」

「……さぁ、席につけー!朝のホームルームだ!」

 

 

意気揚々と教室へ入ってきたのは学級担任の先生。入学してから1週間は経つが、こんな感じの普通の学生のような生活がすっかり椎名の日常となっていた。

 

そしてその日の放課後、椎名と真夏はチャイムの鳴り響く学園を後にし、街のショップへと向かう。

 

この街、『界放市』はいたって平凡な街だが、街の人々の人口の約9割がカードバトラー、及び、それに関係した職を持つ人たちである。日本にあるバトスピ学園の中でも特に優れた6つの学園を街中に有している。

 

 

「どう?真夏、あった?」

「……おっ!あったあった!これが欲しかったんや〜〜よし!私はこれ持ってレジに行っとくわ、椎名はベンチで待っときやー」

「オッケー!」

 

 

店に物販として置かれているカードの中から目的のカードを見つけだした真夏はそのままレジへ、椎名は店内のベンチで真夏が戻るまで一息つく。するとすぐ横のバトル場で混み合った声が聞こえてきた。椎名は少しきになり、すぐさま立ち上がると、その混み合った方へと赴く。

 

バトル場とは簡単に言ってしまえばバトルスピリッツを行う広場のことだ。昔はそんなものは不必要なものだったが、今の時代の関係上、どうしてもそのスペースが必要不可欠だった。その理由はこの後すぐに明かすとしよう。

 

椎名が向かったそこには柄の悪い男と、気弱そうな幼い少年がバトルしていた。その盤面は圧倒的に柄の悪い男が優勢であり、

 

 

「……おらぁ!いけ!ドクグモンでアタック!」

 

 

11年前は画面での映像化が精一杯であったが、今のバトルは科学技術の発展によって、スピリットをより立体的に見ることができるようになっていた。タブレット状の携帯機、バトルパッド、通称【Bパッド】を展開させ、どこでもそのバトルを味わうことができる。よりリアルで臨場感たっぷりのバトルを楽しむことができるため、バトルスピリッツをここまで押し上げた要因の1つとなっていた。

 

 

「ラ、ライフで受ける、……う、うわぁ!」

ライフ1⇨0

 

 

椎名と同じ学園の制服を着ているため、おそらく椎名と同じ学園の生徒であろう、柄の悪い男の操る、背中にドクロマークが描かれている蜘蛛のようなスピリット、ドクグモンが中学生にも満たないくらいの少年の最後のライフを無慈悲に噛み砕いた。このアタックでライフが尽きた少年の負けとなる。

 

バトルスピリッツをここまで押し上げたもう1つの要因は、【デジタルスピリットの多様化】だ。【デジタルスピリット】とはこの世界とは違う異空間に存在する特別なスピリットカードのこと。11年前までは滅多にお目にかかれない超レアカードだったが、科学技術の発展により、これらのカードが大量生産され、今では様々なバトラーが愛用する人気デッキのテーマの1つと化していた。

 

この柄の悪い男が操っていたドクグモンもデジタルスピリットの1種だ。

 

 

「ガハハハ!俺様の勝ちだな!大人しくデッキを渡しな!」

「………ッ」

「……よこせっつてんだろぉぉぉおが!」

「わっ!」

 

 

デッキを丸ごと賭けていたのだろうか、柄の悪い男は小さな少年が大事そうに両手で握っていたデッキを強引に取り上げた。

 

 

「僕のデッキ……」

「僕のデッキ!?……違うな、俺様のデッキだよ!!ガハハハ!」

 

 

勝ち誇ったようにその少年のデッキを天に掲げ、その図太い声で笑い飛ばす柄の悪い男。モラルが欠落した行いだが、それを誰も止めるものはいなかった。バトルを挑んでも勝てる保証がなかったからだ。悔しいが、彼は強い。

 

ーだが、

 

 

「……よっと!」

「……へっ!?」

 

 

一瞬だった。一瞬で椎名はその掲げられたデッキをその男から通り過ぎるついでのように取り上げた。柄の悪い男は急に手持ち無沙汰になった自分の手を見て驚く。

 

 

「はい!君のでしょ!」

「え!?……あっ、はい、ありがとう、ございます…」

 

 

嘸かし当たり前のように、椎名はその少年にデッキを返してあげた。いや、元々はその少年のものであるため、返すのは当然のことなのだが、少年はその椎名の奇行に戸惑いながらも自分のデッキを受け取った。

 

これに対して柄の悪い男は椎名に対して怒りを露わにした。

 

 

「なんだ!!てめぇ!なにしやがる!」

「なにって、それはこっちの台詞だよ、人の作ったデッキを勝手に取るって犯罪じゃん」

「俺らは正式にちゃんと賭けてバトルしたんだよ、それのなにが悪い」

「………いやいや、そもそもアンティルールも禁止だし」

 

 

互いになかなか引き下がろうとしない。男は椎名の制服や胸元にあるバッジを見て、自分と同じ学校の生徒だと気付き、ある提案を差し出す。

 

 

「お前、ジークフリード校の生徒だな、しかも1年」

「それがどうした」

「よし、だったら俺に従え、先輩命令だ、今から俺とバトルしろ、アンティルールでな、賭けるのはお互いのデッキ、どうだ」

「…………んー、別の条件付きならいいよ、私が負けたらデッキはあげてもいいけど、逆に私が勝ったらあなたはもう金輪際アンティルールはせずに、この子にちょっかいを出さない……それならね」

「あぁ!?色々とやけに多くないか!?……まぁ、いいか」

 

 

持ちかけられたアンティルールにサクッと乗っかる椎名。椎名に助けられた少年は椎名の方へ行き、謝罪の言葉を並べる。

 

 

「あ、あのう、本当にすみません!僕なんかのために、こんな」

「ん?、あぁ、いいのいいの、…………好きなカードって取られると嫌だよね」

「………え!?」

 

 

椎名は少年の目線に立ち、その丸っこい頭を優しく撫でながら言った。彼女のその目は何かを思い出すかのような遠い目、ほんの数秒くらいそのことを考えた椎名は直ぐに柄の悪い男とそのバトル場で肩を並べる。バトル場の大きさやスペースは大体バスケットコートの半分くらいと言えばわかりやすいだろうか。そこでスピリットやネクサスが並べられ、より間近で、臨場感溢れるバトルが楽しめるのだ。

 

それぞれの立ち位置に着いた時くらいに店のレジから真夏が帰って来た。帰って来たと言うよりかは椎名を探してここまで来たになるのか、そしてこの状況を見た真夏はとても驚いた。

 

 

「ちょ!椎名!あんたなにやってんの!?」

「おっ!真夏!おかえり〜〜」

「おかえり〜〜ちゃうわ!………あんた、今から戦おうとしている相手わからんか?」

 

 

どこまでも能天気な椎名に呆れる真夏、椎名がバトルしようとしている相手は意外にも有名人なようである。

 

 

「知らない、教えてー」

「はぁー、……あいつは3年の【毒島富雄(ぶすじまとみお)】この学園の札付きの悪で、自分より弱い奴にアンティ仕掛けてくるクズや」

「へぇー」

「誰がクズだ!この関西女!このアホ毛女倒したら次はお前だからな!覚えてろよ!」

「いや、そこまでそれっぽいこと言うんやったらもう悪でええやん、」

 

 

毒島は見た目からもまさしく一昔前の不良といった感じだった。紫のドクロTシャツに着こなされた短い学ラン。少し太めの体型。どれをとっても悪だ。3年生用の胸元のバッジが妙に浮いて見える。

 

真夏を椎名の友達と思った少年は真夏に震える声で話しかけに行った。一応申し訳ないと思っているのだろう。

 

 

「あのう、あのお姉さん、僕を庇って、………大丈夫なんでしょうか」

「ははっ!なるほどな!そう言う事やったんやな!………まぁ、任せとったらええよお!あいつは負けへんでぇ!」

 

 

全ての状況を理解した真夏は腕を組み、ガッツポーズを少年に見せ、元気づけようとする。余程椎名のことを信頼しているのが伺える。そして、そのすぐ横では椎名と毒島のバトルが始まろうとしていた。

 

椎名は鞄の中に入っているBパッドを取り出し、展開させる。Bパッドは折りたたみ式に開き、脚立が飛び出し、自立する。椎名はその上に自身のデッキを置いた。毒島も同様にそれを行う。互いにデッキを置いた瞬間、デジタルコアと呼ばれる物体がBパッドから浮き出て来る。それがこのバトルで使用するコアだ。自動で出て来るため非常に便利な代物だ。運用の仕方は普通のコアとなんら変わりはない。

 

準備は万端、バトスピ特有の掛け声で開始が宣言される。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

椎名と毒島は2人同時に叫ぶ。これこそ、バトルスピリッツの最初の掛け声、サッカーで言うところのキックオフ、野球で言うところのプレイボールとほぼ同じような意味で捉えられても問題ない。

 

ーバトルが始まる。先行は椎名だ。

 

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の足元から彼女の腰ぐらいまでしかいかない程の小さな青い小竜型のスピリット、額には金色のブイの字が刻まれている、ブイモンが姿を見せる。このスピリットもデジタルスピリットの一種だ。

 

 

「ほぉ、青のデジタルスピリットじゃねぇか、いいねぇ」

 

 

毒島はブイモンを物欲しそうに狙う目で見ている。デジタルスピリットはある程度は手に入るようになったものの、その希少性が完全に消滅したわけではない。珍しいものは珍しいのだ。昔からこっちの世界に流れ着いていたカードをバトスピの一族が継承していくケースも存在する。ブイモンもその中でもなかなかのレアカードに数えられていた。

 

 

「ターンエンド、どうぞー」

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

先行の最初のターンなどやれることは限られている。椎名はブイモンを召喚しただけでターンを終えた。次は後攻の毒島のターン。

 

 

[ターン02]毒島

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!俺はクリスタニードルを2体!LV2ずつで召喚!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨1

 

 

毒島のフィールドには蛇のような龍のような小さい紫のスピリットが現れる。そのスピリット達は今にも猛毒を吐きつけそうな奇声をあげていた。

 

 

「アタックステップ!2体のクリスタニードルでアタックだ!」

 

 

クリスタニードル達はフィールドを泳ぐように体をくねらせながら進む。彼らのBPはいずれも2000、椎名のブイモンも2000、椎名が選んだ選択は、

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨3

 

 

ライフの破壊を選択。椎名の目の前にバリアが展開され、クリスタニードル達はそれらを1つずつ体当たりで破壊した。椎名はライフのコアを2つリザーブに置く。

 

 

「ガハハハ!だろうな、そいつが破壊されちゃあ、【進化】できないもんな!」

 

 

【進化】とは、デジタルスピリットが行う独特の召喚方法。アタックステップの開始時、またはアタック時等に発揮し、デジタルスピリットを1つ上のランクへと成長させることができる。デジタルスピリットを代表するキーワード能力だ。毒島はこの効果を知った上で、椎名がバトルで破壊されるブイモンをブロッカーに使うわけがないと考え、2体でフルアタックを決めたのだ。

 

 

「ターンエンドだ!」

クリスタニードルLV2(2)BP2000(疲労)

クリスタニードルLV2(2)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

 

毒島はターンを終える。椎名のライフを2つ削っただけでもう既に勝ちを誇ったような表情をしている。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「よし、メインステップ、ガンナー・ハスキーを2体召喚!」

手札5⇨3

リザーブ6⇨3

トラッシュ0⇨1

 

 

現れたのは犬のような姿に加えて拳銃を持つための青い筋肉質な腕が生えている緑のスピリット、ガンナー・ハスキー、それが2体、ブイモンの両隣に居座る。

 

 

「緑のスピリット!?お前は青と緑の使い手なのか?」

「うーん……だいたいはそんな感じかな?」

 

 

毒島の言っていることは半分正解、椎名は青に加えて緑も扱えるデッキを組んでいる。

 

ーそして、半分は不正解。

 

 

 

「ブイモンをLV2へ!」

リザーブ3⇨1

ブイモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

ブイモンはレベルアップに伴い、力を増幅させた。普通のデジタルスピリットならここでアタックステップの開始時のタイミングで【進化】を発揮させるが、

 

 

「ブイモンの効果は使わない!そのまま、アタックステップ!ブイモンとガンナー・ハスキー1体でアタック!」

「はあ!?LVまで上げといて【進化】させないだと!?」

 

 

ブイモンとガンナー・ハスキー1体がフィールドを走り出す。狙うのは2体とも毒島のライフ。前のターン、フルアタックを仕掛けた毒島はこのアタックを無条件で受けなければならなかった。

 

ブイモンは成長期のデジタルスピリット、成長期は他の形態と比べても比較的進化しやすい部類なのだが、椎名はそのブイモンの進化の効果を発揮させずにアタックステップを行なった。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨3

 

 

ブイモンは頭突きで、ガンナー・ハスキーは青い腕に所持している拳銃の乱射で、それぞれ1つずつ毒島のライフを破壊した。

 

 

「よし!ターンエンド!」

ブイモンLV2(3)BP4000(疲労)

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(疲労)

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

椎名は自陣に帰ってくるブイモンとガンナー・ハスキーを見届けながらターンエンドの宣言をした。

 

 

「とんでもねぇハズレくじ引いたもんだぜ、俺は、……まさかお前、成長期しか持ってねぇんじゃないだろうな?」

「へへ、それはどうだろうね!」

 

 

本当にハズレくじを引いたかはいささか早とちりな気もするが、少なくとも毒島は今、心の中で椎名がレアカードをあまり持ってないことを察してがっかりしている。

 

デジタルスピリットは主に成長期から順番よく成熟期、完全体、と言うふうに進化していく。完全体クラスにまでなるとデッキのエースを任される事が多いが、中間の成熟期がいなければ基本的には完全体など入れる必要がない。つまり椎名がここで成熟期に進化させなかったと言うことは、椎名のデッキに完全体がいない事を同時に表していた。

 

あくまで可能性の話ではあるが、

 

 

[ターン04]毒島

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

クリスタニードル(疲労⇨回復)

クリスタニードル(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!このターンで終わりだ!!来い!ドクグモン!こいつを2体召喚!LVはいずれも1!」

手札4⇨2

リザーブ4⇨0

クリスタニードル(2⇨1)LV2⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

さっきの少年とのバトルでも召喚されていたスピリット、成熟期のドクグモンが同時に2体召喚される。ドクグモンは緑のスピリットだが、その軽減シンボルの内2つは紫、紫のスピリットのクリスタニードルでも十分に軽減ができるのだ。

 

毒島は緑と紫の混色デッキの使い手だった。

 

 

「おぉ!さっきのデジタルスピリットかぁ!燃えてきたぁ!!」

「なに喜んでんねん!しっかりせんかい!!」

 

 

強そうなドクグモンの登場に歓喜する椎名。だがこれは、アンティルールでも心の底からバトルスピリッツを楽しんでいる証拠でもある。

 

 

「アタックステップ!ドクグモンでアタック!アタック時効果!相手のスピリット1体を強制的に疲労させる!!巻かれな!ガンナー・ハスキー!!」

 

「………ッ!…ガンナー・ハスキー!」

ガンナー・ハスキー(回復⇨疲労)

 

 

ドクグモンのアタック時効果は相手のスピリット1体を強制的に疲労させるという、如何にも緑のスピリットらしい効果だ。

 

ドクグモンの口内から吐き出された糸が絡まり、ガンナー・ハスキーの1体は身動きが取れなくなる。これで椎名のブロッカーはゼロ。

 

 

「おら!アタック中だ!」

 

「よし、それはライフだ!」

ライフ3⇨2

 

 

ドクグモンは椎名のライフを噛みちぎるように破壊した。これで残りライフは2、いよいよ危ない状況になってきた。

 

 

「あぁ、お姉さんのスピリットが全て疲労、僕の時と同じだ。……どうしよう」

 

 

自分のせいでバトルさせてしまった少年は椎名に対して罪悪感を覚えていた。そして今のこの状況は自分のバトル展開とほぼ同様。完全に椎名が負けると悟っていたのだ。

 

ーだが、

 

 

「あんた、本当に椎名が負ける思とるんか?」

「……え!?でも……」

 

 

ブロッカーのいないフィールド、ライフは2、迫り来るスピリットの対数は4体、周りからして見れば間違いなく積みに近いこの状況だが、椎名は諦めたりはしない。寧ろ彼女はワクワクしている。この状況を、バトルを楽しんでいる。

 

 

「……よっしゃああ!これで終わりだ!2体のクリスタニードルでアタック!」

 

 

毒島はクリスタニードル達でアタックする。再びフィールドを泳ぐように飛翔するクリスタニードルが目指すのは、もちろん椎名の残った2つのライフだ。

 

 

「……へへ、」

「なにがおかしい!やられすぎて頭がいかれたか!」

「……いや〜楽しいなと思ってさ、ワクワクしてきたよ!バトルスピリッツはそうでなくちゃ!」

「はぁ!?勝ちが全てのバトルの世界で楽しいだと!?笑わせるな!」

「人間皆んな楽しんだもん勝ちだよ!………さっき、あなたは進化がどうととか言ってたね、だったら見せてやるよ、ブイモンの進化の可能性、…その1つを!」

「なに!?」

 

 

椎名が毒島に見せたカードは進化の効果を持っている。だがそれは通常の進化ではない。特別な進化方法を持つカード。

 

 

「フラッシュタイミング!手札のフレイドラモンの【アーマー進化】の効果発揮!成長期のスピリット1体を手札に戻して、1コスト支払うことで召喚できる!…………効果対象はブイモン!!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ1⇨2

 

「なに!?【アーマー進化】だと!?」

 

 

【アーマー進化】、それは通常の進化とは異なる進化方法、通常の進化とは異なる最大の特徴はフラッシュタイミングならいつでも進化できること。

 

ブイモンは頭上から落下してくる謎の形をした赤い卵のような物と衝突し、混ざり合い、その姿を変えていく。

 

 

「……フレイドラモンを召喚!」

フレイドラモンLV2(3)BP9000

 

「な!?今度は赤のスピリットだと!?」

 

 

ブイモンは燃えたぎる炎の武装を纏い、進化する。赤属性のアーマー体スピリット、燃え滾る炎を連想させるような

スマートな竜人型のフレイドラモンが召喚された。

 

 

「か、かっこいい!」

「せやろ!……あいつのエースや!」

 

 

フレイドラモンの勇猛たる姿に見惚れる少年や、周りの人たち、フレイドラモンこそ、椎名のエーススピリットだ。進化元のブイモンが疲労状態であったが、進化の効果は新たなる召喚扱い、故に今のフレイドラモンは回復状態であり、すぐさまブロックができる。

 

 

「だ、だが!1体増えたところで戦況は変わらねぇ!このターンのフルアタックでお前はおしまいだ!」

 

 

確かに今からブロッカーが1体増えたところで椎名のライフはまだ差し引いても丁度ゼロにされる。だが、召喚されたのがフレイドラモンなら別だ。

 

 

「フレイドラモンの召喚時効果、相手のBP7000以下のスピリット1体を破壊!」

「なにぃぃい!!!?!」

「いけ!フレイドラモン!クリスタニードルを1体破壊!!……爆炎の拳!ナックルファイア!!」

 

 

フレイドラモンはその拳に炎を灯し、殴りつけるように投げ飛ばす。その炎は一直線にクリスタニードルを捕らえ、命中する。クリスタニードルはその炎に焼き尽くされて破裂するように爆発した。

 

 

「へへ!破壊に成功したらカードを1枚ドローする。……さらに、残ったクリスタニードルのアタックはフレイドラモンでブロックだ!!」

手札3⇨4

 

「……ぐっ!」

 

 

フレイドラモンは向かって来るクリスタニードルを炎の回し蹴りで迎撃、クリスタニードルを撃ち落とし、破壊した。

 

 

「す、すごい……!」

 

 

椎名とフレイドラモンのコンビネーションに只々ひたすらに感嘆の声を漏らす少年。これで椎名の残りライフは2、対して、毒島の回復状態のスピリット対数は1、どう足掻いても椎名のライフをゼロにすることはできなくなった。

 

 

「た、ターン、エンド」

ドクグモンLV1(1)BP3000(疲労)

ドクグモンLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

毒島はターンエンドせざるを得なかった。自分の残りライフは3、対して椎名の総スピリット対数は3、無理にドクグモンでアタックするよりはブロッカーに回したほうが良いと判断したのだ。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

フレイドラモン(疲労⇨回復)

ガンナー・ハスキー(疲労⇨回復)

ガンナー・ハスキー(疲労⇨回復)

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

 

 

ガンナー・ハスキー1体に取り巻かれていたドクグモンの糸がようやく解ける。

 

 

「メインステップ、ブイモンを再び召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨1

 

 

椎名はアーマー進化の効果で手札に戻っていたブイモンのカードを再び召喚した。ブイモンは青と緑の軽減シンボルを1つずつを持っているスピリットだが、ガンナー・ハスキーの効果で青のシンボルがメインステップ中のみ追加されるため、フル軽減での召喚が可能になっていたのだ。

 

またブイモンが元気にフィールドに飛び出して来る。

 

 

「アタックステップ!いけ!フレイドラモン!アタック時効果でドクグモンを1体破壊!」

「なにぃぃい!?!またか!」

「あ、言い忘れてたね、フレイドラモンのこの効果は召喚時とアタック時にそれぞれ発揮できるんだ」

 

 

再びフレイドラモンの熱き炎の鉄拳が、今度はドクグモンを襲う。ドクグモンは散り散りになり、破裂するように大爆発を起こした。

 

 

「そしてカードをドロー……!」

手札4⇨5

 

 

召喚時同様の効果であるのでおまけのようなドロー効果も発揮する椎名、この効果は彼女にとってとてつもないアドバンテージを与えていた。さらにフレイドラモンの効果はまだ残っている。このタイミングで第2の効果が発揮される。

 

 

「さらにフレイドラモンはLV2の時、相手のスピリットを指定してアタックができる……!」

「な!?!どんだけ効果もってんだよぉぉぉお!」

「残ったドクグモンに指定アタック!いけ!フレイドラモン!……渾身の爆炎!ファイアロケット!!!」

 

 

フレイドラモンはその脚力を活かし、天高く飛び上がる。そのまま炎を纏い、残った最後のドクグモンに向けて落下するように飛び立つ。そしてドクグモンと衝突。ドクグモンだけが破壊されて大爆発を起こした。

 

 

「う、嘘だ……!…この俺様のスピリットがたった1体のスピリットで全滅するなんて……!」

 

 

よく考えてみれば圧倒的だった。椎名はフレイドラモンを召喚しただけで、防御、妨害、ドロー、などバトスピにおいて必要なことのほとんどをやってのけたのだ。この速攻に対する強さこそがフレイドラモンの最大の強味。

 

片や毒島のフィールドはなにも無し、手札もたったの2、椎名のフィールドと手札と比べたらその差は圧倒的に開いていると言える。

 

 

「さぁ〜て、いきますか!」

「ヒィぃぃい!」

「ガンナー・ハスキー2体でアタック!」

 

「ら、ライフだ、……うわぁぁぁぁあ!!」

ライフ3⇨1

 

 

椎名の命令でガンナー・ハスキーはそれぞれの拳銃の乱射で毒島のライフを破壊した。残りは僅か1つ。決め手になるのはもちろん、

 

 

「ブイモンでアタック!」

 

 

ブイモンは待ってましたと言っているかのように走り出す。ブイモンの推進をもう止める術を毒島は保有していない。

 

 

「ら、ライフだぁぁぁぁあ!!」

ライフ1⇨0

 

 

ブイモンの渾身の頭突きが毒島の最後のライフを砕いた。毒島のライフがゼロになった事でこのバトルの勝者は椎名となる。

 

 

「よっしゃああ!!私の勝ち!!」

 

 

椎名は勝利のVサインを掲げると、ブイモン、フレイドラモン、2体のガンナー・ハスキーもそれに応えるかの如く一斉にガッツポーズをとった。

 

バトル終了に伴い、それらのスピリット達はゆっくりと消滅していった。

 

 

「へへ!どうだ毒島先輩!約束は守ってもらうよ!今度はデッキなんか賭けないで楽しくバトルしようね!」

「ぐっ!………覚えてやがれぇぇえ!!」

 

 

それだけ吐き捨ててその店を逃げるように後にした毒島。真夏は「捨て言葉が古い」とツッコミを入れるように一言入れた。

 

毒島が消えた途端に店内で椎名を讃える拍手が送られる。乱暴していた悪者を追っ払ったのだ。それは誰だって賞賛したくなるのだろう。椎名は少々照れ気味に頭をかいていた。

 

 

「いやぁ、それほどでもぉ」

 

 

そしてその光景を大勢の人混みの中で見届けていた2つの影がいた。1人はギザギザの白髪が特徴的な少年。もう1人は栗色の短髪の少年。椎名達と同じ学生服を着用している。バッジの色からして椎名とは同級生であることが示唆される。

 

 

「あれが例の赤のアーマー体を持ってる子だよ、どう?」

 

 

短髪の少年が言う。すると白髪の少年はその仏頂面を少し歪ませて硬い口を開いた。

 

 

「どうって、まぁ、欲しいに決まってんだろ」

 

 

白髪の少年がそう言うと、2人はその店内を後にした。

 

ー椎名の波乱万丈なバトスピ生活が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【フレイドラモン】!」

「フレイドラモンはデジタルスピリットの新たなる効果、【アーマー進化】を持ってる赤のスピリット、召喚時とアタック時で破壊効果を発揮して一気に勝負を決めよう!」





最後までお読みいただきありがとうございます!
週一と言うなんとも言えないスローペースですが、これからも応援よろしくお願いします!



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第2話「激突!赤きアーマー体!」

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁあ!!!やばい!やばいよぉ〜!……遅刻だぁぁぁぁあ!!」

 

 

椎名は朝っぱらから全力で叫びながら学校までの通り道を走っていた。学生なら誰もが恐れる遅刻と言うものと戦っているのだ。足がはち切れそうになるくらいの速度でアスファルトの上を走る椎名。学校からは徒歩約20分だったが、椎名の俊足をもってすれば5分程で到着できる。

 

 

「よし!校内についた!後は………」

 

 

校内まではついても今度はその校舎に入り、中を走らないといけない。階段が靴箱と遠いせいで遅刻するのは必至の状況だった。おまけに1年生の教室は4階にあるため、尚のこと辛いものがある。だがここで、椎名はある方法を思いつく。それは彼女にとっては本当にグッドアイデアと言える作戦。

 

 

「あっ!そうだ!」

 

 

椎名は校庭で何故かその場で手元にあった上履きに履き替えた。

 

 

******

 

 

そしてここは4階の椎名のクラス教室、担任の教師が番号順で出席を取っていた。

 

 

「真夏、」

「はーい」

「椎名………椎名?」

 

 

真夏の次の椎名の名前を呼ぶ男性教師、だが、椎名の返事はない。そして男性教師が名簿から目を背き、椎名の机に振り向こうとした次の瞬間、

 

 

「はいはーい!!」

 

 

椎名はなんと教室の窓をガラリと開けて入ってきた。この教室は4階だと言うのに、そして、ベランダもない。下はもう校庭だけの造りなのだ。椎名は壁からよじ登ってエスカレートした方が早いと考えて校庭からよじ登ってみせたのだ。クラスの者たちは真夏を含めて全員が唖然。担任の教師も口を大きく開けて呆気にとらわれていた。椎名はそんなことは一切気にせずに取り敢えず一安心したような顔つきで何事もなかったかのように自分の席に座る。窓側の一番後ろだ。その横には真夏がいる。

 

 

「いやぁ、危なかった、危うく遅刻するとこだったよ〜あ!真夏、おはよう!」

「おはよう……って……あんたどうやってここまで来たん?!」

「え!?…いや、普通によじ登って………」

 

 

そう言いかけた途端、椎名の目の前には担任の教師がいた。その顔はまさしく金剛力士像にも匹敵するほどの強面だった。それを見た椎名は蛇に睨まれたカエルのように思わず背筋が凍りついた、そして恐怖を表しているかのように自身のアホ毛がアンテナのように真っ直ぐ硬直する。

 

 

「………し〜い〜〜なぁ〜〜!!!お前はまた何やってんだぁぁぁぁあ!!」

「いや、でもほら、ちゃんと授業には間に合いましたよ、………だから晴太先生……今日は穏便に………」

「ばっかもぉぉぉおんん!!間に合い方ってもんがあるだろうがぁぁぁぁあ!!…今日一日中廊下に立ってなさぁぁぁぁあい!!」

「ええぇぇえ!!?」

 

 

 

【空野晴太(そらのはれた】、今年で23歳。椎名と真夏のクラス担任。プロに行ける実力がありながらも教師になった、若き天才。教師としては新任なので、今は問題児の塊の椎名に苦労させられている毎日。生徒達のことを下の名前で呼んだりと、なかなか面倒見のいい性格だ。ただし、怒るとこの通り、とてつもなく怖い顔になって叱ってくる。椎名は入学してからもう3回もこの顔を見ていた。と言うか、させていた。

 

 

「……ちぇ、間に合ったのになぁ、」

 

 

そう呟き、軽く文句を言いながら、教室の前で突っ立っている椎名。この学園の校舎はコンクリートでできている。当然上履きだけでは足が痛くなってくる。しかもこれを今日1日とはなかなかハードな所業だ。

 

教室の中では既に授業が始まり、晴太の声がする。今日の1時間目は確か、【赤属性の歴史】だったか、

 

椎名は勉強が苦手だった。かったるいし、今までほとんどしたことがない。バトルも頭脳派ではなく直感派だ。勉強と言う行い自体が自分と噛み合っていない。そう考えていた。

 

 

「うぅ、バトルしたい……」

 

 

せっかく遥々遠い島から引っ越してまでこの学園に通ったのだ。椎名としては毎日のように楽しいバトルがしたかった。と言うか、すると思っていた。だが、その実態のほとんどはバトスピの歴史や戦略の考え方、対策などの授業。おまけに国語や数学、英語など、普通の教科もあるときた。実技という形でバトルすることはあるものの、ほとんどがそちらに授業枠を割かれていた。

 

 

「おいおい、笑わせるぜ、…この学園にいながらバトルがしたいだって?」

「…!?、あなたは誰?」

 

 

授業中であるにも関わらず、1人の男子生徒が廊下で項垂れている椎名に話しかけてきた。白髪のと言うか、どちらかといえば銀に近い髪色にギザギザの形が特徴的だ。

 

 

「そんなにバトルしたいのなら、どうだ、この俺とバトルしないか?……お互いのエースカードを賭けたアンティルールでな」

「おっ!いい度胸してるじゃん!私は売られたバトルは買うよ、」

「……よし、じゃあ第3スタジアムに来い、そこでバトルだ」

 

 

この生徒はこの前の毒島と同じようなタイプの人間なのだろうか、授業もサボっているようだし、……でも今の椎名はアンティルールでもなんでも、バトルできればそれでよかった。椎名はそう思いながらもその男子生徒とその場を後にし、学校の第3スタジアムに赴いた。スタジアムとは、学校にいくつも設置されており、授業中以外ならフリーで対戦しても構わない場所だ。ただし忘れてはいけない。今は授業中だ。

 

椎名とその男子生徒はBパッドをセットし、バトルの準備を行なった。

 

 

「そう言えばあなたの名前は?私は椎名、芽座椎名。やるからには楽しいバトルにしよう!」

「俺は、お前と仲良くなるためにバトルしに来たわけじゃねぇ、格の違いを見せてやりたいだけだ。早く始めるぞ、【めざし】」

「め、ざし?」

「めざしいな、なんだろ?だったらめざしじゃねぇか」

「いやいや!!分ける場所おかしい!!めざ、しいなだから!」

 

 

名前からもじられて【めざし】と言う妙な渾名を付けられる椎名。まさか出会って間もない男子生徒にこんな恥ずかしい渾名をつけられるとは思ってもいなかった。

 

因みにめざしとは【目刺】のことであり、干物の一種だ。小魚の目から顎を竹串などでとうしてそれを数匹束ねたもののこと。春の季語の1つでもあり、栄養も豊富。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

ーそんなこんなでも、2人のバトルが始まる。先行は椎名。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!ガンナー・ハスキーを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名の場に拳銃を持つために背中から青い腕が生えている犬型のスピリット、ガンナー・ハスキーが現れた。

 

 

「ターンエンド」

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

先行の第1ターン目を終え、次は謎の白髪の男子生徒のターンだ。

 

 

[ターン02]男子生徒

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はネクサスカード、朱に染まる薔薇園をLV1で配置!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

男子生徒の背後にとても綺麗な赤薔薇園が配置される。朱に染まる薔薇園は赤と黄色のネクサスカード、シンボルもその2色が入っているため、男子生徒は赤と黄色の使い手だと言うことが示唆される。

 

 

「おお!綺麗!」

 

「…ターンエンドだ」

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

 

やはり女の子か、薔薇の花畑の美しさに心踊らされる椎名。それを他所に男子生徒はネクサスの配置にコアを全て使い果たしたので、このターンをエンドとする。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

 

 

「いっくよぉぉぉお!…メインステップ!猪人ボアボアを2体立て続けに召喚!」

手札5⇨3

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名が勢いよく手札の2枚をBパッドに叩きつけると、場には鎧を着用した猪頭のスピリットが現れる。手には鎖付き鉄球を所持している。それが一気に2体も呼び出された。

 

猪人ボアボアは青と緑の1つずつの軽減シンボルだが、ガンナー・ハスキーのメインステップ時の効果で青のシンボルが追加されていたため、どちらもフル軽減で召喚されたのだ。

 

 

「アタックステップ!猪人ボアボア2体でアタック!その【連鎖(ラッシュ)】の効果でボイドからコアを1つずつ猪人ボアボアに置き、LVを1つずつ上昇!」

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

 

 

2体のボアボアは男子生徒を威嚇するように、鎖付き鉄球を振り回す。

 

猪人ボアボアはアタック時にLVを1つあげる効果と、それに付随する【連鎖:緑】の効果でボイドからコアを置くことができる。その【連鎖】の条件はガンナー・ハスキーが満たしている。

 

 

 

「……どっちもライフで受けとくか、」

ライフ5⇨3

 

 

そのまま放り込まれた2つの鉄球が男子生徒のライフを砕く。

 

 

「続け!ガンナー・ハスキー!」

 

「それもライフだ」

ライフ3⇨2

 

 

続けてガンナー・ハスキーにアタックさせる椎名、ガンナー・ハスキーは背に生えた腕に持つ拳銃で男子生徒のライフを撃ち抜いた。

 

まさしく電光石火のような速攻。瞬く間に男子生徒のライフは半分を切ってしまった。

 

 

「よし!ターンエンド!」

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(疲労)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

なかなか調子の良い速攻だったが、次の男子生徒のターンで、彼の逆襲が始まる。

 

 

 

[ターン04]男子生徒

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨9

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ、イーズナを召喚」

手札5⇨4

リザーブ9⇨8

 

 

男子生徒の場に現れた最初のスピリットはまるでイタチのような赤と黄色のハイブリットスピリット、イーズナ。イーズナは可愛らしく小さい鳴き声をあげる。

 

 

「続けて、ハーピーガールを2体、いずれもLV3で召喚!」

手札4⇨2

リザーブ8⇨0

トラッシュ0⇨2

 

 

美しい容姿の少女だが、腕と足が強靭な鳥のような姿になっているスピリット、ハーピーガールが一気に2体召喚された。

 

 

「おぉ、…なんか華やかだね」

 

 

椎名は赤き薔薇園に舞い降りる3体のスピリットに見惚れる。だが、美しいものには棘がある。椎名はこのターンでそれを思い知ることになる。

 

 

「ふっ!行くぞ、アタックステップ、やれ!ハーピーガールでアタック!その効果でLV2・3の相手のスピリットにはブロックされない」

 

 

ハーピーガールLV2・3の効果、それは相手のLV2・3以下の相手のスピリットからはブロックされないと言うもの。終盤になればかなり活きて行く効果となりうるが、現在は、

 

 

「残念だったね!今の私のフィールドのスピリット全ては疲労状態、あんまり関係ないよ!」

 

 

そうだ、その通り、元々がブロックできない状況ならばアンブロッカブル効果など意味がない。だが、ハーピーガールはある条件さえ満たせば序盤からでも十二分に発揮できる効果があった。

 

 

「この俺がそんな意味のないことするかよ、……ハーピーガールの効果はまだ続く、【連鎖:赤】の効果でBP3000以下の相手のスピリット1体を破壊する、くたばれ!猪人ボアボア!」

「なにぃ!?」

 

 

飛び立ったハーピーガールの強烈な翼撃がボアボアを襲う。ボアボアは鉄球ごとぶっ飛ばされて爆発を起こす。

 

ハーピーガールも猪人ボアボアと同様に【連鎖】の効果を所持していた。ハーピーガールは【連鎖:赤】で相手のBP3000以下の相手のスピリット1体を破壊する効果がある。ボアボアが破壊されたのはこの効果だ。【連鎖】条件はネクサスの朱に染まる薔薇園や、ハイブリットスピリットのイーズナで満たされていた。

 

 

「さぁ、継続だ、このアタックはどうする?」

 

「……ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールは今度は椎名のライフを翼で破壊した。そしてこの瞬間にもハーピーガールのもう1つの効果が発揮される。

 

 

「ハーピーガールの効果、【聖命】!ライフを1つ回復する」

ライフ2⇨3

 

 

ハーピーガールが椎名のライフを砕いた瞬間、男子生徒のライフが1つ復活する。

 

これぞ黄色の代表的な効果の1つ、【聖命】、相手のライフを破壊すれば自分のライフを1つ回復できる強力な効果だ。

 

さらに、男子生徒のコンボは続く、今度は朱に染まる薔薇園の効果が起動。

 

 

「さらに朱に染まる薔薇園のLV1・2の効果、俺のアタックステップ中に、俺のライフが回復した時、カードを1枚ドローする」

手札2⇨3

 

 

朱に染まる薔薇園LV1・2の効果、自身のアタックステップ中に、ライフが回復したならカードを1枚ドローする効果、この効果と、ハーピーガールの相性は最高中の最高だった。相手のライフを減らし、スピリットを破壊した挙句、ドローまで行う。これは男子生徒にとって相当なアドバンテージをもたらしていた。

 

そしてこれの恐ろしいところは、まだ待機中のもう1体のハーピーガールが残っていると言うこと。

 

 

「もう1体のハーピーガールでアタック!アタック時効果【連鎖:赤】!!……今度はガンナー・ハスキーを破壊だ!」

「くっ!」

 

 

男子生徒の命令で、2体目のハーピーガールが飛び上がる。滑空するように翼撃を放ち、ガンナー・ハスキーを切り裂いた。

 

 

「さぁ!継続中だ!」

 

「……ライフだ……ぐぅっ!」

ライフ4⇨3

 

 

ハーピーガールは翼で椎名のライフを破壊、そしてまたあのコンボが繰り出される。

 

 

「ハーピーガールの効果でライフを1つ回復、さらに朱に染まる薔薇園の効果で1枚ドロー」

ライフ3⇨4

手札3⇨4

 

 

あっという間だった。あっという間に男子生徒は椎名のフィールドをほぼ壊滅させただけではなく、ライフ差も手札差をも覆してみせた。

 

 

「……すごい……!、こんな奴がいるのか、すごいや」

 

 

椎名は只々感心の声が漏れる。とても楽しいのだ。さっきはこの学園に来て少し後悔すらしていたが、今のでまた気が変わった。やはり、ここは、バトスピ学園は楽しい、すごい場所だと認識していく。

 

 

「おいおい、感心してる場合かよ、ターンエンドだ」

イーズナLV1(1)BP1000(回復)

ハーピーガールLV3(3)BP5000(疲労)

ハーピーガールLV3(3)BP5000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

男子生徒は余裕の表情でターンを終える。ライフと手札を増やしてほぼ完璧なプレイングだった。それは誰もが観ても、美しいと感じさせるターンであっただろう。

 

 

「よし!私のターンだ!」

 

 

椎名は期待に胸を膨らませ、意気揚々とターンシークエンスを進めた。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

一方その頃、椎名の教室では、1時間目が終わる。休み時間中、晴太は流石に1日中廊下に立たせておくのはやり過ぎたと自己反省して、椎名を中に入れるつもりでいた。そして教材をまとめて手に持ち、廊下を出ると、

 

 

「おい、椎名、もういいから中に入ってなさい、………椎名?…………」

 

 

返事がしない。さっきまで廊下に立たせたはずなのに。そう思って晴太は廊下全体を見渡す。

 

第3スタジアムまでバトルをしに向かった椎名はそこには当然存在しない。晴太は手持ちの教材や周りの空気を震撼させるほどの大きな息を吸い上げる。

 

ーそして、

 

 

「し〜〜〜〜なぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

授業中にばっくれた椎名に対してまた顔の血管が浮き出てくるほど本気で怒る晴太、その雄叫びが学園のその校舎に響き渡った。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

晴太がお怒りになっているとはつゆ知らず、椎名は目の前の強敵とのバトルに全力を尽くしていた。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨8

トラッシュ2⇨0

猪人ボアボア(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、ブイモンを召喚!LV2!」

手札4⇨3

リザーブ8⇨3

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名のフィールドにブイモンが姿を見せる。ブイモンはやる気を見せるように拳を強く握る。

 

 

「猪人ボアボアもLV2へ!」

リザーブ3⇨2

猪人ボアボアLV1⇨2(2⇨3)BP4000

 

 

ボアボアはLVが上がり、それをアピールするかのように雄叫びを上げる。

 

 

「アタックステップ!ブイモン!いけぇ!」

 

 

アタックステップを開始し、ブイモンに特攻させる椎名、ブイモンがその2本足で走り出す。

 

 

「……ライフで受ける……ぐっ!」

ライフ4⇨3

 

 

ブイモンの勢いをつけた強烈な頭突きが男子生徒を襲う。男子生徒は少しよろめくも、すぐに態勢を立て直す。

 

男子生徒の残ったブロッカーはLV1でBP1000のイーズナのみ、ブロックは極力避けたかったのだろう。

 

 

「続け!ボアボア!効果でLV3にアップ!」

猪人ボアボアLV2⇨3

 

 

椎名の命令で再び鎖付き鉄球を振り回すボアボアだが、その側であるスピリットが進化をしようとしていた。

 

 

「いくよ!【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!ブイモンを手札に戻して、アーマー体、フレイドラモンにアーマー進化!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ2⇨3

 

「……来るか、赤のアーマー体」

 

 

ブイモンの頭上から炎を模した卵が降ってくる。ブイモンと衝突し、混ざり合う。そして、竜人型のアーマー体、フレイドラモンが召喚された。

 

 

「今日も頼むよ!フレイドラモン!」

フレイドラモンLV2(3)BP9000

 

 

フレイドラモンは椎名の言葉に対して、まるで任せろと言っているかのように吠える。その咆哮はスタジアムを震撼させるほどに響き渡った。

 

 

「フレイドラモンの召喚時効果!相手のBP7000以下のスピリットを破壊!……イーズナを焼き尽くせ!爆炎の拳!ナックルファイア!」

 

 

放たれるフレイドラモンの炎の鉄拳がイーズナを包み込む、イーズナは耐えきれずに小さく爆発を起こした。

 

 

「そしてカードを1枚ドロー」

手札3⇨4

 

 

フレイドラモンは召喚時とアタック時にBP7000以下の相手のスピリット1体を破壊し、成功すればドローすることができる。

 

【アーマー進化】は他の【進化】とは違い、タイミングはフラッシュのみと、かなり幅広く対応できる。

 

例えば進化元をアタックさせた後のタイミングで使えば、攻撃回数が単純に1回増えることになる。今がまさにその状態、疲労状態のブイモンを戻したからといって、進化先のフレイドラモンまで疲労はしない、フレイドラモンで追撃が可能なのだ。

 

 

「さぁ!ボアボアのアタックは継続中!」

 

「……ライフで受ける」

ライフ3⇨2

 

 

ボアボアのハンマー投げのような攻撃で、再びライフを減らされる男子生徒。これでハーピーガールの【聖命】の力で押し戻されたライフはプラマイとなる。

 

ーだが、椎名の場にはまだ、フレイドラモンが残っている。

 

 

「いけぇ!フレイドラモン!アタック時効果!今度はハーピーガールを破壊!………ナックルファイア!」

「……またか」

 

 

フレイドラモンは再び炎の鉄拳を使う。狙った的はハーピーガール2体の内の1体、放たれた炎に避けることはできずに、ハーピーガールは燃え尽きてしまう。

 

 

「そして1枚ドロー!」

手札4⇨5

 

 

アタック時にもドロー効果は存在する。椎名はカードを1枚ドロー、そしてここからがフレイドラモンの本領発揮だ。

 

 

「フレイドラモンのLV2効果!相手のスピリット1体を指定アタックできる!」

「……!!」

「残ったハーピーガールに指定アタック!………砕け散れ!渾身のファイアァ!ロケットォォ!」

 

 

フレイドラモンは宙に舞うと、そのまま炎を自身の体全体に纏い、残ったハーピーガールに向けて落下、それと衝突したハーピーガールはその凄まじい攻撃には耐えられず、1体目同様、燃え尽きてしまう。これで男子生徒のフィールドのスピリット全ては除去された。

 

フレイドラモンはLV2になると【進化】と名の付く効果を持つスピリットに指定アタックの効果を付与できる。椎名はこの効果で疲労しているハーピーガールを狙い撃ちにしたのだ。

 

このターンで椎名は手札差、ライフ差、スピリット差など、大きくアドバンテージを取り返してみせた。この調子でいけば間違いなく勝利できることだろう。

 

だが、それだけでは勝てないのが、バトルスピリッツの面白いところである。

 

 

「ターンエンド」

猪人ボアボアLV2(3)BP4000(疲労)

フレイドラモンLV2(3)BP9000(疲労)

 

バースト無

 

 

[ターン06]男子生徒

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ9⇨10

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ10⇨12

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ、朱に染まる薔薇園をLV2へ」

リザーブ12⇨11

朱に染まる薔薇園(1⇨2)LV1⇨2

 

 

男子生徒はメインステップの初めに朱に染まる薔薇園のLVを上げる。効果が1つ追加された。

 

 

「朱に染まる薔薇園のLV2効果で俺の赤のスピリットカードの軽減シンボルは黄色としても扱う」

「……!!」

 

 

朱に染まる薔薇園、LV2の効果はメインステップ時に赤のスピリット及びブレイブのカードの軽減シンボルを黄色としても扱う効果、平たく言ってしまえば赤は黄色と同じ色としても扱うと言っても過言ではない。

 

男子生徒はこの効果をフルに活かし、新たなるスピリットを召喚する。

 

 

「……赤きデジタルスピリット、ホークモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ11⇨9

トラッシュ0⇨1

 

「……赤のデジタルスピリット……!」

 

 

赤い鳥型の成長期スピリット、ホークモンが男子生徒の元へと駆けつける。

 

 

「ホークモンの召喚時効果、デッキから3枚オープンし、その中の成熟期か、アーマー体を1枚、手札に加える」

オープンカード

【朱に染まる薔薇園】×

【イーズナ】×

【ホルスモン】○

 

 

ホークモンの召喚時効果でオープンされるカード達、男子生徒はその中の対象内のスピリットカード、ホルスモンを手札に加えた。

 

 

「【めざし】、お前はさっき、【アーマー進化】の効果を連続アタックの駒に使ったな」

「【めざし】じゃなくて【しいな】!」

「………アーマー体の正しい使い方を教えてやるよ」

 

 

名前の間違いに一々突っかかる椎名。男子生徒もアーマー進化を行うのか、そう言いながらリザーブのコアを1つ支払った。

 

 

「【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!こいつを手札に戻して、羽ばたく愛情!ホルスモンをLV2で召喚!」

リザーブ9⇨6

トラッシュ1⇨2

ホルスモンLV2(3)BP6000

 

 

ホークモンの頭上に翼のようなものが生えた卵が落下してくるそれはホークモンと衝突し、混ざり合うことで、それを進化させる。獣型の赤きスピリット、ホルスモンが愛情の風を育みながら誕生した。

 

 

「おぉ!フレイドラモンと同じ赤のアーマー体かぁ!!カッコいい!!」

 

 

フレイドラモンと同様の赤のアーマー体の登場により、興奮を抑えきれない椎名、それを他所に男子生徒はターンを進める。

 

 

「俺は、もう一度ホークモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨4

トラッシュ2⇨3

 

「……!……またホークモンが」

 

 

アーマー進化の効果で一時手札に戻ったホークモンが再び男子生徒の元に駆けつけた。ホークモンはその体を赤く発光させて召喚時効果を発揮させる。

 

 

「再び召喚時だ!」

オープンカード

【ハーピーガール】×

【ライフレボリューション】×

【ホルスモン】○

 

 

捲られたカードの中には再びホルスモンのカードが発見される。男子生徒は再びそれを手札に加える。

 

そして椎名は気づく、男子生徒が行おうとしていたことに、

 

 

「……まっ、まさか……!」

 

「そのまさかだ、再び【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!ホークモンを手札に戻し、2体目のホルスモンを召喚!こいつもLV2だ!」

リザーブ3⇨1

トラッシュ3⇨4

ホルスモンLV2(3)BP6000

 

 

再びホークモンに翼の生えた卵が落下して衝突、男子生徒のフィールドに2体目のホルスモンが現れる。その登場と共に流れる強かな風が椎名の制服を、飛び跳ねた毛を靡かせる。

 

アーマー体の使い方はタイミングによって様々である。相手のアタックステップ中ならば、相手への妨害となり、自分のアタックステップ中ならば、追撃の要に、そして、メインステップ中には連続で召喚することが可能となる。

 

 

「……なるほどね、メインステップ中だったら連続召喚は可能だよね」

 

 

椎名とて、決して知らなかったわけではないが、自分のデッキの相性の都合上、どうしてもアタックステップ中に召喚することが多かった。故にメインステップでの連続召喚はあまり行わなかったのだ。

 

 

「最後に再びホークモンを召喚」

手札5⇨4

リザーブ1⇨0

朱に染まる薔薇園(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ4⇨5

 

 

朱に染まる薔薇園がLVダウンしてしまうものの、ホークモンが三度男子生徒の元に現れた。

 

 

「そしてバーストを伏せる」

手札4⇨3

 

「……おっ、バーストか」

 

 

最後に男子生徒はバーストカードを伏せた。バーストカードは言うなれば【罠】、条件さえ満たせば即発動でき、使用したバトラーに莫大な恩恵を与えることができるカードだ。フィールドにもその影響が出る、男子生徒のフィールドから見て左上側に裏向きでカードが伏せられた。

 

これで準備は万端、いよいよ3体の赤き鳥獣達が侵攻を始める。

 

 

「アタックステップ!この瞬間にホルスモンの効果を発揮!ホルスモンは自分のアタックステップ中にアーマー体のBPを3000上げる、それが2体分」

「……てことは、合計12000までアップ……!」

 

「御名答、」

ホルスモンBP6000⇨9000⇨12000

ホルスモンBP6000⇨9000⇨12000

 

 

2体のホルスモンはそれぞれ赤く発光しだす、互いの相乗効果でBPが10000を超える。椎名のフィールドで一番高いフレイドラモンさえも易々と超えてみせた。

 

 

「まぁでもこの際BPは関係ねぇ、このまま決めるぞ」

 

 

確かに今はBPの増加などあまり関係なかった。この3体のスピリットのフルアタックで椎名の残りのライフは尽きるからだ。

 

 

「いけ!ホークモン!」

 

「ライフだ!」

ライフ3⇨2

 

 

ホークモンは自身の翼から赤い羽根をいくつも飛ばし、椎名のライフを串刺しにして、1つ破壊した。

 

椎名の場には疲労状態のスピリットしかいない、何か抵抗するすべがない限りはほぼ強制的にライフの減少を許容されていた。

 

 

「次だ!いけ!ホルスモン!………テンペストウィング!」

 

 

ホルスモンが羽ばたく、身体を竜巻のように高速で回転させて椎名のライフへと突っ込んでくる。だが、このタイミングで椎名の手札の1枚が光りを放つ。

 

 

「まだだ!まだ終わらない!!フラッシュタイミング!マジック!チェイスライド!」

リザーブ2⇨0

猪人ボアボア(3⇨2)LV2⇨1

トラッシュ3⇨6

 

「なに!?」

「この効果でアタックしてない方のホルスモンを疲労させる!」

 

 

椎名のマジックカード、チェイスライドが発揮される。その効果はシンプル、相手のスピリット1体を疲労させるというもの。

 

緑の突風がアタックしていないホルスモンを疲れさせる。

 

 

「アタック中のホルスモンはライフで受ける!………ぐぅ!」

ライフ2⇨1

 

 

ホルスモンの竜巻のような攻撃が椎名のライフを1つ貫いた。これでいよいよ椎名の残りライフは1、本格的に追い詰められた。

 

だが、それは男子生徒も同じことである。なんせこのターンで勝負を決められなかったのだ。残りライフ2の状態で次の椎名の攻撃を防がなければならないのだ。しかもブロッカーゼロで。

 

 

「くっ!ターンエンドだ」

ホルスモンLV2(3)BP6000(疲労)

ホルスモンLV2(3)BP6000(疲労)

ホークモンLV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト有

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨8

トラッシュ6⇨0

猪人ボアボア(疲労⇨回復)

フレイドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、ボアボアのLVを元に戻し、再びブイモンを召喚!LVは2!」

猪人ボアボア(2⇨3)LV1⇨2

手札5⇨4

リザーブ8⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

猪人ボアボアのLVが元に戻るのと同時に椎名のフィールドに今一度ブイモンが現れた。

 

 

「さらに私もバーストをセット!」

手札4⇨3

 

 

椎名も負けじとバーストを伏せる。男子生徒は当然それを警戒する。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!フレイドラモン!アタック!」

 

 

フレイドラモンがその身に炎を灯しながら再び男子生徒のフィールドへと飛び出していく。

 

 

「アタック時効果でホルスモンを破壊!……ナックルファイア!」

 

 

フレイドラモンの炎の鉄拳が2体のホルスモンの内1体を襲う。爆炎に包まれてホルスモン1体は大爆発した。

 

 

「そしてカードを1枚ドロー」

手札3⇨4

 

 

ホルスモンのBPアップは自分のアタックステップ中のみ、相手のアタックステップ中はBP6000のままなのだ。

 

だが、それは男子生徒のバーストの発動条件でもあって、

 

 

「相手による自分のスピリットの破壊でバースト発動!シャイニングバースト!」

「なに!?」

「この効果でBP10000以下の相手のスピリット1体を破壊、俺が選ぶのはもちろんフレイドラモン!」

 

 

光り輝く炎に包まれてフレイドラモンが大爆発を起こした。シャイニングバーストは自分のスピリットの破壊に反応するバーストマジック、破壊に特化した効果しか持たないフレイドラモンとの相性は最悪だろう。

 

 

「くっ!フレイドラモン……!」

 

 

爆発からなる爆風を感じながらフレイドラモンの破壊を噛みしめる椎名。男子生徒は見越していた。仕留められなかった次のターンでも、椎名がフレイドラモンから必ずアタックを仕掛けると言うことに。だから破壊後のバーストを伏せたのだ。

 

 

「そしてその後、コストを払い、デッキから1枚ドロー、バーストでの発動だった場合、さらに1枚ドローする」

手札3⇨4⇨5

トラッシュ3⇨2

トラッシュ5⇨6

 

 

シャイニングバーストの効果で追加のドローを行うの男子生徒、だが、このタイミングで椎名がとどめを刺すべく動き出す。

 

 

「………今だ!!相手の効果によって手札が増えた時、バースト発動!グリードサンダー!この時点で相手の手札が5枚以上の時、相手はその手札を全て捨て、デッキから新たに2枚ドローする」

 

「なに!?……ぐっ!」

手札5⇨0⇨2

破棄カード

【光翼之太刀】

【朱に染まる薔薇園】

【テイルモン】

【ネフェルティモン】

【アクィラモン】

 

 

椎名のバーストから放たれる強烈な電撃、それは男子生徒の手札を捉え、捨てさせ、そこから新たに2枚ドローさせたのだが、手札の合計枚数は目で見るより明らかに少なくなっていた。

 

 

「そして、コストを払って、相手のスピリットをコスト合計5以下になるように好きなだけ破壊!……残ったホルスモンを破壊だ!」

リザーブ6⇨2

トラッシュ2⇨6

 

「………ぐっ!」

 

 

フィールドに迸る青い電撃がホルスモンを襲う。ホルスモンはそれに耐えられなくなり、大爆発を起こした。

 

これで男子生徒のフィールドに残ったのはホークモンだけとなる。

 

 

「猪人ボアボアででアタック!その効果でLVアップ!」

猪人ボアボアLV1⇨2

 

「ライフで受ける」

ライフ2⇨1

 

 

猪人ボアボアの鉄球が三度男子生徒のライフを破壊した。これで彼も残りライフ1、追い詰められた。

 

 

「よし!いけぇ!ブイモン!」

 

 

椎名のブイモンが待ってましたと言わんばかりに走り出す。目指すは男子生徒のライフ。これで椎名の勝利だと思われていたのだが…

 

 

「……調子にのるなよ、俺はフラッ……あぁ?」

 

 

その光景に思わず気を抜いた男子生徒、その理由は目の前にいた今にも自分を殴ろうとしていたはずのブイモンの姿が消えたのだ。ブイモンだけではない、猪人ボアボアもその姿を消した。椎名もその光景に当然驚く。

 

 

「え!?……あれ、ブイモン!…ボアボア!?……どこいったぁぁぁぁあ!!?」

 

 

何が何だかわからない椎名、さっきまでBパッドの上に置かれていたデジタルコアも消滅していた。いくらカードを取り上げて再びBパッドに叩きつけても一切の反応がなかった。そんな中、男子生徒はブイモン達が姿を消した理由を理解した。

 

 

「お前のBパッド……」

「充電切れしたんだよ!!椎名ぁぁぁぁあ!!」

「げっ!?、晴太先生!」

 

 

男子生徒がその理由を説明しようとした途端、スタジアムの扉を力強く開けながら晴太が現れる。その怒りに満ちた顔は椎名達に近づいて来るたびにより濃くなっていく。

 

 

「充電切れ!?」

「お前知らなかったのか、Bパッドもらった時に充電機も貰っただろう?」

「あ、あれか……」

 

 

Bパッドはスマホやタブレットと同じ充電式の機械だ。田舎育ちの椎名はこのBパッドの仕組みについては全く知らなかった。入学試験の時にBパッドをもっていないと言うことで貰ったBパッドだが、その時から使用して以降の約1ヶ月間、充電などしたことがなかった。

 

 

「あっ!!じゃあさっきの勝負は?」

「当然引き分けだ」

「えぇ!?狡い!!もう少しで私の勝ちだったのに!」

「勝ちだったのにじゃなぁぁぁぁあい!!し〜〜〜なぁ〜〜お前は今日1日ずっと反省文を書いてもらうからなぁ、覚悟しておけよ」」

「いやだよ!なんで!?」

「問答無用じゃあぁぁぁぁあ!!」

「いやぁぁぁぁあ!!」

 

 

そう言いながら晴太は動けないように椎名の首根っこを鷲掴みにして連行する。そして何かを思い出したかのように後ろを振り返り、男子生徒に注意事項と連絡をする。

 

 

「あ、そうそう、君も担任の先生が探していたよ、授業はサボらないようにね、【赤羽司(あかばねつかさ)】君」

「……はい、気をつけます」

「赤羽、司、それが名前か……じゃあね!司!またバトルしよう!次こそは決着だ!」

「お前は黙ってろ!」

「痛!!」

 

 

軽く頭を下げる男子生徒。あまり反省しているようには見えない。なかなか口数が減らない椎名をチョップで静止させる晴太。椎名と共にその場を後にした。

 

【赤羽司】、赤羽一族の末裔、赤羽一族とは昔から数あるバトルの名門一族の1つ、司はその赤羽一族の中でも30年に1人の天才と謳われており、その華麗且つ美しいバトルから世間は彼のことを【朱雀】と言う異名を名付けた。

 

 

「どうだった?……芽座椎名は」

「ん?いや、まぁ今一歩ってとこかな」

 

 

椎名達が去った後、スタジアムの影からひょっこりと現れる司の友人らしき栗色の髪で短髪の男子生徒。司は手札に残った赤のマジックカード【フレイムブロウ】を見せつけながらそう答えた。

 

ー【フレイムブロウ】はBP10000以下の相手のスピリット全てを破壊する効果がある。もし、バトルを続けていたら椎名のスピリットはこの効果で全滅していたので、本当に勝っていたのはどっちかまだわからなかったのだ。

 

 

「へぇ、今一歩か、司がそう言うなんて珍しいね……それにしても久しぶりじゃない?君のことを名前で呼ぶ奴なんて」

「どうでもいい………呼び方なんて人それぞれだろ」

 

 

そしてその後すぐに2人もその第3スタジアムを後にした。これが芽座椎名の生涯の好敵手、赤羽司との最初のバトルだった。

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【ホルスモン】!」

「ホルスモンはフレイドラモンと同じ赤のアーマー体!自分のアタックステップ時には特定のデジタルスピリットのBPが3000上がるよ!」






最後までお読みいただきありがとうございました!


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第3話「渾身の一手!ライドラモン轟く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、そんなことあったんや」

「へぇーじゃないよ本当に、その後は一日中ずぅっと感想文書かされたんだから」

「いやぁ、1日はまだマシやと思うねんけど」

 

 

椎名が司とバトルした翌日の昼休み、丁度弁当を食べ終わってから、晴太にこっ酷く叱られ、挙げ句の果てには一日中感想文を書かされた椎名は、その事を真夏に愚痴るように話していたのだ。

 

椎名もあれだけのことをしたのだ、真夏の言う通り、確かに1日中感想文を書かせるのはまだ甘いほうだと思われる。

 

 

「でもやっぱすごいでぇ、椎名は」

「ん?何が?」

「だってあの【朱雀】に臆さずバトルしたんやろ!?すごいでぇ、ほんま大もんやわ〜〜」

「いやいや、ただバトルしただけでそんなに言われてもなぁ、」

 

 

それと同時に、椎名が【朱雀】こと赤羽司とバトルしたことは、知らずのうちに学校中で噂になっていた。強敵に挑んでいく椎名をべた褒めする真夏。バトル自体の結果は晴太が横入れしたため消化試合となってしまったが、

 

椎名としてはただバトルに夢中になっていただけだ。そんなことで褒められてもあまりピンとは来ないだろう。それは椎名が【朱雀】と言う男を詳しく知らないのも理由の1つであろう。

 

 

「そう言えば司ってなんで【朱雀】って呼ばれてるの?」

 

 

椎名はそもそも司が【朱雀】という異名を持っていたことを知らなかった。真夏はあまり世間を知らない椎名にこれを説明していく。

 

 

「はぁ!?あんたそんな事も知らんかったんかいな、【朱雀】って言ったら赤バトラーの名家、【赤羽一族】の30年に一度の天才って言われてる奴やないか、あいつの軸となっているスピリットとその華麗なプレイングから【朱雀】って言われるようになったんよ、私らと同期の中でもトップクラスの有名人やで!?」

「はは、いや私あんまり世間とか世論とか知らなくってさ〜」

 

 

同期の中でも逸脱した才能の持ち主である【朱雀】を知らなかった椎名に対して真夏は少なからず驚いている。いくら椎名が遠い島出身とは言え、【朱雀】を知らないのはあまりにも変だと、それほどまでに【朱雀】は有名人なのだ。

 

【朱雀】こと、司はジュニア時代では数々のバトスピ大会で賞を勝ち取っている。他を寄せ付けないその強さは当時から多くのメディアにも注目されていた。ただそれ故に椎名が【朱雀】を知らないのは本当におかしい以外何者でもなかったのだ。

 

 

「でも、もうちょっとで勝てるとこだったんだよなぁ」

「それほんまに言っとんの!?」

 

 

椎名は知らないが、あのバトルは本当ならまだあのバトルの決着はついていなかった。もう少しで椎名が勝てるとこではあったが、司はまだ凌げる防御札を手札に持っていた。

 

それでも【朱雀】と呼ばれる司をあそこまで追い詰めれるのはこの同期とそれ以下の世帯の中ではほとんどいないだろう。

 

2人が机を囲んでそんな談笑をしている時だった。誰かが閉まっている教室のドアを開ける。そこに現れたのはクラスメイトでも先生でもない。別のクラスの男子生徒だ。160cmもいかない位の椎名とほぼ同じくらいの小柄な体格に加え、栗色の短めの髪、成長期が来るのを予想してるのか、少し大きめの制服を着ていた。新品の制服やバッジの色から椎名達と同じ1年生であることが示唆される。

 

その男子生徒はなんの躊躇もなく真っ直ぐに椎名と真夏がいる机に寄って着た。いや正確には椎名だけを見ていた。そして椎名に親しげな顔つきを見せながら口を開いた。

 

 

「やぁ、君が芽座椎名さん?……かな?」

「ん?そうだけどあなた誰?」

 

 

知らない生徒に声をかけられて首をかしげる椎名、するとここで真夏が思い出したように口を開く。

 

 

「あっ!思い出したで、あんたは確か【朱雀】の唯一の親友、【長峰雅治(ながみねまさはる)】!」

「司の親友?」

「はは、……そう、僕は【長峰雅治】。……司の親友ねぇ、まぁ、そんな感じかな、僕は兎も角、あいつがそう思っているかは謎だけどね」

 

 

彼の名は長峰雅治、椎名達の同期で、司の幼なじみ、バトルの腕前も相当なもので、椎名達の同期中では【朱雀】と並んでトップクラスに立っている。

 

そんな彼がなぜ今椎名達の前にいるのかというと、

 

 

「でも、司の親友がどうして私のとこに?」

「いや、昨日、司が君にアンティなんか仕掛けたらしいから迷惑かけたなぁと思ってねぇ、あいつ素直じゃないから言えなかったんだろうけど、ただ取り敢えず君とバトルがしたかっただけだったんだ。それだけはわかって欲しいと考えてね」

「なんか、おかん見たいなやっちゃな」

「あ〜〜いいのいいの全然!気にしてないし、寧ろ楽しかったよ!」

 

 

雅治は椎名に謝罪目的で来ていた。少しだけ頭を下げる雅治だが、当の椎名は特に何も気にしてはいない。寧ろ友の誤解を解くためにわざわざ自分のとこまで来たのだ。逆に感心してしまう。

 

椎名の返事を聞いて、雅治は手を口にあて、微笑ましく顔を歪ませる。

 

 

「楽しかった、か。ふふ、君とはいいバトルになりそうだ」

「………!?」

「いやなんでもない、こっちの独り言だよ………じゃあね」

 

 

雅治はそれだけ言い残して椎名達の教室を後にした。

 

 

「結局それだけかいな」

「…他に何か言いたげだったような」

 

 

そうしているうちに学校の予鈴チャイムが鳴り響き、次の授業が始まろうとしていた。

 

次の授業は【合同実技】だ。椎名達はさっきの雅治の発言が引っかかりつつも授業がある第3スタジアムへと赴いた。

 

【合同実技】とは、簡単に言ってしまえば、他のクラスと合同でバトルの練習を行う。それぞれ違うクラスの生徒とバトルを行う。

 

 

「よし!全員配られた番号の元に行きなさい!目の前にいる生徒が今日の対戦相手だ!」

 

 

担任の先生の晴太の指示でクラスメイトの各々が散っていく。椎名は自分に割り当てられた番号のバトル場に向かう。同じ番号のものが今回の椎名の対戦相手だ。

 

 

「えー、っと、17、17、………ここか」

「………やぁ!待ってたよ!」

「ん?あっ!さっきの!」

 

 

その17番のバトル場で既にBパッドを展開させて待ち構えていたのは雅治だった。椎名は気づく。さっきの雅治の発言はこれから自分とバトルするのがわかっていたからなのだと、

 

 

「なるほど!今回の合同実技はあなたが相手だったんだね!よろしく!」

「こちらこそ」

 

 

雅治はまるで丁寧な執事のように挨拶をする。椎名も直ぐにBパッドを展開させてバトルのスタンバイに入った。

 

 

「見せてもらうよ、入学試験で空野先生に勝った実力を」

「へへ、望むところだよ!」

 

 

椎名は少なからず入学試験時点で何かと注目されている人物の1人だった。

 

入学試験では、職員の教師、誰か1人とバトルすることになるのだが、今年に限っては、新人教師且つ天才的なバトラーの空野晴太が1部担当しているところがあり、学生間の間では空野晴太はハズレ枠認定だった。

 

そしていざ始まってみると案の定、晴太の前に積み上げられたのは自分に敗北した生徒達の山だった。

 

そんな中、晴太にただ1つの勝ち星を挙げたのが【芽座椎名】、その時の晴太は本気のデッキではなかったとは言え、彼にバトルで黒星をつけたことは他の学生や教師陣からも話題のまとだった。

 

雅治はこの椎名のバトルを見ていた。だからこそ一度戦って見たかった。自分のような頭脳派とは違う、体で何かを覚える感覚派のバトラーである椎名とバトルすることで何か自分を高められるのではないか。そう考えていたのだ。

 

椎名も、今回の相手はあの【朱雀】と呼ばれている赤羽司の親友、彼も当然それ相応の実力者であるはず、そう考えるだけで椎名は胸を踊らせずにはいられなかった。

 

ーそしていつもの掛け声でバトルが始まる。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

芽座椎名と、長峰雅治のバトルが始まる。

 

ー先行は雅治。

 

 

[ターン01]雅治

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、じゃあ僕は先ず、アルマジモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4s⇨0

トラッシュ0⇨3s

 

 

アルマジロのような外見の黄色の成長期スピリット、アルマジモンが雅治の足元から出現した。その顔の表情はとても愛らしい。

 

 

「黄色か!!」

 

「そう、これが僕の色だよ、アルマジモンの召喚時効果発揮!デッキの上から3枚をオープンし、その中の「成熟期」か、「アーマー体」のスピリットを1枚手札に加えて、残りを破棄!」

オープンカード

【イエローリカバー】×

【イエローリカバー】×

【舞華ドロー】×

 

 

アルマジモンの召喚時効果でデッキのカードがめくれていくが、その3枚のカードの中にはどれも該当するものはなく、そのまま破棄されてしまった。

 

だが、これも彼の計算のうちだ。

 

 

「エンドステップ、トラッシュにある舞華ドローの効果」

「!?」

 

「自分のトラッシュにソウルコアがある時、自分のエンドステップ時に手札に戻ってくる」

手札4⇨5

 

 

舞華ドローの効果はトラッシュにある時にソウルコアがあるならエンドステップ時に手札に戻ってくる効果がある。ソウルコアとはどのプレイヤーも必ず持っている他のコアとは違う唯一無二の特別なコアのこと。そのソウルコアを活用した効果を持つカードは多々存在している。

 

 

「自分のデッキに舞華ドローがあるのを知っていたからアルマジモンの召喚コストにソウルコアを支払ったのか」

 

「ふふ、まあね、これで僕はターンエンドだ」

アルマジモンLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

普通は有象無象にソウルコアをトラッシュには置かない。ソウルコアが次のターンまで使えなくなるからだ。それは前述したとおり、ソウルコアを活用する効果を持つカードがあるからである。ソウルコアがトラッシュにあれば少なくとも相手の手札にはソウルコアを活用するカードは存在しない、またはそれが使えなくなると言った情報が相手側に流れるからだ。雅治はそれを承知の上でアルマジモンの召喚コストにソウルコアを払っていた。

 

 

(確か、舞華ドローは相手のスピリット1体をBPー3000して、0になったそのスピリットを破壊だったよね)

 

 

椎名は雅治の手札に加えられた舞華ドローの効果を思い出しながら自身のターンシークエンスを進めていく。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「よし!メインステップ!風盾の守護者トビマルをLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の場に大きな盾を持った鳥型のスピリットが召喚される。

 

 

「なるほど、守護者スピリットか、確かにそれならコスト3以下のスピリット限定で舞華ドローから身を守ることができるね」

 

「へへ、このターンはエンドだよ!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

トビマルのような守護者と名のついたスピリットは弱き者達を守る勇敢な戦士、自身を含めたコスト3以下のスピリットが効果で破壊される時に、それらを疲労状態で残すことができる。

 

これで椎名は舞華ドローの破壊効果をある程度は軽減できる。

 

 

[ターン03]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、そうだなぁ、ここは……2体目のアルマジモンを召喚しようかな」

手札6⇨5

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

雅治の場にもう1体のアルマジモンが姿を見せる。

 

 

「2体目の成長期!?」

 

「そう、……そしてもう一度、召喚時効果!」

オープンカード

【アルマジモン】×

【パタモン】×

【パタモン】×

 

 

再びアルマジモンよ召喚時効果が発揮されるがまたその中には該当するカードがないため、トラッシュにそのまま送られた。

 

 

「そして手札からマジック!舞華ドロー!コストにはソウルコアを支払うよ」

手札6⇨5

リザーブ1s⇨0

トラッシュ2⇨3s

 

「やっぱ撃ってくるよね〜」

 

「この効果でBPー3000するのはもちろん君の風盾の守護者トビマル、そして0になったらそれを破壊して僕はデッキから1枚ドローする」

「トビマルのBPは2000、0にはなるけど自身の効果で疲労状態で生き残る」

 

 

黄色い波動がトビマルを襲う。それに力を奪われた瞬間、爆発してしまうが、トビマルは自分の効果で疲労状態となり椎名の場に居座っていた。

 

 

「だけど破壊はされているからカードはドローするよ」

手札5⇨6

 

 

守護者スピリットの効果はあくまで疲労状態で残る効果、つまり一度破壊はされているのだ。よって、雅治は舞華ドローの効果でデッキから1枚ドローした。

 

 

「アタックステップ!アルマジモン2体でアタック!!」

 

「トビマルは疲労状態、なら、どっちもライフだ!」

ライフ5⇨3

 

 

トビマルが疲労した途端アルマジモンでアタックを仕掛けてくる雅治。おそらくはこれも計算のうち、

 

アルマジモンはボールのように体を丸めて弾丸のように飛んでいき、椎名のライフを破壊した。

 

 

「エンドステップ、舞華ドローの効果でトラッシュから手札に………そしてターンエンド」

手札6⇨7

 

アルマジモンLV1(1)BP2000(疲労)

アルマジモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

できることは全て終えた雅治はこのターンを終える。次は椎名の反撃だ。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!先ずは猪人ボアボアを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨4

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名の場に猪の顔をした獣戦士ボアボアが召喚される。ボアボアは鎖付きの鉄球をぐるぐると振り回し、やる気を見せる。

 

 

「そして、次はブイモンを召喚!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨2

トラッシュ2⇨3

 

「……来たね、軸となる成長期スピリット」

 

 

椎名の足元から出現したのは青い体の小竜型の成長期デジタルスピリット、ブイモン。

 

 

「召喚時効果!デッキから2枚オープンして対象のカードを手札に加える!」

オープンカード

【ワームモン】×

【グリードサンダー】×

 

 

ブイモンの召喚時効果を使う椎名だったが、雅治同様これは外れ、そのままトラッシュに送られた。

 

 

「ちぇ、ハズレか〜」

(その言い方じゃあ、進化形態がいないのがバレバレだね、……可愛いけど)

 

 

結果に口を尖らせる椎名。雅治はその椎名の表裏のない性格から分析してブイモンの進化形態はいないと判断する。

 

その予想は完璧に的中している。確かに今の椎名の手札にはフレイドラモンは存在しない。

 

 

「バーストをセット!風盾の守護者トビマルをLV2へアップ!!」

手札3⇨2

リザーブ2⇨0

風盾の守護者トビマル(1⇨3)LV1⇨2

 

 

椎名の場に伏せられたのは1枚のバーストカード、このカードで試合を動かすことはできるのか期待がかかる。トビマルもLVが上がり、新たな効果が追加された。

 

進化できないのは少々残念だが、致し方ない。椎名は今いるスピリットでアタックを仕掛ける。

 

 

「アタックステップ!いけ!ボアボア!!アタック時で強制的にレベルアップ!さらに【連鎖:緑】でボイドからコアを1つボアボアに追加!」

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

 

 

ボアボアでアタックを仕掛ける椎名、ボアボアは自身の効果でコアを増やしつつ鎖付きの鉄球を雅治に向かって投げ飛ばした。

 

 

「ライフで受けるよ」

ライフ5⇨4

 

 

前のターンにフルアタックをした雅治は当然ブロックできるスピリットがいない。このアタックは無条件で受けることになった。

 

ーだが、問題はこの後であって、

 

 

(ブイモン達でアタックをしてもいいけど………)

 

 

珍しくターン中に手を止める椎名。それもそのはず、雅治の手札には舞華ドローが存在する。椎名の場のスピリットはいずれも舞華ドロー1発で射程圏内に収まる小型ばかり、トビマルの効果で破壊は免れるとは言え、残る時は疲労状態、おまけに今は雅治のスピリットを除去するカードもない。

 

つまり、ここで1回でもアタックしてしまえば舞華ドローの効果を使われて、ブロッカーは0、次のターン、雅治がスピリットを1体でも召喚して、またフルアタックをしかけられたらその時点で椎名はほぼ終わりなのである。

 

 

「………ターンエンド」

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

風盾の守護者トビマルLV2(3)BP3000(回復)

 

バースト有

 

 

結局アタックはできず、ブロッカー2体を残すプレイングをとった椎名。攻めたいところだが、攻められない。彼女はもどかしい気持ちに襲われるが、負けるよりかは遥かにマシであって、

 

 

[ターン05]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、それじゃあ、そろそろ決めにかかろうかな」

「!?!」

 

 

「行くよ、椎名、これが僕のアーマー体!………僕はアルマジモンを対象に【アーマー進化】を発揮!1コスト支払い、アルマジモンをアーマー体、ディグモンにアーマー進化!!」

リザーブ5⇨4

トラッシュ0⇨1

 

「おぉ!!雅治もアーマー進化を使うんだ!!」

 

「ディグモンをLV2で召喚!!」

リザーブ4⇨3

ディグモンLV2(2)BP6000

 

 

アルマジモンの頭上にこれまた独特な形をした黄色い卵が落下してくる。アルマジモンはそれを受け入れるように衝突していき、混ざり合い、その力の恩恵を受けて、進化する。

 

そして現れたのは鼻先と両腕にドリルの武器を携えた昆虫型のデジタルスピリット、ディグモン。

 

ディグモンはその黄色い体を輝かせながら自慢の3つのドリルを回転させている。

 

 

「すごい!ドリル!!」

「ふふ、すごいのはこれからだよ!!ディグモンの召喚時効果!相手のスピリット1体を指定して、このターン中、そのスピリットはブロックできなくなる」

「!?!」

「僕が指定するのは厄介なアタック時とブロック時を待つ、風盾の守護者トビマル!!」

 

 

ディグモンは両腕のドリルを地面に突き刺し、地割れを起こす。トビマルはそれに足を挟まれて身動きが取れなくなる。

 

トビマルはアタック時とブロック時に相手のスピリット1体を疲労させる効果がある。雅治はそれを見越してトビマルを選んだのだ。

 

 

「くそぉ、ブロックできないのか……でも召喚時のバーストはもらうよ!」

「……!!」

 

 

椎名のバーストが勢いよく開く。

 

 

「バースト発動!双翼乱舞!カードを2枚ドロー」

 

 

効果でデッキのカードを勢いよく引く椎名、狙うはもちろんフレイドラモンのカード。果たしてその結果は……

 

 

「…………よし!来た来たぁぁぁぁあ!!」

手札2⇨4

 

(わかりやすい………可愛いけど)

 

 

2枚のカードを見て大いに盛り上がる椎名、雅治から見たらそれは本当にわかりやすかった。明らかにキーカードを引けた顔だ。

 

雅治はポーカーフェイスを一切保とうとしない椎名に少々呆れながらも、思わずその可愛らしい笑顔をまじまじと見つめてしまう。

 

双翼乱舞は赤のバーストマジック、相手のスピリット及びブレイブの召喚時に発動することができる。その効果は至ってシンプルで赤らしいドロー効果、

 

椎名はその後のメイン効果をコストを支払って使用できたが、キーカードを引けたからか、支払いはせず、双翼乱舞の効果は2ドローで終わった。

 

 

「どうやらキーカードをうまく引けたみたいだけど……………このターンの僕の進化はまだ終わらないよ」

「え!?」

 

「残ったアルマジモンをLV3に!」

リザーブ3⇨0

アルマジモン(1⇨4)LV1⇨3

 

 

場に残ったアルマジモンのレベルが上がる。アルマジモンはそれをアピールするかのように宙返りしてみせる。雅治はこの後すぐにアタックステップへと移行した。

 

 

「さぁ、アタックステップ!!アルマジモンの【進化:黄】発揮!!成熟期のアンキロモンに進化召喚!」

アンキロモンLV3(4)BP6000

 

 

アルマジモンはデータの渦に包まれていき、そのデータコードを返還させて行く。新たに現れたのは硬質化した表皮に全身を覆われた鎧竜型スピリット、成熟期のアンキロモン。

 

 

「……!!…普通に進化した……!!」

「進化はアーマー進化だけじゃないよ!」

 

 

気づけば雅治のフィールドにはアーマー体と成熟期のスピリットが並び立っている。

 

咆哮をあげるアンキロモン、ドリルを回転させながらやる気をみせるディグモン。椎名の小さいスピリット達だけでは勝つことは難しいだろう。

 

 

「アタックステップは継続!ディグモンでアタック!」

 

 

雅治の指示で動き出すディグモン。ディグモンは事前に回転させていたドリルを地面に突き刺して、再び地割れを起こす。それは瞬く間に椎名のブイモンの足場を崩し、身動きを封じた。

 

 

「……!!…これってさっきと同じ、」

「そう、ディグモンは召喚時とアタック時に同じ効果を発揮するスピリット、……2体目はブイモンを選ばせてもらったよ」

 

 

ディグモンは召喚時とアタック時でブロック不可効果を発揮できる。

 

これで椎名の場には実質ブロックできるスピリットは消えてしまったが、ブイモンが生き残っているならそれは関係ないことであって、

 

 

「だけどこのフラッシュタイミングを待ってた!!【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!!……ブイモンを手札に戻して炎燃ゆるスピリット!!フレイドラモンを召喚!!」

トラッシュ3⇨4

猪人ボアボア(2⇨1)

風盾の守護者トビマル(3⇨1)LV2⇨1

フレイドラモンLV2(3)BP9000

 

 

足を挟まれたブイモンの頭上に赤い卵が投下される。ブイモンはそれと衝突して進化、フレイドラモンが地割れに挟まれた足を引き抜きながら参上した。

 

 

「……来たね、赤のアーマー体」

「アーマー進化は新たなる召喚扱い。フレイドラモンにはディグモンの効果は及んでいない」

 

 

椎名の言う通り、フレイドラモンのようなアーマー進化を持つスピリットの召喚は新たなる召喚扱い。つまりブイモンとは別のスピリットとして扱われている。

 

一見してみるとBPの高いフレイドラモンを召喚した椎名が有利に見えるが、実は本当に優位に立っているのは雅治の方であった。それはフレイドラモンの召喚時効果を発揮すれば直ぐに分かることである。

 

 

「フレイドラモンの召喚時効果!BP7000以下の相手スピリット1体を破壊!……対象はBP6000のアンキロモン!……いけ!フレイドラモン!爆炎の拳!ナックルファイア!!」

 

 

フレイドラモンがその拳に炎を纏わせて殴りつけるように射出、アンキロモンに命中し、焼き尽くすと思われたが、

 

 

「残念だったね、アンキロモンは相手の効果では破壊されない」

「……え!?」

 

 

その爆煙が晴れてみると、そこには擦り傷1つついていない元気なアンキロモンの姿がいる。フレイドラモンの効果を全く受け付けなかったのだ。

 

 

「くそ!……じゃあディグモンを」

「無駄だよ!ディグモンも自分のアタックステップ中のみ、相手の効果では破壊されない」

「………!!」

 

 

そう、ディグモンも効果では破壊されない。雅治は椎名のバトルをこれまで色々と見ていた。見ていたからこそ、ここまで対策を練り、完封する作戦を考えて来たのだ。

 

椎名のデッキはフレイドラモンを使用した圧倒的速攻。それは良くも悪くも、アドバンテージ差をつけるためにはフレイドラモンにやや頼り気味であって、そのフレイドラモンを対策されると窮地に陥りやすい弱点を抱えている。

 

スピリットを破壊できなければフレイドラモンに付随するドロー効果も使用できない。椎名はこれだけで一気に辛くなる。自分が優位に立つ残された手段は、

 

 

「だったら、フレイドラモンでディグモンをブロック!!」

 

 

ディグモンをこのまま迎撃して破壊することで不利な状況を一転させよう試みるしかない。

 

フレイドラモンより若干上背のディグモンは両腕のドリルでフレイドラモンを貫こうと上からそれを振り下ろす。フレイドラモンも負けじと両腕に炎を纏わせたダブルパンチで迎撃する。

 

BPはフレイドラモンが9000、ディグモンは6000、フレイドラモンの方が3000高いが、雅治の手札にある舞華ドローを使用すれば同値まで持っていかれてしまう。

 

ー椎名はそれを避けるために勝負に出る。

 

 

「フラッシュマジック!ワイルドライド!!不足コストはボアボアとトビマルから確保!!フレイドラモンのBPを+3000!!」

手札4⇨3

猪人ボアボア(1⇨0)消滅

風盾の守護者トビマル(1⇨0)消滅

トラッシュ4⇨6

フレイドラモンBP9000⇨12000

 

 

ボアボアとトビマルが消滅してしまうが、ワイルドライドの効果でフレイドラモンのBPがディグモンのBPを大きく上回る。これでBP差は詰められることはなかったが、雅治は黄色らしい、思わぬトリッキーな一手でやり返して来た。

 

 

「そうくるのも計算のうちさ………フラッシュマジック!フルーツチェンジを使用する!不足コストはアンキロモンから使うよ!」

手札8⇨7

アンキロモン(4⇨3)LV3⇨2

トラッシュ1⇨2

 

「フルーツチェンジ!?」

「……このカードはこのバトル中、BPを比べるスピリットのBPを入れ替える不思議な効果を発揮する」

「……あっ!!…BPを入れ替えるってことは!?」

「そう、ディグモンのBPはフレイドラモンのBP12000となり、逆にフレイドラモンのBPはディグモンのBP6000となる」

 

 

ディグモンとフレイドラモンが取っ組み合っている空間にのみ、黄色の波動が纏わりつく、それは瞬く間に2体の力関係を入れ替えてしまった。フレイドラモンの力となったディグモンはそのままドリルの回転速度を上げてフレイドラモンを一気に叩き潰した。

 

フレイドラモンは力及ばず爆発してしまう。

 

 

「…ぐぅ!!…フレイドラモン!!」

 

「僕はこれでターンエンド………」

ディグモンLV2(2)BP6000(疲労)

アンキロモンLV2(3)BP5000(回復)

 

バースト無

 

 

状況を一転させるつもりがより不利な状況を作ってしまった椎名。だが、エースを破壊されても自身のライフとデッキが尽きない限りは絶対に諦めない。それこそが芽座椎名だ。まだまだ全力でバトルに臨む。

 

たが、いくら強がっても不利な状況は変わらない。このままではじわじわと嬲り殺されるだけだ。次のターンのドローステップが勝負の分かれ目である。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

 

 

「頼むよ!私のデッキ!!……ドローステップ!!………」

手札3⇨4

 

 

椎名はドローカードを確認する。そのカードはまさしく今自分が欲しかったカード。それを見事引き当ててみせた。

 

 

「よし!!」

(……!?……何を引いた!?)

 

 

エースがやられた次のターンの局面でできる顔ではないと判断した雅治。そのカードがなんなのか推測するが、今までの椎名のバトルではフレイドラモンだけが活躍していたためか、予想するのは難しかった。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨10

トラッシュ6⇨0

 

 

「へへ、行くよ!雅治!………メインステップ!!ブイモンを再び召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ10⇨6

トラッシュ0⇨3

 

 

【アーマー進化】の効果で手札に戻ったブイモンが再び椎名の元に現れる。ブイモンは両拳を強く握り締めてやる気をみせている。

 

ーそして椎名は魅せる。自分が持つ第2のアーマー体を、フレイドラモンと双璧を成すブイモンの進化形態を。

 

 

「アーマー進化発揮!対象はブイモン!!」

リザーブ6⇨5

トラッシュ3⇨4

 

「……またアーマー進化!?」

 

 

ブイモンの頭上に独特な形をした黒い卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、新たなる姿へと進化を果たす。

 

それは黒き獣のようなアーマー体、青き雷をまといて、椎名の場に参上する。

 

 

「ライドラモンを召喚!!」

リザーブ5⇨2

ライドラモンLV3(4)BP10000

 

「新しいアーマー体!?緑のスピリット……!!」

 

「そう、これがフレイドラモンと双璧を成す私のアーマー体スピリット、ライドラモン!!…………召喚時効果発揮!!ボイドからコアを2つトラッシュに追加する!!」

トラッシュ4⇨6

 

 

ライドラモンが召喚されるなり雄叫びをあげる。すると椎名のBパッドに雷が落雷する。その煙が晴れると、椎名のトラッシュにコアが2つ新たに追加されていた。

 

だが、

 

 

「今更コアブースト!?しかもトラッシュに………それじゃあ結局何も変わらないよ」

 

 

そうだ、ライドラモンの効果は強力ではあるものの、結局はタイムラグ付きのコアブースト、使用できるのは次のターンからとなる。いくらコアが増えても巻き返す方法がなければ意味はない。

 

しかし、椎名が使いたいのはコアブースト効果ではなかった。

 

 

「まぁ、そう慌てないでよ、ライドラモンの強みはこれからわかる」

「!?!」

 

 

椎名はライドラモンだけがいる盤面でアタックステップに移行する。それは一見無謀とも取れるが、

 

 

「アタックステップ!!ライドラモンでアタック!!」

「BP10000のただ1回のアタックでは僕の4つのライフは減らされないよ!」

 

 

地を駆けるライドラモン。確かにライドラモンだけではこのターンで雅治のライフを全て消すことは難しいだろう。だが、バトルスピリッツの醍醐味はどんなに追い詰められても複数のカードを活かすことでそれらを難なく突破することが可能になることである。

 

椎名は初手からためていたあるカードを引き抜く。

 

 

「ここでこのマジックが光輝く!……フラッシュマジック!ストームアタックを使用!!」

手札3⇨2

リザーブ2⇨0

ライドラモン(4⇨3)LV3⇨2

トラッシュ6⇨9

 

「なに!?このタイミングでストームアタック!?」

「この効果で回復状態のアンキロモンを疲労させ、逆に疲労状態のライドラモンを回復させる!!」

 

 

椎名が使用したカードは《究極カード》と呼ばれるデッキには1枚しか入れられないと言う強力なカードの1枚、緑のマジック、【ストームアタック】、その効果でアンキロモンが風に包まれて疲労し、逆にライドラモンが追い風を受けて回復状態になる。

 

 

「くっ!!」

アンキロモン(回復⇨疲労)

 

「これであなたのブロッカーは0!!ライフで受けるしかなくなった!!いけ!ライドラモン!!」

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

「う、ぐぅ!」

ライフ4⇨3

 

 

ライドラモンの全力疾走からの体当たり、最早かわすすべがない雅治はその攻撃を諸に受けてしまう。だが、そのライフ数はまだセーフティラインであって、

 

 

「残念だね、その程度の攻撃じゃあ、君がいくら頑張ってもこのターンで削ることができる最高値は2。僕はまだ負けない」

 

 

安心したように笑みを浮かべる雅治だが、この状況で笑っていたのは椎名も同じだった。雅治はそれを見て不思議に思う、何故笑っているのだろう。と、使用したコアはもうギリギリ、ライドラモンをLV2で維持するのに手がいっぱいのレベルだ。

 

雅治は気づく。この状況で椎名が笑っていられるのはライドラモンにはもう1つ何か効果があるから。ということに。

 

そして椎名はライドラモンの第2の効果を説明する。

 

 

「ライドラモンはライフを減らす時、さらにもう1つライフを減らす!!」

「………な、なんだって!?」

「いけ!ライドラモン!!轟の雷!!!ブルーサンダー!!!!!」

 

「うわっ!!」

ライフ3⇨2

 

 

ライドラモンのツノが避雷針となり、落雷する雷が雅治のライフをさらにライフを破壊する。この効果により雅治の計算が崩される。

 

ライドラモンはこの効果のおかげで実質ほぼダブルシンボルだ。1足す1が2足す2になればそれは相手にとって大きく計算を狂わせることができる。

 

 

「よし!これで決まり!!ライドラモン!!トドメのブルーサンダァァァァァア!!!!!!」

 

「ま、まさか、こんな面白いバトルをする子がいるなんて、………やっぱり君は素敵だよ、椎名」

ライフ2⇨0

 

 

ストームアタックの効果で回復状態となっているライドラモンはその場で再び巨大な雷を打ち出して雅治のライフに叩きつける。雅治は椎名の凄さに感心しながらその眩い雷の光にのまれていった。

 

ーこれで雅治のライフを全て破壊。勝者は椎名となる。

 

 

「よっし!私の勝ち!!」

 

 

ガッツポーズをあげる椎名。ライドラモンも消える瞬間まで吠え続けた。逆に盤面に残った雅治のディグモンとアンキロモンは悔しそうな形相をしながら消滅していった。

 

 

「ふふ、やっぱり凄いや君は、」

「いやいや!雅治も凄かったよ!またバトルしようね!!」

「はは!そうかなぁ、ありがとう!」

 

 

2人はその場で握手を交わした。その後は互いのクラスのところへと一時戻る。

 

雅治と椎名は違うクラスなのでそれぞれ違う場所に戻るが、

 

 

「どうだったよ、愛しのあの子とのバトルは」

「あれ、司、見てたの?……授業またサボったなぁ?」

「低レベルな連中とバトルしても仕方ねぇ」

 

 

スタジアムの裏側で雅治に声をかけたのは雅治の親友の司。司と玄は同じクラスであるため、司も同じように別のクラスの者と対戦しているはずだったが、司はこの2人のバトルを観戦した方がまだ自分にとっては得になると考え、また授業をサボって、そのままこっそりと2人のバトルを観戦していたのだ。

 

 

「ちなみに、今日めざしが使った【ライドラモン】、あれ入試試験の時も使ってたぞ」

「あれ!?そうだったけ!?」

 

 

そう、椎名が今回フィニッシャーにしたライドラモン、あのスピリットは入試試験での晴太とのバトルでも使用されていた。

 

 

「まぁ、お前はその時どっかの誰かに目を奪われてて覚えてなかったのかもなぁ」

「そう、やっぱり椎名は素敵だ。直感的に感じ取る力とあの引きの強さは本物だよ」

 

 

からかうような言い草の司に対し、それに全く気づく素振りすら見せずに椎名のことを考える雅治。

 

雅治が椎名に惹かれたのは実技の入試試験の頃、晴太とのバトルに果敢に挑戦していく姿に思わず見惚れてしまった。なんで惹かれてしまったのかは当初はわからないままだったが、今回のバトルを機に、ようやく理解した。理由は2つ。

 

それは椎名と言う女生徒は兎に角ユーモラスに特化しているからだ。ユーモラスなどありふれたごく普通の人間である雅治にとっては最もかけ離れた存在。雅治はきっと自分にないものを欲していたのだろう。

 

ーそして、もう1つは自分の初恋だった相手にそっくりだった。と言うことだ。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【ディグモン】!!」

「ディグモンは黄色のアーマー体スピリット!!召喚時とアタック時に相手のスピリットのブロックを封じる上に、自分のアタックステップ中には特定のデジタルスピリットを効果破壊から守る効果も兼ね備えているよ!!」





最後までお読みいただきありがとうございました!
今回は別にいいかと思ってしまい、投稿してしまいましたが、基本は週替わりに投稿します。

※タイトルが12話とちょっと被ってたのに気づいて少し変更しました。


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第4話「燃え上がれ!蒼炎のフレイドラモン!」

 

 

 

ここは椎名達が通うジークフリード校の1年生担当の先生達が集まる職員室、現在ここでは今の1年生についての大事な会議をしていた。その中には当然晴太の姿も確認できる。

 

 

「さぁ、先生諸君、今日はいよいよ1年生の子達にとって初めて、それぞれの強さの優劣がハッキリと分かる日と言っても過言ではありませんが、今まで話していた通り、【今月の代表バトル】は【芽座椎名】と【赤羽司】で問題ありませんね?」

 

 

学年主任の先生が他の1年生担当の先生に大きな声で聞こえるように、そう言う。【代表バトル】とは、学年毎に月1回、その1ヶ月の間での実技授業のバトルにおいての成績上位者2名をバトルさせること、

 

当然強いものだけが選ばれることになるので、学年主任の言っている『優劣がハッキリと分かる日』と言うのはそう言うことだ。生徒達は日々この場に立つために精一杯バトルに明け暮れている。

 

この学校行事は元々、選ばれなかった悔しさを糧に、他の生徒達全員の士気や向上心を上げるためにある。こういった学校行事が日本の名門バトスピ学園の1つ、ジークフリード校が毎年プロバトラーを輩出できる秘訣の1つである。

 

 

「ちょっと待ってください、【芽座椎名】と【赤羽司】はいずれも実技での成績は認めますが、【芽座椎名】は以前、校舎をよじ登る等の問題を多々起こしてますし、【赤羽司】はよく授業をサボります。……【代表バトル】はまだ1回目ですし、今回は生徒達の見本となるような優等生を推すべきでは?」

 

 

今回の選出生徒に対し、異論を唱えるのは司と雅治のクラス担任の女教師、名前は【鳥山兎姫(とりやまとき)】、彼女も晴太同様の今年からの新人教師だ。腕も晴太に負けず劣らずで、昔馴染みでもある。この異論に対して、学年主任が逆に問う。

 

 

「じゃあ、鳥山先生、あなたは誰を推薦しますか?」

「私は【長峰雅治】と【緑坂真夏】を推薦します、彼らは共に文武両道です。きっと生徒達の士気を上げてくれることでしょう」

 

 

兎姫の口から出たのは雅治と真夏の名前。この2人は確かに椎名と司にも負けず劣らずの成績だった。代わりとしては無難なところであろう。

 

ーだが、これにも異論を唱える者がいた。

 

 

「いや、鳥山先生、最初だからこそ、問題児を上げるのも一つの手じゃないか?」

 

 

また手が上がり、発言する者が現れる。その真っ直ぐ伸びた手の人物は椎名と真夏の担任、空野晴太。

 

 

「あら、空野先生、それはどう言うことかしら?」

「……つまりは、問題を起こしてばかりの彼らに、【代表バトル】と言う栄誉あるバトルをさせることで、生徒達はあんな奴らでも出れるなら俺らでもいける。そう思うんじゃないかな?ってこと」

「「「「「………!!!」」」」」

「寧ろそれがこの行事の本来の本質でしょ」

 

 

晴太の謎の説得力で納得してしまう教師陣達、確かに下手な優等生を出させるよりも先ずは問題児を立たせる方が生徒達は躍起になってくれるのではないかと思えてしまう。

 

これには同期の兎姫も納得せざるを得なかった。そしてこれは決まったと思ったのか、学年主任が最後を締める。

 

 

「よし!それじゃあ、今月の【代表バトル】は【芽座椎名】と【赤羽司】の2名で行います!」

 

 

 

******

 

 

 

そして場所は変わり、椎名と真夏がいつものように教室までの渡り廊下を歩いていると、何やらざわついている場所が目立っていた。そこは学園の情報が提示される掲示板があるところである。

 

いつも以上に釘付けになる生徒達、椎名と真夏は何だろうと思い、自分達もそこへと向かう。

 

 

「ん?なに?」

 

 

椎名がその掲示板の目の前に来ると、何故か他の生徒達の目線が一斉に椎名に集まった。さっきまでは掲示板に釘付けになっていたにも関わらず。その目は尊敬を抱くような目を向ける者もいれば、悔しそうな目を向ける者など、様々だった。

 

不信に思った真夏は掲示板を見て理解した。

 

 

「……!!……なるほどなぁ、そう言うこっちゃ」

「え!?何がそう言うこと!?」

「掲示板見てみ?」

「……えーっと、第9期生、第1回代表バトル【芽座椎名】VS【赤羽司】!?……どう言うこと!?」

「あんたなぁ、この学園に来たならそんくらい理解しとかんかい!!【代表バトル】っちゅうのはなぁ、月1回に実技の授業トップだった生徒2名をバトルさせる行事のことや!」

 

 

理解できなかった椎名に真夏が理解させるような説明を入れる。わかりやすい解説に椎名も納得。

 

 

「……!!じゃあ!私は今日、司と再戦できるってことか!!」

「………ふふ、これは面白いことになりそうだね〜」

「わっ!!雅治!!びっくりした〜〜!」

 

 

喜ぶ椎名の横に突如現れたのは雅治。あのバトル以降、すっかり椎名と気が合い、直ぐに仲良くなっていた。

 

 

「僕は2人のバトルを楽しみにしてるよ」

「うん!ありがと!」

「ふっ!やっと決着だな、【めざし】」

「……司!!」

 

 

雅治の次には司が割って入って来た。この2人が揃った瞬間、その場の空気は鋭く張り詰め、周りの他の生徒達はお通夜にでもなったかのように急に黙り込んだ。

 

 

「へへ、やるからには楽しいバトルにしよう」

「前も言ったが、俺とお前との格の違いってやつを見せつけてやる」

 

 

まさに一触即発、司はそれだけ言い残すと通りすぎるようにその場を離れていった。

 

 

「燃えて来た!!絶対勝ってやる!」

 

 

椎名の燃えたぎる熱いバトスピ魂に火がつく。【代表バトル】は昼過ぎの授業からだ。

 

 

 

******

 

 

 

そして時間となり、多くの生徒達がこの第5スタジアムの観客席に集まった。普通なら眠たくなるこの時間だが、生徒達は眠ったりはしない。このバトルは現在のジークフリード校の1年生の頂点を決めるバトルと言っても過言ではないからだ。眠気など来るわけもない。

 

行われるのは第5スタジアム、第3スタジアムより大きなドーム型が特徴だ。椎名と司は今ここで向かい合っている。既にBパッドは展開完了。いつでもバトルが始められる。

 

 

「横いい?、空野先生、」

「おぉ、兎姫ちゃんか」

「……!名前で呼ぶのはやめろって言ったでしょう!!……//」

「いや、今2人だし、別にいいだろ。苗字呼びは正直かたっ苦しい、お前も2人の時くらいは名前でいいんだぞ?」

 

 

生徒達とは離れたところで観戦しようとしていた晴太の横に兎姫が現れる。不意に名前を呼ばれた兎姫は顔を桜色に染めながらもその横に座った。

 

 

「て言うか、甘いってなんだよ、俺はちゃんと生徒には平等だぞ」

「いや、芽座さんって、私達がよく知っているあの2人にそっくりじゃない」

「あぁ、…まぁね、……どっちかって言うと足して2で割った感じかな」

「2人の間から産まれた子どもって言われても信じれるわよ、私は」

 

 

兎姫の言うあの2人とは誰かは定かではないが、その2人とは兎姫と晴太にとってはとても大事な存在であるようだ。

 

 

「確かに似てるとは思ってるけど、その程度で俺は贔屓なんてしないよ、……俺はこの間、あの2人の真剣勝負に水を差してしまったからな、今度は誰にも邪魔されずに決着をつけて欲しいのさ」

「『今度は』って、この学園にいればそんな決着なんていつでもできるでしょうに」

 

 

晴太はこの間の椎名と司のバトルに職の関係上、仕方ないとは言え、2人の真剣勝負に横入れしてしまった。そのことに対して、少なからず罪悪感を覚えていたからこそ、無理にでも2人にバトルして欲しかったのだ。

 

 

「ねぇ、緑坂さん、どっちが勝つと思う?」

「う〜ん、椎名を応援したいけど、あの【朱雀】が負けるなんて想像つかへんもんな〜〜」

「はは、確かにね、でも、僕は椎名に1票を入れるかな」

「え!?」

 

 

雅治と真夏も他の生徒達に紛れて2人のバトルを観戦しようとしていた。雅治は意外にも【朱雀】である司ではなく、椎名が勝つと予想を立てる。いや、正確には勝って欲しいと願っているのか、

 

真夏は少しその言葉を不審に思う。確かに椎名の対戦相手はあの【朱雀】なのだ。大多数の人が予想を立てるとするならば、必ず司に1票を投じることであろう。

 

ーそしていよいよ1年生代表の【芽座椎名】と【朱雀】こと、【赤羽司】の再戦が始まる。

 

 

「いくよ!」

「おう、」

「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

多くの生徒や、教師に見守られながら椎名と司のバトルが幕を開ける。

 

ー先行は司。

 

 

[ターン01]司

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、先ずはホークモンを召喚」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

今回司が初めて召喚したのは、デッキの中軸とも言える赤き羽を持つ鳥型の成長期デジタルスピリット、ホークモン。

 

 

「おっ!ホークモン!…今日は最初っから召喚か!」

 

「まぁな、…召喚時効果」

オープンカード

【ハーピーガール】×

【ライフドリーム】×

【ホルスモン】○

 

 

成長期スピリットではお馴染みの進化系をデッキの上から回収する効果、司はこの効果で巻かれたホルスモンのカードを手札に加えて、残りを破棄した。

 

コア不足のため、進化することはできないが、アーマー体のホルスモンが加えられたことで椎名に若干のプレッシャーがのしかかっていた。

 

 

「ターンエンドだ」

手札4⇨5

 

ホークモンLV1(1)BP3000

 

バースト無

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!私も最初っから飛ばしていくよ!…ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名も自分のデッキの中軸となる成長期デジタルスピリット青き小竜型のスピリット、ブイモンを召喚する。

 

 

「召喚時効果!」

オープンカード

【ライドラモン】○

【猪人ボアボア】×

 

 

効果は成功、アーマー体のスピリットカード、ライドラモンが椎名の手札に加わった。そして椎名は何も考えずにそのカードを引き抜く。

 

 

「ライドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コスト支払って、青き稲妻、ライドラモンを召喚!!」

手札4⇨5

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

ライドラモンLV1(1)BP5000

 

 

ブイモンの頭上に独特な形をした黒い卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、進化。黒き体に青き稲妻を纏い、ライドラモンへと進化を果たした。

 

 

「早速来たか、」

 

「召喚時効果!トラッシュに2コアを追加!!」

トラッシュ4⇨6

 

 

ライドラモンは登場するなり大きな雄叫びをあげると、椎名のBパッドに雷が落雷して、トラッシュに2コアを追加した。

 

 

「なるほどね、なるべく序盤でライドラモンを出すことによって、コアブースト効果のタイムラグのデメリットをある程度軽減したんだね」

「一気にコアの総数に差が開きよったな」

 

 

バトルの考察をする雅治と真夏。2人だけではない。多くの生徒がまた違った形で2人のバトルを研究していることだろう。

 

 

「アタックステップ!いけ!ライドラモン!」

 

「そいつはライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

ライドラモンの瞬発的な体当たりが直撃、司のライフを1つ破壊した。この前の雅治とのバトルの時とは違い、ライドラモンはまだLV1、追加でライフを破壊する効果はまだ持っていなかった。

 

 

「ターンエンド」

ライドラモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

やることを全て終えた椎名がターンを終える。まだ序盤の中の序盤だが、ライドラモンの登場で既にバトルは熱い展開となっていた。

 

 

[ターン03]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、イーズナを2体召喚」

手札6⇨4

リザーブ5⇨3

 

 

コスト1で、赤のスピリット且つ黄のスピリットでもあるハイブリットスピリットのイーズナが2体、司のフィールドに召喚される。その2体は囀るように小さく鳴く。

 

 

「さらに、ネクサスカード!朱に染まる薔薇園を配置!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨1

トラッシュ0⇨2

 

「……!!またあのネクサスか!」

 

 

さらに司が配置したネクサスはこの間も使用した朱に染まる薔薇園。

 

フィールド全体が美しき赤き薔薇に囲まれた。だが椎名は知っている。それらにはどれも鋭利な棘があることを。

 

 

「さらに、イーズナ1体から不足コストを確保してハーピーガールを召喚!」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

イーズナ(1⇨0)消滅

トラッシュ2⇨3

 

 

イーズナ1体はコアの損失により消滅してしまうが、新たに現れたのは可愛らしい少女の顔に加えて、強靭な鳥のような翼と足を持つスピリット、ハーピーガール。その効果の凶悪さは既に椎名の頭にもインプットされている。

 

 

「やっぱり来るか〜〜」

「アタックステップ!やれ!ハーピーガール!」

 

 

ハーピーガールがその腕の代わりに生えている翼で飛翔する。ブロッカーが0で、コアも十分には使えない椎名は、このアタックは、ほぼ無条件でライフの減少を選ばなければならなかった。

 

 

「ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

強烈な翼撃が椎名のライフを1つ破壊した。たが、ハーピーガールの恐ろしいことはこれからであって、

 

 

「アタックが通ったことにより、ハーピーガールの【聖命】でライフを1つ回復する。さらに、俺のアタックステップ中にライフが回復したことにより、朱に染まる薔薇園、LV1、2の効果でデッキから1枚ドローする」

ライフ4⇨5

手札2⇨3

 

 

司はライフを回復しつつ、カードをドローした。

 

 

「相変わらずえぐいなぁ」

 

「お前のフレイドラモン程じゃねぇよ、俺はこれでターンエンドだ」

ホークモンLV1(1)BP3000(回復)

イーズナLV1(1)BP1000(回復)

ハーピーガールLV1(1)BP3000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

意外にもこれ以上のアタックは仕掛けず、2体のブロッカーを残し、このままターンを終える司。次は椎名の反撃だ。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨8

トラッシュ6⇨0

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ガンナー・ハスキーをLV1で、風盾の守護者トビマルをLV2で召喚!」

手札6⇨4

リザーブ8⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名のフィールドに現れたのは、犬型だが、拳銃を所持するために背中に腕を生やしたスピリット、ガンナー・ハスキーと、大きな盾を持つ鳥型のスピリット、トビマルが現れた。

 

 

「ライドラモンをLV2にアップ、さらにバーストを伏せて、アタックステップだ!」

手札4⇨3

 

 

椎名の場にバーストが伏せられると同時にライドラモンのLVが上昇した。これでLV2・3のライフを追撃する効果が新たに加えられた。

 

 

「……あれ?ブイモンは出さないんやな」

「下手に出して破壊されたら巻き返しがしづらくなるからね」

 

 

司は破壊効果を多く有する赤属性のカードを得意としている。中軸となるブイモンを下手に展開して、破壊されたら、逆に不利となってしまう。

 

どちらにしてもいつもの椎名と比べたらやや大人しいプレイングと言える。

 

 

「いけ!ライドラモン!!」

 

 

椎名の命令で駆け出すライドラモン。目指すは司のライフ。ブロッカーが2体いる司の選択は、

 

 

「それもライフで受けてやろう」

ライフ5⇨4

 

 

ライフの減少を選択。ライドラモンの勢い余る体当たりが司のライフを破壊した。そしてライドラモンにはこの瞬間にも発揮できる効果がある。

 

 

「ライドラモンが相手のライフを減らした時!もう1つ相手のライフを破壊する!」

「……!!」

「轟の雷!ブルーサンダー!!!」

 

「ぐっ!!!」

ライフ4⇨3

 

 

立ち止まったライドラモンがそのツノを避雷針とし、雷を溜め込む。そしてそのまま司のライフにそれを叩きつけた。司はまたライフをひとつ失った。

 

 

「ターンエンド!」

ライドラモンLV2(3)BP7000(疲労)

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(回復)

風盾の守護者トビマルLV2(3)BP3000(回復)

 

バースト有

 

 

椎名はブロッカーを2体残して、そのターンを終える。

 

 

[ターン05]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

ハーピーガール(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、俺はホルスモンの【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!」

リザーブ6⇨5

トラッシュ0⇨1

 

「……!!来るか!」

 

「羽ばたく愛情!ホルスモンを召喚!!」

リザーブ5⇨3

ホルスモンLV2(3)BP6000

 

 

ホークモンに白銀の色をした謎の卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして、風を育む赤き獣のアーマー体、ホルスモンへと進化を果たす。

 

 

「もう一度ホークモンを召喚!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨1

トラッシュ1⇨2

 

 

司は瞬時に【アーマー進化】の効果で手札に戻ってきたホークモンを再び召喚した。ホークモンは今一度その召喚時効果を使用する。

 

 

「ホークモンの召喚時効果!」

オープンカード

【イーズナ】×

【シャイニングバースト】×

【シュリモン】◯

 

 

召喚時は成功、アーマー体のスピリット、シュリモンが手札に加わった。残ったカードは先と同様トラッシュへと破棄された。

 

 

「俺はアーマー体のシュリモンを手札に加える」

手札3⇨4

 

「………!?…またアーマー体?でもバーストはもらった!召喚時発揮後のバースト!」

 

 

ホークモンの召喚時の効果に反応して、椎名の伏せられたバーストカードが勢いよくオープンされる。

 

 

「双翼乱舞!カードを2枚ドロー!」

手札3⇨5

 

「ほぉ、……双翼乱舞か、」

 

 

シュリモンのカードのことを椎名は知らなかったが、アーマー体だと分かればある程度は対処できる。アーマー体という情報だけで【アーマー進化】の効果を持っていることがわかるからだ。椎名はバーストの双翼乱舞でカードを増やし、態勢を立て直す。

 

だが、司はその加えたアーマー体を直ぐに召喚はせず、そのままアタックステップに入る。

 

 

「ハーピーガールのLVを2に上げ、アタックステップ!」

ハーピーガール(1⇨2)LV1⇨2

 

 

知らないうちに司のフィールドのスピリット総数は4、椎名より1枚上手だった。

 

 

「ハーピーガールでアタック!アタック時効果!LV2・3のスピリットにブロックされない!……さらに【連鎖:赤】の効果でお前のBP3000以下のスピリットを破壊!消えろ!ガンナー・ハスキー!!」

 

 

ハーピーガールの強力な翼撃がガンナー・ハスキーに命中。破壊されるかと思いきや、

 

 

「……風盾の守護者がいる限り、ガンナー・ハスキーは消えない!」

 

 

その命中した翼撃は間一髪でトビマルの大きな盾が守っていた。ハーピーガールは破壊に失敗し、一旦空中に離脱し、距離を取る。

 

風盾の守護者トビマルはコスト3以下のスピリットが破壊される時、それらを疲労状態で残す効果がある。

 

 

「ふん、そんなのお見通しだ、これでお前をブロックできるスピリットは消えた……今度こそやれ!ハーピーガール!」

 

 

今度は椎名のライフをめがけて、ハーピーガールは急降下して、椎名のライフを狙いに行く。椎名のフィールドはハーピーガールの効果でブロック不可状態のトビマルのみ、

 

 

「ライフで受ける!」

ライフ4⇨3

 

 

そのままその翼撃が炸裂。また椎名のライフをひとつ破壊した。そしてあのコンボも再び発動する。

 

 

「ハーピーガールの【聖命】で俺のライフを1つ回復して、朱に染まる薔薇園のLV1・2の効果でデッキからカードを1枚ドローする」

ライフ3⇨4

手札4⇨5

 

 

再び司のライフが回復し、カードも増える。椎名とのアドバンテージ差をどんどん広げて行く。

 

 

「次だ!ホルスモン!!……アタック!ホルスモンは自身の効果でBPが3000上がっているぞ!」

ホルスモンBP6000⇨9000

 

 

ホルスモンは身体を竜巻のように回転させて突っ込んでくる。椎名のライフを破壊するためだ。

 

 

「それもライフだ!……ぐう!!」

ライフ3⇨2

 

 

そのままホルスモンは通過するように椎名のライフを破壊した。

 

 

「ターンエンド」

ホルスモンLV2(3)BP6000(疲労)

ホークモンLV1(1)BP3000(回復)

イーズナLV1(1)BP1000(回復)

ハーピーガールLV2(2)BP4000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

またブロッカーを2体残し、そのターンを終える司、毎ターンずつではあるが、少しずつ椎名と差をつけてきている。逆に椎名はこのターンで挽回しなければ勝機を見出すのは厳しくなることだろう。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨5

トラッシュ2⇨0

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、ガンナー・ハスキーをLV2に、ライドラモンをLV3にアップ!」

リザーブ5⇨2

ガンナー・ハスキー(1⇨3)LV1⇨2

ライドラモン(3⇨4)LV2⇨3

 

 

2体のLVが上がる。ライドラモン達は力が上がったことをアピールするかのように雄叫びを上げた。

 

 

「さらに、バーストをセット!」

手札5⇨4

 

 

椎名のフィールドに裏向きで再びバーストが伏せられた。司は全力で警戒する。だが、さっきホークモンの効果によって手札に加えたスピリットを出すことができればそのバーストへの警戒心を半減にできる。

 

司がそんなことを考えていることはつゆ知らず、椎名はアタックステップへと移行しようとしていた。

 

 

「アタックステップ!トビマルでアタック!その効果で相手は相手のスピリット1体を疲労!」

 

「ホークモンを疲労させる」

ホークモン(回復⇨疲労)

 

 

風盾の守護者トビマルが飛び立つ。トビマルはアタック時かブロック時に相手自身が1対選び、疲労させる効果がある。

 

巻き起こる向かい風がホークモンを疲労させる。だが、ホークモンはまたアーマー体に進化すればこの効果を無効にできると言っても過言ではないのだが、司はまだ少し様子を見る。

 

 

「イーズナでブロック!」

 

 

指示に従い、イーズナが果敢にトビマルに挑むが、トビマルの大きな盾で簡単に薙ぎ倒されてしまった。イーズナは転げ落ち、破裂するように爆発した。

 

 

「よし!次!ライドラモンでアタック!」

 

 

三たびライドラモンが駆け出す。だが、あの【朱雀】と呼ばれている男にこんな単調な同じ攻撃がそう何度も通用するわけはなくて、

 

ー司はこの時を待ち望んでいたかのように手札のカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!1コスト支払い、シュリモンを召喚!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ2⇨3

 

 

ホークモンの頭上から、これまた独特な卵が落下し、衝突、混ざり合って、ホークモンは緑のアーマー体、鳥の姿とは打って変わって忍者のような姿をしたスピリット、シュリモンが召喚された。

 

椎名はまさか赤と黄色のデッキを使っている司が緑のアーマー体を使ってくるなんて思ってもいなかった。自分も青と緑に赤のフレイドラモンを入れているのであまり驚くようなことではないが、

 

 

「すごい!今度はライドラモンと同じ緑のスピリットかぁ!」

 

「あぁ、お前への対策だ……召喚時効果!疲労状態のスピリット1体を手札に戻す!消えろ!ライドラモン!」

シュリモンLV1(1)BP4000

 

「………!!」

手札4⇨5

 

 

シュリモンは登場するなり、その手足の蔓を伸ばし、それに付随している巨大手裏剣を走ってくるライドラモンにぶち当てる。ライドラモンはそれには敵わずに吹き飛ばされ、デジタルの粒子となり、椎名の手札に戻った。

 

 

「……まじか、ライドラモンが……ターンエンド」

ガンナー・ハスキーLV2(3)BP4000(回復)

風盾の守護者トビマルLV2(3)BP3000(疲労)

 

バースト有

 

 

ライドラモンの損失で攻め手を完全に失った椎名はターンを終了せざるを得なくなり、そのままターンを司に渡す。

 

 

[ターン07]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

ホルスモン(疲労⇨回復)

ハーピーガール(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ここで!ブレイブカード!砲竜バルガンナー〈R〉を召喚!」

手札6⇨5

リザーブ4⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

「……!!……ブレイブカード!」

 

 

この局面で司が呼び出したのは赤のブレイブカード、砲竜バルガンナー〈R〉、2丁の砲撃を携えた赤いドラゴンだ。ブレイブとは、スピリットと合体することで真の力を発揮できるカード達のことだ。

 

 

「行くぞ、めざし!俺はホルスモンに砲竜バルガンナー〈R〉を合体!」

ホルスモン+砲竜バルガンナー〈R〉BP6000⇨10000

 

 

ホルスモンの背中に砲台のみと化したバルガンナーが装着される。ホルスモンは合体スピリットとなり、パワーアップした。

 

 

「シュリモンをLV2へ!」

リザーブ2⇨0

シュリモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

さらに司は残ったコアを使い、シュリモンをパワーアップさせた。

 

 

「アタックステップ!ホルスモンの効果!「アーマー体」のスピリット全てにBP+3000!」

ホルスモン+砲竜バルガンナー〈R〉BP10000⇨13000

シュリモンBP9000⇨12000

 

 

ホルスモンの効果は自分のアーマー体のスピリット全域に対応する。当然、同じアーマー体のシュリモンもこの効果の影響を受けて、パワーアップした。

 

 

「ホルスモンで合体アタック!」

 

 

砲台を背中に乗せたホルスモンが飛び立つ。そしてその上に乗せた砲台の効果が同時に起動する。

 

 

「砲竜バルガンナー〈R〉の合体アタック時効果、カードを1枚ドローし、BP6000以下の相手のスピリットを破壊、……くたばれ!風盾の守護者トビマル!」

手札5⇨6

 

 

ホルスモンの砲台がトビマルに向けられ射出、咄嗟にトビマルは盾を前に出すが、その弾丸は瞬く間にトビマルの盾ごと貫き、粉々に玉砕した。この時、トビマルは自身の効果で場に残ることが可能であったのだが、何故かトビマルはその場から姿を消していた。椎名はそれを見て驚く。

 

 

「……破壊された!?なんで」

「砲竜バルガンナー〈R〉の効果で破壊されたスピリットの効果は発揮されない。こいつの前では守護者特有の効果は通用しねぇぞ」

 

 

砲竜バルガンナー〈R〉の合体アタック時効果は1枚ドローし、BP6000以下の相手のスピリット1体を破壊する効果。この時、その破壊したスピリットの効果は適応されない。つまりトビマルの効果は無効となり、フィールドに残ることはできなかったのだ。

 

ーだが、手札が効果によって増えた。椎名にとって今はそこが最重要であって、

 

 

「……だったらこれならどうだ!!!……相手の効果によって手札が増えたことにより、バースト発動!グリードサンダー!!………あれ!?」

 

 

この前も司のデッキに刺さった青のバーストマジック、グリードサンダーの効果を発揮させようとした椎名だったが、なぜかバーストが開かない。その答えはシュリモンにあった。

 

 

「シュリモンが俺のフィールドにいる時、お前は俺の「アーマー体」を持つスピリットのアタック中はバーストを発動できない」

「……なにぃ!?」

「お前がこの場面でグリードサンダーをセットするなんてお見通しなんだよ……さぉ!このアタックはどうする?」

 

 

これはシュリモンの影響で発揮を封じられていたのだ。シュリモンは「アーマー体」のスピリットがアタックしている時に相手のバーストを封じ込めることができる。

 

合体により、ダブルシンボルと化しているホルスモンのアタックがまだ終わっていない。残り2つしかない椎名のライフ、この攻撃は意地になっても守るしかない。

 

椎名は使いたくなかった必殺のカードを引き抜くことになる。

 

 

「……ガンナー・ハスキーでブロック!!……そしてフラッシュタイミング!マジック、ストームアタックを使用!ハーピーガールを疲労させて、ガンナー・ハスキーを回復!」

手札5⇨4

リザーブ9⇨6

トラッシュ0⇨3

ガンナー・ハスキー(疲労⇨回復)

 

 

ハーピーガールが向かい風に押されて疲労状態となり、逆に追い風のガンナー・ハスキーは回復状態となった。

 

 

「……!!…究極カードでしのぎに来るか、だが、そいつが回復しても意味はねぇ!いけ!ホルスモン!……砲撃の嵐!!ランパードストーム!!」

ハーピーガール(回復⇨疲労)

 

 

まるで嵐のような砲撃にガンナー・ハスキーが太刀打ちできるわけなく、あっさり吹き飛ばされて破壊されてしまった。

 

 

「くっ!……だけどガンナー・ハスキーのLV2の破壊時効果でボイドからコアを2つリザーブに!」

リザーブ9⇨11

 

 

砲竜バル・ガンナー〈R〉による破壊時無効効果はあくまで自身の効果のみ、その他のタイミングでは発揮が可能。椎名はガンナー・ハスキーの最後の恩恵で、おこぼれのようにコアを2つリザーブに送る。

 

ストームアタックの効果で、疲労させられたことにより、司の残ったスピリット対数では椎名のライフをギリギリ0にすることはできない。司はターンを終了することになる。

 

 

「……ターンエンド」

シュリモンLV2(3)9000(回復)

ハーピーガールLV2(2)BP4000(疲労)

ホルスモン+砲竜バルガンナー〈R〉LV2(3)10000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

ギリギリで踏み止められてしまった司だったが、その顔にはいつもの余裕そうな表情が伺える。確かに彼はライフ差、手札差、そして盤面差、明らかに優位に立っている。椎名が巻き返すには少々厳しい状況に仕上がっていると言えるだろう。

 

 

「ふっ!どうやら勝負あったようだな」

「へへっ!……なに言ってるの、私のライフはまだ尽きていないよ!」

「………強がりを」

「私は自分のデッキを最後まで信じ抜くだけだ!」

 

 

司はこの時点で自分の勝利を確信していた。司だけではない。他のほとんどの生徒達や、教師陣までもが、椎名の勝利などすでに確率の蚊帳から捨ててしまっていた。

 

 

「流石【朱雀】と呼ばれるだけはあるわね、赤羽君。……これはもう完全に終わったかしら、」

「あぁ、確かに【あいつの弟】なだけはある。……だけど兎姫ちゃん、俺ら教師が生徒の可能性を捨てるのはダメだろう。………見せてみろ椎名、お前のバトラーとしてのセンスを……!」

 

 

兎姫と晴太がそう言う。確かに兎姫の言う通り、はなから見ればこの状況は完全に積みに見える。だが、この程度で諦めるバトラーなどこの学園で育成するに値しない。そして晴太は入学試験の時から知っている。椎名には他の誰もが欲するであろう、バトラーとしての天賦の才能を持っているということを。

 

椎名も当然諦めていない。寧ろここからが本当のバトルだと思わせるような表情だ。

 

 

[ターン08]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ11⇨12

 

 

「ドローステップ、……ドロー!!………!!よし!」

手札4⇨5

 

 

ドローしたカードに思わず口角を上げる椎名。引いたカードを見て、一気に作戦を思いつく。それはこの状況を一変させるどころか、このバトルに決着をもたらす程の爆発力を秘めた作戦。だが、この作戦において必要な駒があと1つ足りない。ここで椎名は取っておいたブイモンを活用する。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ12⇨15

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ15⇨11

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名のフィールドにここまで抱え込んできたブイモンが再び召喚される。椎名はブイモンの召喚時を使用し、逆転のキーカードを狙う。

 

 

「召喚時効果発揮!デッキから2枚オープンして、対象のスピリットカードを手札に加える!」

オープンカード

【風盾の守護者トビマル】×

【フレイドラモン】○

 

 

効果は成功、アーマー体スピリットのフレイドラモンが椎名の手札に加わった。これこそが椎名が待ち望んだ逆転への最後の素材。

 

 

「よし!フレイドラモンを手札に加える!」

手札4⇨5

 

「フレイドラモンか、…今更そいつを出したところで戦況は変わりはせん」

 

 

司の言う通り、フレイドラモンの効果でで対処できる今の司の場のスピリットはハーピーガール程度。他のホルスモンもシュリモンもBP7000を上回っている。それでも椎名はこのフレイドラモンに賭けている。

 

 

「フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払って、アーマー進化!」

リザーブ11⇨8

トラッシュ3⇨4

 

 

ブイモンに赤き卵が落下していき、衝突、そして混ざり合う。燃え上がる竜人型のアーマー体、フレイドラモンが召喚された。

 

 

「燃え上がれ!!フレイドラモン!!」

フレイドラモンLV2(3)BP9000

 

「だからそれがどうした、たかがBP9000……」

 

「先ずは召喚時効果及びアタック時効果!ハーピーガールを破壊!……ナックルファイア!!」

手札5⇨6

 

「ぐっ!!」

 

 

フレイドラモンの燃え盛る炎の拳がハーピーガールを貫く。ハーピーガールは翼ごと燃え上がり、爆発した。椎名は破壊に成功したため、デッキからカードを1枚ドローした。

 

だが、この召喚時とアタック時効果が通用するのはここまで、単体ではシュリモンと互角、合体スピリットと化したホルスモンはフレイドラモンを僅かながら超えている。

 

飽くまで単体ではの話だが、

 

 

「いくよ!私がドローした奇跡の一枚!!青のブレイブ、潮より来たれ!双牙皇オルト・ロードを召喚!」

手札6⇨5

リザーブ8⇨4

トラッシュ4⇨8

 

 

椎名の背後に波が打ち寄せる。その中から飛び立ち、椎名の目の前に現れたのは、鎧を身に着け、2つの顔を持つ犬のような姿をした青のブレイブ、双牙皇オルト・ロード。

 

 

「なに!?お前もブレイブを!?」

 

「へへ、…いくよ、フレイドラモンに双牙皇オルト・ロードを合体!!」

フレイドラモン+双牙皇オルト・ロードLV2(3)BP9000⇨14000

 

 

フレイドラモンとオルト・ロードは互いに空中でぶつかり合い、混ざり合っていく。そして新たに現れたのは言わば青いフレイドラモン。オルト・ロードの装備が身体中に施されており、新たに生えた黒き巨翼を広げている。そして光り輝く眼光を放ちながら椎名の場に降り立った。

 

 

「す、すご!こんな大技を残しとったんかい、椎名は」

「ふふ、やっぱり面白いね、椎名は」

 

 

椎名の進化した新たなフレイドラモンに会場が大いに盛り上がる。

 

 

「だが、こんなのただのこけ脅しだ!!……このターンを凌げば問題ない」

「じゃあ、凌いでみなよ、アタックステップ!!フレイドラモンはLV2の時、相手のスピリットに指定してアタックができる!!……ホルスモンに指定アタック!!」

 

 

椎名の指示で飛び出す合体スピリットと化したフレイドラモン。その黒き翼を翻し、宙に舞う。さらに椎名は畳み掛けるようにフラッシュタイミングでマジックカードを使用する。

 

 

「フラッシュタイミング!!!マジック、ワイルドライドを使用する!!フレイドラモンのBPをさらに3000上げて、このターンの間、BPを比べて相手のスピリットを破壊したらフレイドラモンは回復する!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ8⇨11

フレイドラモン+双牙皇オルト・ロードBP14000⇨17000

 

「なに!?」

「いけ!フレイドラモン!蒼炎の拳!!ブレイズナックル!!」

 

 

空中から放たれる蒼き炎の鉄拳がホルスモンを襲う。その炎には耐えることができず、ホルスモンは破壊されてしまった。

 

 

「くっ!砲竜バルガンナー〈R〉は残さねぇ」

 

 

バルガンナーはホルスモン共に消滅。ブレイブのルール効果により、残すこともできたが、回復するフレイドラモンのアタック時効果でどちらにせよ破壊され、挙げ句の果てにはドローまでされるのを防ぐためだろう。

 

 

「ワイルドライドの効果でフレイドラモンは回復!」

フレイドラモン+双牙皇オルト・ロード(疲労⇨回復)

 

 

緑の光を浴びて、フレイドラモンは回復状態になる。上空に舞うフレイドラモンが次に狙いを定めるのは忍者のような姿をしたシュリモン。

 

 

「次はシュリモンに指定アタック!!…………いけ!フレイドラモン!!……渾身の蒼炎!!バーニングインフォース!!!!」

「ぐぅ!!」

 

 

フレイドラモンは燃え滾る蒼き炎をその身に纏いシュリモンのいる地上まで急降下。シュリモン共々大爆発を起こす。だが、フレイドラモンは爆煙が晴れると司の目の前で眼光を放ちながら再び姿を見せる。破壊されたのはシュリモンだけだった。

 

 

「ワイルドライドの効果で回復」

フレイドラモン+双牙皇オルト・ロード(疲労⇨回復)

 

 

ワイルドライドの影響で再び回復状態になるフレイドラモン。目の前のスピリットがいなくなったら、次は司のライフを根こそぎ奪うのみ。

 

 

「だが!いくら合体しているとはいえ、そいつは所詮ダブルシンボル!残り4つの俺のライフを減らすことは………」

「できるんだなぁ、これが……!」

「なに!?」

「フレイドラモンでアタック!!」

 

 

司の目の前にいるフレイドラモンがその拳に蒼き炎を纏わせてライフに叩きつける。そしてここでフレイドラモンと合体してきるブレイブ、双牙皇オルト・ロードの合体時効果が発動する。

 

 

「双牙皇オルト・ロードの合体アタック時効果、私の手札を3枚破棄することで、このスピリットを回復させる!」

「……な、なんだと!?」

 

「カードを3枚破棄!再び起き上がれ!!フレイドラモン!!!」

手札4⇨1

破棄カード

【ブイモン】

【ライドラモン】

【スティングモン】

 

 

椎名は手札のある適当なカードを3枚捨てる。フレイドラモンは蒼き光を浴びて三たび回復した。ダブルシンボルの2回のアタックで減らせる最大数は4だ。

 

 

「フレイドラモンで2回攻撃!!これで終わりだぁぁぁぁあ!!」

 

「こ、この俺が……負けるだと!?…………う、うぉぉぉお!!」

ライフ4⇨2⇨0

 

 

フレイドラモンの蒼き炎を纏う両拳が司の残りの4つのライフを一気に全て粉々に粉砕した。

 

これにより司のライフはゼロ、勝者は椎名だ。椎名はガッツポーズを掲げる。フレイドラモンがゆっくりと消えていく。会場は椎名を讃え、大いに盛り上がった。

 

まさかの大金星だ。あの【朱雀】が、同期の女の子に負けるなど一体誰が予想できただろうか。

 

 

「すごい……!…椎名の奴ほんまに勝ちよった!」

 

 

予想の斜め上をいく結果に、真夏も含めた会場の誰もが驚く。だが、その盛り上がる中で、雅治だけはどこかへ消えていた。

 

 

「よっしゃ!!………いいバトルだったよ!司!またやろう!!………て、あれ!?」

 

 

椎名がそう言って司の方を見ても、もう既にそこには誰もいなかった。

******

 

そしてここはスタジアム裏。そこは暗くて表からは到底見えることはない場所。壁を拳で叩きつけて負けた悔しさを前面に露わにする司の姿がそこにあった。

 

 

「くそっ!!くそっ!!……負けた、二度と負けないと誓ったのに、ちくしょうっ!!」

 

 

一度、たった一度負けただけでそこまで悔しいのか、司はいつもの余裕を完全に失い、手の痛みなども忘れて何度も何回も拳を壁に向かって叩きつける。その手には、ほのかに血が滲んでいた。

 

 

「悔しいのかい?司」

「……!!…雅治、なにしに来やがった」

 

 

その向こう側には負けてしまった司の様子を見に来た雅治の姿があった。

 

 

「いい加減に思い出そうよ、いくらあんなことがあったからと言って、1回も負けてはならないなんて、どうかしてる。椎名を見たかい?あの子は君とのバトルをずっと楽しそうにしていた。………でも司、君は……」

「黙れよ、雅治。一々それを言うな」

「茜さんが言いたかったことは絶対にそう言うことじゃないはずだよ」

「………!!」

 

 

なかなかつかみ所のない会話。この2人の間に何かあったことはまだここでは語ることはできない。

 

司は雅治の言葉に思わず黙り込んでしまう。

 

 

「……少し、考えさせてくれ」

 

 

それだけ言い残して司は雅治の後ろを通り過ぎて行った。司と雅治の過去に何があったかはわからないが、それはきっと2人にとって重要なことなのであろう。

 

雅治が椎名の勝利に1票を入れたのは、司に昔のような楽しいバトルを思い出して欲しかったから。司が椎名と関われば必ず椎名が司の心にある何かを変えてくれる。そう信じたのだ。

 

結果、司はその椎名の影響力で何かしらの心が揺さぶられ、崩壊した。この心が完全に回復するには、また少し時間がかかることだろう。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【シュリモン】!」

「シュリモンは緑のアーマー体!召喚時に相手の疲労状態になっているスピリットを手札に戻したり、アーマー体のアタック時には相手のバーストを使えなくしたりできるよ!」





最後までお読みいただきありがとうございました!


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第5話「絶対零度に抗え!ラストワンに賭けろ!」

 

 

 

 

 

椎名は今、自身が住まう住宅の屋上で昼寝している。日当たりの良いこの場所は、椎名にとって心安らぐ場所。この寒くも暑くもない気候の時期にはもってこいの場所だ。

 

椎名は暇な休日は、いつも日が暮れるまでそこで寝ていた。

 

 

「……司の奴、最近見かけないなぁ」

 

 

司は代表バトルで椎名に負けた日以来、一向に学校に姿を見せなくなっていた。椎名は何が問題で司が不登校気味になったのかを考えてみる。だが、椎名の頭ではそんなものいくら考えても出てくるわけがなかった。

 

雅治は何かを知っているようだったが、全然教えてくれなかった。

 

司の不登校のことなど考えても仕方ない。少し心配ではあるが、あの軽い性格なのだ。いずれひょっこりとまた現れることだろう。今椎名はそう考えてゆっくりと瞼を閉じ、夢の世界へと誘われていった。

 

 

******

 

 

「ん?……わぁああっ」

 

 

椎名はようやく夢の世界から解放される。仰向けになった姿勢を起こし、寝ぼけながら大きな欠伸をする。空には綺麗な星空が出ていることから既に日は沈んでいるようだ。昼過ぎから寝ていたことを考えると、かなりの時間熟睡していたことがわかる。

 

 

「お!ようやくお目覚めだね!」

「ん?……うわっ!あなた誰!?」

 

 

眠っていた椎名の側で座っていたのは、長い青髪を携えた、容姿端麗な女性。その見た目と声色から椎名より年上の大人であることが示唆される。

 

椎名は眠気を一瞬で覚醒させ、反射的に飛び上がる。

 

 

「ははっ!いい反応するねぇ!……私の事は、……そうだなぁ、王女さんとでも呼んでくれよ」

「王女さん?」

 

 

王女。女の子なら誰もが一回は憧れそうなネーミングではあるが、その女性の格好を見ると本当にどこかの王女様のような服装であるため、案外しっくりくる渾名でもあって、

 

本名を教えてはくれなさそうなので、椎名はこの名前で呼ぶことにする。

 

 

「あっ!私は芽座椎名って言います!よろしく!王女さん!」

「椎名だね…よろしく!」

「ねぇ、王女さん、王女さんはどこの人?この辺の人じゃないよね?」

 

 

呼び方が決まったとこで、早速椎名は王女さんが何しに来たのかを質問する。海のように綺麗な青い髪色で、目立つ格好をして、おまけに顔も美人なのだ。仮にこのマンションの住人だったら、椎名が見覚えがないわけがない。

 

 

「んーー、それもちょっと言えないかな、どこかの国の王女さんってだけ覚えておいて」

「ひ、秘密が多い……でもどこかの国の王女って、…そんなすごい人がここにいていいの?……なんかこう、屈強な執事的な人が追いかけて来るんじゃ……」

「ははっ!私のお目つきにはそんな物騒な連中はいないよ!……それに今はちょっとした息抜きの時間だからね〜大丈夫さ!」

 

 

なかなか自分のことを話そうとしない王女さん。このままの情報だと本当にただの痛い人だ。だが、椎名は島育ち故なのか、とても純粋。王女さんの普通では信じ難く、身もふたもない嘘のような話を全て彼女は真に受けていた。普通は王女さんがこんなところには来ない。

 

 

「な〜んだ息抜きかぁ、王女さんも大変だねぇ」

「それでさ、息抜きって言ったら何かわかるよね?」

 

 

住んでいる環境が違いそうな2人であったが、息抜きと言えばこれしかない、と満場一致で2人はあのカードゲームの名を阿吽の呼吸で声を重ね合わさる。

 

 

「「バトルスピリッツ!!」」

「そう!私、遥々遠くからあんたとバトルしに来たんだよ……!」

「……そ、そうだったのか、一国の王女さんがわざわざ遠くから私なんかとバトルしに………くぅ〜〜っ光栄だよ!」

 

 

そんなわけないだろう。普通はいろんな意味でおかしいと気づくはずだが、なにぶん椎名の頭の中は、良くも悪くもバトルスピリッツでいっぱいいっぱい。どこの誰かもわからないとは言え、バトルすると言われれば即OKしてしまう。しかもそれが一国の王女だと言うのだから、より感銘を受けたことだろう。

 

ー如何にも椎名らしいと言えば、らしいか。

 

マンションの屋上はある程度の幅がある。1つのバトルスペースは余裕で確保できる。

 

2人はそこでBパッドを展開してバトルの準備を行った。

 

 

「……なんか、懐かしいな」

「ん?なにが?」

「……いや、何も、……ただ、椎名は私の古い友達によく似てるって思ってね」

「王女さんの古い友達?」

「そう、正確にはあいつとあいつを足して2で割った感じかな?……まさかあいつらの子供?……いや、年齢的にも合わないか……名字も違うし」

 

 

王女さんは椎名が手札を持つ姿を見て、自分の古い友と重ねていた。

 

腰まで伸びた長い髪、首に下げたゴーグル。どれも椎名に当てはまる2つのキーワードが、王女さんの頭から離れなかった。

 

 

「ごめん、ちょっとばかりそれてしまったね、……じゃあ始めようか」

「うん!」

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

満天の星空の下、星々の光と街中のライトの明かりを頼りに、2人のバトルが幕を開ける。今回の先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の足元からブイモンが飛び出して来た。

 

 

「へぇ〜〜青を使うんだ」

 

「へへっ、まぁね。召喚時効果!」

オープンカード

【猪人ボアボア】×

【ライドラモン】○

 

 

ブイモンの召喚時効果は成功、椎名は緑のアーマー体、ライドラモンのカードを手札に加えた。

 

 

「よし!当たりだ!……緑のデジタルスピリット、ライドラモンを手札に加える!」

手札4⇨5

 

「青に加えて緑も、……ふーん、これは面白くなりそうだね」

 

「ターンエンド!……さぁ!次は王女さんの番だよ!」

ブイモンLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

アタックができない先行1ターン目として、この椎名の動きはかなりいいと言える。

 

椎名は次の王女さんのターンに期待の眼差しを向けていた。一国の国の王女様は一体どんなカードを使うのか、と。そう考えるだけでワクワクしてしまう。

 

 

[ターン02]王女さん

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「よし、メインステップ!私は2枚のネクサスカード!…No.2 ブルーフォレストを配置!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨3

 

 

王女さんが初めて呼び出したのはネクサスカード。それは、とてもとても青く澄んだ深い森。ずっと直視していたらどこか違う世界へ誘われそうだ。

 

 

「王女さんも……青…!」

 

「ふふ、あんたのとはちょっとばかしベクトルが違うけどね……さらに、バーストをセットしてターンエンドだ」

手札4⇨3

 

No.2ブルーフォレストLV1

 

バースト有

 

 

王女さんはさらに1枚のバーストカードを伏せてターンを終了した。それがどこで発揮されるか見ものである。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!緑のスピリット!ガンナー・ハスキーをLV2で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨1

 

 

椎名の場に現れたのは犬型だが、2丁の拳銃を手に持つために青い筋肉質な腕を背に生やしたスピリット、ガンナー・ハスキー。

 

特にやることのない椎名はこのままアタックステップを仕掛ける。

 

 

「よし!アタックステップ!やっちゃえ!ブイモン!!」

 

「……そいつはライフかな」

ライフ5⇨4

 

 

ブイモンの強力な頭突きが王女さんのライフを1つ破壊した。だが、これは王女さんのバーストの条件でもあった。

 

 

「…ライフの減少により、バースト発動!No.26キャピタルキャピタル!効果によりこれを配置する!」

「……!…バースト持ちのネクサスカード!?」

 

 

王女さんのバーストが勢いよくひっくり返る。すると、背後から空中都市が出現。それがキャピタルキャピタルだ。

 

 

「キャピタルキャピタルは相手のソウルコアが置かれていないスピリットがアタックするなら、リザーブから1コストを支払わないとアタックができなくなる効果がある」

「……ソウルコアが……あ」

 

 

椎名は気づいた。今自分のソウルコアはブイモンのカードに乗せていることに。リザーブはゼロ。これでは残ったガンナー・ハスキーはアタックができない。

 

 

「……ターンエンド」

ブイモンLV1(1s)BP2000(疲労)

ガンナー・ハスキーLV1(3)BP4000(回復)

 

バースト無

 

 

ここはしょうがない。椎名はそのターンを終了した。

 

 

[ターン04]王女さん

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、……ん〜〜そうだなぁ、バーストをセットして……海傭師団スナ・メリーをLV1で召喚!」

手札4⇨2

リザーブ7⇨6

 

 

王女さんは再びバーストを伏せる。そしてその後に呼び出したのは甲冑を着ている太ったイルカのようなスピリット、スナ・メリー。

 

 

「スナ・メリーは破壊時に相手のコスト3以下のスピリット1体を破壊するから気をつけなぁ」

「……コスト3以下か」

 

 

コスト3以下と言えば椎名のデッキでは大抵のスピリットが該当してしまう。そもそも椎名のデッキにはコストが6より上のスピリットが入っていない。意外にも地味な効果で攻撃を牽制されることとなった。

 

 

「さらにリザーブのソウルコアをキャピタルキャピタルに追加する。キャピタルキャピタルはソウルコアが置かれていたらその効力を倍増させる」

リザーブ6s⇨5

No.26キャピタルキャピタル(0⇨1s)

 

 

つまりは2つだ。椎名はソウルコアが置かれていないスピリットでアタックするなら、リザーブのコアを2つ払わなければアタックができなくなった。

 

 

「最後にブルーフォレストのLVも上げとこうかな」

リザーブ5⇨2

No.2ブルーフォレスト(0⇨3)LV1⇨2

 

 

LVの上昇に伴い、ブルーフォレストはより怪しげに光りだす。まるで椎名をどこかえと誘おうとしているようだ。

 

 

「ターンエンドだ」

海傭師団スナ・メリーLV1(1)BP1000(回復)

 

No.2ブルーフォレストLV2(3)

No.26キャピタルキャピタルLV1(1s)

 

バースト有

 

 

王女さんはこのターンも特に攻めることなくターンを終了した。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨2

トラッシュ1⇨0

ブイモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップは何もしない!そのままアタックステップだ!」

「……!!…何もしないか」

「ブイモンでアタック!」

 

 

ブイモンが元気よく走りだす。ブイモンにはソウルコアが置かれているため、キャピタルキャピタルの効果は受け付けない。だからと言ってもこのアタックは一見無謀にも見える。王女さんの場にスナ・メリーがいるからだ。

 

 

(スナ・メリーがいるのにも関わらずコスト3以下のスピリットでアタックして来たか、何かあるんだろうけど……まぁ、真っ向から受けてやるか)

 

 

王女さんは椎名のアタックの意図を考えた。だが、その答えは一向に見えない。それだったら真っ向から受けてやる。という考えに至った。

 

 

「スナ・メリーでブロック!!」

 

 

スナ・メリーがブイモンの目の前に立ちはだかる。BP差はブイモンの方が若干上。このままではスナ・メリーが破壊され、その効果を十二分に発揮することだろう。だが、椎名はここで1枚のカードを引き抜く。それはブイモンの効果で事前に加えていたあのカード。

 

 

「よし!ここだ!!…フラッシュタイミング!ライドラモンの【アーマー進化】を発揮!対象はブイモン!1コストを支払い、雷轟かすライドラモンをLV3で召喚!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ0⇨1

 

「……!?…【アーマー進化】!?」

 

 

王女さんが驚く目の前でブイモンはスナ・メリーを踏み台にして飛び上がると、上空に用意されていた黒い独特な形をした卵と衝突し、混ざり合い、進化を遂げる。青い電気を走らせる黒き獣、ライドラモンが召喚された。

 

 

「これが私の【アーマー進化】だ!……召喚時効果でボイドからコア2つをトラッシュに追加!!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ1⇨3

ガンナー・ハスキー(3⇨1)LV2⇨1

ライドラモンLV3(4s)BP10000

 

 

ライドラモンが上空から雷を椎名のBパッドに落とし、コアの恵みを与えた。

 

 

「……なるほど、1コスト支払うことでフラッシュなら、どのタイミングでも召喚ができる【進化】か、これは上手くやられたなぁ」

「そのままいけぇ!ライドラモン!」

 

「仕方ない、そこはライフで受けようか」

ライフ4⇨3

 

 

天高く飛び上がっていたライドラモンがそのまま落下するように王女さんのライフを1つ減らした。

 

そしてこの瞬間にライドラモンのLV2、3の効果も起動する。

 

 

「さらに!ライドラモンのLV2、3の効果!相手のライフを減らした時、追加でもう1つ破壊する!!」

「……!!…」

「轟の雷!ブルーサンダー!!」

 

「ぐぅ!」

ライフ3⇨2

 

 

地に足をつけたライドラモンが避雷針となり瞬時に落雷を引き起こす。それは瞬く間に王女さんのライフを砕いた。だが、ここで再び王女さんの伏せられたバーストがオープンする。

 

 

「バースト!2枚目のキャピタルキャピタル!!……これを効果でまたノーコストで配置!」

「……また!?」

 

 

王女さんの背後に2つ目のキャピタルキャピタルが姿を見せる。これで椎名はさらにアタックがし辛くなった。

 

 

「……仕方ない、私はこれでターンエン………」

「エンドの前に私のネクサスカード、ブルーフォレストのLV2の効果を発揮させてもらうよ!」

「……!?」

 

 

王女さんがそう宣言すると、椎名の6枚の手札が森に誘われるように宙を舞っていく。椎名はこの光景に目を見開き、驚く。

 

 

「……!?…なに?」

「ブルーフォレストはLVが2の時、相手のエンドステップ時に自分のフィールドにソウルコアがあるなら相手は手札を3枚以下になるように破棄しなければならない」

「……!!…手札破棄効果」

 

 

こうなっては仕方がない。椎名はブルーフォレストの効果に従い、自分の手札の6枚の内、3枚を破棄する。ゆっくりとこのバトルでは使わなさそうなカードを選別していく。

 

 

「これと、これと、……これだ」

破棄カード

【ワームモン】

【スティングモン】

【エクスブイモン】

 

 

椎名のトラッシュに3枚のがが送られた。椎名はようやくこのターンを終える。

 

一見して盤面を見てみると、椎名がずっと攻めて、王女さんを防戦一方にしているように見えなくもないが、王女さんが本当に狙っているのは椎名のライフではなくて……

 

 

[ターン06]王女さん

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

海傭師団スナ・メリー(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、……さて、そろそろ頃合いかな?」

「……!?」

 

 

今までとはまた違う、独特で異彩なオーラを放ち出す王女さんに、椎名はこれまで以上に警戒し出す。こんなに長い間、何もせずに引っ張ってきたのだ、ここで動かないわけがない。

 

 

「いくよ!青のデジタルスピリット!ゴマモンをLV3で召喚!」

手札3⇨2

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨1

 

 

王女さんの場に飛び出してきたのは、白い毛皮に覆われた怪獣型の可愛らしい成長期のスピリット、ゴマモン。どうやらあのスピリットが、王女さんの軸となるスピリットのようだ。

 

 

「青のデジタルスピリット……!!」

 

「そう、そしてこの子の召喚時効果で2枚のカードをオープンするよ」

オープンカード

【五行寺院】×

【イッカクモン】○

 

 

ゴマモンの召喚効果は、2枚オープンし、その中の成熟期か、完全体を加える効果。この中では成熟期スピリットのイッカクモンが該当する。王女さんはそれを手札に加えた。

 

 

「よしよし、いい子だ!!」

手札2⇨3

 

 

ゴマモンは成長期のスピリット、当然【進化】の効果を持っている。

 

 

「さぁ!アタックステップだ!ゴマモンの【進化:青】を発揮!ゴマモンを同じ色のイッカクモンへと進化!!」

 

 

ゴマモンが0と1のデータが返還される。そしてより巨大な怪獣型の成熟期デジタルスピリット、イッカクモンへと進化を遂げた。その大きさは椎名のライドラモンをはるかに凌ぐ。

 

 

「……すご」

「驚くのはまだ早いよ!…アタックステップを継続させて、イッカクモンでアタック!」

 

 

王女さんの指示でゆっくりと前に出るイッカクモン。そして青く体を発光させると、椎名のデッキの上から3枚のカードが明るみになる。

 

 

「……!?…なんだ?」

「イッカクモンはアタック時に相手のデッキを上から3枚破棄する………そしてその中にマジックカードか、アクセルの効果を持つスピリットカードがあるなら、相手のコスト5以下のスピリット1体を破壊できる……けど」

 

 

椎名のデッキの上から3枚のカードが破棄される。これはイッカクモンの効果だが、その中にはマジックカードは愚か、アクセルの効果を持つスピリットカードすらない。追加効果は使用されずに終わってしまった。

 

この動きで、椎名は王女さんの本当の狙いに気づいた。

 

 

「……王女さんの本当の狙いって、」

「ふふ、ようやく気づいたね、……そう、私のデッキコンセプトは、…【デッキアウト】」

 

 

デッキアウト、それは相手のデッキが先にゼロになったら勝利すると言う、バトルスピリッツにおいてはライフをゼロにする以外での唯一の勝利方法だが、普通は意図的に狙って行うものではない。それに特化させたデッキが好ましい。王女さんは本格的にそれに特化させたデッキだったのだ。

 

 

「でも、3枚じゃあ、まだまだ遠いよ!私のデッキはまだまだ残ってるよ!!!なくなる前に決着をつけてやる!」

 

 

現時点で、椎名のデッキはあと28枚、デッキアウトのデッキにとってはまだまだ遠い枚数に入るが、王女さんのデッキであればこの程度の枚数では安心できない。

 

王女さんはイッカクモンのもう1つの効果を発揮させる。それは成熟期スピリットなら誰もが所持している有名な効果だ。

 

 

「りょーかい!できるもんならやって見な!……イッカクモンのもう1つのアタック時効果!【超進化:青】!!イッカクモンを同じ色のデジタルスピリットへと進化させる!」

「……!!……また進化を!」

 

 

イッカクモンが再び0と1のデータに返還されていく。瞬く間に姿形を変え、硬い甲羅とハンマーを所持した青の完全体スピリット、ズドモンが現れた。

 

 

「……完全体……!!」

 

 

椎名は驚いた。それもそのはず、完全体スピリットはデジタルスピリットの中でもかなりのレアもの、椎名も未だに所持できていないし、見たこともあまりない。おまけにこのズドモンはXレアカード。まさしくレア中のレアなのだ。

 

 

「さぁ、こいつの威力を味わってもらおうかな?…………いけ!ズドモン!アタック!」

ブルーフォレスト(3⇨1)LV2⇨1

ズドモンLV3(6)BP14000

 

 

王女さんの指示とともにズドモンがハンマーを振り回し、上から地面へと叩きつける。その衝撃は電流となり、椎名のデッキへと迸っていく。

 

 

「ぐっ!!……」

デッキ28⇨13

 

 

椎名のデッキがその電流に当てられて15枚バッサリとトラッシュに送られた。そしてその中にはバースト効果を持つカード、【グリードサンダー】が確認できる。

 

 

「……?…なんだこの効果」

「これは【大粉砕】、ズドモンのLVの数値×5の数だけ、相手のデッキを破棄できる。今のズドモンのLVは3だから3×5で合計15枚破棄したのさ」

 

 

ズドモンの持つキーワード効果、【大粉砕】。はまってしまえばたった一度のアタックで15枚ものカードを破棄できる強力な効果だ。そしてこの効果はこれだけでは終わらないのが、厄介であって、

 

 

「そして、その中にバースト効果を持つカードがあれば、相手のスピリット1体を破壊できる。……さっきバースト効果を待つグリードサンダーが破棄されたよね?………じゃああんたのスピリット、ライドラモンを破壊だ!」

「……なに!?……ライドラモン!!」

 

 

ズドモンは再びハンマーを振り回し、叩きつけ、その衝撃の電流は今度はライドラモンを捉える。自身より強い電流だったのか、ライドラモンはその電流をまともに受けて大爆発を起こした。

 

 

「ブルーフォレストのLV1からの効果でブルーフォレスト自身にコアを2つ追加し、LVを2に戻すよ」

No.2ブルーフォレスト(1⇨3)LV1⇨2

 

 

ブルーフォレストは系統に獣頭を持つスピリットの効果で相手のスピリットを破壊した時、ボイドからコアを2つ自身のフィールドに追加させる効果がある。王女さんは無理矢理その効果でブルーフォレストを再びLVを2に戻した。

 

 

「ぐぅ!……でもまだデッキは残る」

「それはどうかな?」

「……!?」

 

 

王女さんはまだ何か隠し持っているのか、さらに1枚のカードを引き抜く。それは椎名をさらに驚かせるものであり、

 

 

「煌臨発揮!対象はズドモン!」

No.26キャピタルキャピタル(1s⇨0)

トラッシュ1⇨2s

 

「……!!…煌臨だって!?」

 

 

煌臨とは、指定されたタイミングでソウルコアをトラッシュに置くことで、対象になるスピリットを煌臨元として重ね、新たなるスピリットへと変化させる効果のこと。デジタルスピリットにもこの効果を有しているカードも存在する。それは完全体を超えた究極の者達。

 

王女さんが今から煌臨させるのはその中の1種。

 

 

「凍てつく極寒の地の王者よ!今こそこの場に顕現せよ!……究極進化!!ヴァイクモン!!」

手札3⇨2

ヴァイクモンLV3(6)BP15000

 

 

ズドモンが青き光に包まれていく。そして現れたのは白き勇猛な姿をした獣人型、完全体を超えた究極体のデジタルスピリット。ヴァイクモンが煌臨した。

 

 

「す、凄い!!!究極体だぁ!!!」

 

 

椎名が驚くのも無理はない。さっきの完全体はただの高価なだけのレアカードのレベルだが、この完全体を超えた究極体は最早伝説。この地球の市場に何枚出回っているかもわからない。その効果はどれもバトル状況を一気に傾かせる者ばかりだ。

 

そして、王女さんのヴァイクモンが効果を発揮させる。

 

 

「ヴァイクモンの煌臨時効果!!煌臨元の青の完全体を手札に戻すことで、相手のデッキを上から5枚破棄!」

手札2⇨3

 

「……またデッキを……!」

デッキ13⇨8

 

 

ヴァイクモンが吠える。その爆発的な音は椎名のデッキを吹き飛ばす。そして、その中にはマジックカードの【ワイルドライド】が確認される。

 

 

「マジックカードがあるね、……ならヴァイクモンの追加効果でこいつ自身を回復させる!」

ヴァイクモン(疲労⇨回復)

 

「……回復!?」

 

 

破棄されたワイルドライドのカードが光りだすと、それに共鳴するようにヴァイクモンが青く光りだす。

 

 

「煌臨スピリットは煌臨元としたスピリット全ての情報を引き継ぐ。よって、今のヴァイクモンはアタック状態だ!……言ってみたかったんだよね〜〜この台詞!」

 

 

ヴァイクモンはズドモンのアタック時に煌臨したので、ヴァイクモンは現在進行形でアタックしていることになる。

 

 

「ちなみに、こいつはアタックしたバトルの終了時にデッキをさらに7枚破棄する」

「……!!」

 

 

ヴァイクモンは現在回復状態であり、2回攻撃が可能。つまりこの後、王女さんは椎名のデッキを最大14枚破棄できることになる。

 

椎名のデッキは残り8枚。これがフルで通ってしまえばジ・エンドだ。

 

 

「くそ!それは止めなきゃ!……フラッシュタイミング!マジック!チェイスライド!効果でヴァイクモンを疲労させる!」

手札3⇨2

リザーブ4⇨2

トラッシュ3⇨5

 

「……!!…緑の疲労マジック……!」

ヴァイクモン(回復⇨疲労)

 

 

ヴァイクモンは緑の風で疲労状態となり、進んでいた足が止まる。

 

 

「だけどその程度じゃあ、最初のアタックは止まらないよ!」

 

「……そこはライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ヴァイクモンは両手に持つ鎖付きの巨大鉄球を振り回して椎名に投げつける。それは瞬時に椎名のライフを1つ砕いてみせた。

 

ようやく1つ減る椎名のライフ。だが、もうこのバトルにおいては自分のライフなどほとんど関係なかった。なにせ、いくらライフが残ろうともデッキがなくなってしまえば終わりなのだから。

 

 

「ヴァイクモンのアタック時効果!バトルの終了時に相手のデッキを7枚破棄する!」

 

「ぐっう!」

デッキ8⇨1

 

 

ヴァイクモンの鎖付きの巨大鉄球が再び椎名に投げられる。今度は椎名のデッキを襲い、その風圧だけで計7枚ものカードが破棄された。椎名のデッキはいよいよ後1枚。

 

 

「あぁ、1枚残ったか、……まぁ、いいや、次で終わりだね……ターンエンド」

ヴァイクモンLV3(6)BP15000

海傭師団スナ・メリーLV1(1)BP1000

 

No.2ブルーフォレストLV2(3)

No.26キャピタルキャピタルLV1

No.26キャピタルキャピタルLV1

 

バースト無

 

 

「へへっ!」

「……!?…どうしたの?急に笑って」

「いや何、凄い楽しいと思ってね、私の残りデッキは1枚、次のターンで決められなかったら終わる。そう考えただけでメッチャワクワクする!!……これを乗り越えたいって思うとドキドキする!」

 

 

何故だろうか、王女さんはこの時の椎名をまた誰かに重ねてしまう。やはり、椎名は自分の知っているあいつにそっくりだ。外見と中身はどちらかといえば別のあいつに近いが、バトルの腕や考え方はあいつそのものとも思えるほど同じものであった。そう思うと、王女さんはついつい頬の力を緩めてしまう。

 

 

「ふふ、そう。楽しい…ドキドキする……か、だけど、この盤面は流石に私の勝ちじゃない?……」

 

 

確かに椎名が逆転するには掻い潜らなければならないものが多すぎる。先ずは2枚のキャピタルキャピタル。破壊時にコスト3以下のスピリットを1体破壊するスナ・メリー。王女さんのライフは2。椎名の手札は次のドローを合わせても3枚。スピリットはガンナー・ハスキーのみ。ライフがほとんど減っていないため、コアも少ない。確かに1ターンで克服するにはいささか厳しいものがある。

 

 

「いや、最後に残ったのが本当にあのカードだったら私の勝ちだ!!」

「なに?」

 

 

椎名は自分の作ったデッキを当然把握している。残った1枚はあのカードだと、密かに自信を持っていた。

 

そして椎名のターン。デッキがゼロになってもその時点でスタートステップでなければ、そのターンは行動できる。だが、次はない。正真正銘のラストターンだ。

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

 

 

「ドローステップ!!……よし!やっぱりこいつだった!」

手札2⇨3

デッキ1⇨0

 

(なんだ、何を引いた?)

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨9

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!!この瞬間、ガンナー・ハスキーの効果発揮!青のシンボルを1つ追加!」

 

 

ガンナー・ハスキーの頭上に青のシンボルが1つ出現する。これで椎名はある程度の軽減を確保できるようになる。

 

 

「いくよ!王女さん!先ずはブイモンと、風盾の守護者トビマルを召喚!」

手札3⇨1

リザーブ9⇨4

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の場に呼び出されたのは【アーマー進化】の効果で手札に戻っていたブイモンと、巨大な盾を所持した緑の鳥型のスピリット、トビマル。

 

そして椎名が予測していたカードが召喚される。

 

 

「そして!最後のラスト1枚で引き当てた、奇跡のブレイブカード!鎧殻竜グラウン・ギラスを召喚!」

手札1⇨0

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨5

 

 

地中より、赤属性のブレイブ、鎧殻竜グラウン・ギラスが飛び出してきた。それは逞しい4足歩行で、表皮には岩のようにゴツゴツとした外骨格を持っている。

 

 

「ここに来て赤のブレイブ!?」

「そう、……そしてこいつの召喚時効果で相手のネクサス1つを破壊する」

「……!?」

「いけぇ!グラウン・ギラス!キャピタルキャピタルを1つ破壊だ!」

 

 

グラウン・ギラスが地面を踏みしめて、盤面全体に振動を起こすと、宙に浮いているキャピタルキャピタルは何故か地に沈められていった。

 

 

「へぇ、やるじゃない、でもその程度じゃあ、」

 

「いや行ける!グラウン・ギラスをトビマルに合体!そしてトビマルを2に上げる!」

リザーブ1⇨0

風盾の守護者トビマル+鎧殻竜グラウン・ギラスLV1⇨2(1⇨3s)BP3000⇨6000

 

 

トビマルとグラウン・ギラスが合体……と言うよりかは、トビマルがグラウン・ギラスの背中に止まり木のように止まっただけである。椎名はトビマルがキャピタルキャピタルの効果に引っかからないようにソウルコアを置いた。

 

これで椎名の逆転への布石が全て整った。

 

 

「アタックステップ!トビマルでアタック!この瞬間!グラウン・ギラスの合体アタック時効果でネクサスをさらに破壊!2枚目のキャピタルキャピタルを撃ち落とせ!」

「またネクサスを!?」

 

 

グラウン・ギラスは同じ要領で再びキャピタルキャピタルを地に沈めた。これで椎名のスピリット達にアタックの制限が課されることはない。

 

 

「だけどスナ・メリーを破壊させてしまえば、頭数は足りなくなる!」

 

 

そうだ。まだ王女さんの場にはスナ・メリーが存在する。このアタックに対してスナ・メリーを差し出されて破壊時を発揮させてしまえば、ブイモンか、ガンナー・ハスキーが破壊されて、椎名の負け。だが、そんなこと椎名もお見通しであって、

 

 

「トビマルのアタックか、ブロック時の効果。相手は相手のスピリット1体を疲労させる!」

「なに!?…今の私のスピリットは、スナ・メリー1体……」

「そうだ!スナ・メリーには疲労しててもらう!」

 

 

グラウン・ギラスの背中に止まっているトビマルが起こす風に、スナ・メリーは耐えられず、その場で腹を空に向け、横たわってしまう。

 

これで王女さんのブロッカーはゼロだ。

 

 

「さぁ!アタックは継続中!」

 

「くっ!仕方ない!ライフで受ける!」

ライフ2⇨1

 

 

猛ダッシュするグラウン・ギラスの体当たりが、王女さんのライフにクリーンヒットして、それを1つ破壊した。

 

 

「これで最後だ!いけぇ!ブイモン!」

 

 

ブイモンは待ってましたと言わんばかりに走り出す。もうすでにキャピタルキャピタルの効力が失われているため、リザーブからコアを払う必要もない。

 

 

「……ふふ、参ったねぇ、本気で勝つ気でいたんだけどなぁ」

ライフ1⇨0

 

 

王女さんは受け入れるように笑ってみせる。ブイモンの強烈な頭突きがその最後のライフを破壊した。王女さんのライフがゼロになったことでこのバトルの勝者は椎名に終わる。

 

王女さんの場に残ったヴァイクモンやブルーフォレストは役目を終えたかのように、ゆっくりと消滅していく。椎名のスピリット達も勝利したことを喜びながらも消滅していった。

 

 

「王女さん!私すっごい楽しかった!またバトルしよう!」

「あぁ、私もだよ、久しぶりにドキドキしたよ、またやろうな!」

 

 

互いに死力を尽くしたバトルが楽しくないはずがなく、どちらもその健闘を称え合う。

 

 

「て言うか、私、そろそろ元の場所に帰らないと……」

「えぇ!もっとバトルしたかったのに〜」

 

 

やはりもっと王女さんとバトルがしたかったのか、その言葉に対し、椎名は若干のショックを受けた。だが、直ぐに王女さんは忙しいから、と言う理由で納得してしまう。

 

 

「そうそう、最後にこれを渡しとくね!」

「ん?………え!?もらっていいの!?」

 

 

王女さんから渡されたカード。国の王女からもらったなど。椎名にとってはこれ以上にない自慢になることだろう。自慢話しを信じてもらえるかは怪しいところだが、

 

 

「じゃあ、今日はありがとう……これからも頑張ってね」

「うん!……頑……張る、………よ?」

 

 

何故か急に椎名の目の前がぐねりとひん曲がり、その後、真っ暗になる。そんなことに気付く前に椎名は倒れてしまった。

 

 

 

******

 

 

 

「う、……うーーんっ!………ん、あれ!?王女さんは!?」

 

 

椎名は目を覚ました。仰向けになった体を半分起こしながら考えた。あれはなんだったのだと。時は今、鮮やかな橙色の夕焼けが差し込んでいる夕方だ。王女さんと対談したのは星空輝く夜の出来事。こう言った矛盾から、きっとあれは夢だったのだと、椎名がそう思った次の瞬間だった。

 

 

「……夢…か、…あれ?これって、」

 

 

椎名は右手に違和感を感じた。まるで何かを握っていたような。そしてふとその手を見てみると、そこには【No.26キャピタルキャピタル】のカードがあった。これは確かに王女さんから貰ったものだ。

 

椎名は一瞬驚くと、頬の力を緩めてにこりと笑う。そして勢いよく立ち上がり、橙色から墨色に変わろうとしている街並みに向かって叫んだ。

 

 

「王女さぁぁん!!またバトルしようねぇぇえ!!」

 

 

一期一会。椎名は1つの出会いに感謝しながら自分の部屋へと戻っていくのだった。




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【ヴァイクモン】!!」

「ヴァイクモンはデッキ破壊に特化した青の究極体!煌臨元になった完全体を手札に戻すことで、相手のデッキを破棄させつつ、回復することができるよ!私も完全体とか、究極体、欲しいなぁ!!」





最後までお読みいただきありがとうございました!
*タイトルは最初『歯向かえ』にしてましたが、日本語的にどうかと思い、『抗え』に変更しました。


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第6話「悪霊退散!? 照らし出せネフェルティモン!」

 

 

 

 

 

 

ここはとあるお墓。まだ日が差し込んでくる昼間の時間だというのに、学校の制服を着用して、数多の種類が確認できる花束を手に持ち、ある墓石の前に立つ1人の少年がいた。それは赤羽司だ。墓石に刻まれている名前は【赤羽茜(あかばねあかね)】。

 

ー彼の7つ年上の姉だ。

 

司はその花束を墓石の前にゆっくりと供えた。

 

 

「久しぶりだな、姉さん」

 

 

墓石の前でそう呟く司。いくら話しても返事が返ってくるわけがないと理解していても、その墓石を前にすると口を開かずにはいられなかった。

 

だが、開くと言っても、出てくる言葉は『久しぶり』のみ。それ以外のことなど、話す気にもなれなかった。

 

司がこの墓石に来たのは2回目。最初の葬式の時以外、ここに立ち寄ったことがなかった。あの時はただ、姉が死んだことを認めたくなかった。

 

茜が亡くなったのは5年前の出来事。元々病弱だった彼女は重たい病気でその命を落としてしまった。

 

その才能は司以上だと言われてきた。その病弱な面がなければ今頃はプロのバトラーとなり、世界を股にかける凄腕として注目を浴びていたことだろう。

 

そんな姉が病室で死ぬ間際に自分に残してくれた最後の言葉がずっと頭に引っかかっていた。それは、

 

 

 

ー『強くなれ!天国で待ってる!……誰にも負けないくらい強くなれ!……そしたらいつか、司も登ってきたら、……またバトルしよう!』

 

 

 

この言葉の意味を、司はとても深く捉えていた。考えれば考えるほどわかりづらくなってくる。

 

単に病弱だった姉が自分と最後にバトルをできなかったことを惜しんだ言葉だったのか。はたまた本当に2度と負けるなと言う意味だったのかは、彼女が死んだ今、最早わからぬことであって、

 

司はこの言葉をこう捉えていた。自分はもう2度姉以外のバトラーには負けない。いつか天国で姉と再戦するまでは、絶対に負けることが許されない。それが彼女に対する一番の供養になる。そう考えていた。

 

だが、負けてしまった。【芽座椎名】に。5年前から負け知らずで、ジュニア大会にも積極的に参加し、それら全てを勝ち取り、【朱雀】と言う異名の名の下に優勝したにもかかわらず。どこぞの馬の骨かもわからない相手に大逆転を喫して敗北してしまった。

 

負けた瞬間はあまりの悔しさに敗北を認めたくなかった。だけれども、同時に感じ取ってしまった。芽座椎名のバトルスピリッツに対する思いを。それがまた自分自信をおかしくしていた。

 

それはとてもおおらかだった自分の姉にそっくりであって、雅治が椎名に惹かれているはなんとなくわかる気がしていた。雅治は自分の姉が、茜が心の底から好きだった。5年前の葬式では自分以上に涙を流し、悲しんでいた。姉もまた、雅治を可愛がっていた。

 

椎名は姉によく似ている。声のトーンだったり、髪の長さだったり、その色だったり、妹だと言われてもあながち一瞬は騙されるかもしれない。だが、血筋の違う別の人間なのは確かなこと。飽くまで重なる部分が多いだけだ。

 

その後、司は夜を迎えるまで茜の墓石の前で黄昏ていた。茜の言葉の意味を考えながら。そして空はすっかり墨色に染まる頃。

 

 

「馬鹿だな、俺は、こんなとこでいくら頭捻っても答えなんて出やしねぇのに」

 

 

空はもう真っ暗、墓の外れの道のライトだけが、唯一の明かりだ。そんな中で、司に声をかける人物が1人。

 

 

「……お主、もしや、その墓石の者の、肉親か何かかの?」

「あぁ?」

 

 

現れたのは隻眼の初老の男性、髭を生やしていて、背筋が真っ直ぐなのが印象的、いや、それ以上に目立つのが、白い装束か、この時間帯にこんな服を着ていると、これくらいの歳の男性は幽霊にも見えてしまう。

 

司は生憎、幽霊などと言う非科学的な物は一切信じていない。

 

 

「肉親だけど、なんか文句あんのか?」

「ほっほ!最近の若者は威勢がいいのぉ!」

 

 

自分の事を聞かれるのが嫌なのか、やや突き放した態度をとる司に対し、幽霊のような男性は懐が広いのか、それを見て大きな声で笑い飛ばしていた。

 

 

「ほっほ!いや何、その墓石、あんまり人が来ないから……ちょっと気になってたんじゃよ」

「あぁそ、悪いが俺はもう帰る」

 

 

聞く耳をほとんど持たず、司はその場を離れようとする。が、次の瞬間に男性が放った一言が司の足を止める。

 

 

「……お主、悩んでおるな、バトルに勝てなくて」

「……!?!…」

 

 

男性は司が悩んでいた事の核心を突いてきた。司はほとんどそんな言葉を発していなかったはずなのにだ。司は血相を変えてその男性を問い正そうとする。

 

 

「なんでそんな事わかるんだよ、ジジイ」

「おっ!ようやく儂と話す気になったか…………いや何、儂は生前からバトルを教える側の人間での?…伸び悩む者の気持ちがわかるんじゃ」

「はぁ?生前?何言ってんだお前」

 

 

普通は生きている人間から自分の生前のことなど語られるわけがない。司が不思議そうに返事を返すと、男性は全面のドヤ顔でこう言った。

 

 

「いや〜儂、幽霊なんじゃよね〜」

「……はぁ?」

 

 

男性は自分のことを幽霊だと言った。そんな身もふたもない嘘を信じられるわけがないだろう。と言わんばかりに司は首を傾ける。男性は証拠を見せつけるように赤羽家の墓石に近づき、それを手で触ろうとした。本当に幽霊だったのか、その手はするりとすり抜けてしまった。

 

 

「な!?」

「じゃろ?凄いじゃろ?もうかれこれ10年以上もこんな感じなんじゃよ」

 

 

司は珍しく驚きの声を上げる。普通の人なら恐怖にまみれてその場をトンズラしてしまうだろうが、この男性は幽霊的に驚かせようとはしていなかった点を見ると、悪い幽霊ではないことが示唆される。呪われるなんて物騒なことはされないだろう。司はそう考えて、この場に一応止まることにした。

 

 

「いやぁ、申し遅れたな、儂は【武魂影技(ぶこんかげわざ)】。武魂家の将軍だった男じゃ」

「武魂家?聞いたことねぇ一族だな」

「むぅ、やはり知らぬか、まぁ良い、それよりお主、儂とバトルをしないか?…お主を強くするため、みっちりしごいてやるぞい!」

「はぁ?なんで、俺は暇じゃねぇんだよ。何が好きで幽霊なんかとバトルしなくちゃいけねぇんだ」

 

 

武魂影技と名乗る男性。バトスピ一族は多数いるが、武魂などと言う一族は司の頭の中にはインプットされていなかった。影技は怪訝そうな顔をする。

 

そんな幽霊が司にバトスピを挑んできた。幽霊とバトルするなど気味が悪いだろうと思い、司は断りの言葉を並べるが、

 

 

「負けるのがそんなに怖いか、少年」

「あぁ?」

「そんなにこの老いぼれに負けるのが怖いのかと言っているんじゃ」

 

 

安い挑発だ。だが、プライドが高い司はこんな挑発でも、易々と乗ってしまう。

 

それは少々子供っぽく見えるが、それだけ自分に自信がある証拠でもあって、

 

 

「んだとてめぇ!上等だ!ぶこんだか、うこんだが知らねぇが、格の違いを見せてやる!」

「はっは!やはり威勢がいいのぉ!」

 

 

2人のバトルが結託される。2人はお墓の空き地の広いスペースまで赴いた。司は懐からBパッド取り出し、直ぐにセッティングするが、1つだけ、幽霊の影技に対して疑問が浮かんできた。

 

 

「そういや、ジジイ、お前物に触れられないのにどうやってバトルするんだ?」

「ん?あ〜〜心配ご無用じゃ、………おぉ〜〜い、ミッケやぁ〜〜〜!!」

 

 

率直な疑問だった。何も触れることができないから、カードは愚か、Bパッドすらセットできないのではないかと、そうなればバトルをするなんて不可能ではないのか、と。

 

影技が「ミッケ」、と呼ぶと。そこに現れたのはただの三毛猫。だが、その口にはBパッドが加えられていて、

 

 

「よぉし、偉いぞ!組み立ててくれ!」

 

 

すると、ミッケは手慣れた手つきでBパッドを変形させた。まぁ、ボタン1つで変形するから猫でもできないことはないか。

 

 

「なんだ、この猫」

「儂と仲良くなった『ミッケ』じゃ、可愛いじゃろ?…………それでデッキは儂の懐にある物を使えばと……よし!」

 

 

影技の火葬の時に一緒に燃やされた魂のデッキがある。それなら幽霊でも触れるのか、影技はBパッドにそれをセッティングした。幽霊の私物にもかかわらず何故反応するのかと、司は聞きたかったが、直ぐにそんなことはどうでもよくなり、聞くのをやめた。彼には色々な常識が通用しない。

 

ーそしていよいよ2人のバトルが幕を開ける。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

今回の先行は影技だ。ターンシークエンスを進めていく。

 

 

[ターン01]影技

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

「よし、メインステップじゃ、先ずはネクサスカード、故郷の山に似た山を配置じゃ」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

「……赤のネクサスか」

 

 

影技が配置したネクサスは赤のカード。これで彼は赤属性の使い手であることが判明する。同じ赤として、司はより負けられないバトルとなった。

 

影技の配置した赤のネクサスは、まるで富士の山を連想させるような山岳だ。

 

 

「ターンエンドじゃ」

故郷の山に似た山LV1

 

バースト無

 

 

[ターン02]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺もネクサスカード、朱に染まる薔薇園を配置」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

墓場を彩るのはとても鮮やかな赤い薔薇園。だが、その薔薇園の薔薇には一本一本鋭い棘が存在する。

 

朱に染まる薔薇園の配置で、司の盤面には赤と黄色のシンボルが1つずつ並んだことになる。

 

 

「ほほぉ、これはなんとも見事な」

 

「何感心してんだ、俺はこれでターンを終了する」

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

司もネクサスカードを配置しただけでそのターンを終えてしまう。

 

お互い静かな滑り出しとなった。が、仮にも赤属性同士のバトル。この後の展開が凄まじくなるは目に見えている。

 

 

[ターン03]影技

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップじゃ、ドラマルを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨4

 

 

影技が最初に呼び出したのは甲冑を着た小さなドラゴン。身の丈と同じくらいの声を張り上げながら場に現れた。

 

 

「武竜デッキか」

「ほっほ、儂らの一族の習わしでな、昔から武竜一筋じゃよ」

 

 

『武竜スピリット』、主に赤属性が持つ系統で、バトルによる破壊を得意としている。ソウルコアの扱いにも長けており、他の系統を見てもそれは随一であると言える。影技の生まれ育った武魂家では、何故かこの武竜を使わなければいけなかったらしい。

 

 

「さらに、もう1枚、ネクサス、故郷の山に似た山を配置しようかの」

手札4⇨3

リザーブ4⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

影技の背後にもう1つ大きな富士の山が聳え立つ。

 

 

「そして、こいつを、サムライ・ドラゴンを召喚じゃ!そのコストは2枚の故郷の山に似た山の効果により、マイナス2となり、3、3つの軽減と合わせて、ノーコスト召喚じゃ!」

手札3⇨2

リザーブ2⇨1

 

「なに!?」

 

 

故郷の山に似た山の効果は武竜スピリットのコストを1つ下げるというもの。それが2枚あることにより、本来コスト5のスピリットであるサムライ・ドラゴンが、コスト3として召喚されたのだ。

 

舞い上がる桜吹雪の中で、青く勇ましい侍の竜、サムライ・ドラゴンが召喚された。

 

 

「ドラマルに残ったソウルコアを追加じゃ……そしてアタックステップに入るかの」

リザーブ1s⇨0

ドラマル(1⇨2s)

 

 

ドラマルにソウルコアが追加されるが、特に変化はない。だが、意味がないと言うわけでもない。

 

それはこのアタックステップで直ぐに分かることであって、

 

 

「さぁ、先ずはドラマルじゃ、」

 

 

ドラマルが小さなおかっぺきを掲げながら走り出す。前のターンでコアを全て使い果たした司はこの攻撃を防ぐ術はなかった。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ドラマルの身の丈ほどの小さなおかっぺきの一撃が、司のライフを1つ破壊した。

 

 

「次じゃの、行け!サムライ・ドラゴン!」

「そいつもライフで受け……」

「おお、おお、ちょっと待つんじゃ、フラッシュタイミングで、サムライ・ドラゴンの【覚醒】を発揮じゃ」

「!?」

 

 

【覚醒】とは、赤属性特有のキーワード効果であり、フラッシュタイミングで他のスピリットのコアを取り除き、自身に置くことができる。バトル時のBP上げにはもってこいの効果だ。だが、このサムライ・ドラゴンは他の【覚醒】スピリットとは少々使い方が変わっていて、

 

 

「ドラマルのソウルコアをサムライ・ドラゴンに………そして、サムライ・ドラゴンの効果発揮じゃ、【覚醒】により、ソウルコアがサムライ・ドラゴンに置かれた場合、サムライ・ドラゴンは回復し、そのBPを5000上昇させる」

ドラマル(2s⇨1)

サムライ・ドラゴンLV1⇨2(1⇨2s)BP3000⇨6000⇨11000(疲労⇨回復)

 

 

「なんだと!?」

 

 

効果により回復したサムライ・ドラゴン。これで2回攻撃が可能となった。使えるコアが少ない司はこの攻撃をライフで受けるしかなくて、

 

 

「サムライ・ドラゴンの2連撃、受けてみよ!」

 

「くっ!ライフで受ける」

ライフ4⇨3⇨2

 

 

サムライ・ドラゴンが刀を抜刀すると、見事な剣術で、司のライフを一瞬のうちに2つも削り取ってしまう。

 

 

「ほっほ、なんか若い頃を思い出すのぉ、……あの頃はまだ娘も小さくって」

「御託はいいから、早くエンドしろよ」

 

「むぅ、せっかちな男よ………まぁいい、ターンエンドじゃ」

ドラマルLV1(1)BP1000(疲労)

サムライ・ドラゴンLV2(2s)BP6000(疲労)

 

故郷の山に似た山LV1

故郷の山に似た山LV1

 

バースト無

 

 

おそらくは椎名以上の速攻であっただろうこのターン。影技が自分の予想していた以上に強敵だと思い知る司。だが、椎名にも負けて、こんな得体の知れない幽霊に負けられない。負けたらおそらく自分の一生の恥だとも考えていた。

 

 

[ターン04]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨9

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!朱に染まる薔薇園をLV2へ上げる!……これで俺の赤のスピリットとブレイブの赤軽減シンボルは黄色としても扱えるようになる」

リザーブ9⇨8

朱に染まる薔薇園(0⇨1)LV1⇨2

 

 

「ほほぉ、赤が黄色にのぉ」

 

 

朱に染まる薔薇園のLV2効果は赤のスピリットとブレイブのカードを黄色にすると言っても過言ではない効果である。これを活用し、司はスピリット達を展開して行く。

 

 

「いくぜ、ホークモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ8⇨6

トラッシュ0⇨1

 

 

司が呼び出したのは赤き羽を羽ばたかせる鳥型の成長期スピリット、ホークモン。

 

 

「デジタルスピリットか、奴らも安くなったもんじゃのぉ」

 

「一々うるせぇ、ホークモンの召喚時効果!」

オープンカード

【イーズナ】×

【イーズナ】×

【シュリモン】○

 

 

ホークモンの召喚時効果が起動され、その中の対象内のスピリットカードであるシュリモンが、司の手札へと加わった。

 

 

「さらに、俺はハーピーガールをLV3で召喚する!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ6⇨1

トラッシュ1⇨3

 

「ぉぉぉお!ええのぉ!可愛いぞ!ありじゃよ!」

「うるせぇっつってんだろ!ジジイ!」

 

 

司が呼び出したもう一体のスピリットは、美しい少女の顔をしたスピリットだが、その手足は強靭な巨鳥のような黄色のスピリット、ハーピーガール。

 

大の女好きである影技は、目をハートにしてハーピーガールを見つめる。ハーピーガールはそんな影技に対して、少し引き気味。

 

 

「アタックステップ、……ハーピーガールでアタック!アタック時の【連鎖:赤】!BP3000以下のスピリットを1体破壊!ドラマルだ!」

「ぐっ!ドラマル……寂しいのぉ」

 

 

ハーピーガールの翼の攻撃により、ドラマルが呆気なく敗れ去ってしまう。ハーピーガールの効果はライフを奪ってからが本領発揮なのだが、司はその前にここで別の一手を繰り出す。

 

 

「フラッシュタイミング!マジック!レッドライトニング!……この効果でBP6000以下のスピリット1体を破壊!…くたばれ!サムライ・ドラゴン!」

手札4⇨3

リザーブ1⇨0

朱に染まる薔薇園(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ3⇨5

 

「むっ!」

 

 

赤き稲妻が迸る。それは瞬く間にサムライ・ドラゴンを貫く。サムライ・ドラゴンは耐えることができずに、その場で大爆発を起こした。

 

 

「さぁ!ハーピーガールのアタックが継続中だぜ!」

 

「……これは仕方ないな、ライフで受けるかの」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールの強烈な足技が影技のライフを粉砕した。ハーピーガールの効果がこの瞬間に発揮される。

 

 

「ハーピーガールの効果!【聖命】!ライフを1つ回復する!………さらに、朱に染まる薔薇園の効果で自分のアタックステップ時に自分のライフが回復した時、デッキからカードを1枚ドローする」

ライフ2⇨3

手札3⇨4

 

 

黄色と赤が織りなすコンボにより、司はライフと手札を潤していく。

 

 

「ほっほ、今時の若い者は贅沢好きじゃのぉ」

「続け!ホークモン!」

 

 

影技の言っていることを全て無視して、司はホークモンにアタックの指示を送った。

 

 

「それもライフじゃ」

ライフ4⇨3

 

 

ホークモンの赤い翼の一撃でついにライフ差が同じとなった。手札の差も考えると、現在は司が若干巻き返したと言えるだろう。

 

 

「ターンエンド」

ホークモンLV1(1)BP3000(疲労)

ハーピーガールLV3(3)BP5000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

[ターン05]影技

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨8

トラッシュ2⇨0

 

 

「なかなかやる見たいじゃの〜、じゃが、お主はまだまだ爪が甘い」

「なんだと!!」

 

 

なかなかやる。爪が甘い。それらの自分を軽く見ている言葉だけで、【朱雀】と呼ばれている司にとっては侮辱の極みのような言葉であって、

 

だが、本当に影技からしてみれば爪が甘かったのだ。それは彼のこのターンですぐにわかることだ。

 

 

「まぁ、まだ若いしのぉ、これからじゃよ………メインステップ!ヒエンドラゴンをLV2で召喚じゃ!……2枚ぶんの故郷の山に似た山の効果でコストを2下げ、ノーコスト!」

手札3⇨2

リザーブ8⇨6

 

 

影技の場に現れたのは、燕のような翼を翻している。武竜のスピリット、ヒエンドラゴン。元々のコストが3であるため、2枚の故郷の山に似た山の効果と軽減により、ノーコストで召喚された。

 

 

「さらに、剣豪龍サムライ・ドラゴン・天をLV2で召喚じゃ!……故郷の山に似た山の効果でコストは4じゃ」

手札2⇨1

リザーブ6⇨1

トラッシュ0⇨1

 

 

暗がりの街を明るく照らし出すほどの火柱の中で、眼光を放ちながら待機する武竜のスピリット。それはすぐさま自身の両手に持つ2本の刀で火柱を断ち切り、その姿を見せる。

 

その正体はサムライ・ドラゴンの息子。サムライ・ドラゴン・天。その派手な登場の仕方に思わず司もたじろいだ。

 

 

「な、に?サムライ・ドラゴン………天!?」

「ほっほ、ではいくかのぉ、アタックステップじゃ」

 

 

この瞬間、天の背中に『天』の字の炎が浮かび上がる。これは天のド派手な効果の始まりのサインでもあって、

 

 

「天の効果、【無限刃】、ソウルコアの置かれている天は指定アタックが可能となるんじゃ」

(……!?……それだけか?)

「ほれ、まぁ、手始めにハーピーガールから叩くかの?可愛い子じゃったが、バトルならば仕方あるまい」

 

 

天が走り出す。その2本の刀でハーピーガールをあっという間に引き裂いてみせた。天の猛攻に耐えられるわけなく、ハーピーガールはその場で大爆発してしまう。

 

ーそして天の【無限刃】のおそるべき能力が語られる。

 

 

「そして、天はこの時、疲労はせん」

「なに!?」

 

 

そう、天は【無限刃】の状態でいるならば、疲労せずに、指定アタックができる。アタックするスピリットは基本的に回復状態のスピリットのみが宣言できる。つまり今の天は相手のスピリットがいる限りは文字どうり無限にアタックを繰り返すことができるのだ。

 

 

「さぁ、次はホークモンじゃ!」

(くそ!疲労しないんじゃあ、シュリモンの召喚字効果は使えない………でもBPは勝てるか)

 

 

天がホークモンを襲う直後に、司の手札のカードが光を放つ。それはさっき手札に加えていたスピリットカード。シュリモンのカードだ。

 

 

「フラッシュタイミング!【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!……緑のアーマー体、シュリモンをLV2で召喚!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ5⇨6

 

 

ホークモンの頭上に独特な形をした卵が投下され、衝突し、混ざり合う。新たに現れたのは緑の忍者のような外見をしたスピリット、シュリモン。

 

シュリモンは召喚時に疲労状態の相手のスピリット1体を手札に戻す効果があるのだが、そもそも疲労しない天にはほとんど無効。それでも司が召喚した理由はただ1つ。

 

 

「シュリモンのLV2BPは9000、それに対し、天のBPは7000!これで【無限刃】はできねぇ」

 

 

そう、天の弱点の1つとして、LV2までのBPがそのコスト帯としてはかなり低めであるということ。BPで勝てなければ、当然影技はアタックはできなくなる。だが、彼はそのくらいで止まるような男ではなかった。

 

 

「なるほど、まぁ、構わんよ、いけ!天!【無限刃】じゃ!」

「なに!?!」

 

 

BPが低いにもかかわらず、止まることなくシュリモンに勝負を挑む天。だが、それには当然訳があるわけで、

 

天の2本の刀とシュリモンの巨大な手裏剣がぶつかり合う。その光景はまるで時代劇さながら、力差はほぼ拮抗していたが、若干、シュリモンが押しているように見える。

 

 

「フラッシュタイミング!ヒエンドラゴンの【覚醒】を発揮!天のソウルコアをヒエンドラゴンに追加する!」

剣豪龍サムライ・ドラゴン・天(4s⇨3)

ヒエンドラゴン(2⇨3s)

 

 

天のソウルコアがヒエンドラゴンに移される。だが、司には疑問が残った。

 

 

「おい!待て!ヒエンドラゴンには【覚醒】の効果はないはずだ!」

「ほっほ、学業を疎かにしておるな、剣豪龍サムライ・ドラゴン・天は系統「家臣」「主君」を持つスピリットに【覚醒】を与えるんじゃよ」

「な!?」

 

 

【無限刃】に隠れがちだが、剣豪龍サムライ・ドラゴン・天のもう1つの効果は、前述された系統に【覚醒】を追加する効果。これにより、LVは特に変化はないが、ヒエンドラゴンにソウルコアが置かれた。だが、そこが重要である。

 

 

「さらにヒエンドラゴンはソウルコアが置かれている時、武竜スピリット全てをBP+4000するんじゃ」

「!!!!」

 

 

ヒエンドラゴンがソウルコアの力を受けて、赤く光り出す。この影響力は強く、天のBPは7000から11000に膨れ上がった。

 

拮抗していた勝負は一転して、天の独壇場となり、シュリモンの巨大な手裏剣を砕き、そのまま彼の身体をも貫き、爆発させた。

 

 

「くっ!……」

 

 

司はシュリモンの爆発による爆風を肌で感じると同時に、影技の実力も感じていた。基本はおちゃらけているように見えるが、彼の実力は本物だ。

 

 

「………むぅ、ここはブロッカーを残した方が得策か、………ならターンエンドとしようかのぉ……ほっほ」

ヒエンドラゴンLV2(3s)BP8000(回復)

剣豪龍サムライ・ドラゴン・天LV2(3)BP11000(回復)

 

故郷の山に似た山LV1

故郷の山に似た山LV1

 

バースト無

 

 

スピリットを全て破壊できても、残った2体では司の残り3つのライフを破壊することはできないからか、影技はここでターンを終える。

 

天がいる限り、並みのスピリットでは、その場にとどまることは難しいだろう。

 

 

(………俺はまた負けるのか?)

 

 

司は自身のBパッドを見つめながら、盤面を見ながら、負けを悟っていた。スピリットを維持し辛い状況なのだ。無理もない。それでも勝つ方法がないわけではないのだが、それにはまだパーツが足りていない。

 

だが、その負の気持ちと同時に溢れかえってくるのは雅治の言葉。その意味を今になって理解してしまう。しかもそれだけではない、5年前の茜の言葉さえをも同時に飲み込んだ。

 

いや、本当は、椎名に負けた時から理解していたのだ。ただあの時は心の整理がつかなかっただけ、影技とのバトルで今一度ピンチになることで、ようやく司は整理することができたのだ。

 

 

ー『茜さんが言いたかったことは絶対にそういうことじゃないはずだよ』

 

 

「………そうか、1回、1回負ければ本当はすぐにわかることだったんだな、なのに俺は昔の事ばかり引きずっちまって、………悪いな雅治……なんかやっと戻ってこれた気がするぜ」

 

 

司は思い悩んでいた心の鎖を断ち切る。姉が亡くなったあの日から、自分は止まっていたのだ。それを雅治はずっと気づかせるために行動していた。そしてようやく思い出せた。姉との色んな思い出。そこには毎日のように楽しいバトルが繰り広げられていた。そうだ。自分が楽しまなくては、天国に行った姉が報われないだろう。死ぬまでには強くなれば良いのだ、誰にも負けないくらい。それが真に姉の供養となる行いだ。

 

ようやくデコボコの幼馴染2人の意見が合致した。

 

 

(目つきが変わりおった……ようやく何かに気づいたようじゃな、………いや、あの目は気づいたと言うよりかは、思い出したって感じじゃな)

 

 

影技は心の中でそう考える。司の目は確かにさっきまでと全く違う。まるで全ての重荷を外した後のような感じだ。

 

 

「そうだよ、そうだよなぁ、俺がバトルを楽しめなくなってちゃ、姉さんも喜ばねぇ…………死ぬまでに強なりゃいいじゃねえか!…ありがとよ、ジジイ!おかげで吹っ切れたぜ!」

「ほっほ、わしは何もしとらんよ……お主が勝手に1人でテンション上がっとるだけじゃ………それはさておき、この状況からの逆転は厳しそうじゃな」

「いや、できる。勝利への道筋はすでに見えている」

「……!?!」

 

 

そう言いながら司は自分のターンシークエンスを進めていく。

 

 

[ターン06]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨10

トラッシュ6⇨0

 

 

「メインステップ、朱に染まる薔薇園を再びLV2に上げて、もう一度ホークモンをフル軽減で召喚!」

朱に染まる薔薇園(0⇨1)LV1⇨2

手札4⇨3

リザーブ10⇨7

トラッシュ0⇨1

 

 

司の場に再びホークモンが姿を見せる。その召喚時効果も今一度発揮される。勝てるかはこの効果にかかっている。

 

 

「召喚時効果!」

オープンカード

【フレイムブロウ】×

【一角魔神】×

【テイルモン】○

 

 

効果は成功。成熟期のスピリット、テイルモンが司の手札に新たに加わった。このテイルモンこそが、逆転へのキーパーソンだ。

 

 

「……ふっ!……よし」

手札3⇨4

 

「ほっほ、成熟期など加えても無駄じゃよ、天の【無限刃】の前では塵にも等しい」

「まぁ、落ち着けよ、腰が曲がるぜ……ホークモンのさらなる効果!2コストを支払うことで黄色の成熟期スピリットを召喚!……来い!テイルモン!LV1だ!」

リザーブ7⇨4

手札4⇨3

 

 

ホークモンの召喚時の追加効果。2コストを支払えば成熟期の黄色のスピリットを召喚できるというもの。この効果で司はさっき手札に加えたばかりのテイルモンを即召喚した。

 

彼の場に、猫のような姿をしている鼠型で、黄色の成熟期スピリット、テイルモンが召喚された。このスピリットは時代や住む世界が違ければ、他のデジタルスピリットとは別格の存在となっていたことだろう。普通に買って手に入れた司にはわからないことではあるが。

 

 

「まだだ!手札のホルスモンの【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!……1コストを支払い、羽ばたく愛情、ホルスモンを召喚!LV1!」

リザーブ4⇨3

トラッシュ3⇨4

 

 

ホークモンの頭上に銀色で翼のようなものがある卵が落下してくる。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合い、新たに進化を遂げる。現れたのは強かに風を運ぶアーマー体スピリットのホルスモンだ。

 

 

「ホルスモンの召喚時効果!相手のネクサスを1つ破壊!……故郷の山に似た山を1つ破壊だ!」

「ほほぉ、」

 

「そしてその後、デッキからカードを1枚ドローする」

手札3⇨4

 

 

ホルスモンは召喚されるなり、鋭い眼光で、故郷の山に似た山を睨み付けると、そのうちの1つが、地面へと沈んでいった。

 

 

「そして、赤のブレイブ、砲竜バル・ガンナー〈R〉を召喚し、ホルスモンと直接合体!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨1

トラッシュ4⇨6

 

 

「椎名とのバトルの時にも使用した赤のブレイブカード。バル・ガンナーが司の場に現れ、一瞬のうちに合体形態となり、ホルスモンの背中にドッキングした。

 

ここで司はようやくアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!ホルスモンでアタック!砲竜バル・ガンナーの効果でデッキから1枚ドローし、BP6000以下の相手のスピリット1体を破壊!」

手札3⇨4

 

「ほっほ、BP6000なんて言う貧弱なスピリットは今の儂の場にはおらんぞい」

 

 

ヒエンドラゴンの効果でBPが増強されているのだ、BP破壊効果そのものが効きづらくなっている。だが、別に破壊はしなくても良い。司が欲しいのはフラッシュタイミングだ。

 

 

「お前のフラッシュがなさそうだから俺が使うぜ、……フラッシュタイミング!【アーマー進化】!対象はテイルモン!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ6⇨7

 

「……!!……ここでまたその進化か!」

 

「あぁ、その通りだ!来い!光育む神の使い!ネフェルティモン!LV2だ!」

朱に染まる薔薇園(1⇨0)LV2⇨1

 

 

テイルモンに不思議な形をした卵が投下され、衝突。混ざり合うと、新たに姿を見せたのは、まるでスフィンクスに近い外見のアーマー体スピリット。ネフェルティモンだ。

 

 

「ネフェルティモンの召喚時効果!トラッシュのコアを1つ俺のライフに!」

トラッシュ7⇨6

ライフ3⇨4

 

 

ネフェルティモンの放つ聖なる光が、司のライフに再び光を灯した。さらに灯されるのはその光だけではなくて、

 

 

「俺のライフが増えたことにより、朱に染まる薔薇園の効果でカードを1枚ドローする」

手札4⇨5

 

 

今度は朱に染まる薔薇園が光輝き、司の手札を潤していく。本当はもう手札もライフも増やす必要もないのだが、

 

 

「だが、たった1体進化態が出たところで、天とヒエンドラゴンの敵ではない」

 

 

そうだ、いずれもBPはどれも下回っている。だが、忘れてはいけないのがネフェルティモン。このスピリットの色は黄色。その効果も黄色らしい効果だった。

 

 

「ネフェルティモンは「アーマー体」のスピリット全てにLV1と2のスピリットにブロックされない効果を与える」

「なんじゃと!?」

「やっと驚きやがったな……ホルスモンはバル・ガンナーとの合体でダブルシンボルになっている」

「ぐつ!」

 

 

天とヒエンドラゴンがネフェルティモンの放つ異彩なオーラにより、身動きを封じられる。まるで金縛りにでもあっているかのようだった。

 

これで影技はブロックが不可。ホルスモンは体を竜巻のように回転させ、バル・ガンナーの砲撃と共に、影技のライフへと向かう。

 

 

「くらえ!……砲撃の嵐!ランパードストーム!」

 

「くっ!ライフじゃ」

ライフ3⇨1

 

 

ホルスモンは、そのまま重たくて鈍い音を立てながら、影技のライフを同時に2つ破壊して見せた。

 

そして最後を締めるのは、同じくアーマー体で自身の効果も対象圏内となるネフェルティモンだ。

 

 

「終わりだ!………いけ!ネフェルティモン!」

 

 

ネフェルティモンが空を飛ぶ。光の波動を頭部に集中させて、一気に放つつもりだ。影技はもう反撃のすべはなかった。

 

 

「………見事じゃ……ライフで受ける」

ライフ1⇨0

 

 

ネフェルティモンは光の波動を放ち、負けを認めた影技の最後のライフを破壊した。影技のライフがゼロになったので、勝者は司となる。圧倒的に不利な状況から大逆転して見せた。

 

周りのスピリット達も同時に消滅していくが、天とヒエンドラゴンはまるで年寄りの自分たちの主人を心配して気づかっているようにも見える顔で消えていった。

 

そして影技自体にも変化が訪れる。

 

 

「どうだ!ジジイ!俺の勝ちだ!………!!!?」

「ほっほ!やはりお主は強いのぉ、儂の娘にも引きを取らぬ天才じゃ」

「いや、おい!ジジイ!身体が!」

 

 

司は驚いた。それもそのはず、影技の身体がどんどん光の粒子となって、足元から天へと消え去ろうとしているのだから、

 

 

「ほっほ、最後にようやく納得のいく楽しいバトルができたからかの、未練もなくなり、こうやって成仏できるようじゃ」

 

 

そう、これは成仏。この世に未練をなくした影技は10年以上の時を経て、ようやくあの世へと行こうとしていた。猫のミッケもそれを察したのか、悲しそうな顔で影技を見つめていた。そう、影技は最初から成仏がしたかったから、司に近づいた。司に霊感があることを知っていたから。

 

司はこれが最後だと理解し、意外な気遣いを見せる。

 

 

「あんたは強かったよ……この俺が認めてやる」

「ほっほ!そりゃどうも!」

「最後にあんたの言葉を1つ聞いてやらぁ、歴史の偉人としてなんかいい言葉を残せよ」

 

 

上から目線には変わらないが、これは司が珍しく見せた他人への気遣い。影技は少し考えるとその口を開いた。

 

 

「そうじゃのぉ…………強いて言うなら、…まだ女子風呂を覗きたかったのぉ〜〜〜」

「……………はぁ!?」

「最近のお気に入りは、あのオレンジの頭の子じゃったな、顔も可愛い系じゃし、足は細くて、強かで綺麗じゃったし、最高じゃった。もう儂の好みドンピシャ」

 

 

影技が最後にとんでもないことを暴露した。霊感がない者には見えないのをいいことに、覗き行為を繰り返していたのだ。司も呆気に囚われて、開けた口がなかなか閉じない。最後に遺言をと思って気遣ったのに、まさかこんな返信が返って来ようとは、今までの影技のイメージがすごい下がっていく。

 

いや元々結構低かったから、あまり関係なかった気もするが、最後の最後までおちゃらけるとは思っていなかった。

 

 

「そうそう、スタイルも抜群でのぉ!着痩せするタイプじゃったのかのぉ、ほっほ…………じゃあの、ミッケ!少年!お前さんもあの世に来ることがあったらまた今日のような楽しいバトルでもしようじゃないか!…………」

 

 

それだけを言い残し、影技は天へと姿を消した。司の隣にいた猫のミッケが毛を逆立てて、悲しそうに鳴き声をあげる。

 

 

「悪いなぁ、ジジイ。あの世には先約がいるんだ」

 

 

司は影技の最後を見届けると軽く口角を上げて、そう呟いた。おそらくこの出会いがなければ自分は一生、雅治と茜の言葉の意味には気づかなかっただろう。少なからず感謝していた。

 

それと同時にあることに気づく。

 

 

「ん?まてよ、『オレンジの頭の子』?………」

 

 

オレンジの頭。いや、髪はあんまりいない部類の人間だろう。だが、司は1人知っていた。その不思議な髪色と形をした女子を。

 

 

******

 

 

その翌日の学園での出来事である。椎名は休み時間中に、いつものように、真夏とおしゃべりをしていた。

 

 

「最近身体が、だる〜いんだよねぇ」

「バトルしすぎちゃう?」

「いや、なんだろう。なんか、お風呂入ってる時とか、すごい視線を感じるんだよね」

「………いやいや、それ絶対あかん奴やん!ストーカーにでもひっつかれたんとちゃうんか!?」

「………むーーー別に人の気配は感じないんだけどなぁ、」

 

 

その直後、司が椎名達の教室へと入ってきた。大体1週間ぶりくらいだったろうか。椎名も司に気づく。

 

 

「あっ!司!久しぶり〜〜!この間急にいなくなったから心配したんだよ!?」

 

 

司は黙って椎名の前に立つと影技の言葉を思い出しながら彼女の着ている制服を、いや、彼女の全身をジロジロと見渡す。

 

 

(…着痩せするタイプ。ねぇ………)

「?」

 

 

不思議そうな顔をされながら観察される椎名は頭にはてなの字を浮かべる。そして司はようやく口を開く。たが、それは椎名や真夏にとっては全く通じない言葉であって、

 

 

「……めざし、お前、俺に感謝しろよ」

「はぁ!?」

「じゃあな」

「おいおいおい!どう言うこと!?」

「………あいつも結構謎い奴やな」

 

 

司はそれだけ言い残して、その場を離れて言った。椎名は何が何だかわからなかった。一体何を感謝すればいいのだと。

 

 

「やぁ、司、どう?頭は冷えたかい?」

 

 

渡り廊下でばったり会うのは幼馴染の雅治。司がここに再び帰ってきたということは、5年ぶりに悩みが消えたということだ。雅治は当然それを理解していた。幼馴染だから。

 

 

「……まぁな」

 

 

自分に足りなかったのは、いや、忘れていたものは、バトルを楽しむ心意気。姉がいなくなった事により損失していたこの感情は、今回の件を機に、その本心を5年ぶりに取り戻したのだった。

 

それと同時に椎名のことも認めた。あいつは強い。と。だが、次に戦う時は必ず負けない。【朱雀】と【赤羽】の名にかけて次は必ず倒すと心に決めた。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【ネフェルティモン】!!」


「ネフェルティモンはアーマー体にしては珍しく、成熟期から進化できるよ!ライフを回復したり、相手のブロックを通り抜ける効果を持ってる強力なアーマー体!!……そう言えば。司のやつ、一体何が言いたかったんだろう?」




最後までお読みくださり、ありがとうございます!
今日出てきた影技が誰かわかった人はすごいです!


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第7話「VSアイドルバトラー!流星を止めろ!」







 

 

 

 

 

 

 

 

とある日の平日。椎名はいつものように真夏とおしゃべりをして楽しんでいた。だが、今日の真夏は少し様子がおかしくて、

 

 

「なぁ!椎名!今度の休日、暇やったら輝夫様のライブ観に行かへん?」

「てる、らい、………なに?」

 

 

訳のわからないワードに頭を抱える椎名。それを見越したように真夏が説明を入れていく。

 

 

「輝夫様って言ったら【模手最 輝夫(もても てるお)】様に決まってるやないかぁ!………あのミカファール校卒のアイドルバトラー、歌って踊れて、バトルも超一流の最近話題の時の人や!」

「へ、へー、アイドルバトラー………ね」

「チケット買ったから一緒に行こうや!」

 

 

アイドルバトラーとは、真夏の言う通り、歌って踊れて、バトルも超一流のカードバトラーのこと。模手最輝夫はついこの間ブレイクしたてだが、その中でもトップに君臨する存在だった。

 

ちなみに、彼の母校であるミカファール校とは、界放市にある6つのバトスピ学園の1つで、プロのバトラーは当然のこと、アイドルバトラーまで目指せる珍しい学園だった。

 

椎名は田舎出身ということもあって、なかなか異性に対する考え方が歳相応にできていない。そもそもライブがなにをするのかもわからないのだ。

 

だが、親友が折角自分のためにチケットと言うものを買って着てくれたのだ。椎名としてもいかないという手はなかった。

 

 

 

******

 

 

 

そして時は経ち、一番近い休日。椎名と真夏は界放市にある大きなスタジアムの観客席に腰掛け、その模手最輝夫の登場を待っていた。余程人気があるのか、観客席はほぼ満員だった。

 

 

「お、おお、……広い…!」

「せやろせやろ!ここで輝夫様が歌うんよ〜!」

 

 

ここまで広い建物に入ったのは初めてだった椎名は妙に興奮が収まらなかった。こんな広い場所でたった一人で歌うのも結構きついだろうとも考えていたが、

 

 

(………なんだろうこの臭い、ちょっと嫌かも)

 

 

椎名はこの広いスタジアムに入ってから妙な臭いを嗅ぎ付けていた。それは少し鼻を刺すような嫌な臭いだった。真夏はこの臭いを嗅いでも平気なのだろうか。いつもなら「なんなん?この臭い!?臭いわぁ!」とか言いそうなのに。

 

 

「てか、なんや、あれ!?」

「ん?……わ!すごい!……悪の組織?」

「な訳あるか!」

 

 

2人が見つけたのは、会場中に充満している臭いを嗅ぎたくないからか、ガスマスクを着用している女性。地味な茶色いコートも着ている。雰囲気や佇まいで椎名や真夏よりかはずっと歳上の女性である事が示唆される。椎名が悪の組織と例えるのも無理ないだろう。

 

ただ、やはりそのガスマスクのせいで悪目立ちしているのは確かな事であって、

 

 

「世の中いろんな人がいるんやな」

「不思議だね」

 

 

少々気になるが、あまり話しかけれるような雰囲気をなるわけもなく、2人はその怪しげな女性を見なかった事にするように目を背けた。

 

ーそんな時、嵐が巻き起こる。それはこのスタジアムを訪れたほとんどの観客たちが待ち望んでいる事であって、

 

 

「え!?なに?……真っ暗!」

「……くるでぇ!」

 

 

突如ほとんどの照明が消え、ステージの一点だけとなる。そして、そこに照らし出されていたのは、絶世の美男子、模手最輝夫だった。

 

 

「はーーあぁい!レディ達!待っててくれてセンキュー!」

 

 

ただその一言だけで騒音に近い黄色い声がスタジアムを駆け巡る。真夏も同様にその声を送るが、椎名だけはうるさ過ぎて思わず耳を手で覆いかぶせていた。

 

模手最輝夫は確かに誰が見ても美男子と言える容姿だった。ファンが多い訳だろう。

 

 

「あれが、アイドルバトラー?」

「せやせや!かっこええやろ?」

「ははっ、そだね」

 

 

苦笑いする椎名。何故だか、今日は、いや、この間から真夏の様子がおかしい気もしていた。この模手最輝夫と言う男にハマってからか、このスタジアムの異臭からかは定かではないが、いつもの真夏ではない。椎名はそんな気がしていたのだ。

 

模手最輝夫はその後も、アイドルらしくファンサービスを続け、歌って踊った。正直歌はあんまりうまいとは言えないが。アイドルバトラーで、イケメンだったらなんでもセーフなのだろう。

 

 

(ん?あの娘、……あれが効いていないのか?)

 

 

模手最輝夫は歌って踊りながら、スタジアムの観客席で自分に興味なさそうな目をしている椎名を目撃してしまう。他の女性はほとんど目をハートのようにしてこちらを見ていると言うのに。

 

椎名自身も最初こそ広いスタジアムで、妙に興奮していたものの、正直そこまでアイドルというものに興味がなかったため、内心早く帰りたかった。

 

そして、歌や、ダンスを全部やりきった模手最は、マイクを手に持ち、本日のスペシャルなイベントのことを語らい出す。本当はそんなものはないのだが、

 

 

「よし!レディ達!今日のメインイベントだ!…………今からこのスタジアムで選ばれたレディが、この俺とバトルすることができるぜぇ!!」

 

 

模手最がマイクを使って、テンションを上げらがらそう言うと、観客席の方達も、また熱が入ったように盛り上がりを見せる。あのアイドルバトラーの模手最輝夫とバトルスピリッツができるのだ。ファンは涎ものだろう。

 

椎名もバトルができると聞いて少し反応するが、この人数だ。まさか選ばれるとは思えなかった。だが、奇跡は起こる。

 

 

「俺とバトルするのは…………君だ!」

 

 

模手最が何処かへ指を刺すと同時に、天空から差し込んでくる一筋の光は瞬く間に椎名を照らし出した。椎名は最初何が起こったのか全くわからなかった。ただ、急に眩しくなって、周りの視線が一気に集まったのを感じた。

 

 

「ん?なにこれ」

「あんた選ばれたんよ!凄いやん!羨ましいわ〜!」

「ええ!?なに、バトルできるの?」

 

 

そう言うと椎名は広いスタジアムを素早く降りて、模手最と同じステージに立った。まさかこの人数で選ばれるとは思ってもいなかったが、実はこれはランダムではなく、模手最が選んだことであり、

 

 

「さぁ!レディ!いや、キュートガール!俺とバトルだ!」

「きゅっ?…なに?………まぁいいや、芽座椎名って言います!歌と踊りは苦手だけど、バトルは得意だよ!」

(ふふ、これで君も僕の虜になるのさ)

 

 

周りには爽やかな笑顔を見せつつ、心の中で本性を現す模手最。

 

模手最は学生の頃から、地球上の全ての女性をものにすると言う目標があった。椎名が観客席で全く興味がなさそうな顔をしていたため、無理にでも自分に目を向けさせたかったのだ。つまりは自分のバトルの腕を見せつけ椎名を惚れさせようと言う魂胆だ。

 

椎名はそんなことはつゆ知らず、Bパッドを展開し、バトルの準備を進めていた。椎名にとってはつまらないイベントから急に楽しいイベントに早変わりしたのだ。しかも相手はバトスピ学園の卒業者。真夏も超一流と言っていたし、強者だろうと容易に推測ができた。より楽しみになる。「キュートガール」とまた妙な渾名を付けられたのは少々気になったが、

 

 

「よし!行くぜ!キュートガール!」

「はい!よろしくお願いします!」

「「ゲートオープン界放!!」」

 

 

ステージでのバトルは華やかだ。界放の宣言をすると、まるで花火がその場で散るようにフィールドを形成していく。流石はアイドルバトラーと言ったところか、何をやらせるにしても派手だ。

 

ーバトルの先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の第一手、彼女の足元から額にブイの字が刻まれている青き竜、ブイモンが元気に盤面へと飛び出してくる。

 

 

「召喚時効果発揮!……カードをオープン!」

オープンカード

【ライドラモン】○

【風盾の守護者トビマル】×

 

 

効果は成功。アーマー体のライドラモンのカードが椎名の手札に加わった。

 

 

「よし!ライドラモンを手札に加えて、ターンエンド!」

手札4⇨5

 

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

先行の第1ターンなどやれる事は限られる。椎名はターンを終えた。

 

 

[ターン02]模手最

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!俺はミノタコルスをLV1で召喚するよ!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

模手最が初めて場に呼び出したのは、牛頭で槍を携えた青のスピリット、ミノタコルス。低コストのスピリットだが、たったこれだけの行いで、黄色い声援が送られる。これもトップアイドルバトラー故か。

 

 

「アタックステップ、ミノタコルスでアタック!」

 

「ライフで受ける!…………痛っ!!」

ライフ5⇨4

 

 

早速ミノタコルスに指示を送り、アタックさせる模手最。BPが低いブイモンをブロックさせるわけもなく、椎名は自分のライフを差し出す。ミノタコルスはその槍で椎名のライフを一突きで1つ貫いてみせた。

 

椎名はいつもよりバトルでの痛みを強く感じる。

 

 

「いった〜〜〜、なんだ!?」

「それは愛の痛み!……君が俺に心を奪われている証拠さ!」

「愛?」

 

 

手持ち無沙汰な右手をスナップさせながら、キザな言い回しをする模手最。椎名にはまるで意味が伝わらずその顔をキョトンとさせていた。

 

 

「ターンエンド……さぁ!キュートガールのターンだ!」

ミノタコルスLV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト無

 

 

別に気にするほどの痛みでもないため、椎名はそのままバトルを続行する。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「よし!メインステップ!ライドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払って、青き稲妻!ライドラモンを召喚!」

リザーブ5⇨4

トラッシュ0⇨1

 

 

ブイモンの頭上に投下されるのは、黒くて独特な形をした卵。それはブイモンと衝突し、混ざり合い、進化する。青き稲妻を迸らせるアーマー体スピリット、ライドラモンが召喚された。

 

 

「召喚時にコアを2つトラッシュへ!」

トラッシュ1⇨3

 

 

ライドラモンが放つ雷が、椎名のトラッシュへと落ち、ボイドからの恵みを与えた。

 

 

「そして、ブイモンを再び召喚!」

手札6⇨5

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨5

 

 

椎名の場に、【アーマー進化】の効果で手札に戻っていったブイモンが再び姿を見せた。

 

 

「ブイモンの召喚時!…カードオープン!」

オープンカード

【風盾の守護者トビマル】×

【フレイドラモン】○

 

 

効果の発揮は成功。椎名はフレイドラモンのカードを手札に加える。

 

 

「よし!アタックステップだ!ブイモンと、ライドラモンでアタック!」

手札5⇨6

 

「どっちもライフで受けるよ!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

ブイモンと、ライドラモンによる高速の体当たりが、模手最のライフを1つずつ破壊した。ライフを割った瞬間にとても濃度の高い黄色い声援が、椎名に対するブーイングへと様変わりする。完全に椎名はアウェイだった。

 

 

「ターンエンド!」

ブイモンLV1(1)BP2000(疲労)

ライドラモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

だが、椎名は特にアウェイになっているのを気にしたりはしない。いや、目の前のバトルに夢中になりすぎて、それを感じていないだけか、

 

 

[ターン04]模手最

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

ミノタコルス(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!……バーストを伏せて、ミノタコルスをLV2へアップ!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨5

ミノタコルスLV1⇨2

 

 

模手最の場にバーストが伏せられると同時に、ミノタコルスの力が上昇する。

 

 

「アタックステップ!いけ!ミノタコルス!」

 

 

再びミノタコルスでアタックさせる模手最。この行為は一見無駄に見える。何故なら椎名の手札には今、フレイドラモンのカードがあるからだ。

 

 

「フラッシュタイミング!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払って、炎燃ゆるスピリット、フレイドラモンを召喚!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ5⇨6

 

 

ブイモンに炎の文様が刻まれた卵が頭上に投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、進化する。熱き炎の竜人スピリット、フレイドラモンが召喚された。これで椎名のデッキの2大エースが揃う。

 

 

「フレイドラモンの召喚時!相手のBP7000以下の相手のスピリット1体を破壊!ミノタコルスだ!……爆炎の拳!ナックルファイア!」

「……!!……ミノタコルス!」

 

 

フレイドラモンの炎の鉄拳が、BP5000のミノタコルスを襲う。ミノタコルスはなすすべなくそのまま破壊されてしまう。

 

 

「そして、カードを1枚ドロー!」

手札6⇨7

 

「………なかなかやるね、キュートガール、俺はこれでターンエンドさ!」

 

バースト有

 

 

 

盤面のカードをバースト以外空にされてしまう模手最。だが、これは作戦のうち、フレイドラモンが見えた時点でそうする予定だった。他のスピリットをまともに召喚してしまえば、間違いなくフレイドラモンの餌食になるため、あえて召喚はせずに、ミノタコルスを犠牲にしたのだ。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨7

トラッシュ6⇨0

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ガンナー・ハスキーを3体と、猪人ボアボア!ブイモンを召喚!」

手札8⇨3

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名はトドメを刺すべく、手札に溜めていたスピリット達を一気に展開。見た目は犬だが、拳銃を持つために青い腕を背中に生やしたスピリット、ガンナー・ハスキーが3体と、鎖付き鉄球を振り回す猪頭のスピリット、ボアボア。そして、ブイモンが召喚された。

 

 

「さらに、バーストをセット!」

手札3⇨2

 

 

最後に椎名はバーストを念入りに伏せて、アタックステップへと移行していく。

 

 

「アタックステップ!……これで決まりだ!ボアボアでアタック!効果でLVを上げつつ、コアブースト!」

猪人ボアボアLV1⇨2(1⇨2)

 

 

猪人ボアボアが手持ちの鎖付き鉄球を振り回す。ボアボアだけでない、他の7体のスピリット達も今にも模手最を攻撃しようと戦闘態勢に入っていた。

 

だが、やはり学園の卒業生か、一筋縄ではいかない。模手最はこのタイミングであるカードを手札から引き抜く。

 

 

「フラッシュタイミング!マジック!スプラッシュザッパーを使用!この効果でコスト7以下のスピリット3体を破壊!……俺が選ぶのはブイモン、ライドラモン、フレイドラモンの3体だ!」

手札4⇨3

リザーブ8⇨2

トラッシュ0⇨6

 

「なにぃ!?」

 

 

鋭い水の斬撃が指定された3体を襲う。ブイモン、ライドラモン、フレイドラモンは耐えきれずに爆発してしまう。

 

スプラッシュザッパーは、大きなコストのマジックだが、決まれば最大で3体のスピリットを破壊できる強力なマジックだ。椎名のデッキはコスト7以上のスピリットが存在しないため、このカードの影響はどうしてももろに受けてしまう。

 

 

「くっ!…だけど、ボアボアのアタックは継続だよ!いけ!ボアボア!」

 

「ライフで受けよう!」

ライフ3⇨2

 

 

ボアボアの鉄球が模手最のライフを砕く。だが、これも模手最の計算通り、伏せられているバーストが勢いよく開かれていく。

 

 

「ライフの減少でバースト発動!雷神轟招来!4以下の数字を指定し、指定された相手のコストのスピリットを全て破壊する!……俺は2を指定!」

「2!?てことは……ガンナー・ハスキー達か!?」

 

 

ガンナー・ハスキー達に、落雷が落とされる。指定されたコストの対象内の彼らは当然耐えられずに破壊されてしまった。

 

この2大マジックで、椎名の場に残ったのは猪人ボアボアだけとなってしまう。椎名は攻め手どころか守り手すら失ってしまった。

 

 

「くっそ〜、このターンで決めれると思ったのに、…ターンエンド」

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

 

バースト有

 

 

[ターン06]模手最

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨10

トラッシュ6⇨0

 

 

「さぁ!このターンがショウタイムだ!」

「……!!」

 

 

さっきまでとは何か違う雰囲気を漂わせる模手最。椎名はより一層警戒心を強くする。ファンの人達はまるでこの時を待っていたかのように拍手や、光る棒みたいな物や、団扇を振っていた。

 

 

「先ずは下準備!チャコペッカと獣士オセロットを召喚!」

手札4⇨2

リザーブ10⇨8

 

 

先ず模手最が召喚したのは猪のようなスピリット、チャコペッカと、巨大な斧を振りかざす虎のようなスピリット、獣士オセロット。

 

 

「さらに、マジック!湧力招海をソウルコアを使って使用する!手札を2枚ドローし、1枚捨て、【連鎖】の効果を持つスピリット、猪人ボアボアを破壊する!」

手札2⇨1⇨3⇨2

リザーブ8s⇨7

トラッシュ0⇨1s

 

「…!!……ボアボアまで、」

 

 

模手最は手札を入れ替えると同時に、ボアボアまで破壊してくる。ボアボアは地面から現れる謎の青き力によって沈められてしまう。これで椎名の場にはバーストのみとなった。

 

しかも、ここで模手最に狙い通りのカードを引かれた。

 

 

「ハッハッハ!やはり来てくれたね!……次に俺はアルティメットカード、アルティメット・エルギニアスをLV3召喚!」

手札2⇨1

リザーブ7⇨5

トラッシュ1s⇨2s

 

 

模手最は勢いよくBパッドにカードを叩きつける。そして金色の鱗粉を振り払い、青の牛型のアルティメット。アルティメット・エルギニアスが召喚される。

 

 

「……!!…アルティメット!……すごい!」

 

 

アルティメットとは、スピリットとはまた違う別次元の存在。それらは完全にスピリットを超越しており、LVも3からスタートし、スピリットのみを対象とした効果は一切受け付けない。ただし、召喚条件などのデメリットも多数存在する。

 

 

「そう、アルティメットだ。だけど、これだけじゃない!エルギニアスなど、ただのバックダンサーさ!……さらに召喚する!来い!流星の如く!アルティメット・ドライアンをLV4で召喚!獣士オセロットの【スピリットソウル:青】により、最大軽減して、支払うコストは3!」

手札1⇨0

リザーブ5⇨0

トラッシュ2s⇨4s

 

 

【スピリットソウル】はアルティメットの召喚を手助けするスピリットの効果。アルティメットを召喚する際に指定された色のシンボルを1つ増やす効果を持っている。

 

流星の如く降り注いでくるのは金色の鱗粉を纏った青き竜。その勇ましい4本足で着地し、その鱗粉を咆哮と共に弾け飛ばす。

 

アルティメット・ドライアンはアルティメットの中でもかなり強力な部類のカードだ。このアルティメットの登場で、観客のファン達はより一層盛り上がる。そして、椎名もまた、

 

 

「すごい!かっこいい!!」

「だろ?俺の美貌……は」

「アルティメット・ドライアン!」

(そっちか………何故だ、何故、この娘は俺の美貌の虜にならない!?…薬は効いてないのか!?)

 

 

模手最は悔しさを表すかのように歯をを噛み締めながらアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップだ!いけ!アルティメット・ドライアン!アタック時の【WU(ダブルアルティメット)トリガー】ロックオン!」

 

 

アルティメット・ドライアンが走り出すと同時に、模手最は、自分の手を指鉄砲のように曲げ、それを椎名のデッキに向ける。すると、椎名のデッキから2枚のカードが弾け飛んだ。

 

 

「……アルティメットトリガーの効果か!」

 

 

アルティメットトリガーとは、アルティメットだけが持つ特有の効果。相手のデッキをトラッシュに送り、そのコストが発揮したアルティメットより下の場合はヒットし、その強力な効果を使用できるのだ。アルティメット・ドライアンはその中でも特に特別なダブルアルティメットトリガー。つまり2枚のカードをめくれる効果を持っていた。

 

 

「さぁ!コストはなんだい?」

「コスト4の鎧殼竜グラウン・ギラスと、コスト3の風盾の守護者トビマル」

 

「ダブルヒット!……効果により、アルティメット・ドライアンはLVが2つ上がり、6になる。さらに、ダブルヒットならば、アルティメット・ドライアンは回復する!」

アルティメット・ドライアンLV4⇨6(疲労⇨回復)

 

「え!?…回復!?」

 

 

アルティメット・ドライアンは最大LVの6になると同時に、疲労状態から回復状態となる。アルティメット・ドライアンのBPはこれで28000。椎名のデッキのスピリット達では到底追いつけないものとなってしまう。

 

 

(あれ、あいつのコスト7だよね?……これってやばいかも)

 

 

椎名は気づいてしまう。アルティメット・ドライアンと、自分のデッキの相性の悪さを。それは言ってしまあば、アルティメット・ドライアンは椎名が相手だと、ずっとアタックができてしまうのだ。

 

何故なら椎名のデッキにはコストが7以上のカードはないからだ。アルティメットトリガーはガードするためにはコストがそれより同じ以上でなければならない。

 

だけれども、まだ椎名にも対策はある。

 

 

「アタックはライフで受ける!……うわぁ!」

ライフ4⇨3

 

 

アルティメット・ドライアンの高速の爪撃が、椎名のライフを砕いた。椎名はまたいつも以上の痛みを感じる。そもそもこれは立体映像だ。普通は痛みなどはない。あまりのリアルさに、脳が錯覚して思わず叫びたくなる時はあるが、普通の痛みなどは来ないはずだ。

 

だが、椎名は全くそんなことは気にしていない。それは彼女が無頼のバトスピ馬鹿であるからと言う以外の理由はありえない。椎名はそれすらも錯覚だと認識していた。

 

ー条件が整ったバーストが勢いよく開かれる。

 

 

「ライフの減少により、バースト発動!No.26キャピタルキャピタル!効果によりこれを配置!」

「………!!」

 

 

椎名の場に、空中に浮かぶ都市が出現する。それは模手最のフィールド全体に影響を及ぼすものであって、

 

 

「キャピタルキャピタルがあるとき、相手はソウルコアが置かれていないスピリット、又はアルティメットでアタックする時は、リザーブのコアを1つ支払わないといけない!」

「ぐっ!………今の俺のリザーブはゼロ。ソウルコアはトラッシュにある」

 

 

模手最のソウルコアはさっきのメインステップ時に使用した青のマジック、湧力招海のコストに使われたため、このターンは使えない。

 

つまり、模手最はこのターン、これ以上のアタックはできなくなってしまった。決めるターンに決めることができなかった悔しさを感じながら彼はそのターンを終了させた。

 

 

「……ターンエンド」

チャコペッカLV1(1)BP1000(回復)

獣士オセロットLV1(1)BP1000(回復)

アルティメット・エルギニアスLV3(1)BP5000(回復)

アルティメット・ドライアンLV4(2)BP17000(回復)

 

バースト無

 

 

奇跡的に凌ぐ椎名。だが、次でなんとかしなければ、負けるのは必至だ。たった1枚のキャピタルキャピタルなど、一回きりの噛ませに過ぎない。

 

 

「ふぅっーー!!……助かったよ!王女さん!」

 

 

椎名はキャピタルキャピタルの元々の主に感謝する。割とノーガードになりがちな自分のデッキとは意外と相性が良かった。

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ10⇨11

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ11⇨14

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!いいの引いたよ!先ずは、キャピタルキャピタルにソウルコアを置いて、よし!……頼むよ!ワームモンをLV3で召喚!」

手札3⇨2

リザーブ14s⇨6

No.キャピタルキャピタル(0⇨1s)

トラッシュ0⇨2

 

 

キャピタルキャピタルにソウルコアが置かれる。これで効果が倍増するようになる。そして、椎名が呼び出したのは新たなるスピリット、芋虫のような外見だが、とても可愛らしい、緑の成長期スピリット、ワームモン。

 

だが、その姿を目にした途端、模手最は背筋が凍りつくように震え上がる。とても体が痒くなってくる。彼は虫が大の苦手なのだ。

 

 

「な!?……虫!?……キモっ!!」

「キモいとか言うな!ワームモンをなめたら痛い目にあうよ!」

「そんなのにこの俺様がやられるわけないだろ!!」

 

 

模手最は椎名が思ったよりも強かった事や、苦手な虫の登場により、いつものペースを崩されつつあった。口調も心の中に潜むものへと変わってきている。

 

椎名はここで、ワームモンの召喚時の効果を使用する。これは運命の分かれ道。これでいいものが引けるかに全てが決まる。

 

 

「ワームモンの召喚時効果!デッキから2枚のカードをオープンし、その中の「完全体」、「究極体」を手札に加える!……お願い私のデッキ!!」

オープンカード

【ニードルライド】×

【チェイスライド】×

 

 

勢いよく捲るが、これらはスピリットですらない。当然トラッシュへと破棄される。だが、この2枚はこの状況では最強にして最高のカード達であって、

 

 

「ハッハッハ!残念だったな!次で俺の勝ちだ!」

「いや、これでいい。そもそも私のデッキに完全体も究極体も入ってはいない」

「なに!?」

 

 

それならば単純にデッキを削っただけだ。もっと言えば、ワームモンなんていうカード自体、入れる価値がないようにも思える。だが、それはこのターンのエンドステップにわかることであって、

 

椎名はさらにターンシークエンスを進めてアタックステップへと移行する。この時にワームモンの第2の効果が発揮される。

 

 

「アタックステップ!その開始時にワームモンの【進化:緑】を発揮!ワームモンは幼虫から蛹となり、成虫へと進化を果たす!成熟期のスピリット、スティングモンを召喚!LVは3だ!」

 

 

ワームモンにデジタルのベルトが巻かれていき、姿形を変えていく。そして、新たに現れたのは、スマートな人のような姿をした昆虫型スピリット、成熟期のスティングモンが召喚された。

 

 

「い、芋虫が、成虫に!?」

 

「スティングモンの召喚時、及びアタック時の効果で、ボイドからコアを1つスティングモンの上に置く!」

スティングモン(5⇨6)

 

 

スティングモンにコアの恵みが送られる。だが、いくら頑張ったところで、スティングモンのBPは10000。模手最のアルティメット・ドライアンには勝てない。椎名はアタックステップをそのまま終了させてエンドステップへと移行する。

 

 

「エンドステップ!トラッシュに送られた、ニードルライドと、チェイスライドの効果を発揮!この2枚はエンドステップ時にトラッシュから私の手札へと舞い戻ってくる!」

手札2⇨4

 

「なに!?……そういうことだったのかっ!」

 

 

椎名の手札にトラッシュから新たに2枚のカードが追加される。椎名の狙いはこの効果を使うことであった。それでも2枚中2枚を当てるのは流石と言ったとこか。

 

 

「これで正真正銘!ターンエンドだよ!」

スティングモンLV3(6)BP10000(回復)

 

No.26キャピタルキャピタルLV1(1s)

 

バースト無

 

 

「くっ!だが、所詮はBP10000の雑魚だ!アルティメット・ドライアンで討ち取ってやる!」

 

 

[ターン08]模手最

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札0⇨1

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!アルティメット・ドライアンにソウルコアを追加し、アルティメット・エルギニアスをLV4にアップさせる!」

リザーブ6s⇨3

アルティメット・ドライアン(2⇨3s)

アルティメット・エルギニアス(1⇨3)LV3⇨4

 

 

アルティメット・ドライアンにソウルコアが置かれる。これでこのアルティメットだけは椎名のキャピタルキャピタルの効果を受け付けなくなる。

 

 

「アタックステップ!アルティメット・ドライアンでアタック!【WUトリガー】ロックオン!」

「………コストは3と、4……ブイモンと、エクスブイモンのカードだ」

 

「なら、ダブルヒット!ドライアンは回復しつつ、LVを6、BP28000へとアップさせる!」

アルティメット・ドライアンLV4⇨6(疲労⇨回復)

 

 

どうやってもヒットは防げない。椎名のデッキではアルティメット・ドライアンは必ず回復してしまう。だが、ここで椎名が呼び起こした奇跡のカードが光輝く。

 

 

「フラッシュタイミング!マジック!ニードルライド!系統に殼人を持つスピリット1体をBP+3000、それをスティングモンに与える!さらに、アルティメットとバトルするならBP+7000を追加で加える!…………そして、スティングモンでブロック!」

手札4⇨3

リザーブ6⇨4

トラッシュ2⇨4

スティングモンBP10000⇨13000⇨20000

 

 

緑のマジック、ニードルライドは、椎名のデッキにとっては殼人を持つスティングモン専用のマジック。アルティメットとバトルするならBPを合計10000上昇させる効果を発揮する。だが、

 

 

「足りないな!BP28000だと聞こえなかったのか!!!やれ!ドライアン!」

 

 

流星の如くの高速移動で、スティングモンを捉え、一気に爪や牙の一撃でそれを破壊しようとするアルティメット・ドライアン。そして、それは一瞬のうちに通り過ぎるかのようにスティングモンを砕き、破壊。…………したかに思われた。

 

 

「な、なに!?」

 

 

なんと、砕けていたのはスティングモンではなく、ドライアンの爪や牙。スティングモンはかすり傷1つとしてついてはいなかった。アルティメット・ドライアンは地面へと落ちていく自分の牙を目で追いつつ、とても驚いていた。

 

 

「なぜだ!BPはこっちの方が8000も上なんだぞ!」

 

 

訴えるように怒鳴る模手最。だが、スティングモンはちゃんと正当な理由でアルティメット・ドライアンを超えていた。

 

 

「私はもう一枚のニードルライドを発揮してたんだ、これで、スティングモンのBPはさらに10000上昇して、」

手札3⇨2

リザーブ4⇨2

トラッシュ4⇨6

スティングモンBP20000⇨23000⇨30000

 

「び、BP、……30000だとぉ!?」

 

 

椎名は咄嗟に、元々持っていたもう一枚のニードルライドを使ったのだ。これでスティングモンはBP30000となり、逆にアルティメット・ドライアンを砕いてみせたのだ。

 

 

「そこだ!スティングモン!………スパァァイキィィング、フィニィッシュ!!」

 

 

スティングモンは自分の背後に回ってきたアルティメット・ドライアンを捉えて、自身の拳を叩き込む。するとそれには猛毒が仕込まれていたのか、アルティメット・ドライアンは破裂するように爆発した。

 

 

「う、嘘だ、この俺のアルティメットが、………いや、まだだ。破壊された時に置かれるコアを使えば……よぉし、」

 

 

アルティメット・ドライアンの破壊によって増えたリザーブのコア。模手最はこれを使って、椎名のキャピタルキャピタルをすり抜ける作戦へと切り替えてきた。

 

 

「アルティメット・エルギニアスでアタック!【Uトリガー】ロックオン!」

リザーブ6⇨4

トラッシュ0⇨2

 

「…………私にも運のツキが回ってきたね!コストは3。ワームモンだ!!」

 

 

エルギニアスのコストは僅か3。あまり当たるようなコストではない。だが、既に頭数は十分椎名の残りのライフを破壊するには十分であって、

 

 

「これで終わりだぁぁぁあ!!!美しい俺に見惚れろぉぉぉお!!」

 

 

なかなか自分に見惚れない椎名に、徐々に自分のペースを崩されてきた模手最はとうとう心の奥底から自分の欲を出していく。その顔はアイドルとは思えないほど狂気に満ちている。だが、椎名はその言葉をスルーするように、手札のカードを引き抜いていく。

 

 

「フラッシュタイミング!マジック!チェイスライド!この効果で相手のスピリット1体を疲労させる!獣士オセロットを疲労!」

手札2⇨1

リザーブ2⇨1

トラッシュ6⇨7

 

 

「なっ!?」

獣士オセロット(回復⇨疲労)

 

 

また回収されたカード。今度はチェイスライドが発揮される。この効果によって、オセロットが疲労。これで、頭数が足りなくなる。

 

 

「アタックはライフで受ける!………ぐぅ!……やっぱり痛い」

ライフ3⇨2

 

 

アルティメット・エルギニアスの猪突猛進なアタックが椎名のライフを1つ砕いた。

 

 

「た、ターンエンド……だ」

チャコペッカLV1(1)BP1000(回復)

獣士オセロットLV1(1)BP1000(疲労)

アルティメット・エルギニアスLV4(3)BP7000(疲労)

 

バースト無

 

 

現在。模手最の残った手札1枚は防御札ではない。ライフは残り2つ。椎名の残った手札にはワームモンが必ずあるため、次のターンで椎名がドローステップでスピリットを引けば、このバトルの勝者は椎名となるのだ。

 

 

[ターン09]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨10

トラッシュ7⇨0

 

 

「メインステップ!ワームモンをLV3で召喚して、アタックステップだ!」

手札2⇨1

リザーブ10⇨4

トラッシュ0⇨1

 

 

椎名のフィールドに、ワームモンが再び現れるが、それ以上のスピリットは出ることはなかった。

 

 

(……!!……スピリットを引けなかったか!)

 

 

模手最は内心で大喜びする。椎名はここで決められなかったら、流石に負けるだろう。

 

 

「スティングモンでアタック!」

スティングモン(6⇨7)

 

「ライフで受ける!」

ライフ2⇨1

 

 

スティングモンの拳が、模手最のライフを1つ砕いた。後1つだが、模手最の場にはまだ回復状態のチャコペッカが残っており、

 

 

「ワームモン!アタックだ!」

「無駄だ!チャコペッカでブロック!」

 

 

BPではワームモンが上。だが、ブロックされてはライフを減らすことはできない。模手最が勝利を確信したその時だった。

 

 

「フラッシュタイミング!マジック!ワイルドライド!効果の対象はワームモンだ!」

手札1⇨0

リザーブ4⇨3

トラッシュ1⇨2

ワームモンBP6000⇨9000

 

「!?!!」

「ワイルドライドは、このターンの間、指定したスピリットがBPを比べて相手のスピリットだけを破壊した時、そのスピリットを回復させる効果も与える!!」

「な!?!!」

 

 

ワームモンの体当たりがチャコペッカを吹き飛ばす。チャコペッカはあえなく破壊されてしまった。そして、ワイルドライドに与えられた効果が発揮される。

 

 

「バトルに勝利したワームモンを回復!」

ワームモン(疲労⇨回復)

 

 

ワームモンが緑の風を受け、疲労から起き上がる。そして、

 

 

「最後のアタックだ!いけ!ワームモン!!……その名を指し示せ!!!」

 

 

ワームモンが体当たりするように飛び込んでいく。模手最は苦手な虫が飛び込んでくることに恐怖を覚える。人型に近いスティングモンはまだしも、ほぼ芋虫に近いワームモンは嫌だったのだろう。

 

 

「う、うわぁぁぁあ!!虫は無理なんだってばぁぁぁあ!!」

ライフ1⇨0

 

 

そのまま直撃し、最後のライフを砕いてみせた。これでこのバトルの勝者は椎名。見事バトスピ学園の卒業生を討ち取ってみせた。

 

 

「よし!私の勝ち!!」

 

 

ガッツポーズで勝利を噛みしめる椎名。スティングモンとワームモンも勝鬨をあげる。模手最はまさかの敗北にショックを受け、肩から崩れ落ちていく。

 

 

「くそっ!なぜだ!なぜあのキュートガールはこの俺に惚れないんだ!…………なぜ、薬が効かない!?!」

「さっきからその惚れるとか惚れないとか、なに?」

「………そこまでよ!模手最輝夫!!」

「「!!」」

 

 

椎名と模手最は声のする方へと目を向ける。声の主は、ガスマスクを着用していたあの謎の女性だ。

 

 

「あ、さっきの」

「なんだあんたは!」

「あら、『そこまでよ』と言ったはずよ」

 

 

女性がそう言い終わると、スタジアムの端から端までの隅々から厳つい警官達がわらわらと何人も飛び出してくる。それは瞬く間に模手最を持ち上げ、連れ去ろうとする。ファンのブーイングなど、誰もまるで気にするそぶりすら見せずに。

 

 

「おい!なにすんだ!むさ苦しいオス共め!この俺を誰だと思っている!!世界の美男子、模手最輝夫様だぞ!!」

 

 

そう言いながらも、模手最は大勢の警官達に上に持ち上げられながら、このスタジアムを去っていった。椎名は顔をキョトンとさせていた。一瞬すぎて一体何が起こったのかさっぱりわからなかったのだ。

 

 

「ありがとう!お嬢さん、お陰さまで、模手最を逮捕できたわ!」

 

 

舞台に立っている椎名のところまで赴き、ガスマスクを外しながらそう言う女性。声から予測できた通り、見た目はだいぶ若く見えるものの、アラフォーと言った感じの女性だ。

 

 

「はぁ、……模手最って人、何か悪いことでもやったんですか?」

「奴は、女性の人気を確保したいがために、薬に手を出したのよ、貴女は効いてなかったみたいだからわかるでしょう?あの変な臭い」

「あぁ、あれ、薬だったんだ」

「あれは模手最に釘付けにされてしまう不思議な薬だったのよ」

 

 

模手最は落ちこぼれだった。バトルの腕前は卒業生の中でもそこそこはあったものの、アイドルバトラーとしては顔が整っているだけの半人前だった。

 

そこでその女性が言っていた薬に手を出した。それは自分に少しでもかっこいいと感じれば即ファンとなってしまう。変だが、危ない薬。顔は整っている模手最にとっては相性が抜群であると言えた。

 

ただ、椎名には一切効き目がなかった。それは彼女が全く彼のことをかっこいいと思わなかったから、椎名は遠い島出身であることや、天真爛漫な性格ゆえに、そう言った感情はあまり、と言うか、全く持ち合わせてはいなかったのだ。

 

そして、それのおかげで、模手最はボロをだし、自分で薬を使っていることを示唆するような台詞を言ってしまっていたのだ。それが証拠となり、結果的に彼の逮捕に繋がった。マスクの女性、いや女警察官や他の警察官はこのように彼がボロを出すのをずっと首を長くして待っていたのだ。

 

 

「申し遅れたわね、私は警視よ!【一木聖子(いちきせいこ)】。よろしくね!ピュアホワイトちゃん」

 

 

聖子は手帳を見せながら、右目だけウィンクし、椎名に名前を名乗った。それとまた妙な渾名もつける。おそらく椎名が純粋な子だと思ってのネーミングだろう。

 

 

「……か、カッコいい!!………私!芽座椎名って言います!よろしく!聖子さん!」

「えぇ、また何かあったらお願いねぇ」

 

 

そう柔らかい声で言い。かっこよく、逞しい背を向けて、無敵の女警察官はこの場を後にした。椎名はまだ知らない。これからもこの女性と関わりを持つことに。正確にはこの女性が追いかけているある事件に関わることになるか、

 

一方で、真夏は薬の効果が切れるのに一週間かかった。

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【スティングモン】!!」

「スティングモンは、緑の成熟期スピリット。召喚時とアタック時にコアを1つ置くことができるよ!」






最後までお読みくださりありがとうございます!
後、一応、Twitter初めました。ネットでの会話が苦手な私ですが、フォローしてくださるととても嬉しいです。ネームはいつも通り、バナナの木です。


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第8話「英雄を継ぐ者VS英雄の弟子!炎と炎!」

 

 

 

 

 

「いけぇ!フレイドラモン!……渾身の爆炎!ファイアァァ!ロケット!!」

 

 

第3スタジアムのバトル場で椎名のフレイドラモンが炎を纏い、赤き駿馬、【エグゼシード・ビレフト】に飛び向かっていく。そのエグゼシード・ビレフトを扱っているのは、晴太だ。つまり今は椎名と晴太がバトルしている。

 

この2人がなぜバトルをしているのか、それはほんの30分前に遡る。

 

 

******

 

 

ここは椎名達の教室。授業は終わり、今は放課後。ここからは学生達の自由時間だ。勉強するのも、普通に帰宅するのもあり、スタジアムに向かってバトルをするのも学生の自由だ。

 

そんななか、椎名と真夏はいつものように残ってお喋り。まぁ、普通の女子高生らしいと言えば、らしいが。

 

その内容はこの間の、模手最輝夫の違法薬使用の事件。

 

 

「あぁ!もう!思い出しただけでも腹立つわぁ!ほんまに!!……なんで、あんなのに惚れとったん!?私は!」

「まぁまぁ、薬も抜けたんだし、逮捕されたんだし、もういいじゃん!」

 

 

あのちょっとした事件以後、真夏は模手最に対して怒り狂っていた。薬のせいとは言え、まさかあんなのに惚れていたのは彼女にとって一生の恥だったのだろう。

 

それでも一木聖子のお陰で、ようやく不正がバレ、模手最を現行犯として逮捕できたのだ。椎名の言う通り、水に流しても大丈夫だろう。

 

 

「いやぁ、でも、卒業生ってあんなに強いんだね〜今回は流石に負けたかと思ったよ!」

「あんたはどこまでもどこまでもそれなんやね……………………そう言えば、椎名。あんた、好きな男の子とかおらへんの?」

 

 

真夏が咄嗟に思いついた質問。普通の女子高生なら当たり前にする恋バナだが、椎名がなにぶん普通ではなかったので、そんな話に発展する機会など全くなかった。今回の件でようやくそれっぽい言葉が言えた。

 

 

「ん?好きな男の子?」

「せやせや!なんかこう、メッチャ好き!って感じの奴おらんか?」

「んーーーー、えーーーっと。雅治」

「……………な、なんやとぉぉぉお!?」

 

 

椎名は思い出すように深く考えて答える。意外だった。まさかこの話の内容で雅治が出てくるとは、真夏は思ってもいなかった。雅治の椎名に対する気持ちはとてもわかりやすいため、当然真夏も理解していた。当の本人は全く気づいていないが、……これは雅治にとっても朗報。

 

ーのはずだったが、やはり、椎名は椎名であって、

 

 

「あと、は〜、司、…………くらい?後は兄弟とかか、……意外と少ないなぁ男の子って」

「ん?司?【朱雀】も好きなん?」

「うん!友達だし!」

 

 

真夏は驚いた。椎名は好きの意味を全く理解していなかった。簡単に説明するならば、ライクとラブの違いがわからないと言うことだ。まぁ、椎名自身、本気で恋なんてしたことないのだが。

 

 

「いや、ちゃうちゃう!ちゃうよ!そう言う意味じゃなくてな!……なんか、こう、憧れって言うか、尊敬?みたいな?、…むずいわぁ」

「…憧れ、尊敬、…………あっ!だったら1人いるかも!」

「おっ!誰や!言うて………み?」

 

 

真夏は椎名の幼さからして、本気で恋なんてしたことないと確信していた。そんな椎名が、憧れと、尊敬というワードで導き出した答えは本当に憧れていて、尚且つ尊敬している人物に違いない。そう、真夏は考えた。それならもしかしたらあの人ではないかと、真夏は椎名より先に口を開いてその人物の名を口にする。

 

 

「それって、ひょっとして【一木花火(いちきはなび)】プロのこと?」

 

 

一木花火。現役のプロバトラー。赤属性の使い手で、そのセンスの良さと、実力から、バトルの申し子と呼ばれることもある。もう彼は30近いから、子ではない気もするが。……だが、その若さで【伝説バトラー】に近づきつつあるのは確かなことであった。

 

真夏がそう推理した理由は、椎名がいつもゴーグルを首から提げているから。一木花火のファンは皆、彼の応援をする際は、彼と同じようなゴーグルを首から提げるのだ。

 

ーだが、椎名は、

 

 

「………誰?」

「えぇ!!じゃあ誰やねん!!?」

 

 

思わずずっこける真夏。だけれども、その推理は本当は的中していて、

 

 

「名前は知らないって言うか忘れたんだけど、昔さ、私に生きる力と勇気を与えてくれた人がいてねぇ、その人のかっこいいバトルに憧れて、私は今ここにいるんだ」

 

 

椎名は胸側にあるゴーグルに思いを募らせるようにギュッと握りしめてそう答えた。

 

 

「ふーーーん、てっきり一木プロかと思うたんやけどなぁ……………ちなみにこの人が一木プロやで、ファンの子はみんなあんたみたいにゴーグルつけとる」

「ヘェ〜〜〜これが………………ん?」

 

 

真夏がカバンから取り出したのはバトスピニュースがまとめてある週間冊子。そこには一木花火の活躍している瞬間の写真が一面に大きく載っていた。すぐ横には、彼の長年のエース、かつ、マイフェイバリットのウォーグレイモンも確認できる。

 

椎名はその写真を見て、思わず目を丸くした。そして、思い出した。この顔、ゴーグル、スピリット、…………そしてあの時のうろ覚えになっていた出来事も全て。そうか、この人が一木花火だったのか、と。

 

 

「結構、かっこええやろ!………あっ!そうそう!聞いて驚くなよぉ!なんとな!この人、晴太先生のお義兄さんなんやで!」

 

 

自分の推理が当たっていたことを知らずに椎名にその事実を言ってしまう真夏。それがしばらく続く椎名の暴走の事の発端となることは想像してすらいなかっただろう。

 

 

「………えぇ!!?…………てことは、晴太先生に言えば、この人に会えるの!?!」

「お、おお、どないしたん、急に興奮して………て、おぉぉぉおい!」

 

 

椎名は聞く耳を持たずにすぐさま走り出した。目指すは晴太がいるであろう。職員室だ。

 

 

******

 

 

「晴太先生!!!!」

「うおっ!」

 

 

椎名は勢いよく職員室の扉を開けた。思わず晴太や、作業中の他の先生達は背筋を動かしてしまう。

 

 

「おい、椎名ぁ、職員室はゆっくり開けろよなぁ」

「先生!私、一木花火さんって人に会いたいんです!」

 

 

落ち着きがない椎名は晴太に詰め寄り、目を輝かせながらそう言った。

 

 

「あぁ?花に、…いや、一木プロに会いたい?またなんで急に、……………(そういや、こいつのゴーグル、)」

 

 

思わずハッとなって言葉を詰まらせてしまう晴太。理由は椎名のかけているゴーグルにあった。そのゴーグルは椎名を最初見た時から見覚えがあった。あれは間違いなく一木花火の物だ。幼い頃から彼を見ていた晴太にはわかる。あれは彼の両親が誕生日プレゼントとして渡した一点もののゴーグルだ。今までは単なる偶然だと思っていたが、晴太はこれで確信した。間違いなく花火と椎名には関係性があると。

 

だが、一木プロは今、【イタリアリーグ】に挑戦しているため、呼ぶことは不可能だ。

 

 

「先生、その人の弟なんでしょ!!合わせてよ!」

「ん?弟?………あぁ、義理のな」

「………義理?」

 

 

椎名は義理と聞いて思わずキョトンとしてしまう。そこに真夏が息を切らしながら現れる。ようやく猛ダッシュでかけて行った椎名に追いついた。

 

 

「はぁ、はぁ…………せやで、絶対勘違いしたやろ椎名、晴太先生のお姉さんが、一木プロと結婚したから、先生と一木プロは義理の兄弟なんや、本当の兄弟やないでぇ、て言うか、苗字で別れや」

「あぁ、なるほど、そうだったの、…………いやでも仲良いんでしょ!?合わせてよ!!」

「ちょっ、ちょっ!!止めろ椎名!脳味噌が揺れるぅ!」

 

 

血が繋がってないと理解しても気持ちが収まらない椎名。椅子に腰掛けている晴太の肩を両手で掴み、全力で揺らし、駄々をこねる。晴太はこの暴走列車を止めるために最後の手段に出る。それはいかにもバトスピ学園らしいといった方法であって、

 

 

「わかった、わかったよ!……合わせてやる!」

「本当に!やったぁ!」

「えっ!?先生、今、一木プロって、イタリアリーグに挑戦中なんじゃないんか?」

「その点は俺に任せろ……………ただし、俺にバトルで勝ったらだ!それでいいだろ?」

 

 

そう、それはバトルスピリッツによる勝負だ。『その点は俺に任せろ』と言っているが、無理だ。呼ぶことはできない。つまり、晴太は絶対に負けられない賭けを椎名に持ちかけたのだ。

 

 

「おっ!ちょろいちょろい!望むところだよ!」

 

 

椎名は一度晴太に勝っているためか、自信満々で応答する。そして3人はフリーで対戦できる第3スタジアムへと足を運んだ。

 

 

 

******

 

 

 

早速、椎名と晴太はBパッドを展開させて、バトルの準備を始める。真夏は上の観客席でその光景を眺めていた。

 

 

「……はぁ…なんで、こうなったんやろ」

「…………やぁ、緑坂さん」

「ん?……長峰と、【朱雀】やないか」

 

 

ため息をつく真夏の横に現れたのは雅治と【朱雀】こと、赤羽司。真夏は2人にこの状況をざっくりと説明した。

 

 

「………なるほど、でも、これはなかなか面白いカードだね、入試以来じゃないかな?」

「まぁ、どちらにせよめざしに感謝だな、あの【一木花火の唯一の弟子】と名高い空野晴太の本気をこの目で拝めるんだからな」

 

 

一木花火は教え子などつくらない性分なのだが、晴太だけは彼の弟子だったと言う。その実態は昔から遊んでもらっていただけなのだが、

 

そんなこんなで、全ての準備を完了した2人のバトルが幕を開けようとしていた。

 

 

「いくよ!先生!」

「あぁ、どっからでもかかってこい!」

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

ーバトル場が光の筋で満たされて、バトルが始まる。先行は晴太だ。

 

 

[ターン01]晴太

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、……来い!コレオン!ハクビシンドローン!」

手札5⇨3

リザーブ4⇨2

 

 

晴太が颯爽と召喚させたのはライオンをこれでもかとデフォルメした可愛らしいスピリット、コレオンと、ドローンに乗り、飛行する白鼻芯のスピリット、ハクビシンドローン。

 

この2体のスピリットは椎名には見覚えがなくて、

 

 

「あ、あれ!?先生のスピリットにそんなのいたっけ?」

「ん?……あぁ、あれは入試用のデッキだったからな、今回は本気のデッキだ」

 

 

入試試験の時に行った椎名とのバトルで、晴太は学園側から支給されたカードのみでバトルしていた。だが、今回はフリー、自分の本当のデッキでバトルしている。

 

 

「おぉ!!本気のデッキ!楽しみ!!」

 

 

椎名は【本気のデッキ】と言う言葉に格好良さを覚え、目を光らせる。だが、それと同時にこのバトルが賭けごとのバトルであったことを忘れていた。

 

 

「あれは、もう、約束を忘れた顔やな」

「椎名らしいね〜(かわいい)」

 

 

そう思う真夏に納得する雅治。その顔はこの約2ヶ月間彼女を見てきた真夏からしてみればあっさりとわかることであった。

 

 

「俺はこれでターンエンドだ」

コレオンLV1(1)BP1000(回復)

ハクビシンドローンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

晴太はこれ以上何もせずにそのターンを終える。

 

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!風盾の守護者トビマルをLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が最初に呼び出したのは強力な耐性効果がある守護者のスピリット、風盾の守護者トビマル。大きな翼に盾を構えて椎名の場に舞い降りた。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!トビマル!」

 

「ライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

早速トビマルでアタックを仕掛ける椎名。晴太のライフが1つ、大きな盾の一撃に潰されて破壊された。

 

ー先制点は椎名がもぎ取った。

 

 

「ターンエンド!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

やることを全て失い、椎名はそのターンを終えた。

 

 

 

[ターン03]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

 

 

「メインステップ!いくぞ椎名!俺はエグゼシード・ビレフトをLV2で召喚!不足コストはコレオンから確保!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨0

コレオン(1⇨0)消滅

トラッシュ0⇨2

 

 

晴太の背後より炎を灯しながら駆け巡る一頭の駿馬。高く飛び上がり、晴太の頭上を高く飛び越えて場に現れた。それは伝説のスピリットが大昔に力を奪われた姿。だが、その身体には無限の可能性を秘めている。

 

そのエグゼシード・ビレフトと入れ替わるように、コレオンはコアの損失により、消滅する。

 

 

「エグゼシード・ビレフト!?…………カッコイイ!」

 

 

馬と言うよりかは、ユニコーンに近いエグゼシード・ビレフトの姿を見て、興奮する椎名。このスピリットは言わば、晴太を代表とするスピリットの1体。特にエグゼシード・ビレフトはコストの軽さと扱いやすさから、彼のバトルではほとんど召喚されている。

 

椎名は当然そのことを知らないのだが、他の人達はその効果を知り尽くしている。それは彼がひと昔前に世間から注目を浴びていたことが理由である。

 

 

「さぁ、アタックステップだ!いけぇ!ビレフト!アタック!……その効果でデッキから1枚ドローし、トビマルに指定アタックだ!」

手札3⇨4

 

「……!?」

 

 

炎のロードに逃げ道を阻まれ、そのまま物凄い勢いで突進してきたエグゼシード・ビレフトの一本の頭角に串刺しにされる。トビマルは当然耐えられるわけもなく、爆発してしまった。

 

トビマルは効果破壊には耐性があるが、バトルによる破壊には対応しきれないのだ。指定アタックは効果破壊でなく、バトル破壊。間違えやすいルールだ。

 

そして、ビレフトの効果はまだ終わってはいない。

 

 

「さらに、このバトル終了時、お前のライフを1つ破壊する」

 

「な!?」

ライフ5⇨4

 

 

炎のロードから飛び出してきたエグゼシード・ビレフトがそのまま椎名のライフを体当たりで1つ破壊した。

 

エグゼシード・ビレフトはコスト4のスピリットにして、ドロー、指定アタック、ライフ貫通、と、一体でかなりの役を熟せるハイスペックなスピリットだ。

 

 

「ぐっ!……すごい!」

 

 

椎名は今、晴太の本当の実力とデッキに感動している。入試試験の時と比べたら大違いだ。椎名は今まで、そこらへんの教師などよりかは強いと思っていた。実際そうなのだが、

 

だが、晴太の実力がここまでとは、椎名自身も思ってもいなかったことだろう。

 

 

「俺はこれでターンエンドだ」

ハクビシンドローンLV1(1)BP2000(回復)

エグゼシード・ビレフトLV2(3)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!ガンナー・ハスキー1体と、猪人ボアボア2体を連続召喚!」

手札5⇨2

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

椎名が更地になってしまった場に新たに呼び出したのは、犬型だが、拳銃を所持するために、背中に青い腕を生やしたスピリット、ガンナー・ハスキーと、顔が猪で、鎖付きの鉄球を振り回すボアボア、それが2体、計3体が召喚された。

 

そして、仕返しと言わんばかりにアタックステップに入る。

 

 

「反撃だ!アタックステップ!ボアボア2体でアタック!【連鎖:緑】でコアブースト!」

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

 

「……反撃と言っても苦し紛れって感じだな、ライフで受ける」

ライフ4⇨2

 

 

2体のボアボアが放り込む鉄球が、晴太のライフを粉々に粉砕する。

 

 

「……ターンエンド」

ガンナー・ハスキー(1)BP2000(回復)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

深追いは禁物か、椎名はこれ以上のアタックは仕掛けずにそのターンを終える。

 

やはりエグゼシード・ビレフトの存在が大き過ぎるか、現在、椎名の場をあのスピリット1体でほとんどコントロールされてると言っても過言ではない状況だった。椎名もいつものように果敢に攻めることがし辛くなってきている。晴太が言っていた、『苦し紛れ』とはそういう事だ。

 

ーフレイドラモンが来てくれていたら話は変わっていただろうが、

 

 

[ターン05]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨5

トラッシュ2⇨0

エグゼシード・ビレフト(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!俺はさらに2体のビレフトを召喚だ!……今度はハクビシンドローンより不足コストを確保!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

ハクビシンドローン(1⇨0)消滅

トラッシュ0⇨4

 

「なにぃ!?」

 

 

ハクビシンドローンは先のコレオン同様消滅してしまうが、新たに2体のエグゼシード・ビレフトが彼の場に姿を現した。これで一気に3体のエグゼシード・ビレフトが揃った。その姿は椎名の視線から見ると、圧巻の一言である。

 

 

「すごいわぁ、先生、同じスピリットを一度のバトルに3体も、……なかなかみれへんでぇ」

「ちっ!……所詮はビレフト止まりかよ」

「空野先生はまだまだ奥の手がいっぱいあるだろうね」

 

 

そう、観客側にいる3人の会話の通り、晴太のデッキはエグゼシード・ビレフトで始まるが、飽くまでそれはテンポを、試合の流れを掴むためのカードであって、エーススピリットではないのだ。

 

椎名はただそれだけのスピリットに圧倒されていた。おそらくデッキの相性も関係しているだろうが、

 

 

「アタックステップ!先ずは最初に召喚したLV2のビレフトでアタック!ボアボア1体に指定アタック!」

手札3⇨4

 

「くそっ!ボアボアでブロック」

 

 

ボアボアもトビマル同様、炎のロードに逃げ道を阻まれてしまい、あえなくエグゼシード・ビレフトの強烈な頭角の一撃で貫かれて、大爆発を起こした。

 

 

「さらに、ライフを破壊」

 

「ぐっ!」

ライフ4⇨3

 

 

ボアボアも貫いてもまだ気持ちが収まらないエグゼシード・ビレフトはその勢いを殺さずに椎名のライフをも貫いてみせた。

 

晴太の攻撃はまだ終わらない。次はLV1のエグゼシード・ビレフト達のアタックだ。

 

 

「LV1のビレフト2体でアタックだ!」

手札4⇨6

 

 

アタックするたびに手札が増えているためか、椎名よりも圧倒的に手札が多い晴太。これは赤属性の得意の戦法である。

 

さらに2体のエグゼシード・ビレフトが椎名に圧力をかけて来る。

 

 

「……1体はガンナー・ハスキーで、もう1体はライフだ」

ライフ3⇨2

 

 

2体のエグゼシード・ビレフトはそれぞれ、椎名とガンナー・ハスキーに狙いを定め、それぞれの方向へと走り行く。瞬く間にガンナー・ハスキーを吹き飛ばし、爆発させ、瞬く間に椎名のライフを1つ破壊した。

 

 

「ターンエンドだ………どうした?そんな調子じゃあ、一木プロには会えないぞ」

エグゼシード・ビレフトLV2(3)BP5000(疲労)

エグゼシード・ビレフトLV1(1)BP3000(疲労)

エグゼシード・ビレフトLV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト無

 

 

「……!!…忘れてた……」

「おい!!」

「やっぱり」

 

 

椎名はすっかり約束を忘れていた。それほどまでにこのバトルが楽しかったからだ。予想できていた真夏は呆れた口調で思わず『やっぱり』と一言言葉をもらした。

 

だが、ここで思い出せたことが幸いしたのか、椎名にようやくスイッチが入ってきた。

 

 

(そうだ、会って、バトルしないと、強くなった私を見てもらいたいんだ。あの時のお礼も言いたい…………よぉ〜し!はりきっていくぞ!!)

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

 

 

「ドローステップ!!……………よし!」

手札2⇨3

 

 

勢いよくドローしたカードを見て、椎名の目と顔つきが変わる。それを察知した晴太はより一層警戒心を強くする。油断など絶対にしない。それが一流のバトラーというものだ。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨10

トラッシュ4⇨0

猪人ボアボア(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札3⇨2

リザーブ10⇨7

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名はドローしたブイモンを即座に召喚させる。額に金色のブイの字が刻まれた小さな青き竜のスピリット、ブイモンが椎名の場に現れた。

 

 

「召喚時効果で2枚オープン!」

オープンカード

【フレイドラモン】○

【No.26キャピタルキャピタル】×

 

 

効果は成功、アーマー体スピリットのフレイドラモンが椎名の手札に加えられた。このフレイドラモンが椎名に反撃の狼煙を上げさせる。

 

 

「よし!フレイドラモンを手札に加える!」

手札2⇨3

 

「……ようやくご登場か」

 

「さらに!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!リザーブから1コストを支払い、ブイモンを手札に戻して、フレイドラモンを召喚!」

リザーブ7⇨4

トラッシュ2⇨3

 

 

ブイモンの頭上に独特な形をした赤い卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、進化を果たす。現れたのは、燃え盛る赤き竜人のアーマー体スピリット、フレイドラモン。

 

 

「フレイドラモンの召喚時か、アタック時の効果で、LV1のビレフトを1体破壊!……爆炎の拳!ナックルファイア!」

 

 

フレイドラモンが自身の拳を炎の塊として、殴りつけるように発射させる。それに当たった3体のうちの1体のビレフトは瞬く間に燃え上がり、灰になった。

 

 

「そして、カードをドロー」

手札3⇨4

 

 

追加効果により、椎名はカードを1枚ドローした。

 

 

「……バーストを伏せて、もう一度ブイモンを召喚!」

手札4⇨2

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨5

 

 

バーストが伏せられると同時に、ブイモンが今一度椎名の元へと駆けつける。

 

 

「アタックステップ!………フレイドラモンでアタック!アタック時効果で、2体目のビレフトを破壊!……ナックルファイア!」

「ぐっ!」

 

「……カードをドロー」

手札2⇨3

 

 

フレイドラモンはもう一度同じ要領で、エグゼシード・ビレフトを破壊する。ドロー効果を相まって、椎名が逆転してきているのがはっきりとわかる。

 

そして、椎名は3体目のエグゼシード・ビレフトの破壊も狙う。

 

 

「フレイドラモンのLV2の効果で、残ったLV2のビレフトに指定アタック!………いけぇ!フレイドラモン!……渾身の爆炎!ファイアァァ!ロケット!」

 

 

フレイドラモン自身が炎の弾丸となり、エグゼシード・ビレフトへと飛び向かって行く。そして、そのまま2体は衝突し、大爆発。

 

 

「……すご、椎名のやつ、晴太先生のビレフト軍団を物ともせずに、打ち破りよった……!」

「……………いや、まだだ」

 

 

『まだだ』と言ったのは、司だった。それは爆発の爆煙が晴れると直ぐにわかることであって、

 

通り抜けるように破壊したはずのエグゼシード・ビレフトが、フレイドラモンの背後で前脚をあげ、高鳴るように鳴いていた。

 

 

「な!?」

 

「残念だったな、椎名。俺はフラッシュでマジックカード、鉄壁ウォールを使ってたんだよ」

手札6⇨5

リザーブ2s⇨0

エグゼシード・ビレフト(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ4⇨8s

 

 

エグゼシード・ビレフトを守っていたのは、純白な壁、それが爆発の衝撃からエグゼシード・ビレフトを守ったのだ。

 

鉄壁ウォールは使用コアをソウルコアと一緒に払うことによって、アタックステップ終了の効果と、このバトル中は、自分のスピリットは一切破壊されない効果を発揮できる。

 

 

「鉄壁ウォールの効果で、このターンのお前のアタックステップは終わりだ」

 

「ぐっ!………ターンエンドだ」

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(回復)

フレイドラモンLV2(3)BP9000(疲労)

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト有

 

 

椎名は強制的にターンを終了させられた。危機的な状況だが、次のターンを凌げればまだチャンスはある。

 

 

(私が伏せたバーストは、【風刃結界】、これで先生のビレフトを返り討ちにできれば、まだチャンスはある)

 

 

【風刃結界】。緑のバーストマジック、相手のアタックに反応し、自分のスピリット1体のBP10000上げ、回復させる効果を持つ、強力なカウンターバーストだ。

 

晴太とて、椎名がこのまま引き下がるとは思えないと予想しているため、当然あのバーストには目を光らせていた。

 

 

[ターン07]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨9

トラッシュ8⇨0

 

 

「メインステップ!………よくここまで頑張ったな、椎名………だけど、ここまでだ」

「………!!」

 

 

遠回しに勝利宣言をする晴太。観客席の真夏達も晴太に注目して行く。晴太は確実にこのターンで勝利できるカードをドローしたのだ。それは自分の尊敬する人の大事なカードであって、

 

 

「行くぞ!……先ずは、庚獣竜ドラリオンをLV3で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ9⇨1

トラッシュ0⇨4

 

 

顔がドラゴン、体が猛獣のようなスピリット、庚獣竜ドラリオンが召喚された。これは晴太が受け継いだカードを召喚するためのカードだ。相性も抜群であって、

 

 

「ドラリオンの召喚時効果!……BP5000以下の相手のスピリット2体を破壊!ブイモンと、ボアボアだ!焼き払え!」

「ぐっ!」

 

 

ドラリオンの口内から放たれる渦を巻く炎に、ブイモンと、ボアボアは焼き尽くされた。さらに、ドラリオンの召喚時効果は、これだけではなくて、

 

 

「この効果で、破壊に成功した時、手札にあるブレイブカードをコストを支払わずに召喚する!」

「……ブレイブを……!!」

 

「行くぜ!……燃え盛る異魔神ブレイブ!…炎魔神を召喚!」

手札5⇨4

 

 

回りながら燃え盛る歯車の中から鈍い機械音を鳴らし、巨大なロボットのような異魔神ブレイブ、炎魔神が晴太のフィールドへと降り立った。

 

 

「い、異魔神ブレイブ、炎魔神!……かっこいい!」

 

 

異魔神ブレイブ、通常のブレイブとは違い、2体のスピリットと合体できる異質なブレイブ。炎魔神は特にその中でもレア中のレアカードとして数えられてきた。

 

これは一木プロが、妻に譲渡し、その妻が自分の弟の晴太に託したカードだ。今では晴太の一部、大事なキーカードの1つだ。

 

 

「そんなこと言ってる場合じゃいぞ!椎名!……俺はビレフトのLVを3に上げ、炎魔神の左にビレフトを右にドラリオンを合体だ!」

リザーブ1⇨0

エグゼシード・ビレフト(3⇨4)LV2⇨3

 

 

炎魔神の両手から光線が放たれる。それが、ビレフトとドラリオンにそれぞれ繋がり、合体した。より一層力が増した2体は気合を入れているかのように雄叫びをあげる。

 

 

「アタックステップ!……ドラリオンのLV2、3の効果で、合体スピリット全てにBP+5000!」

ドラリオン+炎魔神BP15000⇨20000

エグゼシード・ビレフト+炎魔神BP11000⇨16000

 

 

ドラリオンの咆哮が、エグゼシード・ビレフトと自身の士気を高めて行く。

 

 

「いけ!エグゼシード・ビレフトでアタック!…この瞬間!炎魔神の左合体時効果で、お前のバーストを破棄して、このターンの間、スピリット全てをBP+5000する!」

 

「なにぃ!?………うわぁ!」

破棄バーストカード【風刃結界】

 

 

エグゼシード・ビレフトが走り出すと同時に、炎魔神がロケットパンチの要領で左手を飛ばす。火花を散らしながらも回転し、飛んで行く先は、椎名の伏せられているバースト。瞬く間にそのカードは吹き飛ばされた。左手は場をそのまま一周して、再び炎魔神に装着される。

 

 

「くっそぉぉ!せっかくのバーストが!」

(風刃結界なんて伏せてやがったのか、………しかもおそらくタイミングはフレイドラモンの効果で最初にドローした時。……)

 

 

風刃結界を最初から手札に持っていたら、前々のターンから伏せられていたことだろう。つまり椎名がこのカードをドローしたタイミングはフレイドラモンの召喚時効果を発揮した時しかないのだ。

 

晴太は椎名のここぞという時のドロー運はまだまだ伸びる。と感心していた。教師としてここまで才能あるバトラーを育てることができるということはどれほど嬉しいことかは計り知れない。

 

 

「さらにビレフトの効果で1枚ドローし、フレイドラモンに指定アタックだ!」

手札4⇨5

 

 

エグゼシード・ビレフトのBPは炎魔神との合体、その効果、ドラリオンの効果により、合計21000。もはやフレイドラモンなどでは太刀打ちできないほどに強化されていた。

 

フレイドラモンはエグゼシード・ビレフトの炎のロードに囚われ、逃げ場を失う。そのまま凄まじい勢いで突進してくるエグゼシード・ビレフトの頭角に胸部を貫かれ、爆発してしまう。

 

 

「ぐっぅ!フレイドラモン……ッ!」

 

 

フレイドラモンの破壊による爆風を肌で感じる椎名。制服と長い髪が靡く。

 

そして、エグゼシード・ビレフトの最後の効果が発揮される。

 

 

「バトル終了時、ライフを1つ破壊する」

 

「くっ!」

ライフ2⇨1

 

 

エグゼシード・ビレフトは、フレイドラモンを突き抜けた勢いで、そのまま椎名のライフをも破壊して行く。

 

 

「椎名ぁぁぁぁあ!!踏ん張らんかい!!このバトルに勝ったら一木プロに会えるんやでぇぇえ!!」

 

 

真夏が力いっぱい椎名に声援を送る。だが、その心意気はありがたいが、もう椎名は何も抵抗することができない。

 

 

「……………」

「終わりだ、ドラリオン!」

 

 

BP25000のフルパワーで、ドラリオンが口を開き、炎の渦の発射をスタンバイする。椎名はゆっくりとラストコールを宣言する。

 

 

「………ライフで、受ける」

ライフ1⇨0

 

 

ドラリオンの巨大な炎の渦が、椎名を包み込む。そして、最後のライフを焼き切った。

 

この物語において、椎名は初めて敗北した。だが、その顔は決して悔しさに紛れた顔ではなく、とても潔い表情をしていた。もちろん悔しさはある。ただ、椎名は今日、自分の弱さを知ったのだ。

 

 

「椎名が、………負けた」

「相手が相手だ、当然だろ」

 

 

椎名が負けたことに一番驚いたのは雅治だった。これは椎名のことを好いているが故の感情だと思われる。一方で司は、驚きはしなかった。確かに今回の椎名の相手は仮にも天才と謳われた存在、学生の身分では、普通は勝てない。

 

 

「ちぇ!負けたか……………でも、楽しかったよ!晴太先生!!」

「あぁ、俺もだ………お前が一木プロに会いたい理由はわからんが、まぁ、お前が卒業するまでに俺に勝てたら、合わせてやるよ」

「……!!……本当!!?……やったぁぁぁぁあ!!」

 

 

朗報に諸手を上げて喜ぶ椎名。だが、この晴太に勝つと言うのは簡単なことではない。それでも何もない根拠でただただ諸手をあげることができる椎名はある意味で、人間として大物と言える。

 

 

 

******

 

 

 

その日の翌日の出来事だ。昨日のちょっとしたハプニングから、晴太はことなきをえ、職員室の自分の机でゆっくりとコーヒーを啜ろうとしていた。それは心安らぐひと時の時間。だが、

 

 

「晴太先生!バトルだぁぁぁぁあ!!」

「ぶっーーーーー!!!!」

 

 

思わずコーヒーを霧状にして吹き出す晴太。椎名がまた職員室のドアを勢いよく開けて入ってきたのだ。まさか昨日の今日でこんなことになるとは思えなかった。

 

 

「椎名、お前何しに来たの」

「何って、勝ったら花火さんに合わせてくれるって言うから……あれから結構デッキいじってみたよ!」

「いやいや、昨日の今日で俺に勝てるわけないだろ!?」

「やってみなきゃわかんないじゃん!!……さぁ!いざ勝負ぅ!!!」

「勘弁してくれぇぇえ!!!」

 

 

なかなか引き下がらない椎名。よほど花火に会いたかったことがわかる。晴太とて、本当は合わせてやりたいが、合わせられないのが現実。それで昨日、あんな約束をしたのだ。少なくとも、椎名が自分よりかは強くなる頃にはイタリアのリーグは終わっているだろうと思い。だが、昨日の今日ではあまりにもペースが早すぎる。この学園にいれば、いろんなところでバトルする機会があるに違いないのにだ。

 

逃げ出す晴太を追いかける椎名。当然、職員室は走ってはいけないところだ。

 

 

「はぁ、全く、女に難儀な男ね〜〜昔も今も」

 

 

そんな晴太と椎名を眺めながら言うのは鳥山兎姫、椎名が彼の姉と似ていることから、この発言に繋がったのだろう。少し懐かしい気分になりながら、兎姫は自分のぶんのコーヒーをゆっくりと啜った。

 

このようなやり取りが一週間続いた。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【炎魔神】!!」

「炎魔神は、左右にそれぞれ合体できる特別なブレイブ、異魔神ブレイブの一種!炎魔神は左で相手のバーストを破棄、右では相手のスピリットを破壊できるよ!」





最後までお読みくださり、ありがとうございました!


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第9話「大樹に咲き誇る一輪の花」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………緑坂真夏、……あいつが、なぜ……!!」

 

 

ジークフリード校の校門の前で、そう呟く男子生徒。全体的に緑の髪色に、ところどころ赤色が混じっているのが特徴的。その服装は学園の制服ではあるものの、バッジの色が違う。これは彼がジークフリード校以外の生徒であることを表している。

 

その男子生徒は、真夏を知っているかのような口調だ。だが、決していい印象を与える意味には聞こえない。怒りの感情を含んでいるからだ。彼はゆっくりと赤き学び舎へと足を踏み入れた。

 

 

******

 

 

「ちぇ、……晴太先生、結局今日も相手してくれなかったなぁ」

「まぁ、仕方ないでえ、先生も忙しいんや、………別に卒業まででええんやろ?じゃあ鍛え直してからでも遅くはないやないか、今のままでまた挑んでもボロ雑巾になって帰ってくるのが落ちやで」

 

 

どうしても一木プロに会いたい椎名。ようやく念願の尊敬する人物に会える方法が発覚したのだ。真夏としても椎名が焦ってしまうのは理解できるが、晴太と椎名の差は歴然。今の彼女では絶対に勝てない。

 

別にこの学園にいたら教師とバトルするチャンスなどいくらでもあるのだ。何度も果敢にチャレンジすることもない。

 

真夏の言葉の真意を理解したのか、椎名は焦っていた心を落ち着かせつつあった。この現状を加味すると、確かに果敢にチャレンジするよりかは卒業までに強くなった方が早い気がする。椎名はそう思いながら考えを改めた。

 

 

「………やぁ!椎名!」

「おっ!雅治!」

 

 

2人がそう話している時に現れたのは、司の親友の雅治。今では椎名とも大の仲良しになりつつあった。

 

だが、今日の雅治は少し様子がおかしくて、

 

 

「あの、椎名、………その………」

「?……なに?」

 

 

頰を赤らめ、もじもじしながらも、雅治は精一杯言葉を発しようとするが、なかなかでない。それもそうだろう。何せ雅治はこれから好きな女の子をデートに誘おうとしているのだから。

 

デートと言っても、「一緒にショッピングしない?」と言うだけだった。それでもやはり、それを言う相手が、椎名となるとどうも言い出しづらかった。

 

まぁ、仮にそれを言えたとして、椎名はそれをデートと認識することはないだろうが。

 

真夏も心の中で「頑張りやぁ〜〜」と声を上げて応援する。雅治にそうアドバイスしたのは彼女だからだ。

 

ーだが、しかし、これも運命か、それを邪魔するものが現れる。それはあまりにも突然であり、真夏と雅治にしては本当に空気が読めないと思われることであって、

 

 

「………やっと見つけた、やっと見つけたぞ!緑坂真夏!」

「………あぁ?」

 

 

怒りの感情を含んでいて、鈍く太い声が真夏を呼ぶ。3人はその声のする方を振り向くと、そこには妙な男子生徒がいた。

 

その男子生徒は真夏だけを凝視した目をギラつかせており、とてもじゃないが、好意的な印象はなかった。

 

 

「誰?」

「この制服は…………キングタウロス校の人だね」

「………あぁ、そうだ、俺はキングタウロス校1年の【炎林 頂(えんばやし いただき)】!【緑坂 冬真(みどりざか とうま)】先輩、【ヘラクレス】の一番弟子だ!」

 

 

【キングタウロス校】。それはこの界放市にあるバトスピ学園の6つのうちの1つである。学園によって、様々な教育方針が存在するが、ジークフリード校と、キングタウロス校はそれらが、若干被るものがあるからか、他の近所の学園よりかはやや親しい関係にある。

 

それよりも気になるキーワードは、【緑坂冬真】と【ヘラクレス】だ。

 

 

「ヘラ、なに?………緑坂冬真?………ん?緑坂?」

「そうや、緑坂冬真は私の兄や」

「……!!……真夏のお兄ちゃん!?」

 

 

【緑坂冬真】。真夏の実の兄であり、現在はキングタウロス校3年生だ。その実力は歴代最強と言われ、どの学園の卒業生と比べても、現役時代ではそのレベルには達していないと言う。毎年行われる6つの学園が競い合う祭り事、【界放リーグ】では、当時は1年生であるにもかかわらず、出場し、優勝。その次の2年次も優勝と、その実力は底が知れない。【ヘラクレス】とは、彼のエーススピリットからもじられた異名だ。1年次で活躍した時に名付けられ、それ以降は本名よりもこちらの方で呼ばれる事の方が多い。この傾向は司の【朱雀】に似ていると言える。

 

この男子生徒、炎林 頂は、その彼の弟子と言う。真夏は彼にめんどくさそうな態度で受け答えする。

 

 

「はぁ、それで、兄さんの弟子が、あたしに何の用や?」

「用もクソもない!お前!何であの方の実の妹だと言うのにジークフリード校などにいるんだ!今日はお前をキングタウロス校に引き摺り込みに来たのだ!」

「はぁ!?」

「お、おぉ、スカウトってやつ!?」

「うーん、ちょっと違うかも知れないね」

 

 

炎林はそこまで緑坂冬真を尊敬しているのか、横暴な意見を言ってくる頂。真夏は呆れると同時に腹が立った。

 

 

「あたしがどこに行こうが、あたしの勝手や、行く気はないでぇ………あと、一々兄さんのこと言うのやめてくれへんかなぁ?」

「……真夏?」

 

 

真夏は鋭い目つきになり、炎林を睨みつける。まるで突き放すかのように、椎名は普段おおらかで、誰とでも仲良く接する真夏がこんな感じになるのを見たことがなかった。

 

真夏は昔から兄と比べられるのが気に入らなかった。兄が有名になりすぎているため、仕方のないことではあるが、どうやっても、どんなに強くなっても、いつも目の前には兄の背中。周りからの評判もほとんど必ず兄を入れてくる。真夏が弱いわけではない。寧ろとても才能がある。ただ、それは【緑坂真夏】としてではなく、【ヘラクレスの妹】としてだった。それが彼女としては気に食わなかった。だから、兄のいるキングタウロス校ではなく、ジークフリード校へと入学したのだ。

 

 

「………嫌なら無理矢理にでも連れて行くぞ」

「えぇで、望むところや」

 

 

炎林も簡単には引き下がらない。今度は界放市の人間らしく、バトルスピリッツで有無を決める。真夏もそれに賛同し、ジークフリード校 第3スタジアムへと移動した。

 

 

******

 

 

「負けたら、お前はジークフリード校との縁を切り、キングタウロス校に行く。それでいいな」

「あぁ、構わへんでぇ」

 

 

まさに一触即発。今にも火花が飛び散りそうな空気の中。2人はBパッドを展開させて、バトルの準備をしていた。椎名と雅治も観客席でそれを見ていた。

 

 

「なんか大変なことになったね」

「そうだね」

「………意外と落ち着いてるね、負けたら緑坂さんは、ここをやめちゃうんだよ?」

「いや、流石に負けないでしょ、なんとなくだけど、」

 

 

椎名はさっきの真夏の鋭い目を見て、不思議なものを感じとっていた。それは真夏が負けないという。根拠のない自信だ。

 

真夏とは結構バトルしたことがあるからというのもあるだろう。

 

ーそして、2人の準備が終わり、バトルに入る。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

ーバトルが開始される。先行は真夏だ。

 

 

[ターン01]真夏

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!……先ずはパルモンを召喚や!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

真夏が呼び出したのは頭にトロピカルな花を咲かせた緑のスピリット、パルモン。これが真夏のデッキの軸となる成長期スピリットだ。

 

 

「召喚時効果で、2枚オープン」

オープンカード

【トゲモン】○

【トゲモン】○

 

 

パルモンの効果は成功。ただし、成熟期か、完全体をどちらか1枚であるため、トゲモンのカードは2枚とも手札に加えられず、1枚は破棄された。

 

 

「ターンエンドや、………」

手札4⇨5

 

パルモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

先行の第1ターンなど、やることが限られている。真夏はそのままターンを終えた。初手にしてはなかなか上々な動きだろう。

 

 

[ターン02]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「いくぜ!俺のメインステップだ!俺はホムライタチを召喚!さらに、ホムライタチのメインステップ時の緑シンボルの追加効果と合わせて、もう1体のホムライタチをフル軽減で召喚!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

炎林の場に燃えるような体毛を纏う鼬型のスピリット、ホムライタチが2体連続召喚された。

 

彼が使うデッキは赤と緑。いろんなタイプがあるが、彼のデッキは特に安定性が高いものだ。

 

 

「ターンエンドだ」

ホムライタチLV1(1)BP1000(回復)

ホムライタチLV1(1)BP1000(回復)

 

バースト無

 

 

このターンは様子を見るのか、特にアタックは行わず、そのままターンを終えた炎林。次は真夏の番だ。

 

 

[ターン03]真夏

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!バーストを伏せて、パルモンのLVを上げる!」

手札6⇨5

リザーブ4⇨2

パルモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

バーストが伏せられると同時に、パルモンは真夏からコアを与えられて、喜ぶようにレベルを上げる。これで【進化】の条件は整った。

 

 

「アタックステップ!その開始時にパルモンの【進化:緑】を発揮や!パルモンを手札に戻し、成熟期のトゲモンをLV2で召喚!」

 

 

パルモンにデジタルのベルトが巻かれて、その姿形を変えていく。そして、新たに現れたのはまるでサボテンのような外見のスピリット、トゲモンだった。トゲモンはボクサーのようなグローブを叩きつけながらやる気を見せている。

 

 

「アタックステップは継続やでぇ!いけ!トゲモン!アタック!」

 

 

トゲモンにアタックの命令が下された瞬間、トゲモンは空中へとジャンプし、その場で高速回転する。その時に飛び散っていく針のような鋭い棘が、炎林のホムライタチ1体に命中し、それをダウンさせる。

 

 

「!?……なんだ?」

ホムライタチ(回復⇨疲労)

 

「アタック時効果や、トゲモンはアタック時にコアを増やしつつ、相手のスピリット1体を疲労させるんやで」

トゲモン(3⇨4)

 

「くっ!だが、どちらにせよそのアタックはライフで受けるつもりだった!……ライフでもらうぞ!」

ライフ5⇨4

 

 

空中から降りてきたトゲモンのプロボクサー並みのパンチが炎林を襲う。炎林のライフは1つ砕かれた。

 

 

「ターンエンドや」

トゲモンLV2(4)BP6000(疲労)

 

バースト有

 

 

やることを全て失った真夏はそのターンを終える。次は炎林の反撃だ。

 

 

[ターン04]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨5

トラッシュ2⇨0

ホムライタチ(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!六分儀剣のルリ・オーサを召喚!ホムライタチのシンボル追加により、フル軽減で支払うコストは1だ!」

手札4⇨3

リザーブ5⇨3

トラッシュ0⇨1

 

 

炎林の場に剣を携えたスマートな緑の殻人スピリット、ルリ・オーサが召喚される。このデッキにおいては、アドバンテージの塊とも言える効果を持っており、

 

 

「ルリ・オーサの召喚時!ボイドから赤のスピリット2体にコアを1つず追加!俺は赤のホムライタチ2体に1つずつコアを追加させる!」

ホムライタチ(1⇨2)

ホムライタチ(1⇨2)

 

 

ルリ・オーサが自身の剣を天に掲げると、天からホムライタチ2体にコアの恵みが与えられた。

 

ーだが、彼のデッキにとって、こんなの始まりに過ぎないことであって、

 

 

「さらに!もう1体のルリ・オーサを召喚!召喚時でまたまたホムライタチ2体にコアを追加だ!」

手札3⇨2

リザーブ3⇨1

トラッシュ1⇨2

ホムライタチ(2⇨3)LV1⇨2

ホムライタチ(2⇨3)LV1⇨2

 

 

もう1体のルリ・オーサが召喚される。その効果で、再び天よりの恵みがホムライタチに与えられた。

 

目まぐるしい程にスピリットを展開し、コアを増やしていく炎林。だが、まだそれは終わることはなかった。

 

 

「さらにさらにさらに!おれは増えたコアを使い、こいつを、師匠から譲り受けたエースを召喚する!野望を抱き、顕れよ!金殻皇ローゼンベルグ!LV1!」

リザーブ1⇨0

ホムライタチ(3⇨1)LV2⇨1

ホムライタチ(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ2⇨3

 

 

金色の甲殻を輝かせながら現れるのは炎林のエーススピリット、金殻皇ローゼンベルグ。左手の人差し指を真夏に向け、打倒を目指す。全長4メートルくらいはありそうだ。

 

 

「でか!!!!」

「まさかここまで一気に展開してくるなんて、流石は【ヘラクレス】の弟子を名乗るだけはあるね」

 

 

観客席の2人もその巨躯の身体に驚愕する。ローゼンベルグは強力な効果をいくつも内蔵しているスピリットだ。先ずは召喚時から解決させていく。

 

 

「ローゼンベルグの召喚時!ボイドからコアを3つローゼンベルグに追加する!」

金殻皇ローゼンベルグ(2⇨5)LV1⇨3

 

 

ローゼンベルグにコアの恵みが与えられた。一気にそのLVをマックスにさせる。既に炎林はこのターンだけでコアを7つブーストしており、莫大なアドバンテージを有していた。その分手札が少なくなってしまったが、それもローゼンベルグがいれば問題ないことであって、

 

 

「アタックステップ!いけ!ローゼンベルグ!アタック時効果でBPを10000上昇させる!さらに、【連鎖:赤赤】を達成してる時、デッキからカードを2枚ドローする!」

ローゼンベルグBP11000⇨21000

手札1⇨3

 

「………!!」

「これだけ展開しつつ、ドローまで……」

 

 

そう言ったのは椎名だった。ローゼンベルグはコストが重いものの、決まってしまえば、バトスピにおいて必要な手札とコアを1体で補強してしまう恐ろしいスピリットだ。おまけにダブルシンボルと、隙がない。

 

両手で勢いよく自身の剣を地面に突き刺し、その衝撃波を真夏の方へと飛ばしていく。

 

 

「やばい!緑坂さんの場にはブロックできるスピリットがいない!……もし、全部のアタックが通って仕舞えば」

 

 

現在、炎林のスピリットのシンボル数の合計は6。このターンだけで真夏のライフを破壊できてしまう。

 

だが、真夏は当然ここで終わらない。1枚のカードを引き抜く。

 

 

「手札からアクセル発揮!ロードバシリー!効果により、あんたのルリ・オーサを1体疲労や!」

手札5⇨4

トゲモン(4⇨2)LV2⇨1

トラッシュ0⇨2

 

「なに!?アクセルっ!!」

六分儀剣のルリ・オーサ(回復⇨疲労)

 

 

アクセルとは、スピリットやブレイブが持つ効果。手札からアクセルとして使用することで、その後自分の場に手元のカードとして置くことができる。もちろん手元に置けば、自分のターンでは普通に召喚できる。使い方次第ではマジックをも超える恩恵をプレイヤーに与えることができる便利な効果だ。

 

緑色の小さな小鳥が、ルリ・オーサを貫く。それに力を奪われてしまったのか、ルリ・オーサは膝をつき、疲労状態となってしまった。その後、緑色の小鳥は、真夏の足元へと落ちるように飛んでいき、ロードバシリーのカードとしてそこに居座った。

 

だが、ローゼンベルグのアタックが無効になった訳ではない。炎林は追い討ちをかけるように自分のフラッシュを使う。

 

 

「それがどうした!!……俺はフラッシュマジック!バードウィンド!不足コストはローゼンベルグのLVを3から2に落として確保する!この効果で緑のスピリット、ローゼンベルグを回復させ、【連鎖:赤】で、お前のトゲモンを破壊だ!」

手札3⇨2

金殻皇ローゼンベルグ(5⇨3)LV3⇨2

トラッシュ5⇨7

 

「……!!」

 

 

炎林は見逃してはいなかった。真夏がロードバシリーのアクセル効果を発揮する時に必要とするコアをトゲモンから使っていたことを。バードウィンドは、緑のスピリット1体を回復させると同時に、【連鎖:赤】でBP4000以下の相手のスピリット1体を破壊できる効果がある。

 

ローゼンベルグが緑の風を纏い、回復状態になると同時に、真夏のトゲモンが下から湧き出てくる炎に飲まれ、爆発した。

 

 

「いけぇ!ローゼンベルグ!」

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨3

 

 

ローゼンベルグが放っていた衝撃波が、ようやく真夏のライフを砕いた。だが、それは真夏のバーストカードの条件でもあって、

 

 

「バーストくらい警戒せぇや、発動!ジャンピングバインド!」

「……!?」

 

 

真夏のバーストが勢いよくひっくり返る。すると、真夏のリザーブにコアが1つ追加された。

 

 

「ジャンピングバインドはライフ減少時のバーストで、ボイドからコアを1つあたしのリザーブに置くことができる。さらに、コストを支払うことで、フラッシュ効果、相手のスピリット1体を疲労や!寝ときぃ!ローゼンベルグ!」

リザーブ6⇨7⇨4

トラッシュ2⇨5

 

「なんだとぉ!?」

金殻皇ローゼンベルグ(回復⇨疲労)

 

 

真上から降り注いでくる強風が、ローゼンベルグを叩きつけるように膝をつかせる。これでローゼンベルグが再アタックすることはなくなった。だが、

 

 

「くっ!だが、俺のアタック可能なスピリットは合計3体!お前のライフを全て砕くには十分な数だ!やれぇ!ルリ・オーサ!」

 

「ライフで受けるで」

ライフ3⇨2

 

 

そう、まだ、危機が完全に去った訳ではない。ルリ・オーサが飛翔していき、その手に持つ剣で、真夏のライフを1つを一刀両断した。

 

 

「ハッハッハ!打つ手なしか!次だいけぇ!ホムライタチ!」

 

 

走っていくホムライタチ。この瞬間、真夏は悟った。デッキはおそらく兄が作ったもの。又はあげたもの。彼はそれを使って強くなった気でいる半人前だと言うことに。そんなただの雑魚相手に真夏が負けるわけがなかった。

 

なんとなく気付き始めたのは、彼がローゼンベルグを召喚する時、彼は『師匠から譲り受けたエーススピリット』と言っていた。【ヘラクレス】はそんなカードは使ったことはないが、真夏は彼が炎林にあげるために適当に作ったデッキだと理解した。

 

ーそして、リザーブからコアを移動させ、手元に置いたカードを場に移動させる。

 

 

「手元からロードバシリーの効果発揮!ロードバシリーはコストをリザーブから全て支払うことで、手元からフラッシュタイミングで召喚できる!出て来いや!ロードバシリー!」

リザーブ5⇨2

トラッシュ5⇨7

 

「はぁ!?」

 

 

真夏の足元にあったロードバシリーのカードが本物のスピリットとなって場に召喚された。小さな小鳥のスピリット、ロードバシリーは向かってくるホムライタチを迎撃すべく飛翔し、そのままの勢いで、ホムライタチと衝突し、競り勝ち、吹き飛ばした。ホムライタチは呆気なく爆発してしまった。

 

これで炎林のスピリットの総数では真夏の残ったライフは破壊できなくなってしまった。炎林はターンを終了することになった。

 

 

「ぐっ、……ターンエンドだ」

ホムライタチLV1(1)BP1000(回復)

六分儀剣のルリ・オーサLV1(1)BP3000(疲労)

六分儀剣のルリ・オーサLV1(1)BP3000(疲労)

金殻皇ローゼンベルグLV2(3)BP9000(疲労)

 

バースト無

 

 

「す、すごい、あの猛攻を凌いだ………っ!!」

「流石だよ真夏………っ!!」

 

 

[ターン05]真夏

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨10

トラッシュ7⇨0

ロードバシリー(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ………の前に、あんた、それ、兄さんに作ってもろたデッキやろ?」

「な!?……なんでそれを!?」

「はぁ、やっぱりな、人に作ってもろただけのデッキであたしに勝てる訳ないやろ?」

「な、なんだと!?……じゃあ勝ってみろよ!お前にこの俺の、【ヘラクレス】から授かったデッキが倒せる訳ねぇだろ!!」

 

 

バトスピを築き上げて来た偉人がこういう言葉を残している。【自分で作ったデッキには魂が宿る】と。魂が入っていないデッキなど、ただの紙束にも等しい。いくら強い人が作り上げたデッキでも、やはりそれを使いこなせるのはその本人だけだ。

 

緑坂冬真は、炎林を気に入っていた。だから、彼に自分が構築したそこそこの完成度のデッキを彼にあげたのだ。【これで強くなれ!】とそういう願いを込めて、だが、炎林はその言葉の意図をこの時は完全には理解していなかった。

 

やはり、自分のデッキは自分なりにカスタマイズしていかなければ、強くはなれない。何度も使用し、自分の魂をゆっくりと注いでいったデッキに、真の魂と強さが宿る。それが時折、極限の場面でデッキがバトラーに応えてくれる時もある。炎林はそういったことが疎かになっていたのだ。それほど緑坂冬真のデッキの完成度が高かったとも言えるが、

 

 

「じゃあ、やってみよか……メインステップ!フローラモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ10⇨7

トラッシュ0⇨2

 

 

パルモンとはまた違った方向性でトロピカルな花を咲かせる成長期スピリット、フローラモンが真夏の場に現れる。

 

 

「召喚時効果!デッキから3枚オープンして、その中の系統「樹魔」を持つスピリット1枚を手札に加える!」

オープンカード

【ロードバシリー】×

【ロードバシリー】×

【リリモン】○

 

 

効果は成功、樹魔を持つスピリットカードのリリモンが手札に加えられた。これで準備は万端。真夏はこのバトルを決めにかかる。

 

 

「よし!リリモンを手札に加えるでぇ!……そして、老賢樹トレントンをLV1で召喚や!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ7⇨2

トラッシュ2⇨6

 

 

緑の神々しい光が真夏の場に集まっていく、それはどんどん増えていき、やがて大きな樹木へと変化していく、そして、樹木を人型のようにした緑のスピリット。老賢樹トレントンが召喚された。そのサイズは炎林のローゼンベルグさえをも凌いでいる。

 

 

「な!?トレントン!?そいつは確か………」

 

 

トレントンはとてもとても昔からあるカード。大昔に人類がバトスピをやり始めた時から存在する化石のようなスピリットなのだ。炎林は戸惑う。その効果をゆっくりと思い出していく、だが、その頭から捻り出される前に、真夏がその効果を宣言する。

 

 

「トレントンの召喚時効果!手札にある緑のスピリットカード1枚をコストを支払わずに召喚する!あたしが呼ぶのはこいつや!リリモン!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨1

 

 

トレントンの森のように茂っている背後から、まるで妖精のようなスピリットが顔を出す。それは意外にも完全体の緑のスピリット。真夏のエーススピリットでもある。超レアカード、リリモン。

 

 

「来た!真夏のエース!」

「緑の完全体!……しかもあれは緑坂さんの叔父にあたる【緑坂小次郎】さんが使うものと全く同じだ」

 

 

【緑坂小次郎】。真夏達の叔父にあたる人物。日本でも有名なプロバトラーであり、椎名の尊敬する一木花火をライバル視していることで有名。公式戦ではまだ一度も彼に勝ったことはないが、

 

そして知らない間に真夏は前のターンの炎林と全く変わらないくらいの展開を見せつけていた。

 

 

「さぁ!アタックステップや、」

「ぐっ!だが、お前の4体のスピリットで総攻撃しても俺のライフはゼロにはならない!」

「……はぁ!?あんた何言うとんのや!緑坂冬真の弟子のくせに、その叔父の緑坂小次郎の使うリリモンのことを知らんのかい!!!」

「………!!!!」

 

 

リリモンは非常に可愛らしい外見をしているが、やはりその強さは完全体であり、強力な効果をいくつも内蔵していた。炎林はその強さを思い知ることとなる。

 

 

「やったりやぁ!リリモン!アタック時効果の【旋風:1】で相手のスピリット1体を重疲労!対象は回復してるホムライタチ!あんたや!」

 

「なに!?【旋風】だと!?」

ホムライタチ(回復⇨重疲労)

 

 

リリモンが飛翔する。そして、その両手に花のような砲手を備え、そこから緑のエネルギー弾を放つ。それに直撃した唯一の回復状態だったホムライタチは他のスピリットよりも酷く疲れてしまう。まるでやる気を感じないほどに。

 

重疲労とは、一言で言えば疲労の第2段階。カードの向きは逆さまとなり、一度の回復で普通の疲労状態となる厄介なもの。リリモンの【旋風】の効果はそれをなんのデメリットもなく使える数少ない効果だ。

 

そして、リリモンにはまだ恐ろしい効果がある。

 

 

「さらにリリモンはアタック時に、ボイドからコア2つをリリモン自身に置くことで、ターンに一度回復する」

リリモン(1⇨3)LV1⇨2(疲労⇨回復)

 

「はぁ!?まだそんな効果が……っ!!?」

 

 

リリモンは緑の光を纏い、回復する。リリモンの恐ろしいところは、相手のスピリットを重疲労させつつ、コアを増やしながら回復し、連続でアタックできるとこだ。単純にこれだけでも十分なパワーカードであると言えるだろう。

 

 

「最初のアタックは継続中やで!!どう受ける?」

 

「くそ!ライフしかねぇ!」

ライフ4⇨3

 

 

リリモンの片手から放たれる緑のエネルギー弾が、炎林のライフを1つ破壊した。もう炎林になすすべはなかった。後は好きに殴られるだけ、

 

 

「もう一度!リリモン!」

リリモン(3⇨5)LV2⇨3

 

「そ、それもだ!」

ライフ3⇨2

 

 

リリモンは、次は違う手からの攻撃で、炎林のライフを破壊した。

 

 

「次はロードバシリーや!」

 

「ら、ライフで、……うお!?」

ライフ2⇨1

 

 

ロードバシリーは目にも留まらぬ速さで通り過ぎるように炎林のライフを破壊した。そして、ラストは、

 

 

「締めはあんたや!いけぇ!老賢樹トレントン!」

 

 

大きな木がゆっくりと動き出す。その振りかざされた右手はまるで神の天罰のように見える。炎林の手札には普通のスピリットカードしかなかった。これが【ヘラクレス】のではなく、【自分自信のデッキ】という認識があれば、このバトルの結果は違っていたかもしれない。

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!!」

ライフ1⇨0

 

 

金殻皇ローゼンベルグ、六分儀剣のルリ・オーサ、ホムライタチは彼の方など、見向きもしない。ただ炎林の目の前に巨大な右腕が、彼の最後のライフを押し潰したのだ。

 

これでこのバトルの勝者は真夏。見事キングタウロス校の生徒を討ち取って見せた。真夏は消えゆくスピリット達の間を通りながら、落ち込む炎林のところまで行く、

 

 

「兄さんがあんたのどういうとこが気に入ったのか知らへんけど、そのデッキ使いたいならもっと鍛錬せんかい!」

「ぐっ!………っ!」

 

 

言い返す言葉がない。自分がこのデッキに頼りきりになり、鍛錬を疎かにしていたのは事実なのだから、精錬されていないデッキを扱うバトラーほど弱いものはない。

 

 

「よかった、緑坂さんジークフリード校に残れるね」

「でしょ!?言った通り!真夏は強いもん!」

「せやろせやろ!何せ俺の妹なんやからな!」

「「!!」」

 

 

真夏の勝利を喜ぶ椎名と雅治の前に割って現れたのは謎の関西弁で話す褐色の肌色の男子生徒。その制服は炎林と同じキングタウロス校のものだ。

 

 

「誰?」

「あ、あなたは……っ!!」

 

 

流石にあまりニュース等を見ない椎名にはわからなかったが、それ以外の人間にはかなりの知名度の男であるようで、その顔を一目見た雅治は大きく口を開けて驚いた。

 

ーそして、その褐色の男子生徒は手摺に手をかけ、満面の笑みで、手を振り、

 

 

「おお〜〜〜〜〜い!!!真夏ちゅわぁぁん!!」

 

 

大きな声で真夏を呼ぶ。そう彼こそが、

 

 

 

「げっ!!?……兄さん!!」

「し、師匠!?」

「え!?この人が!?」

 

 

彼が真夏の実の兄、【ヘラクレス】こと、【緑坂冬真】だ。初めて知った椎名も声を荒げながらも驚いてみせる。まだまだジークフリード校とキングタウロス校の交流は続きそうだ。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【リリモン】!!」

「リリモンは緑の完全体!アタック時に相手を重疲労させたり、コアを増やしたり、回復したり、もうやりたい放題!」







最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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第10話「キングスロード……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回、キングタウロス校の生徒で、真夏の兄、【ヘラクレス】の異名を持つ【緑坂冬真】の弟子と名乗る炎林頂が、真夏をキングタウロス校に入れるべく椎名達の前に現れた。バトスピで決着をつけることになるが、結果はリリモンの効果をフルに発揮させた真夏の勝利に終わる。だが、そのバトルを裏から【ヘラクレス】が覗いていて………

 

 

「し、師匠!!!」

「はっは、どうやった炎林、俺の妹は強かったやろう?」

「す、すみません!妹さんをキングタウロス校に引き込めなくて……!」

「ん?あぁ、ええのええの、そんなこと無理やし」

「え、えぇ!?」

 

 

そう、真夏がジークフリード校を辞めることは不可能なのだ。いや、正確には不可能ではないのだが、単純に引越しの手続きなどがこの街ではかなり複雑且つ面倒で、いろんなところで経費もかかる。真夏は1人暮らし。【ヘラクレス】は兄としても別にこのままでもいいと思っていた。

 

 

「で、でも、師匠、『妹がここに居てくれたらなぁ』っていつも言ってたじゃないですか!?」

「あぁ、あれはお前がそのうちそれを理由にジークフリード校に向こうて来れる思てずっと口ずさんどっただけや」

「……いやいや!どういう意図!?」

 

 

全く【ヘラクレス】の考えてることがわからない炎林。【ヘラクレス】の目の前にいる椎名も同様だ。だが、流石兄妹と言ったところか、真夏は理解していた。頭の良い雅治も同様にそれを理解する。

 

 

「はぁ、つまりはここに来るための口実が欲しかったんやろ?【ヘラクレス】さん?」

「あら、バレちゃった?」

「いや、さっき全部自分でトリックバラしてもうとるやないかい!!!なんでこんなまどろっこしいことすんねん!」

「いや、ほら、あれやで、真夏ちゃん口実なかったら怒るおもてな、………でも心配しとったんやでぇ!連絡もくれんと、……………おっ!」

「………?」

 

 

【ヘラクレス】は久し振りに自分の妹に会いたかっただけのようだ。中学を卒業してから真夏は一回も兄と連絡を取っていなかったのだ。それは流石に兄としては心配になるだろう。それで彼は頑張って弟子である炎林で口実を作ろうとしたのだ。その結果が今日という日だ。真夏を引き抜くために炎林はジークフリード校に訪れ、それを迎えに来るかのような形で如何にも偶然であるかのように真夏を見に来たのだ。一瞬でバレたが、

 

話の腰を折るかのように、【ヘラクレス】は自分の横にいた椎名に顔を向ける。椎名も何事かと思い、アホ毛がピクッと動く。真夏はなにかを察したように「やばい」と口ずさむ。

 

 

「君、1年生か?」

「え!?……あ、はい、芽座椎名って言います……けど」

「めざしいな………いいやないかぁ!!可愛い名前しとるよ!どうや?こんど一緒にデートでも、」

「こーーーらぁ〜〜〜兄さん!!!」

 

 

【ヘラクレス】は椎名をナンパする。彼は大の女好きだった。そもそも彼はすごくルックスが良い。彼のためのファンクラブさえできているほどだ。椎名は苦笑いで済ますが、真夏はもどかしかった。思いっきりツッコミたかったろうが、バトル場からじゃ観客席には声しか届かない。不完全燃焼だ。雅治は「この人をなんとか椎名から遠ざけねば」と心の中で模索しだす。椎名を取られたくない嫉妬心からだ。

 

 

「いやぁ、真夏ちゃんの友達にこんな可愛ええ子がいるなんてなぁ、」

「は、はは、い、一応ありがとうございます?………デートはちょっと嫌だけど、バトルはしたいな!真夏のお兄ちゃんは【ヘラクレス】って呼ばれるほど強いんでしょ?」

「ガーーン!……なんか遠回しにふられとるやん!

 

 

胸を釘で打ち付けたようなショックを受ける【ヘラクレス】。椎名の無神経で発した言葉が、彼の心をおもいっきり傷つけてしまった。

 

ーだが、

 

 

「………………でもええんか?俺はバトルでは女の子でも容赦はできへんで?」

「「………!!」」

 

 

さっきまでおちゃらけていた【ヘラクレス】だったが、バトルのこととなると急に態度が豹変した。その場にいた椎名と雅治は背筋が凍りつくようなプレッシャーを感じる。ただこれだけで彼が強者であると認識してしまう。

 

椎名はそれでも、「いいよ!」と了承するように答えようとしたが、その前に言い出したのは雅治だった。前に出てくる雅治を見て、【ヘラクレス】は、その顔をゆっくりと思い出していく。

 

 

「じゃあ、そのバトル、僕がやってもいいかな?」

「………お前さんは確か【朱雀】の親友の、」

「長峰雅治です、よろしくお願いします!」

「ちょ、ちょっと待って!バトルするのは私じゃ!?」

「ごめんね、椎名、今日は僕にやらせて欲しい」

「……んーーーー、まぁいっか!頑張ってね!」

「うん!」

「はぁ、なんかもうバトルすることになっとるし、………まぁええか、バトル場に行くでぇ長峰」

 

 

正直、椎名は自分が【ヘラクレス】とバトルしてみたかったが、その相手が雅治ならば、バトルは必ず面白くなると思い、今日は一歩後ろに下がり、彼に枠を譲った。因みに【ヘラクレス】も本当は女の子の椎名とバトルしたかった。まぁここでカリカリ文句垂れるのもどうか思い、なにも言わなかったのだが、

 

一方で雅治は、椎名が自分にかけてくれた『頑張ってね!』の一言が嬉しすぎてモチベーションが急上昇する。絶対に勝とうと心に誓った。まぁ、いいところを見せたいのだろう。【ヘラクレス】と、雅治はバトル場に降り、逆に真夏と炎林は椎名のいる観客席まで上がってきた。

 

 

「ごめんなぁ、椎名、…兄さんが」

「いやいいよ!面白いお兄ちゃんじゃん!」

「頑張ってください!!師匠!!」

 

 

申し訳なく思ったのか、真夏は椎名に頭を深々と下げて謝った。当の本人は全く気にしていなかったが、

 

炎林は全力で【ヘラクレス】を応援する。

 

【ヘラクレス】と雅治はBパッドを展開させ、バトルの準備をする。

 

 

「一度でも【ヘラクレス】と呼ばれるあなたとバトルがしたかったです」

「本当かいな?めざっちにいいところを見せたいだけとちゃうか?」

「な!?違いますよ!……ていうか【めざっち】って、」

 

 

確信を突かれて頬を赤らめる雅治。否定しているが、本心だ。だが、【ヘラクレス】とバトルがしたいという思いも、また本心であるには違いないことであって、

 

【ヘラクレス】は完全に椎名をマークしてしまう。椎名のアダ名がまた一つ増える。

 

 

「ほな、いくで!」

「はい!」

「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

2人のバトルが始まる。先行は雅治だ。

 

 

[ターン01]雅治

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!僕はアルマジモンを召喚だ!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

雅治が最初に召喚したのはアルマジロ型の黄色の成長期スピリット、アルマジモン。その召喚時も使用する。

 

 

「召喚時効果!3枚オープン……!」

オープンカード

【イエローリカバー】×

【パタモン】×

【フルーツチェンジ】×

 

 

勢いよくめくられるが、それは全て外れ、手札が増えることはなかった。寧ろ相手にデッキの中の情報アドバンテージを提示してしまうことになる、

 

雅治には椎名や司のような引きの強さは備わっていない。自分のセンスの無さを、彼は明晰な頭脳と推理力で補っているのだ。

 

 

「仕方ないね、ターンエンド」

アルマジモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

やることを全て終えた雅治はそのターンを終えた。次は期待がかかる【ヘラクレス】のターンだ。

 

 

[ターン02]ヘラクレス

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「ふ〜む、黄色か、……じゃあ後手に回るのは無しやな!」

 

 

そう言って、【ヘラクレス】はメインステップへと移行し、手札のカード達を抜いていく。

 

 

「メインステップや!召喚!カッチュウムシ!……そして緑の成長期スピリット!テントモン!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨2

 

 

ヘラクレスが召喚したのは甲冑を着た小型のカブトムシと、緑の成長期スピリット、てんとう虫型のテントモンが現れた。このテントモンこそが、彼のデッキの軸となる重要なカードだ。その効果は他の成長期スピリット達とは一風変わった効果であり、

 

 

「テントモンの召喚時!ボイドからコア1つをテントモンの上に置く!……それによりLVも2に上昇や!」

テントモン(2⇨3)LV1⇨2

 

 

テントモンは他の成長期スピリットとは違った召喚時を持っている。それは緑属性なら当たり前のコアブースト効果。テントモンにコアが1つ追加で送り込まれた。それは同時に新たな力を与えられたのに等しいのであって、

 

ー黄色のデッキとの長期戦は不利になる。そう考えた【ヘラクレス】は速攻で決着をつけようと自分のデッキを高速回転させる。可能な限りだが、

 

 

「アタックステップ!テントモンのLV2効果、【進化:緑】発揮や!こいつを手札に戻し、成熟期のカブテリモンに進化させるで!」

「な!?……も、もう進化を!?」

 

 

テントモンはその変わったコアブースト効果により、後攻の第1ターン目から【進化】を行える異例なカードだ。

 

データのベルトに巻かれて、テントモンが進化する。新たに現れたのは立派な一本の頭角を持つ成熟期スピリット、カブテリモン。4本の手、4本の羽を広げて、主人である【ヘラクレス】の前に現れた。

 

 

「す、すごい!もう進化した!」

「せやな、兄さんのデッキにとってこのくらいは朝飯前や」

 

 

素直に驚く椎名。この動きを何度も目の当たりにしているからか、真夏は特に驚くことはなく、冷静な口調で喋る。そうでなくとも、有名になりすぎた【ヘラクレス】のこの動きは、ほとんどの人々に知られてしまっている。雅治も同様。驚くのは成長期と成熟期の2枚を初手に握っているその引きの強さだ。

 

 

「カブテリモンの召喚時かアタック時、相手のスピリット1体を疲労……対象は当然、アルマジモンやな!」

 

「くっ!」

アルマジモン(回復⇨疲労)

 

 

カブテリモンの巻き起こす緑の風が、アルマジモンを疲れさせる。カブテリモンの効果の真骨頂はこれからだ。

 

 

「アタックステップは継続や!いけ!カブテリモン!LV2のアタック時効果で、疲労状態の相手スピリットをデッキのいっちゃん上に戻すで!今度は消えな!アルマジモン!」

「……ぐっ!まさかこんなに早くこの2枚を揃えてたなんて……っ!!」

 

 

カブテリモンは4本の腕を胸部に集めてエネルギーを溜めて、それを一気に射出。避けきれないアルマジモンはこれに命中。すると、アルマジモンはデジタルの粒子となって雅治のデッキの一番上に置かれてしまった。

 

デッキトップバウンス効果。カブテリモンの最も厄介な効果だ。何か事前に対策カードをデッキに入れない限り、あまり防ぎ辛い効果だ。

 

 

「流石だぜ!師匠!第2ターンからあの【進化】を繋げるなんて!」

 

 

強すぎる自分の師匠の引きの強さに思わず声を荒らげる炎林。だが、この引きの強さは必然のもの。彼ほどの実力の持ち主は、それを当たり前のように実行してしまう。

 

 

「さぁ、アタック継続中やで!」

 

「……ライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

カブテリモンの4つの拳が、雅治のライフを1つ砕き切った。

 

 

「次やな、カッチュウムシ!」

 

「それもだ!」

ライフ4⇨3

 

 

カッチュウムシの高速体当たりが炸裂。また雅治のライフが砕けた。雅治はこのターンで、スピリットと、ライフを2つを同時に失ってしまった。たった2ターン、たったの2ターンで、その実力の差がはっきりとわかってしまう。

 

 

「まぁ、こんなもんやろ、ターンエンドや」

カブテリモンLV2(3)BP8000(疲労)

カッチュウムシLV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト無

 

 

(くっ……!……強い、…椎名の前でこれ以上無様な姿は見せられない。次のターンで一気に挽回するんだっ!)

 

 

余裕の顔でターンを終える【ヘラクレス】。散々鳴り響いていた虫達の羽音がようやく静かになった。

 

雅治は次のターンで挽回の機会を狙う。

 

 

[ターン03]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「いくよ!メインステップ!天使キューリンと、戻ってきたアルマジモンをLV1ずつで召喚!」

手札5⇨3

リザーブ7s⇨2

トラッシュ0⇨3s

 

 

かの有名なスピリット、クーリンをモチーフに作られた黄色のスピリット、キューリンと、カブテリモンによりデッキの上へと戻ってしまったアルマジモンが召喚される。

 

雅治はアルマジモンの効果を再び発揮する。

 

 

「アルマジモンの召喚時効果!カードをオープンっ!!」

オープンカード

【天使キューリン】×

【パタモン】×

【舞華ドロー】×

 

 

またもやはずれ、3枚のカードは無残にトラッシュへと送られてしまう。だが、雅治は涼しい顔のままアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!いけ!アルマジモン!」

 

 

アルマジモンが体をボールのように丸めて転がっていく。【ヘラクレス】は自分の手札をじっくりと眺め、考える。その結果は、

 

 

「………ライフで受けるで」

ライフ5⇨4

 

 

ライフの減少を選択。弾丸のように加速したアルマジモンが【ヘラクレス】のライフを1つ砕いた。

 

雅治は本当ならもっとライフを減らしておきたかったところだったが、場にいる天使キューリンは自身の効果によりアタックを行うことができない。仕方なくここはターンを終えることになる。

 

 

「エンドステップ……トラッシュにある舞華ドローの効果を発揮、僕のトラッシュにソウルコアがあるため、これを回収する………ターンエンド」

手札3⇨4

 

天使キューリンLV1(1)BP1000(回復)

アルマジモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

トラッシュから舞い上がるように、舞華ドローのカードが雅治の手札へと回収された。雅治はアルマジモンの召喚の際に、コストの支払いをソウルコアで払っていたのだ。

 

 

「ふ〜〜ん、舞華ドロー……ね」

 

 

[ターン04]ヘラクレス

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

カッチュウムシ(疲労⇨回復)

カブテリモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ…………(さぁ〜〜て、どないするかな、アルマジモンのサーチ効果を使うたっちゃうことは今あいつの手札には【進化】も【アーマー進化】もないか、………はたまた引き運の悪さを利用して誘ってるのか……まぁええ、罠だったらだったで、一回乗っかってみよおっと)」

 

 

思考を張り巡らせる【ヘラクレス】。その結果、このターンで一気にライフを減らしにかかる判断を下した。

 

 

「テントモンと山賊親分ヒゲコガを召喚や!……不足コストはカブテリモンからな」

手札4⇨2

リザーブ4⇨0

カブテリモン(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ0⇨4

 

 

【ヘラクレス】は【進化】の効果で手札に戻ってきたテントモンを再召喚すると同時に、髭を長く生やした山賊のようなスピリット、山賊親分ヒゲコガが召喚される。

 

さらに、【ヘラクレス】はテントモンの召喚時効果でコアを1つブーストすると、すぐさまアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!ヒゲコガでアタックや、その効果でボイドからコア1つヒゲコガに置き、相手のスピリット1体を疲労、対象はもちろんキューリンや」

山賊親分ヒゲコガ(1⇨2)

 

「ぐっ!……」

天使キューリン(回復⇨疲労)

 

 

ヒゲコガは自分の持つ古びた剣を振り回す。それで起きた大きな風がキューリンを襲う。キューリンは思わず横になってしまった。戦っているとは思えない程にとても緩い顔つきで、

 

天使キューリンには、破壊時に自分のライフを1つ回復する効果がある。だが、疲労を得意としている【ヘラクレス】相手では、その効果を存分には使えない。おまけにそれがアタックできないときたものだから、まさにやられるがままだった。

 

 

「アタックは継続中やで、」

 

 

【ヘラクレス】がそう言いつつもヒゲコガがそのでかい腹を揺らしながら走って来る。目指すは雅治のライフだ。このターン、【ヘラクレス】のフルアタックが通れば、彼の勝利に終わる。

 

だが、雅治は待っていた、このタイミングを、【ヘラクレス】が勝ちに来るためにカブテリモンのLVを下げてまでスピリットを展開して来ることを、そして手札のカード1枚を抜き取る。【ヘラクレス】はその動作を見て、「後者やったか」と、察したように呟く。

 

 

「それを待ってた!フラッシュマジック!舞華ドロー!相手のスピリット1体のBPをマイナス3000し、0になったらそれを破壊、デッキから1枚ドローできる………僕はこの効果でテントモンを対象にする!…テントモンのBPは2000、よってそれを破壊し、僕はカードを1枚ドローする」

手札4⇨3⇨4

リザーブ2⇨1

トラッシュ3s⇨4s

 

 

テントモンは眩い黄色の光に包まれて、そのまま爆発してしまう。それでもまだフルアタックされれば雅治のライフは尽きてしまうのだが、

 

 

「わかっとるよ、舞華ドローの効果はな、それだけじゃあまだ足りんでぇ、(まぁ、ここで意気揚々と使うたんやからまだ何かあるんやろうなぁ)」

テントモンBP2000⇨0(破壊)

 

 

【ヘラクレス】のこの予想は完璧に的中している。雅治はさらにもう1枚のカードを抜き取る。それはこの状況を一変させるカードだった。

 

 

「フラッシュタイミングで、手札にあるサブマリモンの【アーマー進化】発揮!アルマジモンを手札に戻し、1コスト支払うことでこれを召喚する!……サブマリモンを召喚!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ4s⇨5s

サブマリモンLV1(1)BP4000

 

 

「……!!…ほぉ、珍しい、…アーマー進化かいなっ!」

 

 

アルマジモンに独特な形をした卵が頭上に投下される。アルマジモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは、まるで小型の潜水艦のようなスピリット。鼻先のドリルを回転させながら、青のアーマー体、サブマリモンが浮上した。

 

 

「おぉ!アーマー体!しかも青!」

 

 

これに反応したのは椎名だった。同じ青を使うからか共感したのだろう。そして、雅治はその召喚時の効果を使用する。

 

 

「サブマリモンの召喚時効果!相手のコスト4以下のスピリット1体を破壊!僕はヒゲコガを破壊する!」

「……!!……コスト破壊っ!」

 

 

地中を泳ぐように移動するサブマリモンは、その下部に取り付けられたミサイルを発射する。行く先は走って向かって来るヒゲコガだ。ミサイルはヒゲコガの足元までくると上へと飛び上がり、ヒゲコガの腹の側で爆発する。ヒゲコガは耐えられず、ミサイルと共に爆発した。

 

【ヘラクレス】は少し驚いていた。何かしらの反撃が予想されたこのターンだったが、まさか黄色のデッキから青属性の特徴であるコスト破壊が飛んでくるとは思ってもいなかったのだ。

 

 

「これはちょいとしてやられてしもたなぁ、……でもアタックステップはまだ終わらへんでぇ!カブテリモン!」

 

「……!!…ライフで受ける!」

ライフ3⇨2

 

 

4枚の羽を羽ばたかせ、飛翔するカブテリモン。上空から雅治のライフを叩きつけるように破壊した。

 

 

「…ターンエンドや……」

カッチュウムシLV1(1)BP1000(回復)

カブテリモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

[ターン05]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨7

トラッシュ5⇨0

天使キューリン(疲労⇨回復)

サブマリモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!パタモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨4

トラッシュ0⇨2

 

 

雅治の場に、新たなる成長期スピリットが現れる。それは小さな哺乳類型で耳が羽のように発達したスピリット、パタモン。雅治はその召喚時効果を使用する。

 

 

「パタモンの召喚時!カードをオープンする!」

オープンカード

【イエローリカバー】×

【アルマジモン】×

 

 

パタモンはデッキから2枚オープンし、その中の「成熟期」「完全体」を加える効果があるが、今回も失敗に終わる。カードはトラッシュ送りとなった。だが、

 

 

「まだだ!僕はアルマジモンを召喚!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨2

トラッシュ2⇨3

 

 

三たび現れるアルマジモン。雅治はデッキへと手を伸ばし、その召喚時を発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

【エンジェモン】○

【アンキロモン】○

【ペガスモン】○

 

 

「よし!僕はこの効果で「アーマー体」の【ペガスモン】を手札に加える!」

手札3⇨4

 

 

ようやくゲットに成功する。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとはまさにこのことだ。雅治は手札にあるペガスモンのアーマー進化の効果をメインステップで発揮させる。

 

 

「ペガスモンの【アーマー進化】発揮!対象はパタモン!対象のスピリットを手札に戻し、1コスト支払うことで召喚できる!……希望の光差す天馬!ペガスモンを召喚!」

リザーブ2s⇨1

トラッシュ3⇨4s

ペガスモンLV1(1)BP5000

 

 

パタモンに羽のついた卵が頭上に投下される。パタモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは、まるでペガサスのような姿をした聖獣型の黄色のアーマー体、ペガスモン。その優雅な姿に、【ヘラクレス】は目を見開く。

 

 

「ほぉ、立派なもんやな〜〜」

「ペガサスだぁ!カッコイイ!!」

 

 

椎名は初めて目の当たりにするペガサスに興奮する。この間ユニコーンのような姿をした晴太のエグゼシード・ビレフトを目の当たりにしたからだろう。

 

ー雅治はそのペガスモンの力を存分に発揮させる。

 

 

「ペガスモンの召喚及びアタック時効果!相手のスピリット1体をBPマイナス3000!対象はカブテリモンだ!」

 

「………!!」

カブテリモンBP5000⇨2000

 

 

飛翔するペガスモンの額から放たれる聖なる光線がカブテリモンを貫く。カブテリモンは力をそれに奪われてしまう。そしてこの効果はアタック時にも発揮できるのであって、

 

 

「アタックステップ!ペガスモンでアタック!再び効果を発揮!カブテリモンのBPをマイナス3000!0になったカブテリモンを破壊する!」

 

「ぐっ!!」

カブテリモンBP2000⇨0(破壊)

 

 

再び放たれる聖なる光線。カブテリモンは遂に全ての力を奪われる。そして力尽き、倒れ、大爆発した。

 

 

「すごい!雅治!あのカブテリモンを破壊した!」

「ふん!師匠のカブテリモンを破壊したくらいで何をそんなに喜ぶことがある」

「?……エースじゃないの?」

「違ぇよ!カブテリモンなんて序の口!本当はまだまだ強いのがいるんだぞ!」

「……せやで椎名、兄さんはこんなもんやあらへんよ……ちょっと腹立つけど」

 

 

3人の会話からまだ【ヘラクレス】が本気ではないことが示唆される。これでほぼ互角だと言うのに一体どれほどの力を身につけているのだろうか。底が知れない。

 

 

「ペガスモンのアタックは継続!」

 

「ライフで受けるでぇ」

ライフ4⇨3

 

 

ペガスモンは両脇から宇宙空間を広げると、そこから流星群のようなものを発射させる。【ヘラクレス】のライフはそれに砕かれて1つ破壊されてしまった。

 

 

「続け!サブマリモン!」

 

「それもライフやで」

ライフ3⇨2

 

 

今度はサブマリモン、地中を泳ぐように推進し、ドリルのような鼻先を回転させながら、バリアに衝突し、【ヘラクレス】のライフを1つ破壊した。

 

 

「よし!エンドステップ!トラッシュの舞華ドローを回収して、ターンエンド!」

手札4⇨5

 

天使キューリンLV1(1)BP1000(回復)

アルマジモンLV1(1)BP2000(回復)

サブマリモンLV1(1)BP4000(疲労)

ペガスモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

雅治はブロッカーを2体残し、そのターンを終える。

 

 

[ターン06]ヘラクレス

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ7⇨8

 

 

「ドローステップ………!!…なんや、もう終わりなんか」

手札2⇨3

 

「なに!?」

 

 

今、確かに彼はそう言った「終わり」だと、【ヘラクレス】はドローしたカードを見て、察したのだ。このターンでバトルが終わることに。だが、現在、【ヘラクレス】の場には低コストスピリットのカッチュウムシ1体しかいない。こんな状況から少ない手札で一体なにをしようというのか、

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ8⇨12

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、………そうそう、長峰、さっき俺は『バトルに関しては女の子にも容赦せん』って言うたけどなぁ、……………俺は男にはもっと容赦しないねん。念頭においとくんやなぁ」

「………!!」

 

 

さっき会った時と同じような感覚を雅治は味わっていた。とてつもないプレッシャーだ。それと同時に、雅治はドローステップでの言葉が嘘ではないことを見抜いてしまう。彼は本気だ。本気で終わらせるつもりだ。ブロッカー2体をどけ、さらに残った自分の2つのライフを減らすつもりだ。

 

ーそして【ヘラクレス】はドローステップで得た1枚のカードをゆっくりとBパッドに置いていく。

 

 

「ちょっとだけ力を見せてやるでぇ、………アトラーカブテリモンをLV2で召喚や!!!」

リザーブ12⇨3

トラッシュ0⇨6

 

「……!!」

 

 

地中から勢いよくスピリットが飛び出してくる。それは先のカブテリモンが進化し、完全体となった姿。体は赤みを帯び、羽がなくなるが、そのかわり頭角が日本の国産カブトのような逞しいものに変わる。

 

赤き稲妻をその頭角に纏う緑の完全体スピリット。アトラーカブテリモンが【ヘラクレス】の場に誕生した。雅治も当然このスピリットのことは知っている。【ヘラクレス】でのバトルでは必ずと言っていいほど召喚され、フィニッシャーになっているのだから。

 

 

「す、すごい、」

 

 

椎名もそのアトラーカブテリモンのとてつもない威圧感に飲まれそうになる。炎林はその右横で「やっちまってください!師匠!」と大きな声で叫ぶ。左横では真夏がそれを「うるさい」と一蹴する。

 

 

「アトラーの召喚時発揮!相手のスピリット2体を疲労させるか、疲労状態のスピリット2体を手札に戻す!俺はアルマジモンと天使キューリンを疲労させるで!」

 

「くっ!」

アルマジモン(回復⇨疲労)

天使キューリン(回復⇨疲労)

 

 

アトラーカブテリモンの4本の腕から放たれる赤き稲妻が、アルマジモンとキューリンを襲う。2体を吹き飛ばし、疲労を負わせる。そして【ヘラクレス】はアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!アトラーでアタックや!効果でアルマジモンとキューリンを手札に!」

 

「…………」

手札5⇨7

 

 

アトラーが再び4本の腕から赤き稲妻を放つ。アルマジモンとキューリンは今度は耐えきれずに、デジタルの粒子となってしまって、雅治の手札へと戻ってしまう。

 

 

「そ、そうか……思い出した。こ、これが噂の【キングスロード】、王者の道、……か……っ!」

 

 

【キングスロード】。【ヘラクレス】がバトルを決めにかかる時、必ずと言っていいほど、相手のスピリットが全て疲労しているか、手札に戻っているかのどちらかであり、その様がまるでスピリット達が彼に道を譲っているように見えることから、このようなターンを王者の道、【キングスロード】と呼称されるようになった。

 

ー今がまさにその状況だ。だが、雅治もただでは転ばない。手札のカードを1枚引き抜く。

 

 

「でもまだ負けない!フラッシュマジック!回収していた舞華ドローを使用する!対象はカッチュウムシ!BPは0になる!…よって破壊し、カードをドローする!……よし!これで………」

手札7⇨6⇨7

リザーブ3⇨1

トラッシュ4s⇨5s

 

 

舞華ドローがここに来て再び炸裂。カッチュウムシが光に包まれて、爆発してしまう。これで【ヘラクレス】のスピリットは1体。雅治の残った2つのライフを破壊できずに終わる。……………かと思われた。

 

 

「………なんや、もう抵抗は終わりか?」

カッチュウムシBP1000⇨0(破壊)

 

「!?!…………な、なにを、………!!?…そうかっ!……アトラーは!!」

「え!?なに?防げないの?」

「周りを駆除したくらいじゃ、アトラーは止まらないっちゅうこっちゃ」

 

 

雅治はアトラーカブテリモンのもう1つの効果を思い出した。それはフィニッシャーとなる決定力をあげるカブテリモン系特有の効果であって、

 

観客席の椎名もその効果を知らない。今回、それを目の当たりにできたのは幸運中の幸運と言っても過言ではないだろう。

 

 

「さぁ、どう受ける気や?」

 

「…………ライフだ」

ライフ2⇨1

 

 

負けを悟ったように迫り来る赤き甲虫の4本の拳をライフで受け止める雅治。それは砕かれ、いよいよ残り1つ。そしてここからが赤き甲虫の真骨頂だ。

 

 

「アトラーが相手のライフを減らした時、相手のライフを「完全体」の数1体につき、さらに減らす。今回はアトラーが1体、よって追加でもう1つもらうでぇ!……レッドホーンフィニッシュ!!!」

 

 

その赤き一本の頭角に同じく赤き稲妻を纏い、雅治のライフに突進するアトラーカブテリモン。その勢いで雅治の最後のライフを串刺しにし、破壊。【ヘラクレス】が圧倒的な力の差を見せつけて雅治に勝利した。それに伴い、残ったスピリット達がゆっくりと消滅していく。アトラーカブテリモンはその中で勝利を祝うように奇声を上げ続けた。その姿はまさに王者の咆哮。

 

 

(ま、負けた、なんて人だ、まさかここまでだなんて、……この僕がずっと掌で転がされていた………っ!)

 

 

このバトル、一貫して見ると、ずっと互角のバトルに見えなくもないが、そうではなかった。【ヘラクレス】は常に雅治のほとんどの行動を読み取り、動いていた。互角になっているように見えたのは、【ヘラクレス】自身が敢えて雅治の罠に乗っかったから、雅治がどんなバトラーなのか見たかっただけだ。そうでなければ、第4ターンでスピリットなど展開せず、素直にカブテリモンの効果で再びアルマジモンをデッキトップに戻していたことだろう。雅治もバトルを続けていくうちに、薄々それを感じとっていた。

 

雅治は膝をつく。悔しさや、脱力感に襲われたからだ。雅治は今日、改めて自分の弱さを痛感した。【ヘラクレス】はそんな彼の目の前までいく。

 

 

「ふぅ〜〜なかなかスリリングやったでぇ、またやろうや、」

「……はい、お見事でした……っ!」

 

 

そう言って手を差し伸べる【ヘラクレス】。雅治もその手に合う手で掴み、立ち上がる。2人が互いの実力を認め合った証拠だ。

 

その握っている手を離すと、【ヘラクレス】は疲れを癒そうとしているかのように、ゆっくりと腰を伸ばす。

 

ーそして、ここに来た時同様の大きな声で、

 

 

「はぁ、疲れたなぁ…………よし!炎林!今日のとこは帰るでぇ!」

「えぇ!?もう帰るんですか!師匠!?」

「おう!久しぶりに妹の顔も見れたし、可愛い子もおるし、もう満足や!」

 

 

急に帰ると言い出す【ヘラクレス】。炎林は少しだけ驚くが、自分の師がそう言うのだ。帰るしかあるまい。炎林は観客席を降りる。

 

 

「じゃあなぁ!真夏ちゃーーん!!めざっち〜〜〜〜!!!また会おうね〜!!!」

「二度と来んなやぁ!!この変態!!!」

「ははっ、………じゃあねぇ!!!真夏のお兄ちゃん!!!」

「いや、椎名、受け答えせんくてええねん!!!!!」

 

 

そう言って大きな声で高笑いしながら、【ヘラクレス】は満足げな顔で第3スタジアムを炎林と共に出て行く。ジークフリード校とキングタウロス校の急な交流はこれにて幕を閉じた。

 

 

 

******

 

 

 

「つ、疲れた……」

 

 

その後の下校時のことだ。真夏は疲れ切った顔をしながら椎名と雅治の横を歩く。ツッコミ疲れたのだ。自分の兄が突然自分の学校に訪問して来たのだ。当然といえば当然だが、

 

いろんな意味で兄を遠ざけるためにジークフリード校にきたが、それが仇となった。久しぶりに兄のオーラを浴び過ぎて余計に疲れてしまった。

 

椎名は真夏がよく人に対してツッコミに回るのがよくわかった。あんなに変わった兄がいればどうしてもそうなってしまうのだろう。真夏が今まで苦労してたのがわかる1日だった。

 

ーそして椎名は何かを思い出したように掌を合わせるようにを叩く。

 

 

「……あっ!そういえば、雅治、今日私に何か言おうとしてなかった?」

「あっ!」

 

 

すっかり忘れていた。雅治は椎名に今度の休みにショッピングならぬデートに誘おうとしていたことに。

 

 

「あっ、えぇっと、そうだね、」

「?」

(頑張りやぁ)

 

 

雅治は困惑していた。急にふってきたものだから言葉がパッと浮かばない。いや、「一緒にショッピングしない?」と言うだけなのだが、真夏も再び心の中で応援する。雅治にアドバイスしたのは彼女だ。真夏自身も恋愛経験はないのだが、

 

やはり相手が好きな女の子だと言いだし辛いものがある。胸の心音が頭に響いてうるさい。

 

ーそれでも意を決して告げる。

 

 

「その、………僕と今度の日曜!!!ショッピングしてくれませんか!!!!!!?」

 

 

言った。大きい声で不自然だが、言えた。なんとか言えたが、対する椎名の反応は。

 

 

「え!?そんなデカイ声で言うこと?……まぁいいけどさ!」

 

 

深い意味を全く理解していないが、一応元気な声で了承する椎名。雅治は心の中で飛び上がった。とても嬉しかった。真夏も心の中が晴れやかになる。今まで溜まったストレスが浄化されたかのように。

 

椎名はそんな2人の顔を見て不思議に思う。

 

 

「?……真夏も行く?」

「い、いやいや、行かれへんよ〜……あたしその日用事あんねん!!」

「そ、そうなの?」

(服……何着て行こうかな?)

 

 

嘘だ。真夏は絶対尾行する気だ。椎名は真夏の異様なテンションの高さに少し驚いた。理由は一生かけてもわからないだろうが、

 

緑坂真夏。関西出身の女子高生。基本はツッコミ役だが、この手の話だとボケに回ることが多い。周りがおかしな連中ばかりで気づいていないだけで、本当は彼女自身も十分変わり者だ。

 

 

 

******

 

 

 

場所は変わり、ここは電車の中。炎林と【ヘラクレス】は帰宅中。腰掛けに座っている。炎林は疲れ切ったのか、周りの人達など気にせず鼾をかいて寝ていた。【ヘラクレス】はなんとかそれを起こそうと試みるも、これがなかなか起きなかった。彼はもうどうでもよくなり、一旦炎林のそばを離れ、違うところに座り、1人落ち着く。

 

 

(今日はなかなかええもん見れたな、【朱雀】の親友の長峰に、【めざっち】。……今年の【界放リーグ】では、【朱雀】とあの2人のどっちかが上がって来るやろなぁ……………いや、長峰は参加せんやろ……じゃあ、ジークフリードからは【朱雀】と【めざっち】の2人か………ふふ、おもろなって来たでぇ!!)

 

 

今日のことを振り返りながらそう考える【ヘラクレス】。毎年行われる界放市の6つの学園によるバトスピ祭り【界放リーグ】。その学校の代表者は学園毎に2名だ。その選出方法は学園内での選抜予選大会で決めるのだが、【ヘラクレス】は椎名と司の2名が勝ち上がって来ると予想。彼は最初に椎名を見た時から見抜いていた。椎名がかなりのバトスピセンスの持ち主であると、雅治が参加しないと思った理由はわからない。妹の真夏は絶対に参加しないだろうと思ったのか、名前すら考えなかった。それは真夏が自分と比べられるのが嫌なのを知っているからである。大会など特に滑降な比較場所だろう。

 

【ヘラクレス】は胸の高鳴りを感じていた。【朱雀】の司とはジュニア時代ではバトルは一切していなかった。ジュニアクラス、又は中学生の大会では、3年生は受験で忙しくなるため、大会に参加できないのだ。そのため、必然的に1、2年生で争われることになる。それ故に年が2つ離れていた【朱雀】と【ヘラクレス】は対戦できなかった。今年ようやく念願の対戦ができることは、彼としては楽しみの極みのようなものであって、

 

ー【ヘラクレス】は大の女好きだが、それ以上に熱いバトルがなによりも好物だった。

 

今回、彼がジークフリード校に来たのは、真夏のことももちろんあるが、それ以上に【朱雀】のバトルを一目見たかっただけだった。結果としては会えなかったものの、ひょっとしたら【朱雀】以上かもしれない人物である椎名に出くわした。【ヘラクレス】は確信していた。彼女なら絶対に選抜予選を勝ち抜き、【界放リーグ】本戦に出場して来ると、

 

ーだが、椎名はまだその【界放リーグ】の存在すら知らない。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【アトラーカブテリモン】!!」

「アトラーカブテリモンは、リリモンと同じく緑の完全体!召喚時とアタック時に相手のスピリット2体を疲労させたり、手札に戻したりできるよ!私も【ヘラクレス】とバトルしてみたかったなぁ!」






最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回登場した【キングスロード】王者の道。
ですが、正確な英訳は全く違う単語です。この物語の中では英訳ではなく、ただ単にそう呼ばれるようになった。と言う解釈でお願い致します。

ヘラクレスと炎林も後で設定に書き足しておきます。時間があればどうぞご覧になってください!

いよいよ貯めていたストックを全部投稿し終えました。次回は10日後くらいになる可能性もあります。ご了承ください。タグの通り、この作品はだいたい1週間で投稿します。短くて2日、長くて10日くらいの間隔でやってみせます。

オバエヴォの第1章の物語も、次回からゆっくりと傾いていきます。


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第11話「椎名の最高の1日」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《皆さん!おはようございます!【紫治 夜宵(しち やよい)】です!今日も元気にパープル・ヒーリングを始めちゃいましょう!》

 

 

これはあるラジオの人気番組。紫治夜宵の【パープル・ヒーリング】だ。パーソナリティを務める紫治夜宵は16歳にして、この界放市では絶大な人気と知名度を誇る有名な芸能人。この街においては彼女の名前と顔を知らない者はいない。このラジオ番組だけでなく、界放市のグルメリポートや、歌手など、その幅はかなり広く、基本的に職を選ばない。

 

ーそしてこの番組で一番人気のコーナーが、

 

 

《ハイ!それでは次のコーナーです!………【導け!バトスピ占い!】………このコーナーは、今から私がドローするカードで今日1日のみんなの運勢を占っちゃおう!…と言うコーナーです!……では早速今日のカードをドローしていきましょう!》

 

 

ちなみに、普通は星座や、干支などで占うのが一般的だが、この街ではそれぞれの人達が持っている、又は使っているデッキの色だ。何故ならこの街の9割以上がカードバトラーなのだから。デッキが混色の場合はそのベース色が対象になる。例えば司だったら赤だ。

 

夜宵は用意されたカードの束の中から1枚引き抜く。引いたカードは、

 

 

《ハイ!今日のカードは【ネコジャラン】です!》

 

 

【ネコジャラン】猫のような外見に、尻尾がネコジャラシになっているのが特徴的。緑のスピリットであるが、赤、青のスピリットとしても扱う効果を持っている。夜宵はそのカードから見える今日の運勢を伝える。

 

 

《今日の1番は緑のあなた!楽しみにしていることがやっとやってくるかも!でも友達を見失うことには気をつけて!ラッキーアイテムは輪ゴム!》

《2番目は青のあなた!今日はいいことがあるかも?でも物は壊さないようにね!ラッキーアイテムは懐中電灯!》

《3番目は赤のあなた!デッキを調整してたら思わぬ発見があるかも!?でも油断してるといきたくないところに連れて行かれちゃいそう!ラッキーアイテムはケチャップ!》

《4番目は白のあなた!あまり外に出ない方が悪いことは起こらないかも?ラッキーアイテムは白い短パン!》

《5番目は黄色のあなた!ゆっくり注意してたら好きな子と距離を縮めるチャンス!?でも一瞬でも気をぬくととてもつまらない1日に!ラッキーアイテムはバスケットシューズ!》

《そして、ごめんなさい!6番目は紫のあなた、今日は色々面倒なことが起こりそう、ラッキーアイテムは黒いニット帽!》

 

 

淡々と明るく可愛らしい声色で、そう伝える夜宵。飽くまでも占いなので真に受ける必要性もないが、これがまたよく当たると最近専らの評判なのである。そして最後に行うのが、

 

 

《そして最後に今日ドンピシャで運がいい人!それはデッキが緑と青の混色で、尚且つ赤属性が少し混じってるデッキを使ってるそこのあなた!今日はとても素晴らしいことが起きます!楽しみにしててくださいね!》

 

 

このドンピシャコーナーだ。さっきまでと違い、絶対にその幸福が来ると断定して話している。あまりにも条件が細かすぎるゆえに当たる人間はほとんどいないのだが、今回は違った。

 

ラジオ放送が終わり、そのラジオのスイッチをリビングで切る少女が1人。椎名だ。

 

 

「……………それ私じゃん!!!!!」

 

 

椎名は驚いた。確かに椎名はさっきのドンピシャのコーナーの条件に合っていた。1ミリのズレもなく。

 

ちょうど2週間前だろうか、テレビのドラマやバラエティで登場する紫治夜宵を見たのは、彼女の話が面白かった。そこから椎名は彼女のファンになった。男性だけでなく、女性ファンも多いのも、紫治夜宵の特徴であった。ちなみにファンの人達からの彼女の呼ばれ方は【夜宵ちゃん】だ。

 

椎名は幸せな気持ちになる。何という幸福感だったろうか、それは本人にしかわからないものだが、自分の好きな芸能人に名前を呼ばれたことに等しい筈だ。椎名は悟る。今日は必ず素晴らしいことが起こると。

 

 

「あっ!もうこんな時間だ、早く行かないと、」

 

 

今日は日曜日。学校は休みだ。だが椎名には行かなければならない場所があった。それはショッピングモール。この間、雅治と約束したのだ。一緒に買い物でも行かないか?と。

 

椎名は私服に着替えて出かける準備をした。黒いパーカーに大きめのブーツが印象に根強く残る。

 

 

「あぁ、と、懐中電灯持ってこ〜〜〜っと」

 

 

紫治夜宵の占いで言われたラッキーアイテムの懐中電灯も忘れなかった。椎名はそれを手に持ち、懐に入れると、住宅街を飛び出した。

 

 

 

******

 

 

 

そしてここは界放市一のショッピングモール。果てしなく大きくて、広い。とにかく広い。日曜日ということもあって大勢の人達で賑わっていた。そんななか、ショッピングモール前のベンチで座っている男子が1人。雅治だ。

 

彼は今日という日を待ちわびていた。まさか椎名とショッピングできるなどとは夢にも思わなかっただろう。雅治は待ち合わせの時間から2時間前からここに座っていた。それほど緊張しているのだろうか、椎名とは学校などで普通に話す分には特に問題はないのだが、こういうことになるとどうも思い上がってしまう。

 

そしてそこから少し離れたところからその様子を眺める人影が2つ。真夏と司だ。彼らは変装のつもりなのか、サングラスとアフロのカツラで他人になりすましていた。だが、司は何やらご機嫌斜めで、

 

 

「おい、関西女」

「ん?なんや?」

「なんやじゃない、……なんだこの格好は、何故俺がこんな恥ずかしい格好で人気の多いショッピングモールにいねぇといけねえんだ」

「何言うとんの?…せっかくの椎名と長峰のデートなんよ?!……こんなおもろっそうなイベントそうそう起こらへんって!……見たいやろ?」

「見たくない。俺は【界放リーグ】に向けてデッキの調整に忙しいんだ」

「【界放リーグ】の予選なんてまだ後2ヶ月近くあるやないか、………あっ、椎名や椎名や!」

「おい!服を引っ張るな!……くっ!てめぇ、とことん逃がさねぇつもりだな」

 

 

司とて、雅治が今日椎名とショッピングモールに行くことくらいは知っていた。雅治と司は今同じ家で2人で暮らしているため、いやでもそのことは雅治から聞かされるのだ。

 

だからといって雅治の恋愛に興味がないわけではない。極力応援したい気持ちも少なからず司にはある。だが、それは他人が介入していいものではないと司は考えているからこそ、今日は彼を遠ざけようとしたのだ。それでも真夏に無理矢理連れて行かれてしまったのだが、あまりの彼女の強引さに、結局尾行することになってしまった。

 

司は女子のそういうところが嫌いだ。

 

そんな中でようやく椎名が到着する。元気よく手を振りながら近づいて来る。この時間は約束の時間より5分ほど早かった。

 

 

「おお〜い!雅治!おまたせ〜〜!!」

「し、椎名!……お、おはよう!」

「?」

 

 

ベンチから勢いよく立ち上がってしまう雅治。椎名もいつもと違う雅治に見えるのか、やや怪しげな目で見つめる。

 

 

「どうかしたの?」

「い、いや〜〜なんでもないよ、じゃあ行こうか……!」

 

 

そう言って話を切るかのように歩き出す雅治。椎名もそれについて行く。目の前のショッピングモールへと足を運んだ。外から見るより内側は遥かに膨大だった。色々な品物を揃えた店が所狭しと並べられている。

 

 

「おぉ!ここが界放市一のショッピングモール!広ぉぉい!」

 

 

椎名は目を輝かせながら感動の声を上げる。彼女の故郷である離島にはこんな大きな店などないからだろう。

 

雅治は私服の椎名と会うのは初めてだった。そのこともあってか彼は新鮮な気持ちになっていた。だが、ここで浮かれすぎて入念に計画していなかった分のツケが回ってくることになる。

 

 

「そういえばさ、何買うの?」

「ん!?」

「いや、なにか買いたいから誘ったんじゃないの?」

 

 

そういえばなにも考えていなかった。そうだ、なにも買わずにショッピングなどおかしい。本当の理由は【椎名と一緒にいたかった】だが、そんなの告白同然だ。雅治に言えるわけがない。しかし、彼のI.Qは高い。咄嗟の言い回しで回避する。

 

 

「いやぁ、ほら、あれだよ、夕飯のメニューを増やそうと思ってね!椎名は一人暮らしで料理は得意だって聞いたから!」

「あぁ!そういえば司と2人で暮らしてるんだったね!今度遊びに行っていい?」

「う、うん!いいとも!」

 

 

なんとか切り抜ける。だが、この言葉が司と真夏の耳にも入っていて、

 

 

「あの野郎!めざしなんて誘うんじゃねぇよ!うるさくて敵わねぇぞ!」

「まぁまぁ、長峰の調子も戻ってきたみたいやし、よしとしようやないのぉ」

 

 

そう言ってからの肩にポンと手を置く真夏。2人は物陰に隠れながら2人を尾行しているが、そのサングラスとアフロの格好のせいでかえって悪目立ちしていることには気づけていない。

 

咄嗟に切り抜けたことで、雅治の調子を取り戻したのか、いつものように普通に喋れるようになっていた。咄嗟に考えた嘘から考え出した歩く道のりを椎名に伝えようとする…………が、ここで事件が起きた。

 

 

「よし!椎名!先ずは野菜のコーナー……を?」

 

 

振り返って椎名の方を振り向いて見るとそこに椎名は見当たらなかった。まるで瞬間移動でもしたかのような速さでどこかへと姿を消したみたいだった。

 

 

「あ、あれ!?椎名?」

 

 

雅治は直ぐに周りを見渡した。が、やはりどこにもいない。真夏と司も椎名を見失っており、

 

真夏が思い出したかのように手をポンっと合わせる。この大きなショッピングモールに行くならば、そこそこ重要なことであった。

 

 

「あっ!そういえば、椎名の奴、方向音痴やった……」

「いやいや!もはや音痴のレベルじゃねぇぞ!?」

 

 

3人の椎名捜索の長い旅路の始まりであった。一方の椎名はというと。

 

 

******

 

 

「あれ?どこだろ?ここ……さっきから雅治もいないし、うーむ……雅治、道に迷ったのかな?」

 

 

気づいた時には全く違う通りへと足を運んでしまっていた椎名。自分が迷子だという自覚は毛頭ない。取り敢えずその場をもう一度歩いて見る。

 

 

「ちょっと!?……離しなさい!」

「いいじゃねぇか!少し俺らと遊ぼうってだけだって!」

「ん?」

 

 

すると椎名の目に留まったのは、ゲームコーナーでショートカットでサングラスと黒いニット帽を被っている女の人が、なんか毒島っぽい感じのキャラ3人組に絡まれている様子だった。椎名は女の敵は許せない。考える間もなく、そこまで早歩きで一直線に歩み寄って行く。

 

 

「ふんっ!」

「あぁ!?」

 

 

椎名は近づくなり、直ぐにその手を退かした。その勢いで女性のサングラスが外れる。毒島っぽい3人組は椎名を睨みつける。なんとも言えない濁った目だった。椎名もまた、彼らを睨みつけた。

 

 

「おいおい!なんだ、ネェちゃん!邪魔しないでくれるぅ?」

「今いいとこだったのに!」

「つか!あんたも結構いいなぁ!どうだ、2人まとめて…………」

 

 

昔、椎名は育ての親から色々と鍛えさせられていた。肉体的に、バトスピのためと銘打って。だが、椎名は5年くらい前に気づいた。バトスピに肉体的な強さはいらない。ということに。

 

椎名は今一度気づく。この鍛えた拳は、肉体はこいつらを倒すためにあるのだと、だけどもこれはバトルスピリッツ。カードゲームの物語だ。そんなことをしてしまえば作品が崩壊しかねない。

 

と、考え、椎名は懐から懐中電灯を取り出した。

 

 

「あぁ!?懐中電灯?」

「ハッハッハ!なに!?それで俺らとやろうっていうの?」

(あっ!あれは………!)

 

 

大声で叫んで嘲笑う3人組だが、ニット帽の女の人だけは違った。まるで何かに気づいたかのような顔つきになる。椎名はそれを両手に持ち。

 

 

「ふんっ!」

「「「「へ!?」」」」

 

 

〈バキッ!〉……そんな割れた音が鳴り響く。椎名はまるでアイスの棒を分けるかのように懐中電灯をその手だけで真っ二つにしてしまった。壊れた後からネジやら破片やらのパーツがぼたぼたと零れ落ちていく。

 

 

「……こ、こいつ、や、やべえぞ」

「あ、あぁ」

「か、帰ろうぜ」

 

 

危険と悟ったのと、引いたのと、いかれてると思ったのとで、さまざまな気持ちが混ざってしまった3人組は呆れてその場を逃走していった。

 

 

「……やっちゃった……どうしよう、ラッキーアイテム」

 

 

事なきを得たものの、椎名は今日の自分のラッキーアイテムの無残な姿を見てもどかしい気持ちになる。そんな時、そのニット帽の女性が椎名に話しかけてくる。この後椎名に人生で一番の衝撃が訪れる。

 

 

「あ、あの……助けてくれてありがとう!……ところでその懐中電灯…………」

「ん?……あぁ、いいのいいの、これ安もんです…………し…………へ!?」

 

 

サングラスが外れて、見れるようになった素顔はまさしく翼のない天使と言ったところ。椎名は何度もこの顔をテレビで見た。その正体は【紫治 夜宵】だった。

 

 

「や、夜宵ちゃぁぁぁん!?」

「!?!」

 

 

思わず声を上げてしまう椎名。まさか見ず知らずの人を助けたつもりが、見て知ってる人を助けていたのだ。しかもその相手があの人気芸能人、夜宵ちゃんだっだ。これ以上の衝撃はない。

 

椎名の叫びに周りの人達もそこに目を向けてしまう。あの夜宵ちゃんがここにいるとなると大騒ぎは間違いないだろうと考えた夜宵は、椎名の口を無理矢理手で抑えてもう片方の手で椎名の右手を掴み、椎名と共に一目散に走り出した。

 

 

 

******

 

 

「ふぅ!ここなら人目は少ないわねぇ」

 

 

夜宵が椎名を連れて来た場所は、このショッピングモール外にある別館のバトル場。ピラミッド型なのが特徴で、ここは一番上。基本的に通り道になるのは1回と2回くらいなので、一番上はバトル場が1つしかないことも相まって、なかなか人が来ない場所なのだ。

 

 

「ほ、本当に夜宵ちゃんなの?いや!何ですか?」

「ふふ、同い年でしょ!タメ口でいいわよ!………【芽座 椎名】ちゃん」

「……えぇ!?なんで私の名前を!?」

「だってぇ、さっきの懐中電灯にそう書いてあったんだもの!それに!芽座椎名と言ったら、あの司ちゃ、……じゃないじゃない、【朱雀】に勝ったバトラーじゃない!」

「……!!」

 

 

椎名はまた驚いた。まさか司に勝利しただけで自分の名前がこんな有名人まで届いていたと言うことに。とても嬉しかった。ほっこりして、体から温かみを感じる。

 

 

「私!あなた達の通うジークフリード校から一番距離が近いデスペラード校の生徒なの!!そのくらいの噂は飛んでくるのよ!会えて光栄!」

「い、いやぁ!私こそ会えて光栄だよ!まさか夜宵ちゃんとバッタリ会っちゃうなんて!夢のよう!」

「それでね!ずっと椎名ちゃんとバトルして見たかったの!どう?ここで一戦!」

「うん!いいよいいよ!望むところだ!」

 

 

夜宵がデスペラード校に通っているというのは意外にもあまり知られていない。椎名もそのことを初めて知った。それは彼女がラジオ等でも口にしないからというのもあるが、それ以上に、ある異常な人物の権力の力の影響でもあった。

 

一市民である椎名には決してわからないことであった。2人はBパッドを展開してバトルの準備をした。そして始まりのコールが両側から鳴り響く。

 

 

「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

バトルが始まる。先行は夜宵だ。

 

 

[ターン01]夜宵

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!先ずはネクサス!No.3ロックハンドをLV1で配置!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

早速夜宵が呼び出したのはネクサスのカード。それも紫属性だ。まるで生きているような感じで、両手のような大岩が彼女の背後から出現した。

 

 

「ターンエンド!……楽しませてね!」

No.3ロックハンドLV1

 

バースト無

 

 

先行1ターン目などやることが限られている。夜宵はこのターンを終える。次は椎名だ。『楽しませてね!』とあの夜宵ちゃんから言われたのだ。俄然やる気を出していく。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!先ずはガンナー・ハスキーを召喚!さらにその効果で青シンボルを1つ追加し、フル軽減で猪人ボアボアを召喚!LV1!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が召喚したのは、拳銃を持つために青い腕を生やした緑の犬型スピリット、ガンナー・ハスキーと。猪頭で、鎖付きハンマーを振り回す猪人ボアボア。椎名はこれだけ並べるとアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!いくよ!夜宵ちゃん!ガンナー・ハスキーと、ボアボアでアタック!ボアボアのアタック時の【緑:連鎖】でボイドからコアを1つボアボアの上に置く!」

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

 

 

一挙に走り出す2体。相手が紫と分かれば早めにコアを貯めてコア除去をし辛くするのが常套手段だ。

 

 

「これが、噂の青緑速攻か……ライフで受けます!」

ライフ5⇨3

 

 

2体はそれぞれ立ち止まり、銃の連射と、ハンマー投げで、それぞれ夜宵のライフを1つずつ粉々に粉砕した。

 

 

「よし!ターンエンド!」

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(疲労)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

椎名はこの時、夜宵を舐めていたのかもしれない。彼女のバトルの実力を知る者は、デスペラード校の生徒や、教師、又は彼女の肉親とあと数人程度しか知らないので、無理はないが、

 

椎名は初めて感じる事になる。紫治夜宵の。いや、【紫治一族】の末裔の強さを。

 

 

[ターン03]夜宵

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

 

 

「ドローステップ時!No.3ロックハンドの効果発揮!手札にある系統「呪鬼」のスピリットカードを1枚破棄する事によって、そのドロー枚数をプラス2にする!私はオーガモンを破棄!」

手札4⇨3⇨6

破棄カード

【オーガモン】

 

「!!……ドローステップで3枚も……!!」

 

 

これがロックハンドの恐ろしい効果の1つだ。通常、この手のカードは結局はプラマイになることが多いのだが、ロックハンドは手札に「呪鬼」スピリットがいれば、一気にドローステップでアドバンテージの差を広げることが可能なのだ。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!先ずはバーストを伏せて……紫のデジタルスピリット!ピコデビモンをLV2で召喚!」

手札6⇨4

リザーブ7⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

バーストが伏せられると同時に、丸型の体で、コウモリのような羽を持つ使い魔のような紫のデジタルスピリット、ピコデビモンが現れた。そのピコデビモンが持つ能力は、普通の成長期とは少し変わっていて、

 

 

「召喚時効果でカードを1枚ドロー!」

手札4⇨5

 

 

ピコデビモンの効果でカードを1枚デッキから引き抜く夜宵。紫のコスト3と言えばこの効果だ。ピコデビモンにはその効果が内蔵されている。確実にカードが増えるため、紫デッキではこのような効果はほとんどと言っていいほど入る。そしてピコデビモンはデジタルスピリット。当然進化もできるのであって、

 

 

「そしてアタックステップ!ピコデビモンの【進化:紫】を発揮!これを手札に戻して、成熟期のスピリット、デビモンをLV2で召喚!」

リザーブ2⇨3

デビモンLV2(2)BP7000

 

 

ピコデビモンにデータのベルトが巻きつけられる。そしてそれらが離れると、新たな姿に進化していた。それはさっきの丸型とは打って変わって細身の堕天使型。如何にも悪と言った感じのデビモンが召喚された。

 

 

「おぉ!紫のレアカード!」

「ふふ!デビモンの真価はアタック時よ!アタックステップを継続!そのままデビモンでアタック!……アタック時効果発揮!」

「………!?」

 

 

デビモンは自身の手を下に向ける。するとそこから闇の瘴気のようなものがどんどん溢れ出てくる。地面まで到達すると、それは横に広がり、ゆっくりと消えていく。だが、完全に晴れる頃に、椎名は気づいた。そこには屈強な鬼が目の前にいると。

 

 

「な、なんだ、こいつ!?」

 

「これはオーガモン、成熟期のデジタルスピリットよ………デビモンはアタック時にトラッシュにいる系統「成長期」「成熟期」をノーコスト召喚できるの。このオーガモンはさっきロックハンドの効果で破棄したやつ」

リザーブ3⇨0

オーガモンLV2(3)BP12000

 

「び、BP12000、……ッ!!」

 

 

紫の特徴はコア除去だけではない。トラッシュのスピリットを蘇らせる効果にも長けている。デビモンが持つ能力は特に強力なものだ。何せアタックするだけでその効果を発揮できるのだから。

 

 

「さぁ!アタック中!」

 

「ぐっ!……ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

デビモンの強力な右手が椎名のライフを1つ切り裂いた。

 

 

「次よ!オーガモン!」

 

「これもだ!」

ライフ4⇨3

 

 

オーガモンは巨大な棍棒を振り回し、椎名のライフを1つ叩き割る。これでライフだけなら同値に持っていかれた。

 

 

「ターンエンド!」

デビモンLV2(2)BP7000(疲労)

オーガモンLV(3)BP12000(疲労)

 

No.3ロックハンドLV1

 

バースト有

 

 

 

「つ、強い……夜宵ちゃんってこんなにバトル強かったんだ……っ!」

「そりゃあまぁ、だって私は【紫治一族】ですから♪」

「し、しち、一族?」

 

 

【紫治一族】紫のカードを使いこなす一族であり、故人の供養したりする僧侶のような役目もある。その長、夜宵の父である。【紫治 城門(しち じょうもん)】は故人の供養の他にも、デスペラード校の理事長までもを務めている。超人且つ【伝説バトラー】の1人。大きな権力とは彼のことだ。

 

約9年前、デジタルスピリットが多様化してから、この一族のしきたりは少し変わっていった。それはカードの制限だ。

 

 

「私の一族にはランクがあるの、成長期しか使ってはいけないのがランク1、その次が2、3って言う風にね、私はランク2。だからこの成熟期の進化が限界なの………そしてランクを上げるためにはお父様に認められなくてはいけない」

「へ〜〜〜そんな事するとこもあるんだ」

「だから私は早く一人前になって、完全体まで手に入れたい!だからバトスピ学園に入学したの!」

「………なれるよ!夜宵ちゃんなら!私は全力で応援する!」

「うん!ありがとう!……じゃあ次は椎名ちゃんのターンだね!」

「よぉ〜し!!」

 

 

椎名は夜宵の強さを理解した気がした。誰よりも努力したのだろう。きっと、それでも認めてはくれない父を認めさせるためにデスペラード校に入ったのだと。

 

彼女がこんなアイドルじみた活動をしているのはそれが原因の1つであった。父親の気を引かせたい。その一心で2年前からデビューしたのだ。それがかえって父親を困らせるばかりか、もう後戻りできなくなっているのだが、本人自体はこの活動を楽しんでいる。

 

 

******

 

 

一方その頃、椎名を探している他の3人はと言うと、

 

 

「おぉ〜い!長峰ぇ!」

「ん?あれ、緑坂さん?用事あるんじゃなかったの?」

「そんなのホンマにあるわけないやろ?………それでな!【朱雀】が椎名の居場所がわかる言いよるねん!」

 

 

真夏と司は流石にやばいと気づいたのか、アフロもサングラスも外していた。雅治だけでは拉致があかないと考えた司は、ある作戦に出たのだ。それは普通ではありえない、オカルトチックな作戦。幽霊の存在を全く信じていなかった司からは想像もつかない作戦であって、

 

 

「!?……司もいるのかい?」

「もうすぐ来るで」

 

 

真夏がそう言ったのもつかの間、司がゆっくりと2人のとこまで歩み寄った。だが、その手には奇妙なものを持っていた。それは全国のご家庭では必須な存在。誰もが知っている赤い物体だ。

 

 

「……司」

「なんだ」

「その手に持ってるのはなに?」

「…………さっき買ってきたケチャップだ」

「いや!見ればわかるよ!?……ふざけてるのかい!?」

「なんか、これ買うたらすぐ見つかるんやて」

 

 

そう言いながら3人は司を先頭にして、適当に歩き出す。果たしてこんなんで別館にいる椎名を見つけることができるのか。

 

 

******

 

 

そして、ここは再び別館のバトル場、そのてっぺん。椎名の第4ターンがスタートする。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

ガンナー・ハスキー(疲労⇨回復)

猪人ボアボア(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札4⇨3

リザーブ6⇨4

トラッシュ0⇨1

 

 

椎名は瞬時にドローステップでドローしたブイモンのカードをBパッドに叩きつけて、召喚する。ブイモンが彼女の足元から飛び出してきた。

 

 

「……これが軸になる成長期スピリットッ!」

 

「そうだよ!召喚時効果!」

オープンカード

【フレイドラモン】○

【風盾の守護者トビマル】×

 

 

ブイモンの召喚時効果は成功。椎名の手札にアーマー体スピリット。フレイドラモンのカードが新たに加えられた。そして、

 

 

「フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払って、炎燃え滾るアーマー体!フレイドラモンをLV2で召喚!」

手札3⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ1⇨2

フレイドラモンLV2(3)BP9000

 

 

ブイモンの頭上に赤くて独特な形をした卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのはスマートな赤の竜人スピリット、フレイドラモン。

 

 

(ふ〜〜ん。これが司ちゃんを破ったアーマー体スピリット、フレイドラモン……でもそう好き勝手には動かせないわよ!)

 

 

椎名が司に代表バトルで勝利して以降、ジークフリード校だけでなく、それと最も距離の近いデスペラード校と、タイタス校でも、椎名の噂が広まっていた。夜宵も当然それを知っている。

 

そしてそうなると必然的に最後に逆転を飾ったというフレイドラモンもまた、有名になっていた。同学年か、それ以下の学年では全く敵わないと言う【朱雀】に勝ったのだ。本当はもっと広まっていてもおかしくはないのだが、

 

 

「フレイドラモンの召喚時かアタック時の効果!BP7000以下の相手のスピリット1体を破壊して、カードを1枚ドローする!……破壊対象は、ピッタリ7000のデビモン!……爆炎の拳!ナックルファイア!!」

手札4⇨5

 

「……くっ!」

 

 

フレイドラモンの拳の炎が飛ばされる。それは真っ直ぐデビモンの方へ行き、衝突。凄まじい勢いでデビモンを焼却させた。

 

 

「よし!デビモンを倒した!……ガンナー・ハスキーのLVも2に上げ、バーストをセットし、アタックステップだ!………いけぇ!フレイドラモン!オーガモンは無視してそのままライフにアタックだ!」

手札5⇨4

リザーブ1⇨0

猪人ボアボア(2⇨1)

ガンナー・ハスキー(1⇨3)LV1⇨2

 

 

椎名の場にバーストが伏せられると同時に走り出すフレイドラモン。もう1つの指定アタック効果を使用したいところだが、現在夜宵の場にはBPがフレイドラモンより上回っているオーガモンが存在。これでは指定はできないため、疲労していることをいいことに、そのままライフを削りに行った。

 

このままでは、椎名のフルアタックで、夜宵のライフは尽きてしまうが、何故か彼女は笑っていた。まるでフレイドラモンを嘲笑うかのように。

 

 

「ライフで受けます!」

ライフ3⇨2

 

 

フレイドラモンの渾身の炎の拳が、夜宵のライフを破壊する。だが、それは彼女のバーストの条件でもあって、勢いよくそれが開く。

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!妖華吸血爪!デッキからカードを2枚ドローする!」

手札5⇨7

 

「……!!」

 

 

紫のバーストカード、妖華吸血爪。それはライフ減少に反応し、カードをドローさせるという紫らしい効果だが、その恐ろしさはフラッシュにある。

 

 

「さらに、コストを支払ってフラッシュの効果を発揮!私は手札を好きなだけ捨てて、その枚数分だけ相手スピリットのコアをトラッシュに置く!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ2⇨5

 

「なにい!?」

 

「私は手札を7枚のうち3枚を破棄!椎名ちゃんのフレイドラモン以外のスピリットのコアを全てトラッシュに置くわ!」

手札7⇨4

破棄カード

【ピコデビモン】

【ピコデビモン】

【妖華吸血爪】

 

 

「くっ!!」

ガンナー・ハスキー(3⇨0)消滅

トラッシュ2⇨5

 

 

夜宵の破棄したカード達が紫の棘となり、ガンナー・ハスキーの背に突き刺さる。そしてそれに干からびるまでエネルギーを吸われてしまい、そのまま力尽き、消滅した。

 

しかも送られたコアはトラッシュ。次のターンでは防御に回すことはできなくなった。

 

 

「……くっそぉ、仕方ない、このターンはエンドだよ!」

フレイドラモンLV2(3)BP9000(疲労)

猪人ボアボアLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト有

 

 

一気に片付けるつもりが逆に追い込められてしまった椎名。仕方なくそのターンを終えるが、限られたコア数で次のターンを生きなければならない。

 

 

[ターン05]夜宵

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

 

 

「ドローステップ時!再びロックハンドの効果で、今度はピコデビモンを破棄して、枚数を2増やす!」

手札4⇨3⇨6

破棄カード

【ピコデビモン】

 

 

さっき3枚もカードを破棄したにもかかわらず、もやは既に6枚まで戻す夜宵。それも紫属性の特徴だ。そのドロー能力は赤属性をも凌ぎナンバーワンなのだ。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

オーガモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!魂鬼を2体!LV1で召喚!」

手札6⇨4

リザーブ6s⇨4

 

 

先ずは軽減確保か、夜宵はコストが0で、尚且つ呪鬼スピリットである魂鬼を2体召喚する。鬼の頭だけが霊魂になっていて、少々気味が悪い。そのうちの1体にはソウルコアが置かれており、

 

 

「マジック!デッドリィバランス!私はソウルコアが置かれている魂鬼を選択!……さぁ椎名ちゃん!あなたも自分の場から1体スピリットを選びなさい!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨3

トラッシュ0⇨1

 

「くっ!………仕方ない。ごめんね!ボアボア!」

 

 

紫のマジック、デッドリィバランス。お互いのスピリットを1体選択して破壊させる効果がある。椎名は疲労状態と言えども流石にフレイドラモンは生贄にはできなかった。

 

両者から選ばれた魂鬼とボアボアは突如現れた巨大な天秤に吸い込まれるようにそれぞれ左右に置かれる。置かれたと思えばそれは動く前に豪快に爆発した。

 

 

「そしてソウルコアの置かれた魂鬼の効果!破壊時にカードを1枚ドローする!」

手札3⇨4

 

 

魂鬼はコスト0ながら効果がある。それはソウルコアが乗っていないといけないと言う、デッキによっては響いてきそうな条件ではあるものの、追加効果は破壊されるだけでドローすると言う便利なもの。

 

デッドリィバランスで使えれば尚無駄がないと言える戦法であった。

 

フレイドラモンの破壊の危機は去ったかに思われたが、夜宵は自慢気に手札のカードを見せつける。

 

 

「再び魂鬼にソウルコアを置き、2枚目のデッドリィバランスを使用する!……私は当然、魂鬼を選択!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨2

トラッシュ1⇨2

 

「………!?!」

 

 

発揮される2枚目のデッドリィバランス。椎名の場にはもはやフレイドラモンしか存在しない。魂鬼とフレイドラモンが吸い込まれるように巨大な天秤にかけられ、そして、かけられた瞬間爆発した。

 

 

「くっそぉ、フレイドラモン……!!」

 

「魂鬼の効果で1枚ドロー」

手札3⇨4

 

 

全く無駄がない。完璧な戦法で、夜宵は椎名の場を壊滅させた。さらにまだ終わらない。ここから怒涛の展開が待っていた。

 

 

 

「さらに、3枚目の魂鬼を召喚し、No.3ロックハンドをLV2にアップして、その効果を使用!トラッシュにある呪鬼スピリットはコストの支払いにソウルコアを使うことで、トラッシュから蘇生できる!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨3

No.3ロックハンド(0⇨1)LV1⇨2

 

 

「え!?トラッシュから蘇生?………召喚するってこと!?」

 

「その通り!私はソウルコアを使用して、トラッシュの呪鬼スピリット、デビモンをLV1で再召喚!」

リザーブ3s⇨0

トラッシュ2⇨4s

デビモンLV1(1)BP5000

 

 

3体目の魂鬼が出現すると同時に、ロックハンドの両掌から悍しいほどの闇が蓄積される。そしてそれらが地面に投下されると、フレイドラモンが倒したはずのデビモンが浮上してきた。彼は焼却されたにもかかわらず、元気ピンピンだ。

 

 

「アタックステップ!オーガモンでアタック!」

 

「くっそ!ライフだ!」

ライフ3⇨2

 

 

オーガモンが飛び出して来る。そのまま勢いよく自慢の棍棒を振り回し、椎名のライフを粉々に砕いた。

 

そして次は蘇生されたデビモンの番だ。

 

 

「さぁ!次よ!デビモンでアタック!!その効果でトラッシュよりピコデビモンを再召喚!」

オーガモン(3⇨2)LV2⇨1

ピコデビモンLV1(1)BP1000

 

 

デビモンはオーガモンを呼び出した時と同様の方法で地の底に眠るピコデビモンを呼び覚ました。ピコデビモンもその召喚時効果を発揮させる。

 

 

「ピコデビモンの召喚時でデッキから1枚ドロー………そしてデビモンのアタックは継続中よ!」

手札3⇨4

 

「それはライフで受ける!」

ライフ2⇨1

 

(………!?!……またライフで!?)

 

 

ボロボロの黒い翼で飛翔し、迫り来るデビモン。そのままその強靭な鉤爪で椎名のライフを1つ八つ裂きにした。このままでは後一度のアタックでも通して仕舞えば椎名の負けだ。

 

 

(……?……なんで?なんでバーストを発動させないの!?……この流れの中で条件は全て満たしたはずなのに……っ!)

 

 

夜宵が気になっていたのは椎名のバーストだった。バーストは大きく分けて5つの条件がある。【自分のスピリットの破壊後】【相手のスピリットのアタック後】【効果によって相手の手札が増える】【相手の召喚時効果発揮後】【自分のライフ減少時】だ。

 

夜宵はいずれもこのターンのうちにそれらを全てやってしまっている。つまりいつ椎名のバーストが発動してもおかしくはない状況であったということだ。だが、椎名はそのバーストを発動させなかった。何か狙いがあるのか、それともブラフか、どちらにせよ、あのバーストは油断ならない存在だ。

 

この場合はバトラーの判断に委ねられるが……………夜宵はそれでもアタックする覚悟を決めたようだ。やはりここで行くのが真のカードバトラーと言えるであろう。

 

 

「結構楽しかったわ!ピコデビモンでラストアタック!!!」

 

 

夜宵のピコデビモンによる渾身のアタック。だが、ここに来て、椎名のバーストが勢いよくオープンする。椎名はこの時を待っていた。リザーブにコアが貯まるその瞬間を、

 

 

「相手のアタックにより私のバーストを発動!」

「え!?このタイミングで!?」

 

 

そのカードとは、

 

 

「緑のバーストマジック!トライアングルバースト!」

「!?!」

 

「その効果により、コスト4以下のスピリット1枚をノーコスト召喚する!来て!ブイモン!…………さらにコストを払い、フラッシュ効果で、魂鬼を疲労!」

手札4⇨3

リザーブ6⇨0

ブイモンLV2(3)BP4000

トラッシュ5⇨8

 

 

トライアングルの緑の光の中から、【アーマー進化】によって手札に戻ってきたブイモンが現れた。その額に金色のV字を輝かせている。

 

残ったトライアングルはそのまま魂鬼を捕らえる。魂鬼は身動きが取れなくなってしまった。

 

 

「ピコデビモンのアタックはブイモンでブロックだ!」

 

 

ピコデビモンの注射器のような物を飛ばす攻撃はブイモンには全く通じない。全て腕で払いのける。そしてブイモンは空中へと飛び上がり、得意の頭突きをピコデビモンにおみまいして、地面に叩き落とし、爆発したかに見えたが、

 

夜宵にも渾身の一手はあった。いざという時の保険が、その手札には握られていたのだ。夜宵は勢いよくBパッドにそれを叩きつけて発揮を宣言する。

 

 

「フラッシュマジック!式鬼神オブザデッド!」

「!?!」

 

「この効果で、コストを支払い、トラッシュにいるもう1体のピコデビモンを召喚!不足コストはデビモン以外の全てのスピリットから確保する!………………さらにその召喚時の効果でカードを1枚ドロー!」

手札4⇨3⇨4

魂鬼(1⇨0)消滅

オーガモン(2⇨0)消滅

ピコデビモン(1⇨0)消滅

トラッシュ4s⇨7s

ピコデビモンLV1(1)BP1000

 

 

ブイモンと戦っていたピコデビモンを含めて、デビモン以外のスピリットが一気に消滅してしまうが、夜宵の場に闇の瘴気が立ち込める。そしてそこから新たに飛び出してきたのは新たなるピコデビモンだった。

 

式鬼神オブザデッドは、トラッシュにある「呪鬼」「霊獣」スピリット1体をコストを支払って召喚する効果のあるマジックカードだ。

 

 

「……これで終わりよ!アタック!」

 

 

ブイモンはバトルしてしまったせいで現在は疲労状態。もう椎名を守るスピリットは存在しなかった。ピコデビモンが椎名の最後のライフをめがけて飛翔する。

 

ーだが、最後まで何があるかはわからないのが勝負の理論である。椎名はさらに1枚のカードを引き抜く。それはまさしく奇跡の一枚。

 

 

「フラッシュタイミング!ライドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払い、青き稲妻、ライドラモンをLV3で召喚!」

ブイモン(3⇨2)LV2⇨1

トラッシュ8⇨9

ライドラモンLV1(2)BP5000

 

「……何ですって!?」

 

 

独特な形をした黒い卵が、ピコデビモンの飛翔を邪魔するように浮遊する。ある程度そうすると、それはブイモンに吸い込まれるように飛んでいき、衝突、混ざり合い、黒いアーマーに青の雷を落とす緑のアーマー体、ライドラモンが召喚された。

 

 

「ライドラモンの召喚時でボイドからコア2つをトラッシュに追加!…………そしてライドラモンでピコデビモンをブロック!」

トラッシュ9⇨11

 

 

【アーマー進化】で召喚されたスピリットは当然新たな召喚扱いなので、回復状態。ブロックが可能だ。空中に浮かぶピコデビモンめがけて飛び立つライドラモン。青き稲妻を纏った一撃でそれを瞬時に引き裂いてみせた。

 

 

「…………ターンエンド」

デビモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

No.3ロックハンドLV1

 

バースト無

 

 

椎名は夜宵の猛攻を何とか凌ぐことに成功。それと同時にこのバトルの勝利がほぼ確定する。当然だ。何せ夜宵の場には疲労しているデビモンと、ネクサスのみ。使用できるコアもたった2つ。ライフも後2つ。これはライドラモンの効果の射程範囲内だ。勝負は最後まで何があるかわからないとは言え、流石にこのコア数では次の椎名の攻撃を耐えるのは難しい。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨12

トラッシュ11⇨0

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップでライドラモンのLVを3に上げ、アタックステップ!…………いけぇ!ライドラモン!」

 

 

ライドラモンは凄まじい速度で地を蹴り、走り出す。

 

 

「……ライフで受ける」

ライフ2⇨1

 

 

ライドラモンはそのまま勢いを殺さず、夜宵のライフを体当たりで破壊する。そしてそのまま椎名はライドラモンの第2の効果を発揮させる。

 

 

「ライドラモンは相手のライフを破壊した時!さらにもう1つのライフを破壊する!………轟の雷!ブルーサンダー!!!」

 

「………!!……やっぱりよく当たるなぁ、私の占い………ッ!!」

ライフ1⇨0

 

 

最後にそう呟く夜宵。自分の色は紫。今日の紫の運勢は最悪だった。

 

ライドラモンのトドメの落雷が、夜宵の最後のライフを砕き、椎名に勝利を収めさせた。バトルの終わりに伴い、スピリット達がゆっくりと消滅していく、残っていたのはデビモンとライドラモンだけだった。

 

 

「はぁ、負けちゃったぁ、流石は【朱雀】を倒す程のバトラーねぇ」

「へへ!……楽しいバトルだったよ!夜宵ちゃん!!」

 

 

お互いに満足げな表情で話す夜宵と椎名。それほどまでにこのバトルが楽しかったと言えよう。だが、ここで来客が訪れる。真夏、司、雅治の3人だ。彼らは階段を走りながらこのバトル場のてっぺんまで上ってきたのだ。

 

 

「おぉ!いたいた!探したでぇ、椎名!」

「真夏!司!雅治!……あれ!?真夏用事あるんじゃなかったっけ?」

「いや、あれやで、これは…………早く終わったから様子を見に行こかなぁーおもてな」

「まぁ、見つかってよかったよ」

「全くだ」

「てか、なんで司まで…………」

「………うるせぇ」

 

 

普通に語らい出す4人だったが、

 

 

「そう言えば、そこの人は誰や?」

「あっ!そうそう!聞いて驚かないでねぇ!この人は!…………」

 

 

真夏が聞く。椎名が夜宵を紹介しようとし、他の皆を驚かせようとしたその時だった。夜宵は黒いニット帽を取り、勢いよく抱きついた。その相手は【朱雀】こと、赤羽司だった。

 

 

「司ちゃぁぁぁぁあん!!!!会いたかったぁ!」

「「え、えぇぇぇ!?」」

 

 

それを見て驚く、椎名と真夏。真夏に至っては夜宵ちゃんがここにいることに関しても驚いていた。真夏は彼女のファンと言うほどでもないが、当然知名度の高い人物であるため、知ってはいた。

 

側にいた雅治はその顔を見て思い出す。この人は自分達が昔から知っている人物であると、司はイラついたような表情で彼女の名を叫んだ。

 

 

「なんでてめぇがここにいるんだぁぁぁぁあ!!夜宵ぃ!!!!」

 

 

椎名と真夏が落ち着くのに3分ほどの時間を有した。それから改めて雅治からの説明が入る。彼女達はその話をよぉく耳を傾けて聞いた。

 

 

「えぇっと、……2人とも知ってると思うけど、この夜宵ちゃんこと、【紫治 夜宵】ちゃんは、僕と司とは昔馴染みなんだ」

「ほ、ホンマかいな」

「いいなぁ」

 

 

そう、彼らは昔からの友人だった。出会ったのは10年くらい前。赤羽家の歴代当主達の供養のために彼女の父が出向いたのがきっかけだった。夜宵が司に好意を寄せるようになったのはここからだった。同じく司が女子が苦手になるのはこれが始まりだった。

 

 

「昔馴染みって言うよりかは、司ちゃんと私は婚約者って言った方がいいかな?」

「誰がてめぇみてぇな尻軽女と俺が婚約したよ」

「尻軽じゃないですぅ!昔から司ちゃん一筋ですぅ!片手にケチャップ持ってる人が何言ってるの!?私のラジオ聴いてる証拠じゃない!!」

「あぁ、そうか、今日の赤属性のラッキーアイテムだったから」

「…………偶々だ」

「あぁ!ちょっとどこ行くの!?司ちゃぁぁぁぁあん!」

 

 

司はそれだけ言い残すと、買ったばかりのケチャップを投げ捨ててそのまま去っていく。人とはどこで繋がっているのかわからないものだと思った椎名であった。

 

 

 

******

 

 

 

これはその日の夜。夜宵は自宅に帰宅した。彼女の家はそれはそれは豪華な屋敷であった。扉に入るなり大勢の召使いが彼女をお出迎えする。そして夜宵はサングラスとニット帽を外し彼らに渡した。

 

疲れたような顔をしながらも、夜宵は自分の部屋に戻ろうとするが、その道中、ある人物とすれ違う。彼女の姉だ。夜宵と同じく美人だが、見た目だけでも妙に刺々しい印象を受ける。

 

 

「どうだった?夜宵、芽座椎名は当たり?それともハズレ?」

「……ごめんなさいお姉様。芽座椎名は実力は伴っていますが、現段階では判断できませんでした…………でも、赤羽司は間違いなく【アレ】に目覚めつつあります」

「あら、赤羽家の長男にもあったの?」

 

 

夜宵な雰囲気は椎名達と話していた時とは明らかに別人だった。それが彼女の本性なのか、はたまた相手が自分の姉だからかは定かでない。

 

 

「まぁ、いいわ、あんたはさっさとあんなアイドルじみた活動なんか辞めて、今日みたいに【計画】の手伝いをしなさい!…お父様もそれを望んでいるわ」

「お姉様、あれはもう私の趣味なのよ、辞めちゃったら周りの人にも迷惑がかかっちゃう、今更辞められないわ」

「あぁ、…………そっ」

 

 

そう言って彼女は夜宵の横を通り過ぎて行った。あまり機嫌が良さそうな顔ではなかった。

 

つかみどころの無い会話だったが、この界放市で何かが起ころうとしているのは確かなことであった。

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名でーす!今回はこいつ!【ライドラモン】!!」

「ライドラモンは私が使う緑のアーマー体スピリット!相手のライフを破壊すると、さらに相手のライフをもう1つ砕くことができるよ!……夜宵ちゃん可愛かったなぁ!またいつか、会えるよね!」





最後までお読みいただき、ありがとうございました!
なんだかんだ投稿できました。

このお話。実は最初に夜宵が言った占いが全部当たってます笑。


《※お詫びと謝罪》
この度は【妖華吸血爪】のフラッシュ効果を、誤って1体ではなく全体に対して使用していたことを大変深くお詫び申し上げます。バトル内容は少々返させていたきました。
次回からはこのようなことが起こらぬよう。気を引き締めて書き留めていきます。本当に申し訳ありませんでした。


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第12話「熱き仮面戦士!クウガ見参!!」

 

 

 

 

 

椎名は今、界放市にある、とあるドーナツ屋に向かっている。普段は節約のためにあまり外食などはしないのだが、今日は違った。

 

なにせ紫治夜宵がMCを務める人気ラジオ番組、【パープル・ヒーリング】でのお便りコーナーで、《オススメのお店はありますか?》という質問を受けたところ、夜宵は今椎名が向かっているドーナツ屋。【ドーナツの穴場】がとにかくオススメだと答えた。

 

夜宵のファンの1人である椎名はこれを聞いていてもたってもいられなくなり、なんとかその場所を調べ、1人で行くことを決意したのだ。

 

それほど楽しみなのか、鼻歌混じりにスキップをしながら上機嫌な様子を伺わせていた。だが、待ち受けていたのはとんでもない待ち地獄だった。

 

 

「す、すごい………!?」

 

 

ようやくその場所に到着したかと思えば、その店には何人もの人々が連なる長い長い行列ができていた。おそらくは紫治夜宵の宣伝能力だろう。彼女の人気が、今日の行列を作り上げたのだ。椎名は少し疲れた顔をするが、ここは致し方ない。せっかくここまで来たのだ。何か1つでも食べて帰りたい。そう思い、行列の最後尾に並んだ。

 

ーすると椎名の目の前にはある人物が並んでおり、

 

 

「ん?……あれぇ?……司じゃん」

「……よう、めざし」

 

 

そこにいたのは赤羽司。彼は椎名と目を合わすなり、いつものように軽く上から目線で物を言う。いや、正確には司自身自覚がないのだが、彼の性格や声の出し方から、どうしてもそのように聞こえてしまうのだ。

 

椎名は意外に思った。あのキザな司がこんなドーナツ屋なんぞに足を運んでいることに。椎名は悟る。間違いなく夜宵ちゃんの【パープル・ヒーリング】を聴いてたな、と。

 

 

「絶対夜宵ちゃんのラジオ聴いてたでしょ」

「なんで俺が夜宵のラジオなんぞ聴かねぇといけねぇんだ」

 

 

口ではそう言っているが、この間もバトスピ占いでのラッキーアイテムであったケチャップを手に持っていたこともあり、その言い分は信頼性に欠ける。

 

それ以外は特に会話することはなかった。……いや、椎名はずっと、「しりとりをしよう」「ジャンケンしよう」などと、色々と暇を潰そうとしていたが、司がそれを無視し続けた。

 

長い列に並び始めて1時間くらい経つだろうか、まもなく椎名達の順番が回ってくる頃だった。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉお!!!しまったぁぁぁぁあ!!財布を忘れたぁぁぁぁあ!!」

 

 

すぐそばで今ドーナツを買おうとしていた1人の男性が大声でそう叫んだ。その声はとても太く、たくましく、男性の性格が暑苦しいのがよくわかる。

 

司はこの男性のことを知っているようで、

 

 

「?………お前は……【岸田 空牙(きしだ くうが)】」

 

 

男も司の声に気づいたのかこっち側を振り向いた。するとすぐさま喜びの表情へと切り替わった。

 

 

「おぉ!司ではないか!!」

 

 

******

 

 

そして、10分後、3人は近くの公園で購入したドーナツを食べていた。男性は何やら、司と椎名の2人に向かって土下座をしていた。それはそれはとても綺麗な土下座であった。

 

 

「ほんっとうっに!!申し訳ない!!この借りはいずれ返す!」

「200円払ってやったんだ、倍の400円で返せよ」

「はっはっは!まぁいいって!困った時はお互い様ってね!」

 

 

2人はドーナツを買えなかった空牙を哀れんで、割り勘で彼にドーナツを1つ買ってあげたのだ。

 

 

「ていうか、空牙って司の知り合いなの?」

 

 

椎名の質問に応えるために勢いよく空牙は土下座の姿勢を崩し、起き上がる。

 

 

「知り合いも何も!俺と司は永遠のライバルだ!」

「………誰もそんなノリに付き合ってやってる覚えはねぇぞ」

「またまたぁ、ジュニア時代、何度も何度も決勝の舞台で俺と因縁の対決をしたじゃないか!」

「全部俺の勝ちだったけどな」

「ぐっ!」

 

 

司の言葉に胸が突き刺さる思いをする空牙。

 

【岸田 空牙】。先の会話の通り、自称【朱雀の永遠のライバル】を名乗る男だ。椎名達と同年代であり、界放市のバトスピ学園の1つ、タイタス校に通っている。

 

実力は相当なものであり、赤属性のマッシブで直球な戦い方を得意としている。だが、ジュニア時代はずっと司に負け続け、ずっと準優勝止まりであった。

 

椎名はこの話を聞いて彼がそれなりの強者だと理解する。そうなればやることは1つだ。

 

 

「あっ!じゃあさ空牙!さっきの借りってやつ!私とバトルするじゃあダメかな?」

「……おっ!椎名もバトスピ強いのか?…………ん?待てよ、椎名?……芽座椎名ぁ!?!……まさか司に勝ったというあの!?」

「ふっふ〜ん!……その通り…さ!」

 

 

【椎名】という名前でそのことを思い出す空牙。タイタス校はデスペラード校と同じくジークフリード校ととても近い地域にあるため、噂でそのような情報が流れ出てくることが非常に多いのだ。

 

そのことを言われて、椎名は誇らしげな表情になるが、嫌なことを思い出したからか、司は少々不機嫌な顔になる。

 

バトルの要望は当然オーケー。椎名と空牙は、公園の広場でBパッドを展開し、バトルの準備を行う。なんとも緑の綺麗な公園だった。短い草はらが弱い風に靡かされ、より決闘の予感を感じさせる。

 

ーそしていつものコールでバトルの開始が宣言される。

 

 

「「ゲートオープン!界放!」」

 

 

ーバトルが始まる。先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!先ずは様子見だ!召喚!風盾の守護者トビマル!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が様子見と銘打って早速呼び出したのは、大きな盾を有する鳥型のスピリット、トビマル。

 

 

「ターンエンド!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

そのままターンを終える椎名。次は彼女にとっては未知数の空牙のターン。彼は一体どんなスピリットを召喚するのだろうか。

 

 

「……おぉ!…噂通り緑と青の使い手のようだな!」

 

 

[ターン02]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「……メインステップ……!……行くぞ相棒!召喚!仮面ライダークウガ マイティフォーム…!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

「……仮面……スピリット…?!!」

 

 

突如として起きる謎の火柱。そしてその中で聞こえてくる謎の機械音。そしてそれらが一気に晴れると、赤き鎧をその身に纏う1人の戦士が現れていた。

 

ーその名もー………クウガ、【仮面スピリット】の一種だ。

 

【仮面スピリット】とは、デジタルスピリットのようなカードカテゴリであり、同等且つ対極な存在。デジタルスピリットとは似てはいるが、その使い手は意外にも少ない。ある意味でデジタルスピリットより希少なカード達であると言える。

 

 

「これが俺の原点にして相棒!俺と同じ名を持つ戦士!クウガだ!」

「…………!!!!!」

 

 

椎名は思わず鳥肌がたった。空牙の想いがひしひしと伝わったからだろうか、……たったこれだけの召喚でわかってしまった。このスピリットがどれだけ彼にとって誇らしい存在なのかが、今まで彼がこのスピリットと共にどんなバトルをして来たのか。そう考えるだけで椎名は心が震え上がったのだ。

 

 

「まぁ、先ずは俺も様子見だ!…これでターンエンド!」

仮面ライダークウガ マイティフォームLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

このターンを終える空牙。彼が操る仮面スピリットの一種、クウガの力は未知数だ。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「まさか仮面スピリットとやれるなんて……最高だよ…!!……このバトル、とことん楽しませてもらうよ!」

「あぁ!存分にかかってくるといい!」

 

 

椎名は仮面スピリットと戦うのは初めてだった。仮面スピリットの特徴として、低コストの小型スピリットでもスマートなスピリットが多い。

 

それに対し、デジタルスピリットの低コストたちは、どれもコミカルで独創的なスタイルを持つものが多い。それはこの2種のカード達の全く異なる基準がもたらしているものだ。カードが進化を繰り返して行くことで強くなって行くのがデジタルスピリット。だが、仮面スピリットは…………

 

 

「よし!メインステップ!ガンナー・ハスキーと猪人ボアボアを召喚!」

手札5⇨3

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名が召喚したのは拳銃を持つために背に青い手を生やした犬型のスピリット、ガンナー・ハスキーと、鎖付き鉄球を振り回す、猪の頭に人の体系の獣人型のスピリット、ボアボア。

 

椎名の最序盤を支えるスピリット達が揃い踏みとなる。

 

 

「アタックステップ!猪人ボアボアでアタック!その効果でコアとLVを1つあげる!」

猪人ボアボア(1⇨2)LV1⇨2

 

 

ボアボアはアタック時にコアを増やしつつ高BPでアタックできる優秀なスピリットだ。

 

 

「そいつはライフだ!」

ライフ5⇨4

 

 

鉄球を振り回して投げ飛ばすボアボア。空牙のライフはそれに木っ端微塵に破壊された。

 

 

「まだまだ!ガンナー・ハスキー!」

 

「それもライフだ!」

ライフ4⇨3

 

 

ガンナー・ハスキーが放つ弾丸が畳み掛けるように空牙のライフを貫いた。これで椎名は若干優勢にたったと言える。

 

 

「……このターンはエンド…!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000(回復)

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(疲労)

猪人ボアボアLV1(2)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

[ターン04]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ……バーストをセットし、仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000をLV2で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

空牙がバーストをセットすると同時に召喚したのはバイクに乗る仮面ライダークウガ マイティフォーム。バイク独特の機械音が場に木霊する。

 

 

「アタックステップ!……トライチェイサーでアタック!その効果でデッキからカードを1枚ドローし、BPプラス3000、そして、【真・激突】!可能ならブロックしてもらうぞ!」

手札4⇨5

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000 BP6000⇨9000

 

「……!!……今の私のブロッカーは一体だけ、……くっ、トビマルでブロックだ、」

 

 

バイクに乗り、走りだすクウガ。トビマルは大きな盾を構えて戦闘態勢に入るが、そのバイクの勢いが強すぎて、ぶつかった瞬間に盾ごと吹き飛ばされてしまった。トビマルはそのまま爆発してしまう。

 

 

「さらにマイティ!」

 

「……それはライフだ!」

ライフ5⇨4

 

 

マイティの強烈な炎のパンチが椎名のライフを1つ粉砕した。

 

 

「これでターンエンドだ!」

仮面ライダークウガ マイティフォームLV1(1)BP3000(疲労)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV2(3)BP6000(疲労)

 

バースト有

 

 

やる事を全て出し切った空牙はこのターンを終える。次は椎名の反撃だ。丸腰になった彼のライフを狙いに行く。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨5

トラッシュ2⇨0

猪人ボアボア(疲労⇨回復)

ガンナー・ハスキー(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!……よし!スティングモンをLV2で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ5⇨0

猪人ボアボア(2⇨1)

トラッシュ0⇨3

 

「おお!やっとデジタルスピリットのお出ましか!」

 

 

椎名が召喚したのは、昆虫型だが、限りなく人型に近い緑の成熟期スピリット、スティングモン。スティングモンは腕を組み、その存在を強く認知させる。

 

 

「スティングモンの召喚時でボイドからコアを1つスティングモンに置く!さらにアタックステップ!スティングモンでアタック!アタック時にもコアブースト効果があるからさらにスティングモンにコアを置き、LV3にアップ!」

スティングモン(3⇨4⇨5)LV2⇨3

 

 

流れるようにコアを増やし、自身のLVを上げるスティングモン。羽で飛翔し、その鋭い針のようなものを仕込んでいる腕で、空牙のライフを破壊しに行く。

 

 

「そこはライフだ!受け取れぇ!」

ライフ3⇨2

 

 

スティングモンはそのまま右拳の一撃で空牙のライフを破壊した。だが、それは同時に彼のバーストを目覚めさせる要因であって、

 

 

「この瞬間!バースト発動!アルティメットウォール!効果でこのターンのアタックステップを終了させる!」

「……!!」

 

 

突如立ち込める吹雪に、椎名のスピリット達はなすすべがない。アタックができなくなった椎名はそのターンを終わらなければならなくなった。

 

 

「……ターンエンド」

ガンナー・ハスキーLV1(1)BP2000(回復)

猪人ボアボアLV1(1)BP2000(回復)

スティングモンLV3(5)BP10000(疲労)

 

バースト無

 

 

[ターン06]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

仮面ライダークウガ マイティフォーム(疲労⇨回復)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ネクサス、燃えさかる戦場〈R〉を2枚配置し、2体目のクウガ&トライチェイサーを召喚!」

手札6⇨3

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

空牙の背後が燃え上がる。まるで山火事でも起こったかのように。これはネクサスの燃えさかる戦場による演出だ。

 

そしてバイクに乗ったクウガがもう1人。

 

 

「アタックステップ!クウガ&トライチェイサー2体でアタック!燃えさかる戦場〈R〉はアタックしているスピリットにBPプラス3000を与える!それが2枚分で…………」

手札3⇨5

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000 BP6000⇨9000⇨12000⇨15000

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000 BP6000⇨9000⇨12000⇨15000

 

「び、BP15000……!?」

 

 

コスト4のそれを遥かに超えたBPを有したクウガ&トライチェイサー。【真・激突】の力でボアボアとガンナー・ハスキーに襲いかかる。

 

2体ともトビマル同様吹き飛ばされ、爆発してしまった。

 

 

「次だ!マイティ!………フラッシュタイミング!マジック!ライジングマイティキック!」

手札5⇨4

 

「………!!」

「このマジックはカード名に「クウガ」を持つスピリットがアタックしている間はコスト3として扱う!よって軽減と合わせてノーコスト使用!……BP10000までの相手のスピリットを好きな破壊し、その数分ドローする!…………いけ!マイティ!スティングモンを狙え!」

 

 

その右足に炎を纏わせて飛び上がるクウガマイティフォーム。滑空するようにスティングモンに向かっていき、その炎を纏わせた右足で蹴りつける。

 

通り過ぎるように着地するマイティフォーム。その瞬間力尽きたのか、スティングモンは大爆発を起こした。

 

 

「……スティングモンっっ!!!」

 

「1体破壊したことでカードを1枚ドローし、……マイティの本命のアタックだ!受けてみろぉ!椎名!」

手札4⇨5

 

「……ライフで受ける……っっ!」

ライフ4⇨3

 

 

再びマイティの強烈なパンチが椎名のライフを襲う。それはまた1つ破壊されてしまった。

 

 

「よし!ターンエンドだ!」

仮面ライダークウガ マイティフォームLV1(1)BP3000(疲労)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV2(3)BP6000(疲労)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV2(3)BP6000(疲労)

 

燃えさかる戦場〈R〉LV1

燃えさかる戦場〈R〉LV1

 

バースト無

 

 

ターンを終える空牙。椎名の場にはスピリットはこのターンだけで全滅。巻き返しなるか、

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

 

 

「ドローステップ!……よし!」

手札3⇨4

 

 

引いたカードを見て、思わず口角が上がる椎名。そのドローカードは本当に頼もしいものであって、

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨12

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!来い!ブイモン!」

手札4⇨3

リザーブ12⇨8

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の足元から勢いよく現れたのはこのターンのドローカードでもあったブイモン。青い体色に、額の金色のブイの字を輝かせている。

 

 

「召喚時!カードを2枚オープン!」

オープンカード

【フレイドラモン】○

【ガンナー・ハスキー】×

 

 

効果は成功する。アーマー体のスピリット、フレイドラモンが手札に加えられた。そして椎名は即座にそれを召喚させる。

 

 

「フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コスト支払い、召喚!燃え上がれ!フレイドラモン!!」

手札3⇨4

リザーブ8⇨7

トラッシュ3⇨4

フレイドラモンLV1(1)6000

 

 

ブイモンの頭上から投下される赤い独特な形をした卵。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして燃え盛る炎の中から現れたのはスマートな竜人型のスピリット、フレイドラモン。空牙はその存在感に震え上がる。「これが噂のフレイドラモンか!」と、やはりあの日、椎名が司に勝利してから、その近辺で噂が広まっていたのが伺える。

 

 

「召喚時及びアタック時効果!BP7000以下の相手のスピリット1体を破壊してカードを1枚ドローする!……最初に出てきたクウガ&トライチェイサーだ!…爆炎の拳!ナックルファイアァァ!!!」

手札4⇨5

 

「ぐぅ!!」

 

 

フレイドラモンの拳から放たれる炎の弾丸は、瞬く間にクウガ&トライチェイサーを捉える。耐えきれなくなり、バイクごと爆発した。

 

そしてまだ椎名のメインステップは終わらない。トドメを刺すべく動き出す。

 

 

「さらに!青のブレイブ!双牙皇オルト・ロードを召喚し、フレイドラモンと合体させる!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨3

トラッシュ4⇨8

 

 

突如現れる2つの顔を持つ青のブレイブ、オルト・ロード。そしてそれはフレイドラモンの最強の装備となる。

 

フレイドラモンとオルト・ロードは飛び上がり、空中で混ざり合う。そして新たに現れたのは、青き炎を纏うフレイドラモン。漆黒の翼を広げ、今、この場に還元する。

 

司はこれを見た瞬間。前のことを思い出したのか、イラだったように舌打ちをした。

 

 

「おぉ!青いフレイドラモン!」

 

「さらに!バーストをセットし、ブイモンを召喚する!」

手札4⇨2

リザーブ3⇨0

トラッシュ8⇨10

 

 

このバトルでは初のバーストを伏せる椎名。そして、【アーマー進化】の効果で手札に戻っていたブイモンが再び彼女の目の前に現れた。

 

これで準備は万端。椎名はアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!フレイドラモン!アタック時効果で7000以下のスピリット、クウガ&トライチェイサーを破壊!……蒼炎の拳!ブレイズナックル!」

手札2⇨3

 

 

空中へと飛び上がるフレイドラモン。そしてその右腕から放たれる蒼炎の炎はクウガ&トライチェイサーに命中。バイク共々大爆発した。

 

 

「さらに!オルト・ロードの合体時効果で手札を3枚破棄して、自身を回復させる!」

手札3⇨0

破棄カード

【ワームモン】

【風盾の守護者トビマル】

【ワームモン】

フレイドラモン+双牙皇オルト・ロード(疲労⇨回復)

 

 

青き光を纏い、回復するフレイドラモン。これで何が起こっても勝負を決めることができる。椎名はそう思っていた。だが、ここからが正念場を迎えることとなる。

 

空牙は手札のカードを1枚引き抜き、それの使用を宣言する。

 

 

「フラッシュタイミング!仮面ライダークウガ ドラゴンフォームの【チェンジ】発揮!」

リザーブ6⇨4

トラッシュ3⇨5

 

「……!!」

 

 

マイティフォームを中心に水の柱が立ち上る。そして、マイティフォームは姿を、その色を変える。新たに現れたのは、棍棒を振りかざす青の戦士、ドラゴンフォームだ。

 

 

「【チェンジ】の効果で、シンボル2つ以上のスピリット1体を破壊し、マイティフォームとこれを回復状態で入れ替える!」

仮面ライダークウガ ドラゴンフォームLV1(1)BP4000

 

「……シンボル2つ以上……!?!……まずい、フレイドラモン!」

 

 

フレイドラモンを撃ち落とすべく、飛び上がるドラゴンフォーム。フレイドラモンより上に行くと、そこからその棍棒をフレイドラモンに叩きつける。フレイドラモンは撃墜され、大爆発を起こす。その爆発の中を分離されたオルト・ロードが脱出した。

 

ー【チェンジ】、仮面スピリットが持つ独自の効果。アクセルのようにフラッシュで発揮できるが、その後場にいる他の仮面スピリットと自身を回復状態で入れ替えさせる効果を持つ。

 

デジタルスピリットが【進化】ならば、仮面スピリットは【変身】。それがこの2種のスピリット達が対極関係にある理由だった。

 

 

「そしてそのアタックはドラゴンフォームがブロックする!………フラッシュタイミング!ソウルドロー!ドラゴンフォームのBPをプラス4000!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨2

トラッシュ5⇨7

仮面ライダークウガ ドラゴンフォームBP4000⇨8000

 

「……!!」

 

 

【チェンジ】で出されるスピリットは召喚ではなく、飽くまで入れ替えるだけ、よって、ドラゴンフォームはマイティフォームに乗せていたコア1個しかなかった。つまりLVは1。BP4000、BP5000の双牙皇オルト・ロードの相手にならなかった。だが、それを補うようにフラッシュでの底上げ。ドラゴンフォームはオルト・ロードを超えた。

 

合体元のフレイドラモンがアタック中にいなくなったことにより、アタック中になったオルト・ロード。だが、その命も儚く、ドラゴンフォームの棍棒に薙ぎ払われて、散らしてしまう。

 

 

「くっ!……ターンエンド」

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト有

 

 

仕方なくそのターンを終える椎名。トドメを刺すつもりが、逆に追い込まれてしまった。安易にオルト・ロードの効果を使用してしまったことも相まって、現在の手札は0枚。かなり厳しい状況だ。

 

 

[ターン08]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨10

トラッシュ7⇨0

仮面ライダークウガ ドラゴンフォーム(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ゴウラムを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ10⇨8

トラッシュ0⇨1

 

 

まるでクワガタのようなメカが飛翔してくる。仮面スピリットではないものの、それらを十二分にサポートする力を持ったカードだ。

 

 

「召喚時効果!トラッシュにある仮面スピリット1枚を回収する!俺はこの効果で仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000を回収し、そのままLV2で召喚!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ8⇨4

トラッシュ1⇨2

 

 

トラッシュから空牙の元へと舞い戻ってくる仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000。そのまま再び場へと帰還した。

 

 

「さらに、マイティフォームを再び召喚する!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ2⇨4

 

 

【チェンジ】の効果で手札に戻っていたマイティフォームが再び場へと姿を現した。この時点で空牙の場にいるスピリットの総数は4、椎名のブイモンを通り越して残ったライフを破壊できる数になった。

 

 

「ここで決めるぞ!ドラゴンフォームのLVを2に上げ、アタックステップ!クウガ&トライチェイサー!【真・激突】でブイモンを蹴散らせ!」

リザーブ1⇨0

仮面ライダークウガ ドラゴンフォーム(1⇨2)LV1⇨2

手札3⇨4

 

「くっ!……ブイモンでブロックだ」

 

 

強制的にブロックを強いられる椎名。当然残ったブイモンしか選択肢はない。

 

ブイモンは果敢にバイクを止めようとするが、あっさり吹っ飛ばされて破壊されてしまった。

 

 

「次はゴウラム!マイティ!」

 

「どっちもライフだ!」

ライフ3⇨1

 

 

ゴウラムの突進。マイティの強烈なパンチが椎名のライフを一気に2つ破壊した。いよいよ椎名の残りライフは1。だが、ここで椎名の伏せていたバーストが発動される。

 

 

「ライフの減少でバースト発動!No.26キャピタルキャピタル!効果によりこれを配置!」

「……!!」

 

 

椎名の背後から現れたのは空中都市。それは空牙の場、全体に影響を及ぼす。

 

 

「キャピタルキャピタルの効果で相手はソウルコアが置かれていない相手のスピリットはリザーブのコアを1つトラッシュに置かないといけなくなる」

「……!!…今の俺のソウルコアは……くっ!マイティに置いているっっ!…これじゃあこのターンはアタックができない」

 

 

空牙の場にあるコアをよく見てみる。ソウルコアは既にアタックを終えたマイティに置かれていた。リザーブのコアもないため、空牙はこのターンはアタックを封じられてしまった。

 

 

「ぐっ、仕方ないこのターンはエンドだ……だが次で必ず仕留めてみせる」

仮面ライダークウガ マイティフォームLV1(1s)BP3000(疲労)

仮面ライダークウガ ドラゴンフォームLV2(2)BP6000(回復)

ゴウラムLV1(1)BP2000(疲労)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV2(3)BP6000(疲労)

 

燃えさかる戦場〈R〉LV1

燃えさかる戦場〈R〉LV1

 

バースト無

 

 

「……凌いだか、だが手札は0枚、場にはその場しのぎのネクサスのみ、………この程度でくたばるなよ、めざし、…お前を倒すのは俺だけだ」

 

 

そう呟く司。代表バトルの一件以後、この2人のライバル意識は異常なほどに上がったと言える。

 

空牙も何故か油断できなかった。椎名の手札は0枚で、次のドローステップでも1枚にしかならないというのに。それほどまでに芽座椎名が凄かった。湧き出てくるオーラが自分が今まで感じてきたものと全く違ったからだ。それが彼をより気を引き締めさせていた。

 

 

(だが、手札には2枚目のマイティフォームがある、これで一度はブロックできる……)

 

 

空牙の手札には2枚目のマイティフォームが確認できる。マイティフォームも仮面スピリットの1体、当然【チェンジ】の効果を持っている。回復状態で現れるため、次のターンのブロッカーに回すことができる。

 

 

「楽しいよ、空牙!……このターンのドローで全てが決まると思うとワクワクしてくる!」

「あぁ!俺もだ椎名!さぁ!ドローしろ!」

 

 

ー椎名のラストターンが始まる。

 

 

[ターン09]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

 

 

「……ドローステップ……ドロー!!!………!!よっし!」

手札0⇨1

 

(なんだ、一体何を引いた?……なんで笑ってる?)

 

 

そのドローに思わず口角を上げてしまう椎名。このターンのドローステップでドローしたカードはまさしく奇跡の一枚と言えるだろう。だが、それは椎名のこれからの運も試されるものであって、

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨15

トラッシュ10⇨0

 

 

「メインステップ!ブイモンをLV2で召喚!」

手札1⇨0

リザーブ15⇨10

トラッシュ0⇨2

 

「……!?!…このタイミングで成長期スピリットだとぉ!?」

 

 

椎名が召喚したのは2枚目のブイモン。それが場に飛び出してくる。さらに椎名はその召喚時の効果を使用し、逆転を狙う。

 

 

「召喚時効果!デッキから2枚オープンし、アーマー体か成熟期を手札に加える!………カードをオープン!」

 

 

カードがゆっくりとオープンしていく。1枚目は、

 

 

【猪人ボアボア】×

 

 

1枚目は外れ、ボアボアはデジタルスピリットでもないカードだ。次の2枚まで勝負が決するといっても過言ではないだろう。

 

空牙はこの空気の重さに、思わず固唾を呑む。普段は堂々としている自分がここまで緊張するのは初めてだった。

 

 

「……2枚目ぇ!!オープンっっ!!」

 

 

2枚目がオープンされる。そのカードは、

 

 

 

 

【エクスブイモン】○

 

 

 

エクスブイモンのカードだ。このスピリットカードは成熟期、よって椎名の手札に加えられた。

 

 

「よっし!!成熟期のエクスブイモンを手札に加えるよ!!………さらにアタックステップ!その開始時にブイモンの【進化:青】を発揮!ブイモンを手札に戻し、成熟期のエクスブイモンへと進化させる!!」

リザーブ10⇨9

エクスブイモンLV3(4)BP7000

 

 

ブイモンが0と1のコードに巻かれていく、それは次第に膨れ上がっていき、破裂。新たに現れたのはブイモンが1段階正統に進化した姿。エクスブイモン。青い体にマッシブなボディ、ドラゴンらしい翼。なにより腹部にブイの字から線が2本足されてエックスの字になっているのが印象的だ。

 

 

「おぉ!進化したか!!……だがこれだけでは足りんぞ!」

 

 

そうだ。いくら進化したとはいえ、エクスブイモン1体ではどうしようもできないだろう。飽くまで1体だけではの話ではあるが、

 

椎名はさらにエクスブイモンの召喚時効果を発揮させる。

 

 

「エクスブイモンの召喚時効果!デッキから2枚ドローし、その後2枚破棄する、だけど、【進化】で召喚されていたら破棄するカードを1枚にする…………よし、ブイモンを破棄!」

手札1⇨3⇨2

破棄カード

【ブイモン】

 

 

エクスブイモンの召喚時効果は青属性らしい手札交換効果。これにより椎名はブイモンを破棄した。普通はデジタルスピリットのデッキで大切な成長期スピリットを破棄したりなどしない。

 

つまり椎名が引いたのはそれよりこの場で重要なカードだということ。空牙もそれを悟り、より一層気を引き締める。

 

 

「アタックステップは継続だ!いけぇ!エクスブイモン!」

 

 

駆け上がるエクスブイモン。BPは7000。空牙の場に残ったブロッカーのドラゴンフォームは6000。だが、この攻撃だけでは空牙の残った2つのライフはゼロにはできない。彼は一度フラッシュの権利を放棄して様子を見ることにした。

 

 

「そっちがないなら私のフラッシュ!……マジック!ストームアタック!…………この効果で空牙のドラゴンフォームを疲労させ、私のエクスブイモンを回復させる!」

手札2⇨1

リザーブ9⇨5

トラッシュ2⇨6

エクスブイモン(疲労⇨回復)

 

「……!!…ここで究極カードを引き当てたぁ!?」

仮面ライダークウガ ドラゴンフォーム(回復⇨疲労)

 

 

椎名が引き当ててたカードはその強力さ故にデッキに僅か1枚しか入ることができない究極カードのストームアタック。緑の風が吹き上げて、ドラゴンフォームを疲労させると同時に逆方向にいたエクスブイモンを追い風により回復させる。

 

これでブロッカーを消すと同時にエクスブイモンによる連続アタックで椎名の勝利……………かと思われたが、

 

 

「このままでは終わらん!俺はドラゴンフォームを対象に2枚目のマイティフォームの【チェンジ】を発揮!回復状態で入れ替える!」

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000(3⇨1)

トラッシュ4⇨6

仮面ライダークウガ マイティフォーム(2)LV1

 

「………!!?!」

 

 

思わず目を見開く椎名。ドラゴンフォームを中心に火柱が立ち上り、その姿を変えていく。そして2体目のマイティフォームが現れる。これで空牙の場にブロッカーが1体復活した。エクスブイモンでは彼のライフを全て削りきれない。

 

 

「……どうだ!椎名ぁ!俺の勝ちだ!!!」

 

 

流石にこれは勝ったと思い。勝利宣言する空牙。だが、そう思うのはいささか早かったと言える。

 

椎名は残った1枚の手札を引き抜き、それを発揮させる。

 

 

「……運も実力のうちってね!……フラッシュマジック!スプラッシュザッパー!」

手札1⇨0

リザーブ5⇨1

トラッシュ6⇨10

 

「……!?!!」

「この効果で2体のマイティフォームとクウガ&トライチェイサーを破壊!……いっけぇ!!!」

 

 

鋭い水の斬撃が仮面スピリットたちを襲う。3体ともいとも容易く切り裂かれ、爆発してしまう。

 

スプラッシュザッパー。青の大型マジック。コスト7以下を3体も一掃できる強力なカードだ。これで空牙の場にはゴウラム1体のみ。

 

 

「くっ!……ゴウラムは仮面スピリットじゃないっっ!!」

 

 

【チェンジ】をしようとしてももはや意味はない。入れ替えるスピリットがいないからだ。無駄に意味のない効果を使用して破棄するだけになってしまう。

 

ー勝負は決した。椎名は畳み掛ける。

 

 

「これで決まりだ!エクスブイモン!……闘魂の……エクスレイザーっっ!!」

 

 

エクスブイモンは腹部のエックスの字から光を放ち、それを全力で放出する。それはまさに光のごとく速さ。空牙はもうなすすべはなかった。

 

 

「……っっ!!……これが【朱雀】を倒す程の実力者……か……!」

ライフ2⇨1⇨0

 

 

光に包まれながらもそう感じる空牙。油断はできなかったとはいえ、確実に勝ったとも思っていた。まさか本当にあの場から大逆転してくるなど誰が想像できようか、

 

これにより勝利したのは椎名。椎名はガッツポーズを掲げて喜ぶ。エクスブイモンもまたそれに呼応するように咆哮を上げていた。

 

 

 

******

 

 

 

「いやぁ、まさかあの場から本当に逆転するなんて……こんな凄い奴がこの近辺にいるなんてびっくりだぜ!」

「私も初めて仮面スピリットとバトルしたよ!……楽しかった!!」

 

 

バトルも終わり、すっかり意気投合した椎名と空牙。それを他所に相変わらずの澄ました顔で横にいる司。

 

 

「椎名は【界放リーグ】には出るのか?」

「【界放リーグ】?なにそれ?」

「っておい!知らないのか!!」

「こいつは底なしに頭悪いぞ、」

「なんだと!司!」

 

 

椎名は知らなかった。界放市にいるバトラーなら誰もが憧れる【界放リーグ】を、

 

空牙は椎名にゆっくりと説明した。【界放リーグ】がどのようなものなのかを、

 

年に一度界放市にある6つの学園。ジークフリード校、デスペラード校、キングタウロス校、オーディン校、ミカファール校、タイタス校の選ばれた生徒達が、界放市の学生No.1を決めるバトルの祭典。噂ではそれぞれの学園の理事長達がそれによる賭け事をしたいだけと言う話もあるが、

 

それでもこの界放市に住む生徒達にとっては青春を謳歌するにはもってこいのイベントであって、

 

 

「そ、そんな楽しいイベントがあったのかぁ!……くぅ!これだからバトスピ はやめられないよ!……よし!絶対に予選で勝ち残って代表に選ばれるぞ!!」

「おぉ!やる気になったか!俺も必ず本戦に残るから、その時はまたいい勝負をしよう!椎名!……司も!!………では俺はこれで失礼する!今日俺はバトルで負けてしまったから、逆立ちをしながら帰宅するぞぉぉぉぉぉお!!自分へのペナルティだ!……………うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

そう言って、誓いを立てながら、自分へのペナルティと称して空牙は逆立ちをしつつ、猛烈に叫びながら歩き出す。というか、走り出す。司はそれを見て「相変わらずの馬鹿だな」と一蹴する。椎名はなにも気にせず彼に手を振った。

 

岸田 空牙。最初から最後まで熱い男。いや、暑苦し過ぎる男だ。彼もまたタイタス校の代表として本戦に勝ち残ってくることだろう。

 

 

「ところでさ、司は出るの?……代表予選」

「……愚問だな、めざし、出るに決まってるだろう…………そして、お前を倒すのは……………俺だ」

 

 

椎名の質問に対し、司はキザなセリフだけを残し、1人帰路に着く。椎名はそれに対しても元気よく手を振った。今からでもワクワクとドキドキが止まらない。椎名は他の学園の生徒とバトルできるのが楽しみすぎて仕方がなかった。そして心に誓う、必ず優勝すると、

 

予選が始まるのは後1ヶ月程。期末試験が終わった後に行われる。

 

 

******

 

 

 

ここは界放市のとある空港。かの有名な成田空港や、羽田空港と同等の大きさを誇っている。そんななかで、一機の航空機から降りてくる初老の男性がいた。

 

 

「いやぁ、楽しみじゃなぁ、待ってろよぉ〜…………………………椎名!」

 

 

【界放リーグ】。その学園別代表予選が始まる前に、また一波乱ありそうな感じを予感させる。

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【エクスブイモン】!!」

「エクスブイモンは青の成熟期スピリット!…召喚時にデッキからカードを2枚ドローして2枚捨てる効果があるよ!……さらに、【進化】で召喚されてたら捨てる枚数を1枚に減らしちゃうよ!」






最後までお読みくださり、ありがとうございました!

今回初めて仮面ライダーを登場させてみましたが、私自身、仮面ライダーはWくらいしか見たことないので、正直クウガがどんな感じで変身するかわからなかったです。なので少し派手な演出で描写させていただきました。

ライダーファンの皆様。私の勝手な想像でクウガを描写して申し訳ございません。クウガはバトスピコラボのライダーの中では最も一般的なライダーだと思ったので出させてもらいました。

仮面ライダーは後から色々登場させる予定ですが、なるべくかっこよく、それでいてカッコいい感じでどれも登場させたらと思っております。


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第13話「予選へのカウントダウン、ホークモンの進化」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椎名は下校中だった。学園一の、いや、界放市一の祭り事、【界放リーグ】。その学園別代表選抜予選まで、残すところ後1週間。猛暑が続くこの夏に、それに参加するバトラーは皆、切磋琢磨しながら自身のデッキを磨いていた。

 

それに伴い、椎名も自分のデッキを調整しようと考えていた。だが、なかなかそれは上手くいっているとは言えなかった。

 

自分のマンションに帰る椎名。だが、自分の部屋のドアの前であることに気づく。

 

 

「?………鍵が開いてる……!?」

 

 

今朝閉めたはずの自分の部屋のドアの鍵が開いていたのだ。椎名は何事かと思い、恐る恐るそのドアをゆっくりと開ける。部屋はそこそこ広い。ドアの方向からリビングまで一直線に見える。そのリビングには椎名の顔見知りの人物がいた。白くて長い髭を生やした初老の男性だ。その男の姿を見て、椎名は思わず呆気にとらわれた。彼は椎名にとって最も大事な恩人であって、

 

 

「じ、じっちゃぁぁぁん!!」

「おぉ!しぃ!帰ったか!……待っとったぞぉぉー!」

 

 

靴をその場に脱ぎ捨ててそこまで一直線に走り行く椎名。椎名がじっちゃんと呼ぶこの老人こそが、親のいない椎名を育てて来た人物。名を【芽座 六月(めざ ろくがつ)】。椎名だけではない。今もなお、数多くの身寄りのない子供達を育てている人物だ。

 

六月は椎名の部屋の合鍵を所持していた。だからこそ部屋に上がることができたのだ。だからとて、普通は年頃の女の子の部屋に勝手に入るのはいささか問題になりそうだが、……その相手が椎名ならばそれも気にされない。

 

 

「じっちゃん!なんで、言ってくれないの!びっくりしたよ!………他の子の面倒は誰が見てるの?」

「ほっほ、シスターしかおらんじゃろ、なぁに、すぐ帰るよ」

 

 

他の子、と言うのは椎名と共に育った孤児の子供達のこと。椎名は今まで、その子達と家族や兄弟となんら変わらない関係を築いてきた。

 

 

「ええ!?すぐ帰るの?一緒にご飯でも食べようよ!」

「おぉ!椎名の手料理かぁ、久し振りに食べたいが、今回はちょっと野暮用でここまで来とるからのぉ、」

 

 

椎名が六月に会うのは約4ヶ月ぶり。年頃の女の子が育ての親に久しぶりに会えたのだ。少しでも長く一緒にいたいのだろう。

 

だが、六月は椎名にあるカードだけを渡してこの場を去ってしまう。

 

 

「椎名、もうすぐ【界放リーグ】の予選が始まるんじゃろう?……鍛えなくて良いのか?」

「あぁ、なんか調子が悪くてさ、なかなかいいデッキ作れないんだよね」

 

 

椎名は若干のスランプに陥っていた。いつもはバトルになれば本能のままにバトルをし、勝って来たが、それはただ自分のドローセンスが高かっただけ、一歩ズレたら即敗北していたバトルなど、いくつもあった。だからこそデッキ自体を強化しなくてはならないのだが、

 

色々と抜かしたくないカードや、枚数調整が難しくてとても苦労していた。それにこのジークフリード校での予選だったら、【朱雀】の司を視野に入れなければならない。他のライバルである雅治と真夏はなぜか【参加はしない。】と言ってたので、彼らの対策までしなくていいのが不幸中の幸いだった。もちろん椎名としても彼らには参加して欲しかったのだが、

 

 

「………それはお前がいろんなバトラーやデッキとバトルしてきたからじゃ」

「………え…!?」

「お前はきっとこれまでのバトルで数々のバトラーに触れ、それらが持っているであろうバトラーとデッキの絆を見てきた。自分のももちろんのぉ、だからこそカードがデッキから抜き辛くなっとるんじゃ」

「んーーー……………………………どう言うこと?」

「ほっほ、まだわからんくてええよ」

 

 

六月の言うことに頭を抱える椎名。確かにいささか難しいかもしれない。つまりはここまでのバトルで自分のデッキはこれ以上の強化ができないと、無意識のうちに考えてしまっているのだ。今の自分のデッキのカード達に恩情を感じているが故に。その心をより強くしてしまったのが、他のバトラーとそのデッキ達だ。

 

 

「そんな時は新たな力を得ればいいんじゃよ!……………気持ちをリセットせい!…ほい!」

 

 

そう言って六月は椎名にバトルスピリッツのカードを手渡した。それは光輝いていて、何が何だかわからない。だが、椎名はこれを見たとき、一瞬で気づいた。これは自分が欲していたもの。自分のデッキコンセプトを潰さずに、尚且つ強化できるカード。だと言うことに。

 

 

「こ、こんな凄いのど、どこで……!?」

「まぁ、もらっとけ、お前にぴったりなカードじゃ」

 

 

椎名は新たな力をもらい受け、新たにデッキ構築を始める。必ず良いデッキが作れることであろう。

 

 

******

 

 

時同じくして、ここはジークフリード校の体育館裏。普段はほとんど誰も通らないこの場所には、白銀のギサギサ頭が特徴的で、見た目から性格までキザな少年。赤羽司がいた。何やら細身で柄の悪そうな男と、それの取り巻き3人組と揉めているようだ。

 

 

「……こんなところに呼びつけてなんのようだ……俺は今デッキの調整で忙しいんだ」

 

 

司は柄の悪い男のパシリであろう、取り巻き3人組に呼び出されてここに来た。偉そうにしている柄の悪そうな男が、コンクリートでできた地面から立ち上がる。そして司を嘲笑うようにこう言った。

 

 

「お前が【朱雀】か、あの同年代の女に負けたって言うのは」

「………あれに言い訳などしない。馬鹿にしたいならなんとでも言え」

 

 

司はしょっちゅうこんな感じで不良に絡まれることがあった。それは自分の粗相な態度が、相手の癇に障ってしまうのがほとんどの原因だ。

 

 

「それでなぁ、【朱雀】……!……俺は今度の予選のために強いカードが欲しいのよ……」

「だからなんだ……俺のカードでも欲しいとか言うのか?」

「ビーーーーンゴー!!正解!女に負けた雑魚でもあの【赤羽一族】だ!強いカードの1枚や2枚持ってんだろぉ!?」

 

 

椎名が【朱雀】に勝ったという噂はあまり良き意味で広がらないこともあった。このようにして、【朱雀が女に負けた】という事実だけが伝わり、朱雀が本当は弱くてただの鴨。という身もふたもない嘘になってしまうことがある。

 

それは椎名がまだ無名のバトラーであることも理由に挙げられる。椎名の実力がわからない者は【朱雀】が女に負けた。という認識にしかならないのだろう。

 

司の前ではあれ以来このようなことが今回を含め、三度起こっている。もちろんそのような輩は全部返り討ちにしたのだが、

 

彼は有無を言わず、いつものように自分のBパッドを手提げカバンから取り出した。今回も返り討ちにする気満々だ。

 

 

「御託はいい、俺に勝ったらカードなんぞくれてやる、先ずは俺よりお前が強いと言うことを証明しろ」

「ふっふっ!そうこなくちゃなぁ!!」

 

 

柄の悪そうな男の裏でニタニタと笑う取り巻き達。彼らは4人とも、あの【朱雀】か本当に弱くなったと勘違いをしている。腕の立つバトラーなら普通は司が弱くなっていない。寧ろ強くなっていることに気づくはずだ。だが、彼らにはそれが分かっていない。つまり彼らは司にとっては本当に【雑魚】のような存在であった。

 

柄の悪い男もBパッドを取り出し、展開。そして始まる。おそらくこの物語において1番情けないバトルが、

 

 

「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

ーバトルが始まる。先行は柄の悪い男だ。

 

 

[ターン01]柄の悪い男

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「はっはぁ!!メインステップだ!俺はゴツモンをLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

男がテンションを上げながら召喚したのは白のスピリット。岩を擬人化したかのような成長期スピリット、ゴツモンが召喚された。

 

男はなぜかこのゴツモンを召喚しただけでなぜか勝ち誇ったかのような顔になり、こう言った。

 

「どうだ!俺はこう見えても【九白(くしろ)一族】の人間なんだよ!」

 

 

男がそういうと、他の取り巻き達も粋がっているように騒ぎ出す。

 

【九白一族】。元々存在する古来の一族だが、10年前から【デジタルスピリットの多様化】により、白のデジタルスピリット達を操るようになる。強者が特に多いが、それは最早宗教じみており、現在の総数は約300人はいると言われている。それはどの一族よりも子孫繁栄の意識が強いからだろう。この一族も【紫治一族】同様、カードは【制限式】である。この男は、

 

 

「お前、ランク1の落ちこぼれだな?」

「………!!んだとぉ!」

「図星かよ………まぁ、【九白】のほとんどはオーディーン校だもんな、…聞いたことあるぜ、ランクが1以下の奴はオーディーン校には行けず、他の学園に行かないと行けないってな」

「ぐっ!!!!てんめぇ!!」

 

 

オーディーン校の理事長は【九白一族】の現在の頭領でもある。9年前から学園が立ち上げられた頃、この一族はこのオーディーン校に通わなくてはならなくなった。だが、それはランク2以上のものだけ、ランク1以下の者はオーディーン校に通う資格がなくなるのだ。

 

それ故にオーディーン校の生徒の大多数が【九白一族】の者を占めるため、別名【九白学園】とも呼ばれるほどだ。

 

この柄の悪い男がこんなジークフリード校にいると言うことはランク1以下で確定だったのだ。男はそのことを気にしているのか、司にそれを言われた途端に怒りの感情を露わにする。

 

 

「ターンエンドだ、ほら!かかってこいよ!」

ゴツモンLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

先行の第1ターンではやることは限られる。男はそのターンを終えた。だが、この後、圧倒的な実力差を知ることになる。司を、【朱雀】を、【赤羽一族】を甘く見た報いを受けることになる。

 

 

[ターン02]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はイーズナを2体連続召喚する」

手札5⇨3

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

司が早速召喚したのは赤と黄色、2色の色を持つハイブリットスピリット、イタチのような姿のイーズナが2体現れた。

 

 

「さらに、俺はホークモンをLV1で召喚!」

手札3⇨2

リザーブ2⇨0

トラッシュ1⇨2

 

 

司がさらに召喚したのは、このデッキの顔、ホークモン。器用に赤い翼を広げて場に降り立つ。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【ハーピーガール】×

【ハーピーガール】×

【アクィラモン】○

 

 

効果は成功。ホークモンは「成熟期」「アーマー体」を1枚回収できる。これにより、司は「成熟期」のアクィラモンを手札に加えた。

 

 

「そして、イーズナ2体を消滅させて、ホークモンをLV2にアップさせる」

手札2⇨3

イーズナ(1⇨0)消滅

イーズナ(1⇨0)消滅

ホークモン(1⇨3)LV1⇨2

 

「な!?こいつ自分のスピリットを2体も………!!」

 

 

イーズナ達のコアが取り除かれたため、無惨だが、2体とも場から消滅した。カードアドバンテージ的にはだいぶ痛いが、ホークモンがこの早い段階でLVアップしたのはかなり大きいと言えた。

 

 

「アタックステップ、その開始時にホークモンの【進化:赤】を発揮、ホークモンを手札に戻し、「成熟期」のアクィラモンを召喚する!」

 

 

ホークモンに0と1のデジタルコードが巻きつけられていく、それは膨らんでいき、破裂。すると、新たに現れたのは頭部に2つ大きなツノを携える巨鳥型の成熟期スピリット、アクィラモンだ。

 

 

「ぐっ!!成熟期……!!」

 

 

男は司を妬むように成熟期スピリットのアクィラモンを睨みつける。

 

今までこういうことがしたかった。進化というものを。他の兄弟や親戚が羨ましかった。みんな息を吸うように進化してくるから、どうしても自分も一度やってみたかった。だが、自分には一切使うことが許されなかった。

 

もちろん。【九白一族】の大体はランク2。つまり、ほとんどの者は成熟期までの使用が許されていた。この男は単純に実力が備わっていないだけだ。

 

だが、この男は誰よりも成熟期のカードを、進化系のスピリットを、欲していた。実力が備わってないなど理由にしたくなかった。

 

 

「アクィラモンの召喚時効果、BP4000以下の相手スピリット1体を破壊する………くたばれ、ゴツモン」

 

 

アクィラモンの口内から放たれる業火が、男のゴツモンを焼き払った。アクィラモンはこの効果を召喚時とアタック時に発揮できる。

 

その後、司は呆れたような顔つきでアタックステップを継続させる。

 

 

「……アタックステップは継続だ、やれ、アクィラモン」

 

「ら、ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

アクィラモンの強烈な翼撃が、男のライフを1つ粉々にした。ガラス細工が割れたような音が場にこだまする。

 

 

「……ターンエンド」

アクィラモンLV2(3)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

できることを全て終え、このターンを終える司。たったこのターンだけで実力の違いが身に染みたのか、あんなにはしゃいでいた取り巻き達は既に沈黙し、怯えるような顔つきになっている。

 

 

[ターン03]柄の悪い男

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「……ぐっ!メインステップだ、2体目のゴツモンとアイスメイデン〈R〉を召喚する」

手札5⇨3

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

男は2体目のゴツモンと、小型のロボットを召喚する。このアイスメイデンのLV2のBPは5000。アクィラモンの破壊効果ではギリギリ破壊できないラインであった。

 

 

「アタックステップだ!いきやがれ!ゴツモン!」

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ゴツモンの硬い岩皮膚を活かした体当たりが炸裂する。ライフが1つ砕けるも、司の余裕そうな表情までを砕くことはできなかった。それがまた男の気に触る。

 

 

「ぐっ!……ターンエンド」

ゴツモンLV1(1)BP2000(疲労)

アイスメイデン〈R〉LV2(2)BP5000(回復)

 

バースト無

 

 

アクィラモンでは破壊されないアイスメイデンを残し、男はそのターンを終える。

 

 

[ターン04]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

アクィラモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、…………このターンで終わりだ」

「………はぁ!?……笑わせるぜ!アクィラモンの効果じゃアイスメイデンは破壊されないし、第1、俺のライフはまだ4だぞ!!ライフの計算もできねぇのかよ!【赤羽一族】は!!!」

 

 

突然の司の勝利宣言に腹を抱えて笑う男達。いくらなんでもそんなことはできないと、やはり【朱雀】はこけおどしのただの雑魚だと思い直しかける。だが、もちろんこれは本気だ。本気でこのターンで終わらせようとしていた。

 

 

「……俺は、異魔神ブレイブ、天魔神を召喚する」

手札4⇨3

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

「!?!……異魔神ブレイブだとぉ!?」

 

 

アクィラモンの背後からゆっくりと天より舞い降りてくる天使のような異魔神ブレイブ。天魔神。左右に合体できる異魔神達の中でも扱いやすい効果を内蔵している部類だ。

 

 

「天魔神の右にアクィラモンを合体」

アクィラモン+天魔神LV2(3)BP9000

 

 

天魔神の右手から放たれる光線がアクィラモンと繋がる。異魔神ブレイブ独特の合体方法だ。

 

 

「アタックステップ………やれ!アクィラモン!効果でゴツモンを破壊……!」

 

 

アクィラモンの口内から放たれる業火が、ゴツモンを再び焼き払う。これだけでは彼のブロッカーを排除できないが、

 

 

「それがなんだってんだ!……俺のブロッカーのアイスメイデンは破壊できねぇぞ!」

「……天魔神の右合体時効果でBP6000以下のスピリットを破壊する………!!」

「な!?」

 

 

天魔神の右手に矢が待たれる。天魔神はそれを全力で小さな機械に槍投げの要領で投げつける。アイスメイデンはそれで串刺しにされ、爆発してしまった。

 

 

「だ、だが、たった1回のアタックでは俺のライフを0にはできねぇ!」

 

 

ブロッカーを排除してもアクィラモン自身は天魔神との合体でダブルシンボル。残り4つの男のライフを破壊できない。

 

だが、アクィラモンを操っているのは司。【朱雀】と呼ばれている彼が決めると言って決められないはずがない。

 

ーさらに手札の1枚を引き抜く。

 

 

「フラッシュマジック!…イエローリカバー……アクィラモンを回復する」

手札3⇨2

アクィラモン+天魔神(3⇨1)LV2⇨1(疲労⇨回復)

トラッシュ4⇨6

 

「……は、はぁ!?」

 

 

黄色のマジック。イエローリカバー。ターンに1回だけ使用でき、黄色のスピリットを1体回復させる効果を持つ。アクィラモンは今、天魔神との合体で、黄色のスピリットとしても扱っている。この効果を受けることができたのだ。

 

黄色い光を浴び、アクィラモンは回復する。これでダブルシンボルの2回アタック。合計4つのライフを減らせる算段が整った。

 

 

「さぁ、どう受ける?」

 

「ら、ライフだ………!!」

ライフ4⇨2

 

 

アクィラモンの強烈な脚の一撃が男のライフに刻まれる。それはいとも容易く2つ破壊された。

 

ーそして、

 

 

「トドメだ!………雑魚野郎!」

 

「………う、うそだぁぁぁぁあ!!」

ライフ2⇨0

 

 

男の悲痛の叫びも虚しく。アクィラモンは非情にその残りのライフを跡形もなく蹴散らした。

 

ー4ターン、僅か4ターンの出来事だった。

 

衝撃に吹き飛ばされる男。取り巻き達はその光景を目の当たりにし、恐れ慄き、腰が引けつつも、情けない背を司に見せながら、その男を置いてその場から逃亡した。

 

男も倒れてから腰が抜けて、立ち上がることができなかった。まさか実力の差がここまであるとは思っていなかった。ここまで完膚なきまでに叩き潰されるなど想像もしてなかった。全く弱くなってなどないじゃないかと何度も何度も心の中で叫ぶ。

 

司は少しだけ疲れた表情をしながらもその場を去って行く。ただ強いバトラーとバトルをするよりも、口先だけの弱者との方が疲れる。司はそう考えていた。

 

 

「やぁ、司、……僅か4ターンで決めるなんて、流石だね、」

「なんだ雅治、覗いてやがったのか、」

 

 

少し離れたところでひょっこりと現れたのは、彼の親友雅治。

 

司はずっと疑問に残っていたことを雅治に問うことにした。

 

 

「………お前、本当に【界放リーグ】に出ないのか?」

「……あぁ、今年はやめとくよ」

 

 

雅治はなぜか【界放リーグ】に出ないと言っていた。その理由は誰にも教えてはいなかった。親友の司でさえもその理由は知らない。

 

雅治本人にもその理由は分からなかった。体のどこからか、羞恥心や、劣等感が湧き出て来て、自分の本能が、大会に出るなと言っているような感覚だった。本当は出たいはずなのに。

 

 

「そんなにチンタラしてると、俺はもっとお前を追い越していくぞ」

「………………」

 

 

司の言葉に言い返せない雅治。2人は昔から競い合っていた。司は嫌だったのだ、張り合う相手が少なくなるのが、【界放リーグ】であれば、その張り合える相手はいくらでもいるからか、それ以上に雅治を問い詰めることはなかった。だが、司はこれだけは理解している。自分がこの世で一番張り合いがある相手は雅治だと言うことを。

 

雅治とて、参加したくないわけではなかった。本当の理由は司ではなく、椎名にあると言うことは、雅治自身も未だに気づかないことであって、

 

 

******

 

 

場所は変わり、ここは【紫治一族】の巨大な屋敷。夜宵と、その姉、【紫治 明日香(しち あすか)】と会話をしていた。その内容は明日の【界放リーグ】の予選についてだ。

 

 

「本当に出場しないつもりなんですか?お姉様」

「今までそんなのに興味なかったから1回も出たことなかったのよ、今さら出場なんて柄じゃないわ、あんただけ出場しなさい」

「で、でも、2人の方が進出できる確率が………」

「バカねぇ夜宵、毎年デスペラード校には強すぎて必ず出場できる奴がいる。そいつのせいで2つある枠が1つになるのよ」

 

 

突き刺すような刺々しい言葉で夜宵にそう発言する明日香。【界放リーグ】で、本戦に勝ち残れるのは、各学園から2名ずつ、だが、デスペラード校には1年の時に入学してからと言うもの、キングタウロス校の【ヘラクレス】同様、毎年必ず本戦に勝ち残る者がいた。その者は今年で3年、つまり枠は1つしかないのも同然だった。

 

 

「必ず勝ち残りなさい、夜宵。なんとしても【アレ】に目覚める者を見定めるのよ」

「………はい、わかってます、お姉様」

 

 

彼女達の言う、【アレ】が何かは定かではない。だが、【界放リーグ】の裏側で何かとてつもないことが起ころうとしているのは確かなことであった。

 

 

******

 

 

その日の夜。ここは界放市の空港。用事が済んだ六月は、再び離島に飛び立とうとしていた。早めにチェックインを済まし、待合所のベンチで腰を下ろしながら、椎名のことを考えていた。

 

 

(椎名、……大きくなったのぉ、……中身は相変わらず子供のままじゃったが………だが、それで良い、お前はそれで…………)

 

 

椎名は捨て子、当然自分の本当の親の顔を知らない。知りたいと思ったことはない。自分には既に血は繋がってなくとも、大事な家族や兄弟がたくさんいるからだ。

 

それで十分だった。いもしない本当の親など考えたくもなかった。ただ、自分のことが大好きで、自分も好きな家族がそこにいてくれたら、…それで。

 

六月はそんな椎名をずっと可愛がって来た、とてつもないくらい溺愛していた。他の身寄りのない子供達も同様にそうして来たが、椎名は特別だった。いろんな意味で。それはこの物語が進むにつれ、明らかになっていくことだろう。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【アクィラモン】!!」

「アクィラモンはホークモンが進化した赤の成熟期スピリット、召喚時とアタック時で相手のBP4000以下のスピリットを1体ずつ破壊できるよ!」





最後までお読みくださり、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!


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第14話「黄金の守護竜……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ始まる【界放リーグ】の予選代表選抜戦。夏休み真っ只中だと言うにもかかわらず、校舎はジークフリード校の生徒達で賑わっていた。

 

 

「………さぁ、とうとうやって来たが、どうしたもんか」

 

 

そう言ったのはジークフリード校の理事長【龍皇 竜ノ字(りゅうおう たつのじ)】。今年で60歳の男性で、ライオンのような鬣が特徴的だが、10年前までは現役の凄腕のプロバトラーで、引退後も【伝説バトラー】として崇められた。

 

そもそもこの界放市にある6つの学園の理事長は皆、この龍皇と同じ代で、尚且つ【伝説バトラー】なのである。

 

そして龍皇は困っていた。それは今年の界放リーグでは必ずヘラクレスに勝てるほどのバトラーを選出しなければならないからである。

 

理由としては、仲の良いキングタウロス校の理事長との賭け事で、どちらかが3年連続で優勝できたら、負けた方が勝った方にハワイ旅行させるというもの。

 

その程度の金は現役時代に稼いだ金でいくらでも出せるのだが、負けるのは血の気が多かった彼としては癪であって、

 

1人目は既に目をつけている。【朱雀】こと赤羽司だ。彼ならヘラクレスに打倒できる可能性がある。彼ほどの実力ならこの学校の3年生をものともせずに勝ち上がって来るだろう。問題は2人目だ。去年、一昨年の結果から、めぼしい上級生はいない。となると1年生しかいないが……

 

 

「……………おぉ、この芽座椎名と言う生徒は4月の代表バトルで赤羽司に勝利している………そしてエントリーもしている……」

 

 

彼は1学期のバトル成績表を見て、椎名の項目を覗いた。椎名はこの学期を通して、唯一司に黒星を与えていた。だが、司とバトルしたのも勝ったのもこれ1回のみ、本当は偶然だったかもしれないという考えが龍皇の頭をよぎる。

 

 

「…………よし!ちょっくら試してみっか」

 

 

そう言って彼は理事長室から出た。

 

 

******

 

 

ここはジークフリード校エントランス。広々としたこの空間は生徒達の休憩所であり、癒しの場だ。だが、それはこの男の存在のせいでいずらいものとなっていた。それは以前椎名に敗北した【毒島富雄】だ。カツアゲなどの乱暴な行為が噂される彼のせいで、エントランスはほとんどの人はやってこなかった。

 

毒島は3年生。実力もまぁまぁあることながら、予選代表選抜に出場する予定であった。だが、彼の目的は予選で勝ち残るのが出場する理由ではなく、椎名に復讐するが本当の目的なのだが、

 

自分の手持ちのカードにはあのフレイドラモンを超えるようなカードはなかった。あのフレイドラモンにさえ勝つことができれば必ず椎名を倒せる。そう思っていた。

 

 

「おい、毒島富雄だな?…ちょっといいか?」

「………!!……あんたは、龍皇理事長…!?」

 

 

唐突に現れたのはなんとこの学校の理事長である龍皇竜ノ字。まさか自分のような者に話しかけてくるとは思ってもいなかったのか、思わず座っていたベンチから立ち上がる。その異常な存在感に腰が引けた。

 

 

「あ、あんたみたいな人が、お、俺に何の用だ?」

「いやいや、お前を応援しようと思ってな、……予選に出るんだろ?……これをやるよ」

 

 

そう言って彼は毒島の手にカードを数枚握らせた。その後、通り過ぎるように通過し、「期待してるぜ」と呟いてその場を去っていった。とてつもないくらいのオーラだった。近づいてきた瞬間は息が詰まりそうなくらいだ。毒島は息を荒げながらもそのカードを見た。そのカード達は皆驚くほどのレアカード。しかも自分のデッキと相性がいいときた。これほどの補強パーツは他にない。

 

あの龍皇理事長が、本気で自分なんぞを応援しているとは思えなかったが、そんなことはどうでもいい。結果論が全てだ。今自分の手にはあの芽座椎名を倒せるカード達があると言う。

 

 

「こ、これがあれば、奴に、奴に勝てる!!!ガハハハハ!!!!とうとう俺の時代だ!待ってやがれ!」

 

 

毒島は代表選抜予選に臨む。芽座椎名を打倒するために。

 

 

******

 

 

そしてジークフリード校の中では最も広い、この第10バトル場でついに代表選抜予選が幕を開ける。ざっと見て200人は参加している。勝ち星が多い上位2名が出てくるまで何度もバトルすることになる。

 

真夏と雅治が共に2階の観客席で見守る中、椎名と司は予選に挑んでいた。バトル内容はどれも快勝だった。2人とも流石と言える。

 

 

「いっけぇ!!フレイドラモン!……渾身の爆炎!ファイアァァア!!ロケット!!!」

 

 

相手のライフに向かって、炎を纏い、全力で落下するフレイドラモン。その相手のライフを無慈悲に破壊した。最後のライフが消し飛ばされた相手は軽く吹き飛ばされる。

 

 

「へっへ!楽しかったよ!」

 

 

椎名はこれで10戦中10勝。人数的にも後1回。後1回勝てば確定で代表入りを果たせる。

 

 

「やれ!ホルスモン!!!………テンペストウィング!」

 

 

司の指示に従い、ホルスモンは身体を回転させ、まるで竜巻のように飛翔する。そしてそのまま瞬く間に最後のライフを貫いた。司も椎名と同じ勝ち星をあげていた。つまり後1回で代表入り確定だ。

 

 

「2人とも流石だね」

「………せやな」

「緑坂さんはなんで界放リーグに参加しないんだい?」

「あんたくらい頭が良ければ考えずともわかるやろ?……私からしてみればあんたが出ん方がよっぽど謎やで」

「……………」

 

 

黙り込む雅治。あれから何度も出場はしたいのにしたくない、そんな矛盾する気持ちを考えて見たが、なかなかその理由がわからない。そして本番を迎え、結局何が何だか分からず出場しなかった。

 

真夏が出場しないのは当然の如く、兄、ヘラクレスと周りから比較されるが嫌だからだ。彼女にとってそれは自分の身体が引き裂かれるような痛みなのである。

 

 

「よぉぉし!代表選抜予選もいよいよ最後のバトルだ!この4人のうち2人が代表だぞ!」

 

 

バトル場のど真ん中にいる晴太がそう言うと4人の人物がバトル場に歩み寄る。その中には司と椎名も確認できる。

 

椎名は目の前にいる自分の対戦相手を確認する。司ではなかった。彼はその隣で、また別の人物とバトルすることになっていた。椎名としては好都合。彼とは一緒に代表になって本戦でバトルしたいからだ。

 

 

「よっし!頑張るぞぉ〜〜!」

「………よぉ、久しぶりだな、芽座椎名」

 

 

椎名の目の前にいた対戦相手が椎名に話しかける。どうやら椎名の知人のようだが、

 

 

「?……どっかであった?」

「忘れたのかよっ!?俺様だ!毒島富雄様だ!!カードショップでバトルしてやっただろうが!!」

 

 

対戦相手はあの毒島だった。椎名もそれを聞いてようやく思い出す。

 

 

「あぁ、あの毒島先輩かぁ、」

「今回俺はお前に復讐するために来た、……覚悟しやがれよ、アホ毛女」

「へへ!……せっかくだから楽しいバトルにしよう!」

 

 

このバトルは生徒達からは離れたところで龍皇理事長も観戦している。芽座椎名を見極めるためだ。

 

 

「よっし、お手並み拝見だな、芽座椎名」

 

 

多くの生徒や先生が見守る中、この4人のバトルが、代表選抜予選の最後の試合が今、切って落とされる。

 

 

「バトル、始めぇ!」

「「「「ゲートオープン!!界放!!」」」」

 

 

晴太の始めの合図に合わせて、4人共一斉にバトルを始める。

 

椎名と毒島のバトルが始まる。

 

ー先行は毒島だ。

 

 

[ターン01]毒島

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「ガハハハ!メインステップ!……俺はネクサス、旅団の摩天楼を配置!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

毒島が早速背後に配置したのは細長い摩天楼。これはその効果の汎用性の高さから、紫のデッキならば、どんなデッキでも採用圏内に入る強カード。

 

 

「配置時効果で1枚ドローだ!………さらにバーストを伏せる。俺はこれでターンを終了だ!」

手札4⇨5⇨4

 

旅団の摩天楼LV1

 

バースト有

 

 

さらに1枚のバーストカードを伏せ、先行の第1ターンを終える毒島。次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が早速呼び出したのはこのデッキの潤滑油的存在、青き体に加え、額に金色のブイの字が刻まれた小さな竜、ブイモンが召喚された。

 

 

「召喚時効果発揮!カードをオープン!」

オープンカード

【グリードサンダー】×

【フレイドラモン】○

 

 

召喚時効果は成功。アーマー体のフレイドラモンのカードが手札に加えられた。

 

そして椎名は早速召喚する。この最高のマイフェイバリットスピリットを。

 

 

「さらにフレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!…1コストを支払い、燃え上がる炎、フレイドラモンをLV1で召喚!」

 

 

ブイモンの頭上に赤く、独特な形をした卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは炎を彷彿とさせるスマートな竜人型アーマー体スピリット、フレイドラモン。

 

雅治も「早速来たね」と、声を上げる。毒島は激しい怨念の炎をその心に燃やしていた。痛い目にあわされたあいつが目の前にいると思うと俄然倒したくなる。

 

 

「アタックステップ!……フレイドラモン!」

 

「ライフだ、くれてやる!」

ライフ5⇨4

 

 

フレイドラモンは炎を纏わせた拳で、毒島のライフを1つ叩き割った。椎名にとっては幸先の良いスタートと言える。

 

だが、ここで毒島のバーストがオープンされる。

 

 

「ライフの減りでバーストを発動だ!ジャンピングバインド!……効果によりコアブーストだ!!」

リザーブ2⇨3

 

 

真夏も使ったマジックカード。毒島にコアの恵みが送られる。

 

 

「よっし!ターンエンド!」

フレイドラモンLV1(1)BP6000(疲労)

 

バースト無

 

 

ターンを終える椎名。次は毒島のターンだ。前のターンから一転して、リベンジを果たすべく大きく動き出す。

 

 

[ターン03]毒島

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「……メインステップ……ガハハハ!!!この力を使う時が来たぜぇ!!」

「………!?!」

 

 

忽然と笑い出す毒島。思わず椎名は身構える。毒島が今から呼び出すのは、龍皇から譲り受けたレアカード。デジタルスピリットでも貴重な完全体のカードだ。

 

 

「召喚!……アルケニモン!!!LV2だ!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨4

 

「……!?」

 

 

突如現れる巨大な繭。その中で蠢く何か、それはゆっくりとその繭を引き裂き、現れる。

 

下半身は蜘蛛。上半身は不気味な女性の姿をした魔獣型スピリット、アルケニモンが召喚された。

 

 

「おぉ!すごい!!」

「毒島ってあんなカード隠し持っとったんかいな……!?」

 

 

あいも変わらず強敵そうなスピリットの登場ではしゃぎ出す椎名。その上で、少々驚く真夏。毒島は基本的にドクグモンを軸に戦うデッキだった。なので今回のこの完全体のレアカード、アルケニモンを見て、驚くものはたくさんいた。

 

 

「これが俺の新たなエースカードだ!!!覚悟しやがれぇ!!アタックステップ!!………アルケニモン!!」

 

 

蜘蛛の下半身を巧みに活かして走り出すアルケニモン。その凶悪なアタック時効果が椎名とフレイドラモンを待ち構える。

 

 

「アタック時効果だ!くたばれぇ!フレイドラモン!!」

「なにぃ!?」

 

 

アルケニモンは右腕から暗黒の粒子の球を形成し、それをフレイドラモンに投げ飛ばす。フレイドラモンはそれに直撃し、塵となり消滅した。

 

 

「アルケニモンのアタック時だ!疲労状態の相手スピリット1体を破壊し、ボイドからコア1つをアルケニモンに置く………ガハハハ!!!どうだ!」

アルケニモン(3⇨4)

 

 

早々にフレイドラモンを失い、痛手となる。が、まだ挽回のチャンスはある。椎名はこのアタックをライフで受けようとするが、

 

 

「くっ!!……ライフで受け…………」

「ちょぉっと待ちやがれ!まだあるぜ!アルケニモンのアタック時効果がなぁ!!!」

「………!!」

 

「アルケニモンの第2のアタック時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【ドクグモン】×

【マミーモン】○

 

 

アルケニモンの2つ目のアタック時効果、それは緑、または紫1色のネクサスがある時、デッキからカードを2枚オープンし、その中の完全体スピリットをノーコスト召喚できるというもの。

 

今回は同じく完全体のマミーモンが該当するため、毒島はこれを召喚する。ちなみに、このマミーモンも龍皇から貰ったものだ。

 

 

「いよっしゃぁあ!!俺はこのマミーモンを召喚するぜ!LV2だ!」

アルケニモン(4⇨1)LV2⇨1

マミーモン(3)LV2

 

 

アルケニモンが作り出す暗黒の瘴気、その中から、ミイラのように、全身が包帯で巻かれたアンデッド型スピリット、完全体のマミーモンが召喚された。その手には長い銃が握られている。

 

 

「……!!……一気に完全体が2体!?」

「アルケニモンのアタックは継続だ!!」

 

「ぐっ!……ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

アルケニモンの引き裂くような攻撃が、椎名のライフを1つ破壊した。このターンはこれだけでは済まされない。次はマミーモンの攻撃だ。

 

 

「続きやがれ!マミーモン!……こいつはLV2の時!アルケニモンがいるだけでBPプラス5000、紫のシンボルを1つ追加される!」

マミーモンLV2(3)BP12000

 

 

つまりはダブルシンボルのアタックだ。少ないコア数、場のカード、椎名にはライフで受ける以外の選択肢はない。

 

 

「それもライフで受ける!」

ライフ4⇨2

 

 

マミーモンの銃撃が椎名のライフを一気に2つ破壊する。

 

 

「ガハハハ!!これが俺様の真の実力よ!!ターンエンドだ!」

アルケニモンLV1(1)BP5000(疲労)

マミーモンLV2(3)BP12000(疲労)

 

旅団の摩天楼LV1

 

バースト無

 

 

そのターンを終える毒島。アルケニモンとマミーモン。この最悪のコンビを打ち破る術を椎名は持ち合わせているのだろうか、いや、持ち合わせなくてはならない。本戦に出場し、勝ち残るまで負けてはいられない。椎名がそう思った直後だった。

 

 

《勝者!赤羽司!代表決定!!!》

 

 

そんなアナウンスが流れてくる。椎名はすぐ横を見渡すと、司が対戦相手を完膚なきまでに叩き落としていた。盤面にいるホルスモンが宙を舞う。

 

司は椎名を見る。まるで勝ち誇ったかのような顔だ。まだ椎名と勝負もしていないのに、椎名は不思議とやる気が込み上げてくる。「司には負けられない」と自分を鼓舞していく。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

 

 

「ドローステップ!!……ドロー!!………!!……じっちゃん!」

 

 

椎名がドローしたカードは六月に渡されたカード。それはまさしくこの状況にはうってつけのカードであって、

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨9

トラッシュ4⇨0

 

 

「いくよ!メインステップ!バーストをセットして、ガンナー・ハスキーと猪人ボアボアをLV2で召喚!」

手札6⇨4

リザーブ9⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名がバーストを伏せると同時に場に呼び出したのは犬型だが、拳銃を所持するために、青い腕を生やしたスピリット、ガンナー・ハスキーと、猪の頭をした獣人型スピリット、ボアボア。

 

いずれも椎名の速攻部隊となるスピリットたちだ。

 

 

「アタックステップ!ボアボアとガンナー・ハスキーでアタック!」

猪人ボアボア(3⇨4)LV2⇨3

 

「2つともライフだ!!」

ライフ4⇨2

 

 

そのままアタックステップに入る椎名。ボアボアの鎖付き鉄球が、ガンナー・ハスキーの乱射が、それぞれ1つずつ毒島のライフを破壊した。

 

これでライフだけなら同値となるが、

 

 

「ガハハハ!!!バカが!勝負を捨てたか!……これでもうお前を守るスピリットはいない!俺の勝ちだ!!」

 

 

椎名はこのターン、フルアタックをしたせいでブロッカーは無し、確かに大雑把に見れば勝負を捨てたように見えるが、

 

毒島は勘違いをしていた。何故なら、勝負を捨てたプレイヤーがバーストなど伏せるわけがないからだ。

 

既に観戦に回っていた司は思った。「これはめざしの勝ちだ」と。こんな相手に奴が負けるわけがないと、

 

 

「ターンエンド!!……さぁ!どっからでもこい!!」

ガンナー・ハスキーLV2(3)BP4000(疲労)

猪人ボアボアLV2(4)BP4000(疲労)

 

バースト有

 

 

「あぁ!どっからでもきてやるぜ!この俺のターンで終わりだぁ!!」

 

 

[ターン05]毒島

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

アルケニモン(疲労⇨回復)

マミーモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!アルケニモンをLV3に上げ、……決めてやるぜ!異魔神ブレイブ!龍魔神!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨0

アルケニモン(1⇨5)LV1⇨3

トラッシュ0⇨3

 

「……異魔神ブレイブ!!」

 

 

悪運立ち込める空間に、雷雲と共に現れる黒き龍。左右に合体できる特異なブレイブ。異魔神ブレイブの1種、龍魔神が召喚された。

 

ーそして

 

 

「龍魔神の右にアルケニモンを、左にマミーモンを合体させる!」

 

 

龍魔神の左右の手から光線が伸びる。それはアルケニモンとマミーモンに繋がり、合体状態となる。

 

そして脅威のアタックステップが始まる。

 

 

「終わりだぁ!!アタックステップ!アルケニモン!!……龍魔神の右側の力はアルケニモンとほぼ同等!ガンナー・ハスキーとボアボアの2体を破壊し、コアを2つ追加だ!」

アルケニモン+龍魔神(5⇨7)

 

「……くっっ!!!……でもガンナー・ハスキーのLV2の破壊時効果でコアを2つ増やす!!」

リザーブ7⇨9

 

 

アルケニモンと龍魔神の黒き波動により、ガンナー・ハスキーとボアボアの息の根は止まる。2体とも爆発し、破壊されてしまった。

 

ガンナー・ハスキーのLV2の破壊時でリザーブにコアが追加されるものの、乗せるスピリットがいなければ意味がない。

 

 

「それがどうしたぁあ!!お前の盤面にはもはやスピリットはいない!トドメだ!!」

 

 

走り出すアルケニモン。龍魔神との合体でシンボルは2つ。椎名の残りのライフをいとも容易く消し飛ばすことが可能。誰が見てもこの状況は変わらない。そう思われた直後だった。椎名のバーストカードが光り出し、一気に反転する。

 

 

「相手のアタック後でバースト発動!トライアングルバースト!!」

「なに!!?」

 

「トライアングルバーストは、バースト効果で手札にあるコスト4以下のスピリットをノーコストで召喚できる、……ブイモンを召喚!!」

手札3⇨2

リザーブ9⇨5

ブイモンLV2(4)BP4000

 

 

突如現れるトライアングルの光り。その間から【アーマー進化】の効果により手札に戻っていたブイモンが再び登場する。

 

 

「なるほど……相手のアタック時効果を掻い潜り、成長期を召喚、さらに【アーマー進化】を決める算段か、」

 

 

そう呟いたのはすぐ横のバトル場にいる司。彼の予想通り、椎名は呼び出しても直ぐにアタック時効果で破壊されかねないブイモンを維持するために、それよりタイミングが後のアタック後のバースト、トライアングルバーストを仕込むことで、相手ターンでの【アーマー進化】を可能にした。

 

ーだが、

 

 

「仮にフレイドラモン、ライドラモンを出せたとして、この状況を変えることはできない…………」

 

 

そう呟いたのは雅治。確かにフレイドラモンでもライドラモンでも、毒島のアルケニモン、マミーモンに勝つことはできない。だが、椎名が召喚するスピリットはフレイドラモンでもライドラモンでもない、誰もが予想だにしない新たなるスピリットを召喚する。

 

 

「フラッシュ!【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!」

「ガハハハ!!今さらフレイドラモンか?そんなものを出しても無駄だ!俺様のアルケニモンとマミーモンの敵ではない!」

 

「……誰がフレイドラモンを召喚するって?……私が召喚するのはこいつだ!!……1コストを支払い、黄金の守護竜………マグナモンを召喚!!!」

リザーブ5⇨4

トラッシュ3⇨4

マグナモンLV3(4)BP10000

 

「な、なにぃ!?マグナモン!?!……」

 

 

金色の輝きを放つ黄金の鎧を纏う卵のようなものがゆっくりとブイモンの頭上に投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れるのは、鉄壁の防御能力を持つ、最強のアーマー体。それは黄金の鎧をその身に纏い、椎名の場に現れる。

 

それを見るなり、椎名以外の者は驚愕していた。それもそのはず、このマグナモンは他のデジタルスピリットとは訳が違う。

 

 

「あ、あれは………マグナモン………!?」

「【ロイヤルナイツ】の1体………!!なぜめざしが、……」

「世界にただ1枚しかないカードのはずやで!?……そんなもん持っとったんかいな!?」

 

 

マグナモン。伝説のデジタルスピリット。【ロイヤルナイツ】の1体。【ロイヤルナイツ】とは、世界にただ1枚しか存在しないと言われる無敵のデジタルスピリット集団。それらは全てで13種、そのうちの1体であるマグナモンを椎名が召喚した事により、周りは騒然とする。それはあの龍皇理事長も同様である。

 

ちなみに椎名は【ロイヤルナイツ】の存在を、マグナモンの価値を全く知らない。マグナモンの煌めく後ろ姿にただ見惚れていた。

 

 

「おぉ!!これがマグナモン!!カッコいい!!………よろしくね!!マグナモン!!」

 

 

椎名の言葉に少しだけ振り返り、小さく頷くマグナモン。対戦相手の毒島はただそのマグナモンの存在に驚き、恐怖していた。

 

 

「ぐっ!!………だが!!!所詮はBP10000!!アルケニモンの敵じゃあない!!」

 

 

確かにBPだけならマグナモンは他のアーマー体となんら変わりはない。だが、マグナモンは仮にもアーマー体最強のスピリット。それにはそれ相応の強力な効果がいくつも備わっていた。

 

 

「マグナモンの召喚時効果発揮!!……マグナモンは召喚した時、相手の場にいる最もコストの低いスピリット1体を破壊する!」

「……な、なぁ???!?」

「毒島先輩の場にいる最もコストの低いスピリットは10のアルケニモン!これを破壊する!…………黄金の波動!!!エクストリーム・ジハード!!!!」

 

 

マグナモンはその身に黄金の光を集中させ、それを一気に解き放つ。その膨大なエネルギーは瞬く間にアルケニモンを捉えて、それを消滅させた。

 

 

「へっへー!!アルケニモンが破壊された事で、マミーモンに与えられたBPとシンボルが低減するっ!」

 

「ぐっっ!!!」

マミーモン+龍魔神BP16000⇨11000

 

 

アルケニモンがいなくなった事により、寂しさを感じたのか、涙を流すマミーモン。彼は仇を取るべくアタックしに行く。

 

 

「だが!!!まだ俺様の場にはまだマミーモンがいる!!アタックだ!!!……マミーモンのアタック時効果でマグナモンのコアを2つリザーブに置き、龍魔神の効果で疲労させる!!!………喰らえ!マグナモン!!」

 

 

マミーモンの渾身の銃撃と、龍魔神の闇の瘴気が同時にマグナモンを襲う。このままではマグナモンはLVが下がるだけでなく、疲労状態になってしまう。

 

ーだが、

 

 

 

マグナモンはその黄金の鎧の力を示すように輝かせると、その2つの攻撃を同時に跳ね返してしまう。

 

 

「な、なにぃ!?!……なぜ効かない!!?!」

「マグナモンは相手のスピリット、ブレイブの効果を受け付けない………!!…よってその効果は効かないよ!」

 

 

マグナモンの強力な効果の1つ。それは耐性効果。マグナモンに対するスピリットとブレイブのこれ一切の効果を遮断してしまう。

 

最強のアーマー体と言われる由縁の1つだ。そして、マミーモンはアタック状態。椎名はこれをマグナモンで迎え撃つ。

 

 

「アタックはマグナモンでブロックするっ……!!」

 

 

マミーモンの気持ちはまだおさまらず、包帯を飛ばし、マグナモンを縛り付けにしようとする。マグナモンはその攻撃を上空に飛ぶ事で回避する。

 

 

「ガハハハ!!!いくら【ロイヤルナイツ】と言えどバトルスピリッツのルールには逆らえまい!!BPはマミーモンが上!!くたばりやがれぇ!!」

 

 

だが、椎名も何も考え無しにブロックしたりなどしない。さらなる逆転の1枚を引き抜く。

 

 

「へっ!……フラッシュマジック!アビサルカウンター!!……アビサルカウンターは相手の合体スピリットのブレイブを1体破壊する!私が破壊するのは龍魔神!!」

手札2⇨1

リザーブ4⇨2

トラッシュ4⇨6

 

「……は、はぁ!?!!……あ、あぁ!?!……俺様の龍魔神!!?!」

 

 

龍魔神を襲う特大の竜巻。龍魔神はそれに取り込まれ、宙に飛ばされて、そのまま爆発してしまう。

 

これにより龍魔神の合体時+は無くなり、マミーモンのBPは椎名のマグナモンより劣ってしまう。

 

 

「今だぁ!!いっけぇ!!マグナモン!!………黄金の一撃!!ゴォォルデン!!ドラァァイブ!!!」

 

 

マグナモンは再び黄金の輝きをその身に纏い、上空からマミーモンに向けて落下して行く。マミーモンは焦り、銃を乱射するが、通用せず、全て弾き返される。そしてそのままその攻撃が直撃、爆発する。

 

爆発の煙の中、マグナモンだけが生存していた。その黄金の鎧が、より輝いて見える。

 

 

「……た、ターン、エンド……っ!!」

旅団の摩天楼LV1

 

バースト無

 

 

なすすべがない。何もできない毒島は仕方なくそのターンを終えてしまう。

 

次はラストになるであろう、椎名のターンだ。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨9

トラッシュ6⇨0

マグナモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップで……ブイモンを召喚し、アタックステップ!………ブイモンとマグナモンでアタックだぁ!!」

手札2⇨1

リザーブ9⇨4

トラッシュ0⇨2

 

 

動き出す2体のスピリット。目指すは残った毒島の2つのライフ。毒島の手札にはもはやカウンターカードはない。

 

ー決着だ。

 

 

「ぐっっ!!………ら、ライフだぁあ!!」

ライフ2⇨1⇨0

 

 

マグナモンの肩部から放たれるミサイルが、ブイモンの頭突きが、毒島の残ったライフを完全に叩き壊す。

 

これにより勝者は椎名。見事大逆転を飾ってみせる。ブイサインを掲げる彼女の前にいるマグナモンとブイモンはゆっくりとその姿を消滅させて行く。

 

 

《勝者!芽座椎名!代表決定!!!》

 

 

勝利を告げるアナウンスが流れる。湧き上がる歓声。

 

これでバトスピ学園、ジークフリード校の代表2人は芽座椎名と赤羽司に決定した。

 

 

「ぐっ!!ま、負けた…………」

「毒島先輩!!いいバトルだったよ!!またやろうね!!」

「…………うるせぇ!……覚えてやがれぇ!」

「あ、あれ!?」

 

 

そう言ってまた古い捨てゼリフだけを残して、毒島はその場を去って行く。

 

 

******

 

 

代表が決まり、今は表彰式だ。椎名と司は真ん中の表彰台の前に立たされ、祝福されていた。目の前にいるのは龍皇理事長だ。

 

 

「あっほん!……改めて代表入りおめでとう、芽座椎名、赤羽司!……特に芽座椎名、お前のあのマグナモンには驚かされたよ、これからも頑張れよな!」

「あっはは!!ありがとうございます!」

(よぉ〜し、狙い通りだ、やっぱ凄い才能だったぞこいつ、この2人でなんとか【ヘラクレス】を倒してくれよ………頼むからマジで)

 

 

龍皇はキングタウロス校の理事長との賭け事に勝つことしか頭にない。こんな歳になって何を考えているんだと思うかもしれないが、彼とて年長者。余生を楽しみたいのだろう。

 

 

「ところで理事長。【界放リーグ】本戦はいつですか?」

「!?!」

 

 

思わず呆気にとられる龍皇。まさかここまで勝ち上がってきてそんなことも知らないとは思ってなかった。

 

横にいる司がそれを説明し、伝える。

 

 

「何今更言ってんだめざし、【界放リーグ】の本戦は夏休み明けて、10月だろうが」

「………えぇ!?そんなに長く待つの!?」

「はっは!……まぁ、他校も強敵を送ってくるんだし、それまでに腕を磨くのもいいかもな!」

「はぁ、馬鹿馬鹿しい、俺はこれで失礼するぜ」

「えぇ?まだ終わってないよ!?」

「俺がそんなこと知るか……」

 

 

司はそれだけ伝えるとまだ表彰式は終わっていないというのに、表彰台から降り、その場を去って行く。

 

 

(めざしはあんな力を………ならば俺も新たに身につけねばならん、癪だが、あそこに帰ってみるか)

 

 

司は心の中でそう考える。椎名の持つ【ロイヤルナイツ】、マグナモンを見て、追い越されている気がした。司はあのカードを必ず得ると誓った。【赤羽一族に伝わる伝説のスピリット】を。

 

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【アルケニモン】!」

「アルケニモンは緑と紫の強力な完全体スピリット!……アタック時に疲労状態のスピリットを破壊したり、マミーモンを連れてきたりできるよ!」








最後までお読みいただきありがとうございました!


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第15話「赤羽一族訪問!伝説を獲得せよ!」

 

 

 

 

 

 

 

赤羽司と長峰雅治は今、電車に乗っている。目的地は赤羽司の実家だ。2人は同じ町で育った。雅治は彼の家族とも仲が良く、ほぼ家族と言われるほどだ。

 

だが、そんななか、司は違和感と不安感を感じていた。何せ、今、自分が座っている座席の横には雅治がいるのだが、さらにその隣には、

 

 

「おい、めざし、なんでお前がいる」

「やっと気づいたなぁ、いや、どうしても赤羽家の伝説のスピリットをみたくってさぁ!」

 

 

そこに居たのは芽座椎名。椎名はいつものように笑顔を振舞いながら話す。直射日光を避けるための大きめの麦わら帽子が妙に馴染んでいて、似合っている。彼女に好意を抱く雅治はその姿を見て、またひとつ心を奪われている。

 

椎名がなぜここにいるのかは大体の見当がついた。おそらく雅治が呼んだのだろう。というか、帰省することは雅治にしか告げていない。うっかり口を滑らせて、それに椎名が便乗した。司はそう推理した。それは100%的中していた。

 

司は面倒臭いと思いつつも、ここまで来てはもうしょうがないか、どうでも良くなり、電車に乗っている間は、その口をずっと閉じていた。

 

ーそして電車は目的地に到着し、3人は赤羽家の家まで歩き出す。古びた家が多く。良く言えばのんびりとした趣のある場所、悪く言えば活気のない寂れた場所だった。

 

良く知っている司と雅治は早足で向かう。椎名はその後ろを歩き、周りをキョロキョロ見回しながらついて行く。

 

徒歩20分くらいで、そこに到着する。赤羽家の家は大きな神社と言ったところか、だいぶ年季が入っており、鳳凰のような石像が玄関前に飾られていた。

 

 

「おぉ、これが司ん家か」

「………鍵が閉まってやがる、…たくっ、開けとけって言っただろうが………」

 

 

ーすると、"カシャン"と鍵が開く音と、"ガラララ"と扉が開くと音がする。椎名は前を見るがそこには誰もいない。と思ったらいた。下に。それはとても小さくて可愛らしいお人形さんのような女の子だった。その子は司の妹だった。その子は真ん前にいた司と椎名を見つめ…………

 

 

「おとさーーん!!おかさーーーん!!!にぃがおよめさんつれてきたぁぁぁぁあ!!!」

「「なにぃぃぃぃぃい!!!!!」」

 

 

と叫ぶと、後ろから司の父親と母親が颯爽と走りこんでくる。年齢は2人とも40代前半と言ったところ。

 

 

「あの司が女の子を家に連れてくるなんて!!」

「おぉ!なかなかのべっぴんさんじゃねぇか!!!ところでお嬢さん、スリーサイズは?」

「うるせぇぇぇ!!!それが半年ぶりに実家に戻ってきた息子にとる態度か!?」

「なんか面白い家族だね!」

「まぁこうなることは予想してたけどね」

 

 

盛り上がる赤羽家の面々。一応帰る連絡は入ってはいたが、まさかこんな可愛らしい女の子を連れてくるのは彼らとして予想外だった。

 

 

「ハッハッハ!!申し遅れたな、俺は司の親父、赤羽一族の現頭領、【赤羽 紅蓮(あかばね ぐれん)】と、嫁の【緋色(ひいろ)】、司の妹の【可憐(かれん)】だ」

「こんにちは!!同級生の芽座椎名です!」

 

 

軽く挨拶を交わすと、紅蓮は、司に目を向ける。それはさっきまでとは違い、真剣な表情だった。

 

 

「……司、お前ここに帰ってきたってことは、……あれを引き継ぎに来たのか?」

「あぁ、あのカードをもらいに来た」

 

 

紅蓮は少し黙り込むと、また口を開く。

 

 

「だったら、明日だ、……お前とて、今日がなんの日かわかるだろ?」

「あぁ、わかってて今日帰ってきた」

「?今日何かあるの?」

「うん、今日は司のお姉さんの命日なんだ」

 

 

今日という夏の日、それは赤羽家にとっては忘れられない日にち。それもそのはず、今日は、司の7つ上の姉、赤羽茜の命日なのだから、

 

この日は毎年、とある人物に彼女の仏壇の前で、天国で何事も起きぬよう、供養をしてもらう日なのだ。

 

椎名達は家に上がり、その時を待つ。

 

 

「しーないいにおいするーー!」

「うっそー嬉しいなぁ!次はなにしよっか?」

「もう打ち解けてやがる」

 

 

椎名は司より10歳年下の妹、可憐と知らないうちに仲よしになり、一緒に遊んでいた。

 

 

「おい、司、お前あんな可愛い子どこで見つけたんだよ!羨ましすぎるぞ!」

「うるせぇぞ、クソ親父」

「あの子、雅治と司、どっちが好きなのかしら?」

「いや、おばさん、そういう話は………」

 

 

椎名と可憐が遊んでいる側で色々話す赤羽家と雅治。これだけ見ると、彼らは至って普通の家族だ。

 

そしてそんな時は終わり、仏壇の前に、お祓いや、供養をするためにある人物が現れた。それは【紫治 城門(しち じょうもん)】。

 

 

「おっ!来たな!城門の旦那!今年も頼むぜ」

「あぁ、任せてくれ…………おや?紅蓮、今日は見たことないお客を連れて来ているようだね?…」

「ん?あぁ、椎名ちゃんって言うんだ、可愛いだろ?あんたのとこの夜宵ちゃんといいとこいくんじゃねぇか?」

「人の子を自分の娘のように言うでない……………そうか、あの子が芽座椎名か……」

 

 

そう言って彼は装飾服を行きずりながら椎名の方へ向かった。

 

 

「君が芽座椎名ちゃんだね?」

「ん?そうですけどーーー、何か?」

「君のことは夜宵から聞いているよ、とてもセンスの良いバトラーだとね」

「?夜宵ちゃん?」

 

 

訳がわからない椎名のために、雅治は「あの人は夜宵ちゃんのお父さんなんだよ」と相づちを挟んだ。それを聞いた椎名は思わず飛び上がった。

 

 

「や、夜宵ちゃんのお父さん!?」

「はっは、驚いたかね、いやはや、あいつも有名になってしまったものだ………君は【界放リーグ】の本戦にも出場するそうだね、私もデスペラード校の理事長として見物させてもらうよ、君のバトル、楽しみにしている」

「へ、へぇ、夜宵ちゃんのお父さんが理事長なんだ…………ありがとうございます!精一杯頑張りますよ!」

 

 

その後、すぐに供養が始まった。お経を唱えたり、踊ったりと、様々な方法でそれを行った。1時間以上、そんなことをしていたものだから、椎名は眠気が差して来たが、なんとか一睡もせずにそれを乗り切ってみせた。

 

そしてこれは供養が終わり、城門も帰って墨色の夜を迎えた頃。椎名は赤羽家と雅治と共に鍋を食べていた。その鍋はとても絶品の一言だった。椎名もその味に震え上がった。

 

 

「ところで椎名ちゃんのご両親は何をなさってるの?」

 

 

司の母、緋色の質問だ。

 

 

「ん?私ですか?んーーー、私捨て子だから親はいないんですけど、じっちゃんが、育ての親はなんか神父的なことをしてますよ」

 

 

椎名がそのことを話した途端。赤羽家はおろか、雅治、司までもが目を見開いた。椎名は自分の出生が謎なことを真夏以外に話したことがなかった。あと知っているのは担任の晴太くらいか、

 

 

「うっ!!そうか!!良い人だな!じっちゃん!よしよし!俺が君を幸せにしてやろう!!」

「しーなをくどくなーー!!」

「もっといっぱい食べなさい!スイカいる?」

「ん?あっはい、ありがとうございます………」

 

 

司の両親は涙目になりながらそう面白げに喋った。椎名は不思議に思った。何せ、そんなことを話した自覚がないからだ。ただひとつ感じたことは、本当の家族という暖かさ。自分が今まで一緒に過ごして来た血の繋がってない兄弟達や、六月が、家族と思っていないわけではない。だが、両親がいるとこんな感じなのだと、肌で感じていたのだ。

 

そして鍋を食べ終わった頃、また砕けたような表情を戻し、真剣な顔で、紅蓮は司に告げた。

 

 

「司、明日の朝7時、表に出ろ、そこでお前が相応しいか試す、かつての茜のように」

「…………あぁ、わかった」

 

 

承諾する司。相応しいか試す。その試す方法はあれしかない。バトルスピリッツだ。そのカードは今までバトルスピリッツで示すことで受け継がれて来た。だが、それが使われ始めたのはたった10年前、理由としては、それがデジタルスピリットを使わないと全く使えないことにあった。

 

そして翌朝、司と紅蓮は家の前の広場でBパッドを展開してスタンバイしていた。椎名も雅治も緋色もその様子を見守っている。

 

 

「司、受け取れ」

 

 

そう言って紅蓮は1枚のカードを司に投げ渡す。司はそれを受け取り、見ると、それは自分が欲していた赤羽家に伝わる伝説のスピリットだった。かつては姉、茜に渡されたが、彼女が亡くなったことでまた持ち主をなくしたカードだ。

 

 

「なんの真似だ親父」

「それを入れて戦え、かつての茜も、いや、先祖代々そうして来た」

 

 

納得はできないものの、これを得るためには仕方ない。司はそれをデッキに差し込んだ。そしてそれを得るためのバトルが始まる。バトルスピリッツの始まりが宣言される。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが始まる。先行は司だ。

 

 

[ターン01]司

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、ホークモンを召喚」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

司が最初に召喚したのはこのデッキの潤滑油。赤き羽を持つ成長期スピリット、ホークモン。その召喚時を発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

オープンカード

【ハーピーガール】×

【ハーピーガール】×

【ホルスモン】○

 

 

召喚時効果は成功。アーマー体のホルスモンのカードが加えられた。

 

 

「これでターンエンドだ」

手札4⇨5

 

ホークモンLV1(1)BP3000

 

バースト無

 

 

司はそのターンを終える。先行の1ターン目としては上出来な動きと言えよう。

 

 

[ターン02]紅蓮

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

順調にターンシークエンスを行なっていく紅蓮。そしていよいよメインステップだが、ここでこの場にいる誰もが驚くスピリットを召喚する。

 

 

「メインステップ、俺は……いや、俺も!ホークモンを召喚する!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「なに!?ホークモンだと!?」

 

 

紅蓮は司と全く同じスピリットを召喚した。司は驚いた。何せ、紅蓮はホークモンなどは使わないからだ。

 

 

「こ、これは、……ミラーマッチだ……!!」

「おぉ、あんまり見ないよね」

 

 

ミラーマッチ。その名の通り全く同じデッキ同士がバトルする時の総称だ。このデッキタイプが別れやすいご時世にはかなり珍しい現象だった。

 

ーだがこれは当然意図的なものであって、

 

 

「なんの真似だ親父……!!」

「なんだよ、俺がこれを使ったら悪いのかぁ?……ちなみにこのデッキはお前のデッキと全く同じだ」

「だったらなんで俺にあのカードを渡した!?…それだと俺が確実に勝てるじゃねぇか!」

 

 

今回の紅蓮のデッキは本当に司のデッキとほとんど同じだ。だが、唯一用意できないのが、赤羽家の伝説のスピリットカードだ。それ以外がほとんど同じカードだと、間違いなく司の方がカードパワーが上がる。

 

 

「よく考えろ司、仮にお前がそれで負けてみろ、それはお前があのカードに相応しくないという証明になる」

「!」

 

 

紅蓮にも考えがあった。確かにこの状況で司が負けることがあれば伝説のスピリットカードに相応しくないと言えるだろう。司も不機嫌な顔は崩さないものの、その意見には内心納得していた。

 

 

「さぁ、続きだ、ホークモンの召喚時で3枚オープン」

オープンカード

【イーズナ】×

【朱に染まる薔薇園】×

【ホルスモン】○

 

 

効果は成功、紅蓮は司同様、ホルスモンのカードを手札に加えた。

 

 

「よぉし、手札は整った、いくぞ司!俺はイーズナを召喚し、バーストをセット!そしてアタックステップ!ホークモンでアタック!」

手札4⇨5⇨4⇨3

リザーブ1⇨0

 

 

紅蓮は司も多用する低コストスピリット、イーズナを召喚し、一気にアタックステップまで移行する。ホークモンでのアタックは一見無謀にも見れるが、司とて、自分のホークモンを失うわけにはいかない。当然ここは、

 

 

「ライフで受けるっ!」

ライフ5⇨4

 

 

紅蓮のホークモンが司のライフを小さな羽を投げつけて破壊した。

 

 

「まだだ!イーズナ!!」

「はぁ!?BPの劣るイーズナでアタックだと!?………くっ!ホークモンでブロックだ!」

 

 

一見してみると、ただの紅蓮のプレイミスにしか見えない。だが、これは大いに意味があることであって、司だったら絶対にしないであろう戦法だ。

 

 

「この瞬間!ホルスモンの【アーマー進化】を発揮だ!ホークモンを対象に1コストを支払い、これを召喚する!そのコストはイーズナより確保!よって消滅!」

イーズナ(1⇨0)消滅

トラッシュ3⇨4

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

 

イーズナは司のホークモンとバトルする瞬間に消滅してしまうが、紅蓮のホークモンの頭上に独特な形をした卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして赤き空飛ぶ獣のスピリット、ホルスモンが召喚された。

 

 

「司の反対側にホルスモンがいるなんて、なんか新鮮だね」

「うん。それにこの戦法は司が絶対にやらないタイプだ」

 

 

アーマー体の特有効果、【アーマー進化】は、普通の進化とは違い、フラッシュタイミングでも行えるため、様々な場面で使え、幅が広い、

 

自分のアタックステップで使えば連続アタック、また逆も然り、だが、司はそんな戦法はとったことがなかった。圧倒的に危険だからだ。自分のアタックでは、フラッシュタイミングの権利は基本的に相手がなきとなるため、その最初のコンタクトで元となる成長期スピリットが破壊される恐れがあるからだ。

 

今回、紅蓮は司と同様のデッキでそれを行なった。司が驚いたのは、自分のデッキでそんなことをするはずがないという固定概念が頭から離れなかったからだろう。

 

 

「司ぁ、お前はいつも自分の考え方に頭を縛られている、いつも言ってただろうが、【あるもの全ての可能性を考え、それをフルで活かせ】と」

 

「そんなものもうとっくに理解しているっ…!!……俺のフラッシュ!ホルスモンの【アーマー進化】!ホークモンを対象に、1コストを支払い、これを召喚する!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

 

司のホークモンもまた、紅蓮と同じようにホルスモンへとアーマー進化を果たす。これで司の場には再びブロッカーが復活したことになる。

 

2体のホルスモンのLVは1。当然同じBPを持つ。仮にこのターンで2体がバトルを行えば相打ちになる。そうなれば、紅蓮側の場の方が圧倒的に不利になる。次は司のターンだからだ。そのため、司はアタックは仕掛けてこない。そう思ったが、

 

 

「やれ!ホルスモン!」

「なんだと!?」

 

 

風を巧みに操り、羽ばたくホルスモン。目指すは司のライフだ。

 

 

「アタックは……くっ、ライフだっ!」

ライフ4⇨3

 

 

ホルスモンの竜巻のような攻撃が、司のライフをまた1つ破壊した。司とて、ホルスモンの破壊は痛いと考えたからなのか、

 

 

「おいおい司ぁ、何驚いてんだぁ?全ての可能性を考えろって言ったよなぁ?ここでお前が驚いたってことは、今の可能性を考慮してなかったってことじゃねぇか、お前、さっき言ったよなぁ、理解しているって、」

「う、うるさい!ターンを続けやがれ!」

 

「はぁ、反抗期の子持ちの親父は大変だな、…………ターンエンドだ」

ホルスモンLV1(1)BP4000(疲労)

 

バースト有

 

 

少々呆れながらも、そのターンを終える紅蓮。ちなみに紅蓮は仮にも赤羽家の現頭領。本来の自分のデッキを使えば、司はおそらくもっとこっぴどくやられていたことだろう。

 

 

[ターン03]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、……………」

 

 

司は思考を張り巡らせていた。先ず警戒すべきは相手のバーストだ。自分と同じデッキならば考えられるのは破壊後か、ライフ減少。

 

相打ちを恐れずにアタックしたと言うことは、

 

 

(あのバーストは破壊後だ)

 

 

そう考える司。そしてあのバーストが確実にそれだと認識しながらバトルを続ける。

 

 

「いくぞ!クソ親父!俺はイーズナ2体、ハーピーガール1体を召喚!」

手札6⇨3

リザーブ6⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

イタチのような姿のイーズナと、腕と足が鳥のような姿になっている女性のスピリット、ハーピーガールが召喚された。

 

 

「さらにホルスモンのLVを2に上げ、アタックステップ!やれ!ハーピーガール!」

リザーブ2⇨0

ホルスモン(1⇨3)LV1⇨2

 

(?…ホークモンを召喚しない?)

 

 

飛び立つハーピーガール。目指す先は紅蓮のライフただ一つ。ブロッカーのいない紅蓮は当然このアタックをライフで受けることになる。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールの強烈な翼撃が、紅蓮のライフを1つ破壊した。

 

 

「ハーピーガールの【聖命】により、俺のライフを1つ回復!」

ライフ3⇨4

 

 

ハーピーガールの【聖命】の力で、司のライフに活力が戻る。

 

ーだが、

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!」

「!」

「救世神撃破!BP6000まで好きなだけお前のスピリットを破壊する!くたばれ雑魚ども!」

 

 

渦を巻く業火が、2体のイーズナと、ハーピーガールを襲う。3体はたちまち破壊されてしまった。

 

迂闊だった。司は今一度考え直してみる。あのホルスモンのアタックはライフを減らしやすいようにしむかれていただけだった。その結果、簡単に罠にはまり、一気に3体のスピリットを破壊されてしまった。司にしては意外な判断ミスであると言える。

 

 

「さぁ、この後どうする?」

「………ホルスモンでアタックだ」

 

「だったらそいつもライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

司のホルスモンの竜巻のような攻撃が、今度は紅蓮のライフを破壊した。

 

 

「………ターンエンドだ」

ホルスモンLV2(3)BP6000(疲労)

 

バースト無

 

 

 

やることを失った司は、そのターンを終える。次は紅蓮のターンだ。

 

 

[ターン04]紅蓮

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

ホルスモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、俺は2体目のイーズナを召喚し、さらにホークモンを召喚だ」

手札4⇨2

リザーブ7⇨4

トラッシュ0⇨1

 

 

紅蓮の場に2体目のイーズナと、【アーマー進化】により手札に戻っていたホークモンが再び場に現れた。その召喚時の効果も当然発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

【アクィラモン】○

【テイルモン】○

【シュリモン】○

 

 

召喚時効果は全て当たり、その場合は好きなものを1枚名札に加えられるが、

 

 

「俺はシュリモンを手札に加える………さらにリザーブの残りコアを使ってレベル調整」

手札2⇨3

リザーブ4⇨0

ホルスモン(1⇨3)LV1⇨2

ホークモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

ホルスモンとホークモンのLVがアップする。

 

 

「アタックステップ!ホークモン!ホルスモン!」

 

「……2体ともライフだ!」

ライフ4⇨2

 

 

2体の赤きスピリットが、司のライフを2つ叩き割る。

 

 

「さぁ!いけ!イーズナ!」

 

 

走り行くイーズナ。紅蓮はまたここでもフラッシュであの効果を使用する。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!1コスト支払い、これを召喚!」

ホルスモン(3⇨2)LV2⇨1

トラッシュ1⇨2

シュリモンLV2(3)BP9000

 

 

ホークモンにこれまた独特な形をした卵が投下される。そしてまたそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは緑のアーマー体、忍者のような姿のシュリモン。

 

 

「シュリモンの召喚時効果!疲労状態の相手スピリットを1体手札に戻す!ホルスモンを戻す!」

 

「くっ!」

手札3⇨4

 

 

シュリモンは勢いよく背中に装備された巨大な手裏剣を司のホルスモンに向かって投げつける。それに直撃した司のホルスモンはたちまち司の手札へと強制送還されてしまった。

 

それだけではない。このイーズナのアタックと、シュリモンのアタックで司のライフがゼロになってしまう。

 

まさかほとんど同じデッキでここまで差があるとは思ってもいなかっただろう。いくら相手が歴史に名を残せるほどの実力を持つバトラーと言えど、いつも自分が扱っているデッキの力を自分以上にここまで理解してゲームメイクができるなど想像もしてなかった。

 

だが、【界放リーグ】で勝つためには、芽座椎名に勝つためには、あの力がどうしても必要なのだ。こんなところでつまずくわけにはいかない。

 

ー司は手札のカードを1枚引き抜く。

 

 

「フラッシュ!シンフォニックバースト!……このバトルで俺のライフが2以下ならば、お前のアタックステップを終了させる!」

手札4⇨3

リザーブ8⇨5

トラッシュ1⇨4

 

 

司の場に黄色いバリアが展開される。

 

 

「そのアタックはライフだ!」

ライフ2⇨1

 

 

イーズナが司のライフを勢いよく破壊するも、残りライフは1。2以下だ。黄色いバリアが弾け飛び、紅蓮のスピリット達の動きを封じ込める。

 

 

「……ほぉ、まぁいいか、このターンはエンドだ」

ホルスモンLV1(2)BP4000(疲労)

シュリモンLV2(3)BP9000(回復)

イーズナLV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える紅蓮。次は司のターンだが、既にあからさまに戦力差が開いてきている。巻き返すのは難しいだろう。

 

 

[ターン05]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨11

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、俺も2体目のイーズナと、【アーマー進化】により手札に戻っていたホークモンを召喚」

手札4⇨2

リザーブ11⇨6

トラッシュ0⇨3

 

 

司の場にも同じスピリットが展開されるが、運命を分けるのはこの先であって、

 

 

「ホークモンの召喚時効果、…………カードをオープン!」

オープンカード

【朱に染まる薔薇園】×

【シャイニングバースト】×

【ホウオウモン】×

 

 

残念ながら全て外れだった。それらは全てトラッシュに送られた。だが司はまだ諦めない。まだスピリットを展開する。

 

 

「再びホルスモンの【アーマー進化】発揮!ホークモンを対象に1コスト支払い、LV2で召喚!」

リザーブ6⇨3

トラッシュ3⇨4

 

 

再びホークモンはホルスモンへとアーマー進化を果たすが、もはやこれだけではどうにもできない。

 

 

「さらにもう一度ホークモンを召喚する」

手札2⇨1

リザーブ3⇨1

トラッシュ4⇨5

 

 

再び召喚されるホークモン。そしてその召喚時を使用する。

 

 

「効果発揮!」

オープンカード

【ホークモン】×

【イエローリカバー】×

【ホークモン】×

 

 

効果はまた不発だ。だが、司はそれでも表情を崩さずにアタックステップへと移行する。

 

 

「いくぞ!アタックステップ!……ホークモンでアタック!」

 

 

果敢にアタックしに行くホークモン。紅蓮の場にはシュリモンが存在するが、

 

 

「ふっ、ブロックだ、シュリモン、相手してやれ、」

 

 

なんのためらいもなくシュリモンにブロックさせる紅蓮。司は手札にある自分の【アーマー進化】発揮させる。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!1コストを支払い、これを召喚する!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ5⇨6

 

「ほぉ、もともと持ってやがったなぁ」

「あの司が自分のアタックステップで【アーマー進化】を………!!?」

 

 

司のホークモンも、紅蓮のホークモン同様、シュリモンへとアーマー進化を遂げる。そしてまた召喚時の効果だ。

 

 

「召喚時効果!俺が対象に選ぶのは…………イーズナ!貴様だ!」

 

「!」

手札3⇨4

 

 

シュリモンの巨大な手裏剣が、今度は紅蓮のイーズナを吹き飛ばす。イーズナは紅蓮の元へと強制送還された。

 

司が何故強力なアーマー体ではなく、弱小で再召喚を狙いやすいイーズナを手札に戻したのかは理由があった。

 

 

(やるじゃねぇか、これで俺のイエローリカバーは使い物にならない)

 

 

紅蓮のデッキには黄色のスピリットを回復させるイエローリカバーがあった。そのままアタックさせていれば間違いなくどこかでかイーズナを回復されていたことだろう。

 

これでスピリットのフルアタックで、紅蓮のライフをぴったりゼロにできる。

 

 

「よし!俺はこの3体でアタックを仕掛ける!いけぇ!」

 

 

司のスピリット、イーズナ、ホルスモン、シュリモンの3体がアタックして行く。

 

 

(ほぉ、見せ場があるのにもかかわらずそれを使わない……か、ほんっとにプライドが高い奴だなお前は、……まぁいい、どうやら俺の気持ちは伝わってるみたいだしな)

 

 

迫り来るスピリット達を前に余裕そうな顔で考え事をする紅蓮。

 

紅蓮は知っていた。司は既に赤羽家の伝説のスピリットを引いていたことを。だが、司はそれを使おうとはしなかった。使えばもっと楽に勝てていたはずなのに、彼なりのプライドだろう。紅蓮は自分の役目はここまでと考えて、ゆっくりとその瞳を閉じて行く。

 

 

「ライフで受けてやるよ」

ライフ3⇨2⇨1⇨0

 

 

3体のスピリットによる連続攻撃が紅蓮のライフを一気に0にした。これで司の勝利となる。最後は意外と呆気ない幕引きだった。

 

 

「はぁっ、はぁっ、……どうだクソ親父!俺の勝ちだ!こいつはもらってくぜ、」

「あぁ、好きにしろ、」

 

 

息を切らしながら、そう言ったかと思えば、なぜか司は駅の方面まで歩いて行く。

 

 

「ちょっちょっと!司!?どこ行くの?」

「あぁ?目的は果たした。俺は帰る」

「えぇ!?」

「まぁそんなことだと思ってたけどね、……僕達も準備しようか」

 

 

そう言って、素早く支度した椎名達は赤羽家の者達に別れを言って駅まで歩いて行った。

 

 

「あなた、良かったの?アレを渡して、」

「ん?いや、いいだろ、別に一族が云々とか、まだ早いとか、どうでもいいのよ、俺は、」

 

 

そう言って家に帰る紅蓮。緋色は「本当に親バカね」と呟いて、後を追うように家に帰った。

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【ホークモン】!」

「ホークモンは赤の成長期スピリット、召喚時の効果で成熟期スピリットか、アーマー体スピリットを手札に加えられる効果があるよ!……そう言えば結局伝説のスピリットってなんだったんだろう?気になるなぁ」







最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回のバトル。よく読んでみると、途中から司が相手の裏をかく力が上がっているのがわかるはずです。
次回もお楽しみに!


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第16話「Sからの依頼/俺達は2人で1人の探偵でカードバトラー!」

※ほとんど特別回みたいなものです。本編では椎名が主役として活躍します。

 

 

 

 

 

 

 

「……と、言うわけで、私の夏休みの宿題を手伝ってください」

「はぁ?」

 

 

蒸し暑い夏の終盤に、椎名はとある私立探偵事務所を訪れていた。その名も【天楼探偵事務所(てんろうたんていじむしょ)】。界放市で根をはるこの探偵事務所は、そこそこ有名な場所であった。この探偵事務所には2人の探偵がいる。その1人が今、椎名と話している青年【左近時 切札(さこんじ きりふだ)】。

 

切札は困っていた。なぜならこの少女、芽座椎名の依頼がなんとも意味不明な内容だからだ。

 

 

「だから言ったじゃないですか!……私この宿題終わらないと【界放リーグ】に出られないんですよ!お願いします!」

 

 

椎名は学園に来るまでは宿題などやったことがなかった。じっちゃんこと芽座六月の管理する児童施設にいたからだ。

 

【界放リーグ】が楽しみすぎてそのことをすっかり忘れていた。成績に難がある生徒は出場できないと言う情報を聞いて、これはヤバイと考えた椎名は、なんとかするためにこの探偵事務所に訪れたのだ。

 

 

「いやいや、お嬢さん、宿題ってぇのは自分でやるもんだぜ?……そしてこの探偵事務所は極めてハードボイルドな……」

「興味深い!……あの界放市一のイベント、【界放リーグ】に出場するほどのバトラーのデッキを見ることができる良いチャンスだよ!切札!これは引き受けるべきだ!」

 

 

その横で切札の言葉を遮るように、興奮しながら喋る少年は、この探偵事務所のもう1人の探偵【シモン】。端正な顔立ちに、緑色の髪色が特徴的だ。性格としては、とにかく知識欲が旺盛。

 

 

「あぁ?おいおいシモン!なんでそんな理由で妙ちくりんな依頼受けないといけねぇんだよ!今日はあいつも出かけていないのに、なんでこの事務所はうるさい女がしょっちゅうまとわりつくんだ!?」

「今言っただろう?あのTV中継もされる【界放リーグ】に出るかもしれないスピリットカードをこの目で見れるチャンスなんだ!」

「俺とお前も学生じゃねぇだろうが!!そんなの見てどうなるんだよ!」

「引き受けてくれるんですか!!」

「引き受けねぇよ!」

 

 

なかなか引き受けてくれない切札に、椎名は差し入れを差し出す。それは有名なドーナツ屋のチェーン店。ドーナツの穴場の美味しいドーナツだ。

 

 

「あっ!これ!先入れです!どうぞ!」

「そんなもんくれたって、依頼なんか受けねぇぞ」

「………いや、待てよ、これは…………そうか!そう言うことだったのか!検索を再開しよう!」

「?」

 

 

ドーナツを見て、何かひらめいたのか、そう言うと、シモンは事務所の別部屋に向かい、引きこもる。約10分後くらいに1冊の本を手に持ち、出て来る。不思議そうな顔を見せる椎名。だが、切札は少しだけ笑いながら「何かわかったのか?」と呟く。

 

 

「あぁ!あの事件の犯人がようやくわかった!場所を伝える、そこへ行きたまえよ切札」

 

 

その後はその場所だけを伝えられて、切札はお気に入りのソフト帽を被り、外へ飛び出した。シモンは椎名の宿題を手伝う。手伝ったらデッキを見せてくれるのを条件に。

 

 

「おぉ!これが宿題!簡単な問題ばかりだねぇ」

「うっそ!?そんな簡単なの?私は全然わからないや……」

 

 

******

 

 

切札は界放市の街を走っていた。切札達は椎名が来る前からある依頼を受けていた。街の宝石を盗む泥棒を捕まえて欲しいと言う依頼だったが、その犯人がようやく判明したのだ。

 

切札は走りに走って、広めの路地裏へと到着した。そしてそこには別の男が1人いた。その男が犯人だ。その男は驚愕していた。ここなら誰も来ないと確信していたからだ。そもそも自分が犯人だといつバレたのかもわからなかった。だが、もう言い逃れはできない。手に持っている宝石の山が動かぬ証拠だ。

 

 

「よぉ、宝石泥棒さん?」

「な、何故俺が隠れている場所がわかった!?」

「こっちには優秀な相棒が付いているんでね………さぁ、ここなら逃げ場はない。バトルと行こうぜ」

 

 

苦い顔をする男。だが、その顔は直ぐに笑みへと変わる。そして1つのデッキケースを徐に切札に見せつけてきた。そのケースはDの文字の頭文字が入っており、凄まじいほどの闇の瘴気が漂っている。

 

 

「はっはっはぁ!!!この俺のデッキに勝とうってのか?笑わせるぜ!」

「はっ!笑わせるのはそっちの方だぜ、俺に、いや、俺たちに勝てると思ってんのか?………出番だぜ、シモン」

 

 

そう言って切札は不思議な形をしたベルトを腰に取り付ける。すると、事務所に残っているはずのシモンにも同じベルトが突如出現する。

 

 

******

 

 

「おや?出番のようだ………すまない椎名ちゃん、僕は少し疲れた、回復のためにしばらく睡眠をとるよ」

「え!?なんで今?」

 

 

そう言ってシモンは腰に巻きつけられたベルトにデッキケースを転送させる。その瞬間、急に意識が途絶えたかのようにバタンとソファに倒れてしまう。

 

 

「えぇ!?寝るの早!」

 

 

宿題に集中していた椎名は全くその不思議な現象には気づいていなかった。

 

 

******

 

 

(やぁ、切札、やはり僕の推理は正しかったようだね、)

「あぁ、流石だぜ相棒」

 

 

切札の右目が緑色に変わる。そして何故かシモンの声が薄っすらと聞こえるようになっている。切札は転送されたデッキケースを手に取り、Bパッドを展開した。

 

 

「返り討ちにしてやるぜ!」

 

 

男もBパッドを展開させると同時に、デッキケースのボタンを押す。

 

 

〈ダダ!〉

 

 

そんな音がデッキから発せられる。さらにデッキケースからデッキが飛び出し、男はそれをBパッドにセットした。

 

 

〈ダブル!〉

 

 

今度は切札が持っているデッキケースから音が発せられた。男同様、そこからデッキが飛び出し、Bパッドにセットした。これで互いに準備は万端だ。

 

 

「「(ゲートオープン、界放!)」」

 

 

ーバトルが始まる先行は宝石泥棒の男だ。

 

 

[ターン01]宝石泥棒

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!俺はこのカード!三面怪人ダダを召喚する!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

男が召喚したのは白と黒の体を持つ宇宙人のようなスピリット、ダダ。

 

 

「うぉ!?気持ち悪!」

 

「はっはっは!俺はこのデッキを、カードを手にした時から絶好調なんだよ!もう誰も俺を止めることはできねぇ!!ターンエンドだ!」

三面怪人ダダLV1(1)BP3000

 

バースト無

 

 

彼が手にしていたデッキは【デッキメモリ】と呼ばれていた。それは人間に狂気な力を与える不思議な小箱だ。それは使いすぎるとその者の精神を崩壊させてしまうという。今の界放市はそれが大量に出回っており、奇々怪界な事件が多発していた。

 

ーそしてそれらに立ち向かうのが、切札とシモンのタッグだ。

 

 

(安心したまえよ、切札、あれは効果も何もないただのスピリットだ、僕たちの敵じゃあない)

「よし!行くぜ相棒!」

 

 

[ターン01]切札&シモン

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、早速出番だな」

(あぁ、召喚しよう)

 

「おう!俺はこいつを……仮面ライダーWサイクロンジョーカーを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

〈サイクロン、ジョーカー!!〉

 

 

そんな無機質な機械混じりの声が聞こえてきたかと思えば、強い風が吹き上げ、竜巻を発生させる。そしてその中心には紫の電気が迸っている。そして風が止むと同時に現れたのは右側が緑、左側が黒色の姿をした仮面スピリット、その名もW、この形態はサイクロンジョーカー。彼らのデッキの基盤となるスピリットだ。

 

 

「お、お前、お前がWだったのかぁ!?」

 

 

男は驚いた。このWはメモリ犯罪者と呼ばれる者たちの中ではわりかし有名だった。だが、切札はその言葉に訂正を入れる。

 

 

「あぁん?……そこはお前じゃなくて、お前達、だろ?………」

(行くよ切札、決め台詞は忘れてないだろうね?)

「わかってるぜ」

 

 

「(さぁ、お前の罪を数えろ!)」

 

 

切札は左手をスナップさせながら犯人にそう告げた。

 

 

「誰が数えるか!」

 

「行くぜ!サイクロンジョーカーの召喚時、ボイドからコアを1つリザーブへ!……さらにそのコアを使い、サイクロンジョーカーのLVを2へアップだ!」

リザーブ1⇨2⇨0

仮面ライダーWサイクロンジョーカー(1⇨3)LV1⇨2

 

 

効果をさらに使い、一気にレベルが上がるサイクロンジョーカー。そしてアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!いけ!サイクロンジョーカー!」

 

「そいつはライフで受ける!………ぐぉ!」

ライフ5⇨4

 

 

一瞬のうちに男との距離を縮めるサイクロンジョーカー。そしてそのライフを殴りつけて破壊した。

 

 

(なかなか良い先制点だ、)

「だろ?俺達はこれでターンエンドだ」

仮面ライダーWサイクロンジョーカーLV2(3)BP4000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て失い、そのターンを終える切札達、次は宝石泥棒の反撃が待っていた。

 

 

「ぐっ!……舐めやがって、今に見てやがれぇ!!」

 

 

[ターン03]宝石泥棒

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨5

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ!俺はさらに2体のダダを召喚!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

男はさらに2体のダダを召喚した。名前の通り、三面怪人らしくなったと言える。

 

 

「おいおい、これちょっとやばいんじゃねぇか?」

(いや、問題ない)

 

 

とは言っているが、場のスピリット数は圧倒的に不利。切札が少し不安になるのは当たり前だ。なんせ、彼はバトルスピリッツのルールというものを、このシモンと出会うまでは全く知らなかったのだから。

 

 

「最初に出たダダのレベルを2に上げ、アタックステップ!レベル1のダダ2体でアタック!」

 

 

2体のダダが切札に向かって走り出す。目指すは彼のライフを破壊することだ。

 

 

「きたぞ!シモン!どうすればいい?」

(ライフで受けろ!)

 

「よしきた!ライフで受けてやるぜ!……!」

ライフ5⇨3

 

 

ダダ2体の右拳のパンチが切札のライフを一気に2つ破壊した。

 

 

「くっ、結構効くじゃねぇか」

 

「どうだ!これでターンエンドだ!」

三面怪人ダダLV2(3)BP6000(回復)

三面怪人ダダLV1(1)BP3000(疲労)

三面怪人ダダLV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト無

 

 

男はレベル2のダダだけをブロッカーとして残し、そのターンを終える。次は切札達のターンだ。

 

 

[ターン04]切札&シモン

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

仮面ライダーWサイクロンジョーカー(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、」

(メインは何もしなくていい、全力で攻勢に回れ!)

「オッケー、アタックステップだ!サイクロンジョーカーでアタック!」

 

 

走り出すサイクロンジョーカー。だが、今の男の場には回復状態で待機しているレベル2の三面怪人ダダがいる。このままでは返り討ちにあうだけだが、

 

 

「はっはっは!馬鹿め!自爆とは!」

 

「誰が自爆だ!お熱いの!喰らわせてやる!……フラッシュ!【チェンジ】発揮!サイクロンジョーカーを対象にヒートメタルの効果を発揮する!お前のスピリットを疲労させ、サイクロンジョーカーとこいつを回復状態で入れ替える!」

リザーブ6⇨3

トラッシュ0⇨3

 

 

サイクロンジョーカーが自身の腰に巻きつけられたベルトにある小さな小箱を2つ入れ替える。すると、

 

 

〈ヒート、メタル!〉

 

 

サイクロンジョーカーの色が変わっていく、次は右側が赤、左側が銀色に変わった。これが仮面ライダーWの別形態、ヒートメタルだ。

 

 

「ちぇ、チェンジだとぉ!?」

(何を驚いている?【チェンジ】の効果はどの仮面スピリットのデッキにもあるだろう?)

「俺達が対象に選ぶのはもちろん!レベル2のダダだ!くらえ!」

 

 

ヒートメタルは自身の武器である棍棒を振り回すと、炎が巻き上がり、レベル2のダダを吹き飛ばした。これで男のスピリットは全て疲労状態となる。

 

 

(アタックは継続中だ!)

 

「ら、ライフで受ける……ぐぉ!」

ライフ4⇨3

 

 

ヒートメタルの炎を纏わせた棍棒の一撃が、男のライフを1つ破壊した。さらにそれだけでは済まされない。【チェンジ】の効果は回復状態で入れ替え、そのままバトルを続行させるというもの、つまり、今、ヒートメタルは回復状態、追撃が可能だ。

 

 

(切札、追撃だ!)

「あぁ、……ヒートメタル!………ヒートメタルはアタック時にコアを1つこいつに置く!」

仮面ライダーWヒートメタル(3⇨4)

 

「く、くそ!ライフだ!………ぬぅ!」

ライフ3⇨2

 

 

再びヒートメタルが男のライフを破壊した。これで一気にライフ差を逆転させた。

 

 

「よっし!ターンエンドだ!」

仮面ライダーWヒートメタルLV2(4)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

そのターンを終える切札達、次は男のターン。ガラ空きの場に、今まで以上に攻め立てようとしていた。

 

 

[ターン05]宝石泥棒

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨4

トラッシュ1⇨0

三面怪人ダダ(疲労⇨回復)

三面怪人ダダ(疲労⇨回復)

三面怪人ダダ(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!俺はソウルホースを召喚し、ダダ2体をレベル2と3にアップ!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨0

三面怪人ダダ(1⇨3)LV1⇨2

三面怪人ダダ(3⇨4)LV2⇨3

 

 

男は脚に炎を纏わせた紫の馬、ソウルホースを召喚し、さらにダダ2体のレベルを上昇させる。

 

 

「アタックステップ!攻勢に回りすぎたなぁ!お前を守るスピリットはもうどこにもいないぜぇ!……ソウルホース!」

 

 

走り出すソウルホース。このターン。男のこの4体のスピリットのアタックのうち、3つがヒットすれば、切札達の負けとなる。

 

 

「うっ!そうだった!やばいじゃねぇか!」

(何を言っている切札、【チェンジ】の効果は相手のターンにも使用できる)

「……!!…そうだった!」

 

 

【チェンジ】の効果がフラッシュタイミング全域で発揮できることを思い出し、切札は手札1枚を引き抜く。

 

 

「いくぜ!フラッシュタイミング!【チェンジ】発揮!対象はヒートメタル!今度はルナトリガーだ!お前のスピリット1体を疲労させ、ボイドからコア1つをトラッシュに置き、ヒートメタルとこいつを回復状態で入れ替える!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ3⇨6⇨7

 

「なにぃ!?」

 

 

〈ルナ、トリガー!〉

 

 

Wは再び自身のメモリをチェンジする。次は右側が黄色で左側が青色だ。今度は手に銃を所持した、ルナトリガーが現れた。

 

ルナトリガーは現れるなり、その銃でレベル3のダダを狙い撃ちにする。その弾は曲がりながらもダダを撃ち抜いた。ダダは吹き飛ばされ、疲労した。

 

 

「ぐっ!」

三面怪人ダダ(回復⇨疲労)

 

(そのソウルホースのアタックはルナトリガーがブロックする!)

「いけぇ!」

 

 

迫り来るソウルホースに銃の連射をおみまいするルナトリガー。ソウルホースは耐えられなくなり、走りながらもその場で爆発を起こした。これで男のスピリット達のフルアタックでは彼らのライフをゼロにはできなくなった。

 

 

「な、なぁ!?……ぐ、ターンエンドっ!」

三面怪人ダダLV3(4)BP8000(疲労)

三面怪人ダダLV2(3)BP6000(回復)

三面怪人ダダLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

無理にライフを破壊するよりかはブロッカーに回りした方がいいと考えた男は、そのままそのターンを終えた。これがラストターンだったということも知らずに。

 

 

[ターン06]切札&シモン

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

仮面ライダーWルナトリガー(疲労⇨回復)

 

 

(さぁ、フィニッシュだ、切札)

「あぁ、これで決めるぜ!」

 

 

単純に戦力差では勝てない。だが、それ以上にこのWは強い。切札はスピリットの数を増やすことなく、このターンのアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!ルナトリガーでアタック!その効果でレベル2のダダを疲労させる!」

 

「ぐぅ!」

三面怪人ダダ(回復⇨疲労)

 

 

ルナトリガーの連射を受けて、もう1体のダダが疲労状態になる。これだけでは差は全く縮まってはいないが、

 

 

「行くぜ!【チェンジ】!今度はサイクロンジョーカー!ルナトリガーと入れ替えるぜ!」

リザーブ8⇨6

トラッシュ0⇨2

 

 

〈サイクロン、ジョーカー!〉

 

 

再びWは基本形態のサイクロンジョーカーに姿を変える。

 

 

(サイクロンジョーカーの【チェンジ】の効果は、このバトル中のアタックしている自分のスピリットをBPプラス2000にする、よって今のサイクロンジョーカーのBPは………)

「6000だ!」

仮面ライダーWサイクロンジョーカーBP4000⇨6000

 

 

「BPが上がっても無駄だぁ!スピリット数に変わりはなぁい!!」

(それはどうかな?)

 

「俺は、俺達はさらにフラッシュタイミングでこのマジックを使用する、……ジョーカーエクストリーム!…このマジックはWがアタックしていたらコスト3のカードとして使用できる!」

手札6⇨5

リザーブ6⇨4

トラッシュ2⇨4

 

「!!」

三面怪人ダダ(回復⇨疲労)

 

 

サイクロンジョーカーが風の力で宙を舞う。そしてその風の力により、回復状態の最後のダダが疲労した。

 

 

(ジョーカーエクストリームは相手のスピリット2体を疲労させ、さらにWがいれば……)

「疲労しているスピリット2体を手札に戻す!………いけぇ!」

 

 

〈ジョーカー!マキシマムドライブ!〉

 

 

Wの半身が分かれる。先ずは左側のキックでダダ1体を蹴り上げ、すかさず右の方も左と合わさるように、もう1体のダダを蹴り抜いた。

 

通り過ぎるように着地するW。ダダ2体は耐えられなくなり、爆発し、男の手札に戻っていった。

 

 

「くっ!」

手札3⇨5

 

 

そして今のサイクロンジョーカーは【チェンジ】の効果により回復状態になってアタックしている。つまりは2度アタックができる。

 

 

(これで決まりだ!)

「トドメだ!」

 

 

切札とシモンは息を合わせる。そして仮面ライダーWサイクロンジョーカーは、黒いメモリを腰にあるスペースに移動させる。すると再び風の力で飛び上がり、2度目のマキシマムドライブが発動される。

 

 

〈ジョーカー!マキシマムドライブ!〉

 

 

「(ジョーカーエクストリーム!!)」

 

「うっ!ぐおぉ!!……………そんな馬鹿なぁ!!!!」

ライフ2⇨1⇨0

 

 

再び体が分かれるW。先ずは黒い左側が男のライフを1つ破壊すると、それと合わせるように立て続けに右側の体が蹴り抜いた。一気に2つのライフを破壊した。

 

これで男のライフはゼロ。探偵コンビの勝利となった。男の持っていたデッキケースが割れ、三面怪人ダダのカードからあふれ出ていた闇の瘴気も消え去った。男が盗んだという宝石も衝撃でいくつも飛び出してきた。これを売ったらいったいいくつの値段で売れるかわからない。おそらく一生遊べるくらいだろう。

 

切札もベルトを外し、シモンとの合体を解いた。気絶して倒れる男を見て、「後は警察の仕事だ、聖子さんに任せるか」とだけ言い残し、その路地裏を去っていった。その数分後に甲高いパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

これが人知れず続いていた。界放市の裏の事件だ。そういった事件を、彼らは解決していたのだ。これはまた椎名達の物語とは違う物語。

 

 

******

 

 

切札は事務所に帰っていた。そしたらそこには高速で椎名の宿題を終わらせたシモンと椎名がいた。2人は何故かすっかり仲よくなっていた。

 

 

「いやぁ!シモン君のおかげで間に合ったよ!ありがとう!」

「いえいえ、こちらこそ、伝説の【ロイヤルナイツ】の人柱が見れて大変喜ばしいさ」

「何やってんの、お前ら」

「おぉ、帰ったか切札、見たまえよ、これが世界にただ1枚しかないと言う13体のスピリットのカテゴリ、【ロイヤルナイツ】の1枚、マグナモンだ、君は知らないだろう?」

「あぁ、知らねぇよ、興味ねぇし」

 

 

そう言って切札は自分専用の机に腰かけた。事件解決後はいつもそこに座り、記事を打ち込んで残しておくのが、彼の趣味だ。

 

今回は椎名から視点をずらして、また別の人物の物語を少し語った。これが、この2人が、今人知れずに【デッキメモリ】と言うものから、この街、界放市を守るために戦う探偵だった。

 

ー彼らは2人で1人の探偵で、カードバトラーだ。彼らは今日もこの街を泣かせる小箱を退治していく。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【仮面ライダーWサイクロンジョーカー】!」

「【チェンジ】を駆使して戦うWデッキの基盤となるスピリット、緑と黒の配色がかっこいいね!来週からはいよいよ【界放リーグ編】がスタートするよ!お楽しみに!」








こんばんは!先ずは最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回はWを登場させましたが、Wを使わせるなら絶対に翔太郎とフィリップのキャラ以外にはありえないと考え、ほとんど同じキャラを勝手に作ってしまいました。そう言うのが苦手な方には大変なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。私はWが一番好きなライダーなのでこれ以外は考えつきませんでした。
今回は1話限りの特別出演でしたが、ウケが良かったら合間合間で本当にこの2人を主役にした話を書くのもありかなと思っております。
上の椎名も言ってましたが、来週からは話を戻して、いよいよ【界放リーグ編】が幕を開けます。お楽しみに!


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【一期】第2章「界放リーグ編」 第17話「界放リーグ開幕!ブイモン軍団出撃!」

 

 

 

 

 

 

 

「おい!獅子!約束は覚えているだろうな?」

「あぁ、勿論だ竜ノ字、お前こそ覚えているだろうな!もう王手はかかったんだからな!今年でヘラクレスを倒せなかったらちゃんと旅行させろよ?」

 

 

今日は【界放リーグ】本戦の当日。この日はこの街一番の大きなスタジアム、界放市中央スタジアムにて、開催される。大きなスタジアムで、午前中だと言うのに、そこは大勢の人々で賑わっていた。

 

学生の大会と言って侮ってはいけない。その中ではトップクラスの強者揃い。ほぼプロ入りが確定しているもの達ばかりだ。

 

各学園の理事長らは、特別なVIPルームでそれを観戦できるようになっている。今、ジークフリード校理事長の龍皇竜ノ字と話しているのはキングタウロス校理事長の【大公 獅子(たいこう しし)】。彼らはどちらの務める学園の生徒が、先に3年連続で優勝できるかを競い合っていた。

 

そして今年こそがその王手、今のところ二連覇しているヘラクレスが今年優勝して仕舞えば、龍皇は大公にハワイにある有名なとある場所に旅行させねばならなかった。

 

 

「まったく、お前たちはまだそんな子供じみたことをしているのか」

「同感だ」

「いやいや、ただ眺めるだけじゃ暇なんだよ、……そういえばお前らのとこのガキも出るそうじゃないか、城門、漣」

 

 

呆れたような口を聞いたのは紫治一族の現頭領、紫治城門。夜宵の父でもある。

 

そしてもう一方は現在の九白一族の頭領、【九白 漣(くしろ さざなみ)】。理事長達はみんながみんな同い年だ。若き時はプロリーグで対戦するのは日常茶飯事、こうやって歳になっても争いたくなるほどだ。城門も漣も少なくとも彼らと同じく競い合いたい気持ちは存在している。

 

彼らは他の学園の理事長達と共にこの祭りを高い場所で見守っていた。

 

 

******

 

 

場所は変わり、グラウンドでは入場式が行われていた。轟音のような歓声の中から1人ずつグラウンドに入場して行く。

 

ー先ずはタイタス校からだ。女性のアナウンスで1人ずつ紹介されて行く。その様子はまるで甲子園さながら、

 

 

《タイタス校3年、【光乃 国貞(ひかりの くにさだ)】君》

 

 

なんともマッシブで筋肉質な男子生徒が姿を見せる。この男は3年になり、今年やっと出場することができた努力家なバトラーだ。

 

 

《同じくタイタス校1年、岸田 空牙君》

 

 

こちらもマッシブで長身な男子生徒、空牙。彼は一度椎名ともバトルしている。今回はそのリベンジも含め、出場を選んで、見事予選を勝ち残った。彼もかなりの努力家だ。

 

この2名がタイタス校代表、次はミカファール校の代表達だ。

 

 

《ミカファール校3年、【蝶花 菊乃(ちょうか きくの)】さん》

 

 

歩いてくるのはまさしく八方美人の女性。スタジアムから大勢のファンの声が聞こえてくる。彼女も今年初めて【界放リーグ】に出場した。実力の問題で、基本的には3年生が出ることになることが多い。

 

 

《同じく、ミカファール校3年、【獣道 岳(けものみち がく)】君》

 

 

それが現れた途端に会場の声が不協和音に変わる。彼の獣道岳の大きな図体、大きな手足に、彼が蝶花菊乃と並ぶとまさしく美女と野獣だった。彼も今年が初、

 

この2名がミカファール校の代表達だ。次はオーディーン校の代表達。

 

 

《オーディーン校3年、【五護 鉄火(ごご てっか)】君》

 

 

いよいよきたとばかりに騒ぐ会場のもの達、彼はオーディーン校の中でも1年の頃からこの祭典に参加できるほどの強者。ここ2年間は毎年のようにヘラクレスと1位争いをしていた。その鉄壁すぎるプレイスタイルからついた呼び名は【五の守護神】。

 

 

《同じくオーディーン校3年、【九白 岩壁(くしろ いわかべ)】君》

 

 

上がってきたのは九白一族の末裔にしてエリートの1人、九白岩壁、彼も今年が初出場だ。使うカードは当然白のデジタルスピリット。一族の名を知らしめるため、彼は戦う。それがオーディーン校へ導かれた九白一族の宿命だった。隣にいる五護 鉄火を到着するなり睨みつける。

 

彼が五護鉄火があまり好ましくないのは、九白の者でもないものが毎年この場にくるのが気に食わないからだろう。

 

これがオーディーン校の代表達だ。次はキングタウロス校の入場。

 

 

《キングタウロス校3年、緑坂冬真君》

 

 

湧き上がる歓声、怒涛の声援。圧倒的な人気だった。もはや説明するまでもない優勝候補、緑坂冬真、またの名をヘラクレスが入場した。そして彼の一番弟子もまた、

 

 

《同じくキングタウロス校1年、炎林頂君》

 

 

ガッチガッチに固まりながらヘラクレスの後を追うのは、彼の一番弟子、炎林、師匠の妹である真夏の一件からどれほどの実力をあげたのか期待がかかる選手だ。

 

この2名がキングタウロス校の代表、次はデスペラード校の生徒達だ。

 

 

《デスペラード校3年、【吸血 堕天(きゅうけつ だてん)】君》

 

 

なんとも暗そうな人物が現れる。その雰囲気はまるでドラキュラさながら。彼もヘラクレス、五の守護神同様、毎年出場してくるもの、彼に至ってはある一族の名も背負っていた。その一族はある仮面スピリットを継承しており、そのスピリットにちなんで、【エンペラー】とも呼ばれている。

 

 

「今年こそは僕が優勝するっ!……見てろ!ヘラクレス、五の守護神!」

 

 

その太い声色で、やる気が相当高いのが伝わってくる。そしてもう1人は、

 

 

《同じくデスペラード校、1年、紫治夜宵さん》

 

 

もはやその人気と知名度は軽いアイドルを超えていると噂される超人気な人物、紫治夜宵が入場する。これにはヘラクレスと同等、いや、もしかしたらそれ以上の声援が送られてたかもしれない。

 

これがデスペラード校の代表達だ。そして次はラスト、ジークフリード校。

 

 

《ジークフリード校1年、赤羽司君》

 

 

ポケットに手を突っ込みながら、なんとも他の者を上から見下すような目つきのまま、朱雀こと、赤羽司が堂々と入場してくる。

 

 

「わぁ!司ちゃん!やっぱり来てくれたんだぁ!嬉しい!」

「誰もお前なんぞのために来てねぇ」

 

 

横で元気よく手を振る夜宵に対して冷たい態度で突き放す司。これが2人のいつものやりとりだからか、夜宵も怪訝な顔ははしなかった。

 

ーそしていよいよ最後、我らが主人公のお出ましだ。

 

 

《同じくジークフリード校1年、芽座椎名さん》

 

 

「は、ひ、ひゃあ、い!」

 

 

炎林よりもはるかにガチガチのまま、妙にぎこちなく歩き出す椎名。それを見て笑う観客達。上にいる真夏と雅治も半笑いだ。

 

椎名はここまで大きな舞台だとは思ってもいなかった。そしてそれに追い打ちをかけるかのようにテレビ中継。緊張の理由はそこだ。椎名はなんとか覚束ない足取りで到着した。

 

 

「だ、大丈夫?椎名ちゃん」

「お、おぉ、や、夜宵、ち、ちゃん………ひ、久しぶりやなぁ」

「テンパりすぎて緑坂の関西弁がうつってるぞ」

 

 

以上が今年の【界放リーグ】の出場者。今年は特に1年生が多い。それほど今年の1年はレベルが高いと言える。

 

全員が集まったことで開会式が始まった。それはヘラクレスによるやる気のない選手宣誓だったり、各理事長の挨拶、界放市の市長の挨拶。その挨拶は大変長かった。椎名が緊張を通り越して立ちながら寝入ってしまうほどに。お陰で緊張がほぐれたとも言えるが、

 

そしてその後に行われたのが、選手達が待ちに待ったであろう、対戦表の発表だ。対戦はトーナメント方式、対戦カードは毎回ランダムで選ばれるが、12人のため、徐々に12⇨6⇨3という風に減っていくことになる。3人の時は誰か1人がランダムシードとなり、決勝に無条件で進出できる。

 

気になる1回戦第一試合は、

 

ー芽座椎名と九白岩壁だ。

 

 

「おっ!私1回戦じゃん!」

 

 

気合いの入る椎名。相手はあの九白一族の末裔、今年の九白の3年の中では最高の出来と謳われている。

 

他の選手は皆、自分の用意された特等の控え室のモニターで試合を観戦する。

 

 

******

 

 

轟音のような歓声の中、椎名と岩壁は見合っていた。今にも目線の間から火花が飛び散りそうだ。

 

 

「ふっふ!これはラッキーだぜ!まさか最初の相手がまぐれで上がってきたかわい子ちゃんとはなぁ!」

「私もラッキーだよ!まさか相手があの九白一族?って奴で!絶対強いじゃん!しかもこんな広いとこでバトルできるなんて最高だよ!」

 

 

嫌味を言ったつもりがなかなか椎名には通用しない。九白岩壁は九白一族のエリート故に、自分よりも弱い人間を見下す傾向が多い。

 

2人はこの広いスタジアムで贅沢にBパッドを展開させる。そして期待の初戦が始まる。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

ーバトルが始まる先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、風盾の守護者トビマルを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が早速召喚したのは大きな盾を構える鳥型のスピリット、トビマル。その盾は小さき者を守り抜く。

 

 

「ターンエンド」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える椎名。次は岩壁だ。

 

 

[ターン02]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はゴツモンを召喚する!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

岩壁が最初に召喚したのは九白一族のお家芸の白のデジタルスピリット、ゴツモン、岩を擬人化したようなその姿は、なんとも言えないが、優秀な召喚時効果を有している。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【リアクティブバリア】×

【メノカリモン】○

 

 

召喚時効果は成功した。成熟期スピリットのメノカリモンが彼の手札へと加わる。

 

 

「アタックステップ!やって来いや!ゴツモン!」

手札4⇨5

 

「ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

全力でゴツモンの体当たりを受ける椎名。ライフが1つ砕かれた。場が整っていないこの状況で成長期スピリットでアタックするのは愚の骨頂と言えるが、椎名とて、バトルでは破壊されるトビマルを犠牲にはしたくないと踏んでのことだろう。

 

 

「ターンエンドだ……さぁ、かかってきな!かわい子ちゃん!」

ゴツモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える岩壁、次は椎名の反撃だ。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名の場に現れるのはいつもの小さき青き竜。その額には金色のブイの字が刻まれている。

 

 

「召喚時効果!カードを2枚オープン!」

オープンカード

【ワームモン】×

【ライドラモン】○

 

 

効果は成功、緑のアーマー体スピリット、ライドラモンが椎名の手札へと加えられた。

 

そして加えたかと思いきや、すぐさまアタックステップへと移行する。

 

 

「よし!アタックステップだ!ブイモン!」

手札4⇨5

 

「ライフで受けてやるよ」

ライフ5⇨4

 

 

ブイモンの渾身の頭突きが岩壁のライフを1つ粉砕する。

 

 

「次!トビマルでアタック!」

 

 

羽ばたくトビマルをよそに、椎名は手札のカードを1枚引き抜く。【アーマー進化】だ。

 

 

「フラッシュ!ライドラモンの【アーマー進化】!対象はブイモン!1コストを支払い、轟く稲妻、ライドラモンを召喚!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ2⇨3

ライドラモンLV1(1)BP5000

 

 

ブイモンの頭上に黒い独特な形をした卵が投下される。それはブイモンと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは黒い鎧を持つ獣型のアーマー体、ライドラモン。

 

 

「ほぉ、アーマー進化」

 

「ライドラモンの召喚時効果!ボイドからコア2つを私のトラッシュへ!」

トラッシュ3⇨5

 

 

雄叫びをあげるライドラモン。すると椎名のトラッシュにコアの恵みが送られた。一気に岩壁との総コア数を突き放した。

 

 

「そしてトビマルのアタック!」

 

「ライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

トビマルは、大きな盾を上から叩きつけるかたちで、岩壁のライフを砕いた。

 

 

「ライドラモン!」

 

「ライフだっ!」

ライフ3⇨2

 

 

ライドラモンの瞬発の体当たりが炸裂、さらにライフを砕いた。椎名の速攻は決まったと言える。ただ惜しいところといえば、ライドラモンの追加効果を発揮できなかったことか、

 

 

「ターンエンド!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000(疲労)

ライドラモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える椎名。速攻は決まったものの、返しのターンは誰もブロッカーがいない。いつものことだからか、そのことは椎名とて割り切っている。

 

 

[ターン04]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨8

トラッシュ3⇨0

ゴツモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、俺はハグルモンをLV2で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ8⇨4

トラッシュ0⇨2

 

 

岩壁が新たに現れたのは歯車のような姿をした成長期スピリット、ハグルモン。その召喚時効果は、他に成長期を持っていれば活かせる効果であって、

 

 

「ハグルモンの召喚時効果でボイドからコア1つを他の成長期スピリットに置く、ゴツモンに置いとくぜ、さらにその勢いでレベルアップだ!」

ゴツモン(1⇨2⇨3)LV1⇨2

リザーブ4⇨3

 

 

ゴツモンのレベルが上がる。これにより、ゴツモンは進化の力を獲得した。

 

 

「アタックステップ!俺はゴツモンとハグルモンの【進化:白】を発揮!2体同時にメノカリモンに進化だ!」

メノカリモンLV2(2)BP6000

メノカリモンLV2(2)BP6000

 

 

2体同時に行われる進化、ゴツモンとハグルモンはデジタルのベルトに巻かれて、その姿形をかえていく、新たに現れたのは重装備が施された白の成熟期スピリット、メノカリモン、それが2体だ。

 

 

「す、すごい!2体同時進化!」

「笑ってる場合かよ!俺の進化コンボはまだまだ続くぜぇ!ランク3の俺の実力を見せてやる!」

 

 

九白岩壁、彼は九白一族のデジタルスピリット制限の環境の中では上位のものしか許されないと言われている完全体までの使用が許されている。

 

成熟期のメノカリモンなどただの発展途上、岩壁は完全体の中でも特に強力なスピリットの使用を許されていた。その強さを椎名も思い知ることになる。

 

 

「アタックステップは継続!やれぇ!メノカリモン!アタック時の【超進化:白】発揮!メノカリモンを完全体のナノモンにLV3で進化だぁ!」

リザーブ3⇨2

 

「!!」

 

 

メノカリモンがさらなる進化を遂げる。体格が大きく下がったものの、その力は未知数、まるで豆電球のような完全体スピリット、ナノモンが現れた。

 

 

「おぉ!完全体!」

 

 

感心する椎名。だが、そんな悠長なことを言っている場合じゃない。岩壁はナノモンの召喚時効果を発揮させる。

 

 

「ナノモンの召喚時!相手のスピリット1体を手札に戻す!対象は風盾の守護者トビマル!消えサレェイ!」

 

 

ナノモンの体から放出される小型爆弾。その威力は凄まじく、一発もらってしまったトビマルが椎名の手札へと帰還してしまった。

 

 

「!!」

手札5⇨6

 

「次だぁ!もう1体のメノカリモンもアタックさせ、その効果で2体目のナノモンをLV3で召喚する!」

リザーブ2⇨0

 

「!!2体目!?」

 

 

残ったメノカリモンも新たなる進化を遂げる。そして2体目となるナノモンが召喚された。当然その召喚時の効果を使えるのであって、

 

 

「召喚時で今度はライドラモンを消しとばす!喰らえやぁ!!」

 

「ぐっ!」

手札6⇨7

 

 

ナノモンの小型爆弾の威力には、ライドラモンさえも手も足も出せない。ライドラモンも吹き飛ばされて、トビマル同様、椎名の手札へと戻ってしまった。

 

 

「ハッハッハ!これでかわい子ちゃんの場はすっからかんだなぁ!…………行け!ナノモン達よ!上の世界を知らない1年に、力の差を思い知らしらせろぉ!!」

 

 

小さな足を駆使して走り出すナノモン達。

 

 

「ライフだ!!」

ライフ4⇨2

 

 

ナノモンの爆弾が、今度は椎名のライフにめがけて飛んでくる。なすすべはなく、そのまま2つのライフを同時に破壊されてしまった。

 

だが、岩壁も岩壁でこのターン、フルアタックしてしまったため、ブロックできるスピリットがいない。そう考え出した観客達の思考を遮るように、岩壁はナノモンの第2の効果を使用する。それはいかにも白属性らしい効果と言えて、

 

 

「エンドステップ!ナノモン2体の効果発揮!ナノモンはエンドステップに自分のスピリット1体を回復させる!それが2体!よって2体とも回復状態となる!」

ナノモン(疲労⇨回復)

ナノモン(疲労⇨回復)

 

「なにぃ!?」

 

 

お互いにプラグとコンセントをつなぎ合わせるナノモン達。再起動し、再びバトルに参加できるようになった。攻撃だけでなく、守りも完璧、それが九白一族のバトルの仕方だった。

 

実際にはすごいプレッシャーであるだろう。何せ、アタックステップ中にスピリットを手札に戻された挙句、防御にも立ち回ってくるのだから。だが、椎名とて、ここでは負けられない。司やヘラクレスとバトルするまでは絶対に負けないと誓ったのだ。

 

次のターンから、椎名の怒涛の反撃が始まる。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨11

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!もう一度ブイモンを召喚!」

手札8⇨7

リザーブ11⇨7

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名は今一度ブイモンを召喚する。反撃するならやはりここからしか始められない。椎名はその召喚時も使用する。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【スティングモン】○

【マグナモン】○

 

 

効果は2枚ともあたり。この場合はどちらか1枚が手札に加えられる。椎名がここで選択するのは、

 

 

「よし!マグナモンを手札に!」

手札7⇨8

 

「マグナモン?」

 

 

当然このデッキの最強スピリットのマグナモンだ。岩壁は首を傾ける。まさかあのマグナモンなのか、と。いや、そんなはずはないとすぐに考え直す。

 

だが、本当に世界でただ1枚ずつしかないと言われているロイヤルナイツの1枚、マグナモンなのだ。椎名はすぐさまそれを召喚する。

 

 

「マグナモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払い、黄金の守護竜、マグナモンをLV3で召喚!!」

リザーブ7⇨3

トラッシュ3⇨4

マグナモンLV3(4)BP10000

 

 

今までのアーマー進化の際に現れる卵とはわけが違う。黄金に光輝くそれは、ゆっくりとブイモンの頭上にとうかされる。そして衝突し、混ざり合う。新たに現れたのは黄金の鎧を輝かせる守護竜、マグナモン。

 

その迫力に、神々しさに、会場中の誰もが、いや、この中継を見ている界放市の全員が驚愕した。なんせあの名前だけしか知られていないほどの超レアカード、ロイヤルナイツの1枚、マグナモンがそこにいるのだから。なによりも驚いたのは対戦している岩壁だった。

 

 

「な、なぁ!?本当にマグナモンだったのかぁ!?」

「だからそう言ったじゃん………いくよ!マグナモンの召喚時効果を発揮!相手の場にいる最もコストの低いスピリット1体を破壊する!今のあなたの場はナノモンが2体、そのうちの1体を破壊だぁ!黄金の波動!エクストリーム・ジハード!!」

 

 

マグナモンの強力な必殺技、体内のエネルギーを自身の中心に集中させ、一気に解き放つこの技は、必ずと言ってもいいほど相手のスピリットを破壊できる。

 

ナノモンの2体のうちの1体はそれに巻き込まれて、大爆発、撃破したかに思われたが、

 

 

「あ、あれ?…………減ってなくない?」

 

 

晴れる爆煙のなか、椎名は何度も何度も目をこすり、確認する。だが、いくら見てもナノモンが2体いるのだ。確かにエクストリーム・ジハードは決まったはずなのに。

 

この状況を見て、椎名とマグナモンをあざ笑うかのように、岩壁は高笑いをしていた。

 

 

「はぁっはっ!!残念だったな!伝説のロイヤルナイツでもこのナノモンは倒せない!ナノモンは相手による破壊時、ボイドからコアを1つこいつに置くことで、疲労状態で残ることができるんだよぉ!!!」

ナノモン(4⇨5)

 

 

ナノモンの第3の効果、それは自分のいかなる破壊を無効にしてしまう強力な効果。正確には一度は壊れていた。だが、ナノモンは自分の効果で復活していたのだ。これがナノモンの不死身の効果だ。

 

 

「破壊されないスピリット………すごい!」

「あぁ?生意気な女だな、この状況でまだ笑うってのか?わかってねぇって言うなら教えてやるよ!お前じゃ俺には勝てない!このナノモンを倒せない限りはな!!」

 

 

決して破壊されないスピリット、そしてそのスピリットが内蔵している手札バウンス効果と、エンド時の疲労回復。さながら圧倒的にも見える。だが、あの椎名が、たかがこんな状況であきらめるわけがない。それは当の本人だけでなく、椎名と関わってきた者全員が心に思っていることであって、

 

椎名は手札の端にあるカードを見て思いついた。【ナノモンは倒せなくても、プレイヤーは倒せるという点に】。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!マグナモン!」

 

 

肩部に装着されているブースターを器用に使い、低空飛行で翔けるマグナモン。だが、岩壁の場にはBPが同じナノモンがまだ回復状態で残っている。

 

ナノモンは死なない。当然彼はそのスピリットでブロックする。ナノモンなら効果により、マグナモンを一方的に倒せるからだ。

 

 

「ハッハッハ!バカだなぁ!1年生のかわい子ちゃん!ナノモンはいかなる破壊も無効なんだよ!もちろんバトルによる破壊もなぁ!!迎え撃て!ナノモン!」

 

 

マグナモンの道を遮るナノモン。2体が激突する直後だった。椎名が手札から1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュマジック!ワイルドライド!マグナモンを選ぶ!選ばれたスピリットは、このターン、BPが3000上がり、バトルに勝利したら回復する!」

手札8⇨7

リザーブ3⇨0

トラッシュ4⇨7

マグナモンBP10000⇨13000

 

「な、なにぃ!??」

 

 

緑のオーラを纏い、その力を増幅させるマグナモン。ナノモンを片手で捕まえて地面に叩きつける。ナノモンは力尽き大爆発した。だが、自身の効果によりバラバラだったパーツを引っ付かせ、復活した。

 

 

「ぐっ!ナノモンは場に残る!」

ナノモン(4⇨5)

 

「そして、マグナモンの勝利により、これを回復させる!」

マグナモン(疲労⇨回復)

 

 

マグナモンは起き上がる。まさに不屈の闘志、そしてそれは岩壁のライフを破壊すべく、再び飛び上がる。

 

 

「もう一度だ!いけぇ!マグナモン!」

 

「ぐっ!ライフだ!…………ぬぉ!!」

ライフ2⇨1

 

 

マグナモンの金色の力を纏わせた右拳が、岩壁のライフをいよいよあと1つまで追い込む。椎名の勝利は目前に迫っていた。

 

ナノモンの欠点、それは残っても疲労状態になること、この類の効果は、一度破壊されたことになっているため、ワイルドライドの追加効果が発揮されるのだ。つまり、この状況では、次のターンで岩壁が椎名のライフを全て砕く、またはマグナモンを倒すかをしなければ、次のターンで再びワイルドライドの効果を使われて彼は敗北する。

 

 

「エンドステップ、ワイルドライドの効果で私の手札に戻る」

手札7⇨8

 

 

ワイルドライドのカードがひらひらと舞い上がり、椎名の手札へと帰還する。

 

 

「ターンエンド!」

マグナモンLV3(4)BP10000(疲労)

 

バースト無

 

 

椎名のターンが終わる。次は岩壁のターン。

 

 

[ターン06]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

ナノモン(疲労⇨回復)

ナノモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ワイルドライドには少しびびったが、その残りのコア数じゃあ、このターンの俺の猛攻を防げまい!こい!俺のスピリット達よ!……ゴツモン!ハグルモン!メノカリモン2体!さらにハグルモンの効果でゴツモンにコアを1つ増やす!」

手札6⇨2

リザーブ4⇨0

ナノモン(5⇨2)LV3⇨2

ナノモン(5⇨2)LV3⇨2

トラッシュ0⇨6

ゴツモン(1⇨2)

 

 

これまでの岩壁とのバトルで現れたスピリットが集結した。岩壁とて、ある程度の計算をしていた。椎名のライフは残り2。青のコスト破壊はコストがかかるせいでこのターンは使えない。使えるなら緑の疲労効果。

 

緑には3コスト程度でも複数体のスピリットを疲労させる効果を持つ。このことから、彼は大量のスピリットをこのターン、できる限り召喚したのだ。

 

 

「アタァァックステェェップ!!!終わりだぜぇ!かわい子ちゃんんん!!!先ずはナノモンからだ!」

 

 

アタックステップが始まり、ナノモンは小型爆弾を投げ飛ばす。その狙いはマグナモンだ。

 

 

「!?……あれって召喚時の効果じゃぁ?」

「残念!言い忘れたが、ナノモンはアタック時にも同じバウンス効果が使えるんだぁ!ロイヤルナイツの首はもらったぁぁ!!」

 

 

ナノモンが作り出した大量の小型爆弾はマグナモンを捉えて大爆発を起こした。爆煙で周りが見えぬほどに。

 

 

「ハッハッハぁ!!!ロイヤルナイツの首をもらったぞぉぉ!!後は連続アタックで終いだぁ!!!!!!」

 

 

走り出すナノモン。これは完全に椎名の負け、観客達がそう思っていたその時だった。

 

爆煙の横を通り過ぎようとしたナノモンがそこから現れた謎の手に鷲掴みにされた。身動きが取れなくなったナノモンは足をバタバタと動かすが、一向に出られる気配がない。

 

その手の正体はマグナモンだ。そしてマグナモンはそれを全力で空中に投げ飛ばした。岩壁は驚いた。先ずはマグナモンが場に残っていること、そして疲労状態でも動いていることだ。

 

 

「は、はぁ!?なんでマグナモンが生きてるんだぁ!?そもそも疲労状態のはずなのになぜブロックできる!?」

「……………ふっふっふ!マグナモンは相手のスピリットとブレイブの効果を受けず、疲労状態でもブロックできる!」

「な、なぁ!?、」

「いっけぇ!!マグナモン!!黄金の強弾!!プラズマシュゥゥゥト!!!」

 

 

空中で身動きが取れないナノモンをマグナモンは肩部にあるミサイルをいくつも発射させる。ナノモンはそれに被弾し、大爆発を起こした。だが、不死身ゆえ、疲労状態で場には残る。

 

 

「ぐっ」

ナノモン(2⇨3)

 

 

岩壁は察した。いくら挑んでもマグナモンには勝てない。アタックしても無意味だと。当然だ。疲労状態でもブロックできるということは、バトルで勝てる限り何度でもブロックができるということなのだから。

 

そして、次のターンでワイルドライドを使われて、他のブロッカーに残したもの達も無意味に破壊され、自分は敗北すると。

 

 

「た、ターン、え、エンド」

ゴツモンLV1(2)BP2000(回復)

ハグルモンLV1(1)BP2000(回復)

メノカリモンLV1(1)BP4000(回復)

メノカリモンLV1(1)BP4000(回復)

ナノモンLV2(2)BP7000(回復)

ナノモンLV2(3)BP7000(疲労⇨回復)

 

バースト無

 

 

もはや何もできない岩壁は大量のブロッカーを残してそのターンを終えた。次は椎名のターンだ。もはや何もすることはないだろう。

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札8⇨9

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

マグナモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップは何もしない!そのままアタックステップ!いけぇ!マグナモン!さらにフラッシュマジック!ワイルドライドでパワーアップアンド効果付与!」

手札9⇨8

リザーブ8⇨5

トラッシュ0⇨3

マグナモンBP10000⇨13000

 

 

再びワイルドライドの力を授かるマグナモン。これでもう怖いもの無し。後は残った岩壁の1つのライフを破壊するだけだ。

 

 

「くぅ、くっそぉぉぉぉぉ!!!!ブロックだぁ!!!ブロックだお前達!!」

 

 

必死にしがみつこうとする岩壁。もはやブロックする意味はないというのにマグナモンを倒すための指令を下す。マグナモンはそれらを一瞬で蹴散らし、岩壁のライフごと砕こうとする。

 

 

「マグナモン!纏めてぶっ飛ばせぇ!!黄金の波動!エクストリーム・ジハード!!」

 

 

再び全エネルギーを放出させるマグナモン。それは岩壁のスピリットとライフをまるごと破壊するほどに巨大だった。飲み込まれたスピリット達は一瞬のうちに消滅していく。そして彼のライフも、

 

 

「お、俺は九白のエリートだぞぉぉぉぉぉ!?!何故なんだぁ!?!!……………う、うおぉぉおお!!」

ライフ1⇨0

 

 

九白岩壁のライフがゼロになったことで、このバトル、1回戦第一試合は芽座椎名の勝利となる。下級生が勝ったことにより、より多くの歓声が飛び交った。

 

 

「よっし!」

 

 

ガッツポーズを見せる椎名。岩壁は半分放心状態になっていた。九白の一族ともあろう者が、こんな弱そうな下級生に敗北したのだ。彼よりも偉い、上の上層部、彼らの兄姉や、親などからきつく叱られることは間違いない。

 

九白とはそれほどまでに勝利に貪欲で、優劣に厳しいのだ。

 

このようにプロさながらにレベルが高いバトルが多いことから、この【界放リーグ】では世界中で注目されていた。

 

ーそして次の対戦カードは…………

 

 

《1回戦第二試合、赤羽司VS炎林頂》

 

 

先のバトルの熱が冷めぬまま、2人の戦士がスタンバイしていた。

 

ー【界放リーグ】はまだ始まったばかり、

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【マグナモン】!」

「マグナモンは私が使う新たなるアーマー体、その力はアーマー体の中でも随一!鉄壁の防御能力が最大の魅力だよ!」





最後までお読みくださり、ありがとうございました!


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第18話「オーバーエヴォリューション」

 

 

 

 

 

ヘラクレスの弟子、炎林頂は、界放リーグ開催前、師であるヘラクレスとある約束を交わしていた。

 

 

『師匠!俺はこのリーグで必ず勝ち残る!そしてあなたを超える!』

 

 

意気込みからか、大声で叫ぶ炎林。あまりの声の大きさにヘラクレスはついつい耳を手で覆いかぶせる。内心うるさいと思うものの、その想いはしっかりと彼の胸に伝わっていた。

 

 

『……あぁ、ほな、必ず勝ち上がって来いや!』

『はい!どんなに汚くて、かっこ悪くても必ず勝ち残ってやる!』

 

 

そんな男と男の熱い物語が始まっていた。

 

第一試合の白熱した試合からか、鳴り止まぬ歓声の中、2人の戦士はスタジアムの中央で睨み合っていた。その2人の戦士とは、【朱雀】こと、赤羽司と、ヘラクレスの弟子、炎林頂だ。

 

司は雅治の話から炎林のことは大体知っていた。ろくにデッキの構築もできないものという認識が強く頭から離れなかった。雅治がそう言ったのではない。彼が勝手に強く思い込んでいるのだ。実際はその通りだった。ほんの何ヶ月か前は、

 

一方で炎林の方も緊張していた。それもそのはずだろう。何せあのヘラクレスと共にまさかこのような場に立てるとは思ってもいなかったはずなのだから、彼も彼なりに努力はしていた。その努力が報われたと言えるだろう。

 

そして2人は互いを睨みつけるまま自身のBパッドを展開する。1回戦第二試合の始まりだ。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

歓喜が熱狂しているスタジアムの中、2人のバトルが始まる。先行は炎林だ。

 

 

[ターン01]

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「見ててくださいよぉ!師匠!……メインステップ、いくぜ朱雀!俺はネクサスカード、天空を貫くバリスタを配置!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

炎林が背後に呼び出したのは、巨大なバリスタ。文字通り天空さえも貫けそうだ。

 

このネクサスはコスト4ながら、赤と緑のシンボルを持つ優秀なネクサス。効果は自分のアタックステップ中のみのBP増加といささか地味だが、使い減りしないいい効果だ。

 

 

「ターンエンド」

天空を貫くバリスタLV1

 

バースト無

 

 

先行の第1ターン目など、できることは限られてくる。炎林はこのままターンエンドし、司にターンを渡す。

 

 

[ターン02]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺もネクサスカード、朱に染まる薔薇園を配置し、バーストをセット」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

司の背後に現れたのは赤い色に染まっている薔薇が咲き誇る庭園。それは見たものを魅了させる美しさがある。

 

そして伏せられるバーストカード。状況にどう対処してくるのか期待が高まる。

 

 

「ターンエンド」

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト有

 

 

司もそれ以外は特に動くことなく、そのターンを終えた。最初のターンにネクサスを配置するというのは実はかなり強い動きであって、

 

この後のターンでお互いに凄まじい攻防を繰り返すのが目に見えている。

 

 

[ターン03]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!俺はホムライタチを召喚!」

リザーブ5⇨4

 

 

炎林がこのバトル最初に召喚したスピリットはこのデッキの潤滑油的存在、尻尾が炎のように揺れている鼬のようなスピリット、ホムライタチ。

 

ホムライタチは赤のスピリットだが、メインステップ中は緑のシンボルを追加できるので、彼のデッキのスピリットの展開には大いに役立つ。

 

司とてそれを当然理解している。炎林のことは雅治から聞いていた。ヘラクレスの弟子だが、彼から貰い受けたデッキが強く、調子に乗っていた。と彼のことを解釈している。だが、仮にも1年ながら他の3年生を蹴散らし、ここに来ている。油断は禁物だった。

 

 

「さらに!俺は六分儀剣のルリ・オーサをLV2で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨1

 

 

細長い剣を携え、緑のスマートな昆虫型のスピリット、ルリ・オーサが召喚された。その効果はとても有名だ。

 

 

「ルリ・オーサの召喚時効果で、赤のスピリット2体にコアを1つずつボイドから追加!ルリ・オーサはLV2の時は赤のスピリットとしても扱うため、ルリ・オーサとホムライタチに1つずつコアを追加する!」

ホムライタチ(1⇨2)

六分儀剣のルリ・オーサ(2⇨3)

 

 

天に自身の剣を掲げるルリ・オーサ。その願いは通じたのか、天より2つのコアの恵みが、彼自身とホムライタチに追加された。

 

 

「まだだ!俺はもう1体のルリ・オーサをLV1で召喚!……さらにその効果でホムライタチとLV2のルリ・オーサにコアブースト!」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

トラッシュ1⇨2

ホムライタチ(2⇨1⇨2)

六分儀剣のルリ・オーサ(3⇨4)

 

 

2体目のルリ・オーサが現れる。すると、再びコアの恵みが彼らに与えられ、司との総コア数を一気に突き放した。単純にこのターンだけで4つのコアを増やしている。いくら朱雀と雖も、これはかなり難しい状況であると言える。

 

そしてここからが、彼が変わったところだ。炎林は手札のカードをさらに引き抜く。

 

 

「そして、俺はソウルコアを支払い、マジックカード、ソウルドローを使用!……効果によりソウルコアを支払ったため、デッキから3枚のカードをドローする」

手札2⇨1⇨4

ホムライタチ(2⇨1)

六分儀剣のルリ・オーサ(4s⇨3)

トラッシュ2⇨4s

 

 

ソウルコアの置かれていたルリ・オーサからそれを取り払い、一気に手札を潤す炎林。彼はこの前、こんなカードは入れていなかった。理由としては結局エースである金殻皇ローゼンベルグの効果で手札などいくらでも稼げるからだ。だが、それだけでは足りないと思い知り、ドローカードを10枚近くデッキに詰めたのだ。

 

その結果、今まで以上にデッキの回転率が上がり、有り余るコアに無駄がなくなった。

 

彼は自分のこのヘラクレスから譲って貰ったデッキの無限の可能性を知ることになった。デッキを研究して組み上げるのがとても楽しかった。これもジークフリード校に行ったお陰かと思えば少々気まずいが、

 

だが、お陰で自分は今よりもっと強くなれる。このデッキの無限の可能性を見ることができる。やはり彼も彼なりにかなり成長していた。それは観客席にいる真夏や、雅治も感じている。

 

 

「もう1枚、ルリ・オーサからコアを使い、今度はフェイタルドローを使用し、カードを2枚ドロー!」

手札4⇨3⇨5

六分儀剣のルリ・オーサ(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ4s⇨6

 

 

ルリ・オーサがレベルダウンするも、コアだけでなく、手札の差も司より上回る炎林。そして次は並べられたスピリットでアタックを仕掛ける。

 

 

「アタックステップ!天空を貫くバリスタの効果でBPプラス2000!!やれ!ホムライタチ!」

ホムライタチBP1000⇨3000

六分儀剣のルリ・オーサBP3000⇨5000

六分儀剣のルリ・オーサBP3000⇨5000

 

 

「……ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ホムライタチの小さい口から放たれる火炎放射が司のライフを破壊した。これでルリ・オーサ2体のアタックが通ればまた一気に有利になれる。彼がそう思った矢先だった。司のバーストがオープンされる。

 

 

「バースト発動!秘剣二天一龍!」

「なに!?」

「この効果でBP5000以下の相手のスピリットを2体破壊する!くたばれぇ!ルリ・オーサ2体を破壊!」

 

 

巻き起こる炎の斬撃がルリ・オーサ2体を切り刻む。耐えられなくなった2体はあえなく破壊されてしまった。

 

 

「2体破壊に成功したことにより、カードをドロー」

手札3⇨4

 

 

迂闊だった。炎林は再確認する、今回の相手は緑ではない、赤だ。あの【朱雀】が相手なのだ。ヘラクレスに挑む前には丁度良い相手じゃないか。と。

 

どちらにせよこのターンはやることがなくなった。彼はこのターンを終える。

 

 

「……ターンエンド」

ホムライタチLV1(1)BP1000(疲労)

 

天空を貫くバリスタLV1

 

バースト無

 

 

次は司のターンだ。

 

 

[ターン04]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨7

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ、再びバーストを伏せ、イーズナとホークモン、ハーピーガールを召喚!ハーピーガールはLV2!」

手札5⇨1

リザーブ7⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

司は今一度バーストを伏せると、一気に自分のよく使うスピリットたち、赤と黄色のスピリット、イーズナ。赤の鳥型成長期スピリット、ホークモン。手足が鳥のような女性、ハーピーガールを召喚した。

 

さらにホークモンの召喚時効果を使用する。

 

 

「召喚時効果!カードを3枚オープンする」

オープンカード

【ホルスモン】○

【朱に染まる薔薇園】×

【ホウオウモン】×

 

 

効果は成功、アーマー体であるホルスモンが彼の手札に加えられた。そして始まる。恐ろしいアタック連打が、

 

 

「アタックステップ!ハーピーガールでアタック!アタック時の【連鎖:赤】でBP3000以下のスピリット、ホムライタチを破壊!」

手札1⇨2

 

「……くっ!」

 

 

ハーピーガールの翼に炎を纏われた翼撃が、ホムライタチを切り裂いた。ホムライタチがそれに耐えられるわけもなく、爆発してしまった。この場面でのハーピーガールはとても恐ろしい。

 

 

「アタックは継続だ!」

 

「ぐっ、ら、ライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールの翼が、今度は炎林のライフに直撃し、ガラス細工が砕けるように粉々になる。

 

そしてハーピーガールの追加効果がここで起動。

 

 

「ハーピーガールの効果!【聖命】!俺のライフを1つ回復!さらに、朱に染まる薔薇園LV1の効果で、俺のライフがアタックステップ中に増加したため、デッキから1枚ドローする」

ライフ4⇨5

手札2⇨3

 

 

司のライフが初期状態に戻るとともに、カードがドローされる。ライフの差と手札の差を詰める良い一手だ。

 

 

「まだだ!続け!ホークモン!」

 

「くそ!それもライフだ!」

ライフ4⇨3

 

 

ホークモンは自身の羽を炎林のライフに向かって投げつける。それは凄い勢いで突き刺さり、彼のライフを貫いた。

 

 

「イーズナ!………」

 

 

炎林のライフをさらに削るために走り出すイーズナ。ここで司は手札のカードを1枚引き抜く。【アーマー進化】だ。

 

 

「フラッシュ!【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!1コストを支払い、これを召喚!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ2⇨3

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

 

ホークモンの頭上に独特な形をした卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは赤き空飛ぶ獣型のアーマー体、ホルスモン。

 

 

「ホルスモンの召喚時効果!お前のネクサス、天空を貫くバリスタを破壊し、カードを1枚ドローする!」

手札3⇨4

 

「なに!?」

 

 

ホルスモンがネクサスの天空を貫くバリスタに鋭い眼光を放つと、たちまちそれは地面へと沈んでいく。

 

そして、これはまだイーズナのアタック状態。ホルスモンも【アーマー進化】で召喚されたため、まだアタックできる。

 

 

「ら、ライフだ」

ライフ3⇨2

 

 

イーズナは小さい体ながらも渾身の体当たりでぶつかっていき、炎林のライフを1つ破壊した。

 

 

「やれぇ!ホルスモン!」

 

 

攻撃の手を一切緩めない司。ホルスモンが羽ばたく。何もできない炎林はそのままライフで受けるほかなかった。

 

 

「く、ら、ライフで、……うわぁあ!」

ライフ2⇨1

 

 

ホルスモンの自身の身体を回転させた竜巻のような攻撃が、炎林のライフを通り過ぎるように貫き、破壊した。これで炎林のライフは1。風前のともし火だ。

 

炎林は、僅か4ターンでここまで実力に差が出てくるとは思ってもいなかった。だが、彼はまだ諦めてはいない。何度も何度でも起き上がると決めたのだから、どんなに汚くなっても、かっこ悪くてもヘラクレスに、師匠に挑戦したいのだ。

 

 

「俺はこれでターンエンドだ」

ホルスモンLV1(1)BP4000(疲労)

イーズナLV1(1)BP1000(疲労)

ハーピーガールLV2(2)BP4000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト有

 

 

できることを全て終え、そのターンを終える司。このターンの猛アタックが、ヘラクレスの弟子である彼にさらなる火を灯したことは知らなかった。

 

 

[ターン05]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ7⇨8

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ8⇨14

トラッシュ6⇨0

 

 

メインステップになるも、現状炎林の盤面は秘剣二天一龍、ハーピーガール、ホルスモンの効果により、空。何もない。ライフの差も1と5。普通なら誰もが無理だと思ってしまう。

 

ーだが、彼はそれを覆す。

 

 

「メインステップ!俺は2体のホムライタチを召喚!」

手札6⇨4

リザーブ14⇨10

トラッシュ0⇨2

 

 

炎林は前のターンでの大量ドローで引き抜いていた2、3枚目のホムライタチをここで連続召喚する。これにより今後のスピリット展開が楽になる。さらにそこから逆転へと大きく動き出す。

 

 

「次はこいつだ!賢竜ケイローン!」

手札4⇨3

リザーブ10⇨7

トラッシュ2⇨4

 

 

2体のホムライタチの次に召喚されたのはケンタウロスのような見た目だが、上半身は竜人の姿をした赤のスピリット、賢竜ケイローン。それはこの場では最も活かされるスピリットであって、

 

 

「ケイローンの召喚時効果!BP5000以下のスピリットを1体破壊して、1枚ドロー!……俺が破壊するのはお前だぁ!ホルスモン!」

手札3⇨4

 

「なに!?」

 

 

ケイローンは弓矢を手に持ち、ホルスモンに向かって放つ。それは見事にホルスモンを射抜いてみせた。耐えられなくなったホルスモンは爆発してしまう。

 

賢竜ケイローン。それだけでも優秀な効果だが、緑との混色デッキならばこれだけでは終わらない。

 

 

「まだ終わらない!!【連鎖:緑】でコアを1つこいつに置き、【連鎖:緑緑】でさらにもう1つ追加!」

賢竜ケイローン(1⇨2⇨3)LV1⇨2

 

「ちぃ!またコアブーストか!」

 

 

賢竜ケイローンは緑のシンボルが2つあるだけでルリ・オーサと同じく一気にコアを2つ稼げるスピリット。また司とのアドバンテージ差を突き放す。

 

だが司もただでは転ばない。ここでセットされていたバーストを発動させ、少しでも取り戻そうとする。

 

 

「俺のスピリット破壊後により、バースト発動!……シャイニングバースト!……この効果でBP10000以下のお前のスピリットを1体破壊だ!消えろ!ケイローン!」

「ぐっ!」

 

 

ケイローンの体が光輝いたかと思えば、その光は突如爆発する。ケイローンは当然耐えられず、自身も直ぐに大爆発した。

 

 

「さらにコストを払い、メイン効果だ、デッキから1枚ドロー、さらにバーストにより発動されていたので、もう1枚ドローだ」

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

手札4⇨5⇨6

 

 

やはり仕掛けていた破壊バースト。だが、それは一時しのぎにしかならない。炎林は展開する。どんなに邪魔をされようとも、デッキとの絆を信じて突き進む。

 

 

「まだだ!俺は2体目の賢竜ケイローンを召喚!」

手札4⇨3

リザーブ10⇨7

トラッシュ4⇨6

 

「なに?!…2体目だと?」

 

 

すかさず召喚された2体目のケイローン。それは先とほとんど変わらぬモーションで弓を準備する。筋肉質で力強いこの腕から放たれる矢が次に狙うのは……

 

 

「ハーピーガールを破壊!そしてカードをドローし、コアを2つ追加ぁ!!」

手札3⇨4

賢竜ケイローン(1⇨2⇨3)

 

「ぐっ!……くそっ!」

 

 

ケイローンが狙ったのはハーピーガール。ハーピーガールはその矢で射抜かれ、そこを中心に燃える尽きるように消滅していった。

 

実を言うと、炎林は全くアドバンテージを失わずにこれを行なっていた。賢竜ケイローンの召喚コストで2。そのコアブースト効果でプラマイ。そして召喚してマイナス1だが、それを召喚時の1枚ドローする効果で補っている。逆に司の盤面はシャイニングバーストである程度持ち直しているものの、主力を失いズタボロ、そう考えると差は圧倒的だった。

 

司は、正直信じられなかっただろう。まさかあの噂聞く分では、全く自分の敵にはならないだろうと踏んでいた相手がここまでやるとは、今なら彼がヘラクレスの弟子だと納得できる。

 

だが、まだだ、彼は炎林のメインステップはまだまだ続く。大量に有り余ったコアを使い、今度は自分が認める最強スピリットを召喚する。

 

 

「俺はさらに!エーススピリット!金殻皇ローゼンベルグをLV2で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ7⇨0

トラッシュ6⇨10

 

「……っ!!」

 

 

椎名の持つロイヤルナイツ、マグナモンにも勝にも劣らないほどの黄金の輝きを放つ人型の昆虫スピリット、そのツノは凶暴な猛牛のように曲がっている。

 

その存在だけで会場を震え上がらせる。彼のエーススピリット、金殻皇ローゼンベルグが召喚された。ローゼンベルグは人差し指を静かに司に向ける。まるで彼を打倒しようとするかのように。

 

 

「ローゼンベルグの召喚時効果!ボイドからコアを3つ追加!その勢いでLV3にアップ!」

金殻皇ローゼンベルグ(3⇨6)LV2⇨3

 

 

もうこのバトルの間だけでいったいいくつのコアを増やしただろうか、あれだけ展開して、邪魔もされたと言うのに、場には4体のスピリットが並んでいる。しかも手札は未だに3枚。それもこのローゼンベルグの効果で増える。

 

準備は整った。炎林は長いメインステップを終了させて、ようやくアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!ローゼンベルグ!その効果でBPをプラス10000し、【連鎖:赤】でデッキから2枚ドローする!」

金殻皇ローゼンベルグBP11000⇨21000

手札3⇨5

 

 

このローゼンベルグはもともと2つのシンボルを持つスピリット。減らせるライフは2つだ。

 

さらに炎林は司に追い打ちをかける。残ったイーズナを破壊しつつ、一気にかたをつけるカードを引き抜く。

 

 

「フラッシュマジック!バードウィンド!不足コストはケイローンのLVを下げて確保!この効果でローゼンベルグを回復させ、【連鎖:赤】でBP4000以下のスピリット、イーズナを破壊!」

手札5⇨4

賢竜ケイローン(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ10⇨12

金殻皇ローゼンベルグ(疲労⇨回復)

 

「……っ!!」

 

 

イーズナが竜巻に巻き込まれて破壊されると同時にローゼンベルグが再び起き上がる。アタックするだけで凶器と言えるローゼンベルグが2度もアタックすれば、それは誰が見ても大変だと言うことに気がつくだろう。

 

 

「さぁ!いけぇ!ローゼンベルグ!」

 

「くそっ!仕方ねぇ!ライフで受ける!……ぐう!」

ライフ5⇨3

 

 

ローゼンベルグはその手に持つ巨大な大剣で、司のライフを2つも一刀両断する。おまけに今は回復状態。これがもう一度飛んでくる。

 

 

「もう一度だぁ!やれぇ!」

手札4⇨6

 

 

もはや当たり前のようにデッキから2枚ドローする炎林。このバトルは勝った。……彼がそう思った瞬間。司は手札のカード1枚を引き抜く。それはなんとかこの場を凌ぐカードであって。

 

 

「……俺は手札からマジック!シンフォニックバーストを使用!」

手札6⇨5

リザーブ5⇨3

トラッシュ4⇨6

 

「!!」

 

「……こいつの効果でこのバトル中に俺のライフが2以下ならてめぇのアタックステップは終わる!………ローゼンベルグのアタックはライフで受けてやるよぉ!…………ぬぉぉ!!」

ライフ3⇨1

 

 

「……くっ!そんなカードまで………」

「俺のライフは1!条件達成だぁ!」

 

 

シンフォニックバーストの条件達成に伴い。聖なる光が炎林の場のスピリット達の邪魔をする。これで炎林はどう転がってもこのターンは終了せざるを得なくなった。

 

 

「………ターンエンドだ」

ホムライタチLV1(1)BP1000(回復)

ホムライタチLV1(1)BP1000(回復)

賢竜ケイローンLV1(1)BP5000(回復)

金殻皇ローゼンベルグLV3(6)BP11000(疲労)

 

バースト無

 

 

惜しくも司を仕留められないまま、そのターンを終える炎林。だが、十分すぎる反撃だったと言える。何せ、司のスピリットを全滅させただけじゃなく、ライフを1にまで追い込んだのだから。そして今回は真夏の時とは違う。引いていた。カウンター系のカードを。

 

ー司はここからやり返すことができるのか。

 

 

(なるほど、ヘラクレスの弟子、……ねぇ、……なんか負けられない想いでもあるってか?…………それだったら俺にだってある!………俺はもう誰にも負けないくらい強くなる!だから応えろ!俺のデッキ!俺を勝利へと導け!!)

 

 

司がそう心に思った瞬間。一瞬だが、彼のデッキが赤く光輝いた。それが目に見えたのか、特別VIPルームの紫治城門は思わず立ち上がった。

 

 

「ん!!?」

「おいおい、どうした?ぎっくり腰の前兆?」

「む?………いや、なんでもない」

 

 

何事もなかったかのように再び腰を下ろす紫治一族の頭領、紫治城門。

 

彼は確信した。赤羽司は【アレ】に目覚めようとしていたのだ。それは彼のドローステップが来ればわかることだ。

 

司は息を呑み込み、このヘラクレスの弟子と言う強敵に挑む。自分の全てを、全身全霊をかけて、今まさにラストターンが始まろうとしていた。

 

 

「俺のタァァァァァァンン!!!」

 

 

[ターン06]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

 

 

「ドローステ、…………?」

 

 

このドローステップの時だった。司のデッキが突如、燃えるように光輝いた。炎林を含め、当然のように騒然とする観客や選手たち、だが、内心一番驚いていたのは他でもない、司だった。思わずその凄まじい光量にたじろいだ。

 

 

「な、なんだこれ、……」

 

 

そんな中、紫治一族の頭領、紫治城門だけが、この状況を目の当たりにして、興奮が抑えきれなかった。

 

 

(おぉ!やはり!やはり彼が【アレ】に目覚めるであろう3人うちの1人だったか!……さぁ!この私にその力を示すのだ!)

 

 

そう考える紫治城門。必死に声が漏れぬよう、堪えている。彼にとってこの現象は喉から手が出るほど見たかった。いや、欲しかったのだ。

 

この場にいるもう1人の紫治一族、夜宵もまた1人、選手の控え室で、

 

 

「…………や、やっぱり、司ちゃんが【アレ】に目覚めるんだ…………」

 

 

予想はしていたからか、他と違い、あまり驚く様子はなかった。が、その表情からはどこか寂しそうなものを感じさせる。

 

一方、司はその不思議な現象を目の当たりにしつつも、いつもの冷静さを取り戻していた。そしてその現象の正体に気づく。それはなかなかお目にかかれるものではなかった。

 

 

「こ、これはまさか……………【オーバーエヴォリューション】……!!?」

 

 

【オーバーエヴォリューション】。それはバトル中に起こる奇跡の現象。それが訪れたバトラーのデッキは光輝き、そこには新たなるカードが、命が宿ると言う。言うなれば、バトラーとデッキの進化。

 

非科学的だが、現在判明していることは3つ、1つは、それが正式なデッキのカードであること。普通はイカサマ等で新たに加えられたカードはいくらBパッドにそれを叩きつけても反応しない。だが、その【オーバーエヴォリューション】で得たカードは使用が可能なのだ。なんとも摩訶不思議なことだが、公式にこれが起きた時はそれを使用して良いと言うことが承認されている。過去にもそのカードで、ある無名のチャレンジャーがチャンピオンを破るというケースも存在する。

 

2つ目は、一説によれば、それが起こっている理由は、バトラーとデッキの絆が頂点に達した時のみ起こると言われている。

 

そして最後、3つ目は、それが起こるのは人1人につき、一度だと言うことのみ。他の細かいところはまだ何も解明されていない。

 

司は恐る恐るそのカードをドローした。ドローしたらそのデッキの赤い光は消えた。そしてドローしたのは赤と黄色のデジタルスピリット。やはり見たことのないカードだ。だが、不思議と司はもう驚くことはなかった。むしろ一瞬でその摩訶不思議な登場の仕方をした怪しいカードを仲間だと認め、理解する。

 

そしてなにより、この状況ではうってつけだ。

 

 

「いくぜ、ヘラクレスの弟子、炎林頂。俺はお前を認め、このカードでお前を討つ!」

手札5⇨6

 

「や、やれるもんならやって見やがれぇ!」

 

 

流石にこれはやばいと考えてしまったのか、炎林はやや腰が引ける。だが、それは直ぐに安心に変わる。

 

自分の残りライフはわずか1だが、ブロッカーは3体。そして手札には散々ドローしたおかげで、緑の強力なマジックカード、ストームアタックがある。いざとなればこれで妨害すれば完璧のはず、そう考え直したのだ。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨12

トラッシュ6⇨0

 

 

「メインステップ、先ずは下準備だ……朱に染まる薔薇園のLVを2に上げ、効果により、ホークモンをフル軽減でLV2で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ12⇨11⇨7

朱に染まる薔薇園(0⇨1)LV1⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

赤と黄色のネクサス、朱に染まる薔薇園。LV2の時には赤のスピリットをほとんど黄色のスピリットのようにも扱える効果を持つ。そのカラクリは、赤のスピリット全ての軽減シンボルを黄色としても扱えるようにするからだ。その結果、ホークモンがフル軽減で召喚された。司はその召喚時の効果も使用する。

 

 

「召喚時効果、カードを3枚オープン!」

オープンカード

【シュリモン】○

【イエローリカバー】×

【アクィラモン】○

 

 

効果は成功。この場合は、該当する2枚のうち、どちらか1枚を手札に加えることになる。司が選択するのは、

 

 

「俺はアクィラモンを手札に加える」

手札5⇨6

 

 

司は成熟期のスピリット、アクィラモンを手札に加えて、残ったカードを破棄した。そして、まだホークモンの効果は終了しない。滅多に使わないが、その追加効果も起動させた。

 

 

「ホークモンの追加効果で、2コストを支払うことで、手札にある黄色の成熟期スピリットを召喚する!…俺は手札のテイルモンをLV3で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ7⇨2

トラッシュ1⇨3

 

 

司が召喚したのは黄色の成熟期スピリット、猫のように愛らしく、小さい体躯だが、本当はネズミ型のスピリット、テイルモンが召喚された。

 

そして司はついでのように手札のマジックを使用する。

 

 

「さらに俺は、赤のマジック、レッドライトニングを使用する、この効果で、BP6000以下のスピリット、賢竜ケイローンを破壊する!」

手札5⇨4

リザーブ2⇨0

トラッシュ3⇨5

 

「!!……ケイローン!」

 

 

赤く迸る雷がケイローンを襲う。当然耐えられなくなり、ケイローンは大爆発を起こした。だが、ケイローンの破壊程度では彼の盤面に致命傷を与えることはできない。

 

司はメインステップでやることを全て終えたからか、そのままアタックステップへと移行する。その際にホークモンの【進化:赤】が発揮された。

 

 

「アタックステップ!その開始時に、ホークモンの【進化:赤】を発揮!こいつを成熟期のスピリット、アクィラモンに進化させる!」

朱に染まる薔薇園(1⇨0)LV2⇨1

アクィラモンLV3(4)BP6000

 

 

ホークモンにデジタルのベルトが巻かれて、その姿形を変えさせていく。そして新たに現れたのは、頭部から巨大な2本の角を生やした赤の巨鳥型、成熟期スピリット、アクィラモンだ。

 

 

「アクィラモンの召喚時及びアタック時効果!BP4000以下のスピリット1体を破壊する!ホムライタチを1体焼き払え!」

 

 

アクィラモンの炎を纏わせた翼撃が、2体いるホムライタチの1体を蹴散らしてしまう。ホムライタチは呆気なく破壊されてしまった。

 

 

「くっ!だが、この程度!」

「耐えられるものなら耐えてみろ!アタックステップは継続だ!やれ!アクィラモン!アタック時効果で残ったホムライタチを破壊!」

 

 

飛び立つアクィラモン。そして同じような容量で炎林の場に残ったホムライタチを破壊した。これで彼の場にいるのは疲労しているローゼンベルグ。そして残りライフは1。司の場にはアタック中のアクィラモンも含め、テイルモンの2体。これで決まったかに思われたが、ここで炎林が温存していたカードが目を光らせる。

 

 

「ここだ!……フラッシュマジック!ストームアタック!この効果で、お前のテイルモンを疲労させ、俺のローゼンベルグを回復させる!」

手札6⇨5

リザーブ3⇨1

トラッシュ12⇨14

 

「!!」

 

 

発揮される緑の究極マジック、風の方向は、ローゼンベルグには追い風だが、テイルモンには向かい風、これによって、2体の状態は逆転し、ローゼンベルグが戦闘態勢に入る。炎林は勝ちを確信する。これでアタック中のアクィラモンをブロックすれば自分の勝利だと、

 

 

「よっし!俺の勝ちだぁ!!」

 

 

ーだが、

 

 

「それはどうかな?」

「なに!?」

 

 

その発言に対し、そう言い返す司。司はこの時を待っていた。あんなに手札を抱え込んだのだ。きっとさっきのように攻防に使えるマジックが残っているはず、司はそう思ったからこそ、先ずは周りの破壊できるスピリットを破壊したのだ。さっきの【オーバーエヴォリューション】で創生されたあのカードを使用するために。

 

司はその新たなるカードを引き抜く。それはこれからの彼のバトルでも、きっとエースとして活躍してくれるであろう。

 

 

「フラッシュ、俺は手札のこのカードの効果、【ジョグレス進化】を発揮!対象はアクィラモンとテイルモン!」

「なにぃ!?【ジョグレス進化】!?なんだそれは!!」

 

 

【ジョグレス進化】その聞き覚えのない進化に戸惑う炎林と他の人達。これは彼が得た新たなる力。

 

 

「【ジョグレス進化】は自分のターンのフラッシュのみ使える進化、その対象に選ばれるのは成熟期のスピリット2体だ」

「!!」

 

 

【ジョグレス進化】は比較的【アーマー進化】に近い効果と言える。だが、その対象条件が成熟期2体のみと重たい分、それらよりも遥かに強力なデジタルスピリットが呼び出されるのは目に見えている。

 

 

「赤き巨鳥と神聖なる白き獣が混じり合う時、気高き白き獣人が姿を現わす!………ジョグレス進化ぁぁぁ!!……シルフィーモン!!」

手札4⇨5

シルフィーモンLV3(7)BP12000

 

 

アクィラモンとテイルモンは互いに上空に飛び立ち、自身のデジタルコードを分解させ、衝突し、混ざり合う。新たに現れるのは司の言う通り、バイザーを装着した白き獣人。小柄だが、そのオーラでその強さが理解できる。

 

 

「し、シルフィーモンっ!?なんだそりゃ!?」

 

 

炎林はあんなスピリットなど見たこともなかった。そもそもジョグレス進化などと言う聞いたこともない進化方法で召喚されたのだから、知らなくてもしょうがないが、

 

 

「あ、あれが、【赤羽一族の伝説のスピリット】って奴かいな?」

「い、いや、違う、あれとは別だ!……僕も知らない、あんなスピリットっ!」

 

 

真夏は直感的にあれが伝説のスピリットだと予想を立てるが、違う。あれは今さっき、司の【オーバーエヴォリューション】によって創生された新たなるカード。雅治もそれを理解していた。まさか自分の親友がこんな不思議な現象に立ち会うなど、考えてもいなかっただろう。

 

 

「す、すごい!すごいよ!司!あんな進化もあるんだぁ!」

 

 

控え室で飛び上がる椎名。ワクワクしてきたのだ。さっきバトルしたと言うのに今すぐにでも誰かを捕まえてバトルしたい気分だった。

 

 

「これが俺の新たなる力、シルフィーモンだ!」

「だ、だが、たかが1体増やしたくらいで、この差は埋まらない!お前の負けだ!」

「俺がそんな無意味なことをするように見えるか?」

「………え?」

 

 

ローゼンベルグは回復状態。いくらシルフィーモンがBPで上回っているとはいえ、残り1つのライフを減らせるような状況には見えないのも事実。

 

だが、司の言う通り、もちろんこの召喚には意味があるのであって、

 

 

「シルフィーモンの召喚時…………相手のBP12000以下のスピリット1体を破壊する」

「は、はぁ!?」

「喰らえぇ!!!聖域の凶弾!!!トップガン!!!」

 

 

シルフィーモンは両手を前に突き出しながら小さめでとてつもないエネルギーを凝縮させたエネルギー弾を放つ。それは一瞬でローゼンベルグのとこまで行ったかと思えば、その腹部を貫いてみせた。ローゼンベルグはこれに耐えられず、倒れるように力尽き、大爆発を起こした。

 

 

「…………そして、【ジョグレス進化】での召喚であれば、その破壊されたスピリットのコアはリザーブではなく、トラッシュに送られる」

 

「な!?!?」

トラッシュ14⇨20

 

 

ローゼンベルグに置かれていた6つのコアが、炎林のトラッシュへと送られた。これでもはや彼に対抗する手段はない。後はシルフィーモンのアタックを待つだけ、

 

 

「これで、………終わりだ!シルフィーモン!」

 

 

高い脚力を活かし、上空に飛び上がるシルフィーモン。そしてそのまま腕のわずかに生えた羽を活かし、滑空、炎林の元へと急降下していく。

 

ヘラクレスの弟子、炎林頂は、試合前に師であるヘラクレスと交わした約束を思い出していた。その目にはほのかに涙を浮かべている。

 

 

ー『師匠!このリーグで俺は必ず勝ち残る!そしてあなたを超える!』

 

 

勝ちたかった、ただその一心で突き進んだ。その結果、同じ世帯では勝つのが困難を極める【朱雀】相手にここまでやった。それは見事と言える。だが、彼としてはやはり、この【界放リーグ】で師であるヘラクレスとバトルしたかった。恩返しも兼ねて、

 

敗北は決した。炎林はこのバトルのラストコールを宣言する。

 

 

「……………ライフで受けるっっ!」

ライフ1⇨0

 

 

急降下してきたシルフィーモンが、そのまま炎林のライフに直撃、彼の最後のライフを破壊した。これにより司の勝利となる。見事2回戦に駒を進めてみせた。

 

炎林は負けたショックからか膝から崩れ落ちる。

 

場に残ったネクサス、朱に染まる薔薇園と、ジョグレス体スピリット、シルフィーモンが役目を終えたため、ゆっくりと消滅していく。そして司はBパッドを閉じ、炎林に最後にこれだけを言い残して、控え室に戻る。

 

 

「お前は…………強かった」

 

 

炎林にはその司の背中はとても大きく見えた。互いに全力でバトルして得た、何かしらの共感なのかもしれない。それだけ張り詰めた緊張感の中でのバトルだった。

 

炎林はなんとかその場から立ち上がり、湧き上がる歓声の中、なんとか控え室への帰路につく。バトルに負けたため、荷物だけ取ったら後は観客席で観戦するだけだが、

 

 

「…………よっ!」

「!………し、師匠っ!」

 

 

スタジアムまでの通路には師であるヘラクレスがいた。彼の試合は次だからだ。

 

炎林は何故か涙が止まらなかった。悔しかったから、約束を果たせなかったから、色々とあるが、とにかく溢れんばかりの溜め込んでいた涙が、彼の瞳から溢れてきた。彼はまた膝から崩れ落ちた。

 

ヘラクレスは泣き崩れる炎林のとこまでいくと、少しだけ腰を下ろし、その下を向いた頭をポンっと叩いてこう言うだけだった。

 

 

「お前かっこええやん!」

 

 

炎林は自分が試合前に言った言葉を思い出した。

 

 

ー『はい!どんなに汚くて、かっこ悪くても必ず勝ち残ってやる!』

 

 

ヘラクレスはその後、直ぐにバトルを行うため、その場を後にした。炎林は余計に涙が止まらなくなった。コンクリートに溜まる涙が水溜りのように円を書いていた。

 

 

(さぁ、弟子がここまでやりよったんや、………次は俺の番やな)

 

 

******

 

 

司は自分の控え室で一息ついていた。なんとか勝てた試合だった。正直、途中でシルフィーモンが来なければかなり大変だった。偶然の中に必然があるというが、まさかこの場で起きるとはと考えながらも、司は次の試合を観るためにモニターのスイッチを入れた。すると、

 

 

《1回戦第三試合、勝者!緑坂冬真!!》

 

 

「…………は?」

 

 

司はその瞬間背筋が凍りつき、鳥肌が立ったのが伝わってきた。信じられなかった。もう終わっていたのだ。第三試合が、自分がここまできて、モニターをつけるのに5分とかかっていなかったといのに、ヘラクレスこと緑坂冬真は既に勝利を収めていた。負けた相手はミカファール校の獣道岳。

 

やはりこのリーグで一番の障害となるのはヘラクレス。そう考えを改める司だった。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【シルフィーモン】!!」

「シルフィーモンは新たなる進化方法、【ジョグレス進化】で召喚できる完全体のデジタルスピリット。召喚時に相手のBP12000までのスピリットを破壊したり、ライフを回復させたりできるよ!」







最後までお読みくださり、ありがとうございました!
ようやくタイトルの伏線回収できて心より満足しております。これからも慢心なく、頑張っていく所存です!


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第19話「ウルトラマンVS五の守護神!」

 

 

 

 

【界放リーグ】の1回戦も半分を終え、今は第四試合。デスペラード校、紫治夜宵と、ミカファール校の蝶花菊乃のバトルだ。そのバトルはある意味で熾烈を極めていた。

 

 

「やっとだわ、やっとあんたをトップアイドルから引きずり落とせる!」

「はは、」

 

 

アイドルバトラーの世界には、いくつかの階級というものが存在する。その1つに【20歳以下の学生】という項目が存在するのだが、紫治夜宵はアイドルっぽい活動をしているつもりはないはずなのに、なぜかこのランキングのトップだった。リポーターだったり、ラジオ番組のパーソナリティだったりと、その仕事ぶりはどちらかといえばアナウンサーに近いのに、まぁその反面、歌を歌ったりする分にはアイドルであるが、

 

本気でアイドルバトラーを目指していた蝶花菊乃は夜宵がどうしても目の上のたんこぶだった。今年からランキングに入ってきた夜宵のせいで1位だった座が、2位に引き落とされたのだ。これは彼女にとって屈辱のほかならなかった。かといっても、バトルの強さを競うこの大会で勝てたとしても、夜宵をトップから引き摺り下ろすなんてことは、また別の話になるので、不可能なのだが、

 

そんな妬ましい存在の夜宵をもうすぐ倒すことができた。それは今現在の2人の盤面を見ていればわかることであって、

 

 

【蝶花菊乃】ライフ3

剣聖姫ツル+《姫鶴一文字×3》LV3(3)BP17000(回復)

 

バースト無

 

 

【紫治夜宵】ライフ4

デビモンLV2(2)BP7000(疲労)

ピコデビモンLV1(1)BP1000(回復)

オーガモンLV1(1)BP8000(回復)

 

バースト無

 

 

そして今現在は、蝶花菊乃のターン。アタックステップに差し掛かるころだ。可愛らしい外見の少女のスピリット、剣聖姫ツルと、その周りに浮遊する3本の姫鶴一文字と呼ばれる刀。これが彼女の必勝パターンだ。

 

ツルが今、美しい翼を広げ、夜宵のライフを打つがために飛び出していく。

 

 

「終わりよ!…ツルは自分のコスト以下のスピリットからはブロックされない!!そして今のコストは3枚分の姫鶴一文字と合わせて17!……シンボルは4!」

 

 

ツルはそのコスト以下のスピリットからはブロックされない効果を持つ。そして本来1体しかできない合体を、ツル限定で何枚でも合体できる姫鶴一文字のコンボは有名だ。

 

トリプル合体のクワドラプルシンボルの攻撃が夜宵を襲う。だが、夜宵は待っていた。攻撃が集中してくるのを、

 

夜宵は手札から1枚のカードを引き抜いた。それはアンブロッカブル効果など意味のなくなるような効果を持つ、紫の強力なカード。

 

 

「フラッシュマジック!デスマサカー!」

「………え!?」

「この効果で疲労しているスピリット1体を破壊!………もちろん対象は、……剣聖姫ツル!」

「え、え、えーーーー!?」

 

 

紫の靄がツルをその美しい翼ごと包み込む。それは徐々にツルを蝕んでいく。ツルはその力に及ばず、あえなく爆発してしまった。

 

アタックしているということは、大抵のスピリットは疲労しているということになる。今回はその虚を突かれた。

 

合体状態のスピリットがアタック中に破壊された場合は、残ったブレイブがアタック状態となるが、複数のブレイブと合体している場合、そのうちのどちらか1体がアタックすることになる。今回はどれも同じなので特に関係はないが、

 

 

「ふふ、……姫鶴一文字はオーガモンで迎え撃ちましょうか」

 

 

落下してきた姫鶴一文字を鬼のような姿をした紫のデジタルスピリット、オーガモンが踏み潰し、破壊した。

 

 

「う、嘘…………」

 

 

蝶花菊乃は、まさかこんなに強烈なカウンターをくらうとは思ってもなかっただろう。これまでのバトルも全てこの一撃でどんな相手も華麗に倒してきた。だから相当な自信が彼女の心の中にはあった。

 

だが、上には上がいるというものだ。彼女は今から、自分の目の上のたんこぶに押しつぶされようとしていた。

 

 

「私のターン……………」

 

 

夜宵は着々とターンシークエンスを進め、アタックステップに入る。

 

ーそして

 

 

「ピコデビモン、オーガモン、デビモンでアタック!」

 

 

走り出す計3体の鬼や、悪魔のスピリット達、蝶花菊乃はもはやなすすべがなかった。3体のフルアタックをただ、受け入れるのみ、

 

 

「き、きゃぁぁぁぁぉあ!!!!!」

ライフ3⇨0

 

 

ピコデビモンの注射器のダーツ、オーガモンの棍棒の一撃、デビモンの鋭い鉤爪の攻撃が彼女の3つのライフを1つ残らず消しとばした。

 

これにより1回戦第四試合は紫治一族の次女、紫治夜宵が勝利する。彼女のファンを含めた大勢の観客が轟音のような歓声を上げる。

 

蝶花菊乃の敗北により、ミカファール校の代表は全滅したことになる。

 

 

「おいおい、お前さんのとこ全滅だってよ、舞空さんよ〜〜!!」

「別にいいわよ、私はこんな余興、楽しむ必要ないし」

 

 

ジークフリード校の理事長、龍皇竜ノ字がからかうようのは、ミカファール校の理事長、【大天使 舞空(だいてんし まいから)】。本歳60になる女性だ。龍皇の冷やかしにも微動だにせず茶を沸かし、飲んでいた。

 

ミカファール校はアイドルバトラーも育てることが多い学園だ。そのようなこともあって、本当にどうでもよかったのだろう。

 

そして鳴り止まぬ轟音のような歓声の中、次なる第五試合が行われようとしていた。その争う2人は、タイタス校の【光乃 国貞】と、去年、一昨年とヘラクレスにつぎ2位を独占しているオーディーン校の強者、五の守護神こと、【五護 鉄火】。

 

両雄、巨大なスタジアムの真ん中で睨み合う。

 

 

「わっはっはっは!君があの有名な五の守護神か!私はタイタス校の3年!光乃 国貞だ!よろしくぅ!」

「…………五護鉄火だ」

 

 

テンション高めの口調で語りかけてくる光乃に対し、全くと言っていいほどに顔の表情を変えない五護。その冷徹な目つきは、まるで光乃を全く眼中に入れていないようにも感じさせる。

 

温度差に雲泥の差がある2人。そんな2人がいよいよ自身のBパッドを展開して、1回戦第五試合に挑む。

 

 

「「ゲートオープン、界放!、」」

 

 

ーバトルが始まる。先行は光乃だ。

 

 

[ターン01]光乃

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!……私は!先ず!ネクサスカード!光の国を配置!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

高校生とは思えないほどにマッシブな男、光乃が先ず呼び出したのは、ネクサスカード、光の国、彼の背後に美しいエメラルドグリーンの色をした王国が誕生した。

 

 

「よし!ターンエンドだ!……さぁ!君の番だぞ!」

光の国LV1

 

バースト無

 

 

先行の第1ターン目など、やれることは限られてくる。光乃はそのネクサスを配置しただけでターンを終える。初手でこれを配置することが、彼のデッキにとって、とても強い動きになるということは、五護もまだ理解しきってはいなかった。

 

 

[ターン02]五護

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺もネクサスカード、機巧城をLV2で配置」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

五護の背後にもまた、ネクサスカード、白銀の城が築き上げられた。

 

 

「………バーストをセットして、ターンを終幕する」

手札4⇨3

 

機巧城LV2(1)

 

バースト有

 

 

それ以外はバーストをセットするだけで、特に何もしないでそのターンを終える五護。次は光乃のターンだ。

 

 

[ターン03]光乃

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!」

 

 

光乃とて、五護が配置したあのネクサスの効果は知り尽くしている。五護は何度も界放リーグに出場しているため、デッキの主力はある程度知られやすくなる。

 

機巧城、その効果は相手のエンドステップ時に、自分のライフが減っていなければ、ドロー。そして、スピリット展開の補助も狙える強力な効果、だったら光乃がやることは1つ。

 

 

「ライフ削るだけだ!私はネクサス!光の国の効果!名前に「ウルトラマン」と入っているスピリットを召喚する際!これを疲労させることで!軽減を全て満たしたものとして扱う!」

 

 

光の国の力が、光乃の手札へと注がれる。

 

 

「………私は相棒であるこいつ!初代ウルトラマンをLV2で召喚!」

手札5⇨4

光の国(回復⇨疲労)

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨2

 

 

突如、眩い閃光が一瞬の間、会場の人々を怯ませる。反射的に目を瞑る人々、そして、そこにいたのは赤と銀色のシンプルなボディが特徴的な戦士、初代ウルトラマンが現れていた。

 

 

「これがぁ!私のウルトラマンだ!その召喚時効果で!私はデッキの横にコアを3つ置く!」

カラータイマー〈3〉

 

「?」

 

 

光乃の謎の行いに、少しだけ首を傾ける五護。初代ウルトラマン。彼はコスト4ながらにしては強力なスピリットではあるものの、場にいる時間はわずか3ターン。光乃のデッキ横のコアはそのカウンターを示していた。

 

 

「行くぞ!アタックステップ!ウルトラマン!」

 

 

走り出す初代ウルトラマン。目指す先は五護のライフ。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

「八つ裂き光輪!」

 

 

初代ウルトラマンは手に光の輪っかのようなものを作成し、それを投げ飛ばす。五護のライフ1つを、文字どうり一瞬にして八つ裂きにしてみせた。

 

だが、これは五護のバーストの発動条件でもあって、

 

 

「ライフの減少によりバースト発動………絶甲氷盾、ライフを5に戻す」

ライフ4⇨5

 

 

捲き上るバースト。五護の減少したライフが瞬時に元の形を取り戻した。

 

 

「わっはっはっは!ライフを5に戻しても減ったことにはなるぞ!」

 

 

そう、結果的にはライフが減っていなくとも、一度は減らされているため、五護のネクサスカード、機巧城の効果は発揮されないのだ。五護とて、自分のカードだ。それくらいは理解しているが、

 

 

「エンドステップ!この時!初代ウルトラマンの効果によって置かれたコアを1つ自身に置く!これが0になった時!初代は私の手札に戻る!」

カラータイマー〈3⇨2〉

初代ウルトラマン(3⇨4)

 

 

初代ウルトラマンのカラータイマーが時を進める。その命は後2ターンだ。

 

そして、五護のネクサス、機巧城の効果もここで発揮される。ライフが減っていない時に発揮されるのは、飽くまでLV1のドロー効果のみ、LV2から発揮されるスピリット展開の補助効果はエンドステップに何の問題もなく使用できる。

 

 

「俺もエンドステップ、機巧城の効果で1枚オープン、それが機巧スピリットならノーコスト召喚する」

オープンカード

【リアクティブバリア】×

 

 

残念ながらハズレを引いたため、そのカードは破棄された。

 

 

「ターンエンド!」

初代ウルトラマンLV2(4)BP9000(疲労)

 

光の国LV1(疲労)

 

バースト無

 

 

そしてそのターンを終える光乃。一見、地味に見えるが、この初代ウルトラマンが帰る頃には3つのコアが増えていることになる。名称「ウルトラマン」を含むスピリットは大型が多いので、この効果は実は相当強力なものである。

 

 

[ターン04]五護

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、俺は機巧武者シラヌイをLV2で召喚」

手札4⇨3

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

地響きと共に現れたのは、まるで城のような巨躯に、青いボディを持つロボット、機巧武者シラヌイ。その存在感は光乃の初代ウルトラマンにも勝にも劣らない。

 

 

「本気を出してきたな!」

「あぁ、いけ、シラヌイ」

 

「ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

シラヌイがゆっくりと歩みを進める。光乃の目前まで近づくと、右手に持った刀を振り下ろし、そのライフを1つ切り刻んだ。

 

この後はもう彼には何もすることはない。だが、光乃の初代ウルトラマンの効果は発揮される。

 

 

「エンドステップだな!初代ウルトラマンの効果で、デッキ横のコアを光の国へ!」

カラータイマー〈2⇨1〉

光の国(0⇨1)LV1⇨2

 

 

初代ウルトラマンの光の力の一部が、故郷、光の国へ届き、そのレベルを増加させる。

 

タイマーが残り1になったこの瞬間。初代ウルトラマンの胸のカラータイマーが赤く点滅する。

 

 

「……ターンを終幕する……………わかってると思うが、シラヌイはソウルコアが置かれている間は疲労状態でもブロックができ、ブロック時にそのBPを上げる」

機巧武者シラヌイLV2(2s)BP8000(疲労)

 

機巧城LV2(1)

 

バースト無

 

 

彼のデッキでは中核をなすシラヌイだが、その効果は攻めつつ、守りに徹することができる効果。その防御能力は椎名の持つロイヤルナイツ、マグナモンといい勝負だ。

 

だが、そんはシラヌイを突破できる方法でもあるのか、光乃は未だに自身に満ちた顔をしており、

 

 

[ターン05]光乃

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

初代ウルトラマン(疲労⇨回復)

光の国(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!光の国を疲労!このウルトラマンの軽減を全て満たす!」

光の国(回復⇨疲労)

 

 

再び光の国の力が光乃の手札へと注がれる。今から召喚するのは彼のデッキの中では最強のウルトラマン。その大きすぎるコストを光の国の力でサポートした。

 

 

「LV1で召喚!ウルトラマンティガァァ!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

初代ウルトラマン(4⇨3)

トラッシュ0⇨4

 

 

またまた眩い閃光が照らし出す。新たに現れたウルトラマンは青を基準とし、紫や赤も含めたカラーリング。光の戦士、ティガが現れた。初代と並ぶその姿は圧巻の一言だった。

 

五護も少しだけ驚く表情を見せた。そもそもウルトラマンデッキとはかなりのレアカードの集まりであり、そのカードの種類は仮面スピリットやデジタルスピリットにも劣らないと言われている。

 

初代もティガもかなりのレアカードとして数えられていた。

 

 

「うぉぉお!!アタックステップゥ!ティガァ!」

 

 

走り出すティガ。ティガはアタック時にそのレベルによって効果を変える珍しい効果を持つ。レベル1は………

 

 

「相手の最もコストの高いスピリットを破壊!この場だとシラヌイだ!……いけぇ!ティガァ!ゼペリオン光線!」

 

 

腕を十字に交差し、そこから莫大なエネルギー量の光線を放つティガ。それは瞬く間にシラヌイを貫き、破壊した。シラヌイは3色の【超装甲】を持つが、その中に青はない。

 

これで五護のブロッカーは排除された、だが、光乃の怒涛の効果はまだ続く。光の国第二の効果が発揮される。

 

 

「さらに光の国LV2の効果でティガにコアを追加ぁ!その勢いでティガのLVは2に上昇!そしてそのLV2のアタック時効果を発揮!」

ウルトラマンティガ(1⇨2)LV1⇨2

 

「!!」

 

 

思わずその薄い目を見開いた五護。まさかあのティガをここまで使いこなすとは思ってもいなかった。

 

普通、ティガの効果はそのタイミング故に、どれか1つしか使用できない。だが、光乃はネクサスカード、光の国の効果により、そのティガの力の同時発揮を実現させていた。

 

光の国のLV2効果は自分の効果で相手スピリットを破壊した時、自分のスピリットにコアを追加できる。この効果がここで活かされたのだ。

 

ティガのLV2効果は……

 

 

「青のシンボルを1つ追加!さらに!LVマックスじゃないスピリットにブロックされない!」

 

 

ブロックされない効果はこの状況では意味をなさないが、シンボルの増加は大きい、ここで初代ウルトラマンとの連続攻撃で五護のライフを大きく減らすことができれば一気に優位に立つことだろう。

 

だが、五の守護神の名は伊達じゃない。彼は1枚の手札でこの攻撃を封殺する。

 

 

「少しはやるようだな…………だが詰めが甘い、フラッシュマジック、リミッテッドバリア」

手札3⇨2

リザーブ2s⇨0

機巧城(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ4⇨7s

 

「!!」

 

「この効果で、このターン、俺のライフはコスト4以上のスピリットのアタックじゃ減らない。さらにコストの支払いにソウルコア使用した時相手のネクサス1つを手札に戻す、俺は光の国を手札へと返す」

 

「おぉっと」

手札4⇨5

 

 

エメラルドグリーンの色の国が、また別の輝きを放つ光によって包まれて消滅していく。

 

リミッテッドバリア。このターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックの多くの意味をなくしてしまう程の強力な白マジック。

 

 

「ティガのアタックは当然ライフだ」

ライフ5⇨5

 

 

ティガがいくら殴ったり蹴ったりしてもライフは破壊されることはない。そして初代もまた、コスト4のスピリット、ライフを減らすことはできなかった。

 

仕方なくそのターンを終えるしかなくなった光乃。ここで初代ウルトラマンの制限時間が来る。

 

 

「エンドステップ!初代ウルトラマンの効果!コアを追加!そしてここで一旦お別れだぁ!」

カラータイマー〈1⇨0〉

手札5⇨6

 

 

初代ウルトラマンは遥か上空の宇宙へと飛び出した。この置かれたコアがなくなった時、彼は光乃の手札へと一旦帰ってしまうのだ。

 

そしてこのタイミングで行われるのは初代ウルトラマンの効果だけではない。五護のネクサス、機巧城の効果も発揮される。

 

 

「機巧城のLV1の効果、このターン、俺のライフの減少がなかったため、デッキから2枚ドロー」

手札2⇨4

 

「……ターンエンドだ!」

ウルトラマンティガLV2(2)BP12000(疲労)

 

バースト無

 

 

そのターンを終える光乃。この瞬間、いや、本当はリミッテッドバリアでティガの攻撃を防がれた時だったか、

 

なぜかこの男のライフは減らさないと錯覚している自分がいた。たったこれだけのことなのに、なぜだろうか、あの凍てつくような冷たい視線によるプレッシャーなのか、

 

彼がそんなことを考えている間にも五護はターンシークエンスを進める。その理由はそのターンでわかることだった。

 

 

[ターン06]五護

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

 

 

「メインステップ、俺はネクサスカード、要塞都市ナウマンシティーをLV1で配置」

手札5⇨4

リザーブ8⇨4

トラッシュ0⇨4

 

「なっ!?それは!……白の強力ネクサスカード!」

 

 

要塞都市ナウマンシティー。光乃の言う通り、白属性の強力なネクサスカードだ。最も恐ろしいのはその配置時効果。

 

 

「この配置時効果を使い、俺のデッキのエースを召喚する!………来い!我が牙城を完璧なものにせよ!大機巧武者コンゴウ!!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

 

 

ナウマンシティーから発車してきたのは、シラヌイよりもかなりサイズが向上した機巧武者。その名はコンゴウ。その白銀のボディで五護の城を守り抜く。

 

コンゴウは五護のエーススピリットだった。だが、その重たいコスト故に召喚するのが遅くなりがちだった。彼はそれをネクサスカード、ナウマンシティーを使うことによって補った。これは去年一昨年は使用していない戦法であり、

 

 

「機巧城のLVを2に上げ、アタックステップ、やれぇ!コンゴウ!その効果でソウルコアが置かれていない相手スピリット、貴様のティガを手札に戻す!」

リザーブ1⇨0

機巧城(0⇨1)LV1⇨2

 

「ぬっ!しまった!!」

 

 

コンゴウがその手の持つ、巨大な棍棒を振り回す。それによって発生した竜巻によって、ティガは巻き込まれて消滅した。迂闊だったか、光乃のソウルコアは初代ウルトラマンに置かれていて、現在はリザーブに存在していた。

 

そして、コンゴウの恐ろしいところはそれだけではない。コンゴウはソウルコアが置かれていたらさらに厄介な効果を有する。

 

 

「さらに、コンゴウにソウルコアが置かれているため、ティガをそのまま手札ではなく、貴様のデッキの下へと落とす」

「な!?」

 

 

これぞコンゴウの自己完結した恐ろしいコンボだ。バトルするだけでソウルコアが置かれていないスピリットはデッキの底へと送られてしまう。

 

ティガのカードが光乃のデッキの下に送られていく。

 

 

「さぁ、アタックはどう受ける」

 

「むっ!ライフしかあるまい!」

ライフ4⇨3

 

 

コンゴウの振り回す棍棒の一撃が、光乃のライフを直撃する。ゆっくりだが、確実に彼のライフは減ってきている。

 

 

「……ターンを終幕する」

大機巧武者コンゴウLV2(3s)BP14000(疲労)

 

機巧城LV2(1)

要塞都市ナウマンシティーLV1

 

バースト無

 

 

そのターンを終える五護。次は光乃のターン。

 

 

[ターン07]光乃

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨13

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!私は再び光の国を配置!」

手札7⇨6

リザーブ13⇨9

トラッシュ0⇨4

 

 

光乃は再び背後に光の国を配置する。そして反撃するべく、さらなるウルトラマンを展開する。

 

 

「光の国の効果!ウルトラマンを召喚する際!疲労させ!軽減を満たす!」

光の国(回復⇨疲労)

 

 

三度その光の国の力が光乃の手札に流れ込む。そして次に召喚されるウルトラマンは………

 

 

「召喚!ウルトラセブン!LV2!」

手札6⇨5

リザーブ9⇨4

トラッシュ4⇨7

 

 

現れたのは初代や、ティガとは全く容姿が異なるウルトラマン。多彩な技を持つ栄誉あるウルトラマン。ウルトラセブンが登場した。セブンには召喚時効果があり、

 

 

「セブンの召喚時効果!最もコストの低いスピリットを破壊!狙うはコンゴウだ!………アイスラッガー!!」

 

 

セブンは頭部にあるアイスラッガーと呼ばれる武器をコンゴウに向かって投げる。だが、

 

 

「コンゴウは貴様のターン時に、機巧スピリットに相手のスピリットとアルティメットの効果を受けなくする効果がある。その効果は受けない」

 

 

真っ向から堂々とそれを受けるコンゴウ。あんな鋭利な物、普通なら直ぐに切り刻まれるだろう。だがコンゴウはそれを受けてもその装甲にはかすり傷1つつかなかった。

 

光乃とてその効果は理解している。コンゴウは、五護のコンゴウはとても有名なスピリットになっているのだから。

 

だが、コンゴウはシラヌイとは違い、疲労ブロッカーになる効果を持っていない。光乃の狙いはそこだ。今度は手札に戻ったあの英雄を召喚する。

 

 

「さらに!私は初代ウルトラマンを再召喚!LVは1だ!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ7⇨9

初代ウルトラマン(1s)LV1

 

 

再び現れる初代ウルトラマン。光乃のデッキ横にもまたコアが置かれる。これでウルトラ兄弟の次男と三男が並んだ。光乃はこの2体で畳み掛ける。ライフ5をキープしようとする五護のライフを1つでも削るために。

 

 

「アタックステップ!初代でアタックだ!」

 

 

走り行く初代。目指すは五護のライフ。

 

五護が自由に使えるコアは4つ。軽減があるにしても、使えるマジックやカウンターはある程度限られてくる。だが、五護はこのタイミングでも手札の1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「がっかりだ、もうその程度の攻撃しかできないとは…………………フラッシュマジック!光翼之太刀!不足コストは機巧城のLVを落として確保!対象はコンゴウ!」

手札3⇨2

機巧城(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ4⇨5

 

「ぬっ!まだそんなのを!?」

 

「これにより、このターン、コンゴウのBPを3000上げ、疲労ブロッカーとする…………………………初代のアタックはもちろんこのコンゴウがブロックしよう!」

大機巧武者コンゴウBP14000⇨17000

 

 

眼光を輝かせるコンゴウ。再起動したその鋼の装甲で、初代を迎え撃つ。そして自身のアタック/ブロック時効果で、対象に選ぶのは当然……

 

 

「コンゴウの効果でソウルコアが置かれていない、セブンをデッキの下に戻す!」

「ぐっ!」

 

 

再び自身の棍棒を振り回し、その風圧で強力な竜巻を発生させるコンゴウ。セブンはそれに巻き込まれて消滅してしまった。

 

そしてこれは初代とコンゴウのバトル中であって、……そのBP差は天と地ほどの差がある。

 

初代ウルトラマンは腕を十字に交差し、右手部からスペシウム光線も呼ばれるエネルギーを放つ。だが、コンゴウにはかすり傷1つつかず、そのままコンゴウの棍棒の一撃をもろに受け、吹き飛ばされてしまった。

 

力尽きたウルトラマンは、点滅していく胸のカラータイマーの光が消え、ゆっくりとその姿を消滅していった。

 

ー光乃の光は消えた。

 

 

「はっは!…ごっちーの奴!また硬くなりやがったなぁ!」

 

 

そんな一言を呟くのは、自分の控え室のモニターでそれを観戦しているヘラクレスこと、緑坂冬真。

 

毎年必ず彼と決勝の舞台に立つので、彼のデッキのことをある程度理解しきっているのだろう。年が増すほどにあのデッキはより硬く、強固になっている気がしていたのだ。

 

 

「もう貴様にやれることはない。俺はネクサス、機巧城の効果、カードを2枚ドローする」

手札2⇨4

 

 

機巧城が追い打ちをかけるように五護にさらなるドローの恵みを与えた。

 

 

「た、ターンエンドっ」

光の国LV1(疲労)

 

バースト無

 

 

ターンを終了せざるを得ないだろう。幾ら何でも圧倒的すぎる。相手は同じ3年生だと言うのに。今まで影でずっと努力していた自分とここまで差があるとは、光乃も思っていなかった。

 

次は五護のターン。これがラストターンとなるだろう。

 

 

[ターン08]五護

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

大機巧武者コンゴウ(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、巨腕の機巧武者ラカンをLV1で召喚する」

手札5⇨4

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

地響きとともに現れるのはコンゴウよりも巨躯の体格に加えて、巨大な手を持つ機巧武者、ラカン。ラカンは一度のアタックで相手のライフを2つ破壊できるダブルシンボルのスピリットだ。

 

五護はこれだけ召喚すると、直ぐにアタックステップに入った。

 

 

「アタックステップ、やれ、ラカン」

 

「ら、ライフで受け…………むぉぉお!」

ライフ3⇨1

 

 

ラカンの巨大な両手が光乃のライフを一気に2つ握り潰した。そしてこれがラスト。コンゴウが背のブースターを器用に使い、走り行く。

 

 

「終わりだ、コンゴウ」

 

「……いいバトルだったぞぉお!五の守護神んん!……ライフで受けるぅ!!」

ライフ1⇨0

 

 

最後まで礼儀正しい自分を貫く光乃国貞。コンゴウの最後の一振りが、そんな彼の最後のライフを無慈悲に破壊していった。これで勝者は五護鉄火。見事に2回戦へと進出していった。

 

彼が勝つバトルでは、あるジンクスがあった。それは、【五護のライフが5のままである】ということ。

 

通常、バトルスピリッツというゲームは、試合が進むにつれ、自ずと互いにライフが減っていくもの、だが、彼のバトルはなぜかずっと5がキープされたまま勝ってしまうのだ。そんなバトルを続けていたからか、いつしか彼は【五の守護神】と呼ばれるようになった。

 

 

「ウルトラマンデッキ、なかなかパワフルだったが、今ひとつたらなんだ……………やはりお前だけだ冬真。俺にいい攻撃を浴びせてくれるのは」

 

 

【界放の三英雄】。そう呼ばれるものたちがいた。それは【ヘラクレス】こと、緑坂冬真と、【五の守護神】こと、五護鉄火と、【エンペラー】こと、吸血堕天だ。

 

彼らはもはや学生が到達できるそれをはるかに超えていた。2年前からずっとこの3人が1位から3位までを独占し、争っていた。

 

そして今年はそんな彼らが3年に上がり、当たり前のように他校の代表になった3年生達を倒していっている。普通ではそんなに実力の差が開くことはない。本当に圧倒的だったのだ。彼らは。

 

ーそんな彼ら3人を倒せるほどの人物が、ダークホースが今大会で現れるのだろうか。

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【初代ウルトラマン】!!」

「初代ウルトラマンは青のコスト4のスピリット!強力なスピリットだけど3ターンで、一度エネルギー補給のために手札に戻っちゃうよ!」







最後までお読みくださり、ありがとうございました!
ウルトラマンに関してはまたどこかでちょくちょく出そうと思っています。
今まで、デジタルスピリット、仮面スピリットとコラボカード達は皆、そう呼んできましたが、系統に成長期や、仮面などの特別な系統を持たないウルトラマンや、ゴジラ達は飽くまで普通のスピリットとして登場させますので、ご了承ください。


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第20話「エンペラーの脅威!仮面ライダーキバ!」

 

 

 

 

大いに盛り上がった界放リーグの1回戦も残すところ後一試合。残った2人がこの巨大な中央スタジアムに上がってくる。タイタス校1年の岸田空牙と、【エンペラー】とも呼ばれているデスペラード校3年の吸血堕天だ。

 

 

「いやぁ!やっと出番だ!よろしくお願いします!吸血先輩!」

「うるさいぞ、愚民……さっさと始めるぞ」

「えぇっ、辛辣っすねー」

 

 

ー吸血堕天。バトスピ一族の1つ、【吸血一族】の末裔でそのエリート。彼は昔からバトスピの英才教育を受け、貴族さながらの家庭で育った。それ故に一族ではない普通のカードバトラーを「愚民」、または「下民」というふうに見下していた。

 

そして彼は【吸血一族】に伝わる最強のデッキを授かっている。ただ、それを使用しても、去年、一昨年とヘラクレスや、五の守護神に敗れている。彼らはなんの一族にも属さないので、彼からしたらそのことは屈辱的なことであって、

 

ーそして1回戦最後の試合、第六試合が幕を開ける。2人はBパッドを展開し、バトルの開始を宣言した。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

ーバトルが始まる。先行は吸血。

 

 

[ターン01]吸血

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、バーストを伏せ、ターンを終了する」

手札5⇨4

 

バースト有

 

 

吸血の場に早速バーストが伏せられた。だが、彼が行ったのはそれだけで、スピリットやネクサスを呼び出すことなくそのターンを終えた。

 

次は空牙のターン。彼はその胸を高鳴らしていた。この界放市のバトラーにとって、界放リーグに出場することはとても栄誉のあること。空牙はそれに憧れがあった。しかもその初戦の相手が去年、一昨年で3位入賞の吸血。俄然燃えてくる。

 

ーしかも吸血は空牙と同じ仮面スピリットの使い手だ。当然空牙もこのことを知っている。そのことも相まって、彼のテンションはマックスに上り詰めていた。

 

 

[ターン02]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「うぉぉお!!メインステップゥ!仮面ライダークウガ!マイティフォームをLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「!…仮面スピリットだと!?」

 

 

空牙が早速呼び出したのは炎のように赤く燃え滾る色をしている仮面スピリット、クウガのベースフォーム、マイティフォーム。

 

咄嗟に仮面スピリット使い同士のバトルと知った途端、吸血は不快な顔をする。

 

 

「貴様っ!……下民如きが何故仮面スピリットを使う!」

「ん?いやなぜって、カッコいいからに決まってるでしょ!見てくださいよ〜!この赤いフォーム!」

「……下民には仮面スピリットやデジタルスピリットは似合わん!昔で言う貴族、今で言う一族にこそそれは相応しい!」

「む!別にいいじゃねぇっすか!使うくらい!」

 

 

ドスの効いた口調で空牙を威圧するかのようにそう言い放つ吸血。

 

吸血は本気だ。本気で仮面スピリット、クウガを使う空牙を否定している。今の時代は様々なデッキが飛び交うバトスピの時代。その過程でデジタルスピリットや仮面スピリットの使い手が増えるのは必然であると言うのに。それは彼に教育を施した父の影響でもあって、

 

空牙も空牙で本気でその言葉を受け取ってはいない。軽く受け流している。彼は兎に角器がでかい。その程度の文句など意に介することは絶対にありえない。

 

 

「よっし!気を取り直してぇ!バーストをセットォ!アタックステップゥ!いけぇ!マイティフォーム!」

手札4⇨3

 

 

空牙の場にバーストが伏せられる。

 

そして空牙の支持を聞き、全速力で走り出すクウガ マイティフォーム。吸血の場は何もなく、バーストのみ。この攻撃は当然。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

マイティフォームの炎を纏わせた強烈なパンチが、吸血のライフを1つ豪快に破壊した。

 

だが、これは吸血のバーストの発動条件でもあって、それは彼のデッキの中核を担うスピリットカードだ。

 

 

「ライフの減少によりバースト発動!仮面ライダーキバ キバフォーム!」

「!??!」

「キバフォームはバースト効果で相手のスピリットのコアを2つリザーブに送った後に、召喚される……僕が対象に選ぶのは当然マイティフォームだ!消え失せろ!下民の仮面スピリットよ!」

 

「ぐっ!」

仮面ライダークウガ マイティフォーム(1⇨0)消滅

 

 

マイティフォームの頭上に現れるのは謎の黒い人影。それは上空からマイティフォームに強烈なかかと落としを浴びせた。

 

コアの損失により、マイティフォームは消滅した。そして飛び跳ねるように吸血の場に姿を現した。それは【吸血一族】に伝わる最強のデッキのカード、【キバ】だ。そしてこれはそのフォームの1つ、最も基本的で中核を担うキバフォームだ。

 

 

「おぉ!これが吸血先輩のキバか!」

 

「ふん!……キバフォームの召喚時により、デッキからカードを1枚ドローする」

手札4⇨5

 

 

キバフォームの持っている効果は紫属性のデッキでは最も重要な効果。吸血は手札を少しだけ潤わせる。

 

 

「このターンはエンド!」

 

バースト有

 

 

アタックするスピリットを失ってはしょうがない。空牙はこのターンを終えた。

 

 

[ターン03]吸血

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

 

 

「メインステップは特に何もせずにアタックステップ、やれ、キバフォーム」

 

 

キバフォームが走り行く。目指すは空牙のライフ。空牙も場にバーストのみ、アタックは当然ライフで受けるしかなかった。

 

 

「ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

キバフォームの強烈なパンチが空牙のライフを1つ破壊した。

 

だが、吸血同様、ライフの減少がバースト発動の条件だ。それが勢いよくひっくり返る。

 

 

「ライフの減少でバースト発動!ダイナバースト!……この効果でBP10000以下のスピリット1体を破壊!キバフォームを破壊!」

 

 

キバフォームの足元から突如として火柱が立ち上る。キバフォームはそれに焼かれ、瞬く間に焼失した。

 

ーだが、

 

 

「キバフォームはLV2の時、手札のカードを1枚破棄することによって、手札に戻る………僕はこのカードを破棄する」

手札6⇨5⇨6

破棄カード

【キャッスルドラン】

 

「!!」

 

 

焼失したキバフォームだったが、その魂であるカードだけは吸血の元に戻っていった。

 

 

「キバフォームは死なん…………これでターンを終了する」

 

バースト無

 

 

キバフォームは帰還したものの、今度はバーストもスピリットもなくそのターンを終了してしまった吸血。だが、その顔には余裕の表情を浮かべており、

 

 

[ターン04]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!(……とは言ったものの、この手札じゃ攻められない…………ここは待つか)」

 

 

意気込んでターンシークエンスを進める空牙だったが、その手札にはこのターン攻めることができるスピリットはいない。吸血の場にスピリットもバーストもいない絶好のタイミングだと言うのに。

 

だが、やれることがないわけじゃない。空牙はなんとか手札と場のシンボルを整える作戦に切り替える。

 

 

「俺はネクサスカード、燃えさかる戦場〈R〉を配置!」

手札4⇨3

リザーブ7⇨4

トラッシュ0⇨3

 

 

空牙の背後に山火事のように燃え滾る戦場が出現した。これはBPが低めになりがちなクウガには相性バッチリのカードであって、

 

そして空牙はさらに手札を使う。

 

 

「さらに、マジック、ソウルドローを使用する!ソウルコアも支払って、デッキから3枚のカードをドローする!」

手札3⇨2⇨5

リザーブ4s⇨0

トラッシュ3⇨7s

 

 

一気に手札の枚数を稼いだ空牙。だが、攻勢に回ることはできない。このターンは盤面に使えないネクサスだけを残して終了する。

 

 

「ターンエンド」

燃えさかる戦場〈R〉LV1

 

バースト無

 

 

次は吸血のターンだ。

 

 

[ターン05]吸血

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札6⇨7

 

 

「メインステップ、再びバーストを伏せ、仮面ライダーキバ ガルルフォームをLV2で召喚」

手札7⇨6⇨5

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

「おぉ!別フォームのキバ!」

 

 

再びバーストが伏せられると同時に現れたのは仮面ライダーキバ ガルルフォーム。

 

さっきのキバフォームは赤色が基準だったが、今度のフォームは青色が基準。そのフォルムはとても野性的だ。口には刀の様なものが咥えられている。

 

 

「アタックステップ、ガルルフォームでアタック」

 

 

野性的で低い姿勢のまま走り出すガルルフォーム。その動きはとても早く、目で追うのが精一杯だ。

 

空牙はこのターン、反撃のすべがない。

 

 

「このターンは仕方ない!ライフだ!」

ライフ4⇨3

 

 

ガルルフォームの素早い一撃が空牙のライフを貫いた。

 

だが、ガルルフォームの攻撃はこれだけでは終わらなかった。その効果が使用される。

 

 

「ガルルフォームの効果!ガルルフォームはライフを減らした時、ターンに一度だけ回復する!」

仮面ライダーキバ ガルルフォーム(疲労⇨回復)

 

「なにぃ!?」

「今一度引き裂け!ガルルフォーム!」

 

 

ガルルフォームの効果だ。単純に攻撃回数が増えるだけでなく、ブロッカーにも使える利便性の高い効果だ。ただ、今回は攻勢に回されたが、

 

 

「ライフで受ける!…………ぐぅっ!」

ライフ3⇨2

 

 

ガルルフォームの咥えられた刀の一撃が、空牙のライフをさらに1つ破壊する。

 

 

「ターンを終了する………他愛もないな、下民。……口ほどにもないじゃないか」

仮面ライダーキバ ガルルフォームLV2(3)BP4000(疲労)

 

バースト有

 

 

「まだまだ、これからっすよ!先輩!」

 

 

鼻で小馬鹿にする様に空牙とそのデッキを侮辱する吸血。だが、空牙とて、このまま引き下がることはない。なんとかこの盤面をひっくり返す策を考える。

 

 

[ターン06]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨10

トラッシュ7⇨0

 

 

「メインステップ!一気に行くぜ!ゴウラムを召喚!」

手札6⇨5

リザーブ10⇨8

トラッシュ0⇨1

 

 

クワガタの様なスピリット、ゴウラムが飛翔した。ゴウラムは仮面スピリットではないものの、それをサポートできる優秀なスピリットだ。

 

 

「その召喚時の効果で、トラッシュに落ちたマイティフォームを手札に加える!」

手札5⇨6

 

 

トラッシュのマイティフォームのカードが、空牙の元にひらひらと舞い戻る。

 

 

「さらに、今戻ったマイティフォームと、クウガ&トライチェイサー2000をLV2ずつで連続召喚だ!」

手札6⇨4

リザーブ8⇨0

トラッシュ1⇨3

 

 

空牙の場に再び姿を見せるマイティフォーム。そしてもう1体はバイクに乗ったマイティフォーム。その攻撃力は計り知れない。

 

並べられたこの3体のスピリットでアタック、……………かと思われたが、空牙がとった選択はとても意外なもので、

 

 

「アタックはしない!ターンエンドだ!」

ゴウラムLV1(1)BP2000(回復)

仮面ライダークウガ マイティフォームLV2(3)BP4000(3)BP4000(回復)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV2(3)BP6000(回復)

 

燃えさかる戦場〈R〉LV1

 

バースト無

 

 

「アタックしないだと?……僕のバーストに恐れをなしたか下民よ」

「ハッハッハ!それはどうかな?さぁ!次は先輩のターンっすよ!」

 

 

空牙には当然考えがあった。今現在、吸血が伏せているバーストはさっき効果により戻った仮面ライダーキバ キバフォームと見てまず間違いない。

 

だったら1つだけあるのだ。あのバーストを使わせた挙句、彼のライフを全て破壊する方法が。

 

 

[ターン07]吸血

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

仮面ライダーキバ ガルルフォーム(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、ガルルフォームのLVを3に上げ、アタックステップ、再びガルルフォームでアタックしよう」

リザーブ5⇨3

仮面ライダーキバ ガルルフォーム(3⇨5)LV2⇨3

 

 

ガルルフォームのLVが上がり、BPが7000となる。

 

そしてガルルフォームは狼の様に地を駆ける。空牙の場にはガルルフォームにBPで勝るスピリットはいない。

 

が、対抗するすべがないわけではない。空牙は手札のカードを1枚引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!クウガ ペガサスフォームの【チェンジ】発揮!対象はマイティフォーム!………回復状態でこれを入れ替える!」

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ3⇨5

仮面ライダークウガ ペガサスフォームLV2(3)BP4000

 

「!!」

 

 

マイティフォームの中心にに竜巻が発生する。マイティフォームはその中で体の色を変えて行く、そして新たに現れたのは緑のクウガ、ボウガンの様な武器を所持したペガサスフォーム。

 

 

「ペガサスフォームの【チェンジ】の効果!BP7000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊!…………ガルルフォームはもらったぁ!」

 

 

ペガサスフォームはそのボウガンに風の力を集中させ、一気に放つ。それは瞬く間にガルルフォームの胸部を撃ち抜いた。ガルルフォームは勢い余って転げ落ちながら力尽き、爆発した。

 

 

「下民如きが………【チェンジ】を使うだと!?」

「仮面スピリットも今や多様化の時代っすよ!先輩!」

 

 

彼にとって仮面スピリットを一族でもない者が使用するのはとても腹ただしいことであって、

 

特に単なる憧れだけで仮面スピリットを使用する空牙など彼にとっては一番気に入らないタイプであった。

 

だが、このターンではその怒りは自分の中に閉じ込めておくしかない。吸血は仕方なくそのターンを終えることになった。

 

 

「…………ターンを終了する」

バースト有

 

 

吸血の場には何もない。空牙は今が攻め時だと見て次のターン。自分のデッキのエースをチェンジさせる。

 

 

[ターン08]空牙

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップゥ!再びマイティフォームを召喚!LV3!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨1

トラッシュ0⇨1

 

 

三たび仮面ライダークウガ マイティフォームは姿を現した。

 

そして空牙はアタックステップに移行する。このバトルの決着をつけるために。

 

 

「アタックステップゥ!マイティフォームでアタック!………マイティフォームのLV3のアタック時の効果でカードを2枚ドローする!」

手札4⇨6

 

 

走り出すマイティフォーム。狙うは吸血のライフだが、ここで空牙はマイティフォームを対象に【チェンジ】させる。いや、もはやそれを【チェンジ】と言っていいのかは定かではない。何せ、それはクウガの進化系なのだから。

 

 

「そして!フラッシュ【チェンジ】!発揮!対象はマイティフォーム!」

リザーブ1⇨0

仮面ライダークウガ マイティフォーム(4⇨3)LV3⇨2

仮面ライダークウガ ペガサスフォーム(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ1⇨5

 

「!!」

 

 

マイティフォームの頭上に莫大な雷エネルギーが投下される。マイティフォームはそれを吸収し、強化される。

 

 

「雷を纏え!マイティ!……………俺のエース!ライジングマイティにチェンジ!…………ライジングマイティの【チェンジ】の効果発揮!このターン、俺のすべてのスピリットをダブルシンボルにする!」

 

 

強化されたマイティフォームの名は、仮面ライダークウガ ライジングマイティ。その雷のエネルギーは他のスピリット達にも伝染する。

 

ダブルシンボルということは、一度のアタックで2つのライフを破壊できるということだ。吸血のライフは4。つまり2回。2回のアタックを倒せば彼のライフを0にできる。

 

 

「【チェンジ】で入れ替わったスピリットは、元となったスピリットがバトル中であればそのままバトル続行!………いけぇ!ライジングマイティ!」

 

 

空牙の場のスピリットは合計で4体。回復状態のライジングマイティの追撃の事も考えると合計でダブルシンボルのアタックを5回行うことができる。

 

あのバーストは仮面ライダーキバ キバフォームであってもそれを通り越して吸血のライフを0にすることが可能だった。

 

ーが、このバトル中、誰もあの吸血のバーストがキバフォームであると言及してはいない。

 

 

「やはり愚かな下民だな、お前は……………………ライフで受ける」

ライフ4⇨2

 

 

ライジングマイティの炎と雷を纏わせた強烈なドロップキックが、吸血のライフを一気に2つ破壊した。

 

そしてここでライフ減少後のバーストを発動させる。それはこの場ではとても想像できなかったものであって、

 

 

「ライフ減少後のバーストを発動、………………絶甲氷盾!」

「………なに!?…き、キバフォームじゃない!?」

 

 

予想されたバーストとは全く別のバーストを伏せていた吸血。そう錯覚させられていたのだ。一度そのバーストを見せ、手札に戻し、もう一度バーストを伏せる事で、そのバーストが同じバーストであると印象付けられていた。

 

そして実際に伏せられていたのはどの色でも気軽にデッキに入れることのできる防御マジック。

 

 

「この効果でライフを1つ回復し、コストを払い、このターンのアタックステップを終了させる………誰がこのバーストがキバフォームだと言った?」

ライフ2⇨3

リザーブ10⇨6

トラッシュ0⇨4

 

「ぐっ!」

 

 

仮面スピリット達でも身動きができなくなるほどの猛吹雪が空牙の場を襲う。これではもはやアタックなど行えない。

 

はめられた。完全に。吸血がそういうことをした理由はただ1つ。この次のターンで決めれるようにするためだ。

 

 

「…………ターンエンド」

仮面ライダークウガ ライジングマイティLV2(3)BP10000(回復)

仮面ライダークウガ ペガサスフォームLV1(1)BP3000(回復)

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000LV1(1)BP4000(回復)

ゴウラムLV1(1)BP2000(回復)

 

燃えさかる戦場〈R〉LV1

 

バースト無

 

 

仕方なく空牙はそのターンを終了させ、吸血にそれを渡した。

 

 

[ターン09]吸血

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨11

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、再び仮面ライダーキバ キバフォームを召喚、LV2」

手札7⇨6

リザーブ11⇨5

トラッシュ0⇨3

 

「!!」

 

 

吸血は回収していたキバフォームをようやくここで呼び出した。このスピリットを軸に、今度は吸血のエーススピリットが呼び出される。それはとても強力極まりないものであって、

 

 

「さらに俺は【チェンジ】を発揮させる………対象はキバフォームっ!……【チェンジ】の効果で、お前のスピリットすべてのコアを2つずつリザーブへ送る!」

リザーブ5⇨0

 

「なに!?……………うぉっ!」

ゴウラム(1⇨0)消滅

仮面ライダークウガ ペガサスフォーム(1⇨0)消滅

仮面ライダークウガ&トライチェイサー2000(1⇨0)消滅

仮面ライダークウガ ライジングマイティ(3⇨1)LV2⇨1

 

 

突如発生した紫の斬撃を飛ばすかのような衝撃波。それは空牙の場のスピリット達を一切に切り刻ん