精霊使いの装甲機竜 (caose)
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出会いとはじまり
産声


 始まりの声が鳴り響いた。


 古都国

 それはクイナ帝国と呼ばれる国よりも東に位置する島国

 そこは自然折々の国で人々はかつておこっていた乱世が終わり平穏を満喫していた。

 そしてその国には竜を祀る集落がありそこにいる者たちは竜を神と崇め

信仰していた。

 しかしそれは突如終わりを迎えた。

 

 その夜突然見慣れない船の大群がその村を襲った。

 村は焼かれ男たちは農具などを持って立ち向かったのだろうが謎の集団は何やら特別な道具を使って彼らを殺したのだ。

 あるものは焼かれ、切り裂かれ、つぶされたような死体が数多くあった。

 女子供老人は村にある洞穴に身を寄せていた。

 その洞穴の中には神社が建てられておりある物を祀っていた。

 周りには剣を口にくわえた竜

 目のない竜

 武器を持った竜

 小太刀を構えた竜

 そして中央には直刀を持ち頭に見慣れない装飾を付けた

鰐のような顔をした竜がいた。

 そしてその足元には紫の柄をした刀があった。

 何やら後ろから物音が聞こえ全員が息を殺して遠ざかるように祈ったが神様はそれを望んでいなかった。

 襖を開かれ先程の集団が子供を連れ去ろうとした。

 母親はそれを阻止しようとすると外にいる男たちのように殺された。

 その場にいた7歳以上の子供も同じように老人も関係なく・・・

 そしてその集団は赤ん坊や小さな子供を連れて海へと向かった。

 暴れる子供は失神させて。

 そして連れ去らわれた子供の中には1人の赤ん坊がいた。

 その布にはこう書かれていた。

 「カゼハヤ カミト」と・・・

 

 そしてさらに年月は過ぎ・・・とある国にて

 そこは暗い檻のような部屋

 そこにはかつてさらわれた赤子は少年になりその場所に立っていた。

 しかし少年は1人ではなかった。

 周りには屈強な男たちが多数存在していた。

 しかしその誰もが倒れて呻いていたのだった。

 「終わったよ。次は何?」

 その目は無機質な感情もなく光もなくただそこにいるような感じの人間だった。

 「間違いありません。彼こそが約束の子」

 「魔王の力を受け継いだ存在。」

 周りにいた老人たちは口々にそういった。

 「次は何?」

 その少年はもう一度聞いた。

 すると扉が開いて老人の一人がこう言った。

 「来い。」

 少年は機械の様についていった。

 ついていくとそこ等には宝石や指輪、何かの武器などが無造作に置かれていた。

 「ここにあるのはすべて我々が世界中から集めた精霊が封印されているものだ。中には凶悪な精霊が封印されている。」

 老人の言葉にその少年はただ聞いていただけだったが少年はとある刀を見て立ち止まった。

 「じゃああの剣は?」

 「あの剣はただの剣だ。使い道がないからここにあるだけだ。

欲しいのならやろう。」

 老人はその剣を少年に渡すと少年の視界が1瞬で変わった。

 周りは鑑のような世界で地面もない。

 「何だここは?」

 少年はそういうと何かを感じた。

 それは人を2回りほど大きくそして大量の武器を持った鋼の竜だった。

 それは少年を見るとこういった。

 「お前名は?」

 「カゼハヤ カミト」

 「カミト・・・お前が我が所有者か。」

 「そうだ。」

 竜は少年カミトの名前を聞くとさらにこう言った。

 「我が名はシラヌイ。我が詠唱府(パスコード)をお前に譲渡する。」

 「ぱすこーど?」

 「我を呼ぶ時に使う呪文だ覚えとけ。」

 「わかった。」

 「それは・・・・・」

 

 するとまたさっきの景色に戻った。

 「どうした早く来い。」

 老人の言葉にカミトは反応しそのままついていった。

 「僕は何するの?」

 「間もなくわかる。」

 老人がそう言った後立ち止まるとそこにはカミトよりも若干背が高く腰まで伸びた黒髪と黄昏色の瞳を持つ少女がいた。

 「女の子?」

 「初めまして、カミト。私はレスティア。闇精霊よ。」

 「精霊?」

 レスティアと言う少女が自分が精霊だといった。

 「最高位の精霊の中には人型が存在しお前をさらに高みに導けるだろう。」

 少年は老人の言葉を聞いていなかった。

 カミトは初めて女性(精霊だが)見とれていたのだ。

 「よろしくカミト」

 レスティアはカミトに微笑んで手を差し出すとその手を振り払った。

 「僕に触れるな。お前もいつか壊してやる。あいつらのように。」

 「そう。それは楽しみね」

 彼女のその傷ついた言葉に

カミトは初めて胸の奥にある何かがざわつくのを感じそしてあの時刀の中にあるナニカからもらったことばを思い出した。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 




 この出会いが彼らの始まり。


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崩壊

 彼は戦う。
 意味も無く
 ただ生きるために


 あれからカミトはレスティアと仮契約(本契約すると裏切られた際

抵抗できないから。)して教団の指示されるままあらゆる任務に就いたが彼女を使った

暗殺などはなかった。(シラヌイで使っている。)

 しかしそんなある日教団に悲劇が襲った。

 あの日カミトはチームと一緒に過ごしていた。

 「お兄様~。」

 この灰色の髪をした少女は「ミュア・アレンスタール」

 カミトが教団1位であるため彼女はその次の第2位である。

 彼女は〈怪物〉(モンストル)と呼ばれ並の精霊では使用したと同時に自壊するため軍用精霊を使用する戦闘型。

 「ミュア。あまりくっつかない。」

 こちらは褐色の肌と翡翠色の髪、深紅の瞳、そして通常では有り得ないとがった耳

 諜報を担当するリリィ・フレイム

 教団には彼女のような亜人種と呼ばれる者もおり彼女はその1つエルフィム族と呼ばれる種族である。

 そしてカミトは1位〈魔王の後継者〉と呼ばれレスティアを使った精霊での攻撃とシラヌイを使った諜報・潜入・暗殺(諜報はリリィが精霊を飛ばすのであまり使わない。)何でもできたのであった。

 彼らは任務終了し一息ついていたころ突然焔が老人を襲ってきた。

 「た、助けて・・・」

 助命を言い終えぬまま老人たちは焔に飲み込まれていった。

 カミトはその焔を見て疑問に感じた。

 「(あの焔もしかして精霊か?)」

 子供たちは襲わず老人たちだけを襲っているところを見てカミトはそう確信した。

 「(カミトどうする?)」

 腰にさしてある刀(シラヌイ)が思念通信している。

 この刀はどうやら本体又は刀の情報を経由して伝えている(本人?曰く)

 「レスティアを連れ出す。」

 「(あいつはここの所有物だし普段はあの爺共が指輪に封印しているんだぞ。しかも解除する方法も爺共しか知らないんだぞ?)」

 「これを機に外に出てレスティアを開放する手段を見つける。」

 「(できないかもしれないぞ?)」

 「やる。これは僕が決めたことだから。」

 シラヌイはカミトがレスティアを連れ出し封印を解くと言ったのだ。

 シラヌイは再確認しようとするとカミトの意思を聞いた後こういった。

 「(わかった。それとあの嬢ちゃん達もか?)」

 「ああ」

 「(それじゃ行動するか。)」

 シラヌイはミュアやリリィも連れるのかと聞いた後作戦を伝えた。

 「(いいか今奴らは混乱している。え詠唱府で俺を呼んでその後指輪のある保管庫へ向かう。その後ミュア達を探しながら檻を壊してほかの連中を開放、その混乱に乗じてミュア達と合流。その後俺の「迷彩」で姿を隠して外に出る。)」

 シラヌイは作戦を伝えた後カミトは空の檻に入り詠唱府を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」

 光の粒子がカミトの後ろで形作られ1つの形となった。

 紫の体躯と青の勾玉鋼鉄(ミスリルダイト)を持ち両肩には折り畳まれた腕のようなものとそれが持っている大型の4つの刃を持つブーメラン、背中には日本刀と手持ち用の長い筒状の武器を持ったものこそカミトはしらないが神装機竜(シラヌイ)である。

 「接続・開始(コネクト・オン)」

 そういうとカミトの両腕・脚、胴、頭にへと部品が高速で

連結・装着されて行くのだ。

 「行くぞ。(シラヌイ)」

 「(おお。)」

 それからと言う物カミトは初めに機体を「迷彩」で消した後足音を立てないように移動し目的の保管庫の入り彼らが使っている保管庫(何人かいたが全員殺した。)に入りレスティアを封印している指輪と解除する本を奪い「索敵」でミュア達を探そうとすると予想よりも早く見つけた。

 「2人とも無事か?」

 「うん!」

 「ええ。」

 カミトは(シラヌイ)の「迷彩」を解除して2人と合流した。

 「ねえ兄様。あれって精霊軍用でも最高ランクだと思うけどどう思う?」

 「おそらくそうだろうな。」

 ミュアはカミトにあることを言った。

 「ミュアがあれを何とかするから兄様は逃げて。大丈夫こう見えても私〈怪物〉だから。」

 「待てミュア・・・」

 カミトはミュアを止めようとするとこういった。

 「兄様。大好きだったよ。」

 ミュアとリリィは焔の塊に行きその後どうなったのかはこの当時僕はしらなかった。

 




 神装機竜(シラヌイ)
 見た目はガンダムSEED DESUTINEYに出てくる「デスティニーガンダム」
 種類(特装機竜)
 この機体はカミトの村で祀っていた刀の正体。
 何故遺跡(ルイン)になかったのか不明だがこの機体は他とは違いある
1定の適性以上でないと使えないのである。
 しかし能力は凄まじく対機竜用に作られたという経緯を持っている。
 武装 大型刀「玄海」*1
    長距離ライフル(機竜息銃)「清水」*1(見た目は00に出てくるケルディㇺの可変式スナイパーライフル
    大型手裏剣型ブーメラン「風雷」*2
 特殊武装「天の羽衣」
      この武装は折り畳まれた腕のようなものを開いて初めて使用する武器
 内部にフック状の武器が内蔵されてあり敵を捕まえる又は障害物を除去できるという使用が主だが戦闘では電流を流し相手を倒すこともできる。     
           


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師匠との出会い。

 その時であった人たちは自分の経験として残り続ける。


 あの後ミュアとリリィを見つけることができず結局カミトは1人で教団から脱出した。

 

 教団から少し離れた森の中

 

 「(それでどうするんだカミト。これから。)」

 シラヌイはカミトの手にある指輪と本を見て今後を相談した。

 「(ほかの奴ら、それも精霊を使える女どもならそれなりの家に、男なら軍に入るだろうがお前は精霊を使えるからな。良くても実験体、最悪抹殺が目に見えているしなそれに・・・レスティアを解放するにもその呪文が何なのか分かれば良いがそれに通じてる人間をどう見つけるか?)」

 カミトは黙りこくっているが暫くしてこう言った。

 「骸連盟(マーダーズ)・・・」

 「(はっ?)」

 「骸連盟。裏の稼業を取り締める組織がある。そいつらのところでの仕事には呪文関係の資料を強奪する仕事もあるからもしかしたら・・・」

 カミトは裏稼業の元締め〈骸連盟〉に入るということを思いついた。

 カミト自身暗殺などをしておりそれが生かせる場所で働くということだ。

 身寄りもなく頼る当てもない自分には天職だと思ったのだ。

 「(それじゃ行くか?)」

 「ああ」

 思い立ったが吉日という言葉があるようにカミトはシラヌイを纏ったまま〈骸連盟〉のアジトの1つへと向かった。

 

 それから数週間カミトは時には盗みを働いたり、山の動物などを狩ったりして過ごしそしてとある辺境の町に着いた。

 その町の裏にある小さな酒場には〈骸連盟〉の末端の基地がある。

 カミトは町から少し離れた岩山にシラヌイの本体を置きそこに向かった。

 

 カミトが中に入るとその中にいる人たちがそれを見た。

 ボロボロのマントに伸び切った髪。

 カミトはここに入りたいというと全員が笑いこういった。

 「お前みたいなガキに何ができる。」

 「さっさとママのところに帰りな。」

 「バーか。こんなところに来る奴なんて行くとこがねえやつだよ。」

 そのあと大男とでもいうくらいの男がカミトを殴りかかろうとすると持っていたマントを男の顔に当てたあと早業でマントに首を巻き付けた後シラヌイの刀で首を切った。

 全員がその評価を改めた後カミトはこういった。

 「それで報酬だが・・・」

 それはこの精霊封印の解呪について

 受けた仕事はー 大陸最強の精霊使い〈黄昏の魔女(ダスク・ウイッチ)〉の暗殺である。

 

 それからしばらくしたある夜カミトはシラヌイを纏って〈黄昏の魔女〉の家の天井に「迷彩」して忍び込んでいた。

 ここは帝都の郊外だが使用人どころか鼠もおろか精霊もいないという不用心な家であるこれはシラヌイの索敵で既に分かっている)。

 カミトは機竜息銃「清水」をシラヌイで構えた状態で待機させておりポケットに入れている指輪を触りながら彼女のことを考えていた。

 「【レスティアやシラヌイは僕を人間にしてくれた。だからその恩ってやつを返せるなら何だってやるさ。】」

 当日はさっきまで雨が降っていたためまだ雲がかかっておりこれ以上ともない好機であった。

 「【シラヌイの「清水」は矢よりも早い。奴が強くてもその速さなら逃れられない・・・はず。】」

 シラヌイの「索敵」は銃に合わせることで数㌔先を狙えることができるという利点があり暗殺(遠距離ではリリィがタイミングを合わせてくれたことがほとんど。)ではかなり重宝されていた。

 すると馬車の扉が開くと灰色のドレスを着た同じ色の髪と瞳の美女が見えた。

 カミトは「清水」の銃身の砲口を頭に合わせて・・・打った。

 普通なら当たってしかも機竜の武器なら頭がザクロのように破裂するはずだろう。

カミトはそれを何回も見てきたがその弾丸は・・・その手前でナニカに阻まれた。

 彼女の手には闇のようなナニカがあった。

 「【魔精霊ってありかよ。しかもあれはレスティア以上の奴。そんな奴まだ契約できるのかよ!!】」

 魔精霊とは精神構造が他の精霊とは異質であるため人間では扱うことさえできないものなのだ。

 するとその塊は魔女の腕の中で1本の剣に変わった。

 本来姫巫女は十代から二十代前半がピークでありそれを過ぎると衰え力を失うものだが彼女はどうやら例外だろうとカミトはそう確信した。

 「(逃げるぞカミト!!失敗した以上逃げるが定石だ!!!)」

 シラヌイはカミトに撤退するように進言すると

 「そこか。魔女から逃れられんぞ。」

 彼女はそういうと壁をどこぞのスタントマンだという風に神威を足に集中させて駆け上ってきた。

 そして屋根に上りあがった瞬間その1閃をカミトたちがいたところに振るった。

 カミトとシラヌイは間1発でそこから退くものの「迷彩」が解け

その姿が明らかになった。

 「ほう奇妙な精霊だな。城砦(フォートレス)にしては鎧を着るというより纏うといったところかな。それに可愛いお嬢さんと言いたいところだがどこか違うな?」

 彼女はカミトとシラヌイを見て精霊とは違う物かと疑いの眼で見ていた。

 「(どうするカミト?こいつの強さ人間捨ててるぞ。)」

 「【どう考えても逃げきれない。それに障壁があってもあいつは衝撃だけで俺たちを倒せるだろうな。】」

 「(ならどうする?)」

 「【最後まで付き合えるか?】」

 シラヌイはカミトに聞くとカミトは自分の終わりを感じたのかその言葉を聞いた。

 「(・・・わかった。)」

 シラヌイは承知すると「清水」を背中に戻すと「玄海」を取り出した。

 「僕はーお前を殺しに来た。」

 そういうとカミトは周りに何かわからない言葉が掛かれた物が目の前に出てくると機体の出力を上げて向かうことにした。

 そしてシラヌイと共に彼女を討とうとすると突然彼女がー消えた・・・と思ったら

カミトの目の前に現れ・・・

 「絶剣技、初ノ型ーーー〈紫電〉」

 魔女の剣がカミトの脇腹に当たった途端障壁が働くも衝撃までは殺せずそのまま気を失った。

 

 




 「己を知り相手を知れば百戦危うからず「」という諺があるがカミトがこの魔女の事をもっと調べていれば原作でも負ける要素があったとしても1矢はむくいてたかもしれません。


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魔女との契約

 男が女に化けるって13歳以上だと無理があるよな。
 その点女はが逆の事しても大差ないしな。


 「うう、ん・・・」

 カミトが目を覚ましたのは久し振りのベッドの中だった。

 窓からは日が差していた。

 「(あれ僕は確か・・・そうだ!!〈黄昏の魔女〉と戦ってその後あいつの技が当たって・・・あれどういうことになっているんだ?)」

 「おお、起きたか。、驚いたね。本当に男の子だったとは。」

 「・・・っ。」

 頭上から声がしたので起きようとするとそのままベッドに落ちてしまったのだ。

 普段のカミトなら有り得ないことだがその原因は下半身が動かなくなっていたのだ。

 「悪いが〈束縛〉の魔術をかけておいたぞ。暴れられると部屋が汚くなるからな。」

 「くっ・・・。」

 「それにしても私の剣技をくらって打ち身程度とは驚いたよ。

それもあの精霊もどきのおかげかな。」

 「!!!シラヌイはどこだ!!!剣はどこにある!!!」

 「あれならこの家の外にある。それと剣はそこに立てかけている。それとあれには礼を言うことだな。あれが落ちる前に私の家の屋根に鎖を付けた鎌を当てなければ真っ逆さまだぞ。」

 確かに傷は腹の打撲痕が以外なく、よく見ると確かにあるがそこは魔女のすぐそこにあった。

 「・・・どうして助けた?」

 「理由は2つだ。1つは単純な興味本位だ。その若さで並の暗殺者よりもけた違いに強く的確に私を殺そうとした。私以外なら間違い無く殺せただろう。2つ目はー」

 彼女は1端言葉を切ると手にしているものを掲げた。

 「伝説級の魔装具〈スライマンの指輪〉と

〈魔王の鍵の書(キー・オブ・スライマン)〉を持っているのだからな。。」

 「・・・!!返せ!!」

 カミトはそれを取ろうと無我夢中で手を伸ばすも届かなかった。

 「ますます興味がそそるな坊や。私の〈束縛〉を受けてもなお動こうとするとは。

余程大切なものだな。」

 黄昏の魔女はカミトの耳元に近づいてこういった。

 「悪いが気絶している間調べさせてもらったが君は、精霊と感応する姫巫女の力を持っているな。これまでそんなことが出来たのは歴史上でただ1人かつてこの大陸に厄災を起こした魔王。その再来ともなれば実に危険だな。」

 「・・・僕をどうするつもりだ。」

 カミトは現在絶体絶命だ。帝国に引き渡されれば間違いなくシラヌイの言っていた未来があるからだ。

 そうなればレスティアやシラヌイとも会えることも出来ないからだ。

 すると黄昏の魔女はカミトにこう聞いた。

 「坊や歳はいくつだ?」

 「はっ?」

 「年齢はいくつだ?」

 「13歳って聞いてるよ。」

 カミトは黄昏の魔女から年齢を聞かれたので素直に答えた。

 「丁度良い年齢だな。それにこの顔立ちならー」

 黄昏の魔女は何やら独り言を言うとカミトに提案を持ちかけた。

 「坊や、私のものにならないか?その代わり君やあの鎧とこいつを帝国に引き渡さないしこの指輪の中にいる精霊を解放してやろう。どうだ良い取引だと思わないか?」

 カミトは少し考えていた。

 たしかにそれは良い内容だがその対価をまだ聞いていないので聞いた。

 「そっちの要件は?」

 「ほーそこを聞くか感心だな。ここで家事労働をしてもらう。それとあの鎧の解析の付き合ってもらう。それでどうだ。」

 「わかった。今んところあんたのところにいるのがベストなようだ。

乗るよ魔女とのその取引。」

 「ならば私の事をこう呼んでもらうぞいつまでも魔女では示しがつかん。」

 彼女は1呼吸おいてカミトに名乗った。

 「私の名はグレイワース・シェルマイル帝国軍最高部隊〈十二騎将(ナンバーズ)〉の元第1位だ。よろしく頼むぞえーとお前の名は?」

 「カゼハヤ・カミト」

 「よろしくなカミト」

 これが俺とグレイワースとの師弟関係の始まりだった。




「グレイワースって年齢いくつだっけ?・・・って何でしょうかその剣は?」
「喰らえ男爵。」
 「え、ちょっと待って!!やめてーーーーー!!!」
 その後残ったのは服の切れ端とナニカだった。


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変装するならまともなものにしてほしい。

 「グレイワース。あれってお前の趣味?」
 「・・・死ね。」
 周りには大量の血が飛び散っていた。


 「--なんで俺を家事労働として雇うんだ?」

 現在カミトはずっと切っていない髪の毛の内前髪を切りそろえ後ろのほうの髪は櫛で整えられていた。

 「坊やが私より強かったらな。だがお前には必然的に欠けている・・・いや忘れてしまったものがある。それを思い出すためにな。」

 「だからって・・・これはないだろ?」

 目の前にある大きな立て鑑を見るとそこにいたのはカミトではなくヒラヒラのロングスカートを身に着けた女の子のメイドだった。

 「全く空恐ろしい程に似合っているなお前、その恰好で帝都を歩けば間違いなく男に声をかけられるだろうな。」

 「(序にそういう趣味の奴に攫われそうだな。)」

 グレイワースはカミトの見た目を見て感想を述べたところシラヌイはその格好だと幼女趣味な奴に攫われるんじゃねと冗談交じりで言った。

 「僕は男だ、そんな趣味ないし。それにシラヌイそんな奴いても僕がやられるとでも思うか?」

 「(確かにな。そんな命知らずいるまい。)」

 カミトの強さはシラヌイが見続けているからわかっている。

 そうするとグレイワースがこう言った。

 「おいなんの話だ。私には聞こえないぞ?」

 「ああーそうか忘れてた。シラヌイは僕と特殊な方法で会話してるんだ。しかも今のところ出来るのは僕だけだ。」

 「ほーそれは更に興味がわくな。精霊だはないのに上位の精霊と同じく言葉を交わせるとは。」

 カミトはシラヌイとコミュニケーションをとっていると聞くとグレイワースは更に興味がわいた。

 「それとその格好だが確かに悪戯心は多少あるがそれだけではない。」

 「どういうことだ?」

 グレイワースはカミトにその服装の意味を言った。

 「私の客人の中には感応力の高い姫巫女がたまに来ることがあってな。もしばれれば帝国の精霊騎士団。下手すれば〈十二騎将〉がこぞってやってくる。それに片や坊やは未登録の精霊使い、もう片方は精霊と呼べるかどうかわからない未知の存在。さらに厄介ごととして世界中が敵になる。さて反論あるか?」

 流石にシラヌイだけでは間違いなくばれるだろう。

 それに世界中を敵にすればいくらカミトでも太刀打ちできない。

 「何、永遠にこの屋敷に閉じ込めるという訳ではない。少し良い考えがあってな、それまではこの屋敷でおとなしくしてもらう。さてとそろそろ案内しよう。」

 「・・わかった。」

 カミトはグレイワースに導かれるまま部屋を案内された。

 そして屋敷の屋内から屋外に行こうとしたときカミトはこう聞いた。

 「なあ聞いていいかグレイワース?」

 「何だ?」

 「昨日屋敷に忍び込んだ時思ったんだが何で使用人がいないんだ?」

 「ああそれはーーーすぐにわかる。」

 グレイワースがそういった瞬間廊下の窓が砕け散った。

 「・・・っ。」

 カミトは腰に差しているシラヌイの刀を抜くとそこには湾曲した短剣を持った黒ずくめの2人組がいたが1人が気づく前に相手の首の頸動脈を切り裂いた後もう1人がそれに気づくもその姿に膠着した。

 何せメイドの格好をした少女が相方を殺したのだから。

 そしてもう1人は刀の柄で鳩尾に一撃を与え失神させたのだ。

 グレイワースはその光景を冷静に観察していた。

 「1人殺したのになぜもう1人は殺さなかった?」

 「こいつらの雇い主を見つけるためだ。・・・それにしてもこういう連中が来るから誰もいないのか?」

 「私はいろんな連中に恨まれていてね。帝国の内外を問わず敵だらけだ。こいつらの掃除もお前の仕事だがお前今の剣技は例の暗殺者養成機関で学んだ奴か?」

 グレイワースが聞くとカミトはこういった。

 「僕はこれしか知らない。」

 グレイワースは軍部とも繋がりがあるためそういう事情も知っている。

 「ま、私はお前の素性に興味はないがその剣技では剣舞に向いてない。」

 「剣舞?」

 剣舞とは精霊使いが精霊に奉納する儀式の中で最も格式が高いのである。

 「坊や強くなりたいと思ったことはないか?」

 「グレイワースはカミトに尋ねるとカミトはこういった。

 「僕はそう思ったことがない。」

 カミトはそういうとグレイワースは憐れむような眼でこう言った。

 「お前の強さはこの大陸にいる暗殺者の誰よりも強いが・・・誰よりも弱い。」

 「なんだそれ?」

 「(頓智か?)」

 カミトとシラヌイはお互いにグレイワースが何を言っているのかわからなかった。

 「その前にそいつの本体の所に連れてってやろう。」

 「!!シラヌイの所に連れてってくれるのか?」

 「こっちだ。」

 グレイワースはカミトと一緒に外に出ると少し歩いたところにシラヌイの本体が木の葉っぱの中に隠れさせていた。

 「何せお前を出すので精一杯だからな。ここに置いていたのだ。そこの大きな小屋が私の研究室だ。そこまでそいつを持ってこさせろ。」

 グレイワースはカミトにそう命令するとカミトはシラヌイの本体を起動させた。

 そしてグレイワースを持ち上げた後その小屋に向かった。

 「(坊やに言ったあの言葉の意味は近々その身をもってわからせよう。)」

 彼女は何かを思いついたように微笑んだ。

 

 




 強くそして弱い。
 それは外見ではわからない。


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力の本当の意味(前編)

 力とはその本質を見極めれないものは只の宝の持ち腐れである。


 それからしばらくたちーー

 「カミト、ふろを沸かしてくれ。温めでな。」

 「ああ。」

 「庭掃除(暗殺者の掃除も兼ねて)を頼む。植木の切込みもな。」

 「ああ。」

 「カミト、晩御飯の用意だ。ローレンフロスト風の肉料理。

ちゃんと味の整ったやつな。」

 「何だそれ?」

 「レシピがあるからその通りに作れよ。」

 「今の情勢でそんな料理できるのか?」

 「精霊の森に行って火属性の精霊を捕まえればよいだろう。」

 「どうなっても知らんぞ。・・・」

 カミトの料理経験だが全くと言ってよいほど無しである。

 それに現在帝国領内では〈教導院〉崩壊の数週間前に起きた〈災禍の精霊姫〉(カラミティ・クイーン)による反逆事件で帝国の土地が焼かれあらゆる火の力がなくなったのだ。

 それでもどうにかできたものを出すとグレイワースは・・・

 「カミト部分部分で少し火が強すぎるぞ。もう少し全体になじむようにしろ。」

 「ソースがまずいな。それに香草があまり効いていないな。」と文句を言いながらも残さず食べた。

 「(文句言うなら残せばいいのにな?」)」

 「(カミトそれはあいつなりの礼儀ってやつだ。

これからも頑張るようにっというな。)」

 「(それでもあいつには困ったものが・・・)」

 「カミト。ちょっと来い。」

 「ああ。」

 シラヌイはカミトの小言に付き合っている中その張本人に呼ばれたのでカミトはそっちに向かった。

 そこには・・・一糸まとってないグレイワースがそこにいた。

 「なっ!!!」

 「ああ、体をふいてくれるか?それが済んだら今夜の相手をしてもらおうか?もちろんベッドの中でだ。」

 「っ・・・あ・・・」

 「冗談だよ。全く面白い坊やだ。」

 カミトはグレイワースを睨みつけるもメイド服では迫力0だ。

 その後またシラヌイが話し相手になったのは言うまでもない。

 

 無論それだけではないグレイワースは学士つまり教師の資格を持っているため離れになっている倉庫でシラヌイのデータをまとめている。

 シラヌイが持っている「迷彩」や「索敵」さらに多くの装備や精霊とは違う契約の方法などあらゆるものを精霊使いの視点でまとめている最中なのだ。

 

 そしてさらに数日がたちグレイワースは皇帝の命令により出向することになった。

 「あんた政治嫌いなんだろ?断ればよいだろ。」

 「確かにな本当ならばシラヌイの研究データを基に帝国の軍部が使う図書館で調べたかったんだが命令だから仕方あるまい。今回の案件は坊やがいた〈教導院〉についてでな。」

 「えっ?」

 カミトはそれが自分のことで驚いていた。

 「何せあの施設の創設メンバーには帝国の大貴族が金を出して作戦を実行していた

アルファス教国の〈魔王教団派〉の名前が挙がってな。そっちは外交的に

進めていてな。こっちは〈騎士団〉が虱潰しに当たっているがカミトは

何か知らないか?」

 グレイワースはカミトにメンバーの情報を聞こうとするがカミトが言ったのは・・・

 「わからない。僕は道具だったから。」

 そう言ったのでグレイワースはそんなカミトを見つめた後こういった。

 「やはりやるしかないか。」

 「・・・・?」

 「ああそうだ。それでだ。夕方までに洗濯と屋敷の掃除。

それと序に書斎も頼むぞ。」

 「?なんでだいつもはしなくていいって言ってたろ。」

 「少し汚くってな。床掃除だけでいい。ほかの物には触るなよ。」

 「・・・わかった。」

 そのときカミトは気づいていなかったがその時のグレイワースの目は真剣だった。




 己で知る努力をしなければ何もできない。


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力の本当の意味(後編)

 人は時がたつと忘れるものである。


 グレイワースが屋敷を出た後カミトはすぐに掃除・洗濯を始めた。

 最初は不慣れであったメイド(女装)の仕事も慣れてきたのだがカミトはグレイワースが〈教導院〉の解体聞いた後脳裏に2人がよぎった。

 「【ミュアとリリィは大丈夫かな?】」

 「(大丈夫だろ。あの2人があの炎の化け物にましてや騎士団に捕まるようなへまをすると思うか?」

 「確かにな。」

 もしかしたらという思いは彼らを見ていたシラヌイが否定しそして安心をさせた。

 それが嘘と思われても・・・

 カミトはグレイワースから預かった書斎の扉を開けて中を見るとそこには想像したよりも広く大量の研究資料(精霊だけでなくカミトと協力して作っていたシラヌイの物もある。)。

 ガラス戸に目を向けると精霊鉱石の原石や魔装具(どれも高い物ばかり)が

飾っていた。

 「学士っていうのは本当なんだな。」

 「(カミトあの盾を見ろ。)」

 カミトは周りを見ているとシラヌイが差した物を見た。

 それは木製の盾の中央にさっき見た鉱石と伊那路様な価値があるであろうものが埋め込まれていて金属のプレートにはグレイワースの名前と彫られた年月が入っていた。

 「(あいつってこんなに強いんだな。)」

 シラヌイは改めてグレイワースの実力を知った。

 そしてカミトが掃除しようとすると甲高い鐘の音が聞こえた。

 「(また侵入者か。)」

 いつも通りカミトはそこに向かおうとすると既に部屋の入り口の前にいた。

 

 「(背は小さいしあの体格だと・・・女だな。)」

 シラヌイが相手を観察するとカミトは刀を抜きながらこう言った。

 「生憎だが〈黄昏の魔女(ダスク・ウイッチ)〉はいない。」

 カミトは言葉をかけても敵は動じず目線をほかの所に向けていた。

 それを追うとそこにあったものにカミトは目を見開いた。

 「【あれは〈魔王の鍵の書(キー・オブ・スライマン)〉。あいつの目当てはまさか・・・!!】」

  すると相手は黒い球体を本に向けて何かをしようとした。

 そして打った瞬間カミトは辛うじて本を取った。

 すると着弾した場所が削り取られたように消えていた。

 「【〈消滅〉の魔術ってその魔術は闇魔術だぞ!!!】」

 カミトはこれまであった中でグレイワース以外にもいたことに驚くも敵は更に黒い球体をいくつも作ると再び発射した。

 「【狙いはこの本か!!】」

 カミトは相手の目的を知りその本をさらに強く抱きかかえた。

 「【この本はレスティアを取り戻すのに必要なんだ。】」

 カミトは本を持ちながら刀を持ち詠唱府を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 シラヌイを召喚したカミトはそのまま装着し、教団で教わった床や屋根、天井等を移動する技〈影縫い〉でかわしながら機竜息銃「清水」を機関銃モードにしてその相手の周りを打った。

 「・・・!」

 「【今更遅い!】」

 カミトは周りを討つことで即席の煙幕を作り「迷彩」で隠れたのち大型刀「玄海」に変えて敵を殺すという算段をしていたがカミトは何かを感じ取ったのか

そこから離れた。

 するとそこを中心にいくつもの消滅の黒球が現われ周りを吹き飛ばした。

 あのまま行けば自分事消滅すると想定したのだ。

 カミトの胸元に持っている本を守っている光景を見てシラヌイはこういった。

 「(カミト、初めてだな。)」

 「【何がだ?】」

 「(守るための戦いをさ。)」

 それを聞いた瞬間カミト自身もそう気づいたのだ。

 誰のためでもない自分のためにということに

 敵がカミトの間合いに入ろうとした瞬間カミトはシラヌイの肩につけている大型手裏剣「風雷」を放つも相手はそれを見るとすぐに躱した。

 しかし・・・カミトの顔は何かを企んでいたのだ。

 少しずつ大きくなる音に後ろを向くと先程投げた「風雷」が戻ってきたのだ。

 しかし敵はそれをも躱してカミトのほうを見ると左手にはもう1つの「風雷」そしてフック状の腕が6本出てきた。

 特殊武装「天の羽衣」

 これまでは奥の手としてあまり出さなかった武装だがそれを目の前にある敵に出した。

 そして相手の覆面とローブを切り裂くと・・・

 「まさか私が騙されるとは・・・1本捕られたよ。」

 そこにいたのは灰色のグレイワースと同じ髪と瞳を持った少女だった。

 「今度こそ見切れよーー坊や」

 そしてあの時がよみがえった。

 初めて負かされたあの技を

 「絶剣技、初ノ型ー〈紫電〉」




 思い出せ。
 大切なものを


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再会

 「グレイワース。あの服どうやって手に入れたんだ?」
 「私が作った。」
 「・・・え?」
 暫くの間静寂が流れた。


 ここはどこかの国にある闘技場。

 そこはかつてのコロッセオと同じような建築物であった。

 その中にある待機場では1人の少女がいた。

 腰まで伸ばした黒い髪、裾に大きな切れ目が入った異国風の意匠をした美少女がいたが今彼女の周りにはどす黒い悲しみがあった。

 「何でこうなった?」

 「(仕方ないだろう?あの女との約束なんだから。」

 「だからってこういう衣装、しかもこんな大会でか?」

 「≪うふふ似合うわよ。レン・アッシュベル。≫」

 「茶化すなよレティシア。」

 「(そろそろ出番だぞカミト。)」

 「≪いつも通りやりなさい。≫」

 「じゃ行ってくる。」

 そうこの少女こそ我らが主役カミカゼ・カミト(男(笑))

 何故彼がまだ女装してるのかと言うとそれは前話の後に遡る。

 

 「・・・ん。」

 目覚めるとカミトはまたベッドにいた。

 「(またか。これで2度目だ。)」

 自分はまだ成長してないのだなと思いながら起きると

 「やっと目覚めたか。坊や。」

 すぐ近くでグレイワースが微笑みながら言った。

 「グレイワースあんたに聞きたいことが2つある。」

 「いいぞ。答えろ。」

 「先ず1つ目はさっきの攻撃は僕に足りないものを思い出させるためか?」

 「そうだ。忘れているなら思い出させる。そういうときに便利なのは危機に陥った時が効果的だがあの時シラヌイのあの大型の武器を囮としたときはヒヤッとしたがな。」

 グレイワースは悪びることなくそして楽しんでいるように答えた。

 確かにあの時自分はあの本〈魔王の鍵の本(キー・オブ・スライマン)〉を守ることがレスティアを守ることと同意義であったこともあり

あの本を死守することにしたのだ。

 確かに書斎の机の上には資料があったが物がなければ何もできないのだ。

 「それにあの時咄嗟に私の絶剣技をあの小さな手でよけきった時には驚いたぞ。」

 「見切れなきゃ死んでたぞ。」

 「まあ、そうだな。」

 カミトは彼女の言動に対しため息しか出なかったのでもう一つを聞いた。

 「2つ目にあんたのああの姿は何だ。俺よりちょっと歳が上程度だったが。」

 「それは昔〈精霊剣舞祭(ブレイドダンス)〉の優勝時の願いで手に入れたのだがこの体は1定の周期で若返るんだが万能ではない。さてと約束だ。指輪を出せ。」

 「あ、ああ・・・」

 カミトは懐から指輪を取り出すとグレイワースは慣れた手つきで儀式道具を並べほんの解読で得た解放の詠唱を唱えた。

 すると指輪の表面に刻まれた精霊語の文字が光り輝きその後嵐のように風が吹いた。

 「うわっ。」

 「(これは!!)」

 シラヌイとカミトが驚いた瞬間黒い霧のような羽が辺りを舞った。

 「--これはまた。坊やはとんでもない精霊を持っていたね。」

 グレイワースが驚くのも無理はない。

 それは少女の形をした精霊だからだ。

 「レスティア・・・だよな?」

 「ただいまカミト。それとシラヌイ。」

 「(俺はついでかよ。・・・まあ、おかえりレスティア。)」

 カミトにとってそれはミュアとリリィが欠けているがどちらかと言えば家族の再会のようなものなのだから。

 

 「ああそれとカミト。悪いがお前今度の〈精霊剣舞祭〉でないか?」

 「・・・・・はあっ!!!???」

 まだまだ終わらなかった。

 

   

 




 「カミト何で女装してるの?」
 「あの女に着せられた。」
 「それじゃ同じもの着る?」
 「何でさ!!!」


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剣舞祭と発覚

 ここでやっとヒロイン(メイン?)が登場します。


 「(その後はあれよこれよと言う間に〈精霊剣舞祭〉が始まることとなったがまた女装だししかも大勢にみられるという恥辱を味わうことになるとは。)」

 「【然も男に言い寄られるという始末(笑)】」

 「≪しかしほんとに女の子になれるというんだから≫」

 「(2人ともいい加減にしてくれそろそろ出るぞ。)」

 カミトの愚痴から始まりシラヌイの一言追加、レスティアの感想と出たところでカミトは光り輝く場所へ出ようとしていた。

 戦いの場所へ・・・

 

 

 「エリスよ、ヴェルサリアの剣舞をよく見て、そして会得せよ。いずれ帝国の威信を背負って戦うことになるのだからな。」

 「はい、おじい様」

 老齢の祖父ファーレンガルトとその孫娘エリス・ファーレンガルトが観覧席でそういっていた。

 「(いつか私も義姉上のようにあの場所で・・・立派な騎士として。)」

 エリスがそう決意を心の中で思うと西門から喝采が起きた。

 そこにいたのは繊細な彫刻を施された白銀の甲冑と赤いマントを身に纏った星のようなブロンドヘヤーの少女「ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト」が現われた。

 彼女はランバール戦争で没落した下級貴族イーヴァ家の娘であるが精霊使いの才能の高さからファーレンガルト家の養子に迎えられたエリスよりも2個上の義姉である。

 彼女はエリスが入学する養成機関「アレイシア精霊学院の史上初の初等生でありながらも代表選手に選ばれたのである。

 そして反対側からはカミト(女装)がそこにいた。

 「おじい様、あの娘は?」

 「レン・アッシュベル。無所属の精霊使いだが有力者の後押しがあったらしい。お前と同じ13だそうだ。」

 「私と同じ・・・」

 エリスは同い年の少女(?)があそこにいるという事実で悔しかったのだ。

 そして試合の鐘が鳴った。

 それと同時にヴェルサリアの甲冑が展開した。

 そこにいたの両肩にある大型の2門の主砲がせり出された全身を覆うような精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)静寂の要塞(サイレント・フォートレス)がいた。

 するとカミトの腰に差していたシラヌイがこういった。

 「【ほう。あれが精霊魔装か。カミト奴は俺がやる。)」

 「≪駄目よシラヌイあれは精霊私の獲物よ。それにしてもあの背入れを使えるなんてすごいわねあの子。≫」

 「(あれってすごいのか?レスティア。)」

 「≪ええあれはそこらの精霊使いじゃ手に余るほどの封印精霊よ。あれを手なずけるのはそういないわ。まあなたなら大丈夫でしょう。≫」

 シラヌイが自分を出すように提案するもレスティアが横から入りあの精霊をカミトに説明した。

 その間にヴェルサリアは手を振り上げると両肩の主砲を発射した。

 そして弾着した所から複数の火柱が上がった瞬間誰もがヴェルサリアの勝利を疑わなかった。

 ・・・この時までは・・・

 頭上からカミトが落ちてきたのだ。

 あの時神威を足に集中した後跳躍し爆風を利用して空高く飛んだのだ。

 カミトはヴェルサリアの眼前に飛び乗ると(サイレント・フォートレス)の複合装甲を貫いたのだ。

 そして黒い霧が血しぶきのように吹いた後ヴェルサリアはゆっくりと地面に崩れ落ちた。

 部門の筆頭であるファーレンガルト家を下したという事実を観客が認識した後喝采を浴びそこにいた少女達はこれだけを思った。

 「((((いつか私もあんな風に。))))」




 勝者は栄光を
 敗者は絶望を
 これもまた真実。


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正体は突然に

 正体が分からないって冒険心誘わね?


 あの後ヴェルサリアはレン・アッシュベル(カミト)の試合をしばらく見ていたが1日目の試合が終わると彼女は誰にも告げずにとある場所へと向かった。

 そこは捻じれた木がありどう見ても人間社会では有り得ない植物が大量にあるここは只の森ではないのだ。

 〈元素精霊界(アストラル・ゼロ)〉

 あらゆる精霊が住む世界。

 そしてそこにいるのは多種多様・属性多数・凶暴性・知性諸々が混ざり合っており危険度もある。

 ましてや精霊剣舞祭の会場の外と直結しているためそれなりに強い精霊がいる。

 そこでヴェルサリアは(サイレント・フォートレス)を展開するとそこら辺にいる狂精霊やそこら辺を縄張りにしている精霊が現われるとヴェルサリアは待ってましたとばかりに微笑みそしてこういった。

 「来い!貴様ら全員が相手だ。」

 暫くすると周りには倒れて力尽きた狂精霊や縄張りびしていた精霊がおりその周りでは木々は倒れ地面には無数の穴が開き消炎がたちまわっていた。

 当の本人もそれなりに疲労しており本来であれば魔力の回復のために1度戻らなければならないが彼女はそれをしなかった。

 「こいつら程度ではダメか。やはりもっと強い奴と戦わなければいかんな。・・・私が死ぬためには。」

 そうヴェルサリアは死にに来たのだ。

 この〈元素精霊界〉で精霊と戦って。

 「(あの時私は負けた。しかも初戦で、ファーレンガルト家に傷をつけそして落としてしまった。もう私にはいるところなんかない。)」

 ヴェルサリアの生家であるイーヴァは戦時中に当主を失い更に財政的な目的で土地を手放し今後の生活をどうするかで困っていた時ヴェルサリアの姫巫女の才能を見抜いたファーレンガルト家に養子になった時残った家族が安心して暮らせる資金を提供してくれた恩返しのためにこの精霊剣舞祭に入るために努力したのが水の泡だった。

 ヴェルサリアは次の敵を探すために移動しようとすると大きな物音が聞こえた。

 彼女はその音を聞いた後(サイレント・・フォートレス)の脚部に内蔵されている車輪を出してそこにむかった。

 

 「はっ、はっ、はっ。」

 少女は走っていた。

 両端で結い上げた黒の長髪、袖が長く豪奢な儀礼装束はどこかで転んだのか土にまみれ靴は脱げて傷だらけとなっておりひどいさまだった。

 しかし背後では何かの大群がこっちに来ているのだとわかっておりこのままでは追い付かれるとわかって彼女は振り返ってみると(樹木の精霊〈ドリアード〉)が群れでやってきたのだ。

 彼女は気丈ににらみつけこういった。

 「お、お前なんて私の精霊でやっつけてやるんだから。」

 そして彼女は詠唱を唱えた。

 「汝、人の子の王に仕えし剣聖の騎士よ!」

 「旧き血の契約に従い、我を守る剣となりて我が下に馳せ参じ給え!」

 すると少女の胸元から何かの刻印が淡い光を放つも突然その光が消えた。

 「(そ、そんな!!)」

 すると彼女の脳内にある言葉が浮かんだ。

 「(〈神儀員〉から外れたですって。)」

 「(第2王女はもう終わりだな。)」

 「(あれが元は精霊使いとは・・・。)」

 「(価値もない女。ロスト・クイーンと呼ぼう。)」

 少女の顔が絶望に染まろうとしたとき突如爆発音が聞こえた。

 そこには・・・

 「大丈夫か?」

 ヴェルサリアがそこにいた。

 「(まさかこんな女の子がいるとはな。歳はエリスと同じぐらいか。)」

 ヴェルサリアはエリスの事を思い出すと彼女を守ろうと考えた。

 「(どうせ死ぬんなら騎士らしく守って死のう。)」

 ヴェルサリアは(サイレント・フォートレス)にある戦斧(ハルバート)を振り上げ周りにいるドリアードを薙ぎ払った。

 雑魚程度なら何とかなるがこれまで守りながら戦うのはしたことなかったのか行動が制限されていたのだ。

 すると周りにいた残りのドリアードが下がると同時に巨大な樹木・・・いや大型のドリアードが現われたのだ。

 --グオオおおおおおおおおーーーーーー

 巨大な鳴き声と共にドリアードのボスが巨大な蔓をヴェルサリア目掛けて叩いたのだ。

 周りの大地が割れるとこれまでの戦闘でヴェルサリアの魔力が底を尽きかけたのであった。

 ドリアードのボスがもう一度巨大な蔓を振りかざした瞬間ヴェルサリアはこう思っていた。

 「(この子を守れずに死ぬなんて・・やはり私は何もできないんだ。)」

 ヴェルサリアはいつの間にか涙を流しながらこれまでのことが

走馬灯で出て来たのだ。

 ヴェルサリアは目を瞑りその瞬間を待った。

 すると何か大きな音がしたので目を開けると巨大な蔓が斬られておりそこには・・・黒い霧を出す魔剣と黒髪の少年がいた。

 「そこでじっとしていて、危ないから。」

 少年は素っ気なく告げるとドリアードのボスが怒っておりもう片方の腕で応戦しようとするとその少年の魔剣が消え代わりに紫色の鞘から見たこともない直剣とは違う剣が出てきた。

 すると少年がこう言った。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 すると光り輝きそこから紫色の何かが出てきたのだ。

 「接続開始(コネクト・オン)」

 すると今度はその何かが分解されると少女の周りに装着されたのだ。

 

 「(まさか特訓している途中でこんなのに出くわすなんてなあ。)」

 少年カミトはそう思っていた。

 何故レスティアではなくシラヌイなのかと言うとさっきのトーナメント戦の時にレスティアに譲ったため今度はこっちだと言ったためである。

 ドリアードのボスが振りかざした腕は当たることなくそれどころかシラヌイの「迷彩」で姿を隠した後「玄海」で腕を切った後「清水」を連射形態にしてドリアードのボスの表皮を破壊したあと長距離形態にした後「索敵」を使い急所を狙い打った。

 圧倒的な強さ唖然としていたがヴェルサリアはあの戦い方に誰かと重ねた。

 「(あの戦い方、それにさっきの魔剣・・・まさか!!)」

 「大丈夫?怪我はない?」

 「え、ええ。助けてくれたことに感謝します。」

 カミトはレスティアの剣を出し聞いた。

 するとヴェルサリアはカミトの顔を近づけさせた後こう聞いた。

 「お前、レン・アッシュベルか?」

 「!!!」

 「その剣は見覚えがあるぞ。なんせ私はこの試合で始めてそれを見た人間なんだからな。」

 カミトは何なのかと思ってヴェルサリアをみると最初に戦った相手だと気づいた。

 そしてもう一人の少女も目を見開いてこういった。

 「どうして・・・どうしてレン・アッシュベル様が男なのーーーー!!!???」

 カミトは2人の少女に睨まれまるで蛇に睨まれた蛙のような感じであった。

 「(どうしよう、レスティア、シラヌイ。)」

 「≪試合中じゃなくても女装するように言ったのに考えなしに

行動するから悪いのよ。≫」

 「【ま、こんな森の中だから大丈夫と思っただけじゃなく対戦相手を忘れたお前に非がある。こればかりはお前自身で解決するんだな。】」

 「(そ、そんなーーー。)」

 少年の顔が百面相のように変わっているのを見ながら2人は混乱していた。

 レン・アッシュベルが実は男であの伝説の魔王(スライマン)と同じく精霊と契約できるということにショックだったのだ。

 「・・・なあ2人とも頼みがあるんだけど?」

 「内容によるな。」

 「・・・うん。」

 カミトの言葉にヴェルサリアは条件次第として聞き、少女はそれに同意した。

 「僕の正体についてなんだけども・・・秘密にしてくれないかな?」

 カミトは困った顔をして願いを言った。

 少女は本来このことを報告しなければならない立場なのだが困っている様子を見てどうしようかと考えているとヴェルサリアはこういった。

 「わかった。このことは我々だけの秘密としよう。」

 「え、いいの。」

 ヴェルサリアの言葉に少女は困惑した。

 を「助けてくれた恩があるし何か事情がありそうだしな。君はどうだ?」

 ヴェルサリアの問いに彼女が出した答えは

 「・・・わかったわ。私も何も言わないわ。」

 「ありがとう!!じゃ2人とも森の出口まで送るよ。」

 「いや私は良い。」

 カミトはお礼として2人を送ろうとするとヴェルサリアはそれを拒否した。

 「私はもう少しここにいたいんだ。すまんが先に行ってくれないか?」

 元々ヴェルサリアはここを死地と決めていたのでそれを拒否したのだ。

 「あんたここにいればまたあのドリアードがやってくるぞ。」

 「さっきまでに魔力が回復したからな。あれくらいどうともしない。・・・それに・・・」

 「それに?」

 元を正せばカミトに負けたからここにいたのであり更に言えば死にかけだった自分たちを助けたこともあり最早生き恥をこれ以上晒したくなかったのだ。

 しかしカミトはそこまで回復していないんだとも分かっていた。

 現在でも木の根元で座り込んでいてしかも息も少し荒いためこのままでは今度こそ死ぬだろうとわかったのでカミトはある行動に出た。・・・それは・・・

 「きゃっ!?」

 ヴェルサリアの腰と足元を持ち上げる行為。

 つまるところ「お姫様抱っこ」である。

 いきなりのことでヴェルサリア自身も女の子のような声を出したのである。

 そのまま少女をシラヌイの腕に乗せ森の出口まで歩いた。

 「なあ。教えてくれ。どうして自分を偽ってまで〈精霊剣舞祭〉に出場したんだ。」

 ヴェルサリアはカミトに聞くとカミトは切実な顔でこう答えた。

 「叶えたい〈願い〉があるから。あんたは何のために?」

 今度はカミトがそう聞くとヴェルサリアは沈痛な顔でこういった。

 「育ててくれた家族の恩返しだ。私は養子でな。ここまで育ててくれた家に対して何かしようと思ってこの大会に出場したんだが・・・私は信頼を裏切った。もう私には居場所なんて・・・。」

 ヴェルサリアはそういうとカミトがこう言った。

 「僕も親はいないけど、でもレスティアが僕を人間にしてくれてある人がそれを思い出してくれて居場所を与えてくれた。居場所がないんなら・・・僕がそれになるよ。」

 カミトは力強い目でそういうとヴェルサリアは「そうか・・・\\]とほほを赤く染めて答えた。

 やっとのことでカミト達は森を抜けた。

 「じゃああとは自分で帰れるね。」

 「ええ、ありがとう。」

 少女はそういうとシラヌイから降りた。

 「ありがとう。それと君の名前は何だ?」

 ヴェルサリアがカミトにそう聞いた。

 「レン・アッシュベルではない君の・・・本当の名前。」

 カミトは暫く迷った後こういった。

 「カゼハヤ・カミト」

 「カゼハヤ・カミトか。約束してくれさっきのあの言葉。そしてこの大会が終わったら私ともう一度戦ってほしい。その精霊で。」

 「・・・うん。わかった。」

 ヴェルサリアは今度はシラヌイを使って戦いたいといいそれを飲んだ。

 「義姉上ーー」

 どこかで女の子の声が聞こえるとヴェルサリアは自分の義妹であるエリスの声が聞こえたのだ。

 やがてポニーテールを揺らしながらエリスが来た。

 「義姉上何処に行っていたんですか?心配したんですよ。もう夜中なのに戻っていなくておじい様も心配してたんですよ。」

 「・・・エリス。ファーレンガルト公はなんて言っていた?」

 ヴェルサリアは少し不安げに聞いた。

 「おじい様からは『家に戻った時もう一度初心に帰ってやり直せ』と言っていました。それと『今日はご苦労だったな』とも言っていました。」

 「そうか。」

 おそらく自分を心配していたんだろうと感じそれ以上は聞かなかった。

 「エリス。これが終わったら料理を教えてくれないか?」

 「!?・・・はい!!」

 「ああそれとお前に紹介したい奴が・・・あれ?」

 ヴェルサリアはエリスに料理の手ほどきを教えてほしいと頼むとエリスは驚いた後快諾した。

 そしてヴェルサリアはカミトを紹介しようとすると既にその姿が消えていたのだ。

 「・・・ありがとうカミト。」

 ヴェルサリアはカミトにお礼を言うと少女とエリスと一緒に帰った。

 その後学園に戻った後ヴェルサリアが前よりも角が丸くなり手料理をすることに驚くのだが

それはまた別の機会に。 

 

 一方カミトはと言うと・・・

 「お前正体隠す気あるのか?(# ゚Д゚)」

 「ごめんなさい 」

 今回のことでカミトはグレイワースに扱かれていたのだ。

 「まああっちは秘密にするといったようだが私もそれなりにくぎを刺しておこう。ヴェルサリアは私の学校にいるからいいがもう一人は恐らく〈神儀院〉だろうから知り合いをつてに探してみよう。あとシラヌイは私の船の物置に入れておけ分かったなこれからはちゃんと外でも女装しろよ出ないと今度は・・・」

 「今度は・・・」

 カミトはグレイワースの言葉の続きを聞いた。

 「ミニスカメイド服だ。」

 「はい!!」

 メイド服でごめんこうむりたいのにこれ以上は心が持たないとカミトは判断した。

 それから〈精霊剣舞祭〉が終わるまでの1週間レン・アッシュベルとして過ごしそして優勝した。

 そして彼女はどこかへと姿を消した。

 

  

  




 この作品は暫く休載します。


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剣と学院と装甲機龍
最悪な出会い


 11か月ぶりに私は戻ってきたぞーーー!!!(他の作品専念してたから)


 穏やかな木漏れ日差し込む森の中で少年はあるものを見た。

 スレンダーだが目の色から髪の色までが紅く可愛らしい・・・素っ裸の少女がいた。

 「(おいカミトぽけーっと見ている中悪いが謝ったほうが良いぞ。)」

 この状況に対し刀型のソード・デバイス『シラヌイ』が忠告した。

 そう心の中では逃げろ逃げろと思っているのに見惚れていたのか

体が動かなかったのだ。

 そして暫くして少年カミトは少女から視線を逸らした後口を開いた。

 「あ・・・えーと・・・。これは事故だから気にするなと言いたいが・・・。」

 この馬鹿何説明してんだと『シラヌイ』がそう思っているとカミトはある事を

口走った。

 「君の姿を見てしまったことには謝るが俺は健全な男子で子供の裸には興味が

ないんだ。」

 「(おいこの馬鹿!!)」

 まさかそれ言うかと思う中少女は腕を掲げてこう言った。

 「私は・・・今年で・・・十六歳よーー!!」

 「嘘だろそんな小さな胸・・・。」

 「(この阿保!!)」

 『シラヌイ』がカミトに注意すると周りの木々がざわめき始めた。

 「何だ?」

 カミトがそう思うと少女から声が聞こえた。

 -紅き炎の守護者にして眠らぬ炉の番人よ!

 -いまこそ血の契約に従い、我が下に馳せ参じ給え!

 精霊語を使っている少女の手の上で爆発するとそこには炎の鞭が現われた。

 「おいおい精霊使いかよ。」

 カミトは自分の運の悪さを呪った。

 目の前にいる少女は武器化させる程の実力を持った精霊使いであることが

わかったのだ。

 大抵はそのままの状態で出すのが実力がある物はこの様に武器として

召喚出来るのだ。

 「(こりゃ詰んだな。カミト骨ぐらいなら後でばあさんに拾わせてやるから

くたばって来い。)」

 「おいそりゃねえぞ!」

 『シラヌイ』があきらめろと言った言葉にカミトが待ったを掛けようとすると少女が怒りながらこう言った。

 「よくもこの『クレア・ルージュ』の水浴びを除いたわね!!」

 そして鞭を振りながらこう言った。

 「この変態!!」

 「おわ!!」

 カミトが間一髪で躱すと近くの木が・・・真っ二つに分かれた。

 本来なら燃えるはずのがあまりにも高熱で然も早かったのか焦げ跡が

付かなかったのだ。

 「覗き魔!!」

 「淫獣!!!」

 そう言いながら周りの木をも倒しまくっていくにつれてカミトの隠れるところが

限定し始めたのだ。

 「だーー!!どうすりゃいいんだよ!!??」

 「(もお諦めっちまえば。)」

 『シラヌイ』がそう言うもカミトはふざけんな!と返した。

 そしてカミトはクレア・ルージュにこう言った。

 「おおいお前指の隙間から見えてんぞ?」

 「・・・きゃあ!!」

 カミトの言葉にクレア・ルージュは・・・両手で胸を隠した。(下は泉に入っていて見えないようにしている。)」

 「あ、馬鹿!」

 「(ちゃんと確認しろ!!)」

 カミトと『シラヌイ』がそう言うのも無理はない。

 何せ片手で使っていた鞭が後ろの大木に当たってしまったからだ。

 そして切断された木がゆっくりと・・・ずり落ちて行った。

 「間に合え!!」

 カミトは池に向かって全速力で走りクレアに飛び込んだ。

 「な!!」

 クレアが驚いた瞬間鞭が水の中で消えていった。

 そして巨木が丁度良い温度になった泉の水に倒れて舞い上がった水は雨となって

降り注いだ。

 「おい大丈夫か?」

 カミトがクレアにそう聞くとクレアはこくりと頷いた。

 「それじゃあ・・・」とカミトが立ち上がった瞬間・・・何か柔らかい物が

当たった。

 「ひゃあん。」

 「何だ泥か?」

 カミトはそれを触っている中クレアから声が聞こえてくるのに『シラヌイ』が

ある事を推測した。

 「(おいカミト。それ・・・そいつの胸じゃね?)」

 「へ?」

 それを聞いたカミトはたらたらと冷や汗流しながらこう言ってしまった。

 「はあ!さっき見た時はそんなに!」

 「な、ナナナナ、何してるのよ・・・この変態ーー!!」

 「ぐはっ!!」

 鳩尾に思いっきりパンチ(なぜか拳が赤かったが)を受けたカミトが失神する前に見たのは・・・ゆらゆらと紅い髪が炎のように逆立った「クレア・ルージュ」であった。

 

 

 

 なおこの時『シラヌイ』が思った事は・・・。

 「(おお、良いパンチだな○石!!)」と言ったそうだ。




 カミト「燃え尽きたぜ・・・真っ白に」
 シラヌイ「いやまだ始まったばかりだろ!」


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何故にこうなった。

 何でこうなったんだろう?


 「うう・・・ん。」

 あれから数分経ちカミトが目覚めると『シラヌイ』がこう言った。

 「(おおい相棒。助けてくれーー。)」

 何やら『シラヌイ』が助けを呼んでいたので起きようとすると首に何か巻き付かれているような感触がしたので取ろうとすると・・・。

 「やっと目覚めたわね、覗き魔の変態淫獣。」

 「ぐえ!!」

 カミトは首が締まったので咳き込むとクレア・ルージュがそこにいた。

 今度は全裸ではなく制服姿だ。

 純白に黒のラインが入って、胸元を彩るリボンタイ、ボタン代わりに縫われている

精霊護符(アミュレット)を身に纏って・・・調教用の革鞭を持って髪を

ツインテールにしていた。

 カミトの首を絞めていたクレア・ルージュはこう言った。

 「感謝しなさいよ。死なないように手加減してあげたんだから。」

 普通なら消し炭にしてやってるのよハイグレード変態と言っている中カミトは腰に

差していた剣が無いことに気づいた。

 「な、なあ俺の剣は?」

 「あああれなら・・・泉に捨てたわ。」

 「ふざけんな嗚呼!!」

 あの後カミトはクレア・ルージュを無理やり連れて行って声を頼りに探した。

 

 

 

 「(ああ。錆びるところだった。)」

 カミトは『シラヌイ』を見つけた後クレア・ルージュから一緒に来いと言われた。

 そして歩いている中クレア・ルージュがカミトにこう聞いた。

 「ねえ何で貴方アレイシア精霊学院に入ってるのよ。男のあなたが?」

 それを聞くとカミトはコートの内ポケットからある手紙を出した。

 「俺はグレイワースの婆さんから呼ばれたんだよ。」

 ほいこれが証拠と言うとクレア・ルージュはそれを聞いて驚いた。

 「グレイワースって・・・学園長にってこれ帝国の第一級紋章印!?・・・

本物みたいだけど婆さんてあなた何様のつもりよ!!」

 グレイワースは精霊騎士を目指すオルデシア帝国を目指す姫巫女からすれば

「レン・アッシュベル」と同格ともいわれており伝説の魔女と恐れられている。

 「俺はグレイワースとは知り合い何だがはるばる来たのは良いとして学園って

どれだけ広いんだよ。」

 カミトがそう愚痴るとクレア・ルージュはカミトに呆れた口調でこう言った。

 「あんた多分森の精霊に騙されんじゃない?それに学園はここから二時間かかるからまたやられるわよ。」

 「どんだけ広いんだつうの・・・此れなら最悪お前頼りだったよ。」

 最後はシラヌイにしか分からないように言うとカミトはクレア・ルージュにこう

聞いた。

 「なあなんであんな所で禊してたんだ?」

 するとクレア・ルージュはこう返した。

 「この近くには噂だけど古代の聖剣を祀っている祠があるの。そこには強大な

≪封印精霊≫がいるんだけど気位が高いのか学園の創設以来誰も成し遂げられなかった

らしいからここらへんで最も聖性の高い泉があそこだったから禊をしたのよ。精霊契約するには心身の清らかな乙女を好むってこれ常識よ。」

 そう言うとカミトはある事を思い出した。

 ≪封印精霊≫はその大半が人類に厄災をもたらすため封印されているのだ。

 「おいおいやめとけよ。それがとんでもない奴だったらどうするんだ?

危険すぎるぞ。」

 「(そん時は俺達はとんずらするがな。)」

 『シラヌイ』がそう言った。

 するとクレア・ルージュはカミトの方を見てこう言った。

 「私ね。・・・どうしても強い精霊が欲しいの。」

 「だったらさっきの炎精霊を育てりゃ良いじゃねえか。あれも結構強いだろ?」

 カミトは二重の意味でクレア・ルージュにそう忠告した。

 一つはあれ程の威力がある精霊を武器化できるという事は彼女自身の才能も十分に

あるとみて行った。

 もう一つは精霊を複数契約すると精霊同士が干渉してバランスが崩れて神威が

出しにくくなるぞという意味での言葉であった。

 「それでも私は目的のために必要なのよ。強力な精霊が。」

 その言葉を聞いた後カミトは少し溜息を吐いた。




 そしてカミトは運命の出会いをする。


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眠っている奴を起こすときには丁寧にな。

 クマと同じだ。
 長時間寝てるやつを無理やり起こすのは下の下だ。


「(とうとう来ちまったな相棒。)」

 『シラヌイ』が祠の前でそう言うがカミト自身もそう思っていた。

 聖剣が祀られている祠は森が開かれた場所なのだがその周りを結界が

覆っていたのだ。

 もうこの時点で回れ右したいのだが首に鞭が締まっていて思うに逃げられないのだ。

 クレア・ルージュはその結界を指先一つであっさりと解呪するとカミトの方を向いてこう忠告した。

 「ここから先は本当に危険だから一般人のあんたは私の後ろに着いてきなさい。」

 「(じゃあ解けよ首の鞭。)」

 「あんた危険って分かってんならやめとけよ。≪封印精霊≫は気性が荒くて隙あらば

自分を使役する精霊使いも殺すほどだぞ。」

 カミトは如何やら制御に失敗した時に備えて護衛すると言っているのだ。

 何言ってんだこのお人好しはと『シラヌイ』が呆れかえっていた。

 「言ったでしょ。私には今すぐ強い精霊が必要だって。」

 如何やらがんとしていう事を聞かないのでカミトはクレア・ルージュにこう聞いた。

 「絶対に大丈夫なんだな?」

 「当たり前でしょ!」

 カミトは肩を竦めて駄目だこりゃと思った。

 そして二人は祠の中に入った後クレア・ルージュはそっと呟いた。

 「-炎よ、照らせ。」

 炎精霊の初歩的な精霊魔術で指先に小さな火球を生み出して二人は進みだした。

 暫く進むとその剣があった。

 巨大な石に突き刺さっている抜身の剣だ。

 剣自体はかなり古い物らしいが剣身自体は錆びついておらず刃こぼれも

していないという何ともさっき刺しましたーー。というくらい綺麗な剣であった。

 剣の腹には精緻な古代紋様が刻まれておりその文字が淡く青白く発光していた。

 「あれが学院が立てられる前からあるといわれる≪セヴェリアンの聖剣≫よ。」

 「おいおいそれってあの魔王スライマンを倒したっつうあの?」

 「(お前にとっちゃあ天敵だな。)」

 それはかつて七十二柱の精霊を従えた唯一の男の精霊使いでありそれを殺した剣が

目の前の剣であると言われる。

 然しクレア・ルージュは呆れながらこう言った。

 「馬鹿ね。そんなの帝国に至る所にあるわよ。ま、本物じゃないにしろ

それなりに強い精霊が封印されているかもしれないけど。」

 そのままクレア・ルージュは剣の方へと歩いていった。

 「おおい、無理するなよ。」

 「分かってるわよこのハイグレード変態!!」

 「(まだそれ言うようだな。)」

 カミトはクレア・ルージュに注意しても聞く耳持たずの様だ。

 カミトは封印精霊を刺激しないようにそしていつでも『シラヌイ』を出せるように

構えるとクレア・ルージュは深呼吸した後詠唱した。

 -旧き聖剣に封印されし、気高き精霊よ!

 -汝、我を主君と認め契約せよ、さすれば我は汝の鞘とならん!

 流暢に紡がれる精霊語の契約式(コンダクトル)の中彼女の周りで風が暴風のように渦巻き始めた。

 そのまま契約の誓言が最終章に入るとさらに風が強くなって今にも吹き飛ばされそうになりそうであった。

 更に聖剣から叩きつけるように膨大な神威が放出された。

 普通ならとうの昔に失神してるぐらいの量だがクレア・ルージュはこう綴った。

 「-我は三度、汝に命ずる、汝、我と契りを結び給え!」

 クレア・ルージュの誓言が祠の中に響き渡った瞬間・・・剣が抜けた。

 「ぬ、抜けた!抜けたわ!!」

 「マジでか!?」

 クレア・ルージュは抜き取った剣を歓喜の声で振っていると剣に刻まれている

古代紋様が烈しく光った。

 「!!。」

 「(おいカミト、やべえぞ!!)」

 『シラヌイ』そう注意した瞬間・・・剣が光と共に砕け散った。

 「きゃっ!」

 クレア・ルージュは砕け散った影響で地面に倒れこんだ。

 「おい、大丈夫か?」カミトは慌ててクレア・ルージュに近寄った。

 「な、何?一体何がって・・・あたしの剣精霊は!?」

 すると『シラヌイ』が凄い嫌な口調でこう言った。

 「(早く逃げたほうが良いぜ相棒。あいつ・・・怒ってるぞ。)」

 そこにいたのは砕け散った聖剣ではなく武骨で切れ味が良さそうな鋼の剣であった。

 「・・・確かに。ありゃ怒ってるな。」

 「何で精霊使いでもないのに分かるのよ。」

 クレア・ルージュがそう言うとカミトはこう返した。

 「ああそりゃ見りゃわかるだろ。」

 すると剣がこちらを向いた。

 「ありゃ完全に・・・敵意剥き出しだろうが!!」

 カミトが大声で言うと同時に剣がこちら目掛けて突進してきた。




 寝る子は育つ。
 だが寝すぎると健康に害を及ぼすぞ。


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火猫対剣精霊

 この作品での戦いは初めてなので大目に見ていてください。


 「(伏せろ!相棒!)」

 『シラヌイ』がそう言った瞬間カミトはクレア・ルージュを地面に押し倒すと先程迄いた場所に穴が開いていた。

 カミトはクレア・ルージュを半眼で睨みながらこう言った。

 「あれ程の精霊を解放したのは流石だけどよ・・・あれ完全に暴走してるぞ。」

 よく見ると剣がカミト達を探していた。

 「うるさいわよ!こ、これから調教するの!」

 クレア・ルージュの言葉にこりゃ駄目だと思うとカミトはクレア・ルージュの手を握って走り出した。

 「ふぁっ。」

 「いちいち反応するな。ここは逃げるぞ。」

 「ちょ、ちょっとあの精霊は?」

 「良いから走るぞ!ここじゃ戦いづらい。」

 カミトはクレア・ルージュと共に祠の外に向かって走り出した。

 未だ本調子じゃないのか定かではないが剣精霊はカミト達を追わなかった。

 祠の外に出るとカミトのすぐ後ろに剣精霊が突撃しようとしていた。

 「(カミト後ろ!!)」

 『シラヌイ』がそうカミトに忠告するとカミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いてはじき返した。

 すると剣精霊は回転しながらも周りの木々をなぎ倒しながら体勢を整えた。

 「へえ、中々じゃない。調教のし甲斐があるわ。」

 「あれが中々か!?どう考えても高位の封印精霊だぞ!」

 クレア・ルージュの言葉にカミトは逃げるべきだと提案するも彼女はこう返した。

 「逃げたいならあんた一人で逃げれば?あたしには必要なのよ。」

 そしてクレア・ルージュはこう言った。

 「どんな精霊にも負けない強力な精霊が!」

 するとクレア・ルージュは泉で使った精霊語を詠唱すると現われた紅蓮の炎が

逆巻くとクレア・ルージュはこう叫んだ。

 「さあ、狩りを始めるわよ、スカーレット!」

 炎から出たのは緋色の炎を体中に纏った真紅の火猫(ヘルキャット)だった。

 「〔こいつが炎精霊の本体!〕」

 「(あまり強そうじゃねえな。)」

 然しカミトは『シラヌイ』にこう返した。

 「〔阿保言うな。獣の姿で顕現する精霊は高位でそれなりに名のある奴だぞ!!〕」

 「(マジかよ。)」

 『シラヌイ』が驚いている中クレア・ルージュが持っていた革鞭を振るうと

火猫は唸りながら突撃した。

 対する剣精霊は木々を切断しながら向かっていった。

 「スカーレット、狩りなさい!」

 すると火猫は爪を立てて振り下ろした。

 そして甲高い金属音と共に火花を散らした。

 それが二三度続くがカミトはあの革鞭は精霊に指示を出すためなのかと納得すると

剣精霊が動きを止めた瞬間・・・。

 「喰らえ、灼熱の劫火級!」

 クレア・ルージュの掌から火炎球(ファイアボール)の巨大版が放たれると

スカーレット共々巻き込ませた。

 然しその衝撃で周囲の木々が爆発を中心になぎ倒された。

 「(すげー威力!)」

 『シラヌイ』が感心すると火猫と剣精霊が出てきた。

 火猫は元々同じ火属性には効果はないが剣精霊は無傷であった。

 「スカーレット!」

 クレア・ルージュもこれごときで倒せるとは思っていなかった。

 然し本命はこれだった。

 火猫の爪が更に赤く染まっていたのだ。

 高熱の爪で剣精霊を倒すという作戦であった。

 然し剣精霊はそれを素早く察知すると金属をこすり合わせたような嫌な音が

流れだした。

 「きゃ!」

 「ぐお!」

 「(うぜーー!!)」

 カミト達は耳を(『シラヌイ』は覗いて)塞ぐと剣精霊が・・・変形したのだ。

 通常の剣ではなく巨大な〈バスターソード〉にへと変形するとそのまま

火猫の体を両断した。

 「スカーレット!」

 そして火猫はそのまま姿を消した。

 どうやらたった一撃で倒されたようだ。

 クレア・ルージュはそれを呆然と見上げてへたり込んだ。 

 そして剣精霊がクレア・ルージュに狙いを定めるとカミトはヤバいと思うと『シラヌイ』を天に掲げてこう唱える。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 そしてバスターソードになった剣精霊がクレア・ルージュに轟音を上げて突撃した。

 「ひっ!!」

 クレア・ルージュはあまりの事に目を瞑りそれを待った。

 「・・・???」

 クレア・ルージュは何もないのかと思って見ると目の前には見たこともない

何かが自分の前に立ちふさがっていた。

 

 

 

 

 「くそおお!!」

 カミトは『シラヌイ』を召喚して障壁で止めるもバスターソードとなった

剣精霊は尚も体当たりをしていた。

 暫くして剣精霊が離れると今度は回転を加え始めた。

 今度は本気で倒す気なのだろう。

 するとカミトは自身の革手袋を付けていない右手を見てある事を考えた。

 だが本人はそれをしようかすまいか考えていると剣精霊が再び突撃してきた。

 「(カミト!!)」

 『シラヌイ』の言葉にカミトはこう思った。

 「〔やるしかない!〕『シラヌイ』!!障壁を最大出力で頼む!!」

 「(分かった!!)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』が了承するとカミトは突撃してくる剣精霊に

こう唱えた。

 ー旧き聖剣に封印されし、気高き精霊よ!

 -汝、我を主君として認め契約せよ、さすれば我は汝の鞘とならん!

 「嘘、精霊契約!?」

 クレア・ルージュは驚いているもカミトは気にしなかった。

 剣精霊が障壁に当たった瞬間余りの衝撃に『シラヌイ』の脚部が地面にめり込んだ。

 然しそれでもカミトはやめなかった。

 今ここで中断すれば自分ならまだしもクレア・ルージュが真っ二つになるからだ。

 -我は三度、汝に命ずる!

 -汝、我と契りを結び給え!

 契約式を唱え終わった瞬間剣精霊の刀身が青白く輝いた瞬間・・・。

 「(またかよ!!)」

 「やべえ!!」

 激しい閃光と轟音がカミトに襲い掛かった。




 そしてそれは達成される。


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そして契約へ?

 そして終わりまた始まり。


 「ぐうう・・・。」

 「(起きたか?相棒。)」

 「〔『シラヌイ』、俺どうした?〕」

 目の前にはクレア・ルージュが何か叫んでいたが聞こえない。

 「(お前あの爆発で耳が暫くの間だが聞こえないようだぞ。ま、

その内良くなる。)」

 「〔それで・・・あの精霊は・・・?〕」

 「(自分の右手を見てみろ。)」

 『シラヌイ』の言葉にカミトは自分の右手の甲を見た。

 そこにあったのは二本の剣が交差する紋章が刻み込まれていた。

 地面に横たわって脱力しながら安堵の溜息をつくが心は晴れていなかった。

 胸を抉るような罪悪感がカミトの心を支配していた。

 彼女との約束を破ってしまった自分に腹が立ったのだ。

 すると『シラヌイ』はこう弁護した。

 「(あの時は仕方なかったさ。全員が助かるためには仕方がなかったことだしそれにあいつだって事の次第を説明したら分かってくれるさ。)」

 そう言うも矢張りカミトの心は晴れなかった。

 クレア・ルージュはカミトが目を覚ましたことに気づくと襟首を掴んで

物々しい形相で睨みつけていた。

 そしてクレア・ルージュは震えながらカミトにこう聞いた。

 「どうして・・・どうして男のあんたが精霊と契約したり精霊を使役できるのよ!」

 「・・・やっぱりそれか。」

 精霊契約は清らかな姫巫女のみに許された特権である。

 それを男が出来たのは「魔王スライマン」を置いて歴史上に他にいなかったのだ。

 カミトはそれに答えずに立ち上がって『シラヌイ』のある方にへと向かおうとした。

 クレア・ルージュは無視されたのが腹に来たのかクレア・ルージュはキッと

怒りながらこう聞いた。

 「あ、あたしの精霊は!?」

 「それならここにある。」

 カミトは右手の精霊刻印をクレア・ルージュに見せるとクレア・ルージュは口を

ぱくぱくしながら茫然としていた。

 何か言いたそうだが言葉も出れないほどであった。

 カミトは『シラヌイ』に乗ろうとするとクレア・ルージュは腰に手を当ててカミトに向けてこう言った。

 「ちょっと待ちなさいよ!」

 「?(何だ?)」

 カミトと『シラヌイ』は何事かとクレア・ルージュを見た。

 そしてクレア・ルージュはカミトにこう言った。

 「あ、あんた・・・あたしの精霊を奪った責任取りなさいよね!」

 「「は(は?)」」

 お礼じゃなく賠償かよと呆れた思考だなと思っているとクレア・ルージュは

こう続けた。

 「だから!あんたがあたしの手に入れるはずだった精霊を横取りしたんだから責任として・・・あんたがあたしの契約精霊になりなさい!!」

 その言葉にカミトと『シラヌイ』はそれぞれこう言った。

 「お前頭大丈夫か?」

 「(医者に診てもらえ。)」

 そう言うとクレア・ルージュは革鞭を器用に使ってカミトの体に巻き付かせた。

 「はあ!!」

 そのままクレア・ルージュはカミトを引き摺っていった。

 「おいどこ行くんだよ!?」

 「アレイシア精霊学院よ!責任取りなさいよね!!この変態泥棒!!!」

 「何か増えてるぞ!!?」

 クレア・ルージュのどう考えても自己中心的発想に色々と文句を垂らす

カミトであったが『シラヌイ』はそんな二人を見送りながら次に召喚されるのを

待つことにした。

 「(・・・は~~。こりゃ前途多難だな。)」

 そう思う『シラヌイ』であった。




 次はやっと学園です。


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師匠との再会 

 ドモン「ししょーーーう!!」
 東方不敗「馬鹿弟子がーー!」
 こいつらウザい。


アレイシア精霊学院とは帝国各地から集められた貴族の令嬢達が集まり一人前の

精霊使いとなる為に日々研鑽を磨く訓練養成校であるが城壁の内部の庭は手入れ

されているだけではなく瀟洒な尖塔が立ち並ぶその様子は宮殿のようである。

 その内部にて・・・。

 「ああ今日は酷い事が立て続けだな。」

 赤い絨毯が敷かれている校舎の二階の廊下でカミトが愚痴っていると『シラヌイ』がこう続けた。

 「(森に入れば道に迷い、高飛車で実力の差も把握仕切れない娘っ子にボコられて

今度はその娘っ子が解放した〈封印精霊〉に殺されかけた挙句に契約して最後には

その娘っ子が『私の契約精霊になりなさい!』って鞭で雁字搦めにされながら

連行されたんだもんな。)」

 殆どあの娘っ子がやらかした後始末を尻ぬぐいする羽目だよなと『シラヌイ』が

ため息交じりでそう言った。

 カミトはクレア・ルージュがトイレに入っている隙に鞭を解いて逃げたのだ。

 「なんにせよあの世間知らずに見つかる前にグレイワースに会って・・・。」

 カミトは懐に入れてあった便箋を取り出すと深い事情があるのか顔を険しくして

こう言った。

 「この手紙の本当の意味を問いたださないとな。」

 「(ああ、今まであの婆さんの家でメイドしたり執事したりしながら裏街で

情報を探してたんだ。こうなったら魔女の掌で踊りながら手掛かりを掴み取る。)」

 『シラヌイ』とカミトは共に同じ意思を持っていることを確認したその時、カミトは学園長の執務室に足を止めた。

 「さてと出るのは鬼か蛇か・・・。」

 「(はたまた魔精霊か。)」

 カミトと『シラヌイ』はそう思いながらもカミトが扉を叩こうとすると・・・何やら声が聞こえた。

 「学園長、私は納得できません!」

 「ん?女??」

 執務室で少女の声がしたので叩かずに耳を当てて聞いてみた。

 「何故、神聖なる姫巫女の学舎に、お、男等を迎えなくてはならないんですか!」

 「この私が必要だと言ってるんだ。理由はそれで十分だ。」

 「グレイワースだな。」

 「(ああこのぞわっとするような声は間違いないな。)」

 カミトと『シラヌイ』がそう言うともう一度聞き耳を立てた。

 「私達では力不足だと、おっしゃるんですか?」

 「それについては問題ない。騎士団の実力は承知しているがあいつは特別な才能を持っている。」

 「男でありながら精霊と交感出来ることですか?」

 「いやそれだけじゃない。あいつともう一人・・・いやもう一体の奴もな。」

 「何ですかそれ・・・何者だ!」

 「やべえ!!」

 カミトが扉から遠ざかると・・・ポニーテールの少女が扉を蹴りつけながら

現われたのだ。

 ・・・然も下着丸見え。

 「あ、黒のレース。」

 「(おま、また!!)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』が呆れると少女は真っ赤にしてこう言った。

 「この不埒物が!!」

 少女の蹴りがカミトの腹部に当たる瞬間・・・カミトはそれを『シラヌイ』を鞘ごと使って防御した。

 「(お前があほなこと言うたびに何で俺が使われるんだ!!??)」

 理不尽だろ!!と言いながら『シラヌイ』が文句言っていると少女は腰に差した剣を抜くと同時にカミトも『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いた。

 すると少女はカミトを凝視すると顔が赤くなって驚いた。

 「貴様・・・まさか男!!??」

 「ああ男だよ。」

 「(偶に女になるがな。)」

 カミトはきちんと答えるが『シラヌイ』の余計な一言に大きなお世話だというと

執務室の机にいた女性がカミトにこう言った。

 「ふん、随分と遅かったじゃないか。カゼハヤ・カミト。」

 そしてカミトもその女性にはんと言ってこう返した。

 「こっちは色々あったんだよ。グレイワース・シェルマイス。」

 そこにいたのは灰色の髪と瞳を持ち、小さな眼鏡を掛けた女性。

 元帝国十二騎将第一位にしてカミトの師匠「グレイワース・シェルマイス」が

そこにいた。




 グレイワース「やっと私が出てこれたか。」
 やっとだもんね。


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魔女との取引

 怪しい人間と契約するなかれ
 その内容は自身をも殺すものとなるだろう。


 「さてと・・・剣を収めろ、エリス。学園内での死闘は禁じられてるんだ。騎士団長補佐菅として校則を破るのはいかがなものだぞ?」

 「・・・はい。」

 エリスはグレイワースの言葉に不承不承で従うとグレイワースはカミトにも

こう言った。

 「お前もだカミト。お前は曲がりなりにも私が直に教えた弟子なんだ。ここで

まだ剣を収めないのなら・・・私がまた相手になるぞ。」

 「分かってるよ。あんた相手に勝てるなんて思っていないからな。」

 そう言いながらカミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを収めた。

 「エリス、お前は下がれ。こいつとは話さなければならないことがあるからな。」

 するとエリスが真っ赤になって抗議した。

 「だ、駄目です!男女が同じ部屋で二人きりなど!!この男が学園長に不埒な欲望を抱くという事も・・・。」

 「いやそりゃないない。」

 「(そうそうこいつがそんなに誰此れ構わずって訳じゃねえし。それに

こんな魔女手出したら俺らが殺されるわ。)」

 エリスの言葉にカミトと『シラヌイ』がそれぞれの意見で否定した。

 するとグレイワースがニヤリと笑いながらこう言った。

 「ふむ、それならそれで構わんさ。私はいつも勝負下着を身に着けているぞ。」

 するとカミトがどてっと倒れた。

 「因みに色は・・・。」

 「あんたふざけてるだろ!!」

 立ち直しながらもそう言うカミトにグレイワースはつまらなさそうにこう言った。

 「はあ、つまらんな。昔はそれなりに反応があったのに。」

 「あんたのおかげだよ。」

 カミトはぶっきらぼうに言った。

 「さてとエリス、下がってもらうぞ。なあに大丈夫だ。まだこの坊やには負けは

しないさ。」

 「・・・学園長がそうおっしゃるのなら。」

 そう言ってエリスはカミトを睨みつけながらそう言った。

 

 

 

 

 「彼女はファーレンガルト公爵家の娘でな。騎士としては優秀だがどうも肩に力が

入り過ぎてな。」

 ここ最近は特になと言うとカミトは彼女の格好に疑問を抱いていたのかこう聞いた。

 「なあ。あの娘の制服の上にある甲冑って何だ?」

 「あああれは風王騎士団(シルフィード)の正装でな。この学園の秩序を乱す狼藉を追い払うのが仕事だ。」

 「だったらもっと厳しく取り締まったほうが良いぞ。こっちはそのせいで酷い目

見たんだ。」

 「ふむ、それはボロボロになったその服と。」

 そしてグレイワースはカミトの右手を見た。

 「その右手と関係があるのか?」

 「ああこいつは・・・。」

 その後カミトはあの祠の事を包み隠さず報告した。

 するとグレイワースはカミトを見てこう言った。

 「まあ偶然とはいえ一体どういう心境の変化だ。お前が彼女以外の精霊と

契約するとは。」

 するとカミトは懐から便箋を取り出してこう言った。

 「それについてだが本当か?この内容は。」

 するとグレイワースはカミトにこう言った。

 「ああ本当だとも。魔女は嘘をつかない。」

 「そして本当の事も話さないんだろ。何が目的だ?」

 そう言うとグレイワースは目を丸くしてカミトにこう聞いた。

 「驚いたな。私がここに務めてたった一年足らずでよく変われたものだな。」

 「当たり前だ。俺だってそれなりに変わろうと努力したんだ。」

 カミトの言葉にグレイワース自身の目が変わっていた事にカミトは気づいていない。

 その目はまるで成長した我が子を見る母親のような感じがあったからだ。

 そして執務机に身を乗り出すとカミトの鼻先に書類の束を見せた。

 「・・・なんだこの紙の束は?」

 カミトはそれを受け取りながらそう聞いた。

 「それにサインしろ。交換条件としてな。」

 グレイワースの言葉を聞きながらカミトはそれを読んでいる中カミトは

グレイワースにこう聞いた。

 「・・・おいあんたこれって・・・編入手続きって・・・何じゃこりゃあ!!」

 そこに記されていたのはカミトの・・・偽装プロフィールであった。

 「(おいこれって大丈夫なのかよ?)」 

 足つくぞと『シラヌイ』がそう言うとグレイワースはカミトにこう言った。

 「手続きはこっちで済ましてる。それにこれはお前を守るためだ。」

 「・・・どういうことだ。」

 グレイワースの言葉にカミトは意味深な表情でそう聞いた。

 「本来、精霊使いとは協会に管理されているのだがお前はそれすらない。

前の奴とスペアの奴は使えないし、お前の存在を知れば精霊騎士団が挙ってお前を討伐するだろう。それにあれに出場するにはそれなりの証明が必要だしな。」

 「あれ?」

 グレイワースの言葉にカミトなんだと思い聞くとグレイワースはこう言った。

 「二か月後に行われる元素精霊界(アストラル・ゼロ)で行われる

〈ブレイドダンス〉に出場するためにさ。」




 カミト「・・・また女装しろってか?」
 シラヌイ「(今度はどんな衣装だろうな?)」


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条件。

 魔女の条件には危険が付き物。


学園の廊下でカミトはエリスと共に学園の案内をされていた。

 制服は本来なら女生徒しかいない為スカートが基本なのだが現在カミトが

着ているのはグレイワースが特注で作らせたズボン付きの制服一式であった。

 然もサイズが丁度良い事にカミトは心の中で愚痴っていた。

 「〔あの婆さん。こうなると分かっていたのか?〕」

 すると『シラヌイ』がこう言った。

 「(まあ良いじゃねえかカミト、あの屋敷で見つかるまでビクビクしながら

業務をこなすより大手を振って安全な場所に住めるって思えばな。)」

 『シラヌイ』の言葉にそりゃそうだと言ってこう続けた。

 「〔・・・なあ『シラヌイ』、あの話本当だと思うか?〕」

 「(あの話って・・・あれか・・・。)」

 

 

 

 

 数分前・・・。

 「はあブレイドダンスって三年前にあったばかりだろう!!」

 ブレイドダンスとはアストラル・ゼロで数年に一度行われる最大級の神楽の儀式で

まあいうならば世界中の精霊使いを使った武闘祭で優勝すればその国には数年間の

精霊王からの加護による国土の繁栄と望む願いを一つだけ叶えれるというものなのだ。

 「そうだ。これ迄こんな短期間にあったことは例がなくてな、調査も兼ねてお前にも参加して優勝して欲しいんだ。」

 カミトの言葉にグレイワースはこの学園に来させた理由を話すとカミトは

こう返した。

 「悪いが俺はブレイドダンスに出場したくねえ・・・って言いたいがそれだけ

じゃねえんだろ、俺を呼んだ理由?」

 するとグレイワースはカミトを見てこう言った。

 これまでにないくらい真剣な眼差しで・・・。

 「お前を呼んだ理由の中で最大の物。それは・・・。」 

 そしてグレイワースは重く口を開いた。

 「お前以外に勝てないんだ。あの最強のブレイドダンサーにはな。」

 するとカミトの顔が強張りこう聞いた。

 「おいおいちょっと待てよ。それってまさか・・・。」

 そしてグレイワースはこう返した。

 「・・・戻ってきたんだ。最強のブレイドダンサーにして前回の優勝者。

『レン・アッシュベル』がな。」

 

 

 

 

 「〔あいつが戻ってきたってあり得るかよ『シラヌイ』?」

 「(どうだろうな?成りすましかもしれないし本物だと自分で言っても俺達には

効かない。何せ俺達はそいつが誰なのか知っているしな。)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』は面白半分で言うとカミトは『シラヌイ』に

こう返した。

 「〔・・・そいつが誰だとしても関係ねぇ。あいつを見つけるためにはあの婆さんが交換条件として提示したブレイドダンスの優勝を目指す!!それだけだ。〕」

 そして『シラヌイ』はこう締めくくった。

 「(あああいつの居所を問いただすためにもいっちょ鈍った腕を鍛え直すぞ!!)」

 「ああ、その通りだ。」




 次はエリスとの会話。


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学園の案内

 エリスと話の中にある重要なものがあります。


 さてさて何故エリスがカミトに学園の案内しているかですがグレイワースがカミトが制服に着替えている最中に呼びつけて指示したそうだ。

 無論本人は嫌な顔をしていたがグレイワースからの指示の為仕方なく案内している。

 懇切丁寧に教えているがこの学園の設計思想は精霊のとって心地よい場所になる事を第一に考えているため使うべき人間の事など考えない建物になってしまったのだ。

 「教師棟と学生棟は二階の廊下で繋がっていて食堂は一階にあるが何か聞きたい

ことはあるか?」

 エリスがカミトにそう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ後は自分で慣れるようにするが・・・何でそんなに離れてるんだ?」

 エリスとカミトとの距離は人一人分すっぽりと寝そべれば入る位の距離になっておりどうしてそんなに離れているのか気になったのだ。

 「貴様!私に近づいてナニカする気なのだな!!」

 そう言って剣を抜くとカミトはエリスにこう返した。

 「ちょ、待てって!さっきグレイワースの婆さんから学園内でのもめ事はするなって言われたばかりだろう!」

 それを聞いてエリスはくっ!と言って納刀しながらぶつくさと文句を言っていた。

 「全く何で学園長は男を編入手続きさせたんだ。」

 「(どうやら完全に嫌われてるな、相棒。)」

 「〔仕方がねえよ『シラヌイ』、超が付くくらいの箱入り娘のお姫様たちの前に男が来るんだ。兎の群れに狼かライオンを入れるような物だぞ。〕」

 『シラヌイ』の言葉にカミトは悲しいが彼女達から見てそう見えているんだろうと

説明した。

 然しブレイドダンスが始まるまで聞いたところ二か月そこらの為ここで生活する以上信頼を得て今回のルールであるチーム戦に必要な5人を集めなければならないのだ。

 するとカミトはある事を考えてエリスにこう聞いた。

 「なあ、エリス。俺は狂から何処で寝泊まりするんだ?」

 そう聞くとエリスは少し離れた窓の外を見た。

 「あれが見えるか?」

 「・・・あああのレンガ造りの建物か?」

 それは少し古くこの学園にはまるで似つかわしくない殺風景だがそれなりの

屋敷並みの建物であった。

 「あそこは昔軍がランパール戦争の際に姫巫女達の傷を癒す際に使われた

療養所だったのだが今は誰も使われていなかったんだ。」

 「?・・・誰も?」

 カミトはエリスの言葉の最後の部分に違和感を覚えた。

 「今はある生徒が一人で住んでいる。訳アリだが上級の精霊と契約を交わした

だけじゃなくそいつが持っている物に学園長は興味を示してな。ここに着任された後

あそこを改築して住めるようにしたんだ。」

 「風呂や調理器具一式とベッドが揃っているからそこに住むように言われている。」

 「・・・ふーーん。」

 カミトはその建物を見ているとエリスが囃し立てるようにこう怒鳴った。

 「何をしている!貴様がこれから入るレイブン教室に案内しなければ

いけないのだ!」

 「おお分かった!!」

 カミトはそう返すと『シラヌイ』はその建物から何か感じる気配を感じた。

 「(この感じ・・・まさかな。)」

 

 

 

 

 「(ん?今のは・・・)」

 薄暗い場所で女性のような声をした。

 然しそこにいたのは人ではなく・・・青い鋼の体と黒い線が入った・・機竜がそこにいた。




 この機竜についてはまた何処かで語ります。


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我が学び舎の部屋へ。

 学ぶこととは知る事。


レイブン教室に着いてその部屋を覗くと・・・誰もいなかった。

 「今は全員外に出払っているが後で先生が来る。その時に・・・。」

 「(カミト!あぶねえ!!)」

 エリスが言いかけると突如『シラヌイ』が警告すると何かが来る予感がしたため

カミトはそれを紙一重で躱した。

 そこにいたのは・・・。

 「よくも逃げたわね!!カゼハヤ・カミト!!」

 あたしの契約精霊でしょうとクレア・ルージュが大声でそう言うとエリスがカミトの前に割り込んだ。

 「またか!クレア・ルージュ!!」

 「げ!エリス・ファーレンガルト。」

 クレア・ルージュは苦々しい表情でそう言うとエリスはこう言った。

 「貴様また問題行動をしてどうする!こいつは認めたくないが今日からわが校の

生徒になるんだ!これ以上問題行動を起こさすわけにはいかない!!」

 するとクレア・ルージュはこう返した。

 「は!何言ってんのよ!そいつは私の奴隷精霊になるんだからね!!」

 「貴様。とうとう頭がいかれたのか?そんな精霊何処にいる?」

 エリスはクレア・ルージュの言葉に呆れていると彼女はカミトに指差して

こう言った。

 「そこにいるじゃない!そこに!!」

 「こいつは人間だぞ?何を基準にしてるんだ!?」

 エリスはとうとうツッコミしてしまうがクレア・ルージュは収まる事を

知らなかった。

 「さあ、さっさとそいつよこしなさい!!」

 「(無茶苦茶だなあの嬢ちゃん)」

 流石に『シラヌイ』も呆れてしまうとドアから誰かが入ってきた。

 「おいおいここで騒ぎを起こさないで欲しいな。騎士団長様。」

 そう言っているのは二十代半ばの長い黒髪と黒縁の眼鏡を掛けて、ダークグレーのスーツの上に白衣を羽織った女性であった。

 「「フレイヤ先生!!」」

 エリスとクレア・ルージュが揃ってその女性の名を出すとカミトは誰だと思った。

 するとフレイヤと言う女性はカミトを見てこう言った。

 「ああ君が学園長の話に出てきた例のねえ・・・。」

 そしてフレイヤは自己紹介した。

 「私がレイブン教室担当のフレイヤ・グランドル。担当教科は精霊刻印についてだ。君の事は既に把握済みだ。その腰に差している奴についてもな。」

 フレイヤは『シラヌイ』の方を見てそう言うとエリスとクレア・ルージュに

こう言った。

 「さて二人とも、学校内での私闘は厳禁だろ。さっさと散った散った。

クレア・ルージュ、君は確か野外授業じゃなかったかな?何でここにいる?」

 「あ・・えと・・・あの・・・。」

 クレア・ルージュは慌てふためいて弁解しようとしながらカミトの方を見るが

カミトは目線を逸らした。

 「もうすぐ授業が終わるから自分の机に戻るがいい。」

 「・・・はい。」

 そう言われてクレア・ルージュは渋々戻るとエリスにもこう言った。

 「君はヴィ―ぜル教室だろ?ここは任せて戻るがいい。」

 「ではこれで。」

 エリスはそう言ってフレイヤにお辞儀して出て行った。

 そしてカミトにこう言った。

 「君の席は後にして、自己紹介の内容を考えることだ。」

 「はい。」 

 そう言ってカミトは壇上近くの席に座った。

 因みにクレア・ルージュはカミトを後ろから睨みつけていた。




 そしてカミトは自己紹介をする。


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自己紹介と出会い。

 この話であの少女が出ます。


 「それじゃあ今日から入学する新入生を紹介する。」

 フレイヤの言葉にカミトが壇上に上がると教室内で小さいが幾つかの言葉が

飛び交った。

 「あれが男の精霊使い・・・。」

 「(見たまんまだろ。)」

 「目付きが悪くて人殺してそう。」

 「(実際二桁ぐらい殺してるぞ。)」

 「〔いや婆さんの所も加えたら三桁だぞ。〕」

 前半は『シラヌイ』が女生徒の言葉にツッコミ入れるが所々カミトもツッコミ

入れていた。

 「あのクレア・ルージュを手籠めにしたらしいわよ?」

 「(いや手籠めじゃなくて奴隷にされかけただがな。)」

 「て、手籠めって何?」

 「(辞書で調べろ。)」

 「ちょっと不良ぽくってカッコイイかも♪」

 「(婆さんの家じゃ献身的な執事だぞ。)」

 「外見に騙されちゃだめよ。噂じゃエリス・ファーレンガルトもお手付きに

なったって話よ。」

 「(あの直ぐに剣を抜く奴誰が手を出す。)」

 「お手付きって・・・何?」

 「とにかく厭らしいことよ。」

 「〔俺もう帰っていいか?〕」

 後半のこの言葉にカミトは速攻で出て行きたいと思ってしまったのだ。

 生徒の数は十四、五人であるが男の精霊使い=魔王という答えがあるのか怯えている生徒が何人かいた。

 「あー囀るな、お前ら。単位減らすぞ。」

 フレイヤ・グランドルが名簿を机に向かって叩くと全員静まり返った。

 「ほらお前もとっとと自己紹介しろ。」

 フレイヤ・グランドルはカミトに向けてそう言うとカミトは無難な内容で

自己紹介した。

 「カゼハヤ・カミト、十六歳。見ての通り男の精霊使いだがあまり怖がらずに接してくれるとありがたい。」

 心の中でブレイドダンスの為になと思っていると生徒たちの何人かがこう

言っていた。

 「何か・・・普通だね。」

 「うん。あまり魔王ぽくないね。」

 「でも何か、キュンとしたね♪」

 「あ、分かる。ツンツンしてるけど本当は甘えたいって言う犬みたいな感じが

するよね。」

 「(いやコイツ犬って言うより狼だろ?)」

 人食いが付くがなと『シラヌイ』がそう思っている中カミトはこの教室の軽さに

驚くとフレイヤ・グランドルはカミトの耳元でこう囁いた。

 「あー、ここのお嬢様たちは常日頃から精霊と関わっているせいか一般人よりも

感覚がズレてるから気にしないでくれ。」

 「ああ・・・はあ。」

 フレイヤ・グランドルの言葉にカミトは少し納得すると女生徒の一人がカミトにこう聞いた。

 「え、えーとカミト君・・・好きな食べ物ってある。」

 「ん?まあ何でも食べるが強いて言うならグラタンかな。」

 すると他の女生徒も質問してきた。

 「故郷は何処なの?」

 「スリーサイズは?」

 「お風呂で何処から洗うの?」

 「〔おい待て最初以外はセクハラだぞそれ。〕」

 カミトは心の中でそう思っているとある女性徒がこう聞いた。

 「ねえ、今度のブレイドダンス何だけどチームは何処にするか決めたの?」

 するとカミトはこう答えた。

 「いやまだだ。仲間はこれから探すつもりだけど。」

 「それじゃああの剣の〈封印精霊〉を手懐けたのって本当?」

 「ん?・・・ああこいつかって誰だ?それ言ったのは?」

 すると机に乗り上げてこう言う女性徒がいた。

 「そしてその精霊を手懐けたカミトを手懐けてるのがこの私よ!」

 「お前か!!ってそもそもお前があいつを倒せなかったからその尻ぬぐい

させられたんだぞ!!」

 クレア・ルージュの言葉にカミトがそう言うとクレア・ルージュは更にこう言った。

 「何よ!生意気な奴隷精霊ね!!」

 「精霊を奴隷呼ばわりするような奴が粋がるな!!」

 カミトとクレア・ルージュの言い合いがエスカレートする中フレイヤ・グランドルが机を叩くと全員静まり返った。

 「いい加減にしろ!!貴様ら!!カゼハヤ・カミト!お前も早く好きな席に座れ!!後クレア・ルージュ!!机に乗るな!!」

 「は、はい・・・!」

 クレア・ルージュはそう言われて机に座るとカミトは彼女から離れた席に

座ろうとすると・・・調教用の革鞭がカミトの首に巻き付かれた。

 「ぐえ!!」

 するとそのまま後ろへ引き戻されて行くので後ろを向くと・・・クレア・ルージュが鞭を手繰り寄せていた。

 「あんたは私の隣よ!!」

 「ふざけるな!そんな所誰が座るか!!」

 「逆らうつもりなら誰がご主人様かはっきりさせてあげるわ!!」

 カミトは必死で鞭を解こうとするも強く巻き付かれているのか中々解けない。

 「ぐううう・・・くそ・・・。」

 「(おいカミト!!俺を召喚しろ!!このままじゃあお前死ぬぞ!!)」

 『シラヌイ』がそう警告しているのが分かりソード・デバイスを抜こうとした

瞬間・・・シュンと言う音と同時にカミトの首がきつくなくなった。

 「ゲホゲホ!!」

 カミトは咳き込みながら後ろを向くと・・・鮮やかに切られた革鞭とその先にいる

クレア・ルージュの机の上で剣を刺していた女性徒がいた。

 「これ以上は許しませんよ。クレア・ルージュ。」

 するとクレア・ルージュはこう反論した。

 「な、何よ!!そいつは私の・・・。」

 クレア・ルージュが言いかける中女生徒はこう返した。

 「彼は精霊使いです。貴方の所有物ではありませんし聞いてみたら貴方が

自分を過大評価した結果彼がいなければ貴方はここではなく墓の下ですよ!本来なら

感謝すべきところを逆恨みして自分の精霊に!!然も奴隷って貴方何様の

つもりですか!!それがオルデシアの貴族たる振る舞いですか!!」

 「ウググググググ・・・。」

 クレア・ルージュはその女性徒の言葉に反論できず睨みつけることしか

できなかった。

 そして彼女はカミトのいるところに向かって手を差し伸べてこう聞いた。

 「大丈夫ですか?立てますか?」

 「ああ・・・大丈夫だ。」

 カミトはその女性徒の手を握って立ち上がると女生徒がカミトにこう言った。

 「私の席の隣に来ませんか?空いてますよ。」

 「おお、ありがとうな。」

 カミトはそう言って彼女に着いていった。

 「ありがとうな助けてくれて。」

 カミトがお礼を言うと少女はこう返した。

 「良いんですよ。力をああいう風に使う人間は私嫌いなんで。・・・

それに・・・。」

 すると女生徒は机からある物を出した。

 「同じモノ持っている者同士ですし。」

 そこから出したのは水色の短剣であった。

 「それは・・・。」

 「ああその前に自己紹介しましょう。」

 すると女生徒はこう名乗った。

 黒髪を肩口で切り揃え、眼鏡を掛けた少女。

 その名は・・・。

 

 

 

 

 「レオノーラ・ランカスター。元ドラグニア竜皇国現ヘイブルグ共和国にいた

神装機竜『メイルストローム』のドラグナイトです。」

 「ドラグナイト・・。」

 カミトは聞いたことが無いなと思うとエレオノーラはこう締めくくった。

 「お互い持つもの同士仲良くしましょ。カゼハヤ・カミト♪」

 




 何故エレオノーラがいるのかはまたいつか明かします。


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我らが寝床

 寝る場所
 それは人間の欲求において大切な事の一つ。


 ここは精霊学園近くの森の中・・・。

 「おいどこ連れてくんだ?」

 カミトは森の中を歩いていると前にいる少女「レオノーラ・ランカスター」が

こう返した。

 「これから貴方が住む場所です。一度は寮内と言う案がありましたが年頃の

男女が・・・然も魔王と同じ体質の人間がいれば何されるか分かったものじゃないと

大多数の教員の反対意見でここになったんです。」

 「俺ってそう思われてるのかよ。」

 カミトはレオノーラ・ランカスターの答えに『シラヌイ』がこう返した。

 「(まあ良いじゃないか。女がそこら狭しといる中に男一人はきついぜ。一人になれる環境を提供してくれるだけまだましだぜ。)」

 『シラヌイ』がそう言うとレオノーラ・ランカスターはこう返した。

 「あのこう言っちゃ何ですが・・・一人ではありませんよ。」

 「ああそういや言ってたな。俺が住む場所には先約がいるって・・・誰なんだ

そいつ?」

 カミトはレオノーラ・ランカスターの言葉に問うと彼女はこう返した。

 「私です。」

 「・・・・はい?」

 「いえ私なんです。先約。」

 「・・・・・マジかよ。」

 カミトはまさか目の前にいる彼女が同居人である事に項垂れていると

レオノーラ・ランカスターがカミトにこう言った。

 「着きましたよカミトさん。あそこが私達が住む場所でありグレイワース学園長が

研究の時に使っている研究棟『魔女の釜(ウイッチ・ケトル)』です。」

 そこはレンガ造りで離れていた時よりも少し綺麗な感じがした建物であった。

 

 

 

 

 はてさて何故この二人がいるのかと言うとアレイシア精霊学院の講義は精霊によって千差万別であり能力もさまざまであるため必要取得条件を満たしていれば好きな講義を生徒が自分で受けることが出来る単位制なのである。

 カミトは編入したばかりでカリキュラムが出来ておらず午後からの予定が

真っ白なのだ。

 そしてレオノーラ・ランカスターはと言うとグレイワースから午後の授業を

休みにする代わりにカミトに宿舎となる場所を教えて欲しいと頼まれたのだ。

 本来ならば昼食を食べてから行くことも考えていたが学園の食堂の値段が一般よりも馬鹿高い為昼食抜きで行くことにした。

 レオノーラ・ランカスターも流石に学園のはと言って同じ理由。

 そして後ろからクレア・ルージュがカミトに午後の授業にも来いと言われたが

レオノーラ・ランカスターがグレイワースの名前を出すとすごすごと退散した。

 

 

 

 

 そして現在にへと至る訳であるがレオノーラ・ランカスターは扉からではなく後ろの勝手口から入っていった。

 カミトもそれに続くと中は・・・。

 「おお意外に綺麗じゃねえか。」

 元々は待合室であった場所を台所や本棚、勉強机等が置かれていた。

 さらに窓際には衛生面を考えてか花が置かれていた。

 そして少し離れた所にそれがあった。

 爪は先端が薄紫になっており肩には蜂の巣の断面のような形の武器が搭載されており両手の手首部分には鋭い刃物が内蔵されていた。

 「こいつが・・・『メイルストローム』。」

 すると声が聞こえた。

 「【あらあら久しぶりに見たわね。ドラグナイトを見るのは?】」

 「!!誰だ!?」

 「【こっちですよ。】」

 カミトはその声に従って振り向いた先には先程の機竜がいた。

 「成程『シラヌイ』と同じってか?」

 「【久しぶりですね『シラヌイ』】」

 「(ああ久しぶりだな。『メイルストローム』)」

 如何やらお互い顔なじみだったようだ。

 カミト自身も少し嬉しかったのだ。

 自分と同じモノを持つ仲間に出会えたのだから。

 「カミトはさん。寝る部屋に着いて説明しますので着いて来て下さい。」

 「ああ、分かった。」

 カミトは今後の事を考えると少し楽しみが生れたことに意気揚々であった。




 神装機竜「メイルストローム」
 種類  「ワイアーム」
 見た目  肩にミサイルを搭載した「ガンダム・鉄血のオルフェンズ」に出てくる「ガンダムバルバトスルプスレクス」と同じ。
 本機は『シラヌイ』と同じく人語が喋れる機竜である。
 グレイワース曰く未だ他にもあるかもしれないという仮説がある。
 武装  クロー*10
     槍
     腕部内蔵ワイヤーテール*2
 特殊武装  グロリアス・テンペスト
     肩部に搭載されているミサイルポッド
     ミサイルは機竜弾頭(ドラグヘッド)と呼ばれる代物であり所有者に応じて煙幕、焼夷弾、分裂弾等が搭載されている。
     機竜自身で生成しているため弾切れしない分所有者の体力を削る為
長期戦には向いていない。
 


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腹がすけば何とやら。

 腹が空ければ何もできない。


 「さて寝る所ですが元々ここは療養所であることは知ってますね?」

 レオノーラ・ランカスターがカミトにそう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああここは来る前に遠くからだがエリスが説明してくれた。」

 「それなら後は簡単です。二階全て空き部屋ですので好きな所に入って下さい。

私が入っているのは201号室ですのでそれ以外を使ってください。それとお風呂は

大風呂がありますのでそれを使って下さい。台所も好きに使って構わないので。」

 何か質問ありますかと聞くとカミトはいやと答えるとレオノーラ・ランカスターはほっとしていた。

 「それではお昼としますが・・・。」

 レオノーラ・ランカスターは何か言い淀んだ後カミトにこう聞いた。

 「カミトさん、料理できますか?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああそれなりにな。」

 そう言うとレオノーラ・ランカスターは喜びながらこう言った。

 「良かったーー。私あまり料理が出来なくてだからその・・・缶詰めとパンしか

食べれなかったんです。」

 サンドイッチとサラダぐらいなら出来ますけどねと自嘲しながらそう言うとカミトは台所に向かって食糧庫を見ると大量の缶詰めがそこにあった。

 「結構種類が多いからそれなりに出来るな。それじゃあ・・・えーと・・・

レオノーラさん・・・。」

 「レオノーラでいいです。これからここで暮らすのですから。」

 レオノーラがそう言うとカミトはこう答えた。

 「それじゃあ俺の事もカミトって呼んでくれ。」

 「分かりました。カミト。」

 レオノーラがそう笑顔でそう言うとカミトは咄嗟にこう思ってしまった。

 「〔・・・可愛いな。こいつ。〕」

 カミトは耳が赤くなっていることを感じながら調理を始めた。

 

 

 

  

 数分後机の上にはカミトの手料理があった。

 丁度パスタの袋があったのでそれでホウレン草とベーコンのパスタ、ツナ缶と

マッシュしたジャガイモで作ったツナポテトサラダ、サーモン缶を使ったグラタン、

カボチャのポタージュスープ、デザートのフルーツヨーグルトまである。

 「うわあああ・・・。」

 レオノーラは目を輝かせながら料理を見ていた。

 どうやらあまり真面な食事にありついていなかったと思ったのだ。

 因みにサラダとヨーグルトはレオノーラも作っていたのだがその光景を見ていた

『シラヌイ』と『メイルストローム』曰くこう思ったらしい。

 「(【夫婦の共同作業??】)」

 するとレオノーラは我を取り戻すとカミトにこう言った。

 「ああそう言えばカミトさん。機竜を召喚してください。私はまだ見たことが

無いので。」

 「おお分かった。」

 そしてカミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いて詠唱を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 そして『シラヌイ』が『メイルストローム』の隣に召喚された。

 「これが『シラヌイ』ですか・・・。」

 「(これからよろしく頼むぜ。レオノーラ。)」

 「こちらこそよろしくお願いいたします。」

 レオノーラは『シラヌイ』に挨拶した後カミトはレオノーラにこう言った。

 「さてと冷めないうちに食べるとするか。」

 「そうですね。」

 そしてお互い机についてお互いこう言った。

 「「それじゃあ・・・頂きます。」」




 食事は誰かと食べることが一番良い事。


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三年前の過去

 レオノーラがアレイシア精霊学院にいる真実を語ります。


「ごちそうさまでした。」

 「お粗末でした。」

 カミトとレオノーラは食事を済ませた。

 レオノーラはこれまで真面な食生活とは言えなかったので喜びながら食べていたが

カミト自身も朝から何も食べていなかったので腹ペコだったのだ。

 カミトはレオノーラに食後の紅茶の入ったカップを渡すとレオノーラにこう聞いた。

 「なあ、『ドラグニア竜皇国』って確か西側の軍事国家だったよな?そんな所から

この学園に来るって留学生か何かか?」

 するとレオノーラの顔が曇って行くのが見えてカミトはこう続けた。

 「悪い。もしかして聞いちゃいけないんなら謝る。すまん。」

 そう言うとレオノーラはカミトにこう言った。

 「いえ良いんです。どうせ何時か知られることなので。」

 そう言うとレオノーラは紅茶の入ったカップを置いてこう話した。

 「カミトの言う通り『ドラグニア竜皇国』は軍事国家であると同時に

竜種を精霊として使役していました。」

 「ああそれにブレイドダンスでも何回か優勝していることでも有名だよな。」

 カミトはレオノーラの言葉にそう続けるとレオノーラはこう続けた。

 「その通りです。私も竜種を主っていましたし何時かはブレイドダンスに出場

出来ると信じていましたがある事が起きたんです。」

 「ある事?」

 カミトは何なのかと聞くとレオノーラは震えながらこう言った。

 「アビスが・・・現われたんです。」

 「アビス?」

 カミトは何だそれと話すとレオノーラは顔を真っ青にしてこう言い綴った。

 「・・・人類の敵と呼ばれていました。」

 「敵?」

 「はい・・・。」

 

 

 

 

 

 3年前

 ドラグニア竜皇国の港である漁師が漁をしていた。

 「あ?何だあれ?」

 漁師の男性が空を見上げると何か黒いナニカが空を覆い尽くしていた。

 「鳥か?」

 「いや鳥にしては妙だぞ。」

 漁師達がそう言うと全容が明らかになり始めた。

 細く黒い体と羽。

 鋭い爪と牙。

 これは機竜側では「幻神獣『アビス』ガーゴイル型」というタイプである。

 初めて見るアビスに漁師は驚きを隠せなかった。

 「な、何だあれは?」

 「新しい精霊か!?」

 そう言うとアビスの何匹かが船に気づき襲ってきた。

 「う、うわあああーーー!!!」

 「海に飛び込めーー!!」

 漁師達が海に飛び込んで逃げるとアビスはそのまま海に飛び込んで・・・漁師達を

食い殺した。

 海は赤く染まりアビスの体も紅い液体で覆われていた。

 そしてそのまま港町「ドラゴン・ポート」でもアビスの姿を見る者は新しい竜種かと思って見た瞬間・・・アビスの羽が分離して町を襲った。

 『『『『『きゃああああああああああ!!!!!!』』』』』

 町の住民が恐怖してそこから遠ざかろうとしたり竜種に乗っていた人間が果敢に

挑もうとするも成すすべなくアビスに竜ごと喰い殺される人間が続出したり竜の死体が港にいた人間の頭上に落ちて押しつぶされる者もいた。

 「タスケテーー!!」

 「来るな!!クルナーー!!」

 「いや・・・イヤーーー!!!」

 町は焔とアビスの群れによって焦土と化し生きのこった人間達は後にこう語った。

 「あそこは正に地獄だ。」と語ったようであった。




 まだ続きます。


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初めてのアビス戦。

 アビスと精霊、戦ったらどっちが勝つかな。


 「『ドラゴン・ポート』がやられた!!」

 竜都「グラン・ドラグニア」の軍司令部で最高司令官がそう言うと兵の一人が

こう続けた。

 「通信によれば謎の生命体により港は壊滅的打撃を被り数時間後にはここ竜都にも

攻める事間違いないとの事です。」

 「精霊の類・・・魔精霊か!!??」

 「未だ何とも言えないようで・・・。」

 兵の一人がそう言うと司令官はこう命令した。

 「直ちに騎士団を招集!!見習いにも出撃させよ!この竜都だけは何としても

守り抜くぞ!!」

 『『『『『『は!!!』』』』』』』

 

 

 

 

 「そう言う訳で未だ見習いだった私達も参戦する事となったんです。」

 そう言って紅茶を啜っているがカミト自身は頭を抱えていた。

 自身なら未だしもまだ戦闘経験が乏しいであろう彼女達まで招集すること自体が異例なのだ。

 そしてレオノーラは話を続けた。

 「そして私達は竜都に程近い所で陣を敷いたんです。」

 

 

 

  

 話は戻って・・・。

 「以上が我々がここに配置された理由である。何か質問は?」

 全員が無言で答えていた。

 眼前にいる敵を殲滅するという意思の元団結していた。

 「レオノーラ、大丈夫ですか?」

 隣にいたチームメンバーである「ユーリ・エルシッド」の言葉に

レオノーラ・ランカスターはこう答えた。

 「大丈夫ですよ。ちょっと緊張してるだけですから。」

 するともう一人の方もこう聞いた。

 「当たり前よ。皇国が狙われるなんて今までなかったんだから。」

 もう一人の少女、レグリス・ローアがそう言うとレオノーラは見習い全員に

こう鼓舞した。

 「皆さん。これを皮切りに何時か行われるであろうブレイドダンスの前哨戦として

切り抜けましょう!!」

 『『『『『『おおおお!!!!!』』』』』

 あの時いた数十人の少女達全員が勝利を疑わなかった。

 それが間違いだと気づいたとき取り返しがつかない事も知らずに。

 

 

 

 「攻撃開始!!」

 竜種達の攻撃と同時に竜騎士や姫巫女達が揃って突撃をした。

 飛行種が周りを囲う間に地上から精霊での遠距離攻撃を行って殲滅するという簡単な手段であるがそれは高度な連携がなくては成し遂げられない物であった。

 特に被害を被るのは竜騎士であるが彼らはそれも覚悟の上で志願した。

 そしてレオノーラを中心にした部隊で攻撃しようとした瞬間・・・アビスの中から

あるアビスが出てきた。

 赤茶色の体をした筋肉質のアビス。

 機竜側では「ディアボロス型」と呼称されているが彼らはそれを見て群れのリーダーではないかと思っていると突如「ディアボロス型」が・・・消えた。

 「は?」

 一人の竜騎士が間の抜けた声を出した瞬間・・・「ディアボロス型」が姿を現して

殴りかかった。

 「な!!・・ぐえ!!」

 竜騎士は竜如殴られてそのまま地面に赤い血煙と共に叩きつけられた。

 「な・・・な・・・。」

 竜騎士全員が唖然としていると他のアビスも一斉に動き出した。

 「ひい!!こっちにkぐぎゃ。」

 「畜生がーー!!」

 「タスケテ・・・。」

 次々と竜騎士達が餌食となるさまを見て地上の方は恐怖するとレオノーラの視界には一人の少女がいた。

 自身と同じく見習いである仲間の一人がアビスに飛び掛かったのだ。

 「ヤメローー!!」

 「逃げてーー!!」

 レオノーラがそう言うも少女を見たアビスがその槍を掴んだ瞬間上にあげて少女を・・・目の前で腕を喰らった。

 「いぎゃあああ!!」

 すると他のアビス達が少女の周りに集まって来た。

 「い、い、・・・イヤーーー!!!」

 そして捕食が始まった。

 「ああああああ・・・。」

 レオノーラはあまりの惨状にへたり込むと何かが木に当たってそれが堕ちたのに

気づいた。

 そこにあったのは・・・先程喰われた少女の腕であった。

 「い、い、イヤーーー!!!」

 誰かが悲鳴を上げた瞬間アビス達がそこに群がってきたのだ。

 我先にと逃げるもアビスに包囲され近い人間から順番に喰われた。

 「ヤメローー!!」

 「痛い!!イタイ!!」

 「タスケテーー!!」

 姫巫女も兵士も精霊も関係なく捕食される光景にレオノーラは涙を流しながら

恐怖した。

 次は自分だと思うとまるで死刑台に連れて行かれるような感覚があったのだ。

 そして諦めかけたその時ある事を思い出した。

 「は!あれなら!!」

 レオノーラは懐に付いている袋からある物が見えた。

 それは古風な水色の鞘の短剣であった。

 これはレオノーラが出撃する際に母親がお守り代わりにと渡したものらしいが

父親曰く・・・。

 「良いか、よく聞けレオノーラ。これは我らの祖先がこの国の内戦の際に

活躍した精霊が封印されているがその後誰も開放することが出来なくなったのだがもし自分の命に危機が訪れたのならそれを使いなさい。」

 「これは賭けですが・・・今は藁にも縋る思い!!」

 そう言って短剣に触れた瞬間景色が変わった。

 

 

 

 

 「ここは・・・?」

 そこは先程の戦場とは違い洞窟のような空洞に小さな泉がそこにあった。

 するとその泉の中央に鋼の体をした何かが水上にポツンとそこにいた。

 「【貴方が私を呼んだのですね?】」

 「へ!?・・・あ、はい!!」

 目の前にいた青い女性の声をした精霊(?)がそう聞くとレオノーラは慌てながら

そう答えた。

 「【私の名は『メイルストローム』。我が詠唱府(パスコード)を汝に

譲渡します。】」

 「パスコード?」

 「【私を召喚する際に必要な呪文です。】」

 「それは私を主と認めるのですか?」

 「【ええそうですよ。レオノーラ・ランカスター。それでは教えましょう、

それは】」

 すると風景が元の戦場になってアビスがこちらに近づいてきた瞬間レオノーラは短剣を抜いて教えられたパスコードを唱えた。

 「-鳴り響け。-風を縦糸に、海を横糸に奏し海龍よ。数多の嵐を洗い清めよ、

≪メイルストローム≫!!」

 すると後ろから青い機竜が召喚された。

 「コネクト・オン」

 そしてそれらがバラバラになると腕に、足に装着され頭部に竜を模したものが

付けられた後レオノーラはアビスに向かって槍を向けてこう言った。

 「もうこれ以上!!誰も失わせはしません!!」




 次回は多分あの人が出ます。


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魔女との出会い。

 その魔女は・・・この世の悪を知る物。


 ドラグニア竜皇国の元港「ドラグニア・ポート」にてある一団がアビスと

対峙していた。

 空や地上で鋼の竜が戦場を縦横無尽で飛び回っていた。

 そしてその中である一角で猛威を振るっていた。

 飛翔するアビスを叩き落しながらそれは移動していた。

 全身が刃のように鋭く尖っており黒灰色の装甲と緑の線が刻まれていた。

 するとそれを纏っている人間が何かを聞いていた。

 「それはほんと~~?」

 間延びしている感じがするがその髪の色と三日月のように曲がった口を見るとまるで悪魔のような印象を与えそうになった。

 「そう・・・それじゃあ・・・見てみましょうか~~?」

 すると足元から車輪が出てきて高速で移動を始めた。

 レオノーラ達がいる戦場へ・・・。

 

 

 

 「このーー!!」

 レオノーラは孤立無援の状態でありながらも戦場を駆けていた。

 神装機竜『メイルストローム』は未だ調整すらしていない中レオノーラは

戦っていた。

 持っていた槍を振り回しながら残った兵士を逃がそうとしていたのだ。

 然しガーゴイル型は飛翔出来るためそれをひょいと躱して倒そうと考えたのか

翼を広げて飛翔した瞬間『メイルストローム』がこうアドバイスをした。

 「【私の腕の武器を使ってあれらを叩き落しましょう。】」

 「はい!!」

 レオノーラはそれを了承して腕に付いている突起型のワイヤーテールを射出してそれをアビスの足に括りつけた。

 「!!」

 アビスがそれに驚くとそのまま地面に叩き落した。

 「セエーーイ!!」

 アビスが叩き落されると他のアビスが羽を赤くして射出しようとすると

『メイルストローム』の肩に搭載されていた蜂の巣のような物の穴から何かが

出てきた。

 「発射ーー!!」

 しゅどどと音を出して射出されたそれは線を描くようにアビス目掛けて

突っ込んできた。

 「ぎえ!!」

 アビスが射出する前に命中してアビス達は落下していった。

 そしてレオノーラは堕ちた敵目掛けて槍で突き刺した。

 「ぎえええええ!!!!」

 アビスがもだえ苦しむもそのまま槍を振って投げ飛ばした。

 「うおおおお!!!」

 そのまま刺されていたアビスを投げ捨てた後レオノーラは次の敵に

集中しようとすると背中から気配を感じて振り向くと・・・。

 ディアボロス型がにゃっと笑うように立っていた。

 「へ?」

 「【レオノーラ、防御!!】」

 『メイルストローム』がそう言った瞬間ディアボロス型の腕が

『メイルストローム』を襲った。

 「ぐうう!!」

 咄嗟に槍で防御するとともに神威で防御力を上げるもそのまま吹き飛ばされた。

 そしてそのまま近くの木にぶつかったのだ。

 「がは・・・。」

 木にぶつかり思うように動けなくなったレオノーラは前を見ると・・・。

 「そ、・・そんな・・・。」

 自分が倒したアビスが立ち上がってレオノーラを睨んでいたのだ。

 周りを見ると既に自分以外は誰もいなくなったのを確認するとレオノーラは

槍をアビスに向けてこう言い放った。

 「貴方達を竜都には絶対近づけません!!」

 そしてディアボロス型が腕を振ろうとした次の瞬間・・・ディアボロス型の胸から

剣が生えてきた。

 「ぎ・・・・え・・・。」

 「あら~~、大当たり~~。」

 そのままディアボロス型が倒れたと同時に周りにいたガーゴイル型ごと斬り捨てた。

 「へ?」

 あまりの光景にレオノーラは茫然とするとその人間はこう言った。

 「あら~~。本当のようね~~。ここにも機竜があるなんて~~。」

 それが近づくとレオノーラはその人間にこう聞いた。

 「助けてくれたのとに礼を申します。私はレオノーラ・ランカスター。

貴方の名前は?」

 するとぞの人間はこう名乗った。

 「私はヘイブルグ共和国所属の~~。『ローザ・グランハイト』よ~~。」

 それが彼女との初めての出会いであり・・・仇ともいえる存在の強さでした。




 そしてその後・・・。


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終わった後。

 守れるものもあれば守れないものもある。
 それも人間なのだ。


 「その後の事は・・・全く覚えていないんです。」

 「え?何でだ?」

 レオノーラの話を聞いている中カミトが何故覚えていないのかと聞くとレオノーラはこう答えた。

 「あの後直ぐに気を失ったんです。医者の話によると初陣による緊張と

戦死した人間の最後によるストレス、初めて機竜を使った事における精神的、

肉体的負担が原因であると言われたんです。」

 レオノーラは既に冷え切った紅茶を飲もうとすると既に飲み干していたことが

分かるとカミトは温め直した紅茶を入れた後こう聞いた。

 「それで覚えてないって言ったが気を取り戻した後どうしたんだ?」

 「ああそれはですね・・・。」

 

 

 

 

 話は戻って・・・。

 「ううう・・・ん。」

 レオノーラが目覚めた時には戦いは終わっていた。

 自身が目覚めた所は竜都の臨時野戦病院であった。

 周りには怪我した人間が山ほどいた。

 中には(殆どだが)体の一部がなくなった人間もいた。

 すると病院の医療師がレオノーラが目覚めたことに気づくと先生を呼んだ。

 「先生!!先生!!レオノーラさんが目覚めました!!」

 レオノーラは体の幾つかに包帯が巻かれていたことに気づいた瞬間あのことを

思い出した。

 目の前で喰い殺された仲間たちの最後を・・・。

 「ああ・・・あああああ・・・。」

 レオノーラは泣きそうになると一人の人間が来た。

 「ああ大丈夫だったようですね。」

 そこにいたのは黒い髪で額が見えるようにして眼鏡を掛けた少女であった。

 「あの・・・貴方は?」

 レオノーラは目をこすって涙を拭きとって聞くと彼女はこう答えた。

 「私はヘイブルグ共和国軍所属『カレンシア・ハーズマイド』と申します。」

 「ヘイブルグ・・・貴方もですか?」

 レオノーラはカレンシアにそう聞くと彼女はこう返した。

 「ああローザの事ですね。今彼女は我が軍の司令部に通信して今回のアビス討伐に

ついての説明をしています。」

 「アビス?」

 「ああここでは知らないようですね。まあ私達も知らないことが多いのですが出来る限りの情報を伝えましょう。」

 彼女はアビスについて幾つかの説明をした。

 彼らは人を喰らう種族である事

 彼らは遺跡(ルイン)という場所で生息していること

 彼らの種類は千差万別である事

 そして自分達が持っている装甲機龍こそ唯一の対抗策である事。

 「装甲機龍ですか・・・。」

 レオノーラは腰に差している剣を見るとカレンシアはこう言った。

 「あら、あなただって持っていたって言うか使っていましたよ。」

 「え?」

 レオノーラはいつ自分がと思うと『メイルストローム』を思い出した。

 「あの・・・『メイルストローム』は?」

 するとカレンシアはレオノーラにこう言った。

 「あああの機竜ですか?あれは今近くの補給基地で整備と調査を行っています。

新種の機竜ですから整備士は張り切っていますよ。」

 そう言ってではまたと言うと彼女は思い出したようにレオノーラにこう言った。

 「ああそれと貴方意外に何人か生き残りがいますので安心して休んでください。」

 そう言って出ていくとレオノーラは安心したようにこう言った。

 「そうですか・・・皆・・・ミンナ・・・。」

 レオノーラは死した仲間を思い出すともう我慢できなかった。

 「私がもっと強ければ皆を・・・ミンナを・・・。」

 ひっくひっくと泣き始めると後は転がり落ちるように泣くだけであった。

 「うあああああああ!!!・・・・アアアアアア!!。」

 自分がもっと強かったらこうならなかったかもしれない。

 自分がもっと『メイルストローム』を使いこなしていたらこうならなかったかも

しれない。

 たとえそれが驕りだと言われても彼女はそう思うとやるせなかったのだ。

 それから暫くしてドラグニア竜皇国に初のドラグナイト養成学校が出来た時に

入学した生徒の中にレオノーラ・ランカスターの名もあった。




 少女は後悔しない為に門を叩いた。


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また・・・失う。

 失ったものは戻らず・・・これから失うものもまた届かず。


「その後私は養成学校に入学しました。もうあんな目に合わないようにするために。」

 「・・・そうか。」

 カミトはレオノーラの過去に同情する以外に何もなかった。

 自分と同じ年でありながらも前線で多くの仲間を失い、生き残った事に本来なら褒めるべきだと思うだろうが今のカミトの心情はそれすらも出ないほどぐちゃぐちゃで

あったのだ。

 「・・・それで何でアレイシア精霊学院にいるんだお前?そのまま養成学校にいたんだろう?」

 カミトはここで何故アレイシア精霊学院にいるのかを聞くとレオノーラは顔を

俯かせてこう言った。

 「・・・裏切られたんです。」

 「裏切られた?」

 「はい。」

 

 

 

 

 話は戻って・・・。

 レオノーラはあの後生きのこった仲間と共に養成学校で機竜について学んでいた。

 機竜の動かし方や陣形の取り方。

 機竜を使っての役割分担や演習。

 座学においては機竜関連の整備の仕方や通常座学。

 これまで精霊しか扱っていなかった彼女達からすれば勉強してもしたりなかった。

 然しレオノーラはそれに齧りついていた。

 演習では指示の取り方や機竜の力を最大限に引き出す方法。

 三大機竜奥義の一つ「クイック・ドロー」を会得しようと休みの日まで使って

機竜を使ったり。

 通常座学においては予習復習をして授業に着いていこうと頑張っていた。

 その苦労が実ったのかどうか定かではないが解析が終わった『メイルストローム』を卒業試験の日に返却されることが決まった時には浮足立つように喜んでいた。

 そして月日は巡り・・・。

 「等々明日だね。レオノーラ。」

 ユーリが布団の中でそう言っていた。

 養成学校の宿舎は男女別(基本的であるが人数的理由で混合することがある。)で

四人部屋である為レオノーラ、ユーリ、レグリスの三人、この時もう一人いたが

その人間はリタイアして出て行った。

 「ええ、我々全員で合格して士官学校に入学しましょう。」

 「はい。」

 レオノーラの言葉にレグリスが答えた後三人は眠りについた。

 ・・・それが永遠の別れになるとは知らずに・・・。

 

 

 

 「勝者!!『レオノーラ・ランカスター』!!」

 試合会場の周りにいた観客が歓声を上げていた。

 整備され、調整を解かされた『メイルストローム』を纏ったレオノーラは自身が

勝ったことが嬉しかった。

 「やりました!!『メイルストローム』!!」

 「【ええ、貴方の弛まない努力が実ったのですね。】」

 今回の卒業演習では汎用機竜を持っている生徒5人が教官一人に対してのチーム戦であった。

 然しレオノーラは神装機竜を持っていることを考慮して1対1の決闘試合で

挑んだのである。

 教官役の人間は機竜から降りてレオノーラにこう言った。

 「おめでとう。レオノーラ・ランカスター。これで晴れて士官候補生として

ヘイブルグ共和国に行けるな。」

 頑張れよと言ってレオノーラははいと答えた後彼女は『メイルストローム』から

降りて一息入れてから他の皆の応援に行こうと思っていたところ何やら外が

騒がしかったので待機所からドア越しで聞き耳を立てていると声が聞こえた。

 「おいそれ本当か!!?」

 「ああ本当だ!!卒業演習で死人が出たらしいぞ!!然も5人全員で全員

ドラグニア出身だそうだ!!」

 それを聞いたレオノーラは驚愕してそこにいた人間に問い詰めた。

 「それは誰か分かりますか!!私の友達も今日演習なんです!?」

 そう言うと彼らは・・・死んだ人間は全員医療室に運び込まれたと聞くと

レオノーラは脇目も降らずに走り出した。

 そして演習場近くの医療室に着くや否やレオノーラは扉を破壊するような勢いで

開けてそこにいた医者に食いつくような勢いで飛びつきながらこう聞いた。

 「今日運び込まれた人間で先程迄演習をしていた女の事たちを知りませんか!?」

 「・・・彼女達はこの奥のベッドだ。」

 そう聞くや否やレオノーラはそこに向かうとそれは・・・地獄であった。

 血だまりがベッドの下に溜池のように広がって、その中心には5人の人間の遺体が

そこにあった。

 そしてその中に・・・ユーリ、レグリスがいた。

 「・・・ユーリ、・・・レグリス・・・これは何の冗談ですか?」

 レオノーラはふらふらと歩きながら彼女達の方に向かった。

 「起きて下さいよ・・・演習終わっちゃってますよ・・・私合格したんですよ・・・だからみんなも続いて下さいよ・・・何で目を開けないんですか・・・?」

 レオノーラは切れ切れと・・・嗚咽を出しながらもこう続けた。

 「起きて下さい・・・起きて下さいよ・・・ねえ・・・私を・・・ヒトリニ・・・。うわああああああああああ・・・。」

 レオノーラは彼女達の遺体に蹲って泣いた。

 もうあの時のように語ってくれない仲間の骸を抱きしめ乍ら泣いた。

 そしてレオノーラは泣き止んだ瞬間医者に大きな声でこう問い詰めた。

 「誰です・・・誰がヤッタンデスカ!!」

 「ぐうう!!」

 レオノーラは医者の襟を掴んで聞くと医者は苦し紛れにこう喋った。

 「ろ・・・ローザ・グランハイトだ。」

 「え?」

 その名は嘗て自分を救っただけではなく目標として・・・憧れた女性の名前で

あった。

 「何故彼女が?」

 「分からん。だが今彼女は牢屋に閉じ込められているらしいからその後に・・・

って君!!」

 医者の言う事を聞かずにレオノーラは走り出した。

 理由を聞くために・・・。

 それが間違いであると同時にあんなことになるとは誰も思っていなかった。




 次回でその真意が明らかとなる。


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魔女の言葉。

 その言葉はレオノーラを怒りで満たせた理由。


 レオノーラはヘイブルグ共和国が管轄する簡易的な牢屋に行った。

 無論牢屋の前には衛兵がいたが監視付きで入る事を許された。

 そして中に入ると牢屋のベッドで寝転がっているローザがそこにいいた。

 レオノーラは牢屋の前でローザにこう聞いた。

 「何で・・・何で殺したんです!?ユーリを!レグリスを!!何で全員

殺したんですか!?一体彼女達が何したんですか!!」

 そしてレオノーラは崩れるように聞いた。

 「ナニカ言ってくださいよ・・・ローザさん・・・。」

 そしてローザが放った言葉は・・・残酷なものであった。

 「そんなもの決まってるじゃな~い。弱いからよ。」

 「ハ?」

 ローザの言葉にレオノーラは言葉を言い表せなかった。

 そしてローザはこう続けた。

 「あんなに弱くっちゃ~~どうせ直ぐにアビスに殺されちゃうんだから~・・・私が殺したのよ~~。」

 それにと言うとローザはレオノーラに近づいてこう締めくくった。

 「正しい事=正義何て甘ちょろい事言う人間何て・・・反吐が出るわ~~。」

 ニヤリと悪魔のように笑うローザを見てレオノーラは途切れ途切れだが・・・こう言った。

 「それだけの・・・それだけの理由で・・・コロシタノカーー!!」

 ガシャン!と檻を叩いてそう言うとレオノーラの目が真っ赤になって檻が曲がり

始めたのだ。

 レオノーラは精霊使いの中でも異種でもある「龍の血(ドラゴン・ブラッド)」を

保有しており戦闘的人格に早変わりするのだがそれに加えて怒りを

露わにしたことによりより凶暴性の高い力を発現していた。

 「おいレオノーラ!!ヤメロ!!」

 傍にいた衛兵がレオノーラを捕まえて牢屋から離している中でもレオノーラは

ローザにこう言い続けた。

 「ユルサナイ!ユルサナイ!!ユルサナイゾ!!ローザ・グランハイト!!

オマエダケハカナラズ!カナラズワタシノテデコロシテヤル!コロシテヤルーー!!」

 

 

 

 

 「初めてでした。あんなに人を憎んだことはあれを除けばない事でした。」

 「何だよそれ・・・。」

 レオノーラの話にカミトも怒っていた。

 只弱かっただけの理由で親友は殺された。

 もしそれがミュアやリリィがそんな目に合っていたら恐らく自分はその人間を殺そうとあらゆる手段を講じているだろうと思っている中レオノーラは紅茶の入った

カップから手を放して机に置くとレオノーラはある事を言った。

 「そしてあの日になるんです。」

 「?あの日??」

 カミトはレオノーラの言葉に何だと聞くとレオノーラはこう言った。

 「今でも思い出します。あの日を・・・。」

 それはレオノーラにとって最悪の日

 「両親との別れを・・・。」

 燃え盛る我が家。

 「国との決別。」

 その焔の中で事切れた使用人たちと家族。

 「そして私がここにいる理由。」

 そして雨の中で泣き叫ぶ自分を・・・。

 




 多分次でレオノーラの過去話が終わります。


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真実はいつも残酷である。

真実とは全てが幸福になるわけではない。


あの後ローザ・グランハイトは本国に強制送還された。

 今回の事件はあまりにも残忍であり普通なら死刑が妥当であると誰もが思っていた。

 だがローザ・グランハイトの刑はそんなものじゃなかった。

 「え・・・謹慎・・・。」

 レオノーラは教官からそう報告を受けた時、自分の耳を疑った。

 然し教官はレオノーラにこう続けた。

 「正確には牢獄にて謹慎処分であるがそれでも俺からすれば寛大すぎる処分だ。

あれ程の事件を起こしてこれとはあいつらも報われんぞ。」

 議会は何してるんだとぶつくさと文句を言いながら怒っている教官を見ながら

レオノーラは納得できていなかったのだ。

 「(ユーリとレグリスが死んだのに何でそれ程度なんです?何で・・・

ナンデナンデナンデアイツガイキテイルノ?)」

 レオノーラは余りのショックに茫然と立っている中教官はレオノーラにこう言った。

 「レオノーラ、明日お前はヘイブルグ共和国に行くことになっているから荷造りを

済ましておけ。良いな。」

 そう言って教官はレオノーラから姿を消すがレオノーラは未だ立ち尽くしていた。

 そして暫くするとレオノーラは意を決してある所にへと向かった。

 

 

 

 場所は変わって嘗てはドラグニア竜皇国の軍司令部であった場所であったが現在は

ヘイブルグ共和国ドラグニア支部として利用されている。

 そしてその施設の中にある司令官専用室において二人の人間がそこにいた。

 一人は無論嘗てのドラグニア竜皇国司令官であったが現在の肩書は

ドラグニア支部長官という名になっている。

 そしてもう一人はソファーに座っているのだがその座っている人間の服装は

不審者でしかない服装であった。

 フード付きのローブを身に纏っていた。

 「それでどうだい?今の椅子の座り心地は?」

 ローブを着た人間がそう聞くと司令用の椅子に座っていた男がこう言った。

 「いやはや良い座り心地だ。貴様と取引した甲斐があったよ。」

 そして男がローブを着た人間にこう言った。

 「それにしても今回は如何言う事かね?」

 するとローブを着た人間はこう言った。

 「いや何。あんたとの取引についての確認に来ただけだよ。」

 するとローブを着た人間は懐からある物を出した。

 「おれがこの角笛でアビスをおびき寄せてそしてあんたは精霊使いをある程度

死んでから俺達が参上して事を沈めて・・・。」

 「そして私は全ての実権を手に入れて機竜を使って新たなる軍事国家として君臨すると言うシナリオであったがここ迄上手く行くと拍子抜けだが忘れていないさ。

その暁として我が軍はヘイブルグ共和国から招集された際には最前線で戦おうと言う

契約だと事もね。それに・・・」

 すると司令官はローブを着た人間に向けて苦々しくこう言った。

 「私は精霊使い如きで大きな顔して歩く奴が嫌いだったんでな。貴様の取引に応じて正解だったよ。」

 元々この司令官は兵士に必要なのは目に見える力であり精霊がなければ何も出来ない小娘が成り上がるのが気に入らないという理由で他国と取引したのだ。

 そしてローブを着た人間は司令官にこう言った。

 「これからも良い関係を築きましょう。司令官。」

 「ああそうだな策士殿。」

 フハハハハハと笑っている中何か扉の向こうで物音がした。

 「誰だ!?」

 司令官が扉を開けてみると・・・誰もいなかった。

 するとローブを着た人間の隣に誰かが現われ耳打ちするとローブを着た人間は

司令官にこう言った。

 「どうやらさっきの一部始終を聞かれてしまったようだぜ?」

 「何!?」

 司令官が驚く中ローブを着た人間は司令官にこう提案した。

 「それでだ。俺の部下がそいつらぶっ殺しに行くから適当に罪状作ってくれよ。」

 そして司令官はローブを着た人間にこう聞いた。

 「良いだろう。ならば国家反逆罪として対処するとして誰だね。相手は?」

 そしてローブを着た人間はニヤリと笑ってこう答えた。

 「レオノーラ・ランカスターだよ。」




 そして少女は全てを失う。


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永遠の別れ。

 何時か別れるときは必ず来る。


 「はあ・・はあ・・はあ・・。」

 レオノーラ・ランカスターは司令部から猛ダッシュで家に向かって逃げていた。

 彼女は司令官にローザ・グランハイトの処罰について抗議しようと部屋に入る前に

誰かがいるのに気付いたので扉を少し開けて聞いていると知ってしまったのだ。

 全てはヘイブルグ共和国とドラグニアの司令官が起こした茶番である事。

 そしてその為に「ドラゴン・ポート」の市民と仲間を見殺しにしたという真実に

レオノーラは信じたくなかったが耳に残っているあの二人の笑い声に怒りが沸きそうになった。

 「とにかく・・・父様達にこの事報告して・・・教官にも伝えて・・・

それから・・・。」

 レオノーラは今後の事を考えながら走っていた。

 父親に話せば軍の何割かを加えて司令官を倒せるはずだと考えていたからだ。

 するとレオノーラはある事に気づいた。

 「?・・・赤い光・・・あそこは!!」

 レオノーラは腰に差している『メイルストローム』のソード・デバイスを抜いてこう詠唱した。

 「-鳴り響け。-風を縦糸に、海を横糸に奏し海龍よ。数多の嵐を洗い清めよ、

≪メイルストローム≫!!」

 レオノーラは『メイルストローム』を召喚して纏うと車輪を出してその場所にへと

向かった。

 そしてレオノーラが着くとそれは・・・何者かによって蹂躙されている

自分の家であった。

 「ヤメローー!!」

 レオノーラは傍にいた機竜目掛けて槍で攻撃した。

 「お、目標見っけ。」

 そう言うとその人間は機竜のブレードで受け止めるとそのまま屋敷向けて

弾き飛ばした。

 「ぐああ!!」

 レオノーラが屋敷の中迄飛ばされるとそこで見たのは・・・。

 「ひい!!」

 無残にも惨殺された使用人たちであった。

 すると機竜使いの何人かがレオノーラを見てこう言った。

 「そういやあお前殺せばボーナス出るって言う話だからよ・・・

死んでくれるかな?」

 「その前に犯してやるけどなあ。」

 ひひっと笑いながらそう言う人間を見てレオノーラはこう言った。

 「下衆が!」

 そう言うと肩に搭載されている「グロリアス・テンペスト」を起動して天井向けて

「竜頭弾頭(ドラグヘッド)」を射出した。

 「「どわあああ!!」」

 天井に向けて発射された弾頭は命中した瞬間天井が崩れ落ちて彼らは埋まった。

 そしてレオノーラは起動から降りて階段に上って両親を探した。

 そして寝室に入るとそこにいたのは・・・。

 「「レオノーラ!!」」

 二人は何故か荷造りをしていた。

 「二人とも何をして・・・!!」

 すると父親はレオノーラにその荷物を渡した。

 「これは・・・?」

 「これにはランカスター家の財産の書類と我が家で保管されている封印精霊に関する記述が入っている。」

 父親がそう言うとレオノーラは驚いてこう言った。

 「封印精霊って!!どうしてそれを私に!!」

 レオノーラは逃げなきゃというと父親はレオノーラの肩を掴んでこう言った。

 「逃げるのはお前だけだ。レオノーラ。」

 「何でです!!父様や母様も一緒に!!」

 すると母親はレオノーラに向けてこう言った。

 「貴方が生きている。それだけでランカスター家は守れるわ。」

 「それに我々と一緒よりもお前ひとりの方が生き残る確率が高いんだ。」

 分かってくれと言うが尚もレオノーラは食い下がった。

 「そんなの嫌です!!二人と一緒じゃなければこれから私はどうやって生きろと!」

 すると父親はレオノーラに向けてこう言った。

 「何時かお前と一緒に傍にいる仲間や男と出会えるはずだ。」

 「良いわね。レオノーラ。生きて私達の事を伝えるのよ。」

 母親の言葉にレオノーラは泣きながら出ると父親は母親にワインを出した。

 「これは・・・?」

 「来週。お前との結婚記念日に飲もうと思っていたんだが今飲まないと

あいつらが飲むだろうな。」と言ってワインの入ったグラスを渡すとドカンと下から

音がした。

 外を見るとレオノーラが纏っている『メイルストローム』が外に出て行く

様子が見えた。

 そして父親がワインを飲むとある事を口にした。

 「あーあ、あいつの花嫁衣裳見たかったなあ。」

 すると母親もこう口にした。

 「どんな人があの子を守ってくれるでしょうね?」

 そしてお互いこう口にした。

 「それを言うならバージンロードを歩きたかったなあ。」

 「あの子の子供を抱きしめたかったなあ。」

 「おいおい何だか未練たらたらなことしか言わないなあ。」

 「本当よねぇ。」

 そして扉が破壊されるとその張本人たちが機竜息銃を向けると父親は母親に

こう言った。

 「ま、人生の半分は達成したんだ。」

 「あの子の未来をあっちで見守りましょ。あなた。」

 そしてドンという音と共に・・・二人のいた部屋が爆炎に包まれた。

 

 

 

 「お父様・・・お母様・・・。」

 「【レオノーラ。】」

 レオノーラは『メイルストローム』を動かしながら泣いていた。

 嗚咽を上げて鞄を抱きしめ乍ら・・・自分の無力さを呪いながら泣いていた。

 「うあああああああ・・・あああああああ。」

 すると空が曇って雨が降ってきた。

 ランカスター家は雨により鎮火し始めたがそこには彼らの血が混ざっていた。

 雷が鳴り始める中レオノーラはこう叫んだ。

 「ああああああああああ!アアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 涙なのかそれとも雨粒かわからないがレオノーラの目から溢れ出してくるそれは

彼女の心が震えてしまっている証なのだろう。

 




 そして現在に戻る。


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親友との出会い。

 失い・・・また得る。


「そして私はドラグニアから脱出しました。」

 「・・・・・。」

 カミトはレオノーラの言葉に最早何も言えなかった。

 自身と同い年で然も自分とは違い家族がいて友達がいて何不自由なく暮らしていた

彼女は突然仲間を失い、もう失いたくないがために養成学校に入ったのにも関わらず、

国から裏切られ、親を失い、天涯孤独となってしまった時の彼女の心境は図ることも

出来ない程である。

 するとレオノーラはこう続けた。

 「その後私はケルブレス山脈の山道を使って山を越えた後ローレンフロスト領にまで密入国しました。」

 「密入国って・・・まあ理由が理由だしな。」

 カミトはレオノーラの言葉に少しツッコミながらもそう言うとレオノーラは

こう続けた。

 「然し知っていると思いますが機竜は長時間使うと疲労が通常よりも早く、

重く来るものです。」

 「そういや俺も『シラヌイ』をずっと使っていた時はそう言う事何回かあったな。」

 カミトはレオノーラの言葉に思い当たる節があったようなのでカミトは

そう言うとレオノーラはこう続けた。

 「そしてローレンフロスト領にて私は力尽きたんです。」

 

 

 

 

 一年前・・・。

 「はあ・・はあ・・はあ・・。」

 レオノーラは錘を付けているかのような足取りで歩いていた。

 あれからずっと彼女は『メイルストローム』を纏って昼は移動して夜は暗い洞窟か

旧い家屋に身を寄せていたがここ最近は食事すら真面に出来ない状況であった。

 養成学校で野戦食については学んでいるため木の実等は食べれるが動物関連等は

食べれていなかったのだ。

 然も最近は雪が降っていることから寝ることすらも出来なくなっていたのだ。

 「【レオノーラ、もうこの辺で休んだら?体が持たないわよ。】」

 『メイルストローム』がそう聞くがレオノーラは聞く耳持たずに歩くがもう体が持たなかったのだ。

 「うう・・・。」

 等々レオノーラは『メイルストローム』を使うほどの体力が残っておらず『メイルストローム』は膝をついて動かなくなりレオノーラは自身も意識が遠のいていった。

 「(御免なさい。お父様、お母様。私はもうここまでの様です。言いつけも

守れなくなった私を許してくれますか?レグリス、ユーリ。私も直ぐに

そちらに・・・。)」

 そう心の中で先に逝った彼らを思いながらレオノーラは意識を手放した。

  

 

   

 

 「ううう・・・ん。」

 レオノーラはここはどこかと思っていた。

 「(暖かい部屋にベッド・・・ああここは死後の世界って言う所ですね。)」

 何故にそっちに思い当たると思いたいがこれまで碌な場所で寝ていなかったため

今自分が何処にいることすらも知らなかった。

 「・・・え・・・じょう・・・?」

 「(・・・誰でしょうか・・・アア天使ですかね。)」

 声がするのにそれ天使ってあるかと言いたい所だろう。

 するとその部屋の扉が開くと現われたのは・・・。

 「・・・は?」

 台車を押している煌びやかなドレスを着た自分と同じ年のプラチナブロンドの長い髪をした少女がそこにいた。

 「(うわああ・・・綺麗。)」

 お前自分も一応それに該当するだろう。

 するとその少女はレオノーラを見てこう言った。

 「あら起きましたの、良かったですわね。治癒師(ヒーラー)から聞けば

貴方もう少し遅かったら凍死していたところですわよ。」

 それを聞いてレオノーラは未だ自分は生きているのかと思うと少女はレオノーラに

ある物を差し出した。

 「さあ、熱いうちに食べた方が良くてよ。」

 それは白い湯気が立つたっぷりの玉ねぎと骨付きの鶏肉が入ったスープの入った

お椀であった。

 それを見てレオノーラはスプーンを取ると一目散に食べ始めた。

 「ちょ、ちょっと!!まだ暑くてよ!!」

 少女は止めようとするがレオノーラは一心不乱に食べ続けた。

 「ひ・・・ひぐっ・・・えぐっ・・・。」

 レオノーラは泣きながら食べていたのだ。

 これまで碌なものが食べれず空腹だっただけではなく仲間や家族、国を失って

何をどうしたら良いのか分からなかったのだ。

 その中で見ず知らずの自分をここまで温かく迎えてくれたことにレオノーラは

感極まっていた。

 「ちょ、大丈夫ですの!?もしかしたら火傷したんですの!!??」

 少女はレオノーラの心情を露知らず心配するとレオノーラは少女にこう言った。

 「私・・・死ぬかと思ってました・・・もう駄目かと・・・思っていたんです!!」

 そしてレオノーラは少女にこう言った。

 「ありがとうございます!!ありがとうございます!!ありがとう・・・

ございます!!」

 レオノーラは泣きながら何度もお礼を言うと少女は恥ずかしそうにだが

胸を張ってこう言った。

 「と、当然ですわ!!このローレンフロスト家の次期頭首たるもの困った人に

手を差し伸べるのは当然の事ですわ!!」

 その光景を見てレオノーラはクスリと笑うとレオノーラはお代わりを所望した。

 

 

 

 「ごちそうさまでした。」

 「あれだけあったスープを完食って・・・一体どれだけ食べていなかったん

ですの?」

 分胴であるがあれだけあったスープを完食した事に少し引き気味の少女であったが

レオノーラは少女に向かってこう言った。

 「この度はどこの馬の骨とも知らない私を助けたことに対して礼を言います。」

 そう言うとレオノーラは頭を下げると少女はレオノーラにこう言った。

 「先程も言いましたが人を助けるのに理由はいりませんが何故あんな所に

いたんですの?」

 「・・・それは・・・。」

 レオノーラは言いにくくなると少女はレオノーラにこう言った。

 「ああ良いですわよ。誰にも言いたくないことぐらいありますわ。」

 そう言われてレオノーラはほっとすると自己紹介した。

 「ああ申し遅れました。私は『レオノーラ・ランカスター』と申します。」

 すると少女は立ち上がると髪をかき上げてこう言った。

 「私はこのローレンフロスト領の『ウインターガルフ城』を父上から任されている・・・。」

 

 

 

 ドンドンと扉をたたく音がした。

 レオノーラが話している中誰かが来たのであろうがここはあまり人が

立ち入らないような場所なので誰かと思うといたのは・・・プラチナブロンドの長髪の少女であった。

 「あら貴方は確か転入生の・・・。」

 「お前確かレイブン教室にいた・・・。」

 カミトは誰なのかと思うとレオノーラが後ろから自己紹介をしてくれた。

 「ああ紹介しますよカミトさん。彼女は私のチームメンバーでリーダーをしている・・・『リンスレット・ローレンフロスト』。私の友達です。」

 するとリンスレットはレオノーラを見るとこう聞いた。

 「少し作り過ぎたから一緒にどうです?」

 よく見ると台車の上には幾つかの食べ物が並んでいた。 

 然しレオノーラはこう言った。

 「すみません。ご飯は先程カミトさんと作って食べてしまったんです。」

 ああでも夕ご飯には食べますよと言うと少し沈んでいたリンスレットの顔が

明るくなった。

 「どうせなら入ったらどうだ?立ち話も何だしな。」

 「そうですね。一緒にどうです?リンスレット。」

 カミトの提案にレオノーラがそう言うとリンスレットはふふっと笑ってこう言った。

 「ええ。宜しいですわよ。」

 そう言って彼女達は部屋に入っていった。




 貴方に出会えてよかった。


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アレイシア精霊学院へ。

 レオノーラがここにいる理由その2です。


リンスレットが中に入るとある事に驚いた。

 「何ですのこれは!!『メイルストローム』がもう一体いるではありませんの!?」

 リンスレットは『メイルストローム』の隣にいる紫色の方を見て驚いていると

カミトはリンスレットにこう言った。

 「ああそいつは俺の相棒の『シラヌイ』だよ。」

 「『シラヌイ』・・・ですか。」

 リンスレットはそう言うとある事に気づいた。

 「凄いですわね、カミトさんは。まさかレオノーラと同じく二重契約

(ダブル・コンダクター)とは驚きましたわ。」

 そう言っているとレオノーラがカミトにこう耳打ちした。

 「すいませんカミトさん。リンスレットは『メイルストローム』の事を

精霊の一種だと思っているらしいので話をそのまま合わせてくれると・・・

ありがたいんです。」

 そう言っている中リンスレットは二人にこう聞いた。

 「何ですの?二人で何か話していらっしゃいますが。」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「いやいや何でもねえよ・・・ってレオノーラ、確かリンスレットさんにあった後

どうしてここにいることになったんだ?」

 そうレオノーラに聞くとリンスレットが代わりに答えた。

 「ああその後暫くは我が家に居候させた後行くところがないと言うのでどうしようと思っていましたらレオノーラも精霊使いの適性があることが分かっていたので

父にどうにかアレイシア精霊学院に入学できないかと話すと父はグレイワース学園長に文で聞いてみると『メイルストローム』の事で知りたいことがあると文で来るように

送られたので直ぐに向かわせましたわ。」

 

 

 

 

 数か月前・・・。

 レオノーラは色々と世話になったリンスレット達に一時の別れを告げて馬で

アレイシア精霊学院にへと向かった。

 本来なら『メイルストローム』を使えば早いのだが『メイルストローム』の

機体が幾つか本格的に調整しなければいけない所まで来ていることもありそれを

考慮して馬での移動となった。

 それから二、三日してアレイシア精霊学院に着いたレオノーラは門の前にいた

フレイヤ・グランドルを見つけるとフレイヤ・グランドルはレオノーラに

こう挨拶した。

 「ああ君が学園長が特別入学を許した子だね。私はここの教師の

『フレイヤ・グランドル』だ。学園長はここから少し離れた旧療養所にいるから

そこまで案内するよ。」

 「あ、はい。」

 そう答えるとレオノーラはフレイヤ・グランドルと一緒に古びた療養所にへと

向かって扉をたたいた。

 「学園長、彼女を連れてきました。」

 「ああ入れ。」

 扉の向こうで声がしたのでフレイヤ・グランドルはレオノーラを前に出さしてこう言った。

 「あとは君次第だよ。」

 そう言ってそこから立ち去った後レオノーラは意を決して中に入った。

 「お邪魔しまーす。」

 レオノーラはそう言うと周りを見た。

 多くの資料と何かを描いた紙。

 その内の一枚を見るとレオノーラはそれを見て驚いた。

 それはドラグニア竜皇国でヘイブルグ共和国が支給してくれた『ワイアーム』に

酷似していたからだ。

 「何で機竜が!?」

 レオノーラはそう言うと向こうから声が聞こえた。

 「貴様、それを知っているのか!?」

 部屋の向こうを見ると白衣を身に纏ったグレイワースが睨みつけていた。

 「む、見ない顔・・・アア貴様があれを持っている奴か。」

 「は、・・・ハイ。」

 レオノーラは緊張しながら答えるとグレイワースは自己紹介をした。

 「ああ初めまして、私は『グレイワース・シェルマイス』。ここの学園長をしているのだが・・・。」

 するとレオノーラの肩を掴んで顔が当たりそうになるくらいの距離でこう聞いた。

 「貴様の知っていること全て話せ。イイナ。」

 「は・・・ハイ。」

 その時のレオノーラ曰く・・・。

 「まるで蛇に睨まれた蛙の心情でした。」と言っていたそうだ。




 魔女の問いに素直に答えよ。
 さもなくば死あるのみ。


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話は終わり。

 レオノーラの過去話がやっと終わった。


レオノーラは自身が知っている機竜についてグレイワースから根掘り葉掘り

聞かされた後グレイワースは顎に手を置いて何か考えていた。

 そして暫くしてレオノーラにある事を聞いた。

 「レオノーラ・ランカスターといったな?」

 「あ、はい。」

 レオノーラは名を聞かれて答えるとグレイワースはこう聞いた。

 「機竜についてだがお前以外に機竜について知っているのはドラグニア竜皇国しか

ないのだな?」

 「はい、そうです。」

 レオノーラはそう返すとグレイワースはレオノーラにこう言った。

 「よし、貴様の入学を認めよう。」

 「本当ですか!」

 「ああその代わりにと言っては何だがもうすぐ行われるブレイドダンスに出場して

欲しいのだが?」

 「喜んで承知いたします!!」

 レオノーラはそう答えた後グレイワースはレオノーラにこう聞いた。

 「そう言えばお前は契約精霊を持っているのか?幾ら機竜が精霊扱いされているとはいえ万が一を考えるとな・・・。」

 そう聞くとレオノーラは何か詠唱を唱え始めた。

 -吹き荒れし風の申し子よ、数多なる息吹を吹かす空の剣よ!

 -今こそ血の契約に従い、我が下に馳せ参じ給え!

 レオノーラが詠唱していると辺りが嵐のように吹き荒れてその竜巻の中には・・・

あるナニカがいた。

 それを見たグレイワースはニヤリと笑ってレオノーラにこう言った。

 「文句のつけ用無しだな。」

 それがレオノーラがアレイシア精霊学院に入学できた理由であった。

 

 

 

 

 

 そして現在・・・。

 「そして私は一足早くここに滞在して『メイルストローム』の調整を

行っていたのです。」

 レオノーラがそう締めくくった後リンスレットがこう付け加えた。

 「そして私が入学した後直ぐにチームを組んで来るブレイドダンスに備えているの

ですわ。」

 「まあチームに加える際の基準が高すぎるあまり誰も入りたがらないの

ですけどね。」

 「ちょ、ちょっと!!レオノーラ!!」

 レオノーラがリンスレットのチーム入りに対する基準の高さを指摘すると

リンスレットが慌てていた。

 そしてリンスレットが咳払いするとカミトにこう聞いた。

 「そこでカゼハヤ・カミト!あなたを私のチームに入れたいと思って

いらしてよ!!」

 何で腰に手を当てて言うのかと思っているのだがカミトはリンスレットにこう

聞いた。

 「なあチームにいれる際の基準って何だ?」

 「それは勿論私と同等の強さを持った同い年の人間ですわ!!」

 「そんな人が滅多にいないこと+高飛車な所が災いして集まらないんですよ。」

 「レオノーラ!!口出さないで!!」

 リンスレットの条件にレオノーラが横からちゃちゃ入れたためぷんすかと文句

言っているとカミトは更にこう聞いた。

 「自分と同じくらいって言うのは良いけど強いのかあんた?」

 そう聞くとリンスレットは胸を張ってこう答えた。

 「私こう見えてもB以上ですわよ!!」

 「それなら『クレア・ルージュ』を迎えたらと言ったらお互いが嫌がったん

ですよね。」

 「いい加減にやめて下さいましレオノーラ!!(# ゚Д゚)。」

 レオノーラの言葉にとうとうふしゃーと言うくらいの気迫を見せた

リンスレットに対しレオノーラはハイハイと言った。

 「それでも何で俺なんだ?未だ実力見せてねえぞ?」

 するとリンスレットはこう返した。

 「それなら貴方が契約した精霊の噂を元にすれば簡単ですしレオノーラと同じルームメイトになるのならあなたにも声を掛けようと考えたんですわ。」

 なんとまああの数分でそこまでの考えに至ったのかと思ってゾッとするが

後二ヶ月しかないことを考えれば丁度良いんじゃないかと思っていると外から

声が聞こえた。

 「カミト!!いるのは分かってんのよ!!出てきなさい!!」

 その声にカミトは嫌な顔をしながら外を見るとあの少女がそこにいたので扉を

開けると少女はこう怒鳴った。

 「さあ、カゼハヤ・カミト!私の奴隷精霊になりなさい!!」

 クレア・ルージュが外でそう大声で言った。




 そしてまたクレア・ルージュが騒動を巻き起こす。


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喧嘩は誰の迷惑が掛からないところでやれ。

 喧嘩したけりゃあ・・・誰もいないところでやれ。


「何事ですのって・・・クレア・ルージュ!!」

 「何であんたがいるのよ!リンスレット・ローレンフロスト!」

 リンスレットとクレア・ルージュがお互いを見るや否や険悪な状況になっていた。

 「何であんたがって・・・まさか私の奴隷精霊を誑かしに来たのね!この泥棒犬!」

 するとリンスレットがこう反論した。

 「誰が泥棒犬ですって!?貴方こそいい加減にチーム作りに専念したらどうなのよ!!この残念胸!!」

 それを聞いたクレア・ルージュが怒ってこう言った。

 「誰が残念胸よ!!あんたの家の家紋。白狼なんて言ってるけど私からしたら

只のチワワよ!!」

 それを聞いたリンスレットは低い声で・・・こう呻いた。

 「私のことなら露知らず我が誇り高きローレンフロスト家に対する侮辱だけは・・・許しませんわよ!!残念胸!!」

 「残念胸、残念胸言うな!!来なさい、〈スカーレット〉!」

 クレア・ルージュが持っていた鞭を地面にめがけて打つと〈スカーレット〉が

焔の中から現われた。

 そしてリンスレットはというと・・・。

 -凍てつく氷河の獣よ、冷徹なる森の狩人よ!

 -今こそ血の契約に従い、我が下に馳せ参じ給え!

 リンスレットが召喚式を唱えると渦巻くブリザードの中から・・・白銀色の

毛皮を持つ一頭の狼がいた。

 「あれがリンスレットの・・・。」

 「はい、あれがリンスレットの契約精霊ー魔氷精霊〈フェンリル〉です。」

 レオノーラが説明した後カミトはそれをよく観察した。

 その風格からBランクの中級精霊以上という仮説を立て、リンスレットも

クレア・ルージュと同じぐらいかと思った。

 然しクレア・ルージュは〈フェンリル〉を見てこう言い放った。

 「ふん、相変わらず毛並みだけは立派な犬ね。」

 するとリンスレットはクレア・ルージュにこう言った。

 「犬、犬って・・・泣いて許してを扱いても手加減しませんわ!」

 そう言うとお互いの精霊がぶつかり合った。

 そして何合かのぶつかり合いの中でクレア・ルージュはリンスレットに向けてこう言った。

 「いつもいつも目障りなのですわ!クレア・ルージュ!!」

 「あんたこそ!何でいつも突っかかってくるのよ、リンスレット!!」

 氷と炎がぶつかり合う中カミトとレオノーラはそれを吹き飛ばされないように

見ている中『シラヌイ』と『メイルストローム』が二人に向けてこう忠告した。

 「(カミト!!後ろを見ろ!後ろ!!)」

 「(レオノーラ!!燃えてますよ!!)」

 「「え?」」

 カミトとレオノーラは後ろを見ると・・・割れた窓の外から火が燃えているのが

見えた。

 「「うああああああ!!!」」

 カミトとレオノーラは驚き乍らそこに行くと部屋の一室が燃えているのを見て

レオノーラは絶望した顔でカミトにこう言った。

 「あ・・・あそこは・・・グレイワース学園長の研究資料の部屋・・・。」

 「・・・・何ーーーー!!!!!」

 カミトは急いでバケツに水を入れて部屋の火を消そうとした。

 そして何回かして鎮火するも・・・。

 「これって・・・怒るだろうな~~。」

 「そうですね・・・絶対怒りますね。」

 びしゃびしゃになった部屋。

 燃え散った資料。

 黒焦げになった研究資材。

 「「・・・・はーーー・・・。」」

 カミトとレオノーラは溜息つくと外から声が聞こえた。

 「貴様ら!!学園内での私闘は禁じられてるぞ!!」

 如何やら外から二人の喧嘩が分かったようであるが二人はもう少し早ければと

思っていた。

 そしてカミトとレオノーラが外を見るとエリスと同じように制服の上に甲冑を身に纏った生徒がいた。

 「こうなったらエリスさん経由で学園長に報告するしかありませんね。」

 レオノーラがそう言うとカミトはこう続けた。

 「グレイワース・・・只じゃすまないだろうけどな・・・。」

 「「は~~・・・。」」

 再び溜息つくこの光景はまるで家で喧嘩する子供達を止める親の様であった。




 魔女の怒りは・・・触れることなかれ。


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罰。

 悪い事したら罰は受けろ。


「フフフフフフフ・・・・。」

 グレイワースは燃えた部屋の前で笑っていた。

 いや普通なら未だしもその笑い声はまるで地獄の底からナニカが出てきそうな

くらいの乾いた笑い声であった。

 その周りではその笑い声に恐怖してか、遠回りで見ているカミトとレオノーラ。

 更に後ろで恐ろしく思いながらグレイワースを心配しているエリスと彼女と

一緒にいた二人の少女。

 そして下手人であると同時に二人の間で正座させられているクレア・ルージュと

リンスレット・ローレンフロストが震えながら座っていた。

 この状況は既に十分ぐらいたっているがカミト達からすれば数時間ぐらい経っているような物である。

 然し最初は酷い物であった。

 グレイワースが研究室の変わり果てた姿を見て最初は狼狽して青い顔をして崩れ

落ちたのだ。

 然も事の詳細を聞くとカミト関連でこうなったという事も分かり最初はカミト

自身もだが自分に八つ当たりするんじゃないかと思っていたがグレイワースはそのまま笑い始めて今に至るのだ。

 「おい、大丈夫か?グレイワース??」

 カミトはグレイワースにそう聞くとグレイワースは笑い終えて突如二立ち上がった。

 するとグレイワースはカミトにこう聞いた。

 「ああ・・・大丈夫だ。」

 ほんとかよと思っているとグレイワースはこう言った。

 「見事に研究室がキレイニマックロになった事にお礼がしたいと思うがどう思う?

カミト??」

 「「!!」」

 クレア・ルージュとリンスレット・ローレンフロストがびくっとするとカミトは

二人を見てこう返した。

 「なあグレイワース。二人も悪気が・・・無かったとしても場所を考えて

ほしかったって思うけどどう思うってどうするんだよ?」

 カミトがそう聞くとグレイワースは・・・ワライナガラこう返した。

 「そうだな・・・私の個人レッスンというのはどうだ?実戦クラスの演習で

鍛えてやろう。・・・アリガタクオモウンダナ。」

 グレイワースはニヤリとワライナガラクレア・ルージュと

リンスレット・ローレンフロストを見ると二人の体が全身にわたり震え始め、冷や汗を掻き始めたのだ。

 すると二人を見はっていた二人の少女がこう言った。

 「全く・・・何時も問題ばかり起こしている家柄だけが自慢の田舎貴族。」

 「ななななななーーー!!!」

 リンスレットは物凄い表情で怒り乍ら少女達を見るともう一人の少女もこう言った。

 「おまけに反逆者の妹も付くとなお質が悪いったらありゃしないわよ。

全くこんなんだからレイブン教室全員がそう思われてるのに。」

 「『反逆者の妹』って・・・取り消しなさいよその言葉!!」

 クレア・ルージュもにらみ返してお互い一触即発状態になるとエリスがこう締めた。

 「とにかく今回の事は〈騎士団総会〉に報告する。容疑は精霊を使った小火騒ぎと

器物損壊だが・・・それについては後々に処分を発表する。」

 もうやるなよと言ってエリスは二人を連れて立ち去ろうとすると・・・。

 「待ちなさいよ、エリス・ファーレンガルト。逃げる気?」

 「何?」

 エリスは足を止めてクレア・ルージュに顔を向けるとこう聞いた。

 「今何と言った・・・?」

 怒りを孕んだ表情でそう聞くとクレア・ルージュはこう言い放った。

 「聞こえないならこう言いましょうか?『シルフィード』は腰抜けぞろいなのね。」

 「クレア・ルージュ!!それ以上言うならこちらも容赦しないぞ!!」

 エリス達が剣を抜くとクレア・ルージュが鞭を構えると・・・グレイワースが

エリス達にこう警告した。

 「・・・やめないか。」

 すると殺気がエリス達目掛けて放った事により彼女達の体が強張った。

 「「「「「「「ひい!!」」」」」」」

 彼女達はあまりの事に恐怖して両手が震えるとグレイワースはクレア・ルージュ達にこう提案した。

 「学院内での私闘は厳禁だと今日だけで何回言ったのかね?

エリス・ファーレンガルト???」

 「ああああああああ・・・。」

 エリスはあまりの恐怖に立ちすくむと今度はクレア・ルージュ達にもこう忠告した。

 「クレア・ルージュ、リンスレット・ローレンフロスト。今度また騒ぎを起こして

また同じことを繰り返そうというのかね?」

 「い・・・いええええ・・・。」

 「と・・・とんでも・・・・アアアありませんわ。」

 二人もそう答えるとグレイワースは全員に向けてこう言った。

 「まあお互い納得いってないなら・・・今夜二時に〈門(ゲート)〉の中にて行うが対戦形式は・・・。」

 グレイワースはクレア・ルージュ達を見た後カミトに向けてこう言った。

 「坊やも含めて三対三と行こう。」

 「おい!俺もかよ!?」

 カミトはいきなりのことに文句を言うとグレイワースはカミトにだけ聞こえるようにこう言った。

 「お前のリハビリも兼ねてだ。未だそいつを使ってないから丁度いいじゃないか?」

 グレイワースはカミトの右手を見てそう言う事にカミトはため息交じりで了承した。

 「さてとそれでは決まった事だから・・・クレア・ルージュと

リンスレット・ローレンフロストは私とコイ。」

 「「え?」」

 クレア・ルージュとリンスレット・ローレンフロストがグレイワースの言葉に驚くと二人の肩に手を置いてこう言った。

 「私の研究資料と機材を破壊した事による罰がある事・・・忘れてないよな?」

 「「あわわわわわわわわわ・・・。」」

 二人は恐怖するとグレイワースは二人の襟首を後ろから掴んでこう言った。

 「さあ・・・イコウカ?」

 「「イヤアアアア!!!」」

 クレア・ルージュとリンスレット・ローレンフロストはそまま引きずられて行きそうであったが二人はカミトとレオノーラを見てこう助命を扱いた。

 「あんたあたしの奴隷精霊でしょ!?早く助けなさいよ!!」

 「助けて下さいまし!!レオノーラタスケテーー!!」

 二人の言葉にカミトとレオノーラはお互いを見て・・・グレイワースを見た後二人の目の前で・・・手を合わしてこう返した。

 「ごめんなさい(すまん)。無理です(だ)。」

 「「Noooooooooo!!!」」

 そのまま二人はグレイワースに引っ張られてどこかにへと連れ去っていった。

 それを見た後エリスは気まずそうにこう言った。

 「二人の処分は・・・あれでいいな。」

 残りの二人もこくこくと頷いた後今度こそ出て行ってくれた。

 そしてカミトはレオノーラにこう言った。

 「片付けるか?」

 「そうですね・・・。」

 カミトとレオノーラはそのままグレイワースの研究室の整理と掃除をしにかかった。

 

 

 

 余談だがその日・・・二人の少女の悲鳴と同時にある女性の狂ったような笑い声が

森に鳴り響いたという噂が出来たらしい。




 犠牲者二人プレゼントーー。


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風呂場にて

 何事もまずは体を清めてから。


 カミトとレオノーラはグレイワースの研究室の掃除をした後カミトが入る部屋の

整理と『シラヌイ』の軽い調整(レオノーラ担当)と作戦会議と

リンスレット・ローレンフロストが持って来たご飯(牛肉の煮込みとシチュー)を

食べた後カミトはレオノーラからある物を貰いそれを読んでいた。

 「然し機竜っていうのは色々と操作とか整備とかで大変な事あるんだなあ。」

 それはレオノーラが養成学校に入っていた際に使っていたノートを読んでいた。

 そこには機竜の搭乗の仕方や、整備の基準、各種の能力に伴う部隊の配置や

三大機竜奥義についての事までびっしりと書かれていたのだ。

 「・・・あいつここ迄必死に頑張っていたんだよなあ。」

 カミトはレオノーラの昔話を思い出すとヘイブルグ共和国は嘗て自分が所属していた教団と一緒なんじゃないのかと思った。

 「≪もし俺がヘイブルグ共和国にいたら今でも汚れ仕事を専門にしてたん

だろうなあ。≫」

 カミト自身もそのifを想像して身震いすると『シラヌイ』はこう返した。

 「(何にしても過去は変えられない。・・・だけどこれからの自分次第じゃあ未来を作ることぐらい簡単に出来るんだぞ。)」

 『シラヌイ』の言葉に少し軽くなったカミトはもう少し読もうと思っていると・・・。

 「きゃあああああ!!!」

 「!!レオノーラ!!」

 遠くでレオノーラが悲鳴を上げたのに気づいたカミトはその場所に向かおうとすると『メイルストローム』がカミトに居場所を伝えた。

 「【カミトさん。レオノーラは今風呂場にいますから悪しからず。】」

 「分かった!!」

 カミトは急いで風呂場の前に着くと一端深呼吸してから目を瞑って入った。

 風呂場にいるという事はレオノーラ本人は今裸である事を考慮した事によるものであった。

 「レオノーラ・・・入るぞ・・・って何だこれは!!??」

 カミトは薄く目を開けるとそこにいたのは・・・。

 「だれ・・か・・・たす・・・け・・・ああん。」

 レオノーラの体に半透明の・・・スライムみたいなものが体に巻き付かれているのを見てカミトはと言うと・・・。

 「・・・ごくっ」

 生唾飲むぐらいの光景であった。

 然もレオノーラが痙攣する度に服からは見えなかったが結構ある胸や形のいい尻が

揺れ動くのを見てドキマギしていたが流石にヤバいと思ってかカミトは目を

もう一度閉じて意識を集中した。

 「荒ぶる水の精霊よ、我が命に応じて静まり給え!」

 小声で鎮守の精霊語を唱えて神威を右手に込めてレオノーラの手を取った。

 するとスライムみたいなものが飛び散るとそのまま水に戻っていった。

 「おい大丈夫か?レオノーラ!?」

 カミトがそう聞くとレオノーラはこう返した。

 「あ、ありがとうございます・・・・って・・・カミトさん?」

 レオノーラはそのままカミトの胸に倒れ込んで荒い息をしながらそう言うとカミトである事の気づいた瞬間・・・。

 「え・・・あの・・・・あう・・・////。」

 レオノーラは顔を真っ赤にしてフルフルと震えていた。

 然もカミトに抱き着いているような形である事も重なり悲鳴が上げづらかった。

 そしてカミトはレオノーラにタオルをかけるとこう言った。

 「それじゃあ俺はこれで!!」

 カミトはそう言って猛ダッシュして風呂場から出た瞬間・・・。

 「きゃああああああああ!!!」

 レオノーラの悲鳴が風呂場一帯に響いた。

 

 

 

 「あいつって・・・着やせするのかよ。」

 カミトはぜえぜえと息を切らしながらそう言うとカミトはレオノーラのあの姿を思い出して・・・顔が真っ赤になった。

 「どうすりゃいいんだよおい。」

 カミトは机に突っ伏しながらそう言った。

 その後レオノーラが風呂場から出た後あの時の事を思い出してお互い顔を

真っ赤にして決闘時刻までお互い何も言わなかった。




 この時の『シラヌイ』と『メイルストローム』の思い
 「「(【あ、・・・甘ったるい。】)」


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いざ決闘へ。

 カミトとレオノーラ、決闘場所二へと向かう。


蒼い月が輝く夜に学院の塔の上で黒い羽根を持つ少女がいた。

 少女はカミト達がいる建物を見てニコッと笑った。

 「逢いたかったわ、カミト。」

 それと『シラヌイ』もと言った。

 如何やらこの少女は『シラヌイ』の事を知っているようだ。

 それもそのはずだ、この少女こそ・・・。

 「けどまだ貴方は本当の貴方じゃない。」

 カミトが探している少女・・・。

 「だから思い出してあげる。」

 魔精霊・・・「レスティア」なのだ。

 

 

 

 

 そして指定された時間にカミトとレオノーラがそこにいた。

 何故レオノーラまでいるのかと言うと・・・。

 「貴方の精霊使いとしての実力を見たいです。」と言ったのだ。

 然しこの二人未だ風呂場での一件があるのでお互い顔を赤くしながらお互い視線を

合わせないようにしていた。

 お前らカップルかよと思いたいほどである。

 更に言えばカミトは決闘場所を知らない為レオノーラが案内しているのだ。

 カミトはレオノーラに着いていくようにそこに向かった。

 「あそこです。」

 レオノーラがそう言って指さすと巨大な石の円環(ストーン・サークル)が青白く光っていた。

 「あれってまさか・・・。」

 「はい、あれこそこの土地に学院を作った場所とも言われる場所。人間界と

アストラル・ゼロを繋ぐ門〈精霊界の門(アストラル・ゲート)〉です。」

 そして二人がそこに向かうと茂みから・・・ガサガサと音がした。

 「「!!」」

 カミトとレオノーラがソード・デバイスを抜く構えをするとそれが姿を現した。

 それは・・・。

 「学園長・・・。」

 「グレイワースかよ・・・。」

 グレイワースがクレア・ルージュとリンスレット・ローレンフロストを掴んで連れてきたのだ。

 よく見ると二人ともボロボロになっており失神していた。

 「なあグレイワース。そいつら無事なのかよ?」

 決闘があるんだぞと言うとグレイワースはニヤリと笑ってこう返した。

 「その心配はないさ。決闘できるぐらいの力は残しているしこの子娘たちは未だ

鍛えたりないところがあるのでな。」

 そう言ってカミとレオノーラに託すとグレイワースはそのまま立ち去ろうとすると

カミトとレオノーラの方を向いてこう言った。

 「決闘が終わってもそのままいちゃつくなよ。またエリスから怒られるからな。」

 「「なああ!!」」

 カミトとレオノーラは驚くとそのままグレイワースは闇の中にへと消えて行った。

 「・・・それでは・・・行きましょうか///」

 「・・・ああ・・・//」

 カミトとレオノーラは顔を真っ赤にしてクレア・ルージュと

リンスレット・ローレンフロストを回収するとレオノーラが精霊語で開門の言葉を

唱えると地面の青白い光がさらに強まった。

 「カミトさん!」

 レオノーラはカミトに来るように言うとカミトは慌てて中に入った。

 そして光が視界全体に広まった。




 そして決闘場所へ。


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アストラル・ゼロへ。

 誰もいないのかを二度確認してから作業をする事。


 「ううう・・・ん。はっ!」

 クレア・ルージュが目を覚ますとそこは今までグレイワースの特訓(拷問)を

受けていた場所とは違う場所であった。

 月は紅く照らし、ねじ狂った木が生い茂る場所であった。

 「ここは・・・?」

 クレア・ルージュがそう聞くと近くにいたレオノーラがそこにいた。

 「あ?起きましたか?」

 「・・・ねえここ何処?」

 クレア・ルージュがレオノーラにそう聞くとレオノーラはこう答えた。

 「ここはアストラル・ゼロですよ。」

 「アストラル・ゼロって・・・何時の間に!?」

 クレア・ルージュが驚いて飛び起きるとすぐ隣にいたリンスレットも起きた。

 「もお何ですの?折角寝ていたのに・・・。」

 リンスレットがそう言って起きるとレオノーラがリンスレットにこう言った。

 「よくここで寝れますね・・・っと言いたい所ですがそろそろ決闘場所まで

行きましょうか?」

 そう言うとクレア・ルージュとリンスレット・ローレンフロストと共にレオノーラが連れて行くとすぐそこでカミトが何かをしていた。

 「冷徹なる鋼の女王、魔を滅する聖剣よーー今ここに鋼の剣となりて、

わが手に力を!」

 精霊語の召喚式を唱えると右手の交差する二本の剣が輝くもカミトは何か

違和感を感じた。

 「≪なんかおかしいな?≫」

 カミトはそう思っていると右手に現れたのは・・・ナイフのような短剣であった。

 「「・・・あれ(あれ)??」」

 正直言えば・・・あれほど強そうだった封印精霊にしては・・・しょぼいの

一言に尽きると思った。

 「・・・何だこれ?」

 カミトがそう言うと『シラヌイ』がこう返した。

 「(そこら辺の木を切って切れ味確かめてみたらどうだ?もしかしたら凄く

強いのかもしれないぞ。)」

 そうだなと答えて木の枝を切ると・・・。

 パキッと・・・剣の方が折れた。

 「「・・・・・。()」」

 正直こりゃ駄目だと思っているとカミトは後ろを振り向くと・・・気まずそうな

顔をしているレオノーラとリンスレット、そしてポカンと口を開けている

クレア・ルージュがそこにいた。

 「な・・・な・・・な・・・なによそれーー!!」

 クレア・ルージュの怒号が森に響き渡った。

 

 

 

 

 「どうやら俺は未だこいつを使いこなしてないらしいな。」

 カミトがそう言うとクレア・ルージュが怒ってこう言った。

 「ドー言う事よ!!あんたの戦力を当てにしてたにーー!!」

 クレア・ルージュが鞭を持ってカミトを叩こうとした瞬間レオノーラが後ろから

羽交い絞めしてこう言った。

 「待ってください、クレア・ルージュ!!こればかりはしょうがありませんから

『シラヌイ』を使う事にしましょう!?ね?」

 レオノーラがそう言うもクレア・ルージュは未だいきりだっていたが突如真上から

声がした。

 「-そちらは揃ったようだな、レイブン教室。」

 「(カミト、上だ。)」

 『シラヌイ』がそう言ったので上を見ると崩れかかった広い劇場のような場所の

壁の上でエリス達が立っていた。

 然しカミトはある事を聞いた。

 「・・・お前まさか格好良く登場するタイミングを見計らうために

そこにいたのか?」

 「な・・・そ、そんなことないぞ!私は今来たばかりだからな!!」

 エリスが動揺しながら弁解するもレオノーラと『シラヌイ』と『メイルストローム』がこう思っていた。

 「あれどう考えても一時間前には来てますね。」

 「(馬鹿と何たらは高いところが好きというけどな。)」

 「【ちょっと残念ですね。】」

 それぞれ思い思いの言葉を述べるとエリスは咳払いしてこう言った。

 「さてとレイブン教室。夜明け前には終わらすから・・・覚悟することだな。」

 「いやそれ言ってもさっきの事思い出すとカッコよくねえぞ。」

 エリスは話題を変えさせようとするもカミトはそれをツッコミで返した。

 すると舞台に炎の照明が灯された瞬間上空から巨大な大鷲が姿を現した。

 「紹介しよう、カゼハヤ・カミト。これが私の契約精霊ー魔風精霊

〈シムルグ〉だ!」

 エリスの言葉に〈シムルグ〉はくええと言うとカミト目掛けて突進してきた。

 今、決闘が始まる。




 そして決闘が始まる。


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決闘開始!!

 やっと決闘が始まった。


 「あいさつ代わりってかよ!!」

 カミトはそう言いながら避ける瞬間クレア・ルージュとリンスレットにも

こう忠告した。

 「お前らも避けろよ。」

 するとクレア・ルージュとリンスレットがこう返した。

 「分かってるわよ!!」

 「分かってますわ。」

 そう言って全員がそこから避けると避けた場所から鼓膜が破れそうなくらいの轟音がけたたましくなり響いた。

 そして爆心地を見ると巨大な穴が開いていた。

 「まともに喰らってたら・・・ヤバいな。」

 「(カミト、前!!)」

 『シラヌイ』がそう言うと大穴から〈シムルグ〉が風の塊となって地面を抉りながら突進してきた。

 カミトはそれを紙一重で躱した後再び召喚式を唱えるとまたあの短剣が

出てしまった。

 「(・・・またかよ。)」

 「でも無いよりはマシだろ!!」

 『シラヌイ』がガックリするもカミトは短剣を持ってエリスに挑もうとした。

 「≪こうなったらエリスを倒して契約精霊を消すしかない!!≫」

 カミトは先手必勝の構えでエリスに向かおうとすると・・・。

 「(カミト、頭を下に!!)」

 『シラヌイ』の言葉の通りにすると〈シムルグ〉の翼が先程カミトがいた地点を

薙ぎ払っていた。

 「危ねえ!」

 カミトはそう言うも〈シムルグ〉がまた急降下してきたのでカミトは空を飛ぶも

今度は地面の破片と一緒に無数の風の刃がカミトの右腕に襲い掛かった。

 「くっ!!」

 ここ、アストラル・ゼロでは人間も精霊と同じく神威の存在になるので傷は出ないが精神的にダメージがくるようになっているのだ。

 「≪まさか風の刃を出すとはな!!≫」

 カミトはエリスの精霊使いとしての技量の高さに舌を巻きながら周りを見た。

 「ああもう!!邪魔よ!!」

 「団長の邪魔はさせない!」

 クレア・ルージュは三つ編みの騎士、レイシアを相手にしていた。

 相手は透明な氷の剣を持っているがあれくらいなら大丈夫だろうと思っていると

カミトはある事に気づいた。

 「・・・?・・・もう一人がいない。」

 「(カミト、右を見ろ!!)」

 『シラヌイ』の言う方向を見ると柄の長い大槌を持った短髪の騎士、ラッカが

来ていた。

 「くそっ!気づかれたか!!」

 ラッカがちっと舌打ちしながらエリスの方を見るとエリスの方も頷いた。

 恐らく二人がかりでカミトを倒そうとする魂胆であろう。

 すると『シラヌイ』がカミトにこう提案した。

 「(俺を召喚すればこの状況を打開できるはずだ!!)」

 そう言うがレオノーラの言葉が正しければ機竜は肉体にダメージを加えることが

出来るのでそうなると下手したら人死人が出ると思ったカミトはサブプランを

提案すると『シラヌイ』がこう言った。

 「(分かった。お前の好きにしろ。)」

 そう言うとカミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いた瞬間

ソード・デバイスをエリスの槍に、短剣を大槌の柄目掛けて投擲した。

 「「!!」」

 エリスとラッカはそれに驚くとそれぞれ防御態勢に移ると短剣は粉々に砕けるも

エリスの槍を斬った瞬間エリスはすかさず退いてラッカに任せようとするとカミトはラッカにこう忠告した。

 「狩人に注意しろ。」

 「はあ・・・!!」

 ラッカが振り上げた瞬間氷の矢がラッカの胸に命中すると吹き飛ばされて地面に

バウンドした後大槌が消えた。

 そしてカミトはその方向にいる人間にこう言った。

 「ナイスショット。」

 「当然ですわ。」

 それはリンスレットの精霊魔装〈氷の大弓〉による攻撃であった。

 そしてカミトはエリスの方に向けるとエリスに向けてこう言った。

 「さあてと・・・反撃開始だ!!」




 さてさてどうなる事やら。


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邪魔が入るのは常道だ。

 いつだって邪魔者は現われる。


 「反撃か・・・フフフ・・・あまり調子乗るなよ。レイブン教室共!!」

 エリスが斬られた槍を捨てて怒鳴ると上空にいる〈シムルグ〉を呼び戻した。

 そしてーー。

 「-凶ツ風よ、怨敵の心臓を貫く魔槍となりて我が手に宿れ!」

 精霊語の展開式を唱えた瞬間、エリスを中心に風が吹き荒れ、その手に巨大な槍が

現われた。

 それは柄に精緻な文様が刻まれた恐らく儀式用の長槍であろう。

 だがカミトが見ているのはそこではなかった。

 腰まで届くであろうポニーテールの髪が風に煽られて揺れ動き、その長槍を

片手で回すその動きに見とれていたのだ。

 「どうだ、カゼハヤ・カミト。これが私の精霊魔装ー

〈風翼の槍(レイ・ホーク)〉だ!」

 見せびらかすようにエリスはレイ・ホークをカミトに向けるとカミトはこう答えた。

 「綺麗・・・だな。」

 そんな声を漏らしたのが聞こえたのかエリスは得意満面にこう答えた。

 「ふっ、君にも分かるのかーこの〈レイ・ホーク〉の美しさが。」

 「いやどちらかと言うとお前かな。」

 カミトはエリスに綺麗だと言った事に『シラヌイ』が呆れ混じりでこう言った。

 「(お前よくもまあ、そんなこっぱずかしい事しれっと言えるな。)」

 そして『シラヌイ』があっち見ろと言って見てみると・・・。

 「わ、私が・・・綺麗って・・・あうううう~~///。」

 顔を真っ赤にして湯気を出していたエリスがそこにいた。

 「あら、騎士団長補佐官も乙女ですわね。」

 リンスレットが後ろからクスクスっと笑いながらそう言うとエリスがそれを

聞いたのかカミトの方を向いてこう言った。

 「よくも・・・よくも私を愚弄したなカゼハヤ・カミト!!この不埒物が!!」

 そう言ってエリスは魔槍を突き込もうとするとカミトはそれを紙一重で

躱そうとすると・・・突如風の刃が全身を切り裂いた。

 「≪ぐう!!こいつもさっきのを出せるのかよ!!≫」

 カミトは全身から来る激痛に耐えながらも後方にへと一気に下がった。

 然もその風は一直線に壁を壊すほどであった。

 「(紙一重は駄目、直撃は論外。こりゃ腹括って俺を出すしかないな。)」

 『シラヌイ』はカミトに忠告するとカミト自身もそう思っていた。

 「≪俺は昔よりも体が動きキレてねえし、直観力も落ちてるが・・・こうなったら

やるしかねえな。≫」

 そう思ってカミトはソード・デバイスを構えるとエリスは槍の後方に風を纏うと

エリスはカミトにこう言った。

 「わ、私を綺麗と言った事・・・後悔させてやる。」

 「お前それ言ってなんだが顔真っ赤だぞ。」

 「(あーもーこの鈍感!!)」

 エリスの言葉にカミトは正直に返したことに『シラヌイ』は駄目だこりゃと

思いながら怒鳴った。

 「な・・・な・・・な・・・///。」

 再びエリスの顔が真っ赤になっていくのを見ていたカミトは後ろにいる

クレア・ルージュとリンスレットに気づいていなかった。

 「凍てつく氷牙よ、穿てー〈魔氷の矢弾(フリージング・アロー)〉!」

 「舞え、破滅呼ぶ紅蓮の炎よー〈炎王の息吹(ヘルブレイズ)!」

 クレア・ルージュとリンスレットの攻撃が同時にエリス目掛けて攻撃した。

 「ちぃ!!」

 エリスはそれに驚くと防御しようとするもこの距離なら間に合わないという事も

カミトは知っているためこれで勝ったと思っていると・・・。

 その攻撃は・・・互いに衝突して水となってエリスにかかった。

 「わぷ。」

 「・・・は(は?)?」

 流石にカミトと『シラヌイ』も茫然とするしかなかった。

 それは客席にいたレオノーラもしかりであった。

 「あちゃーー。」

 するとクレア・ルージュとリンスレットが口げんかしていた。

 「ちょっと、リンスレット!あんた何邪魔してんのよ!」

 「な、何ですのっ、貴方こそ私の邪魔をしないで下さる!?」

 それを聞いていたカミトはこう思っていた。

 「≪こいつら実力はあるのに、チームワークというより協調性が殆んどねぇな。≫」

 レオノーラはどうやってたんだと思いながらエリスの方を見てカミトは顔を

真っ赤にした。

 「なああ!!」

 カミトが狼狽えているのにエリスがこう聞いた。

 「?どうした?」

 そう聞くとカミトは言いづらそうにこう言った。

 「その・・・見えてるぞ・・・紫・・・。」

 「へ?」

 そう言って見てみると上半身が水浸しになった事で下着が見えていたのだ。

 然も装飾が少ないバストが大きい人用の物であった。

 それを見てエリスは更に顔を真っ赤にしてこう怒った。

 「貴様!!よくも私を慰み者にしたなあ!!」

 「誤解だぞそれって!!つうか怒るならあいつら・・・?」

 突如ソード・デバイスから何か音がしたので耳を近づけてみると・・・。

 《カミトのバカーー!!》

 レオノーラの声が聞こえた。

 《何やってんですか貴方は!!私の裸を見ておきながら何やってんですかーー!!》

 「いや待てレオノーラってこれ如何やってんだ?」

 《これは「竜声」と言って機竜同士の通信能力って何してるんですか貴方って人は‼》

 「なあレオノーラ、違うって!これには深いわけがな!」

 何だこの状況はと第三者なら思ってしまいそうな光景だが単に言うならこの状況は・・・。

 「(【浮気現場がバレて口論になっている夫婦みたい】)」と『シラヌイ』と

『メイルストローム』はそう思っていた。

 するとカミトがレオノーラとエリスにこう言った。

 「待て二人とも!様子がおかしいぞ。」

 「何言ってんだ貴様は!」

 《話を替えようとしてるんじゃあ・・・。》

 するとレオノーラも何かを感じたのか上を見るとレオノーラがそれを見て

こう言った。

 「何ですあの裂け目は?」

 それは広がれば広がるほど空気が重くなっていくのが分かる。

 「何?」

 「何ですの?」

 クレア・ルージュとリンスレットも気づいたようなのでそれを見ると・・・

裂け目から・・・雷鳴のような音と一緒にそれは現われた。




 次は乱入者編です。


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魔精霊現る!!

 いつの世も邪魔者はどこかから現われる。


裂け目から現われたのは・・・巨大な顎が体の大半を占める生き物であった。

 それはずらりと並んだ鋭い歯をガチガチと音を立てていた。 

 「おいおいあれって魔精霊かよ!?」

 カミトはその精霊の正体を知るや否やヤバいと直感で分かった。

 魔精霊と契約出来る人間なんてグレイワースぐらいなものであるからだ。

 「(いやお前あいつと契約したじゃねえか?あいつも魔精霊だろ?)」

 『シラヌイ』がカミトにそう聞くとカミトは怒りながらこう返した。

 「あほか!あいつとあれを一緒にするな!!それに何でこんな場所に来るんだよ!」

 すると魔精霊がヴォ・・・ルオオオオオオオン!!と耳を塞ぎたくなるような咆哮に全員が身を竦めた。

 その凄まじい威圧感から恐らくAランクの魔人級と見て間違いないだろうがカミトは

ある事に気づいた。

 「・・・あいつ・・・狂乱している?」

 それが証明されているかのように魔精霊は周りの木々や遺跡を破壊していて

カミト達の事など目もくれなかった。

 「クレア・ルージュ、決闘は中止だ!良いな?」

 「・・・分かったわ。」

 エリスの言葉にクレア・ルージュは一呼吸おいて納得した。

 幾ら何でもあの魔精霊の攻撃においては精神が持てないからだ。

 「私が殿を務める!君たちは気絶したラッカ達を非難させてくれ。」

 そう言ってエリスは〈レイ・ホーク〉を構えてそう言うとカミトが前に出て

こう言った。

 「いや殿はおれがやる。お前ひとりじゃあ危険すぎる。」

 然しエリスはカミトにこう言った。

 「冗談はよせ。契約精霊を満足に使役できない君に何が・・・。」

 エリスが言いかけるとカミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを見せつけた。

 「なあに、時間稼ぎぐらいなら出来るし俺には長年連れ添っているこいつがいる。」

 そう言って前に出ようとすると横から誰かが来た。

 「それなら私も残ります。一人より二人の方が生き残る確率は高いですし、

それに・・・。」

 するとレオノーラは召喚式を唱えて風の塊の中にいるナニカが現われると

それは固まって一本の剣になった。 

 「〈嵐神の剣(テンペスト・ソード)〉。私は皆さんとは違い神威が十分に

ありますから。」

 レオノーラはそう言ってカミトに向けて微笑むとカミトもそれに答えて進もうとした瞬間・・・後ろから猛ダッシュで魔精霊に向かっていく人間がいた。

 「な、クレア!何をする気ですの!?」

 クレア・ルージュが契約精霊である火猫を出すとこう言った。

 「殿は私がやるわ!あいつは私がもらうわ!!」

 カミトはその言葉に嫌な予感がしたので追いかけながら聞いた。

 「お前まさかあいつを契約精霊にする気か!?」

 「ええそうよ!だから?」

 その言葉にレオノーラがこう返した。

 「無茶です!魔精霊相手に契約なんて無謀すぎます!!」

 然しクレア・ルージュはこう返した。

 「何言ってんのよ!グレイワース学園長だって契約しているのよ!つまり

0じゃない!!」

 「【無茶です!レオノーラ、彼女を止めなければ!!】」

 「(そんな曖昧な理由で殿なんて務まるかよ!?)」

 クレア・ルージュの根拠のない自身に『メイルストローム』と『シラヌイ』が

止めるように言った。

 「それにカミトの精霊魔装があんなに弱っちいんだからあの変な精霊も弱いから

殿なんて無理よ!!」

 その言葉に『シラヌイ』はちょっとドスガ効いた口調でこう言った。

 「(おいカミト、あいつ後ろからぶった切りたいが良いよな?)」

 「おいやめろ。同士討ちだけはしたくねえぞ。」

 カミトは『シラヌイ』にそれだけはするなと言うとカミトは走りながら

ソード・デバイスを構えて詠唱を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 そしてカミトが飛び跳ねると後ろに『シラヌイ』の本体が現われた。

 そしてカミトは『シラヌイ』を纏うと『シラヌイ』は魔精霊に向けてこう言った。

 「(おいそこの魔精霊、・・・少し八つ当たりさせてもらうぜ。)」

 そして大型刀「玄海」を構えて魔精霊に突撃した。




 次は戦闘です。


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そして終わりへと。

 魔精霊対カミト、レオノーラ、クレア・ルージュ戦。


 カミト、レオノーラ、クレア・ルージュの三人が殿を務めることとなりエリス、

リンスレットはラッカ達を連れてサークルがあった場所まで走っていた。

 「ありましたわ!」

 リンスレットはサークルがある場所を見つけてラッカ達をそこに降ろした。

 リンスレットはラッカ達と一緒にサークルに入って開門の精霊語を唱えると

サークルが先程のように青白く輝くとリンスレットはエリスに向けてこう言った。

 「さあ、行きますわよ。」

 そう言って転送される間際、エリスがサークルから出て行った。

 「エリス!どうしたんですの。」

 「私は騎士団長補佐官だ!生徒が棄権に会っている中自分だけ逃げるなどしたく

ない!!」

 そう言ってエリスはカミト達がいるところへと走り去った。

 そしてリンスレット達は止める間もなく人間界に転送された。

 そしてエリスは爆発音のある場所にへと向かった。

 

 

 

 

 「しぶといわね、私の物になりなさい!!」

 クレア・ルージュが精霊魔装である炎の鞭で魔精霊を叩きつけながら

そう言っているが周りはそうではなかった。

 「クレア・ルージュ、少し距離を離してください!カミトが攻撃できません!!」

 「うっさいわね!それくらいあいつが何とかするわよ!!」

 レオノーラの言葉にクレア・ルージュは喧嘩腰でそう返した。

 「くそっ!狙えねえ!!」

 「(あの子娘のせいで狙いが定まらねえ!!)」

 カミトは『シラヌイ』の右手に「玄海」を、左手に「清水」を持っているが本当ならクレア・ルージュとレオノーラが魔精霊を止めている間にカミトが

スナイパーライフルモードになった「清水」で核を見つけて倒す予定なのだが

クレア・ルージュが何度も「清水」の射線に入る為牽制として使いながら「玄海」で

切り裂こうとしているのだが魔精霊は見た目に似合わずすばしっこく、当てることも

難儀なものであった。

 すると魔精霊が口を閉じて何かをしようとした。

 「皆逃げろおーー!!」

 カミトがレオノーラ達にそう言うがクレア・ルージュはそれを無視して魔精霊の

真正面にへ跳んだ。

 「えーーい!!」

 クレア・ルージュがそう言いながら鞭を振りかざそうとした瞬間、魔精霊が吠えた。

 オオオオオオオン!!

 「ぐう!!」

 「「きゃあああああ!!!」」

 カミトは障壁を展開し、レオノーラは風の結界を作って防御するも

クレア・ルージュは防御する間もなく地面に叩きつけられた。

 「あ・・・ああ、あ・・・。」

 クレア・ルージュは魔精霊を見て震えていた。

 逃げたいのに脚が強張っているのだ。

 「あ、あんたなんか、怖くないんだから!あ、あたしの下僕になりなさいよね!」

 クレア・ルージュは魔精霊に罵声を浴びせるも魔精霊はその光景にフッと笑っているように見えた。

 それを見たクレア・ルージュは本能的恐怖がよぎると炎の鞭が消えた代わりに火猫が姿を現した。

 「スカーレット!?どうして・・・。」

 クレア・ルージュは擦れた声で呟いた瞬間、〈スカーレット〉が魔精霊目掛けて

跳び上がった。

 「スカーレット!!ダメ――!!」

 クレア・ルージュの言葉は届いているのかどうか分からないがスカーレットは焔を纏った爪で切り裂こうとした瞬間、魔精霊はそれごと〈スカーレット〉を

噛みちぎった。

 ニャアアアアーー!!

 〈スカーレット〉の断末魔が木霊し、そのまま消滅した。

 「スカー・・・レッ・・・ト。」

 クレア・ルージュはその光景を見てへ足り込んでしまった。

 〈スカーレット〉が命を懸けて作った時間であると分かっているのに何も

できなかった。

 「(あたしのせいでスカーレットが・・・何で・・・何で・・・私は・・・コンナニヨワイノ?)」

 クレア・ルージュは涙を流しながらそう思っていた。

 そしてそのまま魔精霊が口を大きく開けた。

 「いや・・・だ・・・助けて・・・姉さま・・・。」

 クレア・ルージュの引き攣った声と共に魔精霊が飲み込もうとした瞬間・・・。

 グオオオオオン!!

 爆発音と同時に魔精霊が雄叫びを上げると横からナニカがクレア・ルージュを

掴んだ。

 それは・・・。

 「大丈夫か!クレア・ルージュ!!」

 「・・・エリス?」

 クレア・ルージュは力なく呼ぶとエリスは下にあるのを見た。

 「あれは・・・『メイルストローム』!!」

 それは『メイルストローム』を身に纏ったレオノーラが

「グロリアス・テンペスト」で出来た爆発であった。

 魔精霊はレオノーラの方を向くとレオノーラはニヤリと笑ってこう言った。

 「周りを見たほうが良いですよ。魔精霊さん。」

 すると何処からか何かが当たる感触があった。

 よく見ると斬られた跡があり周りを見ると今度は撃たれた跡があった。

 それが幾つも続き魔精霊はもう一度吠えようとするも・・・。

 「そうはいきません!!」

 レオノーラは「グロリアス・テンペスト」で今度は拡散式にして魔精霊の体全体に

爆発するようにした。

 グオオオオオン!!

 魔精霊が雄叫びを上げて逃げようとするとレオノーラとそれと逆方向からの

ワイヤーテールが射出された。

 そしてよく見るとそれは・・・迷彩で隠れていたカミトが現われた。

 「あの精霊は姿を隠せるのか!?」

 エリスはそれに驚くと二人はそのまま魔精霊を地面に叩きつけた。

 グオオオオオン・・・。

 魔精霊が弱弱しく叫ぶもレオノーラがカミトに向けてこう言った。

 「今です!!」

 「おおおおおおおお!!!!!」

 カミトは「玄海」を構えて魔精霊に突撃した。

 すると右手の精霊刻印がまばゆく輝いた瞬間それは「玄海」に流れると「玄海」の

刀身が光り輝いた。

 「消え失せやがれ!顎野郎!!」

 そしてそのまま魔精霊を両断した。

 

 

 

 雨が降り始めた中エリスがクレア・ルージュと共に降りてきた。

 するとエリスを見てカミトはこう言った。

 「何でここいるんだよ?俺達に任せろって言ったろ。」

 するとエリスは言い淀みながらこう言った。

 「私は騎士団長・・・補佐官だ。生徒を守るのは・・・当然だろう。」

 最後は消え入りそうなくらいの声であったがまあクレア・ルージュを助けて

くれたので良しとするかと思っている中クレア・ルージュはカミトに向けてこう言い放った。

 「何で・・・何で・・・何でそんなに強い力持ってんのよ!!」

 するとクレア・ルージュはカミトの制服の襟を掴んでこう言った。

 「よこしなさいよその精霊を!!あんたは私の奴隷精霊なんだからあんたのは私の力でもあるのよ!!」

 そう言いながらカミトの腰にある『シラヌイ』のソード・デバイスを捕ろうとするとレオノーラがクレア・ルージュを抑えてこう言った。

 「ヤメテ下さい、クレア・ルージュ!!この精霊はある条件を満たしていなければ

使えませんし、精霊を奪っても何もならないことぐらい分かってるでしょう!!」

 契約精霊とは精霊使いと精霊の信頼によってその力が変わるのだ。

 ラッカ達のように強い精霊と契約してもその力を使いこなせなければ無用の長物で

あり、結局のところ自分が強く無ければ意味はないのだ。

 然しそれでもクレア・ルージュは怒りは収まらず今度はレオノーラにぶつけた。

 「あんただって本当はそれがある事に優越感持ってるのでしょう!!」

 「そんなことありません。私は『メイルストローム』を使いこなそうと今も

努力してますしこの子とも・・・。」

 そう言ってレオノーラは胸のあたりに手を当てるもクレア・ルージュは

こう言い放った。

 「努力努力って・・・あんたみたいに!!」

 然しその続きはレオノーラにとって・・・。

 「何も失った事もない奴が言える台詞なのよ!!」

 言ってはいけない言葉であった。

 「おい、クレア!!」

 カミトが文句を言おうとした次の瞬間・・・。

 パンと乾いた音が鳴り響いた。

 それはレオノーラがクレア・ルージュの頬を叩いたからだ。

 「な、何よ!!」

 クレア・ルージュはレオノーラに文句を言おうとした瞬間それを言えなかった。

 その時のレオノーラの顔が怒りで満ちていたからだ。

 「何も・・・失って・・・いない・・・ですって!!」

 するとレオノーラはクレア・ルージュの胸ぐらを掴むとこう怒鳴った。

 「貴方に何が分かるというんですか!!」

 「仲間を失い!!」

 ドラグニア竜皇国で共に研鑽し合った戦友。

 「守ろうと決めた仲間をまた失い!!」

 レグリス、ユーリとの最後の会話を。

 「あこがれの人に裏切られ!!」

 自らが目標としていたローザ・グランハイトの裏切りを。

 「国にも裏切られ!!」

 一部の人間の思惑を知り。

 「家族を失い!!」

 大切であった父と母との永遠の別れ。

 「それでも前を向こうとした人の気持ちを貴方は何だと!!」

 「もうやめろ。レオノーラ。」

 カミトが後ろから肩を叩いて正気を戻すとクレア・ルージュの顔が青くなっている

ことに気が付いて慌てて離した。

 然しクレア・ルージュはカミト達にこう言い放った。

 「それでも私は力が欲しいのよ!!」

 そう言ってそのまま森の中に入っていった。

 その光景を見た後カミトの視界が逆転した。

 「あ・・・れ・・・。」

 カミトの意識が急速に遠ざかっていくのを感じてそのまま倒れた。

 「カゼハヤ・カミト!!」

 「カミト!!」

 エリスとレオノーラがカミトに近寄った。

 雨は止まず尚も降り続いていた。




 貴方は・・・ダレ?


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精霊の紹介

 カミトとレオノーラの精霊紹介


「うう・・・ん・・・は!」

 魔精霊との戦いで疲弊して倒れたカミトが目覚めた場所は自身の住んでいる部屋であった。

 「俺は確か・・・如何やってここ迄。」

 カミトがベッドから起きようとすると右手に焼けるような痛みを感じた。

 「≪そういやあの時・・・。≫」

 カミトは魔精霊を両断する時にも同じ痛みがあった事を思い出すとシーツの中が

異様に膨らんでいることに気づいた。

 「・・・何だこれ?」

 そう言ってカミトはシーツを剥ぐとそこには・・・。

 黒いニーソックスしか履いていない銀髪の美少女がそこにいた。

 「・・・誰だお前?」

 数十秒経って出たのがそれなのはどうかと思う。

 「エスト」

 少女は無表情で無機質な声で答えるとカミトは更にこう聞いた。

 「エスト・・・それが君の名前か?」

 「はい。正式な真名は人間の発声器官では発音できませんからーエストと。」

 それを聞いてカミトはある疑問を持った。

 「なあ、人間の発声器官って言ってるがどう言う事だエスト?」

 カミトはそれを聞くと第三者が横からこう答えた。

 「(精霊だぜ。そいつ。)」

 「『シラヌイ』!!」

 カミトは壁に立てかけている『シラヌイ』を見て安堵すると同時に『シラヌイ』の

言葉にカミトはそれを聞き返した。

 「精霊ってどういう・・・まさか!!」

 「(そうだカミト。あいつもあの女と同じ奴って事だ。)」

 カミトはマジかよと思いながらもう一度エストを見た後カミトはエストにこう

聞いた。

 「なあエスト、聞きたいことが二つあるんだが良いか?」

 「はい」

 「一つは何で俺のベッドに入っていたんだ。」

 「(長くなりそうだからレオノーラ呼んでくるぞ。こいつの事も話して

おくから。)」

 カミトの質問に時間がかかりそうだなと思って『シラヌイ』はレオノーラを呼びに行った。

 そしてエストはこう答えた。

 「私が貴方の物だからです、ご主人様」

 エストのスパッとした答えにカミトは頭を抱えていた。

 とてもじゃないが事後で然も奴隷さながらに調教した男にしか見えないんじゃ

ないかと思っている中カミトはエストにこう言った。

 「なあよ・・・ご主人様はやめてくれないか?」

 「それでは兄上様と」

 「駄目だ。」

 「パパ」

 「ママ誰だよ!もっと駄目だ!!」

 「お兄・・・ちゃん?」

 「・・・嫌駄目だ!!」

 (何だ今の間は?)」

 最後の所で帰ってきた『シラヌイ』のツッコミがありながらもこれで落ち着いた。

 「ではカミト」

 「それならいいぞ。・・・第二の質問がしたいんだが良いか?」

 「はい」

 「何でニーソックスしか履いてないんだ?」

 それを聞くとエストは顔を赤くしてこう返した。

 「ニーソを・・・脱げと言うのですか・・・カミトのえっち」

 「羞恥心あるならまず服を着ろ。」

 カミトはその言葉をツッコミで返すとエストは『シラヌイ』を見ていた。

 そしてソード・デバイスを鞘ごと持って・・・窓を開けた。

 「せえの」

 「(待ってヤメロ!カミト助けてくれーー!!)」

 エストは『シラヌイ』を窓から捨てようとしていた。

 「おい何する気だーー!!」

 カミトはそれに驚くとエストから『シラヌイ』を取り上げた。

 「(もう嫌だこんな所。昨日からこんな扱いで俺泣いちまいそうだ(;´Д`)。」

 流石の『シラヌイ』も参りそうな気持であった。

 「あのー、もう入って大丈夫でしょうか?」

 すると部屋の外からレオノーラがそう聞いたのでカミトはこう返した。

 「ああ、入ってくれ。」

 そしてレオノーラが入るともう一人そこにいた。

 その少女は翡翠のような髪の色をしておりアレイシア精霊学院の制服の所々に

羽のような飾り付けがされていた。

 「ほほう。これはエスト殿ではないか?久しぶりですなあ。」

 「お久しぶりです。そちらは彼女と契約されているようですね。」

 まあなと翡翠の髪の少女が答えているがカミトはそれが誰なのか気になって

レオノーラに聞いてみた。

 「なあレオノーラ、あの子って誰だ?ここには俺とお前以外住んでいない

はずだろ?」

 そう聞くとレオノーラはクスクスと笑ってこう返した。

 「カミト、あの子もそこの女の子と同じなんですよ。」

 「はあ!!まさかあいつも!!」

 カミトは驚いている中レオノーラはその少女の名前を言った。

 「彼女は『グリムゲルデ』。魔風精霊で私の契約精霊です。」

 カミトはその光景を見た後こう思っていた。

 「確かにこいつは上級精霊だな。」




 精霊『グリムゲルデ』
 魔風精霊
 武装 剣
 能力 風を纏った剣における近中距離攻撃型
 レオノーラがドラグニア竜皇国から逃亡する際に家族から託された封印精霊。
 性格は自由奔放だが敵相手には情け容赦ない攻撃をする。
 『メイルストローム』とは相棒の一人として親しんでいる。


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いざ闘技場へ。

 その前に散歩です。


 「まさかあの剣の〈封印精霊〉がこんな女の子とはなあ。」

 カミトはレオノーラとエスト、グリムゲルデを連れて学院の中庭でそう言う話を

していた。

 因みにエストは現在アレイシア精霊学院の制服を構築して着ている。

 グリムゲルデの服もそれなのだ。

 だが本来精霊はアストラル・ゼロに帰還して力を回復させるのだがエストの場合は

カミトの強い思いに共鳴した際に『シラヌイ』が持っていた「玄海」を経由して

疑似的な精霊魔装になったのだがカミトが意識を失ったと同時に回路(パス)が

閉じたのでアストラル・ゼロに帰る事が出来なくなったのだ。

 「然しどうしてパスが繋がらないんだ?契約は結んだはずなのに。」

 「(あの時は仕方なくって言う思いがあったんじゃねえの?)」

 カミトの疑問に『シラヌイ』が仮説を述べるとエストがこう答えた。

 「それは、私の存在が強大過ぎるというのもありますが・・・恐らくカミト自身が

無意識のうちに私との契約を拒んでいると思います。」

 「(それって・・・あれだな。)」

 「(ああ・・・あれだな。)」

 エストの答えに肯定する部分があったのかカミトと『シラヌイ』はカミトの黒い

革手袋に覆われた左手を見た後カミトはエストにこう言った。

 「・・・悪いな。別にお前と契約したくないととかそういう意味じゃねえけどお前らからすればストレス溜まるもんな。」

 現在のエストの力は殆どアストラル・ゼロに残してしまったため本来の力を

発揮することが出来ないのだがエストはどこ吹く風というようにこう返した。

 「構いません。これまで53人の精霊使いを袖に振りながらも何百年と封印されていたのでこの世界を愉しみます。」

 エストはそう言うとグリムゲルデを連れて遊び始めた。

 それを見ていたカミトとレオノーラは微笑ましい様子で見ていると中庭にいた生徒の何人かがひそひそと呟いていた。

 「見て、ほら、例の男の編入生。」

 「(みての通りだろ。)」

 「流石ね。もう新しい女の子を手籠めにしてるわ。」

 「(・・・反論する材料がねえ。)」

 「あのこ可愛いけど何処のクラスの娘なのかしら?」

 「(こいつ精霊だぞ。)」

 「ねえ、昨日の夜、エリス達があいつを巡って決闘したって本当?」

 「(決闘はしたが理由は違うぞ)」

 「まさか、この学院の女の子全員を手籠めにするつもりかしら?」

 「本当だとすれば・・・淫獣ね。」

 「女の子の敵ね・・・。」

 「・・・俺もう帰っていいか?」

 「大丈夫ですってカミト。」

 周りの人間の言葉にカミトは心が折れかかっているのをレオノーラが慰めていると誰かが後ろから来るのが分かり振り返ると・・・。

 「目が覚めたようだな。カゼハヤ・カミト。」

 「エリス・・・。」

 エリスがカミトにそう言うと遊んでいる少女を見つけてカミトにこう聞いた。

 「カミト、あの子は?」

 「ああ、あの封印精霊だよ。」

 俺も驚いたがなと言うとエリスはカミトにこう言った。

 「その・・・済まなかったな。」

 「ん?」

 「私は君が男だからって言うだけで君を遠ざけていたんだ。そのことを

謝りたくてな。」

 エリスは顔を赤くして謝るとカミトはこう返した。

 「大丈夫だ。狂乱した精霊相手なら何度かやり合ったことがあるからな。

経験だよ。」

 カミトは照れ隠しに頭を掻いていると花火の音が外から聞こえた。

 「(何だ?祭りか?)」 

 『シラヌイ』がそう言うとエリスはカミトに思い出すようにこう言った。

 「ああ、そう言えば今日の午後に学院都市でオルデシア騎士団の

デモンストレーションも兼ねて〈軍用精霊〉の契約式典(セレモニー)が

開かれるんだ。」

 「セレモニー?」

 エリスの言葉にカミトは何だそれはと言うとレオノーラがこう説明した。

 「このアレイシア精霊学院に入学している人間の大半は精霊騎士の志願者が

多い事からそう言う催しが度々開かれるんです。勿論軍属になったら騎士団の要請に

従わなければならないと言う制約がありますがそれでも魅力的なんですよ。」

 それだけに参加者は多いので無制限戦闘(バトルロワイアル)でやるのですがねと

付け加えるとカミトはあの時のクレア・ルージュを思い出すとエリスにこう聞いた。

 「クレア・ルージュも・・・あいつもこのセレモニーを聞いていると思うか?」

 するとエリスが顔をしぶかせてこう返した。

 「確かに出場すると思うが幾ら何でも無理だ。契約精霊を失った状態でエントリー

するなんて自殺行為だが・・・。」

 いや然しと唸っている中『シラヌイ』がカミトにこう提案した。

 「(気になるなら見に行けば良いじゃねえか?いればいたで止める手立てを

考えればいいしいなかったらいなかったでほっとすりゃいい。)」

 そう言って成程と思ってカミトはエリスとレオノーラにもそう言った。

 「よし、一回行ってみて確かめようぜ。もしかしたらまだ間にあうかも

しれないしな。」

 するとエリスとレオノーラもこう返した。

 「確かにな。ここで突っ立っていても仕方がない。」

 「何事も『百聞は一見に如かず』ですしね。」

 そう言うとカミトはエリスに場所を聞いた。

 「学院都市のオリビエ通りを真っすぐに行った闘技場だ。」

 「それじゃあ行くか。」

 カミト達はエスト、グリムゲルデも連れて闘技場へと向かった。

 それを見届けている少女に気づかずに。

 「クスクス。」




 次はクレア・ルージュサイドから。


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いざ闘技場へ(クレア・ルージュサイド)

 クレア・ルージュが闘技場に行くまでのお話。


 そのクレア・ルージュはと言うと学院都市の路地を一人で歩いていた。

 カミト達と別れた後クレア・ルージュはその後もあの森で精霊を求めていたが

魔精霊以上の精霊などいるはずもなく夜明け前までアストラル・ゼロで

彷徨っていたのだ。

 更に言えば今のクレア・ルージュは幼馴染であるリンスレットですらも見分けが

つかないほどやつれていたのだ。

 足取りは重く、前に進むことですらやっとといった状態なのだがクレア・ルージュはある目的のために強い精霊を探しているのだ。

 それは・・・

 「(行かなくちゃいけないのよ、スカーレットのために、そして私の願い・・・

ルビア姉さまに真実を聞くためにも!!)」

 クレア・ルージュとは学院での都合上与えられた名前であり本当の名前が別に

あるのだ。

 本名は「クレア・エルステイン」。

 オルデシア帝国の建国以来、代々王宮に仕え、精霊使いの頂点ともいうべき存在、

五大精霊王に直接仕える〈精霊姫〉を排出する名門で・・・あったのだ。

 何故過去形なのだというと四年前、火の精霊王に仕えてきた精霊姫ー

ルビア・エルステインが突然、祭壇から当代最強ともいうべき炎精霊

〈レーヴァティン〉を奪って姿を消したのだ。

 精霊姫の裏切りにより炎の精霊王は怒り狂い、エルステイン領を始めとし、

オルデシア帝国の領地を幾つも焼き払って帝国は甚大な被害を被り、約一年の間、

帝国内で火を熾すことが出来なくなったのだ。

 何故ルビア・エルステインが姿を消したのか理由は定かではないがオルデシア帝国の国民は憎しみと呪詛の言葉を込めて彼女をこう揶揄した。

 「災禍の精霊姫(カラミティ・クイーン)」と・・・。

 そしてエルステイン家は責任を取らされ、領地を没収され、夫妻は最も厳しい監獄、「バルサス監獄」に投獄された。

 そして一年後その時のブレイドダンスで優勝した「レン・アッシュベル」改め

カゼハヤ・カミトのが奉納した剣舞によってようやく収拾のめどがついたのだ。

 因みにこれを聞いた『シラヌイ』曰く・・・。

 「(男でも女でも舞っていりゃ誰でも良いのかよ。)」と呆れ交じりで

そう言ったらしい。

 だからこそクレア・ルージュは歩き続けたのだ。

 最強の精霊を手に入れてブレイドダンスで優勝し、その願いで姉の真実を聞き出すと心に誓って・・・。

 何物にも負けず、何も失わず、全てを取り戻すための力を得ようとするために・・。

 然しそんな力など何処にもないことぐらい誰でも知っているだろうに・・・。

 「-そんなに力が欲しいの?」

 「!!」

 クレア・ルージュはその声を聴いて振り向くとそこには・・・一人の少女がいた。

 闇色のドレスを纏い、黒い髪と瞳を持つ美少女がそこにいた。

 あまりの美しさにクレア・ルージュは警戒することを忘れて見惚れていると彼女は

たおやかな手をすっと差し出すとクレア・ルージュにこう聞いた。

 「力が欲しいならこれを使いなさい。」

 すると少女の掌から黒い靄のようなものが浮かんできた。

 「これは・・・精霊!?」

 クレア・ルージュはそれを見るとそれに目を奪われていた。

 今のクレア・ルージュは焦りとスカーレットを失ったショックで警戒すらしなく

なったのだ。

 「この子の名前は狂精霊〈ゲシュペンスト〉-。貴方のほんとうの力を

引き出してくれる精霊だけど・・・使う?」

 その少女の問いにクレア・ルージュはにべもなくこう返した。

 「勿論・・・貰うわ!!」

 クレア・ルージュはその手を掴むと黒い靄がクレア・ルージュの手に染み渡るように入ると左手に黒く禍々しい精霊刻印が刻まれた。

 「やった・・・やった・・・やったわ!!アハハハハハハハハ」

 クレア・ルージュはそれを見て狂ったように笑うと少女はそれを見てこう言った。

 「これでカミトの目覚めがまた一歩前進ね。」

 その少女の笑顔はまるで人を騙すことに快楽を覚え始めた悪魔の様であった。




 次回はあの狂精霊が・・出るのかな?


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狂気の獣、現る!!

 そして戦いが始まる。


 学院都市はアレイシア精霊学院の麓にある小規模な街であるが学院の生徒のために色々な店が立ち並んでいた。

 更に言えば今日はセレモニーがある為多くの人間がいた。

 その中にカミト、エリス、レオノーラ、エスト、グリムゲルデがいた。

 彼女達はクレア・ルージュが精霊無しでセレモニーに参加しているのではないかと

思い気になっていたため闘技場に行っていたのだ。

 闘技場は街の中心部に建てられていた。

 だが本来ブレイドダンスは神楽の一種であり精霊を愉しませるものであるのだが

精霊は人間が多いところを好み、そして人間はブレイドダンスを最高の歓楽と

していることからお互い持ちつ持たれつなのである。

 耳を劈くような歓声と甲高い剣劇の音。

 既に二十人ほどの参加者が鎬を削っていた。

 彼女達はクレア・ルージュを探している時にレオノーラが祭壇に祀られている石柱を見つけた。

 「あれが今回の優勝賞品ですか・・・。」

 「【大きいですね。】」

 『メイルストローム』もそれを見て感想を言うとカミトがクレア・ルージュを

見つけた。

 「いたぞ!やっぱり出場してた!!」

 それを見て全員目を疑った。

 クレア・ルージュが傷だらけだったのだ。

 全身を殴打され、壁に叩きつけられながらも何度も立ち向かっていたが正直見るに

堪えない光景であった。

 するとエリスがクレア・ルージュと対峙している人達を見た。

 「彼女達は!」

 「知っているのか!?」

 カミトはエリスが見覚えがある人間だったので聞いてみた。

 「ああ、彼女達は学院の上級生だったが一か月前にクレア・ルージュに叩き潰されていたんだ。そのことでよく文句を言っているのを聞いた生徒が何人もいるんだ。」

 「・・・それって単なる負け惜しみでは?」

 エリスの説明にレオノーラは呆れながら答えると彼女達二人が使役している

〈金剛精霊〉と〈魔境精霊〉がいたがクレア・ルージュが小さな炎で〈金剛精霊〉に

攻撃した。

 「あんなもので何とか出来るわけねえぞ!!」

 「恐らく精霊がいなくて十分な神威が供給されていないんです!!」

 カミトとレオノーラがクレア・ルージュの攻撃に意見していると〈金剛精霊〉が青く輝きながら突進して来てクレア・ルージュの腹部を殴った。

 「「「クレア!!」」」

 カミト、レオノーラ、エリスが大声でクレア・ルージュを呼んだ。

 

 

 

 

 「がああ・・・。」

 クレア・ルージュの口からくぐもった悲鳴が聞こえた。

 急所を狙っていなかったのだ。

 「生意気なのよあんた。カラミティ・クイーンの妹の癖に粋がっちゃって。」

 「本当よねぇ。契約精霊もいないくせにwwww.」

 二人がそう言うとクレア・ルージュがまた立ち上がるのを見てこう言った。

 「さっさと降参しなさいよ!!反逆者の妹が!!」

 「今なら土下座をして靴を舐めて『私は愚かなカラミティ・クイーンの妹で

ゴメンナサイ。」って言えば許してあげるわよwwww.」

 その言葉を聞いた瞬間クレア・ルージュのナニカがキレる音がした。

 クレア・ルージュは左手に神威を集中させると少女から与えられた精霊刻印が黒く

光るとクレア・ルージュの手から黒い炎が現われた。

 そして黒い炎が〈金剛精霊〉を飲み込んだ瞬間その〈金剛精霊〉の体にナニカがいることに気づいた。

 「何よ・・・あの精霊は?」

 上級生の一人がそう言うとそれは姿を現した。

 揺らめく漆黒の炎を纏った魔獣。

 今のクレア・ルージュと同じく狂気に溢れた炎であった。

 「お望みの物を見せてあげるわ!!これが私の本当の力・・・

〈ゲシュペンスト〉よ!!」

 するとクレア・ルージュは鞭を地面に叩いてそれにこう命令した。

 「さあ〈ゲシュペンスト〉!!狩りの時間よ!!」

 グオルオオオオオオオン!!

 身の毛もよだつような咆哮が闘技場の空気を狂気で支配した。




 狂気は伝染する。
 心を蝕んで奥へ奥へと・・・。


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黒炎の狂精霊

 狂った力は身を亡ぼす。


 「あれって・・・クレア・ルージュの精霊の・・・〈スカーレット〉だよな・・?」

 カミトは客席に乗り上げてそれを見てレオノーラとエリスに聞くも二人はこう

答えた。

 「いえ、あれは精霊というには少し・・・禍々しいです。」

 「それにクレア・ルージュの精霊は紅い火だぞ。あの火は黒いタイプであんなの見たことすらないぞ。」

 そう言っている中黒い精霊は金剛精霊を貪り終わると今度は魔境精霊に目標を変えて襲い掛かった。

 するとその焔の残滓に当たった他の精霊もまるで乗り移ったかのように暴走して

お互いを喰らい始めた。

 「精霊同士が・・・共食いしてる。」

 レオノーラはそれを見て口を両手で抑えてそう言うと『メイルストローム』が

カミトにこう聞いた。

 「【カミトさん。確か昨日の魔精霊も暴走してましたよね?】」

 それにカミトがああと答えると『メイルストローム』はレオノーラにこう聞いた。

 「【レオノーラ、恐らく今回の事と魔精霊のあれは誰かが後ろで操っているのが

いるんじゃないんですか?】」

 「え?どういうことです?」

 レオノーラの問いに『メイルストローム』がこう答えた。

 「【恐らく誰かが魔精霊を誘い込ませて暴走させる何かを与えておいたのでしょう。

 それにお風呂場での水精霊の暴走もその誰かが実験として扱ったのでしょう。・・・・この日の為に。】」

 「(そうか!そしてセレモニーに出場する奴から適当な奴見つけて渡しておいて

何処かでデータを取っているって言う寸法だな!!)」

 そして『シラヌイ』が纏めた後エリスは本来ならこう言うときに備えているはずの

騎士団を見てみると・・・。

 「駄目だ。全員何かに催眠させられてる。」

 エリスは闘技場の光景を見て中に入ろうとするとカミトがそれを止めた。

 「おい待てエリス!!この状況で助けるのは無理だ!!」

 「然しこのままじゃ観客にも!!」

 そう言うとエストがカミトの服を掴むとこう言った。

 「カミト、あれは狂精霊です。」

 「狂精霊?」

 カミトはエストから発せられた内容を聞いて何だそれと思っているとエストがそれを説明した。

 「憑依型の精霊で確か精霊に狂化属性(バーサーク)を与えるやつだ。」

 「そして憑依された精霊は理性を失って自身の存在が消滅するまで戦わされるというあの?」

 エリス、レオノーラがそれについて説明するとエストはさらにこう続けた。

 「肯定です。本来のあの火猫はとても強い精霊なので魔精霊ぐらいでは何ともない

はずなんですが恐らく彼女が消滅したと思い込んだことで回路が繋がらなかったんだと思います。」

 「じゃああれは・・・あの火猫だと!」

 カミトがそう言って指さすとクレア・ルージュを見ていたエリスがそこを指さすとゾッとするような光景が広がっていた。

 「アハハハハハハハハハハ」

 狂ったような笑い声を上げながらそこにいた。

 「カミト、あのままではいずれ彼女もあの精霊も死にます」

 エストがそう言うとカミトは頭を掻きむしってこう言った。

 「エスト!!力を貸してくれ!」

 「私はカミトの剣。貴方の望むままに」

 そう言ってエストはカミトの手を握るとカミトはこう唱えた。

 「冷徹なる鋼の女王、魔を滅する聖剣よー今ここにわが剣となれ!」

 精霊魔装の展開式(レリーズ)を唱えるとエストの体が光に包まれると白銀に輝く

片刃の剣が現われた。

 「こいつがエストの・・・。」

 刃には精霊語の彫られたものがあった。

 銘は・・・「テルミヌス・エスト」

 軽く振ってみると最初のような弱弱しさがなくなっていた。

 「本体との回路が閉ざされているので十分な力が出ないのであしからず。」

 エストがすまなさそうにそう言うも・・・

 「いやこれで十分だ。」

 そしてカミトはエリスとレオノーラの方を向こうとした。

 恐らく離れているようにと言おうとした瞬間カミトはそれに驚いていた。

 二人とも魔装を展開しており準備万端だといっているようであった。

 そしてカミトはため息交じりでこう言った。

 「行くぞ、レオノーラ、エリス、エスト!!」

 そう言った瞬間三人は闘技場にへと飛び込んだ。




 そして彼らは戦いの場にへと向かう。


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〈ゲシュペンスト〉対カミト

 闘技場の戦い前半です。


カミト達が闘技場に飛び込むと黒い魔獣となった〈スカーレット〉が牙を剥いて

襲い掛かるとエリスが〈レイ・ホーク〉でそれを受け止めた。

 「ぐう!!」

 「エリス!!」

 カミトがエリスに振り向くとエリスはカミトにこう言った。

 「私が何とかするからクレア・ルージュを!!」

 「・・・分かった!!」

 カミとレオノーラはそのままクレア・ルージュの元に向かった。

 

 

 

 

 「ええーーイ!!この狂精霊が!!」

 エリスはそう言いながら〈スカーレット〉を抑え込んでいると右側から黒炎を纏った爪がエリスに襲い掛かった。

 「!!」

 エリスはすかさず風の魔術で防御するも・・・威力までは殺しきれず吹き飛ばされ

そうになった。

 「ウワア!!」

 そのまま〈スカーレット〉エリス目掛けてを飛び上がると・・・エリスは笑ってこう言った。

 「かかったな!!」

 そう言うとエリスは穂の部分を風で纏わすとそれをメイスのように振りかぶって

叩きつけた。

 グオオオオオン!!

 〈スカーレット〉が雄叫びを上げた瞬間風が刃となって〈スカーレット〉を襲った。

 グぎゃあアアア!!

 そしてそのまま〈スカーレット〉が姿を消した。

 「何処に行った!?」

 すると〈スカーレット〉が燃やしていた黒炎が纏まって行くとナニカになって

いった。

 「な・・・何だアレは。」

 

 

 

 

 「アハハハハハハハハ!!」

 クレア・ルージュは未だ笑っていたがカミト達がクレア・ルージュの顔を見ると酷い状況であった。

 左手の精霊刻印から血が滴り落ちて溜まり場みたいになっていた。

 そして顔色も青くなっていた。

 「このままじゃクレア・ルージュが!!」

 レオノーラがそう言うとカミトはレオノーラにこう提案した。

 「レオノーラ!クレア・ルージュの精霊刻印に魔力を押し付けるんだ!!そうすりゃ〈スカーレット〉に憑りついている狂精霊を引き剥がせるかもしれない!!」

 するとカミトは剣を構えるとこう続けた。

 「俺は・・・こいつを抑える!!」

 カミトが見ている方向には〈スカーレット〉に憑りついていた〈ゲシュペンスト〉が

 黒炎を人型の姿にしてカミトの目の前に現れた。

 「分かりました!!」

 レオノーラはそう言ってクレア・ルージュの方に行った。

 そしてカミトは〈ゲシュペンスト〉に向けてこう言い放った。

 「悪いがここから先は通行料金出してもらうぜ!!」

 そう言ってカミトは剣を振ろうとすると〈ゲシュペンスト〉も黒炎で剣を作って対峙した。

 お互いの剣戟が音叉の如く響き渡った。

 

 

 

 

 「クレア・ルージュ!!大丈夫ですか!?」

 レオノーラはそう言ってクレア・ルージュに近寄ると右側から鞭が飛んできた。

 「ジャマヨ!!」

 クレア・ルージュはそう言って黒炎を纏った鞭でレオノーラに襲い掛かった。

 「くう!!」

 レオノーラが避けるとクレア・ルージュは更に猛攻を仕掛けた。

 「アハハハハハハハハ!!イイワコノチカラ!コレガワタシノホントウノ

チカラ!!」

 「そんなの力ではありません!!力とは、だれかを傷つけたり、貶めたり、見せびらかす為のものではなく仲間や友を守る物であると私はそう思っています!!」

 そしてレオノーラはこう続けた。

 「そしてそれは今でも変わらず!!自らを律し、鍛えて、精霊とともに歩むこと

こそが真に本当の力が出せるのです!!」

 そう言うとレオノーラは黒炎を纏った鞭目掛けて風を纏った

〈テンペスト・ソード〉で切り裂いた。

 「ウワアアアアア!!」

 クレア・ルージュは大声を出しながら炎の魔術を出そうとすると横から何かが

クレア・ルージュに当たった。

 「大人しくしろ!クレア・ルージュ!!」

 エリスが風を使ってクレア・ルージュ目掛けて突っ込んだのだ。

 「ナイスタイミングです!!エリスさん!!」

 そう言うとレオノーラは自身の神威を右手に集中させながらこう言った。

 「いきますよーー!!」

 「ヤメローー!!」

 そして自らの神威をクレア・ルージュの精霊刻印に押し付けるとクレア・ルージュは

悲鳴を上げながら叫んだ。

 「ヤメテーー!!ワタシノチカラヲウバワナイデーー!!」

 すると〈スカーレット〉に憑りついていた〈ゲシュペンスト〉が震え始めた。

 「レオノーラ!やってくれたな!!」

 カミトはそう気づくとカミトは〈ゲシュペンスト〉目掛けて突撃すると

〈ゲシュペンスト〉は震えながらも黒炎で作った剣を振りかざそうとすると・・・既にカミトが視界から消えていた。

 グアアア・・・グアアアア。

 〈ゲシュペンスト〉は周りを見ているとカミトが・・・後ろでこう言った。

 「そんな単調な動きで・・・俺に勝とうなんて・・・思い上がんじゃねえぞ!!」

 そしてそのまま〈ゲシュペンスト〉を両断した。

 〈ゲシュペンスト〉はそのまま消え去るのを見た後カミトはレオノーラ達の元に

向かった。

 「大丈夫か!?」

 するとレオノーラとエリスはこう返した。

 「大丈夫です。」

 「君に比べたらな。」

 エリスはそう言ってカミトの状況を見た。

 所々だが火傷や切り傷がありこっちに比べたら重症であろう。

 そしてクレア・ルージュはと言うと・・・。

 「くー。くー。」

 何故か眠っていた。

 左手の精霊刻印もなぜか消えていた。

 「然しこいつ何処であんな精霊を見つけたんだ?」

 カミトがそう聞くとエリスはこう返した。

 「分からんが後は騎士団が問い詰めて・・・。」

 

 

 

 

 「あら、それは私よ。」

 「「!!(!!)」

 カミトと『シラヌイ』はその声を聞いて上空を見ると・・・それがいた。

 「(嘘だろ・・・。)」

 それはカミトと『シラヌイ』が探していた精霊。

 「何でここに・・・。」

 三年間ずっと探していた自分の恩人。

 「久しぶりね。カミト、『シラヌイ』。」

 「「レスティア(レスティア!!)。」」

 微笑んだ顔の魔精霊「レスティア」がそこにいた。




 次回は後半戦。


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再会。

 その再開は幸か?不幸か?


 カミトは凍り付いた顔でレスティアを見て立ち尽くしていた。

 「まさか・・・そん、な事って・・・レス・・・ティア?」

 カミトは掠れた声でそう聞くとレスティアは微笑んでこう答えた。

 「三年ぶりね、カミト。見ない間に背が伸びたわね。」

 「!!!」

 カミトはその声に間違いないと悟り泣きそうになると『シラヌイ』がレスティアに

こう聞いた。

 「(久しぶりだな。レスティア・・・といいたいところだがカミト、分かるか?

あいつのあの表情?)」

 『シラヌイ』がそう聞くとカミトは涙を拭ってこう答えた。

 「ああ分かってる。あいつはレスティアだけど・・・何か違う。」すると

レスティアは持っていた黒い塊を祭壇の柱に向かって放った。

 「カミト、逢いたかったけど次の機会にまた会いましょう。・・・

あの子が起きるから。」

 レスティアがそう言うと突如闘技場が烈しく揺れた。

 「な、何です!これは!?」

 レオノーラがそれに驚くと・・・石柱に大きな罅が入ると裂け目から巨大な人型の

手が見えた。

 「まさかあいつもか!!」

 「(おい、カミト!!レスティアが!!)」

 『シラヌイ』がそう言うとレスティアは黒い霧となって消えた。

 「レスティア・・・レスティアーー!!」

 カミトはレスティアに手を伸ばすも叶わなかった。

 「レスティア・・・どうして・・・?」

 「(おいカミト!!)」

 カミトが茫然として意気消沈している中頭上に巨人精霊〈グシャラボラス〉が壊した石柱が堕ちてくるのに『シラヌイ』が警告した。

 然しそれすらもカミトは聞いていなかった。

 そしてそのまま瓦礫が堕ちてくる・・・寸前に何者かがカミトを助けた。

 「大丈夫ですか!カミト!!」

 「・・・レオノーラ。」

 『メイルストローム』を身に纏ったレオノーラがカミトを救ったのだ。

 そして二人は闘技場の対戦場から離れた。

 そこには気絶したクレア・ルージュとエリスがいた。

 するとレオノーラがカミトにこう聞いた。

 「カミト、・・・彼女は一体?」

 するとカミトは消え入りそうな声でこう答えた。

 「俺の・・・契約精霊・・・だった。」

 「精霊・・・まさか彼女も?」

 レオノーラはそれはエストやグリムゲルデと同じ上位精霊だと分かると同時に

カミトの資質の高さに驚いていた。

 それはエリスも同じだ。

 これ迄二体なら未だしも三体も契約する人間など「魔王スライマン」以外

いなかったのだ。

 「・・・俺のせいなんだ・・・俺のせいで・・・おれの・・・。」

 「(今そんなことで落ち込んでいる場合か!!)」

 『シラヌイ』がカミトを叱りつける様に言うと対戦場にいた「グシャラボラス」が

解き放たれた。

 全長は十数メートルあり解き放たれたことによる咆哮一発で観客席の半分

(観客は全員避難済み)が壁ごと吹き飛んだ。

 そして「グシャラボラス」が闘技場の壁に手をかけて出ようとした。

 それですらも地鳴りが起きる程であった。

 あのまま行けば町がどうなるか分かったものではなかった。

 「(あいつが街に行けば大勢の人間が死ぬ!学院や騎士どもでも対処できるか

わからねえ!!俺達が戦わなきゃ間接的とはいえレスティアが殺したことになっても

良いのかよ!?)」

 「!!」

 カミトは『シラヌイ』の言葉を聞いて目を開くとカミトは『シラヌイ』にこう

聞いた。

 「じゃ・・・どうすりゃいいんだ?『シラヌイ』?」

 カミトがそう聞くと『シラヌイ』はこう答えた。

 「(俺達がやることは一つだろ?カミト。)」

 「・・・ああ。」

 するとカミトはレオノーラにこう聞いた。

 「レオノーラ、サポートを頼む。」

 「はい!」

 レオノーラが『メイルストローム』を起動させるとエリスがこう言った。

 「わ、私も!?」

 「エリスは外の人達を頼む。今必要なのはお前個人の力じゃなくて騎士団としての・・・皆を守るための力を使ってくれ。」

 「カミト・・・レオノーラ。」

 エリスは少し考えた後〈シムルグ〉を出して空にへと昇った。

 「必ず援軍を送る!!それまで持ちこたえてくれ!!」

 それを見届けた後カミトはエストを鞘に納めると『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いた。

 「俺がやるべきこと・・・。」

 「(お前がやるべきこと・・・」

 「それは!!(それは!!)」

 そしてカミトはこう詠唱した。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 カミトは『シラヌイ』を纏うと二人は自身が持つ願いを天高らかに誓った。

 「あいつを・・・レスティアを・・・正気に戻(す!!)して見せる!!」

 そしてカミトとレオノーラは「グシャラボラス」に立ち向かうため・・・

走り出した。




 あと少しで1巻が終わる。


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そして終わって。

 やっと第1巻終了だ。


 「行くぞ!巨人精霊!!」

 カミトはそう言いながら『シラヌイ』の背面部から「玄海」を取り出して右の

足首の腱を突き刺した。

 ヴォオオオオン!

 巨人精霊は雄叫びを上げながら片膝を付くがその雄叫びで吹き飛ばされそうに

なった。

 「なんて破壊力だ!」

 「(流石に軍用だと結構威力があるな!)」

 カミトと『シラヌイ』がそう思っている中自身の足の腱を斬ったカミトと

『シラヌイ』を見て雄叫びを上げながら巨岩のような拳を振り下ろすと・・・。

 「危ない!!」

 レオノーラが『メイルストローム』の「グロリアス・テンペスト」の機竜弾頭を

突撃槍型にして打ち込んだ。

 そして「グシャラボラス」がそれを見ると突如大爆発を起こした。

 ヴォオオオオオン!!

 「グシャラボラス」がその痛みを味合うのを見るとレオノーラと

『メイルストローム』はカミトと『シラヌイ』にこう言った。

 「今のうちです!!!」

 「【さあ早く!!】」

 そしてカミトと『シラヌイ』は「グシャラボラス」の手を使って顔まで渡ると

そのまま黒い水晶のような眼球めがけて切裂いた。

 するとその水晶から黒い霧のような物が出ると『シラヌイ』に纏わりついてきた。

 「こいつ、『シラヌイ』を侵食する気か!!」

 カミトは『シラヌイ』を霧から振り払おうとすると突如『シラヌイ』の体が光り輝き霧が退いていった。

 「これは・・・。」

 「(一体・・・?)」

 すると鞘に納めていたエストがカミト達にこう言った。

 「あれは私の聖属性の力で無効化しておきました。元々聖属性はああいうタイプを

解呪できるので・・・不服ですが」

 「(いやそこ言うなよ。ありがたみが失せる。)」

 エストの言葉に『シラヌイ』がそう言うが今それに対しては感謝していた。

 ヴォオオオオオン!!

 「グシャラボラス」が目の痛みと同時に今度は別の腕で殴りかかろうとすると

その腕めがけて何かが絡まり始めた。

 「そうはいきませんよ・・・!!」

 レオノーラが『メイルストローム』のワイヤーテールを射出してそれを止めていた。

 カミトはそれを見て不敵に笑うと「玄海」を構えた。

 そしてそれが光り輝くと同時にカミトは『シラヌイ』と共に跳び上がった。

 「おおおおおおおお!!!!!」

 光り輝くその剣の一閃は「グシャラボラス」を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

 

 「・・・凄い。」

 エリスは闘技場の上で感心しながらそう言った。

 あの後彼女はクレア・ルージュを向かっていた騎士団に託すと自身はそのまま

〈シムルグ〉で向かったのだ。

 然しその時にはカミトが「グシャラボラス」を切り裂いた後であった。

 その一瞬だけだがその剣舞のような動きはあの時姉の試合で見た・・・

「レン・アッシュベル」の様であった。

 「・・・まさかな。」

 そう思いながらエリスはカミト達の方にへと向かった。

 

 

 

 

 

 結論から言えば死者0だがそれでも闘技場が破壊された事でブレイドダンスは

中止となり巨人精霊は消え去った。

 クレア・ルージュはどうやってあの狂精霊を手に入れたことについてをぽつぽつと

話してくれたがやはりレスティアが関わっていることが分かった。

 さらに〈スカーレット〉はと言うと復活はしたものの〈ゲシュペンスト〉に

憑りつかれた時の影響でただでさえ小さな子猫だったのが今や生後間もない

赤子のような子猫になってしまったのだ。

 〈ゲシュペンスト〉はあの後没収され色々とペナルティーを科せられた後ある事が

言い渡された。

 それは・・・。

 「え、俺があのクレア・ルージュのチームメイトに!?」

 「ああそうだ。丁度あいつしかいないしそれに今回のような事が起きない為に

監視役としてもお前を当てたい。」

 学園長室でグレイワースの提案にカミトはうう~~んと考えた後こう決めた。

 「分かったよ。受けりゃいいだろう。」

 「それでいいさ坊や。精々こんな所で落第するなよ。」

 それを聞いた後カミトは学園長室から出ると扉の前にレオノーラが待っていた。

 そして今回の事を話すとレオノーラはカミトにこう宣言した。

 「でしたらこれからはライバルとしてお互い頑張りましょう。」

 「!!・・・ああ!」

 カミトはそれを受諾してお互い握手を交わした後レオノーラはある所に連れて行こうとした。

 「では記念に町のカフェテリアに行きませんか?丁度食べ放題の店があるんです。」

 「お、それは良いな。」

 お互い街に向かって歩くその姿はこれから起きるどんな時でも支え合うことが

分かっているような感じの二人であった。




 次は第2巻です。


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ロスト・ザ・ロスト
姫少女現る!


 第二巻スタート!!


 「(カミト、起きろ。朝だぞ。)」

 「ふぁああ・・・。」

 アレイシア精霊学院から少し離れた元療養所改め機竜格納庫兼住居の一部屋で

カミトは目覚めた。

 一人で暮らすには広すぎる部屋であるが元々複数人が止まる部屋であるのでこう言う部屋である。

 するとカミトはベッドのシーツを見ると何やら膨らんでいるためはぁと溜息交じりでシーツを剥ぐとそこにいたのは・・・。

 「あ、おはようございます、カミト」

 銀髪の裸ニーソの剣精霊「エスト」が入っていた。

 然しカミトはまたかと思うとエストにこう言った。

 「あのなあ、いい加減ベッドに入るのはやめてくれよ。隣にあるので寝てくれよ。」

 そう言うもエストはこう返した。

 「いいえ、カミト、私は貴方の剣です」

 だから入りますと不満な口調で言うも・・・。

 「(こりゃずっと平行線だな。)」

 何故『シラヌイ』がカミトを起こすのかと言うとエストが毎日入る為その前に

監視として起こすように頼まれたのだ。

 おれはモーニングコールじゃあねえぞと思っていたが律義にこなしていた。

 『シラヌイ』はそう思いながら今日行われるあれを思い出した。

 「(今日はチーム対抗戦だなあ。)」

 

 

 

 

 朝靄が晴れて講義開始の鐘の音が鳴っている中一台の馬車が現われた。

 それにはスーツ姿の老執事が御者として動かしていた。

 そして老執事が馬車から降りると恭しい態度で馬車の扉を開けた。

 「到着しましてございます。フィアナ様。」

 「ご苦労様です、爺や。」

 馬車から降りてきたのはカミトと同い年ぐらいの黒髪の少女であった。

 艶やかな髪と意志の強さを感じる瞳、透き通った処女雪と思うような白い肌と

胸の谷間を露出させた黒いドレスのような制服を着ていた。

 少女が馬車から降りて学園を見ていると老執事がフィアナにこう忠告した。

 「十分に気を付けて下さい、フィアナ様。下手な小細工はダスク・ウイッチの目を

誤魔化せられませんぞ。」

 それを聞いたフィアナは制服の袖に仕込んでいる帝国でも高価な精霊鉱石を

そっと握りしめながらこう返した。

 「大丈夫よ、爺や。それとあのルビア・・・・。」

 「姫様、その名前は口に出さない方がよろしいですぞ。」

 フィアナが言いかけると老執事がそれを止めた。

 「《全く爺やもあの噂を信じてるのかしら。》」

 フィアナが言いかけたのはカラミティ・クイーンこと「ルビア・エルステイン」の

名前であるがその名前は忌み名として疎まれ、その名前を呟くだけで清らかな乙女の

聖性が汚れるという迷信が蔓延っているのだがフィアナの場合は強ちそうでは

なかった。

 「《ま、近くでいた私がこのざまだと強ちそうだと思ってしまうわね。》」

 そしてコホンと咳払いした後今度はある人間の名前を出した。

 「そう言えば、『カゼハヤ・カミト』と言う男の精霊使いについてだけど・・・。」

 「は、何でも目撃者によればかの最強の剣舞姫「レン・アッシュベル」を彷彿とされるらしいですがまさか姫さま、その少年に懸想されているのでは?」

 老執事がそう聞くとフィアナはあっけカランにこう返した。

 「それは無いわよ、爺や。私は純粋に興味があるだけよ。」

 笑い乍ら言うので老執事も納得するもフィアナは心の中でこう謝罪した。

 「《ごめんね爺や。それにしてもあの時の彼が今どうなっているのか知りたいし

もしかしたら・・・》」

 するとフィアナはある事を思い出していた。

 自分と同じく助けてもらった女性の事を・・・。

 「面白い物が見れるかもね。」

 そう小悪魔のような笑みを浮かべながら学院にへと向かっていった。




 そして少女は学院にへと入る。


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チーム対抗戦

 常に仲間を信じよ。


ここはアストラル・ゼロの森の中で薄紫色の霧(毒であらず)が立ち込む中カミトと

クレア・ルージュは走っていた。

 するとカミトがクレア・ルージュを手を出して停止させると茂みの方を見てこう

忠告した。

 「クレア、左の茂みを警戒しろよ。多分待ち伏せてる。」

 「何で分かるのよ?」

 カミトはクレア・ルージュの言葉に少し言いよどんだ。

 元々教団の潜入等で培われた技術であるがそれはグレイワースから喋るなと言われているためこう言った。

 「・・・勘だ。」

 「(経験って言えよ。)」

 『シラヌイ』がツッコミ入れた瞬間その通りに青い雷光弾が左の茂みから放たれた。

 「ビンゴ!」

 カミトは狙い通りと確信すると神威を足に集中して駆けると雷光弾を弾いた。

 ・・・いやどこの自由の戦士だよと言いたい所である。

 因みにエストの精霊魔装〈テルミヌス・エスト〉は対魔術として高い性能を

誇っている。

 「クレア!!」

 カミトが叫ぶと同時に〈フレイム・タン〉を革鞭のホルダーから抜き取って木々を

薙ぎ払った。

 すると目元を前髪で隠したちょっと暗い感じの女子がいた。

 「(雷光弾使う奴が暗そうって逆じゃね?)」

 『シラヌイ』がそう思っていると周りにある青白い雷光弾の群れを引き連れて

森の中にへと逃げて行こうとすると・・・。

 「逃がすかあ!!」

 クレア・ルージュは巨大な火球を出すとそれを少女めがけて投げつけた。

 そして着弾すると失神した少女がいた。

 「やったわ!これで後二人!!」

 「油断するなよクレア!!」

 クレア・ルージュが喜ぶ中カミトが注意するとクレア・ルージュは怒ってこう

返した。

 「何よ!!二人倒したからって!!。」

 クレア・ルージュが文句を言うと足元から大量の土砂が吹きあがった。

 「なっ!!」

 「敵討ちさせてもらうぞ!クレア・ルージュ!!」

 それは無数の突起が付いた・・・蟹みたいな鎧タイプの精霊である。

 「(・・・今晩カニにしね?)」

 「違うだろおい!」

 『シラヌイ』が晩御飯の献立を言うとカミトがツッコミを入れた。

 「くう!!」

 クレア・ルージュは先程の衝撃で吹き飛ばされていた。

 アストラル・ゼロでは精霊の直接攻撃は効かないが間接的な、衝撃や土砂などには

相応のダメージが出る。

 「クレア!!」

 「(カミト!あいつもう攻撃態勢に入ってるぞ!!)」

 『シラヌイ』が言う通り恐らく攻撃したと同時に追撃態勢に入っていたのだろう。

 「喰らえ、甲殻精霊〈クラステ〉の精霊魔装ー〈破貫鋼拳(ブレイカー・アーム)〉

 「くっ!炎よ、我が手に舞い、踊れ!」

 クレア・ルージュの手から無数の火球を地面に放って方向をずらした。

 「くそっ!」

 鎧タイプの精霊使いはその方向のまま全力疾走で逃げた。

 「あ、待ちなさあい!」

 クレア・ルージュはそう言うが既に森の奥に消えていた。

 「(なんか妙だな?)」

 「ん、どうした『シラヌイ』?」

 『シラヌイ』が何かを感づいたことにカミトが聞いてみた。

 「(今までのあいつらの動きを思い出してみろ。)」

 「今までのって・・・そういや。」

 「どうしたのよ?そんな顔をして。」

 クレア・ルージュがカミトの表情を見て何事かと思って聞いた。

 「なあクレア。あいつらって今迄俺らが近づいてくるか攻撃した時だけしか対応して来なかったよな?」

 「そう言えばそうね・・・何かを待っているかのようにね。」

 すると『シラヌイ』がこう当ててみた。

 「(もしかしたらとんでもない事するんじゃねえのか?)」

 「何か・・・か。」

 カミトは思い詰めたように考えるとソード・デバイスを抜いて『シラヌイ』を

召喚した。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 そして『シラヌイ』を纏って「清水」を背面部から取り出すと長距離狙撃モードに

して辺りを探索した。

 「ちょっと・・・何やっているのよ!!」

 クレア・ルージュがカミトにそう大声で聞くもカミトは集中して聞いていなかった。

 クレア・ルージュはムッとした表情でカミトを睨みつけているとカミトはある物を

見つけた。

 「あれは・・・?」

 「・・・何かあったの?」

 そしてカミトは「清水」を戻すとクレア・ルージュに今見たものを伝えた。

 「ああ・・・連中とんでもないことしてたぞ。」

 「は!なによそれ!?」

 クレア・ルージュが何があったのかを聞くとクレア・ルージュを『シラヌイ』で

担いだ。

 

 「ちょ、ちょと何よ!!?」

 「説明は走りながら話す。」

 そう言うと『シラヌイ』で駆けながら説明した。

 「この先でデカい櫓があってそこで最後の一人が神楽らしきものを舞って

いたんだ。」 

 「はあ!!つまりあいつらはそれを成し遂げるために・・・。」

 「時間稼ぎしてたのさ。」

 「「!!」」

 クレア・ルージュが驚いていると横から先程の鎧タイプの精霊魔装を纏った少女が『シラヌイ』に突撃してきた。

 「(あぶねえな!!!)」

 『シラヌイ』はそれを肩に搭載されている「風雷」でガードすると少女はそのまま

吹き飛ばされた。

 「・・・あれって死んだんじゃ。」

 「いやまだ大丈夫だろ。万が一の事があったらフレイヤ先生が救出している。」

 カミトがそう言い捨てると確かに彼女は傷一つなく現われた。

 「いやあ。まさか私の精霊以上のやつがいるなんて世界は広いわね。」

 そう言うと彼女はカミトに向かってこう言った。

 「どうせもうすぐうちの部隊長(リーダー)が終わらせるんならあんたとさしでやり合いたいね。」

 そう言って来いという風に指を曲げさせているとカミトはクレア・ルージュを

下ろしてこう言った。

 「クレア。櫓を破壊してくれ。もしかしたらまだ間に合うかもしれねえ。」

 「あんたはどうすんのよ?」

 「おれはこいつの相手だ。」

 二人は小さな声でそう言うとカミトは「玄海」を出して鎧タイプの少女に向けた。

 「やられたらぶっ飛ばすわよ!」

 「そりゃどうも。」

 そう言ってクレア・ルージュは走り出すとそれを鎧タイプの少女は見送った。

 「・・・随分余裕だな。」

 カミトがそう聞くと少女はこう返した。

 「さっきも言ったがリーダーの精霊が終わらせるからね。その前にあんたと

やり合いたくなったのさ。」

 そう言うとお互いの武器(少女は鋏を)を構えて・・・会い打った。

 「ぐおおおお!!」

 正直言えばとんでもない奴だと思った。

 なにせ自身の神威を全てあの鋏に集中させて「玄海」を受け止めたのだ。

 然しカミトはそれ以上の神威を「玄海」に与えて鋏を斬り折った。

 「・・・マジで?」

 少女はそう言うとカミトはそのまま『シラヌイ』の肩に搭載されている「風雷」を

外して奥の手でもある「天の羽衣」を展開して少女に引っ掛けて・・・

気絶するくらいの電流を流した。

 「グアアアアア!!」

 そして少女はカミトに寄り掛かるように失神した。

 「・・・さてとそろそろ・・・?」

 カミトはクレア・ルージュの元に行こうとするとなにやら地鳴りがしたので

レーダーを使うと・・・膨大な熱源反応があった。

 そしてそれはそのままクレア・ルージュを飲み込む前に・・・消えた。

 「・・・これって・・。」

 「(俺達の負けだな。)」

 チーム対抗戦ではリーダーがやられると自動的に負けと見出すのだ。

 そしてフレイヤ先生の終了の笛の音が鳴った後カミトは少女をお姫様抱っこして

ゲートにへと向かった。

 

 

 

 因みにこの少女、今回のお姫様抱っこの事をネタにされて暫く悶絶するのは

序である。




 常に仲間を信じてるから勝つわけではない!!


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反省会。

 いつだって失敗を顧みることが必要だ。


 「アアアア!!またランクが下がったーー!!」

 カミトとクレア・ルージュはエストを伴って学院の中にあるサロン・カフェで遅めの昼食に入っていた。

 今回の敗北でランクが下がってしまったことに大声で怒りながらパンを食べていた。

 真ん中に置かれたバスケットの中には総菜パンや甘物のパンなどが山のように

積まれていた。

 このカフェは学院生なら誰もが利用でき、パンは食べ放題、コーヒー、紅茶飲み放題(まあここの生徒の入学金だけで賄えるという事であるが)という財産や領地が無い

クレア・ルージュや元々貴族どころか犯罪者とも呼ばれかねないカミト、そして

ここにはいないが国から逃げてきたレオノーラからすればなんと救いのあるものだと思っている。

 何せ学院の食堂は高級レストラン並みの食事代を捕られるためとてもではないが利用なんて夢の又夢と思っている。

 カミトはコーヒーを飲みながらこう思っていた。

 「今日の試合だがやっぱり俺達も早く仲間を集めてチームワークを身に付けなきゃ

ブレイドダンスに出場するどころか出場枠の上位三チームにだって掠りもしねえぞ。」

 そう、今回のブレイドダンスは三年前の一対一の勝ち抜き戦ではなく五人1チームに

よる団体戦であるのだ。

 そして出場資格があるのは各国上位三チームという決まりになっておりカミトと

クレア・ルージュはそれが悩みだったのだ。

 ランクについては先程のような公式戦以外に学院から割り振られる任務次第で

上がるのだがカミトは巨人精霊の戦い、エリス・ファーレンガルトの決闘、狂乱した

魔精霊は非公式であるため反映されず。

 クレア・ルージュはというと・・・精霊使いとしては優秀なのだが全ての任務を一人で受けるので失敗し、公式試合ではタコ殴りよろしくな戦いをしているためランクは

上がらず、チームについても彼女の姉がやらかしたことで殆どの生徒(幼馴染である

リンスレットは除く)が加入したくないのだ。

 さらにカミトと存在に恐怖、又は好奇心による延長なのか分からないが牽制し合って近づきもしないのだが・・・。

 「《やっぱりレオノーラの提案に則ってリンスレット達も加えたほうが

良いようだな。》」

 実はと言うとレオノーラからお互いのチームを一つにしてブレイドダンスに

挑戦しないかという案が出ているのだが・・・プライドが高いクレア・ルージュと

リンスレットからすればお互い頭を下げたくないという思いから

それをしたくないのだが背に腹は代えられずある事を思いついたのだ。

 それは・・・

 「それではここで作戦会議をするというのは?」

 「良いですわね。こう言う所で会議をしても誰もいませんし。」

 後ろから声がしたので二人が後ろを向くと・・・。

 「げ、リンスレット。」

 「な、クレア!!」

 レオノーラと一緒にリンスレットがいるのにクレアは嫌な顔をすると隣にいたレオノーラが大声でこう言った。

 「アアーカミトグウゼンですね。」

 「ソウダナグウゼンだな。」

 「(【うわー・・白々しい】)」

 『シラヌイ』と『メイルストローム』が業とらしいなと思っているとカミトが

咳き込んでこう提案した。

 「二人とも座って一緒に食べないか?おいしいぞ。」

 「はあ!何言って・・・」

 「それではお構いなく。」

 「レオノーラ!!」

 カミトの提案にクレア・ルージュが文句をつけようとするとレオノーラがカミトの

隣に座ったことにリンスレットが驚くとリンスレットは顔を逸らしたまま

クレア・ルージュの方に座った。

 これこそカミトとレオノーラが考えた作戦

 「ばったり会って同盟結ぼう作戦」である。




 ・・・うまくいけばいいなあ。


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アピールは慎重に

 アピールポイントはしっかりと確保すべし!!


その後クレア・ルージュとリンスレットは不機嫌な表情でパンを食べていた。

 暫くは観察していたが流石にこのままでは食事が喉に通らないことになりそう

(エストは無心でメロンパンを食べていた。)なのでレオノーラが話題を作る為にある情報を公開した。

 「そう言えばレイブン教室に新しく編入生が来るそうですよ。」

 それを聞いたカミトがこう言った。

 「おいおい、俺が入ったのって数週間前だぞ?どういう身分の人間だよ?」

 するとレオノーラは恐らくと考えてこう言った。

 「高貴な身分で然もこの時期にも関わらず編入出来るとなると・・・三大貴族の紹介ではないかと思われますね。」

 「!!」

 レオノーラの言葉にクレア・ルージュはキッと表情を荒らげかけた。

 彼女の本来の家、「エルステイン家」は元々帝国建国以来の大貴族で

ファーレンガルト、ローレンフロスト、ケルザノスと同等であったのだが

ルビア・エルステインによって全てを失ったことでエルステイン家の名はなくなった

のだ。

 カミトはクレア・ルージュの表情を見てヤバいと思ったのか話の一部を変えることにした。

 「そういやどんな精霊使いなんだ?そいつの使う契約精霊は?」

 レオノーラは噂ですがと言ってこう返した。

 「午前中に行われた実技での編入試験ではどうやら〈聖精霊〉だそうですよ。」

 「〈聖精霊〉って・・・またじゃじゃ馬な精霊を使う奴だな。」

 〈聖精霊〉は五大精霊の一角であるのだが気位が高くて自分で使い手を選び、それも特に清らかで高潔な乙女にしか心を開かないという事であまり使役する人間がいない

のである意味魔精霊と同じタイプである。

 「(そういや・・・カミト、あいつも聖精霊使いじゃなかったか?)」

 「《ああ・・・三年前は苦戦したなあ。》」

 カミトと『シラヌイ』が遠い目をするように呟いている中レオノーラは何のかと

思いながらクリームパンを食べていた。

 暫くしてバケットのパンが空になるとクレア・ルージュがはーと溜息つきながら

こう言った。

 「どっかいないかしらね?カミトくらいの精霊使いは・・・?」

 「それは流石に・・・都合よくいませんわね。」

 クレア・ルージュとリンスレットが溜息つくとチャンスとばかりにカミトと

レオノーラが目を図らせてこう切り出した。

 「それなら未だチームが出来上がっていないところというのはどうです!?」

 「いちいち集めるより手っ取り早いぞ!?」

 レオノーラとカミトがここぞとばかりにアピールするとクレア・ルージュと

リンスレットは暫く考えてお互いこう聞いた。

 「ねえ、(クレア)リンスレット、私達のチームに入らない(りません)?」

 お互い同時に然も真逆な事を言っているためなにやらビシッと音が鳴ると

クレア・ルージュとリンスレットが大声でこう言いあいした。

 「何言ってんの!?あんたが私のチームに入るのよ!」

 「何言ってるんですの!?貴方達が私のチームに入るんですのよ!!」

 ガルルルルと顔を近づけさせながらにらみ合う二人を見てカミトとレオノーラはお互い顔を合わせてこう言った。

 「こりゃ駄目だ。チームに入るなんて絶対無理だ。」

 「やはり地道にですねえ。」

 「「・・・はーー・・・。」」

 お互い諦めの溜息をつきながらコーヒーを啜っていると後ろから声が聞こえた。

 「全く、君たちは静かに出来ないのか?ここは公共の場だぞ!」

 その声を聴いて全員がその声の主がいる方向を見てクレア・ルージュと

リンスレットは嫌な顔で、カミトとレオノーラはアアといった表情でこう言った。

 「「「「エリス!」」」」

 軽甲冑を身に纏ったエリスがカフェの入り口にいた。




 次はエリスとの会話です。


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勧誘。

 目的のためなら人情など捨てよ!!


 クレア・ルージュとリンスレットはエリスを見るや否や嫌な奴に会ったなと

思っていた。

 然しカミトとレオノーラからすればそういやな奴ではないと知っていたのであまり

不快な印象は持っていなかった。

 確かに厳格で真面目過ぎて周りから顰蹙(クレア・ルージュとリンスレットが

特にだが)を買うこともあるが一本芯の通った真っすぐで純粋な心を持っている

人間なのだ。

 エリスがテーブルの方に向けて歩いていくとリンスレットとクレア・ルージュが

席から立ち上がってこう言った。

 「あら、騎士団長様がこんな所に何の用ですの?」

 「この間の決闘の続きがしたいなら喜んでやってやるわ。」

 それを聞いたカミトは嫌な顔をしてこう思っていた。

 「《勘弁してくれよ。決闘なんてしてもしなくても一緒だろ?》」

 そう思っている中エリスが鋭い目でクレア・ルージュを見下ろすとこう返ってきた。

 「ふん、確かにそれも一興だと思っているが今日はお前達ではなく・・・。」

 するとエリスはカミトの方に目を向けると少し顔を赤くしてこう言った。

 「・・・カミトに用があるんだ。」

 「はっ?俺に??」

 「(俺達騎士団に目を付けられることしたか?カミト??)」

 カミトはいきなり自分が名指しで呼ばれたことに何なのかと思っている中

『シラヌイ』も訳わからんと思っていた。

 するとエリスはカミトの方に行くと初めにこう言った。

 「今日の対抗試合でウルヴァリン教室の鎧タイプの生徒と戦ったようだな。」

 「ああそうだが?」

 「(俺達あいつにナニカしたか?)」

 試合の事じゃねとカミトが『シラヌイ』にそう言っているとエリスはこう返した。

 「あの生徒は騎士団には入っていないがそれなりに優秀でな、騎士団長が嘗て

騎士団にスカウトした事がある人なんだ。」

 「まあそれでも本人は拒否したのだが今回の試合の後でその生徒がカミトにこう

言って欲しいと頼まれてな。」

 エリスはカミトに説明すると咳払いしてこう言った。

 「『次は負けない』と言っていてな。清々しく君の事を喋っていたよ。」

 「そ、・・・そう・・・か///」

 カミトは少し照れくさそうに頭を掻いているとエリスはあることをカミトに聞いた。

 それでだな・・・カミト・・・その・・・。」

 エリスは急にもじもじと顔を赤くして俯くと一緒にいたラッカとレイシアが

それを見てひそひそとこう囁いていた。

 「もう、団長補佐ってば早く言えば良いのに。」

 「いつもは毅然とした態度なのにねぇ。」

 「でも可愛いよね。今の団長補佐。」

 「あー、あれだよね。まるで恋するー。」

 「貴様らからかうな!わ、私はこんな不埒物の事など・・・それに私はかの『レン・アッシュベル』のような高潔な人間・・・ってそうじゃないだろ!!」

 何か色々と脱線しているがその言葉に『シラヌイ』はこう呟いた。

 「(世の中って・・・聞かなきゃ良い事ってあるんだな。)」

 「【何の話です?】」

 『メイルストローム』が『シラヌイ』の言葉に疑問を投げかけるもさあなーと

答えた。

 そしてカミトはエリスにこう聞いた。

 「それで何か用事があったんだろう?」

 「ああそれはな・・・その・・・。」

 何やらどんどん声が小さくなっていくのでカミトは何だと思うとエリスは大声でこう言った。

 「わ、・・・私は君が欲しいんだ!!」

 「「「「「・・・・・はぁ?」」」」」

 流石に全員唖然とした。

 暫くすると内容が分かったレオノーラがふぇえと言いながら顔を真っ赤にし、

『シラヌイ』と『メイルストローム』はと言うと・・・。

 「(こりゃ告白かよやるなカミト。)」

 「【あらあら】」

 何やら近所のおじさんと叔母さんみたいな会話をしていた。

 暫くするとエリスは自分が言った言葉に気づくと首を横に振ってこう答えた。

 「いや、違うぞ!そう意味じゃなくて・・・!」

 そしてエリスはカミトに顔を近づかせてこう言った。

 「カゼハヤ・カミト、わ、私達のチームに入ってくれないか!?」

 まさかのヘッドハンティングであった。

 そして暫くするとカミトはエリスにこう聞き返した。

 「・・・えっと、どういう事だ?」

 「そ、そのままの意味だ。カゼハヤ・カミト、き、君を私のチームに迎え

入れたいんだ!この間の軍用精霊を倒した君の実力なら申し分ないと思ってな!!」

 早口で言っているがカミトからすれば渡りに船であった。

 エリスの成績は上級生を抑えてえトップランクなのだ。

 エリスのチームに加入すればグレイワースからの依頼を成し遂げられると

考えているのだ。

 然し自分はそのグレイワースからクレア・ルージュを監視するようにと言われているためここは話を濁そうと考えていると・・・カフェの扉が勢いよく開いた。

 「ここに淫じゅ・・・カゼハヤ・カミトはいますか!?」

 「おれは淫獣じゃねえって・・・いいかけたなこの子。」

 然し息を切らしている手前何か緊急の事でもあったのだろうと思って文句を心の中に閉めて手を挙げた。

 「俺はここだけどどうしたんだ?」

 「学院長が緊急の呼び出しです!!至急学院長室に来るようにと!!」

 「・・・グレイワースが。」

 カミトは何事かと少し嫌な顔をしていると『シラヌイ』がこう言った。

 「(何か嫌な予感がするなあ。)」




 次回はフィアナとの自己紹介。


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暗躍

 予定を変更してある人たちの一幕。


アレイシア精霊学院の麓にある喫茶店で二組の奇妙な客が座っていた。

 一人は闇精霊レスティア

 その向かい側には痩せぎすで肌の浅黒い黒髪の少年であった。

 顔立ちはそれなりに整っているが赤い瞳がまるで地獄の炎の様な感じであった。

 そしてもう一組はと言うとこちらはどちらかと言えば何処かの裕福な家の出のような雰囲気が漂っていた。

 灰色に近い銀髪で中肉中背であるがその瞳はまるで何かを選定しているかのような

感じであった。

 そしてもう一人は水色の髪をショートカットしておりまるで氷から産まれたような

印象を与える感じであった。

 すると黒髪の少年はレスティアに対して蕪村な態度でこう言った。

 「それで俺は学院の図書館から例の封印指定の資料を奪ってくるってめんどくせーなおい。」

 少年は地面に唾を吐いてそう言うとレスティアはそれを気にも留めずにこう言った。

 「この間奪う筈の軍用精霊を暴れさせちゃったから学院に近づくことが

出来なくなってね。それに鉱山都市にあるあれの封印はオルデシア帝国軍の最上級の

封印が何重も施されてあるから解放の儀式だけじゃ時間がかかるからね。」

 そう言ってレスティアは紅茶を飲んでいると黒髪の少年はレスティアに対してこう言った。

 「それにしてもあの女廃棄された軍用精霊をかき集めて何やるのやら?」

 「貴方に彼女の思惑を知る権利は無いわよ。ジオ。」

 そう言うと黒髪の少年、「ジオ」はある事を言った。

 「それにしても『レン・アッシュベル』ってあんなに弱え何てあんな腑抜けた奴が俺よりも上なんて可笑しいぜ。」

 ジオが笑うとレスティアは厳しい口調でこう返した。

 「彼はまだ目覚めてないわよ。倒す自信があるの?彼を??」

 するとジオが肌にある刺青のようなものを見せるとこう言った。

 「倒すさ。そして証明してやるよ。この『ジオ・インザーギ』こそが真の

魔王スライマンの後継者だってことをな。」

 そう言って立ち去るのを見届けたレスティアは銀髪の青年の方を見てニッコリと

笑ってこう聞いた。

 「それで、例の物は?」

 すると銀髪の青年の足元にある黒い箱を水色の少女に渡して少女が何かをしていた。

 見た限り継ぎ目はなく、開けるためのカギ穴がなかったのだ。

 然し少女が手をかざすとそれは自動的に開くとある物が現われた。

 それは液体が入っている注射器が二つ入っていた。

 「これが例の物だ。もしもの為にも含めてある。」

 すると銀髪の青年は一つを取るともう一つを少女に渡してこう言った。

 「それともう一つ。」

 そして銀髪の青年の懐のポケットからある物を出した。

 それは何かが描かれている札のような物であった。

 「これは?」

 レスティアがそう聞くと銀髪の青年はそれを木箱に入れるとこう言った。

 「これは最近話題になっている奴でな。精霊にも効くかどうかテストしたいんだ。」

 「へーー。・・・まあ良いわ。カミトを強く出来るんなら。」

 レスティアはそう言うと銀髪の青年が席を離れるとレスティアに向けてこう言った。

 「それでは『魔王の選定者』。また会おう。」

 「じゃあね。『救世主の選定者』さん」

 そしてそれぞれ立ち去ったあと残ったのは金貨と・・・人数分のコップだけで

あった。




 次回こそフィアナとの会話。


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第二女王の自己紹介。

 フィアナ登場。


 「それにしてもグレイワース何の用なんだ?」

 「(話し相手じゃね?酒を飲みながらの。)」

 それは御免だなと言っている中学院長室の執務室に入ると・・・グレイワース以外にもう一人いた。

 「遅いぞカミト、この私を何秒待たせるつもりだ。」

 グレイワースがそう言うとカミトはこう返した。

 「あんたが呼ぶとなると絶対面倒ごとに付き合わされるって思うと足取りが悪く

なったんだよ。」

 そう言うとグレイワースは鼻息を吹かしてこうも言った。

 「ふん。全く時の流れとは恐ろしい物だ。素直で無垢だったあの頃が懐かしいよ。」

 「それで何か依頼して欲しいんじゃないのか?」

 するとグレイワースはカミトの隣にいる少女をみてこう言った。

 「彼女は今日からお前と同じレイブン教室に入る事になった編入生だ。」

 そう言うとカミトはあああの噂のって思って見ると・・・思わず見とれてしまう程の美少女だったのだ。

 「ええっと・・・貴方がカゼハヤ・カミト君?」

 「ああ・・・そうだが・・・。」

 少女がそう言うとカミトは誰だっけと思っていると『シラヌイ』がこう聞いた。

 「(多分俺達が軍用精霊をぶっ飛ばしたからそれでじゃねえのか?)」

 ああなるほどと思っていると少女はカミトをジロジロと見ていた。

 「随分印象が・・・でも三年たってるし・・・面影も確かに・・・。」

 「えーーと、君は一体・・・・?」

 カミトがそう聞くと少女は自己紹介をした。

 「初めまして、カゼハヤ・カミト君。私はオルデシア帝国第二王女、『フィアナ・レイ・オルデシア』よ。」

 そう聞くとカミトは驚いて目を開いた。

 少女、フィアナの名前からオルデシア王家の人間であることが分かったのだ。

 然し本来王家なら精霊姫養成機関〈神儀院〉で五大精霊王に仕える精霊姫になる為の修行を積んでいるんじゃないかと思っていると『シラヌイ』がこう言った。

 「(待てよカミト、第二王女と言やあ『喪失の精霊姫(ロスト・クイーン)』で有名な奴じゃないのか?結果的にお前が火の精霊王に奉納した奴の。)」

 そう、本来ならカラミティ・クイーンこと「ルビア・エルステイン」失踪事件の後〈神儀院〉は二人目の精霊姫に第二王女を推したが本人が辞退すると宣言したため

カミトがレン・アッシュベルとして奉納したのだ。

 それ以降彼女が表舞台から姿を消したのだ。

 カミトは無礼が無いように地面に片膝を付こうとするとグレイワースがそれを止めてこう言った。

 「やめろカミト。ここではどのような身分であろうと特別扱いはしない。

一介の生徒として編入したんだ。」

 そう言うとフィアナはカミトに向かってこう言った。

 「そんなわけで元王女だけどよろしくね。カゼハヤ・カミト君。」

 「ああよろしく。」

 そう言って立ち上がった後会釈するとグレイワースがカミトにこう言った。

 「さてと、顔合わせはこのぐらいでいいとして・・・本題に入るぞ。」

 そう言うとカミトの顔つきが真剣な表情になるとグレイワースはカミトに向けてこう言った。

 「本来ならこれはSランクでお前が関わってはいけないだろうがフィアナからの指名でもあるしな、これはお前達にとって最重要な任務となる。」

 そしてその内容は・・・。

 「任務内容は『鉱山都市≪ガザ≫にある封印されている戦略級軍用精霊

〈ヨルムンガンド〉の再封印の為フィアナを護衛せよ』だ。」




 恐らくは任務内容についてです。


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任務の説明

 内容を聞いてから受けるべし!!


「戦略級軍用精霊って・・・なんつうものを封印してんだよおい。」

 カミトが頭を抱えていた中『シラヌイ』がカミトにこう聞いた。

 「(軍用精霊って・・・この間の奴だろ。それが戦略級だとどれくらい

危険なんだ?)」

 そしてカミトはこう答えた。

 「何百人もの精霊使いが儀式型神楽でやっと制御できるか否かの代物だよ。

下手扱けば国一つ滅ぼせる程だぞ。」

 「(・・・それってヤバくね?)」

 『シラヌイ』がやべえなと言っている中グレイワースはカミトに事の状況の

説明をした。

 「ここ最近〈ガド〉で奇妙な自信が相次いでな、恐らく封印が解かれかけているやもしれないからな。調査して危険と判断すれば・・・。」

 「私が〈儀式神楽〉で再封印の儀式を行うんですね。」

 グレイワースの説明にフィアナが割って入るがその通りだと言ってこう続けた。

 「知っているかどうか分からないが彼女は〈神儀院〉であらゆる神楽の型を覚えているからうってつけなんだが・・・受けるかカミト?」

 グレイワースが任務に関する資料を机に置いた。

 それを取った後カミトはグレイワースにこう言った。

 「・・・これは俺個人としては大きすぎる案件だ。クレアと話し合う機会を

与えてほしいんだが?」

 「分かった。隣の執務室を使え。後でクレア・ルージュも呼ぼう。」

 悪いなと言うとカミトはフィアナと一緒に隣の執務室にへと向かった。

 二人が出るのを確認するとグレイワースはフィアナの事を思い出してふっと

微笑んだ。

 「然しあのお姫様め。編入試験ごときで精霊鉱石を使うとはもったいないな。」

 「やはり知っていたんですね。彼女の絡繰り。」

 声が聞こえるとグレイワースの影からフレイヤ先生が現われてこう続けた。

 「あんなもの、学園生活で何度も使える物ではありません。何れバレますよ。」

 そう言いながら眼鏡を掛けなおしているとグレイワースは面白い事が起きる

子供のような顔でこう言った。

 「フィアナ姫は、僅か13歳であのルビア・エルステインに告ぐ第二位の精霊姫候補だった。そしてその彼女がもう一度精霊使いとして目覚めればそれでよし、

駄目ならそこまでだった。それだけであろう。」

 クックックッと笑うその姿は正しく魔女そのものであった。

 そしてそれを聞いたフレイヤ先生は眉を顰めていると窓からグレイワースが放った

探査用の精霊(翼の付いた目玉)が飛び込んできた。

 グレイワースがその状況を見るとフレイヤ先生にこう指示を出した。

 「フレイヤ・グランドル。すまないが『シルフィード』に警備を強化するよう命じておけ。・・・万が一の為にな。」

 「はっ。」

 そう言うとフレイヤ先生はまた影の中にへと入っていった。

 然しグレイワースが注意しているのはレスティアだけではなかった。

 「・・・こいつは一体・・・。」

 グレイワースが注視していたのは銀髪の青年の方であった。

 ナニカある。

 そう睨んだのだ。

 因みにクレア・ルージュと相談するも彼女は一述べもなくクエストを受けると

言った。




 次は対ジオ戦


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学校での戦い。

 その出会いは果たして・・・


 「成程・・・Sランクですか・・・。現状確かにそれならポイントの率も高いですが

危険も多そうですね。」

 「【確かに、本来なら戦闘能力の高い人間と合同でやった方が効率が良さそう

ですけどね。】」

 夜、カミトはレオノーラや『メイルストローム』が今回の任務についての話を

していた。

 恐らく長期になる事を見越して晩御飯はシーフードカレーである。

 銅鍋(巨大)いっぱいにしている。

 それを食べ終えて一服茶を飲んでいる中カミトは外を見た。

 「『シラヌイ』・・・分かるか?」

 「(ああ、何かあったって言う気配が所狭しにな。)」

 「?・・・どうしたんです?」

 カミトの言葉にレオノーラが何があったのか分からず聞くとカミトは扉を開けて外を見た。

 「学院の中で戦闘・・・然も大規模だ。」

 「決闘・・・いえ、この空気は違うそうですね。」

 レオノーラも外の空気を読んで何か違う事を悟ると机の上でお茶を飲んでいた

エストとグリムゲルデを呼んだ。

 「エスト、悪いが腹ごなしの運動になりそうだ。」

 「グリムゲルデ、お願いします。」

 「ハイカミト、私は貴方の剣」

 「ふむ、何やら怪しい物を感じるな。」

 それぞれが剣に変わるとカミト達は走ってそこにへと向かった。

 

 

 

 「何だこれはー」

 「(まるで嵐が過ぎ去ったような感じだな。)」

 カミトと『シラヌイ』が目にしたのは『シルフィード』の騎士団が累々と地面に

倒れていたのだ。

 「(こいつらって全員結構強い奴らばかりだろう?そのこいつらがって・・・

まさか!!!)」

 「多分・・・レスティアだと思う。」

 カミトと『シラヌイ』が犯人を予測すると見知った人間が『シルフィード』の騎士団の中央にいた。

 「貴様か、これをやったのは!」

 エリスが〈レイ・ホーク〉を構えてそう問いた。

 三十分前に図書館から機密資料でもある封印指定の石板が奪われるという報告が入り『シルフィード』の騎士団を向かわせるも現在までの間に5人もの精霊使いが

倒れ伏した。

 然し目の前の侵入者は口を閉ざしているが・・・嘲笑っている雰囲気が漂っていることが分かりエリスは〈レイ・ホーク〉の風を集約させながらこう言った。

 「-そうか・・・無言は是と見た!!」

 この時エリスはこう思っていた。

 精霊使いでも無い人間が精霊使いを倒せるわけはなく、恐らく肉体に憑依する精霊を使役していると錯覚してしまったのだ。

 そして風を使って突撃するや否や相手は直ぐに反応し、くぐもった声で・・・。

 「-顕現せよ、牙狼精霊〈ウルフファング〉!」

 地面に光の紋様が浮かび上がると狼の姿をした精霊が召喚した。

 「それが貴様の精霊か!」

 エリスはそう言いながら風の塊を放出して狼の精霊を倒すとそのまま相手目掛けて

突き進んで・・・そのまま地面を蹴って急降下攻撃を行った。

 人間は真上には対応しずらいという弱点を突いた攻撃であった。

 ・・・然し相手はエリスを見上げると・・・掌を向けてこう言った。

 「-顕現せよ、破雷精霊(ブラスト・ギア)!」

 突如青白い光がエリス目掛けて放たれた。

 「がああ!!」

 直撃したエリスは悲鳴を上げるとその侵入者はこう呟いた。

 「-顕現せよ、魔光精霊(シャイニング・レイ)」

 そしてもう片方の手から光の槍が出て・・・エリス目掛けて投擲しようとした。

 「死ねよ。」

 その一言とともに攻撃する瞬間・・・風の塊がまた現れた。

 「ちぃ!!」

 侵入者はそれを避けた瞬間・・・後ろから何かが来るのに気づいた。

 そして懐に忍び込ませておいた短剣を素早く出した。

 出てきた人間・・・カミトを見るや否や侵入者はこう言った。

 「初めましてだなあ・・・レン・アッシュベル!!」




 対ジオ戦です。


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対ジオ戦開始!

 二人のイレギュラー、交わるとき何かが起こる。


「その声!!」

 カミトが侵入者の声を聞いた瞬間ある事に驚愕したのだ。

 「お前・・・男か!?」

 すると侵入者はローブを脱ぎ捨ててその姿を晒した。

 「よう、同じ男の精霊使い。」

 それこそ昼間にレスティアと話していた少年「ジオ・インザーギ」である。

 「さあてと・・・どっちが魔王スライマンの後継者か決めようぜ!!」

 ジオ・インザーギが短刀をと槍を構えなおすとカミトに斬りかかった。

 

 

 

 

 「うう・・・ん・・・はっ!!」

 エリスが起き上がるとそこにいたのは・・・。

 「大丈夫ですか?エリスさん。」

 「・・・レオノーラ・ランカスターか。」

 レオノーラがそこにいた。

 彼女はエリスが地面に激突する寸前にグリムゲルデの風でエリスを浮かせたのだ。

 「大したことは・・・うぐう。」

 エリスは傷ついたところが痛むとレオノーラがエリスを抱きかかえて止めた。

 「まだ駄目です!!先程の攻撃がまだ・・・!!」

 「戦況はどうなっている?」

 エリスはレオノーラにそう聞くと気まずそうにこう言った。

 「見たら驚きますよ。」

 そう言って指さすとその方向には・・・テルミヌス・エストと『シラヌイ』の

ソード・デバイスを使っているカミトと、槍と短刀を使って戦っている

ジオ・インザーギがそこにいた。

 「な!男だと!!」

 エリスは侵入者の正体を知って驚くとレオノーラにこう忠告した。

 「いかんぞ!奴は精霊を二体・・・いや三体契約している!」

 「精霊三体って・・・それはまるで・・・」

 レオノーラはエリスの言葉を聞いて魔王スライマンと同じではないかと思っていると奥の茂みから音がした。

 「誰です!!」

 レオノーラがエリスの前に立つように警戒すると出てきたのは・・・。

 「・・・貴方は?」

 

 

 

 

 「おいおいそれで全力かよ!『レン・アッシュベル』さんよ!!」

 「!!・・・こいつ何で俺の・・・。」

 「(カミト!恐らくこいつはレスティア関連だ!!)」

 カミトは自身の嘗ての名前を聞いて驚くも『シラヌイ』の言葉になるほどと

思っているとジオ・インザーギは短刀を収めて空いた手を翳してこう呟いた。

 「-顕現せよ、剣精霊(ファルシオン)!」

 すると今度は蒼く輝く大振りの剣が現われた。

 「・・・それがお前のか。」

 カミトはあれがジオ・インザーギの精霊とエリスと同じく錯覚してしまい

攻撃しようとすると『シラヌイ』のソード・デバイスを伝って竜声でレオノーラから

通信が入った。

 『カミトさん気を付けてください!!彼は恐らく四体以上の精霊と

契約しています!』

 「!!四体以上だと!」

 「(なんだよそのビックリ箱擬きはよ!!)」

 カミトと『シラヌイ』が驚く中ジオ・インザーギが攻撃を始めた。

 槍と剣の変則二刀流にカミトは防戦一方であった。

 「くそ!」

 「(こいつ、槍と剣の長さを活かして俺達の攻撃の範囲を遠ざけやがってる!!)」

 カミトはどうすると思っている中レオノーラからある提案があった。

 『カミトさん・・・提案聞きますか!』

 「勿論!!」

 

 

 

 暫くしてカミトが遠ざかるとジオ・インザーギがまたこう呟いた。

 「-顕現せよ、風精霊(エアリアル)!」

 今度は風を使ってエリスと同じくその強さを生かして跳躍してこう言った。

 「死ねよー『レン・アッシュベル』」

 するとカミトはニヤッと笑ってこう言った。

 「それはどうかな?」

 すると横から小石がジオ・インザーギ目掛けて跳んできた。

 「ちっ」

 ジオ・インザーギが反射的にそれを弾くと石が砕けて周りが昼のように明るく

なった。

 「ぐう!!」

 ジオ・インザーギがいきなりのことで目が眩むと・・・カミトが

テルミヌス・エストを放るとこう指示した。

 「今だエスト!!」

 「ハイカミト」

 その瞬間テルミヌス・エストから高周波の音が鳴り響いた。

 「ぐううおおおお!!」

 あまりの音量の高さにジオ・インザーギが耳を塞ごうと両手を塞ぐと・・・横から

風が吹いてきた。

 「どうわああ!!」

 ジオ・インザーギが吹き飛ばされその方向を見るとレオノーラがグリムゲルデの風で吹き飛ばしたのを知って怒り狂ってこう言った。

 「手前よくも!!」

 「おい。」

 すると今度は顔に痛みが出るとともにその方向を見るとカミトが殴ってきたのが

分かったのだ。

 「ぐは!」

 そしてジオ・インザーギが木にぶつかりよろけ乍ら立とうとすると地面の振動を

感じた瞬間苦々しい顔でこう言った。

 「ちぃ!!」

 そして闇の中に消えた瞬間カミトはジオ・インザーギの正体の一つを見切った。

 「あいつ・・・暗殺屋だな。」

 「(ああそれも精霊使いのな。)」

 『シラヌイ』がそう言うと後ろからレオノーラと肩を貸された状態で立っているエリスと何故かいたフィアナがいた。

 「サンキューなって・・・何でフィアナがいるんだ?」

 「ああ精霊が何かけたたましかったから見に来たの。そしたらこれでね。」

 「それでフィアナさんが持っていた精霊鉱石を使って光で視界を遮断し、エストの

高周波で聴覚を封じて攻撃するという作戦を思いついたんです。」

 レオノーラが(∀`*ゞ)エヘヘと言うとエリスは苦い顔でこう言った。

 「だが奪われてしまったものがある・・・。」

 「何だそれは?」

 カミトがそう聞くとエリスは重い口調でこう言った。

 「封印指定の機密が書かれた石板だ。あれには多くの封印精霊に関することが

書かれている。」

 すると後ろから『シルフィード』の援軍が来るのを確認した後『シラヌイ』が

カミトにこう聞いた。

 「(おいカミト、封印精霊って・・・俺達が行く鉱山都市にもあったよな。)」

 「・・・まさか!!地震の原因も!!」

 「(どうやらハイキングじゃすまないかもしれないな。)」

 『シラヌイ』の言葉に嫌な予感を感じたカミトであった。




 そして嫌な予感がまた当たりそう。


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森の中で。

 前半はグレイワース
 中盤はエリス
 最後にフィアナ


 「そうか・・・盗られた物は仕方がないとしてまさかお前以外にもなあ・・・。」

 次の朝、朝早くにカミトはグレイワースに今回の事について話した後色々と

整理をしていた。

 「然しお前だけだったのだろう。魔王スライマンの後継者と言われていたのは?」

 「ああそうだ。」

 「(俺も聞いていたぜ。)」

 カミトと『シラヌイ』がそう言う中グレイワースはある事を考えていた。

 「あれなら・・・いやそれでも・・・。」

 「おい、グレイワース。大丈夫か?」

 カミトはグレイワースにそう聞くとグレイワースはああと返した後こう続けた。

 「それで話は・・・今回の護衛任務にレオノーラとリンスレットを加えたいという

事だな。」

 「ああ。正直あいつだけってのは考えられないから万が一に備えて戦力を

増やしたいし手練れと連携を考えるならレオノーラとリンスレットが確実だと思った

からな。」

 それを聞いた後グレイワースは少し考えてこう返した。

 「分かった。リンスレットには私が話しておくからお前は準備をしておけ。」

 「ああ、盗られたもの取り返してやるさ。」

 そう言ってカミトが学園長室から出るのを見届けた後グレイワースは何か嫌な予感がすると思い窓の向こうを見た。

 

 

 

 あの後カミトは療養所に戻ってレオノーラに報告して準備させると同時にエリスと

一緒に光属性の精霊を捕まえる為アストラル・ゼロに来ていた。

 「悪いなエリス。手伝わしてもらって。」

 「いや寧ろあの時助けてくれたのに礼を言いたい。君がいなければ私はもう・・。」

 そう言いかけるとエリスは肩を抱き寄せて震えていた。

 後少し遅かったら恐らくよくても入院生活。

 最悪今頃棺の中と思うと恐怖が蘇ってくるのだ。

 カミトはエリスが震えるのを見て手を重ねてこう言った。

 「大丈夫だ。俺が付いているから・・・大丈夫だ。」

 「ふぁあ!!」

 エリスはあまりの事に驚いたのだ。

 現在自分達は・・・カミトに抱きしめられているからだ。

 本来なら何か大声を出して斬りかかりたいところだが何故かもう少しこうして欲しい自分がいて動けなかったのだ。

 「《これ昔レスティアにしてもらった奴だけど意外と聞くんだよなあ。》」 

 どうやらエリスを落ち着かせるための所業であるがどちらかといえば悪手だと思う。

 そして暫くこの状態が続くがその間エリスは顔が耳まで真っ赤になって

しまっているのだ。

 そして時間が経つ中ある声が聞こえた。

 「あらあらこれは中々良いシチュエーションねえ。」

 声が聞こえたのでエリスの首がギギギと錆びた歯車のように曲がるとそこに

いたのは・・・。

 「あ、私に構わず続けといて~~♡」

 精霊鉱石を持って何かしていたフィアナであった。

 「・・・ナンダソレハ?・・・」

 エリスが片言で聞くとフィアナはこう返した。

 「ああこれ、記憶映写用の鉱石よ。これで二人のムフフな所記録しようと思って。」

 フィアナは片手でそれを弄っているとエリスは更に顔が赤くなってこう言った。

 「・・・ムフフって・・・ナンダ・・・・?」

 エリスがそう聞くとフィアナは耳元でこう囁いた。

 「そりゃーもー・・・。」

 何やら耳元で言っていると・・・エリスの顔がトマトよりも顔全体が真っ赤に

なって・・・失神した。

 「おい、エリス!」

 「ふにゃ~~~~。」

 カミトはエリスを揺さぶるも当の本人は失神していた。

 尚その際に揺れる物があったのでそこは極力見ないようにした。

 「ああ~。楽しいわね。ここ。」

 当のフィアナは反応に面白がっていた。

 「それに丁度良いわ。これなら暫く起きないだろうし。」

 そう言いながらフィアナは近くにあった切り株に座るとカミトに向けてこう言った。

 「それじゃあ私の願いを聞いてくれるかしら?カゼハヤ・カミト君・・・いや・・・『レン・アッシュベル』さん♪」

 「なああ!!!」 




 フィアナ「そりゃーもー・・・カミト君のバキューンでズキューンなものをエリスのドカーンでボフンを合体・・・。」
 シラヌイ「(・・・こいつ鬼だ。)」


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いざ出陣。

 そして彼らは向かう。


「・・・何で・・・それを・・・!!」

 カミトはフィアナに驚きながらも大声で言いそうになるとフィアナが指に口を付けてこう言った。

 「静かにしなさい。エリスが起きるわよ。」

 それを聞いてカミトは慌てて声を小さくして聞いた。

 「何で俺の正体を!?」

 するとフィアナがカミトの言葉を聞いて呆れてこう返した。

 「呆れた。未だ思い出さないのね?」

 「?」

 カミトはフィアナの言葉に疑問を抱くと彼女はこう返した。

 「私は貴方に会っているわ。三年前のブレイドダンスでアストラル・ゼロの

森の中で助けられてね。」

 「(アストラル・ゼロの森の中で・・・三年前・・・助け・・・ああ!!)」

 『シラヌイ』がある事を思い出してカミトに思い出させた。

 「(カミト!こいつ三年前のブレイドダンスの時に特訓の際にドリアードに

襲われてた奴だぞ!!)」

 「え・・・ドリアード・・・あああ!!」

 「やっと思い出したのね。」

 フィアナは呆れながらそう言った。

 「悪い。まさかここ迄雰囲気が違うなんてよ。」

 カミトがそう言うとフィアナはある事を言った。

 「私がこの学院に入ったのはね、カミト君のチームに過去の秘密をネタに

入りたかったのよ。」

 「お前それ悪人だぞ。」

 カミトはフィアナにそうツッコミを入れると更にこう続けた。

 「そしてブレイドダンスに出場して私の願いを叶えるために。」

 その言葉には力強さを感じ、カミトはそうかと返した。

 するとフィアナは立ち上がってカミトにこう言った。

 「さてと、そろそろ戻りましょ。皆が待ってるはずよ。」

 エリスをお願いねぇと言って去って行ったがそれを聞いてカミトはエリスの方を

見ると・・・。

 「待て・・・それで私を・・・ああ・・・ダメダ・・・カミト・・・////。」

 ・・・何だか顔を赤くしながら魘されているようであった。

 「(・・・何だかなあ。)」

 流石の『シラヌイ』も呆れて物が言えなかった。

 「・・・しょうがねえな。」

 カミトはエリスをお姫様抱っこして集合地点まで向かった。

 

 

 

 「それじゃあ・・・準備は良いかしら?」

 何故かクレア・ルージュが馬に乗りながらそう聞いているがそれはエリスがまだあの事を思い出す為かとてもではないがまとめられる状況ではないからだ。

 そしてフィアナは同性で然もそれなりに強いレオノーラの後ろに掴まっていた。

 (フィアナは乗馬の経験がない為である。)

 そして門が開いてクレア・ルージュが全員に向かってこう高らかに言った。

 「それじゃあ・・・出陣よ!!」

 「「「「「「「おーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」

 そして馬と共に駆けるその姿はまるで戦場にへと向かう戦士の様であった。




 いざ戦地へ。


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とうとう〈ガド〉へ。

 そこにいるのははたして誰か?


 あれから殆ど馬を走らせ、カミト一向は真夜中の鉱山都市の跡地にへと着いた。

 本来ならここで全員疲労を回復させたい所であるがジオ・インザーギの一件がある為休む暇などないのだ。

 「ここが〈ガド〉。・・・まるでゴーストタウンですわね。」

 「廃鉱になったのは二十年以上前だからな。だからこそ軍用精霊を封印

出来るんだろうな。」

 リンスレットが〈ガド〉の街の感想を言った後カミトが補足すると

クレア・ルージュは目を細めてこう続けた。

 「人間はいないけどーー。」

 街の周りには青白い鬼火を出す低級の浮遊精霊が所狭しといた。

 全員が鉱山に向かう中クレア・ルージュが炎を出して明かりを灯し乍らこう言った。

 「皆、何時その男の精霊使いが出るかもしれないから契約精霊を出す準備を・・・」

 「ほー。この辺りに人が儂ら以外に来るとはの~~。」

 「!!誰だ!!」

 何処からか声が聞こえたためエリスが〈レイ・ホーク〉を構えてそう言うと

空き家の屋根から人影が浮かんだ。

 カミト達はそこを向けるとその人影が出るや否やその正体に驚いていた。

 「・・・女の子!?」

 ランタンの火で見えたのはオレンジ色で頭に小さい輪っかが付いたような髪型のカミト達と同じか年下の少女と眼深な帽子と黒い服を身に纏った人間がそこにいた。

 「あんた達誰よ?」

 クレア・ルージュが彼女達にそう聞くとオレンジの髪の少女がふっと鼻で笑ってこう言った。

 「人に名を聞くときには自らが先に名乗るのが礼儀であろう?親から教えられて

おらんのか?小娘?」

 「な!!何ですってー!!!」

 クレア・ルージュはその言葉に怒るもエリスが前に出てクレア・ルージュを

制してこう言った。

 「確かに君の言う通りだ。私は『エリス・ファーレンガルト』、

アレイシア精霊学院の者だ。こっちはラッカとレイシア、それとカミト、フィアナ、

クレアだ。」

 カミト達は礼をして紹介すると少女はこう自己紹介した。

 「何故に何か分からぬが中々礼儀が成っとる娘っ子じゃのお。儂は

『マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク』、マルカファル王国という国で商人をしとる。隣にいるのが護衛の『アルマ』。こう見えて腕は達者じゃ。」

 少女、マギアルカが自身と護衛を紹介するとアルマと言う人間は会釈をする程度であった。

 するとマギアルカがエリス達に向かってこう聞いた。

 「のおエリスとやら、聞きたいがここは〈ガド〉という街で合っているか?」

 そう聞くとエリスはそうだと答えた後エリスはマギアルカ達に向けてこう聞いた。

 「君たちの目的はなんだ?」

 そしてマギアルカはこう答えた。

 「少し旅行をしているんじゃが土地勘がなくてのお。ここで骨休みをしていたんじゃ。」

 そう言った瞬間突如地鳴りが起きた。

 「これは急いだほうが良いな。」

 カミトがエリスにそう提案するとエリスも頷いてマギアルカ達に向かって

こう言った。

 「それでは我々は急いでいるからここから立ち去ったほうが良いぞ。」

 そう言って彼らは鉱山にへと向かった。

 そしてそれを見送ったマギアルカはというとアルマに向けてこう言った。

 「アルマ、着いて来い。奴らを追えば目的の物が手に入るぞ。」

 「おお。」

 そう言ったあと二人は屋根から降りて部屋に入ってある物を取り出した。

 それはカミトと同じ・・・ソード・デバイスであった。




 いやっとここ迄来たぜーー!!


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いざ内部へと。

 彼らはそこで何を見る。


 目的の場所に着くとそれは酷いの一言に尽きた。

 巨大な石造りで作られた立派な祭壇の彫像は砕かれ、石柱に嵌められていた

精霊鉱石は全て剥ぎ取られ、無残な廃墟と同じようになっていた。

 「酷いな、こりゃ。」

 「(夜盗に荒らされた感がプンプンするぜ。)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』が付け加えるとフィアナは何か感じ取ったのか祭壇に

近づくとこう言った。

 「この石畳の傷と足跡・・・誰かが儀式を執り行っていたようね。それもここ数か月間の間に何度も。足跡の大きさから女の子だと思うわ。年齢は分からないけど。」

 そう言うと更にフィアナはこう付け加えた。

 「この舞踏は・・・恐らく解放の儀式。多少アレンジを施してるけど

間違いないわ。」

 フィアナの言葉にカミトはある事を考えた。

 「《恐らくあいつは封印されている『ヨルムンガンド』を手に入れようとする連中の指示で機密資料を盗んだとしてもグレイワース曰くあれを解読するには専門の

知識がいるし何か月も掛かるって聞くから昨日今日では無理だろうがとにかく。》」

 「フィアナ、封印は解けかかっているのか?」

 するとフィアナは顔を横に振ってこう答えた。

 「その心配は無いわ。これは偽物。本物は恐らく鉱山の中にあるはずよ。」

 「どういう事だ?」

 フィアナの言葉にカミトは何故と聞くとフィアナはこう答えた。

 「鉱山のような場所には本来の祭壇を隠すためにあえて偽物を目立つ場所に置くことがあるのよ。」

 フィアナの説明になるほどと答えるとリンスレットが鋭い声でこう言った。

 「気を付けて、何かいますわよ!」

 そう言って廃鉱の入り口を見るとそこにいたのは・・・錆びた剣や棍棒を手にし、

隙間から黒い霧が噴き出している・・・骸骨であった。

 「な、何ですのこれは!?」

 「こいつらも精霊か?」

 エリスがそう言うとフィアナがその動きを見てこう言った。

 「多分こいつらが儀式をしていたのよ!骸骨の動きは雑だけど間違いなく祭壇に

あった傷と動きが一緒よ。」

 「となると誰かが操っているってことだな。」

 カミトがそう言うと全員が武器を構えて(クレア・ルージュはなぜか涙目だが)骸骨を相手にした。

 然し相手は下級だったためものの数秒で片付いて前にへと進んだ。

 

 

 

 

 鉱山の何処かでレスティアが奪った石板を使って何かをしていた。

 そしてそこにはジオ・インザーギと銀髪の青年がそこにいた。

 「おい、どれくらいで終わりそうなんだ?封印の解除はよ?」

 「もう少しよ。この封印は何重にも重なっているから時間がかかるのよ。」

 レスティアがそう答えるとジオ・インザーギは銀髪の青年に向けてこう聞いた。

 「おい、本当にこいつがあればあいつを倒せれるんだな?」

 すると銀髪の青年が涼しげにこう返した。

 「ああそうだ。こいつならお前の敵を倒せるさ。」

 そうかとジオ・インザーギはニヤリと笑って答えるとジオ・インザーギは何かを

感じたのか出入り口に向かおうとした。

 「何処へ行くの?」

 レスティアの言葉にジオ・インザーギは嗤ってこう答えた。

 「ちょっとした暇つぶしだ。」

 そう言うジオ・インザーギの顔はまるで悪魔のようであった。

 そして封印されているものを見た。

 それは七つの腕を持つ・・・桜色の鋼の兵器であった。




 これで分かりますか?正体。


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対ジオ戦  その2

 二回戦スタート!!


カミト達が洞窟の中に入るとエリスがカミトに向かってこう言った。

 「カミト、私達は例の男の精霊使いを探してみる。万が一の事があったら・・・。」

 「それって今じゃねえのか?騎士団さんよ。」

 その声に全員がそこに視線を向けるとジオ・インザーギが嗤いながら

そう言っていた。

 「貴様あの時の!!」

 エリスが〈レイ・ホーク〉を構えてそう言うとジオ・インザーギは嘲笑して

こう言った。

 「手前一人じゃ話になんねえよ!そいつを殺すまでの準備運動にもならねえから

全員で掛かって来いよ!!」

 カミトに指さした後そう言うとラッカ達が精霊魔装を構えてジオ・インザーギに

向けてこう叫んだ。

 「あんたそれが遺言でいい様だな!!」

 「後悔しなさい!!」

 そう言って立ち向かうとジオ・インザーギは呆れた様子でこう言った。

 「手前ら程度じゃ俺には勝てねえよ!!」

 そう言うとジオ・インザーギはこう呟いた。

 「-顕現せよ、地精霊(アルゴス)!」

 するとラッカの前に地面がジオ・インザーギの前で隆起した。

 「はっ!!その程度!!」

 ラッカは大槌を振るって地面事破壊するもジオ・インザーギの姿が見えなかった。

 「何処だ!?」

 「ここだよ。」

 そう聞いてラッカが下を見るとジオ・インザーギが地面すれすれの状態で伏しておりそのままラッカの腹部に拳を叩きつけた。

 「がはア・・・!」

 ラッカはその威力に耐え切れずに失神するとレイシアが怒り乍ら突っ込んで

こう怒鳴った。

 「よくもラッカを!!」

 剣を構えてそう言うもジオ・インザーギはさらにこう呟いた。

 「-顕現せよ、破雷精霊(ブラスト・ギア)!」

 すると雷がレイシアに襲い掛かった。

 「きゃああああ!!」

 そしてレイシアはそのまま倒れたのを見てエリスが〈レイ・ホーク〉を構えてこう言った。

 「貴様よくも!!」

 「-顕現せよ、毒精霊(ラフレシア)!」

 するとジオ・インザーギを中心に濃密な紫紺の霧が噴出された。

 するとグリムゲルデがレオノーラのこう忠告した。

 「レオノーラ!あれはヤバいぞよ!!」

 「!!・・・はい!」

 するとレオノーラが風を出してそれを追い払った。

 そしてエリスが〈レイ・ホーク〉を構えてこう呟いた。

 「凶ツ風よ、汝、無限の刃となりて我が敵を切裂けー」

 エリスが〈レイ・ホーク〉の力を解放して無数の風の刃を出して応戦した。

 然しジオ・インザーギはこう呟いた。

 「-顕現せよ、魔境精霊(ミロワール)!」

 するとジオ・インザーギの前に赤い鏡が現われてエリスの風の刃を・・・

弾き返した。

 「なっ!!」

 「エリス!!」

 カミトは驚いているエリスを抱きかかえる勢いで押し倒して回避させた。

 「大丈夫か!」

 「ああ・・・。」

 エリスは少しびっくりしているとジオ・インザーギがニヤニヤしながらこう言った。

 「邪魔すんじゃねえよ。折角その女をぶっ殺せたのになあ。」

 そう言った瞬間・・・カミトと『シラヌイ』がジオ・インザーギに向けて

こう言った。

 「安心したぜ・・・手前みたいな最低野郎なら・・・。」

 「(心行くまでぶち殺せるってもんだ。)」

 するとジオ・インザーギが右腕の掌からある物を召喚した。

 「剣精霊(グラディウス)。その剣とどっちが強いか試してみようぜェ。」

 するとカミトはジオ・インザーギに向けてこう言い放った。

 「エストとそんな鈍らと一緒にするな。」

 そして二人の剣が交差した。




 ここからだぜェ。


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対ジオ戦 2回目  後編

 前回の続きです。


 互いに剣を交わす中カミトはジオ・インザーギにある事を聞いた。

 「ジオ・インザーギ!手前の目的はなんだ!?」

 「はっ!!目的なんて決まってるだろうが!俺こそが『魔王スライマン』の後継者に相応しいってことを証明するためだ!」

 「とんでもない馬鹿だなお前はよ!!」

 カミトはそう言いながらジオ・インザーギに踏み込んで斬りかかろうとすると

ジオ・インザーギはそれを自身の剣精霊で防御しようとすると・・・。

 「ナニッ!!」

 甲高い金属音と共にジオ・インザーギの剣精霊が砕け散った。

 「おいおい、俺の剣精霊を一撃かよ。」

 「余裕あるのかよ!」

 カミトがそう言うとジオ・インザーギは更に剣精霊を召喚するも・・・。

 「遅い。」

 そう言ってあっという間に二本目を砕くも・・・。

 「なら次は此れだ!!」

 そう言って三体目の剣精霊を召喚した。

 「一体何体契約してるんだよ!!」

 カミトがそう毒づくと『シラヌイ』がカミトにこう聞いた。

 「(カミト、あいつのあれ、可笑しくないか?)」

 「あれ?」

 すると『シラヌイ』はある事を聞いた。

 「(あれだけポンポン出してるのに息切れどころか汗一つも掻いていないぞ。)」

 「・・・確かに。」

 カミトはジオ・インザーギの顔を見ると確かに汗一つ掻いていないことが

良く分かる。

 「(恐らくあいつは何かタネを隠し持ってんじゃねえのか?)」

 「タネって何だよ?」

 「(それは戦って見ないと分からないな。)」

 『シラヌイ』はそう言い終えると後ろからクレア・ルージュがこう言った。

 「隙有りよ!」

 クレア・ルージュは〈フレイム・タン〉を使ってジオ・インザーギの剣を絡めとるとジオ・インザーギはクレア・ルージュに向かってこう言った。

 「邪魔すんじゃねえぞ!!」

 そう言って透き通った氷球の精霊を召喚してクレア・ルージュ目掛けて投げ放った。

 「何よ、こんなもの!」

 クレア・ルージュは火球を出して氷球を蒸発させると・・・無数の針が現われて

クレア・ルージュの全身を刺した。

 「きゃあ!」

 「クレア!」

 カミトはクレア・ルージュに一瞬の間ジオ・インザーギから逸れると

ジオ・インザーギは四体目の剣精霊を召喚してこう言った。

 「よそ見すんなよ!」

 カミトはテルミヌス・エストで防御するもジオ・インザーギの攻撃が苛烈さを

増した。

 「どうした、『レン・アッシュベル』!!その程度かよ!?」

 「うるせえ!!」

 カミトはジオ・インザーギの言葉にそう反論するとジオ・インザーギは更に

こう続けた。

 「何しろ三年の空白と・・・あいつらがいるからな!」

 そう言うとジオ・インザーギは射出タイプの精霊を召喚してカミトに向ける・・・

振りをしてラッカ達に照準を合わせた。

 「こう言う事だよ!」

 「くそ!」

 カミトはジオ・インザーギの攻撃を何とかしようとするも光の槍はラッカ達に

めがけて行きカミトはそれを止めようとすると・・・。

 「《それが手前の弱点だ!!》」

 ジオ・インザーギは剣を振りかぶってカミトを後ろから斬ろうとした。

 どう考えても間に合わないと思ったその時・・・ラッカ達の前にナニカが現われた。

 「ハウリングロア!」

 それと同時に衝撃波が巻き起こり同時に光の槍が消えた。

 「なっ!!」

 ジオ・インザーギはそれに驚いているとカミトは途端にターンをして・・・

ジオ・インザーギ目掛けて蹴りを放った。

 「うおらあ!!」

 「ぐは!」

 そしてそのままジオ・インザーギは吹き飛ぶのを確認したカミトはラッカ達の前に

現れたそれを見た。

 『シラヌイ』と同じ鉄の体。

 巨大な羽。

 そしてそれに乗るのは・・・街で見かけた帽子を被った人間であった。

 「お前は・・・一体?」

 カミトはそう聞くとその後ろから声が聞こえた。

 「アルマ。いきなり前に出るでない。驚いてしまうだろう。」

 するとそれがうっすらとだが全身が出てきた。

 それはカミトの『シラヌイ』と同じような感じの機体であった。

 それを見たレオノーラも驚いていた。

 「どうして彼らが装甲機竜を・・・。」

 そう思っている中『シラヌイ』と同じ形をした機体に乗っているマギアルカが

ジオ・インザーギに向けてこう言った。

 「悪いがこいつらが死んじまうと儂が困るのでな。手を貸させてもらうぞ。」

 そう言うとジオ・インザーギは少し顔色が悪くなった。

 未だ〈ヨルムンガンド〉を手に入れてないのにこれは少しどころでは

済まないからだ。

 ジオ・インザーギは諦めかけたその時・・・彼が通ってきたところから声が

聞こえた。

 「申し訳ありませんが彼はまだ必要ですので渡すわけにはいきません。」

 突如その声に船員がその方向を見た。

 それは水色の髪を短く切り揃え、機竜乗りの証ともいえる装衣を身に纏った女性が

そこにいた。

 そして腰にはソード・デバイスを持っていた。

 「手前俺じゃ勝てねえって言いてえのかよ!!」

 「その通りです。さっさと支度してください。」

 ジオ・インザーギの言葉に二部もなくそう言った後ソード・デバイスを抜いて機竜を召喚した。

 それはレオノーラの『メイルストローム』と同じ形の機竜であった。

 するとその少女はカミト達に向けてこう言った。

 「それでは・・・失礼します。」 

 そう言った瞬間カミト達の足元目掛けて機竜息銃で煙幕を作ってジオ・インザーギを逃がすと更に大型の砲台を出してカミト達に向けてこう言った。

 「それでは皆様。また会う事が無いよう祈ります。」

 するとその砲台を・・・天井に向けて発射した。

 「全員逃げるのじゃあーー!!」

 マギアルカの言葉に動けるものは動けない者を担いで離れた。

 そして天井が崩落した瞬間カミトが最後に見たものは・・・

 軽くお辞儀をして離れる少女であった。




 そして再びの自己紹介。


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問答

 その問いの答えは何をもたらすのか?


「皆!無事か!?」

 カミトはレオノーラ達に向けてそう聞いた。

 洞窟の天井が崩落したため道が完全に塞がってしまったからである。

 すると何処かで声が聞こえた。

 すると光が灯るとその人間がこう言った。

 「大丈夫です。カミトさん。」

 レオノーラがそう言うとそれに続くように声が上がった。

 「こっちもよ。」

 「酷い目に合ったわ。」

 「服が埃塗れですわ。」

 「命があるだけまだましだろ。」

 クレア、フィアナ、リンスレット、エリスが続けてそう言った。

 「全くとんでもない女じゃ。」

 「怪我人はこっちにいるぞ。」

 そして機竜を纏ったマギアルカとアルマがそう答えた。

 そしてアルマのすぐ近くには傷ついて倒れているラッカ達がいた。

 二人は傷が酷くラッカに至っては腹部の骨が内蔵に刺さっていることを考慮すると

直ぐに医者に診てもらわなければならないのだ。

 するとカミトの表情を見ていたマギアルカがアルマにこう指示を出した。

 「アルマ。お主はそこの娘二人を連れてここから出よ。その後救難信号である

煙幕弾を焚いて仲間に救援を送らせよ。良いな?」

 それを聞いたアルマはマギアルカにこう聞いた。

 「・・・ボスはどうする?」

 それを聞いたマギアルカはニヤリと笑ってこう返した。

 「儂は欲しい物が手に入るまでこ奴らと行動を共にする。それに・・・

儂の邪魔をした報いを受けさせなければ気が収まらん。」

 それを聞いたアルマははーーと言って頷くとラッカ達を機竜の腕に掴ませてからこう言った。

 「それじゃあボス。気を付けて。」

 「うむ、お主もな。」

 そう言った後アルマは機竜を浮かしてラッカ達と一緒に外にへと向かった。

 そるとレオノーラがマギアルカに向けてある事を聞いた。

 「マギアルカさん。貴方は一体・・・何者何ですか?」

 するとマギアルカはこう返した。

 「先も行ったはずじゃ。儂は・・・。」

 「装甲機龍を・・・然も上級者用のエクスシリーズを保有できるほどの人間が

商人とは思えないのです。その実力から見て恐らく上位の実力者。貴方はどこの国の兵士ですか?アディスマータ新王国ですか?それとも・・・ヘイブルグ共和国ですか?」

 レオノーラは『メイルストローム』のソード・デバイスを抜いてそう聞くと

マギアルカはそれを見てある事を聞き返した。

 「ほう、ここにも装甲機龍があるとはこの国にも遺跡(ルイン)があるのか?それにしてもお主、ヘイブルグ共和国に恨みがあるような口調をするようじゃが・・・何かあったのかのう?例えば・・・親しい人間が殺されたか?」

 「!!貴様・・・!」

 「おいやめろ!レオノーラ!!」

 一色触発の中カミトがレオノーラを止めようとする中クレア・ルージュは話が付いてこれてなかったのだ。

 「何言ってんの?レオノーラの奴?」

 「あそこ迄怒ったレオノーラを見るのは初めてですわ。」

 「アディスマータ、ヘイブルグ・・・どちらも聞いたことがない国ね。」

 「お前達こんなことしている場合じゃ・・・!」

 エリスも止めに入ろうとすると突如地震が揺れ動いた。

 「また地震!」

 クレアがそう言うと『シラヌイ』がカミトに向けてこう言った。

 「(ヤバいぞカミト!『ヨルムンガンド』が目覚めちまうぞ!!)」

 そう言うとレオノーラはちっと舌打ちしてソード・デバイスを収めるとカミトに

向けてこう言った。

 「カミトさん!機竜を使って直ぐに真祭殿に向かいましょう!時間がもったい

ないです!!!」

 「ああ・・・そうだな!!」

 そう言ってカミトも『シラヌイ』のソード・デバイスを抜くとマギアルカは

こう言った。

 「それなら儂も同行しよう。手練れは多い方が得じゃし・・・お主等じゃあ

あの水色の髪の女子を倒すのは無理そうじゃしな。」

 「「・・・!!」」

 カミトとレオノーラはそれを聞くと確かにと思った。

 カミトですら敵わないとあった瞬間に直感で思う程なのだ。

 「そう言えば自己紹介をしていないの~~。」

 するとマギアルカがカミト達に向かってこう名乗った。

 「『マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク』先も言ったがマルカファル王国に

所属している・・・『ヴァンフリーク財閥』の現当主を表にし、裏では『ギルゾレイクファミリー』のボスを兼任する世界等級順(ワールドランク)一位のドラグナイトじゃ。」

 それを聞いた後レオノーラは口を大きく開けているためカミトはレオノーラにこう

聞いた。

 「おい、どうしたんだよ!レオノーラ!?」

 するとレオノーラはカミトに向けてこう言った。

 「わ、ワールドランクと言うのは世界中のドラグナイトの強さが分かる物で、それにヴァンフリーク財閥って言うのは・・・経済界を支配して国家すらも相手どれる

財団です。・・・」

 「それって・・・もう凄すぎるだろ。」

 第一位で然も国を相手取れるほどの資金を保有するとなればグレイワースとなんら

遜色ないほどである。

 それを自分とあまり変わらない年頃の人間がしていることに驚いていると

マギアルカはさらに爆弾を落とした。

 「ああそれと儂、こう見えてももう二十代じゃからな。」

 「「「「「「・・・・・・工エエェェ(´д`)ェェエエ工!!!!!!!」」」」」」

 訂正、グレイワースそのものであった。




 驚愕の真実は正に驚きである。


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いざ、出陣。

 彼らはさらに進む。


 「さてとじゃが・・・どうやってその真祭殿迄行こうかのう?」

 「あ・・・。」

 カミトはそこに失念していた。

 幾ら進もうとしても道が寸断されている以上どうしようか迷うほどだ。

 然も瓦礫の山を破壊しようものなら恐らくまた崩落の危険も付きまとうからだ。

 すると剣状態であるエストがカミト達に向けてこう言った。

 「カミト、真祭殿の場所なら私が知っています」

 そしてエストは剣から人型に戻るとそれを見ていたマギアルカは物珍しそうにこう言った。

 「これはこれは・・・精霊とはこういう物なのじゃな。こりゃ驚いたわい。」

 「何言ってんのよ?あんたのそれも精霊でしょう。」

 マギアルカの言葉にクレアがそう返すとマギアルカは最初少しだが驚いていると笑いながらこう言った。

 「ブひゃひゃひゃ。これが精霊とは・・・おかしいのおお主。」

 「ちょっと!どう言う事よ!!」

 マギアルカの言葉にクレアが怒りながらそう言う中カミトはエストにこう聞いた。

 「エスト、真祭殿の居場所を知っているって・・・どう言う事だ?」

 それを聞いたエストはカミトにこう答えた。

 「ここは鉱山になる遥か昔に、この山そのものが精霊を祀る高位の祭壇

だったんです。剣に封印される前から私はここを訪れていたことが何度か

あったんです」

 それを聞いた『シラヌイ』は呆れ交じりでこう言った。

 「(そう言う大事なことは早く言えよなおい。)」

 カミトは『シラヌイ』にまあそう言うなよと言うとカミトはエストにこう聞いた。

 「エスト、真祭殿の場所を覚えているか?」

 「当然ですカミト」

 エストはそう言うとカミトはエストに向けてこう言った。

 「偉いぞ、エスト。」

 「はい、カミト。では頭を撫でて下さい」

 そしてカミトはエストの頭を撫でていると『シラヌイ』はカミトのそれを見てこう思っていた。

 「(・・・親子か)」

 そう思っている中それを見ていたレオノーラ達はと言うと・・・

 「カミトさんはエストに甘いです。」

 「何故あいつはいつも・・・」

 レオノーラとエリスはそれを見て羨ましそうに見ていた。

 そしていい加減に業を煮やしたマギアルカが全員に向けてこう言った。

 「お主等いちゃつくんならこれが終わってからにしろい!」

 そう言うとマギアルカはカミトの方を見てこう言った。

 「お主、機竜の武器に遠距離型はあるか?」

 それを聞いたカミトは『シラヌイ』の方を見るとこう言った。

 「あるぞ。」

 「それならさっさと召喚しろ。儂の機竜息銃を使って先程見つけた脆い部分に

撃ちかます。」

 そう言った後カミトは『シラヌイ』のソード・デバイスを抜いて詠唱府を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 そしてカミトは『シラヌイ』の背面部から「清水」を取り出すとマギアルカがこう言った。

 「それじゃあ・・・一二の三じゃぞ。」

 「分かった。」

 そしてお互いが武器を構えるとマギアルカがカウントダウンを言った。

 「一、二の・・・三!!」

 そして一斉に発射すると瓦礫は吹き飛ばすとマギアルカは全員に向けてこう叫んだ。

 「機龍を持っていない者は持っている奴にしがみつくんじゃ!!」

 そしてマギアルカはこう叫んだ。

 「それじゃあ・・・走るぞ!!」

 そして三体の機竜は洞窟の中を全力疾走した。




 そして彼は辿り着く場気場所にへと向かった。


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いざ進む

 みんなで行けば怖くない。


「だー!痛ーなくそが!」

 ジオ・インザーギはカミトから蹴られた腹部を擦りながら周りに八つ当たりして

いる中レスティアは興味なさげにジオ・インザーギに向けてこう言った。

 「過信しすぎてるからよジオ・インザーギ。」

 そう言うとジオ・インザーギはレスティアに向けて怒鳴り散らすようにこう言った。

 「おい、闇精霊!いつになったら終わるんだよ!?」

 「もう少し時間がかかるわね。この石板の暗号を解読しながらだからどうしても手間取っちゃうのよ。」

 そう言うとジオ・インザーギはレスティアに向けてこう言い放った。

 「早くしろ。そいつを使って魔王に楯突いた報いを報いを受けさせてやる。」

 そう言った後ジオ・インザーギはレスティアにある物を見せつけた。

 「間に合わなけりゃこいつで貴様を俺のものにする。」

 それは右手に埋め込まれている紅く輝く勾玉があった。

 それを見てレスティアはジオ・インザーギに聞こえないほどの声でこう呟いた。

 「本当に愚かな男。貴方程度じゃカミトと『シラヌイ』に勝てるわけないでしょ。」

 そして再び石板の解読をしている中銀髪の青年がそれを見てこう言った。

 「・・・やはり奴は魔王になるのにも中途半端か。」

 

 

 

 何処までも続くであろう行動の中で車輪の音と足音が聞こえた。

 長距離の索敵ができる『シラヌイ』を先頭に立ち、後ろにレオノーラと

『メイルストローム』、中央にマギアルカがそれぞれの機竜を纏ってエリス達を乗せて走っていた。

 嘗て精霊鉱石の採掘場として掘られていただけに巨大な迷路のように

入り組んでいた。

 然し人間どころか機竜ですらも余裕で入れることから岩盤の採掘に大型の精霊を

使ったのではないかと言う痕が幾つか見えた。

 途中で封印されていたであろう扉が全て開かれていた。

 「多分・・・ジオ・インザーギの仲間がやったんだな。」

 カミトは総推測すると今度は長い階段が下に続くように伸びていた。

 「このまま進むぞ。」

 マギアルカがカミトとレオノーラにそう指示して下にへと下った。

 暫くするとクレア・ルージュがエストに向けてこう聞いた。

 「ねえ、まだなのエスト?さっきから一時間以上歩いてんだけど。」

 するとエストはクレア・ルージュにこう返した。

 「数百年前とは道が幾つか変わってるんです。後クレアうるさいです」

 「な!!」

 エストの言葉にクレアが怒るとマギアルカがクレアに向けてこう言った。

 「仕方があるまい。何せ数百年前なんじゃ、幾つも風景が変わるわい。」

 そう言われてクレアはむーと頬を膨らましている中九人の前に巨大な石の彫刻を

模った壁がそこにあった。

 そこに描かれていたのは・・・。

 「これは〈五大精霊王(エレメンタル・ロード)〉の彫刻みたいね。」

 クレアが明かりを付けてみたのは・・・五属性を意味する彫刻であるのだがカミトはその下を見た。

 「?・・・これだけ剥ぎ取られている。」

 その彫刻の下には・・・何故か不自然に削り取られた部分があった。

 するとエストがそれをなぞるとこう言った。

 「これは神話の時代の後・・・後世によって存在を消された、闇の精霊王(レン・アッシュドール)」

 「エスト?」

 それを聞いたカミトは聞き返そうとすると・・・何か音がした。

 するとエストがカミトに向けてこう言った。

 「これは神話時代の遺跡。高位の精霊だけが開けれるのでいつでも入れます」

 それを聞いたマギアルカがこう言った。

 「よ~し、乗り・・・。」

 「待って。」

 「は?」

 言いかけた途端にフィアナが待つように言った。

 すると近くの鍾乳洞の側にある溜池を見てこう提案した。

 「禊をしましょ♪」

 「・・・はああ?」

 マギアルカの呆れる声が響き渡った。




 戦い・・・いけるかなあ?


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一時の安らぎ

 先ずは一休み。


 「(女って奴はどうしてまー。)」

 『シラヌイ』が愚痴っている中『メイルストローム』が『シラヌイ』に向けてこう言った。

 「【まあ良いじゃありませんか?ここまで休みなしだったんですし、休憩をする

という意味では丁度良いですし。】」

 『メイルストローム』がそう言った後カミトはこう呟いた。

 「それにしても俺は見張りって・・・ここにいること自体が駄目だろう。」

 声とか音が聞こえるしと文句を言う所を聞いて二機は確かにと思っていた。

 そんな彼女達はと言うと・・・。

 

 

 

 

 「うううう、何で皆大きいのよ~~。」

 クレアがそう言っているがまあ無理はないのだ。

 この中では自分は胸囲が周りに比べると慎ましいのだ。

 そして周りはと言うと・・・。

 「レオノーラ、・・・又大きくなってませんの?」

 「えええ!そんなはずは・・・無いような。」

 「あらエリスさん。胸が大きいわねぇ。」

 「いや何言ってって姫君もちゃんと結構あるでしょう。」

 「いや貴方に比べるとねぇ。」

 女子たちのそう言う声が聞こえる中唯一の女性でもあるマギアルカはと

言うと・・・。

 「やれやれ、若い奴は皆せわしいのお。」

 そう言いながら鍾乳洞の天井を見ているがマギアルカのスタイルはどちらかと言えば十代前半と言っても言い間違いではないスタイルを持っており胸に関していえばクレアよりも結構あるほうである。

 「エスト殿、頭をよく洗ったほうが良いですぞ。」

 「あ、よろしく願いします」

 グリムゲルデと一緒にエストも楽しんでいた。

 

 

 

 「(なあカミト、あの野郎どう見る?)」

 『シラヌイ』がカミトにジオ・インザーギについて聞いた。

 するとカミトは『シラヌイ』にこう答えた。

 「ああそれだがお前の言葉と統合してその後戦闘を振り返ってみたんだが妙な事があるとすれば・・・精霊の耐久値、つまり武器精霊の強さに引っ掛かりがあるし

精霊自身の強さも引っ掛かるんだ。」

 「【つまり彼は何かしらの方法で多くの精霊を使っているという寸法ですね。】」

 『メイルストローム』がカミトの言葉をそう解釈した後『シラヌイ』にこう聞いた。

 「となると頼りはお前だな、相棒。」

 「(任せろ。)」

 

 

 

 カミトと『シラヌイ』と『メイルストローム』の談話が終わった後マギアルカ達は服を着替えて(マギアルカとレオノーラは装衣、フィアナは儀式用の服)カミトと

レオノーラとマギアルカがそれぞれの機竜を纏うとマギアルカが全員に向けてこう

言った。

 「それじゃあ・・・行くぞ!」

 そして扉が開くとそこにいたのは・・・。

 ジオ・インザーギと銀髪の青年と水色の髪のメイド服を着た少女と真祭殿に

立っているレスティアがそこにいた。

 「よう、久しぶりだな。・・・カゼハヤ・カミト!!」

 ジオ・インザーギがそう大声で言うとカミトはテルミヌス・エストを構えてこう

言った。

 「決着をつけるぞ!偽物さんよ!!」




 三回戦開始!!!


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その力の正体。

 それは簡単な手品と一緒である。


「おらあっ!」

 「くそが!」

 カミトがテルミヌス・エストを振り下ろすとジオ・インザーギは剣精霊を召喚して

弾くとカミトはテルミヌス・エストを持って更に踏み込んで剣を横薙ぎに振ると

ジオ・インザーギはそれを紙一重で回避して・・・蜘蛛のように天井に張り付くと

カミトに向けてこう言った。

 「はっ!前戯無しかよ!少しは会話を楽しめないのかよ!?

『レン・アッシュベル』!」

 「悪いが俺に騎士道精神なんてこれっぽっちもないんだよ。お前と同じ・・・教導院出身なんでな!」

 「なっ!!」

 ジオ・インザーギはそれを聞いて驚くとカミトは壁を蹴り上げて跳躍して

ジオ・インザーギ目掛けてテルミヌス・エストを振るってジオ・インザーギの剣を

粉々にして砕くとそのまま壁を蹴って方向転換して『シラヌイ』のソード・デバイスを振るって斬ろうとすると左手から新たな剣精霊を召喚した。

 形状からして刺突用のレイピア型と思われるがカミトはそのまま神威を集中して

ソード・デバイスでその剣精霊を砕いた。

 そしてそのまま踵落としの応用でジオ・インザーギの頭に叩き込んだ。

 「グオオ!」

 そしてカミトはそのまま着地して見てみるとジオ・インザーギが砂煙から

忌々しい表情で出てきた。

 「くそが・・・滅茶苦茶するじゃねえの・・・。」

 するとカミトはジオ・インザーギに向けてある事を言った。

 「閉鎖環境での高次立体移動は教導院じゃ真っ先に教え込まれる技だ。・・・まあ、あんたほど徹底してないがな。」

 するとジオ・インザーギはカミトに向けてある事を聞いた。

 「なああんた・・・魔王再臨の実験って知ってるか?」

 「・・・まあそれなりにな。」

 「(確か僅かに交感能力を持った少年を使って、催眠、薬物投与、精霊憑依をして

人為的に魔王を作るって言う阿保じみた計画だったな。)」

 まあ全部失敗だったがなと『シラヌイ』がそう締めるとジオ・インザーギは声を

高らかにこう言い放った。

 「そして俺がその成功例だ!!そして俺は精霊使いとしては手前よりも

格上なんだよ!」

 そう言いながら笑っている中カミトはと言うと・・・

 「かわいそうなくらい残念だなお前。」

 「・・・何だと?」

 ジオ・インザーギは目を見開いて憎らしそうな表情に歪むとカミトはこう続けた。

 「お前が使っているのは全部・・・封印精霊だろ。」

 「・・・!!!」

 ジオ・インザーギはそれを聞いて驚いている中カミトは更にこう続けた。

 「第一にお前が何体もの同じ精霊を使っていることだ。伝承によれば

魔王スライマンは数多もの異なる精霊を使役していた。なのにお前はそうじゃなく同じタイプを使役していた。」

 「・・・くう!!」

 「第二に剣精霊の耐久値が低い事も理由の一つだ。耐久力においては最硬の剣精霊がたやすく砕けるのもおかしい。」

 「第三に・・・それだ!」

 するとカミトはテルミヌス・エストを手放すと服の袖から短刀を抜いて・・放った。

 そしてそのままジオ・インザーギの左の袖に当てた。

 「なああ!!!」

 するとジオ・インザーギの切り口から大量の・・・精霊鉱石が出てきた。

 「お前が同じ奴を使うときにはそれを出してたんだよ。恐らくお前は風や火と言った精霊をその鉱石に、剣や槍は封印精霊として使っていた・・・偽物だったって

ことだ。」

 「貴様!!」

 するとカミトはジオ・インザーギ目掛けて突進するとジオ・インザーギはこう

呟いた。

 「-顕現せよ、楯精霊(エイジス)」

 すると目の前に楯が現われた。

 本来、盾精霊は剣精霊の攻撃すら弾くほどであるのだがカミトはそのまま

テルミヌス・エストに向けてこう言った。

 「エスト!俺達の力を見せつけようぜ!」

 「ハイカミト」

 するとテルミヌス・エストが光り輝いた瞬間・・・身の丈すら超える

巨大な大剣にへと姿を変えた。

 「なん・・・だと・・・!?」

 「うおらああああ!!」

 そのままバスターソードになったテルミヌス・エストを振るった瞬間・・・盾が真っ二つに切裂かれた。

 「馬鹿な・・・剣精霊が盾精霊を破壊するだと!!」

 「これが俺達契約精霊と精霊使いの力だあ!!」

 そしてそのままバスターソードを振り上げた瞬間・・・ジオ・インザーギが右手を

掲げるとそこには・・・紅く輝いた勾玉が埋め込まれていた。

 「〈!??〉」

 カミトは言い表せない何かを感じた瞬間テルミヌス・エストがその石に

触れた瞬間・・・エストの剣身に罅が入った。

 「・・・!!」

 カミトがそこから離れると今度はそこから黒いシミのような物が広がっていた。

 「それがあんたの弱点だぜ。」

 するとジオ・インザーギが溶岩のような猟犬を召喚するとそれがカミトに

襲い掛かった。

 「ぐお!」

 カミトはそれを避けながらジオ・インザーギにある事を聞いた。

 「何だそれは!?」

 するとジオ・インザーギはカミトに見せつけるようにこう言った。

 「こいつこそ俺の力の根源・・・数多の精霊を支配することのできる狂王精霊

(ネブガドネザル)だ!!」

 「!!成程、そいつで封印精霊を使っていたのかよ。」

 「(とことんのパチモンだなこいつはよ!!)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』がそう続けるとジオ・インザーギは

テルミヌス・エストを見てこう言った。

 「もうすぐその剣精霊は俺のだ。そいつで殺してやるよ。」

 げははははと笑うジオ・インザーギを見てカミトはある事をジオ・インザーギに

言った。

 「おいお前、ここて結構反響するよなあ?」

 「はあ?それが何だよ。」

 「俺が何でお前の力の正体を喋ったと思ってる?」

 「・・・何?」

 カミトの言葉にジオ・インザーギは何だと思っているとカミトはジオ・インザーギに向けてこう言い放った。

 「準備は良いか!?フィアナ!!」

 すると後ろからフィアナがこう言った。

 「ええ・・・準備完了よ!」

 そこには儀式装束を着たフィアナが構えてこう言った。

 「見せてあげるわ。帝国第二王女、フィアナ・レイ・オルデシアの儀式神楽をね!」




 そして鍍金が剥がされる。


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フィアナの舞

 フィアナの秘密が明らかになります。


四年前。

 突如フィアナが敬愛する精霊姫「ルビア・エルステイン」が反旗を翻し最強の炎精霊「レーヴァテイン」を奪ったのだ。

 その燃え盛る神儀院の中で当時幼かったフィアナはルビア・エルステインを

止めるために祭殿に向かったのだ。

 「ルビア様!」

 祭殿で見たのは紅い髪をなびかせていたルビア・エルステインであった。

 彼女が持っている緋焔の剣と光景から息をのむほど美しかったがその凄まじい殺気にフィアナは立っているのがやっとであった。

 「邪魔をーーするな。」

 ルビアの無感情な声にフィアナは気丈に睨んでこう返した。

 「ここから通すわけにはいきません!」

 そして彼女は精霊を召喚するも・・・。

 「邪魔をするなら・・・殺す。」

 その剣の一閃によって精霊を消滅させた。

 「そ・・・んな・・・。」

 フィアナはあまりの事に膝から崩れ落ちた瞬間ルビアがフィアナの前に現れた。

 「あ・・・あああ・・・あ・・・。」

 彼女の下から小水が漏れ出すとフィアナは泣き縋るようにこう呟いた。

 「い、・・・イヤ・・・タスケ・・・お願い・・・。」

 するとルビアはフィアナの元に腰を屈めると耳元でこう言った。

 「フィアナ・レイ・オルデシアーー私の前に二度と現れるな。」

 そしてルビアが何処かへと行方を晦ましたと同時に・・・彼女は精霊を召喚出来なくなってしまった。

 

 

 

 「(それからは一年間王城に籠っていたわね。両親も、姉妹も、兄弟も、女官たちも私を無視してたわねぇ。)」

 フィアナはそう思っていたがある事を思い出していた。

 「(でもそんな私を変えてくれたのは三年前のあのブレイドダンスと

アストラル・ゼロの森の中で・・・カミト君に助けられたこと。)」

 「(あの時貴方は私に立ち上がる力を分け与えてもらった。・・・だから!!)」

 そう思いながらフィアナは神楽を舞っていた。

 ジオ・インザーギの精霊が全て封印精霊ならばと直感でこの舞にした。

 言葉を覚える前から神儀院で教え込まれた、完璧な演舞の動作。

 「儀式神楽第七式ー狂宴の儀、ここに奉納する!」

 

 

 

 

 

 「があ・・・あああ・・・アア・・・貴様!オレにナニヲシターー!!」

 突如ジオ・インザーギの体が捩れて地面に倒れ伏した。

 両腕が有り得ない方向にねじ曲がり始めたのだ。

 「お前の体は多くの封印精霊を祀っているあの神殿そのものなんだ。」

 「(そいつがあの嬢ちゃんの奉納した神楽に反応して)」

 「【彼はもう精霊を使う事すらできなくなっているのです。】」

 「成程・・・それなら彼はもう。」

 カミト、『シラヌイ』、『メイルストローム』、レオノーラの言葉がその真実を

語った。

 「くそがあ!!」

 ジオ・インザーギは五体の精霊を召喚してフィアナを攻撃するも・・・。

 「無駄だよ。」

 カミトがそう言った瞬間エリス達がそれを全て倒した。

 そしてカミトが『シラヌイ』のソード・デバイスをジオ・インザーギの首元に

当てるとこう言った。

 「ジオ・インザーギ、お前を拘束する。ヨルムンガンドの事も含めてじっくり

聞かせて・・・。」

 「それは承知できないな。」

 「!!」

 カミトがそう言いかけた瞬間影から声が聞こえたのでその方向を見た。

 そこにいたのは・・・。

 灰色に近い銀髪の青年がそこにいた。

 「あんたは一体・・・?」

 「ああ自己紹介してなかったな。」

 青年がそう言うと胸に手を当てて自身の名を明かした。

 「俺は元『アーカディア帝国』第一皇子『フギル・アーカディア』だ。

以後宜しみおきを。」

 その時のフギルの目はまるで・・・実験動物を見るかのような目つきであった。




 そして最悪な展開にへと向かう。


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そして悪夢は終わらず。

 未だ終わりは見えず。


 アーカディア帝国

 それは機竜を保有する国からすれば最も強大な国家の名称。

 世界の1/5をその手に収めその戦力は最高ランクで・・・あった。

 

 

 

 

 「嘗ては男尊女卑と言ってな、女は獣以下の子を成すための存在と言われ、

慰められ、貧富の差も激しくてのお。最悪薬の実験体にされた者たちも

数知れぬじゃ。」

 「何て醜悪な。」

 「聞くだけで吐き気が出そうだわ。」

 マギアルカの言葉に傍にいたエリスとクレアが気分を害した顔をしていた。

 オルデシア帝国では女性の軍人が多くおり、そんな国があるとすれば解放の名の下に戦争を吹っかけていたであろう。

 「然し5年前に辺境伯であった『アディスマータ伯』がクーデターを起こしてのお。

本人は戦争で死んだがアーカディア帝国の王族の殆どを討ち取って生き残りは

確か恩赦の代わりに雑用全般を命じられておるそうじゃ。」

 そしてその国はアディスマータ新王国になったのじゃと言うとマギアルカは

こう続けた。

 「只生き残りの中には他国に逃げ延びた奴がいると聞くがこんな所に身を

潜めておったとはのう。」

 マギアルカはそう言いながら『エクス・ドレイク』を起動させるとフギルは

こう返した。

 「そちらの御仁は何を思っているのか知らないが俺はもう『アーカディア帝国』など粗末な事だ。」

 「・・・ほお。」

 マギアルカは武器をそう返しながら武器を構えるとフギルはさらにこう続けた。

 「俺が求めるのはたった一つ・・・『英雄』の存在だ。」

 「「「「「「?」」」」」」」

 カミト達はその言葉にはっ?と思うとフギルはこう続けた。

 「この世界は歪んでいる。貧困、格差、汚職、賄賂、戦争、疫病。それらが

蔓延している。それらをひっくり返す存在、弱者のための英雄が必要となっている。」

 今この瞬間にもと締めくくるとマギアルカはフギルに向けてこう問いた。

 「ほほう。それを聞く限りお主がその『英雄』に相応しいと言いたげな

そぶりじゃな?」

 然しフギルはマギアルカの言葉をこう返した。

 「いや俺は『英雄』を選別し、道を差し示す『先導者』だ。『英雄』などと言うのはおこがましい事だ。」

 「・・・オ・・イ・・・。」

 フギルが言い終えた瞬間足元にいたジオ・インザーギがフギルの足を掴むと

こう言った。

 「はや・・・ク・・・俺を・・・タスケロ・・・・。」

 するとフギルはジオ・インザーギを・・・冷ややかな目でこう言った。

 「やれやれ魔王どころか精霊使いでもなく、暗殺者としても半端ものが俺に

何の用だ?」

 その言葉にジオ・インザーギはこう言い放った。

 「俺は・・・マオウ二・・・なるんだ!!最強を・・・タオシテ・・・俺は!」

 ジオ・インザーギは血を吐きながらそう言うとフギルは懐からある物を二つ出した。

 「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」

 カミト達は身構えると出してきたのは木箱であった。

 そしてそれを開けるとそこにあったのは・・・何かの札と虹色の液体が入った容器であった。

 するとフギルはジオ・インザーギの元を屈むとカミトが『シラヌイ』の

ソード・デバイスをフギル目掛けて振ろうとすると・・・。

 「避けるのじゃ!!」

 「!!」

 マギアルカの言葉にカミトは跳躍するとそのいた場所にはハルバードが

刺さっていた。

 「エスシス。時間を稼げ。」

 「了解。」

 水色の髪の少女、「エスシス」が「エクス・ワイアーム」を纏ってカミト達の元に

向かうとマギアルカはブレスガンとブレードを出してカミト達に向けてこう言った。

 「こ奴はわしがヤル!!」

 そしてマギアルカはエスシスに挑み、カミト達はジオ・インザーギを

捕まえようとすると黒い電撃がカミト達の行く手を阻んだ。

 「彼は貴重な実験サンプルだから勝手に持ち出されちゃ困るわ。」

 「レスティア!!」

 レスティアがカミト達の行く手を遮っている中フギルはジオ・インザーギに向けて

こう言った。

 「貴様みたいな出来損ないでもまあ・・・こいつの良い実験体にはなるだろう。」

 すると注射器にあるその虹色の液体の針に札を刺すとそれ事ジオ・インザーギに

刺した。

 「アグウ!!手前何・・・ヲ!!・・・・・」

 突如刺されたフギルの体がうねうねと文字通り畝っていた。

 「何だ?・・・何が起きて・・・。」

 「一体あれはナニ?」

 カミトとレスティアがその光景を見てそう言うとフギルがレスティアに向けてこう言った。

 「今のうちに逃げないと・・・喰われるぞ。」

 そう言ってエスシスに撤退するぞと言うとそれに従うようにフギルの元にへと

向かった。

 「待つのじゃ!」

 マギアルカがそう言うとエスシスはマギアルカに向けてこう言った。

 「それでは何れ。」

 そう言って出口に向かって一直線に逃げた。

 「おい、見ろ!!」

 カミトが大声でそう言うとジオ・インザーギの右手が紅い精霊鉱石に包まれて

いたのだ。

 「グウオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 ジオ・インザーギは人では出せないような悲鳴を上げると今度は体も変わり

始めたのだ。

 肌は赤黒い肌から黒一色に。

 目は瞳孔が黒く染まり。

 背中から剣や槍が生えだした。

 右腕は精霊鉱石で出来たように金属に変貌し。

 左腕は手甲で覆われ始め。

 足は鋭く尖った虫の足のようになり。

 顔はまるでミイラのように乾いたような感じになり始めた。

 そして変身し終えたジオ・インザーギは最早・・・人でもなく、精霊でもなかった。

 (見た目は「NARUTO」の「十尾」の第二形態の顔に「ヴァンガード」の「絆の根絶者 グレイオン」の体を足した感じ)

 そして右肩に「72」の文字が浮かんだ瞬間・・・ジオ・インザーギだったものがけたたましい雄叫びを上げた。

 オリェエエエエエエエエエエエエエ!!

 それは世界で最初の幻魔人(ノクターン)の誕生であった。




 狂気はさらに強く。禍々しく。


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化け物の蹂躙。

 アレは人ではない。


 「(おいおいおい・・・こりゃ何の冗談だよ!!)」

 『シラヌイ』がそう思っているがそれはここにいる全員の思いでもあろう。

 先程迄フィアナの演舞によって精霊が使えず、もだえ苦しんでいた

ジオ・インザーギがフギルと言う男が与えた虹色の液体を投与されたことにより人から化け物にへと変貌したのだ。

 「カミト・・・」

 「どうしたエスト?」

 エストがカミトに何かを伝えようとした。

 それは・・・。

 「あのナニカから多くの精霊の叫び声が聞こえます。」

 「精霊の?」

 「ええそれも大多数のね・・・。」

 エストがそう言っているとレスティアもそれに同意した。

 「・・・恐らく彼によって封印されていた精霊が彼に取り込まれたのかも

しれないわ。」

 そしてフィアナも吐きかけるような表情でそう続けた。

 「フィアナ!大丈夫か!?」

 「ええ大丈夫よ。・・・ちょっと精霊達の悲鳴で参りそうだけどね。」

 カミトはフィアナを抱きかかえるようにするとフィアナは大丈夫と言って

立ち上がった。

 するとジオ・インザーギだった何かが動きを止めた瞬間クレアがこう言った。

 「・・・何する気?」

 そして全員が武器を構えた瞬間・・・それは訪れた。

 オリャアアアアアアアーー

 再び雄叫びを上げた瞬間右腕を振り上げた。

 「全員散開じゃ!!」

 マギアルカの言葉に従って全員離れた後エリスが全員に向けてこう指示を出した。

 「全員応戦しろ!!このままじゃやられるぞ!!」

 全員攻撃を始めた。

 クレア、エリス、リンスレットは精霊魔装で、カミト、フィアナ、レオノーラは

機竜の武器で応戦した。

 然しジオ・インザーギだった者はその攻撃を避けきっていた。

 するとマギアルカが全員にこう指示をした。

 「誰かあ奴の動きを止めるんじゃ!当たるものも当たらん!!」

 「それなら私がやるわ!」

 するとクレア・ルージュが〈フレイム・タン〉でジオ・インザーギだった者の右腕に巻き付けた。

 「よし!これなら・・・・。」

 ウラアアアアアーー

 「え?」

 クレアがやったと思った瞬間、ジオ・インザーギだった者がそれを力任せに引っ張ってクレアごと飛ばした。

 「グファ!!」

 そしてそのままクレアの腹部を殴った後そのまま右腕でクレアを掴んで床に

叩きつけた。

 「ブフォ!」

 そしてそれはそのままもう一度殴りかかろうとした瞬間・・・後ろから

矢が現われた。

 そしてそれをひょいと避けると後ろにいたのは・・・。

 「クレアを離しなさい。」

 リンスレットが〈フリージング・アロー〉で射ろうとしていたのだ。

 然しジオ・インザーギだった者がそれを見た瞬間背中から・・・幾つもの剣と槍が

生えてきた。

 そしてそれらが一斉に・・・周りに関わらず斉射した。

 「全員障壁を展開するのじゃあ!!」

 マギアルカの言葉にカミト達が障壁を展開するとレオノーラがリンスレットに向けてこう叫んだ。

 「リンスレット!!逃げて下さい!!」

 「くっ!」

 然しそれも間に合わずにリンスレット目掛けて何本もの武器が迫っていた。

 「ええい!!」

 然しリンスレットは矢を四本出して斉射して撃ち落とすもまだ何本か残っており

それらの内二本がリンスレットの右足と左腕に突き刺さった。

 「グギィイ!!」

 リンスレットが苦悶の表情を浮かべた瞬間リンスレットが見たのは・・・。

 「へ?」

 右腕に巨大な光が収束されている瞬間であった。

 そしてそのままリンスレット目掛けて・・・青白い電撃が襲い掛かった。

 「!!!!!!!!」

 リンスレットは声にも出ないほどの悲鳴を上げた後・・・気を失った。

 「リンスレット!!クレア!!」

 「リンスレットさん!!」

 カミトとレオノーラの悲鳴じみた叫びが聞こえた瞬間ジオ・インザーギだった者がそれを見た後・・・雄叫びを上げた。

 オリャアアアアアアアーー

 未だ戦いは終わらず。




 次回は機竜対ジオ・インザーギだった者。


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化け物対機竜

 遂に後半戦。


 「チィ!」

 カミトは倒れたクレアとリンスレットを気にしつつも戦っていた。

 ジオ・インザーギだった者は機竜と同じぐらいの体格になったため機竜相手に格闘戦をしているのだ。

 「カミトさん!援護します!」

 レオノーラはそれに割って入るような感じで戦っていた。

 カミトは「玄海」を、レオノーラは槍を使ってジオ・インザーギだった者と

戦っているが二人を相手取っているのにジオ・インザーギだった者は平然と放った剣と槍を使って応戦していた。

 するとジオ・インザーギだった者はカミトに向けて右手を向けるとそれが

砲口になったのでカミトはそれを避けた瞬間『シラヌイ』がこう言った。

 「(カミト!奴の狙いはお前じゃない!フィアナだ!!)」

 「何!」

 カミトは『シラヌイ』の言葉を聞いてフィアナに伝えようとすると・・・

ジオ・インザーギだった者は問答無用に火球を放った。

 「フィアナーー!!」

 

 

 

 

 「〈あ・・・これ死んだ。〉」

 フィアナは向かってくる火球を見てそう思った瞬間目を閉じてその瞬間を待った。

 「〈・・・・あれ?〉」

 フィアナは未だ訪れない痛みの謎を知ろうと目を開くとそこにいたのは・・・。

 「大丈夫か?小娘。」

 「マギアルカさん!!」

 マギアルカがフィアナの前に立ちふさがるように守っていたのだ。

 「ふぃー。流石に障壁越しでも暑かったわい。」

 「な・・・何で私を?」

 フィアナはマギアルカにそう聞くとマギアルカはニヤリと笑ってこう答えた。

 「これはビジネスじゃ。儂がお主を守る代わりにお主は儂の願いを

叶えさせてもらう。」

 あれには必要じゃからのうとブレードを封印されている所に向けてそう言った。

 「それに・・・お主はここで諦めるタマか?」

 そう言うとフィアナは口を一文字に結んでこう言い放った。

 「当たり前よ!私はフィアナ・レイ・オルデシアよ!こんなところでへこたれるわけにはいかないのよ!!」

 その光景にくくくとマギアルカは笑う中「索敵」をしていた。

 ジオ・インザーギだった者の弱点を探るために・・・。

 そして暫くすると・・・。

 「よし、分かったわい。」

 マギアルカが何かを確信するとカミトとレオノーラに向けて竜声でこう指示した。

 『・・・・・出来るか?』

 「「・・・勿論!!」」

 マギアルカの指示にカミトとレオノーラは賛同するとレオノーラが前に出ると

カミトは少し後ろに下がった。

 マギアルカの指示はこうだ。

 先ずレオノーラがジオ・インザーギだった者を引きつける間にカミトは

「迷彩」を施してジオ・インザーギだった者の心臓部分にある

核を破壊せよという事だ。

 カミトは「迷彩」を起動しようとするとレスティアがカミトの前に現れた。

 「!!」

 カミトはそれを見て身構えるとレスティアがカミトに向けてこう言った。

 「カミト、私を使いなさい」

 「「はあ??」」

 カミトと『シラヌイ』ははあと言うとレスティアはこう続けた。

 「彼は私達教導院が作った存在」

 「歪で不完全な魔王」

 「だから・・・お願い」

 それを聞いたカミトは少し考えると『シラヌイ』がこう言った。

 「(仕方ない。時間が無いからちゃっちゃと終わらすぞ。)」

 それを聞いたカミトはレスティアに向けてこう言った。

 「・・・一緒に戦おう。レスティア。」

 「!!・・・ええ」

 するとレスティアは精霊魔装になった。

 然しその大きさは人間ではまず扱えない・・・『シラヌイ』の「玄海」と

同じ形状をした「真実を貫く剣(ヴォ―バル・ソード)」になった。

 「彼を使いながらだからこうしてみたけどどう?」

 レスティアがそう言うとカミトと『シラヌイ』がそれを持つとこう言った。

 「「良い感じだ。」」

 そしてもう一度「迷彩」を起動させようとするとこんどはエストがこう言った。

 「カミト、私も」

 するとエストも同じようになるとカミトはそれを持った。

 それは黒と白の刀となったエストとレスティアを持つ『シラヌイ』。

 まさに自身の相棒たちの総出演であった。

 そしてカミトは「迷彩」で隠れるもそれを察知したのかジオ・インザーギだった者は左手を構えた。

 するとレオノーラの「グロリアス・テンペスト」の爆炎がそのまま

跳ね返ってきたのだ。

 「【レオノーラ!!】」

 「!!」

 レオノーラは『メイルストローム』の言葉を聞いて回避した。

 そしてジオ・インザーギだった者はカミトを探そうとすると横から何かが

迫ってきた。

 「はああ!!」

 エリスが〈レイ・ホーク〉の風を活かして突っ込んできたのだ。

 ジオ・インザーギだった者はそれを見て右腕を構えるとエリスは・・・

笑いながらこう言った。

 「今だ!!」

 エリスは〈レイ・ホーク〉を逆向きに構えなおすと土煙が立ち込んだ。

 そしてエリスはそのままシムルグに戻して倒れているクレアを回収して飛び去った。

 それを見たジオ・インザーギだった者は再び構えなおそうとした瞬間・・・

殺気を感じて後ろを向くと・・・。

 「遅い!!」

 『シラヌイ』を纏ったカミトが二振りの精霊魔装の剣を構えて振り向いてきた

ジオ・インザーギだった者を・・・両手ごと切り裂いた。

 ウギャアアアアアア!!

 ジオ・インザーギだった者は悲鳴を上げた瞬間カミトは剣を二振りとも・・・

手を離した。

 ジオ・インザーギだった者は何事だと思うと目の前から・・・手裏剣が

現われたのだ。

 そしてそのまま胴体を切り裂いた。

 イギャアアアアアアア!!

 ジオ・インザーギだった者は更に悲鳴を上げた瞬間カミトは『シラヌイ』の

「玄海」を構えてこう言った。

 「ここにいるのは最強のブレイドダンサーじゃねぇ。」

 ここにいるのは・・・。

 「(「只仲間と共に戦うカゼハヤ・カミトだ!!)」」

 そしてそのまま吸い込まれるように・・・心臓部分目掛けて「玄海」で貫いた。




 長かったヨルムンガンド戦も終わりが見えてきたぞお。


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半端ものの最後

 半端ものの末路程哀れなものはない。


「グウゥウウウウ・・・ウおおおおお!!」

 カミトがジオ・インザーギだった者の胸を貫いた瞬間右腕から・・・

ジオ・インザーギが這い出てきたのだ。

 然しその時のジオ・インザーギの状態は酷かった。

 髪は白く染まり肌は未だ黒く、瞳孔が元に戻り始めていた。

 然し体をよく見ると酷い物であった。

 右腕は未だジオ・インザーギだった者とくっ付いており左腕は鉄のようになっていて体中もまるで化け物のように色々な精霊が出たり入ったりと蠢いていた。

 「(おいおいこれって人間かよ。)」

 『シラヌイ』がジオ・インザーギの状態を見てそう言った途端ジオ・インザーギが

何かつぶやき始めた。

 「畜生、畜生、畜生。あの野郎ぶっ殺してやりてえなおい!!」

 最後に大声を上げるとジオ・インザーギがカミトを見た瞬間こう怒鳴り散らした。

 「手前だって俺のこの姿を見ていい気味だとか精霊ともまともに交信できないって思ってるんだろう・・・ゴホゴホ!!」

 ジオ・インザーギは最後に咳き込むと今度はレオノーラ達を見てこう怒鳴り

散らした。

 「見るな・・・ミルナ・・・俺を見てんじゃねえぞ弱者共が!!」

 するとジオ・インザーギは怒鳴り散らしながらこう喚き散らした。

 「手前らみてえに精霊を道具としても使いこなせねえ連中が魔王に歯向かったことを必ず後悔させてやる!!手前ら全員八つ裂きに・・・!!」

 ジオ・インザーギはそう怒鳴り終わる前に自分の腕を見て固まった。

 鉄と化した左腕が・・・なくなっていたのだ。

 そして足元を見ると鉄となっていた左腕が・・・灰になって消えてしまったのだ。

 「な・・・何だよごれはああああ!!」

 ジオ・インザーギが喚くとエリスがある事に気づいた。

 「き、貴様体が!」

 ジオ・インザーギは自分の体を見ると・・・少しずつであるが灰色の粒子が

漂い始め、体が薄くなり始めたのだ。

 「な、何だよこれ、一体!!」

 「それは精霊がアストラル・ゼロに帰還する時の光よ」

 「レスティア!!」

 カミトは精霊魔装になっていたレスティアを見てそう言った。

 そしてレスティアが人型に戻るとレスティアはジオ・インザーギに向けて

こう言った。

 「貴方はあの時フギルによって精霊と一時的に融合して力を得たけどどんなものにも代償が存在するわ」

 「そして貴方の体は今や精霊と同じようになってしまった以上アストラル・ゼロに

帰還することも当然の帰結よ」

 そう言っている間にも体の左半身が灰となり、右半身は粒子となっていた。

 それを証拠に体がどんどんと薄く透明になり始めていたのだ。

 「イヤだ・・・嫌だ!俺はこんな所で死にたくねえよ!!」

 「誰か俺を助けろ!魔王を助けた奴は俺の右腕にしてやるからよお!!」

 ジオ・インザーギはそう言いながらエリス達に助けを求めるも誰も相手にしてもらえなかった。

 「哀れじゃのお。まさに道化じゃな。」

 それを見ていたマギアルカはまるでじわじわと死んでいく家畜を見るような眼で

ジオ・インザーギを見ていた。

 そして誰も相手にしてもらえずカミトの方を見るとこう言った。

 「おい助けてくれよ!あんたなら俺をさ!な!?」

 ジオ・インザーギはまるで縋るような顔でそう聞くも流石のカミトも首を横に振った瞬間ジオ・インザーギは脇目も降らず泣き崩れながらこう言った。

 「おい、助けてくれよ!俺は死にたくねえよ!!助けてくれ!タスケテ!!」

 そしてカミトに向かってなくなった方の左手を向けてこう言った。

 「タスケテ!レン」

 そしてジオ・インザーギは何かを言いかけた瞬間灰となって消え去った。

 灰色の粒子は空にへと舞い上がって・・・。

 「哀れじゃのお。魔王にもなれず、精霊使いにもなれず、何者にもなれずに

死んでいく半端ものほど涙が出ない死に方はないわい。」

 マギアルカはそう言いながら空を見上げた。

 天井は光り輝いているの全員の心は・・・沈んでいた。




 その後アストラル・ゼロにおいてある精霊が目撃された。
 右腕は赤く、左腕は鉄色。
 足は虫のようなもので背中には突起物のような物が生えた精霊がそこにいた。
 そして時折こう言うそうだ。
 「タチュキェテ・・・タチュキェテ・・・。」
 そう言いながらアストラル・ゼロの森を彷徨っているそうだ。


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解放の大蛇

 最強の力はここから始まる。


 後味の悪いジオ・インザーギの最後を見たカミト達は暫くして『シラヌイ』がカミトにある事を言った。

 「(そういやーよ。レスティアは?)」

 「!!そうだ、レスティア!!」

 そう言ってカミトは自身の隣にいたレスティアは見ると・・・既に彼女は

消えていた後であった。

 「一体どこへ?」

 「(あいつ本当に何考えてんだか?)」

 『シラヌイ』がそう言うとレオノーラはある事を口にした。

 「その前にリンスレットとクレアを助けなければ!?」

 「おうそうだな!?」

 その言葉にカミトもそっちにへと向かった。

   

 

 

 

 

 「酷いなこりゃ。」

 「ええ。ここでは満足な治療が出来ません。」

 カミトとレオノーラはクレア・ルージュとリンスレットの傷を見てそう言った。

 クレアは全身に(特に腹部)痣や内出血の跡があるがリンスレットも

酷い物であった。

 右腕と左足に深く刺し込まれた跡があり抜けば直ぐに出血多量を引き起こすほどだ。

 それなら剣ごと岩からどかすという手もあるがそれも深く刺さっているため

抜くこともままならないのだ。

 どうすればよいかとレオノーラはそう思っていると後ろからマギアルカが

レオノーラに向けてこう提案した。

 「お~~い。そ奴についてじゃが外に儂のファミリーがおるから直ぐにこっちに

来るように頼んどいたからそ奴らに任せよ。」

 そう言われるもやはりレオノーラは不安があった。

 すると今度はエリスがカミト達に向けてこう言った。

 「先程シムルグに学院の治癒者(ヒーラー)と騎士団を向かわせるように頼んだ!!ヒーラーの方はシムルグに運ばせるようにしているから半日でここに来るが我々も

出来る限りをしよう!」

 「ああ、分かった!!」

 カミトはエリスに向けてそう言った後カミトはフィアナと隣にいるマギアルカの方を見た。

 そして彼女達の眼前にいる戦略級精霊・・・いや、巨大な装甲機龍がそこにあった。

 「全くあれも機竜って・・・何でもありだなおい。」

 

 

 

 

 

 数分前・・・。

 「はああ!!〈ヨルムンガンド〉の封印を解けだって!!?」

 カミトはマギアルカの頼みに驚いていた。

 自分達は封印に対し彼女は解放をしてほしいというのだ。

 「ふざけるな!!こいつは我がオルデシアの封印精霊だぞ!部外者の貴方に

渡すなど!!」

 「おいおい何言ってるのじゃ?儂がいなければあ奴に皆殺しに遭ってたかもしれないがのお?」

 「ぐう・・・。」

 マギアルカの言葉にエリスはぐうの音も出せなかった。

 まあ確かにマギアルカの指揮により助かった事も幾つかあるがフィアナはさらにこう言った。

 「それに彼女と約束しちゃったのよ。守ってくれる代わりにあれを寄越せって。」

 「はああ!!」

 エリスはその言葉を聞いて唖然とした。

 廃棄したとはいえオルデシア帝国の精霊。

 然も戦略級であるため無料で渡していいのかと思いたくなるのだがマギアルカはこう付け加えた。

 「大丈夫じゃ。商人として約束は守るぞ。ここを責めないように王国に打診しちゃるからのお。」

 「・・・本当なんだろうな?」

 エリスの言葉にマギアルカはならば契約書も書いてやろうかとも言う程であるため

こりゃ駄目だと諦めがついた。

 そしてフィアナは石板を持って祭壇に上がるとこう言った。

 「それじゃあ・・・いくわよ。」

 そして解放の神楽を舞った。

 

 

 

 

 「すげえ・・・。」

 「綺麗ですね。」

 「これが神儀院の・・・。」

 「こりゃ良い物じゃのお。」

 カミト、レオノーラ、エリス、マギアルカがそう言う程見惚れていたのだ。

 その舞は精霊すらもほっとするほど美しい舞であった。

 そしてフィアナの舞が終わった途端また地震が起きた。

 「ま、またか!!」

 「今度のは大きいです!」

 カミトとレオノーラがそう言うと〈ヨルムンガンド〉の前に何か石が現われると

それが割れた瞬間・・・桜色の鞘と剣が現われた。

 それを見たマギアルカは颯爽とそれを取った瞬間柄にあるボタンを押して何かを

唱えた瞬間・・・後ろにいる〈ヨルムンガンド〉が動き出した瞬間それは一瞬で

マギアルカの後ろに現れてそれを纏う・・・いや装着した。

 これがマギアルカが神装機竜〈ヨルムンガンド〉を手にした瞬間であった。




 そして新たなる物語にへと誘われる。


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傷口はばい菌を入れないように。

 傷口はあまり触らないようにね。


マギアルカが〈ヨルムンガンド〉を手に入れた後洞窟から全員撤収するはずなのだが

クレアとリンスレット(特にリンスレットが重症)が心配であるためか動こうにも

動けないのだが扉の奥から声が聞こえた。

 「・・・ここですね。」

 「医療班・・・だ。」

 「!・・・おおい!!ここじゃーー!!」

 マギアルカがそう言って外の人間に呼び掛けた。

 そして扉が開くとそこにいたのは・・・。

 「マギアルカ様!ご無事ですか!?」

 「ボス!」

 「おお、アルマにロロットか!こっちに怪我人がおる!!寝ころばせてるやつは

肋骨が折れとるかもしれんから慎重に運べ!」 

 「はっ!」

 「他は壁に刺さっている女がおる!猿轡と麻酔薬を大至急じゃぞ!」

 「「了解!!」」

 ワイバーンに乗ったアルマがクレアを抱え、カミトよりも年下の少年がワイアームに乗ってリンスレットの方にまで向かった。

 リンスレットの怪我の状態を見たロロットと言う少年は周りの人間に向かってこう言った。

 「誰か手を貸してくれ!突き刺さった剣を抜くのに人員がいります!」

 それを聞いたカミトとレオノーラがリンスレットの左手と右足の所にへと向かった。

 「二人はそのまま彼女を抑えて下さい!少し荒療治なので!」

 「わかった。」

 「分かりました。」

 カミトとレオノーラがそう言って手足を抑え麻酔を打つとリンスレットが彼らに

向けてこう言った。

 「・・・できれば・・・早めにお願いいたしますわ・・・。」

 リンスレットは力なくそう言うとロロットはリンスレットに猿轡をつけて

こう言った。

 「それじゃあ・・・抜きます!」

 「「「せーーの!!」」」

 ロロットが合図を出した瞬間・・・剣が動き出した。

 「ムムム――――!!!ムムー!!!」

 リンスレットはあまりに痛みに麻酔されていても途轍もない痛みが彼女を襲った。

 「もう少しです!!」

 「踏ん張れ!!」

 「リンスレット!!もう少しですよ!!」

 「ムムムムー!!ムムー!!」

 リンスレットはあまりの痛さに涙と涎を出しながら叫び続けていた。

 そして・・・

 ずちゅっと・・・剣が抜けた。

 その瞬間大量の血が噴き出した。

 「リンスレット!!」

 「直ぐに縫合!!」

 「おう!」

 レオノーラがリンスレットに向けて叫ぶとロロットは近くの医療班に指示を出した。

 そして傷口を縫合する中リンスレットがレオノーラに向けてこう言った。

 「も、もう少し声を落としてくださいまし・・・痛いですわよ。」

 リンスレットは力なくそう言うとレオノーラがリンスレットに向けてこう返した。

 「それが言えるくらいなら大丈夫ですよ。」

 レオノーラは泣き笑いながらそう言った。

 リンスレットは力なく笑った後目を閉じて眠りについた。




 良い子の皆は此れしないでね。
 破傷風になるからね。


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やっと帰還。

 やっと終わりが見えてきたなあ。


 あれからカミト達はリンスレットが運ばれるところを見送った後それぞれは洞窟から出ることにした。

 その道中エリスはカミトにこう聞いた。

 「・・・大丈夫か?カミト。」

 それを聞いたカミトは力なくだがこう返した。

 「・・・ああ・・・大丈夫ってわけじゃ・・・ねえけどな。」

 カミトとレオノーラの服はリンスレットの飛び血で赤く染まっているのだ。

 そしてエリスも自分に自己嫌悪していた。

 本来なら騎士団として自身が最前線に立たなければいけなかったのだが

ジオ・インザーギの討伐という途中から学生どころか正式な騎士ですら困難な任務になったのにカミトとレオノーラ、マギアルカの活躍で討伐と石板奪還と言う

色んな意味で騎士としてあるまじき成功の横取りをしてしまった自分に腹が立って

しまったのだ。

 そしてカミト自身も自分の力の無さに鬱屈していた。

 「≪今回の任務はマギアルカがいなけりゃ間違いなく全滅していた。それに

レスティアがいなけりゃ間違いなく死んでいた。・・・これじゃあブレイドダンスに

出場なんて夢のまた夢だ!!》」

 カミトはどうするべきかと考えている中『シラヌイ』がカミトにこう言った。

 「(今回の事は仕方がねえよ。まさかあんな化け物になるなんて誰も思っちゃ

いなかったけどなあ。お前一人じゃ限界だって無論あるんだよ、最強なんて呼ばれても出来る事限られちまうならよ・・・仲間や俺達を頼っても罰当たらねえぜ。)」

 その言葉を聞いてカミトは眉間のしわを少し緩ますとこう返した。

 「・・・ありがとよ。『シラヌイ』。お前にはいつもいつも助けられて

ばっかりだな。」

 「(良いってことよ。俺達は一心同体の相棒なんだぜ。お互い助け合わなくて

どうすんだよ。)」

 【私達もですよ。】」

 「そうですよ。カミト。」

 『シラヌイ』の言葉に『メイルストーム』とレオノーラがそう続けた。

 そしてカミトも少し気が晴れると目の前に明かりが見えた。

 「そろそろ出るぞ。」

 マギアルカが全員に向けてそう言うと全員光の中に入っていった。

 そして目を開けるとそこは・・・。

 「・・・な、・・・・何だこりゃ嗚呼!!」

 カミトはその光景に驚いてしまった。

 何せ荒れ果てていた鉱山都市があっという間に数十人もの人間が機竜の周りで

待機していたのだ。

 廃屋だったところには人間が所狭しとおり、洞窟の近くでテントを張って

怪我していたクレア達を治療していた。

 「あ、当主様!!」

 一人の人間がそう言うと全員がそっちを向いた。

 「当主様!」

 「ボス!!」

 「姉御!!」

 それぞれが思い思いの言葉でマギアルカに近づいていった。

 全員服装が違うが全員マギアルカを心配していたようであった。

 すると医療班の一人がマギアルカに近づいて報告をした。

 それを聞いた後カミト達に向けてこう言った。

 「全員無事じゃぞ。」

 それを聞いてカミト達はほっとするとマギアルカはこう続けた。

 「じゃがクレアとリンスレットは少々ここで治すには機材が足りん。故に後は

オルデシアに丸投げじゃがよろしいな?フィアナ姫。」

 それを聞いた後フィアナはマギアルカに向けてこう返した。

 「ええ無論よ。・・・と言いたいところだけど少し取引がしたいんだけど?」

 それを聞いたマギアルカはフィアナの方に顔を向けるとこう言った。

 「ほう・・・どんな内容じゃ?小娘。」




 その取引の意味とは一体?


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取引内容。

 フィアナがマギアルカに持ち掛けた話についてです。


 アレイシア精霊学院

 カミト達はあの後やってきた騎士団とヒーラーによってクレアとリンスレット達を

治療してくれた後マギアルカ達と共に学院に戻ったのだ。

 機竜はカミトとレオノーラが住んでいる療養所に全機置くこととなったが

ギリギリ入るかどうかになってしまっているのだ。

 そして他の人間は待機することとなりカミト達はマギアルカとアルマ、ロロットを

連れて学園長室にへと向かった。

 エリスが扉をノックすると外から声が聞こえた。

 「入れ。」

 扉の向こうからグレイワースの声が聞こえた後部屋に入るとフレイヤ先生も

そこにいたのだ。

 如何やら事の顛末を聞くためにいたようだ。

 「全員無事とは・・・いかないまでもそれなりに成果を出したようだな。」

 「学園長、今回の事でラッカ、レイシア、クレア、リンスレットが負傷を

負いました。」

 「ああ、それについてだが・・・君の精霊が持ってきてくれた手紙も含めて

報告してくれないか?無論彼女も含めてな。」

 グレイワースはマギアルカの方を見てそう言うとマギアルカはため息交じりでこう言った。

 「はああ・・・仕方がないのう。こういうのは面倒くさいんじゃが。」

 そしてマギアルカ、エリスの報告が始まった。

 

 

 

 

 そして報告が終わるとグレイワースは顎に手を置いて何かを考えていた。

 「アーカディア帝国・・・機竜・・・教導院・・・挙句のはてに人を化け物に

してしまう薬。・・・全く、こんなの帝国の中央議会に持ち込めるわけないだろう。」

 下手したら戦争ものだぞとグレイワースは頭を掻きながらそう言うとフレイヤ先生もこう言った。

 「確かに、それだけの力を持っている国がある以上こちらも対処せざる追えませんが然し・・・。」

 フレイヤ先生は少し苦々しい顔で言葉を詰めた。

 三十年前なら未だしも今のナンバーズは殆ど全員が戦争を体験した事がなく

精霊使いの経験者といえばグレイワースぐらいなものである。

 するとフィアナがグレイワースにある提案をした。

 「そこで学園長、折り入って頼みたいことがあります。」

 「?何だ?」

 グレイワースが何事かと思って聞くとフィアナはこう言った。

 「ここにいるマギアルカ様に機竜や戦闘訓練をつけさせたいのです。」

 「ほう・・・その理由は?」

 グレイワースはフィアナに目を細めて聞くとフィアナはこう答えた。

 「私達は正直精霊を使役した試合なら未だしも精霊を使った実戦はしたことがありませんしこれからも同じことが起きかねません。それゆえにこちらも対応策を講じたいのです。自分の身と仲間を守れるように。」

 グレイワースはそれを聞いて少し考えているとフレイヤ先生はこう言った。

 「それは無理だ。元来精霊使いは精霊とコミュニケーションをとって国を豊かに

させるのが主目的であって戦闘重視とは流石に・・・。」

 「良いだろう。了承しよう。」

 「学園長!!?」

 グレイワースがOKを出したことにフレイヤ先生は驚いているとグレイワースは

こう続けた。

 「今回の事がこれっきりとは限らんしそれに彼女達を見るともう無理だろう。」

 グレイワースはカミト達の目を見てそう言った。

 全員覚悟が出来ているからだ。

 「それじゃあ新しい教室だがまだ実験段階である事を含めて生徒は

お前達だけとする。教室は療養所の一室を使え。教習内容は・・・そちらに一任

したい。」

 グレイワースはマギアルカにそう言うとマギアルカはにこっと笑ってこう言った。

 「良いのかのう?儂のは少し厳しいぞ??」

 「むしろ徹底的に扱いてくれるとこちらも楽だからな。」

 それぞれ了承を得たのでグレイワースはある事を言った。

 「それじゃあ・・・今後についてだが・・・」

 「失礼します!!」

 突如ヒーラーが扉を勢い良く開けるとグレイワースはヒーラーに向けてこう言った。

 「何だ?今から大切な話があるのだが?」

 そう言うとヒーラーはグレイワースに向けてこう言った。

 「クレア・ルージュが目覚めたんですが少し問題があってそれで大騒ぎに!!」

 それを聞いたグレイワースは溜息を出すとこう言った。

 「それじゃあ話は・・・クレア・ルージュを止めてから話すから一緒に来い。」

 そしてカミト達はグレイワースに着いていった。




 真実は時に残酷である。


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火は魔に落とされる。

 クレアが怒る理由です。


「納得出来ません!!」

 クレアが〈聖セラエル医療院〉で大声を出してそう言った。

 彼女達の怪我がラッカ達よりも酷い(当人たちは学校の医療施設にいる)為学園長が彼女達をここにいれたのだが何故かクレアが怒り心頭であった。

 その理由は・・・。

 「ブレイドダンスに出場出来ないなんてそんなの有り得ないわよ!」

 これが理由である。

 クレアは腹部の肋骨骨折と脳震盪に伴う一時的な体の不調。

 リンスレットは右手と左足の使用厳禁と洞窟内での治療における体の不調がないかの検査の為ブレイドダンスの出場はしないようにと言うヒーラーからの忠告を聞いて

クレアは怒り狂ったのだ。

 然もリンスレットも言葉に出してないが同じ思いであった。

 するとクレアがベッドから出ようとした。

 「私には叶えたい事が・・・痛ゥ!」

 「ほら言わないことですよ!!ベッドから戻って下さい!」

 ヒーラーの一人がそう言ってクレアに近寄るもクレアは差し出された手を叩き落してこう言った。

 「私は・・・こんな所で・・・立ち止まる訳には・・・!!」

 クレアはベッドの柵を使って歩こうとすると部屋の外から誰かが来た。

 そして目の前の扉が開かれてその一団を見た。

 「困るな、クレア・ルージュ。お前は怪我人なのだからそれらしくしなければいかんだろう?」

 「「学園長!!」」

 クレアとリンスレットはグレイワースを見て身形を正そうとするとグレイワースは

手を前に差してこう言った。

 「構わん。お前達は怪我人だしクレア・ルージュ。貴様は当分ここに入院せざる

をえないのだ。」

 そう言いながらグレイワースはクレア・ルージュをひょいっと摘み上げてこう

言った。

 「さっさとベッドに入ってろ。」

 そう言いながらポイっと放るかのようにベッド目掛けて投げた。

 「!!!!!!~~~~~!!!!!」

 クレアはあまりの痛さに悶絶しながらこう反論した。

 「で・・・ですが学園長!その為に三週間入院の後は一か月の様子観察なんてして

いたらブレイドダンスが終わってしまいます!!」

 クレアはもうじき始まるブレイドダンスについてを言うとグレイワースはクレア・ルージュに対してこう返した。

 「駄目だ。確かにブレイドダンスは精霊使いからすれば名誉ある大会であるがそれは同時に他国に対して自国の軍事力をアピールするためのものだ。」

 「「「「「?」」」」」

 その言葉に全員が何故と思うとそこにいいたマギアルカが代弁した。

 「成程のお~。つまりは自国の精霊使いを見せつけて他国に対して圧力をかけて

優位性を確保したいといった所じゃなあ?」

 その言葉にグレイワースは頷くとこう続けた。

 「そのためには万全のメンバーで出陣させなければならない。だが怪我した

メンバーを入れれば他国からどのような目で見られるかは・・・分かるな?」

 グレイワースはカミトに目を向けて聞くとカミトはこう答えた。

 「人材不足・・・ってことか?」

 「そうだ。そうなれば好戦的な国から攻められる機会を与えることとなる。

国の威信を掛けた試合に個人の意思を尊重するなどあってはならないからだ。」

 グレイワースは全員に向けてそう言った。

 世界規模の大会なら万全でかつベストメンバーでやっても勝てるかどうか

分からないが1%の可能性があるならそれを高めようと考えるのが性である。

 だがクレアはグレイワースに向けてある提案をした。

 それは・・・。

 「・・・呪装刻印。」

 「!!」

 グレイワースはその言葉を聞いて目を大きく開かせた。

 「あれなら精霊使いの神威を増幅させて回復を早めさせることが出来ます!!」

 呪装刻印とは人工的に付与された刻印であり精霊の封印や契約精霊の力の底上げ、

新たな属性の付与等ランパール戦争の際には精霊使いのこれを与えていたが

適合できたのはほんの一割で殆どが暴走を起こしたり精神に異常をきたして病院送りと様々な副作用を起こしたため国家間における禁止条約が締結されるほどであった。

(裏では未だ実験が続けられている。)

 「学園長、私にそれを移植させてください!私なら制御できます!」

 「・・・そう言って私から消えた人間を何人も見てきたしそれによって精霊使いに

戻れなくなった人間も数多くいた。」

 「だから・・・許さん。」

 グレイワースはまるで泣くのを堪えるかのようにそう言った。

 然しクレアは縋るかのようにこう続けた。

 「それでも構いません!この身がどうなろうか構いません!!私には叶えたい」

 クレアは何か言いかけた瞬間・・・パンと言う音が鳴った。

 「へ?」

 全員は声にも出さなかった。

 何せグレイワースがクレアの頬を引っ叩いたからだ。

 「いい加減にしろよ小娘。」

 そしてグレイワースはクレア・ルージュの胸元を握りしめてこう言った。

 「どんな理由があるにしても下法に身を染めた奴の末路はお前が良く知っている

だろう!精霊が弱体化するだけなら未だしも今度は二度と精霊を使役できなく

なるんだぞ!私の目の黒いうちは何があっても生徒にそんなものを使わせん!!

良いな!!!」

 クレアはグレイワースの言葉に二の次を出すことが出来なくなった。

 そしてグレイワースは全員に向けてこう言った。

 「戻るぞ。」

 そう言ってグレイワースはクレア・ルージュとリンスレットを残して立ち去った。

 その姿をクレアは見ることすらできなかった。




 あと少しで第二巻が終わりそうだ。


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新たな編成。

 足りなければ補え。


〈聖セラエル医療院〉から出たグレイワースはすぐそこのカフェでカミト達を招いた後力尽きるように倒れてこう言った。

 「やれやれ・・・私もまだまだ未熟ものだな。あの程度で感情を出すなど。」

 グレイワースはクレア・ルージュを叩いた手の方を見ながらそう呟いた。

 その声は弱弱しく儚そうな印象であった。

 その言葉にマギアルカはこう返した。

 「良いではないか?未熟ならまだまだ成長できるという物じゃ。それに人と言うのは感情を表に出さなければ分からないこともあるし叩かれなければ分からんことも

あるわい。」

 マギアルカはそう言った後紅茶を嗜むがグレイワースの顔が少しすっきりしたような感じになった。

 それを見て落ち着いたのか『シラヌイ』がカミトに向けてある事を聞いた。

 「(そういやよ、今後のことでカミト達になんか言いたかった事あるんじゃ

ねえのか?)」

 それを聞いてカミトはそれについて聞いた。

 「グレイワース、あんた俺達に何か話さなけりゃならないことがあったん

じゃないのか?」

 それを聞いてグレイワースはそのことを思い出した。

 「そう言えばそうだったな。何分色々とあったからな。」

 「まあ、しゃあねえよ。あんなことがあったんだから。」

 カミトは先程の一件について気にしないように言った後グレイワースはその話に

ついてを言った。

 「貴様らのチームは今回の事で参加人数に不備を起こしてしまっただろ?」

 「ああ。」

 「はい。」

 「確かに。」

 カミト、レオノーラ、エリスがそれを言われ少し意気消沈した。

 現状カミト、レオノーラ、エリス、共々一人きりになり今回のブレイドダンスを

どうしようかと考えていたのだ。

 「これ迄も各国ではそれなりの事情でチームが成り立たないことがあったからな

それなりの救済措置がある。」

 「救済措置って・・・何だよ?」

 カミトはグレイワースの言葉が何なのかを聞いた。

 それは・・・。

 「お前達四人でチームを作れ。」

 「「「「・・・・・はああ!?」」」」

 まさかのことにカミト達は驚いていたがマギアルカはああそう言う事かと納得した。

 「成程のう。手練れをそのままほっとくのも愚策。ならば足りない者同士を集めて

取敢えず形を成そうという訳じゃな?」

 「そうだ。ブレイドダンスは国を見せつけるに必要な場所だ。お前達には残りの

試合をこのメンバーで勝ち残ってほしいのだが意見があるのなら聞こう。」

 そう言って周りを見渡すとエリスが手を挙げていた。

 「何だ?エリス。」

 「あ、はい。我々は未だお互いのことを知っていません。特にカゼハヤ・カミトが

ですがこのメンバーで調整するのはどうかと」

 「ならばほかに方法があるなら聞こうか?エリス。」

 エリスの言葉を聞いた後グレイワース代用作は無いかと聞くがそれを言われ何も言えなくなったエリスを見て全員に向かってこう言った。

 「よろしい。後はお前達でチーム編成をしろ。書類は私が何とかするので・・・今日はゆっくり英気を養うためにここで何か食え。私のおごりだ。」

 それを聞いて全員嬉しがりながら注文票を見ているのを見てマギアルカはこう

言った。

 「さてと・・・ここからどうしようかのう?」

 その顔はまるで遊び道具を見つけた子供の様であった。




 これにて第二巻終了。


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竜の恋戦
最強帰還!!


 第三巻突入!!


 「ふぁああああ。」

 朝の・・・五時の夜明けすらない夜の中カミトは目覚めた。

 カミトはベッドから出て服をパジャマから・・・装衣に着替えた。

 何故カミトが装衣を持っているのかと言うと・・・。

 「おはようございます。カミトさん。」

 すると部屋の外からレオノーラが装衣を纏って入って来たのだ。

 「おお、おはよう。レオノーラ。」

 カミトも挨拶返しをした後二人は外に出た。

 するとそこにいたのは・・・。

 「おはよ~。カミト君。レオノーラさん。」

 「おはよう。カミト、レオノーラ。」

 フィアナとエリスも装衣を纏って外に出ていたのだ。

 フィアナは眠そうであったが・・・。

 彼らはその後森にある嘗てエストが封印されていた祠のすぐ近くまで歩いていった。

 未だ夜という事もあり本来なら出入りできないのだがある事をする為に特別に

グレイワースから特別に許可してもらったのだ。

 それは・・・。

 「おお、よく来たな。小童ども。」

 祠の入り口の近くでマギアルカが『エクス・ドレイク』を纏ってそこに立っていた。

 「それではいつも通りの演習じゃ。カミト、レオノーラは儂と一時間の間、機竜を纏って組手じゃが機竜が解除されたら終了。その後はエリス、フィアナは30分間

儂と生身での組手、精霊の使用も可じゃ。良いな。」

 「「「「はい!」」」」

 「それじゃあカミト、レオノーラは機竜を纏え。」

 そして二人は『シラヌイ』と『メイルストーム』を纏うと近くにいたアルマがこう言った。

 「演習・・・開始。」

 そう言った瞬間三人はそれぞれの得物で・・・やり合った。

 

 

 

 

 あれから一週間がたちカミトとその周囲の環境は変わった。

 ブレイドダンスが近いことからカミト、レオノーラ、エリス、フィアナは

チームを組んで選抜戦に挑んだ。

 諜報を得意とするカミトが遊撃として加わり、フィアナは戦闘支援、エリスが指令、レオノーラが前衛と言った実に広範囲な戦闘陣形が組み上がったがそれは機竜でも

同じことである。

 マギアルカの指導の元、機竜の動かし方や陣形の取り方、種類に応じての機竜の

操作方法、アビスの種類や対応策などを学び、朝早くと授業後にはこうやって

組手をして実力を伸ばす中である変化が起きた。

 それはフィアナが精霊を召喚したのだ。

 名前は「ゲオルギウス」と言う騎士型の聖精霊で防御を得意とする精霊であった。

 恐らくガドでの戦いとこれまでの特訓で自分に自身が出たのか出せるように

なったようだ。

 その時のフィアナの表情は驚きと感動に満ち溢れていたようであった。

 そしてそれによることも相まって連戦連勝の記録を打ち出し、等々現状第三位に追いつけるぐらいにまでなった。(カミト達とチームを組んだことで得点が一緒になった後三分割され現在の第三位は上級生で締めたものであった。)

 そして朝霧が立ち込み始める中ある少女が学院にやってきた。

 輝きを放つブロンドの長髪と純白のマントを羽織った・・・腰にレイピアを差した

少女がそこにいた。

 そして少女はアレイシア精霊学院を見ていると・・・どこからか声が聞こえた。

 「《ほおう、これが精霊学院とは何とも壮大だな。》」

 「そうだ。お前は少し黙っているようにな。」

 「《分かっているさ主よ。だが我の声を聴けるほどのものなど折るかの?》」

 「さあな。だがお前に似た奴を私は知っている。・・・結局会えなかったがな。」 

 「《ああそなたの想い人か?耳にタコができる程聞いたな。》」

 「////!!な・・・にゃにを言って!!」

 「《慌て方がバレバレだぞ。何とも初心よのう我が主よ。》」

 「////とにかくお前のことは学園長に報告する!それからだ!!分かったな

『カオス・ブレイカー』!!」

 「《分かっているとも。我が主『ヴェルサリア』。」

 今学園最強が帰還しようとしていた。

 白と赤のラインが入ったレイピアを持って・・・。




 等々ここまで来たぞお!!


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報告会

 報・連・相は絶対必需!


「それで・・・あちらの様子についてだがフレイヤ先生、報告がてら聞きたい。」

 学園長室でグレイワースがフレイヤに向けてそう聞くとフレイヤ先生はこう返した。

 「はい、先ずドラグライドを使った実践演習ですが彼女の強さにあのエリスですら

太刀打ちできないようです。」

 「ほう・・・やはり第一位は伊達ではないという事か。」

 グレイワースはフレイヤ先生の報告を聞いて改めてマギアルカの実力に少しだが

驚いていた。

 彼女自身、「金で買った」とは言ったが機竜の搭乗経験がなくとも精霊を使って

戦っているエリス達に対しそれを素の状態で戦って勝っていることに任命させてくれたことに二重の意味で感謝していた。

 「[彼女のおかげでフィアナ姫の力を取り戻させてくれた事には感謝だな。]」

 「次に教師陣からアビスに対してですがやはり情報が不足していて対抗するにしてもレオノーラからの情報と合してもやはり機竜無しでは自殺行為だという結論に

至りました。」

 「それでも万が一があってはいかんからな。対策として結界を張って避難させると

いうことしか思いつかんな。」

 これで終了してとグレイワースが締めくくると報告についてが出た。

 「それでは報告ごとが二つ、一つは『マーダーズ』の商人が、学院都市に

潜入しているという情報を掴みました。目的は恐らくブレイドダンス前に学院生に

呪装刻印を売り込もうとしているんじゃないかと思われます。」

 「忌々しい連中・・・いや待てよ。もしかしたら・・・」

 グレイワースはその報告を聞いた途端何やら顔を顰め面にして考え事をするとそれを見ていたフレイヤ先生がグレイワースにこう聞いた。

 「どうされたんです?学院生?」

 「いや何でもない。エリスにそれを伝えて『シルフィード』に学院都市の警備を強化させるように命じておけ。」

 「はい、それと二つ目ですが・・・。」

 「うん?」

 「『ヴェルサリア・イーヴァ』が先程学院に戻ってきました。」

 「それを聞くとグレイワースは眉を僅かだが跳ね上げてこう言った。

 「それはすごいな。たった数週間足らずで魔人級精霊の討伐任務をこなすと

なれば。」

 「ええ、間違いなく学院最強の精霊使いですし今回のブレイドダンスを期にこれまで単独で事をこなしていたヴェルサリア相手にチーム加入を懇願されるでしょう。

出場三枠の一つは彼女のチームで」

 「いやそれはないだろうな。」

 グレイワースはフレイヤ先生の言葉に割って入り否定した。

 「何故そう言いきれるのです?幾ら彼でもグレイワース相手では。」

 「いや君が思っていることよりも面白い展開が待っているはずだぞ?」

 「??」

 グレイワースの意味深な言葉を聞いてフレイヤ先生は疑問の様子をしている中

グレイワースはある事を思い出していた。

 「[もし『マーダーズ』が例の薬を売買していることを想定した方が良いな。・・・悪い予感が的中しなければ良いが。]」

 それは嘗てカミトが鉱山都市でジオ・インザーギが使用したといわれる秘薬の事を

考えていた。




 その想像は・・・現実のものとならん事を。


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新たな試合開始!

 今回は新たに結成されたカミトのチームの戦闘模様である。


 「『カミトさん。間もなくフィアナとエリスが合流ポイントに到着いたしますので

準備を。」」

 「分かった。」

 カミトはレオノーラからの竜声が聞こえて指示を聞いた後カミトは森の先にいる

開けた野原の方を見た。

 「(どう考えても待ち構えられてるなあれ。)」

 『シラヌイ』がカミトにそう聞くとカミトはそれに肯定で返した。

 「ああ、正面に三人、後ろに二人。部分展開技術を会得するとこんなに便利

だとはな。」

 あの事件の後機竜に慣れていたカミトとレオノーラに対してマギアルカは彼らに

部分展開する知識を教えており試合や特訓でそれを会得した事で試合に有利な状況が

出来上がりつつあった。

 「カミト、いるか!」

 「カミトさん。」

 すると後ろからエリスとレオノーラが呼んできた。

 「あれ?フィアナは?」

 カミトはフィアナが見当たらないことでどうしたのかと聞くと・・・。

 「はあっ、はあっ、待ってよ。」

 遅れて・・・息を上げながらフィアナがやってきた。

 神儀院では精霊の儀式神楽などと言った支援なら未だしも戦闘訓練は受けていない

ようだ。

 するとフィアナがエリスの方を見ると・・・こう聞いた。

 「どうして私よりも胸が大きいのにそんなに早く動けるのよお。」

 「なあ!」

 エリスはそれを聞いて胸を隠すようにするも隠し切れなかったのかはみ出ている

ところがありそれをみたカミトは顔を赤くしてそっぽ向くと・・・。

 「じ~~~。」

 「な、何だよ?」

 レオノーラがカミトを睨んでいたのだ。

 「【あの皆さん?未だ敵がいますけれど?】」

 『メイルストーム』がそう言った後レオノーラとカミトは突撃する準備をしていた。

 「前方の敵は私が、後方はカミト。良いですね?」

 「おお。」

 カミトはレオノーラの作戦に答えるとレオノーラは「テンペスト・ソード」を

構えるとフィアナ達にも聞こえるようにこう言った。

 「それでは・・・行きます!」

 すると巨大な突風が吹き荒れた瞬間カミトはその風に乗って敵中に飛び込んだ。

 「「「!!!」」」

 敵チームはそれを見て驚いて散開しようとすると・・・。

 「遅い!」

 カミトは恐らく厄介であろう竪琴を持っていた少女に向かって剣を振りかざして

竪琴如切り裂いた。

 「ぐう!」

 「ヴィッテ!」

 「仲間の心配している場合ですか!?」

 恐らくカミトは覚えていないだろうが「セレモニー」の際にクレアを痛みつけていた精霊使いが仲間の名前を言った瞬間レオノーラが剣を振りかざして彼女に

斬りかかった。

 「ちぃ!」

 「貴様!」

 カミトはそれを見ている中後ろから巨岩精霊が拳を振りかざした瞬間・・・

拳が斬られたのだ。

 「ば、馬鹿な・・・?」

 彼女はそれを見て驚いているがタネを明かせば何ともない。

 それは・・・。

 「〈まさか高周波を剣に纏わすだけでこんなことが出来るとはなあ。)」

 

 

 

 

 「良いかお主等?お主等は精霊の力を遠距離のみで使っておるがそれでは

対応される。」

 マギアルカはある特訓の後こう言っていた。

 「じゃからその力を逆に精霊の武器に纏わせてみらんか?遣りおう次第では

近接戦闘で格上の精霊相手でも対抗できるはずじゃわい。」

 

 

 

 

 

 「(それで実践してみると全員何気なくだが出来るようになっちまったん

だよなあ。)」

 前に俺がやったみたいに。と『シラヌイ』がそう言っているが実際は

それなのである。

 嘗て「セレモニー」でカミトが軍用精霊を両断したような感覚であった。

 「くおのお!!」

 巨岩精霊の使い手がカミトのもう一方の手で殴りかかった瞬間・・・カミトはそれを一閃で真っ二つにして斬り捨てた。

 「な、何者だ?貴様らは?」

 すると後ろに立っていた金剛精霊の精霊使いがカミトとレオノーラに向けて

そう言うと二人は揃ってこう返した。

 「「『チームスカーレットだ!!』」」

 そう言って二人は高周波と風を纏った剣で金剛精霊を切り捨てた。

 「そんなマサカ!!」

 「これで・・・」

 「きゃあ!」

 「フィアナ!」 

 レオノーラが止めを刺そうとすると後ろからフィアナの叫び声に気づいた

カミトが呼び掛けた。

 「な!何ですあれは!」

 それは水で出来た大蛇であった。

 「おいおい高位精霊かよ。」

 カミトはそれの正体を看破するも平常心であった。

 何せ・・・。

 「まあエリスがいるから良いか?」

 「そうですね。」

 

 

 

 

 

 「ちょっとナニコレ!!って・・・いやあああ!そんな所触んないでよ!!」

 如何やら大蛇はフィアナの体を色んな意味で締めあげていたようだ。

 ・・・見た感じエロいが。

 「待ってろ!すぐ助ける!」

 エリスがそう言うも大蛇は口から水弾を発射させた。

 「ちぃ!攻撃型か!」

 エリスはその威力を見て相手の力を分析していた。

 これもマギアルカからの教えである。

 本人曰く「大将ならどっかりと座って全体を見渡せ。」と言ったのだ。

 「『シムルグ』!!」

 エリスは精霊魔装を解除して動物型に戻すと『シムルグ』は蛇の周りを飛び回り

攻撃を躱しながら大蛇の周りを飛び回り苛つかせさせた。

 大蛇は攻撃が当たらないことに苛つきとうとうフィアナから離れようとすると・・・フィアナは召喚式を唱えた。

 -汝、人の子の王に仕えし剣聖の騎士よ!

 -旧き血の契約に従い、我を守る剣となりて我が下に馳せ参じ給え!

 直後緩んだところが膨れ上がって破裂した。

 フィアナを片手に抱きかかえている甲冑の騎士こそ騎士精霊〈ゲオルギウス〉

 オルデシアの王家に代々仕える契約精霊である。

 そしてそれを見たエリスは近くにあった水たまりに槍を向けてこう言った。

 「チェック・メイト」

 すると水溜りの近くの林にいた精霊使いが悔しそうにこう言った。

 「・・・ここまでの様ね。」




 我らに敗北は死と同意義である。


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授業中は静かに。

 勉強はちゃんと受けとけよ~~。


「あ、カミトさん。その内容間違ってますよ。」

 「え?ありがとうな、レオノーラ。」

 「どういたしまして。」

 カミト達は試合の後勉強をしていた。

 マギアルカ曰く「何事も文武両道。機竜以外、精霊についてもカミトは学ばなければいかんとグレイワースから言われておるから最悪単位を落とすような真似は

するなよ。」だそうだ。

 そう言う事で体系的な精霊学が苦手なカミトと・・・騎士団と本の全てを覚えようとするエリスの勉強にレオノーラとフィアナが教えていた。

 因みに今勉強しているのは機竜側では「三大機竜奥義の特性」、精霊側は

「呪装刻印における危険性」をフレイヤとマギアルカの代わりに(本人は商業で不在)アルマがそれぞれ教えていた。

 前半は「三大機竜奥義」の種類とメリット、デメリットを教えていた。

 フレイヤもそれについて勉強机で聞いていたがそれを作った人間(噂だが)の年齢と功績に驚いていた。

 「一説では三大機竜奥義を作ったのは若干十二歳の皇族だったって言う噂が有ったが本当かどうかは定かじゃねえが唯一分かるのはこれを使った人間は1200機の機竜を一人で倒し皇国を滅ぼした『黒き英雄』ではないかと言う噂もある。」

 それを聞いたとき全員が驚愕していた。

 たった一人で精霊使い1200人と渡り合うような物だと思っているからだ。

 「〈それって下手すりゃグレイワースと同等・・・いやそれ以上って事だろう。とんでもないぞおい。〉」

 「『クイック・ドロウ』か、これにシムルグの力を足せば。」

 「『リコイル・バースト』。下手すれば自殺行為しかないわね。」

 「『エンド・アクション』。これを極めればルビア様の攻撃も。」

 それぞれ三大機竜奥義を意見した後入れ替わってフレイヤが授業を行った。

 「ーーつまり、場合によっては、契約精霊の消滅に至る。ここの生徒だけではなく

学院生徒はそのようなものに手を出す愚か者がいないと思いたい。」

 「ランパール戦争の際には中には無理やりだが呪装刻印を移植された者がいたが・・・エリス、そのほとんどはどうなったかを答えろ。」

 「はい、契約精霊が暴走し、死に至ったことさえあると聞いています。」

 「そうだ。適合率は僅か一割弱。その危険性は証明されるも未だに非合法の研究が

続けられている。」

 「・・・なんだか今日の授業は結構呪装刻推しだな。」

 カミトはレオノーラにそう聞くと隣にいたエリスがこう返した。

 「実は今朝、騎士団に通達が来て最近学院都市で呪装刻印を違法に売買している輩がいるらしく、ブレイドダンス直前という事もあって注意喚起を呼び掛けている

そうだ。」

 特に成績が伸び悩んで連中を標的にしてなと言うと『シラヌイ』がその言葉にカミトに対してこう返した。

 「(要は自身がねえってことだろ。そう言う連中をターゲットにして金を

手に入れる。精霊の森で密漁したり封印精霊の横流しするよりか低リスクでハイリターンだもんな。こう言うお嬢様学校は格好の標的だもんな。)」

 『シラヌイ』の言葉を聞いた後カミトはエリスの方に向き直すとエリスはペンを強く握りしめてこう言った。

 「私は騎士として、なにより一人の精霊使いとして呪装刻印を売買して学院を

蝕むような連中を決して許さない。」

 それを見た後カミトはエリスにこう聞いた。

 「もう騎士団はそう言う奴は捕まえたのか?」

 「いや、先日の襲撃事件以来深刻な人手不足に陥っているのだ。マギアルカ殿の

紹介で来てくれたギルゾレイクファミリーが空いた穴を埋めているもののやはり

他人まかせという訳にはな。」

 そう言いながらエリスは窓際で座っているアルマの方を見ていた。

 この人間はいつも眼深な帽子を付け、全員から一歩離れた所にいることが殆んどだがその実力は一級品である。

 彼には劣るがそれでも腕っぷしの強いドラグナイト(女性だけ)を回してくれる辺り義理堅いという事である。

 「そういやチームメイトはどうだ?」

 「ああ、二人とも体が動かせるほどぐらいには回復している。何から何まで

ギルゾレイクファミリーには世話にかけっぱなしだよ。そちらは?」

 「ああ・・・クレアとリンスレットは未だ退院出来てなくてな。特にクレアはあの後から抜け殻みたいにボーっとしていることが多くってな。見舞いにっても反応が

ないよ。」

 カミトはいつもは勝気であったクレアの顔が最早幽体離脱したかのように無反応になっている所を思い出していた。

 いつもツーテールにしていた髪は何もつけず、まるで病弱な少女のような印章で

あった。

 「だが君たちのおかげで私達は学院に戻ってきたわけだから・・・私は・・・

君個人に・・・礼をしたいのだが・・・今日は昼の祝勝会の後空いているか?」

 エリスはもじもじとしながらそう聞くとカミトは予定を思い出していた。

 「ああ、何もないけど何だ?」

 「いやその・・・五時に中央講堂の前で待ってくれないか?そこで言う。」

 「おお・・・分かった。」

 カミトがそう言った後エリスはうんうんと頷きながらも教本の下に顔を隠すと・・・。

 「痛てててててて!何すんだよレオノーラ!」

 「・・・知りません。」

 隣で聞いていたレオノーラがカミトの手を抓っていたのであった。

 その後剥れっ面でフレイヤ先生の方に目線を戻した。

 「〈一体何なんだよ?〉」

 「(この唐変木が。)」

 カミトの心の言葉に『シラヌイ』は呆れながらそう言った。




 ・・・お前態とだろ?


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騎士の誠意とほにゃららら

 それって・・・誠意なのか?


それから暫くして夕刻頃。

 「・・・すまない、待たせてしまったな。」

 はあはあとエリスが息を切らしながら走ってきた。

 「いや、そんなに待ってないぞ。」

 「(お決まりの台詞だな。)」

 カミトの言葉に『シラヌイ』がニヤッと笑うかのように言った。

 「取り敢えず・・・勉強するなら図書館か空き教室にへ行くか?」

 カミトは鞄の中にある勉強道具一式を見せてそう言うとエリスは少し小さな声でこう返した。

 「いや・・・その・・・部屋で・・・だ。」

 「は?」

 「だから・・・その・・・わ、私が使っていた部屋で教えて欲しいんだ!」

 「・・・・ハイ?」

 カミトはエリスの言葉を聞いて自分の耳を疑った。

 使っていた部屋という事は未だエリスがヴィ―ぜル寮で使っていた部屋であろう。

 現在はカミト達と同じ療養所の一角で暮らしている。

 「え・・・でも何で・・・あっちの部屋でいいだろう?」

 「いや・・・それは・・・流石に・・・な。」

 エリスは少し落ち着きがなく目線を余所に向きながらそう言うとカミトの手を

引っ張ってこう言った。

 「行くぞ・・・。」

 「お、おお。」

 カミトは訳が分からないと思いながらも連れて行かれた。

 

 

 

 そしてヴィ―ぜル寮の二階にあるエリスの部屋にへと向かった。

 「こ、ここが私が使っていた部屋で今はもう一人が使っている部屋だ。」

 「それって大丈夫なのか?男の俺がここに入るのって?」

 カミトはエリスにそう聞くとエリスはこう返した。

 「いや今は学院の任務で数週間の間開けているんだがその人は厳しさと優しさを

兼ね揃えた騎士の見本となれる人なんだ。」

 エリスはその人の事で憧れのような表情でそう言いながらクッションを床に敷いた。

 「楽にしてくれ。今お茶とお菓子を用意する。」

 エリスはそう言うとバッグから紅茶のポットとお菓子を出してお湯を沸かした。

 大貴族で武門の家柄のエリスは幼いころから厳しい教育を受けてきたのであろう。

 目の前に出してくれたのは紅茶の粉をまぶしたカステラと紅茶であるが

『シラヌイ』はこう思っていた。

 「(紅茶のオンパレードだな。)」

 そう思うが食べてみれば意外とおいしく好評であった。

 「これ上手いな!エリスが作ったのか?」

 「ま、まあちょっとした趣味だが少し待ってくれ。今準備してくる。」

 「ん?準備って」

 「(カミト、そう言うのは言わないのが常識だぞ。)」 

 『シラヌイ』がカミトの言葉にストップをかけさせエリスはそのまま隣の部屋に

入っていった。

 そして暫くして・・・。

 「ま、待たせたな。」

 背後からエリスがか細い声を出してそう言った。

 「ん?どうした」

 エリスと振り向いて言いかけた瞬間・・・時が止まった。

 そこにいたのは・・・。

 「ううううううう/////」

 ロングスカートのメイド服を着たセリスがそこにいた。

 ・・・続く

 「(え?これで終わりかよ!)」




 Bパートに入ります。


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阿保と優秀は紙一重

 馬鹿と天才と同じような物ですよ。


 「ええっと・・・エリス、何やってんだ?」

 カミトは口を( ゚д゚)ポカーンと開けながらそう聞いた。

 「い、今から、和や市は君専用のメイドだ。・・・い、良いな?」

 エリスは顔を真っ赤にしながらロングスカートの裾を摘まんでお辞儀すると・・・

スカートの下の黒いガーターベルトが僅かに見えた。

 「!??」

 カミトはぎょっとして目線を別の所に向けると・・・たわわに揺れる胸が目に

入った。

 甲冑から解放されているのか自由を謳歌しているかのようであった。

 「・・・似合わないか?・・・」

 エリスはもじもじとしながらそう聞くとカミトはハッとしてエリスを見ると

こう返した。

 「いや・・・似合うぞって・・・ナンデメイド服なんだ?」

 カミトはそう聞くとエリスはこう返した。

 「こ、これは私なりの誠意なのだ。」

 「誠意?」

 恥ずかしそうに俯きながらエリスがそう言うとカミトは何でだと聞いた。

 「せ、先日の任務で騎士団の代表として助けてくれた礼をっと思ってな・・・。」

 「嫌良いって。助けるのに理由なんていらねえって。」

 「それでは私の気が済まないんだ。恩義ある物には全身全霊をこめて礼を尽くすのが我がファーレンガルト家の家訓なのだが・・・どうすればよいかと思って

チームメイトのラッカとレイシアに相談したら・・・こう言う格好に興奮する

マニアだと聞いたから。」

 「いやお前それって・・・」

 「(単に嵌められたな。こりゃ。)」

 カミトと『シラヌイ』はそれを聞いて騙されたなと心の中で直感した。

 「な、・・・なあエリス・・・話を聞いてくれるか?」

 「?」

 

 

 

 

 

 

 「/////////////」

 「大丈夫な訳・・・無いか」

 「(こりゃ傑作だな。)」

 エリスはベッドの上で顔を真っ赤にしてゴロゴロと転がるのを見てカミトは

天を仰ぎ、『シラヌイ』は笑いそうになっていた。

 「アウウウウ・・・私は何と阿保だ。」

 エリスは両手で顔を覆い隠しながらそう言うが気を取り直してカミトに向けてこう言った。

 「ええい!こうなれば自棄だ!カミト、何か命令してくれ!!」

 「いやお前が命令してどうする。」

 カミトはエリスにツッコミを入れるもこう提案した。

 「それじゃあ夕飯もあるから何か軽くつまめるものが良いな。」

 「かしこまりました。ご主人様。」

 立ち直り早!と『シラヌイ』はそう思っていた。

 

 

 

 

 「あ、味はどうだ?ご主人様。」

 「な、なあご主人様って・・・ああもういいや。あいつらの入れ知恵だろ。」

 「フフフフフフフ。あいつらは完治したらトックンダ。」

 「ご愁傷様。」

 カミトはエリスが作ってくれた一口サイズのチーズカツをエリスに食べさせて

もらいながらそう聞いた。

 彼女の料理の腕は同居しているうちに判明しており最近ではカミトと作る事が

多いのである。

 エリスがチーズカツをカミトの口に運んでいる所を見て『シラヌイ』はこう

思っていた。

 「(あああ。人間だったらブラックコーヒー下さいって言いてええ。)」

 砂糖を吐いていた。




 ・・・甘すぎて腹下しそうだ。


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頼み。

 エリスの頼み・・・それは・・・


「カミト、君に折り入って頼みたいことがるんだ。」

 「?」

 カミトはデザートのイチゴのケーキを食べていた。

 如何やらレオノーラ達にも食べさせようと思い大きく作ったのであろう。

 エリスは使った食器の後片付けをした後そう言った。

 「カミト、仲間が復帰するまでの間で良いんだ。『シルフィード』に入って

くれないか?」

 「俺が『シルフィード』にって男だぞ俺は?」

 カミトは学院の治安と風紀を守るべき場所にある意味異物である自分を入れる理由が何なのかと聞くことにした。

 「『シルフィード』に入るって言っても何で俺なんだ?募集かければ良いじゃ

ねえか?」

 カミトはそう聞くがエリスは少し暗い表情でこう返した。

 「無論そうしているが希望者はほとんどいないし『シルフィード』の仕事は

危険なだけじゃなく他の学院生からも敵視されることから二の足を踏んで

しまうんだ。」

 「然もジオ・インザーギが起こした襲撃事件の所為で構成員の三分の一である

9名が戦線離脱してしまって『シルフィード』の信頼は大きく下がってしまったんだ。

それで汚名返上で捕縛任務に打って出たがカミト達がいなければ全滅していた。」

 エリスは涙を流すのを堪えながらそう言った。

 それを見ていたカミトはこう思っていた。

 「(こいつ、ずっと『シルフィード』に向けられる非難の声に誰にも相談できずに

耐えていたんだ。それが自分の務めだと疑わずに)」

 元々エリスは騎士団長補佐官だったのだが団長が不在である事から自分が

しっかりしなければと思っていたのであろうが責任と重圧を一人で背負い込み、

周りからの不信感をこれまでは実力で抑えていたがそれすらも出来ず今は本当にたった一人なのだ。

 「・・・本当は怖いんだ私は。」

 「(怖い?)」

 エリスの言葉に『シラヌイ』はそう聞いた。

 「私は騎士として正しくやっているように見えて実は『シルフィード』の権威を傘に守るべき生徒たちを力で抑えつけているだけなんじゃないかと思うと・・・」 

 そう言いかけた所でエリスは言葉を詰まった。

 カミトはそれを聞いてこう返した。

 「分かった。同じチームメイトが大変な時に何もしないなんてそれじゃあ

チームを組んだ意味がない。それに今にも泣き出しそうなエリスを見てしまうと

どうにもほっておけないしな。」

 「か、・・・感謝する。カミト。」

 エリスは今にも泣き出しそうになりそうな表情で頭を下げた。

 それを見て今後どうするのか、そしてレオノーラ達にどう話そうかと考えていた。

 

 




 何か波乱が起きそうだなあ。


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一体誰だ。

 嫉妬って怖いよ~~。


あの後カミトは医療院に戻ってご飯の準備をする中でレオノーラ達にエリスの事で

話した。

 「・・・へええ。そうですか、そうですかあ。」

 「おい、レオノーラ。少し怖えぞ。」

 レオノーラはカミトとエリスが二人っきりでと言った所で少し顔が怖くなっている所を見てカミトが注意していた。

 「くっ!迂闊だったわ。そんなところがあるんなら記憶結晶を持って

見たかったわ。」

 フィアナはそれを聞いて何だかお門違いな所を悔しがっていた。

 「然し儂らにこれ以上の借りを作らせない為とは言え小僧を勧誘とは中々やるのお。あの騎士団長補佐官殿は。」

 それを聞いて裏の理由を感づいたマギアルカはニヤニヤと笑っていた。

 するとマギアルカは全員に聞こえるようにある事を言った。

 「おおそうじゃそうじゃ。忘れぬうちに伝えておくが明日の夕刻ぐらいから新たに

編入する者が来るぞ。」

 「「「「「?????」」」」」

 カミト達はそれを聞いて誰なのだろうと思った。

 この教室に来れるのは機竜の事を知っているか若しくは・・・。

 「(新しいドラグナイトが来るって事か?)」

 「「!!」」

 『シラヌイ』の言葉を聞いてカミトとレオノーラが驚いた。

 新たにドラグナイトが見付かったという事は自分達が保有している機竜と同じようなタイプである可能性が出てきたのだ。

 「何やら特殊なタイプらしくてのお。明日の夕刻頃にはここに来るように

なっておる。」

 「あの~。何で明日なんです?」

 マギアルカの言葉にレオノーラが質問してきた。

 何故今日では何のかという事に対しての質問に対してこう答えた。

 「うむ。如何やらその者はある任務で帰ってきたのが今日の明け方ぐらいだった

そうじゃ。その後に報告と儂らの存在を話してくれてのお。授業の調整も相まって

明日になるそうなのじゃ。然も本人はもう三年なのじゃが此度のブレイドダンスの

ルールを知って丁度良いようでな。これで五人揃うと言う物じゃ。」

 マギアルカがいつものように笑いながらそう言うと全員の眼の色が変わった。

 チームがこれで五人目。

 つまりこれで問題の一つがクリアされたような物であったがフィアナは何やら

顔を顰めていた。

 「いいえまだ問題があるわ。その人が加入したといってもその強さが如何程にも

よるわ。」

 フィアナの言葉に確かにと思った。

 如何に上級生でも強さが無ければ足手纏い、又は無用の長物である事が

あるのだから。

 それを聞いたマギアルカはニヤリと笑ってこう返した。

 「その心配はいらんぞお小娘ども。」

 「「「「「?????」」」」」

 「何せ編入してくるものはな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 ところ変わってエリスがいる部屋の中で・・・

 「カミトが似合っているって・・・・うふふふふ。」

 部屋の掃除が終わった後さっきまで来ていたメイド服を広げて浮かれていた。

 これまでエリスは誰にも弱みを見せずその強さを見せつけていた。

 だが・・・。

 「カミトが初めてかもな。私の弱さを・・・。」

 不安に怯えていた自分を見せたのは姉を除けば彼だけであった。

 そしてカミトを思うたびに胸の鼓動が止まらないのだ。

 そしてある物を見た。

 綺麗にラッピングされているチョコの入った袋を・・・。

 「明日は〈ヴァレンティア聖祭〉だからな。・・・騎士団に入ってくれる

礼だからな。それ以上の意味はないな。うん。」

 エリスはそう言いながらも少し気になりそしてメイド服を見てこう考えた。

 「・・・少し予行練習をしよう。」

 

 

 

 そしてエリスはメイド服を着た後扉を睨みつけるかのように立っていた。

 如何やら扉をカミトに見立てているようだ。

 そして扉を見た後深呼吸して何回か練習した後こう言った。

 「カミト。騎士団に入ってくれたことに・・・私の願いを受け取ってくれたことに対して・・・受け取って下さい!ご主人様!!」

 そう言ってエリスは扉の前に目をやると・・・人が立っていた。

 「!!!!」

 「・・・・・・・」

 エリスはその女性を見て驚いている中当の女性は・・・苦笑いしながら立っていた。

 そして・・・。

 「・・・・・・」ぎぃ~~~~。

 扉を閉めようとしていた。

 「!!!!」ガッチリ!!

 「待ってください義姉上!!これには訳が!!」

 「いや良いんだエリス。人にはそれぞれ趣味趣向があるからな。私は何も反対しないからな。」

 「それなら私の目を見て言ってくださいって扉を閉める力を強めないで!話を聞いて下さい義姉上~~~~!!」

 姉妹の再会は・・・悲しいかな。哀れな物であった。




 そしてエリスが帰った後滅茶苦茶泣きそうな顔で部屋に入ったそうなあ。


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恨みつらみて

 恨みもつもりゃ殺意だ。


 「(カミト・・・そろそろ起きねえと遅刻するぞ。)」

 『シラヌイ』が何時ものように起こしてくれる声でカミトの眠気が覚めた。

 そしてカミトは起きると直ぐに装衣に着替えていつも通りに修行に行こうとすると

ある事に気づいた。

 「そう言えば何時もならレオノーラが起こしてくるのに今日は来ないな。」

 「(・・・この唐変木。)」

 「ん?何だ?」

 「(何でもねえよ。)」

 『シラヌイ』がカミトに対して悪口を言っているのにも気づかない辺り

こりゃ駄目だなと思ってしまいそうだ。

 そしてカミトは練習場に着くとレオノーラが少し離れた所で準備運動をしていた。

 そしてエリスも同じようであった。

 するとエリスはカミトを見てこう言った。

 「おはようカミト。昨日はありがとな。」

 そう言うとエリスはカミトにある物を渡した。

 「これは?」

 「ああ、今日は〈ヴァレンティア聖祭〉だからな。『シルフィード』に入ってくれるお礼も兼ねて・・・渡しておきたいんだ。」

 カミトはラッピングされていたチョコを貰うとこう返した。

 「ありがとうな、エリス。今度何か恩返ししなくちゃな。」

 そう言うとエリスはこう返した。

 「いや良いんだ!これは私の個人的な事だしそれに・・・その・・・。」

 何やらエリスの顔が真っ赤にしているのを見て・・・二者二様の表情がそこに

あった。

 「・・・・・・」顔を剥れている。

 「これはおもしろそうねえ。」

 剥れっ面で見ているレオノーラと面白そうな表情で見ているフィアナがそこにいた。

 「おおい。そろそろ特訓を始めるぞお。」

 そこにマギアルカがそう言うと全員はそこに並んだ。

 「それじゃあ今日の内容じゃが。」

 「すみませんマギアルカさん。少し提案があります。」

 マギアルカの言葉にレオノーラが割り込んだ。

 「何じゃレオノーラ。何か言いたいことがあるのかい?」

 そう聞くとマギアルカの言葉にレオノーラがこう返した。

 「今日は汎用、神装それぞれの機竜同士の対抗試合をしたいのです。」

 「ふむ。理由は?」

 「これまで私達はあなた一人で多数とやっていましたが今日はブレイドダンスに

備えて同じ実力を持っている者同士で戦いあってみたいのです。」

 それを聞いたマギアルカは無論本音も感じ取っているのであろう。

 だが・・・。

 「よろしい。面白そうじゃし新しい人間が来るからのお。現在の人数での総まとめ

として戦いあって見よ。」

 それを了承した。

 そしてそれぞれ離れて所定の場所に着くとレオノーラはカミトを見てこう言った。

 「それじゃあカミトさん。ヤリマショウカ?」

 「おいなんか違う意味でヤバい予感がするのだが気のせいだよな。」

 「ダイジョウブデスヨカミトサン。チョットO・SHI・O・KIするだけですから。」

 「いや何かイントネーション違うくね!?」

 カミトの言葉にレオノーラは耳を貸さずに『メイルストーム』を纏うとこう言った。

 「ソレジャアカミトサン。カクゴシテクダサイネェ!!!」

 そして模擬試合と名を騙った蹂躙が始まった。

 「(俺知らねえ。)」

 「【私も知りません。】)

 それぞれの機竜がそう言う中時折こう言う声が聞こえたそうだ。

 「この唐変木がああ!!!」

 「ぎゃあ嗚呼ああ!!」




 地獄の晩鐘だな。


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いざ騎士団の拠点に。

 大聖堂って何人ぐらいは入れるんだろう?


「さてとカミト、そろそろ行くが準備は出来ているか?」

 エリスは装衣から学生服に着替えた後カミトの部屋の前に来ていた。

 あの特訓(と名を騙った折檻)の後カミトはボロボロになりながらも戻って

きたのだがその後エリスから『シルフィード』の本部に案内したいという事で

ご飯を食べた後にそこに向かった。

 『シルフィード』の本部は嘗ては大聖堂だったところを改装した所なのであろう。

 構成員が二十人未満で十人弱になった現在に比べたとしても十分に大きいであろう。

 そしてカミトは息を吸って重い鋼鉄製の扉に手をかけようとした次の瞬間・・・。

 「ま、待ってくれ!!」

 エリスが待ったをかけて扉の前に立ちふさがった。

 「ん?どうしたんだエリス?」

 カミトは何だと思って聞くとエリスは慌ててこう言った。

 「い、今は駄目だ!!ちょっと待っててくれ!!」

 そう言って扉を少し開けた後ジト目でこう言った。

 「・・・見るなよ。」

 「へ?」

 エリスはそう言って扉を閉めた後カミトは耳元を扉に押し付けて何事かと思って

聞いた。

 「貴様ら何している!」

 「あ、騎士団長補佐官おはようございます。」

 「どうしたんだ?」

 「さっさと更衣室で着替えて来い!カミトが来てるんだぞ!!」

 『『『『『・・・・・え~~~~~!!!!!』』』』』

 「ちょっと待ってよ!私の制服どこだっけ!?」

 「あ、私の下着よそれ!」

 「待って!!未だ着換え中!!?」

 ドタドタと音がしているのを聞いたカミトと『シラヌイ』はこう思っていた。

 「・・・『シルフィード』って普段から更衣室で着替えてないのかよ。」

 「(女性だけの学校に良くありがちなパターンだな。)」

 そして音が鳴りやむと扉からエリスがはあはあと肩で息しながら出てきた。

 「いいぞ・・・入っても。」

 「・・・おお。」

 何だか初っ端から騒々しいこととなった。

 

 

 

 

 

 「ええ・・・本日付で『シルフィード』に配属されることとなったドラグーン教室の『カゼハヤ・カミト』だ。知っての通りだと思うが彼は男の精霊使いだが、怖がらずに歓迎してやってほしい。」

 『『『『『・・・・・』』』』』

 『シルフィード』のメンバー全員はカミト不審者を見るような目つきで見ていた。

 「あれが噂の夜の魔王か」

 「(いやこいつヘタレ)」

 「信じられない、あんな小さい子を愛人にしているなんて・・・」

 「(こいつ精霊)」

 「でもちょっとかっこよくない」

 「(まあ見た目はな)」

 「騙されちゃ駄目よ、ああ見えて物凄い変態で既に第二王女に手をかけたって噂が」

 「(誰だ、流した奴)」

 『シルフィード』のメンバーの言葉に『シラヌイ』がツッコミしている中一人がこう言った。

 「そう言えば『ドラグーン教室』って何?」

 「ああ、新しくできた教室だって聞くよ」

 「でも教室は前の医療院で夜な夜なお化けが出るところって聞くよ。」

 「ちょっとヤダ。」

 「でもでもグレイワース学園長がわざわざ外国から教師を見繕ってきたって話よ。」

 「おまけに教師も一流らしいよ。」

 何やら色々とドラグーン教室についての話で持ちきりになり始めてエリスは頭を

抑えながらこう言った。

 「済まない。何時もは静かなのだが今日の所は許してくれないか、カミト。」

 「まあ良いけどな。」

 そして暫くの間この話は続いた。




 次回は彼女が登場します。


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説明。

 起承転結はちゃんとするように。


 「おおい、今来たぞ!」

 暫くしてギルゾレイクファミリーの人間が来たのを確認してから総会が始まった。

 「本日、学院は休講になっているがヴァレンティア聖祭で学院生の殆どが街に

繰り出すことになるだろうが一般市民の前で喧嘩沙汰になるような事は

起こさないように総員心して任務に当たってくれ。」

 『『『『はいっ!』』』』

 『シルフィード』のメンバーの殆どが返答した。

 していないのは彼女よりも上級生の何人かである。

 その数人はあからさまに不服そうな顔をしていたのを、カミトは見逃さなかった。

 「〈・・・成程、家柄も実力も上なのに後輩であるエリスに対して嫉妬しているって事か〉」

 カミトはそう思いながら周りをもう少し見ていると『シラヌイ』が声を掛けた。

 「(・・・それじゃああいつらは?)」

 そう言ってそっちを見ると・・・。

 「・・・あいつら何やってんだ?」

 それはギルゾレイクファミリーの方であるが彼女達は今・・・

 「フルハウス」

 「げ、あたしツーペア」

 「あたしも~~。」

 トランプ(然も金を賭けて)をしていた。

 「なあおいエリス、あいつら何時もあれなのか?」

 カミトはそう聞くとエリスは言いづらそうにこう返した。

 「ああそうなんだ。前は注意していたんだが・・・『あたしらはボスの命令で

来てるんだ。遊びで警備している餓鬼どもはすっこんでな。』と言われたんだ。」

 「それはまた」

 カミトはその光景は確実に想像できるなと思った。

 「然し彼女達のおかげで何人かの裏商売人を捕まえることが出来ているから

注意しづらくてな。」

 それで困ってるんだと言うがそれはそれでだなと思った。

 「〈所詮『蛇の道は蛇』、そいつらの特性を掴みやすい裏社会の人間なら鼻が利くと考えたんだろうな。〉」

 ま、あの女の紹介なら当然だなと納得したカミトであった。

 「尚学院都市には礼の呪装刻印の商人でもある〈マーダーズ〉の連中も潜入し、

学院生に接触を謀るかもしれないので現場を押さえたら各自の判断で対応するように。それでは、解散」

 「ただいま。」

 その声を聞いてカミトは扉の方を見た。

 そこにいたのは・・・・氷の彫像めいた、美貌の騎士であった。

 輝くブロンドの髪。

 冷徹なアイスブルーの瞳

 腰には白と紅い線が入ったレイピアと鞘

 学院第一位のみに纏う事が許されるマントを身に纏った女性であった。

 「ヴェルサリア様!」

 「お帰りなさいヴェルサリア様!」

 「いつお帰りに!?」

 「言ってくださったらお迎えに来ていたのに!」

 辺りにいた少女達が我先にと集まっていった。

 「ああ昨日帰ってきたんだ。その後報告と所要があってな。然し・・・少し団員の

メンバーが減っているがどうした?」

 「あ・・・それは」

 ヴェルサリアの言葉に全員が言葉を詰まらすがヴェルサリアはこう続けた。

 「ああすまん、冗談だ。昨日エリスに聞いている。・・・済まなかったな、

私が留守の間に駆け付けれなくて。」

 「いいえ!私達がちゃんとできていればこのような事には!」

 ヴェルサリアの謝罪に対して団員の一人が自分達の力不足に対してだといった。

 そして全員の方を見てカミトの方を向くと・・・。

 「!!」

 目を丸くしてカミトの方に一直線に向かった。

 そしてカミトに向けてこう言った。

 「・・・三年ぶりだな。」

 「(あれこいつまさか)」

 『シラヌイ』はもしかしてと思っている中カミトは頭を掻いてこう言った。

 「ええと・・・誰だったっけ?」

 ・・・・・・・・・・・・・

 「・・・・・は?」

 その瞬間世界が固まった。(ある意味で) 




 シラヌイ「(お前・・・なんつうこと言ってんだよ。)」


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ちゃんと思い出せよ。

 人の顔はちゃんと思い出せるようにすること。


「・・・はあ?」

 ヴェルサリアのこの言葉に全員が何事だと思った。

 「いや・・・あんた誰だ?」

 カミトのこの言葉が原因だ。

 暫く茫然とした状態が続き『シルフィード』のメンバーの一人がヴェルサリアにこう聞いた。

 「あの~。ヴェルサリア様。・・・大丈夫でございますか?」

 「〈?・・・ヴェルサリアって・・・何処かで〉」

 カミトはその名前に聞き覚えがあるのを感じて記憶を整理している中・・・。

 「フフフフフフフ。」

 ヴェルサリアが何故か分からないが笑い声を上げていたがそれは普通の笑い声では

なかった。

 「ヴェ・・・ヴェルサリア様?」

 「あ・・・義姉上?」

 『シルフィード』のメンバーとエリスがそれを聞いて少し恐怖した。

 その笑い声はまるで地獄の底からのナニカとした言えないからである。

 「そうか・・・そうかソウかソウカ誰ときたか・・・フハハハハハ。」

 壊れたラジオそのままのような言語で俯いていた顔を起こし、カミトに対してハイライトの灯っていない瞳を見せながらこう言った。

 「私はあの時の約束を三年も忘れていなかったというのに貴様はそれを忘れる。

こんな事が・・・ハハハハハ。」

 「おい・・・何かわからねえが・・・怖いぞ。」

 カミトはそれを聞いて恐怖しながらそう言った。

 するとヴェルサリアはカミトの耳元でこう囁いた。

 「あの約束忘れるとは酷いぞ。レン・アッシュベル。」

 「なあ!?」

 カミトはその名前を聞くや否や少し下がってこう聞いた。

 「あんた一体?」

 「私を忘れるとは本当に約束やぶりだな貴様は。」

 ヴェルサリアはそれを聞いて頬を膨らましながらある事を口にした。

 「三年前・・・ブレイドダンス・・・精霊の森・・・ドリアード・・・

神儀院の少女」

 「あれ何かそれって何処かで・・・」

 「(いい加減にしろよお前。こいつあの時フィアナと一緒にいた精霊使いだろ。お前に戦って負けたあの。)」

 カミトはそれを聞いて思い出そうとすると『シラヌイ』が助け船を出すと・・・

それを思い出した。

 「あああ!!あの時の!?」

 「やっと思い出したか。」

 カミトの驚くような言葉にヴェルサリアは頭を抱えて呆れた口調でそう言った。

 「悪いな。あの時の約束。」

 「ああそうだな。私はあの日一日待ったのに来なかったものな。」

 「ぐうう!!」

 ヴェルサリアの言葉がカミトの心に突き刺さった。

 するとヴェルサリアはカミトに近づいて・・・こう言った。

 「だからこれは・・・その時の約束をさぼった責だ。」(*´з`)

 「・・・へ?」

 ヴェルサリアはカミトの頬にキスをするや否やこう続けた。

 「これはあの時助けてくれた礼だからな。・・・それじゃあ////」

 そう言ってヴェルサリアは颯爽と出て行くや否や・・・。

 『『『『『きゃあああああああ!!!!!』』』』』

 『シルフィード』のメンバー全員が悲鳴を上げた。

 「ヴェ、ヴェルサリアは様がキスを!?」

 「これは大事件よ!!」

 「直ぐに他の生徒にも伝えて!」

 周りがざわめく中カミトはと言うと・・・。

 「・・・・・( ゚д゚)」

 ポカーンとしていた。

 然もキスされた方の頬を擦りながら・・・

 すると・・。

 「カ・ミ・ト~~~~!!」

 エリスが槍を持ちながら怒っていた。

 「貴様あ!義姉上にどう言う事を!!そこに直れ!!『野菜サラダ』にして

くれるわあ!!」

 「おい待てって!俺にもわかんねえよお!?」

 カミトはエリスの槍を避けながら弁解のチャンスを探っていた。




 ヴェルサリア「はううううう・・・/////」
 あの後部屋に戻るや否やベッドに包まって顔の紅さを隠すようにしていた。


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騎士団の仕事は楽ではない。

 今回は『シルフィード』の仕事についてです。


 『シルフィード』のメンバーは主に実力に応じてチーム編成されており二人一組のツーマンセルか三人一組のスリーマンセルになっているがカミトと組もうとする

メンバーがおらずまた、ヴェルサリアが帰還した事からエリス、ヴェルサリア、カミトのスリーマンセルで行動している。

 『シルフィード』の仕事は多岐に分かれておりどれもが大変な仕事となっている。

 ①学院生同士の決闘の仲裁

  本来ならクレアとリンスレットとの騒動の収拾も仕事なのだが煽りを喰らって

戦う羽目となった。

 ②封印精霊の密輸業者の摘発

 最近は「マーダーズ」における問題も相まって『シルフィード』のメンバーはこれに集中している。

 ③はぐれ精霊の保護

 ④学生団体との交渉

 ⑤精霊の森での遭難者の救出

 もしカミトが迷子になった時でも彼女達が助けてくれていたであろう。

 ・・・まあただでさえ森は広いので普通に迷子となるケースもある。

 ⑥精霊の森から〈門〉で侵入してくる魔獣や暴走した精霊の討伐

 これが最も多く『シルフィード』に舞い込んでくる任務であり今回もそれが起きた。

 

 

 

 森の木々をなぎ倒しながらも魔獣が暴れまわっていた。

 見た目は巨大な蜘蛛の背中に亀のような甲羅を背中で背負っているものである。

 「随分大物だな。どれだけ大きな〈門〉が開いたんだ?」

 カミトは離れた所から『シラヌイ』の≪索敵≫で探りながらそう言った。

 「精霊調査会からの報告によれば原因は不明だが年々〈門〉が大きくなっている

ようだ。」

 エリスは厳しい表情でそう言うとヴェルサリアは自身の精霊を召喚した。

 そして「サイレント・フォートレス」を纏ってエリスを片手に乗せた後それぞれ

その地点に向かった。

 「行くぞ!エリス!!」

 「はい!義姉上!!」

 エリスはヴェルサリアの言葉を聞くや否やヴェルサリアはエリスを投げ飛ばした後

エリスは空中で魔獣に攻撃している中≪透明化≫で姿を消した『シラヌイ』を纏った

カミトが魔獣の下腹に剣を刺した。

 どうやら柔らかいそこが弱点であったようだがそこから巨大な蛇が出てきた。

 そしてカミトの存在を熱で感知した蛇の頭部がそこを襲うもカミトはすぐにそこから立ち去った。

 「(うへえ!気色悪いなあ!おい!!)」

 『シラヌイ』がそう文句を言っているとヴェルサリアは二人に聞こえるようにこう言った。

 「気をつけろ!こいつの体は耐属性の精霊魔術で強化されている!!」

 「精霊魔術だと!?」

 その言葉にエリスは驚くもカミトはそこに捕捉を付けた。

 「恐らく呪装刻印を売りつけている奴らが俺達の注意を逸らすために召喚したん

だろうな!!」

 「何と卑怯な!」

 エリスはカミトの言葉にその商人に対して怒りを露わにするとヴェルサリアは

カミトに向けてこう言った。

 「カミト!私がやったようにエリスを投げろ!」

 「カミト、やってくれ!」

 「分かった。」

 ヴェルサリアの作戦にエリスとカミトが乗るとカミトはエリスを空高く飛ばした。

 そしてエリスはそのまま急降下して槍を甲羅に突き刺すとそこから罅が入ると・・・カミトとヴェルサリアが二人同時にその罅目掛けて突き刺すと・・・甲羅は壊れ、深く突き刺さった。

 ギェエエエエエ!!

 魔獣が悲鳴を上げた瞬間カミトとヴェルサリアは止めと言わんばかりに銃火器を一斉発射すると爆発と同時に魔獣は崩れ落ちて行った。

 「初めてにしてはタイミングあってたな。」 

 「当たり前だ。義姉上がいるのだ。これくらい当然だな。」

 エリスはカミトに向かって誇らしくそう言った。

 その光景にヴェルサリアは少し笑みを浮かべていた。




 因みに魔獣はその後森の養分となりました。


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ヴェルサリアがいる理由。

 ヴェルサリアが何故いるのかはここで分かります。


「精霊の森での魔獣退治後もカミト達は学院が休講である事からトラブルが急増し

終わったころにはもう昼頃になっていた。

 午後からはヴァレンティア聖祭の為か市民はそっちに向かっているようだ。

 「それにしても『シルフィード』の仕事って大変なんだな。」

 カミトは街の様子を見ながらそう言うとエリスがこう返した。

 「今までの事件で生徒がやめたりしたからな。仕方があるまい。」

 エリスはそう言いながらも意気消沈し始めていた。

 ジオ・インザーギ事件により三分の一の生徒が脱落し、前よりも仕事量が増して

いるのだ。

 「お前のせいじゃないさエリス。お前は自分が出来ることを精一杯していた

じゃないか?焦らなくても良い、少しずつ自分を鍛え上げれば良いのだ。」

 エリスの隣でヴェルサリアがそう言ったのでエリスは少し嬉しそうに

笑っている中・・・。

 「・・・・////」

 ヴェルサリアはカミトを見て少し顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

 「(クックック。さっきのを思い出してるぜあれはよ。)」

 『シラヌイ』がヴェルサリアの表情を見てそう言うとカミトはあの事を

思い出していた。

  

 

 

 

 

 数時間前・・・。

 「カミト、見回りに行くのだが義姉上も誘ってよいか?」

 「義姉上って・・・ああ。」

 エリスはカミトにそう提案してきた。

 本人はボロボロだが・・・。

 「本来新米は騎士団長が面倒見るのだが貴様の実力は私しか知らないし私は

貴様の事をよく知って・・・ってそう意味ではないからな!?」

 「分かってるって・・・。」

 エリスは最後ら辺で慌て始めたのでカミトはそれを見て呆れながら返した。

 

 

 

 

 そしてエリスと一緒にこの間入った部屋に向かった。

 「義姉上、エリスです。宜しいですか?」

 エリスは扉をノックしてそう言うと向こうから声が聞こえた。

 「エリス?何かあったのか?」

 そう言いながらヴェルサリアは扉を開けると・・・。

 「義姉上!」

 「よう。」

 カミトとエリスがいた。

 「カ!きゃみと!!」

 「「は?」」

 ヴェルサリアはカミトを見て噛んでしまったのだ。

 そして暫くして舌をかんだ痛みから復活するとヴェルサリアはエリスに目を向けるとこう聞いた。

 「な・・・何だ?」

 「あ、はい。これから見回りに行くのですが新米のカミトと回るので義姉上も

如何かと思いまして。」

 エリスはヴェルサリアにそう聞くとヴェルサリアはカミトを見て顔を真っ赤に

しながら好条件を突き出した。

 「・・・カミトと私の間に立っていることを条件にするなら・・・。」

 「あ、分かりました。」

 そう言う事でこうなったのだが・・・。

 

 

 

 「(こりゃ気まずそうだな。)」

 クックックと笑いながらその様子を見ていた。

 




 因みに魔獣退治の際には団長としての振る舞いで平常心を保っていた。


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腹が減っては何とやら。

 腹が減ると力って出ないよね。


 そんなことが暫く続く中・・・。

 きゅるるるる~~。

 「(うわーー。)」

 「「エリス?」」

 何か音がしたのでカミトとヴェルサリアの二人は揃ってエリスの方を向いた。

 「わ、私ではない!?」

 エリスは顔を真っ赤にして言うも場所的に間違いないので仕方がないのだ。

 「そういや朝っぱらから仕事続きで腹減ったなあ。そろそろ交代の時間だし、

昼飯にするか?」

 「名案だな。今日はヴァレンティナ聖祭だから食べ物屋がごまんとあるし食べ物には困るまい。」

 「ウウウ・・・違うと言ってるのにぃ。」

 カミトとヴェルサリアが昼食の提案をしている中エリスはいじけながら

反論していた。

 「それにしても多いなア。」

 「祭りで且つ学院生が多いからな、金を巻き上げるのに皆必死なのだろう。」

 「(なんつう下世話な事言うんだろうな。)」

 まあヴェルサリアの言葉にも一理あるがもう少し言葉を選んでほしい物だ。

 「あ、・・・あのう。」

 「「うん??」」

 エリスが何か言いたげそうに言うのでカミトとヴェルサリアは何事かと思い、

エリスの方を見た。

 すると上空から〈シムルグ〉が大きめのバスケットを掴んでやってきた。

 「・・・作ってきたんだ。」

 「流石だな。」

 「しまった!私も作るのを忘れてた。」

 カミトはエリスの用意に感心し、ヴェルサリアもそれに同意していた。

 「それじゃあ俺達は。」

 「何か買っていくか。」

 カミトとヴェルサリアはそう言って屋台に行こうとすると・・・。

 エリスはカミトの襟首を掴んだ。

 「な、何だ?」

 カミトがそう聞くとエリスはカミトにバスケットを見せてこう言った。

 「君の分も入ってるぞ。」

 「え?」

 「だ・か・ら!君の分も入ってるが勘違いするな!材料が余っていたからであって

決してだな」

 エリスはカミトにそう言うもエリスはヴェルサリアにもこう言った。

 「義姉上も一緒に食べましょう。」

 「良いのか?」

 「はい。」

 ヴェルサリアはエリスにそう言われ、分かったと答えるとこう言った。

 「それでは何処か落ち着ける場所を」

 「あ、ヴェルサリア団長!エリス団長補佐官!!一緒にお昼食べませんかあ!?」

 すると街路の向こう側で三人組の『シルフィード』のメンバーがやってきた。

 「お前達、市街の見回りは?」

 ヴェルサリアがそう聞くと少女達の一人がこう言った。

 「先程リュスカ隊と交代して皆でお昼ご飯を食べようと思ったんですが

どうでしょう?」

 そう聞くとカミトはエリスに向かってこう言った。

 「良いじゃないか?丁度お昼ご飯だし人数が多いほど飯も旨いだろう?」

 「そ、それはそうだが・・・。」

 エリスは何やらもの言いたげな顔をすると・・・。

 「ならば皆で食べよう。その方が良いだろう?な、エリス。」

 ヴェルサリアがそう言うとエリスはため息交じりでこう言った。

 「・・・分かりました。皆で昼食を摂ろう。」

 カミトとヴェルサリアに対してエリスは恨めしそうな表情で移動した。




 みんなで食べればおいしい物だ。


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昼食の一時。

 ご飯ぐらいはゆっくり食べさせろよ。


 まあそんなこんなでカミト達は『シルフィード』のメンバーと一緒に昼ご飯を

食べることとなった。(エリスは不機嫌だが)

 場所は緑豊かな自然公園でヴァレンティア聖祭の会場から少し離れているため

静かである。

 「そう言えば調理場で何かやってるなアと思っていたけど昼食を

作っていたんだな。」

 「ああ、こう言う事が何回かあってな、それからは習慣になったんだ。」

 そう言いながらエリスはランチボックスを広げた。

 他のメンバーもサンドイッチだがエリスのは豪勢であった。

 「・・・凄い豪勢だな。」

 「・・・そうか?べ、別に、普段と同じモノだがな。」

 カミトが驚いている中エリスはちょっと照れたように顔を俯かせた。

 するとそれを見た『シルフィード』のメンバーがこう反論した。

 「いやそれ嘘よ、何時もはピーナッツバターサンドイッチだけなのにポテトサラダに玉子焼きも入ってるし。」

 「よく見たら林檎もちゃんと兎さんの形に切ってるし。」

 「ウインナーもタコさんになってるしね。」

 「・・・エリス、どう言う事だそれは?」

 メンバーがエリスの台詞に異議ありという風に反論するとそれを聞いたヴェルサリアもジト目でそう聞いた。

 「・・・・すいません。今日の為に調理しました。」

 エリスは等々観念した。

 するとエリスは『シルフィード』のメンバーにある事を聞いた。

 「そう言えばお前達、カミトに対しては今朝はあんなに怖がっていたのにどうしたというのだ?」

 すると彼女達はそれぞれこう答えた。

 「・・・実はまだ怖いところはあるけど。」

 「団長補佐官と話しているのを見たら評判通りの人じゃないことが分かり

ましたし。」

 「それに・・・ヴェルサリア御姉様とのご関係も知りたかったし。」

 「「!!」」

 それを聞いたカミトとヴェルサリアは目を見開いてお互い見つめ合うと・・・。

 「「/////」」

 顔を真っ赤にして目を逸らした。

 「(おい、この状況何とかしてくれ?甘すぎて仕方がねえよ。)」

 『シラヌイ』はこの空気に耐えられないと思いながらそう言った。

 「・・・(´ー`)」

 エリスはと言うとそれを見て顔をムッと膨らませていた。

 その後は色々と質問しながらもお互い話し込んでいた。

 

 

 

 

 「ねえあれって、カゼハヤ・カミトじゃない?」

 昨日カミトのチームと戦った二人の精霊使いがいた。

 二人はカミトを忌々しそうに見ている中・・・ある声が聞こえた。

 「ねえ・・・力が欲しくない?」

 「「!!」」

 背後からの声に二人はさっと身構えるとそこにいたのは・・・・。

 「あの男の精霊使い何か圧倒するぐらいの」

 翡翠の髪をした妖艶な美女

 「・・・圧倒的なチ・カ・ラ♡」

 〈マーダーズ〉の商人「ヴィヴィアン・メローサ」がそう言った。

 手には虹色の液体の入った瓶を持って。




 嫌な予感は直ぐに当たる。


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祭りでの一幕

 お祭りでんががらわっしょっショーイ!!


 そして夕方・・・。

 ヴァレンティア聖祭が始まると広場には大勢の市民がにぎわっていた。

 エリスは何やらカミトの隣でそわそわしていた。

 「〈エリスの奴どうしたんだ?肩が触れるかそうじゃねえ距離にまでなると

『ふぁあっ』って悲鳴上げて離れるとまた近づいて来ちまうもんなア。〉」

 カミトはエリスを見てそう思っていると『シラヌイ』はそれをこう解釈していた。

 「(どう考えてもお前を意識しちまうんだろうな。まあ無理もねえか、そんな経験

こいつらには無に等しいぐらいだからな。)」

 『シラヌイ』はそう思っているがまあ大体正解である。

 貴族の令嬢に取ってみればカミトのように異性と共に居ることどころか話しかける

ことすらないのだから。

 ・・・だが中には例外もある。

 「カミト、手を借りるぞ。」

 「!・・・お、おお。」

 「義姉上!何しているんですか!?こんな往来の中で殿方と・・・手を!」

 エリスは道のど真ん中でそう言った。

 何せ今ヴェルサリアはカミトの手を握っているのだ。

 然も体を少し密着するような形で。

 「これ程の人間の中で迷子になるのはごめん被りたいし、それに・・・。」

 するとヴェルサリアは少し顔を赤くしてこう続けた。

 「カミトになら・・・別に/////」

 「!・・・!」

 カミトはそれを聞くと少し顔を赤くした。

 体が密着しているためヴェルサリアのスレンダーであるが女性らしい体の柔らかさに更に拍車がかかっているのだ。

 「---・・・それなら私も!」

 「なあ!?」

 すると今度はエリスが反対側の手を握ってから体を密着させた。

 ヴェルサリアとは反対にグラマラスな体つきをしていて胸が腕に挟まれている

感触から別の意味で緊張し始めた。

 「(こりゃあおもしれェ事になりそうだなア。)」

 『シラヌイ』は笑いを我慢しながらもそう言った。

 「・・・何してるんですか。」

 すると後ろから声がしたので振り向くと・・・

 「レオノーラ・・・。」

 「はい、そうですよ。カミト。」

 レオノーラがそこにいた。

 ・・・両手に大量の食べ物を携えて。

 

 

 

 

 

 

 「おおい、こっちじゃぞう。」

 レオノーラに着いていくとマギアルカが祭りを楽しみながら座っているのが見えた。

 「マギアルカさん。あんたも来てたのか?」

 「そりゃそうじゃ。今日は家の店も構えておるから見物がてらのう。」

 そういうと確かにマギアルカの経営する財閥の人間が物を売っているのが見えた。

 「うん?なんじゃお前も来てたのかえ?」

 「ああ、義妹に誘われていてな。」

 マギアルカはヴェルサリアを見てそう言うとカミトはマギアルカにこう聞いた。

 「あれ、二人とも知り合いか?」

 するとマギアルカは笑いながらこう答えた。

 「おおそうじゃ。紹介しなければのお。」

 そう言うとマギアルカは隣に置いていた細長い袋をヴェルサリアに渡すとカミト達に向かってこう言った。

 「明日から儂ら『ドラグーン教室』の生徒でありお主等のチームに編入することとなった『ヴェルサリア・イーヴァ』。『ワイバーン』の神装機竜

『カオス・ブレイカー』の所有者じゃ。」

 するとヴェルサリアはその袋からある物を出した。

 白い鞘に赤い線が入ったレイピアであった。

 「「「「エエエエエエエ(;゚Д゚)!!!」」」

 その時カミト達は大きな声でそう叫んだ。




 これで全員そろった。


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『カオス・ブレイカー』の出会い。

 ヴェルサリアがどうして装甲機龍を持っているかについての話です。


 「まさかあんたもドラグライドを持っていたなんてな。」

 「はい、それにそれは恐らく『神装機竜』ですよね?よく手に入りましたね。」

 カミトとレオノーラがお互い口々にそう言うとヴェルサリアがこう返した。

 「ああ、こいつはこの間まで討伐に向かっていた魔人級精霊を討伐する時にそいつが拠点にしていた洞窟で拾ったんだ。」

 

 

 

 

 数週間前・・・。

 「やったな。」

 ヴェルサリアは魔人級精霊を討伐するためとある森にある洞窟に来ていた。

 そしてその精霊を討伐して戻ろうとした時、何かが聞こえた。

 「《誰だ?》」

 「?」

 ヴェルサリアはそれを感じさらに奥にへと進むと・・・。

 「おお、これは美しい。」

 そこには地面に鞘ごと差されているレイピアがあった。

 ヴェルサリアはそれを見てそう思うとそれに手をかけようとした。

 すると・・・。

 

 

 

 

 「ここは何処だ?」

 周りは漆黒の世界で何もなかった。

 「《ほう、我の世界に来れるほどの素質がある人間に出会えるとはこれは

幸運だな。》」

 「!!」

 ヴェルサリアはその声を聞いて何処かと思って周りを見渡すと・・・白い体で所々に赤い線が入り、頭頂部に黒輪の輪と翼が生えた龍がそこにいた。

 「何者だ!?」

 ヴェルサリアはそう言って精霊を出そうとするも・・・。

 「精霊が現われない!どう言う事だ!?」

 「《無駄だ。ここは我の世界だ、貴様は今夢の中にいるような物で力を使うことが

出来ない。》」

 ヴェルサリアはが困っているのを見て嘲笑するようにそれはそう説明した。

 「ちぃい!!」

 ヴェルサリアはそれを聞いて最早ここ迄と悟った瞬間・・・それはこう言った。

 「《我が名は『カオス・ブレイカー』。貴様に力を与える者だ。》」

 「力だと?」

 「《そうだ、あらゆるものをねじ伏せ、従わせる力だ。良い物だろう?》」

 「対価は何だ?」

 ヴェルサリアは『カオス・ブレイカー』の説明を聞く中対価について聞いた。

 それを聞いた『カオス・ブレイカー』は・・・笑いながらこう言った。

 「《ハハハハハハ!!まさかそっちに目を向くとは中々どうして、勘が鋭いようだな人間!!》」

 「《気にったぞ人間!名を述べよ。》」 

 「・・・『ヴェルサリア・イーヴァ』だ。」

 『カオス・ブレイカー』の問いにヴェルサリアはそう答えると

『カオス・ブレイカー』はヴェルサリアにこう宣言した。

 「《ヴェルサリアか、ならば我がパスコードを貴様に教え、汝の手足となって

働こう!!条件はただ一つ『我を愉しませろ!!』だ!!」

 

 

 

 

 

 「!!今のは一体。」

 ヴェルサリアは意識を露わにした。

 時間はそう経っておらず気づくとそのレイピアを鞘から引き抜いていたのだ。

 「・・・これからよろしく頼もう。『カオス・ブレイカー』。」

 

 

 

 

 

 「そして学院に戻った後学園長が『ドラグーン教室』の存在とマギアルカ殿から

『ドラグナイト』についてを教えてもらってな。これが終わったら荷物をそっちに

持って行こうと思っていたんだ。」

 ヴェルサリアはそう言いながら貰ったホットドッグを食べていた。

 「《まあ、そのおかげでこうやって外に出れただけではなく貴様らにも会えたの

だからこれはこれで愉しみが増えたと言う物だ。》」

 「(けっ!手前みてえな悦楽主義者が仲間になってもムカつくだけだぜ。)」

 「【まあまあ良いじゃないですか?こうやってまた仲間になれたんですから】」

 『カオス・ブレイカー』の言葉に『シラヌイ』は認めねえと思い、

『メイルストーム』は『シラヌイ』を宥めていた。

 「然しよろしいのですか?我々のチームで?他にも強豪がいた筈ですが?」

 エリスはそう聞くとヴェルサリアはこう返した。

 「ああ大丈夫だ。今からチームを集めてもまともに連携が取れるわけではないし

それに・・・。」

 するとヴェルサリアはカミトを見てこう言った。

 「・・・お前もいるしな。」

 ヴェルサリアはそう言いながらも顔を赤くして俯くと・・・。

 「むうう。」

 レオノーラはそれを見て不貞腐れていた。

 そしてマギアルカがこう締めくくった。

 「それじゃあ新たなチームの編入も兼ねて近くのレストランで何か食わぬか?

儂が特別に奢ってやるわい。」

 それを聞いて全員がわっと沸くと・・・。

 「きゃああ!!」

 「「「「「「!!!!!!」」」」」」

 ズドンという音と悲鳴に全員がそっちに目を向けた。

 「カミト、義姉上!」

 「おう!」

 「これは祭りの事故ではないな!!」

 そう言ってカミト達はそっちに向かった。




 まあこれも・・・いつも通りだな。


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事件発生!!

 事件は現場で起きてるんだ!!


 カミト達は我先にへと逃げる民衆をかき分けながら進むと、広場にて

見たものは・・・。

 「なんだ、あれは!?」

 広場にいたのは・・・全身を鏡のような甲冑で覆い、肩に「73」の数字が彫られた人間であった。

 然もその少女カミトが前にチーム対抗戦で倒した少女であった。

 「アハハハハハ!!これ最高!!」

 少女はそう言いながら持っている二股の槍を振り回していた。

 然もよく見ると女子供、果ては老人にまで槍を向けているという最早精霊使い以前の所業であった。

 「あいつ、一般人に!」

 「カミト、この事態はレベル5の精霊災害として処理!奴を倒すぞ!!」

 カミトはそれを見て怒り出している中エリスは冷静に事を対処しようと考えた。

 「相手はフォートレス型の精霊だ!何かしらの移動手段を持っているかも

しれんぞ!!」

 ヴェルサリアはそう言いながら周りの市民を非難させていた。

 彼女の精霊「ドレッドノート」は彼女と同じくフォートレス型だが周りの被害を

考え、避難に徹していた。

  それを聞いたカミトは剣袋からエストを抜くとこう言った。

 「エスト、力を貸してくれ。」

 「お前をコロセバアタシらが出場できる!!」

 少女は槍をカミトに向けて振り下ろした。

 「くう!!」

 カミトはそれをエストで受け止めるもあまりの重さに片膝を突くほどで

あったが・・・。

 「今だ!エリス!!」

 「はあっ!!」

 エリスは〈レイ・ホーク〉から無数の風の刃を生み出して少女に向けた。

 これならと思った次の瞬間・・・。

 「聞かないわよ!」

 少女がそう言うとその風は鏡のような鎧から虹色の光を発した。

 「ぐわ!」

 「一体何が!?」

 カミトとエリスはそれを見て目を瞑ると・・・。

 風が乱反射を起こして周りの建物を両断して斬られた方の建物が轟音を上げて

崩れ落ちて行った。

 「私の風の刃を弾いただと!」

 「(いや今のはそれを増幅して返したんだよ!)」

 エリスの言葉に『シラヌイ』がそう答えた瞬間カミトはある答えに辿り着いた。

 それは・・・。

 「まさかこいつこの間の魔境精霊か!?」

 「正解だよ!アタシラハある奴から力を貰ったんだよ!」

 「ある奴って・・・あたしら!?」

 カミトはその言葉を聞いてまさかと思った中近くで何かがやってきた。

 それは全身に刃が生え、腹部に「74」の数字が刻まれた金剛精霊であった。

 「おい未だかってそいつは男の!」

 するともう一人の少女がカミトを見て憎らしい顔で言った。

 「こいつをコロセバアタシらが出場出来るんだ!!邪魔するなア!!」

 少女一人がそう言うともう一人はそれを見るとこう言った。

 「それじゃあアタシは・・・良いのがいる。」

 少女が見つけたのは恐怖で足がすくんでいる女の子であった。

 「あんたもアタシらの為に捧げろ!!」

 そう言いながら金剛精霊は鋭利化した拳を振り下ろそうとした。

 「やめろお!!」

 エリスはそれを止めようとするも間に合わない距離であった。

 そしてそれが振り下ろされた瞬間・・・。

 ガキィイイと言う堅いナニカと接触したような音がした。

 そこにいたのは・・・。

 「エクス・ワイバーン」を纏ったアルマがいた。

 アルマは少女を見ると大声でこう叫んだ。

 「さっさと逃げろ!足が無けりゃ腕使ってでもここから失せろお!!」

 「ヒィイ!!」

 少女はそれを聞いてよろめきながらも這いつくばって逃げて行った。

 「あんたよくもあたしの獲物を!!」 

 「はっ!弱い奴しか食えねえハイエナ女が!これが貴族なんて聞いて呆れるぜ!!」

 アルマは少女にそう言いながら鍔迫り合いをしているが・・・ここである失念をしていた。

 「まだあるんだよ!!」

 腕が・・・二本ある事を。

 「がはああ!!」

 「アルマ!!」

 カミトはそれを見るや否や何とかしないといけないと思ったあとエリスが上空から

落下しながら槍を振り下ろそうとしていた。

 「はああ!!」

 エリスは風の力を穂先に集中しておりこれならと思っているが・・・世の中そう

甘くはない。

 「硬くて・・・喰い込まない!!」

 鎧が固すぎるのか喰い込まれていなかったのだ。

 「邪魔だあ!!」

 少女はエリスを掴もうと力を緩んでしまい・・・・カミトを自由にしてしまった。

 「!しま」

 「ウおおおお!!」

 そしてカミトはそのままエリスを救うとそのままアルマが弾き飛ばされた所まで

向かおうとするも・・・。

 「おおっと、そうはいかないよ!!」

 金剛精霊がそれを塞ぐような形で立ち塞がった。

 「畜生が!」

 カミトはそう思いながら唇をかんでいた。

 「これで終わりだあ!!」

 金剛精霊が拳を振り上げようとした瞬間・・・。

 「待て。」

 上から声が聞こえた。

 全員はそれを見るとそこにいたのは・・・。

 「ヴェルサリア。」 

 「義姉上。」

 ヴェルサリアがそこにいた。

 巨大な鎌と槍と斧が融合した中国で使われていた「方天戟」のような武装を持った

 白いからだと赤い線をなぞった装甲機龍が沈みかけた夕日をバックにして上空に

いた。

 「ヴェ・・・ヴェルサリアって。」

 「あんた・・・戻ってたの?」

 少女二人はヴェルサリアを見て恐怖していた。

 何せ彼女は学院第一位の強者で嘗て『シルフィード』であった時に色々と生徒に暴行していたのが分かりヴェルサリアが徹底的に叩き潰して追放したからだ。

 ヴェルサリアはその二人を見ると・・・はあと溜息ついてこう言った。

 「未だ懲りてなかったのだな、貴様らは。」

 そう言うと二人はこう返した。

 「は!アタシラハ前とは違うんだよ!!」

 「この力であんたを叩きのめしてやるわ!!」

 虚勢であろうかどうか分からないが強気な態度でそう言うとヴェルサリアはカミトとエリスに向けてこう言った。

 「カミト、エリス。二人はさっき吹き飛ばされた人間を連れてここから離れろ。」

 「然し義姉上!!」

 「離れたらカミト、『シラヌイ』で援護に来てくれ。それまでは何とか

時間を稼ぐ。」

 ヴェルサリアはそう言うもエリスはまだ納得していなかったのか言い返そうとするとカミトはこう言った。

 「分かった。必ず戻るからな!!」

 「カミト!?」

 カミトはそう答えるとエリスはそれを聞いて驚くもカミトはエリスに向けて

こう言った。

 「信じろよ!お前の姉貴を!!」

 カミトはエリスにそう言った。

 「!逃がすか。」

 金剛精霊を持つ少女がカミト達を追おうとすると地面に土埃が舞い、ヴェルサリアがこう言った。

 「貴様らの相手は私だ。」

 ヴェルサリアは保有されている機竜息銃を使って牽制したのだ。

 そして持っていた大鎌を構えるとこう言った。

 「さてと・・・貴様らを罰してやろう!!」

 そう言って彼女達目掛けて突進した。

 

 

 

 

 

 「おい、大丈夫かあ!!?」

 カミトとエリスはアルマが吹き飛ばされた家の中に入った。

 如何やら吹き飛ばされた時に家財も吹き飛んでしまったようだ。

 カミトは近くにあったランタンに火を灯して探すと・・・。

 「あれは!!」

 アルマが纏っていた「エクス・ワイバーン」がそこにあった。

 いつも使われていた帽子が近くでボロボロの状態で発見された。

 「大丈夫か!アルマ!?」

 カミトはそう言いながら近づいてランタンに顔を近づかせると・・・。

 「え・・・?」

 「(こいつって・・・)」

 カミトと『シラヌイ』はそれを見て驚いていた。

 服もボロボロでそこから僅かだが膨らんだ胸と・・・金髪を一括りで束ねた

少女がいた。

 「女の子・・・。」




 神装機竜(カオス・ブレイカー)
 見た目は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に出てくる
「ガンダム バエル」の青が赤になったぐらい。
 種類  飛翔機竜(ワイバーン)
 機龍としてなら接近戦でトップランクの性能を発揮することが出来る機龍である。
 機動性を最大限に発揮させるために近接専用の武器を「方天戟」みたいに
まとめたことから比重が重くあり、使用時においては広い場所を選択しなければ
使えないのだ。
 武装 方天戟「クライシス」*1
    双剣「クローズ」*2
    機竜息銃*1
    


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共闘のブレイドダンス

 今嘗ての約束の為に共に戦おうとしている。


 「おい!おい!!アルマ!!」

 カミトは必死にアルマを揺らしていた。

 あの金剛精霊の攻撃をもろに喰らってしまいこの家まで吹き飛んでしまったのだ。

 そしてエリスはと言うと救急箱を持って待機していた。

 幾ら機竜には障壁と呼ばれるものがあるにしてもその程度では済まないほどの怪我を負っている可能性があるのだ。

 そして暫くすると・・・。

 「ぐ・・・グウウ・・・。」

 「アルマ!大丈夫か!?」

 アルマが意識を取り戻したのだ。

 「・・・うるせえぞカミト、そんなに大声で・・・!!」

 アルマはいつもの癖で帽子の鍔を摘まもうとするとそれがない事に気づくや否や今の自分の格好にヤバいと思ったのだ。

 いや、大丈夫だアルマ!!ここには俺たち以外はいないしそれにお前怪我

してるだろ!?」

 カミトはそう言ってアルマを制止させようとするとアルマは少し痛々しく

こう言った。

 「畜生・・・あの時の攻撃を障壁出した後にちょっと飛翔しても軽減

できなかった。」

 「お前あの一瞬でそこまでの事やってたのかよ?」

 カミトはアルマの言葉を聞いて驚きながらそう言うとアルマはこう続けた。

 「おそらく・・・あいつらは何かしらの薬を決めてるだろうな。」

 「だけどよ・・・それがどうしたんだよ?」

 「「??」」

 アルマの言葉にカミトとエリスは何だと思った。

 「未だ機竜は動けるんだぜ。それに俺はああいう糞ったれが大嫌いなんだよ!!」

 アルマはそう言いながら「エクス・ワイバーン」を起動させるも機体自身が悲鳴を

上げており、あと一回戦えるかどうかである。

 「それであいつらは?」

 アルマがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「いま、ヴェルサリアが戦っている。」

 

 

 

 

 

 「畜生が!!」 

 「何で当たらないのよ!?」

 一方のヴェルサリアはと言うと、例の少女達と戦っているが少女達の攻撃を鎌で

往なした後に攻撃したり時には避けたり機竜息銃で牽制しながら戦っていた。

 「貴様らは精霊の力に頼りっきりであったが故に自分を鍛えてないからな。

このように力づくでは出来ないのだ。」

 ヴェルサリアは嘲笑しながら注意するも彼女達からすればムカつくしか言いようが

なかった。

 「ふざけんな!」

 「お前みたいな下級貴族生まれごときに私達があ!!」

 彼女達の攻撃がさらに苛烈に特に金剛精霊は自身の体から剣を出してきた。

 するとヴェルサリアのレイピアから竜声でカミトが通信してきた。

 『ヴェルサリア!今大丈夫か!?』

 「カミトか?どうした??」

 『作戦があるんだ!!」

 「・・・ナンダその内容は?」

 『それは・・・・・・』

 『行けるか?』

 「・・・無論だ!!」

 カミトの作戦を聞いてヴェルサリアはそれを了承して突っ込んでいった。

 「何!」

 「突っ込んできた!?」

 少女達は身構えると・・・横からも何かが現われた。

 「うおおおおおお!!!!」

 カミトが『シラヌイ』を纏って現われたのだ。

 「「何い!!」」

 少女達が驚く中カミトは金剛精霊目掛けて攻撃した。

 「きゃあああ!」

 「!!」

 「よそ見してよいのか!?」

 「ちぃい!!」

 そしてヴェルサリアは魔境精霊と対峙するような形になった。

 「さあてとカミト、行けるか?」

 「誰にもの言ってるんだよ?」

 カミトとヴェルサリアは背中合わせでそう言うと二人はこう言った。

 「「さあ・・・お前の罪を数えてもらおうか?」」

 二人はまるで相棒同士が共に戦う戦士のようなセリフを言いながら相手目掛けて

武器を差した。

 




 そして共に未来を掴もうと藻掻いた。


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作戦会議

 勝率を上げるために必要な事だ。


「「さあ、お前の罪を数えてもらおうか?」」

 カミトとヴェルサリアがそう言って自分の武器を構えると二人の少女は激高してこう言った。

 「ほざくな!」

 「あんたら諸共殺しちゃうわ!!」

 そう言ってお互い攻撃しようとすると・・・。

 「「へ?」」

 二人の少女は素っ頓狂な声を上げた。

 鎧を纏った少女は槍を振りかざそうとするとヴェルサリアは「クローズ」の柄でそれを受け止めながら勢いを殺さずに避け、金剛精霊の方は殴ろうとした瞬間にカミトが

消えると足が何かに掴まれたように転んで行ったのだ。

 「「きゃあ!!」」

 二人の少女はそのまま転んでしまうとカミトとヴェルサリアは二人に向けてこう

言った。

 「「さあ・・・早く立ち上がれ。」」

 「「貴様あ!!」」

 二人は更に怒り狂ったかのように攻撃し始めるがカミトとヴェルサリアはそれを

避けるだけである。

 「[後どれくらいかかるんだカミト!!]」

 ヴェルサリアは竜声でカミトにそう聞くとカミトはこう答えた。

 「〈あと少し・・・あと少しだ!!〉」

 そしてカミトは破壊された家の方を見てそう言った。

 「〈頼んだぞ!アルマ!!〉」

 

 

 

 

 

 「おい大丈夫なのかアルマ!!このままでは義姉上達が!?」

 「うるせえぞ。少し集中させろ。」

 エリスはカミト達の状況に急がせるもアルマは自分を落ち着かせるように意識を集中させていた。

 

 

 

 

 

 「あいつらを倒す考えはない物か?」

 カミトはエリス達に向けてそう聞いた。

 おそらくあの少女達の精霊は何かしらの方法で強化(凶化?)されたのであろう。

 カミトはそう思い作戦を立てようとしているのだ。

 「あの鎧は遠距離攻撃を跳ね返し」

 「あのデカブツはあの剣みてえな体でたたっ切る」

 エリスとアルマはそう言うとアルマはある事を言った。

 「ボスからの話じゃあもう少し時間がかかるようだ。だから俺達だけでここを

切り抜けなきゃいけないようだぜ。」

 その言葉にカミトとエリスは暗い表情になった。

 今の少女達の実力は正規の騎士でなければ太刀打ちできないというレベルに

なっており、さらに自分達の得手不得手を知っているためどう対処すればよいのか

見当が付かないのだ。

 暫く考える中アルマはある事を考えた。

 「なあよ・・・あいつらってコンビネーションで戦ってるんだよなア。」

 「ああそうだ。だからこうやって対策を」

 「おれにいい考えがある。」

 「本当か!?」

 アルマはある事を考えたようだがこうも言った。

 「だけどこいつは賭けだぜ。失敗する確率が高いし俺自身もこいつを完全に会得したわけじゃねえんだ。」

 「なんだそれは・・・?」

 アルマの言葉にエリスは何事だと思い聞いた。

 その名は・・・

 「『クイックドロウ』三大機竜奥義の一つで神速の攻撃術だ。」

 




 それは最強の一撃となれるか?


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信じてる。

 俺は君を信じる。


 「『クイックドロウ』・・・お前それ使えんのかよ!?」

 カミトはそれを聞いて驚いていた。

 何せ三大機竜奥義は一つだけでも会得すればそれだけで一流のドラグナイトと認めてもらえるほどである。

 だがそれと同じく会得するには膨大な時間と才能と努力を積まなければいけないのである。

 「まあ、使えても百回やって一回出来るかどうかだがそれでも当たれば必殺の一撃となり得るモノだが・・・。」

 アルマはそう言うと自身の「エクス・ワイバーン」を見てこう言った。

 「今のこいつじゃ一回やっただけでお釈迦は免れねえだろうな。」

 そうじゃなくてもこいつは戦えるかどうか分からねえけどなと言った後こう続けた。

 「ボスの救援を呼んだとしてもあいつらが暴走すれば街が大変な事になっちまうし

今しか多分勝ち目はなさそうだがどうするよ?」

 アルマの言葉を聞くと全員しんとなった。

 何せこのままヴェルサリアが応援が来るまでずっと守り切れるかどうかが

問題なのだ。

 恐らくヴェルサリアは今日までの間に機竜を纏った経験は無いと思ったほうが

妥当なのだ。

 それに幾ら調整したとしても戦闘後のデータにおける調整はしていないであろう。

 (これは間違いなく)

 そして何よりも・・・。

 「〈このままあいつ一人にしちゃいけないだろうが!!〉」

 カミトはそう思いながらも今の状況を考えている中・・・『シラヌイ』がカミトに

向けてこう言った。

 「(おいカミト、俺はお前が何したいのかを実現するようにサポート出来るぞ。)」

 『シラヌイ』の言葉がカミトの心の中にある何がしたいのかを理解すると

カミトはこう答えた。

 「やろう。」

 「「!!」」

 カミトの言葉にエリスとアルマはびっくりしていた。

 正にこれは賭けと同じであり失敗は許されないのになぜそれを実行するのかと

思ったからだ。

 「このままじゃヴェルサリアだってきついし俺達『シルフィード』がやらなきゃ

いけねえだろう。」

 「俺は違うけどな。」

 カミトの言葉にアルマは少し否定するとカミトはこう続けた。

 「それに・・・俺はいつもお前が毎朝何か特訓しているのは気づいてたからな。その力に俺は・・・信じたい。」

 カミトはアルマを見てそう言うとアルマはふっと鼻息を出すとカミトにこう言った。

 「しゃあねえな。・・・やるか。」

 「おお。」

 アルマの言葉にカミトはそう答えて竜声でヴェルサリアに説明をした。

 

 

 

 

 

 そして現在・・・。

 「(正直出来るかどうか自信ねえけど・・・。)」

 『俺は・・・信じたい。』

 「(あんな事言われたら答えねえ訳にはいかねえだろうが!!)」

 アルマは意識を最高潮にするとエリスに向けてこう言った。

 「離れてろ!!」

 その言葉を聞いてエリスは無言で離れた。

 そして「エクス・ワイバーン」を纏ったアルマは最大出力で・・・外に出た。

 

 

 

 

 

 「うおおおおおお!!!!」

 アルマは雄叫びを上げながら出てきた。

 アルマが向かう場所・・・そこは。

 「お前だアアア!!」

 金剛精霊目掛けてである。

 そしてそのまま金剛精霊を・・・一刀両断にした。

 「きゃあアアア!!」

 金剛精霊の精霊使いはその衝撃にびっくりして失神した。

 「こっちだってえ!!」

 「ハアアア!!」

 カミトとヴェルサリアはそれを見て驚いていた魔境精霊の精霊使いの鎧を両側から

切り裂いた。

 「きゃああ!!」

 そして鎧が砕かれると同時にその少女も失神した。

 それを見た後カミトはアルマの方を見た。

 機体はボロボロだが本人は無事であった。

 「・・・任務完了だな。」

 カミトの言葉を聞いたと同時に全員脱力した。

 これを持って精霊災害は収まった。




 だから君も俺を信じてくれ。


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その後・・・。

あの騒動の後からお話しよう。


そして次の日の早朝の森の中・・・。

 幾つかの剣戟の音が聞こえる。

 本来その森は人もあまり寄り付かない精霊の森であるのにも関わらず何故剣戟の音が聞こえるのかと言うと・・・。

 「はああ!!」

 これが理由である。

 上空からヒット&アウェイをしているのは「ワイバーン」を身に纏った

ヴェルサリア、そして相手は・・・。

 「フムフム。基本に忠実じゃが面白みがないのう。」

 「エクス・ドレイク」を纏っているマギアルカがそこにいた。

 二人とも剣のみでやっているがヴェルサリアは双剣に対しマギアルカは

たった一本にも関わらず応戦している辺り本人の腕の強さが確かにあると見た。

 そしてマギアルカは再び「エクス・ドレイク」の≪迷彩≫を使って姿を消した。

 「またか!!」

 ヴェルサリアはそう言うとまた飛翔して周囲を警戒した。

 そして・・・

 がさと言う音が聞こえた。

 「そこか!!」

 ヴェルサリアはそう言いながら機竜息銃を構えて音がしたほうに目がけて撃った。

 「やったか!?」

 ヴェルサリアはそう思いながらも撃った方を見るために高度を下げてそこに向かうとそこにいたのは・・・。

 「・・・いない。」

 そこには誰もいなかったのだ。

 すると・・・。

 「こっちじゃぞ。」

 「!!」

 マギアルカの声がしたことにヴェルサリアは気づいてもう一度空に上がろうとするも

 間に合わなかった。

 「チェックメイト。」

 マギアルカのはそう言ってヴェルサリアの首筋に剣を向けた。

 「・・・降参だ。」

 ヴェルサリアはそう言って機竜の操縦腕から手を放した。

 

 

 

 

 

 「先ずヴェルサリアは『ワイバーン』の特徴でもある飛翔能力に頼りがちじゃな。

もう少し地上に近いところで匍匐飛行する練習を積めばさっきのような

ヘマはしでかすまい。」

 「分かった。」

 ヴェルサリアはマギアルカの言葉を聞きながら重要な所はメモをしていた。

 「義姉上も頑張っているな。」

 「当然でしょ。もうすぐ私達からすれば最後の試合があるんだから。」

 それで余計にでしょうね。と言うとエリスの言葉に対してフィアナがそう言うとこう続けた。

 「それに・・・頑張ってるのはヴェルサリア様だけじゃないらしいしね。」

 そう言いながら別の方を見た。

 「おらあ!!素振り千回迄後500本みっちりしやがれエ!!」

 「「はい!!」」

 アルマの元で機竜で素振りをしていたカミトとレオノーラがそこにいた。

 「私達も頑張りましょ。」

 「ああ、私も義姉上の背を守れるぐらいに強くなりたいしな。」

 そう言うとエリスは槍を構えてフィアナの向けてこう言った。

 「もう一本頼もう。」

 「ええ良いわよ。・・・『ゲオルギウス』!!」

 そしてフィアナはゲオルギウスを召喚して模擬試合を行った。

 全ては明日行われる決定戦に臨んで。

 

 

 

 

 

 あの騒動の後呪装刻印に手を出した女性徒二人は駆け付けた『シルフィード』と

ギルゾレイクファミリーによって捕縛され、瓦礫の後片付けや被害に遭った

建物の修繕、怪我人の治療等でマギアルカとグレイワースは多忙を極めたそうだ。

 今回の事は既に帝国評議会に報告されており呪装刻印に手を出した二人は

評議会からの人間が来るまで学院の使用されていない倉庫に閉じ込めることにした。

 その周りには『シルフィード』のメンバーやギルゾレイクファミリーの

ドラグナイトが周囲を警戒しており脱走できる状況ではないのだ。

 さらに呪装刻印を使った事で精霊の力が弱まっていることから脱走すらも怪しい

状況であったがそれは表向きである。

 本当はと言うと・・・。

 

 

 

 

 「そういや次の試合の相手って誰なんだ?」

 カミトが朝食を食べながらそう聞いた。

 「次の相手は確か『ローデル』教室だったな。あそこは主にサポート系の精霊が

多いから本来なら他の教室の生徒と組むべきなのだがな。」

 その言葉にヴェルサリアがそう返すとこう続けた。

 「ま、次が最後だがこれに勝てば我々はブレイドダンスに出場出来るのだ。

皆気を引き締めよ!!」

 「「「「おおお!!!!!」」」」

 その言葉にカミト達が全員大声でそう言うとエリスは何かを思いだしたように

カミトとレオノーラにこう言った。

 「ああそう言えば私とカミトとレオノーラは学院長から来てくれと頼まれたんだ。」

 「グレイワースが?」

 「(また変な御使いじゃねえと良いけどよ。)」

 エリスの言葉にカミトと『シラヌイ』がそう言った。

 

 

 

 

 「おお来たな。カミト、エリス、レオノーラ。」

 既にグレイワースとマギアルカが倉庫前で待っていた。

 「それで俺達を呼んだ理由って一体?」

 「まあそれは見れば分かるわい。」

 カミトの質問にマギアルカがそう答えると倉庫の前で番をしていた

『シルフィード』のメンバーに開けるように伝えた。

 そして扉を開けて奥を進むとそこにいたのは・・・。

 「こいつら。」

 「そう、お前達が捕まえた人間の・・・成れの果てだ。」

 グレイワースはそう言いながらランタンに明かりを灯してそこを照らすと・・。

 右腕が金剛精霊のような腕になった女生徒と体の幾つかに鏡のようなナニカが

埋め込まれていた女生徒がそこにいた。

 「いやあああ!!」

 「見ないで(;゚Д゚)!!」

 二人はそう言いながら体を逸らそうとしていた。

 よく見ると二人とも両手両足に鎖と手錠がされておりまさに犯罪者のような扱いであった。

 「これはいってえ。」

 「何があったんです?」

 「これはもしや・・・。」

 カミト、レオノーラ、エリスはそれぞれ口々にそう言うとグレイワースは

こう返した。

 「おそらくだがこの学院に侵入してきたあの男と同じ薬を使われたと思われる。」

 「はあ!!でもこいつら」

 「それは量によるものだ。今回は少なかったからこの程度で済んだんだろうな。」

 グレイワースがそう言うとマギアルカがこう続けさせた。

 「こやちつらの情報によればどうやら『エルフィム族』と呼ばれる人種が

関係しておるらしい。」

 「エルフィム族。」

 その言葉を聞いてエリスは奥歯を噛みしめる勢いでそう呟いた。

 「おそらくそいつが呪装刻印の商人であろう。既にギルゾレイクファミリーが総力を挙げて対処に当たっておる。じゃからお主たちは明日の決定戦にのみ集中せよ。

よいな?」

 そう締めくくったあとカミトは彼女達をもう一度見た後外に出た。

 

 

 

 

 そして次の日・・・。

 「今日が最後。」

 「はい。」

 「これに勝って。」

 「私達はブレイドダンスに乗り込むのね。」

 「全員準備良いな?」

 カミト、レオノーラ、エリス、フィアナ、ヴェルサリアがお互いそう言うと外にへと向かった。

 勝っても負けてもこれが最後なのだと言い聞かせるように出て行くと『シラヌイ』と『メイルストーム』はこう言った。

 「(ここまでやってきたんだ。)」

 「【後は運を天に委ねましょう。】」

 そう思う中カミト達は決定戦の会場にへと向かった。

 それはまるで出陣する騎士の様であった。

 




 尚試合内容はスキップだよ。


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その真実はどんな箱か?

 その箱は開けざるべきか?
 開ける場気か?


「勝者『チーム スカーレットナイツ!!』」

 フレイヤ先生の声で勝負が決した。

 元からサポート系が多いチームであったのだが幾分か攻撃系を保有していたことから少々焦ったがそれでも勝てたことは勝てたのである。

 「これによりブレイドダンスに出場するチームが決まった!これをもって選抜戦を

終了とする!!」

 そして女生徒達のわああああ!!という大声と共に選抜戦が終わった。

 

 

 

 

 

 

 「それではブレイドダンス出場を祝って・・・乾杯じゃ!!」

 『『『『『カンパ~~~イ!!』』』』』

 今回のブレイドダンス出場を記念してマギアルカ主催で立ち食いパーティーが

執り行われた。

 本来ならチームだけで慰労会をする程度だったのだがこの間のヴァレンティア聖祭による被害の算出と穴埋めが終わった事に伴いマギアルカの慰労も兼ねて

執り行われたのだ。

 周りには『シルフィード』のメンバーやギルゾレイクファミリーの面々が集まって

無礼講の大騒ぎとなっていたのだ。

 するとエリスとヴェルサリアの周りには『シルフィード』の彼女達が集まっていた。

 「おめでとう!エリス!!」

 「姉妹揃ってブレイドダンス出場なんて羨ましいわ!!」

 「ヴェルサリア様!今度こそ我々『アレイシア精霊学院』に優勝のご報告を!!」

 「頑張ってください!ヴェルサリア様!!」

 周りはそう言ってエールを送っていた。

 すると・・・。

 「ラッカ!レイシア!如何したのだ一体!?」

 エリスがそう言って二人を見ると二人はエリス達にこう言った。

 「いやさ。本当は来ない方が良かったかもしれないけどさ。」

 「同じチームメイトが晴れ舞台に立とうとしてるんだから言葉だけで持って

思ってさ。」

 二人は居心地悪そうにそう言うとエリスは首を横に振ってこう言った。

 「いいや。お前達がいてくれたからこそここまで戦えたのだ。本当に感謝してるのは私なんだ・・・ありがとう!!」

 「「・・・エリス(;´Д`)」」

 エリスの言葉にラッカ達は泣きそうな顔になっているのをカミト達が見ている中

カミトはある所を見た。

 「あいつ・・・何であんなに離れてんだ?」

 少し離れた所でアルマが酒をちびちび飲みながらエリス達を見ていたのだ。

 あれからと言う物アルマは帽子を被らなくなり素顔で周りに姿を現すように

なったのだ。

 まあそれでもギルゾレイクファミリーは相変わらず素のままで接しているため

大差ないのだが・・・。

 それでもエリス達を見ているアルマは何だか羨ましそうな表情で見ていたのだ。

 それを見たカミトはアルマに近づいてこう聞いた。

 「なあよ、こんな所じゃなくて皆の所に来ればいいじゃねえか?」

 カミトはアルマにそう聞くとアルマはこう返した。

 「俺は一人が好きなんだ。ほっといてくれ。」

 ぶっきらぼうにそう言うとカミトはアルマにある事を聞いた。

 「お前さ・・・偶にだけどエリスとヴェルサリアが一緒な所をよく見るよな?」

 「!!」

 カミトの言葉にアルマは目を見開くとカミトはこう続けた。

 「最初は偶々かなって思ったけど朝から夜までそう言う所をチラ見していたからさ、何だろうなって思ったんだけどよ。お前・・・何かあったのか?」

 そう聞くと『シラヌイ』がカミトにこう忠告した。

 「(お前さ、あいつの顔を見てみろよ。何だか言いたくねえような顔だぞ。)」

 『シラヌイ』がカミトにそう言っているとカミトはこう続けた。

 「いやそのさ!言いたくなけりゃ良いんだ。只何となくさ?気になってな。」

 そう言うとアルマは自嘲しながらこう言った。

 「ははは、まさかお前みてえな奴に気づかれちまうとは俺も駄目だなア。」

 そう言いながらアルマは天を仰いでそう言うとカミトの眼を見てこう言った。

 「カミト、これはボスしか知らねえ秘密でな。俺の目的の為でもあるんだ。そんで

それを聞いちまったらお前も共犯になってもらうぜ。」

 それでもいいのか?って聞くとカミトはアルマの目を見てこう返した。

 「ああ良いぜ。俺も秘密を持っているものだからな、お前になら喋っても特に問題はねえだろうしそれに・・・お前に秘密を聞いて俺は知らん存ぜぬなんて嫌だからな。」

 そう言うとアルマは笑いながらこう言った。

 「アハハハハハ!!トンでもねえお人好しだなお前はよ!!全くよ・・・あん時に

お前がいたらどんだけ心強かったんだろうなア。」

 そう言うとある話をした。

 「お前覚えてるか?『アーカディア帝国』についてをよ?」

 「ああ、お前が授業で教えてもらってるからな。確か5年前まで強国で『男尊女卑』を掲げていたんだよな?」

 「(そんで胸糞ワリィ事を女共に平気でしていたんだよな?)」

 アルマの言葉にカミトと『シラヌイ』がそう言った。

 「そう、『男尊女卑』を掲げたその国はあらゆる凌辱を女性に対して行いそれは口に出すのも嫌になるような事ばっかりだった。」

 「そしてそれを見限ってある貴族が他の貴族と手を組んで帝国打倒を掲げたのは?」

 「『アディスマータ伯だよな?』」

 「そうだ。『アディスマータ伯』が起こしたクーデターにより帝国は滅び新たに

『アディスマータ新王国』が誕生してな。その娘が成人するまでその

『アディスマータ伯』の妹が暫定女王陛下になったんだが・・・。」

 するとアルマは酒瓶を睨んでこう続けた。

 「その娘『リーズシャルテ・アディスマータ』には妹がいたんだ。三歳年下の妹

でな、そりゃあ懐いてたそうだぜ。」

 「だが革命の際にその妹は姉と叔母から裏切られ、帝国に掴まって奴隷にされかけて逃げて逃げて逃げ延びた時にあるファミリーに拾われて機竜に搭乗して今でも

戦ってる。・・・そう今でも。」

 「おい・・・アルマ?」

 「ここまで喋っちまったんだ。全部言うぜ。」

 カミトはアルマの顔が険しくなり始めたのを見て如何したのだと思うとアルマは

カミトにある真実を話した。

 それは・・・。

 「俺の名前は『アールマティア・アディスマータ』。『アディスマータ新王国』

第二王女であり『リーズシャルテ・アディスマータ』の実の妹だ。」




 明かされた真実は何を語る?


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苦悩と挑戦。

 等々予定していたのが来れそうだ。


 「『アディスマータ』って・・・お前王女様なのか!?」

 「まあ血筋的にはそうなっちまうな。」

 マジかよとカミトはアルマの話を聞いて驚いていた。

 アディスマータの血族二人の裏切りにより自分は国を追われてアンダーグラウンドで生活しなければいけなかったのにその二人は王国で暮らしていることにカミトは

少し腹の立つ思いでそう思っていた。

 「・・・俺はあいつらをぶっ潰したいんだ。」

 アルマはそのままこう続けた。

 「父上が命張って国を立て直そうと必死だったのにも関わらずそれを裏切り、

剰え血族であるだけで王国で悠々自適な生活・・・ふざけんな!」

 するとアルマは酒瓶を机に叩きつけてこう言った。

 「俺がどんだけ苦しい生活してたんだと思ってたんだよ!!残飯をあさり!!

僅かな金のために人を殺し!!犯されかけて!!マギアルカ様に見つけてもらえるまで俺がどんだけ惨めでいやらしい生活を送ってたのかをあいつらに民衆の前で

暴露してやりてえ程に憎いのに!!・・・・」

 大声を上げながらアルマは自分の経験を喋っている中言葉が突如詰まり、

こう続けた。

 「・・・それでも憎み切れねえ自分が心のどっかにあるんだよ。」

 「あいつらを見ていると思いだしちまうんだよ・・・姉上と一緒に過ごした

あの時をよ・・・!!」

 アルマは酒瓶越しからヴェルサリアとエリスを見てそう呟いた。

 そしてアルマはカミトを見てこう言った。

 「これが俺の目的だ。さあてと次はお前だがアホナ話すると。」

 「阿保な話すると・・・何だよ?」

 カミトはアルマにそう聞くとアルマはカミトの・・・下半身を見てこう言った。

 「その下の剣をブッタギルゾ。」

 「ヒィイ!!」

 カミトはアルマの言葉に怯えながらもある事を話した。

 

 

 

 

 

 

 「(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャwwwwwお前それって・・・プププwwwww!!」

 「もう笑わないでくれ。・・・自分でも分かってるつもりだから。」

 「(今でもやったら似合うんじゃねえ?)」

 アルマが爆笑している中『シラヌイ』の言葉にカミトがふざけんなと言っている中

カミトはアルマにこう続けた。

 「なあアルマ、この事だけどさ・・・黙っててくれるか?」

 「はあwww何でだよ?」

 未だ笑っているアルマにカミトはアルマにある頼みごとをした。

 「あいつら・・・エリス達には黙っててくれないか?あいつらの夢を

ぶち壊したくねえしよ。」

 それを聞いたアルマははあと溜息ついてこう言った。

 「良いぜ。お互い秘密を言い合ったんだ。これで俺達は共犯者だから秘密を

共有しようぜ。」

 「助かる。」

 そう言いながらカミトとアルマはお互い握手をした後カミトはアルマから離れて

行った。

 

 

 

 

 

 「何の話をしていたのだ、カミト?」

 「ああちょっとな。」

 カミトはヴェルサリアからの言葉に濁しを入れて誤魔化した後ヴェルサリアは

カミトに向けてある事を聞いた。

 「覚えてるか?ブレイドダンスで精霊の森から脱出した後、お前に約束をと言った

あの言葉を?」

 「ああ・・・やっと思い出したよ。」

 カミトはヴェルサリアの言葉に『シラヌイ』のソード・デバイスを見せてそう言うとヴェルサリアも『カオスブレイカー』のソード・デバイスを見せつけてこう言った。

 「お互いに同じ得物があるという事と今の私とお前、どれだけ差が縮まっているのか知る機会だと思うんだ。」

 ヴェルサリアはそう言って酒を飲むとカミトに向けて指さしてこう言った。

 「カゼハヤ・カミト!貴様に勝負を申し渡す!!」

 それを聞いた周りの人間が( ゚д゚)ポカーンとしている中カミトはヴェルサリアに

対してこう返した。

 「その挑戦・・・受けて立つ!!」

 それを聞いた全員は一呼吸おいて・・・。

 『『『『『ええええええええええええ!!!!!!!!!!』』』』』』

 一斉に叫んだ。




 因みにこれを聞いたマギアルカの顔は・・・
 「($・・)/~~~良い事考えたのじゃ$$」


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何でこうなった。

 壁に耳あり
 戸に口有り。


それから3日たったある日の事・・・。

 嘗てセレモニーがあったコロシアムで大きな叫び声が響き渡っていた。

 『『『『『ウおおおおおお!!!!!』』』』』

 興奮冷めやらぬ舞台で沸く観客と反比例するかのようにコロシアムの闘技場にいる

2人は少し・・・暗かった。

 「・・・カミト。」

 「・・・何だヴェルサリア。」

 「・・・何でこうなったんだ?」

 「・・・そりゃお前・・・決まってるだろう?」

 「・・・ああそうだな。」

 「「・・・マギアルカのせいだ。」」

 カミトとヴェルサリアは少し重い口調でマギアルカのいる席を見ていた。

 その本人はと言うと・・・。

 「(・_・D フムフム・・・これなら黒字が出せるわい。ヒヒヒヒヒヒ」

 観客の人数と持っている商品を見て笑みを浮かべていた。

 それもそのはず、今回のこの騒動はマギアルカが一端を担っていたからだ。

 

 

 

 

 

 前日の夜。

 『『『『『エエエエエエエエエ(;゚Д゚)』』』』』

 ヴェルサリアとカミトが決闘すると知ってそこにいた『シルフィード』のメンバーは驚いていたのだ。

 何故にどうしてと周りがざわめく中ヴェルサリアは全員に向けてこう言った。

 「皆の物、彼はこの間の襲撃者を打倒したという噂を学園長から聞いてな。

騎士として・・・何よりも『シルフィード』の団長として戦いたいと思った次第だ。」

 ヴェルサリアはあたもさっき思いついたような事を周りに聞こえるように言った。

 流石に嘗ての約束など言った時には勘の良い人間からすればそれが

ブレイドダンス中であるのではないかと感づく人間が出る恐れがあるのだ。

 カミトはそれを聞いて流石だなと思っている中ある事を聞いた。

 「それで・・・日時は?」

 その言葉にヴェルサリアはこう答えた。

 「3日後の夕方、精霊の森で。」

 あそこなら誰も傷つくまいと言ってカミトは了承しようとした次の瞬間・・・それに待ったを掛ける人間がいた。

 「ちょっと待つのじゃああ!!」

 マギアルカが食べ物を持って出てきたのだ。

 するとマギアルカがこう言った。

 「決闘なら分かるがここはアレイシア精霊学院、民草は精霊の戦いなら

知っておるよな?」

 「それはそうだ。皆ブレイドダンスを見ているからな。」

 マギアルカの言葉にエリスが淡々と答える中レオノーラは少し引き攣ったような

笑顔でこう聞いた。

 「あのまさか・・・マギアルカ先生・・・もしやと思いますが・・・。」

 「( ゚д゚)ウム、大体はお主が思っていることじゃな。」

 「・・・やっぱり。」

 マギアルカの言葉にレオノーラは頭を抱えながら的中してしまったことに

後悔してしまった。

 「ねえ・・・マギアルカ先生何しようとしてるの?」

 フィアナはレオノーラに何が起きたのかを聞こうとした。

 そしてレオノーラの答えはと言うと・・・。

 「恐らくですがカミトさんとヴェルサリアさんの決闘を興行にしようとしてるんだと思います。」

 「あら、決闘って言っても精霊使いとして」

 「そっちじゃなくてドラグナイトとしてですよ。」

 レオノーラの言葉にフィアナは・・・マジかよと言う顔でこう聞いた。

 「え・・・ウソでしょう。」

 「本当ですよ。」

 フィアナの言葉にレオノーラは一瞬で切り捨てると顔を真っ青にした。

 ブレイドダンスでも結界が張られてることがあるが機竜では力が違うため

場合によっては怪我人が出るかもしれないという想像をしてしまったのだ。

 するとマギアルカがフィアナにある事を言った。

 「大丈夫じゃ。機竜の障壁を内側に展開すればちょっとやそっとじゃびくとも

せんから心配するでない。」

 その言葉に少しほっとしたフィアナであったがカミトはマギアルカに何故それを

するのかと聞くとマギアルカはこう答えた。

 「当たり前じゃろ。この国で初めての機竜での決闘などそうそう拝めるものでは

なかろう?」

 「ん・・・確かにな。」

 その言葉にはカミトはそれもそうだと思った。

 機竜などこの国では恐らく知っている人間がいるはずはないのだ。

 それが戦う所を見せれば確かに興行としては成り立つだろうがマギアルカは

さらにこう続けた。

 それも嫌嫌な顔で・・・・。

 「それにな・・・この間のヴァレンティア聖祭の時の出資代を稼がなければ

いかんのじゃ!!」

 「「それが理由だろ!!」」

 カミトとヴェルサリアはそれが本音だなと直感で理解し、ツッコミを入れたのだ。

 彼女達がヴァレンティア聖祭を滅茶苦茶にしたせいで赤字になっていたのだ。

 それを解消しようと悩んでいたところに今回の決闘を聞いて思いついたのである。

 「それにのう、同じ考えをしているヴァレンティア聖祭の時に出店していた連中も

大勢おるからなこれを期にお互いWin-Winな関係を作りたくてのう。」

 「「・・・はああ。」」

 「という訳で儂はこの辺りでまだうろついている連中に声を掛けてくるから

楽しみにな。」

 じゃあの、と走り去っていったマギアルカを見ていたカミトとヴェルサリアはと

言うと・・・。

 「「何だか・・・嫌な予感がするなア」」

 と溜息交じりでそう言ったのであった。




 世の中金と商人同士の友情じゃあ。


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さてと・・・商売じゃな。

 商売人の魂は真っ赤だ。


 その後マギアルカはばらけていたヴァレンティア聖祭の時に出店していた商人に

手あたり次第機竜に乗って今回の事で出店をだして黒字にして見ないかと誘ってみると商人魂に火が付いたのか馬車をアレイシア精霊学院に戻して颯爽と準備に

取り掛かったのだ。

 無論それだけではなくマギアルカはアディスマータ新王国で噂になっている場内での飲食等を配る仕事を『シルフィード』のメンバーにさせる事とするがちょっと問題が・・・出たのだ。

 「な・・・何だこれはアアアアア!!」

 「それが出店の衣装じゃが何じゃ?」

 「こんなに足が出る服等着れるかアア!!」

 スカートの丈が短かったり腕を出したりする服はアレイシア精霊学院では見ない為

そう言う服もあると教えるのに時間がかかったりしたという事である。

 更に言えば何処からか漏れ出たのか近場にいる貴族や騎士たちも船に乗って

集まるためその調整にグレイワースは少し苛つきを覚えてしまっているらしい。

 そんなこんなで決闘当日には多くの民間人や貴族が集まってきた。

 それぞれは席を分けておりそこで観戦させている。

 そして闘技場の中には障壁を展開させるため待機させている機竜が10機あるが外ではもっとすごいことになっていた。

 「はい、いらっしゃい!いらっしゃい!!ヴァレンティア聖祭のチョコレートを

使った『チョコバナナ』はいかがですか!?」

 「こちら機竜の簡単な説明コーナーになってます。分からない方は気軽に

どうぞー。」

 まあこれは未だ優しい方なのだが・・・更に向こうには・・・。

 「さあさあ張った張った!!『カゼハヤ・カミト』対『ヴェルサリア・イーヴァ』

との機竜対決!!1口につき金一枚!銀三枚!!銅五枚!!!さあさあ張った

張った!!」

 「俺『カゼハヤ・カミト』に銅10枚!!」

 「私『ヴェルサリア・イーヴァ』に銀三枚!!」

 「儂は『カゼハヤ・カミト』に金四枚!!」

 賭け事が行われていたり・・・。

 「昼間から酒吞めるって良いなあおい!!」

 「本当!マギアルカ商会様様ってな!!」

 真っ昼間から酒を飲む連中がいた。

 

 

 

 

 

 「凄い人数ですねぇ。」

 「本当、よく見たら騎士の家系の貴族もいるわね。」

 フィアナとレオノーラは今回、ファーレンガルト公が来ると手紙に書いていたこともあり席を幾つか貰っているのだ。

 本来ならフィアナは皇族の為特等席で見られるようになっていたのだが本人の希望で断ってもらったのだ。

 「然しエリスのお爺様には何から何までありがとうございます。」

 「ああ構わん構わん。ヴェルサリアの奴が戦いたいと思う人間が噂の男の

精霊使いだからな。これを期に奴の力量を知りたくってな。」

 そこにいたのは鷹のような目つきをした青い髪の老人、ファーレンガルト公である。

 「然しドラグライドか、此度の試合次第ではマギアルカと言う者と商談してみるのも

ありだな。」

 ファーレンガルト公はそう言うが恐らくここにいる貴族全員がそう思っている

だろう。

 そして暫くすると装衣を身に纏ったアルマが闘技場から姿を現すと既に準備しているカミトとヴェルサリアを見てこう説明した。

 「それじゃあ、試合を始めるがルールは簡単だ。機竜の障壁が展開できなくなるか、機竜が解除されるかだ。お互い悔いが残らねえようにしろよ。良いな?」

 「おう。」

 「無論だ。」

 カミトとヴェルサリアはアルマの言葉に了承するとお互いソード・デバイスを

抜いた。

 そしてお互い詠唱府を唱えた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」 

 「愉悦せよ!遍く希望を刈り取り、真の絶望と狂乱を我に!!

〈カオスブレイカー〉」

 そしてお互いの後ろに機竜が召喚された。

 「おおあれが。」

 「機竜、なんと勇ましい。」

 「カッコいいー。」

 「「コネクトオン」」

 そして二人が機竜を纏った後、ヴェルサリアは少し地上から離れ、カミトは

「玄海」を構えた。

 「障壁、展開!!」

 アルカがそう言って合図を送ると機竜の掌から障壁が内側向きに展開された。

 これにより攻撃が外に漏れないようにするのだ。

 そしてヴェルサリアは大鎌、「クライシス」を構えるとカミトに向けてこう言った。

 「やっとこの時が来たな。」

 「・・・ああそうだな。」

 その言葉にカミトは確かにと思った。

 ここまでの間に色々な事が立て込んでいたのだが今日この瞬間だけはお互いに嘗ての約束を果たそうとしていた。

 「それでは両者!!」

 アルマが手を天に掲げた瞬間お互い武器を構え、そしてその緊張感と同時に・・・

ゴングが鳴った。

 「バトル・スタート!!」

 アルマが手を地面に向けたその時に・・・カミトとヴェルサリアはお互いの

正面にへと向かった。

 今帝国最初の機竜同士の戦いが始まった。




 今約束の決闘が始まった。


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決闘開始!!

 約束は今実現する。


「せえええ!!」

 ヴェルサリアが急降下しながら大鎌型方天戟「クライシス」を振りかざすとカミトは一瞬「玄海」でそれを食い止めようと考えたが「シラヌイ」の言葉で思いとどまった。

 「(待てカミト!あれを受け止めようとするんじゃねえ!!)」

 その言葉にカミトは思いとどまって肩に搭載されている「風雷」で

受け止めた。

 「くう!!」

 カミトは上空から来る武器の重さに機体の脚部が膝を付いた。

 そしてヴェルサリアはそこから離れて機竜息銃を構えるとカミトも「清水」を

構えた。

 そしてお互いダアン!!という大きな銃声と共に自分達の近くに着弾した。

 するとヴェルサリアはカミトに竜声でこう話した。

 「この時を待ち望んでいたぞカミト!!あの時できなかったブレイドダンスの戦いを今こうやって出来る事を楽しみにしていたぞ!!」

 そう言うとヴェルサリアは「クライシス」を背面部に収めると腰部に搭載されている「クローズ」を抜いてカミトに対してこう言った。

 「さあカミト!貴様が私にしか目に映っている限り勝ち目が無いぞ!!」

 するとカミトは「玄海」を抜くとこう言った。

 「そいつは・・・俺の台詞だよ!!」

 

 

 

 

 

 「・・・凄い。」

 誰かがその戦いを見てそう言った。

 初めての機竜での戦いを見ている観客はここ迄凄いのかと思っていたのだ。

 見せるためではなく勝つためだけに戦いあう彼らを見て武者震いする者もいる程だ。

 それはレオノーラ達も同じであった。

 「カミトさん、ここ迄強かったんですね。」

 「ええ・・・正直言えばここ迄とは思っていなかったわ。」

 レオノーラとフィアナはお互いそう言っていた。

 何せこれ迄カミトが本気で戦った事など今迄なかったのだから。

 そしてそんなカミトと機竜でとは言え互角に戦いあえるというそのセンスの高さにも驚いていた。

 「やっぱりヴェルサリア様は凄いわ。」

 「それに向かい打つ彼も凄いわね。」

 客席にいた「シヴァレス」の隊員もそう言っていた。

 そしてエリスはというと・・・。

 「≪義姉上もカミトもあれ程凄いとは・・・それに比べれば私は・・・≫」

 エリスは自身の弱さに落ち込みが目立ち始めていた。

 それを見ていたファーレンガルト公はエリスに対してこう言った。

 「エリス、よく見ておくのじゃ。ファーレンガルト家を継ぐと思っているのなら己の無力を受け入れるのもまた必要な事。」

 「・・・お爺様。」

 エリスはファーレンガルト公からそう言われるとこう続けた。

 「だがなエリス。あれがあそこまで『己の為に』戦っているのを見るのは儂は初めてじゃ。」

 「え?」

 「あれはいつも儂らファーレンガルト家の恩返しのために、残した家族の為に、『己』を捨ててまでも戦っているのを知っておろう。」

 「・・・はい。」

 「だが今のあ奴は違う。騎士としてではなく、『学院最強』でもなく、

ファーレンガルトの家を背負っている訳でもなく、只々己の心にある誇りと闘争心を

胸に秘めて戦っているのじゃ。」

 「・・・誰でもない自分のために。」

 「エリス、たとえどんな結果になったとしてもそれを受け止め、己の糧として

得ることこそが真の騎士たるものじゃ。」

 「・・・はい!!」

 エリスはファーレンガルト公の言葉を聞いてカミトとヴェルサリアの戦いをじっと

見守っていた。

 そしてファーレンガルト公もそれを見て安心したのかヴェルサリアの方をじっと

見ていた。

 

 

 

 

 

 

 「「はあ!!」」

 カミトとヴェルサリアは剣戟の応酬をしていた。

 ヴェルサリアが持つ「クローズ」は二本のブレードであるため「玄海」一本しかないカミトからすれば不利であるがそれを肩に搭載されている「風雷」を使った計三本で

応戦している。

 「くう!!」

 その猛攻にヴェルサリアは不利な状況にあると確信した。

 何せ今のカミトは変則三刀流になっており僅かに斬られる数が増えつつある。

 只でさえカミトとヴェルサリアのドラグナイトとしての経験が違う事も

あるという風にだ。

 だが今のヴェルサリアにあるのは不利に伴う焦りなどなくあるのはただ一つ。

 「アハハハハハ!!」

 興奮と戦闘に伴う悦楽である。

 カミトと戦っている。

 それは彼の正体が「レン・アッシュベル」だと知っているヴェルサリアからすれば

リベンジ・マッチであると同時に嘗ての約束を果たさんとする女の意地があるのだ。

 そして何よりも・・・想い人でもある人と一時とはいえ、まるで舞踏会のように踊るこの状況に感激しているのだ。

 「ふっ!!」

 カミトはヴェルサリア目掛けて二つの「風雷」を投擲した。

 「くあ!!」

 ヴェルサリアは二つを避けてカミトに迫った。

 二人が切り結び合う中ヴェルサリアはカミトにこう聞いた。

 「如何したカミト!!私相手に二本も出さないという余裕から来てるのか!!?」

 それを聞いたカミトは何も言わずに・・・にゃっと笑った。

 「[!!ヴェルサリア後ろから来るぞ!!]」

 「!!?」

 『カオスブレイカー』の声にヴェルサリアはカミトから離れようとすると後ろから「風雷」が迫ってきたのだ。

 「ちぃい!!」

 ヴェルサリアはそれをぎりぎりで避けると後ろから声が聞こえた。

 「後ろに要注意だ!!」

 カミトはそう言いながら特殊武装「天の羽衣」を展開していた。

 「[回避だ!!ヴェルサリア!!]」

 「言われなくとも!!」

 そう言ってヴェルサリアは回避しようとするも何分数が多いことが災いし、その内の一つが引っ掛かった瞬間『シラヌイ』がカミトにこう言った。

 「(今だ!!)」

 「おお!!」

 すると微弱だが電流が足に流れてきた。

 「ぐう!!」

 ヴェルサリアはそれに何とか我慢するも着陸するしかなかったのだ。

 そしてカミトはそのまま「玄海」を振りぬいた。

 「グウウ!!」

 ヴェルサリアはあまりの衝撃にそのまま飛ばされた。

 そしてカミトを見るとヴェルサリアは・・・大笑いした。

 「ハハハハハ!!やはりこうでなくては面白くないな!!」

 そう言いながら剣を地面に刺しこむと「クライシス」を背面部から取り出して・・・柄の分を二つに分けた。

 「なあ!!」

 そして別れた部分を「クローズ」の柄に差し込むとそれらはカチっという音がした。

 そしてその二つを持ち上げると剣ごとそれらが浮いた。

 そしてヴェルサリアはその二つを見せつけながらこう言った。

 「これこそ『カオスブレイカー』の特殊武装『オーバーフォール』だ!!」

 「オーバー・・・フォール。」

 方天戟か付いていた上側は剣が鎌のように柄が曲がった状態になり

もう一本の方は小型の鎌のようになった。

 そしてカミトにそれを見せてからこう言った。

 「さあ!!続きと洒落込もう!!」

 そう言いながらカミトに向かってヴェルサリアは突進した。 




 戦いは未だ終わらず。


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神装解放。

 やっと『シラヌイ』と『カオスブレイカー』の神装が出せる。


「はあ!!」

 ヴェルサリアは特殊武装「オーバーフォール」を使ってカミト目掛けて再び

突進してきた。

 「そう何度も同じ手が通じるかよ!」

 そう言いながらカミトはその攻撃を避けようとした。

 あの武器は剣と合体しているが剣は真っすぐの状態であったので避けやすいと

考えたのだ。

 然しそれを・・・軽く裏切った。

 避けた瞬間に剣が柄如曲がり、もう一つの鎌のようになったのだ。

 そしてヴェルサリアはそれを思いっきり引っ張った。

 「(カミト!後ろ!!)」

 「なあ!!」

 カミトは『シラヌイ』の警告を聞くも命中してしまった。

 「ガアア!!」

 カミトはそのままヴェルサリア目掛けて跳んで行くとヴェルサリアはもう一つの

武器を使って弾き飛ばした。

 「がは!」

 そしてまた飛んで行って壁に激突した。

 「・・・全く・・・とんでもねえ武器だぜ。」

 「(ああ。あの鎌を見ると完全に近接格闘戦特化型の機体だってのは分かるしそれにあいつの武器も長獲物だからな、相性が合致しやがってるぜ。)」

 カミトと「シラヌイ」がそう言いながら対策を考えていた。

 「(近接格闘型なら『清水』を使って「透明化」しながらやるのがベストだろうが

あいつらがそんなことに気づかないとは思えねえな。)」

 「それにヴェルサリアの精霊も遠距離戦が高いからそう言うのも察知されると

厄介だろうな。」

 恐らくヴェルサリアは足りない機竜戦での経験を精霊使いの経験で補っているの

だろうと少しやばいと考えた。

 そしてカミトは『シラヌイ』にあることを提案した。

 「『シラヌイ』、あれやるか?」

 「(あれって・・・おいおいあれは未だやったことすらねえ奴だぞ!!)」

 「だがやる価値はあるはずだ。」

 「(・・・・・どうなっても知らねえぞ。)」

 「ありがとよ。相棒。」

 カミトは『シラヌイ』と打ち合わせをした後カミトはもう一度立ち上がって闘技場に向かった。

 「少し遅かったなア、カミト。」

 「ああ・・・ちょっとな。」

 ヴェルサリアの言葉にカミトはそう返すとカミトは「玄海」を構えた。

 そしてヴェルサリアも「オーバーフォール」を構えた。

 「「・・・・・!!」」

 お互い一瞬の間にお互い武器を構えて突撃した瞬間・・・カミトは『シラヌイ』に

こう言った。

 「今だ『シラヌイ』!!」

 「(『修羅骸』!!)」

 すると次の瞬間・・・『カオスブレイカー』の反応が鈍った。

 「!?」

 ヴェルサリアはその現象に何だと思っているとカミトはヴェルサリアにこう言った。

 「よそ見するんじゃねえ!!」

 そしてカミトの攻撃は当たり、「オーバーフォール」の内の一本を斬り捨てた。

 『『『『『オオオオオ!!!!』』』』』

 その攻撃に客席で見ていた全員が驚いていた。

 「今の攻撃は何!?」

 「義姉上が一瞬・・・遅くなったような感じであったぞ!?」

 フィアナとエリスが今の攻撃について議論している中レオノーラはある仮説を

たてた。

 「・・・神装」

 「「??」」

 その言葉に二人は何だと思う中ファーレンガルト公がレオノーラにこう聞いた。

 「すまんがレオノーラ嬢。『神装』とは何だね?」

 そう聞くとレオノーラは持って来た本からその説明の所を参照した。

 「ええと『神装』と言うのはですね、『神装機竜』だけが保有することが出来る

特殊能力で用途は様々。然しそれは超常現象クラスであり周りの空間を操作したり

機竜に何かしらの能力や制限を与えることが出来ると様々な力を持っているのです。」

 「ですがそれゆえに『神装機竜』は一種類ずつしか存在されず、単一の武器でも

あるのです。」

 レオノーラの説明に対してフィアナはこう答えた。

 「それってつまり、強力な精霊の力を使っているって事?『軍用精霊』みたいな?」

 「まあそんな所ですかね。精霊で言えば上級ランクと言っても過言でもありませんがその分、体力を削られてしまうので使うことが出来るのは上級ランク者だけ

ですがね。」

 レオノーラの言葉に全員がなるほどと思っていた。

 「神装」とは奥の手でもあり最終手段でもあるのだがそれを使用したという事は

そうしなければ勝てる可能性が低いのだと察知したのであろうと思ったのだが

レオノーラはこう思っていた。

 「≪カミトさんの『シラヌイ』が出来るようにもしかしたら『カオスブレイカー』も

出来るという事も考えたらいけませんね。≫」

 レオノーラはそう思いながらも決闘を見守っていた。

 

 

 

 

 

 「くおのお!!」

 「おっと。」

 ヴェルサリアの攻撃に対してカミトは余裕の表情で躱した。

 すると肩で息をし始めたヴェルサリアがカミトにこう聞いた。

 「お前・・・私の『カオスブレイカー』に何か特殊な事をしたな?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああそうだ、相手の機竜の機構に侵入して弄って機体の制御を乱す。それが

『シラヌイ』の神装」『修羅骸』。」

 そう言いながらカミトは「玄海」を構えるとヴェルサリアに対してこう聞いた。

 「降参しろ、ヴェルサリア。今の状態で俺に勝つことは」

 「断る!!やっと戦えるのにそんな程度でリタイアなど私はしたくない!!」

 ヴェルサリアはそう言いながら構えると『カオスブレイカー』はこう提案した。

 「[ならば我も奥の手を使おう。]」

 「ああ・・・こんな所で負けるのは癪だしな!!」

 そう言うと二人は奥の手を使った。

 「[『デュ二ヴァース』!!]」

 すると『シラヌイ』の力が・・・落ち始めた。

 「!!如何した『シラヌイ』!!?」

 「(分からない・・・機体が・・・力が・・・出ねえ!)」

 それを聞いたカミトはヴェルサリアに対してこう聞いた。

 「それがお前らの奥の手か?」

 「そうだ、相手の『神装』を無力化する力。それが『カオスブレイカー』の『神装』『デュ二バース』。」

 そう言うとお互い武器を構えなおしてこう言った。

 「となると・・・」

 「最後は・・・」

 そしてお互い・・・武器を振りかぶった。

 「「一騎打ち!!」」




 「修羅骸」
 相手の機竜の機構を操作して相手の力を狂わすことが出来る。
 「デュ二バース」
 相手の神装機竜の神装を無効化することが出来る。


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試合終了。

 この一撃に全てをかける。


 「「はああああ!!」」

 カミトとヴェルサリアはあらん限りの力を使って自らの武器を振るった。

 最早小手技など要らず使うのは己の経験只一つに事尽きた。

 ヴェルサリアは「オーバーフォール」を使って変幻自在の間合いを活かしてカミトを追い詰めたと思えば今度はカミトが機体を透明化させて遠近両方の武器を使って

翻弄させた。

 『『『『『・・・』』』』』

 客たちはその光景に言葉を表すことも出来なかった。

 今や彼ら二人の戦いを見守るしか出来なかった。

 だが中にはある思惑を持った者がいた。

 「あれが機竜の力か・・・。」

 「素晴らしい力だ。」

 「あれさえあれば我々も大貴族の力を・・・。」

 誰もが己や国の為にと如何したら手に入るのかを模索してた。

 

 

 

 

 

 「「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」」

 そして暫く経つと二人は荒く息を切らしていた。

 機竜は搭乗回数に応じて搭乗時間が長くなるという説があるがそれでも

これだけ動くため体力の消耗が激しいのだ。

 そして機体も幾分か軋み始めた。

 ドラグナイトの疲労における機竜の暴走である。

 それを感知したアルマは次が最後だなと思っている中カミトはヴェルサリアに

こう提案した。

 「どうだ・・・ヴェルサリア・・・次で・・・最後ってのは・・・?」

 それに対してヴェルサリアは・・・。

 「良い・・・だろう・・・決着を・・・つけよう。」

 そう言ってヴェルサリアは「オーバーフォール」を解除して

「クローズ」の一本を手に取った。

 そしてカミトも「玄海」を両手持ちにして構えた。

 お互い息を整えた。

 観客全員が見守る中・・・その時が来た。

 「「ウオオオオオオオオオ!!」」

 カミトとヴェルサリアは今使える力の全てを使って突撃した。

 もう後が無くても良い。

 この一撃に全てを出し切る。

 その思いが二人を動かしていた。

 そしてお互いの距離が0となり・・・武器を振るった。

 がきぃいん!--という音と共に土煙が立ち込んだ。

 そしてアルマがその様子を見て・・・その姿が土煙と共に現われた。

 そこには機竜の障壁を展開するエネルギーがある肩にお互い当てていた。 

 『・・・この試合・・・両者引き分けとする!!』

 その声と共に・・・観客は悲鳴に似た絶叫を挙げた。

 『『『『『ウ(ノ・ω・)ノオオオォォォ-(ノ・ω・)ノ

オオオォォォ-おお!!!!!』』』』』

 観客は拍手をしながらそうしていた。

 そしてカミトとヴェルサリアはお互いを見合うとこう言った。

 「今回は引き分けだな。」

 「だが次こそは勝つさ。」

 そしてこの日・・・約束を果たすことが出来た。

 

 

 

 

 「如何やら終わったようだな。」

 それを音で聞いていたのはグレイワースであった。

 何故彼女が裏路地で然も闘技場にいなかったのかと言うと・・・。

 「さてと・・・私の庭で悪さをしているネズミを片付けなければな。」

 そう言いながら黒い塊を持って奥にへと進んだ。 




 闇に忍び寄る悪魔を倒す。


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悪夢再来。

 ジオ・インザーギの悪夢がまた蘇る。


 「やはりここにいたのだな、ヴィヴィアン・メローサ。」

 「あらお久しぶりですね。先生♡。」

 闘技場から少し離れた裏路地でグレイワースはヴィヴィアン・メローサに会った。

 然し当の本人は彼女の顔を見てもいつも通りな感じそう答えた。

 「貴様か?この間二人の女生徒達にあれを植え付けたのは?」

 それを聞いたヴィヴィアン・メローサはこう答えた。

 「ええそうですよ。どうでした彼女達のあのチカラは?」

 そしてグレイワースはこう返した。

 「一言でいうなら嘗ての貴様の研究がここまで進歩したのには驚きを隠せないな。」

 だがとグレイワースはこう続けた。

 「私の大切な学院生に手を出したことに対しては・・・お仕置きする必要がある。」

 そう言うとグレイワースは右手から自身の契約精霊でもある・・・魔精霊を出した。

 「久しぶりの食事だ、伯爵、思う存分に喰らうがよい。」

 すると魔精霊がヴィヴィアン・メローサに飛び掛かろうとした瞬間・・・

その間に誰かが割って入った。

 「!!待て伯爵!!」

 グレイワースは魔精霊にそう命令した。

 そこにいたのは・・・話に出ていた女生徒達であった。

 「何故ここにいる!?貴様らは確か朝一番に来た帝国からの人間が・・・!!」

 グレイワースは何か悟ったかのようにヴィヴィアン・メローサを睨みつけると彼女はあっけカランにこう答えた。

 「ああ、彼らは確かに殺したけどやったのは私じゃないわよ。」

 「・・・彼女達よ。」

 ヴィヴィアン・メローサはちょろっと舌を出してそう言うと懐からある物を出した。

 それは少しアンティ―クな感じの角笛であった。

 「何だそれは?」

 グレイワースは魔精霊を剣に変えてから聞くとヴィヴィアン・メローサは笑いながらこう答えた。

 「ウフフ、面白い実験ですよ。」

 そして角笛を口に・・・当てて音を出した。

 ピィイイイイーー!!

 角笛から音が出た瞬間・・・ある事が起きた。

 「!・・・何だ!?」

 グレイワースは女生徒達の方を見ると女生徒達の体がうねる様に何かが蠢いていた。

 「「グアアア・・・・グぎぃあアアアアアア!!!!!」」

 そして女生徒達の体から・・・翼が生えた。

 そして服がビリビリト破れながらもそれは変出していった。

 体は黒く染まり、両手両足には鋭い爪が、顔は最早人ではないものとなっていった。

 そして彼女達に埋め込まれていた魔境精霊と金剛精霊の体がその体に

纏わりつくように同化していった。

 「何だ・・・これは」

 グレイワースはそれを見て何だと思っていた。

 人間だった彼女達がまるで・・・化け物に姿を変えたのだ。

 「さあて・・・どうします?グレイワース先生♡」

 そう言いながらヴィヴィアン・メローサは角笛を吹いた。




 さあ・・・実験再開だ・・・


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嘗ての最強の屈辱。

 もはやそれは過去の物。


 「ちぃい!!」

 グレイワースは化け物となった女生徒達からの攻撃を避け続けていた。

 これ迄色んな精霊相手には戦っていたが相手や未知なる存在、どう対処すべきか

決めかねていた。

 「(こいつらには知性と言う者が無いがその分攻撃が読みにくい!!)」

 グレイワースはそう思いながら避けているが攻撃できなければ対処の仕様が無い。

 「伯爵!!」

 グレイワースは剣にしていた魔精霊を黒い塊に戻した後ヴィヴィアン・メローサに

攻撃するようにした。

 これならと思っていると先程の女生徒だったナニカが行く手を塞いだ。

 「またか!!」

 グレイワースは魔精霊を戻してどうするべきかと思っている中

ヴィヴィアン・メローサはこう言った。

 「さてと・・・実験はこのくらいにして・・・終わりにしましょ。」

 そう言うと角笛を吹いた。

 ピィイイイイ!!とまた音が鳴った瞬間、女生徒達だったナニカが行動を変えた。

 ギィエエエエエ!!

 雄叫びのような悲鳴を上げるとそれは空にへと舞い上がると・・・。

 翼が分離して・・・グレイワースに襲い掛かった。

 「!!」

 グレイワースは咄嗟にそれを避けた。

 すると着弾した場所が大きく穴が開いた。

 それを見たグレイワースはこのままでは思うと・・・。

 「ほほお、ここでアビスと出会うとはのう。」

 上空から声が聞こえた。

 そしてそれが落ちると巨大な土煙が周りを襲った。

 「「「「!!!!」」」」

 全員がそれが何だと思っている中土煙から・・・腕が現われた。

 「「!!」」 

 そしてそれは女生徒達であったナニカを掴んだ。

 「一体何でここにと思って人払いさせたかいがあったのお。」

 土煙から声が聞こえた。

 そして土煙が晴れるとそこにいたのは・・・。

 「さてと・・・アビス狩りといこうかの。」

 神装機竜「ヨルムンガンド」を身に・・・いやそれを操っているマギアルカが

そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 「どうして?」

 「いやの、アビスを遠目で確認したから封鎖させて儂はワイバーンを使って

降ろさせてもらったんじゃ。」

 グレイワースの問いにマギアルカがしれっと答えるとグレイワースは彼女達を

見てこう言った。

 「待て!!あれ私のは女生徒達だ!」

 それを聞いたマギアルカはある事を思い出した。

 「元は人・・・あやつと同じ薬か。」

 それならとマギアルカはグレイワースに残酷な事を告げた。

 「ならば諦めよ。ああなったら最早・・・楽にさせるしかあるまい。」

 その言葉にグレイワースは口を一文字にして噛み縛った。

 ギィエエエエエ!!

 女生徒達だったナニカがそれから振りほどいて上空に向かおうとするとマギアルカはこう言った。

 「そうすると思ったか?アビス。」

 そう言うと鑑を纏ったアビスにブレードを、金剛の方にはキャノン砲を見せつけた。

 「・・・墜ちよ。」

 そう言った瞬間・・・すべてが終わった。

 ブレードはアビスを叩き落し、キャノン砲で破壊した。

 キャノン砲を浴びたほうはあまりの威力に体が崩壊し、ブレードを受けたほうは

そのまま地面に叩きつぶした。

 そして土煙から・・・裸体になった女生徒がいた。

 「大丈夫か!!」

 グレイワースはその女生徒に駆け寄ろうとすると・・・ある物を見た。

 「これは!!。」

 それは灰色の光と灰になり始めた体になっていく女生徒であった。

 報告にあったジオ・インザーギと同じ状態であった。

 「おい、大丈夫か!しっかりしろ!!」

 そう言うと女生徒は目を僅かに開けてこう言った。

 「学園・・・長・・・イタイヨ」

 そして体が灰となって消えて行った。

 それを見たグレイワースはヴィヴィアン・メローサを見てこう激怒した。

 「ヴィヴィアン!!貴様アア!!」

 グレイワースは怒りのまま剣を向けると・・・何処からか声が聞こえた。

 

 

 

 

 「おい、迎えに来たぞ。」

 

 

 

 

 

 「!!」

 その声と同時にグレイワースは弾き飛ばされた。

 「グウウ!!」

 グレイワースはマギアルカの方まで吹き飛ばされた。

 「大丈夫か!?」

 「・・・平気だ・・・。」

 グレイワースはそう言うとその相手を見た。

 それは灰銀色の翼が生えた機竜であった。

 「あら遅かったわね。」

 「はん、手前がさっさと切り上げなかったからだ!!」 

 そう言っている人間は両目とも違う色をしている・・・灰色に近い銀髪の

少女であった。

 「お主・・・アーカディア帝国の者か?」

 マギアルカの問いにそれはこう答えた。

 「は!俺はあんな馬鹿共とはちげえよ。こいつを連れ帰るだけだからな。

じゃあな。」

 「待て!!」

 グレイワースはその機竜に向かってそう言うが既に飛び立ってしまった後であった。

 グレイワースは灰になってしまった女生徒を思い、天に向かってこう叫んだ。

 「ヴィヴィアン・メローサ!!必ず私が貴様を殺す!!必ずだ!!」

 その時のグレイワースの顔は・・・。

 怒りで顔を歪ませていた。




 そしてそれは未来への決意。


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いざブレイドダンスへ。

 やっと3巻がオワタ。


それから暫くして・・・。

 「当面の間だがここで食べるのが最後だな。」

 カミトは食事しながらそう言った。

 「ああ確かにな。」

 ヴェルサリアもそれに共感していた。

 「然しまさか我々がブレイドダンスに出場出来るなんて夢のようですね。」

 レオノーラは感慨深くそう言った。

 「それを言うなら私なんてまさか精霊をもう一度使えるようになれるなんて

夢にも思わなかったわ。」

 フィアナは少し前の自分を思い出していた。

 「だがこれは夢ではなく現実なのだ。出場する以上我々が掲げる目標は・・・。」

 エリスは全員に対して目的と目標を全員で掲げようといった。

 そしてそれは・・・。

 「「「「「ブレイドダンス優勝!!ただ一つ!!」」」」」

 全員がそう言った。

 

 

 

 

 

 「それでやはり奴はこの国にはいないという事だな。」

 学園長室でグレイワースがフレイヤ先生にそう聞いた。

 「はい。軍の報告を照らし合わせてみた所やはり一致していました。」

 フレイヤ先生の報告にグレイワースは内心穏やかではなかった。

 自身の学院を滅茶苦茶にしただけではなく生徒にまで被害を及ばせ、

死人を作らせたことに対して怒り心頭であるのだ。

 「分かった。引き続き軍の諜報を頼む。」

 「あの、私先生なんですけど。」

 そう言いながらフレイヤ先生は部屋を出て行くとそれを聞いていたのは

グレイワースだけではなかった。

 「やれやれ。どうやらあ奴らは中々尻尾を掴ませてくれないようじゃのう?」

 マギアルカがソファーの上で寛いでいた。

 「ま、儂の方も裏の連中を使って調べておるがあの機竜を使っていたあの少女は

おそらく『アーカディア帝国』の関係者で間違いなかろう。」

 「またその国か。一体何が目的でこの国に来ているのだ。」 

 グレイワースは憎たらしさ全開で窓に目を向け乍らそう言った。

 「ま、どちらにしてもあ奴らの迷惑にさせないようにすべきじゃの。」

 こんなめでたい日は特になと言ってマギアルカは部屋を出ようとする中

グレイワースも席から立ち上がってこう言った。

 「確かにな。」

 

 

 

 

 

 「エリス!頑張ってーー!!」

 「ヴェルサリア様!!応援しています!!」

 「カミト君!!勝ち進んでーー!!」

 学院にあるストーンサークルでカミト達学院から選抜された3チームとその友達が

集まっていた。

 無論大半はヴェルサリアのファンなのだがあの戦いの後カミトに話しかける女生徒が増えてきたのでそう言う声がチラホラと聞こえる。

 全員選抜の証でもある赤いマントを羽織っていた。

 「まもなく転送が始まるから全員準備しておけ。」

 フレイヤ先生が懐中時計を見ながらそう言うとグレイワースとマギアカが

やってきた。

 マギアルカはカミト達を見てこう言った。

 「お主等を教えていたのは1か月にも満たないがまあ言う事はただ一つ・・・

『勝て』!!それだけじゃな。」

 「カミト・・・絶対勝てよな!!」

 「おおう。」

 マギアルカの隣にはアルマが親指を見せつけるようにそう言った。

 そしてグレイワースは全員に聞こえるようにこう言った。

 「これから君たちは我が国の代表として数多の試練が襲い掛かるだろう。

だが国の威信とか家とかそういうのは抜きにしてこう言いたい。『全員!!必ずここに戻って来い!!』以上だ!!」

 『『『『『ハイ!!』』』』』

 そう言った後フレイヤ先生が懐中時計を持ってこう言った。

 「時間だ。全員ストーンサークルの中に入れ。」

 するとストーンサークルが光り輝くのを見た後ヴェルサリアは全員に向けて

こう言った。

 「皆。それぞれ理由があってここ迄来たんだろうが我々の眼前に来るのは敵と思って心得ておけ!!」

 「「「「ハイ!!!!」」」」

 「さあ・・・喰らい尽くすぞ!!」

 「「「「オオオオ!!!」」」」

 そう言ってカミト達はストーンサークルにへと進んだ。

 ここまでの間に多くの出会いと戦いがあった。

 託された願いが・・・叶えたい願いを胸に秘め、彼らは陰謀渦巻く戦いに身を

投げた。

 後にカミト達は『聖域(アヴァロン)』の戦いに身を投じ、歴史の真実を知るのだがそれはまた・・・別の機会にお話ししましょう。




 2回目ですが休載いたします。


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精霊と機竜の戦舞踏
いざ試合会場へ。


 8か月ぶりに再開します。


 選抜メンバーはそれぞれストーンサークルで転送されていった。

 まばゆい光と一瞬の酩酊状態の後にカミト達が見たものは・・・。

 鬱蒼と茂森と広大な湖であった。

 それを見たヴェルサリアがぬかるんでいる土を見てこう言った。

 「ここは学院の合宿で来たことがある。」

 そう言った後にカミトは周りを見ると他の面々も出てきた。

 するとカミトはこう聞いた。

 「所で船は何処だ?」

 カミトは湖を見渡してみるが何もないのでそう言うとヴェルサリアは・・・上空に指さしてこう答えた。

 「あれだ。」

 「ん?あれ・・・・」

 「【マジかよ。】」

 シラヌイはそれを見てマジかと思っていた。

 流線形のフォルムをした・・・飛空艇だ。

 「〈随分変わった形の船ですね。〉」

 「≪ほう、あれが飛空艇か・・・中々どうして≫」

 それを見ていたメイルストームとカオスブレイカーがそれに続いた。

 するとフィオナがこう説明した。

 「あれは神儀院が保有する最新鋭の飛空艇『ベルファール』級よ。」

 「動力源はバルスタン王国製の精霊機関で外装は樹齢6000年以上もする神樹を

使っているらしいわ。」

 それを聞いた機竜全員の言葉が・・・これであった。

 「「「【〈≪もったいねえ。≫〉】」」」

 それだけかよ。

 精霊王に対して奉納するという意味においては最高のおもてなしの様に思えるが

機竜である彼らからすれば只の船としか見ていない。

 それが水しぶきを上げて着水するのを見届けたカミトはこう言った。

 「・・・勝つぞ、シラヌイ」

 「【おおう!】」

 

 

 

 

 

 

 

 そして場所は移ってアレイシア精霊学院の執務室。

 「坊やはもう、あちらに向かい向かっている頃かな?」

 グレイワースはそう言いながら部屋の壁に向かって・・・いや、壁の中にいる

人影と会話していた。

 人影は影精霊使いで教師のフレイヤだ。

 フレイヤはグレイワースの執務机に近づくととあるレポートを乱暴に投げた後にこう聞いた。

 「はい、先ほど。ですがいい加減に私に能力を軍への密偵として使うのは

やめていただけないでしょうか?」

 「それは済まないな。」

 本当にですかとフレイヤはそう聞いた後にこう言った。

 「4年前の教導院に関する資料の内、帝国騎士団が保護した遺児と・・・機竜に関する情報です。」

 「・・・それでどんな結果であった。」

 グレイワースは機竜の情報を聞いた矢張りだと思っていた。

 如何やら教導院もシラヌイに関して精霊使いとしての視点から

研究していたんじゃないかと睨んでいたからだ。

 「先ずは学院長が気にしていらっしゃる機竜についてですが、

どうも向こうも研究に四苦八苦していただけではなく何やら意味不明なことまで

記述していることから帝国図書館の保管室に乱雑に置かれてました。」

 「勿体ないなあ。あれはこれからの機竜部隊創設に向けて必要な物なんだが。」

 「・・・どうしても学院長は創設されるおつもりなんですね。」

 「嫌か?」

 グレイワースはフレイヤの言葉を聞いて意地悪くそう聞くとフレイヤは・・・

いえと答えてこう続けた。

 「奴らが保有するあの薬、もし帝国で濫用されればこの国はあの

バケモノになった人間で埋め尽くされるのは時間の問題です。

ならばこの学院だけでも彼らに対抗するための戦力は欲しても不思議では

ありません・・・ですが」

 「その為に生徒に乗させるのに反対か?」

 グレイワースの言葉にフレイヤは口を噤んだがグレイワースはこう続けた。

 「確かに君の言う通りだ。場合によっては彼女たちを人殺しにさせるかも

しれん」

 だがなとグレイワースはこうも続けた。

 「それでも前に進まなければならないんだ。例え売国奴と呼ばれて機竜を

他国から買って他国の力を借りて創設してでも・・・この国とそこに住む民たちの未来を考えればそんなの埃程度にしかならんよ。」

 グレイワースはそう言いながら厳しい目でそう言った。

 カミトは自身が引き取るまで教導院の暗殺者として機竜に乗り、

ついこの間のジオ・インザーギの時には結果的に彼を殺す一因にもなった。

 そして何よりも・・・自身の生徒がバケモノとなり他社の手で

葬られなければならなかったその無力感を生徒たちに体験させたくないという

グレイワースなりの思い入れがあった。

 「それで次だがこの学院に襲ってきた男は・・・保護した遺児には入ってないがどういう事だ。」

 グレイワースがフレイヤにそう聞くとフレイヤは姿勢を正してこう答えた。

 「はい、当時保護された遺児は14名おり、撃ち5名は騎士団の特殊部隊に

配属されていますが残った彼らは施設で施された呪装刻印の影響で数年後に

亡くなっています。」

 「となれば保護されなかった人間は相当数いると仮定したほうが良いな。

上層部に提案して彼らの探索を依頼しておこう。丁度この間のカミトと

ヴェルサリアの試合を見て貴族の中からも機竜の資金援助を持ちかけてる

連中が出てきて行く用があったからな。」

 グレイワースはそう言いながらもこう考えていた。

 「(カミトの方はマギアルカに頼んで機竜の運送と応援に行ってくれたから

大丈夫だと思いたいが・・・あの偽物のレン・アッシュベルが何を企んでいるのか気になるな。)」

 そう思いながらグレイワースは胸を押さえつけていた。

 丁度心臓があるほうに手を当てるとこう呟いた。

 「頼むよカミト。・・・私の命が尽きる前に何とかしてくれ。」

 




 戦いに備えて・・・準備を進める。


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船の中にて。

 船酔いの薬は持っておいて損はねえぞ。


 飛行艇が上空で飛行する。

 普通ならそんなこと・・・ありえないんだけどなあ・・・。

 「然しこの飛空艇って、凄いなあ。」

 「【ああ、何せ揺れないし・・・豪華だしな。】」

 金使ってんなアとシラヌイがそう言った。

 何せ船内には磨き上げられた大理石の壁、美しい刺繍で施された緋毛の絨毯と

最高級であろう調度品。

 もし一つでも壊せばグレイワースから・・・何されるか分かったものではない。

「このスピードでしたら昼頃には着くらしいですからそれまで皆さんお茶に

しませんか?」

 レオノーラがそう聞くと全員賛成した。

 「それでは紅茶は・・・ローレンフロスト産ですね。」

 「ローレンフロストの紅茶は風味が良いと聞く。今の緊張を和らげるなら丁度良い茶葉だ。」

 ヴェルサリアはそう言いながら何やら読んでいるとレオノーラは何やら・・・

寂しそうな感じであった。

 「?何かあったのか」

 ヴェルサリアはレオノーラにそう聞くとエリスが耳元でこう囁いた。

 「義姉上。レオノーラのチームメイトはローレンフロストのリンスレット

何です。」

 「・・・そうだったか。なら他の」

 「いいえ大丈夫です。それにこれを飲めばもしかしたらと思いますので。」

 ゲン担ぎです。と言うがメイルストームはこう聞いた。

 「〈大丈夫?レオノーラ。カミトに変わってやった方が〉」

 「大丈夫ですメイルストーム。だからこそ私がやらなければならないんです。」

 レオノーラはそう言いながら注意深くお茶の湯を沸かしていた。

 「・・・レオノーラ。」

 カミトはレオノーラの方を見て少し可哀想になっていた。

 何せ本当ならリンスレットとチームを組んでブレイドダンスに

出場したかったのだ。

 それがあの任務で駄目になってしまったことに自分自身が情けないと

思っているとシラヌイがこう言った。

 「【あまり自分を追い詰めるなよ。なっちまったもんは仕方がねえんだ。

だったら今後どうしなければいけねえか考えないといけねえだろ?】」

 「・・・そうだよな。」

 カミトはシラヌイの言葉を聞いて少し気持ちが楽になった。

 するとフィオナが話を変えようとこう言った。

 「そう言えば今夜は城館で開会のセレモニーとして舞踏会が開かれるらしいけど皆礼服とか持ってきてるの?」

 そう聞くと先ずはヴェルサリアとエリスがこう答えた。

 「私たちは既に荷物に入ってる。」

 レオノーラはと言うと・・・。

 「私は・・・そう言うのがないので欠席しようかと。」

 「俺も同じだな。・・・舞踏会なんて御免被りたい。」

 カミトもレオノーラと同じであったがシラヌイは笑いながらこう言った。

 「【昔男に結構誘われたからなあwwww】」

 「喧しい。」

 シラヌイの笑いにカミトが一喝するがフィオナはこう答えた。

 「それなら大丈夫よ。向こうでレンタルの礼服屋があるから後で

採寸取っておくと良いわよ。」

 フィオナの言葉にレオノーラはホットするがカミトは少し嫌な顔をしていたが

シラヌイがこう言った。

 「【大丈夫だって。今回は普通だから心配ねえよwwwww】」

 「手前、楽しんでんだろ?」

 カミトはそう聞くがシラヌイは素知らぬ顔みたいな感じそっぽ向いた。

 「もしなかったらお前たち何する気だった?」

 ヴェルサリアは少し疑問を投げつけるかのようにそう聞くと

カミトとレオノーラはこう答えた。

 「俺は解放された市民街で飯だな。」

 「私も同じですね。後は機竜の整備とか。」

 そう、ブレイドダンス中は本来禁制な場所も解放されるため民間人用のエリアも存在するのだ。

 「そろそろお湯が温まりますけど何にしますか?」

 そう聞くと先ずはフィオナがこう答えた。

 「それじゃあアップルティーを。」

 次にヴェルサリア。

 「私はストレートを。」

 エリスはというと・・・。

 「わ、私は、お砂糖たっぷりのミルクティーで頼む。」

 「はい、では最後に」

 「そ・・・それとだな。」

 「?」

 レオノーラはカミトに何か聞こうとするとエリスが何やら申しつけたいのか

こう言った。

 「で、出来れば・・・クリームと蜂蜜、それとマシュマロを浮かべて

欲しいのだが。」

 「「「・・・・・・・・え?」」」

 その言葉を聞いてヴェルサリアを除いて全員が・・・目を丸くした。

 それは最早紅茶ではなく紅茶と名を騙った果汁ジュースだろと思ってしまった。

 「・・・エリスさん。もしかしたら紅茶、苦手・・・なのでは?」

 レオノーラは少し顔を引きつりながらそう聞くとエリスは・・・ムッとした

表情でこう言った。

 「い、いやな!過酷な剣の訓練を耐え抜くには、糖分を多く摂る必要が!!」

 「いや、私でもそこまでせんぞ。」

 「義姉上!?」

 エリスの言葉にヴェルサリアはそれとなく否定した。

 するとレオノーラはこう反論した。

 「いえ、訓練で足りなくなるのは塩分であって糖分は頭ですよ。」

 「なあ!!」

 するとフィオナは笑いながら・・・爆弾を落とした。

 「ああ、だから余剰分は全部・・・そっちに行くのねえ。」

 そう言いながらフィオナはエリスの上半身の・・・胸部に目線を向けた。

 全員もそっちに目線が向けてしまったのだがな・・・。

 すると視線に気づいたエリスが・・・胸を押さえつけてこう言った。

 「違う・・・違う・・・ちがう・・・チガウ・・・ウウウウウウ。」

 「「「「?」」」」 

 何やらエリスが下向きになってしまったので何だと思って見てみようと

すると・・・エリスは突如立ち上がって・・・大声でこう言った。

 「ちがうんだああああああ!!!!!」

 ウワアアアアアアと泣いているかのような顔で部屋から走り去っていった。

 するとヴェルサリアがそれを見た後に・・・こう言った。

 「・・・取り合えずあいつの分も一応作っておいてくれないか?

探してからで大丈夫だろうがな。」

 「ええ・・・そうですね。」

 「お茶菓子は何だ?」

 「ええとですね・・・ああ、アレイシア名物のパンケーキですね。何時も私達が食べるところの。」

 そう言った後にレオノーラはカミトにこう聞いた。

 「ええとそれで・・・何飲みます?」

 「ああ・・・それじゃあ、俺はオレンジティーで。」

 「無難ですね。」

 そう言った後に準備しようとするとカミトがこう言った。

 「それじゃあ俺はエリスを探してくるわ。」

 「其れなら私も」

 カミトの言葉を聞いてヴェルサリアは立ち上がろうとするとカミトは

こう言って止めた。

 「いや、お前は機竜の勉強してんだろ?俺は取り合えず頭に叩き込んでるし

それに他の対戦国家も見たいしな。」

 そう言うとヴェルサリアは成程と言った後にこう言った。

 「それならよろしく頼む。」

 「ああ、分かった。」

 そう言ってカミトはエリスを探しに外に出た。




 作者「大丈夫大丈夫。機竜サイドにも甘党の爆乳娘がいるから!!」
 エリス「何の慰めにもならんわああああ!!」


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厄介事は空でも起こる。

 色々とどんなところでも起こるよなあ。


高度4000メートル上空。

 カミト達ブレイドダンス出場者を乗せて運航しているベルファール級飛空艇の丁度真下に1隻の小型戦闘飛空艇が森の中に潜んでいた。

 すると金属製のハッチが開くとそこから・・・何かが飛翔してきた。

 するとそれに乗っていた・・・頭の両端で括った暗い灰色の髪の少女が

そこにいた。

 すると少女はある船にいる人間を見て・・・微笑みながらこう言った。

 「・・・見つけたわ、兄さま。」

 すると少女の中指にはめていた指輪が赤く輝いたその時に・・・空が・・・

裂けた。

 「さあ、存分に暴れてきなさい。破壊精霊〈デス・ゲイズ〉」

 そして裂け目から巨大なナニカが・・・姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 「おおい、エリス。何処だあ?」

 カミトは甲板の上でエリスを探していた。

 本来なら高度4000メートルともなればその風だけで身動きとるどころか

吹き飛ばされてしまっても可笑しくないだろうと思うのだがそれには秘密があった。

 「【然し風の障壁が機能しているだけで吹き飛ばされずに済むとは相変わらず

凄いよなあ。】」

 シラヌイがそう言っている中カミトは周りを見渡していた。

 「エリスは何処だろうな?」

 そう言いながら探している中で・・・シラヌイがこう言った。

 「【あそこだ。】」

 「?」

 シラヌイが見つけたと言うので周りを見渡していると・・・・いた。

 船の最先端に。

 カミトはエリスに近づいてこう言った。

 「エリス。ここにいたのか。」

 「・・・カミトか。」

 エリスはカミトに気づいたのか答えた。

 少しはあとため息ついていたが。

 如何やらさっきのフィオナの言葉が気になっているようだ。

 「大丈夫か?」

 そう聞くとエリスはこう言った。

 「・・・別に胸が大きいからっていい事ないんだぞ。」

 「はあ?」

 突如の事に何だと思っているとエリスはこう続けた。

 「肩は凝るし、下は見えづらいし、可愛い下着は皆小さいし、素振りの時なんて揺れて邪魔だしそれに・・・」

 聞いてもいないのに何言ってんだと思いながらぶー垂れながらエリスは文句を言っていた。

 流石のカミトも・・・ハハハと空笑いするしかなかった。

 そして暫くして・・・。

 「・・・色々自分だけ言ってしまって申し訳ないが何かあったのか?」

 エリスがそう聞くとカミトは思い出すかのようにこう言った。

 「ああ、ヴェルサリアが心配してたぞ。いきなり出て行ってしまったからな。」

 「・・・済まない。」

 「別にいいって。仲間だろ?俺達」

 カミトはそう言って戻ろうかと聞いてエリスは少し考えて・・・こう聞いた。

 「なあ、カミト。」

 「?」

 「私は・・・子供っぽいか?」

 エリスは少し頼りなさそうにそう聞いた。

 するとカミトはこう答えた。

 「まあ、個人好き好きだからなあ。俺はどっちでもないしそれに・・・」

 「?」

 「エリスの部屋に入った時思ったけど女の子らしい部屋だったからそう言う一面持っても良いんじゃないか?」

 「そうか・・・女の子らしいか。」

 「?」

 「【・・・阿保らしい。】」

 カミトとエリスの言葉を聞く中シラヌイがそう言った。

 それで帰ろうとしたその時に・・・。

 ドおオオォォォォオオ!と。

 耳を劈くような轟音が響き渡り、船体が激しく揺れた。

 

 

 

 

 

 

 「きゃあああ!!」

 「エリス!」

 カミトは床が斜めに傾いてバランスを崩し、転びかけたエリスを船の柵を掴んでエリスを掴んだ。

 「一体何だよ!!?」

 カミトは何事だと思って飛行帝の舷側から身を乗り出して見てみると

そこに映っていたのは・・・・。

 「あれは!?」

 「【オイオイオイ、冗談じゃねえぞ!こんな所でよ!!】」

 シラヌイも慌てた声色でそう言った。

 前兆10メートル程あるエイに似た何かであった。

 唯一違うとするならば頭部に巨大な紅い単眼がギロッと睨みつけて居ることだ。

 「ああクソ!魔獣かよ!!」

 そう言いながらカミトはエストを抜き放った。

 するとエストがカミトに向けてこうアドバイスした。

 「カミト、あれは軍用精霊です。このままでは船が沈みます。」

 そう言うとエリスもこう続けた。

 「幾ら最新型とはいえこいつは戦闘艇ではない!風の障壁もそう長い間持て」

 するとエリスが言いかけたその時に・・・。

 ビー、ビー、ビーと警報が鳴った。

 如何やら飛空艇を旋回する際の警報のようだ。

 回避しようとしてそれを待つ魔獣ではない。

 「伏せろ!!」

 「うわああ!」

 カミトがそう言ってエリスを押し倒したその時、・・・

 轟音が鳴り響いた。

 ズドーン!という轟音と共に魔獣は抉る勢いで船に体当たりした。

 「・・・大丈夫か!?」

 「ひゃああん。」

 カミトが確認しようとしたその時にエリスが何やら素っ頓狂な声を上げたので

何だと思って見てみると・・・納得してしまった。

 カミトがエリスの胸を・・・鷲掴みしてしまっていたのだ。

 「!!!悪い」

 カミトは慌てて手を離すがエリスはと言うと・・・。

 「ウウウウウウ」

 胸を腕で押さえつけてウルウル状態であった。

 それを見ていたシラヌイはと言うと・・・。

 「【お前らイチャイチャする暇あるならさっさとあいつ倒せ!!】」

 その言葉を聞いてカミトは慌てて魔獣を見た後に・・エリスに向けて

こう言った。

 「エリス!暫くシムルグを貸してくれないか!?」

 「ああ・・・・何を・・・まさか!!」

 「ああ、そのまさかだ。」

 そう言いながら魔獣を見ながらカミトはこう言った。

 「あいつと・・・空中戦してくるさ。」

 




 次回は対デス・ゲイズ戦です。


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空中戦。

 シムルグ&カミトVS〈デス・ゲイズ〉戦!スタート!!


「【地上に堕ちる迄後2,3分と思って戦えよ!カミト!!】」

 シラヌイは船が堕ちる迄の制限時間をシムルグに乗っているカミトにそう伝えた。

 エリスはあの後カミトをシムルグに乗せた後にヴェルサリア達を呼びに行った。

 「あいつの外殻は多分結構硬えだろうな。」

 シムルグに乗っているカミトは〈デス・ゲイズ〉を見ながら観察していた。

 「シムルグ!あいつの近くまで頼む!!」

 ピィイエエエエエエエ!!

 シムルグはカミトの言葉を聞いて全速力で〈デス・ゲイズ〉のすぐ手前まで

飛翔した。

 「おオオォォォォおおおお!!」

 カミトは大声を上げながらエストの剣を突き立てた。

 ギャアアアアアア!!

 すると〈デス・ゲイズ〉は悲鳴を上げながら尾鰭をくねらせて背中にいる

カミト目掛けて叩き潰そうとしながら未だ船体を壊そうとしていた。

 「このままじゃあ船が持たねえぞ!!」

 そう言いながらカミトはあの尾鰭を何とかしようと思って・・・

エストの剣を・・・抜いた。

 「【おい馬鹿、何やってんだ!!】」

 シラヌイは何をしてるんだと思っているとカミトの行動を見て・・・

分かってしまった。

 「【お前、こいつの筋肉の収縮してる場所を足場にして移動するって・・・

なんつう事考えてるんだ!?】」

 そう、カミトは〈デス・ゲイズ〉の筋肉を足場にして移動しているのだ。

 確かに〈デス・ゲイズ〉の巨体を考えれば不可能ではないと思うが・・・

普通こんな事やろうと考える事すらしないはずであろう。

 そんなことできる人間と言えば、並外れた身体能力と戦闘の勘と経験が

備わっているグレイワースか、マギアルカくらいであろう。

 「お前に恨みはねえが・・・船を壊させるわけにはいかねえんだよ!!」

 そう言ってカミトはエストの剣で〈デス・ゲイズ〉の尾鰭を切断した。

 尾鰭が落ちるのと同時にカミトも・・・堕ちてきていた。

 やばいと思ったその時に、何か柔らかい毛のような物がカミトを救ってくれた。

 「シムルグ!!」

 ピィイエエエ

 シムルグはカミトを救った後に一旦〈デス・ゲイズ〉から離れると・・・突如〈デス・ゲイズ〉がカミトの方に向かって・・・顎を大きく開いた。

 無数の歯がびっしりと並んでいるのを見せびらかす様にカミトとシムルグに

迫った。

 「【あの野郎、俺達から先に倒そうとしているようだぞ!】」

 シラヌイはそう言って〈デス・ゲイズ〉の行動を話していた。

 カミトは少し考えて・・・シムルグにこう言った。

 「シムルグ!頼むがもう一度出来るか?」

 シムルグにそう聞くカミトだがシムルグは一度〈デス・ゲイズ〉を見た後に

もう一度カミトと・・・船の方を見て・・・こくんと頷いた。

 「良し、行くぞ!!」

 ピィイエエエ!

 シムルグがカミトの言葉に答えるように飛んだ。

 すると両手に握ったエストの剣は姿を変え、巨大なバスターソードにへと

姿を変えた。

 「これで決める!」

 然し〈デス・ゲイズ〉は何かを察したのかカミトから離れようとすると・・・。

 「させません!!」

 何処からか聞きなれた声がすると思った瞬間、〈デス・ゲイズ〉から

爆発音が聞こえた。

 ギャアアアアアア!!

 〈デス・ゲイズ〉が悲鳴を上げたその時にカミトが見たのは・・・。

 「レオノーラか!?」

 甲板の上でメイルストームを纏ったレオノーラがそこにいた。

 如何やらメイルストームのドラグヘッドを使って吹き飛ばしたのであろう。

 そして一瞬であるが身動きが取れなくなった〈デス・ゲイズ〉を見てカミトは

シムルグと共に突撃した。

 「おオオォォォォおおおお!!」

 バスターソードを構えて、そのままカミトはシムルグと共に〈デス・ゲイズ〉の柔らかいであろう下腹を綺麗に切り裂いた。

 だが・・・。

 「こいつ未だ!?」

 〈デス・ゲイズ〉は未だ消滅せずにいた。

 そしてそのままシムルグごとカミトを嚙み殺そうとすると・・・。

 カミトの目の前にある人間が現れた。

 「カミトに・・・手を出すなアあ!!」

 そう言ってそのまま巨大な鎌で〈デス・ゲイズ〉を斬り裂いた。

 そして切り裂いた人間がカミトの目の前に現れた。

 「大丈夫か!?カミト!!」

 「ヴェルサリア!!」

 そう、目の前にいるのはカオスブレイカーを身に纏ったヴェルサリアであった。

 「お前、どうしてここに!」

 カミトはそう聞くとヴェルサリアはこう答えた。

 「ああ、エリスが来てくれてな、それで駆けつけてきたんだ。」

 「そうか・・・。」

 カミトはそれを聞いてほっとすると・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あーあ、やられちゃった。少しはやると思ったのに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「!!」」

 声が聞こえた。

 何処からだと思って周りを探すと・・・・。

 「カミト!あそこだ!!」

 ヴェルサリアが如何やら見つけたようだが何やら驚いている様子であったので

見てみると・・・カミトは二重の意味で驚いていた。

 何せそこにいるのは・・・・。

 暗い灰色のツインテール。

 幼い顔立ち。

 そして何より・・・少女が纏っているのは・・・精霊ではない。

 「ミュア・・・・それ・・・お前。」

 「お久しぶりねえ。兄さま。」

 「・・・・・」

 「ああ、もしかして驚いてる?これねえ、汎用機竜の〈ワイバーン〉って

言うのよ。似合ってる?」

 カミトはそれを聞いて驚いていた。

 嘗て自分の事を兄と慕っていた少女が目の前に・・・それも機竜を纏って

現れたのだ。

 するとミュアはカミトを見てこう言った。

 「兄さまは弱くなってしまったわ。」

 ミュアはカミトを見て少し悲し気にため息つくと側にいたヴェルサリアが

こう言った。

 「弱い?こいつのどこがだ。」

 「全部よ。・・・貴方達が兄さまを弱らせた。」

 そう言うとミュアは殺気を出してヴェルサリアを睨みつけた。

 「!!」

 それを感じたヴェルサリアは武器を構えるとカミトに向けてこう言った。

 「でも、安心して。きっとミュアが目を覚ましてあげるから。」

 「・・・じゃあね。」

 ミュアはそう言うと雲の中にへと去って行った。

 「待て」

 「待つんだヴェルサリア!!」

 ヴェルサリアは追おうとするとカミトが止めた。

 「何故止める!」

 「あいつは特別な力を持ってる!迂闊に戦うのが駄目だ!!」

 ヴェルサリアは尚も食い下がろうとすると・・・カミトの顔を見て留まった。

 如何やら本当であるかのような瞳であったのでヴェルサリアはカミトを見て

こう言った。

 「・・・後で説明しろよ。」

 「・・・・ああ。」

 カミトは少し暗そうにそう答えた。

 ブレイドダンス・・・如何やら今回のは一味違うようであった。




 厄介事は直ぐに起こる。


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闇の住人の心。

 所詮私たちは影にしか咲けない花だ。


あの後ミュアは機竜《ワイバーン》と共に例の小舟に帰還した。

 すると船の下部にある金属製のハッチが一人で二開くとミュアはその中に

入っていった。

 その中には幾つもの工具と武器と装飾品が所狭しと置かれていた。

 「ミュアさん、お帰りなさい。」

 「只今~~。」

 その船の中にいる少年の一人がミュアにそう言うとミュアもそう答えた。

 そして機竜から降りた後に階段を上っていくとそこには・・・ある少女がいた。

 「ミュア、任務ご苦労様と言いたいところだがまた

〈愚者の万力(ジェスターズ・バイス)〉を使ったな!!」

 「ミュアは悪くないもん。あんな弱い精霊をよこした軍が悪いもん!!」

 「今回の任務はカミトの現在の実力を調べるだけだから別に軍用じゃなくても

良かったんじゃないの!!」

 「ふん!ミュアの〈愚者の万力(ジェスターズ・バイス)〉に耐えられないん

だから有効活用した迄よ!!」

 「軍用精霊はお前の玩具じゃないんだぞ!使いつぶすなら使いつぶすで

有効活用しなさい!!」

 「そんな考え方してるからリリィは弱いのよ!!」

 グぬぬぬぬぬぬとお互い一歩も譲らぬ気持ちで睨みあっていると・・・パンパンと何か音が聞こえ、声も聞こえた。

 「はいはい、喧嘩はそこまでさね。あんたの任務はこれでお終いさね。」

 そう言うのは壮齢の女性であった。

 長い黒髪と右目にある傷跡。

 然しそこから溢れるのは・・・並大抵とは思えない強者のオーラが滲み出ていた。

 「ドラッケンさん!」

 「ゲッ!ドラッケン!?」

 ドラッケンと呼ばれるこの女性は二人を見た後にミュアを見てこう聞いた。

 「さてと、ミュア。あんたが信頼するお兄様とやらの実力は如何さね?」

 「そうだ!紅蓮卿(カーディナル)に報告しなきゃいけないのよ!

貴重な軍用精霊を失ったんだからまともな情報は聞かなきゃ!!」

 そうリリィが聞くとミュアは少し考えて・・・こう答えた。

 「兄さま・・・・弱くなった・・・・かな?」

 「「は??」」

 その言葉を聞いて二人は・・・はあと目を点にしていた。

 「弱いって・・・〈デス・ゲイズ〉は中級とはいえ軍用精霊を倒したぞ。」

 「昔の兄さまなら一人でやってたわ。」

 「けど今は兄さまに付き纏う連中が兄さまの足を引っ張ってるの。」

 「アレイシア精霊学院のチームメイトがか?・・・信じられないと言えば

嘘になるが彼がそんな連中と馴れ合っているとは。」

 「このままじゃ兄さまが腑抜けてしまうわ。」

 「・・・そうなると紅蓮卿(カーディナル)の計画にも支障が出るかも

しれないわね。」

 リリィが何やら考えている中ミュアは笑顔でこう言った。

 「大丈夫よ。兄さまの周りにいる連中はミュアが全部殺してあげるから。」

 そう言うとドラッケンと言う女性が・・・頭をガシガシと撫で始めた。

 「ちょ!何するのよ!!」

 「ハハハハハ!その勢いさね!!欲しい物は力づくで手に入れる、それこそ

あたしららしささね!!」

 ドラッケンはそう言いながらミュアを撫でている中ミュアとリリィに向けて

こう言った。

 「けどね。そいつは違うさね。」

 「「??」」

 ドラッケンの言葉に何だとミュアとリリィは思うがドラッケンはこう続けた。

 「あんたの兄さまとやらは恐らくだけど誰かに『守ることの大切さ』を

教えたんだろうね。」

 「?守ることの」

 「・・・大切さ・・・ですか?」

 ミュアとリリィは何だと思っていた。

 この二人はカミトと同じ教導院の出身だ。

 殺しに精通した人間ばかりが集まるためそう言うのは教わらないのだ。

 そしてドラッケンはこう続けた。

 「良いかい?人間って言うのは傍から見れば足手まといにしか見えない人間でも本人からすれば大切な・・・自分の命以上に大切になっちまうものなんだよ。」

 「そう言う人間のためならどんな状況でもチャンスを作っちまうから

戦いにおいては厄介何ださね。」

 「だからこそあたしは情報を集めてそいつの弱点、行動、全てを把握して対策を練るのさ。」

 「それにね・・・守る奴ほど・・・怖いのはいないんださね。」

 「「??」」

 ミュアとリリィは最後まで分からなかった様子であるがドラッケンは

こう締めくくった。

 「ま、あんたらにもわかる時が来るさね。」

 そう言い終えるとドラッケンは船員に向けてこう言った。

 「アンタたち!取り合えず島に向けて迂回しつつ着陸するよ!!」

 『『『ォォォォオオ!!』』』

 船員全員の掛け声が船中に響き渡った。

 「それとミュア、あんた依頼主にあれを持って行かなければいけないん

じゃないのかい?」

 「はあああい。」

 ミュアはドラッケンの言葉を聞いた後、リリィは後を追うように行くと

ドラッケンはその二人を見てこう言った。

 「・・・出来ればあの子達にもそう言う道を見つけて欲しいね。」

 「・・・それにしても未だあの子のドラグナイトとしての実力は

見てないからね。もう少し情報が必要さね。」

 そう言いながらドラッケンは空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 船の中には幾つか部屋がある。

 船員の寝場所。

 調理場。

 物置。

 そして来客用の部屋。

 その部屋をリリィはノックした。

 その来客用の部屋の一室にてある女性がそこにいた。

 長い腰まである黒髪。

 黒いマントを身に纏い、緋色の鬼面の仮面を付けていた。

 「誰だ?」

 「わたしだ。リリィだ」

 「入れ。」

 リリィはその声を聴いて部屋に入った。

 「体の調子はどうだ?」

 そう聞くと女性はこう答えた。

 「問題ない。」

 それを聞いた後にリリィはこう言った。

 「もうこれ以上は止めた方が良いぞ紅蓮卿(カーディナル)。これ以上は

貴様の」

 「問題ないと言ってる。」

 カーディナルはそう答えるとリリィはため息ついて先ほどの報告をした。

 「それで・・・あれは?」

 カーディナルはそう聞くとリリィはミュアを入れた。

 するとミュアはある事を聞いた。

 「ねえさ、本当にやるの?別に止めないけどさ、あんたこのままじゃあ本当に」

 「問題ないと言ってる!!」

 カーディナルは大声で同じ事を言うとミュアは何やら精霊語を唱えるとある物を出した。

 それは赤黒い・・・肉の塊のような物が出てきた。

 しかもそれは何やら心臓の様に波打っていた。

 「ほら。これでいいでしょう?」

 そう言ってミュアはそれを差し出すとカーディナルは有無を言わずにそれを奪い取り、自身の仮面をはぎ取って・・・食べた。

 それを見ていたミュアは少し顔をしかめっ面してリリィにこう聞いた。

 「ねえさ。あれって美味しいの?」

 すると隣にいたリリィは首を横に振ってこう言った。

 「それはないだろうがまあ仕方があるまい。私達は彼女に雇われているん

だから。」

 「全くさあ、軍の上層部が何処だっけ?「ヘリブル」か「へインブル」だっけ?変な国の軍師からあれを貰った後に一二もなく同盟結んでさあ、

いい迷惑だよねえ。」

 「ミュア、『ヘイブルグ共和国』だ。それにそのおかげで我々はカミトと

同じもの手に入れられたし彼女にも出会えたんだから良いだろう?」

 「それってアンタだけでしょう?私は兄さまと一緒に入れられるなら何処だっていいもおん。」

 そう言ってミュアは部屋から出て行ったのを見送ったリリィは部屋から見える

大空を見てこう思っていた。

 「カミト。貴様は忘れているのかどうか分からないが忘れているのなら

思い出してやる。我々のような存在が活きるのは太陽の下ではない。」

 「・・・・暗い地の底なんだ。」

 「その生き方を体現していたのは紛れもなく・・・

お前だったんじゃないのか?」

 リリィはそう思いながら空を見つけていた。

 外を自由に飛んでいる小鳥たち。

 だがそれらは竜の前では只の捕食対象でしかない。

 所詮は力がなければ生き残れない。

 それこそ絶対の真実。

 リリィのとって世界はそれだけの存在でしか・・・ないのだ。




 私たちは生き残る。
 誰かを殺してでも。


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会場に着いたな。

 そして襲撃後。


〈デス・ゲイズ〉の襲撃によりベルファール級飛行艇はメインの動力部を損傷し、サブだけではどう考えても島にはたどり着けないと船員がそう思っている中・・・

後方から別の飛空艇がやってきた。

 何やら重装甲であるがそれなりに動く飛空艇と思っていると何やら音声が

響き渡った。

 『あー、アー、聞こえておるか?聞こえておるなら返事せよ!!』

 「なあ、この声って」

 「【間違いないな。】」

 その声を聴いてカミトとシラヌイはお互いそう言うと音声の主が・・・

名乗り上げた。

 『ワシは《ヴァンフリーク商会社長《マギアルカ・ヴァンフリーク》じゃ。』

 「「やっぱり」」

 『そこの船に乗っている選手たちを島まで送り届けてやる。運送料は後で

請求するから今は選手を運ばせてほしいのじゃがな。』

 「・・・体のいい人質だな。」

 「【ああ・・・・まあ、基本料金なだけまだマシじゃね?】」

 シラヌイはそう思っていた。

 無論船内では色々と話し合いが行われていたが暫くして船長がこう言った。

 『分かった。今は船首を送り届けることを最優先とする。料金は追って

上に相談するものとする。』

 『熟考に感謝する。』

 そう言ってお互い通信し終えた。

 そして船内にいる選手たちを中にいれた。

 すると聞きなれた声が聞こえた。

 「おおい、カミト。」

 「おお、アルマか?」

 アルマがカミトを見て手を振っていた。

 「お前見送ってたんじゃ。」

 そう聞くとアルマはこう答えた。

 「ああ、只待つのも暇だからな。こうやって見に来たんだよ。」

 「・・・それって試合開始までは島の片田舎で過ごすって事じゃねえか?」

 そう、ブレイドダンス前は来るのは貴族関係であり民間人はそこから少し離れた村で過ごすのだ。

 「まあな、そこで店を構えようかっつう目論見とお前らの機竜の運搬が

仕事だからな。」

 其れで来たんだよとアルマはそう言った。

 すると近くにいたロロットが全員に向けてこう言った。

 「それでは本船は出航致します。手狭ではございますが暫くの間我慢して

下さい。」

 そう言うと船は発進した。

 そして暫くすると・・・・風の精霊王の聖域に入った。

 「あれが・・・聖域か。」

 カミトはそう言って厚い雲から見える峻険な山脈に囲まれた巨大な浮遊縞が

見えた。

 するとアルマがそれを見てこう言った。

 「あれがブレイドダンスっつうのが行われる場所か。・・・

何か遺跡みたいだな。」

 アルマはそう言いながら島を見ていた。

 まあ確かに、浮遊となれば第7遺跡の『月』と同じであるからなあ。

 然しカミトは自身の左手を抑えながらこう言った。

 「あそこに・・・レスティアがいる。」

 「【ああ・・・ここ迄長かったな。】」

 カミトとシラヌイは同じ思いで島を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 船が着いたのは正午過ぎで予定時刻からやや遅れていたが飛空艇は

聖域〈ラグナ・イース〉に着いた。

 如何やら向こうの船長が事情を説明し、マギアルカと交渉しているようだ。

 港からは〈神儀院〉が用意してくれた馬車で向かう事となった。

 機竜はロロット達がちゃんと宿にある倉庫に置いておくと言ってきたのだ。

 機竜を置くのはダメなんじゃないのかとエリスが聞くとロロットはこう返した。

 「大丈夫です。予めグレイワース様がこちらの責任者に

伝えておいたようです。」

 そう言ってカミト達は・・・ああねと納得した。

 グレイワースなりの考えがあるように思えるが機竜を使う機会などないと

願いたいほどだ。

 全員は馬車に乗ったがこれは4人乗りであり、本来なら入らないんじゃないかと思っていたが・・・・。

 カミトとレオノーラが前に、後ろにエリス、フィオナ、ヴェルサリアが

座ったため大丈夫であった。

 馬車は開会式が行われる城館に向かって進んでいた。

 「あそこが俺達の宿泊施設か。」

 カミトはそこを見てそう言うとフィオナがこう追加した。

 「ええ、普段は〈神儀院〉の姫巫女しか立ち入ることすら許されない場所よ。

私は火の精霊王の祭壇に入る時に一度だけだけどね。」

 「・・・精霊王の本祭壇か・・・何だか緊張するな。」

 エリスは緊張した表情でそう言った。

 するtヴェルサリアがフィオナにこう聞いた。

 「そう言えば帝国の皇帝夫妻は、到着していると思われるが合わないのか?」

 ヴェルサリアはそう聞くとフィオナは・・・こう返した。

 「あれ知りませんでした?私もう勘当寸前なんですよ。」

 「「「「・・・・・えええええ!!」」」」

 それを聞いて全員が驚いていた。

 一体何でだと思っているとフィオナはしれッとこう続けた。

 「ほら私精霊使えるようになっても〈神儀院〉に戻らなかったじゃない?

それで両親からああだこうだ言われてもう嫌なのよねえ。だから、これを機に

マギアルカ様の商会に入ろうかなって思ってるの。」

 「イヤイヤイヤイヤ。待って下さいよ!!それでは女王は

どうするんです!?」 

 レオノーラが慌ててそう聞くとフィオナはこう返した。

 「ああ、私そう言うのは興味ないのよ。精霊が使えないからって『無能』とか

『ロストクイーン』とか陰で言ってたくせにいざ使えるようになると

手のひら返してくるんだから嫌になったのよ。」

 「だから、マギアルカ様の商会に入って商業を学んであの夫婦を

見返してやるのが私の究極の復讐だって思ってんのよ!!」

 オーホホホホホホホと終盤は大声でそう言っていた。

 「・・・以外に逞しいな。」

 「・・・ですね。」

 カミトとレオノーラはそれを見て引き攣った様に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして暫くして馬車は巨大な石で作られた門の前で止まった。

 城館は類稀な美しさと壮厳さを兼ね揃えただけではなく、深い森は精霊たちの

憩いの場として、さらに湖もある。

 よく見ると馬車が数台乗り付けられているところを見るに既に

ほかのチームも到着しているようであった。

 カミト達は馬車から降りると・・・門の前から声が聞こえた。

 「お待ちしておりました。精霊王を愉しませる剣舞の姫巫女達よ。」

 「【一人男がいるけどな。】」

 姫巫女の一人に対してシラヌイはそう言った。

 するとフィオナがカミトのすぐ近くに来てこう言った。

 「あの子達は〈神儀院〉の見習い姫巫女で私の後輩よ。」

 「へええ・・・・あんな格好が巫女なのかよ?」

 「ああ・・・うん。・・・確かに男の人からすれば刺激が・・・

強いわよねえ。」

 カミトの言葉を聞いてフィオナは少し言いづらそうであるがそう言った。

 何せ胸元は大きく開き、裾の切れ目からは瑞々しい肌が僅かに露出していた。

 これ考えた奴本当は変態なんじゃないのかとカミトはそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 そしてカミト達は城館に入っていった。

 その中には広大な玄関ホールがあった。

 美しいアーチのかかった高い天井。

 絨毯を敷いた柱廊とその壁には数百年前に描かれた絵画がそこにあった。

 それらは歴代ブレイドダンス優勝者の絵画であり真新しいのが・・・

3年前のである。

 最強のブレイドダンサー『レン・アッシュベル』

 その繊細なタッチで描かれたその少女の姿は客観的に見ても綺麗な物であった。

 然しそれを見たカミトとヴェルサリアはと言うと・・・。

 「・・・美化しすぎだろ。」

 「まあ仕方がないだろうな。3年前だし」

 お互いそう言っていた。

 然し前を歩いていたエリスはムッとした表情でこう言った。

 「見る目がないのかカミトは!?それに義姉上もです。彼女の美しさは

間違いなくこの絵以上に美しくなっていますよ!!」

 そう言って憧れているエリスを見てヴェルサリアはカミトに対してこう言った。

 「・・・今更正体行っても聞かんだろうな。」

 「ああ・・・・」

 そう言ってその絵から離れていった。

 

 

 




 次回はちょっと商業です。


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商売は何処でもできる。

 マギアルカは何処に行ってもやってそう。


「オルデシア帝国代表〈チーム・スカーレット〉のお部屋はこちらになります。」

 姫巫女はそう言って部屋の前に案内してくれた。

 「何か御用の際には気軽に」

 「ああ、ちょっと良いか?」

 「はい、何でしょう?」

 カミトは姫巫女にこう質問した。

 「俺の部屋はどうするんだ?まさか一緒なんてことはないだろう?」

 そう聞いた。

 何せカミトは世間的には「魔王の後継者」と呼ばれているのだ。

 そんな人間を一緒にさせるなどどうだろうと聞いた。

 すると姫巫女はカミトを見ずにこう言った。

 「そちらの方は既に別室」

 「それってボロの倉庫部屋の事か?」

 「!!何者です」

 突如何処からか声がしたのを聞いて姫巫女は驚きながらも声の合った方を向くと

そこにいたのは・・・。

 「「「「「アルマァ!!」」」」」

 アルマがそこにいた。

 「どちらでしょうか?ここは関係者以外立ち入り禁止のはずですが?」

 姫巫女はそう言って警戒しているとアルマは懐から1通の手紙を差し出した。

 「何ですこれは?」

 姫巫女がそう聞くとアルマはニヤッと笑ってこう答えた。

 「前々回優勝者『グレイワース』の書簡さ。」

 「!!」

 「既にもう一通のはあんたの上司に渡してるぜ。」

 姫巫女は奪い取るかのように書簡を読むと・・・フルフルと震えていた。

 「そう言う事だ。」

 するとアルマはニッコリと笑ってこう続けた。

 「カミトは俺達『ヴァンフリーク商会』が預かることとなったが安心しろ。

あんたらのカミトに対する処遇は目を瞑るが・・・・」

 するとアルマは姫巫女の耳元に近寄ってこう警告した。

 「・・・次はネエゾ。」

 「ひいい!!」

 アルマの言葉を聞いて姫巫女が怖がったのを見てニヤリと笑ったアルマは

カミトに向けてこう言った。

 「それじゃあ行くか、荷物はこっちに用意済みだからな。」 

 「おお。」

 カミトはアルマの言葉を聞いて着いていくと・・・アルマは

思い出したかのように姫巫女に向けてこう言った。

 「ああ、それとそこの姫さん。」

 「あ、ハイ!!」

 「家のボスから伝言で『禊するならいい物提供するぞ』だから取り合えず

全員集合させといてくれないか?」

 「ア、ハイイイイイイイ!!」

 姫巫女は慌ててそう言って消えるように走り去って行くのを見送ったのを

見た後に今度はレオノーラに向けてこう言った。

 「レオノーラ、お前のドレスだけどこっちで用意してるから後で来いってさ。」

 「あ、はい。分かりました!!」

 それを聞いた後今度こそアルマはカミトと一緒に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まあ、取敢えずはここが俺達の本部扱いかな。」

 そう言うとアルマはカミトを送ってくれた飛空艇に連れて行った。

 然しよく見ると幾つか忙しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねえ、これってどこだっけ?」

 「それは確かあっちの試着室よ。」

 「これは何処だったっけ?」

 「ああそれは違う!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何か忙しそうだな。」

 「まあな、マギアルカ様の親友の国で最近流行の奴らしくてな、

水遊びするならこれだって話だぜ。」

 「へえ?」

 カミトはアルマの言葉を聞いてそう返事した。

 そして船内に入って船室の一つの扉の前に着いた。

 「ボス、カミト連れてきたぜェ。」 

 「うむ、それなら入って良いぞ。」

 マギアルカの言葉を聞いてアルマとカミトは部屋に入った。

 するとそこにあったのは・・・。

 「おお、すまんのう。もう少しで終わりそうなのじゃ」

 膨大な資料にサインしているマギアルカであった。

 暫くすると・・・。

 「ふう、終わった終わった。あ、ゆっくりくつろいでおけ。当面はこの船が

お前の部屋扱いじゃ。」

 そう言いながらマギアルカはロロットが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。

 するとカミトはマギアルカに向けてこう聞いた。

 「なあ、どうして俺はこの部屋なんだ?まあ、倉庫じゃねえから助かるが」

 そう聞くとマギアルカはククククと笑いながらこう答えた。

 「ああ、簡単な話じゃよ。グレイワース曰く『姫巫女共は極端に男との接触を断っているから恐らくカミトに対して何らかの問題をおかしかねんから』との事じゃそうじゃ。」

 「グレイワース・・・。」

 「【あいつもなんだかんだ言ってお前の事結構心配してたんだな。】」

 グレイワースの言葉をマギアルカ経由で聞き、カミトとシラヌイは

そう思っていた。

 「じゃから当面はここで寝ておけ。試合日には必ずお前さんを送ってやるから

心配せんでもよいわい。」

 そう言うとマギアルカはある物を出してカミトにこう聞いた。

 「ほれ、これやるから禊するならそれに着替えておけ。」

 「?」

 カミトは突如マギアルカから渡されて驚くがモノを見て更に驚いた。

 「おい、これって・・・パンツじゃねえか!?」

 確実と言っていい程パンツであったのだ。

 するとマギアルカは・・・笑いながらこう言った。

 「フフフフフフ、戯けめ。それは下着ではないぞ?よく見ろ。」

 そう言うので見てみると・・・・。

 「あれ?これよく見たら・・・。」

 「【カミト達が来ている装衣に似てるな。】」

 そう、シラヌイの言う通り装衣によく似ているのだ。

 すると外から声が聞こえた。

 「如何やら来たようじゃのう?」

 マギアルカはそう言うと・・・少し目をきつめにしてこう言った。

 「さてと・・・商売といこうかのう?」

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 船の外には今回の出場選手たちがごまんといた。

 「ねえ、これって何なのかしら?」

 「禊関連と聞きましたが?」

 「何なのかしら?」

 周りの少女達が何やらそうひそひそ声が聞こえていた。

 その中でヴェルサリア達はこう耳打ちしていた。

 「どう思う?」

 「どうでしょうね?ですが・・・。」

 ヴェルサリアとレオノーラは何やら話をしていた。

 そしてエリスとフィオナはと言うと・・・。

 「これは何かの儀式か何かか?」

 「あのマギアルカさんがそんなことすると思う?」

 エリスの言葉に対してフィオナは無いと思っていた。

 すると暫くして・・・マギアルカが出てきた。

 「え、あの人って確か」

 「ええ、私達をここ迄連れてきた人たちですわ。」

 それぞれそう言っていると突如マギアルカが全員に向けてこう聞いた。

 「よくぞやってきたのう?選手たちよ。」

 マギアルカは前振りを言うと本題に入った。

 「お主等はこれから禊をするが・・・それだけじゃとは思ってないよのう?」

 そう聞くが全員確かにと思っていた。

 大体こう言う時は一部を除いてはリフレッシュを兼ねて遊ぶこともあるのだ。

 するとマギアルカはこう言った。

 「そういう者達にお勧めするのが・・・これじゃあ!!」

 そう言ってマギアルカは少女たちの目の前にある布を剥ぎ取った。

 そして出てきたのは・・・。

 「え!何あれ!?」

 「下着・・・でしょうか?」

 「けどよく見たら綺麗。」

 少女たちがそう言っているとマギアルカはそれについてこう説明した。

 「これはとある国で今流行している水遊び用衣服『水着(ウオータードレス)』じゃ!!」

 「これを着た状態なら幾ら濡れても大丈夫!たった一日干すだけで大丈夫じゃ」

 「それに今年は男性もおるからのうそう言うことに対しての対応も

兼ねているのじゃが・・・。」

 「お主等着たいと思わんか?今なら無料で貸してやるぞい?」

 そう聞くと少しして・・・全員・・・水着に群がってきた。

 「すいません!これ貸してください!!」

 「ちょっと、それ私のよ!!」

 「ああ、それ私が狙っていましたのよう!?」

 それぞれそういう中ヴェルサリア達はというと・・・。

 「まあ、こうなる訳だな。」

 「ですね。」

 「ね、言ってた通りでしょう?」

 「ああ、確かにな。」

 ヴェルサリア、レオノーラ、フィオナ、エリスがそれを見てそう言った後に

こう言った。

 「さてと、我々も選んでおくか。残ってたのは嫌な予感しかしないからな。」

 「そうですね。」

 「なら私もう!」

 「な、それならば!!」

 そしてお互いも水着を選びに行った。




 さてと・・・湖は少し端折りそうだな。


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泳いで晩餐会。

 さてと・・・ダンスは出来るかなあ?


穏やかな日の光。

 空を飛び交う色彩鮮やかな鳥の群れ。

 生い茂った木々の枝からは色鮮やかな果実が実っている。

 ここは城館近くにある湖。

 そこにいるのは普段は精霊だけだが今では・・・・。

 「・・・平和だなあ。」

 「【カミト、お前現実逃避してねえか?】」カミトが遠い目をしているので

シラヌイがそう聞くがまあ当たり前だろうな。

 何せ・・・・。

 キャッキャウフフと・・・少女達が・・・・色鮮やかな・・・水着で・・・

遊んでいるからだ。

 因みにカミトは自身の立場を考慮し、湖の畔でエストと日陰ぼっこしている。

 何でこうなっちまったんだとカミトは思ってしまった。

 思えばあのマギアルカが商売しないとは考えが付かなかった。

 まさか他国の水用の衣装を持ってきていたとは思いもよらなかった。

 するとカミトの下に誰かがやってきた。

 「ここで何してるんだ、カミト?」

 「ああ、ヴェルサリアか。」

 ヴェルサリアは今白地のビキニの水着を着ていた。

 本人的には他のが良いかなと思っていたがこれしかなかったのだ。

 するとカミトの隣に座ってこう聞いた。

 「泳がないのか?禊とかは大切だろ?」

 するとカミトはこう答えた。

 「いや、・・・女子の中に・・・なあ。」

 「・・・確かにな。」

 ヴェルサリアはそう言って目の前の光景を見ていた。

 するとヴェルサリアはカミトにある事を聞いた。

 「なあ、カミト。聞きたいことがあるのだが・・・良いか?」

 「?」

 「・・・あの〈ワイバーン〉を纏っていた少女についてだ。」

 「!!」

 カミトはそれを聞いてミュアの事だと確信するがヴェルサリアはこう続けた。

 「お前とあの子、ただならぬ関係何だと思っているのだが・・・」

 「・・・・・。」

 それを聞いたカミトだがそれを言う事とはつまり自身の過去、自身が

〈教導院〉出身であることも喋らなければならないのだ。

 徹底して殺人のための教育を叩き込まれ、実際に人も殺している。

 だがそれを聞かれたらどうなるか・・・。

 軽蔑か同情か。

 どちらにしても今までのような関係ではなくなるのは目に見えていると

思ったのだ。

 それを見たシラヌイはというと・・・。

 「【カミト・・・。】」

 心配しながら見守るしかなかった。

 付き合いが長いからこそカミトの考えにも納得しているからだ。

 だがこれはいつか来るであろうことだ。

 こればかりはどうしようもないと思っていた。

 しかしヴェルサリアが言った言葉は・・・・意外な言葉であった。

 「・・・言いたくないのならそれでもいい。」

 「え?」

 カミトはその言葉に驚いていた。

 もっと質問するんじゃないのかと思っていたがヴェルサリアはこう続けた。

 「私たちはチームで仲間だがだからといってその人間の過去にづかづかと

立ち入るのは無粋な事だ。」

 「話したくないのならいいが自分自身で話したいと思ったら・・・何時でも

話してくれ。」

 そう言いながらヴェルサリアはカミトに向けて微笑んでいた。

 するとヴェルサリアはカミトの手を握ってこう言った。

 「さあ、試合まで未だ幾ばくかの余裕があるのだから貴様も泳げ。」

 そう言ってヴェルサリアはカミトと共に湖に向かって行った。

 恐らくヴェルサリア自身はもう少し話したかったのであろうがそれはそれ。

 これはこれである。

 今は楽しませようと思うヴェルサリアの思いやりを感じたカミトは・・・

こう呟いた。

 「・・・ありがとうな。ヴェルサリア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浮遊島のどこかにある地下空洞。

 そこでは多くの人間が準備していた。

 武器を磨いている者。

 食事を喰らっている者。

 仮眠を摂っている者。

 その中でミュアは・・・一人こう言っていた。

 「もうすぐよ兄さま。ミュアが邪魔なお姉ちゃんたちを全員

消してあげるから。」

 ミュア・アレンスタール。

 元々は帝国辺境の寒村生まれであったが生まれついて精霊契約の力を

持っていた。

 村の人間は皆大層に喜びミュアを大切に育てた。

 そして彼女が4歳の誕生日の日。

 ある事件が起きた。

 村の人々はミュアを村の守護精霊と契約させようとしたのだ。

 村を繁栄させようと。

 最初はそう言う純粋な思いであったのだろう。

 だがそこから・・・全てが変わってしまった。

 ミュアが契約の儀式を交わした途端に守護精霊は・・・狂乱してしまったのだ。

 これまで村を守っていた精霊は村を・・・悉く焼き尽くしたのだ。

 自身が消える迄ずっと・・・・。

 ミュアの力は・・・精霊を狂乱させる異能であったのだ。

 これまで大切に育ててくれた村人たちは一変してミュアを村に追いだした。

 そして村を追い出された彼女は教導院に連れ去られ、呪装刻印を刻み、

殺戮の技術を覚えさせ、心を消すすべを学ばされた。

 それが幾年月が経過し・・・心が壊れかけたそんなある日であった。

 

 

 

 

 

 

 『お前、いつも一人だな。』

 『そうよ、ミュアはずっと一人だもの。ミュアが話すのは殺す人間だけ。』

 『なら僕が友達になってやるよ。』

 『ふん、バカみたい。ここで友達何て』

 「じゃあ、兄妹ならどうだ?俺が兄さんでお前が妹だ。』

 『・・・何を勝手に決めてるのよ、バカね。』

 

 

 

 

 

 

 嘗てカミトと初めて会った日に交わした言葉。

 もう当の本人は思えていないであろうがミュアにとっては自我を保つのに大切な言葉である。

 「・・・兄さまは、ミュアとリリィだけいればいいもん。」

 自身にとって世界とはカミトとリリィとシラヌイ。

 只それだけでありそれ以外はあまり興味がなかった。

 だが・・・・。

 「けど・・・・ドラッケンも・・・『竜匪族』のメンバーと一緒だったら

良いかな?」

 本人の知らぬ間に出来てしまった居場所。

 『竜匪族』は最初は仕事関係での付き合い程度であったがいつの間にか・・・

ドラッケンと一緒にいるうちに・・・消えてしまっていた感情が少しずつ・・・蘇ってきたのだ。

 血の繋がりではなく・・・心の繋がり。

 ・・・『家族』のような関係に・・・・。

 「だから許さない。兄さまはこっち側の人間だってこと・・・思い出させて

あげる。」

 竜匪族人竜隊所属の客将ミュア・アレンスタール。

 今ある居場所の為に・・・戦う人間。

 

 

 

 

 

 

 

 夕刻、代表生の宿舎(カミトは除く)となっている城館でブレイドダンスの

開会式と名を騙った夕食会が執り行われた。

 城館の大ホールには既に大勢の賓客で賑わっていた。

 中央に並んだテーブルには贅を凝らした魚、肉料理、果物が並べており、優雅な音楽と精霊鉱石をふんだんにあしらったシャンデリアが輝いていた。

 「【おうおうおうおうおうおう、こりゃあすげえな。】」

 正に金の無駄遣いだなとシラヌイがそう言った。

 何せ開会式に出席しているのは各国から出場してきた精霊使いと身分の高い

王侯貴族ばかりなのだから。

 「今回は我が国の代表が勝たせてもらいますぞ。」

 「何の、我が白の騎士団には最高峰の精霊使いがいますからな。」

 表面上は礼儀正しく挨拶しているが心中では罵りあいと自慢話が横行していた。

 「(・・・ったく、お前らの為に剣舞を奉納するわけじゃないってのに)」

 「【そう言うなよ。・・・まあ、グレイワースが表舞台を嫌う理由は

分からんわけでもないがな】」

 するとシラヌイが周りを見てこう聞いた。

 「【なあよ、カミト。出場する連中ってみんな・・・若いな。】」

 「そりゃあそうだろう。何せブレイドダンス出場者は20歳以下の姫巫女って

決まりなんだからな。」

 「【それってつまり・・・精霊も中々どうして、やっぱ年寄りの婆よりも

若い女の子ってかよ。】」

 物好きだなとシラヌイがそう言った。

 「・・・にしてもあいつら遅いな。」

 カミトは周りを見てそう言った。

 「【女の着替えなんて遅いのが通例なんじゃねえの?】」

 「【ま、そう言う時には『別に、待ってねえよ。』って言えば大体の奴は

喜ぶぜ。】」

 「【それにな・・・・】」

 シラヌイがカミトにそう言うとある所に意識を向けていた。

 「動物はご遠慮下さい!」

 「むー、獣ではないのだ!この狼は森の仲間なのだ!!」

 「仲間でも、駄目なものはダメです!!!」

 「【あれよりはマシだろ?】」

 「・・・確かにな。」

 同じ学院代表として恥ずかしいと思うカミトはなるべく目を合わさないようにホールの入り口から遠ざかった。




 次回は・・・出来るかな?


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舞踏会において。

 遂にあの女性?が来る。


カミトはエストと一緒に食事をしていた。

 エストは純白のドレスを着飾っており、人形のような可愛さを放っていた。

 「カミト、次はお魚が良いです。」

 「ん、分かった。エストは好き嫌いしない良い子だな。」

 「【もう完全に親子の会話だろこれ?】」

 シラヌイはカミトとエストとの会話を聞いてそう思っていた。

 すると・・・。

 「【カミト、全員集まったぞ。】」

 「え、やっとか?」

 カミトはシラヌイの言葉を聞いて後ろを向くとそこにいたのは・・・。

 「・・・・・・・。」

 「どうしたの?カミト君?」

 「どうしましたカミトさん?」

 「どうしたカミト?」

 「カミト、どうした?」

 カミトは呆然としてフィオナ、レオノーラ、エリス、ヴェルサリアの方を

見ていた。

 フィオナは胸元が大きく開いた白いドレス。

 同じく胸元が大きく開いた紺碧色のドレス。

 フリルをふんだんにあしらった純白のドレス。

 紫色の質素な感じであるが本人らしさを際立させたドレス。

 4人とも元が美人であるため更に美しさが際立っていた。

 「・・・綺麗だ。」

 「「「「・・・・・!!!!!」」」」

 それを聞いた4人は思い思いであるが驚いていた。

 何せカミトが顔を少し赤くしているのだから。

 「嫌だわああ、カミト君たら上手ねえ。(まあ嬉しいのは嬉しいけどこっちは

如何かしら( ̄▽ ̄)。)」

 「ななな・・・・何言ってるんですか?!(えええ!!それって私・・・いやいや待って下さい!あのカミトですよ!?前に私彼に裸・・・・////////)」

 「〈あらあらあら、レオノーラったら嬉しがってますね。〉」

 「うううう・・・・私は・・・綺麗だのと・・・!

(・・・ちょっと嬉しいな。)」

 「そ・・・そうか・・・・・/////」

 「≪クククク、主も乙女だなあ。≫」

 それぞれの反応に機竜の方も(・∀・)ニヤついていた。

 するとフィオナがカミトに向けてこう聞いた。

 「それじゃあカミト君、誰と踊るのかしら?」

 「?」

 「「「!!!」」」

 フィオナの言葉を聞いてカミトは頭が?マークに、他3名は雷に打たれたような感覚になった。

 するとレオノーラがこう言った。

 「それでしたら私が」

 するとエリスとヴェルサリアはこう続けた。

 「何言ってるのだ?ここは私が」

 「エリス、ここは年上でもある私が最初であろう?」

 「ははは、何言ってるのですか義姉上?それとこれとは違いましょう?」

 「ホウ?」

 何やら三者三様の火花が飛び散っていた。

 然もその光景は周囲にも見られていた。

 「何してるのかしら?」

 「【男を賭けた取り合いだ。】」

 「修羅場」

 「【あんた正解】」

 「アレイシア精霊学院の代表みたいよ」

 「連中は舞踏会のマナーを知らないのか」

 「【知ってますけど知ってるこいつらが始めたぞ。】」

 「例の男の精霊使いよ。」

 「ああ、例の」

 「嫌がる女の子を無理やり・・・」

 「【お前目の病院に行け。】」

 「三人まとめて相手するなんて」

 「きっと夜の相手もまとめてしてるんだわ」

 「【こいつにそんな度胸ねえよ。】」

 「何て破廉恥な!」

 「【今言った奴だぞ。その台詞】」

 「でも、彼ちょっとカッコいいかも・・・」

 「【スミマセン、一人修羅場追加しても良いですか?】」

 「やめろ。収拾がつかんって言うか、フィオナお前良い性格してるって

言われねえか?」

 「あら?面白そうじゃない( ̄▽ ̄)」

 ニヤリとフィオナはそう言って笑った。

 ・・・こいつマジでマギアルカの下でこう言うのも学ばすのは危険だな。

 ・・・色んな意味で。

 するとフィオナがカミトに向けてこう耳元で囁いた。

 「カミト君、彼女が来たわ。」

 「彼女?・・・・まさか!!」

 「【お出ましのようだな。】」

 カミトとシラヌイはそれを聞いてグレイワースの言葉を思い出した。

 それこそ自分がこのブレイドダンスに出場したもう一つの理由。

 カツン硬い靴音鳴らして彼女が入ってきた。

 夜色の如き漆黒のドレス

 緋色の鬼面の仮面を付けた黒髪の少女。

 

 

 

 

 

 

 最強にして正体不明のブレイドダンサー『レン・アッシュベル』が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれがもう一人の・・・」

 「【ああ、然もあいつは冗談抜きで強い。】」

 「・・・お前を使っても多分。」

 「【ああ、負けそうだな。】」

 レスティアがいれば違うだろうけどなとそう付け加えた。

 「カミト君」

 ゴクッとフィオナは彼女を見て恐怖した。

 恐らくフィオナは気づいてしまったようだ。

 ・・・相手は正に強者であると。

 無論レオノーラ、エリス、ヴェルサリアも同じ気持であった。

 カミトは何時でも抜けるようにとソードデバイスを手にかけていた。

 すると・・・レン・アッシュベルらしき人間がカミトに近づくと

右手を差し出して・・・こう言った。

 「カゼハヤ・カミト、私と一曲踊ってくれないか?」

 「!!・・・・・」

 「【こいつはお願いというより・・・命令だぜ。】」

 シラヌイはカミトにそう忠告した。

 するとメイルストーム、カオスブレイカーがこう提案した。

 「〈レオノーラ、ここは様子を見たほうが〉」

 「≪貴公も把握しているであろう?お主とでは次元が違う≫」

 二機もそう忠告した。

 二人も知っている。

 相手との絶対的な差を。

 そう言うとヴェルサリアはエリスの手を、レオノーラはフィオナの手を引いて

退いた。

 「義姉上?!」

 「エリス、お前も分かってるはずだ!あいつはやばい!」

 「!!・・・・はい。」

 エリスはヴェルサリアの忠告を聞き、大人しくなった。

 するとレン・アッシュベルであろう女性はこう聞いた。

 「舞踏の嗜みはあるか?」

 「・・・前にグレイワースから教わった流行おくれのならな。」

 カミトは剣呑に言い返してレン・アッシュベルらしき女性の手を取った。

 ・・・それが戦いの狼煙である事も・・・知らずに。




 狼煙が上がった。
 ・・・・準備せよ。


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舞いと戦火

 狼煙は上がった。
 準備出来次第・・・発動せよ。


「・・・そろそろさね。」

 城館近くにある森の中でドラッケンがそう言った。

 彼女は今機竜の中での一品物、神装機竜「アスプ」を身に纏っている。

 するとドラッケンは少し後ろに離れている少女に向けてこう聞いた。

 「・・・準備は如何さね?」

 「万事順調よ。あと少しで全部城館を囲めれるわ。」

 そう言って少女、ミュア・アレンスタールがそう言うが何か不満そうであった。

 「不満そうだね?城館の飯が食いたかったのかい?」

 そう聞くとミュアはふて腐りながらこう返した。

 「フーンだ。兄様と踊るなんて全くカーディナルはさ」

 「ああね、そう言う事かね」

 ドラッケンはそう言った後に城館の方をもう一度見た。

 数多くの王族や貴族、その子供たちが一堂に集い、油断しているであろう

あの建物はまさにお宝の山といっても過言ではない。

 ドラッケンは全員に向けてこう言った。

 「良いかい?あたしらは暴れる。いつも通りさね。」

 ドラッケンの言葉を聞くと一人の男性がこう聞いた。

 「あのう、隊長。一つ良いですか?」

 「何さね」

 「・・・殺したり、犯したりするのは良いすか~~?」

 それを聞くと何人かがヒヒヒヒと笑っていた。

 それを聞いたドラッケンは・・・ニヤリと笑ってこう返した。

 「ああ・・・奪った女は構わないさね。・・・但し、身代金が払えない奴

だけさね。」

 「ういーす。」

 ドラッケンの言葉を聞いて質問してきた男性はそう答えた。

 そしてドラッケンはまた城館の方を見つめていた。

 ・・・合図が来るのを待って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優雅に奏でられるワルツの調べ。

 ホールの中央でカミトとレン・アッシュベルらしき人間のダンスを周囲は

見つめていた。

 リードしているのはレン・アッシュベルらしき人間。

 踊っているのは激しく燃える焔のような舞踏だ。

 それは姫巫女が祭儀の際に奉納するような本格的な儀式舞踏。

 その変幻自在な動きにカミトはついていくのがやっとであったが

レン・アッシュベルらしき人間はカミトに向けてこう言った。

 「中々良い動きだ。流石剣舞を極めた者は違うな。」

 「そいつは皮肉なのか?『レン・アッシュベル』・・・いや」

 「【それを騙る偽物さんよ?】」

 カミトとシラヌイは同じ思いでそう聞いた。

 何せその正体を知っているのが・・・彼らなのだから。

 すると何かを感じ取ったのかレン・アッシュベルらしき人間は足を素早く

組み変えた。

 カミトも其れに反応し、即座に反応して彼女の腰を抱き寄せた。

 そしてそのまま反転し、再び音楽に身を任せたが見ようによって

これは舞踏でなく・・・剣舞であろうと見て取れる。

 「アンタには色々と訊きたいことがある。」

 「性急だな。私はもう少しお前との舞踏を楽しみたいのだが。」

 レン・アッシュらしき人間はそう言うがカミトはこう答えた。

 「悪いがいい加減に踊りは・・・飽きたんでな!」

 カミトはそう言ってレン・アッシュらしき人間を無人のテラスにへと

誘いだした。

 広いテラスからは浮遊島に広がる大森林が一望できる。

 普通ならこう言う時は告白が大前提だと思われるがカミトは

レン・アッシュベルらしき人間から即座に離れてシラヌイのソードデバイスを

抜く構えをとりながらこう聞いた。

 「面倒くさい単刀直入に訊くぞ・・・ミュアはお前の仲間か?」

 「・・・ほう、そこを聞くか?」

 「目的は何だ?」

 「何故聞きたい?」

 「答えろ」

 カミトはそう言った。

 「【いい加減に観念したらどうだ・・・偽物さんよ?】」

 シラヌイも同じ気持であった。

 そしてレン・アッシュベルらしき人間はこう答えた。

 「戦争のためだ。」

 「戦争?・・・何処とだ」

 「〈彼ら〉と戦うために私はある国と同盟を結んだ。」

 「同盟?どことだ。」

 「・・・ヘイブルグ共和国」

 「!!・・・ヘイブルグ共和国」

 カミトはその国を聞いて驚いていた。

 少し前にレオノーラが話していた国の名だ。

 現在では軍が中央を支配しているというほど軍事力が高い国家である事も。

 「・・・〈彼ら〉って誰だ?」

 「この世界の王達だ。」

 「なああ!?」

 「【オイオイ、こいつランパール戦争の焼き増しでも起こす気か!?】」

 シラヌイはそう言っていた。

 もし本当に起こすとなると機竜側との全面戦争に陥ってしまうからだ。

 「(然もあっちにはアビスって言う化け物共がいる。もしそいつら迄

加わったら・・・!!)」

 考えるだけでゾッとするものだ。

 下手したら世界が破滅に陥ってしまうからだ。

 「そんなことして何になるんだ!?世界が滅びちまうぞ!!?」 

 カミトはそう言いながらソードデバイスを抜き放った。

 然しレン・アッシュベルらしき人間は何も感じない様にこう続けた。

 「違うな。この世界を救うための戦争・・・だが、戦争にはある現象が必要だが何か分かるか?カゼハヤ・カミト」

 「・・・何だ?」

 カミトはそう言いながらソードデバイスを構えた。

 するとレン・アッシュベルらしき人間は懐からある・・・札を見せて

こう言った。

 「試させてもらうぞ『レン・アッシュベル』(魔王の後継者)。お前に

〈彼ら〉を殺す資格があるのかどうかを・・・」

 そう言いながらレン・アッシュベルらしき人間はその札をカミト目掛けて

投げ放った。

 「!!」

 カミトは直ぐに回避して攻撃しようとしたその瞬間に・・・。

 「【カミト!!】」

 シラヌイが大声で何か言ったその時に・・・その札がカミトの背中に刺さった。

 「!!」

 カミトは何が起こったんだと思っている中で・・・声が聞こえた。

 「カミト!!」

 すると向こうからレン・アッシュベルらしき人間向かって・・・何かが間に

割り込んだ。

 「・・・ヴェルサリア!?」

 「大丈夫かカミト!!」

 ヴェルサリアはカミトを見た後に・・・憤怒に近い表情でこう言った。

 「貴様・・・ここでカミトに何かしようとはいい度胸だな・・・!!」

 そう言ってヴェルサリアはカオスブレイカーのソードデバイスを抜き放った。

 するとそこから他のメンバーも来た。

 「「「カミト(さん)〔君〕!!」」」

 エリスとレオノーラ、フィオナも来てくれたのだ。

 三人はカミトを守るように陣形を取った後にヴェルサリアはこう聞いた。

 「さあ、『レン・アッシュベル』。貴様ともあろうものが不意打ちとは

感心せんが何用で・・・カミトを手にかけた」

 ヴェルサリアは殺気丸出しでそう聞くが当の本人はというと・・・・。

 「ああそうだ、話が途中であったな?カゼハヤ・カミト」

 「おい、貴様!!」

 ヴェルサリアは確実に自分は眼中にすらない事に気づいて怒り出すも

レン・アッシュベルらしき人間はこう続けた。

 「戦争にはある現象が必要だと言ったがそれは何だと思う?」

 そう聞いた次の瞬間に城館の出入り口から・・・。

 ドカーン!!

 「「「「「!!!!!」」」」」

 「きゃあアアアアア!!」

 爆発音が聞こえた。

 「・・・まさか・・・・!!」

 カミトはレン・アッシュベルらしき人間を見てまさかと思いながら聞くと

レン・アッシュベルらしき人間はこう答えた。

 「そうだ、カゼハヤ・カミト」

 「・・・発端だ。」

 




 これより、戦闘行為に移る。


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剣舞?・・いや、戦争だ。

 それは見せるのではなく・・・倒すための戦い。


 城館から少し離れた港にて・・・。

 「ん?あれは・・・・!!??」

 見張りをしていたアルマが城館から出てきた煙を見て・・・あることに気づいた。

 「ボス!ボス!!あれあっれあれ!」

 アルマは驚きながらもマギアルカに城館から出てきている煙を見せると

マギアルカは・・・一筋の冷や汗を流してこう言った。

 「やばいのう・・・・」

 そう言うとアルマとロロットに命令した。

 「総員を叩き起こせ!機竜部隊出動!アルマは儂を担げ!!」

 「「はい!!」」

 アルマとロロットは命令を受諾して戦闘配置と戦闘員を叩き起こそうと

散らばった。

 マギアルカは煙の方を見てこう呟いた。

 「一体だれか知らんが・・・厄介なことをしてくれるのう!!」

 マギアルカはそう言いながら下唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれは!?」」

 「・・・機竜。」

 「あんなにたくさん」

 エリスとフィオナとレオノーラはその光景を見て驚いていた。

 森から大量の機竜〈ワイバーン〉、〈ワイアーム〉、〈ドレイク〉型が

総勢40機近くが城館に向けて・・・突撃してきた。

 「・・・・がはああ。」

 「カミト!!」

 カミトが無理やり起き上がろうとしているのを見てヴェルサリアは肩を貸した。

 今の髪とは心臓が焼けるような熱さと全身の血と痛覚が活性化しているような

感じであった。

 カミトはレン・アッシュベルらしき人間に向けてこう言った。

 「これが・・・お前の…言った・・・発端か・・・・!!」

 「そうだ。」

 カミトの言葉にレン・アッシュベルらしき人間は軽い感じで答えた。

 そしてレン・アッシュベルらしき人間はカミトを見てこう言った。

 「矢張り肉体が拒絶するか。」

 「カミトに何をした!!」

 ヴェルサリアがそう聞くとレン・アッシュベルらしき人間はこう答えた。

 「なあに、ほんの少しだがそいつの中に眠る魔王の素質を解放させただけだ。」

 「魔王の・・・素質だと?」

 「まあ、耐えられなければその程度の器だったと言う事」

 レン・アッシュベルらしき人間は言い終える前に・・・目の前に巨大な腕が

現れた。

 「貴様あ・・・!!」

 ヴェルサリアがカオスブレイカーを展開したのだ。

 この距離なら直ぐにでも相手はグチョグチョに体が潰せれるのだが

ヴェルサリアは・・・それをしなかった。

 それは・・・。

 「早く・・・カミトを・・・治せ!!」

 ヴェルサリアはそう言うがレン・アッシュベルらしき人間はこう言った。

 「良いのか?このままでは奴らは直ぐに攻撃してくるぞ?」

 「くう!?」

 ヴェルサリアはそれを聞いて怒り心頭であったが・・・さらに爆発が起きた。

 「「「「!!!!」」」」

 それを感じた四人ともヤバいと思いそれぞれソードデバイスを抜いた。

 「待て・・・俺も。」

 「【無茶だカミト!?】」

 シラヌイは起き上がるカミトに警告するもカミトはこう言った。

 「ここの・・・連中・・・は・・・戦闘・・・けいけ・・・・ん・・・

無いんだ・・・だから・・・!!」 

 カミトはそう言ってシラヌイを展開させようとすると・・・。

 「カミト、じっとしてください。」

 「・・・エスト。」

 エストがカミトの隣に立って何か唱え始めた。

 「・・・痛みが」

 「【こいつの解呪能力か?!】」

 シラヌイはエストの能力を感じ取るとエストはこう言った。

 「一応封じましたが神威を使うとぶり返しますので気を付けて下さい。」

 「いや・・・十分だ!!」

 そう言ってカミトはシラヌイを展開した。

 レオノーラもまたメイルストームを、エリスとフィオナはワイバーンと

ドレイクを纏った。

 「行くぞ!!」

 「「「「ォォォォオオ!!」」」」

 カミトの掛け声に四人とも大声を出して下にへと降りた。

 それを見ていたレン・アッシュベルらしき人間はこう言った。

 「その意気だ。私を失望させるなよ、最強のブレイドダンサー

『レン・アッシュベル』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はああああ!!」

 エリスが風魔法を使ってワイバーンに突風を与えると何人かが動きを止めた。

 「義姉上!!」

 「任せろ!!」

 エリスはヴェルサリアに向けてそう言うとヴェルサリアはそれに答えて

突撃した。

 元々近接特化型の機竜であるため、近づければ絶対に・・・有利である。

 「ガアアア!!」

 1機撃墜するもまだ何機もそこにいた。

 幾らマギアルカからの特訓があったからといってもヴェルサリアは

未だ初心者レベル。

 10機近いワイバーンを見てこう言った。

 「少し・・・きついな。」

 すると・・・。

 「義姉上!!」

 「エリス?!」

 ヴェルサリアの目の前にエリスがある敵の前に立ちふさがった。

 それは・・・。

 「お前は!?」

 「はあああい、お姉ちゃんたち。」

 ミュア・アレンスタールがワイバーンを纏って現れたのだ。

 エリスは彼女を見た後にこう言った。

 「義姉上、ここは私が引き受けますから他の方を。」

 「エリス!!」

 「義姉上の機竜でしたら大丈夫でしょう?・・・それに私も彼女に

用があります。」

 ヴェルサリアはエリスの言葉と表情を見ると・・・こう言った。

 「分かった。だが・・・死ぬなよ!?」

 「はい!!」」

 エリスはヴェルサリアの言葉を聞いてそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「発射アアアアア!!」

 レオノーラは敵に向けてドラグヘッドを射出した。

 今回使っているのは拡散弾頭であり一定の高度で拡散し、周りに煙幕をばら撒くタイプである。

 「ゲホゲホ」

 何人かがそれに引っかかると何処からか・・・攻撃が来た。

 「ギャアアアアアア!!」

 「畜生!何処からだよ?!」

 「前が見えねえ!!」

 煙の外からどうやって攻撃しているのか分からない人間が多かったが

蓋を外せば・・・簡単な事である。

 「敵は後3!」

 「はい!」

 フィオナが索敵で指示してレオノーラがフィオナから預かったブレスガンで

攻撃しているのだ。

 無論フィオナも攻撃できるが万が一を考えてこう言う陣形を執っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 「な・・・何だあれは」

 「あれも精霊?」

 「見たことがない。」

 城館に来た貴族、王族、代表選手たちはレオノーラ達の戦闘を見て驚いていた。

 何せ初めて見る機竜での戦いを見ているのだから。

 無論それはオルデシア国王も・・・見ていた。

 「・・・フィオナ」

 父親はその光景に戸惑いを隠せずにいた。

 精霊鉱石を無断に拝借したことは怒っているし、元々は厄介払いで学院に

入れさせたのだから。

 だが今は・・・違っていた。

 嘗ては部屋から出なかった女の子が今では前線で味方に指示を与えている

その姿を見て・・・悲しくなってしまったからだ。

 「私は・・・愚か者だ。」

 嘗ては愛しくて止まない娘。

 精霊が使えなくなっただけで放置し、何もしてこなかった。

 只精霊が使えなくなっただけで彼女の心を支えようとも、理由を聞こうとも

しなかった。

 王族である前に一人の親。

 自分は親の役目をはたしていなかったと言う現実に・・・心が潰れそうに

なってしまった。

 「どうか、・・・どうか、・・・精霊王よ、あの子を・・・お守下さい。」

 最早神に祈ることしかできない自分が惨めでみじめで・・・仕方がなかった。

 だが・・・彼らは知らなかった。

 戦いは・・・外だけではないという事に・・・。

 「・・・・・・・」

 誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「【カミト、あいつやばいな。】」

 「ああ、そうだな。」

 カミトは冷や汗を流していた。

 目の前にいる女性に・・・久しぶりの恐怖を感じているからだ。

 「あんたがカゼハヤ・カミトさね?」

 「そうだがアンタは?」

 カミトは女性にそう聞くと・・・女性はこう答えた。

 「初めましてさね。あたしは『竜匪族』人竜師団長。

『ドラッケン・メギストリ』、周りじゃあ『戦場の奏者』何て呼ぶ奴も

いるさね。」

 「二つ名持かよ!!」

 「【こいつは最初から難敵だな。】」

 カミトとシラヌイはそう言いながらも警戒していた。

 何せそう言う人間は必ずと言っていい程一癖難癖もあるからだ。

 するとドラッケンはカミトに向けてこう聞いた。

 「さてと、アンタはそいつを使って何年さね?」

 「?・・・どういう事」

 「答えな。」

 「・・・6年ぐらい。」

 「【正確に言えば3年弱だな。】」

 実質の時間に直すととシラヌイがそう言った。

 「それじゃああと何個か」

 「おい、何が目的だ。」

 カミトはそう言って背部から玄海を抜くとドラッケンはこう答えた。

 「はあ、焦りは禁物だって聞いたことないのかねえ。まあ、あんたの機竜での戦闘経験は大体・・・3、4年ちょい?って所さね?」

 「「!!【!!!】」」

 カミトとシラヌイはそれを聞いて驚いていた。

 何せたった一言で全てが把握されたかのようであったからだ。

 然しドラッケンはこう続けた。

 「なあに、簡単さね。あんたの言動と機竜の動かし方から見て独学で

学んだところってだろうさね。それなら話が早い。」

 そう言うとドラッケンはブレードとブレスガンを展開してこう言った。

 「後は戦って見ないとさねえ。」

 そう言うとドラッケンは構えた。

 「・・・行くぞ、シラヌイ」

 「【ああ!!】」

 カミトも構えた後少しして・・・爆発が起こった。

 「「!!」」

 それを皮切りに二人は獲物を思いっきり・・・振りかざした。

 ギィイイン!!と金属がぶつかる音が聞こえた。

 




 ドラッケンの実力って本当の所・・・どれくらいなんだろうなあ。
 まあ、・・・年齢詐欺隊長と副隊長は人外だからカウントしないけど。


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もう一つの戦いと真実

 その戦いに置いて告げられるのはナニカ?


パリィいいン!!

 『『『!!!』』』

 突如後ろの窓から何か音がしたので全員が何事だと思って後ろを見てみると

そこにいたのは・・・。

 「・・・・・・・・・!!!!!!」

 スライム状の何かであった。

 『『『『『ウワアアアアアア!!』』』』』

 それを見た全員が何だと思っている中代表選手達が前に出ると一人が現れた。

 金色の長髪

 綺麗な顔立ち

 そして何よりも際だせているのはその雰囲気である。

 何事においても眼前の敵のみを滅ぼすという雰囲気。

 彼女は神聖ルギア王国精霊騎士団第1軍〈鋼の獅子(シュルタール・レーヴェ〉のリーダー『ルミナリス・セイント・レイシェード』。

 前回のブレイドダンスにおいて順優勝者である。

 すると彼女は自らの精霊魔装を出すと代表選手たちに向かってこう言った。

 「恐れるな!前にいる敵共は現在オルデシア帝国が相手をしているが何時まで

持つか分からん!!故に我々は後方の敵を殲滅したうえで眼前の敵共を一掃する!!

 各員はこれまでのブレイドダンスを持ってこれを殲滅せん!!!」

 ルミナリスがそう言うと各代表選手たちはと言うと・・・。

 『『『『ォォォォオオ!!』』』』』

 全員武器を構えて立ち上がった。

 そして城館でも・・・戦いが起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アハハハッハ!意外にやるじゃないお姉ちゃん!!」

 「くう!!・・貴様もな!!」

 ミュアはそう言いながらブレードとブレスガンを使い分けながら戦うのに対し、

 エリスはブレード1本のみで戦っていた。

 これはエリス本人が風を使いながらの戦法であると同時に自身が

騎士であることからブレードのみしか使わなかったからだ。

 エリスは風魔法を使ってミュアの動きを封じようとするもミュアはするりと

抜けながらヒット&アウエイの戦法で戦っていた。

 元来ミュアは自身の異能を使って精霊を暴走させながら戦うため本人の

戦闘能力はそうでもないのだがドラッケンと出会って以降はそれが改善され、

最低限の戦闘が出来るようになったのだ。

 「それにしてもこの機竜は凄いわあ!これがあれば兄さまの隣に!!」

 「貴様とカミト、一体どういう関係なのだ!?」

 「あれあれェ?もしかして聞かされてなかったァ~~?」

 きゃははとミュアは笑うのを見てエリスは怒るようにこう続けた。

 「何が可笑しい!!」

 「だってさあ、あたしと兄さまはこれと同じ・・・兵器なんだよ~~?」

 「兵器・・・・だと・・・?」

 エリスはミュアの言葉を聞いて驚いていた。

 何故自身の事を兵器と呼ぶのか?

 彼女は一体何なのか?

 上げればキリがないくらい疑問が頭の中で湧いてくるがそれにミュアは・・・。

 こう答えた。

 「私と兄さまは・・・同じあの場所・・・・」

 「〈教導院〉で教わったバケモノなんだよ~~~!!」

 きゃははとミュアは笑った。

 その顔はまるで小悪魔の様に・・・悪意がなかった。

 

 




 告げられた真実は・・・残酷な・・・真実で・・・あった。


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戦い終わり・・・失って。

 やっと第4巻が終わった。


森の中にて何やら金属同士が打ち合う音が聞こえた。

 「ほらほらほら!どうしたさねカゼハヤ・カミト!!」

 「グウおう!?」

 カミトは現在ドラッケンと戦っていたが相手は化け物が付くくらいの

腕前であった。

 「・・・・強い!!」

 「【何せ俺達よりも機竜での戦闘経験が高いからな!!】」

 カミトとシラヌイはドラッケンに対してそう思っていた。

 カミトは知らないが何せ相手は機竜でのワールドランクには入っていない

(面倒くさいから)がもし入っていたら10位以内は確実であろうと言うほどの

腕前なのである。

 まあ、そうとも知らないカミトはドラッケンと戦っているのだが当の本人はと

言うと・・・。

 「(オイオイオイ、こいつは中々じゃないさね。それなりに機竜を動かしている

だけじゃなくて勘も良いようさね!?後数年すりゃあ・・・やばいかもさね】」

 ドラッケンはそう思っていた。

 カミトの機竜での経験はドラッケンと比べれば雲泥の差であるのだがそれを

マギアルカに特訓によりマシな程度(本人談)まで押し上げることが出来たのだ。

 お互いあと1歩のところで決定打に欠けてしまっている状態である。

 「【どうする?カミト】」

 シラヌイがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「・・・あれをやる。」

 「【・・・オオ!!】」

 カミトの言葉にシラヌイがそう答えるとシラヌイが持っている武器が全て・・・

展開された。

 右手に玄海。

 左手に清水。

 両肩に搭載されている風雷は天の羽衣で持っていた。

 これこそシラヌイの武装総展開形態。

 カミトは全ての力を出し切る覚悟で武器を構えた。

 お互い攻撃しようとした・・・その時に!!

 「無事かカミト!!」

 上空から声が聞こえてきたのです。

 二人は上を見るとそこにいたのは・・・。

 「アルマ!マギアルカ!!」

 アルマとマギアルカがいたのだ。

 するとマギアルカはアルマから降りて着地するとこう言った。

 「遅くなってすまんのう!?何せ城館にいる連中の手助けするメンツを

揃えるために遅くなってしまったわい!!」

 「それって・・・エリス達のか?!」

 「うむ、丁度部下たちが迎え撃っていることだわい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃の城館。

 「何だこいつらは?!」

 「突然出てきやがった!!」

 ロロット率いる部隊が城館を襲っている機竜部隊と戦っていた。

 「「「ロロットさん!!」」」

 「皆さん大丈夫でしたか!?」

 ロロットはレオノーラ達にそう聞くと全員は大丈夫だと答えた。

 「カミトさんの方にはマギアルカ様が向かっております!我々は敵の掃討に

撃って出ます!!」

 そう言って全員が迎え撃った。

 ある一人を除いては・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 「あ~~あ、もうお終いかな?」

 ミュアはその光景を見ていた。

 これは引き時かなと思っていると後ろから・・・音が聞こえた。

 「ドラッケンの合図。・・・撤収か、後少しだったんのになあ」

 ミュアはそう言いながらボロボロになった・・・エリスを見てこう言った。

 「じゃあねえ、お姉ちゃん。今度は・・・殺すまで相手してあげるねえ。」

 きゃははとミュアは笑いながら撤収していくがエリスはそれどころでは

なかった。

 「カミトが・・・・〈教導院〉・・・そんな・・・・ウソダ。」

 エリスはミュアの言葉を聞いて・・・頭の中がグチャグチャであった。

 カミトが教導院の出身、つまり・・・暗殺者であることがショックで・・・

たまらなかったのだ。

 だが心の内ではストンと何かがはまった様な感じでもあった。

 カミトの実力の一端がそこならば納得してしまったからだ。

 認めている自分と拒絶してしまっている自分。

 相反する感情にエリスは・・・何も考えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今のは・・・撤収かのう?」

 マギアルカはドラッケンに向かってそう言うとドラッケンはこう返した。

 「まあね、アンタみたいな実力者が相手だとあたしも死を覚悟しなきゃいけないからさね。傭兵は体が資本だからねえ。」

 そう言ってドラッケンは引いていく中でカミトに向けてこう言った。

 「それじゃあ、坊や。また何処かで会おうさねえ。」

 そう言ってドラッケンは姿を・・・晦ました。

 「矢張りあ奴の機竜は〈ドレイク〉か・・・」

 マギアルカはそう言ってドラッケンの機竜を解析しているが・・・事態が

急変した。

 「・・・・・あぐっ、アアアアアアアア!!」

 「!!どうしたのじゃ」

 「カミト!!」

 マギアルカとアルマが突如苦しみだしたカミトを見て驚いていた。

 「何でも・・・・な、い」

 「そう言う人間ほど大丈夫じゃないのじゃ!!」

 そう言いながらマギアルカはシャツのボタンを緩めて見たものは・・・。

 「何じゃこれは・・・・」

 丁度心臓のある位置に、禍々しい黒い文様が浮かんでいた。

 「グああアアアアアアアア!!」

 「ボス!!」

 「アルマ、直ぐに医療班を呼べ!それと精霊使いの・・・フィオナもじゃ!!

もしかしたらあ奴の専門家もしれん!!!」

 「はい!!」

 マギアルカは矢継ぎ早にアルマに指示を出すと・・・。

 「どいてください。」

 「エスト?」

 エストがマギアルカにそう声をかけた。

 するとエストはカミトの顎に触れると・・・こう言った。

 「私は貴方の剣。だから」

 そう言いながらエストはカミトに・・・キスをした。

 「エス・・・・ト!?」

 「【お前・・・・まさか!!】」

 シラヌイはエストの行動にまさかと思っているとエストはカミトを見て

こう言った。

 

 

 

 

 

 

 「サヨナラ、カミト」

 そう言ってエストは・・・無数の粒子となって・・・消えた。

 「・・・・・エストーーーー!!!」

 カミトはエストの手を掴もうと虚空に手をかざしそのまま・・・失神した。

 「「カミト!!」」

 マギアルカとアルマはカミトの状況を見て近づいた。

 彼女たちはその時にカミトの胸の呪装刻印が消えているのと同時にあるものが

浮かんでいたことに気が付かなかった。

 ・・・・101の数字が浮かんでいたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処かの闇の中。

 そこにナニカがいた。

 全身を漆黒で覆った鎧を身に纏った・・・騎士の如きナニカが。

 それが持っている槍はある物を見て・・・それを指した。

 純白の・・・剣がそこに突き刺さっていた。

 ゥおオオォォォォおおおお!!

 騎士の雄たけびは誰にも聞かれることなく虚空に・・・響き渡った。

 




 また休載します。


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人物紹介・・・5巻まで

 人物紹介です。


カゼハヤ・カミト

 知っての通りの主人公

 赤子の時に教導院に攫われて暗殺者としての訓練を受けた。

 精霊使いとしての能力を持っており教導院の老人たちからは〈魔王の後継者〉と

呼ばれていた。

 レスティアと仮契約する際に放置された刀型のソードデバイス、《シラヌイ》を

見つけ、契約した。

 教導院が滅んだ後に逃走し、骸連盟〈マーダーズ〉に入籍し以来として

グレイワースの暗殺を受けるも失敗した。

 その後グレイワースの下で召使(メイド服)としてだけでなく暗殺者の

カウンターとしても起用された。

 ある理由でレスティアを手放してから3年後にグレイワースに呼び出されるが道中にクレア・ルージュと遭遇し、戦い沙汰となった。

 クレア・ルージュの目的は1000年前に存在した伝説の精霊

《セヴェリアンの聖剣》を抜いたが暴走し、仕方なく契約した。

 その後グレイワースとの取引にてアレイシア精霊学院に入学。

 その際に一時であるがクレア・ルージュにしつこく勧誘された。

 また、契約した精霊〈エスト〉を新たに迎えた。

 精霊使いとしては初期段階においては素人クラスであったが戦えば戦うほど

何か思い出したかのように成長していった。

 同居人としてレオノーラと同居している。

 クレア・ルージュが狂精霊〈ゲシュペンスト〉にて大会を混乱に陥り、

その際に賞品でもある軍用精霊の暴走に立ち会い、《シラヌイ》で迎撃する。

 第2巻においては《シラヌイ》とエストを使った戦闘が主流となり、

事実上二種類での使用となっている。

 フィオナが入学したその日にジオ・インザーギと学院にて戦闘。

 それを捕らえる仕事と軍用精霊〈ヨルムンガンド〉の再封印を命じられ、

鉱山都市《ガド》に向かった。

 その際にマルカファル王国の商人であり、ギルゾレイクファミリーのボス

《マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク》と《アルマ》に出会った。

 その後エリス達を倒したジオ・インザーギを見つけ、共闘するも

あと1歩のところで邪魔が入った。

 その後マギアルカと共闘することとなり、真祭殿においてジオ・インザーギの

絡繰りを推測し、勝利するもフギル・アーカディアにより

ジオ・インザーギであったバケモノ相手に戦う事となった。

 その際に共にいたレスティアとエストの剣の二振りをシラヌイで使って

勝利するもジオ・インザーギは死亡した。

 その後にマギアルカに本格的な機竜での使用法を教授された。

 その際に新たなるチーム編成に伴い、エリス、フィオナ、レオノーラが

加わった。

 第3巻において、新たに加わったヴェルサリアに機竜での決闘を布告され、

これを受諾。

 戦闘は引き分けに終わったがその実力は確かなものとなった。

 第4巻においては試合会場に向かう最中に軍用精霊《デス・ゲイズ》と

空中で交戦することとなった。

 辛勝した後に教導院において組んでいた少女、《ミュア・アレンスタール》に

再会。

 その後の晩餐会においては《レン・アッシュベル》らしき人間からある物を

投与され、痛みながらも竜匪族の人竜部隊団長《ドラッケン》と戦闘。

 マギアルカの介入にて何とか退くも投与された何かに蝕まれ、命の危機に

直面していったがエストの力で回避したがその際にエストは消えた。

 その正体は嘗て前ブレイドダンスにおいての優勝者

《レン・アッシュベル》本人であるのだが知っているのは相棒の《シラヌイ》と、レスティア、グレイワース、フィオナ、ヴェルサリアだけである。

 その後エストの手掛かりを求めて古代図書館にて

『アレイシア・イドリース』直筆の記録書を手に入れた。

 呪いはフィオナの助けにより現在の火の精霊姫であるレイハによって

解呪されるもその後からアレイシア・イドリースの記憶が見えるように

なってしまった。

 ルミナリス戦の際に危機に陥った時にエストを再召喚に成功し、勝利した。

 保有№は101

 

 

 

 

 

 

 レオノーラ・ランカスター

 本来なら《ドラグニア竜皇国》に在籍していたがとある《アビス》戦において《ヘイブルグ共和国》に吸収された。

 機竜、《メイルストーム》を保有し、精霊《グリムゲルデ》と契約している。

 親友を恩人でもあり憧れでもあった《ローザ・グランハイト》に全員

殺された後に家族を殺され、天涯孤独となって国外脱出した後に

チームメイトでもあったリンスレットの家に一時的に身を寄せた後に

グレイワースの推薦で入学した。

 独り身であるが真面目で優秀性である。

 機竜においては下位ランクであるが一通りのやり方は学んでいる。

 主に機竜での戦闘に重点を置いているが精霊使いとしての腕前は1流である。

 ジオ・インザーギ戦の後にカミトのチームに入り、ブレイドダンスに出場した。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト

 先のブレイドダンス出場であると同時にレン・アッシュベルの正体を知る一人。

 元々は下級貴族の出であるが精霊使いとしての実力を評価され、養子となった。

 エリスとは義理の姉妹であるが仲は良い。

 1年生にしてブレイドダンスに出場出来る程の実力者であったが

レン・アッシュベルに瞬殺され、意気消沈しアストラル・ゼロで精霊に殺されて

死のうと思っていたところにフィオナと襲っていたドリアードに遭遇。

 死ぬと確信した時にカミトに出会い、その正体を知る。

 カミトとの言葉のやり取りの後にもう一度再戦を約束するもそれは

3年先となった。

 治安維持組織シルフィードの団長であり実力は確かである。

 3年後にカミトと再会するも忘れていたことに少し・・・キャラ崩壊したが

思い出してくれた後にカミトの頬に口づけをした。

 機竜は《カオスブレイカー》、精霊は《サイレント・フォートレス》

 カミトのチームに入った後に機竜での決着を所望した。

 カミトに対しては好意を抱いており、再会に備えて料理の特訓もしている。

 

 

 

 

 

 

 

 エリス・ファーレンガルト

 先のブレイドダンスにて《レン・アッシュベル》に憧れを抱いておる少女。

 シルフィードと言う学院の治安維持組織にて団長補佐を任されていた。

 精霊は《シムルグ》、機竜は《ワイバーン》

 団長補佐に選ばれているだけあって実力は確かであるが優等生型であるため

授業の単語を全て書くと言う堅物なところがある。

 一時はカミトを不安視していたが軍用精霊の戦いの後にカミトの実力を見て、

見直し勧誘することもあった。

 ジオ・インザーギ戦の際に自身のチームメイトがやられたため、カミトの

チームに入り、マギアルカの教えを請いた。

 機竜での戦闘は主に接近戦であるためある程度万能型でもあるミュアに

やられかけた。

 カミトが教導院出身であることを知っている人間であり、チームでは

エリスのみである。

 胸が大きい事がコンプレックスであり、最近は甲冑が付けづらいと漏らすことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 フィオナ・レイ・オルデシア

 オルデシア帝国の第2王女であり、神儀院に在籍していたが

クレア・ルージュの姉のルビアの出来事により精霊が使えなくなった為、

神儀院から追放され《ロストクイーン》と呼ばれるようになった。

 前回のブレイドダンスにおいてレン・アッシュベルの戦いを見た後に精霊が

使えないかアストラル・ゼロに行くも失敗し、ドリアードに襲われかけた。

 その際にレン・アッシュベルの正体も知った。

 その後は精霊鉱石を使って不法入学した後にジオ・インザーギ戦に参加。

 その戦いに置いて儀式演武を使って補佐に周りジオ・インザーギの精霊を

無力化させた。

 カミトのチームに入り、マギアルカの教えを請いた後に精霊が使えるように

なった。

 精霊は《ゲオルギウス》、機竜は《ドレイク》

 本人曰く、耳年増であるが初心だと告げているが本当なのかどうか知らない。

 両親に対しては険悪であり、女王の資格を返上し、マギアルカに商売の

イロハを教わり、見返したいと思うぐらい嫌いであるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 クレア・ルージュ

 本来ならメインヒロインであるのだが本作では不遇キャラ。

 名前自体が偽名で本名は《クレア・エルステイン》なのだが姉が炎の精霊王を

奪い、脱走したため家は取り潰された。

 家を取り戻すこととルビアに真実を聞くために強力な精霊を手に入れたいと

やっきになっていた。

 カミトがエストと契約した際には本人の事を《奴隷精霊》と呼んでカミトを

無理やりチームに入れさせようとした。

 精霊は《スカーレット》

 エリスとの決闘の際には途中で割り込んできた魔精霊すら契約しようと

意気込むがスカーレットがやられたのを見て意気消沈し、カミトが倒した際には

カミトに対して嫉妬の心が出来ていた。

 軍用精霊をかけた試合においては精霊無しで戦おうとするも酷い結果であると

同時に姉を馬鹿にすることを言った上級生に対して怒りが込みあがり直前に

レスティアに貰った狂精霊《ゲシュペンスト》を使って全ての精霊を

暴走させるもレオノーラによって阻止された。

 ジオ・インザーギ戦時に洞窟内で負傷し戦線離脱したがブレイドダンスに

出場できないと知るや否や呪装刻印を使って出場したいというが

グレイワースの叱責で没となりその後は抜け殻の様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 リンスレット・ローレンフロスト

 今作においての不遇キャラその2

 高飛車で自分と同等の人間しかチームに入れないというとんでもない性格で

あるが本当は面倒見の良い少女。

 クレアの事もそれとなく気にかけているが基本的には会えば喧嘩が普通である。

 レオノーラと組んでいたがジオ・インザーギ戦において負傷し、

ブレイドダンスに出場できなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイワース・シェルマイル

 元オルデシア帝国最強の12人の第1位であったが引退し、アレイシア精霊学院の学院長になった。

 カミトを引き取って色々と世話をしており、日常における常識を教えた人間。

 精霊は魔精霊で《伯爵》と呼んでいる。

 39だがその見た目は正に20代と言っても差し支えない人間であるがこれは

2回前のブレイドダンスにおける願いの副作用であり1定周期で若返るそうだ。

 実力は正にバケモノランクでありカミトですら死を覚悟したほどである。

 自分の生徒に危害が出た場合はあらゆる手段をもって下手人を葬る。

 嘗ての教え子でもあるヴィヴィアン・メローサによって教え子がバケモノに

変えられた後は必ず殺すという宣言もした。

 カミトに対しては親の様に接している。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラッカ、レイシア

 エリスと同じくシルフィードのメンバーでエリスのチームメイト。

 ジオ・インザーギ戦によりチームから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィアン・メローサ

 マーダーズの組織に属するエルフィム族の女性

 呪装刻印に長けており生徒にそれをばら撒いていたが更にある秘薬と№を売りに出して

オルデシア帝国において指名手配犯となった。

 ある少女と国外脱出した後、行方知れずとなった。

 

 

 

 

 

 

 フレイヤ・グランドル

 アレイシア精霊学院の教師でレイブン教室担当。

 グレイワースが最も信頼している女性で影魔法の使い手。

 グレイワースによって軍の諜報を任じられてしまうという教師と言うより諜報員紛いなことを

されている女性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジオ・インザーギ

 自身を〈魔王の後継者〉と自称した男性。

 カミトと同じく教導院に入っており、暗殺や精霊の使い方を学んだ。

 教導院が崩壊した時に脱走し、数々の精霊を奪った。

 精霊においては鉱石や呪装刻印で使用していることから半端モノと呼ばれていた。

 フギル・アーカディアが№と特殊な薬の投与によって精霊と融合し、バケモノとなった。

 カミトによって倒された後にアストラル・ゼロに体を奪われ、送還された。

 カミトに対して見下していた態度から一変し、命乞いをしていたが結局体は精霊となって消えて

行った。

 保有№  72(その後にカミトが押収した。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミュア・アレンスタール

 若干12歳であるが教導院において№2の実力を持っている。

 幼い時に自身が育っていた村の守り神でもある精霊を狂乱させ、暴走させたのちに村を追放され、

教導院に入った。

 カミトの事を兄の様に接しており同じ教導院所属のリリィとも仲がいい。

 教導院崩壊後は紆余曲折を経て、ドラッケンが所属している竜匪族に入団し、機竜をもらい受けた。

 異能は《愚者の万力》、機竜は《ワイバーン》

 №を保有しているようであるがそれが何なのかは不明

 

 

 

 

 

 

 リリィ・フレイム

 カミト、ミュアと同じく教導院育ち。

 エルフィム族でありカミトの事を心の中では尊敬している。

 ミュア・アレンスタールと同じような理由で竜匪族に入団した。

 カミトが表社会で馴染んでいることを納得しておらず、目を覚まさせようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク

 表向きはマルカファル王国の巨大商業の社長であるが裏ではマフィア、ギルゾレイクファミリーの

創設者。

 幼い容姿とは裏腹で年寄りめいた言動と圧倒的な実力を持っている。

 カミト達とガドで出会って以降、アレイシア精霊学院においては人員不足のシルフィードの手伝いと、商業展開の拠点としてカミトが暮らしている旧療養所に住んでいる。

 機竜側においてはワールドランク第1位であり「金で買った」と言いながらもその実力は確かである。

 実際は26歳と妙齢の女性で初めて聞いた際にはカミト曰く「グレイワースみたいだ」と

思うほどである。

 機竜は《ヨルムンガンド》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルマ

 ギルゾレイクファミリーにおいて高い実力を持った人間。

 少女であるのだが普段は目深な帽子と全身を覆うように服を着ているため少年と間違われることも屡々。

 その正体はアディスマータ新王国第2王女「アールマティア・アディスマータ」と言う名前で革命時に自身が隠れていた隠れ家が旧帝国に強襲され、捕まったが命からがらに脱出し紆余曲折を経て

マギアルカに拾われた。

 隠れ家は姉がばらしたというのを聞いて恨み高らかに力を付けるうちに三大機竜奥義

「クイック・ドロウ」をマスターした。

 努力家でカミト達を気にかけていることから口は悪いが面倒見のいい人間と記憶されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フギル・アーカディア

 嘗て存在した国「アーカディア帝国」の皇子だが国外脱出した後幾つもの国を渡り歩いている。

 自らを先導者と呼び、カミト達に謎めいた言葉を吹きかける。

 ジオ・インザーギ戦では謎の薬を投与させ、暴走させた張本人

 機竜を持っているがそれが何なのか不明。

 

 

 

 

 

 

 ミスシス

 フギル・アーカディアに付く謎の女性。

 機竜を保有し、3種類すべてをマスターしている。

 それ以外は不明。

 

 

 

 

 

 

 

 ルミナリス・セイント・レイシエード

 神聖ルギア王国の聖霊騎士団の団長にして全大会の順優勝者。

 騎士としての高い忠誠心と実力を持っている。 

 打倒レン・アッシュベルを掲げて今回の大会に出場しており

今のレン・アッシュベルは偽物だと気づいている。

 その偽物に敗れた後に№を植え付けられ、暴走したがカミトによって鎮静化されもう一度の勝負を誓い合った。

 保有№は36




 次回は精霊と機竜の紹介。


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精霊とオリジナル機竜

 精霊とシラヌイ達の紹介です。


精霊編

 

 レスティア

 カミトが最初に使った精霊であり契約精霊。

 嘗てはキー・スマイランの指輪に封印されていたがグレイワースの手に

よって復活。

 ごく僅かしかいない魔精霊であり、単体でも戦闘することが出来る。

 シラヌイとは付き合いが長い為ある程度の感覚は理解できる。

 武装は《真実を貫く剣(ヴォーバル・ソード》

 

 

 

 

 

 

 エスト

 本名はテルミヌス・エスト。

 学院の洞窟に封印されていたのをクレアが抜いてカミトが契約した。

 剣精霊でありあらゆる剣にコピーすることが出来るため変幻自在な戦闘が出来る。

 最初シラヌイに対しては邪魔者扱いしていたが現在はそれなりに信頼している。

 解呪の力も備わっており、光の精霊らしい能力を持っている。

 カミトの呪装刻印を解くために自身を投げうって助けたため消滅した。

 その後に本体と接続された際にアレイシア・イドリースの記憶を見せられるも

自身は自身と言ってそこから去って行った際に№を取り込むことに成功し、

名前は『サイレント・オナーズ・アーク・エスト』に変わった。

 それに伴い手足に鎖が巻きつけられ攻撃範囲が広くなった。

 何やらとあるものを手に入れたがそれは未だ不明。

 

 

 

 

 

 

 グリムゲルデ

 レオノーラの精霊。

 家族が死ぬ前に渡した形見精霊。

 風精霊であるがその力は最大出力ならばあらゆるものを吹き飛ばす事が出来る。

 エストとは昔知り合ったことがある。

 武装は《テンペストソード》

 

 

 

 

 

 

 

 

 シムルグ

 エリスの精霊。

 鳥獣型で人1人は余裕で乗せることが出来る。

 顔が怖い為、あまり誰も近寄らない。

 武装は《風翼の槍(レイ・ホーク)》

 

 

 

 

 

 

 ゲオルギウス

 フィオナが扱う光精霊。

 騎士型であるため武器を持った戦闘が主。

 防御にも秀でているため万能型。

 

 

 

 

 

 

 

 サイレント・フォートレス

 ヴェルサリアが扱う精霊

 鎧の様に纏う為、精霊使いの実力で左右されてしまう。

 武装は大型キャノン*2

    ハルバート

 

 

 

 

 

 

 

 フェンリル

 リンスレットが扱う氷精霊。

 氷を主な攻撃手段として使っている狼型の精霊。

 

 

 

 

 

 

 

 スカーレット

 クレアが扱う炎精霊。

 炎に身に纏った爪や牙で攻撃することが出来る。

 《ゲシュペンスト》に憑依されていた事が原因になのかどうか分からないが

生まれたての子猫サイズに迄縮んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲシュペンスト

 精霊に憑依する狂精霊。

 スカーレットに乗り移って狂気伝染させた。

 

 

 

 

 

 

 男爵

 グレイワースが扱う魔精霊。

 実体は持たず黒い塊で行動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機竜編。

 カミト達が保有する機竜は殆どが言語を話すことが出来るが何故話せるのかは

不明。

 遺跡とは違うところで保管されているため何者かがばら撒いた線が強い。

 

 

 

 

 

 

 神装機竜(シラヌイ)

 見た目はガンダムSEED DESUTINEYに出てくる「デスティニーガンダム」

 種類(特装機竜)

 この機体はカミトの村で祀っていた刀の正体。

 何故遺跡(ルイン)になかったのか不明だがこの機体は他とは違いある

1定の適性以上でないと使えないのである。

 しかし能力は凄まじく対機竜用に作られたという経緯を持っている。

 武装 大型刀「玄海」*1

    長距離ライフル(機竜息銃)「清水」*1(見た目は00に出てくるケルディㇺの可変式スナイパーライフル

    大型手裏剣型ブーメラン「風雷」*2

 特殊武装「天の羽衣」

      この武装は折り畳まれた腕のようなものを開いて初めて使用する武器

 内部にフック状の武器が内蔵されてあり敵を捕まえる又は障害物を除去できるという使用が主だが戦闘では電流を流し相手を倒すこともできる。

 

 

 

 

 

神装機竜「メイルストローム」

 種類  「ワイアーム」

 見た目  肩にミサイルを搭載した「ガンダム・鉄血のオルフェンズ」に出てくる「ガンダムバルバトスルプスレクス」と同じ。

 本機は『シラヌイ』と同じく人語が喋れる機竜である。

 グレイワース曰く未だ他にもあるかもしれないという仮説がある。

 武装  クロー*10

     槍

     腕部内蔵ワイヤーテール*2

 特殊武装  グロリアス・テンペスト

     肩部に搭載されているミサイルポッド

     ミサイルは機竜弾頭(ドラグヘッド)と呼ばれる代物であり所有者に応じて煙幕、焼夷弾、分裂弾等が搭載されている。

     機竜自身で生成しているため弾切れしない分所有者の体力を削る為

長期戦には向いていない。

 

 

 

 

 

 神装機竜(カオス・ブレイカー)

 見た目は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に出てくる

「ガンダム バエル」の青が赤になったぐらい。

 種類  飛翔機竜(ワイバーン)

 機龍としてなら接近戦でトップランクの性能を発揮することが出来る機龍である。

 機動性を最大限に発揮させるために近接専用の武器を「方天戟」みたいに

まとめたことから比重が重くあり、使用時においては広い場所を選択しなければ

使えないのだ。

 武装 方天戟「クライシス」*1

    双剣「クローズ」*2

    機竜息銃*1

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 当面の間休みます。


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魔王殺しの黒聖剣
心配事なプロローグ。


 再開しました。


夢を見た・・・・。

 砂漠の中にある街で人々が自由を享受しているところを・・・。

 そしてその中にある城の中で・・・仲睦まじく暮らしている・・・男女を。

 一人は分かる。

 何せ彫刻や絵画などの美術品で今なお数多く描かれているからだ。

 その女性の名は・・・・。

 『アレイシア・イドリース』

 魔王を滅ぼしたという救世の聖女と・・・呼ばれていた。

 だがそれでも腑に落ちない点があった。

 (・・・どうして彼女の夢を?)

 そしてもう一人の男性は誰なのか・・・分からない。

 顔らへんが黒く潰されていて誰なのか分からないのだ。

 そしてそんな二人の腕の中に・・・小さな・・・赤んぼがいた。

 (何故・・・彼女が?)

 そう思っていると・・・小さな女の子が現れた。

 白い銀髪の少女。

 儚いような印象の少女がそこにいた。

 その少女を見て・・・彼はこう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エスト!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見ていた主、カミトがそう言って起きた。

 目覚めて初めに見たのは・・・少し硬いがハンモックの上であった。

 一体ここはと思っていると・・・頭の中から声が聞こえた。

 『よう、起きたかカミト?』

 「・・・『シラヌイ』?」

 自分の近くにある壁に立てかけている刀型のソードデバイスを見て

そう言うとカミトは・・・。

 「俺は・・・どうしてここに?」

 そう言うとシラヌイがこう言った。

 『お前覚えてねえのか!?』

 驚いたかのようにそう言うのに対してカミトはこう答えた。

 「いや、意識を失う前後がな・・・。」

 そう言うとシラヌイはこう説明した。

 『お前あの時にレン・アッシュベルと舞踏会で踊った後にトンでもねえ

化け物ドラグナイトと戦っていたんだぞ。』

 「ああ、そんでアイツが・・・撤収して・・・それで・・・・・!!」

 カミトはそう言うと全てを思い出した。

 自身の精霊でもあるエストが・・・自身を助けるために・・・消滅したことを。

 「俺は・・・・また・・・・守れなかった・・・のか・・・よ!!!」

 そう言いながらカミトは壁を殴ろうとするとシラヌイがこう言った。

 『いや、まだ望みはあるぜ。』

 「・・・何だと?」

 そう言うとシラヌイがこう説明した。

 『レオノーラとヴェルサリアによりゃあ、右手にある精霊刻印があるって事は

未だエストは存在しているらしいんだ。』

 『だから先ずは体力を回復してから方法を考えるだそうだ。』

 そう言うとカミトはこう言った。

 「そうか・・・。」

 するとそう云やあと言ってカミトはシラヌイにこう聞いた。

 「《精霊剣舞祭》の演目はどうなったんだ?精霊姫の宣託はもう出たんだろ?」

 そう聞くとシラヌイはこう答えた。

 『そいつはヴェルサリア達に聞けよ。今あいつらはマギアルカ達と一緒に

晩餐会があった会場の後片付けと捕らえた『竜匪族』って言う連中の

取り調べだそうだ。』

 一応連絡しといたけどなと言うとシラヌイはこう締めた。

 『そう言う事だからさっさと休んで体力回復してこい!!』

 そう言うのを聞いてカミトは渋々とハンモックの布団に包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうか、カミトが。」

 《ああ、だがやはりショックは大きいようだ。当面は精神的な意味で

落ち着かせた方が良いだろうな。》

 ヴェルサリアはそう言って自身の機竜、『カオスブレイカー』の言葉を

聞いてこう言った。

 「後で演目を伝えておくから目を離さないでいてくれと

伝えておいてくれないか?」

 《我は伝書鳩ではないんだがな》

 承知したと言って終了した。

 そう言うとヴェルサリアは近くで何やら本を読んでいるフィオナを見かけた。

 何やら分厚い本の山の中でう~~んと考え事をしていた。

 そして暫くして・・・。

 「あああ~~、駄目ねえ。」

 そう言いながらフィオナは本を投げ捨ててうつぶせた。

 それを見たフィオナがこう聞いた。

 「一体何読んでいるのだ?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「うん?・・・呪術や呪装刻印、精霊に関係する文献を読んで

あれの解呪をしようとおもってたんだけどどれもこれも当てはまらないわ。」

 は~~~とため息交じりでそう言うとヴェルサリアはフィオナに向けて

こう聞いた。

 「お前はあの偽者を見てどう思う?」

 「・・・《レン・アッシュベル》擬きの事?」

 「・・・・」

 そう聞いてフィオナはこう答えた。

 「文献にも載っていないとなれば多分オリジナルの精霊魔術を作れるほどの

高度な知識を保有していて剣舞も出来るとなれば・・・相当の腕前と見て

良いわね。」

 そう言うとヴェルサリアはこうも聞いた。

 「それで確かなのか?エストはまた戻ってこれるというのは?」

 そう聞いた。

 エストについてはフィオナがそう仮定を述べたのだ。

 そしてそれに対してフィオナはこう答えた。

 「確かに精霊刻印は無事だから力が回復すれば戻ってこれる可能性はない事にはないけど・・・けどねえ・・・」

 「?」

 「恐らくだけどエストの力をもってしてもあの呪いを完全に破壊することが出来なかった。」

 「そしてその呪いに縛られていて一種の封印状態に至った。」

 そう思ってるけどねと言うとヴェルサリアはこう結論づけた。

 「ならば矢張り先ずはその呪いからか・・・。」

 そう言うとフィオナはこう言った。

 「取敢えず私は《神儀院》の知り合いを当たってみるからカミト君の方を

お願いね。」

 其れじゃあなと言ってフィオナは立ち上がって何処かへと立ち去って行った。

 それを見届けたヴェルサリアはこう言った。

 「はあ・・・先ずはそこからだな。」

 そう言ってヴェルサリアは後片付けを再開した。




 次回は外出編です。


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港の散歩

 港って・・・磯臭いよね。


 「う・・・ううん。」

 カミトはハンモックの上で起きた。

 ハンモックの上で寝るのには少し訓練が必要であるのだが何とか寝れた後に

起き上がって着替えようとしていた。

 『大丈夫なのかよ、カミト?』

 シラヌイがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、少し寝たら体が楽になった。後でお前のいる部屋に行って

調整しなけりゃあな。」

 『ああ、それはさっきまでここの連中がやってくれてな。おまえがやることなんて殆どネエゾ。』

 カミトの言葉に対してシラヌイがそう言うとカミトは手持ち無沙汰だなあと

思っていると扉からノックする音が聞こえた。

 「カミト、今大丈夫か?」

 それと同時にヴェルサリアがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「!ちょっと待ってくれ!!今着替えてるんだ!!?」

 そう言うとヴェルサリアはこう答えた。

 「そ、そうか!着替え終わったらもう一度言ってくれ!!」

 そう言うと少し離れていく音が聞こえた。

 『早く着替えろ。』

 「分かってるよ。」

 シラヌイの言葉に対してカミトはそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして着替えてからヴェルサリアが入室するとこう言いだした。

 「外に出るぞ。」

 「は?」

 何言ってんだと思っているとヴェルサリアはこう言った。

 「フィオナに聞いたんだが今エストはその呪いに縛られていて

身動きできんようだ。」

 「そっち方面は知り合いに頼むらしいから気分転換に外に出ないか?」

 気がまぎれるぞと言うとこう続けた。

 「それにこのラグナ・イースには〈神儀院〉の管理する古代図書館

【ビブリオン】がある。」

 「ビブリオン?」

 何だそれはと聞くとヴェルサリアはこう言った。

 「聖域に展示されている図書館は学院の封印図書館にも展示されていない

遺物級の資料が数多く秘蔵されている。」

 「エストは古代の聖剣に封印されていとしたら?」

 ヴェルサリアがそう聞くとシラヌイがこう答えた。

 『そうか!アイツは元々〈デモン・スレイヤー〉系の精霊だったから!!』

 「・・・エストに関して何か記述されていることがある・・・

そう言う事だな!!」

 カミトはそう言いながらヨッシャと声を荒げた。

 微かにだが希望が見えたことにカミトはやっと笑うとヴェルサリアは

こう続けた。

 「それじゃあその・・・カミト?」

 「?」

 「ここは・・・その・・・だな・・・/////」

 ヴェルサリアは何やら指を絡ませながら何か言いかけると後ろから・・・

声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・何してるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 「「!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 二人はそれを聞いて驚きながら後ろを見るとそこにいたのは・・・。

 

 

 

 

 

 「「レオノーラ!?」」

 「ええ、いましたよ。」

 レオノーラがそう言うと腰に差している短剣型ソードデバイスの

メイルストームがこう言った。

 ≪申し訳ありません。何せ聞き耳立てていたらしくて.≫

 そう謝りながら言っていた。

 そしてレオノーラがこう言った。

 「其れでしたら私も御同行しても・・・良いですよね?」

 手は多いほうが良いですしねと・・・少しどすの効いた声で言った。

 それを聞いて二人は・・・まあヴェルサリアはいやいやながら・・・了承した。

 

 

 

 

 

 

 制服に着たカミトを連れて3人は港に来ていた。

 聖域にある古代図書館はここから少し離れていて通り道なのだが周辺では簡素な木造の建物が並び立ち、商店街のような賑わいを見せていた。

 何せブレイドダンスを見るために来た観覧者や出場者をねぎらう為に飲食施設や遊興施設が所狭しと並び立っていた。

 そしてその1角に・・・ロロット達も店を構えていた。

 然も・・・水着店。

 「お前ら何やってんだ?」

 カミトがそう聞く中でロロットがこう言った。

 「ああ、カミト様起きられたんですね。」

 「まあ・・・あそこにいたところでさ・・・エストが帰ってくるわけ

じゃあ・・・ないからな。」

 カミトは少し暗い表情でそう言うとロロットもそうですかとそう答えた。

 あまり深く聞いてこなかったのでカミトは安心している中何してるんだと聞くとロロットはこう答えた。

 「ああ、本来でしたらマギアルカ様もいる予定でしたが・・・その・・」

 「?」

 「如何やら他国において機竜の事で色々と取引や資金援助、軍創設における

教官についてなどで話し合いに駆り出されているらしくてそちらに

出ずっぱりのようです。」

 「・・・成程な。」

 カミトはそれを聞いて納得した。

 機竜の存在は他国からすればとんでもないくらいに価値があるのだ。

 精霊に頼らずに然も安定した性能と、何よりも・・・男も使えるという

利点を考えればと思うとはははとカミトは乾いた笑いをした。

 するとロロットがこう言った。

 「そう言えば皆さんは何か御用でも?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、エストの手掛かりを探すために古代図書館にな。」

 そう言って向こうにある建物に指さすとロロットも承知してこう言った。

 「其れでしたら何か・・・収穫がある事を祈ってます。」

 そう言って別れた後でしばらく歩いていると・・・ある店を見た。

 「あれは・・・『ラ・パルフェ』じゃないか?」

 ヴェルサリアがそう言いながらその喫茶店を指さすとレオノーラもこう言った。

 「ああ、帝国で有名なお店でしたよね・・・あそこのケーキって噂じゃあ

結構美味しいって話ですよ。」

 レオノーラはそう言いながら涎を垂らしていた。

 するとヴェルサリアがこう言った。

 「カミト、〈神儀院〉から聞いた演目について話したいからあそこで話すぞ!」

 「お・・・おお。」

 カミトはそれを聞いてそう答えると2人によって連れて行かれた。




 さてさて・・・次回は果たして?


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甘いものは別腹

 甘い物食べて元気回復だ---!!


「へえ・・・中々落ち着いた雰囲気じゃねえか?」

 カミトはそう言いながら『ラ・パルフェ』の内装を見ていた。

 自然木の曲線を使った天井の梁。

 木のぬくもり感じれる佇まいはカミトの好みに合うのだ。

 『けどよお、帝都で人気って言うからもう少しド派手だと思ってたがな。』

 シラヌイがそう言うとヴェルサリアがこう言った。

 「ブレイドダンスの開催中限定の店舗だからな。そんなに金をかける訳は

ないな。」

 《それにここは元来は人が入れぬところだからな。金を考えるならばこう言うのがうってつけって訳だな。》

 ヴェルサリアの言葉にカオスブレイカーがそう付け足した。

 「それでは何か頼みましょうか?」

 [そうですね、カミトさんが目覚めたことですし]

 そしてレオノーラとメイルストームもそう言うとカウンター席に着くや否や

カミトは二人に向けてこう聞いた。

 「そう云やあ俺、手持ちがそんなに」

 そう言いかけるが二人がこう言った。

 「大丈夫だ、代表選手には無料提供されるらしいぞ。」

 「大方その分は上層部が払うかもですけどね。」

 ヴェルサリアとレオノーラはそう言ってカミトは内心ほっとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この桃のタルトは美味しそうだな、いや、このレモンのシャーベットに

ミルクムースも捨てがたい」

 「こっちの木苺のシュークリームも美味しそうですよ!!」

 ヴェルサリアとレオノーラはお互い美味しそうなものをピックアップしているとカミトはと聞かれこう答えた。

 「な、まあ・・・このスコーン」

 「「偶には贅沢しろ(して下さい)」」

 「・・・はい。」

 そう言われたのでカミトは取り合えずと言ってアップルパイ

(メロン味のアイスクリーム乗せ)を頼んだ。

 そして給仕の女性を呼んで今のを注文した。

 「それと茶葉はそうだな・・・紅茶のローレンフロスト産を頼む。」

 「畏まりました。」

 そう言って離れていくのを見届けた2人はカミトに向けて演目についてを

説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「奉納する剣舞の演目は・・・・・〈嵐の如き乱舞(テンペスト)〉だ。」

 「〈嵐の如き乱舞(テンペスト)〉か・・・。」

 「最近行われたのは百数十年前になりますが今の我々となるとですね・・・」

 カミトはヴェルサリアから聞いた演目を聞いて顔を曇らせるとレオノーラも

同じであった。

 『どんなルール設定なんだ?』

 シラヌイがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「代表選手達チームがチーム毎に広大な聖域のフィールドのどこかに転送されてそこで何日間か戦いあうルールだ。」

 「これには個人の戦闘技能だけではなく戦術的レベルを超えた長期的な戦略とチームの総合力が問われた試合方式だ。」

 カミトとヴェルサリアはそう説明するとシラヌイはこう答えた。

 『ようは、バトルロワイアルって事だな。』

 《然もそこでは罠を張ろうが何しようが勝手気儘という事でもある。》

 [カミトさんがエストさんを使えないとなればこれは・・・厳しい戦いに

なりそうですね。]

 それに続いてカオスブレイカー、メイルストームもそう言うと確かにと

思っていた。

 チームワークとして言うならば数週間前に集まっていることから不安要素が

数多くおまけに今のカミトは精霊が使えないのだ。

 個人能力は高いが総合的とならば名と思っているとヴェルサリアは

こう提案した。

 「まあ、正直な話機竜を使うという選択肢もなくはないがそれを各国の上層部が納得するかどうかだな。」

 「そうですね・・・機竜は精霊ではありませんからね。」

 「おまけに昨日の戦いでどういうのかはっきりされてますから今更話を

濁すことは出来なさそうですしねえ。」

 ヴェルサリアのある意味ありそうな提案に対してカミトとレオノーラは

頭を悩ませていた。

 まあ、後はマギアルカ頼みだなと思って持ってきた食べ物を食べてから

考えようと決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてフィオナの方では・・・。

 「お願いヨ!レイハ様に謁見を」

 「貴方もしつこいですね。お引き取り下さい、〈神儀院〉は俗世に

堕ちたものをには決して門を開きません。ましてやレイハ様との謁見など、

許される筈がないでしょう。」

 フィオナは現在〈神儀院〉の姫巫女達が修行する場所の門の前で年かさの

祭殿長に向けて申し込むが当の本人はフィオナを険のある目つきで見下し、

侮辱していた。

 その理由は・・・まあ、本人は見当が付いていた。

 「(ああもう、この頭が固い陰湿婆が!!)」

 フィオナはそう思いながらこう考えていた。

 「(大方私が精霊契約の力を失って〈神儀院〉の顔に

泥を塗ったからでしょうけどどっちが俗世に穢れたよ!?)」

 勿論全員とまではいかないが長い歴史の中で老朽化して形骸化した

〈神儀院〉と言う組織をそう思っていると立ち去る前にこう言った。

 「は!どっちが俗世まみれよ!!自分のメンツの事しか考えない強欲共が!!」

 「!!何ですって!?」

 「堕ちるところまで堕ちちまえ!!」

 そう言ってふんすかと言いながら出て行く前に祭殿長の顔を見て・・・

少し気持ちがすっきりしたのだ。

 何せ・・・。

 「(あの陰湿婆があんな怒り狂うなんて得したわ♪)」

 ルンルン気分で帰る最中に・・・声をかけられた。

 「おうおう、中々面白い事を言う娘じゃのう?」

 「マギアルカ様!!」

 マギアルカが馬車の前でそう言うと乗れと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで・・・どうするんじゃこれから?」

 マギアルカはフィオナに向けてそう聞いた。

 「まさかカミトに機竜を使わせるのか?正直な話じゃが今回の戦闘で

使わせるなと他国からの進言をお前さんの親父殿から言われとるのじゃ。」

 「然も破るようなら儂らを殺すというお触れ付きじゃしな。」

 「・・・あのクソ親父!そこまでして面子重視かっての・・・!!」

 フィオナはそれを聞いて本格的に親子の縁を斬りたいと心から願っていると

マギアルカがこう言った。

 「まあ、只ではくたばってやらんがのう。それでお前さんこれから

どうするのじゃ?」

 そう聞くとフィオナは悪戯っぽい笑みを浮かべてこう言った。

 「『押しても駄目なら引いて見よ、それでも駄目なら搦め手』を使うわ♡」

 そう言うとマギアルカも悪戯っぽい笑みを浮かべてこう聞いた。

 「何が欲しいのじゃ?」

 「はい。それはですね」

 そう言いながら2人はその計画について話し合った。




 あれ、フィオナなんか・・・逞しくなったな。


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図書館の中では静かに。

 本を読む時は静かに読もうね。


あの後カミト達は古代図書館に着き、司書の案内で地下の封印書庫を訪れた。

 カミトに施された呪術は第2位でもあるフィオナですら解呪することが

出来ない代物だ。

 だとするならば一般の文献ではなく『蛇の道は蛇』と言うかの様に

封印書庫におさめられている禁書が妥当であると考えて探す事にした。

 これもブレイドダンスの出場者であるからこそ出来る特権と言えよう。

 だがまあ・・・無理な事も無論ある。

 「『ランバール戦争時の呪装刻印』の資料・・・違う!!」

 「『禁じられた古代の儀式魔術』・・・・・・!!???」

 レオノーラがある本を開けるとそれを見て・・・顔を真っ赤にして驚いた。

 「レオノーラ!どうした?!何かあったのか!!」

 ヴェルサリアはそう言って横から覗き込むとそれを見て・・・。

 「////////////!!!!!!」

 顔を真っ赤にして後ずさりした。

 正直な話コレハ・・・生々しく間違いなくRー18の代物である。

 いやお前ジャストじゃねえかと思うが何せこいつも女学校出身であるために

カミト相手にも恥ずかしがるタイプなのだ。

 「「・・・・・」」

 お互いにそれを見て何やら気まずい空気が漂うがヴェルサリアが・・・

こう言ってしまった。

 「もう少し・・・読むか?」

 そう聞くとレオノーラはと言うと・・・。

 「//////・・・ハイ。」

 そう言ってページを捲ろうとすると・・・カオスブレイカーとメイルストームが

こう進言した。

 《貴様ら何しておる?》

 [早く他の本も読みませんか?]

 「「!!!!!」」

 それを聞いてレオノーラはその本を戻して・・・こう言った。

 「さてと・・・続けましょう」

 「あ・・・ああ。」

 更に気まずい様子でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃カミトはと言うと・・・。

 

 

 

 

 

 

 「ふう、これを全部調べるのは骨が折れそうだな。」

 『実際に全部調べていたら間違いなく祖父さんか死人だぜ。』

 シラヌイはカミトの言葉に対してそう続けた。

 カミトは現在テーブルの上一杯にある『デモン・スレイヤー』に関する

伝承を調べていた。

 その出典は『救世の聖女  アレイシア・イドリース』に関する伝承なのだがこれは後年により書き加えられたものでありその実像は不明とされている。

 おまけに聖剣についても書き加えられたりしたものが多くありその殆どが

眉唾物である。

 「・・・こんなもの読んでも手掛かり何てねえな。」

 『ああ、無駄足だったようだな。』

 そう言って本を持ち上げると1冊が落ちた。

 「あ、やば・・・・・うん?」

 カミトは落ちた1冊を注意深く見ていた。

 『どうしたんだカミト?』

 シラヌイは何があったんだと聞くとカミトはその古い1冊を持って何かを

見ていた。

 『そいつはもう読んだんだろう?』

 シラヌイがそう聞くとカミトはシラヌイのソードデバイスを持って

それの一部分に・・・突き刺した。

 『おいおいおい!何やってんだよ!?』

 シラヌイはそれに驚いてそう聞くと本の一部が取れて・・・1冊の薄い本が

出てきた。

 『・・・何じゃこりゃ?』

 「如何やらこいつは特殊な精霊魔術を仕込んでいたんだろうな。」

 『はあ!?それだったらこいつを見つけた精霊使いが気づくはずだろ!!??』

 シラヌイはそれを聞いて反論するがカミトはこう考えた。

 「多分と思うが誰かが後年になって態と置いたんだろうな。」

 そう言うとその本を読もうとするが・・・ある難解に初っ端から

突入してしまった。

 『・・・何だこの文字?』

 意味わかんねえなと言った。

 何せどう見ても象形文字が更に複雑化されているような文字であったのだ。

 「如何やら精霊語・・・然も結構大昔の奴のようだな。」

 『そんな大昔の言語知っている奴なんているのかねえ?』

 シラヌイがそう言うとカミトはある文字を見つけた。

 「いや、俺でも読める奴ならあったぞ。」 

 『本当か!?』

 そう聞くとそれは・・・昔だが人間語の奴であった。

 『・・・何だよ感心して損したぜ。』

 シラヌイがそう言うがはカミトはそれを読んだ。

 「ええと・・・『我、この記録をゾルディア王国にて綴る   

【アレイシア・イドリース】・・・・!!」

 それを読んでカミトは驚愕してしまった。

 もしこれが本物ならば彼女の直筆の記録書となるのだから。

 「・・・手がかりが見つかったぞ・・・!!」

 『ああ・・・それも極上のな・・・!!』

 カミトとシラヌイはそれを見て喜んでいた。

 これをフィオナに解読してもらえればエストを助けることが出来ると

踏んだのだから。

 『それでこいつだが・・・どうする?』

 シラヌイがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「なあ、こいつは封印書物に入るか・・・?」

 『はあ?・・・どちらかと言えば表のとんでもねえランクのある図書館に

寄贈されて・・・成程な。』

 シラヌイはカミトの考えることを読んでこう言った。

 『俺達が持っているのは只の古い本。』

 「つまり・・・。」

 そう言いながらカミトはそれを・・・服にちゃっかりと入れてこう言った。

 「『パクっても誰も気づかない!!』」

 そう言いながらカミトは本を元に戻す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 然しこの時彼らは知らなかった。

 これこそが『アレイシア・イドリース』の残したたった一つの真実。

 そしてこの真実はカミト自身の出生と・・・・伝説の真実を語る本である事を

未だ・・・誰も知らない。 




 彼らはまだ知らない。
 この本に書かれていることは・・・全てを根底から覆すものであることを。


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試合準備中。

 戦いの準備はいつも直前。


あの後カミトはこの本を皆に見せて報告しようと思いながら

本を片付けている中で・・・声をかけられた。

 「貴様がカゼハヤ・カミトか?」

 「?・・・!!・・・あんたは・・・」

 カミトは声をかけた人間に対して不味いと思っていた。

 何せ目の前にいるのは・・・嘗て戦った女性だからだ。

 前回ブレイドダンス順優勝者のルミナリス。

 聖精霊の使い手で苦戦した相手なのだから。

 「・・・こんな所で何してるんだ」

 「愚問も良い所だな、他国の情報収集に決まっておるだろう。」

 そう言われて後ろを見ると大量の本が所狭しと足元に置かれていた。

 「これはほんの一部だ。他のは今チームメイトが片付けている最中だ。」

 そう言いながらルミナリスは本を閉じるとこう言った。

 「だがここで探してもあの『装甲機竜』に関する資料は見当たらなかったがな。」

 「まあ・・・そうだろうな。」

 カミトはそれを聞いてそう答えた。

 何せ機竜は10年近く前に発掘された代物で確かに僅かとはいえ数百年にも

渡ってそれに似た物の報告は上がっている。

 「あれとの戦い、楽しみにしているぞ。それに私にはやらなければならない

ケジメを付けなければならないしな。」

 「・・・ケジメ?」

 カミトはそれを聞いて何だと思っているとルミナリスはこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 「『レン・アッシュベル』」

 「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「奴との再戦は私の悲願だ。ようやくその機会が訪れ上層部に

無理言ってまで出場したのだ。・・・絶対に勝つ。」

 そう言いながら彼女は立ち去って行くのを見て・・・シラヌイはこう言った。

 『・・・目の前にいるぞそいつ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてあの後カミト達は馬車に乗って古代図書館を後にして

結果報告をしている中でカミトは『アレイシア・イドリース』の記録書らしきものを見せて二人は・・・・ガクガクと震えてしまった。

 「お前ら大丈夫か!?」

 カミトはそう聞くが流石の2人もそれを触れてしまい何も言わずに

震えるだけであった。

 「・・・こりゃあ駄目だな。」

 カミトはそう言ってヴェルサリアの手にある記録書を取って外を見上げた。

 「・・・絶対に助けるからな。」

 そう言って夕焼けを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそのエストはと言うと・・・。

 底のない闇の中にある1隻の巨大な船の近くにいた。

 周りが黒の中でただ一つの白い白亜の船。

 その船の近くで剣精霊・・・エストはこう思っていた。

 

 

 

 

 

 「(カミト)」

 ただ一つ、自分が契約した契約者の名前だけを口ずさんでいた。

 「(カミト、私は貴方の剣。だからー)」

 そう呟いている中で・・・眩しい光が生まれた。

 「(・・・誰です?)」

 そう言って現れたのは・・・もう一人の自分。

 「(私は嘗てデモン・スレイヤーと・・・呼ばされた者。)」

 「(呼ばされた?)」

 「(そうです。)」

 もう一人のエストは目の前にいるエストに向けてこう聞いた。

 「(貴方の契約者は如何です?)」

 そしてエストはこう答えた。

 「(優しくて・・・楽しい人です。)」

 そしてこうも聞いた。

 「(貴方の仲間は・・・どういう人たちですか?)」

 そう聞くとエストはこう答えた。

 「(・・・レオノーラはきちんとしていますが可愛いですし・・・

ヴェルサリアはカミトの事を想ってますし・・・エリスも・・・

そうかなあ?・・・フィオナは・・・お姉さんみたいです。)」

 「(それにマギアルカにアルマ・・・皆良い人達です。)」

 それを聞いてもう一人のエストが・・・剣の切先を向けてこう言った。

 「(今のあなたは私の力の1割程度。ですが・・・)」

 「(もしこれを見ても貴方が周りにいる仲間を守りたいと思えるのならば・・・それで良いのなら・・・)」

 そう言って剣の切先から・・・膨大な情報が流れ込んだ。

 「(それこそ本当の記憶)」

 

 

 

 

 

 

 「(『アレイシア・イドリース』、私の最初の契約者にして・・・最後まで幸せだと言った少女の記録です。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕焼けが沈む前にカミトは港に戻って荷物整理をしていた。

 携帯食料や精霊鉱石のランタンなどサバイバルグッズを整理しているのだ。

 然も装備には重量制限がかけられているために厳選しなければいかなかった。

 「・・・3年前なら楽だったなア」

 『本当、重量制限って俺達旅行に行くわけじゃねえのにな。』

 カミトの言葉に対してシラヌイもそう言うと・・・扉の向こうから

声が聞こえた。

 「カミト、今大丈夫か?」

 「アルマ?」

 『何の用だろうな?』

 アルマの声を聴いてカミトとシラヌイは何だろうと思っているとアルマが

向こうからこう言った。

 「お姫様が来てるぜ、客室に行きな。」

 「・・・フィオナが?」

 何だろうと思って外にいるアルマに聞いて案内してもらうともう一人が

既に来ていた。

 「おお、カミト。遅かったのう」

 「マギアルカさん?・・・どうしたんだよ一体」

 カミトがそう聞くとマギアルカはこう答えた。

 「んまあ、色々とな。」

 「?」

 「おおそうじゃ、お前さんらの機竜についてじゃが当面の間は儂らと

〈神儀院〉が預けることと相まってしまった。」

 「そいつは・・・まあそうだろうな。」

 機竜は精霊じゃないからなと言うとシラヌイはつまらなさそうにこう言った。 

 『えええ・・・つまらねえ。』

 そう言うが聞こえてないマギアルカはこう続けた。

 「ソードデバイスを儂らが、〈神儀院〉が機体をそれぞれ離して

管理するからのう・・・すまぬ、儂の力不足で」

 そう言って謝ろうとするマギアルカを見てカミトはこう返した。

 「いやいやいや、大丈夫だよマギアルカさん!何とかするから!!」

 そういう中でフィオナに向けてこう聞いた。

 「それで・・・何か進展でもあったのか?」

 そう聞くとフィオナに向けてそう聞くとこう答えた。

 「カミト君の呪いを解呪出来る知り合いを見つけたの」

 「本当か!!」

 それを聞いてカミトは喜んだ。

 〈闇の烙印〉を破壊できる人間がいるとなれば偽のレン・アッシュベルに

鼻を明かせれると思っている中でフィオナはこう続けた。

 「だけど一つ・・・問題があってね。」 

 「問題?」

 「そう、彼女は身分の高い姫巫女でそう簡単に大祭殿の外に

連れ出せないから・・・カミト君には一つ協力して欲しいのよねえ・・・」

 そう言いながらニヤリと笑っているため何か嫌な予感がするなと

カミトは察知するがこう考えた。

 「(・・・これも・・・エストのためだと思えば・・・!!)」

 そしてこう言った。

 「分かった、協力するよ。」

 そう言うとフィオナににこやかに笑ってこう言った。

 「そう言ってくれると思って良かったわあ!!・・・服が無駄にならずに

済んだわ。」

 「服?」

 カミトがそう言うとフィオナは・・・とんでもない事を口走った。

 「カミト君!私と・・・女装してくれない!?」

 「・・・・・ハアアアアアアアアア!!」

 『ブは( ̄∇ ̄;)ハッハッハハッハはああっは‼!』

 シラヌイの笑い声とカミトの悲鳴が同時に船に・・・響いた。




 頑張れカミト!
 負けるなカミト!!
 きっと似合うから大丈夫!!!





 カミト「嬉しくねえよ!!」


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その責任はどれほどか?

 カミト・・・いい加減に諦めよう。
 カミト『ふざけろ!!」


 数分後・・・。

 「・・・・・」

 「・・・驚いたわ。」

 「うむ・・・儂もじゃ。」

 カミトの格好を見てフィオナとマギアルカがそう言って二人でこう呟いた。

 「「まさかここまで似合うなんて(のう)」」

 『ギャハっハハハハハああハッハ‼!』

 それを聞いてシラヌイが大爆笑する中でカミトはこう呟いた。

 「・・・いっそ殺してくれ。」

 そう項垂れあるしかなかった。

 目の前の鏡映っているのは・・・〈神儀院〉の儀礼服を身に纏った

カミトであった。

 長い黒髪の鬘

 頬には白粉。

 唇には薄い桜色の紅をさして・・・完全に少女になっていた。

 「想像以上の出来よ。顔立ちは変わっても流石ね。その格好で街に出たら

きっと皆が声をかけるわ。」

 「これは中々じゃのう、成程。確かにこれならあそこに

忍び込んでものう・・・」

 フィオナとマギアルカはカミトの女装の姿を見てそう言う中で

フィオナはこう言った。

 「・・・完成度が高すぎて皆に見せるか記録結晶に保存して売りさばきたいわね」

 「頼む!それだけは止めてくれ!!」

 カミトはそれを聞いて懇願するとシラヌイがこう言った。

 『あああ、面白かったけどよ。それで、これでどうするんだよおい?』

 シラヌイがそう聞くとカミトもこう聞いた。

 「そうだな、これでどうするんだよ?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「・・・聖域の大祭殿に侵入するのよ。」

 「・・・・・・ハアアアアアアアアア!!!」

 それを聞いてカミトは滅茶苦茶驚いてしまった。

 何せあそこはブレイドダンスの選手程度では入る事すら出来ないのだ。

 然もあそこには強力な守護精霊が番をしているのだがフィオナはこう続けた。

 「大丈夫よ、大祭殿ですら感知されていない秘密の通路を使って侵入するのよ。そしてそこにいる・・・恐らく間違いなくいる彼女に頼んで解呪してもらうわ。」

 そう言うとマギアルカはこう聞いた。

 「もしおらなければ?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「その点も大丈夫よ、あそこには呪術の資料が山ほどあるから

そこからアクションを試みるわ。」

 そう言いながらウインクするがどうにもなあと思いながらカミトは

連れられていくのであった。

 ・・・シラヌイはお留守番。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浮遊島の地下には何時造られたのかその目的ですら分からない大空洞がある。

 そこは最高位の姫巫女ですら立ち入ることが禁じられているのだが一人だけ・・そこにいた。

 真紅の仮面を付けた少女。 

 偽のレン・アッシュベルが。

 

 

 

 

 

 

 周囲が天然の洞窟であるのだがそれに対してここだけが明らかな人工物である。

 さして広くないこの部屋こそが・・・この聖域の〈真祭殿〉。

 地上にある大祭殿は只の見せかけの偽物である。

 体の奥底から腐っていくような腐臭がたちこむ中偽のレン・アッシュベルは

ある場所を見ていた。

 それは部屋の中央に安置されている黒い棺。

 石で出来ている石棺である。

 然しそこだけは・・・周囲から禍々しい気配を漂わせていた。

 すると背後から・・・少女の声が聞こえた。

 「探したわよ、『レン・アッシュベル』」

 暗闇から現れて来たのは・・・『ミュア・アレンスタール』であった。

 するとミュアがこう言った。

 「ドラッケンから報告ヨ、四人目がやっと到着したらしいわ。今リリィが迎えに行ってるわ。」

 そういう中で偽のレン・アッシュベルはこう言った。

 「やっと到着したか、あのお姫様には困ったものだ。」

 「ま、アンタの監視も兼ねているから別に後でも良いってことじゃない?」

 そういう中でミュアは偽のレン・アッシュベルに向けてこう聞いた。

 「ねえさ、アンタ・・・兄さまにナニカしたの?」

 そう言いながら腰に差しているソードデバイスを抜く構えを見せた。

 気に入らない、納得のいかない答えならば即座に殺すと忠告するかのように。

 すると偽のレン・アッシュベルはこう聞いた。

 「彼の力を解放したことが気に入らないのか?」

 そう聞くとミュアはこう答えた。

 「それは私とドラッケンの仕事ヨ。アンタの仕事じゃないわ。」

 「私もあれは本意ではなかった。だが、計画を急ぐ必要性が出てきたのでな。」

 「・・・ほら吹きも大概にしなさい。」

 そう言いながらミュアはソードデバイスを抜いてこう言った。

 「・・・・あんたの****が来れなかったことの逆恨みでしょ?」

 「・・・貴様・・・・!!」

 それを聞いて偽のレン・アッシュベルから炎が燃え上がるが

ミュアはこう続けた。

 「もし兄さまの体が耐えられなかった時はどうやってお詫びするのよ・・・!」

 「その時は彼に魔王の後継者としての資格がなかった」

 「資格何てアンタが決められるほど小さなものなのかしらね?」

 「何・・・・!!」

 そしてミュアはこう続けた。

 「私達『竜匪族』とそのスポンサーがあんたらアルファス教国と

『躯連盟』に協力するのはただ単に利害が一致していることのこれ1つ。」

 「あたしとリリィは『兄さまに本当の居場所がどこなのかを知ってもらって

また一緒に暮らす』と言う目的があるけどアンタには何があるのかしらねえ?」

 「・・・黙れ」

 偽のレン・アッシュベルはそう言うがミュアはこう続けた。

 「アンタの大切な****はこのブレイドダンスに出場できないどころか

深手を負って今も入院中」

 「・・・黙れ」

 「可哀そうにい、大切だからこそ手放しておきながら陰ながら

応援しないどころか家族をバラバラにしておきながら自分はのうのうと

然も前回優勝者の名前を使って皆からちやほやされているなんて

なんて滑稽なのよ。」

 「黙れ」

 「アンタに資格どうのこうの言う前に自分がどうなのよ。」

 「黙れ」

 「あんたにその名前の重みを本当に理解しているの」

 「黙れ!」

 「アンタは自分の行動に責任持てるの?」

 「黙れ!!」

 「あんたは自分の事しか何も考えていない」

 「黙れ!!!」

 「アンタは所詮責任から逃げてるだけの弱者よ」

 「黙れ---!!」

 偽のレン・アッシュベルは最終的に大声を上げてそう言うが

ミュアはこう言った。

 「もし兄さまが死んだらアンタの大切な****を仲間に犯させてから殺すからそう思いなさい。」

 生きていればだけどねと笑いながら消えていくのを見て

偽のレン・アッシュベルは・・・膝から崩れ落ちるかのように倒れると・・・

くぐもった声を出していた。

 そして仮面を少し取って目を隠すかのように・・・泣き始めた。

 「う・・・うう・・・・ううう」

 そして暫くすると・・・もう一度仮面を付けて偽のレン・アッシュベルは

再び黒い石棺に目を向けなおすとそこに向かって歩き出した。

 そして石棺の上に紐を通した勾玉と・・・懐から1枚の札を出した。

 勾玉はアストラル・ゼロの聖域でしか発掘出来ない国宝級の精霊鉱石、

『ブラッド・ストーン』である。

 そして偽のレン・アッシュベルは澄んだ声音で呪詛の言葉を紡ぎ出した。

 「冥府を統べる精霊の王よ、今ここに、闇の御子の御霊を呼び戻せー」

 仮面の奥から聞こえる精霊語は只の精霊語ではない。

 それは、《神儀院〉の中でも最上級でもある最高位の姫巫女のみが唱えることを許された・・・古代精霊語(ハイエンシェント)だった。

 すると・・・。

 ドクン

 黒い石棺から心臓のような音が聞こえた。

 それと同時に石棺も震えた。

 そしてそれと同時に真紅の『ブラッド・ストーン』が粉々に砕け散って

札が石棺の中に・・・取り込まれていった。

 すると石棺の蓋部分に・・・『35』の数字が表れたのだ。

 そして・・・。

 

 

 

 

 

 

 ズズ・・・ズ・・・ズズズズ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小刻みに震えていった石棺の蓋が開いてその隙間から・・・

何かが這い出てきた。

 それを見た偽のレン・アッシュベルは・・・こう言った。

 「初めまして先代の魔王の後継者・・・『ネペンテス・ロア』」

 「・・・我ら〈煉獄の使徒【チーム・インフェルノ】の5人目よ」

 そう言う偽のレン・アッシュベルの目に映っているのは・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8つ目の目を持つ・・・化け物であった。




 もう戻れないのならば・・・進むしか・・・ないのだ。


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その頃のカミトとフィオナ

 洞窟の中にいるカミトとフィオナです。


「まさか、聖堂の地下にこんな大空洞があったなんてな。」

 「ええ、この大空洞の存在を知っているのは私と・・・後一人だけなの。」

 カミトとフィオナは精霊鉱石のランタンを持ちながら地下の大空洞に

入りながらそう言うとフィオナの言葉を聞いて誰なんだろうと思っていると

こう聞いた。

 「其れって誰なんだ?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「〈神儀院〉の先輩・・・『カラミティ・クイーン 

《ルビア・エルステイン》』様よ」

 「・・・・なあ!!」

 カミトはそれを聞いて思わず声を上げてしまった。

 何せ彼女はここにはいないが『クレア・ルージュ』の実の姉であると同時に

オルデシアの火を一年間も使えなくさせた張本人なのだから。

 そしてフィオナはこう続けた。

 「彼女とは一度風の精霊王の儀式奉納で一度ここに来た時にこの場所を

案内してくれたのよ。」

 「・・・けど」

 「けど?」

 「最高位の姫巫女さえ立ち入ることを禁じられた場所なのに何でこの洞窟を知っていたのかは分からないけど」

 そう言うと・・・カミトは何かに気づいてこう言った。

 「フィオナ、静かに!」

 「どうしたの!?」

 フィオナはどうしたのかと聞くとカミトはこう答えた。

 「・・・近くに誰かいる」

 「そんな!?だってこの場所を知っているのはもう私・・・・!!」

 フィオナは何かに気づいたかのような表情をするとカミトはこう続けた。

 「取敢えず黙ってろ!」

 そう言ってカミトはフィオナの口を手で塞いでその声を聴いた。

 --もし・・・の体が耐えられなかった時はどうやってお詫びするのよ・・・

 --の時は彼に・・の後継者としての資格がなかった

 洞窟の中で反響する声。

 それにより距離がどれくらい離れているのか分からないが正体は分かった。

 「(一人は・・・ミュアだな。それともう一人は・・・まさか!)」

 カミトはもしかしてと思って聞いている中で・・・殺気が辺りに響いた。

 --黙れ---!!

 「「!!!!!」」

 それと同時に彼女の殺気を感じてカミトはこう言った。

 「フィオナ!ここは一度通り過ぎるぞ!」

 「え・・・ええ!!」

 そう言って二人は離れていった。

 

 

 

 

 

 そしてそこから猛ダッシュで離れたカミトはそう言えばと思ってこう聞いた。

 「そう言えばおれ、聖女アレイシアの夢を見たんだ。」

 「え・・・どんな夢なの?」

 カミトの言葉を聞いてフィオナはそれを聞いた。

 内容的に見れば普遍的な夢なのだがそれを聞くとフィオナはこう答えた。

 「気になるわね、男の人もそうだけど問題は聖女の腕に抱かれている子供。何かあるのかしら?」

 そういう中でフィオナはもしかしたらと思ってこう聞いた。

 「ねえ、カミト君?」

 「?」

 「もしかしたら・・・と言うか私も体験したんだけど多分・・・エストの意識と混濁してるんだと思うの。」

 「・・・どういう事だ?」

 カミトがそう聞くとフィオナはこう答えた。

 「精霊使いと契約精霊は、夢の中で意識を共有して繋がることがあるのよ。」

 「かく言う私もゲオルギウスが使えなくなった時に戦場を駆ける騎士の夢を

見たんだから」

 経験者が言うんだから間違いないわよとそう言った。

 例え契約精霊の力を失っているとしても繋がりが断ち切られなければ大丈夫だとそう言った。

 「だとするとあれはまさか・・・エストの記憶か?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「正確に言えばカミト君の記憶とエストの記憶が混ざり合って出来た

イメージって言う事だろうけどね?」

 「けど俺には両親の記憶何て無いぞ。」

 カミトはフィオナに向けてそう言った。

 物心つく頃には既に《教団》にいたことから親などいないと思っている中で

そう言うとフィオナはこう答えた。

 「多分だけどまだ幼いカミト君の深層意識における記憶かまたは・・・そう言う心理的欲求から来ているんじゃないの?」

 「俺の・・・心理的?」

 「そ、カミト君がそう言うって事は心のどこかでこう思ってんじゃないの?」

 「『親の愛情が欲しい』って言う想いが。」

 「親の・・・愛情」

 「それが夢となって現れたって言う事もあるんじゃないの?」

 そういう中でカミトはこう思っていた。

 「(俺のそう言う想いでああいう夢が出来るって本当だろうか?けどもしそれが本当だとするなら俺の願いは・・・・)」

 一体何なんだとそう思った。

 最初は嘗ての相棒であるレスティアを見つけたいというその願いであった。

 然し彼女は今偽のレン・アッシュベルと手を組んで何かをしようとしている。

 それが何なのかは偽のレン・アッシュベルに問い詰めるしかないなと思っており改めて自身の願いが何なのかを考えてしまっているとカミトはこう聞いた。

 「それにしても何で俺にここまでするんだ?」

 フィオナに向けてそう聞くとフィオナはこう答えた。

 「そうね・・・強いて言うなら・・・『恩返し』かな?」

 「恩返し?」

 何じゃそれはと思っているとフィオナはこう続けた。

 「知っていると思うけど私は本来ならばルビア様の後継者だったんだけどさ、

契約精霊の力を失って周りからは『ロスト・クイーン』何て呼ばれてさ、

〈神儀院〉や貴族、城の人間、果ては家族ですら失望と差別を受けていたわ。」

 「・・・・そうか。」

 「けどさ・・・」

 「?」

 「3年前にカミト君が使った剣舞が私を勇気づけてくれたの。」

 「だからこれはその恩返しって奴ヨ。」

 そう言いながらフィオナはにこやかにそう言うとこう続けた。

 「これで返せれ程安くはないけどそれでも少しずつ少しずつ貴方に

返したいのよ。」

 カミトに向けてそう言う中でそれにと言ってこう続けた。

 「《親の愛情》を欲したいと思うほどの家族だったら会いたいだろうから

私の願いを使って。」

 「!!・・・良いのかよ!?だってそれは」

 「ああ、大丈夫よ。私の願いは

《契約精霊をもう一度使えるようにしてほしい》って言う願いだったんだけど

其れはもう叶ってるし今はそれよりも目標が出来たしね。」

 そう言いながらフィオナは舌を出してそう言うとカミトはああなと思っていた。

 「(多分マギアルカからすれば『中々じゃのう』と言いそうだなア。)」

 そう思っている中でフィオナはこう言った。

 「もうすぐ出口よ」

 フィオナはカミトに向けてそう言った。




 家族の愛って本当に欲しい人間からすれば・・・何物にも代えがたい
宝物なんです。


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会うのは精霊・・・姫!?

 いやアンタ・・・合う人間くらい・・・ちゃんと伝えよう。


 「カミト君、ちょっと肩車してくれるかしら?」

 「良いのかよ?それやるって事はよ」

 「あら、それなら貴方が馬みたいな体勢になってやれば良いじゃない?」

 「其れが良いな。」

 カミトとフィオナはお互いそう言いながらカミトは四つん這いになってフィオナを支えることにした。

 そしてフィオナはカミトを踏みつけながら細かい精霊語が彫られた石板が

嵌めこまれておりそれに向けて小さく呪文を唱えると石板に彫られている

精霊語が青白く輝いたと思ったら石板が中心から真っ二つに割れてそこから・・・

月明かりが差し込んだ。

 外は既に夜になっており広大な庭園には炎が焚かれていた。

 「・・・大丈夫、外には誰もいないわ。」

 「良し、行くぞ。」

 カミトとフィオナは這い上がって地上にある庭園に面した柱廊の陰に身を隠すと

カミトはフィオナに向けてこう聞いた。

 「なあ、もしだけどよ。正体がばれたらここを守るガーディアン全員と戦って

逃げるのか?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「堂々としていれば大丈夫よ。それにその時は・・・」

 そう言いながらフィオナは背中から・・・ソードデバイスを抜いてこう言った。

 「これを使って逃げれば良いんだから。」

 「・・・何時の間に。」

 カミトはそれを見て呆れているとフィオナはそれを戻してこう言った。

 「さあ、行くわよ。」

 そう言って進むと・・・前方から一人の姫巫女が歩いてきた。

 「・・・・!」

 それを見てカミトの表情が強張るが姫巫女は尚も近づいて・・・

すれ違う寸前に二人の横ですっと足を止めてこう聞いた。

 「・・・どちらへ?」

 そう聞くとフィオナはこう返した。

 「レイハ様の寝所へ。少し気分がすぐれないとのことでしたので」

 「・・・左様ですか。お疲れ様です」

 フィオナの言葉に対して姫巫女は一礼して去って行った。

 「・・・・ね、大丈夫だったでしょう?」

 フィオナがそう聞く中でカミトは冷や汗ダラダラでこう言った。

 「・・・流石本物のお姫様だぜ。度胸が違うな。」

 そういう中でカミトは心臓を抑えていた。

 もし発覚すれば良くても・・・いや、口にしないほうが良いだろう。

 「こっちよ。」

 「おお。」

 カミトはフィオナの先導について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして暫くすると長い廊下の最奥にある精緻な彫刻の施された・・・

他の部屋とは明らかに別物の扉が目に入った。

 縁を飾るように貴重な高純度な精霊鉱石が嵌めこまれてもいた。

 それを見てカミトはまさかと思いながらフィオナに向けてこう聞いた。

 「・・・なあ、フィオナ?・・・一応訊いても」

 「貴方が思っている通りよ。」

 「やっぱりか!?」

 カミトはそれを聞いて驚くがフィオナは肩を竦めてこう言った。

 「だって私以上に位の高い姫巫女って言ったら彼女達くらいしかいないわよ。」

 「本気なのか!?」

 「もう!男の子なんだから腹を括りなさい!!大丈夫よ勝算があるから

ここにいるんだから!!!」

 なかったら行かないわよと言ってフィオナは正式な謁見の儀に則って

扉を3回ほどノックした。

 そして暫くして・・・・壮麗な扉がゆっくりと開かれた。

 「ここが・・・」

 カミトはそう言いながら周りを見渡した。

 奥に向かって伸びる赤い絨毯。

 淡く輝く精霊鉱石の光。

 厳かに静謐に満ち足りた神聖な空間。

 そしてその最奥にある薄い御簾の向こうに、小柄な人影が見えた。

 「何用ですか?食事は不要と申したはずですが」

 「あら、久しぶりの再会で初めての言葉がそれって酷くない?レイハ??」

 フィオナはその言葉に対して間違いなく不謹慎だなと思うセリフを吐くと・・。

 「・・・・え?」

 少女はそれを聞いて慌てて御簾を上げて・・・ポカンと口を開けてこう言った。

 「・・・嘘!フィオナ先輩!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ紹介するわね、こちらは『レイハ・アルミナス』。焔の精霊姫で現在トップの内の一人ヨ。」

 「は・・・・初めまして。」

 レイハはそう言っておどおどした様子で挨拶するとフィオナはカミトに

向けてこう言った。

 「其れでこっちが・・・・」

 そう言ってカミトに向けて首を縦に振るとカミトも答えて鬘を取って化粧を

拭き取って正体を見せると・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・はうううう。」

 「ちょ!レイハ!?」

 危うく卒倒しかけたのでフィオナがフォローして意識を保たせた。

 「あわわわわわわわ・・・・男の人・・・・・」

 「おい、こいつで大丈夫なのか?」

 カミトは小声でそう聞くとフィオナはこう答えた。

 「まあ、見た目は小動物みたいだけどこう見えてもルビア様の後任を

務められる程だから実力は確かよ。」

 それを聞いてカミトはもう一度レイハを見た。

 綺麗に編み込まれた艶やかな黒髪。

 小動物のような可愛らしい瞳。

 艶やかな真紅の儀礼服を身に纏っていた。

 歳は聞いたところ未だ15歳だという事だがそれを差し引いても

精霊姫になれたのだから確かなのだろうと思っているとレイハはこう言った。

 「ご、ごご、ごめんなさい!私、お、・・・男の人とお話しするの

初めてなので・・・」

 「いや、って言うか済まない。いきなり押しかけてきて。」

 そういう中でフィオナはレイハに向けてこう聞いた。

 「ねえレイハ。2つ聞きたいんだけど良いかしら?」

 「・・・?」

 レイハは何だろうと思っているとフィオナはこう聞いた。

 「先ず一つは機竜の事なんだけど機体の保管を〈神儀院〉が担当するって

聞いたけどもしかして・・・あの祭殿長の横槍?」

 そう聞くとレイハはこう答えた。

 「ええとですね・・・本当でしたら各国が使用を許可してもよいと言ってたのですが『ブレイドダンスは精霊使いが精霊王達に奉納する儀式であるため

野蛮な機竜を使う事は精霊王達の反感を買う為におやめになるように』と

祭殿長自らが仰って・・・・。」

 「・・・あの頑固婆!!!!!」

 「ひぃい!!」

 フィオナの怒り心頭の言葉を聞いてレイハは驚きながら仕方なくカミトの背中の後ろに隠れるがフィオナの怒りは更にヒートアップしてこう言った。

 「何が世俗まみれよ!自分が真っ黒じゃない!!自分たちは襲われた時には

何もしてなかったくせに試合には口を出すわ機竜を保管って要はどうやって

破壊できるのかを考えてんじゃないだろうなア!!!畜生がアアアア!!!」

 最早キャラ崩壊の次元を超えているかのような状況になっているが

フィオナは(*´Д`)はあはあと息切れしながら座った後で深呼吸すると・・・

レイハに向けてこう聞いた。

 「・・・ねえレイハ?・・・ちょっといい?」

 「は・・・ハイなんでしょうか!?」

 レイハはフィオナの言葉を聞いて直立不動になってそう聞いた。

 流石にあれ程の怒りを見たのか恐怖しているとフィオナはレイハの目を見て

こう聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方の力で彼・・・カミト君に罹っている呪いの解呪をお願いしたいの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回はやっと解呪・・・かも?


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いざ解呪の時。

 やっとここまで来た。


「え・・・解呪って・・・そこにおられる殿方の・・・呪いを?」

 レイハはカミトの方に目を向けてそう聞くとカミトは床に手を付けて

頭を下げてそう頼んだ。

 「彼の呪いは私でも解呪することが出来なかったんだけれど火の精霊王の祝福を賜った貴方ならあらゆる穢れを滅却することが出来るんじゃないかと思って」

 「・・・確かに、〈断罪の浄火〉を使えば、灰に出来ない呪いなどない

でしょうが・・・」

 レイハはそう言いながらも躊躇っていた。

 幾ら昔の友人でもあるフィオナの頼みとはいえ〈精霊姫〉は本来は

公の立場にある存在。

 詰まるところが中立の存在である。

 精霊王から賜った力を私情で使う事など許される筈がないのだ。

 するとフィオナは・・・。

 「お願いヨ!レイハ・・・いえ、レイハ様!!」

 いきなり土下座してそう言うのだ。

 「ちょ・・・フィオナ様!」

 「フィオナお前何を!?」

 レイハとカミトはそれを見て驚きながらそう言うがフィオナはこう答えた。

 「今頼れるのは貴方だけなの!これで駄目ならもう後が無いの!!

だから・・・お願い・・・いえ、お願いいたしますレイハ様!!!」

 「俺からも頼みます!!」

 「えええええ・・・・」

 レイハはフィオナに続いて土下座するカミトを見て困ってしまった。

 そして暫くして・・・。

 「はああ・・・分かりました。」

 「「え?」」

 レイハが溜息交じりでそう言うので二人は何だと思っているとレイハは

こう答えた。

 「今回だけ特別ですよ。先輩の頼みであると同時に・・・ここまでされますと

流石にです。」

 降参ですと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから暫くして・・・。

 「・・・それではこれより儀式を始めます。」

 純白の儀式装束に着替えたレイハはそう言ってカミトの前に立って正座した。

 先ほどの様におどおどした少女とは180度違うまるで別人になった彼女を見て

カミトは確かに選ばれただけあるなあと思っていた。

 因みにフィオナは儀式の邪魔にならない様に部屋の隅の離れた場所で

見守っている。

 「宜しく頼む。・・・えっと・・・レイハ様」

 「レイハで宜しいですよカミト様。」

 レイハはカミトに向けてそう言うとカミトはこう聞いた。

 「怖くないのか?・・・その・・・男の体に触れるのは・・・」

 そう聞くとレイハはカミトに向けてこう答えた。

 「・・・正直ちょっとだけ怖いです。けど・・・。」

 「先輩があそこまでして頼むんですしそれに貴方は・・・。」

 「?」

 カミトはレイハの言葉を聞いて何だろうと思っているとレイハはこう答えた。

 「貴方は〈神儀院〉の人達が言うような人間じゃないって分かりますから。」

 「・・・そう・・・なのか?」

 「これでも私は精霊姫ですよ。人を見る目には自信があります。」

 そう言ってレイハは笑顔でそう答えたが・・・。

 カミトはそれを聞いて少し疑っていた。

 怖くない。

 それならば・・・幼少期に『シラヌイ』を使って幾多のも作戦、暗殺に参加し、幾多の人間の命をそれでこそボロ雑巾の様に潰してきた自分に対して

言う事ではないだろうな自虐的にこう思っていた。

 「(正直その目は当てにならないぜ。レイハ様。)」

 「さあ、上の服を脱いでください、カミト様」

 「あ、ああ・・・。」

 カミトはレイハの言葉を聞いてそう頷くと儀礼服の下に来ていた

装衣を脱いで上半身裸になった。

 胸の心臓に当たる部分に刻まれている〈闇の烙印〉がまるでどす黒い痣の様に残っていた。

 然しそれを見たレイハはと言うと・・・。

 「きゃ!す、凄い・・・!」

 「お、男の人の肌・・・は、初めて見ました・・・」

 「・・・そっち?」

 カミトはそれを聞いて呆然としてしまった。

 幾ら何でも親父と風呂に入ったことぐらいあるだろうがとツッコミたいと思うがまあ・・・父親は論外なんだろうなと思っている中でフィオナはこう言った。

 「どうせ結婚する時には上半身どころか全身見るんだけどね。」

 「お前そこ黙れ。」

 フィオナの言葉に対してカミトがそう言った。

 本当に前は姫巫女だったのかと思うとゾッとする人間だなと思った。

 その間にレイハは恐る恐ると言った様子でカミトの胸に手を触れると

興奮するかのようにこう言った。

 「・・・す、凄く固いんですね!!」

 「まあ・・・学院の訓練とマギアルカの特訓で鍛えてるからな。」

 「あれは確かにしんどいわよねえ。」

 フィオナはそう言って乾いた笑みを浮かべていた。

 その間に指が痣に触れるとカミトに疼くかのような鋭い痛みが走った。

 「!!」

 そしてレイハは静かに目を閉じると、厳かに精霊語の呪文を詠唱し始めた。

 それは〈火の精霊王〉に捧げる儀礼の言葉から始まった。

 「この世に遍く炎を司る至上の王。苛烈な処罰者にして偉大なる戦士よ」

 すると聖室の空気が変わり、レイハの髪が風に煽られたかのように

激しく舞いながら指先に蒼白い炎が灯った。

 「あらゆる罪を贖い、あらゆる穢れを滅ぼす〈断罪の浄火〉よ」

 語れるは最上級の古代精霊語。

 「あ・・・あぐう・・・」

 するとカミトの口から苦悶の声が洩れた。

 そして彼女の指先から放たれる蒼白い炎はカミトの全身を・・・燃やした。

 「クあアアアアアアアア!!」

 「カミト君!!」

 フィオナはそれを見て驚いた。

 然しそれでもレイハは続けた。

 「塵は塵に、灰は灰に!我が炎は闇を祓い、呪詛すら焼き尽くさん!!」

 それを言った次の瞬間に全ての炎が痣に集まり・・・爆裂した。

 「!!!!!!!!!!」

 カミトは声にもならない悲鳴を上げ途切れかけた意識の片隅で・・・右手が

僅かに疼くのを感じた。

 「(まさ・・か・・・エストの精霊刻印が?!)」

 それを目にした瞬間に・・・・。

 カミトの意識は闇の中に落ちていった。




 次回は闇の中に。


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夢の中と過去

 語られるは神話。
 見つけるは真実。


 「・・・ここは、・・・何処だ?」

 カミトがそう言って目覚めた場所は・・・アストラル・ゼロとは全く違う世界であった。

 紅い空。

 紅い鉱石が敷き詰められたかのような大地。

 紅い塔。

 何もかもが真っ赤な世界であった。

 「俺は確かレイハの魔術で<闇の刻印>を消させてもらおうとしてそれから・・・」

 そう言いながら進んでいくと・・・ある場所に着いた。

 そこは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 「これは一体?」

 

 

 

 

 

 そこは巨大な白亜の船が埋まっているところであった。

 「船?・・・にしちゃあ形がなんか違うしなア。」

 そう言いながらカミトは周りを見ていると・・・ある剣がその船の近くで

突き刺さっているのを見た。

 精霊語の銘が刻まれた美しい剣だ。

 その剣を見た途端にカミトの全身の細胞が一気に覚醒した。

 「エスト!!」

 カミトはそう直感で感じてそこに向かった。

 そしてその剣に手を触れようとすると・・・。

 「うわあ!?」

 いきなり大地から無数の壁が現れてカミトの行く手を遮った。

 「ああクソが!!」

 カミトはそれを登ろうとすると・・・。

 「・・・・!!」

 後ろから何か気配を感じて後ろを向くとそこにいたのは・・・。

 「・・・お前は誰だ。」

 全身が黒い槍を持った騎士がそこにいた。

 すると黒い騎士の姿が・・・消えた。

 「!!」

 カミトはそれを見て警戒すると・・・。

 「・・・・」

 「!!いつの間に!?」

 カミトの目の前にいた。

 そしてそのままカミトは・・・黒い騎士の持っていた槍に貫かれた。

 「・・・がはあ・・・!!」

 そしてそのまま・・・何かがノイズと共に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘗て世界は幾つもの小国が鎬を削り、戦いに暮れていた戦乱の世であった。

 そんな中である少女が名もなき村で慎ましく暮らしていた。

 輝く金髪が自慢の愛らしい顔立ちをした羊飼いの少女。

 彼女こそ後に聖女となる『アレイシア・イドリース』本人であった。

 彼女が14歳だったとき、山の中へ薪を拾いに来ていた際に見つけた

古い祠の中にある 1本の剣を見つけてそれを・・・抜いてしまったのだ。

 その瞬間に眩い光と共に剣精霊が現れた。

 「・・・貴方は誰?」

 そう聞くと剣精霊はこう答えた。

 「私は貴方の剣。契約者たる貴方に全てを捧げましょう。」

 そして彼女はこう聞いた。

 「貴方の名前は?」

 「私の真名は人間の言語では発音できませんが精霊語では

〈テルミヌス・エスト〉と」

 「じゃああなたの名前はエストね。」

 そう言いながら少女は剣精霊の頭を撫でると剣精霊はこう答えた。

 「勝手に言わないでくださいマスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレイシア・イドリースがこれまで誰も抜けなかった剣精霊を従えたという噂は国中に広がった。

 民衆は少女を救世主として祭り上げた。

 当時は精霊使いは血統で決まっていたために絶対数が少なく当時の人々は荒ぶる精霊に苦しめられていた。

 そんな中で少女は剣精霊を従えて各地の精霊を鎮め、討伐した。

 人々はあらゆる感情で彼女に接した。

 喜び、嬉しさ、妬み、恨み、怒り、下心。

 そんな色んな感情で接されても彼女は剣を取って戦い続けた。

 それが・・・自分の与えられた使命と思って。

 剣精霊を・・・友と呼び。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてとうとうある使命が下った。

 内容は・・・魔王討伐軍1400人と共に『魔王 スライマン』を討伐するという

任務であった。

 大国が幾度となく討伐軍を編成して向かうもその悉くが失敗した。

 生き残った兵士は口々にこう言ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『6体の鋼の精霊に全員がやられた!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を何人もが言うも上層部はそれを耳にもせずに何度も何度も無駄死にの死人を作ってしまった。

 そしてとうとう彼らはアレイシア・イドリースに託すこととなってしまった。

 未だ恋も何も知らない少女に・・・。

 「エスト、私は戦うわ。世界中の苦しんでいる人の為に」

 「はいマスター、私は貴方の剣。貴方の望むままに。」

 そう言って彼女はそこに向かうが・・・この時彼女は知らなかった。

 恋も、幸せも・・・その魔王から・・・全てを知ることになるなど

露とも思わず・・・彼女は兵士達と共に進んだ。

 眼前にある・・・6機の・・・神装機竜と・・・2体の・・・精霊王ですら

敵わない・・・精霊の存在を知らぬまま・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・今のは・・・・!?」

 カミトはその光景を見て何だと思っていると黒い騎士はカミトを

見降ろした後に・・・空を見上げた。

 カミトも空を見上げるとそこにいたのは・・・。

 

 

 ギャオォォォォォォォォ・・・・・!!

 

 

 

 「竜・・・精霊・・・か?」

 

 

 

 

 

 

 蒼い焔を身に纏った紅の竜が上空を我が物顔で飛翔していたのだ。

 そして黒い騎士はそこから・・・消え去ると誰かの声が聞こえた。

 ・・・お前が望めば何れ相棒は答える。

 「誰だ!?」

 ・・・お前は何れ知るだろう・・・。

 「何処にいる!?」

 ・・・自らの過去を。

 ・・・自らの出生と・・・その血に眠る秘密を。

 「誰だって聞いてるんだ!!」

 ・・・何れ分かる・・・何れ・・・な。

 カミトは何処だと思っていると目の前にいたのは・・・・。

 「・・・お前は」

 銀髪の・・・外套を着た青年と・・・。

 「・・・何だあれは・・・?」

 巨大な・・・全身に銃火器を身に纏った・・・精霊を見て・・・。

 

 

 

 

 

 

 カミトはもう一度気を失った。




 過去は明かされ、それは未来を照らす。


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夢の出来事

 夢は時に現実のものとなる。


「・・・君、カミト君!?」

 「・・・う・・・」

 夢から目を覚めたカミトがまず見たのは・・・心配するフィオナである。

 「カミト君、大丈夫なのよね!?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「・・・俺・・・どの位・・・気絶して・・・たんだ?」

 「ええと・・・ほんの数分って所ね?」

 カミトの言葉に対してフィオナはそう答えた。

 が、然し・・・・カミトにとってみればあれは数時間も経過しているような

感覚であった。

 すると隣にいたレイハが荒い息を吐きながらこう言った。

 「・・・カミト・・様の・・・〈闇の烙印〉・・・破壊・・・

成功・・・しまし・・・た。」

 「・・・本当に?」

 カミトはそれを聞いて訝し気にそう聞きながらカミトははだけた胸に手を

当ててみると・・・。

 「確かに・・・無くなってる。」

 確かに烙印は消えていたが・・・レイハはこう続けた。

 「ですが・・・カミト・・・様の・・・契約精霊は・・・未だ・・・。」

 そう言いながらカミトは右手の精霊刻印に目を落とした。

 あら程眩かった精霊刻印は今や何の反応もないのだ。

 「・・・エスト」

 カミトは失敗したのかと思っている中でレイハはカミトに向けてこう聞いた。

 「カミト・・・様・・・意識を・・・失って・・・いる・・・間に・・・何か・・見て・・・ませ・・ん・・・でした・・・か・・・?」

 レイハがそう聞くとカミトは夢で見たことを話した。

 アストラル・ゼロとは違う世界。

 そこにいた黒い騎士と蒼い焔を身に纏った紅の龍。

 恐らくエストの・・・『アレイシア・イドリース』と出会った時の情景。

 全てを話すとカミトはある本を懐から出してこう言った。

 「多分こいつが媒体になったんだろうと思うんだ。」

 それを見てフィオナはこう聞いた。

 「カミト君、それは何?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、本当なら直ぐに見せなきゃと思った奴なんだ。」

 そう言ってカミトはフィオナに本を渡してフィオナは

その最初のページを見て・・・驚愕した。

 「!!!!!!!」

 「あの・・・先輩・・・一体・・・何・・・が?」

 レイハもそれを聞いて見てみると・・・。

 「・・・・!!!!!!」

 同じく驚愕しながら後ずさってしまった。

 フィオナはその本を震えながらカミトに渡してこう聞いた。

 「ねえ・・・カミト君・・・これって・・・・何処で?」

 そう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、精霊魔術で他の本とくっついた感じで置かれてたんだ。」

 古代図書館でと言ってフィオナは・・・口を押えたまま驚いた。

 「「!!!!!!!」」

 無論レイハも同じであった。

 何せアレイシア・イドリース直筆とも言える本があるのだ。

 本来ならば古代図書館に何て置かずに〈神儀院〉が確実に保管しているほど

なのだから。

 そしてカミトは二人に向けてこう聞いた。

 「俺はこの通り精霊語が不得意だからお前らに解読を頼もうと思ってたんだ。」

 要は『餅は餅屋』とも言うように頼みこんだ。

 「え・・・えええええ・・・・。」

 それを聞いたフィオナは正直に言って・・・困惑していた。

 こんな歴史的書物を無断で解読していいのかよと思っているとレイハは

急いで手袋を出してこう言った。

 「それでしたら早速・・・・。」

 「レイハ!?」

 そう言った途端にレイハが床から崩れ落ちかけたのであおれをフィオナが

助けた。

 「もしかして貴方昨日精霊王の託宣の時の体力がまだ回復してないんじゃ!?」

 そう聞くとレイハはこう答えた。

 「ハハハハハ・・・私・・・体弱いですから。」

 ですがと言うとレイハはこう続けた。

 「『アレイシア・イドリース』の直筆の本を解読できるならば

これくらい・・・!!」

 そう言いながらレイハは起き上がると手袋を付けてこう言った。

 「それでは・・・いきます」

 そう言ってレイハはまずページ目を見開いた。

 「これは・・・高度な古代精霊語・・・それもかなり前の・・・。」

 そう言うとレイハはこう口ずさんだ。

 「・・・『私は負けた』・・・!!」

 「ええ!?」

 「どういう事だ!?」

 それを聞いてカミトとフィオナは驚いていた。

 何せアレイシア・イドリースが敗北した何て有り得ないと思ったからだ。

 然しレイハはこう続けた。

 「『6人の鋼の龍騎士に敗北した私は捕虜となった。』」

 「『私はこのまま魔王に全てを奪われるのだろうか?』」

 「鋼の・・・まさか!?」

 「ああ・・・恐らくな。」

 フィオナとカミトはその1節を読んで該当するものを思い出した。

 「竜騎士ってつまり・・・ドラグナイト?」

 「それが6人・・・アレイシア・イドリースが負ける程だとすればとんでもない連中だぞ。」

 「「そこから先は!?」」

 二人がそう聞くがレイハはこう答えた。

 「正直な所私程度では何とも・・・他の精霊姫の力を借りれば

もしかしたら・・・。」

 そう言った。

 古代精霊語は精霊姫といえども完璧に読めるとは言えない。

 すると扉の向こうから・・・足音が聞こえてきた。

 「!側使えが来ます!!」

 「「!!」」

 レイハの言葉を聞いてカミトとフィオナはすぐさまに退散しようとした。

 そしてカミトは本を取って退散しようとするとレイハがこう言った。

 「あ・・・あのお!!」

 「レイハ、この恩は忘れないぜ!!」

 カミトの言葉に対してレイハが言ったのは・・・これだ。

 「どうか・・・応援してます!!」

 それを聞いて二人はこう言った。

 「「今度は優勝者として!!」」

 そう言って二人は部屋から出て行った。




 そして陰謀と謎が・・・加速する。


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偽物と闇。

 偽のレン・アッシュベルと・・・彼女の会話です。


カミトとフィオナが大祭殿に潜入している頃、城館では上層部貴族だけの晩餐会が執り行われている中でその庭園にて偽のレン・アッシュベルが・・・。

 「いよいよ明日ね。レン・アッシュベル?」

 「ああ。」

 闇精霊レスティアと喋っていた。

 「カミトは貴方の試練に耐えたようね?」

 レスティアがそう聞くが偽のレン・アッシュベルは冷たくこう言い放った。

 「あの剣精霊が闇の力を抑え込んだのは想定外だが所詮は一時的にしかすぎぬ。

一度開いたゲートは二度と元には戻るまい。」

 それを聞いてレスティアはこう続けた。

 「彼が本当に闇に呑まれたら貴方の計画に支障が出るんじゃない?」

 然し偽のレン・アッシュベルはこう答えた。

 「あの男がその程度の器ならどのみちここで終わっている。」

 そしてレスティアはこう聞いた。

 「彼に仕える精霊姫は用意できるの?」

 「候補ならばあの中で言えば彼女が適格だ。」

 「・・・あのロストクイーン?」

 「そうだ。」

 「・・・そう。」

 如何やらフィオナを使って何かやらかそうとしているようであったがレスティアはそのまま姿を消した。

 そして偽のレン・アッシュベルも消えようかと思っていると・・・

声をかけられた。

 「今のは闇精霊だな?」

 「・・・盗み聞きとはルギア王国の聖霊騎士団にしては趣味が悪いな。

ルミナリス」

 声をかけたのはルミナリスであった。

 するとルミナリスはこう続けた。

 「既に感づいていたはずだと思っていたが・・・矢張り間違いないようだな。」

 「・・・何の事だ?」

 偽のレン・アッシュベルはルミナリスは何だと聞くとルミナリスはこう答えた。

 「貴様は『レン・アッシュベル』ではないな。」

 「・・・どういう意味だ。」

 そう聞くとルミナリスはこう続けた。

 「あいつと貴様とでは気配・・・いや、根本的に何かが違う。」

 だからと言ってルミナリスは自身の精霊魔術でもある剣を構えてこう言った。

 「一合し合って何なのかを・・・見極めて貰おう。」

 そう言うが偽のレン・アッシュベルはこう言った。

 「身の程を弁えるがいい。貴様如きにあれを使う価値はない。」

 「そうか・・・ならば!!」

 ルミナリスはそう言って・・・剣を振りかざした。

 そしてそのまま偽のレン・アッシュベルの頭を1直線に斬りこもうとするが・・・偽のレン・アッシュベルはこう言った。

 「良い動きだが・・・。」

 「剣で焔は斬れまい。」

 そう言いながら背後に1瞬で移動した。

 「!?」

 ルミナリスはそれを見て驚くがその刹那に・・その胸部に強烈な掌打が

撃ち込まれた。

 「が・・・はあ。」

 ルミナリスはその攻撃により体をくの字になって倒れこもうとすると

偽のレン・アッシュベルがルミナスに向けてこう言った。

 「魔王に騎士をぶつけてみるのも一興か。・・・こいつを使ってな。」

 偽のレン・アッシュベルはそう言いながら懐から・・・札のような物を出した。

 そして偽のレン・アッシュベルはルミナリスの胸元にそれを・・・

刺しこませた。

 「あ・・・ッグウ。」

 そしてそのままルミナリスは・・・激痛に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 「ガ・・・・アアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 「喜べ騎士ヨ。貴様に相応しい相手を教えてやる。」

 偽のレン・アッシュベルはそう言うが当の本人は聞いておらづそのまま

ルミナリスは失神した。

 右手の甲に・・・「№36」がボヤっと浮かび上がって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無数の屍が並ぶ丘の上でセイクリッド・クイーンでもある

アレイシア・イドリースは剣を大地に突き立てた。

 民衆の期待する肖像とは裏腹に彼女の純白の甲冑は血まみれになっており、

明るい笑顔はなりを潜め暗くなっていた。

 周りにあるのは魔王軍の屍であるのだがそれらは全て・・・雑兵に

過ぎなかった。

 部隊の話によれば鋼の兵器を身に纏った者たちがいたらしいがその人たちは

アレイシア・イドリースが助太刀する前に退散していることが殆どであった。

 然し戦闘の後に残っているのは・・・仲間の死体だけであった。

 更に言えば少女の敵は魔王軍だけではないのだ。

 幾つもの勝利と敗北を繰り返し時には仲間から策謀や裏切りなどにより

彼女の心は少しずつであるが壊れ始めていった。

 そんな中で繋ぎとめている人間・・・いや、剣精霊がいるからこそ戦えるのだ。

 「ねえ、エスト」

 「何でしょうか?マスター」

 エストが何ですかと聞くとアレイシア・イドリースはこう聞いた。

 「何時までも私の側にいてくれる?」

 そう、・・・嘗て見せた笑顔を見せるとエストはこう答えた。

 「私は貴方の剣。貴方の命尽きるその日まで貴方を守りましょう。」

 そう答えるとアレイシア・イドリースはこう言った。

 「ねえ、エスト。何時か魔王を倒してこの戦いが終わったら貴方は私の・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(あの時・・・アレイシア・イドリースは何を言おうとしたんだろう?)」

 闇の中でエストはそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 然し彼女はある事を忘れていた。

 どうしてアレイシア・イドリースは魔王に負けたのか?

 どうして歴史はそれを隠ぺいしたのか?

 そしてどうして・・・夢の中の一コマにある彼女の笑顔が・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あんなに満面の笑みを浮かべていたのかを・・・まだ知らない。




 誰かに見せる笑顔が何で・・・・。
 あんなに輝いているのだろう?


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ホールにおいて

 大祭殿ホールでの会話です。


カミト達は緊張と興奮に包みこまれた大祭殿のホールに来ていた。

 ホールに集まっているのは有力な王侯貴族、各国の精霊使い養成機関に所属する

姫巫女達がホールの下にいる代表メンバーを見ていた。

 観客の殆ど全員が高貴な身分であるために野次とかはないが

有名な精霊使いに対してはファンからの黄色い歓声が聞こえてきた。

 「さてと・・・それでは現状の把握と行こう。」

 その中でヴェルサリアがそういう中で要注意チームを見てこう言った。

 「先ず厄介なのが『神聖ルギア王国の聖霊騎士団のエースだな。」

 そう言って全員はルミナリスの方を見るがカミトはあれっと思っていた。

 「(何だアイツの気配が・・・違う?)」

 『ああ、それに何か憑りつかれているような感じがするしな』

 それを見ていたシラヌイもそう言うがヴェルサリアはこう続けた。

 「今のところ〈煉獄の使者(チーム・インフェルノ)〉を除けば厄介なのが

あいつらだな。」

 〈それとチーム・ワイヴァーンとチーム・ケルンノスは我らの戦力を

把握されておるからこやつらも要注意であるがな。〉

 ヴェルサリアとカオスブレイカーはそう言って見ているとレオノーラも

こう言った。

 「それとクイナ帝国にいる〈四神〉。彼女達は集団戦術に特化した

強豪チームであの白髪の女性『シャオ・フー』が扱う神獣精霊の〈白虎〉も

要注意ですね。」

 『メンバーが5人ですから恐らくあの中に中心人物がいるのでしょうね。』

 レオノーラの言葉に対してメイルストームもそう付け加えた。

 そしてフィオナはある方向を見てこう言った。

 「後はそうねえ・・・ここ数十年の間に神聖ルギア王国から独立した

新興国のロッソベル公国の〈破烈の師団〉のエース『ミラ・バゼット』は

今大会最年少の13歳らしいわ。データ不足の事もあって・・・っていうか

よく集められたわね学園長は」

 そう言いながらフィオナはある本を出した。

 手帳には敵の情報がびっしりと書き込まれていた。

 これは今日の昼頃に届いた学園長直筆の情報データの一部から抜き取った物だ。

 「一体どうやって調べたのか気になるけどねえ・・・。」

 「ああ、藪をつついたら斬り殺されそうだもんな。」

 フィオナとカミトはそう言って肩を透かした。

 そして大祭殿の入り口付近でざわめきが生まれた。

 「・・・ようやくお出ましか。」

 『重役出勤とは余裕何だろうな。』

 カミトの言葉に対してシラヌイは毒を吐きたそうな声色でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レン・アッシュベルが出た途端にざわめきは静寂に変わった。

 彼女の後ろには長い頭衣で全身を覆った四人の精霊使いを率いていた。

 その内2人を凝視した瞬間にその二人はカミトと目が合った。

 「・・・ミュアがいると思えば多分と思っていたがビンゴだったな。」

 『ああ、まさかミュアだけじゃなくて・・・リリィもいるとはなんつう

偶然何だか。』

 同窓会かよとシラヌイは冗談交じりでそう言っているが内心は

穏やかではなかった。

 嘗ては背中を預け、お互いに守りあったチームメイトだった。

 彼女たちと組んだカミトはまさに無敵であった。

 だからこそ・・・だからこそである。

 『(こんな血なまぐさい再会とは俺達は本当に死神に愛されてるよなあ。)』

 そう思っていた。

 三人目は目の醒めるような青い髪の少女であった。

 彼女の頭衣にはあちこちに金銀の豪奢な飾りをつけ、手には派手な図柄が

描かれた扇子を持っていた。

 『派手な奴だな。』

 シラヌイはそう言うがヴェルサリアはそれを見て驚きながらこう言った。

 「あれに描かれているのは・・・アルファス教国王家の・・・まさか

〈ダスク・ウイッチ〉の後継者と呼ばれる

〈魔精霊使い(デモン・キャスター)〉の『シェーラ・カーン』か!?」

 「はあ!?あの婆さんの後継者だって!!??」

 『オイオイまじかよあのバケモノの後継者ってどんだけだよ!!』

 シラヌイはそれを聞いてカミトと共に驚いていた。

 何せ魔精霊を使う人間なんてグレイワース以外に考えることすら

しなかったからだ。

 そして最後の一人は・・・。

 「・・・何だあいつは・・・」

 そう言うしかなかったのだ。

 何せ最後の一人は・・・全身を漆黒の甲冑で覆った黒騎士だ。

 然し夢で見た黒騎士とは違って・・・全身から嫌な気配を感じた。

 決してここにいてはならないという・・・そう言う印象と言うか・・・

存在のようである。

 「うぷ・・・気持ち悪い。」

 「フィオナさん!」

 如何やら感受性の高いフィオナはその黒騎士の神威を感じて吐き気を

催してしまいレオノーラがフィオナの前に立った。

 すると偽のレン・アッシュベルがカミトの方を見て向かうと・・・こう言った。

 「まさか〈闇の烙印〉を破壊できる者がいるとはな。」

 「ああ、フィオナの人脈って奴でな。」

 「だがあの烙印はあくまでもお前の中にある魔王を目覚めさせる

きっかけにすぎない。一度開いてしまったゲートは決して元には戻らず、

その証拠に契約精霊を失っている貴様程度では勝ち目など」

 「いい加減にしなさい。」

 そう言う・・・ミュアの姿があった。

 「ミュア」

 「ハアイ、兄さま。本当ならリリィと一緒に祝いたいところだけど

今は敵同士だからねえ。」

 そう言うとミュアは偽のレン・アッシュベルに向けてこう言った。

 「正直に言うけど・・・兄さまは強いわ。誰よりも強いって所

見せてあげてやるわよ。」

 「それは何時になることやら。」

 ミュアの言葉に対して偽のレン・アッシュベルがそう言うとミュアは

こう言った。

 「あら知ってる?そう言う人間って本当は凄く・・・弱いって

定番なのよねえ。」

 「・・・貴様」

 それを聞いて偽のレン・アッシュベルの殺気が放出された。

 『『『『『『!!!!!』』』』』

 全員が驚愕するが耐えているのは・・・ミュアとリリィ、そして・・・

カミトであった。

 すると大祭殿のホールからざわめきが聞こえた。

 それを聞いてミュアはこう言った。

 「そろそろ精霊姫達が来るわよ。さっさと準備しましょ?」

 そう言って離れる前に・・・リリィが頭衣を取ってこう言った。

 「久しぶりねカミト。」

 「リリィ」

 するとリリィはカミトの耳元に近づいてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方がいるべきところはそんな光り輝くところじゃないわ。」

 「私達と同じ・・・闇の中ヨ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミトはそれを聞いて目を見開くとリリィは離れてこう言った。

 「それじゃあねカミト。楽しみにしてるわ。」

 そう言ってミュアのいる方向に向かった。

 『・・・カミト』

 シラヌイはそれを聞いて・・・何も言えなかった。

 これまで多くの人間を殺めてきた人間が娑婆で暮らせるなど・・・本当に

出来ていたのかと思ってしまったからだ。




 次回はルール説明。


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ブレイドダンスのスタート

 戦いが・・・始まろうとしていた。


祭壇の上にレイハを加えた5人の精霊姫が姿を現すとルール説明をした。

 ①ブレイドダンスの舞台は浮遊島の北に広がる広大な森林地帯。

 ②フィールドは〈神儀院〉の所属する姫巫女達が総出で構築した封絶結界で

覆う為通常での脱出は不可能であるため各代表選手一人一人に対して精霊鉱石である〈魔石〉を分配しこれを奪われたりして1分以上体から離れると自動的に

大祭殿に転移される。

 ③各チーム毎にランダムに転送される。

 ④期間は1週間。

 ⑤その間に最も多く集めた4チームが精霊王の御前でブレイドダンスを

してもらう。

 ⑥例えチームの中に退場者がいたとしても一人生き残っていれば決勝に

全員進める。

 ⑦試合状況は一時も欠かさず大祭殿が保有する使役精霊がスクリーンに映す

(プライバシー関係は除く)

 ⑧禁則事項として精霊使いを殺すことを禁じる。

 「これは、ブレイドダンスは単なる武芸の試合ではなく清らかな姫巫女達における儀式神楽であるためその死によって穢すことは許されないため、

オルデシア帝国所属チーム『チーム・スカーレットナイツ』の『機竜』を

所持するものは速やかに召喚してここで保管されます。」

 レイハはそう言ってカミト達を見た。

 それを聞いたカミトはこう言った。

 「・・・成程な。」

 『面倒くさいな。』

 カミトとシラヌイはお互いそう言った。

 そしてカミト達は特別に祭殿に向かうとソードデバイスを抜いて詠唱して

機竜を召喚した。

 それを見た全員がおおっと声を出すと何やら他の精霊姫達が・・・

大型の鎖を持ってきた。

 すると祭壇長がこう説明した。

 「こちらは大型魔獣用の鎖でありその強度は魔獣の攻撃を物とも致しませぬ。」

 そう言いながら精霊姫達はシラヌイ達を雁字搦めにした。

 『やれやれだぜ。俺達は化け物かよ?』

 《ある意味間違ってはいないかもしれぬがな》

 〈まあ、こちらでレオノーラ達を応援いたしましょ。〉

 シラヌイ、カオスブレイカー、メイルストームはお互いそう言う中で

レイハはカミトに近づいてこう囁いた。

 「(申し訳ありませんカミト様、何分剣の方もと言う案も言われたのですが

万が一と言うマギアルカ様のお言葉で負けたらしく。)」

 「(成程な。)」

 カミトはそれを聞くと祭壇長は嫌嫌な顔でこう言った。

 「それでは剣の方を・・・、マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク様。」

 「うむ。」

 それを聞いてマギアルカは不遜な態度で壇上に向かうとアルマとロロットに

向けてこう言った。

 「管理はお主等に任す。神装機竜の方はアルマ、汎用機竜はロロットが・・・ちゃんと見ておけよ?」

 「「は!」」

 そう言った後に壇上に立って5人のソードデバイスを預かるとマギアルカは

こう言った。

 「お主等は今日、この栄えある場所に立っておる、故にただ一つ言おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「勝て!そして楽しめ!!以上!!!」

 「「「「「ハイ!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを聞いてマギアルカはソードデバイスを持って去って行った。

 そしてレイハ達精霊姫達は一斉にこう言った。

 『剣舞を舞う姫巫女に武運と加護を!』

 それが本船開始の合図であった。

 割れるような大歓声の中で精霊使い達は祭壇の上にある転送円に足を

踏み入れた。

 そんな中でカミトは全員に向けてこう言った。

 「皆、絶対優勝するぞ!」

 そう言うと。

 「勿論ね。」

 フィオナは悪戯な笑みを浮かべ。

 「無論だ。」

 ヴェルサリアは何時もの様に頷き。

 「ドラグニアの騎士の実力を見せてあげます!!」

 レオノーラは確かな覇気を醸し出し。

 「・・・うん。」

 エリスは何やら元気がなさそうにそう言った。

 そして今、四人の少女と一人の少年のブレイドダンスが・・・始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転送円から現れた一行がいるのは不気味に広がる森の中である。

 薄くかかった視界の中で遠くから鳥や獣の鳴き声が聞こえる。

 「森の中か・・・敵がいるとしたら待ち伏せだな。」

 カミトはそう言いながら武器を構えた。

 エストがいないという事実を隠すために予め持ってきた物なのだ。

 カミトは周りを見渡しているとフィオナがこう呟いた。

 「こう言う時に『ドレイク』の探索能力を使えば1発なんだけどねえ。」

 そう言う中でヴェルサリアはこう言った。

 「先ずは水源の確保と野営地の建設だな。速めにしておかない寒くて

凍えてしまいそうだ。」

 そう言いながらヴェルサリアは少し震えていた。

 如何やらここは風の精霊王の加護が弱いようなのかどうかわからないが

かなり寒い。

 「先ずは周辺の探索ですね。」

 レオノーラがそう言うとヴェルサリアが隊列の説明をした。

 「隊列の先頭は私とレオノーラ、フィオナが真ん中でエリスが護衛、

殿がカミトだ。」

 そう言うと全員がその通りの陣形になった。

 戦闘が苦手なフィオナを中心として戦闘能力が高いヴェルサリアとレオノーラが前衛としてカバーし、エリスとカミトは護衛として固めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どれくらい経った?」

 カミトがそう聞くとヴェルサリアがこう答えた。

 「恐らく半刻程も経っていないだろうな。」

 そう言っていた。

 「水辺が全然見当たりませんが一体どこにあるのでしょう?」

 「この浮遊島の大きさは小国並みだからそうそう簡単に見つかる事は

無いわよ。」

 レオノーラの言葉に対してフィオナはそう答えた。

 「早めに地図も作っておかんとな。」

 ヴェルサリアもそう言っている中で・・・フィオナはこう言った。

 「ちょっと・・・足が痛くなったわね。」

 未だ山歩きに慣れていないフィオナがそう言った。

 編入性であるため学院での野外訓練など受けたことがない為に体力が

一般人並なのだ。

 するとカミトがこう言った。

 「おぶってやろうか?」

 そう聞くとフィオナは笑いながらこう言った。

 「まだ大丈夫よ、けど本当に駄目だって思った時はお願いね。」

 そう言うと歩きを再開した。

 「・・・こう言う時にシラヌイがあると本当に助かるんだけどな。」

 そう呟くとレオノーラもこう続けた。

 「仕方ありませんよ。これは儀式神楽と言われてるんですから。」

 まあ一理ありますけどねと言うとヴェルサリアはこう続けた。

 「まあ・・・喧しいがいないといないで何やら寂しい感じがするな。」

 そう言っていた。

 確かにこう言う時にはシラヌイが何か冗談めいた言葉の一つや二つは言っているであろうからな。

 そう思っていると・・・カミトは足を止めてこう言った。

 「誰か・・・いるな。」

 「「「「!!!!」」」」

 それを聞いて全員が構えた。

 弦の糸が張り付けるような・・・沈黙とした時間。

 カミトは暗殺時代の感覚を思い出して気配を探っているとフィオナが

こう言った。

 「まさか・・・斥候かしら?」

 そう言うがエリスはまさかとこう言った。

 「いや、それでも・・・この序盤・・・からか?」

 そう言っているのを聞こえるとカミトは何かを見つけて・・・。

 「来るぞ!!」

 閃光が爆ぜた。




 初戦開始!


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初戦の勝利は次に生かされる。

 諸君!
 勝って兜の緒を締めよ!!


 「(くうう!目くらましかよ!)」

 カミトはそう毒づいていた。

 恐らくは予め地面に埋められていた精霊鉱石の爆雷なのであろう。

 古典的で威力が殆どないとは引き換えに不意打ちにおいては確実な

手段としている。

 それと同時に殺到してくる殺気に気が付いた。

 「(・・・下か!!)」

 そう思ってジャンプすると先ほどまでいた場所から・・・巨大な砂の腕が現れた。

 「(やっぱり伏兵!!)」

 そう考える中でも砂の腕はカミトに迫ってくると・・・。

 「カミト!!」

 ヴェルサリアがサイレント・フォートレスに搭載されている

二連式キャノン砲で砂の腕を破壊するとヴェルサリアはこう続けた。

 「そのまま上にいる術者を狙え!!」

 「感謝するぜ!!」

 カミトはヴェルサリアの言葉を聞いて承知するも・・。

 「--圧殺せよ、石獣精霊〈ガルグイユ〉!」

 頭上から石の魔物が落下してきたが・・・。

 「グリムゲルデ!!」

 「承知!」

 レオノーラが巨大な風を出現させてカミトをそこから無理やり遠ざけるも

カミト目掛けて突進してきたので・・・。

 「剣聖の騎士ヨ!わが友の盾となれ!!」

 フィオナが精霊を召喚してその攻撃を受け止めた。

 然しカミトはなぜ自分ばかりが狙われているのかと思っていると・・・

声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 「あいつは危険だ!契約精霊を使役出来ないうちに潰せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(何故それを!?)」

 知っているのだと思っていると・・・カミトの前後を挟むかのように精霊使いが現れた。

 一人は抜身のサーベルを手にした精霊使い。

 もう一人は弓を構えている。

 更に言えば砂の巨人も現れてきた。

 「とことん今日はモテルなおい!!」

 シラヌイがいれば間違いなくそう言うなと思いながらも考えていた。

 どうやれば良いのかを・・・。

 そして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・やってみる価値はあるな。」

 カミトはそう言って懐から・・・幾つかの武器を取り出した。

 「何をするか分からないが!!」

 サーベルを持った精霊使いがそう言って振るおうとすると・・・。

 

 

 

 

 

 

 「遅ェ!!」

 

 

 

 

 

 

 そう言って一瞬でサーベル使いに近づいて・・・ナイフで切りつけた。

 「!!」

 サーベル使いはそれをかすり傷で避けると・・・。

 「あれ・・・・?」

 体の平衡感覚が乱れてきたのだ。

 「!!一体何を」

 「言うかよ!!」

 カミトはそう言いながら木々の間を縫うように移動した。

 〈教導院〉で教わった高次立体移動。

 それらを利用して当たりの木々を使いながらこう考えていた。

 通常の精霊使いならばこの動きについてこれないのだ。

 ましてやカミトはその圧倒的な速度故に〈影縫い〉の固有名を

与えられているのだ。

 それが代表であったとしても見えないのだ。

 そして・・・。

 「ふん!」

 「がはあ・・・!!」

 弓精霊使いを一撃で失神させた。

 然し砂精霊は木々を全て破壊していった。

 恐らくはカミトの移動手段を封じるのが目的なのであろう。

 然し・・・。

 「そこかあ!!」

 ヴェルサリアの言葉と共に砲撃の音が聞こえ、砂精霊がはじけ飛んだ。

 然し砂精霊は再生しようとしている中でカミトは・・・砂精霊の鳩尾向けて

殴った。

 すると・・・砂精霊の体が崩れて砂の中から・・・一人の少女が失神した状態で現れるとヴェルサリアは成程と言ってこう続けた。

 「土関係の精霊使いは大体がどこかに隠れているからな。その中なら

怪しまれないだろうな。」

 そう言いながら倒れている少女達3人から魔石を奪うとカミトはこう聞いた。

 「なあ、お前ら・・・俺が精霊を使えないって誰から聞いた?」

 「!!」

 ヴェルサリアはそれを聞いて目を見開くと・・・彼女達はこう言った。

 「・・・貴様などに教えて堪るか。」

 そう答えるとカミトはこう続けた。

 「・・・レン・アッシュベルだな。」

 「・・・・・」

 少女はそれを聞いて顔をそっぽ向けるがカミトは成程なと言った。

 「それじゃあこいつは貰っておくぜ。」

 そう言ってカミトは離れようとすると霧が晴れてきた。

 「如何やらエリスが倒したようだな。」

 ヴェルサリアがそう言うとカミトに向けてこう聞いた。

 「カミト、エリスの事についてなんだが。」

 「?」

 「あいつ何だかお前の事について避けていると言うかなんと言うか・・・迷いを感じるのだ。」

 「あいつが?」

 「私もそれとなく聞いておくからお前も頼む。」

 「・・・分かった。」

 カミトはそう言って戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・夢なのだと間違いなく分かる。

 聖女が男性と仲睦まじく歩いているところを。

 子供たちが聖女と共に遊んでいるところを。

 そして何よりも・・・・。

 聖女と男性の左手の指に嵌められている・・・・綺麗な銀の指輪を付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・カミト、カミト。」

 「う・・・・ん?・・・ヴェルサリアか?」

 ヴェルサリアが揺らしてきたことによりカミトは目を覚ました。

 「食事の時間だ。早く起きないと無くなるぞ。」

 「ああ・・・分かった。」

 カミトはそう言いながら目をこすって起きた。

 カミト達が今いるのは緩やかに流れる渓流のすぐそばである。

 食料となれる魚があるし水は澄んでいて

(まあ人が来ないから当たり前であるが)丁度良いのだ。

 簡単なテントを作った後にカミトは夜の見張りの為に仮眠を取っていたのだ。

 こう言う時にはシラヌイがいれば起こしてくれるようなものなのだが。

 辺りはもうすっかり暗くなっており川の近くに行くと既に全員が準備していた。

 食事は魚の丸焼き。

    鍋の中には野菜たっぷりのリゾット。

 全員が食事をしている中でカミトについて全員で会議した。

 「・・・成程そう言う事ですか。」

 「厄介ね。」

 「・・・うむ。」

 上からレオノーラ、フィオナ、エリスの順番でそう考えていた。

 そうなると既に全チームが知っているはずだなと思っていると・・・

カミトはこう言った。

 「取敢えずは現状を維持して今後を考えよう。万が一の時には・・・

分かってるな。」

 カミトはそう言って全員に向けて言った。

 無論反対意見があるように思えるが代替え案がない以上何も言えないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後に女性陣は禊の為に川に向かったためカミトは岩陰に座り込んで

夜襲に備えていた。

 「・・・・。」

 ふっと息つくとカミトは右手にある精霊刻印と・・・持っている

アレイシア・イドリース直筆の本を見ていた。

 恐らくはこれを通してカミトは夢として見ているのであろう。

 アレイシア・イドリースの身に・・・何があったのかを。

 「・・・ま、夢だろうがな。」

 そうだろうなと決めつけていた。

 あのアレイシア・イドリースが男性と結婚していたなどと夢物語だろうなと

思おうとしていると・・・。

 「(・・・気配!)」

 気配を感じてカミトは戦闘態勢に入った。

 この野営地にはフィオナが張り巡らせた簡易的な結界が張られているため

何者かの侵入や魔獣に対して反応するのにそれがなかったとなると・・・。

 「何者だ。」

 そう言ってカミトは構えた。

 フィオナの結界は簡易的とはいえそれなりに丈夫だ。

 それが破られるとなると・・・相当な腕前だと思って覚悟しなければならないとそう思っていた。

 そして暫くして・・・。

 「そんなに怖い顔をしないでカミト。」

 「!!・・・・まさか・・・」

 カミトはその声を聴いてまさかと思っていると現れたのは・・・・。

 「久しぶりね、カミト」

 「・・・レスティア」

 嘗ての相棒、レスティアであった。




 次はレスティアとの会話です。


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再会と戦闘

 レスティアとの再会とルミナリスとの激闘です。


 「レスティア・・・」

 「はあい、カミト」

 レスティアはそう言ってカミトに向かって行くとカミトは少し離れてこう聞いた。

 「・・・何をしに来たんだ?」

 そう聞くとレスティアは・・・ちょっと拗ねたようにこう言った。

 「つれないわね、折角心配してあげたのに」

 そう言うとレスティアはカミトに向けてこう聞いた。

 「貴方らしくもない・・・というのは失敬ね。けど少し実力が

落ちてるんじゃない?」

 「誰かさんのおかげでな。」

 カミトはそう言いながらレスティアに目を向けるとこう聞いた。

 「・・・目的は何だ。」

 「まだ信じていないなんてちょっとショックだわ。」

 シラヌイのせいかしらと言うと本題を言った。

 「ねえカミト、私を使ってみない?」

 「!!」

 カミトはそれを聞いて目を見開くとレスティアは笑いながらこう言った。

 「別に驚くことではないわ。私は今でも貴方の契約精霊何だから。」

 「その割にはピンチになっても駆けつけてこなかったろうが。」

 今更何だよと思っているが内心は嬉しこんでいた。

 あの日からずっと願っていても来てくれなかったレスティアがやっと来てくれると思っているからだ。

 然しカミトは何かおかしいと思っている中でレスティアがこう言った。

 「但し条件があるわ。」

 「条件?」

 何だと思っているとレスティアは・・・とんでもない事を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの剣精霊の娘との契約を破棄すること。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを聞いてカミトは目を見開くがレスティアはカミトの耳元で囁くように

こう言った。

 「貴方が他の精霊と契約したことを、この私が嫉妬していないとでも

思ったの?」

 そう言うがカミトは・・・こう答えた。

 「悪いがそれは出来ない。」

 そう言うとカミトはこう続けた。

 「元々俺がブレイドダンスに出場したのはお前を取り戻すためだ。

それじゃあ本末転倒も良い所だしそれに・・・エストは俺の大切な相棒だ。」

 そう言うとレスティアは・・・寂しそうにこう言った。

 「そう、ならしょうがないわね。」

 そう言う中でレスティアはこう続けた。

 「気を付けて、彼女はあらゆる手段を使って貴方を追い詰めて

覚醒させようとしているわ。」

 「・・・あの偽のレン・アッシュベルがか?」

 そう聞くとレスティアはこう続けた。

 「何時でも待ってるわカミト。貴方が私を呼びさえすれば・・・・」

 「彼女が戻れなくなる前に倒してくれることを祈るわ。」

 「待ってくれレスティア!!それって一体」

 カミトはレスティアに向けてそう言うが・・・次の瞬間に爆発が起きた。

 「何だ!?」

 カミトは爆発が起きた方向を見てみるとそこにいたのは・・・。

 「・・・ルミナリス!?」

 ルミナリスが剣を持って現れるが何かおかしかった。

 そう・・・まるで・・・。

 「ソコニイタかァ・・・。」

 禍々しいナニカを放っているかのようであった。

 そしてカミトを見て・・・こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レン・アッシュベル---!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言いながらルミナリスは天に手を差し伸べると・・・何かが現れた。

 「・・・何だあれは‥‥」

 そう・・・現れたのは・・・・

 「・・・遺跡か?」

 巨大な建造物であった。

 何やら十字架のような建物が大量にあると思ったらそこから剣が現れた。

 そしてルミナリスの右手から・・・・「36」の数字が表れた。

 「あれはまさか!!」

 カミトはまさかと思っていると・・・ルミナリスは剣を振りかざして・・・。

 その一撃を穿った。

 そしてその場所が・・・大爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まさか敵襲か!?」

 ヴェルサリアは爆発音を聞いてそう言うと急いで着替え直していると・・・

フィオナがこう言った。

 「何か来るわよ!!」

 そう言った瞬間に・・・弓矢が襲い掛かった。

 全員がそれを避けるとそこから・・・。

 「聖ルギア王国の聖霊騎士団・・厄介な連中だな。」

 ヴェルサリアはそう言ってサイレント・フォートレスを展開すると・・・

影が周りを包んだ。

 「これは?!」

 ヴェルサリアはそう言うと一人がこう言った。

 「悪いがルミナリス様があいつを倒すまで付き合ってもらおう。」

 そう言うと残りのメンバーが・・・攻撃してきた。

 敵は3人だがフィオナは戦えないために実質足止めされているという

感じであろう。

 「カミト・・・!!」

 ヴェルサリアはそう言いながらも・・・戦うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レン・アッシュベル---!!」

 「何だこいつは!!」

 カミトはそう言いながらもルミナリスの剣戟を受け止めているが・・・何時もと違っていた。

 まるで狂暴性が増した魔獣のようだと思っている中でカミトは両手にある短剣を構えていた。

 神威を集中して強度を増し、更に毒を使っているため当たればと

思っているが・・・そうはいかなかった。

 ガギィインと・・・短剣が・・・弾かれたのだ。

 「!!!!」

 カミトは何故と思っていると・・・ある事に気づいた。

 よく見れば彼女の周りには見えない・・・膜が張られていた。

 あれが恐らく防御壁の役目を果たしているのであろうと思っている中で

ルミナリスはカミトを見て・・・こう言った。

 「コンナモノなのかァ!!レン・アッシュベル---!!」

 そう言いながらルミナリスは剣をあの遺跡に向けると・・・光が放たれた。

 「うおわあ!!」

 カミトはあまりの光に目を瞑ってしまうがルミナリスはこう言った。

 「〈破滅の守護聖域『サンテ・ガル・ルミナス』〉!!」

 その言葉と同時に遺跡から・・・強い衝撃波が襲い掛かった。

 「!!!!」

 カミトは堪らずに吹き飛ばされてしまい何処かの木にぶつかった。

 「・・・ウグウあ・・・・。」

 カミトはそれと同時に自信の右手の違和感にヤバいと思ってしまった。

 「(・・・腕が・・・)」

 完全に折れているなと思っているとルミナリスは近づいてこう言った。

 「このテイド・・・なのかあ!!」

 そう言いながらカミトのすぐそこまで走りながら構えて・・・そして・・・。

 「終わりだあああ!!!」

 振りかざされて・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かが見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎に包まれた街が。

 家が。

 城が・・・。

 人間が・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「******様!このままではここも持ちませぬ!!」

 誰かがそう言うとその周りにいた5人の人間もそう思ってた。

 半分以上が女性であったがその中にいる一人の男性がこう続けた。

 「どうか逃げて下さい!我々が時間を稼ぐ故に******王国に!!」

 「いや、駄目だ。」

 すると男性がそう言ってこう続けた。

 「彼らの目的は僕と彼女と・・・恐らくあれであろう。」

 そしてこう言った。

 「君たちはあれのプロトモデルを持って国外に逃げるんだ。

民たちも生きている者たちは既にポータルを使って非難した。」

 「ですが!!」

 それを聞いて尚も食い下がろうとする騎士を見て男性はこう言った。

 「それならば・・・***。良いかい?」

 「は!」

 男性は騎士の一人を呼ぶと騎士はそれに答えて前に出た。

 黒髪の・・・口を布で隠した女性であった。

 すると男性は女性に・・・布でくるまれたナニカを渡すとこう言った。

 「その子を守ってくれ。それが君たちに与える任務だ。」

 「「「「「「!!!!!!」」」」」」」

 全員はそれを聞いて男性の方に目を向けて・・・何人かが泣き始めた。

 最早ここまでだと確信して・・・こう言った。

 「必ずや・・・お守りいたします。」

 「ありがとう。」

 そう言うと全員・・・離れていった。

 そして残ったのは・・・・。

 「本当に良いのかい?アレイシア」

 「ええ・・・良いわ。」

 アレイシア・イドリースと・・・。

 「マスター」

 隣にいたエストだけであった。

 するとその部屋から・・・誰かが来た。

 「無事か*****!!」

 「フギル!!」

 フギルと言う青年が現れるとこう言った。

 「早く逃げるぞ!今ならまだ」

 「頼みを聞いてくれないか?」

 「・・・・・・」

 フギルはそれを聞いて黙り込むとアレイシアはこう言った。

 「エストをお願い。」

 「マスター!!」

 エストはそれを聞いて驚くがエストはこう続けた。

 「マスター!私ならば単体でも戦えます!!それにあの子を」

 「エスト」

 アレイシアはそう言いながらエストに向けてこう言った。

 「思えば貴方とは色々あったわ。」

 「貴方を見つけて・・・聖女だと言われて・・・良い事も・・・

悪い事も・・・」

 けどねと言ってこう続けた。

 「ここに来て本当に良かった。」

 「愛を教えてくれた。」

 「世界を教えてくれた。」

 「そして何より・・・幸せを見つけた。」

 「貴方がいたから私は今の私があるの。」

 だからねと言って・・・こう言った。

 「ありがとう、私の友達」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アレイシア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを聞いてアレイシアはにこやかに笑ってこう言った。

 「やっと名前を呼んでくれたわね。嬉しいわ」

 そう言ってアレイシアは涙を流すと男性と共に外に出る唯一の扉に二人で

手をかけてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ありがとう、エスト。私の大切な・・・・家族。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アレイシア---!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その慟哭と同時に映像が切り替わって見えたのは・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 細長い体をした・・・白い・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二つの光を纏った竜が・・・そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして街を・・・光で・・・覆い尽くした。




 それは光。
 全てを覆う・・・優しい創生。


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生まれ変わった力。

 殲魔の守護聖剣(ミュルグレス・ヒューカス)
 ルミナリスが№36を吸収してしまったがために得た精霊。
 本来は剣だけであったが更に頭上に巨大な浮遊遺跡が現れた。
 能力は魔精霊の破壊だけではなく、魔力等の防御が出来るようになった。
 


「・・・分かりましたか私の一部。」

 そう言ってもう一人のエストはエストに向けてそう言った。

 「アレイシアは裏切られたのです。他ならぬ・・・アイツらによって。」

 そう言うとこう続けた。

 「もう仲間だと思っている人間が裏切られ、そして失う恐怖を味わいたくは

ありません。」

 だからと言って手を差し伸べた。

 今ならばまだ戻れると・・・そう言うように。

 然しエストは・・・その手を・・・取らなかった。

 「?・・・何故」

 そう聞くとエストはこう答えた。

 「貴方の気持ちは分かります。だから私は・・・カミトの下に行きます。」

 「・・・それでまた失う事になったとしても?」

 そう聞くとエストはこう答えた。

 「大丈夫です。カミトの守る人たちに悪い人はいません。」

 「それに・・・貴方の知る騎士たちも最後まで守ろうとしていました。」

 「・・・・・」

 「だから・・・行きます。」

 そう言ってエストは光となって消えると・・・近くにいた船も動いた。

 まるでエストに・・・反応するかのように。

 そして浮上していく船を見守りながらもう一人のエストはこう呟いた。

 「何故あの子はそれでも信じようとするのでしょう?」

 分かりませんと言うと・・・声が聞こえた。

 --それはあいつがお人よしだからだろ?

 「?」

 誰だと思ってもう一人のエストは周りを見渡していると・・・一人の・・・人型の影が見えた。

 --あいつも同じだ。

 --何度裏切られようが自分の信じた道を進んで・・・そいつの心を

掴んじまった。

 --多分そいつも・・・同じ奴なんだろうな。

 そう言うと人型の影はナニカを出して・・・こう言った。

 --ま、なんかあった時に備えてと思えば良いか。

 そう言うと影から現れた青い光はエストに向かって行った。

 そして人型の影はこう言って消えた。

 --・・・『かっとビング』だぜ。

 じゃあなと言って人型の影は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方の目的は何ですか?」

 エストは船に向かってそう言うとそこから・・・黒騎士が現れると

エストを見て・・・手を差し伸ばした。

 「・・・・」

 「-----」

 「分かりました。」

 エストはそう言って黒騎士の手を掴むと・・・エストの中に

取り込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして紅い世界にあった船に張り巡らされていた鎖が・・・解き放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ナンダ!!」

 ルミナリスはそう言ってカミトから離れていった。

 すると眩い閃光を放つ右手を差し伸ばしてカミトはサモナルを紡いだ。

 「--汝、冷徹なる女王、魔を滅する聖剣よ」

 「--今ここに!!」

 そう言いかけるとカミトの脳裏にあの船が見え・・・紡ぐ言葉が頭に浮かび、

唱えた。

 「満たされなき魂をその剣に宿し、光すらも届かぬ深淵から我が手に集え!!」

 するとエストの精霊刻印に・・・数字が浮かび上がった。

 そう・・・「101」が。

 

 

 

 

 

 

 

 そして門から現れたのは・・・白銀の髪を靡かせ・・・両手両足に鎖を

巻き付けた・・・エストが現れた。

 「エスト!!」

 カミトはそう言ってエストに手を差し伸べるとエストはその手を掴んで

こう言った。

 「カミト、私は貴方の・・・思いに答える剣。」

 その力を望むがままにと言ってエストは着地するとルミナリスはこう言った。

 「ヤットホンキヲダシてクレルヨウダナア・・・!!」

 ルミナリスは三日月のような笑みを口で浮かべるとこう続けた。

 「サア!!ツヅケルゾ!!」

 そう言うとエストはそれを見てこう言った。

 「カミト、彼女の中に何かが蠢いています。」

 そう言うとカミトはこう返した。

 「ああ、何とか正気を取り戻して欲しいんだがな。」

 するとエストがこう提案した。

 「あの、カミト。私に考えがあります。」

 「?」

 カミトはそれを聞くとこう聞いた。

 「出来るか?」

 そう聞くとエストはこう返した。

 「はい。」

 信じてますと言ってエストは自らのエレメンタルバッフェを展開した。

 その形状は・・・いや、見た目から変わっていた。

 片方に刃が付いた剣であるエストの剣は峰部分は黒く、そして何よりも柄の

下部分にあの船の形を模倣したような形の装飾が施されていた。

 その姿は正しく白と黒の剣。

 新たなる姿。

 ・・・サイレント・オナーズ・アーク・エスト。

 魔王殺しから・・・多くの命を運ぶ方舟となった。

 「行くぜ、ルミナリス・セイント・レイシエード!!」

 カミトはそう言いながら片手で構えるとルミナリスはこう言った。

 「コイ!レン・アッシュベル---!!」

 そう言って剣を構えて・・・同時に走った。

 「「おオオォォォォああアアアアアアアア!!」」

 お互いが神威を使って地面を捲り上げるかのように走りこんでお互いの

距離が詰めたその時・・・・!!

 「今ですカミト!!」

 「ウおらああ!!」

 カミトは柄の下にある装飾を掴むとそこから・・・鎖でつながれた

装飾と同じ分銅が出てきてそれをルミナリス目掛けて投げた。

 するとルミナリスの体はそれを・・・弾くことなく巻き付かれた。

 そして頭頂部にある遺跡から光が・・・無くなった。

 最後にカミトはこう言った。

 「これが俺とエストの・・・俺たち二人の力だアアアアアアアア!!」

 そして・・・ルミナリスの魔装『殲魔の聖剣』から姿を変えた

『殲魔の守護聖剣(ミュルグレス・ヒューカス)』が・・・砕け散った。




 サイレント・オナーズ・アーク・エスト
 テルミヌス・エストが進化した姿
 №101を吸収して得た姿。
 手足の鎖はその際に出来たもの。
 柄から分銅が出せるようになったため攻撃パターンが増えた。
 特殊な能力を幾つか使えるようになっているがそれは未だ不明


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戦い終わり。

 第5章も終わり。


 その光景を外から見ていた影精霊使いが通信してこう言った。

 『ルミナリス様が負けた!総員撤退です!!』

 そう言って結界を解除すると全員が撤退していった。

 それを見ていたヴェルサリアはナニカを感じ取ってこう言った。

 「カミト・・・やったんだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・何故私の〈魔石〉を奪わないんだ?」

 ルミナリスは俯せになっていながら・・・目の前で自分に覆い被っているカミトに向けてそう聞くとカミトはこう答えた。

 「エストを呼び戻すきっかけを作ったって言うのもあるが・・・。」

 「お前とは本当の意味で決着を付けたいんだ。聖霊騎士団団長ルミナリスとして」

 正々堂々と言うとルミナリスはそれを見て・・・頬を少し赤めらせてこう言った。

 「貴様は本当に甘いな。」

 そう言うとカミトはルミナリスに向けてこう聞いた。

 「アンタ何処であれを手に入れたんだ?」

 そう言いながらルミナリスの近くにある札。

 №を見てそう聞くとルミナリスはこう答えた。

 「確か・・・私は、闇精霊を見て・・・レン・アッシュベル・・・いや、

その偽物の正体を突き止めようとして戦いを挑んでそれから・・・」

 するとルミナリスは何やら頭痛が起こったかのように頭を抱えるとカミトに向けてこう言った。

 「気を付けろ。あの偽物はなにかを仕出かそうとしている。」

 それを聞いてカミトはこう答えた。

 「ああ、俺もそう思うよ。」

 そしてお互い離れるとルミナリスはこう言った。

 「次があれば・・・その時は。」

 「ああ、分かってるよ。」

 お互いそう言うとルミナリスは少し引きづるかのように去って行った。

 それを見届けたカミトは来てくれたエストを見ているとエストはこう言った。

 「只今です。カミト」

 そしてカミトはこう答えた。

 「ああ、お帰り。」

 そう言ってカミトは・・・気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミトはあの後ヴェルサリア達が見つけてくれたようだ。

 怪我した箇所には包帯が巻かれており巻き方が良い事から恐らくはレオノーラが施したのであろう。

 そして目を覚ました後にエストは自身に何があったのかを話した。

 エストの本体でもある聖剣の事。

 その聖剣から見せられた記憶。

 そして・・・今の自分を。

 「つまりお前は今独立した存在になっている・・・で良いんだな。」

 「はい、その通りです。」

 そしてエストは自身の手足に付いている鎖を見てこう言った。

 「今の私は『サイレント・オナーズ・アーク・エスト』と呼ばれる

存在のようです。」

 「・・・また長ったらしいな。」

 カミトはそれを聞いてめんどくさいなと思っているとエストは更にこう言った。

 「そう言えばこういうのもありますがどうしましょうカミト?」

 そう言ってエストは制服からある物を取り出した。

 それは・・・。

 「何だこの板は?」

 「さあ?」

 蒼い板状のナニカである。

 それと・・・。

 「なんか色違いの札みたいなのがあるな。」

 板状のナニカに入っていた大量の札らしきもの。

 そこには文字ではなく・・・。

 「絵か?」

 幾つもの鮫のような絵が施されていた。

 一体何が何なのか分からないなと言ってカミトは取り合えずカバンに入れて

こう言った。

 「これからもよろしくな、エスト。」

 「はい、カミト。」

 お互いそう言って握手を交わした。

 1日目の夜が過ぎようとしていた。




 また少し休載して新作作ります!!


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追憶の化け狸と少女。
起床して。


 1年ぶりの再開。


 チュンチュンと森から小鳥が鳴き声が聞こえた。

 早朝の冷たい空気が肌に突き刺される中でカミトは目が覚めた。

 テントの僅かな隙間からはほんの僅かであるが光が出ているところを見るに

未だ夜明けなのだがカミト達はマギアルカからの特訓時間がこの位であった為普通に起きようとすると・・・突然と肋骨ら辺に痛みが襲い掛かった。

 「!!・・・確か俺って怪我してたんだよな。」

 カミトはそう呟いてあの時の事を思い出した。

 神聖ルギア王国聖霊騎士団団長にして前回ブレイドダンス準優勝者でもある

ルミナリス相手に戦闘を行ったがとんでもない戦いであった。

 変貌した精霊《ミュルグレス・ヒューカス》によって僅か数分程度であったにも関わらず森がその地点を中心に吹き飛ばされており大地が捲り上がる程であった。

 そんな中に於いて勝てたのは復活したエスト・・・いや、

《サイレント・オナーズ・アーク・エスト》のおかげとも言えよう。

 新たに生まれ変わったエストによって勝利してルミナリスを正気に戻すことに

成功して何とか撤退してくれたからだ。

 それでこの怪我なのだがカミトは簡易ベッドから降りようとすると・・・

自身の腕に小さな手が握られていることに気づいた。

 「またかよエスト・・・っておわああ!!」

 そこにいたのは黒ニーソ以外全裸の・・・エストであった。

 何時もならば剣の状態で寝ているの何でとそう思っているとああとある事を

思い出した。

 「(そういやあエストは本体から記憶を見せて貰ったって言ってたな。

それが不安なんだろうな。)」

 そう思っていたがある事にも気づいた。

 それは自身も見た・・・アレイシア・イドリースとスライマンが夫婦として

過ごしていた優しい過去を。

 そして2人が国を守るために自らを犠牲にしてあの精霊を召喚したことを。

 「(あの夢は間違いなくこいつが媒体だと確信した!だけど

どうしてこの本が古代図書館の本の中に隠されていたんだ?一体何の為に??)」

 そう思っているとテントの外から・・・人が入ってきた。

 「ああ、起きたかカミト。」

 「ヴェルサリアか、どうしたんだこんな朝早く。」

 「私だけではない、他の皆ももう起きて訓練中だ。」

 「そうか、習慣だったもんな。」

 カミトはヴェルサリアの言葉を聞いて合点がいった。

 自分だけではなかったことに喜んでいる中で処でと言ってジト目で

ヴェルサリアはエストを見てこう聞いた。

 「何故エストが寝ているのだ?然も殆ど全裸。」

 「俺が聞きてえよ。」

 カミトはヴェルサリアの言葉を聞いて頭を抱えてそう言うとエストが起きた。

 「うみゅ・・・カミト?」

 エストが眠気眼でそう言うとカミトもおはようと答えた後にカミトも

着替えようとした途端にヴェルサリアがこう言ってカミトを止めた。

 「今日は止めておけ。お前あの時頑張ったからな。」

 そう言って朝ごはん迄もう一度寝ていろと言われて出て行くが本心は・・・

これであった。

 「(カミトの奴め!私の前で着替えようとするなど・・・

少し見たかったな。/////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして暫くすると今度こそカミトが起きるとその光景を見て驚いた。

 「凄いな、俺が寝ている間にもう拠点が出来ていたのか。」

 「いいえ、目標の半分と言った処だけどそこは貴方とルミナリスとの戦闘で

壊れた木々や回収した土で作った土嚢で何とか拵えている程度ヨ。

今度はあんなバケモノ精霊ですら壊せない要塞級の陣地にしてね!!」

 「そうか・・・あんまり根詰めるなよ。」

 カミトは鼻息荒らしているフィオナを見て完全に負けん気が全開だなあと

そう思いながら陣地を見た。

 折れた木々を使って机やいすを作っていたり薪などもあるが中には土嚢に

木で補強して簡単な通路を作っていたりと完全に前線基地と言っても

過言ではない。

 それだけではなく流石元とは言え精霊姫候補生なだけあって結界も

ちゃんとしておりその強度だけで並の精霊使いならば攻める事すら

躊躇するレベルだ。

 然も土地の精霊の加護によって神威を増大させるだけではなく

地脈と干渉して疲労回復など様々な祝福も受けている。

 「貴方が寝ている間に他の土地精霊とも交渉してね、

まあ中には支配されたくないって精霊もいたけどなんとかなって

今や多くの罠が設置で来たわ。さあ来なさいよ他国の精霊姫共!

嬉恥ずかし酷い目満載のトラップの餌食にしてやるわ!!」

 グフフフと黒い笑みを浮かべているあたりこいつが最も変わったんじゃねえと

そう思っていた。

 そんな中でカミトはフィオナに向けてこう聞いた。

 「それで他の皆は?」

 「ええ、確かレオノーラは近くの水精霊が住んでいる川に行って儀式剣舞、

エリスは確か料理中だと思うけどそう言えば」

 「?」

 「エリスって最近思いつめているのかしら?何だか心ここにあらずって所が

多いわね。まあ戦闘中はそれはしないようだけどそれでもそれを振り払うみたいに無茶していたからそれとなくでいいから気をかけてくれないかしら?」

 「分かった、それじゃあな。」

 そう言ってカミトはフィオナとも別れて別の場所に向かって行った。




 次回はレオノーラとエリス辺り。


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他国の騎士団対レスティア。

 やっと他の騎士団が出せたよ。


 あれからカミトは少し歩いていると川沿いでいい匂いがしたのでカミトはそっちに向かうとそこにいたのは・・・。

 「エリス。」

 エリスが大きな鍋でスープをコトコトと煮込んでいたのだ。

 だが当の本人は何んだから知らないが少し思いつめている様子であったがカミトは取敢えずと言って挨拶した。

 「よう、おはようエリス。」

 「!!・・・カミト」

 「・・・どうしたんだよエリス、皆心配しているぞ?」

 「・・・何でもないんだ、気にしないでくれ。」

 「分かった・・・だけど相談ぐらいはしてくれ、俺達は仲間なんだからな。」

 「!!」

 カミトはそう言って今度はレオノーラの下に向かうとそれを後ろから見ていた

エリスは小さな声でこう呟いた。

 「・・・言えたら苦労はしないさ・・・お前の事なんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 河原ではレオノーラがテンペスト・ソードを使って儀式剣舞を待っていた。

 剣の一振り一振りが力強く鋭い風切り音が鳴るのに見惚れてしまうほど

綺麗な剣舞であった。

 「よお、レオノーラ。」

 「カミト!怪我は宜しいんですか!?」

 レオノーラは驚いた表情を浮かべてカミトに近寄るとカミトはこう答えた。

 「ああ。大丈夫だ。治療してくれたんだって?感謝する。」

 「この位当たり前です。ドラグニアにドラグナイト養成学校が出来て

こう言う治療も教わりましたので。」

 「あ・・・済まない。」

 「良いんです、確かに色々と嫌な事がありましたがそれでもそれで

人を助けられたんですから。」

 アハハとレオノーラは苦笑いしてそう答えた。

 ヘイブルグ共和国の統治下となったドラグニアは故郷であると同時に

両親と親友が死んだ場所。

 正直なところ思い出したくないと言えばそうなのだがそれはそれである。

 「それじゃあいつも通り頼む。」

 「稽古ですか?ですが今のカミトは」

 「だからこそ・・・まあ、寸止めで頼むわ。」

 「其れでしたら・・・行きますよ!」

 「来い!」

 そう言ってお互いに稽古を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして場所は移り変わって。

 深い森の中において白地に赤で統一された騎士装束、

『ロッソベル公国代表チーム』の一つ〈破烈の師団〉の制服を着た少女達が・・・レスティアを追っていた。

 何故彼女がこの島にいるのか分からないがまあ取敢えず彼女たちは・・・

レスチィアを狙っていた。

 そんな中で先頭を走るダークブラウンの緩やかな長髪を持つ少女

『ミラ・バセット』今大会最年少の精霊使いにして紺碧の右目と琥珀色の左目のオッドアイを持つこの娘が指示を与えた。

 「エシルとユステラは右に回って。目標を速やかに包囲殲滅。」

 「「了解。」」

 それを聞いてチームメイトが動くがレスチィアは術を唱えた。

 「影すらも焼き尽くせ《暗黒の焔よ(イビルフレイム)》!」

 そう言って高位呪文を唱えた。

 それは周辺の森の木々を焼き尽くすほどの魔術。

 普通ならば間違いなく灰燼に帰すのだが『ミラ・バセット』はその攻撃に対して精霊魔術の剣を振るってその炎を消すとこう言った。

 「愚か、私達の精霊は闇属性の精霊に対して耐性を持っているから通じない。」

 そう言うとレスティアはニヤリと笑ってこう答えた。

 「じゃあ・・・これならどうかしら?」

 そう言った瞬間に『ミラ・バセット』だけではなく追っ手の少女達の足元に

魔術方陣が現れたのだ。

 「これはまさか・・・〈封絶結界〉!?」

 すると『ミラ・バセット』達が崩れ落ちるかのように倒れるとレスティアが

彼女達に向けてこう言った。

 「喜びなさい貴方達・・・〈ネペンテス・ロア〉の贄となる事を。」

 その声と同時に・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウォォォォォォォォオオォォォォ!!」

 「「「「「!!!!」」」」」

 異形の様な声を聴いて全員がびくついた瞬間に何やら・・・クモの糸の様な

ナニカが彼女達を締め上げるとレスチィアは『ミラ・バセット』の目を見て

こう言った。

 「あら?貴方、面白い〈眼〉を持っているわね?」

 そう言って少し見せて欲しいわと近づかせようとした瞬間に・・・

『ミラ・バセット』がこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今だドン!ミラ!!」

 「!?」

 「これで終わり。」

 そう言って上空から・・・『ミラ・バセット』が短剣を持って姿を現したのだ。

 然しレスティアはそれをするりと・・・だが少し冷や汗を掻いていると

今縛られている『ミラ・バセット』を見てこう聞いた。

 「貴方・・・一体誰かしら?」

 そう聞くと何やら印を結ぶや否やどろんと・・・煙を出すと

その真の姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、お初にお目にかかりまして!あっしは生まれも育ちも

『日本』の『狸』!!嘗ては戦国武将『喜楽 壮八』に仕えて

今は縁あって『ミラ・バセット』嬢に仕える第一家臣『№64古狸三太夫』こと『ぽん太』とはおいらの事だーー!!」

 まるで歌舞伎の役者の様な言葉を言いながら登場したのは・・・

赤い鎧を身に纏い、この国では知らないが『薙刀』を持ち、背中には槍を

何本か所有した獣とも人とも言えない精霊・・・いや、№の精霊『ぽん太』が

この世界で名乗りを上げた瞬間であった。

 そしてこの戦いこそ世界で初めて公開された・・・№であった。 




 次回もお楽しみに!!


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ぽん太対レスティア

 ぽんた見参!


 そんな光景を見ていた各国の重鎮たちはというと・・・。

 「何だあの精霊は!!」

 「選手に変身していただと!!一体いつ変わったんだ!?」

 「其れよりもあの精は言葉を口に出来ているぞ!上位精霊・・・

まさかあれが今大会最年少が使用する精霊なのか!?」

 彼らはそれを見て驚いていた。

 変身する精霊は数あれどあそこ迄饒舌で然も見慣れない鎧や武装を身に纏った

精霊は初めて見る為一体あれあれは何なんだと考えている中でグレイワースは

マギアルカに向けてこう聞いた。

 「あれは間違いないな。」

 「うむ、然し己で№と言うなど自信過剰なのかそれとも。」

 そう呟いているとグレイワースは自身の荷物からあるものを出した。

 其れは・・・。

 「お主こんな所に迄持ってきたのか?」

 「ああ、私の留守中に盗まれでもしたらたまらんからな。」

 そう言って見せたのは№・・・これまで入手した三枚の№が入った箱が

そこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ!行くでぽん!」

 ぽん太はそう言って武器を持ってレスティア目掛けて振り下ろすが

レスチィアはそれをひらりと躱すとこう言った。

 「見たこともない精霊ね・・・№にもそういうのがあるのね。」

 そう言って黒炎を放つがぽん太はそれを薙刀を回して防御すると

何やら印を結んで小さな狸の人形を出すとそれが・・・レスティアに変わった。

 「!!何ですって。」

 「ウフフフ。」

 レスチィアの偽物は本物を見て笑うと・・・同じ威力の黒炎を放った。

 「何ですって!!」

 あまりの事にレスティアは目を見開いて驚いて黒雷を放って相殺して

まさかと思ってこう聞いた。

 「貴方はもしかして・・・模倣する精霊の能力迄もコピー出来るの?」

 「その通りヨ、ぽん太は能力は使えないけど魔法ぐらいなら再現できる。」

 その問いに対してミラ・バセットはしれっとそう答えるが最悪だとレスチィアは舌打ちしてこう思っていた。

 「(最悪だわ、眼の事もそうだけどまさか№をここ迄自在に

コントロール出来る程の精霊使い・・・いえ、あんな№がいるなんて

計算外だわ・・ここは引き時ね。)」

 そう思いながら地面に向けて黒炎を放つとその爆焔で・・・姿を晦ました。

 「どうするんだぽんミラ!?」

 「ここは撤退ね、こっちも一度体制を整える為に本拠地にしている場所に

戻らないと。」

 そう言うとぽん太に対してこう命令した。

 「取敢えずは私はもう少し周りの警戒に当たるからその魔精霊のコピーを

私と行動を共にして、貴方は一度本拠地に彼女達を送っといて。」

 「分かったぽん、直ぐに戻るぽん!」

 ぽん太はそう言って彼女達を担いで本拠地に向かうとミラも同様に警戒の為

レスティアの偽物と共に森の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まさかあんなのがいるなんて、お前に『ネペンテス・ロア』の食事も

満足いかなかったしどうしましょう?」

 そう言いながらレスティアは黒騎士の方を見ているとこう続けた。

 「さてと、カミトに会うまでにはちゃんとした状態にしておかないとね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何せ彼もまた『魔王の落とし仔』なんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽が高く昇っている中でカミト達は食事をしていた。

 スープと近くで釣った川魚を焼いたと野草ときのこのサラダであった。

 「お前少しは怪我人である事を考慮しろ。」

 「悪いな、どうしても感触を確かめたくてな。」

 「仕方アリマセンヨ、エストが新しくなった以上調整は急務ですし。」

 レオノーラがそう言ってヴェルサリアに対してカミトの援護をしていると

フィオナがまあ取敢えずはと言って手帳を取り出した。

 グレイワースの各国の情報が記載された奴だ。

 「先ずは現状だけど既に多くの参加選手国、特に強豪校は強固な拠点を

構築しているわ。『神聖ルギア王国』についてはまだ不明だけど

あの大型精霊が立ち塞がるのは決定ね。」

 「あああれか、俺もあれには間違いなくやばかった。」

 勝てたのが奇跡だったなとそう言うとそれとと言ってこう続けた。

 「チーム・インフェルノについてなんだけど拠点の居場所が

分からずじまいで然も偵察用にエリスが放った風の精霊が

全て撃ち落とされたって話ヨ。」

 場所から特定するには時間が掛るわねとそう言うとエリスがこう続けた。

 「すまない、だが敵には諜報術に優れた精霊使いがいるようだ。」

 「諜報・・・あいつか。」

 カミトはエリスの言葉を聞いてそう呟きながら・・・彼女の事を思い出した。

 「(諜報術に長けていると言ったら間違いなくリリィだ、

あいつなら撃ち落とすだけじゃなくて欺瞞情報も送れそうだ。・・・

味方だったから分からなかったが敵になってはっきりと分かった・・・

あいつとミュアのコンビはある意味厄介だ。)」

 攻撃のミュアと隠密行動のリリィ、正に矛と盾と言っても過言とは言えない

内容だ。

 そしてさらにこう続けた。

 「それと・・・ワタシ思い出したくないけどあの黒騎士も厄介なのよねえ。」

 「あいつか・・・イヤな感じがしていたな。」

 カミトはフィオナの言葉を聞いて確かにとそう思った。

 あれから溢れているのは・・・まるでこの世とは思えない闇であった。

 「奴は既に『ウォルス王国』の出場者達を全て倒した・・・まさに国落としね、然も奴と共にいる精霊についてエリスが得た情報何だけどね。」

 そう言うとフィオナは一息ついて・・・こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「女の子の・・・人間の姿をした闇精霊よ。」 




 明かされた内容はカミトを更に追い詰める。


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同盟の手紙

 同盟・・・それは吉と出るか凶と出るか?


「女の子のって・・・まさかそいつはレスティア!?」

 カミトが間違いなくと言った感じでそう聞くとフィオナはこう続けた。

 「ええそうよ、監視精霊によれば間違いなくね。

それで貴方はどうするのかよ?」

 カミトに向けてフィオナがそう聞くとカミトは左手にある契約の証を摩っているとヴェルサリアは取敢えずと言ってこう締めくくった。

 「兎にも角にもだ、そいつがその闇精霊だとしてだ、情報が少ない以上は

相手にしない事が得策だが良いなカミト。」

 「ああ・・・分かっている。」

 カミトはヴェルサリアの言葉を聞いてそう答えるとエリスがこう言った。

 「それに今は情報収集が主だっているとはいえ拠点に籠って

身動き取れないでは本末転倒だ。」

 それを聞いてそうだよなあと全員が同じ気持であった。

 決勝戦に駒を進めるためには魔石を集めなければならないのだが

現在スカーレットナイツが保有している魔石はバルスタン王国から分どった3つ。

 たったこれだけで決勝戦にはいけない、そう、1週間後の終了まで

生き残っていたとしてもだ。

 「エリス、もう一度偵察用の精霊を使ってくれ。

今度は『チームインフェルノ』以外のチームに対して偵察して拠点の出来次第では

こちらから仕掛ける。」

 「分かりました義姉様。」

 そう言ってエリスは精霊を呼び出そうとすると・・・何かが来るのが見えた。

 「あれは・・・偵察用の精霊・・・いや、違うな。」

 ヴェルサリアはそう言ってその精霊・・・翼を生やした兎を見てそう言うと

その兎が降りるや否や口に加えている何かをヴェルサリアに渡すと兎は何処かへと去って行った。

 「こいつは手紙か?」

 そう言って何だと思い手紙の封を開けて確認すると中に入っていた

手紙を読んで・・・ヴェルサリアは目を見開いていた。

 「一体何が書かれていたんだ?」

 カミトがそう聞くとヴェルサリアはこう答えた。

 「同盟の提案だ、相手は『ロッソベル公国』。」

 「同盟・・・だと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『我ら《ロッソベル公国》所属、《破烈の師団》は故合って汝らと同盟を

結びたく手紙を綴るものとする。2時間以内に所定の場所にテ会合されたし、

師団長《ミラ・バセット》。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「と書かれているが何故我々なのか詳細な事は書かれていない、

書かれていたのは場所と制限時間だけ。罠の可能性が否めないな。」

 ヴェルサリアはそう言って全員に対してどうするのかと聞いた。

 何せ相手は国を興して歴史は浅いがブレイドダンスは2度目だが高位の聖精霊を使役できるといういわばダークホースとも言われている。

 そんな彼女たちが自分たちに対して同盟を持ち掛けるともなれば

何か裏がありそうだなあとそう確信しているが証拠がない以上疑うにしても

時期尚早とも思えるであろう。

 それにテンペストは勝ちあがれるチームは上位4チーム迄、こんなに初期からの同盟等前例がないどころかこのテンペストに於いて同盟など皆無で大体が

全滅するまでの試合形式である。

 「罠か否かはさておいてだがこんなに速くとは私も予想外だ、つまる話彼女達に我々ですら予想が付かない事が起きていると考えた方が不思議であろうな。」

 「まさか・・・壊滅って事でしょうか?」

 「「「「!!!!」」」」

 レオノーラの言葉を聞いてカミト達はまさかと思っているがブレイドダンスでは何が起きるか予想が付かないのが普通。

 詰まる話彼女達に何かあったという事だ。

 「先ずは皆の考えを聞きたい。」

 ヴェルサリアはそう言って先ずはレオノーラに聞いた。

 「私は・・・これは罠の可能性が高いです。ドラグナイトの養成学校に

通っていた時ですが会談中に奇襲を受けることを想定した訓練もしていたので多分それではないかと」

 「ああ、貴様の話は参考程度にしよう。」

 「聞いて何ですけど酷くありません!?」

 保留

 次にエリス。

 「私も同意見です、待ち伏せも視野に置いた方が良いかと。」

 「ふむ・・・つまる話がレオノーラの同意見だな。」

 次にフィオナ。

 「私はこれって罠じゃないかもしれないわね。」

 「その理由は?」

 「確かにこんな初期に同盟を組もうとしているあたり向こうでも

何かあったって事なのかもしれないわ。それに露骨過ぎよ、私だったら

もう少し上手く書いておびき出させるわね。」

 「おびき出させる・・・その目的は?」

 「拠点の襲撃ね、そして他の所と戦闘になったら疲弊したところから

魔石を奪えば良いんだしけどこの文脈を見るにそれすら感じないから私は取敢えず行ってみる価値はあると思うわ。」

 「詰まる話が会議に賛成だな。」

 そしてカミト。

 「俺はこういうのは分からないけど取敢えずは聞いてみるのも

良いかもしれないぜ?レオノーラが言ったように全滅しているんだとするなら

相手とそいつが使っている精霊の特徴が分かるから情報の共有ぐらいは

出来るはずだ。」

 「ふむ、賛成と反対が見事に真っ二つともなると皆の言葉を組んで

取敢えずは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行って見る。其れしかあるまい。」

 そう言うとヴェルサリアは捺印されている《ロッソベル公国》の紋章印に

手を触れて精霊語を唱えると小さな土の精霊に姿を変えて森の向こうに

走っていった。

 そしてヴェルサリアはさてとと言ってこう続けた。

 「それでは次に・・・会談の面々を決めよう。」




 次回は誰を行かすか。


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誰が行くの?

 交渉事用の人間は用意して損はない。


 「それでは次に会談に誰を行かすかだ。」

 「義姉上、全員で行かないのですか?」

 「いや、ここで全員で行ってもし罠だった場合拠点が攻められたり

他のチームが来たら厄介な事になりそうだからそうだなあ・・・

2人ぐらいで良いが」

 「其れなら俺とエストだな。」

 「ハイカミト、私がカミトを守ります。」

 エストはそう言ってカミトに向けるがヴェルサリアはそれに首を横に振って

こう答えた。

 「いや駄目だ、お前たちは重要戦力だ。それにお前の怪我は治っていない。」

 ヴェルサリアはそう言ってカミトに対して駄目だというがカミトはこう続けた。

 「だけど女の子を危険な所に行かせて俺だけ安全な場所にって」

 「何言っているんですかカミト?私達はここ迄切り抜けられたんですよ、

見縊らないでください。」

 レオノーラがカミトに向けてそう反論するとフィオナがこう続けた。

 「それにカミト君って他国から結構警戒されているからあなた一人だけだと

間違いなく・・・フルボッコよ。」

 「うっぐ・・・確かに。」

 カミトはそれを聞いて顔を青くした。

 何せ舞踏会でも色々と言われていたからな。

 然しとヴェルサリアはカミトを見てこう続けた。

 「カミトの実力については確かに保証は出来るから用心棒としてはうってつけだが他に行かすともなれば・・・。」

 ヴェルサリアはそう言って残りの三人を見てこう続けた。

 「私はここを防衛しなければならないから駄目だ、ここはフィオナ嬢に

行ってもらいたいところだが拠点の事を考え且つ野外訓練など・・・したこと

ないだろう?」

 「・・・ああ、確かにね。そうなると私は没って所かしらね。」

 フィオナはそう言って乾いた笑みを浮かべているとヴェルサリアはこう続けた。

 「レオノーラだが・・・正直なところ不安要素があるがこう言う交渉事は

やったことあるか?」

 ヴェルサリアがレオノーラに向けてそう聞くとレオノーラはこう答えた。

 「いえ、こういうのはやっとことがないですね。家にいた時には

そういうのは大体父でしたし・・・」

 そう言いながら少しずつであるが表情を暗くするレオノーラを見て

ヴェルサリアは済まないとそう言ってレオノーラも大丈夫ですよと

そう答えるととなればとヴェルサリアはエリスを見るがどうかなあと

そう感じていた。

 騎士道精神が服を着て歩いているような彼女が交渉事に言った処で

その実直さが災いしてこちらに不利益な条件を出してくると考えると

仕方ないと思ってカミトに向けてこう聞いた。

 「カミト、お前交渉事」

 「出来ると思うか?」

 「・・・だよなあ。」

 ヴェルサリアはカミトの問いを聞いて完全に詰んでいるなあと確信した。

 ここ迄交渉事に難がある面々が集まるのもまた希少であるがどうしようかと

考えている中でカミトとエリスを見て仕方ないと思い至ってこう言った。

 「良し、エリスとカミト。お前たちが向かえ。」

 「「!!」」

 カミトとエリスはそれを聞いて・・・特にエリスが驚いているとエリスが

立ち上がってこう意見を出した。

 「待って下さい義姉上!私ではなくその・・・レオノーラが良いかと」

 「駄目だ、これは決定事項だ。それにレオノーラには見張りを任せたい、

風の精霊使いでもある彼女の実力は確かなものだ。」

 「わ、私も風の精霊使いです!」

 「今回必要なのは交渉事に対応できる奴だ。その点貴様は補佐官として

十分な経験を積んでいる。だからだが何か反論でも?」

 それを聞いてエリスは暫くして黙ってしまうとこれで決まりだと言って

ヴェルサリアはカミトとエリスに向けてこう言った。

 「それでは簡単な身支度を整え指定された場所に向かえ。各員の健闘に

期待する。」

 以上と言ってカミトとエリスを準備するようにと言った後に座ると

フィオナはヴェルサリアに向けてニヤリと笑顔を向けるとこう聞いた。

 「へえ、補佐官として十分な経験だなんて見え透いた嘘を言えるのねえ。」

 「・・・ふ、バレたか。」

 ヴェルサリアはフィオナの言葉を聞いて鼻で笑うとこう返した。

 「どうもあいつ・・・エリス何だがカミトに対して何だか余所余所しいと言うか何だか・・・避けているような感じがしてな。ここは2人っきりにさせた方が

効率が良いと判断した迄だ。」

 「妹思いなのねえ。」

 「義理が付くがな、貴様だって兄弟姉妹がいるのであろう?」

 ヴェルサリアがそう聞くとフィオナはこう答えた。

 「あああっちは駄目ね、どちらかと言えば全員敵みたいな感じで

少し上の兄なんて自分以外全員自分よりも下って意識が完全にバレる程だからね。あんなのが血の繋がったとかは無理な話ヨ。」

 「ですがその・・・話合えば。」

 「そんなのして出来ていたら私は『ロストクイーン』何て呼ばれていないわ。

それよりも私は・・・マギアルカさんみたいな人たちが家族見たいって

思っているの。」

 「あの人たちがですか?」

 レオノーラが何故とそう聞くとフィオナはこう返した。

 「マギアルカさんは使えそうだからって言っているようだけど

本当は手を差し伸べて皆を守っているのよ。そしてそれを勘づいている皆も

マギアルカさんの役に立ちたいって思いがある。家族ってさ、そういう

何ていうの・・・心と心が繋がっている、そう言う感じじゃないのかなあって

思っているの。」

 だからよとそう言って拠点の構築を再開し始めた。

 後の面々もそれぞれ各々の役目を果たすために準備に入った。




 そして2人は旅立った。


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同盟の場所へ

 暫くはエリスが主です。


 カミトとエリスは簡単に準備を済ませた後に出発した。

 用心の為に2人は精霊を武装形態にして進んでいた。

 更に言えば完全な休眠モードである事で神威を込めなければ探知されない。

 2人の行く先は鳥型の導きの精霊(ガイドスピリット)が案内している。

 それについて行くため道に迷わないのだが一つ問題が発生した。

 同盟についてではない・・・カミトとエリスについてである。

 2人は無言で目的地に向かっているのだが時々こう言う話が聞こえた。

 「な・・・なあ、カミト・・・」

 「うん?」

 「いや・・・その・・・何でもない。」

 「ん、そうか・・・」

 この会話が何でも続くのだが其れには理由があった。

 エリスはチーム内で唯一カミトが教導院出身である事を知っているため如何しても聞きたかったのだが話す機会がなく今まで避けていたのだが其れすらも敵わずに

話してみようと思ってもこうなってしまう為話が進まないのだ。

 カミトもエリスが何か言いたげなのは分かっているがそれが何なのかが

分からないのだ。

 お互いにそう思っているとエリスの足元に・・・滑ッとした何かが絡みついた。

 「きゃっ!」

 「エリス!?」

 カミトがエリスの悲鳴を聞いて振り向くとエリスの足元に蛇がいたため

カミトは素早く蛇を掴んで持っていたナイフで頭を斬り落とすとこう聞いた。

 「大丈夫か?噛まれなかったか?」

 「あ・・・ああ、ちょっと驚いただけで問題はない。」

 いきなりだったからなとそういうとエリスはカミトが自分のすぐ近くにいたため

驚くがあっとこう思っていた。

 「(カミトは優しい人だ、こうやって皆を守ってくれた・・・聞くべきだ、そして私は知りたい、どうしてそうなったのかを。)」

 カミトは人殺しを好んでいたわけではないとそう思っているとエリスは

カミトに向けてこう言った。

 「カミト、この同盟が決まってまた2人になったら・・・

聞きたいことがあるんだ。」

 「今じゃ駄目なのか?」

 「ああ・・・2人っきりでだ。」

 エリスの真剣な表情を見てカミトは分かったと言って先に進もうとするが

エリスは更にこう聞いた。

 「所で聞くがその蛇はどうするのだ?」

 「ああこいつか、帰って来た時の食糧になるかなと思ってるんだが

調理するか?」

 「調理って・・・まあ良いが毒の確認からしないといけんぞ?」

 「知っているさ、こう見えても野営食は慣れてる。」

 「・・・何処で知ったんだ?」

 「ああ・・・グレイワースから教わったんだ、必要になるからってさ」

 「・・・そうか。」

 エリスはカミトのたどたどしい言葉を聞いて恐らくとそう思いながら

目的地に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 短い休憩を何度か挟んで着いた目的地は朽ち果てた遺跡の前であった。

 嘗て大陸と《元素精霊界(アストラルゼロ)》が一つとされていた

伝説の時代・・・つまり神話の世界に造られたと思われる

祭殿の遺跡であろうことは何となく分かるが・・・全体像は

最早理解できるものではなかった。

 壁の殆どが朽ちて崩れ落ちて辛うじて原型を留めているのは

半ば地中に埋もっている数本の石柱ぐらいだ。

 然も遺跡から少し歩いた先にあるのは急な崖で川の流れる音がけたたましく

聞こえる。

 奇襲するのであれば正に持って来いの場所であろう。

 然も拠点にするのならば最適な場所である。

 すると・・・エリスがカミトに向けてこう言った。

 「カミト見ろ、石柱に紋章があるぞ。」

 そう言ってよく見るとそれは。

 「ロッソベル公国の聖印。未だ新しいがこいつは結界じゃない?」

 「となれば監視用か?」

 「その可能性があるな、ここは拠点になるに最適だと思うが連中は

それを逆に利用してここを襲撃拠点にしていたんじゃねえか?」

 「となれば連中の拠点はまた別に?」

 「そう考えると・・・上流になるな。」

 カミトとエリスは互いに考えを出し合っていると・・・互いの額に冷たい水滴が落ちてきた。

 「「ん??」」

 そしてカミトは空を見ると・・・暗雲が立ち込めているのが分かり

まさかと思った瞬間に・・・パラパラと雨が降り始めたかと思えば一気に・・・

激しい豪雨となって襲い掛かった。

 「うわ!?」

 「何処かに雨宿り出来る場所を探すぞ!!」

 カミトはエリスの頭に自身の制服をかけて周りを見渡すと遺跡から

少し離れた崖に洞窟があった。

 然しそれは天然ではなく人為的に・・・誰かが精霊で掘ったものだと分かった。

 然しなりふり構っていられないと感じたカミトはエリスに向けてこう言った。

 「あそこの洞窟迄走るぞ!」

 「あ・・・ああ!」

 そう言って2人は洞窟目掛けて駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして遺跡から少し離れたロッソベル公国の拠点。

 「それで、誰かが来たのか?」

 「今の私達は動けない状況よ、神威の回復にここ迄時間を

割いてしまうなんて。」

 「あの選手でしょうね、神威を吸収しようとするなんて。」

 「同盟の方は?」

 「今ぽんたがミラ・バセットを迎えに言ったわ、その儘向こうに行くって。」

 「それじゃあ私達は準備に入るわよ。」

 「「「「ォォォォ。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は戻って。

 洞窟の中は真っ暗だったためカミトは荷物からランタンを取り出して

火精霊が入っている精霊石を取り出してランタン二入れると明かりが灯った。

 ごつごつした岸壁が照らし出されていた。

 そして中には薪の跡が残っていた。

 「《破烈の騎士団》はここで過ごしていたようだな。」

 「折角だから使おう。」

 カミトとエリスは互いにそう言って腰を下ろした。




 次回はこんな時になったら・・・あれになる。


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雨の中で

 土砂降りの時は大抵雨宿りせよ。


 「ここにも雨が降るんだな。」

 浮遊島なのにとカミトはそう言いながら頭をタオルで拭いているとエリスが

こう説明した。

 「それは違うぞカミト、浮遊島は日夜雲の上にいる訳ではないのだ。

上にいる私達は気づいていないが実際は一定の周期で上下に移動しているのだ。」

 エリスもそう言いながらタオルで頭を拭いているとこう続けた。

 「然し交渉相手は本当にここにいるのだろうか?もしかして

我々は騙されているのかもしれないな。」

 「罠だとしたらどんだけ楽だろうな。」

 それに対してカミトも同意するとエリスは顎に手を添えてこう呟いた。

 「・・・それにしてもあの紋章から見ても間違いなくここだと睨んでいるのだが

彼女たちは今どこで何をしているのだろうな?」

 「さあな・・・まさか」

 「?」

 エリスはカミトが突如考え出したのでどうしたのだと聞くとカミトはこう答えた。

 「全員・・・全滅したのか?」

 「まさか!それだとするならあの同盟の話は・・・まさか敵の!?」

 「多分かもって話に過ぎないが万が一に備えてってのも大事な話だ。」

 カミトはそう言って少し考えているとエリスはその間に結いているポニーテールを解いてどうするべきかと考えているとカミトはそれを見て・・・。

 「・・・!?」

 ドキッとしてしまった。

 色っぽく濡れそぼった青い髪。

 焚火の炎の光によって照らされた豊満な肢体。

 制服が濡れてしまったがために肌に張り付いてしまい下着のレースまでもが・・・見えてしまったのだ。

 普通ならば装衣を下に纏っているのだが機竜が使えないため服は

マギアルカに預けてしまったがために下着が見えやすくなってしまったのだ。

 「カミト、どうしたのだ?」

 エリスはカミトに向けてきょとんと首を傾げ乍らそう聞くとカミトは視線を

外に向け乍らエリスに向けてこう言った。

 「あー・・・その・・・なあ。」

 「・・・・・!?!」

 カミトの何が言いたいのか分からない言動に対してエリスはどうしたのだろうと思っていると・・・自身の格好を見て察して慌てて体をぎゅっと抱きしめた。

 「きききき貴様何時から見ていた!?」 

 「いやその・・・何て言うかその・・・済まない。」

 「!!!!!!!!!!!!!」

 エリスはそれを聞いてカミトに何か言いたげな表情であったが今回の件は

カミトが悪いわけではないので何も言えずにいたのだが・・・・。

 「クシュン」

 エリスがくしゃみをした瞬間にカミトがこう言った。

 「其の儘だと風邪・・・引くよな。」

 「ああそうだな・・・覗いたら君を『蜂蜜トースト』にしてやるからな。」

 「いや待て何だか甘そうだなって言うか蜂蜜何処から出すんだよ!?」 

 見ねえよと言ってカミトは後ろを振り向くと・・・

何やら衣擦れの音が聞こえた。

 「(これって・・・何を脱いでいるんだ?)」

 そう思いながらも・・・するすると音だけが洞窟の中で聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もう良いぞ。」

 「おお・・・・・!!」

 カミトはエリスの言葉を聞いて振り向いた瞬間に・・・そこにいたのは

パンティーだけ着たエリスの姿がそこにあった。

 白く滑らかな肌に青い髪が纏わりついて扇情的な格好であった。

 然も胸ら辺は両腕でガードしているのだがはみ出ているところがある為に

正直な所刺激的すぎる光景だったためカミトは慌ててそっぽ向こうとすると

エリスが慌ててこう言った。

 「き・・・着替えが無かったのだから仕方ないだろう!

私だってこうなっているのだから貴様も脱げ!?」

 「俺も!?」

 「・・・『ハムエッグ』。」

 「分かった分かった分かったから槍出すな!」

 エリスが槍を出してきたのでカミトは慌てて服を脱ごうとすると

エリスが後ろを向いてこう言った。

 「何故こっち向いて脱ごうとしているのだ!?」

 「ああ悪い!」

 流石のカミトもヤバいと感じたのか謝った後に反対側に向き直した後に

脱ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「・・・・・」」

 暫くの間2人は無言の状態であった。

 パチパチと焚火の爆ぜる音と雨が降り続ける水音しか聞こえない中で

2人は背中合わせで座っていた。

 「・・・なあ。」

 「!?・・何だ」

 エリスが何か聞きたそうな声を出すのでカミトはそれを聞いて驚きながらも

聞いてみるとエリスはこう答えた。

 「何か話してくれないか?間が持たなくて。」

 「あ・・・ああ、確かにな。」

 このままじゃあなとそう思いながらも話かあと思って腕を組んで

頭を巡らせていた。

 教導院にいた時は大抵が戦闘技術のみでそういうのは論外であった。

 ならばと他にはとなるとこれしかでなかった。

 

 

 

 

 

 

 「昔々、ある所にランプに封印された精霊が」

 「済まないがカミト、それは誰もが知っている話だぞ。」

 「そうか・・・。」

 それを聞いて万事休すだなと感じていた。

 因みのこの話をシラヌイと共に聞いていた際にシラヌイはこう言ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『良し、ダンスはバックダンサーを相当数用意しなきゃな!』

 何言ってんだとこの時カミトとレスティアはそう思っていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「済まない、ネタ切れだ。」

 「そうか・・・。」

 それを聞いてエリスはそう答えるとカミトはこう呟いた。

 「雨、やまないな。」

 「ああ。」

 そう言いながら暫くするとエリスがカミトに向けてこう聞いた。

 「・・・カミト、一つ良いか?」

 「・・・何だ?」

 カミトは何だとそう聞くとエリスはこう続けた。

 「いやな、お前が言いたくなければそれで良いのだ。・・・

だがこれ以上聞かずに戦えるというほど私は器用ではない。」

 「確かにな。」

 「だから!・・・聞きたいことがある。」

 「・・・・」

 「カミト・・・お前は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教導院の出身者か?」

 「!!」

 カミトはエリスからの言葉を聞いて目を見開いて見つめた。

 その時のエリスの瞳は・・・・・・涙を溜めて泣きそうな感じであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨は降り、雷は鳴りやまない。




 その問いにカミトは・・・何と答える?


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真実(一部)

 自分がレン・アッシュベルというのは秘密にしてです。


 「お前・・・どうしてそれを・・・!!」

 カミトはそれを聞いて目を見開いてエリスに聞くとエリスはこう呟いた。

 「あの時、竜匪族が襲ってきたあの舞踏会の夜に・・・ミュアと言う子から」

 「あいつか・・・成程な。」

 カミトはそれを聞いて合点が聞いたと思っていた。

 カミトに執着しているあの少女ならば確かに喋っているとしても不思議ではないと感じたからだ。

 そしてエリスはもう一度カミトに聞いた。

 「教えてくれカミト・・・お前は教導院なのか?」

 それを聞いてもう秘密には出来ないと悟ったカミトはこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 「ああ・・・そうだ。」

 「!!・・・そうか。」

 それを聞いてエリスは顔を俯かせるとこう続けた。

 「お前はそこで・・・何をしていたのだ?」

 「何を・・・俺の事を『魔王の後継者』とかって言って俺は戦闘訓練を

受けさせられた。」

 「・・・・・」

 「毎日毎日厳しい訓練もあって正直死ぬリスクが大半だったがある時から

任務が入る事が多くなったんだ。」

 「何だ・・・一体?」

 エリスは恐々とした表情でそう聞くとカミトは重く口を開いてこう答えた。

 

 

 

 

 

 「暗殺だ。」

 「!!」

 「当時俺はレスティアと『シラヌイ』を所有していたから

主に『シラヌイ』で暗殺を行っていたんだ。精霊を使った暗殺は

精霊に悪影響を及ぼすと勝手に言ってて『シラヌイ』を使って

ミュアとリリィと組んで任務を果たしていたんだ。」

 「ミュアとリリィ・・・あのローブを着た女がリリィか?」

 「ああ・・・アイツが諜報を、ミュアが精霊を暴走させて攪乱、

そして俺が『シラヌイ』を使って暗殺をしていたんだ。」

 「あいつ・・・リリィがホールで行われた開会式でこう言われたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『貴方がいるべきところはそんな光り輝くところじゃないわ・・・

 私達と同じ・・・闇の中ヨ。』ってな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなこと」

 「イヤ真実だ、俺は今まで多くの人間を・・・教導院の言いなりになって

殺し続けてたんだ。殺された奴らからすれば俺が今ここにいる事は

ただ単に過去から逃げている臆病者で卑怯者って言われても仕方ないと

思っている。」

 「・・・俺はずっと表で生きていたから忘れていたんだ・・・

所詮俺は裏の人間、血なまぐさい場所でしか俺達教導院の面々は

生き残れないんだって分かったんだ。」

 「・・・だが生き残った教導院の中には国軍に」

 「入っているとしても大方は非公式の組織か暗部が関の山だ。

そんな連中が生きれる場所なんて限られちまう・・・

ある意味ミュアとリリィは自分の長所を存分に発揮できる場所にいるってのは

間違いねえな。」

 「・・・・・」

 「分かったエリス、俺とお前じゃあ住む世界が違うんだ・・・

この話はこれでお終いに」

 するぞと言いかけたところでカミトの背中に何かが・・・

圧し掛かるような感触を感じたので何だと思っているとそこで目に映ったのは・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エリス・・・」

 自身の背中に抱き着いているエリスであった。

 「お前は馬鹿だ・・・私達がその程度で貴様を見放すと思っているのか!?」

 「あのなあ俺は」

 「例えお前が教導院の出身出会ったとしてもお前はお前だ!私達が・・・

私が知っているお前は破廉恥で夜の魔王で」

 「お前俺に対して恨みでもあるのか?」

 「だが・・・優しくて誰よりもお前は傷つく場所に立って皆を守って強く気高く戦うお前を私は」

 「・・・エリス?」

 「!・・・だから!!・・・お前が気に病むことなどないのだ!!私も義姉上もフィオナもレオノーラもお前がどう言う人間かは知っているからだから・・・

自分を蔑むのはやめてくれ・・・・」

 そう言いながら鼻声になっているエリスの声を聴いてカミトは

エリスに向けてこう言った。

 「ありがとうなエリス・・・少し気が楽になったゼ。」

 そういうとカミトは・・・頬を赤めらせてこう言った。

 「それでだ・・・その・・・当たっているのだけど・・・」

 「「?・・・・!!」

 エリスはそれを聞いて自身がほぼ裸であったことを思い出して

さっと離れるがカミトは先ほどの感触が忘れられないのかポリポリと

頬を掻いていた。

 するとエリスはカミトに向けてこう聞いた。

 「ならばそのレスティアと『シラヌイ』も?」

 「ああ、『シラヌイ』もレスティアも教導院からだ、あいつらが俺を人間として見てくれていたな。」

 「そうか・・・この事学園長は?」

 「知っている、俺が精霊使いである事は俺が婆さんを暗殺に失敗した時から

分かったってさ。」

 「は・・・暗殺?」

 「マーダーズに一時所属していてな、そん時の初任務が其れだったが腕っぷしを買われて『シラヌイ』の解析も兼ねて屋敷で働くことになったんだ。・・・

レスティア前のブレイドダンスと同時期に行方不明になったんだ。」

 「ならばお前が学園に来たのは」

 「ああ、レスティアの情報と引き換えにこのブレイドダンスに出場しろって

言われてな。後はお前が知っているだろう?」

 「そう・・・だな。」

 それを聞いてエリスはそれ以降もカミトに色々と聞いていた。

 時間を忘れ・・・只々互いの知りあえるかのように・・・ゆっくりと。




 次回は・・・あいつです。


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黒騎士戦

 黒騎士VSカミト&エリス


 「等々嵐になったな。」

 「ああ、義姉上達は心配しているであろうな。」

 カミトとエリスは互いにそう言いながら外を見ていた。

 嵐となってしまい激しい風と雷の音がする中で・・・カミトは何かが聞こえた。

 「今のは・・・?」

 「カミト?」

 エリスはどうしたんだと思っているとカミトは耳を澄ましていた。

 轟音轟く中で・・・剣戟の音が聞こえたのだ。

 「剣舞だ。」

 「何だと・・・!?」

 「《破烈の騎士団》が交戦しているのかもしれない・・・急ぐぞ!」

 「ああ!」

 互いにそう言って2人は未だ生乾きの制服の上着を

(エリスは下着を着ていない)羽織って駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人は激しい森の中で打ち鳴らされる剣戟の音頼りで向かって行くと

開けた場所に出た瞬間に・・・地面に倒れ伏した・・・アレイシア精霊学院の

生徒達がそこにいた。

 「こいつらは《チーム・ワイヴァーン》!?」

 「学院ランキング一位の強豪だぞ!どうしてこんな!?」

 2人はその光景を見て驚きながらカミトはすぐ様に近くにいた上級生の少女に

駆け寄ってこう聞いた。

 「おい大丈夫か!一体何があったんだ!!」

 「う・・・お前はレイヴン教室の・・・男の精霊使い」

 そういうと彼女がいきなり・・・光に包まれ始めたのだ。

 どうやら魔石を奪われているのであろう、消えようとしていた。

 すると上級生の少女が弱弱しくこう言った。

 「森の向こうで・・・仲間が未だ戦っている・・・助けて・・・!!」

 そういった瞬間に・・・彼女達は消えていった。

 「カミト・・・。」

 「・・・先を急ぐぞエリス。」

 「・・・ああ。」

 エリスはそれを聞いて少し暗くなっていたが急いで向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カミト、この気配。」

 「ああ、間違いなさそうだな。」

 エリスとカミトはそう言って木立の向こうから伝わる・・・禍々しい気配を

感じた。

 そして森を抜けると目にしたのは・・・黒い剣を手に少女に向けて一撃を

与えようとする黒騎士の姿が見て取れた。

 カミトはそれを見て迷わずに黒騎士目掛けて渾身の一撃を見舞った。

 甲高い金属音と共に火花が弾け、それによる反動で黒騎士の剣が少女に・・・

当たることなく地面に突き刺さった。

 すると黒騎士の面から見える紅い眼光がカミトを見据えた。

 「(やっぱりこいつは普通じゃねえ!)」

 カミトは着地してそう思いながら周りを見ていた。

 危うく当たりかけた生徒と・・・反対側・・・黒騎士の真後ろで

倒れている少女が見えてまさかとカミトはこう思っていた。

 「(こいつ一人でエース級の精霊使い5人全員を倒したって事かよ!?)」

 そう、恐怖だ。

 こいつは単体では・・・それどころかメンバー全員でやっても勝てるかどうかの手合いだ、ここは先輩たちを引き連れて撤退が良いかとそう思っていると・・・

エリスが現れてこう言った。

 「カミト!大丈夫か!?」

 「く・・・男の精霊使いに・・・ヴェルサリアの・・・妹か。」

 「学院代表の好で助けてやるよ。其れと勝手にやるからな。」

 カミトは女生徒に向けてそう言いながら周囲の地形を把握していた。 

 右を向けば森が、左を向けば大きな崖。

 下を向けば間違いなく助からない事間違いなしとそう感じていた。

 「(崖っぷちでの打ち合いになると力があんまねえ俺だと無理だ!・・・

ならここは!!)」

 カミトは少し考えて・・・駆けだすと同時にエリスがレイ・ホークで

風の刃を作り出して飛ばすが黒騎士はそれを黒い剣で弾くが・・・

狙いはそれだけではなかった。

 「グォォォォォオオ!?」

 「良し!かかったな!!」

 エリスはそう言って・・・泥と水まみれになった黒騎士を見た。

 先ほどの攻撃は相手の視界を阻害させることも兼ねた攻撃であった為突然の事で黒騎士は慌てている様であったがカミトは其の儘最大の神威を込めた

デモンズ・スレイヤーを振り下ろそうとした。

 「(貰った!)」

 カミトは手ごたえありだと確信するも・・・そうはいかなかった。

 黒騎士は汚泥に四肢を沈めさせるほど低くして次の瞬間に・・・

一瞬でカミトの目の前まで跳躍したのだ。

 「!!」

 嘘だろうとそう思っていた。

 何せあの鎧であそこ迄の跳躍を人間の・・・然も女の子が出来るのかと

そう思ったのだ。

 然しカミトはこうなったらとそう思い其の儘・・・振り下ろした。

 迸る閃光と衝撃によって黒い剣が・・・粉々に砕け散ったのだ。

 「(いける!今の俺なら負ける相手じゃない!!)」

 カミトは勝利を確信して其の儘突き進もうとしたその時に・・・

それは起こった。

 黒騎士の鎧の隙間から・・・無数の黒い糸が飛び出してきてカミト目掛けて

襲い掛かった。

 「何!?」

 「カミト!!」

 エリスがカミトを心配するが寸でのところでカミトは身を低くして

それから回避するとその糸は其の儘・・・カミトの後ろにいた女生徒に

絡みついた。

 「アがあ!?」

 女生徒が短い悲鳴を上げて暫くすると・・・痙攣して意識を失ったと思いきや

その糸が黒騎士の方に戻ったと思えば黒い霧を隙間から勢いよく噴出した。

 「なあ!」

 カミトは皮膚の泡立つような圧迫感を感じてまさかとこう言った。

 「こいつ・・・神威を吸収しているのか!?」

 そういうと・・・上空から声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?兎を追いかけていたら狼に出会ってしまったみたいね。」

 「!!」

 カミトはその聞き覚えのある声を聴いて上を向くと・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レスティア・・・。」

 「こんな所で逢えるなんて思わなかったわ、カミト。」

 レスティアがそこにいたのだ。




 次回は・・・助けが来る!


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同盟

 戦闘の続きです。


カミトは上空にいるレスティアを見て苦々しい表情であったがこう聞いた。

 「そいつが新しい契約者か?」

 そう聞くとレスティアはムッとした表情でこう答えた。

 「冗談はやめて。私はいつだってカミトのものよ。貴方が望みさえすれば。」

 「それじゃあこいつ・・・いや、何だアレハ?」

 カミトは黒騎士を指さしてそう聞くとレスティアはこう返した。

 「これは『ネペンテス・ロア』・・・嘗ての魔王の後継者よ。」

 「『魔王の後継者』・・・だと!?けど俺がいた教導院じゃ」

 「或いは魔王の意志とでも呼ぶべきかしらね。とはいえ、流石に今の状態じゃ

力不足が否めないからもう少し贄が必要なんだけどね。」

 「一体それはどういう意味だ!!」

 エリスは怒り心頭でそう聞くがレスティアは詠唱しながらこう言った。

 「貴方はお呼びじゃないから・・・ここで消えなさい。」 

 そう言いながらレスティアの人差し指の先端から・・・黒い雷球が

生み出されていた。

 それを見たカミトはヤバいと感じていた。

 「(あれは闇魔法の上級クラス『ヘルブラスト』!中級クラスの精霊が

灰に成る程だ、生身の人間なら猶更だ!!)」

 そしてレスティアはそれをエリス目掛けて放つとカミトはエストの柄から

鎖分銅を使ってエリスの前に立ってそれを回し始めた。

 鎖はあらゆる能力を無効にできる為もしかしたらと思ったが・・・

矢張りそうは問屋が卸さなかった。

 「アアアアアアア!」

 全身に激痛が走り、カミトは意識を飛ばされ其の儘・・・崖に向かって

吹き飛ばされて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「させるかぽん!」

 落ちる手前でぽんたが現れて落ちそうになるカミトを掴むと刀を抜刀してそれを岩肌に突き刺して・・・落ちるのを食い止めた。

 「カミトーー!!」

 エリスは崖下で失神したカミトを見つけるとエリスはシグルドを召喚して

ぽんたの方目掛けて飛ばした瞬間に・・・糸の様な鎖がエリスに襲い掛かった。

 「うぐ」

 「一人だと高が知れているけどまあ贄にはなるわね。」

 レスティアはそう言って『ネペンテス・ロア』に神威の吸収を

命じようすると・・・今度は黒い雷が『ネペンテス・ロア』目掛けて

攻撃してきた。

 「馬鹿な!一体どうして!?」

 レスティアは何故とそう思っている間に解き放たれたエリスに向かって・・・

ミラ・バセットが走って救出に来た。

 ぴえー!

 シグルドがぽんたと共に上空に上がるとミラ・バセットは・・・林から現れた

もう一人のレスティア・・・いや、コピーレスティアが現れるとミラ・バセットはこう命令した。

 「最大出力でここら辺一帯を爆炎で目隠しして!」

 そういった瞬間にコピーレスティアが辺り一帯を黒雷で破壊させまくると

そこから煙が立ちこみレスティア達の視界を遮った。

 「ちぃ!これじゃあ見えないわ!」

 そう言いながらレスティアは煙が晴れていく事から確認してみるが・・・

既にカミト達は何処かへと立ち去った後であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐ・・・ああ・・・・・アアアアアアア!」

 焼けるような凄まじい激痛の中でカミトは目を覚ました。

 「ハアア・・・ハアア・・・ハアア・・・かハア。」

 両手の爪を皮膚に食い込ませようとすると・・・既に治療が

行われた後であった。

 そして隣には・・・レスティアの姿が見えた。

 「レスティア!?・・・いや、君は誰だ?」

 カミトはレスティアに似た少女を見て誰なんだと聞くとニコニコと笑って

何も言わないレスティアを見て何だと思っているとどたどたと扉の向こうから

足音が聞こえてそして音が止まった瞬間に・・・扉が開かれた。

 「カミト!大丈夫か!?怪我は!!」

 エリスが何かを持って来てカミトの体の心配をしているとカミトはこう答えた。

 「イヤ大丈夫だ、・・・悪いな守れなくて。」

 「何言っている!お前があの時守ってくれたから何もないのだぞ!!」

 エリスが涙ながらにそう言ってカミトの手を握っていると・・・

カミトは頬を掻きながらこう言った。

 「いやそのな・・・その・・・手。」

 「手?・・・あ。」

 エリスは自身がカミトの両手を握っているのを見て慌てて引っ込んだ。

 そして2人に間に少し桃色な空気が漂うのを感じると・・・

外から声が聞こえた。

 「目が覚めた?カゼハヤ・カミト。」

  「!?」

 カミトは突如現れたオッドアイの少女を見て誰なんだとエリスに聞くと

エリスはこう答えた。

 「彼女の名は『ミラ・バセット』。《破烈の師団》の師団長だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここは一体何処なんだ?」

 カミトはエリスが作ってくれたご飯を食べながらそう聞くと

ミラ・バセットはこう答えた。

 「ここはあの遺跡の上流にある森の中、そこを私達は倒れた木とかを再利用して作った砦よ。一日かかったけど上手く出来ているでしょ?」

 「これをたった一日でか?」

 カミトはそれを聞いて唖然としていた。

 何しろ少し凝った造りの建造物だからだ。

 「近くに洞窟があったからそこを作戦上の拠点にして、ここは近くにある遺跡の監視所も兼ねているからね。」

 そう言いながらミラ・バセットはさてとと言うとこう説明した。

 「あの黒騎士、貴方達はどう見る?」

 「「!!」」

 それを聞いて2人は驚きながら思い思いの言葉を放った。

 「何と言うかあれは・・・気味の悪いナニカだったのは間違いないな。」

 「ああ、それにどう考えてもあれは人間じゃねえっていうのは分かった。」

 エリスとカミトの言葉を聞いてそうねとミラ・バセットはそう言うと

こう続けた。

 「あれは間違いなくブレイドダンスにいてはいけないナニカだと

そう思っている。だから皆と話し合った結果この同盟を思いついたの、

内容は・・・分かっていると思うけど言うわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの黒騎士を討ち取るために貴方達と同盟を組みたいの。」




 そして同盟の結果。


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№について

 №については少し独自解釈があるかもしれません。


「同盟というのは簡単なんだが・・・策でもあるのか?」

 カミトはミラ・バセットに向けてそう聞くと彼女はこう答えた。

 「ええ、詳しい性能は極秘だけど私の契約している聖属性の精霊の力は強力、

それに他の皆もここに出場できるから強いし役に立つ。」

 それにと言ってミラ・バセットはこう続けた。

 「私達には『ぽんた』って言う頼もしい軍師がいるから。」

 そう言うと近くにいたぽんたが腹を叩いて答えるとカミトはこう聞いた。

 「なあ、一つ良いか?」

 「何?」

 「そいつは『№』・・・何だよな?」

 「正確にはおいらは№の精霊だぽん!」

 「序にそこにいる女の子はぽんたが作った偽物。」

 「・・・成程な、道理で。」

 カミトはそう言ってコピーレスティアを見た。

 見た目も魔力も間違いなく言われなければ普通ならば

誤認してしまいそうな位に似ているのだ。

 するとミラ・バセットがカミトに向けてこう聞いた。

 「そういう貴方も№の事知っている様ね?」

 「ああ・・・色々あってな。」

 エリスはミラ・バセットの言葉を聞いて内容を濁してそう答えると

ぽんたがこう言った。

 「それでは同盟の内容についてだがおいら達はあの黒騎士を討ち取るまでを

期限としたいポン。何せおいら達は敵同士、

勝ち残れるのは4チーム迄ともなると期限を設けたほうが

互いにやりやすいポン。」

 「確かにな、ならばそれ迄の間だが魔石の取り分は半々でどうだ?」

 「奇数の際にはメンバーが少ない方に魔石を譲って欲しいポン。」

 「・・・分かった、俺はそれで良いとしてエリスはどうだ?」

 そう聞くとエリスはこう答えた。

 「ああ、私も問題ないと・・・言いたいところだが一つ聞きたい。」

 「?」

 「何故私達なんだ?敗れた『ワイヴァーン』、今だ残っている『ケルンノス』。学院代表の中でも3番手の我々に同盟を持ち掛けたのだ?」

 それを聞いてカミトは確かにとそう思っていた。

 何故ギリギリな自分たちなのかとそう聞くとミラ・バセットはこう答えた。

 「ランクなんてそんなの学院の成績程度の話、実戦ともなれば

それは大きく異なる。それに何故と言えば答えは彼。」

 「俺?」

 ミラ・バセットがカミトを指さすとミラ・バセットはこう続けた。

 「昨晩のルミナリス・セイント・レイシェードとの剣舞を監視用の精霊で

見ていたから。」

 「・・・何時の間に。」

 「あの時結界は破壊されていたからか・・・。」

 カミトとエリスは互いにそう言えばと言って頭を抱えた。

 恐らくあの時に感知用の結界も同時に破壊されてしまったようなのだ。

 だからこそ入ったとしても気づくことが出来なかったのだ。

 そな事知らぬと言わんばかりにミラ・バセットはこう続けた。

 「あの時皆貴方達が初日で敗北すると予想していたのだけど貴方はルミナリスに勝つことが出来た。」

 「いや、アイツはあの時何者かに操られていたから勝ったという

言葉にはならない。」

 「其れは恐らく№の力だぽん。№は人の闇の部分を増幅させて支配させることが出来るから操られていたという意味では強ち間違いではないポン。」

 「闇の部分か・・・成程な。」

 それを聞いてカミトは確かにとそう思った。

 ジオ・インザーギでは『魔王』になりたいという欲望が、あの上級生2人は

負けた腹いせ、そしてルミナリスはレン・アッシュベルに対する敵愾心が

増幅されていた事を考えると納得がいったのだ。

 そしてぽんたはカミトを見てこう続けた。

 「だが中には№の力を制御して使いこなす者も確かにいるのだポン。

カミト殿の様に。」

 「・・・俺にも№ってまさか~~?」

 カミトはまさかとそう言うとならばとぽんたがこう言った。

 「其れならば少しばかり力を引き出してみてはどうかポン?もしかしたら

出るかもしれないポン?」

 それを聞いてじゃあとカミトはそう言って神威を出すと右手にある

エストの精霊刻印から・・・101の数字が浮かび上がった。

 「な!?」

 エリスはそれを見て驚くがカミトも驚いていて一体何時とそう思っていた。

 するとエストがカミトに向けてこう言った。

 「恐らくですがカミトが呪装刻印を刻まれたあの時にではないでしょうか?」

 「あの時・・・確かにそう思ったら」

 カミトはそれを聞いてあの時以外にないなとそう言うとそれではとぽんたが

三人に向けてこう言った。

 「ならば同盟締結の証をしなければいけないポン。」

 そう言うとミラ・バセットはカミトに向けてこう言った。

 「それじゃあだけど・・・《誓約(ゲッシュ)》のやり方は知ってる?」

 「当たり前だろうってエリス何でむっとした表情になってるんだ?」

 「・・・知らん。」

 ぷいと頬を膨らませてそっぽを向いたエリスを見てカミトはこう思っていた。

 「(こりゃあ試合が終わったら何かしてやらねえと怒りそうだな。)」

 そう思いながらカミトは《誓約(ゲッシュ)》の準備を始めた。

 《誓約(ゲッシュ)》とは精霊使い同士で交わされる誓いの儀式であり

こう言った重要な取り決めの際に使われるものだが違反すれば

ペナルティとして長期にわたった地脈の恩恵を失う、精霊に敵意を向けられる、

最悪精霊召喚が出来なくなるというものである事から大事にしなければ

ならないのだ。

 そしてカミトがミラ・バセット背の高さまで腰を下げるとぽんたがこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでは《誓約(ゲッシュ)》を執り行うポン!」




 次回は誓約のやり方。


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血の盟約

 契約は果たされた。


「そういえば貴方ってゲッシュについて知ってるの?」

 ミラ・バセットがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、それなりにな。」

 そう言うと互いに右手の親指を出し合って押し付けると互いにこう言った。

 「我は精霊王の名に懸けて誓約する。例え地が裂け、天が落ちようとも」

 「我と汝の交わしたこの契り、決して違える事は無い。さもなくば」

 

 

 

 「「わが身は永久の劫火に焼かれ、その影迄も灰にならん。」」

 精霊語で互いに誓約の言葉を紡いだ後に・・・ミラ・バセットがカミトの頬に

口づけをした。

 「アアアアアアア!」

 エリスはそれを見て悲鳴交じりでそう言うとミラ・バセットはカミトを見て

こう言った。

 「ゲッシュの成立には口づけが必要なの知ってイルでしょ?」

 「そ・・・それはそうなんだがな・・・。」

 カミトは困り顔でエリスの方をチラリと見たが・・・凄い嫉妬の炎が

燃え上がっているのが見て取れた。

 それを見たカミトは少しやばいなとそう思いながら・・・

自らはミラ・バセットの手に口づけした。

 「これで良いか?」

 カミトがそう聞くとミラ・バセットはこう答えた。

 「意外に紳士で驚いた。」

 「意外には余計だろ。」

 そう言うと今度はぽんたが2人の間に割って入ると紙が置かれた机をすすっと

置いて立ち去るとこう言った。

 「それでは今度は念のためと言う訳で血判状にサインしてもらうポン。」

 「血判状?」

 なんだそれはとカミトはそう聞くとぽんたはこう答えた。

 「こいつはおいらがいた世界の日本において互いに覚悟を決めているという証で指にちょっと血を垂らしてそれに判、つまり指の印を押して貰う事だポン。」

 「其れって・・・ちょっと怖いな。」

 「まあこれをするくらいの覚悟、自らを危険にさらしても成し遂げるという

意味合いが強いポン。」

 そう言うと机の上に置いてあるナイフを見て互いに指にちょっと傷を入れて

血を出して判を押した。

 そしてぽんたはそれを全員に見えるように広げるとこう言った。

 「これにて!ゲッシュは完了したことを伝えるポン!!」

 そう言った瞬間にそれぞれ拍手を送るとそれじゃあとカミトは立ち上がって

こう言った。

 「俺達は帰るよ、長居は無用だしな。」

 「・・・ああ。」

 エリスは少しムッとした表情を浮かべながら立ち去ろうとすると

ぽんたが2人を止めてこう言った。

 「其れは駄目だポン、もうすぐ夜になる。森の中での行軍は危険が

付き纏うポン。」

 「大丈夫だ、俺は夜の剣舞には慣れているから。」

 「「「「「「「夜の剣舞・・・・・・」」」」」」

 それを聞いてミラ・バセットのチーム全員がジト目でカミトを睨んでいると

カミトは慌ててこう言いかえた。

 「待て!そんな夜の運動会的なニュアンスじゃないぞ!そうだよなエリス!!」

 カミトはそう言ってエリスを見るとエリスはと言うと・・・。

 

 

 

 

 

 

 「よよよよ夜のケケケケ剣舞わわわわ私がかかかかかカミトと」

 「・・・全然駄目だった。」

 カミトはショート仕掛けているエリスを見てそう呟くとぽんたがこう言った。

 「まあ仕方がないポン。男と女が夜にする事と言えば子作りが相場と」

 「お前は黙っててくれ!話がややこしくなる!!」

 ぽんたの言葉に流石にヤバいと感じたカミトはぽんたに黙ってくれるように

頼むとぽんたは冗談だと言ってこう続けた。

 「然し流石に怪我人を放っておいて帰すのは武士の恥だポン。

先ずは食事でも摂って風呂に入って寝るぽん。」

 「風呂ってそんなもん迄あるのかよ。」

 カミトは呆れ眼でそういうとぽんたはこう続けた。

 「まあ本来ならば水浴び場程度で良かったのだがこ奴らが折角ならばと

願われては仕方がないポン。それに風呂は心の栄養と言って身も心も

さっぱりさせて体調を良くさせるとも言うポン。」

 「・・・まあ、偶には良いか。」

 俺達も水だったしなとそう言うとエリスは少し決まづそうな顔でこう言った。

 「良いのかな・・・我々だけ風呂に入っても。」

 そう言うとカミトはこう返した。

 「別に良いだろう?俺達雨で体が冷えそうだったしな、それに折角の好意を

無駄にしたくないしな。」

 そう言うとじゃあと言ってエリスも了承するとぽんたがこう言った。

 「何だったら風呂の時は誰も入らない様に結界を張っておくポン。

その間まあ一時間は2人っきりで過ごすと良いポン。」

 「お前何時までこの会話続ける気だ!!」

 それを聞いてカミトはぽんたに向けてそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてお風呂。

 「ふ~、いい湯だな。」

 カミトは風呂の中でそう呟くと音が反響していた。

 今はたった一人、偶には良いかなとそう思っていると・・・声が聞こえた。

 「カミト・・・今大丈夫か?」

 「おお、今良いが?」

 どうしたんだとエリスに向けてそう言うと・・・・。

 「お邪魔する。」

 「いやなに入ってんだ!?」

 タオルで包んでいるが全裸のエリスが湯気の中から姿を現したのだ。

 それを見てカミトはヤバいと思って背中を向けると・・・

エリスがくっついてこう言った。

 「・・・なあ、カミト。」

 「な・・・ナンダエリス?」

 カミトは噛み噛みでそう聞くとエリスはこう答えた。

 「あの時・・・守ってくれてありがとうな。」

 「ああ・・・あの時か、あの時俺もぽんたがいなかったら落ちて

死んでいたな。」

 お互いにヤバかったなと話すとエリスはこう言った。

 「・・・だから。」

 「?」

 エリスはそう言って後ろから・・・カミトの頬に口づけした。

 「!!」

 「・・・これはほんのお礼だ。」

 そう言って少し離れて互いに湯を嗜んだがカミトは自身の頬の感触を思い出してこう呟いた。

 「・・・何だよこれ。」

 そう呟くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 因みにこの時ヴェルサリアとレオノーラは何やら殺気めいた何かを感じていた。
 「「むむ!何だか嫌な予感が!!」」
 「何言っているの貴方達?」
 それを聞いて阿保の子を見るような目で2人を見るフィオナであった。


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同盟を祝して

 先ずはミュアサイドからです。


そしてカミト達が就寝(他のメンバーは精霊と見張り)で起きている中で・・・

戦闘が・・・いや、最早一方的なものとなっていた。

 「何だあれは!?」

 「まさか軍用精霊か!!」

 「!(^^)!ピンポーン!大正解!!」

 巨像の上でミュアがそう言いながら小国の拠点を破壊してその重い一撃で

精霊毎薙ぎ払った。

 「ほい、こんなものね。リリィ、魔石の回収宜しく~~♪」

 「やるならやるでもう少し丁寧にやれ!ああもう!!こう瓦礫が多くては

埒がいかん!!」

 リリィはそう言いながらも倒れている代表選手から魔石を奪い取って撤収する中でミュアはリリィに向けてこう聞いた。

 「ねえ、リリィ。一つ聞いて良い?」

 「何だ?」 

 「あの『ネペンテス・ロア』だっけ?レスティアと一緒に姿晦ましているけど

居場所って分かる?」

 「分かる訳ないだろう、その前に私もあんなバケモノを視界に入れたくない。」

 「確かにねエ、初めて見た時感じたもんねえ~~。」

 

 

 

 

 

 

 

 「あんな悍ましい奴見たことすらないってね。」

 そう言いながらもミュアは鳥肌を立たしていると更にこう聞いた。

 「リリィはさ、あの偽物と話すんだから聞いてるんでしょ?アイツの正体??」

 そう聞くとリリィはこう答えた。

 「ああそう言えばこう言っていたな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あれは私や彼と同じ古の時代に葬られた

《闇の精霊王(レン・アッシュドール)》の意志その物にして嘗ての

魔王の後継者だ。』

 「って言ってたぞ。」

 「何ソレ?・・・まさかあの女あの呪法を!?」

 「恐らくな、だが我らは所詮は傭兵。雇われた以上はそれなりに

働かないとな。」

 「そうだねえ・・・そう言えばあいつよくあんなもん喰ってるけど体もつの?」

 「持たないだろうな・・・もって数日。この大会その物が終わるまで

持てればだがな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝の明朝

 「それでは出発するぽん!」

 ぽんたは全員にそう言って出発した。

 全員食事は簡単に済ませており各員が所定の位置で迎撃準備をしていた。

 そんな行動をして二時間後にカミトとエリスはチームと合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでは同盟を祝して・・・乾杯!」

 『乾杯!』

 ヴェルサリアの音頭と共にささやかな宴が催された。

 蜂蜜入りのサンドイッチ

 煮豆

 野草と茸のサラダ

 川魚のパイ包み

 シチュー

 デザートはフルーツ缶詰

 それなりの食卓に加えて《破烈の騎士団》側も用意されていた。

 ぽんたお手製手巻き寿司(川魚)と野草であったが初めて見る食べ物に

カミト達は興味津々で食べてみた。

 「へえ、結構いけるな。」

 「確かにな、野草と魚次第で組み合わせが多くあっていける。」

 「好みに合わせてか・・・色合いも考えると創作料理としていける。」

 「このご飯御酢だっけ?良い味してるじゃない?」

 「然しこれは何処の国の何ですか?」

 レオノーラがそう聞くとぽんたはこう答えた。

 「其れはおいらの世界では《日本》と呼ばれていてこっちだとクイナ帝国の更に東に位置する島国だポン。」

 「「「「!!!!」」」」

 それを聞いてヴェルサリア達はカミトを見つめた。

 これはカミトの国の食事だと聞いたのだからだ。

 然しカミトはこう返した。

 「いや・・・俺こういうの食べたことなくて。」

 それを聞いてエリスは納得がいくと同時にこう思っていた。

 「(そうか、カミトは幼い時に教導院にいたんだったな。・・・

生まれ故郷がどんなものか知らないか。)」

 そう思うとエリスはこうも思っていた。

 「(何時かカミトにも知って貰いたいな。故郷の思いを。)」

 そう思いながら煮豆を食べているとミラ・バセットはエリスに向けて

こう聞いた。

 「煮豆頂戴。」

 「ああ良いが、良いのかこれで?」

 他にもあるんだぞと聞くとミラ・バセットはこう返した。

 「良い、こっちが何だかぽんたのと同じだから。」

 「そうか。」

 そう言って煮豆をよそうとカミトはこう聞いた。

 「そういえばお前とぽんたってどうして今に至るんだ?」

 そう聞いて《破烈の騎士団》のメンバーはどうするかと聞いていると

ミラ・バセットはこう答えた。

 「どうせ同盟関係なんだし言っても支障はない。」

 そう言って話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今から三年前

 ミラ・バセットは自身の眼が《封魔眼》であることが分かり両親から

売られたのだ。

 封魔眼とは精霊使いの家系の子供がごく稀に生まれる精霊鉱石の一種で

強大な精霊が封印されていることから危険視されて迫害か権力者によって

兵器として利用されるのだ。

 それからと言うもの教導院と同じような訓練を受けており

感情が失いかけていた時期の頃だった。

 「何?・・・あれ???」

 ミラ・バセットはその時自身の部屋に入っていたカードを取るとそれが・・・

動物に変わったのだ。

 すると動物はミラ・バセットに向かってこう聞いた。

 「ここは何処だポン?」

 「貴方は精霊?」

 「その通り!おいらは№の精霊《№64 古狸三太夫》だポン。」

 ぽんたと呼んで欲しいポンと言うと君はと聞くと自身の名前を名乗った後に

ぽんたはこう続けた。

 「ならばここは何処の国・・・異国なのは分かるが何処なのだポン?」

 「ここは《ロッソベル公国》よ。」

 そう言うとぽんたはこう言った。

 「お前?おいらを触って何も感じないのか?」

 「私は感情が無いから。」

 そう言うとぽんたは少し考えてこう言った。

 「だったらおいらが思い出してやるぽん!」

 「何を?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「感情を思い出してやるぽん!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回はミラ・バセットの過去です。


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過去語り

 ミラ・バセットの続きです。


 それからと言うものぽんたはミラ・バセットに感情を思い出させるために

色々と工夫したり街に繰り出させもした。

 工夫と言うのはびっくり箱を渡して驚かせたり『日本』の怖い話や昔話などを

聞かせてやったり街に繰り出すときはぽんたが兵士に化けてミラ・バセットを

街の出店や色々な所に案内させてあげたのだ。

 その中でミラ・バセットは・・・何時の間にか笑う事が増えてきたのだ。

 だがそんなのが・・・続くわけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 「返して!それは」

 「駄目だ!貴様は所詮は兵器!!我々がルギア王国と並び立つには

貴様の力を存分に発揮させる!その為に感情など」

 「そんなの貴方達が勝手に決めたことでしょ!私がいつそう決めたのよ!!」

 「ええい黙れ黙れ黙れ!貴様みたいなバケモノは大人しく我らの」

 

 

 

 

 

 

 「ちょっと待ったーー!!」

 そう言って何処かの貴族の家に・・・ぽんたが入ってきたのだ。

 「何だこの動物!精霊か!?」

 「おいらはぽんた!ミラ・バセットを助けに来たポン!!」

 そう言うが貴族の男性は醜悪な笑みを浮かべてこう言った。

 「ハン!何だ所詮は少し頭が良い程度の小さな精霊が良くほざく、

貴様など兵だけで充分だ!!」

 そう言うと周りから・・・鎧を着た男性たちが現れた。

 然しぽんたは彼らに向かってこう言った。

 「お前たち筈かしくないのか!未だ小さな、下手したら貴様らと同じ年の

子供がいるというのに苦しんでいるその子を放っておいて

それで良いのかポン!!」

 「・・・確かにそうかもしれないが命令は命令だ。」

 そう言って騎士達が武器を構えるとぽんたはこう言った。

 「ならばおいらもお主たちのその主君を思う敬意に免じて・・・戦うポン!」

 そう言った瞬間にぽんたが・・・姿を変えた。

 『古狸三太夫』に。

 「な、精霊が変わった!?」

 「一体どうなっている!!」

 騎士達はぽんたに向けてそう言っているとぽんたはこう呟いた。

 「さあてと・・・誰から来るポン!?」

 そう言ってそこからは・・・ぽんたの無双であった。

 №であった為その能力は人間以上に高い身体機能と喜楽の部下であった経験から戦での戦い方は熟知していたので騎士の動きなど・・・意味がなかった。

 全員倒すとぽんたは貴族に向けてこう言った。

 「後はお前だけだぽん。」

 「ヒィイイイイイイイイイ!!」

 貴族はぽんたに恐怖するとぽんたに向けて命乞いをした。

 「ままま待ってくれ!先ほどの事は謝ろう!

ミラ・バセットの扱いは不当にしないと他の貴族にも言及する!

金でもなんでも好きにやるからドウカ命だけは!!」

 そう言うとぽんたは貴族の胸倉をつかむとこう言った。

 「それで許せるほど・・・ミラの心の傷は治せないんだぽん!!」

 そう言ってぽんたは顔に一発拳をお見舞いしようとして・・・

フェイントで股間に鎧の重さを+した蹴りを見舞った。

 「!!!!!??????」

 貴族の男性はあまりの痛みに悶絶しているがぽんたは其の儘・・・

顔に一発拳を今度こそ見舞って・・・吹き飛んでいった。

 「プギャアアアアアアアアア!!」

 そして殴り飛ばされた貴族の男性は其の儘階段に一直線に吹き飛んで

その勢い其の儘に上に上がって・・・気絶した。

 「良い気味だポン!」

 ぽんたはそう言ってミラ・バセットの方を向くとミラ・バセットは

ぽんたに・・・抱き着いたのだ。

 「ぽんた・・・ありがとう。」

 「どういたしましてだポン。」

 そう言ってミラ・バセットと共に部屋に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからと言うものミラ・バセットの周りの環境は変わった。

 兵器扱いなどされることもなくそれどころか強力な精霊を

複数契約しているという噂が忽ち広がり軍もそれを聞いて

ぽんたはどの様な精霊なのか、何の種族なのかと、何処で契約したのかなどと

聞かれるが代わりにぽんたが説明するも・・・気がふれたのかと言う

内容ばかりである。

 異世界にある№と言う力。

 ヌメロンコード

 バリアン

 自身が嘗て仕えてきた主君が邪神によって運命を狂わされたこと

 通常ならば信じられないという人間が大多数を占めていたがならば

この精霊は何なんだという疑問がまた出てしまう為取敢えずは

そういう事にしようかと思っていたが・・・ぽんたがある物を出してこう言った。

 「これこそが拙者が異世界から来たという証の

『デュエルディスク』なるものがここにあるでぽん!」

 『『『『『最初からそれ出せ‼!』』』』』

 それを見て遅いわと言う内容であった。

 世界でたった一つであった為解析するのに分解できないという

難点があったが見ただけでは分からないという事で起動させて見せた処・・・・。

 『『『『『これ・・・納得するしかないな。』』』』』

 そう言って納得させると同時にこう言う人がいた。

 「本当にぽんただけなのか?」

 『『『『!‼!!』』』』

 それを聞いて酷内での話し合いの結果、ブレイドダンス中に任務として

№の収集、情報解析等が含まれてしまい・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そして今に至るって訳、ぽんたは私の契約精霊って感じなの。」

 「そうか・・・君もか。」

 「?」

 「いや、こっちの話だ。」

 カミトはミラ・バセットに対してそう答えるがこう思っていた。

 「(この子は俺なんだ、昔・・・レスティアに救われた時の。)」

 そう思いながら食事をしていると・・・左手に激痛が走った。

 「!!」

 「どうしたの?」

 ミラ・バセットがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「奴が来た。」

 「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「随分と強固で最悪な『拠点』を構築したわね、流石は元精霊姫候補のお姫様」

 レスティアはそう言いながらも前方にある聖結界を見ていた。

 闇属性でもあるレスティアからすれば悪意の塊としか言いようがないのだが

仕方ないと言ってこう言った。

 「未だ完全な状態じゃないけど仕方ないわね。」

 通るわよと言って・・・黒騎士ネペンテス・ロアが現れた。

 「さあ、剣舞を舞いましょう。カミト」

 そう言った瞬間にネペンテス・ロアの背中から・・・

4本の蜘蛛の足が現れて結界を破壊し始めた。

 




 次回は戦闘。


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ネペンテス・ロアバーサスカミト

 ネペンテス・ロア戦開始。


「!!」

 「どうしましたフィオナ?」

 レオノーラは突如真剣な表情をしたフィオナを見てそう聞くとフィオナは

こう答えた。

 「如何やら敵が来たようね。」

 『『!!』』

 それを聞いて全員が驚いているとフィオナは辛そうな表情でこう続けた。

 「この感じは多分・・・あの鎧ね、吐きそうだわ。」

 そう言うとミラ・バセットとカミトは互いのチームに向けてこう言った。

 「皆、フォーメーションをとって、いつも通り・・・とはいかないだろうけど

近くの人間とコンビ組んで!」

 「「「「ォォォォ!!」」」」

 「俺達が前衛だ!気を引き締めるぞ!!」

 「「「「ォォォォ!」」」」

 全員が声を出して前面に出てみるとそこで目にしたのは・・・

あの黒騎士ネペンテス・ロアであった。

 そしてもう一人・・・上空にいた。

 「嬉しいわカミト、邪魔者が何人かいるようだけど仕方ないわね。」

 レスティアが上空でそう言うとカミトはこう返した。

 「そうかよ、こっちは今からそいつと戦うんだが一つ良いか?」

 「何かしら?」

 「・・・あいつは人間なのか?」

 カミトは真面目な表情でそう聞くとレスティアはにこりと笑ってこう返した。

 「さあ?それは自分で確認しなさいカミト。」

 そう言うとレスティアは精霊語でこう語った。

 「我は彼方より齎されし無窮の闇、永久の裁きを齎す者。」

 そう言った瞬間にレスティアが消えたと思いきや

次の瞬間にネペンテス・ロアの手に漆黒の禍々しい黒い焔を思わせる

大剣の様な魔剣が現れるとエリスがこう呟いた。

 「何で・・・何でレン・アッシュベルと同じ剣を!?」

 「(ヴォーパル・ソード。また懐かしい奴が出たな。)」

 嘗て自身がレスティアと共にブレイドダンスを勝ち抜いたあの剣。

 そして今自身が持っているのは闇の対となす光の剣。

 そしてカミトは全員に向けてこう言った。

 「皆、あの剣は俺が何とかするからサポートを頼みてえんだが。」

 そう言うとミラ・バセットがこう聞いた。

 「・・・勝算は?」

 「・・・五分五分・・・性能は同じだからな。」

 後は運だなと言うとミラ・バセットはこう答えた。

 「分かった、けどあなたがやられそうになったら全員でかかる。

それで良いね。」

 「ああ、頼む!」

 カミトはそう言った瞬間にミラ・バセットが全員に向けてこう言った。

 「総員離れて!多分カミト一人の方が効率が高いと思うけど万が一に備えて!」

 そう言った瞬間にそれぞれ(カミトのチームはエリスとヴェルサリアと

レオノーラが苦々しい表情をしているが)離れるとカミトはこう言った。

 「行くぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おオオォォォォオオ!!」

 カミトは跳躍して高く飛ぶと其の儘聖剣をネペンテス・ロアの頭部に

振り下ろしたがネペンテス・ロアはその巨体に似合わない俊敏さで

その一撃を魔剣で受け止めるとカミトはこう思っていた。

 「(こいつ!前よりも強くなってやがる!!)」

 そう思いながらカミトは如何すべきかと考えた。

 本来体格差のある人間とやりあう時は力任せでやっても無理だ、

なので相手の間合いに入りこまなければいけないのだが

ネペンテス・ロアはそれを感じたかのように・・・魔剣を振り下ろしたと

同時に黒雷がカミトに向けて襲い掛かった。

 「!?」

 マズイと感じたカミトは賺さずに横に跳躍して躱すが放たれた黒雷が

地面に当たると巨大な穴が出来上がっていた。

 「(『ヴォーバル・ブラスト』、俺がレン・アッシュベルだった時に

よく使った技を今度は俺が受ける番とはな!!)」

 情けねえゼとカミトはそう思っているがだけどなとこう思っていた。

 「(手前はレスティアを俺の時の様に使いこなしてねえな!!)」

 そう思っていたのだ。

 思えばなぜ最初に自分と戦った時にレスティアを使わなかったのかと

そう思っているとある仮説を思いついたのだ。

 「(こいつは最初普通の大剣だった、つまりレスティアを使いこなすほど時間が無かったんだ!!)」

 そう、使い慣れていない彼女を使わないからこそ今使っても所詮は付け焼刃。

 「(勝機は今!)」

 そう思っているとカミトはこうも考えていた。

 「(『ヴォーバル・ブラスト』はタイムラグがある、そこをつく!!)」

 その時が今だと思っているカミトは其の儘テルミヌス・エストに装備されている鎖鎌を使ってネペンテス・ロアの腕に巻き付いた瞬間に何やら・・・

様子が可笑しかった。

 「が・・・アアアア。」

 「苦しんでる?」

 カミトはそれを見てそう感じるが今がチャンスと思い其の儘ネペンテス・ロアの頭部目掛けて・・・聖剣を振り下ろして破壊した。

 ばりぃイインと砕け散る鎧から見えたその顔は・・・。

 「!?」

 カミトはそれを見て目を見開いていた。

 何せ相手は・・・人ではなかったのだから。

 蜘蛛の様な鋏を口に持ち、眼も8つあった。

 正に・・・バケモノだと思っているとレスティアが魔剣から元の姿に戻って

こう言った。

 「あら?正体が分かっちゃった??」

 「レスティア!こいつは一体何なんだ!!!」

 カミトはそれを見てそう聞くとレスティアはこう答えた。

 「あれは人間じゃない。」

 「じゃあ一体あれは?」

 「あれは禁呪で蘇った魔王の後継者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レン・アッシュドールの意志ヨ。」




 そして真実は語られる。


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解かれた悪意

 それはあってはならない存在。


「レン・アッシュドールの意志・・・どういう意味だレスティア!?」

 カミトは大柄の蜘蛛の顔をした男性を見た後にレスティアを見て大声でそう聞くとレスティアはこう答えた。

 「その人間は嘗て貴方と同じく『魔王の後継者』と呼ばれ、

そして処刑された人間だったのを禁忌の呪法で蘇った。それくらいしか言えないけど後は頑張ってねエ。」

 レスティアはそう言いながら離れるとカミトはこう言った。

 「相手が人間じゃなくて亡者なら遠慮する必要性はないな。」

 そう言ってデモン・スレイヤーを構えるとレスティアはカミトの表情を見て

こう言った。

 「その表情素敵だわカミト、あの頃を思い出すわね。」

 「いや、今の俺は三年前の俺じゃない、アレイシア精霊学院代表

〈チーム・スカートナイト〉のカゼハヤ・カミトだ。」

 「そう・・・貴方はあの頃よりも弱くなってしまったわ。」

 「其れは如何かな?確かに俺はあの時よりも弱くなっちまったがな・・・

俺はあの学院で三年前に婆さんから言われた弱さを知って強くなった。」

 「・・・それって何?」

 「仲間だ。」

 「・・・今何って言ったの?」

 レスティアは僅かであるが・・・苛立つとカミトは笑ってこう言った。

 「ハハハハハ、お前がそんな顔するなんてな。『シラヌイ』が見たら

間違いなくこう言うぜ!《お前もそんな顔するんだな》ってな!!そうさ!

俺はあそこで同じ様に機竜を使う仲間を!俺の過去を知っても変わらず

接してくれる女性が!!俺をここ迄導いてくれた仲間達があの時無かった強さを

手に入れたんだ!!今の俺はレスティア!あの時よりも強くなってるんだよ!!!」

 カミトはそう言うとレスティアそうと言ってこう続けた。

 「ならその強さ、確かめて貰うわ。」

 そう言うとレスティアの指先から黒い閃光が迸った瞬間に

ネペンテス・ロアの鎧が・・・黒い霧となって消えた。

 すると黒い霧はネペンテス・ロアの体を覆うとそれは黒い体となって現れた。

 鍛え抜かれた体が露わとなるがよく見れば幾つもの・・・呪装刻印が

刻まれておりそれは首元に迄及んでいた。

 そしてレスティアはもう一度魔剣の姿になってネペンテス・ロアの下に戻ると

ネペンテス・ロアまるで・・・喜んでいるかのような表情で

怨嗟の様な声を上げた。

 「アアアアアアアアアア!!」

 それを聞いたカミトは唇を舐めて・・・指先が僅かに震えているのを見て

こう呟いた。

 「こいつは本気でヤバそうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これはちょっとやばいわね。」

 ミラ・バセットはそう呟きながらその戦闘を眺めていた。

 まさかあんなバケモノをブレイドダンスに出場させるとはとそう思っていると

ぽんたはネペンテス・ロアを見てこう言った。

 「アイツから№の力を感じるぽん!」

 『『!!』』

 それを聞いて全員が目を見開いていた。

 何せ№ともなれば所有者によってはとんでもない力を発揮するからだ。

 特にヴェルサリア達は何がどれ程の力なのかを既に体験しているため

それをカミト一人だけにヤバいと思っているとミラ・バセットはフィオナに向けてこう聞いた。

 「ねえ、この拠点ってまだ使える?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「ええ使えるわ、と言ってもあいつが無理やり壊してしまったから

中枢以外は使い物にならないかもしれないけど。」

 そう言うとミラ・バセットはぽんたを見て・・・ぽんたはそれを見て

こう言った。

 「分かってるポン、今戦っている戦友の為ならばおいらは力になるぽん。」

 そしてそれを聞いた後にチーム全員を見て・・・こう言った。

 「仕方がないな、こっちがフォローしてやるからやって来い。」

 そう言うとフィオナはミラ・バセットに中枢迄案内させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おオオォォォォオオ!!」

 カミトはデモン・スレイヤーを構えて突進していくとネペンテス・ロアは体から蜘蛛の糸の様な触手を放った。

 カミトは避けていくがその内の1本に当たった瞬間に・・・虚脱感に襲われた。

 「(こいつは神威を吸収するのかよ!!)」

 体調から見てそう確信すると一度離れてこう考えた。

 「(このままじゃあ神威が尽きてしまう!それに比べてあいつは今まで

何人の精霊使いの神威を吸収したんだ!?)」

 内容次第じゃあ小国一個師団クラスの神威じゃねえのかとそう思っていると

ネペンテス・ロアは魔剣から・・・《ヴォーバル・ブラスト》を放った。

 「ヤバい!?」

 カミトは嫌な予感を感じて避けると避けた先にある森が・・・跡形もなく精霊毎吹き飛んでいた。

 「・・・マジかよ。」

 カミトはそれを見て顔を青くした。

 あんなの《シラヌイ》があったとしても受け止めきれないぞと

そう思っていると・・・頭の中から直接声が聞こえた。

 ー-どうかしら?ネペンテス・ロアの力は?

 「レスティア!俺に直接かよ!!」

 ー-目覚めなさいカミト、貴方の本当の力を私に見せて

 「俺の本当の・・・?」

 ー-ええ、《彼ら》さえ殺すことが出来る本物の魔王の力を

 「その力があれば俺は皆を・・・三年前に香苗られなかった《願い》を

叶えられるのか?」

 ー-そうよ、そして今目覚めなければ貴方は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「吹き荒れよ《凶つ風》!」

 「斬り裂け《斬楓》!!」

 レスティアが言っている中でエリスとレオノーラが互いの魔法で触手を

弾き飛ばすと・・・砲撃の音と共に爆音がネペンテス・ロアを中心にして

響き渡った。

 それはヴェルサリアの《サイレント・フォートレス》の砲撃であった。

 それを見てカミトはレスティアとネペンテス・ロアに向けてこう言った。

 「悪いな、今回はチーム戦でな。それに俺はそんな良く分からない力に

興味はないんだよ!!」

 そう言うとカミトは三人の・・・いや、ミラ・バセットのチーム合わせて

7人の前に立ってこう言った。

 「ここから先は・・・俺達のターンだ!!」




 次回は・・・あの精霊が活躍する!!


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ネペンテス・ロア戦  決着

 やっとここまで来れた。


「ここよ!」

 フィオナはミラ・バセットに向けて拠点の中枢に案内すると

ミラ・バセットはぽんたを見てこう言った。

 「行くよぽんた!」

 「了解だぽん!!」

 ぽんたがそう言った瞬間にミラ・バセットの眼の封印が・・・一部であるが

解かれた。

 「何て力なの!?一体どんな精霊を封印しているのよ貴方!!?」

 「これでも・・・未だ一部・・・。」

 「これで一部だなんてこれは確かに貴族が貴方の力を兵器に使いたいわけね。」

 「!!・・・どうして・・・それ・・・を。」

 「偶然って言うか・・・ハイスミマセン、精霊使って聞いちゃってました。」

 「・・・悪耳。」

 ミラ・バセットはフィオナに向けてそう呟くが額に大量の汗が流れていた。

 何せ彼女は拠点の地脈を使って封魔眼に宿る精霊の力を解放させるためなのだ。

 然しそんなことすれば間違いなく封魔眼は間違いなく壊れてしまうのに

どうしてだと思っているとミラ・バセットはフィオナに向けてこう言った。

 「彼は・・・私と同じ」

 「?」

 「心を・・・失い・・・かけた・・・そんな目。」

 「心を・・・?」

 フィオナはそれを聞いて何だろうと思っているがミラ・バセットはこう続けた。

 「私に・・・とって彼は・・・鏡。・・・だから!!」

 そう言った瞬間に封魔眼に映ったのは・・・・。

 「八つの・・・光・・・けど・・・強い闇に・・・!!」

 するとミラ・バセットの体に激痛が走った。

 「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 「ミラ・バセット!無理しないで!!」

 「ミラ!!」

 「大丈夫・・・ぽんた・・・!!」

 ミラ・バセットが目から溢れ出る蒼白い雷火が迸った。

 このままでは封魔眼が壊れてしまうのに彼女は止めなかった。

 その理由は。

 「(皆が戦っている!同盟を持ち掛けたのが私なんだから・・・

責任をとるために・・・そして!!皆の為に!!)」

 そう思った瞬間にミラ・バセットの懐から・・・一枚のカードが姿を見せた。

 それは・・・。

 「これ・・・ぽんたの。」

 そう、ぽんたのカードだ。

 するとぽんたのカードから光がミラ・バセットの封魔眼に注がれた瞬間に

封魔眼に数字が浮かんだのだ。

 ・・・№64が。

 すると頭の中にある精霊語が浮かび上がって詠唱した。

 「高潔にして従順なる聖王の戦士たちヨ!!」

 神威の力が封魔眼に流れ始めるのを感じる。

 それと同時に封魔眼のある左目の周りに隈らしきものが浮かび上がるが

ミラ・バセットはこう続けた。

 「汝らの剣は強健なる者どもを打ち砕き無辜なる民たちを守るもの」

 「故に今ここに・・・我が忠義に答えし者達よ命じる!!」

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「我が戦場に集いその剣を存分に振るえー-

《古代の師団(サムライダーズ)》よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああもう!この糸イイカゲンニ気持ち悪いわ!」

 「同感!」

 「って言うかあの顔も気色悪い!!」

 「本当に嫌ねあの顔あれなら《カゼハヤ・カミト》の方はマシヨ!」

 「おい誰があれよりもマシって俺ってあんなバケモノじゃねえだろうが!!」

 カミトは《破烈の師団》の少女達の言葉を聞いて反論しながらも攻撃するが・・一向に前に進めないのだ。

 「何だあの糸は!」

 「進もうとしても糸に遮られます!」

 「おまけにあの剣も一級品!まさに全距離全てが奴の支配域という奴だな!」

 エリスとレオノーラ、ヴェルサリアも同じ気持で

直接ネペンテス・ロアに攻撃できない事に苛ついていると・・・

目の前に光が現れた。

 いや、それは違った。

 目の前に聖属性の魔法陣が無数に現れたのだ。

 それと同時に糸が次々と聖属性の光によって浄化されるや否や魔法陣から・・・大量の見たこともない鎧を身に纏った兵士たちが次々と現れたのだ。

 「これってミラの!」

 「けどなんか様子が違わない!?」

 「だけどこんな精霊を出せるのって」

 「けど本当に何か違う!!」

 《破烈の師団》は全員それを見てそう言うがカミト達は

それどころではなかった。

 「何だ・・・これは。」

 「軍団精霊(レギオン)タイプの・・・」

 「こんな数、普通じゃない。」

 「これはまさか戦術級軍用精霊なのか!?」

 ヴェルサリアは驚いてそう言った。

 一体一体はそれほどではないのだがそれらが数百体もいるのだ。

 すると魔法陣から・・・ぽんたが現れたのだ。

 『ぽんた!?』

 カミト達が驚くとぽんたは全員に向けてこう言った。

 「只今到着!おいら達全員がミラの精霊だぽん!!

《古代の師団(サムライダーズ)》総員いざ出陣だぽん!!」

 『『『『『おオオォォォォおおおお!‼!!!』』』』』

 ぽんたの掛け声と同時に精霊全てから声が聞こえた。

 それと同時にカミト達の体にも・・・異変が生じた。

 「何だこれ・・・?」

 「暖かい。」

 「力が湧いてくる!」

 「神威が元に戻って行くようだ!!」

 ヴェルサリアがそう言うとぽんたが全員に向けてこう言った。

 「今ミラが拠点の地脈を使って皆の神威を回復させているぽん!

今のうちに態勢を立て直すポン!!」

 ぽんたはそう言いながら薙刀を振るって糸を斬り裂いていると・・・

エストがカミトに向けてこう言った。

 ー-カミト、私に考えが。

 「?」

 それを聞いてカミトは何だと思っていると・・・カミトは笑ってこう言った。

 「やれるかエスト!」

 ー-はいカミト、私は貴方の剣。

 エストがそう言った瞬間にエストの剣が・・・姿を消した。

 「カミト!」

 「一体どうしたのだ!!」

 エリスとヴェルサリアがどうしたのかと聞くとカミトはエストの契約印を上空に掲げるとこう呟いた。

 「満たされなき精霊の方舟よ、今ここに我が声に耳を傾け・・・

我らに安住の世界へと導きたれ!!『聖船(エストアーク)』!!」

 そう言った瞬間に上空に・・・巨大な白亜の船が現れた。

 『・・・・』

 全員がポカーンと口を開けているとカミトはその船に手を添えると

その瞬間に船が・・・先端にその船の形をした槍に姿を変えた。

 そしてカミトはその槍をネペンテス・ロアに向けて・・・こう言った。

 「いい加減に成仏しやがれー-!!」

 そう言ってネペンテス・ロアの胸に当たる前に『ヴォーバル・ソード』で

防ごうとした瞬間にその槍が・・・剣をすり抜けた。

 「!!」

 ネペンテス・ロアはそれに驚くが槍がネペンテス・ロアの胸に

命中した瞬間に・・・貫通して一枚のカードと共に槍が地面に突き刺さった。

 「ギャアアアアアア!!」

 それと同時にネペンテス・ロアの体が・・・ぐずぐずに溶けていき剣だけが

地面に突き刺さって・・・ネペンテス・ロアは消滅した。




 《古代の師団(サムライダーズ)》
 ミラ・バセットがぽんたの力と融合して生まれた力。
 戦国時代の侍たちと同じ鎧を身に纏った精霊を召喚することが出来る。
 また、ぽんたがコピーした精霊も召喚できる。




 聖船(エストアーク)
 エストの体を『サイレント・オナーズ・アークナイト』の船にさせる力。
 精霊魔装は槍で邪気だけを破壊することが出来る。


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願い

 等々6巻目が終わった。


そして次の日。

 「それじゃあだが・・・それで良いのか?」

 「うん、元々目的は№の収集だしこのカードを回収できたし

魔石はそっちにあげるわ。」

 ミラ・バセットはそう言って№が入った箱を見せるとこう続けた。

 「それに私の精霊もぽんたと融合したことで変わってしまったし

その辺の報告もしなきゃね。」

 そう言いながらミラ・バセットは自身の左目にある・・・隈のような刺青を

触っていた。

 するとカミトはこう聞いた。

 「ぽんたは?」

 「ここにいる、私と一緒に。」

 もう離れないようだしねと自嘲交じりでそう言った。

 ぽんたはあの後から・・・姿を消したのだ。

 まるで始めっから存在しなかったかのように忽然と。

 「だけどぽんたは私の眼の中で生き続けておるから何とかなる。」

 そう言いながらカミトに向けてこう言った。

 「次に会う時は敵同士だけど・・・貴方達と共に戦って良かった。

あんなバケモノをのさばらすのはブレイドダンスとしてあるまじき行為だから。」

 「確かにな、あの闇精霊の話によればあれは禁呪で蘇ったそうだからな。」

 それを聞いてヴェルサリアも賛同するとミラ・バセットはカミト達に向けて

こう言った。

 「それじゃあこれで・・・武運を。」

 「ああ、お前もな。」

 カミトとミラ・バセットは互いにそう言ってそれぞれ別れた。

 そしてエリスがこう呟いた。

 「今日で4日目、既に各チームは拠点を構築しているだろうな。」

 「そうなるとここからが本番ですね。」

 「それまでに拠点の再構築を急がないとね。」

 エリス達はそう言いながら空を見あげた。

 既に24チーム中8チームが敗退し、

現状一位が《チーム・インフェルノ》である。

 そして拠点が構築し終えたという事は次は情報収集であり

ここからが本番となるのだ。

 「ここからが俺達の腕の見せ所だ・・・やるぞ!」

 『『『『おオオォォォォおおおお』』』』

 それを聞いてヴェルサリア達は掛け声を上げる中でカミトはある事を

思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘の後の夜。

 「さてとレスティア、今度は逃がさないぞ!」

 そう言ってカミトは魔剣の柄を掴んだ瞬間に・・・じゅっと音をたてて

皮手袋が溶けて火傷の様な痛みが襲い掛かった。

 「グあアアアアアアアア!!」

 「「「「カミト!?」」」」

 ヴェルサリア達はそれを見てカミトを離させようとするがカミトはがんとして

離さずに神威を注いでいると・・・声が聞こえた。

 ーやめなさい、カミト。貴方はもう私に触れることすらできない。

 「やってみないと分からねえだろうが!!」

 ー馬鹿ね、私はもう貴方の知っている私じゃ

 「それがどうした!!」

 ー・・・・

 「あの時お前が変わっちまったのならその責任は俺だ!だから俺が

お前を元に戻す!!それが俺の願いだ!!!」

 カミトはそう言いながら魔剣を空に掲げると・・・黒い羽が見えた。

 「レスティア。」

 「馬鹿ね本当に・・・けど私は貴方の知っている私じゃないわ。教えてあげる、三年前に貴方が願ったあの願い。」

 そう言った瞬間にレスティアは自身の魔力を注いで・・・

あるビジョンが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三年前のブレイドダンス最終日

 「ねえカミト、私の願いを叶えてくれる?」

 「ああ、僕はレスティアの為に勝ち抜いたんだ。」

 「【お前本当に我欲がないよな。】」

 シラヌイはそう呟いている中でレスティアはカミトに向けてこう続けた。

 「良いの?それをしたら貴方は世界の敵になってしまうわ。」

 「【何だその願いは!?どんな野望を持った願いなんだよ!!】」

 シラヌイはそれを聞いて一体どんなの何だとそう思っていると・・・

カミトはこう答えた。

 「大丈夫だよ、僕とシラヌイがレスティアを守るよ。」

 「【何気に俺も巻き添えって・・・ああもうどうにでもなれ!野となれ山となれ後は采配だ!!】」

 勝手にしやがれとシラヌイがぶつくさ文句たれながらそういうとカミトは願いの内容を聞いてレスティアはこう答えた。

 「それはね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・貴方に暗殺して欲しいの、5人の精霊王を。」




 次回は七巻です。


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最強の剣舞姫と仮面の悪意
同士


 七巻目の始まりです。


ああ・・・これは夢か。

 そう言う女性はその夢を見てそう呟いた。

 とある少女がオルデシア帝国の小さな農村都市で起きた厄災に対して神儀院の

巫女達は聖域の大祭殿で祈祷し続け演舞を舞っていた。

 当時その農村では例年にない干ばつが長期間続いてしまったがために

供物となる作物を奉納したにはしたが少なかったのだ。

 そして・・・厄災が突如その村を襲った。

 天から火の雨が降り注ぎ、周辺の田畑を焦土と化し、家は焔の中に焼き払われ

そこに住んでいた人々の命が消えていった。

 これに対して村の住人は本来ならば越冬に備えて備蓄されていた穀物をかき集め、見目麗しい姫巫女に演舞を舞わせるも・・・効果は薄かった。

 その為に聖域の姫巫女は3日3晩していた。

 他の巫女達は休憩しながらだがただ一人だけ・・・舞い続けた。

 彼女は火の精霊姫として選ばれた僅か15歳の少女だ。

 只々彼らを助けるために舞い・・・4日目になってやっと焔は消えたが・・・

散々な物であった。

 街も畑も焼き尽くされ残ったのは荒廃した焦土だけ。

 彼女は長期間の疲れで床に伏せ、それに対して年長の祭殿長がこう言った。

 「寛大なる精霊王は私達の祈祷を聞き届いてくださいました。」

 然しそれに対して少女は耳を塞いで首を横に振ってこう聞いた。

 「どうして・・・何故精霊王は無辜の民にこのような」

 すると祭殿長はこう答えた。

 「***様、精霊王の御心を人が量る事など出来ないのです。

私達に出来ることは赦しを請う事だけ、貴方はよくやってくれましたわ。」

 そう言うのに続いて民たちからも心からの感謝の言葉を述べていたが

今の彼女にとってそれは・・毒の様に心を蝕んだ。

 何故精霊王は彼らを殺した?

 彼らが何をした?供物が足りないだけでこの仕打ちなのか!?

 これが精霊王の・・・王たる名を冠する者達の所業なのか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうだ。」

 「!?」

 あの後に彼女部屋に戻って涙を流す中突如聖域の火の精霊姫の部屋に

男性が入ってきたのだ。

 「この世は不条理だ、王と呼ばれながらも所詮奴らは人の事など

知ろうともしない俺達人と何ら変わらない外道だ。」

 「貴方!!」

 それを聞いて精霊を呼び出そうとすると男性はこう続けた。

 「お前もそう思っているのであろう?無辜なる民を痛めつけ、

気に入らなければ殺す。これを外道とも呼ばずに何という?」

 「それは!・・・それは」

 「お前は今迷っている、今の世界に。この矛盾と悪意に満ち溢れた世界を

愛するべきかそれとも疎ましく思うべきか?」

 「・・・・・」

 男性の言葉が心に染み込み始めていた。

 まるで自分の考えを代弁してくれるかのように。

 そして男性はこう言った。

 「今こそ必要なのだ『英雄』の存在が。」

 「『英雄』・・・?」

 「そうだ、無辜なる民を守り、力なき者達を痛めつける者どもに鉄槌を下す

そんな存在が。」

 「・・・其れを貴方が?」

 それを聞いて男性は首を横に振ってこう続けた。

 「いや、俺は只の『先導者』。『英雄』足りえる存在を見つけ、導き、

この世界に平穏を与えてくれるそんな存在を。」

 そしてと言ってこう続けた。

 「お前もその一人だ。」

 「私が」

 「そうだ、今この世界の歪みを見て、失望し、憎むお前も『英雄』足らん素養を持っている。」

 だからと言って手を差し伸ばしてこう言った。

 「この世界の歪みを消し去り、本当の意味での理想郷を作るための

手伝いをさせてくれ。人員も、戦力も、そして武器もお前に与えよう。」

 そう言うと少女は男性に向けてこう聞いた。

 「貴方は一体?」

 「ああ、自己紹介が遅れたな。」

 そう言うと男性はこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「フギル・アーカディア、『英雄』を欲する存在だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・久しぶりに見たな。」

 彼女はそう呟いて木陰で寝ているが・・・空は赤く染まっていた。

 夕日ではなく・・・炎によって。

 ミュア・アレンスタールが使用している軍用精霊『ガルーダ』の放つ

獄炎によって何処かの代表チームの『拠点』が焼かれていた。

 「これで七つ目か、三分の一が消えた今我々の勝利は確定的だな。」

 そう言いながら魔石を眺めていた。

 既に決勝戦に進めれるだけも魔石が手に入ったのだが彼女の目的は

優勝程度ではない。

 更にその先にある・・・精霊王。

 「その為には『レン・アッシュベル』。彼に仕える六人目の精霊姫と・・・例の機竜を完成させるための布石を整えなければ。」

 まあと言ってこう続けた。

 「精霊姫は適当な奴で且つそれなりに実力のある存在を選べばそれで良い、

本当の目的のために連中を利用しているだけだからな。」

 そう言うと・・・背後から声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「へえ・・・その目的って何かしら?」

 「!!」

 それを聞いて後ろを振り返るとそこにいたのは・・・。

 「シェーラ・カーンか。」

 「あら、そんな言い方して良いのかしら?」

 シェーラ・カーンはそう言うとこう続けた。

 「忘れないで欲しいけど今ここにいるのは

私達アルファス教国のおかげであることを忘れないで欲しいわ。」

 「分かっている、軍用精霊についても礼を言うが貴様も忘れるな。

私の仲介で彼らと出会えたという事を。」

 「ええ無論よ、貴方達と出会えたからこそ私達の戦力は既に

他国以上となっているし・・・『ルイン』から発掘される武器と引き換えに戦力の提供と言う好条件、私達の教えこそが世界に必要だって事を分からせるには

うってつけよね。」

 そう言うとシェーラ・カーンはこう続けた。

 「それじゃあ私は鼠が入ってきたから遊んでおくから適当に宜しくね。」

 そう言って去って行った。

 「ふん、まあ良い。あれらはまだ利用価値がある。ここで消すのはまだ早いな」

 そう言うとこう続けた。

 「闇の精霊姫・・・矢張り奴だろうな。」

 そう言いながら彼女は軍服の懐から銀の鎖のペンダントを取り出して・・・

赤い宝石型の記憶封じの精霊鉱石の中にいる・・・ドレスで着飾った両端で括った焔の様に紅い髪を持つ幼い少女が映っていた。

 それらを見て彼女は・・・こう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「***」

 その声は風の音でかき消されたがその時の彼女はまるで・・・

寂しそうな感じであった。




 次回はカミトサイドです。


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カミト達の会議

 カミト達の所です。


ミラ・バセット達と別れた後カミト達は取敢えずと言う意味で

一日休息を取ることとなった。

 ネペンテス・ロアとの激闘による疲労であるがフィオナは結界の再配置と

新たに再構築すると言って現在外出している。

 そして戦闘班であるカミト達は休息を取って暫くすると・・・エリスが全員を

起こしてこう言った。

 「皆来てくれ!先ほど使い魔の精霊が運んできた物だ!!」

 そう言って見せたそれは・・・手紙であった。

 「手紙・・・今度はどっかと同盟か?」

 「こんなに早くとも言えんが何か可笑しいな。」

 「そうね、こんな急にまるで謀ったかのように。」

 カミト、ヴェルサリア、フィオナの順でそう言うとエリスは手紙の封を解いて

中身を見るとそこには・・・。

 

 

 

 

 

 

 「これ、何処の国の文字であろうか?」

 蛇ののたうっているかのような文字が書かれていた。

 するとレオノーラがこう答えた。

 「これは確か東方の文化圏の文字ですね、学院の基礎課程で

習ったはずですが?」

 「わ、私は語学は苦手なのだ。」

 「そうか、ならばこれが終わったら家で集中的に教える様に義爺様に

報告させるか。」

 「それだけご容赦ください義姉上!?」

 エリスはヴェルサリアの言葉を聞いて慌てている中でレオノーラは眼鏡をかけて

文字の内容を読み解いて・・・険しい表情となった。

 「なんて書いてるんだ?」

 カミトがそう聞くとレオノーラはこう答えた。

 「宣戦布告です、相手はあの〈四神(スーシン)〉です。」

 「〈四神(スーシン)〉だと!?」

 それを聞いてカミトは驚いていた。

 いや、カミトだけではない、全員が驚いていた。

 <四神(スーシン)>とは大陸東方にある大国『クイナ帝国』擁する強豪チームでチーム・インフェルノ、〈聖霊騎士団〉に並ぶほどの実力を備えている。

 最高峰のチームワークを誇る〈四神(スーシン)〉の中での特に

注目されているのが神獣精霊〈白虎〉の使い手『シャオ・フー』と言う少女で

今大会の参加者の中で注目されている選手だ。

 「ここに書かれているのは〈四神(スーシン)〉の拠点はここから

さほど遠くない場所で周辺にいたチームは粗方制圧されていて残されているのは我々『チーム・スカーレットナイツ』だけと言う事で真正面から決闘しようと

書かれていますね。」

 レオノーラはそう言って書状を直した。

 ブレイドダンスはあくまでも精霊王に剣舞を奉納する演舞の舞台である為

チーム戦の際にはこのように少ない際に宣戦布告の書状を送ると言う

しきたりがある。

 これは現代で言う最後通牒と同じ力を保有しているためこれを発布せずに

他国に攻め入るのは間違いなく国際法違反に該当するため間違っても

発布しないという選択肢は取らない様に(日本も第二次世界大戦時に

同じことをしたがその前に国連から脱退しているため適応されなかったのだ。)。

 本戦開始から4日目、折り返し地点に入ったため初期段階での偵察中の

遭遇戦又は奇襲が出来にくくなり且つ結界を張られて膠着状態に

陥ってしまったがための正当行為である。 

 「で、どうする皆?」

 カミトは全員に向けてそう聞くと暫くして順番にこう答えた。

 レオノーラ

 「私は賛成です、この状況ともなればのるのが常套ですし向こうには

それ相応の魔石がありますし。」

 フィオナ

 「私も同意見ね、それに向こうから向かってくるなら都合が良いわ。・・・

そうと決まれば早速罠を作り直して増やさないとねウフフフフ・・・

最近結界修復してばっかりでストレス溜ってばかりだったから

ここで発散してもらうわよ〈四神(スーシン)〉!!」

 エリス

 「フィオナはまあ良いとして私も賛成だ、ここは攻めるべきだと思うが

義姉上は?」

 ヴェルサリア

 「我々は魔石が少ないからな、ここは博打に打って出るしかないな。」

 そう言うとカミトは全員に向けてこう言った。

 「良し!だったらここで挽回するぞ!!」

 「「「「おオオォォォォおおおお!!!!」」」」

 カミトの言葉を聞いて全員が声を合わせるとカミトはこう聞いた。

 「それで場所と日時は?」

 カミトがそう聞くとレオノーラはああと言ってこう続けた。

 「明日の早朝です。」

 「「「「・・・・アア、そうなんだ。」」」」

 それを聞いて全員が脱力するが丁度いいとも思えた。

 何せ今は全員未だ疲れが残っているのだから。

 するとカミトは全員に向けてこう言った。

 「それじゃあ今日は疲れを癒して明日一丁戦うか。」

 そう言って全員が頷くと先ずはレオノーラがこう言った。

 「それじゃあ私は〈四神(スーシン)〉に返信の手紙を書いて出しますので少し中に入ってますね。」

 エリス

 「なら私はもう少し見回りを続けよう、未だ交代の時間ではないしな。」

 ヴェルサリア

 「なら私はフィオナの護衛をしておこう、結界を張っている間に

襲われない様にしなければならんしな。」

 「宜しくお願い致します。」

 「ああ、任せろ。と言う事でカミトはもう少し寝ていろ、

エリスが戻って来る迄な。」

 そう言って互いに別れるとカミトは欠伸しながらこう言った。

 「ファアアアアアアアア、それじゃあ俺はもう少し寝ているか。」

 そう言ってカミトはテントに戻った。




 次は〈四神(スーシン)〉サイドです。


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〈四神(スーシン)〉の会議

 〈四神(スーシン)〉サイドです。


そしてその〈四神(スーシン)〉はと言うと・・・。

 〈チーム・スカーレットナイツ〉の拠点から結構離れた切り倒された

木々の中心にある豪奢な東方風の神殿に於いて御前会議が執り行われていた。

 「ーそれではお前たちの意見を聞こう。」

 薄い御簾の奥からクイナ帝国の第三皇女『リンファ・シン・クイナ』がそう言うとクイナ風の衣装を身に纏った三人の少女が一人ずつこう言った。

 先ずは青い服を身に纏った神獣精霊《青龍》を使う『ラオ・リン』

 「恐れながら申し上げますリンファ様、私は〈チーム・スカーレットナイツ〉との戦は反対でございます。」

 「その理由は何じゃ?」

 「確かに我ら〈四神(スーシン)〉の力を持ってすれば無名のチームで

然も機竜が無い彼ら等敵ではない様に思えますがお忘れではないでしょうか?

カゼハヤ・カミトはかのルミナリス相手に善戦して退いたことを?

それに若しも<チーム・インフェルノ>が疲弊したところを強襲されでもしたら

取り返しのつかない事になるでしょう。」

 それを聞いて『リンファ』は残りの二人に向けてこう聞いた。

 「ふむ、『ハクア』、『シャオ』。お前たちはどう思う?」

 そう聞くと神獣精霊《玄武》の使い手でもある『ハクア』はこう答えた。

 「『ラオ』がそう言うのであればそれが良いかと。」

 そして神獣精霊《白虎》の使い手『シャオ・フー』はこう答えた。

 「アタシは強い奴と戦えればそれで良いや。」

 「お前たちの意見は役に立たんのう。」

 それを聞いて『リンファ』は溜息を漏らすが『ラオ』はこう続けた。

 「『リンファ』様、お考え直し下さい。確かに今回のブレイドダンスに於いては『ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト』以外の精霊使いは全員無名ですが

先の舞踏会に於いてかの者達は賊共相手にたった5人で半壊させるほどの手練れ、既に我々は決勝進出に必要な〈魔石〉を既に獲得しておられますから不必要なリスクを負う事自体が愚策。籠城すべきかと。」

 「むう、然しな・・・送ってしまったんじゃ宣戦布告状を。」

 『リンファ』の困ったような声を聴いて『ラオ』は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・ブちぎれたのだ、盛大に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な・・・何やっているんですか貴方はー-----!!!!!」

 「ヒィイイイイイイイイイ!!」

 『ラオ』の大声を聞いて『リンファ』が恐怖するかのように御簾の中で震えたが『ラオ』はこう続けた。

 「どうして勝手なことしているんですか!大事なことを決める際には先ず我々に相談って『報告・連絡・相談』の『ほう・れん・そう』をして下さいと

あれ程言ったではないですか!?」

 「だからその・・・今お前たちに相談」

 「決めてから相談する阿保が何処にいるんだアアアアアアア!!」

 「御免なさーーい!!」

 ・・・実はであるが『ラオ』は『リンファ』のお目付け役兼教育係として

側にいる事からいうなれば幼馴染的である為砕いたような口調の時が

あるのだが・・・現在彼女は今それである。

 「今スグに撤回の使者を出してください!」

 「イヤじゃ!?一度出した宣戦布告を軽々しく撤回など」

 「面子よりも勝利を選べー-----!!!!!」

 「ハウウウウウウウウウ・・・・・・!!」

 最早御簾越しで彼女が小さくなっていることが分かる為正直な所可哀そうに

見えてきたので『シャオ』が『ラオ』の肩をポンと叩いてこう言った。

 「まあ、そう怒んなって。要はアタシらが〈チーム・スカーレットナイツ〉と〈チーム・インフェルノ〉を皆纏めてぶっ潰せば」

 「そうは簡単ではありません、先にもお話した通りルミナリスを退かせた

カゼハヤ・カミトがいる以上まともに」

 「そうじゃ!そいつじゃ!!」

 「「「?」」」

 『リンファ』の声を聴いて三人はどうしたんだと思っていると

『リンファ』はこう続けた。

 「その悪逆非道の暴君を誅殺する為にこそ妾は宣戦布告したのじゃ!!」

 「・・・どういう意味ですか?」

 『ラオ』がジト目でそう聞くと『リンファ』はこう返した。

 「うむ、お前たちも噂位は聞いたことがあるであろう?

かの暴君カゼハヤ・カミトは清らかな貴族の令嬢を囲い、

筆舌に尽くしがたき淫蕩に耽っていると!!」

 「た・・・確かに聞いたことがありますが」

 「それって只の噂程度だろう?舞踏会の時にあいつ滅茶苦茶強かったし

それに他の連中もそんな風には見えなかったぜ?」

 『リンファ』の言葉を聞いて少し考え乍ら『ラオ』がそう答えるが

『リンファ』はこう続けた。

 「それにじゃ!今回の『ブレイドダンス』に於いては敵対勢力のチームに対して倒すだけでは飽き足らずその服を剥ぎ取ってりょ・・・りょ。」

 「凌辱か?」

 『ハクア』は『リンファ』の言葉に対してしれッとそう答えると

『ラオ』が慌てて撤回するようにと言っている中で『リンファ』が

こう締めくくった。

 「と、兎に角じゃ!その様な汚らわしき淫獣王を速やかに

誅殺せねばならんのだ!!これは〈魔石〉云々の問題ではないのじゃ!?」

 それを聞いて三人は確かにとそう考えていた。

 ・・・噂とはここ迄人を哀れにさせるのかとカミトに対して哀悼の意を

唱えたいほどである。

 すると『シャオ』が『リンファ』に向けてこう言った。

 「ちょっと待てよ、『リオン』の意見は聞かなくて良いのか?」

 そう聞いたのだ。

 神獣精霊《朱雀》の使い手でもある『リオン・シャルマ』は

現在〈チーム・インフェルノ〉の拠点の偵察任務に出ているのだが

未だ帰ってきていないのだ。

 そんな中でまさかと『シャオ』がこう呟いた。

 「まさかへまやらかしたんじゃ?」

 「『リオン』はお前と違って慎重な奴じゃ、そんなこと」

 『リンファ』が『シャオ』に向けてそう言いかけていると・・・『リオン』が戻ってきた。

 「おお、『リオン』よ、丁度其方の事を話して居ったのじゃが。」

 「何だよ、心配して損したぜ。」

 「『リオン・シャルマ』、只今帰還いたしました。」

 『リオン』がそう言うと『リンファ』は事の次第を話すと報告を兼ねて

こう進言した。

 「レン・アッシュベル達は現在十分な程の〈魔石〉を持って

拠点に籠っておられますが決勝戦に備えておると思われますので良い機会かと。」

 『リオン』がそう答えると『リンファ』は全員に向けてこう言った。

 「後顧の憂いはなし!これで決まりじゃな、我ら〈四神(スーシン)〉は

悪逆非道の淫獣王カゼハヤ・カミトを誅殺するぞ!!」

 そう言ってそれぞれ頷く中で・・・『リオン・シャルマ』の唇が

嘲弄するかのように歪んでいた事に誰も気づいていなかった。

 そして全員が気づいていないのであろうが彼女の顔に・・・

お面らしきものが一瞬だが浮かんだことには誰もが気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・67と言う数字が描かれていた事も知らずに。




 次回は戦闘に・・・なるのかな?


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〈四神(スーシン)〉

 対決は目の前。


 明け方カミトは近くにあった棒きれを剣に見立てて稽古している中で

こう思っていた。

 「(あのネペンテス・ロアの時エストは槍にもなれた、となれば

今後は槍での稽古も加えないといけないけど槍はエリスがだけどなあ・・・)」

 そう思いながらある事を思い出していた。

 ミラ・バセットの話し合いの後にエリスが自身に・・・半裸で

 「(アアアアアアアア!やめろ辞めろ辞めろ!思い出したら集中できない!!

そうだ他の事も・・・)」

 そう思って次に思い出したのは風呂での・・・

 「(全然駄目だ集中どころか思い出すうちにキスされたのも思い出しちまう!)」

 もう完全にお手上げ状態であるがもしここに『シラヌイ』がいれば・・・

こう言ってたであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ああ、ハイハイ青春だなあ。』

 

 

 

 このような感じで呆れていたであろう。

 そんなのを見て・・・偶然にも起きたフィオナがこう呟いた。

 「何やってのかしらあれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして朝食。

 「それでは確認と行くぞ。」

 ヴェルサリアが全員に向けてそう言うとこう続けた。

 「我々のフォーメーションについてだがいつも通り変わらずだ、

だが相手は強豪だ。気を抜けば我々は全滅だな。」

 そう言っている中でフィオナの目つきが・・・鋭くして叢を見つめて

こう言った。

 「そこにいるのは誰かしら?」

 「「「「!!!!」」」」

 それを聞いてカミト達が身構えていると・・・一匹の蛇が姿を現した。

 鮮やかな青色の蛇が赤い瞳でフィオナを睨みつけていると・・・何とこう言って喋ったのだ。

 「流石は名高い〈ロストクイーン〉ね、使い魔の気配に対して敏感にならずに

態と入れたのね?」

 「どうせ気づいていたんでしょう?」

 「そうね、これは私としたことが失敗ね。」

 何やら世間話をしている中で蛇はカミトを見てこう言った。

 「初めましてカゼハヤ・カミト、我らが魔王。」

 「我が魔王だと・・・?」

 カミトは何言っているんだと思っているとフィオナがこう言った。

 「カミト君、こいつはアルファス教国のよ。」

 「序に言えばデモンスレイヤーと言えば分かるかしら?」

 「・・・シェーラ・カーンか!?」

 「「「!!!」」」

 それを聞いてヴェルサリア達が精霊を出そうとすると蛇を操っている

シェーラ・カーンはこう言った。

 「まあ待ちなさい、私の目的は貴方達ではないのでそれに貴方達も

〈四神(スーシン)〉と戦うんでしょ?休んでなさい。」

 「何処からそれを・・・!!」

 「さあ、何処でしょうね?」

 (´∀`*)ウフフとシェーラ・カーンはヴェルサリアの問いに対してはぐらかすと

こう言って叢に消えていった。

 「それでは〈スカーレットナイツ〉の皆様と魔王の後継者様また何れ。」

 それを聞いて去ったのを見た後ヴェルサリアがこう言った。

 「偵察か?」

 「いえ義姉上、何か目的があったのでは?」

 「それに私達が〈四神(スーシン)〉と決闘することを知っていたとなると

不意打ちで仕掛けてくることも考えないといけませんね。」

 ヴェルサリアの言葉に対してエリス、レオノーラの順でそう言うと

カミトがこう言った。

 「取敢えずだが全員何かしらの準備はしたほうが良いかもな。」

 「それなら私が感知用の結界を張っておくわ、それに・・・。」

 「?」

 「相手が誰だとしても対策を取っておくのに越した事は無いわ。」

 フィオナの言葉を聞いて確かにと全員が準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして蛇越しから見ていたシェーラ・カーンは視覚共有を切るとこう呟いた。

 「さてと・・・だれが<闇の精霊姫〉に相応しいのかしらね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして一行は〈四神(スーシン)〉が指定した場所に向かって行って

暫くすると・・・森の中で少女の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「待っておったぞ、カゼハヤ・カミト!!」

 「「「「「!!!!!!」」」」」

 それを聞いて全員がフィオナを中心に防御陣形を取りカミトは隣にいたエストを精霊魔装状態にさせると森の中にある広い道の向こう側から・・・

〈四神(スーシン)〉が姿を現すとフィオナが彼女達よと言って全員警戒した。

 すると〈四神(スーシン)〉の彼女達はそれぞれ自己紹介した。

 「初めまして、私は<青龍〉のラオ。」

 「同じく〈玄武〉のハクア。」

 「ふふ、私は〈朱雀〉のリオンですわ。」

 「〈白虎〉のシャオだ、宜しくな。」

 そう言うとシャオを見てカミトは全員に向けてこう呟いた。

 「気を付けろ、こいつは他の連中よりも強いぞ。」

 「ああ、分かってる。」

 「見れば分かる。」

 「ええ、あそこ迄痺れる程の闘気を感じるのは初めてです。」

 そう言うと最後に儀礼装束を纏ったリンファが現れて自己紹介するが

カミトはあれとこう思っていた。

 「(ミラ・バセットよりも年上・・・何だよなあれ?)」

 そう思って気になったのでこう聞いた。

 「なあ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

 「何じゃ淫獣王め!」

 「淫獣王ってお前初対面の人間相手にそれ言うかって・・・お前何歳だ?」

 「お、お主まさか妾を口説く」

 「どっちかって言うかお前ミラ・バセットよりも年下ぽかったから。」

 「「「「「「「「ア」」」」」」」」」

 それを聞いて当人たちを除いた全員が口を開けてそう言うとリンファは

怒り心頭でこう答えた。

 「わ、妾はミラ・バセットよりも年下ではないわ!こう見えても16歳じゃ!!」

 「え、嘘だろ!!こんなんで俺達とタメかヨ!?」

 「己カゼハヤ・カミト!絶対に許さぬのじゃ!!我が忠実なる

〈四神(スーシン)〉達ヨ!悪逆たる淫獣王カゼハヤ・カミトを

今ここで八つ裂きにするのじゃ!!」

 そう言った瞬間に全員が精霊魔装を召喚するがヴェルサリア達はそれを聞いて

互いにこう答えた。

 「カミト、今のは無いぞ。」

 「確かにいきなり淫獣とか言われるのは酷いが向こうだって

気にしているであろう?」

 「少しはデリカシーを考えたらどうです。」

 「流石カミト君!人の気にしているところを迷わずに言えるなんて

天晴だわ!!」

 「・・・何だか最後の所は褒められた気がしないがまあ・・・行くぞ!」

 カミトはそれを聞いて少しだが気落ちするがまあ取敢えずの所・・・

戦闘が始まった。




 次回戦闘です。


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戦闘開始

 〈四神(スーシン)〉戦です。


リンファの号令の下で〈四神(スーシン)〉メンバーはそれぞれ散開した。

 正面から来るのは下馬評に於いて名高いエースのシャオ。

両腕にトラを模した籠手が魔装であり見た感じ格闘タイプと見て取れる。

 カミトはレオノーラに向けてこう指示を出した。

 「レオノーラ、前衛は俺が受け持つ!」

 「では私はエリス達と後衛に!!」

 そう言って互いに離れるとそれを見ていたシャオがニヤリと笑ってこう言った。

 「一対一か!嬉しいねエ!!」

 好戦的な笑みを浮かばせながら互いの武器が交差して・・・衝撃が互いに

襲い掛かった。

 「エストを止めた!?」

 「アタシの精霊魔装〈神虎牙(シン・フーガ)〉は攻防一体の拳だ!!」

 そう言いながらシャオは身を屈めて神速とも言わんばかりの拳を

カミト目掛けて放とうとするとカミトはそれを察知してガードした瞬間に・・・

籠手に刻まれていた彫刻が生きた虎の様に咆哮してカミトの腕を噛みついた。

 「!!」

 カミトはそれに対して痛みを堪え乍ら牙を振り払おうとした瞬間に

残りのメンバーが突破するのを見てカミトはこう考えた。

 「(くそ!目的は俺をこいつに釘付けさせるためかよ!!)」

 そう思いながらもカミトは嚙まれていない方の腕で剣を逆手で薙ぎ払おうとするとその手前でシャオはカミトから離れるや否や再び拳打の嵐がやって来たので

今度はエストで防御するが・・・軽々と吹き飛ばされた。

 「(精霊のアシスト込でこの威力とはな!!)」

 恐れ入ったゼとそう思っていると更にシャオは一気に距離を詰めて神速にして

変幻自在の攻撃をしている中でカミトはある事を思い出していた。

 それはまだ自分が・・・教導院にいた頃の記憶に。

 「(こいつの拳法間違いねえ!やり方は違うが暗殺拳の使い手だ!!)」

 嘗て教導院の人間の中にこう言う拳法を使う人間がいた事を思い出して

厄介だと感じていた。

 暗殺拳ともなれば対応は出来るがそれは精霊無しでの事だ、ありともなると対応に大きな違いが生まれる為にカミトはここは仕切り直しするかと考えて

懐からある物を出そうとした瞬間に・・・カミトの全身に激痛が走った。

 「カハアアアア・・・なん・・・で・・・!?」

 そう思っているとシャオはこう答えた。

 「暗殺拳<虎咆殺〉。不可視の衝撃波で内臓を破壊する拳法だ。」

 遠距離だがなと言うとカミトはこう考えた。

 「(それって詰まる話が遠当ての一種ってところか・・・

これはちょっと本気出さないといけないかもしれねえな・・・)」

 そう思いながらカミトは息を整えると剣を構えてとある挙動をした。

 両腕を少し下にして目を閉じてこう呟いた。

 「運命よ。我は呪い、その座を引きずり降ろし、わが手で未来を作る。

(シラヌイ)」

 そう呟いてもう一度目を開けたカミトの瞳は・・・

知っている人間からしたら恐怖するであろう。

 そう、まるで相手を・・・人間として認識せずに只々・・・殺すことに全集中を研がせた光のない瞳。

 然し暗殺拳を習得しているシャオから見ればその変わりようを見て

納得がいった。

 そして彼女はカミトに向けてこう言った。

 「へえ・・・アンタも同じなんだな。」

 そう言うと自身も瞳の光を消して構えた。

 ここから先は上層部やグレイワースから言われたブレイドダンスではない。

 血で血を洗う・・・実戦であり殺し合いとなったのだから。

 そして互いに構えて・・・消えた瞬間に互いに木の上や木を伝って攻撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事とは露知らずにレオノーラとエリスは

残った〈四神(スーシン)〉達相手に戦闘をしていた。

 ラオは青龍刀、ハクアは楯、リオンは根と言った魔装を展開するとレオノーラがこう言った。

 「スミマセンが儀式が終わるまでここで食い止めておきます!!」

 そう言ってレオノーラはラオ目掛けて突撃した。

 武器から見て自身が彼女と戦ったほうが良いと本能的に感じて攻撃してエリスはリオンと戦うこととした。

 「凶つ風よ、狂え!」

 「焔ヨ!舞い踊れ!!」

 互いにそう言いながら攻撃した。

 その攻撃は周りを風で吹き飛ばされた炎で森が焼き焦げそうな勢いであった。

 然しレオノーラはラオだけではなく・・・ハクアとも戦う羽目となった。

 「大地ヨ!汝の咆哮を轟かせよ<地衝雷(アース・ブラスト)>!」

 ハクアはそう叫んで楯を地面に叩きつけた瞬間に大地が隆起して

大量の土砂が舞い上がった。

 然しレオノーラはそれに対して目くらましされた土砂ごと風で・・・

吹き飛ばして懐に向かおうとしたハクアに向けてこう言った。

 「そういうのは間に合っています!!」

 そう言いながら周りの砂を風で纏めてハクア目掛けて攻撃した。

 「!!」

 ハクアはその攻撃に対して防御して前を見ると・・・レオノーラが

何処にもいなかったのだ。

 何処だと思っているとレオノーラが楯の死角でもある・・・楯の真ん前に

屈みながらこう言った。

 「楯はこのように使われるので覚えておいてください。」

 「しま」

 「させるかー-!!」

 ラオはそう言いながらレオノーラの横から攻撃して弾き飛ばすと周りを見て

レオノーラはこう呟いた。

 「さっさと終わらせないとヤバそうですね。」

 そう呟きながら攻撃を再開した。




 その一方のフィオナはと言うと。


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戦闘終わり

 戦い終わってまた嵐



「大地に遍く精霊ヨ、我が呼び声に応えた前。」

 後方においてヴェルサリアの護衛の下でフィオナは儀式神楽を舞っていた。

 「我は汝の加護を願うもの、我は汝の力を讃えるもの。」

 流石に元精霊姫候補だけあって艶やかに舞うその姿は正しく舞姫であり

優雅に見えた。

 そして彼女が儀式演武を奉納した瞬間の光り輝く地属性の魔術方陣が

浮かび上がった。

 その演舞は舞手とその仲間に大地の祝福を与えることが出来る儀式演武

 儀式神楽第四式〈栄光の賛歌(オラトリオ)〉と言う術式である。

 するとフィオナは更に演武を舞い始めた。

 それは先ほどとは全く異なる演舞である。

 すると演舞を舞いながらフィオナはこう思っていた。

 「さてと・・・少し暴れるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その中でカミトとシャオの・・・血で血を洗う激闘は続いていた。

 既に互いに傷だらけであったのだがそれでも構わずに時には退き、

時には攻めてと攻守を入れ替えて戦いあっていたが・・・カミトの足元に

〈栄光の賛歌(オラトリオ)〉の魔法陣が浮かび上がって

カミトの力が増すのを感じるとシャオはそれを勘で退くとカミトがこう言った。 

 「ここ迄のようだな。」

 そう言うとシャオはこう呟いた。

 「ああ・・・リンファ様がいなかったら退いてたな。」

 「・・・!?」

 カミトはそれを聞いて一時何だと思っている次の瞬間に何を言っているのかを

理解したのだ。

 地面に描かれていた魔法陣が書き換えられていったのだ。

 「何だこれは?」

 カミトはそう聞くとシャオはこう答えた。

 「儀式魔術の書き換えさ、リンファ様の持つ神獣精霊〈麒麟〉の魔装

〈神仙羽衣(セラフィム・フェザー)〉でリンファ様の力を

底上げしているんだよ。」

 そう言うとこう続けた。

 「さて・・・命令だ、お前をここで殺す。」

 そう言って構えるとカミトはこう続けた。

 「そうか・・・なら僕もそうするよ。」

 そう言って嘗ての・・・教導院のカミトに完全に戻って戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うげまじってどうやったのかしら興味あるわね。」

 「フィオナ貴様ボケーッと言っている場合か!?敵はそこ迄来ているって

何でまだ踊っているんだ!?!」

 ヴェルサリアは大声で怒鳴るようにそう言いながら間もなく来るであろう

敵に対して準備しているとフィオナはこう返した。

 「あら?私が何で未だ儀式演武を舞っていると思って。」

 「?」

 理由が分からんと言う眼をしているヴェルサリアに対してフィオナは

こう答えた。

 「戦いは商売と同じ、相手の行動に対して二手三手先を考えて対応して

お客さんを掴んで離すなってマギアルカさんが言ってたじゃない。」

 「それで?」

 「お客様は精霊、そして彼らはサクラで客を奪い取る敵商人。人様の商売道具で成り上がるなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・使用料含めて百倍で取り立ててぶんどるのみよ。」

 そう言って儀式演武を終えるとフィオナはこう言った。

 「儀式神楽第八式  <大地の怒り(スリャウス)>発動!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで終わり。」

 「そうなるか。」

 シャオとカミトは互いに単調な言葉で攻撃しようとした次の瞬間に・・・

地面が突如揺れ始めた。

 それは今戦闘を行っている場所全域で揺れておりカミトは何だと思ったその時に魔法陣が浮かび上がって更に揺れが酷くなった。

 そして耳元にいた通信用の精霊からヴェルサリアが全員に向けてこう言った。

 『総員一時撤退!この戦域から離脱して体制を整える!』

 その声を聴いてカミトは瞳の光を取り戻してシャオ二向けてこう言った。

 「それじゃあまた後でな。」

 「それはない。」

 シャオは尚も平坦な口調で攻撃しようと木々を伝っていこうとすると

カミトは懐から精霊鉱石を使って・・・眩しい程の光を解き放った。

 「!!」

 「勝負は一端お預けだ!!」

 そう言ってカミトは撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無論それはエリス達も然り。

 「撤退命令です!」

 「分かった!!」

 レオノーラとエリスが互いにそう言って風の魔法で上空に上がって撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、己己己ー-!!」

 リンファは地団駄踏みながら悔しがっていた。

 あの時間違いなく勝っていたのにまさかあの様なやり方で撤退するなど

夢にも思わなかったのだ。

 思えば〈チーム・スカーレットナイツ〉は常に互いの戦場を把握して

近寄らせない様にしていただけではなく万が一に備えての準備までしていたのだ。

 今回の戦闘は引き分けの様に見えるが実際は戦いに勝って勝負に負けると言う

格下と思っていた敵に見事にしてやられたのだ。

 因みに戦闘の様子を見ていたマギアルカはそれを見て大笑いしながら

見ていたのは余談だ。

 「然しまあ今回はしてやられたな。」

 「恐らく勝てれば上等、負けるとしても引き際を見極める辺り

中々の敵のようです。」

 「強ちルミナリス倒したのってまぐれじゃなさそうだね。」

 「お主等何でそんなに平然としておるのじゃー-!!」

 リンファはそう聞くとシャオはこう返した。

 「だってなー、結果は結界だしな。」

 そう言うとリンファはリオンに近寄ってこう言った。

 「そもそもお主ちゃんと敵情視察したのかって・・・聞いておるのはリオン!

妾の言葉を」

 聞いているのかと言おうとした瞬間にリオンが懐からとある仮面を見せた。

 何も彫られていない真っ黒なお面。

 「何じゃそれは!?そんなので妾が気を乱すとでも」

 そう言ッている瞬間にリオンはリンファにお面を素早く押し付けた。

 すると被ったリンファが突如・・・苦しみ始めた。

 「・・・・・・・・!!」

 「リオン!?お前何しているんだ!!」

 「リンファ!?」

 ラオは心配するようにリンファに近寄ろうとしたその時に・・・

リオンが攻撃してきたのでハクアがそれを防ぐとリオンは後ろにバックしていくと茂みから・・・誰かが現れた。

 「あら?被れたのはその子供?へえ、リーダーなら丁度良いわね。」

 そう言って現れたのは・・・シェーラ・カーンであった。

 「「「!!!」」」

 シャオ達が魔装を出して構えるとリンファが突如起き出した。

 「リンファ!大丈夫なの・・・リンファ?」

 リンファはお面を被ったままシェーラ・カーンに近づいてシャオ達に

相対するかのように向くとシェーラ・カーンは笑いながらこう言った。

 「さあてと・・・魔石狩りよ♪」




 次回は何故シェーラ・カーンが出てきたのかについて。


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仮面の悪意

 シェーラ・カーンの精霊です。


「お前は確か〈チーム・インフェルノ〉の魔女『シェーラ・カーン』!?」

 シャオは即座に魔装を展開するとラオがこう聞いた。

 「貴方!リンファ様とリオンに何したの!?」

 そう聞くとシェーラ・カーンはこう答えた。

 「簡単よ、私の精霊が彼女達の意識を奪って操っているのよ。」

 シェーラ・カーンがそう言った瞬間に影の中から顔に「67」と言う数字が

彫られた木偶人形が現れるとハクアが少し怖そうな表情をしてこう聞いた。

 「何・・・それ?」

 そう聞くとシェーラ・カーンはこう答えた。

 「これが私の精霊《嘲笑う仮面(バルダンマスク)》。能力はこの子の顔に

1から6までの数字が出てね、それで今日一日に出す仮面の数が決まるのよ。」

 「仮面・・・リオンが持っていたあれか!?」

 シャオはリオンが持っていたそれを思い出すとシェーラ・カーンは

正解と言ってこう続けた。

 「今日は⑤、つまり5枚の仮面が出てきたから丁度良いわね。・・・

全員私の手駒になれるんだから。」

 「「「!!!」」」

 それを聞いてラオとハクアがシャオに向けてこう言った。

 「シャオ!貴方は逃げてください!!」

 「ふざけるな!そんなこと出来るか!?」

 「今あなた迄ここで倒れでもしたらそれでこそクイナ帝国の名が

地に伏してしまいます!!今は耐えて!!」

 リオンの言葉を聞いてシャオはそう返すがハクアの必死の言葉でクソと思いながら見捨てるしかないのかよとそう呟いてこう続けた。

 「・・・分かった、済まない!」

 そう言ってシャオは森の奥にへと入っていくとシェーラ・カーンは

それを見てリオン達に向けてこう言った。

 「貴方達が相手してくれるのかしら?」

 そう聞くと2人はこう答えた。

 「その通りです!」

 「ここからは通しません!!」

 2人の言葉を聞いてシェーラ・カーンはくすくすと笑っているのを見て

リオンはそれを見て怒り心頭でこう言った。

 「何が可笑しい!!」

 そう言うとシェーラ・カーンはこう答えた。

 「ええ、可笑しいわ。だって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・何時私だけって言ったかしら?」

 「何?」

 ハクアはそれを聞いて何でと思った瞬間に・・・10人以上の人間が現れた。

 「この人たちはまさか!!」

 「全て・・・参加選手・・・まさか魔石を未だ持って!?」

 リオンとハクアがそう言うとシェーラ・カーンはこう答えた。

 「その通りヨ、性格には〈嘲笑う仮面(バルデンマスク)〉の支配下に置かれた今は私の私兵よ。」

 「貴様・・・こうやって仲間を操って同士討ちなどと言う薄汚い事を!!」

 リオンは遂にキレて青龍刀を構えるがシェーラ・カーンは何言ってんのと言ってこう続けた。

 「これは国の威信をかけた代理戦争よ、正々堂々なんて・・・

バカでしかないわ。」

 そう言って扇子を開いて仰いでいると2人は攻撃を始めようと飛び込んだ瞬間にシェーラ・カーンはこう言った。

 「・・・返り討ちに合わせなさい、私の私兵。」

 それを聞いた瞬間に全員の魔装が展開されて・・・蹂躙が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして3分後。

 「全く手を焼かせてくれるじゃないの。」

 シェーラ・カーンはそう言って・・・無表情となって

シェーラ・カーンの私兵となってしまったリオンとハクアを睨んでいた。

 圧倒的な数の暴力で押さえつけられ、然もリンファの能力によって

弱体化させられ抵抗虚しく仮面を付けられたのだ。

 そしてさてとと言ってシェーラ・カーンはこう言った。

 「それにしてもあの女が何考えているかさっぱりわからないけど

どうでも良いわ、私は私のやり方で行動するだけ。」

 そう言ってリンファ達を引き入れて・・・森の奥にへと去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中でカミト達はと言うと・・・。

 「これで良いわ、腕の方は終わったけど応急処置だから

あまり使わないようにね。」

 「悪いなフィオナ、助かるぜ。」

 カミトはフィオナに向けて礼を述べるとこう続けた。

 「それにしてもどうしてあそこであんな方法を思いついたんだ?

普通なら戸惑うだろう?」

 そう聞くとフィオナはこう答えた。

 「簡単よ、マギアルカ様の教えで『いかなる時におぴ手も常に最善を模索して

撤収を含めて策を弄するべし』って教わったからね。」

 「成程な。」

 カミトはそれを聞いて納得がいった。

 ああ見えてマギアルカは商人であると同時にマフィアのボスだけではなく

国家に於いて最強のドラグナイトだ。

 軍事、政治、商事、あらゆることを貪欲と言っていい程に吸収して

わが身に変えたその実力と探求心は本物でありそれの教えを請いたのであろう。

 今のフィオナは間違いなく女王として確実な才能を開花しつつあるが

それを当人は全くと言っていい程国ではなくマギアルカの為に使うと言う

心構えしかない。

 本当に・・・欲しい人材ほど遠くにあるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の昼飯は先ほどの激闘も相まって鍋になった。

 ぽんたから教わった『寄せ鍋』と言う鍋料理を教わって貰い今日はそれだ。

 肉に魚、薬草、そして貰った豆腐である。

 豆腐に関してはぽんたから教わっている為出来上がったものだ。

 そして暫くして・・・全員が揃ってこう言った。

 「「「「「「頂きます。」」」」」」

 そう言って食事が始まった。




 そして食後。


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侵入者

 それは一体だれか?


そしてカミト達は食事を終えて片付けている中でヴェルサリアがこう言った。

 「まさか敗北・・・とまではいかないだろうが痛い結果となった。」

 そう言うとエリスはこう続けた。

 「確かに、今後の事考えたとしても試合が終わるのは後2日。

其れまでに魔石を集めなければ。」 

 そう言うがレオノーラはこう呟いた。

 「そうなると我々は敵のど真ん中に行かなければなりませんね。」

 それを聞いて全員がう~んと唸っていた。

 何せ他のチームは全員結界を張っている為万が一罠にかかったら

一溜りもないからだ。

 だけどとカミトはそう言ってこう続けた。

 「今のままだと俺達は1回戦落ちは間違いないぜ、ここは賭けに乗るってのも

一つの手だと思うぜ?」

 どうだと聞いてフィオナはこう返した。

 「カミト君の言うとおりね、私達にはもう余裕が無いわ。ここは賭けに出て

戦うべきだと思うわ、ここに居ても埒が明かないしね。」

 そう言って確かにともそう思っておりどうするべきかと考えていると・・・

フィオナが何かを感じてこう言った。

 「皆気を付けて・・・誰かが結界に入ったわ。」

 「「「「!!!!」」」」

 それを聞いて全員目を見開いていた。

 まさかこのタイミングでかとそう思ってカミトが出張ろうとすると

エリスがこう言った。

 「カミト!お前は今負傷しているのだぞ!!私が偵察に行ってくる、

哨戒中の敵チームである事も考えて行動しておくが何かあったら通信用の精霊で

応答する。」

 そう言ってエリスはシムルグに跨って飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「フィオナの言葉が正しければここだと思うのだが・・・あれか?」

 エリスはそう言ってシムルグから降りて下に着地した後林の木々の後ろから

その人間を見ていた。

 そしてエリスはここでやるかと考えていると・・・その人間が

いきなり倒れたのだ。

 「な!?おい大丈夫か!!」

 エリスは突然のことで出てきて見てみると傷だらけになっていたのだ。

 そしてエリスは通信用の精霊でこの事を伝えるとシムルグを使って

彼女を運ばせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「皆帰ったぞ!」

 「エリス!それで怪我人は!?」

 ヴェルサリアがそう聞くとエリスはこう答えた。

 「はい、彼女です!見た限りたった一人でしたので。」

 そう言って怪我人は誰だとそう思っているとカミトも近づいて見て驚いたのだ。

 「カミト君、この子クイナ帝国の服を着ているわね。」

 「ああ・・・それに俺はこいつを知っている。」

 「・・・今日か?」

 ヴェルサリアがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「こいつはシャオ・フー。俺の腕に怪我させた奴だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「取敢えずはこんな所ね、怪我は大したことなさそうだけど念のためにね。」

 そう言うとフィオナはこう続けた。

 「それにしてもこの子一体どんだけの敵相手に戦ったのか分からない程

傷が多いわ。コレモカミト君が?」

 「いや、俺の時よりも酷い傷だ。一体誰がここ迄やったんだ?」

 結構強いんだぞこいつとそう言っていると・・・シャオがうううと魘されて・・目を開いた。

 「気が付いたか?ここは〈スカーレットナイツ〉の本拠地だ。」

 カミトがそう言うとシャオはこう答えた。

 「お前確か・・・そうか、ここ迄逃げちまったんだなアタシ。」

 シャオがそう呟いているとカミトがこう聞いた。

 「お前一体誰にやられたんだ?お前ほどの奴がここ迄やられるなんて・・・

まさかお前ら〈チーム・インフェルノ〉と戦ったのか?」

 「「「「!!!!」」」」

 それを聞いて本当なのかとそう思っていた。

 何せ全員の実力が分からないので情報が欲しい所だったのだ。

 するとシャオはこう答えた。

 「まあ・・・当たらずとも遠からずって所だな。」

 そう言うとシャオはこう続けた。

 「あの戦いの後アタシらは本拠地に帰投したんだけど・・・

リオンがいきなりリンファ様に仮面を付けて操り始めたんだ。」

 「操る・・・何かの武器か何かか?それにしても何でそれを

俺達に使わなかったんだ?」

 カミトがそう聞くがシャオは首を横に振ってこう答えた。

 「其れはアタシらのじゃねえ・・・〈チーム・インフェルノ〉の

シェーラ・カーンの精霊の能力だ。」

 「何だと。」

 「アイツはその日に何個かの仮面を作ってそれを哨戒している奴や

偵察する人間に被らさせて操ってそんで同士討ちをさせるって言った

酷い能力を持った精霊を使って先ずはリオンをそしてリンファ様だ。

奴はそれを使ってアタシが見た時には18人くらいの・・・他国の精霊使いを

支配しているんだ。」

 「支配って・・・18人ともなると小国並みの精霊使いをたった一人で

運用しているようなものじゃねえか!!」

 それを聞いてカミトは驚くと同時にヤバいとそう思っていた。

 何せそれだけではないんだと感じてしまっているからだ。

 最悪情報にある〈チーム・インフェルノ〉が倒した三分の一のチームの半分がシェーラ・カーンの支配下になっていることも視野に納めなければならないのだ。

 するとシャオはカミトに向けてこう頼んだ。

 「本来なら・・・アタシを逃がすために時間稼ぎしてくれた

ラオとハクアを助けてえんだがアタシ一人じゃ間違いなく無理だから・・・

頼むカミト!皆を助けるために力を貸してくれ!!」




 その頼みに対してどう答える?


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同盟②

 再びの同盟


 「頼むカミト!皆を助けるために力を貸してくれ!!」

 シャオの言葉を聞いてカミトはううんと唸っていた。

 何せ小国並みの精霊使いを操っている精霊使い相手と戦うとなると戦力的に

問題と言うか今の自分の怪我の容態から見てどれだけ戦えるのかと思いたいのだが

これはチャンスじゃないかと思ってもいる。

 何せ魔石が大量に取れる大チャンスでありこれを逃したら間違いなく敗北が濃厚となってしまうからだ。

 そしてカミトは暫くしてこう答えた。

 「・・・仲間と話がしたい、ソレデ答えを出すが良いか?」

 「ああ・・ああ!分かっている!!」

 それでも頼むとシャオは涙ながらに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミトは全員に向けてそれを伝えた上でどうするかと言う話となった。

 相手は20人近い戦力を保有する〈チーム・インフェルノ〉のシェーラ・カーン。

 そんな強敵相手に戦うか否かについて話し合って以下となった。

 戦う レオノーラ、エリス

 戦わない ヴェルサリア、フィオナ

 この様になった。

 理由は以下の通り

 「「ここは勝負に出る!!」」

 「「いや、ここは戦わずに別の策を考える。」」

 この様な意見がある為どうすべきかカミトは考えているとフィオナは

こう聞いた。

 「もしかしてと思うけどカミト君はもしダメだったら一人で行こうって

そう思ってるんじゃないんでしょね?」

 「「「!!!」」」

 それを聞いてエリス達が本当なのかとそう思って聞いてカミトはこう返した。

 「・・・ああ、正直な所ここが俺達にとって生き残れるか否かって所だと

思うんだ。」

 「・・・その理由は何かしら?」

 フィオナはそう聞くとカミトはこう返した。

 「まず最初にだが俺達の魔石の獲得率は圧倒的に低いって事だ、

このままだとここで敗北って話になる。」

 「・・・・」

 「だがここで話に乗れば俺達の魔石は間違いなく18と確実になるし

シェーラ・カーンを倒せば〈チーム・インフェルノ〉に対しての

障害が一つ減るって思えば都合が良いって思うんだが失敗した時のリスクを

考えたらな。」

 それを聞いて全員が唸った。

 要は此の儘最終日までちまちまと集めるか若しくは賭けに出るか

そう言う問題であるが問題はそこではない。

 勝てると言う勝算が無く如何やって戦うのかと言う問題だ。

 其れでも戦うのかと聞くとカミトはこくっと頷くだけであったが

それを見てフィオナはため息交じりでこう言った。

 「・・・分かったわ、だったら私のついて行くわ。」

 「はあ!?」

 カミトはそれを聞いて何でと聞くとフィオナはこう答えた。

 「相手がどこにいるか分かってんの?」

 「うぐ!」

 「やっぱりね、当てもなく探すよりも私が<念視〉して場所を特定したほうが

早いけど皆は如何する?」

 参加するかとそう聞くとエリスはこう答えた。

 「・・・分かった、私も参戦しよう。こうなったら賭けに乗るしか道は

なさそうだな。」

 多数決だしなとそう続けるとヴェルサリアは全員に向けてこう言った。

 「それでは我ら<チーム・スカーレットナイツ〉は

〈四神(スーシン)〉救出作戦のタメニ同盟を組むことを宣言する!」

 「「「「ォォォォォォォォ!!!!!」」」」

 それを聞いて全員が大声でそう答えてカミトはシャオにその事を報告すると

シャオは笑顔でこう答えた。

 「ありがとう!ありがとう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてフィオナが全員を集めさせるとこう言った。

 「それじゃあこれから〈念視〉でシェーラ・カーンの居場所を

見つけ出すからよく見ておいてね。」

 そう言ってフィオナは儀式演武を舞った。

 その姿は矢張り神々しいと言うしかない程の光景であり暫くして終わると

〈念視〉が泉の光に照らされて発動された。

 〈念視〉とはアストラル・ゼロの世界と干渉することで

対象の位置を映し出す高位魔術であるのだがそれが出来るのは僅かである為希少な魔術なのだ。

 すると夕暮れにより赤く光っていた泉の水面からどこか遠くの・・・

何処かの景色と繋がってぼんやりとだが浮かび上がって来た。

 鬱蒼と茂る森、無残に朽ち果てた石柱群、苔むした蔦の生えた岸壁には

所々であるが何かの残骸があちらこちらと置かれていた。

 すると周りに確かに20人近い精霊使いがそこら辺をまるで・・・意思が無い様に歩いていた。

 するとその中からシャオがこう言った。

 「リンファ様!リオン!!ラオ!!!ハクア!!!!」

 シャオを除くチームメイトが全員いたのだ。

 するとカミトはフィオナに向けてこう聞いた。

 「写っているのは<ブレイドダンス〉のフィールド内の光景だよな?」

 「そうよ、そう言うルールだからそうなるとここは・・・少し遠ざけるわよ。」

 そう言って〈念視〉によって少し話してみるとそれは・・・

何かの儀式を行う神殿の様な感じの場所であった。

 「良し、後はこの場所を・・・!!」

 「どうしたフィオナ!?」

 カミトはフィオナに向けてそう聞くとフィオナはこう答えた。

 「最悪!こっちに気づいて干渉してきた!!」

 切るわよと言って強制的に切断した後にフィオナはこう答えた。

 「場所はここから西に47㌔!そこにある神殿よ!!」

 フィオナは息を切らしながらそう言うとカミトは全員に向けてこう言った。

 「良し!ここからが正念場だ!!行くぞ皆!!」

 「「「「「ォォォォォォォォ!!!!!」」」」

 それを聞いてシャオも含めてそう答えた。

 向かうは18人もの精霊使いがいるシェーラ・カーンの城へ。




 次回は敵陣にへ!


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戦闘開始

 戦いが始まった。


 「皆ここよ!!」

 フィオナはそう言ってとある朽ちた集落に辿り着いた。

 拠点を発見して数時間。

 精霊使いが張った結界とは思えない程の禍々しい気配と多くの人間の気配で

満ちていた。

 「すげえな、周りには精霊使いが居やがるぜ。」

 カミトはそう言って周りを見てみるとそこには大量の精霊使いがわんさかといた。

 さてとどうするかと聞くとフィオナがこう答えた。

 「精神操作をする精霊だったら使い手を倒せばもしかしたら。」

 そう呟くが一体どうやってと思っていた。

 この人数をどうやって切り抜けるのか考えようとしているとカミトはシャオを見てこう提案した。

 「・・・ここは俺とシャオが内部に忍び込んだ方が速そうだ。」

 「カミトそれは・・・まさか彼女も!?」

 「ああ、多分な。」

 「エリス?お前は一体何を」

 「すみません義姉上、こればかりは。」

 「・・・分かった、言いたい時に言えばよい。」

 「ありがとうございます。」

 エリスはヴェルサリアに向けて礼を述べるとカミトは作戦を伝えた。

 「それじゃあ俺とシャオが潜入する、その間皆は」

 「分かっているわカミト君、私達は囮としてあいつらの注意を逸らすんでしょ?」

 「ああ、それじゃあ皆頼むぞ!」

 「「「「ォォォォォォォォ!!!!!」」」」

 それを聞いて全員が声を揃えてそう言って・・・行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?お客さんね。」

 「・・・〈チーム・スカーレットナイツ〉か?」

 「そうらしいわね、貴方はどうするのかしら?」

 「私は未だ出番ではないから出て行かせる。」

 「そうね、私もお人形の内容次第じゃあ逃げなきゃね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何処だシェーラ・カーンは!?」

 「何処かにいるはずだ・・・こっちか?」

 カミトはそう呟きながら向かって行くと・・・ある人間と鉢合わせた。

 その人間は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レン・アッシュベル。」

 「ほう・・・貴様か。」

 レン・アッシュベルらしき人間がカミトを睨んでいるとシャオがこう言った。

 「おいお前!シェーラ・カーンは何処だ!!」

 「さあな、奴とはとある目的ゆえの関係に過ぎないからどこにいるかは

分からん。」

 そう答えるとレン・アッシュベルらしき人間はこう続けた。

 「それにしてもあの時からどうだ?目覚めたか魔王の力は。」

 そう聞くがカミトはニヤリと笑ってこう答えた。

 「生憎だが俺はそんな力欲しくなくてな。」

 「そうか・・・ならば望み通りに!!」

 それを聞いてレン・アッシュベルらしき人間は腕から炎が激しく迸って

その熱風で2人は吹き飛ばされそうになるが踏ん張った。

 だがレン・アッシュベルらしき人間はこう続けた。

 「貴様が魔王の力を覚醒させるためにはまず・・・その女を殺す!」

 そう言ってレン・アッシュベルらしき人間はシャオに

炎をぶつけさせようとするがカミトはそれをテルミヌス・エストで防ぐとカミトはこう返した。

 「生憎だが俺がいる間仲間は決して倒させねえよ!」

 「そうか・・・だが何時まで持つかな?」

 レン・アッシュベルらしき人間はそう言って更に焔の出力を上げて攻撃すると

カミトは・・・こう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「絶剣技、四ノ型ー-『焔斬り』!!」

 カミトはそう言うとエストを中心に剣で焔を薙ぐとそれを返した。

 だがレン・アッシュベルらしき人間はこう続けた。

 「ほお・・・だがその程度で!」

 防げれると思ったかとそう言おうとした瞬間にある物を見て・・・驚いたのだ。

 その炎が・・・剣の柄を経由して・・・鎖分銅に炎が灯された。

 そしてカミトはシャオに向けてこう言った。

 「行くぞシャオ!」

 「オオ!」

 そう言った瞬間にカミトは焔の灯った鎖分銅を放つとそれは凝縮された力として其の儘レン・アッシュベルらしき人間が更に放たれた炎よりも強力に・・・

一点突破みたいに貫かれた。

 「ちぃい!」

 レン・アッシュベルらしき人間はそれに対して避けた瞬間に・・・

下から何かを感じるとそこにはシャオがいた。

 「何ィ!!」

 「おらあ!」

 シャオは其の儘顔めがけて放つがレン・アッシュベルらしき人間は

それをギリギリ・・・仮面の右目ら辺が完全に破壊されて少しだが顔が

明らかになった。

 仮面から見えた赤い瞳。

 そして何よりもあれは鬘だったのだろう、・・・紅い髪が露わになった。

 それはまるで・・・クレアみたいな。

 「それがアンタの正体か?」

 カミトがそう聞くとレン・アッシュベルらしき人間はそれを隠してこう言った。

 「この戦い、暫く預けるぞ。」

 そう言ってレン・アッシュベルらしき人間は去って行くと耳に入っていた

通信用の精霊からフィオナの声が聞こえた。

 囮の方はどうなっているんだと聞くとフィオナはこう答えた。

 『もう最悪よ~、結局手に入れられたのは6個、後は何だか黒い仮面が

全部持って行ってしまって骨折り損のくたびれ儲け!こんなんじゃあ労働分に

釣り合わないわよー----!!』

 畜生がー-!とか言って通信を切るとカミトはシャオに向けてこう言った。

 「まあ取敢えずは・・・勝ったのかねえ?」

 「・・・だよな。」

 そう言って互いに天井を見上げるしかなかった。

 因みに〈四神(スーシン)〉の魔石はちゃんと全員分確保した。




 次回でラスト。


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次の為に

 やっとここ迄行けたぜ。


 あの戦闘から一夜が明け拠点に戻ったカミト達に対してシャオがこう言った。

 「この魔石あんたらにあげるわ。」

 あっけからんとシャオは自身の魔石をカミトに手渡すとカミトがこう聞いた。

 「良いのかよ?お前迄脱落したらクイナ帝国が・・・お前の立場ってものが。」

 「ああ良いよそんなの、まあクイナ帝国からは追い出されるか

また元の場所に戻るだけって話だろうし。」

 「お前。」

 カミトはそれを聞いて暗い顔をした。

 シャオは暗殺拳の使い手、追い出されるか元の場所・・・つまり暗殺部隊に

逆戻りか最悪殺されるかもしれないとカミトはそう考えていた。

 自分と同じ様に兵器としてしか扱われない人間に対して何かできないかと

そう思っていると・・・ヴェルサリアがこう提言した。

 「もし居場所が無ければこちら側に来ないか?」

 「え?」

 「レオノーラも元は他国の人間だが今は我々の仲間だ、それに学園長ならば

貴様ほどの使い手に対して何も無碍には扱われまい。」

 「何で・・。アタシにそこ迄。」

 シャオはヴェルサリアの言葉を聞いて動揺していた。

 他国の、先ほどまで敵対関係であった自分に対して何故そこ迄協力してくれるのか疑問だったのだ。

 暗殺者としてこれまでいろんな人間を見て来て分かった事はただ一つ。

 人間は自分の欲望を中心に考える存在で他人の事は二の次であると言う結論だ。

 だが仲間でもあったリンファ達は自分の正体を知っているうえで同士として

迎えてくれたが心の中では違っていた。

 ・・・皆アタシを恐れている。

 皆はアタシを兵器としか見ていない。

 たったそれだけ、だからこそ仮初とは言えカミト達と協力を提言しつつ

上手くいけば他の選手の魔石を手に入れられるという計算も入れていた。

 だが作戦は失敗、それどころかメンバー全員がリタイアとして強制送還された今

自分たった一人では無理と判断したから辞退する道を選んだのだ。

 後はもうどうにでもなれと思っている中での言葉にそう聞いて

ヴェルサリアはこう答えた。

 「何を言っている?仲間なのだぞ我々は、助けるのが筋というものだ。」

 そうだろうと聞くと全員が頷くとカミトはシャオに向けてこう言った。

 「そういう訳だシャオ、何かあったらグレイワースに頼め。力になってくれるし俺達だって出来ることをするつもりだ。」

 だから甘えろよと言うとシャオは・・・涙ながらにこう言った。

 「ありがとう・・・・。」

 そう言って彼女は転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「良い奴だったなアイツ。」

 「ああ、これが終わったら何か飲みにでも行くか?」

 カミトとヴェルサリアが互いにそう言うとエリスがこう言った。

 「さてと、後残すは一日です義姉上。」

 「はい、今日が正念場です!」

 「頑張って先を進みましょう!!」

 エリス、レオノーラ、フィオナが互いにそう言うとカミトは全員に向けて

こう言った。

 「それじゃあ・・・行くぜ手前ら!!」

 「「「「ォォォォォォォォ!!!!!」」」」

 その掛け声が空に響き渡り行動を開始した。

 この日多くの選手が鎬を削ったのは言うまでもない。




 当面の間休載します。


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第8章決勝前の一休み
最終日


 半年ぶりに再開です。


深い霧が立ち込めている〈アストラル・ゼロ〉の密林の中でカミトは

拠点制圧のために森の中に入っていた。

 既に時間が足りない彼らにとってこれしか手段が無いのだ、そして相手は

同じ学園でチーム名は『ケルンノス』。

 前にカミトがクレアと組んでいた際に戦闘して敗北してしまったチームであるが

今回はそうはいかないと思いながらカミトは手に持ってある交信用の精霊鉱石を

持っているとヴェルサリアから通信が入った。

 『カミ・・・聞こ・・・いる・・・?』

 「感度が悪い・・・そろそろ敵陣に入る頃合いだ。」

 『そう・・・気を付け・・・』

 その言葉を最後に交信が途切れた。

 そして暫くして・・・爆発音が聞こえた。

 「ヴェルサリアが奴らを引き付けているな、この隙に。」

 カミトはそう言って隠形を解いて中枢に向かった。

 ヴェルサリアを筆頭にレオノーラ・フィオナが囮として敵の主力を引き付けて

カミトは途中で合流するエリスと共に中枢を破壊して敵の主将が使っていた

儀式魔術を中断させるためである。

 その道中で鋭い棘が射出されるが・・・その前にエリスがシムルグで

カミトを捕まえて上昇して一直線に飛んで行くと・・・爆発音が丁度聞こえた。

 「何だ!」

 「行って見るぞ!」

 カミトはそう言って向かって行くと既に・・・戦闘が行われていたのだ。

 「あれは『神聖ルギア王国』の!」

 「くそが!奴らもかよ!!」

 そう毒づきながら降りていくと『神聖ルギア王国』の代表がカミトが

降り立つのを見てこう言った。

 「男の精霊使いのカゼハヤ・カミトだな!」

 「貴様をここで決勝に行かせんぞ!」

 そう言って先ず片方の少女が精霊を出した。

 「来い《咎人の足枷(ギルティ・スナッチ)》!」

 そう言うと足元から鎖が出現するとカミトとエリスはそれを避けるも

後ろにいた・・・『ケルンノス』のリーダーが捕まった。

 「何なのらーーーー!!」

 何やら間延びしたような声が聞こえたが仕方ないしと思って

カミトとエリスは向かって行くと・・・もう一人の精霊使いも精霊を出現させた。

 「出でよ巨人精霊『グレンデル』!」

 そう言って天空から現れたのは醜い見た目をした鉤爪が付いた巨人であった。

 空間事抉るかのように放つその攻撃にカミトとエリスは避けた後にエリスは

こう言った。

 「あれは私が相手をする!」

 そう言って槍の精霊魔装にして向かって行くと・・・森の中から声が聞こえた。

 「城塞精霊《アイゼンガルト》精霊魔装

《不落の城壁(グレート・ウオール)》。」

 その言葉と共にカミトとエリスを引き離すかのように身の丈の数倍はある城塞が現れるとカミトに向けてこう言った。

 「これで貴様は動けないはずだ、悪いがお前の精霊魔石を頂くとする。」

 そう言ってじわじわと城塞が狭まってくのを感じたカミトはまさかと

思っていた。

 「このままおれを押しつぶす気かよ!?」

 嘘だろと思いながらエストで砕こうとするも剣精霊と地精霊では

地精霊が上である為壊すことが出来ないのだが・・・カミトは

あれを思い出して・・・実行に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「良し、そろそろ失神している頃合いだな。」

 少女はそう言って城塞を解除しようとして・・・何かが城塞を砕いた。

 「何だと!?」

 一体何がと思った瞬間に・・・少女は槍に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし、上手くいったな。」

 カミトはそう言って『エスト・アーク』を持ち直した。

 『エスト・アーク』になった場合如何やら剣精霊であると同時に

水精霊になれると言う特性がある事をエストから聞いたカミトはこれを実施して

城塞を破壊したのだ。

 地属性の精霊は水精霊の攻撃に対して弱いと言う事は既に知っている為

破壊できたのだ。

 そして周りを見て見ると・・・既にエリスも相手を倒していた。

 「これで二対一だな。」

 そう言って枷を使う少女に槍の矛先を向ける2人を見て少女はこう答えた。

 「・・・降参する。」

 そう言うと同時にカミト達は・・・近くで倒れている

『ケルンノス』の主将からも魔石を取った後他のメンバーの魔石も取って

引き上げようとすると・・・脳内で音声が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予選終了時刻となりました、選手全員転送いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は経ってラグナ・イースの繁華街にあるヴァンフリーク商会出店の

唐揚げ屋『バードフライ』では祝勝会が執り行われていた。

 「お前達よく戻ったのウ、今日までの7日間しんどい事も多々あったが今日はゆっくり休んで英気を養うがよかろう・・・

『チーム スカーレットナイツ』の決勝進出を祝して乾杯!」

 『『『『『乾杯~~!!!!!』』』』』

 全員がジョッキを片手に乾杯するとあっという間に大騒ぎとなった。

 飲めや歌えやの大騒ぎで或る。

 そんな中でカミトは久しぶりに腰にある『シラヌイ』に向けてこう言った。

 「久しぶりだな相棒、暇だったか?」

 【ああ、滅茶苦茶暇だったぜっていうかまさか№が他国にあるって事には

驚いたな。】

 「其れだけじゃないんだがなあ。」

 【エリスには言っておいたんだろ?手前の過去?】

 「ああ、流石にもう一つはな。」

 【ばれたら間違いなく涙頂戴今晩のおかず確定だもんな♪】

 「俺殺されるんかい!?」

 カミトはそう言いながらも久しぶりに『シラヌイ』と言葉を交わせたことに

安堵している中でこうも思っていた。

 「(取敢えずは4位では入れたけど後三チームのうち

『神聖ルギア王国』ルミナリスと『ロッソベル公国』ミラ・バセット、そして・・『アルファス教国』のレン・アッシュベルらしきあの女。どいつもこいつも強敵でレン・アッシュベルらしきあの女以外は全員が№持ち・・・俺達はまず間違いなくこれ以上ともない強敵と戦う事となるんだな。)」

 そう思いながらカミトは今後について考えていた。




 そしてパーティーには客も来る。


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今後について

 パーティーにとある2人が出ます。


「さてと、パーティーで頭が呆ける前にだが我々は4位とギリギリで

第一位のレン・アッシュベルを相手どる必要が出てきた。それに備えて作戦会議を」

 そう言っていると・・・とんとんとノックする音が聞こえた。

 「誰じゃ一体?ロロット、ちょっと見に行ってくれぬか?」

 「分かりました。」

 ロロットがそう言って扉を少し開けてみた。

 「どなたでしょうか?」

 そう聞いて目の前にいたのは・・・。

 「よう、カミトはいるか?」

 グレイワースであった。

 

 

 

 

 

 

 

 「何でここに来てんだグレイワース?」

 「なあに、不詳の弟子にお祝い事と報告をしようと思っててな。」

 「報告・・・でしょうか?」

 一体何をとヴェルサリアがそう聞くとグレイワースは入れと言って

入ってきたのは・・・クイナ帝国の衣装を身に纏っているシャオが入って来た。

 「「「「「シャオ・フー!?」」」」」

 「よう、また会ったな。」

 そう言ってグレイワースの隣で立っていた。

 するとエリスがグレイワースに向けてこう聞いた。

 「何故彼女がここに・・・まさか本当に?」

 「ああその通りだ、カミトが私を頼れと言ってきた物だから

こいつは私が引き取ることとしたのだ。お前達が帰って来る時には一生徒として

通う事となるだろうからな、それまでの間は私の下にいるからそのつもりでな。」

 「まあそういう訳だから宜しくな。」

 アハハと空笑いしているシャオを見てカミトはそうかと呟くと

シャオはこう続けた。

 「まあ他の皆には悪いと思っているけどアタシが生き残る方法としたらこれしかなかったからな、・・・後は頼んだぜカミト。アタシの分まで勝ってくれ。」

 「ああ、分かっているさ。」

 カミトはシャオに向けてそう約束した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後暫くは宴会を楽しんでいるとカミトチームメイト全員に向けて

こう聞いた。

 「そう云やあ皆この後予定ってあるのか?2日間休息が与えられているけど?」

 カミトがそう言ってアルことを思い出していた。

 決勝戦開始前に〈神儀院〉の姫巫女達は〈精霊王〉に対して感謝の儀式を

奉納するため2日間の休息が設けられているのだがそれを聞いて

『シラヌイ』はこう呟いたのだ。

 《次の試合の内容すら知られねえって面倒だよなあ。》

 そう言ったのだ。

 そして全員はこう返した。

 エリス・ヴェルサリア

 「私達はソフト父上に決勝進出の報告をしなければならない。」

 フィオナ

 「私も同じだけどあの人たちに会うのなんて嫌だからバックレたいわ~~。」

 憂鬱だなあと凄い分かる表情でフィオナは項垂れていたがこれは嘗て自身が

《ロストクイーン》と呼ばれていた時の思い出が未だ引きづっているようだ。

 「だから私は当面は帝国のホテル泊りだからそんじゃ。」

 そう言って立ち上がって3人が出ていくと残ったのは

レオノーラとカミトだけとなった。

 両名とも親がいないがためにどうするべきか考えていると・・・

シャオが2人に向けてこう提案した。

 「そんじゃあさ、外の祭りを回ってみるのはドウダ?どうせ暇なんだろ??」

 「まあ・・・それもそうだな。」

 「ですが私達は次の試合に向けて作戦を」

 そう言っていると・・・『メイルストーム』が会話を遮ってレオノーラに向けてこう言った。

 《レオノーラ、今まで頑張っていたんですから今日くらいは羽目を外しても罰は当たりませんよ?》

 「で・・・ですけど。」

 《ほら?休むのも戦ううえで大切な事なんですよ、楽しみなさい。》

 「わ・・・分かりました。」

 《そんじゃ決まりだな、回るとするか》

 『シラヌイ』がそう言って場を切り上げるとカミトはこう言った。

 「それじゃあ楽しむか。」

 そう言って楽しみ始めるために外で色々と回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中でグレイワースはこうも思っていた。

 「(恐らくはこれが私がこの目で見る

最後の『ブレイドダンス』になるかもしれんが其れまでに何としても

明らかにしないといけない事がごまんとあるな。)」

 24年前に優勝した時は未だ機能していたシステムに異常があり始めたのは

3年前のカミトが優勝した年だ。

 僅か3年と言う短い周期で行われるブレイドダンス

 正式な契約精霊ではないのに参加している闇精霊

 精霊使いどころか人間ですらない異形の存在である『ネペンテス・ロア』

 これが何を意味するのかと考えていると・・・マギアルカがこう言った。

 「お主も如何やらこの試合に何か陰謀があるのかとそう思って居ろう?」

 「まあな、そしてもう一つ気がかりなのがアルファス教国にいる

レン・アッシュベルの偽物。そして教導院の遺児、奴らが何かを

企んでいると言う事は明白なのだがそれが何なのか知る事から

始めなければいかんが如何せん情報が少ないしそれに『№』についてもだ。

今回のブレイドダンスについて何か決定的な証拠があれば良いのだがな。」

 グレイワースはそう言いながら・・・自身の胸を掴んでこう思っていた。

 「(持っていてくれ私の心臓よ・・・あの坊やに・・・カミトに

私の絶剣技の奥義を伝授させることができるまで。)」

 そう思いながら外を眺めていた。

 明るく照らす外の世界とは裏腹にグレイワースは内心穏やかな事など

一切なく今後の事を考えていた。)」




 次回は偽物視点。


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決勝の知らせ

 とうとうその日がやって来た。


 何処までも続く地下空洞の中で『チームインフェルノ』が竜匪族と

作戦会議をしていた。

 「それではアルファス教国の軍上層部からですが新たな軍用精霊の提供に

同意してくれましたがこれ以上は難色を示しており」

 「まあ仕方ないさね、軍用精霊は強力な反面使い勝手が悪いからね。

ミュア、分かってると思うけど」

 「分かってるわよドラッケン!ここで機竜を使う事が出来ないって言われてるけどああもう苛つくわ本当に!!いっその事本気で試合中に機竜使っちゃって

暴れたいわ!」

 「止めておけミュア、そうなるとアルファス教国の軍共から

茶々いれられるから。」

 そう言って取敢えずはとそう言うとこう続けた。

 「それとですが数日前にドラグニア経由でヘイブルグの空中戦艦部隊が

アディスマータ新王国を強襲するも失敗したと言う情報が入りました。」

 「成程ね、そうなるとアタシらもそろそろ忙しくなりそうだねエ・・・

こっからが稼ぎ時だからあんたら気合い入れるよ!」

 『『『『『ォォォォォオオォォォォォォォォ!!!!!』』』』』

 団員たちが大声でそう言うとドラッケンはリリィに向けてこう聞いた。

 「それであの自称最強さんは?今何処さね???」

 そう聞いたのだ、レン・アッシュベルらしき人間がいないのでどうしたんだと

聞くとミュアがこう答えた。

 「あいつなら今部屋の中じゃないの?大方あの力に押しつぶされそうとかで。」

 きゃははハッハと笑いながら説明しているとリリィがこう付け加えた。

 「恐らく次の試合が限界でしょう、まあ私からすればあの程度で

彼女となり変わろうなんて普通は考えませんよ。」

 そう言っているとドラッケンはこう呟いた。

 「・・・こいつはアタシらもここから出ていく事を考えないと

いけないそうだねエ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予選終了から2日経って現在カミト達は大祭殿に来ていた。

 この2日間の内1日目は普通に楽しんでおり2日目は機竜の整備と作戦確認等を

費やしており巨大な石門の前では盛大に篝火が焚かれていた。

 五大精霊王の託宣を言うために集まっている中で『シラヌイ』達が又もや

鎖に架けられているのを見てため息ついているが仕方なしと思って辺りを

見渡していると・・・声を掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 「失礼、カゼハヤ・カミト殿。」

 「?」

 背後から肩を叩かれて後ろを振り向くとそこにいたのは・・・やけに体格がよく鷹のように精悍な顔立ちと短く刈り込まれた青い髪をした・・・

誰かに似ているなとそう思っているとエリスとヴェルサリアが揃ってこう言った。

 「「御爺様!!」」

 「え、御爺様ってまさか!?」

 カミトが大声でそう言うと腰に納められている『シラヌイ』が慌てて

こう言った。

 『おい先ずは挨拶しろ!相手は国のお偉いさんだぞ!?』

 そう言うとカミトが慌てて目礼するとレオノーラ達もそれに続いた。

 相手は帝国筆頭軍事顧問でランバール戦争の際に活躍した帝国の英雄である為

平時ならば口を聞くことはおろか顔を見ることすら敵わない程の

大物貴族であるのだ。

 それにはレオノーラや王族でもあるフィオナですら目礼するほどだ。

 するとファーレンガルト公はカミトの肩を叩いてこう言った。

 「そう固くならずとも良い、顔を上げなさい。君の事は

エリスとヴェルサリアからよく聞かされているよ、

今回のブレイドダンスでの活躍は見事な物であったぞ、・・・

カミト殿一つ良いか?」

 「あ、はい。」

 何でしょうかとカミトがそう聞くとファーレンガルト公がこう言った。

 「儂のエリスとヴェルサリア何だがどっちが良いのだ?2人共器量は良いし

家柄も問題ではないし何よりもこれと決めたら一途に突き進む家庭的な

手合いだから良い子達だ。」

 「・・・・・え?」

 『これって完全に・・・目えつけられたなカミト。』

 《これはこれはレオノーラも頑張らないといけないわよ!》

 「な、何言ってるんですかメイルストーム!」

 【クククク、この男お前と妹のどちらかを嫁にさせる気だぞ我が使い手ヨ?

今なら押し倒す事も可能だぞ?】

 「////////」

 メイルストームとカオスブレイカーがレオノーラとヴェルサリアに向けて

そう言っている中でファーレンガルト公はカミトの肩を・・・強く掴んで

こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「但し、浮気は許されんぞ?もしワシノ可愛い孫娘たちを

2人共泣かすような事したら・・・部門の筆頭であるファーレンガルト家の

全兵力を使ってでも君を追い込んで生きていた事を後悔させてやるから

そのつもりでな。」

 「(あ・・・俺2人共泣かしたらコロサレル。)」

 『今のうちに高飛びする国考えとけよお前?』

 『シラヌイ』がある意味心配している中でファーレンガルト公は・・・穏やかに微笑んでこう言った。

 「では儂はこれで失礼する、君達の優勝を願っている。」

 そう言って立ち去ったが・・・爆弾が残ってしまって暫くはこのざまである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして『チームインフェルノ』以外の全メンバーが集まると白い儀式装束に顔に白いヴェールがかけられた姫巫女達が現れたのだ。

 そして中央にいる精霊姫が一歩前に進むと全員に向けてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これより精霊王の託宣を伝える、決勝戦の舞台は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・古の廃都【メギドア】」




 次回は奥義伝授。


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魔女デル

 彼女が出てきます。


あの後カミト達は〈大祭殿〉のホールから出て決勝戦の場所について

話し合っていた。

 「廃都〈メギドア〉か・・・何か知ってるか?」

 カミトがそう聞くとフィアナは肩をすかせてこう答えた。

 「聞いたことない場所よ、これまでブレイドダンスで舞台になっていたのは

聖地だったから対策を考えようともねえ。」

 するとシラヌイがカミトに向けてこう言った。

 『三年前は確かに正常だったけどやっぱあれかもな。』

 「あれ・・・三年前のか?」

 『生憎だが俺は知っているがこいつはお前が思い出さなきゃいけない案件だから

俺は口出ししないぜ。』

 「・・ああ、分かってるさ。唯一の救いはテンペスタと同じって所か。」

 「だが今回はメンバー全員が別々の場所に飛ばされると考えると

気がめいりそうだな。」

 【ふむ、≪焔の乱刃(クロス・ファイア)≫と言っていたな。これの攻略法は

如何に同胞を集めつつ敵を屠るかに掛かっていると言う事だな。】

 ヴェルサリアとカオスブレイカーがそう言ってこの戦い方について

そう言っていると・・・ドン!と花火が咲き誇るのを見てカミト達は

足を止めているとエリスがこう呟いた。

 「そう言えばそろそろ〈精霊大祭〉が近いところだな。」

 「〈精霊大祭〉?」

 『何じゃそりゃ?』

 カミトとシラヌイがそう聞くとヴェルサリアがこう答えた。

 「ああ、毎年学院で催される学園祭でな。シルフィード全員は

警備をしなければいかんからその時は覚悟しろよカミト?」

 「私は編入組だから帰ったらフレイヤ先生の補講・・・

はあ、バックレたいわ。」

 「其れは言わないで下さいフィアナ、王女が留年なんて恥しかありませんよ?」

 「それよ!留年すればあのお父様だって愛想つかすはずよ!!

そうと決まれば早速荷造りして」

 《・・・逆効果のようですねこれ。》メイルストームとフィアナの行動を見て

呆れ交じりでそう言うと・・・カミトは全員に向けてこう言った。

 「兎に角残り3日・・・悔いを残さない様にしないとな。」

 「その通りだな!我々の力でレン・アッシュベルを騙る不埒物に

天誅を与えねば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほう・・・良くいったなエリス・ファーレンガルト。」

 「グレイワース!?」

 『お前何時から後ろにいたんだよ!?』

 カミトとシラヌイが互いにそう言うとシャオが後ろに出てきてこう言った。

 「ようお前ら、久しぶりだな。御免だけどカゼハヤ・カミトを借りて良いか?」

 「シャオ・フー・・・貴様の目的は何だ?」

 ヴェルサリアが何やら警戒心丸出しでそう聞くとグレイワースがこう答えた。

 「なあに、ちょっとばかり坊やを借りるだけだ。野暮用があるしそれに・・・

睦会う・・・というのは冗談だからそんな人を殺す濁った笑みを浮かべるな

怖くなってきたぞ。」

 グレイワースはそういって・・・レイプ目になっているヴェルサリアを見て

恐怖してそう言うとカミトがこう聞いた。

 「明日決勝戦何だが今じゃなきゃいけないのかよ?」

 カミトがそう聞くとグレイワースはこう答えた。

 「ああ・・・お前たちが勝てる確率を上げるために必要な事だからだ。」

 「「「「「!!!!!」」」」」

 それを聞いて全員が目を思いっきり見開いたのだ。

 勝率が上がれる機会はそう訪れるものではない、

然もそれがグレイワース直々ともなれば更に話が速い。

 このチャンスをものにしたいカミトはヴェルサリア達に向けてこう言った。

 「皆は帰っててくれないか?俺は」

 「分かっている、気を付けろよ。」

 そう言うとグレイワースはシャオにもこう言った。

 「お前も先にホテルに戻っていろ、エストがいれば安心だから

ゆっくり休んでいろ。」

 「わ・・・分かった。」

 そう言ってシャオも戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイワースと共に深い森の中を歩いて行くとカミトに向けてこう言った。

 「懐かしいなこうして坊やと森の中を散歩とは。」

 「あの俺は森にキノコ狩りに行くぞと言われてついて行ったと思ったら

魔人級精霊がりだったもんな。」

 『こっちはその所為で死にかけたもんな。』

 「ああそう言えばそうだったがあの実戦でお前はあの技を会得できたのだから

良かったではないか?」

 「会得しなきゃ死んでいたよ。」

 『そもそもナンデ今更その話するんだ?』

 シラヌイが疑問を述べていると森が切り開かれた場所についた。

 「それで・・・俺に渡したい物って一体何なんだグレイワース?」

 そう聞くとグレイワースは・・・重い口を開いてこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カミト、お前に最後の絶剣技を託す。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な・・・に」

 『あの技が奥義じゃねえのかよ!?』

 シラヌイがそう言うが無理もない、大陸最強と呼ばれているグレイワースから

レスティアと共に会得したこの技こそが自身をレン・アッシュベルに

誘ったのだから。

 するとグレイワースはカミトを見てこう続けた。

 「確かにあの技は極めれば魔人級精霊すら屠れるだろがお前に教えていない

最後の技・・・これは未熟者が使えば肉体が滅んでしまう力だが

今のお前ではレン・アッシュベルには勝てないだろう。だが肉体的には

今のお前ならばこの奥義の不可に耐えきれると確信したからだ。」

 そう言うとグレイワースは地面に手を翳した瞬間に血のように

紅い光芒が発生して禍々しい魔法陣が浮かび上がると・・・こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーー冥府の門より出でよ、偉大なる伯爵、魔精霊〈ヴォイド〉よ!」




 次回は奥義伝授。


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奥義伝授

 8巻が終わりました。


「ーー冥府の門より出でよ、偉大なる伯爵、魔精霊〈ヴォイド〉よ!」

 そう言って現れたのは不定形な闇の塊であった。

 だがこのヴォイドは嘗て魔王スライマンが使用していた72の精霊の一つである。

 そしてそれをグレイワースが手を伸ばすとヴォイドは漆黒の剣と姿を変えた。

 『ストーム・ブリンガー』、これこそがヴォイドの精霊魔装である。

 そしてカミトはエストをデモンスレイヤーにして構えるとグレイワースは

カミトに向けてこう言った。

 「さてと、三年ぶりに稽古するのだ。覚悟は良いな坊や?」

 「三年前はそんな事言ってもいないよな?」

 そう言って暫くして・・・グレイワースが姿を消した。

 「やば」

 『カミト上だ‼』

 シラヌイがそういってカミトは剣を上に向けるとグレイワースと剣戟が

交じり合った。

 「ほう、初撃は受けきったか?勘は戻りそうか?」

 「それは・・・勝ってから言え!」

 そう言って押し出そうとするが・・・押し負けていた。

 「エストが押されてる・・・!!」

 「昔からお前は神威の放出に斑があるから直せと言っただろう!」

 「くそ!」

 カミトは仕方ないと思って下がるがグレイワースは・・・更に速くなって

技を放った。

 「絶剣技、初の型〈紫電〉!」

 『カミト!エストに神威を集中しろ!』

 「分かってる!」

 カミトはそう言ってエストの刀身に神威を注いで防御するが

かなり吹き飛ばされたのだ。

 「ふむ、今のはシラヌイの助言であろうが手加減したんだ。未だ続けるぞ。」

 「そのつもり・・・でいるんだろ!」

 カミトはそう言って構えるとグレイワースはカミトの諦めない目つきを見て

ニコリと笑っているとこう言った。

 「カミト、一つ言うが奥義は一回しか使わない。それでこの技の神髄を

導き出せ、さもなくばお前はレン・アッシュベルには勝てんぞ。」

 そう言いながら底冷えするような神威を放出し始めるのを見てカミトは無言だが了承して構えた。

 最初はクレアしかいなかった、今ではフィアナ、レオノーラ、ヴェルサリア、

エリス、エストが加わって・・・大切な物が出来たなとそう思っていると

グレイワースはカミトに向けてこう言った。

 「カミト、今放たれる最強の技で私を倒して見せろ。」

 「言われなくても・・・やってやる!」

 そう言ってカミトは神威をデモンスレイヤーにありったけ流し込むと地を蹴って加速して逆手で構えたその技は・・・これだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「絶剣技、破ノ型ーー烈華螺旋剣舞・18連!」

 それは一撃一撃が必殺級の威力を誇る連撃技。

 普通ならばこれで大概の相手を倒せれるが相手が相手である。

 グレイワースはそれらを全て受けきっていた・・・だけではない。

 「!?」

 カミトはその光景を見て驚いていた、何せグレイワースの髪が・・・淡い燐光を放っていたのだ。

 それを見てシラヌイはまさかと思ってこう言った。

 『おいおい嘘だろ!あの婆さんカミトの神威を吸収しているのか!?』

 あれがヴォイドの能力なのかよとそう言っているがカミトは違うと思っていた。

 「(これは吸収じゃない・・・同調だ!こいつは相手の動きや呼吸を完全に

合わせることで俺の神威を自分の物にしているのか!?)」

 そう思いながら全ての斬撃が終わったその時に・・・グレイワースの攻撃が

カミトに襲い掛かった。

 これまでの攻撃が全て・・・グレイワースの攻撃も+して襲い掛かる正に・・・回避不可能のその奥義が。

 そしてグレイワースはこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「絶剣技終ノ型ーー〈天絶閃衝【ラスト・ストライク)〉!」

 その攻撃が瞬く間にカミトに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相手の攻撃の総裁にカウンター・・・奥義という割にはシンプルだったな。」

 『だが使いどころを見極めなきゃ無用の長物だ、カウンターの出せる所を

見極めなきゃ意味ねえゼ?』

 「成程な。」

 カミトは大の字になって寝ているとグレイワースが大量の治癒鉱石を

置いていると汗だくになってカミトのもとに駆け寄った。

 「絶剣の奥義、見切ったか?」

 「ああ・・・掴めたには掴めたが後は俺自身だな。」

 そう言うがグレイワースは・・・少し微笑むと・・・カミトのすぐ隣で倒れた。

 「お・・・おいグレイワース!」

 『何だ!過労か!?』

 カミトとシラヌイが慌てているとグレイワースは・・・こう呟いた。

 「カミト・・・レン・アッシュベルを・・・倒せ。」

 そう言いながら心臓を押さえて熱に魘される様に・・・其の儘目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グレイワース!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして何処かの空洞

 「黄昏は過ぎ去って闇夜が訪れた。」

 レン・アッシュベルらしき人間はそう呟いて目の前にある・・・

ネペンテス・ロアの肉の欠片を頬張っていた。




 また休載します。


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登場人物8巻前

 最新情報です。


カゼハヤ・カミト

 知っての通りの主人公

 赤子の時に教導院に攫われて暗殺者としての訓練を受けた。

 精霊使いとしての能力を持っており教導院の老人たちからは〈魔王の後継者〉と

呼ばれていた。

 レスティアと仮契約する際に放置された刀型のソードデバイス、《シラヌイ》を

見つけ、契約した。

 教導院が滅んだ後に逃走し、骸連盟〈マーダーズ〉に入籍し以来として

グレイワースの暗殺を受けるも失敗した。

 その後グレイワースの下で召使(メイド服)としてだけでなく暗殺者の

カウンターとしても起用された。

 ある理由でレスティアを手放してから3年後にグレイワースに呼び出されるが道中にクレア・ルージュと遭遇し、戦い沙汰となった。

 クレア・ルージュの目的は1000年前に存在した伝説の精霊

《セヴェリアンの聖剣》を抜いたが暴走し、仕方なく契約した。

 その後グレイワースとの取引にてアレイシア精霊学院に入学。

 その際に一時であるがクレア・ルージュにしつこく勧誘された。

 また、契約した精霊〈エスト〉を新たに迎えた。

 精霊使いとしては初期段階においては素人クラスであったが戦えば戦うほど

何か思い出したかのように成長していった。

 同居人としてレオノーラと同居している。

 クレア・ルージュが狂精霊〈ゲシュペンスト〉にて大会を混乱に陥り、

その際に賞品でもある軍用精霊の暴走に立ち会い、《シラヌイ》で迎撃する。

 第2巻においては《シラヌイ》とエストを使った戦闘が主流となり、

事実上二種類での使用となっている。

 フィオナが入学したその日にジオ・インザーギと学院にて戦闘。

 それを捕らえる仕事と軍用精霊〈ヨルムンガンド〉の再封印を命じられ、

鉱山都市《ガド》に向かった。

 その際にマルカファル王国の商人であり、ギルゾレイクファミリーのボス

《マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク》と《アルマ》に出会った。

 その後エリス達を倒したジオ・インザーギを見つけ、共闘するも

あと1歩のところで邪魔が入った。

 その後マギアルカと共闘することとなり、真祭殿においてジオ・インザーギの

絡繰りを推測し、勝利するもフギル・アーカディアにより

ジオ・インザーギであったバケモノ相手に戦う事となった。

 その際に共にいたレスティアとエストの剣の二振りをシラヌイで使って

勝利するもジオ・インザーギは死亡した。

 その後にマギアルカに本格的な機竜での使用法を教授された。

 その際に新たなるチーム編成に伴い、エリス、フィオナ、レオノーラが

加わった。

 第3巻において、新たに加わったヴェルサリアに機竜での決闘を布告され、

これを受諾。

 戦闘は引き分けに終わったがその実力は確かなものとなった。

 第4巻においては試合会場に向かう最中に軍用精霊《デス・ゲイズ》と

空中で交戦することとなった。

 辛勝した後に教導院において組んでいた少女、《ミュア・アレンスタール》に

再会。

 その後の晩餐会においては《レン・アッシュベル》らしき人間からある物を

投与され、痛みながらも竜匪族の人竜部隊団長《ドラッケン》と戦闘。

 マギアルカの介入にて何とか退くも投与された何かに蝕まれ、命の危機に

直面していったがエストの力で回避したがその際にエストは消えた。

 その正体は嘗て前ブレイドダンスにおいての優勝者

《レン・アッシュベル》本人であるのだが知っているのは相棒の《シラヌイ》と、レスティア、グレイワース、フィオナ、ヴェルサリアだけである。

 その後エストの手掛かりを求めて古代図書館にて

『アレイシア・イドリース』直筆の記録書を手に入れた。

 呪いはフィオナの助けにより現在の火の精霊姫であるレイハによって

解呪されるもその後からアレイシア・イドリースの記憶が見えるように

なってしまった。

 ルミナリス戦の際に危機に陥った時にエストを再召喚に成功し、勝利した。

 保有№は101

 対ネペンテス・ロア戦に於いてはエストの姿を槍に形状を変えて勝利した。

 またレン・アッシュベルらしき人間とも戦い彼女の招待の一部を見た人間の一人

 ブレイドダンス前にグレイワースから絶剣技の奥義を伝授されそれについて

考察中。

 

 

 

 

 

 

 レオノーラ・ランカスター

 本来なら《ドラグニア竜皇国》に在籍していたがとある《アビス》戦において《ヘイブルグ共和国》に吸収された。

 機竜、《メイルストーム》を保有し、精霊《グリムゲルデ》と契約している。

 親友を恩人でもあり憧れでもあった《ローザ・グランハイト》に全員

殺された後に家族を殺され、天涯孤独となって国外脱出した後に

チームメイトでもあったリンスレットの家に一時的に身を寄せた後に

グレイワースの推薦で入学した。

 独り身であるが真面目で優秀性である。

 機竜においては下位ランクであるが一通りのやり方は学んでいる。

 主に機竜での戦闘に重点を置いているが精霊使いとしての腕前は1流である。

 ジオ・インザーギ戦の後にカミトのチームに入り、ブレイドダンスに出場した。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト

 先のブレイドダンス出場であると同時にレン・アッシュベルの正体を知る一人。

 元々は下級貴族の出であるが精霊使いとしての実力を評価され、養子となった。

 エリスとは義理の姉妹であるが仲は良い。

 1年生にしてブレイドダンスに出場出来る程の実力者であったが

レン・アッシュベルに瞬殺され、意気消沈しアストラル・ゼロで精霊に殺されて

死のうと思っていたところにフィオナと襲っていたドリアードに遭遇。

 死ぬと確信した時にカミトに出会い、その正体を知る。

 カミトとの言葉のやり取りの後にもう一度再戦を約束するもそれは

3年先となった。

 治安維持組織シルフィードの団長であり実力は確かである。

 3年後にカミトと再会するも忘れていたことに少し・・・キャラ崩壊したが

思い出してくれた後にカミトの頬に口づけをした。

 機竜は《カオスブレイカー》、精霊は《サイレント・フォートレス》

 カミトのチームに入った後に機竜での決着を所望した。

 カミトに対しては好意を抱いており、再会に備えて料理の特訓もしている。

 

 

 

 

 

 

 

 エリス・ファーレンガルト

 先のブレイドダンスにて《レン・アッシュベル》に憧れを抱いておる少女。

 シルフィードと言う学院の治安維持組織にて団長補佐を任されていた。

 精霊は《シムルグ》、機竜は《ワイバーン》

 団長補佐に選ばれているだけあって実力は確かであるが優等生型であるため

授業の単語を全て書くと言う堅物なところがある。

 一時はカミトを不安視していたが軍用精霊の戦いの後にカミトの実力を見て、

見直し勧誘することもあった。

 ジオ・インザーギ戦の際に自身のチームメイトがやられたため、カミトの

チームに入り、マギアルカの教えを請いた。

 機竜での戦闘は主に接近戦であるためある程度万能型でもあるミュアに

やられかけた。

 カミトが教導院出身であることを知っている人間であり、チームでは

エリスのみである。

 胸が大きい事がコンプレックスであり、最近は甲冑が付けづらいと漏らすことがある。

 対ネペンテス・ロア戦の際にはカミトの真実を聞いても受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 フィオナ・レイ・オルデシア

 オルデシア帝国の第2王女であり、神儀院に在籍していたが

クレア・ルージュの姉のルビアの出来事により精霊が使えなくなった為、

神儀院から追放され《ロストクイーン》と呼ばれるようになった。

 前回のブレイドダンスにおいてレン・アッシュベルの戦いを見た後に精霊が

使えないかアストラル・ゼロに行くも失敗し、ドリアードに襲われかけた。

 その際にレン・アッシュベルの正体も知った。

 その後は精霊鉱石を使って不法入学した後にジオ・インザーギ戦に参加。

 その戦いに置いて儀式演武を使って補佐に周りジオ・インザーギの精霊を

無力化させた。

 カミトのチームに入り、マギアルカの教えを請いた後に精霊が使えるように

なった。

 精霊は《ゲオルギウス》、機竜は《ドレイク》

 本人曰く、耳年増であるが初心だと告げているが本当なのかどうか知らない。

 両親に対しては険悪であり、女王の資格を返上し、マギアルカに商売の

イロハを教わり、見返したいと思うぐらい嫌いであるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 クレア・ルージュ

 本来ならメインヒロインであるのだが本作では不遇キャラ。

 名前自体が偽名で本名は《クレア・エルステイン》なのだが姉が炎の精霊王を

奪い、脱走したため家は取り潰された。

 家を取り戻すこととルビアに真実を聞くために強力な精霊を手に入れたいと

やっきになっていた。

 カミトがエストと契約した際には本人の事を《奴隷精霊》と呼んでカミトを

無理やりチームに入れさせようとした。

 精霊は《スカーレット》

 エリスとの決闘の際には途中で割り込んできた魔精霊すら契約しようと

意気込むがスカーレットがやられたのを見て意気消沈し、カミトが倒した際には

カミトに対して嫉妬の心が出来ていた。

 軍用精霊をかけた試合においては精霊無しで戦おうとするも酷い結果であると

同時に姉を馬鹿にすることを言った上級生に対して怒りが込みあがり直前に

レスティアに貰った狂精霊《ゲシュペンスト》を使って全ての精霊を

暴走させるもレオノーラによって阻止された。

 ジオ・インザーギ戦時に洞窟内で負傷し戦線離脱したがブレイドダンスに

出場できないと知るや否や呪装刻印を使って出場したいというが

グレイワースの叱責で没となりその後は抜け殻の様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 リンスレット・ローレンフロスト

 今作においての不遇キャラその2

 高飛車で自分と同等の人間しかチームに入れないというとんでもない性格で

あるが本当は面倒見の良い少女。

 クレアの事もそれとなく気にかけているが基本的には会えば喧嘩が普通である。

 レオノーラと組んでいたがジオ・インザーギ戦において負傷し、

ブレイドダンスに出場できなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイワース・シェルマイル

 元オルデシア帝国最強の12人の第1位であったが引退し、アレイシア精霊学院の学院長になった。

 カミトを引き取って色々と世話をしており、日常における常識を教えた人間。

 精霊は魔精霊で《伯爵》と呼んでいる。

 39だがその見た目は正に20代と言っても差し支えない人間であるがこれは

2回前のブレイドダンスにおける願いの副作用であり1定周期で若返るそうだ。

 実力は正にバケモノランクでありカミトですら死を覚悟したほどである。

 自分の生徒に危害が出た場合はあらゆる手段をもって下手人を葬る。

 嘗ての教え子でもあるヴィヴィアン・メローサによって教え子がバケモノに

変えられた後は必ず殺すという宣言もした。

 カミトに対しては親の様に接している。

 ブレイドダンス本戦前にカミトに絶剣技の奥義を伝授するも

その後に体調を崩して倒れた。

 心臓に何か埋め込まれていると言うのが原因である。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラッカ、レイシア

 エリスと同じくシルフィードのメンバーでエリスのチームメイト。

 ジオ・インザーギ戦によりチームから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィアン・メローサ

 マーダーズの組織に属するエルフィム族の女性

 呪装刻印に長けており生徒にそれをばら撒いていたが更にある秘薬と№を売りに出して

オルデシア帝国において指名手配犯となった。

 ある少女と国外脱出した後、行方知れずとなった。

 

 

 

 

 

 

 フレイヤ・グランドル

 アレイシア精霊学院の教師でレイブン教室担当。

 グレイワースが最も信頼している女性で影魔法の使い手。

 グレイワースによって軍の諜報を任じられてしまうという教師と言うより諜報員紛いなことを

されている女性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジオ・インザーギ

 自身を〈魔王の後継者〉と自称した男性。

 カミトと同じく教導院に入っており、暗殺や精霊の使い方を学んだ。

 教導院が崩壊した時に脱走し、数々の精霊を奪った。

 精霊においては鉱石や呪装刻印で使用していることから半端モノと呼ばれていた。

 フギル・アーカディアが№と特殊な薬の投与によって精霊と融合し、バケモノとなった。

 カミトによって倒された後にアストラル・ゼロに体を奪われ、送還された。

 カミトに対して見下していた態度から一変し、命乞いをしていたが結局体は精霊となって消えて

行った。

 保有№  72(その後にカミトが押収した。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミュア・アレンスタール

 若干12歳であるが教導院において№2の実力を持っている。

 幼い時に自身が育っていた村の守り神でもある精霊を狂乱させ、暴走させたのちに村を追放され、

教導院に入った。

 カミトの事を兄の様に接しており同じ教導院所属のリリィとも仲がいい。

 教導院崩壊後は紆余曲折を経て、ドラッケンが所属している竜匪族に入団し、機竜をもらい受けた。

 異能は《愚者の万力》、機竜は《ワイバーン》

 №を保有しているようであるがそれが何なのかは不明

 

 

 

 

 

 

 リリィ・フレイム

 カミト、ミュアと同じく教導院育ち。

 エルフィム族でありカミトの事を心の中では尊敬している。

 ミュア・アレンスタールと同じような理由で竜匪族に入団した。

 カミトが表社会で馴染んでいることを納得しておらず、目を覚まさせようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク

 表向きはマルカファル王国の巨大商業の社長であるが裏ではマフィア、ギルゾレイクファミリーの

創設者。

 幼い容姿とは裏腹で年寄りめいた言動と圧倒的な実力を持っている。

 カミト達とガドで出会って以降、アレイシア精霊学院においては人員不足のシルフィードの手伝いと、商業展開の拠点としてカミトが暮らしている旧療養所に住んでいる。

 機竜側においてはワールドランク第1位であり「金で買った」と言いながらもその実力は確かである。

 実際は26歳と妙齢の女性で初めて聞いた際にはカミト曰く「グレイワースみたいだ」と

思うほどである。

 機竜は《ヨルムンガンド》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルマ

 ギルゾレイクファミリーにおいて高い実力を持った人間。

 少女であるのだが普段は目深な帽子と全身を覆うように服を着ているため少年と間違われることも屡々。

 その正体はアディスマータ新王国第2王女「アールマティア・アディスマータ」と言う名前で革命時に自身が隠れていた隠れ家が旧帝国に強襲され、捕まったが命からがらに脱出し紆余曲折を経て

マギアルカに拾われた。

 隠れ家は姉がばらしたというのを聞いて恨み高らかに力を付けるうちに三大機竜奥義

「クイック・ドロウ」をマスターした。

 努力家でカミト達を気にかけていることから口は悪いが面倒見のいい人間と記憶されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フギル・アーカディア

 嘗て存在した国「アーカディア帝国」の皇子だが国外脱出した後幾つもの国を渡り歩いている。

 自らを先導者と呼び、カミト達に謎めいた言葉を吹きかける。

 ジオ・インザーギ戦では謎の薬を投与させ、暴走させた張本人

 機竜を持っているがそれが何なのか不明。

 

 

 

 

 

 

 ミスシス

 フギル・アーカディアに付く謎の女性。

 機竜を保有し、3種類すべてをマスターしている。

 それ以外は不明。

 

 

 

 

 

 

 

 ルミナリス・セイント・レイシエード

 神聖ルギア王国の聖霊騎士団の団長にして全大会の順優勝者。

 騎士としての高い忠誠心と実力を持っている。 

 打倒レン・アッシュベルを掲げて今回の大会に出場しており

今のレン・アッシュベルは偽物だと気づいている。

 その偽物に敗れた後に№を植え付けられ、暴走したがカミトによって鎮静化されもう一度の勝負を誓い合った。

 保有№は36

 

 

 

 

 

 

 ミラ・バセット

 ロッソベル公国の選手所属でリーダー格で《封魔眼》の所有者

 最年少の存在であると同時に№の所有者。

 嘗ては精霊の影響で国から兵器扱いされて心が壊れかけたところを

ぽんたに救われて感情を維持した。

 《封魔眼》に封印された精霊を解放する際に

ぽんたによって《封魔眼》破壊されなかったためカミト達の国に

亡命することはなかった。

 所有する№は64

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネペンテス・ロア

 レン・アッシュベルらしき人間の呪法によって蘇った存在。

 神威を喰い尽くしてそれを自身の力に変えると言う能力を持っている。

 全身黒い鎧で包まれていたがその正体は蜘蛛の顔をしたバケモノ

 カミトの力によって倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャオ・フー

 クイナ帝国の暗殺拳保有者にして暗殺者。

 カミトと同じ様に暗殺経験もある。

 カミト達と共闘後にリタイアするもカミト達の協力によってグレイワースの

保護下に入った。

 精霊は《白虎》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンファ、ハクア、ラオ、リオン

 同じくクイナ帝国所属の精霊使いでリーダーは第三皇女のリンファ。

 四聖獣を模した精霊を扱っており《黄龍》、《青龍》、《玄武》、《朱雀》の

使い手。

 シェーラ・カーンの策略によって操り人形とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シェーラ・カーン

 アルファス教国の王家の人間。

 グレイワースの後継者と呼ばれており魔精霊を扱う。

 その精霊は対象を支配すると言う能力で20近い精霊使いを従える程の実力者。

 所有する№は67




 これにて閉幕。


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クロス・ダーク・ファイア
常闇の会議


 2か月半ぶりの再開です。


カミトがグレイワースに絶剣技の奥義を習得し終えている間に夜の闇にまぎれて

一隻の小型飛空艇が着陸した。

 戦績は巧妙に偽装されてはいたが搭乗しているのはアルファス教国の

拘束密航船であり全員が訓練させられた戦闘技能者揃いである。

 魔王教団秘密機関《蛇》、彼らの之く敵は自身の国のメンバーでもある

『チーム・インフェルノ』にとある物を渡すために来たのだ。

 「来たわよリリィ、あいつら本当にしみったれているよねえ。」

 「貴方が考えなしの《ガルーダ》や《《コロッサス》を使い潰すからでしょって

今度こそは決勝戦まで持てればいいわよ本当に。」

 はああとリリィは溜息交じりでそう言っているとドラッケンが前に出て

こう言った。

 「ご苦労なこったさねアンタら、で?例のブツは??」

 そう聞くと一人の老僧が前に出て精緻な装飾が施された細工箱を見せて

こう言った。

 「喜べ、我らが教主様は汝らに最強の軍用精霊を賜った。」

 「中を確認させてもらうさね、念には念さ。」

 「結構。」

 老僧がそう言ってその細工箱をドラッケンに手渡すとドラッケンは

それをミュアとリリィに手渡して開けさせると出てきたのは・・・

鈍く光る銀製の腕輪であった。

 恐らく前述されていると思うが伝説級の魔装具はその殆どが簡単な形であるが

高純度のミスリルを使用している為分かる人は分かるのだ。

 そしてリリィは表面に刻まれている今や失われた言語、古代精霊語を読み取って

分かったのが・・・とんでもない代物であった。

 「・・・《ヴァラルカール》!?滅びの炎を司っていると言われる魔人級!!」

 「リリィが驚いているとなればそれなりに使えそうさね、良かったねミュア。

今度はそれなりだそうさね。」

 「まあ良いんじゃない?使えれるならって言うかもう少し可愛い方が良いな。」

 「・・・そんな魔装具あるか馬鹿者。」

 リリィはミュアの独り言を聞いて頭を抱えている中でドラッケンがこう聞いた。

 「それじゃあ外についてだけど何か情報はあるさね?」

 そう聞くと老僧たちとは別に背後から現れたのは・・・竜匪族の一人

三頭首の一角で地竜師団長の『ヴァイン・アシェットス』、細面の青年で

傭兵と言われても分からない程上品なタイプの人間である。

 「久しぶりだねドラッケン、あの子達とはうまくやっているようだね?」

 「そうさね、まあ付き合いも良いしなってそれで進捗状況は?」

 「其れなんだけど聞いてるよね?ヘイブルグ共和国の失敗。」

 「ああ聞いているさねそれで?」

 「これは噂程度何だがどうも新王国に・・・魔王が現れたと言う報告が

耳に入ったんだ。」

 「「「!!!」」」

 それを聞いてドラッケンだけではなくリリィ達も驚いていた。

 魔王と言えば=カミトとなるのだが国外にもう一人いたのかと思っていると『ヴァイン』はこう続けた。

 「其れだけじゃない、奴らは遺跡の完全停止方法を所有しているらしく

近々行われるヴァンハイム公国の催しで発表することとなったらしくて

今やこっちもてんやわんやさ。」

 『ヴァイン』は両手を広げて降参するかのようにするとこう続けた。

 「と言う訳で報告は以上だからそれでは。」

 じゃあなと言って立ち去るのを確認するとドラッケンが森に向かって

こう言った。

 「そう言えば何時までいるんさねシェーラ・カーン?」

 「「!!」」

 それを聞いてミュア達がその方向に振り向くと・・・森の中から

シェーラ・カーンが現れたのだ。

 「あら?矢張り分かっていたのね。」

 「当り前さねまだそんなに衰えていないよアタシは。」

 「そうね、それで私には何かあるのかしら?」

 シェーラ・カーンがそう聞くと老僧は黒衣の袖から小さな指輪を恭しく

差し出した。

 「これがかしら?」

 「はい、全てを奪う物《バンダースナッチ》でございます。」

 そう言うとシェーラ・カーンはそれを指にはめてこう言った。

 「それじゃあ私は失礼してもらうわね。」

 そう言って立ち去るのを見てミュアは小さくべーと舌を出していた。

 そしてドラッケンは老僧たちに向けてこう言った。

 「それじゃああたしらはこれで退散するさね、アンタらも帰りには

気を付けな。」

 そう言うと老僧たちは音もたてずに船に搭乗して立去って行った。

 それを見届けたミュアはドラッケンに向けてこう聞いた。

 「ねえさドラッケン、あの『ヴァイン』が言ってたことって本当なのかしら?」

 そう聞くとドラッケンはこう答えた。

 「さあね、けど遺跡の完全停止を知っているともなればこっちは御飯が

くいっぱぐれちまうさね。その前に資金を稼ぐよ。」

 そう言って帰ろうとするとミュアはドラッケンの服の裾を引っ張って・・・

こう言った。

 「あのさドラッケン、・・・別に暇じゃなければ良いのよ本当に!・・・

《三匹の猫剣士》見に行ってもいい?」

 そう聞くとドラッケンは少し笑って・・・こう答えた。

 「ああ良いさね、一緒に見に行こうじゃないさね。」

 それを聞いてミュアは少しであるが表情が明るくなったのを見て

こう思っていた。

 「(あたしにも子供がいたらこんな感じなのかねえ?)」

 傭兵で女の身分、色々あったがそれでも今や竜匪族の三頭領迄上りつめた

この身。女としての幸せを棄てている様に感じるがミュアと付き合ってからは

こう言う生活もあったんじゃないかと思ってしまう事もあったのだ。

 そしてミュアはドラッケンに向かって速く速くと急かすのを見て

少し微笑んでいるリリィと共に向かって行った。




 次回はカミト達サイド。


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託された願い

 その願いは聞かなければいけない。


 アルファス教国が陰謀渦巻いて入る中カミトはシャオと共に《神儀院》の

診療施設で・・・倒れたグレイワースの看病をしていた。

 あの後カミトはシャオに報告して機竜で診療施設に走り込んで

治療させたのだが・・・酷い容態であった。

 体の見た部分は以上ないのだが神威の循環を司っていた経絡が

これでもかと言う位にズタズタに寸断されていたが為最早修復できる

見込みは0だと言われたのだ。

 ーーもうグレイワース様には精霊を使役する事が出来なくなって

しまわれております。

 診療施設にいた医療士がそう言ったのを聞いて2人はそんなと思っていた。

 最もショックを受けていたのはカミトだ、あの絶剣技の奥義を

習得させるがために力を使い果たしてしまったのだ。

 もうこの世界に《ダスク・ウイッチ》と呼ばれた最強の精霊使いは

いなくなったのだ。

 そして暫くするとグレイワースが目覚めるとカミトに向けてこう言った。

 「・・・お前のせいではないさ、そう辛気臭い顔をするな。」

 「・・・どうしてだよグレイワース!何で・・・アンタ。」

 カミトは声を振り絞ってそう聞くとグレイワースはこう答えた。

 「元々こうなる事は分かってい吐いたが予想よりも早かった、それだけだ。」

 「予想って・・・アンタはどうして分かったんだ?」

 シャオがそう聞くとグレイワースはカミトに向けてこう言った。

 「昔話したよな?私が精霊王の願いによって精霊使いとして

延命されていた事。」

 「あ・・・アア覚えてるぜ(本当は一定周期で若返るんだよなそれ。)」

 「《まあこのお嬢ちゃんが聞いたとしても全然分からなそうだけどな。》」

 シラヌイがカミトの言葉に対してそう続けるとグレイワースはこう続けた。

 「寧ろ最後にあの剣技を坊やに託すことが出来たのは運が良かったと

考えるべきなんだろうな、だがあれは諸刃の剣。使わないで勝つに・・・

シラヌイがあれば確実なのだがな。」

 そう言ってグレイワースはシラヌイのソードデバイスを見てそう言うと

カミトの顔を見据えてこう言った。

 「坊や、今ここで約束してくれないか?」

 「何だ一体?」

 「《遺言なら聞いてやらねえことは無いぜ?》」

 シラヌイは半ば冗談交じりでそう聞く中でグレイワースはカミトに向けて

真剣な表情でこう言った。

 「あの仮面の精霊使いを・・・もう一人のレン・アッシュベルを倒せ、

彼女を止めなければ・・・アルファス教国が何かを・・・もしかしたら戦争を

行うかもしれん、奴らが機竜を保有している勢力と繋がっていることは明白だ。

下手したらあのランバール戦争等比べ物にならない程の戦争に突入しかねん。」

 「・・・何だと・・・!!」 

 カミトはそれを聞いて目を見開いて驚くが確かになと思っていた、

レン・アッシュベルらしき人間とダンスした後にこう言っていたのを

覚えているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『〈彼ら〉と戦うため』

 彼女はそう言って竜匪族をけしかけたのだ、何かやろうと思っても

不思議ではないなとそう考えている中でグレイワースはこう続けた。

 「あの戦争で大勢に姫巫女が死んだ、私を慕う者、妬むもの、友好を深めた者も兵士含めて大勢死んだあんな戦争の光景は見たくないのだ。

それに加えて機竜にアビスと厄介な揉め事が+されれば世界が荒廃してしまう、

カミト、お前の剣は私の様に守れずに敵を殺し尽くした剣とは違う。

大切な者達を守り、未来を切り開くための剣だ、その事を努々忘れるなよ?」

 何時になく真剣な表情をしているグレイワースを見て

カミトは短く分かったと答えると安心したのかその指先をそっと肩から離すと

疲れたようにこう言った。

 「さてと、お前は城館に戻っておけ。仲間のお嬢様たちが心配しているはずだしここにはシャオがいるから身の回りは何とかなる。」

 そう言ってカミトはシャオに目を向けるとシャオはにこりと笑ってこう答えた。

 「任せなよカミト、アタシだってこう見えても暗殺部隊にいたんだ。

見回りは任せな。」

 「そうか・・・頼んだぞシャオ。」

 「おおよ!」

 シャオがニヤリと笑ってそう答えるのを見てグレイワースは

やれやれと言ってこう思っていた。

 「(私は如何やら暗殺者を育てることに因縁がありそうだな、今度家に帰ったらシャオにはメイド服でも着させて家の掃除とかから始めさせるかな?)」

 フフフと少し笑っているとああそうだと思い出すとグレイワースは

ベッド脇にあった手紙をカミトに手渡すとカミトはこう聞いた。

 「何だこれは?」

 そう聞くとグレイワースはこう答えた。

 「学院長として可愛い教え子たちに伝えなければいけんことだ、必ず渡せよ?」

 「分かった。」

 じゃあなと言ってカミトが出るのを見送るとグレイワースはこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行って来い・・・可愛い可愛い私の息子。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてカミトがシラヌイのソードデバイスを持って診療室から出ると

扉から少し離れたところで声を掛けられた。

 「初めましてカゼハヤ・カミト君。」

 そう言ってきたのでカミトが振り向くとそこにいたのは・・・

首の後ろで括った黒髪に四角型の眼鏡を付け、理知的に見える紺碧の瞳、

そして純白のローブを身に纏った姫巫女を見て・・・カミトはこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・《十二騎将》の『ルーリエ』卿?」

 『おいおいマジかよビッグネームじゃねえか!?』

 シラヌイがそう言っていると『ルーリエ』卿はにこやかに笑ってこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「光栄だわカゼハヤ・カミト君、貴方に名前を憶えて貰えるなんて。」




 次回はなぜビッグネームの人がいるかです。


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作戦会議

 これ大切


 ルーリエ・リザルディア、またの名を『奇跡』のルーリエ。

 治癒術式を専門とする帝国最高位の『治癒師(ヒーラー)』にして

『十二騎将(ナンバーズ)』の第8位である。

 ナンバーズと言われても全員が全員戦闘技能が優れているわけではない。

 昔は騎士としての称号であったが今やエキスパートの中でもトップランクの人間に与えられるものとなっており今回は帝国の観戦団に随行する形で来たのだろう。

 するとカミトはルーリエに向けてこう聞いた。

 「貴方がグレイワースの治療を?」

 「ええ、『神儀院』から連絡があって飛んで来たわ。グレイワース様は帝国が誇る最強の姫巫女にして英雄だもの、出来るだけの事はしたつもりよ。」

 「・・・そうか、良かった。」

 カミトはルーリエの答えを聞いて少しほっとしているとルーリエに向けて

こう聞いた。

 「・・・聞きたいことがあるんですが宜しいでしょうか?」

 「どうぞ。」

 「グレイワースは・・・契約精霊についてその」

 「・・・それなんだけどよく聞いてね、グレイワース様の心臓には呪装刻印が

刻まれていてそれの影響で体が侵食されていたのよ。」

 「呪装刻印!?」

 カミトはルーリエの言葉を聞いて驚いていた、心臓に呪装刻印を刻むと言うのは

間違いなく死を覚悟していないと出来ない事でありその前に

そんな事が成功したと言う事例はランバール戦争時では聞いたことが無いからだ。

 するとシラヌイがこう呟いた。

 『(多分だけどあの婆さん自分が各国の抑止力として頂点に君臨し続ける為に

文字通り寿命が縮む覚悟で挑んだんだろうな。)』

 そう思っているとルーリエはカミトに向けてこう続けた。

 「精霊王からの奇跡における肉体の不死、それが無ければ間違いなく

グレイワース様のお身体はもう当の昔に限界を超えて

お亡くなりになっていたでしょう。ランバール戦争終結後も

グレイワース様は帝国を守らんがために最強の精霊使いとして君臨し続ける為に

禁忌を使ってでも頂点に君臨し続けたのです。」

 「そして俺に託したのか・・・『ダスク・ウイッチ』を捨ててまでも俺に・・・今まで守ってきたものとこれからを。」

 その思いが重いなと感じながらも立ち尽くしているとルーリエは

そう言えばとカミトに向けてこう聞いた。

 「ああところでカミト君、今回のブレイドダンスが終わったらだけど

君にはナンバーズの推薦があると思うのよ。決勝戦の活躍次第だけど

今の君の実力だったら間違いなく合格できそうだから最低でも11位、

良かったら7位に加わる事も夢じゃないわよ。」

 『(お前確か前にナンバーズの勧誘受けてたよな前のブレイドダンスで)』

 ああそういやあそうだったなあとキンジは頭を掻いて思い出していた。

 あの時も今と同じだが興味などないしあの当時にはレスティアの夢を

果たさせるために頑張っていた事と正体を隠すことも相まって断ったのだ。

 更にルーリエはこう続けた。

 「それとだけど君が持っているその奇妙な精霊、興味があるのよ。

グレイワース様からの報告によればそれは機竜って言う兵器らしいけど

其れも含めればナンバーズは間違いないから覚えておいてねエ。」

 それじゃあと言って立ち去るを見送るとカミトは城館に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城館にあるヴェルサリア達がいる部屋に着くとカミトを見て驚いていると

ヴェルサリアはカミトに向けてこう聞いた。

 「カミト、学院長の容態は?」

 「・・・大丈夫だ、命に別状はねえって。」

 「そうか・・・良かった。」

 それを聞いて落ち着いている中でレオノーラが紅茶を用意すると

作戦会議を執り行った。

 「それでは今回の決勝戦『クロス・ファイア』ですが内容は『テンペスト』と

同じですが違うのは2つ。」

 そう言ってノートにそれを書いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ①期間は3日間

 ②チーム全員がそれぞれ別個のエリアに飛ばされること

 「この2つです、見た感じは短期決戦で『テンペスト』の様に

拠点を作る暇は皆無と思って宜しいでしょう。」

 「それにだが一見サーチ系の精霊使いがいるチームには有利と

思われがちだろうが間違いなくジャミング系の結界が

張り巡らされているはずだから通信用の魔石はここに置いておくとして

フィールドなんだがフィオナ、説明してくれないか。」

 ヴェルサリアがそう言うとフィオナが立ち上がって説明した。

 「それじゃあ今回の場所廃都・メギドアなんだけど嘗ての名は

『象牙の都』と呼ばれていて遥太古の時代に於いては精霊たちが

築いた都市にして・・・かの有名な『精霊戦争』において

最後の戦場になった場所よ。」

 それを聞いてメイルストームがレオノーラに向けてこう聞いた。

 《何です?その『精霊戦争』と言うのは??》

 「ああ、お伽噺によく出るのですがランバール戦争の際に封印精霊や精霊鉱石を発掘している際に碑文が発見されていることから如何やら

お伽噺ではないかもしれないと言うのが今の見解です。」

 【ふむ、具体的にはどういう戦争なのだ?】

 カオスブレイカーがそう聞くとヴェルサリアはこう答えた。

 「アストラル・ゼロを焦土に変えるほどの戦争だ、

五大精霊王(エレメントロード)と反旗を翻した謎の精霊勢力の戦争によるもので最終的に五大精霊王(エレメンタルロード)が勝利した奴だ。」

 『然しよく精霊を統率する事が出来る奴がいたもんだなおい。』

 シラヌイがそう聞くとカミトは確かと言ってこう答えた。

 「五大精霊王(エレメンタルロード)に対抗できるほどの力を

持った奴がいたんじゃねえかって話だが詳しい事は俺も知らねえんだ。」

 そう答えると・・・エリスがこう言った。

 「尚これは噂レベルだが神聖ルギア帝国の

ルミナリス・セイント・レイシェードが『神聖武装』を取り寄せたらしい。」

 「あれって確か物理武器だよな?儀式に使うのか??」

 カミトはそう呟いているとエリスはこう答えた。

 「分からない、だが覚えておくに越したことは無い。」

 そう言って更に幾つか討論をして・・・全員部屋に戻って行った。




 次回は・・・手紙のあれはカミトのいる場所が船なので断念させます。


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そして決戦場へ。

 戦いに向かうぞ。


 次の日カミトは船の中で軽い朝食を食べ終えて転送用の〈ゲート〉まで

行こうとするとマギアルカはカミトに向けてこう言った。

 「カミトよちょっと待ってくれ。」

 「?」

 それを聞いて何だと思っているとマギアルカはこう続けた。

 「お主これが終わったら少しばかりじゃが機竜の試験受ける気は無いか?」

 「!?」

 それを聞いて驚いていた、何せ機竜の試験とは一体何なんのかと思っていると

マギアルカはこう説明した。

 「もうすぐ昇格試験という前に話したが機竜使いにはランクがあってそれに応じて任務や機竜が与えられるのじゃが其れの試験でな、まあ大抵は実技じゃから

お主程度なら何とかなるやもしれんが問題はもう一つ。サミットじゃ。」

 「サミット?」

 「そうじゃ、各国の重鎮が数年に一度集まって話し合う物でな。恐らく議題に№が関わるのは自明の理じゃ、それに伴ってお主たちと

ロッソベル公国・ルギア王国からも来てもらいたいのじゃ。向こうの重鎮共は

ロッソベル公国は何とかなるまでもじゃがルギア王国ハア何かきな臭いのじゃ、まあ取敢えずは頭の隅にでも入れておくことじゃな。」

 もう良いぞと言うと腰に差してあるシラヌイがこう言った。

 『(カミト、こいつは面白い事になりそうだぜ~~?)』

 「面白いって言うか・・・厄介事なのは間違いないな。」

 そう言いながら荷物を持って歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして合流地点に着くと早速と言ってヴェルサリアが全員に向けてこう言った。

 「それでは最終確認といくぞ、フィールドに着いたら極力戦闘は避けて

チームメイトとの合流を最優先とする。例え相手が一人であろうとも絶対だ、

ここまで来た者達は既に全員がエース級と覚悟しろ。」

 それを聞いて全員頷くと案内している姫巫女がこう言った。

 「到着いたしました。」

 そう言って聖堂に着いた。

 今回は特別な転送魔術を使う事と丁度4チームである事から

それぞれ別々のメンバーが違う場所で転送するのだ。

 そして全員が姫巫女達からテンペストで使われたものと同じ魔石を使っており

失格条件も同じである為どう持つかは分かり切っていた。

 「誇り高き精霊使いの姫巫女に〈精霊王〉の加護を!」

 「俺男なんだけど!?」

 カミトは姫巫女の言葉に対してそう反論するが全員少しクスクスと笑っていた為緊張をほぐすことは出来ているようであった。

 そして暫くして全員転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして同時刻の別の聖堂

 「諸君、これより我々は〈聖法機関(デ・ゼツサント)〉より与えられし

最後の任務を遂行する。」

 ルミナリスがそう言って全員に目を向けると全員直立不動の姿勢で並んでいた。

 「それでは任務完遂の補助としてお前たち全員に渡すものがある。」

 そう言ってルミナリスは手にした剣で地面に魔術方陣を描くとその途端に

眩い5つの光芒が生まれてその殻長大な棒状の武器が現れると全員が驚いていた。

 現れたのは柄の部分に聖句が刻まれた・・5本の槍であった。

 特務仕様の新星武装〈ロンギヌス・コピー〉。

 最高位の魔装具職人が生み出した伝説級の魔装具で練達の精霊使いが

神威を込めれば闇精霊型の精霊に対して最も有効的な武器となる。

 そしてルミナリスは全員に行き渡るのを確認するとこう言った。

 「改めて確認する、我々の目的は2つ。一つはブレイドダンスの優勝、

そしてもう一つは・・・チーム・インフェルノにいる闇精霊を討伐する事!

チームリーダーに関しては3人以上で戦う事!!それとこれは

私の個人的頼みであるが・・・チーム・スカーレットナイツの

カゼハヤ・カミトを見つけたら私に連絡しろ!これは最重要命令とする!!」

 良いなと言ってそっぽ向くとチームメイトはルミナリスを除いた

全員が輪を作るとこう言いあった。

 「ねえあれどう見えます?」

 「そりゃあ勿論普通ならばリベンジマッチだと聞く方なんだがなあ。」

 「見ました?ルミナリス様のあのお顔!」

 「ああ・・・どう見ても紅かったな、・・・成程あれが魔王と言う事か。」

 「え?それってどういう意味ですか?」

 「分からないか?魔王は数十人とも言う精霊使いを手籠めにしていたんだ、

そして大抵の女は強い男に惚れやすい・・・そう言う事だ。」

 「其れってつまりルミナリス様はあのカゼハヤ・カミトに・・・!!」

 「恐らくな、それに考えたらルミナリス様は19歳。そろそろ精霊使いとしての

婚約の適齢期に入ろうとしているのだ、ここでカゼハヤ・カミトの・・・

まさか望んで手籠めに!?」

 「いやあああ!ルミナリス様がそんなはしたない事を!?」

 「まさかと言いたいが取敢えずは用心しておけ、

もしカゼハヤ・カミトと出会ったら我々4人で叩くしか道はない。」

 「だけど相手はルミナリス様と引き分けたんですよね?

それ相手に如何しろと?」

 「・・・それでもやるしかない!ルミナリス様のイメージを保つためにも!!」

 互いにそう言っているとルミナリスは全員に向けてこう聞いた。

 「おい貴様ら何言ってるのだ?」

 「「「「いいえなんでもありません!!!!」」」」

 それを聞いて全員が姿勢を正してそう答えるのを見届けた後に

ルミナリスはこう思っていた。

 「(待っていろカゼハヤ・カミト、私があの闇精霊を見つけたその時こそお前と3年前の決着をつけて・・・それで若しも私が勝ったらそのだ・・・

一緒にルギア王国で…//////私は何考えているのだーー!?)」

 何やら変な事を考えている自分を想像(妄想)していたがために

煩悩退散とも言わんばかりの頭を振りながら<ゲート>に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてアルファス教国はと言うと。

 「それでは全員いつも通り暴れろ。」

 「分かってるわよ。」

 「いつも通り依頼を遂行しましょう。」

 「ええ、こっちも準備良いわよ。」

 それぞれがそう言って<ゲート>に向かおうとすると

レン・アッシュベルらしき人間はミュアに向けてこう言った。

 「ミュア、貴様には命令がある。」

 「はあ?」

 それを聞いて嫌々そうであったがとりあえず聞く事となってそれから暫くして

彼女達は転送された。




 そしてついて。


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戦いの場所へ。

 それは戦いの場所。


 カミトが転送が終えて目を開けたその眼前にあるのは・・・途方もなく

巨大な都市の遺跡群であった。

 巨石で造られた祭殿の様な建造物がそこらかしこに聳え立ち、中には

倒壊したものがあり石畳は剥がれた個所から地面から奇怪な樹木が樹海の様に

生い茂っていた。

 「精霊王に神楽を捧げるにしちゃあ陰気な場所だな。」

 カミトはそう言いながらメギドアに流れる空気を感じていた、

滅びの気配とも言うべきものであろう・・・命を感じることが出来ない

無の世界だなとカミトはそう思っているとこう呟いた。

 「取敢えずは皆と合流するか。」

 そう言ってカミトは周囲を見回しながら行動する中で腰に差してあるエストが

こう言った。

 「カミト、私はこの場所を知っています。」

 「・・・どう言う事だエスト、ここには来たことがあるのか?」

 そう聞くとエストはこう答えた。

 「いいえ、ですがこの風景を私は記憶の中で確かに知っています。」

 そう言っているとカミトの背筋が・・・ぞわりと濃密な敵意を感じたのだ。

 「敵!?何処だ・・・。」

 カミトはエストを構えて暫くすると・・・地面から

まるで火山が噴火するかのように現れたのは・・・黒い影であった。

 「な・・・ナンダこいつらは!?」

 カミトはその影を見て驚いていた、何せ輪郭が朧気で人の姿はしていようとも

意思が無いのを感じたのでカミトはこれは一体何なんだと思っていると

エストがこう返した。

 「カミト、この者達はおそらく嘗て滅ぼされた精霊の亡霊《廃精霊》です。」

 「精霊の・・・亡霊・・・?」

 「はい、強すぎる怨念を抱いたまま滅ぼされた精霊は霊格を失い。

時には亡霊となって彷徨うタイプでして、恐らくですが子の廃都には

そう言った精霊のなれの果てが多くいるようです。」

 「そうか・・・まあ考えたら戦場跡だもんなって・・・こっち来ているぞ!?」

 「恐らくは私が狙いですカミト、私が」

 エストがそう言いかけた瞬間に《廃精霊》の群れが迫って来たので

カミトはエストと共に《廃精霊》相手に戦う事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミトと転送した同時刻

 「・・・風邪が淀んでいるな。」

 エリスはそう言いながらホールの様な場所で中央には祭壇の残骸が

残されていた。

 「風よ。」

 エリスは風魔法を使って語り掛けるも得たのは・・・沈黙であった。

 恐らくは地脈もズタズタにされているのだろうと思いながらエリスは

こう考えていた。

 「精霊王は何故このような場所を祭儀の場所に選んだんだ?」

 そう言いながら外に出れる大階段を見つけたのでそっちの方に向かった

その時に・・・風が僅かに揺れた。

 「!?誰かがいるのか!!」

 エリスはそう言いながらレイ・ホークを構えて周囲を警戒するが・・・

人影を見ることは無かった。

 そして暫くして・・・足元の地面が揺れた。

 「下か!」

 エリスはそう言ってフライの魔術を唱えて真上に跳躍した刹那、突如として

無数の蔦が姿を現して上空にいるエリス目掛けて襲い掛かった。

 「な!このーー!!」

 エリスはその蔦に対して攻撃して切断する中で・・・数本がエリスの片足に

幾つもの切り傷を与えた瞬間に・・・ズキン!と焼けるような激痛に襲われた。

 「まさか・・・麻痺毒か!」

 エリスはその痛みで集中力が乱れてフライの魔術が不完全になってしまい地上に落下していくがエリスは地面に向けてレイ・ホークの力を解放させて

風の風圧を利用してまるでトランポリンで跳ねたかのように離れて着地するが・・又もや痛みが襲った。

 「(痛みがあると言う事は未だ薬がそう簡単に聞いていないと言う事か・・・

一体誰がこれを!!)」

 エリスが心の中でそう思っていると地面を貫いて巨大な植物が生えてくると

その中心で紅い花が咲いてその中に・・・リリィが入っていた。

 「風で衝撃を殺したとはそれなりと言った処ですね。」

 「お前は確かあの時のフードを着た・・・あの時カミトに何か言った奴か?」

 「その通りです、お初めまして。私は教導院第7位《蟲毒》リリィ・フレイム、一応はチーム・インフェルノの諜報担当で竜匪族の客将です。」

 「教導院・・・カミトと同じ出身か。」

 「あら?彼の事は聞いているのね?」

 「大体はな・・・一つ聞くがこの付近で精霊使いの反応はなかったのに

ドウヤッテすり抜けたのだ。」

 エリスがそう聞くとリリィはくすくすと笑いながらこう答えた。

 「専門の隠密訓練を受けている私からすれば気配遮断する事位

造作もないです。」

 それを聞いて厄介だなと思っていた、チームメイト全員で

合流しなければいけない中で強敵と鉢合うなど運が悪いとしか言いようが

無いからだ。

 そんな中でエリスは合流する事を第一の目的と考えて・・・精霊語の

呪文を唱えた。

 「風よ、我が敵を薙ぎ払えーー<風王爆閃陣(ウインド・ボムズ〉!」

 それと同時にエリスの手から強烈な風の衝撃波が砂塵を爆裂させて広範囲な

目くらましを行ったのだ。

 それと同時にエリスは大階段迄爆風を利用して一気に離脱しようとすると・・・再び激痛が走った瞬間に・・・蔦が四方八方に襲い掛かったのでエリスは

魔術を唱えた。

 「我は蒼穹の天を駆ける魔女ーー〈風神の靴(エア・ウイング)》!」

 高速飛行魔術を唱えてエリスは蔦から更に離れると砂塵から・・・

小さな光が見えた。

 びゅっと言って出てきたのは・・・短刀であった。

 その短刀は胸当てに当たって甲高い音が響いた瞬間に・・・

エリスの頭上から殺気を感じて上を見るとそこで目にしたのは・・・

短刀を逆手に構えたリリィが天井の壁を蹴って急降下してきたのでエリスは

レイ・ホークを回転して柄の部分で短刀を受け止めようとした瞬間にリリィが・・こう言った。

 「甘いですよ、型通りで倒せれる程教導院は軟な育て方をしておりません。」

 そう言った瞬間に槍の柄を足場にしてもう一度天井に向かって跳んで

エリスの方に戻ってきたのだがエリスはその動きを見て・・・カミトの動きを

思い出したのだ。

 そこでエリスはもう一度と魔術を唱えようとした瞬間に・・・背後から蔦が

エリスの体に巻き付いた。

 「何・・・・!!!?」

 その時エリスはある異変に気付いたのだ、まるで力が・・・抜けていくかの様な感覚が襲い掛かってくるとリリィがエリスの前まで来てこう言った。

 「力が抜けていく感覚がありますか?」

 「!!」

 「ああよかったあったようですね、それでしたら・・・この毒も

効きやすいでしょうね。」

 そう言った瞬間にエリスの掌に短刀の刃を握らせるかのように

食い込ませると・・・何か熱い物を感じた。

 「な・・・にが・・・・!!」

 「私は薬学に精通していまして毒についてはそこらの人間よりかは上手だと

自負しております。」

 そう言って魔石を探そうとするとエリスの背後から・・・声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『なあおいリリィ・・・こいつ喰っていいかよ?』

 「だ・・・誰・・・だ?」

 エリスがそう呟くとリリィがこう答えた。

 「駄目よ、魔石を取り出した後だったら魔力を限界ギリギリまで食べても

問題ないわ。」

 『なら速くしろヨ・・・腹が減って仕方ねえんだよ!』

 そう言って急がせるかのように言っている・・・蔦を見ているエリスを見て

リリィはこう答えた。

 「ああこの声ね、私の相棒の声よ。」

 「相棒・・・だ・・・と。」

 「ええ、私の精霊は魔樹精霊『ティターニア』。その精霊を取り込んで

更に進化した私だけの精霊。」

 そう言ってエリスに向けて左手を見せつけるかのように翳すと・・・

数字が現れたのだ。

 出た数字は・・・96

 そしてリリィはこう答えた。

 「私の精霊、魔樹精霊『ブラック・ティターニア』よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ぎゃはははハハハハハ!速くオワラセテ全部喰い尽くしてやるよ!!

精霊使いさんよ~~~~!‼』

 ぎゃはははハハハハハと気味の悪い笑い声がする中で蔦の中からその顔が

僅かに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 樹で出てきているがその顔はまるで・・・巨大な獣のように

大きな口が大半を占めていた悪魔の様な精霊であった。




 魔樹精霊『ブラック・ティターニア』
 リリィ・フレイムが保有する№96の力を持った精霊。
 蔦に絡ませた相手の神威を取り込んで我がものとする事が出来る。
 上位精霊さながらの知力を持っているが大体が悪だくみとして使用される。


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女の戦いは怖い

 この一言だな。


そしてフィオナはと言うと・・・こうなっていた。

 「アアアアアアアア!畜生がああああああああ!!」

 普段言わないような言葉を発しながら廃精霊から逃げていた。

 防護魔術を唱えながら逃げ回っているがふざけんなと思いながらこう言った。

 「ゲオルギウス!こいつらやっちゃって!!」

 そう言うとゲオルギウスは廃精霊達を一網打尽にしたがきりが無かった。

 「こんな所で足止め喰っている暇ないのにってああもう横っ腹が

痛くなりそうよ!」

 逆切れしながらそう云う中で・・・周囲にいた廃精霊達が突如として

動きを止めた。

 「な・・・何が起きて・・・・!!」

 ォォォォォオオォォォォォォォォ!!

 凄まじい咆哮における振動で砂塵が一気に舞い上がってフィオナは驚いている

とある物を見た。

 「あれは一体・・・何?」

 あったのは・・・巨大な火柱であった、ここから大分離れているのにも

肌を焼き尽くすような熱波が襲い掛かるのでゲオルギウスが盾となって守る中で

フィオナはそれが何なのかを目を細めて確認するとそれは・・・現れた。

 巨大な火柱は絶え間なく炎を吹き出す黒い溶岩の様な胴体、眼光は灼熱の炉の様に紅く輝き、口腔からは黒い煙を吐き出していた。

 そしてその手に握られているのは巨大な炎の鞭。

 それを見てまさかとフィオナはこう言った。

 「封印指定の軍用精霊《ヴァラルカール》って何であんな安定しない精霊って・・あれ?あの精霊擬きたちは?」

 フィオナはそう言って周囲にいた廃精霊達がいない事を確認するとこう言った。

 「まあ良いわ、あんなバケモノ相手に戦う必要ないもの。速攻で合流よ!!」

 そう言ってフィオナはそこから走って離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃都の外周を囲んでいる奇怪な樹木が根を張っている城塞から突き出した鐘楼の縁に・・・レスティアが腰かけて廃精霊達に向けてこう言った。

 「堕ちた者ね・・・まあ私も似た様な物だけどね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・3年前のあの時に私は私じゃ無くなった。」

 そう意味深な事を言っていると廃精霊達はレスティア目掛けて

襲い掛かって来たが・・・レスティアは廃精霊達に向けてこう言った。

 「けれど私は未だお前達と一緒になる気は無いわ。」

 そう言って黒雷が・・・全てを消滅させた。

 その威力はまさに最強と言っても良い位であるが途端にレスティアは胸元に

手を添えて苦し気に呻いていた。

 その光景はまるで・・・グレイワースと同じであった。

 「かなり浸食しているって事ね・・・あとどのくらい持つか分からないけど・・使命を果たすまで消える訳にはいかないわ・・・!!」

 そう言って何とか立ち上がると・・・声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほお、本調子ではないようだな闇精霊。」

 「!!・・・貴方は確か三年前の」

 「ああ、久しぶりだなレン・アッシュベルの精霊・・・いや、

カゼハヤ・カミトの元精霊とでもいうべきか?」

 森の中からルミナリスが現れるとレスティアはこう言った。

 「何処で彼の・・・アア大体わかったわ。」

 恐らく戦ったのであろうとレスティアは呆れ半分中々やるじゃないのと

感心していた。

 「それで・・・私に何か用かしら?」

 レスティアがそう聞くとルミナリスはこう答えた。

 「ああ、上層部からの命令で貴様を滅ぼしに来た・・・建前はな。」

 「・・・成程、大方3年前のリベンジって所かしら?」

 「まあな、貴様は少し痛みつけたところをカゼハヤ・カミトの前に連れ出して

もう一度リベンジして勝利して・・・その・・・うん・・・/////」

 最後ら辺で赤面していくルミナリスを見てレスティアは・・・・ああねと思って内心こう続けた。

 「(カミト、貴方何敵に迄惚れさせてるのかしらね。その内彼を賭けて

ブレイドダンスが行われそうって・・・辞めましょ、何だか分からないけど

嫌な予感になりそう。)」

 そう思いながら半ば思考放棄するとレスティアは気を取り直してこう言った。

 「それで、私をどうするつもりなのかしら?」

 「あ・・・ああ簡単だ・・・。」

 ルミナリスはちょっとした妄想から心を戻すとこう言った。

 「貴様を戦えないとは言わんが少々・・・痛めつけてやる!」

 そう言って・・・攻撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれと同時に。

 「全く、まさか私が都市の一番端とはな。」

 ヴェルサリアがそう言いながら外縁部を見ていた、所々壊されていて

外に出るのは一見して簡単そうに見えるが強力な結界で出ることが

出来ないでいた。

 すると轟音と共に火柱が上がった。

 「あれは焔精霊・・・然しあれはまるで放置している様な感じだが

今は合流だな。」

 ヴェルサリアはそう言ってそこから離れると・・・ガキンと音が聞こえた。

 「今のは・・・あっちか。」

 そして向かって行くとそこで目に映ったのは・・・レスティアとルミナリスが戦っている様子であった。

 「あれは確かルミナリス・・・もう一人は精霊か?」

 一体何の為にと思って聞き耳を立てていると・・・こう聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 「へえそれなりに強くなったのね。」

 「当たり前だ!3年前のリベンジの為だけに剣を振るったのだ!!」

 「あらあらそうなの?けど貴方カミトに負けたじゃない?」

 「貴様何処で知った!!」

 「あら?私は当てずっぽうで言っただけよって・・・へえ黒のねえ。」

 「!!!!何見ている貴様!!」

 「くすくす、それでカミトを誘惑してあわよくば其の儘夜のブレイドダンス」

 「きききき貴様矢張り闇精霊貴様はこいつで封印してくれるわ!!」

 「・・・本気だったとは何かその・・・御免なさいね。」

 「謝るなあアアアアアアアア///////」

 何やら意味不明の様な感じであるがヴェルサリアはと言うと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・何だと。」

 殺意丸出しにするに十分であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで終わりだ闇精霊ーーーーー!!」

 「ここで倒されるわけにはいかないのよ!」

 レスティアはそう言って魔術を放とうとした瞬間に・・・横から

割込みがあった。

 「「!!」」

 突如としてハルバードが2人の間に割って入って来て一体何だと思っていると

出てきたのは・・・精霊を纏ったヴェルサリアであった。

 「貴方は確かカミトの所にいた・・・。」

 レスティアがそう呟くとヴェルサリアは・・・ルミナリスに向けてこう聞いた。

 「初めましてだなルミナリス・セイント・レイシェード。」

 「確か貴様はヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルトだったな、

何の用だ?」

 そう聞くとヴェルサリアは・・・にこりと笑ってこう答えた。

 「いやな・・・《私の大事な大事な》チームメイトにちょっかい出そうとする

不届き物に用があってな。」

 「!!ほう成程な・・・貴様もか。」

 ルミナリスはそれを聞いてククククと・・・黒い笑みを浮かべていると

ルミナリスはこう言った。

 「どけヴェルサリア、私はそこの闇精霊と《カミト》に用があるんだ。」

 「用だと?・・・敵風情がほざくな負け犬が、さっさと(カミトの事)諦めて

魔石置いてリタイアしろ。」

 突如としてヴェルサリアの殺気が神威と一緒に流れるのを感じて周りの鳥たちが逃げていくのを感じるがルミナリスは・・・目を鋭くしてこう言った。

 「ふざけるな、そう言う貴様こそレン・アッシュベルに一回戦で負けた

負け犬であろうが。黙って(カミトの事)引き下がって失せろ。」

 互いに内心の事察している様であり互いに殺気と神威を放出しながら

ルミナリスが精霊魔装を出して互いに武器を構えるとこう言った。

 「よく聞け《岩石女》、貴様よりも男は私みたいな手合いが好みだと聞くぞ?」

 「くくく笑わせるな《行き遅れ》、歳を考えろ。さっさと何処かの貴族と

子供でも作って励め。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「・・・・・ヨシコロソウ!」」

 互いに悪口の応酬が終わった所で・・・何故か分からないが殺し合いに

発展してきた事に対してレスティアはその原因であるカミトの事を思い出して

こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私じゃなくてここにカミトがいた方が良かったんじゃないのって

私どっか行っても良いわよねホントウに?」

 そう呟きながらレスティアは体力を回復しようと思って精霊魔装になって

眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決して現実逃避したいからと言う理由ではない事を祈りたい。




 そして最後にこう言おう。








 修羅場はまだあるよ♪


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見っちまった。

 修羅場かもしれない。


 「こいつらきりがねえな!」

 カミトはそう言いながらデモンスレイヤーで廃精霊達をその一閃で

薙ぎ払っているがそう言うが一向に数が減らないどころかそれどころか・・・

増えてきているのだ。

 「こいつらに構っている暇なんてねえんだっつうの!」

 カミトはそう言いながら攻撃するがこの廃精霊達はネペンテス・ロアと同じで

触れれば必要以上に神威を消費してしまうがためにこれ以上の長居は無用だと感じて技を放った。

 「絶剣技ー三ノ型、影月演舞!」

 影月演舞とは水に映る月影が如く揺らめいて舞う様に辺り一帯の敵を

屠ることが出来る対集団戦用の技である。

 然しそれでも少なったかと思いきや又もや廃精霊達が這い出てきたので

鼬ごっこだと思ってその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 「アアアアアアアア危なかったーーーーー!!」

 カミトはそう言いながら何とか廃精霊達から離れていると・・・声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 ミ・・・ト・・・カミ・・・ト

 「?今の声って」

 カミトはそう言いながら今の不明瞭な声を頼りにして辺りを見渡すと

そこで目にしたのは・・・小さな蝶の姿をした精霊がフワフワと漂っていたのだがカミトはその精霊に見覚えがあった。

 「あれって確かエリスの風精霊だよな?」

 そう言いながら何でと思っていると遠くで・・・かすかだが

剣戟の音が聞こえた。

 「!この音・・・エリスは誰かと戦っているのか!!」

 カミトはそう言いながらその剣戟の音が聞こえる方向目掛けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ・・・ミト・・・カミ・・・ト・・・あ・・・ふうん。」

 エリスはリリィのナイフに染み込まれていた毒で全身が燃えるような

熱さと同時に襲い掛かる甘い感覚に切なく・・・全身を悶えさせるような感覚が

襲い掛かる中でエリスはリリィに向けてこう言った。

 「くう・・・毒を、使うとは・・・・んあ!?」

 「スミマセン私は暗殺者ですので騎士道精神なんて既にゴミ箱に

ポイしました。」

 それにですねとリリィはこう続けた。

 「私的には貴方はここで殺した方が良いかと思いますが今回は殺せば

失格ですので毒の中でも致死毒は持ってきていないのです、ですので

今回は精霊使いが苦手とする媚薬を調合しておりますので失格になったら

まあどっかで一人で慰めといてくださいね。」

 「///////」

 それを聞いてエリスは赤面するがさてとと言ってリリィは服を弄りながら魔石を探していた。

 「うううん、前に無いともなれば内側かしら・・・・ブラックティターニア。

中にあるかもしれないから取敢えず服破っといて。」

 『ハイハイ分かりましたよご主人様・・・っとな!』

 「や・・・辞めろーーーーー!!」

 エリスがそう言ったが服を一瞬で蔦で破壊すると半ば下着のみになった

エリスを見てリリィはええとと言って辺りを見ると・・・近くに魔石が

堕ちていたのだ。

 「これで〈チーム・スカーレットナイツ〉は一人脱落っと。」

 「か・・・返せ。」

 エリスはそう言って蔦の絡みついた手で必死に手を伸ばすがリリィは

ハイハイと言ってこう続けた。

 「諦めなさい、全くミュアの言う通りね。貴方達と交流するから

カミトは弱くなってしまったようね。」

 「何・・・だと・・・!」

 まるで自分が弱いみたいにと思っているとリリィはこう続けた。

 「真実でしょ?微温湯の中でお遊戯みたいに訓練する人間と・・・

昨日話した仲間を殺すか見棄てなければ自分が死ぬような場所で死に物狂いで技を極めた私達とじゃ身に着けた技の練度が違うのよ、彼も私達のように

竜匪族に入っていればもっと高みに行けたはずなのに。」

 惜しい事したわねと言うとエリスがこう聞いた。

 「竜匪・・・族・・・ナンダ・・・それ・・・は」

 「ああ今私達が所属する組織ヨ、世界中の遺跡を盗掘してそれを利益にして

兵力を蓄えて戦場に行って傭兵として働く正に私達暗殺者にとっては

宮仕えよりかは有意義に過ごせれる場所ヨ。」

 団長は良い人だしねとそう言うと更にこう続けた。

 「カミトの技に機竜の技術が加われば彼は貴方達全員が束になったとしても

勝てない程の実力者になっていたはずなのに貴方達が彼を弱らせたような物ね、

だから・・・ここでお荷物は退場させてもらうわ。・・・

ブラックティターニア、魔石が見つかったから魔力限界ぎりぎりまで

吸いなさい。」

 『ぎゃはははハハハハハ!やっと喰えるってもんだぜ!‼』

 「ああ・・・あ・・・あ。」

 魔力が吸い尽くされるかのような感触で意識が朦朧する中でエリスは

こう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(カミトはずっと後悔していた、お前達と共にいられなかったことを・・・

そして何よりも私達を仲間と言ってくれたアイツの思いに・・・答えたい!)」

 そう思いながらも魔力を何とかしようとするが何も出来ずに終わりなのかと

思っていると・・・ブラックティターニアの動きが止まった。

 「どうしたの?」

 『何だ・・・体の力が・・・抜けて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エリスーーーーー!!」

 そう言って現れたのは・・・ブラックティターニアの体に鎖を巻いて

動きを封じていたカミトが現れたのだ。

 「カミ・・・ト」

 「大丈夫か?ほら回復石だ、これで動けれるようにはなるはずだ。」

 カミトはそう言いながらデモンスレイヤーをリリィに向けると

リリィは・・・こう言った。

 「ここは撤退ね、生憎私は貴方と戦う気は無いから。」

 じゃあなと言って懐から何かを出すと・・・色鮮やかな煙が立ちこみ

始めたのだ。

 「何だこれはってゴホゴホ!」

 カミトが咳き込んでいると・・・エストがこう言った。

 「スミマセンカミト、逃げられました。精霊も。」

 「そうか・・・。」

 そう言ってカミトはエリスのいた方向に目を向けると・・・

とんでもない物を見てしまったのだ。

 それは半裸になって・・・黒い下着が所々見える・・・エリスの姿が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやああアアアアアアアア!!」

 

 「アアア悪い!!」

 この日大階段にてある意味絶叫が響き渡ったと同時に・・・とある場所ではある2人がこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 「「何だ嫌な予感がするって言うか抜かれたって言うか

今は目の前のお前だ!」」

 「ねえ、私本当に帰って良いよね?」




 次回だった。


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果てた。

 さあ・・・階段を上りな。


「ここなら大丈夫そうだが大丈夫かエリス?」

 「・・・う・・・ん」

 カミトは自身の制服の上着をエリスに掛けた後廃都の中心から離れた巨大な祭殿の遺跡にある御祓の出来そうな泉を見つけていた。

 これは毒などの異常状態を穢れと共に無くして少しでも回復させる行為である。

 それとだが精霊使い・・ブラックティターニアがエリスに対して行った行為で

精霊使いとしての力に支障をきたさないようにするためである。

 カミトはその泉に浄化の精霊語の呪文を唱えた後に精霊鉱石を投げ込むと

雨水が溜まっていて少し汚そうであった水が一瞬泡立ったかと思いきや済んだ

清らかな水に変化した。

 「カミト・・・すまない。」

 「無理に喋るな、体力を温存するんだ。」

 カミトはそう言ってエリスを泉に入れるとこう聞いた。

 「今はこんな処置しか出来ないが少しは楽になったか?」

 「う・・・うむ・・・大丈夫・・・あう・・・ん」

 エリスはそう言いながらも苦しく喘ぐがカミトに向けてこう言った。

 「カミ・・・と・・・・ん」

 掠れ声でエリスはカミトの名前を呼んでいたがカミトはそれよりも視線がある所に集中していた。

 ・・・胸部に集中していたのだ。

 自身の上着がエリスの体に張り付き始めてその黒い下着が透けて

見え始めていたのだ。

 何とか見ない様にしている中でカミトはこう聞いた。

 「体辛いのか?」

 「あ・・・ん」

 エリスはそう言いながら身を捩っていると唇をきゅっと噛みしめて

カミトを見つめてこう言った。

 「そ・・・その・・・笑うなよ・・・手を・・・握ってくれないか?」

 「ああ、分かった。」

 カミトはその言葉に対してそう答えて両手でエリスの手を握ると・・・

エリスは可愛い悲鳴を上げた。

 「ひゃわアアアアアアアア!」

 「わ、悪い!いきなりすぎたか?」

 カミトがそう聞くとエリスはこう答えた。

 「い・・・いや・・・私こそ済まない・・・と・・・殿方の手を・・・

握るのは・・・慣れていなくて。」

 エリスは恥ずかしそうに頬を赤ラメながらおずおずと指を搦め始めた。

 まあ当人はゆで胼胝の様に真っ赤になっているとこのままではまずいと感じた

エリスはカミトに向けてこう聞いた。

 「カミト・・・一つ良いか?」

 「?」

 「もし・・・あの2人が敵でまた・・・現れたら・・・どうするのだ?」

 そう聞いて来たのだ、幾ら敵国とは言え嘗ては同じ仲間であったカミトにとって苦ではないのかとそう聞くとカミトはこう答えた。

 「戦うさ、今の俺にはお前らがいるからな。」

 「そうか・・・それなら良かった・・・・!!」

 エリスがそう言った瞬間に体の熱が高くなるのを感じた。

 「ああ・・・・ん」

 「エリスどうした!?まさか発熱を促す毒か何かを仕込まれていたのか!!」

 「ん・・・あ、ふん・・・ん」

 「おい如何したんだ大丈夫なのか!?」

 カミトは苦しそうにしているエリスに対して肩を掴んだ瞬間に・・・

エリスの体がビクンと大きく跳ねた。

 「んひゃう!?あ・・・はああ・・・んあ。」

 「呼吸が荒くなってるし熱も高くなってやがる!」

 カミトはそう言いながら手から伝わる体温でどうしたら良いんだと思っているとエリスがこう言った。

 「カミ・・・ト」

 「どうしたエリス!」

 「体が・・・急に熱くなって・・・ふぁん」

 「ああクソ、間違いなくリリィのやり方だ。あいつの薬学と毒の知識は

桁外れだったからそれだ。」

 「そ・・・そう言えば・・・あの・・・エルフィム族の・・・リリィが・・・言ってた・・・ナイフに・・・毒を仕込んで・・・いたと」

 「ナイフ・・・そう云やあアイツそう言うのもうまかったな・・・

何仕込まれてたんだ?」

 カミトがそう聞くとエリスは赤面して暫くすると・・・こう答えた。

 「び・・・媚薬・・・だ。」

 「・・・・ハアアアアアアアアア!!?」

 それを聞いてカミトは嘘だろと思っていた、お嬢様学校の人間がそんな薬を

使われるとどうなるか考えたくないと思っているのだ。

 するとエリスは赤面しながら自らの胸を掻き抱いて両足をもじもじしながら

カミトに向けてこう言った。

 「ふぁ・・・ん・・・助け・・・て・・・カミ・・・ト」

 そう言いながら・・・涙が溢れて出てくるんを見てカミトは

如何すりゃあいいんだと思っているとエリスがこう答えた。

 「こ・・・この火照りを・・・ああ・・・静めてくれるだけでいい。」

 「(いやいやいや待て色んな意味で駄目だろうって言うか

もしファーレンガルト家の娘に対して何か取り返しがつかない事したら間違いなく俺殺されるぞあの爺さんに!!)」

 そう思いながら首をぶんぶんと降っているがエリスは更に苦しそうに

喘ぎ声をあげているとカミト・・・決心して一緒に泉に入って

エリスを抱きしめた。

 「こ・・・これで良いのか?」

 「う・・・うむ。」

 「辛かったら力を抜いて良いからな。」

 「す・・・済まない。」

 カミトの言葉にエリスは頬を赤く染めているとエリスはこう言った。

 「そ・・・その・・・はしたない娘だと思わないでくれ・・・こ・・・

こんな風になってしまうのは・・・わ・・・悪い毒のせいだからその・・・

もっと・・・強く頼む。」

 エリスがそう言うとカミトは腰を強く抱きしめてこう聞いた。

 「これくらいか?」

 そう聞いた瞬間にエリスはカミトの顔の真ん前に出ていきなり・・・・。

 「ムグ」

 キスをして来たのだ。

 まさか媚薬の効果かと思っているとエリスは更にカミトの口に・・・

舌を入れてきたのだ。

 「も・・・・ももも!!」

 カミトはいきなり入ってくるエリスの舌が自身の舌に絡みつくかのように

舐め始めると体を密着して胸を押し付けるどころか股をカミトの足に

擦りつけるかのように動かし始めた。

 まるでカミトに自分の匂いをマーキングするかのように。

 そして一旦離れるとエリスはカミトに向けてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カミト・・・もっと~~♡」

 そう言って更に強烈に、今度は腰を動かしてカミトの下半身を

刺激してくるようにしていると暫くして・・・エリスが震えあがって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・絶頂を初めて体験してしまったのだ。

 「♡♡♡♡♡!!!」

 その初めての絶頂を体験したと同時にエリスは・・・

果てたかのように意識を手放したのだ。




 その頃のフィオナ
 「何だろう・・・記憶結晶を使う機会逃したって私の第六感が囁いてる!!」
 そう言いながらギリギリとハンカチを噛んでいた。


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或る意味酷い

 文字通りです。


「危なかった・・・理性があのまま壊れちまう所だった。」

 カミトはそう言いながらあの時の事を思い出していた、ぶっちゃけた話

あのままだと押し倒してこの作品がR18になりそうだった所をギリギリ

食い止めたのだがその原因でもあるエリスは今カミトの膝の上ですやすやと

眠っていた。

 如何やら媚薬の効能が切れた様であるが起きた時はどういう風になるか検討が

付かない、このまま知らなかったで済めば良いのだが若しもの事を考えると・・・

今夜の晩御飯の肉料理が自身が材料にされそうだと思っていた。

 暖かい熱を放っている火の精霊鉱石で温めているが外は夕日が降りて

闇が広がり始めていた。

 「今日はここで野宿か。」

 そう言いながら欠伸していると・・・エリスの声が聞こえた。

 「む・・・カミトめ。ハムサンドイッチにしてやるぞ。勿論君がハムで

私がパンで・・・ベッドで何て・・・カミト大胆だ。」

 「・・・こいつ寝てるんだよな?」

 カミトはそう呟きながら今日の事を思い出していた。

 戦果0で1日が終わってしまった事とリリィが№を持っている事、そして・・・

エリス。

 「うん辞めるか、考えたら眠れなくなりそうだ。」

 カミトはそう言って思考を放棄しようとすると・・・エストが現れてこう言った。

 「カミト、私はお腹がすきました。」

 「もうそんな時間かって飯なんてこれしかねえぜ。」

 そう言って出したのは数十種類の薬草をショウガと蜂蜜で味を調えた

携帯食料である霊薬。

 「・・・カミト、ご飯は無いのですか?」

 じーと無垢な目つきでそう聞くとカミトはこう返した。

 「今エリスはこの状態だ、悪いがこれで勘弁してくれないか?

これが終わったら島で好きなもん食べさせてやるから。」

 「・・・分かりました。」

 そう答えてエストは大人しく霊薬を食べて休憩を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして同時刻、レオノーラはと言うと。

 「・・・一体何処まで続いているんですかこの迷宮は。」

 ハアアアア・・・・と溜息付きながら取敢えず休憩ですと言って同じく

霊薬を食べているとレオノーラは壁に描かれている壁面を眺めていた。

 「これは一体何でしょうね?」

 そう言いながら結構旧い精霊語で描かれた文字を眺めていると・・・

ある文字を見てその視線が集中した。

 書かれていたのは旧い精霊語であるがこう書かれていた。

 『テルミヌス・エスト』と。

 「これは・・・エストと同じ、他にも名に書かれてますね。」

 そう言うと腰に差している剣・・・グリムゲルデがこう言った。

 「ほう・・・懐かしい名前が勢ぞろいだな。」

 「グリムゲルデ?」

 どうしたのですかと聞くとグリムゲルデはこう答えた。

 「イヤ何懐かしい名前だから久方ぶりに昔を思い出しただけ。」

 「懐かしい名前・・・他には分かりますか!?」

 そう聞くとグリムゲルデはこう答えた。

 「ええと・・・ティアマト、ヴァラルカール、ヨルムンガンド、

スカーレット・ヴァルキリー・オルトリンデ、全く色々と名前が・・・

レオノーラあっちに行ってくれないか?」

 「良いですけど一体何が?」

 「良いから!」

 「わ・・・分かりました。」

 一体何なんだと思って前にへと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてフィオナはと言うと・・・。

 「良し、ここ迄来れば後は明日隠れながらカミト君達と合流ね。」

 そう言いながら一休みしようとすると背後から・・・声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「見~~つけた、ロスト・クイーン。」

 「誰!?」

 そう言って後ろを振り向くとした瞬間に背後から薄汚れた水の様な粘液が・・・フィオナに襲い掛かった。

 「な・・・何よこれ!?」

 フィオナはそう言いながらゲオルギウスを出そうとすると何か・・・

嫌なにおいを感じた瞬間に体が痺れ始めたのだ。

 「な・・・毒・・・?」

 「正解ヨ、まあただ単に動きを鈍らせるタイプだから大丈夫よ。」

 そう言ってリリィと・・・ミュアが現れたのだ。

 「チーム・インフェルノ・・・!!」

 「正~解、いい子ね貴方。」

 「魔石が目的・・・じゃなさそうね。」

 「へえ、よく分かるじゃん。」

 ミュアが感心しているとフィオナはこう答えた。

 「商売するんなら相手の表情から読み解けってマギアルカ様が

言ってたからね。」

 「へえ、あの世界一位のドラグナイトのねえ。まあ良いわ、あの女の命令で

アンタを連れてけって言われてるからねえ。」

 そう言っていると粘液が・・・フィオナの顔に迫ってくるのが見えた。

 「ちょ!私をどうする・・・気?」

 フィオナはそう言いながら目を細めているとある物を見て・・・ミュアに向けてこう聞いた。

 「ねえ・・・聞いて良いかしら?」

 「何?」

 「これってさ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・鼻水じゃないわよね?」

 「「・・・・・」」

 それを聞いて2人は目を細めているとミュアは肩を透かして・・・

コイコイと言わんばかりに手で招くと現れたのは紅い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・鼻水垂らした獏が歩いて来た。

 「この子の名前は『バグ―スキュラ』って言ってね、その御鼻からは

お酒が出て」

 「ザけんじゃないわよごらって言うか鼻水って正気って言うか

仮にも一国の王女に向けて鼻水で動き止めさせるって言うかじゃあこの顔にって

イヤーーーーー!!顔だけは勘弁顔だけは勘弁って鼻水で拘束されるなんて

嫌だーーーーー!!もごもおもご!?」

 そう言いながら等々・・・鼻水がフィオナの顔を覆いつくしてしまい

其の儘暫くして・・・完全に真っ白に燃え尽きたかのような表情をして

目が真っ白になったのを見てミュアはこう呟いた。

 「・・・何かゴメンね本当に。」

 本当に申し訳ないなあと思いながら取敢えずと言って何処かへと・・・

運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迷宮の最奥。

 「これだな。」

 「グリムゲルデ・・・この絵は一体?」

 何ですかと聞くとグリムゲルデはこう答えた。

 「これこそ私達精霊の神にして精霊王よりも高位の精霊・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・『精霊龍』と『精霊神』の絵じゃ。」

 そう言って見えたのは・・・六芒星を模った様な図形にある6体の龍と

その両隣で向かい合っている・・・線が細く両肩に太陽の様な光の絵が

描かれた龍と全身に銃器が装備されている大柄の龍が描かれていた。

 その上に・・・天井に巨大な幾つもの星をまとめている巨人も描かれていた。




 また休載します。


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 人物紹介9巻まで

 人物紹介です


カゼハヤ・カミト

 知っての通りの主人公

 赤子の時に教導院に攫われて暗殺者としての訓練を受けた。

 精霊使いとしての能力を持っており教導院の老人たちからは〈魔王の後継者〉と

呼ばれていた。

 レスティアと仮契約する際に放置された刀型のソードデバイス、《シラヌイ》を

見つけ、契約した。

 教導院が滅んだ後に逃走し、骸連盟〈マーダーズ〉に入籍し以来として

グレイワースの暗殺を受けるも失敗した。

 その後グレイワースの下で召使(メイド服)としてだけでなく暗殺者の

カウンターとしても起用された。

 ある理由でレスティアを手放してから3年後にグレイワースに呼び出されるが道中にクレア・ルージュと遭遇し、戦い沙汰となった。

 クレア・ルージュの目的は1000年前に存在した伝説の精霊

《セヴェリアンの聖剣》を抜いたが暴走し、仕方なく契約した。

 その後グレイワースとの取引にてアレイシア精霊学院に入学。

 その際に一時であるがクレア・ルージュにしつこく勧誘された。

 また、契約した精霊〈エスト〉を新たに迎えた。

 精霊使いとしては初期段階においては素人クラスであったが戦えば戦うほど

何か思い出したかのように成長していった。

 同居人としてレオノーラと同居している。

 クレア・ルージュが狂精霊〈ゲシュペンスト〉にて大会を混乱に陥り、

その際に賞品でもある軍用精霊の暴走に立ち会い、《シラヌイ》で迎撃する。

 第2巻においては《シラヌイ》とエストを使った戦闘が主流となり、

事実上二種類での使用となっている。

 フィオナが入学したその日にジオ・インザーギと学院にて戦闘。

 それを捕らえる仕事と軍用精霊〈ヨルムンガンド〉の再封印を命じられ、

鉱山都市《ガド》に向かった。

 その際にマルカファル王国の商人であり、ギルゾレイクファミリーのボス

《マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク》と《アルマ》に出会った。

 その後エリス達を倒したジオ・インザーギを見つけ、共闘するも

あと1歩のところで邪魔が入った。

 その後マギアルカと共闘することとなり、真祭殿においてジオ・インザーギの

絡繰りを推測し、勝利するもフギル・アーカディアにより

ジオ・インザーギであったバケモノ相手に戦う事となった。

 その際に共にいたレスティアとエストの剣の二振りをシラヌイで使って

勝利するもジオ・インザーギは死亡した。

 その後にマギアルカに本格的な機竜での使用法を教授された。

 その際に新たなるチーム編成に伴い、エリス、フィオナ、レオノーラが

加わった。

 第3巻において、新たに加わったヴェルサリアに機竜での決闘を布告され、

これを受諾。

 戦闘は引き分けに終わったがその実力は確かなものとなった。

 第4巻においては試合会場に向かう最中に軍用精霊《デス・ゲイズ》と

空中で交戦することとなった。

 辛勝した後に教導院において組んでいた少女、《ミュア・アレンスタール》に

再会。

 その後の晩餐会においては《レン・アッシュベル》らしき人間からある物を

投与され、痛みながらも竜匪族の人竜部隊団長《ドラッケン》と戦闘。

 マギアルカの介入にて何とか退くも投与された何かに蝕まれ、命の危機に

直面していったがエストの力で回避したがその際にエストは消えた。

 その正体は嘗て前ブレイドダンスにおいての優勝者

《レン・アッシュベル》本人であるのだが知っているのは相棒の《シラヌイ》と、レスティア、グレイワース、フィオナ、ヴェルサリアだけである。

 その後エストの手掛かりを求めて古代図書館にて

『アレイシア・イドリース』直筆の記録書を手に入れた。

 呪いはフィオナの助けにより現在の火の精霊姫であるレイハによって

解呪されるもその後からアレイシア・イドリースの記憶が見えるように

なってしまった。

 ルミナリス戦の際に危機に陥った時にエストを再召喚に成功し、勝利した。

 保有№は101

 対ネペンテス・ロア戦に於いてはエストの姿を槍に形状を変えて勝利した。

 またレン・アッシュベルらしき人間とも戦い彼女の招待の一部を見た人間の一人

 ブレイドダンス前にグレイワースから絶剣技の奥義を伝授されそれについて

考察中。

 『テンペスト』にてリリィと交戦しているエリスを救出するも媚薬によって

性的な干渉をエリスからされてしまい其の儘去れるがままにファーストキスを

奪われた。

 

 

 

 

 

 

 レオノーラ・ランカスター

 本来なら《ドラグニア竜皇国》に在籍していたがとある《アビス》戦において《ヘイブルグ共和国》に吸収された。

 機竜、《メイルストーム》を保有し、精霊《グリムゲルデ》と契約している。

 親友を恩人でもあり憧れでもあった《ローザ・グランハイト》に全員

殺された後に家族を殺され、天涯孤独となって国外脱出した後に

チームメイトでもあったリンスレットの家に一時的に身を寄せた後に

グレイワースの推薦で入学した。

 独り身であるが真面目で優秀性である。

 機竜においては下位ランクであるが一通りのやり方は学んでいる。

 主に機竜での戦闘に重点を置いているが精霊使いとしての腕前は1流である。

 ジオ・インザーギ戦の後にカミトのチームに入り、ブレイドダンスに出場した。

 テンペストでは遺跡に転移されてしまいグリムゲルデの案内でとある秘密に差し迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト

 先のブレイドダンス出場であると同時にレン・アッシュベルの正体を知る一人。

 元々は下級貴族の出であるが精霊使いとしての実力を評価され、養子となった。

 エリスとは義理の姉妹であるが仲は良い。

 1年生にしてブレイドダンスに出場出来る程の実力者であったが

レン・アッシュベルに瞬殺され、意気消沈しアストラル・ゼロで精霊に殺されて

死のうと思っていたところにフィオナと襲っていたドリアードに遭遇。

 死ぬと確信した時にカミトに出会い、その正体を知る。

 カミトとの言葉のやり取りの後にもう一度再戦を約束するもそれは

3年先となった。

 治安維持組織シルフィードの団長であり実力は確かである。

 3年後にカミトと再会するも忘れていたことに少し・・・キャラ崩壊したが

思い出してくれた後にカミトの頬に口づけをした。

 機竜は《カオスブレイカー》、精霊は《サイレント・フォートレス》

 カミトのチームに入った後に機竜での決着を所望した。

 カミトに対しては好意を抱いており、再会に備えて料理の特訓もしている。

 テンペストにてカミトを狙うルミナリスと現在交戦中。

 

 

 

 

 

 

 

 エリス・ファーレンガルト

 先のブレイドダンスにて《レン・アッシュベル》に憧れを抱いておる少女。

 シルフィードと言う学院の治安維持組織にて団長補佐を任されていた。

 精霊は《シムルグ》、機竜は《ワイバーン》

 団長補佐に選ばれているだけあって実力は確かであるが優等生型であるため

授業の単語を全て書くと言う堅物なところがある。

 一時はカミトを不安視していたが軍用精霊の戦いの後にカミトの実力を見て、

見直し勧誘することもあった。

 ジオ・インザーギ戦の際に自身のチームメイトがやられたため、カミトの

チームに入り、マギアルカの教えを請いた。

 機竜での戦闘は主に接近戦であるためある程度万能型でもあるミュアに

やられかけた。

 カミトが教導院出身であることを知っている人間であり、チームでは

エリスのみである。

 胸が大きい事がコンプレックスであり、最近は甲冑が付けづらいと漏らすことがある。

 対ネペンテス・ロア戦の際にはカミトの真実を聞いても受け入れた。

 テンペストにてリリィ相手に苦戦するもカミトの協力で難を逃れるが

媚薬の影響で性的な干渉をするがためにキスしたどころか其の儘

初絶頂をしてしまったある意味可哀そうな少女①

 

 

 

 フィオナ・レイ・オルデシア

 オルデシア帝国の第2王女であり、神儀院に在籍していたが

クレア・ルージュの姉のルビアの出来事により精霊が使えなくなった為、

神儀院から追放され《ロストクイーン》と呼ばれるようになった。

 前回のブレイドダンスにおいてレン・アッシュベルの戦いを見た後に精霊が

使えないかアストラル・ゼロに行くも失敗し、ドリアードに襲われかけた。

 その際にレン・アッシュベルの正体も知った。

 その後は精霊鉱石を使って不法入学した後にジオ・インザーギ戦に参加。

 その戦いに置いて儀式演武を使って補佐に周りジオ・インザーギの精霊を

無力化させた。

 カミトのチームに入り、マギアルカの教えを請いた後に精霊が使えるように

なった。

 精霊は《ゲオルギウス》、機竜は《ドレイク》

 本人曰く、耳年増であるが初心だと告げているが本当なのかどうか知らない。

 両親に対しては険悪であり、女王の資格を返上し、マギアルカに商売の

イロハを教わり、見返したいと思うぐらい嫌いであるそうだ。

 テンペストではミュアが扱う№によって拘束されて何処かへと・・・

鼻水で顔まで覆われて失神中。

 

 

 

 

 

 

 

 クレア・ルージュ

 本来ならメインヒロインであるのだが本作では不遇キャラ。

 名前自体が偽名で本名は《クレア・エルステイン》なのだが姉が炎の精霊王を

奪い、脱走したため家は取り潰された。

 家を取り戻すこととルビアに真実を聞くために強力な精霊を手に入れたいと

やっきになっていた。

 カミトがエストと契約した際には本人の事を《奴隷精霊》と呼んでカミトを

無理やりチームに入れさせようとした。

 精霊は《スカーレット》

 エリスとの決闘の際には途中で割り込んできた魔精霊すら契約しようと

意気込むがスカーレットがやられたのを見て意気消沈し、カミトが倒した際には

カミトに対して嫉妬の心が出来ていた。

 軍用精霊をかけた試合においては精霊無しで戦おうとするも酷い結果であると

同時に姉を馬鹿にすることを言った上級生に対して怒りが込みあがり直前に

レスティアに貰った狂精霊《ゲシュペンスト》を使って全ての精霊を

暴走させるもレオノーラによって阻止された。

 ジオ・インザーギ戦時に洞窟内で負傷し戦線離脱したがブレイドダンスに

出場できないと知るや否や呪装刻印を使って出場したいというが

グレイワースの叱責で没となりその後は抜け殻の様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 リンスレット・ローレンフロスト

 今作においての不遇キャラその2

 高飛車で自分と同等の人間しかチームに入れないというとんでもない性格で

あるが本当は面倒見の良い少女。

 クレアの事もそれとなく気にかけているが基本的には会えば喧嘩が普通である。

 レオノーラと組んでいたがジオ・インザーギ戦において負傷し、

ブレイドダンスに出場できなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイワース・シェルマイル

 元オルデシア帝国最強の12人の第1位であったが引退し、アレイシア精霊学院の学院長になった。

 カミトを引き取って色々と世話をしており、日常における常識を教えた人間。

 精霊は魔精霊で《伯爵》と呼んでいる。

 39だがその見た目は正に20代と言っても差し支えない人間であるがこれは

2回前のブレイドダンスにおける願いの副作用であり1定周期で若返るそうだ。

 実力は正にバケモノランクでありカミトですら死を覚悟したほどである。

 自分の生徒に危害が出た場合はあらゆる手段をもって下手人を葬る。

 嘗ての教え子でもあるヴィヴィアン・メローサによって教え子がバケモノに

変えられた後は必ず殺すという宣言もした。

 カミトに対しては親の様に接している。

 ブレイドダンス本戦前にカミトに絶剣技の奥義を伝授するも

その後に体調を崩して倒れた。

 心臓に何か埋め込まれていると言うのが原因である。

 その後呪装刻印が原因であることが判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラッカ、レイシア

 エリスと同じくシルフィードのメンバーでエリスのチームメイト。

 ジオ・インザーギ戦によりチームから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィアン・メローサ

 マーダーズの組織に属するエルフィム族の女性

 呪装刻印に長けており生徒にそれをばら撒いていたが更にある秘薬と№を売りに出して

オルデシア帝国において指名手配犯となった。

 ある少女と国外脱出した後、行方知れずとなった。

 

 

 

 

 

 

 フレイヤ・グランドル

 アレイシア精霊学院の教師でレイブン教室担当。

 グレイワースが最も信頼している女性で影魔法の使い手。

 グレイワースによって軍の諜報を任じられてしまうという教師と言うより諜報員紛いなことを

されている女性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジオ・インザーギ

 自身を〈魔王の後継者〉と自称した男性。

 カミトと同じく教導院に入っており、暗殺や精霊の使い方を学んだ。

 教導院が崩壊した時に脱走し、数々の精霊を奪った。

 精霊においては鉱石や呪装刻印で使用していることから半端モノと呼ばれていた。

 フギル・アーカディアが№と特殊な薬の投与によって精霊と融合し、バケモノとなった。

 カミトによって倒された後にアストラル・ゼロに体を奪われ、送還された。

 カミトに対して見下していた態度から一変し、命乞いをしていたが結局体は精霊となって消えて

行った。

 保有№  72(その後にカミトが押収した。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミュア・アレンスタール

 若干12歳であるが教導院において№2の実力を持っている。

 幼い時に自身が育っていた村の守り神でもある精霊を狂乱させ、暴走させたのちに村を追放され、

教導院に入った。

 カミトの事を兄の様に接しており同じ教導院所属のリリィとも仲がいい。

 教導院崩壊後は紆余曲折を経て、ドラッケンが所属している竜匪族に入団し、機竜をもらい受けた。

 異能は《愚者の万力》、機竜は《ワイバーン》

 №を保有しているようであるがそれが何なのかは不明

 その後な少女41を所有しており精霊は『バグ-スキュラ』。

 能力は鼻水を使った操作。

 

 

 

 

 

 

 リリィ・フレイム

 カミト、ミュアと同じく教導院育ち。

 エルフィム族でありカミトの事を心の中では尊敬している。

 ミュア・アレンスタールと同じような理由で竜匪族に入団した。

 カミトが表社会で馴染んでいることを納得しておらず、目を覚まさせようとしている。

 所有ナンバーズは96の『ブラックティターニア』。

 神威の吸収やあらゆる毒の生成が得意。

 意志を持っており邪悪な力を持っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク

 表向きはマルカファル王国の巨大商業の社長であるが裏ではマフィア、ギルゾレイクファミリーの

創設者。

 幼い容姿とは裏腹で年寄りめいた言動と圧倒的な実力を持っている。

 カミト達とガドで出会って以降、アレイシア精霊学院においては人員不足のシルフィードの手伝いと、商業展開の拠点としてカミトが暮らしている旧療養所に住んでいる。

 機竜側においてはワールドランク第1位であり「金で買った」と言いながらもその実力は確かである。

 実際は26歳と妙齢の女性で初めて聞いた際にはカミト曰く「グレイワースみたいだ」と

思うほどである。

 機竜は《ヨルムンガンド》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルマ

 ギルゾレイクファミリーにおいて高い実力を持った人間。

 少女であるのだが普段は目深な帽子と全身を覆うように服を着ているため少年と間違われることも屡々。

 その正体はアディスマータ新王国第2王女「アールマティア・アディスマータ」と言う名前で革命時に自身が隠れていた隠れ家が旧帝国に強襲され、捕まったが命からがらに脱出し紆余曲折を経て

マギアルカに拾われた。

 隠れ家は姉がばらしたというのを聞いて恨み高らかに力を付けるうちに三大機竜奥義

「クイック・ドロウ」をマスターした。

 努力家でカミト達を気にかけていることから口は悪いが面倒見のいい人間と記憶されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フギル・アーカディア

 嘗て存在した国「アーカディア帝国」の皇子だが国外脱出した後幾つもの国を渡り歩いている。

 自らを先導者と呼び、カミト達に謎めいた言葉を吹きかける。

 ジオ・インザーギ戦では謎の薬を投与させ、暴走させた張本人

 機竜を持っているがそれが何なのか不明。

 

 

 

 

 

 

 ミスシス

 フギル・アーカディアに付く謎の女性。

 機竜を保有し、3種類すべてをマスターしている。

 それ以外は不明。

 

 

 

 

 

 

 

 ルミナリス・セイント・レイシエード

 神聖ルギア王国の聖霊騎士団の団長にして全大会の順優勝者。

 騎士としての高い忠誠心と実力を持っている。 

 打倒レン・アッシュベルを掲げて今回の大会に出場しており

今のレン・アッシュベルは偽物だと気づいている。

 その偽物に敗れた後に№を植え付けられ、暴走したがカミトによって鎮静化されもう一度の勝負を誓い合った。

 保有№は36

 テンペストにてカミトを巡ってヴェルサリアと交戦中。

 

 

 

 

 

 

 ミラ・バセット

 ロッソベル公国の選手所属でリーダー格で《封魔眼》の所有者

 最年少の存在であると同時に№の所有者。

 嘗ては精霊の影響で国から兵器扱いされて心が壊れかけたところを

ぽんたに救われて感情を維持した。

 《封魔眼》に封印された精霊を解放する際に

ぽんたによって《封魔眼》破壊されなかったためカミト達の国に

亡命することはなかった。

 所有する№は64

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネペンテス・ロア

 レン・アッシュベルらしき人間の呪法によって蘇った存在。

 神威を喰い尽くしてそれを自身の力に変えると言う能力を持っている。

 全身黒い鎧で包まれていたがその正体は蜘蛛の顔をしたバケモノ

 カミトの力によって倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャオ・フー

 クイナ帝国の暗殺拳保有者にして暗殺者。

 カミトと同じ様に暗殺経験もある。

 カミト達と共闘後にリタイアするもカミト達の協力によってグレイワースの

保護下に入った。

 精霊は《白虎》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンファ、ハクア、ラオ、リオン

 同じくクイナ帝国所属の精霊使いでリーダーは第三皇女のリンファ。

 四聖獣を模した精霊を扱っており《黄龍》、《青龍》、《玄武》、《朱雀》の

使い手。

 シェーラ・カーンの策略によって操り人形とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シェーラ・カーン

 アルファス教国の王家の人間。

 グレイワースの後継者と呼ばれており魔精霊を扱う。

 その精霊は対象を支配すると言う能力で20近い精霊使いを従える程の実力者。

 所有する№は67




 これで終わりです。


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魔王と聖女覚醒
合流


 良くも悪くも再開しました。


そしてエリスが起きた時にあの時の事を思い出したエリスは・・・赤面して

カミトに向けてこう言った。

 「かかかかカミトあれはその・・・忘れてくれ本当に!!」

 「お・・・・おお。」

 カミトはエリスの鬼気迫らんほどの目つきに恐怖してそうかといっていると

エリスは逃げるかのようにこう言った。

 「ちょ・・・ちょっと禊してくるから・・・絶対に来るのではないぞ!!」

 良いなと言って例の場所に向かって行くのを見て暫く考え事をしていた。

 収穫は0で然も全員集まっていない、この状況をどうするべきかと思っていると

近くから・・・足音が聞こえた。

 「!!」

 カミトはヤバいなと思って身構えて暫くすると・・・精霊が現れたのだ。

 「これは風精霊・・・?こいつ何か持って・・・こいつは

俺達の通信用精霊の石!」

 そう言うと・・・そこから草むらからレオノーラが現れたのだ。

 「はああ・・・やっと着きました。」

 「本当じゃ、合流出来て一安心じゃ。」

 「レオノーラ!グリムゲルデ!!大丈夫だったか!?」

 「はい、こちらは。何処かの地下迷宮擬きに迷い込んでいてつい先ほど

出れたんですよ。」

 「そうか、良かったって言うかヴェルサリアは?」

 どうしたと聞くとレオノーラはこう答えた。

 「そっちもですか?こちらも合流出来てません。カミトの方は誰かと

合流出来ましたか?」

 「あ、アアアアアアア!エリスと合流出来たからダイジョウブダ。」

 「何故にカタコトなのか気がかりですがまあ良いでしょう、こちらは遺跡で

面白い物がありましたので。」

 そう言っていると・・・近くから髪を濡らしていたエリスが現れると

レオノーラに向けてこう言った。

 「レオノーラ!そちらは無事だったか!!」

 「ええこちらは、そう言えば遺跡で面白い物が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほお、それは私達にも聞かせて貰うぞ?」

 「ヴェルサリア・・・と・・・何でいるんだルミナリス?」

 「私がいては悪いと言うのか!!」

 ルミナリスが怒ったかのような感じでそう聞くと・・・ヴェルサリアが

説明した。

 「私達は丁度良くがちあってな、まあ戦ったが引き分けであったから

ここに来たのだ。エリスの風精霊の導きでな。」

 「そうか・・・まあ良いのか是?」

 大丈夫かルール的にというがまあ良いかとカミト入ってレオノーラ二向けて

こう聞いた。

 「それでだが何見つけたんだ?遺跡で??」

 「ああそうでした!詳しい事は帝国の資料から見ないといけませんが・・・

厄介な事が記述されてました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘗て世界には6匹の全ての精霊の根幹とも言うべき精霊龍とそれらを創造し、

世界を作りし二体の精霊神が世界を統治していた。

 だが・・・異界から別の精霊たちは天使の力を使って6体の精霊龍は封印され

その力を封印されかけた精霊神達は輪廻の輪に逃げ込み時を待った。

 いつか現れるであろう・・・精霊神を扱えるであろう人間が現れるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「とまあこんな感じで結構古い記述で書かれていたのですがまあ後は

調べなければ分かりませんね?」

 「其れが真実である確証は?」

 ルミナリスがそう聞くとレオノーラがこう答えた。

 「グリムゲルデが証人です。」

 そう言うが信用すら出来ないと言うのが大多数でありこれはなと思っていると

取敢えずと言ってエリスはカミトに向けてこう言った。

 「取敢えずは休みたいのだが義姉上はどういたします?」

 そう聞くとヴェルサリアはこう答えた。

 「私達も眠ろう、戦って疲れてるからな。」

 「そうだな、神威の補充をしなければな。」

 そう言って2人が寝るとカミトも眠りについてレオノーラがこう聞いた。

 「どうします?ここは彼女の魔石だけでも」

 「其れは駄目だ、その様な卑劣な事は私が許さんぞ。」

 「分かってますって。」

 そう言うとエリスに向けてこう言った。

 「それでは寝ててください、もしかしたらフィオナが

来るかもしれませんので。」

 「ならば私も起きていよう、先ほどまで寝ていたからな。」

 体力は既に回復してるしなと言って互いに火の番をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーここは何処だ?」

 カミトはフワフワとした様子で周りを見ていた。

 さんさんと輝く太陽が照り付けていて周りには古い家なのであろう石で

出来た家が至る所にありその中でも大きな城が目に付くと・・・場面が変わった。

 ーーここは城の中か?

 カミトはそう思って周りを見ていると・・・少し変わった格好をしているが

アレイシア・イドリースが少し長くて白いロングのスカートの

腹部が出ている状態で子供達に手を振っていると・・・エストが近寄って

抱きしめていたのだ。

 まるで母親に甘える娘の様なそんな感じになっているとエストの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 「アレイシア、何時になったらこの子に会えるんですか?」

 腹部に向けてそう聞くとアレイシアはこう答えた。

 「(´∀`*)ウフフ、未だ二か月後よエスト。・・・ねえエスト、

私偶にこう思うんだ。これは夢なんじゃないかって。」

 「アレイシア・・・。」

 「だってそうでしょ?捕虜になったと思いきや彼に解放されてここに住んでいて何時の間にか愛してしまってこの子を宿して・・・こんな普通の幸せが

夢なんじゃないかって思っちゃうの。今起きたら軍隊の中で聖女扱いされて・・・使い勝手のいい道具にされるなんて・・・嫌だなあ。」

 そう言いながら寂しそうに空を見つめるアレイシアであったが・・・

エストがこう言った。

 「それでしたら私がアレイシアを守ります、貴方の剣として・・・そして、

生まれてくるこの子と子孫達の為に。」

 そう言うとアレイシアは・・・笑ってこう答えた。

 「ありがとうねエスト、私のたった一人の友達」

 「もう一人ではありませんよアレイシア、貴方には私ともう一人の彼と・・・

あの人がいます。」

 そう言って視線の先には・・・顔が黒く塗りつぶされている男性が

手を振っているのが見えた。

 そしてエストはアレイシアの手を取ってこう言った。

 「行きましょうアレイシア、待っている人がいますよ。」

 「・・・うん、ありがとうねエスト。」

 アレイシアはエストの手を取ってその男性の下に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーエスト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そう言えばお腹の子供の名前は何するんですか?」

 「うん?そうねえ・・・折角だからこの国の言語で良い

響きの名前にしようかなあって思ってるんだ。」

 「何です?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な・・・い・・・しょ♪」




 夢はやがて・・・真実に繋がる物語へと。


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会合

 出会ってしまった。


 ーーああ・・・これは夢ね。

 フィオナはそう思いながら周りを見渡していた、燃え上がる祭壇と目の前にいる

存在・・・クレアの姉『ルビア・エルンステイン』と

立ちはだかっているつもりの自分。

 ーー思えばあの時の私は内心天狗になっていたのかもしれないわね。

 そう思っていたが無理もない、精霊王に選ばれると言う事は栄誉あることで

まだ幼かった時から特別扱いされていた自分からすれば天狗になっていたとしても

不思議ではなかった。

 そしてゲオルギウスを呼び出して・・・あっという間に負けて

命乞いするところを見てフィオナはこう思っていた。

 ーーうわああ、ああ見たら私って情けなかったのねえ。全く相手を

見くびっていたのね。

 そう思いながら涙を流している過去の自分に近寄って・・・こう言った。

 ーーねえ、聞こえていないと思うけど言うわね。貴方はこれで終わったと

思っているようだけどここからが始まりなのよ、ここで躓いたからこそ

カミト君が出ていたブレイドダンス見れたんだしそれにね・・・本当の意味で自分を見てくれる人に出会えるんだから・・・負けちゃだめだよ私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う・・・・ここは。」

 フィオナはそう言いながら目を覚ますと自分の格好に・・・何でと思っていた。

 「何で制服じゃなくて・・・精霊姫が着る最高位の儀礼装束じゃないの?」

 そう言いながら自分の格好を確認していた。

 丁寧に櫛けすられ頭には黄金の宝冠が載せられていた。

 「ああイヤだイヤだ、昔の事思い出しそうで嫌になるのよねえこの格好って・・ちょっと胸元苦しいわね着させるんならサイズ位合わせなさいよね!!」

 何処か違う所で逆切れしている様な感じであるがフィオナはああもうと

言いながら進もうとして・・・ばちりと何かが当たった。

 「痛!・・・これ結界って複雑なタイプだけど解けないことは無いわね、

ちょっと細工してみたら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほう・・・もうそこの解読を済ませるとは流石嘗ては精霊王に

仕えていただけの事はあるな。」

 「!!」

 それを聞いて何だと思って声のあった方向に目を向けて・・・ぞわっと

フィオナの背筋に何かが走ったのだ。

 「(この感覚・・・あの時と同じ!!)」

 フィオナはそう思いながら嘗て自分が精霊を呼び出せなくなったあの時を

思い出して・・・まさかと思うとフィオナはこう聞いた。

 「お久しぶりですね、あの時あの祭壇から逃げてからですから・・・

4年前ですかね?」

 「そうなるか・・・よく分かったな私の正体が」

 「始めにカミト君が貴方の仮面の下にある髪と瞳の色を聞いてから・・・

そして今貴方が私の目の前に来て確信したわ・・・何で貴方は精霊王を

裏切ったのか聞きたくなったわ。」

 フィオナがそう聞くとレン・アッシュベルらしき人間は・・・こう答えた

 「そうする必要があったからだ、この世界を救うために。」

 「世界を救う・・・どういう意味でしょうか?」

 フィオナがそう聞くとレン・アッシュベルらしき人間は・・・こう返した。

 「そうだ、世界を救うため。私はかの王共・・・精霊王を討つ。」

 「本気で言っているのですか貴方は!そんな事をすれば・・・五大精霊王の

恩寵を失えば大陸中の人間たちは火を熾す事も土地を耕すことも、風や水の恩恵を受ける事すら」

 「ならば機竜を扱う彼らは如何だ?」

 「そ・・・それは」

 「そうだ、彼らは火を自ら熾し、大地を耕し、風や水を有効活用している。

人だけの力で彼らは文明は我々を遥かに凌駕するほどの知識を使ってだ、それ故に今ある世界を壊して新しい世界を作る必要があるのだ!・・・偽りの精霊王を

滅ぼし・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・その全てを簒奪させられ歴史から抹消された精霊龍と精霊神を

蘇らせるために!!」

 「精霊龍と・・・精霊神・・・ですって・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う・・・ん、夢か。」

 カミトはそう呟きながら他の面々を見ていた。

 ルミナリスを含めて全員が寝ているのを見てカミトは何やってんだろうなあと

思いながら空を眺めていると・・・黒い羽が見えた。

 「この羽・・・まさか!?」

 カミトはそれを見てまさかと言うと現れたのは・・・レスティアであった。

 「あらこんばんわカミト、よく寝られたようね。」

 「・・・久しぶりだな。」

 「あら怖い、そんなに怖い顔しているのはやめた方が良いわよ?」

 レスティアが笑ってそう言うとカミトはこう聞いた。

 「一体何が目的なんだ?何で俺の前に現れたんだ??」

 そう聞くとレスティアはこう答えた。

 「貴方のチームメイトのあのお姫様がチーム・インフェルノに捕まったわ。」

 「な・・・・!!」

 カミトはそれを聞いて驚くとこう聞いた。

 「何で俺に聞くんだ・・・・!!」

 「簡単よ、彼女を『闇の精霊姫』にする為ヨ。」

 「『闇の精霊姫』・・・だと」

 「もう猶予はないわ、場所は廃都の最東端。ここから直線距離で

2,3時間はかかるわ、それに奴らはロッソベル公国とルギア王国王国の精霊使いのその殆どを手中に収めていて戦力差は歴然よ。」

 「・・・あの精霊か・・・!!」

 カミトはそれを聞いてあの仮面の精霊かと思い出すとレスティアが

去ろうとするのでカミトはこう聞いた。

 「どうして俺にそんなこと言うんだ!情報を教えて何させる気なんだ!!」

 そう聞くとレスティアは・・・こう答えた。

 「彼女は魔王を復活させる気よ、それでこそ№を使ってでも・・・

此の儘だと彼女は人ではなくなるわ!!」

 「だったら教えてくれレスティア!レン・アッシュベルの正体を!!」

 そう聞くとレスティアは・・・こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「彼女の正体は嘗ての火の精霊姫・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ルビア・エルステイン』よ。」




 いざ救出に向けて。


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道案内

 物語の確信に触れつつあります。


「まさかフィオナが向こう側に捕まっているとは・・・。」

 「然も相手はカラミティ・クイーン・・・奴がレン・アッシュベルの正体。」

 エリスとルミナリスがカミトの報告を聞いてそう呟くが何故?何の為にと

思っていた。

 フィオナに対して何故ルビアが『闇の精霊姫』などと言う存在に

させようとしていること、そして・・・既にルミナリスを除いてルギア王国が

全滅している事と下手すればロッソベル公国も全滅しているんじゃない事と言う事に最悪だなと感じていた。

 向こうには相手の精霊使いを支配下に置くことが出来る

グレイワースの後継者と目されるシェーラ・カーン、教導院出身のリリィとミュア。

 間違いなく最恐の敵だと言われるような存在だと思っていると・・・ルミナリスがこう言った。

 「だが敵の居場所、拠点が分かった以上攻撃するしか何とかするしかない。」

 「だけどどうやってだ?俺達だけで」

 「私も加わろう、どうせルギア王国はリタイアだからこうなれば

共同戦線を張るしか意味がない。」

 ルミナリスがそう言うがルミナリスが加わっただけで如何こうできるかと

思っていると・・・レオノーラがこう言った。

 「・・・ですがルミナリスさんの言葉にも一理あります、此の儘座して待つのも

此の儘失格が目に見えてますからここは乾坤一擲で確実に魔石を手に入れる策として敵地に乗り込むしかないのも一手ですね。」

 「だがどうやって乗り込むのだ?敵地ともなれば

対策の一つや二つはあるはずだろ?」

 ヴェルサリアがレオノーラに向けてそう聞くと確かにとそう思っていた。

 敵地ともなると迎撃手段が大量にある為此の儘戦っても

返り討ちされるんじゃないかと思っていると・・・レオノーラがそう言えばと言ってこう続けた。

 「私・・・敵地に感知されることもなく行けるかもしれません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオノーラが全員に対して案内した先は・・・例の地下通路であった。

 「ここが地下遺跡に繋がる場所か。」

 「ええ、ここからでしたら気づかれることなく敵地へと

たどり着けるかもしれません。」

 「だが内部は複雑なのかもしれない、どうやって奴らのいる最東端に

辿り着けるのか?」

 ヴェルサリアがレオノーラに向けてそう聞くと・・・グリムゲルデが

こう答えた。

 「大丈夫じゃ、ここら辺は儂が知っておる場所が多いから何とかなるし

それに奴らが儀式を行うともなると地脈がちゃんとしていないといけないから

清浄な気配が満ちておられるからまあ水浴び位は出来るかもしれないな。」

 グリムゲルデはそう言いながら全員を案内する中でカミトは

エストの名前を見つけると同時にある名前を見つけた。

 「・・・スカーレット・・・まさかな。」

 そう言いながら其の儘とある場所に入って行った。

 「ここが大広間じゃ、その儘行けば恐らく・・・どうしたのじゃカミトよ。

鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしておるぞ?」

 グリムゲルデがそう言って・・・目を大きく見開いているカミトに向けて

そう聞くとカミトはこう呟いた。

 「何で・・・この精霊が・・・!!」

 「お主・・・知っておるのかこの精霊を!?」

 グリムゲルデがそう聞くとカミトはこう答えた。

 「ああ、二体とも夢に出てきた精霊だ!」

 カミトがそう言って壁の上にいる二体の・・・巨大な精霊を見てそう言うと

グリムゲルデがその夢とはと言うと・・・カミトは懐からアレイシアの日記を

取り出すとこう言った。

 「これを持っていると夢で出てきたんだ、あれは只の夢じゃないかなと

思ってたんだが。」

 「カミト、何だその古い手帳は?」

 ルミナリスがそう聞くと・・・何処からか声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「其れの事、私にも教えて?」

 「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」

 全員がその声を聴いてまさか敵かと思っていると・・・闇からミラが現れた。

 「ミラ!お前無事だったのか!?」

 「まあね、けどチームメンバーは全滅したから私も死に体なのよね。」

 そう言うとカミトが持っている日記を見てこう聞いた。

 「それで、それは一体何なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アレイシア・イドリースの・・・手製の日記!」

 「そんなのが・・・古代図書館の本の中に・・・何で!」

 ルミナリスとミラがそれを見て驚いていた、矢張り彼女達ももし本物ならば

大祭殿にて厳重に保管されるべきものだと確信しているとカミトはこう続けた。

 「あの細い体の精霊は・・・最初の日の夜に夢に出たんだ、アレイシアと

誰かの男性と共に部屋から出て行った後に出てきてもう一方の方は

銀髪の男性と一緒に出てきたんだがその周りにある6体の龍は初めて見るな。」

 「然し夢とは言えあの精霊神を拝謁できるとはお主ついておるなア。」

 グリムゲルデがそう言っていると上を向いてあれは何だとカミトが

そう聞くと・・・グリムゲルデがこう答えた。

 「これこそが全ての精霊たちの祖にして全ての精霊の頂点に君臨する

最強の精霊・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・絶対精霊界神『ヴァルケリオン』。それがあの精霊様の名前じゃ。」

 グリムゲルデがそう言って全員がその精霊の肖像画を見た。

 顔に太陽の様な仮面を付けた・・・幾つもの星が周りを囲ってカミト達を

見下ろすかのように見ていた。




 そして抜け出して。


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地上へ

 戦いの前。


「あ・・・くうう・・・・!!」

 ロスト・カテドラルの巨大な帆ロマノ中央でフィオナは苦悶の表情を

浮かべながら・・・ルビアを睨んでいた。

 彼女の計画はさることながらその思想も危険であると確信して何とかしなきゃと

思いながらも怪しく輝く魔術方陣に細工して儀式を妨げようとしているのだが相手が相手なだけあってその時間すら与えられず此の儘じゃと思っていると

闇を満たした宝珠を手にしたルビアが祭壇へと続く階段を

ゆっくりと上がってくるのを見てフィオナはこう言った。

 「先輩やめてください!此の儘では貴方は戻れなくなる!!」

 「これが世界の為だ。」

 「何が世界の為ヨ!世界と家族を天秤にかけて家族をバラバラにさせて

たった一人の妹すら守ろうともしなかった癖に・・・・・!!」

 そう言っているとフィオナの体に・・・漆黒の電流が流れた。

 「アがあアアアアアアアア!!」

 「黙れ、今は眠ってろ。私の計画が完遂するまでの間な。」

 そう言ってフィオナを気絶させると・・・シェーラ・カーンが現れて

こう聞いた。

 「あら?もう調教は終わったのかしら?」

 「直に蝕まれてこいつは闇の精霊姫になる。」

 「あらそうなの?そう言えばだけど貴方が儀式をしている間に

侵入者が来たわ。」

 「侵入者・・・まさか!」

 「そう、チームスカーレットナイツ。既に来ているのを監視用の精霊から

確認済みよ、それも私が取り逃がしたあの狸の精霊使いも一緒。」

 「何だと・・・・!」

 ルビアがそれを聞いて驚いているとシェーラ・カーンはこう続けた。

 「私は迎撃に出るわ、新しい精霊使いたいしミュア達にも知らせて

いいかしら?」

 「構わん、私は儀式を完遂させる。」

 そう言っているが内心動揺していた、幾ら未だ全貌が明らかになっていない

遺跡の地下迷宮とは言えここ迄簡単にここに来られるのかと思っているが

こうも考えた。

 「(ここで奴の中にある魔王を復活させれば計画は上手くいくはずだ、

この機会は逃す分けにはいかん!)」

 そう思うとシェーラ・カーンに向けてこう言った。

 「ならば奴らを迎え撃つまでだ、だがカゼハヤ・カミトは」

 「分かってるわ、ここに向かう様に仕向けって言いたいんでしょ?

それじゃあ勝手にやるわね。」

 そう言ってシェーラ・カーン画立ち去るのを確認するとルビアはこう呟いた。

 「これが終われば貴様らは用無しだ、教国の蛇共はここで殲滅だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここが連中の根城か。」

 カミトはそう言いながら周りを見ていた、未だ夕刻前にも関わらず辺りは

夜の様に暗く、空には分厚い雲が渦を巻いているのを見てまるで魔王の居城だなと内心思っているとカミトは螺旋階段で覆われている様な外観を帯びた

その居城を見てどうやって入ろうかと思っているとヴェルサリアがこう言った。

 「あそこに門がある、あそこからアプローチをかけるぞ。」

 ヴェルサリアが言ったその方向にあったのは樹海の合間に見える巨大な門だ。

 そこに向かうとレオノーラがこう呟いた。

 「お・・・大きいですね。」

 そう言ってその門を見てそう思った、嘗ては巨人精霊も住み着いていたので

あろう。巨大すぎるのだ、普通サイズの人間など想定されていない。

 するとルミナリスが剣の先端で門を叩くと剣先に蒼白い光が散った。

 「材質は恐らくミスリル製か、それに厄介な魔術がかけられているな。」

 「門のレリーフなんだけど太鼓の魔術が刻まれてることを考えると

精霊の力を弾くことが出来てしまうわ。」

 「・・・これでシラヌイがあったら楽に開きそうなんけどなあ。」

 「ないものねだりするなカミト、となれば力づくで」

 開けるしかないなとエリスがそう言った瞬間に虚空から・・・攻撃が来たのだ。

 「全員散開!」

 ヴェルサリアの言葉と同時に全員が門から離れると現れたのは・・・

触手の生えた眼球や顎だけの怪物など嫌悪感丸出しな感じがする精霊が現れると

カミトはこう呟いた。

 「魔精霊・・・!!」

 となるとと言うと門が開いて現れたのは・・・シェーラ・カーン達であった。

 「ふふ、初めましてカゼハヤ・カミト。」

 「・・・アンタが婆さんの後継者か。」

 カミトはシェーラ・カーンに向けてそう言うと・・・リリィ達も現れて

こう言った。

 「ああ!兄さまだやっほー!!」

 「あらあの時の精霊使い、今度は徹底的に叩き潰すとしましょう。」

 ミュアとリリィがそう言うとシェーラ・カーンがこう言った。

 「カゼハヤ・カミト、貴方を通せってレン・アッシュベルから言伝貰ってるから速く行きなさい。」

 「!!どういう意味だ?」

 「さあ、それは本人に聞いてみた方が速いわよ。」

 シェーラ・カーンはカミトに向かってそう言うと

ヴェルサリアも入ろうとした瞬間に・・・魔精霊たちが攻撃を始めた。

 「皆!」

 「カミト!お前は先に行け!!我々も後で向かう!!」

 ヴェルサリアがそう言うとミュアとリリィがヴェルサリア達の前に立つと精霊を召喚して立ち向かおうとすると・・・ルミナリスがこう言った。

 「こうなれば強行突破だ!あの囚われた仲間は私が何とかする、

ミラ・バセットはあの小柄な娘をヴェルサリアと共に。レオノーラと云ったな、

貴様はエリスと言ったな、奴と共にエルフィムの方を!!」

 そう言うと仕方ないとヴェルサリアがそう言ってその布陣で戦いが始まった。




 そして始まった。


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戦闘開始

 戦闘です。


「ええい!数が少ないのが幸いだが公国だけではなく

王国の者達もいるとは!!」

 ルミナリスはそう言いながら自らの精霊における効果を使って弾き飛ばした。

 「「「「があアアアアアアアア!!!!」」」」

 支配されていた少女達4人は全員吹き飛ばされると仮面が剥がれた。

 「・・・済まないが盟約ゆえに貰うぞ。」

 ルミナリスはそう言って全員の魔石を奪うと彼女達は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 「ええい!この大型の精霊を何とかしなければいかんのに!!」

 「こっちはあの獏みたいな奴の鼻水が面倒くさい。」

 ヴェルサリアとミラ・バセットは互いにそう言いながらサムライダーズと

サイレント・フォートレスを使ってミュアが扱うバグースキュラと大型の焔精霊『ヴァララカール』を相手取っているがその巨体と特殊な軍勢(汚い)に

四苦八苦している中でその攻撃を躱し乍ら戦っていた。

 「そらそら速くしないと倒しちゃうわよーー!」

 ミュアはそんな中に於いても笑いながら戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「気を付けろレオノーラ!この木の魔物は魔力を吸収するぞ!!」

 「でしたら消し飛ばすまでです!!」

 レオノーラはエリスの言葉を聞きながら攻撃するがその木の枝の数に厄介だなと思いながら攻撃すると・・・ルミナリスの声が聞こえた。

 「こいつは私が抑える!」

 「エリス行ってください!私達が何とかしますから!!」

 レオノーラの言葉を聞いてエリスはこう答えた。

 「分かった!カミトは必ず」

 「あら?そうはさせないわよ。」

 シェーラ・カーンがそう言った瞬間に虚空からのっぺりとした白い腕が現れた。

 「何だこいつは!」

 「これは『パンダ―スナッチ』、全てを奪う物ヨ。」

 そう言った瞬間に巨大な腕が攻撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「4階!後何階あるんだよこの建築物は!!」

 カミトはそう言いながら昇っていると・・・四方の魔術方陣から

火柱が燃え上がった。

 「何だ!?」

 カミトは敵襲かと思っているとその部屋の最奥から・・・巨大な扉が開くと

現れたのは・・・ルビアであった。

 「よく来たなと言いたいが未だ目覚めていないようだなカゼハヤ・カミト。」

 「よう初めましてだな・・・ルビア・エルステイン。」

 カミトがそう言うとルビアはこう答えた。

 「その名前は4年前に捨てたが誰から聞いた?」

 ルビアはそう聞くと上空・・・と言うか外から声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私が教えたのよ。」

 「・・・レスティアか。」

 ルビアはレスティアを見て睨みつけるかのようにそう聞くとレスティアは

クスクスと笑いながらこう続けた。

 「あら?勝手に人様の名前浸かってるんだから返してあげるのは常識でしょ?」

 「ほざけ闇精霊、協力しないのならば貴様も敵だ。」

 「・・・フィオナを返してもらうぞ。」

 カミトがそう言って剣を構えるとルビアはこう答えた。

 「あれはもう既に闇に堕ちた、後は貴様の覚醒を待つだけだ。」

 「!(くそ!!俺はまた間に合わなかったのかよ!!)」

 カミトがそう思っていると・・・レスティアがこう答えた。

 「いえ未だよ、儀式が終わってまだ時間は立っていないから

未だ助けられる可能性は残っているわ。」

 そう言うとルビアはレスティアに向けてこう言った。

 「貴様・・・本当に裏切る気か!」

 「あら?私はいつでもカミトの味方ヨ、それに魔王復活とか言っても

カミトはまだ覚醒していないのに闇の精霊姫を造るだなんて順序が違うでしょ??何急いでいるかどうか分からないけど

私はいつでもカミトの味方でいるつもりよ。」

 そう言うとルビアはレスティアに向けてそうかといって敵意を向けるとカミトはこう聞いた。

 「俺と戦ってくれるかレスティア。」

 「ええ、一緒に戦いましょ。」

 レスティアがそう言った瞬間にレスティアはヴォーバルストライクに姿を変えてカミトの前に現れるとカミトは右手にレスティア、

左手にエストのデモン・スレイヤーという二刀流の構えになるとカミトは

ルビアに向けてこう言った。

 「返してもらうぞ、最強の名前『レン・アッシュベル』を。」

 「来るが良い魔王の後継者ヨ、貴様がそれに相応しいかどうか見極めさせろ!」

 ルビアがそう言ったと同時に火柱が上がると同時に・・・剣舞が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「目覚めの時が来たか。」

 何処かの国でフギルはそう呟いた。

 「君はどっちを選ぶ?魔王かそれとも・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・聖女、どちらの血を目覚めさせるんだ?」




 次回はカミト対ルビア。


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闘い

 戦いが始まった。


「行くぞエスト!レスティア!!」

 カミトはそう言って閃光の如く駆け上がるとルビアが何か呟いたと同時に

小さな火球が放たれたと同時にそれは一気に膨張して放たれた。

 「ファイアーボール!なんつう大きさだ!!」

 カミトはそう言ってギリギリで直撃を回避するもその威力はクレアが

使っていた時よりも強力で・・・爆発範囲が広すぎていた。

 「クソが!これが元精霊姫の実力かよ!!」

 カミトはその威力を見て驚いているとルビアは新たに魔術を唱えた。

 「煉獄の門より来たれ、灼熱の猟犬共よ!」

 虚空から魔術方陣が出てきて炎を纏う三頭の『地獄の猟犬(ヘルハウンド)』が

召喚されたと同時に三方向から同時に飛び掛かるとレスティアが黒い雷を迸らせると『ヘルハウンド』達が痺れたと同時にカミトは二つの剣を逆手に持ち替えて

技を放った。

 「絶剣技三ノ型・・・『影月演舞』!」

 それと同時に三頭の『ヘルハウンド』は一太刀で斬り伏せられた。

 「眠れる火山の王よ、その息吹を解き放て・・・

『火竜の咆哮(フレイムハウル)!」

 その言葉と同時に巨大な竜を模した炎がカミト目掛けて襲い掛かった。

 然もコノ魔術は追尾できるようでありカミトの神速に自動で追ってくるのだ。

 「きりがねえ!こうなったら!!」

 カミトは舌打ちして足を止めたと同時に・・・半身を回転せて振り向きざまに

火炎竜の頭を打ち砕いた。

 消える竜を見ると今度はそれが新たな火柱となって吹き上がって来た。

 「こんなの俺達には意味がねえよ!」

 カミトはそう言ってその勢いのまま一輝に駆け込んで

一撃を与えようとしたと同時に・・・レスティアがカミトに向けてこう言った。

 「カミト!こいつは偽物よ!!本物はすぐ後ろ!?」

 「私が受け止めます。」

 エストがそう言ったと同時に鎖を放って横薙ぎの斬撃事繰り出すもルビアはそれを最小限の動作で躱すとこう言った。

 「私も本気を出そう。」

 そう言った瞬間にその手に蒼い焔を生み出した。

 「時すらも凍れ、絶対零度の劫火・・・

『凍える焔華(フロスト・ブレイズ)!」

 「お前の焔は俺達には効かねえぜ!」

 カミトがそう言った瞬間に絶剣技四ノ型『焔斬り』を使うが・・・

切先に触れた瞬間に刀身が凍り付いたのだ。

 「何だこの炎・・・嫌なんだこれ?」

 カミトがそう言って驚いていた、何せ凍り付いたはずのエストの刀身の氷が・・溶けたのだ。

 炎が物体を凍らせた事にも驚いているのにそれが溶けるなど何でと思っているとルビアはこう呟いた。

 「馬鹿な・・・私の焔を溶かすなど・・・!」

 一体どうしてと思っているとカミトはルビアに向けてこう聞いた。

 「お前イッタイナニガ目的なんだ、こんなことしてイッタイナニガ

してえんだ。」

 そう聞くとルビアはこう答えた。

 「仕方ない応えよう、私の目的は・・・魔王の力を使って精霊王を

滅ぼす事だ。」

 「精霊王を滅ぼす・・・だと!」

 「そうだ、三年前のあの日。お前がそいつとその願いを

叶えようとした事だが・・・そして失敗した。」

 冷たく放たれたその言葉を聞くもカミトはその時の事を忘れている為その結果が分からなかったがルビアはこう続けた。

 「私はこの世界を再構築して精霊王を滅ぼし、精霊を使わずに人類のみで

世界を発展させたいのだ。」

 「世界の再構築・・・そんな事したら世界中でどれだけの人々が犠牲になると」

 「確かになるが機竜を扱う国はどうだ?あちらは我々とは違って

自分たちの力だけで発展しているそうだ、そう。我々は精霊がいなくても

この世界をいい方向に発展させれるのだ。」

 「確かにマギアルカからその話は聞いたが・・・だけどこっちの方じゃ」

 「この精霊側の国々は今まで精霊に甘えそして堕落した、大地を耕すのに

自らの力で耕さず、水を湧き出させるのに自らの力で掘らず、炎をくべるのにも

自ら火を焚こうともせず、風を送るにしても風を感じようともせず

こんな連中を助けて・・・ランパール戦争が起きたにも拘らず世界は

正しくあろうともしなかった・・・これは罰なのだ、世界が再び自らの意思で

立ち上がるために・・・!!」

 そう言うとカミトは・・・ふざけるなと言ってこう続けた。

 「アンタがどんだけの理想を持っているのか・・・どんだけの覚悟で

挑もうとしているのか分からねえけどな・・・無関係な人々を巻き込むことなんて俺は・・・絶対に認めねえぞ!」

 そう言ってカミトは二振りの剣を構えるとルビアは・・・カミトに向けて怒りの表情でこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お前は・・・私の見てきた悲劇を知るまい。」

 そう言うとあの時の事を思い出した。

 精霊王の気まぐれ一つで街を破壊された。

 人々は死んだ。

 傷ついて家を失った。

 そして何よりも・・・精霊姫であったことから沈めたとしても

どれだけの酷い惨状だとしても有難いと言って崇められル事に・・・

心底ふざけるなと思った。

 だからこそ壊すのだ、この世界の常識を!

 「力なき言葉は無力だ、私はそれを『精霊姫』となった日に知ったのだ。」

 そう言った瞬間にまるで荒らしの様に熱せられた風は集まって焔の竜巻となってルビアを覆った。

 「今こそ見せてやろう・・・最強の『神殺しの焔』を・・・!!」

 そう言って天井に迄達した焔の竜巻はやがてその姿を変えた。

 カミトの前に現れたのは・・・巨大な人型の魔神であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれは四年前の・・・あれはあんただったのか・・・!!」

 カミトがそう言うとルビアはこう言った。

 「そうだ、思えばあの時から私とお前の運命は・・・教導院の壊滅と同時に

交錯していたのだ。」

 そう言うとルビアは精霊語の展開式を唱えると・・・ルビアは懐から

カードを出してきた。

 「そいつはまさか!!」

 カミトはそのカードを見てまさかと言うとルビアはそれを焔の竜巻に

放った瞬間に炎から・・・84の数字が見えた。

 そして現れたのは・・・真紅の鍔に蜘蛛の巣を模ったかのような剣が現れた。

 「これこそが炎属性最強のエレメンタルバッフェ『レーヴァテイン』だ。」

 そう言った瞬間にカミトはルビアの背後に・・・焔の蜘蛛が見えるのを感じた。




 次回は外での死闘。


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外での戦い

 戦いまくりです。


 「くそ!やはりこの木の大群はきりがない!!」

 「でしたら降参して魔石置きなさい。」

 「ふざけるな!そうして魔石を奪えば今度は私達を操る気なのでしょう!?」

 レオノーラがそう言うとリリィはそれもそうですねと言いながら縦横無尽に

ナイフを使ってエリス達を翻弄させていると・・・光が辺り一帯に降り注いで樹が

枯れていくのが見えた。

 

 

 

 

 ーークソがーー!!俺の体に何しやがるーー!!

 ブラックティターニアが断末魔を上げると魔精霊たちがエリス達目掛けて

攻撃しようとするもその光によって阻まれた。

 「今だ行け!ここは私が引き受けた!!」

 「分かりました!行きましょうエリス!!」

 「ああ!」

 レオノーラとエリスはこの場をルミナリスに任せて自分たちはカミトの方に

行こうとすると・・・シェーラ・カーンがこう言った。

 「だったらこの子を倒してからよ!」

 そう言って召喚したのは・・・腕が付いた白い球体であった。

 中心部には口みたいな開閉場所があり一体何だと思っていた。

 魔精霊は大概が奇怪な形状を持っており中には形などないタイプもいる。

 そしてその精霊を見るとエリスはそれに向けて技を放った。

 「凶ツ風よ、狂え!」

 そう言ってレイ・ホークで貫かんとするもそれが口を開けた瞬間に・・・

風が吸収されていくのが見えた。

 「「!!」」

 2人はそれを見て驚いているとシェーラ・カーンがこう言った。

 「さあ行きなさいパンダ―スナッチ!嘗て魔王に使役されていた72柱の一つの力を見よ!!」

 そう言うと巨大な腕で攻撃してきたのだ。

 「ちぃい!」

 「うぐう!!」

 その攻撃は重たかったがために吹き飛ばされるとパンダ―スナッチは口を大きく開けた瞬間に・・・風の刃がエリス達を襲った。

 「「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」

 2人はその攻撃に吹き飛ばされるとエリスがこう言った。

 「何故・・・私の攻撃が」

 「ああそれはね、この子の能力は相手の力を奪って自分の物にする事が

出来るのよ。だからあなたたちの攻撃は効かないわよ。」

 「「!!」」

 それを聞いてじゃあどうやって倒すんだと思っているとシェーラ・カーンがこう言った。

 「今度はこっちの番ヨ。」

 そう言った瞬間にパンダ―スナッチが・・・ニヤリと嗤った瞬間に姿を・・・

消したのだ。

 「!!」

 「どこに」

 「上だレオノーラ!」

 グリムゲルデがそう言った瞬間に上空を見るとパンダ―スナッチが

そこにいたのだ。

 実はパンダ―スナッチは消えたわけではなく只腕を地面に叩きつけて

飛んだだけなのだが力が強かったことから消えたように見えたのだ。

 そしてその儘・・・エリスのすぐ近くに着陸するとパンダ―スナッチはエリスを殴り飛ばした。

 「が・・・はあ!」

 「エリス!」

 レオノーラはやばいと感じてグリムゲルデで突き刺そうとして猛スピードで

向かうもその腕で防御されたのだ。

 「な!」

 その光景にレオノーラは一瞬呆けた瞬間にパンダ―スナッチは口から巨大な舌をエリス目掛けて放った。

 「エリス逃げて下さい!」

 「あ・・・う」

 レオノーラがそう言うもエリスは先ほどのダメージによるものであろう身動きがとりづらくなっていたのだ。

 そしてその儘その巨大な舌でエリスを搦めとろうとした瞬間に

レイ・ホークが解除されて・・・シムルグが現れたのだ。

 ぴぃえエエエエエエエエ!

 そしてシムルグはエリスをその足で掴んで空高く飛んだ。

 「しむ・・・ルぐ。」

 ぴぃえエエエエ

 シムルグは傷ついたエリスを戦線から離させようとするのであろう、少し遠くの森迄飛んで行こうとすると背後に気配を感じた。

 「・・・・!!」

 エリスはそれが何なのかを感じて振り向くと・・・パンダ―スナッチが

そこにいたのだ。

 そしてその巨大な舌はシムルグを搦めとった。 

 「シムルグ!」

 エリスはいけないと思って精霊界に帰そうとするも・・・

それが出来なかったのだ。

 「な・・・何で。」

 するとパンダ―スナッチの上にいたシェーラ・カーンがこう言った。

 「ああ簡単よ、この子の舌に絡めとられたら精霊界に帰れないのよ。」

 「そんな精霊が・・・!!」

 そう言った瞬間にシムルグが・・・ヴェルサリア目掛けて落としたのだ。

 「!?エリス!」

 ヴェルサリアはいけないと思って受け止めると上空にいるシムルグを

見た瞬間に・・・悍ましい事が起きたのだ。

 「さあパンダ―スナッチ・・・食べちゃいなさい♪」

 シェーラ・カーンがそう言ったと同時にパンダ―スナッチはその巨大な舌で

シムルグ事巻き取ってそして・・・食べたのだ。

 バリバリと嫌な音を立てているのを聞いてエリスは・・・

呆然となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・え?」

 何でと思っていると其の儘パンダ―スナッチはシムルグを食べ終えると

更に奇妙な現象が起きたのだ。

 精霊刻印が・・・消えたのだ、エリスの。

 「そんな・・・・ああ・・・あああ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嫌ああアアアアアアアア!!シムルグーー!!」

 エリスはそれを見て大声でそういうもシェーラ・カーンはニヤリと笑ってこう言った。

 「ファーレンガルト家の魔風精霊御馳走様♪」




 そして中に戻って。


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ルビア対カミト

 戦いです。


ルビアがレーヴァテインを展開させるとその瞬間に炎が迸って辺り一帯を

一瞬で焼き尽くした。

 「何て熱なんだ!床が溶けてやがる!!」

 カミトはその光景を見て恐ろしいと思っていた。

 ロスト・カテドラルはあらゆる精霊に対して体制があるであろう精霊鉱石で

造られているのにも関わらずこの威力である事に下手したら自分は死ぬのは

間違いないと考えているとルビアはこう呟いた。

 「・・・威力を調整しなければ使い手が消し炭になりかねん。」

 「じゃあここで終わって欲しいな!」

 カミトはそう言いながらもこう思っていた。

 「(正に化け物と言っても過言じゃねえぞ本当に!あの精霊もそして

それを使役することが出来るルビア自身も。)」

 どっちもどっちだぜと思いながらエストとレスティアの方に目を向けて

こう続けた。

 「(今の俺に勝てるのか?伝説のデモンスレイヤーでさえ10分の1程度の力、

レスティアがいたとしてもこれで勝てるか否か・・・)」

 シラヌイがいれば勝率は上がっていたなと思っているとエストが

カミトに向けて・・・こう言った。

 

 

 

 

 ーーカミト、私は貴方が信じている限り私は絶対に折れません

 ーー私達は貴方を信じてるわ、だから自信を持ちなさい。

  「エスト・・・レスティア・・・・ああ、そうだな!」

 カミトは2人の言葉を聞いてそうだなと思いながらエストは白銀、

レスティアは黒雷を放っていると・・・灼熱の投信と化した

レーヴァテインを持ったルビアが現れたのでカミトはハハハハと笑いながら

こう聞いた。

 「ここを消し炭にする気かアンタ?」

 「これでも抑えているのだがな、

私もこれを完全に制御できるわけではないのだ。」

 そう言いながらルビアはその高い威力を持つレーヴァテインから放たれた炎が

カミト目掛けて襲い掛かるとカミトはエストから鎖を出して天井にある

僅かな窪みにひっかけるとエストは其の儘上にへと向かって行った。

 そしてカミトがいた場所には炎で焼き消されたのであろう大穴が開いていた。

 「アンタ俺を魔王にするんじゃなかったのかよ!」

 「この程度で死ぬようならば、どのみち精霊王を殺す事など夢のまた夢だ。」

 「手前の勝手な物差しで俺を決めるんじゃねえ!」

 カミトはそう言いながら天井を蹴って反転し頭上からルビアを狙おうとすると

ルビアはレーヴァテインを逆手に持ち替えてその渾身の一撃を受け止めたのだ。

 「な!?」

 その光景にカミトは驚いているが朗報もあった。

 「(この距離だったらあの焔は出せねえって事だな!)」

 それだけでも収穫ものだなと思っているがこうも思っていた。

 現在両者は拮抗していたが最大の問題が浮上してきたのだ。

 それが・・・神威である。

 元とは言え精霊姫であったルビアに対してカミトよりも莫大な神威を

保有している為じり貧に近い状況となっているのだ。

 するとルビアはエストを見てこう言った。

 「皮肉な物だな、貴様の持っている2振り。片や最強のブレイドダンサーの剣、そしてかのデモン・スレイヤーとはな。」

 「はは、俺が本当に魔王の転生体だとしたら」

 「違う、嘗て聖女と共にあった聖剣が私に刃を向けている事だ。」

 「・・・何?」

 ーーどういう意味かしら貴方?

 レスティアがそう聞くとルビアはカミトに向けてこう聞いた。

 「貴様は疑問に思わないのか?儀式を司る姫巫女に過ぎない私が

最強のブレイドダンサーである貴様と対等に剣舞を舞えることに?」

 そう言いながらカミトの首筋に赤い斬閃が掠める中でカミトも確かにと

思っていた。

 「(ああ確かに、幾らブランクがあるとはいえ何でって思っちまう・・・

まさか!)」

 その考えに至った瞬間に全てに合点がいった。

 才能・修練・呪装刻印のどれにも当てはまらずそして先ほどまでの言葉から

推移してカミトはこう呟いた。

 「お前マサカ・・・聖女の転生体とでも言いたいのか?」

 そう聞くとルビアはこう答えた。

 「そうだ、私は魔王の転性に呼応して覚醒する対抗存在(アンチユニット)。

レン・アッシュドールの復活を恐れた精霊王たちが仕組んだ種、それが私だ。

皮肉であろう?私は魔王の復活を目論み、精霊王を滅ぼさんとする私が

精霊王の遺した力だとは・・・まあそれも紡がれた糸かもしれないがな。」

 「エスト!大丈夫か!?」

 カミトは今エストは動揺しているんじゃないかと思っていた、今の話が

真実であるとするならエストは嘗ての主相手に剣を向けているような物だ。

 精神的にきついはずだと思っているとエストは・・・こう返した。

 ーー大丈夫ですよ、カミト。私は過去とは違う存在、たとえ彼女が

過去のマスターの後継者だとしても関係ありません。

 「そうか、なら・・・負ける訳には行かねえな!!」

 カミトはそう言いながらルビアを2振りの剣で払いのけるとルビアは

こう呟いた。

 「成程な、魔王への拡声が遅れたのはその聖剣が一因か。・・・

ならばその聖剣を打ち砕き真の絶望を与えてやろう!!」

 そう言った瞬間にレーヴァテインから膨大な熱が迸り始めた。

 それを見たカミトはここだと思って爆発的な脚力で踏み込んで神威の根源を

見極めてその一点のみに集中して奥義を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「絶剣技終ノ型・・・《ラスト・ストライク》!」

 カウンター特化のその超神速の斬撃がレーヴァテインの刀身を穿って・・・

デモン・スレイヤーとヴォーバルストライクに罅が入った。

 「エスト!レスティア!!」

 「さあ、目覚めるが良い魔王よ!」

 ルビアがそう言って灼熱に滾るレーヴァテインでカミトの胸を

貫かんとした瞬間にカミトの懐、アレイシアの日記のある場所から眩い程の光が

その部屋一帯を目を潰さんとも言わんばかりに照らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして何処かの場所。

 暗闇の中でその精霊は何かを感じた。

 そしてその精霊の力は天井を突き破って・・・何処かにへと飛んで行った。




 その光は・・・戦いに何をもたらすのか?


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夢の世界

 夢の中へとご案内。


「ここは・・・何処だ一体!?」

 ルビアはそう言いながら周りの・・・見たこともない様な光景が広がっていた。

 恐らく砂漠に面した国なのであろう灼熱の如き太陽がさんさんと輝いており

周りの人達は日除けの為かフードらしきものや布で巻いた帽子を付けているような

人たちが至る所にいた。

 「私はカゼハヤ・カミト相手に戦ってそしてあのデモン・スレイヤーを破壊して

奴を貫こうとしてそして・・・何がどうなっている!?」

 ルビアはそう言いながら頭を悩ませていると近くに人が来たのでこう聞いた。

 「おい済まないがここは一体」 

 何処だと言いかけてルビアは・・・絶句したのだ。

 先ほど通りかかった女性が自分の体を・・・透き抜けたのだ。

 それは他でも同じで何故か通り抜けてしまうのだ。

 「一体・・・何がどうなっているのだ?」

 ルビアがそう呟いた瞬間に・・・風景が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここは・・・城内か?」

 ルビアはそう言って見まわしていた。

 質素に見えるが其れなりに優雅さを併せ持つ綺麗な場所である。

 ルビアは周辺を歩いていると・・・カミトを見つけた。

 「カゼハヤ・カミト・・・!」

 見つけたと思って近づいて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここは・・・前とは違うのか?」

 カミトはそう言いながら前に見た夢とは違うのかと思っていると・・・

とある部屋に辿り着いた。

 「ここは?」

 何だと思って入ろうとすると・・・声が聞こえた。

 「カゼハヤ・カミト!」

 「・・・ルビア・エルステイン・・・!!」

 カミトはそう言いながらルビアに対して敵愾心全開で睨みながらも・・・

部屋に入ろうとして2人の見ているものが変わった。

 「ここは部屋の中か。」

 「おいカゼハヤ・カミト!ここは一体何処なんだ!!我々は今まで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アアアアアアアア!」

 「「!?」」

 一体何だと思って2人は悲鳴があった所を振り向くとそこにいたのは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エスト私のお菓子食べちゃったよ~~!!」

 「ああ、はいはい泣かない泣かないって。」

 エストが頬張っているお菓子を食べているのを見て泣いているアレイシアと・・カミトと顔立ちが似通っている男性が頭を撫でていた。

 するとアレイシアはこう続けた。

 「お菓子~~~!!」

 「お菓子ならまだ俺のがあるからそれ食べてろよ?」

 「けどそれ食べたら・・・スライマンの分が。」

 「「スライマン!?」」

 カミトとルビアは互いにその名前を聞いて驚いていた。

 あの魔王が目の前にいることに驚いたのだが・・・理由はそれだけでは

なかった。

 魔王と呼ばれていたのだから一体どんな恐ろしい手合いかと思って見てみれば

何ともない・・・人のよさそうな青年であった。

 するとスライマンはアレイシアに向けてこう言った。

 「ああな、俺はまだ仕事が残っているしそれにアーカディアとの同盟における

手続きでフギルが待っているからな。」

 「「!?」」

 それを聞いて更に2人は驚いていた、フギルは前に見たが何でこんな大昔に

於いてもその名前が出てくるんだと思っているとアレイシアはスライマンに向けてこう言った。

 「じゃあさ!一緒に食べよ!!どうせだったら2人でさ!!」

 「まあ・・・仕事の邪魔をしないんだったらいいがな。」

 「ヤッターー!!」

 それを聞いてアレイシアは本当に喜んでいるように思えてならないが

アレイシアがスライマンの・・・足に乗っかるような感じで座ると

お菓子を一つ取り出してこう言った。

 「はい、あ~~~ん。」

 「・・・はあ・・・あーん。」

 スライマンは少し溜息付くと其の儘アレイシアが手で渡したお菓子を食べると

アレイシアはにこにこしながら更にお菓子を渡していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な・・・何だこれは・・・!!」

 「ああ、俺は何度か見たけどこれは無かったなあ。」

 カミトがそう呟くとルビアは何だとと言ってこう続けた。

 「お前この夢を何回も見ているのか!どう言う事だこれは・・・!!」

 答えろと言った瞬間に風景が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 街が燃えているのだ、精霊使いや軍隊が町の住民を達を皆殺ししているのだ。

 そして城の中で見るとカミトとルビアはアレイシアとスライマンを見ると

スライマンはこう聞いた。

 「良いのかアレイシア?僕がこいつを使うと言う事はそれは君の魂が」

 「構わないわスライマン、あの子が無事逃げ切るまでの時間は稼ぎたいし

何より・・・貴方と離れ離れになって残りの一生を過ごすなんて・・・嫌だよ。」

 アレイシアはそう言いながらスライマンに抱き着くとスライマンはこう言った。

 「じゃあやろう、この魂が例え・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『冥府に送られず永遠にこの土地に縛られようとも』

 『我らの魂は何時いかなる時も永久に離れることなくこの土地を守らん。』」

 スライマンとアレイシアが互いにそう言って・・・2人揃ってこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「現れよ!創世神『メサイア』!!」」

 その言葉と共に精霊が現れた瞬間に光が国を覆って街は・・・砂の中にへと

引きづりこまれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー是こそが真実だ。

  「「!!」」

 2人はその声を聴いてフギルだと思い至るとフギルはこう続けた。

 ーー2人の魂は今でもメサイアと共に封印されている、だからこそ・・・

生まれ変わりなど只の幻想にすぎない。

 「嘘だ!」

 ルビアがそう言うとこう続けた。

 「貴様は行ったはずだ!私こそ世界を救う聖女だと」

 ーー確かに言ったがだが俺は何時・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・貴様の事をアレイシアの転生者だと言った?

 「・・・・え?」

 ルビアは間の抜けたかのような声を出すとフギルはこう続けた。

 ーー哀れな小娘だ、お前はアレイシアにはなれないが・・・誰にもなれない

お前こそが真実だ。

 「黙れ」

 ーー誰かの名前を使わなければ只々からにとじ込むるだけの弱い存在 

「黙れ」

 ーー妹を守ろうともせず手放してせいせいしていたんだろ?

 「黙れ黙れ黙れ!」

 ーー所詮お前は誰も守れない。

 「黙れーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー貴様など、無敗の最弱である賢弟にも劣る存在だ。

 そう言うとフギルはルビアに向けてこう言った。

 ーーそしてそんなお前に良いものをやろう。

 「出て来いフギル!フギルーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーさらばだ精霊姫

 そう言った瞬間にルビアの体の至る所に・・・模様が浮かんできたのだ。

 「刻印・・・・!?」

 カミトがそう言った瞬間にルビアの体が波打っているのを見た。

 「あが・・・グウウウウウ・・・・!!」

 「おい!大丈夫かおい!?」

 ーーカゼハヤ・カミト、お前は向こうに戻ったら仲間を引きつ入れて逃げるか

機竜を使え。さもなくば・・・死ぬぞ。

 「な!それってどういう」

 意味だと言いかけた瞬間にルビアは・・・断末魔を上げた。

 「ウぎゃあああああああアアアアアアアア!!」

 そう言うと同時に黒いオーラが体から溢れ出てそれが先ほどまでの

白の世界を壊すと同時に見えたのは・・・恐ろしい物であった。

 「な・・・何だよありゃあ。」

 カミトが黒いオーラの向こう側から見えたのは・・・蜘蛛の如き

8本の足を持った・・・まるで魔精霊の如き風貌と成り果てていた

ルビアがそこにいた。




 次回は人物紹介してまた休載します。


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人物紹介 10巻まで

 人物紹介です。


カゼハヤ・カミト

 知っての通りの主人公

 赤子の時に教導院に攫われて暗殺者としての訓練を受けた。

 精霊使いとしての能力を持っており教導院の老人たちからは〈魔王の後継者〉と

呼ばれていた。

 レスティアと仮契約する際に放置された刀型のソードデバイス、《シラヌイ》を

見つけ、契約した。

 教導院が滅んだ後に逃走し、骸連盟〈マーダーズ〉に入籍し以来として

グレイワースの暗殺を受けるも失敗した。

 その後グレイワースの下で召使(メイド服)としてだけでなく暗殺者の

カウンターとしても起用された。

 ある理由でレスティアを手放してから3年後にグレイワースに呼び出されるが道中にクレア・ルージュと遭遇し、戦い沙汰となった。

 クレア・ルージュの目的は1000年前に存在した伝説の精霊

《セヴェリアンの聖剣》を抜いたが暴走し、仕方なく契約した。

 その後グレイワースとの取引にてアレイシア精霊学院に入学。

 その際に一時であるがクレア・ルージュにしつこく勧誘された。

 また、契約した精霊〈エスト〉を新たに迎えた。

 精霊使いとしては初期段階においては素人クラスであったが戦えば戦うほど

何か思い出したかのように成長していった。

 同居人としてレオノーラと同居している。

 クレア・ルージュが狂精霊〈ゲシュペンスト〉にて大会を混乱に陥り、

その際に賞品でもある軍用精霊の暴走に立ち会い、《シラヌイ》で迎撃する。

 第2巻においては《シラヌイ》とエストを使った戦闘が主流となり、

事実上二種類での使用となっている。

 フィオナが入学したその日にジオ・インザーギと学院にて戦闘。

 それを捕らえる仕事と軍用精霊〈ヨルムンガンド〉の再封印を命じられ、

鉱山都市《ガド》に向かった。

 その際にマルカファル王国の商人であり、ギルゾレイクファミリーのボス

《マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク》と《アルマ》に出会った。

 その後エリス達を倒したジオ・インザーギを見つけ、共闘するも

あと1歩のところで邪魔が入った。

 その後マギアルカと共闘することとなり、真祭殿においてジオ・インザーギの

絡繰りを推測し、勝利するもフギル・アーカディアにより

ジオ・インザーギであったバケモノ相手に戦う事となった。

 その際に共にいたレスティアとエストの剣の二振りをシラヌイで使って

勝利するもジオ・インザーギは死亡した。

 その後にマギアルカに本格的な機竜での使用法を教授された。

 その際に新たなるチーム編成に伴い、エリス、フィオナ、レオノーラが

加わった。

 第3巻において、新たに加わったヴェルサリアに機竜での決闘を布告され、

これを受諾。

 戦闘は引き分けに終わったがその実力は確かなものとなった。

 第4巻においては試合会場に向かう最中に軍用精霊《デス・ゲイズ》と

空中で交戦することとなった。

 辛勝した後に教導院において組んでいた少女、《ミュア・アレンスタール》に

再会。

 その後の晩餐会においては《レン・アッシュベル》らしき人間からある物を

投与され、痛みながらも竜匪族の人竜部隊団長《ドラッケン》と戦闘。

 マギアルカの介入にて何とか退くも投与された何かに蝕まれ、命の危機に

直面していったがエストの力で回避したがその際にエストは消えた。

 その正体は嘗て前ブレイドダンスにおいての優勝者

《レン・アッシュベル》本人であるのだが知っているのは相棒の《シラヌイ》と、レスティア、グレイワース、フィオナ、ヴェルサリアだけである。

 その後エストの手掛かりを求めて古代図書館にて

『アレイシア・イドリース』直筆の記録書を手に入れた。

 呪いはフィオナの助けにより現在の火の精霊姫であるレイハによって

解呪されるもその後からアレイシア・イドリースの記憶が見えるように

なってしまった。

 ルミナリス戦の際に危機に陥った時にエストを再召喚に成功し、勝利した。

 保有№は101

 対ネペンテス・ロア戦に於いてはエストの姿を槍に形状を変えて勝利した。

 またレン・アッシュベルらしき人間とも戦い彼女の招待の一部を見た人間の一人

 ブレイドダンス前にグレイワースから絶剣技の奥義を伝授されそれについて

考察中。

 『テンペスト』にてリリィと交戦しているエリスを救出するも媚薬によって

性的な干渉をエリスからされてしまい其の儘去れるがままにファーストキスを

奪われた。

 ロスト・カテドラル戦に於いてはレン・アッシュベルらしき人間・・・ルビア・エルステイン相手に戦っている中でアレイシアの記憶を見た。

 

 

 

 

 

 

 レオノーラ・ランカスター

 本来なら《ドラグニア竜皇国》に在籍していたがとある《アビス》戦において《ヘイブルグ共和国》に吸収された。

 機竜、《メイルストーム》を保有し、精霊《グリムゲルデ》と契約している。

 親友を恩人でもあり憧れでもあった《ローザ・グランハイト》に全員

殺された後に家族を殺され、天涯孤独となって国外脱出した後に

チームメイトでもあったリンスレットの家に一時的に身を寄せた後に

グレイワースの推薦で入学した。

 独り身であるが真面目で優秀性である。

 機竜においては下位ランクであるが一通りのやり方は学んでいる。

 主に機竜での戦闘に重点を置いているが精霊使いとしての腕前は1流である。

 ジオ・インザーギ戦の後にカミトのチームに入り、ブレイドダンスに出場した。

 テンペストでは遺跡に転移されてしまいグリムゲルデの案内でとある秘密に差し迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト

 先のブレイドダンス出場であると同時にレン・アッシュベルの正体を知る一人。

 元々は下級貴族の出であるが精霊使いとしての実力を評価され、養子となった。

 エリスとは義理の姉妹であるが仲は良い。

 1年生にしてブレイドダンスに出場出来る程の実力者であったが

レン・アッシュベルに瞬殺され、意気消沈しアストラル・ゼロで精霊に殺されて

死のうと思っていたところにフィオナと襲っていたドリアードに遭遇。

 死ぬと確信した時にカミトに出会い、その正体を知る。

 カミトとの言葉のやり取りの後にもう一度再戦を約束するもそれは

3年先となった。

 治安維持組織シルフィードの団長であり実力は確かである。

 3年後にカミトと再会するも忘れていたことに少し・・・キャラ崩壊したが

思い出してくれた後にカミトの頬に口づけをした。

 機竜は《カオスブレイカー》、精霊は《サイレント・フォートレス》

 カミトのチームに入った後に機竜での決着を所望した。

 カミトに対しては好意を抱いており、再会に備えて料理の特訓もしている。

 テンペストにてカミトを狙うルミナリスと現在交戦中。

 その後にルミナリスと共に共闘となった。

 

 

 

 

 

 

 エリス・ファーレンガルト

 先のブレイドダンスにて《レン・アッシュベル》に憧れを抱いておる少女。

 シルフィードと言う学院の治安維持組織にて団長補佐を任されていた。

 精霊は《シムルグ》、機竜は《ワイバーン》

 団長補佐に選ばれているだけあって実力は確かであるが優等生型であるため

授業の単語を全て書くと言う堅物なところがある。

 一時はカミトを不安視していたが軍用精霊の戦いの後にカミトの実力を見て、

見直し勧誘することもあった。

 ジオ・インザーギ戦の際に自身のチームメイトがやられたため、カミトの

チームに入り、マギアルカの教えを請いた。

 機竜での戦闘は主に接近戦であるためある程度万能型でもあるミュアに

やられかけた。

 カミトが教導院出身であることを知っている人間であり、チームでは

エリスのみである。

 胸が大きい事がコンプレックスであり、最近は甲冑が付けづらいと漏らすことがある。

 対ネペンテス・ロア戦の際にはカミトの真実を聞いても受け入れた。

 テンペストにてリリィ相手に苦戦するもカミトの協力で難を逃れるが

媚薬の影響で性的な干渉をするがためにキスしたどころか其の儘

初絶頂をしてしまったある意味可哀そうな少女①

 ロスト・カテドラル戦に於いてシェーラ・カーンのパンダ―スナッチによって

シムルグを奪われて戦線離脱となった。

 

 

 フィオナ・レイ・オルデシア

 オルデシア帝国の第2王女であり、神儀院に在籍していたが

クレア・ルージュの姉のルビアの出来事により精霊が使えなくなった為、

神儀院から追放され《ロストクイーン》と呼ばれるようになった。

 前回のブレイドダンスにおいてレン・アッシュベルの戦いを見た後に精霊が

使えないかアストラル・ゼロに行くも失敗し、ドリアードに襲われかけた。

 その際にレン・アッシュベルの正体も知った。

 その後は精霊鉱石を使って不法入学した後にジオ・インザーギ戦に参加。

 その戦いに置いて儀式演武を使って補佐に周りジオ・インザーギの精霊を

無力化させた。

 カミトのチームに入り、マギアルカの教えを請いた後に精霊が使えるように

なった。

 精霊は《ゲオルギウス》、機竜は《ドレイク》

 本人曰く、耳年増であるが初心だと告げているが本当なのかどうか知らない。

 両親に対しては険悪であり、女王の資格を返上し、マギアルカに商売の

イロハを教わり、見返したいと思うぐらい嫌いであるそうだ。

 テンペストではミュアが扱う№によって拘束されて何処かへと・・・

鼻水で顔まで覆われて失神中。

 その後にレン・アッシュベルらしき人間・・・ルビア・エルステインによって

闇の精霊姫とされてしまいそうになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 クレア・ルージュ

 本来ならメインヒロインであるのだが本作では不遇キャラ。

 名前自体が偽名で本名は《クレア・エルステイン》なのだが姉が炎の精霊王を

奪い、脱走したため家は取り潰された。

 家を取り戻すこととルビアに真実を聞くために強力な精霊を手に入れたいと

やっきになっていた。

 カミトがエストと契約した際には本人の事を《奴隷精霊》と呼んでカミトを

無理やりチームに入れさせようとした。

 精霊は《スカーレット》

 エリスとの決闘の際には途中で割り込んできた魔精霊すら契約しようと

意気込むがスカーレットがやられたのを見て意気消沈し、カミトが倒した際には

カミトに対して嫉妬の心が出来ていた。

 軍用精霊をかけた試合においては精霊無しで戦おうとするも酷い結果であると

同時に姉を馬鹿にすることを言った上級生に対して怒りが込みあがり直前に

レスティアに貰った狂精霊《ゲシュペンスト》を使って全ての精霊を

暴走させるもレオノーラによって阻止された。

 ジオ・インザーギ戦時に洞窟内で負傷し戦線離脱したがブレイドダンスに

出場できないと知るや否や呪装刻印を使って出場したいというが

グレイワースの叱責で没となりその後は抜け殻の様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 リンスレット・ローレンフロスト

 今作においての不遇キャラその2

 高飛車で自分と同等の人間しかチームに入れないというとんでもない性格で

あるが本当は面倒見の良い少女。

 クレアの事もそれとなく気にかけているが基本的には会えば喧嘩が普通である。

 レオノーラと組んでいたがジオ・インザーギ戦において負傷し、

ブレイドダンスに出場できなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイワース・シェルマイル

 元オルデシア帝国最強の12人の第1位であったが引退し、アレイシア精霊学院の学院長になった。

 カミトを引き取って色々と世話をしており、日常における常識を教えた人間。

 精霊は魔精霊で《伯爵》と呼んでいる。

 39だがその見た目は正に20代と言っても差し支えない人間であるがこれは

2回前のブレイドダンスにおける願いの副作用であり1定周期で若返るそうだ。

 実力は正にバケモノランクでありカミトですら死を覚悟したほどである。

 自分の生徒に危害が出た場合はあらゆる手段をもって下手人を葬る。

 嘗ての教え子でもあるヴィヴィアン・メローサによって教え子がバケモノに

変えられた後は必ず殺すという宣言もした。

 カミトに対しては親の様に接している。

 ブレイドダンス本戦前にカミトに絶剣技の奥義を伝授するも

その後に体調を崩して倒れた。

 心臓に何か埋め込まれていると言うのが原因である。

 その後呪装刻印が原因であることが判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラッカ、レイシア

 エリスと同じくシルフィードのメンバーでエリスのチームメイト。

 ジオ・インザーギ戦によりチームから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィアン・メローサ

 マーダーズの組織に属するエルフィム族の女性

 呪装刻印に長けており生徒にそれをばら撒いていたが更にある秘薬と№を売りに出して

オルデシア帝国において指名手配犯となった。

 ある少女と国外脱出した後、行方知れずとなった。

 

 

 

 

 

 

 フレイヤ・グランドル

 アレイシア精霊学院の教師でレイブン教室担当。

 グレイワースが最も信頼している女性で影魔法の使い手。

 グレイワースによって軍の諜報を任じられてしまうという教師と言うより諜報員紛いなことを

されている女性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジオ・インザーギ

 自身を〈魔王の後継者〉と自称した男性。

 カミトと同じく教導院に入っており、暗殺や精霊の使い方を学んだ。

 教導院が崩壊した時に脱走し、数々の精霊を奪った。

 精霊においては鉱石や呪装刻印で使用していることから半端モノと呼ばれていた。

 フギル・アーカディアが№と特殊な薬の投与によって精霊と融合し、バケモノとなった。

 カミトによって倒された後にアストラル・ゼロに体を奪われ、送還された。

 カミトに対して見下していた態度から一変し、命乞いをしていたが結局体は精霊となって消えて

行った。

 保有№  72(その後にカミトが押収した。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミュア・アレンスタール

 若干12歳であるが教導院において№2の実力を持っている。

 幼い時に自身が育っていた村の守り神でもある精霊を狂乱させ、暴走させたのちに村を追放され、

教導院に入った。

 カミトの事を兄の様に接しており同じ教導院所属のリリィとも仲がいい。

 教導院崩壊後は紆余曲折を経て、ドラッケンが所属している竜匪族に入団し、機竜をもらい受けた。

 異能は《愚者の万力》、機竜は《ワイバーン》

 №を保有しているようであるがそれが何なのかは不明

 その後な少女41を所有しており精霊は『バグ-スキュラ』。

 能力は鼻水を使った操作。

 

 

 

 

 

 

 リリィ・フレイム

 カミト、ミュアと同じく教導院育ち。

 エルフィム族でありカミトの事を心の中では尊敬している。

 ミュア・アレンスタールと同じような理由で竜匪族に入団した。

 カミトが表社会で馴染んでいることを納得しておらず、目を覚まさせようとしている。

 所有ナンバーズは96の『ブラックティターニア』。

 神威の吸収やあらゆる毒の生成が得意。

 意志を持っており邪悪な力を持っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク

 表向きはマルカファル王国の巨大商業の社長であるが裏ではマフィア、ギルゾレイクファミリーの

創設者。

 幼い容姿とは裏腹で年寄りめいた言動と圧倒的な実力を持っている。

 カミト達とガドで出会って以降、アレイシア精霊学院においては人員不足のシルフィードの手伝いと、商業展開の拠点としてカミトが暮らしている旧療養所に住んでいる。

 機竜側においてはワールドランク第1位であり「金で買った」と言いながらもその実力は確かである。

 実際は26歳と妙齢の女性で初めて聞いた際にはカミト曰く「グレイワースみたいだ」と

思うほどである。

 機竜は《ヨルムンガンド》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルマ

 ギルゾレイクファミリーにおいて高い実力を持った人間。

 少女であるのだが普段は目深な帽子と全身を覆うように服を着ているため少年と間違われることも屡々。

 その正体はアディスマータ新王国第2王女「アールマティア・アディスマータ」と言う名前で革命時に自身が隠れていた隠れ家が旧帝国に強襲され、捕まったが命からがらに脱出し紆余曲折を経て

マギアルカに拾われた。

 隠れ家は姉がばらしたというのを聞いて恨み高らかに力を付けるうちに三大機竜奥義

「クイック・ドロウ」をマスターした。

 努力家でカミト達を気にかけていることから口は悪いが面倒見のいい人間と記憶されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フギル・アーカディア

 嘗て存在した国「アーカディア帝国」の皇子だが国外脱出した後幾つもの国を渡り歩いている。

 自らを先導者と呼び、カミト達に謎めいた言葉を吹きかける。

 ジオ・インザーギ戦では謎の薬を投与させ、暴走させた張本人

 機竜を持っているがそれが何なのか不明。

 

 

 

 

 

 

 ミスシス

 フギル・アーカディアに付く謎の女性。

 機竜を保有し、3種類すべてをマスターしている。

 それ以外は不明。

 

 

 

 

 

 

 

 ルミナリス・セイント・レイシエード

 神聖ルギア王国の聖霊騎士団の団長にして全大会の順優勝者。

 騎士としての高い忠誠心と実力を持っている。 

 打倒レン・アッシュベルを掲げて今回の大会に出場しており

今のレン・アッシュベルは偽物だと気づいている。

 その偽物に敗れた後に№を植え付けられ、暴走したがカミトによって鎮静化されもう一度の勝負を誓い合った。

 保有№は36

 テンペストにてカミトを巡ってヴェルサリアと交戦中。

 

 

 

 

 

 

 ミラ・バセット

 ロッソベル公国の選手所属でリーダー格で《封魔眼》の所有者

 最年少の存在であると同時に№の所有者。

 嘗ては精霊の影響で国から兵器扱いされて心が壊れかけたところを

ぽんたに救われて感情を維持した。

 《封魔眼》に封印された精霊を解放する際に

ぽんたによって《封魔眼》破壊されなかったためカミト達の国に

亡命することはなかった。

 所有する№は64

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネペンテス・ロア

 レン・アッシュベルらしき人間の呪法によって蘇った存在。

 神威を喰い尽くしてそれを自身の力に変えると言う能力を持っている。

 全身黒い鎧で包まれていたがその正体は蜘蛛の顔をしたバケモノ

 カミトの力によって倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャオ・フー

 クイナ帝国の暗殺拳保有者にして暗殺者。

 カミトと同じ様に暗殺経験もある。

 カミト達と共闘後にリタイアするもカミト達の協力によってグレイワースの

保護下に入った。

 精霊は《白虎》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンファ、ハクア、ラオ、リオン

 同じくクイナ帝国所属の精霊使いでリーダーは第三皇女のリンファ。

 四聖獣を模した精霊を扱っており《黄龍》、《青龍》、《玄武》、《朱雀》の

使い手。

 シェーラ・カーンの策略によって操り人形とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シェーラ・カーン

 アルファス教国の王家の人間。

 グレイワースの後継者と呼ばれており魔精霊を扱う。

 その精霊は対象を支配すると言う能力で20近い精霊使いを従える程の実力者。

 所有する№は67

 

 

 

 

 

 

 

 ルビア・エルステイン

 クレアの姉でありカラミティ・クイーンと呼ばれている。

 元々は火の精霊姫でありその実力は高いがフギルの言葉に同調してしまい

裏切った。

 その後はレン・アッシュベルの名を騙ってブレイドダンス二出場して

カミトの中にある魔王を目覚めさせようと画策してたが真実を知ったのちに№の

暴走によって体が造り変わってしまっている。

 使用するナンバーズは84




 次は精霊です。


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精霊とオリジナル機竜10巻まで

 精霊と機竜について。


精霊編

 

 レスティア

 カミトが最初に使った精霊であり契約精霊。

 嘗てはキー・スマイランの指輪に封印されていたがグレイワースの手に

よって復活。

 ごく僅かしかいない魔精霊であり、単体でも戦闘することが出来る。

 シラヌイとは付き合いが長い為ある程度の感覚は理解できる。

 武装は《真実を貫く剣(ヴォーバル・ソード》

 

 

 

 

 

 

 エスト

 本名はテルミヌス・エスト。

 学院の洞窟に封印されていたのをクレアが抜いてカミトが契約した。

 剣精霊でありあらゆる剣にコピーすることが出来るため変幻自在な戦闘が出来る。

 最初シラヌイに対しては邪魔者扱いしていたが現在はそれなりに信頼している。

 解呪の力も備わっており、光の精霊らしい能力を持っている。

 カミトの呪装刻印を解くために自身を投げうって助けたため消滅した。

 その後に本体と接続された際にアレイシア・イドリースの記憶を見せられるも

自身は自身と言ってそこから去って行った際に№を取り込むことに成功し、

名前は『サイレント・オナーズ・アーク・エスト』に変わった。

 それに伴い手足に鎖が巻きつけられ攻撃範囲が広くなった。

 何やらとあるものを手に入れたがそれは未だ不明。

 聖船(エストアーク)

 エストの体を『サイレント・オナーズ・アークナイト』の船にさせる力。

 精霊魔装は槍で邪気だけを破壊することが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グリムゲルデ

 レオノーラの精霊。

 家族が死ぬ前に渡した形見精霊。

 風精霊であるがその力は最大出力ならばあらゆるものを吹き飛ばす事が出来る。

 エストとは昔知り合ったことがある。

 武装は《テンペストソード》

 

 

 

 

 

 

 

 

 シムルグ

 エリスの精霊。

 鳥獣型で人1人は余裕で乗せることが出来る。

 顔が怖い為、あまり誰も近寄らない。

 武装は《風翼の槍(レイ・ホーク)》

 

 

 

 

 

 

 ゲオルギウス

 フィオナが扱う光精霊。

 騎士型であるため武器を持った戦闘が主。

 防御にも秀でているため万能型。

 

 

 

 

 

 

 

 サイレント・フォートレス

 ヴェルサリアが扱う精霊

 鎧の様に纏う為、精霊使いの実力で左右されてしまう。

 武装は大型キャノン*2

    ハルバート

 

 

 

 

 

 

 

 フェンリル

 リンスレットが扱う氷精霊。

 氷を主な攻撃手段として使っている狼型の精霊。

 

 

 

 

 

 

 

 スカーレット

 クレアが扱う炎精霊。

 炎に身に纏った爪や牙で攻撃することが出来る。

 《ゲシュペンスト》に憑依されていた事が原因になのかどうか分からないが

生まれたての子猫サイズに迄縮んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲシュペンスト

 精霊に憑依する狂精霊。

 スカーレットに乗り移って狂気伝染させた。

 

 

 

 

 

 

 男爵

 グレイワースが扱う魔精霊。

 実体は持たず黒い塊で行動する。

 

 

 

 

 

 《古代の師団(サムライダーズ)》

 ミラ・バセットがぽんたの力と融合して生まれた力。

 戦国時代の侍たちと同じ鎧を身に纏った精霊を召喚することが出来る。

 また、ぽんたがコピーした精霊も召喚できる。

 

 

 

 

 

 嘲笑う仮面(バルダンマスク)

 シェーラ・カーンが扱う精霊。

 仮面を使う精霊で元々は相手にコピーすることが出来る精霊を67の能力により

精霊使いを操ることが出来るようになった。

 一日に付き1~6まで数字が出てその分の仮面が出るようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔樹精霊『ブラック・ティターニア』

 リリィ・フレイムが保有する№96の力を持った精霊。

 蔦に絡ませた相手の神威を取り込んで我がものとする事が出来る。

 上位精霊さながらの知力を持っているが大体が悪だくみとして使用される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バグ―スキュラ

 ミュアが保有するナンバーズ41によって生まれ変わった精霊。

 鼻水にはお酒と同じ効能があり吸う事で酔わせて眠らせることが出来る。

 また簡単であるが操作することが出来る。

 だが拘束される方は堪ったものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レーヴァテイン・スパイダー

 ルビア・エルステインが扱うレーヴァテインに№84の能力が付与された姿。

 剣から炎の蜘蛛の糸が出るようになっており拘束や攻撃等にも使える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機竜編。

 カミト達が保有する機竜は殆どが言語を話すことが出来るが何故話せるのかは

不明。

 遺跡とは違うところで保管されているため何者かがばら撒いた線が強い。

 

 

 

 

 

 

 神装機竜(シラヌイ)

 見た目はガンダムSEED DESUTINEYに出てくる「デスティニーガンダム」

 種類(特装機竜)

 この機体はカミトの村で祀っていた刀の正体。

 何故遺跡(ルイン)になかったのか不明だがこの機体は他とは違いある

1定の適性以上でないと使えないのである。

 しかし能力は凄まじく対機竜用に作られたという経緯を持っている。

 武装 大型刀「玄海」*1

    長距離ライフル(機竜息銃)「清水」*1(見た目は00に出てくるケルディㇺの可変式スナイパーライフル

    大型手裏剣型ブーメラン「風雷」*2

 特殊武装「天の羽衣」

      この武装は折り畳まれた腕のようなものを開いて初めて使用する武器

 内部にフック状の武器が内蔵されてあり敵を捕まえる又は障害物を除去できるという使用が主だが戦闘では電流を流し相手を倒すこともできる。

 

 

 

 

 

神装機竜「メイルストローム」

 種類  「ワイアーム」

 見た目  肩にミサイルを搭載した「ガンダム・鉄血のオルフェンズ」に出てくる「ガンダムバルバトスルプスレクス」と同じ。

 本機は『シラヌイ』と同じく人語が喋れる機竜である。

 グレイワース曰く未だ他にもあるかもしれないという仮説がある。

 武装  クロー*10

     槍

     腕部内蔵ワイヤーテール*2

 特殊武装  グロリアス・テンペスト

     肩部に搭載されているミサイルポッド

     ミサイルは機竜弾頭(ドラグヘッド)と呼ばれる代物であり所有者に応じて煙幕、焼夷弾、分裂弾等が搭載されている。

     機竜自身で生成しているため弾切れしない分所有者の体力を削る為

長期戦には向いていない。

 

 

 

 

 

 神装機竜(カオス・ブレイカー)

 見た目は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に出てくる

「ガンダム バエル」の青が赤になったぐらい。

 種類  飛翔機竜(ワイバーン)

 機龍としてなら接近戦でトップランクの性能を発揮することが出来る機龍である。

 機動性を最大限に発揮させるために近接専用の武器を「方天戟」みたいに

まとめたことから比重が重くあり、使用時においては広い場所を選択しなければ

使えないのだ。

 武装 方天戟「クライシス」*1

    双剣「クローズ」*2

    機竜息銃*1

 




 休載します。


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