七武海 黄金のテゾーロ (たんばりん)
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第1章 英雄の名はテゾーロ
第1話 神様転生!!


処女投稿レベルです。
神様の登場シーンはこの話だけのつもりなので極力飛ばしました。
よろしくお願いします。


ん?ここは?

 

気がつくと彼は真っ白の空間に来ていた。

 

辺りに目を向けても一面、白。

壁も、床も目に入る限りの景色がすべて白一色である空間に彼は立っていた。

 

「気がついたか?人間よ」

ふと、後方から声が響き彼は振り返る。

そこには全身白いローブのようなものを着た白髭を伸ばした老人が立っていた。

「ん?あなたは?ここはどこですか?俺は先ほどまで自分の部屋で寝てたような・・・」

急な展開に追いつけず彼こと、この物語の主人公となる男は目の前の老人に声を掛ける。

 

そうなのだ。彼こと主人公は実家暮らしのプー太郎(今では死語かもしれないが)であり、

週7日とまでは行かなくも毎日のようにパチンコに行き、消費者金融から借り続け、借金が膨らみ、次の返済をどこからやりくりしようが悩みつつ、その日もなんとかなるかと考え眠りについた筈なのだ。ではこの空間は夢だろうかと一瞬考えるが彼はすぐさまその考えを捨てる。

彼の唯一の特技は夢を見ない程爆睡することである。もっとも普段から仕事をせずにパチンコ屋の往復のみの生活を送っている男がなぜそこまで疲れることがあるのだという話ではあるが。

話が脱線したが彼は夢をその生涯一度も見たことがないのだ。だからかは謎だが、彼はこの身に起きている現状について即座に断言が出来た。これは夢じゃないと。

では夢でないとしてこの現実はなんだ。目の前の老人は?やけに白いこの空間は?等々試行錯誤しているとその考えは目の前の老人の行動により棄却された。

 

「すまない!!!」

急に目の前の摩訶不思議な恰好をした老人急に土下座をしたのである。

「え!?いや、急にどうしたんですか?!」

彼もすかさずその老人を立たせるべく老人の腕を掴むがその老人はビクともせず頑なに土下座のポーズと取り続ける。

「すまない!許してくれ!!!!」

老人が白い床に額を擦り付けながら叫ぶ。

「いや、許すも何も、急に土下座をしている訳を聞かせてください!!どうして土下座なんてしているのですか?」

彼は老人に問うが老人から明確な返答はない。あるのはただ「すまない!」という言葉だけ老人は繰り返す。

何度、そのわけを聞いただろうか。やがて彼の方から折れ彼は一言「わかりました。許しますから。だから頭をあげてください。」と老人に伝えると先ほどまで地面に額をつけ誠心誠意謝っていた老人はバッと顔を上げる。

「おぉ!許してくれるか!!言質はとったぞ!!!ありがとう!!」

老人はすぐさま体を起こしズボンのホコリを取るようにパッパッと叩きニマリと破顔する。

彼はその変わりようを見て「あ、この人やばい人だ。」と警戒レベルを上げるが既に遅かった。

「儂はおぬしら人間が言う神じゃ。すまんがお主を間違って殺してしまったのじゃ。ガハハハハ!儂の間抜け!!ガハハハハ!」

「は?」

彼は素っ頓狂な事態に情けない声を出すが老人は止まらない。

「じゃが言質はとったぞ!!すまんな!人間の青年よ!いやあこの通りじゃ!すまんすまん!ガハハハハ!」

自らを神と名乗る老人がいままでの真摯な土下座は嘘のように片手でごめんごめんとジェスチャーをする。

「ちょ、ちょっと、待ってください。あなたが神さま?!それに殺したって!え?は?」

彼はそうして自分の体に目を通す。腕も足も腹も、いままでみていた景色、肉体となんら遜色はない。寝る前と変わらず小太りな体型だ。

「まあ、急に連れて来られて信じれないのもわかるが儂をよく見てみぃ。ほれオーラがでとるじゃろ?」

老人の言葉に彼はよく、その神様とやらの姿を見る。すると確かに背中に後光のような光とも言える、オーラに見えなくはないが、彼自身そのオーラとやらを見たことないが。確かに老人の背には後光が見えている。

「まぁ、これは後ろにライトがあるからじゃが。」

「いや!オーラじゃねえのかよ!クソジジイ!!」

老人はそう言ってその場から一歩横にずれると確かに後ろには大きなライトが老人が立っていた場所を照らしていた。

「クソジジイとな?お主、誰に口を聞いておるのじゃ?儂は神じゃぞ!!」

老人の言葉に再び発した瞬間なぜか再びライトが当たる。

「おい!もういらねぇよ!そんな演出!早く俺を戻せ!」

老人の不可解な言動に彼のフラストレーションは一瞬で溜まり老人にここから出すようせがむと老人の顔つきが変わった。

「良いのか?戻してもお主はあっちの世界で多重債務者の引きこもり穀潰しではないか?

儂がこうしてお主を殺してしまってすまなかったと謝りここに連れてきた理由も聞かず帰るのは非常に勿体ないと思うぞ?」

先ほどとは打って変わり老人の真面目な態度に驚く彼であったが、確かに老人の意見は一理あると考え、何故この老人が自分を多重債務者だとわかるのか?この空間は何だとか様々な疑問が頭に浮ぶがとりあえずはここに連れて来られた理由とやらを聞こうと考え騒ぐのを辞めた。

「うむう。どうやら冷静になってくれたようじゃな。」

老人は彼のその様子に満足そうな顔を浮かべ頷いた。

「儂がお主を呼んだのは他でもない。お主を間違って殺してしまったから特別に転生させてやろうと思ってのことよ。もっとももう元の世界には戻れないしの。」

「戻れねえのかよ!!」

彼は再び老人に突っ込む。

「当たり前じゃろ?お主は死んでるんじゃぞ?心臓麻痺での。まぁ死んだのはワシの手違いじゃが。それでどうするんじゃ?お主の選択肢は二つ。普通に転生するのか儂の『好意』で『特別に』転生するかじゃ。」

老人は彼の目の前に指を二本立てる。

「いや、特別にってあなたのミスでしょ?」

彼は老人に言うがそれは無視される。

「ええい!早くきめんか!!儂はこれでも忙しいんじゃ!ちなみに転生する世界はONE PIECEの世界じゃ。」

「するするするする!!もちろん転生特典マシマシでおねがいします!!!」

老人の言葉に彼はすぐさま反応しその老人を神だと断定する。

非常に現金ではあったがあるが彼は大のワンピースファンなのだ。いや正確にはワンピースの女性キャラがであるが。

「なんじゃ?お主、先ほどまで現実に返せとうるさく喚いたではないか。」

老人は彼のその態度の変わりように苦笑いを浮かべた。

「いえ!!もう俺、いや私は神様についていきます!!!ですので何卒!!何卒転生特典とやらをください!!!」

今度は逆に彼が老人に土下座をする。

「まぁ、覚悟を決めることは確かにいいことじゃ。どれ説明にもどっていいかの?」

老人は自分のヒゲをしごきながら彼を見下ろし言った。

「はい!神様ッ!!」

「なんじゃ、調子狂うのぅ。そんな見事な掌返しをされると。」

老人は彼をジト目でみるが土下座している彼はずっと頭を上げることはない。

「まぁ、なんじゃ。儂も時間がないのでの。テキパキと話をすすめるがの。

お主にはワンピースの中で好きなキャラクターに転生させてやることが一つ。

そしてさらにお主の望むものを3つ与えてやろう。

もちろん前世の記憶も転生に付随してやるぞ?。

まあ、前世の記憶を蘇らせるキーを与えるといったものかの。

転生して、すぐに前世の記憶が覚醒する訳ではないぞ?

あくまでそのキーを与えるだけじゃ。

まあ、生きてればいつか思い出すであろう。それが10年後か、20年後か、はたまた死ぬ前かは誰にも分からぬがのぅ。

では望むキャラクターと、望みを三つ儂に教えてくれぬか?

儂は本当に忙しい身なのじゃ。はよ決めてくれ。」

 

彼は老人が話している最中に所々質問をしようするがそのたびに老人が何かを察したのか彼を指さすと途端に口が開かなくなった。恐らく質問はするなという意味合いなのだろうが、ここにきて急に摩訶不思議な技を使うものだと感心する彼であった。

 

 

 

 

そして老人にせかられながらもも悩むこと30分。

老人が痺れを切らし貧乏ゆすりを始め出した時ようやく彼の願いが決まったようだ。

「うむ。決まったようじゃの。随分と待ったが、ではそれぞれ願いを言え」

「では、キャラクターはギルド・テゾーロ。願いは、覇王色の覇気の素質、武装色の覇気の素質、あとゴルゴルの実の能力をドフラミンゴと対立フラグ無しで手に入れることです!」

「ほぅ、テゾーロ とな。まあそこは良い。儂もあのキャラは何故か好きじゃった。願いも二つは把握したが何故ゴルゴルの実をすぐに望まぬ?

儂ならすぐさま望むが。」

老人は心底不思議そうに、しかし面白いというような顔を浮かべ彼に問うた。

「単純にドフラミンゴから奪うよりなにか偶然の方が人生楽しいと思っただけです!もちろん早くにもらうに越したことはありませんが、それは神様に任せます!」

「ほぅ、なるほどな。ではその願い聞き届けた。

あとちなみにだかこれから行く世界で貴様以外の転生者はおらん。それも都合というもの。充分に楽しめ。

ギルド・テゾーロよ」

老人が言葉を言うや否や、彼、この物語の主人公であるギルド・テゾーロの視界は白く限りなく白くホワイトアウトされ、彼は意識を失った。

 

 



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第2話 奴隷のテゾーロ

テゾーロたん記憶喪失でふ。


ここは天竜人がおわす聖地 マリージョア

 

そこで一人の青年が背中に天竜人の所有物である焼印を背中に押され、全身傷だらけの男が牢に閉じ込められていた。

彼の名はギルド・テゾーロである。

12歳の頃、不仲だった母の元を飛び出しスラムに住み。

数年そこで盗み、殺人、強姦様々な悪事に手をつけ

しまいには人身売買の片棒も担いでもいた。

しかし、そんな彼も現在21歳

天竜人の奴隷になってから早3年目。

何故彼が奴隷になったのかをここで語ろう。

12歳の頃、家を飛び出しスラムの住人になり早一年。

生まれつきの素質なのか、才能なのか彼には不思議な力があった。

感情を昂ぶらせた時に発動する力

その時の彼はその力がなんなのか理解は出来ていなかったが、

彼の周りの人間はテゾーロの視線を浴びると卒倒してしまう。

時には屈強な男たちと戦う時は腕を漆黒で包み殴り飛ばし、それで気がすまねば相手の首の骨をへし折る。

それさえも容易に出来てしまう能力にテゾーロの周りも、彼自身も魅了されていた。

しかし、その日は雨の時。

テゾーロは人身売買での仕事で攫ってきた男を人間屋に売り渡し、ただ、興味本位でほかの商品を見て回った時彼女に出会った。

その女の名はステラという。

美しかった。彼が今まで見た人間の中で。

初めは容姿に惹かれ、少し話してみようと好奇心に押され彼女に話しかけた時、彼女は冷たい声でテゾーロに言った。

「なに?なにか用かしら?生憎貴方のようなクズに知り合いなんて居ないと思うのだけど。

あなたもわたし達、何も罪無い人間を売ってお金にしてるんでしょ?楽しい?人が悲しむ顔見ながら生活するのは?美味しい?人を売って手に入れたお金で食べるご飯は。

貴方のような人たちには一生私たちの気持ちも、絶望という感情にも無縁なんでしょうね。

楽して生きて、人を不幸にして。」

彼女は矢継ぎ早にテゾーロに己が考え得た最大限の批判を、不満を彼にぶつけた。

それを聞いたテゾーロはステラに対し酷い憤りを感じた。

「何故、お前のような女に俺が諭されなくてはならない!お前に俺の何がわかる!?

俺だって他に仕事があればやったさ!でもな!ここはスラム街。ならず者の町。全うな仕事なんてあるわけないだろ!!」

「分からないわ。だって他人ですもの。それにあなたのような人のことなんて分かりたくないもの。

そもそもスラムだ、スラムだなんて言い訳しながら実際はただ楽なほうに流されているだけじゃない。」

 

テゾーロは思った。

この女、容姿だけが取り柄で口は汚い。何故母親でも無いのにここまで言われなければならないのか。いっそ殺してその口を閉ざしてやりたいと。

ステラは思った。

早く目の前から消えてと。

思うことは両者同じような事だが、しかし、何故か、テゾーロはステラに惹かれていたのもまた事実。

容姿が美しいから?

違う。

テゾーロを否定したから?

違う。

その理由は彼にも分からなかった。

しかし、この日からテゾーロは毎日ステラのところに顔を出しステラに悪態をつかれながらも話しかける姿をよく見かけるようになった。

そんな日々が続いたある日。

今日も今日とてテゾーロはステラの元に顔を出し、

ステラに言った。

「生意気なお前だけど、俺が買ってやるよ」

最近は彼を冷たくあしらいながらしかし、時折笑顔を見せるようにまで親密になっていたステラは初めてテゾーロに対し激情な感情露わにし、叫んだ。

「馬鹿にしないで!!あなたのような人を売って手に入れたお金で私を買うなんて、私をあなたと同じじゃない!!

そんな汚いお金なんていらない!!

そもそも何!?買ってやる!?貴方何様よ!確かに私は人間屋(ヒューマンショップ)の商品よ!

でも!それでも人としての尊厳まで売り払ったつもりはないわ!!

どうして気がついてくれないの!?あなた達のそんな所が本当に嫌い!いくら私が商品だとしても私も貴方と同じ人間よ!

なぜ気がついてくれないの?最近私の元へ来るようになったのは何故!?

品定めするためなのっ?!」

「ち、違うっ!!俺は君を商品だなんて  「だったら!!だったら初めからそう言ってよ。何が『買ってやる』よ。貴方だけには私をちゃんと見て欲しかった。」・・・ステラ・・ごめ「もう黙って!二度と私のところへは来ないで!!!」

ステラの涙を流しながらの咆哮のような感情の吐露を聞いたテゾーロはかなり衝撃を覚えた。

その後、彼は何度彼女に謝ろうとも、話しかけようとも彼女は口を開くこともテゾーロのこと見ることもなかった。

そしてテゾーロは彼女の前から去って行った。

 

テゾーロがステラの元へ行かなくなって3年。

彼は久方ぶりに、人間屋のステラの元へ訪れていた。

「ステラ。久しぶりだね。

君にあの時言われて目が覚めたよ。

実は今真面目に働いてるんだ。ここ三年は近所では全うな仕事がなっかったからさ、出稼ぎに行ってたんだ。

ははっ。笑っちゃうよな。この俺がだぜ?

12歳の頃からスラムに住み、盗みも喧嘩も他にもいろんなことをした。

だけどあの時君に言われてから目が覚めたんだ。

あの後迷惑かけた人たちに謝りに回って、仲間の元を抜け、ちゃんと今は全うな仕事してるんだ。

こうして君に会いに来たのは、もう少しで君を解放してあげるだけの金が貯まりそうなんだ。

でもよかった。まだ君がここに居て。

ねえ、もしお金が溜まれば俺と一緒にいてくれるか?

それが聞きたくて今日はこうして君に「なんでそこまでするのっ!?」

なんでって…なんでかな?俺にも良く分からねえ。だけど

君にあの時会った時、そして君に言われた時俺は、このままじゃ、ダメだと思ったのかもしれない。

それに何より君と一緒に居たいと思ったのかも知れない。

明確に何でっていうのは俺自身分からないけど、何故か、君と一緒に居たいんだ」

テゾーロは檻越しに座るステラの顔を見つめ自分の気持ちを伝えるとステラは涙を流した。

「私は、あなたが許せない!

私はあなたに売られたわけじゃないけど、あなたはここでいろんな人を売った!

私が嫌う悪人そのものだった!それなのに!

どうしてあなたは私の心の中に居続けるの!?出て行ってよ!!

あなたのことなんて好きじゃないのに!!」

 

 

「好きじゃない」

 

 

ステラの言葉にテゾーロは少なからずショックを受けるがその様子をおくびにも出さずステラを見つめた。

テゾーロ自身も分かっていた。

ステラは自分を愛してくれないと。

でも、これは自分のわがままかもしれない。

例えステラが今自分を愛してくれなくても、

テゾーロ自身は彼女をこれから愛し、守っていく。

ステラが今の彼を望まぬならこれからも、いや、これまで以上に専心誠意被害者に謝り、真っ当な仕事で金を稼ぎステラと共に居たい。

第三者から見ればテゾーロの思想は若干狂気に満ちてるかもしれない。

しかしテゾーロはステラに対し自分の思いの丈、今後の事を丁寧に、優しい声音で伝えた。

テゾーロが、全てステラに話したいことを伝えた時、ステラはまたもや泣いた。

そして一言彼に言った。

「ありがとう。待ってる」と。

テゾーロはステラのその言葉を聞き笑顔で頷くと今日もまた建設の仕事に出て言った。

テゾーロとステラが仲直りしテゾーロの人間屋通いが再び始まって2ヶ月後、

奴は突如とした現れた。

「金さえあればなんでも買えるだぇーん。

おい。女早く歩くだぇーん。」

テゾーロが今日もステラの元へ行こうと人間屋の前に着いた時、宇宙服のような服を被った奇妙な格好をした男がステラに鎖を付け引っ張っていた。

「ステラっ!!!」

彼は思わずステラに近づこうと走った。

一歩、また一歩ステラに近づきようやく手が届きそうな距離の時、彼は気がついたら背中から地面に押し付けられ、腕を縛るように拘束された。

背後には人間が乗って彼を抑え付けられてるのだろう。それなりの重さを背中から感じるテゾーロであるが、彼もまた一時はスラムを仕切っていた人間。

当然のようにもがく。

しかし、ビクともしない。

テゾーロは自分が持つ不思議な力を体全体で出すようにイメージし、テゾーロ自身の体が黒くなろうと彼を抑えつける力は一向に弱まらない。

「なんじゃぁ。お主一丁前に覇気なんぞ使いよって」

テゾーロが未だにもがいてる最中、彼の後方から若干訛りがあるような独特の声で話しかけられる。

どうやら。その声はテゾーロを抑えてる者のようだ。

「お前のようなもんが、この人にとやかく出来るもんでもなし、いい加減諦めろ。

それに、儂の覇気の前ではお主がどうにかしのうとしたとて無駄じゃと分からんのか!」

グッ!

テゾーロを抑えつける力は更に強くなる。

しかし、彼も諦めない。

「ステラっ!!ステラ!!」

彼は自分が出せる限りの声で鎖に繋がれた彼女の名を叫ぶと、ステラは彼の顔をみて涙を流した。

「テゾーロ。ありがとう。あなたが私のために変わって私の為に一生懸命働いてくれたことは分かってたよ。

それが何よりのも嬉しかった。私は世界一幸せ者よ。」

ステラはそれだけ言うとそれ以降顔をテゾーロには向けず地面を見つめ肩を震わせるだけだった。

そんな二人のやりとりを見て何かを感じた天竜人もテゾーロに、さらにはステラに向かって

「世の中は金だぇ〜。金が全てだぇ。」

そう残し、ステラを引き連れテゾーロの前から去っていった。

そして、これは後に分かったことだが、テゾーロを抑えつけていた人物のは名は当時天竜人の護衛をしていたサカズキ中将であり、

彼、テゾーロは天竜人に逆らったとし、サカズキ中将他海軍の連中に連行され、

犯罪奴隷として背中に奴隷の焼印を押されマリージョアへと連行されたのであった。

 

 

そして、時は現在に戻り。

テゾーロ21歳。

ステラを連れ去った天竜人に対し反逆の意思ありとされ、犯罪奴隷に落とされて、早2年。

彼はこの世の中に絶望していた。

何故なら先日、自身を飼う天竜人 チャルロス聖から聞かされたステラが死亡したという情報を聞いたことによって。

詳しい理由はチャルロス聖はテゾーロに言わなかったが、どうやらチャルロス聖はテゾーロとステラの中をおおよそ把握しており、その死を面白半分にテゾーロに伝えたことにより、テゾーロは深い悲しみに追われた。

金があれば。

金さえあればステラを買えたのに。

金さえあれば二人で幸せになれたのに。

金さえあれば俺も奴隷なんてならなかったのに。

金さえあれば。

金だ!全ては金だ!金は力だ!

 

テゾーロの中を黒い感情が支配した時、テゾーロは意識を失った。



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第3話 英雄の序章

グランテゾーロは船だとの指摘があり現在編集中です。
よろしくお願いします。


あと2、3話でテゾーロ海に出る予定ですがそれまではお待ちくださいねー!

〜補足〜

ご指摘があり再度読み返すと掲載してなかったお話が見つかりました。
一応メモ帳には残していたのですが、非常に申し訳ありません。笑
再度3話を読み上げてくれると助かります。


「あーー、なるほど。このタイミングか…おせぇよ」

再びテゾーロが目を覚ました時、彼は一筋の涙を流した。

 

「なるほど。トリガーって奴は、精神的に多大なショックを受けたらってことかよ。

ハッ。あのクソジジイも性格悪ぃことしてくれる」

 

それでもテゾーロ一筋の涙が頬を伝い地面に落ちる時強かに笑みを浮かべた。

 

前世の記憶が蘇ったことによる歓喜なのか、はたまた今までの天竜人に対する憎悪なのか、彼自身もなぜ笑ってしまったのか分からなかった。

 

「まあ、これで全てのピースが揃ったか。」

彼は一つ深呼吸をし、手のひらを見つめた。

 

「武装色」

 

彼が一言呟くと手のひらは漆黒の如く黒く染まる。

彼はその後己の手のひらを閉じたり、握りこんだりしてその感触を確かめた。

 

「やっぱり、覇気とは己を信じる心そのもの。

記憶の覚醒前も若干無意識で覇気を使っていたことは覚えているが、それでも覚醒後と比べると全く精度が違うな。

やはり、覇気とは己を疑わない心。

まあ、神様の転生によりチートを与えられたと認識している俺なら己を信じる力も強いわな」

 

彼はそこで再びニヤリと笑った。

 

「まあ、覇気は所詮確認だしな。問題はゴルゴルの実だよなー。」

 

彼は以前、天竜人に食べさせられた悪魔の実を思い出す。

恐らく彼ら天竜人は遊びか、それとも探し物か、分からぬがテゾーロに悪魔の実を一つ食べさせた。

 

それが、ゴルゴルの実。

金を操る力を得ることが出来る悪魔の実を。

 

しかし、天竜人も、そして当時のテゾーロはもちろん現在のテゾーロも予想外な事が起こった。否起きなかったと言うべきか。

 

ゴルゴルの実とは金を作り出すことは出来なかったのである。

あくまで金を操れるだけの能力という金持ちしか使えない、否金持ちでも、選べるなら他の悪魔の実を選ぶであろう程、対して使えない能力であったのだ。

しかも現在、奴隷のテゾーロが個人で金を持てるわけもなく。

 

同時に金を操る以外なにも出来ない。

むしろ金を作り出すことを期待していた天竜人は、テゾーロがその能力をない事が分かるや否や彼に対して興味を失ったのか、今まで以上に悪辣にあたった。

しかしそれも毎日ではないのが唯一の救いか。

 

いくら奴隷とは言え、天竜人の奴隷なんて腐る程いる。

故に彼らにとっておもちゃとはテゾーロだけではなく、その他大勢のおもちゃがあるのだ。

そうなれば必然的に壊れてもいいような遊び方になってしまう。例え毎日遊ばれることが無かろうと。

 

そして現在テゾーロは生きているのも不思議なくらいに生傷が絶えず、それ以外にも痣が至る所に見受けられる。

 

恐らく彼がここまで暴力を受けようと生きてこれたのはステラへの想いがあったからなのだろう。

 

しかし、ステラが死んだ事を知った時、世界に絶望したことにより意識が覚醒したのである。

 

テゾーロは考える。

とりあえずは26歳。フィッシャータイガーが奴隷を解放するまで、覇気の修行、それと、天竜人が持つ黄金をできる限り触ること。

 

正直意識が覚醒してしまった今、現代人としての尺度で天竜人の行いを測ってしまい、これからでも天竜人を八つ裂きにしてやりたいと思ってしまうと同時に

どうせなら原作ストーカーをするべきだと決めたテゾーロは今後の方針を軽く定めた。

 

それは簡単に言えばあと5年間はひたすら待つ。

 

たとえ鞭で叩かれようとも。拳銃で撃たれようとも。

実際叩かれようが、撃たれようが今では武装色でこっそりとガードすればいいのだ。

 

そう決めるとテゾーロはまた深い眠りについた。

 

 

 

 

テゾーロの一日、いや、大半の奴隷の一日は早朝から始まる。

奴隷に朝食などはもちろん無く、食べれるのは夜に一食だけである。

奴隷達は早朝になると管理人が牢の鍵を開け点呼を取り、各自振られた仕事に着く。

その大半が掃除である。

 

もちろん女の奴隷は性奴隷や、給仕の仕事もあるが、男の奴隷は基本、天竜人に殴られるもしくは、屋敷の片付けが主な仕事であり、テゾーロ 自身も例外ではない。

 

しかしテゾーロにとってそれは非常に幸運であった。

もちろん宝を持ち出すことは死罪(銃殺など簡単に死ぬ処刑では無く。ただひたすら身体を精神を痛めつけた上で衰弱死させる程の)極刑が課せられる。

これは物を壊した、もしくは天竜に逆らったら。彼らの機嫌を極端に損ねたら。

も加えられる。

 

しかし天竜人も無闇やたらに奴隷を殺すわけではない。

天竜人同士にも力関係が存在し、

どれほどの優秀な奴隷を、多く側に、もしくは飼えるかが天竜人のステータスにもなっているのだ。

故にやたら無闇に殺すのではなく、あくまで生かさず、殺さずのコレクションとしても用いられている。

テゾーロ自身はその現状に虫酸が走るが今は我慢する時とし、粛々と日々を過ごしていくのであった。

 

 

 

意識が覚醒してから2年が経ち23歳になった年の冬

テゾーロは2人の姉妹奴隷と親しくなった。

その姉の名前はモネ

妹の名前はシュガー

共にテゾーロとは11歳離れた双子の姉妹であったが

双子はテゾーロに異様に懐き、テゾーロ自身もまるで兄のように時には父のように2人に優しく接していた。

 

もちろん彼は知っていた。

 

モネという名も

シュガーという名も

 

どちらも原作開始後にはドフラミンゴの仲間になる人物でありテゾーロ自身、前世で好きだったキャラクターでもあった。

 

もちろん邪な考えが全くなかったわけではない。

しかし彼自身今やONE PIECEの中で生きるリアルな人間。

初めは青田買い!や、そもそも奴隷だったのか!?と驚きもあり好奇心などにより近づいたが、しばらく接するようになってから2人のことをまるで妹のように大事に接するようになった。

 

それにモネもシュガーも既に天竜人の実験により悪魔の実を食しており、

且つシュガーに至ってはこれ以上成長しない呪いをかけた天竜人により深い憎悪を感じるテゾーロであった。

 

そして今日もいつものことながらテゾーロはシュガーを慰めていた。

 

「テゾーロさん、やっぱりわたしはこれ以上大きくなれないの?モネはこれからも身長も大きくなってるのに、わたしはもう大きくなれないの?

双子なのに?どうして?なんで、わたしだけ…。」

 

現在モネもシュガーも12歳。

しかしシュガーが悪魔の実を飲まされたのは10歳の頃であり、現在モネとシュガーが同い年とは誰も気がつかない程の身体の大きさに差がある。

当然年頃の女の子であるシュガーはそれを毎日のように悲しみ「この呪いさえなければ」と卑下する。

今まではモネがそれを諭していたが現在その役目はテゾーロに変わっている。

テゾーロ自身、シュガーの気持ちが分からなくもない。

しかも、これから先更に悪魔の実を恨む気持ちは強くなるだろうとさえ彼は思う。

 

あと10年20年経ってもシュガーはその身体のままであり、双子のモネはこれからも成長していく。それに引け目を感じないワケがない。

 

故にテゾーロは毎日のように思う。

 

天竜人をいつか全員殺そう。と

 

シュガーにつらい思いをさせた天竜人を

 

ステラを攫いそして殺した彼らを。

 

そもそもが彼は前世の時でも天竜人は嫌いであった。

むしろ好きな人間がいたら出てきて欲しいとさえ思う。

それがこうして今、自分達が天竜人に人とは思われない、まるで汚物に対するような扱い方をされれば思うのは当然であろう。

故に彼は毎日のようにシュガー、そしてモネに語りかける。

 

「あと、3年。あと3年待ってくれ。必ずここからお前たちを出す。今はその準備が必要なんだ」

 

最初にそれを2人に行った時は2人とも「なぜあと3年なのか?」と疑問に思い口にしたが、

テゾーロはその理由自体は語らず、ただ準備が足りないと常に2人に言う。

故に2人はそれ以上何も聞かずにただテゾーロを信じて待つ。

 

「あと3年」という言葉を胸に秘めて。

 

 

 

 

 

あれから約束の3年と言うべきか、テゾーロの物語が進む時が来たと言うべきか、

テゾーロ26歳の年、テゾーロは焦っていた。

「来ない。」

 

そう、フィッシャータイガーがである。

既に26歳になってから10ヶ月は過ぎている。

無論テゾーロ自身の準備は今や完璧というまで終わっている。

 

当初の目標通り、彼を飼っている天竜人の持つ黄金は触れるだけ触り、覇王色、武装色の覇気も原作を知っているからか、

 

自分でも驚く程の精度の成長を遂げており、

覇王色の覇気を出すとしても、標的のみ気絶させることが出来るし、武装色もタイムラグがほぼ0コンマの世界で全身に展開出来る。

 

見聞色に至っては元々転生特典でもらってなかったからか、未だ完璧ではないにしてもある程度使える程にはなった。

目標はカタクリのように未来予知ではあるが、これは気が長くなりそうな目標でもあった。

 

ただ覇気について予想外な事が一点。

それは相手の意識を奪えば、その標的は直前の記憶まで失ってしまうことであった。

これについては何度やってもコントロールは出来ず、

初めは申し訳ないが奴隷仲間に覇気をかけ実験をしていく上で発見、及び成長した技であった。

 

話を戻そう。

現在彼は悩んでいるのである。

フィッシャータイガーはどうやって脱獄したのか。

彼が知る知識はフィッシャータイガーが脱獄して奴隷を解放するところからのことは知っていても、フィッシャータイガー自身がどうやって脱獄したのかまでは知らない。

 

ただ、ひたすらフィッシャータイガーを待つ事10ヶ月。彼も、加えてモネとシュガーの姉妹もそろそろ我慢の限界を来ていた。

原作を知るテゾーロは当たり前ではあるが、モネとシュガーの双子はテゾーロの3年を今も信じているのだ。彼女らもそろそろ限界であろう。

 

加えてあれから3年が経ち双子は共に15歳なった。

シュガーの身体の成長は別として、モネの成長は著しい。

恐らくあと一年も経たずに性奴隷にされてしまうことは想像に難くない。

そこでテゾーロは行動に移すことにした。

 

実際看守と言うべきか、管理人と言うべきか奴隷を管理する人間を無力化すること自体は容易である。

ただ彼がなぜ頑なに26歳と言う原作でいう奴隷解放まで待ったかと言うと理由の一つはフィッシャータイガーを待つためであった。

しかし、一向に姿を現さないフィッシャータイガーを待つのももう限界であった。

 

故に

 

「やるか」

 

そう彼が呟くや否やテゾーロはおもむろに立ち上がり自分を閉じ込めている牢に手をかける。

 

「武装色」

テゾーロは右手を黒く染め上げると、そのまま牢に向かって手刀を振り下ろす。

 

スパッ。

 

鉄が切れたとは思えない音を上げ牢の一部が切れると、少しして、牢の一部が床に落ち、鉄が地面に当たる音が響いた。

 

カラーン。

 

その音に耳聡く気がついた管理人は素早く音の発生源を探しテゾーロの牢に当たりを付け向かうと、牢の外にテゾーロが立っていた。

 

「おい!貴様何をしている!?どうやって牢から出た!すぐに戻ッ!」

 

管理人が言葉を言い終わる前に身体中にとてつもない緊張感がほとばしり、それは重圧となって彼の意識を奪った。

 

「まずはあの双子を助けて、その後はフィッシャータイガー。出来ればハンコック達も俺が救出したいな。

あと、黄金の回収だな。」

 

彼はそう言うと、近くの牢から順に武装色で硬化した両手で手刀を持って奴隷達を解放していく。

 

「あんた、こんな事して奴らに殺されちまうよ!」

救出した奴隷の人がテゾーロに向かって叫ぶ。

しかし彼はその意見に怯える様子もなく、他の救出した奴隷達にも向かって話しかける。

 

「どーせ、このまま居たっていつかは殺される。それなら自由の身となっていつか天竜人を滅ぼす。そっちの可能性に賭ける方が幾分か人間らしいってもんだろ。

別に残りたい奴は残ればいい。

ただな、俺たちはゴミじゃねえ。人間だ。

人間なら人間らしく足掻こうじゃねえか。強制はしねぇけどな。」

 

彼はそう言うと、そのまま歩を進め他の奴隷を解放していく。

初めは不安な表情をしていた彼ら奴隷も、テゾーロの雄姿に魅了されてか、彼の後に続き、まだ解放されてない牢へと近づき手を合わせ牢の錠を壊しにかかる。

「お前ら、彼に続け!!俺たちはゴミじゃねえ!!

ここでやらなきゃ一生このままか死んじまうぞ!!」

 

奴隷の誰かがそう叫ぶとたちまち周りの奴隷達も大声を出し己を周りを鼓舞する。

 

今ここに奴隷解放の英雄。ギルド・テゾーロが生まれた瞬間であった。

 

モネシュガー姉妹の牢はすぐに見つかった。

だいたいは予想がついていたのもあれば加えて見聞色を発揮したのも理由に挙げられよう。

テゾーロは姉妹が閉じ込められている牢の前で一度泊まると彼女らに笑いかけた。

 

「待たせたな。ここから出るぞ。」

 

「テゾーロ。待ってたわ。」

 

「うん。ここから出よう!」

 

モネとシュガーの順でテゾーロに返事をし、それを頷きで返した後彼は手刀で2人の折を切り裂いた。

 

 

「テゾーロ、これからどこに行くの?」

モネは首を傾げテゾーロの顔を見上げた。

 

「じゃあまずは今までお世話してもらったお礼として天竜人の黄金奪いにいくか!

その後はフィッシャータイガーっていう魚人を救出する。

彼の力は役に立つ筈だ。」

 

彼はニカッと笑いモネに返した。

 

「わたしも、モネもずっとテゾーロについていくよ!!」

シュガーはテゾーロに笑顔を語りかけ、テゾーロの左手を握る。

 

彼女も、モネもまた、この3年でテゾーロとさらに親しくなり今やお互い呼び捨てで呼ぶのに何も抵抗はない。

 

ただ精神は成長しているはずのシュガーは今もこうして身体の成長と相応な、まるで10歳というフリをして自然にテゾーロの手を握ってくる。

 

時には子が親に甘えるように接してくる時もあるが、彼もまた満更でもないのか、手を振り払うようなことはなくシュガーの手を握り返した。

 

「ずるいわよ!シュガー!それなら私はテゾーロの右手と手を繋ぐから!」

なんの対抗心か、

モネもまたシュガーに対抗してテゾーロの手を掴む。

「おいおい、両手が塞がっちまったら他の牢を解放出来ねぇし動きずれぇだろ」

 

しかしテゾーロの言葉とは裏腹に彼もまた同じようにモネの手を握り返した。

 

「まあ、いい2人ともついてこい。俺がお前らを自由にしてやるよ。」

 

「「うん!」」

 

姉妹は満面の笑みで返事をし、テゾーロはまたニヤリと笑うだけで再び行動を開始すべく、歩を進めた。

 

2人の手を繋いだままに。

 

 

 

 

 

「あんたがフィッシャータイガーか?」

 

「お前は?」

現在テゾーロ達はフィッシャータイガーの牢の前に来ていた。

 

現在テゾーロ、モネ、シュガーを除く既に解放された奴隷は他の牢に回っている。

 

フィッシャータイガーの元へ行く道中テゾーロは天竜人の金を能力を使い回収し、

おおよそ300キロは下らない黄金を全て指輪サイズに圧縮し現在10本の指の内左手薬指を除く9本にはめている。

もちろん現在も奴隷が、おおっぴらに行動している理由も、テゾーロがついでに掛けた覇王色の覇気により見聞色で把握出来る敵対勢力は全て気絶済みであり、こうしておおっぴらに動けるという理由もあるのだが、

 

それもそろそろ限界だろう。

恐らくそう遠くない先で海軍大将や。中将、もしくはCP0あたりが動き出すのは目に見えている。

 

故に戦力になりそうな人材は率先してテゾーロが解放し、申し訳ないが陽動を頼んでいる最中でもあった。

 

「俺の名は、ギルド・テゾーロ。

テゾーロで良い。あんたも周りの騒々しさに気がついてるかも知れんが、今奴隷を解放し回っている首謀者とも言える。

悪いが手伝ってくれんか?

俺には今魚人であるあんたの力が必要だ。」

 

「はっ。人間が今更。

お前らも知らないわけでないだろう。

お前たち人間が俺たち魚人に対してどのように接して来たか。

人間という狂気の塊を。」

 

フィッシャータイガーはその巨体の四肢を鎖で繋がれながらもその目にはある種の誇りを、己の力の自信を感じる瞳をしていた。

 

「あんたも知っているだろう?

俺たち人間が全て狂気に染まっているわけではないことを。

たしかに俺たち大人同士では種族間での差別意識は強いかも知れない。

しかし、この子らモネやシュガー、更にはその次の世代の子らには俺は種族間での差別意識を完全に撤廃までは言わなくとも少しでも薄れていて欲しいと願う。

 

あんたの島のオトヒメ王妃も同じ考えのはずだ。

だから、今よりお前も俺と一緒に英雄になってもらうぞ。」

 

そういうと、テゾーロは己の両の手のひらを左右に立つモネとシュガーの頭に置いた。

 

「何故人間として生まれただけで偉い。何故天竜人として生を受けただけでまるで他の生物をゴミのように扱える。

人間も魚人も巨人族もミンク族も全て同じ命あるもの。

命あり、己のことを考え行動出来るもの。そこに種族での優劣などないと俺は思う。魚人に生まれたからといって海底1万の海の底の世界でしか生きられないなどおかしいだろ。

あんたはこれから俺と一緒に。今だけでも良い。

種族など抜きにし、囚われている者達の英雄として協力してくれないか?

これから生まれる命のためにも。」

 

テゾーロの言葉を聞きフィッシャータイガーは目を見開いた。

確かに人間にもさまざまな種類の性格があり、魚人もまた同じである。

しかも、今目の前にいる男は、フィッシャータイガーと、オトヒメ王妃のやり方は違えど、目指すべきは次の世代に怨念を教えない。という考え方が一致する。

ここまで面白いと思うことが今まであっただろうか。

いやあったのだろう。思い出すは魚人島に置いてきたジンベエと、アーロン達の事。

 

彼らと一緒の時は総じて楽しかった。

もしかしたらこの人間もその信じるに足る人物のように思えた。故に彼は、

 

「良いだろう。ただし、今だけだ。

俺自身人間に対しては悪いがもう良い感情は思えそうにない。

だが、今回は別だ。乗ってやろう。その話に。」

 

フィッシャータイガーはニヤリと凶悪そうに牙を剥きながら笑うと、

テゾーロも同じようにニヤリと笑った。

 

「じゃあ悪いがあんたには奴隷解放の後俺とは違う場所で存分に暴れまわってくれ。

あんたがそうしてくれるだけできっと他の奴隷達の生存率は格段に上がるはずだ。」

 

 

「あぁ、わかった。お互い検討を、祈ろう」

フィッシャータイガーの返事を聞くとテゾーロは彼の鎖に近づき人差し指の金の指輪を刀に変形させ、それを断ち切った。

 

「ふっ、悪魔の実能力者か。」

 

「あぁ。なんの能力かは秘密だけどな。それじゃあ頼んだぞ?フィッシャータイガー」

 

「お前らもな」

 

「大丈夫だよ!テゾーロはすごく強いから!」

 

「そうよ。きっとあなたの予想の100倍強いと思いますわ」

シュガーとモネがまるでフィッシャータイガーにあっかんべーとするように言ったがそれを聞いたテゾーロもやれやれとした様子で、彼女らを連れて彼のの元から去って行った。

 

あとは九蛇姫姉妹だな。

そう心に決め彼は見聞色の覇気を発動する。

 

 

 

ハンコック達は比較的すぐに見つかった。

「あなたね、この騒動の正体は。」

 

その容姿から出される声音もまた容姿並みに美しく、これぞ後の海賊女帝。

ONE PIECE世界で一の美女と言われるだけのことはある美しい少女が目の前にいた。

そしてその両脇にも多少ハンコックには見劣りするも、比較的美しめな少女が2人、ハンコックを守るように脇を固めている。

 

「やはり、気がついていたか。

俺の名はギルド・テゾーロ。

テゾーロで良い。今奴隷を解放し回っている者だ。

もしよければ君達も解放するがどうする?」

 

「もちろん。着いていきます。またとない好機。今こそこの汚らわしい場所から去りましょう。行きますよ。貴方達。」

 

「「はい。姉さま」」

 

ハンコックの話し方を聞いてテゾーロが真っ先に思ったことは、「あれ?話し方違くね?」であったが、現在はただ美しい奴隷でありあくまでアマゾンリリーの女帝ではないのだ。それも当然かと思い直し、

 

同様に手刀を持って牢を切り裂きゴルゴン姉妹を解放した。

「礼を言います。素敵な殿方殿」

 

そういうとハンコックらゴルゴン姉妹は深いお辞儀をテゾーロにした。

すると元々よれよれなボロ布をまとっているだけの三姉妹(テゾーロ一行もそうだが)の胸元が大きく見えテゾーロは心の中で

 

(この歳で爆乳かよ!!欲しい!)

っと密かに。密かに思ったはずなのにその視線もしくは心を読んだのか、両脇にいたモネとシュガーから脇を抓られ無言ではあったが、冷たい視線を浴びることになってしまった。

 

「テゾーロで良いと言っているだろ。

肩苦しいのは無しだ。それにここからが本番だ。」

 

「テゾーロ、どうやってマリージョアから逃げるのですか?」

モネがふとずっと疑問に思ってたことをテゾーロに聞くと、テゾーロはさも当然のように

「海軍の船を奪うしかないだろう。」

それだけ言うと、「行くぞ」と一行に伝え、テゾーロ、モネ、シュガー、ゴルゴン姉妹はその場を後にした。




次回 テゾーロVS海軍の英雄
更新は早ければ今日中、遅くても明日中(6月26日)に投稿致します。

6月25日改稿しました。

ちなみに2話と3話でのテゾーロの人格の差異は前世の記憶が蘇ったことによる差異だとご理解下さい

ただ、モネとシュガーとの出会いの詳細は後ほど別の時に掲載する予定でありますので何卒よろしくお願いします。


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第4話 強敵との邂逅

現在テゾーロ一行は聖地マリージョアの中心部にいた。

 

 

奴隷を解放し回ることすでに数百人以上。

 

解放された奴隷はほかの奴隷を

 

さらにはフィッシャータイガーも解放して回ることにより、現在聖地マリージョアで囚われていた奴隷凡そ3000人弱が解放され、皆一応に殺気立ちながらも冷静にこの場から逃れる為、各々が死力を尽くしていた。

 

 

奴隷の集団はだいたい三つに分かれ、

 

一つ。 テゾーロが率いている奴隷おおよそ50名。

 

一つ。フィッシャータイガーが解放してまわりさらに陽動のために彼の近くにいるもの500人

 

一つ。その他の解放された数多くの奴隷。

 

 

この内最期のグループは、聖地から逃げ出すべく逃亡手段を探している最中であった。

そして、そのグループのリーダー格である、初めにテゾーロに死にたいのか?と問いかけた元奴隷。

 

足長族のプルートがグループの先導に立ち、聖地からの脱出方法を探っていた時、テゾーロ達は彼らから離れ、マリージョアの中心地。

 

 

聖地を襲撃する上で欠かせないことを果たすべくこの中心地にいた。

 

 

その果たすべきこととは、聖地からの悪魔の実の奪取。

 

そのため彼、テゾーロは陽樹イブを探すためマリージョアの中心地へと来たが、陽樹は思いの外、すぐに見つける事が出来た。

 

何故なら陽樹イブはここマリージョアで一番の大樹であり、遠くからでも確認出来る程、高く、高く天に向かってそびえ立ったいた。

 

 

陽樹イブ。

 

推定で直径50メートルはあるであろう幹。

高さは恐らく200mは下らないその大樹は、悪魔の実を宿し、世界に混沌の力を振りまく存在。

 

現在テゾーロら一行、ここではグループAとしよう。

 

総勢50名の多種多様な種族で集まった元奴隷達は陽樹イブの下で、その大樹を見上げていた。

 

 

「これが悪魔の実を宿す陽樹イブか」

 

 

「テゾーロ。この木の名前知ってるの?」

 

横に居るモネはこの大樹の名を知るテゾーロに疑問を問いかけながらも、その目はこの大樹から目を離すことはない。

まるで、その大樹を崇拝するかのように。

 

モネとは対照的な表情を。

 

まるでその大樹を睨むように見上げるシュガーはまるで親の仇を見るような表情をしていたが。

 

 

「あぁ、あくまでうわさだけどな。

 

恐らくここ、マリージョアにあるだろうと当たりを付けていたがどうやら俺の予想は当たりだったようだ。

 

見ろ、枝になってる実を。あれは間違いなく悪魔の実だろうな。」

 

 

テゾーロが、モネが未だ握っている右手の力を抜き手を離し高くそびえ立つ大樹の枝を指差す。

 

 

指を指した先には視認出来るギリギリの高さにある悪魔の実がそこになっていた。

 

 

 

「恐らく、ここにはありとあらゆる悪魔の実がなっているはずだ。

俺たちはそれを奪う。

 

シュガーそんな怖い顔をするな。

 

今の俺たちには必要なことだ。」

 

テゾーロはそういうと彼女の頭に手を乗せ、まるで幼い妹をあやすように優しく撫ぜる。

 

 

シュガーから返事らしき言葉は返ってこなかったが、

 

それでも一応は納得したのかシュガーは首をゆっくりと縦に振り、頷いた。

 

 

「なら、俺が適当に取ってくる。お前らは全員そこで待っててくれ」

 

「ちょっと!どうやっ…て?」

 

ハンコックがテゾーロを制止しようと声を上げるが、途中テゾーロの「月歩」という声を出した後、空をかけるように彼は飛んだ。

 

 

「「「は!?」」」

 

 

一同テゾーロの行動に驚愕する。

 

 

それもそのはず。これまでマリージョア制圧の為テゾーロは幾度となく黄金の力や、覇気と呼ばれる不思議な力(そもそも相手が抵抗する前に気絶させるという力自体にも驚愕したが)

テゾーロに現在従っている者、全員がもうこれ以上驚くことはないのではと思うほど、衝撃的であった。

 

人間がそらを走るということに。

 

 

しかしテゾーロ自身はなんてことない。ただの六式の一つ「月歩」を使っただけでありなんら、驚かれるようなことはしてないつもりである。

 

 

(転生者がこの数年覇気だけ修行するわけもねぇし、そりゃあ、もちろん六式の会得出来るようにするよな)

 

というのが転生者の考えであった。

 

 

空をかける彼はあっという間に枝になっている悪魔の実を一つもぎ取ると、さらに上を見上げ、視界に入った悪魔の実を目指しまた、跳躍した。

 

おおよそ手当たり次第テゾーロが確保した悪魔の実が20個ほど取った時、テゾーロは地表へと降り立った。

 

 

(まあ、こんなもんかな。これ以上とっても今のところ使う予定が立て込んでるわけでもないし、それに下手に原作改変して先が読めなくなるのも不安だからな)

 

 

彼はそう1人思案しながらモネやシュガーの元へ戻っていった。

 

「ハンコック、お前まだ悪魔の実食べてなかっただろ。この一つやるよ」

 

 

テゾーロは生前悪魔の実辞典で見たメロメロの実の外観をなした悪魔の実をハンコックに渡した。

 

 

「サンダーソニアと、マリーゴールドは既に食わされたんだろ?その外観で分かる。

ただ、この悪魔の実は必ずお前の役に立つ。

だから渡しておくわ。

 

この悪魔の実はメロメロの実。

お前のその美しさを最大限いかせるはずだ。」

 

そういうとテゾーロはハンコックの右手首を手に取り、彼女の手にメロメロの実を載せた。

 

 

「今食うか、後で食うかは任せるが、どのみち今すぐ使いこなせるような者でもない。

 

これから使いこなせるよう努力してくれればと思う」

 

そういうと彼は後ろを向き手をヒラヒラとしモネとシュガーの元へ戻っていった。

 

 

「…私を美しいと…何故だろう。何故他の男には靡くことがなかった私の心はこうも揺れてしまうのだろう…。

 

テゾーロ。貴方は一体…。」

 

 

ハンコックの独り言がテゾーロに聞こえることはなく、しかし、何故が体が紅潮するのに理解出来ないハンコックであった。

 

 

ハンコックとは、所謂チョロインであったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん。テゾーロはあの子のような黒髪がタイプなのね。

黒髪がいいのかしら。ねぇシュガー。」

 

 

「そうだね。モネ。あの女私の能力で消してもいい?ねぇ、消してもいい?」

 

 

テゾーロが彼女らのそばに戻った時モネと、シュガーの何故か高圧的な威嚇を受け若干タジタジになってしまったテゾーロであった。

 

 

「シュガー、お前の能力は今回は使うべきじゃない。

 

俺が思う限りお前の悪魔の実はこの世で一番恐ろしい力を発揮する。

 

だが、今はなるべく隠すべきだ。

 

天竜人。俺らをゴミのように扱ったクズどもの復讐のために。」

 

 

テゾーロの言葉にシュガーもニヤリと口角を上げた。

 

 

「分かってるよ。なんとなくテゾーロのしようとしてることは。

 

私の能力でいつかあいつらをオモチャにしてくれる機会を与えてくれるんでしょ?

 

天竜人なのに、みんなから忘れられる。まるで初めから居なかったかのように扱われるクズ達。

 

あぁ、早くその時が来ないかなー?」

 

 

「必ず成し遂げよう。

 

しかし今はまず脱出だ。

 

そろそろ海軍も動くはずだ。気を引き締めて行くぞ。」

 

 

 

 

 

そういうとテゾーロは己の指輪をリュックのように精製するとその中に悪魔の実を入れていく。

 

そのリュックは金色に輝き、ある種成金趣味なリュックになってしまったが、

彼は気にせずそれを背負うと、陽樹イブをあとにした。

 

 

どうやらテゾーロ達が陽樹イブで色々しているうちに、フィッシャータイガーが奴隷をほとんど解放したのだろう。

 

マリージョアからいくつもの火をあげ、

 

あたりには物が燃える臭いが漂い、いくつもの煙が立ち上げ、若干であるが炎の光により夜の空を照らしていた。

 

 

 

 

 

その火は奴隷達の今出来る精一杯の反逆の狼煙であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃フィッシャータイガーのグループは数多くの奴隷を解放し、さらに元奴隷の数は爆発的に増え、数の暴力で聖地マリージョアを荒らしていた。

 

 

「まぁ、よぉ〜くやってくれるねぇ〜。魚人は。」

 

 

フィッシャータイガー自身も暴れ周り、人間の数十倍の腕力を駆使し天竜人の建物を壊している時彼の頭上から声が掛かった。

 

「お前、海軍か。一人で何しにきた?」

 

 

「そりゃあ〜、お仕事でしょぉ〜。お前ぇ楽に死ねると思わない方がいいよぉ」

 

 

フィッシャータイガーの言葉に答える海軍将校のみ許される正義の文字を背中に刷られたコートを肩にかけ、黄色のスーツを着込んだ男は、どうやった空に飛び留まっているか謎だが、フィッシャータイガーは、彼は恐らく一筋縄でいかない相手だと判断し、

 

背筋を伸ばし構えた。

 

 

「能力者か。来い。俺はここで引くわけには行かんのでな。」

 

「あっしの光は魚人なんぞに止められるんよぉ。

 

八尺瓊勾玉。」

 

フィッシャータイガーに相対する海軍の将校の周りから光の粒としたか表現出来ないモノがおびただしく発生し、その粒は弾丸となり彼を否、彼を含む奴隷目掛けて飛翔する。

 

 

「「「がああああああ!!!」」」

 

 

天竜人の建物を壊すべく各々そこらに会った鉄や、木を手に取り好き勝手に暴れていた奴隷達に高速の光の粒が当たり、それは弾丸の如く彼らの肩を、腹を、頭を、足を、心臓を貫く。

 

 

周りを一瞬にして地獄絵図へと変えた。

恐らく今の一瞬で100人以上の奴隷は死に、更にその倍の数は行動が不能な程の傷を負ってしまったであろう。

 

その将校に対しフィッシャータイガーは激怒した。

 

「貴様ッ!!

俺だけでなく、周りの者にも手を出し、そこまで奴隷が憎いか!!

 

それにその能力!聞き覚えがある。お前、海軍中将、ボルサリーノだなっ!!

 

許さん!魚人空手正拳 「上段爆掌」!!!」

 

フィッシャータイガーは己の持てる力を、武装色の覇気で掌を黒化し、ボルサリーノの顔目掛けて掌底を放つ。

 

 

「八咫鏡」

 

フィッシャータイガーが掌底をボルサリーノの顔に打ち付けるその瞬間ボルサリーノは忽然と姿を消し、上段爆掌を、回避する。

 

空を切ったフィッシャータイガーの掌底は、その場に風を巻き起こし、前方の土はえぐれ、近くにあった天竜人の銅像らしきものを風圧で破壊した。

 

 

「ん〜。魚人族の腕力に武装色とは、恐れ言ったねぇ〜。」

 

一瞬消えたボルサリーノであったが、突如としてフィッシャータイガーの右後方に姿を現し、口笛を吹くように戯けた表情をしながらその掌底の感想を述べる。

 

 

「コケにしおって。俺もお前に勝てるとは思えん。しかしここはまだ時間を稼がせてもらうぞ!

 

行けぃ!!お前達!ここは俺が時間を稼ぐ!

 

お前達はテゾーロという男を探せ!!我ら奴隷の本当の解放者だ!!彼と一緒にここから逃げ出せ!」

 

 

 

 

フィッシャータイガーの叫びにより一斉に奴隷達がその場から逃れようと散り散りに逃げ出す。が、

それを見逃すボルサリーノではなかった。

 

 

「あっしから逃げれるとでも思ってるのかぃ?

 

八咫鏡。」

 

 

ボルサリーノはまた忽然と姿を消すと我先と逃げ出す奴隷の先頭集団の前方に姿を現した。

 

 

「じゃあ、死んでもらいますか。八尺瓊勾玉。」

 

 

ボルサリーノがふたたび光の弾丸を空中に留まらせ、光の弾丸の発射準備が終わろうとした時。

 

 

彼もまたそう易々と見逃す男ではない。

 

 

「魚人空手正拳!唐草瓦正拳!」

 

 

フィッシャータイガーの声がいつのまにかボルサリーノの側面から聞こえ、彼は驚いた顔をフィッシャータイガーに向けるが既に遅い。

 

フィッシャータイガーの繰り出した右拳が衝撃波を生みボルサリーノの顔に直撃した。

 

 

バキャっと人を殴る音に相応しくないような音がその場に響きボルサリーノはその場から飛ばされ天竜人の住まう屋敷に激突し、屋敷を破壊していく。

 

 

「お前だけが早いと思うなよ。

魚人は人間より優れた筋力を持つ。それは脚力もしかりだ。」

 

 

吹っ飛んだボルサリーノに向かってフィッシャータイガーはニヤリと笑みを浮かべ痰を切る。

 

 

ガララっ。

 

潰れた屋敷から柱を退かし這い上がってくる音をフィッシャータイガーの耳に捉えると彼は瓦礫に近づき更に攻撃を放つ。

 

「七千枚瓦回し蹴り!」

 

恐らくボルサリーノのが這い上がる場所を見越して居たのだろう。

彼が体を起こした瞬間にボルサリーノの頭部目掛けてフィッシャータイガーの回し蹴りが炸裂する。

 

ゴウンッ!と風を切る音を立て、ボルサリーノの顔に近づく圧倒的な圧力の回し蹴りをボルサリーノは避けることもせず、抗うこともせず受けた。

 

ギンッ!

 

鉄と鉄がぶつかり合うような音がその場になった。

 

「ふぅ〜。やるねぇ〜魚人。

全く厄介だねぇ。魚人という種族は。

お前ぇ、何者だぃ?」

 

 

「貴様のようなものに名乗る名前など無いわ!!!」

 

ボルサリーノに回し蹴りが効果ないと見るや、彼は拳でのラッシュに切り替えた。

 

武装色を拳に纏い、ひたすらの連打。

しかしボルサリーノのまた海軍中将の実力者。

 

いくら魚人との種族の間に腕力の差があろうとも

退かず、手に武装色を纏い、彼の拳の連打の軌道を全て逸らす。

 

 

「やるねぇ〜。魚人君。お前にはここで必ず死んでもらうよ。

天叢雲剣。」

 

 

ボルサリーノは手のひらから光の剣を作り出しフィッシャータイガーに斬りかかる。

 

 

「魚人空手!腕刀斬り!」

 

しかしフィッシャータイガーもここは引かない。

 

己の肘(ヒレ)を武装色で硬化し光の剣と打ち合う。

 

 

 

 

「そう、簡単に俺の命が取れると思うなよ。ボルサリーノ。」

 

 

 

フィッシャータイガーはボルサリーノと打ち合いながら笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、脚長族プルート率いる最大人数を擁する奴隷グループ。

 

ここではグループCとしよう。

 

 

彼らもまたフィッシャータイガーと同じように海兵も戦闘を繰り広げていた。

 

 

「殺せ!!!絶対に船を奪うぞ!!!」

 

プルートが叫び、周りの奴隷達も「「「応ッ!!」」」と答え、遅いかかる海兵達に向かい力の限りを尽くす。

 

 

現在彼らは脱出手段として海軍の軍艦を奪うべく、軍艦に駐留していた海兵と戦闘を繰り広げていた。

 

 

 

当初、2500人以上居た集団は一時4000人まで膨れ上がったが、道中、マリージョアの衛兵や、海兵の襲撃を受け今や3000人まで数を減らしていた。

 

しかし、プルートは思う。

 

 

恐らくこの海軍の軍艦を奪うことこそが我らの残された唯一の道だと。

 

それはプルートに限ったことではない。

 

非戦闘員ながらも近くにある木を。鉄くずを。石を。持ち戦おうとする者たち全員の認識であった。

 

 

故に、血みどろになろうとも。死に物狂いで奪取すべく戦う奴隷達は海兵を恐怖させる。

 

2つ、彼らにとって幸運なことがあった。

 

それはプルートを含めた生き残った奴隷の2割は海賊や、荒くれ者であり腕に覚えたあった。

 

更に、船に滞留していた海兵に主力級。所謂中将以上の力を持つ海兵がいなかったことが挙げられる。

 

故に彼らが取った戦略は数による暴力。

滞留している海兵総勢100人。相対する奴隷は当初3000人

 

海兵側も何も黙ってやられるのを見ているわけではない。

船上から銃で、大砲で数を減らすべく殺戮の限りを尽くす。

それによって軍艦にたどり着いた時には3000人もいたが、徐々に数を減らす。

 

しかしそれでも彼らは止まらない。今更止められない。

 

大砲が一発放たれることに50人。銃での一斉射撃で更に50人の命を簡単に奪っていく。

 

それでも奴隷側プルートが率いるチームCも黙って見ているだけではない。

 

ロープを、梯子を使い船上に登る。

例え目の前にいる仲間が倒れようとも。友となり結束し自由を夢見た者が死ぬ様を横目に見ようとも。

彼は止まらない。

 

 

 

 

勝負は気がつけば一瞬でついた。

 

 

仲間の一人が船上に踊り出ると、それに続き続々とプルート含め総勢2000人が、船に乗り込むべく駆け出す。

 

船上にさえ登ってしまえば、海兵達は同士討ちを恐れ、剣や、槍、拳などの近接戦闘を取らざるを得なかった。

 

気がつけば100人はいた海兵を一人に対し15人以上の奴隷が囲み全員で袋叩きにする。

 

 

「やべでっ!!や、、やめでぐだざいっ!!」

 

海兵の一人が寄ってたかって殴られながら命乞いするも、彼らは止まらない。

 

足を砕き、指を潰し、鼻を、目を、喉を、そして頭部を。

 

その様を見てしまった海兵は己大事に逃げ出してしまう。

 

しかしすぐさま彼らは逃げ出した海兵を取り囲み再び暴力の限りを尽くす。

それは女の奴隷も例外ではない。

非戦闘員など、関係なく皆が一様になって海兵を嬲り殺す。

 

気がつけば船上で息をする海兵はいなくなり、デッキの床には血の海が広がった。

 

 

標的がいなくなったと皆が気づいた瞬間

 

辺りを静寂が包む。

 

しかしそれも束の間、プルートが、女の奴隷が。子供の奴隷が。他の男達の奴隷が、まるで雄叫びをあげるように咆哮した。

しばし、その熱に盛り上がりひとしきり声を荒げ勝鬨をあげた後、

プルートは静かな声で、しかし確かにその場にいる仲間達に聞こえるように呟いた。

 

「後は英雄の帰還を待つべきだと。」

 

なにもプルート達とテゾーロが事前に落ち合う約束などしていない。

 

しかし彼らは言葉にせずとも英雄は。

テゾーロ は必ず俺たちの元に来ると。

なにも確信はないが彼らはテゾーロがこの軍艦に来るのを待つことにした。

 

奴隷達には導いてくれる存在が必要なのだ。

 

それはプルートではない、フィッシャータイガーでもない。

 

この騒動を巻き起こした、ギルド・テゾーロその人を待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖地マリージョアには二つの港。入国入り口がある。

それは西と東。

 

現在テゾーロ達チームAは西の港を目指していた。

なんでも、チームAに同行していた巨人の奴隷「バルディッシュ」という男の奴隷が基本的にその門番のような役割をさせられており、

 

バルディッシュ曰く、海軍は西の港から来ると行ったからである。

 

 

バルディッシュという奴隷は背丈20mはあり、筋骨隆々で奴隷になる前は闘技場の闘士をしていたそうだが、ある日天竜人がそんな彼に目を付け奴隷として引き取ったのだが、

 

その背丈20mというのは非常に目立つ。

 

時折、彼を目印にしてか、海兵の襲撃な会うがそこはテゾーロの覇王色により、未だ行動不能になったものは0人と驚異的な生存率を誇るチームである。

 

 

チームAはひたすら走る。一刻の猶予もない。

この地から逃げ出し自由を手にするため後ろなど振り向かずひた走る。

 

そんな中テゾーロは見聞色で近づいてくる強敵の存在に気がついた。

その強敵は恐らく2人。猛スピードで彼らの後方を追うように近づいてくる。

なぜ港の方ではなく後方からという疑念が湧いたが、すぐにその疑念を振り払い来たるべく接敵に彼はその場で立ち止まり後方を振り向いた。

 

 

近くで走っていたモネとシュガー、ゴルゴン姉妹も彼の様子に立ち止まった。

 

 

「どうしたの?テゾーロ」

 

モネが代表してテゾーロに問うが、彼から返答は無い。ただ今来た道を真剣な顔で睨むように見ているだけである。

 

そのまま2秒程経っただろうか、テゾーロは未だ共に立ち止まる彼女達に振り返ることなく口を動かす。

 

 

 

「先に行ってろ。とんでもない奴らが俺たちを追っている。後で必ず追いつく。お前たちは先に行って軍艦の拿捕を頼む。」

 

 

彼の有無を言わせぬ覇気を帯びた声にモネが

 

「分かったわ。死なないでね」と返答するとテゾーロもすぐさま

「死ぬわけねぇだろ。これからだ。だから先に行って待ってろ」

 

そう言うと

テゾーロは今来た道を、モネ達は港に向かって走り出した。

 

 

 

 

そして暫し、テゾーロは神経を集中させているとその強敵はまるで地を翔ける豹のようなスピードで接近して来た。

 

 

「貴様かー!!!この騒動の原因。諸悪の根源は!!」

 

正義のコートを羽織った黒髪に白髪混じりの筋骨隆々な巨体。

もう片方は黒髪にアフロのようなふざけた髪型をし、同じく正義のコートを羽織る海軍将校の姿だった。

 

(いきなり英雄と後の元帥かよっ!)

 

テゾーロは己の不幸を一瞬恨んだが、今の実力を試すには申し分ないと考え直したのか、ニヤリと笑う。

 

 

「答えろ!!貴様が首謀者か!!」

 

先程のは問いかけだったのか、アフロ頭の将校。センゴクが怒りの表情で今もテゾーロに近付く。

 

 

「だったら。なんだよセンゴク大将さん。」

 

 

「その答えだけで充分だ!!やれ!ガープ!!!」

 

 

 

「ぬうっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今までの走るペースはなんだったのか。一瞬にして100m程の距離を詰めたガープが、右手を武装色で包み拳骨を繰り出す。

 

 

それを見聞色の覇気で察知しすかさずテゾーロは横に飛び、躱した。

 

バゴォォォオオオン!!

 

ガープの放った拳が地を貫き、その一帯に地割れを起こさせる。

 

 

「人間のやることかよっ!!嵐脚ッ!!」

 

テゾーロはすぐさま態勢を切り替え、修行で習得した六式の一つ嵐脚をガープの顔目掛けた放つ。

 

 

ギィィィンッ!

 

テゾーロの嵐脚はガープの顔に決まることなく武装色で硬化した手をクロスしそれを防いだ。

 

 

 

「ガッハッハ!! お前覇気も六式も使うか!!面白いッ海軍に入らんか!?」

 

「冗談を。天竜人の奴隷を解放し、更に聖地マリージョアを荒らした大罪人が海軍など」

 

「冗談ではない!!海軍に入れ!!そしたら儂が鍛えてや「ガープゥゥゥゥ!!!!」る…」

 

ガープが豪快に笑いながら素敵な提案(笑)をするが、センゴクがそれを制す。

 

「貴様!!また適当なことを抜かしおって!此奴はこの場で捕らえなければならん!!少しは真面目に仕事やらんかっ!!!」

 

そう叫びガープの横にセンゴクが移動するとセンゴクの頭に拳骨を落とした。

 

「痛えーぞ!!クソアフロ!!!てめぇ、いま本気だっただろ!!!」

 

 

「やかましい!!!お前と言う奴は今日という今日は許さん!!!今、職場放棄してみろ!!二度と海軍本部の敷地跨がせんぞっ!!!」

 

 

「ぬっ…それは困る…しかし…この男のは面白いのじゃが…「ガープ!!!」…ええぃ!うるさいわ!!!わかっておるわ!!!!やればいいんじゃろ!!やれば!!

 

と言うわけだ。若いの。儂はお前を捕まえにゃならん。黙って捕まってくれるか?」

 

 

「それこそ、何を冗談を。必死で抵抗させてもらう」

 

 

「やはりそうでなくてはのぅ!!!若いの。名は?」

 

 

「ギルド・テゾーロ。いつか世界を変える男だ。」

 

「ギルド・テゾーロか。 儂はモンキー・D・ガープ。

 

では。」

 

 

「「参るッ!」」

 

 

テゾーロとガープの声が被ると彼らは己が持つ最大限の覇気を拳に纏いぶつけた。

 

 

 

 

後に奴隷解放の英雄テゾーロ、海軍の英雄ガープがぶつかり合ったと後世に渡って語り継がれる名勝負のゴングが切って落とされた。

 

 

 




長すぎたので一度ここで限らせて頂きます。

次回は6月27日更新予定です。
感想、ご意見、誤字報告もしよろしければお願い致します←


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第5話 激闘 拳骨のガープ

今回は少し短いです。

誤字報告をいつも下さる方、非常に助かっております。
これからも毎日投稿を目指し頑張りますので応援をよろしくお願いします。
あと携帯投稿ですので誤字は多いと思いますが今後とも何卒よろしくお願い致します。




 

 

「ガープそいつは頼んだぞ。私は他の逃げた奴隷の、ところへ「させるかよ!!!」っ!?」

 

センゴクがテゾーロをガープに任せモネ達を追って港に行こうとするもテゾーロはそれを剃で近づき回し蹴りを放つ。

 

黄金爆蹴(ゴオン・ボンバシュート)!!」

 

テゾーロの脚部が黄金に包まれセンゴクの胸部に命中する。

 

するとそこから爆発が生じ、センゴクは後方に吹っ飛ばされた。

「悪ぃけど、ここから先は死んでも通さねぇ!いくら伝説の海兵と大将センゴクだとにしてもなっ!!」

 

「ガッハッハ!言いよるではないか!小僧!

ならその誓い。死ぬ気で通してみよ!

「拳骨連打」!」

ガープの両拳が黒く染まりあげその大きな拳が雨となってテゾーロに襲いかかる。

 

「それなら初めから全力でいくぞ!|黄金聖闘士(ゴールドセイント)モデル牡牛座(タウラス)!」

 

テゾーロの指にハマっていた黄金の指輪5つが泥状になり彼自身を覆う。

 

すると一瞬でそれは甲冑へと変わり野牛を模した全身鎧へと変化した!

 

「ガハハハッ!鎧なぞ被って何になる!?それに何か能力でもあるんか!?!?」

ガープのラッシュがテゾーロの鎧にぶつかり、鉄と鉄がぶつかり合う激しい音を出す。

 

「意味は無いっ!」

「意味は無いのかよっ!!」

上はガープの発言であり、彼は心底驚いた。

ただの金の鎧だとは。

ガープの拳の連打を鎧と、己の手で弾き、致命傷足り得る攻撃をいなすテゾーロ。

2人が超至近距離で肉弾戦を繰り広げているところに巨人族の拳が落ちて来た。

「大仏鉄拳!」

「まぢかよっ!?」

テゾーロはすぐさまその場から剃のステップで後方に跳ねると、大仏化したセンゴクの拳がガープの元へと炸裂した。

 

ズガガガガガガ!

地面に拳が突き刺さるも未だ止まらぬ黄泉への拳。

ある一定距離まで地中に突き刺さると彼は腕を引き抜いた。

 

「ちっ。上手くかわされたか。」

センゴクは己の攻撃を回避したテゾーロの顔を忌々しい表情で睨んだ。

「ヒトヒトの実モデル大仏か。見た目以上にヤバそうな能力じゃねぇか。」

テゾーロは前世ではヒトヒトの実モデル大仏とは見た目が少し残念な能力だと思っていたが、

 

実際近場で目にするとその印象は全く異なる。

巨人のように巨大になり全身からなにやら力の根源のようなオーラを視認できる。

加えて先ほどの一撃は覇気を纏わず、ただのパンチであった。しかし、その拳は地中に深く刺さりセンゴクが手を引き抜くと1mほどの穴が空き、それが巨大なクレーターとなり、聖地を荒らす。

 

「それよりいいのかい?センゴクさんよ、ガープっていうオッサン、モロに食らって地中に埋まっちまったぞ?!」

テゾーロはその陥没した穴を指差す。

しかしセンゴクもまた伝説とまで言われた海兵。そのようなことで動揺はしない。

 

「奴は大丈夫だ。あいつの硬さは海軍1「痛いわ!貴様!!!」」

センゴクの会話の途中に、地中からガープが飛び出し武装色で覆った右手で思いっきり巨大化したセンゴクの顔を殴りつけた。

 

ドガァァァァァァンッ!

 

ガープに殴られたことによりセンゴクの身体は地面に倒れた。

しかしそれでもガープは止まらない。

地面に付したセンゴクに向かいその首らしきところに跨ると更に硬化した拳を3発力の限りセンゴクを殴り付けた!

 

「これはワシの分ッ!これは聖地を壊した分!そして最後がルフィと離れて寂しい爺ちゃんの分じゃあ!!!」

 

「おまっ、最後は関係なっ!ブベッ!!!」

ガープの本気の拳を計、4発モロに受けたセンゴクはそこで意識を失い、大仏化が解けた。

 

「…あのぅ…お味方さん大丈夫ですか?」

テゾーロはそのモロに受けたセンゴクを気遣いガープに話しかけた。

 

「ハァハァハァ。大丈夫じゃわい!こんなぐらいで死ぬような奴では無い。しかし本気で殴りおって!」

ガープは肩で息をしながらセンゴクの首から腰を退かし、テゾーロと再び向かいあった。

 

「まあ、これでお前さんも本気で儂と戦えるじゃろ?

どっからでも掛かって来んかい!老いぼれが相手してやる。」

 

ニヤリとガープは口角を吊り上げた。

「ではお言葉に甘えて。剃ッ!」

テゾーロは地を一瞬に10歩叩き、ガープとの距離を詰める。

 

「嵐脚。闘牛連斬っ!」

テゾーロはガープのそばに移動し、モデル牡牛座(タウラス)をイメージした鎌鼬(かまいたち)を起こし目の前の強敵を狙う。

 

「鉄塊!」

キンキンキンキンキンッ!

ガープの身体に当たった鎌鼬は彼の身体を傷つけることは敵わず、全て鉄塊により落とされた。

 

「小僧、どこで六式を覚えた?

六式という術が派生してまだ間もない。何故海軍でないお主がそこまで使いこなせる?」

 

「秘密だッ! モデルチェンジ獅子座(レオ)!獣指銃ッ!」

バババババババンッ!!

テゾーロが纏っていた鎧が瞬時にその姿を変え、獅子座を模したゴールドアーマーに変わり彼は黄金と覇気で強化した指から指銃を放つ。

それは、まるで大型の機関銃をフルオートで放ったような音を立て、何十、何百の衝撃波となりガープに襲い掛かる。

「月歩!」

それをガープは空を翔けることにより回避していくがテゾーロもまたその指銃によって追従する。

 

「鬱陶しい!!」

しばし指銃による弾丸の雨を空を翔け逃げ回っていたガープはそのまま体の向きをテゾーロに変え距離を詰めていく。

 

「モデルチェンジ蟹座(キャンサー)

黄金雪時雨(ゴウン・スノー)。」

 

「ガッハッハ!捕まえたぞ!!!このまま締め上げてやるわい!!」

ガープは、また更に姿を変えたテゾーロに近づき己の胸に彼を抱き締める。

締め上げる腕の力は万力のようにギュウギュウと音を立て彼を逃がさんと力が込められていた。

 

「ん?なんじゃ?金箔の雪?」

ふとガープは空から降る金箔に気がつき空を見上げる。

空からは幾千もの金色の雪が舞い散り彼らの元へと降り注ぐ。

 

「黄金雪時雨。俺の能力だよ。天から雪のように金粉を落としそれは人体の毒になる。呼吸とともに人体に入りやがて死に至る毒だよ。」

彼は未だ締め上げるガープに向かい笑いかけるとガープは目を見開きその腕の力を緩め、即座に彼から離れた。

 

「あっぶねぇことする小僧じゃ!!!」

ガープはテゾーロから10mほど離れ金箔から降るエリアから脱出し、彼のやり口に口を尖らした。

 

「行け。金箔よ。」

テゾーロがパチンと指を鳴らすと降っていた金箔はやがて密集し、一つの大きな球体のようになりガープの元へと飛ぶ。

 

「こんなもの、息と止めれば良いだけじゃ!!老いぼれを舐めるなあああああ!!!!」

ガープが飛んできた球体を武装色で硬化した右手でそれを殴る。

しかし、殴った瞬間その球体は素早く液状化しガープの右腕を包んだ。

 

パチン。

 

それを見たテゾーロはまたそこで指を鳴らすと、液状化しガープの右腕に纏わり着いた金が素早く固まり彼の右腕は金の彫像となった。

 

「これで、あんたの右腕はもう使えない。どうする?次は両脚を。その次に左腕を。最後に頭を彫像にしてやろうか?」

テゾーロは微笑みガープに笑いかけた。

 

「そうじゃな。ここらで辞めるとするか。儂の負けじゃ」

「…は?」

ガープは潔く負けを認めるとその場にドカっと座り込んだ。

 

「そもそも儂は今回の任務は気が進まん。元々天竜人なぞに儂の正義を掲げるに値する物でもない。

ほれ、もう今は追わん。さっさと仲間たちとここから出ろ。」

「いいのかよ、爺さん。これでも一応は犯罪者だぜ?

それも天竜人に逆らい奴隷まで解放してしまった。」

 

「構わん。今、ここで貴様を殺したり捕まえたりするのは儂の正義に反する。

それに正直ここでお前さんと儂が本気で戦えばこの聖地もただでは済まんじゃろうしのぅ」

 

「ケッ。気づいてやがったか。糞爺ィ。」

「伊達に海軍の英雄なんて呼ばれておらんよ。

 

しかし去る前にこの腕だけはどうにしてくれんかのぅ。」

「意外に似合ってと思うぞ。その黄金の右手。」

「さっきから全く曲がらんのじゃ。

正直貴様の武装色が儂の武装色よりも強いことは気に食わんがなっ!!」

 

「そんなのも分かるのか?」

「あぁ。儂が武装色で覆った腕を完璧に固めてしまうなどそうとしか考えられんわ。

その覇気の素質と言い、能力という小僧、貴様は何者なんじゃ?」

「それも秘密だ。いつか分かるだろうぜ。

じゃあな爺さん、もう二度とやり合いたくねぇが次会うときまで達者でな。見逃してくれてありがとよ。」

 

テゾーロはそれだけ言い残し剃を使い港へ向かって消えていった。

 

「んっ!?あの小僧!!!儂の腕このままにして行きやがった!!!!!」

ふと腕のことを思い出したガープが大きな独り言を呟くも既にテゾーロの姿は見えない。

 

彼の腕の金が落ちたのはそれから30分経った時だった。

どうやらテゾーロが充分離れた時に能力を解除したのだろう。

「にしても、あの小僧。ありゃあいつかとんでもない怪物になるぞ。」

 

ガープはその場で独り言を呟き胸元から子電々虫を取り出し電話を掛けた。

 

プルルルルル ガチャ

「おぅ。ボルサリーノか。撤収じゃ。現時点をもって任務を全て放棄。至急天竜人の救出及び復興作業に当たれ。

ん?今立て込んでる?知らんわ!!そんなもの放置して早よ来んか!!!!!ガチャ!」

ガープはボルサリーノが喋っていた途中であったが無理やり電話を切り上げ、未だ地に伏すセンゴクに目を向けた。

 

「はぁ。こりゃあまたセンゴクの野郎にぶちギレられるわな。

逃げようかな。」

 

彼はそこで腰を持ち上げ未だ倒れ伏すセンゴクを無理やり背負い込むとマリージョアの中心地まで歩を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テゾーロとガープとの戦闘が終わった時、もう一つの戦場も終演に向かっていた。

「ん〜。どうしようかねぇ。ガープさんから連絡あったし、お前ェここで死んでもらうかぃ。」

 

「ぐっ。クソ!この化物めッ!」

地面に伏したフィシャータイガーの胸を踏み付け彼を見下ろしたボルサリーノの彼の顔に指を指す。

 

するとその人差し指に光が集まり瞬く間にそれは収束した。

 

「八尺瓊勾玉。さよならだよぉ。魚人く「プルプルプル!」…!?」

ボルサリーノ必殺の攻撃を放とうとした時再び彼の懐に忍ばせた子電々虫が鳴る。

 

するとボルサリーノは一旦攻撃をやめ先ほどガープからの子電々虫とは違う子電々虫を取り出した。

それは海軍で支給されるものではなく。華美に装飾された珍しいタイプの子電々虫だった。

 

ガチャ。

 

「はい。こちらボルサリーノ。はい。それは真ですかぃ?

ん〜。しょうがないって言われましてもねぇ。

えー。はい。分かりました。それでは。」

 

ガチャ。

 

「はぁ〜。たくっ。お前ェ。命拾いしたねぇ〜。今回は見逃してやるよぉ。しかし次会った時は必ず殺すから、それまでせいぜい生き残ることだねぇ。」

そう言うとボルサリーノはフィッシャータイガーの胸にのせていた足を退かし、それ以降振り返ることなくその場から立ち去った。

 

「クソがっ!!俺は生きされたのかっ!クソ!クソッ!ボルサリーノめ、いつか必ずお前は俺が倒す!!必ずだ!!!」

ボルサリーノが周囲に居ないことは分かっていようとも彼は自分の悲願を大声で叫んだ。

 

 

なにはともあれフィッシャータイガーは生き残った。

そして彼はのちにタイヨウの海賊団を組織し、

しばし世界中の人間から英雄の1人と謳われるようになる。

 

フィッシャータイガーは傷だらけの身体をなんとか起こし、マリージョアの端を目指し進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ゴールドアーマーに着きました、この章が終われば改めて設定として多少なりとも情報を開示できたらと思っております。

次回、モネとシュガー達と合流します。

頑張って明日までにはまた次話を投稿したいと思いますのでよろしくお願い致します。


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第6話 奴隷達の狼煙

少し早いけど投稿します。


出来れば7話も今日中に投稿したいだすが、いけるかなー?笑


それにしてもゴールドアーマーは、皆さん恐らくお察しだと思いますが・・・。ゴニョゴニョ種類あります。ゴニョゴニョ。

恐らくお察しの通りだと思いますが…よろしくお願いします笑


 

 

「あ!!テゾーロ!無事だったんだねー!」

 

テゾーロが港に近づいた時、彼に気がついたシュガーが拿捕した軍艦の船上から彼に向かって大きく手を振った。

 

 

彼女の声で、船上にいた全ての奴隷が彼に目を向ける。

 

皆彼を見つけると思い思いの声をあげ彼を歓待した。

 

 

シュガーがデッキの上から梯子を垂らしテゾーロを迎え入れると、彼らの歓待の叫びは一際大きくなった。

 

 

「英雄の!!英雄の帰還だ!」

 

 

「ありがとう!テゾーロ!」

 

 

「テゾーロ様ッ!」

 

 

彼が船上まで登りその姿をを表すと皆が一斉に彼の元へ駆け寄りテゾーロを囲う。

 

 

しかし、そんな歓待ムードをテゾーロは

「時間がない。」といってすぐさま全員に出航準備を言い渡した。

 

出航準備自体は奴隷の2割が海賊上がりであった為すぐさま完了するとテゾーロは皆を代表して言った。

 

 

「お前ら!出航だ!!このままこの地から飛び降りるぞ!」

 

 

 

「「「「「応ッ!」」」」

 

 

「ん?飛び降りる?」

 

 

船は徐々にそのスピードを上げマリージョアの港を離れると赤い土の大地(レッドライン)の端を目指し航行していく。

 

「ねぇ、飛び降りるとは?、まさかレッドラインの端からこの船で飛び降りるってわけじゃないでしょうね?」

 

モネがテゾーロに疑問を問いかけるとテゾーロは真顔で

「いや、この船で飛ぶ。」

 

とだけ伝えると、最初はテゾーロの事を信じ、あまり深く考えず出航した他の奴隷隊から声が上がる。

 

 

 

「「ええぇ〜!?!」」

 

 

「ちょ、ちょっとテゾーロ!飛ぶってどうやって!?」

 

 

 

「時期に分かる。いけ!!そのまま突っ切れ!!!!」

 

 

軍艦はマリージョアの端を目指し、進む。帆で最大限の風を掴み。いまさら止まれない速度で。

 

「「「「死ぬぅぅぅぅ!!!」」」

 

 

心ではテゾーロを信じると決めた一行も身体は正直であり、彼らがレッドライン。マリージョアが地に堕ちるため飛び出したあと、

内臓が浮き、なんとも表現できない浮遊感が彼らを一瞬襲ったが、その浮遊感はすぐさま消失し、

 

船が堕ちることによって変わる景色も緩やかになっていく。

 

 

黄金飛袋(パラシュート)

 

 

テゾーロは軍艦が聖地から海へと堕ちる時しばしジェットコースターのような浮遊感を楽しむと己の指輪の金を薄く薄く伸ばし、船の上を覆う様に広げて、四隅に触手のように黄金を伸ばし軍艦に固定して。

 

 

 

 

「「「えぇ〜!!!!」」」

 

 

ハンコック、モネ、シュガー含め、奴隷達全員がエネルのあの驚き顔のように驚愕しテゾーロを見ていたが、

彼は彼で

(シュガーの驚き顔やっぱエネル顔だったんだな)

 

などと思っていた。

 

 

 

 

 

 

風は幸いに良好でなんら吹き荒れることなく彼らをゆっくりと流し空から落ちていく。

 

 

驚愕から冷めた一同は再びテゾーロを賞賛し始めるが、テゾーロの顔は一向に冴えないままだった。

 

 

 

「どうしたのですか?テゾーロ」

 

 

ハンコックが代表してテゾーロに問いかけた。

 

 

モネも、シュガーもプルートも感じていたテゾーロの表情に対する不安。

 

 

それは奇しくも正解だった。

 

 

 

「恐らくこの軍艦が海に着水するまでにもう少し時間が掛かると思う。

 

そこで今のうちに俺たちとこれから先も行動するのか、それとも自分たちの家族の元へ帰るのか。みんな決めて欲しい。

 

悪いが家族の元へ帰る連中にはある程度の金を渡す。

 

地上に着いた後港を探してそこから各自、自分たちだけで行って欲しいんだ。

 

 

それで、もし俺と、共に残ると決めた奴らはそのあと無人島を探してそこでしばらく身を隠し生活をしようと思う。

 

急でわりぃがお前ら今決めてくれ。

 

 

モネ、シュガー。お前たちは俺と来てくれ。お前らの力は必ず必要になる。共に世界を変えよう。

 

 

ほかの奴らは自由にしてくれてもいい。

 

 

ただ俺と共にくる選択をした奴らは世界といつか戦うことになると思う。

 

全員が全員戦闘員に!というわけではない。ただ気持ちは、心は!世界と!天竜人と戦うんだという気持ちでいて欲しい。

 

それを今決めろというのは申し訳ねぇと思うが、この通りだ。」

 

 

テゾーロはそう言うと、彼らに向かって頭を下げた。

 

「うん!私も、モネもテゾーロに着いていくよ!今更だしね!」

 

 

「そうですね。ここまで来たら戦いましょう。」

 

 

真っ先に同意の声をあげたのはシュガーとモネだった。これはテゾーロはある程度予想していた。

 

 

奴隷だった時、お互いの身の上話をしたことがあったら彼女たちに身寄りはいないということだった。

 

故にテゾーロの元へ姉妹がくるのはなんら不思議でも無い。

 

 

 

しかし、その後はテゾーロの予想とは多いに違っていてた。

 

 

 

軍艦に乗り込んでいた奴隷2000人そのほとんどがテゾーロと共に行く事をその場で決断し、賛成の声をあげる。

 

 

家族の元へ戻ることを選んだのはその内1割も居なかった。

 

 

その中には当然のようにプルートも、ハンコック達ゴルゴン姉妹も含まれていた。

 

 

 

「今更、わたし達だけでは生きて行くのは何かと不安ですし、テゾーロに着いて行きます。」

 

 

ハンコックがゴルゴン姉妹を代表してテゾーロにそう声をかけるがそこでテゾーロは待ったを掛けた。

 

 

「ハンコック。お前たち姉妹には悪いがお前らはここで降りてもらう。」

 

テゾーロの淡々とした解答にハンコックは驚く。

 

 

「何故ですか!?他の者たちがよくて何故わたし達は!?」

 

 

 

「お前ら三姉妹にはやってもらいたい頼みがある。

 

 

恐らくいま俺たちはマリージョアの入り口から飛び降りている。

 

つまりは、俺の予想が正しければこれから一番先に向かう港はシャボンディ諸島と言われるマングローブの集合体で出来た島だと思う。

お前達はそこでレイリーという男を探して欲しい。

 

レイリーからニョン婆と言われる老婆を紹介してもらい女人島に潜入しそこで皇帝になって欲しい。

 

 

何、皇帝と言うがハンコック。お前なら大丈夫な…はずだ。

 

そこで俺の声がかかるまで戦力を整えて欲しい。

 

 

これはお前にしか頼めない。お前たち姉妹でしか成し遂げれない非常に難しい任務なのだ。

 

頼む。」

 

 

 

 

「なっ!!!!!そ、そそそそ、そこまで言われるなら仕方ありません!このボア・ハンコック。見事貴方の期待に応えましょう!」

 

 

 

((((チョレーっ!)))

 

 

 

 

一同がなんだこのチョロインはとは思ったが誰も口にしなかった。

 

 

テゾーロはテゾーロで

 

(あぶねー!!ハンコックが女人島の皇帝にならないと話読めねえし、上手く行って良かったが、これは御都合主義という奴か?)

 

 

と思っていた。

 

 

 

断言しよう。御都合主義である。と。

 

 

 

 

 

 

しばし時を置き、テゾーロと共に無人島に行く者。

 

シャボンディ諸島に行く者が、甲板の上でグループ分けされ一同はシャボンディ諸島付近の海域を目指し、ゆっくりと海へ近づく。

 

 

皆が思い思いに別れを惜しみ話し合ってる時テゾーロは、共に残ることを選択した脚長族のプルートと巨人族のバルディッシュをそばに呼び、

 

金色をした黄金のリュックサックから悪魔の実を二つ取り出し、彼らに渡す。

 

 

 

 

 

「お前らが、共に残ってくれて嬉しく思う。巨人族のバルディッシュ。それと・・・脚長君。君はだれだ?」

 

 

「プルートだ!!!」

 

 

 

「あぁ、そうそうプルート。君は数多くの彼らを率いてこの軍艦の拿捕に率先して協力してくれたと思う。

 

 

これは悪魔の実だ。

すでに俺や、モネ、シュガーは食べているし、シャボンディ諸島で離れるゴルゴン姉妹もまた全員能力者だ。

 

 

これをお前らに渡すのは他でも無い。悪いが食ってくれ。

 

これが何の悪魔の実かは正直俺も分からない。悪魔の実図鑑がここに無いからな。

 

ただこれを食って弱くなることは絶対に無い。

 

 

これから先お前らの力が必要になる。だから「テゾーロさんのこれから先やりたいことって言うのは何なんだ?」」

 

 

 

プルートはテゾーロが話している「世界との戦い」を未だに深く理解してなかった。

 

それはバルディッシュでもあり、この甲板に居るほとんど全員でもあった。

 

 

ただ、彼らには帰る場所など既になく、

 

 

今回この襲撃事件を起こした張本人。彼らにとっては大英雄ギルド・テゾーロを信じて残ることを決意した者たち。

 

世界とどのように戦うのか、気にならないと言えば嘘になる。

 

 

皆がプルートの言葉で一斉にテゾーロを見つめ彼の言葉を待った。

 

 

 

 

 

 

「なあに。簡単なことさ。

 

いつか俺は、いや俺たちは世界に革命をもたらし、天竜人を全員滅亡させる。

 

いや、もしかしたら滅亡ではなく天竜人の地位を消滅させるというのが正しいかもしれん。」

 

 

 

「そ、それは・・・。」

 

 

 

誰もが思わず「それは無理ではないか」と思った。

 

しかしテゾーロの言葉はまだ続く。

 

 

 

「天竜人という地位をなくし、奴隷という制度も。

 

そして、種族差別を無くし皆が平等な世界を創る。

 

それが俺の夢だ。」

 

 

((えっ!?そうだったの!?天竜人殺すだけじゃないのっ!?))とモネとシュガーが思ったがそこは空気を読んで黙る。

 

 

「無理だ!!そんなの出来るわけねぇ!」

 

 

元奴隷達のだれかが口にする。

 

 

 

「そうだ!人間はもともと平等じゃねぇんだ!」

 

 

 

声を荒げた奴隷は数はそう多くはない。

 

 

他の皆は口を閉じ、その行く末を見守る。

 

しかし誰もが口にしないながらも思う。

 

 

そんなのは無理だ。

 

 

出来るはずがない。 と。

 

 

 

「出来るわけねぇって言って何故そう思う?

 

出来ねぇ。出来ねぇと口にし、何もせずただ政府の奴らに捕まりまた奴隷に戻るのをお前らは望んでいるのか?

 

 

違ぇだろ。俺たちはもう奴隷じゃねぇ。

ゴミじゃねぇ。

虫ケラでもねぇ。

 

笑うことも許されず、テメェの意見を語らず時が経つのをジッと待つ。

 

もうそんな生き方には戻りたくねぇだろ!

 

思い出せ!あの日々を!

理解しろ!家族の居ない俺たちに残された道はないと!

信じろ!お前らが英雄と慕うこの俺を!

 

 

 

俺が!!俺たちが!!

 

必ずこの腐った世の中に終止符を打つ!

 

 

てめぇら!一度俺について来ると決めたならもう迷うな!!

 

 

他人を信じれねぇって言うなら俺が家族になってやる!

 

1人が恐ぇなら俺が守ってやる!

 

 

強くなりてぇなら俺が強くしてやる!

 

 

 

もう天竜人共の機嫌を伺う必要もねぇ!

 

 

いいか!!俺たちはもう奴隷じゃねぇんだ!!

 

 

 

今日から俺たちは自由だ!誰にも縛られれず、誰からも指図されない。

 

お前ら!!!勝鬨をあげろ!!!

 

俺たちはもう!自由なんだっ!!!!!!!」

 

 

 

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らの叫びが、未だ空中を浮遊する船から木霊する。

 

 

 

空が、

 

 

大気が、

 

 

船が、

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが揺れるように凄まじい音量で放たれた彼らの勝鬨は世界に轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリージョア襲撃事件と後に呼ばれ、その戦いで解放された奴隷、総勢2600人余り。

 

 

その他、戦闘により死亡した奴隷1600人 海兵250人。

 

 

 

 

 

ここから、テゾーロの。

 

 

 

いやギルド・テゾーロファミリーの復讐が始まる。

 

 

 

 

 

 

そして船は粛々と海へと緩やかに落ちていった。

 

 




誤字報告、感想等あればよろしくお願いします!!!泣いて喜びます!


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第7話 ホビホビの能力者

ギリ間に合った?間に合ったとした下さい。


公式ではシュガーとモネは8歳差がありますが、ここでは同い年の双子だと思ってください。
じゃないと物語が進まなかったの!!許して!!!


 

「じゃあな。ハンコック。マリーゴールド、サンダーソニア。また会おう。」

 

 

「えぇ。テゾーロ。必ず成し遂げて見せますわ!未来の!夫のために・・・。」

 

 

ハンコックは若干頬を赤らめ、最後は尻すぼみになりながらも努力することをテゾーロに伝える。

 

 

テゾーロ自身は最後の方は聞こえなかった・・・ことにして話を続けた。

 

 

テゾーロは主人公補正のような耳が悪いと言う特典など無く至って健康体なのだ。

 

当然のように至近距離で例え後半のハンコックの言葉が一人言のように小さい声音になろうとも耳聡く聞き取っていたが、ここで、それに反応するのは些か無粋ではと思い、そのままサンダーソニアと、マリーゴールドに話しかける。

 

 

「ハンコックは恐らくこのまま美しいままだとは思うが、お前たち2人は注意しろよ?

 

サンダーソニアとマリーゴールドが食べたヘビヘビの実は恐らく太りやすい。ヘビになったお前たちに食事制限をしろとは言い難いが、なるべくそのままの美貌を保ち次会った時も美しい三姉妹でいてくれな。」

 

 

 

「嫌ですわ。そんな美しいなんて。」

 

 

ハンコックはさらに頬を赤らめ自らの手で顔を覆い隠すが、テゾーロはここでも至ってスルーである。

 

 

 

「えぇ。分かりましたわ。テゾーロ。此度は本当にありがとうございました。私もマリーゴールドも気をつけますわ。」

 

 

 

「はい。またテゾーロに会えること私達もお待ちしておりますのでそれまでお元気で。」

 

 

サンダーソニアとマリーゴールドの順でテゾーロに話しかけテゾーロはゴルゴン三姉妹と握手をした。

 

 

 

ここはシャボンディ諸島から一キロ程離れた海の沖。

 

シャボンディ諸島に彼ら全員上陸するのは危険と考え、彼テゾーロは沖から軍艦に載せられていた避難船5隻に20人ずつ。

 

合計約100人を海上で見送ることにした。

 

 

各々が別れをしばし惜しんだ後、すぐさま家族の元へ戻りたいと志願した元奴隷達は避難船に乗り込んでいく。

 

 

 

「あ!ハンコックー!もしレイリーが見つからなければシャクヤクって女がやってる『ぼったくりBAR』を探せ!そこで待てば会えるはずだ!」

 

軍艦の上から避難船に向かってテゾーロは叫びハンコックはそれに答えるように手を挙げた。

 

 

皆が避難船に。

 

 

避難船に乗った人たちは軍艦に。

 

 

 

各々が手を振った。

 

 

しばし軍艦と避難船の距離が離れたことを確認したテゾーロは何故か、歯をキリキリと食いしばるモネとシュガーに目をやった。

 

 

 

 

「テゾーロ。あなたやっぱり黒髪が好きなのねっ!」

 

 

「テゾーロのバカ!スケベっ!!」

 

 

2人がそれぞれ非難めいた目をテゾーロに向けるがそれを聞いてもテゾーロの顔は冴えない。

 

 

 

 

別に2人に責められてるからではない。

 

 

 

これからすることを考えると真剣な表情に成らざるを得なかったからである。

 

 

 

 

 

 

「みんな、ちょっと聞いてくれ。」

 

非難船からかなり距離が空き、軍艦も徐々に外洋へと進み始めた時テゾーロは軍艦に残った総勢約2000人を集めた。

 

「今回、俺たちがしたことは死罪であると俺は思う。

マリージョアからの脱走もそう。奴隷なのに天竜人に逆らったこともそう。

 

しかも俺に至っては恐らく何度殺されても足りないぐらいの裁きが待っているだろう。

 

 

それに海軍も世界政府もこれから俺を。そして脱走したお前達も血眼で探すはず。

 

 

だから俺はプルートとバルディッシュに悪魔の実を渡した。

 

 

2人ともこっち来てくれ。」

 

 

テゾーロの話を聞いてた集団の中から彼の元へ歩む2人の男。

 

 

 

1人はこの軍艦の拿捕に貢献した脚長族のプルート。

 

 

1人は巨人族のバルディッシュ。

 

 

その2人が彼の元へと近づきそのまま振り返りテゾーロと同じように集団に顔を向けた。

 

 

 

「この2人は此度の解放の折に力を尽くした。だから俺は彼らに悪魔の実を与えた。

 

悪魔の実のことについて知らない奴はいるか?」

 

 

テゾーロは集団に顔を向けるが誰一人手を挙げない。

 

 

それもそうだ。悪魔の実とはこの世界では数少ない秘宝であれ、それらのほとんどはマリージョアから生まれる。詳しく言えば聖地マリージョアの中心部に聳え立つ大樹イブであるが、

 

よって、マリージョアに囚われていた彼らは偉大なる航路の前である者達よりも悪魔の実は身近で、更に何人かは既に実験台としたら食わせられている。

 

 

 

「知らないものは居ないようだな。

それなら悪魔の実についての説明は省く。

 

俺が彼らに与えた悪魔の実は正直食べてもらうまで判断は出来なかったが、

 

プルートに渡した実は検証の結果動物系ネコネコの実のモデル猫だと分かった。

 

プルート。頼む」

 

プルートはその場で首をコクリと頷き了承の意を伝えると身体に力を入れる。

 

 

テゾーロ自身ゴルゴルの実を食べた時の記憶もそうだし、意識が覚醒した今でも分かる。

 

 

悪魔の実を食べた人間は己が何の能力か若干であるが理解出来る。

 

 

しかし不思議な事ながら原作の幼少期ルフィはなぜか最初びっくりして居た気がするが、恐らく子供故にとか、素直過ぎる故にであるとテゾーロは考える。

 

 

 

プルートが身体から能力を顕現しようと力を込めると彼のそのシンボルである長い脚、腕、顔が徐々に毛で覆われ、しばらくすると何とも言えない不思議な生物がこの世に現れた。

 

 

白い毛に覆われて異様に脚が長く二足歩行の猫。

 

まあ、キリンとかよりはマシではあるがある種滑稽な姿でもあった。

 

 

 

 

「プルートはこのように猫になるネコネコの実モデルネコと現時点では推測するがそれを食べた能力となったわけだ。

 

次バルディッシュ。頼む。」

 

 

テゾーロは顔を見上げバルディッシュを見た。

 

バルディッシュもその巨体に似合う太い声で返事を返し、己の身体に力を込める。

 

 

 

すると、彼の20mはある巨大な体がミルミル小さくなっていきテゾーロと同じぐらいの身長にまで小さくなった時、それは止まった。

 

 

 

「俺も驚いたが、バルディッシュが食べた能力は身体や物を小さくする能力であることが、分かった。この悪魔の実は俺は知らないが、ここではシュクシュクの実の縮小人間にでもなってもらったと思ってくれれば良い。

 

 

今俺が彼らの能力を皆に見せたのは別に彼らの力を今から使うわけではない。

 

 

ただ皆にある悪魔の実について知っていて欲しいことがあったから先に2人を紹介した。そのある悪魔の実とはシュガーのホビホビの実だ。

 

皆に説明したのは悪魔の実は得体の知れない能力ではあるが別に必ず危険があるという訳ではない。

 

たがシュガーのホビホビの実は別だ。

 

 

シュガー、ちょっと来てくれ。」

 

 

 

 

シュガーはテゾーロの後ろに隠れるように立っていたが、モネから背中を押されやむやむといった様子でテゾーロの横に立つ。

 

その表情はどこか冴えない。

 

彼女は基本悪魔の実の話をになると途端に口を閉ざし、表情も暗くするのだ。

 

無理もない。己の悪魔の実だけが、周りと違い唯一呪いが2点ある。

 

海に嫌われること。

 

 

そして

 

成長しないこと。

 

彼女はその成長しないことが酷く悪魔の実を嫌う理由であった。

 

 

30歳の頃や20代で食べるならまだ良い。

彼女は10代とは言え10歳でその悪魔の実を食べさせられ、それ以降全く成長しない。

 

 

モネが、周りが大きくなろうと、成長しようと、

テゾーロの声が一段、低くなり歳を取ろうと、

 

 

シュガーだけは、彼女だけは永遠に10歳なのだ。

 

 

周りは成長の具合を実感し、喜ぶことが出来るがシュガーにはその喜びを分かち合うことも出来ない。

 

 

故に悪魔の実そのものを恨む。

 

 

遊びや実験と称して成長しないという呪いを孕んだ禁断の果実を食わせた天竜人を酷く憎悪する。

 

 

少女趣味の男も巷にはいると聞くが、彼女が見てほしいのはテゾーロただ1人。

 

テゾーロはハンコックやモネを見る目つきと私を見る目つきは違うことは承知しているし、その様子から恐らく彼は少女が恋愛対象ではないことも理解している。

 

 

それでも彼女はテゾーロに見てほしい。

 

あの地獄から救ってくれた英雄。

 

 

自分が呪いにより塞ぎ込んでいた時も必ず優しく慰めてくれる彼に。

 

 

なのに、彼女は一向に身体は成長しない。

 

それが悪魔の実を、天竜人を恨む理由であり、

 

 

 

現在、晴れない表情をしている理由である。

 

 

シュガーは俯きながらテゾーロの横に立つと、彼はシュガーの水色の髪の毛の上に手を置いた。

 

 

シュガーは顔を上げ彼を見上げると、テゾーロは優しく微笑んでいた。

 

 

「実はシュガーとモネは姉妹なんだが、これについては凡そのみんなは想像していた通りだと思う。

 

ただ、ここで言っておくべきなのはシュガーもモネも共に15歳の双子だ。」

 

 

 

「「えっ!?」」

 

皆が目を見開きシュガーとモネは交互に見る。

 

 

どう見てもシュガーは15歳には見えない。明らかに児童である。

 

 

「皆の気持ちも分かる。シュガーが今現在、このようになったのはその悪魔の実の呪いによるものだ。

 

 

普通、悪魔の実とは海に嫌われること以外に他に呪いと言われる類のものはシュガーが食べた悪魔の実以外ないと俺は思っている。

 

では何故、彼女だけそのような呪いが2種類もある悪魔の実の能力者なのか。

 

 

それは彼女はホビホビの実の能力者だからだ。

 

 

ホビホビの実とはその手で触れたものをここでは人をだが、

触れた人間をおもちゃに変えてしまう。

 

しかもおもちゃに変えられた人間はシュガーに逆らうことは出来ない。

 

ただそれだけのレベルなら恐らく悪魔の実には幾らでもあるが彼女は更に、おもちゃに変えられた人間に関する記憶を世界から消すこと出来る。

 

例え、恋人であろうが家族であろうが仲間であろうが。

 

おもちゃにされた人物に関する記憶は完全に消失し、居なくなった事に対してもなんら疑問を抱かせないレベルの記憶の書き換えを世界中に引き起こしてしまう。

 

 

俺が知ってるなかでこれ以上の世界に対して作用する悪魔の実はホビホビの実だけだと思っている。

 

 

だからそこまで強力な力を持つからこそ呪いが2つ存在し、彼女はホビホビの実を食べた10歳から以降、身体の成長が止まるという呪いがかけられたのだと思う。

 

 

 

そこでだ。

 

 

何も彼女を皆に紹介したいから彼女について悪魔の実を説明したのではない。

 

 

俺たちはこれから彼女の力をでおもちゃとなりしばしその存在を消す。

 

 

これについては全員だ。

 

恐らく1日、2日の話ではない。

 

最低でも3年以上はおもちゃとして生活する必要があると俺は思う。

 

 

しかも今すぐだ。」

 

 

 

 

テゾーロのその真剣な声音からシュガーは全くこの作戦について聞いては居なかったが、自体は急を争っているのではと感じる。

 

 

正直、彼女は己の力を使いたくはない。

 

 

ただでさえ忌み嫌う能力。本来使わないで済むなら迷わず使わない道を選ぶだろう。

 

しかし、テゾーロを信じると決めた3年前から彼女の気持ちは決まっている。

 

 

(力になれるなら、そばに入れるならわたしはなんでもするよ!テゾーロ!)

 

 

彼女は己の心でテゾーロがその力を望むなら使う。いや今なら少し使いたいとさえ思うほど、若干であるが心のモヤが晴れた気持ちになった。

 

「正直、もう今更だし、俺はアンタを信じるぜ。」

その話を聞いていたプルートがテゾーロに語りかける。

 

 

「シュガーは私の妹だもん。お任せするわね。シュガー」

モネがすでにシュガーの頭に載っているテゾーロの手に被せるように手を置き笑いかける。

 

 

「お、俺たちも!ここまで来たら今更引けねぇ!!信じるぜ!!アンタ達を!!」

集団の内誰かが決意を叫ぶ。

 

彼らに悩む時間など必要なかった。既に英雄テゾーロは自分達の最善を考え、そして尽くしてくれる。

家族になってくれると言ってくれた。

守ってくれると言ってくれた。

力になってくれると言ってくれた。

 

そこまで言ってくれ、行動に起こしてくれた人物を疑うような事を元奴隷達は出来なかった。否、したくなかった。

 

そしてみんなが思い思いにシュガーに『よろしく』や『優しくね』や『頑張ってね』等の声をかけると、

 

シュガーの冴えない表情がみるみる明るくなって行くのをテゾーロは見ていた。

 

シュガー自身、その感情には戸惑いもあった。

 

恐れらると思った。

避けられると思った。

邪険にされると思った。

しかし彼らが取った行動はどれにも当てはまらない。

テゾーロを、彼女を信じて託したのだ。

 

嬉しくないわけがない。

 

「何という、俺が言うのもなんだがお前ら無鉄砲だな」

誰もがテゾーロのその声に

 

 

(((お前が言うな!襲撃犯ッ!)))

 

と思ったが口にはしない。

 

 

「まぁ、正直おもちゃになることにデメリットもあるはずだが、とりあえず今すぐおもちゃに変えるぞ!事件が報道される前に!!

 

 

 

シュガー俺は最後に頼む。今から全員おもちゃに変えてくれ。」

 

 

テゾーロは一度シュガーの頭をポンポンと優しく叩くと彼女に微笑みかけた。

 

 

「うん!!任せて!!」

 

 

 

 

シュガーは元気よく返事をすると近場にいた人物からおもちゃへと変えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、世界から2000人もの奴隷が消失した。

 




次回は28日更新予定です。


加えて土曜日にはストックを頑張って続けますので。恐らく1日一話、多くて2話更新になるかと思います。



誤字報告等ありましたらまたよろしくお願いします。


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第8話 動き出す世界

こんにちわ。

パソコン買いました!

よってこれからは徐々に文字数が多くなると思います。


あと、いつも誤字報告ありがとうございます。
それと活動報告もしくは感想欄に

こんな感じの必殺技を使ってほしいとかあればコメントくださいね!待ってます←


 

 

 

 

テゾーロ達の記憶が消失し、しばらく時が経った同日、現在センゴクは海軍の最高責任者コング元帥と共に現在五老星と今回のことについての会議を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは貴様ら大将、中将の2人は多少の奴隷を捕まえただけで首謀者足り得る輩には遭遇しなかったのだな?」

 

 

五老星の内の1人がセンゴクに対して問う。

 

 

「はっ!私とガープ中将はマリージョアに上陸後すぐさま首謀者の捜索に取りかかりましたが、首謀者のような輩とは遭遇しませんでした!」

 

 

「では、ボルサリーノが遭遇したフィッシャータイガーなる魚人が恐らく今回の首謀者ということになるのでは?」

 

 

「しかし、其奴はマリージョアの東側でボルサリーノと遭遇したと報告書に書いてある。

同時に荷物などは何もなく身1つであったともここに記されておる。誰が陽樹イブから悪魔の実を多数奪ったのだ?」

 

「そのフィッシャータイガーがなにかの能力者だとは考えられんかね?」

 

 

「だが、ボルサリーノと遭遇した時、何か能力を使った節は無いとされているぞ」

 

 

 

「敢えて使わなかったのかも知れん。

このような襲撃を起こす者だ。いくらか頭は切れるのではないか?」

 

 

「しかし、今回のこの事件何やら不確定な要素が多すぎる。

記録では天竜人が所有していた奴隷は総勢5000は下らなぬ。

しかしその内約2000人はあくまで記録だけ残っているだけであり、彼らに聞いてもそのような者など知らぬの一点張りだ。

まあ、彼らが非合法な方法で殺してその事を隠しておるかも知れんが・・・。」

 

 

「彼らに合法も非合法も無かろう。

ただここでの問題はその首謀者足り得るフィッシャータイガーを接敵しながらも取り逃がし、悪魔の実を強奪された事。

加えて聖地を多少なりとも燃やした者を殺すことも捕まえることも出来なかった事であろう。」

 

 

「うむ。それはそうだ。」

 

 

「コングよ。そのフィッシャータイガーなる魚人に5億の懸賞金を掛けよ。」

 

 

「5億ッ!?初頭手配で5億ですか!?」

 

 

センゴクが目を見開き詰め寄るが、すぐさまそまをコング元帥が手で制した。

 

 

「分かりました。必ずや我々海軍がその魚人を捕まえましょう。」

 

 

「二度目は無いと思えよ。小僧共。

奴隷の解放、悪魔の実の強奪。マリージョアへの襲撃。必ずその大罪人を捕らえよ。」

 

「「はっ!!!」」

 

「もう良い。お前らは下がれ。」

 

五老星の1人が彼らにシッシッと手を振るが、彼らはそれに対して何も思うことはないのか、その場で敬礼して部屋から退出した。

 

 

 

 

「しかし、悪魔の実20個とはマズイな。」

 

「あぁ。それが一番厄介だ。

もしあの悪魔の実が賊などに渡れば・・・。」

 

「間違いなく、世界は終わるだろうな。カッカッカ。腕がなるわい。」

 

「脳筋が。しかし本当にあるのか?あのような能力が存在するとは些か信じれんが。」

 

「ある筈だ。昔の伝承にもちゃんと記されておる。

しかしそれが陽樹イブにあったとは俄かに考えられんがな。

ここ100年は天竜人が血眼に探し奴隷達で実験したがその実を食べたとされる者は確認されなかったしのぅ。」

 

「まあ、もし彼奴がその悪魔の実を奪ったというなら何が何でも取り替えさなければならないだろうな。」

 

 

彼らの不吉な会議はその後もしばらく続いた。

 

 

 

「全く。ヒヤヒヤしたわい。お前は一体何をマリージョアで見たのだ?

俺にはお前とガープが喧嘩してガープがお前を気絶させたというのが些か納得出来ん。

なにかしらがありガープの奴はそうせざるを得なかったのではないか?

奴も馬鹿に素直ではあるが、ただ本当の馬鹿ではないと俺は思うんだがな。」

 

「いや、奴は本当にただの馬鹿ですよ。」

センゴクはすかさずそれを否定した。

 

今回の事件は全面的に私が悪いとは言えなにも私を気絶させるまで殴ったガープにも責任が無かったとは言い切れません。」

 

「それが俺には解せんのだ。センゴクよ。貴様ともあろうものが任務中にガープに喧嘩を売るとは。」

 

「そこは申し訳ありません。今となっては何故あそこでガープを殴ろうと思ったのか私にも分かりませんが。」

 

「まあ、良い。とりあえずはフィッシャータイガーという魚人をなんとしても捕らえることだ。奴を捕まえ自白させれば全てと言えないまでも凡そは分かるだろう。

センゴク期待しているぞ。」

 

「はっ!かしこまりました。」

 

 

こうしてフィッシャータイガーは初頭手配でありながらも、聖地から奴隷を解放したこと、悪魔の実を多数強奪したこと、マリージョアを襲撃したことが加味され5億ベリーの懸賞金が掛けられた。

これは初頭手配上過去最高額であり、世界はフィッシャータイガーの捕獲に向けて動き始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わりシャボンディ諸島。

 

 

「姉さま。これからどうしよう?」

 

先頭を歩くハンコックにマリーゴールドは声を掛ける。

 

現在彼女たちはシャボンディ諸島を目的もなく彷徨っていた。

しかし、海軍や世界政府に見つかるのを恐れ路地を進み彼女らが現在いる場所は13番街。いわゆる無法地帯といわれ、海賊や荒くれもの跋扈する賭博場近辺であった。

 

「わからないわ。ただ一刻も早く身を隠せる場所を探しましょう。

服装もどうにかしたいわね。「ちょっとお姉さん方、私と少しお茶でもしないかい?」

 

ハンコックの会話を遮り声を掛けてきた初老の男性。長髪の髪はすべて白に染まり一層老けて見えなくもないが上半身を白いシャツだけ羽織、ボタンが全開であるが故にそこから垣間見える腹筋、及び胸筋はえらく発達しており、なにより彼の眼光にいまだ衰えを感じさせない鋭い決意を宿しているような力を感じる男性であった。

 

「・・・・。」

 

ハンコックは声を掛けられた相手に目をやり一瞬言葉を失い、思考を切り替えどのように対処すべきか思案していたが、彼は一瞬の沈黙を困惑と捉えすぐさま言葉が繋ぐ。

 

「なに、怪しいものではない。

ただのナンパだよ。私はよくここらを出入りしている者なのだが、君たちはどうやらよそ者と見える。ここは無法地帯と言われ荒くれものたち蔓延る地域だ。

少し心配になってね。

君たちのように美しい者たちならなんでも相談に乗りたいと思ってしまったのだよ。それに賭けで大勝ちして気分もいいしね。

ここじゃあ、なんだ。場所を変えて話さないか?」

 

「どうしよう?姉さま。」

サンダーソニアがハンコックに尋ねる。

 

彼女もまた今考えている途中であるが一向に正解だと思える答えは見つかっていない。

しかし、いままで天竜人にひどい目に合わされてきたのだ。なにか騒ぎを起こすのはマズイと思いハンコックは断ろうと口を開こうとしたとき、目の前の男は、

「訳ありだろう。来なさい。悪いようにはしない。それにその服の替えにいくらか考えがある。」

とだけ伝え、その場から踵を返し彼女らに背を向けるようにして進む。

 

「どうしよう。姉さま!?」

サンダーソニアは再びハンコックに尋ねるとハンコックは黙って頷き白髪の彼に付いていった。

 

 

そして一行は『シャッキー'sぼったくBAR』と書かれた看板が立つBARの前に立っていた。

 

「ここは私の知り合いがしているBARでね。現在の私の家でもある。来なさい。中で話そう。なに、君たちのようにお金も無さそうなものたちからぼったくるほど彼女も冷酷じゃない。そこで話を聞こうじゃないか。」

その男性はハンコックたちに伝え店の中に彼女たちを誘導する。

 

カランカラーン。

 

彼が入り口の扉を開いたことにより、玄関に掛けられた鈴が室内へと響く。

 

「あら、レイさん。お帰り。今日は勝てたの?あら?後ろのかわいい子たちは?」

 

「あぁ。シャッキー。珍しく勝てたよ。彼女たちは賭博場の近くにいたのでね。拾ってきたよ。訳ありのようだ。」

彼、レイさんと呼ばれた男はハンコックたちをシャッキーに紹介するように彼女の目線に被らないように横に移動した。

 

「そう。それじゃあお嬢さん達、こちらにいらっしゃい。ここは酒場。

お酒を飲みながら話しましょう。」

ハンコックたちに手招きをしカウンターの席を指さしそこに座るように指示し、

ハンコックたちも恐る恐るであるが小さな声で「失礼します?」とやや疑問符が付くような様子でカウンター席に腰掛ける。

 

「まずは自己紹介をしましょう。私はシャクヤク。まあ、お店の看板を見てくれてたら分かると思うけどほとんどの人がシャッキーて呼ぶわ。あなた達もそう呼んでくれるとうれしいわね。」

 

シャクヤクと名乗った女はフフフと微笑み彼女たちをしばし観察する。

三人とも若干、いやかなり小汚い恰好をしている。服の所々は破け素肌が露出し、体臭も若干ながら漂ってくる。

しかしそんな汚い彼女たちであるが、全員が美しくしかも体型も美しい。

とくに黒髪の恐らく年長者であろうか?いや姉妹であろうか?その彼女はなにか別格を思わせる程のオーラと言うべきか、美しさと言うべきかを感じる。

 

(レイさん。よくこんな子たちを連れて帰ってきたわね。下手すれば真っ先に人攫いにあっててもおかしくない容姿よ?)

シャッキーが連れてきた彼にむかって無言で目を向けると彼もシャッキーの視線に、その思いに気が付いたのか黙って頷いた。

 

「そしてあなた達をつれてきたあの人がレイさん。まあレイリーと名前なんだけど、私は何となくレイさんって呼んでるの。

それであなた達の名前は?」

 

シャッキーがハンコックにまず目を向け話しかける。

 

「わ、私はハンコック。ボア・ハンコックです。」

 

いまだ彼女達は混乱しているのか、それとも緊張しているのか、かなり固い表情をしており、リラックスどころではないといった様子であった。

 

「ハンコックね。それで左右のお二人さんは?」

 

「サンダーソニア」

「マリーゴールド」

 

彼女らもまた例外なく緊迫した表情で声も堅い。

 

「ハンコックちゃんにサンダーソニアちゃん、マリーゴールドちゃんね。よろしくね。そうだ!お腹減ってるでしょ?少し待っててね。なにか作って来るから。」

 

シャッキーはそんな彼女たちの緊張を少しでもほぐそうと料理を作りに厨房の中へと消えていった。

 

 

「あ、あの。レイリーさん?」

 

「レイリーで構わんよ。私もハンコックと呼ぶしな。」

 

ハンコックがレイリーに声を掛ける。

 

「あ、あのレイリー。どうしてあなたは私たちを連れてきたの?

私たち見るからに訳ありでしょ?なんで、ですか?」

ハンコックは心底気になっていたことをレイリーと名乗る彼に問いかけた。

 

彼女自身、レイリーについていく道中、己の身を、妹たちの身を案じていた。

しかしこのままあの場所で途方にくれるのは建設的でないし、なにより彼の瞳には天竜人のような汚れた感情はないように見えた。だからついてはきたが。連れて来られた場所は女性が営む酒場。

おそらく本当はナンパ目的ではなく親切心なのではないだろうか?と彼女は考えたがそれならば納得できないこともある。

 

何故助けようと声を掛けたのかである。

 

その疑問をハンコックのほかに2人の姉妹も思っており腑に落ちなかったというべきか、いままで長い間奴隷であり、人に優しくされたことが久しくなかったせいなのか。

彼女らは理由がわからなかった。

 

「簡単だよ。私は美人に弱いのだよ。」

しかし彼から帰ってきた言葉は予想をはるかに超えた理由だった。

 

「え?そ、それだけですか?」

 

ハンコックは詰め寄るが彼から返ってきた言葉は「そうだ。」という一言だけであった。

 

「こんな所に連れて来て早速すまないが、私はこれから人と会う約束があるのでね。

君たちはシャッキーが戻ってきたらちゃんと彼女のご飯を食べるんだよ。彼女の料理は世界一だから。」

そういうとレイリーはおもむろに席から立ちあがり店から出た。

 

「ね、姉さま・・・。」

 

「マリーゴールド。ここはもう腹を据えるしかないわ。とりあえずシャッキーさんがご飯を作ってくれているらしいし、それをいただいてから考えましょう。」

 

ハンコックはそう答えレイリーが去った扉に目を向ける。

 

「あら?レイさんは?」

 

シャッキーが料理を両手に持ってカウンターに戻った時レイリーが居ないのに気が付き3人に問いかけると

 

「レイリーはこれから約束があるって言って出ていきました。」

とだけハンコックは返事をし、彼女の両手にある料理から目が離せなくなる。

 

シャッキーの手に持つ二つの大皿には湯気が立ち込め、おいしそうな匂いが彼女たちの鼻腔を刺激する。

大皿からみえる料理はカラフルであり盛り付けもまた美しい。

 

「フフフ。あなた達よっぽどお腹空いてたのね。はい。シャッキーちゃん特性のクリームリゾットとビーフシチューよ。

あまり食べてこれなかったのかと思ってお腹に優しそうなものをつくったわ。」

 

コトリと音をたて大皿をカウンターに置き棚から皿とスプーンを人数分だしそれにとりわけ彼女たちの前に置く。

 

そして彼女らの前に料理が置かれると三姉妹はすぐさまその料理を口に掻き込む。

 

「あっつ!!!熱い!熱いよ!」

 

サンダーソニアがその熱さに思わず声をあげるがその手は止めない。

 

「そりゃあ熱いに決まってるじゃない。さっき作ったばかりなのよ?火傷しないように少し冷まして食べないと。」

 

シャッキーの注意もなんのその。

彼女たちは女性にあるまじきスピードで乱暴にそれらを口に運ぶ。

 

ハンコックたちの頬に涙が流れた。その頬はリスのように膨らみ口にたくさんのものを蓄えている頬を伝い涙が足に床に皿のなかに落ちようとも彼女たちは食事を辞めない。

 

やがてシャッキーも彼女たちを止めるのを辞め、彼女たちの顔を見る。

先ほどの美しさはうって変わり、今はまるでリスのように頬を膨らまし、零れ落ちる涙を拭おうともせずひたすら食事を続ける。

まるで温かい食べ物を、ちゃんとした食べ物を食べるのが初めてだというかのように頬張る彼女たちに微笑んだ。

 

「おかわりもあるから一杯食べなさい。」

 

 

シャッキーは彼女たちに話しかけ、次の料理をつくるため厨房へと去っていった。






今回で第一章は終わりです。

次回からは第二章が始まります。

今日中に挙げるのは難しいと思いますので明日になると思われます。

今後とも応援よろしくお願いします!


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第2章 楽園を目指して
第9話 ブリキのおもちゃ達


なんか、読み返したんだけど、私改行し過ぎじゃね?って思いました。
今後は気をつけたいとおまいます!



時は少しだけ遡る。

 

「テゾーロ。本当に良かったの?」

 

「なにが?」

 

「みんなをおもちゃにしたこともハンコック達を行かせたのも。」

 

『あぁ、ハンコックには女人島の皇帝になってもらわないとな。

じゃないと俺の計画が「それなんだけど。テゾーロをおもちゃに変えるとハンコック達もあなたに対する記憶がなくなるからその、レイリーって言ってたっけ?その人に会えという約束も忘れちゃうと思うんだけど。」

 

「あっ・・・。しまったー!!!!!!

シュガーの力を使う作戦なのにそのことを忘れてたわ。

うーん。まあなんとかなるだろ!」

 

「「「なるのかよ!!!」」」

 

 

現在彼等テゾーロ一行は拠点になるような島を探すべく偉大なる航路(グランドライン)を適当に航行していた。

 

カモフラージュとして軍艦の表面に薄く金を伸ばし加工し、海軍の物だとは見えないように隠蔽作業を施した船の乗組員はシュガー以外総勢2000人弱はブリキのおもちゃで構成されたある種不思議な集団が出来上がっていた。

 

 

(まあ、実際ほとんど原作を改変してない筈だし大丈夫だと思うが)

テゾーロはある種楽観的に考えていた。

 

実際物語は殆ど原作との差異は無いのだが。

 

「にしてもおもちゃになるっていうのはかなり便利な能力ではあるな。」

テゾーロは己のおもちゃとなった手を見ながら呟いた。

彼だけでなくシュガー以外の全員が今やおもちゃとなり、睡眠や食事は必要としない体になっていた。

 

聖地マリージョアから逃げ出してきた彼らにとって食事の心配をしなくていいというのは僥倖であった。

 

「テゾーロさん!前方に島が!島が見えてきました。」

 

頭にバンダナ巻いたピエロのようなメイクを施したおもちゃが話しかける。

 

「あぁ、それなら一度上陸しよう。その前に俺が少し偵察に行ってくる。お前ら全員は船にいてくれ。

ひさしぶりの地上の大地だ。無人島ならいいのだがな。」

バンダナピエロに言葉を返した全身黒のブリキのおもちゃは指にはまっていた黄金のリングのひとつを金色の鎧に精製し、その身に纏わせ、空中を『月歩』にて飛翔し、一人、島へと進んでいった。

 

 

「本当になんでもありね。彼は。」

そんな様子を見ていたモネは独り言なのか、横に居たシュガーに話しかけたのか判別しにくい声量にて話すがシュガーもまた

「そうね。でも彼だから私たちをあそこから救い出せることが出来たのだと思う。」

呟いた。

 

「無人島ならいいわね。」

 

モネが再び呟きいまだ空中を掛ける彼の背を見送った。

 

 

 

「おっ。丁度良さそうな島じゃねぇか。」

現在彼は一人で島に入り江に上陸し辺りを見渡していた。

入り江の前方から木と草が生い茂りジャングルのようになった島。

現在彼はおもちゃ故に温度を体感で察することは出来ないが、爛々と輝く太陽の陽に砂浜は照らされ蜃気楼も確認できた。

恐らく夏島であろう。

 

その島は彼が上陸する前に月歩で周囲を見渡した時は人の営みらしき影は見えず、島の大きさはおおよそであるが、全長10km程の大きさであった。

 

「人間は居なさそうだが、他の生き物は居るらしいな。」

 

彼が島に上陸した時から感じる獲物を狙うような視線を感じ、更に見聞色で気配を探ると彼がいる入り江を遠くから囲むように包囲する100台ほどの四足歩行の生き物の気配を察知する。

 

「1匹だけやけに強い気配を感じるな。

悪りぃけどおもちゃの俺食っても美味かねぇぞ。」

彼がそう、前方に目を向け独り言を言うとタイミングを計っていたのか森から灰色に染まった狼の群れが一斉にテゾーロに駆け寄る。

 

「覇王色ッ」

別に「覇王色」とわざわざ言う必要もないが、彼自身、技名を叫ぶのは比較的カッコいいと考え、この世界に覚醒してからもその認識は変わっていなかった。

 

テゾーロが覇王色を放ったことにより彼に駆け寄っていた約80匹程の白い狼がその場で卒倒した。

 

「ガルルルルルルル。」

 

その様子を見ていたのだろう。

さらにジャングルの中から残りの約20匹の狼が姿を彼の前に現すが、警戒し距離を置き威嚇するにとどめる。

 

「大丈夫だ。殺してはいない。」

 

テゾーロは言葉が分かるかは分からない狼にそう声を掛けたあと。ジャングルの中に潜んでいた恐らく彼等の親玉らしき白い毛並みの巨大な狼が姿を現した。

 

「グラァァァアアア゛ア゛ア゛ア゛!!」

先程までの狼とは一線を画すかのような咆哮。

空気が震え、テゾーロは重圧(プレッシャー)を感じる。

 

彼自身は覇王色の覇気を習得しているが己に対してそれを行使されたことはない。

しかし、恐らく今自身が感じるそれはまさに覇王の器足りある咆哮であった。

 

「まじかよ!!狼のくせに覇王色っ!?

数百万人に一人だとか一握りだとかの能力じゃねぇのかよ!!」

彼が思わず原作に対して一言物申すがその答えは返ってこない。

 

美しい白い毛並みをした大狼が地を駆り巨大な爪で彼の命を刈り取るべく彼に振り下ろす。

 

黄金鎧(ゴールドアーマー)モデル牡牛座(タウラス)

 

巨大な刃のように尖った爪は彼に達する前に瞬時にテゾーロは己の身を黄金で包むとすぐさま鎧を成型した。

 

ガキンッ!!

 

爪と鎧がぶつかりあう音が響く。

 

「そんなんじゃ爪じゃあ俺に傷つけるなんてできねぇよ。武装色。黄金爆(ゴウン・ドンパ)ッ!」

 

テゾーロの金色の腕が黒く染まり彼はその腕で大狼を殴りつける。

 

その拳は大狼の顔面に突き刺さり爆音をあげて狼は吹き飛ぶ。

狼はそのまま後方100mと飛んだのかジャングルの木を巻き込みながらもそれでも止まらずに飛ばされる。

やがてそれが止まった時には大狼は意識を失っていた。

 

「さて、まだやるか?」

 

彼はあたりを見渡し残った20匹の狼に覇王色の覇気を放つ。

「ほぅ。これくらいでは気絶せんのか?なら・・・」

 

テゾーロが先ほど80匹ほどの狼を卒倒させたレベルで覇気を放ったが残った20匹ほどにはどうやら耐えられるようであった。

それならばと彼がもうひと段階上で覇気を放とうとした時残っていた狼たちは地面に寝転がり腹を彼に見せる。

いわゆる絶対的強者に対して行う服従のポーズをとる。

 

「ん?もう終わりか?それならこれから仲間をここに呼ぶがもしてめえら俺の仲間に傷をつけたらタダじゃおかねえからな。」

 

テゾーロが狼たちに念を入れ凄むと狼たちは言葉がわかったのかその場で首がもげるほど縦に振り回しテゾーロに対して恭順の意が伝わるように激しくボディランケージを行っていた。同時に全員が理解した。

 

もうこの島の王者は自分たち狼ではないと。

 

 

「へえ。なんだか鬱蒼としてるわね。」

モネは島の入り江に上陸したあと黄金の鎧をはずした黒いブリキのおもちゃに声をかける。

 

「まあな。ただ恐らくこの島には人間はいないはずだ。それに一番気配が強かった奴はさっき俺が仕留めた。ペットにでもしようかと思うんだが。」

 

「それはテゾーロの好きにしたらいいと思うわ。それよりもあそこに全員整列している狼はなにかしら?」

モネはそういうと前方に横一列にきれいに並ぶ狼を指さす。

そしてその列の一番手前側には殴られたことにより、若干顔がゆがんだ白い毛の大きな狼がテゾーロを見つめていた。

 

「あの畜生はメスよ。モネ。

わたしには分かるの。いますぐ殺すべきだと思うの。」

 

「そうねシュガー。テゾーロごめんなさい。やっぱりあの畜生は殺すべきだと思うわ。何故なら女王様のシュガーがそれをお望みですから。」

 

「お前らまだやってたのか。いくらシュガーにおもちゃにされたからと言って契約自体は結んでないんだ。

シュガーが女王やる必要もねえよ」

 

テゾーロは遊びに未だ付き合うモネにそれとなく諭す。

そうなのだ。彼等が皆シュガーにおもちゃにされて少しした時、誰かがシュガーをブリキの女王様と呼んだのが始まりだった。

 

それ以降シュガーを女王に祭り上げみんなでシュガーのご機嫌伺い(笑)をとる女王様ごっこが始まっていたのである。

テゾーロ自身も初めは少しそのノリに乗って遊んでいたが、ハンコックのこともあり、加えて大狼との戦闘ですっかり忘れていた。

 

しかし、そこで彼の頭に閃きの稲妻が脳内に走る。

(そうか!ただでさえ塞ぎガチなシュガーを皆でヨイショすればその性格も陽気に近づくのではないか!?)と。

 

故に、ここでは彼も少しその遊びに付き合う事にした。

 

 

「シュガー。いや女王様。あの大きい狼はどうやらこの島での主のようです。

あいつはなるべく生かしたままの方が得策だと思うんですが。」

 

「うぅ〜。テゾーロがそう言うならわたしは従うけど・・・でも、うーん。分かったわ!特別に生かしてあげましょう!」

 

シュガーは一瞬だけ眉間にシワを寄せ悩むそぶりをするが、そこはテゾーロの言うこと。

間違いは無いと考えすぐさまその大狼を生かすことを選択する。

 

「ありがとう、いやありがとうございます。

それではコイツらの処理は後々するとして今後の事を皆に伝えても?」

 

シュガーはうんと頷き、テゾーロに先を促す。

 

 

 

そう遠くない未来このごっこ遊びが後にテゾーロを後悔の嵐が襲うがそれはまだ先のお話。

 

 

 

「では、みんな聞いてくれ。俺たちはここに住もうと思う。ここに俺たちだけの国を作ろう。誰からも邪魔されず誰からも奪われない。そんな楽園を作ろうと思う。」

 

 

そして、テゾーロはその為にどうするべきか皆に意見を伝えるのであった。

 

 

 

 




非常にすいません。とてもとてーーも難産でして、今回はこのような短さで限らせて頂こうと思います。
次回の更新は6月30日の15時ごろを予定しております。


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第10話 森を切り取ろう!

ここから2話ほどは内政ターンだと思ってください。

しかし私は内政チートに対してそこまで詳しくないのであしからず。




「テゾーロさんこの切り取った木はどこに置きましょう?」

 

「テゾーロ様!また今度算数を教えてくださいね!」

 

「テゾーロさん!シュガーさんが探しておりましたよ!」

 

現在彼らは島に上陸して早一年。

村の居住圏を拡大すべくジャングルを切り開き開拓を行っていた。

 

島に上陸した当初、彼らはまず島の生態系の頂点に君臨すべく懐柔した白い毛並みの大狼。のちに「ポチ」と名付けられた大狼たちに先導してもらいジャングルを探索。

島の南東。入り江の大きく切り開かれた場所を拠点に決め、そこからジャングルを切り開き簡素ではあるがそこに村を作り上げた。

 

彼らおもちゃたちに休養も睡眠、食事は必要なく、かと言って強制労働をシュガーが命じるはずもなく(一瞬命じ掛けたが、そこはテゾーロとモネが止めた)皆自分の住処を拡大すべく率先して働きわずかこの一年。信じられないペースで島は開発された。

 

初めに村の中心地に集会所を作り、その横に彼は固辞したが村民全員に説得されテゾーロ邸が完成し、その屋敷にテゾーロ、モネ、シュガー、愛犬(狼)のポチそしてシュガーにえらく懐いたウサギのミンク族のピットというポチと同様白い毛並みをした2等身のオスの獣人が一緒に暮らしている。

 

そしてテゾーロ邸の近くには学校が設立され元奴隷で子供と言える少年少女はそこでテゾーロやモネ、シュガーにより算数を中心に勉強している。

 

テゾーロはゆくゆくはこの島をグラン・テゾーロのようなギャンブルとリゾートの島にしようと考えており、経理に強い役人的なものをこの学校から作ろうと考えていたので算数を特に教え込んだ。

中でも九九の存在は学校の生徒たちだけでなくモネやシュガー果てには大人の村民たちにも流行り、現在ほとんどのものがそれをそらんじることが出来るようになった。

 

そして学校の周辺に他の村民たちの住む家であったりアパート的な(ほぼ全部が木と石を切り出し作られてはいるが)人が、おもちゃが住む分には申し分ない建物が建てられていた。

これらはほとんど全部元大工であったゲン爺とよばれる老人のおもちゃに指揮され皆が協力して作り上げたものだ。

 

「さて、なら一度帰るか。」

テゾーロをシュガーが探していると聞き彼はその場からおもむろに立ち上がり村のほぼ中心地に建てられたテゾーロ邸に向かう。

 

 

「あ、おかえりなさい!テゾーロさん!」

「お疲れ様!テゾーロ様」

 

家に戻る道中村民に声を掛けられ彼、全身黒のブリキのおもちゃは手を挙げることで返答し、自分の家に着いた。

彼が自らの邸宅。村民にテゾーロ邸と呼ばれる邸宅に目をやると、その邸宅は薄い金箔が壁中に施された黄金の豪邸が目に入った。

 

彼の能力はすでに村民達に知れ渡り、当初はその黄金に驚いたものだが今や見慣れたのか誰も過敏に反応することはなく「あぁ、いつも輝いているわね。テゾーロさん家は。」と流すほど当たり前の光景になっていた。

テゾーロ自身なにも目立ちたいからそのように装飾したわけではなく自分の能力が及ぶ範囲にその黄金とまき散らし、立場上必要と思える場所、とりわけ自宅にはその黄金の多くを使い装飾したまでのことである。

 

他にも学校や、現在も建築中である港などにも小さい黄金の置物などを置いている。

それに幸いにもいまだ誰からもその金の盗難などにはあってはいない。

まぁ、実際今はおもちゃである彼らに金などのぜいたく品は必要ではなく、その金に対して欲を抱かないのであろう。

そのように能力を使ったからなのか現在彼の指輪にはまっているのは右手の人差し指の一つだけであった。

 

 

「死ねェ!!ゴミくず野郎ッ!!!」

 

突如、自分の邸宅を見ていた彼の頭上から白い影があらわれ頭上から木刀の剣先が振り下ろされる。

それを彼は横に一歩動くことによりその斬撃を躱す。

 

「フェイントだ!バーカッ!」

 

しかし木刀が彼が先ほどいた場所に振り切られることなくすぐさま剣先の方向は横へと向けられる。

彼がチラとその剣先に目を向けると木刀であったモノは瞬時に黒く染まり彼の胴体を切り裂くべく近づいていく。

 

「紙絵。」

しかしその攻撃も彼に届くことはなくテゾーロはまるで紙のようにそれをしなやかに躱す。

「まだまだぁ!」

しかし、今の渾身の一撃を避けられることは若干把握していたのかその白い影は瞬時に態勢を整えさらに剣の連打を行う。

十閃。彼を貫くべく放たれた10の突きをテゾーロはひとつもあたることなく躱し、人差し指にはまられたリングの力を行使する。

 

黄金鞭(ゴオン・ウィップ)

金の指輪から素早く伸びる触手が飛び出し先ほどから襲撃していた犯人の右足を捕まえ宙にぶら下げる。

 

「クソッ!またかよ!」

 

触手に捕らえられ逆さまになりながら尚あきらめず暴れる襲撃犯。その人物は全長おおよそ50センチの二等身の白いウサギのぬいぐるみ。彼が現在テゾーロ邸の同居人ピットである。

「おい。俺は手前ぇになんて教えた?年上は敬えと言ったはずだが?」

 

テゾーロはいまだ宙ぶらりんにしているピットを彼の目線と合うように少し持ち上げ睨む。

 

「うるせぇ!いつでもかかってこいって言ったのはアンタじゃねぇか!」

ピットは彼の一睨みに怯むことなく突っかかる。

 

「そうか。なら仕方ねぇな!一回頭冷やしてこい!」

テゾーロはその場で中腰になり己の両足に力を籠める。そして右手に武装色を纏い握りこぶしを作ると彼にむかってその拳骨(相手によれば真っ先に爆発してしまうようなパンチであるが)を放つ。

 

「悪かった!!!ごべんなざい!それはまじで勘弁!テゾーロざブベェッ!!!!!」

 

その黒腕の拳はピットの左頬をぶち抜き瞬時にテゾーロは触手の力を緩め、ピットは空高くへとふっ飛んだ。

 

「次こそは絶対ぶちのめしてやるからなあああああああああああああ」

ピットは殴られ空に飛びながらもテゾーロに対し叫ぶがすぐさま彼は星のように消えていった。

 

 

「おかえり。テゾーロ。これでピットの0勝8346敗ね。まったく本当にザコね。」

 

「シュガー、お前もピットもその口の悪さはどうにかならんのか?」

テゾーロがピットを殴り飛ばすと後方からシュガーの声がし彼は振り返る。

 

水色の髪をし、今もその姿に成長はないが、頭上にはテゾーロ特性のティアラが載せられ、さらに右目もテゾーロ特性のモノクルをかけた少女がピットの戦歴をメモっているのか、メモ帳になにやら書き込んでいるシュガーが目に入る。

 

「無理ね。この口の悪さはあなたの影響。ピットもわたしもね。

さあ!ここであったが百年目今度はわたしと勝負よ!今度こそテゾーロに土を!この『黄金とおもちゃの国。グラン・テゾーロ』の女王であるシュガー様がぶちのめしてあげるわ!」

シュガーが手にしていたメモ帳とペンを身に纏う少女チックな服のポケットにしまうとすぐさま彼との距離を詰め彼の頭上へと跳躍した。

「武装色ッ!黒色巨拳(ブラック・デストロイ)ッ!」

彼女が己の能力で右手をおもちゃに変えてそこに武装色を込める。彼女の肩から下はその質量を無視したようにまるで巨大ロボットのような腕へと変化し覇気を纏いテゾーロを襲う。

巨大故にまるでゴゴゴゴゴと風を切るような音をたて放たれるその巨大な拳は近づいてくるだけでとてつもない重圧を感じる。

 

黄金鎧(ゴールドアーマー)モデル牡牛座(タウラス)鉄塊ッ!!」

彼は己の指輪をすぐさま全身鎧へと精製し鉄塊にてその攻撃を防ぐべく全身に力を籠める。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴやがてその巨大な拳が全身黄金となったその鎧とぶつかり合い激しくものがぶつかる音が響きその場ですさまじいほどの覇気が衝突し合う。

「おらああああああ!まだまだよっ!!!!!」

尚もシュガーにより力を込められる巨拳はやがてゆっくりであるが、確かに相対する黄金の全身鎧を地面へと押しつぶす。

 

 

「よお、お前は今誰と戦ってるんだ?」

 

「なっ!!!!!」

確かな手ごたえを右手に感じ徐々彼を、テゾーロを地中へと埋めるべく渾身の力を込めていたシュガーの後方に彼の声がかかる。

 

「シュガー!手前ぇには見聞色も修練するように言ったよなァ!また武装色ばっか鍛えやがって!お前もいっぺん頭を冷やしてこい!」

 

シュガーは目を見開きその場の光景に驚いた。

たしかに先ほども、そして今現在も右手には相対する手ごたえを感じている。それなのに彼は現在自分の後方に立っていた。

 

「まさかっ!?身代わり!!卑怯よ!!」

 

「うるせえ!!自分の拳の影にも注意を怠るような奴ぁ、落第だ!!ぶっ飛べ!黄金爆(ゴオン・ボンバ)!!」

 

 

ドガァァァァァァン!と盛大な爆発音を挙げその拳はシュガーの腹に的中し、爆発の為彼女もピット同様に空へと飛び立つ。

 

「私は女王なのにぃいいいいいいいっ!」

彼女もまたピット同様捨て台詞を放ちながらもその流れに逆らうことなく空の人になった。

 

 

「フフ。お帰りなさい。テゾーロ。今日も賑やかね。」

シュガーが空飛ぶ様を見上げて見送っていると家の中から出てきたのか、青色の髪をした女の子おもちゃが白い狼を連れ彼に声を掛け近づいてくる。

 

「これでシュガーは確か0勝2831敗?2830敗?どちらだったかしら。シュガーじゃないから忘れちゃったわ。」

モネと狼のポチはテゾーロに満面の笑みで近づく。

ポチは舌を口から出し、尻尾をブンブンと振り回している。

現在ポチは巨大な身体では村での生活にいろいろ支障をきたすとして、シュクシュクの実を食べた巨人族のバルディッシュにその身を普通の狼サイズにまで縮小してもらい共に生活している。

 

しかし、この流れ。テゾーロには覚えがあった。

先ほどのシュガーの登場シーンが頭に過ぎりデジャブを覚える。

 

「ただいま。モネとポチ。なんだ?お前らもやるか?」

 

「いえ、やらないわ。どーせ勝敗は決まってるもの。それならもう少し強くなってからにするわよ。ねぇ?ポチ。」

 

「ワンッ!!」

モネの問いかけに大きく返事をしたポチはその頭をテゾーロの右手に擦りつける。まるで撫でてと言わんかのように。

 

「なら良かった。」

テゾーロはそう答え、ポチの頭を少し乱暴ではあるか撫でる。

ポチも嬉しいのがその場でハッハッと言いながらさらに尻尾をブンブンと回す。

 

「ところで、テゾーロ。なんで帰って来たの?何か忘れ物?」

 

「あっ!!しまった!!!!!シュガー殴り飛ばしちまった!!!!」

 

テゾーロはその場でガーンとした表情を(おもちゃだが)をし、シュガーが飛んで言った方向に再び目を向ける。

 

「フフ、本当にあなたたちはいつも賑やかね。それならシュガー達が戻ってくるまでにポチの散歩にでも行ってたら?ポチもあなたと行きたがってるわよ。」

モネはそう言ってポチを指差すとポチは「ワオンっ!!」と答えその場でクルクルとテゾーロの周りを旋回した。

 

「あぁ、それならちょっとポチと村の見回りでも行ってくるか。」

 

彼はそう言ってその場からポチと共に踵を後方へと返し村の周回へと出るべく歩をすすめる。

 

「えぇ。いってらっしゃい。テゾーロ。」

「あぁ。」

 

テゾーロはモネの見送りを手を上げながら答えると、ポチを連れまずは巨人族のバルディッシュの家へと向かって言った。

 

 

「よお、お疲れさん。ちょっとポチと村の周回に出るからポチを元の大きさに戻してくれねぇか?」

 

「テゾーロ。お前の家はいつも賑やかだな。さっきもシュガーとピットに襲われたんだろ?騒ぎでわかる。

あとポチのことは構わんぞ。それなら一回外に出よう。」

 

現在彼はポチと共にバルディッシュが住むログハウスの中に居た。

巨人族の彼が住む部屋はどれだけ大きいのだと思うかもしれないが現在おもちゃの彼はその背丈は普通の大人の人間よりも小さく、通常の大きさのログハウスでも有り余るほどのスペースがあるほどの快適な家に住んでいた。

もっとも彼自身がおもちゃでなくなっても、己のシュクシュクの実で小さくなればなんら生活に困ることもないのだが。

 

シュクシュクの実。

この一年さまざまな検証の結果、その能力は対象の大きさを50分の1まで小さく出来る能力であることが分かった。

そこに無機物有機物などは関係なく、50分の1までの大きさならば彼の任意のサイズで調整することが出来る。

逆にものを大きくしたりは出来ないが、非常に便利のいい能力であると言えよう。

故に過去彼等が乗って来た軍艦はバルディッシュの能力により小さくされ、現在それはテゾーロの屋敷にて保管してある。

 

「それよりもシュガーとモネ姉妹もそうだがピットも凄まじい進歩だと聞くが、今尚アンタには敵わないようだな。」

 

「あぁ。三人の成長はいろいろ頼もしくもあるのは確かだな。だがシュガーとピットはどうにも武装色ばっか鍛えやがる。モネは共に成長してバランスがいいんだが。それにあの二人の口の悪さどうにかならんのか。」

テゾーロはシュガーとピットの口の悪さを思い出しその場でハアとため息を漏らす。

 

「まあ、ピットの奴はどうにかなるかもしれんがシュガーはな・・・。」

テゾーロの言葉を受けバルディッシュは苦笑いでそれを受け止めた。

 

そうなのだ。現在彼等は頭を悩ませているのがシュガーである。

彼女はこの島唯一の姿が人間であり、いくら無人島であった島を開拓したとしても、誰も島に近づかないわけがない。

ここは偉大なる航路と呼ばれたグランドライン前半の海。

海賊達が跋扈する島なのだ。

 

そこに何か食料があればと考え寄港しようとする海賊は多い。

加えて村の中心に聳え立つ黄金の屋敷。港や学校などに点在する黄金の置物。それが彼らの欲望を刺激し海賊はこの島で乱暴を働こうとするが、それはもちろんテゾーロを含め、現在修行中のモネやシュガー。さらにピット達、ここの島でいう武闘派のようなもの達が返り打ちにしていたが。

 

そして返り打ちにした海賊達からもシュガーの分の食料や、衣服。

商船から略奪して来たのか、畑に植える食物の種などを徴収させて頂き、海賊達は大工のゲン爺に作ってもらった小舟に詰め込み海へと流す。

 

そしてその海でなんとか生き延びた海賊達はこの島のことをこう言うのであった。『黄金溢れるおもちゃの国』があったのだと。

 

そのような経緯から当初遊びで始めたシュガー女王(笑)計画は本格的に人間達の窓口にもなるため本格的にシュガー女王計画として議案に上がり村の中心地に立つ集会所。まあ、村民による多数決であるがこれが可決された。

そして、晴れてこの島の女王となったシュガーは、テゾーロに王冠のようなティアラを強請り彼はこれに承諾し彼女に与えたのだ。

 

それが先ほどシュガーが頭の上に載せていた黄金のティアラの正体である。

 

もちろん女王と名乗る訳であるから急遽国の名前をと集会場で様々な意見が立ち上がったが。シュガーの一言『テゾーロという名前は国の名前につけよう』という発言に村民の全てが賛同し、この島は村ではなく一応『黄金とオモチャの国。グラン・テゾーロ』と名乗っている。

 

まあ、所詮元は無人島であり、そこまで大きくない島。未だ世界政府からはなんら目を付けられる事もなく。ただ時折やってくる海賊達にそうやって名乗るだけであったのだが、

 

問題は正式に女王となったシュガーの事であった。

女王と言う地位がよっぽど嬉しかったのか、それ以降以前のように暗い表情をすることはなくなってその点についてはテゾーロも喜んだが、加えて非常にワガママになってしまったのである。

 

しかし、ここでの政治はあくまで村民との話し合いで決められるためそのワガママが反映されることも無いが、家での態度は以前のシュガーの影はまるでなく、唯一料理などを摂る必要があるシュガーは、「これ美味しくない。」「こんなの着たくない」と駄々をこねるようになったのである。

 

「まあ、シュガーのワガママはあくまであんたらの家の中での話だろ?別にそれはいいんじゃねえか?小さい娘が出来たのだとでも思えばよ」

 

バルディッシュは冴えない表情をしたテゾーロに笑いかけ彼の肩をバッバッと叩く。

「お前、そのセリフ、シュガーの前で言えんのか?」

 

「ぬっ。それは…。」

バルディッシュはテゾーロの言葉を受け黙ってしまった。

 

そうなのだ。シュガーは普段テゾーロ達、主にテゾーロに対してだが、

身近な人間以外にはあまりワガママを言わない。

むしろ村民には愛され、可愛がられているぐらいなのだ。

しかし、時折やってくる海賊達が、女王の彼女を見て一言「小さい」などとほざくとシュガーは烈火の如く怒り狂い、海賊達を殴り飛ばす。

加えて、海賊に女の、成長した女の海賊がいた場合。

彼女は嬉々として「その胸のきたねぇ脂肪はなんだ!」と悪魔のような笑みを浮かべもぎ取ろうとする。

まあ、実際それはテゾーロ達に止められ成功したことは無いが。

しかし『小さい』という単語がシュガーにとって、地雷であることは既に村中が周知の事であった。

 

「まあ、なんだ。そんな気に病まな。なっ!気楽にやって行こうや!大将!」

 

そう言ってバルディッシュは再び笑顔になりテゾーロの肩を叩く。

 

「はぁ、どうしたもんかね」

 

そう彼はひとりごちるとバルディッシュにポチを元の大きさにしてもらい、テゾーロはポチの背中に跨るべく跳躍し、狼の背に乗ると一人と1匹は島の周回へと出て行った。

 

終始、ポチの尻尾はブンブンと振り回っており大きくなった故にその巨大な尾は風を巻き起こすが、バルディッシュは暖かい目で彼らを見送った。

 

 




少し遅れましたー!ごめんね!
新キャラ登場しましたね!オリキャラです!
次回も島の話になります。
恐らくあと2話ほどはオモチャにて話が進むと思いますがもう少しお付き合い下さい!!
更に次回はポチやピット。成長したモネやシュガーの能力にもちょっとは触れるつもりですので!
あと全く内政の話ありませんでしたね!すいません!知識がないもので!
次回の更新は本日6月30日23時〜24時頃を予定しております。

感想等あればお待ちしております。
それと、評価にて1や2を付ける方は何故低評価なのか感想欄にて述べてくれると非常に助かります!怒るとかではなく非常に私自身が勉強になると考えておりますのでよろしければ低評価を付けた方も感想を下さればと思います!

もちろん高評価の方での感想も。それにこれはこうした方がいいんじゃないか?等の意見も今後もドシドシ応募しておりますのでよろしくお願い致します!


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第11話 ピットとシュガーと時々ポチ

ポチという名前が安直過ぎるとのご指摘がありましたが、ここではテゾーロが適当に決めたというものだと思って頂ければ幸いです。彼の性格上かなり適当な部分があるのでこのような名前になりました!


「ほんとにあの人は化者かよ」

 

彼、ウサギのミンク族のピットは1人愚痴る。

現在彼は島の最北端、正確に言えば一度最北端を超え海に落ちてしまったがそこから泳いで戻り現在村の中心部からは反対側のジャングルを歩いていた。

彼が化け物と評する人物こそギルド・テゾーロその人である。

 

ギルド・テゾーロ

彼はこの島の村民から英雄と言われその性格は粗雑で乱暴ではあるが時折垣間見える優しさ。感じることができる愛のある鉄拳。ゆえに彼、ピットからすれば苦手意識はあれど憧れの人物であった。

たとえ、自らのご主人様、シュガー姉さまの思い人だとしても。

彼にとってすでにこの島は彼の故郷であり村民は守るべき家族であった。

白兎の奴隷。かつて彼はゾウと呼ばれた国の中心部から遠く離れた辺境に住まう種族であった。

ウサギの姿をし、成人になってもその背丈は最大50cmほどしか成長せず、且つ言葉を理解し話すことが出来る獣人。

 

そのような希少性から度々人攫いや海賊がウサギの獣人を求め乱獲し奴隷として売りさばく。

そして年々彼らの種族の数はみるみる減っていき、ピットはその種族の1人でもある。

ウサギのミンク族とは本来気性は激しくなく弱弱しく、力もさほど強くない。当初ピットも解放直後は例にも漏れず周りの音に敏感に反応しどこか弱弱しい雰囲気を放っていた。

それを心配したのかシュガーという少女がピットをうさぎのぬいぐるみ(実物とほとんど差異は無いが)に変えた後、自らの傍にいるようにと言われ現在ピットはシュガーに非常に懐いている。

 

シュガー姉さまと呼ぶのも彼女がピットに厳命したからであり、彼自身それについてなにか思うことは無い。

 

「そう言えばシュガー姉さまも同じように飛ばされていたな。早く探さないとまた姉さまに怒られる。」

彼はそう1人愚痴るとその場で鼻をヒクヒクとさせ彼女の匂いを辿る。

テゾーロならここで見聞色でも使って一発で探し出すであろうが現在ピット、シュガーはほとんど見聞色は使えていない。

武装色に至ってはここの村の人たちには負けないと自負している二人であったが(但しテゾーロについては例外だが)故に彼は己の獣人特有の能力を持ってシュガーを探す。

「あ!!!この匂い!?正しくシュガー姉さま!待っててください!いますぐ私が助けに行きます!」

これはそう言うやいなやその場で後ろ足に力を最大限込めるとそこから跳躍するようにジャングルを駆る。

 

その表情は今日はどんなことでシュガーに怒られ責められるのか夢想し光悦した表情であった。

彼、ピットは齢13歳にしてドMという性癖でありなにより早熟であった。

故にシュガーが彼に時折見せる侮蔑な目も甘んじて受けるし、初めて一緒に風呂に入ったときのピットを己の裸を見て興奮している表情を感じたシュガーから冷めた目で百列張り手をその頬に張られようとも、彼は動じない。

そしてそれはこれからもである。

今日はどうやってシュガーにご褒美を貰おうかと考えながら彼は己の愛するシュガーの元へと駆けていった。

 

 

 

「おい。駄ウサギ。見てないで早く助けろ。」

現在ピットは木の蔓が身体に絡まり身動きが出来ず樹上の人となってしまったシュガーを見つめている。

彼がシュガーを発見し、早く2分。幾度ものシュガーの声も無視し(聞こえていない)ただ爛々と輝かせた目でその姿になった彼女を見つめるだけだった。

「おい!聞こえてるでしょ!駄ウサギ!変態獣!カスッ!」

シュガーが叫ぶとやっと我に帰ったのか彼女の言葉に反応し身体を動かそうとするも、シュガーがピットに叫ぶ罵倒が耳に入り、少し体温が上がる。

(あぁ、もう少しこのままでいよう。)

ピットはそう決意し再び石の彫像のように上を見上げ固まった。

 

 

「この駄ウサギ。コロス。このシュガー様が害獣を駆逐してやる。」

「ちょっとシュガー姉様、冗談じゃないですかぁー。ねっ!冗談ですよ。冗談。」

「例え冗談だとしてもお前はわたしの姿を見つけてから合計8分32秒。ただ無言で視姦した。この罪は重い。女王を視姦した罪。わたし自ら処罰してあげる。ギルティー。」

「まあ、シュガー姉様は女王というより『お姫様』ですけどね。お・ひ・め・さ・ま♡」

 

ブチッ。

 

何かがキレる音をピットは感じる。

「やっばぁ♡」

そしてシュガーの表情をみたピットはすぐさま笑顔になった。

「コロス。人形劇場(マリオネットシアター)。」

シュガーは憤怒の表情を浮かべピットに向け10本の指を彼に向ける。

するとピットは途端にその場から身動きが出来なくなるが時折シュガーが指を動かすとそれに応えるかのようにピット自身の意思とは関係なく手が、脚が動く。

「駄ウサギにはお仕置きしてあげるわ。」

彼女大きく彼に向けた手を横に振り払うとピットもそれに応えるかのように大きく横へ跳躍する。

それは例え目の前に木があろうとも。障害物があろうとも。彼女が振った手の振りに呼応するかのようにピットは吹き飛ぶ。

 

「ブベッ!」

ピットは猛スピードに横に振られ木に激突し声を上げるもそこでシュガーは止まない。すぐさま右手をまた逆側に振り抜きピットも同じように反対側に飛ぶ。

 

人形劇場(マリオネットシアター)

彼女がおもちゃにした物に限定であるがその対象物を自由に操作することが出来る。それは言動も含め六感も入る。

故に今ピットはおもちゃ特有の無痛ではなく、木に打ち付けられる度にそのぬいぐるみの身体に激痛が走る。

 

「らめええええええ!!!」

 

「今更命乞いしても無駄よ。今日と言う今日は完全にキレたわ。この変態。これでおしまいよ!」

 

シュガーがこれまで以上に一際大きく右手を振り上げる。それにつられピットもまた空高く上空へと飛ぶ。

そして左手を細かく動かしピットの頭が地面に向くように調整し、シュガーはニヤリと笑みをこぼした。

 

(あ、これ僕死んじゃうううううう!!)

ピットはこれから自分の身に起こることを思い浮かべさらに興奮するが拘束された身でその内心が周りにすけることは無い。

そしてシュガーが右手を振り下ろすとすぐさま降下が始まりピットは地面へと突き刺さるべくスピードを上げ落下していく。

 

(いやああああああ!!これは!!これは!良いッ!)

ピットがその最中自分の命を諦め、諦めさせたシュガーに対して完全にあっちの世界に行きそうな時、彼が現れた。

 

「やめんか!」

彼の叫びで大気が震えまるで空気そのものが凍るように体感温度がグッと下がる。

ピットもシュガーもー指先が震え膝が笑いなんとかその場にて気絶することだけは免れてもその場で行動を止めてしまう。

 

「テゾーロ。」

シュガーが恐る恐るその声がした方向に目を向けるとそこには白い大狼の背に乗った黒色のブリキのおもちゃがいた。

 

彼の声に応えるようにシュガーはそっとピットに掛けた能力を解除し、彼の拘束を解くとピットは自由になった四肢を使い見事に着地した。

内心(もう少しだったのに、邪魔しやがってこのクソ黄金野郎)と思わないことも無かったが、テゾーロの視線を浴びすぐさま態勢を直立へと変える。

 

「シュガー。やり過ぎだ。いくら鍛錬にもなるからといって痛覚まで能力解除する必要も無い。あのままならぬいぐるみであるから死ぬことはないかも知らんが、それなりのダメージが残る。」

 

「はい。」

ショボーンと効果音がするほど彼女は目に見えて意気消沈する。

いくらワガママな彼女とは言えテゾーロに怒られてしまうのは心にいくらかズシンと来てしまう。

 

「待ってよ!テゾーロさん!僕はそんなの気にしない!!そ、それにこれも鍛錬だよ!せっかくあとちょっとで・・・なんでもありません。ごめんなさい。」

すぐさまドMなピットが反論しようと試みるも彼のひと睨みで口を噤んだ。

 

「まあ、そんなに修行がしたいならポチとしなさい。この子も久しぶりにこの姿に戻れてまだハシャギ足りないようだからね。」

 

「「え!?それはちょっと・・・」

テゾーロの提案に2人は異を唱えようとするもテゾーロが再び彼らを睨むと2人は嫌々ながらも応じることにした。

彼らが考えてることは一つである。

 

(ポチ全く手加減してくれねぇんだもん)であるが、テゾーロはその2人を見てやる気を出したのかと考えポチの頭を撫でた。

「ポチ、2人のためだ。全力を出しなさい。」

 

ポチが彼に応えるように「ワオーン」と遠吠えをすると空気が震えピットとシュガーに寒気が襲う。

 

これだ。これが厄介なのだ。覇王色持ちというのは。

覇王色の覇気の素質を持つ者はこの島で1人と1匹。

それはテゾーロとポチであり、他に素質があるような者はいない。当然である。そもそも数百万人に1人の割合なのだ。

テゾーロがその素質があるのは何となくだが彼らは理解している。

村民達への統率力。カリスマ。単純な戦闘能力。どれを取っても正しく王のような人物だとシュガーはもちろんピットも思っている。

しかし、この白い大狼はなんだ。

ただの全長5m高さ2mという巨体を待つだけの狼ではない。

何故か覇王色の素質があるのだ。そしてそれはこの一年テゾーロと行動を共にする事でより磨きがかかっている。

そして、ピットからするとそれ以上にポチに対して苦手意識を感じることが一つ。

彼は狼なのだ。対する自分は獣人とは言えウサギである。

能力差はあれどそこには狩る者と狩られる者という定義がある。故に苦手であった。

 

「じゃっ、2人とも頑張れよ。死にそうになったら助けてやるわ。」

 

彼は2人にそう言うとポチの背から飛び降り近くの木の下へと移動するとそこに腰を落とした。

どうやら一応は監督してくれるのであろう。

2人はその場でホッと息をついた。

 

「シュガー姉さま・・・。」

「やるしかないわ。駄ウサギ。いくらポチだといってもテゾーロの手前、そんな本気を出さないはずよ。もちろん手加減はないでしょうけど流石に私たちを傷つけるようなことは」

 

シュッ。

彼らの目の前に居たポチが瞬時にその姿を消し突如としてピットの目の前に現れその研磨されたように尖る爪でピットを殴りつける。

 

バーンと音を立て吹き飛ばされたピットはその力に抗うことが出来ず、瞬時に戦場の里へと飛ばされる。

 

「ほんとうになんなの?あなた。狼のくせに覇王色持ちで剃もこの一年で会得する。色々信じられないわ。

『黒色巨拳』」

シュガーの右手が瞬時に肥大化しその手には武装色を纏いポチを殴りつけるべくそれは振り下ろされる。

 

しかしポチはそれを獣特有な強靭な脚力を用いた剃を使い目にも止まらぬ速さで躱すとシュガーの左耳付近に移動し、腹に力を込め大きく吠えた。

 

「ワオオオオオオオォォォォォン!!!!!」

なんて事は無い。ただ耳元で叫ぶ狼の遠吠えである。

唯一違う点を挙げるとすれば、それはポチの巨体から発せられるエネルギーに覇王色が付けられているだけ。ただそれだけである。

 

「いや、ほんとに手加減ぐらいしなさいよ。バカ犬。」

そう言い残しシュガーはその場で意識を手放した。

 

「シュガー姉さま!!」

やっと身を起こし戦場にピットが戻ってきた時丁度ポチがシュガーに対して至近距離で咆哮している最中だった。

そして、目の前でシュガーが倒れ、(あれはキツイな)と内心思いながらピットはシュガーの側に駆け寄る。

白目を剥き口から泡を出し気絶するシュガーを見てピットの背中に冷たい汗が流れる。

耳などの人間特有の能力が現在さほど活動していないピットでも今の咆哮をあの至近距離で喰らえばさすがに意識が飛ぶであろうことは想像に難くなく、それがこれから己の身にも降りかかる事は予言者でなくとも分かる気がすると彼は思った。

 

しかし、ここで「はい。どうぞお好きにした下さい。」と諦めるようなウサギではないのがピットである。

例え相手が獣人出ないにせよ肉食生物ならここは草食生物としての意気込みを見せようではないか。

 

「かかって来いよ犬っころ。」

ピットは己の小さいぬいぐるみの右手。中指だけを立て凶暴なら大狼と対峙し挑発する。

それにポチも応えるように咆哮をあげる。

その咆哮には覇王色の覇気が含まれているが、至近距離での覇気でもなく、テゾーロの本気の覇気でもない。ましてや今は痛覚その他聴覚も従来のそれよりも幾分少ないと言った方が正しいのか、ぬいぐるみである。故に彼はその咆哮に、そう萎縮することは無くその場からポチへと駆け出した。

 

本来覇王色の覇気とは声による制圧ではない。

しかしポチに至っては咆哮でしかその覇気を出すことは出来ない。そこにこそ勝機があると考え彼もシュガーと同様に短期決戦で終わらすべく、現在彼が待ち得る最大限の攻撃をポチに放つ。

兎爆拳(ラビット・ボンバ)

 

それはテゾーロの黄金爆と同じような技であった。

否、まさにそのものとも言える。

ピットにとってテゾーロは憧れであった。

シュガーがピットのことを愛していることがわかっててもそれが分かるほどの魅力をピット自身テゾーロに感じる。

英雄なのだ。彼にとってもテゾーロとは。

故に嫌いになれない。むしろ好きである。

そして、ピットから放たれた右の拳はまるでテゾーロのそれのように拳がスパークする。

 

「覇気で一番大事なのは自分を信じる力。そしてそれを行使する上で一番大事なのはイメージすること」

過去にテゾーロから覇気を教わった際に真っ先に学んだ言葉である。

故に彼は信じる。そしてイメージする。

 

テゾーロのように黄金を纏えるわけではない。だからそこは武装色を纏う。

あとはその武装色を纏った右腕が爆発するように最大限の覇気を右腕に込める。

「ドチクショーがああああああああああ!!!!!」

 

何という技でも、もはや言えないのかも知れない。武装色を力の限り右腕に集中したその拳は全くの小手先の技術などは介在しないただひたすら真っ直ぐな右ストレート。

得意の木刀での乱闘を選ばずこうして右腕のパンチ全てに力を込めるのは愚策でしか無いとピット自身も思う。

 

しかし、しかし、憧れのテゾーロの手前。今この時ぐらいは素直に彼を認め、彼を模倣した技を持って相対する狼に一撃を入れたい。

その一心でピットは放った。

その拳は大気を震わせ、とてつもない重圧がその場に渦巻く。

 

「いっけええええええええええ!!!!」

そしてその渾身の一撃が、ポチの頭をかち割るべく振り下ろされる。

 

「・・・まぢかよ。」

ピットがポチに放ったその攻撃はポチに当たることは無く、余裕を持って剃で躱され拳が地面に突き刺さる。

ポチを探すべく首を左に振るとそこにはポチが得意げに爪を掲げて悠然と立っていた。

 

「いや、まぢ勘弁。そりゃあ無理やわー。』

ピットはその様子を見て引きつらせた笑みを顔に貼り付けてそう1人愚痴をこぼした時、無情にその爪、否巨大な狼の手は暴風を巻き起こすほどの速さで横に振り抜かれポチの肉球。人間でいう掌底の部分で腹を横殴りにし再び空へと飛んで行った。

 

 

「いや、まぢ無理ですからー。本当にどうもお疲れ様でしたーーー。」

そう声を出しながら彼は再び星になるべく旅立った。

 

 

 

「お~。飛んだなぁ~。」

テゾーロは飛んで行ったピットを見上げた。すでに空にピットの姿はなかった。

「ワンっ!」

ポチはテゾーロの近くに寄ると「褒めて」と言わんばかりに彼に頭を押し付けその尻尾は周囲に風を起こしブンブンと音を立てる。

 

「良くやったぞ。ポチ。これで2人も見聞色の大事さに気がついてくれるといいんだけどな。」

「ワンッ!」

ポチも意味は分かっているのか居ないのか定かではないが彼に応えるように吠え彼の指の先をペロペロと舐める。

 

「とりあえずシュガー連れて一度家に帰るか。」

テゾーロはそう呟くと未だ気絶しているシュガーを肩に背負いポチとともに帰路に着くべく歩きだした。

 

村に戻るとおもちゃ化が解除され一時騒動となるも、シュガーを無理やり叩き起こし、再び全員をおもちゃ化するというなんとも閉まらない結果になってしまったのはそれはまたのお話。

 

尚その後テゾーロとポチはモネにこっ酷く叱られこれから先無闇に覇王色を使うのはなくなったそうである。

なんとも閉まらない主人公であった。




すいません。リアルで色々とありましてずっと潜伏しておりました。
加えて毎日投稿の難しさを身をもって感じ、これからは最低2日おきに更新しようと現在ストック作成中です。
ご心配をお掛けしました。これからもエタらず頑張ります!
PS先週の土曜日ワンピースを1巻から最新刊まで一気に大人買いしましたので余計にエタらせたくありませんので頑張って更新します!


ps.シュガーが気絶したらおもちゃ化が…というご指摘がありました無理やり最後にこじつけました!すいません!笑


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第12話 蠢く世界

こんにちわ!!今日も投稿です!ストックがあると楽ですね!


「テゾーロ!見てこれ!」

 

今日も村民たちといつもの同じように建築作業をしているとテゾーロの名を呼んで走ってくるシュガーが目に入る。

 

「あ、シュガーちゃんだ!」

「シュガーちゃーん!」

「シュガーちゃんは今日も可愛いねえ。」

 

「シュガー様だって言ってんだろ。何度言わせるのよ。ぶっ飛ばすわよ?」

 

シュガーが走る姿を見つけた村民たちは皆思い思いに彼女に声を掛けるがそれを一蹴するシュガー。

ある意味、この島に来てから2年既に見慣れた光景である。

シュガーに冷たくあしらわれるも気にせず笑い合う村民たち。

シュガーはシュガーでムスッとした表情を浮かべているが心底不愉快ではないのであろう。そのまま再びテゾーロの元へと駆け寄る。

 

「どうした?シュガー。」

「これ!!これ見て!これ!」

 

彼女の普段のテンションとは比べようがない程上がり彼に一枚の紙を渡す。

「ん?これは・・・ッ!?」

それは一枚の手配書であった。

しかしここでシュガーが騒ぎ立てテゾーロに見せる必要がある人物は1人しか居ないであろう。

 

『海賊女帝 ボア・ハンコック 80,000,000ベリー』

シュガーが渡してきた手配書には彼らが知る人物が載っていた。

「すごい!本当にテゾーロの言った通りになった!ハンコックがアマゾンリリーの皇帝で初頭手当に80,000,000ベリーですって!

テゾーロ!あなた未来でも見えるの?」

 

「そんなん見えねぇよ。たまたまだ。」

テゾーロはシュガーにそう答え彼女手配を戻しシュガーの頭をに手を起きポンポンと撫でる。

ブリキのおもちゃとシュガーの身長差は対して変わらずそして、頭を撫でられ頬を赤くし俯く少女の姿に周りで作業していたおもちゃ達はすかさずシュガーを茶化す。

 

「やっぱりシュガーちゃんはテゾーロさんが大好きだね。」

「頬赤くしてるシュガーちゃん可愛い〜。」

 

「うっせぇ!バカッ!黙ってろ!」

シュガーは村人たちの声に顔をハッとあげ、その場から多少名残惜しいが瞬時に退き茶化す村人達に中指を立て吠える。

 

「照れ隠しのシュガーちゃんは今日も可愛いねえ。」

「だーーかーーらーー!シュガー様だって言ってるでしょ!!もういい!お腹すいた!帰る!」

シュガーは先程までニヤけていた表示を瞬時に引き締め今度はプンプンと怒るようなその場を後にする。

いくら、短気の彼女とは言え喧嘩を買う相手は選ぶし考えるのだ。

現在この島での開拓のほとんどは終わり現在順次改築及び増築作業に勤しんでいる。

それは防衛機能のためであったり、自分たちがおもちゃから人間に戻ってきたときの為のことを考えての作業である。

いつ戻るのか。明確にはテゾーロは伝えてはいないが、その時期は恐らく近いであることはなんとなくであるがシュガーもさらにほかの村人達も感じている。

急ピッチに進む実験的な農作業や、学校、その他住宅の改築。

元々住んでいた動物達のために島の最北端半径一キロ程は今後もその環境を残す為に置いているが、

それにこの一年で前年と大きく変わったことは未だに観光客のようなものは来ないが、時折海賊が消息を断つという噂を聞きつけたのか、商船が時折来るようになりそこで鉄や衣服。日用品などを買えるだけ海賊から没収させてもらった黄金で払う。

そして金回りがいいと噂を聞いたのかその後海賊がこの島を訪れまた黄金を徴収してもらう。

幸か不幸か海軍らしき船は未だ近くに寄ることもないが。

しかしそれ以外は順調に彼らは人間への生活を取り戻すべく力を蓄えていた。

 

現在島での生活は三つに分かれる。

一つ 村の増改築をする者たち

二つ 学校にて勉強を学ぶ者たち

三つ テゾーロに時折訓練してもらい後は己らで力を溜める自警団的なことをする者たち

以上の三つである。もちろんテゾーロは全ての件に関わっておりこうして今日は増改築するグループと一緒に作業を行なっていたのだ。

ちなみにであるがモネは主に学校にて教鞭を執り、シュガーとピットは戦闘訓練一辺倒であった。

しかしこの一年でも2人はテゾーロに土をつけることは出来なかったが、去年までと違う点が2つ。

まだまだ未成熟であるが見聞色の覇気が多少使えるようになったこと。

そしてもう一つは2人ともポチに一方的にやられないようになったことである。

ポチ自身は覇気については覇王色しか使えないので勝ってもらわないと困るというところではあったが。

 

なにはともあれ

「やっぱり多少の事象が起きてもある程度原作の流れを取るのか。」

彼はその場で1人ごちるが、誰もその呟きを聞き取る事は出来ず、しかしテゾーロ自身は1人若干晴れやかな表情をして再び作業へと戻った。

 

 

 

 

現在五老星と呼ばれる世界の中心的人物達が話し合いを行っていた。

その場には昨年から海軍元帥と昇格したセンゴクが参加し6人で話し合っていた。

議題は一つ。

空白となった七武海の地位の一席についてである。

 

「では、その海賊女帝なる者に打診するという事で構わんな。」

 

『はっ。ボア・ハンコックは強力な能力者であり対峙した海賊、海軍共に男達は皆、石化の呪いを掛けられるほどの強さであると部下から聞いております。ここは早急に手を打つべきでしょう。」

 

「それでは、七武海の一席をとその海賊女帝なる者に打診するように。

それとだ。センゴク元帥。元帥となったお前をここに呼んだのは何も七武海についてではない。

あの事件から早2年。そろそろフィッシャータイガーなる魚人を捕まえるべきではないか?」

五老星の1人がセンゴクに問う。予想してたとは言え未だその魚人を捕まえることは叶わず、センゴクから冷たい汗が噴き出す。

 

「申し訳ありません。現在目下捜索中ではありますがなにぶん魚人故いつ何処から現れるか予想出来ないものでして。

加えてタイヨウの海賊団なる魚人連合で組織され海中からも襲ってくるため「言い訳はいらん。私たちが望むのは成果だ。経過などに興味はない。良いかセンゴク元帥よ。なるべく早くその魚人を捕まえよ。地上では英雄と囃し立てる者まで出て来ていると聞く。何を差し置いてでもその魚人を捕らえるのだ。」

センゴクの言葉を遮り一際身体の大きい五老星が彼に威圧を送る。

その回答に努力しますなどの曖昧な言葉は許される雰囲気ではないことをセンゴクは察し、ただただ頭を下げるだけであった。

 

『もう良い。下がれ。だか何においてもその襲撃犯の首謀者を捕まえる事が貴様らの第一目標であることを再度認識せよ。」

『はっ!失礼します!」

 

こうして今日もセンゴクが胃痛に悩まされるイベントの一つが終わったことに安堵しながらその部屋から出た。

 

 

 

センゴクと五老星から早半年が立ちあの事件から三年が経ったある日。

 

 

「タイの兄貴。」

「あ?どうしたジンベエ。」

ジンベエと呼ばれた魚人は口に二本の牙が空へと向かい生えており、黒髪に所々金髪が混じった長髪をオールバックにしており、その巨体は何処にいても目につく。

゛海峡゛のジンベエ。

魚人島屈指の荒くれ者ものであり、その腕もそれなりに立つ。

海峡という二つ名までつけられるほどの人物がカシラと呼ぶ人こそ彼ら魚人の英雄。ひいてはこの世界の英雄と呼ばれた男。

 

フィッシャータイガーその人である。

ジンベエの巨体を更に超える偉丈夫であり、襲撃後グランドラインの壁を素手で降りるという信じられない力技を持って聖地を離脱。

その後単身で魚人島にて帰還すると当時からフィッシャータイガーを慕っていた。

故に血眼に今回の事件の首謀者であるフィッシャータイガーを探す海軍とともに戦うためネプチューン軍であった地位を捨て、同じく魚人島で海賊をしていたアーロンとともにタイヨウの海賊団を結成し、フィッシャータイガーの不殺の誓いをかろうじて守りながらも現在も各地に囚われている奴隷を解放すべく今日も海軍と戦っていた。

そして何度もその海軍の襲撃を退け彼らはフィッシャータイガーだけでなくジンベエにも懸賞金をかけた。初頭手配では2000万ベリーとそこまで、ここ偉大なる航路(グランドライン)では高額でなかったものの、この3年でその額は2億ベリーへと上がり、それはフィッシャータイガーも例外ではなかった。事件直後5億というかつてないほどの高額な初頭手配をされたタイの魚人はこの3年でさらに2憶ベリー程懸賞金が上がり現在7億ベリーの賞金首であった。

 

「ここの島民がどうやらタイの兄貴に話したいことがあるそうじゃ。」

ジンベエに声を掛けられ現在とある島の港にて停泊していた船から彼はでてデッキへと出る。

そこには恐らくこの島の村長であろうか。ある程度年齢がいった老人が少女を抱いて立っていた。

 

「もし!!どうか頼まれてくれませんか・・・・。この子は3年前のあなたの奴隷解放の際にマリージョアより逃れてきた子です。

しかし、この子のいる故郷はここよりも遠く・・・。我々の航海術では連れてゆくことが出来ないのです。」

そうして老人に押されるように彼ら魚人の前に立つ少女をフィッシャータイガーは見る。

にこにこと正に作り笑顔ですと言わんばかりの笑顔を張り付けた少女の顔を。

 

「コアラです。11歳!3年前はありがとうございました!」

少女は自分の背丈の何倍もする魚人たちの前に出ても緊張している様子はおくびも出さずしかし、その張り付けた気色の悪い作り笑顔が彼、フィッシャータイガーを不安にさせる。

3年前から奴隷ではなくなり自由となってもなぜ、天竜人に向けるように作り笑顔をつくるのか。己は天竜人と一緒ではない。貴様のような人間と一緒ではない。

彼フィッシャータイガーが一瞬黒い感情に支配された瞬間彼はふと思い出す。いつぞやオトヒメ王妃が言った子供たちにという言葉を。

今、目の前にいる少女をオトヒメ王妃なら救うだろうか?彼はふとそのように考え瞬時にその考えを忘却する。

(無駄だな。そんなこと考えてもあの人なら未来のことなど打算的に考えずこのコアラと名乗る少女を救うだろうな)

彼はもう一度、今度は観察するようにコアラに目を向ける。

別になんてことはない人間のことである。これからの航海成り行きで時にはオトヒメ王妃のように偽善かもしれないがそれをしてみてもいいのではないか?

答えは一瞬であった。

 

「あぁ。成り行きだ。構わねえよ。野郎ども出航準備だ。」

彼は冷たくそういうとその場から翻り船長部屋へと戻っていった。

 

 

「ニヤニヤしてんじゃねぇよ!癇に障るガキだ!!」

出航して間もなく事件が起こる。アーロンが終始ニヤニヤするコアラに対して殴りつけたのである。

大の人間嫌いであるアーロンからすれば、そもそも人間と同じ空間にいるというだけで虫唾が走る。

アーロンに殴り飛ばされデッキをすべるように飛んでいくコアラにアーロンは尚も追い打ちをかけるべく彼女に近づく。

「アーロンさん!まだガキだぜ!!」

6本の腕を持ち2本の足で立つタコの魚人 ハチがアーロンを後ろから羽交い絞めするように彼を抑える。

 

アーロンに殴られ、額が割れ、鼻が折れ、とどめなくコアラから甲板へと血が流れる。

ビリッ。

 

彼女は己の顔に手を付け痛みを抑える仕草もせず、すぐに体を起こし、己の衣服を一部破りすぐさま血が付着した場所を拭う。

「汚してしまいすいません。働きますから。手を止めず働きます。すいません。すいません。」

彼女の手は止まることはなくその汚れを落とすべく甲板を拭きあげる。

しかし彼女自身から流れる血によって拭った場所も再び血が落ちる。

 

「なにしとる・・・。おい・・血が・・・」

ジンベエが彼女のそばに座り込み彼女に問いかける。

「なにがあっても泣きませんから殺さないでください。

彼女の手は尚も止まらず動き続ける。

 

「おい。やめんか。わしらが恐ぇのか?」

「はい。でもおかあちゃんに会いたいから。それに手をとめたらあなたたち殺すかもしんないでしょ。役に立ちますから。働きますから。殺さないでください。」

彼女はいまだ手を動かしつづけながら正面に座りこんだジンベエをみるため顔をあげた。

 

「!?ッ」

ジンベエは思わず言葉を失ってしまう。額がアーロンの鮫肌に触れたのか横に割れ鼻は折れ曲がり今なお血を流し続ける。しかし彼女はそれでも目に涙を貯めることなく終始笑顔なのだ。

奴隷とはここまで根が深いんかっ!!!

彼になんとも言えない怒りが沸々と巻き起こる。それは今はまだ何に対してなのか彼自身分からない。しかしそれは確かにジンベエの心の中に棲みつく。

 

 

「お頭っ!!」

船員のだれかが彼らの船長に気が付き声をあげる。

ジンベエはハッと意識を戻し後ろに振り替えるとそこにはフィッシャータイガーがコアラを見下ろしていた。

 

「このガキを俺の部屋に連れてこい。」

彼は淡々とそれだけ言うと再び船長室へと戻っていく。

しばしその様子に呆けていた一団も船長が部屋にもどりドアが閉まった音で我に返る。

「おい。きやがれ。人間。」

 

乗組員の一人が彼女の小さな腕を掴み引っ張るように船長室へと入っていく。

だれもが室内でなにが行われるのか耳をすませる。静寂があたりを支配したのはわずか一瞬。

「ああああああああああああああああ!!!!!!!」

突如として人が絶叫する声が響き皆が顔を見合わせ驚く。

彼らの知るフィッシャータイガーは不殺を貫き弱きものを守るものである。しかし、なぜ今彼の部屋から少女の絶叫する声が響くのか。その疑問は次の瞬間には解決された。

 

バタンッ!ドンッ!突如船長室の扉が開きそこから投げられるように飛んできた少女コアラ。

彼女の背中からジュウ~と肉が焼ける音が聞こえあたりにもその匂いが充満する。

そして続いて出てきたフィッシャータイガーの右手には熱く熱せられ真っ赤に染まる焼き印の器具。

「止血を。烙印が残ってしまっていたら忘れるもの忘れられねえ。」

 

 

コアラはしばらくの間気を失っており目が覚めると手当されたのか体中にまかれた包帯にひどく動揺する。

そしてなぜか彼女のそばに立ちコアラをみつめるフィッシャータイガーに彼女は伝えた。

「すいません。気絶してしまっていました。だけど私泣かなかったから。殺さないでください!何をされたって泣きま「泣きゃあいいじゃねえかよ!!!!俺たちをあの天竜人(バカ)と一緒にすんじゃねえ!!!!」

 

「おい。これをよく見ろ。」

フィッシャータイガーはコアラの目の前に拳銃を取り出し、彼女の視線が拳銃を追ったと確信したとき、それを海に投げた。

「いいか。俺は、俺たちは誰も殺さねぇ。誰にもころさせねぇ。泣きたかったら泣けばいい。怒りたかったら怒れ。笑いたかったら笑え。俺たちは奴隷じゃない。お前ももう奴隷じゃねぇんだ。母親のとこに戻りてぇんだろ?

安心しろ。俺たちが必ずお前を送ってやる。

いくぞ。お前ら。こいつは必ず故郷へ送り届ける。」

 

「「「「おぉー!!!」」」

フィッシャータイガーの言葉に船員はみなそろって声を上げる。

「あ˝りがどうございまず!!!」

そして彼女。コアラも今までずっと堪えて流していなかった大粒の涙を流した。

 

 

 

世界は激動の世界へと一歩また一歩と近づいていく。




ハンコック手配されましたね!それに若干でありますがコアラとジンベエ、コアラとタイガーのシーンも改竄しております。よろしくお願いしますー!
次回の更新は恐らく遅くても今週土曜には公開出来ると思います。よろしくお願いします。


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第13話 英雄堕つ

被災によるその他準備、片付けのため更新が止まっておりました。
そして、今回の大雨で漫画全部水につかってしまい非常に悲しくおもってます・・・
なにはともあれ、応援コメントくださった方々。そして現在も更新を待っていただいていた方々。ありがとうございます。これからは再び更新を続けていきたいとおもいますのでよろしくお願いいたします。
あれから丁度2か月が経ちました。現在ストックは約10話分ほどたまっております。ですので今週はお詫びとして今日、明日、明後日で5話掲載し二章を終わらせますので定期的に見て頂けたらと思います。
更新日時は18時と0時になりますのでよろしくお願い致します。
来週以降は金曜土曜の18時更新ですのでよろしくお願い致します。


「やっと手に入れたな。コアラの故郷の永久指針。」

現在彼ら、タイヨウの海族団は偉大なる航路を航行していた。

数週間前にある島で拾った元奴隷の少女コアラを故郷に送るべくその故郷への行き先を示す永久指針を手に入れ、これからその島に向かうべく航行していた。

 

「・・・・。」

「にゅ~。なんだよ。コアラぁ~。もっと自然にしろよ。折角新しい服も買ってやったし髪も切ってやったのに。」

タコの魚人ハチはコアラに笑いかける。

「で、でも私、変じゃない?ちゃんと似合ってる?」

コアラはハチに問いかけ再び自分の姿を見下ろす。以前とは違い白いワンピースを着て髪も以前のようにゴワゴワ絡まるようなことはない。

「んにゃ。そのほうが絶対母ちゃん喜ぶぞ!」

 

「そ、掃除しなきゃ。」

コアラは照れ隠しなのかハチの言葉に少し反応するがすぐさま甲板を拭くべくポケットから出した雑巾で自分の足元を拭く。

 

「にゅ~!!おめぇ、その困ったら働く癖やめろ!ここはマリージョアじゃねえぞ!」

「好きにさせてやれ。そいつのトラウマはそう簡単に消えるもんじゃない。」

 

ハチに対してタイヨウの海賊団 船医であるアラディンが話しかける。

「シャーハッハ!!よく分かるようだな。アラディンのアニィ。やっぱり元奴隷には元奴隷の気持ちが痛いほどわかるってか!?

本当は殺してやりてぇんだろ!こいつはアンタを飼ってたやつと同類の人間だぞ!」

アーロンはいまだ掃除するコアラに指をさしアラディンに詰め寄る。

 

「おう、やめねぇか。アーロン」

この船のキャプテンであるフィッシャータイガーが彼を止めようとするもアーロンの語りは止まらない。

「おい!ガキ!本心をさらしてみろ!てめぇの母ちゃんからなんて教わった!?本当はお前も魚人を見下しているんだろ?お前の親と同様に!」

アーロンは見下していたコアラの頭に掌を置くとそのまま地面に向けて押し付ける。

 

ドンッ!

船に鈍い音が響く。

 

「おいっ!!アーロン!貴様っ!」

それをみたジンベエが彼を叱責するべく詰め寄った。

「人間の社会ってのはそうだろう!!人間という種族が世界一素晴らしく偉いんだと思い込んでやがる。

そしてそいつらのその子はまたそれを見て育ちつけあがる。誰かが人間という種族をぶっ潰さねえ限りその流れは止まらねえ!

この三年の航海でさんざん見てきたハズだろう!人間たちが俺たち魚人を蔑むあの目!俺はお頭がいなきゃあ人間どもになにをしてたかわからねぇ!」

 

「蔑むものは一部に見えたがのぅ。他はだいぶ違ったと思ったが。のぉ、コアラよ。なぜわし等は一部の人間に怖がられるんじゃ?お前も含め。わしらが海賊じゃからか?」

ジンベエはコアラの前に座り込む彼女の顔を覗き込む。

「だって、何も知らないから。」

 

ズキリ。

ジンベエの心に何かヒビが入った。

そのように一瞬感じたジンベエは魚人島のオトヒメ王妃を思い浮かべる。

彼女もまた夢に向かって。己の代が無理でも次の。その次の代へと希望を紡ぎ、何も知らない子供たちに魚人とは。人間とは何かというのを話し合い、そしていつか助け合えるような世界を。

そうして恐らく今日も署名を集めている頃だろう。

 

「何も知らないからか。」

そう1人ぽつりと言葉を吐いてみると何故かストンと彼の心に落ち着く。

「己が人間を知り、そして人間に我ら魚人を知ってもらう」

オトヒメの行為は夢物語ではあるだろうが、こうして人間を強く恨むまたアーロンも人間を知らないのだ。

「そうか。コアラよ。母親に会えると良いのぅ。」

そう言ってジンベエはその場から立ち去った。

 

航海を続けること幾日。

彼らはコアラの故郷である島の沖に滞留していた。

「にゅ~。コアラさみしくなるぞ。」

ハチがコアラに声を掛ける。コアラの恰好はいまや小ぎれいにされ奴隷であった頃の面影はすでに見当たらない。そこらにいる町娘となんら変わらない。

「ハチさん、変じゃないかな?」

しかし当の本人はいまだにぎこちない笑みを浮かべ己の恰好に目を向ける。

彼女の中にはこの恰好がへんじゃないかという意味とは別に私がこんな格好していていいのか?という意味が含められているのをハチは知っている。

「気にしすぎだ。コアラ。いくぞ。」

彼女の問にフィッシャータイガーが答え彼女を小舟へと誘導する。

 

「にゅ~!!!コアラ達者でなっ!」

「コアラー!またいつか一緒に航海でようなっ!」

「どこへでも行きやがれ。」

 

皆三者三様の言葉をコアラと、ともに引率もかねて向かうフィッシャータイガーの二人組に向かって声を掛ける。

「ありがとー!!!私楽しかった!村に帰ったらみんなに言うよ!魚人族の人たちは怖くないって!優しい人ばっかだったって!ほんとうにありがとう!!」

彼女もそれに応えるべく彼らに向かい大きく手を振り彼らに別れを告げる。

 

「ああいう子供たちがきっと、わし等と人間をつなぐ架け橋になるんんかのぅ」

徐々に遠ざかるコアラの背を覗きながらジンベエは一人甲板で空に声をかけた。

 

 

「タイガーさんありがとう。」

コアラは村へ向かう小舟の中でフィッシャータイガーに話しかける。

「ん?気にすんじゃねえよ。俺らも楽しかったしな。」

彼タイガーはそういうとコアラの頭の上に手を置き撫ぜた。

「もう天竜人なんかに捕まるんじゃねえぞ」

「うん!私大きくなったらタイガーさんたちみたいに海に出たいな!それで魚人族の人と人間の人たちと冒険するの!みんなで仲良くできるんだよっていろんな人たちに伝えたい。それが今の私の夢。」

「おう、いいじゃねえか。そしたらいつか俺たちも仲間に加えてくれよ。そしたらコアラ船長か。ガッハッハッハ!おもしれえ!・・・コアラ。待ってるぞ。(ここ)で」

彼はそう言うと今度は乱暴にではあるがそこには親が子を撫でるようにどこか親密さがうかがえるように彼女の頭を撫でた。

 

「うん!!!」

そして彼女もまたいままでのぎこちない笑顔とは違う、本当に心の底からの笑みを浮かべた。

 

 

「おかあさーーーん!!」

小舟が海岸へと着きコアラを連れ島の中心部をめざし二人あるいていた時コアラは前方に見えた人だかりに向け手を大きく振り母と呼んだ人物に向かって駆け出す。

タイガーをそれをその場で、集団とは少し距離を取りそれを見守った。

コアラが母と抱き合い再会の涙を流している場面の横で他の村の大人たちは未だ距離をとるタイガーに警戒しているのか皆怯えた表情ながらも彼の一挙手一投足を見逃さんと視線を向ける。

その視線になれてしまっっているタイガーは気にも留めずコアラを見続けていたが、これ以上居てもと考えその場を後にすべく後ろを振り向いたとき。

「タイガーさん!」

彼の背に向かいコアラは声を掛ける。

「本当にありがとう!!!ありがとうございました!!」

コアラは未だこちらを振り向かないタイガーに対し感謝の気持ちが聞こえるよう、大きな声で、大きな動作でお辞儀をしながら彼に礼を伝えた。

「私たちからも!ありがとうございました!」

コアラに続き、その母も彼に向かい言った。

「ありがとう」「ありがとう」

コアラの母の声の後他の大人たちからもちらほらとそうした声が上がる。

 

「コアラッ!!」

タイガーは彼女のほうに振り向き己の頭に巻いていたトレードマークの雲をあしらったバンダナをほどきコアラに投げた。

バンダナは風をうまくつかんだのかヒラヒラとコアラのほうに飛びやがて彼女の手に落ちた。

「それはやる。俺たちはいつでもお前を待ってるぞ。またいつか会えたらな!また冒険でもしようや。」

彼はそう言って再び彼女たちに背を向け仲間たちのもとへ向かった。

 

 

 

「飛んで火に来る夏の虫じゃのう」

現在タイガーはコアラの故郷の島、海岸へとあと少しの距離のところで海軍に囲まれていた。

「くそっ!あいつらっ!」

「島から通報があり来てみればとんだ大物じゃ。のうフィッシャータイガーよ。」

現在包囲している海軍の者たちの中で恐らく一番階級が上であろう中将以上が羽織ることを許された正義のコートを羽織り軍帽を深くかぶった偉丈夫な男がタイガーを睨む。

「おどれに弁解の余地は無い。いっぺん死んどくれや!」

男が手から溶岩を作り出しそれをタイガーに向けて放つ。

「くそ野郎がああああああああ!!!」

溶岩がタイガーを包みやがて地面にも到達するとそこで大爆発が起こり周囲に爆炎と爆音を発生させた。

 

タイガーが襲撃されているときと時を同じくしてその島の沖に停泊していたタイヨウの海賊団も海軍の軍艦に囲まれ襲撃を受けていた。

「ジンベエの兄貴!!」

魚人族の誰かがジンベエに向かい叫ぶ。

「おのれぇ!海軍っ!」

「逃がさねえよ。氷河時代(アイス・エイジ)

ジンベエと相対している中将以上である制服を着崩した将校が海に向かい氷の能力を放つ。

すると一瞬にして周囲の海は氷を化し、魚人族の強みを消した。

「さて、気が進まないけど、大捕り物といこうじゃないの!」

 

「くそがああ!!!人間どもが!!!貴様ら許さんぞ!!!必ず殺す!!殺してやる!!!!」

アーロンが海軍に向かい大声で叫ぶが、多勢に無勢、さらには海が氷漬けにされ魚人としての強みが発揮できない今、彼らは海軍に。そして氷の能力を持つ将校に斃されていく。

「タイの兄貴、コアラ。すまぬ。」

ジンベエが彼らが向かった方向に独り言のように言葉を発した時、彼は氷の彫刻へとなった。

 

 

 

その事件の数日後、世界政府は衝撃なニュースを世界に発信した。

【大罪人フィッシャータイガーの捕縛。加えて魚人海賊団の一部を捕獲。タイヨウの海賊団の実質ナンバー2のジンベエとともにフィッシャータイガーも捕縛した】というニュースである。

記事ではフィッシャータイガーはその後、混乱を防ぐため秘密裏に彼を処刑。

そしてジンベエ他、魚人の多くはインペルダウンへと収監されたと書かれている。しかし、ノコギリ鮫の魚人他数名の魚人は捕縛時のどさくさに紛れ逃走したことも記されていた。

ここに聖地マリージョア襲撃の大犯罪人の処刑、そしてその一味の捕縛により事件は終結したことが世界に発信された。

 

 

「モネ。シュガーを呼んできてくれ」

「ええ。テゾーロ。呼んでくるわね」

そしてこれからギルド・テゾーロの物語が今動き出す。



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第14話 金色の首謀者

「シュガー、もういいぞ」

「本当に?」

現在彼らは島の中心部。市長室と呼ばれテゾーロが普段執務をおこなっている一室にいた。

メンバーはテゾーロ、モネ、シュガー、ピット、能力で人間サイズにまで小さくなったバルディッシュ。そしてプルートである。

「テゾーロ、本当にいいの?」

モネが彼らを代表して問う。

「あぁ。世界政府は今回のマリージョア襲撃の首謀者を処刑して事件は終結したとご丁寧に詳しくニュースで発表したからな。今更真犯人が出てきたとしても面子のために隠すだろうよ」

現在彼らが集まっている理由は一つ。

フィッシャータイガー処刑によりテゾーロがそろそお人間に戻していいと皆に伝えたためである。

「それに、そろそろおもちゃでいるのも限界ではあるしな」

テゾーロがそう言うとその意見には賛成なのか皆が頷いた。

 

「モネ、明日皆を学校に集めてくれ。そこでみんなを人間に戻す」

「ええ、分かったわ」

 

 

翌日。島の島民すべてが島の中心部に立つ学校のそこまで広くない校庭に集められていた。

「みんな、長い間待たせたな。今日集まってもらったのは、これから人間に戻すからだ」

島民たち団体の前に出て代表してしゃべるテゾーロの言葉にざわめきはあれど反対の声は上がらない。

恐らく昨日のうちにおおよその事情が村中に知れ渡ったのであろう。

「皆を戻す前に一つ、皆に聞いてほしいことがある。先日聖地マリージョアの襲撃の首謀者としてフィッシャータイガーという魚人が処刑された。

紛れもなく俺のせいの濡れ衣ではある。ここの者たちは皆俺を救世主だの、英雄だの言うが、俺は彼こそが英雄たるべき人物であったと思っている。間違いなく俺に利用されてしまったような形であれ、俺は彼を尊敬するし、皆も彼を尊敬し英雄だと思っていてほしい」

テゾーロの言葉に皆が耳を傾け、フィッシャータイガーに想いを寄せる。確かにテゾーロに利用されたようにも思える、かの魚人。しかしテゾーロがそういうのであれば彼、フィッシャータイガーもまた英雄なのであろう。英雄の死を尊ぶ必要がある。と思い込む。

彼らは間違いなくテゾーロに妄信していた。恐らく今後テゾーロが黒を白と言おうともきっと彼らはそれを白と断じる程の妄信ぶりである。

 

「皆、フィッシャータイガーに黙とうを捧げよう」

テゾーロがモネに向かって視線をやると、彼女もまたその意を得たりと頷き昨日、テゾーロの能力であつらえられた急場の黄金の鐘を鳴らした。

カラーン カラーン カラーン

鐘は三回鳴り、島中にその美しい音色が響き渡る。

「黙とう」

テゾーロの声に皆が頷き皆、一様に胸を手に置き目をつぶり第二の英雄に黙とうを捧げた。

10秒程経っただろうか、みなが黙とうを終え再びテゾーロに目を向けた。

「シュガー、頼む」

テゾーロの一言にシュガーは頷き能力を解除した。

 

それは後に美しい景色であったと皆が言った。

凡そ2000のおもちゃたちの全身が白く輝き足から、人によっては手から、頭から、おもちゃであった部分がゆっくりと光の粒となり空へと飛んでいく。

瞬時におもちゃから人間に変わるというわけではなく、徐々にであった。

しかしその光の粒の行方を追おうと空に目を一瞬だけ向け再び体に目をむけるとすでに全身が元の体に戻っていた。

一瞬であったのに、一瞬ではないような時間。光の粒が空にゆっくりと浮かぶ幻想的な刹那の時間。不思議な体験であったと、島民は後に語る。

「ははっ。きったねー」

誰の声であったろうか。誰かが自分の人間のころの恰好をみてそんな声を出す。

おもちゃになりすでに3年の時が過ぎてはいたが皆三年前の逃亡劇のままの姿かたちのままである。

テゾーロがひそかに懸念していたことでもある。

原作ではロビンなどがおもちゃになったのは少しの間ではあったが、彼らはおもちゃのままでも歳をとるのだろうか?もし取らない場合、今現在学校に通っている児童たち心の年齢と合致しなくなるのではないか?故にフィッシャータイガーの処刑を聞いてすぐさま判断したのである。

 

「こりゃあ、まずは最初に服とは身の回りを綺麗にしねえとな」

テゾーロの声は喜びのあまり歓喜の声を上げる島民たちに聞こえることはなかった。

 

 

~女ヶ島・アマゾンリリー~

「わらわは・・!わらわはなんと愚かなことを!!!」

「姉様ッ!!!テゾーロです!私たちを救ってくれたのはテゾーロです!」

現在、女ヶ島アマゾンリリーの女帝。昨年初めての航海で異例の初頭手配8000万ベリーを賭けられその後王下七武海に選ばれた海賊女帝と呼ばれている美女は涙を流す。

同様にその両隣にいたサンダーソニアとマリーゴールドも同様である。

いままで何故彼女たちは自分の本当の英雄を忘れていたのか。しかし、今はっきりと思い出せた。

「にゃにがあったのじゃ!蛇姫!!」

ボア三姉妹の混乱ように顔面を蒼白とさせニョン婆が問いかける。

「すぐに!!!いますぐに!!テゾーロを探すのじゃ!!」

そんなニョン婆の問いかけにハンコックは反応を見せずただテゾーロを探せと近くに従える近衛兵に命令を出す。

「ギルド・テゾーロ!!!金髪の男じゃ!!なにがなんでも見つけるのじゃ!!わらわは!!わらわたちは!その方に謝らなければ!!」

ニョン婆がいまだ「蛇姫ッ!」とハンコックを戒めようとも彼女にはその声は聞こえない。他の姉妹も同様にである。

ニョン婆はその姿を見てこれから先、想像ができない程の嵐が大波を伴ってこの女ヶ島を時代を、包み込むような寒気に襲われた。

 

 

 

 

~海軍本部・マリンフォード~

 

 

ガッシャーーン!

元帥室と呼ばれ、歴代の海軍元帥の者がいる部屋では食器が割れる音が響く。

「何故、忘れていた!?」

彼、センゴクはともに茶を飲んでいたガープに話しかける。その声音はどこか怒気を孕んでいた。

センゴク。三年前までは海軍大将であったがあの事件以降コング元帥が海軍元帥の地位を辞職。その後スライドする形で元帥に昇進した男である。

「ガッハッハッハ!!それはワシにも分からんわい!しかし面白いのぅ!あの時も面白かったが」

センゴクの怒気を孕んだ声音に怯えることなく快活に答える男。海軍の英雄と謳われた海軍中将ガープである。

「ガープッ!!笑い事ではないわ!!すぐさま奴を手配するぞっ!!」

「奴とは?誰じゃ?名前は?能力は?年齢は?なにもわからんぞ?」

ズズズ。ガープは先ほどの表情はうって変わり真剣な様子でセンゴクに問い、目の前のお茶を飲んだ。

「負けじゃよ。あの時もそうであろうし、今回もすでに海軍含め世界政府は首謀者フィッシャータイガーという魚人を処刑し事件は収束したと発表してしまった。

今更、真犯人が出てきましたと発表するのは五老星の爺たちがいい顔せんであろうのう。」

「しかし!!!いや、お前があの時私を殴っていなければこんなことになっていなかっただろうが!!!」

センゴクは当時のことを思い出しガープを叱責しようとするがガープは煎餅をバキリッと音を立てながら首を横に振った。

「そうかもしれんがそれは難しいじゃろ。あやつの武装色の覇気はワシより上じゃったしあれは恐らく見聞色もそれなりじゃろう。それにあの能力。もしかしたら覇王色も使えるかもしれんわい。そんな奴をワシとセンゴクが五体満足で捕まえ、且つ聖地も傷をつけずにいるなど無理じゃろう。今回はあきらめるしかないわい」

 

「ん?すまん。聞き間違いか?お前の武装色より上と聞こえたが?」

「いや、紛れもなく上じゃったぞ。ガハハハッ。面白い小僧じゃろ!?いろいろ思い出して来たらワクワクするのぅ!!ワシちょっと行ってくるわ!!」

「お、おいっ!!!ガープどこに行く!?」

センゴクがおもむろに立ち上がり居住まいを正すガープを止めようと声を張り上げる。

「決まっとるじゃろ!あの小僧のもとよ!」

「決まってるもなにもどこにいるのか分らんだろう?」

「勘じゃ!!!!じゃあの!センゴク!後はまかした!!!」

「ちょっ!!!ガープ!!!待て!報告はどうするんだ!?」

センゴクの問いかけにガープは風のように、いや、嵐のように走りながら「そんなものはお前さんに任すわい!!」といいながら元帥室を後にした。

 

「はぁ~。どいつもこいつも」

センゴクはいなくなったガープを見送りながら、今後のことを考え頭を悩ませていた。

 

 



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第15話 船出

「ウォーターセブンへの永久指針(エターナルポース)?」

 

現在テゾーロは集会所の中の一室に設けられた市長室と呼ばれる部屋で執務を行なっていた。

聖地襲撃から既に3年。さらに影で英雄と謳われた解放の英雄フィッシャータイガー処刑のニュースが世界を震撼させ2か月。彼ら、テゾーロ一行は人間に戻ってからも着々と島の発展を行っていた。

話が変わるが、彼らがおもちゃの時の3年は非常に忙しかったと言えるが彼らはおもちゃという特性を最大限に生かし、その発展を大きく行なった。

島の名が『黄金とおもちゃの国グラン・テゾーロ』という名に恥じないように、そのグラン・テゾーロという名を活用するかのようにテゾーロ達はゆくゆくは観光客あふれる島を目指し開発を行っていた。

結果的にいまだ観光客は来ないが島民が凡そ2000人が生活していく分にはそこまで不自由というほどのものではなかった。

 

しかし一つ、上手くいってない点にテゾーロは頭を悩めていた。

観光客と呼ばれるような客が全く来ないのである。

完璧に来ないといって差し支えがないレベルである。

ただ海賊がこの村の噂を聞きやってくるが皆、黄金に目を奪われ、乱暴狼藉を図ろうと来るため丁重に宝だけ徴収した後は小舟にて帰ってもらっている。

 

しかし、海賊がだけだ。あくまでこの島に訪れるの海賊だけであり、身の回りの品はとりあえず海賊の船から物資を取り上げるか、テゾーロの力により、非常に贅沢な話であるが服が無いものは皆黄金の水着を着用している。

幸か不幸か、この島は夏島であり、一年中夏であるがゆえに出来ることであろう。

しかしほとんどの人間が性別問わず黄金の(女性はビキニ、男性は海パン)水着を着ているというのは少し現実離れしている感は否めないテゾーロである。

もっとも小さい子供、老人から優先して衣服は支給しているが現状では当分の間は全員に衣服が揃うことは難しいであろう。

やはり、どこかで貿易すべきであろう。何、黄金ならこの島に腐るほどある。

おおよそでしか見積もりできないが現在換金できるであろう、ここでは流動性金とでも言おうか、別にベリーに変えてもいい金がおおよそ3憶ベリー。

反対に設備やテゾーロの能力の特性上換金出来ない金はおおよそ10憶ベリー程だろうか。

ほとんどが聖地襲撃時に能力を用いて強奪してきた金である。

しかし、現状は2000人の島民が衣服も満足に着られず(実際能力で金を柔らかくしているので皆不満に思っていないが。加えて男性陣には好評である)食事面でもおもちゃであった期間にポチを筆頭に島を散策しあらかた食べれるものは確保、量産、保管しているため若干ではあるが余裕があるとは言え貿易をしなければ先はない。なにより、金はたらふくある。

しかし、この世界の海は記録指針(ログ・ポース)がなければ満足に航海もできない。加えておもちゃしかいない船員たち。そんな船を相手に商売してくれるような人などいるわけない。というわけでいまだここの島に移住して三年、遠海にでたことはほとんどなかった。それがいままでこの島内で自給自足を強いられていた理由である。

 

そして現在も今後のことについて考え頭を悩ませていた彼に思わぬ朗報があった。それがウォーターセブンの永久指針である。

 

「これしか無いな。」

彼はモネから渡された砂時計のような記録指針を手に取り執務室出るべく支度を始める。

「まさか、今から行くの?」

モネが彼の姿を目で追いながら問いかける。

「あぁ。丁度いい案が浮かんだ。すぐにバルディッシュに小さい帆船を港に浮かべるように伝えてくれ。

あと、俺と来るメンバーはピットとポチとシュガーにモネ。君もだ。

他のメンバーには俺から伝えておくから、モネはバルディッシュに帆船の伝言と、ポチを元の大きさに戻すように伝えてくれ。

後、プルートは島に残り引き続き学校で教鞭をとり、もし緊急の時には電伝虫を使って連絡してくれとでも伝えておいてくれ。それと、これをプルートに。」

そう言ってテゾーロは足元に無造作に置いてあった木箱と、テゾーロが書いた手紙をモネに渡す。

手紙は2通。一つはプルートと、もう一つはヒナと書かれた物を彼はモネに手渡した。

「もぅ。いつも急なんだから。この間だって・・・「す、すまん。先を急ぐのでな。三時間後に港に集合だ。頼んだぞモネ。」

彼はモネの説教が始まることを察知するとすかさず他のメンバーを探すべく部屋から出た。

モネの気持ちも分かる。

この3年、彼の思い立ったらすぐ行動に真っ先に振り回されて調整させられているのはモネであった。しかし彼女はなんだかんだ言いながらもその役目を見事にこなし、現在テゾーロの秘書のようなポジションに立っている。

ポチはあくまでペットであり、シュガーは変わらずに女王(笑)だが。まあ、ピットはペットその2と言ったあたりか。

テゾーロはそのまま恐らくピットとシュガーがいるであろう隣の建物。今や完全に校舎だと一目に分かる学校と呼ばれた建物へと向かう。

 

 

「シュガー様。お茶が出来ました。」

「うむ。くるしゅうない。」

「シュガー姉さまっ!僕を踏んで下さい!!!」

「死になさい。駄ウサギ。いえ、むしろこの世の存在そのものごと消えなさい。」

 

・・・。

テゾーロは現在目の前の光景に言葉を失っていた。

学校の校庭にて幼い子達であろう。正直全員がおもちゃであるが、もちろんテゾーロも彼女達のことを知っている。

算数を教えるためであったり護身術として覇気を教えるためであったりと頻繁にこの学校に教鞭を振るうため訪れるのだ。その場にいる全員とも面識はあるし生徒達である。無論彼女達のグループが何歳かも凡そであるが把握している。

 

もちろん今から市長室に戸籍を取りに行けば正確な年齢が把握できるが。

彼テゾーロはこの村の開拓と同時に現在島の村民が総勢何人なのか。

そして年齢、前職などを記載する住民票なるものの提出を義務化し現在それは市長室で管理されている。

届出の結果、この島に住むのは総勢2150人。

それの9割が現在20歳を超える。

そしてここ、グラン・テゾーロの学校に通う事が出来る年齢のラインは決めてはいないがだいたいが現在5才〜18歳の者達が通っている。

まあ、主になので、例外もあるし、ここの学校で学ぶ最年長は21歳であるが・・・。

聖地襲撃時点では2歳であろう子供達は親と一緒にテゾーロについて行くことを選ぶ者が多かったのも子供が元奴隷の割に多いという理由であるとも言えよう。

 

そして現在シュガーとピットは校庭にてピクニックシートを引き、あれは恐らく5歳〜7歳のこの島での最年少女グループであろう。

彼女達とおままごとを興じていた。

 

シュガーは意外にも年下の子供に対しては癇癪を起こすこともなく。彼女達の遊びにも率先して付き合うことにより、現在学校では絶大な支持を子供達から得ている。

まあ、これは何も学校だけではなく、村民の大人達もシュガーのことを恩人と考え、彼女のワガママについても微笑ましい感情を抱くほどこの島の人たちに好かれているのであるが。

 

「シュガー姉さま。そのようなお茶はなんではいけません!!飲むならまず私めに毒味を!毒味をさせて下さい!」

シュガーを囲みワイワイしている集団から外れ一歩離れた馬車からその低い背丈で見えないのか、ピョンピョンと跳ねながら自分存在をアピールする。

 

「話しかけないで。駄ウサギ。」

「そーよ!ピットはあっちいって!」

「邪魔よ!!私たちの邪魔しないで!」

シュガーがいつものように彼を冷たくあしらうとそれに便乗するようにシュガーの周りでおままごとに興じていた子達もピットに悪態をつく。

 

「ぐっ!!僕はこんなことで引けない!むしろもっと!!!もっとくれ!いや下さい!」

ピットは年下の幼女達に何を言われようとも、シュガーにあしらわれようともシュガーの身を案じ、彼女を守る騎士のように勇敢に困難と立ち向かう。

(と、以前の俺なら思ってたな。)

テゾーロはそこで「はあっ」とため息をつくと、彼らの元へと近づく。

「おい。仕事だ変態ウサギ。それとシュガー。」

 

「テゾーロっ!!」

「「「わーー!先生だ!!先生ぃー!!!」

「ゲッ!!!テゾーロさんっ!?」

上からシュガー、幼女達。ピットの順である。

シュガーはおままごとに興じる自分を見られた恥ずかしさ。

幼女達は島の英雄、そして自分たちに学を教えてくれる先生に会えたことに対しての嬉しさ。

ピットはただひたすら鬼を見るように恐ろしさを。

三者三様の感情を抱き彼の名を呼んだ。

 

「先生!先生もわたしたちと一緒に遊ぼー!」

「遊ぼー!」

彼女達はテゾーロに駆け寄ると彼の手を掴みピクニックシートの中に誘導する。

「悪りぃな。お前達。俺とシュガーとピットはこれから仕事で少し出てくる。心配ない。プルートがいる。少しの間この島で留守番を頼むぞ。」

彼はそういう時彼女達の頭を順に撫でていく。

 

「そうゆうわけだ。シュガー、ピット今すぐ出航の準備をして3時間後に港に集合だ。」

「テゾーロさん。出航する分には構わない。ただ何処にいくんですか?」

この一年でそれなりに礼儀を学びぎこちなくとも敬語を少し使えるようになったピットがテゾーロに問う(もっとも、戦闘中は言葉が荒くなり一人称も俺になるような若干多重人格っぽいが)

「水の都。ウォーターセブンだ。」

「うーん。僕は聞き覚えないかな。まあ仕事というならすぐに行きますが。」

「シュガーも、悪いな。楽しんでる最中に。」

「べ、別に楽しんでるわけじゃないわ!!女王として!そう。女王としての仕事よ!」

シュガーが赤面しながら声を上げるとその言葉を聞いた幼女達は目に見えて落ち込む。

それを見たシュガーはすかさず「ていうのは建前よ。楽しかったわよ。貴方達。また私と遊んでね。」

というと彼女もまたテゾーロ同様に彼女達の頭を順に撫で彼女達の元から離れテゾーロ邸に戻るべく帰路に着く。

 

「何よ。テゾーロ。」

ギラリと効果音が付きそうな程こちらを見て先程からずっと微笑むテゾーロを睨みつける。

「いや、お前も大人になったんだなって思ってな。」

彼はそう言ってシュガーの頭も優しく撫でる。

「・・・。あっそ。」

言葉とは裏腹にシュガーの顔はほのかに赤くなりその顔はどこか優しい笑みを浮かべていた。

 

その様子を後ろからついて行くように見ていたピットは思った。

(あれ?僕も居るんだけだ。あ、これが放置プレイという奴か!!)

ピットは本日も平常運転であった。

 

 

「さて、お前らに集まってもらったのはこれから遠海、まあ目指す場所はウォーターセブンだがそこに行こうとおもう」

現在彼らは島の港に停泊する金色の帆船の甲板にいた。

帆船自体の大きさはそこまで大きくなく10人ほどが長期航海したとしてもそこまでストレスを感じないような大きさである。

もとは海賊船で、この島に押し寄せてきた奴から頂いたものと、聖地襲撃の際強奪して逃げた海軍の軍艦を一度分解し、海楼石を積み、船内は男子部屋、女子部屋、キッチンにダイニング、航海士部屋、船医室、宝物室、あと船長室が造られ船首には金色の狼をモチーフになれた見事な彫刻が前方を睨みつけ雄たけびをあげるが如く口を大きく開き威嚇している。

もちろんこれはテゾーロが用意したものであるが。

もちろん彫像自体はいつでも金に戻すことが出来、彼自身、今乗っている船に思い入れも全くと言っていいほどない。

ただ、人数的にこの船が丁度良いと判断し、加えて海賊が襲いたがるように船を金で覆っただけである。

船はウォーターセブンで作ってもらおうと考えている故に、この船はあくまでそれまでの繋ぎの船というわけである。

「テゾーロ、それはいいけれど航海士とかは?このメンツでそのような・・・」

モネは今甲板にいるメンバーを見渡す。

シュガー、横にピット、テゾーロとポチ、そして小型化した巨人族バルディッシュである。

だれも航海術をもっている者などいなさそうである。

「テゾーロ?」

モネの心配を察したのか姉妹のシュガーもメンツを見渡し、最後にテゾーロに目を止め問う。

「・・・・。」

答えは無い。ここにいるメンバー、そしてポチさえ思ったであろう。

゛あ、この人何も考えてない゛と

「・・・。」

尚もテゾーロからの答えは無い。

カシュッ。ボッ!

テゾーロはおもむろにポケットの中から海賊から奪ったライターと煙草を取り出し口に咥え、火をつけた。

「ふーーっ」

テゾーロが煙を吐くと臭いがだめなのかいつも横から離れないポチは若干距離をとるべく離れた。

「わりぃ。忘れてたわ。まあどうにかなるだろ」

テゾーロは片手をあげ謝りの意味を込め軽く悪い悪いと手を挙げた。

 

「まあ、仕方ないの。俺も今回の船旅は生活物資等もそろえるためと思っているし、元々奴隷の俺たちに航海術を持つ者などおるまいよ。テゾーロ、俺にも煙草くれるか?」

バルディッシュはテゾーロのそばに歩み寄り煙草を一本もらい受けテゾーロに倣い火をつける。

「まあそれもそうね。まあ後悔が無理そうならまた戻ってくればいいわよ。ここはもう私たちの故郷なんだから」

モネはバルディッシュの言葉に賛成し、そして彼女は右の手の甲を皆に見せる。そこには依然、天竜人の奴隷の印が刻まれていたが今は金で着色された星のマークが刻まれている。

モネの手の甲をみてテゾーロも己の衣服の中のマークを思い浮かべる。背中にはいまや巨大な星のマークが刻まれている。

それはシュガーの腰にもピットの足にも、バルディッシュの右肩にも同様に、以前は天竜人の奴隷を記す烙印は無い。あるのは人体には不可思議なほど金色に輝く星のタトゥー。もちろんテゾーロの能力であるが、島民は全員が体のどこかに金色の星が刻まれている。

「あぁ。でも島民のためには食料と服だけでも買ってやらねえとな。俺たちだけじゃ悪ぃしな」

テゾーロの声に皆が頷く。

「なにはともあれ、出航だ!帆を張れ!!俺たちの初めての船出だ!」

「「「応ッ!!!」」」

テゾーロの号令でみなが船を動かすべく駆け出す。

しばらくもせずに、船はゆっくりと風を掴み港からその金色の船体は離れていく。

「おまえら!!!!行ってくる!!!」

テゾーロは港でわざわざ見送りにきていた数十名の島民に手を振りながら、これから向かう場所へ思いを馳せた。

 

「じゃあ、狼の上は僕がもーーらいっ!」

やがて船が完全にスピードを上げ沖へと向かう頃ピットが船首の狼の彫刻の上へと昇った。

「へっ!?うぼっ!!」

しかしピットが船首に上った瞬間シュガーが飛び蹴りをくらわしピッドは甲板に吹っ飛んだ。

「ここは!女王様の特等席に決まってるでしょ!!この駄ウサギ!!百回死んできなさい!」

そしてシュガーは黄金の狼の頭の上に仁王立ちし、海を眺めた。

そこにはとてつもない夢が、未来がこの先待っていると予感させるほどの美しい眺めだった。

 




次回の更新は明日の0時過ぎに更新します!
ですので、明日は0時と18時に更新しますのでよろしくおねがいします。30年9月8日作者より


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第16話 プルートの苦労

今回はテゾーロ達一行は出ませんので悪しからず。
少し島の説明も兼ねます。
来週からテゾーロ一行は活動するよ!


「よぉ、ヒナ。これ、テゾーロさんからだとよ」

「あ、プルートさん。先生からですか?」

ヒナはプルートからテゾーロの直筆でヒナへと書かれた手紙を受け取る。

 

ヒナ

苗字はない。現在21歳

15歳の時、両親に口減らしとして奴隷に売られ、その後天竜人に飼われ、性奴隷として3年間、天竜人に陵辱された過去を持つ。

ピンクのストレートロングヘアでキリッとした美人系タイプの女性である。

21歳ではあるが、実際3年間はおもちゃであったため見た目は18歳前後のままであるが、正直18歳も21歳もそこまで見た目に違いはないのだが、あくまで実年齢は21歳である。

彼女の他、奴隷解放時、もしくは奴隷になった頃は子供であり教育を満足に受けることの出来なかった者達は殆どが、テゾーロ達が作った学校で勉強に励む。

故に彼らはテゾーロのことを先生と呼ぶことが多い。

そして、現在彼女は島の学校の中で最年長である。

「それとな。手紙と、この箱もお前さんにやるってさ」

プルートは手紙のほかに預かった木箱をヒナの前に出した。

「ありがとう!プルートさん!ヒナ感激!」

ヒナは木箱を受け取り、まずはテゾーロからの手紙を読むべく封を開けた。

「・・・??これって?」

「あぁ、そうだ。お前をご指名でテゾーロさんからの任務だと俺は聞いている」

ヒナは再度、手紙を読み返す。

 

『ヒナへ。お前にひとつプレゼントをあげよう。

それは悪魔の実、超人系オリオリの実だ。木箱に入っているからちゃんと食べておくように。尚、見た目が檻っぽいからオリオリの実と呼んでるが、恐らく相違無いはずだ。

俺らが帰って来るのは恐らく数ヶ月先だと思うが、この能力を使いこなしていることを期待する。

そして、来年ぐらいになればお前に海兵として将校学校に通って通ってもらいたい。

もちろんお前の返事次第ではあるが、俺は必ずヒナはやり遂げれると信じている』

ヒナは手紙を読み終えるとプルートから渡された木箱に目を移す。

ヒナがその木箱を大切そうに抱きしめ、己の境地を思い起こす。

この3年と少しの間は間違いなく幸せであった。

おもちゃとなり、島民たちと一緒に島を開拓。

その後学校に入学しテゾーロを始め他の大人達から教育を受け、加えて覇気という力を学び己の身を守れる程には強くなったと自負できる程だ。

しかし、今回の航海では声がかかることもなかったことに対してはショックを受けているが、それでも、こうしてテゾーロから手紙とプレゼントを貰うことだ出来た。

加えて自分だけの。ヒナはシュガーとモネのことを思い起こす。

いつも、テゾーロの側に居てテゾーロと寝食を共にし、あまつさえ、ミンク族の変態ウサギもペットであり、そしてポチまで居る。

なぜ。そこに自分が居ないのか。

と自問自答したことは数え切れない。

しかし、ようやく出し抜ける。あの女狐どもを。そう思うと自然に彼女の顔が妖艶さを醸し出したニヒルな表情へと変わる。

 

現在この島では覇気の習得レベルを6段階に分けられている。

ちなみにテゾーロを武装色の覇気はレベル5、見聞色はレベル3である。

モネはどちらもレベル3で、シュガーは武装色がレベル4、見聞色はレベル1であり、ピットもそれと同様である。

ヒナについては現在はどちらもレベル2と位置づけられており、その、判断基準は全てテゾーロが決めている。

テゾーロが独自に考えた力の尺度ではあるが、

覇気未習得の者はレベル0

若干使える程度はレベル1

無能力者を圧倒出来るぐらいであればレベル2

己の覇気を体の一部に移動及び凝縮出来ればレベル3

レベル4以降はその力の強さにより変動するが、新世界でも間違いなく通用するのはレベル4以降。それでもレベル3であればある程度の事が対応出来るであろうというのが、テゾーロの言葉である。

そして現在この島民で主に戦闘行為から遠ざかりたいと考えた者たちは村の開拓作業などを主に行い、力を付けたいと考えている者はこうして学校や、テゾーロから覇気を学ぶ。

もっともテゾーロ自身、神様の恩恵で覇気を使えるだけであり、その教え方はひたすら覇気を込めた力で殴るという暴力にも値する程の雑な教え方ではあるが、結果島民の2割はおおよそ覇気を使える事が出来る。

もっとも、ほとんどがレベル1ではあるが、それでも覇気を使う事が出来るというステータスは間違いなく強いであろう。

もっとも、住民の2割は覇気を使えるまでテゾーロがボコボコに殴るという蛮行にも似た修行が出来たのはひとえにおもちゃだったからというのがとてつもなくデカイ要因と言えよう。

そしてヒナは目の前にいる足長族のプルートに目を向ける。

彼もまた覇気を習得しており、武装色はレベル1見聞色はレベル2である。

ヒナはどちらもレベル2であるから、その才能たるや、ここの島民は誰もが疑わない。しかしモネとシュガー、そしてピット、シュガーとピットは偏りがあれど、それでも武装色はレベル4と現在のヒナでは逆立ちしても勝てない。

モネは両方とも彼女の一歩上を行っている。恐らく天才と言われる部類であろう。

では自分は何か。今のところただの器用貧乏ではないだろうか。

更にモネは今回の航海で確実に、能力も、そして考え方も成長していかであろう事は想像に難くない。

ヒナもここに残り、テゾーロからもらった悪魔の実の能力の訓練で強くはなるだろうがこのままでは一向にあの女狐姉妹との力の差も、テゾーロの力になるであろうポジションも自分が上回ることはないと断言出来た。

故に彼女は決心した。

「ヒナ、これから海軍支部行ってくる!!!!」

「・・・ん?すまん。今なんて?」

プルートは思わず聞き返すもヒナからその後返事は無く彼女は木箱を掲げ飛ぶようにその場から駆け出した。

「はあ〜。全くテゾーロさんは、島民に愛されてることで」

プルートはその場でため息をつきもはや点となり視界から消えつつあるヒナを見て思った。

きっと何を言っても彼女はもう止まらないだろうなと。

 

「よし!!行こう!!ヒナは行きます!皆さん!お元気で!!!」

現在ヒナは島の港に停泊している小型の漁船にありったけの食料を積み、武器庫から取ってきたムチと、長めのライフル銃、そして刀と呼ばれる刀剣を持ち出し、小脇には大切そうに未だに口をつけていないテゾーロからもらった木箱を抱えて、島民達に手を振る。

島民達も現在は仕事中であり、あまり手を止め彼女を見送るようなことも出来ないが、それでもいつもの平和な島の光景の延長線上であると判断し、ヒナに気づいた者たちは彼女を笑顔で送り出そうと手を振って応える。

「おぉーーーーい!!ヒナ!!どこに行くか知らんがせめて記録指針だけでも持っていけー!!!!!!」

ヒナをやっと見つけたのか、それともすぐに来るであろうと港で待ち伏せしていたのか、その光景を見ていたプルートはヒナが乗る漁船に向かって記録指針を投げる。

記録指針は大きな弧を描き、上手い具合にヒナの胸元あたりを目掛け飛来しそれを彼女は掴んだ。

「ありがとう!プルートさん!ヒナ感激!では行ってきます!先生にもよろしく伝えて下さい!ヒナは強くなって帰ってくると!」

ヒナはプルートに伝えると、小舟をオールで漕ぎ出航すべく沖を目指す。

原作では優等生タイプであったヒナは、こちらの世界ではテゾーロ。そして彼女が女狐姉妹と呼ぶモネやシュガー。そして身につけた覇気という力の結果、無鉄砲少女へと変化していた。

「いくわよ!!!目指すは海軍本部!!そこに行けばなんとかなるでしょ!!!」

彼女は海軍本部がどこにありどうやって行けるのか全く理解していなかったが、それでも本部に行けばどうにかなるであろうというあまりにも無計画で出航していった。

その日の空は彼女の船出を祝うように晴天であり、蒼く輝いていた。

 

「プルートさんこんにちわ!」

「あぁ、こんにちわ、ロンさん。」

「プルートさんどーも!」

「ダイさん。元気にしてたか?」

港でヒナを見送ったプルートは島民たちと世間話に興じていた。

「ところでヒナちゃんはどこに行ったんだ?」

ロンと呼ばれた今では漁師をしている男はプルートに問う。

「ん??さあ??俺にも分からん」

プルートはその問いに苦笑いしながら答えた。

「まあ、テゾーロさんからの任務だとは思うが、ヒナを今すぐ外に出すとは俺も聞いてないし、恐らくヒナの突発的な行動じゃないか?」

「まあ、ヒナちゃんも、モネちゃんもシュガー姫さんもここの女達はみんなお転婆で男よりも強ェからな!」

「違いねぇや!!」

ガハハハと三人で歓談していたところ、ロンの奥さんとダイの奥さんらしき女性が、般若のような顔でこちらに歩み寄り、「サボってんじゃないよ!バカ亭主!」と声を荒げ、旦那達の耳を引っ張り、自らの船へと連れて行く。

まさに男よりも強いカカア天下が目の前で繰り広げられていた。

「さてと、俺も仕事に戻りますか」

プルートはそう言って自らの職場、今は学校へと足を向けた。

 

 

 

「プルート先生おかえりなさいっ!」

「おかえりなさーい!!」

プルートが学校に戻ると子供達がプルートに向かって駆け寄る。

現在この学校に通う者達はおおよそ5歳から上はヒナの21歳。

そして教鞭を振るうのは主にテゾーロとプルートである。時々モネとシュガーも手伝いはするが、

主には2人でありそして、テゾーロ達が居ない今、当分の間はプルートが1人で切り盛りする必要がある。

そして、彼は心の中で盛大なため息をつき早く帰ってきてと願いながらも、表情は満面の笑顔で子供達に応える。

「ただいま。みんな。それではこれから覇気の修練を始めるぞ」

「はーーーい!!」

今日もこの島は平和である。島民は意外なことにテゾーロという精神的な支柱が居なくても彼ら島民はいつもと変わらぬ日常を過ごす。

もちろん彼らの心の中にはテゾーロが絶対自分達を守ってくれるという思いがある故にという第一前提があるからなのは皆の周知の事ではあるが。

 

しかし、そんな平和の島に着実に嵐を呼ぶ男が近付いているのは、まだ島民も、そしてテゾーロ達も気がついてはいなかった。




ヒナちゃん登場ですよー!!!!ヒナちゃんこれから海軍で頑張る!
何をどうすればいいか、全くわかってないまま飛び出してしまったヒナちゃん。
今後どうなるのか、乞うご期待!←
島に近づく嵐を呼ぶ男のことについては今は何も考えないで下さい笑
へー、そうなんだーって思って頂ければ結構です笑


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第17話 伝説の船大工トム

「ん?すまん。もう一度言ってくれ」

「だから!!ヒナがもう1人で言っちまったんだよ!テゾーロさん!」

「はぁ、あのバカっ!」

現在テゾーロ達はグラン・テゾーロを出港し10日目、ウォーターセブンを目指し海上を航海している。

「んで、ヒナはどこへ?」

「分からない。テゾーロさんはヒナになんて司令を出したんだ?俺が、あんたからもらった手紙には悪魔の実と手紙を渡してヒナに依頼があるからそのことを伝えてくれとしか書かれてなかったが」

マストの柱の中に置かれた伝々虫が、困惑した表情で話す。

「あぁ、ヒナに海軍で海兵になれと依頼した。まあ、その前に島で悪魔の実の能力を使い訓練を行い、俺が帰ってから彼女に意見を聞くはずだったんだ。それなのに、あのバカは、猪みたいなやつだな」

「海軍??なんで海兵なんだ?それに元奴隷のヒナが海兵なんて危なくねぇか?」

「いや、だからこそ海兵として政府側の動きを把握しておきたかった。それにヒナは腕っ節も立つしな、今んとこ候補が彼女しかいなかったんだ。まあ、勝手に1人で先走ったことについては正直腹も立つがな」

「でもよぉ、テゾーロさん。ヒナもテゾーロさん達の航海に連れて行ってほしかったんじゃねぇかな。だから、テゾーロさんの直々の依頼ならって先走っちまったんじゃねぇかと俺は思う。あんまり叱ってやらねぇでくれ」

「まあ、そうだな。過ぎちまったことは仕方ないか。悪いなプルート。悪いけど俺たちはしばらく帰れそうにねぇかも知れないから、そっちは頼んだわ。またなんかあったら連絡してくれ」

「わかった」

ガチャ。

テゾーロは伝々虫を切りその場で盛大なため息をつきヒナの顔を思い出す。

原作では2年後の世界で少将にまで上り詰めた黒檻のヒナ。

彼女が奴隷であった時は彼自身驚いた。

奴隷の時の扱いについても聞いた。だからなるべく優しく接するようにはしていたが。

「はあーーー。」

そして、彼はもう一度ため息を吐いた。

「ヒナの奴、また1人で先走ったんですって。相変わらずね、あの猪女」

「ふふ。まあテゾーロの言う通り過ぎてしまったことですもの。尤も、彼女がスパイとして海兵を演じきれるかは甚だ疑問ですけどテゾーロが決めたなら大丈夫でしょ」

シュガー、モネの順である。

「まあ、そんな気を落とすなよ大将。それにヒナもテゾーロ、あんたの力になりたかったんだろうよ。」

バルディッシュはテゾーロの肩をバシバシと叩き彼を励ました。

「あぁ、分かってる。今更だしな。でもあいつ分かってんのか?今から海兵なるとしたら恐らく数年は俺たちに会えねぇぞ?」

 

「・・・。」

一同から返答はない。恐らく考えてることは皆同じであろう。

『あいつは絶対何も考えてない!!』と

故にシュガーからは影で猪と呼ばれているのだ。

そして、テゾーロ自身、今は言いたい。『この猪野郎!!』と。

 

「テゾーロさん!島です!島ですよ!」

ピットは最初からヒナについて興味はないのか、船の欄干に腰掛け釣りをしていたところ目で確認出来る最小レベルの島を見つけ指をさした。

「モネ。ウォーターセブンの永久指針はどうなってる?」

「間違い無いと思うわ。恐らくあの島を指してる。あれがウォーターセブンよ」

「そうか。やっとだな」

「ええ」

テゾーロはこれまでの10日の航海を思い出す。

航海士が居ないため永久指針が目指す方をただ真っ直ぐ進んで来たが、この数日で何度嵐に直撃したことか。

しかも皆、初めての長期間、長距離の航海。嵐で時化った海の波に船体が当たる度に大きく揺れ、その度に体までも方向感覚も狂わせる。

何度吐いたことか。

テゾーロと、ピットとシュガー三人はほとんどダウンして居たが、不思議とモネは平気だった。

尤も彼女がやっと着いたことに同意したのはこれで当分看病しなくて良いという意味からの安堵である。

「なるべく早く船医と航海士を見つけましょう」

それがモネの口癖である。

「なにはともあれ到着だ!お前ら!頼むから穏便にいけよ!特にシュガー!それとピット!」

「なによ!」

「え!?俺?!」

「あぁ、別に船から降りるなとは言わねえが喧嘩沙汰起こして海軍が来てみろ!その時にはお前らグラン・テゾーロまで泳いでもらうからな!俺たちには島民の生活が掛かってるんだ」

「分かったわ。気をつければいいんでしょ」

「分かりましたー!キャプテン!」

シュガーは面白く無さそうに顔をフイッと背け、ピットは敬礼を持って応えるが、本当に大丈夫か?と一抹の不安を感じるテゾーロであった。

 

「おーーー!これはまたとんでもねえ船がウォーターセブンに来たもんだ」

「どれどれ。これはっ!どんだけ金持ち船だよ!全体に金が施してあるぜ!」

「成金やろうか?、悪趣味な奴だぜ」

現在テゾーロら一行はウォーターセブンの港にて停泊して、好奇の目に晒されている。

別に海賊旗も、掲げてないしむしろ海賊だなんて名乗ってもないのだ。堂々と皆に入港出来た。

 

「お、どうやら船の人間たちが降りてくるようだぜ。どんな顔か拝ませてくれや!」

港にいた住民の誰かがそう言うと、甲板から港へ向け金の階段が伸びその階段を降りる人物が4人と2匹。

恐らく先頭を歩く男が船長か、その両脇に美人な女が1人とその妹だろうか10歳ほどの同じように未来は美人になるであろう少女が並び後ろには白ウサギの二足歩行の動物と白い狼。そして後ろに体は大きめだが、他に特徴となるものはない男の4人と2匹で構成されたメンバーが降りて来た。

 

「俺の名はギルド・テゾーロ。市長を呼んでほしい。黄金はいくらでもある。取引がしたい」

彼の言葉にウォーターセブンの住民たちが騒ぎ出す。

たしかに船の黄金を見るからにとんでもない金を持つ者だと予測出来る。しかし、誰だ?テゾーロ?こんな人物など天竜人にも世界貴族でも聞いたことがない。

海賊としても商人としても有名でない人物。

それが黄金の船に乗りこの街にやってきて、市長を呼び出した。

誰かが市長を呼びに走ったのか、その後5分ほどざわめきが起こるまま、誰もテゾーロに話しかけず、彼の正体を探ろうと見ていると1人の男がテゾーロの元へ近づいていく。

灰色の三点揃えのスーツを着こなし、綺麗に整えられたオールバックの中年男性。

身体は大きく、筋肉が全身に付いているのが分かるような体型であり、市長というよりは船大工や、海賊が似合うような男がテゾーロの元に歩み寄る。

「やあ、私を呼んでるのは君だね。私はジェル。この街の市長をやらしてもらってる。ビジネスの話だと聞いているが」

ジェルと名乗った男はテゾーロの目の前まで歩み寄ると右手を差し出して握手を求めた。

「はじめまして。ジェル市長。俺はギルド・テゾーロ。ゴルゴルの実の能力で、一応ここから船で10日程行った島の代表で来た。

能力で金を自在に生み出せる。もちろん無制限ではないが、この通り」

そしてテゾーロは左手を上に向け、そこから金の指輪の能力を使いあたかも金を生み出すかのように変化させた。

それは黄金の延べ棒であり神々しく輝きを放っていた。

そして、ジェルと同様右手で、彼と握手をし、ジェルの左手に黄金を渡す。

「確認してくれても構わない。能力を使ったと言えども完全なる金だ。削ったり、舐めたりして自由に確かめてくれ」

テゾーロはそう言ってジェルに微笑む。

「これはこれは。素晴らしい能力を持っているようで。それではお言葉に甘えて確認しよう。

どうかな?これから私の部屋で商談でも」

ジェルもその黄金を見つめ、その金の出来栄えに心を奪われたのか未だに目を離さずにテゾーロに語りかけた。

「分かった。それなら頼む」

そうして彼らテゾーロ一行はウォーターセブンのジェル市長とともに港を後にした。

 

「では、話を聞かせてくれないか。そのビジネスの話とは?」

現在市長室にテゾーロとジェルは向かい合いふかふかのソファーに腰をかけている。

「何、簡単なことさ。トムさんに船を作って欲しい。2船程。」

テゾーロの発言にジェルの眉がピクリと動く。

「トム?トムというとトムズワーカーの?それなら私ではなくトムをあの時呼び出せばよかっただろう?なぜ私を呼んだんだ?」

「その作って欲しいっていう船が一つは普通に俺たちが航海する船。もう一つは、全長10キロほどの船を作って欲しい」

「じゅ、10キロッ!?!」

ジェルがそこで初めて驚きの表情をテゾーロに見せた。

「し、しかし10キロなんてどれ程の金が、、!!」

「あぁ、金なら俺がいくらでも作れる。それに、10キロの船を一からというわけでもない。俺たちが今住んでいる島を船に改造して欲しいだけだ。

だが、10キロともなればトムさんだけでは人手が全く足りないだろう?ましてや海列車がまだ全部完成してない今このウォーターセブンも金が必要な筈だ。悪い話ではないと思うが」

テゾーロはそこでニヤリと笑い、今や癖となっているタバコに火をつける。

「とりあえず、前金として3億ベリー持ってきた。もちろん建設に金が必要になるならその都度出そう。

おおよそ、総額でいくら程になる?」

「おいおいおい。待ってくれ、テゾーロさんと言ったか?急にそんな話を出されても俺も即決とは行くまいよ。とりあえずトムを呼んでくるからもう少し待っててくれないか?」

「あぁ、構わない。ゆっくり呼んできてくれ。俺たちは別に消えたりもしねぇからよ」

テゾーロは両手を広げおちゃらける表情をするとジェルは「今更消えられるのは正直困るな」と愛想笑いを浮かべ部屋を出て行った。

 

「テゾーロ、どうして金が作れるなんて嘘ついたの?」

今やテゾーロ一行のみとなった室内でシュガーは尋ねる。

他にもピットやバルディッシュも同じ表情をしているが、モネは終始微笑んいるだけでありその表情に動揺は窺えない。

彼らは皆テゾーロの本当の能力を知っている。

金を圧縮、膨張は出来るが、生産することは出来ない。

金を膨張させてもその質量は変わらないのだ。

現在指輪に圧縮しているが、質量は本来の金と変わらない。故に、その指輪は本当はとてつもなく重たいのだ。

もっとも、それを修行だと笑いながらこなすことを可能にしているのがワンピースという世界の特徴とも言えるが。

「あぁ、なに。そうしないと奴らも重い腰を上げないと思ったからだ。もっとも、そんな大金を俺たちだってそうやすやすと用意出来るわけがねぇしな、この話が成ればこれから黄金を取りにいく。」

「でもよ、テゾーロ。黄金を取りに行くってどこにだ?目処はついてんのか?」

バルディッシュも思わずテゾーロの行動に疑問符が浮かぶ。

「あぁ、付いている。ここからそこまで遠くない所にジャヤという島がある。そこから空島に行くんだよ。ん?空島を知らねぇ?そのままだ。空に向かうぞ」

「はあー?!?!テゾーロさん?!」

ピットも思わず驚きの声を上げる。シュガーもバルディッシュまである。モネは変わらず微笑んでいるだけであるが。

「空に島なんてあるわけないじゃない」

シュガーがそう言うがテゾーロはそれに首を振った。

「いや、ある。そしてそこに黄金の都市がある。そこの黄金を全て頂く。おっと、ここまでのようだ。どうやら来たようだぜ」

テゾーロが話を止め、ジェルが出て行った扉に目を向けると扉が開きジェルと、その後ろに大きな体をした魚人が現れた。

「ガッハッハ!聞いておるぞ!なにやら成金のお坊っちゃんがとんでもない話を持ってきたと。それにワシを名指しとはどこかで会ったことあったか?」

大きな体した魚人が、大きな声でテゾーロに語りかけた。

「いや、初めてだよ。トムさん。俺はテゾーロ。よろしく」

「あぁ、ドンとよろしくじゃ!それに、さんとかいらんわ!トムでええわい!

ところで早速で悪いんじゃが、船の話をワシにも聞かせてくれ」

トムはテゾーロと握手をして近くのソファーに座りテゾーロに話しかける。

「ん?あぁ。それならまず聞くが、10キロほどの島を船にするにはいくらぐらいかかる?それと期間も。」

「そうだな。俺の考えでは、それほどの大きさの島を改造するにはこのウォーターセブンの職人を総出とまではいかんがかなりの人数を派遣することになる。期間となるともはやどれだけ金を出せるかにもよるし、費用もその島をどれだけ船の機能をつけるかで変わるからなんとも算出し難い部分はある」

ジェルは机をトントンと人差し指で叩きながら首をひねる。

「あぁ。船自体は何か海獣にでも引かせればと考えてる。ビックタートルとかを見つけようとでもな。

だから最低でも島を海に浮かせれる状態にしてもらいたいのが最低条件だ」

「うーむ。それなら恐らく職人が100人居れば一年で済むじゃろうな」

「あぁ。恐らく一年あれば足りるだろう。費用も恐らく30億ベリーぐらいか。」

トムの意見にジェルも同意とばかりに頷いた。

「まあ、30億ベリーも大金ではあるが、海列車を全線開通するにはもう少し必要だろう?」

そこでテゾーロはジェルとトムにニヤリと笑いかかる。

「そうじゃな。お前さんも見たか?ワシの作った海列車じゃ。今や、ウォーターセブンは寂しい街へと変わってしまったがの、これが全線開通すればこの街は必ず栄えるぞ。しかしその為には金がいるのも事実。それに正直な話期限が迫っとるでな、難しい問題じゃわ!ガハハハ!」

トムは頭を掻きながら大きく笑い声を上げた。

「そこでだ。島を出来るだけ船に近い形に改造してくれ。そして島にはカジノを建てたい。他にもホテルと、プール。ゴルフ場。目指すのは巨大な動くエンターテイメントシティ。予算は1000億ベリー。期間は3年。どうだ?」

「「「「「1000億!?!?!」」」」

商談中ずっと黙っていたシュガーもピットもバルディッシュもジェルやトム同様に驚きの声を上げた。

「いや、ちょっと待って、ちょっと待ってくれ!テゾーロ!君の能力を信じてないわけじゃない。だが本当に用意できるのかね?1000億ベリーなんて大金」

「そうじゃ!若いの!流石に1000億ベリー事業となるとワシも、それにこの街の連中も初めての事じゃ、揶揄うなら他所行ってくれんか?」

「いや、冗談ではない。始めに3億ベリーの前金を払う。そして三ヶ月後に500億ベリー。完成後に残りを払う。それで、出来ればその船以外にも一隻。トム、アンタに作ってもらいたい」

テゾーロの言葉にジェムは額から滝のような汗を流しながらも頭で算盤を弾く。

「もし、その話が本当なら一隻ぐらい構わんわい。ただ、何故ワシじゃ?海列車を、作ったからか?」

トムはテゾーロを見定めるように彼の瞳を見つめる。

そして、テゾーロを見た後はモネを。シュガーを、ピットを、バルディッシュを順に見る。

「理由か、まあ始めは海列車を作った船大工に興味があったのはあるが、今では、あんたなら自分が作った船はドンッと胸張れるほどの出来栄えで作ってくれる。なんかそう思ったからだ」

「ドンっと胸を張れるほどか」

トムはテゾーロの言葉をその場で復唱し、考える。

この男、どこか得体が知れない。しかしどこだろうか、どこかしら以前見たあの男となにか同じモノを。好感的なモノだが、なにか共通点を感じるものがある。

人を惹きつける何か。恐らくテゾーロの後ろにいる者たちは彼を慕っているのだろう。

「一つ聞いていいか?」

トムは真剣な表情をしてテゾーロを見る。

「あぁ、構わねぇよ。」

「お前さん、テゾーロと言うたな。姓は何という?」

「ギルド。ギルド・テゾーロだ」

「ふっ。分かったわ。テゾーロよ。ジェルさんこの話は受けよう。ただし期間は5年。そうじゃないとワシらも海列車の開発に納期がある。それと同時進行しようじゃねぇか!なあに!ワシにドンっと任せしやがれ!ガハハハ!」

トムの言葉にジェムもそろばんを弾き終えたのか「そうだな。テゾーロ。よろしく頼む。納期も5年でな。」と伝え再びテゾーロに握手を求めた。

「分かった。5年で構わない。よろしく頼む」

テゾーロもそれに答えるようにジェル、トムの順に握手を交わした。

 

(しかし、ギルド・テゾーロのぅ。もしかしたら、奴と同じようにDの意思を継ぐ者かのぅ。)

トムはテゾーロの顔を見ながらふと思考に過ぎったがそれをすぐさま振り払い、これから作ることが出来る10キロという船の構造に思いを寄せる。

「あ、それとなテゾーロ。もう一つの船ってのはお前さん方が乗って航海するような船でええんじゃな?」

「あぁ。頼む。恐らく10人ぐらいで乗れたら良い。それと海楼石を船に積んできた。それを船底にびっしり敷き詰めて凪の海(カームベルト)も航海出来るようにしたい。もちろん船にある積荷も船自体も好きに解体してくれ。それでどのくらいで出来そうだ?」

そこでトムはニヤリと笑った。

「舐めるな、ドンっとワシに任せておけ。7日間で作ってやるわい」

そういうと、再びガハハハ!!と笑いながら「7日後にもう一度この部屋に集まろう」と約束し、トムは部屋を去って行った。

その後テゾーロもジェムに仕切りにこれからよろしく頼むと頭を下げられ、彼らテゾーロ一行はこれから一週間、ウォーターセブンを滞在することが決定した。

 

「じゃあ、まずは水水肉食いにいくか!」

テゾーロが、まずここにきたら食べたいと思っていた食品の名前を出し、シュガーとピットの目が輝く。

こうして、彼、テゾーロ。現在29歳。原作開始まであと10年。

彼が思い描いていたグラン・テゾーロ計画の第一歩がやっと進み出したのである。




第2章完結です!!!
次回から第3章になります。


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登場人物紹介

ネタバレ軽く注意
まあ、そこまで気にしなくても良いとは思いますが、


ギルド・テゾーロ

年齢29歳

元奴隷でゴルゴルの実の能力者。

武装色レベル5見聞色レベル3(テゾーロ基準ではあるが)

加えて六式を使いこなし、覇王色の覇気も使える為、戦闘能力は未知数。

性格は短気で乱暴なところがあり思い立ったらすぐ行動を起こす為度々モネを困らせている。

好きな物はタバコと黄金と女体

 

モネ

年齢18歳

元奴隷でユキユキの実の能力者。

武装色、見聞色ともにレベル3

才色兼備の美貌を持ち加えて知識もスポンジのように吸収するため現在はテゾーロの秘書的なポジションにいる。

島民達には影で彼女を怒らせると怖いと噂されている。

性格は基本穏やかで冷静。時折無鉄砲のテゾーロを戒める役をこなす。シュガーとは双子である。

趣味は読書とテゾーロを観察すること、ポチの世話、シュガーに抱きつく

好きな物は算数、シュガー

 

シュガー

年齢18歳(能力により見た目は10歳)

元奴隷でホビホビの実能力者。

武装色のレベルは4、見聞色は1という武に一辺倒な猪突猛進タイプ。

見た目が10歳のままの為、外見を弄られるとすぐさま沸点に達し、ブチギレる。

加えて3年間、仮初めとは言えど女王として君臨していた為性格は、乱暴であり、独裁(わがまま)とも言える。

性格はモネと正反対であり、テゾーロに似ているのか短気。そして極度のツンデレであり毒舌。思ったことは口にしてしまうタイプ故に隠し事は出来ない。

趣味は恋バナと子供達とやるおままごとで女王を演じること?

好きな物は甘いもの、可愛いもの、モネ、そして金

テゾーロが作ってくれた黄金の小さな冠というのか、ティアラを心底大事にしており、常に頭の上に乗せている。その冠を定期的に磨くのも趣味の一つでもある。モネと双子である。

 

ピット

ミンク族の白ウサギ。

年齢13歳

武装色レベル4、見聞色レベル1とシュガー同様である。

本来力の強くない種族ではあるが武装色によりウサギにしてはとてつもない戦闘力を持つ。

愛玩ペットとして天竜人に飼われていた元奴隷

性格はテゾーロに敬語を使うよう現在は強制されているが、本心では彼に対して悪態をついているほど性格が悪い。

生来、気弱な性格を持つ白ウサギの種族の為か、戦闘では己を鼓舞する為言葉が特に荒くなる。

テゾーロのことを嫌いだと本人は思っているが、何故かテゾーロを真似してしまう節が至る所に見受けられ、先日テゾーロを真似てタバコを吸ったところ嘔吐してしまった。

性癖はドMを最近極めつつある。

趣味はシュガーをおちょくる事

好きなの物はシュガー。

怖いものはテゾーロ。

 

ポチ

もともと、『おもちゃと黄金の国グラン・テゾーロ』の原住種族であり、島の食物連鎖のトップにたつ灰色狼の首領

毛並みは何故か白く、本来の大きさは尚も成長中であり通常サイズでは体長10m体高5m程ある。しかし最近ではバルディッシュの能力により小さくされている。

覇王色の覇気の習得をしておりシュガーとポチを現段階では圧倒出来る程の戦闘力を持つ。現在はテゾーロにペットその1として飼われている。その2はピットである←

趣味はテゾーロと散歩すること。

好きな物は・・ご主人!ご主人!ご主人!!!!後モネ。というのがポチの内心である。

ポチからすればテゾーロ 》モネ》》シュガー》》》》超えられない壁》》その他の島民》》》餌(ピット)である。

 

バルディッシュ

巨人族の元奴隷でありシュクシュクの実を食べた縮小人間

有機物。無機物問わず物の大きさを小さくすることができ現在は50分の1まで縮小出来る。

覇気については未習得でありどちらもレベル0

本人談では今後は島の食料や、船、黄金などの物資管理を主な仕事をしたいと考えあまり覇気の習得について熱を入れてない。

加えて能力で常に自分の身長を人間サイズまで小さくしている

性格は、優しく、穏やかで几帳面

趣味は数を数えること。それを記録すること

好きな物は特になし

 

プルート

足長族の元奴隷でありネコネコの実モデル猫を食べた猫人間。

性格は優しく面倒見が、よく加えて奴隷になる前に若干ではあるが教育を受けていた為、現在ではテゾーロとともに学校で教鞭を振るっている。

趣味は子供達と遊ぶこと

好きなものは運動

最近の悩みは結婚相手が見つからないということ。

 

ヒナ

年齢21歳

テゾーロからオリオリの実をもらった為未来の檻を扱う能力者予定

元々性奴隷として天竜人に飼われていた為男性不信なとこが、あったが、解放後に島の大人達、主にテゾーロによりその不信は若干ながら解消されている。

武装色見聞色ともにレベル2であり、本人談では器用貧乏である。

現在テゾーロの意見を無視して海軍本部目指し1人海を漂っている。

その際、ムチと長めのライフル。刀を武器庫から持ち出すのも器用貧乏の性格が出ていると言えよう。

性格は前述した通り器用貧乏に加え猪突猛進タイプ。

趣味は訓練。

好きな物はテゾーロと、テゾーロの影響でタバコを好む。

嫌いなものはモネとシュガー姉妹であり、一方的に彼女らをライバル視している。

 

おもちゃと黄金の国グラン・テゾーロ

現在はシュガーの能力解除によりおもちゃは居ないが、黄金は未だ健在しており、海賊間では有名になりつつある謎の島。

なにやら、乱暴狼藉を働こうとすればおもちゃ達が不思議な力を使い遅いかかり身ぐるみを全て剥がれると言われる島である。

島民の2割は習熟度の違いはあれど覇気を使うことが出来る。

全員が元奴隷であり、例外なく皆が身体のどこかに黄金の星のタトゥーを入れており、天竜人の奴隷のマークは見当たらない。

 

 

 

ボア・ハンコック

ボア・マリーゴールド

ボア・サンダーソニア

元奴隷でありテゾーロらとともに聖地から逃げ出した者たち。

全員が悪魔の実能力者であり、ハンコックに至っては現在七武海入りした九蛇海賊、別名海賊女帝と言われる程の美貌を持った人物である。

現在テゾーロ他、当時別れた元奴隷達の行方を捜している。

 

モンキー・D・ガープ

海軍中将であり海軍の英雄と呼ばれる男

テゾーロの行方を捜し、その行動の真意と今後の予定を聞こう・・・なんて考えているわけではなく、ただ単純にテゾーロという男を知りたいが為にグランドラインを泳ぎ、彼が作ったと言われる島を発見する。

 

センゴク

現在海軍元帥であり、テゾーロの正体を解明しようと目論んでいる。

ガープとは無二の親友であるが時折振り回されておりよく叫んでいる。

 




ピット(オリジナルキャラ)の挿絵はこちら。
知り合いから頂きました!
ありがとうございます。

【挿絵表示】


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幕間
幕間 色気より食い気


ストックに余裕がありましたので予定日より早いですが交換致します。
今後も余裕があれば公開致しますのでよろしくお願い致します。


「「水水肉うっまー!!!!!!」」

シュガーとピットが口を揃えて今食べた物の感想を叫ぶことこれで何度目か。

既に彼ら二人が食べた水水肉の数は一人10個を超えても未だに飽きず、その感想も変わらない。

『水水肉』このウォーターセブンで代表的な料理。

読んで字の如く見た目は肉だが水風船のように柔らかく水を豊富に含んでいるためにその名は『水水肉』

テゾーロ自身は騒いでいないが、その味は前世のどの料理にも属さないレベルで美味いモノであった。

「おばちゃん!!おかわり!おかわりちょうだい!!」

ピットが水水肉を売っている屋台の店主である年を召した妙齢な女性におかわりをせがむが店主は首を横に振る。

「もうアンタらに出した分で終わりだよ。すまないねぇ。」

店主の言葉にシュガーとピットが肩を落とす。

「もうないの?」

シュガーが目に見えて悲しい顔をして店主に問うた。

「しょうがないねぇ!こんな可愛い子に言われたら!!ならほんとに最後の一個だよ!」

そう言って店主はシュガーに水水肉を手渡す。

「いや、あるのかよ!!!!」

ピットがそれにすかさず突っ込むが、店主は苦笑いを浮かべた。

「これは本当はアタシ用だよ。賄いに残しておいたんだが、こんな可愛い子におねだりされちゃあ断れないじゃないか!」

店主は何処か胸を張るがピットはピットで恨めしそうにシュガーを見る。

「駄ウサギ。一口食べる?」

シュガーがピットの口に向けて手に持った水水肉を近づける。

「え?!意地汚いあのシュガーお姉様が!?!?え!?常に色気より食い気のあのシュガーお姉様が!?え!?本当に?!ありがとうございますッ!!」

ピットがすかさず口を開けその水水肉に食らいつこうとしたが、言いすぎたのか彼が肉を食べる前に顔にシュガーの鉄拳が飛ぶ。

「プギャッ!!」

拳が頬に当たり一瞬よろめくピット。

「やっぱりあげない。死ね。駄ウサギ。」

そう言うとシュガーは手に持った水水肉を口に運ぶ。

「おいひ〜!!」

シュガーがピットに見せびらかすように口をリスのように膨らませ、頬を両手で抑えとろけるように身体をクネクネしその美味しさを表現する。

「やっぱりくれないかよ!!ほらみろ!!!」

それについてピットがシュガーに噛み付くが、シュガーはそれを無視する。

「おばちゃん、本当にもうないの?」

ピットはシュガーに噛み付くのをやめ店主にウサギ特有の上目遣いでおねだりするが店主の言葉は変わらない。

「おばちゃん。お願い。」

シュガーも頬張った肉を嚥下し店主に更にないかとおねだりすると、店主が微笑み

「もう!しょうがないねぇ!はい!お嬢ちゃん!」

そして再び隠していた水水肉をシュガーに渡す。

「いや、あんのかよ!!!」

またピットが突っ込むが、彼女の意見は変わらない。

店主曰く、「本当は賄いように〜。お嬢ちゃんが可愛いから〜。」

という話であった。

その後もシュガーが、ピットに一口あげるそぶりをして、あげない。そしてピットが店主におねだりするが断られシュガーがおねだりすると店主の賄い用といって一つ渡す。

そしてそれをシュガーはピットに〜

といった流れを繰り返すこと5回。

最後には「本当にもうないの。ごめんね、お嬢ちゃん。」という店主の言葉でシュガーは諦めた。

その間テゾーロが思ったことは

「いや、おばちゃん、そんな隠してたのか?」

という感想だった。

「またくるね!おばちゃん!美味しいお肉ありがとう!!!」

シュガーが天真爛漫な笑顔で店主に手を振り彼らはその店を後にする。

普段はあまりテンションが高い時は少ないシュガーだが、こと食に関しては異常に機嫌が良くなるのだ。

 

一行は店を後に他の店を物色する。

「それにしても水の島って言われるだけはあるわね、何処も水路だらけね。」

モネが辺りを見渡し感想を述べる。

テゾーロもそこについても激しく同意見である。

もちろん海列車が全開通する前なので原作のイメージ程栄えているわけではないがそれでも水の水路はちゃんと整理されそこをブルと呼ばれる馬のような舟のような摩訶不思議な生き物が人を、物を乗せ縦横無尽に動き回っている。

「テゾーロ!あれ乗りたい!!」

シュガーは水水肉の興奮が未だ冷めぬのか妙にハイテンションで彼の服の裾を掴む。

「あぁ。折角だ乗ってみよう。」

テゾーロがそれに頷き近くに『ブルレンタル』と書かれた看板の店に入った。

「いらっしゃい!おっ!4名様と犬????狼??犬?」

店の店主らしき男性がテゾーロ達に声をかける。まあポチについては確かに今はバルディッシュの能力により小型され、あの巨体の大きさではない。それにテゾーロに対するあまりの懐きように確かに狼とは言いにくいかもしらんなとテゾーロは思った。

話が少し脱線するがバルディッシュは原作食料品と衣服の調達に行っているので現在は別行動である。

「あぁ、狼だ。それでブルを借りたいんだが、丁度いいのはあるか?」

テゾーロが店主に尋ねると若干困ったような顔を浮かべる。

「悪りぃが、ウチのブルはペット乗せられねぇんだ。だから預かることは出来るがすまない。他のお客さんの手前特定の客を特別扱いは出来ないんだ。もちろんペットを預かることは出来るが。」

店主の言葉にテゾーロは当然だなと思う。

「分かった。それなら預かってくれ。」

そう言って彼は店主にペットを預け用意された4人用のブルへ乗り込んでいく。

 

「ピットお利口さんにね〜。」

モネが店主に連れられているピットに向かい手を振る。ピットもそれに応えるべく軽く手を振った。

「って!僕なの!?!」

しばらくピットは手を振っていたが急に我にかえりその場で大声で叫ぶ。

同時に一緒にいた店主もピットと同じように驚いた顔をしていた。

「ちょちょ!ちょっと!旦那!!困るよ!!特別扱いはできねぇんだ!」

店主がブルで颯爽と水路を動くブルに向かって叫ぶ。

「あぁ、すまない。ではこれで何とか頼む。」テゾーロは店主にチップが入っている小袋を店主に放り投げた。

「そんな、いくらチップを弾まれても・・・!?」

店主がその袋の中身を確認すると中には眩い光を放つ金貨の束。鉄貨でも銅貨でも銀貨でもない。金貨だ。

文字通りギョッと小さく驚きの声をあげ店主の額から汗が流れる。

「いってらっしゃいませ。旦那様。」

店主の態度が180度変わり、彼は仰々しくお辞儀をし、テゾーロを見送る。

「わりぃな。無理言っちまって。」テゾーロが悪びれもない程度でそう伝えると店主も「いえいえ。旦那様きっての頼みです。お気になさらず!」

店主の言葉にテゾーロは頷きブルは走らせる。

「いや、ちょっと!テゾーロさん!!僕は?!」後方からテゾーロに叫ぶピットの声は次第に遠くなっていった。

 

「テゾーロ!水飴!水飴食べたい!」

ブルで水路を進む中、水路の両脇を店が囲いブルにのったまま買い物ができる通りに入った時シュガーがテゾーロの服を掴む。

「また食うのか?まあ俺も貰うかな。モネ、ポチいるか?」

テゾーロがモネとポチに問うがモネはそれに首を振る。

「もう食べられないわ。さっき水水肉をあんなに食べたもの。」

モネは自らのお腹をさする。

「じゃあ、わたしもいらない。」

モネの様子をみたシュガーが不服そうに答える。

「ワンッ!?」しかし、どうやらポチは食べたかったらしくシュガーの声に耳ざとく反応し、テゾーロも内心どうしたものかと考えるが、水飴自体は恐らく賞味期限等は長く持つだろうと考えブルを店の前に止め水飴を気持ち多めに買い込む。

「うっめ~!!」「ワンワォ~ン!!」

買った水飴を口に運ぶとテゾーロとポチはそのおいしさに声を上げる。

水水肉よりは驚きは少ないものの、この世界では甘味は彼の前世程当たり前じゃない。故にテゾーロも水飴購入に同意したのだ。

「シュガー。食ってみろ。それに飴でそんな太るわけねぇだろ。」

テゾーロは彼女の頭に手をポンと乗せもう片方の手にもった水飴を彼女の口へと運ぶ。

するとシュガーも初めは少し渋る顔をするも尚も口に近づく水飴に観念したのかパクッとそれを頬張った。

「甘ぁ〜い!美味しい!」

シュガーが水水肉と同様両頬に手のひらを当てクネクネと身体を動かす。

「テゾーロ!もう一個!」

シュガーが指を一本立てテゾーロに催促すると彼も笑みを浮かべ再び彼女の口に水飴を運んだ。

 

しばらくブルの乗りウォーターセブン観光別名食い倒れツアーに興じていたテゾーロ一行だがそれもそろそろお開きの時間となった。

何故ならテゾーロはこれからトムの元へ行き船の計画を進める必要があるからだ。

「それじゃあお前ら自分たちで帰れるな?」

テゾーロがモネとシュガー、ポチそしてその後合流したピットを目を向ける。

「えぇ。任せて。テゾーロも行ってらっしゃい。」

代表してモネがテゾーロに手を振るとシュガーもピットもそれに習い手を振る。

ポチは尻尾を振っていたが。

「でもわたし達は本当にいいの?」

シュガーがテゾーロに着いていこうか?と言外に彼に伝えるがテゾーロは首を横にふる。

「いや、俺だけで大丈夫だ。また夜には戻る。」

そう言うとテゾーロだけグループから離れトムズワーカーズの工房へと向かっていった。

「さて、シュガー。次は何食べたい?」

「水水肉!!」

テゾーロを見送ったモネはシュガーにまだ食べたいものがあるかという意味を込めて聴くと彼女は元気よく答えた。

「また?なら一緒に探しましょうか。ほら。ピットもポチも行くわよ。」

彼女らもまたテゾーロとは別にウォーターセブンを散策する。

シュガーの ONE PIECE(水水肉)を求めて。



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幕間 旅立つヒナ

ヒナちゃん登場。
話は現在より少し未来の話です。



「いやここどこやねんッ!?」

ヒナが全く知らない島の港に停泊し思わず普段話さないような訛り言葉で己の現状に一人ツッコミを行う。 

この1人ツッコミをこれまでに何度してきたろうか。

現在ヒナは島を弾丸のように飛び出して早、2か月。初めは海軍本部に行くべしと考え目指して(どこにあるのか。どうやったら行けるのか知らなかったわけだが)いたが、さすがにこの二か月、島を転々としその情報を集めると己がどれだけ無謀なのかを思い知らされた。ある島の人曰く「そんな小型の漁船で行けると思ってんのか?アンタ、いくつだ。子供じゃあるめぇししっかりしやがれ。」や「ガハハハハ!夢見ることはいいことだ!!だがあきらめな。おバカちゃん。」や「連れていってもいいが一発俺と良いことしようぜぇ!」など、誰も彼もが海軍本部に行くことは現実的ではないと教えてくれた。もちろん最後の下卑た笑みを浮かべた糞野郎は覇気を纏った拳でボコボコにしてやったが。

ヒナは煙草を口に咥え火を着けそれを吹かす。

「とりあえずご飯でもしようかしら。」

そう言って彼女は船に積んでいた木箱の蓋を開ける。そこには二か月前にテゾーロからもらった悪魔の実が今も健在であり余ったスペースにはヒナを襲おうとしてきた男たちから巻き上げた少しばかりの金と内緒で島から持ってきた黄金を換金したことにより若干、20歳そこらの小娘が持つには不相応な金貨が入っている。

もちろん、これがテゾーロにばれたら叱られるかもしれない。いや間違いなく叱られる。ヒナはそのことを考え少し身震いをする。

過去、訓練中に一度、テゾーロがブチ切れたことがあるが、その際は恐ろしかった。ヒナを初め、シュガーにピット、モネ、プルート、そして私が寄ってたかっても相手にならない程であった。もっとも最終的にはモネが言葉による説得でなんとか落ち着いたが、ヒナはそれも許せない。「何故、私じゃないのか。なぜいつもモネなのか。」と自問自答するがそれに加え腹が立つのはあのポチという狼だ。テゾーロが怒ったときもテゾーロの味方をし、実際はテゾーロVSモネ、シュガー、ピット。ポチVSヒナ、プルートであった。

「いや、なんで!?ヒナも混ぜろよ!!!!」

彼女は過去の思い出にも突っ込んだ。

この二か月一人でさみしい無計画の航海。話し相手がいなかったからか自分でぼけて突っ込むことが増えていた。

そしてヒナは思う。「ヒナこそが先生の最大の犬になれるのに!!!」と。あんな狼とウサギだか変態だかわからない気持ち悪い生物より私こそが彼のペットにふさわしい!!過去に性奴隷として天竜人に無理やり飼われていた頃とは違う。いまは率先して恩ある彼のために自分は彼の従順な犬になる自信がある。勿論その犬とはいろいろな意味が含まれていることは否定しない。故に一足早く海兵としてその犬の役目を果たすべく海へ出た。もっとも今振り返ればそれは間違いであった感じがする。

ヒナは頭が良いのだ。反省すること出来る。

ただ反省は出来るがそれを次に生かすことが、不得手なだけだとヒナは思う。

「これからどうしよう。ヒナ困惑。」

ヒナは考える。今後、テゾーロの従順な犬として、そしてテゾーロの一愛弟子として海軍のスパイになるには確実に将官まで登り詰めないと役に立つことは出来ない。

今後彼がどのようなことをしでかすかはヒナ自身分からないが、最終目標はあの天竜人を全員叩きのめすことというのは想像できる。

故に海兵のそれも将官クラスの座が必要だ。だから海軍本部に行けばとヒナなりに考えたのだが、現実は上手く行かない。

どこか海軍支部にでもと考え港に停泊している他の船を見ていると、ヒナは一隻の軍艦を発見する。

「ん?」

その軍艦は全体に青がモチーフに作られ、船首には骨を加える少し不細工な犬が鎮座している軍艦だ。

ヒナは確信する。「神は!先生は!ヒナは見放していなかった!」と。

何故ならあの船首は見たことないが、その青をモチーフにした軍艦には身に覚えがあった。

マリージョアから脱出する時に奪った海軍の船と船首以外は瓜二つなのである。

帆は現在は畳まれているが、恐らくその帆にはデカデカと海軍という文字が刻まれているのだろうとヒナは思う。

「とりあえず乗り込んで海兵に士官してみよ。」

そう独り言を呟くと彼女はテゾーロから貰った木箱を大事そうに小脇に抱え、その軍艦へと向かう。

「ん?なんじゃお主。」

軍艦の側まで行くと港で海兵に指示を出していた老齢ではあるが筋骨隆々らしき巨体を持つ男がヒナに気がつく。

「わたしはヒナ。海兵になりたいの。」

その男にヒナは一応名乗り海兵になりたい旨を呟く。

「お主のような小娘では立派な海兵になれんよ。ワシはいま忙しいんじゃ。他を当たってくれ。」

男はシッシッとヒナを追い払うべく手を振るがヒナは諦めない。

「海賊に家族も!島のみんなも酷い目に遭わされた!その為には力がいるの!だから海兵になりたい!お願いします!」

ヒナはその男に頭を下げる。別に彼女自身海賊に対してなんら恨みは無いが、恐らく海兵になる者のほとんどは海賊を少なからず憎んでいるだろうと予測し、彼が欲しい言葉を考えるそのように振る舞う。

「ほぉ。だから海兵になりたいと?海兵はお前の復讐のための組織じゃないんじゃ。」

男はヒナの言葉にピクリと眉をあげ反応するが、返答は変わらない。あくまでも他を当たれということだ。

「海兵になる為に力をつけた!ヒナはそこらへんの弱いから女子供たちと違う。恐らくあなたの船の誰よりも強いわ!」

ヒナは顔をあげその男の顔を改めて見つめる。

その男は髪もヒゲも全部白いがその瞳はケモノのごとく強く光を発していた。

「ほぅ。ワシの船の誰よりも強いとな?ガッハッハ!笑わせる。誰それが本当か試してやる。ボガード!来てみろ!おもしれぇ小娘がおるぞ!」

男は近くにいた帽子を被り腰に剣を挿した男を呼ぶ。

「小娘。それなら本当に強いかワシに見せてみぃ!こやつと戦って勝てばワシの船に乗せてやるぞ!」

男は「まあ、無理だがのぅ。」と最後に呟きボガードと呼ばれた男の後ろに下がる。

「お嬢さん。やめた方が良いと思うぞ。」

ボガードと呼ばれた男は剣を抜くことはせず徒手空拳の構えをしヒナと向かい合う。

「望むところよ。」ヒナもそれに倣い同じく素手での戦闘をすべく構える。

「では!始めッ!!」

男の大きな号令によりヒナがボガードに向かって走り寄る。

ヒナが覇気を纏ってない普通の拳をボガードの腹部に向かい放つがボガードは悠々とそれを躱す。

「確かに、初動の速さは中々筋がいい。だがッ!」

ボガードはヒナの攻撃を躱しそしてすぐさま反撃すべく彼女に向かい蹴りを放つ。

ボガードの蹴りをヒナは躱さず手をクロスし迎えうった。

「初動が早くてもいまだその身のこなしには無駄がある。諦めな。お嬢ちゃん。」

ボガードの言葉にヒナが反応することはなくすぐさま追撃すべく駆け寄り再び拳を繰り出す。

「あと、攻撃も単調だな。」

ボガードはその攻撃を片手でいなす。しかしすぐさまヒナは次の拳を繰り出すがそれさえもいなされる。

「まだよ!」ヒナは攻撃をいなされる前提で高速に体を動かせ、パンチ、キックの連弾を繰り出すがそれはすべてボガードによりいなされ時に躱される。

「攻撃も単調身のこなしには無駄が多い。ただそのガッツは買おう。ただこの船にはまだ早いと思うが。」

「そんなのせめてわたしに一太刀でも与えてから言いなさいよ!」

ボガードの言葉にヒナが吠えると彼の額に青筋が浮かぶ。

「勘違いしてもらっては困るな。別に攻撃できないのではない。しないのだ。」

「寝言は寝て言いなさい。黒腕連弾ッ!」

ヒナが両手に武装色を纏いパンチのラッシュを繰り出す。

「ほぅ。武装色の覇気を扱うか。だが単調だ。」

ボガードは再びそのラッシュも高速でいなすがそれこそヒナも分かり切っていた。故にヒナは拳の中に隠していた砂をボガードの目に向けて振るう。

「それも読めている。」しかしボガードは目つぶしさえも躱し剃で瞬時にヒナの懐へと近づき拳を放った。

ガシッ!

「なっ!?」

驚きの声を上げたのはボガードであった。

「見えたのか?私の剃を!?」

ボガードがヒナに問うが彼女はニヤリと笑った。

「見聞色も使えるの。ヒナの大勝利。」

彼女はボガードの拳を体をそらすことで躱しそれを脇に挟み拘束。

「はい。わたしの勝ち。」

ヒナが拳を覇気で纏いそれを振り上げる。

「そこまでじゃ。嬢ちゃん。」

しかし振り上げられた拳がおろされることはなく先ほどまでこちらを見物していた男が彼女の腕を掴んだ。

「それ以上やると嬢ちゃんボガードに殺されるぞ?」

男は厳しい顔つき彼女を見る。ヒナもなぜ自分がと疑念を感じ再びボガードの顔をみるとその顔は先ほどとは違い人間の顔をしていなかった。

獣だ。それも肉食獣。

「ボガード、もうよせ。能力を使うな。」男の言葉に威嚇するようにヒナに唸っていた獣がみるみる内に元の人間の容姿へと戻っていく。

「嬢ちゃん、合格じゃ。ワシの船に乗せてやる。」

ボガードが能力を解除し、ヒナの体からいささかの緊張が解けたのを男は感じたのか、掴んでいたヒナの手を放し、今度は彼女の目の前に手を差し出した。

「ワシはモンキー・D・ガープ。海軍本部の中将じゃ。お主をワシの船の海兵見習いにしてやる!じゃがワシは厳しいがな!!!」

ガープと名乗った男はその後無理やりヒナの手を掴み激しく上下させた。

 

ヒナ自称テゾーロの一番の犬。彼女の物語はまだ始まったばかり。

「あ、それとなボガード今後はおぬしはこの娘の面倒をみろ。」

ガープの言葉にボガードはため息をつく。

「嬢ちゃん。名はなんと言ったかの?」

「ヒナよ。さっきも伝えたでしょ?」

ヒナの言葉にガープはガハハハハと笑い彼女の肩をバシバシと叩きそして最後に彼女の頭に拳骨を落とす。

「ヒナよ。ワシはこれからお前の上官じゃ!上官には敬語をつかわんかっ!」

ガープの言葉にヒナは思う。『自分が海兵になったのだ』と。

 

 



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第3章 金狼の一味
第18話 ゴールデン・ウルフ号


「タッハッハ!テゾーロさん!こっちじゃ!」

現在テゾーロ達は市長室での商談から7日後、一度市長室に行ったがウォーターセブンの市長ジェルに港に行くようにと言われ港に居たトムを発見したところ向こうも気がついたのか、こちらに向かって手をふっていた。

「おぃおぃ。あんたがテゾーロさんか!スゥーパァー金持ちそうには見えなくもねぇが、1000億ベリー持ってるようには見えねぇなァ!」

「この馬鹿ッ!!ンマー、許してやってくれないか?テゾーロさん。こいつはこの通り馬鹿なんでな。」

トムに気が付き呼ばれるままにそばに行くと、早速青年二人組に絡まれてしまっていた。

「別に構わねぇよ。それで君たちは?」

「俺ァー、トムズワーカーズのカティ・フラムだ!」

「俺はアイスバーグ。ンマー、同じくトムズワーカーズの社員でトムさんの一番弟子だな。」

カティ・フラムと名乗った少年もアイスバーグも恐らくは20歳前後だろうか。

テゾーロは思った。

『フランキーとここで会って大丈夫だったのだろうか?』と。

「よろしく。俺はギルド・テゾーロだ。まあ、聞いているだろう。

後ろにいるのがモネとシュガー。ピットにバルディッシュ。そして、ポチだ」

「ワオン!」

ポチが頷くように吠えた。

「まあ、自己紹介もそこらへんにしてじゃな。アレが君たちに送る船じゃよ」

トムが話を切り港に停泊している大きな帆船を指差す。

「・・・10人乗りといったはずだが」

テゾーロは思わず自分が思ったことを口に出す。

彼の目の前にはグラン・テゾーロからここまできた船の3倍はあろうか、恐らくは海軍の軍艦よりは一回り小さいが、それでも大きい帆船が目に入る。

「ダッハッハ!スマン!色々詰め込み過ぎたらちょっとばかしデカイ船になってしもうた!まあ、ワシにドンっと任せろ!それにあんた、黄金を操る能力もあると聞いた。それなら機関部に黄金を這わせればあんた一人でも動かせるはずじゃ!!」

トムズワーカーズの3人が胸を張りキメ顔を取る。

その表情には『すごいだろう?1週間でこれだけの船を作ったんだぜ!!』と言わんばかりの表情である。

「しかしよ、これ俺が居ない時はどうすんだ?」

テゾーロの疑問に3人が声を揃えて「あっ・・・。」と呟きそのキメ顔は途端に崩れた。

「ちょっと、まさか忘れてたとか?」

シュガーがテゾーロの後ろでボソッと呟くとそれを耳聡く聞いていたトムが堪らず弁解する。

「わ、わ、わ、わ忘れてたんじゃねーし!!た、ただ、ちょっと待っててくれんかの!!おい、二人ともちょっと船の最終点検にでも行くぞ!!!最終点検だ!最終点検!」

そう言うとトムズワーカーズはテゾーロ達をそのまま残し3人ともその大きな船に乗り込んでいった。

去り際に「最終点検が終わるまでその場で待っててくれ」と言葉を残して。

 

「大丈夫なの?テゾーロ。あの人たち。なんか抜けてるところがあるけど」

テゾーロにモネは尋ねる。他の面子も同じようにある種、不安な表情を見せテゾーロを見ている。

「大丈夫だろ。あのトムって人は海賊王、ロジャーの船も作った男だぞ?それにこの前見学した海列車も設計したと聞く。それに、1週間でここまでの船を作るってのはすげえぞ」

そう言うとテゾーロは船に向かって指を指す。

外観は全て金でコーティングされている。これはテゾーロの能力ではない。

全て職人が金を加工したものだ。

この1週間テゾーロ達は何も遊んでいた訳ではない。

トムに呼ばれ彼の能力についていろいろ聞かれたり、船についての要望も聞かれた。

トムが注目したのは恐らくテゾーロの能力だろう。

テゾーロは島の仲間達以外に自分の能力を正確に教えていない。

ウォーターセブンの連中にはテゾーロは『金を作り出し操ることが出来る』と伝えているが、本質は触った黄金を操る力なのだ。

トムはその黄金を自在に操るという場所に注目した結果、今回のような不手際が起こったのだろうと推測は出来るが、

ここで、何故船のコーティングをテゾーロの能力ではなく、職人による加工でされたのかというと、彼はあくまで悪魔の実の能力者。

よって、彼の能力で成形された金は海につかると溶けてしまう。が、完全に金がなくなるという訳ではない。

金は海に浸かり、形を保てなくなり砂金になる。

恐らく彼らトムズワーカーズはテゾーロ達が乗ってきた船を分解し、海の水につけ砂金状態にしてからコーティングしたのだろう。

コーティングした理由は、万が一の場合の保険として残してもらった。

当然、この提案についたはトムから反対の声が上がった。

この大海賊時代の昨今、黄金に輝く船のなど、もはや良い的。むしろ攻撃して下さいと周囲にアピールするものだと。

しかし、テゾーロにはそれも作戦の内としてトムも止む終えずその意見に頷いたのだ。

他にも船首には、元の成形はテゾーロが能力で。そしてその上を砂金でコーティングしたことで、海の弱点を克服している。

ある種、テゾーロの能力は形を作るという点ではもはや完璧な能力と言える。

イメージすれば黄金がその形になるのだ。

もちろん黄金の量にほとんどが依存してしまい、薄く薄く成形した場合はもはやただのハリボテなのだが。

その船首の狼は大きく口を開き咆哮をあげるようにしており、口には穴が空いている。

恐らく彼の要望通りで一際大きな大砲が積まれているはずである。

他にも船の側面。現在目視出来る側に砲台が5門。恐らく反対側にもあるだろう。

それにマストは3本。

3本目とも現在は帆を張っては居ないが、この帆についてはまだテゾーロは仲間に内緒にしていることがあった。

「おぉーい!お兄ちゃん!準備出来たぞー!」

テゾーロ達が船の外観を観察していると上から声がかかり甲板を見るとフランキーがこちらに身を乗り出して手を振っていた。

彼に招かれるように、テゾーロ達も甲板へと続く階段を上って船に乗り込んだ。

「おぉ〜!!!!」

先に声を上げたのはピットである。

目を輝かせ船の甲板に見惚れている。

他の面々を同様に、どこかしら惚けている表情をしている。

「タッハッハ!喜んでくれてるかな?それなら結構じゃ!どれ、ワシが案内しよう」

トムがテゾーロ達の顔を見て満足そうに頷くくと甲板の床を指差した。

「とりあえずじゃ、まず先に言うておく。この船の竜骨には宝樹アダムを使っておる」

「アダムッ!!!」

テゾーロは思わず声を上げた。

宝樹アダム。世界に数カ所でしか存在せず、その木はとてつもなく頑丈で、あの海賊王のロジャーの海賊船。そして麦わらのルフィのサウザンド・サニー号に使われていたぐらいしか確認出来なかった宝樹である。

「タッハッハ!まだまだ驚くには早いぞ。この甲板は二階建てじゃ。一階は主に男用の部屋、ダイニングキッチン、リビングルームなど主に生活出来うる空間がある。武器庫に繋がるのもこの一階じゃな。

二階は女部屋と船長部屋じゃな。他にも航海士部屋。

主に役職部屋がある。まあ、それぞれの部屋はそれぞれで確認してくれたら良い。とりあえず武器庫じゃな」

トムが一階の甲板から船内部へ通じる扉を開けるといくつもの扉が開く左右に存在し、通り過ぎる様に「この部屋は寝室1、寝室2」などと足早に紹介して廊下を突き進む。

この階段を降りるんじゃ」

やがて真っ直ぐ降りた先には階段があり、そこを下ると武器庫があった。

巨大な船内の左右に5門ずつ計10門が並べられ、真ん中には前方へと繋がる巨大な大砲。これが狼の口から発射される大砲であろうことがうかがえる。

「おっ!兄ちゃん!気がついたか?!コイツァ、デミ・カルヴァリン砲を俺がアレンジしたスゥ〜パァ〜!な大砲だぜ!!!」

そこでトムの横にいた青年、カティ・フラムが声を上げる。

「どのくらいの威力だ?」

「スゥ〜パァ〜!だ!!」

「ん?」

「ん?」

「すまん。カティ・フラム君。威力を教えてくれないか?」

「だから兄ちゃん!スゥ〜パァ〜だ!!!」

「おい。」

「ンマー。このバカンキーを許してくれねぇか、テゾーロさん。なにせ、デミ・カルヴァリン砲をアレンジしたものだ。そこらへんで試し打ち出来るもんじゃねぇのさ。」

そこでアイスバーグがテゾーロとフランキーの間に入ってフランキーの肩を持つ。

「まぁ、いいさ。それでどこで動かすんだ?俺の能力を使うんだろ?」

テゾーロが辺りを見渡してみるが、現在は武器庫であり、周りには銃器や大砲しか置かれていない。

「おぉー!そうじゃな!!では甲板に一度戻るかのぅ!」

その声にトムが手をポンと叩くと今来た道を引き返していく。

「さっき甲板は一階と二階に分かれていると言ったが、正確にはこの舟の内部は4層になっておってな。

一つがここ、武器庫や、砲門の層。

もう一つが先ほど通ったじゃろ?男部屋や、キッチンなどがある層。

女部屋や、船長室、他にも役付きの部屋は下から三層目にある。そしてこらから行くところが管制室とワシらは呼んでるがのぅ。それが一番上の層じゃ。」

トムを先頭に皆が彼の後ろについて歩き再び甲板に戻りそこから外階段を登る。

「ここがいわゆる第三層目じゃな。まぁ、中は二層目と対して変わらんがの。それでこの上じゃ。」

トムは二階に続く階段を登り更にその上に繋がる階段も登り切るとそこは恐らく部屋が一室しかない空間があった。

「ここが、管制室じゃの。第四層はこの管制室しか無い。ほれ。中に入ってみてくれ」

トムがそこの部屋に通じる扉を開けて彼らを誘導する。

「これは面白い」

思わずテゾーロの声が漏れる。

彼の目の前には部屋の真ん中に二本の恐らく手を置く場所だろう。先端が丸い二本の黄金の棒が床をから生えていた。

そして、その棒の前には普通の舵が設置されていた。これは恐らく先ほどのトムズワーカーズの突貫工事により付けられたものだろう。

周りとはあまり同調出来ていないアンバランスな感じで施されていた。

他にも壁側には映像電伝虫が3匹。船の内部。外部。そしてデッキと映されていた。

その横に普通の電伝虫が4匹。

「タッハッハ!映像電電虫と電伝虫はワシからのプレゼントじゃ。なぁに。1000億ベリーのビジネスじゃからな。これぐらいはしてやるわ!タッハッハ!」

トムが電伝虫達に指を指し、それはプレゼントだと伝えるとテゾーロは彼に『ありがとう。』と伝えるとトムはニヤリと笑った。

「さて、お主の気になるその棒のじゃが「いや、私はその舵が気になるわ」」

「ゴ、ゴホン!!!」

モネの質問にトムは大げさな声でわざとらしく咳払いをして流す。

「と、とにかくその金の棒がなにかと「ねぇ、なんでこの舵だけ周りとアンバランスなの?なんか変じゃない?」」

「ゴ、ゴホン!ゴホン!!」

今度はシュガーが問うがトムは咳払いでそれを乗り切ろうとする。

恐らく、あまり触れて欲しくないのであろう。

「すまん。気にするな。続けてくれ」

テゾーロがトムに先を続けるように伝えた。

「あ、あぁ。では続けるとじゃな。この金の棒は「ワォーーーン!!!」うるせえな!!!トイレはあっちじゃ!!!!!」

「「「伝わった!?!?!?」」」

トムが再び話を戻そうとするとそこにポチが遠吠えを発し、それにトムが逆ギレし、トイレの場所を指差す。

「ハッ!?今この狼に『トイレはどこだ』と聞かれた気がしたようなしないような」

「トム。いいから話を続けてくれ」

テゾーロが茶番はそこまでだと言わんばかりの表情でトムに先を促す。

「いや、話を毎回止めるのお前たちだからな!!まぁ、良い。それでその金の棒についてじゃが「ところでこの舵は?」」

「「話の腰を折るな!この駄ウサギ!!!」」

「プギャラッ!!!!」

再び、トムの話の腰を折ろうとしたピットがシュガーには腹部に肘鉄。テゾーロには頭にゲンコツを食わされる。

「・・・なんで・・僕だけ・・・ガクッ。」

「おい、大丈夫か?あの白ウサギ。口から血を出してるが?」

ピットの様子を見てアイスバーグが声を上げるが、テゾーロが「構わない。いつものことだ。見てみろ。血を出しながら光悦とした表情してるだろ?」と言って、彼がピットの顔を指差すと、たしかに口から血を出して気絶してはいるが、その顔はニヤニヤとしていた。

「ヒィッ!!」

誰かが、その様子を見て声を上げた。恐らくはシュガーであろう。

それの証拠にシュガーは気絶したピットに尚も攻撃を食らわし始めたからだ。

「キモいんだよ!!死ね!!この駄ウサギ!!」

「アッ!!アッ!!!アッー!!!!」

殴られながらもピットは無意識なのか声を(ここでは喘ぎ声に近いが)上げ、その声が室内に響く。

「テゾーロさん。あんたの仲間はいつもあんな感じなのか?」

トムがシュガーの顔を指差し指摘する。

たしかに、ピットもピットだが、シュガーも、そのピットをボコボコに殴り返り血を浴びながらも表情は明るい。むしろ普段感情の起伏をあまり表に出さないが、ピットを、ピット以外の人を殴る。もしくは殴ろうとするときはこうして笑顔になるのだ。それも天使を彷彿させるような満々の笑みで。

「大丈夫だ。いつも通りだ。放っておけ」

テゾーロはトムに対して首を横にフルフルと振ると、トムもアイスバーグも『まあ、そんなもんなのか』と無理矢理であるが半ば納得していたが、フランキーは内心、ピットに対してどこか仲間意識を芽生えていたのは内緒である。

 

「まあ、話を戻すとじゃな。その金の二本の棒じゃが、その間にテゾーロさん。立ってくれんかのぅ。そして両手を広げてその棒の上に置いてくれ。」

トムが支持するとテゾーロは黙って頷き二本の棒の間に立ち、それぞれの棒の先に手を置いた。

「なにぶん、わしらには悪魔の実の能力者が周りにおらんでのぅ。とりあえず金を操れるなら船の中枢的な場所に制御するっぽい物があればと思ってそこに作ったんじゃ。

どうじゃ?ちょっと船を動かすように金を船の全体に流してこんでくれんかのぅ。

金は船の内部、いたるところにある小さな無数の穴から流れ、この船全体に行き渡るはずじゃ。

イメージは、血管みたいなものじゃ。

そしてここが心臓。ここから血を流すように黄金を流せば良いと思うのじゃが・・・」

トムの言葉に再びテゾーロは頷き、いま手を置いてある黄金の棒に意識を集中させ金を流し込むように力を込める。

 

バチバチバチッ!

するとテゾーロの手から。金の棒から小さな火花が発生し、そこに能力が発動するされているのがテゾーロ自身も少し分かった。

「恐らく、これでいいと思うが・・・。」

そう言うとテゾーロは能力を駆使し、船の帆を下ろし風を掴むべくマストの向きを調整する。

船底にあるスクリューのような物の内部に這わせた黄金を駆使し回転させていく。

テゾーロは覚醒した能力者ではまだない。

しかし、それでもある程度の質量の黄金を今まで操って来た故に分かる。

「これはたしかに俺一人で動かせる」と。

やがて船は港から徐々に沖へと進んでいく。

3本のマストを上手く使い最大限の風を掴んでるせいか、はたまた船底のスクリューによるものなのかは謎だが、巨大な帆船はスピードをグングンと上げていく。

「どうやら気に入ってくれたようだのぅ。ではテゾーロさん、前方はその映像電伝虫をみながら適当に船を走らせてくれ。

他のものは一緒に甲板に出てもらおうかのぅ。テゾーロさんが君たちにサプライズしたいらしい。」

そういうとテゾーロを残し他のメンバーはその室内から出て甲板へと向かう。

しばらくしてからだろう。管制室にいたテゾーロにも聞こえるほどの歓声が上がる。どうやら気がついたか。

テゾーロはその場で一人ほくそ笑み一旦そこで能力を止め、皆の元へと向かう。

わずか一瞬の出来事であるが、船は沖へと既に進んでおり後は風による自動航海へと切り替えたからだ。

「ちょっと!!!テゾーロ!これ!!!!!」

普段声を荒げることも少ないモネも今回ばかりは声を荒げテゾーロに詰め寄る。

「あぁ。」

それについてテゾーロは頷く。

「海賊旗だ。」

テゾーロの声にモネが、シュガーがピットが海賊旗に目を再び向ける。

金色の星の背景に龍の胴体を噛んでいる骸骨(ジョリーロジャー)

大腿骨の骨を二本クロスさせた海賊旗。

全員が一瞬で理解した。否してしまった。

ドクロに噛まれている龍の意味を。

「やるぞ。これから。ここから。グラン・テゾーロの連中も。みんなで。」

「えぇ。」

「うん。」

「はい。」

「あぁ。」

全員がテゾーロの言葉に決意を表す。

尤も、バルディッシュについてはこれからの航海にはついてこない事は決まっている。

彼がここまで今回来た理由は物資を小さくした船に積んで島に運ぶこと。

そして、明日からバルディッシュはウォーターセブンの職人達、総勢50枚を乗せ、グラン・テゾーロに帰ることが決まっているのだ。

しかしバルディッシュ自身、そのジョリーロジャーのマークの意味を考えないわけなどないのだ。

いや、それはあの島の連中の全員が瞬時にそのマークの意味を悟るだろう。

 

「ダッハッハ!!どうやらお主達の決意も決まったようじゃの!!!!テゾーロさん。この船の名はゴールデン・ウルフ号じゃ!!

ワシが!ワシらトムズワーカーズが作ったドンっと胸の張れる船!大事に扱ってくれぬか?それとこれからよろしく頼む!」

 

「あぁ。トム。ゴールデン・ウルフ号。良い名だ。こちらこそよろしく頼む。」

そう言うと2人は会ってから何度目だろう握手を交わす。

そして、ここに新たな仲間がテゾーロの一味に加わった。

その名も『ゴールデン・ウルフ号』

大海を超え、空も飛び、黄金に輝くこの船は未来で伝説の船の一つに数えられるようになる船が彼らの仲間に加わった。

 



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第19話 金狼の海賊団

「じゃあ、後は頼んだぞ。バルディッシュ」

「任せておけ。テゾーロも頼んだ」

現在彼らは港にいる。

船の着水式というか、お目見え式というものがあったのが昨日。

今日から、バルディッシュとテゾーロらは行動を別にする。

「三ヶ月で帰れるように努力するが、少なくとも半年以内には帰るようにするからなんとかジェル市長にもよろしく伝えてくれ。

もっとも恐らく島につけば黄金がちゃんともらえるかどうかなどあまり気にならなくなるだろうがな。」

「だろうな。俺らの島は黄金が多いからな。」

「じゃあ行ってくる。」

テゾーロがバルディッシュに手を振り船へ乗り込もうと後ろを向くと後方から声がかかった。

 

「ダッハッハ!成金坊ちゃんかと思ったら海賊旗なんて掲げよって!死ぬなよ!テゾーロさん!!」

その独特の笑い声で枯葉後ろを振り向かなくてもだれか判断できた。

「あぁ。また金を払いにくる。それまでな!トム!船はありがたくいただくぞ!」

テゾーロはまた振り返りトムに向かって声をかける。

「ドンッと行ってこい!!」

テゾーロはそれに手を挙げ答えると今度こそ船に乗り込んだ。

「さあ、行くか。」

「えぇ。」

テゾーロの声にモネが返事をし、ピットとシュガーが頷く。ポチはいつもと変わらずテゾーロの手に自分の頭を擦り付ける。

「出航だ!!!」

「「「応ッ!!」」」

 

テゾーロとモネは急ぎ足で管制室に向かい早速テゾーロは黄金を船内部へと流す。

ピットはすかさず船首の黄金の狼へと目指すが、シュガーに足を引っ掛けられその場に倒れ、その隙にシュガーが船首へと駆け寄り彫像の上に飛び乗った。

 

ビリリリ!テゾーロの手が火花を挙げ船は帆を自動的に下ろし、イカリをあげ、スクリューが動き出す。

やがて、スクリューが高速に動き出すと徐々に港から離れ、帆が風を掴みグングンとスピードを上げる。

「シュガー!ピット!喧嘩もほどほどになー!!!」

港にで見送りをしていたバルディッシュが大きな声で手を振りながらみるみる内に港から離れる船に向かって声をかける。

シュガーはそれに無言で頷き前方へと目を向けた。

前方は船の門出を祝う天気とは言えずどんよりとし、重い雲が広がっていた。

ゴールデン・ウルフ号。ジャヤに向けて出航した日、彼らは運悪く高波『アクア・ラグナ』に遭遇することになる。

 

 

 

「ヴォエェェェェェーー!!!!!」

ウォーターセブンを出航し、はや一日、現在彼らは広い海の真ん中でユラユラと揺れていた。

彼らはあの後、テゾーロが思うにアクア・ラグナと思わしき嵐に遭遇し、なんとかこのゴールデン・ウルフ号のスペックの高さで乗り切りきりやっと嵐が収まった海域に出たところだった。

「ヴォエ!!!!、オエェェェェェー!!!!」

もっとも嵐を乗り切った後でもピットはずっとダウンしているが。

「航海士はいるな。やっぱり。」

テゾーロは切実に思う。

流石にナミ程の航海士じゃなくてもいいが嵐をある程度予測出来る仲間は必要だとテゾーロも、他の人員も思う。

「それにしても、この子は頑丈ね。」

モネがゴールデン・ウルフ号のメインマストをパシパシと叩き先日の嵐を思い出す。

高波に晒されながらもある種悠々と航海出来たのはこの船のおかげだろう。

「あぁ。なにせ、宝樹アダム製だからな。それにシュガーも気に入ってくれてるようだしな。」

テゾーロがそう言って今も、船首の上に乗り空を見上げているシュガーを指差す。

「シュガー!どうだ?新しい仲間は。気に入ったか?」

テゾーロがシュガーに話しかけるとシュガーはボソリと「金狼・・・。」と呟いた。

「ん?どうかしたの?シュガー?」

モネがテゾーロを連れ今や定位置となったシュガー専用席の船首まで近づく。

「わたし、考えてた。金の狼。だから金狼。金狼海賊団ってのはどう?」

彼女の言葉にテゾーロとモネは向かい合って笑った。

ピットは今も甲板から海へ向かって嘔吐をしている。

「金狼か。いいんじゃねぇーか。あぁ。それなら今日から俺たちは金狼海賊団だ!!」

「えぇ!凄いわ!シュガー!ぴったりよ!」

2人してシュガーの意見に賛同し、彼女の頭を撫でる。

「わ、わかったから!そんなベタベタしないでよ!!」

シュガーが頭を振りその手から逃れようとするも、今度はモネがシュガーに抱きついた。

「もぅ!!可愛いんだから!!!このこのー!!」

モネが姉スキル全開でシュガーにじゃれつくが、シュガーは不機嫌そうな顔で「この胸が!!胸が邪魔!!!!じゃまーーーー!!!!!!」とモネの胸の中で叫ぶもそれはモネの胸の中でかき消され、テゾーロからは『モガーーー!モガーーー!」としか聞こえなかった。

「まぁ、それならそろそろ朝飯にするぞ。

おい!ピット!お前も飯にするぞ!」

金狼の海賊団は今日も自由に海原を航海する。

目指すはジャヤ。そして黄金都市シャンドラを求めて。

 

 

「それで、ジャヤにはあとどれくらいで着くと思う?」

テゾーロの声に食卓に座ったモネとシュガーは首を横に振る。

当然であろう。テゾーロさえもはっきりとしないのだ。彼女達も分かるわけがない。

そして現在ピットは今も変わらず甲板でダウンしている。

今日のメニューはクリームシチューとパンだ。

テゾーロ達は食事を当番制に分け、今日の当番はモネである。

見た目通りと言えばそのままだが、彼女は料理が上手い。

しかし逆にシュガーは料理があまり得意でなく、グランテゾーロのときも、加えてウォーターセブンにいる時もだいたいは彼女が当番の時にはモネが一緒に付いている。

テゾーロは普通に現代人の記憶を元に軽い料理なら出来るが、ピットは常に生き物の丸焼きである。

彼曰く、『丸焼きが一番美味しい。』らしい。

 

「まあ、でもまさか記録指針の反対側に進めばジャヤにつけるっていうのはな。」

テゾーロが出港前にトムにどうやったらジャヤに着くのか聞いたところ、トムが言うには記録指針の反対側に航路を取れば着くとのことだったので現在はその航路を通っている。

読者諸君もこの意見には意を唱えるかも知れないが、ここはそうゆう物だと思ってもらえたら良い。

 

「でもいくつかの島を経由するのよね?」

モネがスープをすすりながらテゾーロに尋ねる。

「あぁ。そうらしいな。まあ大丈夫だろ。なんとかなる。それにポチもいるしな!」

「ワンッ!」

ポチは今日もいつもと変わらずテゾーロの横で彼からご飯をもらえるのを待っている。

「そうね。ポチのお陰でなんとなくではあるけど嵐が来そうな感じが分かるけど・・」

「あぁ。分かるがどこに航路を取ればいいか分からないからな。」

「そうなのよね。やっぱり航海士は早急に欲しいわね。」

「「「はあ〜」」」と3人のため息が重なる。

「まあ、とりあえずはジャヤまでなんとかこのメンツで頑張るしかねぇな。」

テゾーロはそういうと手に持っていたパンを千切りポチの口に運ぶ。

「わかった。それならわたしはお風呂に行ってくる。」

シュガーは食べ終えたのかイスから立ち上がりお風呂へと向かう。

モネもすかざす後を追おうと追いかけるが、「来ないでよ!!!バカ!!」っとシュガーの声が聞こえるがモネは変わらず突進していく。

「ポチ。最近モネのシュガーラブ具合凄いと思わねぇか?」

「ワンッ!」

「思うか!そうかそうか!!!」

金狼海賊団は今日も平和である。

目指すはジャヤ。今日も航路はグランドラインを逆走し、ひた走る黄金の船。

乗組員は未だ4人と1匹。彼らの目下の目標はまずは航海士を仲間にすることである。

 




短いですが、一旦ここで切らせて下さい。短いので明日18時に後半を掲載します。


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第20話 満月の夜

「テゾーロ!!!!ピットが!!!!」

モネがテゾーロが寝ていた第二層の男部屋にノックもなく乱暴に侵入してきた。

現在彼らはウォーターセブンを出航して幾日。

既に中継地点にあるセント・ポプラと呼ばれる島を経由し、今なお逆走している時の一幕での話である。

「あぁ。そういえば今日は満月か。」

テゾーロはハンモックから身を起こしため息をしながら今日の月齢を思い出す。

『満月』

ピット達ミンク族は満月の夜。その月を見ると超好戦的な戦闘民族へと変わる。

スーロン化と言われ、これはピットも同様である。

もっともおもちゃであった時は満月を見てもスーロン化はせず、人間に戻ってから、ピットは獣人であるが。

そして、今回の満月で何度目かのスーロン化である。流石にテゾーロも慣れてきた。

もっとも戦闘力が何倍にも跳ね上がるから油断は出来ないが。

恐らく今回も毎回同様シュガーが足止めしているのだろう。

「今日はどれくらい持つだろうな。」

テゾーロはニヤリと笑うが、モネが「いつもそんな悠長に構えて!油断はダメよ!」とテゾーロに小言を言うが彼は片手を上げそれに応え、船室から甲板デッキへと向かう。

「この駄ウサギィ!!!いつもいつもめんどくさいのよっ!!!」

「お嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!ちっちゃい!ちっちゃい!お嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!!』

テゾーロとモネが甲板に出ると現在、もっともいつもだがシュガーとピットが相対していた。

ピットは満月にせいでより好戦的な性格になり必要以上にシュガーを煽る。

シュガーも、それが作戦だと頭で理解はしても腹が立ちひたいに青筋が浮かぶ。

「いいわ。わたしの進化した技、受けさせてあげる。人形劇場(マリオネットシアター)。」

シュガーが指をピットに向ける。

「シュガーお嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!それはおもちゃじゃないとだめなやつでしょうよぉ!!!!ハッ!?!?」

ピットは以前受けた人形劇場ではおもちゃ故の能力だとシュガーに告げた瞬間身体が動かなくなるのを感じた。

「だからアンタは駄ウサギなのよ。何?満月になると身体は大きくなるけれどおつむは小さくなるの?私がいつまでも成長しないと思ったのかしら?」

シュガーが自分の指から伸びる黒色の糸を少し動かす。

人形劇場(マリオネットシアター)以前はおもちゃに対してのみの条件で使用できた能力であるが、今は普通の糸を武装色で硬化し相手に結びつけることでその体の自由を奪う。

シュガーは短期間で糸使いへと進化していたのだ。

(あのー、これもはやドフラミンゴさんの技では?)と内心テゾーロは思っていた。

そしてテゾーロはピットを見る。

低かった身長はいまや170cmほどに成長し、白い髪型は銀髪のロン毛へと変わり目は紅く染まっている。

側から見たらイケメン獣人の完成だか中身がちょっとなと思うテゾーロであるが、そのピットが現在、身動きが取れず拘束されている。もちろんシュガーの糸によるものだが。

ニヤリ。

ピットが身動き取れないながらも口元に笑みを浮かべ身体中に力を込めた。

ブチブチブチブチ!

ピット自身にまとわりつく糸がまるで鋼鉄の糸が切れていくような音を立て始める。

「こんなモンはなぁ!!!!力でネジ切ってやんよおおおおおおお!!!!」

やがてブチリと音を立てるとピットに伸びていた糸はその張力を失いピットは脱出に成功する。

「モネ。今日はお前がピットの相手してあげてくれ。シュガーもあの糸が切られた今1人じゃ厳しいだろう。」

テゾーロがその様子を見てモネにシュガーを助けるよう指示を出す。

「分かったわ。テゾーロは?」

「俺はポチと月見しながらお前らの反省点でも探しておくわ。来い。ポチ。」

「ワフッ!」

ポチがテゾーロの近くによると彼とともに甲板に座る。テゾーロも寝酒用にと持っていた酒と、つまみを甲板に起き晩酌を始めた。

「気をつけてな。」

「えぇ。」

テゾーロがモネにエールを送りモネがそれに頷きシュガーの元へと歩む。

「雪化粧。」

モネがポツリとそう呟くと彼女の周りが吹雪き、それは彼女をも飲み込んでいく。

やがて、その吹雪は甲板を包み、ゴールデン・ウルフ号の周りだけ温度がグッと下がった。

モネ自身も、いつも肌白くはあるが、それがより一層。まるでおとぎ話の雪女の如く白く儚くその姿を変えるが、彼女の身体は既に雪。

歩くことも走ることもなく、飛ぶようにピットの背後に飛翔しそして、雪を刀に圧縮形成する。

雪走(ゆばしり)。」

彼女は両手でやっと抱えきれそうな長い刀身をした刀をピットの頭上目掛け振り下ろす。

「チィッ!今度はリアルお姉様かよ!!」

ピットはそれをすかさず交わし、モネに向かって回し蹴りを放つ。

ただの回し蹴りではない。テゾーロ基準のレベル4の武装色の覇気を込めた獣人の回し蹴りである。

当たれば大きなダメージだろう。

しかしモネは動かない。

やがてピットの回し蹴りがモネの腹部に届くかと思われた刹那その強襲は間にシュガーが入ることで事なきを得る。

「アンタなんかの攻撃、モネに当たらせることもないわ。」

シュガーが己の硬化した腕を回し蹴りのコースに起きそれをガードし、ピットの蹴りはそこにぶつかりあたりに金属音がこだまする。

「おい。駄ウサギ。さっきはよくもいろんなことを言ってくれたわね。お詫びにわたしからプレゼントあげる。」

ピットの蹴りはシュガーの腕に当たった瞬間そこにモネが雪をぶつけ固まらせる。

シュガーは空いた左手を握りそこに武装色を纏いニヤリと微笑んだ。

「もう、泣いて許しをこいても容赦しないから。わたしの気がすむまでボコボコにしてあげる。」

シュガーが、なんの変哲も無いただ武装色で硬化した拳をピットの顔面に放り込む。

ピットはいまや片足をシュガーの右腕に拘束され身動き出来ない身。

それでもシュガーの凶拳は止まらない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァーッ!!!!!!!!」

シュガーのラッシュがピットの顔面に炸裂する。

「あれは痛そう〜。」

モネが能力でテゾーロの側に戻ってきて、今なお続くシュガーの攻撃に対し一言呟くと。

「お疲れさん。やっぱり今日もピットの負けだな。もっともピット自身もそこまで本気出してねぇだろうがな。」

テゾーロはそう言って残った酒をグイッと飲み干しその様子を見る。

「そうね。まだシュガーはピットを拘束出来るだけの何かを完璧に持ってない中スーロン化したピットと一対一はちょっと厳しいんじゃないかしら。ただでさえ最近はピットの方が力をつけている感じがするもの。」

テゾーロの意見に賛成を唱えモネはテゾーロの横に腰を下ろし、側で寝転がるポチの頭を撫ぜる。

「まぁ、それもそうだな。あいつはミンク族だしな。シュガーについてはそこが今後の課題ではあるな。」

テゾーロもその意見には若干同意見なのか頷き、ポケットからタバコを取りだし口に咥える。

それを見たモネは胸からライターを取り出し彼のタバコに火をつける。

「ありがとな。おっ、終わったみたいだな。」

テゾーロが再びシュガー達に目を向けると白眼を向き顔面がボコボコになり気絶したピットと、その上に馬乗りになり左手は血に染まり肩で息をしたシュガーがいた。

「シュガー、モネお疲れさん。悪りぃが2人ともピットの手当て頼むわ。俺は寝る。明日ピットが起きたら反省会だ。」

事の次第が終わったと判断したテゾーロはその場から立ち上がりポチを連れて男部屋へと戻っていく。

「ねえ。モネ。」

「なに?シュガー??」

「あの、クソ狼、メスよね?なんでいつもさり気なくテゾーロと一緒に寝るの?」

「さぁ〜?まあ犬だしいいんじゃないかしら?」

「いいえ、許さないわ、いつかコロス。」

「もう〜。シュガーったらポチにもヤキモチ?可愛い〜!!!」

モネは思う。ポチよりもシュガーの方がよっぽど狂犬だと。

 

そして当然のように彼女らはピットの手当てをすることなく三層の自室へと戻っていった。

 



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第21話 ジャヤという島

「着いたあああああああ!!!ゲロロロロロ!!」

「ちょっと!!こんなとこだ吐かないでよ!!気持ち悪い。死ねば?」

「あぁ、シュガーお姉様の罵詈雑言♡すて・・・オロロロロロロロ!」

現在テゾーロ一行はやっと目的地であるジャヤに到着していた。

距離はそこまで遠くはなかった。

ウォーターセブンから出航して2週間。

襲撃してくる海賊を返り討ちにして10回。

トムの懸念は完全に当たっていたが、それらは難なくテゾーロ達は打ちはらいここ、ジャヤへ着いていた。

(もっと)もピットは常に船酔いしておりほとんど役に立っては居なかったが。

「しかし、治安が悪いわね。ここは。」

甲板から港を見下ろしモネが呟く。

港にはガラの悪い男たち。身なりだけでわかる。海賊達がこちらの船を品定めをするべく無遠慮な視線を送る。

きっとここでも一波乱、一悶着が起こるだろうことにテゾーロは内心ワクワクしていた。

ここまでの道中で海賊から金銀財宝を奪うこと幾数回。その小金稼ぎは既に立派な資金になりつつある。金はいくらあっても足りないのだ。

「とりあえずどうせだしな、ここで情報を集めつつ観光でもするか!」

「応っ!」

テゾーロの声に一同が賛成の声をあげた。

「とりあえず留守番役はピットでいいんじゃないかしら?」

モネがピットの様子をみてテゾーロ達に提案する。

確かに現在ピットは船がやっと港に停泊したことに安堵の声を出したが、今も船酔いでオロオロと海へ嘔吐している。

「そうだな。それと一応ポチも留守番頼めるか?」

「ワンッ!」

テゾーロはポチの頭を撫で3人へ情報収集のため港へと歩を進める。

「じゃあ、まずは酒場だな。情報収集は酒場だと相場が決まっている。」

テゾーロは意気揚々と先頭を歩き、その様子を見た姉妹がテゾーロの珍しいテンションの上がり具合に微笑んだ。

 

 

「空島だぁ?ギャハハハハハハハ!!!!!」テゾーロの問いに酒場が爆笑を包み込む。

「バカかよ!おめぇ!良い歳して空島なんて伝説信じてんのかよ!!!」

「ギャハハハハハハハ!子守しながら海賊業で行き先は空島だってよ!!!もう少し現実見ろや。お坊ちゃん!」

「違いねぇ!ガハハハ!!!」

酒場の男達が口々にテゾーロ達を笑う。

内心テゾーロは(おーっとこの流れ漫画で見たぞ。夢を笑われてルフィは喧嘩を買わなかったな。)

「うるせぇ。」ドンッ!!!

テゾーロが覇王色の覇気を発動すると酒場の男達が1人を除いて全員が気絶した。

「まぁ、笑うってことは知らねーってことだろ。それに誰も喧嘩を買わないなんて言ってねぇぞ。」

テゾーロは身近に倒れた奴の髪を無理やり引っ張り顔を上げさす。

全員が泡を吹いており髪を乱暴に引っ張っても反応することはない。

「テゾーロ。こいつら殺していい?」

シュガーが額に青筋を浮かべテゾーロに許可を求める。どうやら、子守=自分が子供だとでも思ったのだろう。

「放っておけ、こんな雑魚ども。」

テゾーロの言葉にシュガーは「分かった」と一言だけ言うと身近に倒れている男の顔面を蹴飛ばす。

(あ、だめだ。コイツァ聞いてねぇわ。)

テゾーロがシュガーのその様子を見て思いつつモネを見るとモネはそんなシュガーを見つめていた。

その目は別にシュガーを咎めること意思はなく。ただ妹を見守る慈愛に満ちた目つきだ。

 

「おぃおぃ。兄ちゃん。覇王色の覇気なんて使えるんか。こんな偉大なる航路(グランドライン)の前半側で会えるなんて、お兄ちゃん何者だ?」

先程から一人、カウンターで酒を飲んで、テゾーロの覇王色にも耐えきった髪型が特徴的な男が椅子を後ろに回しテゾーロに話しかける。

(まぢかよ。)

テゾーロはその人物の顔を見て驚愕する。

独特の茶色いリーゼント。どこか制服感漂うコック服のような服に腰には剣を差している。

原作でも2、3度しか登場したことがない人物。白ひげ海賊団4番隊隊長サッチである。

「アンタも空島のこと笑うか?」

テゾーロは内心の同様を周囲に悟られないように平静を務めサッチと思わしき男に問う。

「いいや。俺は笑わねぇよ。行けるといいな。」

男はテゾーロの意見に人懐っこい笑顔を浮かべ、カウンターの横の席に手を指す。

「良かったら座りな。俺がなんか作ってやるからいろいろアンタ達の事聞かせてくれねぇか。興味が湧いた。」

テゾーロは彼の言葉に甘えてカウンターに座るのを確認すると男は「よっ。」と言ってカウンターを飛び越えマスター側に移動した。

「それじゃあ、まずレディたちから注文を。」

男がシュガーとモネに「何が食べたい?」と聞く。

「私はなんでもいいわ。任せる。」

「・・・オムライス。」

ズキューーーン!!(モネの心臓がシュガーの可愛さに撃ち抜かれた音である)

「あいよ。任せてくれ!それでそこの兄ちゃんはどうするよ?」

「俺もアンタに任せるよ。」

テゾーロの言葉に男は頷きおもむろに料理を始める。

「ところでアンタはこの店の店主か?手際良いように感じるが。」

テゾーロが対面に立ち、シュガーのオムライスを作る為だろうか。卵を溶いでいる男に尋ねる。

「いや、俺は海賊船でコックをしてる。尤も、この島は海賊の島とも言えるしここの店主はお前が気絶させちまっただろ?」

男は彼の足元で泡を吹いて寝転がる店主らしき人物を顎でクイッと指す。

「ところでオタクら何者だい?

グランドラインの前半に覇王色の覇気を自在に操る男に美少女が2人。

いささか、前半の海には相応しくないように俺は感じるが。」

男の料理の手際は非常に良い、会話しながらでもその手は止まらず、絶えず流麗に動く。

「何者と言われてもな。

俺はテゾーロ。こっちがモネにシュガーだ。一応海賊をしている。」

テゾーロが二人を紹介すると男が、

「テゾーロに、モネにシュガーちゃんね。

シュガーちゃん、ちょっと待っててね。今作ってるから。」

とまるで子供をあやすように彼女に声をかける。

「いいから、早く作って。」

一瞬、テゾーロとモネはシュガーが怒るかと思ったが、現在の彼女は怒るよりも食い気の方が強いらしい。

スプーンを握りしめ、彼の手つきを若干キラキラとした目で見ながらオムライスを待つ。

「オッケー。オッケー!それならこれで完成だッ!」

男がフライパンで三つのオムレツを作りそれぞれを宙へと放る。

そして、その落下地点に炒めたケチャップライスを置きオムレツをキャッチした。

オムレツはケチャップライスにぶつかった瞬間、その楕円形の形を崩し半熟のオムライスの出来上がりだ。

「うわぁ〜!!!」

シュガーが目を星にさせ驚いていた。

「おまかせって全部オムライスかよ。」

テゾーロが苦笑いを浮かべ男を見ながら呟くと男は「手間は少ない方がいいだろ。」と笑みを浮かべそれぞれの皿を目の前に置いていく。

「まあ、食べてくれ。俺特製のオムライスだ。味は保証する。」

「なら、いただきます。」

「いただきます。」

「いただきま・・・した!!おかわり!」

「いや、早ぇよ!!!!」

シュガーがいただきますと同時にそのオムライスを口に掻き込み瞬時に平らげ、思わず男は彼女に突っ込む。

シュガーの口はいたるところにオムライスのカケラが付いてるのを見て、モネはポケットからハンカチを取り出し彼女の口をそっと拭った。

「オッケー!オッケー!なら次はハンバーグでも作ってやるか!」

しかし、瞬時に平らげた様を見てご満悦なのか、男は微笑み店の冷蔵庫からミンチ肉を取り出しコネ始めた。

「んで、アンタの名前は?」

テゾーロはスプーンを手に持ちオムライスを口に運ぶ前に男に尋ねた。

「あぁ。俺はサッ「ウマッ!!!!!!!!!・・・聞けよ!!!いや、嬉しいけども!!」

男が名乗り終える前にテゾーロはオムライスを口に運び思わず感想が口から漏れる。

「いや、美味いってもんじゃねぇ!美味すぎるぞ!!これ!!」

テゾーロがオムライスの感想を述べると横にいたシュガーは首を激しく上下させその美味しさに同感し、モネも「ほんとに。美味しいわね。手順は普通だったのに。」と言葉を述べる。

「それはな。俺の愛情が詰まってるからだ。料理は愛情だ。」

男は胸を張りドヤ顔をするが、その肉をコネる手は止まることはない。

「それで、サッ?さんて言ったか?」

「いや!サッチだわ!!!」

テゾーロのボケにサッチと名乗った男は突っ込む。

「サッチ!わたし達の仲間になって!」

珍しくテンションが爆上がりのシュガーがサッチを勧誘するが、サッチは首を横に振った。

「わりぃな。シュガーちゃん。俺は既に海賊の船に乗ってる。白ひげ海賊団って言うんだ。お前たちも知ってるだろ?」

サッチは手に持ったハンバーグをフライパンで焼き始め、彼らを見る。

「知らないわ。」

「知らない。」

「知らねぇな。」

3人が順にサッチに伝える。テゾーロはあくまで空気を読んだだけだが。

「知らねぇのかよ!!いや、いま海賊王に一番近いと呼ばれている男だぜ?!白ひげは!俺はその海賊団の4番隊隊長兼コックなんだが・・・。ホントに知らねぇのか?」

サッチは驚きで目を見開き彼らを見る。

「知らないわ。それにわたし達はついこの間海賊になっただけだし。」

モネが代表して答える。

「それに、わたし海賊王とか興味ないし。」

それにシュガーが代表して答えるが、それについてはテゾーロも同意見である。

別に海賊王になりたくて海賊になったわけではない。いつか天竜人を根絶やしにすることが目標であのジョリーロジャーを船に掲げただけだ。

「海賊王に興味ないのに海賊になったのか?なんで?」

サッチは3人に問う。

「いろいろ。」

それをシュガーが答えて暗にその話を終わらせる。

「まあ、それぞれ事情があるか。わりぃな。変に詮索するような真似して。

ほらよ。ハンバーグだ。」

サッチは焼き終えたハンバーグを各自の皿に盛り彼らに謝った。

「いただきます!」

シュガーがすぐさまそれを平らげ美味しさに顔を綻ばせる。

それを見たテゾーロとモネもハンバーグを一口切り口に運んだ。

「これもめちゃくちゃ美味いな。サッチ。俺たちの仲間になれよ。」

テゾーロもあまりの料理の上手さに彼を勧誘するがサッチは「だから無理だって。」と苦笑いを浮かべ誘いを断った。

 

「それで、あんたら空島へ行きてぇんだってな。」

サッチがカウンターから身を乗り出しテゾーロの顔を見つめる。

「あぁ。ジャヤから突き上げる海流(ノックアップストリーム)に乗って行こうかと思っている。」

「急ぐのか?」

「分かるか?」

「あぁ。大抵の奴はそれを選ばずもう一つのルートで空島に向かう。

それに突き上げる海流で空島に行こうなんて博打も良いところだ。」

サッチはニヤリと笑う。

「まあ、決めたことだ。それに恐らくそれが一番早いだろ?」

「まあ、あんたらがどっから来たか詮索はしないが、たしかにジャヤからなら明らかに突き上げる海流が一番早いわな。」

「何か情報を知らねぇか?突き上げる海流を研究している奴とか?」

「まあ、俺らもつい先日この島に着いたばかりだ。でもこの前酒場で面白い噂を聞いた。

どうやらこの島の端に変わり者がいるらしい。そいつはどうやら黄金都市を探していると聞く。」

サッチがニヤリと笑う。

彼も恐らくテゾーロ達の狙いが分かったのだろう。空島に行く奴は大体が冒険を目指すか、はたまた目指すのは黄金だ。

「なるほど。ならそいつに会えば多少は分かるかもしれねぇな。ありがとさん。サッチ。俺らはもう行くわ。」

テゾーロ達はサッチに礼を言うと席を立つ。

「サッチ。気が変わったら私たちの船に来て。歓迎する。」

シュガーが淡々とサッチに話しかける。

「だから無理だって。それにな俺たちは白ひげの旦那にある種、惚れてんだ。お前らこそ、俺の飯食いたきゃぁ白ひげ海賊団に入れよ!歓迎するぜ?」

サッチが逆にテゾーロたちを勧誘するもそれはテゾーロが首を横に振り断った。

「わりぃけど今は誰の下にもつくつもりはねぇんだ。悪ぃな。」

「気にすんな。そうだろうと思ったし、言ってみただけさ。」

サッチは手をヒラヒラとさせる。

「それと美味い飯ありがとな!また食わせてくれよ。」

「また会った時にでも食わせてやるよ。」

お互い笑い合い握手をガッシリとし感謝を告げた。

「あ、それと白ひげ海賊団にケンカなんて売るんじゃねぇぞ?」

サッチがニヤリと笑うが、それについてはテゾーロは(フラグか?)と考えたがすぐに切り替え「気をつける。」とだけ伝えて彼らは酒場を後にした。

「テゾーロ。ポチとピットにお土産買っていく。」

酒場を後にし港に戻る道すがら屋台を見つけたシュガーがテゾーロの服を掴み屋台を指差す。

「あぁ。そう言えば忘れてたな。好きに買ってこい。シュガーの分も買った来ていいぞ。」

テゾーロはシュガーに10000ベリーほどを渡しそれを受け取ったシュガーは小走りで屋台へと走る。

「なんだかんだ言ってあの子も優しいわね。」

モネがシュガーの後ろ姿を微笑ましく見つめ笑う。

「まあな。しかしたまにシュガーは本当にモネと同い年か疑問に思う時があるがな。」

「テゾーロ。それは絶対にシュガーの前で言っちゃダメよ?」

モネが彼の顔の前に指を一本、立て「メッ!」とテゾーロに注意する。

「あぁ。それはもちろん分かってる。」

テゾーロもそんなモネの行動に微笑む。

「まあ、もしかしたら身体が成長しないから精神も少しではあるけどそっちに影響されてしまうとかではないかしら?」

モネも「う〜ん。」と腕を組み考え込む。

「テゾーロ。ありがと。」

しばらく二人で悶々と考えていたらどうやら屋台での買い物を終えたのであろう。

シュガーは既に口にいくらかの食料を詰め込みモグモグとしながら両手にも沢山の食料を抱えている。

「おう。なら返ってピットの奴にも食わせるか。」

「ちょっとだけね。あとはわたしとポチの分も。」

シュガーの宣言にテゾーロは彼女の頭に手を置き微笑んだ。

 

 

「ゼハハハハハッ!にしてもさっきのうさぎ野郎無駄に強かったぜ!まあ、それ以上に沢山、黄金を蓄えたやがった!得したな!!ぜハハハハハ!」

テゾーロ達がゴールデン・ウルフ号に近づいてきた道中。目の前の巨体な男の話し声が耳に入った。

「流石ティーチさんだぜ!!いつか白ひげ海賊団の船長になる男!こんなとこでも運が良い!」

「ゼハハハハ!いつかな!いつか!それよりもとりあえずは今日はこれで酒も女も買うぞ!宴だァーッ!!!」

「「「イエェェーイ!!!」」」

ティーチと呼ばれた巨体な男が腕を一杯に抱えた財宝の一欠片を側にいた恐らく手下衆の者達に投げると彼らはそれに呼応するかのように雄叫びをあげる。

「モネ。シュガー。船に戻ってピットとポチを見てきてくれ。」

「えぇ。分かったわ。」

「分かった。」

テゾーロに向かって二人は頷き急いで船へと走る。

「おい。おっさん。」

「ゼハハハハハ!!!・・・ん?なんだお前?俺の金が欲しいのか?ゼハハハハハ!!悪りぃがヨソ当たってくれ!俺たちはこれから忙しい!なぁ!野郎共!!」

「「「応ッ!!」」」

テゾーロがティーチに話かけるがティーチはそれに顔だから向け、「これから酒場に行くんだ、忙しいからさったとどっか行け」と伝え港とは逆の方へと歩を進める。

「おい。今すぐ止まれ。」

テゾーロが覇王色の覇気を、酒場で出した覇気より3割増しぐらいの威圧をティーチら一行に放つ。

ドンッ!!!!

周囲の空気が突然冷たく、そして重たくなる。

ティーチを囲うようにいた取り巻きがその場で意識を刈り取り地面へと倒れた。

「おいおい、今日で2回も覇王色にあっちまったが、お前、あの狼とうさぎの仲間か?」

ティーチは後ろを振り向きテゾーロを視界に入れる。

「どうやら人違いじゃ無さそうだな。テメエ、ピットとポチに何をした?!?答えろ!」

テゾーロがティーチを射殺すと言わんばかりの殺気を覇王色に乗せて覇気を出す。

「グッ!?おいおい!!ここまでとは!!!お前バケモノか?!ゼハハ・・ッ!?」

ボキャッ!

さっきまでテゾーロを見ていたはずのティーチは瞬時にその場から姿を消したテゾーロに驚愕した次の瞬間テゾーロの右ストレートがティーチ頬に炸裂し、鈍い音を出す。

ティーチはそのまま後方に吹っ飛び地面を何度か転がりやがて仰向けで止まるがそれを待ってたかのようにテゾーロがすぐ様その距離を詰めティーチの胸元に座り込みもう一発覇気を纏い、更に能力で黄金に包まれた拳を振り下ろす。

黄金爆(ゴオン・ボンバ)ッ!!!」

ドガアアアアアアアンッ!!!

テゾーロの拳がティーチの口元に直撃し、そこから爆発発生する。

「おい。答えろ。」

ティーチの口元はその衝撃で何本か歯が飛ぶがテゾーロは御構い無しに彼の襟袖を掴み揺り起こす。

「オバエッ!おれざまがだれがばがっで「答えろよ。」ッ!!!!」

テゾーロが再びティーチの顔に拳を振り下ろし彼の顔で小爆発が起こる。

「ば、ばがっだ!!!ばがりまじた!!!だがらはなじで!はなじてくだ「早く。」」

更にもう一発。

ティーチの顔は至る所から血を流し、既に歯はある本数を数えた方が早くなっていた。

「み、びなとにどまるぶねがらおうごんをどりました!!!!ぞ、ぞのとき船番で体調わるしょうにじてだうさぎ野郎がはんごうじでぎたので返り討ちにじて狼も同じくお、俺が、いやわたじが返り討ちにじて黄金をどりまじた!!ずびばぜん!!!」

「あっそ。もういい。死ね。」

テゾーロが指輪の黄金を剣に変え、その切っ先をティーチに向け脳天を貫こうとし力を入れる。

「おいおい。兄ちゃん、辞めるよい。ソイツァ俺らの船の仲間だよい。」

テゾーロが力を込め剣をティーチの脳天に刺しこもうとした時彼の腕を掴み動かせまいとする存在が現れた。

「ば、バルゴ!!ダズゲテぐれ!!」

ティーチがその人物の名を告げ助けを求める。

「あ?なんだテメェ。邪魔するならテメェも殺すぞ?」

テゾーロはバルゴ(恐らくマルコだが)と呼ばれた男を睨み付けるが、マルコはどこ吹く風の態度でそれを受け流す。しかし、その手はテゾーロの腕をがっしりと捕まえこれ以上進ませないようにしていた。

「事情は分からないが、詳しく教えてくれよい。

うちのティーチが何かしたかよい?」

「詳しくはこの歯抜けに聞け。ただこいつは先に俺の仲間に手を出し、あまつさえうちの財宝を奪おうとしたやつだ。海賊が海賊の財宝狙って逆に返り討ちにあったとしても文句言えねぇだろ?」

テゾーロの言葉にマルコは黙って未だにテゾーロに押さえつけられ地面に寝転がるティーチを見る。

「ティーチ、ホントかよぃ。この兄ちゃんが言ってることは。」

「あぁ!ぼんどうだ!!だが!ごうなるとは思っていながった!!!」

「後から後悔しても遅ェよ。死んで詫びやがれ。」

テゾーロはティーチを抑えたいた手の指を立てティーチの胸元に指を指す。

指銃(シガン)。」

「あ゛ああああああああ!!!!!!」

その余りの痛みにティーチが声を上げる。

当然だ。テゾーロの指を5本が彼の胸元に現在第一関節まで挿入されている。

「だから落ち着けって言ってるよいッ!!!!」

テゾーロの変わらぬ態度に業を煮やしたマルコが彼に向けて蹴りを放つ。それ蹴りは脚に青色の炎を灯していた。

「チッ!!」

テゾーロは思わず舌打ちをしてティーチから離れその蹴りを交わす。

「まずは話し合いだよぃ!」

マルコはファイティングポーズ取ってテゾーロに怒鳴るが、テゾーロはこれ以上関わりあうべきでは無いと考えたのか「話すことはない。そこのクソ野郎にでも聞け。」とマルコに伝えるとその場から船へと歩き出す。

「あ、それとそこの財宝は全部返してもらうぞ。」

テゾーロが指をヒュイっと上に上げると地面に散らばっていた黄金が宙に浮かびそしてテゾーロの腕に吸い付き、やがてそれは金の腕輪に変わる。

 

「待つよい!!!まだ話は終わってないよい!」

マルコはテゾーロに向かって叫ぶと彼は「行き先はサッチって奴にでも聞け。文句があればいつでも相手になってやる。」とだけ言い残すとその後は全てマルコの問いを無視し、船へと歩く。

マルコも詳しくは一度ティーチに聞いてからと考え、テゾーロに対してこれ以上の深追いをやめ、ティーチを一度船に戻そうと彼を起こし、船へ向かう。

彼らの船長(父親)がいるモビーディック号へ。

 

 

 

 




フラグ早速回収ですね。 次回、白ひげ登場!!


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第22話 白ヒゲ海賊団

「そりゃあお前ェが悪りぃだろうが。」

「親父!!!」

「ガタガタうるせぇよ。ティーチ。お前ぇ、親父の言うことに反発すんのか?」

親父と呼ばれたティーチより更に巨体の筋骨隆々の男がティーチを睨む。

 

エドワード・ニューゲート。

海賊王ロジャーが存命の時からの大海賊。

現在既に十隊の海賊団を組織し、尚且つ傘下の海賊団が20。

グラグラの実の地震を操りし天災級の指名手配犯。

現在、もっとも海賊王に近いとされる男。

 

「しかしよぃ、親父。いくらティーチとはいえ、コイツをここまでボコボコに出来る実力なんて、かなりヤバイやつだよい。ティーチの実力はともかく、こいつのタフさは目を見張るものがある。それを一方的に攻撃できるなんてよい。」

白ひげの横で酒を飲むマルコが今日、会った男についての警戒度を白ひげに諭す。

「グララララ!!しかも、ティーチ。お前ェが言うには覇王色持ちだってな。何が目的でこんな前半の海に来たのかしらねぇが確かにここじゃ不相応か!ソイツァ名はなんて?」

「知らねぇよい。聞く前に行っちまったよい。」

マルコが首を振ると横から声がかかる。

「そりゃあ、恐らくテゾーロってやつかもしれねぇぜ。親父。

俺はさっき酒場で少しそいつと話した。」

サッチが白ひげに、恐らくだがテゾーロの名を告げる。

「まあ、間違いねぇと思うがな。ソイツは覇王色持ちだろ?俺が酒場であったやつも覇王色持ちだったぜ。しかもアレは恐らく親父と同じくらいの覇王色だと思うぜ。」

そう言うとサッチは手に持った酒をグイッとあおった。

「グラララ!それは面白いじゃねぇか!で、ソイツァどこに行ったんだ?」

「そうだ!!そのテゾーロってやつサッチに聞けば居場所分かるって行ってたよい!」

「ん?あいつか。恐らくこの島の端。変わり者。あのモンブラン・クリケットに会いに行ったはずだぜ。」

サッチはテゾーロの居場所を彼らに伝える白ひげは「グララララ!」と笑った。

「あの嘘つきノーランドの子孫か!グララララ。ソイツに目をつけるとは面白い。サッチ、お前ェが誘導したんだろ?」

白ひげの言葉にサッチはニヤリと笑い一言白ひげに伝える。

「ただの善意だ。あいつはきっと面白い男になる。連れの嬢ちゃんたちもな。」

「グララララ!!お前ェがそこまで評価する奴ァ久しぶりじゃねぇーか!なら、いっぺん挨拶に行かねぇとな!!お前ぇら!!!準備しろ!出航だァッ!!」

「「「応ッ!!」」」

白ひげの声に船員が慌ただしく動き出す。

「グララララ!面白ぇことになりそうだ!グラララ!!!」

 

場面は少し遡り、ゴールデン・ウルフ号。船医室。

現在金狼の海賊団(もっとも内訳はテゾーロ、モネ、シュガーに現在包帯を巻かれ寝ているピットとポチの4人と一匹だが)はその船医室に全員が集まっている。

ポチは胴体を綺麗に包帯が巻かれており表情も現在は優れスヤスヤと寝ている。

テゾーロが室内に入った当初起き上がろうとしたが、彼がポチの首もとに手を入れ撫でると安心したのか、その場で眠りにつく。

綺麗に包帯が巻かれたポチとは対照的にピットは乱暴とは言えないがとりあえず適当に包帯巻いておけばなんとかなるやろ!って勢いでぐるぐる巻きにされちょっとしたミイラが完成していた。

「あれは、シュガーが?」

テゾーロは隣にいたモネに小声で声をかける。

「えぇ。なんだかんだ言って一番気にかけてるのはあの子だからね。」

モネもテゾーロに対しシュガーに聞こえないように小声で話す。

目の前のシュガーは既に看病に飽きたのか、ソファに腰掛け眠っている。

「後でちゃんと手当頼む。」 テゾーロがモネにそう言うと彼女は頷いた。

「さてと。ピット。大丈夫か?」

テゾーロはピットのベッドの横に移動し、彼の頭を撫でる。

「テ、テゾーロさん。あのクソジジイ必ずブチ殺す。」

「あぁ。大丈夫そうだな。とりあえず今からちょっと出航する。お前はお土産でも食って体力付けろ。必ず再戦させてやるから。」

「あ、お土産はもうシュガーが全部食べちゃったわよ?慣れない看病して疲れたみたい。」

「まぢか!!!!僕のは!?!?まぢか!!!でもこれも放置プレイ♡!こんなケガ人の僕の食料を食べる新手のSプレイですね!シュガーお姉様!!」

よかった。どうやら、いつも通りだと安心するモネとテゾーロ。

「まあ、そこまでお前を傷つけたのはティーチって言うやつだけどな。」

テゾーロはピットに襲撃の犯人の名を告げるとピットは思い出した!と言わんばかりの顔をした。

「そうだ!!!とりあえずあのクソ親父必ずぶち殺す!!はじめに歯全部折ってやって指も一本一本へし折ってやる!!くそ!!!クソが!!クソがああああああ!!!!」

よっぽどティーチにやられたことが悔しいのかその後もピットの罵倒は続くが、聞くに耐えない言葉の連続であったためテゾーロは船医室を出て管制室へと向かう。

目指すは島の端。モンブラン・クリケットに会う。その後は白ひげにでも挨拶に行くか。

今後のことを考えるとワクワクしてきてしまうテゾーロはその興奮を隠す為か高速で船を起動させた。

 

「なんだテメェ?」

現在テゾーロは島の端、変わり者が住む場所と言われるところに船を停め、突き上げる海流で半分にされた家の前で絡まれていた。

(まあ、当然変わり者って言やぁ、モンブラン・クリケットしかおらんよな。)と内心思うテゾーロであった。

「俺はテゾーロ。一応海賊をやってる。」

「誰かなんて聞いてねぇ。何しに来やがったんだって聞いてんだ馬鹿野郎。」

クリケットはテゾーロに対し独特の構えを取り戦闘態勢を整える。

「おいおい、別に俺はアンタと喧嘩するために来たわけじゃねぇよ。単純に突き上げる海流(ノックアップストリーム)の発生パターンを教えてくれねぇかと思って来ただけだ。」

テゾーロはクリケットに対し戦闘の意思はなくその目的を伝えるが未だに構えをとったままのクリケット。

「突き上げる海流の発生パターン?そんなもの教えて俺になんの得がある?」

クリケットがジリジリとすり足でテゾーロの距離を詰めながら言った。

「得か。それなら教えてくれたら俺が空島で、シャンドラの灯を灯してやるよ。」

テゾーロも彼との距離を詰めるべく歩を進める。

「テメェ、何者だ?空に島があるなんて信じてんのか?そんな馬鹿みてぇなおとぎ話を。」

「おとぎ話?誰も空に島が無いなんて証明できたこと無い話だぞ?おとぎ話と断じるには早ェだろ。

アンタには迷惑はかけねぇよ。そこらへんにいる若造が突き上げる海流の乗って空を飛びたいって言ってるだけだ。

それに万が一上手くいけばその伝説が本当にあったことの証明になる。だから教えてくれ。」

「ガハハハハ!!テメェは全く何者だ!!まあ良いだろう。こっちに来な。」

クリケットはそう言うと海岸へと歩を進めテゾーロもそれに従う。

やがて海岸で止まるとクリケットは南を指さした。

「俺の勘だが突き上げる海流には確かにパターンがある!だがそれがどうしてそのパターンなのかはまだ解明できていない。それに空島があるとすればそれは積帝雲の上だと俺は思う!」

「まあ、まず間違いねぇだろうよ。他の雲ならきっと落ちるだろう。」

テゾーロがクリケットの意見に賛同する。もっとも賛同するもなにもテゾーロは知っているのだが。

「あぁ。それでだ。恐らくだが明日海は荒れる。そして空も荒れる。これは突き上げる海流と積帝雲が近づいている前兆だと思う!そして恐らくだが明日の突き上げる海流はここから南に真っすぐ行った4㎞進んだポイントで発生するはずだ。そして丁度その時真上には積帝雲も来ているだろう。」

「全く、整えられたようなタイミングね。」

シュガーがボソリとつぶやく。

確かにその通りだとテゾーロも思う。

まるでどこかの原作主人公ではないか。しかし今更それを気にしても仕方ない。ウォーターセブンで大口を切ってしまったからにはもう止まれないのだ。

「全くね。」

モネもテゾーロやシュガーと同じことを思ったのだろう。同意とばかりに頷く。

「そこでだ、いまからでもサウスバードを捕まえてくる必要がある。ん?おいおい。なんかとんでもなくデケェ船がこっちに来るぞ?」

クリケットが指で輪っかを作りそれを海に向けて覗き込む。

テゾーロもそれを習い海へと目を向ける。

「あぁ。恐らく俺の客だ。モネ、いますぐ船に戻ってピットとポチを起こせ。喧嘩だ。」

テゾーロはニヤリと笑いここに近づく船をもう一度みる。

間違いない。あれはモビーディック号。白ひげ海賊団の海賊船だ。

 

「オメェがテゾーロか。息子(ティーチ)が世話になったみてぇだな!」

「ティーチ?誰だそれ?あの歯抜け野郎のことか?」

「お前が殴ったからだろうが!!!みろよ!俺の歯を!!!もう奥歯しか残ってねぇじゃねえか!!!!」

現在テゾーロは海岸に停まるモビーディック号の船首に立つ白ひげほか隊長格とティーチを見上げている。もちろんそこには四番隊船長のサッチもいた。

テゾーロの他にもモネとシュガー、ポチとピット加えてクリケットもいるが。

「かえって、2枚目になったんだ。感謝してくれ。」

テゾーロの言葉に金狼海賊団はクスクスと笑う。

「小僧!!!いくらティーチが悪いと言ってもこいつは俺の息子だ!息子をここまでされて俺は黙っちゃいねぇぞ!!」

白ひげが船首から覇王色の覇気をのせて恫喝する。

クリケットはその覇気にあてたれ若干たじろぐも、テゾーロ達は何食わぬ顔で白ひげを見る。

(クリケットすげぇ。耐えた!!!)

テゾーロは内心思うが顔には出さない。

「あっそ。だから?」

シュガーが、大きな声ではないが白ひげに答える。その顔は心底どうでもいいような表情をしている。

「小娘に言ってんじゃねぇよ!オメェは引っ込んでな!」

「あ゛ぁ?!」

(やっちまった。)

白ひげが地雷を踏見込んだ瞬間モネとテゾーロは頭を抱えた。

(これで平和的解決は無理だな)と二人が思った瞬間には時すでに遅し、シュガーが横にいたピットの首元を掴み白ひげに向かって全速力で投げつける。

「えっ!?えぇぇぇーーー!!!!?!?」

ピットが驚きの声を上げるが既に彼は空の人となりミサイルが如く白ひげに向かい飛翔する。

「こうなっちまったら仕方ねぇ!!!おっさんが誰か知らねぇが死ねぇ!!!!黒色爆(ブラック・ゴオン)ッ!!!」

ピットがすぐさま切り替え腕を武装色で包み白ひげに向かい拳を放つ。

「邪魔だ!ハナッタレ!!!」

白ひげが手に持つ巨大な薙刀の側面でピットを打ち払った。

「ピギャッ!!!」

薙刀がピットの顔面に入り込みピットは再び空へと飛んだ。

「小僧共!全員で掛かって来やがれ!!俺ァが相手だ!!!!」

白ひげの今までにない大音量での咆哮を上げると島の森にいた鳥達が騒がしく鳴き空へと避難するべく飛び上がる。

「テゾーロ!あれ!!!」

そんな白ひげはなんのその、モネが飛び上がる鳥にサウスバードを目敏く見つけテゾーロに教える。

先ほど、クリケットが見せてくれた黄金の鳥の増加がすぐさま役に立つとは。テゾーロがニヤリと笑い飛び上がったサウスバードに向かって己の能力を発動する。

黄金鞭(ゴオン・ウィップ)。」

テゾーロの指輪にはめられた黄金がすぐさま鞭のような触手に変わりサウスバードへと伸びた。

「ジョー!ジョジョジョーーーーーー!!!!」

サウスバードが己の身の危険を悟ったのか声をあげるがその触手はやがてその鳥の足を掴みテゾーロの元へと引き寄せられる。

「はい。ありがとよ。オッサン。探す手間が省けた。」

テゾーロはサウスバードの足を手で掴むと、それをクリケットに渡し、「あんたは家でコイツと避難してくれ」と伝えるとクリケットも黙って頷きサウスバードを抱え家へと走る。

 

「小僧!!!舐めやがって!!!!!!」

白ひげがその様子を見て額に青筋を浮かべた。

「舐めてんのはどっちだ!?アンタの方だろ!全員だと!?ピット!!!いつまで飛んでやがる!あの歯抜け野郎をぶっ飛ばせ!!!」

テゾーロは未だ空を飛翔するピットに喝を入れる。

「ぶっ飛ばしたいけど止めてえええええ!!!」

「たくっ!世話が焼ける!!!」

テゾーロはその場から月歩を使い空を蹴り上げさらに黄金の触手を伸ばしピットを捕まえる。」

「ありがとうございます!テゾーロさん!」

ピットは触手に捕らわれながらテゾーロに礼を述べる。

「んじゃあ、もういっちょ行ってくれ。」

「ヘッ?!」

ピットが、情けない声を出すがテゾーロは既に投球フォームに移っており、おおよそであるがティーチに向かってピットを投げつけた。

「もう嫌。この一味。いくらドMでももう嫌あああああああ!!!!」

ピットが再び叫びながら今度はティーチに向かって飛翔する。

「おい!歯抜け!!!もう一度そいつと勝負しやがれ!!それで勝ったら許してやるよ!!!」

テゾーロがティーチに向かって挑発するとティーチも容易くそれに乗る。

「受けてヤラァっ!!!そんなゲロゲロ吐くしかねぇミンク族、もう一度ボコボコにしてやるぜ!ゼハハハハ!!!!」

ティーチがその出っ張った腹のベルトに差し込んだピストルを取り出し構える。

「おい。これクソデブ。どこ見てんだ?!あぁん?!」

飛翔するピットに向かって銃口を向けたティーチの後方に先程から飛んで来ていたウサギの声が聞こえた。

「ウサギ舐めんなや!!クソボケェェェェェ!!!!!」

ピットが彼の横腹目掛け渾身のストレートを放つ。その小さい背丈からは想像できない驚異的な一撃。

その拳はティーチの肉にめりこみ更にティーチの骨へとめり込む。芯に捉えた的確な狂拳。

ティーチはその衝撃に耐えられず、先程から立っていた船首から地面へと吹き飛ばされる。

「ほぅ。あのハナッタレども。海軍の月歩を使うか。グララララ。」

白ひげがピットが一瞬にして消えたトリックを解き明かし、「面白ぇ。」と呟く。

「サッチ。」

ピットが地面へと飛ぶティーチを追うためモビーディック号から飛び降りた時シュガーが頭上のサッチに声をかける。

()ろ。」

サッチがその声に気が付きシュガーを見るとシュガーは冷たく笑いサッチを誘う。

彼は白ヒゲの顔を見ると白ヒゲが頷いたため、サッチは船首から飛び降りた。

「悪りぃがシュガーちゃん。親父の手前、あまり手加減は出来ねぇぜ。」

サッチは見事に海岸に着地すると己の腰に挿した剣を抜く。

「別にいい。私が勝ったら私たちの仲間になって。それでオムライスいっぱい作って。」

「いや、シュガーちゃんが勝っても仲間にはならねぇがこの喧嘩が終わったら飯ぐらい作ってやるよ。」

サッチはシュガーの言葉に苦笑いを浮かべ剣を構える。

シュガーもそれに呼応するようにサッチの元へと走り寄る。

 

「それで私の相手は誰かしら?」

モネは能力で腕を雪で翼へと変化させ空中へと飛び上がりモビーディック号を覗く。

「それなら俺が行くよい。」

船首から不死鳥へと変化させたマルコが飛び立ち空中でモネと相対する。

「ふふっ。お手柔らかにね。」

モネがマルコを見て優しく微笑む。

「美人には弱ぇんだがよい。」

それに対しマルコも苦笑いで応え、空中戦の火蓋が切って落とされる。

 

「おい!!!ハナッタレ!!」

各地で戦闘が始まり、白ヒゲがテゾーロを見下ろし叫ぶ。

「いいのか?俺の息子たちは強ェぞ?」

白ヒゲはニヤリと笑うがテゾーロも同じく笑った。

「わりぃけどよ。俺の家族も強ェんだわ。」

テゾーロが煙草に火を着け吹かしピットとティーチが戦闘を行っている場所を指さす。

そこには顔面血だらけになり地面に倒れているティーチとその顔に唾を吐きかけるピットの姿があった。

「こちとら病み上がりじゃなけりゃあテメエみてえなクソブタ肉達磨に負けるわけねぇだろ!!!クソが!!!!」

ピットは既に地面に倒れ意識がないティーチに向かって中指を突き立てる。

「さて、次!!!誰が相手してくれんだ!?あぁ!?」

ピットは上着のポケットからテゾーロから拝借した煙草を取り出し、テゾーロと同じように火を着けた。

「おい!!!!ジジイ!!次はテメエでもゲロオオオオオ!!!!!」

ピットが白ヒゲに威勢よく啖呵を切るが次の瞬間ピットは嘔吐してしまう。

そう。ピットは煙草が吸えないのである。

「おい。お前また吸えもしねぇのに俺の煙草くすねたのか?」

テゾーロがピットが手に持つ煙草を見つけピットに問う。

「ピィ~。ピュルルルル。」

ピットが口笛を吹きテゾーロとは違う、あらぬ方向を向いた。

「茶番はそこまでだ!ハナッタレども!!!ビスタ!相手してやれ!」

「ピット。気をつけろ。そいつ強ェぞ。」

テゾーロがビスタの登場にピットに注意を促すが、ピットとは地面に唾を吐く。

「どっちでも構わねぁよ、テゾーロさん。俺はただ目の前の敵をぶっ飛ばすだけだ。」

ほとんど普段の性格と真逆に感じるピットの姿にテゾーロは頭を抱える。

「これは、お初に。ウサギのミンクのボクちゃん。」

先ほどまで船首にいたビスタが気がつけばピットの前まで来ていた。

いや、気がつけばというのは語弊があるだろうか。テゾーロもピットも気がついてはいたがそれほど凄まじいスピードでピットとの距離を詰め現在ピットの真正面に立っている。

「早ぇな。」

ピットはぼそりと呟く。

「フフフ。ボクちゃんは獲物とか使わないのかい?私はこいつを使わせてもらうが。」

パンパンと両手で両腰に挿さる剣の持ち手を叩くビスタ。その表情はいくらか余裕の笑みを浮かべている。

「チィッ。ちょっと待ってな。オッサン。船に木刀忘れたから取ってくらぁ。」

ピットは己の忘れ物の存在を思い出しゴールデン・ウルフ号へと走る。

(いや、テメエの獲物忘れてんなよ。)

この場にいる一同が同じことを考えたが、テゾーロを始め全員が放っておくことにした。

 

「じゃあ、俺の相手はアンタってことでいいか?ジイさん。」

テゾーロはタバコを地面に捨て足でその火を消す。

「グララララ!テメエみてぇな小僧捻り潰してやるよ。グララララ!」

「あっそ。やれるものなら・・・

 

 

やってみな!!!!!」

ガキィィィン!!!

テゾーロがその場から跳躍し即座にその距離を詰め、能力で形成した黄金の(つるぎ)を白ヒゲの顔目掛けて振り下ろす。

白ヒゲもそれに応えるように手に持つ薙刀で受け止めあたりに剣戟の音が響く。

「最初から全開でいくぞ!黄金聖闘士(ゴールドセイント)モデル山羊座(カプリコーン)。」

そして、今ここに白ヒゲ海賊団と金狼海賊団の戦いのゴング、開戦の音を鳴り響かせた。

 

 

 

一方その頃、一人否、1匹その場に残されたポチはその場でアクビをしていた。

(放置ですね。)と思えど、それを主人に伝える手段はないため、留守番でもするか、と1匹船へと戻る。

金狼の海賊団は全員がマイペースなのであった。




ふぅーー。疲れた。
次回、シュガーVSサッチとピットVSビスタの予定ですが、内容次第によっては一話ずつのになるような気もしますが、、ご期待頂ければと思います。それでは!


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第23話 シュガーVSサッチ ピットVSビスタ

「シュガーちゃん。本気かい?」

サッチは両手に剣を持ちクロスに構えシュガーに問う。

「さっきからそのシュガーちゃんって辞めてくれない?虫酸が走る。」

シュガーが冷たい表情でサッチを見る。

「おぉ〜。スマンスマン。シュガーちゃん。気をつけるよ」

サッチが挑発なのかはたまた直すつもりもないのか再びシュガーをちゃん付けで呼んだ。

「あぁー。キレた。もう怒った。わたしが勝ってあなたをわたし専属にコックにするから。」

シュガーがサッチに向けて糸を投げる。

人形糸(マリオネイト)。」

シュガーによって投げられた糸はサッチの元へと向かい意思を持ったように彼を捕らえるべく動く。

「やっぱり覇気持ちかっ!!!」

サッチは黒くなり襲ってくる糸を瞬時に躱すが尚も糸はサッチの元へと追跡する。

「くそッ!しつこい!」

サッチがその糸を断ち切ろうと両手に持った剣を振るう。

しかしその糸が断ち切れることはなく、逆に剣が当たった衝撃で糸が剣に絡まった。

「つーかまえた。」

それを見たシュガーが子供のいたずらっ子のような笑みを浮かべ、手に持つ糸を力いっぱい引き寄せる。

「おいおい、なんつー馬鹿力だよ!シュガーちゃん!」

しかし、サッチも白ヒゲ海賊団4番隊隊長の座に就くほどの強者。

幼女に力比べに負けるわけにはいかず、渾身の力で剣を取られまいと力を込める。

力比べはギリギリとお互いの武器から妙な音を発するが互角である。

「シュガーちゃん。もしかして糸の能力者か何かかい?」

サッチはそのままの体勢でシュガーに問うがシュガーから返ってきた答えは「秘密。」の一言だった。

「そうかよ!!それなら勝ったら教えてくれよ!!!」

サッチが不意に身体に込める力を抜く。

「ッ!?」

結果、先ほどまで拮抗していた力比べはシュガーに軍配が上がり、シュガーの方へとサッチは引き寄せられる。

否、シュガーが勝ったのではない。サッチが放棄したのだ。

更にサッチは引き寄せられる力を利用した上で更にシュガーの方へと大地を蹴る。

二人の距離は瞬時に埋まった。

故にシュガーが驚いた。普段からの戦いでそのような駆け引きは彼女自身全くと言って使わない。むしろ己の身体を覇気で纏い肉弾戦を仕掛けるタイプだ。

シュガーは以前テゾーロに教わった戦いのやり方を思い出す。

「シュガー。あれほど俺は見聞色の鍛錬もしろと言ったよな?」

テゾーロがシュガーに今までに何度も言い聞かせてことを伝える。もちろんこれにはピットも含まれているが。

「それと、シュガーのそのホビホビの実はやたら使うべきではない。

もちろん生死がかかった場面とか、俺の指示がある時はいいが、普段からは乱用するなよ?だからなにか獲物になるものを選んでそれを訓練してくれ。」

そして、紆余曲折ありシュガーは糸を選んだ。イメージは人形劇のようにおもちゃ(人)を操れるようになれればとシュガーは考えて選んだわけだが。

そして、島での三年間での訓練により、おおよその狙いはつくし、日々糸をつかって訓練しているからか、次第にその糸は細くなってきても頑丈さは上がっている。

ただ、テゾーロの度重なる注意もあまり意味が無く現在シュガーは見聞色をほとんど使わない。

シュガーは思っている。見聞色についてはそこまで才能がないと。

故に覇気とは己が信じる力にその力量は作用される。よって彼女はほとんど見聞色の覇気が成長しないのだ。

もっとも武装色に関してはその成長の度合いは凄まじいものであるが。これについてもピットと同様であるのがシュガーは面白くなかったのが本音ではあるが。

 

そのようなことを考えている隙というのは些か疑問だが、しかしサッチと距離が既に目先へと詰まった今、そのような油断を見逃す白ヒゲ海賊団団4番隊隊長ではない。

剣を振りかぶり、一拍遅れてシュガーが掴んでる糸に力をいれ応戦しようする。

が、サッチはそれを確認するとすぐさま剣を手放しシュガーは再び虚をつかれ力の作用により剣はシュガーへと一人でに飛ぶ。

「またっ!?」

シュガーが飛来してくる剣を避け再びサッチがいた方をみるが既にそこには彼は居なかった。

「あっ。」

トンッと己の首を手刀で叩かれる音に気がついたときには既にシュガーは気絶していた。

「わりぃな、シュガーちゃん。起きたらまたオムライス作ってやるからよ。」

サッチは倒れたシュガーを抱えモビーディック号に戻っていった。

 

「ゲッ!!まぢかよ!あの、おっさんシュガー姉様瞬殺じゃねえか!!!」

その様子を船から木刀を取りに戻りビスタの元へと戻っていざ戦闘を始めようとし、横でシュガーとサッチとの戦いをチラリと見ていたピットが驚きの声を上げる。

「フフフ。そりゃあ、俺らは少なくとも新世界で活躍する白ヒゲ海賊団の隊長だからな。

君たちとは格が違うよ。」

ピットにビスタが答える。

「俺らはってことはアンタもその隊長って奴か?」

ピットがニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。

「いかにも。私は5番隊隊長のビスタである。別名花剣と呼ばれる剣士。君も剣士であろう?その木刀をみるに。」

ビスタが両腰にささっている剣を抜きクロスに構える。

「悪りぃが、俺は剣士のつもりはねえよ?ただ敷いて獲物をあげるとしたらこの木刀が気に入っているだけだ。」

ピットは手に持った木刀を目の前に掲げる。

それはなんの変哲もない、ただの木刀だ。島に生えていた木の枝から作った木刀。

名など勿論ない。

「ところでよ、アンタもあの隊長と同じ隊長ってんなら俺がアンタを倒せば俺はシュガー姉様より強ェってことだよな?」

ピットがビスタに問うが、ビスタはカッカッカと笑うだけである。

「やってみろよ。小童が!」

しかし暫く笑った後ビスタがピットに向かい恫喝し身体中に力を溜める。

覇王色の覇気を纏っていなくても周囲にその殺意が溢れ出る。

「上等ッ!」

ピットは木刀を片手に持ち彼の元へ駆け寄る。

「獣人剣術壱之段。」

獣人活殺術。剣術、柔術、空手の三つの大きな枠組の中の一つ。

なんてことはない。テゾーロがどうせなら格好良く作ろうということで作った物だ。

それも全て剣道、柔道、空手と前世の世界では比較的に容易に習うことが出来るものを取り入れているだけのものである。

しかしピットは人間に非ず。獣人である。筋肉のつき方も筋肉量も人間のそれを凌駕する。

故に彼が放った『獣人剣術壱之段』とは単純に中段で構え木刀を振るうだけ。

しかし獣人の筋肉量から繰り出されるその攻撃は真空波を作り出し飛ぶ斬撃へと変わる。

ピットは己の木刀を武装色で覆う。

それは瞬時に黒い刃へと変わる。

『黒刀』原作でも新世界編でゾロが剣を黒くする物と同じである。

「烈空斬ッ!!」

ピットが叫び木刀を振りかぶりそれを振り落とすと一筋のカマイタチがビスタを襲う。

「ヌウッ!!」

それをビスタは己の両剣を力のかぎり弾き飛ばすが、ピットの真空波は何も一太刀ではない。

カマイタチが二筋、三筋とビスタに襲いかかる。

「面白いっ!」

ビスタはその飛んでくる刃を睨みつけニヤリと笑うと己の両剣に覇気を纏う。

「全部叩きのめしてくれるわっ!!!!憤怒ゥッ!!!」

ビスタは風のように走りピットとの距離を詰めながらも飛んでくる無数の刃を払い落としながらもその速度は全く遅くなることはない。

風圧でトレードマークの帽子は取れ、髪が逆上がり両手に剣を持ち走り寄る様はまさに金剛像のようなものである。

「もらったっ!!!!」

やがて2人の距離はつまりビスタは若干勝ちを確信し、ピットに向かい剣を振り抜く。

「んなっ!?!?」

しかしその剣がピットに当たることはなく、加えてピットはその場から消えていなくなる。

「獣人剣術壱之段。八艘連打ッ!」

ビスタは後方からかかる敵の声に振り向くが遅い。

既にピットが8連の突きを繰り出す。

「舐めるなあああああ!!!!!」

しかし、ビスタも遅れながらもその8つの突きを1つ1つ振り落とす。

2つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ全てを払い落としその突きの連撃が一瞬終わるが、ビスタは今度は上空からの殺気に気づき上を向く。

「さすが、ミンク族。動きが早い。」

ビスタは感心するようにピットと微笑む。

「死にさらせ!クソひげ!!怒涛烈斬(ドトウレツザン)ッ!!!」

「しかし、いかんせん、口が悪い。薔薇協奏曲。」

ビスタがその両剣を上に、正確にはピットに向けるとどこからか、薔薇の花びらが舞いそれは竜巻を起こしピットを襲う。

ピットの斬撃とビスタのバラの花びらが激突した瞬間そこに爆発音が響く。

「まだだぜ!ヒゲモジャ!!!」

ピットは薔薇と衝突した直後すぐさま木刀を放棄し、剃と月歩を駆使し、すぐさま着地後、彼の胸元へと忍び寄る。

「獣人空手指銃貫手!」

ピットが六式の内の1つ。指銃を貫手で放つ。

「惜しいな。ウサギの少年。」

しかしビスタはそれを読んでいたのか間一髪、いや、むしろピットに油断させるよう彼には間一髪に見えるようなタイミングで避ける。

「こりゃあ、無理だわ!!無理でーす!」

ピットが躱された事に驚きそして諦めの声をあげる瞬間ニヤリとビスタは笑い彼の脇腹に剣の柄をぶち当てた。

グボゥ!

鈍い音がピットの脇腹に響く。

「どいつもこいつもバケモノばっかかよ。」

そう言い残しピットはその場に倒れた。

「いや、君もなかなか面白いものだったよ。及第点というところだな。」

ビスタは己のヒゲを扱きながらピットを見る。

「しかし、そんな齢もいってない少年がここまで化けるとは・・・。」

ビスタはピットについて感想を一人述べる。

それもそのはず。ピットは六式と呼ばれる海兵や、政府の軍人が使う技を駆使し、さらに自らを剣士ではないという。

しかしだ、あの剣術さばき、加えて最後の攻撃の殺傷力の高さは群を抜いているとビスタは考える。

この少年をここまで鍛えることが出来た人物。金髪のオールバック。テゾーロと名乗る人物を見ると彼もまたこちらを見ていた。

「親父、もしかしたらそいつはとんでもないかも知らない。気をつけろよ。」

ビスタの声は白ヒゲには聴こえてないだろう。しかし何故かそう呟いてしまうような何かをこの一味に感じるビスタであった。

 



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第24話 決着の行方

遅くなってごめんなさい!


「グラララ!おめぇの仲間はおもしれぇじゃねぇか。糸使いの嬢ちゃんに六式を使うミンク族。それに雪のロギアの姉ちゃん。お前は俺とやりあわねぇでも良いのか?」

白ヒゲがその戦闘の一部始終を見てテゾーロに問う。

「俺はあいつらの大将だ。大将戦は最後にやるものだろ?」

テゾーロはそれに答え目の前に置かれた酒をグイッと飲み干す。

「グラララ!ちげぇねえが既に0勝2敗。俺らの勝ちだろうがよ!グラララ。」

白ヒゲもまた同じように酒を飲む。

現在彼らは先ほどの場所から移動し、何故かモビーディック号の甲板で酒を飲んでいる。

シュガーとピットも同様にモビーディック号の船内に運ばれて船医がその様子を見ているということだ。

そして何故かこうして白ヒゲの部下に酒を注がれていると状況にテゾーロは思う。

(どうしてこうなった)と。

初めは海岸で向かい合った二人であったが、お互い仲間の戦闘が気になったのか暫し見ていた時、急に白ヒゲが仲間を呼び酒を持ってきて飲み始めたのだ。

それに乗っかる形でテゾーロもダメ元で酒を頼むと普通に出てきてしまった。

そうして暫くその場で呑んでいたが、初めにシュガーが運ばれ、その次にピットと運ばれることで場所をモビーディック号に変え現在二人で酒を呑んでいる。

「それにしても、ハナッタレ。俺に勝つつもりか?」

白ヒゲが笑いながら、しかしその目には獰猛な目つきを浮かべテゾーロに問う。

「初めから負けるつもりで喧嘩なんか初めるかよ。」

テゾーロが尚も酒をグイッと飲み明かし答える。

「グラララ!ちげぇねえ!」

白ヒゲもそれに続き再び酒を空ける。

「とりあえずはモネとアンタの家族で良いんだよな?」

テゾーロが問うと白ヒゲが笑顔で「あぁ。家族だ。」と答える。

「その家族だかで、そいつで俺たちの一勝。」

テゾーロの言葉に白ヒゲはピクリと眉を潜める。

「マルコを舐めてんのか?」

白ヒゲの声に先ほどのような陽気さはなくどこか剣呑とした雰囲気が漂う。

「別に舐めてねぇよ。だけどな、モネは強ェぞ。あいつ怒ったら俺にも手がつけられん。いろんな意味でな。」

テゾーロの言葉に白ヒゲが「グラララ!女とはそう言う生き物だ!」と答える。

「それで、一勝。そしてこの飲み比べで一勝。最後に俺がアンタに買って合計3勝だ。」

彼の言葉に白ヒゲは

「おもしれぇ!ハナッタレ!俺ァ酒でも負けねぇ!」と宣言し今度はそばに置いてあった酒ダルを口につける。

テゾーロもそれに負けじと同じく横に置かれた酒樽に口につけた。

 

「雪の姉ちゃんよぃ。そろそろ終わらせねぇかよい。」

上空でマルコは両腕を翼に変え

モネは背中の肩甲骨の部分に翼を形成し、空中戦を繰り広げていたマルコがモネに話しかける。

彼らは現在拮抗していた。

己の持ちうる技を駆使しても、お互いがそれを交わし、時にははたき落とし現在二人とも息を切らしながらもこうして空中にとどまっている。

「えぇ。そうね。私は早くシュガーの様子を見に行きたいもの。」

それに同意するように、モネを、頷きシュガーの身を案じる。

恐らく致命傷ではないが、姉とは妹が倒れている時にそばにいてあげるべきだと彼女は考える。

「じゃあ、全力でいくよい!不死鳥、鳳凰演舞。」

マルコが纏っていた青い炎の勢いが増し、炎全体が彼を包む。

猛吹雪(アイスブリザード)。」

そしてそれに相反するようにモネは全身を雪で包む。

マルコは炎を滾らせ、周囲の温度を上げる。

モネは雪を吹雪かせ、周囲の温度を下げる。

自然パワーの衝突によりその周囲の景色はいっぺんする。

落ちる雪に炎が纏い青い炎が空を舞い散る。

しかしその炎に雪の結晶が燃やされているわけではない。

炎の中に確かにその結晶は核となり存在する。

「グララ!雪の火の粉なんざぁ粋なことしてくれる!」

白ヒゲが空を見上げ手に持つ酒を煽る。

テゾーロもそれに頷き同意を示す。

彼らの戦いもまた熾烈を極めていた。

既に2人で空けた酒ダルは彼らの背後に積まれおおよそ1人5樽程。

現代世界ではまずあり得ないし、自分の体重以上の量を呑んでいることになるが、それはこのワンピース世界特有の物だとテゾーロは認識している。

雪走(ゆばしり)

右手に雪の剣を形成しモネはマルコに近づきそれを振り下ろす。

「両手が空いてるのは汚ねえよい。」

しかしマルコも負けじと口を膨らませ、一気に吐き出すことでそれは火炎放射となりモネは距離を再び取る。

「フフ。女の子に汚いなんて言うのはどうかと思うわ。それに両手が塞がってる方が悪いからのよ。」

モネはマルコに対しどこか冷笑をする。

「思ったんがよぃ。アンタ自然系(ロギア)だろぃ?なんでわざわざ背中に翼なんか生やして飛ぶんだよぃ。」

「それはね、見た目が美しいからよ。」

モネは自分の言葉に胸を張る。

背中から生えた雪の翼を盛大に広げ、肌は雪のように白く絹のように滑らか。

着ている白いワンピースはその姿を更に映えさせ、それは天女、もしくは翼の生えた美しい雪女となっている。

「見た目重視かよぃ。」

マルコがそれに突っ込むがそれに対しモネは再び冷笑を浮かべると即座にマルコへと距離を詰める。

「なッ!?!」

マルコが驚きのあまり声を出す。

それは今までのモネのスピードを遥かに超えた速度で彼は反応に遅れた。

「後はね。四肢が空くからよ。」

気がつくとモネはマルコの背後に立ち手にした雪走をマルコの首にそっと近づける。

「武装色を纏わせた能力の(つるぎ)よ。降参して。」

モネは優しくマルコの耳元で(ささや)く。

「アンタ、何者だよぃ。」

マルコはそれに翼の両手をあげることで降参の意を示す。

「ただのお姉ちゃんよ。」

 

 

「グラララ!!!コイツァ面白え!!あの嬢ちゃんマルコに勝ちやがった!!!!!」

それを下で見ていた白ヒゲはあぐらをかいていた己の膝をバシバシと叩き盛大に笑う。

「だから言ったろ?アイツは強ェって。」

それに対しタバコをふかしていたテゾーロは答える。

「それじゃあ。」

「あぁ。」

「「やるか。」」

2人の言葉が重なり2人はそこから腰をあげる。

飲み比べ勝負は互角へと終わり彼ら一味の対決はもはや決まっていたものではあるが、彼らとてここで引くわけには行かない。

「しかし、ハナッタレ。テメェ大丈夫か?顔が赤いを通り越して青いぞ?」

白ヒゲが床に置いていた薙刀を手にしてテゾーロに問う。

「なんだ、爺さん耄碌して目まで腐っちまったか?この通りピンピンしてらぁ。」

しかしそれに対し負けじとテゾーロも白ヒゲに悪態をつく。

「グラララ!!俺とここまで飲み比べできる奴は久しぶりだっ!」

白ヒゲが自分たちが飲んで空にした酒樽を後ろ指で指すとそこには1人10樽の空いた酒樽が積まれていた。

「すげぇ。」

「どっちも人間じゃねぇよ。」

白ヒゲの船の乗組員達が彼らのその様子に驚きの声を漏らす。

 

「まあ、ここじゃあなんだ。ちょっと場所を移すぞ。」

白ヒゲの声を無視し、テゾーロはモビーディック号の看板から岸辺へと飛び、そして着地する。

「マルコォ!テメェは終わったらお説教だ!!!嬢ちゃん!妹さんは無事だ!俺の船で寝てる!会ってくるといい!」

白ヒゲは船から降り立ったテゾーロを見送った後上空からゆっくりと近づく2人に声を掛けた。

白ヒゲの声にマルコは目に見えて肩を落とし、逆にモネは微笑んだ。

「えぇ。そうさせてもらうわ。ありがとね。」

それに対し白ヒゲは「グラララ!」と笑うとすぐさま真剣な表情に戻りテゾーロの後を追うべく船から降り立つ。

 

「勝敗はどうやって決める?死ぬか降参でいいか?」

テゾーロが正面に立つ巨体な男。エドワード・ニューゲート。別名白ヒゲと呼ばれた男に声をかける。

「グラララ!ハナッタレ。俺ァ別に殺し合いするつもりはねぇよ。これは喧嘩だ!お互いが満足すればそれでいいじゃねぇか。」

それに対して白ヒゲはどこか暖かい表情を浮かべ手に持った身体同様に巨大な薙刀を肩にかける。

「まあ、確かにな。アンタ面白えよ。好きだわ。そうゆうの。」

テゾーロが手に持っていたタバコを口に運びふかし、ポケットから飛び出した携帯灰皿にタバコを仕舞う。

「グラララ!男に好かれてもなんも嬉しくねぇよ!グララ!」

テゾーロの言葉に白ヒゲはまた朗らかに笑う。

「まあ、勝つのは俺だがな。」

「やってみやがれ、ハナッタレ。」

テゾーロの言葉に白ヒゲの表情は真剣なものへと戻った。

「「参るッ!!」」

 

2人の覇王色の覇気が衝突する。

それは単純な威圧感の衝突ではあるが周囲の空気が震え、彼らの立つ岸辺の砂浜が波立つ。

ドゴゴゴゴゴゴッ!

まさしくそのような音がお互い何もしていないが発せられる。

「親父も化け物だがアンタの船長さんもバケモノだよぃ。」

その様子を甲板で見ていたマルコは横に立つモネに声をかける。

「ありがとう。とでも言うべきかしら?」

それにモネはにっこりと微笑む。

モネの腕にはシュガーが抱っこされる形で現在シュガーは眠っている。

恐らく起きたら一悶着あるがそれよりも今はこの幸せな瞬間を精一杯過ごすのよッ!と意気込みながらテゾーロにほとんど目をくれず現在はシュガーの匂いを盛大に嗜むモネ。

ピットは寝てたからそのまま船室で放置してきたが。

「モネちゃんもシュガーちゃんも今何歳なんだい?それにテゾーロもだが。」

それに対し近くに立っていたサッチがモネに問う。

「私もこの子(シュガー)も今年で18歳よ。テゾーロは29歳でピットは13歳ね。」

モネの言葉に周りにいたモビーディック号の船員達がモネの腕に抱かれスヤスヤと寝ているシュガーに目を向ける。

「それ以上の詮索は辞めてね。ただ一つ言えることはこの子も苦労してるの。」

そう言ってモネはシュガーの頭をそっと撫でる。

モネの顔は聖女のように優しくどこか華やかさを持っていた。

「まあ、詮索はしねぇよ。悪かったな。」

サッチはすかさずモネに対し謝罪をするとモネは彼に対し「またシュガーにオムライスを作ってあげて。」と伝えるとサッチは頷いた。

「もちろんだ。約束だったしな。」

サッチの言葉にモネは満足そうに頷き、再びシュガーの頭を優しく撫でる。

モネは現在幸せの頂点にいた。

 

黄金聖闘士(ゴールドセイント)モデル射手座(サジタリアス)

テゾーロは手首につけた黄金を能力で全身を覆う全身鎧(フルアーマー)へと形成する。

黄金は腕から伸びそれは胸へ、腰へ、脚へと伸び背中からも黄金の翼を伸ばす。

「ハナッタレ。その能力は?」

白ヒゲはテゾーロの体を顎で指し聞く。

「俺はドロドロの泥人間。全ての土を操ることができる。」

「「「いや、嘘だろ!!!!」」」

テゾーロの言葉にその様子を見ていたモビーディック号の乗組員達が即座に突っ込む。

「あ?わざわざこれから戦うのに教えてやるかよ。」テゾーロはそれに対しそう答えると白ヒゲは笑った。

「確かに。これから戦うやつに能力を教えるのはいいことじゃねぇなぁ!グラララ!」

「天宮の弓。」

テゾーロは指輪の黄金を金色の弓矢。所々金の装飾を施された弓矢を形成し、そして矢を放つ。

「一の矢。」

テゾーロから放たれた弓は白ヒゲへと真っすぐ金色の軌跡を描きながら進む。

「震刀。」

白ヒゲは己の手にもった薙刀の刃に能力を宿しその矢を叩き斬る。

ブゥゥンッ!

ある種、虫の羽音のような振動音をあげた薙刀が彼に向かって飛んでくる矢を捉えた瞬間、矢は消し飛びそれを形成していた金は砂金のような形状まで崩される。

「二の矢。」

テゾーロはその様子を目端に捕らえながら続けざまに二本の矢を放つ。一本は上空に向かって。そして一拍おいて再び真っすぐ進む矢を。

二本の矢はその形を変え無数の小さな矢へと分裂する。

上空へ飛びそこから地面へと振る無数の矢は黄金の雨となり白ヒゲへと落ちる。

正面から飛んできていた矢も分裂し、それは面での矢の攻撃。その両方が白ヒゲへと向かう。

「舐めるなァッ!ハナッタレがぁ!!!」

白ヒゲは手に持った薙刀に再び能力を宿し、初めに正面から飛んでくる矢を上段から振り下ろし、そのまま今度は回転ざまに振り下ろされた薙刀を上へと斬り上げる。

ドパァァァァンッ!

矢は瞬時に砂金へと戻り金が白ヒゲの周囲に舞う。

「三の矢。黄金柩(おうごんきゅう)。」

テゾーロが腕を上に振り上げそして手を握ると、白ヒゲの周囲に舞う砂金は彼の体にまとわりつきそれは黄金の棺へと変わる。

通常の棺と違うのは黄金でできていること。そして顔の部分は露出し胴体部には無数の穴があることか。

「グララララ!ハナッタレ。こんなんで俺を拘束したつもりか?」

白ヒゲは全身を長方形の黄金の箱に全身を捉えられながらも笑う。

「秘技。白ヒゲ危機一髪ッ!!!」

しかしテゾーロはその言葉に反応はせずその棺の無数の穴に向かって黄金の矢を放つ。

ドドドドドドドドドドッ!!!無数の矢が穴に命中しその中の白ヒゲの体へと衝突する。衝撃音あたりに響く。

「効かんわッ!!!!!!!!」

白ヒゲが雄たけびをあげ全身に力を入れる。否、全身を能力で纏い周囲に地震を巻き起こす。

そして彼を捕らえていた黄金の棺はピシリ。ピシリと音を立て亀裂が走る。そしてやがてその棺は粉々に砕かれ白ヒゲの体が現れる。

無傷。全身に刺さっていたはずの矢の跡など欠片もなかった。

「おい。ハナッタレ!今度は俺から行くぞ!」

白ヒゲはニヤリと笑い大地を駆る。

踏み込んだ大地は一瞬で窪み瞬時にテゾーロとの距離を詰める。

「ふんっ!!」

白ヒゲが己の手に能力を宿し彼に向かってその拳を振り抜く。

「やべぇ!!」

テゾーロは白ヒゲの速さに反応が遅れるがなんとかその拳を横に避ける形で躱す。

彼の頬に風の衝動が掠める。

頬は能力で波打ち黄金の兜は不気味な不快音をあげる。

黄金爆(ゴオン・ボンバ)ッ!」

テゾーロが手に持っていた弓を重量な籠手に変え白ヒゲに殴りかかるが、白ヒゲはそれを見越していたのか手に持っていた薙刀を側方に投げ、テゾーロと同じく、今度は両手に能力を宿しテゾーロの拳にぶつけ相殺する。

ドガァァァンッ!

否。相殺したのでは無い。両者の拳がぶつかった瞬間そこから爆発が起こるが、白ヒゲの拳はテゾーロの拳を打ち抜いた。

黄金の籠手は崩れ素肌が露出する。

しかし未だ接着する白ヒゲとテゾーロの拳。故に白ヒゲの地震の能力は止まらない。

「チッ!!!!」

テゾーロはすかさず手を離し後方に飛ぶことで白ヒゲとの距離を取り自らの手に目を向ける。

手の甲は砕かれそこから多量の血が地面へと落ちる。

かたや白ヒゲの拳に目を向けると未だ無傷。擦り傷さえ出来ていない。

「ジィさん化け物かよ。」

テゾーロはポツリと愚痴をこぼすが白ヒゲはそれにグララと小さく笑った。

「ハナッタレが、一丁前に俺に喧嘩売るなんざァ2000年早ぇ!」

白ヒゲが再び距離を詰め再び肉弾戦へと持ち込む。

繰り出される凶器の拳のラッシュ。

当たれば片方の拳の同様潰される。故にテゾーロは回避に徹する。

「グラララ!!見聞色まで使うとはおもしれぇハナッタレだ!だがまだ未熟。」

白ヒゲがフェイントを加えテゾーロのみぞおちに拳を打ち込む。

振動(ビブラート)。」

白ヒゲはテゾーロのみぞおちに拳がヒットした瞬間に能力をさらに強める。

触れる拳からいままで以上に強い振動を加える。

それは拳が当たったことによる衝撃で後方に飛ぶはずだった衝撃を地震の引力をもって引き戻す。

そして絶えず触れ続ける腹部に必殺の振動がテゾーロを襲う。

「くそがあああああああ!!!!」

テゾーロが咆哮を上げ力の限りの拳を白ヒゲに見舞う。

「おっと。」

白ヒゲはその攻撃を避けるため瞬時に後方へと下がり彼から距離をとった。

「降参しやがれ。ハナッタレ。そいつを食らったなら早く治療しねぇと死ぬぞ?」

白ヒゲがテゾーロのみぞおちを指さす。

テゾーロもそれに従うように己の腹部を見る。今までテゾーロ自身の身を守っていた鎧は腹部の部分だけ弾け、断続的な衝撃の拳を食らったためか腹部の至る所に裂傷が見受けられる。しかし外傷よりもひどいのは内部の傷であろうことはテゾーロ自身理解できた。

先ほどから吐き気が収まらず今も口から血を流している。

「たかがフェイントに引っかかるとは。」

テゾーロは己の見聞色を恨むが、白ヒゲはグララ!と笑った。

「見聞色というが、そもそも覇気自体が奥が深い。それにこれはもはや経験の差だ。おめぇにはまだ早ぇよ。」

白ヒゲは己が投げた薙刀を拾う。

「どうする?まだやるか?」

ニヤリと白ヒゲが口角をあげる。彼自身先ほどの言葉に偽りはなかった。本当に今、降参して船医にでも見てもらう必要があるほどの傷だ。しかし同時に「このハナッタレは降参などしない」というどこか断言できるほどの予想が立つ。故に薙刀を再び手にしたのだ。

「上等。黄金聖闘士モデル山羊座(カプリコーン)

テゾーロ全身鎧が二本の角を生やした羊の形態をとる。

「正直今にでも降参してぇがな。」

テゾーロは一人ボソッと呟く。

「言ってろ、ハナッタレ。テメェがそうゆうタマじゃねぇことぐらい想像できらぁ!」

それを耳ざとく拾った白ヒゲは豪快に笑った。

黄金聖剣(エクスカリバー)。」

テゾーロがそっと呟き己の掌を前に突き出す。

すると指輪の金がすべて剣の形に形成される。

「おい。じいさん。死ぬんじゃねぇぞ。」

テゾーロが目の前に形成された聖剣を掴み構え白ヒゲに言う。

「ハナッタレが。口だけは立派だな。」グララと笑い白ヒゲも薙刀を両手に持ち構える。

「おらよっ!!!」

テゾーロが握った光輝く聖なる剣を振るうとそこから金色の斬撃が飛ぶ。衝動波ではない。正真正銘聖剣の一部。金の刃だ。

「千本桜。」テゾーロは聖剣をまるで剣舞を舞うかのように振るうことで無数の黄金の刃が白ヒゲへと向かう。

毒などの特殊能力などない。ただ3つの特異点を挙げるとすればその数は数千。数万の刃となり白ヒゲが薙刀で払い落とそうが避けようがそれは追尾してくる。加えその刃の薄さは限りなく薄くそして圧縮された刃であった。

「おもしれえ!!!!」

白ヒゲはその飛ぶ刃を避けながら笑う。完全には避けきれていない。現に今も一筋の刃が彼の腕を掠る。いままでは無傷であったのがウソのように彼の体に傷が走り、血がジワジワと流れる。

「おい!ハナッタレ!」

白ヒゲの周りを幾千の黄金の刃が飛び交う。見る間にどんどん白ヒゲの体に傷が走りあたりに血が流れるもその刃はとどまることをしらない。

「舐めるなあああああハナッタレえええええ!!!!大空震ッ!!」

白ヒゲが空いた片方の手で空間を叩くと周囲にとてつもない振動が響きあたりに舞う黄金の刃が砂状へと形を壊す。

「おい。やっぱりアンタ化け物だわ。」

それをみたテゾーロは白ヒゲに悪態をつくが白ヒゲはグララと笑い声をあげた。

「まだやるか?小僧。」

白ヒゲは全身から血を流しながらもテゾーロに問う。しかしその姿は悠然と立つ仁王像の如く力強さを発している。それもそのはず。彼は血を流そうとも致命傷はすべて避けている。

逆にテゾーロはあまり傷を負ってはいないものの能力を使い果たしいまや肩で息をしている現状である。

「参った。降参するわ。」

テゾーロは現状ではどうしようもないと考えその場で両手をあげ負けを宣言する。

「グラララ!!俺の勝ちだ!ハナッタレ!」

その宣言を聞き白ヒゲもまたその場で勝ちを宣言する。

「「「オォォォォォォ!!!!」」

モビーディック号でその戦いの一部始終をみていた白ヒゲ海賊団の連中も雄たけびをあげる。

「好きに盛り上がってろ。バカヤロー。」

その様子をみたテゾーロはその場で最後に吐けるだけの悪態を着きその場に倒れた。

傷を負ってなくても彼の体力は底をついていた。

「マルコォ!!!!このハナッタレも治療してやりな!!!おめぇら!!祝杯だぁ!!」

白ヒゲが手に持っていた薙刀を空に掲げるとその仲間たちもまたガヤガヤと動き出した。

こうしてテゾーロ達金狼の海賊団と白ヒゲの海賊団の波乱の一日は終わった。

「コイツァ。間違いなく大物になるぜ。グララララ!」

白ヒゲは未だ倒れその場でいびきをかき寝ているテゾーロを見下ろしながら一人呟いた。

 



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第25話 盃

「グララララ!!!!大した(タマ)だ!ハナッタレ!!グララララ!」

白ヒゲの快活な笑い声があたりに響く。

現在、白ヒゲ海賊団と金狼海賊団はモビーディック号で宴をしていた。

もちろん、気絶していたシュガーもピットもそしてゴールデン・ウルフ号で留守番すべくかえっていたポチも含めて全員で宴をしていた。

「ゼハハハハハ!!テゾーロさんあんた。いやあんたら金狼の海賊団は強ェなぁ!どうだ?親父と息子になっちまえよ!ゼハハハハハ!」

後の黒ヒゲ、いやここではティーチと呼ばせてもらおう。

ティーチが酒を片手にテゾーロに近づくが彼も彼ら金狼海賊団は一瞥もくれない。

「失せろ。達磨(ダルマ)いや肉達磨。テメェはいけ好かねぇ。」テゾーロがジョッキをグイッとあおり近づいてきたティーチを睨みつける。もちろん覇王色を込めて。

「肉達磨キモイ無理。死んで」「シュガー姉様に激しく同意。おい。肉達磨ァッ!ぶち殺すぞ!失せろ!!!」「全くあなた達少し言葉使いが悪いわよ。肉団子さんごめんなさい。消えてください。今すぐ。」

シュガー、ピット、モネの順である。

「ゼハハハハハ!!!俺も嫌われたもんだ!ゼハハハハハ!」

そういってティーチは豪快に笑い踵を返した。しかしテゾーロは振り向く瞬間一瞬鬼の形相をしたティーチを見逃さなかった。

(やっぱり、この頃から野心の塊か。黒ヒゲ。)

テゾーロは再度ティーチの警戒度を上げる。現在はテゾーロはティーチを圧勝できるがそれはティーチが力を隠していなかった場合だ。シャンクスの目を傷つけた謎が今回判明するかと思ったがティーチはその能力らしきものを発揮しなかった。それとも単純にまだ力をつけていないかだが。どっちにしろ彼に対しては最大限警戒することとしようとテゾーロは内心決めた。

「おい。ハナッタレ。」

テゾーロが一瞬、思考の波をサーフィンしていたが、白ヒゲによりそれは中断される。

「ん?」テゾーロはぶっきらぼうではどこか親しみのある声音で反応する。

「今回はティーチが悪いがあんまり俺の倅をいじめねぇでくれや。あんなんでも俺の息子だ。」白ヒゲは少し申し訳なさそうにテゾーロに言うがテゾーロはそれについて首を縦には振らない。

「悪ぃが、それは無理だな。俺の家族に手を出したやつは許せねぇ。もちろんアンタらみたいな喧嘩ならいいがやつは略奪を目的にしやがった。海賊だからで済ませる問題かもしれねぇが海賊ならケジメをつけるべきだろ?」

テゾーロはそう言って再び酒をあおる。

「グララララ!違いねぇ!なら俺も無理にとは言わねぇよ。どうだ?ハナッタレ。俺と親子にならねえか?」

「は?」

白ヒゲの勧誘にテゾーロは少し気の抜けた声で返事をする。

それもそうだ。さっきまで喧嘩もとい、決闘を繰り広げ加えてティーチを許すことはないとまで言い切ったばかりだ。

「アンタ、話聞いてたか?」

思わずテゾーロは目を細め白ヒゲをみる。

「いや、聞いてたぞ。」

「いや、だから、俺は「うるせえ!!!!息子になりやがれ!!!!!!」ドンッ!!!!

 

まるでどこかで見たことあるような強引な勧誘。そして何故か聞こえもしないのに『ドンッ!!』という効果音まで聞こえてしまうような迫力。

(なるほど。ルフィみたいな奴だな)とテゾーロは内心思った。

「悪りぃが、やっぱり無理だわ。俺は今誰の傘の下に入るつもりもねぇしな。悪りぃな。おっさん。まあ友達としてなら盃でもなんでもしてやるよ。」

テゾーロはそういうと、黄金の指輪から、宝石めいた金色に輝く盃を二つ形成して白ヒゲの前におく。

「グララララ!後悔するぞ!ハナッタレ!!!マルコ!!!口上を言え!!!俺はこの生意気なくそったれと友の盃を交わす!!!!」

白ヒゲは近くでモネと飲んでいたマルコを近くに呼ぶ。

「状況が飲めねぇよい。まあそれが親父よい。」

彼はそう言うとテゾーロと白ヒゲの間に歩み寄り手に持っていた酒ビンからその黄金の盃に酒を注ぐ。

「それじゃあ、お二方。よくわからねぇが盃を持つよい。」

マルコが盃に酒を注ぎ終えると白ヒゲとテゾーロに向かって盃を持つように伝える。

それに従い二人はそれを手に持ち上に掲げた。

「それでは、今日をもって我ら白ヒゲ海賊団はテゾーロの金狼海賊団だっけか?」

マルコの言葉にテゾーロは黙って頷いた。

「両海賊団は友となり、時に盾とし、時に矛とし友の誓いを破らず盃を交わすことをここに誓うよい。」

マルコの口上は終わる。先ほどまでガヤガヤと騒いでいた連中も今や二人の動向を見守ようにこちらを黙って見つめていた。

「ああ、じゃあ俺はアンタの矛となり。」

「俺ァ、このハナッタレの盾となり。」

「「いまここに誓おう。」」

二人の言葉が重なり二つの盃はチンッと金属が当たる音を立て、二人は盃をあおる。

「これからよろしくな。じいさん(ニューゲート)。」

「あぁ。俺ァもだ。ハナッタレ(テゾーロ)。」

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」

先ほどとは打って変わりその場は男たちの声により熱が上がる。

「野郎ども!!!!!宴の続きだぁぁ!!!たらふく飲め!!!グララララ!」

白ヒゲの言葉にさらにその場は盛り上がる。

そして、ここに白ヒゲ海賊団と金狼海賊団の友の誓いが成り、後に世界を震撼させる出来事が起こるのだがそれはまたのお話。

 

そして、その場をただ黙ってみていたティーチの顔は狂犬のように牙をむき出し、その場から一人静かに去っていった。




まあ、後の大事件ってもちろん頂上決戦ですけどね!!!!!(笑)


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第26話 突き上げる海流

「おい。小僧。もう行くのか?」

宴も終わりテゾーロ達一行は夜更けから出航の準備をするべくゴールデン・ウルフ号の甲板を走り回っているとき下から不意に白ヒゲの声が聞こえテゾーロは甲板から見下ろした。

「あぁ。もうすぐ突き上げる海流がくるんだとよ!面白かったぜ。じいさん。またどこかで会おうな。」

テゾーロは白ヒゲにニシシと笑いかけると白ヒゲも笑う。

「グララララ!航海士もいねえのに突き上げる海流に乗り込むなんざ本当にテメェはバカ野郎だぜ。おらよ。持っていきな。」

白ヒゲはそう言うとテゾーロに向かって何かを投げ渡す。

「ん?」パシリッ。軽快な音を立てそれをテゾーロが受け取り己の掌の中をみる。

「永久指針か。」

「あぁ、空島のだ。それを頼りに進むとちょうど針が真上を向けた時。そこに突き上げる海流がくるだろうよ。」

白ヒゲの声にテゾーロはポンッと手を叩いた。

「わりいな。じいさん。助かる。」

「グラララ。気にすんじゃねぇよ。小僧とはもうダチでもあるからな。グララララ」

白ヒゲが快活に笑いそれにつられテゾーロも笑った。

「また近いうちに遊びにいくわ。じゃあなじいさん。」

テゾーロはその場から手をあげることにより白ヒゲに別れを告げると顔を甲板の方に戻し、己の仲間に支持を出す。

「ピット、錨をあげろ。モネは操舵。シュガーはいつもの場所でくつろいでくれていいが、これを持ってろ。」

テゾーロはそう言ってシュガーに向かって白ヒゲからもらった空島への永久指針を投げ渡す。

「じいさんからの餞別だってよ。」テゾーロの言葉にシュガーはコクリと頷き、もはや己の特等席となった金色の船首の上へと移動する。そして船首にはこの前の騒動の時に捕まえたサウスバードが南を向き「ジョ~~~。」と情けない鳴き声をあげている。

「てめぇら!出航だ!!!」

テゾーロの声により船は帆をはり風を捉えぐんぐんと沖へと向かう。

 

 

「親父。よかったのかよい。空島の永久指針あげちまって。」

それを一人見送っていた白ヒゲの陰から不意に現れたマルコが白ヒゲに声を掛ける。

「あぁ?別にいいじゃねえか。そんな貴重なものでもねぇし、空島の永久指針ならもう一つ宝物室にあるだろうがよ。」

白ヒゲの声にマルコが首を横に振った。

「親父、あいつらどうやったかしらねえがうちに宝物室に入って金目のものかっぱらっていきやがったよい。」

「あ?なんの間違いだ?マルコ。昨日友の盃をかわしておいていきなり不義理か?」

マルコは苦笑いを浮かべ宝物室に置かれていた一枚の紙きれを白ヒゲに手渡す。

 

「じいさん。友達になったことだし悪ぃけど宝借りていくわ!いつか返すからよ!あ、でも一杯あった永久指針は空島以外はのこしてくわ!ありがとな!!」

と記されていた。

「あっっのくそがきゃぁあああああああ!!!!!」

白ヒゲの手はプルプルと震えその叫び声は大気を震わす。

「野郎ども!!!いますぐ出航だ!!!!あのくそガキをぶっ潰すぞ!!!!!!」

「「「「「応ッ!!!!」」」そしてテゾーロ一行が出航してすぐ、白ヒゲ達も彼らを追うべくすぐさま港を出発する。しかし言動とは裏腹に彼らの顔に怒りの要素はなくどこかニヤニヤとまるでしてやられたが面白いといいた表情であった。

 

 

「大量大量。」テゾーロは己の宝物室に移された5つほどの大きな宝箱を眺めニヤリと笑った。

「でもいいの?白ヒゲのおじいさんおこらないかしら?こんなに頂いて。」モネはその様子に首を傾げ若干悩んだような表情を浮かべる。

「まぁ、借りるだけだ。いつか返すさ。いつかな。」テゾーロはそう言って近場に置いてあった宝箱の上部をペシぺシと叩く。

彼らは出航後、全速力で突き上げる海流のスポットを目指しひたすら南進していた。

「ハナッタレええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

すると船内にいるのに外から響く雄たけびのような声が聞こえテゾーロとモネは顔を見合わす。

「まじかよ!じいさん早すぎな」テゾーロはそう言ってニヤリと笑うと宝物室を出て甲板へと向かった。

 

「テゾーロさん!!!!なんか白ヒゲのじいさんめちゃくちゃ怒ってるんですけど!!!めちゃくちゃ砲弾飛ばしてくるんですけど!!!!」

甲板に出ると遠方からものすごいスピードでこちらに近づき砲撃を繰り返すモビーディック号の姿が目に入り。ピットが焦った表情を浮かべ時たま船に飛来してくる砲弾を蹴り飛ばし防衛に努めている。

シュガーはその様子を白ヒゲの船から宝と一緒に奪ってきた肉を頬張りながらただその様子を眺める。

「おぉ~、おぉ~むちゃくちゃキレてやんの。やべえな。」テゾーロは遠目に見えるモビーディック号に立つ白ヒゲの様子をみて感心したようにつぶやく。

「テゾーロ。そろそろ。」

しかし時は、いや神とよぶべきだろうか、それらは彼は見放さなかった。シュガーがテゾーロの袖をクイクイッと掴み彼が下を見るとシュガーは手に持っていた永久指針を彼に見せた。指針は空を指しどうやら突き上げる海流のスポット、そして空島のありかを同時に示す。

「ギリギリ間に合ったな。」テゾーロは海底からせりあがる潮の流れを察し内心、安堵のため息を吐いた。

やがて隆起するようにゴールデン・ウルフ号の真下から波が引きあがりそれは一本の波の柱を天へと突きあげる。

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!海が上げていい音とはいくらか異なるまるで地震ような音をたて数瞬、海流はゴールデン・ウルフ号を空へ突き上げた。

「まちやがれええええええええええ!このくそがきがああああああああああああ!!!!!!!!」一瞬にして小さくなっていくモビーディック号に乗る白ヒゲが彼らに向かい雄たけびを上げるもテゾーロ達は止まらない。

「じいさん!悪ぃ!いつか返すからよ!!!!じゃあな!友よ!!!」

白ヒゲに伝わるようにいまや空の人、もとい船になっているゴールデン・ウルフ号からテゾーロは思いっきりさけんだ。白ヒゲの返答は聞く前に船はぐんぐんと垂直に突きあがる。

テゾーロは能力を行使しサブマストと留めている金の留め具を外し風を精一杯掴む。

「モネ!操舵しっかり頼むぞ!!」テゾーロは操舵を掴むモネに声を掛けると彼女も「ええ!」と大きな声で返事をした。

「目指すは黄金都市!!!いくぞ!お前ぇら!!!」

現在の異常事態にやけにハイテンションになっているテゾーロが本日何度目かの号令をあげ仲間が返事を返す。そして彼らは深い厚い積帝雲へとその姿を消した。

 

「あのクソガキか!!!いってこい。」その様子を海上から見上げていた白ヒゲがニヤリと笑った。

「ハハハハ!親父から金をだまし取って逃げる奴なんざぁこいつは大物いなるぜ!」

白ヒゲの横で腹を抱えつつ豪快に笑ったサッチが感想を漏らす。

「あぁ、あの小僧は間違いなく大物になるだろう。それに他の船員たちも。」

それに同意するようにジョズが彼らの行く末を想像する。

「それになにより面白いよぃ!金はまた集めればよいよ。」

マルコもまた彼らのことを思い出し笑う。

「グララララ!!ハナッタレ!待ってるぞ!すぐに来やがれ『新世界』に」

白ヒゲはすでに見えなくなってしまった未来ある若人に言葉を残し、己の拠点たるべく新世界へと帆を向ける。

「やろうども!こっち側の用事はすんだ!さっさと帰るぞ!!!」

白ヒゲの号令に海賊団は雄たけびをあげ新世界へと向かった。

 

原作開始まで残り残り12年。テゾーロ一行は黄金都市シャンドラを求め空へ飛び立った。



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