上里ちひろは勇者である (☆ここな☆)
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プロローグ 新たな始まり

ちひろ『え、えーと…初めまして!園姉は分かると思いますけど上里ちひろです!勇者として頑張るのでよろしくお願いします!』

園子『そんな緊張せんくてええよ〜ちっひー、どう?いい子でしょ、うちの妹〜』

銀『ほんとだな!園子!あたしは三ノ輪銀!よろしくな!』

須美『そうね、わたしは鷲尾須美よ、よろしくね、上里さん。』

ちひろ『…はい!よろしくお願いします!銀さん!鷲尾さん!』

 

ーーーどうしてだろう?

 

ちひろ『わあー!ご飯すっごい豪華ですね!』

銀『な!…っておお!園子、須美、ちひろ、カニが、カニがあるぞ!』

須美『2人とも、騒がないの!』

 

ーーーこんな楽しそうな映像なのに

ちひろ『園姉も須美さんもとてもじゃないけど動ける傷じゃないですし…やるしかないですね、2人で。』

銀『…いや、私が1人であの三体を止めてくる。』

ちひろ『無茶ですよ!!私も行きます!!』

銀『いや、こいつがすごいスピードで神樹様に迫ってる。あれを止められるのはスピードタイプのちひろだけだ。』

ちひろ『でも…』

銀『大丈夫。少し離れるだけだ、すぐ戻るよ。』

ちひろ『…絶対、生きて帰ってくるって、約束してください。』

銀『…ああ!当たり前だろ?』

ちひろ『…はい。後で会いましょう。』

銀『お互い、生きて敵を倒して、な!!』

 

ーーーつらいところもあるけど

 

須美『銀…?ねえ、銀ってば!』

園子『返事してよ…ミノさん…お願いだから…!』

ちひろ『あの時約束したじゃないですか…生きて戻ってくるって!』

 

ーーー微笑ましい映像なのに

 

園子『…あ、そうだ。はいわっしー。』

須美『これ…』

ちひろ『え?いいの園姉。それ小さい頃からずっと持ってたのに…』

園子『わっしーに似合うと思うんだ〜この戦いが終わったらつけてみて!』

須美『…ありがとう、そのっち。必ず見せるわ。』

 

ーーーどうして

 

園子『…心臓が…動いてない…』

ちひろ『…へ…?嘘でしょ…?そんなの…生きてられるはずが…』

 

ーーーこんなに

 

ちひろ『園姉。私が止めてくる。』

園子『ちっひー!?それは無茶だよ!?』

ちひろ『私だけ、まだ満開の後遺症が分かってないから。』

園子『逆にそれが危険なんだよ…?』

ちひろ『わかってる。分かってるけど…満開で機能不全になるなら、使えば使うほど満開なしには戦えない体になるんだよ。なら…頭痛だけの私の方が負の連鎖にはならないと思う。』

園子『…せめて私も…』

ちひろ「『須美さんが巻き添えくらう危険性があるでしょ?…お願い、園姉。須美さんを守って。』

園子『…うん、わかった。でもやくそくして。必ず生きて戻るって。』

ちひろ『…うん、もちろんだよ。』

 

ーーー悲しくなるんだろう

 

神官『誰だと聞いている。…なぜ、勇者システムを所持している。』

 

ーーーえっ?

 

『誰も何も…上里ちひろですよ!上里家の!!上里月夜と、上里和斗の娘の!!』

 

ーーーなんで?

 

神官『上里家に、そんな名前の子供はいない。

…いや、そもそも上里家に子供はいない。』

 

ーーーナンデナンデナンデナンデナンデナンデ

園子『神官さんの…お子さんかな?初めまして〜乃木園子っていいます。』

 

ーーーダレモワタシヲオボエテナイノ?

 

            ーーーーー「ワン!」

 

 

 

 

ちひろ「ハァ、ハァ、ありがとうコマさん。久しぶりにあの夢見たから。」

私は上里ちひろ、もうすぐ中学一年、2年前に勇者をやっていた。

でも、誰もそのことを覚えていない。

最後の大橋の戦いで導入された新たな勇者システム「満開」

一時的に神の力を得る代償に体の一部を供物として捧げる。

私はその戦いで5回満開をした。

そして、1回目で住民票などの記録から、2回目で周りの人から、3回目で友人から、4回目で親友から、5回目で家族から、忘れられた。

そして忘れられた私は大赦に危うく勇者システムを取られかけたものの、スマホは胸に隠してたため速攻で勇者に変身、唯一消えてなかったリボンの継承の証でなんとか存在を証明し、住民票などなど発行させた。

母さんと父さんは悲しんでくれて、一緒に暮らしていたが…

私のためにと思うと逆に耐えられず、今は大赦が支給してきたマンションで暮らしている。

6体の精霊がみんな人懐っこいので気が楽だ。

そしてもうすぐというのは明日、讃州中学校に入学するから。

もう、クラスの子と友達になるつもりはない。

ーーー所詮、小さい頃からの友達も忘れてしまうほど、人間関係とは脆いのだからーーー

 

 

 

 

ーー讃州中学校入学式ーー

(…暇。)

特に面白みもなく、式は進んでいく。

「へくしゅ!!」

…そんな時、小さなくしゃみが聞こえた。

(ん?なんだ今の?)

音の聞こえた方を確認すると、鼻水がでかけてすごい焦ってる子がいた。

(この子…確か入学生代表の…)

「はい、ティッシュ。なくて困ってるんでしょ?」

「ありがとうございます!わたし犬吠埼樹って言います!あなたは…?」

「…上里ちひろ。ちひろでいいよ。」

「ちひろちゃん!これからよろしく!」

「うん、よろしく、樹ちゃん。」

 

 

これは、この世の全てから忘れられた勇者の物語



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鷲尾須美の章
プロローグ であい


一体いつから…同日投稿がないと錯覚していた…?
まあ内容がそこまでないからです。奇跡です。次からは期待しないでください()


ーーー神世紀290年、上里邸ーーー

ーーー園子sideーーー

園子「おとーさん…おかーさん…どこー…?」

わたしのなまえは乃木園子…

きょうはおとなりさんのおたんじょうびをおいわいにきたのですが…おトイレをしたくなったせいでまよってしまいました…

(こんなことになるならがまんすれば良かった…ここもおいえみたくでっかくてぜんぜんつかない…)

園子「いっしょうこのままなのかなー…やだよー…そんなの…」

???「…だいじょうぶー?ないてるのー?」

かおをあげると、わたしとおなじくらいのおんなのこがいました。

園子「だって…ずっとまよってて…」

???「あー!じゃあおなじだね!なかまー!!」

園子「えー!?あなたもなのー!?」

???「はい!じぶんちなのにまいごなっちゃいました!」

園子「それダメじゃん…けっきょくふりだしだよー…」

???「あーなかないでーしあわせがにげちゃうー!きっとパパやママがさがしてくれてるからわたしたちもがんばろ!!」

園子「さがしてくれてるならうごかないほうがいいきが…」

ちひろ「ぜんはいそげってママがいってたしレッツゴー!!」

園子「きいてない!?まってよーひとりにしないでー!!」

 

ーーー20分後ーーー

???「はあ…はあ…ぜえ…ぜえ…」

園子「もうダメぇ…うごけないよぉ…」

???「おなじくですー…のどがカラカラ…」

園子「…やっぱりめいきゅうにとじこめられちゃったんだ…もうにどとでられないんだー…おとーさん…おかーさん…」

???「だからないちゃダメだよー!なみだはしあわせにバイバイしちゃうってママがいってたもんー!」

園子「わたしからすればなんでなかないでいられるのかのほうがふしぎだよー…たしかここのこってわたしよりちいさいはずだけど…」

???「それはねー…えーっとねーうーんとねー…えがおでいるほうがたのしいからー?」

園子「…どういうことー?」

???「だってえがおってみてるとこっちもえがおにならないー?」

園子「たしかに…」

???「つまりえがおはえがおをよぶ!えがおならなんでもできるきがするからー、つまりだれかがえがおになればみんななんでもできるようになるってこと!!」

園子「それはないとおもう…」

???「うそっ!?でもねーやっぱりえがおならなんでもたのしめるとおもうんだー!だからえがおがいちばん!ナンバーワン!!」

園子「そっか…そういうことならわたしもちょっとがんばってみる!」

???「やったー!じゃあふたりでえがおでいよー!!」

園子「うん!!」

と、いったそのときでした。

護衛「園子様ー!?」

???「んー?あれなんだー?」

園子「えー?…あー!あれわたしのごえいさんだー!!おーい!!」

???「ほんとに!?こっちですー!!」

 

ーーー玄関ーーー

園子母「この度はご迷惑おかけしました…」

月夜「いえいえ!?こちらこそ見つけてもらって感謝しかないですよ!」

???「ねー?いったでしょー?えがおでいればなんとかなるって!!」

園子「うん!そうはいってなかったけど…」

???「ありゃりゃ、わたしのきおくちがい…」

園子「…でも、これからえがおでいれるようにがんばってみる。あなたのおなまえは…?」

ちひろ「なまえー?わたしはうえさとちひろ!!あなたはー?」

園子「わたしはのぎそのこ!」

ちひろ「そのこちゃん!よろしくね!!」

園子「うん!よろしくね!!」

 

 

 

 

 

 

ーーー時は流れ、神世紀298年ーーー

園子「スピー…スピー…」

ちひろ「園姉ー?」

園子「スピー…スピー…」

ちひろ「園姉ー!」ユサユサ

園子「あと1時間寝かせてなんよ〜…」

ちひろ「園姉!おーきーてー!!」ユッサユッサ

園子「ふがっ!?」

ちひろ「あっ!起きた!おはよー!園姉ー!」

園子「あ、ちっひー!おはよ〜!!もしかしてもうそんな時間〜?」

ちひろ「うん!だから私が起こしに来たの!」

園子「なるほど了解だぜー!!お母さんにご飯車に積んどいてって伝言頼むねー!」

ちひろ「わかった!私に任せて!!」

神樹館6年、乃木園子の日々が、今始まりまーす!!




プロローグと見せかけたただの原初のそのちひ。


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1話 おやくめ

ーーー須美sideーーー

須美「…心頭滅却。」バシャッ!

私、鷲尾須美の一日は身の清めから始まる。

 

ーーーダイニングーーー

須美「ご飯ができました、お父様、お母様。」

お手伝い「今日の味噌汁は須美様がお作りになられたんですよ、義史様。」

義史「そうか…上手にできてるじゃないか、いただくよ。」

須美「…!はい!」

食事などを済ませ、

 

ーーー神樹館ーーー

拓斗「おはよう!」

須美「おはようございます。」

麻里「おはよう、鷲尾さん。」

須美「おはようございます、北条さん。」

学校に通う、なんら変わりのない日々だ。

…まあ、少し憂鬱なことはあるが。

「スピー…スピー…」

須美「…」

「スピー…」パンッ!

隣で寝ていた少女の鼻ちょうちんが割れる。

「わっ!?あわわわわわわわ!?!?お母さんごめんなさーい!!

…ってあれ?家じゃない…???」

(…はあ…相変わらずこの子は…)

須美「ここは学校よ、乃木さん。朝礼の前。」

園子「あっそっかー!えへへ〜鷲尾さんおはよう〜!」

須美「…おはようございます。」

少し目を離すと夢の中に潜る乃木さん。

そして…

安芸「みなさん、おはようございます。」

須美「おはようg…」

ダダダダダダッ!!

「はざーっす!!はあ…はあ…なんとか間に合ったぁ…」

ペシッ

「いったぁ!?」

安芸「ギリセーフじゃなくてギリアウトですよ、三ノ輪さん。早く席についてください。」

銀「はーい…」

クラス『あははは!!』

園子「ミノさんは相変わらずだな〜」

須美「相変わらずにしちゃダメでしょう…」

遅刻の常習犯、三ノ輪さん。

とある事情でこの2人とは親睦を深める必要があるのだが、私はこの2人がクラスで特に苦手だった。

(そんなわがまま言ってられない状況とはいえ、どうしたもんかしら…)

麻里「ねえねえ銀ちゃん、今日の遅れた理由はー?」

銀「6年にもなると色々あるのさ。」

麻里「何それ、ごまかさないで教えてよー。」

銀「やーだねー…ってあー!!カバンの中空っぽだ!?」

麻里「ええ…(汗)」

(…はあ。時間をかけて慣れていくしかないわね…)

問題に区切りをつける。

安芸「じゃあ、今日の日直の人。」

須美「はい。起立!」

ザッ

須美「礼!」

スッ

須美「神樹様に礼!」

クラス『神樹様のおかげで今日も私たちがあります。』

須美「着席!」

こうして、今日もいつもとなんら変わらない日が…

園子「…あれれー?」

銀「みんなが…止まった…?」

…訪れなかった。

 

ーーー少し時を遡り、ちひろsideーーー

ガラララ!

ちひろ「おはよー!!」

「お、来たねちひろ!おはよ!」

「今回は3番目だね。」

ちひろ「ええ!?楓はともかくここなにも負けるなんてー!?」

ここな「ちょっとそれはひどいよ!?パシャるよ!?」

楓「いやなんでそこでパシャるになるの。」

ちひろ「上等!私の高速頭回転をブレずに撮れるなら撮ってみなさーい!!」ブンブンブンブンッ!!!

楓「いやここにカメラないからね、今やらなくていいからね!?」

ここな「は、早い!?なんてスピード!?」

ちひろ「そうだろう?そうでしょう?私のスピードこそ無敵…ってあ〜目が回る〜」フラフラ

楓「はあー…言わんこっちゃないよ…」

ここな「まさかの自滅とは…私の勝ちだね!」

楓「いやいつ競ってたのよそこで…」

ガラララ!

ちひろ「あ!天音おはよ!」

天音「おはようございます、3人とも。今日も負けてしまいました…」

ここな「まあ天音の家遠いしね〜仕方ない仕方ない!そうそう!今日私ちひろに勝ったんだよ!」

ちひろ「あれは園姉起こしにいってたからでノーカン!!」

楓「却下、外的要因含めないなら天音が一番乗り。」

ちひろ「ぐぬぬ…無念。」バタリ

ここな「ちひろも倒れたところで、今日って何あったっけ?」

楓「国語と算数と図工、それに家庭科。」

南乃花「ラッキーデー、ってやつですね。」

ここな「うっひょー!楽勝じゃn…

…え?家庭科?2時間?」

天音「はい、たしか今日は料理の実習のはずですよ。」

ここな「…エプロン持ってきてない…」

楓「…うっそでしょあんた…」

ちひろ「ご愁傷さま〜」

天音「あらま…」

ここな「なんてこったいぃぃぃぃぃ!!!!」

どーもみなさん!上里ちひろです!

ついに小学五年生!

高学年にまでなりました!

先生「みなさんおはようございます。」

楓「お、先生入ってきたね。」

天音「席に戻りましょう。」

ここな「うう…怒られるのやだぁ…」

親友はしっかり者の桐生楓、写真大好き星空ここな、お嬢様の伊予島天音。

楓「起立。」

ザッ

今日は一体何が待ち受けてるのか…

楓「…ちひろ!」

ちひろ「ひゃいっ!!」ザッ

サラッと怒られたけど楽しみでs

シーン…

ちひろ「…あれ?楓ー?礼はー?」

シーン…

ちひろ「楓がふざけるなんて珍しいね…挨拶続けてーってかったぁ!?何これビクともしない!?」

挨拶を続行させるために揺らそうとするも、楓はまるで岩になったかのようにビクともしなかった。

ちひろ「…園姉助けてぇぇ!!!」ダダダッ

 

ーーー須美sideーーー

チリンチリン

鈴の音がどこかから鳴る。

(この音…ということは…)

銀「…お役目?」

須美「…そうね、ついに来たんだわ。私たちがお役目するとk「園姉ぇぇぇぇぇ!!」」

園子「ちっひー!どうしたの〜?」

ちひろ「よかった園姉はいつも通りだ〜!!」

園子「私はいつでも私だよ〜?」

須美「…で、どうしたの?上里さん。」

ちひろ「あ、そうですそうです!急にみんなが動かなくなっちゃって!それにどっからかチリンチリンって鳴り出しますし!!」

園子「あ〜同じだね〜どこもかしこもだったり〜?」

須美「そりゃそうでしょう…お役目よ、上里さん。私たちのお役目の時間がついに来たのよ。」

ちひろ「…そういうことですか!!納得です!!」

園子「そういえばそんなこと言ってたね〜鷲尾さんすご〜い!!」

須美「本来なら絶対に覚えてなきゃいけないことよ…そろそろ来るんじゃないかしら。」

パアアアアアア

窓に映る大橋の方から、世界が何かに覆われていく。

銀「おー!きたきたー!!」

園子「まぶしー!」

ちひろ「キレイではありますけど…!」

須美「くっ!」

あまりの眩しさに目を閉じる。

そして目を開けた時には…

 

 

 

 

世界は姿を大きく変えていた。

ちひろ「おおー!!」

銀「これが樹海ってやつかー!」

園子「初めて見たよ〜!!」

須美「神樹様の結界だもの、見ないで人生を終えるのが普通よ。」

銀「そりゃそっか…教わった通り全部樹だなぁ。」

ちひろ「…あ!あれが大橋じゃないですか!!」

園子「ほんとだー!ナイスちっひー!」

ちひろ「いぇーい!!ありがとう園姉ー!」

須美「大橋…壁の外と中を繋ぐ唯一の道。あそこから敵が渡ってくるのね…」

銀「そして私たちがそれを阻止する!勇者っていい響きだよなー!」

須美「三ノ輪さん、遊びじゃないのよ?」

銀「分かってるって!」

園子「うむむ…あー!なんか見っけたよー!橋の上ー!」

ちひろ「もしかしてあのコポコポしたやつー?」

園子「そうそう!あれが敵じゃない?」

銀「お、ほんとだ!写真撮ろっと!」パシャッ

須美「三ノ輪さん??」

銀「ナンデモナイデス。」

須美「全く…あれが橋を渡って神樹様にたどり着けば、世界は消えちゃう。だから…」

園子「私たちが止めないと!」

銀「ってことだよな!」

須美「ええ。お役目を果たす時よ。」

ちひろ「はい!!」

 

須美「あめつちに きゆらかすは さゆらかす」

園子「かみわがも かみこそは きねきこゆ きゆらかす」

銀「みたまがり たまがりまししかみは いまぞきませる」

ちひろ「みたまみに いまししかみは いまぞきませる!!」

 

銀「しっかしこれが初めての実戦だな!」

園子「合同訓練はまだだったけどね〜」

須美「敵が神託より早く出現したからね…」

ちひろ「まあ来ちゃったことは仕方ないですし、やっつけましょう!!」

須美「そうね、慎重に行動しt…」

銀「よーし!ぶっ倒す!!」バッ

須美「ちょ、三ノ輪さん!?」

園子「あーミノさん待ってー!私もー!」バッ

ちひろ「園姉まで!?置いてかないでよー!!」バッ

須美「ちょっと…3人とも待ちなさい!!」バッ

銀「うっひょー!でっかいなー!訓練の時とは大違いだ!!」

ちひろ「今踏み台にしたところも本来なら何かの建物なんですよね…そう考えると少し罪悪感が…」

園子「そうしなきゃ世界守れないから仕方ないよ〜もしもの時は一緒に謝りにいこ〜!」

ちひろ「うん!園姉!!」

須美「全く…大事なお役目なんだからもう少し緊張感をもってほしいのだけれど…」

ちひろ「でも緊張しすぎたら力出せませんし、私はこれくらいでいいと思います!」

須美「…それもそうね…」

銀「よーし到着っと!さーて敵はどれだーってうおっ!?」

園子「でっかいねー…」

須美「これが壁の向こうから来たウイルス適応体、バーテックス…」

ちひろ「神様が動くくらいのウイルスですし、相当ヤバいと思ってはいましたけどやっぱりヤバいんですね…すごい奇妙な姿…」

ボォォ…

銀「っ!あれって!」

須美「侵食!!早く倒さないと元の世界に影響が出るわ!」

弓を引いて迎撃の準備をする。

銀「ならやることは1つっ!!」バッ

須美「ちょ、突貫は…!!」

園子「待ってー!!」バッ

須美「乃木さんまで…!!」

 

ーーー園子sideーーー

銀「速攻で撃破してやる!!」

ミノさんがバーテックスに攻撃するべく、接近する。

対するバーテックスは…

ポポポポポポ

(何あれー!?)

左右についてる2つの玉から小さな玉をたくさん出し、とばしてくる。

ミノさんはかわそうとする動きを見せるけど…

銀「しまった!空中じゃかわせない!!」

グイッグイッ

そのまま2つ被弾、それが腕を包み込み…

銀「うわああああ!?!?」

そのまま飛ばされてしまう。

園子「ミノさん!」

ギュゥゥゥゥゥゥ

さらに…

(…何かが集まってる?)

ビュンッ!

玉のひとつからレーザーがとんでくる。

園子「わっ!?」

ズドンッ!

それはなんとかかわすけど…

(あっぶな〜い…ってあれれ?バランスが悪い〜!!!)

園子「わあああ〜!!!」ヒュゥゥゥゥゥン

足場から落ちてしまうのでした。

 

ーーーちひろsideーーー

(銀さんも園姉も…!!)

須美「2人とも!!」

ポポポポポポ

再び敵は水球?を。

(2人ともまだ防御できる状態じゃないはず…追撃は避けなきゃ!)

ちひろ「須美さん!私が園姉の方に行くので銀さんの方頼めますか!?」

須美「ええ!」

走って園姉の方に向かいつつ、クナイを投げてとんでくる水球を相殺していく。

(破壊はできないけど勢いは殺せる…できれば本体を削りたいけど…!!)

ザクッ

敵本体にクナイのひとつが刺さる。

ちひろ「よしっ!」

しかし…

…ポロッ

敵が再生、その際にクナイも落ちる。

ちひろ「うぐぐぐぐぐ…」

ビュンッ!

今度は須美さんの矢が刺さるけどこれもすぐ再生されてしまう。

(私や須美さんじゃダメージにすらならないか…!)

ちひろ「いた!園姉!!」

園子「ちっひー!?アイタタ…」

しかし再度レーザーを園姉に放とうとしてくる。

(あれをモロはヤバい!!)

須美「っ!!乃木さん、避けて!!」

銀「危ない!!」

園子「うそっ!?」

ちひろ「園姉!傘!!」

園子「かs…!?」

ズドンッ!

…放たれ、直撃した…

 

ーーー須美sideーーー

須美「乃木さん!?!?」

…かに、見えた。

ズドドドドドドドド

園子「そういえばこれ、盾になるんだったぁぁ!!」

間一髪、乃木さんは槍を傘のように展開し、受け止めていました。

(…とりあえずは一安心ね…)

銀「…ふぅ…焦ったぁ…」

ちひろ「でもあのままじゃ押し切られちゃいます!!」

須美「私が止めるわ!!」

そう言って矢をチャージし始める。

私の武器に秘められた力…長時間弓を引くことでチャージ、フルで放つことで威力を何倍に引きあげる。

(素ではないようなものだったけど、これなら!!)

園子「ヤバいよこれ…体験したことはないけど台風みたい…!!」

銀「くっ…水球が邪魔で近づけない…!」

須美「早く、溜まって…!!」

ピカッ!

(溜まった!!)

須美「これで!!」ビュンッ!

そうして放たれた一撃は…

…4つの水球に完全に相殺された。



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2話 はじめて

やっぱり元になるのがあるのとないのとだとかなりスピードが違いますね…()



 

ーーーちひろsideーーー

希望だった須美さんのチャージ攻撃。

しかしそれは届きすらせず止められてしまった。

もちろん園姉へのレーザーはそのまま。

(なっ…!!ヤバい!!とりあえず園姉を…!!)

須美「嘘…でしょ…?」

ポポポポポポ

そのまま水球の攻撃を受けた。

須美「きゃあっ!?」

(っ…間に合え…!!)

園子「鷲尾さん!?あっ…」

ちひろ「そりゃあっ!!」

ズドンッ!

間一髪、園姉を持って回避する。

ドサッ!!

ちひろ「いったぁ…」

園子「危なかったぁ…ありがとね、ちっひー。」

ちひろ「大丈夫だよ!これくらい!それより須美さんも心配だからそっちも行かないと!!」

園子「うん!!」

 

ーーー須美sideーーー

(…どうすればいいの…私の矢や上里さんのクナイじゃダメージが足りない…三ノ輪さんは近づけない…乃木さんはどう扱えばいいか…)

ポポポポポポ

再び水球が向かってくる。

須美「どうすれば…!!」

銀「危ない!!」ドンッ!!

須美「っ!三ノ輪さん!?」

三ノ輪さんに突き飛ばされ、水球をなんとかかわす。

銀「動いてないと危ないだr…わぶっ!?」

須美「三ノ輪さん!?」

水球が三ノ輪さんの顔を覆う。

ちひろ「見えた!!」

園子「鷲尾さーん!と…ミノさん!?!?」

須美「…これっ…!妙に弾力が…!!」

(このままじゃ三ノ輪さんが窒息死しちゃう…!!早く取らないと…!!)

銀「ー!ー!!…っ!!!!」

ゴクゴクゴクゴク

須美「…えっ…?」

(…飲み…込んでる!?)

…なんと、三ノ輪さんは水球を飲み干し始めたのであった。

須美「えー…」

園子「ミノさん大丈夫ー?」

ゴクゴクゴクゴク

銀「っぷはー!!」

須美「ぜ、全部飲んだ…」

銀「み、見たか!!神の力を得た勇者にとって、この程度のことなんともな…気持ち悪い…」

ちひろ「銀さんすごいです!!」

園子「お味はどうー?」

銀「最初はサイダーで、途中ウーロン茶だった…」

ちひろ「思ったより不味そう…」

須美「…ってそれより!!バーテックス!!」

銀「あいつ、やべえぞ…」

園子「もうだいぶ出口近づいちゃってるよねー…」

須美「追撃!…って言いたいところだけど…」

銀「効かなかったもんな…」

ちひろ「かといって大橋抜けられちゃうと倒せなくなっちゃいますよ…」

銀「根性でもう1回とか?」

須美「それじゃ同じ結果が目に見えてるわ。」

園子「 ・ ・ ・ あっ!」

ちひろ「どうしたの?園姉。」

園子「ふふふ…ピッカーンと閃いた!!」

ーーーちひろsideーーー

銀「いた!結構進んでんな…」

須美「そうね…3人とも、用意はいい?」

園子「OKですー!」

ちひろ「いつでもいけます!」

銀「ドンと来いだ!!」

須美「よし!撃つわよ!!」ビュンビュンッ!!

…クルッ

園子「お、気づいたね!!」

銀「急がないと!」

須美さんの矢が敵に命中、意識を後ろに向けて…

ポポポポポポ

何度も私たちを阻んで来た水球をまた出してきます。

ちひろ「来るよ!園姉!」

園子「うん!展開!!」

それに対して園姉はさっきも見せた傘を展開、水球を防ぐ。

須美「やっぱり防げるのね!」

園子「はいー!すっかり忘れてたけど盾になるんよー!」

銀「…って言ってる間に、レーザー来るぞ!!」

ギュゥゥゥゥゥゥ

ビュンッ!

レーザーもこれまた園姉が傘で防ぐ。

園子「ぐぅぅ…!!」

須美「乃木さん、大丈夫!?」

ちひろ「協力して凌ぎまs「凌ぐんじゃない!!このまま押し返す!!」…はい!」

ちひろ、園子、銀「「「オーエス!オーエス!!」」」

銀「鷲尾さんも!!」

須美「えっ!?わ、わかった!!」

4人「「「「オーエス!オーエス!!」」」」

ちょっと、ほんのちょっとずつ、前に進む。

…そしてレーザーがついに止まりました。

銀「今だ!!」バッ

園子「突撃ぃ!!」バッ

須美「援護は任せて!!」バッ

園姉たちが跳躍、銀さんは園姉に掴まる。

ポポポポポポ

園子「水球!鷲尾さん!!」

須美「ええ!狙いづらい…けど!!」

ビュビュビュビュビュンッッ!!!!

須美さんの矢が行く手を遮る水球を次々に割っていきます。

園子「ミノさん、とばすよー!!」

銀「ああ!思いっきしやったれ!!」

園子「どっこらしょぉぉぉ!!!」

園姉は銀さんを敵の方へとばす。

そして私は敵の真下に入り込んで…

ちひろ「巨大化の術!にんにん!!」ザンッッ!!

巨大化させたクナイで下部についていた細い糸を破壊、それによって敵はバランスを崩します。

(やっぱりあの糸が地面との距離を計測してたんだ!!予想的中!!あとで園姉に褒めてもらおーっ!!)

水球は割られ、バランスを崩されたせいでレーザーの照準も定まらない。

…敵と銀さんの間に立ち塞がるものは、もう何も無い。

須美「三ノ輪さん!!」

ちひろ「銀さん!!」

銀「うおおおおおお!!!」

銀さんの持つ2つの斧が、その威力を全開にするべく炎を纏う。

銀「これ以上ぉぉぉ!!行かせるかぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!!!!!!

左右についてた玉を、残っていた糸のような下部を、中部を、切り刻んでいく。

そこで下に落ちてしまいますが…

ちひろ「銀さん!?」

園子「ミノさん!?」

須美「大丈夫!?」

銀「これで…どうだぁぁぁぁぁぁ!!!」

辺りが光に包まれる。

須美「…!鎮魂の儀…!」

園子「ミノさん、大丈夫?」

銀「ああ、ガッツリ弱らせてやったよ!」

ちひろ「おかげで始まりましたよ!敵を撃退する神樹様の防衛機能が!!」

須美「…綺麗…」

目の前を花びらが通り、再び去る頃にはもう、敵は影もなく消えていた。

園子「静まった…?」

銀「ってことは…」

ちひろ「…撃退成功ですよ!私たちの!!」

銀「…ぅぅぅやったぁぁぁぁぁ!!!」

園子「初めてで大成功だよ!!そーだ!ハイタッチしようハイタッチ!!」

ちひろ「うん!!あと予想的中したよ私!!褒めて園姉!!」

園子「いいよいいよー!!ちっひーすごいすごーい!!」

銀「お、じゃあ私もー!おかげで助かったぞーえらいえらい!!」

(撫でられるの気持ちいい…)

ちひろ「えへへ…!!///」

須美「…樹海が、消える…」

 

ーーー大橋前、祠ーーー

園子「あれ?教室には戻らないんだねー。」

銀「つまり私たちは無言で早退したことに…!?先生に怒られる!!」

ちひろ「あっ!!それに私たち上履きですよ!?」

園子「いやー!先生怒ると怖いもんー!!」

須美「事情が事情なんだから大丈夫よ…多分。」

園子「多分…」

銀「…あ!樹海の写真撮ってるんだった!どーせ間に合わないなら確認しよー!」

ちひろ「あ、私にも見せてください!気になります!!」

園子「私も私もー!」

銀「お、いいぞいいぞ?…ってあれ、樹海じゃなくなってる!?」

園子「ほんとだねー…写らないのかな?」

ちひろ「なんとなく景色が合致してる気がするのでそうじゃないですか?」

銀「くっそー!!母さんとかに見せようと思ったのにー!!」

園子「…?」トコトコ

ちひろ「園姉?」

園姉が突如として須美さんの方へ。

園子「おーい、鷲尾さん?」

須美「…」

園子「スミスケ?」

須美「…」

銀「む、無言だな…鷲尾さーん??」

ちひろ「返事がない…疲れて目開けたまま寝ちゃったんでしょうか…」

園子「私でもできないしそれはないと思う〜」

銀「なんでだろうな…ってあ!車来た!先生ー!ここですここー!!」

 

ーーー夕暮れ、鷲尾家ーーー

ーーー須美sideーーー

バシャッ

須美「心頭滅却…!」

(…辛勝だ。私一人じゃ勝てなかった。)

須美「これからはあいつらみたいなのがもっと来る…」

 

ーーー部屋ーーー

(そのために…私がするべきことは…!!)

そうして、『友達の作り方』と銘打たれたサイトを開く。

須美「うーん…」

 

 

 

 

 

ーーー翌日、教室ーーー

安芸「昨日も話したとおり、3人には神樹様から任された大切なお役目があります。

だから昨日のように教室から突然居なくなることもありますが、慌てたり騒いだりせず、落ち着いて心の中で3人を応援してください。

みなさんには勉強という大切なお役目がありますからね。」

クラス『はーい!』

 

麻里「ねえねえ銀ちゃん、お役目ってどう?大変?」

銀「話しちゃダメって言われてんだよねー…」

クラスメイト1「えー…ケチ!」

銀「なにをぉ!?私だって喋れるなら喋るわ!!」

(…話を切り出すスキがない…!)

園子「…鷲尾さん、何か言いたそうにしてるけどどうしたのー?」

(…!乃木さん、ありがとう!)

須美「え、ええ…こほん。三ノ輪さん、乃木さん、あとはここにいないけど上里さん…よければなんだけど、その…学校が終わったら、祝勝会でもどうかしら…?」

銀「おっ!いいねそれ!」

園子「名案だね〜!ちっひーには私から伝えるよ!」

須美「あ、ありがとう…」

 

ーーーちひろsideーーー

ここな「入れるべきー!」

ちひろ「ノーカンー!!」

ここな「なんでさぁ!!お役目とはいえ早退したもんは早退でしょ!!」

ちひろ「不可抗力だもん!おまけに重みが違うよ重みが!!」

ここな「そんなこと言ったって内容私はわかんないもん!転送されてお供え物作れとかだったらカウントしていいと思いまーす!!」

ちひろ「ぐぅ…反論したいけど内容言えないいいいい。」

ここな「反論はないようで…じゃあペナ決tドゴォンッいったぁい!?」

楓「うだうだ言わない。どんな内容かなんて想像もつかないけど、それを課したのは神樹様なのよ?ちひろの言う通り重みが違う。」

ここな「うー…でもさー!」

天音「ならものすごい粘って無理やりセーフにした青い鳥事件のことも追求しませんか?状況が似ていますし。」

ここな「セーフだよみんな何言ってるの。神樹様直々のことなんだから全てより優先度高いって言われなくても分かるじゃん!」

ちひろ「元から言ってたのここなだけだよ!?」

楓「とりあえずは一安心か…ありがとね、天音。」

天音「お礼を言われるようなことはしてませんわ。」

園子「ちっひー!!」ガラガラ!!

楓「あ、園子さん、おはようございます。」

ここな「おはようございまーす!」

天音「おはようございます。」

ちひろ「園姉!」

園子「ここちーも楓ちゃんも天ちゃんもおはよっ!!ちっひー、鷲尾さんがね、学校終わったら祝勝会しないかって!」

ちひろ「祝勝会…なんか響きがいい!行く!!」

園子「やったー!これで楽しいこと間違いなしなんよ〜!!」

ちひろ「楽しみだなぁ…!!」

 

ーーー放課後、イネスーーー

ーーー須美sideーーー

須美「え、えーっと…きょ、今日という日を無事に迎えられたことを、えー、大変嬉しく思います。本日は大変お日柄もよく、えっと、神世紀298年度勇者初陣祝勝会ということで、えーっと、お集まりの皆様のますますのご健康と繁栄、そして…」

銀「かったくるしいぞー!かんぱーい!!」

ちひろ「かんぱーい、です!!」

園子「ありがとね、スミスケ。」

須美「あ、うん…」

園子「いやぁ、私もね?スミスケ誘うぞ、誘うぞー!って思ってたんだけど、なかなか言い出せなかったから…すごい助かったし嬉しいんよ〜!」

銀「それな。鷲尾さんから誘ってくるのって何気に初めてじゃないか?」

ちひろ「そうだと思います。」

園子「私とちっひーはたまに一緒にやってたけど合同訓練もなかったし…それにしては頑張ったよねー!!」

銀「な!未だに興奮が冷めないから何か話したかったんだよ!!」

ちひろ「私は昨日銀さんと園姉に褒めてもらったから褒める側に回りますねー!」

須美「え、えと…私も実はその事で話したくて…私ね、実は三ノ輪さんや乃木さんのことあまり信用してなかったの…」

園子「およ?」

銀「っ…」

ちひろ「…私は信用されてた…!?」

須美「2人のことが嫌いとか、そういうのじゃないの!ただ私、人に頼るのが苦手で…上里さんは頼ってくれるから比較的マシな方だったんだけど…」

ちひろ「そういうことだったんですね…」

園子「スミスケ…」

須美「でも、それじゃダメなのよね…私一人じゃ、何もできなかった。4人でだから勝てたと思うの。だから…その…私と仲良くしてくれませんか!?」

銀、園子、ちひろ「「「…」」」

(…やっぱりダメよね…当たり前じゃない、そんなふうに思われてた相手と仲良くなんて…)

銀「…なーに言ってんだよ!」

須美「え…?」

ちひろ「もうすでに仲良しですよ、須美さん!」

園子「私もちっひーと同じだよ。それに嬉しいかな!私もスミスケと仲良くしたかったから…私も友達作るの苦手だし…」

須美「乃木さん…」

園子「スミスケも同じ思いだったんだね〜嬉しいよー、スミスケ!」

須美「…乃木さん。」

園子「なーにー?」

須美「そのいつの間にか言ってるスミスケって…」

銀「うおっ!確かにいつの間にか言ってたな!?」

園子「んー…無意識で呼んじゃってた〜!!」

銀「しかも無意識!?」

ちひろ「相手の許可なしはともかく無意識は初めてだ…」

須美「それはそれでどうなのかしら…」

(あだ名で呼んでくれること自体は嬉しいけど…)

須美「ちょっとそのあだ名はあまり好きじゃないかも…ほら、乃木さんも園りんとか嫌でしょ?」

園子「いいね!」

銀「えぇ…」

ちひろ「園姉は天才ですからー!」

銀「多分フォローの場所間違ってるぞ。」

園子「とまあそれは置いといて…スミスケはダメかぁ…そうだ!ワッシーナは?アイドルみたいで可愛くない?」

須美「もっと嫌よ。」

園子「即答!?」

ちひろ「それは私もちょっと…」

銀「私も避けたいな…」

園子「しょぼーん…あ!閃いた!!わっしー!わっしーはどう?」

須美「うーん…」

(一番いいことにはいいけど微妙ね…)

…チラッ

片目だけ開けて様子を確認してみる。

キラキラキラキラ

(…アニメみたいなレベルで輝いてる…)

須美「まあ…それでいいかな。」

園子「ほんと!?やったー!!」

ちひろ「おめでとう園姉ー!!ハイタッチ!」パンッ

園子「ハイターッチ!!」パンッ

銀「よし、そういうことなら私のこと銀って呼んでよ。三ノ輪さんはなんかよそよそしいしさ!」

ちひろ「なら私もちひろでいいです!!せめて名字呼びだけはどうにか…!!」

須美「え!?え、えっと…銀とちひろちゃん…?」

ちひろ「それです!」

園子「あー!私の事はなんで呼んでくれるの〜?」

須美「うーん…

…そのっち、なんてどうかしら…」

園子「うっひょー!いいねそれ!!それがいい〜!!」

須美「そ、そう?ならよかった…よろしくね、そのっち。」

園子「うん!よろしくね、わっしー!」

銀「ふー…さてお互い仲もちゃんと深まったことだし!!」

園子「ミノさん何か考えあるの〜?」

銀「もちろんとも!ここのジェラートを食べよう!!」

 

園子「ん〜!!おいしいー!!ほうじ茶&カルピシス味大成功Vサイン!」ŧ‹”ŧ‹”

ちひろ「リンゴ&蜂蜜味も美味しいよ園姉!!」ŧ‹”ŧ‹”

園子「お?私にも食べさせてー!」ŧ‹”ŧ‹”

ちひろ「いいよ!交換しあお!!」ŧ‹”ŧ‹”

銀「楽しんでんなー2人とも。」ŧ‹”ŧ‹”

園子「ミノさんのは〜?」ŧ‹”ŧ‹”

銀「醤油豆味だな!」ŧ‹”ŧ‹”

園子「何それ美味しそう〜!!」ŧ‹”ŧ‹”

(私もそろそろ1口…)

パクリ

(!!これは…!)

須美「美味だわ!このほろ苦抹茶が織り成す調和がなんとも絶妙…で…?」

前を向くとそのっちが口を開けて何かを待っていました。

園子「あーん!」

須美「ど、どうしたの?そのっち。」

園子「そんなに美味しいならー!あーん!!」

須美「え、でも…こういうの初めてで…」

(やり方が分からないっていうか…)

園子「なら私から!はむ!」

そういってそのっちは私のスプーンを口に入れる。

園子「ん〜!!美味しい〜!!初めての共同作業だね!!」

(きょ、共同作業!?!?)

須美「なっ…!?///」

ちひろ「珍しく須美さんが照れてる!!」

銀「園子ー、言葉の意味がおかしいぞー。」

園子「えへへー、友達とこういうことしてみたかったんだー。わっしーはー?」

須美「っ!?それは…わ、私も…いやその…!」

ちひろ、園子、銀「あはは!」

(恥ずかしい…はずなのに…)

須美「…くす。」

園子「ミノさん〜わっしー喜んでくれた〜嬉しいな〜!」

ちひろ「私も須美さんの幸せな顔見れて幸せですー!」

銀「みんな楽しそうで私も楽しい!!」



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3話 くんれん

書くスピードが想定を遥かに上回るため、1日2話投稿を視野に入れました。


ーーー須美sideーーー

…私たちが人類を、神樹様を守る勇者としての最初のお役目を果たしてから半月。

2体目の敵が、来襲していた。

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

銀「身動き取れねえ…!!」

園子「風強すぎだよー!!」

ちひろ「少しでも離れたらとばされちゃうー!!」

須美「あの敵、前のやつより弱点は分かりやすいのに…!!」

凄まじい回転による風圧で、私たちの動きを封じてくるバーテックス。

回転である以上、上が隙だらけなのだが…

銀「とはいえどうしようもない…!ハメ技ってホントずるいな!!」

ちひろ「でも…このままじゃ樹海が…!」

(ちひろちゃんの言う通り…このままじゃ現実世界への被害が拡大する!なら…!)

ビュォォ!!

園子「わっしー!?」

あえて離し、宙に浮きながら照準を合わせる。

須美「南無八幡…大菩薩!!」ビュンッ!

そしてフルチャージの一撃を放つが…

キンッ!!

あっさり弾かれる。

須美「そんな…!」

 

ーーー園子sideーーー

銀「須美!!」

園子「大変大変!助けにいかないt

…」

ブォォォォォンッ!

横から分銅が迫ってくる。

(なんか来たー!?)

園子「展開!!」

ゴンッ!!!

急遽盾を展開、防ぐが…

園子「ぐぅぅ!!重い!次来たら耐えられないよー!!」

ちひろ「ハメ技ダメ絶対!!」

そんなことを言ってる間にも次の分銅が迫ってくる。

銀「…なら!!」

ビュォォ!!

ちひろ「銀さん!?」

今度はミノさんまでも離れて風に乗っていく。

須美「銀!?」

銀「これでも…くらえぇぇぇぇぇ!!!」

 

ーーー教室ーーー

安芸「…ゴリ押しにも程があるでしょう。」

4人「「「「はい…」」」」

安芸「確かに映像を見る限り鷲尾さんと上里さんが実質無効化されて仕方なかったのは分かりますが…」

ちひろ「ごめんなさい…伸ばして拘束する手も考えたんですけど風に流されないようにするのでせいいっぱいで…」

安芸「別に責めてるわけじゃないのよ。上里さんのその決断がなければ天秤座が止まったあと、即座に乃木さんとあなたが追撃して次に繋げることもできなかったんだから。

あなたたちはお役目を成功させてくれたし、現実世界への被害も軽微に抑えてくれた。そこに関しては褒めたいわ。

ただ…こんな戦い方じゃ命がいくつあっても足りません。あなたたちの変わりは勇者としても、人としてもいないのですよ。」

(いつもは怖い先生が心配してくれてる〜ちょっとだけ嬉しいな〜)

須美「3人が上手く立ち回ってくれたんです。」

銀「須美もな!須美がいなきゃあの風を利用して上を取る発想思いつかなかったし!」

園子「ちっひーも私がとばないように支えてくれてたもんね、ありがとう!!」

ちひろ「有効打がほとんどなかったからサポートに回っただけだよ。」

園子「そこは素直に喜べばいいのー!」ナデナデ

ちひろ「わかった…!えへへ…///」

安芸「仲良いのもいいんだけど…あなたたちの問題点は演習不足による連携ね。まず4人の中で指揮を取る隊長を決めるとしましょう。」

須美「…!!」

ちひろ「私は唯一の小五だから多分ない…ですよね?」

銀「私もないな。頭で考えるのは合わないもんな。」

須美「それならわt「乃木さん。」っ!?」

安芸「隊長、頼めるかしら?」

園子「私ですかー?みんながいいならいいですけど〜…」

銀「私は私じゃないなら誰でも!特攻だけしか指示できなさそうだし!」

ちひろ「銀さんも園姉も須美さんも、みんな素晴らしい人達なので私は誰でも賛成です!さすがに唯一の年下の私がやるのはアレですけど…」

(わっしー…さっきビックリしてたけど…)

須美「…私も賛成よ。そのっち、隊長頼める?」

園子「…うん!!」

 

ーーー須美sideーーー

(乃木家は大赦の最高位家…こういうところでも隊長であるべきなのね。同じく最高位家のちひろちゃんは年下だし。

実際には私がまとめないと…大変だけど頑張りましょう。)

安芸「なら決定ね。神託によれば次の襲来までは期間がある、連携を深めるために合宿を行おうと思うわ。」

4人「「「「合宿??」」」」

 

ーーー合宿1日目ーーー

須美「ぐぬぬ…」

園子「スピー…スピー…」

ちひろ「むにゃむにゃ…園姉だいしゅき…むにゃむにゃ…」

(…ちひろちゃんは可愛いけど…)

…予定時刻からもう10分、未だに銀が現れていなかった。

銀「悪い悪い、遅れちゃったー!」ガラガラ

須美「…遅い!!銀、遅い!!!!」

銀「ごめんごめん、色々あったんだよ…」

須美「この際だから少し注意するけど銀は少し生活がなってないと思うの。勇者に選ばれたんだから少しは自覚を…」

園子「あれ〜?お母さん、ここどこー?」

ちひろ「むにゃ…見て園姉…キレイなお花畑だよ…むにゃ…」

園子「え!?どこどこ!?」

(やっぱり私がしっかりしないと…この美しい国を守るためにも!)

 

 

 

 

ーーー海岸、ちひろsideーーー

安芸「お役目が本格的に始まったことにより、大赦もまた本格的にあなたたちをバックアップします。家族や学校のことは心配せず、頑張って。」

4人「「「「はい!!」」」」

 

安芸「準備はいい?この訓練のルールはシンプル。あのバスに三ノ輪さんを無傷で到着させること。お互いの役割を忘れないでね!!」

園子「行くよー!」

銀「上手く守ってくれよなー!」

ちひろ「私も頑張ります!!」

須美「先生!私はここから動いちゃダメなんですか!?」

安芸「ダメよー!じゃあスタート!!」

園子「よし、展開!!」

園姉が盾を展開、それとともに砂浜に置かれたたくさんの機械からボールが発射され始めます。

(私は崩し役…少しでも機械を止める!!)

ボンッ!

ボールが盾に弾かれる。

園子「おっと、意外と衝撃あるね〜」

銀「なぁ園子ー、こっからジャンプするのはダメなのか?」

園子「ズルはダメだよ〜」

銀「だよなー…」

ビュンッ!

今度は須美さんの矢がボールを射止める。

ちひろ「ほっ!ふっ!はっ!!」ヒュッヒュッヒュッ

私もクナイをとばしてボールを撃ち落としながら進みます。

(だんだんスピードが早くなってる…急がなきゃ!!)

ちひろ「まず1つ、そりゃっ!!」ギシッ

(切りきれない!?)

ちひろ「ならもう1回!!」ズバッ!!

(切れた…2回分入れなきゃいけないのをこの数…どれを止めるか瞬時に決めなきゃいけないってことですか…)

ビュンッ!ビュンッ!

スッ

須美「しまっ…!!」

ボフッ!

銀「いたっ!?」

安芸「アウトー!!」

(あ!切るのに集中しててボールの破壊忘れてた…!!)

ちひろ「ごめんなさい!!切り崩す方に気を取られてました!!」

須美「ご、ごめんなさい銀!!」

園子「ちっひーもわっしーもドンマイ!」

銀「気にすんなー!何回もやって取り返してけばいいんだから!」

安芸「はい、もう1回配置について!!ゴールできるまでやるわよ!!」

 

ーーー民宿、須美sideーーー

 

安芸『この合宿中は4人で行動すること。

1+1+1+1を4に留めず、10にも20にも変えるのよ。』

 

ちひろ「わあー!ご飯すっごい豪華ですね!」

銀「な!…っておお!園子、須美、ちひろ、カニが、カニがあるぞ!」

須美「2人とも、騒がないの!」

園子「まーまー、早く食べよー!もうお腹ぺこぺこ〜」

4人「「「「いただきます!!」」」」

園子「わっしーの荷物あれだけ?少なくない?」

須美「そうかしら?」

(ちゃんと必需品は最低限持ったはずだけど…)

銀「ちひろはそこそこ多いなー。」

ちひろ「みなさんで遊ぶ用にいっぱい持ってきましたので!!ミーユーはさすがに取り上げられちゃいましたけど…」

園子「ミノさんお土産買うの早すぎ〜!まだ初日だよ〜?」

銀「帰る時にはヘトヘトになってるかもしれないからな!そういう園子はどうなんだよ?」

(えーっと、ダンボールに一際でかいキュウリに謎の黒い球体、それに臼…)

須美「…まるで意味がわからないわ…」

園子「臼でおうどん作るんよ〜!!」

ちひろ「麺棒もありますよ!」

銀「張り切ってるのはいいけど多分そんな時間取って貰えないぞー…」

ちひろ、園子「「えぇー!?!?」」

 

ーーー2日目、銀sideーーー

銀「今度こそぉぉぉぉ!!」

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ボフッ!

銀「あたっ!?!?」

安芸「アウトー!!もう1回!!」

 

安芸「━━━━こうして、神樹様は残った人類をウイルスから守るべく━━━━━━」

(…くっそー!合宿なら勉強しないで済むと思ったのにー!!)

ちひろ「一年先の勉強…楽しいなー♪」

園子「スピー…スピー…」

(園子は寝てるしぃ…)

安芸「しかしここで結界の外で…乃木さん、答えられる?」

園子「はーい…ウイルスで動物が変異、バーテックスとなって攻めて来たんですぅ…」

須美、銀「聞いてたの!?」

ちひろ「え?なんで驚いてるんですか?」キョトン

 

ーーー3日目ーーー

ちひろ「直線のは切りました!!」

銀「ナイス!!これで…どうだぁぁぁぁ!!」

ボフッ!

銀「へぶしっ!?」

 

ーーー和室ーーー

須美「…」

園子「スピー…」

ちひろ「〜♪」

(…座禅、キッツいって…!!)

 

ーーー4日目ーーー

ちひろ「こっちはやりました!あとは頼みます!須美さん!!」

須美「ええ!とんで銀!!」

銀「任すぞ背中!!」ダンッ!!

須美「そこっ!!」ビュンビュンッ!!

(これなら…!)

銀「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」

ドゴンッ!!

バスを両断する。

そしてそのまま…

銀「うおおおおおおお!!!!」

ザザザザザザザザザザザザザザ!!!!

バスを粉々にした。

園子「これって…!!」

須美「やった…わよね?」

ちひろ「やった…はずですよ…」

須美、園子、ちひろ「「「…ぅぅやったぁぁぁ!!」」」



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4話 ついせき

ーーー温泉、ちひろsideーーー

須美「ふぅ…」

銀「ぷは〜!!」

園子「ふぃ〜♪」

ちひろ「ふへぇ…」

銀「気持ちいい…しっかし毎日バランスの取れた食事に激しい鍛錬、それに睡眠ってさ、もう勇者ってよりはスポーツ選手の合宿だよな!」

ちひろ「まあ勇者って言ってもスポーツ選手と結構似てますしね…必殺技はいつ伝授なんだろうー楽しみだなー!!」

須美「今回は連携の訓練だし多分ないわよ…?」

(なっ…!?)

ちひろ「そんなー…ブクブクブク…」

園子「私なんだか筋肉ついてきたかも〜」

須美「強くなった証ね。これから成長する女の子がって考えなければいいことだけれど…」

銀「色んな意味で苦しいメニューだよなー。」

ちひろ「銀さん、あの天秤座?につけられた傷、痛みませんか?」

銀「ん?ああ、へーきへーきへっちゃらだ!」

ちひろ「ならよかったです…私傷はもう治ったんですけど筋肉痛がひどくて…」

証拠に今も体中が悲鳴を上げていた。

園子「ちっひーあとで痛いの飛んでけしようか〜?」

ちひろ「うん!!」

銀「園子は大丈夫か?」

園子「私はそれより手にできたマメの方がしみて痛いかも〜」

ちひろ「そういえばいっぱいできてたねー…私も痛いの飛んでけする?」

園子「大丈夫!私はお姉ちゃんだから!」エッヘン

ちひろ「すごーい!!」

銀「あはは…さて、次はあなたですよ鷲尾さんちの須美さん。」

須美「っ!?なんで!?」

銀「そりゃあせっかくの温泉なんだし、クラス一のお胸を拝見しとこうかとー!」

須美「は、反対!!そんな理由断じて反対よ!!」

銀「問答無用!!その桃頂く!!」

須美「ちょっと!だめー!」

銀「おっとぉ!私は事実を言ったまでよ!むしろ大きいくせして照れるとか、贅沢言うなっての!!」

須美「くっ…!!」

ちひろ「あわわ…!銀さんも須美さんも落ち着いてください!!」バシャッ!

銀「…」

ちひろ「…ど、どうしたんですか?」

銀「…ちひろ、お前も随分とでかいじゃないか。」

(あっ!隠すの忘れちゃってた!!あまり見られるの慣れてないのにー!!)

ちひろ「これは…その…!!」

銀「けしからんぞー!ほれー!」バシャッ!

須美「ちょ、銀!!私はともかくちひろちゃんにまでしない!!」

園子「みんな楽しそうだね〜サンチョにも見せてあげたいな〜…ってん〜?」

ガラガラ

銀「なんだなんだ…っておわぁ!?」

安芸「三ノ輪さんに鷲尾さん、そして上里さん、温泉で騒ぎすぎです。貸し切りとはいえもう少し考えるように。」

須美「は、はい…」

銀「…やー…大人ってすごいな…服着てるとあんまわかんないけど…」

ちひろ「お母さんの方がでかかったです。」

園子「目の付け所がおかしい気がするよ〜ちっひー。」

須美「そのっちが言うこともあるのね…しかしあの大きさ…例えるなら戦艦長門!」

銀「なんじゃそりゃ…」

須美「フッ…」キランッ

(あ、須美さんの目が光った。)

須美「旧世紀の我が国が誇る戦艦よ!!詳しく話してあげる!!」

銀「お、おう…」

園子「わっしーが生き生きしてる〜」

ちひろ「あーいう話だと喜ぶんだね…今度2人で家の図書館探してそれっぽいのあげるのはどうかなー?」

園子「いいね!わっしー絶対喜ぶよ!!」

 

ーーー部屋ーーー

銀「さーてお前ら、合宿の最終日に簡単に寝られると思ってる?」

園子「私は自分の枕持ってきてるから簡単に寝られるよ〜」

ちひろ「私もですー!!」

須美「確か名前は…」

園子「サンチョと!」

ちひろ「コマです!!」

銀「で、園子のその服は?」

園子「鳥さん!私焼き鳥好きなんよ〜!!」

ちひろ「祭りなると屋台ごと買い取るくらいには好きですよ、園姉は!」

銀「屋台ごと!?」

須美「えぇ…と、ともかく!夜更かしなんていけないわ!!」

ちひろ「よくないですかー?絶対楽しいですよ!!」

須美「いいや、ダメよ。言う事聞かない子には…」

ドヨーン…

(…なにこれ…須美さんからどんよりした空気が…)

須美「夜中に迎えに来るよ〜…」

園子「む、迎えにくるー!?!?」ビクッ

(迎え…まさか!?)

ちひろ「マーメイドがですか!?」

須美「なんでそうなるの!?」

園子「はっ!つまり大量のサンチョが!」

銀「そうでもないだろ!?はぁ…全く、そんなホラー話やめて好きな人の言い合いっこしようよ。」

須美「好きな人…って、銀は?」

銀「強いて言うなら弟、かな!」

須美「ちょ、家族はズルくないかしら!?」

ちひろ「なら私は園姉!」

園子「ならなら私はちっひー!」

ちひろ「両思いだねー!」

園子「夫婦だねー!」

ちひろ、園子「「わいわいわーい!!」」

銀「よ、よかったな…まあじゃあ家族は抜くとして!誰かいる人!!」

ちひろ「私と園姉は血繋がってないのでノーカンで!」

銀「本来ならそうだけど今回は特例アウト!」

ちひろ「ガーン!!」

園子「それは残念だけど〜はーい!!」

(…え?????)

須美「っ!?」

銀「マジ!?恋バナ来たか!?」

ちひろ「私も初耳ですよ!?誰!?」

須美「クラスの人!?」

園子「うん!わっしーとミノさん!!」

(…そういうことかー…)

銀「…まあ、だと思ったよ…」

須美「こ、これでいいのよ。私たちには神聖なお役目があるのだから。今日はもう寝ましょう!!そして明日も励みましょう!!家に帰るまでが合宿なんだから!」

銀「へーい…」

(うー…持ってきたやつであまり遊べなかった…残念…)

ちひろ「…園姉準備OK?」ボソッ

園子「d(˙꒳˙* )」

ちひろ「…!じゃあ消しますねー!!」パチッ

 

ーーー須美sideーーー

須美「…!?!?」

ちひろちゃんが電気を消すとともに、部屋に宇宙が浮かび上がる。

銀「なんだこれ!?」

(どういうこと!?何がどうして…)

須美「…あの黒い球体から出てるの…!?」

園子「そう!持ち運びのできるプラレタリウム〜!!」

ちひろ「私は何回も見たことありますけどいつ見ても綺麗なんですよねー!だから2人にも見せたいよねって園姉と!」

銀「確かにこりゃすごいや…」

(えぇ…ホントに綺麗…)

須美「…でも!寝れないから消しなさい!!」

園子「え〜?」

須美「消しなさい。」

園子、ちひろ「しょぼーん…」

 

 

 

 

 

 

ーーー帰宅日ーーー

須美「ぐぬぬ…」

園子「スピー…スピー…」

ちひろ「むにゃ…アイスクリーム美味しい…むにゃむにゃ…」

銀「すまーん!!」ガラガラ

須美「遅い!!銀、遅い!!!!」

銀「ごめんって!ちょっと野暮用で…」

須美「野暮?」

銀「そそ!気をつけるからさ?」

(怪しい…)

 

ーーー1週間後ーーー

銀「ギリギリセーフ!」

安芸「アウトです。」ペシ

銀「おぐ、すいません…」

(銀は遅刻があまりに多すぎる…かといって理由も話そうとしないし…もしかしたら何か事情が…?)

猫「ニャ?」ヒョコッ!

銀「おわっ!?こら、ダメだって!!」

(猫!?ますます怪しい…)

須美「…こうなれば…!」

 

ーーー翌日、田舎道ーーー

(休日でよかった…行動は早い方がいいもの。)

須美「もう少しで銀の家よ、そのっち…」

後ろを振り向くと…いるはずのそのっちがいなかった。

須美「ええ!?どこいったのそのっち!?」

園子「アリさんだ〜!こんにちは〜!」

須美「そのっち。」ガシッ

園子「あっ…」

 

須美「フラフラしないの。もうすぐなんだから。」

園子「ごめんなさ〜い!だから引きずらないで〜!!」ズルズル

今日、私とそのっちは銀の遅刻の理由を探るべく、銀の家を盗sゲフンゲフン観察しようとしていた。

ちひろちゃんは呼んでいない。こんなことに1つ下の彼女を巻き込む必要はないはずだから。

 

ーーーちひろsideーーー

天音「ホントにこれでいいんですか?私あまりストーカーは…」

ちひろ「ストーカーじゃなくて追跡!あの須美さんがだよ?気になるじゃん!!」

楓「まあ確かに…」

ここな「写真写真〜っと!」

今日は休日で、いつも通り園姉と遊ぶ…予定でした。昨日までの。

しかし偶然にも須美さんが私に隠して園姉と何かをしようとしてるのを聞き、いつもの3人と後をおうことにしたのです!

(元からノリがいい上に写真撮りまくれるからここなはもちろん、

優しい天音もついてきてくれる。

唯一反対しそうな楓は憧れの須美さんがってことでついてきたし、私の計画オールパーフェクト!!)

天音「しかしどこに向かってるのでしょうか…もうそこそこ歩きましたが…」

ここな「何か心当たりないの?ちひろは。」

ちひろ「うーん…」

(須美さんが私を抜いてしそうなこと…)

楓「そういえば三ノ輪さんは?確か三ノ輪さんも入れた4人でお役目やってるはずよね?」

ちひろ「 ・ ・ ・ それだ!!」

ここな「うわビックリした…急におっきい声出さないでよ写真ブレる。」

天音「まぁまぁ…何がわかったんです?」

ちひろ「須美さんの目的!多分銀さんの観察だと思う!銀さん遅刻多かったから!」

ここな「あーなるほどね。確かに鷲尾先輩なら気になりそう。」

ちひろ「さぁて、目的もわかった事だし前進だ!!」

 

ーーー須美、ちひろ合同sideーーー

須美「到着ね。早速様子を…」

園子「ピンポンダッシュする〜?」

須美「それはダメ!観察に来てるのにバレやすくしてどうするの!そもそもピンポンダッシュなんて迷惑極まりないわ!!」

(まあこのこと自体あれではあるけども…だからちひろちゃんには言ってないんだし。)

※全てバレてます。

 

楓「あ、須美先輩が何か取り出した!」

ちひろ「うわっ、何あれ細長っ!?」

天音「あれは…潜水艦をモチーフにして作られたカメラですわ。」

ちひろ「…そんなのあるの?」

天音「はい!なんたって伊予島家が大元で販売してますから。」

楓「あー…旧世紀関連の商品は伊予島家の管轄だったねそういえば。先祖様が資料を大量に集めてたとかで。」

ここな「へー…まあ最新型あるし誰か銀さんの方も観察してみれば?」

ちひろ「お、ファインプレーじゃん!よーし見よっと!」

 

須美「これで観察するわ。」

園子「おー!なんだか本格的〜!!」

(これはかつての日本の潜水艦の内部からの景色を体験出来るようにと開発されたもの…リスクはあるけど…やはり国は偉大だわ!!)

※リスクほぼない状態で観察してる人達います

 

銀「おーい、泣くなー。お前、この銀様の弟だろ?泣いていいのは母ちゃんに預けたお年玉が帰ってこないと悟った時だけだぞー。」

赤ちゃん「うー、うぅー!!」

銀「あー…ぐずり泣きが始まってしまった…」

 

園子「あれ、弟かな?」

須美「そのようね…」

 

銀「ミルクやおしめじゃないだろうしなー…あ、そうだ!これだろ!」カランカラン

赤ちゃん「…!あー!あー!!」

銀「お、泣き止んだ!えらいぞー!マイブラザー!」

赤ちゃん「あー!」ギュー

銀「よしよし、ふふっ、甘え坊さんな弟だ!大きくなったら舎弟にしてこき使おー!」

猫「にゃー。」

銀「あ、お前、そろそろうちには慣れたか?」

猫「にゃー。」

銀「そうかそうか、それならよかった!」

弟「姉ちゃーん、買い物はー?」

銀「はいはーい!今行くー!!」

 

園子「わー!ミノさんすごーい!!」

須美「あんな小さい弟達がいたのね…」

(遅刻の原因は世話が大変ということ…?もう少し探る必要がありそうね。)

 

ちひろ「えへへー…可愛いかったなー赤ちゃん!今度銀さんに触らせてもらおっ!!」

ここな「おーい、なんかすっごい幸せそうな顔してるけど目的忘れてるよー。」

楓「三ノ輪さんも須美先輩達も移動始めたし私たちも行かなきゃ。」

(あ!そうだったー!!)

ちひろ「可愛すぎてついつい…」

天音「気をつけましょう。あまり遮蔽物がないですから見つかる危険が高めですし。」

ちひろ「言われなくても!じゃあ出発!!」



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5話 れんけい

順番が上手くいってなかったので再喝です。すいません…


ーーー街中、ちひろ・須美合同sideーーー

園子「あ、わっしー見て見て!おじいさん案内してる!」

須美「道を尋ねられたのかしら…」

 

天音「今度は女の人ですわね…」

楓「そういえば私も見たことあるような…?」

ここな「…っ。」ウズウズ

 

須美「今度は自転車を直してる…」

園子「あ、逃げたワンちゃん捕まえて返してあげてるよ!!」

 

ここな「…」ウズウズ

楓「恐ろしいくらいトラブルに巻き込まれてる…」

ちひろ「これもお役目に選ばれたから…とか?」

 

ーーーイネスーーー

園子「今度は迷子の女の子だよ〜」

須美「喧嘩の…仲裁?」

 

天音「落し物をセンターに届けましたね…」

ちひろ「あ、落ちた商品並べ直してる…」

ここな「っっっっっ…」ウズウズウズウズ

 

須美「今度は散らばったリンゴ集め…」

園子「ねえわっしー、これ巻き込まれてるってより…」

須美「ええ、ほっとけないのね…私ももう見てられないわ!!」ダダッ

園子「あ!わっしー待って〜!私も行く〜!!」

 

ここな「…もう、限界!!」ダッ

ちひろ「えっ!?ここな!?!?」

ここな「ごめん私困ってる人ほっとけないタチなの!!」

楓「何それ初めて聞いたわよ!?」

天音「言ってしまいましたね…」

ちひろ「こうなればもういっそ私たちも行こう!!」ダダッ

楓「まあ結果は十分出たしね…何より言い出しっぺが行ったし!」ダダッ

天音「あ、待ってくださいー!」ダダッ

 

ーーー銀sideーーー

(あちゃー、結構散らばってるなぁ…)

須美「銀ー!!」

ここな「銀さんー!!」

銀「ん?っておわっ!?須美に下の学年の星空さん!?」

(なんでここに!?)

園子「園子もいるんだぜー!」

ちひろ「ちひろもいまーす!」

楓「おはようございます、三ノ輪さん。私も手伝いますよ。」

天音「私もお手伝いさせてもらいます。」

(次々と!?一体どうしてこうなった!?)

 

ーーーフードコートーーー

銀「じゃあみんなずっと見てたってのか!?」

園子「そうなるね〜私はちっひー達に見られてたことが意外だけど〜」

ちひろ「褒めても何も出ないよー?」

園子「ちっひーの可愛い顔が出ま〜す!ナデナデー!」

ちひろ「えへへ…///」

須美「不覚…!」

(須美達だけならともかく…ほぼ初対面の下級生にもなんて…)

銀「さすがに恥ずかしいな…」

天音「恥ずかしがる必要はないと思います。素晴らしいことですもの。」

園子「いつも遅れるのはこういうことだったんだね〜言ってくれればいいのに。」

銀「それはそれでなんか他人のせいにしてるみたいで嫌なんだよなぁ…」

ここな「分かります、すっごい分かります!!私も困ってる人ほっとけなくて…だから家7時には出てるんですけど…」

ちひろ「そうだったの!?じゃあいつも私より遅いのって…」

ここな「まあだいたい誰か助けてるから?」

ちひろ「ええー!?!?」

(同じような人っているもんだなぁ…しかし早く出ることで…)

銀「なるほどなぁ…私も次から早く出るか…」

天音「元からそういう体質だったりってするんですか?」

銀「まあね、こう…ついてないことが多いんだ。ビンゴとかも当たったことないし…」

須美「不幸体質ってやつかしら…

…ところであなた、さっきからガッチガチに緊張してるように見えるんだけど…」

楓「ひゃ、ひゃいっ!!え、えっとそのあの…」

ここな「楓の状態がいつもの欠片すら見えない…」

ちひろ「念願の須美さんだよ、自己紹介もしないでどうするのさ。」

楓「そ、それはそうだけど…」

(ほーう?後押ししてやるか!)

銀「深呼吸深呼吸!須美って結構固い性格に見えるけど結構寛容なとこあるからさ!」

須美「固いってどういうことかしら。」

銀「そういうとこのことだよ。」

楓「あ、ありがとうございましゅ三ノ輪さん…

え、えーっと!神樹館5年、委員長の」ピタッ

ちひろ「あ、フリーズした。」

園子「あらま〜…楓ちゃんドンマイなんよ〜…」

(…?いや、これ…)

銀「桐生さんがフリーズしたってより…」

須美「…時が、止まった…?…ってことは…!!」

チリンチリン

園子「このタイミングで〜!?」

ちひろ「楓の勇気を踏みにじるとは…絶対に許さない!!バーテックス!!」

 

ーーー須美sideーーー

(3度目の敵…今度こそ私が!!)

ちひろ「もー!楓のせっかくのチャンスをー!!」フンスフンスッ!!

銀「気持ちは分かるけどかっかすんなって。」

園子「敵さんはビジュアルな体型だね〜」

須美「どんな体型よ…まずは私が様子見するわ!」

ちひろ「お願いします!!」

(これで動きが決まる…絶対に外せない…!)

須美「今…」

その時だった。

グラグラグラグラ!!!!

樹海が大きく揺れる。

銀「うわっ!?」

園子「地震〜!?!?」

須美「くっ!」

(厄介ね…でももう一度…)

 

《キンッ!!》

 

天秤座にあっさり弾かれたのが目にチラつく。

須美「…っっ!!」

(今度こそ…今度こそ…!!)

ポンッ

(…何?暖かい…)

銀「一旦落ち着け須美、そんなんじゃ当てれるもんも当てれないぞ?」

ちひろ「ゆっくりでいいんですよ。もし攻撃が来たら私たちがなんとかします。」

園子「一緒に倒そう?」

銀「合宿の成果も出さないと、だしな!」

須美「3人とも…」

ピタッ

ちひろ「っ!動きが止まりましたよ!!」

園子「でも別なのが来る!!」

地震を止めた敵は角らしきものを1つとばしてくる。

園子「はっ!そしてどっこらしょ!」ガキンッ!

そしてそれをそのっちが防ぐ。

園子「よーし!敵に近づくよー!!ちっひーはいつも通り先行して!わっしーとミノさんは私の後ろに!!」

ちひろ「うん!!」ダダッ

銀、須美「「了解!」」バッ

私たちが人数で攻撃を引き受け、そのっちが防御、その間にちひろちゃんが急接近する。

ちひろ「せいっ!!」ザクザクザクッ!!

そしてクナイを刺して…

ちひろ「まずは動き止めさせてもらいますよ!針化の術、はつd…」

グググ…

園子「っ!ちっひー後退して!」

ちひろ「えっ!?わかった!」バッ

そのっちの命令で術を中断、ちひろちゃんが後ろに飛び退ける。

それのほんの少し後に敵は大ジャンプ。

ちひろ「あのままだったら吹き飛ばされてた…ありがとう、園姉!!」

園子「いえいえなんよ〜!!」

(このまま上には行かせない!)

須美「私が落とす!!」ビュンッ!!

フルチャージ攻撃を放つが…

…ヒュゥゥゥゥン…

須美「…届かない!!制空権を取られた!!」

時すでに遅し、あと少しのところで矢は届かずに弧を描いて落下する。

ちひろ「またそういう感じですか!?卑怯ー!!」

ゴゴゴ

ちひろ「…あれ?こっち向いてる気が…?」

銀「っ!まずい!!」

園子「ミノさん!?」

…ギュルルルルルルルル!!!!

敵の角が高速回転し始める。

(まさかあれをおとしてくるつもりなの!?)

須美「銀もちひろちゃんも危ない!!」

銀「避けろちひろ!!」ドンッ

ちひろ「へ!?」ドサッ

ギュルルルル…ズドンッ!!!!!

予想は的中、目に見えないほど早く回転した角は銀めがけて一直線に落ちる。

須美「…銀っっ!!」

ちひろ「…銀さんっっ!!!!」

銀「ぐっ…このぉぉぉぉぉぉ!!!」

ギギギギギギギギギギギギギギ!!!!!

ちひろ「よ、よかった…」

双斧でなんとかあの一撃を防いでいた。

須美「でもこれ…このままじゃ…!」

銀「1分は持つ!!それまでに上の敵をやれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ちひろ「わ、わかりました!!」

(それでいいの…?1分なんて所詮銀の予想でしかない…それまでもたなかったら…?それに現実への被害も…!!どうすれば…!!)

園子「よーし!私たちで敵を叩くよ!!」

バババババババッ

そのっちが槍を変形、多数の刃を階段のように展開する。

園子「わっしー、上!!」

須美「う、うん!!」ダッダッダッ

チャージしながら上る。

そしてジャンプするも…

(まずい…ギリギリ届かない!!)

ちひろ「巨大化の術!そしてバルーン化だぁぁぁぁぁ!!!」

須美「っ!ちひろちゃん!?」

足元に巨大化したクナイが現れ、さらにその端にふわふわしたクナイが多数くっつく。

ちひろ「私がジャンプしてさらに投げるので須美さんはそこを!!」

須美「…ええ!わかったわ!!」

ちひろ「じゃあいきますよー!!!ジェットクナイの術ぅぅぅ!!!」

ダンッ!!!ボォォォォォ!!!

私を背負ってちひろちゃんが飛翔、一時的に上昇気流を生み出すクナイまで使って一気に上る。

ちひろ「投げますよ!?」

須美「いつでも!!」

ちひろ「じゃあ…お願いします!!」ブンッ!!

そしてクナイの効果が切れたところで私を投げて、落下していく。

(ここを逃せば…次はもうない…!)

 

《キンッ!!》

 

再び、天秤座と水瓶座に防がれた時のことが逡巡した。

(…っ!!)

須美「…何をビビっているの、鷲尾須美!!銀が!ちひろちゃんが!そのっちが!ここまで繋いでくれたのよ!?今決めずに…どこで決めるって言うのよ!!」

最大まで引き絞る。

須美「っっ届けぇぇぇぇぇ!!!」ビュンッッッ!!!

私たちの運命を決める渾身の一撃。

…ドンッ!!

それは確かに、敵に風穴を空けた。

 

ーーーちひろsideーーー

ドンッ!!

(敵の糸の片側が切れた!!さすが須美さん!!)

ちひろ「なら私も…もうひと頑張りだ!!針化の術!!」

手に持ってたクナイを投げ、切れてない方の糸へ向かわせる。

…ギリギリ、届かない。

ちひろ「…父さんが言ってた…限界はぁぁぁぁぁぁ!!!超えるものだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

すでに伸びきったクナイを限界を超えて伸ばす。

ついには糸に届き、切り裂いた。

 

ーーー園子sideーーー

(わっしーもちっひーもナイス!!)

銀「…っ!よし!!」ドガァァァァン

本体と角を繋ぐものがなくなったことにより、ミノさんが角をそらして回避に成功する。

(よくもミノさんを…ちっひーを…わっしーを…傷つけてくれたね…!!)

園子「巨大化!!ここから…出て行けぇぇぇぇぇぇ!!!」

ビキンッ!!

槍を巨大化させる。

園子「突っ撃ぃぃぃぃぃぃっっ!!!!」

そのまま勢いに任せて突撃。

敵を貫くもののそのまま地面に叩きつけられる。

(いったぁ…!でもこれであとは…!!)

 

ーーー銀sideーーー

敵は落下して向かってきてる、攻撃される心配は…もうない。

園子「ミノさん!!」

ちひろ「やっちゃってください!!」

須美「銀!!砕けぇぇぇぇぇぇ!!!!」

(3人が繋いだこの奇跡…私も繋いでみせる!!)

手に持つ二つの斧から、大火が溢れ出る。

銀「4倍にして返してやる!!!!釣りは取っとけぇぇぇぇぇぇぇえっっっっ!!!!!!」

勢いよくとび上がる。

銀「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!!!!!!!」

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!!!!!!!!!

銀「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

持ちうる"全"ての"力"を振り絞るとかいて、"全力"。

(これが私の…全力だ!!)

そして、世界は光に包まれた。

ちひろ「…始まった…!」

園子「鎮魂の儀…なんとかなった…!」

銀「へへっ…」

須美「…っ。」

 

ーーー祠、須美sideーーー

銀「あー…いてて。」

園子「ミノさん大丈夫〜?」

銀「すっごい疲れた!腰にくる戦いだった…私がばあちゃんなってたら危なかったな。」

ちひろ「大人になると勇者にはなれないらしいですし、それは大丈夫だと思いますよー。」

園子「ミノさんがあーやって攻撃受け止めてくれてたから私たちが崩せたんだよ。ありがとね、ミノさん。」

銀「そっちこそ連携ナイスだったじゃん。」

園子「ミノさんが1分持つって言ったんじゃん。それだけあれば十分だもん。長引かせるのは危険だしね。それよりちっひーのサポートがすごいよー。私すっかり忘れちゃってた。」

ちひろ「私の役目はサポートと切り崩しだもん。常に状況を確認し、自分にできることを絞れ。お父さんの教えです♪」

須美「…」

(…違った…権力とかじゃない…先生はそのっちのいざってときの閃きと判断力を見抜いて選んだんだ…私はただ、迷うしかできなかった…

…大馬鹿だ。自分がしっかりするどころか、足を引っ張ってるだけだった。)

銀「しっかし腹減ったぁ…」

ちひろ「そうですね…届く前になっちゃいましたし…」

園子「はっ!?ってことはまさか私たち、万引き犯として指名手配されちゃう!?」

銀「さすがに万引きだけじゃされないだろ…」

ちひろ「天音がいるし、多分代わりに払ってくれてますよ。」

銀「おー、有能な後輩だねぇ。あとで利子つけて返そ!」

須美「ぐすっ…」

ちひろ、園子、銀「「「!?!?」」」

須美「うっ…」

銀「どうした須美!?どこか痛むのか!?」

ちひろ「絆創膏ありますけど使います!?」

園子「先生に痛み止め頼もうか〜?」

須美「違うの…私…ごめんなさい…!次は初めから息を合わせる…頑張る…!」

銀「…ああ、頑張ろうな!」

ちひろ「この4人でならできますよ。」

園子「そうだね。はいわっしー、ハンカチ!」

須美「ありがとう…ほんとにありがとう…!!」

 

〜 これは、4人の勇者の物語。

神に選ばれた少女たちのおとぎ話。

いつだって、神に見初められるのは無垢なる少女である。

そして多くの場合、その結末は━━━━━ 〜

 



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6話 にちじょう

ーーー6月某日、道場ーーー

ーーー須美sideーーー

山羊座の襲撃から数週間が経過、連携を問題ない域まで鍛錬した私たちは次にと、放課後や休日を利用し、個々の技術向上に務めていた。

園子「ほっ!はっ!そいや!!」

ビュッ!ビュン!ビュビュン!!

銀「ふん!!とあ!!」

ブォン!!ブォン!!

ちひろ「ふっ!とりゃっ!!そこでジェット!!」

ザッ!ザッ!ビュンッッッ!!!

須美「そこ!!」

パキンッ!!

安芸「そこまで!!」

須美「はい!!」

 

安芸「勇者の力は選ばれた少女しか使えない上、量産できない…今のところまだあなたたち4人に頑張ってもらうしかないわ。」

ちひろ「大丈夫ですよ!私たち4人でなら!!」

園子「うんうん〜!!今はもう技術も心も息ピッタリだもんね〜!!」

銀「だな!!」

須美「…ええ!!」

安芸「頼もしいわね。そんなあなたたちの次の任務は…」

銀「ゴクリ。」

ちひろ「ゴクリ…」

園子「ゴクリンチョ〜」

須美「ちょっと待って、今ひとつおかしいのあったわよ。」

園子「えぇ!?どれどれ〜!?」

銀「園子だよ!!」

ちひろ「え!?すぐに飲み込んだ銀さんじゃなくてですか!?」

銀「どうしてそうなった!?」

安芸「…静かに。」

4人「「「「はい。」」」」

安芸「コホン…では改めて、次の任務は…

…ゆっくり休むこと。」

須美「えっ?」

安芸「安定した状態でなければ勇者システムは使えないからね。何よりあなたたちの体が心配だわ、ずっと気を張りつめてるもの…最後までお役目を果たすためにも、休養を命じるわ。」

銀「うおお!!やったね!!」

ちひろ「休むってことは遊ぶってことですよね!?なら私に任せてください!!」

園子「私も私も〜!!」

須美「私はあまり力になれないけど…」

銀「須美は、ていうかみんないるだけで力になってるからセーフ。」

須美「そういうことなら…」

銀、須美、園子「「「いぇーい!!」」」パンッ

須美「い、いぇーい!!」パンッ

 

ーーー翌日、鷲尾家ーーー

須美「ふぅ…」バシャッ

(とは言ったものの…気の休め方なんてわかんないわ…ちゃんとできるかしら…)

お手伝い「お嬢様!」

須美「っ?どうしたんですか?こんな朝早くに。」

お手伝い「お友達の乃木様と、上里様がお見えになってます。」

(2人が…?一体なんで…)

須美「わかったわ、着替えてすぐ行くと伝えてもらえますか?」

お手伝い「了解しました。」

 

ーーー門前ーーー

園子「ヘイ!ヘイ!わっしー?」

ちひろ「レ、レッチュエンジョイかーがわラーイフ!!あ、噛んじゃった…」

(…お、恐ろしくテンションが高いわ…)

朝早くから来訪したそのっちとちひろちゃん。

その状態は想像のはるか上を行き、二人揃って高級車に乗っていたのでした。

須美「え、えっと…す、すごいハイカラね…格好も車も。」

ちひろ「私の家のなんですよ!!」

須美「ふふっ、すごいわね。」ナデナデ

ちひろ「えへへ…///」

園子「ねえ、これからナイスな休日に出かけなイカ?あとちっひーばっかはズルいから私も撫でて〜!」

須美「ど、どっちもいいわよ…?」

園子「やったー!!」ピョンピョン

(逆に不安になってくるわ…)

園子「おおっと!?」ジタバタ

 

ーーー車ーーー

園子「ヘイ♪ヘイ♪ヘーイ♪オゥイェア!!」

ちひろ「銀さんにもう送りましたー?」

須美「今送るところよ、ちひろちゃん。」

ちひろ「ありがとうございます!!」

 

須美『そのっち、ちひろちゃんと3人で向かってるところよ。』

 

ちひろ「いつ来ますかねー!」ワクワク

須美「朝早いわけだし、そんなすぐには来ないと思…」

ピロリン

(銀も銀で早起きね…まああんなちっちゃい子がいるんだもん、早起きも必要なんだろう…)

 

銀『朝はやっ!!』

 

銀『ひょーーーーー!!』

 

銀『あたい…超待ってるわん!!』

 

ちひろ「わん?」

須美「あたいのところもそうだし、銀ってそういうとこもあるのね、新しい発見だわ。」

 

銀『待って今の忘れてうちの弟が勝手に打ったから。』

 

ちひろ「…ってわけでもなかったみたいですね…」

須美「そうね…まあどちらにしろ朝から元気すぎる気がするわ…そのっちといい銀といい。」

ちひろ「すごいわかりますー。実は私も眠かったりー…」

須美「寝てもいいのよ?」

ちひろ「いえ、園姉がはっちゃけてるので!!」

須美「あ、うん…」

(そのっちとちひろちゃん…確か小さい頃からずっと一緒だって初対面の時に聞かされたけど…よっぽど仲良いのね…いいことだわ。)

園子「ナイスナイス、イェーイ♪エブリバディセイ!イェイ香川♪」

ちひろ「イェイ香川ー!!」

須美「早朝と思えないくらいの元気っぷりだわ…」

園子「わっしーもやろ〜?」

須美「敵国に魂を売るつもりはないわ。」

園子「敵国も何も今は四国しかないのに〜…あ、なら!運転手さーん!!」

須美「何企んでるのかわからないけど、そもそも音楽のひとつでテンションなんて上げれるはずが…」

 

ーーー数分後ーーー

銀「おはよー!しっかしみんなよくもまあ早起きだよ…な…」

須美「やったかたー♪やったかたかったー♪やったかたー♪」

園子「エンジョイ!」

ちひろ「ハッピー!!」

須美「万々歳!!!」

銀「…(汗)」

須美「あ、銀!!おはよう!さあ早く入って!音が漏れると近所迷惑になるわ!」

銀「須美がこんなになるって一体何があったんだ!?」

ちひろ「音楽の力は偉大なんですよー!!」

銀「どういうこと!?」

園子「さあ、楽しい楽しいホリデーの始まりだよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜園子の夢〜〜〜

須美「そのっち…私…

アイドルになることを決めたわ!!」

園子、ちひろ、銀「わー!!」

須美「もちろん3人も一緒よ!」

園子「私も!?」

ちひろ「やったー!」

銀「ローック!!」

須美「行きましょう!ライブが始まるわ!!」

 

\ニャー!ニャー!/

銀「っ!!」ドンドン!!

園子「ピー!!!」

ちひろ「〜♪」フーフー

須美「〜〜〜♪♪♪」

\ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!/

園子「勇者的な盛り上がり〜!!」

銀「はぁー!!」ドンッ!!

\にゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!/

銀「ローック!!」

〜〜〜閉幕〜〜〜

 

 

園子「って夢を見たんよ〜!」

ちひろ「フルート…今度吹いてみようかなー!」

須美「お客さんは入ってた?」

銀「そこ気にするとかロックだな。」

園子「お〜!」

銀「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー乃木家、園子sideーーー

私がどうしてもしたかったこと、それはズバリお着替えで〜す!

(わっしーもミノさんも絶対似合うと思うんだよね〜!現に…)

銀「なぁ…この服…やっぱり似合わないんじゃ?」

(ミノさん完璧にマッチしてるし。)

そこには素敵な美少女へと変身(元から美少女だけどね〜)したミノさんがいた。

ちひろ「いやいや!めちゃくちゃ似合ってます!!」

園子「うんうん!ね、わっしー!」

須美「むはー!!!」ブバァァァァァァァ!!!

( ・ ・ ・ これは想定外。)

園子「まるで鼻血の噴水だねー…そんな出し方する人初めて見たー。」

ちひろ「この量ってヤバいんじゃ!?」アワアワ

須美「だ、大丈夫よちひろちゃん…そして銀!!とても似合ってるわ!!」カシャカシャカシャカシャ

ちひろ「ならいいんですけどー…」

銀「おーい須美ー、いつもの性格どこいったー。」

須美「で、でも…この込み上げてくる気持ちはなんなのかしら…はぁ…はぁ…」

(ミノさんの言う通りいつもの姿がミジンコもないね〜これじゃまるで〜…)

園子「今のわっしーってプロの写真家さんみたいだよね〜!素敵〜!」

須美「写真は愛よ! あ ・ い !!今日はとことん色んな服に挑戦しましょう!!」

銀「えっ!?私はこれだけでじゅうb」

 

ゴスロリ系〜。

須美「うんいい!いいわ銀!!」

銀「いっ!?」

 

セクシー(?)系〜。

ちひろ「おー!似合ってますー!!金メダルです!!」

銀「なんでそこで金メダル!?訳わかんないぞ!?」

 

王道のキュート系〜。

園子「打点高いですね〜これはホームラン間違いなしです〜」

銀「だからわけわかんないって!!」

 

そして…カツラも利用したアニメ系!

須美「おぉ…!これはこれで…!!」

銀「いやなしだろ!!これはなしだろ!!」

須美「ありありありありありあり…」カシャカシャカシャカシャ

 

銀「むー…」

ちひろ「こっち来ましょうー?私事実しか言ってませんよー?」

銀「事実かもしれないけど例えがオーバーだった。金メダルとかホームランとか。」

ちひろ「私は金だけですよー…」

須美「はぁ…よかったわ。私、このためだけに生きてきたのかもしれない。」

銀「いやなんでだよ!?」

(ちっひーが言ってることに間違いはないよね〜まあミノさんもこれ以上やると帰っちゃいそうだしここまでにしとこ〜!)

園子「じゃあ、次はわっしーだね!」

須美「えっ!?」

園子「ん〜?もしかして自分の番は来ないとか思ってた〜?甘い甘い〜!!ミルク特盛コーヒーのように甘いんよ〜!」

そう言ってクローゼットからドレスを取り出す。

須美「ダメよ!!百歩譲って着替えは認めるとしても!そんな非国民的衣装は!!」

銀「いや、似合うと思うな!」バンッ!

ちひろ「あ、銀さんが立ち上がった!」

須美「まさかそのっち、ここまで計算済みで!?」

園子「さあどうでしょうか〜!」

(ミノさんの着替え見た時のわっしーの反応以外は想定内だよね〜!)

銀「さあ着替えの時間だ!!」

ちひろ「大人しく着ましょう!!」

須美「待って!!そ、そうだ!!ちひろちゃんやそのっちのも見たいわ!!2人のを見せてくれたら来てあげる!!」

園子「お〜!じゃあ着よっか、ちっひー!」

ちひろ「うん!」

須美「えっ!?」

園子「今回は何にする〜?わっしーたちと合う感じのがいいよね〜。」

ちひろ「銀さんのもドレスっぽいし、長いけど厚みはないスカートのドレスとかは?」

園子「お、いいね〜!じゃあ私は半袖短いスカートのドレス〜!」

ちひろ「わぁー!絶対似合うよそれー!」

須美「う、嘘でしょ…なんで全く躊躇しないの…」

銀「いやまあ…ちひろも園子も最高位家だし、よく家行き来してるんだろ。多分服も何回も着せ合いっこもしてる。」

須美「判断を誤った…!!」

 

園子「じゃ〜ん!!」

ちひろ「どうですかー?」

銀「2人ともナイス!!よく似合ってる!!」

須美「ブフゥ!?な、なんて可愛いの…写真…写真を…」ブバァァァァァァァ

園子「別にいいけどちゃんと来たからわっしーも着てね〜」

須美「あっ。」クルッ

銀「ちょいちょい鷲尾さんちの須美さんや、そこで逃げるのは人情がまかり通らんでしょうや。」ガシッ

ちひろ「今度こそ着替えてくださいねー!!」

須美「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ーーー須美sideーーー

(結局、着替えさせられてしまった…)

須美「無念!」

銀「お、いいじゃん!!最高に似合ってる!」

須美「…え。」

園子「これならアイドルにだってなれるね〜!!」

須美「…そ、そんなはず…」

ちひろ「私ファン1号なりますよー!」

園子「あー!ちっひーズルい〜!私2号〜!!」

銀「なんだかんだ1号は譲るんだな…」

(…ありえない。こんな異国の衣装が似合うはずなんて…)

須美「な、ない…絶対にありえないわ…正気を保つの鷲尾須美…こ、こんな…非国民的洋服…可愛いわけ…ある…のかな…

…はっ!?」

 

ーーー夕方ーーー

須美「心頭滅却心頭滅却心頭滅却!!」バシャッ!!!バシャッ!!!バシャッ!!!

(不覚!大和撫子である私としたことが一時でも異国の文化に流されそうになるとは!!)



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7話 だんらん

ーーーちひろsideーーー

楓「やだ!無理!!」

ちひろ「えー!せっかく私が取り付けたんだよー??」

楓「どーせまたお役目に邪魔されるもん!!」

ここな「えぇ…いつものしっかり者のあなたはどこいったのよ楓…」

楓「なくなるくらい無理なの!!前もあれだけ勇気振り絞ったのに!!」

天音「あれはかなり酷でしたわね…神樹様も少しは空気読んでもらえるとありがたいのですが…」

教室に響き渡る楓の芯の抜けた声と私たちの説得声。

今私たちは、かつて憧れの須美さんへの挨拶のチャンスをバーテックスにふいにされた楓の説得に乗り出していた。

楓「ともかく!無理なもんは無理なの!!」

 

ここな「どうするー?須美さんたちに会える日って今日だよね?」

ちひろ「うん。そりゃ駄々こねるとは思ってたけどここまでとは…」

天音「あのままじゃたとえ核が落ちてきたとしても動かなさそうですわ…」

ちひろ「サラッと例えが怖いよ天音。しっかしどうしたもんか…」

ここな「別なとこから攻めるしかないね。園子さん達に頼ろ。」

 

ちひろ「…ってことなのー。助けて園姉ー!」

銀「なるほどなぁ…桐生さんは私も集会でたまに話してるの見たけど、確かにテンパリ具合が尋常じゃなかった。」

園子「いつもならみんなのまとめ役してるんだけどね〜。まさかわっしーに憧れてるとは〜」

須美「すごい嬉しいけどその分、あの時その彼女の勇気を踏みにじったという事実が心に刺さるわ…」

天音「いや、仕方ないですよ。お役目ですもの。先生の話からして自分でタイミング選べるわけではないでしょうし。」

銀「す、鋭い…!あ、そうそう!はいこれ前のうどん代!」

天音「え?別に返されなくても…」

銀「いいのいいの!私がなんか嫌なだけだからさ!」

ここな「ともかく!今日取り付けちゃった以上どうにかして一日でカタをつけないと!」

須美「別に私は別な日でも…」

ちひろ「1度通っちゃうと次からも通るはずだーって楓が頑固になっちゃうと思うんですよー。だからですねー…」

(とはいえ…ほんとにいい考え浮かばないー!!どうしよー!!)

園子「…はっ!!」

銀「んお?」

須美「その声、まさかそのっち…」

園子「うん!ピッカーンと閃いた!!」

天音「本当ですか!?乃木さん!」

ここな「で、どんな案ですか!?」

園子「ふっふっふ〜…わっしーに多分すこーし嫌なことしてもらうけどそれでもいい〜?」

須美「あの時の贖罪になるなら少しくらい問題ないわ!!ドンと来なさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜ちひろの夢〜〜〜

銀「うわっ!すげぇ…」

園子「一面お人形さんだらけだ〜!!」

ちひろ「どうですかー?私が偶然みっけた人形畑!!」

須美「日本人形もある!!素晴らしい功績だわ!!ちひろちゃん!」ナデナデ

銀「持ってかえって弟たちに渡せる!サンキューな、ちひろ!」ナデナデ

園子「サンチョのお友達がたくさ〜ん!ありがとね、ちっひー!!」ナデナデ

ちひろ「えへへ…/////そんなに褒められても何も出ませんよ〜//////」

 

 

ちひろ「って、夢を見たんです!」

銀「園子ほどはぶっ飛んでないな…」

須美「日本人形が咲く畑なんてあるのかしら…あったらぜひ行きたいけど。」

園子「ちっひーが幸せそうで私は何よりだよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー図書館、楓sideーーー

(はぁ…なんとか回避はできたけどまだ諦めてはないっぽい…じゃなきゃ予行練習なんてさせないもん…)

 

ちひろ『…楓、ホントに嫌なの?』

楓『…うん。』

ちひろ『この機会逃したら次は1ヶ月後になるよ?』

楓『うん。』

ちひろ『それでも嫌なの?』

楓『うん。』

ちひろ『はぁ…なら仕方がないよね…』

楓『…!』

ちひろ『どう天音、アポ取れた?』

天音『はい、バッチシ、ってやつですわ。』

ちひろ『よし、ありがとね!』

楓『…何?今の。』

ちひろ『何って天音と話しただけじゃん。』

楓『違う!アポってなんの!?』

ちひろ『んーとね…だってせっかく時間空けておいてもらったんだし、どうせなら白人の方と予行練習でもしようかなと。』

楓『なっ!?』

ちひろ『須美さんとは!できないんだよね?』

楓『うぐっ…』

ちひろ『…よし、成立!前の通り街の図書館集合ねー!』

 

(まあ実践なりそうな時は粘ればいいし…須美先輩にはホントに申し訳ないけど。)

楓「さて、確かこの机…よね。」

「も、もしかしテ、あなたが楓さんデスか?」

楓「あ、はい。あなたは…」

オシワ「天音カラ言われて来まシタ、オシワ・ミスです。今日はよろしくお願いしまス。」

楓「あなたがですか…天音の友達の桐生楓と言います。よろしくお願いしますね。」

オシワ「桐生と言えば…大赦ノ家のですカ!?」

楓「はい、ただ私はあまりそういう権力に縛られるの、好きじゃないので…一族とはあまり関わらないようにしてるんですよね。」

オシワ「なるほど…余計ナこと聞いてすみません。」

楓「いやいや!誰もが思うことですし気にすることは!」

オシワ「寛容なんですネ…ありがとうございます。今日はいっぱい話まショウ。」

 

オシワ「デ、そこで活躍シタのがこの大和なのですヨ!!」

楓「おー!それは知らなかったです!天音の家でたまに本は読ませてもらうので名前だけはなんとか知ってましたが…そこまで有名だとは…!」

オシワ「イエ、知ってるだけ素晴らしいと思います!今となっては遠い昔の話、歴史ハ忘れ去られがちですカラ。」

楓「そうですね…おまけにウイルスのこともありますし…歴史を風化させない何かがこの先必要になりそうです。」

オシワ「今がアルのは神樹様のおかげですガ、その神樹様が出来上がるまでこの国ヲ守護してきたノハ先人達や数々の軍備ですからネ…忘れ去られるなどあっていいはずがないデス。」

楓「ですね…好きな食べ物はやはり?」

オシワ「うどん!」

楓「ですよね!ついでに私は天ぷらうどんが好きです!」

オシワ「私ハ梅干しや大根おろしをのっけたモノが。」

楓「そんなのもあるんですね…やはりうどんの世界は広いです。」

オシワ「今となっては神樹様の結界内だけニなってしまったこの世界デモ、うどんの大きさは留まらない…もしやうどんこそ世界を救う鍵ナノデハ?」

楓「それは小さい頃に考えたことありますね…ただ無理です。どうやら壁の外に住まうウイルスの変異種は、うどんに見向きもしないと文献に…」

須美「なん…ですって…そんな馬鹿な!!」

楓「私もそう思います。でも相手は人類すら容易に滅亡させるウイルスに適応したもの…わかりあえないんですよ…」

オシワ「そう…デスカ…残念すぎますネ。」

楓「ええ…しかし天音が白人の方と友達だとは…確かほんのひと握りしかいないって聞いてたので…」

オシワ「あ、アー…それはデスネ…」

園子「あ、楓ちゃんだー!」

銀「やっほー!元気かー!」

楓「あ、三ノ輪さんと園子さん!2人も来てたんですね!」

銀「今日は須美と勉強会の約束してたからな〜あと銀でいいよ、名字で呼ばれるのなんか背中がムズムズするからさ。」

(なるほど…銀さん、中学生なったら絶対後輩から男女関係なしにモテそう。)

地味に恋愛話が好きなのでそんな分析もしてみる。

楓「須美先輩は?」

園子「今ちょうど呼びに来たとこ〜」

(まだいないのか…よかったよかっ…ん?)

楓「呼びに…来た????」

園子「うん!ね、わっしー!!」

そう言いながら園子さんはオシワさんに声をかける。

楓「園子さん、その人は須美さんじゃなくてオシワさ…」

(…オシワ?オシワを…逆から読め…ば…)

楓「 ・ ・ ・ す、すすすすすす!!須美先輩だったんですか!?」

須美「ふぅ…血のにじむような思いだったわ。」

銀「お疲れさん。なかなかの演技だったぞー。」

須美「二度とやらないわ、この私の護国心に誓って。」

園子「え〜似合ってたのに〜」

楓「す、すいません!!大変な不敬を!須美先輩だとつゆも思わなくて!!話も私に合わせてもらって…」

須美「それは違うわ、桐生さん。それこそ白人っぽく言い方とかは工夫したけど、話の内容は正真正銘、私の話したいことを話したの。」

(え…)

須美「むしろ桐生さんの方が合わせてくれてたじゃない。すごい楽しかったわ。ありがとね。」

楓「で、でも、私…」

須美「オシワとしてとはいえ、私とあんなに話したのよ?大丈夫、あなたはもう緊張せずにいけるはずよ。もう一度、もう一度だけ勇気をだして…改めて、鷲尾須美としてよろしくね、桐生さん…いや楓ちゃん。」

(勇気…あの時は邪魔されたけど…今度こそ…!!)

楓「…はい!これからよろしくお願いします!須美先輩!」

ちひろ「ついに言ったー!!!」

天音「おめでとう、楓。」

ここな「いやー疲れた。ホントに疲れた。」

(ここなにちひろに天音!?その様子まさか!?)

楓「ずっと見てたの!?」

ちひろ「あんなタイミングよく園姉たち現れた時点で察そーよー。」

天音「実はこの図書館、ここなの親戚さんの管轄らしくて。」

ここな「へっへーん!」

楓「ここな…あんた唯一一般かと思ってたけどそうじゃないのね…」

ここな「まあ調べてみたら偶然そうだったってだけだけど。」

銀「知らなかったのに提案したのかよ…」

園子「結果良ければ全てよ〜し!」

須美「そうね。じゃあ勉強会しましょう。」

ここな、銀、園子「「「えっ。」」」

銀「す、須美?それはあくまで作戦のための…」

園子「そうだよわっしー、作戦は成功したんだしする意味が〜…」

須美「何を言ってるの?私はずっとやるつもりだったわよ?」

天音「役立ちそうな本もたくさん持ってきました。」ドサッ

ここな「意外と力持ちだよね天音って…じゃない!!私は急用あるのでここらで…」

ちひろ「せっかく上手くいったんだし祝勝会がわりにやらなきゃ!功績者は逃がさないよー!」ガシッ

ここな「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」

銀「やべぇ!ここなが捕まった!!」

園子「撤収撤収〜!!」

須美「こら!2人とも待ちなさい!!楓ちゃん!」

楓「須美先輩の頼みとあらば!」

銀「今の腹心みたいなセリフでカッコよ…うわああああ!!!」

園子「ミノさんまで〜!!」

須美「そのっち♪」

ちひろ「園姉ー!」

園子「うっ…うう…いやあああああああああ!!!!」

その後、大橋南博物館に「休館日にはしゃぎ回る少女たちの霊が出る」という噂が囁かれることになったのを、彼女たちは知らない。



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8話 ゆめ

ーーー教室、銀sideーーー

今は昼休み!園子と須美と3人で黒板にお絵描きしてまっす!!

銀「須美のそれ、なんだ?」

須美「翔鶴型航空母艦の二番艦…瑞鶴よ。」

園子「お〜すごいリアル〜!!」

須美「でしょ。旧世紀昭和の時代に数々の戦いで主戦力として戦い、最後まで囮としてこの国に貢献した最高の空母よ!!」

(ほへー…初めて知った…)

銀「そういや須美ってそういうのやたら詳しいよな…」

須美「それは、夢は歴史学者だもの!」

(うおっ!それはなんともまあ…)

銀「相変わらず真面目だなぁ、須美って。」

園子「すごくわっしーぽくていいと思う〜!」

須美「そのっちはなんかあったりする?」

園子「小説家とか〜!時々サイトに投稿してたりもするんよ〜!!」

(おー!こっちも園子らしい…)

須美「なるほどね…確かに独特の感性を持ってるもの…」

園子「2人も登場人物として出したいな〜!優しくて頼れるミノさんに、真面目で時々面白いわっしー!!」

須美「時々面白い…?」

銀「つまらないよりはいいだろ。」

須美「それはそうだけど、私も少しは頼ってほしいわ…」

銀「私、そうやっていじける須美の顔、好きだな!」

須美「そんなふうに褒められても…」

園子「おお!なんかいいよ今の2人!写真撮ろうか?」

銀「お、はいピース!」

須美「え!?ちょっ…」

園子「パシャリ〜!素敵な1枚撮れました〜!!」

(まあ事実だしな〜仕方ない!!

…あれ?この流れ…)

須美「そ、そういう銀はどうなのよっ!!」

(やっぱしか…!!)

銀「そうだな〜、幼稚園の頃はみんなを守る美少女戦士がよかった。」

須美「わかる!!お国を守護する正義の味方!!これこそ少女の憧れよ!!」

(それは違う気もするが…まあなんとかごまかせたかな。)

園子「じゃあ今は〜?」

(前言撤回。無理だった。はぁ…ここは素直に言うしかないかぁ…恥ずかしい。)

銀「…えへへ。」

園子「ん?なんで照れたの?気になる!」

銀「いやぁ、その…家族っていいもんだからさ、普通に家庭持つのもいいかなって…」

須美「…それって、つまり…?」

銀「夢は…お、お嫁、さん。」

(…くぅー!やっぱり恥ずかしい!!顔から湯気出そう!!)

須美「わぁ…!」

園子「ミノさんならすぐ叶うよー!だってこんなに可愛んだもんー!!」

須美「白無垢が楽しみね!」

銀「やめろってー!ただでさえ恥ずかしいんだからさー。」

園子「小説のネタにするね〜!!」

(…はい???)

銀「えっ。」

園子「だから〜、小説のネタに〜」

銀「それはやめろー!恥ずかしいから!ホントに!!」

園子「ふぁーい。ふぁかったからやめふぇー。」

須美「…小説、ね…」

 

ーーー夜、須美sideーーー

(あった!これがそのっちの小説…)

須美「すごい高評価!読者もいっぱい…」

(さすがそのっちってとこかしら。)

須美「…あ、そうだわ!!私も小説を通して、護国思想を広めていけば!」

 

ーーー翌朝ーーー

須美「ふ、ふふ…評価はどうかしら…」

 

『あまりに堅苦しく、読んでくのが大変。』

『護国思想って言葉が453回も出てくる。』

『小説ってよりは洗脳。』

『まず読み手のことを考えた方がいい、物書きの基本。』

 

バシャッ!バシャッ!

須美「我が国の素晴らしさを伝えられない己の筆力が憎い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜園子の夢〜〜〜

園子「ねえわっしー、こっち向いて〜♪」

須美?「いいえ、私はわっしーではないわ。」

園子「え?」

国防仮面「私の名は…富国強兵!正義の味方!!全員気をつけーっ!!憂国の戦士、国防仮面!!」

ちひろ「おぉ…!」

銀「ローック!!」

園子「かっこいい〜〜!!」

〜〜〜閉幕〜〜〜

 

 

園子「って夢を見たんよ〜」

銀「園子はまた変わった夢見てんなー…」

園子「わっしーがね、こんな感じの衣装で正義の味方してたよ〜」

須美「あら、オシャレな格好。」

銀「ローック!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー昼休み、天音sideーーー

今は昼休み。

私たちにとっては雑談の時間です。

ちひろ「で、銀さんの夢がなんとお嫁さん!!素敵じゃない!?」

ここな「あの人が…そういえばお姉さんだもんね、家族のありがたみはよく知ってるわけか。」

楓「須美先輩は歴史学者…すごく先輩らしいよね、そういうところに憧れる。小説も読みやすさは置いといて意思はこれでもかと伝わったし。」

天音「そういえば楓の夢って…」

ちひろ「確か先生とかじゃなかったっけ?」

楓「前まではね。今は違うの。」

ここな「マジで!?1か月前くらいまではそれだったと思うんだけど!?」

楓「今はね…大赦の改革が夢。」

ちひろ「…改革を?」

楓「うん。私が権力大っ嫌いなのは知ってるしょ?」

天音「確か親族の方々が結果第一主義なんですよね。私もあまりあの人たちは好きになれませんし…」

ここな「天音が好きになれないとかどれだけよ…」

楓「だから、大赦のトップになって、権力が過剰なほどの意味を持たない、自由な世界を作る。」

(なるほど…楓らしい…でもそれって…)

ちひろ「でもそれって誰よりも権力持つことにならない?大丈夫?」

楓「承知の上。銀さんに言われたの。『どうしても家族のことが好きになれないなら、迷惑だけでもかけちゃえ!親なら子供にかけられる迷惑嫌じゃないはずだから。』って。まあうちの親なら絶対嫌がると思うけど。」

天音「違いないですわね。」

ここな「ほへー…でっかいねぇ…まあ私には劣るけど。」

楓「じゃあここなのは?」

ここな「そりゃもう写真家でしょ!!」

(…さすがに大赦のトップが写真家に劣るとは…)

ちひろ「大丈夫?頭おかしくなった?」

ここな「なってないわよ!!私の夢は世界の全てを写真に納めることなの。それこそ壁の外もね!!」

楓「それウイルスで死ぬしょ…」

ここな「それに関しては対策を考える、これから。」

ちひろ「えー…」

天音「要は天まかせ、ということですね。」

ここな「ナイス翻訳天音。」

楓「多分ディスられてるわよどっちかっていうと。」

ここな「響きがいいから問題ない。天音は?」

天音「私ですか?そうですね…」

(一応あることにはありますが…実現可能かどうか…)

ちひろ「お、なになに?私も気になる!」

楓「案外、天音も銀さんみたいに家庭系かもね。」

ここな「イメージにぴったりハマるわ。」

天音「図書館の司書さんですね。」

ここな「違うじゃん。」

楓「いやかもって言ったじゃん…」

ちひろ「司書さんかー!理由とかってあったりするのー?いやまあ夢ならあるか。」

天音「もちろん!私、全ての知識が集まる図書館を作りたいんです!」

ここな「全ての知識??どゆこと?」

天音「伊予島家が保有してる歴史書の数々はもちろん、上里家や乃木家の本もある図書館です。この世には隠れた才能がたくさんいます。その人たちの発見に貢献できれば…と小さい頃から思ってたんです♪」

楓「なるほどね…ずっと本を通して歴代の偉人に触れてきた天音だからこその着眼点だわ…」

ちひろ「みんな壮大で応援しがいあるなー!!」

天音「ありがとうございます。そしてちひろのは?」

ちひろ「えっ。」

ここな「いや当たり前でしょ?」

楓「逆に来ないと思ってたの?」

ちひろ「うー…だってないんだもん…」

(なるほど、なしと…え?)

楓「…ホントに何もないの?」

ちひろ「うん。空っぽ。」

ここな「大丈夫?虚しくない?」

ちひろ「みんなや園姉いるから虚しくないよ!!それに夢はないだけでやりたいことはあるし…」

天音「ならそれを、もしかしたら夢と言えるかもしれませんし。」

ちひろ「うーん…私って結構ボランティアとか、あと裏で支えたりするの好きだからさ…大人になったら大切な人を裏から支えられたらいいなって。」

ここな「おお…一番立場でっかいちひろが一番一般的にありそうな感じ。」

楓「めちゃくちゃいいと思う。私は応援するわ。」

ちひろ「ありがとう!まあ今のところそれ以外決まってないんだけどねー…このままだったら一番ありえるのが楓だけど。」

楓「私!?」

ここな「まあ大赦のトップだし支える人はいるよね…」

(トップを支える…なるほど。)

天音「今のここなの発言で閃きました。ちひろの夢は秘書やマネージャーがお似合いでは?」

ちひろ、ここな「「それだ!!」」

楓「天音ナイス!!」

天音「礼を言われるほどではないですよ、だって思ったことを言っただけですもの。」

ここな「出た決め言葉。」

天音「決め言葉…!?」

ちひろ「よく言ってるよね。あと貴重な動揺姿…」

楓「かえってアレに見えなくもないけど、毎回相手が分かってると知っててもそう言う謙虚なとこも天音の魅力だよね。」

ここな「そうだね〜一番の博識だし。」

ちひろ「何より優しいし!」

天音「ま、待ってください…いつから夢公開が私の褒めちぎりタイムに…さすがに照れますよ…」

ここな「それはそれで貴重!学校じゃなきゃ写真撮る!」

楓「それだけ感謝してるってこと。」

ちひろ「うんうん!」

天音「それを言うならみなさんも…」

ちひろ「知ってる!まあ結論から言うならみんなお互いに感謝しまくってるんだよ!」

ここな「ちひろにまとめられたのがなんか屈辱的だけどそういうことだね。」

ちひろ「なんでよ!私一番成績いいんだし問題ないじゃん!!」

ここな「それはそれ、これはこれ!」

楓「2人とも喧嘩しないの。もうすぐ昼休み終わるし、散々夢の話したじゃん?個人的に一番あってほしいことって「ずっと4人仲良しでいられること」になってるんだけど今、どう?」

ここな「おお…」

ちひろ「一番まとまってる…」

天音「素晴らしいです!」

楓「でしょ?これからもよろしくね、3人とも!」

天音「私もお願いします、みなさん。」

ここな「3人ともよろしくね!」

ちひろ「ずーっと友達でいようね!!」



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9話 ともだち

追記 タイトル入れ忘れてました…()


ーーー学校、須美sideーーー

安芸「もうすぐ1年生とのオリエンテーションです。6年生としての自覚を持ち、しっかりと後輩の面倒をみること。」

 

園子「…って、言われたけどさ〜オリエンテーションって何するの〜?」

銀「超ざっくり言えば1年生と仲良く遊びましょってこった。」

麻里「4人1組でね〜!この3人の中に放り込まれるとさすがに居づらいけど。」

銀「大丈夫、仲間はずれになんかしないから。」

園子「4人で仲良くやろ〜!!」

(ふふ…ふふふ…)

須美「相手は真っ白な1年生…」

麻里「ん?鷲尾さん雰囲気が怖いよ??」

須美「そして私たちに神樹様から課せられしお役目はこの偉大な御国を守ること。それ即ち!」

園子「即ち〜?」

須美「未来を見越し、子供たちの愛国心を育てることもまた、任務の一環と言えるわ!!」

銀「いやそれは言えないだろ…」

麻里「鷲尾さんってたまにスイッチ入ると壊れるよね…」

銀「ああ、そこが可愛いとこでもあるんだが…」

園子「でもなんだか楽しそうだし私たちはそれで行こ〜!」

銀「私はいいけど…麻里はいいのか?苦言呈したそうな感じだったけど。」

麻里「万事OK!私のポリシーは全てを楽しむ!護国だか愛国だかわからないけど楽しんでくれるわよ!!」

園子「じゃあ決まりだね〜計画立てよっか〜…ん?」

パサ

そのっちが筆記用具を取ろうと机に手を入れて、出してきたのは謎の封筒。

須美「…?そのっち、それって…」

園子「あれあれ〜?中にお手紙入ってたんよ〜」

銀「果たし状!?」

須美「気をつけて!不幸の手紙かもしれないわ!!」

麻里「いやラブレターが王道でしょ。」

園子「えーっと…『最近気がつけばあなたを見ています。』」

銀「やっぱり決闘か!場所はどこだ!?」

須美「呪いだわ!今すぐ清めの塩を!!」

麻里「いやだからラブレターでしょ…」

園子「『私はあなたと仲良くなりたいと思います。』」

銀「へ?」

麻里「ほら言ったでしょ?」

須美「ただ呪うよりも恐ろしい文だわ…」

麻里「鷲尾さんはどうしてそうなったし…」

園子「『お役目で大変だとは思いますが、だからこそお力になりたいと思っています。』だって!!」

銀「こ、これまさか…麻里の言う通り最初にラが付くアレじゃないか…?」

須美「羅漢像?」

麻里「違う!ラブレター!!」

須美「ああ、そう…」

(へー…そのっちにラブレターねぇ…)

須美「 ・ ・ ・ ラッ!?ラララララララブラブ…!」

園子「わぁ!私ラブレターもらったんだ〜嬉しいな〜!!」

銀「す、すごいな…!初めて見た…!」

ちひろ「おめでとう園姉!!」ヒョコッ

麻里「上里さんはどっから出てきたの!?」

銀「相手は!相手は誰なんだ!?」

麻里「知ってる人!?知らない人!?」

園子「名前は残念だけど書いてないよ〜」

須美「な、なななんでそんな冷静なの!?恋文をもらったのよ!?」

園子「え〜?だって字とか封筒からして女の子だもん〜」

須美「え?」

麻里「チッ。」

銀「なんだ〜…女の子かぁ…」

ちひろ「どうする園姉、今日お赤飯?」

園子「いいね〜お母さんに頼も〜!」

 

ーーー鷲尾家ーーー

須美「ただいま戻りましたー。」

お手伝い「お帰りなさいませ、お嬢様。今日、ポストにこんなものが届いてましたよ。」

そう言って出されたのは封筒。

須美「あ、ありがとうございます…」

(これ…まさか…)

 

須美「はあっ…はあっ…私にも…恋文が…!!」

(ま、まあまだ分からないもの。中を開けて確かめてみましょう。)

須美「…えいっ!」バッ

『鷲尾さんは優等生ですが、注意する時口うるさく感じます。気をつけてください。

匿名希望より』

須美「 ・ ・ ・ ・ ・ ・」

 

ボォォォォォォォォォ!!!!!

須美「ノウマクサンマンダ バザラダン センダン マカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン!!

紙切れ1つに色めき立つとは…何たる不覚!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜ちひろの夢〜〜〜

銀「真っ赤に燃やす熱き魂!勇者レーッド!!」

須美「その淑やかさ、流水がごとく。勇者ブルーッ!」

天音「天に咲かす優しさの花。勇者イエロー!」

楓「固く、強いその意思大樹がごとし!勇者グリーンッ!」

ここな「歌う星々。勇者ピンク!」

園子「その麗しさ、世界一!勇者パープルなんだぜ〜!!」

ちひろ「舞い散る氷花!勇者シアンッ!!」

全員「7人合わして!神樹戦隊勇者ジャー!!」

 

 

ちひろ「って、夢を見たんですよ〜!!」

銀「私がレッドか〜!分かってるじゃん!!」ナデナデ

園子「私のこともよく見抜いてる〜さすがだよ〜!」ナデナデ

須美「もしかしたら実現するかもしれないわね。その時は頼らせてもらうわ、ちひろちゃん。」ナデナデ

ちひろ「わかりましたー!えへへ…/////」

 

ちひろ「という2段階の夢を見たりしましたー!」

銀「結局最後は撫でられるところに行き着くんだな…」

園子「ちっひーらしいんよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーープール、麻里sideーーー

今日は日曜日、みんなでオリエンテーションの作業をするつもりだったけど、あまりに暑すぎるとのことで急遽プールに来ていたのです。

(しっかし1本の電話で急遽貸し切りにできるって乃木家強すぎない??)

銀「ほーらほら、行くぞ園子ー!」

園子「あはは!お願いミノさん〜!」

ちひろ「私も!目指すわ竜宮城!ですよね!」

銀「ああ!」

麻里「あ、ちょっと待って3人とも!置いてきぼりはご勘弁!」

須美「いち、に、さん、し…」

園子「わっしーはいつまで体操してるの〜?」

銀「早く入って遊ぼうよー!」

須美「いい?水の事故ってそこそこ多いのよ?それにちゃんと準備運動してから入らないと心臓がビックリしちゃう。」

ちひろ「貸し切りなんですしいいと思うんですけどねー…須美さんだけやってるのもあれだし私もやろーっと!」

麻里「じゃあ私もー!」

園子「ねえねえ〜、もし今お役目の召集かかったら水着で行かなきゃなんないのかな?」

銀「マジで?それは勘弁だな…ま、イレギュラーなんてそうそう起こらないだろうけど。」

須美「油断は禁物よ。そもそも最初のお役目も想定されてたより早かったんだから。」

(ふーん…あの瞬間移動、どういう仕組みで起こってるのか疑問だったけど神樹様直々に呼び出されてるのね…)

麻里「私の理解が及ぶ世界じゃないなー。3人ともいっつもお役目のあとは怪我してくるし楽しんでる暇もなさそう。」

ちひろ「確かに楽しめはしないかも…ただ仲良くなった今は訓練とか結構楽しかったですよ?」

麻里「それマジ?私もお役目選ばれたかった…」

須美「選ばれたくて選ばれるものなのかしら…」バシャッ

銀「どうなんだろうな、少なくとも私は知りもしなかったぞ。」

須美「私もね。鷲尾家に来たのもお役目に選ばれたからだし。」

園子「私はほんのちょびっと〜?」

ちひろ「お母さんからそれっぽいのは。」

麻里「待ってみんな全然知らなかったんじゃん。これ私大丈夫?「お前は知りすぎた。」的なセリフとともに殺されない?」

園子「そんなこと言いながら顔笑ってる〜!」

麻里「そりゃそうでしょ!そんな漫画あるあるを身をもって体験できるんだもん!」

銀「体験してすぐ死ぬかもしれないけどな。」

ちひろ「最後まで人生謳歌ってしてみたいですよねー!」

麻里「でしょー?」

須美「普通は楽しめないと思うわその状況…銀、競争しない?」

銀「いいね、乗った。」

ちひろ「あー!じゃあ私もー!」

園子「わっしーとミノさんはオリエンテーション作業あるしあまり飛ばしすぎないでn…」

銀「よーい、スタート!!」

園子「きゃー!」

バシャバシャバシャ!!!

麻里「…聞いちゃいないね…」

園子「やれやれだね〜楽しそうだからいいけど〜」

麻里「賛成。」

 

ーーー北条家ーーー

銀「だふー…」カキカキ

須美「くっ…体が重い…!」カキカキ

麻里「ほーら言わんこっちゃない。」

銀「ぐぬぬ…なんのこれしき!!もうひと頑張りだ!」

園子「くす。当日が楽しみだね〜」

須美「…ありがとう。」

銀「ん?」

須美「3人のおかげで、最高のオリエンテーションになりそうだわ。」

麻里「いえいえ!むしろ私を加えてくれてありがたいよ!須美ちゃん!」

須美「…こちらこそ、いえいえよ。麻里。」

園子「こうしてさらに友達の輪が広がったのでした〜まりりんって呼んでもいい?」

麻里「気に入った。」

園子「やっふ〜い!!」

銀「よし、本番に向けてラストスパート!頑張っていこう!!」

麻里、須美、園子「「「おー!!」」」

 

ーーーオリエンテーション日、須美sideーーー

ポン、ポン、ポン

1年生『…?』

銀「さあ!海の向こうから悪い怪物がやってくるぞー!大変だ大変だー!」

麻里「ずしーんずしーん。なんて綺麗な所なんだー。この土地をよこせーガハハハハ!!」

銀「図々しい怪物はこんなことを言ってるぞ!君ならどうする!?」

1年生A「えっ?えっと…逃げる?」

銀「それだと、怪物にここを取られちゃうぞ!」

麻里「グハハハハ!私のモノは私のモノー!お前らのモノも私のモノー!!」

1年生A「じゃ、じゃあどうしよう…」

1年生B「はい!」

銀「はいそこの君、なにか思いついたかい?」

1年生B「戦う!」

麻里「戦うだぁ〜?お前らみたいなちっぽけなのになにができるっていうんだ!ワハハ!!」

銀「それはどうかな?私たちには神樹様がついている!勇気を出して戦いましょう!そう!国防仮面とともにー!!」バッ

1年生A「…何も書いてないよ?」

銀「あり?ホントだ。じゃあお姉さんに続いて呼んでみようか。せーの!」

1年生『国防仮面ー!!』

ガラッ!!

須美「国を守れと人が呼ぶ。」

園子「愛を守れと叫んでる。」

須美、園子「全員気をつけ!!憂国の戦士!国防仮面、見参!!」

1年生『わー!!!!!』

須美「さあ、今日はみんなで楽しく体操しながら、国防について学んでいきましょう。」

園子「さあ!立って立って〜!」

『本日は晴天なり。これより国防を開始します。』

園子「友達とぶつからないようにね〜!」

 

 

麻里「うう!ま、眩しいいいい!!」

須美「敵は討ち取ったり!」

\わー!!!!!/

 

 

ーーー廊下ーーー

安芸「やりすぎ!!」

4人「「「「すいません…」」」」

 



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10話 よにん

ーーー鷲尾家、須美sideーーー

須美「お母さん、お茶入れたよ。」

遥「あら、ありがとね。」

土曜日。今日は銀が都合で遊べないため、お母さんの仕事のお手伝いをしていた。

遥「ただ須美、あまりお手伝いさんの仕事も取らないであげてね。」

須美「あっ…わかった。ただ何かしてる方が落ち着いて…」

遥「乃木さん達と遊ばないの?」

須美「銀が用事あるらしくて、今日は。」

遥「あらま…それなら須美も自由にしていいのよ?」

須美「もしかしたら、予定終わったら連絡来るかなって…そのっちやちひろちゃんも前みたいに突然来るかもしれないし。」

遥「ふふ…いい友達持てたのね。」

須美「うん…!」

ピロリン

(この音…グループ?)

 

銀『駅前で家族と買い物なう。』

 

園子『私はその辺ブラブラしてる〜』

 

ちひろ『私もです〜ただ…』

 

(なんだ…みんないるのね…)

 

須美『そのっちは迷子なったら名前を連呼すること。銀はお疲れ様。』

 

園子『乃木園子です。乃木園子です。乃木園子です。』

 

ちひろ『園姉とはぐれちゃってー!どこにいるのー!?』

 

須美『すでに迷子!?』

 

ーーー駅ーーー

銀「やれやれ…結局4人で集まっちゃったな。」

園子「勇者同士は惹かれ合うんだね〜!」

ちひろ「それなら私と園姉がはぐれることもないと思うから違うー!」

須美「全く…銀が拾ってくれてよかったわ。」

園子「捨て猫みたいに言わないで〜」

ちひろ「あ、せっかくですしご家族のみなさんに挨拶を…」

銀「いいって。私そういうの苦手だから。」

園子「休みの日に家族とお出かけなんて素敵だね〜!」

須美「うん。」

ちひろ「私もお父さんとお母さんが忙しいのであんまりないです。羨ましい!」

銀「いやー…知り合いに会うとなかなかにはずいな。ま、用事も済んだし、これからは3人と動くよ。」

赤ちゃん「うー…うー…!!」

銀「あー…ちょっと待ってて!」

 

銀「ほーらマイブラザー。お姉ちゃんが来たからいじけるなよー。ほーら!笑え笑え、はは…!」

 

ちひろ「…仲睦まじいですね。」

園子「見てるだけで幸せになれるね〜」

須美「ええ…」

 

ーーーゲーセン、銀sideーーー

銀「…ってことで!4人で遊ぶならやっぱゲーセンだろ!!」

須美「そういうものなの?」

園子「ミノさんが言うんだし多分そうなんたよ〜!」

ちひろ「…フフ。」

銀「あー…園子とちひろはお嬢様だし須美は来なさそうだもんな…まあやってこ!」

 

〜〜シューティングゲーム〜〜

 

銀「…須美強すぎね!?」←3位

須美「そりゃそうよ。むしろ弓を請け負ってるのに1位じゃなくてどうするのよ。」←1位

ちひろ「あー惜しかったなー…」←2位

園子「なんでみんな当たるの〜!?全然当たらなかったよ〜!?」←4位(0点)

銀「園子は一つ前のところにばっか撃ってたな…」

 

〜〜レースゲーム〜〜

 

須美「ちひろちゃん、手さばきが明らかに別人だったわよ…」←3位

ちひろ「気のせいですよー偶然上手くいっただけでー。」←1位

銀「いやいや!?カーブとか凄まじいことなってたからな!?」←2位

園子「ちっひーすご〜い!」←4位

ちひろ「えへへ…///」

 

〜〜音楽ゲーム(パネル型)〜〜

 

銀「…なあ、ちひろって実はゲーセン通いつめてるんじゃ。」←2位

須美「私もそう思うわ。」←3位

ちひろ「え、えーっと…そんなことないですよー…偶然です偶然…」←1位

園子「え〜?よく天ちゃん達とイネス行ってるのは知ってるけど〜…」←4位

ちひろ「あ!園姉それは…!」

銀「じー…」

須美「じー…」

ちひろ「あ、あはは…実は結構やってますすいませんー!!!」

 

〜〜モグラ斬り〜〜

 

銀「なぁ…いつになったら私は1位取れるんだ?」←2位

須美「スピード系はちひろちゃんに部があるからね…」←4位

園子「やっとビリ脱出〜」←3位

ちひろ「お役目以外でお父さんにも鍛えられてるのでー!」←1位

 

〜〜太鼓の鉄人〜〜

 

銀「こ、ここに来て園子が頭角を表したか…」←3位

ちひろ「同じノーミスだよ園姉!イェーイ!!」←1位(ノーミス)

園子「イェーイちっひー!!」←1位(ノーミス)

須美「私だけ大差…無念!!」←4位

 

〜〜音楽ゲーム(体感型)〜〜

銀「ついに…ついに…とったどぉおぉぉぉぉお!!!!」←1位

ちひろ「うぐぅ…負けたー!!」←2位

須美「2人とも素晴らしい動きだったわ!」←3位

園子「うんうん!しかしこうも動き回るとお腹減ってくるね〜」←4位

須美「もう正午だもの。ご飯にしましょう。」

銀「そうだな!」

ちひろ「じゃあ前食べ損ねたフードコートのを…っ電話だ。ちょっと待っててくださーい!」

園子「わかった〜!」

銀「誰からだろうな?」

須美「さあ…?いつも一緒にいる3人か、家族の方じゃない?」

ちひろ「すいませーん!お母さん達、ちょうど近くに来てるらしくて…ご飯奢ってくれるって。」

園子「月夜さん来てるの〜!?やった〜!!」

(…月夜?そ、それってまさか…)

銀「お、太っ腹!ありがたくいただこー!」

須美「ちょっと待って!月夜さんってまさかあの、伝説の…!?!?」

ちひろ「へ?私のお母さんってなんかすごいんですか?」

園子「あ〜すごいといえばすごいね〜」

銀「お、なんだなんだ?気になるんだけど!」

須美「上里月夜…西暦の巫女であり大赦の創設者の一角である上里ひなたさんをも上回る歴代最高の巫女、その力は神樹様の力を一時的に高めるとすら言われてる…」

銀「…はい!?」

ちひろ「ええええ!?!?お母さんそんなすごい人だったんですか!?」

須美「ちひろちゃんはなんで知らないの!?」

園子「私はお母さんが言ってたから〜」

銀「と、ともかく行こう!!待たせたら悪い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……園子の夢……

安芸「はははははは…!!」

ちひろ「せ、先生…?」

安芸「あなた達は、下級生を洗脳した責任として…1週間うどんを食べることを禁じます…!」

須美「…そ、そんな…」

銀「真っ赤な…嘘ですよね…先生…」

園子「あわわ…いやあ〜!!!!」

 

 

園子「わ〜〜〜!!!うどんが食べられなくなっちゃった〜!!」

須美「大変!すぐに病院に!」

銀「お前ら落ち着けー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー高級食堂ーーー

(な、なっ…!?)

目の前に展開されるは色とりどりの料理の数々。

しかも全部が最高級。

須美「こ、これ全部…」

銀「奢って…もらえると…!?」

月夜「もちろん!好きなだけ食べて!」

ちひろ「わーい!どれから食べようかなー!」

園子「ちっひー!これとかどう??」

ちひろ「うわー美味しそう!!ナイス園姉!!」

和斗「ほれ!どんどん食え食え!」

銀「あ、ありがとうございます…和斗さん…」

(…ぶっちゃけ、それどころではないわ。ちひろちゃんのお母さんがあの月夜さんだったってことがまず信じられないのに、スポーツ界に消えることなき伝説を残してる和斗さんが父親だなんて…)

須美「どんだけ恵まれたところに生まれてるの…ちひろちゃん…」

月夜「うーんそう見えるだろうけど期待以上のことはあいにくできてないのよ。全然外に連れてってあげれてないし。園子ちゃんがいなきゃどうなってたか…」

和斗「俺は四肢のうちふたつも欠損してるしな。」

銀「それであんなにすいすい動けるんですか…」ŧ‹”ŧ‹”

和斗「慣れりゃあこんなもんさ。」

須美「しかし今どきそんな大怪我するなんて…」ŧ‹”ŧ‹”

月夜「やっぱりそう思うわよね…ちょっと厳しいお役目があってね。私の事守って…」

和斗「気にすんな。あれがあったから今がある。俺は何も気にしてない。」

銀「ひょー…男前だなぁ…」ŧ‹”ŧ‹”

須美「…そうですね。私もちひろちゃんには何度も助けられてます。ありがとうございます。月夜さん達が守ったこの世界、必ず私達も守ってみせます。」

月夜「ありがとう!聞いてた通りのしっかりした子ね…ただ、そこまで気負わなくていいのよ?」

和斗「1回でかいのやったことある程度だからそこまで参考になるようなことは言えないが…

世界なんて大それたものためじゃなくて、自分達のために戦えばいいんだ。みんなと一緒にいたいから、それだけでいい。あまり背負うものがおっきいすぎると、パンクしかねないから。」

銀「…はい。」

須美「…今日は本当にありがとうございm「わっしー全然食べてないじゃん〜はーい口開けて〜!」そのっちもうちょっとまモグゥ!?」

ちひろ「銀さんも食べましょうー?代わりに取っておいてあげましたので!」

銀「お、サンキューな…って多!?」

ちひろ「どうですか?褒めてくれてもいいんですよ?」

銀「そ、そうしたいのは山々なんだけど…さすがに多すぎるかな…」

ちひろ「そんなー!?」

 

ーーー街道ーーー

銀「あーぁ。休養期間ももうすぐ終わりかー。」

ちひろ「長いようで短かったですよねー。」

園子「警戒態勢復活だね。」

須美「気を引き締めないと。イレギュラーが来ないとも言えないし。」

銀「ふふっ。オリエンテーションは少しアレだったけど、楽しかったよな。」

園子「そうだね〜」

ちひろ「1年生すっごい喜んでたって聞きました!」

須美「先生には怒られたけどね…」

銀「おっと、私だけ道が違うか。またね。」

須美「え、ぇ…」

なぜだろうか。そう言って帰ろうとする銀が

…そのまま手の届かないところまで行ってしまいそうな気がした。

須美「…っ!」ガシッ

銀「っ?須美?」

ちひろ「…須美さん?」

園子「わっしー…?」

須美「…あ!ごめんなさい。」

銀「いや、気持ちは分かるよ。」

ちひろ「休み終わっちゃいますもんねー…」

園子「そう考えると感慨深いよ〜…」

銀「私、休むのには自信あるって最初言ったけどさ、やっぱ大切なお役目だし、そこまでリラックスできるかなって思ってた。」

園子「私も〜」

ちひろ「でも実際にはそんな心配なかった、ですよね!」

銀「ああ。4人でいればなんの問題もなかった。」

須美「…」

園子「だってすっごい楽しかったもん!」

ちひろ「須美さんもですよね?」

須美「…ええ。」

銀「うん、よかったよかった!

…バーテックスが神樹様にたどり着いたら、こんな日常もなくなっちゃうんだよな。そんなこと絶対させない。なっ?」

園子「うん!」

ちひろ「できますよ、どんな敵が来ても。」

須美「私達4人なら!」

ちひろ「頑張りましょう!」

銀「ああ!…ってこれじゃ帰れないな。解散解散!」

園子「あ、閃いた!いっそお泊まり会しよ〜!」

須美「いいわね、銀の家で。」

銀「うち弟2人もいるんだぞ!?」

…絶対、乗り越えられる。

たとえどんな敵が来ても。

どんな事が起こっても。

私たち、4人でなら。



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11話 きあい

平和が続けと、少女は願う


ーーー三ノ輪家、銀sideーーー

銀「ふぃー…これで準備OKだな。さすがに須美のしおりは…うん、入らないな。」

夜、いつもの私ならテレビを見てる時間帯。

明日に控える念願の大イベント、遠足を前に、荷物の用意をしていた。

さすがに須美が作った辞書レベルのしおりは入らなかったが…

弟「ブーン…ドゴォン!!」

(鉄太…邪魔するつもりだな?)

銀「ガオー!!」

鉄太「わー!逃げろー!!」

(よし、これで数分は来ないだろう。今のうちに須美に報告っと。)

 

銀『遠足の用意終わりましたわ。』

園子『まあ奥様、私もですわ\(˙꒳˙ )』

須美『ビニール袋もいりましてよ。』

 

(初めの頃と比べると、随分とノリよくなったよなぁ…須美も。)

銀「しっかしビニール袋か…あー、汚れたやついれるためにか。どこにあったかねぇ…ん?」

赤ちゃん「スー…スー…」

銀「…ふふっ。相変わらず可愛い奴。」

鉄太「スキあり!!」ゴンッ

銀「がっ!?」

(こいつ…)

銀「よくもやってくれたな!!」ガバッ!

鉄太「うわ!」

銀「ふっふっふ。なかなか筋はいいがそのていどじゃあ勇者様は倒せないな。」

鉄太「ぐへぇ…なぁ姉ちゃん、お土産頼むよ。」

銀「まーたこいつは…そんなこと覚えよって…だが一撃与えた褒美として許可しよう!」

鉄太「やったー!!」

銀「その変わり、きちんと金太郎の世話をすること。いいね?」

鉄太「分かってるよ!俺だってお兄ちゃんなんだからさ!」

銀「…ああ、そうだな。」

鉄太「いつハイハイするかなー?楽しみだな!」

銀「うん、楽しみで顔がにやけて来そうだ。」

 

ーーー公園ーーー

銀「勇者ならやっぱ、アスレチックで遊ばないと…な!」タッ

クラスメイトA「おお…!」

須美「こういうのもなかなか面白いわね。」タッ

園子「2人とも早すぎ〜ちょっと待って〜…ってわわ!揺れる揺れる〜!?」

麻里「園子ちゃん、そんなビビらなくてもいいんだよ、楽しんでこーぜー!」

園子「でもさ〜落ちたら奈落の底って考えると〜…!!」

クラスメイトB「すごい想像力…」

麻里「何それ楽しそう!!」

クラスメイトA「えっ…」

須美「…フッ。」

(ん?今なんか須美の悪い声が聞こえた気が…)

須美「5本目のタイヤは触ってはいけません。」

園子「えっ?」

須美「触ったら最後、落ち武者の霊が毎晩枕元に〜…」

クラスメイトB、園子「「ひぃぃぃぃ!!」」

麻里「落ち武者!?それもしかしなくても会話とかできたり!?」

(麻里は置いといて…全く…)

銀「逆に怖がらせてどうするんだよ…」

須美「スリルを求めてるならと。」

銀「少しやりすぎだな。園子、もうちょいだぞ。勇者は気合と根性!」

園子「はっ!勇者は!気合と!根性!」バックルクル

園子が一気に進み、ジャンプして落ちてくるので受け止める。

銀「おっと。よしよし、よく頑張りました。」ナデナデ

園子「わ〜ちっひーっていつもこんな心境だったんだね〜!慣れたし次からはもっとスムーズにを目指しま〜す!!」

須美「…

む〜!!」ズイズイ

銀「んお?どうした須美。」

須美が私と園子の間に頭を入れてくる。

須美「仲良くしてるから私もと思って…」

銀「犬か。」

園子「ミノさんは撫でるのが上手いからわっしーも撫でられたいんだよ〜」

銀「なるほど甘えん坊さんか。ちひろもそうだしみんな世話が焼けるなぁ。」ナデナデ

須美「いつもは私が焼いてるからいいの。」フンスッ

麻里「よーし!銀ちゃん、私も受け止めてー!!」

クラスメイトA「私も私も〜」

(うおっ、一気に来たな。)

銀「何人でも受け止めてやる、ドンと来い!!」

須美「ふふ、人気ね。銀は。」

園子「元から人気だよ〜」

 

クラスメイトC「ねえ、銀ちゃん。」

銀「どうしたー?」

クラスメイトC「実は銀ちゃんのサインが欲しいって妹が…」

銀「んえっ!?」

(サ、サイン!?先日和斗さんから初サインを得たばっかの私が!?)

クラスメイトC「多分お役目についてるって聞いて憧れてるんだと…」

銀「マジか!?ついに私も憧れられる側の人間に!」バッ

タンッ

雲梯から飛び降り、我ながら綺麗な着地を決める。

パチパチパチ

須美「時間から逆算して、これが終われば昼ね。」

拓斗「誰も登れないから実質もう昼だな。」

クラスメイトA「はあ!?」

銀「ほーう?言ったな?そういうことなら私が…ほっ!」

拓斗への牽制も込めて、片手で登り始める。

銀「んー、簡単すぎて片手でいけるなー。」

拓斗「うっそだろ!?」

須美「コラ銀、ふざけないの。」

園子「落ちたら危ないよ〜?奈落の底だよ〜?」

銀「へーきへーき。こんくらい。」

その時だった。

ズキッ

(うっ!?マメが痛んで…!)

須美「危ないっ!」

銀「ミノさん!!」

ドサッ

落下するも園子と須美が受け止めてくれる。

麻里「今落ちるの見えたけど大丈夫!?」タタタッ

銀「ああ…ビックリした…」

須美「楽しいのは分かるけど少し浮つきすぎてない?お役目の重要さをもう少し考えて。」

銀「…うん…借りは返す。反省もする…口数減らします。」

 

 

 

 

 

ーーー食事時間ーーー

安芸「そうそう。上手ね、三ノ輪さん。」

銀「時々手伝ってますからね。しっかしいい匂い!絶対美味いやつ!私が作ったんだから当たり前だけど!!」

須美「口数減らすって言葉はどこ行ったのかしら…」

麻里「いいじゃん楽しければ。」

園子「わんぱくだよね〜あ、カブトムシ〜!」

須美「そのっちも十分すぎるくらいわんぱくだと思うけど…あとその虫どっかにやって。」

園子「あ、わっしー虫苦手なんだっけ?」

須美「ええ。絶対無理よ。」

園子「そんなことないよ〜?仲良くなれるから。」

麻里「対決させても結構楽しい。」

須美「…そ、そう?そのっちや麻里が言うなら…ってぎゃああああああああ!!!」

銀「どうした須美!?…ってうお!?」

視線を上げると全身をカブトムシに包まれた園子がいた。

麻里「うっひょぉぉぉおぉぉぉぉ!!!それどうやってやってるの!?気になる!めちゃくちゃ気になる!!」

須美「ごめんやっぱ無理!ゴキブリにしか見えないぃぃぃい!!!」

 

銀「あーん。美味い!最高!!カブトムシ味だな!」

須美「ひっ!?焼いてないからね!?」

麻里「実はこっそり…」

須美「嘘でしょ!?」

麻里「うん嘘。」

園子「美味しいね〜!」

銀「園子は家でもっと美味い肉食べてるだろ。」

園子「高い肉は食べててもこっちの方が美味しさは上〜♪」

須美「みんなで食べてるからじゃない?」

園子「おぉ〜!!」

銀「園子、くちくち。」フキフキ

園子「ありがとう〜はぁ〜…」

麻里「めっちゃテンション変わるねぇ。」

須美「麻里が言うの?」

麻里「私はいつでもハイテンションだよ。」

園子「わっしーもミノさんも、まりりんも、なんならちっひーもちょっとは料理できるのに私はできないから〜…ちょっと恥ずかしくなってきたんだよね。」

麻里「まー私は独り身だし。最初の頃は黒焦げしかできなくて大変だったなー!」

銀「まあ最初はみんなそんなもんだろ。あと焼きそばくらいは練習すりゃ作れるさ。」

園子「じゃあ次の日曜日4人で練習しよ!!」

麻里「おーい、置いてけぼりは許さないぞー?」

須美「わかってるわ。ちひろちゃんに言えば楓ちゃんたちも来そうね。」

銀「うわぁ大所帯。まさかまた私の家でなんて言わないよな?」

須美「え?」

銀「そのつもりだったのか…」

麻里「…ところで先生、さっきからピーマンだけ避けてません?」

安芸「ギクゥ!?ちゃ、ちゃんと食べるわよ!少し苦手なだけで!!」

須美「先生にも苦手なものってあったんだ…」

園子「そういう時は食べるとピーマンの精霊が夜に会いに来てくれると考えるといいですよ〜!」

(…それ逆効果な気が…)

安芸「そ、それはユニークね。ありがとう。スムーズに食べれるわ…」

園子「わ〜い!先生に褒められた〜!」

(顔からして予想通りだけど…)

銀「お手柄だな。ご褒美として園子がベル鳴らしなよ。」

園子「えっいいの?」

銀「ああ!」

 

銀「ここがラストだな…」

園子「勇者は気合、だよね!ミノさん!!」

銀「ああ!その通りだ!」

麻里「じゃ、パパっと終わらせよ!」

須美「いざ、尋常に!!」

 

麻里「ってことでー!」

園子「アスレチック、全制覇ー!!」

須美「成し遂げたわね。」

カンカンカンカン

 

ーーー高台ーーー

銀「うっひょー!いい眺めだなー!」

園子「ねえねえわっしー、大橋市ってあっち?」

須美「ええ。合ってるわ。」

銀「さすがにイネスや大橋は見えないなー。」

園子「ミノさん本当にイネスが好きだね〜」

銀「イネスはいいよ!だって…」

須美「中に公民館もあるから、でしょ?」

銀「げっ、読まれた。」

園子「私も!私もわかったよ!!」

銀「くぅぅ!パターンだいぶ読まれてきたか…」

園子「私は〜!?私は読める〜?」

須美「そのっちは読めないわ。」

園子「え?」

銀「まあ…いつになっても読めないだろうな…」

園子「そんな〜…寂しいよ〜…」

須美「大丈夫よ、今の反応くらいまでは分かるから。」

園子「ホントに!?やったぜフォーーーーーー!!!!!」ババババババババ

銀「…そして、ここからのはね具合が予測不可能なんだよな…」

須美「さすがそのっちだわ…」

銀「あ、ついでに須美に関しては取扱説明書書けるくらいには詳しくなったぞ。」

須美「あら、最初のページにはなんて?」

銀「結構大変な品物のため、くれぐれもご注意ください。」

須美「めんどくさい人みたいな言い方ね…納得できちゃうけど。」

銀「いーじゃん。なんか奥ある感じで。それに比べて私のなんか多分、チラシ並にペラッペラだぞ?」

須美「そんなことはないわ。かなり分かりやすいけど書くことは多いもの。」

(え?マジ?やべっ不意打ちだから少し照れくさい。)

須美「これからも色んな一面を暴いていこうと思うわ。」

銀「うへぇ…お手柔らかに頼むよ…」

園子「…実は私、最初ミノさんのこと苦手だったんだー。」

(…はい!?!?)

須美「実は私も。」

(須美まで!?)

銀「2人とも急になんだよー!?」

園子「だってね、スポーツできる上に明るくて、なんとなく種族が違う気がしたの。でも話してみたらすっごいいい人だし。わっしーもいいキャラしてる。」

須美「私はキャラ扱いなの!?」

(…そっか…そういうことか。心配して損した。)

銀「あはは!確かにそういうのって喋ってみないとわかんないもんな!気に入ってもらえたならよかった。」

そう言いつつ、手を出す。

銀「これからも友達としてよろしく。」

そこに須美が手を重ねる。

須美「ええ、もちろんよ。」

続いて園子が両手を。

園子「こちらこそ!あとこれはちっひーの分!」

銀「だな!」

 

ーーーバス、麻里sideーーー

園子「スピー…スピー…」

須美「スー…スー…」

銀「クカー…」

麻里「…ふふ。みんないい寝顔じゃん。」パシャッ

(お役目は過酷なもの。怪我してきてるんだからそれこそ命の危険だって…

…神樹様。できるなら彼女らが少しでも長く共にいられるように、どうか…)

 

 

 

 

 

 

ーーー帰宅路、ちひろsideーーー

ちひろ「ふんふんふふーん♪」

天音「ご機嫌はいかが…と聞くまでもなさそつですね。」

ここな「今日なんかあったっけ?」

楓「6年生の遠足があるわよ。」

ここな「…ははーん?さてはお土産狙いじゃな?」

ちひろ「そんなちんけなもののわけないじゃん。」

ここな「ち、ちんけ!?」

天音「これは…よっぽどいいことありましたね。」

ちひろ「うん♪だってさー日曜日にみんなで焼きそば作ろーって!」

楓「みんなってことは須美さんも?」

ちひろ「Yes」

楓「行っていい?」

ちひろ「Yes」

楓「やったね。」

天音「なら私もお願いしたいですわ。」

ここな「私もー!!」

ちひろ「いいよいいよー!みんなでやった方が絶対楽しいもん!麻里さんも来るって!」

天音「麻里さん…あの人ですね。いつも楽しそうで地味に尊敬してます。」

ここな「えっ、天音にも尊敬する人っているんだね。すでに人格完成されてるから…」

天音「そんなことはありません。まだまだ学ぶべきことばかりです。」

楓「所詮は私達小五だしね。とりあえず早く日曜日ならないかなー。」

ちひろ「それね!ほんとにすっごい楽しみー!」

ここな「あまり期待高めすぎるといざ当日ってなったらガッカリすることなるよ?」

ちひろ「それを超えるから平気だね!」

ここな「知ってる。」

天音「ふふっ。」

(幸せってこういうものを言うんだろうな〜)

ちひろ「じゃあ日曜日に向けて今日は早めに寝ること!」

楓「今日水曜日だけどね。」

ちひろ「まーまーそう言わずにー」

シーン…

ちひろ「…え?このタイミングで…??」

 

ーーー須美sideーーー

銀「マジかよ…せっかくの遠足だったってのにー。」

須美「まだ遠足中じゃないだけマシね。ちひろちゃんと合流して迎撃しましょう。」

園子「さっさと終わらせてお土産持って帰ろ!!」

銀「ああ!!」

須美「油断は禁物…だけど、勝てるわよ。私たち4人でなら、間違いなく。」

…この時はそう、思っていた。

思って、いたんだ。



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12話 こんじょう

白き少女の__力が、樹海に脈動する


ーーー樹海、ちひろsideーーー

よりにもよって園姉達の遠足の帰りに来た敵を迎撃するために、ちょうど合流していました。

ちひろ「みなさん大丈夫ですか?疲れてませんか?なんなら私が…」

銀「へーきへーき!だいぶこの景色も見慣れてきたしな!」

須美「気をつけて銀、こういう時こそ…」

銀「一番危ない、だろ?わかってるさ。それに私の服は接近戦に備えて頑丈に作られてるしな。」

須美「だからって油断は禁物よ。アスレチックでだって怪我しかけたじゃない。」

銀「うっ…」

(あの銀さんが…?)

ちひろ「珍しいこともあるんですねー…」

園子「ね〜。あと最近のミノさんってさ、わざとわっしーに注意されるようなこと言ってるみたい。」

銀「あはははっ!なんだか癖になってきちゃってさ!」

須美「勘弁して欲しいわ…」

ちひろ「っ!」

園子「来たよ!!」

壁の外から神樹様を壊すため、攻め込んでくる敵…

…今回は、2体いた。

ちひろ「…2体、同時…!?」

銀「そう来たかって感じだな…」

須美「大丈夫よ、2体だろうと私たち4人でなら!」

園子「1+1+1+1が4じゃなくて100だもんね!」

銀「私が片方相手していいか!?」

園子「うん!ちっひーは私ともう一体を、わっしーは遊撃で援護お願い!!」

ちひろ「わかった!」

須美「了解!」

園子「じゃ、行っくよー!!」

ダンッ!!

私たち3人が接近する。

片方が尻尾を使って攻撃してくるものの…

園子「ふっ!」ガキンッ!

それは園姉が防ぐ。

銀「よし!私は気持ち悪い方と戦う!」

ちひろ「どっちも気持ち悪いですよ!?」

銀「何!?じゃあ変なの浮かしてる方!!」ダンッ!!

ちひろ「分かりました!!」

銀「そぉぉぉぉぉぉいっ!!」

ガキンッ!

銀さんが敵その2に攻撃を加えようとするも、浮遊していたバリアらしき何かに防がれる。

銀「なるほど、防御用ね。分かりやすくて私向きだ。」

須美「…っ!」ビュンッ!!

ドガンッ!!

そこに須美さんの一撃が命中。

その2が大きくバランスを崩す。

銀「お、ナイス!!とりゃ!!」ドッガァァァン!!

そこに銀さんが追撃。

園子「うわぁ…あの針当たると痛そうだなぁ…」

一方で園姉はその1の攻撃を防ぎ続けている。

そのうちに私が真下に回り込み…

(ここだ!)

須美「そこ!」ビュンッ!!

私の針化クナイが尻尾の動きを止めると共に、須美さんの矢が再びヒットする。

園子「押し!込む!!」ガンッ…ドガンッ!!

そして園姉が矢をさらに押し込み、ダメージを。

ギギギ…

しかし、それでも動かそうとしくる。

園子「ミノさん!」

銀「ああ!!」

ザンッ!

ビュンッ!!

それを園姉と入れ替わりで銀さんが破壊、園姉はその2に巨大化槍の一撃を撃ち込むために突撃する。

ちひろ「邪魔はさせないっ!ジェットクナイ!!」

そして私がそれを防ごうと動くユニットを弾き…

ドガァァァァァンッ!!

園姉の攻撃が命中する。

須美「はあっ!!」ビュンッ!!ビュンッ!!

そこに須美さんのさらなる追撃が。

(優勢…変な手を使われる前に押し切る!!)

その時だった。

須美「っ!?!?遠くからなにか来るわ!!」

園子「ヤバそうだよ〜!?」

銀「全員避難!!」

ガガガガガガガガガガガガガッ

全員園姉の盾の下に避難するものの、辺り一面が矢だらけになる。

…敵その1とその2も。

ちひろ「危なかったです…」

須美「しかしこんな攻撃…あの2体は何も…」

園子「っ!見て!!奥の方!!」

銀「っ…3体目…!!」

…時間差をつけて、ほか二体より遅れて侵攻してくるバーテックスがいた。

ちひろ「イレギュラー…すぎる…!」

須美「この攻撃の範囲…そのっちの盾以外に防ぐ手がないわ!」

園子「まずいね〜…それってそもそも撃たせないようにしなきゃいけないってことだし〜…」

銀「ならあの新たに来たその3は高火力の私が怯ませる。園子は尻尾攻撃を防げるからその1、あの動く盾をスピードでかわせるちひろがその2、これでどうだ?」

キキキキキキキキン

須美「私は変わらず遊撃ってとこね。分かったわ!」

キキキキキキキキン

園子「それでいこう!矢も止まったし、散開…」

…何故か、矢が横から向かってきていた。

(あいつはずっと上からしか撃ってなかった!なんで!?)

ちひろ「園姉っ!!横!!」

園子「んえっ!?」ガキキキキキキキキ

間一髪、横からの矢も防ぐ。

銀「はぁ!?なんで…」

須美「…反射、させてる…!?」

見ると、その2のユニットが、園姉の盾にあたって弾かれた矢をさらに反射させていた。

(あれをどうにか壊せれば…!!)

銀「むちゃくちゃすぎんだろ…」

須美「でも、やるしかないのよ!」

園子「そうだね…!!」

…しかし、すぐ横にその1の尻尾が迫っていた。

4人「「「「っ!?!?」」」」

ドッガァァァァァンッ!!

ちひろ「くぅぅ!!」

バルーン化したクナイと受け身でなんとか被害を最小限に抑える。

銀さんは咄嗟に斧で防御。

…須美さんと、園姉は、直撃。

須美「かはっ!」

園子「くふっ!!」

ブォンッ!!!!

…そして、空中に上げられた2人にもう一撃、加えられる。

ちひろ「…須美さぁぁぁぁぁぁん!園姉ぇぇぇぇぇ!!!」

銀「2人とも!!!大丈夫か!?」

そう言ってる間にもその3は巨大な矢を用意。

そして…放つ。

銀「くっ!」ギギギギギギギ…

…ボオォォォォ

それだけに、収まらない。銀さんが防いだ矢は勢いを弱めないまま、徐々に熱を帯びていく。

ちひろ「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ボガンッ!!!!

… そして、爆発した。

 

ーーー陸地ーーー

銀「危なかった…助けてくれてありがとな、ちひろ。無事でよかった。」

ちひろ「銀さんこそ…」

銀「…こうしてる間にも、あいつらは出口に近づいてってる。」

ちひろ「園姉も須美さんもとてもじゃないけど動ける傷じゃないですし…やるしかないですね、2人で。」

銀「…いや、私が1人であの三体を止めてくる。」

(…何を言ってるんですか!?4人であれだったのに1人でなんて…!!)

ちひろ「無茶ですよ!!私も行きます!!」

銀「いや、そうもいかないんだ。これを見てくれ。」

そう言って銀さんが出したスマホには、例の三体と…それよりもはるかに出口に近い、一体がいた。

(嘘…いつの間に!?)

銀「多分さっき一緒に現れたんだろう。こいつがすごいスピードで神樹様に迫ってる。あれを止められるのはスピードタイプのちひろだけだ。」

(…でも…三体は…一体にだって4人でだったのに…!)

銀「大丈夫。少し離れるだけだ、すぐ戻るよ。」

ちひろ「…絶対、生きて帰ってくるって、約束してください。」

銀「…ああ!当たり前だろ?」

ちひろ「…はい。後で会いましょう。」

銀「お互い、生きて敵を倒して、な!!」

 

 

 

 

 

 

(…見えた!…小さい…!?)

高速で神樹様に向かう個体、その姿は人より少し大きいくらいに見えた。

(だから私たちからは見えなかったのか…でも、それなら…!)

ちひろ「術ももう少ない…すぐに終わらせる!!」

私の使うクナイの変形術。それには使用制限があった。

まず効果時間はどれも10秒、その時間を使い切る、もしくはクナイが破壊されることで回数が消費され、全体として使える回数が決まっている。

(残りは巨大化8に針化9、バルーン11、ジェット11…!あれは…危険すぎるからなしとして…あの三体のためにもなるべく温存しないと…!)

ちひろ「はぁっ!!」ビュビュビュン!!

クナイを敵に向けて、投擲。

真後ろからの攻撃、敵は為す術もない…

…その、考えが甘かった。

ちひろ「っ!?」バッ

ドガンッ!!

直感的に危険を感じ、地面に伏せる。

そして、私のいたところをバーテックスの拳が凄まじい速度で通っていた。

(早い!?さっきまでは確かに前にいたのに…!!)

ビュンッ!!

再び撃ち込まれるパンチが、今度は身体を掠る。

ちひろ「このスピード…私以上に…!!なら!!巨大化!!二刀流でー!!」

巨大化したクナイと小刀、ふたつを使ってゴリ押し突破を敢行する。

シュンッ!

無論敵は余裕でかわし、そのまま私に攻撃を…

(それを、待ってた!!)

される前に、小刀を振る際に上に投げといたクナイにジェットを発動、仕留めにかかる。

(ただのクナイはよけれても、不意打ちでのこれなら…!!)

シュバッ

ちひろ「うそっ…!」サッ

バキバキ…ドッガァァァン!!

…私の出せる最高速度のそれを、奴は簡単にかわした上に反撃。

巨大化クナイで防御はできたものの、そのクナイは粉々に砕け散った。

(…ヤバい…この敵…スピードもパワーも…全てが私以上だ…!!)

上位互換、それがピッタリの言葉だった。

ちひろ「…上等だ。たかが上位互換…銀さんが相手してるやつと比べれば…!!」

そう、自分に言い聞かせる。

(たとえスペックで勝てなくても私たちには知恵がある!不可能なんてものはないってお父さんも言ってたんだし!!)

ちひろ「はっ!ふっ!ほっ!!」ビュンッ!!ビュンッ!!ビュンッ!!

ドガンッ!!ドガンッ!!ドガンッ!!

当たらないもののクナイを次々と投げつつ、繰り出されるパンチをかわす。

一発目、回避。

二発目、左肩を掠る。

三発目、右脚を掠る。

四発目、身体を仰け反らせて回避。

五発目…右腹部に半分命中。

ちひろ「かはっ…!!」

口から出ちゃいけないものが出そうになる。

そして、そんな私の姿を見て敵はすぐさまに追撃を…

ちひろ「…計画、通り…!!」

グインッ!!

刹那、私の身体が後ろに引き寄せられる。

何故か、それは単純明快、私が載っていたクナイの針化が解け、刺さってる場所へ縮小を始めたのだ。

そして、それと同時に空中にバルーン化して置いといた10個、

針化のクナイが持ち手の穴に刺さり、固定されるようにしていた巨大化したクナイ6個、

その針化とバルーン化が解除され、一斉に向かうとともにたった今投げたジェットクナイ8個と、それまで私を載せていたクナイも足で外し、投擲。最後には私自身も小刀で迫る。

(方向、スピード、大きさ、威力。全てがバラバラ…でも、タイミングが合うように計算して放っていた。)

ちひろ「どれだけあなたが早くても!!全方向一気には対処できない!!私の全力!!くらえぇぇぇ!!!」ビュビュビュビュビュビュビュン!!!!!!

術の大量使用、外れれば二度と使えない。

しかし、たとえどれに対処しようとペースを崩せる。

…はず、だったのだ。

ッッッドガンッ!!!

ガラガラガラガラ!!!!

ちひろ「…う、そ…!?」

バーテックスは両手で地面を破壊、そしてその時に飛び散る破片で、全てを防いでいた。

下から迫る巨大化クナイはあまり飛ばないでかい破片、ジェットクナイや通常は高く上がる細かい破片で。

…つまり、残るは小刀ひとつで突撃してくる私一人。

飛んで火に入る夏の虫もいいところだった。

ブォンッ!!!!

無慈悲に放たれる攻撃。

パキッ

小刀でガードするも、ポッキリと音を立てて折れる。

そして…

ドガァァァァァンッ!!

ちひろ「く…は…!」

壁に叩きつけられた。

(…身体中が痛い…意識が朦朧とする…)

なんとか立ち上がるも、それが精一杯。

(負け…られない…のに…私が負けたら…世界が…みんなが…)

少しずつバーテックスは近づいてくる。

(…こうなったらアレを使って…相討ちでも倒すしかない…それしかもう…!)

 

和斗『今日、須美ちゃん達にも言ったが、戦う理由は世界守るためとか、そんなおっきいもんにするな。冷静な判断ができなくなって、自分の価値を下げることになる。』

ちひろ『自分の価値?』

和斗『ああ。"自らを犠牲にして勝つ"のと、"たとえこの身が燃え尽きても勝つ"は違う。

友達を守りたいとか、約束のためとか、そんなんでいい。自分と、自分の守りたいもののために戦え。…自分を大事にしろ、ちひろ。お前の命は、お前だけのものじゃないから。』

 

楓『個人的に一番あってほしいことって「ずっと4人仲良しでいられること」になってるんだけど今、どう?』

ここな『おお…』

ちひろ『一番まとまってる…』

天音『素晴らしいです!』

楓『でしょ?これからもよろしくね、3人とも!』

天音『私もお願いします、みなさん。』

ここな『3人ともよろしくね!』

ちひろ『ずーっと友達でいようね!!』

 

ちひろ『…はい。後で会いましょう。』

銀『お互い、生きて敵を倒して、な!!』

 

ちひろ「…やめだ。」

バーテックスが拳をかまえる。

ちひろ「…死なない。死ねない。

世界を守るため…なんかじゃない…私には…もっと守るべき…ものがある。

麻里さんを、ここなを、楓を、天音を、先生を、お爺ちゃんを、お婆ちゃんを、お父さんを、お母さんを、銀さんを、須美さんを、園姉を守るっていう…大切なお役目が…約束を守る…お役目が!

だから私は…!生きて…勝つんだ…っ!」

拳が放たれ、私へと向かってくる。

だが、それだけでは意味がないのだ。あのスピードを今避けるのは、あまりに難しい。

(…勇者は気合と根性。限界は超えるもの。動けるかじゃない…動いてみせる!!)

…ほんの、ほんのちょっとの違和感だった。

(…?)

…敵がどこに攻撃してくるかが、そしてどこにかわせばいいかが、なんとなく分かった気がした。

スッ…

ドガンッ!!

その通りに動き、完璧にかわす。

(ゾーン…とは、少し違う気がする…)

さっきまで朦朧としていたはずの頭が、人生で一番冴え渡っていた。

(…投げる振りをしてジェットクナイ。)

クナイを投げるような動きで敵を誘導し、手だけ踵を返してジェットクナイを発動させる。

そして放たれたクナイは敵を貫く。

(…よく見える、って表現が正しいのかな…相手の先?の動きも見えるし…)

バーテックスの攻撃、かわす。

こちらの攻撃、ヒット。

攻撃、掠るも反撃。

(…なんとか、渡り合えてる。でもこれじゃいずれ私が力尽きる。バーテックスは再生するからそれじゃダメ。)

名案が、浮かんだ。

1歩間違えば、やられる、そんな名案が。

(術はそれぞれ残り一つ、さらには危険な賭け…上等。)

バーテックスが再びパンチを繰り出そうと向かってくる。

ちひろ「…巨大化。」ブォン

対する私はクナイを巨大化、手に持ち真っ向から迎え撃とうとする。

バキバキボキボキッ!!!!

結果は明らか、あっさりとクナイは粉砕、そのまま攻撃は左腕に当たり、骨の折れる嫌な音が響き渡る。

(…ッッッッ!!いたいたいたいたいたいたいたい!!!でもっっっっ!!!)

ちひろ「まだっまだぁぁぁぁぁぁ!!!」

今の一撃は陽動。

本筋はバーテックスの右後ろ少し上、そこに…切り札を投擲していた。

もうすでに、賽は投げた。

ここからが、勝負どころ。

ちひろ「ジェットクナイ!!」ブォンッ!!!!

奴が切り札に気づくとともに、私のジェットクナイが切り札の起爆に向かう。

ガキンッ!

…もちろん、バーテックスが弾く。

自分の後ろに謎のがあってそれをクナイが狙ってたら誰だって弾く。

今回ので最低限の知能はあることがわかったわけだし。

ちひろ「それが、私の狙いだけど!!」

…弾き飛ぶはずのクナイが、ゆっくりと宙を舞う。

いや、瞬時にバルーン化を発動されたクナイが、宙をゆっくりと浮遊する。

(バーテックスが弾いた瞬間にバルーンを発動させれば…クナイは無茶苦茶に回転しながら宙を舞う…そこからなら…)

ちひろ「容易に、ねらい打てる…針化ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

最後の針化が発動。

クナイが伸び…切り札に突き刺さる。

そして…

ブチッ…ボガァァァァァァァァァン!!!!

中から、大量のクナイが飛び出し、バーテックスを切り刻む。

切り札、クナイ玉。自身への攻撃の衝撃によって発動し、大量のクナイを高速で全方位に撒き散らす。

敵だけじゃなく味方も、そして自らも巻き込みかねない、だからこそ先生にも禁じられていた。

もちろん、現在も例外とはいかない。

多くは敵が遮蔽物になってくれてるものの、何個かは飛んでくる。

そして、さらにその中の何個かは私の体に切り傷を残す。

(…痛い。腕が痛い。切れたところが痛い。全身が痛い。死にそうなくらい…痛い。

…これを、あの時園姉や須美さんは味わったんだ…!!)

ちひろ「勇者は…根性ぉおぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉお!!!!!!!!」

こちらもボロボロ、しかし敵もボロボロ。

クナイに身体中を切り刻まれ、切り離され、もう再生しなければ反撃も動くこともままならない。

あと一撃、あと一撃で鎮魂の儀に沈められる。

…効かないクナイと、折れた小刀、そして0 になった術でできるかという話になるが。

ガキンッ!

小刀が、バーテックスに当たり、そこで止まる。

ちひろ「できる…できてみせる…限界なんてっっ!!!超えてみせるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

折れた小刀の刀身が、伸びる。

切るスピードが、本来の出せる域を超える。

…さっきの陽動に使った巨大化、攻撃させるために使ったジェット。

…当たる直前で解除されることで、残り数秒を残した2つの術が、本来ありえない小刀に、本来不可能な同時発動する。

叫ぶ、自分を鼓舞するために。

ちひろ「私は!!みんなを!約束を!!守るんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!絶対にぃぃぃぃ!!!生きて!帰るんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

限界を、全力を超えた、死力の一撃。

それは確かに…バーテックスを両断した。



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13話 たましい

紅きたましいが、燃える。


ーーー樹海、ちひろsideーーー

ちひろ「…かは…は…」

死力を尽くして、バーテックスを1人で撃破した。

でも、まだ終わりじゃない。

(これを…銀さんは三体同時に相手してるんだ…早く…助けに行かないと…!)

すでに限界を超えた身体にムチを打つ。

しかし…視界が、揺らぐ。

グラッ

ちひろ「ぁ…」

 

ーーー時は遡り、須美sideーーー

須美「っ…?」

(あれ…?私は…確か…)

須美「いっ…」

身体を動かそうとすると、あちこちが痛む。

銀「須美!?起きたのか!?」

須美「ぎ…ん…?ちひろ…ちゃんは…?」

銀「めちゃくちゃ早いやつが別にいたからそっちの迎撃に向かってもらってる。私はこれからあの三体を。」

(…ダメ…それは…)

須美「無茶よ…ダメ…」

銀「…ああ。無茶だしちょっと怖い。でも、ちひろだって頑張ってる。怖くてもここが頑張りどころだろ?須美と園子は休んでて。すぐに終わらせてくるから。

…またね。」

ダンッ!

(ダメよ…ぎ…ん…)

そう思いながら、意識は再び奥底に沈んだ。

 

ーーー銀sideーーー

さっきの三体を捉える。

銀「見つけた…!」

(…そういえばあの高速のやつに尻尾による近接が得意なやつ、防御と援護のやつ、遠距離射撃のやつ…私たちのこと真似たのか?)

銀「…だとしたら不完全もいいところだな。

…須美は、絶対私たちを巻き込んで攻撃なんかしない。」

前に立ち、武器を出す。

(この先には須美も、園子も、戦ってるちひろもいる。絶対に通しちゃいけない。)

銀「…はあ…!見ないうちに随分と前に進んでくれたみたいだけどなぁ…!!こっから先は!!通さないっ!!!!」

ダッ

シュババババババババババババ

ガキキキキキキキキキ

走り出す。遠距離型がとばしてくる大量の矢は斧で防ぎつつ。

いくつかは防げず傷になるが…

銀「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ズドンッ!!

ダンッ!

ユニットが飛んでくるがジャンプして回避、そのまま援護型に迫る。

(その攻撃は…)

銀「もう覚えたんだよ!!」

ズバッ!!

一撃を与え、崩す。

ドドドドドドドド

(見えてんだよ!!)

横から来た近距離型の尻尾も回避、そのまま…

銀「それも見たわ、園子との戦いでな!!」ズバッ!!

ぶった斬る。

シュババババババババババババ

再び遠距離型が空中から矢をとばしてくる。

銀「うぉらぁぁぁぁ!!!」ブォンッ!!!!

ガガガガガガガガガガ!!!!!

斧を思いっきり投擲、矢を破壊しながら進み、遠距離型に突き刺さる。

(地上に引きずり下ろす!!)

タンッ

ドガンッ!!

バッ

着地して、すぐとんできた尻尾に乗っかり、そのまま駆け上がる。

銀「何上から見てんだ!!」ドガンッ!!

そのまま一撃。さらに刺さった斧を回収してもう一撃加えようとするも…援護型のユニットが潰そうとしてくる。

銀「チッ!!」バッ

仕方なく下りて回避するも、さらにそこに近距離型の尻尾が迫る。

(回避は間に合わない…!)

ギギギギギギギギギギ

斧を重ね、ガードするが…

ブチッ

遠距離型から最初に受けた傷が開く。

銀「や、やったなぁ!!」

シュババババババババババババ

ブォンッ

銀「痛かったんだぞ!!自分たちで受けてみろ!!」ドガンッ!!

三度、矢が降り注ぐがそのまま疾走、向かってきた尻尾も弾いて援護型に刺さる。

銀「お前たちはここから…」

そして、斧に炎が灯る。

銀「でていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

ガンガンガンガンガンッ!!!

回転しながら援護型を切り刻む。

(よし!このまま…!)

…ザクッ

…身体を、矢の1つが貫いた。

銀「ぐっ!?」

落下、矢は消えてそこの傷から赤いものが吹き出す。

ドガンッ!!

…そして、近距離型の空中追撃。

銀「がっ…はっ…!!」

口から、出ちゃいけないものが出る。

銀(…こいつらが…神樹様を壊せば…クラスのみんなは…ちひろの友達の3人は…先生は…麻里は…ちひろは…園子は…須美は…父さんや母さん、鉄太、金太郎は…!!)

銀「絶対に…させるもんか…」

体の痛みを我慢しつつ、立ち上がる。

銀「…させるもんか!!絶対に!!」

再び、走り出す。

シュババババババババババババ

ガキキキキキキキキキ

とんでくる矢を片方の斧でガードする。

銀「帰るんだ!!」

ズバンッ!!

迫る尻尾を両断する。

銀「守るんだ!!」

目の前にあるハサミを破壊する。

そのまま援護型に攻撃を加えようとするものの…

シュババババババババババババ

ザクザクッ

再び遠距離型の矢が身体に突き刺さる。

銀「ぐっ!!」

そして、その怯んだ一瞬に、ユニットが身体を断たんと突撃してくる。

銀「このぉ…!がっ!!」ドガンッ!!

片方の斧だけではガードできず、再び地面に。

身体中の傷から、身体を回す重要なものが漏れ出す。

そこに、巨大な矢が装填…

(まずい…もう体が…!!)

放たれ…

…なかった。

銀「…どうなってるんだ…?」

…形成されたはずの矢が、消えかかる。

(エネルギーが足りなくなったっていうのか…?なんで…)

遠距離型だけじゃない、本来すぐさま追撃してくるはずのほか二体の動きも鈍っていた。

(…これ…鎮魂の儀…!?)

そこで、気づく。

鎮魂の儀の発動により、撃破とはならずもバーテックスに悪影響を与えてるのだと。

銀「…ってことは、ちひろは…やったんだな…はは…ホントにすごいな…自分の武器はタイマンに向かないって言ってたのが懐かしく思える…

…後輩が、ちひろだって…1人で勝ったんだ…先輩の私が…負けてなるものかぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」

斧が大火を、神炎を纏う。

矢も、尻尾も、ユニットも、全てを破壊して進む。

銀「化け物には分からないだろ!!この力!!」

どれだけ、攻撃を受けようとも、止まらない。

銀「これが!!人間様の!!」

守るべき者を、守りきるまでは。

銀「きあいと!!!」

気合を絶やすな

銀「こんじょうと!!」

根性を持ち続けろ

銀「たましいってやつよぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉおぉぉぉおぉおぉおぉぉおっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

魂を、燃やせ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

…トサ

誰かに、持ち上げられる。

ちひろ「…ぅ…?」

園子「大…丈夫…?ちっひー…」

須美「ひどい怪我だけど…無事でよかった…」

ちひろ「…園…姉…須美さん…も…」

見ると、辺りは淡い光に包まれていた。

(まさかもう…戦いは終わって…!?)

ちひろ「早く…銀さんのところに…行かないと…!」

園子「わかってる…1人で三体なんて…絶対…重症だもん…」

須美「ええ…急ぎましょう…血の跡があるから…それを追えば…!」

 

ーーー数分後ーーー

(…だんだん…跡の量が増えてく…銀さん…!!)

須美「…っ!あれ…!!」

その先には、立っている銀さんがいた。

園子「あ…!ミノさ〜ん!!」

ちひろ「銀…さん!!」

須美「銀ー!!」

近づく。

須美「やっぱり銀がやってくれたのね!」

園子「すごいよミノさん!勲章間違いなし!!」

ちひろ「私なんか一体に手こずっちゃっ…て…?」

…銀さんは、動いてなかった。

…さらに、近づく。

須美「銀…もうすぐ樹海化が解けるわ…そしたら病院に行きましょう…?」

園子「そうだよ…弟さんにもお土産、渡さなくちゃ…!」

ちひろ「遠足の話…私まだ聞かせてもらってませんよ…?」

…なお、銀さんは動かない。

…すぐそばまで、近づく。

…右腕は、なくなってた。

園子「…あ…」

須美「…っ…!」

ちひろ「銀…さん…!」

園子「私…焼きそば…教えてもらうって…!」

銀「そうよ…次の日曜日に…って…」

ちひろ「ここな達も呼んで…みんなでやるんじゃ…!!!」

…それでも、返事は帰ってこない。

須美「銀…ねえ…銀ってば…!!」

園子「返事してよ…ミノさん…お願いだから…!」

ちひろ「あの時…約束したじゃないですか…生きて戻ってくるって…!!」

…返事は、ない。

…永遠に、ないのだ。

ちひろ「銀さん…銀さん…!!!」

3人「「「うああああああああっ!!!」」」

 

7月10日、バーテックス4体同時侵攻発生。

4体、撃退成功。

鷲尾須美、乃木園子、多数の切り傷と身体中の打撲の軽傷。

上里ちひろ、左腕骨折、出血多量の重症。

…三ノ輪銀、死亡。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー撃退直後、銀sideーーー

(…身体が、動かないや…)

全身に傷を負った。毒を回さないために右腕も斬った。

(…でも、帰らなきゃ…)

 

ちひろ『…はい。後で会いましょう。』

銀『お互い、生きて敵を倒して、な!!』

 

(約束…したんだ…絶対…生きて戻る…って…)

意識が…生命が消えゆく中…かすかにしか残らない力を振り絞り、立ち上がる。

銀「今、行く…ぞ…ちひろ…園子…須…美…」

…そして。

事、切れた。

 



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14話 わかれ

ーーー7月11日、麻里sideーーー

麻里「…遅いなぁ。遠足だったわけだし銀ちゃんや園子ちゃんはまだ寝坊したとかありえるけど…須美ちゃんがそんななるとは思えないし…」

学校、朝礼のチャイムがなっても銀ちゃん達は来ていなかった。

安芸「みなさん、おはようございます。」ガラガラ

クラス『おはようございます!』

麻里「先生!須美ちゃん達が来てないのななん…で…」

…先生の手には、花束が持たれていた。

安芸「その事も含めて、みなさんにほうこがあります。

…先日、三ノ輪さんがお役目の最中に亡くなりました。」

クラス『っ!?』

麻里「…っ!!!!」

安芸「明日、告別式があります。授業は休みで、そちらに参加します。」

(…銀ちゃん…!!)

 

ーーーここなsideーーー

先生「…また、上里さんも大怪我のため、しばらくは学校に来ません。帰ってきた時は、暖かく出迎えましょう。」

ここな「…嘘…だよね…?」

天音「銀さん…!」

楓「とりあえず早退しよう、今日は。ちひろや須美先輩達のところに行かなきゃ。」

天音「当たり前ですわ…身体面も精神面も相当に傷ついてるはずですもの。」

ここな「学校なんかより友達の方がはるかに優先度は高いっての!」

 

ーーー翌日、告別式場ーーー

ーーー須美sideーーー

須美「…」

大神官「本日ここに哀悼の意を捧げます。今、わたくし共は深い悲しみのうちに、勇者様にお別れを告げようとしております。

三ノ輪銀様の天性の才能、剛毅不屈の精神。それに、人間味豊かな性格をもって神樹様の重大な任務に務められていました。

その輝かしい偉業は永久に我々の指針として残ることでしょう。

どうか神樹様の元で安らかに。そして末永く、わたくし共の行く手をお見守りください。

また、この場にはいらっしゃりませんが、上里ちひろ様もまた、身を━━━━━━━」

 

ーーー控え室、麻里sideーーー

麻里「2人とも!!」

園子「まりりん…来てくれてたんだね。」

麻里「来ないわけがないじゃん…6年生は全員来てるよ。あと伊予島ちゃん達も見た。」

須美「あの3人は昨日学校早退してまで病院来てくれてたもの、来てると思ってたわ。」

 

女性A「銀ちゃん、お役目受けてらっしゃったんですね。」

男性A「我々には到底想像もつきませんが、大変だったんでしょうね。」

 

男性B「神樹様のお役目で逝かれるとは…大変名誉な事じゃないか。」

女性B「とは言っても…自分の子供がと思うと、ねぇ…?」

 

女性C「鉄太君、銀ちゃん、よく頑張ったね。」

女性D「銀ちゃんはね、英霊になられたの。羨ましい限りだわ。」

鉄太「…」

男性C「三ノ輪家はこれから法外な援助が受けられる。銀も親孝行ができて本望だろう。上里様m「少し、黙ってください。」…!?」

月夜「黙ってくださいと、言ってるんです。それとも理由まで聞きたいですか?」

男性C「…」

金太郎「あー。あぁー。あー…!!」

月夜「よしよし、何がいいの?あ、もしかしてこのオモチャかな?」

 

(…さすがに腹たってくるね。)

麻里「…ねえ、殴り飛ばしてきていい?今ならすごい楽しそう。」

須美「ダメよ…銀がそんなことして喜ぶわけがない。」

麻里「だよね…でもさ…!!」

神官A「勇者様。」

園子「あ、はい…分かりました。」

須美「ごめんね…またあとで。」

麻里「大丈夫、問題ナッシング。

…つらかったら相談してね。一応経験者だから。」

園子「…うん。」

(…やっぱり、お祈りなんかするべきじゃなかったんだ。神樹様なんかに。)

 

北条父『…済まないな…お前を…ひとりぼっちにすることになって…』

麻里『父様!死んじゃ嫌だよ!!』

北条父『麻里…神樹様を、悪とは言わない…だが、危険だ…あまりに…危険すぎる…』

麻里『神樹…様が…?』

北条父『ああ…これだけ伝えておく…隠れた真実を…見逃すな…

カタキは取らないでくれ…私たちは…お前が幸せに生きてれば…それで十分…だ…』

麻里『父様…?父様ぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

麻里「…父様。」

心を落ち着かせるために、もうこの世に存在しない名を口ずさむ。

 

ーーー会場、須美sideーーー

男性D「えー、お役目とはいえ、子供の大切な命が失われ、また傷つくのは友人やご遺族の方々にとって大変な苦痛です。皆様方の心痛、いかほどのばかりかと案じています。三ノ輪銀様の━━━━━━━━━━━━━」

 

大神官「献花。」

神官様から花を受け取り、あゆみ出す。

園子「ミノさん…」

…寝ている、ようだった。

自身の命すら燃やし尽くすような戦いをしたとは思えないくらい、銀の顔は安らかで…

…それでも、二度と、目覚めることはないのだ。

須美「っ…」

手が止まる。

…これ以上、進めたら、銀が死んだのだと、確定してしまうようだった。

わかってる。心の中では分かってても…

…ソッ

…手が、添えられた。

(安芸、先生…)

それは、安芸先生のだった。

須美「…っ。」

献花を、果たす。

その、時だった。

鉄太「うわああああああ!!」

(あれは…鉄太君…)

鉄太「神様だったらなんで助けてくれなかったんだよ!!姉ちゃんはずっと頑張ってきてただろ!!なのに!!なんで姉ちゃんなんだよ!!」

三ノ輪父「やめなさい、鉄太!」

鉄太「姉ちゃんを連れてかないでくれよ!!こんなの神様なんかじゃない!!」

鉄太君が連れてかれていく。

鉄太「姉ちゃぁぁぁぁぁん!!」

大神官様が前に出て、礼をする。そして…

…チリン

鈴が、鳴った。

園子「っ!?こんな時に…」

(ふざけるのも…たいがいにしろ…!!)

生きてた頃の銀の顔と、病院のちひろちゃんの顔が浮かんだ。

(お前らが…銀を奪ったのに…その別れすら…させない…?)

須美「…ざ…るな…」

園子「…わっしー?」

須美「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ーーー樹海ーーー

須美「うおおおおああああっ!!」ビュビュビュビュン!!

とんでくる爆弾を同時に出した5つの矢で撃ち落す。

ズバンッ!!

もう片方はそのっちが突き進みながら破壊。

 

園子「じゃあ今は戦えないちっひーのため、そしてミノさんのために戦おう。

2人ならきっと、そう言うよ!」

ボンボンボンッ!!

再び爆弾が飛んでくるが、これはそのっちが盾で。

園子「こんなのちっひーなら…」

須美「銀なら、突破する!!」ダッ

跳躍、接近する。

ブンッ!

須美「きゃっ!」

しかし、空中で布らしきものの攻撃を受け、さらなる追撃も…

 

銀『須美!』

 

須美「…はっ!」サッ

受けずにかわす。

そしてそのまま…

須美「これが!銀仕込みの根性ってやつよ!!」グサッボガンッ!!

直接矢を叩き込む。

須美「そのっち!」

園子「気合ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」ドッガァァァァァァン

さらにそのっちが突撃で追撃。

(まだっまだ!!)

さらに矢をチャージ。

園子「もう1発ぅぅぅぅぅ!!!」

さらにそのっちも再び構え…

ドガンッ!!ズガンッ!!

ボッガァァァァァァァァァァァァァン!!!

同時攻撃、完全にバーテックスにヒットし、大爆発が起こる。

そして、鎮魂の儀。

(倒…せた…?2人で…)

須美「はぁ…はぁ…やったわよ…ちひろちゃん…」

園子「ミノさん…見てくれてるかな…」

須美「…ええ。見てくれてるわよ。きっと。」

 

ーーー大橋ーーー

びしょ濡れになって、横たわる私たちに、傘がさされる。

須美「…先生…」

 

ーーー車、園子sideーーー

安芸「…2人とも、つらい中お役目ありがとう。」

須美「いえ…」

園子「今、何もできなかったらそれこそミノさんに怒られちゃう。ちっひーにも…今は、そんなことできそうにないけど…」

安芸「…あのね。」

須美「…?」

安芸「いえ…こんなに怖い思いをたくさんして、悲しいこともあったのに…あなたたちや上里さんはしっかりと大変なお役目と向き合ってる。3人とも、まさしく勇者だわ。」

須美「…」

園子「…あはは、先生にこんなに褒められたの初めてだよ。」

(…でも、こんなに嬉しくないのも、初めてだ…)

園子「…ただね、ちっひーやミノさんの方がすごいんだよ。」

安芸「っ!」

園子「ちっひーは自分の格上に勝ったし…ミノさんは、三体撃退したんだよ?たった1人で、戦い続けて。…だから、ミノさんを忘れないであげて。」

安芸「っ…」

園子「すごい…強くて…優しくて…カッコよくて…っ!!

私たちは3人でじゃない…4人で勇者なんだからっ…!!うっく…あああん…!!」

涙が、溢れて止まらなかった。

安芸「…ごめんなさい、訂正するわ。4人とも、立派な勇者よ。誰よりも近くで見てきた私が保証するわ。」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー告別式場、ここなsideーーー

大神官「今情報が入りました。鷲尾須美様、乃木園子様両名様ともに、たった今お役目に出向かれたようです。」

ここな「こんな…時まで…!!親友に別れも告げさせないっていうの…!?」

仕方ないのはわかってる。

それでも、拒否権なく選ばれ、戦わされ、友を失い、その別れすらさせない…

とてもムカついた。

…ただ、それ以上に。

 

女性A「まぁ…こんな時にまで?」

男性A「言われただけなら信じられないが…目の前で消えてる以上、事実なんだろう。」

 

男性B「仲間の死にめげずにお役目を果たすとは…なんと立派なことか。」

女性B「でも少し冷静すぎない?ずっとともに戦ってきた子が死んじゃったんだからもう少し戸惑うものだと思うのだけど…」

 

女性C「…こんなの、あんまりじゃないですか…」

女性D「そうかしら?お役目のタイミングを神樹様が選ぶ以上、仕方の無いことだと思いますわよ?」

男性C「そうですな。何より大切なのは神樹様ですから。」

男性D「その通り。上里様もそれがわかってるからこそ神樹様の守りを優先させたんでしょう。」

 

…「人生の大先輩達」の、「無知の悪意」に、吐き気がした。

ここな「…もう、限界だ!!」ダンッ!!

思いっきり立ち上がり、ステージに向かう。

神官B「ちょ、君!?」

そしてマイクを奪い取る。

ここな「いい加減にしてくださいよ、このダメ大人ども。」

神官C「なっ…何を言い出してるんだ!?あの子は!?」

男性E「おい!どうなっている!?なんだあれは!?」

女性E「明らかに私たちを侮辱したわよ今!」

ここな「ええ!そりゃ言いますよ。笑えるくらいの勘違いでただでさえ傷ついた心をエグってたらね!!」

神官D「どこの誰かは知らないが、今すぐに取り押さえろ!!」

ダダダッ

神官どもが向かってくる。

(まだ全然言いたいことは言ってな…)

楓「…いや、お待ちください。」

…楓が、立ち上がった。

楓「彼女の演説を続けさせてください。責任なら、桐生家が。」

会場『なっ…!?』ザワザワ

ここな「楓…っ!?」

 

ーーー楓sideーーー

桐生父「楓!お前は何を言い出しているんだ!!なぜあんな不届き者を庇う!」

楓「なぜか…と。彼女は私の親友です。それに…あの言い方が悪いだけで、私も賛成なので。」

桐生父「だからといってなぜ桐生家全体を巻き込む…ふざけるのもたいがいにしろよお前…いつもいつも迷惑ばかりかけて…少しは親孝行をしたらどうだ!!」

楓「してもらえるようなことをしてから言えば???クソ親父。」

桐生父「こんの…!!お前など娘では…!!」

楓「知ってるよそんなこと。…私が尊敬する銀さんが言ってたもの、子に迷惑かけられて嬉しくない親はいないって。あなたは私みたいな問題児を子と思ったことは無い。私もあなたみたいな…いや、権力だけを大事にして他を二の次にするあなたがたを家族と思ったことは無い。

でも…いいの?私がいなくなれば桐生家の跡取りは誰もいなくなる。英霊すら排出した桐生家を絶やしたいなら、家族の縁を完全に切るなりお好きにどうぞ?」

桐生父「こ…いっつ…!!」

楓「改めて言います。

彼女、星空ここなの演説の責任は、桐生家が負います!!ですので途中で止めることのないようにお願いします。」

 

銀『家族のことを好きになる方法?』

楓『はい。実は私、権力があまり好きじゃなくて…うちの家族はみな権力第一主義だから現状、実質の絶縁状態なんです。ちひろから銀さんは家族と仲睦まじいと聞いて…』

銀『そっかぁ…でもそこまでダメなら無理に仲良くしようとしなくてもいい気もするな。』

楓『え?』

銀『どうしても仲良くできない人はいるよ。それは仕方ない。で、どーせ仲良くできないならむしろ利用して、自分で変えればいいんだよ!』

楓『り、利用??』

銀『そう。目には目をって聞いたことあるだろ?要は行き過ぎた権力乱用をどうにかしたいってこったろ?あと権力第一主義。』

楓『…つまり、家族の持ってる権力を利用して、てっぺん上り詰めて自分で変えろっていうことですか…?』

銀『そそ。大丈夫!なんだかんだ言って、子にかけられる迷惑が嫌な親なんていないからさ!』

 

(…そう、言ってましたよね。銀さん。)

神官B「…たかが、子供1人、それも家族関係崩壊寸前の子の言うことを聞くと?」

(…ダメか…)

天音「ならば、伊予島家もその責任をおいましょう。」

 

ーーー天音sideーーー

神官C「伊予島天音様!?」

神官D「初代勇者の家系の…!!」

ザワ…ザワ…

楓「天音!?」

ここな「天音…まで…」

伊予島母「天音…理由を聞かせてちょうだい。」

天音「もちろんです、お母様。

まず、今壇上にいるここな、そして先程発言した楓は私の親友です。人格のできた、素晴らしい人物であると私が保証させていただきます。

そして、私は生前の銀さんに、数ヶ月の間ですがよくしてもらいました。だからこそ…今、ここにいる方々の抱いている考えと、銀さんの人柄に、大きな違いを感じました。

偉大な功績を残した英雄である銀さんが、勘違いであらぬ事を言われるようになるなどあってはいけないことです。

…これでも、ダメでしょうか、お母様。」

伊予島母「わかったわ、この1件に限り、あなたに伊予島家の全権限を委託します。おのれのやるべきことをなしなさい。」

天音「ありがとうございます。

お母様の許可を得られたため、改めて言わせてもらいます。

これより先、星空ここなの発言に関しましては、桐生家と伊予島家がその責任を負います。」

楓「天音…あなた…!!」

天音「正しいことをしている友を助けない人などおりません。当然のことをしたまでです。」

 

天音『で、ここはこうです。』

銀『なるほどなぁ…しかしまさか学年上の私が教えられる立場になろうとは…』

天音『歴史だけならちひろにも勝ります。』

銀『マジか…博識だなぁ。』

天音『少し照れます…』

銀『これなら司書にも余裕だろ。』

天音『ちひろから聞いたんですか?』

銀『うん。私が応援する、だから頑張れ!』

天音『そう言って貰えると2人力です。頑張ります。』

銀『百人力ではないんだな…』

 

(…銀さん、あなたの人間性、誰にも汚させはしません。)

 

ーーーここなsideーーー

楓「ここなー!私たちがいる!遠慮なくぶちかませー!!」

(2人とも…)

ここな「…ありがとう…!!」

神官E「これは…どうすれば…!?」

神官F「桐生家に伊予島家…どちらも英霊を排出してる大家…!」

大神官「構わない、つまみだせ。」

神官D「大神官様!?」

大神官「今は偉大なる英霊様の告別式だ。たとえそれが英霊を排出している2家だとひても…」

「なら、私も負っちゃいましょうか。」

神官B「っ!?!?!?!?」

神官C「乃木…ひかり様…」

ひかり「銀ちゃん、よくうちに園子が連れてきてたのよ。その度に仲睦まじく遊んでたわ。園子は生きてるからいくらでも弁明できるけど、銀ちゃんはもういない。弁明をしようにもできない。…だから、ね?」

神官D「どう…すれば…乃木家まで…」

「さらなるダメ押し入りまーす。」

「焔ほどではないが控え室の時からだいぶ腹が立ってたところだ。気持ちは痛いほど分かる。」

神官E「…15年前の英雄…犬吠埼焔様に海様…!?」

焔「正式には17年前ね。とはいえあまり銀ちゃんと話したことがあるわけでもなかったからどうしたもんかと思ってたけど…友を失って傷ついてる子供の事すら見逃せないほどカッチカチなの?」

海「まあだいぶ言葉は荒かったから仕方はないとは思うが…俺らも支援させてもらう。」

大神官「…っ。」

月夜「…私と、和斗もです。」

神官F「…十五年前の…四英傑…全員…それに最高位家も…」

月夜「…これでも、ダメと言いますか?大神官様。」

大神官「…特別だ、特別に許可する。」

ここな「…ありがとう、ございます。」

(…こんなに、たくさんの人に支えられて、やっとなんだ。

…これが、ちひろ達の背負ってるお役目の重さ。)

凄まじいくらいに重い。でも。

ここな「まずは私が話せるようにしてくれた多くの人達に感謝を。

…私の名前は星空ここな。神樹館小学校5年。

真っ先に責任を負おうとしてくれた楓や天音、そして…勇者の1人、上里ちひろの親友です。

ちひろを架け橋としてほかの勇者の人達…それこそ、銀さんとも数ヶ月の間交流してました。

…そりゃ神樹様に選ばれるのはすごいことですよ。ホントにすごいことです。ただ、選ばれた人が特別だとか思ってるなら、今すぐ捨てやがれください。

…目を離したら眠ってたり、着せ替えで尋常じゃない量の鼻血を出したり、ナデナデされるだけで喜んだり、ひたすらに運がなかったり、そんな、普通の少女達なんですよ。…決して、死んで親孝行するような人じゃないんですよ。」

男性C「っ!?」

ここな「そんな簡単に親友の死を割り切れるほど、冷静じゃないんですよ。」

女性B「っ…」

ここな「…最後に、誰だっけ…そうだあなた、神樹が一番だからちひろが防衛を優先させたって言ってましたよね。」

男性D「…あ、ああ。」

 

ここな『ちひろ!!』ガラガラ!!

楓『大丈夫!?』

ちひろ『あ…3人とも…来てくれたんだ…授業は…?』

天音『早退してきました。1日くらいの遅れはいつでも取り返せますので。』

楓『それより怪我よ…重症って聞いたけど…』

ちひろ『あはは、大丈夫大丈夫。ちょっと左腕がボキボキに折れただけだから。』

ここな『全然よくないよ…』

ちひろ『いい。確かに本来なら2、3ヶ月はかかるらしいんだけど、神樹様のおかげで半月あれば治るらしいし。』

天音『そうですか…』

ちひろ『…うん。…銀さんに比べれば、遥かにマシだよ。』

楓『…銀さんのことは…仕方ないよ。ちひろだってこんな怪我するまで頑張ったんだもん。』

ちひろ『仕方なくない。』

ここな『須美さんと園子さんだって気を失ってたんでしょ?2人でいつもよりもはるかに過酷なお役目を果たしきったんだもん…仕方ないことだったんd』

ちひろ『仕方なくなんかないんだよ!!』

ここな『っ…!』

ちひろ『私しか、助けられなかった!私がもっと強ければあんなやつさっさと倒して、助けに行けた。銀さんは死なずに済んだ!!私が…弱かったから…!!』

天音『…落ち着いてください。絶対銀さんはそんなこと思ってないですよ…』

ちひろ『だけど…だけどさぁ…!!怪我は治っても…亡くなった命は…もう戻らないんだよ…銀さんは…もう帰ってこないんだよ…!!』

楓『ちひろ…』

 

ここな「もし、そう考えてたんなら…

うちの親友は、泣いてないんだよ。泣いて、自分のこと責めたりなんかしないんだよ。二度と言うな。」

男性D「…っ!!」

ここな「心の傷ついた人のことも考えずにやれ名誉だの、やれ羨ましいだの、そんな傷口にマグマ塗りたくるようなことはしないようにしてください。変にオーバーに解釈して銀さんを勝手に高めるのもやめてください。

他人の気持ちも少しくらいは分かれるようになってください。あなたがたの多くは私より大人なんですから。ありがとうございました。」

果たして、これが正しかったのかなんて分からない。

ただ、悔いはない。

(銀さん…今までありがとうございました。

ちひろ達は任せてください。

…どうか安らかに。)



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15話 さんにん

…はるか上の太陽から、4つの炎が、神樹様に━━━━━━━━━━━━━━━

 

ーーー須美sideーーー

バシャッ

(不気味な夢だった…もう一度、大きな敵が来る。今のはその知らせ…もっと、強くならないと…!!)

 

ーーー学校、園子sideーーー

園子「おはよー!」

サンチョ「お・は・よ・う。」

…シーン

園子「…?」

みんなが静まり返ってこっちを見ていました。

(…あれれ〜?サンチョが効いたかな〜でも何回か前も喋ったことあるし〜あれれ〜?)

クラスメイトA「あ、あの、乃木さん。ずっと聞きたかったんだけど…」

園子「うん、どうしたの?」

クラスメイトA「だけど、お役目のことは聞いちゃいけないって言われてて…」

園子「えっ?」

クラスメイトB「告別式の時もお役目、あったんだよね。」

クラスメイトC「消えたもんね。」

クラスメイトA「ちょっと…」

クラスメイトD「大丈夫?怖くない?」

(怖くないかって言ったら怖いけど…ま、まあ…)

園子「う、うん…」

クラスメイトB「ねえ、お役目って何してるの?」

拓斗「おーい、本人に聞いたら大赦に消されるぞー。」

クラスメイトE「それ言ったお前もな。」

拓斗「マジで!?」

クラスメイトC「銀ちゃん、教科書乗るんだって。すごいね。」

園子「…うん。」

クラスメイトD「乃木さんも鷲尾さんも頑張ってね。」

クラスメイトA「神樹館のヒーローだよ。応援してる。」

(…あはは、褒められっぱなしだなぁ…)

園子「…でもね、別にそうなりたかったわけじゃないんよ〜…」

麻里「傷口にマグマ塗りするの、そこまでにしといたら?」

須美「みなさん、おはようございます…?」

拓斗「あ、麻里。」

まりりんとわっしーが入ってくる。

クラスメイトC「北条さんから2人に何か…」

麻里「最初の自己紹介でも言ったけど、私は楽しむべき時と楽しまないべき時の区別はしっかりつけてるから。頼らないで。」

クラスメイトF「…ねえ、鷲尾さん。事情は全然わかんないけど…三ノ輪さんはみんなのために…」

須美「それができる、強くて優しい子だったから、選ばれたの。彼女のことを思ってくれるなら、そっとしておいて。」

 

ーーー道場、須美sideーーー

ちひろ「はっ!」ザッザッ

ちひろちゃんが先行、的を支える軸足を崩し…

園子「えいっ!」バッ

須美「ほっ!!」ビュンッ!!

そのっちが瞬時に私の前で盾を展開、その後ろでチャージして横から攻撃を放つ。

園子「…はぁ。」

須美「そのっち?」

園子「ごめん、もうワンテンポ早くしないといけないのにね。」

ちひろ「…もう、術はない…もっと早く…強く…」

(そのっちもちひろちゃんもずっと切り詰めてる…このままはまずいわね…)

須美「ねえ、2人とも。勇者には気分転換も必要、じゃないかしら?」

ちひろ「…気分、転換…?」

安芸「…」コクリ

 

ーーー夏祭り、ちひろsideーーー

ちひろ「須美さんから誘うって珍しいですよねー。」

園子「なんだかんだ言って最初の祝勝会以来だよね〜」

須美「先生の許可が取れて一安心だわ。今日は一旦お役目を忘れて、リラックスしましょう。」

園子「そうだね〜わっしーの気合いも十分だし!」パシャッ

そう言って園姉が須美さんの写真を撮る。

須美「ち、ちが…これは親に着せられて…」

ちひろ「めちゃくちゃ似合ってますよー?」

園子「うんうん!お人形さんみたい!その場でクルクル回ってみて〜?」

須美「恥ずかしいわ…」

ちひろ「やりましょう!!」

須美「…こ、こう?」クルクル

園子「お〜ノリノリだね〜!シャッターチャンス!!」パシャッ

須美「あ、撮影は禁止よ!」

園子「え〜?待ち受けにしようと思ったのに〜…」

須美「恥ずかしいからやめて!」

ちひろ「でも今も須美さんが待ち受けだったはずですよ?」

須美「えっ。」

園子「もちろんなんよ〜!ついでにちっひーの待ち受けは私!」

ちひろ「へへん。」ドヤッ

須美「うー…ホントに恥ずかしいからやめて!!」

園子「え〜私の携帯だもん〜」

須美「なら私もそのっちを待ち受けにする。」

(…私のだけ、ない…)

ちひろ「…ショボン。」

園子「せっかくだし3人で回そう〜?」

須美「あ…そ、そうね…」

ちひろ「いいんですか!?」パアア

須美「ええ。もちろんよ。」

 

園子「リンゴ飴とかチョコバナナとか、定番すぎて珍しくないよね〜」

ちひろ「あと焼きそばとかもー。」

須美「その割には満喫してるみたいだけど?」

園子「美味しくないとは言ってないから。」キリッ

ちひろ「何回でも食べたくなりますよねー!!」

須美「あまり祭りに来たことないから分からないけど、そういうものなのね…」

園子「…むっ!このいい匂い!焼き鳥だな!?」シュバッ

須美「あ、そのっち!」タタタッ

焼き鳥屋店主「いらっしゃい。」

園子「へい大将!焼き鳥3つください!」

須美「私そんなに食べられないわよ?」

園子「そうなの?じゃあ私がわっしーの分も食べるよ〜」

須美「すごい食欲ね…」

園子「…美味しい!!なんじゃこりゃあ!?店ごと買いたいんですけど〜!!」

焼き鳥屋店主「はい!?」

園子「ここに電話して…」

須美「そのっち!?それはダメよ!?」

ちひろ「そうだよ園姉。

店ごと買うならフライドポテトだよ!!」

須美「ちひろちゃんもダメよ!?」

 

ーーー射的屋、園子sideーーー

園子「ぐぬぬ…」

射的屋店主「あはは…どうする?もう1回やってくかい?」

ここは射的屋、狙うはでっかいトリさん。

(さっきは外れた…でもこういうのは数に任せるのが一番!)

園子「やり!ます!!」バッ

そういって千円札を数枚出して、大量に弾を得る。

園子「いざぁ!!」パンッ

 

園子「とほほ…」

…そう、意気込んだのはいいものの、全弾見事に外れて残り一つになってました…

(何個かは当たったと思うんだけどな〜…)

ちひろ「…あれが欲しいんだよね?園姉。」

園子「うん…1等のトリさん…」

須美「そういうことなら私たちに任せて、そのっち。癖は今までので分かったから。」

ちひろ「どこを撃てばいいかは私が!」

園子「2人とも…」

須美「落ち着いて呼吸を正して。」

園子「スー…ハー…」

ちひろ「この角度でなら多分行けます。」

須美「ありがとね、ちひろちゃん。照準集中。力を入れすぎず、指を絞るように…」

園子「指を、絞る…」

須美「…今!」

園子「ほっ!」パンッ

ボフッ

弾は人形のトサカに命中する。

グラグラ

ちひろ「いけー!!」

須美「気合いよ!」

園子「き〜あ〜い〜!!」

…そして。

…ボテッ。

見事に落下したのです。

園子「うっひょぉぉぉ!!やったぁぁぁ!」

ちひろ「よかったね園姉!いぇーい!」パンッ

園子「いぇ〜い!!」パンッ

射的屋店主「なんてこった…こんなのコルク弾でなんか倒せっこねえのに…」

須美「それはどういうことでしょうか?」

射的屋店主「あ、いや…は、はいよ。持ってけ嬢ちゃん。」

園子「わーい!やったねわっしー、ちっひー!」

ちひろ「私は場所指示しただけだから…」エヘヘ

須美「得意分野だもの。でも、引き金を引いたのは間違いなくそのっちよ。」

園子「そっかぁ…!」

3人で手に入れた人形。

すごい嬉しかった。

だからこそ…

園子「店主さーん!これ、そこの4つと交換してもらえます?」

3人「「「えっ?」」」

手放した。

 

ーーー夜、ちひろsideーーー

ちひろ「結構遠く来ちゃいましたけど…」

須美「ここがよく見えるって評判なのよ。ネットに載ってたわ。」

園子「わっしーってそういうの得意だよね〜」

ちひろ「あ、始まりましたよ!」

ドーン

須美「…ありがとう、これ。」

そう言って見るのは園姉が交換した4つの猫の人形。

スカーフの色がそれぞれ赤、青、紫、水色でした。

ちひろ「私たちの色だもんね。」

園子「そうそう!ピッタリだな〜って。ひとつはミノさんの分ね。」

須美「うん。」

園子「…私の方こそ、ありがとね、わっしー。私、わっしーと、ミノさんと、もちろんちっひーも。3人と勇者になれて本当によかった。ほら、私って変な子じゃん。あんまり友達できなくって…」

須美「そのっちは変なんかじゃないわ。素敵よ。私も…真面目すぎて心から信頼できる友達って、いなかったから。」

園子「そこがわっしーのいいところだよ?」

須美「そう?」

ちひろ「はい!…実を言うと、私も結構最初不安だったんです。」

園子「ちっひーが?珍しいね〜」

ちひろ「だって私以外みなさん年上なわけじゃん?それまで園姉以外の上の学年の人と触れ合ったことなかったから…」

須美「意外だわ…ちひろちゃん、結構人気あると思ってた。」

ちひろ「お母さん達がすごいからか、高嶺の花みたいに見られてて…実は同年代もここな達だけなんです。だからすっごい不安だったんですけど…安心しました。須美さんも銀さんもすっごくいい人で。」

園子「…よかったね。ちっひー。」

ちひろ「うん!」

須美「…銀はフォワード型、私は融通が効かない。ちひろちゃんは年下だからリーダーとして起用していいものか…

そのっちがリーダーになってくれたおかげで、ここまで来れたのよ。」

園子「…うん。4人だったから、ここまで乗り越えられたんだね。」

ちひろ「選ばれてからの訓練もお泊まりも、全部が楽しかったですよね。」

須美「ええ、3人と友達になれてよかった…」

園子「…友達だよ。私たち4人は。今までも。これからも。」

ちひろ「同じく!」

須美「もちろん、私もよ。」

 

ーーー車、安芸sideーーー

安芸「…はい。データ受け取りました。…彼女達ですか?独断で休暇を取らせてます。三ノ輪さんを失ったメンタル面へのダメージは相当なものでしたので。はい。では。」ガチャ

電話を切って送られてきた内容を確認する。

(勇者の喪失を出さないための新システム…)

安芸「っ!?!?!?」

…それは、想像を絶するものだった。

(…でも…これは…

武器や技の強化はできても…心には限界があるわ…何よりこんなの…まるで…)

安芸「…生贄、じゃない…」



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16話 やくそく

ーーー清めの滝、ちひろsideーーー

ザザー…

ちひろ「…」

 

須美『新システム…ですか?』

安芸『ええ。そのために一時的にスマホを納めてもらうことになるの。いいかしら?』

園子『はい!写真なくなったりはしないんですよね…?』

安芸『そこに関しては問題ないわ。』

ちひろ『ならよかったぁ…せっかく撮りまくったのがなくなるのは残念すぎますもんー!』

 

(神樹様は外から来るかつての動物の変異種、バーテックスと戦うために、私たちに力を与えてくれてる。ただそれは、本当に適正が高い…それこそ、テストとかで80点が当たり前とかのレベルじゃないと無理らしい。システムそのものの数も一因らしいけど。)

神官「新しい勇者システムとなります。」

そうして差し出されたスマホを取る。

ピロリン!

園子「わっ!なんか出た〜!?」

須美「これが新装備…?」

ちひろ「可愛いですねー!よしよーし!」ナデナデ

安芸「そう。それが勇者を強化、サポートする精霊よ。」

須美「…これが間に合っていれば…」

ちひろ「…っ。」

園子「ん?わっしー何か言った?」

須美「いえ、なんでもないわ。」

園子「う〜ん、なんて名前にしようか〜…」

安芸「…」

 

ーーー鷲尾家、須美sideーーー

食卓にお手伝いさんとともに、食事を運び込む。

義史「朝から豪勢じゃないか。」

須美「今日は特別に野菜いっぱいにしておきました。」

遥「あら…お肉いっぱいでもいいのよ?」

須美「それはお母さんが食べたいだけでしょ。もっと健康には気をつけてもらわないと。」

そう言いながら特盛のサラダを置く。

須美「さあ、いただきましょう。」

遥「…須美。」

須美「…?何?そんなに嫌なの?」

遥「いや、そうじゃないわ。あなたにはお役目も勉強もあるんだから、無理しなくてもいいのよ?」

須美「ううん、これくらいしかできないもの。それに、お母さんより私の方が料理好きだしね。」

遥「うっ…」

義史「ふふ…須美、お前は立派な私たちの娘だ。誇りに思う。」

須美「お父さん…わかってるわ。ありがとう。」

 

ーーー学校ーーー

須美「おはよ…う…?」

園子「おはサンチョー…どうしたの?わっしー。」

学校に着いて教室に入ると、みんながブルーシートに固まって何かをしていました。

(…5年生の子もいる…一体…?)

ちひろ「えー!?なに!?」

ここな「いいからいいから!」

楓「あ、須美先輩おはようございます。」

須美「おはよう、楓ちゃん。これは…?」

天音「見てれば分かりますよ。」

そしてみんなが広げたのは…『わたしたちの勇者頑張れ』と書かれた横断幕だった。

園子「…これ…」

ちひろ「…綺麗…」

麻里「念の為に釘さしとくけど、私やそこの3人が提案したんじゃないよ。あくまで作業手伝っただけ。」

須美「でもこれ…ダメって言われてるんじゃ…」

拓斗「先生?知らないね。隠れてやりゃ問題ないし。」

6年生A「他に何も思いつかなかったの。この間はごめん…」

6年生B「一番つらいのは2人のはずなのに、何も考えず質問攻めにしちゃったから…何かできないかってみんなで考えて…」

楓「それを偶然私達も聞いちゃって、協力したんです。うちのクラスにも勇者はいますし。」

須美「…これは絶対先生には内緒にしとかないと。

…でも、ありがとう。」

園子「勇気づけられたよね。すごい嬉しい。」

ちひろ「これさえあれば負けないです!本当にありがとうございます!!」

麻里「ふふっ。…さぁて、先生が来るまであと15分、それまでに全部片付けて元通りにする必要あるわよ!!」

天音「分担した通りに各自動いてください。時間はありません。」

拓斗「今のうちに…」

ここな「ダメですよ先輩ー。」ガシッ

拓斗「チッ!!」

麻里「全員行動開始ぃ!!」

6年生、5年生『はい!!』

 

ーーー乃木家、安芸sideーーー

安芸「…ということです。」

乃木父「構いません。それもお役目の一環なのだと言うのなら…乃木家に生まれた園子の使命です。」

ひかり「…あなたがそう言うなら。…園子には伝えないんですか?」

安芸「はい。」

ひかり「…そうですか。」

 

ーーー鷲尾家ーーー

遥「…どうしても、言っちゃダメなのですか…?」

安芸「はい。心苦しいですが、そういう方針です。」

遥「それだけは反対です。そんなの…」

義史「…了解しました。」

遥「あなた!」

義史「…もしこれで、予め知ったせいで変身できなくなれば、少なくとも須美は自分を絶対に許さなくなる。」

遥「っ!!」

義史「…そういう子だ。そうならないなら…たとえ嫌われようと、構わない。」

 

ーーー上里家ーーー

和斗「…まあ、聞いてくれないと思いましたよ。俺らなら間違いなく反対するって分かってるでしょうし。」

安芸「上里さんも立派に戦っております。聞かないわけにはいかないかと思い、独断で。」

和斗「…あなたが担当でよかったと感謝は述べますが、それで賛成するかと言われればNOです。スペックも上がって、防御用の精霊も追加されたのにこんなのがいる必要が分かりません。」

安芸「それは…月夜様に聞かれれば、明らかかと。」

和斗「っ!?また神託届いたのか…!?」

月夜「…うん。四体同時襲来を告げる、神託が…」

和斗「…また、かよ…!?!?」

安芸「残るバーテックスは4種…あなた方なら、次来るのがお分かりになるかと。」

和斗「…最強の、あいつが来る。」

安芸「その通りです。それと、また15年前に1度観測された合体バーテックスにこの先備えるためにも、必須なのです。どうか、ご理解を。」

月夜「…っ。」

(…そうだ。勇者なんて取り繕ってはいるけれど。

それはこれからも選ばれ、失われてく生贄…)

 

 

 

 

ーーー街道、園子 sideーーー

ちひろ「見てください須美さん!園姉!ここにカボチャ!あっちにもカボチャ!どこもかしこもカボチャだらけー!!」

園子「外国のお祭りだね〜ハロウィン〜!」

須美「我が国の懐の広さが伺えるわね。」

(そういう言い回しってほんとにわっしーらしいよね〜最初と比べるとわっしーも結構変わったけど芯が変わってないの素晴らしいよね〜)

ちひろ「色んな祭り楽しめるから結果オーライじゃダメです?」

須美「いいわよ。」

ちひろ「やったー!」

(たとえば前なら突っぱねてたところを許容したりとか、ね。)

 

ちひろ「じゃあ一斉に行きますよー。」

須美「せー…」

園子「のっ!」

ポスッ

ポスッ

ポスッ

(お〜これは想定以上に〜…)

園子「似合ってるぜー!わっしー!」

ちひろ「園姉もすっごい可愛い!」

須美「ちひろちゃんも人のこと言えないくらいに輝いてるわよ。」

ピロリン!

園子「わっ!」

(あ!勝手に精霊出てきちゃった!)

須美「あ、精霊。」

ちひろ「すごいくつろいでますねー…園姉の頭の上で寝転がってる…」

園子「も〜勝手に出てきちゃダメって言ったでしょセバスチャン〜」

須美「セ、セバスチャン?」

園子「烏・セバスチャン・天狗。この子のミドルネームなんよ〜」

ちひろ「ついでに私のはコマです!!」

コマ「ワン!!」ピロリン!

須美「そ、そうなのね…私も付けてみようかしら…じゃなくて!一般の人から見ると帽子が浮いてるように見えるから早く戻さないと…」

子供「ねー見て母さん!あの帽子浮いてるー!」

(あ、ヤバいねこれ。)

須美「アルファ波でうかしてます。」

子供「すげー!」

園子「お〜!ナイスわっしー!」

須美「今のうちに戻して!」

 

ーーーイネス、須美sideーーー

須美「うーん…やっぱり醤油豆ジェラートは私には合わないわ。」

園子「あはは。ミノさんに怒られるよ〜?」

ちひろ「おー!メロンとスイカも意外に合うー!」

須美「あ、そのっちのバニラもらうわね。」ヒョイッ

園子「あっ!わっしーに取られた!」

須美「ふふ…美味いわね。」

(何度でも食べれるわ…)

園子「しかもこの目…まだ狙って…」

須美「まあ今度はちひろちゃんのだけど。」ヒョイッ

ちひろ「あー!!ズルいですよー!!こうなれば私も園姉のを!」

園子「なんで私〜!?!?」

 

ーーー帰り道ーーー

須美「お父さんもお母さんも、学校のみんなも応援してくれてる。お役目がある私たちは幸せ者だ。」

園子「あんな素敵な横断幕ももらっちゃったもんね。」

ちひろ「みんなのためになら、無限に頑張れる気がします!」

…なんでわかったかは分からない。

けど、嫌な風が吹いた。

園子「…来るの?」

須美「ええ。」

ちひろ「ついに分かるようになっちゃいましたね…」

そして、私たち以外の時間がその動きを止める。

須美「気を引き締めないと。」

ちひろ「集中しないと!」

園子「…あ、そうだ。はいわっしー。」

そうして出されたのはそのっちがいつも身につけてるリボン。

須美「これ…」

ちひろ「え?いいの園姉。それ小さい頃からずっと持ってたのに…」

園子「うん!わっしーに似合うと思うんだ〜この戦いが終わったらつけてみて!」

須美「…ありがとう、そのっち。必ず見せるわ。」

園子「約束だよ?」

須美「うん。」

ちひろ「楽しみです!」

須美「…じゃあもうひとつ。そのっちとちっひーは。」

園子「ちっひーとわっしーは。」

ちひろ「須美さんと園姉は。」

3人「「「私が守るから。必ず、一緒に帰ろう!!」」」



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17話 ゆうしゃ

ーーー樹海、ちひろsideーーー

数ヶ月の平穏を壊し、侵攻してきたバーテックス。

その数は…

園子「4体!?」

須美「あの炎の数…そういうことだったのね…」

ちひろ「やるしかないですね…」

園子「よーし、行くよ!」

須美「了解!」

ちひろ「あ、そのポーズなんかカッコイイです!!」

園子「いかすね〜!」

 

須美「ふぅ…あなたの名前はシロガネよ。よろしく。」

そう言う須美さんの手には狙撃銃。

園子「こやつ…精霊じゃなく武器に!?」

と軽くふざけてる園姉は変わらず槍。

そして私は…

(一応先生から聞いて父さんに稽古付けてもらってたけど…片手剣とレイピアって異色だよねー…あとは…)

ジャキッ!!

園子「おおおっ!背中からなんか出たよちっひー!」

ちひろ「これがソードビット…うん、使いやすそう。」

須美「ふふ、よかったわね。」

そう言って須美さんは狙撃銃を前に。

園子「…そういうことね〜!」

その上に園姉が槍を。

ちひろ「これは私の分で…こっちは銀さんの分。」

そして私がレイピアと、片手剣を重ねる。

園子「敵は強大、でも私達4人なら絶対勝てるよ!」

須美「ええ!銀が果たせなかった分まで、約束を果たすわよ!」

ちひろ「私たちを応援してくれてるみんなのためにも、ですね!!」

3人「「「えいえいおー!!」」」

 

ちひろ「うおおお!!はやーい!!」ビュンッ!

ソードビット2つに足を乗せて水の中を進んできている個体に接近する。

須美「…っ!」ズドンッ!!ズドンッ!!

(今の須美さんの狙撃…前のフルチャージかそれ以上あるんじゃ…?)

ちひろ「よっぽど強くなってるのね…なら私も!!」

ズバァン!!

そのまま一撃、くらった個体は水に沈み込む。

しかし…

ゴーンゴーン

ちひろ「よしよ…なにこれー!?」

(頭にガンガン響く…変な気分ー!!)

園子「ちっひーに…変なことするなぁぁぁぁぁ!!!!」ドガンッ!!

園姉が音を鳴らしていた個体に伸びた槍で攻撃し、音が止む。

ちひろ「ありがとう園姉!」

園子「いえい…」

ズガンッ!!

ビジジジッ!!

園子「キャッ!?」

ちひろ「園姉!」

角っぽいのがついている個体が電撃を園姉に浴びせる。

いつもなら重症間違いなしだっただろう。

ただ今は…

園子「ビリビリ来た〜…ありがとね、セバスチャン。」

私たちを守る、精霊がいる。

ちひろ「これが精霊の守護…これなら!!」

モクモクモク

そう言った矢先、先程私が一撃浴びせた個体が黒い煙を撒き始める。

園子「なんも見えないよ〜!?」

須美「これは…ガス?だとしたらまさか!!」

ズガンッ!!

ボッガァァァァァァァァァァァァン

再びの電撃、さらにはそれが充満していたガスに引火し、大爆発を引き起こす。

ちひろ「きゃっ!?」ビジジジッ!!

須美「くっ…!!」ビジジジッ!!

園子「精霊さんいなかったら全滅間違いなしだよこれ〜!?」ビジジジッ!!

ちひろ「でも…これで…!!」ビジジジッ!!

切り札のためのゲージ…私の場合は右腰についている花…その花弁全てに光が灯り、それに付属する帯の1つも光る。

須美「…!来たわね!」ビジジジッ!!

園子「よっしゃ!やっちゃうぞ〜!!」ビジジジッ!!

3人「「「満開!!」」」

樹海からエネルギーが集まり、炎を払って橋に3つの大輪の花が咲く。

須美さんは巨大な8つの砲台を持つ船。

園姉は8つの刃を持つ船。

そして私は2人と比べて小柄だけど、ソードビットの数が通常の何倍にも増えた船。

 

ーーー須美sideーーー

ズガンッ!!

ビジジジッ!!

電撃の個体が須美さんに攻撃を仕掛けるも、いとも容易くバリアで防がれる。

須美「もうお前たちの攻撃は…届かない!!」

ビュンッ!

一閃、たった一撃で撃破する。

しかし、その散り際はいつもと違く…

須美「…天に、昇ってってる?どういうこと…?」

無数の光が天に昇っていく、奇妙な物だった。

 

ーーー園子sideーーー

園子「お〜接近してきた〜!」

音を鳴らしてたやつが近づいてくる。

園子「あ〜私にもあれ聞かせようとしてるのかな〜…えいっ!!」

ズガガガガガガガッ

刃を伸ばして突き刺し、切りまくったあとに突き飛ばす。

園子「ふふ〜ん。」

ピロリン!

刃を飛ばし、敵を包囲させる。

園子「これで…終わり!!」

ザクザクザクザクッ!!!!

そして、一斉に突き刺し、トドメ。

園子「ふぃ〜楽勝楽勝!!」

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…来た!!」

潜る個体が浮上、押しつぶさんと迫ってくる。

ちひろ「私なら突破できないと思ってるんだろうけど…それは大間違いですよー!!」

シュババババババババババババババババババ

大量に増えたソードビットを一箇所にぶつける。

最初はわずかでも徐々に傷が広がっていき…

ちひろ「せいやっ!!」ズバンッ!!

両断、撃破する。

ちひろ「ふぅ…やったよ園姉ー!!」

 

 

 

 

園子「すごかったよちっひー!!」

ちひろ「園姉もねー!」

園子「へっへ〜ん!」

須美「2人とも!まだ敵は一体残ってるのよ!油断しな…い…」ヒュゥゥゥン

その時、ふいに力が抜けた。

園子「わっしー!!だいじょ…あれ…私も…?」ヒュゥゥゥン

ちひろ「須美さん!園…姉…!」ヒュゥゥゥン

3人とも落下する。

 

ちひろ「あいたた…時間切れ…?」

ズキズキッ!

ちひろ「っ!!たぁ…頭痛…?なんでこんな時に…」

園子「ちっひー!」

ちひろ「園姉!無事でよか…右目の横のそれ最初からついてたっけ…?」

園子「え?そんなのついてるの?解けたあとから右目の調子が悪くて…」

(ドンピシャ!?…まるで…補強してるみたい…)

 

ーーー須美sideーーー

須美「くっ…急いで合流を…」

…足に、力が入らなかった。

須美「…っ?」

頭の後ろから現れた布の補助を受けてなんとか立ち上がる。

(なんで急に足が…いや、今はそれどころじゃないわ。)

すでに、最後の一体が接近してきていた。

須美「2人ともきっと準備に入ってるはず…私はそれまでの時間稼ぎを…」

ボボボボボボボボボ

須美「…何、あれ…」

…その一体が、大量に炎を纏った軍団を放出し始めたのである。

 

園子「せいっ!たぁっ!」ズバッズバッ

ちひろ「数が多い…!」ズバッズバッ

園子「ちっひーはわっしーのところに!この数はまずいよ!」

ちひろ「うん!わかった!!」ズバッズバッダンッ!!

 

ズドンッ!!ズドンッ!!ズドンッ!!

(数が多い…狙撃が追いつかない…!!)

炎個体が1匹迫ってくる。

須美「くっ…」

ちひろ「おりゃぁ!!」ズバンッ!!

須美「ちひろちゃん!」

そこに、ちひろちゃんが登場、当たる寸前で切り裂く。

須美「助かるわ!」

ちひろ「ありがとうございます!…って言いたいですけど…ソードビットでも3個くらい必要なので大した助力には…」

(…防御するしかないこの状況…時間のこともある…今はやるしかない!)

須美「ちひろちゃん!そのっち!!」

ちひろ「っ!了解です!」

園子「わかったよ!」

3人「「「満開!!」」」

再び、空に3つの花が咲き、各々が炎個体に対処していく。

しかしその間に…

バーテックスは巨大火球を用意していた。

須美「…何…あれ…!?」

ボォォォォォォォォ!!!

そして放たれたそれは、樹海を破壊しながらこちらに━━━━━━━━━━━

園子「わっしー!!」

ガチャガチャッビカンッ!!

そのっちの刃が合わさり、盾を私の前で形成。

それにより、なんを逃れるものの…

園子「きゃあっ!!」ヒュゥゥゥン

ちひろ「熱風が…!!」ヒュゥゥゥン

何もないそのっちやちひろちゃんは吹き飛ばされてしまう。

須美「2人とも!…って…これは…!!」

…大橋が、跡形もなくなっていたのだ。

(たった…一撃だけでこんな…!!)

 

ーーー園子sideーーー

(う…うぅ…ヤバいよあいつ…)

園子「ちっひー…大丈夫…?」

ちひろ「う…ん…頭痛いけど…」

(わっしーや私だけじゃない…ちっひーにも異常が…?これ…まるで…)

園子「…あれ?左腕が痺れて…」

次の瞬間、わっしーの布と同じようなものが腕に。

(…まるで…!!)

 

ーーー須美sideーーー

須美「くっ…!!」

(満開ですら1人だと分が悪い…なんて強さなの…!?)

ちひろ「須美さん!!」タンッ

須美「そのっち!ちっひー!無事だったのね。」

園子「ねえ、なんだか変だよ。こんな戦い方でいいのかな?」

そういうそのっちの腕には私の足代わりをしている布や、そのっちの目についてるものと同じものが。

(…嫌な予感しかしない…でも…)

須美「今は神樹様をお守りしないと…世界が…みんなが死んじゃうわ。」

ちひろ「…そうですね…」

そして、再びバーテックスが巨大火球を作り始める。

園子「さっきの…!!」

須美「…私に任せて。」

ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

それに対抗すべく、こちらも全エネルギーをチャージする。

(…やらせない…

世界も…

学校のみんなも…

楓ちゃん達も…

麻里も…

先生も…

父さんや母さんも…

そのっちやちひろちゃんも…)

…銀の顔が、浮かんだ。

須美「…もうッ!!二度とッ!!」

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

ボォォォォォォォォ!!!

フルチャージの一撃と、巨大火球。

双方の一撃がぶつかり合い…

ドッガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!

凄まじい爆発を引き起こした。

(…!力が…!)

園子「わっしー!!」

ちひろ「須美さん!!」

(私一人ならここで終わってた…でも…)

須美「そのっち、ちひろちゃん…後をお願い。あいつを…止めて…」

ちひろ「…任されました。」

園子「私たちが、必ず!」

須美「…ありがとう。」

園子、ちひろ「「満開!!」」

(…綺麗…)

2つの大輪が咲きほこるのを見届けてながら、私は樹海に落ちていった。

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「大剣っ!グンッグニルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

片手剣とレイピアを接続、さらに船とも接続して巨大な剣を作り出す。

そして園姉の船の先端に乗り、突撃する。

バーテックスは大量の炎個体を形成、止めようとしてくる。

(任されたんだ…須美さんに!!)

ちひろ「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

ボボボボボボボボボ…ドッガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!

何百もの炎個体を吹っ切り、そのまま本体を捉える。

園子「こっからぁ…出て行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガドッガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!

そして、勢いのままに壁まで一直線に離さず穿つ。

ちひろ「はぁ…はぁ…やった…?」

園子「多分…?あれ何…?」

ちひろ「え…?」

園姉が指さす先には謎の4面体。

そのまま4面体は解けるように奥へと消えていく。

ちひろ「…っ!園姉!」

園子「うん!逃がさない!!」

急いで後を追う…前に、満開が解ける。

ちひろ「っ!こんなとk」

ズキズキズキズキズキッッッ!!!!

(っっっっっっ!!!!)

ちひろ「が…ぁ…!!!!」

園子「がはっ!がはっ…はー…はー…ち、ちっひー…大…丈夫…?」

ちひろ「なんか…満開を重ねるごとに頭痛がひどくなってるよ…園姉の方こそヤバそうだったけど大丈夫…?」

園子「うん…一瞬心臓止まったかと思ったけど…」

ちひろ「…後を…おおう…あれが敵なら…トドメささないと…!!」

園子「そうだね…つらかったら言ってね。」

ちひろ「うん…!」

あとを追い、消えた先へ…

 

ーーー結界外ーーー

…そこにあったのは、一面炎に包まれた世界。

再生するバーテックス。

炎のないあの個体達が4面体に群がり、再生し始めていた。

園子「…何…これ…」

ちひろ「…ウイルス…なんかじゃないよね…これ…変異どころか…一から…!!」

園子「つまり…教えられてたの嘘だったってこと…?…ってあれ!?!?!?」

ちひろ「どうしたの!?園姉!?」

園子「…心臓が…動いてない…」

ちひろ「…へ…?嘘でしょ…?そんなの…生きてられるはずが…」

…そこまで言いかけて、気づく。

ちひろ「…精霊、バリア…」

園子「…うん。だと思う。

…ねえちっひー。…私、わかっちゃった…」

ちひろ「私も…

満開は…使う度にどこかが機能不全になる…」

園子「…敵さんも、ここで生き返ってるしね…」

(…この先も…敵は来続ける…?仮に私たちが解放されても…あとの子達が…!!)

園子「とりあえずひいて、わっしーと相談しよう。ちっひーのも頭痛だけでまだわかんないし…ここにいるのは危険だと思う。」

ちひろ「うん…」

 

ーーー樹海ーーー

園子「気絶してるね…」

ちひろ「須美さん!起きてください!!緊急事態なんですよ!!」

園子「…起きないね…これは待つしかなさそうなんよ〜…」

ちひろ「…あれ?ねえ園姉。」

園子「ん?どうしたのちっひー。」

ちひろ「…なんで、樹海化が解けないの?」

園子「…っ!!!ほんとだ…なんで…」

その時…絶望が、見えた。

…十二体同時襲来という形をなして。

(…全員…!?)

園子「…っっっっっっ!!!!!」

(…落ち着け…落ち着け私…!満開は代償あり、不用意には使えない…でもただでさえまずいのに須美さんは気絶中、もし今巻き込まれでもしたら…!!

満開すればするほど満開しないと戦えない体になる…負の連鎖になる…!!どうすれば…どうす…)

ズキズキッ!

(…そうだ…それしかない…)

ちひろ「…園姉。私が止めてくる。」

園子「ちっひー!?それは無茶だよ!?」

ちひろ「私だけ、まだ満開の後遺症が分かってないから。」

園子「逆にそれが危険なんだよ…?」

ちひろ「わかってる。分かってるけど…満開で機能不全になるなら、使えば使うほど満開なしには戦えない体になるんだよ。なら…頭痛だけの私の方が負の連鎖にはならないと思う。」

園子「…せめて私も…」

ちひろ「須美さんが巻き添えくらう危険性があるでしょ?…お願い、園姉。須美さんを守って。」

園子「…うん、わかった。でもやくそくして。必ず生きて戻るって。」

ちひろ「…うん、もちろんだよ。」

ダンッ!!

跳躍する。

 

(…絶対に、通さない。)

ちひろ「こっからは、私が相手だ!!満開!!」

 

ーーー園子sideーーー

(ちっひー…ちゃんと帰ってきてね…)

ちっひーの無事を案じ続ける…その時だった。

須美「ん…うぅ…」

園子「っ!わっしー!!」

須美「…?」

園子「よかった!目覚めて!大変なんだよ!壁の外もそうだし、満開の代償も!今ちっひーが敵を食い止めてくれてる、だから簡潔になるけどいい?早く助けに…」

須美「誰…」

(…へ?)

須美「誰…ですか…?」

(…わっしー…何を言ってるの…?)

須美「なんですか?一体…」

…可能性はあった。来るまでに考えもした。

その、はずなのに。

須美「…そうだ、銀は!?」

(…嘘…だよね…?)

須美「銀はどこ!!」

園子「っ…!!わっしー!!!」

…記憶を代償とされた。

ただ悲しき真実が、心をえぐる。

…それだけで、終わらない。

…ズキズキズキズキズキッッッ!!!!

園子「がぁ…っ!?!?いっ…たい…!!」

突如として訪れる凄まじい頭痛。

須美「っ!?だ、大丈夫ですか!?頭が痛むんですか!?」

(…記憶はなくなっても、根は変わらないんだね…)

ズキズキズキズキズキッッッ!!!!

激しい頭痛の中、それだけが心を癒す。

(この状況…あるとしたらちっひーの方で何かが…)

ちっひーが向かった壁側を確認する。

双子座、魚座、獅子座、蠍座、蟹座、射手座が、その姿を消し、ちっひーらしき人影が樹海に落ちていくのが見えた。

(あいつも…強いね、ちっひーは…いつもそう…)

園子「…あれ?いつもってな…に…っ!!!!」

なぜちっひーだけ頭痛だけで済んでいたのか。

否、済んでいると思ってたのか。

(…ごめん、ちっひー…でも、まだ、大丈夫だから。)

須美「…ホントに、大丈夫…なんですか…?それに…さっきの輝き…」

園子「…うん。大丈夫。後は私がなんとかするよ。」

…そう、言い聞かせながら送ったリボンをわっしーの腕に結ぶ。

園子「私は乃木園子。」

代償で持ってかれた腕も使って。

園子「あなたは鷲尾須美。」

ゆっくり。

園子「あの子は上里ちひろ。」

全ての思いを乗せて。

園子「その子は三ノ輪銀。」

やくそくしたんだ。

園子「4人は友達だよ。ズッ友だよ。」

必ず、守るって。

園子「私は死なないから。また会えるから。」

…だから。

園子「だから、ちょっと行ってくるね!」

笑顔で。

ダンッ!!

残る6体を倒すために、跳躍する。

そして叫ぶ。

園子「満開!!」

切り札を。

(何度死んだっていい。死ねないんだもん。)

園子「だから…全て守る。

世界も、

学校のみんなも、

天ちゃんも、

楓ちゃんも、

ここちーも、

まりりんも、

先生も、

父さんも、

母さんも、

わっしーも、

ちっひーも。

勇気はもう…返しきれないくらいもらったから。今度は私が返す番。

…人々に勇気を分けてあげる、それが勇者だもの。」

最大までチャージする。

そして。

園子「…今まで、ありがとう。」

突撃した。

 

 

 

 

ーーー病院、○○sideーーー

○○「…?」

辺りを見回す。

○○「…私は…誰…?」

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…んぅ。」

(…ここ…病院…?)

徐々に意識がハッキリしてくる。

(記憶をたどって…えーっと…)

ちひろ「…はっ!!そうだ!!園姉h…」ガバッ

ジャキッ

ちひろ「…え?」

起き上がってすぐに、なぜか、首に木刀が添えられる。

気づくと、辺りを神官様に囲まれていた。

(看病…?いや…そしたらなんで首に木刀なんて…)

神官A「…誰だ、貴様。」

ちひろ「…はい?」

神官A「誰だと聞いている。…なぜ、勇者システムを所持してる。」

ちひろ「…は?」



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18話 孤独な英雄

今更になってタイトルつけ忘れてたことに気づきました。内容は特に変わってません。紛らわしくて申し訳ねえ…


ーーー病院、ちひろsideーーー

…戦いは、終わった。

私が病院に搬送されてたから、そうなんだろう。

…なのに。

神官A「改めて聞こう。貴様は誰だ。なぜ勇者システムを、それも大赦の知らないものを持っている。今すぐ出せ。」

ちひろ「誰も何も…上里ちひろですよ!上里家の!!上里月夜と、上里和斗の娘の!!」

神官B「はぁ…どうせつく嘘ならもう少しマシなものにするべきだったな。」

ちひろ「嘘って…ここまで確固たる証拠他にないじゃないですか!なんでこれで嘘だなんて…」

言い返せない。せるはずがない。

…その、はずなのに。

神官C「いないからだ。」

ちひろ「…え?」

神官C「上里家に、そんな名前の子供はいない。

…いや、そもそも上里家に子供はいない。」

わけが、わからなかった。

ちひろ「は、はは…何を言ってるんですか…さすがに寝起きドッキリはひどいですよ…?」

神官A「…応じる様子はなし、か。なら…力づくで━━━━━━━━━━━━━━━」

実力行使、それに移行する気配を感じた瞬間に胸からスマホを取り出す。

神官B「なっ…そんな場所に!?」

(生まれて初めて感謝したかも!!)

神官C「使われる前に取り押さえろ!!」

ちひろ「もう遅いです!!」

変身、そしてソードビットをそれぞれにスレスレで押し付けて動きを止める。

神官『っ…!』

ちひろ「…よっぽどの時以外は信念を貫け、そうお父さんが言ってました…

…答えてください。満開の代償、あの結界の外の炎、そして須美さんと園姉の場所を!!」

神官A「結界外のことまで知ってるだと…!?いよいよなにもn「早く!!」…答える理由がない。貴様が味方だろうと敵だろうと、私たちを殺せば犯罪者だからな…この胸に突きつけられてるものは脅しにならないぞ。」

(…賢い…!命に関わる寸止めなら、多くは動揺させられる…父さんがそう言ってたのに…!こうなったら直接証拠を…)

スマホの画面を切り替えて、写真を見せようと…

ちひろ「…え?なんで!?」

…消えていた。

どの写真からも、私だけがすっぽりと。

(…ならいつでも見せれるように挟んである身分証明書を…!!)

白紙。

ちひろ「…な…んで…」

ありえない。ありえて、なるものか。

神官B「現実逃避は終わりか?いくら本物のような演技をしても、証拠がなければ信じるに値しない。無駄な抵抗はもうやめることだな。」

(…おかしいよ…なんで…?私たち…ずっと…みんなのために頑張って…なのに…!!)

心を絶望が、支配していく。

(…いっそ、もう捕まった方が楽なんじゃないかな…勇者システムを持ってた人間だ…殺されるはずがないし大赦中に知れ渡るから母さん達がきっと気づく…)

…変身をとく。

神官C「…!捕らえろ!!」

そしてそのまま神官達に取り押さえ…

…トサッ

ちひろ「…ぁ。」

髪を結んでいた、リボンが落ちた。結び目が緩くなってたらしい。

そして、そこには。

 

『上里ちひろを、初代巫女上里ひなたの名と、私上里月夜の名において認めます。』

 

代々受け継がれるリボン、その継承の証がハッキリと、残されていた。

神官A「…っ!!止まれ!これは…!!」

ちひろ「…私なんかよりあなた方の方がよくわかるんじゃないですか?これが、上里家の帯…リボン?どっちなのか分からないけど、そういうものだって。初めての勇者適正持ちだった私は、初代の人のをお母さんから直接受け継いだんですし。」

神官B「…偽物の可能性は…?」

神官A「ない。月夜様とは小学生の頃から同級生だった。これは間違いなく本物だ。」

神官C「…つまり…」

神官A「…彼女の言ってることは真実、ということだ。」

ザッ

神官様が一斉に礼をする。

神官A「先程までの無礼、大変申し訳ありませんでした。こちらも現在大変に忙しく、人手が足りない。詳細が分かるまで少し時間がかかること、どうかご許し願いたい。」

ちひろ「わかってくれたなら、いいんです…あとは、質問にも…」

神官A「…了解しました。まず━━━━━」

そして全てを知った私の心には、音を立てて、ヒビが入った。

 

ーーー上里家ーーー

ちひろ「…」プルルル

楓『もしもし。』

ちひろ「…もしもし…」

楓『…どちら様でしょうか?ご要件は。あ、父どもは出かけてるので伝えたいことなら代わりに。』

ちひろ「…いえ、なんでも、ないです。」ガチャ

 

…心が。

 

プルルル…

お手伝い『はい。こちら伊予島です。』

ちひろ「…天音さんって、いらっしゃいます?」

お手伝い『はい。今変わりますね。』

天音『お電話変わりました、天音です。』

ちひろ「…ど、うも…」

天音『はい、どうも。それで、ご要件は…』

 

割れて。

 

ここな『もしもしー?誰ですか?』

ちひろ「えーっと…」

ここな『うん。』

ちひろ「…上里の者なんですけど…」

ここな『上里!?それならちょっとこっちも頼みたいことあるんですけど!』

 

砕ける。

数年とはいえ、ずっと一緒に過ごし、将来仲良くすることを誓ったはず…それなのに。

ヒビが…絶望のヒビが、広がる。

 

和斗「…クソが!!!」

バキッ!!

机が音を立てて地面につくほどまでに凹む。

和斗「考えてみればおかしかった…なんで勇者のいないうちにわざわざ許可を取りに来たのか…そんな不自然な点にすら、気づけなかった…!!」

月夜「ちひろは…頑張ってたはずなのに…私は…そんなことも忘れて…まるでいなかったように…!!たとえどれだけの人が忘れようと、親である私だけは覚えてなきゃいけなかった…なのに…!!」

…哀れんでもらえたら、少しは救われるかもしれないなんて、幻想を抱いた。

しかし現実は、残酷で…傷は癒されるどころか、さらに深く、広く心を蝕んだ。

 

ーーー大赦深部ーーー

神官「この奥にお進みになられますと、乃木園子様のいらっしゃる部屋です。」

ちひろ「はい…ありがとう、ございます…」

…その目に、生気はなかった。

これでもかというほどの真実に打ちのめされ、今にも崩壊しそうな心。

それをつなぎとめるためにはもう、微かに残る希望に、縋るしかなかった。

たとえ、その人がどんな姿になってるかを、知ることになったとしても…

それしか、もうなかった。

…ガチャ

扉を開ける。

(…ひどい…)

…全身に包帯が巻かれ、私が来たのを確認しても顔くらいしか動くことができていない。

…私が倒れたあとに、20回もの満開を繰り返したせいだと聞いた。

そして、そのせいで崇められてるということも。

(…私たちは…みんなを守るために…なのにその仕打ちが…これなの…?)

本来の目的を達成する前から、心が壊れかける。

(…ダメだ…まだ動けるだけ私はマシ…園姉よりは…!)

無理やり、自信を鼓舞する。

しかし、そんなボロボロの鼓舞は。

園子「神官さんの…お子さんかな?初めまして〜乃木園子って言います。」

わずかな希望と、崩壊寸前の心ごと粉砕された。

 

 

ーーー???sideーーー

『…なんと、愚かなものだろうか。世界を救った者が…ただ、友と過ごしたいと願ったものがこんな結末とは…

1人は唯一命を落とし、概念的に孤独となった。

1人は記憶…否、人格を喪失、事実的に孤独となった。

1人は身体中のほとんどの機能を失い、崇められ、社会的に孤独となった。

…そして、1人はこの世の全てから忘れられ、自身の歩んできた道を失い、精神的に孤独となった。

…ああ、

英雄とは、なんと、孤独なものだろうか。』

 

 

鷲尾須美の章、完



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結城友奈の章
1話 戦いの始まり


ーーーちひろsideーーー

「いやー、劇大成功でしたね!」

「いや、あれ成功とは言わないから。」

「どちらかというと失敗だと思うんですけど…」

「友奈ちゃんのアドリブのおかげで盛り上がりましたね。」

「東郷、それを人は無茶苦茶と言うんだ。」

今は幼稚園で人形劇を披露してきた帰り道、失敗というのは劇の途中で枠組みが倒れて演じてた風さんと友奈さんが丸出しになってしまったからである。

(ま、東郷さんの言った通り、友奈さんのアドリブでなんとかなったけど。)

入学後の私は同じマンションだったのもあり、友達になり、彼女のお姉さんの風さんが所属する「勇者部」に入った。

本当は誰とも友達になるつもりはなかったけどよく考えたらもう私が生きてるうちにバーテックスは来ないだろうし、別にいいだろう。

私も人助け好きだし。

部員はムードメーカーでフレンドリーな友奈さん、技術・お菓子(っていってもだいたいぼた餅)担当でなぜか須美さんに似ている東郷さん(最初は間違えたけど性格まで似てるんだよなぁ…)、部長で女子力王(自称)の風さん、そして私と樹の5人だ。

活動はボランティア、ゴミ拾いや迷子の猫の飼い主探しetc…。

まあ、正直言って楽しい。

全員に心を開いてるつもりはないけど、お陰で学校生活充実してるし、大赦の100倍はマシだ。

「ちひろちゃん、ぼーっとしてる?」

「ん?別に大丈夫だよ?ところで昨日新しいゲーム買ったけどやる?」

「うん!お姉ちゃん、ご飯の前ちひろちゃん家行ってくるね!」

「はーい、ちひろ、なんならうちでご飯食べる?今日うどんにする予定だけど」

「ぜひ!」

(うん、やっぱりこの部いいわ。)

ーーーそんなある日ーーー

ーーー樹side ーーー

「この問題を…樹、解きなさい。」

「え、あ、はい!」

(どうしよう、難しくて分かんないよ…)

そのとき。

ピロッ

「じっと見てたら怪しまれるから早く覚えて。」ボソッ

「ありがとう、ちひろちゃん。」ボソッ

「よし、せいかーーー」

ビービービー

「あれ、スマホ鳴ってる!?すみません!って先生?」

先生は動いてませんでした。

いやそれだけではないです、クラスのみんなも動かなくなっていました。

「これって…一体?」

 

ーーーちひろsideーーー

「あれ?スマホ鳴ってる?マナーモードにしたけどなー?ってこれって樹海化警報!?どうして!?」

(嘘!?よく見たら時も止まってる。まだ2年しか経ってないのに…しかももう一回選ばれるとは…って勇者システム持ってたら当然か。)

ただ、現実は甘くなかった。

「ちひろちゃん!よかった!これって一体…」

「さ、さあ…スマホの画面には樹海化警報って書いてあるけど…」

(樹ちゃんまで!?勇者部以外は別によかったのによりにもよって一番巻き込まれて欲しくない人が…)

ダダダッ

「お姉ちゃん!よかった!無事で!私とちひろちゃん以外のみんなが…」

「ごめん、二人とも、私たちが当たりだった。」

「え…?なんのこと?」

「なに…あの光…」

(バーテックス?上等だ。何度きたって返り討ちにしてやる、私がいる限り!)

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

「どこだろう?ここ、もしかしてまた私居眠り中?」

「それはないわ、友奈ちゃん。私もいるもの。」

「ホントだ!そうだね!」

「でもこれって…?私たち教室にいたはずなのに…」

そんなときでした。

「友奈、東郷!」

「風先輩!樹ちゃん!ちひろちゃん!」

「よかった…スマホを持ってなかったら見つけられなかった。」

「これって…入部したときにダウンロードしてって言われたアプリですよね…?風先輩、なにか知ってるんですよね?その感じだと…」

「さすが東郷ね…、みんな落ち着いて聞いて、私は…大赦から派遣された人間なの。」

「大赦って神樹様を管理してる…、樹ちゃん知ってた?」

「いや、知らなかったです。」

「言ってなかったからね、当たらなければ黙ってるつもりだったんだ。今見えてる世界は神樹様が作った結界、神樹様に選ばれた私たちは、世界を殺すために攻めてくる敵、バーテックスと戦わなければならないの。」

「この乙女座って表示されてるやつのことですか?」

「その通りよ、ちひろ、あれね。」

「そんな…あんなのと戦えるわけが…」

「アイツらの目的は神樹様にたどり着くこと、そうなったとき、世界が終わる。そして私たちは戦う意思を示したとき、アプリがアンロックされて神樹様の勇者になる。」

(勇者…)

「みなさん!なんかきます!」

「友奈、ここは任せて東郷を連れて避難して!」

「はい、分かりました!」

(先輩、頼みます!)

 

ーーーちひろsideーーー

「樹、ちひろも!」

「やだよ!私も一緒に戦うよ!」

「私も。散々世話になってる先輩や友達置いてけるほどビビりじゃないので。」

(それにアイツは銀さんの葬式邪魔したし、ボコボコにしないと気が済まないしね。)

「頼もしい後輩たちね。」

「で、どうすればいいの?お姉ちゃん。」

「私たちは神樹様に守られてる、ふたりとも、続いて!」

「「はい!」」

 

(この服、久しぶりだなー。)

「すごい、変身しちゃったよ!」

(わ、この反応フレッシュだ、さすが樹ちゃん!)

ポンッ

「わ、なにこの子?」

「この世界を守ってきた精霊よ。…ってちひろ多!?何体いるのよそれ…」

「6匹です。」

「計算早い…さすが成績ナンバー1だね。」

(樹に褒められると少し嬉しいかも。)

「戦い方はアプリが教えてくれる。いくよ、二人とも!」

「あ、ちょっと待ってお姉ちゃん〜!」

「いや、私もいるからね〜樹ちゃん。」

 

ーーー友奈sideーーー

「風先輩!大丈夫ですか!バーナントカと戦ってるんじゃ…」

「こっちは3人でなんとかなってる!友奈は出来るだけ離れて!」

「二人とも…ごめんなさい…私…怖くて…」

「誰だって怖いよ!早く安全なところに行こう!」

(私だって怖いもん、東郷さんが気にすることじゃない!)

「二人とも、黙っててごめん、必ず助けるから。」

「風先輩は私たちのことを思って黙っててくれたんですよね…勇者部の活動通りじゃないですか!だから風先輩は悪くない!」

「友奈…うあ!」

「お姉ちゃん!きゃっ!」

「しまっ…あうっ!」

「風先輩!樹ちゃん!ちひろちゃん!」

「あいつ…こっちに来る!友奈ちゃん!私といたら危ない!私を置いて逃げて!」

(嫌だよ…)

「お願い逃げて!友奈ちゃんが死んじゃう!」

(東郷さんを置いて逃げるなんて…)

「絶対に嫌だ!」

ボカンッ

「友奈ちゃ…えっ!?」

(東郷さんも驚いたよね、私のパンチが爆弾を粉砕していたんだから。)

「ここで友達を見捨てるやつは勇者じゃない!」

「友奈ちゃん…どうして…」

「嫌なんだ!誰かが傷つくこと、辛い思いをすることが!みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!」

勇者部の部活動は人のためになること。

だから私は勇者部が好きなんだ!

私は進んでこの部に入ったんだ!

(だから…)

「私は勇者になる!」

 

ーーーちひろsideーーー

(迂闊だった…布攻撃のことを忘れてたなんて…しかも受け身も中途半端だったし…ネーさんがガードしてくれたけど全身が痛い…)

「樹ちゃん、風さん、大丈夫ですか?」

「体が動かないよ…先にいって…ちひろちゃん…」

「ごめん、ちひろ、まだ私も動けなさそう…二人をお願い!」

「はい。」

(そうは言ったけど痛い…そもそもなんでまた私?神樹様は私にばっか…もうなにも残ってないのに…)

『嫌なんだ!誰かが傷つくこと、辛い思いをすることが!みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!』

そう、声が聞こえた。

そちらを見たら勇者に変身した友奈さんがいた。

(なにも残ってない?違う、今の私には勇者部のみんながいるんだ!こんなところであきらめてられない!もう、二度と、大切なものを失わないために、守るために…)

「私は、戦うんだ!」



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2話 勇者とバーテックス

…いきなり忘れてました…
…しかも3話分も。
ほっっんとに申し訳ない!!
3話分まとめて投稿しますので許してください!!


ーーーちひろsideーーー

「攻撃してもすぐ治っちゃう…どうしたら…」

「友奈!」

「友奈さん!」

「樹ちゃん!風先輩!どうしたらいいんですか?あとちひろちゃんは…?」

「いい、これから封印の儀っていうのをするけど、そのためにはあいつがもっと地面に近くないと囲めないのよ…どうしよ「私に任せて準備をお願いします!」ちょっ、ちひろ!?」

そういって私は二つの剣とソードビットを合わせて弓の形へと変え、迫り来る爆弾を一気になぎ払った。

そしてバーテックスに近づきながら更に弓からダガーの形へと変えた剣で思いっきり地面へと叩きつけた。

ボゴォーーーーン

「ね、言ったでしょ、風さん。」

「本当だわ…さあ、封印の儀、やるわよ!説明した通りに!」

「はい!えーと、手順1、敵を取り囲む。」

途中でバーテックスが布攻撃を仕掛けてくるも風さんがそれを弾く。

「さあ、早く!」

「うん!お姉ちゃん!手順2、敵を抑えるための祝詞を唱える…だよね!」

「なにこれ…言いづらそう…」

「かくりよのおおかみ…」

「あわれみたまい…」

「めぐみたまい…」

「大人しくしろぉ!」

「「「ええ!?それでいいの!?」」」

「要は魂込めれば、言葉はどーだっていいの。」

「「それ早く言ってよ〜(下さい!)」

「ってなんかベロンって出てきたー!!」

「封印の儀をすれば御霊が出てくる!あればいわば心臓よ!破壊すればこっちの勝ちよ!」

(へー、私たちのときはこれどうしてたんだろう…?)

「お姉ちゃん!なんか数字減ってるよ!どういうこと!?」

「ああ、それ私たちのパワー残量!ゼロになると敵を抑え付けられなくなって倒せなくなる!」

(へーって、ん?今サラッと重要なこと言ったような…?)

「え、それってつまり神樹様にたどり着かれるってことなんじゃ…」

「そうね。」

「それを早く言ってくださいよ!あと40秒しかないじゃないですか!」

「この御霊、相当硬いわね…ここは、私の全女子力を乗せた渾身の一撃を…ドリャア!」

ガキィンッ!!

だが小さなひびしか入らず、風さんも地面に叩きつけられてしまう。

「「風先輩(さん)!!」

「これ…枯れてる!?」

(は!?なにこれ!?)

「始まった!急がないと!長時間封印してると、樹海が枯れて、現実世界に悪影響が出るの!」

(なにそれ!?傷ついた時だけじゃないの!?てかなおさらそれ時間かけちゃダメなやつやん!)

「ここは私が「友奈さん!私が風さんのつけたヒビを広げるのでそこを叩いて下さい!」わかった!ちひろちゃん!」

デュランダルで1点集中攻撃してからオートクレールで一気に…

「広げる!」

ガキィン!

(よし!広がった!)

「勇者ーパーンチ!!!」

そして友奈さんのパンチで、御霊は砕け散った。

「どうだ!って砂になってる…」

「友奈!やったね!ちひろもナイスよ!」

「いただだだ!」

「あ、ごめんごめん」

(めっちゃ痛がってる…どんだけ硬かったのよ…乙女ハートはガラスのハートって言うけどあいつはダイアモンドのハートね…)

「お姉ちゃん!ちひろちゃん!友奈さん!」

「樹!友奈がやったわよ!」

(よかった、樹ちゃんが無事で…あ、そこは触っちゃいけないとこだよー!樹ちゃーん。)

「あいただだだだ!」

(あーあ、言わんこっちゃない…言ってないけど…)

 

ーーー東郷sideーーー

「勝った…よかった…」

(すごい…みんなあんな化け物に勝つだなんて…それに比べたら私なんて…)

ゴゴゴゴゴーー

「今度は何…?」

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

変な風?に巻き込まれた私たちはいつのまにか学校の屋上にいました。

「あれ、ここは…屋上?色々と分からないことが多すぎるよ、お姉ちゃん…」

「戦いが終わったから神樹様が元に戻してくださったの。」

(なるほど…あ!東郷さん!)

「東郷さん!無事だった?ケガはない?」

「友奈ちゃん…友奈ちゃんこそ大丈夫?」

(さすが東郷さん!もう私のこと心配してくれるなんて!)

「うん!もう安全!ですよね!」

「そうね、見て普通の人から見てみれば今日は普通の木曜日わた「私たちで守ったんですね、みんなの日常を。」セリフ取られたーーー!」

(よかった…みんなが無事で…)

「あ、ついでに樹海化してる間、世界の時間は止まったままだったから、今はモロ授業中だと思う。」

(え!?どうしよう!急に消えたって怪しまれちゃう!)

「それ結構ヤバイと思うんですけど、風さん。」

「大丈夫、あとで大赦にフォロー入れてもらうから。」

(なるほど、なら大丈夫なのかな?)

「大赦なんて信用に値しないけど」ボソッ

(ん?今ちひろちゃん何かいった気がするけど…気のせいかな?ま、いっか!)

「わーん、お姉ちゃんー!怖かったよー!訳わかんないよー!」

(そっか、そうだよね…それが普通だよね…樹ちゃん1年生だし…)

「よしよし、頑張ったわね、冷蔵庫のプリン半分食べていいから。」

「あれ元々私のだよー!」

「風さん、妹の奪うの良くないと思います。」

「ちょ、ちひろ!?たまに出る怖い笑顔になってる!ヤバイやつになってる!」

(みんな元気で良かっ…東郷さんが元気ない…?どうしたんだろう…?)

 

 

 

 

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「隣町で事故あったでしょ?あれ私近くにいたんだー。」

「何人かケガしたやつ?あるあるだよねー。」

(いや、あるあるじゃないから。ノットあるあるだから。死者が出てないならいい方か。)

「ちひろちゃん?早く部室行こう?」

「うん、ちょっと待ってて〜。」

 

ーーー部室ーーー

「その子懐いてますね〜。」

「へへー、牛鬼って言うんだ〜ビーフジャーキーが大好物なの!」

「えっ!?牛なのに!」

(マジか!?うちのモーモー、牛食べる時だけ嫌だって大暴れするのに…いろんな子がいるんだなぁ…)

「はーい、注目!みんな元気で良かったわ、さっそくだけど昨日のことを色々説明していくわね。」

「はい!よろしくお願いします!」

「戦い方はアプリに説明テキストがあるから…今はなぜ戦うかについて説明していくね、バーテックス、人類の敵が壁を超えて12体攻めて来ることが、神樹様のお告げでわかったの。」

「あ、それ昨日の敵だったんだ…」

「き、奇抜なデザインをよく表した絵だよね。」

「下手ですね。」

「「言っちゃったーーーー!!!」」

「ガーン」

「目的は神樹様の破壊…ですよね。」

「何事もなかったように続けるなんて…ちひろいつからあんたそんな鬼になったのよ…ま、その通り、前も攻めて来たらしいんだけどその時は追い返すので精一杯だったみたい。」

(大赦のくせに情報が的確だわ…てかアレ帰ってたんだ…ちょびっとショックかも…)

「そこで大赦が作ったのは神樹様の力を借りて勇者と呼ばれる姿に変身するシステム、人智を超えた力には人智を超えた力ってことね。」

前言撤回。勇者システムは前からあったわ!

「それ、私たちのことだったんだ…」

「あ、あれだよ!現代アートってやつ!」

「エガトッテモジョウズデスネー。」

「そう!やっと分かってくれたのね!」

「いやお姉ちゃん褒められてないよ…」

「注意事項としては樹海が傷つくと日常になんらかの災いとなって現れると言われてるわ。大惨事にならないように勇者部が頑張らないと!」

「その勇者部も先輩が意図的に集めたメンツだったということですよね。」

「…そうね。適正値が高い人は分かってたから。あ、でもちひろは偶然よ?樹にも頼まれてたから断れなかったし。」

(えっ、そうだったの!?でもどーせ入らなかったら入らなかったで大赦が動いただろうし結果オーライかな。)

「なんで、もっと早く勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか?友奈ちゃんも樹ちゃんもちひろちゃんも、死ぬかもしれなかったんですよ!?」

「ごめん、でも各地に私たちのような候補生がいて、むしろ選ばれない確率の方が高かったんだ…」

「こんな大事なことを黙ってたなんて…」そう言って、東郷さんは部室からいなくなってしまった。

「東郷…」

「私、行きます!」

友奈さんもそう言って東郷さんを探しに…

「二人もごめん。本当に。」

「別にいいよ!お姉ちゃん!」

「私も特に。風さんがいい人なのは知っているので。ビビりだけど。」

「ちょ、最後の一言余計よ!」

(ただ、これは偶然なんかじゃない。勇者適正値が最も高いトップ2、そして先代勇者も一人いる。こんなところが選ばれない訳がない。確実に…仕込まれてる。)



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3話 リベンジ・マッチ

ーーー東郷sideーーー

(どうしよう…そう思ってたのも事実…でもあんなの…ただの…)

「東郷さん!はいこれ!私のおごり!」

「え、でも理由がないよ…」

「あるよ!だってさっき私のために怒ってくれたんでしょ?ありがとね、東郷さん!」

(さすが友奈ちゃんね、もうバレてるなんて…あれ、なんだか…)

「友奈ちゃんが輝いて見えるわ。」

「え、どうして?」

(ああ、友奈ちゃん…そんなところもまたかわいいわ…いけない、友奈ちゃんを待たせないようにしないと。)

「あのね、昨日からずっとモヤモヤしてたんだ。あのままずっと変身できなかったら、私は勇者部の足手まといになるんじゃないかって。」

「そんなことないよ…」

「だからさっき怒ったのもモヤモヤを先輩にぶつけてたのもあって…私悪いこと言っちゃった…友奈ちゃんはみんなの危機に変身したのに…国の危機だというのに…」

「と、東郷さん?」

「私は勇者どころか、敵・前・逃・亡…」

「とーごーさーん(汗)」

「風先輩の仲間集めだって、国や大赦の命令でやってただろうに…ああ、私はなんて…」

「ああー!そんな風に暗くなっちゃダメー!(汗)そうだ!私のお気に入りを見せてあげるね!これ見たらきっと元気でるよ!ほら、キノコの押し花ー!とうもろこしもあるよ!」

「うん、すごく綺麗だね…」

「逆に気を使わせてしまった…」

「友奈ちゃんはあんな大事なこと隠されてたのに怒ってないの?」

「うん、びっくりしたけど怒ってはいないよ。だって適正値が高いお陰で風先輩や樹ちゃん、ちひろちゃんと出会えたから。」

そっか…そういう考え方もできたんだ…やっぱり友奈ちゃんには敵わないな…

「適性のお陰…私も事故で足が動かなくなって、記憶が少しなくなってて不安だったけど…友奈ちゃんがいてくれて、勇者部に誘われたからこうして楽しい学校生活を送れているんだもんね。」

「これからも楽しいよ!ちょっと大変なミッションが増えただけで。」

「本当に友奈ちゃんの前向きさには敵わないな。」

「それって褒めてる?ありがとう!」

 

 ーーー風sideーーー

「ごっめんねー!...これだと軽すぎるわね。大変申し訳ありませんでした...これだと下手すぎ?」

「ちょっとまっててお姉ちゃん…今占ってるから。」

「普通にごめんなさいがいいと思いますけど。」

「これで!と。えーと、誠心誠意謝りましょう、だって。」

「元から誠心誠意込めてるわ!」

「…ブフッ!」

「こら!ちひろ、笑うなー!」

(うーん樹のタロット占いよく当たるんだけどな〜こんな時に外れるとは…これはちひろの言った通り普通にごめんなさいがベターかな?)

「ごちゃごちゃ考えてても仕方ない!ひとまず探して謝ってくるか!」

「なんというか…」

「ね…」

「「お姉ちゃん(風さん)らしい。」」

「あ、タロット落としちゃっ…」

だが、落ちるはずのタロットは、空中でその動きを止めていた。

「これって!」

「もう来たの!?」

「返り討ちにしてその後に東郷さんに謝ればいいのでは?」

「それよ!ナイスちひろ!サンキューバーテックス!だからサクッと倒されなさいよー!」

「敵に感謝してどうするの、お姉ちゃん…」

 

 

 

 

「3匹で来たか…大丈夫?樹、ちひろ。」

「うん、行こう!お姉ちゃん、ちひろちゃんも!ってちひろちゃん…?」

 

『あたしがあの3体を止めてくる』

『私も行きます!1人は無茶ですよ!』

『いや、さっき現れたうちの1体がすごいスピードで神樹様に向かってる。あれを止めれるのはちひろしかいない』

『でも…』

『少し離れるだけだ、必ず生きて戻るよ』

『約束ですよ』

『ああ、もちろんだ』

 

(銀さんは…こいつらに…こいつらのせいで…!)

体が勝手にうごいていた。

(こいつらだけは…許さない。いや…)

「許してたまるかぁ!」

 

ーーー樹sideーーー

「ちょ、ちひろ!?一人でいかない!」

「ちひろちゃん!落ち着いて!3体相手に一人は無茶だよ!」

いつも冷静なちひろちゃんの様子がおかしいです。

まるで復讐にかられた獣みたいに前にいる2体のバーテックスに向かっていきます。

ズバババババ

ちひろちゃんを奥の1体が放った幾千の矢がちひろちゃんを襲います。

ですが、

「そんなのきくかぁー!!」

ちひろちゃんはソードビット(って言うらしいです。)を盾にしてそのまま直進していきます。

「お前らさえ、いなければ、銀さんは、死ななくて、済んだんだ!死んで、償え!」

そう言いながら蠍座をどんどん切り刻んでいます。

しかし…その後ろになぜか射手座の矢が迫ってました。

ガキィィィィン!

「蟹座んとの連携か!邪魔をするなぁー!」

どうやら蟹座の周りに浮いている板が矢を弾き、ちひろちゃんに放っていたようです。

矢は精霊に弾かれ、ちひろちゃんはことなきをえますが、一瞬気をとられた隙に…

「ちひろちゃん!危ない!」

「え、うわああああ!」

蠍座と蟹座から攻撃を受け、遠くに飛ばされてしまいました。

「「ちひろ(ちゃん)!」」

蠍座は神樹様の方向へ、蟹座はちひろちゃんが飛んで行った方向へ、そして射手座はこのまま向かって来ます。

「どうしよう、お姉ちゃん、ちひろちゃんが!」

「落ち着きなさい、樹!ここは私に任せて、ちひろのところに行きなさい!」

「でも、蠍座は…?」

「今友奈が戦ってる!今一番危ないのは気を失ってるかもしれないちひろよ!だから早く!」

「うん、わかった!お姉ちゃん!」

 

ーーー東郷sideーーー

友奈ちゃんと私は再び樹海にいた。

しかも今回は3体も来ている…

「この場所...またなのね」

「東郷さん待っててね。倒してくる!」

「待って、私も...」

「大丈夫だよ。東郷さん。」

「っ...」

「行ってくるね」

「友奈ちゃん!」

(勇者に変身した友奈ちゃんはヒーローのような見た目だ。今だって、みんなのため、戦いに行く。それに比べて、私なんて…私にも適正はある。でも…)

「う…ダメ、変身できない…」

怖がって変身できない。

「私は…やっぱり勇者なんかじゃ…「キャーーー!!」友奈ちゃん!?」

すぐ近くに友奈ちゃんが飛ばされて来て、後を追うように蠍座が友奈ちゃんを貫こうと追撃を加える。

(精霊が守ってるけどあれじゃ…長くは持たない…)

「やめ...て。」

 

『私は結城友奈。よろしくね!』

 

引っ越したばかり、隣の家に住んでいた友奈ちゃんの笑顔と、握手を求めてきた手を思い出す。

「...やめろ。」

(その手は不安だった私を、いつも笑顔で助けてくれた。 )

「友奈ちゃんがいたから、私はこうして皆に出会えた...」 

(恐いけど、だから。)

「友奈ちゃんをいじめるな!!」

「東郷さん...逃げて...」

「逃げない!友奈ちゃんをいじめる奴は...私が許さない!!」

蠍座の針が迫るが、私はそれを精霊で受け止める。

「私はいつも友奈ちゃんに守ってもらってた...だから次は私が勇者になって、友奈ちゃんを守る!」

次の瞬間には勇者の格好に変わり、武器である銃を撃ち込んだ。

更に、素早く二丁拳銃に武器を持ち変え、蠍座の胴体に撃ち尽くす。

「すごい…すごいよ!東郷さん!」

「友奈ちゃん、これからは私も戦うわ。」

「東郷さんがいれば百人力だよ!よろしくね!東郷さん!」

(不思議と武器を持つと落ち着いた。どうしてたんだろうか?それに…

 

『またね』

 

こいつらに見覚えがある気がするのは…今頭をよぎった声は一体…)

 

ーーー樹sideーーー

「あ、いた!ちひろちゃん!」

お姉ちゃんと別れてちひろちゃんを探していた私はやっとのことでちひろちゃんを見つけました。

まだ蟹座も来てません。

「起きて…起きて!ちひろちゃん!」

「んん…樹ちゃん…?そうだ!私はあいつらに…」

「ひとまず落ち着いて〜!!」ブンブンユサユサ

「わ、わかった!わかったから揺らすのやめて〜!」

「ちひろちゃんは強いけど、それでも一人で3体は無理だよ。こういうときにこそ!協力!…だよね?」

 

ーーーちひろsideーーー

(そうだった…今の私が戦ってるのは復讐のため?違う…勇者部のみんなを守るためだ…こんな簡単なことを忘れていたなんて…やっぱまだまだだな…私…)

「樹ちゃん、ありがとう、少し戦う目的を忘れてた。」

「よかった…ちひろちゃんが冷静になって。ところで復讐っていうのは…「今は言えないんだ。でもいつか必ず言う。それまで待っててくれる?」…もちろんだよ!お姉ちゃん今一人で射手座を相手にしてるから早く行かないと!」

「マジで!?うん!すぐ行こう!」

 

ーーー風sideーーー

「しつこい男は嫌われるわよー!!」

(しつこいわ!ホント!遠くにいるせいでぜっんぜん攻めに転じれないし!ていうか…)

「今樹もちひろもいないツッコんでくれる人が誰もいないのよー!」

ドガァン!

(ん?なんだなんだ!?なんか飛んで来たぞ!?)

「そのエビ連れて来ました〜!」

(友奈!タイミングバッチリよ!ていうか…)

「それエビっていうより蠍でしょ!?」

更にその後ろから…

ドガァン!

勇者に変身した東郷が。

「東郷!戦ってくれるの…?」

「…」コクリ

涙が出そうだった。

更に…

ボガァン

「危な!?」

「エビのお供に蟹はいかが?」

「大丈夫?お姉ちゃん!」

「ちひろ!樹!」

「一人で暴走してすみませんでした。(棒)」

「おい棒って出てるわよー。」

「棒読みのフリですから。」

(ちひろも樹も無事で良かったわ…)

「遠くの敵は私にお任せを。」

「じゃ、私はエビさんで」

「それエビじゃなくて蠍だよ…私もちひろちゃんの方行くね!」

「オッケイ!友奈、あの蟹やるわよ!」

「はい!分かりました!」

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

「御霊さん〜御霊さん〜良い子なら出ておいで!っと!」

ベロン

「…なんでこんなにあるのよ…」

(いやコレ本物どれなのマジで。他の考え事のせいで集中出来ないし…)

「ここは私に任せて!まとめて…えい!」

「そしてまとまった一つを…モードブレイド!ぶった切る!」

(よーし砂になった〜。)

「ちひろちゃん!ナイスコンビネーション!」

「イェーイ!まさかスメブラがこんなところで役立つとは…」

「東郷先輩のところ行こう!」

「そだねー。」

(私が一番考えてたこと…東郷さんのあの勇者服…間違いない。東郷さんと須美さんは…同一人物だ。どういうことだ…大赦…!)

 

ーーー友奈sideーーー

「よし!封印いくわよ!友奈!」

「はい!風先輩!」

私と風先輩は蟹座を相手にしていました。

樹ちゃんとちひろちゃんが攻撃・防御手段の板を全て壊していたため余裕でしたが

ベロン

「よし叩き割る!」

ズバァン!

「かわした!?」

御霊は的確に風先輩の攻撃をかわしていきます。

「ちょこまかと…私の渾身の一撃を、くらいなさい!」

そういったら、風先輩の剣がすっごく大きくなり、当たりはしなかったものの、御霊は吹き飛ばされ、空中を舞います。

「今よ!友奈!」

「はい!勇者ーパーンチ!」

ドガァン!

やった!倒した!

「よし、こいつもサラサラになったことだし、東郷のとこ行くわよ!」

「はい!」

(待ってて、東郷さん、すぐ行くよ!)

 

ーーー東郷sideーーー

見たところ相手は幾千もの小さな矢と1つだけの特大の矢を使い分ける。

「なら…撃たせなければいい。」

狙撃銃を使い、遠くから撃っていく。

(みんなの準備が終わるまで、持ちこたえる!)

ブーブーブー

「東郷さん!大丈夫?無事?射手座の近くにみんなついたよ!今風先輩に変わるね!」

(そうだ!風先輩に謝らないと…

忘れてたことに気づかせてくれるなんて、さすが友奈ちゃん!(※本人に自覚はありません。))

「東郷?風よ。あの…」

「風先輩、部室では言い過ぎました。ごめんなさい。精一杯援護します。」

「東郷...心強いわ!あたしの方こそごめ…(みんなが近くにいるならあいつを封印しやすいように…!)」

ドガァン

ズバァン

ボガァン

「やっぱ私、嫌われてる?」

「バーテックスには好かれ、人には嫌われる、悲しい人生ですね〜。」

「ちひろあんたそれ少しもそう思ってないでしょ!」

 

ーーー友奈sideーーー

「よし!封印開始!」

ベロン、ギュルルルルルル

御霊は射手座の周りを周りを回り始めました。

問題なのは…

「は、速い〜目が回るよ〜」

「こんな早く回ってるものどうすれば…」

「くっ、侵食も速い!ここはミニビットで…」

その時、

ズバァン

一撃でした。

(あんな速いのを撃ち抜けるなんてやっぱり東郷さんすごい!)

こうして今回の戦いも勝つことができました!

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

(あの動体視力…さすが須美さん…今は東郷さんだけど…)

「東郷さん!かっこいかったよ!ドキッとしちゃった!」

「でもホントに助かったわ、東郷。それで…」

「はい、覚悟はできました。私も勇者として頑張ります。」

「東郷…ありがとう。一緒に国防に励もう!」

「国防…はい!かしこまりました!」ピシッ

「あーあ、東郷さんのお国スイッチ入っちゃった…」

「なにそれ?ちひろちゃん。」

「ところで友奈ちゃん、課題あるんじゃなかった?」

「そうだった!明日までなのに〜!!」

「頑張って!勉強と部活を両立よ!友奈ちゃん!」

(な…こんなことが…)

「東郷さんのお国スイッチがもう切れた…だと…!?」

「だからなにそれ?」

 

ちゃんちゃん



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4話 完成型勇者 三好夏凜

ーーーちひろsideーーー

私たちは1ヶ月半ぶりに樹海に来ていた。

理由は単純。

バーテックスが来たからだ。

(山羊座…スクリューアタックが来るとまずいな…)

「久々で戦い方わすれてないかな?牛鬼出ておいで!」

「友奈さんこれですこれ。」

「いや、もう出て来てるし…あ、ウサピョンもウリもはしゃがない!」

「本当にちひろちゃんの精霊元気だよね〜。私の木霊も朝起こしてくれたらいいのに…」

(いやそれ元気と関係ないんじゃないかな?うん。)

「成せば大抵なんとかなる!ビシッとやるわよ!」

「狙撃体勢に入ります」 

部の五箇条のうち一つを語る、さっきまでよだれを垂らして寝ていた風さんと、淡々と戦闘準備に入るスナイパー東郷さん。

(なんというか…)

「さっきまでよだれ垂らしてたのによくそんなこと言えますね、風さん。」

「グサッ!」

「東郷さんの方がカッコいいですね。」

「グサグサッ!」

「ちひろちゃーん、やめてー、お姉ちゃんが死んじゃーう!」

「ああ、樹、なんて優しい「これじゃ風さんより東郷さんの方が部長にピッタシデスネー。」グッサーーーーーーー、チーン…」

「お姉ちゃーーーーん!!」

(ふう、スカッとしたぜ…)

「と今思ったでしょ!」

「ひゃ、ひゃい!?な、な訳ないじゃないですか!?」

「ふふ、甘い甘い!その反応!慌てよう!間違いないわ!あんたはびっくりすると隠し事できなくなるのよ!」

「ふざけるな!」

ゴーン

「エブシ…」

「今のは驚かせたお姉ちゃんが悪いよ…」

はあ、はあ、驚かせやがって…

「前方に敵確認!全員交戦用意を!」

「「「はい!」」」

「それ私が言うとこ…」

だがそのとき…

ボガァン!

山羊座が爆発した。

「今のは…東郷?」

「違います。私じゃありません。」

(東郷さんでなければ…一体誰が…?)

 

ーーー???sideーーー

(あいつらが勇者?戦闘前にあんな話してるなんて…論外ね!)

刀を投げて山羊座を爆発させる。

「ふっ、ちょろい!」

「なんですか!?あれ!?」

「新しい…勇者…?」

「かっこいいですね!」

これなら…

「私一人で充分ね!」

刀でダメージを与え、すぐさまに封印を開始する。

ベロン

「まさかあの子、一人でやる気!?」

ブシューーーーー

「なにこれ…なんも見えないよ…」

「樹ちゃん落ち着いて!モードシールド!展開!」

(目隠しの霧か…でも!)

「関係ない!わたしいの力、思い知れ!」

(気配を探って…見つけた!)

「そこだ!殲・滅!」

(ふ、やったわ!)

「えーと…誰?」

「…ふん、揃いもそろってぼーっとした顔してるわね。こんなのが神樹様に選ばれた勇者ですって?」

「あの…」

「なによチンチクリン。」

「チン…はぅ。」

(ま、自己紹介くらいはしてあげますか。)

「あたしは三好夏凜。大赦から派遣された完成型勇者よ」

「完成型?」

「つまり、あなたたちは用済みってことよ。お疲れさまでしたー」

「「「「えぇーーーー!?」」」

「いや、ちょっと待ってくださいよ。」

(ん、なにこのチビ、生意気ね。)

「背、ちっさいですねww」

「ハァイ!?なに言ってんのよあんた!?私の方が背が高いじゃない!同学年で自分より背小さい人に言われたくないわ!」

「いや、私中1ですけど。」

「え?」

(嘘でしょ!?この中だったらかなり冷静そうなこいつが1年生!?)

「私が中2の時には私が当時の夏凜さん抜かすんじゃないですか〜?」

「ぐぬぬ…あんた今度痛い目にあわしてやるわ!」

ビュオオオオ

「あ、逃げるなーー!!」

 

 

 

 

 

ーーー樹sideーーー

夏凜さんは私達の戦闘データを元にアップデートされた勇者システムを持っていて、援軍として大赦から派遣された勇者らしいです。

これを知ったのは勇者部部室です。夏凜さんは転校してきたそうなので。

「東郷と友奈のクラスメートなんだって?」

「はい。」

「わざわざ転校生のフリしなきゃなんないから大変だわ。」

「夏凜ちゃんすごいんですよ!試験ほぼ満点で!」

「へえー…てっきりおバカキャラだと思ってました。」

「あんた覚悟はいいかしら?」

「上等!」

「ちひろちゃんのらないで〜!」

「樹ちゃんがそう言うなら。」

「おい!」

(よかった〜最初から仲悪くなっちゃったらあとで大変だと思うし…)

「ていうかなんで上里家の娘がこんなとこにいるのよ!?そしてなんで存在を隠されてんのよ!?」

「?上里家がなんかすごいの?」

私も聞いたことがありません。

「はあ!?風あんた大赦の人間なのにそんなことも知らないの!?上里家は大赦の最高位家の一つよ!?」

「「「「えぇーーー!!!」」」」

ええ!?まさかちひろちゃんが話せないことって…

「どういうことよ!ちひろ!まさか最初から知ってたの!?」

「…」

「ちひろちゃん…私も風先輩の時みたいに言わないから。真実を述べて…」

「…」

「ちひろちゃん…?」

皆さん各々声をかけます。

(私は待とうかな。だってちひろちゃんを信じてるから。)

「…いや特になにも。」

「「「えぇーーー!!!」」」

「じゃ今の間は何よ!?今の間は!?」

「その方が面白いかな〜って。」

「でもやはりあや「なにもないならいいや!ね、東郷さん!」ええ!友奈ちゃん!」

「てか最高位家のことすら知らなかったですもん。めっちゃお金持ちだな〜って思ってたくらいで。」

「え、じゃあなんで自分が隠されてたかについては?」

「さっぱり。」

「えぇー、まあ、私が来たからには完全勝利確定よ!あんたたちトーシロと違ってね!」

(ありがとう、ちひろちゃん、私にはちゃんと伝わったよ。)

 

『樹ちゃん、私が何か言ったときは大体言い切ったときだから。』

『なんで?ちひろちゃん?』

『例えば「に」とかで終わったときだとあとに続いてるようにも感じれるじゃん。暗号てきな?』

『なるほど!覚えとくね!』

 

(まだ言えないんだね…でも待ってるから。)

「それで夏凜ちゃん、勇者部入るって言ってくれたんですよ!」

「は!?なな何を言ってるのよ!」

「さっきこう言ってましたね。」

 

『あんた達を監視しなきゃならないし、入っといてやるわよ!』

 

「どっちにしても入っちゃった方が早いよ!ね、東郷さん!」

「そうね、友奈ちゃん。」

「樹ちゃんは?」

(うーん、監視とか連携とかを考えると…)

「やっぱり入るべきかと。」

「ワタシモソウオモーウ(棒)」

「なによあんたたち!?どんだけこの部に入れたいの!?」

「まあまあ、落ち着きなさいって。この書類にサインするだけでいいからさ。」

「ってこれ入部届けじゃない!?」

お姉ちゃんも受け入れる気満々みたいです。

「ともかくっ!これからバーテックス討伐は私の指示に従って貰うわよ!いいわね?」

「それはいいけど、事情はどうあれ学校にいる以上、上級生の言葉には従って貰うわよ…正体を隠すのも任務のうちでしょ?」

「しょうがないわね。残りのバーテックスを殲滅するだけの短い期間だもの。我慢するとしましょう。」

「え、マジで?じゃあ夏凜飲み物買ってきて。オレンジジュース。」

「んなっ!?じゃあってなによじゃあって!?」

「パシりに使えるのは先輩特権じゃないの?」

「そんなわけないでしょ!?」

(お姉ちゃん早速からかってるよ…自分はちひろちゃんにちょくちょくからかわれてるのに…)

「ともかく!ともかくよ!?私の足引っ張るんじゃないのよ!」

そう言って夏凜さんは部室から去ってしまいました。

「樹、これからかいすぎたかな?」

「うん、圧倒的に。」

「マジ?ヤバ。」

部室に沈黙が訪れ黙っていると、閉まった筈の部室の扉が少しだけ開かれました。

正体は夏凜さん。

「…バッグ忘れた///」

「ブフッ!」

「何それかわいい!!」

「すみません、かわいいすぎて見られない//」

(ホントにすみません!でもだって…)

「あんたら揃いに揃ってーーー!!!」

「でもあんな去り方してたのに〜?」

「グサッ!」

「決め台詞まで決めてたのに〜?」

「グサグサッ!」

「あんな顔真っ赤にして帰ってきたら〜?」

「グッサーーー!!!」

「かわいいと思われて当然じゃな〜い?」

「ーーーーーっ!!!」

「?はい!バッグ!夏凜ちゃんは元からかわいいよ!」

「/////」

気付かず友奈さんがさらに追い討ちを…

「てかあんたら1年生二人が一番しっかりしてるってどういうことよ!?」

「あ、話逸らした〜!」

「うっさい!いいから答えなさい!」

「「「一番しっかりしてるの東郷(さん)じゃね(じゃないですか)??」」」

「東郷さんもしっかりしてると思う!」

「もう…友奈ちゃん…みんなも…///」

「いや私知ってるからね!?東郷は友奈に甘いでしょーが!!」

「そうかな?私朝弱いから起こしにきてくれたりはしてくれてるけど。」

「それが甘いっつってるのよ!」

「それに!私の精霊、義輝は喋れるのよ!」

「諸行無常。」

「あ、このままいるんだ。」

「精霊だったら東郷さん3体いるよね!」

「えっ?」

「ええ、そうよ、友奈ちゃん!」

(あれ、そういえば…)

「ちひろちゃんは6体だよね、確か。」

「うん、あと賢いし。」

「…はぁああ!?」

「ということで残念でした〜!」

(あ、これ獲物を見つけた目だ、夏凜さんすみません…こうなったらもう止まらないからなぁ、ちひろちゃん…)

 

ーーーちひろsideーーー

(あー、さっきまじで危なかった。樹ちゃんに真意が伝わってるといいけど…さっきから黒板になんか書いてるけどあれ何?バーテックス?風さんよりはマシか。てか煮干しくわえてるな〜。煮干し、煮干し、煮干し…)

「「にぼっしーね。」」

「はぁ!?」

「「あ、息あった(あいました)ね。」」

「てかさっさと説明しなさいよ、にぼっしー。」

「にぼっしー言うな!あんたらがたるんでるから注意をまとめてあげたの!」

「ワーヤサシイデスネー。」

「バーテックスの出現は周期的なものだと考えられてたけど…相当乱れてる。1か月前には3体現れたし、相当な異常事態よ。」

(いや、2年前もあの3体セットで来たから一回勇者倒してるから味しめたんでしょ。双子座は…全然貢献してなかったから解雇されたんじゃね?てかスルーしやがったな!ちくしょう!)

「気をつけないと…死ぬわよ。」

(…死なないんだけどね…勇者である限り。)

「あと、戦闘経験値を積むことで、勇者としてレベルアップして強くなる。これを『満開』というわ。」

ピクッ

「?ちひろちゃん?」

「ん?なんか変なことした?私。」

「いや、気のせいかな。」

(大赦…何がレベルアップだ。ただ生贄に近づくだけのくせに。)

「『満開』を繰り返すことで、勇者はより強くなる。これが大赦の勇者システムよ。」

(あ、でも精霊が増えて攻撃の手段が増えるからパワーアップっていい方は間違ってないか。

問題はそのあとの代償…散華を大赦が隠してることだけど。)

「ところで夏凜さんは満開経験者何ですか?」

「う...まだ。」

「なーんだ。夏凜もあたし達と同じなんじゃない。」

「あ、あんたたちとは基礎経験値が違うのよ!」

「じゃあ私達も運動部みたいに朝練しようか!」

「友奈ちゃん朝起きられないでしょ。」

「あははー…、ごめんなさい…」

パンッ

「はい。じゃあ次は週末の子供会の手伝い、なにやるか決めるわよー。」

「この前折り紙教室やろうって決めたよお姉ちゃん...」

「あれ?そうだったっけ?」

「皆まで言わなくていいよ樹ちゃん、風さんはもう長くないから。」

「ちょっとーーー!?」

(うーん、これは…)

「夏凜さんと風さん、どちらの方がイジりがいがあるか悩ましい…」ボソッ

「それ今考えることじゃないよ…ちひろちゃん…」ボソッ

勇者部の活動で三番目くらいに入る内容が、こうした子供達への催しの手伝いだ。

以前は幼稚園で人形劇をやった。

回数こそ少ないものの、皆に喜んでもらおうと全員の士気は高く、一回一回の思い出が深い。

(それに子供と触れ合うの楽しいしね。)

「こんな非常時によくそんなことやれるわね。」

「夏凜も手伝ってもらうわよ?」

「は?なんで私まで!」

「にぼっしーの入部届けさっき出したもん、私が。」

「なに勝手に出してんのよ!?…ていうかにぼっしー言うな!」

「でも〜書いたのは自身でじゃ〜ん。つまりのちに出すつもりだったからじゃな〜い?

「くっ…」

 

ーーー夜ーーー

ーーー夏凜sideーーー

「こんな非常時にレクリエーションなんて...」

いつものトレーニングと食事(コンビニ弁当だけど、完全食のにぼしとサプリを食べているから問題ない)と大赦への連絡を済ませ、私は子供会のプリントを眺めていた。

「…はぁ。」

大赦が用意した一人きりの部屋にはトレーニング器具と、一般家庭に揃っていそうな家具一式と所々に赤丸がついているカレンダーと上里ちひろに渡された折り紙入門書だけだ。

「ーっ!!」

二つのことが頭を支配する。

一つはあの友奈の笑顔。

あれを前にすると、言いたいことも言えなくなってしまう。

もう一つはちひろの目。

どこかに悲しみを持ってる感じがするのよね。

隠されてた理由も結局分かんなかったし。

東郷も、風も、樹も_____!

「...ふん!緊張感のないやつら!」

私は全部の思考を振り払うようにして、折り紙作りに集中した。

 

ーーーちひろsideーーー

私はいつも通り犬吠埼家を訪れていた。

目的は子供会と夏凜についての会議+夕食。

「本受け取ってくれましたし大丈夫でしょう。」

「それなら安心ね。断られたらドッジボールの的でもやらせようかと思ってたわ。」

「「えげつない…」」

「樹はともかくあんたには言われたくないわよ!?」

「そりゃどうもー。」

「まったくもう…、昼すっごいビックリしたんだから…」

「私もですよ。」

「教えないのって優しさ故なのかなんなのか、だね、ちひろちゃん。」

「んー、優しさだと思うけどね。」

(だって忘れてたって知ったとき何か思い出そうと考え続けて12時間、ぶっ倒れたくらいだし。)

「あ、ところでさっきの続きだけど_____。」

(ほほう…)

「なるほど、いいんじゃないですか?」

「私もいいと思うよ、お姉ちゃん。」

「オッケー、友奈と東郷にも伝えておくわ。あ、お風呂沸いたから二人とも入って来なさい。」

「「はーい。」」

 

ーーーお風呂ーーー

「プハ〜相変わらずいい湯加減だ〜」

「相変わらずって初めてでしょ…」

「ありゃ、そうだっけ?」

「今までは一緒に温泉行ってただけだよ…」

(あら、私としたことが…)

「ところでちひろちゃん、部室のことだけど…」

「あ、あの暗号伝わった?」

「うん、それで勇者のことは…知ってたんだね。」

(やっぱ…鋭いなぁー、樹ちゃんは。別にそこまで伝えようと思ってなかったのに。)

「…うん、話せないのはその深いところについて。」

「でも私に嘘つかないためにああいういい方してくれたんだよね?」

「もちろん。私は樹ちゃんと出会って救われたから。」

(だって私にもう一度、守りたいものを作ってくれたから。)

「そんなことないよ…ときどき思うもん、ちひろちゃんって運動も勉強もできて、スタイルもいいから私が友達でいいのかって。」

「樹ちゃんで充分!お風呂上がったら耳かきしてあげる!」

「ありがとう、ちひろちゃんの耳かき気持ちいいからね〜癖になっちゃって…///」

(さーて日曜日が楽しみだな〜!)



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5話 絆をつなぐ

ーーー夏凜sideーーー

十時五分前に部室の前までつく。

開けると誰もいなかった。

普段では考えられない静けさに不気味さを感じながら、10時を迎える。

「...遅いわね。」

日曜日。誘われた子供会の筈なのに、勇者部は誰一人来ることはない。

電話もメールも誰とも交換していない。

「...おかしいわ、絶対。」

渡されたプリントを見返す。

確か10時に…

「あ、現地集合じゃない。」

気づいた時には三十分以上回っていた。

勇者にでもならない限り、今から向かうのは無謀過ぎる。

もとから遅刻してまで向かうつもりはなかったし、そんな失態を晒したくなかった。

だから、

「行く必要なんてないわ。」

何もせず部室を去る。

自分の部屋に戻る。今日のトレーニングは折り紙の練習でやってなかったからだ。

あの本…折り紙入門書…

「バカじゃないの。」

勇者が何をやっているのか。

世界の存亡と子供の相手、どちらが大事かなど語る必要もない。

外のトレーニング場として利用している浜辺で二本の木刀を振り回す。

きっと、今頃折り紙を教えているのだろうか…

(っ!何を考えてるんだ私は!集中!私は世界の未来を託されてるんだ!普通じゃなくていい!)

どんなに考えてもトレーニングに集中できなく、早々に家に帰ってしまった。

帰ってからも何一つ身入らず、あっという間に日がくれて。 

「…なんなのよ。これ…」

(こんな気持ちは今までなかった。ひたすらに勇者を目指し、それ以外はなにもしてこなかった私は…)

「一体なんだっていうのよ…」

そのとき

ピンポーン

「…ん?」

ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「あーもううっさい!」

私が木刀を持ってドアを開けると…

「失礼しま…きゃあ!」

「ちょ、あんたなんで木刀持ってんのよ!」

「友奈ちゃん落ち着いて…寝込んではなさそうですね。」

「は!?あんたらなんでうちに…「はいはーい、上がらせてもらうわよー。」「失礼しまーす!」勝手に入るな!?」

急いで追いかけると友奈、東郷、風の3人が私の部屋にずかずかと入り込んでは、トレーニング器具を触ったり、冷蔵庫を物色したり、机にお菓子を並べたり…好き勝手やってた。

「いい加減にしなさいよアンタたち!追い出すわよ!?」

「沸点低いわねー、にぼっしーのくせに。」

「にぼっしー言うな!突然来て好き勝手やられたらこうなるでしょ!?」

(そろそろホントに…)

「「「夏凜(ちゃん)、ハッピーバースデー!!」」」

「えっ?」

(どういうこと?第1なんだこいつらが私の誕生日を…)

「なんで知ってるかって?理由はこれよ。」

そう言って風が取り出したのは入部届け。

書いてあるのはクラス、名前、そして生年月日。

「本当はは子供会でやる予定だったんだ!でも夏凜ちゃん来ないし、ケーキはないしだったから…」

「まあ、ケーキは風さんのミスですけどね。」

「お邪魔しまーす。夏凜さん誕生日おめでとうございます。」

「グサッ!」

声がした方にはよくお菓子屋とかで見るお持ち帰り用の箱を持ったちひろと樹がいた。

 

ーーーちひろsideーーー

(あー、疲れた…だって…)

「風さんが予約したところ午後開店だったし。」

「グサグサッ!!」

「隣町だし。」

「グサグサグサッ!!!」

「おまけに本人確認必要なんですからねー。」「グッサーーーー!!!!」

「ま、その分美味しいと思いますけど。夏凜さん誕生日おめでとうございます。」

「クタクタだよお姉ちゃん…」

「ホントごめん!二人とも!」

「今度釜あげうどんお願いしますよ…」

「がってんだい!」

「返事おかしいよお姉ちゃん…」

さて夏凜さんはどう思ってくれてますかね?

「あ、ありがとう…」

「三角帽子持ってきたよ~」

「いいじゃない!パーティー感出てきたわね!」

「ありがとう友奈ちゃん!」

「美味しそうなケーキですね!ちひろちゃん、はい。」

「ありがとう樹ちゃん。…夏凜さん?」

みんな好きなように座っていたが、夏凜さんだけ立っていた。

「バカ…ボケ…誕生日会なんてやったことないから…」

「まじ?あんたついてないわねー。」

「夏凜ちゃん座らないの?」

「早く座ってくださいよ主役さん♪」

(誕生日会やったことないのはビックリしたわー。そんな人いると思ってなかった。)

そこからはいつもどーり騒がしかった。

「あ、折り紙!練習してたんですか?」

「な、ななななな!?」

「あ、友奈さんの部活と遊ぶ予定のカレンダーだ。」

「全部に丸ついてるから真っ赤っかだね、ちひろちゃん…」

「さすがってとこかしらね…」

「すごいわ友奈ちゃん!」

「友奈、にぼっしーが煮干し食べてた日もカウントしましょう!溜まったら高級煮干しプレゼント的な?」

「はーい!」

「なーーーーーー!?」

「あ、マンテンドースイッチ持ってきたんでスメブラやりません?」

「いいわね!」

「好き勝手やるなーーー!」

 

ーーー夏凜sideーーー

そんなバカ騒ぎが…1時間前。

今日のトレーニングとは違って、過ぎた時間はあっという間で、今は誰かいた痕跡なんて何もない。

今はNARUKOで二次会のようなものが行われている。

風から『連絡手段として持ってて』といわれ、今さっき『勇者部』のグループに参加したばかりだ。

 

友奈 : 写真を送信しました。

 

風:これなら連絡が行き違うこともないでしょ。おめでとう夏凜。

 

友奈:ハッピーバースデー夏凜ちゃん!学校や部活でわからないことがあれば何でも言ってね!

 

樹:これからも仲良くしてください。よろしくおねがいします。

 

東郷:次こそはぼた餅を食べてくださいね。有無は言わせない。

 

ちひろ : 有無は言わせてあげて…誕生日おめでとうございます、夏凜さん。風さんイジリ頑張りましょう!

 

風 : 何恐ろしい同盟組もうとしてんのよ!

 

「ふふっ、いいじゃない。了解っと。」

 

夏凜 : 了解。

 

風 : ちひろ、覚えてなさいよ。

 

樹 : お姉ちゃんが怖いよ…ちひろちゃん…

 

ちひろ : 覚悟してくださいね風さん♪

 

風 :あ、これまずいやつだ!友奈ー!どうしてくれるのよー!

 

友奈 : えぇ!?私ですか!?

 

東郷 :夏凜ちゃんはぼた餅食べてね。風先輩は明日楽しみにしてて下さいね…♪

 

風 :やば!?東郷まで敵にまわした!?夏凜ヘルプー!!

 

夏凜 : 風が頭を地面につければ済む話じゃない。

 

風 : 土下座!?四面楚歌じゃない!?

 

(あ、何回も風って文字見てたからつい送っちゃった…いいか。べつに。)

私は一番始めに送られてきた写真を開く。

笑顔の皆に、面白いくらい戸惑った顔をする自分自身。

「…ふふっ。」

自然と、部屋に満足げな声が漏れた。

 



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6話 樹の歌改善作戦ッ!!

はい。まずは一言
…大変誠に申し訳ございませんでしたぁ…
すっかり存在を忘れてましたぁ…
今度からは気をつけます…
…自分で忘れないか心配になる…


ーーー夏凜が転校してきてから数週間後ーーー

ーーーちひろsideーーー

今は音楽の授業の真っ只中。

(私は先生に歌うまでもないって言われてるからいいけど問題は…)

「では次、犬吠埼さんお願いします。」

「は、はい!」

「リラックスリラックスだよ〜」コショコショ

(返事が来ないってことは聞こえてないのか…

やばい、相当緊張してるよ。これは。ん?)

「おーい樹ちゃーん、教科書逆だよ〜。冷静に〜」コショコショ

アハハハハ

樹ちゃんにだけ聞こえるように言ったが本人は慌ててしまい、みんなに気づかれてしまう。

(樹ちゃん、歌は好きなんだけどなぁ…)

先生は樹に優しく微笑むとゆっくりとピアノを弾きはじめるのだが…

「○×△◎$%*@…」

音程はほとんどはずれている。

(やっぱ無理だった。もう一度言うけど樹ちゃんは歌うのは好きだ。ただ、人前で歌うと緊張してできなくなっちゃうけど。)

 

ーーー部室ーーー

「よし、ここにこの写真を!」

ペタ

友奈さんが壁に勢いよく写真を貼り付ける。

「よし…風先輩、ホームページの更新終わりました。」

一方で東郷さんは勇者部のホームページの更新を終わらせる。

(須美さんいつのまにこんな技術を…)

「ありがとう、東郷。しっかし平和ねぇ〜」

「ま、山羊座以降音沙汰なしですから。」

「全くたるみすぎよ!あんたら!」

「いや、たるむでしょ、これは。てかあんたが一番たるんで…あ、にぼっしーだからしゃーないか。」

「どういうことよ!?てかにぼっしー言うな!」

(夏凜さんと風さんは平常運転っと。うん、いつも通りだ、ある一人を除いて。)

「はぁ…」

「ん?どうした樹、またタロット占い?なに占ったの?」

「今度うちのクラスで歌のテストがあってうまくいくか、なんだけど…」

(どれどれ…これは…)

「死神の正位置って言うんだよね?東郷さん。」

「そうよ、友奈ちゃん、確か意味は…」

「破滅、終局…あぁ…」

(おい神樹様ー!樹ちゃんが歌のテストうまくいくようにしなさいよー!)

「別に気にしない、気にしない!」

「たまたまはずれたのかも!もう一回占ってみようよ!樹ちゃん!」

あ、さすが友奈さんだ、ポジティブの天才。

だが…

「あちゃー。」

「これアウトなんでしょ?相当。」

「夏凜ちゃん!シー!」

「ハウ…」

まさかまさかの4回連続死神の正位置。

(神樹め、許さん。)

「これ気分を入れ替えろって意味じゃないかしら?」

「「それだ!!」」

「???」

「どういうことですか?風先輩、ちひろちゃん。」

「死神の正位置のもう一つの意味です。の状況のままでは何も進展がない。気分を入れ替えた方がいいっていう。」

「てかなんで夏凜がそんなこと知ってるのよ?」

「小さい頃に兄貴とタロット占いに行ったときに言ってたわ。」

(へー、夏凜さんのお兄さんって…あ、春信さんだ。あの人はあの人でなんでその年で知ってるのよ…相変わらずバケモノだわ…)

「だって、樹ちゃん!気分変えていこうよ!」

「でもでもでも〜…」

「あちゃー、別なことを考える余裕すらなさそうね…」

(きっと1時間目のことが響いてるんだろうなぁ〜どうしたもんか…)

カリカリ

バンバン

「こうなれば今日の活動は樹を助けることよ!勇者部の活動は人を助けること!それは相手が部員でも同じよ!誰か!意見どんどん出しましょう!」

(んーどうすればいいかな…?)

「てかちひろは大丈夫なの?同じクラスなんでしょ?」

「私?私は先生に歌うまでもないって言われてるから大丈夫ですが。」

「あー、分かるわそれ。」

「どんだけ下手なのよ…」ボソッ

最初に手を挙げたのは東郷さん。

「ひとまずα波を出せるようになればいいと思います!」

「なにそれ!?」

「いい音楽は大抵α波で説明つきますから。」

「さすが東郷さん!物知りだなぁ〜」

(2年でどんだけマニアックになったんですか須美さん…)

「いや、多分それ間違ってるわよ、東郷。」

(え?)

「小さい頃に兄貴が言ってたけどα波はリラックスしてるときに多く出るだけであっていい音楽からα波が出てるわけじゃないって。」

「そんな…」

「あんたの兄貴何者よ!?」

(さすが春信さんとしか言いようがない…)

「サプリキメればいいと思うわ!」

「わけのわかんないこと言わない!にぼっしー!」

「にぼっしー言うな!」

(はぁ、全くこの人たちは…あ、そうだ。)

「樹ちゃん、私と風さんの前だったら歌えるんだから、次は勇者部のみんなの前で歌えるようにって少しずつ慣れていくのはどうですか?」

「ナイスちひろ!そうと決まれば6時にいつものカラオケ屋集合よ!解散!」

「「「はい!」」」

みんなものすごい勢いで帰っていく。ただ一人を除いて。

(私は無論気づいてるけど言わないよ?)

こうして一人を除いて誰もいなくなった部室で彼女は叫んだのだった。

「…いつものところってどこよーーーーーーー!!!!!!!!」



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7話 夢を呼ぶ歌

連投です…
まあ当たり前だよね…ずっと忘れてたんだし…


ーーーカラオケ屋『MANEKI』ーーー

「いきなりは歌いづらいでしょうしみんな歌ってからがいいんじゃないでしょうか?」

「そうね、じゃ私からいくか!」

そういって風さんは自身の得意としている『Soda Pops』をノリノリで歌いはじめる。

「〜〜♪」

「お姉ちゃん上手!」

「さすがですね風さん。」

「あんたにだけは言われたくないわよ…」ボソッ

「夏凜ちゃん、この曲知ってる?」

そういって出された曲は『○△□』

「一応知ってるけど…「じゃ一緒に歌おうよ!」な、なんで私が!?馴れあうために一緒にいる訳じゃないわ!」

「ご・め・ん・なさ〜い!私の後じゃ歌いづらいわよね〜」

そういって指さされた先にあった点数は…

『92点』

「…友奈、マイクよこしなさい…」

「へ?」

「早く!!」

「は、はい!」

(あ、これ夏凜さんの闘争心に火がついたな。)

「「〜〜♪」」

(てか以外とうまいなおい!)

「夏凜さん上手ですね!」

「フン!当然よ!」

結果は…

『92点』

「「チッ」」

「「おい、真似すんじゃないわよ!!」」

「ありがとう夏凜ちゃん!私一人だったらこんな高得点出なかったよ!」

「ゆ、友奈?!べ、別に…完成型勇者として当然のことを…」

〜♪

「あ、わたしの入れた曲。」

「「え!?」」

「なに!?」

ビシッ

「〜〜♪」

(突然友奈さん、風さん、樹ちゃんが立ち上がって敬礼状態…一体…)

「「ナニコレ?」」

「ふぅ。」

ビシッ

シュバッ

(な、なんだったんだ…今の…)

「今のって…なに…?ちひろまでキョトンとしてるけど…」

「東郷さんが歌うとき私たちいつもこうなんだ。ちひろちゃんが知らないのは今年度はまだ来てなかったからだよ。」

(へ、へぇ〜そ、そうだったんだ…)

「あとはちひろちゃんだね!」

「でも私は別に「に・げ・るのかしら〜?」はぁ?」

 

ーーー樹sideーーー

夏凜さんがここぞとばかりにちひろちゃんをイライラさせます。

(やばいよ…)

「ちひろ!落ち着きなさい!あんたは歌わなくていいから!」

「ここで歌えなきゃ樹のためのことすら逃げる臆病者でしょうね〜!」

ブチッ

(あ、今ブチッって聞こえた気がします。間違いなく手遅れです…)

「いいわよ、歌ってあげる!どうなっても知らないからね!」

「上等よ!」

「はぁ…これじゃ友奈と東郷まで巻き添えなるじゃない…」

「お姉ちゃんは大丈夫なの?」

「もう5回目だからね。耐え切って見せるわ。」

「〜〜〜〜♪♪♪」

「ふぅ、久しぶりだったけどちゃんと声出た…やっぱ想像通りだわ…」

ちひろちゃんが歌い終わって、想像通りのことが起こってました。

「すっろい、すれきな歌…」

「らりも、かんらえらくない…」

「お姉ちゃん大丈夫?」

「りりりりね、あろ少しれ理性ろんれたわ…」

そう、ちひろちゃんは歌が下手じゃありません。うますぎるのです。

私は素質があるのか綺麗だな〜と思うくらいですが普通の人は夏凜さんや友奈さんのように理性が飛んでしまうそうです。

授業で歌わなくていいのも結果がわかり切ってる上にその後の授業が続行不可能だからもあります。ついでに耳かきも同じくらい強烈らしいです。

「これは…まるで友奈ちゃんのマッサージを受けてるようだったわ…素晴らしいわ、ちひろちゃん!」

「ろうごう、あんらはさすらね…」

ただ、東郷さんは普通でした。

(なんでだろう…?確かお姉ちゃんが前こんなことを…)

 

『樹、ゴッドに魅入られしものがもう一人いたわ…友奈よ、すっかり忘れてたわ…友奈のゴッドハンドはちひろのゴッドフィンガーとゴッドボイスに匹敵するわ!』

 

(そうだ、友奈さんのマッサージもすごいんでした。それをよく受けてるからなのかな?)

「はぁ、次は樹ちゃんだっていうのに…東郷さん、友奈さんお願いできますか?」

「ええ、友奈ちゃん、起きて!(ラッパの音)プーーーー!!」

「ほわ!あれ私なにしてたんだっけ?」

「大丈夫よ、友奈ちゃん、少しぼーっとしてただけだから。」

「そっか!」

さすがとしか言いようがないくらい手慣れてます。

(すごい…)

「さぁ!初陣よトラ介!よろしく!」

「ガオーーーーーーーーー!!!!!!!」

「ぎゃっ!?耳が潰れるかと思ったわ!なにしてくれんのよ!?」

「誰かさんが人の警告も聞かず理性飛んでるからでしょ?」

「ぐっ!」

一方でちひろちゃんも手慣れた手つきで夏凜さんを呼び戻します。

今まではトラの人形を使っていましたが、トラ介さんも似たような声を出せたらしいので変えたみたいです。

「さ、樹、やっちゃいなさい!」

「う、うん!」

お姉ちゃんに言われ、立ちますが…

(やっぱり人に見られてる…でも頑張らないと…)

「〜〜」

「うーん、やっぱり硬いわねー。」

(やっぱりうまくいかなかった…)

「ううっ…」

「大丈夫だよ!樹ちゃん!お菓子でも食べてリラックス…ってない!」

「あ、ウリ食べすぎだって!」

「牛鬼もだよー!」

たんまりとあったお菓子はちひろちゃんのウリと友奈さんの牛鬼が全てたいらげてしまっていました。

(元気だなぁ〜。)

ピロリン

(ん?メールかな?それにしてはお姉ちゃんの顔が険しくなった気がするけど…?)

「ごめん!ちょっとトイレ行ってくるわ!」

(気のせい、だよね!)

 

ーーー風sideーーー

「やっぱり、大赦からか…」

友達には来る前にあらかじめ言っておいたから来ないはず。

友達じゃなくてメールが来るとしたら大赦しかないもの。

(…これは…)

「大赦からの連絡?」

振り向くとにぼっしーこと夏凜がいた。

「出てくときのあんたの顔がおかしかったからね。ついてきたわ。」

「悪趣味ね〜」

「うっさい!で、なんてきたの?」

「…最悪の事態を想定しろってさ。」

バーテックスは周期的に来ると考えられていた。

でも3体同時出現や不規則に出てることからそれすら怪しくなっている。

「ふーん、まわそんなことはどっちでもいいわ。あんたは統率には向いてない。私に変わりなさい。うまくやるわ。」

「これは私の役目で、私の理由なの。後輩は先輩の背中を見てなさい。」

「あ、そう。じゃ私は先に戻ってるわよ。」

そう言って夏凜は戻ってった。

(誰にもここだけは譲れない。だって…私が戦う理由は憎しみまみれだから、みんなが戦う理由をつくった私がやらなくちゃいけないんだ。)

 

『誰ですか…?』

『私はあなた方の両親が働いていた大赦のものです。今日はあなたの両親の死の…真相と原因を話しに来ました。』

『!!』

 

私たちの両親は瀬戸大橋の事故で死んでしまった。

原因は不明。だが大赦の人はバーテックスの襲来によって事故は起こったと言った。

また、大赦の人は私にそのバーテックスを倒せる、勇者としての素質があるとも言った。

憎かった。両親を間接的にでも殺したバーテックスが。

だから私は大赦に協力したんだ。

このことは樹にすら言っていない。

あの子まで…憎しみに呑み込みたくないから。

 

ーーーちひろsideーーー

1時間程前に樹ちゃんの練習は解散した。

結論は「もっと練習が必要」

樹ちゃん自身も家で練習してくると言ってたのもある。

(風さんしかいないから意味がない気もするけど。)

で今はなにをしてるかと言うと…

「ワン!」

「チュー!」

「ありがとう二人とも。さて、どんな内容なのやら…」

盗聴…ゴホンゴホン!録音データのインストールである。

トイレに行くときの風さんの顔が険しかった+夏凜さんもすぐ行ったのでこっそりネーさんに録っておいてもらったのだ。

 

ーーー視聴後ーーー

「…最悪の事態、か…」

(この状況で想像しうる最悪の事態…)

「残り7体の総攻撃…かな?」

(うん、間違いなくこれが最恐最悪の事態だ。

瀬戸大橋の決戦ほどではないが。7体も来られたらひとたまりもない上に、当時の満開3人がかりでも倒しきれなかった最強のバーテックス、獅子座もいる。もし実現すれば、満開は必須かな。)

「…そろそろ、真実を話すべきなのかな…大赦に、この世界に隠された真実を。」

大きな決断を、迫られていた。

 

 

 

 

ーーー次の日の午後ーーー

私たちは部室で机に鎮座するサプリたちを眺めていた。

「リンゴ酢は肺にいいから声が出やすくなる。ビタミンは血行を良くして喉の荒れを防ぐ。オリーブオイルと蜂蜜も喉に効くし、こっちの…」

矢継ぎ早に説明されるのはサプリの効能。

しかも全て声に関するもの。

昨日却下されたのにこりないですな〜

「さ、これ全部飲んでみて。」

(…無茶言うなし。)

「そんな無茶言うくらいなら夏凜は当然飲めるのよね〜?」

「もちろんよ!お手本見せてあげるわ!」

(風さん、私ですら遠慮したことを…恐ろしい。)

そしてその挑発にのった夏凜さんは錠剤タイプの薬を口に入れ、リンゴ酢とオリーブオイルで飲みほしていく。

予想してたどーりみるみる顔色が…

「一番近いトイレは上の階よ〜」

ダダダッ

猛スピードで行っちゃったよ。

(無茶するから…ってあれ?確か上の階の一番近いトイレって…?)

「風先輩、確か上の階の一番近いトイレって男子トイレでは?」

「そうよ?ふふっ!帰ってきたときがたのしみだわ。」

「「やばいよね。絶対。」」

 

ーーー数分後ーーー

「樹はビギナーだし、一つか二つでいいわよ。」

「ぐぇっ!」

スッキリした様子の夏凜さんはすごい笑顔でそう言った。

足で蹴ってるのは風さんである。

(ま、あの状況であれはまずすぎた。)

「は、はい…」

「本当にごめんなさ…ぎゃっ!」

「あ、あの夏凜ちゃん...」

「なぁに友奈?」

「ひっ!」

「ぐぼぁっ!」

「夏凜さん、一応もうそれくらいに...白目向きそうですから…」

「私は何もしてないわよ?」

「も、もう許して...ぐはっ!」

「それじゃあ樹、試しにそこで歌ってみて。効果あると思う。」

「はい...」

「助け...もう、無理…」

(ごめんなさい風さん。夏凜さんが怖すぎるのでなしで。)

急いで椅子の向きを変え即席のステージをつくる。

夏凜さんは一旦けるのをやめ、逃げられないように踏みつける。

樹ちゃんもサプリを飲み歌い始めるが…

「〜♪」

少しよくなったがまだまだだった。

「…次は緊張をほぐすサプリ持ってくるわ…」

「そんなのあるんですか!?」

「ええ、それも飲めば完璧ね。」

「あ、ありがとうございます…夏凜さん、みなさんも…」

(樹ちゃんが嬉しそうだからな〜今回何にもやってないけど。)

「じゃあ昼休みは解散。あんた達さっさと出なさい。」

いつもとは違い夏凜さんが解散させる。

「助けてー東郷、友奈!」

「夏凜ちゃん...授業二分前くらいには帰ってきてね…」

「...まだ十分ありますけどね。」

「ちひろ!」

「私教室戻りますね...」

「樹!!」

「風、そんな声出さなくてもいいのよ?」

「ひっ!どうかお許しください!夏凜様!」

「お、お疲れさまでした...」

 

ーーー歌のテスト当日ーーー

ーーー樹sideーーー

「次、犬吠埼さん。」

「は、はい!」

(どうしよう…あれからサプリは毎日飲んだからだいぶ歌えるようになったと思うけど…やっぱり緊張する…)

ピロッ

教科書からでてきたのは…紙?

「開けて、樹ちゃん。」コショ

言われて開けてみるとそこには…

 

終わったら打ち上げでケーキ食べに行こう! 友奈

 

周りの人は皆カボチャ 東郷

 

気合いよ 夏凜さん

 

樹の歌は綺麗だから大丈夫。自信持っていって!きっとできる! ちひろ

 

周りの目なんて気にしない!お姉ちゃんは樹の歌が上手いって知ってるから 風

 

樹ちゃんへと真ん中に書かれたメッセージの集まりでした。

(見ててすっごいほっこりする。夏凜さんの名前はちひろちゃんが補足したんだね。きっと。)

「犬吠埼さん?」

「はい!」

(そうだ…私にはこんな素敵な先輩たちが…友達がいる。周りの人はかぼちゃ、目なんかない、緊張しない…)

そこから先は必死で覚えてません。

でも、伝えられた結果はクラス1位でした。(もちろんちひろちゃん除いてですけどね♪)

「やったね!樹ちゃん!」

「うん!ちひろちゃん!」

(私は勇者部のおかげで素晴らしい先輩達に会えたんだ…勇者で良かったな♪)

 

ーーー夜ーーー

(歌うのってやっぱ楽しいな…みんなからの拍手も…)

「私、歌手になりたいな。」

歌は、私に夢を運んできてくれました。

でもそのときの私はまだ知りませんでした。

夢をつくってくれたのが勇者なら、夢を終わらせるのもまた、勇者であることを。

 

 

 

 

 

ーーー7月8日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「5時間目期末テストだ…」

「落ち込まないで樹ちゃん。」

そのとき、世界が止まった。

「ラッキー!」

「喜んじゃダメだよちひろちゃん…」

「どいつが来ようが倒そう!」

「うん!」

ーーー樹海ーーー

「前以上に久しぶりだね。」

「うん、で敵の数は…?」

スマホに表示されてた数は

「7体も…」

「総攻撃…だね…ひとまず皆さんと合流しよう!」

「うん!」

(最悪の事態、的中、か…話さないと…全てを…2年前の…私たちの…二の舞にしないためにも…!そして何より…)

 

ーーー友奈sideーーー

「多いですね…」

「大型1、普通6…総攻撃ね…」

「なんですぐ攻めてこないんだろう…?」

ひとまずみんなと合流しましょう。」

そうね、この戦い、絶対に負けられないもの…」

(夏凜ちゃんの言う通り。だから…)

 

ーーー風sideーーー

「数で来たわね…ひとまずみんなと合流ね…」

(でもやることはただ一つ…)

 

「「「「「「絶対に勝つ!!!」」」」」」

 

世界の命運をかけた決戦が…始まる。



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8話 決戦

話の区切りどころがあってるかがとても不安である…


ーーーちひろsideーーー

「みんな!大丈夫?」

「1年生組も到着しました!」

「みんな!敵いっぱいだね…」

「そうね…ともかく合流できて良かったわ。」

「全部来てるからあれを殲滅すれば戦いはおわるわ。」

「マジで!?数で攻めてきたのは分かったけど全部とは…ここはいっちょアレやりますか!」

そういって風さんは近くにいた友奈さんと東郷さんを捕まえる。

「あれって...円陣?」

「それ必要?」

「夏凜ちゃん、ほら早く!」

「し、しょうがないわねぇ。」

「あ、照れ隠しだぁ!」

「うっさい!」

「私たちもいこう!ちひろちゃん!」

「そうだね!樹ちゃん!」

よし、覚悟は決めた。

だからこの円陣が終わったら言おう。

誰でもない、勇者部のみなさんのために。

「あんたたち!勝ったら好きなの奢るから絶対死ぬんじゃないわよ!」

「やったー!うどん食べたいなー!」

「言われなくても殲滅してやるわ!」

「私も...叶えたい夢があるから。」

「頑張って皆を...国を守りましょう!」

「私も。勇者部が好きですから。」

「勇者部ぅーーー」

「「「「「「ファイトーー!!」」」」」」

よし、今だ。

「みなさん、とてもじゅ…」

ビュオオオオ

ボカァン

「おわ!とんでもないの来た!」

「空気読んでくれたのかしら?」

「敵接近中です!」

「行くわよ!」

(しまった…!今の火球のせいで言えなくなった…

こうなったら…満開が使われるほどのことにならないか…私が使うしかない。)

 

ーーー???sideーーー

「おけおけ、ありがとね。レオ。」

(せっかく散華を知らないで来てくれてるんだもの。様々な人のデータ、とっときたいのよね♪)

「ふふっ、どんな顔してくれるか、楽しみだわぁ〜♪」

 

ーーー???sideーーー

「ついに、始まったな…」

(少なくともあいつが出れば絶対バーテックスが勝っちまう。)

「私があいつを止めても、勇者が獅子座を止められなければ、意味がない…頑張れよ、今の勇者たち…!」

 

ーーーちひろsideーーー

特に作戦はない。

東郷さんが全体の流れを見て指示を伝え、それを元に前線で私たちが暴れるだけだ。

「一番槍ー!」

そう言って夏凜さんが敵に刀をブッ刺す。

そこに二番槍と言わんばかりの援護射撃。

(なら…)

「三番槍だ!」

くっ、まだ止まらないの!?

「四番槍ーーー!」

そこに友奈さんの一撃。やっと止まったよ。

「封印の儀!大人しくしてください!」

すかさず樹ちゃんが封印の儀を行う。

ベロン

そうして出た御霊はその場で高速回転し始める。

(なら、止めればいい!)

「どりゃあ!」

「止まれー!」

私と友奈さん、二つの打撃をくらい、御霊の回転は一瞬だけ止まる。

誰も攻撃できないような一瞬。

でも、充分だった。

ズバァン

東郷さんの射撃が御霊を貫き、砂と化した。

「さすが東郷さん!」

「でもあんないっぱいいるのになぜ一体のみで…?まさか…陽動!?」

気付いた時はもう遅かった。

ゴーンゴーン

「なに…これ…気持ち悪い…」

「こいつは…牡牛座…!」

「二人とも…!くっ…!」

「みんな!あのベルか!」

東郷さんが狙撃しようとしても…

「近くにもバーテックス!?これじゃ狙撃が!」

(東郷さんの…近くのは…魚座…連携しすぎ…だってば…万事休す…かな…)

「音は…みんなを…幸せにするもの…こんな音は…こんな音はー!」

そう言って樹ちゃんの糸が音を止める。

「ナイスよ(だよ)樹(ちゃん)!」

「よし!今のうちに!」

ズシャア!

風さんが近づいてきた水瓶座と天秤座を巨大化した大剣でぶった切る。

「さすがです!風さん!」

「よし!3体揃って封印するわよ!」

この調子なら…!

しかし…

「あわわ!」

牡牛座の力が強く、一緒に連れてかれそうになってる。

「んなことさせるか!」

そう言ってオートクレールでベルの部分を切り裂く。

「大丈夫だった?樹ちゃん!」

「うん!ありがとう!ちひろちゃん!」

牡牛座、天秤座、水瓶座はなぜか撤退していく。

「私たちに恐れなしたのかな?」

「だといいんだけど。」

いや、あれは…

「後ろに獅子座が控えてるわね。」

獅子座…一体なにを…?

3体のバーテックスが獅子型のもとへ到達した瞬間。

獅子型は自身を巨大な火球へと変えその3体を取り込んだ。

そして火球が消え姿を現したのは。

「なっ!?」

「嘘…でしょ…!?」

巨大な合体したバーテックスだった。

 

 

 

 

ーーー???sideーーー

「さて、クラスターも完成したし〜私も行こっかな〜♪」

(さ、たっぷり満開してね♪)

「そうはさせないぞ!」

「…アンタ、どういうつもり?生かされてるアンタが歯向かっても殺されるだけよ?」

「もしそうだったらもう死んでるよ。お前だけは絶対止める!」

(もう〜せっかく直々に戦闘できると思ってたのに〜…ま、あいつらはクラスターだけで充分か〜!)

 

ーーーちひろsideーーー

(そんな…単体でも強力なのに…合体まで…)

「なにあれ!?」

「でもこれなら!」

「4体まとめて封印よ!」

(なるほど…ひとまず封印の儀にさえ持っていければ、なにもできないんだ!)

だが、

ボボボボボボ

合体バーテックスの後ろから無数の火球が放たれた。

「来るっ!各自避けて!」

「これ追尾して…きゃあ!」

「樹!数が多い…うわ!」

「追尾してくるなら…打ち返す!」

友奈さんが火球を一つ一つ潰していく。

私もシールドでガードしながら合体バーテックスに迫る。

(これ以上、やらせない!)

でも、

「きゃあ!」

「友奈さん!」

数が多すぎてやられてしまう。

「覚悟ーーー!!」

夏凜さんが合体バーテックスを傷つけようとするも、

パリン!

「!刀が…硬すぎ…うあぁ!」

「みんな!そんな.傷すら…うわあ!」

(そんな…追尾火球に刀を折る硬度、狙撃ポイントに水圧レーザーを放つ正確性。

間違いなく単純に足し算した以上の力を持っている!私のシールドだって限界はある。このままじゃ…負ける!)

「負けれない…負けられないんだ!」

敵のすぐそこまで迫っていたのでシールドからミニビットに変え、デュランダルとともに一ヶ所集中攻撃を放つ。

そして剣をオートクレールのみにして…

「モードフルブレイド!私の全力!食らってけーーー!!!!」

オートクレールに全てのソードビットを集中した一撃は…

「すごい…ちひろちゃん…」

合体バーテックスの体を引き裂いた。

「よし、このまま封印の儀に…「危ない…!ちひろちゃん!」えっ!?」

気付いたときには…その傷は…回復していた。

(早すぎる…そんな…)

 



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9話 満開

ーーー風sideーーー

「ガフッ!」

そのままちひろはレーザーを食らって吹っ飛んでしまう。

(みんな…)

「ま…だだ…諦めるわけには…かはっ!」

なんとか立ち上がっても、次の瞬間には水球の中にいた。

やばい!このままだったら窒息死する…!

「お…姉ちゃん…!」

(もがいても出れない…!もう…息が…!みんな…倒れてる…!私がやられれば…こいつは次にみんなのこと…死んで…たまるか…みんなを巻き込んで…樹を巻き込んで…)

「死んでたまるかーーー!」

次の瞬間、息苦しさは消え、代わりに力がみなぎってきていた。

(この姿…この力…)

「これが勇者の切り札…満開!」

 

ーーーちひろsideーーー

う…確かさっき…合体バーテックスの水圧レーザーに…

「ふ、風…さん…?」

上空を見ると風さんを水球が包み込んでいた。

(やばい!このままだったら…風さんが…!)

「やるしかない…まんか…」

 

『神官さんの…お子さんかな?初めまして〜乃木園子っていいま〜す。』

 

(ダメだ…できない…また…忘れられたくない…!私は何も救えな…)

その瞬間、風さんのところに一輪の花が咲いた。

光の主は無論風さん。

そして、風さんが合体バーテックスを体当たりだけで後方に倒していた。

(すごい…じゃない…)

「あ…ああ…」

そんな…あれは…

「あれは…満開…間に合わなかった…伝えられなった…」

(そんな…風さん…)

さらに奥の方にも一輪の花が…

「東郷さん…すごい…!」

「もう…許さない。我敵軍に総攻撃を実施す!」

(ぁあ、東郷さんまで…)

ビュオオオオン

東郷さんの戦艦から放たれたレーザーは魚座を一撃で仕留め、御霊を出現させる。

「この程度の敵なら、封印の必要もないみたいね。」

ズバァン

御霊は消滅した。

「いつ見ても妙な散り方…。!こいつ!神樹様に近い!どうして今まで気づかなかった!?素早い!このままでは…!」

(双子座…!あのときと同じ…!)

そしてもう一つ、花が咲き誇る。

「私たちの日常を、壊させない。」

(樹ちゃんまで…)

そっちに行くなぁーーーーー!!」

樹ちゃんが放った糸の数は通常の5倍はあった。あっという間に双子座をからめとり、すぐ近くまで引き寄せる。

そして…

「おしおき!」

御霊ごと細切れにした。

(止められなかった…みんな…どこかを失っちゃう…私なんか…勇者じゃ…)

「くっ!」

「お姉ちゃん!」

(そうだ…まだ終わってない…あいつほどの強さならよほど傷ついてない限り封印も突破される…満開も時間は有限…守るんだ…私が!みんなを!)

「満開!」

そして私の下に小型飛行機、ビットレイフェニックスと…通常の比じゃないソードビットが現れた。

「もう!迷わない!お前を!倒す!」

ズバズバン!

モードノーマルとブレイド、シールドを同時発動し、攻撃を防ぎつつ、合体バーテックスを切り刻む。

普通ならモードの同時発動など不可能だがビットレイフェニックスから追加されたソードビットがあればそれも可能。

「ちひろ!レーザー食らって吹っ飛んでったときはヒヤヒヤしたわよ!?」

「心配かけました!このまま封印の儀に行きましょう!モードグングニル!」

オートクレールとデュランダル、ビットレイフェニックスを接続し、一つの大剣にする。

 

だが合体バーテックスは火球を集中させ巨大な火球を作り出す。

「ちょ!?何ですかあの元気っぽい球!?」

「私が!止める!」

そう言って風さんが大剣を出し火球を止める。

「大人しくしろ!」

「遅れました!」

「封印開始です!ちひろちゃん!すごかったよ!」

「止めてみせる!樹ちゃんもすごかったよ!」

ベロン

「え?」

「嘘…」

だがその御霊は…宇宙空間に到達するほど…巨大だった。

 

 

 

 

(数字の減りも早い!こんなの…倒しようが…)

ボガァン

「「風さん(お姉ちゃん)!!」」

「そいつを止めろぉーーー!!」

火球の消滅とともに風さんが遠くに吹き飛ばされてしまう。

おまけに御霊の一番下でさえかなり空高くの場所…

(風さんのためにも倒さなきゃいけないのに…)

「大丈夫だよ!御霊なんだから今まで通りにやればいいだけだよ!」

「友奈ちゃん乗って!今の私ならあそこまでいけると思う。」

「うん!わかった!」

「なら私たちは!」

「封印を続けましょう!」

「友奈さんと東郷さんがアレを破壊するまで!」

 

ーーー友奈sideーーー

「東郷さん!大丈夫!?」

「ええ、友奈ちゃん!行って!」

東郷さんは合体バーテックスの御霊の攻撃を防ぐことと満開の長時間発動でかなり体力を消耗してるみたいです。

「うん!絶対倒してくる!」

(私のゲージも溜まってる!みんなで帰るんだ!守るんだ!)

「満開!」

宇宙に一輪の花が咲き誇る。

「みんなを守って私は…勇者になあーーーる!!!」

東郷さんが最後に援護射撃で傷をつけてくれる。

「そこだーーー!」

ドガァン!

傷をどんどん殴り続けるが…

(回復が早い!)

御霊の修復スピードが上をいき、傷は完全に塞がってしまいました。

(でも!みんなが下で頑張ってるんだ!負けてたまるか!)

「勇者部五箇条!ひとーつ!」

ビキッ!

「なるべくー諦めなーい!」

ビキビキッ!

「さらにもうひとーつ!」

バキバキバキバキッ!

「成せば大抵ーーーーなんとかなーーーーる!!!!」

バリン!

その言葉とともに放たれた拳を最後に御霊は砂になり、消滅していきます。

満開もとけ、ゆっくり下に落ちていきます。

そんな私を受け止めてくれたのは…

「友奈ちゃん…お疲れ様…」

「えへへ…おいしいとこだけもらっちゃった…」

「最後の力でこれだけ残したけど…持つかどうか…」

「大丈夫…神樹様が守ってくれるよ…」

「そうね…」

私と東郷さんをアサガオの花弁が包み込みます。

(一人なら怖くても、東郷さんと一緒なら、怖くないから。どうか神樹様、二人とも無事に…返してください…)

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

(目の前のバーテックスが砂になったってことは…)

「友奈と東郷がやったのね!」

「友奈さんも東郷さんもよかった!」

「ふぅ…」

(さっきの空の様子からして友奈さんも満開を使った。使ってないのは夏凜さんだけ。これで充分だ。変な欲を出さずにあんな化け物を倒せたことを喜ぼ…ん?)

なにかの音が微かに聞こえた気がするのでソードビットを組み合わせて簡易望遠鏡をつくり、のぞいてみる。

ちょうど合体バーテックスがいた辺りの空からアサガオらしきものが落ちてきてるのが確認できた。

(アサガオってことは…まずい!)

「二人とも大変!友奈さんと東郷さん、このままじゃ地面に激突して死んじゃう!」

「「ええ!?」」

「今ちょうど合体バーテックスがいた辺りめがけて落ちてきてる!多分東郷さんの満開が途中でとけて、なんとか残したアサガオで落ちてきてる感じだと思う!」

「なっ…私の武器じゃ受け止めるのは…」

「夏凜さん任せてください!絶対に止めます!」

「私もシールドで手伝うよ!樹ちゃん!」

(今度こそ守りきってみせる!)

バツン

バリン

バツバツン

バリバリン

私のシールドと樹ちゃんの糸、二つの満開で止めようとするが止まる気配は見えず、ついに地面のすぐそこまで迫っていた。

(もう、守れないのは嫌なんだ!)

「残りの糸全て!」

「モードフルビッグシールド!」

「「とまれーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

ストッ

アサガオはスピードをなくし、地面に着地、中にいた友奈さんと東郷さんを残し、消えました。

(よ…かった…ギリギリ…止まった…)

「見た!?樹!ちひろ!あんたらが止めたのよ!守ったのよ!」

「夏凜さん…行ってあげて…ください…」

「私たちは…大丈夫ですから…」

「ええ!」

ダダダッ

「お姉ちゃん…私…頑張ったよ…ちょっと…疲れちゃった…」ドサッ

(樹ちゃん…!私も…もう…意識が…)バタッ

そこで私の意識は途切れた。

 

ーーー???sideーーー

「あいつが消えてく!やったのか!?」

「チッ!せっかく今回で終わらせようと思ってたのに…ま、撤収としますかね…!」

「あ!待ちやがれ!」

「アンタも覚えておきなさいよ!アンタさえいなければ勇者どもを殺し、世界を終わらせれたんだから!」

(あーあ、行っちゃった…勇者たち、さすがだね…)

ーーー夏凜sideーーー

「東郷ー!友奈ー!!」

返事はない。二人とも互いの手を握りあって目を閉じていた。

「そんな…」

みんな動かない。視界が潤んでいる。

私以外みんな死んで…

「だい…じょうぶ…だよ…夏凜…ちゃん…」

「友奈!」

「…私も…」

「東郷!」

「はーい…なんとか生きてまーす…」

「コホッ!」

「うっさいな〜…にぼっしーは〜…」

「風!樹!ちひろ!よかった…みんなが無事で…」

気付けばいつのまにか樹海も消えていた。

プルプルプル

「はい、こちら三好夏凜!負傷者5名!今すぐ霊的治療班を!尚今回の戦闘でバーテックスは全て殲滅しました!私たち讃州中学勇者部が!」

 




どうしよう…連投しすぎもよくない気もする…(優柔不断)


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10話 代償

とりまpixivでの6話分まで投稿します…


ーーーちひろsideーーー

私たちはあの決戦のあと、検査のため病院を訪れていた。

で、私は検査が終わったので今待合室に向かっている。

代償は昨日のうちにわかった。

嗅覚である。

(この世で一番役立たないとこだからって忘れ去られたばっかの頃の私なら思ってただろうな〜。今は他の人にいってて欲しかったけど…みんな自分で歩いていたから四肢は無事だろうけどな…)

「で、到着!ってもう夏凜さんいるし!?」

「残念だったわね!で、どうだったの?検査の結果。」

「特に異常は見つかりませんでしたけど。」

「よかった〜!」ボソッ

「オーイ、ホンネガモレテルゾイ!」

「な、ななななな!?」

「イッチバンのり!ってもう夏凜とちひろいるし!?」

「ちひろと似たような反応してんわねアンタ…」

「心外です…」

「その顔で言われると嘘に思えないからやめて?」

(まさか風さんと同じにされてしまう日が来るとは…最悪だ…って、ん???)

「いや、その左目どうしたんですか?」

「あ、ほんとね。どうしたの?」

「ふっふっふっ、この目は魔王との戦いで…」

「夏凜さん、中二病こじらせてますよこの人。」

「ちひろ、さっきは一緒にして悪かったわ。」

「ひどーーー!!」

「じゃさっさと本当のこと話してください♪」

「それあかんやつ…戦いの疲れで一時的に見えなくなってるだけだって。」

「あ、そう。」

「反応薄くない!?そっちから聞いてきてきたくせに!?」

(そっか…風さんは左目か…四肢に比べてだと…マシ…なのかな…私はこの事態を招いた張本人…私が…背負わなくては…いけないんだ…!)

「キッチシ血抜かれちゃいましたー!って風先輩その目どうしたんですか!?」

「ああ、これ?魔王との戦いで…」

「左目の視力が落ちてるんですって。」

「ちょ、夏凜!まだセリフ言い終わってないのに〜!!」

「それってもしかしてバーテックスのせいで…?」

「そういうことじゃなくて、かくかくじかじか…」

「疲れてただけか…よかった…」

そのあとに樹ちゃんが東郷さんの車イスを押して来ました。

「友奈ちゃん!大丈夫だった!?」

「東郷さん!全然大丈夫だったよ!東郷さんは?」

「私も。」

「「樹(ちゃん)!!大丈夫だった!?」」

コクコク

「あ、樹ちゃん、疲れで声が出ないらしいです。」

(えっ…)

「私の目と同じってわけね。」

(声…私の…せい…で…)

「そうだ!祝勝会しましょうよ!円陣のときに言ってたじゃないですか!」

「ああ、そういえばね。ま、出れないからうどんは無理だけどいいかしら?」

「構わないと思います。」

「私もよ。お菓子買いに行きましょう。」

お菓子を買いに行く。

(友奈さんと東郷さんは見た目じゃわからないものだ…みんな…私のせいで…

「みんなよくやった! アタシ達勇者部の大勝利を祝ってー、カンパーイ!」

「「「「カンパーイ!」」」」

祝勝会も身が入らなかった。

そしてお菓子を食べたときの友奈さんの反応からして多分味覚を失っている。

(なんで私が…一番罪深い私が…一番軽いんだ…)

 

ーーーパーティー終了後ーーー

ーーー友奈sideーーー

パーティーも終わり今東郷さんを部屋に送ってってる途中です!

「友奈ちゃん?」

「あ、ごめんね東郷さん。なに?」

「体、どこかおかしいところない?」

(やっぱりすごいな、東郷さんは。なんでもお見通しみたい。)

「さっきジュース飲んでたとき、様子おかしかったから。」

「東郷さん鋭いなー。でも大したことないから。」

「話して。」

「...味、感じなかったんだ。ジュース飲んでも。お菓子食べても。」

それを聞くと、東郷さんは悲しそうな表情をする。

「大丈夫!すぐ治るよ!風先輩や樹ちゃんと同じじゃないかな?でもお菓子の味分からないなんて人生の半分は損だなー。」

「そうね。友奈ちゃんらしいわ。」

「えへへ!」

 



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11話 苦悩

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「もう戦わなくていいと思うとよく眠れたわー。」

『そういえばちひろちゃんはなんともなかったの?』

「樹ちゃん、その話し方ナイスだね!」

『お姉ちゃんのアイデアだよ。』キュッキュッ

(たしかにいいアイデアだけど…どうしても会話に遅れるのは…私が…責任を…背負わないと…)

「てか…くさっ!」

『本当だ…臭いよ…』キュッキュッ

「…」

「あんたは大丈夫なの?」

「元から私、鼻鈍いので。微かにはしますけど。」

「…へぇ…」

「いいわね…って夏凜!?あんたいつのまにいたのよ!?」

『途中から一緒に来てたよ…』キュッキュッ

「そっちの方が驚きなんですけど…」

(これが樹ちゃんだったらよかったのに…なんで責任を負わなきゃいけない私なの…?)

 

ーーー1週間後ーーー

ーーー東郷sideーーー

病室で左耳にイヤホンをあてる。

(やはり…聞こえない。)

イヤホンからは確かに音楽は流れている。

それは右耳が証明している。

パソコンに「回復の兆しなし」とうつ。

「これが本当なら…」

風先輩は左目、樹ちゃんは声、友奈ちゃんは味覚、私は左耳。

満開をした人はどこかしらがおかしくなっている。

(あと分からないのは…ちひろちゃん。)

今は放課後、風先輩も今日はフリーなはず。

「もしもし、東郷?どうしたの?」

「風先輩、大至急、伝えたいこととお願いしたいことが。」

「ん?真剣な話っぽそうね…で、何?」

「今のところちひろちゃん以外の満開使用者がみんなどこかに異常をきたしています。」

「え!?」

「風先輩は左目、樹ちゃんは声、友奈ちゃんは味覚、私は左耳、逆に夏凜ちゃんは異常なし。」

「っ!そんな…」

「私はこれが満開の後遺症ではないかと考えています。それを確定させるには…ちひろちゃんもわからないと意味がないんです。風先輩は私よりちひろちゃんと関わりが強いので、私が聞くよりもいいかと。お願いできませんか?」

「オッケー、治るものだとわかってても原因ははっきりさせといた方がいいもんね。任せなさい。ただ…」

「?どうかしたんですか?」

「あれから夏凜が学校に来てなくてね…今ちひろと友奈が探しにいってるのよ…」

「聞ける時で構いません。お願いします。」

「…わかったわ。そろそろ切るわね。」

「はい、失礼しました。」

 

ーーー夏凜sideーーー

(土曜日に部活をサボって、休日明けてからは月曜火曜と学校を無断欠席。水曜日の今日もそう。何をするわけでもなく、ただ家に籠って明かりも点けずにベッドに寝転がっているだけ。

唯一満開できなかったのは私。その事が悔しくて、情けなくて、申し訳なくて、部室にもお見舞いにも行けない。私は戦うために来たのに...私だけ傷を負ってない。一番役にたってないじゃない...完成型勇者なんて…名ばかりじゃない…)

おまけにさっき風からメールが来た。

内容は、満開した人の体の調子がおかしく、ちひろにも確かめてほしいと言うものだった。

(私は…なんのために…派遣されてきたのよ…)

「やっぱりここにいたんですね、夏凜さん。」

振り返るとちひろがいた。

「部活のサボりはいけないですよ。」

「私は大赦から派遣されてきた勇者なのよ。戦いが終わった今、行く理由がないわ。」

「ふーん、でも多分もうじき友奈さんもきますよ。」

「…てかいい匂いするわね。」

「…そうですね。少しだけ。」

「…やっぱりあんたもなのね…」

「?」

「あんた…あの戦いのあと鼻の調子悪いでしょ。」

「…まさか。」

「嘘ね。現に今いい匂いなんてしないわ。翌日の登校のときにあんたの反応に違和感を感じてたからね。風のメールで確信を得たわ。」

「樹ちゃん以外に見破られるとは思ってなかったです。」

(えっ…)

「樹には見破られてたんかい!」

「はい、翌日には。」

 

『ちひろちゃん、鼻の調子悪いの?』キュッキュッ

『さすが!そうだよ』

『いや、前タバコは嫌だーー的なこと言ってたから。タバコは嫌なのに肥料の匂いがわからないはずないでしょ?だから。大丈夫、心配かけないために黙ってたんでしょ?』キュッキュッ

『そこまでバレてるなんて…』

『よく遊んでたからね。』キュッキュッ

 

「っていうことです。ところでサボってるのは

 役立たず とか自分で思ってからじゃないですか?」

「…なんでそれを。私だけ満開できなかった。大赦から派遣されてきたのに。役立たずでしかないじゃない!」

「そうでしょうか?夏凜さんがいなければ、牡羊座を止まれませんでしたし、封印の時間も、間に合わなかったと思います。合体バーテックスの。」

(言われてみれば…)

そうだ。合体バーテックスを倒すことに貢献してないだけで戦闘自体には大きく貢献していた。

「それに何勘違いしてるのか知らないですけどケガをしないことはいいことです。その点では一番優秀だったんですよ。夏凜さんは。あと、夏凜さんはもう勇者部の一員ですから、バーテックスとか大赦とかどうのこうのの前に。」

「…あ、ありがと…」

「あ、照れ隠しだぁ〜!」

「な!?////」

(ちひろ…こんな優しいこともできたのね…)

「あんたも、何かあったら相談していいからね。」

「話すこと一生ないと思いますけどね。」

「ふふっ。」

そして…

「夏凜ちゃーん!!」

(ん?この声…友奈?そういえばちひろがそんなことを…)

「わぷっ!?」

ドサッ

「友奈!?」

砂に足をとられて友奈は盛大に転んだ。

「夏凜ちゃん、そこは駆けつけて受け止めてよ〜!」

「無茶言うな...はい。」

「ありがとう!」

手をさしのべると友奈は迷うことなく掴んで立ち上がり、制服についた砂をとった。

いつのまにかちひろはいなくなっている。

「何しに来たの?」

「部活のお誘いだよ。夏凜ちゃん最近サボりまくってるから。」

「っ!」

「このままじゃサボりの罰として腕立て1000回に腹筋3000回、みかん500個収穫にぼた餅1000個作ることになっちゃうんだけど~」

「は?桁おかしくない!?それに収穫とか作るとかなんなのよ。」

「東郷さんの退院祝いだよ!」ドヤァ

「でも、部活にくるとチャラになりまーす!どう?来たくなったでしょ?」

「ならない。」

「部活来ないの?」

「元々私、部員じゃないし、もう理由もないのよ。」

「理由って?」

「私は勇者として戦うために讃州中学に入ったの。部活に入ったのも他の勇者と連携をとりやすくするため...戦うためにいた。それ以上の理由なんてない......大体バーテックス倒し終わったんだから、勇者部なんてもう意味ないでしょ!」

ちひろのおかげで役立つことができていたのはわかった。

でも未だに行く理由を見つけられないでいた。

「違うよ!勇者部は、風先輩がいて、樹ちゃんがいて、ちひろちゃんがいて、東郷さんがいて、夏凜ちゃんもいる。みんなで楽しみながら人のためになることをする部活だよ。バーテックスなんかいなくても、勇者部は勇者部だよ!」

「でも...」

「戦うためとか関係ない。」

「でも私...戦うために来たから、私にはもう価値はなくて、あの部にも居場所はないって...」

「勇者部五箇条!悩んだら相談!」

「え...?」

「戦いが終わったら居場所が無くなるなんて、そんなことないんだよ…?夏凜ちゃんが部室にいないと寂しいし、私が夏凜ちゃんのこと好きだから!」

「っ!!」

(は、恥ずかしい…)

「しょ...しょうがないわね。そこまで言うなら行ってあげるわよ。勇者部!」

「やったー!!じゃあ早速いこう!」

「え!?」

「よしそうしよう。」

「ちひろ!?」

「あ、でもその前に…シュークリーム買っていこう!」

「なんでシュークリームなのよ…」

「でも友奈さん、味覚ないんじゃないんですか?」

「うん、でもなんでそれ知ってるの?」

「夏凜さんのスマホ見ましたから。」

「はあ!?何勝手に見てんのよ!?」

「いいからいこうよ!」

 

『夏凜さんはもう勇者部の一員ですから、バーテックスとか大赦とかどうのこうのの前に。』

 

(もう、バーテックスとか関係なく来ていいとこなんだ…)

「結城友奈、ただいま帰還しました!」

「ちひろ、帰還でーす。」

「おかえりーって、夏凜も来たのね。」

「ゆ、友奈がどうしてもって言うから!」

「あとこれ差し入れです。」

「でも友奈はお菓子の味分からないんじゃ...」

「っ...あれ、気づいてたんですか?」

「てかちひろ、樹から聞いたわよ!あんたもあんたで鼻悪くしてたの早く言いなさいよ!」

「気付かない方が悪い。」

「ぐはっ!ごめん、友奈、ちひろ。樹も...あたしが勇者部の活動に巻き込んだせいで...」

「こんなのすぐ治ります。気にしすぎですよ」

『そうだよ。』キュッキュッ

「べつに話なんて関係ないですし。」

「そういうわけで結城友奈は今後、風先輩の『ごめん』は聞きません!」

『私も!!』キュッキュッ

「...うん、ありがと。

「私は風さんが泣きながら謝るところ見てみたい気もするけど。」

みんな笑顔になる。

友奈は自分が辛いときでも笑って、一緒にいれる。

きっと、だから皆が好きになって…

「それより早く食べましょう!風先輩が飢えで倒れる前に!」

「...ねぇ、わたしいつでもおなかすいてる人だと思われてない?」

「『違うんですか(の)?』」キュッキュッ

「妹も!?」

「ぷっ...そこまで言ってても手は伸ばすのね。」

「アキレルワー。」

「はっ!?静まれ...あたしの右手!あたしの中の獣ー!!」

『獣(女子力)。』キュッキュッ

「そう、それ。」

「それでいいのかしら…」

「いいんでしょう。」

(楽しい。私も、好きになったんだろうな…友奈と、勇者部のみんなと一緒にいることが。)

 

ーーー夜ーーー

ーーー樹sideーーー

(ちひろちゃん…あの戦いのあとから少し様子がおかしい…まるで全て自分に非があると思ってるみたい。そんなことないのに…もしかして秘密のことと何か関係が…)

「よっしゃーー!!」

『どうしたのお姉ちゃん?急に大きな声出して。』キュッキュッ

「ごめんごめん、大赦がなんと2週間後にバーテックス全部倒した褒美として合宿費を出してくれるそうよ!!高級旅館で海の近く!」

『よかったね!』キュッキュッ

「早速NARUKOでみんなに報告を…っておお!さらに朗報が舞い込んだわよ!東郷が明日退院できるのと夏凜がこれからも勇者部残れるって!」

『やったね!』キュッキュッ

(ちひろちゃん…悩みがあるなら…話せない事情があるなら…助けられるように頑張るね。私は勇者部の一員だから。ちひろちゃんの友達だから。)

 




とりあえずここまでですかね…明日と明後日はテストなので許してください…。。。(lll __ __)バタッ


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12話 休息

あ、今頃だけどここのヒロイン??は樹です☆(めちゃくちゃ珍しいと思う…)


ーーーちひろsideーーー

私たちは今海に来ていた。

大赦からのご褒美らしい。

(ご褒美というより「祀られてる」ってことなんだろうけど。)

満開に隠された機能、「散華」。

神樹様に供物を捧げるということは裏を返せば神に近づくということなのだ。

なぜこんな人道からはずれたことを平気でできるのか。

現に20回もの満開をした園姉は今でも祀られている。

(ま、少しくらい楽しんでもいいよね!)

「さあ!瀬戸の人魚と呼ばれるあたしに向かってくるやつはいるかしら!?」

『自称です。』

「だと思った。」

「私の体は出来上がってるわ!泳ぎで勝負よ!風!」

「望むところよ!」

「いや、着替えましょうよ。」

(あなたまだ私服でしょーが。)

「ふふっ、甘いわね、ちひろ!」

「きゃっ!」

 

ーーー風sideーーー

(あらかじめ中に水着は着ていたわ!)

「驚いたでしょ!?ちひろ!」

「…」

ちひろは無言でそこら辺にある木の棒を手にすると…

「し・ね♪」

ブンッ!

「うぉい!」

ものすごい勢いで投げてきた。

(あれはまずいあれは!やばい笑顔!まじでまずい!)

もっとまずかったのはその木の棒が岩に刺さっていることなんだけど。

「ひえぇえ!どうかお許しください!」

「や・で・す♪」

「ぎゃあああ!」

『お姉ちゃん前にも似たようなことあったのに…』キュッキュッ

 

ーーーちひろsideーーー

(はぁ…風さん許すまじ…)

「風が死んだ今私は誰と泳げばいいのよ?」

「私とやりましょうか?」

『ちひろちゃん泳ぐの早いもんね。』キュッキュッ

「!いいわ!アンタは一度コテンパンにしたかったのよ!」

「いいですよ!返り討ちにしてやる!」

 

ーーー終了後ーーー

「はぁ、はぁ、早すぎるでしょ…」

「返り討ちにしてやったぜ!」

『東郷さん何作ってるんですか?それ…』キュッキュッ

「ああ、樹ちゃん。これは丸亀城よ。」

「うますぎでしょ…」

(何このクオリティ。再開してから須美さんいろいろおかしいよ?)

一方で…

「な!?そんなに一気に!?」

「さ!次夏凜ちゃんだよ!」

「うぐぐ…そ、そーと…あぁ!」

「わーい!勝った!」

「なんでそんな持ってけるのよ!」

「あのね、砂が私に語りかけてくるんだよ…」

「何よそれ!?」

あちらは棒倒しをやってて友奈さんがプロじみたことを言ってる。

(楽しいな。)

「スイカ持ってきたわよー!」

ブンッ!

「危なっ!?」

「ちっ…もう復活したか…」

「ひどくない!?」

『自業自得だよ…』キュッキュッ

「あ!スイカ!どうしたんですか?それ?」

「スイカ割りやろうと思ってね。だれか割りたい人いる?」

『私やりたいよお姉ちゃん!』

「おお、さすが我が妹!他は…いなさそうね。よし、準備するわよ!」

「「「はい!」」」

ーーー数分後ーーー

「そのまま!前進よー!」

「あ!ちょっと向きずれてる!左にちょっと向き変えてー!」

「友奈ちゃん、そっち右だよ。」

「あ、そっか!」

「今だよ樹ちゃん!振り下ろして!」

「あはは、なにその構え!」

「あんたの真似でしょ。」

「え、あたしあんなん?」

(自覚なかったんかい!でもあの構えだからこそあんだけの威力が出るんだからいいか。)

バン

「さすが樹ちゃん!」

『ありがとう、ちひろちゃん。』キュッキュッ

「遊びまくったしそろそろ旅館行って夕食食べる?」

「そうね。もうこりごりだわ…」

「負けまくったから?」

「うっさい!」

 

 

 

 

ーーー旅館ーーー

「「「「『わー!すごいご馳走!?』」」」」キュッキュッ

「美味しそうですね。」

『カニだ!』キュッキュッ

「樹カニ好きだからね〜」

「そういえば最近カニうどん作ってなかったような…」

「しゃーないしょ!?カニ高いんだから!?てかいくらなんでも豪華すぎません!?間違ってないですか!?」

「滅相もございません。どうぞごゆっくり。」

「私たち、高待遇みたいですね。」

「ま、なんたって世界を救ったんだからね!」

「つまり食べていいと…グフフ…」

「気持ち悪いです風さん。」

『でも友奈さんが…』キュッキュッ

「んー!この刺身のコリコリとした歯ごたえ、たまらないですねー!お!こっちのシラスのツルッとした喉越しもたまらない!」

(すごい…)

「もう…友奈ちゃんったら…いただきますが先でしょ。」

「ああ!そうだった!ごめんごめん…」

「「「あらゆる手段を使って味わおうとしている…」」」

『友奈さんにはいろいろ敵わないね、ちひろちゃん。』キュッキュッ

「そうだね、樹ちゃん。」

(私もこんなポジティブにいられた時期もあったな…)

「「「「「『いただきます!』」」」」」

「はむ!はむ!うまーい!」

「って風!?はやっ!?」

「そうだ!写真に撮っておこう!家族に見せるんだー!」

『なるほど!』キュッキュッ

「じゃ、私も撮ろーっと。あとで思い出して味わえるように。」

(家族…そういえばこっちに来てから全然母さんとかに連絡してないや…送ってあげようかな…)

「場所的に私がお母さんするから、おかわりしたい人は言ってね。」

(…須美さんがお母さんって絶対地獄だ…)

「東郷が母親か…厳しそう…」

「門限を破る子は柱に張り付けます。」

「ひっ!!」

(やっぱり…)

「まあまあ、お前、そこまでしなくても…」

「あなたが甘やかすから…」

「夫婦か!」

「夫婦だね。」

『夫婦の会話だよね。』

「時々言ってるけどさ。いつかこういうのを日常的に食べられる身分になりたいわね。自分で稼ぐなり、いい男見つけるなりで。」

『後者は女子力が足りてませぬ。』

「そだねー。」

「そう?この浴衣から匂ってない?」

そんなバカなこと言ってるあいだに夏凜さんが風さんの刺身をパクリ。

「ちょっと夏凜!刺身人数分なのよ!?勝手に取らないでよ!?」

「ふん、ぶつぶつ言ってるのが悪いのよ。第一女子力だかなんだか言うんだったらちひろとか東郷見習いなさいよ。」

「わあ!ちひろちゃん。普通に食べてるだけなのに…」

『東郷さん!美しいです!』キュッキュッ

「私は東郷さんのはいつも見てるから言ってないだけだよ!」

『私はちひろちゃんの。』キュッキュッ

「さすがお嬢様ーズね。」

「そんなに見られると…恥ずかしいです。友奈ちゃんは大丈夫ですけど。」

「やった!」

「私もお母さんとかの見てただけだから別にすごくないよ。」

『いや、何度見てもキレイだよ。』キュッキュッ

(樹ちゃんがそこまで言ってくれてるならそうなのかな…?)

「ま、私もマナーにはうるさいからね!っと。」

ブスッ

(いや、それ刺し箸。)

「『その時点でアウトです。』」キュッキュッ

「『あ、息あったね!』」キュッキュッ

「なっ!?嘘でしょ!?」

「まあ、あまり気にしなくていいかも…」

「そうだそうだ!食は楽しむものだー!」

「そーだそーだ!最低限のマナーさえ守ってりゃあいいのよー!」

「おー!そだーそだー!」

『こういう時は団結するんだ…』キュッキュッ

「友奈ちゃん、かわいい…」

「まったく、この人たちは…」

「ん。ぐあああ!私の邪眼がさらなる生贄を求めている…」

『ご飯おかわりだそうです。』キュッキュッ

「すごい!通訳した!」

「つーか普通に言え。」

「余計な手間かけさせんな!」

ドゴォン

「いった!?3杯目だから遠慮してただけなのにぃ…」

「居候か。」

「おかずも減ってきましたね。」

「そうね…はっ!?」

風さんが見たさきには神棚が。

(まさか…嘘でしょ?この人。)

「確かお供えものって時間さえたてば…」

『やめといた方がいいよ、お姉ちゃん。』

「食べたらドン引きしていいですか?」

「確かにいいですけどやめましょうよーーー!」

「冗談よ冗談。」

(…いや。)

「「あんた(風さん)が言っても冗談に聞こえないのよ(んですけど)。」

「ひどすぎない!?」

「あはは…樹ちゃん、風さんがお供えものに手を出す前に次行こう次!…って次なんだっけ?」

(友奈さん…忘れん坊だからなぁ〜)

『次はお風呂です!』

(…ナイス樹ちゃん!)

 

ーーー風呂ーーー

ーーー樹sideーーー

「はぁ〜…」

「いいお湯だね〜東郷さん!」

「疲れが吹っ飛ぶわ〜」

コクコク

「そうですね、だそうです。」

「な!?なんでわかんの!?」

「ここに来る前に暗号的なの決めてきました。ね?」

(あの時は気が利くと思ったな〜)

コクコク

「確かに、生き返るわね。」

「…なんでそんな遠くにいるの?」

「…!べつに!ぐぐぐ偶然よ!」

「ははーん…!」

「な、なによ…」

「女同士で何照れてんだか♪」

「て、照れてなんかないし!」

(夏凜さん…どうして照れてるんだろう?)

「こんなに広いと泳げたくなっちゃうよね〜」

「ダメよ、友奈ちゃん。」

そう言って東郷さんは水鉄砲を友奈さんに当てる。

「はーい…ブクブクブク…」

「ぐへへへへへ。」

「ど、どうしました?二人とも?」

「風さん、目がキモいんですけど?」

「いやー、二人ともどうすればそんなメガロポリスな感じになるのか〜。」

コクコク

(確かに気になる。私の場合東郷さん限定だけど。

…プチッ

「ちょっとだけでもコツとかを教えていたたければと…グフフ。」

ブチッ

「ふ、普通に生活してるだけです…」

「ご謙遜を〜…ちひろも早く言いなさいよ〜」

ブチブチッ

「もむわよ〜」

ブチブチブチッ

(やばい、そろそろレッドライン超えちゃう。)

「______!」

(あ、今声出ないんだった!まずい!)

「もう、ほれほれ!」

ついにお姉ちゃんがちひろちゃんの胸を揉もうとしますが…

ガシッ

ちひろちゃんがお姉ちゃんの頭をわしづかみにします。

(あーあ、手遅れだった…ごめんね、お姉ちゃん…)

ちひろちゃんは自分の胸の大きさをそこまで快く思ってなく、イジりすぎるとブチギレると前に言ってたのです。

ギリギリギリギリ

「ちょ!?痛い痛い痛い!誰かー!ヘルプー!」

(ちひろちゃん落ち着いて〜!)

 

ーーー夏凜sideーーー

(あんな奴らのトークに巻き込まれるのは嫌よ!?早めに脱出させてもらうわ!あいにく今はちひろが暴走中!)

「今のうちに…」

(さっさと体を洗ってあがろ…)

「はーい!お背中流しまーす!」

(え!?友奈!?)

「ひゃあああああ!」

「背中流すの上手いって、お母さんに褒められたこともあるんだよー!。ま・か・せ・てー!」

「ちょ、くすぐったいってばー!」

 

ーーー部屋ーーー

ーーーちひろsideーーー

(あのバカ部長、私のコンプレックス攻撃しやがって…)

「私は端っこ。」

『私お姉ちゃんの隣がいいです。』キュッキュッ

「私は部長だからまんな…「いや私樹ちゃんの横がいいので端っこ行ってください。」はい!わかりました!」

「じゃあ私反対の真ん中がいいー!」

「私なら友奈ちゃんの隣ならどこでもいいわ!」

「女6人集まって旅の夜…なにを話すと思う?夏凜。」

「え?そうね…辛かった修行は何か、とか?」

「違う。」

「はい!正解は日本という国の在り方について存分に語る、です。」

「それも違う。」

(そこの二人はマニアックなんだよね…ここはオーソドックスに…)

「オカルト話?」

「絶対ない!じゃ、正解をお願い、樹。」

『コイバナ…?』キュッキュッ

「そう!さすが樹!恋の話よ!」

(…めんどくさっ!?)

「で、では…誰かに恋をしてる人〜…」

「「「『…』」」」キュッキュッ

「ま、まあみんな勇者とかだ忙しかったし…」

「そういう風はなんかあるの?」

「あれは2年生のときだったわ…!」

(それか…)

「!」

「私がチア「それ私でさえもう5回も聞いたんでいいです。」なっ!?」

「それだけしかないのね…」

「あるだけいいでしょ。」

『告られたとかなら、ちひろちゃん結構告られてるよね。』キュッキュッ

「なんですと!?」

「そうなの?ちひろちゃん。」

「…まあ、はい、5回ほど。」

「すごいわね。」

「ありがとうございます、東郷さん。」

「ま、あんた勉強も運動も完璧だからね。」

「それ夏凜さんが言うことじゃないと思いますけど。」

『でもそれだけじゃなくて、学級委員長もやってて、美人で、教えるのもうまい上に人助けが趣味だったら人気出るよ。』キュッキュッ

「ありがとう樹ちゃん。」

「ついでにそれ全部どうしたの?」

「全員興味ないので1秒でフリました。」

『それからちひろちゃんには氷の女王の異名がついたとさ…』キュッキュッ

「一件落着…コンビネーションプレイ!イェーイ!樹ちゃん!」

『そうだね!ちひろちゃん!』キュッキュッ

(ま、ぶっちゃけどーでもいーからね…)

「すー…」

「夏凜ちゃんもう寝てる。」

「昼はしゃいでたからね、夏凜ちゃん。」

『かわいい寝顔です。』キュッキュッ

(ふふっ、戦い方や勇者服だけじゃなくて

「私たちもそろそろ寝よっか。夜更かしは乙女の敵よ。」

(わたしも眠いし…そろそろ寝よ…)

「フッ。」

(んん?今何か寒気が…)

「何か言った?東郷さん?」

「なんでもないよ。友奈ちゃん。」

「それじゃ電気消しますね。」

「はーい、おやすみー。」

『おやすみなさい。』キュッキュッ

「おやすみー。」

「おやすみなさい。」

カチッ

(さて、さっさと寝よ…)

「あの日も、こんな感じの暗いジットリとした夜でした・・・。」

「「「「!」」」」

「東郷さん!?」

(そうだ!東郷さん=須美さん、須美さんも合宿のとき怖い話してたー!!)

「その男は帰りを急いでいました。でも、家への近道をしたのが間違いだったんです…。お墓のところを通った辺りから自分をつけてくるような足音が聞こえてきて…。」

「はわああっ! 何でこのタイミングで怪談を!?」

「ちょっ! そういうの私苦手なのよ!」

「私は平気ですけど…ふぁああ…」

「男は思い切って後ろを振り返ることにしたんです。すると・・・!」

そのとき、下半身になにかが突然抱きついてきました。

(ナニコレムリーーー!!!)

「ひゃあああああ!!!!」

「「「きゃあ!」」」

「どうしたの!?ちひろちゃん。」

「なにかが突然下半身に〜!!…樹ちゃんか!よかった〜!怖かったよ〜!…いいよ!樹ちゃんはあの話が怖かっただけでしょ?悪くないよ〜!風さんなら蹴り飛ばしてるけど〜!!」

「ちょ!?ひどくない!?」

(無理!一人じゃ眠れない!)

「怖いから抱き合って寝ようよ〜!樹ちゃん〜!」

コクコク!

「仲間はずれにしないで〜!」

「うぇあぁ! うるさい…。」

「「「すいません〜…」」」

 

ーーー真夜中ーーー

ーーー夏凜sideーーー

(ん?あれ…いつのまに寝てたのかしら…私…)

「ん…?風…人の腹枕にするって…どんだけ寝相悪いのよ…自分の布団に戻りなさい…」

「…女子力コンビニで売ってないかな…?」

「まったく…」

ギュッ

「うわっ!?」

「むにゃむにゃ…樹…治ったんだね…よかった…」

「っ!…仕方ないわね…」

(でも…布団向かい合ってるのに横に来るってどんだけ寝相悪いのよ!?)

 

 

 

 

 

ーーー翌朝ーーー

ーーー友奈sideーーー

「ふわぁ〜あれ…?」

(東郷さん…どこだろう…?)

周りを見回すと夏凜ちゃんと風先輩、樹ちゃんとちひろちゃんがそれぞれ抱き合って寝ていました。

「くすっ、みんな仲良しだね。」

(あ、東郷さん。窓際にいる。きれいだな〜。)

「東郷さん、おはよう!」

「友奈ちゃん、おはよう。」

「肌身離さず持ってるよね、そのリボン。」

「私が事故で記憶を失った時に握りしめていたものだって…。」

「誰のものかもわからないけど、とても大切な物。そんな気がするから…。」

「そっか…。」

「海を見てたの?起こしてくれれば良かったのに〜」

東郷さん

「考え事をしていたの。ねえ、友奈ちゃん。」

「ん?」

「バーテックスって十二星座がモチーフなんだよね?」

「そう聞いたよね。」

「でも星座って他にもいっぱいあるでしょう?」

「ああ、夏の大三角形座とか!」

「そんな星座ないよ、友奈ちゃん。」

(あれ?なかったっけ?)

「えへへ…」

「ねえ、本当に戦いは終わったのかしら…?」

(髪型整えてあげよっと!)

「考えてもしょうがないと思う。なにかあったらその時はその時。大赦の人たちが大丈夫って言ってくれたんだもの。なにより神樹様がついてるし。」

「そうよね。一人でいると、つい悪い方向に考えちゃって…みんなといると、そんなことも忘れられるんだけど。」

「悩んだら相談!だよ!」

「でも、こんなこと相談されても困っちゃうでしょ?」

「そんなことないよ!一人でいると悪いこと考えちゃうなら、今日はずーと東郷さんといよっと!」

「ふふっ、ありがとう、友奈ちゃん。」

よし、髪もできた!

「東郷さん、この髪型どう?」

「わぁ…今日この髪型で行こうかな。」

「お、気に入ってくれた?」

(やった!嬉しいな!)

「ふふふっ!」

「あははっ!」

「朝ごはんまでまだ時間あるけど、友奈ちゃんどうする?」

(そうだな〜)

「私も起きてるよ。ここにいる。」

「うん。」

 

ーーー夜ーーー

ーーー樹sideーーー

今は久しぶりのうどんを食べてます。

「ご馳走もいいけど…」

『うどんが恋しくなるね。久しぶりのうどん、おいしいよ。』キュッキュッ

「ありがと。家に帰るまでが旅じゃないね。うどん食べて初めて締めに…」

プルルルル

「お?」

メール…のようなのですが…見たお姉ちゃんの顔から笑顔が消えます。

(大赦からかな?でもなんで?)

「あらら、ごめん、樹。ちょっと行ってこなくちゃ。先食べちゃっててね。」

『いってらっしゃい。』キュッキュッ

 

ーーー部室ーーー

ーーー風sideーーー

私は今、大赦から呼び出され、部室に来ていた。

(もーう、久しぶりだからあと5杯は食べようと思ってたのにぃ…)

「あ、風。」

「ん?夏凜じゃない。あんたも大赦に?」

「ええ。」

置かれているバッグを開ける。

中にはスマホが入っていた。

そしてその瞬間、待ってましたと言わんばかりに狗神が飛び出してきた。

「わぷっ!?ちょ、くすぐったいって!」

「まったく…どれどれ…『敵の生き残りを確認。次の新月より四十日の間で襲来。部室に端末を戻す。』だって。」

ビュオオオオ

(ん?やっと狗神を引き剥がしたのに…)

「今度は何?」

でてきたのは尻尾が鎌になっているイタチの精霊だった。

「なによそれ。風。」

「私の新しい精霊…?」

コク

鎌鼬が頷く。

「左目が疼いてきそうね…」

「あんた本当に中二病なんじゃない?」

「違うわよ!」

そして、私はこう言った。

「まだ戦いは…」

 

ーーーちひろsideーーー

「マジか…」

今は誰もきてない。

さっきお母さんからメールが返ってきた。その内容が…

『ちひろ。元気にしてますか。風邪ひいてませんか?私たちは今でも何かちひろとの思い出を思い出せないかと頑張ってます。そしたらなんと!あなたが小さい頃に「ちーちゃん」と呼んでいたことを思い出すことができました!他のも思い出せないか努力を続けます。』

「ふふっ、思い出すとこ他なかったのっつーの。」

『本題に入るけど、どうやらバーテックスに生き残りがいたらしいの。無茶しないでね。あ、あと今度またお友達との写真送ってね!』

「まだいるなんて…」

(双子座がもとから2体いたとかそういうオチだろうな…ていうか本題の方が他より少ないし。母さんらしいや。)

「ともかく…戦いは…」

 

「「まだ終わってなかった。」」

 



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13話 悲しき真実

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「バーテックスに生き残りがいて、戦いは延長戦に突入した。まとめるとそういうこと。」

「ま、一体だけですけど。」

「ホント、いつもいきなりでごめん。」

「いいですよ、先輩もさっき知ったことじゃないですか。」

「東郷さんの言うとおりですよ、風先輩。」

「新月から10日以内だから割とすぐ来ますし、文化祭の準備でもしながら気楽にまちましょうよ。」

「ま、私たちは敵の一斉攻撃だって殲滅したん

だからどんとこい、でしょ!」

『勇者部五箇条 成せば大抵なんとかなる!』キュッキュッ

「多分双子座が元から2体で、もう一体残ってたーとかそういうオチですよ。」

「ありがとう、みんな。で、なんでちひろがそれを知ってるのよーーーーーーーー!?!?しかも私より詳しいじゃない!?」

「いやー、昨日母さんに久しぶりにメール送ったら返信で送ってきてくれまして…詳しく聞いたら、ってことです。母さん歴代最高レベルの巫女だったらしくて、他の巫女に言われたのを盗み聞きして神樹様に聞いたらしいです。だから神託もらった人より詳しいかと。」

「神樹様に聞き返すとか対話なんて聞いたことないわよ…さすが上里家ね…」

「よーし、バーテックス!いつでもこーい!勇者部が返り討ちにしてやるわー!」

 

ーーー2学期ーーー

「結城友奈!入りまーす!」

「こんにちわ。」

「ウィース!」

「ん。」

「『ウィースです。』」キュッキュッ

「いやー、こんなに眼帯が似合うとはね…」

「私と樹ちゃんに感謝してほしいです。」

「言われなくても感謝してるわよ!」

(もう一回来たってことは精霊が追加されてんのかな…?私はそれ以前に渡さなくても追加されてるんだけど。っておい!?ちょっと頭で考えてる間にみんなの精霊揃い踏みしてるし!?)

「アン!」

「なに?コマ。…あんたたちも出たいの?あんまりはしゃぎすぎないでよ?」

ポンポンポンポンポンポンポン

「わっ!?ちひろちゃんのも出た〜!?」

「賑やかになるのはいいけどこうも多いとちょっとした百鬼夜行ね…」

「もうこれで文化祭の発表よくないですか!」

「良くないわ。」

「良くないです。」

「ですよね〜」

「あんたたち…」

見ると木霊が夏凜さんの頭の上で嬉しそうに跳ねてる。

(おもろ!)

「東郷みたいに自分の精霊の管理くらいキチッとしなさいよ…!って義輝ーー!!」

今回は牛鬼じゃなくてタッツーが食ってる!?

「こら!タッツー!ダメでしょ!噛み付くなら夏凜さんにしなさい!」

「いやなに言ってんのあんた!?」

「りゅ〜!」

ガブッ

「ほんとに噛むなーーー!」

 

ーーー数分後ーーー

「やっと戻ったわね…」

『敵…いつ来るかな…ドキドキ。』キュッキュッ

「もう新月から5日…来週辺りが危ないとおもうわ。」

「私は今日来ると思うけど。」

「実は敵の襲来は気のせい! …とかだったらいいんだけどねー。あの諸葛孔明だって負け戦はあるし。弘法も筆の誤り。神樹様も予知のミスくらい・・・。」

ブーブーブー

「これは…樹海化警報!久しぶりの樹海化ですよー!」

「やった!当たったよ!樹ちゃん!」

『よかったね!ちひろちゃん!』キュッキュッ

「風が変なこと言うからね。神樹様からのツッコミよ。これは。」

「あんただってはずしてるじゃない!」

「くっだらない話してる間に敵来ますよー!」

 

ーーー樹海ーーー

「やっぱり双子座!予想完全的中!イェーイ!」

トントン

「ありがとう!樹ちゃん!」

「今回で延長戦も終わり!ゲームセットにしましょう!」

「そうね、絶対逃がさないわ!」

「行きましょう!」

「うん!」

「はい!」

 

「よーし、じゃ、またアレ、やろうか。」

「ふん、ほんと好きね、そういうの。」

「そう言いながら準備してる辺り、まんざらでもないんでしょうけど。」

「敵さんをきっちり昇天させてあげましょう! 勇者部、ファイトー!」

「「「「おー!!!」」」」

ドドドドド

「あの変質者、樹倒さなかったっけ?」

「双子座の2体それぞれ姿異なってたら双子じゃないじゃないですか…」

「どっちにしろ、やることは同じよ!」

「そうだね夏凜ちゃん!止めましょう!」

(あれ、みんなのテンションが…満開のせいだ…私が…私のせいで…)

「問題ないわ!なら私が!」

「あの走ってるのを倒せば生き残りも片付くんですよね?」

「う、うん。」

「だったらとっとと終わらせて劇の話しましょう!」

そう言って友奈さんが跳躍する。

「私も!」

「友奈!夏凜!」

「じゃ、ちょっくら私も行ってきますわ。」

「ちひろ!」

(原因の私が…頑張らない訳には…いかないから…)

「ここは私に任せなさいっての!」

「でも…」

「嫌ですけど?」

「…って言っても聞かないだろうし一緒にやるわよ!」

「わかってるじゃないですか!」

「うん、夏凜ちゃん!ちひろちゃん!」

「「「おりゃあーーー!!!」」」

ドガァン

私たちの同時攻撃で双子座は派手にすっ転ぶ。

さらに…

ドスドス

「3人とも!ありがとう!」

風さんの投げた小刀が双子座に刺さる。

ついには…

バシュン

東郷さんの狙撃が双子座の頭を吹き飛ばす。

(ひでぇ…)

「封印の儀、いきましょう!」

「殲滅開始!」

「バーテックス!」

「大人しくしなさーい!」

ベロン

ボロボロボロ

「なにこの数ー!」

(多っ!?蠍座の比じゃない!?でも数ならタッツーのウイングでまとめて切り裂く!)

「トドメは私がもらうわ!」

「夏凜!やめなさい!部長命令よ!」

「甘い甘い!私は助っ人で来てるのよ、好きにやらせてもらうわ!」

そんな言い合いしてる間に周りの御霊から渦巻くように切り裂いていく。

「ちひろ!あんたもこっそりやらない!」

「はあああー!」

「「っ!?」」

「勇者ーキーック!」

ボワアア

サラサラサラ

「ふう、なにもなかった…うん、なせば何とかなる!だね、やっぱり!」

「ぶぅ〜あと半分とられた〜」

「!ごめんね!ちひろちゃん!」

「二人とも!なんで勝手に…」

(他の人を巻き込まないため、これ以上…失わせないため…なんて言えるわけないからー。)

確認すると友奈さんは3つ、私は…

(ま、2回分元から溜まってたしね。)

7つ溜まってる。(左肩に2つね。)

「「っ…!」」

「っ!」

「ご、ごめんなさい!新しい精霊の力、早く使いたくてつい…」

「友奈ちゃん…体は平気?」

「うん!元気そのものだよ!」

「ちひろ…ゲージが…」

トントンペシペシ

「あ、これ決戦のときからですよ。」

「…なんだ〜!ヒヤヒヤしたわよ!」

パパンチョンチョン

「ありがとう、樹ちゃん。」

「みんなにケガがなくてよかったよ!」

「友奈ちゃん…」

 

ーーー屋上ーーー

ーーー樹sideーーー

(友奈さんの言う通りケガなく終わってよかったです。)

『早く帰ってスメブラや…あれ?ちひろちゃんは?』キュッキュッ

ちひろちゃんがなぜかいません…

「ほんとね…ちひろー!どこー!」

「よく見たら友奈と東郷もいないわよ!?」

(ちひろちゃん…どこにいるの…?)

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

(あれ、ここは…瀬戸大橋…?なんで…ここに…?)

「戻った、けど…」

「どこだろう?屋上じゃないよね?みんなは?」

「見たところ、私と東郷さん、友奈さんだけですね…」

「あ、大橋。」

「わぁ!本当だ!とすると結構遠くに来ちゃったよね…」

(それにここは…2年前のお役目が終わったときに来てたところに近いような…?)

「あれ?電波入ってない。」

「えっ?…私の改造版でもダメ…」

(?そんなはずは…てかさらっと改造版って言ったし!?)

「待ってたよ〜わっしー。会いたかった。」

(えっ?この…声…は…)

「「えっ!?」」

後ろを振り返ると…ベッドに寝て、全身に包帯を巻いている少女、園姉がいた。

「ようやく、呼び出しに成功したよ。わっしー。」

(嘘…園姉…!)

「え?え?わっしー?わし?っていうかなんでこんなところにベッドがドーンと?」

「あなたが戦ってるのを感じて、ずっと呼んでたんだよ。」

「えっと…東郷さんの知り合い?」

「…いや、初対面よ…」

私は…言葉を失っていた。

「はー…あはは、わっしーっていうのはね、私の大切な友達の名前なんだ〜」

(ほんわかした感じじゃない…悲しい感じ…園姉…ごめん…止められなかったよ…)

「いつもその子のことを考えていてね〜、つい口に出ちゃうんだ〜、ごめんね。」

「あの〜、あなたが私たちを呼んだんですか…?」

「うん。その祠。」

「これ、うちの学校にも…」

「うん、同じね…」

「バーテックスとの戦いが終わったなら、その祠を使って呼べると思って。」

「「っ!」」

バーテックスのことを知っていることに驚き、友奈さんと東郷さんは顔を見合わせる。」

「バーテックスのことを…知ってるんですか?」

「一応、あなたの先輩ってことになるのかな? 私、乃木園子っていうんだよ。」

(ここだったら乃木園子で〜す、って言うよね…園姉は…)

「讃州中学、結城友奈です。」

「東郷美森です。」

「上里…ちひろです…」

かろうじて返事をする。

「友奈ちゃんと美森ちゃん、ちひろちゃん、か…」

「先輩というのは、乃木さんも…?」

                  ・・

「うん、私も勇者として戦ってたんだ。三人のお友達と一緒に、えいえいおー!、ってね。」

(…!)

「今はこんなになっちゃったけどね…」

「バーテックスが…先輩を…こんな目に…?」

「ああ、うーんとね、敵じゃないよ。私、これでもそこそこ強かったんだから。えっと…あ、そうだ、友奈ちゃんは満開、したんだよね?」

「え?」

「わーって咲いて、わーって強くなるやつ。」

「あ、はい。わーって強くなりました。」

「私もしました。」

「私も…です…」

「そっか…咲き誇った花はそのあとどうなると思う?」

「え…?」

「満開の後には、隠された機能が発動する。「散華」っていうね。」

「散華…華が散ると書いて…散華…」

「満開のあと、体のどこかが不自由にならなかった?」

「っ!!」

「え…?それって…」

「それが散華。人間が神の力をふるった代償。

「華一つ咲けば一つ散る。華二つ咲けば二つ散る。そのかわり、勇者は決して死ぬことはないんだよ。」

「死なない…?」

「で、でも!死なないのはいいことなんじゃ…」

「そして、戦い続けて今みたいになっちゃったんだ。元々ぼーっとするのは得意だったけど、動けないのはキツいかな…?」

「…痛むんですか…?」

「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けてこうなっちゃっただけだから。 敵はちゃんと撃退したよ。じゃないと今がないもんね。」

「満開して戦い続けた…」

「つまりその体は代償で…」

「うん。代償っていうより神樹様に供物として捧げた、って言う方があってるかもしれないけど。」

「「…っ!…」」

「ど、どうして…どうして私たちが…」

「いつの時代だって、神様に見初められて供物となったのは…無垢な少女だから。穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。そういうことらしいよ。でも、その代償として身体の一部を供物として神樹様に捧げていく。それが勇者システム。」

「私たちが…供物…?」

「大人や男性では神樹様の力を宿すことはできないから。私たちがやるしかないとはいえ…ひどい話だよね。」

「それじゃ、私たちはこれから身体の機能を失い続けて…」

「違うよ東郷さん!」

友奈さんが東郷さんに手を重ねる。

「もう、12体のバーテックスは倒したんだもん、大丈夫だよ!」

「友奈ちゃん…」

「倒したのはすごいよね…私たちのときは追い返すので精一杯だったから。」

「ですよね!だからもう戦わなくていいはずですから!」

「…そうだといいね…」

(そんな…ことは…ないですよ…園姉が星屑すらほぼ全滅させても…たった2年で来た…次来るのに…半年もかからないはず…)

「そ、それで、失って部分はこのままなんですか?みんなは治らないんですか?」

「…あなたは本当に優しいね…自分より友達の心配をしてるんだもん…治りたいよね…私も治りたいよ…立って…歩いて…友達を抱きしめに行きたいよ…」

「友奈ちゃん!」

大赦の神官どもがたくさん来る。

「大赦の人たち…?」

「傷つけたら許さないよ。」

バッ

「私が呼んだ大切なお客様だから。あれだけ言ったのに全然会わせてくれないんだもん。だから無理矢理呼んじゃった。」

ザッ

神官が一斉に頭を下げる。

「私は今や半分神様だからね。崇められちゃってるんだ。大丈夫。あなたたちも丁寧に街に送ってもらうから。悲しませてごめんね。大赦の人たちも、このシステムを隠すのは一つの思いやりでもあると思うんだよ。これを怖がって使えなくて、神樹様が死んじゃったらその人は自分のことを恨むかもーっていう。」

(違う…園姉も知ってる…こいつらは私たち個人のことはなんも思ってないって…世界全体の、神樹様のことしか考えてないって…でも友奈さんや須美さんがこれ以上傷つかないように…してるんだ…)

「でも…!私は…言って欲しかったから…わかってたらもっと…友達と…たくさん遊んで…だから…伝えておきたくて…」

(私のせいで…私は…園姉の願いすら…叶えられない…みんな…私のせいで…!)

キュッキュッ

東郷さんは車イスを動かし、園姉の隣に行くと…

涙を拭いてあげていた。

「ふふっ、そのリボン、似合ってるね。」

「このリボンは…とても大事なものなの…ごめんなさい…それだけしか覚えてなくて…」

「…仕方がないよ。」

友奈さんが声を上げる。

「方法は!?このシステムを変える方法はないんですか!」

「神樹様の力を使えるのは勇者だけ。そしてその勇者になれるのは、ごくごく一部。私たちだけなんだよ…」

「っ!」

「彼女たちを街に返してあげて。」

「いつでも待ってるよ。大丈夫。こうして会った以上、もう大赦側もあなたの存在をあやふやにはしないだろうから。」

「…っ!」

(まだ残らなくちゃ…どうしても、確かめることが!)

「東郷さん、友奈さん、先のって帰っててください。」

「えっ!?でもちひろちゃんは!?」

「私はせっかく近くまで来たので家寄ってから帰ります。」

「そっか…わかった!」

 

ーーー車の中ーーー

ーーー友奈sideーーー

(東郷さん…すごい落ち込んでる…不安なんだ…きっと…そうだ!)

東郷さんの肩に手をまわし、抱きしめてあげる。

「友奈ちゃん…」

「勇者部五箇条、なるべく諦めない。」

「っ…!友奈ちゃん…!」

「東郷さん、大丈夫だよ、私がずっと一緒にいるから。なんとかする方法、見つけてみせるから。」

 

ーーーちひろsideーーー

(よし…もういないね…)

「私が話すからいなくなってて。いいよね?」

ザッザッ

「これで邪魔はもうないですよ。」

「そうだね、ありがとう。ちひろちゃん、…いや、ちっひー。」

「!!もしかして…私のこと…」

「ごめんね、思い出せてはないんだ。散華でもちろん記憶とかも持ってかれたんだけど、二箇所だけ、残してるの。一つはわっしーやミノさんと過ごした1年の記憶。もう一つは…他となんの変わりもない日常。ずっと疑問に思ってたの。どうしてここの日常だけは持ってかれたくないって思ったのか。そしてなんでわっしーとともにあなたのこともいつも考えてたのか。今日会ってわかったよ。きっとあなたは私と小さい頃からずっと仲が良くて、あなた自身の散華で私や他の人から忘れられたんだって。私はそこからどう呼んでたか考えただけだよ。」

(やっぱりすごいな…園姉は…)

「全部当たってるよ、園姉。やっぱすごいな…」

「えへへ〜」

「じゃあ、帰るね…」

「待って!もっと話せば何か思い出せるかもしれないから!」

(優しいな…園姉は…でも…)

「ダメだよ…私は知ってるから…忘れた側が…忘れてるって…気付いたとき…そのあとに…どんだけつらいか…ここで話して…思い出せなかったら…園姉はつらくなっちゃうから…そうなってほしくないから!わたしがいたって…気付いてくれただけで…充分だから…」

「…うん、わかった。辛かったよね。」

「っ!」

「自分は知ってるのに…仲間が同じようになるのを止めれなくて…気が向いたら来ていいからね…あなたは私の大事な妹分だから。」

「っ!…うん…バイバイ…」

(本当に…ずるいよ…園姉は…)

 

 

 

 

ーーー翌日・木曜日ーーー

ーーー風sideーーー

私は今昨日消えていた友奈と東郷から話しを聞いていた。

「勇者は決して死なない?身体の一部を供物として捧げる?」

「はい。」

「満開のあと、私たちの身体はどこかしらおかしくなりました。まるで身体機能が欠損したような状態です。それが身体を供物として捧げる、ということだと乃木園子は言ってました。

事実、彼女の身体も…」

「じゃあ、私たちの身体はもう戻らないってこと…?その話、樹と夏凜には話した?あとちひろは?」

「ちひろちゃんはせっかくだから家に寄ってから帰るって。まずは風先輩に相談しようと東郷さんと決めてたので。」

「そう。じゃあまだ二人には話さないで。確かなことがわかるまで、変に心配させたくないから。ちひろには私から連絡しておくわ。」

「「はい、わかりました。」」

 

ーーー金曜日ーーー

ーーーちひろsideーーー

昨日は結局家にいて学校サボだちゃったからなぁ〜(学校には風邪と言ってある)

あと風さんから口止め命令も来た。

『ちひろちゃん!連絡来なかったから心配したよ!』キュッキュッ

「あ、樹ちゃん!ごめん!なんでか大橋市まで飛ばされてて…友奈さんと東郷さんは大赦が迎えに来た車で帰ったんだけど、せっかくだから家に寄ってってたら間に合わなくなって…」

『もう、今度からはちゃんと連絡してね?』キュッキュッ

「うん!もちろん!」

「樹ちゃん!今週の日曜日遊びに行かない?」

『日曜日用事があるから。』キュッキュッ

(私のせいだ。また…)

「そっか…じゃ、また今度ね!」

と、そこに風さんが。

「樹、遊びに誘われたんだったら行けばいいのに。」

『カラオケで歌うのが好きな人たちなんだ。私がいると気を使っていけないから。』キュッキュッ

(私のせいだで樹ちゃんは…友達と遊びに行くことすら…)

「ぁ…でも…」

「樹ちゃんのお姉さん?」

「えっと、樹たちの担任?」

『そうだよ。』キュッキュッ

「そうですね。」

「少しこのあとお時間いただいてもいいでしょうか?」

「大丈夫ですけど…」

トコトコトコ

(一体何を…?)

 

ーーー土曜日ーーー

ーーー樹sideーーー

『じゃ、行ってくるね!お姉ちゃん!』キュッキュッ

「うん、いってらっしゃい。」

今日はちひろちゃんと買い物♪

とお姉ちゃんにはいってあります。

でも、実際はそうではありません。

(ついた…ここだ。)

ピンポーン

『失礼します!』キュッキュッ

 

ーーー日曜日・夕方ーーー

ーーーちひろsideーーー

今は樹ちゃんが遊びに来ていた。

風さんは出かけてるらしい。

『やっぱりちひろちゃんはスメブラ強いね。』キュッキュッ

「まあね、樹ちゃんもうまいじゃん。」

『まあ、そうだけど…』キュッキュッ

ブーブーブー

「メールだよ?樹ちゃん。」

『ほんとだ。』

(内容は…ボーカリストオーディションの件で一次審査通過?)

「どういうこと?樹ちゃん。」

『あのね、実は1ヶ月くらい前、みんなに歌のテストを手伝ってもらったときから、歌うのが本当に楽しくて…歌手になりたいって思ったの。』

(えっ…?)

『だから、応募してみたんだけど、2次審査も歌わなきゃいけないから、回復の兆しがない今は無理かな…』

(樹ちゃんの…夢が…歌手…?でも…樹ちゃんの…声は…もう…戻らない…私のせいだ…私が…ワタシガ…イッテレバ…コンナコト二ハ…

イツキチャンガユメヲアケラメルコトニハ…!)

「ご…めん…」

「?」

「ごめんね…樹ちゃん…」

『ちひろちゃん?』

「私が…樹ちゃんの声が出なくなったのは…私のせいなの…!」

 




…大赦ってほんとにひどいと思うのよ


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14話 心の痛みを分かる人

ーーー樹side ーーー

「私が…樹ちゃんの声が出なくなったのは…私のせいなの…!」

(どういう…こと…?ちひろちゃんが…原因…?でも…)

『私の声が出ないのは満開の副作用じゃないの?』キュッキュッ

「そうだけど…そうだけど!」

『落ち着いて。そのままだったら話せることも話せないよ。』キュッキュッ

「うん…、満開にはね…散華っていう隠された機能があるの…」

『散華?』キュッキュッ

「そう、華が散ると書いて…散華。身体の一部を供物として神樹様に捧げる機能。満開をしたらパワーアップとして精霊が一体追加される。その精霊も…勇者のサポートを本来の目的とはしてない…あらゆる死から勇者を守り…お役目から逃げられなくするのが本来の目的。」

『!!』キュッキュッ

「そして…私は2年前にも勇者をやってたんだ…乃木園子、三ノ輪銀、鷲尾須美…いや東郷美森と一緒に…」

『え!?東郷さんが2年前に勇者をやってた…?』キュッキュッ

「そう、でも途中で3体同時に来た蠍座、蟹座、射手座によって三ノ輪銀は…殺された。その反省を元に新たに勇者システムに追加されたのが…満開と精霊。」

『…』キュッキュッ

「そして東郷さんは満開を2回使って記憶と両脚を…乃木園子は20回もの満開をして身体のほとんどを失った…だから…わたしは知ってたんだよ…満開の代償を…決戦のときには言おうとしたけど…獅子座の火球で言うことができなかった…そしてみんなは満開して…樹ちゃんは声を失った…もう失ったところは戻ってこないのに…ホント最低だよね…みんなが不自由になる理由つくったんだよ…それにこんな重要なことも隠してたし…そのせいで…樹ちゃんの夢すら…奪うことに…!」

(ちひろちゃん…)

『知ってたよ。さすがに東郷さんのこととかまでは知らなかったけど。』キュッキュッ

「…え?」

『ちひろちゃんが勇者やってたこととか、散華のこととか。』キュッキュッ

「な…んで…」

 

ーーー時は遡り、昨日・土曜日ーーー

(着いた…ここだ。)

ピンポーン

『失礼します!』キュッキュッ

「はーい、どなたですか〜?」

『私、犬吠埼樹と言います!ちひろちゃんのお友達で勇者やってます!』キュッキュッ

「!!どうぞ〜」

 

ーーーリビングーーー

「私は上里月夜、月に夜って書いて月夜です、ちひろの母で巫女をやっていました、今でも神樹様とお話しできたりしますけどね。で、何が聞きたいのですか?」

『はい、実は決戦の後からちひろちゃん、まるで全て自分に非があると思ってるみたいに元気がなくて…少しでも元気づけられればとおもって…』キュッキュッ

「…教えます。彼女がそうなった理由を。なぜ讃州市でわざわざ暮らしてるのかも。私が知ってる、ちひろの全てを。それが、私の償いでもあると思うので。」

 

ーーー今ーーー

ーーーちひろsideーーー

『ちひろちゃんも散華でみんなから忘れられちゃったんでしょ?それこそ一番つらいよ!自分のことを覚えてくれてる人が誰もいないなんて…みんなのために戦って来たのに、不審者扱いされて、勇者システムも無理矢理取られそうになって…私たちが被害者なら、ちひろちゃんも被害者だよ!』キュッキュッ

「樹…ちゃん…」

『それに伝えようとしてくれてたんでしょ?そのときは獅子座の妨害が入っちゃったんだから仕方ないよ!伝えようとしてくれただけで充分だって、勇者部のみなさんも言うよ?そして、秘密だって…今言ってくれたじゃん。』キュッキュッ

「あっ…」

『言わなかったら、約束を破ってることになるから怒るけど、約束破ってないもん。怒らないよ。』キュッキュッ

(わた…しは…)

「私のこと…許して…くれるの…?」

『もちろん!』キュッキュッ

(私は…こんなにも…いい友達を…持ってたんだ…!)

その瞬間、2年もの間、私の心を縛り付けていた鎖が、断ち切られた気がした。

2年分の涙が一気に溢れ出た。

「うわああーん!樹ちゃーん!つらかったよ!ずっとずっとー!つらかったよー!」

『いくらでも泣いていいよ、私たちは、「親友」だから。』キュッキュッ

「うん!うん!うああーん!ありがとー!」

私は泣いた。隣で誰かが跳躍する音も聞こえないくらい。

 

ーーー3分後ーーー

「ひっぐ、ごめん、付き合わせて…」

『全然大丈夫だよ!ちひろちゃんの役に立ちたいってずっと思ってたから。』キュッキュッ

(樹ちゃん…そこまで気にしてくれてたんだ…ん?)

「メール?大赦から来てる…なんだろう?」

『私のとこにも…珍しいね。』キュッキュッ

その内容は、

 

『現在、勇者犬吠埼風が暴走中。勇者各員はこれを止めるよう力を尽くしてください。』

 

『お姉ちゃん!そんな…!』キュッキュッ

「風先輩…止めよう!樹ちゃん!」

『うん!ちひろちゃん、私に考えがあるんだけど、それまでお姉ちゃんを止めてて!』キュッキュッ

「もちろん!ただ、大赦のためには私は止めない!風先輩のために止めるから!」

『私も。一部の人以外は大赦もう好きにはなれないよ…』キュッキュッ

「じゃ、あとで!」

『うん!あとで!』キュッキュッ

(元はと言えば伝えられなかった私も一枚噛んでるんだ!止める!風先輩のため!樹ちゃんのため!勇者部のために!)

 

 

 

 

ーー時を遡り木曜日、友奈・東郷の報告後ーー

ーーーかめやーーー

ーーー風sideーーー

(身体が、戻らないかもしれないなんて…私はいいけど樹は…)

「どうぞ。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「最近みんなと一緒に来ないのね。」

(友奈は味覚がないし、樹は声が出ない。かめやの人に心配かけさせたくないからね。)

「あ、あの…ちょっと今友達の調子が悪くて…まあ、でもすぐに治りますよ。そいつには、てやーっ!って私の女子力を注ぎ込んでおきますから。一緒にこの店のうどんパワーも注ぎますね。うどんと女子力は万病に効きますから。」

「ふふ、すごいのね。」

「それで、友達の調子がもどったら…また来ます、皆で。」

(そうよ、戻るはず、医者だって言ってたんだし。)

 

ーーー金曜日ーーー

ーーー少人数教室ーーー

「樹さんの今の状態は、一部の授業に支障がでています。」

「えっ!? あの子が誰かに迷惑をかけたんですか?」

(まさか…そんな!)

「いえ、他の子にではなく、樹さんご自身の問題で…」

(よかった…、いや、よくないわ…)

「音楽の歌の練習なども樹さんは出来ませんし…ある程度授業内容を変えることで対応しておりますが。あまり露骨な変更は逆に樹さんが気に病まれるでしょうし…ちひろちゃんもカバーしてくれてますが…」

(絶対治る。だって皆、何も悪いことなんかしてないじゃない。)

 

ーーー今日・午前ーーー

ーーー東郷の家ーーー

「どうしたの?東郷、急に呼び出して。」

「ちょっと見てもらいたいものがあって…」

「何?東郷さん?」

取り出したのは小刀。

「「っ?」」

「東郷さん?」

そしてなんと東郷はそれを思いっきり首に…!

(そんな!?東郷!?)

だが、青坊主がそれを受け止め、刑部狸が奪い、離れた机に置く。

「何やってんのよ東郷!?あんた今精霊がいなかったら確実に…」

「止めますよ、精霊は確実に…」

「「?」」

「ここ数日で10回以上の自害を試みました。」

「「え!?」」

「切腹、首吊り、飛び降り、一酸化炭素中毒、服毒、焼身…考えうる限り、全ての方法を試しましたが、全て精霊に阻止されました。」

「何が…いいたいの…?」

「…私は今、勇者になってませんでしたよね。」

「あ!本当だ…!」

「それにも関わらず精霊は勝手に動き、私を守った。」

「だから何が言いたいのよ!」

「精霊は私たちの意思とは関係なく動いている。ということです。私は今まで、精霊は勇者の戦う意思に従っていると思っていました。

でも、そうではなかった。それに気づいたら、この精霊という存在が違う意味を持っているように思えたんです。精霊は勇者のお役目を助けるものなんかではなく、勇者をお役目に縛り付けるものなのではないかって。死なせず、戦い続けさせるための装置なんじゃないかって。」

(…そんな!?)

「で、でも精霊が私たちを守ってくれるってことなら、悪いことじゃないんじゃないかな?」

「そうね。それだけなら悪いものじゃないかもしれない。でも、精霊が勇者の死を必ず阻止するなら…乃木さんが言っていたことは、やはり当たっていることになる。」

「勇者は…決して死ねない…」

「彼女が言ってることが真実なら、私たちの後遺症が治らないことも…真実になる。」

「そんな…」

「私たちは何も知らされず、騙されていた…」

(嘘…そうなら…樹は…私のせいで…!)

「なら…樹の声は…二度と…知らなかった…知らなかったの…人を守るため、身体を捧げて戦う。それが勇者…だなんて…私が樹を勇者部に入れたせいで…!」

 

ーーー夕方ーーー

ーーー夏凜sideーーー

大赦からのメールを見る。

 

『犬吠埼風を含めた勇者部4名が精神的に不安な状態に陥ってます。三好夏凜、あなたが他の勇者を監督し、導きなさい。』

 

(たしかに最近、みんな元気がない。特に延長戦が終わったあとから。でも、大赦は…信用できるのかしら。満開の後遺症に関してもう何かしら見つかっててもおかしくないはずなのに…)

そう思ってる間に、風たちが住んでいるマンションの近くについていた。

「大丈夫よね、風…」

 

ーーー風sideーーー

(もう戻らない…樹にどう伝えれば…)

プルルルル

「はい、犬吠埼です。」

「突然のお電話失礼致します。いおなミュージックの藤原と申します。」

「いおな、ミュージック?」

女性(通話)

「はい。犬吠埼樹さんの保護者の方ですか?」

「はい、そうですが…?」

女性(通話)

「ボーカリストオーディションの件で一次審査を通過しましたので、ご連絡差し上げました。」

「え? 何のことですか?」

「あ、ご存知ないんですか? 樹さんが弊社のオーディションに…」

(樹がオーディションに…?いつのまに…?)

「いつ?」

「えー、1ヶ月ほど前ですね。」

「っ!?」

「樹さんからオーディション用のデータが届いています。」

(なっ!?)

「っ!」

「あれ?どうしたんですか?もしもし?もしもし?」

「樹!」

部屋に入るが…

「いないの?」

(このノート…体調を良くするための秘訣がかかれてる…あっちには喉の治療法についての本…喉に効くハーブティーの作り方まで…これで…もう治らないって…樹が知ったら…)

「ん?これって…」

そこにはオーディションと書かれたファイルがあった。

「…」

カチッ

『えっと、これで…あれ? もう録音されてる?あ、ボ、ボーカリストオーディションに応募しました、犬吠埼樹です。讃州中学1年生、12歳です。よろしくお願いします。私が今回オーディションに申し込んだ理由は、もちろん歌うのが好きだっていうのが一番ですけど、もう一つ理由があります。私は歌手を目指すことで自分なりの生き方、みたいなものを見つけたいと思っています。私には大好きなお姉ちゃんが居ます。お姉ちゃんは強くてしっかり者で、いつも皆の前に立って歩いていける人です。反対に私は臆病で弱くて、いつもお姉ちゃんの後ろを歩いてばかりでした。でも、本当は私はお姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたかった。だから、お姉ちゃんの後ろを歩くんじゃなくて、自分の力で歩くために、私自身の夢を、私自身の生き方を持ちたい。その為に今、歌手を目指しています!』

「っ!!」

(樹が…そんな風に…思ってくれてたなんて…)

『実は私、最近まで歌を歌うのが得意じゃありませんでした。あがり症で人前で声が出なくて、でも、勇者部の皆のおかげで歌えるようになって、今は歌を歌うのが本当に楽しいです!そして、私が好きな歌を一人でもたくさんの人に聞いてほしいと思っています!あ、勇者部というのは私が入っている部活です。勇者部では保育園の子供達と遊んだり、猫の飼い主を探したり…』

(でも…もう戻らないなら…歌えないじゃない…)

『私、人見知りだから部に入った最初はちょっと不安でした。でも、部の皆は優しくて。今は部活の時間がすっごく楽しいです。あ、ごめんなさい。余計なことまで話し過ぎちゃいました。では、歌います。』

「あ…ああ…あ…」

(私が…巻き込まなければ…こんなことにならなかったじゃない…勇者にさえ…ならなければ…)

 

『あのね、お姉ちゃん。私、やりたいことが出来たよ!』

『なになに? 将来の夢でも出来たってこと? だったらお姉ちゃんに教えてよ。』

『うーん…秘密。』

『あー、ひどい!誰にも言わないから、ね?』

『でも、ちひろちゃんにも言ってないから。いつか教えるね!』

 

ピロリン

大赦から返信が届く。

 

『勇者の身体異常については調査中。しかし肉体に医学的な問題はなく、じきに治ると思われます。』

 

(ここまで来ても…隠し通すのか…大赦は…!)

 

『お姉ちゃん!』

 

(樹が…こいつらのせいで…許せない…潰してやる…樹の夢を奪った大赦なんて…)

「潰してやるーーー!!」

 

 

 

 

ーーー夏凜sideーーー

ビュン

(ん?今窓から何かが…)

砂浜にいたのは…

変身した風だった。

(嘘…なんで!?)

ビュン

「待ちなさい!」

「っ!?誰!?」

(ひとまず止めないと!)

刀を投擲するが風はそれを薙ぎ払う。

(それは陽動よ!)

「はぁ!」

ドガァン

風に蹴りを食らわす。

でも風は止まらない。

「風!あんた何するつもり!?」

「大赦を潰してやる!」

「っ!?」

(大赦を…潰す!?)

「大赦は私たちを!騙してた!」

「えっ!?」

「満開の後遺症は治らない!」

(やっぱり…)

「うっ!くっ…!」

(風、泣いてる…)

「大赦は始めから後遺症のことを知ってた!なのに!何も知らせないで!私たちを生贄にしたんだ!!」

「…!!」

「私たちよりも前に!犠牲になった勇者がいたんだ!!」

(な!?でも私たちより前に勇者がいるはずが…!)

「何度も満開して!ボロボロになった勇者が!」

(そんな…!)

「そして今度は私たちが生贄にされた!なんでこんな目に会わなきゃいけない!?なんで樹が声を失わなきゃいけない!?夢を諦めなきゃいけない!?」

「うっ!」

(一撃一撃が…重い…!)

「世界を救った代償が!これかああああ!!」

(両手の剣はさっき弾かれた!やばい!)

思わず目を閉じるが、

ギイィィン

「…?友奈!?」

目を開けると友奈が守ってくれていた。

「どきなさい!!」

「嫌です!風先輩が傷つける姿なんて見たくないです!」

(友奈…)

「だからって…こんなこと許せるかあー!!」

「分かってます!」

「だったら!」

「でも、もし後遺症のことを知らされてても、結局私たちは戦ってたはずです!」

「っ!?」

「そうするしかなかったから!だから誰も悪くない! 選択肢なんて誰にもなかったんです!」

「それでも!知らされてたら私は皆を巻き込んだりしなかった!そしたら!少なくともみんなは!樹は無事だったんだーーー!」

「風先輩! そんなの違う! ダメです!」

(!友奈のゲージ!5個溜まってる!?)

「何が違うの!?」

「友奈!ダメ!」

でも、友奈は風の大剣をはじき返した。

(ゲージ…マックスに…なってる…)

「風先輩を止められるなら、これぐらい…」

「っ…」

「だって私は、勇者だから。」

「友奈…」

「少し、昔話をしましょうか、風さん。といっても2年前ですけど。」

「っ!ちひろ!」

そこにはちひろがいた。

 

ーーーちひろsideーーー

(なんとか、間に合った。)

「2年前、4人の少女たちがいました。

少女たちは世界を守るために神から選ばれた、特別な少女たちでした。

敵は強大でしたが、少女たちは協力し、試練を乗り越えていきました。」

「これって…」

「勇者のお話…?」

「そんな時、敵が4体攻めて来ました。

最初は2体だと思っていた少女たちは、攻撃をくらい、二人が動けなくなってしまいました。

主人公の少女は3体の敵に二人で立ち向かおうといいましたが、元気なその少女は高速で神様に近づいている1体を頼むと言いました。

主人公の少女はそれを受け入れ高速の敵を、元気な少女は3体を相手に戦いました。

主人公の少女は敵を倒すことができましたが、元気な少女は3体を追い返すとともにその命を散らしました。」

「そんな…」

「高速の敵って双子座…?」

「それから彼女たちの戦うためのシステムは改善され、3人になった少女たちは最後の戦いに行きました。

ですが、その新しいシステムには、欠点がありました。

新しい力を使うごとに身体のどこかを神様に捧げなければならなかったのです。

しかし少女たちはそのことを知りませんでした。

戦いが終わったあとには少女たちはバラバラになってしまいました。

おっとりとした少女は何回もその力を使い、全身のほとんどを捧げ、大人たちに崇められるように。」

「これって…園子ちゃん…?」

「しっかりとした少女は両脚と2年間の記憶を失い、大人たちに騙され、2年後再び戦うことに。」

「東郷と…状況が…似ている…?」

「そして主人公の少女は…この世の全ての人から忘れられた。」

「う…そ…」

「最後にその少女たちの名前を。

元気な少女は三ノ輪銀。

おっとりとした少女は乃木園子。

しっかりとした少女は鷲尾須美、記憶を失ったあとの名前は東郷美森。

そして主人公の少女の名は…上里ちひろ。」

「「えっ!?」」

「私のことです。この物語は私が2年前に辿った話。」

「そ…んな…」

「獅子座の攻撃のせいで言えなかったものの、私は知ってました。元はといえばもっと早く言えばよかった話。だから、もう隠さない。」

「ち…ひろ…」

「風さん!私は…2年前から…ずっと心は閉ざしたままでした!でも!樹ちゃんと!風さんと!勇者部のみなさんと出会って!助けられたんです!風さんが!勇者部をつくってくれたから!みんなに出会えたからです!だから!自分一人で抱え込まないでください!あなたには!私たちがついてるから!」

「わ…たし…が…助けて…きた…?」

ギュッ

「っ!?樹…え…?」

コクコク

「っ…う…うう…」

(樹ちゃん!間に合ってよかった…)

風さんは泣き崩れる。

「ごめん…ごめん、みんな…ううっ…」

樹ちゃんがスマホを見せる。

「え…?」

『私達の戦いは終わったの。もうこれ以上、失うことは無いから。』

「でも…私が勇者部なんて作らなければ!」

フリフリ

首を横に振って紙を見せる。

歌のテストのときに、みんなが書いた寄せ書きだった。

キュッキュッ

コクコク

寄せ書きに何かを書き込み、風さんに渡す。

「樹…」

ニコッ

その内容は…

『勇者部のみんなと出会わなかったら、きっと歌いたいって夢も持てなかった。

  勇者部に入って本当によかったよ 樹。』

「じゃ、私も。」

キュッキュッ

「はい、風さん。」

「ちひろ…」

『さっきも言いましたが樹ちゃんや風さんに出会えなければ私の心は永遠に閉ざされたままだったと思います。だから、私は風さんのことを尊敬してます。大赦の人間だって知った後も。勇者部があったから私は変われた。守りたいものができたんです。ありがとうございます。』

「風先輩、私も同じです。だから、勇者部を作らなければなんて言わないでください。」

「ぅ…うぅ…うあぁぁぁぁぁん! うあぁぁぁぁぁっ!!」

静寂が訪れた空には、風さんの泣き声だけが響いていた。

 




実はこの回だけ原作から題名いじってないんですよ。
だってこれ以上にピッタリな題名なかったんだもん


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15話 救うためには

はい、また忘れてました。ほんとにごめんなさい…(´._.`)シュン


ーーーちひろsideーーー

(これで…いい。泣き終わったら、全て話そう。大丈夫。勇者部のみなさんとなら…乗り越えていける。きっと。ん、でも…)

「友奈さん。」

「何?ちひろちゃん。」

「…東郷さんは?」

「そういえば来てないね。」

(メールで東郷さんのところにも届いてるはず。なぜ…?)

ブーブーブー

「何!?」

「なんで敵が来るのよ!?」

(特別警報!?なにそれ!?わけがわからない!東郷さん…須美さんがいないのと関係が!?)

「ちひろ!何かわかる!?」

「いや!特別警報なんて初めてです!間違いなくただの襲来じゃない!イレギュラーです!」

「おかしいよ!?アラームが鳴り止まないよ!」

 

 

 

 

 

ーーー土曜日ーーー

ーーー東郷sideーーー

「小さい頃、私は色んな史跡に連れていってもらい…歴史や国に興味を持った。母によると、私たち東郷の一族にも大赦で働く一族の血が入っている、とか…もしかしたら、私にも神樹様にお仕え出来る力があるかもしれない。もしそうならとても嬉しい、と。私の母は微笑んだ。」

 

『う…ここ…どこ?』

 

「医者が言うには、事故でここ2年程の記憶と。足の機能が失われてしまったらしい。記憶が戻ることはなかったが。その2年間もしっかり生きていた、と。自慢の娘だと、母は言ってくれた。そして、車イスでの生活に慣れて来た頃、親の仕事の都合で引っ越しが決まった。」

 

『わあ…大きい。うちって、ここまでお金持ちだったっけ?』

『こんにちわ〜!』

『?』

『あなたがこの家に住むの?』

『え、ええ…』

『じゃあ新しいお隣さんだ!私は結城友奈、よろしくね!』

『っ…東郷美森…です…』

『東郷さん!?カッコいい苗字だね!』

『あ、ありがとう…』

『そうだ! この辺よくわからないでしょ? だったら案内するよ、任せて!』

『うん。』

 

 

『あーん』

『ゴクリ』

『っ!?』

『えっ…?』

『う…う…う…うーん!おいすぃー!』

『よかった。結城さんが気に入ってくれて。車イスでお菓子作るの、ようやく慣れたから。』

『東郷さん!』

『っ?』

『もし出来れば毎日食べたい! 東郷さんのお菓子!』

『えっ?う、うん…わかった。ゆ、友奈ちゃん…』

 

 

『友奈ちゃん、チアリーディング部から誘われたんでしょ? 入らないの?』

『押し花部からの誘いだったらな〜』

『そんな部ないでしょ。』

『そうだよね〜』

『あなたたちにオススメの部活は他にあるわ!』

『?』

『あなたたちにオススメの部活は他にあるわ!』

『何故2回も?』

『どちらの勧誘なんですか?』

『私は2年の犬吠埼風、勇者部の部長よ。』

『『?』』

『勇者部?』

『なんですか?それ…とってもワクワクする響きです!』

『え?』

『分かる?フィーリング合うわね。勇者部の活動目的は世のため人のためになることをやっていくこと。各種部活の助っ人とかボランティア活動とか。』

『世のため人のためになることを!』

『うん、神樹様の素敵な教えだからね。と言っても、私らの年頃はなんかそういうことしたいけど恥ずかしいって気持ちあるじゃない?そこを恥ずかしがらず勇んでやっていくから勇者部!』

『なるほど。あえて勇者というケレン味のある言葉を使い、皆の興味を引くことで存在感を確立しているんですね。』

『いや…そこまで深く考えてなくて…』

『私憧れてたんですよね。勇者っていう言葉の響きに。かっこいいなー、って!』

『その気持ちさえあれば、君も勇者だ!』

『おお!勇者!』

『すごいところに食いつくのね。でも、なんだか友奈ちゃんらしいわ。』

 

 

『二人が入ってくれたおかげで勇者部の戦力は3倍に膨れ上がったと言っても過言ではないわ!』

『聞き覚えのない部活だと思ったら、一からのスタートだったとは…』

『全部これからなんだよね…』

『あ、この間立ち上げたホームページにさっそく依頼が来ています。』

『お、ナイス宣伝!東郷!』

『友奈ちゃんは陸上部、私は将棋部からです。』

『よし、頑張るぞー! 私は勇者になる!』

『あれ?地味に部長の私に依頼なし!?』

『くすっ。さっそく空いてる日を予定で埋めておきますね。』

『お願ーい!』

 

 

『悩んだら相談、っと。』

『こういう5つの誓いみたいなの、いいですねー!』

『なんか気が引き締まる感じがするっしょ?』

『あと一つどうしますか?』

『うーん、最後だからビシッと決めたいよねー。為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。とかどう? 上杉鷹山さんのお言葉なんだけど。』

『成せば大抵なんとかなる、とかはどうでしょうか。』

『それならバッチリ分かるよ!東郷さん!』

『よーし、じゃあ決まりね!』

 

 

『緊張しすぎよ、樹。』

『もっとリラックスした方がいいと思うよ、樹ちゃん。』

『1年、犬吠埼樹です。よよよよろしくお願いします。』

『同じく1年、上里ちひろです。よろしくお願…須美さん!?』

『?私は東郷美森よ、よろしく、二人とも。』

『ちひろー、どうした?あんたらしくないわね。いつもクールなのに。』

『あ、すみません。知り合いに似てたもので…』

『よろしく、樹ちゃん!ちひろちゃん!』

『は、はい!』

『こちらこそよろしくお願いします。』

『なかなかよ。占いとか出来るし。私の妹にしては女子力低…』

『ギロッ。』

『や、やっぱなんでもないわ…』

『おぉー! すごいや!ならこれあげる!縁起物なんだー!』

『わぁ…か、可愛いです…』

『でしょ〜!』

『えっ!?』

『シルクハット…?』

ファサ

『…?』

『シルクハットを脱いで、布を被せて、とったら…』

『はい!』

バサバサ

『鳩〜!?』

『えぇー!?す、すごい…どうやったんですか!?』

『知りたい?』

『はい!』

『私も!』

『それはね、帽子の構造に秘密があるの。』

『ありがとね、二人とも。』

 

『わぁ、載ってますよ!』

『は、恥ずかしい…』

『ユニークって褒められてますね。』

『認められるのは嬉しいわね。』

『よーし、次は保育園でのレクリエーション、頑張ろー!』

『『『おー!!』』』

『あれ…そこ私のセリフ…』

『ザマァないですね。』

『グハッ!』

 

「…」

(勇者のお役目は、12体のバーテックスを倒すこと。私たちは皆で力を合わせて使命を果たした。でも、その後に待っていたのは…)

着物を脱ぐ。

(身体の欠陥だった。大赦の意見を信じて、いつか治ると願っていた。けれど、彼女と会って、とても大事な過去があったことがわかった。)

小刀を持つ。

(同時に、おぞましい真実を予感してしまった。調べていくうちに、その予感はやがて確信へと変わっていき…今に至る。)

お腹に左手をつける。

(精霊が勇者のお役目を助けるだけじゃなく…お役目に縛り付けるものだとしたら…)

 

『その代わり、決して勇者は死ぬことはないんだよ。』

 

(自殺はできないはず…!)

そして目をつぶり、小刀を自らの腹に突き刺す。

「はぁ、はぁ…!」

目を開けると青坊主が間に入っていた。

(まだだ…他の方法も試さないと…!)

その後も…

(どの方法でも、必ず介入してくる。たとえスマホの電池が切れていても。)

「何がなんでも私を生かそうとしている。これがただの緊急安全装置だったら素晴らしいことなんだけど…私の出した結論は違う。ひとまず友奈ちゃんと風先輩に報告を。そのあとは…彼女に会わなくちゃ。」

 

ーーー日曜日・解散後ーーー

ーーー病院ーーー

「やっぱり来てくれた。わかってたよ。この前は嬉しすぎて話が飛び飛びだったけど、今日はちゃんとまとめてあるからね、わっしー。あ、東郷さんか。」

「わっしーでも構わないわ。記憶は飛んでいるけど、その約2年間、私は鷲尾という苗字だったのだから。」

「おお!?すごい。よくわかったね。」

「適正検査で勇者の資格を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになり、そこでお役目についた。」

「鷲尾家は立派な家柄だからね。高い適正値を出したあなたを娘に欲しかったんだよ。」

「私の両親は、それを承知したのね。」

「神聖なるお役目のためだからね。」

「私は、あなたたちと一緒に戦い、散華して記憶の一部と足の機能を失った…敵を殲滅出来る力の代償として身体の一部を供物として神樹様に捧げる勇者システム。」

「うん。私はもっと派手にやっちゃって、今はこんな感じだけどね。えへへ…」

(ここまでは、当たってるのね。でも、まだ聞きたいことはある。)

「大赦は身内だけじゃやっていけなくなって勇者の素質を持つ人を全国で調べたんだよ。」

「東郷の家に戻されて、両親も事実を知ってて、黙っていた…事故で記憶喪失と嘘までついて…引っ越しの場所が友奈ちゃんの家の隣だったのも仕組まれたもの。」

「そうだね。彼女、検査で勇者の適正値が一番高かったんだって。大赦側も彼女が神樹様に選ばれるってわかってたんだろうね。」

「満開してからは食事の質が上がったわ。」

「大赦が手当として家に十分な援助をしてるんだろうね。」

「思えば、合宿での料理も豪華なものだった。あれは労っていたんじゃなくて、祀っていたのね。私たちを…そして親たちは事情をわかってて、今も黙っている…」

「神樹様に選ばれたのだから喜ばしいことだって納得したんだろうね。反対したのはちひろちゃんの両親くらいじゃないかな?」

「そうなの?でも…」

「上里家にはそもそもバーテックスが来てることすら伝えられてなかったんだ。月夜さんも神託を受け取れるけど、毎回じゃない。大人が神樹様と会話出来ること、そのものがイレギュラーなんだよ。2年前、瀬戸大橋の決戦のあとから上里家はずっと満開の廃止を求めていた。だからだろうね。」

(なんで…私の両親は…!そもそも…)

「っ…!どうして私たちがこんな…! 神樹様は人類の味方じゃなかったの?」

「味方ではあるけど神様だからね。そういう面もあるよ。そもそも…あ…落ち着いて聞いてね?」

「っ!?」

「壁の外の秘密。この世界の成り立ちを教えてあげる。」

「え?」

(この世界の…成り立ち…!?)

「あのね…」

ブーブーブー

「_______。」

(そんな…!?)

「もしもし? 東郷さん。昨日の話、私、ショックだったけど樹ちゃんのこともあるし、風先輩が心配になって…大丈夫かな? また連絡するね!」

「真実は、あなた自身の目で確かめるといいと思うよ。どういう結論を出しても、私は味方だからね。…本当は、私は今の勇者たちが何かの形で暴走したら抑える役目なんだ。」

「抑えるって、その体で…?」

「私の精霊の数は21体。」

(嘘…!それじゃあ、20回も満開してるってことに…!)

「えへへ〜すっごい強いんだよ〜戦いになったら大量の武器でズガーン!だよ。普段は怖がられて、手元にスマホがないから変身出来ないんだけどね。」

「辛い、でしょう…20回も散華して…」

「うん…何も出来ないからね…神樹様の身体に近づいたからって…こんなに祀られたところで、私は…」

「っ…!」

「でもね、今は不思議とつらくないんだよ。」

「っ…」

「もう少しだけ、ここにいてくれる?」

「…うん。」

 

 

 

 

 

ーーー壁ーーー

「きれいな景色。でも…」

(彼女の言う通りなら…この壁を超えたら…)

「え…?」

1歩踏み出した先にあったのは、何もない、燃え盛る世界だった。

「なんて…ことなの…」

 

『壁を越えれば、神樹様が見せていた幻が消えて、真実が姿を現わすよ。』

 

「彼女が言った通り…これが…本当の世界…世界は…宇宙規模の結界の中…」

そのとき、星屑が私に気づいた。

「あっ!」

 

『人類を滅亡寸前に追いやったのはウイルスなんかじゃないんだよ。天の神様が粛清のために遣わした生物の頂点、バーテックス。』

 

応戦し、倒れた先は…

星屑の卵の上。

「いやあっ!」

 

『西暦の時代、世界は彼らに突如襲われた。人類に味方してくれた他の神様たちは力を合わせ、一本の大樹となり四国に防御結界を張った。その時、神様の声を聞いたのが今の大赦。神樹様を管理してる人たち。』

 

(こんなところ…)

「まるで地獄じゃない…っ!?」

(あれって…確か!?)

「友奈ちゃんが倒したバーテックスが生まれてる!?こいつらがまた次々と攻めてくるのを、私たちが迎え撃つの!?何回も身体の機能を失いながら…何回も…何回も!」

結界の中に戻って来る。

 

『身体が樹木のように動かなくなって、最後は、こうして祀られる。』

 

「はあ…はあ…はあ…!うう…うっ…この苦しみを一つ一つまた味わう! それも皆が!」

(くやくやしてる場合じゃない。考えろ。)

「考えなきゃ。考えなきゃ…皆を助けなきゃ…みんなを救わなきゃ…!救うためには…どうすればいい…!」

(そうだ…これなら…)

「あった…!たった一つだけ…方法が…!」

 

ーーー樹海ーーー

ーーーちひろsideーーー

(特別警報…予想外の敵の襲撃?違う…バーテックスにも知能がある…少なくとも全体揃うまでは攻め込まないはず…かつ一斉攻撃とかをするはず…ならなぜ…?)

「そんな!? バーテックスは全部倒したはずじゃ…」

「落ち着きなさい。まずは状況確認よ。たとえイレギュラーだろうが私は…なっ!?」

「どうかしました?夏凜さん。」

「ちひろ…これ…」

「っ!?」

マップの海の先には点と見分けられないほど、赤色で埋め尽くされていた。

(まさか…壁を!?)

 

ーーー東郷sideーーー

「私一人だけが生贄なら、まだ良かった…でも、友奈ちゃんたちまで供物にするなんて…許さない。皆をもう苦しめない。待ってて、友奈ちゃん、皆。神樹様を倒してしまえば、苦しみから解放される!生き地獄を味わうこともない!!こんな世界…私が終わらせる!!」

 



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16話 誰として、なんのために戦うか

…結城友奈の章、完結するとこまで行きます


ーーー友奈sideーーー

(すっごい量のバーテックス…え?壁の上の反応って…)

「東郷さん!?」

シュン

「ん!?友奈!?待ちなさい!?」

シュン

「友奈さん!?夏凜さん!?これだけは覚えておいて下さい!壁の外には秘密がある!行くなら覚悟して下さい!」

「な、なんで…壁に穴が…?」

(…!あそこにいるのって!)

「東郷さん…」

星屑が東郷さんに向かって行ってる!

(あ!東郷さん!)

「危ない!」

でも、東郷さんは遠隔誘導兵器でそれを倒す。

「東郷さん、何をしてるの?」

「…」

(なんで、答えてくれないんだろう。)

「東郷さん!」

「壁を壊したのは…私よ。」

「えっ…?」

(どういう…こと…?)

「友奈ちゃん…私、もうこれ以上、あなたを傷つけさせないから。」

(東郷さん…何言ってるか…わかんないよ…)

「グアアッ!」

「あ!」

(星屑!?もうこんな近くに!?間に合わない!)

でも、

「てええぇい!!」

「夏凜ちゃん!」

夏凜ちゃんがそれを引き裂く。

 

ーーー夏凜sideーーー

(東郷…なんで!?)

「どういうことよ!東郷!壁を壊したってあんた…何をしたか分かってるの!?」

「分かってる…でもやらないといけないの!」

シュン

「あっ!東郷さん!」

東郷の姿が壁の外に消えて行く。

(壁の外!?)

 

『これだけは覚えておいて下さい!壁の外には秘密がある!行くなら覚悟して下さい!』

 

(きっと風が落ち着いたら言おうとしたのが特別警報のせいで言えなかったのね…)

「待って「待って!友奈!」夏凜ちゃん!でも!」

「ちひろが言ってたでしょ、壁の外に行くなら覚悟してからって。満開の秘密と同じように風が落ち着き次第言おうとしてたことが、散華と同じくらいの秘密がこの先にはあると思うわ。だから、覚悟を決めてから行きましょう。」

「…うん!覚悟は決めた!」

(早!?でも、友奈らしいわね。)

「よし、行きましょう!」

シュンシュン

「えっ!?」

「なっ!?」

(なにこの…炎に包まれた…世界…これが…ちひろが…伝えようとしてたこと…?)

「夏凜ちゃん…バーテックスが…再生してる…」

(…そんな…ことが…)

「これが、世界の真実の姿。壁の中以外、全て滅んでいる。そしてバーテックスは12体で終わりじゃなく、無数に襲来し続ける。この世界にも、私たちにも、未来はない。

  私たちは満開を繰り返して、身体の機能を失いながら戦い続けて…いつか、大切な友達や…楽しかった日々の記憶も失って…ボロボロになって…」

(東郷…)

「それでも戦い続けて…もうこれ以上、大切な友達を犠牲にさせない!勇者という生贄から逃れるためには…これしか方法がないの!」

(これが…世界の…真実…なにも考えずに行ってたら…東郷の考えに呑まれてたかもね…でも、止めないと!私は…)

「ま、待って!」

「夏凜ちゃん、何故止めるの?」

「こんなこと、間違ってる!それに私は大赦の勇者だから…」

「大赦は真実を隠し、あなたを道具として使ったのに?」

(えっ…?わ…たし…が…)

「私が…道具…?」

「でもっ!」

「わかって…友奈ちゃん…友奈ちゃんや勇者部の皆が傷ついていく姿を…これ以上見たくない…!!友達が傷ついていくのも…私、もう耐えられない…!」

「東郷さん…」

(私が…道具…私は…なんの…ために…勇者に…ん?あれは…乙女座!?)

「「っ!?」」

ボガァン

私が友奈を抱えて逃げる。

「東郷さんを!」

「ダメ! 一旦退いて!」

「「っ!?」」

(追ってきた!?まずい!空中じゃ…身動きが…)

ボガァン

「ガハッ!」

「ああああ!」

 

ーーーちひろsideーーー

トントンパチクリ

「多分…東郷さんが壁を壊したんだと思う。じゃないとこの人数はありえないよ。」

「…」

ユサユサ

樹ちゃんが風さんを揺らして必死に訴える。

(風さん…っ!星屑!)

「…!」

「樹ちゃん!迎撃しよう!」

コクコク

 

ーーー友奈sideーーー

「うっ…?」

(あれ私たち…確か乙女座の攻撃を受けて…?そっか!精霊が守ってくれたのか!)

「!夏凜ちゃん、しっかりして!夏凜ちゃん!」

(東郷さん、泣いてた…あんなに悩んで、苦しんでた東郷さんを、私、ずっと見てきたのはずなのに…きっと私、何か出来ることがあったはずなのに…一番の友達なのに…どうしてこんな…)

「そうだ…今は…あの星屑たちを倒さないと…!」

 

『友達が傷ついていくのも、大切な人を失うのも、私、もう耐えられない!』

 

「っ!」

(私は…私は…!)

ピピー

「えっ?」

『警告。勇者の精神状態が安定しないため、神樹との霊的経路を生成できません。』

「そんな!」

(今の私じゃ…勇者にすらなれないの…?)

 

 

 

 

ーーー樹sideーーー

(…!敵が多い…!でも!お姉ちゃんには、手出しさせない!)

「はあ!」

ちひろちゃんも応戦してくれています。

私も負けてられない!

「ぁ…」

 

ーーー風sideーーー

「樹…?」

(どうして…どうして…そこまで…)

 

『ありがとう。なんとなく言いたくなったの。この家のこととか勇者部のこととか、お姉ちゃんにばっかり大変なことさせて…』

 

 

『反対に私は臆病で弱くて、いつもお姉ちゃんの後ろを歩いてばかりでした。でも、本当は私、お姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたかった。』

 

 

『風さん。』

『何?ちひろ。改まって。』

『いつもあんなんですけど、尊敬してますから。』

 

「隣どころか…いつのまにか前に立ってるじゃない…!ちひろも…あんな…成長して…」

(樹も…ちひろも…前向いて…戦ってるのに…私が…こんなんで…どうするのよ…!)

 

ーーー樹sideーーー

(ダメ…多すぎる…!)

「きゃあ!」

(ちひろちゃん!)

「流石に…多すぎ…」

「…!」

(どうすれば…)

「はあああ!」

ズバッ

(お姉ちゃん!)

「風さん!」

「姉として、妹に頼り切ってるわけにはいかないわ!」

(お姉ちゃん…!よかった!)

「もう大丈夫よ、樹。本当に、私の自慢の妹だ!ちひろも、迷惑かけたわね。」

「ホントですよ。何も言わず背負い込んで。」

「グサッ!」

(ああ、ちひろちゃん…こんな時にも…笑)

「勝手に暴走して大赦潰そうとして。」

「グサグサッ!」

「挙げ句の果てにしばらく動かず私たちに戦いを押し付けて。」

「グッサーーー!!」

「でも、よかったです。風部長。」

(ちひろちゃん…)

「ちひろ…ありがと。さあ!讃州マンションに住む者の女子力!見せてやるわよ!」

コクコク

「はい!で二人とも、迎撃しながら聞いていただきたいことが。」

(?なんだろう…?)

「ん、なに?」

「この世界に隠された…真実についてです。」

 

ーーー友奈sideーーー

「なんで?なんで?なんで!なんで変身できないの!?」

何回やっても勇者には変身できませんでした。

(東郷さんは…ずっと悩んでたはずなのに…助けられたはずなのに…私は…!)

「うぅ…私…私…!友達失格だ…!」

「グガァ!!」

「うっ…うぅ…!」

星屑が私に襲いかかる…はずでした。

でもその星屑は…私に襲いかかる直前で、消えたのです。

 

ーーー夏凜sideーーー

「うぅ…私…私…!友達失格だ…!」

(う…ここは…友奈!なんで変身してないの!?危ない!)

即座に勇者に変身して星屑を倒す。

「夏凜ちゃん…」

「ふぅ…友達に失格もなにもないっての。」

「うっ…」

(友奈…きっと…)

「あんた、東郷のことで自分を責めてるんでしょ?」

「っ!!」

(やっぱりね…)

「はぁ…全く、友奈らしいというか…ねぇ、友奈、あんたはどうしたい?」

(変わったわね…私も。前だったら友奈の意見なんか聞かずに、東郷を止めに行ってたのに…)

「え?」

「東郷のこと。」

「止めたい…!東郷さんを止めたいよ。この世界が壊れたら皆と一緒に居られなくなる。

  でも、今の私じゃ…」

「そう…」

(私は…勇者部と、ちひろと、友奈に出会って…変わったんだ。だから、守りたい。みんなが生きてる、この世界を。だから。)

「友奈…」

「…?」

「私、もう大赦の勇者として戦うの、やめるわ。」

「え…!?」

「これからは勇者部の一員として戦う。もう、勇者部を壊させたりなんかしない。」

(なによりも…)

「友奈の泣くとこ、見たくないから。」

シュン

「夏凜ちゃん!!」

スタッ

海の方を見渡す。

「再生した奴らが溢れてきたわね…まずはあいつらを殲滅して…その後、東郷を探して…」

(…5体、か…)

「さすがに、犠牲なしってわけにはいかないでしょうね…」

スマホを取り出し、誕生日会のときの写真を見る。

「フ…バカね…」

「ショギョームジョー。」

(私の両親は勇者の私は求めても、ただの私なんて、求めなかった…でも、勇者部のみんなはそんなことなかった…戦いが終わっても、私を必要としてくれた。初めて、居場所をくれたんだ…だから、私は、勇者部の一員として、勇者部のみんなを守るために戦う!)

「さあ、さあ!ここからが大見せ場! 遠からんものは音に聞け! 近くばよって、目にも見よ!これが讃州中学2年! 勇者部部員!三好夏凜の実力だー!!」

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

「…以上です。」

「そう、だったのね…」

「すいません…黙ってて…」

「いいわ。何度きたって私たちなら乗り越えられる。それより、東郷を止めにいきましょう。」

コクコク

「…はい!」

「さあ、さあ!ここからが大見せ場! 遠からんものは音に聞け! 近くばよって、目にも見よ!これが讃州中学2年! 勇者部部員!三好夏凜の実力だー!!」

「夏凜!?」

「!…夏凜さん…?」

 

ーーー夏凜sideーーー

星屑を足場にし、次々と切り裂いて進む。

ヒュウーーーン

乙女座が爆弾を飛ばしてきても断ち切り、

「さあ、持ってけーーー!!」

「夏凜ちゃん!」

「勇者部五箇条!ひとぉーーーつ!!」

巨大な斬撃が星屑の群れを切り裂いていく。

さらに大量の刀を投げ、星屑を殲滅する。

「挨拶はぁーーー!!」

爆弾を切りつつ乙女座へ向かい、

「きちんとーーー!!」

一撃で御霊の入ってるところを切り裂き、倒す。

「勇者部五箇条!ひとぉーーーつ!!」

そのまま蟹座を切ろうとするが、反射板二つで受け止められる。

「なるべくっ!!」

反射板を蹴りで砕き、

「あきらめなぁーーーい!!」

そのまま一刀両断。だが、

「っ!?」

蠍座の針が満開の腕の一つに刺さってしまう。

刺さった場所から枯れていき、そのまま満開が解け、落下してしまう。

「うっ!」

(いきなり右腕を持ってかれた!でも!)

シュン

蠍座の尻尾に刀を刺し、思いっきり蹴り飛ばし、

(満開には!関係ない!)

「勇者部五箇条!ひとぉーーーつ!!」

そのまま満開する。

「よく寝てぇぇぇぇぇ!!」

蠍座に向かっていき、

「よく食べぇぇぇぇぇるっ!!」

御霊がある部分をぶった切る。

ドドドドド

(しまった!射手座!)

キンキンキン

ドスドスドスドス

なんとかガードするが満開の腕に多くの針が刺さる。

(これはまずい!満開が解ける!せめて上に!)

ビュン

上昇の勢いを残しつつ、満開が解ける。

(今度は右脚!でも!東郷は両脚一気に失ったんだ!まだマシ!)

「勇者部五箇条!ひとぉーーーつ!!」

口に刀を加え、

「悩んだら!」

落下のスピードで射手座を真っ二つにし、再び満開。

「相談んんんんっ!!」

そして御霊の部分を切り裂く。

(たしかいたのは5体、今まで倒したのは4体…)

「あと一体は!?」

(たしか残ってるのは…魚座!)

「地中か!」

だがもう遅く、魚座の攻撃をモロに受けてしまい、満開が解ける。

(しまった!連続で使用しすぎて…)

「定着が遅い!」

再び魚座が地中に潜っていく。

そして、音が消えた。

(両耳!まだだ!私は!みんなを守るんだーーー!)

4度目の…満開。

「勇者部五箇条!ひとぉーーーつ!!」

地面に向かって突撃し、魚座を捉え、空へ。

そして、

「成せば大抵!!なんとかなぁーーーるっ!!」

魚座を切り裂いた。

「見たかっ!! 勇者部の力ぁぁぁぁっ!!」

(あとは…東郷を…)

だが、その瞬間、景色が、光が消えた。

「あ…」

(ここ…まで…かな…?)

「夏凜ちゃん!!」

最後にそう、聞こえた気がした。

 

ーーーちひろsideーーー

「夏凜さん…」

「4回、満開してたわね…どこが失われると思う?」

「さあ、戦い方からして右腕はやられてると思いますけど、片方だけ取られるときもあれば、両方取られる時すらありますから。」

「…そっか…夏凜のためにも絶対東郷を止めましょう!」

コクコク

「もちろんです。」

(夏凜さん…無事だといいけど…)

 

ーーー友奈sideーーー

(どこにいるの!?夏凜ちゃん!地図ではこの辺りに…いた!)

「夏凜ちゃん!夏凜ちゃん!!しっかりして!!」

夏凜ちゃんも目を覚ましますが…

「誰…友奈…?」

目も声も、虚ろでした。

「ごめん…なんか目も耳も持ってかれたみたい…友奈、だよね…?」

(嘘…夏凜ちゃんには私の姿も、声も、届いてないの…?)

「そうだよ!友奈だよ!」

「見てた…?この私の大活躍を…」

「見てた!!見てたよ!!夏凜ちゃん!!すごかったよ!!」

(なんで!なんで…夏凜ちゃん…なの…?)

「うっ…うぅっ…こんな…こんなのって…あああっ! うあああん!」

「本当は東郷を探そうと思ってたんだけどね。ここまでかな…」

(こんなに優しい夏凜ちゃんから…なんで…!)

「ねえ、友奈…言いたかったことがあるの…ありがとうって…」

「えっ…」

(なんで…私に…?)

「私、長い間ずっと勇者の訓練を受けてきた。

  戦うことだけが私の存在価値で、私はただの道具だった…でも、みんなのおかげで私…」

(わ…たしの…おかげで…?)

「友奈なら東郷の心だって変えられる…きっと…」

(私が…東郷さんを…?)

「私は…」

「東郷を救えるのは友奈だけよ。一番の友達なんでしょ…?」

「…!わかったよ!夏凜ちゃん!行ってくる!」

(そうだ…私は東郷さんの一番の友達なんだ!夏凜ちゃんのためにも…東郷さんのためにも…絶対に止める!!)

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

「東郷さん!」

「この光景を見たでしょう? だったらわかるはずです!」

(違う…違うよ東郷さん…あなたがしてるのは…)

「あなたがしてることは、2年前のあなたと、その親友たちが守りたいと願ったこの世界を、壊すことだ!」

「彼女だって了承してくれたわ!」

(園姉の思いを履き違えてる!それにだとしても…)

「あなたに生きて欲しくて、この世界を守りたくて命を張った銀さんの思いはどこに行くんですか!」

「何も知らないあなたに…何がわかるの!思い出を、大切な友達を忘れてしまうことが!どれだけつらいか!」

(…ふざけるな。)

「忘れる苦しみは知らなくても!忘れられる苦しみは知ってますよ!」

「そんなわけないでしょ!この戦いが初めてのあなたは!」

(ふざけるな!)

「分かりますよ!須美さん!」

「!!…なんで…その名を…」

「私が!2年前に!あなたたちと一緒に!戦ってたからですよ!私はそのとき満開を5回して、この世の全ての人の記憶から忘れられ!記録からも消え!そのせいで大赦に拘束されかけました!世界の真実も園姉と一緒に見ました!満開の真実も!忘れたことにすら気付かずに!

よくあんなこと言えますね!」

「でも!あなたはみんなにそのことを言わなかった!所詮あなたも大赦と同「それは違う!」風先輩!?」

「ちひろは言おうとしてた!でも獅子座の攻撃のせいで私たちが突っ走っちゃって言えなかっただけ!この世界のこともここに来る前に教えてくれたわ!」

(風さん…)

そのまま風さんも切りかかる。それを東郷さんは狙撃銃で防ぐ。

「でも!私たちが救われる方法はこれしかないんです!」

「それでも…それでもぉぉぉぉ!」

東郷さんの狙撃銃を弾き飛ばす。

「須美さん!あなたは園姉の思いすら踏みにじろうとしてる!私のことを忘れたあと!園姉の記憶では!残酷なこの世界の真実と満開の秘密を知って!友達には忘れられてて!奥からは12体のバーテックス!これらの絶望が!小6の少女を一気に襲ったんですよ!?それでも戦ったのは!あなたがいる世界を!銀さんが守った世界を!守りたかったからじゃないですか!それなのに…あなたは!」

東郷さんは小型銃を呼び出す。

「…風先輩!ちひろちゃん!わかって…ください!」

(どこまでも…この人は…!)

だが、

シュルルルル

「っ!樹ちゃん…!」

樹ちゃんの糸が銃をからめとっていた。

「東郷!歯ぁ食いしばれぇぇぇぇぇ!」

ドガァン

東郷さんはそのまま落下していった。

「ごめん、東郷…少しだけ静かにしてて…これでもいい?ちひろ。」

「大丈夫です。しばらく下で頭冷やしてもらったらウイングで回収しに行くので。」

トントン

「ん?何?樹ちゃん。」

チョンチョンヒューピタッ

「おけおけ。ありがとう。」

「いや私さっぱりわかんない。説明プリーズ。」

「えぇー…メンド…「おい!」自分の妹の暗号くらい自分で理解しましょうよ…」

「わかるわけないでしょ!?あんたと樹の暗号なんて!」

「はぁ…敵の進行が止まってる、ですって。バーテックスは星屑が細胞みたいなものなので今のうちに星屑壊滅させましょう。」

「最初からそれ言いなさいよ…」

(須美さんが全く音沙汰なしなのはなんでだ…?気絶したのか?いや、精霊がガードしてたからそこまでいかないはず…まさか!)

ブウゥゥン

音の正体は満開した須美さん。

「なっ!?」

「満開までして…壊したいの…?」

更に後ろには再生中の獅子座。

「っ!風さん!獅子座を止めましょう!獅子座は単体でも別格です!」

「チートキャラじゃない!?よしきた!」

コクコク

「3人とも!退いてください!」

「退くわけないでしょ!」

「その通りです!」

「…ごめんなさい。」ボソッ

(まさか!?)

「っ!?」

東郷さんの8砲集中ビームが神樹様に…

放たれた。

「くっ!モードシールド!」

「「止まれぇぇぇぇぇ!」」

3人がかりで止めようとするものの…

「あぁっ!!」

「きゃあっ!」

途中で落下してしまう。

ビームはそのまま神樹様へ伸びていき…

花びらとなって消えた。

「そう…勇者の力では神樹本体を傷つけることは出来ないのね。」

「でも、こいつなら、きっと殺せる。」

「くっ、スタミナが…樹!?ちひろ!?」

(解けてはいないけど…一番前だったせいで…ダメージが…)

「私を殺したいでしょ…? さあ、おいで。」

獅子座は巨大な火球を作り出し、

「やめろぉぉぉぉ!!」

発射した。

それを東郷さんは避け、火球は神樹様へ。

(このままじゃ…動け…)

「動けぇぇぇぇぇ!!」

「これで、皆を…」

「おおおお!勇者ーーーパーンチ!!」

ボガァン

友奈さんが火球を破壊する。

(動ける!よし!)

スタッ

「ごめんなさい、風先輩。遅刻しちゃいました。」

「友奈…!」

「ふぅ…ありがとうございます、友奈さん、やっと動ける…あとは任せてください。風さん。」

「ちひろも…!」

「もう迷わない。私が勇者部を…東郷さんを守る!」

 



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17話 明日の勇者へ 前編

ーーー???sideーーー

「面白いことなってるじゃな〜い♪じゃ、獅子座に〜こいつらがむかったら〜どうなるかな〜♪アハハ♪」

そう言った後ろにはたくさんのバーテックスたちが。

「時間は与えてあげるからせいぜいあ・が・いて・ね♪アハハ♪」

 

ーーーちひろsideーーー

「東郷さん。」

「友奈ちゃん…」

「須美さん…」

ボガァン

「「「!?」」」

音がした方を見ると遠くの壁が破壊され、バーテックスが出てきていた。

「なんで!?」

(あそこの壁が!?ここら一帯にみんないる…いや、誰がやったかはいい!あいつらが獅子座と合体したら、それこそ世界が終わっちゃう!そんなことさせない!)

「友奈さん!私はあっちのバーテックスを倒してきます!須美さん…いや、東郷さんをお願いできますか?」

「もちろん!そっちこそお願いね!」

「はい!」

シュン

スタッ

(えーと、ひ…ふ…み…)

「…7体か…夏凜さんが倒したやつ以外勢揃いね…」

(一人で倒しきれるかな…いや。)

「できるかどうかじゃない…やるんだ!来い!バーテックスども!ここが貴様らの墓場だ!!満開!!」

一輪の花が天空に咲き誇る。

「さあ、来い!」

(ま、来てるのは…バレバレだけどねっ!)

ズシャア!

素早く双子座の2体を両断する。

「あと5体!」

そう言って牡牛座に向かう。

(真っ先に倒すべきは獅子座と合体するあの3体!)

ゴーンゴーン

「その音は!聞き飽きた!モードアロー!とりゃあ!!」

シュバァン

ビットをアローに変え、残りのビットで作った特大矢で牡牛座を消しとばす。

「残り4体!」

続いて矢を天秤座に放つが、回転により弾かれてしまう。

「なら!モードダガー!上から!叩き割れろぉぉぉぉ!!」

バキバキバキィィィィン

回転のない上からの一撃で天秤座は砕け散る。

「あと3体!」

(そろそろいつ満開が解けてもおかしくない!一撃で仕留めないと!)

水瓶座が大量の水球を飛ばしてくるが、

「モードミニビット!おりゃぁぁぁ!!」

それらを全てミニビットで抑え、水瓶座ざに突き刺し、

「モードソードビット!あと…2体!」

普通のソードビットに戻し、御霊を貫く。

そんなちひろに牡羊座が向かってくる。

「モードブレイド!死ににくるなんていい度胸ねっ!ってはあ!?」

ちひろは牡羊座を十字形に切り裂く。

だが牡羊座は死なず、むしろ増えてしまったのだ。

ドガァン

そのまま牡羊座のタックルを受け、満開も解けてしまう。

(しまった…!牡羊座の能力は電気だけじゃない…分裂が本当の能力だったの!?)

両脚にサポートが付く。

(いきなり両脚!4体のうちどいつかリーダー的なのがいるはず!どいつだ…どいつが本物だ…!)

シュバッ

…シュバッ

…シュバッ

…シュバッ

(…見つけた!)

「モードウイング!お前だーーー!!」

ジャシュッ

本体を倒したことにより、他の牡羊座も消滅していく。

「あと1体!!!大剣グングニル!!」

ビットレイフェニックスをグングニルに変え、残る山羊座へ向かう。

ギュルルルルルル

だが山羊座も押し返そうとスクリューアタックをぶつけてくる。

ギリギリギリ

「ま…けるか…」

(私には…樹ちゃんが…勇者部のみんながいるんだ…!こんなところで…)

「負けてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!」

ちひろがスクリューアタックを押し返していき、山羊座を…

「終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!」

一刀両断した。

「はぁ…はぁ…やった…倒した…!」

だが、そこで満開が解け、音が消えていく。

ドシャアン…!

地面に落ちる。

(両耳…ついてないなぁ…私…でも…樹ちゃんとは話せるから…よかった…)

ゴゴゴゴゴゴ

(なに…この熱量…)

熱を感じる方を見ると、

「っ!?なに…あの…火球…」

獅子座のよりも遥かに巨大な火球があった。

 

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

シュン

(ちひろちゃん…お願いね…)

「っ!!」

獅子座が二つに割れ、そこから炎を纏った星屑が飛んでくる。

シュン

なんとか回避していく。

(!いつもより速い…!)

東郷さんはビームで迎撃している。

「東郷さん…」

(絶対…助けるからね…!)

 

ーーー風sideーーー

「早く…あいつを…!」

(私も加勢して…)

グラッ

「あれ…意識が…」

バタッ

 

ーーー友奈sideーーー

(!風先輩…!でも今は…)

獅子座に向かっていき…

「止まれぇぇぇぇぇ!!」

パンチを食らわせようとするが、

ビュン

「あっ…!!」

東郷さんの攻撃で止められてしまう。

「ダメよ、友奈ちゃん!」

(そっちこそダメだよ東郷さん!だって!)

「そいつがたどり着いたら私たちの世界が無くなっちゃう!」

そう言いながら遠隔誘導兵器を壊していく。

「それでいいの…一緒に消えてしまおう…!」

(そんなの…そんなの!)

次の瞬間、空に一輪の花が咲き誇る。

「よくない!」

炎星屑を破壊しながら獅子座に近づき、

「おりゃぁぁぁ!!」

思いっきりパンチを食らわせる。

すると御霊が出てくる。

「御霊!」

(これさえ壊せば!)

「ダメッ!」

「っ!!」

再びレーザーが飛んでくるが、今度はそれをかわす。

「東郷さん。何も知らずに暮らしてる人たちも居るんだよ?私たちが諦めたらダメだよ! だってそれが…」

「勇者だって言うの!?」

「っ!」

「一番大事な友達を守れないなら…勇者になんかなる意味がない!頑張れないよ…!」

(東郷さん…わかるよ…でも…!)

ボボボボボボ

あらゆるところから星屑が御霊に集まっていく。

「友奈ちゃん…あのままじっとしていれば良かったのに…眠っていれば、それで何もかも済んだのに…もう手遅れだよ…」

8砲のビームが一斉に発射される。

「くっ…!」

(満開じゃなかったら…吹き飛ばされてた…)

「戦いは終わらない…私たちの生き地獄は終わらないの!!」

(違う…そんなの…!)

「東郷さん!地獄じゃないよ!だって、東郷さんと一緒だもん!どんなに辛くても、東郷さんは私が守る!」

「大切な想いや気持ちを忘れてしまうんだよ!? 大丈夫なわけないよ!!」

今度は集中ビームが発射される。

(うっ…防ぎきれない…!)

ドガァン

地面に叩きつけられる。

「友奈ちゃんや皆のことだって忘れてしまう!それを仕方がないなんて割り切れない!」

「くっ!」

「一番大切なものを無くしてしまうくらいなら…」

(大丈夫だよ東郷さん…だって…!)

「忘れないよ!」

「どうしてそう言えるの!」

「私がそう思ってるから!めっちゃめちゃ強く思っているから!!」

「っ!私たちも…きっと…そう思ってた…」

(東郷さん…)

「今はただ、悲しかったということしか覚えてない…自分の涙の意味が分からないの!!」

無差別にレーザーを放つが私はそれをかわす。

「イヤだよ! 怖いよ! きっと友奈ちゃんも私のことを忘れてしまう!」

(東郷さん…!)

「だからっ!」

ガシッ

満開の腕が砲台を全て抑える。

(東郷さん!)

「東郷さん!!」

「っ!!」

東郷さんはとっさに遠隔誘導兵器を向けるが、すでに私は懐に入っており…

ボガァン

私は、思いっきり東郷さんを殴った。

そして、抱き起こす。

「っ…!」

「忘れない。」

「ウソ…」

「ウソじゃない。」

「ウソ…」

「ウソじゃない!」

「っ…!本当…?」

「うん。私はずっと一緒にいる。そうすれば、忘れない。」

「うぅっ…友奈ちゃん…!忘れたくないよ! 私を一人にしないで…! うああああん…!」

「うん…うん…!」

(不安だったよね…東郷さん…ずっと…一緒にいるから…忘れないから…)

ゴゴゴゴゴゴ

「「っ!?」」

「何!?」

(なに…これ…でかい!)

「太陽…?」

その火球は一直線に神樹様に向かっていく。

「私…とんでもないことを…!」

(そんな!違うよ!)

「東郷さんのせいじゃない!あいつを止める!」

「はい!」

火球の前に回り込み、抑える。

「止まれぇぇぇぇぇぇっ!!」

だが…

「止まら…ない…」

満開二人の力をもってしても一向に止まる気配が見えない。

「絶対に…諦めな…い…」

(もう…力が…!)

満開が解け、落下してしまう。

「友奈ちゃん!」

地面に落ちたときに変身も解けてしまう。

「くっ!はぁ…はぁ…」

(東郷さんは今も止めようとしてるんだ…)

「こんな…ところで…!」

起き上がろうとするが…

脚は動かなかった。

「!脚が…!」

 

 

 

 

 

ーーー少し前ーーー

ーーー夏凜sideーーー

「ーーー!ーーー!!ーーーー!!」

(誰かが…抱えてくれてる…?)

「誰…友奈…?ごめん…なんか目も耳も持ってかれたみたい…友奈、だよね…?」

(嘘…夏凜ちゃんには私の姿も、声も、届いてないの…?)

「ーーー!ーーー!」

「見てた…?この私の大活躍を…」

「ー!!ーー!!ーーー!!ーーー!!ーーーーーーーーーーーー!」

「本当は東郷を探そうと思ってたんだけどね。ここまでかな…」

(友奈…泣いてる…)

「ねえ、友奈…言いたかったことがあるの…ありがとうって…」

「ーー」

「私、長い間ずっと勇者の訓練を受けてきた。

  戦うことだけが私の存在価値で、私はただの道具だった…でも、みんなのおかげで私…友奈なら東郷の心だって変えられる…きっと…」

(ちゃんと…言えたかな…?)

「ーーー」

「東郷を救えるのは友奈だけよ。一番の友達なんでしょ…?」

「ー!ーー!ーー!ーーー!」

(行った…みたいね…これで大丈夫な…はず…)

 

ーーー少し経ってーーー

(!なにこの…熱気…!守らないと…みんながいる…この世界を…!行かなきゃ…!)

だが、光も音も届かない状態では何回も転げ落ちてしまう。

そしてついには…

(!スマホがない…!)

スマホすら落としてしまう。

(どこ…?どこにあるの…!早くしないと…世界が…!)

「はい、これだろ?」

なぜか、声が聞こえた。

「誰…?あなた…」

ファワン

「あたしの力じゃ一時的にでも完璧に治せるのは右腕と右脚が限界だし、耳はあたしの声を聞こえる程度が限界だし、目もサーモグラフィーみたいにしかできない…けどないよりはマシだろ?早く友達のところに行ってやれ。」

(見える!あそこか!)

「…そこのあんた。」

「ん?」

「…ありがとね。」

「どうもいたしまして。」

(絶対にあれを止める…みんなを守る!)

 

ーーー東郷sideーーー

(ダメ…止まらない…私も…あまり…持たない…)

「もう…ダメ…!」

そのとき、

「おおおおおおっ!」

ビジビジッ

風先輩と樹ちゃんが来てくれる。

「樹ちゃん!」

「ごめん! 大事な時に!」

(そんなこと…ないですよ…)

「風先輩…私…」

「おかえり、東郷。」

(風先輩…樹ちゃん…!)

「た、だい…ま…です…!」

「よし!いくよ!押し返せ!」

「ううっ!!」

「おおおおおおっ!!」

「っ!!!!」

「この…!満開3人がかりですら…!」

「そこかぁぁぁぁぁぁ!!!」

「夏凜!!」

「勇者部をぉぉぉぉ!!なめるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

夏凜も満開する。

「よぉーし!勇者部ーーー!」

「「「ファイトーーー!!」」」

ついに火球は止まる。

 

ーーーちひろsideーーー

(あれはマズすぎる!なんとしても止めないと!)

「まんか…」

「クゥン!」

コマが出てくる。

(そっか…きっと今度満開をしたら…また…でも。)

「ありがとう、コマ。でも、大丈夫。たとえまた忘れられたとしても…また、思い出を作り直せばいいから。みんながいれば、それができるから。だから、守る!この世界を!みんなを!」

そして

「満開!!」

満開した。

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」

いつもの満開とは違い、ビットレイフェニックスに乗りつつも、その手には2本のグングニルが握られていた。

そして神樹様のところまでいき、一気に突撃した。

頭に浮かんだ技の名を叫びながら。

「ダブルフェニックスレイーーー!!!!」

ドガァン

「「「ちひろ!!」」」

「押しぃぃぃぃ!!返ぇぇぇぇぇす!!!」

私が加わったことにより、火球は押し返され始めていた。

 

ーーー友奈sideーーー

(みんなが戦ってるんだ!)

「くっ!!!」

(こんなところにいる場合じゃないんだぁぁぁぁぁぁ!)

「おおおおおお!!!」

生身で満開し、飛び立つ。

「私はっ!!讃州中学勇者部!!」

「友奈っ!!」

「っ!!!!」

「友奈!!!」

「友奈さん!!!」

「友奈ちゃん!!!!!」

「勇者!結城友奈ぁぁぁっ!!」

ドガァン

火球に突撃する。

「おおおおおおっ!!」

だんだんと満開が砕けていく。

それでも、私は進む。

「くっ!!」

勇者の変身も完全に解けてしまうがなお、友奈はその手を御霊に伸ばす。

勇者部のみんなのために。

「届けぇぇぇぇぇっ!!!」

そして友奈の指が御霊に触れ、

爆発した。

 

ーーー東郷sideーーー

「…?」

みんなが輪になって倒れている。

(そっか…止めたんだ…あれを。)

「ぁ…?」

「終わった…の…?」

「そう…ですね…」

(…友奈ちゃん…は…?)

「友奈ちゃん…」

(え…?友奈…ちゃん…?)

「友奈ちゃん…?」

(起きてよ…)

「友奈ちゃん!?」

(お願いだから…)

「友奈ちゃん!!友奈ちゃん!!!」

(起きてよ…友奈ちゃん!!!)

 



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18話 明日の勇者へ 後編

ーーー翌日ーーー

ーーー風sideーーー

(私たちの戦いは夢物語だったわけじゃない。それは、実際に大きな被害が出てることからもわかる。)

「起立!礼!神樹様に!拝!」

(だがたしかに、私たちが取り戻した日常だ。)

 

ーーー1週間後ーーー

ーーー東郷sideーーー

「ふぁああ…」

(?脚に違和感を感じる…)

スタッ

フラッ

バタッ

「…!」

(少し…動かせた?)

 

ーーー風sideーーー

(さて、おいしくな〜れ〜おいしくな〜れ〜!お、樹?一人で起きれるなんて珍しいわね。)

「もうすぐできるからねー、座って待っててー。」

「お…」

「っ!?」

(今…声…)

「お、おね…お姉…ちゃん…」

「っ!!」

(樹の声が…!)

「本当に…本当に…取り戻した…治るんだ…私たち…!」

「ぅん…うん…」

 

ーーーちひろsideーーー

(さて、犬吠埼姉妹を迎えに行きますかね。)

そのとき、隣のドアが勢いよく開いた。

「!?」

「ちひろ!!見なさい!!」

「ち…ひろ…ちゃん…ぉは…よう…」

「!!」

「戻った!戻ってくるのよ!」

(そうか…戻って…くるんだ…)

「よかった…樹ちゃん…本当に…」

「うん…!」

「で一つだけ、いいですか?」

「な、なに…?ちひ…ろちゃん…」

「ん?なんか変なとこあった?」

「…私、両耳散華してるんでさっぱりわからないんですけど。」

「…ぁ。」

「そうだったぁぁぁ!!じゃなんでこんな普通に会話できてんの!?」

「読唇術です。」

「普通の人使えないわよ!?」

「小6のとき学校行ってないで暇だったから覚えました。」

「学校行こうよ!?」

「まだ住民票出てなかったんで。」

「そうだったー!!」

「ということでできればスケッチブックが好ましいな、樹ちゃん。」

「ゎかった…!」

「ということで、私は樹ちゃんと話しながら行きたいので車イス押してください。風さん。」

「なんでそうなるのよ!?」

「暴走。」

「うっ…わかったわよ!やりゃあいいんでしょ!」

『ヤケクソみたいになってるよ、お姉ちゃん…』キュッキュッ

 

ーーー1週間後・夕方ーーー

ーーー風sideーーー

「夏凜あんた、樹や東郷よりも早く治ってきてたのね、目と耳。」

「まだ本調子までは行ってないけどね。大赦からの連絡もあれから一方通行。返信もできない。どうなってるんだか…」

「私たちは神樹様に解放してもらえたのよ。」

「もう必要ないのね…」

「不安?」

「全然。」

「なにそれ。」

「笑うな!」

「だけど、外の世界があんななのは変わらないわ。私らの戦闘データが役に立ってればいいけど…」

「私たちの戦いは無駄じゃなかった。だから神樹様は供物を求めなくなったんだしね。」

「あとは後輩たちを信じて任せるしかないのね。」

「でも「勇者部は不滅、でしょ?」言われたー!!」

「「あはは…」」

 

ーーーちひろsideーーー

「だいぶ耳聞こえるようになって助かったよ〜、本当に。」

「わたしは…脚からの方が…よかったとおもうけど…」

「いいの、だって樹ちゃんの声が聞けるもん。」

「そっか…」

「なんで…友奈さんだけ…」

「…」

 

ーーー風sideーーー

「ねえ…?」

「なに…どうして…友奈だけ…目を覚まさないの…」

「友奈は…一人で頑張りすぎたから…」

「自分を犠牲にしていいなんて…そんなの嫌だ…」

「私もよ…でも友奈がいなかったら…」

 

ーーー東郷sideーーー

松葉杖で病院を訪れる。

「あ…」

(まだ…戻らないの…?)

「ねえ、友奈ちゃん…外…連れてってあげるね…?」

「今日はね、風先輩がまた変なこと言い出して、ちひろちゃんにしばかれてたの。それで私ね…」

「おーい!」

「みなさん!」

「ごめんごめん、遅くなった。」

「だって風さんと夏凜さんが随分話し込んでるから…」

「うっ!」

「大丈夫ですよ。」

「こんにちは、友奈さん…これ…押し花…」

でも、友奈ちゃんは返事をしてくれない。

「…ちくしょう…」

「私は…一番大事な友達を…犠牲に…!私があんなことを…」

「言うな!」

「須美さん!」

「言うな…誰も悪くないってみんなで話しあったでしょ…」

(友奈ちゃん…)

 

ーーー文化祭30日前ーーー

「さて、もう文化祭までまもなくね。今後のことなんだけど…」

「あの…友奈ちゃんの役、そのままにしておきたいです。」

「東郷…」

「私の脚だって治ってきてるんです!友奈ちゃんもきっと…」

「東郷の言うとおりだよ。なんか、割り切っちゃうのは私も嫌だ。」

「私だって割り切ってなんか…」

「お、お芝居の…練習を続けよう。友奈さんなら、っと、きっと…」

「いざって時は私が代役務めるんで、私が友奈さんだって想定で練習すれば万事解決ですから。」

 

ーーー文化祭25日前ーーー

ーーー東郷sideーーー

「勇者は傷ついても傷ついても決して諦めませんでした。全ての人が諦めてしまったら、それこそ世界が闇に閉ざされてしまうからです。勇者は自分がくじけないことが皆を励ますのだと信じていました。」

 

ーーー風sideーーー

家で眼帯を取ると…

(見える…!両目とも…ちゃんと…!)

「大丈夫?見える?お姉ちゃん。」

「うん!戻った…戻ったよ…!」

 

ーーー文化祭20日前ーーー

ーーー東郷sideーーー

「そんな勇者をバカにするものもいましたが、勇者は明るく笑っていました。意味のないことだと言うものもいました。」

友奈ちゃんへのしおりは3枚になっていた。

ーーー夏凜sideーーー

「はあっ!てやっ!」

(私の体だってもうほとんど治ったんだ!友奈だって!)

 

ーーー文化祭15日前ーーー

ーーー東郷sideーーー

「それでも勇者はへこたれませんでした。みんなが次々と魔王に屈し、気づけば勇者はひとりぼっちでした。勇者が一人ぼっちであることを誰も知りませんでした。」

 

ーーー樹sideーーー

「〜〜〜♪♪♪」

カチッ

「どうだった?」

「バッチシグー!だよ!」

「やった!」

 

ーーー東郷sideーーー

「面会終了時間です。」

「はい…」

(友奈ちゃん…)

ガチャ

「ひとりぼっちになっても…それでも勇者は…」

 

ーーー文化祭10日前ーーー

友奈ちゃんへのしおりは6枚になった。

「それでも勇者は戦うことを諦めませんでした。諦めない限り、っく…希望が終わることはないから…っです…ひっく…何を失っても…ひっく…それでも…それでも…ひっく…私は…一番大切な友達を…失いたくないっ!嫌だ…嫌だよ…寂しくても…辛くても…ずっと私と一緒にいてくれるって言ったじゃない!ううっ…」

 

ーーーちひろsideーーー

「須美さ…須美さん…」

須美さんは…泣いてた…台本に顔を埋めて…

「ちひろちゃん…また今度来よう…」

「うん…そうだね…」

そのときだった。

「とう…ごう、さん。」

「っ!!」

「!今の声って…」

「一緒にいるよ…ずっと…」

「友奈ちゃん!」

「友奈さん!」

「東郷さん…聞こえてたよ…東郷さんの声…みんなの声…」

「友奈ちゃん…おかえり、友奈ちゃん。」

「ただいま。」

「…樹ちゃん、このまま帰ろっか!」

「うん、友奈さんと東郷さんだけで過ごさせてあげよう。」

 

 

 

 

 

ーーー文化祭8日前ーーー

ーーー東郷sideーーー

「じゃーん!結城友奈、ご心配おかけしました!」

「友奈!」

「「友奈さん!」」

「ちょ、早くない!?」

「友奈ー!」

「わっ!いたた…」

「あ、ごめん…」

「くすっ。」

 

ーーーいつもの道ーーー

「みんな無事でよかったねー。」

(もう、友奈ちゃんが一番無事じゃなかったのに…)

「心配したんだから。もう目覚めないんじゃないかって…」

「わ、私は心配してなかったけどね。」

「ふふふっ!」

「ツンデレだ〜にぼっしーがツンデレ発動してる〜」

「ちひろうっさい!!」

「私ももう無理だと思ったんだけどね。そこは…えっと…」

「えっと?」

「根性で!」

「根性?」

「えへへー。」

(ふふっ、友奈ちゃんらしい。)

「神樹様が助けてくれたんでしょうか?」

「…」

(違う、きっと…)

「東郷さん?どうしたの?」

「それは、きっと違うよ。」

「「え?」」

「友奈ちゃんは自分の力で戻ったんだよ。奇跡や神の力なんかじゃない。友奈ちゃんは自分の意思で、根性で戻ってきたんだよ。」

「うん。そうだね。ありがとう。」

「っ!!」

(友奈ちゃん…!)

「私を待っててくれて。」

「…うん!」

(こちらこそありがとう…戻ってきてくれて。)

「さあて!みんな揃ったことだし!久しぶりにかめや行こう!いい加減そろそろ食べたかったのよ!」

「「風さん(お姉ちゃん)1週間前にも行ってたよね…」」

「ギクッ!なぜそれを!?」

「「偶然通り過ぎたときに見た。」」

「あんたねぇ…」

「ふふっ」

「あははっ!」

 

ーーーかめやーーー

「はーい、おまちどうさまでーす。」

「ありがとうございます!」

「じゃ!いただくとしましょう!」

「「「「「いただきます!」」」」

「はむっ!あ…味が…する…!」

(そっか…味覚…戻ったんだね…)

「美味しい!うん!美味しいよ!」

「あ、ところで友奈。」

そういって風先輩が取り出したのは台本。

「もうすぐ文化祭だけど劇、出る?」

「!ズルリュリュッ!はい!もちろんです!」

 

ーーー文化祭6日前ーーー

ーーー部室ーーー

「こんにちはー!あれ?樹ちゃんとちひろちゃんは?」

「ああ、あの二人?今日は来ないわよ。」

「どうしてですか?練習合わせていきたいところなのに…」

「ちょっとね…」

 

ーーーちひろsideーーー

「まだー?樹ちゃん。」

「着いた!もう目隠し取っていいよ、ちひろちゃん。」

私は今目隠しをつけられ、どこかに連れて来られていた。

そして、目隠しを取る。

「え…ここって…私の家…」

なんとそこは私の家でした。

「失礼しまーす。」

「えっ!?ちょっ…」

 ・・・・・

「ちーちゃん…!」

「ちひろ…!」

「えっ…?」

そこには両親がいた。

当然ではあるが。

(ちーちゃんって私が小さい頃に母さんが呼んでた名前…)

さらには…

「「「「「「ちひろちゃん!」」」」」」

「「「「「「ちひろ!」」」」」」

「え…?なんで…?」

神樹館の時に友達だったみんなもいた。

「ちひろちゃんが忘れられてたのだって供物だったんでしょ…?そしたら戻ってきてるんじゃないかって思って月夜さんに協力して集めてもらったの。」

「母さん…父さん…みんな…私のこと…覚えて…るの…?」

『もちろん!!』

(そうか…戻って…来たんだ…私にも…戻ってきたんだ…!)

「みんな…ひっく…ただいま…!」

『おかえり!』

 

ーーー樹sideーーー

「うわぁああん!!ひっく、うあああん!!」

「ちひろ!泣いてないで何で遊ぶ?色々持ってきたよ!」

「忘れて…ごめんなざいー!!」

「もーみんな落ち着いて!」

(ちひろちゃん…よかったね。)

「あなたがちひろのこと助けてくれてたんですよね?ありがとうございます。」

「いえ…私も助けられてばっかだったので…」

「あなた…本当に良かった…!」

「おまえまで泣くな。今は喜ぶ時間だろ?」

「はい…でも…でもぉ!」

「まあまあ。」

 

ーーー文化祭当日ーーー

ーーー友奈sideーーー

今は劇の真っ只中!

お客さんもいっぱいです!

「がーはっはっはっ!結局世界は嫌なことだらけだろう!辛いことだらけだろう!お前も見てみぬフリをして堕落してしまうがいい!」

「嫌だ!」

「あがくな! 現実の冷たさに凍えろ!」

「そんなの気持ちの持ちようだ!」

「なに!?」

「大切だと思えば友達になれる。互いを想えば何倍でも強くなれる。無限に根性が湧いてくる!世界には嫌なことも悲しいことも自分だけではどうにもならないこともたくさんある!だけど、大好きな人がいれば挫けるわけがない! 諦めるわけがない!大好きな人がいるのだから!何度でも立ち上がる!だから!勇者は負けないんだ!」

剣を構えて私は走り出し、風先輩に振り下ろす。

それに合わせて風先輩も倒れる。

(よし!うまくいっ…)

クラッ

(あれ…力が抜けて…)

「友奈ちゃん!」

「友奈!」

「友奈さん!」

「友奈!」

「友奈さん!」

「あ、あれ…?ごめん!ちょっと立ちくらみ。もうだいじょう…」

パチパチパチパチ

「「「「「「っ!!」」」」」」

(良かった!劇、成功した!!)

ギュッ

(東郷さん…!)

ギュッ

(そう。なんだって乗り越えられるんだ。大好きなみんなと一緒なら!)

その後発行された讃州中学新聞。

その見出しには、

『怪我にも負けない不屈の勇者。』

という文字とともに大きく一枚の写真が載せられていた。

その写真でみんなが持ってる看板にはこう書かれていた。

明日の勇者へ

      讃州中学勇者部

 

 

ーーー結城友奈の章・完ーーー

 




はい、これにて結城友奈の章完結です。
超蛇足更新なってしまいました…楽しみにしていただいた方々には申し訳ない…
…というか見てくれてる方いるのだろうか…笑
これからも忘れなければちゃんと投稿する予定です…忘れなければ。
日常編を少し挟んで勇者の章へと参ります。
疑問に思ったことも多くは解消されるかと思うのでお楽しみに…


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幕間 結城友奈の章〜勇者の章
園子の帰還


ーーー文化祭から1週間後ーーー

ーーー通学路ーーー

ーーー友奈sideーーー

あれからみんなの体はほとんど完治しました!(私は少し戻ってくるのが遅かったから今でも立ちくらみしたりするけど!)

「んー!気持ちのいい朝だね!東郷さんのフットワークが機敏になったから朝起きがはかどるよ!」

「友奈ちゃんにはいっぱい助けてもらったから…少しでもお返ししないと!」

(東郷さん…私の方こそたくさん助けてもらってるよ…)

「いや〜昔も今も助けられっぱなしだよ!」

「友奈ちゃん、体、今日は大丈夫?」

「うん、今んとこ元気そのものだよ!」

「何かあったら言ってね。悩んだら相談、だから。」

「うん!東郷さんも、悩んだら相談!だよ!」

(…やっぱり東郷さんって…)

「?どうしたの?友奈ちゃん。」

「東郷さん私より身長が高いから…ときどきドキッとするんだよね!立って並んだときの目線が斬新っていうか…」

「わかるわ。私も時々ドキッとするもの。」

(東郷さんも?息合った!)

ブウゥゥン

「!?これって大赦のマークがついた車…?」

「…お咎めなしだったのが都合良すぎたのよね…」

(そんな…)

「き、きっと違うよ東郷さん!これは…」

でも、車からは私たちのそんな心配をかき消すような声が聞こえてきました。

「こんにちは〜二人とも〜」

(あれ?この声どっかで聞いたことあるような…?)

「この声って…」

そして中から出てきたのは…

「じゃじゃ〜ん!乃木さん家の園子で〜す!今日から同じクラスだよ〜!よ〜ろし〜くね〜!」

くるくるっ

園子ちゃんが回転する。

(えっ?えっ!?どういうこと!?)

「そのっち…」

「へいへい、わっしー!園子だよ〜!」

「そのっち…!!」

「驚いてる驚いてる〜!サプライズ大成功〜!」

「そのっち!!」

ギュッ

「わっ!?ちょ、ちょっと、わっしー…みんな見てるんよ…」

 

ーーー教室ーーー

「スピ〜スピ〜」

「転校初日に寝てるとか本物のそのっちね…」

「え?え?どうなってんのよ、これ…」

「おはよう!夏凜ちゃん!東郷さんも知らなかったんだって。」

「それにしても美人よね、お人形さんみたい。」

「だって小学校は神樹館でしょ?お嬢様よ。」

「それでいったら、この学校3人も神樹館出身がいるってすごいよね…」

「たしかに…」

(園子ちゃん…すごい人気…!)

 

ーーー部室ーーー

ーーーちひろsideーーー

(今日は2年組遅いな…どうしたんだろう?)

「友奈!ただ今到着しました!」

「勇者部入部希望の園子だぜー!!」

「風先輩、遅れました。」

「普通掃除中に寝ないでしょ…」

「はーい、べつにいいわよー…って乃木園子!?」

「よかった…なにかあるかと…って園姉!?」

「2年前に大橋の方で勇者やってたんだぜ〜!

改めてよろしくお願いしま〜す!」

(え?え?園姉!?なんで!?)

「あ、ちっひー…ひっく、ごべんねー!!!」

ギュッ

「!?園姉!?」

「そのっち!?」

(なんで抱きついてきたの!?てかなんで泣いてるの!?)

「わだし…あのとぎちっひーのぎもち…わがっでだきでいだ…でも全然わがってながった…あんなわずれてたなんで…全然わがってながったよ…ごべんね…ちっひー…」

(園姉…)

「もう…思い出してくれたんだったらいいんだよ…園姉が泣くからこっちまで涙出てきたじゃんか…」

「…よかったね、二人とも。私もまたそのっちと勉強できるから嬉しいわ。」

「授業中に寝てたら注意してね〜」

「切り替え早っ!?」

「寝ないように注意しなくちゃダメよ。」

「東郷さんがお母さんみたいになってる…」

「お願いします須美さん、私学年違うんで…」

(ていうかすぐ泣きやめれるんだったら…)

「わざわざ泣くなっ!」

ゴーン

「ヘブシッ!」

私の手刀を食らって園姉は倒れる。

「いやこれいいの!?」

「いいです。もう起き上がってるんで。ほら。」

「リハビリが済んでかなり動けるようになったから通学することになったんだ〜でどこ行くかって聞かれたから当然わっしーとちっひーがいる讃州中学に決まってるよね〜!」

「ほ、ほんとだわ…先代勇者恐るべし…ま、偉大な先代勇者を歓迎します、乃木さん。」

「乃木とか〜園子でいいですよ〜部長〜」

「もう部長と呼んでくれるのか!誰かさんとは大違いね。」

「誰かって私のことかしらぁ?」

(事実じゃない。)

「ま、事実ですけど。」

「ちひろは黙ってなさい!」

「三好さん、お兄さんとは何度か会ったよ〜」

(あ、あの完璧超人。)

「え!?えっと…兄がお世話になりまして…」

「敬語じゃなくていいよ〜同級生だし。私もにぼっしーって呼ぶから〜」

「誰!それ教えたの!」

「私に決まってるじゃないですか〜にぼっしーさん♪」

(ま、私じゃないけど。)

「ちーひーろー!」

「なんつって♪」

「いや、二人ともここで会ったばっかなんだから言えるわけないでしょ。東郷しかいないしょ。」

「しっかし乃木か。あえて苗字呼びがしっかり来そうね。東郷がいるんだし。乃木と東郷とか、なんだかカッコいいわ。」ボソボソッ

「お姉ちゃん心の声漏れてるよ…」

「…確かに似てるね、ミノさんに。」

「散華した時も、自分より私のことを心配してくれてたって…そういうところも似てるわ。」

「…?そこまで似てますかね?戦いのときのとことかはそっくりさんだと思いますけど…銀さんツンデレじゃなかったですし。」

「ま〜ま〜ちっひー。」

「言葉のセレクトが明らかにおかしいですけど?」

「い、犬吠埼樹です!よ、よろしくお願いします!」

「樹が自分から挨拶に行った!見た?見た!?」

「はいはい、いちいち騒がないの。」

「第一それ樹ちゃんに失礼です。」

「こうして妹は大きくなっていくのね…よよよよ。」

「何言ってるかわかります?夏凜さん。」

「さっぱりだわ。」

そんな一方で…

「よろしくね、乃木園子だよ、いっつん。」

(あー、いつものアレか…)

「い、いっつん!?」

「ごめん樹ちゃん、恒例行事だから。」

「そのっちは変なあだ名をつけるのよ。」

「いいじゃない、いっつん。」

「マシな方だね…」

「他にもイツキチとか、イツエモンとか…」

「いっつんでお願いします!」

「友奈ちゃんはゆーゆかな。」

「素敵!じゃあ私は園ちゃんとか。」

「おー、それでお願い!」

「うん!」

(この二人波長合っとる…)

「友奈さんと園子さん、息合ってる…」

「でも乃木は勉強大丈夫なの?ずっと学校から遠ざかってたんでしょ?」

「数週間で取り戻すので大丈夫です。部長〜」

「取り戻せるもんなんだ。凄いわね。」

「ん?園姉どこ住むの?」

「…」

「おーい、ちひろが聞いてるわよー!乃木ー!」

「あ、これぼーっとしてるだけです。そのっち、そのっち!」

「ああ、わっしー、ちょっと考えごと〜昇降口で飼ってる魚たちとお話しできたら面白いな〜って。」

(くだらないこと考えてないでさっさと答えてほしいな〜♪)

「そんなこといいからさっさと答えて♪園姉?」

「乃木ー!逃げなさーい!ちひろがやばい笑顔なってる!あかんやつなってる!」

「駅前に大赦がマンション借りてくれたからそこに住むよ〜」

「ひ・と・り・で?」

「うん〜」

(いや、絶対。)

「無理でしょ。」

「ちっひーひどい〜!」

「だって園姉いっつも私に起こしてもらってたよね!?てか家事できないじゃん!無理でしょ!」

「ひどいな〜料理とかできるよ〜」

「どっちにしろ栄養のこととか考えないよね!?不安しかないから!」

「じゃあ〜どうしろって言うのさ〜♪」

「そのっちわざとね…」

(そんなの一つしかないよ。)

「私と住めばいい。」

「えっ!?」

「想定外だったのね…」

「ということでものずらすのよろしくねー。うん、じゃ、切るから。」

「ちひろちゃんいつのまに電話してたの…」

「しまった!?」

「そのっち…」

「ということで風さん、樹ちゃん、お隣さん一人増えるから。」

「うん!よろしくお願いします!園子さん!」

「よ、よろしく…」

「いっつん適応早い〜ここでは新入りなので頑張りま〜す。」

「あんたも切り替え早いわよ…」

「分からないことがあったら聞いてね!園ちゃん!」

「ゆーゆ〜」

「園ちゃん〜」

「ゆーゆ〜!」

「園ちゃん〜!」

ツッタタツッタツッタッタ

何故か踊っていた。

(この二人波長合うのは完全に想定外だった…)

「これはまた濃い新人が入ったものだわ…」

「…」

(?夏凜さん?あ、友奈さんと園姉が仲良くしてるから羨ましいのか。)

「どうしたの?夏凜ちゃん。」

「べ、べつに!?なんでもない。」

「「ツンデレってるわね〜(ますね〜)」」

「ちょ!?」

「よーし、今日はかめやで歓迎会よ!」

「スルーすんな!」

「うどんですよね〜?部長〜」

「もちろん!部員が増えたから店員さんも喜ぶワ。」

 

 

 

 

 

ーーーかめやーーー

「うっ…園子さんの所作はちひろちゃんや東郷さんのそれにも匹敵する優雅さです…」

「うどんを食べる日常風景がここまで絵になるって凄いよね。」

(そうなの…かな?神樹館では普通だった気がするけど。)

「え、えっと…そ、園子は…」

「うん、その呼び方でお願い〜にぼっしー。」

「実家は大橋の方なのよね…?上里家と同じで。」

「うんうん、てかお隣さんだね〜小さい頃からちっひーとはよく遊んでたんよ〜」

「お姉ちゃん感覚でしたね。」

「だから園姉なんだ…」

「そのっちは供物も返ってきたし、もう祀られることはないんでしょ?」

「もっちろん!でも家が家だし大赦の人はとてもよくしてくれるよ〜」

「乃木は上里と並んで最高位家の1つだからね。」

「今度誰か祀ったら速攻で潰すけどね♪」

「ちひろちゃんそれはマズイよ…」

「大赦から何かメッセージはある?」

「今まで通り生活してだって。」

(怪しい…)

「みんなの奮闘のおかげで2、3年くらいはバーテックスが来ないと考えられてるからね〜心配ないよ〜ちっひー。」

「さすが園姉。」

「嘘!?私なんか50回に一回当たるかどうかだってのに!?」

「時間が違うよお姉ちゃん…」

「今は溜まってる依頼片付けちゃいましょう!」

「ま、そうね。乃木は何が得意なの?」

「…」

「またぼーっとしてるわね…」

(いや、夏凜さんこれは…)

「考えてますね、ぼーっとはしてない。」

「嘘!?」

「わっしー、ちっひー、私って何が得意なの〜?」

「文章系とかじゃない?考え方が独特だけど。」

「芸術方面に強いと思うわ。ただとんがってて一般的に通じるかわからないけど。」

「あたしタイプか…」

(それは絶対。)

「「違うと思います。(思うよ…)」」

「「あ、息合ったね!イェーイ!」」

「そういえば、園ちゃんの精霊はなんだったの?」

「鴉天狗とか〜枕返しとか〜いろいろいたね〜」

「ふっ!人型はわたしだけだったようね。」

「外道め。」

「友奈ちゃんそれ似てる。」

「甘やかしすぎでしょ!風、お手本を見せてやりなさい。」

「唐突に振ってこないでよ…こほん、諸行無常。」

(えっ!?)

「似てる…」

「お姉ちゃんすごい似てるよ!」

「ふん!どんなもんよ!」

「嘘…恥かかせようと思ってたのに…」

 

ーーー夜ーーー

ーーーちひろ家ーーー

「ほんとにずらされてる〜!」

「当たり前でしょ。全く、めっちゃびっくりしたんだから。」

「でも、嬉しかったんだよね?」

「…そりゃそうだけど…」

(お姉ちゃん来たら誰だって嬉しいもん…)

「はいこれちっひーに。」

「これって…勇者システムのスマホ!?」

「ちっひーのだけアップデートもうまくいかなくて他のより強化されたんだって〜勇者アプリは自分でアンロックしない限り樹海化にも巻き込まれないらしいし大丈夫だよ〜あ、これ春信さんが言ってたから。」

(春信さんなら納得。)

「アン!」

「ウー!」

「チュッ!」

「も〜も〜」

「ガウ!」

「キャッ!」

「リュ〜」

「シャ?シャッ!」

「ヒヒン!」

「メ〜」

「みんな!って増えてる!?」

「謎だね〜」

「ま、餌また買わないと…」

「みんな〜乃木園子だよ〜よろしくね〜!」

『ハウ!』

「なに今の〜?」

「全員が息合ったときの声。」

 

ーーー翌日ーーー

ーーー東郷sideーーー

今日はそのっちが遊びに来ていた。

今日は気を使ってくれたのか友奈ちゃんも遊びに来ない。

「う〜ん、なんともわっしーらしい和風たっぷりなお部屋だね〜」

(だって…)

「和であればあるほど落ち着くのよ。」

私たちは積もる話をした。

大切な友の話やこれからの未来についての話など、たくさん、たくさん語り明かした…

 

ーーー風sideーーー

(うーん、どうしたもんか…)

「お姉ちゃんどうしたの?」

「ああ、樹?ちひろとマイハザしてなかったっけ?」

「私は途中でやられたの。ちひろちゃんはまだやってる。で、どうしたの?」

「このお皿、もういらないかなって。」

「なんで急に?」

「昨日精霊の話が出たからね…供物にされるのは困るけど精霊は私たちを守ってくれてたのよね…」

「仲よかったもんね、お姉ちゃんと狗神。」

「これから役立ちそうなのよね…モフモフだし…戻ってきて欲しいわけではないけど寂しいって複雑だわ…」

「お姉ちゃん、わたしモフモフしてないけどあっためることならできるよ。」

「…ありがと。樹、少し背、伸びた?」

「伸びてましたね。」

「ちひろちゃん?マイハザは?」

「ボスで死んだ。ということで今度は3人でクリアしましょう!」

「うん!」

「足手まといなりそうだけど頑張りますわ…」

 

ーーー夏凜sideーーー

(たしかにもうお役目は終わったのかもしれない。でも私は大赦の人間。)

「いつお呼びがかかるか!分からない!壁の外が!あんなである以上!じっとしてなんかいられない!」

「夏凜ちゃーーん!!」

「友奈!?」

ズルッ

「うわ!?」

また転びかけるが

ガシッ

そこはきちんと私がキャッチする。

「今度は受け止めてあげたわよ。」

「えへへ、ありがとう。ちょっと立ちくらみ。」

「また?気をつけなさいよ。もう。」

(友奈だけはまだ完治しきってないんだから。)

「ねえ、今日夏凜ちゃん家遊びに行っていい?明日お休みだし。」

(え!?えっ!?それって泊まる前提ってこと!?)

「しょ、しょーがないわねぇ!!」

 

神世紀300年・秋 勇者部は休息の時を迎えていた。




園子が来たッ!!


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国防仮面

ーーーある日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「うーん…」

「どうしたの?樹。そんな怖い顔して。」

「たしかに。園姉がなんかやらかした?」

「ひどいよちっひー〜」

「国防仮面…」

「?なにそれ?」

(どっかで聞いたような…)

「今巷で話題になっている謎のヒーローなんだけど…」

『国を守れと人が呼ぶ! 愛を守れと叫んでる!憂国の戦士、国防仮面見参!』

「なんか初めて感がしない…なんでだ…?」

「そうなんだよ…どっかで見たような…」

「あー、どこかで聞いたと思ったら…はあ…」ボソッ

「面白いよね〜!」

 

 

ーーー夜ーーー

ーーー樹sideーーー

「こっちにもないよ、お姉ちゃん。」

「うーん、困ったわねー!」

今私たちは公園にいます。

二人で足りなくなった醤油を買いに行ったところ、お姉ちゃんが鍵を落としてしまったのです。

そんなとき、

「あなた方が探している鍵はこれではないでしょうか!」

(この声って…)

「憂国の戦士、国防仮面見参!はい、どうぞ。」

「あ、ありがとう…」

「それではこれで!」

タッタッタッ

「いやー、いい人だったわね〜国防仮面。」

「そうだね、でもやっぱり違和感が残るような…」

「話聞いとけばよかったわ…」

 

ーーー翌日・昼ーーー

ーーー夏凜sideーーー

「ついてないわ…本当に…」

(まさかスーパーの煮干しがきれてるなんて…あの煮干し他だと本店にしかないのに…どうしましょう…)

「あなたが求めている煮干しはこれですね?」

「そうそうこれよこれ!って誰!?」

「憂国の戦士、国防仮面見参!」

(…東郷っぽいのは気のせいかしら。)

「…」

「わ、私はこれで…」

「はい、代金。さすがにそっちに払わせるわけにはいかないでしょ。」

「ありがとうございます!愛国心さえあれば私は何度でも現れるので!」

タッタッタッ

(ていうかあれ…東郷じゃない?)

「あ、夏凜!」

「夏凜さん!」

「風!樹!どうしたのよ、走ってきて。」

「今国防仮面いなかった?」

「いたけどそれがどうかしたの?」

「実は前会ったときに少し違和感を感じて…今度会ったら話聞こうって。」

(いや…あれ…)

「東郷じゃないの?」

「「あっ!」」

 

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

なぜか勇者部は須美さんと友奈さん以外集められていた。

土曜日なのに。

「で、なぜ友奈さんと須美さん以外わざわざ休日に?」

「今日みんなに集まってもらったのは他でもない、国防仮面を捕まえるためよ!」

(なるほど…)

「国防仮面は東郷の可能性があるからね、もしそうならなんでか聞き出さないといけないのよ!樹!」

「うん、今までの国防仮面の出た時間を調べると基本的に夜、休日は昼も、って感じで出てます。」

「それにちひろはわからないと思うけど東郷最近よく教室で寝てるのよ。その理由が国防仮面やってるからって言うのだったら…」

「キツーく怒らないと。」

「風さんのキツーくなんて怖くないですけどね。」

「そしてこれは正式な依頼でもあるわ!」

(え?以外。てかスルーしやがったな!?)

「依頼人誰ですか? 」

「…友奈さんです。国防仮面さんとどうしてもお話ししたいそうで…」

(まじか。ていうか…)

「園姉ぼーっとしてない!」

「ほわっ!?小説のこと考えてた〜」

「園子らしいわね…」

「よーし!勇者部ファイトー!」

「おー!!」

 

ーーー風sideーーー

「とは言ったものの、讃州市のどこかに出るのを見つけろって言うのだから我ながら鬼だわ…」

現に別れて捜索開始してから1時間、誰からも見つけたという連絡はなかった。

(さて、どう見つけますか…)

「おー、そこの嬢ちゃん!今暇?」

(ん?なにこいつ。ナンパ?もうちょっと言葉選びなさいよね。)

「今ちょっと人探ししてるので…」

「そんなこと言わずにさぁ〜ちょっとでいいから〜」

(しつこいわねー。)

「しつこい男は嫌われますよ。では…」

ガシッ

「逃すかよ!」

(っ!?こいつ…力強すぎない…?)

「今日はたっぷり俺と遊ぼ…」

パシュン

どこかから飛んできたコルクはその男の指に当たる。

「いって!?」

「レディに手荒なことをするなんてね…憂国の戦士、国防仮面見参!」

(今だ!)

「ちひろ直伝手刀じゃあ!」

ゴーン

「ヘブシッ!」

チーン

(危なかった…って今の正確な射撃!間違いない!)

「ではこれで!」

ダダダダッ

「あ、待ちなさい!東郷ー!」

 

ーーー夏凜sideーーー

「なに!?国防仮面が出たですって!?」

「そうなのよ!ナンパされて捕まりかけたときに助けてくれて、あの射撃は間違いなく東郷よ!なんとしても捕まえるわ!」

「オッケー!園子、あんたもよ!」

「りょーかいでーす、にぼっしー。」

「にぼっしー言うな!」

スッ!

「ん?今誰か当たったような…ってあいつ!私のカバンがない!待ちなさい!」

(なんでこんな時になのよ!)

「待って〜にぼっしー!」

(園子は園子で早いわね!?)

「憂国の戦士、国防仮面見参!」

「国防仮面!?」

シュルルルル

ギチッ!

「確保!」

(手際いいわね…でも!)

「東郷!あんたも確保させてもらうわよ!」

「くっ!カバンはここに置いておきます!ではさらば!」

(カバン回収してすぐ追いつけばいいこと!私の方が東郷より早いんだから!)

「さてカバンを…ってカバンは!?」

「ふっふっふっ…にぼっしーのカバンはいただいたんだぜ〜!」

「園子!今は遊んでる場合じゃないでしょ!」

(ていうかいつのまに私より前行ってたのよ!?)

「私に追いつけたらいいんだぜ〜!」

「上等!」

 

ーーーちひろsideーーー

「ということだから東郷のことは任せたわよ!」

「了解です。ついでに全て終わったら園姉も締め上げるので。」

「ちひろちゃん怖いよ…」

「きゃー!誰か助けてー!」

「「!?」」

そこには女の人にナイフを突きつける男の姿があった。

「突きつけられそうの段階だったらどうにかできたのに…」

「できるんだ…」

「早く車を持ってこい!じゃなきゃこいつを殺すぞ!」

パシュン

カキンッ

「うあっ!誰だ!」

「憂国の戦士、国防仮面見参!」

「なんだとっ!?」

「樹ちゃん!ナイフを警察の人に!」

「ちひろちゃんは!?」

「あいつを投げる。」

「えっ!?」

 

ーーー樹sideーーー

「は、はい、これ…」

「ありがとうございます。」

警察の人にナイフを届けて後ろを見ると、

ちひろちゃんが相手の腕を掴んで向きをかえ、そのまま一本背負いしていました。

「グェッ!」

「ふぅ…警察さんどーぞ。」

「ご、ご協力、ありがとうございます。」

「ではこれで!」

ダダダッ

「あ、待ってください!」

ダダッ

必死に追いかけますが…

「嬢ちゃん、君では私には追いつけない。疲れるだけだよ。」

「たしかにそうです…でも、私はですけど。」

「!?まさか!?」

ガシッ

気付いたときにはもう遅く、ちひろちゃんが国防仮面の腕をガッシリ掴んでいました。

「くっ!?」

「こちらも依頼なんでね、キチンと来てもらいますよ、国防仮面、いや須美さん。」

 

ーーー部室ーーー

ーーーちひろsideーーー

「ヘルプー!誰かー!「袈裟固め!」ギャアアアア!」

「さて…何から聞けばいいのやら…」

「みんなー!国防仮面さん見つかったのー!?」

「っ!友奈さん!?」

「こないだは危ないところを助けていただいてありがとうございましたー!」

「そもそも友奈が会いたかった理由ってなんなの?」

「体落とし!」

「ヘブッ!」

「前に財布落としたときに一緒に探してくれたんだって。」

「そーなんだー…」

「握手してください!握手ー!」

「わ!は、はい!」

「大外刈り!」

「ガハッ!」

「友奈さんのはしゃぎっぷりすごいね…」

「そうね…」

「なんだか国防仮面さんってすごく話しやすいんだー!なんでだろう?」

「そりゃそうでしょ…」

「脳天落とし!」

「ピギャッ!」

「ねねっ、今日はどうして勇者部に?」

「だって…国防仮面が私だからよ!友奈ちゃん!」

「知ってるわよー…」

「そ、そんな!?国防仮面さんが東郷さんだったなんて!」

「マジなのね…」

「1枚瓦正拳!」

「ウギャッ!」

「…ってさっきからそこうっさい!」

「あ、ごめんなさい。園姉に鉄槌を下してたら…」

「キュ〜…」

「も、もう勘弁してあげて…」

「で、なんでこんなことを?」

「はい。体が元気になったら、居ても立ってもいられなくてしまって…」

「なにが?」

「私が壁を壊してしまったこと…一時の感情とは言え、世界を危機に陥れ入れてしまったのは事実で。それって許されないことだから…私、これからどうやって償えばいいのか…だから…何か罪滅ぼしが出来ないかって考えて…」

「それで国防仮面、ですか…」

「随分…極端…なったね…わっしー…」

「気持ちはわかるけど突っ走りすぎ。」

「すみません…」

「かっこいいな〜国防仮面!私もなりたいな〜!」

「えっ!?友奈ちゃんも…やってくれるの…?」

「ふっふ…実は実は、私もこう見えて…国防仮面2号なんよー!!」

「じゃじゃん! 私3号になる!」

「「イェーイ!イェーイ!」」

(また悪ノリして…)

「これ以上増やさないの!」

「園姉!」

ゴーン

「ギィヤアア…」

「全く…夏凜辺りが真似して煮干し仮面とか現れたらどうすんのよ!」

「真似しないわよ!」

「東郷さん!」

「っ…!」

「皆のために頑張りたい気持ちは私たちも同じだよ!」

「そうだよ、わっしー。何かあったら私たちを頼っていいんだぜ〜!」

「友奈ちゃん…そのっち…」

(全く…須美さんは…)

「一人で溜め込みすぎなんですよ、須美さんは。私が言えることじゃないですけど。」

「ま、そういうことよ、東郷。」

「みなさんの言う通りです。」

「勇者部五箇条、悩んだら相談、ね!」

「みんな…ありがとう!」

「ま、園姉は処すけどね♪」

「オーマイゴッドファーザー!逃げるのだ〜!!」

「逃・が・さ・な・い・よ♪」

ガシッ

「いやぁぁぁ!お助けをーーー!」

「一本背負い!」

「ヘブシッ!」

「「「「「アハハ…」」」」」




あ、ちひろがこんなにスペック高いのは父さんから色々教えてもらってたからです。ちひろの父さん人間国宝とまで言われた逸材なので…






…もっとすごい人がいるんですが(ボソッ)


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三好春信の来訪

ーーー国防仮面騒動の3日後ーーー

ーーー夏凜sideーーー

ピコン

「ん?メール?どれどれ…」

『久しぶり、元気にしてるか?夏凜。俺は元気だ。勇者の件は申し訳なかった。俺にバレたらバラされると思って伝えられてなかった。ま、実際バラしてたけど。でだ、世界を救ってくれた勇者部というのがどんなものか見たくなった。

ので、明後日訪問することとする。ちひろちゃんもいるみたいだし。つーことで、言っといてくれ。よろしくな。』

「…嘘でしょ?」

 

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

「緊急事態よ!みんな!」

「ん?どうしたにぼっしー、そんな慌てて。」

「夏凜ちゃん授業のときとかいつも通りじゃなかった?」

「そんなことにツッコんでる場合じゃないのよ!」

(ここまで慌ててるって…一体なにが…?)

「…来るのよ。」

「?もう一回言ってくれない?夏凜ちゃん。」

「兄貴が来るのよ!」

「そ、それだけでその慌てようですか…ってちひろちゃん…?」

(なっ…春信さんが来る…だと…)

「あの完璧超人が…だと…!」

「…ちひろちゃんまで?」

「ま〜そんだけ言われるくらいの凄さはあるよ〜春信さんは〜」

「そうなの!?楽しみだな〜!夏凜さんのお兄さん!」

「で、いつ来るの?」

「…明日よ…」

(えっ…)

「唐突すぎない?あんたの兄貴。」

「さすがとしか言いようが…」

「ちひろちゃんと夏凜ちゃんにここまで言わせてる辺り相当すごいみたいですね。」

「でも明日って…」

「行動力あるからね〜」

 

ーーー翌日ーーー

「来るわよ…」

「え、ええ…」

「そんな身構えなくていいぜ?」

「どんな人が来るんだろう…」

「すごいとしか言いようがないよ…」

「そこまですごいかな俺…?」

「来るよ〜来るよ〜!」

「総員!歓迎用意!」

「おー!」

「いや〜ここまで準備してくれてると逆に照れるわな〜」

(…ん?)

「…」

「…」

「…」

「あはは…」

「みんな黙っちゃったね〜」

「…」

「?どうしたの?みんな。」

「…あ、もしかして俺のせい?」

「「「「なんでもういるのよ(んですか)…」」」」

 

ーーー少し落ち着いてからーーー

「ということで夏凜の兄の三好春信です。勇者のときは力になれなくてごめんな?これからよろしく!」

「は、はあ…勇者部部長の犬吠埼風です…」

「夏凜ちゃんのお兄さん!結城友奈です!どうやって入ったんですか!すごいなぁ!」

「いや、ジャンプして外から窓開けただけだよ。褒められるほどのことはしてないって。」

「どうやったらそんなことが…ここ3階なのに…」

「…須美さん、あれがあの人です。」

「…ていうかあんたメールでも書かれてたけどなんか関係あんの?」

「父にいろいろ武道教えてもらってたらしいです…」

「す、すごいね…ちひろちゃんのお父さんも…」

「で、お詫びっていうかなんていうか…で一人ずつ好きなこと頼んでいいぞ。」

「おお〜」

「じゃあ、私からいいですか?」

「おう、どんと来い!」

「夏凜ちゃんの過去とか知りたいです!」

「ああ〜それ私も〜」

「ちょ!?友奈!?園子!?」

「よしきた。」

「やめなさい!ばか兄貴!」

「あれは夏凜が1歳のとき…」

「やめろーーーーーー!!!」

 

ーーー終了後ーーー

「面白かったね!園ちゃん!」

「そうだね!ゆーゆ〜!」

「ああ、もう生きてけない…」

(…夏凜さん…)

「ドンマイ…」

「では、次は私行かせてもらいます。」

「ん?でなんだ?」

「ちょっとこちらに…」

「お、おう…」

ゴニョゴニョ

「そういうことな。ならこっち来い、伝授してやる。」

「はい!」

「なに頼んだんだろう…東郷さん…」

「多分ピッキングとかそういう系だと思うよ…」

 

ーーー数分後ーーー

「ふう…いい経験になりました。ありがとうございます。」

「いいってことよ。」

「え、えーと私、いいですか?」

「なんでもいいぞー。」

「みんなで買い物したり、しませんか…?」

「ナイス樹!なら私の願いはみんなでかめやのうどんを食べること!」

「オッケー!じゃ行くか。」

 

ーーーイネスーーー

「すいません、荷物もってもらって…」

「いや、全然気にすることないからな?ちっとも重くねーんだし。」

そんなこと言ってる春信さんの両手にはこれでもかというほどの袋があった。

(そんなこと言ってるけど…)

「「一番持たせてるの風さん(お姉ちゃん)じゃん…」」

「グハッ!」

「大丈夫ですよ〜部長〜私もいっぱい持ってもらってるので〜」

「いやそれカバーになってないわよ…」

「そうなの〜!?にぼっしー。」

「兄貴の前でまでにぼっしー言うな…!」

「お、よく考えられたあだ名じゃねーかよ。」

「兄貴も食いつかないで…」

「これだけ荷物あると先に家に置いてきた方がいいかもしれないね…」

「そうだね、樹ちゃん。」

「オッケー!」

ビュン!

「あ、ちょ…行っちゃったわね…」

「大丈夫です、風さん。10分もあれば帰ってきますよ、あの人なら。」

 

ーーー7分後ーーー

「ふぅ、ただいま、じゃ、行こうか。」

「ホントに化け物だわ…」

 

ーーーかめやーーー

「おお!こりゃうまい!」

「ですよね〜私も最初食べたとき美味しいって思いましたもの〜♪」

「ほんとうまいですよ。ここは。」

「ですよね〜!長時間来れなかったら生気失っちゃいますもん。」

「もう、友奈ちゃん…味覚なくなってたでしょ?」

「あっ!そうだった!」

「全く友奈は…」

「ふっ、いい友達を持ったな、夏凜。」

「な、なによ兄貴!?」

「いや、こんないい友達がいてくれたおかげでお前は変わったのかなってな。」

(春信さん…)

「なっ!?」

「どうかこれからも、妹をよろしくお願いします。」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

ーーー帰り道ーーー

「樹ちゃん、遅いな…」

「たしかにそうね…」

樹ちゃんがトイレに行ってから10分、あまりにも遅すぎる。

「全く心配性ね…っ!あそこの路地から一瞬樹見えたわよ!」

「えっ!?えっ!?」

「これは〜なにかあったかも〜」

「行きましょう、風さん。」

「もちろんよ、私の妹に何かしたら後悔させてやるわ!」

ダダダッ

「あ、二人とも待ちなさい!」

ダダダッ

「待ってー!!」

ダダダッ

「あ、友奈ちゃん!」

ダダダッ

「…これヤバめの雰囲気だね〜」

 

ーーー路地裏ーーー

「おい、止まれ。こいつがどうなってもいいのか?」

「人質…あなた死にたいの?誰相手にしてるか分かってる?」

「あんた私たちのことただの中学生とか思わない方がいいわよ。」

「東郷さん?風先輩?なんで黙ってるの?」

「「あいつだ。」」(2話 国防仮面 参照)

「そうだよ、あのときは随分な目に合わせてくれたなぁ?」

「ふーん、でもあんたなんてちひろ相手だったら手も足も出ないわよ。そしたらキチンとお説教でも、ね…♪」

「だからこうして人質を取ってる。それに…俺一人だと思うこと自体が間違いだ。」

(まさか!)

ザッザッ

なんと周りにさらに人が…しかも全員がナイフや刀を所持している。

「敵軍増援確認!20人はいると思われます!」

「わわっ!人がいっぱい!」

「はめられた!?」

「さすがに分が悪すぎでしょ!?」

「せめて樹ちゃんが人質になってなければ…」

「ごめんなさいみなさん〜!!」

(くそっ!でもそういえば…)

「安心しろ、遺体は勇者部にそれっぽく置いといてやるから。」

「それっぽくってなによ!それっぽくって!あんたなんてすぐ大赦に見つかって死刑なるわよ!」

「裏の世界のやつを大赦が?笑わせてくれるね。」

(やっぱり裏の世界に通じてるやつ…)

「さて、まずは厄介そうなお前から…あ、動くなよ?人質殺すぞ?」

(ん?あれ…?)

「樹ちゃん、いないですけど。」

「はあ?そんな嘘が通じるとでも…いねえ!?」

「全く樹ちゃんを人質まで取ってるから最初どう行こうか迷ったじゃねーか。」

そう言って私たちの後ろから来たのは…

「なにうちの妹とその友達に手出そうとしてんだ?てめえら全員刑務所行きだぞ?」

春信さんだった。

無論樹ちゃんを抱えてる。

「なっ!?ど、どうやった!いつのまに…」

「いや、隣の建物の窓から飛び出して、そのまま反対の建物行くついでに樹ちゃん回収しただけだっつーの。」

(相変わらずの化け物…)

「く、くそ!援軍!来い!」

シーン

だが誰も来ない。

「はいは〜い〜こ〜こで〜す!」

裏の方から来たのは…

勇者に変身し、たくさんの武器で気絶した敵一人一人を掲げている園姉だった。

「園姉!」

「そのっち!」

「園ちゃん!」

「ウフフ〜♪ヤバそうだから〜私が呼んできたの〜♪ついでに勇者システムも借りてきた〜♪」

ついでに満面の笑みだが明らかにアウトなやつである。

「くっ!こうなりゃ全員かかれー!!」

そうして全員が一斉にかかるが

シュバァン

春信さんはビルの上くらいまで跳躍し、

「オラァ!」

バキバキバキ!

刀が一斉に固まってたところへとパンチ、刀を一気に割る。

ついでにコンクリートも。

さらに…

「し、死ねぇ〜!!」

と言いながら来たやつらのナイフを逆に手刀で折り、そのままひざ蹴りを腹に食らわせ、隣のビルの屋上に吹き飛ばす。

「こんくらいで…どりゃ!」

さらにデコピンで強風を起こして10人ほど壁に叩きつけ、気絶させる。

「こ、この野郎!10枚瓦正拳!」

それを人差し指で止め、しっぺで相手をコンクリートにめり込ませる。

残った8人一斉にかかるが…

「効かねえよ。出直してきな!!」

回し蹴りで一気に蹴り飛ばし建物に穴まであける。

「さて、残りはあんた一人だぞ?」

「くっ!…逃げるしかねぇだろ!」

ダダダッ

首謀者は逃げ出すが…

(逃げ切れるわけがないよ…)

シュバァン

再び跳躍し、

「いた!脳天落とし!」

ドガァン!!!

相手をコンクリートに頭以外埋める。

そんな化け物っぷりを初めて見た人が言うのはただ一つ。

「…す、すごすぎる…」

 

ーーー警察に突き出し後ーーー

「ほ、本日はありがとうございました…」

「いやいや、べつにいいって!夏凜がお世話なってるんだし!」

「ほ、本当にありがとうございます…私が悪いのに…」

「樹ちゃんは悪くない!絶対!」

「ま、そーだな、結局なんとかなったから気にしなくていいぜ。じゃ、今度こそ本当に帰るからな。遅くまで出歩くなよ?」

「もちろんですとも。春信さん、本当に…」

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

「あ、ありがとう…バカ兄貴…」

「…おう!こちらこそな。学校生活楽しめよ!」

シュバァン

「すごい人だったわね…」

「それがあの人です。」

「カッコいいよね!憧れるなぁ〜!」

「なっ!?ゆ、友奈が喜ぶんならまた呼んでも…」

「「デレてる?」」

「ないわよ!」

「…一つ思ったこと言っていいですか?」

「ん?なに樹、我が妹よ。」

「…春信さんならバーテックスも普通に倒せそうなんですけど…」

「「「…たしかに」」」」

「「「ですよねー」」」

こうして慌ただしい1日は終わりを告げた。




うちの最強チーター三好春信さんです。はい。


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犬吠埼姉妹の上里家訪問

また…忘れてたよ…パトラッシュ…\(^o^)/


ーーー週末ーーー

ーーー風sideーーー

「ここですね。」

「でかっ!?嘘でしょ!?」

「嘘じゃないよお姉ちゃん。」

私たちは今、上里家を訪れていた。

なぜかというと

 

ーーー昨日ーーー

ピンポーン

「はーい、ちひろ?どうしたの?」

「はい、少しお話があって…」

「あ!ちひろちゃん!」

「樹ちゃん!」

「どうしたの?急に?」

「ちょっとね…」

「で、話ってなに?」

「いや、明日、明後日と家に帰ろうと思ってて…」

記憶が戻ってからちひろは時々週末を家で過ごしていた。

(でもいつもわざわざ言いに来ないのになんで?)

「それでなんですが…一緒に行かないですか?」

「「えっ!?」」

(おいおいおい!いくらなんでも家族団らんの時間に邪魔できないでしょ!?)

「いいね!それ!」

(えっ!?)

「でしょでしょ!母さんたちも樹ちゃんにまた会いたいって言ってたし!」

「ちょっと待ちなさい!いくらなんでも家族団らんの中に入ってくわけには…」

「そうだ…よね…」

(はっ!?私としたことが樹を落ち込ませてしまった!)

「予定変更!精一杯楽しませてもらうわ。」

「やった!」

「じゃ、荷物の整理しておいてくださいね。」

「やったね、ちひろちゃん。」コショコショ

「ナイス演技だよ、樹ちゃん。」コショコショ

 

ーーーそして今に至るーーー

(しっかしでかいわね…学校くらいあるんじゃないかしら…)

「そういえば庭ってどれくらい大きいの?」

「庭っていうか領地だけど、3kmの正方形に近い形?あそこの浜まで。」

「「えっ!?」」

(前言撤回。学校よりもでかいわ。)

「す、すごいね…」

「うん、でも乃木だと5kmだよ?」

(もっとでかいの!?)

「わ、わお…」

「うん、じゃ入ろっと!母さーん!父さーん!いるー?」

「ちひろ様、お久しぶりでございます。」

 

ーーー樹sideーーー

目の前の襖から現れたのは明らかに執事っぽい人。

「あ、じいじ。久しぶり。」

「ちひろ様、元気でなりよりです。そちらが樹様と風様ですね?」

「は、はい…あなたは…?」

「私は上里源吾。ちひろ様の…」

「執事、でしょ?」

「雰囲気出てますから…」

「いや、お爺ちゃんだよ。」

「「嘘!?」」

「いやっはっはっは!すいませんね〜!イタズラが好きなもので。ついなにも知らない人が来るとやってしまうのですよ!」

(すごい年とってそうなのに…)

「すごい元気だわ…」

「そ、そうだね…」

「月夜は今昼ごはん作っとるよ。父さんはレッスン中じゃ、どうする?」

「じゃ、ひとまず部屋に案内してる。どこの部屋にしたの?」

「そりゃ婆さんに聞いとくれ!ワッハッハ!」

(え?でもお婆さんいない…)

「ど、どうすればいいんだろう…ちひろちゃん…」

「大丈夫。ばあば!最初っからいるんでしょ!」

(え?)

「ありゃりゃあ、やっぱちーちゃんにはバレちゃうの〜」

なんと横の靴箱から出てきました。

「ちひろ…あんたすごいわね…」

(というか…)

「そ、そんなところに隠れられるスペースあるんだ…」

「これがあるんじゃの〜フォッフォッフォ!わしゃ上里来夏じゃ。よろしくのぉ〜!!」

「で、部屋は?」

「47号室じゃ。48号室とつなげてあるわい。」

「ありがと!行こう!風さん!樹ちゃん!」

「え、ええ…」

(ちひろちゃんの家の人たち元気だなぁ…)

 

ーーー47号室ーーー

「でかくない!?」

(教室2個分くらいのスペースはある…でかいなぁ…)

「まあ、部屋二つくっつけてますから、今は。」

「そういう問題じゃないと思うんだけど、2つくっつけててもこの広さはありえないと思うんだけれど。」

「そうですかね?」

たしかに、普通の家の部屋は教室くらいでかくはありません。

「次どこ行きたい?リビング、厨房、植物園、展望台、池、運動場、図書館、温泉etc…好きなとこいいよ、樹ちゃん。」

(うーん…なら!)

「図書館で!」

 

ーーー10時・図書館ーーー

「もう驚かないわよ…」

天井まで敷き詰められた本棚にはたくさんの本が納められていました。

(ここなら歌の本とかいいのあるかも…!)

「先祖代々続く図書館でね〜一番古いらしいよ。あと大赦が検閲してないものもあるとかないとか言うし。昼ごはんできたらじいじが呼びに来るだろうし、それまで本読んでよ!」

「んー、私読書苦手なのよねー。ま、樹の頼みだからいいんだけどさ。」

「私は読書好きなので小さい頃からよく来てました。」

「マジで?」

「マジで。」

(あそこの本棚から調べよっと!)

「えーと、これでもない…あれでもない…って、キャッ!」

ドダダダダッ

本が一気に落ちてきて、下敷きになってしまいました。

「「樹(ちゃん)!!」」

(本一気に落ちてくるなんてついてないよ〜…)

「大丈夫!?」

「う、うん…なんとか…」

「うん悪いわね。って!これは!」

お姉ちゃんがなにか見つけたみたいです。

「なんですか?それ。」

「女子力について書かれてるわ…!」

「「なんだ…期待して損した…」」

「ひどっ!?」

「じいじのこと呼んだ?」ガチャ

「呼んでない。何の用?」

「ご飯できたってよ。ファッファッファ!」

「オッケー!」

「じゃ、先行っとるわい。」ガチャ

(…なんで呼ばれたと思ったんだろう…)

「ばあばもいるよ。」ヒョコッ

おばあさんはなぜか天井から…

「な、なんでそこからなんですか…?」

「知らないわい。フォッフォッフォッフォ!」スポンッ

「…行こっか…」

「そうだね…」

「ええ…」

 

ーーー11時・リビングーーー

「「「いただきます。」」」

「「いただきます!」」

「風さんは初めてでしたよね?ちひろの母の月夜です。今日と明日は楽しんでいってね!」

「ちひろの父の和人だ。二人とも、よろしく。」

(月夜さん少し明るくなった?)

「月夜さん少し明るくなりましたか?」

「ちひろのことを思い出したからだろうな。」

「そうなのかしら?」

「本人気づいてないんですか…」

「いや〜私鈍感なのか自分の変化も気づかないことがあって…」

「なにはともあれ、ちひろを支えてくれて、ありがとうございます。娘のことを忘れるような無責任な私たちにはできなかったので…」

「父さん、悲しんでくれただけでいいって言ったじゃん。」

「それでもだ。ちひろを救ってくれて、ありがとう。」

(そんな…)

「私の方こそ助けられてばっかです、ちひろちゃんに…」

「そうね、私も言われるほどのことはしてませんよ。むしろ助けられてますから。」

「本当にいい子たちね〜いつでも来ていいからね?」

「はい、ところであのおじいさんとおばあさんはいないんですか?」

「あの二人なら旅に出たぞ。」

「「えっ!?」」

「自由だからなぁ…」ズルルッ

「そ、そうなのね…あ、このうどんうまい!」ズルルッ

(ほんとだ!)

「すごくおいしいです!」ズルルッ

「本当に?ありがとね。」ズルルッ

「お前の手打ちうどんはうまいからな。」ズルルッ

「そんな褒められたら照れちゃうな〜」ズルルッ

「おう、照れろ。」ズルルッ

「あなた…」

「月夜…」

「あなた…」

「月夜…」

「おしどり夫婦ね…」ズルルッ

「風さん違います。バカップルです。」ズルルッ

「もう結婚してるよちひろちゃん…」ズルルッ

 

ーーー1時・植物園ーーー

「すごい…お花がたくさんある…!」

「これじゃ植物園ってより室内花畑の方があってると思うんだけど。」

「風さん、気にしないでください。」

「あ、はい。」

(お姉ちゃん…あ、そうだ!)

「友奈さんに持ってったら喜びそうじゃないですか?」

「「おお、名案!!」」

「そういうことならたくさん摘んでいきましょう!」

「ちひろが許可したならいいのね、樹!取り尽くしなさい!」

「無論限度はありますけどね♪」

(あ、お姉ちゃん墓穴掘ったよ…今…)

「限度がわからない人にはお仕置きしないと…アハハ♪」

「し、しまった!樹!ヘルプ!」

(どうしよう…ってあっ!)

「あの花見たことない…どんな花だろう…!」

「ちょ!?樹!?いいから助けてー!!」

「もう逃がしませんよ♪」

「いやぁぁぁ!!」

「1本背負い!」

「ガベシャア!!」

(あ、忘れてた…)

「樹ちゃん、いっぱい摘めた?」

「うん!」

「お、結構量あるから袋持ってくるね〜!」

「うん、お願い!」

そんな会話が終わったあと、会話に入れなかった人が声をあげました。

「私…を…のけものに…しない…で…」

 

ーーー3時・博物館ーーー

ーーーちひろsideーーー

「こんなところまであるんだ…」

「お金持ちねぇ…」

ここは博物館、上里家か許されたもののみが入れ、今までの全ての時代のアイテムが展示されているらしい。

ぶっちゃけ私も初めて入った。

(半分は西暦のものだとも言うけど…どうなんだろ?)

「へぇ〜いろいろあるわね〜」

「ん?あ、あれってなんだろう…?」

「どれどれ…300年前の鍬、だね…他のと比べてこれは普通…なんでだろう…?」

(特別にも見えないし…)

「おーい!こっちにもいっぱいあるわよー!!」

「だって、樹ちゃん。」

「行こう!ちひろちゃん!」

「うーんと、西暦の勇者の武器…?物騒ねぇ…」

「ユニークなのが多いですね。私たちと比べて、盾とか鎌とか…」

「私もそっちの方が使いやすそう…」

(うーん、そうかな?)

「でも樹ちゃんにはあれがピッタリだとおもうよ?」

「そ、そうかな…」

「そうね〜樹はあれで東郷と友奈助けてるんだし、充分よ。」

「そっか…えへへ。」

 

ーーー5時・展望台ーーー

「どう?きれいですか?」

「すごいわね…」

「大橋市が見渡せるよ!お姉ちゃん!ちひろちゃん!」

「おー、ほんとね〜!」

「ギリ讃州市も見えたはずですけど…」

「あ、ほんとだ!」

「え、マジ?私見えないんだけど。これは私の中の獣が…」

「視力落ちたんですね。」

「グハッ!ちひろ!この世にはね、正直に言っていいことと悪いことが…」

「お姉ちゃんそれ多分言っていいよ…」

「そんなバカなぁ!?」

「大・勝・利・だ!」

「こうなったら…驚かすわよ!」

「死にたいんですか?」

「すいません。」

「お姉ちゃん…」

 

ーーー6時・食堂ーーー

「ホッホッホ!やっぱ客人のいる夜は盛大にやらんとのぉ!」

「あんなおじさんおばさんばっかじゃやる気が出なくても今日はちひろの恩人じゃからのぉ!腕が鳴って鳴って折れそうやわい!!ファッファッファ!」

「ち、ちひろ…あんたのじいさんとばあさん、旅に出たんじゃなかったの…」

「知らないですよ…じいじとばあば気まぐれだし…」

「大橋市一周旅じゃい!」

「だそうだ。」

「ジュース持ってきたわよ〜」

ズルッ

「ヘブッ!」

「母さん大丈夫?」

「ええ、ありがとう。」

「相変わらずドジじゃなぁ!ヒッヒッヒ!!」

「さすがわが娘じゃ!ヒャッヒャッヒャ!」

「でも来夏ドジじゃないじゃろ。」

「そうじゃが?」

「「ファッファッファ!!!」」

「相変わらず賑やかね…」

「そうだね…」

「慣れてとしか言えないよ…」

「いっぱい食べてね!」

「もちろん、お前がつくった料理なんだ。うまいとわかってるのに食わない理由があるか?」

「あなた…」

「月夜…」

「あなた…」

「月夜…」

「…さっさと食べて温泉行こうか…」

「それがいいわね…」

「そうしましょう…」

 

ーーー7時・温泉ーーー

「プハ〜いい湯ね〜」

「本当だね。これ個人の持ち物なの?」

「先祖様が代々引き継いできたお湯なんだって。だから一般公開はしてないみたい。」

「もったいないわねぇ〜ところで、二人とも成長したわね、入学時に比べて。」

「お姉ちゃん…」

「体のことですか?死にますか?」

「ちがうわよ!いや、体もそうだけどって話よ!精神面よ!」

(ならいいか。)

「二人とも成長して、今じゃ勇者部でいつも必ずしっかりしてる。これで勇者部の未来も安泰ね。」

「にぼっしーもしっかりしてると思うんですけど。」

「あれはツンデレだから。」

「なるほど。」

「納得したら失礼だよ…」

「でも…」

「?」

「私たちの中の部長は永遠に風さんですよ。でしょ?樹ちゃん。」

「うん、友奈さんたちもそう思ってると思う。お姉ちゃんが勇者部の永遠の部長だよ。」

「ブワッ!いいこと言ってくれるわ後輩たちが〜!!」

「…そろそろ暑い…上がりますね…」

「私もちょっと…お姉ちゃんはどうするの?」

「私?もうちょいいるわ。先部屋行ってて。」

「うん!」

 

ーーー8時・47号室ーーー

「なんか話しない?コイバナとか!」

「「嫌です!」」

「ガーン!」

「早く寝るのが一番だと思うけど…」

「そんなぁ!!」

「歴代の写真集あるけど、読む?」

「なぜ歴代?言い方違くない?」

「本当に300年前からあるんですもん。」

「なっ!?」

「すごいあるんだね…」

「どれから見ます?」

「じゃあ私これがいい…ってきゃあ!」

「樹ちゃん!?」

「本日2度目なのに!?」

(樹ちゃん運ないよ…)

「大丈夫?」

「う、うん…でも何かあそこにあるよ…本棚の奥…」

「なっ!?」

(ほんとだ…本棚の奥にあんな空間が!?)

「あんな隠し場所が…」

「何かしらね、かなり古ぼけてるっぽいけど。」

「見てみようよ。」

「そうだね。」

3人で見てみる。

そこには

『今これを読んでいるあなたが、大赦の人間でないことを祈って、歴史に消された勇者の情報を残します。

彼女の名は郡千景。

私たちの友人であり、他の勇者たちと戦い抜き世界を守った紛うことなき英雄。

しかし、大赦はその独断で歴史から彼女を抹消してしまいました。人に刃を向けようとしたこと、それは確かに人々が思い描く勇者とは乖離してしまうのかもしれません。

ですが、我ら人が、その罪が、彼女を凶刃へと駆り立てたことも間違いようのない事実です。周囲の人が彼女を追い詰め、大赦もまた、精霊使用による穢れの累積を認識するところまでたどり着いていても、勇者たちへは精霊使用の厳禁を言い渡すことはありませんでした。

人の心の醜さが、被害者であるはずの彼女を歴史から抹消してしまったのです。

千景ちゃん、これくらいしかできない私を、叶うことなら許してください。』

「なに…これ…」

(上里ひなたってたしか…)

「バーテックスが最初に襲来したときに巫女をやってた人です。たしか。」

「歴史に消された勇者…園子さんみたいに…?」

(これは…)

「多分、もっと徹底的にだよ…」

「どうする…ちひろ、これ見せる…?」

「いや、持って帰りましょう。大赦に見せても意味がないですし。」

「わかった…」

「昔も今も…変わんないんだね…大赦って…」

「そうね…」

「それが…組織なのかもね…」

 

ーーー10時ーーー

「…樹ちゃん、起きてる?」

「うん、寝れなくて。」

「私も。」

「同じだね。」

「風さんは爆睡してるけどね…バルコニーでる?」

「うん、外の空気吸いたいし。」

 

ーーーバルコニー ーーー

「以外だったよね、大赦に歴史から消された勇者がいたなんて。」

(一般人に襲いかかったにしろなんにしろ…)

「人を歴史から消すことは許されることじゃないよ。わざとなら尚更。」

「わざとじゃなくてもやられた方はつらいでしょ?ちひろちゃん…」

(樹ちゃん…)

「うん…」

「だからその状態で2年も耐えてたちひろちゃんはすごいよ。尊敬する。」

「ありがと。私から樹ちゃんに言いたかったんだ。ありがとうって。」

 

ーーー樹sideーーー

(私の方がちひろちゃんに助けられてばっかなのに…)

「え?なんで?」

「総攻撃のあと、私はずっと自分だけでネガティブに考えてた。私のせいでみんながって。いや、そもそも2年前から私の心は止まったままだったのかも。なんで私だけ?ってね。でも、樹ちゃんと、勇者部と出会えて私は救われたんだよ。そしてその勇者部に私が入るきっかけも樹ちゃんがつくった。だから言いたかったの。私のことを助けてくれて、ありがとう。」

(ちひろちゃん…そんな風に思っててくれたなんて…なら…)

「じゃあ、私も言うね?ありがとう。いつも勉強教えてくれたりしてくれて。勇者として戦ってたときもちひろちゃんは心の支えになってたから。」

「えへへ。ありがとう、樹ちゃん。」

「これ以上言わないようにしよう?キリがなくなっちゃう。」

「そうだね。…勇者部が私たちの世代になったらさ。樹ちゃん部長やらない?」

(えっ!?ちひろちゃんの方が絶対向いてるのに!)

「ちひろちゃんがやった方がいいよ。いつも冷静だし、私より部長に向いてる。」

「いや、樹ちゃんの方がいいんだよ。みんなが悩んで話さなくても樹ちゃんはちゃんと話してる。そして樹ちゃんになら話せる。そういう力があるんだよ。樹ちゃんには。私が樹ちゃんが苦手なところは支える。副部長として。だから、ね?」

(うーん…そこまで言うなら…自分じゃわからないところもあるし…)

「わかった。頑張ってみる。だからよろしくね?副部長。」

「うん、もちろん!」

(やっぱりちひろちゃんと話してると楽しいな…ちょっと話してる間に…)

「私もう眠くなってきちゃった…ファアア…」

「私も…寝よっか…」

「うん…おやすみ…」

 

ーーー翌日ーーー

「いいの?こんな早く帰っちゃって。」

「だって園姉もう帰るって言ってるし。べつにいいしょ?母さん。」

「まあ、そうだけどね…」

「あやや〜私のせい〜?」

「完璧にね。」

「部長そんなストレートに言わなくても〜!」

「また来ていいからな?」

「はい!ありがとうございました!」

「ほんとにありがとうございます。」

「堅苦しくせんくてええぞ〜ファッファッファッ!」

「そうじゃそうじゃ!ホッホッホ!!」

「「アハハ…」」

「じゃあまたね!みんな!」

「「「「バイバイ!!」」」」

こうして、私たちは讃州市へと帰っていきました。

 



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わすゆ組のお泊まり会

ーーー東郷sideーーー

今私はちひろ家の扉の前にいる。

なぜかというと…

 

ーーー数日前ーーー

「へいへいわっしー、園子だぜ〜」

「どうしたの?そのっち。」

「そういえばせっかく再開したのにお泊りとかしてないじゃん?」

「ええ。」

(そういうことね。)

「だから、うちらんちに泊まりに来て欲しいんよ!」

「いつにする?翌日に学校がある日はダメよ?友奈ちゃん起こさないといけないから。」

「じゃあ金曜日とかはどうなんだぜ〜?」

「ええ、そうしましょう。」

(あれ?ところで…)

「ちひろちゃんには言ったの?」

「…ま、まだなんだぜ〜…」

(やっぱり…)

「早く言わないと怒られるわよ。」

「今行ってくる〜!!」

(え!?今は…)

「こら!乃木さん、勝手に立たない!」

「はぁ〜い、しょぼ〜ん…」

 

ーーー現在ーーー

(3人では久しぶりね…)

ピンポーン

「はーい、あ、須美さん、どうぞ。」

「ええ、お邪魔するわ。」

「ちっひー!わっしー来たー?」

「来たよ園姉。」

「そのっち、お邪魔してるわ。」

「どーぞどーぞなんだぜ〜!」

 

ーーーリビングーーー

「ぼた餅持って来たけど食べる?」

「おー!!食べる食べる〜!!」

「須美さんいつからぼた餅得意になったんですか…本当に…」

(そんなの一つしかない…)

「友奈ちゃんの笑顔が見たくて…」

「わっしー変わったね〜」

「私もそう思います…」

「そうかしら?」

(変わった自覚がないけど…二人が言うなら変わったのかもね。)

「変わったって言ったらちっひーもね〜」

「え?」

(たしかに…)

「変わったわね。」

「そうですかね?」

「変わったよ〜前はゆーゆに似た性格だったのに〜こんなクールになっちゃって〜!」

「前は人のことをイジるなんてことはできなかったと思うわ。」

「誰かさん方が忘れていたからだと思いますけど?」

「「うっ!!」」

「ちっひー、根に持つタイプだったっけ…」

「やっぱり変わったわ…」

「褒め言葉として受け取っときます。」

(そんなこと言いながら夕食の準備している辺り、しっかりしてるわね。)

2年もの間に私の知る小5の少女はこの中では最もしっかりとした少女へと成長していた。

「ふふっ、ほんとに成長したわね。」

「あ、ありがとうございます。」

「あ、ちっひーちょっと照れてる〜」

「べ、べつに照れてないよ!」

「か〜わ〜い〜い〜!!」

「照れてないから!」

「あ、手刀はダメ…ぎゃああ!!」

(本当に仲がいいわね…)

「ふふっ。」

「あ、ごはんできました。」

「わかったわ。」

「オッケ〜だい!」

「せっかくなので焼きそばを作ってみました。」

(焼きそば…銀の…)

「ミノさん…」

「銀…」

「のけものにしたら化けて出てきそうなので。」

(ふふっ…)

「たしかにそうかもね。」

「化けてなくても出てくるんじゃないかな〜?」

「こんな賑やかだったらでてくるかもね。」

「銀さん明るいの好きですしね。」

「「「あはは。」」」

(そういえば…)

「祭りのときに当てたキーホルダーってまだ持ってる?」

「もちろん〜!」

「私も持ってます。銀さんの分は墓に届けておきました。」

「さすがちっひー!」

「頼りになるわ。樹ちゃんもしっかりしてるし、勇者部の未来は安泰ね。」

「みなさんがいなくなったあとも続くよう、二人で頑張ります。」

「おお〜心強い〜!」

「いただきますしましょう。早く食べないと冷めちゃう。」

「「「いただきます。」」」

「はむ。さすがちっひー!!」

(うん、これは…)

「絶品ね、腕上げた?」

「伊達に一人暮らししてませんから。」

「でも私まだちっひーの焼きそば食べたことなかったよ〜また作って〜!」

「もちろんだよ、園姉。」

「今度お菓子代わりに頼もうかしら。」

「それ友奈さん悲しみますよ?」

「ならやめるわ。」

「わっしーはゆーゆ第一だもんね〜」

「友奈ちゃんに救われたからね。」

「なら私は樹ちゃんに。」

「ちっひー、いっつんとベタベタしてない〜」

(それって私と友奈ちゃんがベタベタしてるってことかしら?)

「そこまでやるのはちょっと…」

「私と友奈ちゃんベタベタしてるかしら?」

「はい。」

「すっごいしてる〜小説のいいネタになるんよ〜!!」

(そんな…)

「自覚してなかったわ…」

「そこはしときましょうよ…」

「かわいい〜」

(あら?ところで…)

「焼きそば一人前にしては少なくないかしら?半人前くらいと思うのだけれど。」

「あ〜言われてみれば〜」

「それはこれのためです。」

そう言って出されたのは見たこともないうどん。

「なにかしら?これ。」

「焼きうどんっていうらしいです。園姉が実家の倉庫からレシピを見つけてきました。」

「どや〜褒めて褒めて〜!」

(そういえば前帰ってたわね…そのときか…)

「すごいおいしいわ、ありがとね、二人とも。」

「わ〜い、褒められた〜!!」

「ありがとうございます。」

ピピピ

「お風呂わきましたね。」

「誰から入る〜?」

「好きな方からいいわよ。」

「須美さんどうぞ。」

「わっしーいいよ〜」

「え、ええ…」

 

ーー全員が風呂から上がったあとーーー

「じゃ、なんの話する〜?」

(そんなの一つしかないじゃない…)

「そのときも…」

「怖い話はやめましょうよ…」

「えっ!?」

「以外って顔されても…これで園姉が急に抱きついてきたら寝れなくなるし…」

「私抱きつかないよ〜?」

「そ、そうなのね…わかったわ…」

「お願いします。」

「あれ〜スルーしないで〜?」

「でもそしたらなんの話する?」

「思い出共有しません?」

「スルーだ〜ガーン…」

(あ…そのっちスルーしちゃってた!?)

「ごめんねそのっち…うっかりしてた…」

「別にいいのに須美さん…すぐ復活しますし…」

「わっしー、心配してくれてハッピーなんだぜ〜!」

「ほら言いましたよね…」

「ほんとね…」

 

ーーー真夜中ーーー

ーーーちひろsideーーー

「スピ〜スピ〜♪」

(眠れないな…なんでだろう…)

「ちひろちゃん起きてる?」

「…はい。須美さんも眠れないんですか?」

「…ええ。銀のことを考えると、ね…」

(私も無意識に考えてたのかな…)

「私は…なんとなく、眠れなくて…多分無意識に考えてたんだと思います。」

「…ごめんね。ちひろちゃん。」

「どうしてですか?急に。」

「私が壁を壊したとき…私、ひどいことを…」

 

『何も知らないあなたに…何がわかるの!思い出を、大切な友達を忘れてしまうことが!どれだけつらいか!』

『忘れる苦しみは知らなくても!忘れられる苦しみは知ってますよ!』

『そんなわけないでしょ!この戦いが初めてのあなたは!』

 

 

『でも!あなたはみんなにそのことを言わなかった!所詮あなたも大赦と同…』

 

(…)

「ちひろちゃんも…被害者だったのに…誰よりも苦しんでたはずなのに…」

「…気にしないでください。元はといえば最初からいえばよかった話、私に非があるので。」

「だとしても私の言葉はあなたを傷つけたはず…」

「過ぎたことは忘れましょうよ。今世界があるのは須美さんが一人であそこまで抑えてたからです。みなさんも気にしてる人は誰もいませんよ。」

「…ありがとう。そうね、前向きに行かないと。」

「…結局お互い自分一人で溜め込んだ結果、状況悪化してますし、悩んだら相談、ですね。」

「…ええ。そうね。ありがとう。もう寝ましょう?」

「はい…ふぁああ…」

「銀…どこかで見ててくれてるかしら…」

「あの人のことです。きっと見て羨ましがってますよ。」

 

ーーー翌日ーーー

「すっごいよく眠れたんよー!!」

「須美さん寝れました?」

「ええ。ちひろちゃんは?」

「こっちもです。」

「ふふっ。」

「…ふふっ!」

「何さ〜私のけものにして〜プー!」

「あー、ごめんね園姉…今朝ごはんつくるから…」

「そのっちよく眠ってたし…」

「なら別にいいんよ〜!」

(…神樹様、あわよくばこんな日々が続いていきますように。お願いします。)

だが、世界とは、現実とは非情なものである。

 

ーーー帰り道ーーー

ーーー東郷sideーーー

(最後まで楽しかったわね。ん?うちの前に止まってるのって…大赦の車…?)

「東郷美森様ですね。」

「え、ええ…そうですけど…」

一人の少女の願いは、

「折り入って重要なお話があります。」

無慈悲にも壊されようとしていた。

 




もう1話だけ投稿します!!


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勇者の章
プロローグ 新たな出会い


ここから勇者の章です!個人的にはかなりの力作…のはず(´・ω・`;)


ーーー天の神sideーーー

「やはり人間は…生贄を差し出すか…もう…意味をなさないも同然だと言うのに…」

(やはり人間はどこまでも…腐敗している…)

「…滅びの時は近いぞ…人間…」

 

ーーー東郷sideーーー

私がいるのは家。そして私の周りには…たくさんの大赦の人がいた。

(覚悟は…決めた。)

「それでは東郷美森様、行きましょう。」

「はい。」

そして私は、大赦の車に乗り込んだ。

(みんな…ごめんね。また約束…破るよ…だから私のことなんて…忘れて…幸せにね…)

 

ーーー???sideーーー

(須美…相変わらずだな…)

「まあ、そこが須美らしくもあるんだがな…さぁーて、私も本格的に動き出さないとな〜!!」

(私が守ってみせる!みんなを…この世界を!)

「例えこの命が尽きようとな…!!」

そう言って私は、壁からどこかへと跳躍した。

 

ーーーちひろsideーーー

「ジェラート美味しかったね!」

「でしょ!樹ちゃん!」

私たちはついさっきイネスに行ってジェラートを食べて来た帰りだった。

そんな時、

「あ…あそこに猫!」

「ほんとだ!」

大きな木の上に猫がいます。

必死に爪で引っかかってるけど…

(高い…まずいな…)

「樹ちゃん!ちょっとカバン持ってて!」

「えっ!?」

「あの子助けてくる!」

「う、うん!」

(ふんばりもあんま聞いてない…落ちてきたのを受け止める方がいいか…!)

ズルッ

猫はついに落下してしまう。

「くっ!間に合えぇぇぇぇぇ!!」

「危なぁぁぁい!!」

そしたら反対からも飛び込んでくる人が。

「「えっ?」」

ゴンッ!!

「「いったーーー!!!」」

「ちひろちゃん!大丈夫?」

「う、うん…猫も無事だよ。」

「よ、よかった…すいません…つい体が動いてしまって…」

「いや…こちらこそ…ぶつかってしまって申し訳ない…」

「僕は讃州中学に転校予定の蛇遣竜治です。」

「あ、奇遇ですね。実は私たち、讃州中学に通ってる1年生です。」

「ほんとですか?偶然もあるもんだな…!」

「私は犬吠埼樹!」

「私は上里ちひろです。よろしくね、竜治君。」

「はい、よろしく。二人とも!」

「せっかく会ったんだし、三人でどこか行く?」

「いいねそれ!!」

「え!?俺もいいの!?」

「もちのろんだけど?」

「ありがとう!!」

「いえいえ!さあ!行きましょう!!」

「おう!」

「おっけー!!」

私たちはまだ知らなかった。

この出会いがのちに世界の命運を変えることになるということを。

今、世界は大きな動きを見せていることを。

 




pixivに投稿してたのが700文字程度で足りなかったので補いました…まさか文字数制限あるとは…


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1話 思い出して

ーーーちひろsideーーー

「勇者部は、勇んで世のためになることをする倶楽部です。なるべく諦めない。成せば大抵なんとかなる。などの精神で頑張ってます。今日も勇者部出発!っと…」

「小学生の作文か!」

「中学生だよー!」

「知ってるわよ!作文のクオリティよ!」

「絵のレベルが小学生の夏凜さんが言えることですか?」

「なっ!?なんですって!?」

「友奈、タウン紙で勇者部の活動を紹介してもらうんだから、いいキャッチコピーを考えてよね。」

「はーい!」

「おお、これは…樹!ちひろ!見て!」

「ん?あらら…」

「すごい…お姉ちゃん、幼稚園からお礼のメールがたくさん来てる!」

「マジ?」

「わあ!すごいね!」

(…竜治君の前ってパソコン担当誰だったっけ…なんか違和感を感じるんだよなぁ…)

「この間のはバカ受けだったからね。」

「「親御さんは苦笑いでした(だった)けどね。」」

「グサッ!」

そんなとき、

ガラガラ

園姉が入ってきた。

「ごめんごめん、もう始まってる〜?」

「園子先輩、こんにちは。まだ始まってないです。」

「よかった〜掃除の途中で寝てしまったんよ〜」

「園子…そんなときに寝れるのはあんたくらいよ…」

「わあ!褒められた!」

「良かったね!夏凜ちゃんはなかなか人を褒めないんだよ!」

「わーい!わーい!」

(園姉…それ以前に…)

「寝ないようにしないとダメなんだってば!!」

「ひいぃぃぃ…ごめんなさぁい…」

「「アハハ…」」

「ま、7人全員揃ったわね。12月期の部会、始めるわよ。」

「「「「「「はーい。」」」」」」

「今、依頼来てるところを地図に貼ってて…」

(…文化祭の写真も…なんであそこだけスペースを空けてるんだろ…)

私の視線の先には友奈さん、夏凜さん、風さ

            ・・

ん、樹ちゃん、そして私の5人が写ってる写真があった。

 

ーーー日曜日ーーー

ーーー犬吠埼家ーーー

「零は無。」

「っ…」

「そんな概念を思いついたインドの人はすごいと思うヨガヨガ。」

「あ、あの…もっとこう…受験対策を…」

「園姉ちゃんとやりなよ?」

「バッチシグーだよ!!」

「なんで今日はちひろちゃんじゃなくて園子さんなの?あ、できたよ。」

「うん、オケ…園姉も頭いいし、教えるの私よりうまいしね。」

「まず3年生の風先輩を1年生のちひろや2年生の園子先輩が教えてるのがおかしいと思うのは俺だけ?」

「大丈夫、私も思ってるから…」

「樹ちゃんほとんどあってるよ。ここだけだわ。」

「ありがとう。んー?あってると思ってたんだけどな…」

「そこは1じゃなくて2だな。」

「あ、ほんとだ。」

「2年生までは成績よかったんですよね?」

「べらぼうによかったわよ!でも今はべらぼうにまずいわよ!」

「静かにしてください。」

「だってぇ…色々ありすぎたんだものぉ…」

「ふーみん先輩が頑張ったから、今があるんだもんね。」

「…?途中勢はわかんないからキツイわ…」

「どんまい。」

「ベッドでずっと見てたから。勇者部楽しそうだなー、楽しいだろうなーって。」

(…園姉…)

「また学校に行けるようになるなんて思ってなかったからなぁ…嬉しいな♪ってね!」

「???」

「竜治君わからなくて当然だから大丈夫だよ…」

(…やっぱりどこか変な気がする…なんなんだ…この違和感…)

 

ーーー友奈sideーーー

私は今夏凜ちゃんとかめやに来てます!

野球部の助っ人の帰りです!

「日曜日なのにありがとうね!夏凜ちゃん!」

「ん?べつに。たまたま暇だったし。」

(でも…)

「夏凜ちゃんすっごいカッコよかったよ!」

「友奈もよかったわよ。」

「ありがとう!」

「いつも思うけど、勇者部って変な部よね。」

「だから楽しいよね。毎日違うことが起きて!」

「まあね。」

ーーー帰り道ーーー

「日が暮れて、また明日だね。」

「そうね…休みって短いわ…」

「帰ったら宿題やらなきゃね。」

「私はもうやってあるわよ。」

「え!?朝から試合だったのに!?」

「土曜日のうちによ。当然でしょ。」

「さすがだな〜」

キッキッ

私たちを車イスの人が通り過ぎる。

(ん?車イス…)

「どうしたの?友奈。」

「ううん、なんでもない!」

(なんでこんなに気になるの…?)

 

ーーー曜日ーーー

ーーー部室ーーー

「1年生到着しました。」

「「じゃじゃーん!!」」

(あれは…ケーキ!?)

「「わー!」」

「おー。」

「そのケーキどこから密輸してきたの?」

「密輸って園姉…」

「今日家庭科の授業があったんです。」

「俺のは他の班員が持ってったんで。」

(絶対美味しいだろうなぁ〜)

「早く食べようよ!」

そして樹ちゃんが箱の蓋を開けると中から素晴らしいケーキが!

「すごい!」

「ちひろちゃんが作ったやつです。」

「樹ちゃんのは味はともかく見た目がアレだったからね…でもここに持ってくるのは樹ちゃん発案です。」

「偉いぞ二人とも。」

「ではさっそく…」

「「「はむ。」」」

(!!これは…)

「美味しい!」

「うん!すごいおいしいんよ〜!さすがちっひー。」

「スポンジとか樹ちゃんですけどね。」

「うう…ついに我が妹が食べられる料理を…お姉ちゃん嬉しいわ…」

「風先輩それ逆にディスってますよー。」

「いくらでも食べられるわね、これ。」

そしてみんなが最後の1個に手を伸ばし、止まる。

「あ…夏凜ちゃんどうぞ。」

「え?いやいや…ここは樹でしょ。」

「私はもう授業で充分です…竜治君どうぞ。」

「俺!?あんま甘いもの好きじゃないからちひろでしょ。」

「えー…私もういらんから園姉いいよ。」

「いや〜そこは部長だよ〜どうぞ〜!」

「マジ?二つも食べると女子力に響くし…」

「そもそもなんで8つに切ったのよ!」

「え?いつもが7つでプラ1だから?」

(ん?いつもって…)

「いつもが7つ?」

「んん?いや…なんとなくかな…」

(そういえば…前部室で…)

「ぼた餅…」

「どうしたの?友奈。」

「あ、前部室でぼた餅食べた気がするなぁーって。」

「ああ、前に友奈さんも家庭科の授業で作ってきたんですよね。」

「あ…そうだった…」

 

『いい?友奈ちゃん。ぼた餅は最初に…』

 

(…?今一瞬なにか聞こえた気が…)

「さ、おやつの時間はおしまい。日曜日の練習をするわよー。」

「「「はーい。」」」

「…」

「…??」

「…?」

「ちひろ?活動の手伝い行くぞ?」

「あ…うん。」

 

ーーー帰り道ーーー

ーーーちひろsideーーー

「…」

(違和感がある…それも日に日に増えてる…ここまでだと今の勇者部は本当の勇者部なの?ってとこから問題になる…)

「はあ…憂鬱だわ…」

 

ーーー日曜日ーーー

ーーー園子sideーーー

私と園姉は今歴代勇者と巫女が眠っているお墓の前に来ています。

劇には間に合うように時間を決めて。

「ミノさん。やっと来られたよ。久しぶり。元気だった? あ、元気とか、そういうのは違うか。」

(そういえば…)

「銀さんが好きだったジェラート屋さんなくなってました。」

「時の流れって残酷だね…あのね、ミノさん。私、勇者部に入ったよ、讃州中学の。皆とっても面白くて、私たちのチームに負けず劣らずなんだよ。ちっひーもすっかり馴染んでてね、心の傷も癒してくれたみたい。」

「みなさん、優しいですからね…銀さんもきっと息合いますよ。」

「あ、そうだ。これ、うちで作ってきたんだよ。ミノさんの焼き方を思い出して自分で作ってみたんだ。」

「私も協力したでしょ。」

「わかってるよ〜これ、ミノさんの分。美味しかったら褒めてね。で、これは私の分。こっちはちっひー。で…」

園姉の視線の先にはもう一つの焼きそばがあった。

「なんで私たち4つ作ったんだろうね。」

「さあね…」

(4つ…私たちは園姉と…銀さんと…私と…)

 

『そうね、わたしは鷲尾須美よ、よろしくね、ちひろちゃん。』

『…はい!よろしくお願いします!銀さん!須美さん!』

 

 

『東郷さん!』

『っ…!』

『皆のために頑張りたい気持ちは私たちも同じだよ!』

『そうだよ、わっしー。何かあったら私たちを頼っていいんだぜ〜!』

『友奈ちゃん…そのっち…』

『一人で溜め込みすぎなんですよ、須美さんは。私が言えることじゃないですけど。』

『ま、そういうことよ、東郷。』

『みなさんの言う通りです。」

『勇者部五箇条、悩んだら相談、ね!』

『みんな…ありがとう!』

 

 

『須美さん寝れました?』

『ええ。ちひろちゃんは?』

『こっちもです。』

『ふふっ。』

『…ふふっ!』

 

(あ…)

「そうだ…思い出した…」

「わっしー…3人じゃない…わっしーもいた…私…なんでわっしーのこと…ずっと忘れて…」

(そ…んな…忘れられるのが…どんなにつらいか…知ってるくせに…なのに…私は…!)

「うう…あぁ…うあぁん!!」

「ちっひー、落ち着いて!ひっぐ。」

「だって…私…ひっぐ…自分と同じこと…須美さんにもぉ!!」

「今は…みんなのところ…行かないと…みんなにも…伝えないと…だから…ね…?」

「…うん…!わかっだ…!」

 

ーーー友奈sideーーー

ちひろちゃんと園ちゃんが来ません。

「もうすぐ始まるのに…困ったわね…」

「たしか来る前に墓参り行くって言ってましたよね…」

「渋滞でもしてたんでしょうか?」

「さあね。こうなったら4人でやりましょう。」

「それしかないわね。」

「わかったよ!お姉ちゃん。」

「わかりました。」

「…」

(なんだろう…心がザワザワするような…)

「友奈?」

「っ!はい!」

「どうしたの?友奈まで調子悪いの?」

「いや…なんか、ザワザワ、変な感じがするの。みんなはしない?」

「「友奈(さん)…」」

「大丈夫ですか?」

「今日は中止にしよっか?」

そのとき先生の人が…

「勇者部の皆さん。今日はありがとうございます。」

「あ…そのことなんですけど…」

「子どもたちが今日の劇を楽しみにしていて。今か今かと。」

「ぁ…」

(私のためなんかでみんなの期待を裏切りたくない!)

「大丈夫です!やりましょう!」

 

ーーー数分後ーーー

「やあやあ!我こそは超極悪の魔王! 今日はこの幼稚園で先生たちの言うことを聞かない子を迎えに来た!」

『アハハ!』

「一緒に好き勝手に暴れよう!我慢なんてしなくていいんだぞー!」

『おー!!』

(今だ!)

「待て!魔王!子供たちに悪いことを吹き込むのはやめろ!」

「何を生意気な!」

「とりゃー!」

私が風先輩に斬りかかる。

でも…

「ふん!」

つきとばされてしまう。

「っ!まだだ!」

「勇者は傷ついても傷ついても決して諦めませんでした。全ての人が諦めてしまったら、それこそ世界が闇に閉ざされてしまうからです。」

何度も立ち向かい、それでもつきとばされてしまいます。

「全ての人が諦めてしまったら、それこそ世界が闇に閉ざされてしまうからです。みんなが次々と魔王に屈し、気づけば勇者はひとりぼっちでした。」

(まだ…もうちょっと…!)

 

『勇者が一人ぼっちであることを誰も知りませんでした。』

 

「っ!」

(今の…声って…)

「ひとりぼっちになっても…それでも勇者は…」

「?」

「「友奈さん(先輩)?」」

(そうだ…私には…勇者部には…!)

 

『諦めない限り、っく…希望が終わることはないから…っです…ひっく…何を失っても…ひっく…それでも…それでも…ひっく…私は…一番大切な友達を…失いたくないっ!』

 

(思い出した…全部…東郷さん…!)

「ゆ、友奈?」

「友奈…さん…?」

ガチャッ!!

そして突然開かれた扉の先には園ちゃんとちひろちゃんがいた。

 

ーーー樹sideーーー

「はあ…はあ…やっと着いた…」

「園子先輩!?ちひろ!?」

(二人とも…あんな汗かいて…渋滞とは違う気がする…)

ギュウッ!

ちひろちゃんが私に抱きつく。

「ちょ!?ちひろ!?」

「樹ちゃん!わだし…さいでいなごどを…うあぁぁぁぁん!!」

(きっと私にはわかんないなにかがあったんだ…)

「よしよし、ちひろちゃんは悪くない、悪くない…」

ギュッ!

園子さんも友奈さんに。

「私は、ずっと一緒に居るよって、約束したのに…!したのにぃ…!」

「うん…うん…!」

 

ーーー夕方ーーー

ーーー部室ーーー

「友奈先輩…」

「園子にちひろもよ。」

「よしよし、ちひろちゃん。もう大丈夫?」

「うん…また樹ちゃんに泣きついちゃった…ごめんね…」

「いいよ。どんだけ頼ってもいいから。」

「で、一体どうしたの?」

「よく聞いてね。」

「「「「うん。」」」」

「今、私たちが持ってる記憶は嘘ってこと。」

「え?」

「記憶が…嘘!?記憶に嘘とかってあるんですか!?」

「なにかとんでもなく悪いことが起こってて…それがなんだかわからないけど…私たちはそれをなかったことにしてる。りゅーくんは入れ違いだからわかんなくても仕方ないと思うけど。」

(なかったことに…?ちひろちゃんの散華と似たような感じ…だからちひろちゃんあんなに…)

「ちょ…なに言ってるの…?ねえ、友奈…」

「私、思い出した。」

「友奈…?」

「勇者部にはもう一人、大切な友達がいたんだよ。忘れられるわけがない。絶対、忘れたりなんかしちゃいけないのに…私…どうして…!」

「友奈、落ち着いて。」

「みんな思い出して!東郷さん…ここには東郷美森って子がいたんだよ!!」

「「「…!!!」」」

(そうだ…)

 

『樹ちゃんは磨けば素晴らしい大和撫子になるわね。磨かなくちゃ!』

 

(東郷さんのこと…私も…みんなも…忘れて…どうして…!?)

「そういえば、東郷ってどこ?…っ!?」

「東郷…東郷美森…」

「え…?どういうこと…?なに…これ…」

「?????」

「竜治君は分からなくて大丈夫だよ…多分…」

「なんでよ…?なんで私たちの誰も今まで東郷の記憶がなかったの…?私…部長なのに…また…」

「風さんは悪くない…私は…自分と同じこと…須美さんに…!」

「…みなさん…」

「ねえ、わっしー…今どこにいるの…?」

 

ーーー神の間ーーー

「…」

ボォォォォォォ

そこには火あぶりにされてる一人の少女の姿があった。

 




忘れなかったよ…\( ‘ω’)/ウオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッッッッッッッッッッッッッッ!!


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2話 取り戻すための戦い 前編

…えー、まずはお詫びします。大変申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ゲームにハマってて完全に忘れてたんです…いやほんとに申し訳ない…


ーーー友奈sideーーー

「ダメね…写真からも消えてる…」

「どうなってるのよ…これ…」

「うーん…頭がパンクしそうなんだけど…おれが入る前にもう一人先輩がいて、その人の存在がなかったことにされてるってことでいいんですか…?」

「そういうこと…うぅ…」

「とにかく東郷さんを探さないと!」

「「「「「うん(はい)」」」」」

「…俺だと誰かわかんないから夏凜先輩ついてっていいですか?」

「は!?なんで私!?」

「あまってるから?」

「ひどっ!?」

「似顔絵なんよ〜!」

「ありがとうございます、園子先輩。」

「うまいわね!?」

 

ーーー公園ーーー

「はあ…はあ…」

(ここにもいない…風先輩は明日再集合って言ってた…明日は休日…ねえ…)

「どこにいるの…?東郷さん…」

(私、東郷さんのこと絶対覚えてるって約束したのに…なのに…!)

 

ーーー翌日ーーー

「全員、手がかりなし、か…」

「昨日のうちに讃州市の半分は回りましたがいませんでした…」

「竜治君そんなに回ったの…みなさんからもらった応援メッセージからも消えてます…」

「席も東郷さんのなかった…まるで最初からいなかったみたいになってる…」

「質の悪いイジメじゃない…これじゃ…」

「いなかったことにされるとかイジメの範囲軽く超えてますよ…記憶を消すなんてどんな力使えばできるんだよ…」

「大赦なら何か知ってるかもしれないけど…何も知らないって…」

「こっちも同じよ…大赦はまた私たちに隠し事を…?」

「そうじゃないみたいです。」

「ちひろ!乃木!」

「私たちが話せる限りの大赦の人に聞いたけど誰も知らないって…それも震えながら…」

「なっ…大赦すらわからない事態なの…?」

「東郷さん…」

(どこにいるの…?)

「もうこれしかないみたいだよ。」

そういって園ちゃんが取り出したアタッシュケースに入っていたのは…勇者システム。

「「「っ!!」」」

「???スマホ??」

「これって…」

「そう、勇者システム。これで見つけに行こう。」

「園姉が怒って、出してって言ったら出してくれました。」

「見つけるって…」

「今も変身できるのよね?」

「もちろんだよ、にぼっしー。」

「勇者システム??変身??」

「あれ?二つ空きがありますけどこれは…?」

「一つはわっしーの。もう一つはちっひーのだよ。」

(ええ!?なんでちひろちゃん持ってるの!?)

「!!ちひろあんたなんで持ってんのよ!?」

「私のだけ特殊でアップデートも微妙な感じになって、私しかなれないからって渡されてました。ただ自身でアンロックしないと樹海化にも巻き込まれないから大丈夫です。」

「そ、そうなのね…」

「よかった…ちひろちゃんが今も樹海行ってるかと…」

「ごめんね樹ちゃん。大丈夫だからアンロックとかもスイッチ切り替えタイプのだから…ね?」

「うん…」

「?????????」

「話は戻るけど、わっしーの端末はないのに、マップにはわっしーの反応がうつらない。もしかしたらすっごいところにいるんじゃないかな?」

「てことは…??」

(…?どこだろう…あっ!!)

「壁の外!!」

「その通り。」

「東郷はいろいろぶっとんでるからありえるわね…」

「今回からは散華もないから。」

「壁の外ってウイルスあるんじゃ…あれれ?????」

「「園姉(お姉ちゃん)…そろそろ竜治君に説明しないと…頭パンクしそうになってるよ…」」

「あらら…でもいいの?乃木。」

「全然オッケーだよ、フーミン先輩。」

「わかったわ。竜治、落ち着いて聞いてね。これから信じられないようなこと次々と言ってくから。」

「…はい!わかりました。お願いします!」

 

ーーー説明後ーーー

「で…理解できた?」

「は、はい…とんでもないことばかりだったけど…言わないようにしますわ…今まで助けてきてくれてありがとうございます…」

「お礼言われるようなことじゃないよ!それより東郷さんを助けに行かなきゃ!」

そういって伸ばした手は風先輩に止められる。

「待ちなさい。」

「っ!?でも…」

「初めての時とは違うの。私は、部長としておいそれと皆を変身させたくない。勢いでなんて言うのはやめて。ちひろもよ。」

(風先輩…)

「…はい。」

「フーミン先輩、大赦はもう勇者システムについて隠し事をしないって言ってくれた。私はそれを直に聞いて、信じようとおもったんです。今回は納得していく。だから私は行きます。」

(園ちゃん…そうだ!)

「私も信じます!」

「っ!?友奈…」

「大赦の人はよくわからないけど、園ちゃんがそう言ってるんだから信じるよ。」

「ゆーゆ…」

「ちゃんと考えました。私も行きます。」

「風さん、どうするべきかなんて昨日からずっと考えてました。私はこれ以上大切な人を失いたくない。私たちに須美さんを思い出させてくれた銀さんのためにも、行きます。」

(ちひろちゃん…)

「全く…部長を置いてくんじゃないわよ!」

「「風さん(先輩)!」」

「大赦はともかく、勇者部のみんなのことなら、私も信じてるからさ。」

「私も行きます。東郷さんにはたくさんお世話になりました。今こそ恩返ししたいです。」

(樹ちゃん…)

「そういうことなら!」

「夏凜ちゃん!」

「完成型勇者の出番でしょ。」

「俺は戦えないけど…おかえり会の準備しときます!」

「竜治君…みんな…」

「にしても壁の外ね…なにがあるか…」

「サプリキメときなさい。とか言わないですよね?」

「なっ!?なんでそれを!?」

「単調すぎる…」

「今回はキメていきます!」

「ちょっ!?樹!?」

「いただきます!」

「やめなさーい!樹ー!!」

「あと風さんさっきカッコつけてましたね。笑」

「べ、別にいいじゃない!!部長なんだし!」

「素敵な仲間だね。」

「園ちゃんもね!」

「「うふふっ!!」」

 

ーーーちひろsideーーー

(実際問題かなり久しぶりだな〜)

「久しぶりね〜」

「新しい勇者システムは満開ゲージが最初から全部溜まってる状態だよ。精霊がバリアで守ってくれるけど、バリアを使う毎に満開ゲージを消費していく。ゲージは回復しない。満開はゲージがいっぱいなら出来るけど、使えばゲージは一気にゼロになる。ゲージがゼロになると精霊がバリアを張れなくなる。この時攻撃を受ければ、命に関わることになる。これが、散華の無くなった勇者システムだよ。」

「やっぱり今みたいに全部説明してもらった方がいいですね。」

「そうね…ちひろのはどこが特別なのよ?」

「満開ゲージが12個あります。」

「「「え?」」」

「あと精霊もきちんと増えてるし、散華もない。みなさんと比べて圧倒的に強化されてます。なぜだか知りませんけど。」

「そ、そうなのね…うば!?って狗神!?」

風さんの端末から狗神が飛び出して飛びつく。

(相変わらず仲良いなおい!)

「あ!牛鬼!久しぶり!」

「ちょっと!前見えないって!」

「やっぱり懐かれてる…」

「たしかに…」

「ちひろちゃんのは?」

「9体も出たらきゅうくつだもん…」

「あ、そっか。」

「す、すげー…かわいらしいな…」

「…元気?」

「外道め。」

「ふっ、変わんないわね。」

「諸行無常。」

「よし!勇者部出陣よ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」

「必ず帰ってきてくださいね!!」

 

 

 

 

ーーー壁ーーー

ーーー園子sideーーー

「ここから先はズゴゴゴって感じだから気をつけてね。」

「一回見たから大丈夫よ。」

「私が先頭で行くから園子は後ろでサポートをお願い。」

 

『よし!私が先陣切るからちひろは続いて!二人はサポートお願い!』

 

(いけない…一瞬ミノさんに見えちゃったよ…)

「あんまり出すぎないでね。にぼっしー。」

「ええ。」

「大丈夫だよ園姉。私も前出るから。」

(ちっひー…ほんとに…)

「立派になったね。」

「…うん。」

「樹、今日はスペシャルうどんを作ってあげるわ。」

「うん。楽しみにしてるよ、お姉ちゃん。」

「よし!行こう!」

 

ーーー壁の外ーーー

(何度見てもすごいなぁ…)

「うは〜…何度見ても凄まじいわね〜」

(あ、レーダーには…あっ!)

「反応あったよ!」

「え?どこどこ?」

かなり離れた先にその反応はあった。

「よかった〜!やっぱり壁の外にいたんだ〜!」

「なんとかなりそうね!友奈!」

「はい!」

「割と近いけど…え??」

「ちひろちゃんどうしたの?そっちに反応あるけど…ええ??????」

「ちょ…なんなのよあれ!?」

(マジか〜わっしー…)

その先にはブラックホールのようなものがあった。

「あの位置…だよね…?」

「わーお…」

「あの中にわっしーはいるみたい。」

「東郷さんだ…東郷さんがブラックホールになってる…」

「久しぶりに会ったらブラックホールになってたやつ初めてだわ…」

「お姉ちゃん…」

「それガチで言ってたらひきますね。」

「ひどっ!?」

「しかも周りにバーテックスいるじゃない!?」

(牡牛座、水瓶座、天秤座、乙女座、牡羊座、山羊座…まさかとは思うけど…いや、きっと大丈夫なはず。)

「行ってみよう!!」

「でも…どうやってですか!?」

そのとき、星屑が私たちに向かってくる。

「こんな時に!!」

「てやー!!」

ズバッ

「はぁ!」

ズシャッ

フーミン先輩に迫ってた星屑をいっつんが倒す。

「ありがと、樹。」

「うん。」

「はあ!とりゃ!」

ドドドドッ

「これでもくらっときなさい!!」

ボガァン

ゆーゆとにぼっしーは連携して数を減らす。

(私も負けてられない!!)

「伸ばして一気に…えーーーーい!!!!」

ドドドドドバァン

「とぉーーーー!!!」

ズバババババァン

「私も…モードウィップ!とりゃりゃりゃ!」

ズババババッ

「さすが先代勇者ズ…一回で倒す量が違うわね…ただこのままだとジリ貧…どうすれば…」

(んー?でもあれくらいの距離なら…)

「船でいけそうだね〜」

「船って行っても…」

シュバッ

「園子!?」

「あー、そういうことね。」

(大丈夫。船のはわっしーだけじゃない。)

「満開!!」

世界に一輪の花が咲く。

「乃木!?いきなり満開して!精霊の加護がなくなっちゃうのよ!?」

「昔はなかったので問題ないで〜す!」

「私でもいいですけどあれ乗れて2人なので。安全面からも100%園姉の方がいいです」

「そ、そうなのね…わかったわ…」

「さあ!乗った乗った!!」

「お邪魔するね、園姉。」

「かっこいい船だな〜!!」

「ちょっと東郷といい、ちひろといい、あんたらずるくない!?」

「私のが一番かっこいいわよ!!」

「私はちひろちゃんのが一番だと思うな。」

「ありがとう、樹ちゃん。」

「園ちゃんすごいなぁ〜!!」

「ありがとう、ゆーゆ。さあ、行くよ!」

(待っててね、わっしー!!)

 

ーーーブラックホール付近ーーー

ーーー友奈sideーーー

(風…強すぎ…!)

「みんなー!船酔い大丈夫?」

「酔い以前にやばいわよ!?これ!?」

そんな中、バーテックスが現れる。

「あいつらもしかしてここ守ってるの!?」

「完全に囲まれてます!!」

(こうなったら…!)

「私が東郷さんのところに行きます!」

「友奈!?」

「大丈夫。絶対一緒に戻ってくるから。」

「ゆーゆ…」

「ちょっと!?大丈夫なの!?」

「もう…ちゃんと帰ってきなさいよ、部長命令だからね!!」

「あいつらは私がなんとかするので。」

「ちひろちゃん!?」

「私満開フルだと12回使えるし。他の人がやるよりいいから。」

「オッケー!ちっひー頼むね!」

「もちろん!」

「友奈!あんなもんの中じゃ何が起きても不思議じゃないわ、気合よ!」

「ゆーゆ、わっしーのこと、頼むね。」

(園ちゃん、にぼっしー…)

「うん!」

「よーし! それじゃあ、一気に行くよ!!」

ビュゥゥゥゥン

船が一気に東郷さんに近づく。

「やっぱり追ってくるよね…邪魔はさせない!満開!」

ちひろちゃんが満開して追ってくる山羊座に向かって行く。

「ゆーゆ!今だよ!!」

「うん!いってきます!」

(すごい重力…!)

ビジビジビジ

「くっ…!」

(満開ゲージが…!でも…)

「まだだぁ!」

ビジビジビジ

(あそこが…中心…?)

「絶対に…あそこまで行く…!」

(もうちょっと…!)

ビジビジビジ

「東郷さん…!」

(待ってて…!)

「今行くから!」

 



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3話 取り戻すための戦い 後編

ーーー中心部ーーー

ーーー友奈sideーーー

(ついた…何!?体が…引っ張られて…)

「あ…ああーー!!」

(何これ…!?体が軽く…えっ!?)

私の後ろにはなんでか私の体。

「これ…幽体離脱!?」

(不思議だなぁ…ん?炎の矢!?)

炎を纏った矢のようなものが大量に飛んできます。

ズガガガガッ

「きゃあっ!!」

(痛い!?これって…)

「私が砕けたら…体はずっとこのまま?」

今度は泡のようなものがとんでくる。

そこには東郷さんがうつっていた。

「あ!東郷さん!?」

泡に触れてみると…

 

『そのっちが私たちの中学に来てから、しばらくして大赦にとって予測してない事態が起こっていた。私が結界の一部を壊してしまったことで、外の火の手が活性化してしまっているのだ。このままでは外の炎が世界を飲み込む。大赦が進めていた反抗計画を凍結し…状況を打破する必要があった。』

 

(今のって…)

「東郷さんの…記憶…」

(やっぱり、この中にいるんだ!)

「他は!?他の記憶は!?」

(…あった!)

 

『火の勢いを弱めるには奉火祭しかない。それは神の声が聞ける巫女を外の炎に捧げ、天の神の許しを乞う。昔、西暦の終わりにも行われた生贄の儀式でもあるらしい。今、大赦でお役目を果たしている数人が生贄のお役目に選ばれた。』

 

(そうだったんだ…他!)

「あれだ!!」

 

『だけど、私でもその代わりが出来ると言う。私は勇者の資格を持ちながらも、巫女の力も持つという唯一無二の存在なのだとか。悩むまでもない。結界に穴を開けたのは私だ。私は償わなくてはいけない。友奈ちゃんが…みんなが無事なら…私1人なら…問題ない。ただ、私が居なくなれば、きっと友奈ちゃんたちが…皆が私を探す。そうならないために…神樹様、お願いします。どうか…みんなから私の記憶を…私の存在を…なかったことに…!』

 

(そっか…東郷さんは私たちのために…)

「もう、東郷さんはいつも1人で突っ走るなぁ…自分がいなかったことにするなんて…」

また、矢がとんでくる。

「でも、私は約束したもん! 東郷さんを一人にしないって!」

(痛い…!でも!諦めない!約束したんだから!)

少しずつ奥へ向かう。

「何度でも!助ける!」

 

ーーー神の間ーーー

「ぁ…?」

(ここって…いつのまに…?ていうか…)

「ここ…前に来たことが…」

(そうだ!体の方は!?)

体はそこにあった。

「よかった…無事だ…!」

(やっぱりここ…)

「あの時の場所だ…!」

ふと後ろを見るとそこに東郷さんがいた。

「東郷さん…!」

さらにその上には…

火あぶりにされてる東郷さんの魂?があった。

(これ…なに…?)

東郷さんの勇者服は錆び付いていた。

「ひどい…」

(東郷さん…!)

「今、助けるね!!」

そう言って東郷さんを捉えてる鏡のようなものに触れると…

ジュッ

(熱っ!?でも!諦めない!)

徐々に東郷さんを引きずり出していく。

ズキズキッ

東郷さんに刻まれていた紋章が私の胸に…

(胸の辺りが痛い!それでもぉぉぉぉ!!)

「構わない!東郷さんを返して!!」

するとどんどん紋章が広がっていく。

「うぁぁぁっ!!」

(痛い痛い痛い!!でも諦めない!!)

「耐えろ!私!こんじょぉぉぉぉ!!」

そしてついに引っ張り出した。

「やった!これで…」

ズキズキズキズキッ

「うああっ!?」

(体中に痛みが広がってく!?痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ!!)

「うあああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

「これで6体目!!」

友奈さんがブラックホールに向かってから数分たち、6体全てのバーテックスを倒しきっていた。

「御霊がない分楽チンね…」

(しかし謎はある…6体もバーテックスを配置するならなぜ獅子座がいない?完全に守る気ならあの3体もいるんだからスター・クラスターを配置するはず…なのになぜ…?)

「ちひろちゃん危ない!!避けて!!」

「!?」

後ろを見ると巨大な針が猛スピードで迫っていた。

「おわっ!?」

なんとか回避。かすったけど。

(あれ蠍座のに似てたけどあんな長くないし大きくない!何今の!?)

「あれは…!?ちっひー!!スター・キラーっていう合体バーテックスなんよ!気をつけて!」

「マジ!獅子座他のとも合体できるんかい!?」

(マジで勘弁してよ!?)

シュババババババッ

さらに矢を発射してくる。

(量多いのよ!)

回避しまくるが少しずつ刺さっていき…

満開がとける。

(しまった!?)

「ちひろ!!こうなったら私が!!」

「やめなさい!夏凜!無茶よ!」

「少し助けてくるだけだっつーの!必ず戻ってくるわよ!」

 

『少し離れるだけだ、必ず生きて戻るよ。』

 

「まだだぁぁぁぁ!!!!」

「ちひろ!?」

「満開!!!」

「モードシールド!ウイング!ミニビット!ブレイド!」

4つのモードを同時展開し、スター・キラーに猛スピードで近づく。

矢はミニビットで、針はシールドで、反射板はブレイドで切り裂き、近づいていき…

「大剣グングニル展開!!!ダブルフェニックスレイぃぃぃぃ!!」

スター・キラーを粉砕する。

「よぉしぃ!!」

だが、それで私は少し油断してしまったのだろう。

(倒した!!!これで全部…)

「!ちひろ!下!」

「あれはスター・フェニックス!?」

「えっ!?」

下から猛スピードで迫るバーテックスにぶつかられるまで気づくことができなかった。

「グハッ!?」

(こいつ…別のやつとの合体バーテックス!?)

強烈な一撃をくらい、満開がとけ、落下していく。

「ちっひーぃぃぃぃ!!!今行くからぁぁぁぁ!!」

「ちひろ!!!やっぱり私が!!」

「2人とも!!あそこに友奈と東郷が!!」

「園子さん!!二人を助けなきゃ!!」

「でもちっひーが!!」

(ああ…みんな…私のために…)

「ちひろちゃんならきっとそういうから!だから!」

「私が満開して行くわ!!」

「夏凜!!合体バーテックス相手に一人は無茶よ!!」

「じゃあちひろを見捨てろっていうの!?」

「ちひろは満開ゲージがたくさんある!!東郷と友奈を救出する方が先よ!!」

「いっつん!!さすがに無理だよ!!」

「園子さん…!ひっく…お願い…します…ひっく…友奈さんたちを!!!!」

(ごめん…みんな…)

うっすらとした視界で見えた先の合体バーテックスはとどめの火球を打つ準備をしていた。

(私…ここまでみたい…私より…友奈さんたちを…)

そのとき、

トサッ

(だれかに…抱きかかえられてる…?なんだか…懐かしい…)

そこで私の意識は途切れた。

 

ーーー園子sideーーー

「園子さん…!ひっく…お願い…します…ひっく…友奈さんたちを!!!!」

(いっつん…)

「…わがっだ…」

ボォォォォォォ

気づくとスター・フェニックスが巨大な火球を放とうとしていた。

「ちひろぉぉぉぉ!!」

「夏凜!!ダメ!!あんたでも間に合わない!!今行っても死にに行くだけよ!!」

ゆーゆとわっしーを助けることはできた。

でもその間に…

火球は放たれた。

(嫌だ!!ちっひーが死ぬなんて!!まだなんにも返せてないのに!!)

「誰か…誰かちっひーを助けてぇぇぇぇ!!」

そのとき

ビュンッ

何かがちっひーを抱えて回避していた。

「東郷!友奈!大丈夫!!ってあれなに!?」

「ぢひろちゃん!!よかっだ!!」

「誰あれ!?」

(ちっひー…!!よかった…!)

「ふう…全く…無茶するなぁ…相変わらず…スター・フェニックス、お前は眠っとけぇぇぇぇぇ!!」

ズバァン!!

そしてちっひーを抱えた誰かはスター・フェニックスを一撃で切り裂いていた。

「す、すごい…」

「もともと硬い敵ではなかったけど…あんなことって…」

(でも…ありがとう…!)

「よいしょっと…ここでいいよな…それじゃあ。」

そしてちっひーを助けた人は去っていった。

私もなんとか壁にたどり着く。

「ぢひろちゃん!!!」

「ちっひー!!」

「気を失ってるだけみたいね!!」

「よかっだ…!ほんどによがった!!」

「みんな無事ね!!」

「よかった!!」ーーーちひろsideーーー

「これで6体目!!」

友奈さんがブラックホールに向かってから数分たち、6体全てのバーテックスを倒しきっていた。

「御霊がない分楽チンね…」

(しかし謎はある…6体もバーテックスを配置するならなぜ獅子座がいない?完全に守る気ならあの3体もいるんだからスター・クラスターを配置するはず…なのになぜ…?)

「ちひろちゃん危ない!!避けて!!」

「!?」

後ろを見ると巨大な針が猛スピードで迫っていた。

「おわっ!?」

なんとか回避。かすったけど。

(あれ蠍座のに似てたけどあんな長くないし大きくない!何今の!?)

「あれは…!?ちっひー!!スター・キラーっていう合体バーテックスなんよ!気をつけて!」

「マジ!獅子座他のとも合体できるんかい!?」

(マジで勘弁してよ!?)

シュババババババッ

さらに矢を発射してくる。

(量多いのよ!)

回避しまくるが少しずつ刺さっていき…

満開がとける。

(しまった!?)

「ちひろ!!こうなったら私が!!」

「やめなさい!夏凜!無茶よ!」

「少し助けてくるだけだっつーの!必ず戻ってくるわよ!」

 

『少し離れるだけだ、必ず生きて戻るよ。』

 

「まだだぁぁぁぁ!!!!」

「ちひろ!?」

「満開!!!」

「モードシールド!ウイング!ミニビット!ブレイド!」

4つのモードを同時展開し、スター・キラーに猛スピードで近づく。

矢はミニビットで、針はシールドで、反射板はブレイドで切り裂き、近づいていき…

「大剣グングニル展開!!!ダブルフェニックスレイぃぃぃぃ!!」

スター・キラーを粉砕する。

「よぉしぃ!!」

だが、それで私は少し油断してしまったのだろう。

(倒した!!!これで全部…)

「!ちひろ!下!」

「あれはスター・フェニックス!?」

「えっ!?」

下から猛スピードで迫るバーテックスにぶつかられるまで気づくことができなかった。

「グハッ!?」

(こいつ…別のやつとの合体バーテックス!?)

強烈な一撃をくらい、満開がとけ、落下していく。

「ちっひーぃぃぃぃ!!!今行くからぁぁぁぁ!!」

「ちひろ!!!やっぱり私が!!」

「2人とも!!あそこに友奈と東郷が!!」

「園子さん!!二人を助けなきゃ!!」

「でもちっひーが!!」

(ああ…みんな…私のために…)

「ちひろちゃんならきっとそういうから!だから!」

「私が満開して行くわ!!」

「夏凜!!合体バーテックス相手に一人は無茶よ!!」

「じゃあちひろを見捨てろっていうの!?」

「ちひろは満開ゲージがたくさんある!!東郷と友奈を救出する方が先よ!!」

「いっつん!!さすがに無理だよ!!」

「園子さん…!ひっく…お願い…します…ひっく…友奈さんたちを!!!!」

(ごめん…みんな…)

うっすらとした視界で見えた先の合体バーテックスはとどめの火球を打つ準備をしていた。

(私…ここまでみたい…私より…友奈さんたちを…)

そのとき、

トサッ

(だれかに…抱きかかえられてる…?なんだか…懐かしい…)

そこで私の意識は途切れた。

 

ーーー園子sideーーー

「園子さん…!ひっく…お願い…します…ひっく…友奈さんたちを!!!!」

(いっつん…)

「…わがっだ…」

ボォォォォォォ

気づくとスター・フェニックスが巨大な火球を放とうとしていた。

「ちひろぉぉぉぉ!!」

「夏凜!!ダメ!!あんたでも間に合わない!!今行っても死にに行くだけよ!!」

ゆーゆとわっしーを助けることはできた。

でもその間に…

火球は放たれた。

(嫌だ!!ちっひーが死ぬなんて!!まだなんにも返せてないのに!!)

「誰か…誰かちっひーを助けてぇぇぇぇ!!」

そのとき

ビュンッ

何かがちっひーを抱えて回避していた。

「東郷!友奈!大丈夫!!ってあれなに!?」

「ぢひろちゃん!!よかっだ!!」

「誰あれ!?」

(ちっひー…!!よかった…!)

「ふう…全く…無茶するなぁ…相変わらず…スター・フェニックス、お前は眠っとけぇぇぇぇぇ!!」

ズバァン!!

そしてちっひーを抱えた誰かはスター・フェニックスを一撃で切り裂いていた。

「す、すごい…」

「もともと硬い敵ではなかったけど…あんなことって…」

(でも…ありがとう…!)

「よいしょっと…ここでいいよな…それじゃあ。」

そしてちっひーを助けた人は去っていった。

私もなんとか壁にたどり着く。

「ぢひろちゃん!!!」

「ちっひー!!」

「気を失ってるだけみたいね!!」

「よかっだ…!ほんどによがった!!」

「みんな無事ね!!」

「よかった!!」

 

 

 

 

 

ーーー病院ーーー

ーーー東郷sideーーー

「ぁ…?」

(あれ…?ここは…?)

「やった!!目が覚めた!!」

「わっしー!!」

「須美さん!!」

「みんな…?」

(なんで…?たしか…私は生贄に…?)

「須美さん数日寝てたんですよ。」

「ちひろちゃんも昨日まで寝てたよね…」

「人のこと言えないわよ…」

「うっ!」

(もしかして…)

「助けて…くれたの…?」

「うん!」

「もちろんです。」

(でも…そしたら…)

「このままだと…世界が…!」

「事情聞いたわよ。火の勢いはもう安定したから生贄はもう必要ないってさ。」

(そんな!?もしかして!)

「私の代わりに誰かが!?」

「ああー、違うわ。東郷あんた、普通なら死んでるくらいの生命力をゴッソリ奪われてたんだって。それできっとお役目を果たしたのよ。でもタフだからまだ生きていた。で、私たちが間に合った。そんな感じみたい。」

「いっぱい体鍛えててよかったね〜!」

「どこも異常なしだそうです。」

「あ、いずれ言われそうだから言っときますけど私も大丈夫ですよ?合体バーテックスにタックルされたくらいで。」

「いやあんたほんの少し肋骨ヒビ入ってたでしょうが…」

「なんのことでしょうか♪」

「な、なんでもないです…」ガタガタ

「私、本当に助かったの?」

「そうよ。お勤めご苦労様。しばらく病院だろうけど。」

「そうだ!東郷さんいない間に部員増えたんだよ!今日は遠慮して来なかったけど…」

(新しい部員が…?)

「これで勇者部全員揃うんよ〜!!」

「ま、もう少しはちひろも入院だろうし、いろいろ聞いときなさい。」

(みんな…!)

「ごめんね東郷さん…」

(え…?なんで友奈ちゃんが謝るの…?)

「東郷さんのこと絶対忘れないって約束してたのに、何日か忘れちゃってて…」

(友奈ちゃん…私…みんなにそんなに心配させてたなんて…)

「私の方こそごめんね。そんなに心配させて…」

「ま、過ぎたことは仕方がないわ。次からはちゃんと言いなさいよ?」

「はい…」

「みんな忘れてたんだし、おあいこってことでいいですよね?」

(みんな…でも…)

「それでも思い出してくれた…夢じゃないのね…!」

「そうだよ、東郷さん。」

「みんな…ありがとう。」

「よーしよし。」

「一件落着ね。」

「そうですね。」

「あ、樹ちゃん。マンテンドースイッチ持ってきてるしスプラテーンやらない?」

「いいよ!」

「よーし! これで本当に全員揃ってクリスマス! そして大晦日にお正月だー!」

「遊ぶことばっかね…」

(みんな…)

「くすっ。」

 

ーーー友奈家・お風呂場ーーー

ーーー友奈sideーーー

「…」

(これって…一体…)

鏡にうつる友奈の胸にはあのときの紋章がしっかりと刻まれていた。



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4話 誰も巻き込めない 前編

ーーー東郷退院翌日・夜ーーー

ーーーちひろsideーーー

「もうすぐクリスマスだ〜ヒューヒュー!!」

「はしゃがないでよ園姉…」

「あや?あれはわっしーとゆーゆだ〜!」

(え?あ。)

「ほんとだね。」

「園子隊員!二人の観察を開始します!!」

(ダメだ…完全に悪ノリしてる…)

「全くもう…」

「わあ! もう飾り付けされてる!」

「外国の祝祭も祝う、我が国の寛容さね。」

「なんか言い方が怖いよ…」

「くすっ。」

「クリスマスツリー、どんな風にしよっか?」

「良かった。」

「え?なんで?」

「友奈ちゃんとクリスマスを迎えることが出来そうで。」

「もちろんだよ!東郷さんがどこかに行ったりしない限りね。」

「もう…」

「へへっ!」

(相変わらず仲いいなぁ…)

「見てるこっちまでほのぼのするね、園姉。」

でも、隣には園姉はいなかった。

「ありゃりゃ!?園姉どこいったの!?」

(…まさか!)

「私とはー?」

「あ、そのっち。」

「えへへ〜」

「園姉!いつのまに行ってたの!?」

「あ、ちひろちゃんも!」

「実はちっひー以外とクリスマスやるの初めてかもなんだ〜!」

(言われてみれば…)

「私もそうかも…」

「っ!!」

「今度は皆一緒だよ! 盛り上がろうね、クリスマス!」

「おー!」

「おー!」

(私もやんなきゃダメだよね…?)

「お、おー!」

「おー!ふふっ。ちひろちゃんだけ少しあどけなかったよね。」

「な、慣れてなかったんですもん…」

「あ、照れるちひろちゃんかわいい!」

「なっ!?」

「ちっひーかわいいよ〜!へいへい!」

(うう…恥ずかしい…)

「クリスマース!」

「クリスマス、ね!」

「…クリスマス!」

(…ん?今友奈さん元気なかったような…?)

 

ーーー数日後ーーー

ーーー部室ーーー

ーーー園子sideーーー

今勇者部ではゆーゆたちがクリスマスツリーを作ってます!

(クリスマス!イェイイェイ!)

「ねえ友奈、飾り付け曲がってない?」

「いや、大丈夫だよ。」

「ちひろも念のためお願い。」

「あ、曲がってる。」

「嘘!?」

「ちひろちゃん嘘言わないの…」

「テヘペロ♪」

「あんたねぇ!」

「東郷先輩、これってどうすれば?」

「ああ、これはここを押して。」

「はい。おお、できた!さすが東郷先輩!」

一方でわっしーはりゅーくんにテクニックを叩き込んでま〜す。

後継育成だって〜

そして私はね〜

「うーん…」

フーミン先輩に勉強教え中!

「ん?どうしたのよ風、その眼鏡。」

「視力落ちてるんですって。」

「笑笑。」

「笑うなー!!」

(ちっひーほんとうにからかい上手になったなぁ〜)

「大変ね、受験生。部室でまで勉強?」

「頑張ってください。」

「先週は色々大変で勉強どころじゃなかったからねー。今のうちに取り返さないと。」

そんなときに…

シュバッ

「陳謝!」

わっしーが土下座する。

「ああ、もう! そういうつもりで言ったわけじゃないの!気にしないで!」

「受験よりブラックホールの方が急務だもんね。」

「ええ。」

「この人(の人生)よりも須美さん(の命)ですからね〜」

「ひどくない!?」

「アハッ♪」

「ちゃんと小さく人生とか命って言ってましたよ。」

「あ、竜治君バラすのなしでしょ!?」

「あはは…」

(賑やかで楽しいな〜!)

バッ

(ん?)

ライトの先には切腹寸前のわっしーがいた。

「陳謝!」

「「「「「「わあああ!?」」」」」」

(みんなスルーしてもいいとおもうんだけどね〜)

あっという間にわっしーはみんなに拘束されてた。

(それよりも…)

「丸、丸、丸、丸、丸。全部正解花丸で〜す!」

「よし!さすが私!」

「偶然じゃないですかね?」

「グハッ!」

(ここはやっぱり…)

「アタックチャーンス!」

「なにそれ?」

「正解すると女子力が2倍になります。」

「やります。」

「お姉ちゃん…」

「どんな受験勉強よそれ…」

(うーん、結論だけ言おうかな〜めんどいや!)

「とまあ、フーミン先輩の女子力は置いといて。」

「私の女子力ー!!」

「こんだけできてたらオッケーです!」

「うん。乃木が見てくれたおかげよ。来週は来週で樹のショーがあるからね。」

「たしかにねぇ〜」

「ははあ、それで詰め込んでたのか。」

「お姉ちゃんもちひろちゃんも私のショーじゃなくてクリスマスイベントだよ!学生コーラス!」

(ほほう…ちっひーも言ってたな〜)

「すごいよな、樹学校代表だし。」

「ちひろちゃんや竜治君が練習手伝ってくれたおかげだよ…!」

「いや、実力でしょ。樹ちゃんの。」

「それでこそ我が妹だ。他の学校の代表者、ぶっ倒して来なさい!」

「趣旨違うしちひろちゃんには言われたくないよ〜!!」

(これは風邪とかNGだね〜!)

「じゃあ風邪を引いたりしないようにベストコンディションで行かないとね。」

チラッ

チラッ

(わっしーオッケーだよ!)

「「健康健康健康健康健康健康健康…」」

「ううっ、余計にプレッシャーが…」

(なら…!)

「樹、サプリキメとく?」

「じゃあ効くやつを…」

「いっつん、いっつん。いっつんのグッズ展開していい?」

「大丈夫園姉。もう準備してある。」

「さすがちっひー。」

「あ!私にも頂戴!!」

「風さんには嫌です。」

「なんでよ!?」

「やめてよー!!」

「あはは…」

「ん?どうかしました友奈先輩。何か考え事ですか?」

「いや?何も考えてないよ?」

「それはそれでどうなんすか…」

「ん?本当は具合悪いんじゃないの?」

「え!?友奈ちゃん具合悪いの!?」

(わっしー顔怖いよ…そしてこの流れは…!)

「「健康健康健康健康健康健康健康…」」

「あんたら…そんなの効くはずが…」

「あ〜なんだかポカポカしてきた〜!」

「嘘!?そんなはずが!?」

チラッ

(なるほどにぼっしーやってほしいのね〜オッケー!)

「ふふん。」

「あ、夏凜さん墓穴掘りましたね。」

「「健康健康健康健康健康健康健康…」」

「や、やめなさい!!…あ、でもポカポカしてきたわ…」

「おーい、夏凜ー!流されてるわよー!!」

「そんなこと言ってたら次お姉ちゃん来るよ…」

「ちょっと!私の体に何したのよー!」

チラッ

(わっしーまだ続ける?)

チラッ

(オッケー!)

「「健康健康健康健康健康健康健康…」」

「ああ!暑いわ!!」

「夏凜さんファイトー(棒)」

「ふざけないでよ!?」

「てか風! 勉強終わったんなら飾り付け手伝いなさいよ!」

「もうほとんど終わってるじゃない。」

「終わってますね…」

「話変えようとしても無駄でしたー!!」

「うっさい!!」

「み、皆! あのね…」

「「「「「「「ん?」」」」」」」

「え、えっと…問題です!キリギリスがアリの借金をこっそり肩代わりしたとしたらその後、どんな問題が起こるでしょうか?」

「「「「「「「?」」」」」」」

(ゆーゆ…?)

「私もわかりません…」

「はあ?社会の実習問題かなんか?」

「…?」

「えっ!?えっと…学校新聞のクイズを考えていて…」

「なんだ。そういうことか!」

「でもそれ、問題なってませんね…」

「私も手伝います!」

「み、みんな…ありがとう…」

(ゆーゆ…なんでそんな申し訳なさそうなの…?)

「あのね!私あの日…っ!」

「肩代わりが問題のクイズねぇ…」

「青鬼が赤鬼の身代わりになった話を元ネタにして考えるのはどうでしょうか?」

「あ、それいいね!」

(…?ゆーゆ今なんか言おうとした…?)

「…」

 

ーーー夜ーーー

ーーー友奈sideーーー

「はぁ…」

(東郷さんを助けようとしたとき、お役目は私に引き継がれた。)

ズキッ

「うっ!」

(このことを知ったら、きっと東郷さんが悲しむことになる…せっかく今、みんなが揃って楽しいのに…)

ピロリン

 

東郷 : クリスマスって名前は外国産すぎてしっくりこない。モミの木祭りというのはどうかしら?

 

風 : 風情がない。

 

夏凜 : バカなの?

 

樹 : ちょっとさすがに…

 

園子 : わっしーは変わらないなぁ。

 

ちひろ : むしろお国スイッチ悪化してます。

 

竜治 : なにそれ…

 

東郷 : 我が国の良さを伝えきれないおのれの筆力が憎い!!

 

「くす。」

(私は…どうすれば…)

 

 

 

 

ーーー翌日ーーー

ーーー教室ーーー

(私は…生かされてる…だから…こっち側にいられるんだ…)

「あーもう!災難だったわー!」

「夏凜ちゃんおはよう!」

「おはよう。どうしたの?」

「二人ともおはよう。昨日マンションのエアコンが壊れてね…なんでこんな寒いときなのよ!」

「私も昨日は電灯が切れてとても困ったわ。」

(そういえばそんなこと言ってたな…東郷さん。)

「へいへい!みんなおはよう〜!」

「あ!園子!ってその手の絆創膏どうしたのよ!?」

教室に入ってきた園ちゃんの手には絆創膏が。

「あ、これ?昨日ちっひーに料理教えてもらっててね〜間違えて切っちゃっただけなんよ〜!」

「だけって…もう、気をつけてね?そのっち。」

「もちろんなんよ〜!でもそれで言ったらちっひー慌ててフライパンにジュってやったからそっちの方が重いんよ〜」

「全くあんたは…」

(みんなによくないことが起こってる…?昨日部室でみんなに紋章が出てたのと関係が…?)

 

ーーー部室ーーー

「でさぁ!樹が鍵落としてて寒空の下大変だったんだから。」

「もう言わないで…」

「ちょーっとコンビニ行っただけだったのに大騒ぎだったわよ。」

「あぅう…」

「私よりマシだと思うんですけど…?」

そう言ったちひろちゃんの腕には大っきく包帯が巻かれていた。

「ほんとにごめんねちっひー!」

「べつにいいよ…悪気なかったんだし…」

「はあ。揃いも揃って師走にろくなもんじゃないわね。」

(…やっぱり昨日紋章が出た人みんな…)

「俺はなんもなかったけど…お祓いしてもらった方がいいかもしんないですね。」

「ちょっと、縁起でもないこと言わないでよ。でも必要かも?」

「友奈ちゃんは何もなかった?」

「っ!うん!平気!」

「良かった。友奈ちゃんにまで何かあったら、いよいよ怪しいものね。」

「りゅーくんは勇者じゃないけどゆーゆまでなってたらまた大赦かーってなってたもんね〜!」

「「「「「「…」」」」」」

「あれ?もしかしてまずかった?」

「…いやいや。」

「さすがにそれはないでしょ。」

「ですよねー!」

「私たち、めちゃくちゃ疑い深くなってるんじゃない?」

「あはは…」

「…?」

「…」

「はいはい。それじゃあ、それぞれ持ち場につきましょう。」

「「「「「「おー!」」」」」

(…勇者部五箇条、悩んだら相談!だよね…!)

「あ、あの、風先輩。」

「ん?なに?」

「…ちょっといいですか?」

 

ーーー外階段ーーー

「どうしたの? 悩み事?」

「えっと…えっーと…」

(やっぱり怖い…これで風先輩に何かあったら…)

「恋愛のことだったりして?」

「えっ!?」

「あ、そしたら東郷が怒るか…」

(でも東郷さんなら…)

「怒ったりしませんよー。」

「どうかなー?」

「ま、冗談はおいといて、何? 言ってみ。」

(風先輩…ありがとうございます…!)

「えーと…この間…」

「どの間?」

「えっと、スマホを返してもらった日…」

「ん?何かあったの?」

「実は、東郷さんを…っ!?」

前を見ると風先輩の胸にあの紋章が再び刻まれていました。

それも前よりはっきりと。

「え?なに?」

(言えない…いやな予感がする…!)

「あ…いえ…」

「?」

「前に撮った皆の写真とか大事なやつ、スマホから消えちゃってて…」

「ああ、それは仕方ないわね。大赦の検閲で消えちゃったのかも。」

「でもみんなに悪くて…」

「あ! 二人だけの恥ずかしい写真とかあったんでしょ?」

「え!?ちょっとー!?」

(恥ずかしい写真ってなんですか!?)

「そりゃ皆には相談出来ないわよねー。で、あんたたち、そんなに変な趣味あったの?」

「無いですよー!!」

 

ーーー帰り道ーーー

ーーー風sideーーー

(友奈の相手に慣れてたかしら…結局最後まで元気がなかったし…)

「ラーラーラー♪♪」

「お、いい調子!でも今外でやるのは喉によくないわよ。」

「アハハ…」

(なんたって、ね…)

「樹の初代表!初イベントだもの!楽しみにしてる。」

「だから私のじゃないよ…」

「ふふふ…」

「でもありがとう。頑張るね。」

(全くうちの妹は立派になりおって…)

「よし、さすが私の妹。じゃあ今日は温かいもの作ろうかね。スーパー寄ってくわよ。」

「はーい。」

(あ、ちょうど信号青なった。さっさと渡ろっと。)

真ん中辺りに差し掛かったそのとき。

キィィィィィ

私が気づかぬうちに車が交差点に突っ込み…

(精霊!?なんで出てきて!?)

「えっ!?」

バーン

私の体は宙に舞った。

「…え?お姉ちゃん!!!!」

そして夕焼け空に樹の叫び声が響き渡った。

 




最近カーソルが出てこなくて打ちづらい…コピペしてるだけどから問題ないんですが


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5話 誰も巻き込めない 後編

えー、今回も謝罪があります。前3話に渡って、話数の表記忘れ、及びミスがありました…ほんとに申し訳ない…


ーーーかめやーーー

『ま、そろそろ帰りましょ?』

『は、はい…』

「…」

(最近友奈さんが怪しいからネーさんに録音してもらってたら…案の定か…友奈さんは何かを隠してる…それも人には言えない何か…おそらく言えば伝染するタイプ…)

「はあ…」

(昨日も一瞬はっとしたような顔してたし…なにを隠してるんですか…あなたは…)

ブーブー

(NARUCO?なんだろう…?)

 

樹 : 今、病院です。お姉ちゃんが車にはねられてしまって。

 

(なっ!?)

「すみません!このうどん下げてもらっていいですか!?」

「ちひろちゃん!?どうしたの!?急に!?」

「風さんが車にはねられて病院らしいんです!」

「なっ!?」

「金は払わなくていい!早く行ってあげなさい!」

「さすがにそれは!」

「いいの!勇者部のみんなにはよく来てもらってるからね!早く!」

(店長さん…)

「ありがとうございます!」

ダダダッ

(風さん…死なないで…!)

 

ーーー友奈sideーーー

「えっ!?」

(風先輩が…車に…?)

 

樹 : 私どうしたらいいか…

 

夏凜 : 樹落ち着いて、すぐいくから。

 

東郷 : すぐいきます。

 

園子 : もう出たから。ちっひーはかめや行ってるけど多分向かってるよ。

 

竜治 : 風先輩が…?すぐ向かう。

 

「あ…ああ…」

(私が…風先輩に相談したせいで…私のせいで…風先輩が…)

 

ーーー病院ーーー

「みんな!」

「友奈ちゃん!」

「風先輩は…?」

「緊急外科に入ってから出てきてないみたいです…」

「風、大丈夫だといいけど…」

「ちひろちゃん…私…なんもできなくて…!」

「うん…よしよし…」

(私のせいだ…風先輩…!)

 

ーーー1時間後ーーー

「…遅いわね…」

「きっと大丈夫。風先輩だもの。」

ガチャッ

「あ、お姉ちゃん!」

「いや〜まいったま…いった…」

「なんでそこ繋がるんですか…」

「偶然よ。」

「風先輩、大丈夫なんですか?」

「大丈夫、大丈夫だから。いきなり飛び出してくるんだもんな、信号無視すんなっつーの。」

「でもあんた…」

「あーもう…みんなして暗い顔しないの。にぼっしーらしくないわよ。」

「なっ!?」

「でも、でも…」

「樹。無事でよかった。」

「っ…」

「全く、人騒がせなのよ。」

「たしかに。」

「うっ…ちょっとは労りなさいよ。」

「あの…命には?」

「なんともないわよ。大げさなんだから。」

「おのれ…受験生になんてことを。」

「それは言わないで。試験は受けるから。絶対受けるから。」

「どれくらい入院なんですか?フーミン先輩。」

「ほんの一、二週間くらいね!その間、部活頼むわよ。」

「病院ではお静かに。」

「あ、はい…」

「妹さんですね?手続きがあるのでついてきてくれませんか?」

「あ、はい。ちひろちゃんもついてきてほしいな。」

「うん、わかった。園姉夕食食べた?」

「バッチシグーだから心配しないで〜!」

「うん。それじゃあ。」

「ひとまずはよかったね。」

「あんたたちも怪我には気をつけなさいよ。」

「はい、こんなときこそ唯一の男子、頑張らなくては!」

「お、その息だ〜!」

「いや…ここでこそアルファ波の出番ね!」

「それはもういい。」

「なっ…」

(風先輩…ごめんなさい…!)

 

ーーー帰り道ーーー

「道路交通法違反。許さない。」

「命に別状がなかったから良かったようなものの…」

「精霊ってやつがいたのになんででしょう?」

「まさか…サボり!?」

「フーミン先輩に懐いてるからそれはないんじゃないかな…?」

「もし皆の身に何かあったら、私、きっと正気じゃいられない。」

「東郷先輩…」

「言っとくけど仮面もブラックホールもなしだからね。」

「どっちも先走りすぎだからね〜」

「くっ…」

(私が…話さえしなければ…)

「友奈ちゃんも。」

「へっ!?私!?」

「怪我だけは気をつけてね。」

「…うん!もちろん!」

「あ、青ね。」

「「また明日ー。」」

「じゃあね。」

「さよなら〜…?」

 

ーーー翌日ーーー

ーーーちひろsideーーー

私は今イネスに来ている。

風さんのお見舞いを買うためである。

「園姉、ちょっとトイレ行ってくるね。」

「うん。いってら〜」

(さて…)

路地裏に入る。

「コソコソ隠れるのやめて、でてきていいよ。天の神に傀儡にされてる人さん♪」

ゴソッ

「ぃ…」

(ある程度の検討はついてる。)

「超小型星屑。その小ささゆえに樹海化にもひっかからず、人の体に寄生、乗っ取る力がある。とかでしょ?天の神。」

「ぃぃ…」

「…変身。」ボソッ

そして変身した私は速攻でミニビットを相手に飛ばし、星屑を切り裂く。

すると相手はたおれた。

「感覚からして胃のあたりにいるみたいね。」

「ぃ…」

「うぅ…」

「あ…」

まわりから洗脳人がたくさん出てくる。

無論全員が刀持ち。

(…20人くらいね…ここまでは想定通り。あとはこいつら全員倒すだけ。)

「コマさん。」

「あう?」

「これ、園姉に渡してきて。精霊バリアはいらない。どっちにしろ意味ないと思うし。」

(風さんのときも精霊バリアは破られてる。出してもゲージの無駄。)

「…アン!」

トコトコ

「よし、行ったか。」

(さて…友奈さんには録音データは送った…これで私が無事なら…友奈さんの精神的負担を減らせる。)

「絶対に負けない。勇者部のみんなが幸せになるためにも、あんたらを倒す。」

 

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

「なに…これ…」

ちひろちゃんから届いたメールについてた録音データ。

そこには昨日の私と風先輩の会話が記録されていた。

(ちひろちゃんも聞いてたってこと…?)

「どうしよう…このままだったらちひろちゃんが…!」

ーーー路地裏広場ーーー

ーーーちひろsideーーー

「はあ!」

(これで7人目…あと13人!)

かなり苦戦していた。

理由はまず殺さないどころか傷つけることができない。

だって相手は操られてるだけの一般人なんだから。

もう一つは連携してくることだ。

(さすが神さま…ってところね。)

「あ、春信さん呼んどけばよかったかなぁ…」

ブンッ

「当たんないわよ。うりゃっ!」

ズバッ

「あと12人!!」

そのとき

キキキキキン

私のデュランダルの突きを防ぐ人が。

(こいつ…強い!)

「はあああああ!!!」

「ぅぅぁ…!!!」

キキキキキン

だが、後ろからも敵は迫っていた。

ガキィン

だが、それをすれすれで受け止める。

「あっぶな!?えいやぁ!!」

ズバッ

そして星屑を切り裂く。

「あと11人!!」

だが…

前の手練れへの注意が途切れてしまっていた。

ズサッ

「カ…ハ…!?」

刀が腹を貫通していた。

(しまった…)

さらに…

ズバッ

「ぐっ…」

背中を大きく斬りつけられる。

(これは…無理かも…)

 

『嫌なんだ!誰かが傷つくこと、辛い思いをすることが!みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!』

 

 

『さあ、さあ!ここからが大見せ場! 遠からんものは音に聞け! 近くばよって、目にも見よ!これが讃州中学2年! 勇者部部員!三好夏凜の実力だー!!』

 

 

『必ず帰ってきてくださいね!!』

 

 

『もう…許さない。我敵軍に総攻撃を実施す!』

 

 

『ちひろ…ありがと。さあ!讃州マンションに住む者の女子力!見せてやるわよ!』

 

 

『自分は知ってるのに…仲間が同じようになるのを止めれなくて…気が向いたら来ていいからね…あなたは私の大事な妹分だから。』

 

 

『いくらでも泣いていいよ、私たちは、「親友」だから。』

 

(まだ…だ…!)

「私はぁぁぁ!讃州中学勇者部部員んんんん!上里ちひろぉぉぉぉ!!勇者部をぉぉぉぉ!なめるなぁぁぁ!!」

ズバババババッ

疾風のごとく11人全ての星屑を切り裂く。

「はぁ…はぁ…警察に…連絡…」

プープー

「はい、こちら讃州警察署です。」

「はい…イネスの…いなり区で…刀を持った複数の人が…」

「なっ!?わかりました。すぐに近くの警察官を向かわせます!」

ブチッ

(一目のつかないところに…!)

 

ーーー園子sideーーー

(ちっひー…遅いなぁ…)

トイレに行ってからもう15分。

あまりにも遅かった。

そのとき、

「あう!」

「?コマ!?なんで買い物袋持って!?」

さらに…

ピンポンパンポーン

『ただいま、いなり区で事件が発生した模様。一般人の方々は…落ち着いて避難してください。』

(…まさか!?)

「ちっひー、今行くからね!」

 

ーーー警官sideーーー

「なんだ…これは…」

目の前に広がっている光景はすさまじかった。

大の男が20人、倒れているのだから。

「この様子だと犯人はまだ逃走中ですね…まずいぞ…」

(そうだな…ん?あの刀についてるのは血か?となると…)

「違う!あの刀に血がついてる!それにこいつらに外傷は不気味なほどない!いないのは犯人じゃなくて被害者だ!この血の量だとかなりまずいかもしれん!急いで探すんだ!!」

「はい!!」

 

ーーーちひろsideーーー

ボタッ…ボタッ…

路地裏のせまい通路を壁によしかかりながら進んでいた。

(さすがに傷がでかすぎた…くそっ…)

「ちっひー!!」

前の方に園姉がいた。

「…園姉…!」

(よかった…これで…)

フラッ

(あ…もう意識が…ごめん…友奈さん…余計…追い詰めちゃう…)

バタッ

「え…?起きて…?起きてよちっひー…ちっひーぃぃぃぃ!!」

園姉の声が最後に聞こえた。

 

 

 

 

ーーー樹sideーーー

「で、ちひろの朝ごはんってどうだった?」

「すごい美味しかった。さすがだよ。本当に。」

お姉ちゃんの頼みでお姉ちゃんが退院するまで私はちひろちゃんのとこに泊まることになっていた。

(今日ちひろちゃんたちお見舞いくるって言ってたけど…まだかな?)

「風先輩!見舞いに来ました!」

「はい。ぼた餅です。」

「りんごあげるわ。」

「体大丈夫ですか?」

「お、みんな来てくれたの?ありがとう。」

「あれ?そのっち来てないの?」

「そうなんです…」

「あの二人イネスでお見舞い買ってくって部活来なかったのよ?」

(え?じゃあ…なんで…?)

ガチャッ

「園ちゃん!?」

「園子!?どうしてそんなに涙目なのよ!?」

扉が荒々しく開いて今にも泣きそうな園子さんが。

「あ…わっしーぃぃぃぃ!!」

ギュウウウウ

「そ、そのっち!?何があったの!?」

「ちっひーがぁぁぁ!大勢の人に襲われて意識不明なのぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁん!!」

(え…?)

「はぁ!?ちひろが!?」

「私…なにもできなくてぇ…!これでちっひーが死んだら私…私ぃぃぃぃ!!」

「落ち着いて!そのっち!」

(そ…んな…)

「ちひろちゃん…が…?そ…んな…」

バタッ

 

ーーー友奈sideーーー

「樹!?しっかりしなさい!樹!」

「樹ちゃんまで…夏凜ちゃん!友奈ちゃん!竜治君!3人だけでも行ってあげて!」

「東郷の言う通りね!ここは私たちでなんとかするから!早く!」

「「「…はい!」」」

(ちひろちゃん…ちひろちゃん…!)

 

『友奈さん!私はあっちのバーテックスを倒してきます!須美さん…いや、東郷さんをお願いできますか?』

『もちろん!そっちこそお願いね!』

 

(ごめんね…ちひろちゃん!)

 

 

ーーー数時間後ーーー

ーーー樹sideーーー

「う…あ…?」

「樹!よかった!目、覚めたのね!!」

(お姉ちゃん?あれ…たしか…)

「そうだ!ちひろちゃん!ちひろちゃんは!」

「落ち着きなさい!横にいるでしょ!」

(ほんとだ!)

「容体は!?」

「…意識不明だ。血を流しすぎたらしい。」

「園子は友奈と東郷が家に帰したわ。一番取り乱してたからね…」

(そんな…)

「ひとまず樹は園子と暮らしてなさい。」

「でも…」

「病院にいたいんでしょ?でもそしたら私もちひろも悲しむわ。」

「園子先輩相当取り乱してたからな…一人だとキツイかもしれないし。俺からもたのむ!!」

「…うん。わかった。」

「途中まで送っていくわ。二人とも、帰るわよ。」

「わかりました。」

「お姉ちゃん、また来るね?」

「ええ、こっちもちひろの意識が戻り次第連絡するわ。それじゃあね。」

 

ーーー夜ーーー

ーーー友奈sideーーー

(私が皆に話そうとしたら、皆に少しずつ嫌なことがあった。改めてちゃんと話そうとした風先輩には事故が起きた…それを聞いてたちひろちゃんは襲われた…)

「うっ!」

(天の力は現実の私たちの世界に及ぼすことが出来るほど…なんとかしようとしても、必ずどこかに影響が出る。そうやってバランスを取ってるんだ…)

「言えない…誰にも…誰も…巻き込むわけにはいかない…」

(私がルールを破ると皆に不幸が起きる。もう、私たちの戦いは終わったんだ。私が黙っていれば、いつもどおり何も変わらない。勇者部の楽しい毎日が続くんだ。私が黙っていれば…それでいいんだ…)

 

ーーークリスマスイヴーーー

ーーー風sideーーー

今、樹がお見舞いに来てくれてる。

てか毎日。

「樹。今日大事なイベントでしょ?」

「いいの。」

「良くないでしょ。」

「お姉ちゃんが怪我しててちひろちゃんも意識が戻ってないのにわたしだけ楽しいことはできないよ。」

(全く…そんなこと言ってたら…)

「こっちが気を使うわよ。お姉ちゃんのことなんて気にしなくていいのに。」

「ううん。お姉ちゃんが楽しくないと私も楽しくないんだ。だから今日はいいの。ちゃんと代わってもらったから。」

「…もう、ちひろが起きたら怒られるわよ?」

「うん、べつに大丈夫。」

「早く、起きないかね…」

「うん…背中をずっぱりだからね…ともかく、怪我人は安静、だよ。」

(生活、大丈夫かな…)

「ご飯どうしてる?ちゃんと食べてる?」

「園子さんが作ってくれてる。おいしいよ。」

「朝はちゃんと起きてる?」

「ちゃんと起きてるよ。むしろ私が園子さんのこと起こすときあるもん。」

(…立派になったわね。)

「もう…なんだか樹の方がお姉ちゃんみたいじゃない…」

「本当?やった!」

「やった、じゃないわよ。」

「うふふ…」

「全く…でもありがとう。」

「うん。全然平気だよ。」

「ちひろも早く起きないかねぇ。一人だと暇で暇で。」

「そんくらい我慢しようよ…」

「来年はもっと楽しいことしなくちゃねぇ…」

「うん。皆幸せにならないと。」

(ふふ…)

「樹もちひろも竜治も東郷も夏凜も園子も友奈も、皆いい子だわ。私は部長として幸せものだ。」

「あ、雪…」

(え、マジ?)

「ホワイトクリスマスじゃない。」

「だね。」

「おーい、怪我人。来てやったわよ。」

「樹ちゃん、遅れてごめんね。」

「ちひろまだ意識戻んねぇの?」

「…あんたら、そんなしょっちゅう来なくてもいいのに…」

(ん?)

「その格好どうしたのよ。」

「クリスマスイヴに病院じゃ寂しいんじゃないかって思ってね。」

(なっ!?)

「寂しくないわよ! これっぽっちも! 全然!」

「すみません。お姉ちゃん、ホントは嬉しいんですよ。」

「ちょっと!?樹!?」

「「この衣装で行こうって言ったのも夏凜ちゃん(先輩)なんですけどね。」」

「なっ!?あんたらねぇ!!」

(ほほう?)

「ツンデレかぁ〜」

「違うわよ!?」

「あれ? 友奈ちゃんは? 先に来てると思ったんですけど…」

「え?来てないわよ?」

「おかしいですね…」

「来年はお姉ちゃん浪人生かな…」

「え!?なんでそうなるのよ!?」

「友奈ちゃん、どうしたんだろう?」

「そうですね…」

「来年は同級生か。」

「夏凜!?」

 

ーーー園子sideーーー

(いかんいかん…少し遅れてしもうた…ん?あれって…)

フーミン先輩の病室の前にはしおりが落ちてた。

(これ、ゆーゆの…)

「あ、友奈ちゃんから。体調崩したみたいです。」

「なるほどねー。ならしゃーないか。」

(ゆーゆは来てたのに入ってない…)

今までの不信感の全てがピースのように当てはまってく感じがした。

「…私、わかっちゃったかも…」

 

ーーー友奈sideーーー

私はひたすら走っていた。

(みんなが幸せになるには…私は…いちゃいけないんだ…私はみんなを不幸にしちゃうから…みんなのとこには…)

ズルッ

「あっ…」

ドサッ

雪に足を取られ、転んでしまう。

(なんで…なんで私なの…?あんなに…頑張ったのに…なんで…!)

「うああ…うわああああ…!」

ただひたすら雪に顔をうずめて、泣いていた。

 

ーーーちひろsideーーー

「ぁ…?」

「ぐがー!すぴー!」

(そうだ…私…洗脳された人たちを倒して…まだ目覚めたばっかで頭が回んないや…)

「ひとまず園姉に…だな…」

(私の予想は当たってた…詳しい調査が必要だ…そうなれば崇められてた園姉の方がいい…)

NARUCOの個人会話を開く。

 

ちひろ : 園姉、起きてる?

 

園子 : ちっひー!!目覚めたの!?

 

ちひろ : うん。心配かけたね。

 

園子 : ほんとだよぉ…

 

ちひろ : それより頼みたいことあるんだけどいい?

 

園子 : ゆーゆのこと?

 

(やっぱ園姉は鋭いなぁ…)

 

ちひろ : そうそう。

 

園子 : ゆーゆは何かを抱えてる。

 

ちひろ : そう。人に言ったら伝染する呪いのようなものだよ。多分。

 

園子 : !!ゆーゆ…つらいだろうな…

 

ちひろ : だからもうちょい調査が必要なの。多分天の神からのだし。調査お願い。

 

園子 : わかった。明日にはみんなに教えてあげなよ?

 

ちひろ : ふふっ、もちろん。樹ちゃんをこれ以上待たせられないもん。じゃ、おやすみ。

 

園子 : うん。おやすみ〜

 

「さて…」

(必ず助けてみせます…友奈さん…!)

 



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6話 今度は私が

ハーメルンよ、私は帰ってk「人様のセリフパクる前に何か言うことないの作者さん?」
…忘れてました、めっちゃいいとこで更新止まってました。大変申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!許してくださいなんでもしますから!!


ーーー1月7日ーーー

ーーーちひろsideーーー

私たち勇者部は少し遅れて初詣に来ていた。

「はーっ!やっと退院できたわ!シャバの空気がおいしい。」

「早く退院できてよかったですね。たしか予定だとあと二日は入院でしたよね?」

「そうね。でも年を越してしまったわ…」

「3人での年越しすっごく楽しかったですー(棒)」

「ガーン!」

「大丈夫だよ、ちゃんとお姉ちゃんのことも考えてたから…」

「ちっひーフーミン先輩分のうどんもつくっ…「園姉!」ヘブシッ!!」

(全く…余計なことを…)

「へぇ〜?照れてるの?照れてるの?」

「園姉と同じようになりたいですか?」

「何でもないですはい。」

「お姉ちゃん…」

「よくあんな早く退院できたね…」

「たっぷり寝てたから?」

「「そういう問題じゃないでしょ…」」

「てか年越すことはいいことでしょーが。」

「いや、いい女が一つ歳を取るのよ。3月で卒業だし…」

「もう一年いてくれてもいいんですよ?」

「いや…それはちょっと…」

「ねえねえみんな〜あっま酒、飲みたいな♪」

(甘酒だしいいか。)

「おっ、いいわね。一杯ひっかけていきますか。」

 

ーーー甘酒購入後ーーー

「「ゴクゴク…プハー!!」」

(うん、なかなかうまい。)

「おお、二人ともいい飲みっぷり!」

「てか3人場酔いしてない?」

(え?まさか…)

「あはは! 酔ってないです! あははは!」

(えー!?樹ちゃん!?)

「うわーーーーーっ!私の中学時代が終わっちゃうーーーー!!!」

(おいおい犬吠埼姉妹…!?)

「酔ってますね見事に…」

「なんだこいつら…」

「重要な記録だわ。」

「あれ?友奈飲まないの?」

(友奈さん…)

「あ、熱くて…」

「大変だよわっしー!フーフーしなきゃ!」

「はっ!」

「「フーフー!!」」

「あ、ありがとう…」

(もう…園姉ったら〜また悪ノリして〜…あれ…?)

「3にんのあろ一人ってられれすか…?」

(ん…?ありゃ〜?ろれつが…)

「いや、あんたよ!?」

「ちひろ見えてないだけで顔真っ赤だぞ?」

「へ…?」

(そういえば…甘酒飲んだあとから…)

「頭らポワ〜っれしてらのそういうろとだったのね…」

「おっとりちっひーかわいい!!!写真じゃ写真!!」

(そ〜なのかな〜?)

「じゃあいいよ〜撮っれ撮っれ〜!」

「ちひろがいつもとは謎なくらい違うわね…」

「重要な記録だわ。」

「ねえ! とうごうパイセン~!写真撮りましょ〜!」

「酒のせいにしちゃう~。」

(集合写真か〜)

「わらしもろりたいれす〜!夏凜さん〜東郷さん〜おねらいします〜!!」

「!?い、言われなくてもいいわよ…////」

「か、かわいい…////」

「そこに並んでね。」

「にぼっしーもりゅーくんも照れてる〜!」

「「なっ!?」」

「撮りますよー。」

「…えいっ!」

「「えっ?」」

「りょっ、園姉〜!?」

「はぁ!?バランス崩れるっての!」

「あはは〜うわっ!?」

「うわぁぁ…へっ!?」

パシャ

結果取れた写真はみんなバランスを崩し、めちゃくちゃな状態だった。

ついでに私の写真は全部データを消した。

 

ーーー1月9日ーーー

ーーー東郷sideーーー

(風先輩はもうすぐ卒業。記録をとっとかなくちゃ…)

「スタンバイ、ゴー!」

「ん?ふっふーん!」

風先輩はポージングをするが…

(うーん、そういうのではなくて…)

「風先輩、自然体でお願いします。」

「いやあ、ついねー。でも最近熱心にカメラ回してるわね。」

「もうすぐ先輩が卒業してしまうので、揃っての活動記録は貴重だと思いますから。」

「って言うけどさー、私、卒業してもここに入り浸ると思うわよ。」

「入り浸るんだ…」

「風先輩呆れますわー。」

「想像ついてたけどね。」

「なっ!?」

(あ、夏凜ちゃん。)

「とか言って嬉しそうね、夏凜。」

「えっ!?…」

「ちょっ、何? その反応…」

「あれー?これはまさか図星というやつでは〜?」

「なっ!?なっ!?なっ!?」

「夏凜先輩ツンデレだったんですか…」

「あはは…」

(これは以外だわ…)

「二人を見てると創作意欲が湧いてくるよ~ね、サンチョ。」

「スィムジョウ。」

(えっ!?)

「その子喋るの!?」

「そうだよ〜」

「すごいね!」

「だって〜サンチョ。」

「アリガトォ!」

「出たよ園姉の腹話術…」ボソッ

「そ、そうなんだ…」ボソッ

「あの人なんでもできるなおい…」ボソッ

「フーミン先輩とにぼっしーで想像はかどっちゃったからな〜帰って二人の小説書こうっと!」

「なっ!?」

「ちょっ!?」

「また明日ー。」

「またね、そのっち。」

「園姉、牛乳買っといて。」

「オッケー!」

「「待ちなさーい!!」」

チラッ

チラッ

「「…」」

「あ、そういえば卒業旅行とか、どこ行こうかしら。」

「あ、話逸らしましたね二人とも。」

「いいから!」

(そういえば年末はどこにも行けなかったものね…)

「大赦のお金で皆で温泉とか行く?」

「っ!」

(…?友奈ちゃん今一瞬様子が…)

「温泉は前に行ったから違うところかどうでしょう?」

(なるほど、さすが友奈ちゃんね。なら…)

「前は海だったので今度は山とかいいですね。」

「俺は行ってないから海がいいけどなー。」

「竜治君の家海すぐそこでしょ…」

「あ、バレた?」

「当然だよ…」

 

ーーー1月11日ーーー

ーーー樹sideーーー

私たちは今依頼の仔猫捜索の途中です。

ただ、なかなか見つかりません。

「迷子の迷子の仔猫くーん? どっこかなー?」

「木の上全部確認しましたけどいないですね…」

「うーん、困ったぜ〜!」

「園姉ふざけないで探して。」

「はぁい…」

(どこにいるんだろう…)

「あ、そうだ。樹、猫語で呼び出してみて。」

「ええっ!?」

(無茶だよ!!)

「なるほど。名案ですね。」

(東郷さん!?)

「猫語ならいっつんだね!」

(園子さん!?)

「やったれー!!」

(ちひろちゃんまで!?)

「「どんまい…」」

(そ、そこまでいうなら…)

「にゃー、にゃー、にゃー。」

(…恥ずかしい!!)

「もっとよ!もっと猫っぽく!」

「樹ちゃんかわいい!!」

「いいよー! いっつん、いいよー!!」

(ええ!?ていうか…)

「これ撮らないでください!!!」

「あ、いたー!!こっちおいで?お家に帰ろ?」

「ふぎゃー!」

タタタッ

「あっ…」

仔猫は友奈さんをスルーしてお姉ちゃんの元に。

(友奈さん、いつもは動物に好かれるのに…好みはそれぞれなんだなぁ…)

「おお、よしよし。友奈、ナイス発見よ。」

「あはは…怖がられちゃいました…」

「東郷先輩と園子先輩はまだスマホ構えてるんすか…」

「「当然。」」

「仔猫発見で依頼クリアね。」

「にぼっしーちゃんとやってた?」

「やってたわよ!てかにぼっしー言うな!」

「それでは先輩、記念に一枚撮りましょう。」

「お、いいわね。」

 

ーーー1月13日ーーー

ーーー夏凜sideーーー

私たちはカラオケ屋『MANEKI』に来ていた。

(久しぶりね、今度こそ風に勝つ!)

「「〜〜♪♪」」

「ヒュー!やるわね、二人とも!」

「ねえ、俺だけレベル低くね?みんな90点代ばっか出してんやん!?」

「たしかに…言われてみれば勇者部カラオケうまいのかもね。」

(ふーん、でも負けないわ。)

「じゃあ、こっちも行こうか、友奈。」

「えっ? うん、宿題これからやるよ。」

「ん?」

(友奈…?そういえば来た時からずっとぼーっとしてたし…)

「あはは、寝ぼけてるんだね。にぼっしー、私と熱唱しようよ!」

「え、ええ…」

 

ーーー夜ーーー

(よく考えたら年末から友奈、様子おかしいわね…元気ないし…)

「勇者部五箇条、悩んだら相談。」

(悩みがあるなら、今度は私が相談にのってあげる。待っててね、友奈。)

 

ーーー1月16日ーーー

ーーー友奈sideーーー

(最近体の調子、ますます悪くなってる…あとどれくらい持つかな…)

そのとき、

「友奈。」

「っ!夏凜ちゃん!」

「話、いいかしら?」

(夏凜ちゃんが?なんだろう…)

「うん。何?」

「…少し、歩こっか。」

 

 

 

 

ーーー港ーーー

「ここまで来たの、久しぶりね。」

「うん、前は東郷さん助けに寄ったくらいだっけ。」

「あのね、友奈…」

(夏凜ちゃん…でも…)

「その前にちょっといい?」

「?」

「夏凜ちゃんは寒くないの…?」

(実はずっと寒くて寒くて…)

「ごめん。全然気が回らなかった。場所を変えようか?」

(あ、気使わせちゃった…なら!)

「大丈夫。だって。」

座って夏凜ちゃんに体をくっつける。

「こうすれば暖かいから。」

「っ…!この前、風が卒業した後もちょくちょく部室に来るって言ってたでしょ?」

「うん、言ってたね。」

「私、それ聞いてちょっと嬉しかったの…」

(ほんとかな?聞き返してみよっと!)

「ちょっと?」

「ちょ、ちょっとよ…でも、結構…」

(やっぱり!)

「嬉しいよね。」

「うん…でさ。」

「っ!」

「私でもこうやって気持ちを話すようになったんだから…」

「っ!」

(夏凜ちゃん…まさか…!)

「友奈も話しなさいよ。友奈。年末辺りからおかしいわよ。絶対何かあったでしょ?」

「っ…!」

(夏凜ちゃん…)

「私が力になる。話を聞かせてくれない? 友奈。」

(ごめん…夏凜ちゃんを巻き込むわけには…だから…)

「なんともないよ。」

「っ!大丈夫よ!どんな悩みだろうと私が受け止めてあげるから!」

「夏凜ちゃん…」

(そこまで…私のこと…心配してくれて…)

「力になるわ。私は友奈の為になんだってしてあげたい!そう思える友達を持てたことが私は嬉しいの。その気持を持たせてくれたのは、友奈たちなの。なにがあったの?友奈。」

(夏凜ちゃん…話したい…でも…そしたら…風先輩や…ちひろちゃんみたいに…!そんなの…夏凜ちゃんが傷つくのなんて…嫌だよ…だから…ごめんね…!)

「本当に、なんでもないんだ。」

「っ…!そう…悩んだら…」

「っ!!」

「悩んだら相談じゃなかったの?」

夏凜ちゃんは…泣いてた…

(そんな…私…夏凜ちゃんを…泣かせて…)

「私、友達の力になりたかった…それだけなのに…!」

ダダッ

「あ、待って!夏凜ちゃん!」

夏凜ちゃんを追いかけようとしても…

ズキズキッ

「うっ!」

(なんで…こんなときに…)

「夏凜ちゃん…夏凜ちゃん…!ごめん…ごめんね…!」

 

ーーー夜ーーー

ーーー東郷sideーーー

「精霊、次の映像。」

カチッ

「…」

その視線の先にはプロジェクターで映された映像が。

(やはり、どう考えても最近の友奈ちゃんの様子はおかしい。)

 

『あっ、大吉だー。あはは、やったー。』

 

(なっ!?)

「違う。大吉を引いたなら友奈ちゃんはもっと弾けるように喜ぶはず。なのに…どうしてそんなに切ない顔をしてるの?」

(年末からずっとそう。どこか苦しんでるような…切ない、作り笑顔になってる。)

「きっと私たちに言えない何かが起きているに違いない!」

(だったらやることは一つ!)

 

ーーー友奈家前ーーー

「私が真相を確かめる。精霊、友奈ちゃんが寝てるか確認してきて。」

ピッピ!(ラジャ!)

ヒュー

ジー

シュッピッピピー(対象は睡眠中、侵入可能であります。)

サッカチッ(了解。そこで待機せよ。)

スタッ

トントンカチャッ(中に侵入し鍵を開けなさい。)

ピッピ(了解であります。)

シュン

カチャッ

窓の鍵が開く。

(よし、侵入!)

ガタッ

だが胸がつっかえる。

(!?…友奈ちゃんは起きてない。続行する!)

「はぁ…」ボソッ

(友奈ちゃん、電気つけっぱなしで…黙って入ってごめんね。)

「さて…手がかりは?」ボソッ

(っ!あれは!?友奈ちゃんが中学入学の時、4月3日にイネスでご両親に買ってもらったけど、手に取ることはなかったという百科事典の位置がずれている!)

手に取って観察する。

「これは…勇者御記…?」ボソッ

(なぜこれを友奈ちゃんが…これを友奈ちゃんが書いたのなら、確実に手がかりがある…)

そのとき、

「ううっ!」

「っ!友奈ちゃん!」

(うなされてるの…?)

手を握ってあげる。

そうすると友奈ちゃんの顔が穏やかになった。

(友奈ちゃん…勝手に持ち出してごめんね…必ず助けるから!)

タッ

そして私は友奈ちゃんの部屋からでた。

(みんなを集めないと…!)

ーーー犬吠埼家ーーー

私の招集により、友奈ちゃんを除く勇者部全員が集められていた。

「これを友奈が書いたってことか…」

「最近友奈ちゃんの様子がおかしかった。その原因が書かれていると思うんです。」

「っ!!」

「こんなのが友奈さんのところから…?」

「よく考えたら友奈先輩、ずっと元気なかったもんな…」

「私とちっひーからもいいかな?」

(え?)

「そのっち?ちひろちゃん?」

「私たちは友奈さんの様子がおかしかったことから調べてたんです。大赦へ行って。」

「主に私がね。」

(そんな!?いつのまに!?)

「大赦…」

「結論から言います。友奈さんは天の神の祟りに苦しめられてる。」

「天の神!?東郷先輩を奪ったやつですか!?」

「そしてそれはゆーゆが人に話したり、書いて伝えたりすると伝染する。他の人だと問題ないみたいだけど。」

「「「「「えっ!?」」」」」

「それで友奈さんが言おうとした風さんは事故に遭った。」

「あのときか…じゃあちひろはなんで!?」

「その会話録音しといてそれを聞いたから。」

「「「「「…ええっ!?」」」」」

「だって明らかに様子おかしいんですもん。ついでにみんなお怪我したときにも何か言いかけてましたし。」

「なっ…そしたらあんたや風が怪我したのって…」

「天の神が原因だね。でわっしー、話を戻すけどゆーゆが書いたその日記を読むってことはとても危険なことなんだ。」

「園子さん…ちひろちゃん…」

「それでも見る?」

(私は…)

「ええ。友奈ちゃんが心配だもの。」

「もちろんです。友奈さんは勇者部の一員。大切な先輩ですから。」

「もちろんよ。友奈のためにも!」

「私が事故にあったせいで友奈は余計追い詰められたんだ…見るしかないでしょ!」

「俺も同じです!友奈先輩をのけものにして楽しむことなんて無理ですから!」

「みなさん…わかりました。」

「じゃあ読んでみよう。ゆーゆの御記を。」

 

 

 

 

 

『はじめに。

  年末に大赦の人達が私の変化に気づいて家にやってきた。

事情は神託や研究を交えて知ったので神聖な記録として残して欲しいということだ。

続くかな?

どうやら私は大きな戦いで相当無理をしたようで、体中ほとんどを散華してしまった。

さらに、敵の御霊に触れたことで魂が御霊に吸い込まれてしまった。

気がつくと、そこは東郷さんを助けに行ったあの場所だった。

どこまでも広がる世界。

頑張って抜け出そうともがいてみたけど…

どうやっても抜け出すことはできなかった。』

 

『みんな…助けて…!』

『ひとりぼっちになっても…』

『!東郷さんの声!』

『それでも勇者は、それでも勇者は戦うことを諦めませんでした。』

『東郷さん…』

『諦めない限り、っく…希望が終わることはないから…っです…ひっく…何を失っても…』

『東郷さん!東郷さん!』

『ひっく…それでも…それでも…ひっく…私は…一番大切な友達を…失いたくないっ!』

『東郷さん…泣いてる…』

『嫌だ…嫌だよ…寂しくても…辛くても…ずっと私と一緒にいてくれるって言ったじゃない!ううっ…』

『私は…私は勇者だ!勇者は泣いている友達を放ってなんかいられない!勇者は根性! 絶対帰るんだ!』

《そのときでした。》

『あれって…カラス?』

《光の中からカラスが現れました。》

『かああ!』

 

『カラスは私に、ついてこいって言ってる気がした。

だから私は…光の方へ、ずっとずっと進み続けて…戻ってくることができたんだ。

でも、体は違っていた…

私や皆は散華から回復したけど、あれは捧げられた供物が戻ってきたわけじゃないみたい。

回復した身体の機能は神樹様が創ったものらしい。

それが自分の身体になるまで時間がかかった。

強引な満開して散華した私なんかは治すために全身神樹様が創ったパーツになったわけで…

大赦では私を御姿と呼んでいるとか。

御姿は良く言えばとても神聖な存在なので神様からは好かれるんだそうだ。

だから私は、私の望んだことが…

友達の代わりになることが出来て…

世界のバランスが守られた。

あれから大赦は異変に気づいて私を調べてくれた。

わかったのは、炎の世界がある限り、この体が治ることはないということ。

そして、私は今年の春を迎えられないだろうということ。

とても怖いし…私のせいで怪我をした風先輩やちひろちゃんに申し訳ないし…なんだか、トンネルの中に居るような気分…』

 

『1月7日。

風先輩が退院出来たのはおめでたい。

皆と居ると元気が出て来るけど、うつさないように気をつけなきゃ。

そう考えると、どうしても口数が減っちゃう…

食欲はなかったけど、甘酒が美味しくて喉が喜んでた。

でも、家で吐いちゃった…』

 

『1月9日。

吐き気はひどかったけど、部室にいると、とても心がほわほわする。

また明日っていう言葉が、最近好き。

約束すれば、明日が来ると思えるから…

出来れば、ずっとこの場所に居たいな…

風先輩は温泉旅行を提案してくれたけど、体中に紋章が広がってる私の体を見たら、みんながビックリしちゃう。

とても行けない。

ごめんなさい。』

 

『1月11日。

今日は調子がいい。

しっかり休んでいるのが効いたのかも。

体を動かせて楽しかった。

このまま根性でいい状態が続くかもしれない。

他にも体に良いことを試してみよう。』

 

『1月13日。

胸がとても痛くて、なんだか頭がクラクラする。

たぶん、皆と会話が成立してなかったかも…体、せっかく良くなったと思ったのに…』

 

『1月14日。

いっぱい寝て体力を回復させなくちゃ。

でも、電気を消して寝るのが怖い。

暗いのが怖い。

そのまま、暗いものに包まれてしまいそうで…』

 

『1月16日。今日は夏凜ちゃんを傷つけてしまった。

でも絶対言うわけにはいかない。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

とても苦しい。

体も痛い。

心も痛い。

グチャグチャになりそう。

もうおかしい。

私はただ…皆と毎日過ごしたいだけなのに…!

弱音を吐いたらダメだ。

私は勇者だから。

覚悟していたのだから。

もう泣かない。

頑張れ自分。

結城友奈!

勇者は挫けない!

とにかく、夏凜ちゃんと仲直りしたい。

でも本当のことは話せない。

どうすればいいんだろう?

もう、ここでいっぱい書く。

夏凜ちゃん…私、夏凜ちゃんのこと大好きだよ。

夏凜ちゃん、本当にごめんね。』

 

(そ…んな…)

「治らないってどういうことよ…春は迎えられないって…」

(こんなの…私が…私が一番悪いじゃない!)

バッ

「待って!わっしー!」

「須美さん!落ち着いてください!」

(だって!)

「止めないで! 全て私のせいじゃない! 天の神の怒りは収まっていなかった!私が受けるべき祟りなのよ!」

「日記に書いてあったでしょ! わっしーにうつってもゆーゆは祟られたままなんだよ!」

「そうです!むしろ須美さんが祟りで何かあれば友奈さんはもっと傷つく!もっと追い詰められる!」

「そんな…」

(じゃあ…どうすればいいのよ…)

「大赦はまた…こんな重要なことを黙って…」

「…他人が話したらどうなるか、わかんなかったんじゃないですかね…」

「竜治君…?」

「友奈先輩じゃない人が話したらどうなるか、もしそれで祟りをうつしてしまったら、って考えたら俺なら言いません。」

(竜治君…)

「っ!でも…」

「大赦はかつてみんなになにもかもを黙ってたかもしれない!でもそれだけで必ずしも悪く考えるのはよくないです!」

「竜治君…私もそう思うよ…お姉ちゃん。」

「樹…!」

「今回は純粋に私たちのためだと思う…」

(樹ちゃん…)

「うっ…うぅ…」

「夏凜さん…?」

「友奈が…そんなに苦しんでるのに…私のために黙ってくれてたのに…」

 

『っ…!そう…悩んだら…』

『っ!!』

『悩んだら相談じゃなかったの?私、友達の力になりたかった…それだけなのに…!』

 

「私…友奈に…あんなひどいこと…言っちゃった…言っちゃったよ…!」

(夏凜ちゃん…)

「夏凜さん…ハンカチ…」

「泣いていいですから…好きなだけ泣いてもいいですから…」

(真相を知っても、私たちはなにもできなかった。)

 

ーーー翌日ーーー

「おはようございます。」

(苦しんでるとわかってるのに、なにもできない。それが一番もどかしかった。)

「おはよう、友奈ちゃん。」

「はぁーい。あっ、東郷さん。おはよう。」

「今日は早いのね。」

「うん。早く目が覚めちゃって…でも寒いから出たくなくて…」

「もう、友奈ちゃんらしいわね。」

「ん?」

「どうしたの?友奈ちゃん。」

(私の顔に何かついてるかしら?)

「東郷さん、調子悪そう。大丈夫?」

(っ!友奈ちゃん…自分の方こそ悪いのに…)

ギュッ

「っ!?東郷さん!?」

(私が不安だった時、友奈ちゃんはいつもこうして抱きしめてくれた…)

「っ…」

ギュッ

(友奈ちゃん…今度は私が、絶対助ける!)




あと2話ほど一気に更新する予定です( ´・ω・`)
あと32話にはお知らせもあるのでそこまで見て貰えるとありがたいです…何様だって話ですが


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7話 相反する思い 前編

ーーー通学路ーーー

ーーー東郷sideーーー

「はあ、はあ、はあ…」

(友奈ちゃん…かなりキツそう…どう声をかけたらいいのかしら…)

「最近、あったかくなってきたね。」

「うん…」

「もうすぐ春だ。」

「うん…」

(早くなんとかしないと…友奈ちゃんが…!)

「東郷さん、私ね…」

「うん…」

「結婚する。」

「うん…うん!?」

(へ!?いいいいいまなんて!?)

「突然ですが、結城友奈は結婚します。」

(はい!?ううううううそでしょ!?)

「なななななな何を言ってるの、友奈ちゃん!? あなたは中学生なのよ!? 大体、相手は!?」

「神樹様だよ。」

「え…?」

 

ーーー数日前・夕方ーーー

ーーー友奈sideーーー

今日はまた大赦の神官さんが来ていた。

(今度はなんなんだろう…)

「あ、あの…今日はなんの御用でしょうか?」

「友奈様に急ぎお知らせしなければならないことがあります。」

「えっ? な、なんですか?」

「私たちを約300年の間守ってきてくださった神樹様の寿命が近づいております。」

「えっ?」

(そんな…神樹様が…?)

「神樹様が枯れてしまわれれば、外の炎から守る結界が無くなり、我々が暮らすこの世界は炎に飲まれ、消えてしまいます。」

「消え…る…?」

(そんな…みんなも…?)

「ダメです…消えるなんて…」

「仰る通りです。人間を全滅させるわけにはまいりません。全滅を免れ、皆が生きる解決法を我々は見つけております。」

(ならよかった…でもこれって…)

「勇者部全員で聞いた方が…いいのでは…?」

「まずは友奈様にだけお話を。皆が助かる方法は一つ。選ばれた人間が神樹様と結婚するのです。」

(へー、結婚かぁ…え?)

「結婚!? 結婚って、あの結婚ですか!?」

「はい。神との結婚を、古来神婚と云います。神と聖なる乙女の結合によって世界の安寧を確かなものとする儀式。」

(そ、そうなんだ…でもなんで私に?)

「神婚することで新たな力を得て、人は神の一族となり、皆永久に神樹様と共に生きられるのです。ご理解いただけたでしょうか?」

「よくはわかりません…でも全滅だけは…」

「私たちも友奈様と同じ気持ちです。」

「そ、それで…なんでまず私に…?」

「神婚の相手として、神樹様は友奈様を神託で示されたからです。」

(っ!?私!?)

「な、なんでまた私を…」

「心も身体も神に近い…御姿だからです。天の神が生贄として友奈様を欲してるのと理由は近いかと。」

「そ、そうなんですか…」

「私たち大赦は人類が生き延びる為に様々な方法を模索し続けて来ました。そして、神婚という選択肢のみが残されたのです。また、神婚が成立すれば選ばれた少女の存在は神界に移行し、俗界との接触は不可能になります。」

(神界に移行?俗界?どういうことだろう?)

「ど、どういうことでしょうか…」

「神婚した少女は、死ぬということです。」

「っ!?」

(死ぬ…?)

「すみません…すぐ答えられなくて…頭が追いつかないっていうか…」

「天の神の怒りを背負われている。さぞ、お辛いでしょう。祟りの為に、皆にこのことも話せず…」

「話せないなら話せないで、もっと賢いやり方もあったかもしれないんですけど…私、友達を傷つけちゃって…」

(ごめんね…夏凜ちゃん…)

「皆を慈しむ心。友奈様は素晴らしい勇者であると、私は思います。」

「そんなこと…ないですよ…」

「その友達を、人間を救うことが出来るのは友奈様だけです。」

(私しか…みんなを…救えない…)

「神婚したとして、その…人が神の一族になってずっと生きるって言うのは…?」

「言葉通りの意味です。我々を神樹様に管理していただく、優しい世界。人は死んでしまえば終わりですが、神の眷属となり、神樹様と共に生きてゆけば希望が持てます。」

(でも…それって…)

「それって、皆、ちゃんと人間なんですか?」

「神の膝下で確かに存在出来ます。信仰心の高い者から神樹様の元へ。皆が、神樹様と共に…どうか…この世の全ての人々をお救いください。」

「…少し時間をください。」

 

ーーー翌朝ーーー

ズキズキズキッ

「ううっ!あっ!」

痛みのあまりベッドからも転げ落ちてしまう。

「はあ、はあ…祟りの次は神婚だって。ビックリだね、牛鬼…」

(痛みはますますひどくなってる…もう時間は残されてない…)

「お父さんとお母さんは泣いてたけど、私の意志に任せるって、言ってくれたけど…私の体は…命は…」

(もう…長くないんだ…)

 

ーーー外ーーー

胸を押さえながらいつもの高台へ向かう。

(神婚して死ぬと、どうなるんだろう?祟りで死ぬより苦しくないのかな?)

「っ…!私ダメだなぁ。勇者なのに、自分のことばっか。」

(勇者らしいことしなきゃ…!)世界が炎に包まれるなんて、そんなのイヤだ…絶対!)

「勇者部五箇条。成せば大抵なんとかなる。」

(そうだよ…迷ったり怖がってる場合じゃない。やらなきゃ!だって私は…勇者なんだから…祟りで消えてしまう命なら…みんなのために使える方がいい。)

「怖くない…怖くない…!怖くない!」

高台に着く。

「はあ、はあ…きれい…うっ!」

(必ず消える私の命で、みんなが生きられるなら…やるしかない。)

「私…決めたよ。」

 

 

 

 

ーーー部室ーーー

「いや、怪しいでしょ! 何引き受けようとしてんの!」

「ゆーゆ…」

「友奈さん、そんなぼかした言い方してる時点で信用に値しないとおもうんですけど。」

「違うと思います。」

「俺もです。反対です。」

(そんな…)

「みんな…」

「今の皆の反応でわかるでしょ? 友奈ちゃんの考え方が間違ってることが。」

「東郷さん…」

(でも…)

「それにしても大赦め…!また隠しおって…友奈、私たちもついていってあげるから、バシッと断りなさい。」

「園姉と私がいる時点であちらさんに勝ち目ないだろうしね。」

「神婚なんてする必要ありませんよ。」

「そもそも神樹様って複数の神様が合体してんのに性別ありゃしないと思うし、やらなくていいですよ、絶対。」

「園子、今から連絡いれられる?大赦に。」

「任せなされ!」

(そんな…!)

「みんなまっ…」

「もう我慢できない!」

(東郷さん…)

「行くわよ。一度潰した方がいい組織になるかもね。」

「てかなるでしょうね。構成員のほとんどクズですから。」

「そんだけなのか…聞いてる限りだとわかんなくもねぇけど。」

(違う…そうじゃない…私が言いたいのは…!)

「待って!私は…神婚を受け入れるって最初に…」

「その必要はないんだって!」

「だって…死ぬんでしょ?」

「そんなの生贄と変わりませんよ!」

「さっきちっひーも言ってたけど神樹様と生きるって、ゆーゆが想像してるのとは違うよ?多分。」

「ええ、とても幸せなことだとは思えないわ。」

(そんなこと言ったって…)

「私が神婚しないと神樹様の寿命が来て世界が終わっちゃうんだよ!」

「だからって友奈先輩である必要はどこにあるんですか!」

「神樹様の寿命は分かるわ。でも友奈はもう頑張った。これ以上頑張らなくてもいいのよ。」

(でも…でも!!そしたら他の人ならいいってことになっちゃう!)

「私はそもそも神婚やらなくていいと思いますけどね。誰かしら犠牲になるなら。」

「たしかにそうね。なんで大赦はいっつも犠牲を払うことばっか…」

「風先輩。」

「ん?なに?」

「勇者部は人の為になることを勇んで行う部活、でしたよね?」

「これは違うよ、ゆーゆ。」

(でも、私は…)

「これも勇者部の活動だと思うんです。」

「…」

「誰も悪くない。世界を守るために他に選択肢が無いなら…それしかないなら、私は勇者だから…」

「友奈!」

「っ!」

「一回頭冷やしなさい。」

「それしかないって考え方はやめよう、ゆーゆ。神樹様の寿命が無くなるまでの間にもっと考えればいいんだよ。」

「そもそも友奈さんがそう決めつけてるだけです。他に方法は絶対あります。」

「そ、そうよ!」

(たしかに…前だったらそうもできたかもしれない…けど…)

「ダメなんだよ…考えるって言っても…私には…もう時間が無くて…」

(しまった!つい!)

みんなの胸に紋章が浮かび上がる。

「友奈ちゃん、私たち知ってるわ。友奈ちゃんが天の神からの祟りで体が弱っていることを。」

(ダメ…その話をしたらみんなが…!)

「その話はやめて! 私は何も言ってない!」

「大丈夫よ、友奈ちゃん。その件も含めて解決してみせる。」

「大体おかしいです。何で友奈さん一人がこんな目に遭わなきゃいけないんですか!?」

「そうです!祟りだけでもダメなのに神婚って…」

(でも私がやらなきゃ別のひとが…!)

「で、でもね、樹ちゃん、竜治君。私はイヤなんだ。誰かが傷つくこと、辛い思いをすることが…でも今回は私一人が頑張れば…」

「ダメよ!」

「友奈さんは一人で頑張りすぎです!」

「友奈ちゃんが死んだら、ここにいる皆がどれだけ傷ついて辛い思いをすると思っているの!?」

(そんなこと…言われても…)

「私…想像してみたけど…後を追って腹を切るかもしれない!」

(そんな!?それで言ったら東郷さんだって…!)

「で、でも東郷さんもみんなを守るために火の海に行ったでしょ。あれだって、自分一人で世界を救えるならって思ったからでしょ!?」

「そうよ! でも壁を壊した私の自業自得でもあるのよ。友奈ちゃんは悪くないじゃない! 反対よ! 腹を切るわよ!」

(そんな…東郷さんに腹切られたら…私…)

「そんなの…ずるいよ…私は…東郷さんのかわりに…っ!?」

(えっ!?今なんで私そんなことを…!?)

「代わりに…何?友奈ちゃん。」

「ゆ、友奈さん。友奈さんが言うように、勇者は皆を幸せにするために頑張らないといけないと思うんです。」

「そうだよ。だから私頑張ってるよ。」

「で、でも…」

「皆って言うのは、自分自身もそこに含まれているのよ、友奈。」

(私は…)

「幸せだよ…それでみんなが助かるなら…」

「嘘よ!」

「ならなんでそんなつらそうなんですか?心のどこかでは嫌だって思ってるからじゃないんですか?」

「俺はいつもの友奈先輩は一番勇者だと思います。でも今最も勇者から遠いのも友奈先輩ですよ!」

(そんなこと言われても…!)

「ゆ、勇者部五箇条! なるべく諦めない。私は皆が助かる可能性に賭けているんだよ!」

「あんたが生きることを諦めているじゃない!」

(祟りと神婚…諦めるしかないじゃないですか…!)

「勇者部五箇条! 成せば大抵なんとかなる! なさないと何もならない!」

「友奈さん!そんなこと書いてないです!」

「友奈!五箇条をそういう風に使わない!」

「私は、私の時間のあるうちに私の出来ることをしたいんです!だからこうして皆にきちんと相談しました!」

「みんなの言ったこと聞いてないじゃん…これじゃ相談じゃなくて報告だよ、ゆーゆ。」

(どこが報告なの!?)

「相談してるよ!!」

「友奈、その…とにかく、無理すんな…」

(無理しなきゃ生きてられないよ!)

「無理してないよ!」

「ご、ごめん…」

「勇者らしく、私らしくしてるよ!」

「友奈先輩!全然らしくないです!」

「どこがなの!」

「っ!いつもの友奈先輩のもっと余裕が…」

「余裕持ってるよ!」

「っ!!」

「待ってくださ…「友奈!!」…っ!」

「皆がここまで言って、まだわかんないの!?」

「風先輩の言う通りよ!友奈ちゃん!」

「風さん!風さんも余裕なくなってきてます!少し落ち着いてください!」

「わっしーもらしくないよ。冷静になって!」

「落ち着いてるわよ!」

「冷静でいられるわけないじゃない!」

「だから! 他に方法がないからこうなっているんです!!」

「待って…なんで…なんでこんな…ケンカなんて…」

(そんな…樹ちゃん…)

「風さん…さっき樹ちゃんのこと遮ってましたよ。」

「そんな!?」

「いつもならすぐ気付くはずです。落ち着いてください。」

「うっ…うう…」

「樹ちゃんよしよし…」

「ごめんね…樹…」

(そんな…私には…もう…)

「私は…本当に時間がなくて…」

そのとき、みんなに紋章が。

「っ!!!」

(そんな…みんなが…みんなが!)

ダダダッ

私は部室から走り去った。

そして私の心の中には絶望と歪な決意だけが残っていた。



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8話 相反する思い 後編

ーーーちひろsideーーー

「っ!!!」

ダダダッ

友奈さんが走り去る。

「友奈ちゃん!」

「ゆーゆ!」

ダダダッ

須美さんと園姉もそのあとを追う。

「うっ…うう…」

「っ…」

「友奈先輩が追い詰められてるのもわかる…わかるけど…!」

「くそっ!こんなとき、どうするのが正解なのよ。」

「さあね…私も冷静さを欠いてたわ…ごめんね、ちひろ。」

「いいですよ、べつに。」

ピロリン

(ん?メール?)

「…これは…!」

 

ーーー東郷sideーーー

(校内のどこにもいないわね…どこにいるの…?)

「あ、そのっち!」

「わっしー!いた?ゆーゆ。」

「いなかったわ、そっちは?」

「こっちも。隠れちゃったのかな?」

(そうだ!レーダー!)

「レーダーを見たら自宅に反応があるわ!」

「おお!行こう!」

 

ーーー友奈家ーーー

(友奈ちゃん…友奈ちゃん!)

「ただ、一気に話すとゆーゆが落ち着けないだろうから、冷静に話そう?」

(そのっち…さっきは私も冷静さを欠いてた。それが友奈ちゃんを傷つけてたのなら…申し訳ないわ…)

「そうね。」

ガチャッ

「よし、入りましょう。」

「あれ〜?なんか今手慣れてたような〜?気のせいかな…」

「いない…」

「あ、ゆーゆのスマホ…」

(ほんとね…)

「反応はこれだったの…」

「横には勇者御記…意味あるだろうね。」

(そうに違いない…)

「開いてみましょう。」

そこには一文のみ書かれていた。

 

『みんな、色々ごめんなさい。私は行きます。』

「っ!ゆーゆ…」

(そんな…)

そのとき

ブーブー

「ん?誰だろ〜?」

 

『大赦本庁』

 

(え!?)

「大赦!?」

「…もしもし。」

 

ーーーちひろsideーーー

「英霊碑に!?わかったわ。」

「誰だったんですか?」

「園子よ。大赦が英霊碑に来いって。」

(っ!?大赦が!?)

「行きましょう。そこに友奈がいるかもしれない。」

「…そうですね。行くしかない。樹ちゃん、大丈夫?」

「うん…いつもと立場逆になっちゃった…」

「いや私いつも泣いてないよ…」

「あはは…」

「そうね。行きましょう。竜治はどうする?おんぶしてくか?」

「ええ!?電車乗っていくんで先に行っててください!おんぶは恥ずかしいです!」

「あ、そう…よし、行くわよ!」

「「「はい!」」」

 

ーーー英霊碑ーーー

奥には神官が…安芸先生がいた。

(…!安芸先生…!)

「勇者様に最大限の敬意を。」

「やめてください。」

「ここは、歴代の勇者と巫女が祀らている場所。」

「友奈がここに居るっての?」

「まさか!?神婚がもう…」

「友奈様はここには居ません。この場所は話をするには静かだと思ったので。」

「なんだ…ヒヤッとしたわ…」

「私たちは友奈ちゃんに会いに来たんです!」

「友奈さんはどこにいるんですか?」

「今は大赦に居られます。」

(そういうことなら…)

「大赦に乗り込もうそうしよう。」

「そうだね、ちっひー。」

「友奈様から話を聞かれたかと。世界を救う方法は神婚しか残されていません。」

「ええ! 聞かされたわよ!」

「友奈を追い詰めるのはやめて!友奈を返しなさい!」

「私たちが追い詰めたわけではありません。ただ、急ぐ必要があった。ご存知かと。友奈様の寿命はあと僅か。」

「友奈さんの祟りを祓う方法は本当に無いんですか?」

「我々は探りました。友奈様を救う方法を…しかし、無かったのです。外の炎がある限り、友奈様は祟られたまま。」

「調べ不足とかじゃなくて?本当に?」

「もちろんでございます。」

「じゃあ、外の炎をどうにか出来ないの!?」

「いくつかのプランはありました。」

「ならそれをやりなさいよ!」

「しかし、不可能だとわかったのです。」

「なんでそう勝手に決めつけるんですか!」

「もう時間が無いのです。」

(なによ…それ…)

「友奈様はこれより神婚の儀に入ります。」

「ふざけるな!」

「そんなの止めるわ!」

「歴代の勇者様の多くが、お役目の中で命を落とされました。2年前には人類を守るために、三ノ輪銀様が落命。」

「「「っ!!」」」

(…違う。)

「銀様は人類を守ろうと懸命に戦い、見事お役目を果たされ、英霊になられました。」

(違う…)

「友奈様もまた、戦い方は違えど皆のためにその身を捧げようとされています。」

(違う…!)

「それこそが勇者であると理解して…」

「違う!」

「ちっひー…」

「銀さんはそれだけのために戦ってたわけじゃない!みんなの日常を、笑顔を守るためだ!それをそんな風に言わないで!」

「友奈様も同じです。あなた方の日常を、笑顔を守るために戦うのです。」

(違う!絶対!)

「そもそも神婚で私たちはどうなる!?今まで通り行くわけないよね!?あんたらは友奈さんを騙してるだけだ!」

「友奈様には真実のみを述べております。友奈様はそれを理解し、自身で決断なされたのです。」

「それを…私たちに納得しろと…」

「歴代の勇者も巫女も…私たちと同じくらいの年齢なんでしょ…?いつだって子どもたちを犠牲にして生き延びて来たってことじゃない。そんな歪な世界ってあるの!?」

(…そうだ。ずっとこの世界は、子供を犠牲にしてきた…満開なんかより…火の海なんかよりイカれた真実はこんな近くにあったんだ…それに存在すら抹消された勇者だっている…どこまで…腐ってるんだ…)

「それしか方法が無いならば…全てを生かす為にはやむを得ないのです。それが、この時代における人の在り方。」

「そんな…」

(はぁ?そんなことない。)

「やむを…得ない…?」

「そうです…」

「それだったら、ちひろさんのお母さんや春信さんのことはどうなるんですか?今の大赦の在り方に疑問を持って、変えようとしてるじゃないですか!」

「彼女らやあなた方のような考えのものはごくわずか…少数では人の在り方を変えることはできません。」

「そんな…」

「ピーマンが嫌い…」

「っ!園姉…」

「そのっち…」

「だったよね?」

「…」

「すっごく厳しいけど、ふとした時に見せるチャーミングな所が…私は大好きだったよ…」

(園姉…)

「でも今は…もう昔の安芸先生じゃないんだね…」

「そうよ…銀のとき、一緒に悲しんでくれたのに!」

「満開のときだって…反対してくれたんですよね…?あの安芸先生はどこに行っちゃったんですか…」

「東郷…」

「ちひろちゃん…」

「その辛さを知っているなら…」

「もう一人も犠牲なんて求めないよね…安芸先生…」

「あなた達のクラスメイトは、その友達は、家族は…もうすぐ来る春を待ち遠しく思いながら、家でうどんを食べて、温かい布団で寝て、今日も平和な日常生活を送っている…少々の犠牲。このやり方で大部分の人たちが幸せに暮らしているのです。」

「そうですか…もう…あの安芸先生は…どこにもいないんですね…残念です…前のあなたなら…このやり方を最も嫌っていたはずだから…」

「人に押し付けないで、あんたらが人柱になればいい!」

「出来るものなら、そうしています。だが、私達では神樹様が受け入れない。」

「でも、ちひろちゃんのお母さんは今でも!」

「彼女は特例です…もしかしたら、こういうことに怒れるあなた達だから、受け入れているのかもしれませんね…」

そのとき、

ブーブーブーブー

(っ!?これって!?)

「特別警報!?なんで!?」

さらに文字がブレて視認できなくなる。

(なっ!?これって…一体…)

ゴゴゴゴゴゴ

「きゃっ!」

ドテッ

(地震!?)

「樹ちゃん!大丈…うわっ!」

ドサッ

「樹!?ちひろ!?大丈夫!?」

(いったー…)

「おっとっと…」

「なんで急に地震が…?」

「もう来るとは…」

「これは一体なんなんですか!?」

「あなたたちの出番です。」

「なっ!?」

(そんな!?まさか…)

「はめられたのか!?」

「天の神は、人間が神の力に近づいたことに怒り、裁きを下したと言われています。人間が神婚するなど以ての外…」

(まさか…)

「バーテックスが来るの…?」

「いいえ。」

だんだんと空が暗くなっていく。

「これって…なに…?」

そして空が焼け、割れる。

(違う…バーテックスじゃない…)

外の世界から巨大ななにかが進行してくる。

「現実の世界に敵!?」

「そもそも…敵なの…?」

「今まで見たどれよりも…禍々しい…」

 

ーーー友奈sideーーー

(あれが…天の神…)

「怖くない…怖くない…!」

 

ーーー竜治sideーーー

「なんだありゃ!?せっかく大橋市ついたってのに…!」

 

『ーーーーー』

 

(ん?なんだ今の…なんか思い出しそうな気が…気のせいか。)

 

ーーー???sideーーー

(いよいよ来たな…)

「安心しろ…みんな…絶対私が全員守る…」

(たとえこの命尽きようと、な…)

 

ーーー春信sideーーー

「ついに来やがったか…」

(そもそも神婚なんてしなけりゃもう少し時間はあったんだ…とんだ馬鹿野郎どもだと実感したわ…)

「これで我ら一同。神樹様と一つになる。神の眷属として迎えられる。何と幸せなことでしょう。」

(少しも幸せじゃねぇ…)

「隙みて抜け出すか…」ボソッ

(待ってろ…勇者部…夏凜…!)

 

ーーーちひろsideーーー

「神婚は、友奈様が神樹様の元へ行き、人々の願いの礎となることで契られ、成立します。神婚が成立すれば、人はもう神の一族。人で無ければ襲われない。これで皆は神樹様と共に平穏を得ます。」

(こんなの…友奈さんは望んでない…)

「やっぱり…友奈ちゃんが言ってたことと違うわね…」

「これが最後のお役目。敵の…天の神の攻撃を、神婚成立まで防ぎ切りなさい。」

(…上等だ。)

「やるわ。でも友奈も返してもらう!」

「神婚なんかさせない!」

「好きにしてください。それができれば、の話ですが。」

世界の命運をかけた最後の戦いが、始まる。

 




最後にお知らせについてですね。実はこの度、Twitterにて小説用の垢を作りました!!@utiyu_yuyuyu です!一応これから投稿のタイミングであちらでも告知する予定ですので…フォローしてもらえるとありがたいです(´・ω・`)
あとできれば感想も…「モチベも何も無いpixivからのコピペっていうこんな単純作業ですら失踪してた人が言うことじゃないと思うの私だけ?」グサッ!!


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9話 最終決戦 "約束"

…最終決戦、5話ほど続きます()


ーーー樹海ーーー

ーーーちひろsideーーー

ピカッ

ゴゴゴゴゴゴ

(あれは…獅子座の!?)

「やばい!避けて!」

ボォォォォォォ!!

ドガァン

(危なかった…まさかバーテックスの全てできるとかないよね!?)

 

ーーー友奈sideーーー

「今のって…天の神…?」

ズキッ

「うっ…」

(私の命がもうダメなのなら…私の命で皆が助かるなら…)

「怖くない…怖くない。」

 

ーーー風sideーーー

(獅子座の火球うってくるなんて…)

「あいつ無茶苦茶でしょ!?」

「風!」

「夏凜!?」

「あんたたちは早く友奈のところへ! あいつの相手は私がやっとくから!」

(あんなのを一人で!?いくらなんでも無理があるでしょ!?)

「甘く見ないで! 私にはまだ満開がある!」

「ちょ、夏凜!?」

(一人であいつを相手させるわけにはいかない…でも…)

「お姉ちゃん…私ね…」

「樹、ここ、お願いできる?」

「うん。お姉ちゃんは友奈さんのところへ。」

(もともというつもりだったのね…成長したわね。)

「ええ。友奈を連れ戻してくるわ。絶対に無事でいるのよ。」

「うん。」

ダダダッ

(とは言っても遠いし…どうしたものか…)

そのとき

ブウゥゥゥゥゥン

満開した東郷が。

「風先輩! 乗ってください!」

「東郷!よし!友奈のところへ向かうわよ!」

「最大戦速で向かいます!」

 

ーーーちひろsideーーー

「なんじゃ今のは…」

「無茶苦茶だったね〜」

(これは…やっぱり残った方がいいか…)

「ちっひー。」

「ん?なに?」

「行きたいところあるんでしょ?」

「っ!?」

(…さすが園姉だなぁ…)

「ここは任せていいから。行ってきて。」

「うん。行ってくる。」

「必ず助っ人を連れてきてね。」

(どこまでもお見通しだなぁ…)

「うん。もちろん。」

 

ーーー夏凜sideーーー

私は天の神と対峙していた。

(友奈に謝らなきゃ…一緒に帰るんだ…!)

「当代無双! 三好夏凜!一世一代の大暴れを!とくと見よ!!」

満開して天の神に向かう。

ピカッ

ズバァン!

特大針が飛んでくる。

(これって…射手座の!?)

ガキィィィィン

ズバッ!

ガードするが、バリアを貫通してくる。

「バリアをっ!?こいつのせいで…!」

(風は…友奈は…!)

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

ピカッ

今度は無数の針が。

ズバババババッ

足や腕に切り傷ができる。

(痛っ!)

「くっ!このぉぉぉ!!!」

だが、当たらなかった針は蟹座の反射板に跳ね返され…

後ろから向かってきていた。

バババババババッ

「っ!?なっ!?」

(しまった!?ガードが間に合わない!)

ガキィィィィン

でもそれは園子によって防がれる。

「園子!」

「一人で前に出過ぎちゃダメだよ、にぼっしー。」

さらに四方から蠍座の針が迫る。

(嘘!?こんなの防ぎようが!?)

ズシャズシャズシャ!!

でもその針を大量の糸が貫いて止めていた。

(これって…樹!?)

「皆で守りましょう。友奈さんが帰ってくる、この場所を。」

「…ええ!!」

 

ーーー???sideーーー

(これで…みんな救われる…)

「よし、覚悟は決めた。」

(みんな…心配かけまくってごめんな…バイバイ…)

そのときだった。

「やっぱりここにいましたか。」

「っ!?」

(この声って!?)

そこにいたのはちひろだった。

「詳しい話、聞かせてくれません?」

「…っ!」

「…銀さん。」

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

(…やっぱり、生きてた…)

「…なんで私だってわかったんだ?」

「須美さんを助けに行ったとき、すごい懐かしい感じがしました。あのとき助けてくれたの、銀さんですよね?」

「…そうだよ。」

「あと、夏凜さんが言ってました。自分に手を貸してくれた人がいたことを。この二つから考えました。」

「さすがだな。…でも私はもうお前が知る私じゃないよ。私は…天の神につくられた人間だから。」

「…!?」

 

ーーー2年前ーーー

ーーー銀sideーーー

(あれ…?ここは…?)

気づくと私は火の海のど真ん中にいた。

「ええ!?いや、根性でもこれは無理がないか!?」

(ていうか私は死んだはず…なんで…)

確実になくなっていた右腕もそこにはあった。

(そうだ!)

「須美!園子!ちひろ!」

「目覚めたか。」

「っ!?誰だ!?」

「私は天の神。あなたを作り出したものだ。ここはあなた方の壁の外。」

(天の神!?神樹様もたしか神さまだったけど…それとは別の!?)

「そもそも!壁の外は死のウイルスで…」

「…真実を伝えられてないのか。戦うものが。」

(真実…?)

「あなた方の壁の外にはウイルスなんてない。約300年前、私が世界のほとんどを火の海に変えた。バーテックスも私が神樹を殺すために作り出したものだ。」

(そ…んな…!?)

「みんなは…須美たちはそのことを知ってるのか!?」

「知るわけないだろうな…だが2人ほど壁の外には足を踏み入れていた。」

(っ!?)

「人間は思ったより腐敗してるようだ…」

「どういうことだよ!?それ!」

「話そう。あなたは知る権利がある。あなたの友がどれだけ残酷な運命を辿ったか、な…」

 

ーーー説明後ーーー

(そんな…3人とも…!)

「…本題にはいる。あなたにはこれを渡しておく。」

(これって…スマホ!?)

「なんでこんなのを!?」

「…満開。あれは凄まじいものだった。それとあなたの今までの戦闘データをもとに作り出した。」

「わざわざなんで私に…!敵になるかもしれないんだぞ!?」

「それでいい…私の目的はデータを取ること。

データがあればそれに合わせたバーテックスを創造できる。普通に生活すればいい。」

(ほんとなのか…?でも…こいつは何も隠さず教えてくれた…信じる価値はある!)

「わかった。」

 

ーーー今ーーー

「わかったか?私はもう人間じゃない。バーテックスに近いんだよ…それに私が生贄になれば、攻撃も祟りもやめる。天の神はそう言った。人の犠牲なく、平和が来る。友奈は須美が絶対助け出す!だから私はみんなが幸せに暮らせる世界をつくるよ。」

「何も、わかってないですよ…銀さん…」

(…どこがなんだよ…)

「…何がだよ。みんなが幸せに暮らせるんだぞ!」

「銀さんの犠牲で保たれた世界を私たちが幸せに暮らせるなんて、本気で思ってるんですか?」

「っ!!」

「もし、私たちがだれかの犠牲で保たれた世界でもいいなら、須美さんを助けに行かないですよ…神婚だって防ごうとしない!」

「…そうだけど…でも!」

(他に方法なんて…!)

「約束…守ってくださいよ…!」

「っ!?」

 

『少し離れるだけだ、必ず生きて戻るよ。』

『約束ですよ。』

『ああ、もちろんだ。』

 

「形は違えど!あなたは今!生きてるじゃないですか!約束…守ってくださいよ…!そんなに…私たちって…頼りないですか…?本音も話せないくらい…信じられないんですか…?」

(…私は…私は…!)

「生き…たい…!また…須美と…園子と…ちひろと…一緒に…暮らしだい!!」

「よかった…!行きましょう。天の神を止めるんです!」

(…ああ。)

「もちろんだ!」

 

 



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10話 最終決戦 "ただいま"

ーーー竜治sideーーー

(さっきの光…多分樹海化だな…でも時は止まってない…神樹様の寿命でそれだけのことができないなら…納得がいく…)

「…ならやることは一つ。勇者部として多くの人を避難させることだ。」

「ギィヤァ!」

(なんだあの白いの。)

空には白い物体?がウヨウヨして人に襲いかかっていく。

(あれが星屑ってやつか…?)

「…ってぼーっとしてる場合じゃねえ!!」

(助けに行かなきゃ!)

 

ーーー海岸部ーーー

「キャアア!!」

「グガァ!」

(やべっ!?)

「おらぁ!」

星屑に蹴りを食らわせて吹き飛ばす。

(ありゃ?以外と弱い?)

「あ、ありがとうございます…」

「なるべく内陸の方に!早く!」

「は、はい!」

タッタッタッ

(周りに人はいないっと…)

「なんとか倒すか…」

「ギシャア!」

星屑が襲いかかってくる。

「さあ、こ…」

ズキッ

「っ!?」

ズキズキッ

(なんだ…これ…星屑が近くにいると…頭痛が…なにか…思い出しそうな感じで…!?)

ズキズキズキッ

「うっ!?」

 

『いいか。あなたの親役の記憶改竄は完了している。あなたは三ノ輪銀をもとに作り出したオフィウクス・バーテックスだ。人間に終焉をもたらすとき、内部からも切り崩すことがあなたの役目。そのために人間と酷似したものにした。

最後にこの記憶は消去し、バーテックスを見た際に思い出すようにしろ。以上だ。』

『ハイ。ワカリマシタ。』

 

(ソウダ。オレハニンゲンジャナイ。オフィウクス・バーテックス。ニンゲンヲナイブカラキリクズスコトガシメイナリ。)

「…ゼンポウ3mサキニニンゲンノシュウダンヲハッケン。サツガイシマス。」

(イマコソシメイヲハタストキ…)

 

『私は上里ちひろです。よろしくね、竜治君。』

 

「ッ!?」

(イまのハ…ナンだ…!?)

さらに

 

『わぁ!あなたが転校生の人!?勇者部に入ってくれるの?』

『あ、はい。ちひろや樹も入ってるし、人助けは好きですので。』

『すごい!私は結城友奈、よろしくね!竜治君!』

 

 

『あ、竜治。明日野球部の助っ人でしょ?』

『そうですけどどうかしました?』

『私助っ人でホームラン打ったことあるから練習つきあおうか?』

『え?いいんですか?ありがとうございます。てかホームランってすごいですね…』

 

 

『園子先輩、それなに書いてるんですか?』

『小説なんよ〜!りゅーくん入ってきたからね〜ハーレム書けるんだ〜やった〜!』

『は、ハーレム!?』

『こら!園姉!』

『あう…ごめんなさぁい…』

 

『風先輩、荷物運び終わりました。』

『オッケー!しっかし竜治にはほんと助かってるわー。』

『え?なんでですか?』

『あんた唯一の男子でしょ?だからボランティアのレパートリーが増えてね〜ありがとう。』

『言われるほどのことはしてませんよ…』

 

 

『竜治君が私のいない間パソコンやっててくれたの?』

『あ、はい。』

『そうなのね…陳謝!』

『なんでですか!?』

『大変だったでしょう?』

『でもある程度慣れてたし、大丈夫ですよ。』

『お詫びとして私の技術も叩き込むわ。』

『ええ!?なんでそうなるんですか!?』

『私が卒業したあとのこと頼むわよ?』

『人の話聞いてくださいよ…』

 

 

『〜〜♪♪』

『いいんじゃね?』

『うん。問題ないよ。ところで、3次試験の結果は?』

『…通ったよ。』

『おお!すげぇ!』

『歌手デビューも目前か…いいねぇ。』

『まだ気が早いよ〜!!』

 

(違う…!)

「たしかに俺はバーテックスかもしれない…でも!」

左腕に盾をつくりだし、右腕を槍に変化させる。

「グギャア!」

「うわぁぁ!!」

「助けてぇぇぇ!!」

さっきの集団を襲おうとしてる星屑を切り裂く。

「俺は!讃州中学勇者部!蛇遣竜治!勇者部の活動は人のためになること!みんなが帰ってくる場所は!俺が守る!!」

 

 

 

 

「はああああ!!」

ズバズバッ

「あ、ありがとうございます!」

「できるだけ内陸の方に!見たところあいつらは大橋市に面してる海からしか来てないですから!」

「わかりました!」

ダダダッ

(しっかし数が多すぎるぞ…範囲も広い…一人で守りきるには無理がある…)

大橋市が海に面してる面は広く、とても一人では無理があった。

「グガァ!」

「あっちにも…」

槍?から放たれるエネルギー弾で倒していく。

「大丈夫ですか!?内陸のほうに避難してください!」

だが…

「いやぁぁぁ!!バケモノォォォ!!手が槍になってる!?」

(っ…!)

「ともかく早く逃げて!!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

ダダダッ

(ひとまずこれで大丈夫…次のところに…!)

 

ーーー東郷sideーーー

私たちは神樹様のすぐ近くまで迫っていた。

「東郷…あれ!」

「神樹様のほうに…地割れ?」

「きっもこの先に友奈がいるわ!」

(なるほど!)

ビジビジッ

(雷…!?)

「なんでしょうか…これ…?」

「いいものではないでしょうね…」

雷が通った空が割れ、中から炎星屑が。

(これって獅子座の!?)

「くっ!」

バシュバシュバシュ

「数が多すぎる…これじゃあ…」

(なら…これしかない…)

「風先輩。」

「…わかった。」

チャージ状態で戦艦は反転し、

「総員退艦!」

(今まで、ありがとう。)

シュバッ

そしてそのまま戦艦は斜め上に直進。

割れた空に突入し…

大爆発を引き起こした。

「はあ、はあ…」

「東郷、大丈夫?」

「はい、友奈ちゃんと比べればこんなもの、痛くもかゆくもないです。」

「さすがね。いくわよ!」

「はい!」

だが…

バキバキッ!

(何あれ…神樹様の根!?)

ドガドガァン

「神樹様に妨害されてる…?」

(そんな…!)

「知るかああああああ!!例え神樹様でもね!今回だけは譲れない!!」

なんとか回避しきったが…

道は大きな壁に塞がれていた。

(そんな!?どうすれば…!?)

 

ーーー園子sideーーー

私たちは完全に劣勢だった。

にぼっしーといっつんの満開も解ける寸前。

「くそっ!」

「とりゃああああ!!」

私が大量の剣を飛ばすけど…

ガキガキガキィン

全て防がれる。

そして…

「っ!?園子危ない!!」

「えっ!?」

私の代わりににぼっしーが爆弾に被弾し、落下してしまう。

「にぼっしー!」

さらに樹の方には水圧レーザーが。

(くそっ!)

「どいて!」

「園子さん!?」

「おりゃぁぁぁぁ!!」

弾き返そうとするが防ぎきれず地面に叩きつけられる。

(痛い!)

「きゃあああ!!」

「いっつん…!」

いっつんも布攻撃で吹き飛ばされる。

そして二人に蠍座の針が迫る。

「くっ…」

「うぅ…」

(嫌だ…もうだれも!)

最後の力で二人の前にたち、盾を展開する。

「園子さん!?」

「園子!?」

「二人とも、ごめんね。…生きて。」

 

ーーー竜治sideーーー

「ぐっ!」

(いくらなんでも多すぎる!)

なんとか今まで守ってきていたが、星屑は敵とわかると集団で襲いかかってきており、徐々に押し返されてきていた。

そんな中、さらに襲われそうな人が。

「くそぉ!!どきやがれぇぇぇぇぇ!!!」

(ダメだ!間に合わない!)

そのとき

ドババババッ

襲いかかろうとしてた星屑と俺の周りのやつは

うちはらわれた。

「なっ!?」

「あなたが人助けをしてる異形の人ですね。」

(助けてくれたのはいいけどひでえいわれようだな!?)

「私は楠木芽吹。防人隊、これより協力体制に入ります!」

 

ーーー風sideーーー

「東郷、やれる?」

「…必ず。」

(信じてるわよ!)

「なら私はぁぁぁ!!」

(狗神!力を貸して!!)

残ったゲージをフル使用、剣を何倍、何十倍にも巨大化させる。

「道をぉぉぉぉ!!切りひらぁぁぁぁぁく!」

ズバアァァァァァァァン!!!

剣を振り下ろし、壁をぶった切る。

そして、東郷はその上を走っていく。

(よし!行ったわね。)

私の後ろでは根が再び現れてた。

「東郷の邪魔はさせないわよ!」

 

ーーー園子sideーーー

盾を貫通される。

(ミノさん…今いくよ…!)

でも、針は私を貫くことはなかった。

「え…?」

「全く、お前はいつも無茶するなぁ、園子。」

(この…声って…!)

さらに

「園姉に手ぇ出すなぁぁぁ!!!」

ズバッ

満開してるちっひーが針を切り裂く。

「「ちひろ(ちゃん)!!」」

「言った通り、助っ人、連れてきたよ。」

(あ…あぁ…)

「ミノさん…!」

「…ただいま。園子。」



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11話 最終決戦 "勇者"

ーーー竜治sideーーー

「防人!?なんだそりゃ!?」

(夏凜先輩が言ってたやつか…?)

「防人は勇者の劣化版みたいなものですわ!私は弥勒夕海子。ここは協力し、乗り切りましょう!」

「夕海子さんが協調を優先してる…珍しい…」

「なっ!?そんなことはありませんわ!」

「私は…山伏しずく…二重人格だから…よろしく…」

「二重人格ってさらって言っていいのだろうか…」

「わわわ私は加賀城雀です!たたた戦いが終わっても食べないで〜!!」

「食べませんよ…」

「雀さんそれはないと思いますよ…」

(ん?今声したけど…なんだ?)

「通信機越しですみません。わたしは国土亜弥と言います。大赦の巫女です。」

(巫女…神託とか受け取るやつか。)

「俺は蛇遣竜治、讃州中学の一年生でバーテックス…らしいです。よろしくお願いします。」

「そうなのね…よし!みんな押し返すわよ!」

『おー!!!』

だが、絶望は訪れた。

ズゥン

「っ!?」

(なんだ!?空気が…変わった!?)

「メブー!たたた大変だよー!!」

「なにがあったの!?」

「ついにバーテックスが来たんだよー!!」

「…正念場。」

「ふん!弥勒の名にかけて倒してみせますわ!」

「射手座、乙女座、山羊座、牡羊座に蠍座…みんな、陣形K!全力で行くわよ!」

『おおー!!』

 

ーーーちひろsideーーー

「本当にミノさんだぁ〜!!」

ギュウウッ

「ん!?園子!?嬉しいのはわかるけどそこまでなのか!?」

「よかったぁー!!本当に会いたかったよぉぉぉぉ!!」

(この人は…2年で鈍感になって…)

「嬉しいに決まってるじゃないですか。私も見えないところで軽く3回は泣いてますもん。」

「マジで!?」

「…最後の戦いのとき、助けてくれたのはあんただったのね。」

「ん?そうだよ?困ってそうだったから。」

「…ありがとね。」

「当然のことをしただけだよ。」

「ちひろちゃんもおかえり。」

「うん。ただいま。」

(…そうだ!)

「はい。お三方に満開ゲージを2個ずつどーぞ。」

「…それ渡せたの!?」

「はい。」

「サラッと言うな!サラッと!」

「ありがとう。ちひろちゃん。」

「よぉーし!みんな押し返すよー!」

「「「おおー!!」」」

「ちょ!?なんで私しか驚いてないのよ!?」

 

ーーー東郷sideーーー

「はっ!?なにここ…」

(精霊にももう頼れない…帰れるかしら…)

「いや、帰るのよ。絶対!」

(あれは…友奈ちゃん!?)

そこには、蛇にまかれ、体と精神が分かれた友奈ちゃんがいた。

そして魂の方の友奈ちゃんは手のようなものに徐々に分解されていっていた。

(早く助けないと!)

「友奈ちゃん!」

「っ!?東郷さん!どうして!?」

「帰ろう、友奈ちゃん!迎えに来たのよ!」

泳いで友奈ちゃんのところへ向かう。

だが、手のようなものが手や足に巻きつき、そこが凍っていく。

(っ!冷たい!)

「そうまでして…渡したくないのね!友奈ちゃん! 今助けるから!」

「でも…私が…私がやらないと…世界が…消えちゃう…!これは…誰かがやらないといけなかったの…!なら私が…!」

(友奈ちゃん…そんなの違う…!)

「友奈ちゃんが…いや、だれもやる必要なんかない…大切な人を…これ以上奪われたくないの!」

(だから…!)

「私が我慢すれば、それでいいから…」

(ダメ…そんなの…私が許さない!)

「友奈!」

「っ!?」

「本当のことを言ってよ!怖いなら怖いって、私には言ってよ!友達だって言うなら…助けてって言ってよ!!」

「嫌だよ…怖いよ…でも言っちゃダメで…でもそんなの…死ぬのは嫌だよ…!皆と別れるのは、イヤだよっ!!」

(友奈ちゃん…よかった…!絶対助けるから…!)

「私たち、一生懸命なのに…それなのになんで…嫌だよ…ずっと…ずっと…ずっと皆と一緒に居たいよっ!!」

(友奈ちゃん!!)

「友奈ちゃん、手を伸ばして!!」

「東郷さん! 助けて!!」

「友奈ちゃん!」

「東郷さん!」

(あと少し…!)

だが、二人の手が触れ合うことはなかった。

ビジビジビジッ

「なっ!?」

二人の間に、バリアがはられる。

(そんな…精霊…!)

「こうまでして…逃したくないの…?」

「東郷さん…たす…けて…」

(そんな!)

「友奈ちゃん!友奈ちゃん!!」

「とう…ごう…さん…」

「ダメ!友奈ちゃん!そんな…!」

(あと…少しだったのに…そんな…)

 

ーーーちひろsideーーー

満開が5人の私たちはついに攻めに転じることができる寸前のところまできていた。

「このまま行きましょう!」

「園子!右から射手座の針!ガードお願い!」

「オッケー!任せて!」

「樹ちゃん!こっちもいくぞ!」

「わかりました!銀さん!」

そのとき

「どうしても、諦めないのですね。」

(っ!?なにこの声!?)

「何よいまの!?頭に直接響いてくるような感じ!」

「この声は…天の神!」

「あなた方は、友のためにならどんなつらいことも乗り越えることができる。不可能も可能にできる。それを、300年間、見てて感じました。」

「おお!ありがたや〜ありがたや〜!」

「…なら、なんで…」

「ですがそんなあなた方を騙し、戦わせる腐敗したものたちがほとんどなのも事実。だから、人類は滅ぼす。どうしても諦めないと言うなら…最凶の絶望を与える。」

(最凶の…絶望!?)

「…そんなことを言って諦めるとおもってるの!?」

「私たちはみんなと生きたいんです!邪魔しないでください!」

「お、いっつんも言うね〜!天の神さん、あなたはゆーゆを苦しめた。許すわけにはいかないよ。」

「あんたに何人もの先輩がやられてんだ!引き下がってたまるか!」

「丸く抑えようとしても無駄ですよ。私たちはあなたを許さない。」

「…そうですか。…ゾディアック・バーテックス、全てを滅ぼしなさい。」

ドガァン!

「っ!?」

音の先には…巨大なバーテックスがいた。

「ラジャ。ユウシャ、キサマラヲホロボス。」

「なんだありゃ!?」

「あれがゾディアック・バーテックス…?」

(あの姿…まさか!?)

「全てのバーテックスが合体してるの!?」

「そんな!?いくらなんでもそれはまずいよ〜!」

「カンガスルドイナ。」

「あたっててほしくなかった…」

「問題ない!倒せばいいだけだ!」

「そうね!行くわよ!」

夏凜さんと銀さんがゾディアックに向かう。

だが…

「ムダダ。」

ズバァアン!!!!!

「カハッ!」

「夏凜!」

巨大な剣で夏凜さんが吹き飛ばされてしまう。

「はあああ!!!」

樹ちゃんが糸を伸ばしても…

「フン!」

ものすごいスピードでかわされ

「キャッ!」

「樹ちゃん!」

スクリューアタックを受けて落ちてく。

(許さない!)

「園姉!銀さん!」

「うん!」

「おう!」

「ダブルフェニックスレイ!」

「紫鳥突撃!」

「根性ーー!!!!」

3人それぞれの最強技でゾディアックを倒そうとする。

だが、ゾディアックに傷がつくことはなかった。

「「「そんな!?」」」

「ナカナカイイコウゲキダッタ。ダガ…タラン。」

ボガァン!

ゾディアックの火球で私たちは吹き飛ばされた。

 

ーーー竜治sideーーー

隊形を組んでの連携攻撃、だが、効いていなかった。

「そんな…一斉攻撃なのに!?」

(くそっ!直接やらねぇと傷すらつきそうにねぇ!)

そして

シュバァン!

「…危ない!」

「あなた方どきなさい!」

「逃げて!」

「くそっ!邪魔だ!」

ドガァン!

射手座の特大針で全員が吹き飛ばされ、芽吹たちは至近距離でくらってしまった。

(くっ!!)

「芽吹さん!夕海子さん!しずくさん!雀さん!」

「みなさん!?応答してください!みなさん!!」

だが、彼女らから返事は返ってこなかった。

 

 

 

 

 

ーーー芽吹sideーーー

「ここは…?」

目が覚めると真っ白な空間にいた。

(たしか私は…射手座の攻撃を近くで受けたはず…)

「まさか!もう死んで…」

「それはない。安心しろ。」

「っ!?誰ですか!?」

声のした方に振り向くと、勇者と思しき人がいた。

「私は乃木若葉。初代勇者だ。」

(初代勇者!?乃木といえば最高位家!やはり私は…)

「私は死んでるが、おまえは死んでない。ここはおまえの精神世界の中だ。」

「精神…世界…?」

「そうだ。今おまえは気絶してるだけだから安心しろ。」

(つまり外は…!!)

「早く出してください。私はみんなのところに行かなくてはいけないんです!」

「まーまー焦るな。おまえに聞く。おまえはなぜ今戦っているんだ?」

「なぜって…今は時間が…!」

「今神婚が進み、神樹様を信じれば神樹様のもとにいける。苦しい思いをせずにな。なのになぜおまえはわざわざ苦痛の道を選んだんだ?」

(なぜ…か…)

「犠牲のある幸せなんて、望んでないからです。誰かの犠牲のうえで成立した世界で生きるなら、私は死んだ方がいい。今までのはどうしようもない。でも、手の届く限りの犠牲は絶対に出させない!そのために戦う。」

「…そうか。その勇気があれば大丈夫だな。これを受け取れ。」

(これって…刀?)

「かつて私が使っていた、生大刀だ。これならあいつらにも対抗できる。」

「…ありがとうございます。」

「礼には及ばないさ。頼むぞ。勇者、楠芽吹。」

「…はい!」

 

ーーー夕海子sideーーー

「これは一体どういうことでしょうか?」

(嫌なくらい何もないですわね…私は死んでしまったのでしょうか?)

「いらっしゃい。」

「…誰でしょうか?」

「私は郡千景。初代勇者よ。」

「初代勇者は4人と聞いています。乃木若葉、土居球子、伊予島杏、高嶋友奈。あなたのような方はいなかったはずです。」

「それもそうね。私は勇者から除名されたから。あなたに問うわ。なぜあなたは戦ってるの?見てわかるでしょう?あなたは楠芽吹には勝てない。どうやっても。なのになぜ戦うの?」

(…そうですね…)

「別に勝てなくても構いませんわ。人間全てが勝る人などいませんから。たとえ力は勝てなくても、他なら勝ってるところはある。お互いに補えばいい。芽吹さんや、他の方ができないところを私が補う。チームとしての勝ちを確実とするために、私は戦ってますわ。」

「…あなたなら私のようにはならないわね。合格よ。受け取りなさい。」

そういって出されたのは大鎌。

「これは?趣味が悪いと思うのですけど。」

「大葉刈。かつて私が使ってたものよ。これを使えば勇者になれるわ。」

「…ありがたく受け取っておきます。とてもあいつらに防人の武器では通じそうにないので。」

「せいぜい頑張りなさい。弥勒夕海子。」

「期待以上の活躍をしてみますわ。」

 

ーーー雀sideーーー

「いやあぁぁぁぁぁ!!ななななにここぉぉぉぉ!!もしかして私死んじゃった!?死んじゃったのぉぉぉぉ!?」

「ハロー!ヒステリックになってるとこ申し訳ないんだけど、話、いいかしら?」

「ひぃぃぃぃ!!だだだ誰ですかぁぁぁぁぁ!?」

振り向いたら、勇者がいた。

「…え?勇者!?もしかして乃木園子!?ししし死んじゃったんですかぁぁぁぁぁ!?」

「う、うーん…私は白鳥歌野。300年前、諏訪ってとこで勇者としてファイトしてたものよ!」

(ええ!?さささ300年前の!?)

「で一つ聞いてもいいかしら?あなたはどうして戦ってるの?あなたは人一倍怖いはずなのに。」

(どうしてって…)

「私、前勇者部に行ったことがあるんです。どんな人たちなんだろうって。すごいいい人たちでした。だから私は、あの人たちみたいになりたいって思ったんです。だから、勇者部の方々が安心して戦えるように、現実の平和を守りたいんです。」

「そっか…ならこれをギブよ!」

そういって出されたのは盾。

「これは神屋楯比売。マイアイテムは別なんだけど、あなたにはこっちの方がいいと思って球子さんと交換してきたのよ。」

(すごい…力を感じる…)

「人一倍怖がりなあなただからこそ、より多くの命を救えると思うわ。ネバーギブアップ!」

「…ありがとうございます!頑張ります!」

 

ーーーしずく・シズクsideーーー

「ん…?ここどこだろ…?」

し(私は攻撃を受けて…死んだのかな?)

「なわけねえだろ。」

「あ、シズク。」

「よう、しずく。」

し(シズクがいるってことは…)

「ここは精神世界…かな?」

「その通りだ!賢いなおまえ!」

「すみません。どうしてもお話ししたいことがあって。」

声のした方には勇者の服に身を包んだ二人の人がいた。

シ(あん?なんだこいつら。)

「私は土居球子!300年前に勇者をやってた!死んだけどな!」

「私は伊予島杏、私もタマっち先輩と一緒に勇者をやってました。」

「300年前に…」

「たしか初代だな。」

「ああ、すっごい大変だった!さあタマを褒めタマえ!」

「本題に入るよタマっち先輩…あなたたちはどうして勇者をしてるのですか?」

「防人も過酷だろ?なのになんでだ!答えタマえ!」

し・シ(そんなの決まってる。)

「鷲尾須美や乃木園子のようになりたかったから。」

「2年前、彼女たちが勇者をしてたとき、私たちは憧れた。」

「そして彼女たちは…今も戦ってる。樹海で。」

「なら、そのサポートをしてあげたい。彼女らが帰ってこれる場所を残したい。」

「「それが私たちの戦う理由。」」

「さすがだな!ならこいつを受け取りタマえ!」

「そういうことなら…これを。」

そう言って二人から出されたのはクロスボウと鞭。

「なに…これ?」

「これは建御名方神。藤蔓っていうらしいぞ!タマのは盾だけど他にピッタリの人がいるらしくてな。交換したのだ!」

シ(いいね!攻撃のレパートリーが多そうだ!)

「ありがたくいただくぜ!」

「これは金弓箭っていうクロスボウです。これならバーテックスにも効くかと。」

「…ありがとうございます。」

「あと、この戦いが終わるまで、おまえらが分離できるようになるぞ!」

「戦える人は多い方がいいですからね。」

し(…シズクと一緒に戦えるなんて…夢にも見なかった。)

「やろう。シズク。私たちでバーテックスを倒すんだ。」

「もちろんだ。しずく。絶対に勝つぞ!」

 

ーーー亜耶sideーーー

「あれ?ここは一体…」

(たしか私は千景殿から情勢を観察してたはず。なのに…)

「きましたね。こんにちわ。」

そこには巫女装束に身を包んだ女の人がいました。

「っ!あなたは…」

「私は上里ひなた。300年前の巫女です。」

(300年前の…?)

「すみませんが今は時間が…」

「ふふ、わかってますよ。一つ質問させていただきます。あなたは防人の方々が戦ってるのを見て、つらくないのですか?」

(…そんなの…)

「つらいに決まってるじゃないですか。さっきもみなさんが吹き飛ばされるのを見て、どれだけ自分の力がないことを呪ったか…でも、信じてますから。みなさんなら必ずかえってくるって。」

(私には、それだけしかできないから。)

「…強いですね。さすがです。なら私はそれをサポートします。」

「サポート…ですか…?」

「そうです。これがとけたときのあなたはまずみなさんの頭に直接言葉を送れます!」

「おお!」

「さらに敵の数、弱点などが見分けられるようになります!」

「おおおお!」

「以上です!」

「ありがとうございます!」

「あら…ツッコミが来ると思ってましたが…頑張ってください。」

「…はい!ありがとうございます!」

 

ーーー竜治sideーーー

「くそっ!」

(敵は五体…部が悪すぎる!)

そのとき

「さて…やりましょうか。」

「芽吹さん!」

「メブ!!」

起き上がった芽吹さんの服は、勇者に似たものとなっていた。

「心配かけました。勇者、楠芽吹。…参る!」

さらに

「ふぁああ…さあ、第2ラウンドですわ!」

「目覚めたぁぁぁぁぁ!!」

「さて…行こう、シズク。」

「いちいち言うんじゃねえよ!しずく。」

倒れていたメンツみんなが起き上がる。

そしてみんなが勇者装束に身を包んでいた。

(みなさん…よかった…!)

「はあ!」

ズバッ

芽吹さんが近くにいた牡羊座を切り裂く。

牡羊座は分裂する。

でも

「…あんたが偽物ね。」

ズバッ

片方をさらに切り裂き、消滅させる。

「この武器はバーテックス、あなた方の命を刈り取るにはピッタリですわ。」

ズシャッ!

夕海子さんは乙女座の頭部を御霊ごと切り裂く。

「硬いなら出させなければいいですから。」

射手座が針を飛ばしても。

「オラオラオラオラオラオラ!」

シズクが全て弾き、

「たしか…御霊は…あそこ。」

しずくが御霊を撃ち抜く。

(すげぇ…これが勇者…)

ギュルルルルルル

ビュウウウウウン

山羊座がスクリューアタックをしてくるが、

「ううううおりゃい!」

雀さんがそれを上に弾く。

「硬さが今までのと段違いだよ…すごい…」

(なら俺が!)

「くらいぃぃぃやがれぇぇぇ!!」

ドガァン

俺が覚醒したときに上がった跳躍力で山羊座の頭をぶち抜く。

(よし!御霊に命中!)

「あああありがとうぅぅぅ!!」

芽吹さんたちの活躍で残りは蠍座だけに。

そのとき

「あーあー、みなさん、聞こえてますか?」

(っ!?頭に直接声が!?)

「亜耶です。さっきちょっとパワーアップしまして、テレパシー?とかできるようになったんです!私なら敵の位置がわかります。司令塔は任せてください!」

(すげぇ…巫女ってそんなことまでできんの!?)

「わかったわ、亜耶。防人隊は亜耶から星屑の場所を把握、退治にむかって!バーテックスは私たちでやる!」

『はい!』

「あ、あの…」

「ん?どうしたの?亜耶。まさかもう内陸部にまで…」

「そうじゃなくて…なぜか海上以外には全くいないです…」

(え?)

「つまり街中のが全滅した…そういうことでしょうか?」

「そう…なるね…」

「えええええええ!?いいいいったい誰がぁぁぁぁぁ!?」

「遅れてすまん!!」

そう言って現れたのは、

「…春信さん!?」

夏凜先輩の兄さんの三好春信さんだった。

しかも手には大量の星屑。

『えええええええええ!?!?』

(聞いてる限りだと…)

「「ありえるわ(な)…」」

「とりゃっ!」

シュバッ!

(え?どこに今行った!?)

見ると、蠍座の方へ…

「おいおい!?いくらなんでもあいつ無茶だろ!?」

「防人ですらないのに危険すぎますわ!?」

「あああああああ!!しししし死んじゃうぅぅぅ!!」

「フルパワー10万枚瓦正拳!!!」

ボガァァァァァァァァン!!!!!!

まわりに突風すら起こしたその一撃は蠍座の尻尾の付け根をぶち抜く。

(嘘だろ!?)

「すご…すぎる…」

「あの人勇者じゃないのにバーテックスに傷つけられるってどんだけ強いのよ…」

「そもそも大橋市中にいたはずの星屑を全滅させてますからね…」

「えいしょっと…バーテックスのならもっと傷つけられるんだよな?」

そういうと落ちた蠍座の尻尾を半分にちぎり、針のある方に腕を通す。

「さらっととんでもねぇことしてんぞ…」

そして

「これで終わりだ!」

ズバァン

御霊を貫通、蠍座を滅ぼす。

『…あの人だけでよくない?』

それが、俺たち全員の思いだった。

「…んなこと言ってらんねーぞ。真打が来た。」

そう言って春信さんが言った先には、

比較にならないほど大きいバーテックスがいた。

「まさか、あれって…」

「…レオ・スタークラスターですわね…」

最後にして最強の壁が立ち塞がる。

 



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12話 最終決戦 "人として"

ーーーちひろsideーーー

「く…そ…」

ゾディアック・バーテックス、そいつ相手に私たちは手も足も出ていなかった。

樹海は天の神によって炎に包まれて来ている。

満開を使い切った園姉たちは避難させている。

私の意識も絶え絶え状態、トドメがさされるのも時間の問題だった。

「サテ、トドメヲサスカ。」

「や…めろ…!逃げろ…ちひろ…!」

(ここ…まで…か…須美さん…風さん…友奈さん…ごめんなさい…!)

その時、時は止まった。

「っ…?」

(時が…止まってる…?これって…一体…)

「ちひろ。」

目の前を見ると、コマたちがいた。

「コマたちが…やってるの…?」

「もともと私たちは、ちひろがどうなるかだけを観察するために天の神からつくられた。」

「っ!?」

(天の神から!?)

「まさか…私の勇者システムだけが特別だったのって…」

「天の神がアップデート時に介入したから。データをとるためにな。」

(そうだったんだ…)

「最初はなんとも思ってなかったよ…でも、ちひろと過ごしてくうちに、日常が楽しくなった。」

「ちひろのサポートをしたくなった。」

「悲しいときは慰めたくなった。」

「傷つくのが嫌になった。」

「ずっと一緒にいたいと…思うようになった。」

「なによりも…生きてほしい。だから、ちひろにこれを。」

そう言って出されたのは神々しさを感じる、刀だった。

「十二太刀。十二回しか攻撃できないけど、威力は最強の刀。我々の魂が攻撃となる刀。」

(みんなの…魂が…)

「…ありがとう。勝つよ。絶対。」

そして時は再び動き始めた。

「勇者部五箇条。成せば大抵なんとかなる。」

「ナゼマダウゴケル。」

「約束したから。大切な「家族」と。あんたを倒すって。」

 

ーーー竜治sideーーー

「傷ついても…すぐ回復する…」

「おまけにこれで御霊はドデカサイズのはずですわよね?」

「ああ!出したら終わるぞ!」

「そそそそんなのどう倒せば〜!!」

(神樹様、天の神様、みんなが帰ってこれる場所を守れるなら、超人的な力なんていらない。だから…最後に、力を貸してください。あいつを倒せる、力を…!)

「っ!?この感じは!?竜治さんにエネルギーが集まってってます!!」

「ほんと!?わかったわ!みんな!竜治君に賭けるわよ!!」

「つつつつまりエネルギーを送れってことですか!?」

「エネルギーが集まってるならやるしかないですわね!受け取りなさい!」

「しゃーねえなあ!おらよ!」

「はい…勝って…」

「どどどーぞ!!!」

「私のも受け取ってください!」

「竜治君、賭けたからね!受け取って!防人みんなの力!」

(みなさん…ありがとうございます!)

そして頭の中に浮かんだことを言った。

「満開…ヤマタノオロチ。」

 

ーーー東郷sideーーー

(あと少しだったのに…そんな…!)

「違う…私たちは…こんなこと…」

(望んで…ない…)

「感謝もしています…でも…でも…!もう…いいの…人を…友達を捨ててまで、手に入れる世界なんて…そんな世界なんて…いらない…それが…」

(私の…願い…)

静寂が訪れる。

ヒタッ

(何…今の音…)

目を開けるとそこには…

中2の銀の魂がバリアに手を触れていた。

(銀…)

ヒタッ

後ろにはそのっちとちひろちゃんの魂が。

(そのっち…ちひろちゃん…!)

力を振り絞り、体を起こす。

そしたら、勇者部みんなの魂も来ていた。

(みんな…)

でも、それだけではなかった。

「神樹様…」

「人は、いろんな人がいます…」

「優しい人、元気な人、怖い人だっている…」

「それでも、本当に人を救おうと言うなら…」

「人を…信じてくれませんか!?」

「これって…」

何人、何十人もの魂が…そこには来ていた。

「歴代の英霊…なの…?」

「ギャーギャー!」

(青い…カラス…?)

そしてそれは、人の姿に変わる。

(力を…貸してくれるんですか…?)

コク

(…ありがとうございます…!)

「私たちは…人としての道を進みます。」

バリアが消える。

友奈ちゃんの魂ももとに戻っていく。

(やった!)

 

ーーー友奈sideーーー

(あ…れ…?)

「っ…」

「友奈ちゃん!」

「東郷さん…」

「友奈ちゃん!!」

(東郷さんだ…東郷さんだ!!)

「東郷さぁぁぁぁん!!」

「ごめん、ごめんね。私、言い過ぎた。」

「私っ、私こそごめん。皆に、東郷さんにひどいことを…っ!」

「いいの…もういいの…」

「どうしようっ!? 世界が、世界が終わっちゃうよぉっ!!」

「友奈ちゃんのせいじゃない。これで世界が終わるなら、それは仕方ないことなのよ…」

「ううっ…」

(っ…牛鬼…?)

牛鬼から黄金の糸が伸びて、私たちを包んでいく。

「何を!?」

(違う…東郷さん…)

「大丈夫だよ…あったかい…」

『あなた方の思い、しかと受け取りました。ならば、最後に、あなた方が人として歩めるように、力を貸しましょう。』

そう、聞こえた気がした。

 

ーーー銀sideーーー

「覚悟!!!」

シュバッ

ちひろの刀とゾディアックの剣がぶつかり合う。

ビジビジッ

(なんだ!?)

見ると樹海中から黄金の糸が、神樹様へと集まっていた。

(まるで…神樹様が満開してるみたい…)

 

ーーー芽吹sideーーー

「一撃で決める!」

シュバッ

竜治君が飛び上がる。

ボォォォォォォ!!

スタークラスターも巨大火球を発射する。

そのとき、

ビジビジッ

(黄金の糸…?)

防人の鎧から黄金の糸が伸びていた。

「…頑張れ…勇者部…!」

 

ーーー友奈sideーーー

外はピンクの蕾ができる。

(すごい…満開のときの何倍、何十倍も力が溢れてくる…)

そして、樹海に大きな花が咲いた。

「私は…私たちは…人として戦う。生きたいんだ!!」

 

 

 

 

跳躍して天の神へ向かう。

ピュオオオオオオ

ズシャアン!!!!

(!?…レーザー!?すごい威力…!でも!)

「勇者は…不屈…何度でも…立ち上がる!!」

「行けっ!友奈!!」

「友奈さんの幸せのために!!」

「みんなで必ず帰るために!!」

「みんなが帰ってくる場所は守りきる!!」

「成せば大抵!!」

「なんとかなる!!」

「勇者部ーーーっ!!」

「「「「「「「「ファイトォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」

私の腕に8つの花が灯り、大きな花が光る。

そして私の下に8つの花が咲き、レーザーを押し返す。

だが

ズゥゥゥゥン

ビシャアァァァァァァァン!!

再び押し返される。

「くっ!」

「まだだ…」

「絶対に…諦めない!!」

「行け!今の勇者!!」

「「「「勇者は…根性ーーー!!!!」」」」

さらに銀ちゃんの炎が後押ししてくれる。

「おおおおおおっ!!!勇者ぁぁぁぁ!!パァァァァァァンチ!!!」

私の渾身の一撃は天の神に当たり…

打ち砕いた。

 

ーーー竜治sideーーー

「くっ!」

(なんて…勢いなんだ…!)

そのとき…

「勇者は…不屈…何度でも…立ち上がる!!」

「行けっ!友奈!!」

「友奈さんの幸せのために!!」

「みんなで必ず帰るために!!」

そう、聞こえた。

(なら!!!)

「みんなが帰ってくる場所は守りきる!!」

「成せば大抵!!」

「なんとかなる!!」

「勇者部ーーーっ!!」

「「「「「「「「ファイトォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」

火球を押し返す。

(くそっ…あと一押し…!!みなさんだって…戦ってるんだ!!)

「くっ!」

「まだだ…」

「絶対に…諦めない!!」

「行け!今の勇者!!」

「「「「勇者は…根性ーーー!!!!」」」」

さらに押し返す。

そして

「これでぇぇぇぇぇ終わりだぁぁぁぁ!!」

ドガァン!!

スタークラスターを消しとばした。

 

ーーーちひろsideーーー

(負けない!絶対に!!)

「勇者は…不屈…何度でも…立ち上がる!!」

「行けっ!友奈!!」

「友奈さんの幸せのために!!」

「みんなで必ず帰るために!!」

「みんなが帰ってくる場所は守りきる!!」

「成せば大抵!!」

「なんとかなる!!」

「勇者部ーーーっ!!」

「「「「「「「「ファイトォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」

ビキビキッ

「マダダ。ソレデカトウナドワラワセルナ!」

(くっ!)

「くっ!」

「まだだ…」

「絶対に…諦めない!!」

「行け!今の勇者!!」

「「「「勇者は…根性ーーー!!!!」」」」

ビキビキッ

バリンッ

ゾディアックの剣が砕かれる。

「ナンダト!?」

「一の太刀!!」

そして

「二の太刀!!」

そのまま山羊座の盾を切り裂く。

「三の太刀!!」

足先の魚座の部分を切り裂き、そのまま…

「四の太刀!!」

脚である双子座も切り裂く。

「五の太刀!!」

水瓶座の部分を突き崩し…

「六の太刀!!」

天秤座の部分も切り崩す。

「七の太刀!!」

腰・胴体の牡羊座を両断し…

「八の太刀!!」

両手の蠍座を根本から切り落とす。

そして…

「九の太刀!!」

右肩の乙女座の部分と…

「十の太刀!!」

左肩の射手座の部分を切り裂く。

「十一の太刀!!」

そして背中の牡牛座の部分と獅子座の部分を切り裂き、

(終わりだ!!)

「十二の太刀!!」

頭を破壊した。

だが…

ゾディアックが消えることはなかった。

(っ!?)

「ザンネンダッタナ。ワタシノホンタイハムネナリ!オワリダ!!」

(終わり…はそっちだ!!)

そして、私の手にはより大きくなった刀が握られていた。

「ナニ!?」

「十二太刀は十二回しか同じ威力の攻撃はできない。これが本当の、最後の一撃。私たち「家族」の力をくらうがいい!!」

「クソッ!?シュウチュウバリア!!」

(コマさん、ウリ、ネーさん、モーモー、トラ介、ウサピョン、タッツー、ヘボン、マルル、モココ、ウッキー、バーさん。…今まで、ありがとう。)

「終の太刀!!」

そして放たれた最後の一撃はゾディアックのバリアを打ち砕き、ゾディアックを御霊ごと…

消しとばした。



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13話 最終決戦 "願い"

ーーー竜治sideーーー

「壁が…消えてく…」

そしてその先には…陸が見えた。

(みんな…やったんだな…!)

「みんな!おつかれ!私たちは…勝ったのよ!!」

『…やったーーー!!』

「戻らないのですか?」

「戻るってどこにですか?」

「勇者部…」

「もうすぐ樹海からもももどってくるでしょう!」

(そうか!)

「ありがとうございます!すぐに!」

「俺が乗っけてってやるよ!」

「春信さん!」

(みんな…!すぐ行く…!)

 

ーーーちひろsideーーー

「はあ、はあ…」

地面に着地する。

(みんな…ありがとう…!)

もうすっかり変身もとけていた。

花びらが世界を再生していく。

(これって…神樹様の…散華?)

ふと見ると、銀さんが消えかかっていた。

「っ!?銀さん!!」

急いで駆け寄る。

「どうしたんですか!?一体何が!?」

「天の神は死んだんだ…私も消えるんだ…」

(そんな!?)

「バーテックスなら消えないらしいけど…私は違う。これは決まってたんだ…」

「ダメです!銀さんまだ須美さんに会ってないじゃないですか!」

「須美…会いたいなぁ…でも…無理みたいだ…ごめんな。」

(嫌だ!嫌だよ!)

「嫌ですよ!せっかく会えたのに!こんなことって…こんなのって!!」

(あんまりだよ…!)

「上里ちひろ、三ノ輪銀。」

(この声って…)

「天の神…?」

「私はその中枢、アマテラス。あなた方勇者には何度も驚かされました。私が作り出した精霊の心を変え、蛇遣竜治の覚醒。そしてついには私やゾディアックを倒した。神樹の心をも動かした。死ぬ寸前になって初めて実感しました。人の力を。」

(…)

「あなた方なら…この世界を任せても、大丈夫かもしれません。なら…」

銀さんが光りだす。

「っ!?何をするつもりですか!?」

「っ…おはよう!」

「銀さん!?よかった…!!」

「私の残る力で銀を完璧な人間にしました。」

「ええ!?そんなことしなくても…!」

「あなた方なら世界をよりよくできる。先人たちの二の舞にはならない。そう信じてます。頑張ってください。今を生きる勇者たち。」

「「…はい。任せてください。」」

 

ーーー友奈sideーーー

(やった…の…?)

神樹様が散華する。

そのときに出た花びらは、世界を火の海から海や地面へと戻していっていた。

「「っ?」」

「これ…」

「いつもと…違う…?」

そして神樹様が崩壊していく。

(私…どうなるんだろう…?)

気づくと目の前に牛鬼がいた。

「…牛鬼ってさ。」

そこまで言うと、牛鬼が光って、花びらになって散っていく。

「ありがとう…さようなら…!」

(牛鬼…!)

そして、樹海化はそこでとけた。

 

ーーーちひろsideーーー

(ここって…讃州中学の屋上だ…)

見ると勇者システムのスマホは割れていた。

「帰って…きた…世界は…?」

「ちゃんとあるね…」

「神樹様は…?」

「散華した…かと。」

「消えたってこと…?」

「たしかにあれは…満開に近かった…ものね…」

「いつもの空…うっ…うう…っ!うっ…」

「どうしたの、友奈ちゃん! 具合が悪いの?」

(もしかして…いやもしかしなくても…!)

「消えてる…」

「なくなったの?紋章。」

「なくなったんですね…よかった…!」

「みんな…みんな、ごめんね…!」

「私の方こそ…ごめんね…」

「夏凜ちゃぁぁぁぁぁん!」

「おかえり、友奈。」

「ただいま。」

「みなさーん!!」

「「竜治君!!」」

「よかった…誰一人欠けずに帰ってきてくれて…本当に…よかった…!」

(竜治君が泣くなんて…)

「私、初めて見た。竜治君の泣き顔。」

「私もだよ、樹ちゃん。レアだね。」

「そうだね。」

「よかった…本当に…!」

「勇者部のみんな、お疲れ様です!」

「ん?誰?」

「っ!?」

「あ、この人はみ…「銀…なの…?」あ、そう

…「そうだよ。ただいま。須美。」中断するのや…「ううっ…ぎぃぃぃぃぃん!!!」「おー、よしよし。」…人のセリフを遮るんじゃないわよ!!」

「ミノさん…よかったね…!」

(須美さん…よかった…)

「スルーすんなぁぁぁぁ!!」

「まーまー、落ち着きなさいにぼっしー。」

「にぼっしー言うな!!」

「場をわきまえてください。」

「夏凜さんこれはさすがに…」

「樹まで!?」

こうして、私たちはありえなかったハッピーエンドへと進んだ。

 

ーーー高嶋sideーーー

(やったね。さすがだよ。結城ちゃん。)

神樹様が散華する。

そのときに出た花びらは、世界を火の海から海や地面へと戻していっていた。

「「っ?」」

「これ…」

「いつもと…違う…?」

そして神樹様が崩壊していく。

(私もほとんど力、残ってないや…でも。)

「牛鬼、お願い。最後に結城ちゃんを地上に送り届けて。」

コクッ

(バイバイ。世界。)

そして私は…

ある場所にたどり着いた。

「ここは…?」

「英霊の広場です。やっとですね。いらっしゃい、友奈さん。」

そこにはひなたちゃんがいた。

「ひなたちゃん…」

さらに

「お疲れ様です。友奈さん。」

「ハロー。300年遅れとは…遅刻しすぎですよ。」

「全くだ!人に頼みごとするときくらい自分ででてきタマえ!」

「球子さんそんなこと言わないであげてください。友奈さんも望んでやってたわけじゃないですから。」

「みーちゃんがそう言うなら私はやめるわ。」

「おい!?歌野裏切るなー!!」

「相変わらず元気だわ…」

「ああ…いつも感心させられる…」

「タマちゃん…アンちゃん…みんな…!」

「ふっ、待ってたぞ。友奈。」

「お疲れ様。よく頑張ったね。」

「おかえりなさい。高嶋さん。」

「若葉ちゃん…オーちゃん…ぐんちゃん…!…ただいま!」

300年、神の役目に縛られていた少女は友との再会を喜んだ。

「ふふ、泣くな。英霊うどん食べるか?」

「若葉さんそれは飲み込めませんね!ここは英霊そばです!」

「うどんだ!」

「そばです!」

「また喧嘩してる…」

「ソーキそば…」

「棗さんもヒートアップさせないで…」

「友奈!あいつらは置いといてお団子あるぞ!食べるか!?」

「うん!」

「土居さんそれは高嶋さんのよ…」

「ひい!なんでもないぞ!」

神樹の加護がなくなった今、彼女たちにはここを相続させるために何度も試練が立ち塞がるだろう。

だが、彼女に今まで以上につらいことは起きないはずだ。

かけがえのない、仲間がいるのだから。

 

 

 

 

 

ーーー数週間後ーーー

ーーー英霊碑ーーー

ーーー安芸sideーーー

『山間部から市街地にかけて発生した大規模火災は…1万ヘクタールにも及び…』

『長引く避難所生活で住民の疲労が蓄積しており、大赦側で今後の対応が問われ…』

『では、壁の外のことを大赦は昔から知っていたと?』

『ご覧ください! 本土は廃墟! 廃墟です! 人の気配がありません!』

『この先人間は限られた資源だけで生きていかねばなりません。』

『…は、神樹様の亡骸だという説もあります。』

『子どもたちに罪はありません。』

(神々は消えた。天の神も、神樹様を形成していた地の神も。加護を失った人類は限られた資源で生きていかなければならない。混乱が訪れる。しかし、これでいいのだ…私は、彼女らの選択を誇らしく思う。新しい時代は子どもたちの為のものだ。大人たちは責任を背負っていく。そうでなければならない。)

もう見えない右目を見る。

(大赦の職員のほとんどは神婚にあわせ、神樹様の眷属となり、死んだ。残ったのは大赦のやり方に疑問を持ったものたち。大赦も変わらなければならない。)

ちょうど今、鷲尾さんたちが三ノ輪さんの墓参りに来ていた。

「大人は…私は、ここにいるべきでは、ないですから。」

そう言って立ち去ろうとしたとき、

「いつまでそこに隠れてるんですか?安芸先生♪」

「っ!?」

「最初から気づいてましたよ。」

「そーそー!いつ出てくるのかな〜って思ってたけど全然でてこないんだもん。待ちきれなくなっちゃった!」

(…ですが…)

「私は…あなた方と顔を合わせるような人間ではもう…」

「春信さんからなにもかも聞きました。安芸先生がここにいるのは、私たちのことを思ってくれてたからじゃないんですか?」

「…」

「そーれーに!まだ私たちの目的は果たされてないんよー!」

(…!?)

「それって…一体…」

「遅れてすまーん!」

「もう!いつも遅刻するんだから。」

(っ!?この声は…!?)

「ごめんごめん!迷ってる人がいてさ、ついつい…」

「変わらないですね。」

「どやー!」

「褒められてるのかしら…」

「三ノ輪…さん…!」

「ん?ってうお!?安芸先生!?びっくりしたー…」

「なんで…あなたは前に…」

「天の神に実験的な感じで生きかえらされてたんですよ。」

「ふっふ!勇者は不滅なり!」

「どや〜!」

(三ノ輪さん…!)

「私たちの誰も安芸先生を恨んでませんよ。」

「安芸先生のことは好きなままなんよー!!」

「好きなだけ泣いていいんですよ?」

「ん?なんだなんだ?」

(…!)

ギュッ

「よかった…みんな無事で…本当に良かった…!」

 

ーーー友奈sideーーー

「勇者部は勇者部に戻りました!竜治君がバーテックスだったりとか、びっくりすることはたくさんあったけど、今も元気に活動中!

風先輩は高校に合格!でも部員は銀ちゃんが入ったことにより変わらず8人に!

そして部長は樹ちゃん、副部長はちひろちゃんになりました!

勇者部五箇条もあれからあらたに「無理せず自分も幸せであること」が加わり六箇条に!

今日を頑張ること。もちろん、無茶のない範囲で。

そうすると未来が素敵になって…振り返ってみても全部が素敵だったことになるんじゃないかな。

皆が居るから、皆が居てくれたから…皆が好きだから…

私、勇者部で良かった!

そっか、これが…

私の願いなんだ!」

 

どうか平穏な日常を

              〜勇者の章・完〜




ということで勇者の章、完結です!ここまで見ていただいた方、ほんとに感謝です…!次からは日常編、忘れないように頑張ります!


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幕間 勇者の章〜防衛の章
誕生日短編 大切なあなたへ


ーーー神世紀301年 3月2日、樹sideーーー

樹「はぁ…どうしよう…」

竜治「やっぱ樹でもムズいか…どうにか助けてえけど俺は初めてだから経験不足だし…」

2人「「はぁ…」」

ため息をつきながらイネスをとぼとぼと歩く。

何があったのか、それは━━━

 

===3月1日、部室===

風「よーしみんな来たわねー!今日集めたのはなぜでしょうか!」

東郷「はい!友奈ちゃんの誕生日の計画です!」

風「違う!!早すぎるでしょ!!」

東郷「早すぎる!?友奈ちゃんの誕生日のお祝いなんて1年は欲しいくらいなのにですか!?」

‪夏凜‬「準備だけで一年かけてちゃ回らないでしょ!?そもそも友奈は遅刻してくるって言ったのあんたでしょ!!」

東郷「ぐっ…‪夏凜‬ちゃんの言う通りだわ…でもそれなら他に誰が!?」

園子「そりゃね〜1人しかいないんよ〜」

銀「うんうん、てか須美いくらなんでも友奈に気を取られすぎだろ…」

樹「はい!」

風「お、樹!」

樹「ちひろちゃんのです!!確か今月の12日だって言ってたの聞いた事ある!」

風「正解!!ということで今日はちひろの誕生日に何するかを決めたい…ところなんだけど…」

竜治「え?やらないんですか?」

風「やるわよ!そんでもってみんなで案練りたかったわよ!!でも緊急依頼が入っちゃったの!!」

‪夏凜‬「緊急依頼!?」

風「そう!!神樹様がいなくなってからいっぱい地震とか起きて、経済混乱してるじゃない?それでとある宿屋さんが倒産寸前らしくて…世界を救った勇者様達と会える的なのでなんとかしたいんだって。それで3日から6日の間来てほしいって…」

銀「うーん…一時しのぎにしかならないと思うんですけど…」

風「一時しのぎでいいらしいわ。3月後半なれば桜が咲いて、形勢逆転できるプランが用意してあるとか。」

‪夏凜‬「勇者のネームバリューっていうのが私たちしかできない案件よね…でもちひろの誕生日もあるのよ?さすがにそこまで長くは…」

風「えぇ…だから私もせめて2日って言いたかった…でも…でも!!」

園子「まだ何かあるの?ふーみん先輩。」

風「…依頼主の宿屋さん、大赦から恩赦として海辺観光に行ったあそこなのよ!!!!」

樹「…あ。」

竜治「????」

‪東郷「…それは…」

倒産の危機を助けて欲しいと頼み込んできた依頼主さんは、かつて私たちが勇者であり、その戦いにひと段落がついた頃に、観光を楽しませてもらったあそこだったのです。

‪夏凜‬「…それは確かに言いづらいわね。倒産しちゃったらの事を考えると。1回泊まって良さ知ってるからなおさら。」

銀「あー…しかもそこって2年前に私たちが訓練で利用させてもらってたところでもあるんですよね…須美が言ってました。」

風「贔屓目抜きにしても今この状況の中で失業するのは先が真っ暗にもほどがあるから受けるわ。でもちひろの方もほっとくわけには行かない。

ってことで2人、ちひろの誕生日担当を決めて残ってもらう。」

園子「ちっひーはもちろん宿屋ですよね〜?」

風「そりゃそうよ。あの子勘いいから残したら絶対バレるもの。で、帰ってくるまでに草案まとめてもらって、残りの5日で準備!この作戦のつもりよ。」

‪東郷「なるほど。賛成ですが、問題はその担当の2人と…」

銀「順当にいくなら樹ちゃんと園子か?」

園子「いや、それは無理なんよ〜。いっつんはともかく、私まで残ったらちっひーは絶対勘づくよ、ミノさん。わたしの代わりに竜治君かな〜」

竜治「俺っすか!?でも俺園子先輩ほどちひろの事なんて…」

園子「知らないからこそ見えることもあるかもしれないんよ〜ないかもしれないけどね〜」

竜治「…そういうことならやらせてもらうっすけど。」

‪夏凜‬「樹は?大丈夫?」

樹「…うん!!ちひろちゃんにはずっと助けられてきたし、頑張る!!」

風「…じゃ、2人に任すわね。それじゃ宿屋の方のスケジュール確認を「すみませーん!遅れましたー!!」友奈!ほら、席につきなさい。今までの流れ説明するから!」

友奈「はーい!」

 

ーーー今ーーー

(…って、気合い入れたのはいいけど…これまで私主体でなんて1回もやってなかったからなぁ…)

お姉ちゃんの時は一応私が主体ではありましたが、何よりちひろちゃんの存在が大きかったです。

でも、今回は力を借りられない。

樹「ちひろちゃんの誕生日…絶対失敗できないのに…」

竜治「家で2人で考えても何も浮かばなかったから、手がかり求めてイネスに来てはみたけどなぁ…どうすりゃいいんだ。」

2人でうーんと唸りつつ周りに何かないか探す。

(…ない、よね…)

…が、方向性すら固まってないのに急にコレだ!となる物などあるはずもない。

樹「…はぁ…「ちひろ」ちゃん「は何を求めてるんだろなぁ…」」

樹、???「「…ん???」」

声が誰かと見事にハモる。

後ろを振り返ってみると3人の少女。

しかし…1人だけは心当たりがありました。

樹「…天音ちゃん!?」

天音「樹…!?」

竜治「どうした樹、ちひろの友達でもいたのって楓!?」

楓「え、竜治!?」

ここな「…え、なに?偶然ハモったと思ったら私以外ペアできてる感じ!?のけ者やめよ!?」

4人がそれぞれ驚く中、取り残された紫髪の女の子の悲鳴がイネスに響き渡りました。

 

 

 

 

ーーーフードコート、天音sideーーー

樹「で、私が犬吠埼樹です。」

ここな「…え、あんたがちひろの親友の!?!?」

楓「こーこーな?初対面じゃないけどほぼ喋ったことなかった人相手にあんた呼びはおかしいよね?」

ここな「楓はほんっと厳しいなー。転校してから少しは変わったかなぁとか思ってた私がバカだったわ。」

楓「うん、知ってる。」

ここな「知らないで!?」

邂逅から10分、立ち話はほかの人方にも迷惑がかかる危険があったため、フードコートで自己紹介したところが今の場面です。

天音「…しかし、まさかちひろにできた新たな親友が樹だなんて思いもしませんでしたの。」

樹「私もだよ。まさか天音ちゃんが神樹館の時のちひろちゃんの友達だなんて…」

竜治「気になってたけどそこはどういう関係なんだ?俺が聞いたことのあるちひろへのサプライズの時のってことじゃないんだろ?他のふたりが覚えてなかったし。」

樹「うん。天音ちゃんとは親戚なの。」

天音「犬吠埼家は元々伊予島家の分家でありまして…樹のお父様がよく図書館を利用なさってたんです。その時に樹も来てらっしゃってたのです。結構仲良かったのですよ?」

そう言ってほほ笑みかける

ここな「まあ天音が呼び捨てするくらいだからねぇ…で、楓と竜治は?どこで知り合ったの?」

楓「あ、うーんとね…それは…」

と、誤魔化しながら楓が竜治さんと壁に消えます。

(…事情でもあるのでしょうか?)

 

ーーー竜治sideーーー

楓「…さあ、どうする竜治。ここなも天音も一般人だからあかせるはずもないわよ。」

竜治「だよな…俺がバーテックスだって知ったらどうなることやら。」

楓「あ、それは問題ないと思うわ。特にここなは写真撮ろうとしそうだし。」

竜治「嘘だろ?」

楓「だってここなの夢壁の外写真に収めることだったし…」

予想外の答えに絶句する。

桐生楓、天の神との決戦で防人を芽吹さん達と率いてた副リーダー。

もちろん出会いは市街地に入り込んだ星屑殲滅のため、言えるはずがない。

防人も一応お役目、しかも勇者とよりもまあまあブラックだったらしいし、仮にそこはセーフでも一般人の俺が防人の助っ人などできるはずもないから十中八九怪しまれる。

竜治「…まぁあんまり長いと怪しまれるし早めに決めようぜ。」

楓「そうね。異形から避難誘導してる時に偶然会って協力してたとか。」

竜治「それでいこう。」

 

ーーーここなsideーーー

楓「…ってわけ。」

竜治「あっちで打ち合わせしたのは食い違いあったら困るから。あの時は必死だったからな…」

2人が出会った経緯をなんで壁に隠れて打ち合わせしたかも交えて明かす。

(異形…星屑だっけ。なかなかヤバい感じだったけどよくもまぁやったなぁ。まあ私も飛び出してたけどさ。)

2人の行いに感心しつつ、己の行いも逡巡する。

(もちろん後悔はしてないけどねー。)

天音「では、ある程度の紹介も終わりましたし、情報を整理しましょう。お2人もちひろの誕生日を祝おうと来た、ということでよろしいんですわよね?」

樹「うん。でもどうしたらいいのか浮かばなくって…それでもジッとしてるよりは動いた方が浮かぶんじゃないかって。」

楓「私たちは乃木先輩からちひろがイネスで買い物よくしてるって聞いて手がかりを探しに。」

ここな「…トラウマ残しちゃったからね。盛大に祝ってあげたいんだよね。」

そう、私たちは…ちひろが一番助けを求めてる時に、力になってあげられなかった。

ちひろの存在をなかったことにして、突き放した。

彼女は許してくれた。でも…

(それで、罪が消えるわけじゃないから。)

竜治「…なんか暗くなったから話を戻そうぜ。どっちもちひろに喜んでもらいたいってわけだ。協力しないか?」

天音「返事するまでもない案件ですわよね?2人も。」

ここな「もちのろん!」

楓「協力しましょう!…と言っても、2人も案がなかったんだよね。」

樹「そうなんだよね…天音ちゃん達は何かない?ちひろちゃんの喜びそうなこと。」

ここな「うーん…ある事にはあるよ?ただ今当てはまるかって言うと…」

竜治「ん?どういう事だ?」

天音「あれから何回か会ってるのですが、2年前とだいぶ好みが変わってるんですよちひろ。」

樹「え?そうなの?」

天音「はい。例えをあげるなら…2年前のちひろって、ゲームあまり上手じゃなかったのですよ?」

竜治「…マジで?めちゃくちゃ上手いんだけどあいつ。」

楓「多分2年の間にやり込んだんだろうね…ともかく、2年間の空白が及ぼした影響が大きすぎるのよ。だから好きな物とかならそっちの方が詳しいと思う。」

竜治「樹任せた」

樹「え!?うーん…ゲームはさっき言ってたけど…買い物とかチーズケーキとか、あとオシャレも結構楽しそうだし、あとミステリー系の物もかな!考察が楽しいとか言ってたよ!」

ここな「…結構知ってんね…」

天音「チーズケーキとオシャレは共通ですわね。」

楓「確か管轄の中に美味しいチーズケーキの店あったからそれは任せて。あとはゲームか…」

ここな「それなら私がたっぷりとあるよ!!」

竜治「でもちひろも結構持ってるっすよ?ゲーム機器は一式。」

ここな「あー月夜さんからの支給かぁ…ならソフトだけでも持ってこ。なんかないのあるかもしれないし。」

樹「ミステリーは組み込みようないですけど…オシャレはどうしましょう?」

天音「プレゼントとしてお洋服を用意する、とかでしょうか?」

ここな「じゃないのー?あいつならよっぽどじゃない限り着こなすだろうし。」

楓「そうね…場所はどうする?」

樹「部室の予定だったけど、3人も来るなら別な場所がいいよね…ちひろちゃん家かな?」

竜治「まあベターだな。となると準備までの陽動役が…」

とまあこんな感じで、お互いの力を合わせて計画は進んでいった。

 

 

 

 

 

ーーー伊予島家車内ーーー

楓「ごめんね、方向違う私まで…」

天音「楓が気になさることではありませんよ。私たちの仲ですし。」

ここな「そうそう!ありがたく受け取っとけばいいんだよ!」

楓「ここなはもうちょっと感謝をね…」

誕生日パーティーの計画会議(?)は無事に終わり、後の微調整は樹ちゃん側で行ってもらうことに。完全に決まったら連絡するそうだ。

(まあ、2人が経験不足で若干慎重になりすぎてただけだと思うけどね。計画の軸は樹ちゃんからの情報だし。)

ここな「…2人はどう感じた?あの2人。」

天音「どういうことです?」

ここな「あーやって計画任されてる以上、多分相当に仲良いよちひろと。まあ樹ちゃんはちひろを救ってくれたんだから当たり前だろうけどさ。」

楓「んー…竜治の方は面識あるから樹ちゃんの方だけになるけど、芯がしっかりしてたよね。優しさも相まって気弱に見えがちな気もするけどね。」

楓「竜治さんの方は話しやすかったですわよね。最初は緊張してたように見えましたけど…」

ここな「私はそうだねー。一言で言うなら「ちひろ、いい友達持ったな!」だね!以上!!」

楓「おい、2人の印象について言いなさいよ。」

ここな「はー?だからいい友達って言ったじゃん。」

天音「それはそうですが、個々の印象であるとは言い難いですね…」

ここな「天音まで微妙に楓派じゃん…味方がいない!!」

楓「なんでわざわざ渋る必要があるのよ…早くいいなさーい。」

ここな「やだー!!もう言ったもんねー!!」

話すことを渋る理由は特になかった。

思ったことも2人と変わらないから、同じといえば終わり。

ただ…私とちひろが張り合い、楓が止めようとして、それを天音が時々参加しながら眺めてる。

そんな、2年前まであるあるだった流れを久しぶりにやってみたいな、と思っただけで。

 

ーーー3月12日、ちひろsideーーー

ちひろ「まだダメなの?園姉。」

園子「あとちょっとなんよ〜。あ、段差あるから気をつけてね〜」

目が見えないので、視覚に頼らず足先に集中して階段を昇る。

園姉が目隠しをしろと言ってきたのはイネスからの帰り道。

もちろんOKしたけど…

(…まあ、誕生日パーティーだろうなぁ…)

自身の誕生日、忘れるはずがなかった。

(…なんだかんだ言って久しぶりなんだよな。一昨年は誰も覚えてくれてるはずがないし、去年はコマさん達がやってくれたけど一応1人だったし…)

ガチャッ

そう考えてると前方から扉の開く音がする。

園子「ここで靴脱いでちっひー!」

ちひろ「分かったよ園姉。」

(このマットレスの感じだとうちかな…?)

園子「よーし到着〜!目隠し取るんよ〜」

そしてついに目隠しが外され…

みんな『ちひろ(ちゃん)、誕生日おめでとう!』

予想通りみんなの声が私を出迎えた。

ちひろ「やっぱりそういうことかぁ…ありがとうございます、みなさん。」

風「あれ?意外と驚いてないわね。」

ちひろ「いや、自分の誕生日に目隠しされたら普通に気づきますよ…」

ここな「じゃあ私たちの登場には驚かずにいられるかな?」

ちひろ「…はあ!?!?なんでここな達がいるの!?」

ここなに声をかけられて、楓や天音もいることに気づく。

天音「2日に樹や竜治さんとばったり会ったんですよ。」

楓「それで協力しよう、ってね。はいこれ洋服。」

ちひろ「おー可愛い!!ありがとう楓!!」

‪夏凜‬「はいこれは私から。」

ちひろ「え?‪にぼっしーも服?ジャージはいくらあっても困ることないからありがたいけど…」

友奈「ちひろちゃんがオシャレ好きって聞いてみんなお洋服持ってきてるよー!はい!」

ちひろ「あ、ありがとうございます…」

(オシャレ好き…いや確かに好きだけど知ってる人少なかったはず。なのになんで…)

ここな「…と、今思ってるんでしょ?なんのために私たちがいると思ってんのさ。」

ちひろ「…あ、なるほどね。確かにここな達入れば気づくね。」

風「ちょっと待ちなさい。前私がそれした時とか軽く殺されかけたと思うんだけど。」

天音「殺され…?ちひろがするとは思えないのですが…」

風「するわよ!ホントに!!結構無茶苦茶だからねこの子!?」

ちひろ「あ!誕生日ケーキがチーズケーキだ!」

銀「楓がオーダーメイドしてくれたらしいぞ。」

楓「桐生家の管轄にいたから利用しただけだよ。食べてみて。」

ちひろ「絶対美味いやつじゃん…今すぐ食べたいけどその前に!」

窓際に移動する。

ちひろ「…誕生日パーティー、ありがとうございます!」

私は、2年前のあの日に一度、自分が死んだと思っている。

最初の誕生日は孤独だった。

2回目の誕生日は今はいない家族が祝ってくれた。

…そして、これが新しい私の三回目。

かけがえのない友達と過ごす、最初の誕生日だ。



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防人が来る!

ーーー4月某日ーーー

ーーー竜治sideーーー

(たしか今日は…)

「今日は転校生がいます。」

「誰だろうね、樹ちゃん。」

「そうだね、ちひろちゃん。」

ガチャ

「はじめまして!国土亜弥です。これからみなさん、よろしくお願いします!」

『よろしく!!』

「え…?」

「あやや?」

(ん?あやや?)

「あ、ちーちゃん!!」

「あややじゃん!元気にしてた?」

「うん!私は防人の巫女しててね…」

「ん?ん?ど、どういうこと…?」

「あ、あややはね、巫女だったからよくお母さんに教わりにきてたの。それで仲良くて…」

「そうなんだ。私は犬吠埼樹、よろしくね、亜弥ちゃん!」

「は…いや、うん!よろしくね、樹ちゃん!」

               ・・

(…そこ繋がりあったんだ…てかここに亜弥が来ることなったのね…了解了解っと。)

なぜおれがそんなことを知ってるのかというと…

 

ーーー数日前ーーー

「こんにちわー、またきましたー。」

最終決戦で防人隊と仲良くなった俺は、ちょくちょく「千景殿」に遊びにきていた。

「あ、竜治君!いらっしゃい!!」

(雀先輩も昔と比べてだいぶ慣れてくれたからよかった…)

「あ、竜治君。少し話したいことがあるのだけどいいかしら?」

「え?はい…」

 

ーーー個室ーーー

「で、話って…?」

(わざわざ個室に呼ぶようなこと…?一体なんだ…?)

「ええ、実はね…防人隊は事実上解散するわ。」

「…ええ!?」

(はい!?解散!?なんでそうなった!?ん?でも事実上って…)

「見ての通り今世界は無茶苦茶、復興の全盛期は私たちの世代になる。」

「は、はい…」

「そこで、防人や補欠だったメンバーが四国の学校に散って、そういうのに備えられるようにするの。だからよ。」

(な、なるほど…それでみんなバラバラなっちゃうのか…)

「寂しい、ですね…」

「まあね。で、これが最後なのよ。どこに行くかはこれから決めるけど。楽しんでってね。」

「…はい!」

 

ーーー今ーーー

(ここ俺いるから人気出そうなのに…すげぇな。)

「あ、竜治君!お元気でしたか?といっても数日前に会いましたけど…」

(あ、そのこと言ったら怒られそうだから言ってねえのに!?)

「そうだったんだ。」

「ま、まあ一緒に戦ってたからね…」

「へー、つまりカラオケ早期離脱はそれが理由か〜♪」

(うっ!?)

「少し覚悟いいかな?竜治君♪」

(アハハ…オワタ。)

 

ーーー部室ーーー

ーーーちひろsideーーー

「もー、せめてそのこと言いなさいよ!」

「すいませんでした!!」

今部室では見事に黙ってた竜治君が風さんからお叱りを受けていた。

(てか…)

「そもそもなんで風さんここにいるんですか?」

「ん?私?私はこいつを連れてきたのよ!」

「連れてきたという言い方はおかしいのでは?ついてきてくれた、ですわ!」

「んなわけないでしょ!連れてきてあげたよ!」

「いいえ!ついてきてくれた、ですわ!」

「連れてきてあげた!」

「ついてきてくれた!」

「はわわわ!?け、ケンカはダメですよ〜!」

険悪になる風さんと夕海子さんを雀さんがなだめる。

一方で…

「わざわざ何の用かしら?芽吹。」

「さっきも説明したよね?私たちは派遣されたの。何回言ったらわかるのかしら?夏凜。」

ビジビジッ

こっちでも静かに火花が散っている…

(せっかくの新入部員なのにこんなんでどうするんじゃ…ま、仲良くしてる人もいるけど…)

「須美さん、園子さん、銀さん、ずっと憧れてました。」

「普通に東郷とか須美でいいわよ?そんな憧れるようなことしてないし…」

「園子!憧れられるってなんかいいな!」

「そうだね〜よろしく〜シズオモ〜」

「シズオモ??」

「おい、園子、今までにないほどおかしいぞ?そのあだ名。」

(はあ????)

「園姉、いくらなんでもそれはおかしい。」

「だってシズオモの中にはシズウラもいるんでしょ〜?だからなんよ〜!」

「そのっち…さすがにそれは…」

「いいですね…」

「「「え?」」」

「だって、二人のうちのどっちを呼んでるかがすぐわかる…」

「私たちを一人としてでなく、二人として見てくれてんだから、ありがてぇ。」

(え、ええ…たしかにそうだけど他にいいようあるよ?多分…)

「雀ちゃん!ぼた餅食べる?東郷さんの!」

「ええ!?い、いいんですか!?」

「もう入部したからいいんですよ、自信持ちましょうよ、雀さん。」

「そうですよ、お姉ちゃん今ケンカしてるけど…」

(そうそう…)

「二人とも〜♪あなた方は部員じゃないんだからそろそろやめないと追い出しますよ♪」

「ひぃ!それやばい笑顔!絶対ダメな笑顔!」

「風さん!私たちはケンカなどしてませんね!」

「そうよ!私たち仲良し!」

「「アッハッハ♪」」

(…プフッ。)

「おもろ。」

「ちーちゃんその反応は…性格少し変わった?」

「まぁ、いろいろあったからね。」

「本当に、いろいろあったよね。」

「たしかに…いろいろあったねぇ。」

「でも竜治君は生まれたてホヤホヤでは?」

(あ、たしかに。)

「さすがあやや、観点がいいね。」

「褒められることはしてないよ…」

「まさかあのドSがこんなにいいやつになるなんて…以外だわぁ。」

「え?そんなことで悟られても困るんですけど…」

「あんた入ったばっかだし帰ってもいいのよ?」

「あんたこそ部長なれなかったんでしょ?休んでもいいのよ?」

「あんたに言われる筋合いはないわよ?」

「私こそあんたに言われる必要を感じないんですけど?」

…ピキッ

「ん?今ちーちゃんの方から何かが…」

「…あのお二人気づくといいけど…」

「…ああ、死に足一本踏み入れてんな。」

「これはおもしろいことになりそうなんよ〜!」

「おい、これ止めた方がよくないか?」

「いいのよ、銀。あの二人が悪いわこればかしは。」

「ん?どういうこと?」

「「仲良くっ!踊ろうっ!」」

「いい加減帰ったら??」

「遠慮するけど??」

ピキピキッ

「帰りなさい?てか帰れ???」

「そっちこそ帰れ???」

ブチッ

「「「「「「あっ、お二人ともオワタ。」」」」」」

(あーもうアッタマにキタァーーー!!!)

ドスッドスッ

「「えっ??」」

「回し蹴り!!!」

ドガァン

「っ!?いった!?」

「まずい!?これはまずいわよ!?」

「足払い!!」

ドサアッ

「うっ!?ちょ…強すぎない!?」

「当たり前でしょーが!?ちひろは東郷と並んでうちの部で最も怒らせてはいけないやつなのよ!?」

「てかなんでこんなキレてるのよ!?」

「知らないわよ!?」

(まだ気づかないのか〜♪)

「両袈裟固め!!」

ギュウウウウ

「うっ…キツ…すぎ…」

「意識…とぶ…わ…」

(まだ気絶させないよ〜♪)

「手刀!!」

ズシャアン

「「ヘブシッ!!」」

(目はすぐに覚まさせてあげるから心配無用だね〜♪)

「一本背負い!!」

ボガァン

「「っ!?!?!?痛いっっっっ!?!?」

(そしてトドメの…)

「脳天割りぃぃぃぃ!!」

ドグシャァン!!!!!!!!!!!!!!!

「「ギャッ!!」」

バタバタッ

「ふぅ…スッキリした…」

「「「あーあ…」」」

「夏凜ちゃん!?芽吹ちゃん!?大丈夫!?」

「園子、あたし本当にちひろを怒らせないようにしようと決めたよ。」

「それが賢い判断なんよ〜!」

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

「防人ではトップクラスの芽吹さんが…こんないともたやすくなんて…」

「そうよ…これがちひろよ…」

「…強さ序列…2位…」

「あら?一位は誰なの?」

「…三好…春信さん…」

『なるほど。たしかにね。』

 

ーーーかめやーーー

ーーー亜耶sideーー

無事に入部できた私たちは歓迎会として、勇者部イチオシの「かめや」に来ていました。

(風さんも高校で勇者部を作って、夕海子さんもそこに入られたようですし。そして…)

「おいしいです!ちーちゃんに聞いてはいたけど…ここまで美味しいなんて!」ズルルッ

「でしょ?私も最初食べたときびっくりしたもん。」ズルルッ

「だよな〜!!」ズルルッ

「夏凜…私は今、生きる喜びを噛み締めてるわ…」ズルルッ

「奇遇ね…私もよ…」ズルルッ

「おい…芽吹があんなこと言うってどんだけやばかったんだよ…」ズルルッ

「私でさえ死へのラインが見えましたわ…」ズルルッ

「あんたたち、ちひろ割と寛大だから気をつけなさいよ。」ズルルッ

「というか…前と比べて…変わった。」ズルルッ

(たしかに…前より冷静というか…)

「変わったと思います。前より優しくなったよで。」ズルルッ

「え?そう?性格ねじ曲がったとおもうけど。」ズルルッ

「自分で言うことじゃないよそれ…でも、優しいよ、ちひろちゃんは。」ズルルッ

(樹ちゃん…)

「樹ちゃん…二人が言うならそうなのかも。わからないけど。」ズルルッ

「そうなの?みんなそんなことに気づくなんてすごいなぁ。」ズルルッ

「私たちはこれより前に会ってるから気づいただけだから、落ち込まなくていいのよ。友奈ちゃん。」ズルルッ

「そっか!よかった!私まだまだだなーって思ってたから…」ズルルッ

「もう、友奈ちゃん…そんなこと思わなくてもいいのよ。」ズルルッ

「…須美さんも変わった…」ズルルッ

「あはは…」ズルルッ

「創作意欲が湧いてくるんよ〜!!」ズルルッ

「園子さんは…変わらない…」ズルルッ

(あ、変わらないんですか…)

「しかし、うどんを食べる風景がこんな絵になるなんて…すごいです。」ズルルッ

「まあ、三人ともキレイだったからな。」ズルルッ

「てか普通は叩き込まれねえか?」ズルルッ

「うち庶民派なので。」ズルルッ

「そういう問題かしら…」ズルルッ

「ま、私が一番キレイですわ。」ズルルッ

「それはないんじゃ…」ズルルッ

「それは…ない…」ズルルッ

「ないわね。」ズルルッ

(うーん…)

「たしかにキレイですけど…」ズルルッ

「亜耶ちゃん遠慮しなくていいんだよ!?」ズルルッ

「そうだそうだ。ズバッと言っちまえ!」ズルルッ

「亜耶、嘘はよくないわ、この嘘はいらないから本当のことを言ってしまいなさい。」ズルルッ

「そーよそーよ!!」ズルルッ

「なっ!?みなさんそこまで言います!?風さんも便乗しないでもらいたいですわ!」ズルルッ

(…どうしよう…)

「「「「さあ!!」」」」

「…ちーちゃんとかの方がキレイだと思います。」ズルルッ

「そ…んな…」

バタッ

チーン

「あ、倒れちゃった…」

「別にほっとけばいいだろ。」

「そうね。」

「ちゃんと回収してくださいよ?」

「「「はい!!!!!!」」」

「鬼教官みたいになってるよちひろちゃん…」

 

ーーー夜ーーー

ーーーちひろsideーーー

「スピー!スピー!」

「すぐ寝たね…」

「まあね…さすが園姉だよ…」

かめやの歓迎会後、あややはうちに泊まることになった。

そして今に至る。

「そういえばあややはどこに住むの?」

「私は夏凜さんと同じマンション。他に芽吹さんも住むけど…で、夕海子さんやしずくさんたちは駅近くの。」

(駅近くか…前園姉が住む予定だったとこかな?)

「ちょっと心配してたよ…あやや少し方向音痴だから。」

「うっ…私だって心配してたよ?生きて帰ってきてくれるか…」

「むぅ。信用してないの?」

「信用はしてたよ、でも相手は今までとは違う。だから…」

(あやや…)

「うん。てか麦のは聞いてびっくりしたよ…あのままだったらどっちにしろバッドエンドだったね…」

「そうだよね。月夜さんとかは大丈夫だった?」

(あ…それは…)

「じいじとばあばが…ちょっと…」

「そんな!?あんないい人だったのに…」

「なんかばあばが神託で世界を戻すためには人の力が必要だって受け取ったんだって。だから…」

「…最後までいい人だったんだね。」

「うん…あやや。」

「なに?ちーちゃん。」

「私たちで神樹様が残してくれた世界を、よくしてこうね。天の神だって、人の可能性をしんじてくれたんだから。」

「…うん。そうだね。」

今は神世紀301年、世界がどうなるかは、神様ではなく、今を生きる人々に託されていた。

 



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讃州高校勇者部の危機

ーーー四月中盤ごろーーー

ーーー夕海子sideーーー

私は昼休みだと言うのに部室に呼び出されていた。

(風さんがエマージェンシーと言ってましたが、なにごとなのでしょうか…)

「このままだと…」

「なんなのですか…」

「勇者部が事実上、廃部になるわ。」

(なるほど…事実上の廃部ですか…え?)

「は、廃部…ですと…?」

「そうよ…実際はそうじゃないけどね…このままだと…」

「こ、このままだと…?」

「このままだと…」

「こ、こ、このままだと…?」

「勇者部が勇者同好会になってしまうのよ…」

(…え?)

「…それだけでしょうか?」

「それだけって言いかたはないわ…」

「それの…それのどこが異常事態なのですか!?期待っていうか、心配して損したじゃありませんか!!」

「なんでそんなことが言えるの!?同好会になるのよ!?」

「同好会だろうが活動続けられるじゃありませんか!!」

「続けらんないのよ!!」

「そうなんですか!!…ってなんでですか!?」

(はぁ!?さっきから言ってることがなに一つ理解できませんわ!!)

「あのね…同好会は部と比べて色々規制がつくのよ…校外での活動は禁止、とかね…」

(ふむふむ…校外は禁止?となると…)

「部の助っ人以外無理ですわね、それ。」

「そーなのよ!!このままだと!勇者部の形だけが残ってしまう!それだけは防がなくては!!」

「で、でもどうするのですか…」

「やることは決まってる…部員を増やすのよ!」

(なるほど…逆にそれしかないのですね…)

「部活加入期間終了まで残り一週間!!その間に部員をあと8人増えれば勇者部は存続よ!!」

「なるほど…それならやるしかないですわね。」

「勇者部…」

「「ファイトォォォ!!」」

「…二人だと虚しいですね。」

「…そうね。」

「ところで、プランはあるのですか?」

「ええ。もちろんよ。」

 

ーーー残り一週間ーーー

ーーープラン1・美貌作戦ーーー

「み・な・さ・ん〜!!」

「勇者部に入れば私たちのようなかわいい女の子と触れ合えますわよ〜!!」

「さあ〜!ぜひ勇者部に〜!!」

シーン

「「…」」

「ミスったわ。」

「ミスったどころではありませんね。イメージ最悪ですわよ。」

「よし、なら次のプランいくわよ。」

「そんなサクッと切り替えていいものなのですか…?」

「過ぎたことは気にしない!!明日、やるわよ!!」

「え、ええ…」

 

ーーー残り6日ーーー

ーーープラン2・お菓子作戦ーーー

「さあさあ!!皆さま!!このお菓子、おいしそうでしょう?」

「勇者部に入れば、これがタダ、タダなのです!」

「部活のあとのお菓子はうまい!」

「ぜひ勇者部に!」

「まずは試食からどうぞ!!」

ワーワー

パクパク

風(これは…)

夕海子(きましたわね。)

 

ーーー1時間後ーーー

シーン

「「…試食だけかい!!」」

「あんなせっかく作ってきたのに!!ふざけんじゃないわよ!!」

「全くですわ!食い意地だけの豚め!!」

「どうする!?いまんとこ体験入部者すら0人よ!?」

「今度は私に従ってもらえますか?考えがあります。」

「わかったわ。」

 

ーーー残り4日ーーー

ーーープラン3・お小遣い作戦ーーー

シュバッ

「勇者部に入れば毎月お小遣いが支給されますわ!」

「部費はなしなのにお小遣い!?なんて嬉しいのかしら〜!」

「さあ!さあ!ぜひ勇者部へ!」

シーン

トコトコ

「「…まずいわね。」」

「どうしましょう?まさかお小遣い作戦すら効かぬとは…」

「そもそも毎月お小遣いはどうやっても渡せないわ。少し冷静になりましょう。」

「風さんの言うとおりですわね。ですがどうしましょうか?もうプランがないですわよ。」

「いや、まだあるわ。一つだけね。」

「…それに賭けましょう。」

 

ーーー残り3日ーーー

ーーープラン4・ふれあいプランーーー

「なんと!勇者部に入ると、中学生と部活を行うことができます!!」

「しかも部活で幼稚園に行ったり…」

「みんなに慕われる先輩になれるかも!?」

「「ぜひ!勇者部へ!!」」

ガヤガヤ

風(これは…!!)

夕海子(反応がいい…!!ついに来ましたわね…!!)

「勇者部って怖そうだよね…」コショコショ

「だって毎日言ってること違うよ?きっと行ったら洗脳とかされちゃうんだよ!」

「うわー、てか小さい子とふれあえるってまさか…誘拐!?」

「やー、こわいこわい…」

「「…そんな…」」

 

ーーー夜ーーー

ーーー樹sideーーー

「た…だいま…」

「おかえり…ってお姉ちゃん!?」

そこには屍のようにやせ細ったお姉ちゃんがいました。

(お姉ちゃん…屍みたくなってるけど一体…)

「ど、どうしたの?お姉ちゃん。なにかあった?」

「あ、樹…まずい…あと…2日…なのに…0人だなんて…アハハ…あははは…」

「お姉ちゃん!?戻ってきて!お姉ちゃん!」

のちに聞くと部員が10人じゃないと部が同好会になり、校外での活動ができなくなるらしい。

それで二人で部員集めに奮闘したものの、全て空回りしたそうだ。

(でも…なんでそんな集め方なんだろう…ここは…)

「お姉ちゃん!!明日学校終わったら中学の部室集合ね!!」

「え!?すまないけど今そんな暇は…」

「ダメ!!絶対来て!!わかった!?」

「え、ええ…」

 

ーーー残り2日ーーー

ーーー風sideーーー

(こんな…もう終わりね…あはは…)

「ところで…芽吹さんたちは…どうしたのですか…?」

「今日は3年生の方々は活動でいらっしゃいません。」

「で…なんの…ようなの…?」

「本当に屍みたいなってる…気持ち悪っ。」

「おい、そんなこと言ったらダメだろ…」

「あのね、お姉ちゃん。」

「なんなの…ですか…?」

「シャキッとしてよ!!」

(…え…?)

「今のお姉ちゃん、らしくないよ。このままだと勇者部の活動ができなくなって焦ってるのはわかる。でも、そのせいで一番大切なことを見失ってるよ。だから、誰も来てくれない。」

(一番大切なこと…?)

「勇者部の活動は何?」

(あ…)

「人のために…なること…」

「そう!今は大変な時!!だからこそ活動も増える。活動のことは何も言わないで、利益しかわからない謎じみた部に入りたい人いる?」

「それは…」

「要はそれを言えばいい。それだけなんですよ、風さん。全く、いつから鈍感になったんだこの人。」

「あ、今三年生組が行ってる活動はPRですよ。」

「え…?なんで…」

「風さんのクラスメートさんからの依頼です。風さんの部活勧誘を助けてほしいって。」

(クラスの…みんなが…?)

「今日抜いてもあと2日ある。明日、みんなでPRしに行こう?お姉ちゃんたちには、私たちがついてるから。」

(樹…いつからそんな…)

「もう…すっかり部長らしくなって…!」

「夕海子さんもですよ?私たち防人にとって、夕海子さんは大切な仲間ですから。」

「亜耶さん…」

「やっと正気戻ったっぽそうだ。全く…」

「よぉーし!やってやるわよー!!」

「自分が不甲斐ないですわ!」

「勇者部…」

「「「「「「ファイトォォォ!!」」」」」」

「…いいわね。」

「しっくり来ましたわ。」

「何を言ってんだこの人たち…」

 

ーーー残り1日ーーー

ーーープラン5・勇者部作戦ーーー

このプランはまず、

「チラシいかがですかー!?」

「こちらをどうぞ。」

「勇者部は人がためらうことを勇んでやるということがもとでできましたー!!」

「こちらのVTRをご覧になってください!」

「これがホームページのURLです!」

「まずは体験入部から…ぜひ。」

中3組がチラシや映像などで部室へ誘導し…

「これらが主な活動となります。」

「今の世界を元に戻すのは私たちの世代です。」

「今のうちからボランティアを進めても遅くはありません!」

「勉強も上手な人が教えてくれます!」

「息抜きも!」

「ぜひ!入部をお願いします!!」

私たち高1組や中2組が部室で詳しい内容を話し、部員を引き込む。

(すごい…どんどん来てる…)

「これならきっといけるよ。お姉ちゃん。」

「…そうね。ありがとう、樹。」

「あ、次の人来ましたよー。」

「よしきた!今日は…」

 

ーーー数時間後ーーー

「あー、疲れた〜!!」

「どれくらい来たんですか〜?フーミン先輩〜!」

(んー、どのくらいかしらね…)

「入るといいっすね!」

「そうね。あと8人、くるかしら…」

「かなり微妙ですわよね…」

「来ないんじゃない?」

「ちひろお前なぁ…」

「そう言いながら一番心配してたのはち…」

「園姉?なんか言った?」

「なんでもないんよ〜!」

「…なんで園子はあんな風に返せるのよ…」

「さあ…さすがレジェンド、だからじゃないのかしら…」

「夕海子さんも風さんも大丈夫です!!最悪活動じゃない形で加わればいいんですから!!」

「それはそうなんだけどね…」

「大丈夫。お姉ちゃんいい人だもん。」

「樹…当然のこと言わないの。」

「へへっ!!」

「果たして当然かねぇ…」

「ん?ちひろ嫉妬してるのか?」

「…」

ドガァン

「ヘブシッ!?」

バタッ

「あ…倒れた…」

「大丈夫!?竜治君!?」

「あらら…」

「りゅーくんどんまい!!」

 

ーーー翌日・残り0日ーーー

「来てくれるかしらね…」

「あれだけしてくれても、私たちが作り上げたイメージは最悪ですからね。8人は…かなり望みは薄い、ですわ…」

(そうよね…)

「みんな、ごめんね…」

そのときだった。

「あの…」

ガチャ

扉から入ってきたのは10人前後の集団。

「ん?どうしたの?依頼?」

「えーと…私たち8人、勇者部に入部届け出したんですけど…」

(そうなのね…っえ!?)

「入ってくれるの!?」

「はい!!」

「わからないことだらけですけどよろしくお願いします!」

『よろしくお願いします!!』

「ねえ、夕海子…何人いる…?」

「8人…ですわ…!」

「同好会に…ならないわよ…!」

「やったんですわ…私たち…!」

「「やったー!!!」」

「ようこそ勇者部へ!さっそく歓迎会よ!!」

「どこにしましょうか!?」

「そんなものかめやに決まってはでしょ!!夕海子、さっそく中学組に連絡入れなさい!!」

「もちろんですわ!!」

「え?え?今日の部活は?」

「歓迎会よ!大丈夫!最初は軽いのから入れてくから!さあ、かめや行くわよ!!」

「こちらですわ!!」

『は、はい…』

こうして私たち、讃州高校勇者部は危機を乗り越えた!!

 

ーーー後日ーーー

「ところで樹。あんたたちの方はどれくらい入ったの?」

「うーんとね…20人くらい。」

(…え?)

「に、ににに20人????」

「うん、中学では活動は知られてるし、入ってる人みんな人気あるからね。だからじゃないかな?」

「恐ろしいわ…」



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ちひりゅうの初デート

ーーー一防人合流後すぐーーー

ーーー樹sideーーー

「どうする?これ…」

勇者部には早々に、ある依頼が届いていました。

その内容は…

『近々彼氏とイネスでデートするため、どんなコースにすればいいか教えてほしい。』

というものだった。

ついでに今、防人組は不在です。

「どうしましょうか…」

「デートしたことある人とかいる?」

夏凜さんがそう問いかけるも…

シーン

「いないだろうね。」

「これは〜!ふっふっふ…」

「おい、ちひろにしばかれるぞ。」

「これはねぇ…」

「はいはーい!!じゃあ実際にデートしたらいいと思いまーす!!」

「言われた!?」

「さすが友奈ちゃん!!となると竜治君は確定ね!」

「なんで俺!?」

「そりゃあんた勇者部唯一の男子じゃない。」

「いやそうですけど!?」

(そうじゃなくてもいいことにはいいけど…やっぱり…)

「依頼としてきてるから竜治君にはお願いしたいな。」

「えぇ…わかったよ…」

「となるとあと一人、誰行く?」

「同じ学年の人が行くべきなんよ〜!!」

(え!?)

「園姉…締め上げられたいの?」

「だって依頼人も同じ学年らしいし、そうした方がちゃんとしたデータ取れると思うよ?」

「ぬぅ…園姉にしては賢い…」

(ええ!?どうしよう!?私…偽デートとはいえ…恥ずかしいよぅ…)

 

ーーーちひろsideーーー

(とか思ってるだろうね、樹ちゃんは。あややもダメ…となると、私しかいないか…ま、しゃーない。)

「じゃ、相手は私が。」

「ちひろちゃん!?」

「おお、意外なやつがでたわね。」

「まさかじつは竜治君のことが「それはない。」はぅ…」

「…グフッ…」

「どーせ明日土曜日だし、行きますわ。ということで竜治君、明日10時駅前集合ね。」

「あ、はい。」

「頑張ってね〜!!」

「ふふっ、面白いことなりそうなんよ〜!!」ボソッ

「ん?なんか言ったか?園子。」

「ううん?なんでもないよ。」

 

ーーー夜ーーー

ーーー風sideーーー

ピロリン

「ん?メール?」

家で調理中に届いたメール、宛先は乃木。

その内容とは…

『こんにちはフーミン先輩!じつはじつは明日、依頼の関係でちっひーとりゅーくんがデートすることに〜!!』

(…はぁ!?)

「ななななんですって!?」

『それにあたり、二人で尾行しないかというお誘いなのであります!!来ていただけるなら、10時までに駅内のバルコニーに来てください!!』

「そうなのね…」

(さて、どうしましょうか…ふふっ!!!)

「お姉ちゃん、ただいまー。」

「あ、おかえり樹。ご飯もうすぐできるからねー。」

「うん!」

(ちひろ、覚悟しなさい…女子力探偵風様があんたの素顔、暴いてやるわ!!)

 

ーーー当日ーーー

ーーー園子sideーーー

私は駅の2階、バルコニーにいた。

ここからなら、駅前を見渡すことができるからだ。

(今は9時50分。フーミン先輩来るかな…)

「待たせたわね!!乃木!!」

「フーミン先輩!!来てくれたんですね!!」

「もっちろんよ!!で、観察するのね?」

「ええ、といってもここからだと声が聞こえないのでちっひーが来るであろう辺りに盗聴器を仕掛けてるのであります!!」

「ご苦労!!じゃ、盗聴…ゴホンゴホン。観察しましょう。」

 

「ごめん!遅れた!!待ったか!?」

「ううん。全然。べつに遅れても問題ないし。」

「いやでもさ…」

「いいから。さ、行くよ。」

「お、おう…」

 

「りゅーくんには早々に照れが見えておりますね〜!!」カキカキ

「これはちひろも時間の問題ね!!」

「では、これより追跡いたす!変装の用意はいいか!!」カキカキ

「もちろんです!!」

「行くぞ!!」カキカキ

「おー!」

 

ーーーイネスーーー

「で、まず何する?」

「んー、ゲーセン?」

「なし。」

「デスヨネー。」

「…雑貨屋さん行こっか。」

「それがいいね。」

 

「目標、雑貨屋へ向かうもよう。ただちに向かいます。」カキカキ

「了解!!」

 

ーーー雑貨屋ーーー

「あ、このマグカップとかいいな〜!!」

「おお、たしかにかわいいな。」

「イネスの雑貨屋ってこんないろいろあったんだ…以外…」

「で、なんか買うか?」

「まだ見て回るけど?あ、あれもいいな〜♪」

「おう…」

 

「なにこの図。」

(こりゃおったまげた…)

「本物のカップルみたい〜ヒューヒュー!!」ザザザッ

 

「で、今度こそ決まったか?」

「うん!!これと、これと、あれと…」

「多くね?」

「そうかな?」

「ま、まあいいわ…」

「あ!これ樹ちゃんとあややにもあげよう!」

「…俺だけなしかな?」ボソッ

「あ、大丈夫。竜治君のもちゃんと買うから。」

「聞こえてたんかい!?」

 

「てかちひろって買い物のときだけキャラ違くない?」

「ちっひー勇者の御役目につくまで買い物なんて行ったことなかったからね〜ちっひーと買い物行ったことありますよね?」ザザザッ

「え、ええ…」

「きっとそれが楽しかったんですよ〜!」ザザザッ

「そう言われるとなんか嬉しいわ。」

 

「さーて、いっぱい買った!!…で、次どうする?」

「え?…どこ行こうか…」

「じゃ、ベターな洋服屋でもいい?」

「お、おう…」

「よし、行こう。」

 

「買い物終わった瞬間にキャラ変わったわね…」

「そこもまたかわいいんよ〜!!」シュバシュバッ

 

ーーー洋服屋ーーー

「で、なに着るんだ?」

「いや、竜治君がね。」

「…え?」

「前から思ってたけど、竜治君少しズレてるから。」

「…ええええええええ!?!?」

「ということだから。えーと…まずはこれ!」

「い、いやでもな…」

「ハリアップ!!」

「はい!!」

 

「ファッションショーが始まりそうね。」

「さすがちっひーなんよ〜!!」ザザザッ

「そういう問題かしら…」

「ちっひー一応服選びもうまいんよ〜!!」ザザザッ

「たしかに…目の前で次々と出てくる竜治のを見てる限り納得できるわ。」

「そゆこと〜!!」ザザザッ

「そだね〜!!」

 

「もう…いいか…?」

「うんうん、よし、買おう。」

「えええ!?!?」

「ええって当然でしょ?」

「いやファッションショー的なだけじゃねえの!?」

「だから竜治君のはズレてるの。だからだよって言ったよね?」

「あ、はい…」

「さあ次は…」

「ちひろは着ねぇの?」

「…へ?」

「せっかく来たんだし、少しくらい着たらいいんじゃないか?」

「うーん…そこまで言うなら。最近新しい服欲しいと思ってたし。」

 

「これはいい流れになってきたんよ〜!!」シュバシュバッ

「もしかしたらだけど〜!」

「もしかしなくても〜!」シュバシュバッ

「「神展開来るかも〜!!」」シュバシュバッ

そのとき、

「風さんに乃木さん、そこでなにをやってるのですか?」

「「え?」」

後ろを振り返るとそこには防人のメンツが!

「夕海子!?それにみんなも!」

「亜耶は…雀と料理中だから…いないけど…」

「で、そんなこそこそしてどうしたんですか?」

(こんなときは…!)

「い、いや〜じつは…」

「あそこをご覧ください!!」

「「「え?」」」

「ちょ、乃木!?」

「竜治君が…いるね…」

「勇者部暗黙の了解一つ!!隠し事はなし!じつはりゅーくんとちっひーが付き合ってるとの情報を聞きつけ、真偽を確かめるため尾行してたのであります!!」

「「「…ええええええ!?」」」

『ちょ、これどゆことよ!?』チラッ

『いいから私に合わせてください。フーミン先輩!!』チラッ

「ま、まあそういうことなのよ!!今んとこ完全に黒ね!!」

「い、以外ですわ…」

「なるほど…そういうことなら私も手伝います。」

「私も…」

「なら私の力も貸してさしあげましょう!!」

「「ありがとう!!」」

『どや〜!!』チラッ

『さすがね…』チラッ

 

ーーーちひろsideーーー

(全く竜治君は…善意から来てるだろうからいいけどね。)

バッ

「はい。どう?」

「…うん。似合ってる。」

(あれ?顔赤くなってる割に反応薄い…)

「顔赤くなってるよ?」

「ええ!?いや、これは…その…なんか「デート」って言われると…意識しちゃうっていうか…ファッションとかだと余計に…///」

(…へ?)

「え?え?ええ?」

かあああ

自らの顔が赤くなってるのもすぐわかった。

「/////っ!!」

ガラガラッ

「ちょ、ちひろ!?」

「そんなこと言われると私まで意識するでしょうが!!///」

「ご、ごめん…///」

(あぅぅ…デートこのまま続けられるか自信なくなってきた…竜治君のばかぁ…)

 

ーーー園子sideーーー

(いいよいいよいいよ〜!!!!!!!)

「最高にいいよ〜!!!」シュバシュバッ

「見てるこっちまで照れるわっ!!」

「ほ、本当だったのね…」

「あの初々しさ…間違いない…」

「このまま尾行を続けるとしましょう!」

「よし、一同我に続け〜!!!」シュバシュバッ

「「「「おおー!!」」」」

 

ーーージェラート屋ーーー

ーーーちひろsideーーー

「だ、大丈夫か…?」

「…うん。大丈夫。//」

「なんかごめん…」

(絶対まだ顔赤いんだな…どうしよう…)

「何頼む?」

「へ?何が?//」

「ジェラート。」

(…それだ!ジェラートを食べて頭を冷やそう!)

「じゃ、リンゴバニラで。」

「俺は…ラズベリー。」

 

ーーー数分後ーーー

(あ、来た。)

「うまそうだな!!」

「いただきまーす。」

パクっ

「うん。相変わらずうまい。」

「おお、うめぇ!!」

「そりゃあイネスマスター御用達だからね。」

「イネスマスター?なにそれ?」

「銀さんの異名。」

「なんだそりゃ…ちひろのもうまそうだな。」

「なっ!?///」

(竜治君のバカ!!このタイミングでそれいうか!?)

「べつに一口ならいいよ。ただし最初についてきたスプーンでね。絶対だよ??」

「あ、はい…」

パクっ

「あ、うまい!!」

「そりゃ当然でしょ。私も食べていいよね。」

そう言ってスプーンを取る。

「あ、ちょ…」

パクっ

「あ、ラズベリーも以外といける。ん?竜治君どうした?フリーズして。」

(なんか悪かったかな?)

「いや、それ…俺使ってるやつ…」

(…え?)

「…ええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」

「だから止めようとしたのに…」

(嘘でしょ!?それってつまり…)

「か、間接キス…/////」

「ちひろ!?オーバーヒート寸前なってないか!?ちひろー!?」

「見ないでっ!!/////」

(最悪だ…もうこれ竜治君の顔見れないじゃん…)

 

ーーー園子sideーーー

「ちっひーなら確実にりゅーくんのも食べますね〜!」シュバシュバッ

「そしたら間接キスに行く可能性があるわね〜!」

「あれが…付き合うということなのね…」

「奥が…深い…」

「きますわ…決定的な証拠が!!」

「…あんたらなにしてんの?」

「「「「「!?!?」」」」」

(この声はにぼっしー!?)

「園子、なにしてんだ…」

「夏凜!?銀まで!?」

「静かにしなさい!!バレたら困るでしょうが!!」

「バレるって…まさか…」

「…?」

「今は大事なタイミング!!ちひろさんと竜治さんの付き合ってる証拠を手に入れるための!!」

「園子…おまえ…」

「あんたらねぇ…」

(まずいよ〜まずいよ〜!!バレちゃうバレちゃう〜!!)

でも、神は私たちの味方をしていたのだっ!!

「あ、ちょ…」

パクっ

「あ、ラズベリーも以外といける。ん?竜治君どうした?フリーズして。」

「いや、それ…俺使ってるやつ…」

「…ええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」

「だから止めようとしたのに…」

「か、間接キス…/////」

「ちひろ!?オーバーヒート寸前なってないか!?ちひろー!?」

「見ないでっ!!/////」

「「「「「「「…」」」」」」」

(ちっひーナイス。)

「まさか…本当だったの…?」

「ちょ、夏凜のせいで証拠取り損ねたじゃない!!」

「ま、まじか…//」

「見てるこっちまで…恥ずかしくなる…」

「ほらね!?言ったでしょ!?」

「ということで二人とも尾行参加する〜?」

「「…ええ。」」

(キターーーーーー!!)

「さあ、今度こそ証拠を掴むぞぉい!!」

「「「「「「おー!!」」」」」」

「あ、みんな〜!!」

「竜治君、ちひろちゃん、依頼のやつ?」

「あ、友奈先輩、東郷先輩。」

(っ!?)

「こ、こんにちは…/////」

「どうしたのちひろちゃん?顔真っ赤っかだよ?」

「あーいや、これはカクカクジカジカで…」

「なるほどね…ところでさっき友奈ちゃんみんなって言ってなかった?」

「うん!だってあっちに園ちゃんとかいるもん!!」

「「えっ?」」

ブゥチィッ

「「…」」

『『命の危険を察知。』』チラッ

シュンッ!!

 

ーーーちひろsideーーー

(許せない許さない死なせるしかない。)

「あ、ちょ園子!?風先輩まで!?」

「そんなこと言ってる場合じゃないですわ!?」

「ふふ.そうかそうかぁ〜♪私たちのこと尾行してたんだ〜♪ならお礼に天国に旅行はどうかな〜♪」

「「これは…死ぬ…」」

「「ふふっ、上等よ…」」

「「えっ?」」

「前は不意打ちだったけど…」

「今回は正々堂々の勝負…夏凜と私、勇者最強コンビなら負ける気がしないわ…」

「ちょうど銀とトレーニングした帰りだからね…木刀は有り余ってるわよ!」

「そういうことなら私も乗るぜ!!」

「「シズク(さん)!?」」

「一人でならまだしもこの二人とだと負ける気がしねぇ。」

「…なら勝率を上げるとしましょう。」

「「「夕海子!!」」」

「あーもう…このまま行ったら風先輩や園子が死にそうだから私も乗るよ…」

「「「「銀(さん)!!」」」」

「これならいけるわ…」

「勇者部屈指のアウトドア軍の力…」

「および防人の力…」

「見せてやりますわ!!」

(ハエが多いなぁ〜叩き潰してあげよっと♪)

 

ーーー園子sideーーー

「はあ、はあ…」

「ここまで来れば…大丈夫でしょ…」

私たちは生存本能のおもむくままに逃げ、気づけば高知県にいました。

「さすがに…ここまでは…来れないはず…」

「あとはゆっくり帰るだけ…」

「私たちは…」

「生きることに成功できたん…」

ボガボガァン!!!

「「っ!?!?」」

横の壁は大きく凹み、誰かがめり込んでいた。

それは…

「夏凜…」

「メブ…」

にぼっしーとメブだった。

「ミィツケタァ♪」

「「ひぃ!!」」

声のした方にはちっひー、しかもその手にはミノさん、ウラシズ、ユーミンが握られてる。

「「いやぁぁぁ!!」」ガクガク

「さあ、お仕置きだぁ〜♪」

「「ギャァァァァァァァ!!」」

 

後日談だけどにぼっしーたちとちっひーの戦闘はのちにイネス血の悲劇と呼ばれたそうだ。

あのあと私はわっしーのうちにお泊り、わっしーとミノさんに交互に説教を一日中くらい、

フーミン先輩はいっつん、

防人はあやのんにそれぞれお仕置きをくらったそうです。

みんなも尾行はやめましょう!

チャンチャン♪



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デートの日の勇者部は

ーーー雀sideーーー

今私は亜耶ちゃんと昼食の準備をしてました。

(というより教えてるんだけどね…)

「しかし亜耶ちゃん誰か呼ぶって言ってたけど、誰なの?」

「すぐ来るって言ってたのでもうすぐのはずです。」

ピンポーン

「あ、どうぞー。」

そして入ってきたのはなんと…

「呼んでくれてありがとう!亜耶ちゃん!」

「全然大丈夫!樹ちゃん!」

樹ちゃんでした。

(…樹ちゃん料理うまくないよー!?やばいやばい!?死んじゃう!?死んじゃうー!!)

樹ちゃんの料理の腕前については風先輩からこっそり教えられていた。

「…?雀さん、どうかしましたか?」

「!?う、ううん!?だ、大丈夫だよ!?」

「ならよかったです…」

(危うくバレるところだったよ…こうなったら、私がうまい感じにサポートして成功させるしかない!!)

「あ、それじゃあ雀さんは休んでてください!」

「…へ?」

「雀さんにはいつもご飯作ってもらってるので…たまには休んでください!」

「え、ええ!?う、うん…」

(…ヤバス。どうしよう!?亜耶ちゃんもそりゃうまいけど樹ちゃんのをカバーできるほどじゃなかったはず!?…こうなったら、簡単なものに誘導する!!)

かつて風先輩情報によれば、樹ちゃんは簡単なものならつくれるようになったとか。

「じゃ、じゃあ卵焼きとかどうかな??」

「いいですね!!」

(よし!!このままいけば…)

「亜耶ちゃん亜耶ちゃん。」

「どうしたの?樹ちゃん?」

「あのさ、私ね、うどん作ってみたいんだ!!」

「…それです!!」

(樹ちゃぁぁぁん!?!?!?)

「芽吹さんたちも疲れて帰って来るでしょうし、うどんならきっと喜ぶはず!!それでいきましょう!!」

(オーマイガッ!!だよっ!!うまくいきそうだったのに!!だったのにぃぃぃぃ!!うどんも簡単だよ!?でも普通の簡単とここの簡単は違う!!どうしよう〜!?!?)

「まっててくださいね、雀さん!おいしいうどん、作りますから!!」ニコッ

(…うん。まあなんとかなるか。)

亜耶ちゃんの笑顔に思考が吹っ飛んだ私であった。

 

ーーー数時間後ーーー

(…止めればよかった…)

「できた!!」

「素晴らしいですね!!」

うどんを完成させた亜耶ちゃんと樹ちゃん。

だがそこにあったのは紫色の麺、真っ黒なスープ、そして立ち込める緑の煙、もはやうどんとすら呼べないものだった。

(ほんとにこれをどうしようか…樹ちゃんか亜耶ちゃんが食べたらダメ、この子たちを現実に気づかせるなど言語同断。ならメブたちにはどうだろうか。)

NARUKOでメブたちに連絡を入れてみる。

 

雀 : ご飯できたよ、もう。いつまで買い物行ってんのさ?

 

芽吹 : ごめん今ちひろと竜治を尾行してるの、先に食べてなさい。

 

「…」

(これ、生還しないかな…となると別な手を…そうだ!風先輩!!)

風先輩に送ろうとしたその時…

 

芽吹 : あと風先輩と園子もいるから。連絡入れないでね?音で気づかれないためにも。

 

(…あ、尾行首謀者その二人だ、間違いない。じゃあどうする!?もう人なんて…そうだ!!

たしかにぼっしーは今日銀ちゃんとトレーニングするって言ってたはず!!トレーニング終わり、かつ樹ちゃんの腕前を知らないあの二人ならきっと食いつく!!)

にぼっしーにはなぜか嫌がられることが多いので(原因 : にぼっしー)銀ちゃんに連絡をかけてみる。

 

「もしもし、銀ちゃん!?」コショコショ

「あ、雀、おはよ!どうしたそんな小さい声で。」

「えっとね、ちょうど今うどんできてて、メブたち帰ってくるの遅いらしいしぜひ食べませんかと…」

「おお、いいじゃんか!!ちょっと待ってろ、夏凜にも相談するから。」

(よし来たぁぁぁぁ!!これでうまくいくはず…)

「ん?あれ園子たちじゃない?」

「お、ほんとだ、何してんだ?」

「!?!?」

(嘘でしょ!?ここでそこ鉢合わせする!?)

「…あんたらなにしてんの?」

「「「「「!?!?」」」」」

「園子、なにしてんだ…」

「夏凜!?銀まで!?」

「静かにしなさい!!バレたら困るでしょうが!!」

「バレるって…まさか…」

「…?」

「今は大事なタイミング!!ちひろさんと竜治さんの付き合ってる証拠を手に入れるための!!」

「園子…おまえ…」

「あんたらねぇ…」

(…結果オーライ!!このまま連れ戻してくれ…)

「あ、ちょ…」

パクっ

「あ、ラズベリーも以外といける。ん?竜治君どうした?フリーズして。」

「いや、それ…俺使ってるやつ…」

「…ええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」

「だから止めようとしたのに…」

「か、間接キス…/////」

「ちひろ!?オーバーヒート寸前なってないか!?ちひろー!?」

「見ないでっ!!/////」

「「「「「「「…」」」」」」」

(あ、これ絶対あかんやつだ。)

「まさか…本当だったの…?」

「ちょ、夏凜のせいで証拠取り損ねたじゃない!!」

「ま、まじか…//」

「見てるこっちまで…恥ずかしくなる…」

「ほらね!?言ったでしょ!?」

「ということで二人とも尾行参加する〜?」

「「…ええ。」」

(ほらぁ…)

「さあ、今度こそ証拠を掴むぞぉい!!」

「「「「「「おー!!」」」」」」

「ということで切るな〜!」ブチッ

「…」

(終わった…なにもかも…ここは東郷さんに?いや、たしか今日友奈ちゃんと買い物のはず…純粋勢を潰すわけにはいかない!そう考えるともう食べる人がいないよ…)

「えっと…」

「これは…」

「「雀さんどうぞ!!」」

「…へ?」

「雀さんには部活でも助けられてますし…」

「しずくさんや夕海子さんを束ねてもらってます!だからこそ!!私たちの真心がこもったこれを食べて欲しいんです!!」

(…あ…ああ…眩しい…二人が眩しいよぉ…守りたいよ…あの笑顔を…そのために…私はできることをする!!)

「…よし来た。いただくぞい!!」

「「ありがとうございます!!」

ズルズルハムハムズルズル!!

「どうですか?味…」

「とってもおいしいよ!!ありがとう!二人とも!美味しすぎて涙出てくる!!」

ズルズルハムハムズルズル!!

「すごいスピード…」

「それだけ美味しかったんですね…きっと…!」

ガタッ

「ふぅ〜、ごちそうさまでした!!ちょっとあんまり泣いてるとこ見られたくないからもう帰るね!!バイバイ!!」

バタバタッ

「ありがとうございました!!」

「よし!片付けしよっか!」

「うん!!」

こうして純粋な二人の笑顔と引き換えに私は今日明日と下痢と吐き気に見舞われていたのだった…

 

ーーー東郷sideーーー

今日は土曜日、休日はいいものですよね。

(なにより…今日は友奈ちゃんがいる!!)

「ん?大丈夫?東郷さん。」

「もちろんよ、友奈ちゃん。」

「よかった!!じゃあ早く行こうよ!!」

「ええ!」

今日友奈ちゃんが来ている理由は二人でショッピングにでかけ、一緒にご飯を作って食べるからである。

友奈ちゃんらしい企画である。

「ほらほら早く〜!!」

「うん!すぐ行くわ!!」

 

ーーーイネスーーー

「いっぱい買ったね!!」

「そうね、じゃあそろそろ昼ごはん作りにいく?」

「そうだね!!でも…」

(でも!?まさか友奈ちゃん…)

「どこか調子悪いの!?大丈夫!?」

「お腹減ったから何か食べてきたいな〜って。」

(よかった…)

「そうね、せっかくだからジェラート食べましょうか。近いし。」

「うん!!」

このときの私たちは想像もしていなかった。

私たちの行動で、とんでもない悲劇が起こるということを…

 

 

 

 

 

ーーージェラート屋前ーーー

「あ、あれちひろちゃんと竜治君!!珍しい組み合わせだなー!!」

「もう、友奈ちゃん、昨日デートの内容考える依頼あったじゃない。」

「あ、そうだった!!」

「まあ頑張ってるみたいだし、声かけてみましょうか。」

「うん!あ、みんな〜!!」

「竜治君、ちひろちゃん、依頼のやつ?」

「あ、友奈先輩、東郷先輩。」

「こ、こんにちは…/////」

(あら?ちひろちゃんの顔…)

「どうしたのちひろちゃん?顔真っ赤っかだよ?」

「あーいや、これはカクカクジカジカで…」

(それはそうなるわね…あれ?そういえば…)

「なるほどね…ところでさっき友奈ちゃんみんなって言ってなかった?」

「うん!だってあっちに園ちゃんとかいるもん!!」

(…え?)

「「えっ?」」

ブゥチィッ

(ん!?今までにないほど殺気に溢れたブチを聞いた気がするけど!?)

シュンッ

(あ、そのっちと風先輩!?)

「あ、ちょ園子!?風先輩まで!?」

「そんなこと言ってる場合じゃないですわ!?」

『東郷先輩!!ちひろ止めましょう!』

『そうね、手伝ってくれるかしら?竜治君。』

『もちのろんです!!』

「ふふ.そうかそうかぁ〜♪私たちのこと尾行してたんだ〜♪ならお礼に天国に旅行はどうかな〜♪」

ガタガタ

『『あ、ダメだ、止めようない。』』

「「これは…死ぬ…」」

「「ふふっ、上等よ…」」

「「えっ?」」

『『は?』』

「前は不意打ちだったけど…」

「今回は正々堂々の勝負…夏凜と私、勇者最強コンビなら負ける気がしないわ…」

「ちょうど銀とトレーニングした帰りだからね…木刀は有り余ってるわよ!」

「そういうことなら私も乗るぜ!!」

「「シズク(さん)!?」」

「一人でならまだしもこの二人とだと負ける気がしねぇ。」

「…なら勝率を上げるとしましょう。」

「「「夕海子!!」」」

「あーもう…このまま行ったら風先輩や園子が死にそうだから私も乗るよ…」

「「「「銀(さん)!!」」」」

「これならいけるわ…」

「勇者部屈指のアウトドア軍の力…」

「および防人の力…」

「見せてやりますわ!!」

『…これまずくないですか?』

『…ひとまず避難優先でいきましょう。彼女たちがくたばる前に。』

『そうですね。友奈先輩も震えてますし。』

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

そうして私たちが避難を始めたそのとき、

「「「「「はあぁぁぁぁ!!!!」」」」」

夏凜ちゃんたちも動き始めた。

(周りから三人、上から二人!!ちひろちゃんは上と他方の処理を同時にはできない…これならどっちを優先しても確実に強力な一撃をねじ込める…!考えたわね…)

でも…ちひろちゃんの怒りは、私たちの想像をはるかに上回っていた。

シュッバギィ!

ズガガガァァァァァン!!!!

「「…へ?」」

人の動きではなかった。

まず目にも留まらぬ速度で二人に瓦割り、脳天落とし、手刀をくらわせ、地面に傷がつかないギリギリの威力で叩きつけ、周りの三人を回し蹴りから一本背負いで二人がいるところに叩きつけた。(目がついてったSさんからの情報)

「ぐっ!?」

「がはっ!!」

「っ!?いった…」

「ぎゃっ!?」

「ヘブシッ!!」

「ふふっ、この程度ぉ?この程度で大口叩いてたのぉ?ナメられたもんだナァ〜力の差を叩き込んであげるっ♪」

「ちょ…これは想定が…ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「や、やばい…みんな!!逃げなさ「逃がさないヨォ?」ああああああああああああ!!!」

「ちっ!夕海子、銀さんいけ!!があああああああああああああああああああああ!!!!」

「銀さん!!お逃げください!!あなたは悪くな…→〆=+〆$☆♪÷÷〆|÷:×○→〆^0&々〒=*÷!!!!!!!!!!!!!!」

「くっ!!やめろ!!ちひろ!!落ち着け!!「落ち着いてられるかっ!!」エベシッ!アバスッ!ホギャアッ!ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

「「…」」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

ーーー最強のHsideーーー

「ねーねー、今イネスのイートエリア大変なことなってるんでしょ?」

「いや、所詮悪ふざけでしょ、だって中学生よ?」

「そうね〜迷惑だわ〜」

(…イネスに買い物に来てみれば…どういうことだ?避難って…)

そのときだった。

「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「ああああああああああああ!!!」

「があああああああああああああああああああああ!!!!」

「→〆=+〆$☆♪÷÷〆|÷:×○→〆^0&々〒=*÷!!!!!!!!!!!!!!」

「エベシッ!アバスッ!ホギャアッ!ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

『…ギャアアアアアアアアアアアアア!!』

「ほんとだった!!ほんとだったの!?」

「いやこの声間違いないでしょ!?」

「絶対殺人とか起こってるってこれ!?」

「今すぐ警察呼べー!!」

「ちょ、あんた呼びなさいよ!」

「いやよ!!殺されたくない!!」

(今の声ってまさか…おいおいやべえぞ…今すぐ止めねえと…!)

ビュゥゥンッ!!

「なっ!!」

(早い!?ひとまず状況確認だ!!)

 

ーーーイネスーーー

「おいおいどうなってんだ…」

(傷一つ付いてないのに殺気は人殺すレベルだぞ…一体何が…ん?)

その先には見覚えのある顔が。

「東郷!?竜治!?友奈!?」

「しゅ、春信さん…」ガタガタ

「どうした!?何があった!?」

「じ、実は…ちひろがカクカクジカジカで…」ガタガタ

(あー…だからか…)

「オッケー、そりゃ止めねえとまずいな…」

「で、でもどこにいったか…」ガタガタ

「大丈夫だ、殺気の残留からたどる。」

「「「…え?」」」

「ん?急ぐからおんぶするぞ?」

「「「あ、はい…」」」

 

ーーー高知県ーーー

「さすがに…ここまでは…来れないはず…」

「あとはゆっくり帰るだけ…」

「私たちは…」

「生きることに成功できたん…」

ボガボガァン!!!

「「っ!?!?」」

「ミィツケタァ♪」

「「ひぃ!!」」

「「いやぁぁぁ!!」」ガクガク

「さあ、お仕置きだぁ〜♪」

「「ギャァァァァァァァ!!」」

バキッ!

ボキッ!

ドガァン!

ビボベバシッ!!

(やべえ完全に暴走してんぞ!?)

スタッ

「園子、風!大丈夫…じゃなさそうだな…」

二人は完全に気絶しているようだった。

そして…

「ん〜?どうしたんですか〜?春信さ〜ん♪」

「ちひろ、もう十分だ、やめろ。」

「何いってんですか〜、こいつらはあの世に送らないと♪…邪魔、するんですか?」

「…おう。今のお前はガチで殺しかねないからな。」

「…こいつらの二の舞にしてあげますよ!!」

(さぁて、あれやるか。)

俺はとっさに下に体を落とし、回し蹴りを膝に当てる。

そしてバランスを崩し、倒れて来たちひろに対し…

頭に指先を当てて手を思いっきり合わせた。

「ガッ!?」

トサ…バタッ

「「「…え?」」」

(ふう…)

「これでよしっと…」

「ちょ、今何したんですか!?」

「ただ手を合わせた…というより叩いただけなのに…」

「ん?あれはねこだまし。相手の波長がもっとも高いところに強力な衝撃を加えることで相手の脳をしばらくマヒさせる。あ、死なねえぞ?」

「「「…す、すごすぎ…」」」

「お、おう…さ、帰るぞ〜」

「「「あ、はい…」」」

 

こうして、三好春信の活躍によってちひろの暴走は食い止められたのであった。

ちゃんちゃん♪



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邂逅

ちょいとお知らせありま( ˘ω˘ ) スヤァ…


一日目

せっかく日記帳を見つけれたんだし、もし私たちが死んだあとに来た人がいた時ように書いておこうと思う。

目が覚めたら、見知らぬ土地。

辺り一面廃墟だし、ぶっちゃけ最初はわけがわからなかった。

記憶から手がかりを探そうにも名前と年齢しか思い出せないし。

いわゆる記憶喪失というやつだろう、ついてない。

とりあえずところどころに雪がある以上、日本海側のどこかなのだろう。

飲食はどうするか、寝る場所は?

問題は山積みだ。

 

 

ーーー神世紀301年、6月ーーー

ーーーちひろsideーーー

友奈「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!テスト嫌だよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

雀「最近なってテストばっか!助けてメブゥゥゥゥゥ!!!」

芽吹「自分でなんとかしなさい。」

雀「ヘブゥ!?そんな殺生な!!」

東郷「友奈ちゃん、これも高校に向けて必要なことなのよ?」

友奈「わかってるけど…やっぱり嫌なもんは嫌だよー!!」

夏凛「私達は受験生なわけだし、仕方ないわね。ほら友奈、勉強見てあげるから。」

友奈「ほんと!?ありがとう夏凛ちゃん!!東郷さんもやろうっ!」

東郷「え!?いいの?友奈ちゃん。」

友奈「もちろんだよー!!」

しずく「…雀、家で見てあげるから。」

雀「んお!?しずく様まじGOD!!」

ちひろ「…樹ちゃん、分ける意味あったかなこれ。」

樹「あ、あったよ…多分。」

20人もの新入部員が入ったことにより大幅にパワーアップした勇者部。

その影響で部室も家庭科室が解禁された。

しかしながら一同(主に雀と園子)の提案で、家庭科準備室を元のメンバー専門の会議(団らん)部屋にしたのだ。

銀「やっほー!三ノ輪銀様のご到着だぁ!!」

園子「園子もいるんだぜー!?」

(…あ。)

ちひろ「そーのーねーえー?」

園子「あり?ありり?これもしかしてバレてる?バレちゃってる?」

ちひろ「今日したらしい居眠りについて、詳しい事情を聞きたいんだけど。」

園子「やっぱしバレてる〜!?許してちょんまげー!!」

ちひろ「許してたら治らないでしょ!袈裟固め!!」

園子「いやああああああああ!!!!」

銀「…ついでに教えたのは?」

芽吹「雀。完全に情報源としていいように使われてるわね。」

銀「あはは…(汗)」

そうしてると

ガラガラガラ

扉が開く。

風「疲れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!テスト多すぎないちょっと!?」

夕海子「賛成ですわ!!あまりに多すぎます!!」

竜治「高校ってそういうもんじゃないんすか?いや行ったことないからわからないですけど。」

風「たしかにそうかもしれないけどね!来る日も来る日もテストじゃ私の女子力が枯れちゃうわよ!!」

夕海子「舐めてましたわ高校…なんて魔境ですの…」

亜耶「風先輩も夕海子先輩も、お疲れ様です…!!」

芽吹「…ところで今床でちひろが固め技かけてたの、気づいてます?」

風、夕海子「え?」

(…やっと気づいたかぁ…)

疾風のごとく現れた2人、固め技かけている真っ只中の私がかわせるはずなどなく、見事に足蹴を食らっていた。

風「ア、アハハ…」

夕海子「こ、これは事故ですの。そう、悲惨な事故。なので私達は悪く…」

ちひろ「…O☆SI☆O☆KI☆」ドゴォォォォォォォン

風、夕海子「ぎゃああああああああ!!!」

しずく「なんだ…いつも通り…」

樹「お姉ちゃん、ドンマイだよ…」

春信「これがいつも通りってなかなかはしゃいでるなお前ら…」

竜治「そうなんすよ…まあそれが楽s…え?」

芽吹「この賑やかさが何よりの勇者部の魅力だと思ってます。どこの支部も大人気のようですs…え?」

園子「ぷはー…開放されたぁ…まあ賑やかが何よりなんy…あ、春信さん。」

ちひろ「…え?」

扉は開いてない。

ここは3階。

春信さんがいるのは窓。

一同「…どんな入り方してきてんすか(るんですか)…」

春信「いやぁすまないね。こっちの方が早いからついつい。」

 

 

 

 

二日目

辺りを散策して見つけた毛布でなんとか一夜を明ける。

とはいっても雪が降ればこれではキツくなるし、早く寒さを凌げる場所を探さないと。

その最中、生存者を見つけた。

小柄な少女、私よりも若そうだ。

この子のためにも探さないと。

雪が降らないうちに。

 

 

春信「でだ、今回来たのには理由がある。」

ちひろ「いやむしろなきゃ困りますけどね…あんなダイナミックな登場したんですから。」

友奈「たしか最初に来た時もそうだったよねー!」

夏凛「たしかに…で、なんなの兄貴。」

春信「まあ依頼だな。…お前ら勇者部に、外の探索を依頼したい。」

(…え?)

風「外って…本州とかのですよね?」

芽吹「なぜまた私達に…」

春信「もちろん本来は子供を危険に晒すわけにはいかないんだが…竜治が消えてないように、バーテックスが残っている可能性がある。そうだった場合対抗できるのは神器を扱える勇者部だけなんだ。」

しずく「なるほど…」

樹「神器…たしか適性で強さが上がるんでしたっけ。」

亜耶「そのはずですね…簡易版勇者システムと言っても過言ではないかと。」

春信「あくまで安全の確認だけでいいんだ。言って欲しい目的地は2つ、北海道と沖縄。このふたつを目指せばほとんどのエリアは確認出来る。」

夕海子「海はどうするのです?どちらも本州とは海で隔てられているはすですが。」

春信「船を出す。移動手段に関しての心配はいらない。」

雀「…待ってください!!私達は今年、受験生なんですよ!?そんな長期間の遠征は勉強に響きまくりますって!?」

園子「そうー?もう大学まで勉強覚えてるよー?」

銀「それは園子が頭いいだけだ…私もそれは気になりますね。行ってもいいですけど人生を大きく左右する要素ですし。」

春信「それに関しても手は打ってある。もし受けてくれるなら全員志望校に入試なしで合格内定だ。」

友奈、雀「やります!」

夏凛「早っ!?」

芽吹「雀…勉強しなくていいということではないのよ?」

雀「そんくらいわかってるよメブ〜。ただデメリットがないんだしさ〜。」

しずく「…悪いこと考えてる雀は置いておいて。私も賛成。役に立ちたい…」

東郷「…私も賛成です。たとえ廃墟となってても、護国のためにも我が母国をこの目で見てみたいですし。」

風「そうね…樹、ちひろ。今はあんたらが勇者部の部長と副部長よ。最後はあんたらで決めなさい。」

ちひろ「…どうする?樹ちゃん。」

樹「勇者部の活動は?」

ちひろ「人のためになること。勇者部6箇条のひとつは?」

樹「無理せず、自分も幸せであること!」

ちひろ「なら答えは?」

樹「ひとつだよね!春信さん!その依頼、私達讃州中学勇者部がお引き受けします!ただ危険を感じたらすぐ撤退する形で!」

春信「おお!ありがとう!!出発は7月の初め頃を予定してるから、それまでに準備を整えてもらえるといいかな。」

一同「はーい!!」

 

 

 

 

 

三日目

最高の場所を見つけられた。

町外れの洞穴なのだが、飲食料はざっと数えて数年分あるし、ベッドや布団、衣服類もある。

他にも避難生活で役立ちそうなものが盛りだくさんだ。

少女も目を覚ましたが、記憶喪失だった。

仕方ない、とりあえず冬の寒さを凌ぐこと第一に、散策をしていこう。

 

 

ーーー東郷sideーーー

(あのあとはどちらに行くかの振り分けを決めた。

北海道にはちひろちゃん、竜治君、雀ちゃん、しずくちゃん、夏凛ちゃん、そのっち、夕海子先輩。

沖縄には樹ちゃん、亜耶ちゃん、芽吹ちゃん、銀、友奈ちゃん、風先輩、そして私。)

銀「すーみ!何考えてるんだ?」

友奈「東郷さん?どうしたの?」

東郷「ん?ちょっとこれからのことをね…依頼は受けたのは別に文句なんてないし、むしろ母国をこの目で見れるから楽しみですらあるわ。

…でも、もし何かの拍子で足を踏み外したりしたら…星座級もいないと確定してるわけでもない。もしいたら神器があっても勝てる保証は…」

銀「うーん、やっぱ須美はしっかりしてるなぁ。バーテックスのことはともかく事故のことは考えてなかったわ。」

友奈「東郷さん!大丈夫、東郷さんには私がいる!私が東郷さんのこと、絶対守るから!」

銀「お?なら私も!だから私たちがヤバい時は守ってくれよな、須美!」

(二人とも…)

東郷「ええ。みんながいれば何が起こってもなんとかなるわよね…!!」

 

ーーー竜治sideーーー

天の神の死後、俺自体は消えなかったものの、俺を人間の中に紛れ込ませるための記憶改竄は消えたようで、俺は夏凛先輩や芽吹先輩たちと同じマンションで1人暮らしをしてる。

芽吹「…夏凛、ほんとに持ってくの?それ。」

夏凛「当たり前でしょ?未知の土地だからこその煮干しとサプリよ。みんなの分も持ってかなくちゃ。」

竜治「マジっすか…重くなるだけじゃ…?」

芽吹「…飲食料は大赦が支給してくれるのよ?」

夏凛「疲れとかで体調を崩しかねないわ。サプリで微調整しないと。」

亜耶「夏凛先輩、さすがです!私も…」

竜治「いや亜耶はしなくていいんだけどな!?」

芽吹「夏凛、ピュアな亜耶ちゃんが影響されてきてる。やめなさい。」

夏凛「別にいいことじゃない!?なんでやめる必要あるのよ!?」

亜耶「ダメなのですか?」

(うーん…困ったな。ダメと明確に言える理由が…)

芽吹「…まあ百歩譲ってサプリはOKよ。た だ !煮干しは必要ないわよね?」

夏凛「ギクッ!煮干しでカルシウムとかを…」

芽吹「ならそれこそサプリを使えばいいじゃない。」

夏凛「グッ!?ほら、応用が効くのよ!出汁を取ったり…」

芽吹「そんな出汁を取れるような道具持ってくと無駄に重量取ると思うけど?」

夏凛「ウッ!!?…わかったわよ…」

(論破しちゃったぞ…芽吹先輩すげえな…)

芽吹「ってことだから煮干しはいらないわよ、亜耶ちゃん。」

亜耶「了解です!ありがとうございます、芽吹先輩!」

竜治「…俺もサプリ少しだけ持ってくかなぁ。野宿とかで作れるものって栄誉偏りそうなことに変わりはないし。」

芽吹「そうね…夏凛、サプリについて教えてもらえたりする?私も持ってきたいし。」

夏凛「え?いいの?そうとなればこの三好夏凜に任せなさい!!3人にサプリの選び方、しっかり伝授してあげるわ!!」

 

ーーーしずく(シズク)sideーーー

雀「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!メブと別班なっちゃったよー!!」

夕海子「過去に起こったことを後悔しても意味ないと思いますわよ。私がいますし平気でしょう?」

雀「よくドジするし安心感がなぁ…」

夕海子「失礼すぎません!?」

しずく「…私は?」

雀「しずくはシズクもいるし頼りになるかなー!!」

夕海子「私だけ扱いがひどいですわよ!?」

しずく(…ねえシズク。)

シズク(ん?どうしたしずく。)

しずく(…私、防人なれてよかったと思う。)

シズク(…そうだな。俺もそう思う。こいつらの賑やかさ見てたら心配も失せるわな。)

しずく(うん…でもやっぱり私は1番シズクがいてくれてよかったかな。)

シズク(私がか?体に別人がいるようなもんなんだぞ?)

しずく(それでも…これからもずっと一緒にいてね。)

シズク(…少なくとも今のお前を置いてったりはしねえよ。大丈夫だ。)

雀「しずく!!助けてー!!夕海子さんに殺されそうだよー!!」

夕海子「もうわたくし怒りましたわ!今日という今日こそ!!」

雀「ぎゃああああああ!!!助けてしずくー!!!」

シズク(…ほれ、行ってやれ。)

しずく(…そうだね…)

 

ーーー樹sideーーー

樹「ふぅ…こっちはできたよ、お姉ちゃん!!」

風「お、ありがと!!しっかしまあ樹がまともな料理を1人で作れる日が来るなんて…」

樹「もう、私だって練習してるもん。ちひろちゃんに教えてもらって。」

風「…こう考えるとほんとちひろってなんでもできるわね。完璧すぎない?」

(うーん…)

樹「そうかな?ちひろちゃんって小論文苦手だし、理科の地学関係できないよ?スポーツも野球苦手らしいし。」

風「樹はなんでそんなに知ってるのよ…全部初耳なんだけど!?」

樹「当たり前だよ〜だって私とちひろちゃんは親友だもん!!」

風「親友、か…樹に最初にできた友達がちひろでよかったと思うわ。あいつ、私達が自分を闇から救ってくれたっていうけど…こっちのセリフなのに。」

樹「うん、私も。」

引っ込み思案で、自分に自信を持てなくて、お姉ちゃん頼りになってた私。

勇者部のみなさんと会えたのも、勇者としての戦いもあるんだろうけど…1番はちひろちゃんと過ごした日々だと思った。

風「…ちひろと班違うけど大丈夫?今からでも竜治に検討しようか?」

樹「大丈夫。ちひろちゃんだもん、心配なんていらないよ。」

風「そうね…じゃ、ご飯にしましょうか!せっかくだしちひろと園子も呼んで!今日はうどんにするわよ〜!ちひろと園子呼んできて!」

樹「うん!!」

 

ーーーちひろsideーーー

園子「ちっひー…疲れたんよ〜」

ちひろ「まだちょっとしかやってないじゃん…ほら、まだまだあるよ?」

園子「だって今日持久走あったんだもん〜!!」

ちひろ「…嘘だね?疲れたって。」

園子「ちっひー?さすがにそれはひどいよー?」

ちひろ「…体力に1番の自信持ってたのに?」

園子「…バレてしまったなら仕方ない!ちっひー、ギューさせて♪」

ちひろ「…どうしたの?園姉にしては珍しく甘えん坊だけど。」

園子「…春信さんの話聞いてね?昔のこと思い出しちゃった。2年…あと数ヶ月もしたら3年だね…前のお役目を終えて、体の機能も、親友も、気づかないうちに妹も失ったあの日のこと。」

ちひろ「園姉…私気にしてないよ?仕方なかったことなんだし…」

園子「やっぱちっひーは優しいね〜!…だからね、思ってもみなかったんだ。

こんなふうにまたわっしーやちっひーと、ましてやミノさんも一緒に学校に通って、勇者部の活動をやれるなんて。

…これも、ちっひーが頑張ってくれたおかげだよ。ありがとう、ちっひー。」

(…園姉…)

ちひろ「…そんなことないよ…最後の戦いで、忘れ去られたあの日から…私の時間は止まったままだったんだよ。

忘れられたことで変に考えて、信じれなくなって、塞ぎ込んで。

…勇者部に入ったあとも、どこかでは心を許してなかった。7体同時襲来のあとは特に、ね。

…私が今を歩み出せたのは、勇者部の…樹ちゃんのおかげなんだよ。

…こう考えると多分私も考えてなかっただろうなぁ。こんな幸せな日々を過ごせる日が来るなんて。

…いいよ、おいで園姉。その代わり私からもいい?」

園子「もちろんなんよ〜!はい!ギューっ!!」

ちひろ「ふふっ。ギューっ!!」

園子「いつもと比べて大胆なちっひー、いいよ〜!!」

ちひろ「いつも手厳しくしてるからたまにはしてあげたいなって。」

園子「優しい〜!…これからもよろしくね、ちっひー!!」

ちひろ「うん、これからもよろしく、園姉。」

ピンポーン

ちひろ「あ、ドアホン。」

樹『園子さん?ちひろちゃん?お姉ちゃんがうどん作ってくれたので一緒に食べませんか?』

ちひろ「だって、園姉。」

園子「LET'S GOなんよ!!」

 

 

 

 

七十八日目

日記帳を見つけた日。

ここまで書いてくるのめっちゃ疲れましたわ。ざっと5日はかかった。

雪が溶け、気温も上がってきた。

そろそろ本格的に探索に乗り出せそう。

主な目的は生存者捜索とアイテムGET。

かなり設備があるここでもないのはあるし、もしかしたら私たちと同じように冬を凌いだ生存者がいるかもしれない。

こんな状況だからこそ協力しなくては。

それはそうとこの洞穴の持ち主は結局どこへ行ってしまったんだろうか。

いくらキャンプ好きだったりしたとしても数年持つほどの飲食料品はあまりに不自然。

一体ここで何が起こったんだろうか。

 

 

百日

ついにこのサバイバル生活も百日になった。

未だに助けも情報もない。

ラジオを見つけたから付けてみたけど、どこをどういじっても電波を拾わなかったのだ。

壊れてたわけじゃないし、世界規模で何かあったのかもしれない。

というかそれなら未だに来ない助けにもうなずける。

一生このままのことを視野に入れ、小規模な畑を作った。

種は廃墟の中にあったものを拝借、近くにある小川や雪溶け水を利用する。

ただ肉が有限なため、海や大きな川を見つけたいところだ。

 

 

百三十二日目

大規模な川を見つけることに成功。

魚もいるから肉問題も解決しそうだ。

まだ捕獲道具がないから釣竿を探さないといけないけど。

洞穴もだいぶ充実してきている。

我ながら女の子とは思えない筋肉のおかげで火を絶やさないように薪も作れるし。

今度は冷蔵庫代わりになるものを見つけたいところかも。

 

 

百八十八日目

大幅に前進した。

まず大きめなドラム缶を見っけたこと。

これを洗って加工すれば古き懐かしのドラム風呂ができる。

続いて歩いて5分くらいのところに中の温度が常に低い洞穴を発見。

冬に雪を溜め込んでおけば冷蔵庫に近い機能を発揮するだろう。

もうだいぶ普通の生活と変わらなくなってきてる。

 

 

二百五十五日目

投げ槍、猟銃を手に入れたことで狩りもできるようになった。

いや普通は投げ槍できないと思うんだけどね、私の記憶あった頃ってどんな化け物よ。

畑もだいぶ実ってきているから収穫も近い。

たとえ私たちが最後の人類でも、生き抜いてみせる。

 

 

三百十一日目

初雪が降った。再びの冬の到来だ。

しかし、今回は前のようには行かない。

熊やらの毛皮から簡易的な厚着も用意したし、雪がひどくなければ散策も可能。

何よりも冷蔵庫用の雪を溜め込む作業をしなくちゃいけない。

ここからが佳境、頑張るぞ!!

 

 

 

 

 

ーーー神世紀301年、12月21日 北海道ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「竜治君、そっちはどう?」

竜治「問題なし。」

春信さんに頼まれた遠征も、5ヶ月ほどかかってついに目的地の北海道に突入。最北端てある稚内を目指し、旭川を探索していた。

園子「えー、こちら園子、全く問題ないんだぜ〜!!」

夏凛「異常なしよ。」

夕海子「わたくしの場所も変わったことはありませんわ!」

しずく「…異常…あり…」

雀「私のとこもないよー!こりゃ楽s…え?」

(…ここまで来て?)

園子「とりあえず行ってみるんよ〜!」

 

しずく「ここ…雪で隠れてるけど何かが通ったあとがある…」

夕海子「たしかにですわね…生存者でしょうか?」

雀「だよね!?だよね!?それしかないy」

竜治「俺みたいなパターンもありえますよ。たしか北海道って勇者いましたよね?」

園子「いるね〜!」

竜治「もしその勇者が生きてたとして、戻った時に倒すために俺みたいな擬態型を…」

雀「ひいいいい!!怖いこと言わないでよ竜治君!!」

(んー…この窪みは…?)

ちひろ「…あの洞穴に通じてる。」

夕海子「つまりあの中に誰かしらがいると。」

シズク「どうする?俺が特攻するか?」

竜治「いやそれはダメですって。とりあえず様子を…あ、何か出てきた。」

???「さっきからうるさいな〜なんだなんだ〜?」

???「もしかして…だったりしますかね?」

雀「ぎゃああああああ!!!でたでたでたぁぁぁぁあ!!助けてメブゥゥゥゥゥ!!!」

ちひろ「落ちいて下さいよ雀さん…とりあえず様子を…ってにぼっしー!?」

 

ーーー夏凛sideーーー

特に迷うことはなかった。

夏凛「あんたら、生存者よね?」

友奈や風なら、絶対そうするって思ったから。

夏凛「私は三好夏凜。そっちは?」

雪花「秋原雪花。絶賛記憶喪失だにゃ。」

佳美「神月佳美です。同じく記憶喪失ですが…」

夏凛「雪花に佳美ね。よろしく!」

 




ということでお知らせです。
今までただpixivのを公開するだけでしたが、こっちであっちに載せれないような2000~3000文字のを投稿しようと思うんです。俺が思いつくかによってしまいますが。
把握お願いしますm(_ _)m


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誕生日短編 聖夜の誓い

祝え!!犬吠埼樹の誕生日を!!!!!!!


ーーー人世紀2年 12月7日、樹sideーーー

園子「じゃあ、改めて〜」

風「樹、誕生日おめでとう!!」

樹「2回目だから言わなくてもいいのに…ありがとうございます。」

12月7日、今日は私の誕生日。

中学二年の時に大幅に人数が増えたことで活動がより活発になったのがあるんだろう、中学三年生になってからも勇者部に入る人はさらに増加。

サブとして入った人も含めると校内でも屈指の人気部活となっていました。

そのため今日は部室で祝われて、その後にかめやで初期メンバーのみなさんに祝われて…そして今、家で祝われてる状況。

園子「しっかしもうイッつんも卒業か〜時の流れは早いですね〜」

風「そう!それなのよ!もう随分と立派になって…」グスッ

樹「あー泣かないでお姉ちゃん、私なんてまだ家事頼りっきりだから〜 」

園子「ふーみん先輩も来年には卒業、仕事や大学次第では讃州市から離れざるを得ないし、最低限はできるようになってた方がいいね〜まあこの様子だと、イッつんが姉離れできてもふーみん先輩の方が妹離れできなさそうだけど〜」

風「安心しなさい乃木、私は一生するつもりないわ。」

樹「そこはしないとダメだよ!?」

同じマンション、それもお隣さんで3年も暮らせば必然的にかなり親睦は深まります。だからいつもよりも将来とかにくい込んだ話も多いです。

…ただ、しかし。

園子「…ちっひー、ついに間に合わなかったね…」

風「全くあいつは…去年はまあ調査だし仕方ないとしてもまたいないって…」

樹「しょうがないよ。どれだけキツい状況でもちひろちゃんが困ってる人を見捨てれるはずないもん。」

ここに私の親友、ちひろちゃんの姿はありませんでした。

事件は遡ること…一週間前。

 

佳美『…みなさん!これって…』

竜治『どうした?そんなあわて…ちひろ!?』

亜耶『意識不明の…重体…!?』

樹『…ふ…へ…???』

 

大橋市で起こった銀行強盗、そこに偶然ちひろちゃんが居合わせたらしく、みなさんを逃がした上で犯人が追えないように単独で戦闘。

その末に出血多量で意識不明の重体になったそうです。

ひとつの疑問は…なぜ大橋市なのか。

一応園子さん曰く、口座も空っぽになったため家に直接取りに行ってたらしいですが…

その前の週から園子さんも分からない用事で部活に来ないことが多かったことも重なり、みなさんの中にも疑問が残っていました。

…それでも。

私はちひろちゃんの行動が、私たちのためを思っての行動だったと信じています。

信じ続けています。

 

ーーー夜11時ーーー

(眠れない…)

明日は休日ですが、お姉ちゃん達が模試?というのがあるそうで、家での誕生日パーティーは8時半に解散、9時半にはベッドについたのですが…

樹「…ここまで寝れなかったの初めてだなぁ…」

再び寝ようと瞼を閉じますが依然目は冴えたまま。

(…ちひろちゃん…無理なのは分かってるけど…)

樹「…私は…ちひろちゃんにも祝って欲しかったよ…」

…その時でした。

ブーブー

樹「…?メール?こんな時間に?」

スマホが振動します。確認するとNARUKOからでした。

(NARUKO…ってことは勇者部の誰かだよね…)

そしてそこには…

 

ちひろ:夜遅くごめんね、屋上来れる?

 

待ち焦がれていたちひろちゃんからのメッセージが入っていたのでした。

 

 

 

 

 

 

ーーー屋上ーーー

樹「はあ、はあ…!!」タッタッ

大急ぎで防寒具を着込み、屋上への階段を駆け上がる。

そしてその先には言われたとおり…ちひろちゃんがいた。

樹「ちひろちゃん!!」ギュッ

思わず抱きつく。

ちひろ「樹ちゃん!!大丈夫?寝てるとこ起こしたりしなかった?」

樹「ううん、ずっと眠れないで起きてたから…ちひろちゃんは体大丈夫なの?」

ちひろ「うん、寝てる間に傷はあらかた治ったみたい。」

(そっか…よかった…)

ちひろちゃんのことだ、今日が私の誕生日である以上、無茶してでも来る可能性が高かったので、怪我のないことに安堵する。

樹「…でーも!気持ちは分かるけどあまり無茶はしないでね。みんなすっごい心配したんだよ?私だって…」

ちひろ「…うん、ごめん。今度からは気をつける。」

樹「わかった。で、ひとつ聞きたいんだけど…いい?」

ちひろ「うん、今は反省の証としてなんでも答えます。」

樹「ありがとう。ほら、事件って大橋の銀行で起こったじゃん?どうしていたの?園子さんから家にお金取りに行ったのは聞いてるけど…」

ちひろ「あ、それ?うーん…家で銀行から直接引き出してって言われたから?」

樹「え?でもいつもお金は家にって…」

ちひろ「私もそう思ってたんだけど…ほら、お母さん達さ、少しでも職につける人増えるようにってお手伝いさんとか一気に雇い始めたじゃん?それであまり防犯の機械を付けづらくなったのと、給料をそれぞれの口座に振り分けやすいようにって、ずらしたんだって。」

樹「そういうことだったんだ…」

ストンと納得する。

ちひろ「他に聞きたいことない?ないなら本題入りたいけど…」

樹「大丈夫、ないよ。本題って?」

ちひろ「…樹ちゃん、誕生日おめでとう。」

(…あ。)

本当のついさっきまで覚えていたのに、いつの間にか意識から抜けてたことに気づく。

樹「…うん、ありがとう。」

ちひろ「いえいえ。今のところ1回しか祝えてないもん。そしてこれが誕生日プレゼント。」

そう言って出されたのは小さな紙。

樹「えっと…これって…?」

(大きさ的には…名刺?だけど…)

ちひろ「ひっくり返して見てみて!」

言われたとおりにひっくり返してしてみる。

そこには…

『いおなミュージック 犬吠埼樹専属マネージャー 上里ちひろ』

そう、書かれていた。

樹「これ…まさか…!」

ちひろ「うん。樹ちゃんの歌手活動のマネージャー、私がやらせてもらうことになりました。」

樹「…ど、どうやって…」

驚きと嬉しさのあまりに声が震える。

ちひろ「ふふ、直談判しに行ったんだ。勇者のこととか私が樹ちゃんの親友のこととかあって特例で応募資格は得られたから、あとは受かるだけ…って感じかな。やっと高成績が役立ったよ…」

…そうして、気づく。

樹「…もしかして最近ずっと部活に出ないで帰ってたのって…」

ちひろ「うん。公式のはもう終わってたから私だけ1人で受けてたんだけど、樹ちゃんの誕生日に間に合わせるためにも結構予定キツキツで…」

樹「…本当にいいの?私なんかで…」

ちひろ「樹ちゃんだからいいの!私…誰かを支えれる職に就くのが夢なんだ。それが樹ちゃんなら本望でしかないよ。」

樹「…人気出ないかもしれないんだよ?そしたら収入…」

ちひろ「出ないわけない。ずっと聞いてきた私が断言する。億が一にあったとしてもお金なんて私のところありあまってるし!

…というか私の方が足引っ張るかもしれないんだよ?さすがにマネージャーとか初めてだし…」

樹「ちょっとくらいなら全然大丈夫。ちひろちゃんはすごいけど完璧じゃないって知ってるもん。」

ちひろ「めちゃくちゃヤバいミスかもしれないんだよ?」

樹「その時は私が頑張って挽回する!だから私が大変なことになったらちひろちゃんが助けて欲しいな。」

ちひろ「もちろん!!」

ふふっと二人で笑い合う。

ちひろ「…ありがとう、樹ちゃん。生まれてきてくれて。」

樹「生まれては言い過ぎじゃない?」

ちひろ「ううん。樹ちゃんがいなかったら私…今も笑えてなかったと思うから。樹ちゃんと過ごした日々の思い出全てが、私のかけがえのない宝物なんだ。」

樹「…私も、ありがとう。ちひろちゃんがいてくれなかったら私…ここまで頑張ってこれなかったと思う。世界の真実とか、散華とか…」

ちひろ「本当に色々あったよね。…でも悪いことだけじゃなかった、絶対に。」

樹「うん、私もそう思う。勇者にならなかったらみなさんにも会えなかったんだし…」

ちひろ「これからも、一緒にいてくれる?」

樹「歌手とそのマネージャーだよ?当たり前じゃん。」

ちひろ「そうだね。

…樹ちゃんが困った時は私が支えるから、心配しないでいいよ。」

樹「うん、じゃあちひろちゃんがどうしてもダメって時は私が頑張るね。」

ちひろ「…あ、2人とも心折れそうな時はどうしよう。」

樹「あっ…うーん…」

ちひろ「お互いにカバーし合う、とか?」

樹「…確かに、2人でなら絶対なんとかなるね!」

ちひろ「…うん、そうに違いない!」

樹「…ちひろちゃん。」

ちひろ「…樹ちゃん。」

2人「「大好き。今までも、今も、これからも。ずーっと!!」」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー園子sideーーー

風「━━━━━て!」

(…むにゃ…?サンチョ〜…?)

風「お━━━!」

園子「まだ〜…早いんよ〜…」

風「━━━━起きなさい!!!!」

園子「わあっ!?!?」ガバッ

耳元の大声で思わず飛び起きる。

目を擦ると前にパジャマのふーみん先輩が。

園子「どうしたんですかふーみん先輩〜パジャマで〜」

風「樹がいないのよ!」

園子「え?」

信じられないことを聞き、つい声が漏れる。

風「ついさっきトイレに起きたんだけど、そしたらいないの!靴もないから多分自分で出かけたんだと思うんだけど…書き置きもなしでなんて…」

園子「…と、ともかく探しましょう。私は下の方を!」

風「任せたわ!私は上を!」

 

園子「うーん困ったんよ〜…」

外の周辺まで大急ぎで探したものの、イッつんの姿は見つけられなかったのでした。

(そしてここまで上がってきてるのにふーみん先輩もいない〜?まさか上に化け物でもいたりするのかな?)

各階をサッと確認しながらどんどん階段を上る。

(もうすぐ屋上…!)

出口にふーみん先輩を見つける。

声をかけようとした、その時。

園子「ふーみん先輩!樹ちゃん…は…」

私の目が止まったところ、ふーみん先輩も見ていたところ。

そこでは…イッつんとちっひーが、お互いに寄りかかるように寝ていた。

園子「…いなかったの、ちっひーが呼び出してたんみたいですね。」

風「そうみたいね。…全く、勝手に抜け出してきただろうちひろも、夜中になんも残さずに来ちゃう樹も明日説教ね。」

園子「そうですね〜風邪引いちゃいますし布団持ってきます?」

風「そうね。私の家に予備があるから行くわよ。」

園子「あいあいさ〜!」

2人がそのまま寝ていられるようにふーみん先輩の部屋へ布団を取りに向かう。

その顔はどこまでも幸せそうな笑顔で、そして…

その手は、固く固く、繋がれていた。



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防衛の章
プロローグ 幸セガ崩レル時


ついに!ついに!!入ります!防衛の章!!


ーーー???ーーー

ーーー???sideーーー

(…ついに、ここまで来た。)

???「…やっと会えましたね。アフトクラトル、ハイレイン殿。」

ハイレイン「そりゃ同盟国を何個も攻め落とされれば会わざるを得ないだろう…で、なんの用かな?突如現れ、未知のトリオン兵で規模を拡大した超新星、オブラ・ディエナ。」

ディエナ「あら、超新星なんて大掛かりな。こちらは黒トリガーないですし。」

ハイレイン「だからこそ、なしでその強さが恐ろしいのだろう…2度目だが、用件は?」

ディエナ「単純明快。…私の国、「スターセーバー」と対等な同盟を結びませんか?」

ハイレイン「…対等な、だと?笑わせるな。いくら強力とはいえ正面衝突になればお前らに負ける要素はないぞ。」

ディエナ「まーまーそう早まらずに。こちらが提供するのは私しか作れない新型"星屑"、"星座級"。それにあなたがたの協力を得られれば、非常に優秀な人材を5〜10名、獲得できる予定です。うち1人は…そうですね。素で黒トリガーに匹敵するかもしれません。」

ハイレイン「…何?黒トリガーにだと?

…本当だろうな?」

ディエナ「ええ。勝てない相手に嘘をつく余裕はないですよ。」

ハイレイン「…よかろう。ミラ、書類を用意しろ。同盟、組もう。」

ディエナ「ありがとうございます、ハイレイン殿。」

(さあ始めようか…)

 

 

 

 

ーーー人世紀3年、イネスーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「あやや、そっちどう?」

亜耶『できたよ!ちーちゃんの方はどう?』

ちひろ「んー、樹ちゃんがまだちょっとゴネてるくらい?」

バーテックス、そして天の神の戦いから3年。

大赦は新たに元号を「人世紀」と改め、新たな時代をスタートさせた。

今ではみんなで本州復興を押し進めている。

反大赦を訴えるレジスタンスも少なくはないけど、全て春信さんに撃沈されてる。

そして私たち勇者部も成長、今では中三の佳美を除き、全員讃州高校に進学した。

讃州高校勇者部の部長はもちろん風さんとして、副部長には防人でのリーダー経験のある芽吹さんに。

あまりの多さに、ボランティアオンリーの勇者部と、大赦関係も請け負う勇者部、つまり私たちの2つに派生。

そして今は何をやってるかと言うと…

樹「やっぱり申し訳ないよ〜…そんな大々的に呼ばれてもそんな上手くないし…」

ちひろ「もう色々やっちゃってんだし、あとには引けないよ。腹くくって!!レッツリハーサル!!」

風「むしろあんたのためにここまでしてくれてるみんなに感謝しないと!」

樹「もちろん感謝はしてるよ?でも〜…」

明日に控えた樹ちゃんの歌手デビュー、その準備の真っ只中であった。

ざっくり言うとあややたち防人組が飾り付け、友奈さんたちが宣伝。

友奈?『やっほー!ちっ…ちひろちゃん!友n』

ちひろ「どうしたの?園姉。宣伝の調子は?」

園子『渾身のモノマネがもうバレてるんよ…ガーン…』

夏凛『ガッカリしてないで本件を話しなさいよ…』

雪花『まあ結論から言うと大成功だにゃ。元の評判もあって軽く100人はパンフ持ってってくれたんじゃないかな。』

ちひろ「…だって。」

樹「うっ…すごい数…」

佳美『樹さんならできます!!私が保証しますから!!』

銀『私も!!なんだかんだ言って本番に強いし大丈夫だ!!』

園子『いっつんの晴れ舞台、楽しみにしてるんだぜ〜!!』

樹「…はい!みなさん、ありがとうございます!!」

ちひろ「やっと腹くくった?」

樹「うん…まだ申し訳ない気持ちはあるけどね。」

ちひろ「これから人気になるんだし、それで稼いだの寄付すりゃ万事解決!」

樹「まず人気ならないと思うよ…仮になったとしても事務所の方にも出さないと行けないし、マネージャーやってくれてるちひろちゃんにも渡さなきゃいけないじゃん。」

ちひろ「…私、上里だよ?」

樹「それでも苦労かけちゃうんだし…」

ちひろ「私が自らやったことなんだし気にすることないのに…なら私がもらったあと寄付を!」

樹「それ二度手間じゃん…わかった。ちひろちゃんがいいって言うなら。」

ちひろ「うん、ありがと。私も勇者部には感謝しきれないし。」

風「…ブゥ。樹が成長したのは嬉しいけど…そのせいで最近私の存在感が薄れてきでる…」

樹「ええ!?お姉ちゃんのこと忘れたことなんてないよ!?」

ちひろ「ヤキモチ焼いてたんですか…私からしたら風さんの方が羨ましいくらいなんですけど。」

風「どこが!?今じゃあんたすっかりメガロポリスもギガロポリスになりやがったし、雰囲気も大人びやがったし!?私の勝てる要素が見つからないんだけど!?」

ちひろ「雰囲気は風さんがやろうとしてないだけでしょ…そしてな に が ギガロポリスですかぁ?」ギリギリ

風「あ、ちょタンマ!!ごめん地雷だって忘れてたの痛い痛い!!」

樹「ちひろちゃん、お姉ちゃんも悪気なかったんだしそれくらいで許してあげて。」

ちひろ「樹ちゃんが言うならまあ…」

風「解放された…ってんな事やってる場合じゃなかった!?リハーサルしないと!?」

樹「そうだよ…じゃ、着替えてくるから。」

ちひろ「いってらっしゃい〜!」

樹ちゃんが衣装部屋に消える。

風「…で、結局どこが羨ましいの?」

ちひろ「目に見えるようなとこじゃないです。人として尊敬させてもらってます。」

風「え?どこが?自分で言うのもなんだけどちひろに勝てるとこあったっけ?」

ちひろ「えぇ。すぐ調子乗ったり、」

風「グサッ!」

ちひろ「悪ふざけしたり、」

風「グサグサッ!」

ちひろ「…しますけど、誰よりも優しくて、みんなのことを誰よりも思いやっている。」

風「…え?別にそんなこと…第一それなら友奈とか銀とかの方が…」

ちひろ「友奈さんも銀さんもたしかにそうだとは思います。でも、やっぱり一番は風さんだと私は思います。だから、みんなはあなたについてくるんですよ。」

風「ちひろ…あんたが言うならそうなのかもね。」

と、その時。

樹「…できたよ!」

衣装部屋から衣装に身を包んだ樹ちゃんが。

(…待って。)

ちひろ、風「…可愛い。」

樹「そ、そうかな…」

風「…ブハッ!!(鼻血)」

ちひろ「え?嘘ですよね?風さん?風さん!?」

樹「ちょ、お姉ちゃん!?しっかりして!お姉ちゃーん!!」

風「幸…せ…我が人生…悔いなし!!」

ちひろ「…さっきまでの話バカらしく思えてきたかも。」

風「え!?ちょさすがにそれはないわよね!?」

ちひろ「だって…ねぇ?」

樹「お姉ちゃんよかった…!!」

 

 

 

 

ーーー翌日ーーー

ーーー樹sideーーー

ちひろ「…うわぁ。すっごい数の観客。」

園子「パンフもらってくれた人がさらに広めてくれたんだろうね〜大活躍なんよ〜!」

風「ここまでとは考えてなかったわ…樹、大丈夫?」

樹「…うん、むしろここで失敗したらせっかく来てくれた人達をガッカリさせちゃうから。」

風「ええ子や!ほんとにええ子や!!」

ちひろ「妹バカ発揮しないでください。みなさん、警護お願いしますね?」

今日はちひろちゃんが勇者部のみんなに警護を頼んでくれてます。

理由は単純、前も言ったレジスタンスからしてみれば今回のデビューは一斉一隅の大チャンスだからです。

そのため、春信さんからそれぞれの武器を借りてるらしいです。

友奈『まっかせて!樹ちゃんのデビューは邪魔させない!』

東郷『悪い輩は殲滅します。』

夏凛『完成形勇者の名にかけて、やってみせるわ!』

銀『樹ちゃん、心配せずにやっていいからな!』

雪花『そうそう。リラックスリラックス!』

佳美『樹さんなら必ず成功します!間違いなく!』

竜治『外も今んとこは問題なしだ。』

亜耶『樹ちゃん、頑張って!!』

芽吹『未来に繋がる大きな舞台、邪魔なんてさせないわ。』

夕海子『樹さんのライブ成功とともに、弥勒家の戦果も上げてみせます!』

雀『なんで来る前提なの?来ないことが一番なんだよ?』

しずく『…ともかく、頑張って。』

(…私にはみんながいる。だから…)

樹「…いってくる!!」

風「ぶちかましてきなさい!!」

園子「やっちゃえなんよ!!」

ちひろ「頑張って!!」

 

ステージへ出る。

そして立ち位置へ。

樹「…コホン。みなさん、今日は来てくれてありがとうございます。初ライブにこんなにも人が来てくれて、嬉しい限りです。

では、歌いま━━━━━━」

ビジッビジジッ

ちひろ「…ん?」

友奈「何…今の音。」

芽吹「…総員!警戒!!」

音が、聞こえました。

不協和音が。

…そして。

ブィィィィィィィィンッ!!

(…え?)

真上に黒い穴が現れる。

さらにそこから、異形の者達が現れだしたのです。

ちひろ「なっ!?」

風「樹ッ!!」

夏凛「何よアレ!?」

銀「分からない…とりあえず一般人の避難と樹ちゃんの救出だ!!」

雀「なななな何あれー!?助けてメブゥゥゥゥゥ!!」

シズク「星屑ともちげぇ!!見たことねえぞあんなの!?」

 

ディエナ「…復讐を。」



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1話 散リ散リニナル友

ーーーイネスーーー

ーーーちひろsideーーー

待ちに待った樹ちゃんの初ライブに突如現れたバーテックスとはまた別な異形たち。

ヤツらは人々に狙いをつけ、襲い始めたのである。

(何よこいつら…それよりも!!)

ちひろ「樹ちゃん!!」ガバッ

樹「わっ!?ちひろちゃん!?」

樹ちゃんを舞台裏に引き戻す。

樹「なにあのでかいの!?」

風「わからない!!とりあえず私たちで避難するわよ!!」

樹「でも一般人の人たちは!?」

園子「わっしーたちが避難させるって言ってたよ!こっちはいっつんを無事に護衛する班!!」

ちひろ「あんまりグダってる暇はない…あいつらがなんなのか、どうしてきたのかとかはとりあえず置いといて逃げなきゃ!樹ちゃん、走れる!?」

樹「ちょっとだけ走りづらいけどやれるよ!」

風「なら私が背負うわ!行くわよ!!」

 

ーーー芽吹sideーーー

夏凛「てやぁ!!」ガキィン

異形を刀で吹き飛ばす。

夏凛「っっったい!切れるどころかこっちが痛いってどういうことよ!?」

友奈「でかいのは吹き飛ばせないし…はぁ!」

銀「これ倒すことすら無理じゃないか!?」

芽吹「そうですね…とりあえず一般人は広場から引いてる!こいつらだけとも思えないし、各自撤退しながら避難者のアシスト!」

全員「はい!!」

友奈「東郷さん!行くよ!!」

東郷「ええ!」

銀「西側は私たちに任せろ!!」

夕海子「なら私は南側を!」

シズク「お、なら俺もだ!芽吹!」

(北は風さんたちが避難に使ってるはず…となると!)

‪雀「置いてかないでメブゥゥゥゥゥ!!」

芽吹「くっついてる場合じゃないでしょう!私達は東側よ!夏凛!移動するわよ!」

夏凛「…いや、私は残るわ。」

(…はい!?)

芽吹「何を言っているの!?攻撃が入らない相手に勝ち目はないでしょ!?」

夏凛「じゃあこの大量の異形は誰が止めるのよ!誰もいなくなったらあっちこっちに行かれて、それこそ私たちじゃ救いきれない人達が出るわ!!」

芽吹「殿のつもり!?なら私も…」

夏凛「東側が雀1人なるでしょうが!!早く行きなさい!!」

(…くっ!)

芽吹「行くわよ雀!遅れないで!!」

雀「はい!全速でついていきます!!」

 

ーーー夏凛sideーーー

(行ったわね…よし!)

夏凛「讃州高校勇者部、三好夏凜!!3年の時を経て鍛錬されし剣舞、その身で味わえ!!!!」

…と、向かおうとした、まさにその時

ズガァンズガァン

どこからか銃撃が。

夏凛「ッ!敵っ!?」

夕海子「…やはり効かないようですわね。攻撃に当たらないように立ち回るしかありませんか。」

シズク「めんどくせぇなぁ。まあやってやらぁ!!」

夏凛「夕海子にシズク!?どうして!?」

夕海子「南側なら大入口があります。おそらく竜治さんが来るでしょう。」

シズク「この数一人はいくらなんでも無理あんだろ。勇者部六箇条、無理せず自分も幸せであること、だ。」

夏凛「…まあ無理はしようとしてたけど別に幸せじゃないってわけじゃないわよ…」

夕海子「ともかくですわ!必ず3人で帰りますわよ!!」

シズク「おう!!負けんじゃねえぞ!!」

夏凛「勇者部ぅぅぅぅぅ!!!」

3人「ファイトォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

ーーー芽吹sideーーー

雀「いやぁぁぁぁぁあ!!!こっち来ないでぇぇぇぇぇ!!」ドゴンッ

迫り来る異形を盾で弾く。

芽吹「はぁぁぁ!!早く逃げてください!!」

雀「弾いても弾いてもキリがないよ!!このままじゃ突破されるよメブゥゥ!!」

芽吹「今行った人達がさらに先の人も避難させるはず!もう少しだけ守って!」

雀「んな殺生な!!」ドゴンッ

芽吹「しっかし…星屑に似てない?こいつら。」

雀「つまりこれも天の神の仕業ってこと?でもたしか死んだんじゃ…ってぎゃあああ!!」ドゴンッ

芽吹「そうよ。…それに本物なら神器であるこれで傷をつけれるはず。そう考えると…まさか!?」

雀「どうしたの?まさか心当たりg…待ってヤバいよメブ!!」

芽吹「っ!どうしたの!?」

雀「でっかいやつが突っ込んでくる!!」

(発光…まさか自爆型!?)

芽吹「雀、危ないッ!!」ドンッ

雀「死んじゃうぅぅぅぅぅ…ってえ…」

ドガァァァァァァァァァァァァン

 

ーーー雀sideーーー

雀「…メ、メブ?」

メブに突き飛ばされ、九死に一生を得る。

…でも、天井が崩れて、道がふさがっていた。

雀「…へ、返事してよメブ…ねえメブ…メブゥゥゥゥゥ!!」

芽吹「雀!!」

雀「メブ!?よかった!無事なんだね!」

芽吹「ええ!そちらには天井が落ちて行けないけど、一旦3階上がって向かうから先に行って避難させてて!」

雀「うん!!任せて!!」

(メブなら大丈夫…だから私は…!)

雀「怖くても頑張るよおぉぉぉぉ!」

 

ーーー芽吹sideーーー

雀「怖くても頑張るよおぉぉぉぉ!」

(行ったわね…)

…目の前に群がる異形たちを見据える。

(前方は傷一つつかない化け物、左右は壁、後ろは瓦礫の山、か…)

芽吹「上等よ。かかって来なさい!!」

 

ーーー竜治sideーーー

竜治「亜耶!連絡は!?」

亜耶「ダメです…まだ誰とも…!」

佳美「あの黒い穴から化け物が出てるみたいです…みなさんは避難させることに徹底してるかと。」

雪花「自身が逃げれるか、考えてるといいけど…」

突然としてイネスの中心部に現れたどデカい黒い穴。

今んとこ外には異常はないが、中は化け物が大量に出てるらしい。

(無事でいてくれりゃいいんだが…!!)

亜耶「…なんでしょうか、あれ…」

…外からも見える部分から何かが飛び出してくる。

一般人A「うわぁ!外にも化け物が来るぞ!!」

一般人B「あれです!避難中に見た化け物!」

佳美「らしいです!」

雪花「あの黒い穴叩かないとヤバいんじゃない?これ。」

亜耶「待ってください…あれって…」

白くて、丸っこく、目ん玉1つの異形。

(…ありゃどう見ても…)

竜治「星屑じゃねえかよ…!?しかも口じゃなくて目ん玉だぁ!?」

雪花「あ、そこは違うのね。」

亜耶「なんで星屑が…!?天の神の消滅で消えたはずじゃ…!」

佳美「…進化か、模倣か、だと思います!」

竜治「偶然適応したのが増殖したか、誰かが真似たってことだな…雪花先輩、1回だけ投槍お願いできます?」

雪花「お、OKー!せいやっ!」シュバッガキッ

竜治「ダメ…となると模倣か!」

雪花「あーなる。前者ならほぼ間違いなく私の刺さるもんね。…これ対策しようなくない?」

竜治「いや、あります。…俺が手を変形させれば!」

亜耶「…竜治君!?ダメですよそんな!」

竜治「相手は人外だ!なら人外で対抗するしかないだろ!?手を槍n」

???「早まるな。未来に関わる。」ゴンッ

竜治「った!?」

誰かにチョップを食らう。

亜耶「…春信さん!!」

竜治「なっ、春信さん!?」

春信「いいか?変形させたらお前が人じゃないのがバレる。そしたらそのお前をずっと抱え込んできた勇者部はどうなる。あいつらがお前の炎上を見て黙ってるはずもない。お前が変形する=勇者部の信用損失と考えろ。」

竜治「…はい。」

雪花「おお、ありがたい。でもこいつらバカみたいに硬くて…」

春信「それに関しては心配ねえ。竜治をシバく前に一体だけ交戦したからな。…あいつらは人の中にありつつも見えない。神力とかに近い何かでできてやがる。だからそれを使わねえことにはダメージが入らねえんだよ。」

佳美「それやばくないですか…?」

春信「…そして、その交戦の時になんとなく感覚は掴んだ。」

春信さんの刀が白く覆われていく。

(…まさか1回の交戦だけでその普通使われないやつを引き出したとかじゃねえよな!?)

春信「そぉら!!」ズバァァァァァァァァァン

春信さんが放った一撃は…来る異形共を一刀両断していた。

亜耶「…相変わらずのチートですね…」

雪花「…反則でしょこれ。」

竜治「マジっすか…それよりも!中で勇者部がこいつらと!」

春信「はぁ!?道理で少すぎると思ったが!…となると、オラァ!!」

一撃で地面に大きなヒビを入れる。

(…はい?)

そして巨大なコンクリート片を持ち上げ、白く覆い…

春信「っっっっっっっらぁ!!」ブォンッ!!

黒い穴へと思いっきし投げたのである。

コンクリート片は吸い込まれ…異形が出てくることは無かった。

雪花「…反則でしょ(2度目)」

亜耶「その…うん。すごいとしか…」

竜治「俺よりもよっぽど人間やめてんだろ…」

春信「まぁな。お前らは避難誘導に集中しろ!俺は中に突っ込む!!」

竜治「…無茶だけはやめてくださいよ!?相手は未知の存在です!」

春信「ああ!!」

 

 

 

 

 

ーーー東郷sideーーー

友奈「みなさーん!冷静に、かつ急いで避難してくださーい!!」

東郷「出口はこちらです!焦らず急いでー!」

銀「勇者はぁぁぁ!根性ッッッ!!」ドガァァァン

東郷「銀、大丈夫!?」

銀「大丈夫だ須美!銀さんまだまだやれるぜ!」

友奈「でもキリがないよね…どれだけいるんだろう。」

東郷「それは気になるけど…今は逃げなくちゃ。ここの人も逃げれたみたいだし、次行きましょう!」

銀「おう!どりゃあ!!」ドガァァァン

友奈「うん!あ、銀ちゃん避けて!勇者…パァァァァンチ!!」ドゴォォォン

東郷「銀に手を出さないで!!」バキュンバキュン

銀「うおっと!?二人ともありがとな!」

友奈「いえいえ!…あ、二人とも見て!階段が見えるよ!」

東郷「ほんとね友奈ちゃん!たしかイネスの地図は…」

銀「3階のはじっこだろ?だから…降り着れば入口ホールに繋がる道に出れるぞ!」

友奈「ほんと!じゃあ急ごう!」

東郷「ええ!!」

(あと少し…なんとかなりそうね…!)

ビキッ

銀「ッ!二人とも!!」ドンッ

(え!?)

銀に突き飛ばされる。

友奈「きゃっ!」バタッ

東郷「銀何するの!?」

転倒し、顔を上げる。

しかし…

東郷「…銀?どこ!?」

そこに銀はいなかった。

あるのは穴のある床だけ。

友奈「まさか…落ちちゃったんじゃ!?」

東郷「なっ!?銀!!」

穴をのぞき込む。

そこには、異形に囲まれる銀の姿があった。

銀「私は大丈夫!上手く着地できたしな!」

東郷「待ってて!すぐそこに…」

銀「来るな!!」

東郷「なんでよ!!」

銀「まだ避難は終わってないだろ!?ここでお前まで来たら、友奈1人じゃ守りきれないかもしれない!避難終わらせてから助けに来てくれ!!」

東郷「そうだけど…でも!!」

友奈「東郷さん!わかるよ、私もすぐに助けに行きたいもん。でも、ここで行ったらあの化け物達にほかの人も襲われちゃうかもしれない…だから急いで避難終わらせて、急いで助けに行こう!銀ちゃんが耐えきってるうちに!!」

東郷「友奈ちゃん…銀!すぐに来るからね!それまで辛抱して!!」

銀「ああ!

…またね!!」

東郷「…ええ!!」

 

ーーー銀sideーーー

(行ってくれたな…友奈と須美ってほんとお互いにお互いを支えあってる、いいタッグだ。)

銀「っ…」ズキズキ

着地時に痛めた左足を見る。

(…こいつらを逃がせば、確実に友奈と須美のところに行く…)

銀「それだけはさせない…させてたまるか!

化け物ども!こっから先は、通さない!!」

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「どれだけいるんですかねこれぇぇぇ!!」

風「私の方が聞きたいわよ!!」

園子「いろんなのいるんよ〜でっかいのに虫みたいなのにうさぎみたいなの〜!あ、魚みたいな爆発するのもいたね〜!」

樹「特にウサギやばかったですよね…通路崩落させてましたし。」

園子「この世には不思議なのもいるもんだね〜…もうちょいで避難通路だから頑張って!!」

ちひろ「…もしかしてあれ!?」

園子「あれだねー!!閉めるから滑り込めー!!」

ちひろ「はいっっっ!!」ザザッ

風「ちひろ!樹投げるからね!!」

樹「え!?お姉ちゃん!?」

風「そぉぉぉぉぉい!!」ブォンッ!!

ちひろ「キャッチィ!!」ガシッ

園子「フーミン先輩急いでー!!」

樹「お姉ちゃん!!」

ちひろ「風さん!!」

風「女子力ゥゥゥ!!スライダァァァァァァァ!!!」ザザッ

ちひろ「ダサいです。」

風「ひどくない!?」

園子「こっから、入るなぁぁぁぁぁ!」ガチャン

樹「…平気っぽい、ですか?」

園子「ウサギさんに突破されたらヤバいね〜」

風「ちょ、園子!不吉なこと言わないで!」

ちひろ「合金って聞いたことありますし大丈夫ですよ…多分。」

風「多分!?」

ゴンゴンッ!!

樹「…叩いてるね。」

ゴンゴンゴンッ!!

園子「…」ゴクリ

ドゴォォォン

風「大丈夫?」

ちひろ「フラグ建てるのやめてもらえます?」

 

 

園子「フラグは、折るものだ!!」

風「…焦ったぁぁぁぁ!!」

樹「何度も心臓止まると思ったよ…」

ちひろ「さすがの私もダメかと思いましたね…とりあえず一息つくのは脱出してからにしましょう。」

樹「そうだね…どこから来るかわからないし、扉も凹んではいるから破られるかもしれないし…」

風「そうと決まれば善は急げね…行くわよ!!」

園子「レッツゴーハリアップ!!」

 

ちひろ「…ところでこれってどれくらいあるの?」

園子「結構あるんよ〜なにせ縦長だからね〜」

風「この通路を抜けた場合ってどこに出るの?」

園子「んーと、もう1つ中間扉があって、そのあとは倉庫に出るんよ〜

倉庫からは外に直結してるね!」

樹「じゃあもうすぐなんですね…あ、見えましたよ!中間扉!」

ちひろ「ほんとだね!!」

風「…樹ッ!!」ドンッ

園子「ちっひー!!」ドンッ

園子、樹「…え!?」ドサッ

次の瞬間、扉が閉まる。

…そして、向こうから凄まじい破壊音が聞こえた。

樹「…お姉ちゃんっ!!」



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2話 救イノ手

ーーー春信sideーーー

(…ここを突っ切れば!!)

イネスに突撃してから20分、俺は元凶の黒い穴があったという樹ちゃんのライブステージに向かっていた。

途中、さまざまな敵にあったが、全て退けた。

ウサギっぽいやつには最初かなり苦戦したが。

春信「オラァ!!」

扉をぶち破る。

そこには…倒れている夏凛の姿が。

春信「…夏凛ッ!!」

軽く周りのヤツらを殲滅して、駆け寄ろうとする。

…ドガァァァァァァァァァァァァン

(っ砲撃!!)

シュバッ

間一髪のところでかわす。

??1「おお!「雷の羽」(ケリードーン)攻撃を初見でかわすとは!!」

春信「…誰だお前。」

ランバネイン「アフトクラトル、ランバネイン。

貴様とは楽しめそうだ!!」

春信「あいにく、こっちは楽しんでなんかいられる場合じゃねえんだよ。」

(…右から射撃系攻撃。)

ガガガガガガ

??2「…かわされたか。…だが。」

刀が引っ張られる。

(…この感じ…なら!)

バギッブォンッ!!

パイプ椅子から鉄パイプを何個も取り出し、をぶん投げる。

それは地面に残る敵の攻撃の残骸に引き寄せられ…やがてくっつく。

春信「…やっぱ磁力か。」

??2「もう見抜くのか…こいつ、俺が出会った中でも上位に入るぞ…」

??3「それはそうでしょう。彼の刀を見なさい。…トリオン体でないのにも関わらず、トリオンを扱うことに成功している。」

春信「…へえ。トリオンって言うのか。…名前は?」

ランバネイン「さっきも言ったが…アフトクラトル、ランバネイン。」

ヒュース「アフトクラトル、ヒュース。」

ヴィザ「アフトクラトルのヴィザです。」

春信「…讃州高校OB、三好春信。かかって来やがれ。」

 

ーーー樹sideーーー

樹「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」

ちひろ「樹ちゃん落ち着いて!園姉!?風さん!?何があったの!?」

園子「ウサギさんが横の壁ぶち破ってきただけなんよ〜」

風「あんたらは先行ってなさい!チャチャッと懐かせて向かうから!!」

(ウサギって…あのヤバいやつじゃん…!)

樹「行けるわけないよ!!ちひろちゃん!」

ちひろ「うん!今そっちに…」

風「樹!!!私を誰だと思ってるの?樹の晴れ姿見ずに死ぬ私じゃないわ。」

園子「ちっひー!!…必ず戻るから。」

樹「でも…でもっ!!」

ちひろ「っ…」

風「ちひろ!!…私が戻るまで、樹のこと、任せたからね。」

樹「お姉ちゃん!!!」

ちひろ「…っ樹ちゃん!」ガシッ

ちひろちゃんに手を引っ張られる。

樹「ちひろちゃん!お姉ちゃんや園子さん助けないと!!」

ちひろ「相手は壁すら破るヤツなんだよ!?ただでさえ狭い通路で人数増やしてもかえって戦いづらくなるだけだよ…!!」

樹「それでも!!助けなきゃダメだよ!!なんでそんな風に割り切れるn…」

(…涙…)

私に決して顔を見せないちひろちゃん、その頬からは…涙が、こぼれ落ちていた。

ちひろ「…信じてる…から…信じる…しか…ないから…」

(…ちひろちゃんだって…つらいんだ…でも…それしかできないから…)

樹「…うん、進もう。お姉ちゃん達のこと、外の人に伝えないと!」

 

ーーー園子sideーーー

園子「フーミン先輩さすがです〜!」

風「それほどでもね…しっかしどうする?…ウサギバーガーにされてるけど。」

閉めたはずの扉の方からもウサギ型が歩いてくる。

園子「美味しそうですね〜…突破するしかなくないですか?」

風「そうね。二人とも、泣き虫なんだから…私たちがついてあげないと!!」

園子「私は実のではないですけど〜姉として、言ったことは守らないとですね〜!!」

風「お、それさえわかってれば十分よ!」

園子「やったー!じゃあ決めゼリフ、お願いします!!」

風「まっかせなさい!!…大人しく讃州マンションのお姉ちゃんの女子力に焼かれなさい!!」

園子「焼きうさぎにして美味しくいただいてやるんだぜ〜!!」

 

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

東郷「銀!待っててね…すぐ行くから!!」

友奈「東郷さん!こっち!!」

西側全ての避難を終えた私たちは、独り戦ってくれてる銀ちゃんを助けるために急いでいました。

(銀ちゃん…待っててね、今行くよ!)

東郷「ここを曲がって階段を…え?」

友奈「どうしたの東郷さん…嘘…」

角を曲がり、階段を登ろうとしたその時でした。

…階段に虫みたいな異形がたくさんいたのです。

ガキキキキキ

もちろんそいつらは私たちを追いかけてくる。

友奈「…東郷さん!こっち!少し戻ったところにも階段があったはず!」

東郷「…そうね!」

来た道を戻り出す。

でも…

ズガァァァァン

上から大型が。

友奈「大…型…」

東郷「…逃げ道が…塞がれた…?」

友奈「…勇者部六箇条、なるべく諦めない…だから…」

東郷「…ええ。私たちは…」

友奈「最後まで抗う!!」

 

ーーー雀sideーーー

雀「こ、こっちです!早くぅぅぅぅ!!」

メブと別れ、1人で避難誘導していた私。

メブが引き付けてくれてるのかわからないけど、異形はかなり減っていた。

(さすがメブ…!もうちょいで出口も見える!生還だぁぁぁぁぁ!)

と、その時

ガッシャァァァァァァァン

雀「へ?」

落ちてきた虫型達と目が合う。

雀「目と目が逢う〜瞬間〜…」

ズガァァァァン

雀「じゃないよねぇぇぇぇぇぇぇ!!なんでここまで来て出ちゃうかなぁ!?」

全速力で逃げ出す。

雀「見えた!出口!!」

そうして出口を捉える。

雀「脱sy…え?」

…親子が、見えた。

子供「かあさぁぁぁぁん!!」

母「私のことはいいから…早く逃げて…!」

お母さんの方は瓦礫に足を挟まれていた。

子供「うああああん!!」

母「…そこの方!この子を…頼みます!!」

(…子供だけならギリ追いつかれる前に出れるよね…

…でも。)

…私は、親子の前に立って、盾を構えていた。

(…何してんだろ、私。)

雀「…目の前の人を見捨てて…逃げる訳にはいかないよ…!!…来い!化け物!!私が相手だぁ!!」

たとえ、ここで朽ちるとしても。

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「見えた!出口の扉だよ!!」

樹「ほんとだ!!」

ついに、出口が見えた。

ここを抜ければ外に直結している倉庫。

脱出は目前だった。

(園姉…風さん…来たよ、私たち。ちゃんと、逃げ切れるよ。2人のおかげだよ…すぐ、助け呼ぶから。)

ちひろ「…開けるよ?」

樹「…うん。」

ガチャリ

扉を開ける。

…絶望が広がっていた。

ちひろ「…え?」

倉庫中に群がる大型、虫型、そしてそれを統括するウサギ型

樹「…なん…で…」

(…甘かった…こいつらも…知能持ちだったんだ…)

樹「…ちひろちゃん。」

ちひろ「…樹ちゃん。」

ちひろ、樹「最後まで、一緒にいてくれる?

…うん。」

(…無理だと分かってても…私は…樹ちゃんを守る…約束したもの…)

ちひろ「…来い。」

ガキキキキキ

ドシンドシン

シュバッ

化け物が一斉に襲いかか…

…ることはなかった。

??4「アステロイド!」

??5「射(ボルト)二重(ダブル)!!」

襲いかかろうとした化け物に何個もの射撃が。

それは化け物の目玉に命中、崩壊させていく。

回避したウサギ型も…

ドガァァァァァァァァァァァァン

砲撃によって大部分を抉られ。

??5「強(ブースト)四重(クアドラ)!!」

トドメを刺された。

??4「大丈夫ですか?」

樹「は、はい…」

 

ーーー雀sideーーー

??6「バイパー。」

雀「へ?」

出口の方から謎のレーザー。

虫型を殲滅していく。

??7「ほい、大丈夫かー?」

そしていつの間にか後ろにいたもう1人の人が瓦礫を切っている。

子供「お母さん!!」

母「ありがとうございます…!」

??7「なぁに、礼に及ぶことはないさ。」

 

ーーー友奈sideーーー

ガガガガガガ

友奈「…嘘…」

目の前の出来事が信じられなかった。

あんだけやっても倒せなかった化け物たちが、突然現れた人達に殲滅されていくんだから。

東郷「…あなた、たちは…」

 

修「玉狛第二、三雲修です。ここからは、僕達に任せてください!」

 

太刀川「俺は太刀川慶。化け物たちは俺と出水に任せな。」

 

レイジ「木崎レイジだ。玉狛第一、現着した!」



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3話 希望ト絶望

ーーーちひろsideーーー

突如として現われ、攻撃が効かない化け物を殲滅した3人。

修「で、こっちの黒いのを纏っているのが空閑遊真。」

遊真「よっ、よろしくな!」

修「で、こっちが雨取千佳。」

千佳「よろしくです。」ペコリ

(…それよりも!!)

ちひろ「この通路の奥にも2人いるんです!」

樹「私のお姉ちゃんと、先輩が!」

修「なっ…遊真!」

遊真「ああ!強(ブースト)三重(トリプル)!せーの!!」ドゴォォォォォォン

修「千佳はここでその人たちを避難させておいてくれ!遊真!行くぞ!」

遊真「おう!」

樹「…とりあえず、私たち助かったの…?」

ちひろ「…多分、ね…」

千佳「あ、はい!他にも仲間が来てるので…」

(…色々聞きたいことはあるけど…とりあえず避難かな…)

ちひろ「…園姉、風さん、無事でいて…」

 

ーーー雀sideーーー

(…私の直感が告げてるよ。この人たち、間違いなく強い!!!)

太刀川「とりあえず避難してもらえるとありがたい。出口にうちの隊のヤツをもう1人置いといてある。」

出水「頼りになるかは別だけどな〜とりあえず迅の言った通り、暴れればいいんですよね?」

太刀川「そりゃそうだろ、敵を引きつけろって言ってきたんだから。さあ、やるぞ!」

出水「うっす!!」

 

ーーー東郷sideーーー

(玉狛…第一…?)

東郷「そんな町名…どこにもなかったはずだけど…」

レイジ「まあわからなくて当然だ。後に説明する。とりあえず鳥丸、避難は任すぞ!」

鳥丸「任せてください。こっちです。」

友奈「あ、ありがとうございます…」

(…そうだ!)

東郷「2階で友達が1人で戦ってるはずなんです!!お願いします!」

レイジ「…!わかった、任せろ。行くぞ小南!!」

小南「オッケー!」ズババババババ

 

ーーー竜治sideーーー

竜治「…ボーダー、ですか?」

???「そうだ。あなた方も見たかもしれないがあの化け物を倒す組織といえばわかるか?」

雪花「なるほどねぇ…となると本来なら使われることの無い何かを使えるってこと?風間…であってますよねる」

風間「そうだ。これを俺たちはトリオンと呼んでいる。しかし迅の予知だと外も出てきてたはずなんだがな…」

亜耶「それは…ちょっとすごすぎる人がトリオンを扱ってコンクリート片をあの穴にブォン、と…」

風間「…は?トリガーなしでトリオンを扱うなんて前代未聞だぞ?」

佳美「その前代未聞をやり遂げちゃうのがあの人なんですよ…」

風間「…となると迅が言ってた分岐点はその人か…?」

竜治「迅…?」

風間「迅悠一、俺たちがここに来たのもあいつが予知をしたからだ。…ちょうどいい、連絡するか。迅、そっちはどうだ?」

 

ーーー中央大広場、入口ーーー

ーーー迅sideーーー

迅「お、風間さーん。首尾はどうだ?」

風間『どうも何も…お前が最優先にしてたと思われるヤツが既に手を打っていた。』

迅「マジで?そりゃすごい。」

風間『玉狛第一や太刀川隊もお前の言った通り暴れてる。それで、間に合ったのか?』

迅「んー…少し間に合わなかったね。最短ルート通ったんだけど。」

中に目を向ける。

そこには凄まじい戦闘の跡だけが残されていた。

 

 

 

 

===時は少し遡り、春信side===

ランバネイン「これならどうだ!?」ドガガガガガガガガァァァァァァァァァン

春信「うおっ!?」シュバッ

(一撃一撃に凄まじいエネルギーが込められてやがる…それを連射とか控えめにキツイぞ!?)

ヒュース「…よそ見は厳禁だ。蝶の盾(ランビリス)!!」キキキキキキキ

春信「跳ね返っ…ふんっ!」シュバッ

ヒュースの鱗粉によって作られた盾で、ランバネインの弾が反射する。

ドガガガガガガガガァァァァァァァァァン

(…まるでかに座といて座じゃねえか…だが!)

春信「…そう考えると、少し対処法も思いつく。」

ランバネイン「強力なのを撃ってもかわされるか…なら数でごり押すのがよさそうだ!先程も焦っていたしなぁ!!ヒュース、付き合え!!」

ヒュース「…わかった。任せろ。」

ランバネイン「よし、行くぞ春信!!」ドガガガガガガガガァァァァァァァァァン

ランバネインの背中から射出されたそれは、まるで雨のように天井から降り注ぐ。

(…連射じゃなくて拡散型か!!)

シュバッ

ヒュース「ランビリス!!」

キキキキキキキ

それをヒュースが反射させ、俺へと狙い撃つ。

春信「フンッ!!」ザザーッダダダッ

その追撃をかわしつつ、徐々にランバネインとの距離を詰める。

…そして、刀の射程範囲内へ。

しかし。

ランバネイン「そう来ると思っていたわ!!俺の最大火力、その身で味わうがよい!!」ギュイイイイイイン

ヒュース「後ろからの弾も忘れずにな。」

(…全て、想定の範囲内。)

春信「そうかそうか…オラ!」ブォンッ

ボフンッ!!

 

===ヒュースside===

(これは…)

ヒュース「…煙幕か…」

ランバネイン「だが関係ない!吹き飛ぶがy」ギュイイイイギギギギギ

ランバネイン「…!?」

春信「…トリオンを纏わせたクナイを発射口に刺しておいた。…その膨大なエネルギーはどこに行くんだろうな?」

ランバネイン「しまっ…」ボガァァァァァァァン

ヒュース「ランバネイン!」

(こいつ…身体能力や戦闘センスだけじゃない…頭も飛び抜けてキレる!)

春信「お前もだ。」ブォンッ

ヒュース「チッ…だが鉄ならば!」

磁力でクナイが引き寄せられる。

春信「…これはあくまで俺の推察だが。

…トリオンで射撃もできるなら、爆発もできるんじゃないか?」

ヒュース「…それがどうした。」

春信「…物は試しって言うだろ?…クナイの先に、塊付けといたぜ。」

(なっ!?)

引き寄せられたクナイは鱗粉に当たる。

そして、その際にトリオンの塊は鱗粉とクナイの挟み撃ちになり、圧迫され…

大爆発を引き起こした。

ヒュース「くっ!?」

咄嗟に盾を形成、ガードする。

が…

春信「…隙ができたな。」ダンダンダンッ!!

春信の射撃が三ヶ所に命中する。

(こいつ…この短期間でトリオンを纏わせるどころか撃ち出す方法まで身につけるか…!?)

===春信side===

(ざっとこんなもんか…?)

煙が晴れる。

春信「…そう上手くは行かねえな。」

ランバネイン「まさかあんな方法で左腕を持ってかれるとは…素晴らしい!!」

ヒュース「…もう少し気を引き締めた方がよさそうだな。」

春信「…何回来ようが同じことだ。倒し切ってやんよ…」

ヴィザ「そこまでにしましょう。」

ヒュース「…ッ!ヴィザ翁!」

(…最後の一人か。)

ヴィザ「私たちの目的はこの方の確保。さらには時間との戦いでもあります。これ以上は得策ではありません。春信、と言いましたかな?

…この方に手を出されたくないなら、大人しくしてもらえるとありがたいですよ。」

…その手には、夏凛がいた。

(…は?)

 

夏凛『━━だから、それまでお兄ちゃんが私を守ってね!』

春信『━━━━━ああ、お前の兄ちゃんだからな。』

 

何かが、切れた。

 

===ヒュースside===

(…気配が…変わった!?)

ヴィザ翁が彼の妹を人質に取った瞬間から、明らかに気配が変わった。

…怯むどころか、殺気を溢れさせて。

そして、次の瞬間。

ズシィッガァン!!

…目で追えないほどの速さで動いた。

ランバネイン「…来るか!」ドガァァァァァァァァァァァァン

ランバネインの一撃が春信に直撃する。

…が。

ズバァンッッッッ!!!!

ランバネイン「…無傷…とは…想定外…」ボガァァァァァァァン

ヒュース「ランバネイン!!」

(あいつの一撃はボーダーのシールドも砕くんだぞ…それを遥かに上回ると!?)

一時ボーダーにいたからこそ、信じられなかった。

そしてそのまま春信は俺の方へ。

(考えてる暇はない!!ガードを!!)

鱗粉をかき集め、巨大な盾を形成する。

…それも、無意味だった。

春信「…」ッッッッブォンッ!!

バキバキバキィィッッッッ!!

ヒュース「が…はっ…!?」

一刀両断。

盾ごと、トリオン体を引き裂かれる。

(強…すぎる…!!これが…ヤツの本気…!?)

ヒュース「ヴィザ翁!!」

無論ヤツはヴィザ翁の方へ。

ヴィザ「…確保とか考えてる暇ではないですね。私の全霊、受けてみなされ。…星の杖(オルガノン)!!」

カッ…ズガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァァン

アフトクラトルの国宝…オルガノン。

凄まじいスピードと威力を持って放たれる円に沿った刃は、巨大な建物をみじん切りするほどに強力。

ヴィザ「…敵ながら天晴れなり。」

…それを、ヤツは、三好春信はかわしていた。

それも初見で。

(あれを…完全な初見でかわすだと…!?)

ズバァンッッッッ!!!!

そしてヴィザ翁を一刀両断。

春信「…死ね。」

そしてトリオン体が解除されたところにトドメを━━━

ディエナ「この時を、待っていた。」

パァン

…ただ、手を叩いただけである。

…それだけで、アフトクラトルの国宝すら撃破した三好春信は、倒れた。

ヒュース「…何が、起こった…!?」

ディエナ「こいつがかつてやっていたことだ。脳の波長が最も乱れている時に、強い衝撃を与えることで一時的に麻痺させることができる。

…たしかにお前は最強だ。神の力がなければダメージを与えれないはずのバーテックスを撃破し、たった1回の交戦でトリオンの扱い方を身につけ、神の国とすら言われるアフトクラトルの精鋭3人を相手に撃破に追い詰めた。

…ただ、この世に弱点がない生物はいない。

三好春信、お前の弱点はただ一つ…

…三好夏凜だ。」

 

ランバネイン「とりあえずこれで目標達成か?凄まじい強さだった。」

ヴィザ「ケリードーンを超える防御力、ランビリスを超える攻撃力、オルガノンを超える反射神経や動体視力…いやはや、これがボーダーについてたらと思うと…ゾッとしますね。」

ディエナ「そういうこと。だからなんとしても確保しておきたかった。…ミラ殿、首尾は?」

ミラ「…あら、バレてたのね。あなたが言ってた勇者部とやらはほとんど回収できたわ。…ただ、8名ほどボーダーとその春信の妨害で逃したわ。」

そういうミラの右足はなくなっていた。

ランバネイン「…右足はどうしたんだ?」

ミラ「トリオンで包まれたでかい岩のようなものが投げ込まれてきてね…咄嗟に回避したけど少しくらったのよ。」

ディエナ「なるほど…牽制のつもりか。どこまでもやりおるやつだ。…まあいいでしょう。そうなれば直にボーダーが到達する。撤収しましょう。八割は予定通りになった。」

4人「はい(ああ)。」

 

ーーー今ーーー

ーーー竜治sideーーー

ブゥゥゥゥゥゥゥン

(黒い穴が…消えてく…)

風間「…迅、門(ゲート)が消えてくぞ。…どれくらいだ?」

迅『んー…悪い7割いい3割くらいっすねー。半数以上を助けれたのは大きいくらいかな?』

雪花「あ、ちひろちゃんと樹ちゃん。」

亜耶「雀さんも!大丈夫でしたか!?」

ちひろ「危ういとこだったけどなんとか…」

樹「…でも、お姉ちゃんと園子さんが…」

(…マジかよ…)

雀「…メブだし、大丈夫だよね?帰ってくるよね…?」

亜耶「…みなさん…」

雪花「…あ、友奈と東郷。大丈夫だった?」

友奈「うん!すっごい人たちが助けてくれたの!」

雀「…あれ?銀は?」

東郷「…銀は…私たちを庇って…」

雀「…なんかごめんね…」

ちひろ「…園姉…」

 

7月13日、突如として異形が大量出現。

一般人軽傷者、28名。

…三好夏凜、犬吠埼風、乃木園子、三ノ輪銀、楠芽吹、弥勒夕海子、山伏しずく、三好春信の計8名、行方不明。

 

帰ってこない友を思い、残された勇者部はただ、ひたすらに泣いた。




ストックが切れたので更新まで少し空きます
すいませんm(_ _)m


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4話 旅立チノ時

ーーー夜、犬吠埼家ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…樹ちゃん、ご飯できたよ。」

樹「…うん。ありがとう、ちひろちゃん。」

ちひろ「…寂しいね、やっぱ。」

樹「うん…

…どうする?迅さんの話。」

ちひろ「…そうだね…どうしよっか。」

 

===夕方===

迅「…3日待つ。」

失意の中、ひたすら泣いた私たちに彼はそう言った。

迅「俺たちは君たちの奪われた仲間たちを取り返すつもりだ。…でも無理に巻き込むつもりはない。…だから3日だけ待つ。…もし、戦いに身を投じる覚悟があるなら、三日後のこの時間にあの高台に来てくれ。」

 

ーーー今ーーー

(…どうするのが、正解なの…?)

3年前の私たちなら迷うことなく行ったのだろう。

…でも、状況が変わったのだ。

行ってホントに倒せるかも分からない未知の敵。

勇者だった私たちは世間から希望の星のように見られてる。

ただでさえ半数が行方不明な上に、私たちがさらに消えれば世間がどれだけ混沌になることか。

反大赦の明確な抑止力も消えてしまうことになる。

そして、一般の勇者部のみんなも、置いてくことになる。

…背負うものが、私たちの意志を鈍らせていた。

プルルルル

電話が鳴る。

ちひろ「はい、もしもし?」

月夜『あ、ちひろ?』

(…え!?)

ちひろ「母さん…!?なんで…」

月夜『なんでだろうね〜…明日、うちに来れる?樹ちゃんも連れて。』

ちひろ「え?いいと思うけど…母さんが明日上里家に来て欲しいって行ってるんだけどいいよね?樹ちゃん。」

樹「え?うん。宛もないし…」

月夜『お、よかったよかった。じゃあまた明日ね〜。』

ちひろ「はーい。」ガチャ

樹「急にどうしたのかな…」

ちひろ「さあ…」

 

ーーー上里邸ーーー

月夜「行きなさい!!!!」

ちひろ「…え?」

扉開けてすぐのまさに開口一番、母はそう言ったのであった。

 

 

 

 

(ん?え??行くって…どこに?)

樹「えっと…一体どういう…」

月夜「どうもこうも決まってるじゃない。k…」

和斗「月夜…」

月夜「ん?どうかしました?あなた。」

和斗「…リビングで話はするってはずだったが。」

月夜「 ・ ・ ・ あっ。」

ちひろ「…全く…上がるよ?」

和斗「ああ。月夜、お茶入れてやれ。」

月夜「二人ともごめんなさいね!?すぐ入れてくるかr」ズルッゴンッ!!

樹「月夜さん!?大丈夫ですか!?」

ちひろ「ちょ、母さん!?大丈夫!?」

月夜「へーきへーき…イタタタ…」

和斗「はぁ…いい感じに空気が和んだから結果オーライかもしれないが…」

ついでにこのあと間違えてコーヒー入れてきたり砂糖と間違って塩入れられたりもした。

 

ーーーリビングーーー

月夜「コホン…では改めて…行きなさい。」

ちひろ「行くって…どこに?」

月夜「昨日助けに来た…ボーダーだったっけ?…何か交渉されてるんじゃないの?」

(…!?!?)

樹「月夜さん、なんでそれを…」

月夜「だてに神樹館でずっと海を差し置いて1位取り続けちゃあいないわ。こんくらいの予想はおちゃのこさいs「実際のところ、そのボーダーの人たちが俺らにも事情説明に来たからだがな。」ちょ、和斗!人の見せ場!」

和斗「お前だったら間違いなく真実伝えずに自らの手柄にするのはわかってたからな。」

月夜「ぐぬぬ…」

ちひろ「…ボーダーの人が??」

月夜「そう、まあ事情もなんも説明せずにだったらそれこそ誘拐になっちゃうしね。」

樹「…ごめんなさい、無理です…勇者部のみんなを置いてくことになっちゃうので…」

ちひろ「…それに私達は世界を救った存在的なイメージが世間では強いのは父さんも母さんもわかってるよね?反大赦勢力の抑止力になってるのも…」

和斗「…じゃあ見捨てると?」

ちひろ「違う!!私だって行きたいよ!!助けたいよ!!でもそれで他を犠牲にしたら、それこそみんな自分を恨むことになる!!だから…だから!!」

月夜「ちひろ!!!!」

ちひろ「っ…」

月夜「それに樹ちゃんも…よく聞いて。人は、助け合わなきゃ生きていけないの。」

ちひろ「急に…何を…」

月夜「生まれた時からずっと、人は1人じゃ何も出来やしない。だから、助け合う必要がある。」

樹「…」

月夜「そしてその助け合いを、人一倍することができるのが勇者だと、私は思ってる。

…助け合いってのはね、決して仲間うちだけでのもんじゃないのよ。今2人は奪われた仲間を助けに行きたい、でも残していくものが多すぎる。ならどうすればいいか?答えはひとつよ。

…助けてもらうのよ。仲間に、友達に、親に!!世間への事情説明は大赦でなんとかする。防犯対策に関しては元防人のみんなや讃州高校勇者部が和斗に指導を求めてる。…みんな、あなた達の力になりたいのよ。自分たちが今までたくさん助けられてきたから。

…いつまでも頼りっぱなしはこっちも嫌なのよ!頼らせて!力にならせて!!お願いだから…!!」

(母…さん…)

樹「…ひとつ、いいですか。…1回月夜さんの話に出てきた海ってもしかして…あ、多分違うと思うんですけど…」

和斗「…犬吠埼海。」

樹「…!?」

和斗「あってるよ。海と焔…犬吠埼焔は、俺達の親友だったから。」

ちひろ「父さんと母さんが樹ちゃんの両親と!?」

和斗「ああ。…俺たちが戦ったから、焔と海が命を尽くして奇跡を起こしたから、そしてお前達が仲間を想い、世界の理に、神に抗ったから今がある。…だから、我慢しなくていいんだ。お前達の帰る場所は俺達が守る。気にしないで行ってこい。」

ちひろ「…樹ちゃん。」

樹「…ねえちひろちゃん。私、やりたいことができたよ。」

ちひろ「…どんなこと?」

樹「お姉ちゃんとちひろちゃんと3人で、お母さんたちの話を聞くこと。」

ちひろ「…いいかもそれ。さすが樹ちゃん。

…だからこそ、取り返さないとね。」

樹「…うん。月夜さん、和斗さん、ありがとうございます。…四国は、任せてもいいですか。」

和斗「…ああ。」

月夜「もちのろん!友達、取り返して来なさいよ?」

ちひろ「当たり前、私たちを誰だと思ってるの?…讃州高校勇者部だもん!!」

和斗「…あ、そうそうちひろ、一つだけ頼みたいことが━━」

 

 

 

 

 

ーーー2日後、高台ーーー

(…とは息巻いたけど…)

ちひろ「よく考えたらみんなが来るとは限らないのよね…」

樹「完全に盲点だったね…同じこと考えてるだろうし…」

ちひろ「最悪私と樹ちゃんだけかぁ…上等。」

樹「上等なの!?…私弱いよ?」

ちひろ「何を言ってるんだか。樹ちゃんは十分強いよ。」

樹「そうかなぁ…」

竜治「なーに話してんだっ!!」ガバッ

ちひろ「自信がなさげな樹ちゃんを励ましてただけ…って竜治君!?」

竜治「え?何?俺幽霊だったりするのか?」

樹「バーテックスだからあながち間違いでもないような…」

雪花「そういえばそうだったね〜」

佳美「こんにちは、樹部長にちひろ先輩。」

樹「雪花さんに佳美ちゃん!タイミングからして竜治君と同じくらいに?」

竜治「んまぁそうだな。…ところで今日この時刻にここにいるってことは?」

ちひろ「…行ってくれるのね!!」

雪花「そりゃもちろん。私も佳美も大恩あるしにゃあ。」

竜治「勇者部のみんなを置いていっていいものかって少々悩んだが…本人達から遠慮なく行けって。」

樹「みんな…」

亜耶「私達は防人のみなさんから後押しされました。」

ちひろ「あやや!となると…?」

雀「やっぱ怖いんだけどぉぉぉぉぉぉ!!あんなのにほんとに勝てるの!?私たちまでやられたら本末転倒じゃない!?」

雪花「やーれやれ…腹くくるか帰るか選べば?」

雀「どっちも嫌だよ!!」

雪花「だろうね!!」

竜治「…相変わらずすぎるなおい。」

亜耶「あはは…(汗)」

樹「…あとは友奈さんと東郷さんですね…」

佳美「来て下さるんでしょうか…東郷さん、相当堪えてたはずですけど…」

…そして、約束の時間を迎えた。

迅「…お、みんな来てくれてるみたいだね。」

樹「どうしようちひろちゃん…友奈さんと東郷さん…」ヒソヒソ

ちひろ「…それがあの人たちの選択だっただけ。…まあ、少し残念だけど…」ヒソヒソ

迅「この先はうちの遠征艇まで移動するんだが…最後に改めて聞く。

俺達は君たちの仲間を取り返すつもりでいる。しかし相手は強大、楽な戦いではない。…それでも、来るのかい?」

(…覚悟は、決めてきた。)

ちひろ「…もちろんです。仲間…友達は、絶対に取り戻す。」

迅「…いいね。じゃあついてk…」

友奈「ストップストーップ!!結城友奈遅れました!!」

東郷「すいません、道に迷ってる人がいたものでつい…」

雪花「友奈っち!」

ちひろ「須美さん!」

迅「お、マジか。危なかったね、ちょうど移動しようとしてたとこだ。…じゃあ改めて…」

友奈「大丈夫です。銀ちゃんにもみんなにも、恩が返しきれないくらいあるんです。何より…友達を助けないなんて、勇者じゃないと思うので。」

東郷「安芸先生にあとを押されました。必ず力になります。」

迅「…聞くまでもなかったか。…よし、改めてついてきてくれ。遠征艇に案内する。」

全員「はい!!」

みんなが歩き出す。

そして私も…

(…みんな…母さん…父さん…)

ちひろ「…いってくるね。」

二世界を巻き込む戦いに、足を踏み入れた。

 




テストがあるので次回も遅れるかもしれませぬ…m(_ _)m
あと何気に50話達成です。やりました。

追記 話数表示をちょっといじりましたので把握お願いしますm(_ _)m


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5話 報ヲ交エル

大変遅れて申し訳ありません
中間テストだったのです…


ーーー遠征艇ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「あ、あの時の。」

三雲「どうもです。力貸してくれるそうで…」

遊真「お、チスチス。元気にしてた?」

千佳「こんにちは。」ペコリ

ちひろ「ホントならやられてたところ助けられてますし。これくらいは当たり前ですよ。」

樹「元気かは微妙ですが…それなりには…?」

遊真「お、嘘ついてない。こういう時って無理して嘘言う人結構多いけどやるなお前。」

樹「…?」

雀「んん??…はっ!まさかまさか!?もももしかして心を読めたり!?!?」

???「違うわ。こいつはサイドエフェクトでウソかホントかがわかるだけ。大して事情も知らない人にそんなこと言わないの。」ボスッ

遊真「やれやれ、キトラはお堅いなー。」

木虎「私が堅いんじゃなくてあんたが緩すぎるだけよ。」

遊真「なにおー!?」

嵐山「木虎も空閑君もそこまで。勇者部の皆さんが混乱するからね。初めまして、嵐山准です。A級5位、嵐山隊の隊長を務めています。こちらは右から木虎藍。」

木虎「どうも。」

嵐山「次に時枝充。」

時枝「三門市についてからも案内とかの担当任されてるから、気安く話しかけてもらっていいよ。」

嵐山「そして佐鳥賢。」

佐鳥「どーもどーも佐鳥っス!機会があれば必殺のツインスナイプ見せちゃいますよ〜!!」

東郷「ツインスナイプ!?」

雪花「あー…東郷って狙撃銃だもんねぇ…」

三雲「ではこちらも改めまして。A級9位、玉狛第二こと三雲隊の三雲修です。」

遊真「空閑遊真だ。よろしくな。」グッ

千佳「雨取千佳です。これからよろしくお願いします。」

佳美「よ、よろしくです…!」

(ふむ…まだ到着までは時間あるみたいだしとりあえず…)

ちひろ「じゃあ何個か質問いいでしょうか?」

嵐山「はい、どうぞ。」

ちひろ「あの異形、トリオンとトリガー、サイドエフェクトについて。あとは…遊馬さんが使ってた他とは異質なやつについても。」

嵐山「分かった。まずトリオンっていうのは人の身体の中にあるエネルギーみたいなものだよ。普通に暮らしてる限り使うことはないし、トリオンを作っている「トリオン供給機関」も視認ができないから基本的に知ることはない。

そしてそのトリオンを使い、戦闘用の肉体や武器を作るのがトリガー。色んな種類があるけど詳しくは本部で、かな。」

時枝「異形に関しては僕達は「トリオン兵」と呼んでるよ。トリオンから作られた様々な兵隊。

大型は人捕獲用の「バムスター」。

虫っぽいのは戦闘用の「モールモッド」。

あと何匹かいた爆発するやつは「イルガー」、大型がほとんどだけど最近は小型化したのもいるよ。

そしてうさぎ型のめちゃくちゃ強いやつは「ラービット」、僕達みたいなトリガー使いを捕獲するためのやつだね。

で、あと一つは…謎。最近現れた新型といえるよ。」

友奈「大型さんも虫さんもうさぎさんも魚さんも出ちゃったとなると…あの星屑みたいなやつ?」

雀「…あれか!?!?」

木虎「…何か知ってるの?」

竜治「知ってるというか…俺たちが数年前まで戦ってたやつに非常に似ているっていうか…」

遊真「なーんかいよいよ世紀末みたいになってきましたなー。」

雪花「的を得ているにゃ…」

遊真「え、マジモンの世紀末だったの?」

(…簡潔な説明しといた方がよさそうかもねぇ…)

ちひろ「…詳しいのはその本部?についてからとしますが、とりあえずこちらの簡潔な説明をさせてもらいますね。いいしょ?樹ちゃん。」

樹「うん!というか私も手伝うよ。」

ちひろ「ありがとー!!」

 

ーーー説明後ーーー

遊真「…世紀末だった。」

千佳「私たちよりも規模がでかかったよ…」

佐鳥「神の国に一泡吹かせたことならあっても神を倒したことはさすがにないですって…いやほんとすげえっスね!?」

三雲「それで、その神の使い…星屑か。それが新型に酷似していると…嵐山さん、これって…」

嵐山「…狙われたのといい、やはり何かしらの関係がありそうだね。もしかすると特殊型とも…」

木虎「じゃあ次はサイドエフェクトね。サイドエフェクトは…」

迅「残りの2つは俺に任せてもらおうか。」

木虎「迅さん!」

迅「サイドエフェクトは漢字で書くと副感覚、高いトリオン能力を持つ人に稀に発現する特別な力さ。例えばさっきやってたユーマのサイドエフェクトはウソを見抜くことだ。一部嘘とか結構細かく絞れるだったよね?」

遊真「そうですね。ちょくちょく役に立つよこれ。」

迅「あとは千佳が気配察知。ゲート…トリオン兵が出てくるとこね、そこから出てくる前に方向とかを察知できる。」

千佳「あとは気配消したりもできます。」

(…わぁお…)

ちひろ「…控えめに言って羨ましい。」

雀「いいな〜…それさえあれば戦うことなく逃げれるんだろうな〜…いいないいな〜…」

亜耶「多分芽吹先輩たちが許してくれないと思いますが…(汗)」

迅「で、俺は未来視。」

勇者部「はい!?」

迅「あー、何も細かいとこまで見えるわけじゃないんだ。いくつかの平行した可能性が見えるってだけ。今回君たちのところへ駆けつけたのも俺たちがそうする未来が見えたからさ。」

樹「万能ってわけではないんですね…」

迅「そうそう。で、次は…黒トリガーについてか。」

(黒トリガー…名称が違う…)

迅「黒トリガーってのはそうだね…

優れたトリガー使いが全トリオンと命を注いで作り出すトリガーだ。」

雪花「…命、ね…」

竜治「…」

東郷「っ…」

迅「その実力はまさに次元が違う。優秀な人材が揃ってるボーダーにおいても、ひとつで戦況をひっくり返しかねないほどだ。現に俺は黒トリガーでA級5人に圧勝してるしね。」

嵐山「迅が使った「風刃」は未来視と相性バツグンだからね。それもあるんだろう。」

迅「あ、嵐山さん。そこは黙っておいてくださいよ〜

あとは…持ち手を選ぶことが特殊かな。相性が悪いと起動することすらままならないからね。」

ちひろ「…たしかに、ぶっ壊れですね。…遊馬さん…」

遊真「ん?気にしない気にしない。別に全然気にしてないし。

…そして、もうじき着くみたいだぞ。」

友奈「…どんなとこなんだろう!楽しみだなー!ね、東郷さん!!」

東郷「え?う、うん。」

亜耶「ちょっとお暗い雰囲気ですよみなさん…ここまでしてくださってるんですし、せめて元気でいないと!」

雀「亜耶ちゃんその原理は謎だよ!?でも賛成、長丁場なるんだろうし交流しとかないと!!

…じゃないといざって時に守ってもらえないし…」

佳美「雀さん…最後の一言さえなければ完璧だったのに…」

ブゥゥゥゥゥゥゥン

遠征艇が揺れる。

ちひろ「…到着ですか?」

三雲「そうなりますね…改めて、ようこそ三門市、そしてボーダーへ。」

(…しばらくいることになるだろう土地…一体どんな景色が…)

扉が開く。

そこにあったのは…無地の壁だった。

ちひろ「・ ・ ・ え?」

嵐山「…あ、少し期待させてしまってたかな?ごめんね、遠征艇はゲートの都合上ボーダーの本部内に離陸場があるんだ。」

(あー…たしかに。こんな大事なもの外に出しとくわけないもんね。)

時枝「じゃあ降りてください。会議の場所まで案内します。」

 

 

 

 

ーーー会議室ーーー

迅「城戸さんー、帰りましたよー。」

城戸「ご苦労だった。…それで、無理を言ってまで太刀川達を動かした成果はあったんだな?」

迅「ええもちろん。紹介します。讃州高校勇者部のみなさんです。」

樹「…勇者部臨時部長を務めさせていただいてます、犬吠埼樹です。先日は危ないところを助けていただいた上の今回の協力、誠に感謝します。」

城戸「…若くもしっかりしている。しかし助けたのにはこちらへの利があると考えたからだ。…無償ではないと言うことを、気に止めておいてもらおう。」

樹「それで構いません。私たちもただ、力を借りっぱなしで終わるつもりではありませんので。」

城戸「…なるほど、期待している。」

雪花「風部長が見たら号泣しそうだにゃこれ。」

雀「間違いないでしょうね〜…ってあ!太刀川さんに出水さん!!」

太刀川「お、雀ちゃん。よく来たね。」ボリボリ

出水「これからしばらくいるんだろ?よろしくな。」

雀「はい!!どうかよろしく頼みます!!ところでお二人はなぜここに?」

太刀川「城戸さんに呼ばれたもんで。あ、ぼんち揚食うか?」ボリボリ

雀「なんですかそれ!?」

迅「太刀川さん、何枚かちょーだい。」

太刀川「あいよ。」ボリボリ

迅「やっぱぼんち揚は最高だね。」ボリボリ

雀「????????」

出水「今はついてけなくていい…てかそれが当たり前。」

竜治「…風間さんもいたんすね。あの時はお世話になりました。」

風間「気にすることはない。お前らのためにやったんじゃなく、俺たちのためにやったことだから。」

忍田「そろそろ本題に入らせてもらってもいいかな?初めまして、ボーダーの本部長を努めさせてもらっている忍田真史だ、よろしく頼む。」

ちひろ「あ、どうぞ。臨時副部長の上里ちひろです。」

城戸「最高司令官の城戸正宗だ。」

林藤「玉狛支部長の林藤匠、勇者部のみんなは玉狛支部に滞在してもらうことなるから仲良くしてくれると嬉しいな。」

鬼怒田「開発室長の鬼怒田本吉だ。トリガーについて何か要望があれば私に聞け。」

根付「メディア対策室長の根付栄蔵です。マスコミ関係で困ったことがあれば来なさい。」

沢村「本部長補佐の沢村響子です。よろしくお願いします。」

唐沢「外務・営業部長の唐沢克己だ。特に役立つことはないだろうがまあよろしく。」

友奈「讃州高校2年、結城友奈です!」

東郷「同じく2年、東郷美森です。」

雀「2、2年、加賀城雀です!無害なので何もしないでください!チュンチュン!!」

雪花「同じく2年、秋原雪花。よろしくお願いします、皆様方。」

竜治「1年の蛇遣竜治です。」

亜耶「同じ1年の国土亜耶です。どうかよろしくお願いします。」

佳美「讃州中学三年、神月佳美です。どうかよろしくお願いします…!」

城戸「…お互いの自己紹介もん済んだところで、話を進めていくとしよう。迅、説明はどこまで?」

迅「ブラックトリガーとかトリオン兵、サイドエフェクトみたいな基礎知識は叩き込みましたよ〜。」

城戸「ならトリガーの種類や詳細か。」

鬼怒田「そういうことなら私が説明しよう。ボーダーのトリガーは緊急脱出用のベイルアウト、戦闘体の他に最大8つの自由枠がある。

これに自分に合うトリガーを搭載し、戦うのだ。

またこれはメイン4つ、サブ4つで分かれていて、メインとサブはひとつずつ同時使用が可能だが、メインとメインのように同じ枠の同時使用はできない。

そしてトリガーを使う奴らはいくつかの分類に分かれるんだが…それはそれぞれのトップを争うメンバーに各自説明してもらうとしよう。」

太刀川「あー、助けに行ってた俺たちだけじゃなくて東さんも呼ばれてんのはそういうことか。おい出水、レッツゴー。」

出水「いや太刀川さん、まずはあんたからでしょ。勇者って響き的にアタッカーは多そうだし。」

迅「俺も太刀川さん推しで〜。ぼんち揚げ終わったあとにあげますから〜。」

太刀川「仕方ねぇな。

じゃあまずはアタッカーについて、この俺、太刀川慶が解説させてもらう。アタッカーは簡潔にいえばまあ…剣とか刀とかを使いたいヤツ、ガンガン近距離で無双したいヤツ(できるとは言ってない)が多めだな。

選べるブレードは3種類。

攻撃力耐久性ともに優れた安定の品、旋空弧月で遠くの敵も一刀両断、孤月。

少し脆いが形自由自在、応用力バツグンのスコーピオン。

攻撃力は乏しいが耐久性があり、シールドモードやスラスターで堅実な戦いができるレイガスト。

これにシールドや姿を隠せるバッグワームを搭載してるのが基本だな。スコーピオン使いは踏んだら跳ぶグラスホッパーとか。あーとは風間隊が。」

風間「…カメレオンか。カメレオンは姿を隠せるトリガーだ。しかし音も出ればレーダーにも移る、後に説明があるだろうがハウンドのような追尾型も防ぐことはできない。おまけで使用中は他のトリガー使用不可。使いこなすには相当な技量が必要だな。」

雀「盾!?」ガタッ

雪花「使う人多そ…っていつもなら言うんだけどほとんど捕まってるよねぇ。ちひろと竜治くらいじゃない?今使えるの。」

樹「…ちひろちゃん、ワイヤーってあるかな…」

ちひろ「うーん…スコーピオンとやらならできなくもなさそうだとは思うけど…あとビット再現できるものないかな…」

出水「ビットってのがなんなのかはわからんが次行かせてもらうぜ。シューターの説明は俺、出水公平が努めさせてもらう。

まずシューターは自身のトリオンを弾丸として敵を倒す。弾速、射程、威力、弾数等を自在に調整できるが、手間がかかるし命中精度に難アリって感じか。味方との連携が鍵になるな。弾の種類は…4つ。

1つ、全ての元であり、直線上に飛んで対象を攻撃する通常弾(アステロイド)。余計な効果がない分純粋な威力は4つの中でもトップだ。

2つ、着弾時に爆発する炸裂弾(メテオラ)。純粋な威力はアステロイドに劣るものの、範囲が広かったり建物ぶっ壊したりできる。

3つ、さっき風間さんが上げてたけど敵を追尾する追尾弾(ハウンド)。トリオン反応を追うものと、自身の視覚を使って追うものがあるな。威力こそ低いが勝手に追ってくれることから持ってる人は多い。

4つ、軌道を自分で設定して放つ変化弾(バイパー)。ハウンドよりも複雑な動きが可能な分、その場で軌道を設定するのは簡単じゃないから基本的には予め決めたいくつかのパターンからってのが多い。ただ少数ながらもその場で設定するやつもいる。無限の可能性を秘めたロマン弾だな。」

(…!!あれなら…!)

出水「あとは合成弾っつー2つの弾を混ぜて使うのもあるが…その混ぜんのにさらに時間がかかるな。

他に搭載するならシールドやバックワーム。あとはブレードや狙撃を主にしつつ、サブウェポンとして搭載したりか。そこの三雲とかはシューターやりながらサブウェポンとしてレイガスト持ってるぞ。あとは似たようなのにガンナーがあるんだが…それは嵐山さんに任しますわ。」

嵐山「ああ。ガンナーとシューターの違いはトリオン弾を撃つ時にある。「あ、そんな普通に繋げれるんすか…」シューターはそのまま、ガンナーは銃型トリガーの補助を受けて撃つ。基本的にシューターはセンスが必要で実力差が出やすいんだが、銃型トリガーで均質化を図ったのが由来だな。

シューターほどの自由度が失われた変わりに安定度が増している。

あとは…ガンナーは威力、射程、弾速をその場で設定できず、予め決めた2つしか撃てないのも特徴。ただ練習するほど命中精度は上がるから使いやすいトリガーではあるかな。」

樹「…私、別な武器慣れないといけないかなぁ…」

ちひろ「うーん…さすがに厳しそうだよね…まだわかんないけど。」

雪花「お、これは私の出番かな?投槍と要領は似てそうだし。」

佳美「私も役に立ちたいし、練習くらいは…」

東郷「…次、行ってくれませんか?…先程の話に、"狙撃"という言葉がでてきたはずですが。」

迅「するどいねぇ。東さん、頼みます。」

東「どうも、勇者部のみなさん。B級4位、東春秋と言います。俺からはスナイパーについて。スナイパーは狙撃銃型トリガーを使って戦う。こちらは弾を選べたりするわけではないが、トリオン能力によって伸びるところが違う。

まずは威力、弾速、射程ともにバランスがいいイーグレット。使用者のトリオンが高いほど射程が伸びる。A級レベルだと動かない的なら1キロ先でも命中させれるだろうな。

次、弾速が早いが威力が弱いチクチク型、ライトニング。軽くて扱いやすいから、移動しながらの狙撃とかにも使われる。これはトリオンが高いほど弾速が早くなる。

最後、威力は高いが弾速は遅いドッカン型、アイビス。サイズや重量の影響からライトニングのように持ち運びながらは難しいな。だがその威力は凄まじく、シールドなら容易に砕くことが出来る。こっちはトリオンが高いほど威力が上がる。

最後に立ち回りだが、スナイパーは見つからないことが重要だ。だから基本的にバッグワームを並行して使い、狙撃の度に移動するのがいい。あとはシールドを搭載して、あまり枠は各自の好みかな。」

東郷「…!これは…私がやるしかないわね!!」

友奈「よかったね!東郷さん!」

東郷「ありがとう!友奈ちゃん!でも友奈ちゃんに合うやつが…」

友奈「勇者部6箇条、なせば大抵なんとかなる!なくてもすぐに慣れて東郷さんのこと守れるようになるよ!!」

東郷「友奈ちゃん…ならそれまで私が友奈ちゃんのこと守るね。」

友奈「え!?ほんとにいいの!?ありがとう!東郷さん!!」

城戸「ご苦労だった。これがボーダーのトリガーになる。」

ちひろ「説明、感謝します。」

迅「じゃあ今度はそっちの方の説明をお願いしたいかな。今回は詳しく。」

樹「…はい。全ての始まりは、300年前に遡ります━━━━━」

 

 

 

 

ちひろ「…以上です。」

忍田「その数年後の今に襲撃…事前に防げず申し訳ない。」

雀「なんで謝ってるんです!?!?取り戻すのに協力してくれるなら文句なしですし普通こんなの予想できないでしょう!?!?」

迅「…それで、彼女らの話にでてきた「星屑」、これが新型と全くと言っていいほど同じなのです。なので新型の名前をそこから取り、「コーメット」としたいのですが…」

太刀川「ちょーっとそれは認めらんねえな。それなら「コミミオン」の方がいい。」

迅「いやコーメットでしょ。」

太刀川「コミミオンだな。」

迅「コーメット!」

太刀川「コミミオン!!」

竜治「なんか始まった…」

雪花「どうするんですかにゃ?これ平行線だと思うんですけど。」

遊馬「そう言われても止めようがないから困るな。他にいい案出すしかないぞこれは。」

佐鳥「コモルート!」

木虎「先輩、ポニモンから取ってこないでください。」

風間「今この場でなのか…それより俺は別に気になることがあるんだが。」

ちひろ「…?なんですか?私でよければ。」

風間「ああ。実はな…」

千佳「…コメッタ。」

一同「…それだ!!」

千佳「んえ!?は、はい!」

(…盛り上がってんなぁ…)

風間「…この写真のやつに見覚えは?」

ちひろ「えーっとで…は!?」

樹「どうしたのちひろち…え?」

風間「…コメッタと同タイミングで確認された大型の一種だ。異常に強く、倒しきれなかったが。」

ちひろ「知ってるもなにも…さっき話した、さそり座ですよ…!?!?」

風間「…やはりか、迅。」

迅「わかってますって。早めに不調は直しますよ。」

林藤「じゃあみんな疲れてるだろうし、今日はここら辺でお開きにしません?部屋で荷物整備とかしたいでしょうし。」

城戸「…そうだな。では、これで会議を終わる。改めて、これからよろしく頼む。」

樹「はい。任せてください。」

(…しかしこれからかなりの時間いるとなるとここの図や町の様子とかも知っときたい…となると…)

ちひろ「勇者部集合!!」

雪花「ほいほい。でなんのご命令で?」

ちひろ「私達はこれからしばらくの間この街で暮らすわけじゃないですか。」

雀「たしかにそうだね。」

ちひろ「そしてトリガーに慣れるための訓練もしなきゃいけない。」

竜治「…あー、そういうことか。」

亜耶「…??」

ちひろ「だから本部と町、それぞれの地図を今のうちに作っときたいなって。私と樹ちゃんで先行して部屋とか整えておくから他の人で頼めないですか?」

東郷「なるほどね…なら私達は本部をやるわ、ね、友奈ちゃん。」

友奈「うん!任せて!」

亜耶「戦えない分私が補給係務めるはず…街に行きます!」

佳美「あ、なら私も!」

雪花「佳美が行くなら私もオナシャス。」

竜治「制作要員として俺もだな…」

雀「…町で!」

ちひろ「多少バランス悪い気がするけどまあおいとこ…樹ちゃん、いい?」

樹「もちろんだよ!むしろそこまで考えてなかったから感謝しかないよ…」

迅「話は聞かせてもらった!」

ちひろ「あ、迅さん。聞いてたなら話は早いですね。」

林藤「さすがに支部の場所が分からなくなると困るから本部班には三雲たち、町班にはレイジたちを付けるよ。じゃあ車で移動するからついてきて。」

樹、ちひろ「はーい!」

 

ーーー道路ーーー

ーーー迅sideーーー

樹「ここってうどん屋さんってどれくらいありますかね?」

林藤「うどん屋?んーそうだな…三店くらいか?」

ちひろ「…やはり世界の違いか…」

迅「あー勇者部って香川だもんね。そりゃうどんに食いつくわけだ。」

樹「うどんは別次元の食べ物ですし。」

ちひろ「圧倒的頂点。」

迅「こりゃすげえ…」

林藤「ははっ!これからはご飯のうどんの周期を早くするか!」

ちひろ「ありがとうございます!!」

(どこまで好きなのか…俺にとってのぼんち揚げくらいか?さてこれからどうするk…)

ビジジッ

未来視が、突如として未来を映し出す。

…それも、すでに避けようがない未来を、だ。

迅「…林藤さん、飛ばして。」

林藤「…まさか?」

迅「…そのまさかだ!!」

ヴゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!

ビジジジッ!!!

空に、黒い穴が開く。

 

ーーー友奈sideーーー

友奈「なんですかこの音!?」

三雲「…中に直接!?どうやって!?」

遊真「2人は俺たちから離れないこと。やるぞ、オサム、チカ!」

千佳「うん!」

三雲「わかってる!!」

3人「トリガーオン!!」

 

ーーー雀sideーーー

どーもみなさん、人畜無害でお馴染み雀です。町を探索に来てたんです。そしたらなんか鳴るじゃないですか。

そして見覚えどころか軽くトラウマ物がわんさか現れるじゃないですか。

雀「…呪物でも買ったのかなぁ私たち!?」

竜治「激しく同意です。」

亜耶「ど、どうしましょう…!?」

雪花「佳美、私の後ろに…って言っても周り囲まれてるしダメか。」

佳美「足でまといならないといいけど…」

レイジ「安心しろ。必ず守りきる。鳥丸。」

烏丸「市街地も含めて結構な位置を同時にやられてるらしいです。どういうわけか本部も直接内部から。」

レイジ「前の時に何かされたか…とりあえずここは俺たちだけでやるしかないな。」

小南「上等。雑魚が何匹集まっても無駄って教えてあげるわ!!」

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「な…んで…」

来る。

樹「…林藤さん!迅さん!これ…」

白き異形が。

林藤「とりあえず全速力で飛ばすから掴まっててな!!」

軍をなして。

迅「…風刃、起動!!」

『ゲートが複数箇所に発生。各員、対応に当たってください』

トリオン兵が、侵攻してきた。



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6話 私タチハ

この時を待ってました
自信作のつもりです()


ーーーボーダー本部ーーー

ーーー東郷sideーーー

修「アステロイド!」

遊真「はあああ!!」ズババババ

千佳「…!」バシュンッ!

遊真「敵が多いな…どうするオサム、このままじゃジリ貧だぞ。」

修「本部である以上すぐ他の人が来るはずなのに…宇佐美さん!援軍は!?」

宇佐美『うーんしばらく無理そう!修君たちのところに繋がる道が全てトリオン兵達に塞がれてるんだって!!』

修「なんですって!?」

友奈「…ねえ、東郷さん。もしかして…」

東郷「私たちが、狙われてる…?」

遊真「うーむ…そうかもしれませんなぁ…オサム、黒トリガー使っていいか?」

修「…ああ!挟み撃ちの状況を打破するために端の部屋に移動する!後方は頼んだ!」

遊真「OK!"レプリカ"起動!!」

修「僕と千佳は前方だ!やるぞ!」

千佳「うん!威力を絞って…ハウンド!!」ドガァァァァァァァァァァァァァン

友奈「すいません、私たちのために…」

修「大丈夫です!僕がそうすべきだと思ったからやってるので!!」

遊真「悪いのは敵さんだしねー。」

(この方向はさっき通ったところ…となると端は…!)

東郷「こっちです!そして次3番目の角を左に!」

遊真「あの1回で構造覚えたのか…なかなかやるなお前。」

東郷「少しでも役に立てば光栄です!」

友奈「東郷さんすごーい!!」

 

ーーー市街地ーーー

ーーー竜治sideーーー

竜治「ダラッセイッッッッ!!!」ズガァン!!

小南「はああああ!!!」ズババババ

レイジ「小南、下がれ!」

小南「ええ!」シュバッ

ドガガガガガガガガガガ

烏丸「竜治君だったか、その腕は?」

竜治「ちょいと化け物やってまして。しかしそれでもダメージ入ってねえのな…」

小南「それがふつっう!!!!」ドガァァァァァァァァァァァァァン

レイジ「できるなら防衛に専念してもらえるとありがたい。」ドガガガガガガガガガガ

竜治「了解です!俺のダチには指一本触れさせねえぞ!!!!」

(…コメッタには入った感じがしたが…まさか、な…?そこまで似てるはずねえし…)

 

ーーー道路ーーー

ーーー迅sideーーー

迅「栞ちゃん!現状はどんな感じ!?」

宇佐美『あまりよくないですね…修君たちは本部で孤立、レイジさんたちも周囲を囲われてます。』

迅「…ほかの部隊は?」

宇佐美『本部は明らかに妨害が入ってる状況ですね…レイジさん達の方は単純に襲撃箇所が多すぎて手が回ってない感じです。』

(…かなりまずいな…レイジさんたちは新型でも来ない限り大丈夫だろうが…孤立させたということは何かしらの意図があるはず…)

宇佐美『…まだ未来視は戻らないんですか?』

迅「メガネ君たちの未来が見えない。そしてこっちも…下手すると死者が出る。」

宇佐美『なっ…くっそぉ!!玉狛も襲撃されてなきゃ私のやしゃまるシリーズを出したのに!!』

迅「気持ちだけ受け取っとく。とりあえずメガネ君たちの方に集中してくれ。」

宇佐美『ラジャッ!!』

迅「…」ズガァァァァァァァァァァン

俺のサイドエフェクト、未来視は見たことさえあれば可能性のある未来が見える。ずっと前から。

しかし、今回この襲撃の未来は直前まで見えることはなかった。

そして今も本部の未来が見えない。

(…サイドエフェクトを超える何かが、干渉してきてるっていうのか…?)

迅「…チッ。やっぱなかなかな数いるねッ!!と。」ズガガァァァァァァァァァァン

《…ドガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!》

迅「ッ!!」バッ

ドガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

迅「ふんっ!!」ガキィィィィィィィィィィィン!!!!!

未来視で見えた斬撃を、風刃で受け止める。

林藤「今だいぶ揺れたが大丈夫か!?」

迅「はい!」

(今の斬撃…モールモッドにしては重すぎる…となると…)

迅「…人型がいるかもしれません!注意してください!!」

林藤「やれやれ。わかった!!くれぐれも屋根から落ちんなよ!」

迅「わかってますよ!!」

 

ーーー友奈sideーーー

孤立を確認してから5分、私達は東郷さんの案内と修さんたちの護衛でなんとか出入口がひとつしかない部屋へと逃げ込むことができました。

遊真「ふぃー。これで正面から来るやつを一匹一匹倒してくだけの簡単なお仕事だな。」

三雲「その間に誰か来れるといいんだが…」

東郷「すみません。私たちがいなければ突破もできるんでしょうけど…」

三雲「いやいや、さすがに量が多すぎるので僕達だけでも無理ですよ。遊真だけなら行けそうだけど。」

遊真「そうそう。あとオサムは標準として二人とも敬語だよね。同学年なんだしタメ口でいこーぜー。あ、オサムはこれが標準装備だから。」

東郷「…しかし…」

(…ならば!!ここは私が!)

友奈「わかった!守ってくれてありがとね!修君!遊真君!千佳ちゃん!」

東郷「…よ、よろしくお願いします…

…修さん、遊真さん、千佳ちゃん…」

千佳「私は年下なので呼び捨てでも…」

友奈「あ、年下の子にもこう読んでるから大丈夫!!」

千佳「あ、ならよかったです!」

東郷「う…少し慣れるまで時間がかかりそうです…天の上の存在的なイメージが…」

三雲「一緒に暮らすわけですし、慣れたらで全然大丈夫ですよ。」

友奈「修君の言う通り!自分のペースで行こ!東郷さん!!」

東郷「友奈ちゃん…そうね。わかったわ。」

遊真「…オサム。」

三雲「ん?どうかしたか?」

遊真「…さっきから部屋に入ってこようとするやつがいない。」

三雲「…!!なんで…」

その時だった。

…ボガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

突如外壁が吹き飛ぶ。

東郷「きゃっ!?」

三雲「しまった…!外からか!」

遊真「…!こいつは!」

千佳「友奈さんと東郷さんは物陰に!」

友奈「はい!」

…その時だった。

壁を吹き飛ばしたトリオン兵の1部が目に入ったのだ。

それは、ウニョウニョ動いていた。まるで布のように━━━━

(…布?そして今の爆風…)

視線を上げて、全体を捉える。

友奈「…嘘…なんで…」

━━━それは、紛れもなくおとめ座だった。

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…林藤さん、人型って?」

林藤「ネイバーは何もトリオン兵だけじゃない。俺たちと同じように人がいるんだ。遊真も一応ネイバーだしな。」

樹「つまり今回の一連の黒幕の誰かが来てるかもしれないと…?」

林藤「んまぁそんなとこだな。」

迅「…ッ!見えました!前方100メートル!」

林藤「突っ切るからしっかり防御すれよ迅!!」

ドガァァァァァァァァァァァァァンドガァァァァァァァァァァァァァン

迅「はあっ!!」ガキィィィィィィィィィィィンガキィィィィィィィィィィィン

林藤「交通法には違反するが…とばすぞ!!」ブォォォォォォォォォォン!!!!!

ドガァァァァァァァァァァァァァンドガァァァァァァァァァァァァァンドガァァァァァァァァァァァァァン

ガキィィィィィィィィィィィンガキィィィィィィィィィィィンガキィィィィィィィィィィィン

そして、すれ違う。

林藤「よし!!」

ちひろ「…ん?」

すれ違った人型、その顔を見たことがある気がする。

(…いやそんなことは…)

樹「ち…ちひろ…ちゃん…」

ちひろ「ど、どうしたの樹ちゃん…そんな…声震わせて…」

ありえない。否、ありえるはずがない。

(後ろ振り返って確認する?)

樹「だ…って…あ…あれ…」

体が拒絶する。

ちひろ「あ、あれ?さっきすれ違った人…型…のこと?」

だからといって口に出すのも体が拒絶する。

(…ええい!勇者部6箇条!!なせば大抵なんとかなる!!)

無理やり後ろを向く。

ちひろ「…は?」

その人型は、キレイな黄色の髪をしていた。

ちひろ「…嘘だ。」

2つに結んで、後ろから下げて。

ちひろ「嘘だ…」

女性にしては少し大きい身長で。

ちひろ「…嘘…です…よね…?」

その顔は━━━━

ちひろ「…風さん!!!!」

━━━行方不明だった犬吠埼風、彼女と全く同じだった。

 

 

 

 

ーーー迅sideーーー

迅「…やはり追いかけてくるな…」

林藤「迅!」

迅「どうしたんすか林藤さん!?」

林藤「…さっきの、ちひろちゃんたちの仲間だと。」

迅「なっ…!!!」

(どうなってる…!?なんで攫われた人が敵に!?洗脳の技術はないはず…)

ドガァァァァァァァァァァァァァン

ガキィィィィィィィィィィィン

迅「…考えてる暇はない、か…とりあえず止める!!」

シュバババッ

ブラックトリガー、風刃。

その能力は壁や床に斬撃を仕込み、任意のタイミングで発生させるもの。

迅「大人しく斬られてろ!」ズバババァァァァァァァァァン

ガキキキィィィィィィィィン

迅「なっ…」

風刃の斬撃はたしかに起動し、彼女を襲った。

しかし、彼女の肩の装甲がひとりでに動き、完璧にガードしていた。

(…自動防御とかか?)

迅「…」シュバババッ

ズバババァァァァァァァァァン

ガキキキィィィィィィィィン

迅「…まずいな…風刃との相性が圧倒的に悪い!」

シュバババッ

ズバババァァァァァァァァァン

ガキキキィィィィィィィィン

シュバババッ

ズバババァァァァァァァァァン

ガキキキィィィィィィィィン

(方法を変えてもダメか…)

《バキバキバキッ!!ジジッ…ボガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!》

(…ッ!!まずい!!)

 

ーーーちひろsideーーー

(なんで風さんが…いやそれより!)

樹「ねえ…どうしようちひろちゃん…お姉ちゃんが敵だなんて…私…どうしたら…」

ちひろ「そんなことない!!きっと洗脳かなんかされてるんだよ!!じゃなきゃあの人がするはずない…」

林藤「少なくとも俺は洗脳なんて見たことねえが…最近出てきてる新型のこともある、可能性は高いな。何か変わったところはあるか!?」

風さんの全体を改めて確認する。

ちひろ「…!頭に角っぽい何かが!」

林藤「角…アフトクラトルが絡んでることも踏まえてそれだな!おそらく新型の角で何かされたんじゃないか!?」

ちひろ「なるほどです!だって樹ちゃん!!」

樹「…お姉…ちゃん…そんな…」

(…ショックが大きすぎるよねさすがに…風さん…)

ちひろ「…ひとりでに動いてガードした?いや…それよりあれって…」

迅さんのトリガーから放たれた斬撃、風さんはそれを肩の装甲でガードしていた。

(ひとりでに動く少し大きい盾…それにあの大剣の柄…)

ちひろ「…もし、かに座を何かしらの形でトリガーにしたら?」

色、模様、そして自動防御。何よりさそり座がトリオン兵として確認されてる事実。

ちひろ「…迅さん!あれもしかしなくても…」

ズババババ

突如屋根が切り刻まれる。

林藤「迅!?何が…」

迅「もうじき爆発するので脱出します!掴まって!!」

林藤「マジかよ!?」

ちひろ「樹ちゃん!!」ガシッ

迅「ふんっ!!」ブォンッ!!

迅さんが全員を抱えて脱出する。

その直後。

バキバキバキッ!!

例の盾が下からガソリンタンクを切り裂き…

ジジッ…ボガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

爆発した。

林藤「まだ買ってから1年も乗ってない新車だったんだがなぁ〜…」

ちひろ「…風さん…」

風さんは迫ってくる。

いつもの豊かな表情ではなく、虚ろで無機質な表情で。

迅「俺が相手するので林藤さんは2人を!!」

林藤「任せろ!二人とも行くぞ!!」

樹「お…姉…ちゃん…」

ちひろ「樹ちゃん、おんぶするからね?」

樹「う、うん…」

 

ーーー迅sideーーー

(さあてどうするか…風刃の斬撃は自動防御で防がれる。かと言ってあの装甲が攻撃もできる以上、スコーピオンだと押し負ける…)

迅「…斬撃を挟んで装甲を剥がしつつ、俺が切り込むしかないか。」シュバッ

風「…」ガキィィィィィィィィィィィン

(未来視がちゃんと働いてるからな…未来が見えるっ!!)

シュバババッ

ズバババァァァァァァァァァン

ガキキキィィィィィィィィン

仕込み斬撃で装甲を引きつける。

迅「そこだ!!」ズバァァァァァァァァン!!!

風「…!!」ガキッ…

ズババババババババ

ガキキキキキキキ

ブゥゥゥゥン!

装甲が攻撃に転じようとするが…

迅「それも、すでに見えてる。」ズバババァァァァァァァァァン!!!!!

ガキキキィィィィィィィィン

仕込み斬撃で引き離す。

(ここで逃せば…ちひろちゃんか樹ちゃん、どっちかが死ぬ未来が確定する…!!)

迅「それだけは!させない!!」ズバァァァァァァァァン!!

風「ッ!!」ガキィィィィィィィィィィィン

そのまま大剣を横にはじく。

迅「終わりd…」

《パキッボゴォォォォォォォォォォォン!!!!!》

(…大剣の一部が離れて自律…!?!?)

思わぬ未来に一瞬動きが止まる。

その一瞬が、命取りだった。

パキッ

迅「しまっ…」

ボゴォォォォォォォォォォォン!!!!!

離れた大剣の面の攻撃を受け、奥のT字路にぶつけられる。

風「…」シュバッ

迅「くっ…あれも装甲と同じだったのか…!!…まずい!!」

 

ーーー東郷sideーーー

突如として破られた外壁。

そしてそれをやったのはまさかのおとめ座だした。

ブォンッ!!!!!

友奈「キャッ!」ザザッ

東郷「くっ!」グキッ

(…!足を…!!)

ボンボンッ!!

さらにおとめ座は爆弾を作り出す。

ヒュウウウウウウウン

三雲「レイガスト!!」

ボガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

三雲「大丈夫か二人とも!?」

友奈「なんとか!」

東郷「ありがとうございます!」

遊真「新型まで出てくるとなるといよいよやべえな…強ブースト二重ダブル!!!」ボガァァァァン

千佳「布を…!ハウンド+レッドバレッド!!」ドガガガガガガガガガガ

三雲「僕は守り!遊真は攻め!千佳は守り優先で遊真の援護だ!やるぞ!!」

遊真、千佳「おう!(はい!)」

ブォンッボゴォォォォォォォォォォォン

ボンボンッ!!ヒュウウウウウウウンボガァァァァァァァァン

ドガガガガガガガガガガ

友奈「すごい…」

(強い…でも決定打を与えれてない…新型ってことは最近現れたはず…とりあえず状況を整理しましょう。

なぜおとめ座が現れたのか…バーテックスの生き残りがいた?…いや、それはおかしい…仮に生き残りだとしても…)

 

東郷『しかし随分とでかいですね…一体どんな方法で建築を?』

三雲『あ、これ全部トリオンなんです。詳しいことまでは知りませんが普通の建物よりは耐久性はあるはずです。』

 

(トリオン兵やトリガー使いはトリオンでしか傷つけれないように、トリオンで出来てるこの建物もトリオンを使わないと傷つけれないはず…となると…)

東郷「…まさか。コメッタと同じ人が?私は今まで、コメッタの発案者は天の神支持の過激派かと思っていた…星屑だけなら避難が完了しきってない大橋市で確認されてるもの。…大赦に裏切り者が?」

友奈「東郷さん?大丈夫?」

東郷「ええ。大丈夫。ちょっと考え事をしてたの。」

友奈「あーそっか!おとめ座がいるなんておかしいもんね!ぐぬぬ…なんでだろー…??」

東郷「何も友奈ちゃんまでやらなくていいのに。」

友奈「でも東郷さんだけに負担かけたくないから!!」

東郷「…うん。ありがとう。」

(これ以上はさすがに考察できない…とりあえず攻撃方法だけでも伝えておけば役立つはず…!)

東郷「3人とも!そいつは爆弾と布以外の攻撃方法はないわ!!急所は頭の中に!!」

遊真「…!道理でどこ探してもないと思ったら!!」

三雲「千佳!」

千佳「うん!アイビス!!」ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!

千佳ちゃんの砲撃がおとめ座の頭部を抉る。

遊真「…あれか!ブースト七重セプタ!!」

そして遊真君がトドメをさそうとする。

それを布が狙うが…

三雲「させるか!スパイダー!!」ビュンビュンッ!!

修君のワイヤーが拘束する。

遊真「サンキューオサム!せーn…」

…しかし。

ブォンッ!!!!!

遊真「ッ!?!?!?」ボゴォォォォォォォォォォォン

友奈「…遊真君!?」

遊真君が吹き飛ばされる。その正体は…

(…2本目の布!?)

右の拘束されていた布とは別、左から出ている布であった。

そうしてるうちに頭部が完全回復する。

ボンッボンッボンッ!!!

ブォンッブォンッ!!

千佳「っ!シールd…きゃあ!」

三雲「千佳!!ぐっ!?」ガキィィィィィィィィィィィン

さらに千佳ちゃんが爆弾でふきとばされ、修君はなんとかレイガストで受け止めるものの…

ビキッ…ビキビキッ…バリンッ!!!

三雲「…がっ!!」ボゴォォォォォォォォォォォン!!!!!

東郷「千佳ちゃん!!修君!!!!」

…そして、次の標的は無論…

(…私は足をくじいてる…なら!)

友奈「…東郷さん!にg「友奈ちゃん逃げて!ここは私が!」…え?何言ってるの東郷さん!?」

東郷「私は足をくじいて動けない。だから私が囮になるわ。」

友奈「ダメ!私が背負って逃げれば!!」

東郷「それじゃ追いつかれちゃう!!お願い…逃げて…!!」

逃げて欲しかった。

これが友奈ちゃんの心に傷を残すことだっていうのはわかってる。

それでも…友奈ちゃんにだけは生きてて欲しかった。

…それでも。

友奈「…嫌だ!」

友奈ちゃんは、おとめ座の前に立ちふさがった。

 

ーーー樹sideーーー

林藤「ぐあっ!」ボゴォン

ちひろ「林藤さん!」

少しの時間を置いて追いついてきたお姉ちゃん。

林藤さんが立ち塞がったもののすぐに壁に叩きつけられてしまいます。

(…どう…したら…いいの…?)

そしてこっちに迫ってくる。

(武器なんかない…勝てるわけがない…)

迅さんすら倒した大剣をもって。

(…逃げるしかない…わかってる…お姉ちゃんに殺しなんかさせちゃいけない…わかってる…わかってるけど…!)

 

風『樹ー!ご飯できたわよー!じゃじゃーん!喉にいいもの尽くしうどん!!』

樹『ええ!?それすごい無茶苦茶な組み合わせなんじゃ…』

風『うぐっ…でも味はこだわったから美味しいわよ!!せめて1口!1口!!』

樹『わかったよ…ズルズル…

…美味しい!さっぱりしてる!!』

風『でしょー!?数日前から研究したかいがあったわ!』

樹『そんなに前から!?別にいつも通りでいいのに…』

風『よくないの!明日は待ちに待った樹の歌手デビューじゃない!そのためなら軽いにもほどがある対価よ!!』

樹『ええ…嬉しいけどそんなに期待されるほどのものじゃないよ?』

風『いーや上手いわ!いずれテッペンとして日本、そして世界の未来を背負ってくに相応しいと豪語するわ!!』

樹『そんなー…でも、ありがとう。頑張るね。』

風『…うん!じゃあ私はお風呂わかしてくるわね!今日は明日に備えて早めに寝ないと!』

樹『はーい!でもちょっと過保護だよー…』

 

…体が、言うことを聞かなかった。

樹「…や…だよ…お姉ちゃん…戻ってよ…お願い…だから…」

私の絞り出した願いは、届かない。

今ほど、自分の非力さを嘆いたことはなかった。

その時だった。

ちひろ「…私に任せて、樹ちゃん。」

樹「…ぇ?」

ちひろちゃんが、そう言ってお姉ちゃんの方へ。

林藤「ダメだ…早く逃げろ…!!」

樹「…行か…ないで…」

(ここで…ちひろちゃんまで失ったちゃったら…私は…!!!!!)

 

ーーーちひろ・友奈、同時進行ーーー

ちひろ「…風さん。」

風「…」

ちひろ「…早く戻ってきてくださいよ。」

風「…」

ちひろ「あなたは、絶対にこんなことしたくないはずです…」

 

東郷「…ここで共倒れになっちゃ…!!」

友奈「…勇者部6箇条、なるべく諦めない、なせば大抵なんとかなる、だよ。」

 

ちひろ「…私は知ってます。あなたは頼まれたら断れない優しい人だって。

いつも、みんなが笑顔になるように頑張ってて、そうなった時に誰よりも嬉しそうにすること。」

 

東郷「勇者部6箇条!無理せず自分も幸せであること!!」

友奈「…東郷さん!!!」

東郷「っ…」

友奈「…もし、ここで東郷さんを置いて逃げたら、多分私は、一生幸せになんかなれないよ。」

 

ちひろ「…自分たちの使ってるシステムに重大な欠陥があって、それを支給者側が黙ってた時…今、そして未来に同じ目にあうはずだった人たちの分も怒れて、そして怒りを、自分の人生すら棒に振ることになってもぶつけられる人だって。

もし自分が事故にあっても周りのことばっか考えて…挙句の果てには加害者の運転手すら心配するようなどうしようもなく優しい人だって。」

 

友奈「あのね、東郷さん。私は勇者部が大好きなんだ。佳美ちゃんがいて、雪花ちゃんがいて、雀ちゃんがいて、しずくちゃんがいて、シズクちゃんがいて、芽吹ちゃんがいて、夕海子先輩がいて、竜治君がいて、銀ちゃんがいて、園ちゃんがいて、‪夏凜‬ちゃんがいて、風先輩がいて、樹ちゃんがいて、ちひろちゃんがいて、東郷さんがいて…そして、みんなが笑ってる、そんな勇者部がたまらなく大好きなんだ!だから!そのためなら…いくらでも頑張れる!!」

 

ちひろ「…妹の最初の友達が少し元気なかっただけで、どんなに巻かれても、散々に言われても気にかけ続けて…何日も潰れたのに返ってきた答えが「なんでもない」だった…それなのに、「よかった!」って、万遍の笑みで言える、そんな素晴らしい人だって!!」

 

友奈「…あのイネスの襲撃の時、私は一旦銀ちゃんより避難を優先したよ…それで助けれなかった。すごい後悔したんだ。今もなんで助太刀しなかったんだって思ってる。

過去には戻れない…でも!それを未来に繋げることはできる!!」

 

ちひろ「そんな風さんだから、もし樹ちゃんを傷つけたら…戻ったあと、一生自分を許せなくなる。だから!!!それだけは絶対にさせない!!!」

 

友奈「だから絶対に諦めない!!もう二度と!!」

 

大剣が、布が、振り上げられる。

 

東郷「…どう…して…」

 

樹「…ちひろちゃん…なんで…!」

 

友奈、ちひろ「だって私は…私たちは…

勇者だから。」

…そして、振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━神の祝福は。

 

 

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

ビジジッ

(…あれ?)

…布による衝撃も、それのよって起こるはずの風も、感じなかった。

(…もしかして、即死しちゃったとか?)

目を、開ける。

ビジジジジジジッ

…攻撃は届いてなかった。防がれていたのである。

…精霊バリアによって。

友奈「…え?」

ビジジジジジジッ

そしてそれを張っているのは…

友奈「…勇者システムの…端末…」

ビジィンッ!!

それは布を完全に弾き、目の前へ。

さらに。

ヒュウウウウウウウン

どこからかトリガーが。

遊真「あれってたしか…試作品の…」

2つは融合し、その姿を変える。

薄ピンク色の本体に、ヤマザクラの模様が中心に。

友奈「…もう一度、力を貸してくれるの…?」

 

そして、それは時同じくして━━━━

 

ーーーちひろsideーーー

ビジジッ

(…あれ?)

いつまでも痛みが来ないことを不思議に思い、目を開ける。

ちひろ「…剣が、防がれてる?誰が…」

『…冷静そうに見えて無茶をする。…変わらないな、お前は。』

(…ッ!?!?!?)

…聞き覚えがあった。

…1回しかないはずのその声を。

…それは、家族と同じくらいに大切な人の。

ちひろ「…コ…マ…?」

コマ『…久しぶりだな、ちひろ。』

ちひろ「…ぅぅっ…詳しい話はあとで、だね?」

コマ『…ああ。お前のその覚悟が、運命を変えた。見ろ。』

そう言われた先には勇者システムの端末と、トリガー。

端末がトリガーに吸収されていき、トリガーは全体の色を水色へと変わる。

そして、中心にコチョウランの花が咲いた。

ちひろ「…積もる話が山ほどあるの。」

コマ『ああ。』

ちひろ「みんなにきいてほしいんだ。できるかな?」

コマ『全員同時には出られないが…聞くさ。いくらでも。お前の話なら。』

ちひろ「うん、ありがとう。」

 

ーーーちひろ・友奈、同時進行ーーー

 

友奈「勇者は不屈、何度でも立ち上がる!!私は!勇者部のみんなと幸せになるために!!再び勇者になる!!」

 

ちひろ「…風さん。今、助けます。」

 

…そして、再びその引き金を引いた。

 

ちひろ、友奈「トリガーオン!!!」



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7話 花咲キ誇ル

ーーー迅sideーーー

(なっ…)

…目の前で起こっている奇跡を、信じられなかった。

たしかに未来視では、上里ちひろ…彼女は死んでいたはずなのである。

《ズバァァァァァァァァァン!!!!

樹「あ…ああ…ち…ひろ…ちゃん…ちひろちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」》

その未来は、たしかに確定されていた。

…しかし、現状はどうだ。

彼女はひとりでに動く謎の生命に助けられた上に、トリガーを変化させた。

そして、未来視は全く異なる未来を映し出した。

(あれはたしか…鬼怒田さんが遊真とレプリカさんを参考にして制作中だった自律型トリオン兵付きのトリガー…)

迅「…神の、力…だったか?彼女たちの持ってたってのは…」

(未来視を超える力…もしそれが彼女たちに宿る神の力、その残滓ならば?)

迅「…ありえなくもない、か…」

実際に神なんて見たことがない。

そもそも人間と神が出会うことなど本来はあってはならないのだろう。

だが、彼女たちはそれをしている。

それどころか、神すら討ち滅ぼしたのだ。

(…これが未来視の不調、そして狙われる原因と見て、間違いないだろうな…)

 

ーーーちひろsideーーー

林藤「…変身、した…!?いやトリガー使ったからたしかにそれはそうだが…!」

樹「ちひろちゃん…」

ちひろ「…オートクレールよし、デュランダルよし、ソードビットもよし。オールOKか。」

(…ただ、少し恥ずかしい…服とかもちゃんとサイズ合わせてくれてるのはいいけど、それ以前に結構肌出てるとこ多かったしなぁ…なぜ改善させなかった中学の私。)

肩出てたり右太もも出てたり挙句の果てには胸の一部が空いてたりする私の勇者服。

精神的にも成長したせいで多少の恥じらいが生じてるが…そんな暇はない。

…ブォンッ!!!!

ちひろ「…モードシールド。」

ガキィンッ!!

ちひろ「…さあ、勝負です…風さん!!」

 

ーーー友奈sideーーー

ポンッ

遊真「…!!あれって、試作品のだよな…!?」

三雲「それにしてはだいぶ姿が変わってるが…おそらく。」

友奈「わっ、牛鬼!久しぶり!!元気にしてた?」

牛鬼「…ジー」パタパタ

友奈「…あ、もしかして何か食べたいの?うーん…でも今変身してるし…」

千佳「…サラミありますけど、食べます…?」

牛鬼「…パァァァ。パクリ」モグモグ

友奈「あ、食べた!千佳ちゃんありがとう!!」

千佳「いえいえ…可愛いなぁ…」

三雲「トリオン兵も動揺、してるのか…?今のうちに…!遊真、東郷を!」

遊真「わかった!すぐ戻るからそれまでは凌げよー!」

三雲「わかってる!!」

東郷「あ、ちょっと待って。友奈ちゃん…」

友奈「東郷さん…」

東郷「…ちゃんと帰って来てね。」

友奈「…うん。任せて!!」

 

 

 

 

 

 

 

ボンッボンッボンッ

おとめ座が爆弾を生成して向かわせてくる。

(まだわかんないことだらけ…とりあえず!!)

友奈「迎え撃つ!!はあ!!」ドゴォンドゴォンボガァン

(…怪我は…なし!今回はトリオン体だから不安だったけど普通に攻撃をパンチで弾いたりしても壊れたりはしなさそう!!)

ブォンッ

友奈「!てやっ!!」ボゴォン!!

布攻撃は蹴りでガードする。

もうひとつも来るけど…

三雲「アステロイド!!」

千佳「ハウンド!!」

ボガガガガガガァァァァァァァァン

そこは修君と千佳ちゃんが対処してくれる。

友奈「二人ともありがとう!!」

三雲「問題ない!!戦うんだろ!?サポートしかできないが…」

友奈「それだけで十分だよ!!こいつとは一度戦ったことがあるから任せて!!」

千佳「はい!!」

ボンッボンッボンッ

ドゴォンドゴォンボガァン

ブォンッブォンッ

ボガガガガガガァァァァァァァァン

おとめ座と私たちの攻防がしばらく続く。

(えーっとたしか…トリオン?っていうのを消費するんだよね…そしたらこのままだったらジリ貧…かといって…)

修君たちが一度、おとめ座の御霊を出した時のことを思い出す。

(再生速度が早くてとても倒しきれるとは…

…アレって、今もできたり…?)

友奈「…勇者部六箇条!!なせば大抵なんとかなる!!当たって砕けろだ!!千佳ちゃん!修君!私に考えが!!」

遊真「なら俺も!加わらせろよ!!」ボゴォン

壁を突き破って遊真君も来る。

友奈「遊真君!!」

三雲「それで、考えっていうのは!?」

友奈「うん!あのね━━━━━━」

 

友奈「━━━━━ってことなの。できるかわかんないけど…それでも手伝ってくれる?」

遊真「…もちろん!現状他に突破策がないしな!」

三雲「ああ!ダメだった時はまた別なものを考えればいい!」

千佳「うん!!」コクコク

友奈「…ありがとう!!じゃあやるよ!!」

 

千佳「…アイビス+レッドバレット!!」ドンッ

ノロノロ

(…撃った!)

おとめ座までの距離、あと20m。

おとめ座「…!」

ボンッボンッボンッボンッボンッボンッ

友奈「作戦開始!ていっ!そりゃっ!えいっ!!」ドゴォンドゴォンボガァン

遊真「ボルト・トリプル+ブースト・ダブル!!」ドガガガガガガガガ

三雲「アステロイド!!」ガキキキキキキキ

爆弾を私と遊真君、修君で防ぐ。

残り、14m。

ボボボボボボボッ

友奈「勇者ぁぁぁぁぁぁ!!!キィィィィィィィック!!!!」ボガァァァァァァァァァァァン

13m。

遊真「ブースト・トリプル!せい!はっ!とう!!」ドガガガン!!

12m。

修「スラスター、オン!!」ズバァァァァアァン

11m。

その時だった。

おとめ座「…!!」ボォォォォォォォ…

遊真「…!?友奈!尻尾の辺りを大きく膨らませていくぞ!?」

友奈「わかんない!!私は見たことないよ!?」

三雲「…布が1本から2本になってたように、タメ攻撃、的なのが可能になってるとすれば!?」

残り、10m。

(…もしそうだとしたら!!)

友奈「早くどうにかしないと千佳ちゃんの弾が爆発に巻き込まれちゃう!!」

遊真「だがあれを至近距離で爆発させたら俺でもキツイぞ!?シールドも多分間に合わねえ!!」

9m。

三雲「二人とも!僕がやる!!遊真!チェインを!」

遊真「…ホントにいいのか?そしたらオサムは…」

8m。

三雲「…僕が今、そうするべきだと思ったんだ!他に理由は!?」

遊真「…そう言ったら最後、お前はテコでも動かねえよな!わかった!!チェイン・ダブル×2!!」

遊真君が鎖を2つ、壁から修君の手元へ。

…7m。

刻一刻と弾は爆発の範囲内に迫る。

修「…エクスード!!」

修君が壁に空いた穴の向こう、おとめ座の尻尾を挟むように展開される。

ビキビキッ

…そして修君の体にヒビが。

友奈「!?!?」

『警告。トリオン消費過多。』

6m。

…爆発圏内まで、あと1m。

三雲「…これで!!!最後だ!!!!エクスード!!!!!!!!」

…先程出したエクスードから出た2つのエクスード。

それは、今にも巨大爆弾を吐き出さんと膨らんでいる尻尾を押しつぶすように挟み込む。

…それによって。

おとめ座「…!?!?」ボギュギュギュギュギュ…ボガァァァァァァァァァァァン!!!!

…爆弾は、発射されることなく大爆発を引き起こした。

友奈「すごい…すごいよ!修く…修君!?」

…ビキビキビキッ

…修君の体には、全身にヒビが入り、今にも砕けそうになつていた。

三雲「僕は…大丈夫だ…!離脱せざるを得ないが…

…あとは…頼めるか!?」

友奈、千佳、遊真「…うん(おう)!!!」

『トリオン体活動限界。ベイルアウト。』

ボシュウウウウウウウウウウウウウンッ!!!!

修君の体が消える。

おとめ座までの弾の距離、2m。

おとめ座「…ッ!!」ブォンッブォンッ

起死回生の一手を封じられたおとめ座は布で防ごうとする。

残り1m。

遊真「それを俺がさせるかよ!スラッシュ・クアドラ!!!」ズバッズバッ

それを、遊真君が切り落とす。

…そして。

ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

弾はおとめ座に着弾。とてつもなく大きな黒い塊となっておとめ座を拘束した。

(…修君、見てる?上手くいったよ!!)

 

友奈『…っていうのなんだけど、そのためにはどうしても拘束か弱らせるかしないといけないんだ…』

三雲『…あの再生速度だと多分弱らせるのはかなり難しい。…でも拘束なら…千佳のアイビスとレッドバレッドで。』

遊真『あー…なるほどな。たしかにあれならよゆーだわ。』

友奈『…?どういうこと?』

三雲『アイビスはスナイパー用トリガーの中でも威力に特化したタイプ、そしてレッドバレッドは相手に重しをつけるトリガー。

このふたつを組み合わせることで当てさえすれば一切の動きができないほどの鉛をつけられる。』

友奈『なるほど!!じゃあそれで…』

千佳『ただ、元から遅いアイビスの弾速にレッドバレッドが加わることで全然当たる前に防げる速度に…』

遊真『ま、そこは俺たちで弾を守ろうということだ。』

友奈『勇者部6箇条、なせば大抵なんとかなる!やろう!!3人とも!!』

 

(みんなで作ったこのチャンス!!)

友奈「絶対無駄にしない!!

封印!!開始!!!!!」

おとめ座の周りを花びらが舞い、御霊が露出する。

遊真「うおっ!ホントに出やがった!」

友奈「これで!!」

封印。バーテックスを倒すための勇者の力の1つ。

バーテックスの急所、核である御霊を一時的に外に露出させる儀式。

(満開でもやれないことはないけど…神樹様がいない今は使えないかもしれないもんね!)

友奈「遊真君!」

遊真「おう!ユウナ!ブースト・セプタ!!!」

友奈「勇者ぁぁぁぁぁぁ!!!」

遊真「せぇぇぇぇぇぇぇのッ!!!!!」

友奈「パァァァァァァァァァァァァンチ!!!!!!」

私たちの渾身の一撃。

それはおとめ座の御霊を…粉砕した。

ボロボロボロボロ…

御霊を失い、おとめ座は崩れていく。

(あれ?前みたいに空に行かないのかな?)

千佳「遊真君!友奈さん!!」

友奈「千佳ちゃん!!さっきはありがとね!」

千佳「いえいえ。私はただ撃っただけですし…」

遊真「そー言わないの。初めての4人の勝利だな!」

友奈「…うん!!今夜はうどんだね!」

遊真「ホントにうどん好きだな…よし、ウサミパイセンにたっぷり買ってきてもらお。」

千佳「そういう話もいいけどとりあえず脱出してからね…まだ私たち孤立してるんだし。」

友奈、遊真「あっ…」

 

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「モードアロー!ふんっ!!」ビュンビュンッ

風「…!」ガキンガキンッ

ちひろ「レイピア!はあ!!」

風「!」

ガキキキキキキキ

ちひろ「からの!モードサイクル!!」ズバッ

シュバッガキンッ

ちひろ「チッ!ハーフシューズブレイド+ハーフブレイド!!」

ガキンッ

シュバッギギギギギ

ちひろ「…これだけやってもダメか…予想以上に厄介なものね、自動防御。」

ただでさえ攻撃範囲、防御範囲の広い大剣。それをかいくぐっても自動防御の装甲が攻撃を阻む。

(有効なのは数の勝負…ミニビット?いや出せるのは最大16…大剣に使ってる装甲まで出動されたら確実に防がれる…1度見せたら警戒される以上、決め手に取っておくべき。)

ちひろ「…もう少し戦って突破作を見つける!ダガー!!」

風「…!」ブンッ

ゴンッゴンッ

ちひろ「まだまだ!せいっ!はっ!とうっ!そりゃっ!」ブォンッブォンッブォンッブォンッ

ガキンッガキンッガキンッゴキンッ

モードダガーによる6連撃で大剣を弾き、バランスを崩させる。

(よし!このまま間髪入れずに!)

ちひろ「フルシューズブレイド!!!」

シュバッゴンッ

しかしそれはまたもや装甲によって防がれる。

(これもダメか!埒が明かない!!)

ビキッ…

(…今、かすかにヒビの入った音が…?)

ちひろ「…迅さんとの攻防ですでにガタが来てる…?…モードウイング!!」ビュンッビュンッビュンッビュンッビュビュビュビュビュビュ!!!!!

風「っ!?」

シュバッ

ガキンッ

ビュビュビュビュビュビュ…

シュバッ

ガキンッ

空を駆けるウイングで撹乱し、装甲に攻撃を加える。

しかし風さんもただ受け続けるはずもなく…

風「…ッ!!!!!!」パキッパキッパキッパキッ

ブンブンブンブンッ!!!!!

ちひろ「っ!モードシールド!!」ガキィィィィィィィン

大剣を装甲に分離、全てを使って範囲攻撃を繰り出してきた。

ちひろ「…応用性が広いわね…私が捕まってたら使わされてたかも。」

(とはいえこれで装甲は限界のはず…ミニビットじゃキツイから削りきりたかったのが本音だけど。)

ちひろ「…まあ大丈夫。モードミニビット!!」ババババババババ

ミニビットが後ろに展開される。

ちひろ「…行きますよ!!風さん!!」

風「っ!!!!」

オートクレールとデュランダルで切りかかる。

無論大剣で防がれるが…後ろのミニビットが動き出す。

風「っ!」パキッパキッ

それを対処するためにフリーの装甲、そして大剣からも2つの装甲が分離、対処へと向かう。

しかし、である。

迅「その思惑は叶わないよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

ズバババババババババァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!

バキバキバキバキィッ!!!!!!!!

迅さんの風刃によって、4つの装甲が切り裂かれる。

ちひろ「…信じてましたよ!実力派エリート!!!やるよネーさん!!行っけぇぇえええ!!!!!」シュババババババババババ!!!!!

風「っ…!!!!!」シュバッシュバッ

残った2つの装甲がミニビットを弾いていく。

…シュンッ!!

ズバッズバッズバッ!!!!!

風「っ…!」

3個のミニビットが刺さる。

ちひろ「…刺さりさえすれば!!やろ!モココ!!モードビッグビット!!!」

ズバァァァァアァンッ!!!!

ミニビットがビッグビットになり、風さんのトリオン体に大きく傷をつける。

ちひろ「このまま決めるよ、トラ介!!モードフルブレイド!!!!」

風「ッ!!」ガチャンガチャンバッ

お互いソードビットと装甲を戻し、ぶつかりあ…

パキッ

…う前、間合いを詰めたまさにその時に先っぽの装甲だけが外れる。

(…!)

そしてそのまま他のよりも早く私の頭を…

…ピタ ダ タ ダ ダ ダ タ

切り裂くことなく、寸前でかすかに動きを止めた。

 

ーーー少し前、風sideーーー

『…私は知ってます。あなたは頼まれたら断れない優しい人だって。

いつも、みんなが笑顔になるように頑張ってて、そうなった時に誰よりも嬉しそうにすること。』

声が、聞こえる気がする。

『…自分たちの使ってるシステムに重大な欠陥があって、それを支給者側が黙ってた時…今、そして未来に同じ目にあうはずだった人たちの分も怒れて、そして怒りを、自分の人生すら棒に振ることになってもぶつけられる人だって。

もし自分が事故にあっても周りのことばっか考えて…挙句の果てには加害者の運転手すら心配するようなどうしようもなく優しい人だって。』

こんなところで止まっているなと。

『…妹の最初の友達が少し元気なかっただけで、どんなに巻かれても、散々に言われても気にかけ続けて…何日も潰れたのに返ってきた答えが「なんでもない」だった…それなのに、「よかった!」って、万遍の笑みで言える、そんな素晴らしい人だって!!』

進めと、叫ぶ声がする。

『そんな風さんだから、もし樹ちゃんを傷つけたら…戻ったあと、一生自分を許せなくなる。だから!!!それだけは絶対にさせない!!!』

(…なんで私に…?あれ…そもそも私って…何を━━━━━━━)

『だって私は…私たちは…

勇者だから。』

(…!)

勇者。

なぜかわからないけど、すごい暖かくて、背中を押してくれる気がする。

(…きっと、何かやることがある。私を必要としてる人がいる。なのにここで止まってるわけには行かないわよね!!)

 

(…なんとか、ここまで来た…あと少しで根幹…

…しかし根幹に近いからか、色んなのが見える…私の記憶かなんかかしら…)

 

樹『お姉ちゃん!!』

 

風「…思い出した。私の名前は犬吠埼風。勇者部部長!!こんな何気ない記憶から思い出させてくれる辺りさすが樹ね!!!よーし!!このまま全速前進y」

シャー!!

風「…えーっと、あれってたしか私のこと拘束してたヤツよね…私が大声出したせいで見つかったの?…絶対捕まったらヤバいわよね…」

(…こうなればやることはひとつ。)

風「ダッシュで逃げてさっさと掌握して少しでもちひろに隙を作るのよはい決定蛇さんさよなら!!」シュバッ!!

 

ーーー今ーーー

風「チ…ひろ…ワタシノコト…はいい…ダカラ…今のウチニ…!!!」

ちひろ「風さん…」

(つらいでしょう…惜しむでしょ…ごめんなさいね…でもこれで少しでも顔が立てれたはz…)

しかし、現実とは非情なものである。

ちひろ「じゃあ遠慮なく。」

風「エッ?」

ちひろ「大虎滅空斬り!!」

(あれええええええええ!?!?想定してたのと違う!!なんか違う!!すごく違う!!たしかにちひろらしいといえばちひろらしいけどそこは少しは躊躇しよ!?いや私のことはいいって言ったけどそれでもちょびっとくらいは惜しんでほしいわよ!?待ってほゆとにこんな終わり方いやあああああああああああああああa)

そこで意識は途切れた。

 

 

 

 

 

ーーーアフトクラトルーーー

ーーーディエナsideーーー

ミラ「…刺客として送ったトリオン兵が全滅しました。」

ハイレイン「そうか…ご苦労だった。ということだがディエナ、どうする?今なら奴らは疲労している。全勢力を投入すればあっという間にケリがつけれるが。」

ディエナ「…いや、大丈夫。むしろこのままの方針で行くべきよ。」

ハイレイン「…奴らがさらに力を覚醒させるかもしれないのにか?」

ディエナ「ええ!むしろドンドン解放してもらいたいわね。そうすれば…枯れし大樹と欠けた月、その手がかりが得られるかもしれないもの。」

 

ーーーちひろsideーーー

風「…んあ?」

樹「お姉ちゃん!!」

風「い…つき…?」

樹「うん…!そうだよお姉ちゃん…!」

風「えっと…私はたしか…?」

ちひろ「敵に捕まって変なの付けられて傀儡化。私たちを襲った、ってとこです。元に戻ってよかったです。」

風「…そっか…迷惑かけたわね…」

樹「ホントにだよぉ〜!わけわからなかったんだから…」

風「ごめんごめん。だから泣かないの…」

ちひろ「いや泣くでしょ。行方不明だった姉が突然襲いかかった来たら。」

風「グサッ!!ちひろ、今のは痛い!めっちゃ痛いわよ!!少しは治りたての人を大事にする気持ちはないの!?」

ちひろ「自身を殺しかけた人を大事にする必要がどこにあるんですかねぇ…」

風「グサグサッ!!正論が心に突き刺さるわよ!?」

ちひろ「あとこれから忙しくなりますよ。敵は引いたみたいですけど友奈さんたちなも会わないと。あと今のところあなたが敵の唯一の手がかりなんだから何かしらでも覚えてること教えてもらわないと。」

風「うーん…それがさっぱりなのよねぇ…」

ちひろ「使えない…」

風「そう言いたい気持ちはわかるけど抑えよ!抑えよ!?」

樹「…くす。二人とも相変わらずだね。」

風「そうなのよ!ひどいと思わない!?」

ちひろ「もうそろそろ慣れましょうよ。」

風「いやその前にあんたがやめればいい話だからね?」

ちひろ「えー…」

風「そこ!露骨に嫌な顔しない!!」

ちひろ「…本当、よかった…グス。」ボソッ

風「…ふっふーん?」

ちひろ「なんですか気持ち悪い。」

樹「それは言い過ぎじゃ…」

ちひろ「あ、OK。なんですか気色悪い。」

風「私が言ってたら間違いなく変えてなかった上に結局悪化してる気がするのは置いといて、やっぱ心配してくれてたんじゃん??」

ちひろ「ごめん樹ちゃん、頭無事じゃなかったみたい。」

風「あんた曲がんないわね!?じゃあその目にかすかに貯まった涙はなn「トリガーオン。」ちょそれはタンマ!!待ってさすがに死んじゃう!!死んじゃう!!「問答無用。」逃げるが勝ちっ!!」シュバッ

ちひろ「逃がさないですよ?」シュバッ

樹「あ、お姉ちゃんもちひろちゃんも疲れてるんだから無茶はダメだよー!!」トッタッタ

敵は強大、おそらくこれからもかつての仲間が刺客として立ち塞がる。

…それでも、私達はたしかに少し、ほんの少しだけ取り戻したのだ。

幸せへの鍵を。




とある読者さんから場所のズレの報告あったので再喝です…申し訳ない


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8話 玉狛トうどんト精霊ト

この度は期間が空いて大変申し訳ありません…学祭があったり模試があったり風邪引いたり疲れで身体ぶっ壊したり講習あったり課題あったりでなかなか執筆時間と意欲を得られませんでした…
これからも似たようなことがあるかもしれませんが、ご了承ください。何卒よろしくお願いします。


ーーー6月10日ーーー

ーーー樹sideーーー

風「それでは!おっじゃましまーす!!」

樹「お姉ちゃん一応病み上がりなんだからいきなりおっきい声出しちゃダメだよ…」

友奈「さすが風先輩!!」

雪花「さすが…さすが?」

ちひろ「洗脳されてたのに加えて私がノしたのになんでこんな元気なんだこの人…」

竜治「ちひろはちひろでなんでボコってんだよ…」

雀「それは…うん。まあいつも通り風さんが地雷を踏んだんだよ。多分。」

竜治「まあそれしかないっすよねぇ…」

雀「うんうん…」

亜耶「??竜治君と雀先輩、どこ見てるんですか?」

雪花「あー、気にしなくていいよー。ツッコミの運命だから。」

亜耶「運命…?よくわからないですけどわかりました!!」

佳美「運命…運命…その血の運命〜…」

雪花「うん、佳美そっちじゃない。だから戻ってこようね?」

遊真「フムフム。随分と面白そうですな。」

雪花「やめて遊真、佳美をこれ以上暴走させようとしないで!!」

迅「いいね〜。こりゃしばらくは退屈しなさそうだ。」ボリボリ

鳥丸「小南さん、あちらの世界ではうどん以外の食べ物を手で食べるのがマナーだそうです。」

小南「えっ!?嘘でしょ!?」

鳥丸「はい。嘘ですから。」

小南「 ・ ・ ・ コラァァァァァァァァァァ!!!!」

ちひろ「…ほほう?」キラーン

東郷「あっ…小南さん、でしたよね。ご愁傷さまです。」

小南「ほらぁ!あんたのせいで新人さんにすら哀れられたじゃない!!」

レイジ「賑やかなのはなによりだが、全員の自己紹介は済ませて置きたいし、早く食堂に行くぞ。」

全員「はーい。」

千佳「あ、そういえばレイジさん、今回の侵攻があってゆりさんも来てるって。」

レイジ「なに!?どうしてそれを早く言わないんだ!?」

過去の中でも上位に入る規模の大侵攻。

私達はそれすら林藤さんの車という犠牲のみで切り抜け、ついにしばらく生活する玉狛支部に到着していました。

(まああのあとも大変だったけど…)

まずは勇者部のみんながお姉ちゃんに軒並み飛びついて、次に勇者姿のちひろちゃんや友奈さんに驚いて。

(本当なら本部でまた会議した方がよかったんだろうけど…そこは林藤さんがいってくれたし。感謝です…)

…そして、何よりも。

(…お姉ちゃんがいると、やっぱり安心するなぁ…)

風「…いつの間に手握ってくるなんてー!相変わらず可愛いわね樹はー!!」

樹「えっ!?いつの間に…」

友奈「無意識!風先輩のこと大好きなんだね!樹ちゃん!!」

ちひろ「…」ゴゴゴゴゴ

三雲「す、凄まじい熱気…」

雪花「あー気にしなくていいよ。ヤキモチ焼いてるだけだから。」

佳美「ちひろさんと樹さん、ものすごい仲良しですから…」

樹「…ちひろちゃんも。」ギュッ

ちひろ「…うん、ありがとね。」ギュッ

風「あんたらも今となっちゃだーいぶ共依存状態なったわよね…」

ちひろ「そんなことないと思いますけど。」

樹「うんうん。あくまで私とちひろちゃんは親友だよ、お姉ちゃん。」

風「…ムッキー!!隙がない!!私の樹を返しなさいちひろぉぉぉぉぉ!!」

ちひろ「返して欲しけりゃ自分で取り返してください。」ドヤッ

風「上等よ!!私の可愛い可愛い樹は誰にもわたさないんだからぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」バッ

ちひろ「いやなんで実力行使なんですか…ほい。」グイッ

風「ちょ、いだだだだだだだだだ!?!?」

飛びかかるお姉ちゃんとそれをかわして腕を捻るちひろちゃん…

ちひろ「えー…まだそんなやってないんですけど。もしかして少し体硬くなりました?」

風「はあ!?女子力キングの私がそんなわkいだだだ痛い!痛いからやめて!!」

樹「ちひろちゃんもお姉ちゃんもストープッ!!皆さんに挨拶しないかないといけないんだよ!?それはまたあとで!ね!?」

ちひろ「うっ…わかってるんだけど売られた喧嘩はつい買っちゃうから…」

風「‪絶対嘘よね!?夏凜‬の時とかはあっさりかわしてるわよね!?」

ちひろ「チョットナニイッテルカワカンナイデス。」

樹「もー…レイジさん、先に行っててもらっていいです…あれ?」

もう少し続きそうなので先にみんなを行かせようと辺りを見回しますが、いつの間にかみんないなくなっててかわりに長髪の女の人だけに。

樹「えっと…あなたは…?」

宇佐美「はじめまして!玉狛支部の凄腕オペレーター、メガネ姉さん宇佐美栞だよ!確か犬吠埼樹ちゃんよね?何か困ったら聞いてね!お姉さんがビシッと解決しちゃうから!」

樹「…はい!よろしくお願いします!ところでオペレーターって…?」

宇佐美「あれっ?聞いてない?トリガー使いのみんなを陰ながら支える結構な重要職なんだけど。」

樹「聞いて…ないですね…すいません、またの機会に詳しい話聞いてもいいですか?」

宇佐美「もっちろん!」

樹「ありがとうございます!…じゃあとりあえず…」

未だ続く2人の喧嘩(?)に目を向ける。

風「こうなれば奥の手じゃあ!!」

ちひろ「なんですかその世界一期待できない奥の手。」

風「ふっふっふ…そんな余裕こいてられるのも今のうちよ。」

ちひろ「事実言ってるだけなんですけど。」

風「いちいちあんたはちゃちゃ入れない!!必・殺!ヒマラヤ登山j「あの世に行きたいんですかそうですかなら行かせてあげますよ今すぐ。」ギャアアアアアアアアアアア!?!?」

(お姉ちゃんはどうして地雷踏み抜きにいくのかなぁ…!?)

樹「ちひろちゃんストープッ!!それ以上は本当にお姉ちゃん死んじゃうからー!!」トタタッ

 

ーーー東郷sideーーー

東郷「そうです!それをそうやって…」コネコネ

小南「こ、こうかしら…?」コネコネ

東郷「はい、そんな感じです!しかしすいません、小南さんもゆりさんも、私たちの要望聞いてもらって…本来なら私たちがやるべきなんですけど…」コネコネ

ゆり「あらあら、気にしなくていいのよ。これからしばらくは一緒に暮らすんだもの、その初日なんだから要望くらい聞かなきゃ。」コネコネ

小南「それにあんたらあの新型倒したんでしょ?あんたも場所の誘導とか攻撃情報提供とか、助かったってユーマが言ってたわよ。」コネコネ

東郷「いえ、結局は守られっぱなしでしたし…というかそれを言うなら小南さんたちこそ雀ちゃん達を守ってくれたじゃないですか!」コネコネ

小南「守ったのはレイジと鳥丸よ。私はいつも通り敵倒してただけ。」コネコネ

いくら自分たちが不利になるからといって、助けに来てくれただけでなく、勇者部のみんなの救出を約束してくれた辺りからわかり切っていたことだけれど、ボーダーの皆さんもいい人ばかりである。

上層部の大人の方々も少し怖い雰囲気出してる方々もいたけど、いい人な気がする。

現に林藤支部長は武器がなくても洗脳された風先輩に立ち向かって足止めしようとしてくれたそうだし、姪のゆりさんもこうやって手伝ってくださってる。

(こう見ると如何に大赦の組織内部が腐敗してたかが浮き彫りになるわね…)

戦う者に真実を隠すどころか偽情報伝える組織と戦う者の命最優先、要望等にも答える組織じゃ差が歴然である。

ゆり「それに友奈ちゃん達は陽太郎の相手してくれてるしね〜。」コネコネ

東郷「そういえば陽太郎君ってなんで玉狛に?」コネコネ

林藤陽太郎、7歳。

支部長さんの息子ではないと紹介があった。

ここまで過去最大規模の発言から数回は近い規模の侵攻はあったはず。それなのに小さい子を危ないところに連れてくる理由なんてボーダーにはない気がした。

ゆり「さあ?なんででしょうね〜」ニコニコ

(はぐらかされた…まあ何かしらの意図はあるんでしょうし、気にしないでおくべきかしら。この先親交を深めていけば話してもらえる日が来るでしょうし。)

小南「東郷ー!!いつまで生地のばせばいいのよこれー!!」コネコネ

東郷「あ、すいません!」

ゆり「…うふふ!」

 

ーーー雀sideーーー

陽太郎「とりゃー!こーか?」

友奈「おお!上手い上手い!!あとはここをこうシュッとして!とりゃー!」

陽太郎「なるほどな!つまりこーか!とりゃー!!」

友奈「おお!いい感じだよ!!あとはもっとビュンッてなるようにー!」

陽太郎「なるようにー!」

友奈「勇者パーンチ!!」

陽太郎「ゆうしゃぱーんち!!」

友奈「OK!!イェーィ!!」

陽太郎「いぇーい!!」

(息合ってるなぁ…)

ここは玉狛支部のリビング。東郷さんたちが料理作ってる間に色々と交流したりしてます。

(友奈さんって前から思ってたけど子供受けいいよね〜…純粋だからなのかねぇ…あ、このお茶おいしい。)

人数構成は私たちを助けてくれた7人に、支部長さん、玄関で会った宇佐美さんとリビングで紹介を受けたゆりさん、陽太郎君、ミカエル・クローニンさん、あとカピバラ?の雷神丸の12人+1匹、いわゆる少数精鋭というやつらしい。

(まあ陽太郎君に関しては入れていいのかわかんないけどねぇ…)

陽太郎「ふふん!きにいった!おぬしをおれのお嫁さん候補にしてやr」ドスッ

(わ〜子供らしいね〜可愛いね〜

…ん?今ドスッってなんか刺さる音しなかった?あれれ?)

壁に、包丁がぶっ刺さってた。

陽太郎「 ・ ・ ・ 」

雀「 ・ ・ ・」

陽太郎、雀「ぎゃああああああああああああ!?!?!?!?」

(あ、ダメ無理ー。)バタッ

 

ーーー竜治sideーーー

(東郷先輩が暴走したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?)

東郷「一体ダレヲ、オ嫁サンニスルッテ?」

陽太郎「あばばばばばばばばばばばば…」

友奈「東郷さん!?落ち着いて!?」

東郷「止メナイデ友奈チャン、今スッゴイ大事ナトキナノ。」

(いやあのですね東郷先輩、友奈先輩でも止められないってどうすりゃええんですか!?)

竜治「とりあえず抑えるしかねえ!!」ダダッ

その時である。

ゴッ

竜治「いっ!?」ドサッ!

何かに引っかかって転ぶ。

竜治「なんでこんな時にドジってんだよ俺は!?てかこんなところに障害物なんて…」

足元を確認すると…

そこにあったのはまさかの雪花先輩の足。

竜治「!?!?!?雪花先輩!?なんで!?今の明らかに故意ですよね!?」

‪夏凜‬さんがいない上に雀さんが失神してる今、間違いなくツッコミ兼ストッパー役のリーダーのはずなのだ。

雪花「まあたしかに私も止めなきゃっては思うよ…でもさ、あのガキンチョが二度と佳美に手を出そうと思わないようにする方が優先かなって。」

なるほど。すでに手遅れだったわけだ。

竜治「雪花先輩もだいぶやべーやつの道歩んでますよね…まあ俺は止めに行きますからね!?」

雪花「えぇ…いいじゃん。痛い目ってのは早いうちに受けておくべきもんにゃんだよ?」

竜治「それにしては痛すぎるでしょう!?」

雪花「は〜やれやれ。ただちょいと妨害はさせてもらうよ。」

竜治「実力行使もやむなしですよ…」

友奈「東郷さん!落ち着いてってばー!」ブンブン

東郷「約束シテ、二度トヤラナイッテ。サモナイト…」

ちひろ「何も起こりませんてか起こさせません☆」ガァン!!

東郷「んげっ!?」バタッ

ちひろ「全く…私が風さんに構ってあげてる間に…」

樹「楽しそうだったけどね♪」

ちひろ「絶対ない。」

風「ちひろあんた覚えときなさいよ!?玉狛支部のみなさん、うちの部員がご迷惑おかけしました…」

鳥丸「部屋のセットから帰ってきたが…どういう状況だ?これは…」

竜治「あの人に悪気はなかったんですよ多分ええきっと。」

鳥丸「…?とりあえずわかったが…誰か少し手伝いに来てくれないか?ご飯出来上がるまではもう少しあるようだし…人数が人数だからなかなか終わらなくてな。」

小南「こっちも誰か来なさーい!!東郷の代わりー!!」

竜治「部屋の整理は俺が行きます!!ちひろは…」

ちひろ「うどんでしょ。言われなくても分かってる。」

風「うどん!?」ガバッ

ちひろ「そうです、うどん。」

風「よーし!そういうことなら私に任せなさい!!」

樹「じゃあ私は竜治君の方行くね。」

亜耶「私は気絶しちゃった雀先輩のこと見てます。」

風「よーし!じゃ「それじゃ各自散開!!」ちょ、ちひろ!セリフ取らないの!!」

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

宇佐美「オペレーターっていうのはね、通信の媒介や戦闘の記録、データ収集や解析、戦闘員のトリオン体のチェック、レーダーに映った敵のタグ付け、部隊合流までの道筋、逃走経路、背面・側面の敵やスナイパーへの警戒情報、敵の移動予想、戦術展開図を隊員にリアルタイムで伝える裏の花形なのよ!情報の並列処理能力とか取得選択が重要な役職だね。どう?やりたくなったでしょ?」ズルズルッ

ちひろ「勇者部ってほとんど勇者なり防人経験してるんでやりたがる人あまりいないんじゃ…」ズルズルッ

宇佐美「なんですと!?」ズルズルッ

亜耶「落ち込まないでください!私やりますから!!」ズルズルッ

佳美「私もです!教えてください宇佐美さん!」ズルズルッ

宇佐美「おお…!お姉さん張り切っちゃうぞー!!」ズルズルッ

ゆり「うふふ。頑張ってね宇佐美ちゃん。」ズルズルッ

遊真「うむ…美味い!うどんとはこんなに美味かったものか…」ズルズルッ

迅「さすが本場香川、プロじゃなくてもこの味とはね。」ズルズルッ

風「まあ歴だけでいえばもう7年くらいになりますからね〜。経験の賜物ってやつです。」ズルズルッ

遊真「…あ、そういえばだけどあのー、なんだっけ…」ズルズルッ

ちひろ「…精霊のことですか?」ズルズルッ

遊真「そう、それ。どんな感じなのかなと。」ズルズルッ

友奈「なるほど!ちょっと待ってね!牛鬼ー!出ておいでー!」ズルズルッ

シーン…

友奈「あれ?おっかしいなー。牛鬼ー?ビーフジャーキーあげるよー!」ズルズルッ

シーン…

樹「おかしいですね…前なんて友奈さんの言う事聞かずに出てきてたくらいなのに…」ズルズルッ

友奈「色々と前と状況変わったからなのかなー…ってあれ!?さっき出したビーフジャーキーがない!?」ズルズッ!?

樹「ええ!?」ズルズッ!?

千佳「…もしかしてあれじゃ?」ズルズルッ

牛鬼「(๑¯﹀¯๑)」モグモグモグ

友奈「ほんとだ!!なんだ〜もうすでに出てきてたんだね〜」ズルズルッ

遊真「牛なのにビーフジャーキー食うのか…案外可愛いなお前。」ズルズルッナデナデ

牛鬼「(⑅ˊᵕˋ⑅)」

友奈「あ、気持ちよさそう!遊真君ナイスー!イェーイ!!」ズルズルッ

遊真「イェーイ。」ズルズルッ

(そういうことなら私も出そっかな…)

ちひろ「コマ、全員出たりってことは?」コショコショ

コマ『すまないができないな。トリガーとは別に精霊用のボディが格納されてるんだが、それがひとつしかない。

トリガー本体も使えば2匹行けるかもしれんが…』コショコショ

ちひろ「なるほどね…じゃあとりあえず今は1匹ずつでいいよ。」コショコショ

コマ『わかった。』コショコショ

ピロンッ!

千佳「わ、また出た。」ズルズルッ

樹「あ、ちひろちゃんのコマ!久しぶりだね!」ズルズルッ

コマ『ああ、久しいな。』

樹「喋った!?」ズルズッ!?

ちひろ「あ、なんか私の勇者システムって天の神の介入が入ってたらしくて…これ最終決戦の時に知ったんだけどね。」ズルズルッ

樹「えええっ!?」ズルズッ!?

東郷「ちひろちゃんのだけアップデートが上手くいかなかったりしたのはそういうことだったのね…」ズルズルッ

ちひろ「さすが須美さん、鋭い。あ、せっかくだしみんな紹介します?」ズルズルッ

陽太郎「きになるぞー!もしかしたら雷神丸のおともだちもいるかもしれないからな!」ズルズルッ

亜耶「ちーちゃんお願い!」ズルズルッ

ちひろ「よし来た。まず私の相棒で人懐っこい犬のコマ。」ズルズルッ

コマ『よろしくたn…』

ちひろ「コマ、キャラ崩壊。」

コマ「…アンアン!!」

雪花「もう1回みんなに喋ってるとこ見せてるから手遅れだと思うの私だけ?」ズルズルッ

雀「いや私もです。」ズルズルッ

ちひろ「で、2番手は猪突猛進、猪のウリ。」ズルズルッ

ウリ「ウリュ!!」フンスッ!

友奈「元気だよね、この子!牛鬼ー、ウリだよー!」ズルズルッ

牛鬼「(*´∇`)」

ウリ「ウリ!!ウリリー!」

ちひろ「3番手、みんなの姉御、鼠のネーさん!」ズルズルッ

ネーさん『ちひろが世話になったね。これからよろしく頼むよ!』

雀「いやさっきみたいに止めないんかい!?」ズルズッ!?

ちひろ「ネーさんはホントになんでもできてですね…友奈さんの祟りの録音とか『MANEKI』での風さんの録音とかもネーさんの賜物です。」ズルズルッ

友奈「あれを!?」ズルズッ!?

風「あれ録音してたの!?」ズルズッ!?

ちひろ「気になることはとりあえず確かめる主義なんで。」ズルズルッ

竜治「お前冷静な顔して無茶するよな…」ズルズルッ

遊真「なるほど、オサムと同じタイプか。」ズルズルッ

三雲「そ、そうなのか…?」ズルズルッ

鳥丸「司令塔なのに命かけやすいから似てはいるだろう。」ズルズルッ

ちひろ「まあそんなことは置いといて、4番手、静かな居眠りさん、牛のモーモー!」ズルズルッ

モーモー「モ〜( ˘ω˘ )」

千佳「あ、可愛い…」ズルズルッ

ちひろ「ついでにモーモーの前で牛関係の食べると死守しようとしてくるので注意です。次、5番手!元気第一、虎のトラ介!!」ズルズルッ

トラ介「ガオー!!」

小南「声でかっ!?耳元で叫ばないでよ!?」ズルズッ!?

鳥丸「小南さん、あまり大きい声を近くで聞きすぎると鼓膜破れて治らないらしいですよ。」ズルズルッ

小南「えっ!嘘!?」ズルズッ!?

鳥丸「はい、嘘ですから。」ズルズルッ

小南「おいこらァァァァァァァァァ!!!」

ちひろ「…次、みんなのアイドル、兎のウサピョン。」

ウサピョン「ウササ〜♪」

亜耶「わあ!可愛いな〜!」ズルズルッ

ウサピョン「ウサ?ウッサ〜!」

佳美「癒されますね〜」ズルズルッ

ちひろ「あややと佳美ちゃんの癒され笑顔が見れたところでの7番手、食べるの大好き、龍のタッツー。」ズルズルッ

タッツー「りゅ〜!」

牛鬼「(๑°ㅁ°๑)‼ヾ(o´∀`o)ノ」

タッツー「りゅ〜!りゅ〜りゅ〜!!」

キャッキャキャッキャ

ちひろ「…あとは牛鬼の仲良しその2です。」

東郷「ウリも含めてよく3人で遊んでたわよね。」

遊真「なんでそれをトーゴーが知ってるのかは触れないでおく。」ズルズルッ

雪花「優秀。」

ちひろ「次、ツンデレ、蛇のヘボン。」

ヘボン『ちょっと待って。ツンデレって何ツンデレって。』

ちひろ「え?だってマルルに『あああああ!聞こえないー!!私は何も聞こえないー!!』別にヘボンに聞かせようとしてるわけじゃないから聞こえなくていいんだけど…で、ヘボンは『ストープッ!!シャー!!』」

ゆり「あら可愛い。うふふ。」

レイジ「そ、そうですね…」ズルズルッ

雀「ほんとにレイジさんってゆりさんいると頼りがいが消えるね…」

ちひろ「そろそろ次行くか…『ちょっと待ちなさーい!まだ誤解とけてn』次はヘボンが言ってたクールイケメン、馬のマルル!」

マルル『よろしく頼む。』

宇佐美「おお!漂うイケメンオーラ〜!」

風「私の女子力には劣るけどなかなかの男子力持ってそうね〜」ズルズルッ

樹「男子力って何お姉ちゃん…」

ちひろ「次、のんびりマイペースな羊、モココ。」

モココ「メ〜」

竜治「…普通?」ズルズルッ

ちひろ「…確かに普通の羊と特に変わりないかも?」

竜治「1匹くらい普通なのいるかもしれねえって思ってたがやっぱりか…」ズルズルッ

ちひろ「まあ次、イタズラ大好きウッキー…早速イタズラしようとしない!」

ウッキー『ぐぇー…なんで!イタズラすることの何がダメなのさー!!』

ちひろ「迷惑かかる。」

ウッキー『ねえ前から言ってるけど話の派生のしようのない返し方だけはやめてって。』

ちひろ「うん、知ってる。だからこう言ってるの。」

ウッキー『いじわるー!!』

ちひろ「好きなだけ言いなさーい。ここでうどに天かす追加〜」

三雲「か、完全にいなしてる…」

遊真「迷惑かけないからって返さない辺りあの猿も根はいい奴なんだな〜」ズルズルッ

ちひろ「で、ラスト。分析鳥バーさん。」

風「あ、長と鳥かけた。」ズルズルッ

雪花「かけましたね。」

東郷「完璧にかけてましたね。」

バーさん『笑わせれればラッキーだったくらいにしか考えとらんから大丈夫じゃ。』

ミカエル「少し思ってたのと違った。」

バーさん『よく言われる。といってもちひろからだけじゃが。カッカッカッ!』

ミカエル「分析屋なんでしょう?もしかしたら世話になるかもしれません。」

バーさん『ワシの主はちひろじゃからちひろが許可を出せばいくらでも力になろうぞ。』

ミカエル「ああ、頼む。」

遊真「これで全部か?あ、ごちそうさまでした。」

ちひろ「そうなりますね。」

風「よく考えてみるとちひろの精霊って干支モチーフなってるわよね〜」ズルズルッ

雪花「あ、ホントだ。」

ちひろ「なんでかは私は知りませんよ?誰か知ってるー?」

コマ『いいや。なるべく一貫性を持たせたいとかそんな感じのテキトーな理由だったはずだ。』

ちひろ「そっかぁ…まあ私が深く考えすぎただけか。」

風「そうそう。あ、ちひろおかわり〜」ズルズルッ

樹「まだ食べるの…?」

レイジ「もうだいぶ遅い、雨取達は帰るのと、お風呂わいてるから順番に入ってけ。」ズルズルッ

一同「はーい!」

 

 

 

 

ーーーちひろ・樹の寝室ーーー

樹「スピー…」

ちひろ「…コマ達、起きてたりする?」

コマ『精霊に寝る必要はないからな。」

ちひろ「…ホントに、嬉しかったんだよ?みんなが帰ってきてくれて。」

コマ『聞くまでもなくわかってる。毎年あの日にケージ引っ張り出して、エサ入れてたらな。』

ちひろ「知ってたの?」

コマ『概念的な存在になってたからな。』

ちひろ「そっか…風さんもコマも帰ってきたし、私は幸せだよ。」

コマ『…気がかりなんだろ?乃木園子のこと。』

ちひろ「…っ。」

コマ『…必ず取り戻すぞ。』

ちひろ「…うん。」

樹「スピー……。」

改めて抱いた思いと共に、激動の一日は、夜は、更けていくのだった…



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9話 技ヲ磨ク

ーーー6月20日、ボーダー訓練室ーーー

ーーーちひろsideーーー

風「…いい加減少しくらいあたりなさいよー!!!」ビュンッビュンッ

ちひろ「風さんの狙いが分かりやすすぎるのが悪いですねはい。」サッサッ

樹「うーん…えいっ!」ビュビュビュビュッ

出水「お、90点2個に70点5個、50点3個、10点10個。だいぶ精度上がってきたんじゃねーか?」

樹「ありがとうございます!!」

ちひろ「ワイヤーとは結構勝手が違うのにすごいよ樹ちゃん!!」サッサッ

樹「ありがとうちひろちゃん!」

風「避けながら樹を褒めるなー!!樹褒めること自体はいいけどさー!!」

ちひろ「ハイハイスイマセンデシター。」

私たちがここに来てからもう1週間、鬼怒田さんができる限り私たちの要望に合わせた調整を行ってくれたトリガーを元に、私達は訓練を開始していた。

(しっかし結構融通が聞くんだね…あんな刀型だった孤月を風さん好みの大剣にしちゃうんだから…)

他には雀さん用にレイガストをシールド特化にしてもあったり、東郷さんのために新たな銃型作ったり。

よほど大変だったのかだいぶ怒り気味だったが。

樹ちゃんと雪花さんのは無理があったらしいのと、本人達がシューターを希望したのでそこまでの調整はなし。

竜治君はレイガストを盾、孤月を刀のスタイルで望んでる。

そして私と友奈さんは勇者の力の宿った…「フラワートリガー」と名づけられたやつに慣れるための訓練。

(体が覚えてるからそこまでやることないと思うけど…もしかしたら何か追加されてたりするかもしれないし。)

で、今は何をしてるかと言うと…

風「攻撃手段スコーピオンだけって厳しすぎんでしょ!?」

ちひろ「自分から言ったんじゃないですか。『前あった小刀ポジのスコーピオンにも慣れたいから力貸してー!』って。だから私はやってあげてるだけです。」

風「ぐぬぬ…でも全然当たらないじゃない!!」

ちひろ「それは風さんの狙いがガバガバな上に分かりやすすぎるんですよ。コツは最初に言ったじゃないですか。」

風「ならせめて隙わざと作りなさいよー!!」

ちひろ「私スパルタなんで。大剣の防御は許可してるんだから上手く使って隙つくりやがれください。」

風「鬼ー!悪魔ー!サディストー!人でなしー!!」

ちひろ「あ、スキあり。」ズバッ

風「んぎっ!?不公平ー!!」ガキンッ

ちひろ「えー…めんどくさい…」

風「そもそも肝心の実践を見せないじゃない。さすがに言葉だけであとは放任じゃキツイわよ…」

(…樹ちゃんも見てあげたかったんだけど…)

ちひろ「1回だけ攻撃解禁します。私はいつもの2本に加えてミニビット1本で。」

風「サンキュ!じゃあ…いっくわよー!!」

ガキンッガキンッ

風さんの大振りの一撃一撃を2本で的確に受けていく。

(やっぱり完全にいなせはしないか…振りかぶる姿勢がいいもんこの人。)

風「どうしたの!もっと!来なさい!!」ブォンッ!!

ちひろ「1本じゃ受けれないんです、よっ!!」ガキンッ

風「ははーん?それって!つまり!さっ!!」ブォンッ!!ブォンッ!!ブォンッッッ!!

ガキンッガキンッガキンッ

風「このまま行けば!!私の!勝ちってことよねっ!!」ブォンッ!!ブォンッ!!ブォンッッッ!!

ちひろ「まあ!そうなります…ねっ!!」ガキンッガキンッガキンッッッ!!

事実、徐々に角に追い詰められてきている。このままいけばいずれ衝撃の逃げ場がなくなり、防御を崩されて真っ二つにされるだろう。

…このままいけば、の話だけど。

ビュンッ!!

風「いっ!?」

風さんの手を上から降ってきたミニビットが切り裂く。

風「いつのまにっ…!?」

ちひろ「隙あり…です!!」ズバァン!!

そしてできた隙を逃さず一閃。

結果として真っ二つになったのは私じゃなくて風さんになった。

(すぐにトリオン補充されるからすぐ治るけど。)

風「そういえばミニビット1つだけあったわね!?」

ちひろ「ええ。これで実感できたんじゃないですか?小刀とかナイフとかを正面から戦う時に使うなら大事なのは…」

樹「ちひろちゃーん!!」

ちひろ「ん?どうしたの樹ちゃん。」

樹「出水さんが呼んできてって。」

ちひろ「出水さんが?わかった。風さんは練習しててくださいね。」

風「え、ちょっと!?1人でどうやれと!?」

ちひろ「そこをどうにかやるんですよ。」

風「投げっぱじゃない!?」

ちひろ「風さんの女子力をもってすれば余裕ですって。」

風「当たり前よ!!任せなさい!!」

樹「お姉ちゃん…」

 

ちひろ「で、用事ってなんですか?」

出水「いや、太刀川さん経由で迅さんから戦闘スタイル聞いてな。めちゃくちゃな感じだそうじゃねえか。弾の軌道常に考えながらの二刀流とか。」

ちひろ「あ、ありがとうございます。ちょっと諸事情で1年半くらい暇な時間があってですね…それで特訓してたんです。」

出水「いや特訓しまくればできるようなもんじゃねえぜ?ましてや形も変化させてなんてな。」

ちひろ「神樹様が使いこなせないものを渡すはずがないのでまあお察しですよ…それより、ホントの要件は?」

出水「…頼まれたブツは、ちゃんと届いたってよ。」

ちひろ「お、ありがとうございます。となると…」

出水「そうそう。報酬の俺との模擬戦、やっともらうぜ?」

ちひろ「…わかりました。ちょっと2人にも言ってくるので待っててください。」

 

 

 

 

ーーー雀sideーーー

雀「ぐえっ!!」ガキンッ

遊真「大丈夫?鬼怒田さんにもうちょいだけ強度あげてもらうか?」

雀「いやいやそんな滅相もない!!私は今のままで十分だようん十分。」

遊真「ならいいんだけど。」ザンネンザンネン

鬼怒田さんが調整してくれたトリガーを使った訓練、さすがに防人の頃よりは受けた時の衝撃が大きくて、私は割かし苦戦してた。

(とはいえ慣れなきゃなぁ…私は勇者じゃないもん。たしかにあの時歌野さんからもらったけど…一時的な可能性が高いし。)

勇者としての神聖な力、それを勝手に手渡しできるとは思えない。

(その場合私はフラワートリガーだっけ?絶対手に入らないもんなぁ…慣れるしかないよねぇ…強度自体はこっちの方が強いっぽいから慣れればなんとかなる!!多分!!きっと!!)

雀「よぉーし!!頑張るぞー!!遊真さん!ワンモアチャン!!」

遊真「おっ!なら遠慮なく行くぞー!トリガー切り替えて…」

(…トリガー切り替え?えーっと?基本的にトリガー使いの人のトリガーはひとつ、例外として迅さんや遊真さんみたいな黒トリガーも使える人はもしもの時のために2つ持ち。そしてさっきまでは通常のトリガー。ってことは…まさか…)

雀「ちょ、遊真さんタンマタンマそこまでやってっては言ってn」

遊真「ブースト・トリプル!!」

雀「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ーーー自販機前ーーー

雀「ひどい目にあった…」ゴクゴク

雪花「お疲れさん。」

まさかの黒トリガーの一撃くらった私はとりあえず自販機でテキトーに飲み物買って飲んでた。

ついでに雪花さんと会ったのは偶然。

雪花「で、そんなことはあったようだけど全体としての調子は?」

雀「防人の頃よりは強度があるんですが、少々受けた時の衝撃が大きくてですね…まだ慣れるにはちょいと時間かかりそうです。友奈さんは絶好調ですね。東郷さんも結構。」

雪花「お、だいぶいい感じじゃん。こりゃこっちも負けてらんないわー。」

雀「というと?」

雪花「まあ私があんまり進んでないのはお察しだろうけど、竜治君はレイガストをシールドから戻しちゃったりとか、旋空弧月だったかな?を意図しないタイミングで発動させちゃったり切り替えに難あり。オペレーター組もまだそこまでだねー。」

雀「やっぱり難しいですよねー。まあ慣れなくちゃいけないんですが。」

雪花「うむ。でなんだけどさ。」

雀「ん?なんですか?」

雪花「そのオペレーター組2人に頑張ってるご褒美としてケーキ買ってあげたいんだよね。だけど私もうちょいあって。頼めたりする?」

雀「あー、この先の予定はあんまないですしいいですよ。亜耶ちゃんが喜ぶ姿は私も見たいですし!」

雪花「契約成立だにゃあ。」

雀「ええ!私におまかせください!!」

 

ーーー住宅街ーーー

ーーー樹sideーーー

樹「だいぶ見慣れてきたよね、この道も。」

風「そうね〜たかが1週間、されど1週間だわ…しっかし珍しいわね、樹が買い物手伝いたいだなんて。」

樹「手伝いたいのが1つ、あとは…ちょっとちひろちゃんのことで。」

風「ちひろ?…あー…なるほどね。」

樹「うん…元気ないんだ。心配かけさせまいといつも通り振舞ってるけど…」

風「真っ先に戻ったのが私だったから乃木のこと思ってるんでしょうね…樹の負担軽減なったのはいいけどちひろの負担増量したら意味ないでしょ私!!」

樹「お姉ちゃんが帰ってきて負担は軽減されたと思うよ?元気ないのはその前からだし…」

風「え?まさかぁ。」

樹「ううん。お姉ちゃんの思ってる以上にお姉ちゃんはちひろちゃんに信頼されてるよ。だからあそこまで遠慮なくいじるんだし。」

風「そういうもんなのかしら。なら嬉しいんだけど…あ、いじられるのは嬉しくないからね。私ドMじゃない。」

樹「大丈夫、言われなくても分かってるよ。で、どうしたらいいと思う…?」

風「そうねぇ…あ、スメブラ持ってきてるんだっけ?」

樹「え?うん。同棲の可能性をちひろちゃんが考えて親睦深めるのに使えるんじゃないかって。」

風「よし!なら明日にでもそれをみんなでやりましょう!運がいいのか悪いのか、ゲーマーの竜治や東郷、防御の鬼雀がいるんだもの。それに玉狛にも1人は猛者いるだろうし。それで少し吹き飛ぶはずよ。」

樹「たしかに!!さっすがお姉ちゃん!」

風「えへへ〜それほどでもないわ〜。

ま、極論言えばちひろは樹が心配してくれてるって知るだけでだいぶ軽減なると思うけどね。」

樹「そっか…でもそれは確実にあとからちひろちゃんがさらに隠そうとするから諸刃の剣だよ。」

風「あ、分かる?あえて黙っておいたんだけど。」

樹「お姉ちゃんの妹だから。」

風「納得。じゃあ一段落したところで!店着いたわね。明日に備えてお菓子も買ってく?」

樹「それいいね!九千坊えびせんとかちひろちゃん喜びそう!」

風「こっちにあるかどうかだけ問題だけどとりあえず探しましょっか!」

樹「うん!!」

…ビジジッ

店に入ろうとしたその瞬間に、それは聞こえた。

(この音って…たしか…)

風「ん?何かしら今の音。」

樹「…お姉ちゃん!トリガーの用意して!」

風「え?どうしたのよ一体!?」

樹「来るの…ネイバーが!」

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!

『緊急事態!緊急事態!警戒区域外、本部内に複数のゲート発生!一般市民のみなさんはただちに避難してください!!』

風「…樹、避難誘導よ!」

樹「もちろん!みなさんのこと守らないと!!」

 

ーーー雀sideーーー

雀「ねえなんで?なんで?なんでまた来るの?なんで今回も外にいる時なの?ねえ教えてよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

どうも雀です。またネイバー来ました。私は亜耶ちゃんと佳美ちゃんへのご褒美買いに絶賛外です。終わりました。

(いや待って私。今の私には…)

雀「トリガーがある!!」バッ

…だが、その手に握られてたのはかつての防人のシステムの入ったスマホ。

雀「えっ?????」

(あっれれー?おっかしいなー。たしかこのポケットに入れたはずだぞー?

そもそもこれなんて持ってきてなかったぞー?)

記憶を辿る。

(…あっ。)

雀「…スマホとトリガー間違えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「宇佐美さん!!友奈さんと通信繋いでください!!あと星座級、人型は!?」

宇佐美『えっとね!人型、星座級?それぞれ一体ずつ!!』

友奈『じゃあ1人で1匹?だね!!』

ちひろ「私の方が人型に近いのでそっち行きます。友奈さんh『じゃあ私は星座級!』ほんと察しいいですね。任せました!」

勇者部の、2度目の戦いが幕を開けた。



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10話 "あなたを守る"

ーーー友奈sideーーー

友奈「…いた!!」

突如として再来したネイバー。

その中でも今私たちしか有効打である封印が必要な星座級討伐へ向かって、今ちょうど白と濃い赤の巨体を発見したところだった。

(濃い赤と白…何座だったっけ…?)

その時である。

グラグラグラ

友奈「うわっ!?地震!?」

グラグラグラ…

(おさまったけど…もしかしてあのやつが…?)

友奈「となると…そうだ!東郷さんが言ってた!やぎ座は地震起こせるって!!」

ブォンッ

4つある足のひとつを飛ばしてくる。

友奈「勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!パァァァァァァァァァァァァンチ!!」ドガァァァァァァァン

(たしか4つまとめてのがヤバいんだよね…気をつけないと!…って、その構えは!?)

ギュルルルルルル…

まるで私の心を読んだかのように、足が回転を始める。

(えええー!?どうしよう!?ちひろちゃんの満開で相殺できたくらいの威力なんでしょ!?避けるにもここで避けたらとんでもない被害出ちゃうし!?)

友奈「…勇者部六箇条!!なせば大抵なんとかなる!!受け止めるしかないよね!!」

ギュルルルルルル…

友奈「さあ!来い!!」

発射される、その直前。

ドガガガガガガガガ

ズバァァァァァァァァン!!!

ボガァァン…

足と本体を繋ぐ糸が破壊され、発射寸前の足は地面を軽くえぐって止まる。

(直撃したら絶対痛そう…って今の攻撃って誰の!?)

加古「A級6位加古隊、加古望よ。あなたが新入りさんね?」

黒江「同じくA級6位加古隊、アタッカー、黒江双葉です。」

友奈「そ、そうですけど…助けに来てくれたんですか!?」

加古「付近のはあらかた倒してきたからね。有効打があるだけで倒せるなら迅や太刀川が倒してる、だから1人では苦戦するんじゃないかってね。」

友奈「…!ありがとうございます!!」

黒江「で、どうするんですかこいつ。あの細いところであの硬さなら攻撃に用いてるところは多分切れないですよ。」

加古「私がアステロイドで削るわ。2人でそこから破壊、結城ちゃんは隙を見て封印だったかしら?を。」

友奈「それであってます!任せてください!!」

黒江「わかった。」

加古「じゃあ…アステロイド!!」

ビュビュビュッ…ドガガガガガガガガ!!!!

加古さんのアステロイドがやぎ座に降り注ぐ。

黒江「旋空弧月。」

友奈「勇者ぁぁぁ!!パァァァァンチ!!」

ズババババ

ドゴォォォォォォォン

そうしてできた傷を私と双葉ちゃんで広げ、足を落とす。

…キュルル、ズガァァァァァァァァン!!!

やぎ座が残った足の1つで加古さんを狙いますが…

加古「あら?どこを狙ってるの?私はここよ?」

いつの間にか真後ろに!

黒江「足のつなぎ目の糸は脆いみたいね。」ズバンッ!!

そうしてる間に3つめの足を双葉ちゃんが落とす。

友奈「よし!封印行きます!!」

パアアアアアア!!!!

封印が発動、御霊が顕現する。

(出た!…そういえばこいつのって…)

ブシュウウウウウウウ!!!!

ビジジッ!!

黒江「っ!?」

加古「煙!?しかもこのキズ…小さなトリオンの刃が…!?」

友奈「すいません!!こいつの御霊は毒ガスを出すんです!!」

加古「それは厄介ね…双葉、平気?」

黒江「これくらいは。あと…3年前のことなんて忘れてて当たり前なので別に気にする必要ないですよ。」

友奈「…ありがとう!!本体はかなり脆いはずなのでガスさえ払えば…!」

加古「なら私に任せなさい。双葉、トドメは頼むわよ?」

黒江「了解。」

友奈「よーし!!勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!キィィィィィィィック!!!」ボォォォォォォォ!!!

まず勇者キックで外側のガスを減らし、御霊の場所候補を減らす。

加古「その姿、見せなさい。ハウンド!」

ビュビュビュビュビュビュッ!!!!

次に加古さんがハウンドで御霊の姿を炙り出す。

黒江「これで終わりよ。韋駄天!!」

ズバズバズバンッッッッッ!!!!

そして、双葉ちゃんがトドメをさした。

加古「…これでミッションコンプリートね。」

友奈「…すっごーい!!双葉ちゃん今ものすごい早く動いてたよね!?どうやったの!?」

黒江「韋駄天、私の使うオプショントリガーです。予め設定したコースを目で捉えられないほどの速さで動く。たったそれだけです。」

友奈「なるほど〜!!」

(本当にトリガーって色んな種類あるなぁ…)

グラグラグラ

加古「さて、別な場所の援軍に行きましょ…ってあら?地震?」

グラグラグラ

友奈「あれ?ほんとですね…でもやぎ座はもう倒したのに…」

グラグラグラ

黒江「…待って。この音少しずつ近づいてきてない?」

グラグラグラ!!!

加古「…2人とも!迎撃用意!」

友奈、黒江「はい!(了解。)」

…バシャンッ!!

 

 

 

 

ーーー風sideーーー

風「焦らずに避難してくださーい!!」

樹「シェルターはこっちです!」

私と樹は市民のみなさんの避難誘導に専念していた。

本当なら戦いたいところだけれど、今日訓練し始めたばっかな以上、リスクを犯すわけにはいかない。

(できれば早く正隊員の人と合流したいわよね〜…今んとこはバムスターだっけ?しか来てないからなんとか倒せてるけど、戦闘用なんて来られたら詰みよ詰み!!)

そしてその願いは唐突に叶えられることになる。

…ドガァァァァァァァァァァンッッッッ!!!

樹「きゃっ!?」

風「一体何!?」

凄まじい音と共に、家をなぎ倒して何かがとんできたのである。

風「…あなたはたしか…B級の諏訪さん!?」

諏訪「お前らッ…早く逃げろ!!」

風「ちょっと待ってください!せめて何があったかだけでも!」

諏訪「そんなことを言ってる時間もなさそうだ…こいつはちーとばかし…強すぎる!」

…ッッッドガァァァァァァァン!!!!

再び一閃、凄まじい攻撃が諏訪さんのトリオン体を消し飛ばす。

樹「この速さと威力って…」

(あの攻撃…黄色い槍…?…となると…)

タッタッタ…

風「来るわよ…樹、構えて!」

樹「…うん!」

「デ、次ハドイツダ?」

(…やっぱり、か…!!)

黄色い、私たちの知るさそり座に酷似した服に身を包んで土煙の中から現れたのは…

…乃木園子。

樹「…園子さん…!」

ソノコ「アァ…タシカコノ体ノ主ハ、ソンナ名前ダッタナ。

ツマリ貴様ラハ勇者部カ。」

風「…樹、私の時もこんな感じだったわけ?」

樹「いや、そもそも喋りすらしてなかったよ?」

ソノコ「当タリ前ダ。我ガ稀有ナダケダカラナ。事実コレハ創造主スラ知ラナイ。」

(ほへ〜…これからも出てきたりするのかしら。まあそんなことは置いといて…)

風「逃げるわよ!!」シュバッ

樹「その言葉を待ってた!!」シュバッ

ソノコ「ナニィ!?ダガ逃ゲラレルト思ッテルノカ!?」

(なるべく時間は稼がないとね〜あと驚くのね…意外だったわ。)

乃木は…いや今はソノコとでも言うべきか、は手のユニットから再び針を形成する。

(とはいえあの威力…避けても被害でかいわよ…レイガストならともかく孤月ベースの私の大剣じゃ受けきれないでしょうし…)

ソノコ「サッキノヤツラノヨウニ、消シ炭ニナルg…ン!?」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

どこからかの射撃が針を破壊する。

時枝「あの槍、なかなかの硬さだね。クロスファイアでやっとか…」

木虎「私と佐鳥先輩で本体をやります。時枝先輩と嵐山先輩は槍の破壊を優先でお願いします。」

嵐山「わかった!」

樹「…嵐山隊のみなさん!!」

時枝「ごめん、少し距離が離れてたから遅れた。」

嵐山「前回のことも考えて犬吠埼さん達の友達なんだろうが…この人だけに諏訪隊、海老名隊、間宮隊の3隊がやられてる。

ここは俺たちに任せてくれ。」

風「ありがとうございます!!避難は私たちに任せてください!!行くわよ!樹!」

樹「うん!お姉ちゃん!!」

 

ーーー木虎sideーーー

木虎「はあ!!」シュッ!

ソノコ「フンッ!!」ガキンッ

私のスコーピオンを作り出した槍で受け止める。

(この硬さ…あと数撃入れなきゃ切れないわね…まあ私だけならだけど。)

ズドンッ!!

佐鳥『木虎ちゃん〜!命中した〜!?』

木虎「命中はしましたが…」

ソノコ「スナイパー…厄介ダナ。」シュウウウウ…

木虎「…槍で防がれてますね。」

佐鳥『うそ〜!?!?』

木虎「でも狙撃はやめないでくださいね。その分嵐山先輩と時枝先輩の負担を減らせるので。」

嵐山「時枝、次が出たぞ!」

時枝「了解です。」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

ソノコ「遊撃用モスグニ破壊サレルカ…カトイッテ出スノヲヤメレバ4対1…勝チ目ガ消エル…」

木虎「へー…4対1になれば勝てないの、ね!!」シュッシュッシュッ!!

ソノコ「アアソウダ!!ダガ遊撃用ガ戻レバ問題ナイ!!」ガキガキガキンッ!!

木虎「そう、つまり人数に関しては平行線ってわけ。まあ戦況に関しては…そうじゃないけど!!」ダンダンダンッ!!

ソノコ「アステロイド…ダガソノ程度!!」ブンブンブンブンッ!!

私の射撃に対し、相手は槍を回して防ぐ。

(…まあ、読み通りかしら。)

ギシッ…

ソノコ「…!?!?コノ糸ハ!?」

木虎「隙ありよ!!」ビュンッ

ソノコ「クッ!!」

ザシュッ!!

拳銃から1発だけ発射されてたスパイダーを使って急接近、斬撃をお見舞いする。

相手の方は間一髪でかわしたけど、それでもかすり傷は負わせられた。

ソノコ「コイツ…!!」

木虎「まだまだ行くわよ!!!」

ビュビュビュビュビュビュッ!!!!

高速移動とスコーピオンによる全方位からの斬撃の嵐。

相手も的確に防いではいるが、捌ききれていない。

そこに加えて…

綾辻『木虎ちゃん、右に避けて!』

木虎「了解です!」サッ

ズドンッ!!ズドンッ!!

ソノコ「ギッ!?」

佐鳥『よーしよし!今度こそは的中!見たっすか!俺のツイン狙撃!!』

木虎「さすがです。ありがとうございます。」

佐鳥先輩お得意のツイン狙撃が敵の針創成部に命中、ヒビを入れる。

ソノコ「マダ壊レテイナイガ…コレハ…キツイゾ…!!」

木虎「言ったでしょう?戦況は変わりうるって!」ザシュッ!!!!

そして今の一撃で槍の一部を切り裂く。

ソノコ「…ッ!!!!」

木虎「終わりよ。その体…持ち主に返しなさい!!」シュッ

ソノコ「…確カニコノ強サガ大量ナラ…返サネバナラナイダロウ…ダガ、ソレハ今ジャナイ。」

ドスッ

木虎「…かっ…はっ…!?」

…何かに、胸を貫かれた。

(…このキズ…おそらくもうベイルアウトは時間の問題…何…?今私は何で攻撃されたの…?槍の先端は削いだ。遊撃用のは嵐山先輩と時枝先輩が止めてる。なら一体何が…)

後に繋げる為にも、情報を。

そうして後ろを見て確認する。

木虎「…そういうこと…!?」

ソノコ「アア。誰モ、「1度離レタ針ハ操レナイ」トハ言ッテイナイカラナ。」

…そう、私の胸に刺さっているのはついさっき切り落とした槍の先端部の針、そのものだった。

(…ってことは…まずい!!)

木虎「佐鳥先輩!今すぐ場所を移動してください!!」

佐鳥『え?どうした?諏訪さん達の見るにこの距離なら投げられても届かn』

木虎「形がなくなってない限り全ての針を操れるんです!!たしかその近くにも…!!」

佐鳥『なんだって!?そりゃ急いで…ぐわああああああ!!!!』バシュウウウウウン!!!

木虎「佐鳥先輩!!」

佐鳥先輩のいた所から光が本部へ向かっていく。

…ベイルアウトした証拠だった。

(本体を抑える私たちがやられた…せめて嵐山先輩たちを!)

木虎「嵐山先輩!時枝先輩!!今すぐ離脱を!!2人では…こいつは…」ビキキッ

『トリオン体活動限界、ベイルアウト』

バシュウウウウウン!!!

 

ーーー嵐山sideーーー

嵐山「佐鳥!木虎!」

時枝「まずいですね…僕達2人だけじゃ槍のゴリ押しで終わりますよ…」

嵐山「くっ…綾辻、他のA級は!?」

綾辻『近くにいません!2キロほど先に風間隊がいますけどラービット三体相手にしてるため援軍としては…!』

嵐山「よし!合流して乱戦に持ち込む!」

時枝「了解です。」

ソノコ「移動…逃ゲテ他ト合流スルツモリカ?ナカナカ賢イ…ダケド、ソウ現実ハ甘クナイ。」

綾辻『人型から強力なトリオン反応!飛ばす攻撃、来ます!!』

嵐山「タイミングを読んでテレポートで回避する…ぞ…」

…奴は、2本の槍の両方をこちらに向けていなかった。

…まだシェルターの方を向いていた。

嵐山「ッッッッッッ!!!!時枝!!」シュンッ

時枝「敵の作戦勝ちですね…」シュンッ

東と西、正反対の方向に発射された2つの槍、それをひとつずつ…俺と時枝が受け止める。

(…すまない、勇者部のみんな。)

『トリオン供給機関破損、ベイルアウト』

そして、ベイルアウトした。

 

 

 

 

ーーー雀sideーーー

雀「ア゙ァァァァァもう最悪だよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」トボトボ

どーもみなさん、加賀城雀です。

2回目の大規模侵攻です。

私は自衛の手段を得たと思ったら忘れてきました。

自分のことながらもう致命的です。

さらには近くに避難シェルターないです、本部付近はトリオン兵多すぎてとても通れません。

まさに悪夢。

(まだなんとか見つかってないけどさぁ…もう嫌だよぉ…助けてメブゥ…)

まあ風先輩のことからメブは敵側濃厚だから助けるどころか殺られるけど。

雀「…自分で自分にツッコめてる辺り意外と冷静なのかも?まあたしかあと1キロくらいでシェルター着くし頑張ろー!おー!…いや1キロて何、遠いって。」

そう言いつつも咄嗟に隠れてモールモッドをかわす。

グラグラグラ

(ふう…危なかった。何が起こるかわかんないし、安全第一〜!…そういえば随分地震多いなぁ…)

ッッドッガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

ホントに何か起こった。

雀「噂をすればなんとやらって言うけどさ〜…それ人物だけで十分なんですけど!?」

土煙の中から人の影が見えた。

(えっ、人型?マジで?私詰んだ?人生詰んだ?)

友奈「いったた…」ブシュー…

雀「友奈さん!?」

友奈「雀ちゃん!?どうしてここに!?」

雀「あ、えっとですね…ちょっと亜耶ちゃんと佳美ちゃんが頑張ってるからご褒美をと…」

友奈「その最中に敵が来ちゃったと…それは災難だったね…ってそうじゃない!!雀ちゃんは早く逃げて!!」

雀「んえっ!?」

(…そうか!!友奈さんをここまで飛ばしたやつがいるのか!!)

グラグラグラ

雀「ってこんな時にまで地震っt「来る!!」えっ!?」

バッシャァァァァァァン!!!!

…何が起こってるかまるでわからなかった。

地面がまるで水のようになって中から見たこともないやつが飛び出してくるんだもん、当たり前だよね。

…今までも散々ありえない景色は見てきた。

ただ今回のは間違いなく上位に来る。

いや何、地面を泳ぐって、ホントに何。

雀「友奈さん、ヤバいのはわかった。だけどあれ何??」

友奈「えっとね…」

 

===数分前、友奈side===

…バシャンッ!!

加古「新たな大型…!?」

黒江「レーダーに映らなかったのも奇妙ですね。」

友奈「これ…うお座です!!地中とかに潜れたりしたけどレーダーに映らない力まではなかったはずなのに…」

加古「…たしか前来た乙女座も強力になってたのよね?」

友奈「あ、はい!爆弾の生成速度が上がってたり、布が二本になってたり…」

加古「おそらくそれと同じよ。より隠密、奇襲に特化したタイプになったんだわ…厄介ね。」

黒江「でも、単体なら。」

友奈「連戦になりますがこのまま倒しましょ…光ってる…?」

黒江「…!!山羊座の残骸があいつに…!」

加古「…合体、した…!?」

(嘘…これじゃまるで…あの獅子座じゃん…!!)

ドポンッ

黒江「また地中に!」

加古「どこから来るかわからないわ。二人とも警戒して!!」

グラグラグラ

黒江「また地震…!?」

その次の瞬間だった。

ドガンッ!!!

加古「下から!?!?」

友奈「加古さん!?大丈夫ですか!?」

黒江「こいつ…姿を見せずに攻撃を…!?ひゃっ!!」ズドンッ!!

友奈「こうなったら…!勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!パァァァァァァァァァンチ!!!!」

ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!!!

地面に勇者パンチを放って、引き出そうとするけど…

友奈「ダメ…私の攻撃だったら地面は硬いまま…きゃっ!?」ズドンッ!!

加古「こう来るなら…陽動して攻撃を!!」

…ズドンッ!!

加古「来たわね…テレポート!!」シュンッ

スカッ

加古「黒江!!」

黒江「了解!韋駄天!!」

加古「ハウンド!!」

ズババババッ!!!

ドガカガガガガガッ!!!!

2人の攻撃が命中する。

ドポンッ

すると足は再び潜り込み…

…グラグラグラ!!!!

黒江「また…!?」

加古「明らかに狙って起こしてきてるわね…地震で調子を乱して自分は安全なところから狙撃…メテオラ持ってくればよかったかしら。」

バッシャァァァァァァン!!!!

黒江「きゃっ!!」ドゴォォォォン!!!!

加古「うっ!!結城ちゃん!私たちが戻るまで身の安全を第一にして!!」ドゴォォォォン!!!!

友奈「加古さん!双葉ちゃん!!」

合体トリオン兵の体当たりを受けて、2人は飛ばされてしまう。

ギュルルルルルル…ボンッ!!!!!

そしてそのまま尻尾をこっちに飛ばしてきて…

友奈「牛鬼!バリアお願い!!」

牛鬼「( *`・ω・)」

ビジビジビジッ

(勢いを…相殺しきれない…!!)

友奈「きゃあああ!!」ドゴォォォォン!!!!

 

ーーー雀sideーーー

雀「なるほど、つまりやべーやつじゃないですか!?」

友奈「そうなの!!だから雀ちゃんは他の人と逃げて!!」

雀「でも友奈さんも1人は無茶ですよ!?」

友奈「そうかもしれないけど私しかいないもん!勇者部6箇条、なせば大抵なんとかなる!!加古さん達がすぐ戻ってきてくれるし!」

雀「うーんそういうことなら任せますよ!?」

友奈「バッチシ任せて!!」

(大丈夫。友奈さんは勇者に選ばれた人だよ?経験も断然違うだろうし、絶対なんとかしてくれる。だから私はこれで正しいんだよ。うん。…正しい、はず。だよね…?メブ…)

友奈「えっ…雀ちゃん危ないっ!!」ドンッ

雀「えっ。」

ドサッ

突如、突き飛ばされた。

雀「友奈さん!?合体バーテックス…は…」

…友奈さんは、合体バーテックスに突き上げられていた。

雀「…友奈さん!!」

友奈「雀ちゃんは…早く逃げて…!!」

精霊バリアのおかげで叩きつけられるだけで済んでるみたいだけど、バーテックスの方はトドメと言わんばかりに角(?)を回転させて撃ち出そうとしている。

(…どうする?あのままじゃ確実に友奈さんはやられる。でも私にはトリガーはない、防ぐことはおろかただの共倒れになる。ってことは逃げるのが正解…?…うん、それしかないもん。大丈夫、他の人が来るって言ってたもん。来てくれるよ…)

雀「私は悪くない…悪くな…」

 

友奈『あ、牛鬼!勝手に出てきちゃダメだよー!!』

雀『あ、友奈さんの精霊…もしかして前勇者部行って落ちた時に無事だったのって…』

友奈『あ、うん!!牛鬼が精霊バリア貼ってくれたからなんだ!!あの時は雀ちゃんは見えてなかったと思うけど…』

雀『ですね…しっかしさすがですわ!あの一瞬でそこまで計算して動けるなんて!』

友奈『いや、そんなことはないよ?』

雀『え?でもそうじゃなきゃあそこで私を助ける意味なんて…自分も怪我するのに…』

友奈『えーっとね…なんていうかー…そのー…体が勝手に動いた、かな!』

雀『…えっ、それだけですか!?』

友奈『うん!!人を助けるのに理由なんていらないから!!』

 

…踵を返し、友奈さんとバーテックス…今はトリオン兵だけど、の間に入る。

友奈「雀ちゃん!?なんで!?」

雀「大切な友達すら守れずに、何が勇者だああああ!!!」

…とは言ったけど、心はだーいぶ荒れてた。

(死んっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!完っ壁に死んだよこれぇぇぇぇぇぇ!!!絶対痛い!!絶対痛いよこれ!!だってめっちゃ回転貯めてたじゃん!!肉が抉られながらあの世行くんだろうなぁ!!嫌だなぁ!!せめて一思いにやってほしいかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

久しぶりに大荒れとなっていた。

とはいえ私の生存本能はかなり優秀なようで、そんな状態でも目を閉じて手を握り、踏ん張る姿勢を取る…その時である。

カチッ

( ・ ・ ・ 今カチッて音したよね?絶対なんか押したよね今?何!?なんで私にこんなに不幸が畳み掛けてくるの!?私の家に呪具でもある!?ほらぁ腕になんかずっしり来たぁ!!もう回避すら封じられたじゃんバッドエンド一直線じゃんいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁまだ死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)

ドヒュウゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!!

(あ、冥界の扉が開いた音した。お父さんお母さん防人のみんなごめん一足先に逝く私を許してくださいぃぃぃぃぃ!!!)

ギギギギギギギガキンッッッッ!!!

(おっっっっっっもい!!重いよ予想通りだけど!!…ん?…痛みは?)

衝撃は来た。すっごい来た。…なら即座に来るはずの凄まじい痛みは?

(…あー、もしかして感じるまでもない速度で旅立ったのかな?不幸中の幸い、なのかなぁ…)

友奈「…雀ちゃん、すごい…」

(へ?すごい??というか死んだはずなのになんで友奈さんの声?)

さすがに訳が分からなくなってきたので目を開けて状況確認。

(えーっとまずは腕に盾。手を離すと2つに分離。続いてクリームっぽい黄色の謎の服。右胸に何かの花の模様…)

雀「なるほどなるほど?あーそういうことか、私勇者に変身したんだ。

…いや変身したんだじゃないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?!?!?!?

いや説明はつくさ!!感情は昂りまくってたし!!カチッの音はフラワートリガーだろうね!!腕の重みは盾!!いやでもさ!!これはなくない!?え!?何!?私の初変身これなの!?あんまりすぎない!?」

友奈「ありがとう雀ちゃん!!助けてくれて!!」

雀「いやいや…私なんか今までずっと友奈さんに助けられっぱなしで…」

友奈「そんなことないよ!雀ちゃんはいつも元気でこっちも元気もらえるし、真剣な時に脱線しそうになった時も止めてくれるし、何より優しいもん!!雀ちゃんが分かってないだけで私は今までたくさん雀ちゃんに助けられてるよ!」

雀「友奈さん…」

友奈「あ、そうだ!!さん付けじゃなくしよう!!雀ちゃん的にはそう呼びたいんだろうけど、私たち同じ学年だし!そんな敬遠しなくていいんだよ?」

雀「うーん敬遠してるってわけじゃないんですけど…まあ気が向いたら。」

…ドポンッ

友奈「あ!また潜った!!」

雀「またあのヤバいのが来るのかぁ…ん?加古隊ですっけ?のふたりが来ればなんとか行けそうじゃないですか?打ち上げ攻撃だと本体が出てくるし。」

友奈「…たしかに!!そこを一斉攻撃すれば!!」

雀「…囮と守りは私に任せて、友奈!」

友奈「じゃあ私が攻めて攻めて攻めまくるね!雀ちゃん!!」

 

ーーー風sideーーー

風「…なんで、あんたがここに…」

ソノコ「倒シタカラニ、決マッテイルダロウ?」

…再び、目の前にソノコが現れていた。

(嵐山さんたち…!!)

樹「…お姉ちゃん。」

風「ええ…わかってる。少しでも被害を減らすわよ。」

ソノコ「ヤラセルト?個人的ニ取リ逃シガ出ルノハ嫌ナノダヨ。ダカラ…ココデ果テヨ。」

風「樹!!」ダッ

樹「うん!!」ダッ

槍の発射と同時に走り出す。

(私の記憶が正しければ、あれはギリギリ避けられる!!)

ソノコ「…細メニ作ッタ、スピード特化型ダ。」

…もう、すぐそこまで来ていた。

(…ダメ、かわしきれない!!)

ちひろ「はああああああああああ!!!!!」ザザザザザザザッズバァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

樹「…ちひろちゃん!!」

ちひろ「ごめんね樹ちゃん、遅れた!!」

風「ちひろ!今回の相手は…」

ソノコ「ホウ?コイツハ…」

ちひろ「…風さんと樹ちゃんは避難を。1キロくらい先にシェルターがあるはずです。」

風「さっきまで誘導してたんだから言われなくてもわかるわよ!…無事でいなさいよ。」

ちひろ「いわか。」

樹「言われなくてもわかってます、だって。」ダッ

風「変に略したわね!?」ダッ

 

ーーーちひろsideーーー

ソノコ「サテ、倒サセエモラオウ…」

ちひろ「…それはこっちのセリフだよ。…園姉。」




余談ですが彼女の右胸に出てきた花の名前はカランコエ、花言葉は「あなたを守る」です



追記 誤字訂正しましたm(*_ _)m


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11話 "なるべく諦めない"

ーーー警戒区域付近、ちひろsideーーー

数々の妨害を突破し、私はついに人型━━体を乗っ取られた園姉と対面していた。

ちひろ「…」

ソノコ「…」

…静寂を破ったのは、ガレキの落ちる音だった。

ちひろ「モードビッグビット!!」

ソノコ「フンッ!!」

ガッキィィィィィィィィィィィィンッッッ!!!!

私の剣と園姉の槍、ビッグビットと尻尾群がそれぞれ激突する。

(嵐山さん達や諏訪隊から情報は得てる…ビまずは想定の範囲内。)

ちひろ「ソードビット!!」

距離を取ってビッグビットからソードビットに戻す。

ビュンビュンビュンビュンッッ!!!!

ズバッズバッ!!

飛んでくる尻尾をかわしつつ、避けきれないものは剣で防ぐ。

その上でソードビットを飛ばす。

まあ、槍でなぎ払われるけど。

(ゼロ距離で尻尾の直撃をくらえばシールドでも防げない。かといって私に有利な形を作るには直接当てれないと…なら。)

ちひろ「モードウィップ!!」

ズババババババババッ!!!

ソノコ「ナッ!?」サッ

ちひろ「逃げられるなんて思わない方がいいですよ。」ズババババババババッ!!!

ソノコ「コレデ3個目…ドレダケ変形スルト言ウンダ…!?」

ちひろ「12種ですよ?モードダガー!!」ドゴォンッッ!!

ソノコ「グッ!!」ギギギッ

近づいて槍に直接一撃をねじ込む。

ソノコ「…コイツッ!!」ババババババッドガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

ちひろ「モードウイング。」シュンッ!!

多少かするけどなんとかかわす。

(ここまでは順調…気がかりなのは嵐山隊がやられたアレをいつ出してくるか…できればもう少し優勢になって、周りの落ちてるやつを破壊してからが望ましいけど…)

ソノコ「コレホドノヲ的確ニ使イコナシテイル…出シ惜シミシテル暇ハナイヨウダ!!」

ブウウウウウウン!!!

世界はそんなに上手くできていない。

噂をすればなんとやらが如く、落ちていた尻尾を展開する。

ちひろ「…チッ。」

ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンッッ!!!!!!!

少しずつかわしていくものの、量が量、かわしきれない時が来る。

ちひろ「…モードシールド!!」

ギギギギギギッ!!

シールドを展開、受け止めようと試みる。

…ビキキッ!

(やっぱりダメか…!)

ドガァァァァァァァァァァアァァァァァァァァン!!!!!

ソノコ「…マズ、機動力ダナ。」

右足を持ってかれた。

ちひろ「…モードウイ〈サセヌ!!コレデ終ワリダ!!〉

瞬時に園姉が私の周りに尻尾を展開する。

(スピード型とパワー型の二重展開…かわせない!)

ザザザザザザザッ

…そのまま、突き刺した。

 

ーーーソノコsideーーー

ソノコ「…コレデ5組目、カ。サテ、マタ奴ラヲ追ワネバナ…」

(シカシコノ二重展開攻撃…使エルナ。コレデ更ニ強クナッタ。)

そのまま利用するために、尻尾を引き抜…

…けなかった。

ソノコ「…!?!?」

(動カヌ!?マルデ何カニ刺サレテルカノヨウニ…!!)

ちひろ「…ボーダーに来れて、よかった。」

ソノコ「ッ!!アレハ避ケラレナイハズ!!」

ちひろ「シューターの方々のあの状況に合わせた応用性、加えてフラワートリガーになったことでソードビットの形を従来以外にも変化できるようになったこと…」

ソノコ「…ヤット抜ケタカ!!」

やっとこさ引き抜いて、彼女の体を確認する。

その体は…

ちひろ「ミニビットよりも細く、鋭く…!新形態、モード"ニードルアーマー"!!」

棘のある球体に覆われていた。

 

ーーーちひろsideーーー

モココ『私が最初だ~嬉しいな~』

ちひろ「ホントはぶっつけ本番にはしたくなかったけどまあ仕方ないよね。このまま畳みかけるよ!!タッツー!!」

タッツー『園姉ちゃんと美味しいご飯食べるために頑張るよー!!』

ソノコ「クッ…来イ!!」

ちひろ「何事も応用!さっきの長さを維持しつつ2つずつ合わせ、平面型にすることで空気抵抗を減らす…モード"ソードブレッド"!!」ダダダダダダダンッ!!!!

ソノコ「サッキト同ジコトヨ!!」ブウウウウウウン!!!

園姉はソードブレッドをソードビットと認識し、再び槍を旋回、防ごうとする。

(たしかに基本的にはかわらない…ただブレッドは立体感をなくして空気抵抗を減らし、鋭さを上げ、何より直線的な動きをさせることでスピードをとことん上げる型。)

…ザクッ!

ソノコ「刺サッ…!?チッ!!」ビュンッ!!

1個が槍に刺さったことで、なんとか園姉は残りを回避。

ソノコ「コレハ…マサカ貴様…!」

ちひろ「あれ?もしかして自分のがパクられたとか思ってます?自意識過剰すぎますよ?所詮あなたのはスピードか威力かしか取れなかったんですし。」

ソノコ「コッイツ…!!」

ちひろ「あ、そんなあなたに特別に情報を!

…ソードブレッド、もう帰ってきてますよ?」

ソノコ「ッッッッッッ!?!?」ザザザザッ

(3発かすり、1発右太ももに切断しきれずとも命中。)

ソノコ「…消シッ飛バスッッ!!!」バッブウウウウウウン!!!

散々コケにされて頭にキたのか、近くにあったマンションの屋上まで移動、距離を取った上で今まで出してなかった特大の槍を形成、こっちに放とうとしてくる。

ちひろ「なら私も…モードフルアロー!!はあああああ!!!」ヒュウウウウウウウン!!!!!

ソノコ「消エ…ヤガレェェェェェェェェェ!!!!」ヒュウウウウウウウン!!!!!

ッッッッボガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

私のフルアローと園姉の特大槍が衝突し、凄まじい爆風が周囲に吹き荒れる。

ちひろ「ウッキー!」ボソッ

ウッキー『うわぁエグいこと考えてるー!まあ僕も大賛成だけど!!』

煙の中を一気に駆け上がる。

そして…

ちひろ「モード"ランス"!!!」ズバッッッ!!

ソノコ「貴様…ドコマデモォォォォォ!!!」ガキィィインッ!!

ランスで奇襲。

あちらが想定してなかったこともあり、マンションの端の方まで追い詰める。

ソノコ「今度ハ至近距離デ特大槍ヲクラワセテクレルゥゥゥゥゥ!!!」

ちひろ「やるよトラ介!!モード"アックス"!!…吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

園姉が特大槍を完成させるよりも早く。

ガードに用いた出来かけの槍ごと、近くの三階建ての屋上に叩きつける。

ソノコ「ガッッ!!!」

ちひろ「モードデスサイズ!!これでッッ!!!」

鎌に変形、そのままマンションの屋上から…

ちひろ「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

首を刈り取…

 

園子『…春信さんの話聞いてね?昔のこと思い出しちゃった。2年…あと数ヶ月もしたら3年だね…前のお役目を終えて、体の機能も、親友も、気づかないうちに妹も失ったあの日のこと。』

 

(…ッッッ!!!!)

 

ちひろ『園姉…私気にしてないよ?仕方なかったことなんだし…』

園子『やっぱちっひーは優しいね〜!…だからね、思ってもみなかったんだ。

こんなふうにまたわっしーやちっひーと、ましてやミノさんも一緒に学校に通って、勇者部の活動をやれるなんて。

…これも、ちっひーが頑張ってくれたおかげだよ。ありがとう、ちっひー。』

ちひろ『…そんなことないよ…最後の戦いで、忘れ去られたあの日から…私の時間は止まったままだったんだよ。

忘れられたことで変に考えて、信じれなくなって、塞ぎ込んで。

…勇者部に入ったあとも、どこかでは心を許してなかった。7体同時襲来のあとは特に、ね。

…私が今を歩み出せたのは、勇者部の…樹ちゃんのおかげなんだよ。

…こう考えると多分私も考えてなかっただろうなぁ。こんな幸せな日々を過ごせる日が来るなんて。

…いいよ、おいで園姉。その代わり私からもいい?』

園子『もちろんなんよ〜!はい!ギューっ!!』

ちひろ『ふふっ。ギューっ!!』

園子『いつもと比べて大胆なちっひー、いいよ〜!!』

ちひろ『いつも手厳しくしてるからたまにはしてあげたいなって。』

園子『優しい〜!…これからもよろしくね、ちっひー!!』

ちひろ『うん、これからもよろしく、園姉。』

 

…鎌は、園姉に届く寸前で止まった。

ちひろ「…っ。」

ソノコ「スキッアリィ!!!」ザクッドッガァァァァァァァァァァン!!!!

そして園姉のユニットから直接繋がった尻尾を鞭のように使い、私を刺してそのまま地面に叩きつける。

トリオン体は、そのまま解除された。

ソノコ「…何ガ起コッタカハ知ラナイガ結果オーライダ。殺スツモリマデハナイガ…我ヲ散々ニコケニシタ、ソノ落トシ前ハ付ケサセテモラウ。」

(…わかってる。わかってるんだ。あんなのは園姉じゃないし、倒しても死ぬわけじゃない。むしろ倒すことこそが園姉を助けることになるんだって。でも…)

ちひろ「…できない…あはは、ホントダメだな私…

…ごめん、園姉…たとえ死なないと分かってても…助けることにつながるって分かってても…私には…園姉にトドメをさすなんてこと、できないよ…」

ソノコ「…」ブンッ!!!!!

園姉が尻尾を投げる。

細いのと殺すつもりはないって発言からおそらくかなり威力を抑えてるんだろう。

(…心に傷、残しちゃう。ごめんね…)

樹「…アステロイド+アステロイド…ギムレット。」

ドガガガガガガガガァァァァァァンッ!!!!

風「ちひろ!大丈夫!?」

…尻尾を撃ち払い、樹ちゃんは…私の前に立った。

私の隣には、風さんも。

ちひろ「…すいません。助けるためと分かってても、トドメ刺せなくて…」

樹「…ちひろちゃんは、すごい色んなことができるんです。

勉強とか、運動ら野球以外は部活並にできて、料理も上手だし、意見まとめるのも出すのもお手の物で…あ、性格もいつも冷静だし、優しいし、頼りになるし。

…でも、女の子なんです。驚かされるとすごい慌てるし、1人でなんでも抱え込んで無理することもあるし、トラウマだって持ってるんです。

…だから、誓ったんです。あの夜に。

私がダメな時はちひろちゃんが、ちひろちゃんが無理な時は私が、2人とも挫けそうな時はお互いに支えあって、乗り越えようって。

…ちひろちゃんの笑顔は、私が取り戻します。だって、親友だから。」

樹ちゃんがトリガーを解除する…そして手に握られていたトリガーは…キレイな緑色をしていた。

風「…全く、少しは頼りなさいっての。…あ!そうそう言い忘れてたわ。今日の夕飯、天ぷらうどんにするから。」

…それは、かつて園姉がうちに来た時に、最初に4人で食べたものだった。

風「だーかーら!あんたの仕事は1つよ。安全な場所で笑顔作って帰ってくるの待ってなさい。ね?」

ちひろ「…はい…!」

涙が、止まらなかった。

 

ーーー樹sideーーー

樹「…お姉ちゃん、ちひろちゃんは?」

風「安全なとこに避難させたわ。」

樹「よかったぁ…これで心置きなく戦えるね。」

ソノコ「…準備ハイイノカ?」

風「ええ!!犬吠埼姉妹の力、見せてやるわ!!」

樹「その体は園子さんのものです。勇者部のみんなのため、東郷さんのため、ちひろちゃんのため…返してもらいます!!」

 

 

 

 

 

 

ーーー警戒区域内ーーー

風「…って言ったはいいけど、どうしたもんかしら…」

樹「予想以上に相性が悪かったね…元からいい人なんてそうそういないのかもしれないけど…」

私とお姉ちゃんは今、ソノコさんの猛攻を凌ぐために廃墟に身を隠していました。

風「私の大剣なら尻尾を切り裂けるけど隙が大きくて間に合わない。樹のワイヤーはまとめて対処できるけど破壊できるほどの威力がないから30秒くらいで突破される、かぁ…どうにか戦況をひっくり返したいわね…」

樹「ちひろちゃんがだいぶ減らしてくれたんだろうけどまだ結構あったもんね…うーん…」

(勇者システムで何か…他にできること…何か…!!)

…一つだけ、思いついた。

かなり危険な賭けになるけど。

(…この先、きっと戦いは激しくなる。そうなったら今使わなくても使わざるを得ない状況がきっと来る…なら…)

樹「お姉ちゃん!耳貸して!」

風「え?その様子…まさか作戦思いついたの!?」

樹「うん!成功するかわかんないし、かなり危険な賭けになるけど…」

風「…詳しいこと聞かなきゃ正式な判断はできないけど、勇者部六箇条、なせば大抵なんとかなる、よ!よっぽどのことない限りやる方針で行くわ!」

樹「ありがとうお姉ちゃん!じゃあね、まず…」

 

ーーーソノコsideーーー

ソノコ「…ヤレヤレ、イツ出テクルカ…」

(流石ニ連戦デトリオンノ消費モ激シイ…コノ先ノコトモ考エテ今アル限リデ決メタイガ…)

その時であった。

バッ!

バッ!

ソノコ「分カレタ!!攻撃ヲ分散サセルツモリカ!!」

(シカシ甘イ。勇者ハ満開ニヨッテ2パターンノ強化ガアルノヲ知ッテイルゾ。

1ツハ主力武器ノ強化、1ツハ新武器。黄色イ方ハ大剣ダカラ複数扱エハシナイダロウ、トナルト強化系…緑ノ糸ハ応用性ニ優レテイルモノノ、攻撃力ニハカケルカラ決メノ一手ガアルハズ。

ソウ考エルトドウスルベキカ自ズト見エテクル。)

ソノコ「マトメテ破壊サレル危険ガアル大剣使イヲ後回シニシ、糸ヲ先ニ倒スコトヨ!!」

バババババババババッ!!!!

緑の勇者へ向けて大量の尻尾を飛ばす。

(黄色ハ救援ニ向カワナイカ…互イニ信頼シアッテル、ソレデコソヤリゴタエガアル。)

シュンッ!

ガキンッ!!

シュシュッ

ガキガキンッッ

ビュビュビュッッッ!!!

ガキガキガキンッッッ!!!

個別に尻尾を形成、飛ばすものの黄色は全てを大剣で防ぐ。

(…ナラバ!!)

ユニットから直接繋がる針のついた鞭を形成。

力で大剣を貫いて━━━━━━

風「…作戦通りよ!!樹!!!」

樹「うん!!満開!!!」

次の瞬間、地面に大輪の花が咲いた。

 

ーーー樹sideーーー

 

風『…満開!?』

樹『うん。どういうわけかわかんないけど、フラワートリガーは勇者システムをさらに自由度を増した形になってる。なら満開もあると思うの。』

風『ダメよそれは…だってあくまで確率の話じゃない!それに仮にできたとしても…散華が…』

樹『…お姉ちゃん、前だってアップデートで何も失わないようになってたから、今回も何か変化があると思う。

それにね、これから先、もっと戦いは厳しくなるはず…だからいずれ、使わないといけない日は来ると思うんだ。なら私が使って、可能性を探る。』

風『でも…また声失ったら…』

樹『大丈夫。失ったら失ったで治る方法探すもん。ボーダーのみなさんだっている。諦めなければ神様はちゃんと力を貸してくれるんだよ。』

風『…あとで後悔しないこと、そして何かあった時にちひろのメンタルケア!OK!?』

樹『うん!!』

風『ならよし!!絶対に勝つわよ!いざっ!』

樹『え、ちょっと待ってー!?満開使うって言っただけで肝心の作戦内容がまだだってばー!!』

 

満開。それはかつての勇者の切り札。

花が満開に咲き誇るように、絶大な力を発揮する。

しかし、その代償として散華という機能があり、身体の機能の一部を神樹様に捧げる必要があった。

(…かつて、私たちを傷つけたこの力…今は友達を助けるために使う!)

ソノコ「クッ!オ前ラハ確カニ分カレタノヲ見タ!ナノニナゼ!?」

樹「糸でそっくりの分身を作ったんです!!よく出来てたでしょう!?」

そう言いながら、地面と拘束した鞭をかけあがる。

 

ーーーソノコsideーーー

(完全ニ策ニハマッタカ…!!尻尾モスグニハ戻セナイ…)

ソノコ「ダガ近ヅケサセハセヌ!!」

鞭を途中で切断することでルートを遮断しようと試みる。

(アノ数ノ糸ダ…ソノウチ自ラ上ガッテクルダロウガ、尻尾ノ生成ト引キ戻シニハ十分y…)

樹「させませんっ!!」

ババババババババギシッッッッ!!!!

ソノコ「ナッ!?」

しかし何事もそう上手くは行かず、ユニットはムチの接続部分ごと完全に糸で覆い尽くされ、切り離すことは不可能に。

(マズイマズイマズイマズイ!!!モウ数秒モアレバ辿リ着ク!!モウ使エルノハ左手の装甲シカナイ!!ギリギリマデ引キ付ケレバ行ケルカ!?)

…ここだけの話、樹の糸の強度は尻尾に負けている。

そもそもさそり座の尻尾の攻撃は、直撃すればシールドを貼ってないトリオン体は消し飛ぶほどの威力を有してるのである。

それを防ぐには相当な数のワイヤーを重ねる必要がある。

つまり、尻尾を複数生成さえしようとすれば簡単に破れるのである。

しかし、ソノコは気づかない。

いくら自我があるとはいえ、所詮はトリオン兵、その思考はどうしても合理的に物事を判断するバーテックスやトリオン兵のそれに似る。

樹「これで…終わりです!!」

ソノコ「マダ終ワッテタマルカァァァァァァァ!!!!」

糸で作り出されたナイフ、それを隠し球の左手の装甲でなんとか防ぐ。

(ナントカ防イダゾ!!アト10秒デ尻尾モ回収デキル!!)

ソノコ「私ノ!!勝チダ!!」

樹「いや…」

ガバッ

…脇から、横に大きく振りかぶる黄色の勇者が見えた。

樹、風「「私たちの勝ちです(よ)!!」」

(…ナゼダ?ドコデ対処ヲ間違ッタ?ナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダ━━━━━)

そうしてる間に剣はふり抜かれ━━━━━

 

 

 

 

 

 

ーーー???ーーー

ソノコ「ナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダ…」

「ねえ、打つ手がないなら私に身体、貸してもらえない?」

ソノコ「…ドウニカ出来ルト?」

「当たり前なんよ~!私を誰だと~?」

ソノコ「…ソウ言ッテ最後ノ可能性モ残サナイ、コウ考エルノガ普通ダガ…?」

「え~なら嘘ついてるか確認すればハッキリすると思うよ?ここならお互いにそのくらいは見分けられるんだし!ね?」

ソノコ「…嘘ハツイテナイ、カ…

…イイダロウ、ヤッテミロ。アノ絶望的状況ヲ覆セルモノナラナ。」

「やった~!認められた~!

お礼にひとつ、名言あげるよ~!!」

 

ーーー警戒区域内ーーー

ーーー樹sideーーー

園子「勇者部六箇条、1ツ!!ナルベク、諦メナイ!!!!!!」

ブチッガッキィィィィィィィィィィンッッッッ!!!!!

お姉ちゃんの渾身の一撃は、なんと自身の右腕を犠牲にして持ち手の部分から出した尻尾によって防がれていた。

風「なっ!?防がれた!?」

樹「それに今の言葉って…!!」

さらにそのまま尻尾は旋回、私の糸ナイフも弾く。

そしてそれと同時に左手でユニット回収へ。

(うっ!でももう一度…!)

風「…っ!!樹、離れて!!」

樹「えっ!?」

お姉ちゃんに言われて、追撃をやめて離脱する。

…ビュビュビュビュビュビュッッッ!!!!

その数秒後、私のいた場所にはたくさんの尻尾が刺さっていた。

樹「危なかった…ありがとう、お姉ちゃん!」

風「これくらいどうってことないわ。それよりソノコは!?」

ブチブチブチィッ!!

そうしてる間にソノコさんは地面に降り、私のワイヤーを破ってユニットを開放していました。

樹「…振り出し、なのかな。」

風「さあね…ただ右腕は持ってけたし無駄ではなかったと思うわ…」

園子「…スターセーバー。」

樹、風「「っ!?」」

園子「サソリ座担当、乃木園子!」

風「…讃州高校3年、勇者部部長、犬吠埼風!!」

樹「讃州高校1年、勇者部所属、犬吠埼樹!!」

樹、風、園子「いざ(イザ)!!!」

ッッダンッ!!!

ヒュンヒュンヒュンッ!!

ズッバァァァァァァン!!!

ズババババババッ!!!

地面を勢いよく蹴り、道中襲いくる尻尾を切り伏せながらソノコさんへ向かう。

…ただ。

ピシピシッ!!

(…体に…ヒビが…!?!?まさかトリオン切れ…!?)

満開は、そう長くは持たなかったのです。

(…それっ…でもぉぉぉぉぉ!!!)

樹「お姉ちゃん!!」

風「…わかったわ!!!」

残りのトリオンで出せる限りのワイヤーを展開、何重にも重ねてトランポリンのように。

樹「いっけええええええええええええ!!!!」

グググ…ビュンッッッッッッ!!!!

そしてそこにお姉ちゃんが乗り、飛ばす。

それによりお姉ちゃんはさらに加速。

一方の私はトリガーが解ける。

ビジビジッ!

樹「木霊、助けてくれたんだね…ありがとう。」

(…四肢も五感も前と変わらない…ただこの疲れ…トリオンの高消費と解除後の疲労が代償?まだハッキリとは言えないけど…)

樹「…お姉ちゃん…」

 

ーーー風、園子、同時進行ーーー

ズバッズバッズバッ!!!

(あと15m…行ける!いや…)

風「樹に託されたんだ、行ってみせるッ!!!!」

園子「ソウ上手ク行クナンテ思ッテナイデスヨネ?フーミン先輩!!」

風「…っ!?!?」

そう言われて辺りを確認すると上下左右、さらには後ろとさっきから撃ってきている前、死角なしで尻尾に完全に包囲されていた。

(しまっ…!!)

 

園子「終ワリ…デス!!」

ビュビュビュビュビュビュッッッ!!!!

そして、一斉に刺した。

それにより、フーミン先輩がいた場所には尻尾の球体が出来上がる。

(コレデ終ワッテクレルナラスッゴイ楽ダケド~…)

…球体の隙間から、かすかに神々しい光が。

園子「…ソンナ人ジャナイデスモンネ、我ラガ部長ハ!!」

風「…満!!開!!!!!!」

球体を四散させ、地上に花が大きく咲き誇る。

(残リハ7m…!オソラク次ガ最後ノ一撃ニナル…)

…間宮隊、海老名隊、諏訪隊への攻撃用に創成した尻尾の数々。

さらに嵐山隊、ちひろ、犬吠埼姉妹によって付けられた傷からのトリオン漏洩。

すでに彼女のトリオンはほぼ尽きかけ、ボーダーのトリガーなら解除されていてもおかしくないほどに消費されていた。

加えての数々のユニットへのダメージ、次に強い衝撃を受ければ完全に破損、トリオンがないから修復も叶わない。

故に、次の一撃にかける必要があった。

園子「…ヨーシ!!全員集合ー!!」

今残る限りの全ての尻尾を集結、今までで1番の特大槍を作り出す。

 

ミシミシッ…

(なんとなくだけど体の中からどんどんトリオンが消えてってるのがわかるわ…距離的にも次で決めないといけないかしらね…)

一方で、犬吠埼風の方も限界を迎えていた。

長時間の避難誘導、その最中にトリオン兵との戦闘も少ないとはいえあった。

そして今回の乃木園子との死闘、ただでさえトリオンが減っているところにダメ押しの満開。

武器の大剣もソノコの攻撃を多数受けたことによりすでにボロボロであり、次に相殺に持ってけば砕けてしまい、再び出せるほどのトリオンはない。

故にこちらも、次で決める必要があった。

風「終わらせるわよ!!犬神!!」

犬神「…!」コクリ

犬神の力を借りて、大剣を何倍にも大きくする。

 

樹「お姉ちゃん!!行っちゃええええ!!」

ちひろ「…っ。…園姉っ!」

風(…樹が託してくれたんだ。)

園子(…ちっひーガ見テル。)

風「だから!私は!」

園子「コンナトコロデ!絶対ニ!!」

風、園子「「負ケらレなイんダぁァぁァぁァぁァぁァぁァ!!!!!!!!!!!」」

槍と剣、2つが激突する。

風、園子「「はアぁァぁァぁァぁァぁァぁァぁァぁァぁァぁァぁァ!!!!!!!!」」

…そして、両者共に砕けた。

 

(…相討チ…!デモ、ソレナラ私ニハ左手ノ装甲ガアル!!)

武器を失った2人、しかし私の方は左手に攻防どちらも可能な装甲が未だ健在だった。

(サア…来イ!!)風「勇者部六箇条、1ぉおぉぉぉぉぉつ!!」

そして粉塵の中から現れたフーミン先輩は…

風「なるべくぅぅぅぅ!!諦めないぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

…指の間に小刀を挟み、拳を振りかぶっていた。

 

 

ちひろ『えーっとですね、小刀とかナイフとか、そういう系統を活かせる戦い方は主にふたつです。

1つはスピードで撹乱、隙をついていくスタイル。基本的に耐久性、射程で大幅に遅れを取るナイフ系の数少ない長所がスピードを出しやすい点です。スピードで相手を撹乱、攻撃をかわしつつできた隙に的確に入れていく。』

風『‪夏凜‬のをもうちょい極めた形みたいね…でも私は大剣よ?さすがにキツくないかしら…』

ちひろ『はい。風さんじゃ最低5年はかかるんじゃないですかね。』

風『それじゃ意味なくない!?』

ちひろ『だからこその2つ目です。ずばり奇襲、隠し球として敵の虚をつく。』

風『敵の、虚…????』

ちひろ『ええ。まあ具体例あげるなら遊真さんですね。あの人の地面の中通して足に攻撃するのとか、あと単純に不意打ち。これによって相手のペースを大きく乱すことができ、一気に流れを引き寄せられます。』

風『ほ、ほへー…確かにそれなら私と合ってるわね…』

ちひろ『そういうことです。まあまずは小刀の扱いになれなきゃいけないですし…攻撃スコーピオンONLYで。』

風『…え?』

ちひろ『聞こえなかったんですか?耳イカれてます?』

風『いや聞こえてたわよ!?ただ信じれないだけ!!いくら訓練とはいえ初めての武器だけ!?』

ちひろ『あ、防御には孤月用いていいですよ。』

風『あ、それはよ…くない!!無理があるでしょそれは流石に!?!?』

ちひろ『不意打ち系統を訓練する前に慣れてもらわないと。ってことで早速やっていきますよー。』

風『ちょ、タンマタンマー!?!?!?』

 

(今こそ…いやまあ今日言われたばっかだけど…これを活かす時よ!!)

風「友奈、ちひろ直伝!!」

園子「…私ノ完敗デス。」

風「全部のせ!!女子力ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!パァァァァァァァァァァァンチ!!!!!」

その一撃はソノコの装甲を破り、そのまま脳天を貫いた。

 

 

 

 

 

 

ーーー乃木園子、精神世界ーーー

ーーーソノコsideーーー

園子「ごめんね~負けちゃったんよ~」

ソノコ「…構ワン。私ニハアンナ手ハ思イツカナカッタ。…オ前ト黄色ノ勇者ノアノ戦イハ、私ノ実力ヲ遥カニ超エテイタ。」

園子「お、褒められた~!わ~いわ~い!!」

ソノコ「…ダカラコソ、疑問ガ残ル。

…ナゼ、私ヲ助ケタ。私ハオ前ヲ乗ッ取ッテイタノダゾ?私ガ倒サレレバソノ支配カラモ解放サレル…ナノニナゼダ。」

園子「う~んとね~、理由は2つくらいあるんよ~!!

…あなた、いっつんやフーミン先輩に追い詰められてたでしょ?それで少し封印っていうかなんていうか~まあなんかが解けて目が覚めたんよ~それでね?少~しだけ視界確認したら…ちっひーが見えたんだ。そしたら、情けないところ見せてらんね~ぜ!って思って。」

ソノコ「サラット毒ヲ吐クナ…デ、2ツアルノダロウ?モウ1ツハ?」

園子「…あなたが困ってたから?」

ソノコ「…ハ????何ヲ言ッテルンダ??」

園子「だから~あなたが困ってたからなんよ~」

ソノコ「フザケルナ!?ナゼ私ガ困ッテルカラトイッテ助ケルコトニナルノダ!?私ハオ前ノ…」

園子「あ~そう何回も言わないでいいんよ~

だって…あなたも私でしょ?」

ソノコ「…エ?」

園子「どんな経緯があったとしても、偶然が重なってたとしても、あなたは私と同じ乃木園子で、確かにあの時、その場に存在していた。勇者部の活動は人のためになること~ましてや自分のために頑張らないわけがないよね~!!」

(…普通ソウハナラナイダロ…

…コイツノコノ意見、私ニ立チハダカッタ奴ラノ信頼、ソシテ何ヨリアノ互イノ限界ヲ超エタ戦イ…ソウカ…コレガ…)

ソノコ「…人ノ力、カ…今ナラ私ノオリジナルノ創造主ガ、人ノ可能性ニ賭ケテ消エタノモ理解デキルカモナ。」

園子「うん!勇者部はみんな個性的だけど優しくて、ほんっとに最高だと思うんよ~」

ソノコ「ダロウナ…時間カ。」

…精神体が消え始める。

ソノコ「私モ…オ前ラと、過ごしたかったな。」

園子「…私もだよ、私。」

ソノコ「…元気でね…負けないで。」

園子「…うん、またね!…」

 

ーーー園子sideーーー

園子「う、うん…」

外の眩しさに目を開けきるのをためらう。

東郷「っ!!そのっち!!目覚ましたのね!?」

雪花「お~!これで一安心だにゃあ。」

園子「あ~…わっしーにアッキー…もしかしてずっと起きるの待っててくれてたの~?」

雪花「まあね~病室に1人では置いとかないしょ。とりあえずみんな呼んでくるよ。東郷は説明頼んだ。」タッタッタッ

園子「で~、どんな感じなの~?」

東郷「結構色々とあったから長くなるけど頑張って話すからね。」

園子「うんうん、期待してるんよ~!!」

そして、わっしーが話だ…

ガラガラッ!!

扉が勢いよく開く。

風「あ、ちょっちひろ!病院で走らない!!」

ちひろ「はあ…はあ…」

やったのはちっひー。

園子「あ、ちっひー…おはよ~」

そう私が言うとちっひーは無言で近づいてきて…

…ムギュッ

ゆっくり抱きついていた。

ちひろ「…すごく心配したんだから。」

園子「…うん」

ちひろ「風さんのこともあったし、変なことされてないかずっと心配したんだよ?」

園子「…うん。」

ちひろ「…対峙した時だって…つらかったよ…」

園子「うん…それでも頑張ってくれたんだよね。ありがとう。」

ちひろ「…もう、いなくなったりしないで。」

園子「もちろんなんよ。ずっとそばにいるよ、ちっひー。」

ちひろ「…う゛ん゛…」

…取り戻した(?)もののありがたみを感じて、

(…ミノさん…)

なお足りないものに思いを馳せつつも、いまはただ、大切な妹との時間を大切にしよう、とりあえずはそう思った。




園姉さんの誕生日代わりじゃああああああああ!!!!


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12話 過去ヲ超エテ

ーーー6月23日、園子sideーーー

園子「ほっ!せいっ!そりゃりゃりゃ!!」

「うおっ!?ホントに使い始めて2日目かよ!?」

園子「それほどでもありま〜す。でもやっぱりよねやん先輩の方が強いですね〜ハウンド!」ビュビュビュッ!!

米屋「シールド!まあ伊達にA級はやってないから…よっ!!」ズバァンッ!!

よねやん先輩の槍の一撃を受けて私のトリオン体が真っ二つになる。

『活動限界 ベイルアウト』

園子「あ〜やられちゃったんよ〜」

米屋「おつかれ!なかなか強かったな…初見で"幻踊"の横攻撃避けた時はさすがにビビったぜ?」

園子「それまでのでわざと外してきたって分かったからあとは勘ですよ〜一応槍の勇者やってましたし!」

米屋「あーそういや秀次がんなこと言ってたな…」

園子「化け物相手なので対人戦は慣れてませんがね〜」

米屋「つまり伸び代があるってこった。もういっちょやるか?」

園子「望むところです!レッツリベンジマッチ!!」

私が復活☆してからはや3日。そうそうに特訓に慣れる私はわっしーとA級7位の実力を持つ三輪隊にお邪魔させてもらってるのでした〜。

(ボーダーのトリガーに槍は改造以外にないし、狙撃手さんが2人もいるからね〜わっしー的にも相性バツグンなんよ〜!!まあ…)

東郷「ふっ!!」バンッ!

三輪「ダメだ!今度は端の方に注意しすぎて真ん中が疎かになっている、全箇所同時に注意しなきゃお前の言ってるのは到底届かないぞ!」

(…どーいうわけか銃の方の射撃訓練してるよね〜)

米屋「おーいどうした〜?」

園子「なんでもないの助ですよ〜!今行きます!!」

 

ーーー休憩時間ーーー

園子「へい!へい!わっしー!」

東郷「そのっち、お疲れ様、そっちは順調?」

園子「そりゃもうスーパーウルトラ絶好調だぜ〜!!でなんだけど、コブラ先輩や「古寺ですよ!?」坂先輩もいるのに〜「奈良坂だ。途中で略すな。」」

東郷「いつもに増してあだ名が悲惨なのは置いとくけどそうね…確かに狙撃の方も学べることは多いし、これからも教えてもらいたいと思ってるわ。でも今はそれよりこっちの方が大事って思ったから。」

園子「その心得は?」

東郷「寄られても対処できるように。」

園子「ソーグッド!!」

東郷「言い直してくれるとなお嬉しいわね。」

園子「oh…手厳しい…流石だなあってことだぜ〜?まあそういうことなら私も教えてもらおっかな〜ハウンドとアステロイド使う予定だし!」

東郷「そのっちも?分かったわ、頼んでくるわn…」

米屋「そういうことなら俺に任せな。よっと。」

園子「あ、よねやん先輩〜」

東郷「まともなあだ名…ありがとうございます。」

米屋「例には及ばねえって。あー、ただ少しピリピリするかもしんないから一応注意な。」

園子「どういうことですか〜?しゅーさん先輩ってもしかして女の子苦手なんですか?」

米屋「そういうことではねえんだけどな…

…うちの隊はネイバーの被害を受けた奴が多いんだ。」

 

ーーー東郷sideーーー

東郷「ネイバーの…ですか?」

米屋「そそ、俺はなんもねえけどな。章平と奈良坂は家ぶっ壊されてるし、秀次は…姉貴殺されてんだ。」

(…少しは考えてたけど…やはり大切な人を失った人もいるのね…)

…ここにはいない、かつて一度は失われた友が頭によぎる。

米屋「トリオンのこと知らなかったりネイバーとは違うのは分かってるが、お前らも似たようなもんではあるからな、一応。気をつけてくれ。」

東郷「分かりました。注意感謝します。」

園子「…はーい。」

 

ーーー訓練室ーーー

東郷「えいっ!!」ガガガガガガッ

園子「そりゃー!」ダダダダッ

三輪「2人ともだいぶよくなってきてる。そろそろ日も暮れるだろうしここまでだろう。乃木のアステロイドはともかく東郷の銃に関してはひたすら練習することが重要だから双方練習を怠らないように。」

東郷「はい!!今日はありがとうございました!」

園子「ありがとうございました〜!あ、ところでなんですが〜

…いいんですか?私たちネイバーに教えても。」

(…今なんて言った!?)

東郷「ちょ、そのっち!?それは触れちゃダメでしょ!?」

園子「ごめんねわっしー。でもこれから侵攻はより激しくなる。そしたら協力する時だってくる。今のうちに確かめれることは確かめておきたいんよ。」

園子「そのっち…」

三輪「…ネイバーは殺す。それが俺の信念だ。」

東郷「っ…!」

園子「…」

三輪「…2年前までのな。」

東郷「…今は…?」

三輪「…今も許すつもりなどない。ネイバーが多くの人の命を奪ったことは確かな事実だ。…だが、お前らがその命を少なからず救ったのも事実だ。

…お前らの仲間がどんな状態だろうと一般人を傷つけた時は、俺は、いや三輪隊はお前らを殺しにかかる。覚えておけ。」

園子「…それが分かっただけで充分で〜す。ありがとうございました、しゅーさん先輩!」

三輪「…その呼び方もやめろ。」

園子「そんな〜!!」

 

ーーー廊下ーーー

東郷「理由は分かったけどよく聞いたわね、そのっち…」

(なんとか穏便にはすんだけど下手すれば不和を生みかねなかったもの…)

園子「よねやん先輩の声色が少ーしだけ明るかったから〜?ホントのホントにやばかったらそんなことないと思うんだよね〜」

東郷「…つまり思考に何かしらの変化があったって予想したのね。」

園子「さすがわっしー!!そこにシビれる憧れる〜!」

東郷「それはこっちのセリフ。…絶対に勇者部のみんなに人殺しなんてさせない。」

園子「今回でより重要なったね。頑張らないと!」

東郷「ええ!力貸してね、そのっち。」

園子「それはこっちの言葉なんだぜぇ?わっしー!」

 

 

 

 

ーーー夜、千佳sideーーー

千佳「ここに来てから結構経ったけどもう慣れた?」

亜耶「私はもう慣れたかな!玉狛支部のみなさんもよくしてくれるし。」

ちひろ「小南さんのおかげで暇しないね。」

樹「あそこまで引っかかってるの見るとかなり可哀想に見えてくるからやめてあげて…」

午後9時、私は今日、高一の勇者部のみんなの部屋(竜治君は男の子だから遊真君のところだけど…)に泊まりに来ていた。

樹「亜耶ちゃんはオペレーターの特訓は順調?」

亜耶「うん!栞さんやゆりさんに教えてもらって佳美ちゃんとなんとか…!」

千佳「あ、パトロールの時に栞さん言ってたよ!2人ともやる気あって教えがいがあるって!」

ちひろ「あややは律儀な子だからね〜巫女の練習も文句一つ言わずにこなしてたし。」

亜耶「それは月夜さんが適度に休憩とか取ってくれてたから…」

(…あ、そういえば私、全然そういうこと知らないや…)

千佳「巫女って言うのは…?」

ちひろ「えーっとね、神樹様のことは前話したと思うけど、巫女はその神樹様の声を聞けるの。」

亜耶「声ってよりは…イメージ?頭の中にこう…ドーンと!」

千佳「ド、ドーン?」

樹「あはは…そしてその神樹様の力を宿して戦ってたのが私たちなんだけど…フラワートリガーってどういう仕組みなんだろう?」

ちひろ「明らかにスペックが勇者システムの時よりいいもんね…」

千佳「鬼怒田さんでも分からないらしいから完全に理由は不明だね…

…すごいなぁ、勇者って…私と正反対かも…」

樹「そんなことないと思うよ…?」

千佳「ううん、だって私トリオンあるせいで友達や兄さんも巻き込んで…それに最初の頃…人のこと撃てなかったんだ。誰かを傷つけて、それで責められるのが怖くて…自分のことばっかだったから…」

ちひろ「…大丈夫、私も似たようなもんだから。」

千佳「え?」

ちひろ「ちょっと色々あってね…人を信じれない時があったの。その時は間違いなく自分のことだけしか考えてなかったと思う。そんな私でも勇者に選ばれてるんだよ?だから違わないなんて事はない!」

樹「怖くてもいいと思う。それをどう乗り越えるかが、重要なんじゃないかな?そして千佳ちゃんはそれを乗り越えてる…勇者部六箇条、無理せず自分も幸せであること、ってあるし。」

千佳「…そっか…もし全てが終わったら、三門市の勇者部は私に任せてもらってみてもいい?」

ちひろ「お、いいと思うよ〜!まあまず作ってないけど…」

樹「作るためにも一時的に高校通ってみる…?」

千佳「それはそれで大変そう…私が友達集めてやってみるからレクチャーとかお願いできればいいなって。」

亜耶「そういうことなら任せて!」

ちひろ「そうと決まれば風さん達に相談だねー…まあもう夜10時だし明日なるけど。」

樹「あ、もうこんな時間だったんだ…」

亜耶「そういえばちーちゃん。」

ちひろ「ん?何?あやや。」

亜耶「ちーちゃんの最初の勇者の頃の話って、私多分聞いたことないよね…」

ちひろ「あ、確かに。誰にも聞かれないから…」

樹「大雑把だけど何があったかは分かってるもん…傷えぐりになんていかないよ…」

千佳「…?」

ちひろ「別にもう大丈夫だよ、みんながいるもん。しかしそっか…じゃあせっかくだし言おうかな?長くなっちゃうけど。」

樹「私はちひろちゃんがいいなら…」

千佳「3人ともよくしてくれてるし、少しでも知れることは知っておきたいかな。」

亜耶「私は樹ちゃんと同意見で。」

ちひろ「よし、満場一致!あれは今から5年前…」

こうして、夜は更けていく…




どうもここなです。いつも読んでくださってるみなさんには感謝しかありません。
そしてお知らせはまあ…終わり方から察してると思われますが…
…鷲尾須美の章、入ります。
これからもどうかうちゆをよろしくお願いします!!


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13話 決戦ノG

お待たせしました、しかし駄文の気しかしない。
日常編になると途端に言葉回しが鈍くなるのはどうしてなのか…


ーーー玉狛支部、宇佐美sideーーー

ビュンビュンビュンビュン

友奈『…そこ!勇者ぁぁぁぁ!パァァァァァンチ!!!』ドガァンッ!!!

やしゃまるブラック『!!』ブシュウウウウウ

友奈『当たった!!やったー!!』

宇佐美「お疲れ様!!」

友奈「勉強になりました栞先輩!ありがとうございました!!」

宇佐美「いえいえ〜うちのやしゃまるシリーズならいくらでも使っていいから!」

友奈「はい!!」

ここは玉狛支部のシミュレーションルーム、友奈ちゃんの要望で神速の斬撃が自慢なやしゃまるブラックと訓練をしていたところだった。

宇佐美「で、どうする?あとピンクとハニーブラウンがいるけど。」

友奈「あとは自主練の予定なので大丈夫です!シミュレーションルームをひとつ貸してもらえれば…」

宇佐美「よしきた!設定するから要望教えt…」

その時だった。

東郷、小南「っきゃああああああっ!!!」

陽太郎「うわー!!」

宇佐美「何今の!?」ダダッ

友奈「東郷さんの声!?」ダダッ

急いで悲鳴の聞こえた方へ。

そうして出たのはリビング。

見ると怯えるこなみに陽太郎。

友奈「東郷さん大丈夫!?しっかりして!!」

…そして、意識を失った美森ちゃん。

宇佐美「小南!何があったの!?まさかネイバー!?」

小南「違う…あいつよ…!!」

宇佐美「あいつ…!?」

小南「そう…あ、あそこに…」

宇佐美「あそこ?誰もいないような…」

疑問を抱きながらも確認する。

(これ…虫?そういえば美森ちゃん虫苦手だっけか…でもそれならなんで陽太郎も…?)

友奈「宇佐美さん!そこに何かいるんですか!?」

宇佐美「うん!小南がそう言ってたから!黒い虫くらいしかいないけど…」

(…ん?黒い虫?)

友奈「あ、ほんとだ…でもこれどっかで…」

宇佐美「…ま、まさか…」

…カサカサ

虫が軽く動く。

友奈「きゃっ!!?」

宇佐美「うわっと!?」

黒い虫、カサカサという音。

宇佐美「こいつ…まさかどころか確実に…」

友奈「…ゴキブリ…!!」

この瞬間、玉狛支部で小さな決戦が幕を開けた。

 

ーーー友奈sideーーー

友奈「…栞先輩、平気だったりは…?」

宇佐美「ごめん、さすがにこいつは無理かなー…そういう友奈ちゃんは?」

友奈「私もちょっと…カブトムシとかちょうちょさんは平気なんですけど…」

宇佐美「だよねー…どうするか…」

(叩き潰そうとしてもすごい早いから逃げられちゃうし…)

友奈「…そうだ!トリガーを起動させて一撃で倒すのは!」

宇佐美「うーん…それ多分支部にも被害行くからダメかなー…

男性組さえ帰ってくればすぐに退治してもらえるんだけど…」

友奈「確か帰ってくるの3時間後くらいですよね…」

宇佐美「それまで野放しにしてくわけにも行かないし、私たちでなんとか…」

亜耶「ただいまですー!」ガチャッ

雀「あー疲れたー!!私のどこに需要があるんだろ…」

ここで、援軍が運良く帰宅してきたのでした。

 

ーーー雀sideーーー

友奈「亜耶ちゃんに雀ちゃん!?おかえり!!」

宇佐美「ちょうどいい?ところに帰ってきてくれたね!」

雀「へ?ちょうどいい?」

帰ってそうそうに嫌な予感がプンプンします。

(こんな状態でさらなるとか勘弁だなー、逃げたいなー。友奈さんも宇佐美さんもいる、私の出る幕なし。よし、部屋で寝よう!!)

脳内をフル回転、関わらないがよしと結論付けて、逃げようとする。

しかし…

雀「何が起こってるか分かりませんけど御二方がそr…」

亜耶「もしかして何かのトラブルですか?私達にできることがあるなら手伝います!!」

それを亜耶ちゃんが秒殺で通行止め、逃げ道なし。

(…ひけなくなったぁ…)

仕方なく覚悟を決める。

雀「そ、そういうことならもちろん私めも!」

友奈「…2人とも、ありがとう!!4人でなら絶対倒せるよ!」

雀「…え?た、倒す??」

宇佐美「そうだねー、雀ちゃんにトリガー起動してもらって四方包囲して叩けば行けるかも!」

雀「え?包囲?もっと嫌な予感してきたんですけど?」

亜耶「まだわからないですけどきっと名案ですね!それで行きましょう!それでトラブルって?」

友奈「実はあそこにゴキブリが…」

雀「あ、無理。」

次の瞬間、私の本能は意識を手放すことを選んだ。

 

 

 

ーーー宇佐美sideーーー

雀「あ、無理。」バタッ

友奈「雀ちゃん!?」

亜耶「雀さん!?しっかりしてください!雀さん!!」

宇佐美「雀ちゃん聞いただけでもダメなの!?」

友奈「特にはないですけど…とりあえず避難させなきゃ!!」

 

宇佐美「ふぅ…どうする?」

亜耶「すみません…私が平気だったら解決してるんですけど…」

友奈「それはみんなに言えることだから問題ないよ。協力して頑張ろう!!」

宇佐美「そうそう。それ言ったら私か友奈ちゃんのどっちか平気だったら巻き込むこと無かったって話なっちゃうし。

とりあえず情報まとめよう。他に近々帰ってくる予定の人は?」

友奈「風先輩が確かそろそろ帰ってくる時間だと思います!あとは誰だろう…樹ちゃんとちひろちゃんは分からないって言ってたし…」

亜耶「佳美ちゃんと雪花さんは時間かかりそうでした。あと園子さんは4時くらいまで米屋さんと模擬戦してるって。」

宇佐美「今が4時10分…ってことはもう向かってきてるね。この5人でどうにかあのGを撃退しなくちゃ…」

(一応案はある。そのためにも2人に帰ってきてもらわないと…)

園子「やっふ〜い!!乃木園子様の〜ご帰還だぜ〜!!!」

風「今日のご飯何ー…ってそれどころじゃなさそうね。何かあったの?」

亜耶「えーっとですね、実は…」

 

園子「ふーむ…私は別にいいけど作戦は〜?」

宇佐美「5人でそれぞれ2つずつスリッパを持ち、一斉に辺り一面を叩く。これなら多分逃げられずにいけるはず。」

風「りょ、了解よ。さっさと済ませちゃいましょ、うん。」

友奈「風先輩大丈夫ですか?顔色悪いですけど…」

風「あまりGは得意じゃないだけよ…すぐ終わるんだから平気、そう平気よ犬吠埼風。勇者部6箇条なるべく諦めない…」

亜耶「…本当に、大丈夫なんでしょうか…無理してらっしゃるんじゃ…」

(あそこまで顔面蒼白にしてるんだから絶対にしてるでしょうね…でもこれ以上人数減られるとキツい…)

宇佐美「…すぐにでも決着つけないとね…」

園子「それで合図は誰が〜?」

友奈「ここはやっぱり発案者の宇佐美さんで!!」

宇佐美「…おっけ!じゃあみんな準備はいい?」

風「私はOKよ…ちゃっちゃと終わらせましょう…」

亜耶「頑張ります!!」

友奈「私はもちろんです!勇者は根性!」

園子「無論私もバッチシで〜す!!」

宇佐美「…じゃあ、せーのでいくよ。」

ドドドドドド

宇佐美「…せーのっ!!」

その時だった。

小南「宇佐美助けてー!!2階にも出たー!!」

宇佐美「え、ちょ、小南!?」

小南が突撃してきたのだ。そして、その震動で…

カサカサカサカサ!!ブーン

園子「あっ逃げた!?」

亜耶「しかもその方向…!風先輩、避けてください!!」

風「えっ?」

カサッ

ゴキブリは風ちゃんの肩に。

風「 ・ ・ ・ いやああああああああ!!!!」バタッ

友奈「風先輩!?」

園子「ふーみん先輩が限界に!」

 

亜耶「みなさんは再度避難させて、仕切り直したいですけど…」

宇佐美「…さっきので、完全に警戒してるよねこれ…」

園子「そうですね〜もう一度やっても絶対ビュビュビュッ!ってかわされると思うんよ〜…」

友奈「しかももう1匹増えちゃいましたし…」

ちひろ「ただいま。」ガチャッ

樹「ただいまです。」ガチャッ

宇佐美「もう1回方法考え直さないと…誰か案はある?」

亜耶「ちょっと待ってくださいね、今考えます!」

ちひろ「…?あれどういう状況…?」

樹「みんなのチラチラ見てる方に何かあるのかな?」

友奈「うーん…トリガーくらいしか…」

園子「ゆーゆ、Gを逃がさないレベルの速度だと少なからず床凹むと思うんよ?」

樹「…あれ、もしかしてゴキブリじゃ…」

ちひろ「あー…樹ちゃん、ちょっとそこのティッシュ箱取ってくれたりする?」

樹「うん。はい。」

ちひろ「ありがとう!」

宇佐美「こうなったらもう男性組が返ってくるの待つしかないのかねぇ…」

亜耶「ですね…せめて警戒が解けるまで待つしか…」

ちひろ「ほいっ。」バシンッッ!!

3人「「「えっ?」」」

園子「…ちっひー!!帰ってきてたんだね〜!」

ちひろ「ついさっきだけどね、ただいま。」

園子「おかえりのすけなんだぜ〜!」

友奈「おかえり!ゴキブリ倒してくれて助かった!ありがとね!」

ちひろ「別にただ害虫潰しただけですし…言われるほどのことでも。」

宇佐美「他ならそうだけど今回はゴキブリだし、ね?」

ちひろ「…?別にゴキブリだから特別とかって…あ、あるんだっけ、樹ちゃん。」

樹「そうだよ…部室での事忘れたの?」

ちひろ「忘れれるなら忘れときたいけどね…」

宇佐美「…部室の案件って?」

亜耶「私も今思い出しましたけど、ちひろちゃん前部室に出た時に素手で叩き潰してて…」

宇佐美「…は!?それ本当!?こっちに来てすぐの頃の遊真くんしか見た事ないけどそんなの!?」

亜耶「それで涼しい顔してたのでホントに虫関係には強いんですよね、ちひろちゃん…」

(他は北海道の人ならありえるかもとは思うけど…ゴキブリをちゃんと見たことある上で平気な人は初見だわ…世界って広いね…)

園子「…あ、そうだちっひー!2階にもいるから頼める〜?」

ちひろ「もう一体いるの!?分かった、任せて!」

こうして数分後、2階に出没していたもう1匹のGもちひろちゃんの手によって叩き潰され、玉狛支部は平穏を取り戻したのであった。

 



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14話 喪失少女ト病弱少女

ーーーボーダー本部、雪花sideーーー

雪花「ん〜!やっぱりココアは美味しいねー。」ゴクゴク

佳美「だね。私はまだ熱すぎて飲めないけど…」ゴクリ

6月30日、今日も私たちはボーダーでそれぞれ訓練に励んでいた。…っていってもやはり息抜きは必要で、今は休憩中。

雪花「会った頃から熱いもの全般無理だったもんね。記憶失う前に熱にトラウマあったんじゃにゃい?」ゴクゴク

佳美「むしろそのトラウマが原因で記憶喪失した可能性も…ユキもだから多分違うと思うけど。」ゴクリ

雪花「いやいや、私一応勇者だったんだし、戦闘の末の記憶喪失もおおいにありえる。あー美味しかった。」プハー

飲みきった私は、缶をゴミ箱に…

コンッ

誰かと思わず手がぶつかる。

雪花「あ、すいません。話してて…」

「こっちこそごめんなさい!!初めて見る顔ですけど新人さん?」

雪花「そういうわけじゃないんですよ、一から話すと長くなっちゃうんですけど。私、秋原雪花って言います。で、あそこでゆっくりココア飲んでるのが…」

佳美「神月佳美です。」

茜「私は日浦茜!元ボーダー隊員なんですよ!2年前の大規模侵攻のせいで親に高校から転校させられて…」

雪花「それは…残念でしたね…親御さんの気持ちは分からなくもないのがアレだけど。」

佳美「最初にトリオン兵見た時ホントに怖かったもんね…」

何も出来ずに、ただ逃げるだけしかない恐怖。イネスの件で私達もそれは十分味わってるし、たとえ攻撃が通ったら楽勝なんて相手でもない。

命よりも大切な娘のことだ、絶対そんな危険からは遠ざけたいに決まってる。

茜「それは私も分かってるんですけど、やっぱりつらいもんですよ…ってことで高校は諦めて、大学で舞い戻ろうと画策してます。」

雪花「ですよねー。まあ私は応援します。大学までいけばもう立派な大人ですし。」

茜「だからそれまでは定期的に遊びに来てるんですよ。少しとはいえ訓練にも参加させてもらえますし。あ、私スナイパーやってたんですけどー…」

雪花「おお!私はシューターですけど、遠いとこ狙うのはそこそこ得意ですよ。投槍やってたんで。」

佳美「私はあまり戦闘得意じゃないのでオペレーターを…」

茜「ふむふむ…あ、そうだ!私の隊長はすごいシューターなんですよ!よければ来ません!?」

雪花「いいんですか?それならご好意に乗っかっちゃいますけど。」

佳美「私もいいですか…?」

茜「もちろんもちろん!さあレッツゴー!!」

 

ーーー那須隊隊室ーーー

茜「どぅわああああああー!!!!」ブワッ

「茜、泣かないの。」

茜「だってえええ!!すごいいい話じゃないですかあああ!!熊谷先輩もそう思いますよねええええ!!」ブワッ

那須隊の隊室にお邪魔させてもらって約10分、今はこちらの事情をあらかた説明した結果、茜が感極まって泣き出したところだった。

(同級生とは思わなかった…いや深く考えたら2年前に高校だから当たり前なんだけど。)

熊谷「それはまあ…しかし噂に聞いてはいたけど実際に聞くと戦いの規模がケタ違いね…」

那須「あの新型、一度くまちゃんと応戦したけどホントに強かったもの。回転してバイパーはじき飛ばしてきてたし。」

「熊谷先輩に直接攻撃してもらおうにも逆に孤月折れてましたし…」

那須隊はボーダーでもあまりいない全員女子の部隊なんだとか。隊長は茜が紹介したがっていたシューターの那須玲さん、アタッカーの熊谷友子さん、オペレーターの志岐小夜子さん。

佳美「とは言っても私達もこの話自体は聞いただけなんですけどね。一応星屑は見たことありますけど…」

雪花「所詮は最初期、無様なものよって感じですわ。」

熊谷「そんなことないわよ。あなた達が来てくれたおかげでホントに助かってる。技術とかはこれから経験を重ねて積み上げていけばいいんだし。」

雪花「ですよねー。ただ、やっぱりいつかは私もフラワートリガー得られると思うんですけどそれがいつかわからない以上、吸収できるものはしたいわけです。

…ということで、5本勝負、受けてくれません?那須さん。」

那須「…ええ。手加減はしないからね?」

 

 

 

 

 

 

ーーー佳美、雪花sideーーー

満を持して決まったユキと玲さんの5本勝負、もちろん私は観戦です。

(どっち勝つんだろう…玲さんは絶対強いんだろうけどユキもだいぶアステロイドの扱いに慣れてきてたし…たとえ勝てなくても1本か2本くらいは…)

茜「熊谷先輩、実際のところ佳美ちゃん達のとこの人達の実力ってどんな感じなんですか?聞いてる限りだと。」

熊谷「うーん、私達は直接見るのは初めてだけど相当なものって聞いてるわ。中にはあのフラワートリガー?を使えば太刀川さんといい勝負する人もいるらしいし。」

茜「げっ!?マジですか!?」

小夜子「まあかなり相手側に有利な状況であったそうですけど。そう考えると秋原さんもそこそこの実力は持ち合わせてるんじゃないですかね?」

熊谷「でしょうね。ただ5本勝負…少々厳しいと思うわ、1本取れるかしら…」

佳美「そこまで厳しいんですか?」

熊谷「確かアステロイド使いでしょ?なら厳しいと思うわ。ま、見届ければ自ずと分かるから見ましょう。もうまもなく始まるわ。」

 

『ランク外対戦、10本勝負 開始』

ボーダーのトリガーを使ってる時の勇者部は特別枠で、トリガーの改造もあるせいでA級判定なんだとか。

(だからランク外…今までずっと嵐山さんや出水さんに世話してもらってたから知らなかった。)

雪花「…って、そんなこと考えてる場合じゃない。遠慮なく行かせてもらいますよ!」

那須「こちらこそ。バイパー!!」

雪花「アステr…いっ!?」

バイパー、それは自分でルートを設定できるが故に自在な軌道を描く弾。

それは最初に受けた説明や出水さんのを見て知っていた。

それでも…自身の全方位から迫るそれはさすがに想定を遥かに上回っていた。

雪花「くっ!シールド!」

急いでシールドを展開し防ごうとするが時すでに遅し、体中を蜂の巣にされる。

『秋原ベイルアウト 1-0、那須リード』

雪花「全方位って…あんなの初見じゃ無理だにゃあ。だけど…」

『2本目、開始』

那須「バイパー!!」

雪花「フルアタックで、撃ち落とす!!アステロイド!!!」

ダダダダダダダダダッ

単純な威力ではアステロイドの方が上、迫り来るバイパーを全て撃ち落とす。

雪花「よし!次はこっちの番だよ!アステ…」

ビュビュンッ!!

雪花「…っ!?!?」

確かに撃ち落としたはずのバイパーが2つ、背後から私の体を吹き飛ばしていた。

『秋原ベイルアウト』

そのままなすすべなくベイルアウト。

雪花「今のは…!?何が起こったかすらわかんなかった…」

(あの攻撃が全くわかんない以上、後手に回ったら同じ目に遭う…先手を取らないことには始まらない!)

『3本目、開始』

雪花「アステロイド!!」

片方を8分割で威力高めに、もう片方を64分割で数重視にして撃ち出す。

出水さんから教えてもらった、シューターの基本戦法の1つだ。

那須「っ…!シールド、バイパー!」

これを那須さんはシールドで8分割を、バイパーで64分割を防ぐ。

(隙を与えたら持ってかれかねない!このまま攻め続ける!)

しかし相手は猛者、そうはさせてくれない。

ビュビュンッ!!

雪花「くっ!」バッ

予め多く展開していたのか、数個のバイパーが私に飛んでくるのをギリギリでかわす。

(きっと撃ち落とさなかったらそのままこっちに飛んでくるように軌道を設定したなこりゃ…)

雪花「…軌道?まさか!」

ビュビュンッ!!

再び不意の数撃に体を吹き飛ばされる。

『秋原ベイルアウト』

 

『その場で軌道を設定するのは簡単じゃないから基本的には予め決めたいくつかのパターンからってのが多い。ただ少数ながらもその場で設定するやつもいる。』

 

(出水さんが言ってたバイパーのごく稀な人材…那須さんがその1人なんだ…!!あの動作なしの不意打ち攻撃は私への攻撃や迎撃時に紛れて数個だけ遠回りするように…!)

 

熊谷「…って仕組みよ。バイパーの軌道をその場で引けるのはボーダーの中でもA級の出水さんと玲だけなの。玲の得意技、バイパーによる全方位攻撃"鳥籠"もその場でだからこそ効く細かい調整の賜物よ。」

佳美「そうだったんですか…めちゃくちゃ難しいって聞いたのですごいと思います!」

茜「だよねー!いつ見てもすご技だよー!」

小夜子「ただ見た感じだと秋原さんも気づいたっぽいですし、残り2回に期待がかかりますね。」

熊谷「そうね。あれを初見でかわせるかが怪しいけど…」

 

『4本目、開始』

雪花「アステロイド!」

那須「バイパー!」

私のアステロイドと那須さんのバイパー、それぞれがぶつかり合う。

(そしてそろそろっ…!)

雪花「…来た!シールド!」

ガキキンッ!!

2本目と3本目で私を穿った死角からの弾をシールドで防ぐ。

那須「…!ならフルアタックで落とす!」

ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュン!!!!!

一方自分の一手を防がれた那須さんは両手を使ってバイパーを展開、物量で押し切る作戦に。

(しまった!こっちは遠回り攻撃にも備えなきゃいけないからシールドは解除できない…さすがにあの量全てをアステロイドで落とすには威力が足りない!)

雪花「…くっ!」ダダッ

ドガガガガガガガガガガガガガ

シールドと周りの遮蔽物を利用しながら逃げまくり、必死に凌ぐ。

(今はなんとか防げてるけど…このままじゃもたない!早めに決める!)

建物の屋根を伝い、那須さんの上へ。

那須「っ!?」

雪花「これでぇ!どうだぁ!」

…ビュビュンッ!!

私がアステロイドを撃ち出す直前、私を真横からバイパーが撃ち抜く。

…というより、辺り一面にバイパーが着弾していた。

(私がこう来るのを読んで戻ってくるように仕掛けてたの…!?!?)

『秋原ベイルアウト』

 

佳美「あと1回…」

小夜子「完全に手のひらの上で転がされてましたね今のは…」

茜「熊谷先輩、雪花に勝ち目って…」

熊谷「…今見てる限りだと厳しいけど、これで彼女は特筆した那須の戦法は全部見たことになる。そのうえでどう動くか、ね…」

佳美「…きっと勝ちます。ユキは頭脳派ですから!!」

 

雪花「…うん、これしかない。一矢くらいは報いてやらないと!」

『5本目、開始』

運命の5本目が始まる。

雪花「アステロイド!!」

私は走りながらアステロイドを射出、那須さんを狙う。

那須「狙いを定めさせないつもり…!?バイパー!」ビュビュビュビュンッ!!

一方で那須さんは私のアステロイドを撃ち落としつつ残った弾で私を狙う。

雪花「そいってやっとね!」サッサッ

それをスレスレでかわしながら動くことをやめない。

那須「もっと遮蔽物を利用すればいいのになんで私の周りを…

…まさか!」

那須さんが周りにバイパーを展開する。

(もう気づかれた!?早すぎるっしょ!?)

 

茜「…雪花ちゃんが通ったところに置き弾!?」

熊谷「まさか…アステロイドで鳥籠をやろうとしてるの!?そんなむちゃくちゃな事…その前に那須に撃ち落とされるわよ!?」

 

那須「…その前に穿つわ!バイパー!」

雪花「バレちゃあしょうがない…準備ができるまでバイパーを全て撃ち落とす!!いや、撃ち落としてみせる!アステロイド!」

 

佳美「…できます。できてみせます。ユキなら、絶対!!」

 

ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュン!!!!!

ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

1個でも撃ち漏らしがでれば作戦は瓦解する。那須さんから射出され、様々な軌道を描くバイパーを1つ残らず撃ち落としていく。

(あとちょびっと!1つの弾も見落とすな私!)

ドガガッ!!

雪花「これでっラスト!!もってけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

準備が整い、アステロイド版鳥籠を撃ち出す。

 

ーーー那須sideーーー

(この数回で…私の真似を…!!)

那須「…フルガード!!」

ガキキキキキキキキキキキキキキキキキキッバキッ

メインとサブの両方をシールドに割き、なんとか防ぎ切ろうとするが…圧倒的な数、途中で砕け、5発ほど身体をかする。

(でもこれならまだやれる!)

那須「辺り一体に撃ち込む!バイp…」

鳥籠によって発生した煙が晴れた先で秋原ちゃんが2つのアステロイドを合わせようとさているのが見えた。

(…合成弾!?鳥籠は合わせるまでの時間稼ぎ!?)

那須「なら、こちらも!!」

バイパーとメテオラを合わせる。

雪花「…アステロイド+アステロイド!徹甲弾ギムレット!!」

那須「バイパー+メテオラ!変化炸裂弾トマホーク!!」

雪花「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

那須「はああああああああああああ!!!」

ッッッッボッガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!

両者の一撃が、ぶつかり合い、混ぜ━━━

 

 

 

 

 

 

 

ーーーボーダー、ベランダーーー

ーーー夕方、雪花sideーーー

那須「…ここにいたの、秋原ちゃん。」

雪花「あ、那須さん。ここから見える夕日がキレイで好きなんですよ。那須さんは大丈夫なんですか?体、弱いって聞きましたけど…」

那須「最近は調子いいから大丈夫。これくらいは。

さっきはありがとうね、いい試合だったわ。」

雪花「いい試合って…結局私1回も勝てなかったですし。最後もトマホークの裏から先に出したバイパー飛ばしてきてるなんて思いもしませんでしたよ…」

那須「そんなことないわ。置き玉を作るってことは、射出するまで枠1つで猛攻を凌ぐ必要がある。それをたったの5試合でこなしたのは褒められていいことだと思う。」

雪花「…ありがたく受け取っておきますかにゃ。私も貴重な体験ができました、ありがとうございます。」

那須「それでだけど…どうしてアステロイドを?あそこまでやれるならバイパーの方がいい気がするんだけど。」

雪花「んーとですね…私の勇者としての武器が投槍でして。どうしてもバイパーほどの自由は利かないので、それなら直線的なアステロイドかなーと…」

那須「なるほどね…そういうことならやっぱりバイパーがいいと思うわ。」

雪花「…え?」

思いもしなかった返答に呆気に取られる。

雪花「でも、バイパーみたいな軌道は…」

那須「確かにバイパーほどの自由度は持てない思う。けど投槍なら上に投げればいずれ下に落下するし、技量があれば途中で曲がるように投げられるはず。あまり詳しくないから違ったり他にもできることはあるかもしれないけど、少なくともこれらは直線的なアステロイドだと練習できないと思うわ。」

雪花「あ…確かにそうですね。」

(ずっと直線的に投げることだけ考えてた…いや知らなかったってのが正しいけど。)

炎化から目覚めた時にはなっていた記憶喪失。あれから勇者部に見つけてもらうまでは生きるのに必死で、動物を仕留める最低限の技能しか磨いてなかったし考えてもいなかった。

雪花「…すいません、実はちょっと嘘混ぜてました。」

那須「…どういうこと?」

雪花「…記憶喪失なんですよ、私。炎化が解けた時からずっと。だから実際見たことあるのはコメッタが初で…まあ記憶失う前はもちろんあったんでしょうけど。」

那須「…それなら別に気にしなくても誰も攻めはしないと思うわ。誰にだって触れられたくないことはあるもの。」

雪花「…ボーダーのみなさんいい人ですし、多分そうだとは思います。…でも、ごめんなさい。」

那須「…そっか。気にしなくていいわ。

…投槍のこと、また相談に乗るわ、雪花ちゃん。体が弱いから毎日は行けないけど。」

雪花「…住所教えてもらえればこっちから行きますよ。…これからもよろしくお願いします、那須っち。」

この夕日をいつまでも眺めていたい。

そんな平穏を、切に願った。

しかし…

 

ーーーアフトクラトル、ヒュースsideーーー

ハイレイン「…それで、前回の侵攻の結果の説明をしてもらおうと呼んだら次の計画の話とは、どういうことだ?」

ディエナ「だっていちいち過去振り返ってたってただの無駄じゃない!それなら次の計画の用意した方がよっぽど有意義よ?」

ハイレイン「確かに国としてならばそうだろう…しかし貴殿と私らは同盟関係にある。貴様が言う通りにした結果、敵の戦力拡大にしか繋がらなかったのはどういうことだと聞いているのだ。事によっては同盟を解消せざるを得ないぞ。」

ディエナ「はあ〜…頭かったいね。国の主ってのは大変だ。前回のは布石。あわよくば戦力を削れればとしか思ってない。それにあちらがトリガーを覚醒させれば"枯れた大樹"の手がかりにもなるし、全て想定の範囲内よ。」

ハイレイン「…布石というなら、つぎはどうすると?」

ディエナ「そっちにもたっぷりトリオン兵用意してもらうわよ?こっちも大盤振る舞いするから。

…遠征艇、アレを潰す。」

 

ーーーボーダー本部、迅sideーーー

迅「ふぃ〜6-4、ぼんち揚げはもらってくよ太刀川さん。」

太刀川「あ、てめえそれ限定のじゃねえか!」

迅「別に何もらうとまでは言ってなかったしね〜」

太刀川さんとの模擬戦を6-4で終え、部屋をあとにする。

(さーて、確か今日はうどんって言ってたし少し早く帰ろ…)

《━━━━━━━━━━━━━━━》

迅「…っ!」

…プルルルルル、プルルルルルルル

ガチャ

迅「もしもし?城戸さん?」

城戸「どうした、迅。」

迅「いや〜大した用事じゃないんすけど〜

久しぶりに俺のサイドエフェクトが大働きしました。」

城戸「!!!…詳細は?」

迅「7月10日…今までを超える規模で侵攻が起こります。」

 

どの世界でも、平穏は長く続かない。そういうものなのだ。

 

 



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15話 戦ニ備エル

 

ーーーボーダー、風sideーーー

忍田「これより、大規模侵攻の緊急会合を始める。」

いつもの小さな会議室と違う、数十人規模の講義室でそれは宣言された。

集められたのは上層部、玉狛から迅さん、レイジさん、烏丸さんに修さん。

A級から太刀川さん、冬島さん、風間さん、嵐山さん、加古さん、三輪さん、出水さん、時枝さん。

B級から二宮さん、生駒さん、東さん、諏訪さん。

そして対星座型への特記戦力として勇者部。

忍田「まず今回予知された侵攻について、迅、頼む。」

迅「はいはーい、どーも皆さん、A級エリート迅悠一だ。今回は皆さんおなじみ俺のサイドエフェクトが久しぶりに仕事をしたんでな。といってもまだ全快とはいかないようだが…」

太刀川「前置きはいいからさっさと話せー、あと終わったらランク戦やるぞ迅。」

迅「俺が買ったらうどんね。で、分かったのはこれまでの3回すら超える規模だってことと、日付。ずばり…一週間後の7月10日だ。」

風「…全っ然時間ないわね…」

ちひろ「…7月、10日…!?」

東郷「っ!!」

園子「…」

(…?)

忍田「だからこそこちらも万策をもって迎え撃つ必要がある。担当区域などは後に伝えるが…ここで不確定要素として絡んでくるのが星座型、そしてそのトリガーを持った洗脳された勇者部の人達だ。

まず星座型だが、これは核が体内にある上にそれぞれが特殊な攻撃法を複数持っているために従来のトリガーだけでは倒すのが非常に難しい。よってこれは核を露出させられる勇者部に任せる。…念の為聞いておくが、勇者部を知らない者はいないな?」

時枝「A級は全員1度は訓練組まれてますしいないでしょう。東さんや諏訪さんも大丈夫だし…二宮さんと生駒さんは?」

二宮「前に出水が連れてきた。」

生駒「ある、カワイかった。」キリッ

ちひろ「…あの人はヤバい、うん。」

樹「あの人って…え?どっち?」

ちひろ「生駒さん。旋空孤月の射程がケタ違いだし、普通に剣、特に居合いがめちゃくちゃ上手かった。」

樹「ちひろちゃんにそこまで言わせるくらいなんだ…」

(…ボーダーってやっぱり人材豊富なのね…勇者部も優秀株ばっかだけど。)

忍田「説明の必要はなさそうだな…もし星座型が確認された場合、勇者部の現着までの足止め、到着後の連携を行ってもらうことになる。知らない人がいたら伝えておいてくれ。

洗脳された勇者部…加賀城君の提案から、これからは星座トリガー持ちとさせてもらう。こちらは単独でもA級、相性さえよければS級すら互角以上の勝負に持ち込めるというのがこれまでの2回からの推測だ。遭遇した場合、なるべく他の隊との合流を測ってもらいたい。」

風間「了解しました。」

三輪「了解。」

忍田「あと二つ…星座型や星座トリガー持ちは勇者部がこれまでに撃破してきたバーテックスなる異形と酷似していることが分かっている。対峙した際に突破口を見つけれる可能性もあるから、これから鬼怒田さんと東郷君にこれまで確認されたバーテックスや星座型について説明してもらう。」

 

 

 

 

 

 

東郷「はじめましての方もいると思います。讃州高校2年、東郷美森です。」

鬼怒田「私は言うまでもないだろう…それじゃあ順に解説していく。

まず一体目、牡羊座。こいつは1回目の時に太刀川と迅が交戦した。」

東郷「牡羊座の特徴としては電撃のような攻撃、敵の攻撃で体が分かれた際の増殖です。特に斬撃とは相性が悪いので、高い実力を持つ悠一先輩達が撃破しきれなかったと思われます。」

太刀川「あいつなー。いくら切っても頭数増やしてくるからお手上げだったんだわ。」

鬼怒田「情報から予測するに強化されてると思われるのは完全に斬られなくても増殖することだ。戦闘時はシューターやスナイパーを攻撃に置き、アタッカーは防御に回るのが望ましいだろう。」

東郷「核はその場で高速回転します。威力がないと弾かれる可能性があるため、スナイパーのアイビスによる一撃や合成弾、旋空弧月が有効かと。」

鬼怒田「次は牡牛座、1回目の際に風間隊が交戦した。」

風間「それに関しては俺から。奴の特徴は音による行動の封じ込めだ。原理は分からないが奴の持つベルから鳴る音を聞くと調子が急激に悪くなる。射程外からベルを破壊するといいだろう。」

鬼怒田「他には自らに付着しているコケのような物を飛ばす攻撃も確認されている。オリジナルは音だけだったそうだから、攻撃方法の獲得がこいつの強化だろう。核の行動は不明、警戒を怠るなよ。」

東郷「3種類目は双子座です。この個体の特徴は…ともかく早いことです。攻撃もかわすため、レッドバレット等の動きを鈍くできるトリガーを用いて対処に当たるのが最も有効打だと思われます。核については時間がかかるほど波のように増えますので、メテオラ等でまとめて吹き飛ばすといいです。」

鬼怒田「4種目は蟹座だな。こいつは攻撃にも防御にも使えるユニットを複数…オリジナルは6つ、持っているそうだ。そのユニットを駆使した後述する射手座との連携が非常に厄介だそうだ。核は攻撃をひたすら避けてくる。朗報と言えるのは星座トリガーはすでに撃破済ということだな。」

冬島「少しいいっすか。」

鬼怒田「ん?どうした冬島。」

冬島「今んとこ聞いてる限り…そのバーテックスとやらは黄金十二宮がモデルに?」

東郷「はい、その通りです。とはいえ見た目や攻撃方法が似てるものが少ないのでそこまで参考にはならないと思いますが…」

冬島「十二宮ってことは12種ね…了解っす。」

東郷「それでは5種類目…獅子座です。この個体を一言で言うなら…最強。百発近い規模で展開される炎弾や巨大な炎球、核を出してもそれ自体が炎球となります。どれも威力が凄まじく、核の炎球に至ってはおそらく…三門市をまるごと吹き飛ばしかねないかと。」

鳥丸「急に規模がでかくなりましたね…強力すぎる。」

レイジ「核はスピード勝負ってことか。」

東郷「はい、相手も切り札として切ってくると思われるのでもし出現が確認されたら、最高戦力で当たってもらいたいです。」

鬼怒田「6種目は乙女座、こいつは2回目に出現、三雲隊と結城君の手によって撃破されている。特徴は爆弾と布による近遠隙のない攻撃。布は2本、爆弾は溜めることによる強化が確認されている。核は非常に硬いが、太刀川や空閑、あとはギムレットの滅多打ちならなんとかなるだろう。」

東郷「次は…天秤座です、1回目の時に那須隊の方々が交戦したと聞いてます。特徴は人を舞いあげるほどの高速回転、バイパーくらいの威力なら弾き飛ばすレベルです。ただし上がガラ空きなので、あえて吹き飛ばされて上から崩すのがいいと思います。」

鬼怒田「次は蠍座だ。鞭のように自在に動く尻尾と、その先についた毒を持つ尾針が強力、接近戦ではほぼ敵なしというレベルだそうだ。尻尾は切り落とせないわけではないが、アタッカーは警戒してかかるように。核は増殖するが…双子座ほどではない。今までは必ず蟹座や射手座と共に出現してるようだ。」

東郷「次はその射手座になります。この個体は遠距離特化で、細い矢を雨のようにばらまく攻撃と、強力な巨大矢を1本飛ばす2種類の攻撃パターンを保持。核は本体の周りを高速で回転するため、捉えるのがなかなか難しいです。

…で、こいつと先にあげた蟹座、蠍座。こいつらの連携が非常に強力です。三体なら獅子座に匹敵しうると思ってます。蟹座のユニット、あれには射手座の矢を反射させる効果があり、もし射手座との直線上を障害物で避けても、ユニットに反射させて狙ってくるという連携を繰り広げてきます。それに加えて近距離特化の蠍座…奴が隙を見せ次第攻撃してきます。三体で完全に弱点を補い合ってる感じです。」

諏訪「…っつーと?どういうことだ風間。」

風間「攻撃力に欠ける蟹座はほか2人が攻撃的であることで、遠距離に弱い蠍座は射手座の射撃と蟹座の遊撃で、近距離に弱い射手座は近距離特化の蠍座と蟹座が矢を反射させることでそれぞれを補完しあっているということだ。」

諏訪「ほー、そりゃ確かにやべーわな。」

鬼怒田「要警戒ということだ。次、山羊座。こいつは加古隊が撃破している。地震を起こした上で自らについてる4つの角を使って攻撃するようだ。」

加古「4つ全部をまとめた、威力が凄まじいのもあるわよ。核は…そうね、小さなトリオンの刃が紛れ込んでるガスを噴出するわ、さながら毒ガスってとこかしら。」

東郷「その通りです。残り2つ…水瓶座。この種の特性は泡を飛ばしてくることです。この泡には弾力があり、おそらくアステロイドも数を重ねれば威力を相殺できます。あとは水圧によるレーザーカッターのような攻撃も繰り広げてくる厄介なやつです。旋空弧月なら相性かなりいいかと。」

鬼怒田「十二星座最後は魚座だ。こいつも加古隊が結城と連携して倒している。その特質はレーダーにも感知されない隠密性と、地中を水のように泳げる異能。これらを活かした奇襲が得意とのことだ。」

烏丸「なるほど…十二星座最後というのは?他にもいるんですか?」

東郷「はい。2回目の時に確認された星座型同士の融合個体です。」

鬼怒田「星座型が複数襲来した場合、片方を撃破すると残ったやつがその残骸を吸収、新たな力を得るのだ。」

三輪「チッ…厄介だな。」

加古「えぇ、とてつもなく厄介だったわ。」

東郷「今のところ確認されてるのは魚座と山羊座の融合体…個体名"ギョライ"一体です。こいつの特徴としては魚座から引き継いだ地中への潜伏で身を隠し、山羊座の地震で撹乱、そして地中から角で狙い撃ちしてくるタイプです。」

鬼怒田「やつは地面を水のようにするがこちらが触れてもただの地面としての役割を果たす…非常に厄介な相手だ。しかし飛び出して突撃する攻撃パターンがあるとのことだ。そこを集中攻撃することが現状分かっている唯一の対抗策だ。もちろんこの融合は他にも適用されるだろう…もし撃破に成功しても油断するなよ。」

東郷「じゃあ私たちからはこれで… 「待ってください須美さん。」ちひろちゃん?」

ちひろ「融合体ってことなら私も1つだけ知ってるので。」

鬼怒田「!!それは本当か!?」

ちひろ「はい。名称…"カミカゼ"とでもしとこ。こいつは双子座が2体融合した奴です。…5年前の4体同時の時に私が戦ったのもこれです。」

東郷「…!」

園子「なるほどね〜いくらあの時の勇者システムじゃ力不足だったとはいえ、ちっひーがあそこまでボロボロになるほどの実力はないと思ってたんだけど〜…そういうことだったんだね。」

ちひろ「うん、双子座単体ならただ早いだけだからね…カミカゼの特質は全体的な速さ。進行速度が遅めな分、攻撃速度や反射神経、危険察知能力にもかな?ともかく全部の行動が人間や他のトリオン兵を凌いでます。戦闘用にチューニングされた双子座、ってイメージが妥当ですね。1人では戦わず、連携で追い詰めるべきだと思います。私からは以上です。」

忍田「上里君、情報提供に感謝する。新型についての説明はこれで終わりだ。次に配置についてだが━━━━━━」

 

 

 

 

 

ーーー街道、ちひろsideーーー

雀「はぁー…やっと平和になったかと思ったら侵攻とか…やになるなぁ…」

亜耶「でもきっと今回も誰かしら来ます。芽吹先輩達を取り戻すためにはやるしかないですよ。市民の皆さんにもボーダーの皆さんにも迷惑かかっちゃうのが心に刺さりますけど…」

ちひろ「あやや、迷惑はかけてなんぼだよ。私達もめちゃくちゃ救われてるけど私達もめちゃくちゃ救ってる。迷惑なんて思ってる人ほとんどいないと思うよ。」

亜耶「そうなんだけど…私ちーちゃんと違ってなんもできてないから…」

ちひろ「んー…でもあややに教えてる人とか結構楽しそうだよ?あと掃除上手いし。」

亜耶「お掃除は得意だから…」

ちひろ「でも得意な人って結構少ないよ?絶対助かってる。自信持と?」

雀「そうそう!あややはいてくれるだけで癒しだよ!」

亜耶「2人が言うなら…もう少しだけ自信持てるように頑張ってみます!」

雀「その意気その意気!!」

緊急会合が終わり、各々帰宅の途に着く中、今日の買い出し担当になった私達は一式買い終えて玉狛支部に向かっていた。

ちひろ「しっかし雀さんって買い出しとかできたんですね…意外ですわ。」

雀「ええ!?そんな意外!?」

ちひろ「しずくさんとか夕海子さんに任せてるイメージでした。」

雀「いやいや…そりゃ任せれたら万々歳だけど任せれないよ…だって弥勒さんは金銭感覚少しおかしいし、しずくは結構余計なもの買ってきがちだし…」

ちひろ「あー…なるほど、覚えざるを得なかったんですね。」

雀「そういうこと。もしサボれるならこっちから喜んでだよ!!」

亜耶「2人とも凄いです。私は芽吹先輩がいつも買ってきてくれますから…」

雀「だよね!羨ましい!!私もメブと一緒がよかった…」

ちひろ「絶対厳しくされると思うんですけど…」ボソッ

何せ芽吹さんである、したくないだけなら簡単に見抜いて割り当てそうな気がしていた。

雀「…あ、ここって…」

ちひろ「ん?普通の街中じゃ?」

雀「いや、ちひろちゃんはわかんなくて当然だよ。ここってね、前の侵攻の時に友奈さんが吹き飛ばされて来たとこだから。あの時はビックリしたなぁ。」

ちひろ「ギョライ、にですか…あいつらオリジナルじゃないくせしてオリジナルがしてきそうだったこと履修とか生意気ですわ…迷惑極まりない。」

亜耶「それだけ相手さんも分析してるってこ…ひゃっ!」

突然、あややが声を上げる。

ちひろ「あやや!?」

雀「!?あややどうしたの!?」

亜耶「あ、すみません、大丈夫です。少し右手を上から下に風が通った感じがしたので…」

雀「なーんだ…よかったぁ。でも上から下ってまた奇妙だねー。怖いからさっさと帰ろ?ってうわー!私も感じた!!怖!!」

亜耶「は、はい!」

(上から下…?しかも感じるほど…?そんなの気圧か温度にでも露骨な違いがない限り起こらないはず…)

ちひろ「…」

亜耶「ちひろちゃん?早く行こー?」

ちひろ「あ、うん!少し考え事してた!!」

 

ーーー玉狛支部、訓練室ーーー

ーーー竜治sideーーー

遊真「まだやるか?」

竜治「お願い…します!!」

会合から帰宅してすぐに俺は遊真さんに稽古を頼んだ。

…それも、黒トリガーの状態で。

 

遊真「ふぅ〜…珍しいな、ここまで何度も遠慮なしでって。今までは数回でオマケに力少し抑えてほしいって言ってたのに。」

竜治「いや…そろそろ本当に強くならなきゃ行けないって思って。」

遊真「…というと?」

竜治「…俺、もう作れるはずなんですよ、トリガー。星座トリガーがバーテックスの力を元に作られてるなら、バーテックスそのものである俺ができないはずはないんです。」

遊真「別にモノホンの力をそのまま利用してるわけじゃないんじゃねーの?そもそもいないの利用なんてできないだろうし。」

竜治「あ、それは確かに…でとフラワートリガーはあるんです、力の大元を持ってる俺なら、その気になればできるはずなんです。」

遊真「なるほど、それはあるかもな。ユウナがフラワートリガーを手に入れた時、勇者シス単に…」

竜治「シス単じゃなくてシステムですよ…」

遊真「あ、そうだったそうだった。勇者システムに残った力の残滓がトリガーに宿る気がしたんだ。確かに元となる力持ってるならやれなくもないだろうな。で、なんでそれが今になってだ?」

竜治「…ほんの少しだけ、甘く見てたんですよ、最初の時に風先輩が帰ってきて。この調子でみんな取り戻せるんじゃーとか。ボーダーの皆さんもいるし実はなんとかなるか?とか。…そんなことはなかった。相手は確実に攻撃の手を激しくしてきてる。このままじゃ…また、助けれないかもしれないんですよ。だから俺も…」

遊真「うんうん

それそこまで急ぐ必要あるか?ボーダーのみんなも勇者部の奴らもみんな強いぞ?自分の中から引き出す必要があるなら他とは勝手が違うんだし、大急ぎでやる必要はないと思うぞ?」

竜治「…俺は、自分がバーテックスなんて知らなかったんで東郷先輩の時も、天の神の襲来の時も最初は見てるだけしかできなかったんです。…もう、見てるだけは嫌なんです。」

遊真「…それで格上相手の想定ね。嫌な質問してゴメンな、詫びがわりに次までに鬼怒田さんに事情話してトリガーもらってきてやるよ。」

竜治「え?いいんですか!?」

遊真「うんうん、結構嫌な質問だったろうしこれくらいは当たり前。あと多分そんくらいの覚悟をトリガー持ってる時にできれば作れるんじゃねーかな?強い意志が要因じゃないかとかナントカって迅さんが言ってたし。」

竜治「ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

ーーー7月10日、司令部ーーー

ーーー雪花sideーーー

…ついに訪れた侵攻当日。しかし…

風「はあ!?ちひろも乃木も東郷もいないぃ!?」

雀「私が起きた時にはすでに空っぽだったんですよね〜…」

亜耶「私のところもです…」

ちひろに結城っち、それに東郷が姿をくらましていた。

根付「上里君はまずいじゃないか!もし大量に星座型に来られたら…」

…ブウウウウウウウウウウン!!!!!

『大規模なゲートの発生が確認されました 各自、対応にあたってください。』

城戸「…来たか。」

根付「ああああ!!」

沢村「過去最大規模のトリオン兵に…星座型の反応、西、東、北の3方向に三体分検知しました!!映像模索します!!」

(おー、今回は三体か…)

雪花「…三体!?!?」

雀「多すぎない!?」

鬼怒田「上里君はどこに行ってるんだ!!」

樹「大丈夫です。」

そこに樹ちゃんが声を上げる。

樹「考えがあるから最初は参加できないって言ってました。それまでは私たちだけでもたせます。」

友奈「あ、はい!東郷さんもそれだって言ってました!!」

忍田「…わかった!!沢村君、映像は!」

それに忍田さんが受諾、そのまま本筋に戻る。

沢村「はい!西と東の2体はカミカゼ、北に牡羊座です!!」

忍田「なるほど…樹君、東に動きを止めれるタイプがいない。頼めるか?」

樹「分かりました!!」

風「牡羊座とカミカゼ…友奈!西のカミカゼ任していい!?」

友奈「え!?いいですけど牡羊座と風先輩じゃ相性悪いんじゃ…」

風「私の大剣とカミカゼの方が相性悪いわ。それに作戦はある!」

忍田「結城君!西にはレッドバレットを扱う三輪隊がいる。上手く連携して撃破してくれ。」

友奈「結城友奈、ビシッと了解です!」

風「雀!あんたは私と来なさい!!竜治と雪花はトリオン兵の撃破!」

雀「りょ、了解!」

竜治「うっす!!」

雪花「了解ですにゃ。さーて、どう動くべきかな。」

忍田「この戦い、負けられはしないぞ!」

風「勇者部、ファイトー!!」




次回投稿は誕生日短編になります。しばしお待ちを


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16話 双刀VS双槍

ーーー風sideーーー

風「ここ!どりゃああああ!!!!!」ドッシィィィィィィィィィン

雀「逃がさないんだからねー!!」ギギギギギギ

風「お、抑え込めてる!!よーし、封印行くわよー!!」パアアア

三回…否、私たちが来る前の1回も含めて4回目となる大規模侵攻。

今回は今までとは違い迅さんの未来視が作用、侵攻のタイミングを特定することができた。

そんな中私と雀は攻撃で分裂する厄介な星座型、牡羊座と交戦、追い詰めることに成功していた。

(私の面攻撃で押し潰して分裂部分を限定、そこを雀が抑えることで分裂させない…割と博打だったけど上手く行ったわね!)

ギュルルルルルルルル!!!!

核は露出後すぐに目にも止まらない速度で回転を始める。

風「もうひと踏ん張りよ犬神!一刀両断じゃああああああ!!!」

ッッッドッガァァァァァァァンッッッッ!!!!!

そして文字通り一刀両断。

回転を圧倒的質量の大剣で無理やり切り裂き、倒しきる。

雀「これで一件落着ですか…あああ怖かったよメブ!こんな奴らをこれから侵攻が起こる度に相手にしなきゃいけないとかホントに勘弁して欲しい!!」

風「ナイス抑え込みだったわよ雀!おかげでちゃんと封印まで持っていけたわ!」

雀「いえいえそんな〜私は責務を果たしただけですよチュンチュン。」

いつものように泣き言を言っていた雀だけど、褒められたことで一気にデレる。

(こういうの、自分に素直って言うのかしらね…雀のいいとこだわ。)

風「さて、じゃあ別なところの援軍n…」

宇佐美『付近に星座トリガーの反応!』

ほかの場所への移動を開始しようとした時に突如告げられる速報。

それを聞き、雀に指示を出そうとしたその時…

ーーーーーーーッ

風「…え。」

すでに何かが、目の前まで迫り、そのまま私を貫かんと━━━

…ガキンッ!!

雀「大丈夫ですか風さん!?」

風「え、ええ…助かったわ…」

…はならず、雀の盾によって弾かれ、何かは近くの建物に突き刺さる。

雀「しっかし今の攻撃早すぎません!?ギリギリ間に合ったからいいですけど!?」

風「そうね…今回は双子座かなんかかしら?」

そう考察しながら刺さった何かを確認する。

(ふーん、刀ね…

…刀?刀を飛ばしてくるのなんて…)

…タッ

誰かが近くに着地する音を聞く。

雀「あ、来ましたよ今回…は…」

風「…全く、なーに似合わない顔してんのよにぼっしー。」

‪夏凜‬「…」

風「…覚悟はいいかしら、雀。」

雀「…ふん!」パァン!

尋ねて少しの時間をおいて、雀は自分の頬を叩く。

雀「…今できました!!」

風「よし!感情豊かなのが取り柄なのに無表情の夏凜‬の表情取り戻すわよ!!」

雀「はい!…ちゃんと全部取り戻しましょうね?」

風「分かってるわよ!」

シーン…

ほんの少しの間だけ、静寂が訪れる。

風「先手、必勝!!!」ズガンッッ!!!

その静寂を打ち破るように大剣を振り下ろす。

…ッッ!!!

それを‪夏凜‬は音すら置き去りにしてかわし、そのまま隙だらけの私の首を切り裂こうと切りかかる。

…それを。

雀「…ほいさぁ!!」ガキンッ!!

それを雀の盾がはじき返す。

‪夏凜‬「…」

…ガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキッ!!!

それを受けて即座に繰り出されるのは目にも止まらない連撃。

これを大剣と2つの盾、さらには精霊バリアも駆使して防ぐ。

風「さーて、ここからどうする雀。」

雀「どうすると言われてもですねー…一応攻撃力はそこまでなのか防げはしてますけど…」

風「私の攻撃は大振りだから避けられる…とはならないわ。」

雀「だからこそ打つ手が…え?あるんですか?」

風「ええ、機能拡張のおかげでね!雀、カバーは任せた!!」

雀「ええ!?」

雀にそう言い残し‪大剣の巨大化を解除する。

もちろん、‪夏凜‬はそうしてできた隙を逃さず狩ろうと迫る。

風「…懐かしいわね。あんた、私の特訓によく付き合ってくれてた…っけ!!」ガキンッ!!

…それを、刀ほどの大きさに調整した大剣で弾く。

風「フラワートリガーになってからだいぶ使いやすくなっててね、ただ大きくするだけじゃなくて色々と調節効くようになったのよ!!」ガキンッ

再び襲いくる刃を防ぐ。

風「あと小刀も変えられるようにね!」ガキンッ

来る場所を先読みし、防ぐ。

風「やっぱりあんたの攻撃の動きは前の通りね、なら問題ないわ!あんたとなら何十回とやり合った。動きの先読みくらい、なんのそのよ!!!今ここで初勝利もらうわよ、‪夏凜‬!!」

 

ーーー雀sideーーー

ガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキッ!!!

雀「これにどう入れと…」

眼前で凄まじい速度の剣戟が繰り広げられている。

情勢は‪夏凜‬さんが押し気味、風さんはあちらの高速連撃にほんの少しずつ被弾している。

(カバーと言われてもこの速度じゃ下手に入っても逆に狩られるし…‪夏凜‬さん崩すにも手段が…)

 

風『ええ、機能拡張のおかげでね!』

 

雀「機能拡張っていうと…そういえばちひろちゃんも前よりも変形できるようになったとかって言ってたっけ…」

(私は正式な勇者システム持つのはこれが初…だけどもし想定されていたとすれば…)

雀「…。」

 

ーーー風sideーーー

‪夏凜‬「…! !」ッ!!ッ!!ッッ!!!

風「ふっ!はっ!!」ガキンッガキンッズッ

頭をフル回転で攻撃の場所を予測、剣で相殺する。

(思った以上にこのスピード厄介ね…!)

…ッ!!

‪長い拮抗の中、夏凜‬の刀が剣の軌道から逸れる。

風「しまっ…読み違えた…!?」

防御し損ねた刀は一直線に私の首を狙い迫る。

…が。

ドッガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!

‪夏凜‬の身体がまるでトラックにぶつかられたかのように吹き飛ぶ。

風「!?何が起こったの!?」

雀「うわっ!?なんか出たぁぁぁぁぁぁ!?!?」

風「雀!?これあんたが!?」

雀「は、はい!盾合わせる以外にも何か出来るんじゃないかなーと色々試したら出ました!」

風「助かったわ!ありがとう!!」

(‪夏凜‬が壁から抜け出すのに手間取ってる…あの威力ならデカい一撃の隙も…!)

風「雀!また隙ができたらそれお願い!それが勝利の鍵よ!!」

雀「了解です!」

ガラガラ…

そうやり取りしてる間に壁が崩れる音が。

(抜け出したわね…)

…ッッ!!!

風「はあっ!!」ガキンッッ!!

遠距離から放たれた刀の高速投擲を、剣でいなす。

ッッ!!!

ガキンッ!!

間を置かずに来る直接の一閃を巨大化させた小刀で防ぐ。

ガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキッ!!!

そして再び始まる剣戟、しかしそれは…

(さっきほどじゃない…)

先程よりも速さも、重みも少し欠けていた。

(雀の一撃を警戒してるってわけね…)

風「でも!そんな状態で!!」

ガキンッガキンッガキンッ!!!!

風「私を止めれると!!」

ガキガキガキガキガキッ!!

風「思ってんじゃないわよ!!」

ガキッ!!

今までの防戦一方だった状況をひっくり返すように攻勢に出る。

風「とりゃりゃりゃりゃりゃ!!」ガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキッ!!!

‪夏凜‬「…っ!!」グラッ

そして、その猛攻を受けて‪夏凜‬の体がほんの少しだけぐらつく。

風「そこだぁ!!」ブォンッ!!

やっと出来たわずかな隙を逃さないために普通の小刀を2本投擲、両足を浮かす。

そしてそこに…

雀「シールドバァァァァァァッシュ!!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!

雀の衝撃波が炸裂、‪夏凜‬の体が宙を舞う。

(欲しい時によくやってくれるじゃない!!)

風「空中なら身動きは取れないでしょ!あとはこれでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

大剣を巨大化させる。

風「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ブォォオォォォォォォォォオォン!!!!

大剣が空を割いて‪夏凜‬を斬り…

‪夏凜‬「…っ!!」

ボガァンッ!!!

さく直前、刀を爆破させ、その爆風で地面に回避する。

雀「え!?」

風「あっ…!!‪そうだ…夏凜‬の刀ってそういえば爆発を…!!」

そうしてできた一瞬を、彼女は逃さない。

ッ!!

雀「風さん!!」

風「あっ…」

今度の今度こそ、その首を切り裂かんと刀を振り抜く。

雪花「バイパー!!」

…それを、雪花のバイパーの集中砲火がへし折る。

竜治「旋空弧月ッ!!」

ズバァンッ!!!

そこに竜治の追い討ち、当たりはしなかったものの、遠ざけることに成功する。

風「雪花に竜治!あんたらなんで!」

雪花「速いってのは通信で聞きましたからねー。おふたりじゃ絶対相性悪いだろうって飛んできた始末ですよ。」

竜治「ここは俺たちに任せて、2人は他の場所を!」

風「でもあんたらのトリガーはまだ覚醒してないのよ!?せめて私か雀も残って…」

雪花「大丈夫ですにゃ。」

竜治「俺たちのこと、信じてください。」

雀「ど、どうするんですか風さん。」

風「…」

少しは迷うけれども、決断する。

風「…竜治!あんたら来たのは!?」

竜治「!!北西部の辺りです!!」

風「OK!交代する形で向かうわよ雀!」ダンッ

雀「…!了解です!!」ダンッ

 

ーーー竜治sideーーー

ダンッ

雪花「…さぁて、お久だね‪夏凜‬。」

雪花先輩が風先輩達がいなくなってすぐに目の前に着地した‪夏凜先輩‬に声をかける。

‪夏凜‬「…」

雪花「…大丈夫、心配しないで。あの日、‪夏凜‬が私たちを救ってくれたように…」

…ッ!!

ビジジジッ!!

雪花先輩へ予備動作なく繰り出される一閃。

それをバリアが弾く。

その手に握ったトリガーは黒く変色し、そして━━━

雪花「…今度は、私が‪夏凜‬を救ってみせるよ。」

━━その中央には、鮮やかな紫をしたペチュニアの花が咲く。

竜治「…‪‪夏凜‬先輩、まだ俺は未熟です。」

思いが。

竜治「だから…また特訓付き合ってくださいよ。」

心が。

竜治「…そのままの、いつものあなたで!!」

燃え上がり、その激情は手に持つトリガーの姿すら変える。

雪花「…行くよ、竜治。」

竜治「ウス、雪花先輩。」

 

 

 

 

 

ーーー雪花sideーーー

ダンッブンブンブンブンブンブンッ!!!

私たちが起動を終えてすぐ、‪夏凜‬は私たちを円で囲うように高速で移動し始める。

竜治「どういうつもりだ…?」

雪花「先輩達にもそこそこ押されたのかにゃ、私たち逃がさないけど被弾も減らそうとしてるっぽい。この距離なら私が物量で押すと私達自身も巻き込みかねないし。」

竜治「攻撃よりも防衛か…こういう時って防御捨ててる方が多い気するんですけどね…」

雪花「黒幕はよっぽど頭がいいよう、で!!」ガキンッ

不意に襲いかかってくる刃を手に持った槍で防ぐ。

竜治「…隙って作れたりは?」

雪花「…OK、おまかせあれ!」

(この速さを逆手に取る!)

ブンッ!!

槍を‪夏凜‬の回る通路に30°くらいの角度で突き刺す。

グワンッ!!

‪夏凜‬「ッッッ!?!?」

もちろん、ほんの数秒で1周する‪夏凜‬が避けれるはずもなく、足を取られる。

雪花「竜治!!」

竜治「あざっす!!」

ビュンッ!!

‪夏凜‬「…ッ!!」ザッ

その隙を狙い撃つ竜治の一撃、頭を狙ったそれを‪夏凜‬はギリギリでかわす。

竜治「かわすのか…よ…ッ!!」

ッ!!

即座に着地、竜治へ刀を振り抜く。

ガキィッ

それを竜治は盾でガード。

‪夏凜‬「…ッ。」

それを受け、すぐに‪夏凜‬は体制を立て直すために離脱することは…

‪夏凜‬「…ッ!?」

…できなかった。

‪雪花「…‪夏凜‬が抜け出さない…!?なんで…」

竜治「盾の面を少し変形させて刀に齧りつかせた…これ以上は好きに動かさせない!」

‪夏凜‬「…ッ!!」

もう1つの刀で盾を持つ腕を切り落とそうと動く。

(そうは問屋が…卸さない!)

ビュンッ!!

その手を封じるべく、投槍。

刀を弾き飛ばす。

竜治「…雪花先輩!」

雪花「竜治、そのままやっちゃいな!!」

その時だった。

…ボガァンッ!!!

竜治「くっ!?」

雪花「盾に捕まった方の刀を爆破させて脱出!?竜治、大丈夫!?」

竜治「盾が割られただけで問題ないです!」

‪夏凜‬が自らの腕を犠牲にして脱出を強行、再び自由に。

雪花「でも片手を失った分はでかい…私が援護する、竜治は距離をつめて!!」

竜治「うっす!!」

ヒュンヒュンッガキガキガキンッヒュンヒュッ!!

竜治の槍と‪夏凜‬の刀が幾度も交わる。

‪夏凜‬「…ッ!!」ダンッ、ッッ!!!

雪花「そぉれ!」ブンッ!!

‪夏凜‬が跳躍しながら投げてきた刀は私が撃ち落とす。

しかし…

ッ!!ッ!!ッ!!ッ!!ッ!!ッ!!ッッ!!!

ブンブンブンブンブンブンッ!!!

竜治「どらァ!!」ビュンッ!!

‪夏凜‬「ッ!!」ッ!!

竜治「俺の気のせいかもしんないですけど…近づいてこなくなってません…!?」

雪花「腕ひとつじゃ不利って悟って遠距離主体に切り替えたっぽいね…」

さっきの攻防から‪夏凜‬は一定の距離を保ちながら刀を投擲してくるばかり。

竜治が接近できた時でさえ回避と距離確保に専念する辺り、もう近距離で勝負はしないと言ってるようなものだった。

竜治「一応俺のもビームは撃てますが…」

雪花「色々と万能すぎてツッコミたいけどとりあえず置いとくにゃ…うーん、一応微調整効くおかげで全弾撃ち落とせてるけど1個でも逃したらゲームオーバーだしなぁ…」

投げた後に私の意志によって軌道の変化が行えるようになった私の槍、それを駆使して高速で投擲される刀を撃ち落としているものの、もし撃ち漏らしが出ればそれが至近距離で爆発。

その隙を‪夏凜‬が逃すはずもない。

‪夏凜‬「…」ッ!!ッ!!ッ!!

雪花「…悠長に考える時間もくれない、か!」ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!

ガンガンガンッ!!

雪花「ふぅ…とりあえず竜治は接近を諦めないで!刀は私で受け持つから。あちらさんも私狙いっぽいし。」

竜治「援護が邪魔だからでしょうね…了解!」

雪花「よし、じゃああちらさんもまた投げてきそうだし、やるy…」

ガキンッ!!!!

‪3人「「「!?」」」

突如として‪夏凜‬の持っていた刀が宙を舞う。

‪夏凜‬「…ッ!!」ッ!!

それを受けて‪夏凜‬は即座にその場を離脱、刀を再形成する。

『なんだなんだ?それいくらでも出せるのかよ。撃った意味ないじゃねーか。』

『そうでもないな。トラップ地帯に近い位置にズレてくれた。』

そして通信で聞こえる2人の声。

(この声…!)

雪花「…会議の時にいた、冬島さん…!?」

冬島『ああ、遅れてすまないな。こちら冬島慎次。冬島隊、現着した。』

当真『俺は当真勇。状況はどんな感じだ?』

竜治「…敵の武器は刀、任意で爆発も可能です。特徴は高速行動。」

雪花「私たちで手の1つは破壊に成功してますけど、それから距離を取られてなかなか攻めきれない状況です。」

冬島『なるほどな。もう少し東に行くと俺のトラップ地帯がある。とりあえずそこに誘導してくれないか?』

竜治「トラップ…ですか?」

冬島『ああ。ワープする奴や地面から攻撃したり、砲台を出してミサイルをぶっぱなすのもある。素早い奴には不意打ちがよく効くからな。』

竜治「了解です!雪花先輩、援護を「言われるまでもないよ。」ありがとうございます!」

ッ!!ッ!!ッ!!ッ!!ッッ!!!

ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!ブンッ

私が飛んでくる刀を撃ち落とし、竜治が接近。

‪夏凜‬は距離を取るためにドンドン後退、そして…

竜治「入りました!」

冬島『よくやった!!右4歩先にあいつの至近距離に行けるショートワープがある、それを使え!』

竜治「うっす!」

シュンッ

竜治が言われたところに動き、踏んだ瞬間に‪夏凜‬のすぐそばへ。

‪夏凜‬「ッ!?!?」

竜治「オラァ!!」ビュンッ!!

ガキンッ!!!!

そこから即座に一撃入るが、‪夏凜‬はそれをギリギリでガード。

しかし…

バキュンッ!!

‪夏凜‬「ッ!!」

当真さんの狙撃が。

かわそうとしたものの右足のつま先が消し飛ぶ。

‪夏凜‬「…ッ!!」ダンッ

すぐに‪夏凜‬は跳躍、距離を取る。

竜治「…どうしても決め手に欠けますね。」

当真『めんでぇな。当たらない弾は撃ちたくねえんだけど。』

冬島『あの距離の奇襲に対応するか…』

(…あの反応速度の前じゃ不意打ちもダメージを最小限に抑えられる…それだけならあっちがジリ貧で倒せるからいい、けどもしほかのトリオン兵が介入、逃げられたら?間違いなく多大な被害が出る。なんとしてもここで倒さないと…なにか方法は…!)

冬島『せめで地下道とかならもうちょい縛れるとお得意の速さを殺せるんだが…あいにく近くにはないな。』

当真『地道に削ってくしかないでしょーよ。手とつま先の損失によるトリオン漏出は決して小さくはないんですし。』

(…地下道…

…!!!!!)

雪花「3人とも聞いてください。私に考えがあります。」

竜治「!!本当ですか!?」

雪花「もち。一気に畳みかけるよ!!!」

 

冬島『準備はいいか?』

竜治「OKです!」

雪花「こちら雪花、いつでも行けます。」

当真『俺もだぜ隊長。』

冬島『よし、始めるぞ。』

‪夏凜‬「…!」

こっちの気配の変わりを感じたのか、‪夏凜‬が警戒態勢に入る。

冬島『おうよっと。』

ガガガガガガガガガガンッ!!!!!

‪夏凜‬「ッ!?」

その次の瞬間、‪夏凜‬の前方を除く周囲のトゲトラップが作動、道を封じる。

さらに…

ガコンッ!!ガチャッ

後方に巨大なミサイルランチャーが出現する。

‪夏凜‬「…ッ!!」

それを見た‪夏凜‬は逃れるために上に逃れ…

雪花「…させないために、私がいるんだよ。

…満開!!!」

私の姿が白い着物のようなのを着たものへと変わり、手に持つ槍も巨大に、そして上半分の真ん中の辺りに大きな花が咲く。

‪夏凜‬「ッ!?」

雪花「さぁて…!」パアアアアアア

その花が散り、たくさんの花びらへ。

その花びらは氷の結晶へと姿を変えて━━━

雪花「はあっ!!!!!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッッッ!!!!!!

その全てから槍が発射、半分は唯一トゲのない道に壁を作るかのように、もう半分は上から雨のように。

…これにより、上下左右後の道は塞がれ、前の道しか残らない…超短時間のオリが完成する。

‪夏凜‬「…ッ!!」ダンッ

‪夏凜‬は前に進むしかない、進まなければそこでやられるから。

だからあとは…

雪花「…最後はきっちり決めてよ!!竜治!!」

竜治「満開、ヤマタノオロチッ!!」

タイマンで、打ち破るだけだ。

 

ーーー竜治sideーーー

背中から竜の頭がついたユニットが8つ、顕現する。

(目をひたすら強化しろ!‪夏凜‬先輩の動きを見切れ!!)

俺の特質を受け継ぎ、ある程度の武器や身体能力の強化が可能になったことを利用して全力で目の動体視力を強化する。

(ここを逃せばもうチャンスはない!)

‪夏凜‬「ッッッッッ!!!!!」

‪夏凜‬先輩がさらに加速する。

(絶対に勝つッ!!)

竜治「おらああああああああッ!!!!」

ッッッッッッッッッ!!!!

神速の一閃、それを受け止めるために3つの首を撃ち出す。

スーーーーーッ…ガンッッッッッ!!!!

豆腐のように斬られて行くが、斬り終えた直後に下から2つの首が直撃、刀をが少し揺らいだところを…

ビュンッ!!

当真『ふぅ…いっちょあがり。』

当真先輩の狙撃が弾き飛ばす。

‪夏凜‬「…ッ!?!?」

竜治「うぉぉおおおおおおおおおッッッ!!!」

そして残った3つの首、そして手の槍で━━━

竜治「八龍乱陣ッ!!」ドッガァァァァァァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!!!

━━━打ち砕いた。

 

 

 

 

 

 

雪花、竜治「「解除!!」」

倒してすぐに、満開を解く。

その直後にドっと疲労の波が。

雪花「うっキッツ…トリガー発動したままでも疲労は付けてくるわけね…」

竜治「一時的に満開使用することでそのまま戦線離脱にしない作戦はいいですけど、これもう1回分来られたら意識トぶか間違いなく動けないっすね…」

雪花先輩が考えた、一時的に道を限定したオリを作り、俺がタイマンで決める作戦。

そのためにはどうしても満開は必須、しかし敵がまだまだ残る中で戦線離脱はまずい…そのため考えられたのがトリオンが尽きる前に解除することでそのまま続行が可能かもしれない、という賭けだった。

冬島『大丈夫か?もう結構減ってきたらひいし、キツいなら本部で休んでもいいが…』

雪花「これくらいなら大丈夫ですにゃ…先輩達は完璧に動けなくなったって言ってたし、疲労の量は使用時間かトリオン量に比例してるのかも。」

竜治「まだまだ謎だらけですね…とりあえず他のところに…」

そう思った時だった。

ビジジジッ

再びゲートが開き、中から大量のトリオン兵が。

当真『お?』

雪花「ここに来て増援!?」

冬島『まだトラップ残量は十分ある。連携してくぞ!』

雪花「あと少し、頑張りますかね〜…」

竜治「ですね…」

その時は、気づいてなかった。気づくべきだった。

竜治「…あそこにあった牡羊座の残骸は?」

雪花「え?‪夏凜‬との攻防でだいぶ移動したしこっから見えるはずがないよ?」

竜治「あ、確かに…」

雪花「大丈夫?休む?」

竜治「いやいや!全然平気なんでやります!」

俺の目は、最後のタイマン用に強化されまくっていた。

…感じた違和感は、気のせいじゃなかったことに。

 

ーーー本部司令室、城戸sideーーー

沢村「東部、西部、北部、北西部にそれぞれトリオン兵の増援!!ラービットの反応も複数検知!!」

根付「まだ来るのですか…しかしもう星座トリガーも星座級もほとんど撃破、残るカミカゼも今封印に入ってるところです。消耗してるとはいえ油断しなければいけますよ!」

城戸「…不自然だな。」

 

ーーー北西部、雀sideーーー

「おかしいってどういうことですか、風間さん。」

風間「そのままの意味だ菊地原。アフトクラトルほどの奴らが無意味にしかけ続けるのは謎が残る。」

風間隊の菊地原さんの問いかけに風間さんが答える。

雀「無意味?私たちが消耗したところを追撃とかじゃ…」

時枝「それだけだと理由としては不十分なんだよね。ラービット複数体くらいなら今のボーダーでA級部隊が複数いれば割と苦戦せずに倒せる。そこに星座級とかが絡んでくると別だけど…」

「その星座級も星座トリガーもすでに4つのうち3つが撃破されてる、と…」

風間「そういうことだ歌川。」

 

ーーー東部、出水sideーーー

出水「アステロイド!!」ドガガガガガガガガガガガ

樹「えーいっ!!」ズバババババ

黒江「韋駄天。」ビュンッ!!

それぞれトリオン兵を複数体撃破していく。

出水「ひゃーっ、しっかしキリがねぇ。」

加古「アステロイド。こうなってくるとますます謎だわ。」

太刀川「こんなとこで追撃して倒されてくれるロマンにかけるくらいだったら次に取っといた方がいいだろこんな数。そんなことが分からねえ相手でもないわけだし。…何を企んでやがる?」

 

ーーー西部、友奈sideーーー

米屋「だいぶ減ってきたな、旋空弧月!!」ズバズバズバッ!!!

三輪「アステロイド!!そいつで最後だ!!」ドガガガガ

友奈「ありがとうございます!!」

私と三輪隊の皆さんはカミカゼの速さに苦戦しながらも、封印を発動。

溢れ出た核も最後のひとつまで減らすことができていました!!

友奈「これで!!勇者ぁぁぁ!!パァァァァァァンチ!!!!」

そして最後の核にトドメの一撃が…

ガキンッ

…入らずに何かに吹き飛ばされる。

友奈「きゃっ!?」

米屋「っ!?大丈夫か!?」

友奈「な、なんとか…一体何が…」

核の方を確認すると、そこには核を覆うように黒い穴から降ってくる謎の残骸が。

米屋「!!こいつは…!」

三輪「アフトクラトルの黒トリガー…!」

友奈「え!?」

しかもその黒い穴はなんと黒トリガーによるものだそうです。

さらにその降ってきた残骸を格が吸収し…

三輪「こちら三輪隊。…合体トリオン兵が出現した!!合体元はおそらくカミカゼと牡羊座!」

合体トリオン兵が、顕現してしまいました。

 

ーーー本部司令室、亜耶sideーーー

この戦いで、ほんの微力ながらみなさんのサポートをさせてもらってる私にも、その衝撃的な事実は聞こえてきました。

鬼怒田「合体トリオン兵だと!?牡羊座とはかなり距離があったはずだぞ!!」

三輪『アフトクラトルの黒トリガーらしき穴を視認しました。それが原因です。』

忍田「ここに来ての増援は合体トリオン兵と連携させるための…」

…そう、忍田さんが言いかけた時です。

沢村「さらにゲートの反応!…これは!?」

さらなる追い討ちをかけるかのように開くゲート。なんとその場所は…

沢村「…本部の北、すぐそこです!!」

一同「…!?!?」

忍田「急いでカメラで確認を!二宮隊、来馬隊、至急出動準備!!」

沢村「トリオン反応は星座級三体に星座トリガー1…つ…!?」

根付「…なんですと!?!?」

亜耶「それ…今まで来てたのと同じくらいの…」

鬼怒田「完全にハメられた!あの増援は部隊をこちらに戻させないためか!!」

城戸「カメラはまだか。」

沢村「今表示します!!」

本部の外部に取り付けられたカメラの映像がモニターに表示されます。しかし…

根付「何も、映ってない…!?」

鬼怒田「そんなバカな!確かにトリオン反応と映像の場所は一致して…」

唐沢「いや、北ならカメラに映らない場所が一つだけあるでしょう。」

城戸「…そういうことか。」

鬼怒田「…地下空洞か…!!」

(…地下空洞…?)

亜耶「どういうことですか??」

根付「前回の侵攻時、ギョライが潜っていたところに巨大な空洞ができているのが確認されたんですよ。ほうっておくわけにも行かないので、近いうちに本部との連絡通路に活用する予定でしたが…」

城戸「前回の侵攻すら今回のための布石だったと言うわけだな…となると敵の狙いは。」

鬼怒田「…遠征艇…!!!!」

 

ーーー風sideーーー

風「どけ、なさい!!」ズッガァァァァァァアァン!!!

雀「バッシュ!バッシュ!バーッシュ!!」ドガン!ドガン!ドッガァァァァン!!

嵐山「この数は…!せめて風さんか雀さんだけでも行かせないといけないのに…!」

 

ーーー友奈sideーーー

友奈「勇者!パァァァァァァンチ!!」ドッガァァァァァァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!!!

米屋「チッ!次から次へと!!」

奈良坂「あの合体トリオン兵がすぐに姿を消したのはいいが…」

三輪「結城、ここは俺たちに任せてお前だけでも先に本部へ向かえ!!」

友奈「わかり、ました!!」ドガァァァァン!

 

ーーー雪花sideーーー

雪花「戻るどころか、ここを切り抜けるのすら厳しくないですかね…!?」

竜治「人海戦術がキツい…」

増援のトリオン兵の数は予想以上で、4人、しかも近接が1人ではややジリ貧気味だった。

その時。

遊真「ほいっと!!」ズババッ!!

三雲「2人とも、それに冬島隊の皆さん!!大丈夫ですか!?」

冬島『お、三雲隊か。押され気味だったから助かるぜ。』

遊真「本部がヤバいらしいしな、出し惜しみはしてらんねえな。"レプリカ"起動!!」

ーーー太刀川sideーーー

出水「ギムレット!!」ドガガガガガガガガガガガ

出水が威力の高いギムレットでラービットの装甲を削り…

太刀川「旋空弧月。」ズバァンッッッッ!!!!

俺がそこに一閃、ラービットを撃破する。

加古「どこからこんなに湧いてきてるのかしら。」

黒江「本部のためにも早く行かないといけないのに…」

樹「でもここで逃がしたら住民の皆さんが大変なことになるかもしれません!!ほっとけないです!!」ギリギリギリ

 

ーーー亜耶sideーーー

忍田「…各隊員は急いで、しかし焦らずにトリオン兵を撃破、本部へと向かってもらいたい!!それまでは…私がもたせる。」

緊急事態がために、基本的に隊員達だけで済ませると言っていた忍田さんが出撃を決意します。

…それでも、まだ敵の手は終わりません。

ドガァン…!!

本部に謎の振動と、音が響き渡ります。

亜耶「こんな時に地震ですか!?」

根付「地震…まさか山羊座というわけではあるまいね!?」

沢村「このトリオン反応…合体トリオン兵です!合体トリオン兵が複数体に分裂し、本部へ攻撃してきてるものと思われます!!」

鬼怒田「この威力だと…もっても10分だぞ!!」

忍田「…地下と地上からの二正面作戦か…!!」

唐沢「…ダメだね。戦力が足りなすぎる。せめてもう一部隊はないと…」

その時でした。

『地下は私たちに任せてください。忍田さん達は地上の合体トリオン兵を。』

慣れ親しんだ声が、通信から聞こえました。

それとともに地下のトリオン兵に向かい合う形で現れる3つのトリオン反応。

沢村「!!地下に3つのフラワートリガーの反応検知!ひとつはちひろちゃんのものと思われます!!」

鬼怒田、根付「「!?!?」」

城戸「…本部長。」

忍田「もちろんです。二宮隊、来馬隊に通達。これより我々は地上で本部への攻撃を続ける合体トリオン兵の対処に当たる!!」

 

ーーー地下空洞、ちひろsideーーー

園子「でもよく分かったね〜このこと〜」

ちひろ「割と偶然に近いよ。会議あった帰り道で亜耶ちゃん達が下から吹く風を受けてて、それがギョライの通ったとこだったの。

風なんて気圧差とかないと起こらないのに、人肌で感じるくらいのを何もないところからはおかしいなって。」

東郷「あとは調べてみたらなってたと…そこら辺さすがたわ、ちひろちゃん。」

園子「しかしホントに抜かりないよねお相手さん〜」

園姉はそう言いながら目の前のトリオン兵…

…蠍座、射手座、蟹座の三体を見据える。

東郷「あちらからしても切り札のひとつでしょうに…よほど壊したい理由でもあるのかしら。」

ちひろ「遠征艇がなければ反撃を受ける心配がないからですかね…あいつらを私たちが相手するって、因果を感じますけど。」

東郷「ええ、ホントに…」

その目には…

━━━━天秤座らしき姿に身を包む銀さん。

園子「…」

東郷「…」

ちひろ「…」

しばし、沈黙が訪れる。

園子「…ミノさん。」

ちひろ「銀さん。」

東郷「銀。」

園子、ちひろ、東郷「「「…ここから先は、通さない!!あなたのためにも!!!!!」」」





〜〜〜次回予告〜〜〜

「気合いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「勇者は!!根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「必ず帰るんだ!!4人で!!今度こそ!!!」

上里ちひろは勇者である 防衛の章「"魂"」


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17話 "魂"

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「はぁっ!!!」

銀「ッ!!」

ガキンッッッッ!!!!

私の剣と銀さんの斧がぶつかり合う。

ゴオオオッ!!

そんな私を貫かんとする蠍座の針は…

ズガァァンッ!!

須美さんが撃ち落とし、その須美さんを狙う蟹座の攻撃は…

園子「ほいさー!」

ガキキッ!!

園姉が弾き飛ばす。

…ガコンッ

ちひろ「…射手座!」

東郷「くっ…!」ダンッ

キキキキキキキキキキキキンッ!!!

その後に発射される射手座の大量の矢を園姉の盾の影に隠れて凌ぐ。

ゴオオオッ!!

しかし、間髪入れず盾ごと薙ぎ払うかのように蠍座の尻尾が迫る。

ちひろ「っ…バーさん!!」

バーさん『微調整は任せときぃ。』

ちひろ「モード…"ドリル"!!」

ギュルルルルルルルルドガァァァァァァン!!!!

レイピアで螺旋を作るようにビットを変形、回転させて迫る尻尾を削り飛ばす。

園子「…!上からユニット来るよー!!」

そして、上から迫る蟹座のユニットを避ける。

東郷「相変わらず厄介な連携だわ…どうする?2人とも。」

ちひろ「とりあえず狙うべきは銀さんだと思います。星座級に関しては吸収されないためにも三体同時封印の必要がありますし。」

園子「だね〜そうなると遠距離から攻めれるわっしーが重要なんだけど〜…」

東郷「パワーアップした蟹座に利用されるからタイミングを考えなきゃいけないのよね…」

今まで出現した星座級と同じようにこの三体にも強化がなされていた。

蟹座はユニットの増量と敵味方問わずの射撃反射、これのせいで須美さんが不用意に狙撃できなくなった。

射手座は雨矢と巨大矢の同時攻撃、これは園姉の盾で防げる。

蠍座は未だ不明だが…

(ないはずがない。でも近距離最強たる所以のあの尻尾の数を増やすよりも有効なところなんてあるの?うーん…)

ババババババババババババババ

ちひろ「チッ…モードウィップ!!」ガキキキキキキキキッ!!

こちらを狙い撃ちしてくる雨矢を全てウィップで薙ぎ払う。

園子「大丈夫ちっひー?さっき攻撃受けてたけど…」

ちひろ「ウィップでなんとかしたから大丈夫。それよりもあの連携を…」

東郷「…そのっち、ちひろちゃん、私に少し考えがあるんだけど。」

園子「お?じゃあ乗った!」

ちひろ「私も。」

東郷「まだ話してもないのに…ありがとう。」

 

ーー東郷sideーーー

東郷「じゃあ決行は次の攻撃が来たら…」

園子「って、言ってるうちにもう来そうだよ〜!!」

ギュゥゥゥゥゥ…ズガンッ!!

射手座が巨大矢をこちらに向けて放ってくるのを、後ろに避ける。

東郷「じゃあ行くわよ!!」

ちひろ、園子「了解!!」

ビュビュビュビュン!!

2人の返事を聞いてから武器を狙撃銃から射撃ユニットへと変更、射手座に向けて一斉攻撃を仕掛ける。もちろん…

キキキキキキンッ!!

全て蟹座のユニットに反射され、私の方へと向かってくる。

しかし…

(かかった!)

それこそが、こっちの作戦だった。

キキキキキキンッ!!

キキキキキキンッ!!

突如としてビームがさらに様々な方向に反射される。

しかも1回ではなく、何回も。

モーモー『(`・ω・´)ふんすっ!』

ちひろ「うん、土壇場ありがとねモーモー。モード"リフレクター"、反射できるのは、お前たちだけだと思わないで!!」

そう、その正体はちひろちゃんのビットの形態の1つ。それもあえて乱反射にすることで…

ガガガガ

ガガガガ

ガキキキッ

蠍座や射手座、銀にも降り注ぐ。

(銀は斧で防いでるけど…十分よ!!)

ビュビュビュビュン!!

そのまま攻撃を続ける。

ちひろちゃんが上手く調整してくれていて、射手座と銀は多さに動けなく、蟹座は反射に必死。

蠍座の死角からの尻尾の攻撃もビームの被弾音で事前に察知、かわせる。

銀「…ッ。」

もちろんこのままじゃ先に私のトリオンが尽きて、戦況は一気に瓦解するだろう。

だからこそ…

東郷「そこよ、そのっち!!」

園子「ほいさー!!」

私たちに奴らが気を取られてるうちに、そのっちに近づいてもらったのだから。

 

ーーー園子sideーーー

ちっひーとわっしーがミノさんと三体の注意を引いてくれたおかげで、私はミノさんの懐まで迫れていました〜

銀「ッ!?」

園子「目には目を、連携には連携をだよ〜!!!!」

ガキガキンッ!!

銀「ッ!!」

こっちに対応するために下ろそうとする斧ふたつをそれぞれモーニングスターとハンマーで抑える。

胴体はガラ空き、これほどのチャンスはない。

蠍座の尻尾もカバーに入るべく向かってくる。

園子「まとめて突っ切るよ!はああああああ!!!!!」ビュンッッッッ!!!

私とミノさんの間に割ってはいる尻尾とその先についた針ごと貫かんと、槍の威力重視モードの一撃を放つ。

…が、しかし。

ドロッ…

針に触れた場所から、槍が溶けた。

そう、まるで固体が液体に戻るかのように。

園子「…!?!?!?!?」

私の本能が、ヤバいと言っていた。

尻尾がこちらに振り抜かれる、槍をあっさりと溶かした針を携えて。

園子「…くっ!!」バッ

それを後ろに離脱し回避、しかしそれとともに…

銀「…!!」ガキガキンッ!!ズバッ!!

園子「っ!!」ガキンッ!!

ミノさんがモーニングスターとハンマーを突破、こちらに斬りかかってくるのを、槍の持ち手で防ぐ。

…だけども。

ギュルルルルルルルルルルル

斧の刃が高速で回転、物凄い音と火花を散らす。

東郷「…そのっち!?」

ちひろ「まずい!!」ダンッ!!

(まるでチェンソーみたいに…!!)

少しずつ、少しずつ持ち手が斬られていき…

ズバッ!!

ついに切断、そしてそのまま私の体も…

ちひろ「モードウイング+シューズブレイドォォォ!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァン!!

高速で飛んできたちっひーの蹴りが斧に命中、間一髪のところでミノさんごと地面に叩きつけ、近くの物陰に身を隠す。

東郷「大丈夫?そのっち。」

園子「なんとかね〜倒せなかったけどミノさんと蠍座の特徴が分かったのはいいことだし。」

ちひろ「銀さんはあの回転か…多分なんでも時間かければ切り裂いてくるだろうし、厄介だね…」

東郷「蠍座は…なんなのかしらアレ。」

園子「針に当たったところから槍が溶けたんよ〜…私の体にも当てようとしてたし多分私に当たってたら私も…」

東郷「針ってことは…毒?」

ちひろ「トリオンでできた物を融解する毒…ありそうですね。確か黒トリガーの中にはトリオンにだけ作用するものもあるそうですし。」

園子「蠍座はほかの2体とまとめて止めるとして、ミノさんをどうするかだね〜防御できないってなると…」

ちひろ「小回りが効く私、だね。あの三体に援護されるとキツいんで抑え込みは任せます。」

東郷「えぇ、ちひろちゃんの方に手は出させないわ。」

園子「ちっひーファイトー!!」

ちひろ「うん!!」ドゴンッ!!

飛んできたユニットをダガーで殴り飛ばし、銀さんの元へと進む。

(銀さんがいるのは空中…多分足底にも回転する何かがあってそれが風を起こすことでのはず。なら私がやるべきモードは…)

ちひろ「…モードウイング+ソードブレット!!」

タッツー『大奮発〜!!』

ソードブレットを4つ展開し、残りをウイングに。

その上で…

ビュビュビュビュンッッ!!

ソードブレットを穿つ。

銀「…」キキキキンッ!!

もちろん銀さんは斧で弾き飛ばすが、その隙に私が距離をつめる。

銀「ッ!!」

ちひろ「行きますよ!!」

ガキガキスッガキガキキキキキンッズバッガンッガキンッ!!

私と銀さんの攻防が繰り広げられる。

優勢なのはこちら、私の猛攻を前に銀さんは大振りでどうしても防ぎきれず、致命傷は避けてるもののかすり傷が増えていく。

銀「…ッ!!」ギュルルルルルルルルルルル

ついに痺れを切らし、銀さんの斧が園姉の時のように回転し出す。

(…来た!)

…ただ、それをうかうかとさせる私ではない。

ガガガガンッ!!!

銀「ッ!?」

そこに最初に弾き飛ばされてからずっと移動させ続け、威力を高めたソードブレットが直撃。

片方の斧を地面に突き刺す。

(チャンスは逃さない!!)

銀さんが斧を回収する前に畳かけようとする。

ちひろ「モードブレイド+レイッ…!?」

…しかし、その時。

…視界に、雨矢と巨大矢の同時攻撃を凌ぐ園姉の盾を狙う、蠍座が見えた。

ちひろ「…っ!モーモー、園姉達を頼んだ!!」

モーモー『え、はい!』ドドド

園姉と須美さんがやられたら銀さんを倒しても敗北は濃厚、モーモーにほとんどのビットを預けて援護に向かわせる。

(残したウイングだけだと一時的な滞空だけが限界…でも銀さんは斧を拾うためにも降りざるを得ない。油断せずに必ず倒す!!)

ダンッ!!

跳躍、斧を回収するべく下がってきていた銀さんに迫る。

(残ってるビットは1本分…剣で斧を抑えて気をそらし、後ろから狩る!)

銀「…!!」ガキンッ!!

予想通り、銀さんは私の攻撃を残った斧の面でガード。

(よし!行ける!)

ヒュッ

ウイングが解ければ滞空効果は消える、そのため一瞬でビットを後ろに移動させる必要があったが、成功。

そのまま突き刺し━━━

…ギュルルルルルルルルルルル

ちひろ「…っ!?」

ビュオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

ちひろ「突風っ…!?がっ!!」ッッッガンッ!!

銀さんの斧が回転したことにより、面であった私の方に物凄い突風が発生。

空中にただいるだけになっていた私はそのまま地面に思い切り叩きつけられる。

さらに…不意の一撃だったため、武器も手を離れていた。

(しまっ…早く回収を…)

ビュオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

ッッドッガァァァァァァァァァァン!!!

ちひろ「…かっ…ふ…!!」

…そこに、地面に突き刺さっていた方の斧からの突風が追い討ちをかけ、武器の回収もできないままに壁に叩きつけられる。

(から…だが…!)

トリオン体はトリオンを介さない攻撃で傷がつくことはない。

…しかし、衝撃とかを感じないわけでは、ないのだ。

斧を回収した銀さんが迫る。

こちらの剣はあえて何も手を出さずに、手元に新しいものを形成させないつもりのようだった。

(このままじゃ…間違いなくやられる…!何か方法は…)

園子「ちっひー!!きゃっ!!」

東郷「是が非でも通さないつもり…!?でもなんとかして援護に…!!」

園姉と須美さんも星座型三体に阻まれている。

(この場を打開する方法…)

銀さんが目の前に立ち、斧を回転させる。

斧はその回転により範囲を広めるかのようにカマイタチを纏う。

(せめて誰かだけでも私が倒さないと…!!)

 

和人『自分を大事にしろ、ちひろ。』

 

(…!)

…かつての戦いでも逡巡したあの言葉が再び、脳裏に浮かぶ。

ちひろ「…は。はは…

…勇者は!!気合いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

無駄でもいい、己を鼓舞する。

カマイタチを纏った、斬撃が向かってくる━━

━━真ん中一直線に両断する形と、右上から左下へ切り裂く形で。

(…斧の、軌道が見えて…!?)

見えた景色で斬撃の来ないところにかわす。

ザンッガンッ!!

斬撃も同じ位置を通り、かわすことに成功する。

銀「…ッ!!」ヒュッ!!

銀さんが逃さないと斧を水平に横に薙ぎ払ってくる。

下にかがんで避けようと…

━━━突風を発生させることで恐ろしい範囲攻撃にしてくる景色が見えた。

ちひろ「…っ!?」ダンッ!!

後ろに跳躍、景色通り突風が発生し、かがもうと上にジャンプしようと逃がさない強力な一撃と化けた。

銀「…!?!?!?」

ちひろ「…何が、どうなって…」

そのまま後退しつつ剣を回収する。

銀さんは逃がさないと斧を回転させたままこちらに来る。

ちひろ「…よく、わかんないけど…っ!!」

ガキガキッ!!

剣と斧が激突、もちろん削り切られそうになるが、そこにソードブレットを…

━━シューズブレイドならダメージを与えつつ距離を取れる

…なぜか、そんな景色が見えた。

ちひろ「…はあっ!!」ヒュンッ!!

銀「ッ!?」

ドッガーン…

3度、景色通りの事が起こる。

(…とりあえず園姉達と合流を…!!)

星座型の三体も銀さんを守るために一旦攻撃の手をやめてるようだった。

園子「ちっひー!!無事でよかった!!」

ちひろ「うん、なんとかね…」

東郷「援護に行くどころかこちらが援護されることになってごめ…ちひろちゃん、その目…」

ちひろ「…目、ですか?」

東郷「えぇ…右目が、黄色になってるわ…」

(…黄色…??)

須美さん曰く、私の右目が黄色に輝いているらしい。

ちひろ「…あ、そうですそう!追い詰められたあの時、未来が見えたって言っていいのか、こう動けって言われたのかよくわかんないですけど、なんかそれっぽい景色が流れて、実際に銀さんもその通りに…それのおかげでなんとか打開できたんですけど…」

園子「…それっぽいのは本で見たことあるんよ〜!」

ちひろ「園姉ホント!?」

園子「うんうん!2人とも、先見の明は知ってるよね?」

東郷「えぇ。事象が起こる前にそれを見抜く力…でもこれは察知力や思考力、計画性とかが高い人がまるで未来予知のレベルで推測することであって、ちひろちゃんのとは…」

園子「で!そういう先見の明を持っててもおかしくないような人が、極限まで追い詰められた結果、一時的に無意識下で未来を予測し続けることがあるらしいんよ!そしてその時には目は黄色に輝く。えーっと確か名前は…"未来の明"!」

(…ってことは…)

ちひろ「局所的にじゃなくて視界全体の未来を予測して、私に見せてたってこと…?」

東郷「それなら辻褄も合うわね…凄いわ、ちひろちゃん。」

ちひろ「ありがとうございます。…で、これからどうします?」

そう言って警戒の姿勢を崩さない銀さん達の方を見る。

園子「このままじゃとても勝ち目ないよね。」

東郷「とはいえ満開だと倒しきるまでトリオンが持つかしら…」

満開が異常な程にトリオンを消費するのは風さんや樹ちゃんから分かってる。

かなりの戦闘を行った私たちだ、傷も少なくはない。

高めに見積もっても持って1分、自身のトリオンを弾とする須美さんはもっと少ないはずだった。

ちひろ「相手は銀さんに加えてあの三体…満開は強力だけど今の時間で倒しきるのはさすがに…」

園子「…一応みんなこっち向かってるだろうから粘れば人数差で押し切れなくもないかもしれないけどね〜」

ちひろ「うーん…それくらいしかないのかなぁ…」

東郷「…それだけは、嫌だわ。」

ちひろ「須美さん!?」

園子「お、珍しい〜理由は?」

東郷「…私らしくないのも、ワガママなのも分かってるわ。でも…この三体は、私たちだけで超えたい。銀は、私たち3人で助けたいの。」

園子「…だって、ちっひー。」

少しの静寂が訪れる。

ちひろ「…分かりました。今から全力で作戦考えます。」

東郷「…!ありがとね、ちひろちゃん。」

園子「もしあちらさんが動き出しそうだったらすぐ教えるんよ〜!」

未来の明の副産物で研ぎ澄まされまくっている思考力をフル回転させる。

そして…

ちひろ「…須美さん、園姉!」

園子「お、その様子だと?」

ちひろ「うん。考えついたよ。」

東郷「ホントに?ありがとう!」

ちひろ「いえいえ。これから説明しますけど、状況によって動きが変わるのでしっかり聞いててください。」

 

ちひろ「…やれます?」

東郷「もちろんよ。2人とも、銀を頼むわね。」

園子「承りなんだぜ!わっしーもね〜。」

ちひろ「…じゃあ、行きましょう。銀さんを助けに。」

東郷「えぇ。」

園子「うん!」

ちひろ、園子、東郷「「「…満、開!」」」

…暗く閉ざされた地下空洞に、大輪の花が三つ、咲き誇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーわすゆ組sideーーー

ちひろ「ダブルフェニックスレイ!いざ!!」

東郷「一斉砲撃!!」

ビジジッ…ビュビュビュビュビュビュゥゥウゥゥゥゥン!!!!!

小型飛行機…"ビットレイフェニックス"に乗ったまま2つの剣とビットレイフェニックスを接続した"大剣グングニル"を両手にひとつずつ持ち、銀さんへ突撃。

それを援護するかのように須美さんが8つある砲門から一斉にビームを撃ち出す。

そしてそれを…

ちひろ「モードリフレクター!!」

キキキキンッ!!

ドガガガガガガガガガガガァァァァァァァァン!!!!!

増量されたビットによるリフレクターが乱反射。

私を狙う蟹座、蠍座、射手座の猛攻を撃ち落とす形で反射させる。

銀さんの前まであと5m。

ゴオオオオオオオッ!!!

ジッーーーー!!!!

ここで蠍座の尻尾と射手座の巨大矢が私へ照準を定める。

ビームは蟹座がカットしていた。

ブォンッ!!

ビュンッ!!!

それぞれが私を貫かんと迫る。

ちひろ「…やるよマルル!!モード"ジェット"!!」

ガキキッ!!ボォオオオオォォォオオオオ!!!!!

それを、2つのグングニルがジェットにより凄まじい推進力を得て突撃、引き剥がす。

そして、銀さんを目前に捉える。

銀「ッ!!」

ちひろ「ぉぉおおおおおおっ!!!!」

勢いのまま貫く、そのためにウイングを起動した上で今乗ってるビットレイフェニックスもグングニルに切り替えようと右に腕を構える。

が…

銀「ッ!!」ギュルルルルルルルルルルル!!!!!

それを銀さんは見逃さない。

迎え撃たんと双斧をこちらに…

ザンッ!!!!

ちひろ「…やっぱり、所詮は強いトリガーを与えただけ。」

銀「…ッ!?!?!?」

ちひろ「…いつもの銀さんの方が、100倍は強いです。」

…銀さんの左腹には、園姉の槍が食いこんでいたのだ。

 

ちっひーの後ろに追随して、ちっひーがミノさんの斧を右に集中させたところで左から槍を刺す。

作戦の第一段階は、最後の鬼門を残して成功していた。

銀「…ッ!!」

ミノさんがこれ以上の攻撃を回避しようと動く兆候を見せる。

園子「行くよちっひー!!」

ちひろ「うん!!園姉!!」

それを逃がさないために…ちっひーごと槍を振り抜く。

スピードを早めすぎてちっひーが回避できずにトリオン体が解ければ詰み、だからといって遅くしすぎてミノさんに逃げられても詰み。

(できるかじゃない…絶対に成功させる!!)

園子「はあああああああ!!!」

ザザザザザザザッ!!

ちひろ「うああああああ!!!」

ザザザザザザザ…ザンッ!!!!

完全に振り抜く。

ちっひーは左腕が身体から離れ、ミノさんは…

…完全に、切り裂かれていた。

ピシピシッ…ドガァァァァァァァン!!!

ミノさんのトリオン体が解除され、落下していく。

ちひろ「あとは話したとおり!」シュバッ

園子「分かってるんだぜ!!」ビュンッ!!!

ちっひーは機動力を活かしてミノさんを助けに。

そして私は…射手座に狙われるわっしーの前に盾を展開、蠍座へと突撃する。

ゴオオオオオオオッ!!!

あと少しのところで止めるためにか、蠍座の尻尾が正面から迫る。

が…

ちひろ「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ビュンッ!!!

ちっひーが足でそれまで乗っていたビットレイフェニックスをグングニルに変形して投擲、尻尾を切断される。

そして…

ガンッ!!!

蠍座に接触。

(よーし!あとは押し切るだけだよ!!)

作戦の第二段階…それは、私が星座型三体を1箇所に集め、わっしーが最大火力でまとめて倒すというものだった。

集める場所は今射手座のいる場所、そこに私が蠍座と蟹座を持っていく必要がある。

(もう…二度と私たちの大切な物は奪わせない!!)

園子「お前達はここから!!出て行けええええええええ!!!!!」

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!

船に推進力をフルパワーにし、蠍座を巻き込んで蟹座へと向かう。

そして…

ッッガンッッッッ!!!

激突、そのまま押し切らんと━━

園子「…動かない…!?」

━━蠍座と蟹座の重さが、船の推進力を完全に上回っていた。

 

ガキキキキキキキキキキキキキキッッッ!!!

東郷「くっ…!」

かなりまずい状況だった。

射手座の攻撃はそのっちが展開してくれている盾が、蟹座のユニットの方はちひろちゃんが受け止めてくれているから被害はない。

しかし…三体を倒しきれるほどのトリオン量が、残っていないのである。

(2体ならギリギリ行けそうだけれど…残った一体が吸収してしまうし、何よりこの状況は私のワガママが通ったからこそ…私が諦めるなんて私自身が許せない!!)

 

園子「動…け…!!」

推進力はすでに最大、しかし二体はビクともしない。

射手座によるわっしーへの猛攻も未だ続いてるためオールの役割を果たす刃も戻せない。

(急いでなんとかしないとわっしーがトリオン切れになっちゃう…こうなったら一体だけ…?いや、ちっひーは私ならやってくれるって信じてるから任せてくれたんだ…だから…!!)

 

東郷「はああああああ…!!!」

船を形成するトリオンを最低限残し、残りを全て砲門、そしてビームへと集約する。

 

園子「ぉぉおおおおおお!!!!」

自身のトリオン体を形成するトリオンまでも推進力に回し、船のトリオンもただの一点に集中させる。

 

東郷、園子「「勇者は!!根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

 

瞬間、推進力が一瞬だけ爆発的に上昇、圧倒的スピードで二体を射手座に叩きつける。

園子「これで!!どうだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

射手座は衝撃のあまり攻撃の手が止まり、蠍座は打ちどころ悪く自らの針を自らで受けて行動停止。

しかし蟹座は…

ギギギギギギギ…

未だに、突破し、須美さんの特大レーザーをはね返そうとしている。

蟹座のユニットは12個、グングニルとビッグビットで抑え込んでいるものの、ビッグビットではギリ押し切られる。

ちひろ「だけど…させるもんか…させるもんか!!絶対に!!!」

グングニルが、二つに分離する。

ちひろ「"双剣ペルセウス"ゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

土壇場で開花した計6つの新たな剣が、2つずつユニットを抑える。

 

船やトリオン体、使える限りのトリオンを全て一撃に集約する。

ちひろ「須美さん!!!」

園子「わっしー!!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

(二人が繋いでくれたこの奇跡…私も、最後まで繋いでみせる!!)

東郷「今までの分、全部倍返しにしてあげるわ!!お釣りは取っときなさい!!」

…ッッッドッッッッッッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

そして私たちが紡いだ究極の一撃は…三体を飲み込んだ。

 

私も園姉も須美さんも、トリオン体が解除され、地面に円を描くように倒れる。

須美さんの特大レーザーの影響で、周りには粉塵が舞っていた。

ちひろ「はぁ…はぁ…や…りました…ね…無事…ですか…?」

東郷「怪我は…ないけど…」

園子「疲労が凄まじいね〜…もう指一本すら動かせないんよ〜…」

身体を襲う人生1番と思うレベルの疲労、園姉の言う通り何一つ身動き取れそうになかった。

ちひろ「みんな限界超えてトリオン使いましたからね…その反動かもです…」

東郷「そう…ね…ちっひーもそのっちもよく頑張ったわ…」

園子「わぁ〜い…!わっしーに褒められたんよ〜…」

その時、粉塵が晴れる。

そこには…

ちひろ「…ダメ、だったか…」

下半身が吹き飛び、一部から核を見せながらも存在している蟹座の姿があった。

もちろん、蟹座はすぐに二体の残骸を吸収し始める。

東郷「あの様子…他の二体を盾にして凌いだのね…」

ちひろ「…すいません、私が最後まで止めれていれば…」

園子「ううん…最初から展開されてたら反射されて誰も倒せなかったんよ〜…ちっひーは十分役目を果たしたよ〜…」

東郷「ここまで来れたんだもの…それに、こんな時のための作戦第三段階、でしょ?」

蟹座が、その形を大きく変える。

園子「そうそう…もう勝ったようなもんなんよ〜…」

こちらに進行してきて、蠍座から取ったと思われる腕の形を三又槍へと変える。

ちひろ「そう…ですね…だって…」

そして、私たち三人を突き刺さすべく勢いよく━━

…ビジジッ!!!!!

━━放たれた一撃は、私達を貫くことなく、弾かれた。

 

「…全く、焦ったぞ?避けようともしないから。」

東郷「避ける力も出ないのよね…指一本動かせなくて…」

「あっちゃー…マジか…私いなかったらどうしてたんだよ…」

園子「まあ可能性としては低かったよね〜…ふーみん先輩でも起きるのに10分くらい必要だったし、そもそもフラワートリガーの覚醒には何かしらの条件必要だったしね〜…」

「…はあ!?それほとんど奇跡だったようなもんじゃないか!!なんでそんな…」

ちひろ「…友達を信じる事ほど簡単なことって、ないじゃないですか。それも、特にあなたなら。」

そういって、3人が微笑む。

「全く、無茶して…でも、ありがとな。」

敵に回っていた自分を、疑いの欠片もなく信じてくれてる3人の信頼が、今はとても嬉しかった。

…だから。

銀「…あとは、この三ノ輪銀様に任せときな!」

両手に斧剣を顕現させる。

前方には合体トリオン兵、後方にはかけがえのない仲間達。

(…3人がここまでやってくれたんだ。ここで踏ん張らずにどうする!!)

銀「…随分と好き勝手やってくれたみたいだけどよ…ここまでだ!園子も、ちひろも、須美も。みんな私が守ってみせる。必ず帰るんだ!!4人で!!今度こそ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー銀sideーーー

銀「…はあ!!」ダッ

射手座の攻撃の兆候を確認し、3人を巻き込まないために突貫する。

ババババババババババババババババッ!!!!!

予想通り雨矢は発射されるが、ギリギリのところで全てかわしきる。

銀「相変わらずだなそういうところ!!」ドガガァァァン!!!

そして斧剣を剣から斧へと切り替え、一撃、二撃と攻撃を撃ち込む。

ヒュヒュヒュヒュンッ!!!

銀「チッ!」バッ

これ以上の攻撃を許さんととんできたユニットをかわし、地面に着地。

ゴオオオオオオオッ!!!

銀「あの時と同じ…!」ギギギギギギギ

剣に切りかえて、片方の面で防ぎ…

銀「…と、思うなよ!!!」ズバァンッッ!!!

残ったもう片方の剣でぶった斬る。

ビュンッ!!!

銀「しまっ…!」ボガァァァァァン!!!

そこにとんでくる巨大矢の一撃、防御姿勢を崩していなかったから直撃は免れたものの、吹き飛ばされる。

銀「効いったぞ…今のは…!!」

…ババババババババババババババババッ!!!!!

キキキキキキキキキキキキキキンッッッ!!!

追随するように雨矢が発射、それをユニットで反射させて複数の方向からこちらを穿たんと迫ってくる。

銀「まだ…だ…まだ諦めるもんか!」

己を鼓舞するべく叫ぶ。

(逃げ道はない…なら!!)

銀「全て撃ち落とす!!」

ギュルルルルルルルルルルルガキキキキキキキキキキキキキキッッッ!!!

斧に切り替え、その場で高速回転。

一時的に竜巻を起こして雨矢を弾き飛ばす。

ブォンッ!!

銀「今度はこっちの番だ!!」

一直線にとんでくる尻尾をかがんで回避し、直進。

ヒュンヒュンッ!!

とんできたユニットを足場にし…

銀「おらあああああ!!!」ズッガァァァァァァァァァァァァン

頭に斧の強烈な一撃を叩き込む。

(よし!このまま…)

ゾッ

銀「っ!?」ダンッ

攻撃を続けようとした時、突如として背中に悪寒が走り、咄嗟に離れる。

その直後…

ガキンッ!!

音沙汰もなく現れた鋏がさっきまで私のいた場所の虚空を切り刻んでいた。

(あの形状…蟹座の奴か!)

合体トリオン兵は人型に近い…おそらく緊急時にだけ髪の先が鋏に変形するようになってるのだろう。

銀「でもそれはつまり…頭に核があるってことだろ!!」

…ッ、ブォンッ!!

尻尾の針が鎌状に変形させ、こちらへと差し向けてくる。

(…攻撃できる範囲を広げてきたか!!でも防ぐのはできない…)

…最初に須美達を狙った攻撃を弾き返した時、斧剣がわずかに溶けたのを確認していた。

(だがあの範囲…かわしたら須美達に砕けた地面の破片が飛んでいきかねない…なら…)

防ぐもダメ、避けるもダメ、ならどうするか…そんなものは、決まっていた。

銀「…無理やり、突破する!!!」

斧剣を斧に切り替える。

勝負は一瞬、それより遅れれば鎌の毒で剣ごとトリオン体まで溶かされる。

ゴオオオオオオオッ!!!

鎌が迫る。

銀「はああああああああああああああああ!!!!!!」ズガンッッッ!!!

一瞬に全てを込めて、鎌を斬り飛ばす。

バッ

斬られるはずのないものが斬られたからか、合体トリオン兵は動揺、後ろに下がって形成を建て直そうと…

銀「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

…それを、逃しはしない。

ドガンッ!ドガンッ!!ズバババババババ!!!!!

合体トリオン兵に攻撃の嵐を浴びせ…

銀「おらあっっっっ!!!!!」

ドッゴォオォォォォォォオォォォン!!!!!!

真下から一撃、宙に叩き上げる。

そしてこのまま畳み掛けようと…

ビュンッガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガブォンッヒュヒュヒュヒュンッ!!!!!!!!!!!

銀「!?!?」

巨大矢に雨矢、尻尾、ユニット…それらが一斉にこちらへと放たれる。

まさに…総攻撃。

銀「…それ、でもぉぉぉぉぉ!!」

(…思えば、勇者のお役目に選ばれてから、色んなことがあった。

たくさんの出会いがあって、訓練を通して連携を深めて。

何気ない団欒を楽しんだり、お互いの夢を語り合ったり。

初めて追跡されたりもした。

そんなかけがえのない日常が、私たちを友達にして。

…別れが、四人を三人にした時も、あった。

それでも、三人は…私を、ずっと待っていてくれた。

私が交わした、約束を信じて。

…だから。)

銀「もう二度と!!あいつらを孤独な英雄になんかさせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

花が光り輝く。

銀「満!!開!!!!!!」

薄暗い世界を照らすように、一輪の花が咲き誇る。

銀「化け物には分からないだろ!!この力!!!!」

総攻撃を全て粉砕。

銀「これが!!人間様のぉ!!!!!」

合体トリオン兵を天井に叩きつける。

銀「気合いと!!!!!」

合体トリオン兵に、天井に、ヒビが入る。

銀「根性と!!!!!!!!!」

合体トリオン兵にさらにヒビが入り、天井が砕ける。

銀「魂ってやつよぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉおぉぉぉおぉおぉおぉぉお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

合体トリオン兵も、降り注ぐ瓦礫も、全てを粉砕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー東郷sideーーー

ビジジジッ

銀が落下してくるものの、精霊バリアで事なきを得る。

銀「うおっ、びっくりした…これが精霊バリア…」

園子「だよね〜…大抵の攻撃は防いでくれる可愛い子達なんよ〜…」

銀「おおー、私もあとで確認してみるか…しっかし体が重い!!こりゃ動けない訳だ…」

ちひろ「ですよね…散華なくなったのはいいんですけど1回使うと戦線離脱せざる得ないと考えるとホントの奥の手になったなぁと…」

園子「しっかしホントにすごいねミノさんは〜…あの合体トリオン兵を1人で倒しきっちゃうんだもん。」

銀「お前らこそ、私含めてよくあそこまでやれたよな…すごいよ。」

園子「そこはちっひーが。」

ちひろ「私だって偶然だよ。まあ全力は尽くしましたけど…」

東郷「…私がいて、そのっちがいて、ちひろちゃんがいて、そして…銀がいたからこそ、この戦いに勝てたのよ。」

(私がいたから、三体をあそこまで追い込めた。

そのっちがいたから、銀を解放することができた。

ちひろちゃんがいたから、勝つ作戦ができた。

銀がいたから、最後の合体トリオン兵に打ち勝てた。)

誰一人欠けても不可能だった…今は、心から、そう思った。

銀「私は最初敵サイドだったけどな。」

ちひろ「でも速攻で起きて守ってくれたじゃないですか。」

園子「そうそう!私たちは三人で三体?人?倒したから1人1つだけどミノさん三体が合体したトリオン兵倒したから3つ分でダントツトップなんよ〜」

銀「なんだそれ…」

ちひろ「でも納得しちゃうのが園姉なんですよねぇ…」

銀「…だな!」

東郷「…ねえ見て。」

そう言って穴から見える空を見る。

銀「…空、綺麗だな。」

ちひろ「心做しか5年前見た時に似てません?」

園子「あ〜、確かに〜!!」

東郷「私もそんな感じがして…まだ、戦いは続くのよね。」

銀「私は分かんないけどまだ取り戻せてない部員もいるんだろ?なら、全員取り戻すまでは、な…」

ちひろ「…できますよ、私たちなら。」

園子「四人揃った私たちならね〜!」

東郷「…銀。」

ちひろ「…銀さん。」

園子「…ミノさん。」

3人「「「おかえり!」」」

銀「…ただいま!」

…神世紀298年に神に魅入られし少女達がかわした約束は、5年の時を経て今、果たされた。

戦いはまだまだ続いていく。

多くの苦難が彼女達を襲うだろう。

しかし…何が来ようと彼女達はそれを乗り越えるに違いない。

なぜなら…彼女達には、

恐れず進める気合いと、

決して挫けない根性と、

燃え尽きることなき"魂"が、あるのだから。




鷲尾須美の章を意識してるとこが結構隠れてます。よければ探してみてください。見つけた時に何かしらの形で教えてくれると狂喜乱舞します


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18話 黒銀ノ親愛

忙殺されてました…大変お待たせして申し訳ありません
量は短めですが2話更新です!!


ーーー7月15日、銀sideーーー

銀「ふ〜やっぱ私はこれくらいが一番だなー。すいません京介さん、付き合わせちゃって。」

烏丸「いや、俺もそろそろ切ろうかと思ってたところだからちょうどよかった。」

須美達に助け出され、そして助けてから5日、私は当番として食料などの買い出しに来ていた。

京介さんは熱中症対策に多めに買うことを聞いてついてきてくれている。

そしてその買い出しがてらに、理髪店で少し伸ばしてた髪を切って昔の髪型にしたのが現状だった。

京介「しかしやっぱりってことはいつもとは違った感じだったのか?」

銀「はい、いつもはこれくらいの長さにして後ろで少し束ねてたんですけど、半年くらい前に園子がすっごいバッサリ行って。イメチェンってやつなんですかね?それで私もしてみようかなーと思いまして!まあ結局戻しちゃいましたけど。」

そう言って軽く笑顔を見せつつ、近くのショッピングモールまで足を動かす。

(予定よりも早く終わりそうだし、みんなにアイスでも買っていってあげようかなー。)

 

ーーー1時間後、烏丸sideーーー

銀「すいません。ホントにすいません付き合わせちゃって。」

烏丸「いや、別に謝ることじゃないだろ。困ってる人を助けるのはいい事だ。」

俺たちはやっとのことでショッピングモールにつき、買い物を始めたところだった。

理髪店を出て3分程歩いたところで、銀が道に迷った子供を発見、親を探すのに20分、それから数珠繋ぎのように重い荷物を持ったお年寄りの手伝いに落し物届けに兄弟の喧嘩の仲裁、リードの外れた犬の保護と遭遇、全てに対処した結果がこれだった。

(しかし短時間でここまで遭遇するものか?偶然に偶然が重なったのかもしれないが、それでも多すぎたような…)

銀「多すぎるとか思ってません?」

烏丸「…ああ、たまには見かけてたがここまでは今までないからな。」

銀「ほんっとすいません…実は小さい頃から不幸体質で結構巻き込まれがちなんですよね。巻き込まれなかったらといってほっとける訳でもないんですが。」

そう言って銀が苦笑いする。

烏丸「…勇者部のみんなはそれを知ってるんだろう?」

銀「はい、もちろん…須美達が話してましたし。」

烏丸「それであいつらはお前のそれを咎めたりしたのか?」

銀「…いや、されたことないです。」

烏丸「…つまりはそういうことだ。事情を知らずただ遅刻するだけならともかく、やってる事は人助け。お前は間違ってない、だから謝る必要もないと俺は思う。」

銀「…ですね!気が楽になりました、ありがとうございます!!」

そう言う銀の顔は、先程までよりも明るかった。

(…責任感が強いんだな。少しは負担を軽減できたようでよかった。)

だからこそ、彼女は昔…

銀「…?どうかしました?」

烏丸「…ん、いや…大体はカゴに入れたと思うが他にあったか考えていた。」

銀「あー、それで全部のはずです!せっかくなので追加でみんなにアイス買ってきましょう!!」

 

ーーー街道、銀sideーーー

銀「…烏丸さんって、兄弟の長男だったりしますか?」

烏丸「…確かに下に4人いるが…どうしてだ?」

確固たる根拠はなかった。

ただ…

銀「…私にお兄ちゃんがいたら烏丸さんみたいなんじゃないかなぁって思ったんです。あ、私も三兄弟の1番上なんですよ!」

烏丸「そうだったのか…」

銀「…まあ、最近はあんまりそれっぽいことやれてないんですけどね。色々と忙しくって…」

烏丸「…瀬戸大橋の死闘、か。」

銀「っ!?」

知らないと思ってた言葉が烏丸さんの口から零れ、少し動揺する。

(須美達、話してたのか…)

烏丸「…銀、さっきお前は俺のことを兄のようと言ったが、多分それは違う。お前の方がよっぽど大人だ。」

銀「えっ…そんなことないですよ?」

烏丸「いや…俺は本部から移動する形で玉狛に所属した。

…小南先輩やレイジさんのように共に戦った仲間を失う経験はない。迅さんや遊真のように親族を失ったこともだ。

…恐らく、玉狛支部で俺だけ失う痛みを知らない。だから…」

銀「…そんなことないと思いますよ?私たちが特殊なだけで、この世の中平和でなんぼですもん!生まれてすぐにおじいちゃんとかが亡くなっちゃう人もいれば、ホントに成人するまで周りの人が誰1人死なず暮らす人もいると思うんですよ。だから私はそんな気負わなくてもいいと思いますよ!失う痛みなんて知らないに越したことないですし!」

烏丸「…確かにそうかもしれないな。すまない、アイスが溶けないように急ぐか。」

銀「あ、そういえばそうでしたね!?」



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19話 暗雲

ーーー7月15日、玉狛支部、ちひろsideーーー

ちひろ「迅さんと話がしたい?」

バーさん『うむ。少々気になることがあるのじゃ。』

唐突な発言だった。

(バーさんのことだし、なにか意図があるんだろうけど…)

壁にかかる時計を見る。

今は午後の9時、もう眠るような時間だった。

(ウッキーなら平気でやりかねないけどバーさん、だもんなぁ…)

ちひろ「…そこまでの火急の用件なの?」

バーさん『んじゃ。いつ事態が動くか分からぬ以上、伝えておく必要がある。』

ちひろ「…そういうことならわかったよ、バーさん。」

バーさん『すまぬのぅ…明日も早いのはわかっとるんじゃが…』

ちひろ「大丈夫。気にしないで。」

そう言いつつ支部内を歩き回り、迅さんを探す。

(ただあの人行動が読めないからなぁ…どこにいるか…)

迅「実力派エリートをお呼びかな?」

ちひろ「ひゃっ!?」ビクッ

迅「おっとすまない、驚かすつもりはなかったんだ。」

と、思ったそばから邂逅する。

後ろから不意に声をかけられたのでびっくりしたけど…

バーさん『ちょうどよかった、少し話したいことがあるのじゃ。』

迅「そういうことなら場所変えます?他の人に聞かれちゃダメなことだとまずいでしょうし。」

バーさん『そうしてもらえると助かるのぅ。』

 

ーーー個室ーーー

迅「…で、要件はなんです?この時間にも関わらずってことは急を要するんでしょう?」

バーさん『その通りじゃ。というのも…前の侵攻についてじゃ。』

(侵攻…?)

ちひろ「迅さんが敵の狙いを見抜けてなかったとか?バーさん。」

迅「…いや、違うよちひろちゃん。」

バーさん『…気づいておったようじゃな。』

迅「…はい、城戸さん達にも伝えてあります、ご心配なく。」

バーさん『仕事が早いのぅ。カッカッカッ!』

ちひろ「…えっと、どういうことですか??」

そこら辺の勘がいい自負はあったが、今回のは全然分からなかった。

バーさん『前回の敵の作戦が、完璧どころか、いとも容易く破綻するという話じゃ。』

ちひろ「…へ?」

(…不備?あそこまでの戦力に、2段3段にかまえてたあれが??)

迅「よく考えてみて欲しい、今回の侵攻、本来ならいつも通りの不意打ちで始まるはずだった。

相手はスピード型が三体、あっという間に本部に到達していただろう。」

バーさん『もちろんボーダーもそう読み、過去2回で本部が襲撃されてることからも本部の守りを厚くしたじゃろうな。』

ちひろ「…そうなれば結果的にあの三体や銀さんが来てもなんとかなる戦力が集っていた…?」

迅「そう、しかし実際はそうならなかった。」

バーさん『…迅が未来を予知し、ほぼ全員が本部から出払っていたことでのぅ。』

ちひろ「あっ…」

…言われてみれば、確かにそうだ。

カミカゼ相手に近場に相性のいい人がいる確率は少ないから、本部で迎え撃つ可能性が高い、しかし今回は迅さんの未来視である程度陣形ができていた。

今までの2回において、本部も襲撃され、封殺されたのに未来視でなかったことから最低限の戦力を残して対象外にされた。

ちひろ「…迅さんのサイドエフェクトが、敵にコントロールされたってことですか?」

迅「…戦闘相手の動きを予知たりはしていたから少し違うだろうね。今までのことを考慮するに…」

バーさん『敵がわざと一部の不調を治し、都合のいいところだけを見せたといったところじゃ。』

…ここに来てからもう1ヶ月が経った。

それまでにボーダーのこれまでの戦いも聞いてきた。

…その中で、迅さんの未来視がどれだけ重要な役割を持っていたかも。

ちひろ「どうするんですか、それ…」

迅「んーどうするかね。ぼんち揚でも食べながらこれからゆっくり考えるよ。」

(…のんびりしすぎじゃ!?)

これまでの鬼札が消える、それどころか敵に利用されてるかもしれない、そんな緊急事態なのに迅さんの声は全く焦ってない。

バーさん『随分と余裕そうじゃのぉ?』

迅「あいにく、うちの後輩ちゃん達は優秀ですからね〜。それに、心強い助っ人も今は来てるし。」

そう言ってこちらへと視線を向ける。

ちひろ「…期待に応えれるかは分かりませんが、全力は尽くします。」

迅「…ありがと。じゃあ、今日はこれで解散!明日早かったよな?早く寝なよ〜」

ちひろ「はい、またあした。」

迅「おう、またあした〜!」

 

ちひろ「…バーさん。」

バーさん『なんじゃ?』

ちひろ「これからも訓練メニュー、任せたよ。」

バーさん『おうともじゃ。』

(私たちが助けられた、そして今も助けられてるように、私達も…助けないと。そのためにも、もっと強く!)

願いは大きい。それを叶えるためにも力をつける。

いつ崩れるかもしれない日常を守るために、決意を新たにした。




コロナァのせいで学校が休校になったのでなるべく更新する予定です。
ただいかんせん勉強もしないとなので…そこはご了承ください


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20話 剣士ノ集イ

お待たせしました。山場(共通テスト)はとりあえず超えたので、投稿再開です。
ただまだ2次試験あるのでペースはイマイチだと思います。


ーーー‪玉狛支部、夏凜‬sideーーー

‪夏凜‬「サプリよし、煮干よし、トリガーよし。そっちはどう?小南先輩。」

小南「こっちも問題ないわ、さっさと行くわよ!」

お互いに準備万端なのを確認し、ボーダーの本部へと向けて出発する。

私が敵…アフトクラトルから解放されて10日、唯一フラワートリガーのない私は、ボーダー支給のトリガーを用いて、鍛錬を続けていた。

 

小南『‪夏凜‬、明後日ボーダーで太刀川達と何回か試合するんだけどあんたもどう?あんたの実力ならあいつら相手でも拮抗した勝負なるだろうしいい経験なんじゃない?』

そんな時だった、小南が私を誘ったのは。

アタッカー、剣をメインとして戦うトリガー使い。

太刀川さんはその中でもトップクラスの実力を誇っていた。

(あの襲撃の時…結局私は倒されて、敵に利用されて勇者部のみんなに刀を向けてしまった。…もう二度と、そんなことをしないためにも…!!)

もっと実力をつける必要がある。

乗らない理由がなかった。

‪夏凜‬「で、今回のってどれだけ人集まるの?とりあえずあんたと、アタッカー1位の太刀川さんがいるのは聞いてるけど。」

小南「私らも含めて5人かしら。行ってからのお楽しみね。」

‪夏凜‬「確かあんたとは戦わないのよね?となると3人か…」

小南「そ。だって今までも何回もやってるじゃない。玉狛支部にいる限りはこれからもやれるでしょうし、それなら本部のヤツらとやった方がいいわ。」

そう言いながら足を動かす小南も、アタッカーとして尋常じゃない実力を誇る。

双月という2丁の小斧と、連結することで生成される一丁の大斧。

それを自在に切り替えてくる彼女を相手に、私の勝率は3割あるかないか程。

我流ながら鍛え続けた剣技が尽く破られたのは勿論ショックだったけど…

(同時にそれは私にまだ伸び代がある事も示してる。)

‪夏凜‬「…やってやるわ。今度こそみんなを守れるようになるために!」

 

ーーーボーダー ーーー

出水「お、いらっしゃい2人とも!」

「誰か来たのかね!?この際誰でもいい!助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」

「あ、小南いらっしゃ〜い。その子が連れの子〜?」

小南「えぇ、国近さん、出水。唯我も元気そうね。」

唯我「どこを見たら元気そうに見えるんですかね!?」

集合場所である太刀川隊の隊室、ゲームで溢れかえったそこに2人の男性と1人の女性がいた。

‪夏凜‬「三好夏凜です。相手ってあなた達が?」

出水「違う違う。俺らは全員太刀川隊のメンバー。ついでに俺はシューター、出水公平。」

国近「私はオペレーターの国近柚宇だよ〜よろしくね、‪夏凜‬ちゃん〜。で、今騒いでるのが…」

唯我「唯我尊!助けて三好君!!ボクは昨日からずっと国近先輩の周回に付き合わされたせいでボロボロなんだ!!」

(えぇ…でもそれじゃ相手はどこに…?)

そう叫ぶ唯我さんをスルーし、部屋を見回す。

‪夏凜‬「…他に誰もいないけど。」

国近「まだ時間にはちょっと早いからね〜二人は来てないよ〜太刀川さんなら今…」

ウィーン

国近さんがそう言いかけた時、奥の扉が開く。

そこから…

太刀川「ふー…相変わらず強いな。ありがとさん。」

ちひろ「その言葉倍にして返したいんですけど…最後のに至っては満開の瞬間の隙にぶった斬るってなんなんですか。直前までシールドと精霊バリアの二重ガードあったんですけど??」

太刀川隊最後の1人、太刀川さんはもちろんの事、なんとちひろが出てきた。

‪夏凜‬「ちひろ!?なんであんたがいるのよ!?」

ちひろ「え、‪夏凜‬さんこそなんでいるんですか??」

‪夏凜‬「質問に質問で返さないでよ…私は小南先輩に誘われたの。」

ちひろ「あー…そういえば太刀川さんがそんなこと言ってましたね。私はホントに色々ですよ?

まずさっきまでやってたみたいに太刀川さんと試合して…」

太刀川「ちひろの剣とレイピア、ビットの3種を同時に操るのはボーダーのトリガーじゃできねぇからな。その上技量も高ぇし。」

ちひろ「その後出水さんと意見交換して…」

出水「シューター適正高いからな、ちひろ。」

ちひろ「あとは国近さんとゲーム。」

国近「ちひろちゃん上手いから楽しいんだよ〜」

ちひろ「あとついでに唯我さんをイジる。」

唯我「弄らないでくれませんかね!?ボク年上なんですよ!?!?」

(なるほどね…太刀川隊の人みんなちひろと何かしら合うんだわ…)

まあ唯我さんに関しては合うと言っていいか迷うけれど、ちひろが楽しそうなのでいいだろう。

ちひろの弄りは私も被害者の1人なので、心で慰めておきつつ、残りの2人を待つ。

そして、10分後。

風間「来たぞ太刀川、小南。」

「俺も来たよー!太刀川先輩ー!」

そう口を開きながら2人の小柄な男子が部屋に入ってくる。

太刀川「おーよく来たな風間、緑川。今日はお客さんもいるから自己紹介しとけ。」

風間「A級3位、風間隊隊長、風間蒼也だ。」

緑川「A級4位、草壁隊の緑川駿だよー!」

‪夏凜‬「私は讃州高校2年、勇者部所属の三好夏凜よ。今日はよろしくお願いするわ!!」

 

 

 

 

 

緑川「じゃ、行きますよー!」

‪夏凜‬「ええ、来なさい!!」

威勢よく返事を返す。

手合わせ順は初戦は駿、二戦目は風間さん、最後に太刀川さんと決定。

ルールは一本勝負というシンプルな物。

そして今、言うまでもなく第1試合である緑川との試合が始まったところだった。

(武器はスコーピオン…スピードタイプか奇襲系か。とりあえず出方を見…)

‪夏凜‬「っ!?」

ガキンッ!!

右手の孤月でスコーピオンを防ぐ。

思考を巡らせた刹那の間に、駿は圧倒的な距離を詰め、すぐそこまで来ていた。

(スピードタイプ!それでも早すぎる…どうやって!?)

緑川「斬れたと思ったんだけどなー。でもまだまだ行くよ!」

ガキキキキキキッ!!!

少し長めのナイフ程に伸ばしたスコーピオンによって叩き込まれる疾風の如き連撃を、両手の孤月で捌く。

‪夏凜‬「くっ…!」

(体格差があまり変わらない以上、武器の重さも重要な要素になる…スコーピオンの方が軽い上に先手も取られたせいで反撃できない!!)

‪夏凜‬「…なら!!」

緑川「うおっ!?」

ガキンッ!!

隙を見て駿の足を払い、追撃する。

追撃はスコーピオンで防がれたものの、なんとか距離をとる。

(あえて攻めないで、さっきの距離を詰めた方法をここで見極める!)

 

ーーー緑川sideーーー

緑川「あっぶねー…」

突き飛ばされたことで崩れた姿勢を立て直す。

(更なる追撃がなくなって助かったけど距離を取られた…)

体勢を立て直すまでの時間は、追撃するには十分なものだった。

しかし‪夏凜‬さんはそれをして来ず、未だに攻めてくる気配もない。

(…初手のアレ、やれって言ってるよねー…)

それでも、あちらから攻めてこない限り、こちらから攻めるしかない。

(完全に先手取ったのに捌かれてた…おそらく真っ向勝負じゃこっちが押される、そうなればスコーピオンの耐久力じゃもたない。)

緑川「…一か八かだなー。」

そう、自身に言い聞かせるように言って、賭けの用意をする。

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

(…来る。)

ダッ!!

駿が正面から走ってこちらに迫ってくる。

(最初のアレは使ってこないようね…)

‪夏凜‬「それならそれで!!」

スコーピオンを持つ腕を斬らんと孤月を振るう。

駿の速度からタイミングを予測して振るった刃は確かに腕を斬り飛ば…

ガッ!!

瞬間、駿の身体が小型の四角い何かに触れ、大きく右へと弾かれる。

ガッ!!

‪夏凜‬「なっ!?」

さらに、再び彼の身体は動く向きを変え、その刃が首のすぐそこに迫っていた。

 

ーーー緑川sideーーー

グラスホッパー。

触れた物質を1度だけ面の向いた方向へと弾くトリガー。

それを孤月の射程ギリギリで発動し、左へ。

ガッ!!

さらにその先でもう1つ展開し、斜めから‪夏凜‬さんの首を斬らんと跳ぶ。

ガギッ

‪夏凜‬「っ…!!!」

それを、‪夏凜‬さんは右手の孤月でなんとか防ぐ。

‪夏凜‬「あっぶないわね…!!」

緑川「防がれたかー。」

(まあでも…)

緑川「予想済、だよ。」

そして、左手の先からスコーピオンを出し、またたきの間に下から右腕を刈り取ろうと突き出す。

スコーピオンは身体のどこからでも出すことができる、‪夏凜‬さんももちろん知っているだろう。

でも、ギリギリだったさっきの攻防でそれをしなければ自然と選択肢から抜ける。

(それに加えての、予想外の行動を防いだという安心感から無意識に来る油断…!!)

この試合、全部を通して作った隙。

これを逃す訳には…

‪夏凜‬「…旋空弧月。」

ッ!!

身体も、思考も、そして勝利も。

鍔迫り合いしているスコーピオンごと貫かれた。

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

‪夏凜‬「はぁー…ギリッギリだった…」

試合が終わり、自身しかいない部屋でそう呟く。

旋空弧月、ブレード部分を僅かな間だけ伸ばす事ができる孤月専用のオプショントリガー。

この間は剣先に行くほど威力が上がるのもあり、瞬間的に間合い・火力増強として孤月使いの多くが取り入れているらしい。

左に持った孤月で旋空弧月を使用し、それによって発生する間合い拡張による擬似的な「突き」が、さっきの決め手だった。

(まあ、剣を戻すには時間が足りなかったからの博打だけど…)

謎の四角いトリガーからのスコーピオンを防いだ途端に左手から別なスコーピオンが生えてきたのを思い出し、長く息を吐く。

小南の言葉が正しければ、駿は全体でもかなり強い方だが、それでも割といるレベルとの事。

仮に今回の結果から私と駿がほぼ同格だとして、ここまでの人生の多くを特訓に費やした私と同レベル、或いはそれ以上の剣士がボーダーには大量にいる事になるのだ。

そして、次の相手の風間さんはアタッカーランキング2位。

厳しい戦いになるのは間違いなかった。

‪夏凜‬「でも、負けるつもりなんてないわ。」

目指す高みは、まだまだ先だから。

 

 

 

 

 

夏凜‬「…さっきとはまた別なステージね…」

ボーダーにはあらゆる状況を想定できるように、訓練用のステージが種類豊富らしい。今日の模擬試合ではその数あるステージの中からランダムで選ばれる仕様だそうで、先程は市街地Aと言われるとこだった。

風間「ここは河川敷A、中央を北から南に縦断する川が特徴的なステージだな。」

さっきの私の独り言に答えるように転送されてきた風間さんが答える。

‪夏凜‬「始める前に一つだけ、勇者部のみんなを助けてくれてありがとうございます。」

風間「例え住む場所が違えど、危険にさらされた人たちを助けるのは当然のことだ。それにこちらも何度も窮地を救ってもらってるからな。…だが、容赦はしないぞ?」

‪夏凜‬「…こっちも遠慮なしで行きます!」

ズバァンッ!!

そう言うと共に旋空弧月を起動、真横に薙ぐ一閃で即仕留めにかかる。

だがそれを読んでいたのか、風間さんは姿勢を低くし余裕で回避、さらにそのまま近くにあった建物の影へと去る。

曲がった直後の不意打ちを警戒しつつすぐさま後を追って私も曲がり、更に路地を抜けてその先の河川敷に面した道路へ。

しかし…

「…いない!?」

その姿はどこにもなかった。

見晴らしの良さから住宅以外に隠れれる場所はないはずだが、その窓はどれも割られてなかった。

(別な路地に入った…?いや、それにしては時間が足りない。どこに…!?)

その刹那だった

‪夏凜‬「…ッ!?」

ガキッ!!

後ろから急に気配を感じ、スコーピオンをギリギリでガードする。

風間「ほう…やるな。だがまだまだこれからだぞ。」

そう言い残し、風間さんは目の前で保護色を纏うように消える。

(瞬間移動…じゃないわよね。あの感じは…透明になるトリガー?)

確か退院してからのトリガーの説明の際に、そういうのがあると聞いた記憶がある。

だとすると、非常に厄介だ。

そもそも、私は鍛錬の末に視界を封じられても気配で敵の場所を見抜けるようになっている。

だけど、速度からしてさっき私が風間さんの存在に気づいたのは気配感知できる範囲の半ば。つまりそれだけ気配を殺す事ができるということになる。

‪夏凜‬「くっ!」

そう思考を張り巡らす間に再び奇襲、刃が頬を掠る。

ザザザザザザッ

それどころか、その速度は更に高まり、あらゆる方向からの連撃で、徐々にトリオンを減らされる。

(攻撃時に姿を見せてる以上、おそらく透明になってる間は他のトリガーを使えないはず…だけど反撃する隙がない!)

防戦一方となってる現状を打開するには距離を取ってふりだしに戻すしかない、しかしあちらもそれをわかってるからこそ逃げられないようにあらゆる方向から攻撃を加えてきている。

(投げ刀代わりに入れてきたアステロイドならできるけど、孤月を片方しまう必要があるから隙ができる…なら!)

‪夏凜‬「シールド!!」

一撃を凌いだところで自身を包むようにシールドを展開、ここまで広げればすぐに割られるが、それでも姿は見せなければならない。その一瞬さえあればアステロイドを展開するには十分だった。

バリィンッ!!

‪夏凜‬「アステロイド!!」

風間「ッ…!」

後ろからの一撃を右に飛んでかわしつつ、アステロイドを発射、風間さんを後退させる。

そしてその時間を利用して私は…川へと派手に着水する。

(思ったより深いわね…)

川の高さは腰より少し下程度、かなり動きづらい印象。

だけど、それは相手も同じ。更にカメレオンを使用されても水の凹みで場所が分かるため、カメレオンを封じることもできる、デメリットよりもメリットが勝った故の作戦だった。

 

ーーー風間sideーーー

風間「川…なるほどな。」

アステロイドをかわしきり、三好の位置を確認してからそう呟く。

川の水は決して多いわけではないが、それでもかなり動きを制限される。

俺のカメレオンと多角からの連続攻撃を封じる目的だろう、オマケにあちらは旋空弧月で射程の有利がある。

(短期で決着をつける必要があるな…)

こちらの手札は封じられ、相手にアドバンテージがある以上、長引けば長引くほどこちらが不利になる。

『どこから川に入るか』『どのように勝負を決めるか』を考える必要があった。

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

‪夏凜‬「また消えた…」

風間さんがこちらを確認してから少し経った時の事だった。

是が非でもこちらに入らせるため、牽制代わりに旋空弧月を使おうとしたまさにその時、風間さんはカメレオンで消えたのだ。

(おそらくなんらかの形で奇襲をかけてくるつもりね…となると危ないのは橋ね。)

ここより少し北に存在する大きな橋は、川の中央に陣どる私に川を経由せずに近づける唯一の場所だ。

多少距離はあるが身体能力が補強されるトリオン体なら問題にはならない。

その時だった。

ブォンッ!!

‪夏凜‬「…!?」ザバンッ!!

不意に気配を感じ、咄嗟に横にかわす。

そして先程まで首があった位置を、手裏剣状のスコーピオンが通過していた。

無論、飛んできたとこには風間さん。

その距離は25m、旋空弧月の射程は15m、川ではできない踏み込みありきでも20mのためどうやっても届きようがない。

孤月の射程は効果時間と対応しており、短ければ短いほど伸びるようになっている、しかし15mから更に10mも伸ばせば、振り切る前に効果が途切れるだろう。

ブォンッ!!ブォンッ!!

‪夏凜‬「っ…!!」ザザッ

そう思案する合間にも風間さんの攻撃は続行され、水に機動力を奪われてる私はかわしきれずトリオンが流出する。

完全にこちらの作戦を逆手に取られた。

孤月で飛んでくるスコーピオンを弾きながら少しずつ近づくが、近づけば近づくほど傷が増える。

(限界が近い…旋空の射程に入った一瞬で決める!)

 

ーーー風間sideーーー

(…と、いう作戦だろうか。)

スコーピオンを投げつつ三好の作戦を予測する。

(地上での攻撃に今回ので、トリオンはかなり浪費している、おそらく川から上がって突撃するのではこの先のダメージが一切なくてもトリオンがもたない。

こちらが後退する前に旋空で決めに来るはずだ。)

それさえ分かればかわすことは容易、あとはスコーピオンでトドメを刺せばいい。

だが、万が一もある。

(…備えておくか。)

そうしてるうちに三好が旋空の射程ギリギリまで迫ってくる。

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

『警告 トリオン漏出過多』

身体がひび割れる、いよいよ猶予はない。

ここが、勝負どころだ。

‪夏凜‬「旋空弧月!!!」

ズバズバズバァンッッッ!!!!

放たれた旋空の数は3つ…うち1つは、風間さん左腕と左足のつま先を斬り飛ばしていた。

 

ーーー風間sideーーー

風間「…!」

斬られた左腕が宙を舞い、手に持っていた手裏剣状スコーピオンが地面に刺さる。

(最初の2回は左手の孤月でそれぞれ左上から右下、右上から左下、1度の旋空で2回斬れるのはボーダーでも忍田本部長と太刀川しかいないが、おそらくは長さを短くして効果時間を伸ばしたな。

そして最後のは効果時間をギリギリまで切りつめて射程を伸ばして左上から右下…)

3連続で左右に振り回し、更に距離の違いを織り交ぜることで最後の一撃を確実に当てる。

これまで目にした事の無い絶技だった。

風間「だが、これならそちらの方が先に…」

トリオン切れだ、そう言おうとした時、三好が消えた。

…いや、飛んだ。

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

刀身を斜め下に向けた状態で旋空を発動、棒高跳びのように一気に風間さんの上まで飛ぶ。

そしてそのまま落下の勢いで急接近、孤月で両断せんと迫る。

そして…

ザクッ!ブシュウウウウウウウウウ

‪夏凜‬「…がっ…!?」

私の胸を、スコーピオンの刃が貫いていた。

風間「足裏から地面の中にスコーピオンを延ばし、手裏剣状のスコーピオンに接続、手裏剣の刃の1つを伸ばしてトリオン供給機関を破壊する。

旋空弧月の使い方と発想は素晴らしいが、勝ちはあげれないな。」

ビシビシッ

致命傷を受け、ヒビが一気に広まる。

‪夏凜‬「ちく…しょう…!!」

『トリオン供給機関破損 ベイルアウト』

1歩及ばず、無慈悲にも体は砕けた。

 

 

 

 

 

ーーー街道ーーー

ちひろ「で、結果どうだったんです?」

‪夏凜‬「一勝二敗、その一勝も結構ギリギリだったわ。」

ちひろ「うわー、‪夏凜‬さんでそれかぁ…」

そうちひろが大きくため息をつく。

風間さんとの戦いの後で行われた太刀川さんとの模擬戦、その結果は風間さん以上の完敗だった。

どんな場所から攻撃しようとガードされ、最後は足を潰され孤月ごと旋空で一閃、あれならばフラワートリガーを使ったちひろがボコボコにされるのも頷ける。

小南「まあ今回一勝負だけだったからね。5本先取とかだったらあんたも1本は取れてたと思うわよ?

実質1位の私にもたまに勝つんだし。」

小南のトリガーは玉狛仕様で、その特殊性からランキングには使えないらしく、いないうちに点数を太刀川さんと風間さんに抜かれたらしい。

それは裏を返せば駿レベルがたくさんいるボーダーにおいて、複数年の違いがあっても抜かせてるのが2人しかいない、ということでもある。

そう考えると小南の評価も上がってくる。

ちひろ「で、収穫は得られたんですか?」

‪夏凜‬「えぇ、旋空弧月は色々と活用法思いつけたし、孤月以外にも色んなトリガーを知れた。とりあえず帰ったらトリガーイジってみるわ、もしかしたらフラワートリガーなった時に活かせるかもしれないからね。」

アフトクラトルに拐われたままの勇者部員は残り3人、夕海子としずく、そして芽吹。

夕海子としずくは最初の襲撃の時に、私を助けるために一緒に残ってくれた結果だった。

(もちろん普通に逃げてても捕まってた可能性はあるわ。だけど…機会があるなら私が助けてやりたいもの。)

あの時、2人が来てくれて心強かったのを覚えているから。

ちひろ「そーいう事なら付き合いm…あ、でも樹ちゃん達とテレビ見る約束してた。代わりに小南さんが付き合うらしいですよ。」

小南「はぁ!?私そんなこと言ってないわよ!?」

ちひろ「でも‪‪夏凜‬さん小南先輩の事カッコよくて頼りになるって。」

小南「…え、ホント!?

…仕方ないわね!!」

‪夏凜‬「…感謝するわ。」

目の前で小南がちひろに騙されてるが、こちらとしては都合がいいのでスルーし、礼を述べる。

敵がいつ再度攻めてくるかは分からない、だからこそ今できることをする。

(待ってなさい、3人とも!)

心の中でそう意気込み、玉狛支部への足を早めた。



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21話 団ラン、決意、ソシテ胎動

ーーーショッピングモールーーー

亜耶「すいません、手伝ってもらってしまって。」

レイジ「暇だっただけだ、気にするな。」

千佳「私たちも用事あったし。ね、出穂ちゃん。」

出穂「そーそ、てかレイジ先輩が全部背負ってるから私とチカ子なんもしてないし。」

今日、私は千佳ちゃん達と一緒に服の買い物に来ています。

というのも、園子先輩や‪風‬先輩たちのような救出された人たちは荷物を持ってきておらず、服の数が足りないのです。

今までは小南先輩や宇佐美先輩のをお借りしていましたが、‪夏凜‬先輩と銀先輩が加わったことで限界が来てしまい、今いる人達と、これから救出されるであろう芽吹先輩達の分をまとめ買いしに来たのでした。

ただ、レイジさんが持ってきたダンボールに丁寧に買った服を入れて、肩で持ってるので私達の仕事はなくなってます。

亜耶「私たちの部屋用意してもらってる時も思ってたんですけど、レイジ先輩って凄い力持ちなんですね!」

千佳「レイジさんは体鍛えてるんだよ。」

レイジ「『いざという時に頼りになるのは己の体』、ってのが親父の言葉だからな。

実際トリオン体は生身でどれだけ体を動かせるか、何ができるかが反映される。もしこれから戦う予定があるならトレーニングはしておいて損はないぞ。」

出穂「だからってスラスター発動したパンチでトリオン兵殴り飛ばすのはオーバーキルすぎません?」

そう出穂ちゃんが苦笑いする。

(でもそんな事ができるくらい鍛えてるって事だもんね…凄いなぁ…)

レイジ先輩の戦い方は三門市を訪れた直後の襲撃の際見せてもらっており、ガトリングで遠くのトリオン兵を一掃しつつ、近くのトリオン兵を殴り潰す豪快な姿は今でも記憶に新しいです。

レイジ「じゃあ俺は支部に帰るが、お前らは遊んでっていいぞ。迎えが欲しかったら連絡してくれ。」

亜耶「えっ、ただでさえ全部持ってくださってるのにそれは…」

レイジ「千佳はともかく夏目とは初対面だろ?せっかくの機会なんだ、気にするな。」

亜耶「でも…」

申し訳ないと言葉を濁していたその時でした。

「およ?これは珍しいメンツじゃないですか?」

黒江「そうなんですか?」

緑川「あの長い髪の子は知らないけど出穂ちゃんは玉狛にちょくちょく遊びに行ってるって遊真先輩から聞いてるしそういう繋がりじゃない?」

「あー、それなら線と線が繋がる!!」

同年代っぽい5人組がこちらに向かってきます。

私は1人だけ顔と声に覚えがありました。

亜耶「桜子先輩!」

桜子「亜耶ちゃんこんにちは!」

武富桜子先輩、ボーダーのオペレーターの1人です。

レイジ「仲良いのか?」

桜子「オペレーターの中では1番歳が近いので色々と…」

亜耶「はい!頼りになる先輩方はボーダーにもいっぱいいるんですが、桜子先輩は友達に近い感覚で接してくれるんです。」

レイジ「そうか、良かったな。」

千佳「あ、ユズルくん。」

出穂「ちっすちっす!」

絵馬「…こんにちは。」

千佳ちゃん達の方も集団のうちの1人に声をかけている。

ユズル…というと、千佳ちゃんが仲良いと言ってた凄腕のスナイパーさんでしょうか?

しかし5人ともなるとそこそこの人数だけど、一体何があったのでしょう。

亜耶「そういえば桜子先輩達はどんな用事で…?」

出穂「あ、それ私も気になってた!武富先輩と緑川さん、黒江さんはたまに一緒にいるの見るんで分かるんですが、ユズルとユカリはなんで?」

緑川「同い年なんだし普通に駿でいいよ?

んーと、まずオレと双葉、さくら先輩で遊びに来てたんだけど、偶然弓場隊の人達と会って、せっかくだって弓場さんから帯島ちゃんを引き取ったの。

そこから更にユズルとも会って半ば強引に引き込んだって感じ。」

黒江「絵馬先輩はご愁傷さまです。」

絵馬「雨取さん達と会えたから最終的には良かったけどね…」

そう言いながらユズル君が頭をかきます。

レイジ「ならちょうどいいな、俺もちょうど先に帰ろうと思ってたところだ。千佳達も入れてもらえ。」

亜耶「えっ!?あの、だから…」

桜子「こちらは全然構いませんが…亜耶ちゃんどうする?」

私が戸惑ってるのを察してでしょうか、桜子先輩が確認を取ってくれます。

(…ここまで親切にしてくれてるのを断る方が無礼ですよね。)

亜耶「…ご一緒させてください!!」

そう言って頭を下げる。

桜子「オッケーだよ!」

レイジ「おし、じゃあさっきも言ったが迎えは連絡してくれたら行くからな。」

亜耶「はい、レイジさん。服運びお願いします!」

レイジ「ああ。」

 

 

 

 

 

ーーーフードコートーーー

亜耶「改めまして、讚州高校1年、勇者部所属の国土亜耶です。今日はよろしくお願いします。」ペコリ

レイジ先輩と別れた直後、とりあえずお互いに自己紹介しようという流れになり、昼食も兼ねて私たちはフードコートを訪れていました。

緑川「千佳ちゃんと出穂ちゃん、さくら先輩はみんな知ってるからいいとして、オレと双葉、帯広ちゃんとユズルだね。

じゃあ1番手、A級4位草壁隊アタッカーの緑川駿、高一!!玉狛でなら遊真先輩とは結構仲良いし、あと最近‪夏凜‬さんとも戦ったよ、強かった!!」

黒江「A級6位加古隊のアタッカー、黒江双葉。歳は15で中学三年生。」

帯島「B級2位、弓場隊オールラウンダー!!帯島ユカリッス!!駿くん達と同じ高一ッス!!よろしくお願いします!!!!」

絵馬「A級10位影浦隊のスナイパー、絵馬ユズル。雨取さんから話は聞いてるかもしれないけど、よろしく。」

亜耶「はい!!みなさんよろしくお願いします!!」

桜子「よし、自己紹介完了だね!!」

そう言いながら桜子先輩が笑う。

出穂「それで、何話すんスか?結構混んでるから頼んだの出来上がるまで時間かかるだろうし。」

緑川「そうだなー…」

黒江「質問。」

桜子「はい、双葉ちゃん!!」

手を挙げた双葉さんに、桜子先輩が当てる。

黒江「国土先輩ってオペレーターなんですよね?それって一体なぜなんですか。

結城先輩と加賀城先輩から勇者部の方々は特別な力を持ってると聞いてるのですが。」

友奈先輩と雀先輩となると…2回目の侵攻の際に一緒に戦ってくださったのでしょうか。

そう思いながら答えを返そうと口を開きます。

亜耶「私も特別な力はあるんですが、勇者部のみなさんとは少し違う力なのです。私は勇者ではなく、勇者様をお助けする巫女だったので。」

帯島「巫女…ですか?あの神社とかの?」

桜子「そうそうそれ!ただ亜耶ちゃんのとこだともっと別な意味合いを持ってたらしいよ!」

亜耶「はい!勇者部の皆さんたちが戦っていた敵…バーテックスが西暦に襲来してからの300年、人類を守護してくださっていたのは神樹様という土地神様の集合体です。

勇者は神樹様の力の一部を宿し、外より入り込んできたバーテックスを撃退する、みなさん達のようなポジション。それに対し巫女は神樹様の意志を聞き取り、敵の襲来などを予知するどちらかというとオペレーターよりの立ち位置だったんです。

なので勇者様達のように戦うための力は持たず、また身体も鍛えていません。なのでオペレーターの方が力になれる、と思ったんです。」

もちろん、特訓する時間があるならトリガーを握って戦う道を選んだかもしれません。

でも、私たちは待たせてる人達がいます。

攫われて洗脳されてる可能性の高いみなさんもいつ来るか分かりません。

それなら、こちらが1番だと思ったのです。

千佳「ちなみにもう1人、佳美ちゃんは孤立地域で秋原さんと生き残ってただけなので、特別な力はないらしいです。争いごとも好きじゃないらしくて、それでだそうです。」

帯島「…大変ッスね…」

亜耶「でもそれは乗り越えました。だからきっと今回も乗り越えれます、だから大丈夫です!」

帯島「…はい!!自分も力貸すッス!!」

亜耶「ありがとう、ユカリちゃん!!」

桜子「当然私達も手伝うよー…っと?ご飯できたみたいだね!駿くん、ユズルくん、運ぶから手伝って!」

緑川「はーい!!」

絵馬「分かりました。」

そうして時間は過ぎて行き…

 

ーーー街道ーーー

出穂「じゃ、チカ子バイバイ!アヤ子もまた会えたら遊ぼうねー!!」

千佳「うん、またね!!」

日が沈みかけ、空が赤く染まる中出穂ちゃんに別れを告げる。

お昼ご飯を頂いた後、ゲーセンやらショッピングやらをした私たちはすっかり仲良くなり、帰り道もみんなで帰るために歩いてました。

とはいえ徐々に人が減り、今は千佳ちゃんと2人っきりになってしまいましたが。

(でも楽しかった…レイジ先輩にはお礼言わないとです!)

そんな時でした。

千佳「…ねぇ、亜耶ちゃん。」

亜耶「うん?どうしたの?千佳ちゃん。」

千佳「亜耶ちゃん、前に防人って人達の話してたでしょ?」

亜耶「うん、私の巫女活動の大半は防人の皆さんと一緒だったからね。」

千佳「それが凄いなぁ、って。玉狛支部で夜更かしした時に言ったけど、私ってトリオンが多いせいでボーダーができる前からトリオン兵に狙われてて、そのせいで友達や兄さん巻き込んじゃって。

その時は何も出来なかったから、きっと同じ辛さを実感しながらそれでも自分にできる事をしてたんだろう亜耶ちゃんって凄い、ってふと思ったの。」

亜耶「…千佳ちゃんも凄いと思うよ?だって、見てるだけじゃなくて戦えるようになったじゃん。

しかも「誰かを傷つけて、その事で責められる」っていう嫌なことを乗り越えて。それってそうそうできないことだと思う。

待つことしかできないから他にできる事を模索し続けるのも凄いかもしれないけど、嫌なことを乗り越えて共に戦うのも、同じくらい凄いよ!」

千佳「…うん、ありがとう。亜耶ちゃんは強いね。」

亜耶「えへへ、お父さんからの色々教えてもらったから!!」

千佳「お父さん?」

亜耶「うん…私が世界で1番尊敬する人だよ!」

千佳ちゃんの家まであと僅かの中、私は語り出す。

今はいない、大切なお父さんの話を。

 

 

 

 

 

ーーーアフトクラトルーーー

ーーーヒュースsideーーー

ディエナ「お、ヒュース君。お迎えに来てくれたの?」

ヒュース「あぁ、同盟相手に迎えを出さないわけには行かないからな。」

ディエナ「…そういうもんかぁ。」

オレの返答を聞き、ディエナは不思議そうにそう言った。

オブラ・ディエナ、彼女には謎が多い。

彼女の国、スターセーバーは発生してから半年も経たずに規模を拡大、"星屑"と"星座級"の2種の独自のバーテックスを用いてアフトの傘下の国を複数襲撃、いずれにも勝利をしている。

これは本来、有り得ざることだった。

それに加え、常識範囲レベルのことでも無知な時が部分部分で存在している。

ディエナ「ん?顔になんかついてる?」

ヒュース「いや、大丈夫だ。」

そうやり取りしてるうちにハイレインの待つ大広間に着いていた。

ヒュース「ディエナ氏を連れてきました。」

ハイレイン「ご苦労だった。それでディエナ、新たな作戦を発案したいという話だったが。

先に断っておくと今回はあまりトリオン兵は出せないぞ?先の侵攻に費やしたトリオン兵はいくらこちらと言えど相当な量、後の事も考えるとここで大幅に消費するわけには行かない。」

ディエナ「大丈夫、分かってる。最初にある程度ボーダーの隊員達をバラせるくらいにちょい加えた程度でいいわ。」

ハイレイン「ふむ…了承した。しかし、それだけで今回はどうするのだ?」

ハイレインがそうディエナへ問う。

ディエナ「狙いは依然として遠征艇、あれさえ壊せばアイツらは何も出来なくなる。

とりあえずスタートリガー持ちは前回と同じく2人出すわ。それに加えて星座級もゴッソリ。真正面から突破するわ。」

ヴィザ「ふむ…しかし正面突破となると残る星座級3体を総動員しても些か厳しいのでは?」

彼女が言い終えるのを確認してから、ヴィザ翁が問題点に突っ込んだ。

ミデン…ボーダーは強い、個々のトリガーの性能は高くなくても、それぞれに合わせてカスタマイズできる事と連携により、それを補っている。

その事はアフトクラトルの中では1番知っているつもりだ。

ディエナ「えぇ、でも三体じゃない。ついにとっておきが完成しそうなんで。」

そう言いながら写真を出してくる。

そこには、超巨大な白い星座級が写っていたのだった。

そして…

 

 

 

 

 

ーーー7月31日・ボーダー・太刀川隊室ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「また来たんですか!?」

国近「うん、星座トリガーの反応が2つ、星座型は3つだって。」

今日も太刀川さんに誘われ、太刀川隊室に遊びに来ていたところに舞い込んできた、大規模侵攻の話。

まだ芽吹さん達が残ってるとはいえ、快調に向かってた迅さんの予知が働かなかったことから驚きが隠せなかった。

(となると、やっぱバーさんの考え通り相手は迅さんの予知を自在に操れる…?そんな力どうやって…)

出水「星座トリガー2つはそれぞれ勇者部がすでに遭遇してるらしい。北と北東の星座型は樹ちゃんと竜治が玉狛第一、嵐山隊と共に向かってる。

俺らで北西の星座型を抑える予定だが、行けるか?」

ちひろ「はい、当然です!!」

 

ーーー‪友奈sideーーー

友奈「すみません、いきなりやられちゃって…」

風「あんたはほとんど素手みたいなもんだし仕方ないわ。」

‪夏凜‬「えぇ、相性が悪かったとしか。」

東郷『それに相手の特徴が分かったもの、ただ転んだわけじゃないわ、友奈ちゃん。』

みんなの言葉に感謝しながら、なくなった右手を見る。

相対する星座トリガーの盾、そこに攻撃を加えた際に振動し持ってかれたそれは、今もトリオンの煙が立ち上がるひどい傷だった。

東郷『彼女の持つ剣にも同じ機能が備わってると考えても良さそうですね…』

風「そうね…‪ちひろのビットみたいに空中かつ複数自在に操れるっぽいから厄介だわ。」

風先輩がそう困ったように言う。

盾に剣、そして剣を飛ばす事による模擬銃撃、一通り交戦して分かった特徴はこんな感じだ。

‪夏凜‬「全く…フラワートリガー持ち3人も足止めされてちゃ困るわ。ちゃっちゃと突破させてもらうわよ、芽吹!!」

 

ーーー雀sideーーー

ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

雪花「ちっ…!」バッ

園子「ミノさん、こっち!」ガキキキキキキキ

銀「サンキュー園子!ふっ、とう!!」バッ

雀「ひぃぃぃぃぃい!!!!」ダダダッ

星座トリガーと遭遇してから5分、私たちは容赦ない矢の雨に晒されていました。

雪花「数多いねー困った。投槍する暇がない。」

銀「射手座、もし星座トリガーなったら間違いなくめんどくさいだろうなぁとは思ってたけどここまでだとは…」

園子「だって他とは違って…あ、デカいの来るよ!!」

雀「またですかぁぁぁぁ!?!?」

ドッカァァァァァァァァァン!!!!

私たちが退避した直後、爆音と共に先程まで隠れていた建物が消し飛ぶ。

そして、それを確認して星座トリガーの持ち主が喋った。大声で。

夕海子「おほほほほ!!!流石アルフレッド!見事な一撃ですわ!!」

アルフレッド「イエイエ。ソレヨリお嬢様、敵ガ狙エマスヨ。」

夕海子「あ、そうでしたわね。じゃあ今度こそ蜂の巣にお成りなさい!!」ガガガガガガガガッ!!

そう、弥勒さんである。

なーんでかアルフレッド(トリオン兵版)を携え、雨矢と巨大矢を分担、2人がかりで攻めてきていた。

(オマケに普通に強い。アルフレッドなんか巨大矢を槍みたいに扱うし。)

弥勒さんの弾幕で近づく事が難しい上、近づいてもアルフレッドが防いでくる。

非常に厄介な事になっていた。

園子「絵面は面白いけど普通に強いからね〜、なんとか突破しないと。」

銀「今回、トリオン兵は少なめらしいけど何が起こるか分かんないしな。やってやる!!」

各地で戦闘の火蓋が切られた。




今回書きすぎたかもなー、とか思ってたんですよ
6000文字しかなかった…感覚取り戻せるように善処します


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22話 信ズルモノ

ーーー三門市西部ーーー

ーーー雪花sideーーー

雪花「ほほいのほいっと!!」ブォンブォンッ!!

園子「えいやっさー!!!!」ビュビュビュビュン!!

夕海子「ふっ!!無駄ですわ!!」ガガガガガガ

ガキキキキキン!!!

私の投槍と、園子の飛ばした刃を弥勒さんが大量の雨矢で撃ち落とす。

その隙に銀が接近するが…

アルフレッド「通シマセヌ。」ガキンッ!!

銀「くっ、行かせてくれない、か!!!」ドガンッ!!

ガガガガガガガガガガガガガガガ

アルフレッドがガード、更にそこに雨矢が降り注ぎ、銀は撤退せざるを得なくなる。

そして私たちのところに巨大矢を投擲、これを…

雀「シールドバァァァァァッシュ!!」

ドッガァァァァァァァァァァン!!!!!!

ボガァァァァァァァァン!!!!

雀の盾から放たれた衝撃波が吹き飛ばし、宙で爆ぜる。

ガガガガガガガガガガガガガガガ

園子「ひゃー!?」ダダッ

雪花「っ!」バッ

だがすぐさま雨矢が追うように放たれ、ガードしながら回避する。

射手座の星座トリガーを纏った弥勒さんとの戦いは、完全にこちらが劣勢となっていた。

銀「ごめん、また近づけなかった。」

園子「仕方ないんよ〜、ゴリ押ししたらその場で爆発させてくるもん。さっきとかそれで危うく右腕吹っ飛ばされるとこだったし。」

雀「でもこのままじゃマズイですよ!?こうやって物陰に隠れてたらアルフレッドが壊しにくるせいで少しずつ隠れれるとこなくなってきてますし!!」

雪花「そうなんだよねぇ…‪私や園子の遠距離攻撃はどうしても雨矢の物量を突破できないし。」

実体がある物を投擲や操作してによる攻撃な以上、同じく実体のある彼女の雨矢で徐々に減速、落とされる。

実体を持たないビームであり、彼女の射程外から攻撃ができる東郷がいればまた違ったのかもしれないけど…

(それはそれで巨大矢に潰されるだろうしにゃあ…)

東郷は私のように動きながら撃てるタイプの銃じゃない。

射程が届く巨大矢を滅多打ちされれば逃げきれず倒される可能性があった。

(そう考えると雨矢も巨大矢もバッシュとやらで吹っ飛ばせる雀に盾と幅広い攻撃手段のある園子、短時間なら無理やり突破できる銀、動きながら射撃戦ができる私ってのは結構良かったのかねぇ…)

友奈は射手座の矢を全部撃ち落とした事があるらしいけどオリジナルより強化されてる弥勒さん相手にもできるか不明、先輩はガードはできても大剣の重みが問題、樹ちゃんと‪夏凜‬はそもそも防げない、となるとあと適任なのは竜治とちひろくらいなものだろう。

園子「ゆみきちが対応する前にアルフレッドを撃破するなり封じるなりして、ミノさんとゆみきちをタイマンに持ってく、これが現時点で1番勝ち目のある方法だと思うんよ。これをどう詰めるかに絞るべきかなー。」

雪花「そうだねー。まあ私は今まで通り弥勒さんとやり合って気を引くべきとして…」

銀「私が弥勒さんとタイマン役、あとは雀と園子か…」

雀「私も雪花さんと同じで引き付け役がいいです!!!!アルフレッドの相手とかいくら命あっても足りません!!!!てか攻撃手段ないからジリ貧なります!!!!すみません!!!!」

想像して抑えきれるビジョンが一切浮かばなかったのか、雀がいつもに増した大声で謝罪する。

(まあシールドとバッシュだけじゃガンガン近接でも攻撃できるアルフレッドは荷が…)

園子「…ピッカーンと閃いた!!」

3人「「「え?」」」

 

ーーー銀sideーーー

夕海子「また来ましたわね!!今度こそ蜂の巣にお成りなさい!!」ガガガガガガガガ

雪花「丁重にお断りします!!」ブォンブォンブォン!!

建物の影から雪花が飛び出し、弥勒さんとの攻防が開始される。

大通りに出て、駆け抜けながら槍を投擲する雪花とそれを追うように空中から大量の矢を射出する弥勒さん、今は拮抗してるが長くは持たないはずだ。

それまでにことを成すべく、路地を縫うように移動し、弥勒さんの背後へ移動。

そして…

銀「おりゃあああああ!!!!!」

アルフレッド「無駄デス。」

ガキンッ!!

大きく跳躍し弥勒さんに切りかかるが、アルフレッドに阻まれる。

ここまでは今まで通り。

ここからが…

雀「バッシュ!!!」

アルフレッド「!?」

園子の作戦だ。

ドッガァァァァァァァァァァン!!!!!!

雀が私に衝撃波を放ち、それを私は残しておいた方の斧剣で受け、アルフレッドを置き去りにして高く遠く舞う。

銀「さあ勝負だ、弥勒さん!!」

夕海子「フッ、上等ですわ!」

アルフレッド「イイヤ、ソンナコトハサセマセn…」

園子「させてもらうんよ〜!!」ブォンッ!!

ガキンッ!!

弥勒さんに急接近した私を見てアルフレッドはすぐに行動を起こそうとするが、それを槍を伸ばして園子が抑える。

アルフレッド「邪魔立テヲ…!!」

園子「そりゃあそれがこちらの作戦ですし〜?しばらくお相手させてもらうんだぜ〜!!」

アルフレッド「オ嬢様…!!」

 

ーーー園子sideーーー

夕海子「やりますわ…ね!!」ビュンッ

銀「そいつはどうも!!」ガキンッブォンッ

夕海子「くっ…!!」ガキッ!!

ゆみきちが弓を大きく振りかぶって襲いかかるのをミノさんは片方の斧剣で受け止め、残る一振で斜め下から攻撃します。

ゆみきちがいるのは建物の屋根よりも高い空中、足場がほとんどない中ミノさんは放たれる雨矢を足場にしてゆみきちを圧倒していました。

アルフレッド「退ケナサレ!!」

園子「却下〜!!」

ガキガキガキッ!!

そしてそれを目で追いつつ、私もアルフレッドを足止めする。

アルフレッドは巨大矢を如意棒とかそういう棒系の武器のように扱い、近接戦闘にも対応してるけど所詮は矢を代用してる物。爆発圏内まで近づけさせない事は容易だった。

(あとはミノさんがゆみきちを倒し切ってくれれば…)

アルフレッド「…オ嬢様、スミマセヌ!!」シュゥゥゥ

園子「っ!?」

そんな時、突如としてアルフレッドの体が薄まり出したのです。

即座に槍を振るいますが…

園子「当たらない…!?」

手応えは少しもなく、まるで雲を切ってるかのようでした。

シュゥゥゥ…

そしてついには完全に消失。

(何が目的から分からない。けど、最後の言葉から考えるなら…)

園子「ミノさん!!気をつけて!!!」

 

ーーー銀sideーーー

銀「おらぁっ!!!」

夕海子「なっ!?」

ガキッ!!

斧の状態にした斧剣の重い横薙ぎが命中し、弥勒さんの弓を持つ方の腕が大きく弾かれる。

(よし!これで…)

園子「ミノさん!!気をつけて!!!」

そう、園子の叫ぶ声が聞こえた。

アルフレッドに突破された?

いやない、仮にそうだとしたら園子はもっとストレートにそれを伝えるはずだ。

(気をつけて、だけって事は…!!)

弥勒さんの方で何かが起こる、その可能性が高いだろう。

勝利を確信し緩まっていた気持ちを引き締め、斧剣を振り下ろす。

その瞬間だった。

ガブッッ!!!

振り下ろした斧剣に、弾いたはずの弓の口が噛み付いていた。

(…この速さはおかし…ッ!?)

さらに真正面から凄まじい速度で突きが飛んでくるが、これはギリギリ躱す。

ユミコ「…」

銀「なるほど…ね!」

突きを放った方の弥勒さんの腕、そこにはアルフレッドらしき武装が追加されていた。

何より…明らかに弥勒さんの雰囲気が変わっていた。

(合体…ってよりは乗っ取られたなこれ。)

だけど、そういう事なら手っ取り早い。

これで園子達もフリーになるのだ、4対1で…と考えた瞬間。

ガパッ

カアアアアア…

斧剣を挟んでいた口が開き、紅い光が漏れる。

あまりに眩く光るためかなり見えづらいが、それでもこの距離なら中身を確認する事は出来た。

明らかに弓の大きさ的に入り切らないであろう巨大矢が大量に、そこにはあった。

雪花「何してるか分かんないけど撃つ前に…!」

園子「フルアタでトドメ刺すよ〜!!」

雀「いや、猛烈に嫌な予感が…」

銀「…ッ!!」

地上の3人はおそらくこれに気づいてない。

そして今まで2度の射手座との攻防からして今ここで撃破しても先に起爆される。

(そうなれば全滅する…!!)

だから。

銀「満開!!」

天空に大輪の花が咲くと共に、真紅の光が限界に達し。

凄まじい爆風が辺りに吹き荒れた。

 

ーーー雀sideーーー

雪花「うぐぬぅ!?」

雀「ぐぉぉぉおおおおぉぉぉお!?!?」

閃光と共に溢れた爆風に吹き飛ばされそうになるのを、盾を用いてギリギリで持ちこたえる。

園子「ミノ…さんは!?」

雪花「…あそこ!!」

雪花さんの指さした先にはちょうど地面に落ちる生身の銀さんの姿。

一応怪我はしてなさそうだ。

(あんな勢いの風が吹いてこちらへのダメージなしなんておかしいし、多分爆発を1人で受け止めて…)

銀「っづ…こっちは大丈夫だ!!1人で離脱できr…」

園子「ミノさん危ない!!」

ガラガラガラッ

銀「…あっ…」

彼女の頭上に、先程の爆風で崩れたであろう瓦礫が降ってきていた。

(ギリギリバッシュじゃ届かない!!)

私のバッシュが届かないということは園子さんでも届かないし、雪花さんは体勢を崩してて槍を投げれる状況じゃない。

誰一人、この場に銀さんを助けられる人は…

ガガガガガガガン

いないはずだった。

だけど、彼女に当たるはずだった瓦礫を代わりに受け止める人がいました。

そしてそれは…

夕海子「…やれやれ、大丈夫でございますか?」

敵である筈の弥勒さんだった。

 

 

 

 

ーーー園子sideーーー

銀「…え…あ…はい…」

夕海子「なら良かったですわ。ここは戦場、先程のように瓦礫が降ってきたりしかねない危険な場所ですので早めに避難するのですわ。」

銀「は、はい…」

ゆみきちはそう念入りに注意し、更には近場の避難所までの最短ルートを雨矢で作り出す。

正直何が起こってるのか分からなかった。

(ゆみきちは最初から喋り方も雰囲気もほとんど変わってないし、人を助けるのは全然わかるけど…ミノさんはさっきまで戦ってた相手だよ…!?)

ゆみきちの反応はどう見てもそれを認識してるとは思えなかった。

アルフレッド「オ嬢様!!敵ハマダマダ健在デスゾ!!ソンナ者ハホットイテ早ク戻ッテキテクダサイマセ!!」

夕海子「いいえ、この方を安全な場所へ送り届けてからですわ。それに、「そんな者」呼ばわりはいけません。全く…悪い癖ですわよ?」

アルフレッド「…ハイ、了解シマシタ。」

ゆみきちが呆れたようにため息をつき、それを聞いてアルフレッドは渋々と言った感じで頷く。

(…これは…)

先程まで息のあった連携を見せていた2人に現れたズレ。

それが不可解な行動を読み解くヒントになった。

園子「ねぇ2人とも、気づいた事があるんだけどいい?」

雪花「お、マジで?」

園子「デジマ〜!」

 

ーーー雀sideーーー

雪花「それで?私には仲間割れしてる事しかわかんなかったんだけど、園子はあの一連のやり取りから何か読み取れたんでしょ?」

園子「うんうん。あちらさんがゴタゴタしてるうちに説明するね〜。まず、多分ゆみきちは洗脳にほとんどかかってない。」

雀「ですよねー。」

これについては付き合いが長い私じゃなくても分かる事だ、明らかに他の人達と比べて雰囲気も口調もまんますぎる。

雪花「でも私たちのことは認識できてないんだし、なんらかはされてるって事っしょ?」

園子「それは間違いないと思うんよ。そしてミノさんへの対応を見ての推論が、トリオン体を敵、他は敵じゃない、って感じなのではないかってとこ。」

雪花「はー、なるほどね。そもそも私たちのことすら武器くらいでしか区別できてないって事?」

園子「うん、そうだと思う。あとはゆみきちの中で、敵じゃない=戦う相手じゃない=戦う力がない=守るべき民、みたいな変換になってると思うんよ。」

空を見上げながら園子さんはそう話す。

(敵以外の変換がやや無茶苦茶な気がするけど弥勒さんなら全然ありそうだしなぁ…)

実際のところ、弥勒さんは色々ぶっ飛んでるところがある。

何より…

 

夕海子『━━━私が弥勒夕海子である限りは。』

 

雀「…」

 

ーーー雪花sideーーー

園子「で、これを前提に話を進めるんだけど…多分アルフレッドは今までの星座トリガー使用者と同様、こっちを殺す事まで含めてキッチリ狙ってきてると思う。」

雪花「…まあ、わざわざあんな風にしたのにもう1人の方まで弥勒さんの方に引っ張らせる理由ないもんねぇ。さっきからずっと言いあってるし。」

そう口を動かしながら弥勒さんの方をちらりと見る。

銀を送り届け戻ってきた彼女だが、そのままアルフレッドに説教を始めていた。

バーテックスの射手座に手足を生やしたかのようなデザインのアルフレッドから表情を読み取ることはできないが、さっきの反応とか見てる限りは不服なんだろう。

園子「そゆこと〜、じゃあなぜミノさんを倒して直ぐに合体を解いたのか、これが最後のポイントだね。」

雀「ん?どういう事です?」

雪花「ほら、解除しなければ銀が瓦礫から助け出されることはなかったからじゃない?やや結果論的なとこはあるけど、癖とまで言うからにはあのやり取り何度も繰り返された事だろうし、それなら解いたらやる事は想像つくしょ。」

雀「なるほど…」

園子「そういう事、多分トリオンめっちゃ消費すると思うんよ、めっちゃシンプルに。ミノさんのアイコンタクト的に合体ゆみきちは巨大矢を雨矢の量出せるっぽいからね〜。ハイリターンだけどハイコスト待ったナシなんよ。

これを含めて立案した作戦が…」

 

ーーー雀sideーーー

夕海子「さておまたせしましたわ!戦闘再開と行きましてよ!!」

園子「じゃあ手筈通りに!」

雪花「了解!」

雀「ラジャー!!」

弥勒さんの宣言を合図として私たち3人は各々動き始める。

雪花さんと園子さんはアルフレッドの方へ、そして私が1人で弥勒さんの方へ。

夕海子「いい度胸ですわね!」ガガガガガガガ

雀「うわ来たぁぁぁ!?」キキキキキキキキキキキキキキンッ!!

双盾を連結して1つの大盾にし、それを屋根のように持って上から降り注ぐ雨矢を凌ぎ接近する。

そしてそのまま近くの家の屋根に登り…

雀「なるようになれぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ドッガァァァァァァァァァン!!!!

ガンッ!!

盾を斜め下にしてバッシュを発動する事で先程の銀さんのように急接近、弥勒さんの持つ大弓にしがみつく。

夕海子「んなっ!?その姿勢ですと矢を放つだけで風穴開きますわよ!?」

雀「敵の心配してどーするのさ…それに、そうならないように園子さんより手は与えられてますので!!」

そう、矢の発射口には今大盾が密着していて、雨矢の1本も通さない状態になっている。

 

園子『当然矢は出ない。ゆみきちは疑問に思って更に放とうとする。これも出ない。そうしてるうちにキャパが限界に達し…ドカーン!!なんよ!!』

 

ということらしい。ちなみに私も吹っ飛ぶ予定だそうなので

(怖い怖い怖い怖い怖い!!)

と口と表情に出ないように心の中で弱音を吐きまくる。

来ると分かってても怖いものは怖いのだ。

夕海子「なら遠慮なくぶちかまさせて…」

(ぎゃあああああ来るぅぅぅぅぅぅだけどよぉぉぉぉs)

ビュンッ!!

弥勒さんがこちらの思惑に乗ってくれそうになったその時、私を巨大矢が穿ちます。

その傷はデカく、即座にトリオン体は解除。

そして…

アルフレッド「オ覚悟ヲッ!!」

雪花「ッ!?雀!?」

連続で投擲、爆発させた巨大矢の爆風で雪花さんを撒き、アルフレッドが巨大矢を槍のように携え一直線に向かってくる。

そして私の体を…

雀「…信じてる。」

ガンッ!!

貫く、その直前。

弥勒さんが、私の前でそれを阻んでいました。

 

園子『①誰かがゆみきちに突貫、撃破される

②アルフレッドがトドメを刺しにくるのをゆみきちが阻止

③アルフレッドブチ切れ、合体ゆみきちへ

④合体ゆみきちを撃破!

もし止めに来なかった場合は精霊バリアで防ぎつつ、私かチュン助が妨害に入る形で。』

雪花『おーいいね。ただ囮役が結構危険か…どうする?私やろっか?』

園子『いや、アッキーは満開が強いからフィニッシャーを務めてもらいたいんよ。だから私が…』

雀『…私やります。』

園子、雪花『『…!?!?!?』』

雀『いや、だって攻撃手段がない私残るより攻撃できる2人残すべきじゃないですか。』

雪花『それはそうだけど…』

園子『…チュン助は死とかそういうのに特に敏感じゃん。無理を強いる事はしたくないんよ。』

雀『あー…なるほど…確かにぶっちゃけ敢えて撃破される①は怖いですし痛みなしで倒される方法ないです?って感じですけど、②に関してはへーきへっちゃらです。だって…』

 

そう、会話した記憶が呼び起こされる。

雀「…ほら、言ったじゃないですか。弥勒さんは絶対助けに来るって。」

アルフレッド「…ッ!オ嬢様!退ケテクダサイマセ!!トリオン体デナクナッタダケデソヤツハ敵デゴザイマス!!」

夕海子「ならばそうだという証拠を私に分かるように提示なさい!!それに、仮に先程まで戦っていた盾使いだとしても彼女は戦う手段を失い、勝負はこちらの勝ちで終わりましたわ!命を奪う必要はありません!!」

アルフレッド「トリオンガ戻レバスグサママタ襲イカカッテキマスゾ!」

夕海子「その度退ければいい話ですわ!!それに私達には話し合いという手段もある!!弥勒家たる者、その者が民衆へ害を齎す者でない限り、分かり合おうとする意志を消してはならないという言葉を忘れになったのですか、アルフレッド!!恥を知りなさい!!」

アルフレッド「…ッ!ソンナモノハ知リマセン!ナント言ワレヨウト、私ハオ嬢様ヲオ守リスル為ニ手段ハ…」

夕海子「知らないと…やはりあなたはアルフレッドではないのですね。」

アルフレッド「何ヲ…!?」

夕海子「弥勒家の先祖が遺した言葉は弥勒家に仕える者全てが教えられ、その心に刻み込む物。

ましてやアレはその最重要項、私の執事が聞きもしない事があるはずがありません!最初に会った時から裏に別な意志を秘めていた事から怪しんでいましたが…」

アルフレッド「…ソウデスカ。ナラモウ仕方ナイ!!アナタハ用済ミダ!!」

夕海子「…!?一体なニ…ヲ…

 

…トリオンガ尽キル前ニ、勇者3人ヲ殺ス!」

弥勒さんの雰囲気がアルフレッドに近くなり、銀さんに見せたような合体が果たされる。

ユミコ「マズh「そうはさせないっての!!」ッ!」

そして真っ先に近くにいる私に矢を放とうとした時。

声と共に、空に花が咲いた。

 

ーーー雪花sideーーー

槍から花びらが舞い、即座に氷の結晶へと変化、そしてそこから一斉に黒い槍が数百、放たれる。

ユミコ「…ナラバ先ニ貴様カラダッ!!」

それを見て合体弥勒さんは巨大矢を雨のように放出、相殺し合う。

だが、数ではこちらが有利…そのはずだった。

(なのになんで押し返されてるわけ!?)

僅かながら数で優るはずのこちらが徐々に劣勢になる。

槍と矢の衝突時に発生する爆風が、こちらの槍を複数同時に撃墜し、数の不利をカバーしているのだ。

雪花「嘘…でしょ…っ!!」

思わぬ事態に額から汗が流れる。

より数を増やして対抗出来たらいいが、こちらも長期戦によってトリオンがカツカツ。いつトリガーが解除されてもおかしくない。

だから…

ユミコ「コノ勝負、モライマスゾ。」

雪花「えぇ…でも、試合はこっちの勝ち。」

ユミコ「…ッ!?」

ズバッ!!

園子「精霊、服部半蔵。その能力は忍びらしく"気配遮断"、なんよ。」

園子の槍が後ろから弥勒さんの身体を横断していた。

ユミコ「私…ハ…!」

雪花「ナイス…!!」

それによって弥勒さんと、トリオンに限界が来た私。

両者のトリガーが同時に解け、戦いは終焉した。

 

 

 

 

 

ーーー雀sideーーー

雀「雪花さーん!!大丈夫ですかー!!」

雪花「な、なんとか…でも疲労がヤッバい…」

園子「お疲れ様なんよ〜。」

弥勒さんを無事倒し、満開による疲労で1番体調がヤバそうな雪花さんの周りに私も園子さんも集まります。

雪花「フラワートリガー四人がかりで園子以外やられたってのもちょっと申し訳ないけどね…」

園子「まあゆみきちはアルフレッドと連携してきてたからね〜。仕方ないと思うんよ。勝てただけヨシ!って感じで〜。合体を引き出した上で全滅を防いでくれたミノさんも、合体ゆみきちを引き付けてくれたアッキーも、囮になって合体ゆみきちを出させたチュン助も頑張った!全員MVP!!」

雀「えへへ…お褒めに預かり光栄でチュン…」

園子さんの賞賛を受けてそう笑う。

雪花「そういえば…だけどさ。雀は『少しでも死とか危険な確率があれば怖いけど、逆にそれが一切なければ平気なので、今回も平気です!!』って言ってたけど、アレって結局何が根拠なの?」

園子「私もそれ気になってたー!!チュン助そこら辺は結構シビアに判定するタイプだしなんで危険ないって確信できたのかなーって。」

雀「あー…それは…」

 

雀『弥勒さんってなんで今も復興目指してるの?』

夕海子『ん?どういう事ですか?』

雀『いやほらさー、天の神は退いて大赦もだいぶ変わったわけじゃん?弥勒家復興しても大赦でウマウマはできないんじゃないかなーって。』

夕海子『あのですね…私は別に権力を目的として弥勒家復興を目論んでるのではありません。』

雀『え、そうなの!?…じゃあなんで?』

夕海子『…守るためですわ。何気ない毎日を、幸せに暮らす人々を。権威があるということはそれだけ自身の声が、手が、助けが届く範囲が広がるということ。

強き者が弱き者を助け、そうやって助けられた弱き者がいずれ強くなった時に、また別な弱き者を助ける…そう言った人の助け合いの輪を作ることこそ、私たちがずっと夢見た理想なのですわ。』

雀『…スケールでっか…まあでもいいと思う。応援してるよ。でも復興って結局どうするの?』

夕海子『まあ地道に困ってる人や危険な目に合ってる人を助ける、これに尽きますわね。』

雀『…果てしない道のりすぎない?』

夕海子『えぇ。でも諦める気はありませんわ。いついかなる時だろうと。

…それこそ、私が弥勒夕海子である限りは。』

 

私の恐怖を消し去った記憶が頭に思い浮かぶ。

(私も友奈さん達に少しずつ影響されてきたのかなぁ…)

そうだ、私は自身の身の危険に関しては思いとかそういうのは置いておくタイプだった。

だけど今回はその思いを根拠にしたし、実際トリオン体を吹っ飛ばされる恐怖はあってもアルフレッドがこちらを刺す恐怖は微塵もなかった。

なら、2人への返答にはこういうしかないだろう。

雀「信じてましたから、弥勒さんの事!」

そう、笑顔で答えた。




2次試験が割と近くなってきたのでまた少しだけ期間空きます


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23話 勇者ノ資格

山羊座メブが万能かつ隙がなさすぎて展開に苦戦しました。
次はここまで期間空かない…はず…


ーーー三門市東部ーーー

ーーー‪夏凜‬sideーーー

芽吹「…」

ビュンビュン!!

友奈「おっと!」

差し向けられる2本の剣を友奈が引き付け、そこに風が大剣を振りかぶり、上から芽吹を両断しようと振り下ろす。

が…

ガンッ!!

友奈を追う2本とは別の二振りの刃が交差する形で風の一撃を防ぎ、そのまま…

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!

激しく振動、それによって大剣が粉々に粉砕される。

だけど友奈でその能力を見ておきながら、無策で粉砕させる私たちではない。

風「‪夏凜‬!」

‪夏凜‬「旋空弧月!!」

両手に持つ2つの孤月が瞬間的にその刀身を拡張し、抑えていた大剣がなくなりフリーとなった剣2本を地面に叩きつける。

これで芽吹の4本の刃は全て彼女から離れた事になり、そこを東郷の狙撃が決める…しかし。

芽吹「…。」バシュンッ!!

東郷『どうですか?』

風「ごめん、防がれたわ。」

左腕に携えられた盾が、芽吹を狙撃から守りきっていた。

友奈「とりあえず東郷さんがまた移動するまではまた攻撃をかわしながら戦うとして…どうやって剣と盾を剥がしましょう…」

風「私は今んとこないわ。‪夏凜‬は?」

‪夏凜‬「申し訳ないけど、こっちもサッパリよ。」

風「そっかー…じゃあ仕方ない、東郷が狙撃ポイントにつくまでに各自案を考えるように!!」

‪夏凜‬「了解。」

友奈「はい!!」

ビュビュビュビュン!!!

そう風が言いきった傍から剣が空を切ってこちらに飛んでくる。

1体4の圧倒的数の有利がありながら、なおも膠着状態となっている現状。

その原因は芽吹の使う山羊座の星座トリガーの秘めた力が大きかった。

自身に触れている物体に共振を強制的に引き起こし、破壊する。

武術を素手で用いる友奈はもちろん相性は最悪であり、武器の再生成にはトリオンを消費する必要があるというトリオンそのものの特性から、近接主体の私や風も決していいほうでは無い。

更に芽吹の周りを浮遊する4本の剣は銃弾のように遠くに飛ばすこともできるため、東郷も攻めきれずにいる。

その結果が現在のこの状況。

(どうにか打開策を見つけたいけど…1番は…)

私のフラワートリガーの解放、になるんだろう。

死角で一瞬だけトリガーを解除し、変化が起きないかを確認するも、その色は変わらぬまま。

小さくため息をしてすぐに再発動する。

…かれこれ、5回目だ。

(強い感情…あるいは決意、だったかしら…それなら私だって…!!)

‪夏凜‬「なのに、なんで…」ボソッ

そう呟き、目を伏せる…だがその一瞬、私は戦闘中であることを完全に忘却していた。

芽吹「…!」

‪夏凜‬「ぁ…」

友奈「っ!?夏凜‬ちゃん危ない!!」ダッ

ガガガガッ

できた隙を逃さぬと剣がこちらを総攻撃、友奈が抱えてくれてなければ直撃していただろう。

‪夏凜‬「…っ。友奈、ごめん…」

友奈「ううん、気にしないで。このまま風先輩と合流しよ!」

 

風「誰も案なしかぁ…」

風はそう言いながら長いため息を着く。

友奈「ビュンビュン飛んでる剣はともかく、盾を弾き飛ばす方法がないですからねー…どうしたらいいんでしょう…」

そう、剣の方は友奈の陽動と私の旋空で芽吹から引き剥がす事は今まで通り出来るだろう。

しかし彼女が左腕に付けている盾、アレは手に持つのではなく腕に固定するタイプであり、風の大剣の一撃をもってしても傷1つ付かない防御力と、共振による粉砕機構を備え持つ。

東郷の射撃を通すためには破壊は必須だが、その手段が思いつかないのであった。

そんなどん詰まりの時だった。

東郷『それなら私に提案があります。』

風「東郷、ほんとに!?」

東郷「はい、そのためにここまで来たんですから。」

次の狙撃ポイントへ移動してるはずの東郷が、すぐ目の前に来ていた。

 

 

 

 

ーーー友奈sideーーー

友奈「勇者…キィィィィィィック!!」

‪トリオン温存のためにトリガーを解除してる‪夏凜‬ちゃんを背負いながら道を塞ぐトリオン兵を一掃していく。

 

東郷『…って事なんですが。』

風『なるほどね、乗るわ、その作戦。』

友奈『待って東郷さん!私と‪夏凜‬ちゃんは!?』

東郷『2人は…』

風『2人は一足先に離脱しなさい。…私たちが芽吹と戦い始めてから10分くらい経ってるのにボーダーからの援軍が誰も来てない。通信も繋がらないし、私達の知らないところで何かが起こってるかもしれないわ。

だから2人はそのための援軍、かつ万が一私と東郷が失敗した時に全滅を避けるための保険。いいわね?』

‪夏凜‬『…わた、しは…』

‪友奈『…はい!わかりました!!』

 

‪夏凜‬「…大丈夫よね、2人とも…」

友奈「…うん、きっと大丈夫。風先輩も東郷さんも強いもん!」

不安そうな‪夏凜‬ちゃんの問いかけに、そう強く答える。

(信じてます、2人とも…!!)

 

ーーー風sideーーー

風「はああああああ!!!!」

芽吹「…!!」

ガキンッガキンッガキガキガキガキガキッッッッッ!!!!!

対‪夏凜‬の時のように片手剣サイズに調整した大剣と、指と指の間に挟んだ小刀4本で芽吹の剣4本による猛攻を凌ぐ。

芽吹はここまでの戦闘で東郷に警戒している。

まずはそれを許さずに、こちらに集中させないと。

風「…見えてる!!」

ブォンッ!!キキンッ!!

正面からの3本を大剣でなぎ払い、意表を突くが如く後ろから迫る1本を小刀2本の投擲で逸らす。

(…ここ!!)

芽吹「…!!」

更にその返しで芽吹の顔面へも2本投擲、その防御に盾を使ったのを確認してすぐがら空きになった足元へと大剣を振るう。

ガキンッ!!

それは戻ってきた剣によって弾かれるが、その額には冷や汗が流れていて、相手もかなりギリギリだったのは目に見えた。

(流石に1人じゃ防ぎきれなくてガンガン傷つけられてるけど、相手もそこそこ焦ってるわね…あとは東郷が…!)

正にそう思ったタイミングだった、空に青いアサガオが咲いたのは。

そして…

満開によって芽吹の真上に出現した艇は、砲門にエネルギーを貯めながら一直線に落下を始めた。

芽吹「…!?………、…!!」

風「その顔、さては気づいたわね。でも逃がさないわよ!!満開!!」

東郷の意図に気づき、すぐさま退避しようとする芽吹を満開によって先回りする。

ビュビュビュビュンッ!!

それを見て芽吹は剣を全てこちらに差し向け、足止めと共に再び場を脱そうと目論むが…

東郷「逃がさない!!」

ヒュンヒュヒュンッ!!ビュンッ!!!

艇の上の東郷がとばした4つのビームビットがそれを阻むようにビームを発射、ビームに阻まれ足の止まった一瞬を狙撃銃が狙い撃つ。

狙撃を回避するべく芽吹が後方に下がるがそこには…私がいる。

風「ナイス東郷!こんれでぇぇぇぇぇ!!!!」

そう叫びながら芽吹の身体を両腕で捉え、そのまま地面に押さえつける。

(よし!あとは…!!)

もう1mもないところまで落ちてきている艇が来るまで逃がさなければいい。

風「さぁーて、仲良く心中よ!」

芽吹「…………!!!!!」

ガンッッッ!!!

そして、直撃…はしなかった。間一髪のところで芽吹が盾によって防いでいたのだ。

風「やるわね…!?」

芽吹「…!!」

勝ちを確信したのか彼女の顔には汗をかきながらも笑みが浮かび、それとともに艇を共振で破壊しようと…

東郷「するんでしょう。読み通りです。」

芽吹「…!?」

東郷「だから天の神と相対した時のように限界までエネルギーを溜め込んできました、例えあなたが共振で艇を破壊しようと破壊しなかろうと、溜まりに溜まったエネルギーが暴発し、吹き飛びます。」

芽吹「…!?!?!?!!???!?」

東郷の言葉によって、その顔からは一瞬で笑みが消え去る。

そして…

東郷「風先輩、伝えるならちゃんと言わないとダメじゃないですか。」

風「ごめんごめん。じゃあ改めて、仲良く心中よ…3人で、ね!!」

ドッッッガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!

凄まじい音と共に青い閃光が爆ぜた。

 

 

 

 

 

ーーー東郷sideーーー

東郷「けほっ…こほっ…」

艇に溜め込んだエネルギーによる大爆発…その威力は凄まじく、半径10m一帯が更地と化していた。

(星座トリガーを倒すためだったとはいえ、住宅地に被害を…帰ったら謝らないと。…帰れたら、だけど…)

そう思いつつ頭を上げる…

芽吹「…」

そこには、ところどころに火傷のような傷を残しながらもトリオン体を維持した芽吹ちゃんがいた。

ただでさえ広範囲な上に、風先輩にガッチリ押さえ込まれていた芽吹ちゃん。

しかし暴発の寸前、盾と4本の剣、そして地面で自身を囲うように直方体を作り共振を発動。

それによって完全では無いもののダメージを大幅に抑え込み、唯一の生還者となっていたのだ。

(まさかエネルギーすらも共振で消せるだなんて…風先輩は満開のトリオン切れで意識を失ってるし、私も風先輩を背負って逃げれる疲労じゃない…)

そして今までの傾向からして芽吹ちゃんは殺しにくる。

詰み、といってもいいだろう状況だ。

(…勇者部6箇条、なるべく諦めない…なんとかして2人とも生還しないと…)

彼女が動き出さないうちに脳をフル回転する。

しかし…

芽吹「…」ダンッ!!

彼女は私達にトドメを刺すことなく、その場を去っていった。

東郷「…あの方角は友奈ちゃん達の…倒した相手のトドメよりも残った勇者を優先した…?」

どちらにしろこれはチャンスだ。

今のうちに風先輩と避難するべきだろう。

(…2人とも…どうか無事で…!!)

 

ーーー‪夏凜‬sideーーー

‪夏凜‬「ねえ、友奈。」

友奈「ん?なになに?どうしたの‪夏凜‬ちゃん。」

‪夏凜‬「…私、どうしたらいいと思う?」

…それは、心の底からの問いだった。

‪夏凜‬「芽吹を助けたい、みんなの力になりたい…私だってそう、誰にも負けないくらい想ってるはずなのに、私のトリガーは一向に変わってくれない…何が足りないの…?実力…?覚悟…?適性…?それとも…何もかも、足りないのかな…」

不安と焦燥に苛まれ、弱りに弱った心から本音が漏れ出る。

‪夏凜‬「…本当は、私なんて勇者にふさわしく…」

友奈「あのね、‪夏凜‬ちゃん。」

最後の一言を遮るように、友奈が言葉を発した。

友奈「あくまで私の時の話だけど、ただ決意した…ってよりは、こう…決意し直した感じだったの。握った拳をさらにグッと握るんじゃなくて、1回開いてからさらにグッとやる感じ。

‪夏凜‬ちゃんは凄く優秀で凄く優しいから、みんなだったらこういう時に改めて思うような事も、日頃から無意識のうちに思ってて、握りっぱなしになってるんじゃないかな。」

‪夏凜‬「友、奈…」

優しくそう語る友奈の言葉を聞いて、微かに声が漏れる。

友奈「だから自分を責めないで、‪夏凜‬ちゃん。

‪夏凜‬ちゃんは、誰が見ても立派な勇者…」

ザスッ!!

‪夏凜‬「…友奈!?」

友奈「…か、は…!?」

その時、友奈を凶刃が貫いた。

(これは、芽吹の…剣…!?)

剣は的確にトリオン供給機関を破壊していて、友奈のトリオン体は即座に解除される。

‪夏凜‬「…作戦が失敗したってよりは芽吹が一歩上を行ったっぽいわね…だいぶボロボロだし。

友奈、すぐ近くに避難所があるはずだからそこに。」

友奈「…頑張って、‪夏凜‬ちゃん!!」

友奈はその一言だけを残し、駆けていく。

‪夏凜‬「…開いてから握り直す、か…」

目を閉じて静かに深呼吸をする。

焦りと迷いがあった。

遅れた分も取り返してみんなの力にならねばならないという焦り。

大丈夫だろうとは思いつつも、万が一の時はどうしようという迷い。

それらがどデカい箱のように手のひらに乗っかっていて、握りきれてなかったのだ。

…だから。

パンッ!!

自身の頬を両手で叩き、乾いた音が周りに響く。

手のひらの箱を砕くように。

‪夏凜‬「…よし。…完成型勇者、行くわよ!!」

その言葉と共に展開されたトリオン体は…懐かしいあの勇者服を纏っていた。

‪義輝「諸行無常。」

‪夏凜‬「…久しぶりね、義…輝!!」

ドガァァァァァン!!!

言葉を言い切る前に芽吹の剣が足元に凄まじい速度で突っ込んできたのを、間一髪で回避する。

(もう少し待ちなさいよ…って言いたいとこだけど、友奈倒してからそこそこ待ってくれてたし私が時間かけすぎただけね。)

‪夏凜‬「…さあ、勝負よ、芽吹!!」

その声と共に、両者は激突した。

 

 

 

 

 

ーーー三門市西部ーーー

ーーー園子sideーーー

園子「みーっけ!とりゃ!!」ズバッ

ブシュウウウウウ…

私の槍が瓦礫の中のある一点へと伸び、そこから何かの刺突音とトリオン漏れ特有の黒い煙が出てくる。

(そしてそのまま縮ませて回収…っと!)

そうして出てきたのは手のひらよりやや大きいトリオン兵。

その姿はラッド…ゲートを開くトリオン兵に酷似している。

しかし身体の中央に付いているはずのゲートを作り出す機構がなく、代わりに超小型の電波塔らしき物がついていた。

園子「亜種って感じかな?しかしふむふむ、この形状…間違いなく通信を妨害してたトリオン兵なんよ〜!!」

私達がゆみきちと交戦を開始してからおそらく2分程度の頃、突然としてオペレートしてくれてたうさみん先輩(宇佐美)との通信が途切れた。

本部や個別通信も通じないので、何かしら要因があるに違いないと1人で捜索していました。

(こんなタイプ聞いたことないし、多分新型だよね〜…運良く損傷もそこまでだし、このまま本部に持って帰ってタヌキさん(鬼怒田)に渡そーっと。)

あれこれ考えながら戻ったであろう通信を繋げる。

園子「もしもしうさみん先輩?聞こえてます〜?」

宇佐美『園子ちゃん!?無事なの!?よかったぁぁ…そっちにも友奈ちゃん達の方にも突然繋がらなくなって焦ったんだから…』

園子「ラッドの亜種らしき新型を確認したので、多分原因はコイツですね〜。ゆみきちは撃破、ミッションコンプリート!しましたのでご安心を〜」

宇佐美『ホントに!?ナイスだよ!!

園子ちゃん以外に動ける人は!?』

園子「うーん、正真正銘私だけなんよ。」

宇佐美『…そっかぁ…でも倒してくれただけでありがたい!!ホントによくやってくれた!!』

その言葉がふと、引っかかった。

「動ける人は!?」「倒してくれただけありがたい」…それじゃまるで、人手が足りないみたいではないか。

今回の侵攻、星座型や星座トリガー抜きのトリオン兵の規模で言うなら前回はおろか、私が暴れた時の侵攻にすら劣るはずなのに。

園子「…今回、援軍の部隊が一切なかったんですよ〜

…何がありました?」

宇佐美『…あのね…』

 

ーーー少し時は遡り、三門市北部ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「出水さん、お願いします!!」

出水「分かってる!バイパー!!」

ドゴゴゴォォォォン!!!

逃げる牡牛座の行く手を阻むかのように、出水さんのバイパーが進行方向から迎撃する。

そしてそこを…

太刀川「旋空弧月。」

ズバッズバッ

太刀川さんの旋空が4撃、身体の六割がたを切り落とす。

北東、北西、北のそれぞれに現れた星座型三体。うち私と太刀川隊(唯我さん抜き)は北西の牡牛座と激突。

動きを制限する音色を出す鐘を早々に出水さんのトマホークが破壊したものの、前回の侵攻と同じくブラックトリガーによるものと思われるゲートが出現。

他の二体と合流して合体バーテックスとなられるのを防ぐべく、追撃しているところだ。

とはいえ撃破しても合体を防ぐことはできない、だから…

ちひろ、樹、竜治「『『封印開始!!!』』」

屍を吸収する隙すら与えない、同時撃破。

それこそが私&太刀川隊、樹ちゃん&嵐山隊、竜治君&玉狛第一の三組が立てた作戦だった。

ブウウウウウウウウウン

封印によって露出した牡牛座の御霊は細かく振動、いつもの音波を出し始める。

(だけど御霊の方が強力になってる…!!)

さらにそれだけではなく…

出水「おいおい、トリオンが乱されて弾途中で消えんぞこれ。」

太刀川「旋空程度のトリオン消費でも不発なるか…ちひろ!!」

ちひろ「了解です!!」ダッ

ガキンッ…ビュンッ!!

跳躍して刃を片方のみにしたソードビットに乗り、それを太刀川さんが孤月で大きく打ち上げる。

出水さんのアステロイドの消え方からして、御霊に近いほど音波の効果は強烈になるはずだ。

(つまり遠くにいけばいくほど、多くトリオンを使うものでも平気になる…!!)

タッツー「りゅ〜!!」

勢いが弱まってきた頃にソードビットをウイングへと形状変化、更に高みを目指す。

(あと数メートル登ったらウイングを解除、落下時の勢いと合わせてダガーで叩き割る…!!)

ちひろ「2人ともごめん、任意でタイミング合わせれそうにない!!合わせてもらえる!?」

竜治『そっちは牡牛座…ならめんどいだろうしな!了解だ!!』

樹『私の方もいつでもいけるよ!!任せて!!』

ちひろ「ありがとう2人とも!!じゃ…」

牡牛座の御霊を確認し、狙いを定め…

(…え?)

ありえない光景を目で捉える。

竜治君と樹ちゃん、その双方が目に映ったのだ。

いや、別にこの場に集まってた事自体は不思議ではない。

逃げる星座型を追いかけてかなりの距離を移動したし、お互いそれに気づかなかったのも、ゲートが巨大な障害物として作用していたのだ。

しかし、ゲートが説明つかない。

これほどの近くまで来てるのだ、ゲートを使わずとも合流は容易のはず。

ならばこのゲートは何のため?

水瓶座と天秤座、牡牛座の合流以外になんの…

(…まさか!?!?)

ちひろ「モードネット!!」

ヘボン「はいはい!!」

ソードビットを超細かくしてから連結、漁に使う網のようにして牡牛座の御霊を包み込む。

そして全体の大きさを縮小、半ば力技で音波を封じる。

太刀川「!?トドメはどうした!?」

ちひろ「中止です!!2人とも聞こえてる!?今すぐ御霊を持って離脱!!できるだけ早く、そして遠くに!!」

竜治『は!?なんでだ!?』

ちひろ「このゲートは三体の合流用なんかじゃないの!!しs…」

ボボボボボボッ!!!!!

そう言いかけた時、ゲートの中から火の粉が…否、炎を纏ったコメッタが溢れ出し、こちら目掛けて突撃してくる。

それを見てすぐさまネットを解除、シールドに切り替えようとするが、相手が早すぎた。

(間に合わな…)

出水「アステロイド!!」ガガガガガガガガ

太刀川「旋空弧月!!」ザザザザンッ!!!!

しかし、太刀川さんと出水さんが全てを撃破、私は事なきを得る。

出水「炎纏ってたやつ、ただのコメッタより耐久力上がってたぞ?」

太刀川「ってーとまさかダンチで強いっつーアイツか?」

ちひろ「…いや、違います。」

ネットを解除した事で自由となった牡牛座の御霊は再び振動を開始…することはなく、ゲートの中へと進んでいく。

…そして。

ゲートから巨大な火球、その輪郭がはみ出てくる。

やがてそれは形を変え…炎が消えて完全に変形…融合を完了、ゲートが消失してその全容が顕になる。

それは、忘れることのできるはずがない姿だった。

ちひろ「…レオ・スタークラスター…!!!」

死の星群が、そこに佇んでいた。



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24話 荒ブル燼滅ノ凶星

大学の勉強と兼任しようとしたら上手くいかなかった男はここです。
遅れてホントにすいません…大学中もやれるよう頑張ります、ホント。
そしてめちゃくちゃ長くなったため3分割です。


ーーー三門市北部ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…レオ・スタークラスター…!!」

牡牛座、水瓶座、天秤座を獅子座が取り込み、融合した超巨大バーテックス。

最新であり、相性のいいバーテックス相手ならタイマンも可能な勇者システムを持った勇者でさえ、その撃破に5人の満開を必要とした正真正銘の規格外の存在。

 

それがコイツだった。

(迂闊だった…!!!牡牛座に水瓶座に天秤座だなんて、まんまこいつのレシピ通りだってのに…!!)

樹「ちひろちゃん!!これって…!!」

ちひろ「うん、間違いないと思う。」

竜治「だよな…厄介どころじゃねぇぞこれ!?」

嵐山「明らかに今までの合体トリオン兵とは別次元だが、これは…!?」

太刀川「スタークラスター。例の特にやべー4種のうち1つだとよ。」

レイジ「となると、目当ては前回と同じく遠征艇か?」

しかし、ゲートが消えたことで樹ちゃん達や竜治君達とも合流。

フラワートリガー3人に加えて、A級1位である太刀川隊、連携が凄まじい嵐山隊、個々で部隊認定される程の実力がある玉狛第一がこの場に揃ったことになる。

(これなら、なんとかできるかも…)

そんな幻想は、一瞬にしてぶち壊される。

ボボボボボボボボボボボボ

レイジ「ッ!!来るぞ!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

クラスターはかつてのように火球を自身の背後で円状に…そして三重に展開。

全てをこちらへと解き放った。

ちひろ「追尾性です!!気をつけてください!!!」

太刀川「OK!!」

嵐山「了解!!」

ダダダダダッ

私の言葉を聞き、火球が1箇所に固まらないように散開、火球も全員を追うべく狙い通り分散する。

ビュビュビュビュビュビュビュビュン!!!!

ちひろ「ソードビット!!!」

十分に距離を撮ってから背後を確認し、追尾してくる火球へソードビットを放つ。

しかし…

ギギッ…バキバキッ!!

(押し負けた!?)

ソードビットは火球に刺さり、少しの間拮抗するも真ん中あたりでへし折れてしまう。

そしてそれに動揺した私へ無機質に突撃し…

ズバババババッ!!!

次の手として頭上を飛ばし続けていたソードブレッドによって両断、爆発する。

そして残りを…

ちひろ「モードブレイド!!」

トラ介「ガオー!!」

モードブレイドでまとめてクロス斬り、破壊する。

ちひろ「ふぅ…なんとかなったけど…」

(あそこまでスピード上げといたブレッドでやっとあそこまでサックリでしょ?ウィップみたいな小さめのをいくつも組み合わせたヤツやアローみたいな攻撃以外へのビットの使用量が多いのは無理ね…しかもそれが通常攻撃の火球の時点でか…)

本体がどれだけ固いのか、正直想像したくなかった。

(それより、他の人は…!?)

思考を切り替え、さっきの場所へと走り出す。

そうして戻った先で…

ザクッ

ボガボガァン…

2つの火球が樹ちゃんを直撃、爆発した。

ちひろ「…嘘…でしょ…樹ちゃん!?」

樹「…ゎたしは無事ですぅぅぅぅぅ!!!」

木虎「間一髪ね!!」

しかしその直後、樹ちゃんを俵のように持った木虎さんが銃から射出したスパイダーでターザンのように黒煙の中から出てくる。

火球もそれを追うが…

木虎「佐鳥先輩!!」

佐鳥『分かってる分かってる!!』

ガガンッ!!

佐鳥さんのツインスナイプが火球を貫き、破壊する。

ちひろ「…よかったぁ…!!!」

みんなは大丈夫だろうかと心配して戻ってきて見せられたのが樹ちゃんへの直撃なのだ、凄まじい安堵感がどっと押し寄せてくる。

時枝「そちらも無事でよかった。この火球、アステロイドでも2人でクロスファイアしないと破壊できないくらいには硬いからね。」タッ

出水「ギムレットでも行けるぜー。まあアステロイドで無理ってのは変わんねえか。」タッ

烏丸「追尾してくる攻撃相手に合成弾を時間かけて作るのはなかなか隙がヤバいですね。」タッ

そしてそれを皮切りに、散らばった人たちも再び集い始める。

レイジ「シューターやガンナーはなるべく2人以上にして当たらせるべきだな。木虎と太刀川、孤月とスコーピオンは?」

太刀川「旋空なら行けるが素では無理そうだな。なかなかに強度がある。」

木虎「一応傷は確認できたので集中的に削れば破壊できると思います。ただ、ただでさえこちらを追尾してくる奴に攻撃をするのが至難な上に、炎を纏っているので現実的ではないかと。」

レイジ「そうか。レイガストはスラスターなら効果があった、こちらも孤月と比べて近づく必要があるから多少危険だが。

本体がこれよりも固いと仮定すると、もっと隊員を集めないと封印に持ってくことすらできなさそうだな…」

嵐山「援軍はシューターやガンナー重視の方が良さそうですね。」

宇佐美『OK!綾辻ちゃん達と連携して調整するよ!』

クラスターが再度動くまでの短い間に、ドンドンとこの後の動きや役割分担が決まっていく。

だがしかし、そうなるとどうしても入れとかねばならない情報が1つある。

ちひろ「ちょっと待ってください。コイツ相手に封印は使えないです。」

そう、話が終わりきらないうちに強引に割り込む。

小南「ん?なんでよ?」

樹「あの、クラスターの御霊ってとても大きい上に1番下の角でも宇宙にあって…」

小南「…はあ!?」

出水「マジかよ…!?」

佐鳥『いや反則でしょそれは!?』

竜治「だから封印なしでなんとかするしか…」

竜治君が言葉を濁しながらそう言う。

太刀川「でも御霊の場所は分かってんだろ?じゃあそこ人集めて集中攻撃すれば突破できるはずだ。」

みんなが驚く中、太刀川さんがそう言った。

国近『場合にもよるけど満開も合わせれば多分行けるんじゃないかな〜?』

綾辻『そうですね。どれくらいの固さかはまだ攻撃してみないと分かりませんが…』

そして、それを皮切りに他の人たちも対策を練り始める。

(…うーん、心強い…)

ただでさえ別次元の強さだったクラスターが更に強化され、ぶっちゃけ不安が少し増していた。

そんなところに勇気をもらえた気がしたのだ。

なら、黙って対策を丸投げしている場合ではない。

ちひろ「集中攻撃で弱いところを作ってもらえれば、私や竜治君なら倒せる可能性は高いと思います。」

出水「お?ちひろのってーと…あーアレか。アレなら確かにぶった切れるだろうな。竜治の方はどうなんだ?」

竜治「ちひろの言う通り、多分行けます。ていうかトリオン兵じゃないスタクラなら1回封印なしで御霊ぶち抜いてるし。」

樹「私はワイヤーの出せる本数が凄いことになるだけなのでちょっと…」

烏丸「…となると2人を温存してくべきですかね。」

時枝「そうなると思う。どれだけの隊が駆けつけれるかにもよるだろうけどね。」

冬島『そーいう事なら安心してくれていいぜー。』

そう、冬島さんから通信が入る。

王子「B級5位、王子隊現着。援軍は僕らも含めてA級2隊、B級5隊のかなり大規模なものだ。」

諏訪「諏訪隊現着!!聞くところによると鬼みてぇなスペックのトリオン兵だそうじゃねーか、変な動きする前にさっさと倒すぞ!!」

影浦「変な動きしよーが倒しゃ終わりだ。A級10位影浦隊現着!」

荒船『B級11位荒船隊現着。援護を開始する。』

間宮「B級18位間宮隊現着!」

茶野隊「B級19位茶野隊現着!」

そしてそれを皮切りに、続々と部隊が到着する。

総勢19名、しかもうち16名がシューター、ガンナー、スナイパーのどれか。

襲いかかる追尾火球を殲滅しながら集中砲火へと繋げるには十分すぎた。

レイジ「よく来てくれた。作戦はオペレーターから通達済みだな?」

諏訪「当たり前だろ筋肉ゴリラ。もうどこも準備万端だ。」

レイジ「よし、竜治とちひろは満開をいつでも発動できるように待機。」

ちひろ、竜治「「了解です!!」」

フラワートリガー3人、A級5隊、B級5隊、今までとは比べ物にならないほどの圧倒的戦力集中。

レイジ「攻撃、開始!!」

…ビキッ

だが、しかし。

竜治「…今、なんか音したような…」

パワーアップしたクラスターは、私たちの想像を遥かに…いや、完璧と言っていいまでに超越していた。

 

[newpage]

ーーー竜治sideーーー

(…クラスターが地面に刺さってる?)

よく見るとクラスターの1番下にある大きな棘が地面に突き刺さっている。

先程レイジさんの号令、およびそれによって一斉に放たれた弾トリガーと同時に聞こえた音はこの時のだろうか?

竜治「っていうか、なんのために…?」

それはすぐに分かった。

…ギュルルルルルルルルルルッッッッッッッ!!!!!!!!

影浦「ッ!?伏せろ!!!!!!!」

ッッッッドガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

弾トリガーが着弾する寸前、クラスターは凄まじい音と共にその場で回転、自身へと向けられた弾トリガーの速度を何倍にもして跳ね返したのだ。

そしてそれによって、防御にまわった間宮隊の1人がシールドごと身体を貫かれ、ベイルアウトする。

嵐山「みんな大丈夫か!?」

蔵内「秦がやられていた、シールドも貫通するとなると威力がシャレにならないぞ…」

烏丸「天秤座と同じやつですね。だけど跳ね返した弾の速度を上げる事まではしてなかったはず…」

北添「合体して強化されたって事!?それってまずくない!?今いるメンバーの攻撃ほとんど逆に利用されちゃうじゃん!!」

太刀川「あの下の棘が軸だろ?ならアタッカー組で一瞬止めてそこに合わせてくぞ。」

樹「そういうことなら、私も力になります!!」

予想外の動きでも、すぐに対応を変える。

が、クラスターの攻撃はまだ終わりではなかった。

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ

木虎「…冗談でしょう?」

クラスターはその回転を止めることなく、ちょうど上下の中間の辺りに、自身を囲うように火球を展開し…

レイジ「…退避!!!!!!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッ!!!!!

…次々と放ち出した。

竜治「くっ!!」ズバズバッ

耐久性が変わるわけじゃない、だから破壊すること自体はさっきと同じくできる。

だが、破壊力は別だ。

ッッッッボガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

狙いなどまるで意識せず放たれる火球は途中でいつもの追尾性を発揮し、その速度のままこちらへと…それこそ建物などまるで知らないかのごとく粉砕して突っ込んでくる。

竜治「撃ち漏らし=即死とかいよいよやべーぞコレ…!?」

さらに、火球は放たれた傍から再装填されている。

つまり、この攻撃に終わりはない。

荒船『やるぞ!!!!』

当真『外すんじゃねーぞー!』

しかし、それで終わるボーダーでもなかった。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガ

距離が離れた場所から狙い撃つスナイパー、彼らは火球の追尾に狙われてはいない。

その間に各自準備を整え、弾を跳ね返すクラスター本体ではなく、こちらを襲いかかる火球を片っ端から狙い撃ち始める。

ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッ!!!!!

影浦『そっち向かったぞ!!!』

だが、それを見てかクラスターは今度はその速度を利用し、火球を狙撃のあった遠方へと飛ばす。

無論、それは途中で追尾性を発揮し…

穂刈『…ッ!?』

ボガガガガガガガガァァァァァァァァァァン!!!!!!

スナイパー組へと襲いかかる。

北添『ユズル、大丈夫!?』

絵馬『大丈夫だよゾエさん、ちゃんと避けた。』

佐鳥『ひぇぇぇぇ…!!!こっわ!?』

時枝『しばらくはこっちで凌ぐから場所変えて!!』

皆さんはそれぞれ来る前に建物から離脱し、事なきを得ている。

しかし、もちろんそれで終わりでなく…

ちひろ『油断しないでください!!』

半崎『…あっ、やべ。』

ビュンッッッッッ!!!ドガァァァァァァァァン!!!!!

空中で身動きが封じられたところに、水圧レーザーが直撃。

1人がベイルアウトしていくのが確認できた。

…正直、言葉が出てこなかった。

弾トリガーはそもそも通じず、狙撃は炙り出されてから狙い打たれ、近接はそもそも近づけない。

冬島『…どうするよ、これ?』

冬島さんのその言葉が、全てだった。

オマケに、だ。

クラスターは、徐々に南下を始めている。

…火球を次から次へと発射しながら、ボーダー本部へと向かっているのだ。

堤『こいつ本部に向かってますよ!?』

諏訪『狙いは前と変わらず遠征艇ってことだろうな。なんとしてもその前に止めんぞ!!』

レイジ『分かっている!が接近も危険、狙撃も迂闊にはできないとなると作戦を練って行く必要がある!!』

王子『回転の軸を破壊するのはどうです?合体トリオン兵の通った道に何かを地面に突き刺し、そのまま引きずったような跡があるので、そこさえ破壊出来れば…』

ちひろ『ダメです。それじゃすぐ再生されて終わります。』

北添『あー…そういえば再生機能なんてあったね、新型のトリオン兵。』

小南『でもじゃあどうすんのよ。このままじゃ埒があかないわよ?』

荒船『破壊せずに封じる方法、か…』

絵馬『…レッドバレットアイビス。』

全員『!?』

そう、小さくユズルが呟いた。

絵馬『雨取さんのレッドバレットライトニングを作った時の副産物。アレを軸になってる棘に当てれれば先端も飲み込んで刺さらなくすることはできると思う。』

(…最初の侵攻の時のか!!!)

あの時、別な場所で襲われていたからその場にいたわけではないが、友奈先輩から話は聞いていた。

レッドバレットアイビスで大量に鉛を付けることでおとめ座を弱体化させ、封印に持っていったと。

烏丸『修と話は付けました。トリオン兵に集中的に狙われていて直接そちらに行くことはできないが、千佳は近くの狙撃ポイントについているから、発射すれば約5分でそちらに着弾させられると。』

レイジ『分かった。そうなると…』

嵐山『その5分、放たれた弾丸が別な何かに効力を発揮することを防ぐのと、そもそも回転に巻き込まれて反射させられるのを防ぐために…』

太刀川『5分…いや、かなり離れてる以上すぐに狙われるとは思えねえ。実際はもっと少なく済むな。ともかくレッドバレットアイビスを直前で不発させられないように合体トリオン兵を止める。それが俺らの役目か。』

やるべき事は定まった。

強大な敵を打ち倒すべく、作戦は動き出す。



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25話 抗ウ者達

長くなったので3分割です(2話目)


ーーー三門市北部ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「ホントにいいんですか?ぶっちゃけこれ特に扱いムズくて私でもやや手こずり気味なので加減できるか分かりませんよ?」

小南「分かってるわよ。でもアイツの上からデカいの叩き込むならこれしかないし、多少はなんとかするからそっちも頑張りなさい。」

ちひろ「それは言われずともですよ。」

ユズル君の発案から始まったクラスター攻略作戦。

だがその肝となるレッドバレットアイビスが着弾するまでにかかる時間は約5分、スタークラスターに迎撃対象とされるだろう位置からでも2分はかかると推測されている。

途中で気づかれて火球で迎撃されても、回転で反射させられても頓挫する。

だからなんとしても回転を一時的に止めて、それを着弾まで維持する必要がある。

今私が用意してるのはその回転を止めるキッカケ。

天秤座の時の戦いを応用し、私のモードジェットで小南さんを上空まで運び、真上からどデカい一撃を浴びせることでクラスターの動きをほんの一瞬封じる、というものだ。

そうして回転の止まった一瞬をついてアタッカー組が棘を切断、もちろん再生するはずだけど再回転する前に何度も何度も破壊。

シューターやガンナー、スナイパーのみなさんは妨害を止めるべく撃ち出されるであろう火球の迎撃。

これを2分間続け、レッドバレットアイビスを着弾させる。

間もなく発射されてから4分、スタークラスターの圏内に入る。

ちひろ「…行きます!!モードジェット!」

小南「…いいっ加減!!止まりなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

小南さんの叫びと共に振り下ろされた一撃が、作戦開始を告げた。

 

ーーー太刀川sideーーー

(派手にぶちかましたな。)

合体バーテックスの頭上で上がる白煙と、凄まじい衝撃によって大きく体がしなった合体バーテックスを見て出た感想がそれだった。

小南が扱う双月はボーダーで支給される標準的なものよりもトリオン消費量が高い代わりに攻撃力が段違いになっている。だが、それでも圧倒的な防御を持つ合体バーテックス相手にあそこまで煙が出るほどの傷が付けられるとは思えない。

おそらく刃が合体バーテックスに接触する瞬間にメテオラを挟み込み、起爆させたのだろう。

(ベイルアウトはしてないようだがダメージはでかいはずだ。復帰は期待しない方がいいな。)

そう、状況を整理して。

太刀川「続くぞお前ら!!」

日佐人「はい!」

樫尾「了解です!!」

王子「合わせるよ!」

「「「「旋空弧月!!!!!」」」」

5つの剣閃が重なり、合体バーテックスの棘を本体から切り離す。

これで状況は成立、あとはこれを2分維持するだけ…だが…

ドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!

今の一撃でこちらの狙いを理解したのか、防衛本能かは分からないが前にも優る勢いで火球を装填、放ち始める。

四方八方、かわす隙すらない超高密度の攻撃。

…だが、しかし。

嵐山「攻撃開始!!」

当真「狙撃再開だ!!」

それらはうちの優秀な仲間たちが撃ち落とし、半分、いや7割がた減らしてくれる。そこまで減らしてもらえればあとはこちらでかわすのは容易だった。

太刀川「ふんっ!!」

身を捩って火球をかわしつつ、回復を始めた断面に更なる追撃を加える。

(残り1分55秒…頼むぜてめえら…!!)

 

ーーー樹sideーーー

烏丸「ガイストオン、ガンナーシフト!」

『カウントダウン開始 ベイルアウトまで157秒』

レイジ「[[rb: 全武装 > フルアームズ]]、オン

!」

旋空組とゆっくりゆっくりこちらへと向かってきているレッドバレットアイビスに向けて放たれ続ける火球を撃ち落とすべく、レイジさんと烏丸さんが奥の手を発動します。

レイジさんのは同時にトリガーを使用できるのはメイン・サブから1つずつという制限をなくし、大量のトリガーによる総攻撃、超高密度の弾幕展開を可能とするフルアームズ。

烏丸さんのはあえてトリオン体のバランスを崩し偏らせ、時間制限付きの部分超強化を得るガイスト。

どちらも大量のトリオンを消費する短期決戦用ですが、この後の撃破までの見通しがついてる今、出し惜しみの必要はありません。

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

ボガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!

2人から放たれた凄まじいほどの数の弾が火球を迎え撃ちます。

(私だって…!!)

樹「これで…えぇぇぇい!!!」

1本だけでは先にこちらの方がちぎれる。

そうさっきの攻防で学んだ私は、何十にも糸を束ねて鞭のようにし火球を切り裂きます。

(あと1分46秒くらい…なんとしても裁ききるんだ…!!!)

 

ーーー王子sideーーー

事態が動いたのは残り1分30秒のときだった。

(水球…!?)

合体トリオン兵の下半身についていた巨大な2つの水球、それまでもが追尾火球のように放たれ始めたのだ。

ちひろ「っ!!一度閉じ込められると脱出できません!!気をつけてください!!」

サトっちからそう注意がとんでくる。

(捕獲して身動きを封じたとこを水圧レーザーや火球で確実に葬るつもりかな。ただ火球ほどの速度はない。点の攻撃で穴を作り破壊する!)

王子「アステロイド!!」

度重なる侵攻で現れる新型の防御力を抜くために積んでおいたアステロイドを分割せずに発射、水球に穴を空け、そこから水を抜こうと試みる。

…が。

ポチャン

王子「!?」

アステロイドが水球に当たっても穴が空く事はなく、弾は水球の中で解けるように霧散する。

水球の仕組みを完全に読み違えた。

あの水球は泡のような器に水を満たした…いわばペットボトルのようなものだと思っていた、だから穴を空けることができればそこから何とか出来ると踏んでいたけれど。

これは湖や海が球の形となったものだ、破壊するならメテオラのような爆破手段が必要だった。

そうして破壊に失敗した水球がこちらへ迫る、再生する断面へ更なる旋空を打ち込みながら後ろへと回避行動を…

ボガァァァァァァァァン!!!

取ろうとしたまさにその時、爆風が身体を押し返す。

(メテオラではない、あの火球、爆発もできたのか…!?それも任意で…!!)

真に厄介なのは、トリオン兵離れした知能だった。

読み違えた報いを受けさせるように、水球がぼくを取り込んもうとする。

しかし、その未来は訪れなく。

樫尾「隊長!!!!」

ダンッ

カシオが代わってその受け皿となる。

王子「カシオ!!」

樫尾「ーー!!」

必死に脱出しようとカシオがもがく。

だけど、その表情は焦りというよりも…

出水「メテオラ!!」

ボガァァァァン…

そう逡巡した一瞬、イズミンのメテオラがカシオごと水球を吹き飛ばし、カシオはベイルアウトで本部へと戻っていく。

出水「…メテオラの爆発で内部からぶち壊せば一応可能、か。かなり厄介だなコレ。アタッカー組の負担はこれ以上増やせねえからメテオラ持つやつ以外かわすしか…ねえ!!」

自身へと向かってきた火球を撃ち落としながらイズミンがそう零す。

王子「そうだね、何より…トリオン体を溺れさせるなんて芸当ができるんだ。どんな影響が出るか分かったもんじゃない。」

到達までの残り時間、約1分24秒。

状況はドンドンと変化していく。

 

ーーー太刀川sideーーー

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッ!!!!

太刀川「かわしてもかわしてもキリがねぇ、なっと!!!!」

こちらを狙う追尾火球をかわし、時には棘と一緒に切り裂く。

だが、明らかに火球の数が増えている。

その理由は言うまでもない、樫尾が落ちた事でその分が分散してこちらを狙っているのだ。

あとはさっきから合体トリオンが排出し始めた水球、あれがヤバい。

どうやらあの水球、メテオラくらいしか破壊できるものがないらしく、一度囚われれば脱出も不可能、そもそもデカいのも相まってほとんどのメンバーは迎撃という手のある火球と違って回避にも意識を割かなければならない。

火球と水球で挟み撃ちされた結果茶野隊の2人が落とされていたり徐々にシューター・スナイパー組共に押されてきているのだ。

日佐人「…っ!?」

ボガァァァァァァァァァン!!!!!

そんな矢先、傘増しされた火球の集中砲火によって日佐人まで落とされる。

(残り1分と10秒くらいか…?ダメだ…このままじゃ先にこっちが落とされるぞ…!!)

荒船『…しまっ…!?』

荒船が死角からの水球に呑まれる。

木虎「くっ…!!」

木虎が火球の弾幕に動きを止めたところを水圧レーザーで撃ち抜かれる。

間宮「すみません…!!」

間宮隊の2人が火球に押し切られる。

たった数秒でこのザマだ。

ボガァァァァァァァァァン!!!!!

太刀川「ぐっ!?」

かくいう俺も、周りに意識を向けた一瞬をつかれ、火球の爆風で体勢を崩す。

(まずい…!!)

樫尾と日佐人が落ちた今、棘への攻撃に参加してるのは俺と王子の2人。

そしてそれでギリギリ再生速度にこちらの攻撃が間に合ってる状態だ。

ここで二刀流の俺が落とされれば最後、棘へ攻撃を加えれるのは王子の孤月一本のみとなる。

仮に王子が火球の攻撃を最後まで凌ぎきっても、再生しきられ、再び全てを跳ね返す回転が始まるだろう。

そうなれば作戦は失敗だ。

火球が迫る。

(回避は無理だ!旋空は…無理だ、体勢が悪ぃ!クソッ!!ここまでか…!!)

その瞬間だった。

ズババババババババババババァァァァァァァァァン!!!!!!!

地面から生えた斬撃が火球を尽く切り裂いた。

太刀川「…!!こいつは…風刃…!?」

迅『その通りだぜ太刀川さん。』

そう通信が入る、その主はもちろん斬撃を放った迅だった。

迅『作戦は聞いた、今そっちに向かってる。

…まだやれるだろ?太刀川さん。』

そう迅が俺に問いかける。

その声が聞こえた時からもう返答は決まっていた。

太刀川「ったりめーだろ!!」

迅からもらった時間で体勢を立て直し、再度孤月を構える。

アイビスにより放たれたレッドバレットの到達まで、残り1分。

更に再生速度の上がった断面を旋空弧月の黄刃と風刃の緑刃、二色の閃光が嵐となって合体バーテックスを襲う。

斬って斬って斬りまくる。

ただひたすらに、トリオンのあるだけを。

1本あたり、1秒につき2回の旋空じゃ足りない。

いつどこから再生するか予測のつかない断面に同じ長さの旋空じゃ最大火力を発揮できない。

もっと早く、もっと鋭く、もっとギリギリ、どこに当たろうと孤月の切っ先が当たるように。

忍田さんは一刀で1秒4撃の旋空を放てるんだ。ならば俺にだってできるはずだ。

(迅がいるんだ。不甲斐ねぇとこなんて見せられねえよなぁ!!!!)

剣戟は加速する。

 



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26話 剣舞ウ

3話目です。


ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…凄い…」

息を呑むような光景がそこにはあった。

太刀川さんの旋空弧月と迅さんの風刃による、凄まじいほどの連携、戦場じゃなければ見惚れてしまいそうな刃の乱舞。

しかも、それはただ斬りまくればいいというだけの話でもない。

風刃には銃における残弾とも呼ぶべき帯が存在し、それがなくなれば帯を再び装填するために少しの時間を要す弱点がある。

再生の勢いが増している今、風刃と太刀川さんの孤月が同時に途切れる事は再生完了による作戦失敗を意味するだろう。

だけど、そうはなってないし、ならない。

風刃の刃が途切れた刹那に入れ替わるように太刀川さんが、旋空の効果が切れ、再起動にかかる一瞬は迅さんが。

互いの隙を完璧なまでにカバーし合っている。

顔どころか姿さえ見えてないはずなのに。

(…って、見惚れてる場合じゃない!!私も私のやれる事を!!)

レッドバレット到達まで残り10秒。

このまま作戦が成功すれば次はスタクラの撃破、私の出番になる。

ちひろ「私の生存は当然として…太刀川さん達の邪魔にならないように火球を全部ぶった斬る…!!」

モードブレイドを片方だけ発動し近場の火球を切り裂きながら、1本だけ出したビッグビットを太刀川さんへと飛ばし、護衛代わりにする。

はずだった。

ドガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

今までにないほどの爆風が戦場に吹き荒れ、同時にビッグビットが消し飛ぶ。

ちひろ「何が起きたの…!?バーさん!分かる!?」

バーさん『スタークラスターが発射する前の火球をまとめて爆破しよった!!』

ちひろ「なっ…!?」

未だに手を隠していた事に驚きつつ、顔から血の気が引く。

ビッグビットが消し飛ばされているのだ、それよりも近距離にいた太刀川さんや王子さんが無事で済むとは思えない。

ちひろ「太刀川さ「俺は無事だ!!!グラスホッパーが間に合った!!!!」」

私の声を遮るように、太刀川さんが王子さんを抱え、言葉と共に粉塵から出てくる。

間一髪グラスホッパーで離脱できたようだ。

だが、ただでさえ勢いよく跳んだにも関わらず同方向からここまで届くほどの爆風が吹いてきたのだ、その距離はドンドンと離れていく。

太刀川「だけどそのせいで距離が届かねえ!!!戻るまで誰か合体バーテックスの再生を止めろ!!!!!!」

そう、叫び声が響き渡る。

残り、9秒。

(考えてる時間すらない!!)

ちひろ「バーさん!!!!!」

バーさん『最短で十分な威力じゃな!!』

ビット全てをソードブレッドへ変換し、バーさんの指示の元できる限り威力を高めるべく空中を飛び回り始める。

だけどそれだけじゃ足りない、間に合わない。

だから。

風刃が途切れる、断面から棘が一気に再生されていく。

だけど…その回転は、決して再開される事は無い。

園子「船を解除、そしてウェポンフルオープン!!!!全部まとめて…食らええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

園姉によって、空から凄まじいほどの武器の雨がクラスターへと降り注ぎ、大きく傾いていく。

しかし、再生が止まるわけではない。

残り8秒。

ついに棘が完全に再生し、回転を始めるべく体勢を建て直し始める。

が、直後風刃が直撃、再度棘を…

(…斬れてない…!?)

傷はできていても、切断にまでは至ってないのだら、

よくよく見るとクラスターの付近の地面が薄らと水に覆われているのが確認できた。

(…確かに園姉に押されてた時、備えてた水球が地面に接触してたと思うけど…その時に仕込んでたって事!?どこまで賢いの、コイツ…!?)

奥の手のように新たな攻撃を披露してきたのはもう何度目か。

私にすら負けないほど揃えてある攻撃手段と、それを隠し、適時に使用してくる高い知性。

バーテックスのスタークラスターよりも更に強化されたその脅威を目前として目を見開くしかなかった。

残り7秒。

ともかく、相当まずい事に変わりはない。

クラスターはもうほぼ起き上がっている、園姉もトリオン切れ、もう体勢を傾けて時間稼ぎをすることなんてできない。

(あと少しなのに…!!!!)

その時だった。

生駒「…屈んでもらってええやろか?」

すぐ隣に、生駒さんが来ていたのは。

鳥丸「…生駒旋空だ、伏せろ!!!!!」

生駒「旋空弧月。」

そして倒れるように身を伏せると共に…後方、40mも離れてる場所から、旋空弧月がクラスターの棘を切り飛ばした。

生駒旋空、居合の達人である生駒さんのみが扱える、極限まで起動時間を減らして射程を伸ばした旋空弧月。

ホントにギリギリ、クラスターを射程内に収めたその旋空が棘を再度切断したのだ。

そしてそれによって

バーさん『行けるぞい!!』

ちひろ「ぶちかませ!ソードブレッド!!」

ザザザザザザザザンッ!!!!

ソードブレッドが、間に合った。

レッドバレット到達まで、残り6秒。

 

ーーー迅sideーーー

(あの黄色の飛ぶ刃は…ちひろちゃんのか!!)

眼前に迫ったクラスターから飛び出たブレッドを見て、状況を確認する。

合体トリオン兵の出現から受けていたトリオン兵の集中攻撃を他の隊に引き受けてもらい、全力疾走して約1分半。

やっと合体トリオン兵のすぐ近くまで迫ることができた。

迅「ふん!!」

ザザザザザザザザンッ!!!!

左右の住宅の壁に三本ずつ、地面に二本、それぞれ風刃の刃を仕込み、間髪入れず発動する。

これでまた次の発動までに時間がかかる。

だが、それでいい、レッドバレットが直前まで来ている以上、下手な斬撃はレッドバレットの誤爆に繋がりかねない。

ならばどうするか…答えは1つ。

(直接、斬る!!)

旋空なしの孤月では火球すら切り裂ききれないが、ブラックトリガーとして孤月を大きく上回る性能を持つ風刃の刀身ならばそれも可能。

ただ1つ問題点をあげるとすれば距離が足りない事か。

だが、しかし。

迅「京介!!エスクード、頼む!!」

鳥丸「…!!了解!!」

残り5秒。

俺の声を聞いた京介によって俺の足元から合体トリオン兵へと斜めに生えたエスクードが出現。

ザンッッッッッ!!!!

その生えてきた勢いで一気にその距離を縮める。

その勢いのままに再生しかけの棘に一閃。

バキッ

ザンッッッッッ!!!!

そして近くの建物の壁を踏み台にし、更にもう一閃。

だがしかし。

(…まあそうなるよな。)

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

火球の八割程度が俺へと発射される。

(避けてもいい…が、それだと爆発させてくる可能性がある。そうなりゃレッドバレットが巻き込まれるな。となると…全部倒すか。)

そう整理して俺は…

姿勢を低くして合体トリオン兵へと三度突撃した。

ドガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァン!!!!!!!

その瞬間、俺の頭上を通り大量の狙撃が火球へと炸裂し、ひとつ残らず破壊する。

残り4秒。

(なるほど、そこか。)

断面に更に攻撃を加えつつ、レッドバレットの位置を把握する。

場所さえ分かれば風刃の仕込み刃で誤爆させる事もない。

ザザザザザザザザンッッッ!!!!

遠慮なく帯の復活した風刃で八箇所同時攻撃を決める。

残り3秒。

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

迅「チッ…!!」

火球の残りの2割も俺へと狙いを定め、大量の火球、その全てが俺へと狙いを定め、集中攻撃。

流石にこれは回避しきれずに、左腕と右足が吹っ飛ばされる。

が…

冬島『お届け物だぜ。』

太刀川「おらッ!!!!!」

ズババババババンッッッッッッ!!!!!

ここで冬島さんのワープによって太刀川さんが帰還、あと少しのとこまで再生してた棘を再び滅多切り。

残り2秒。

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

(ついにか!!)

ここに来てついに目の前の異物…レッドバレットの危険性に気づいたのか、すでに飛ばした火球、これから装填する火球、あらゆる火球をレッドバレットへと差し向ける。

だが、当然。

樹「それには手は出させません!!」

出水「ギムレット!!」

嵐山「合わせるぞ充!」

時枝「了解です。」

蔵内・水上「「アステロイド!!」」

当真『全員外すんじゃねーぞ!!』

鳥丸「ブレードシフト!」

王子「旋空弧月!」

ちひろ「戻ってこい!!ソードブレッド!!」

ボガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァン!!!!!!

総攻撃によって1つとしてレッドバレットには届かない。

 

残り、1秒。

レッドバレットが目と鼻の先に迫る。

最早未来を見るまでもない、再生による回転さえ防げばもう勝ちだ。

だから。

迅「風刃。」

太刀川「旋空弧月。」

最後のダメ押し。

形成されかけていた火球ごと、合体トリオン兵を斬撃の雨が切り刻む。

そして。

…プチ

ボコボコボコボコボコボコ!!!!!!!

レッドバレットがついに命中し、その箇所から凄まじい数の鉄塊が合体トリオン兵の棘を覆い尽くす。

結果、棘を刺しての回転はもちろんの事、水球さえも装填した傍から鉄塊で割られ、封じられる事となった。

 

ーーー竜治sideーーー

竜治「よし!!!!」

作戦が成功するのを確認し、そう叫ぶ。

当然だ、このために2分も死闘を繰り広げたんだから。

諏訪「やったじゃねーか竜治…だったよな?ほれ、ハイタッチすんぞ。」

竜治「…はい!」

パンッ!!

俺と諏訪さんの手が重なり、気持ちのいい音が鳴る。

堤「ハイタッチもいいけど、竜治君って合体トリオン兵の撃破係でもあったしょ?早く行った方がいいんじゃない?」

竜治「あっ確かに。」

忙しすぎてド忘れしていた。

まあ追尾火球の迎撃でかなり傷はできたがどれもかすり傷、トリオンが足りない心配はいらないだろう。

竜治「ちひろ、今どこだ?合流するから場所を…」

その時だった。

カラカラーン…

音が、鳴った。

神社の鈴を鳴らした時に出るような、乾いた感じの音。

反射的に音の聞こえた方向に顔を向けると、そこにはクラスターがいて…

ブシュウウウウウウ!!!!

竜治「…あ…?」

同時に、身体中のありとあらゆる傷からトリオンが吹き出した。

 

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「何が…起きたの…!?」

空いた口が塞がらない。

起こったこと自体は単純だった。

クラスターが音を発した、周りのみんなからトリオンが吹き出てベイルアウトした、それだけだ。

だからこそ、わけがわからない。

コマ『タウラスの音波だ。』

そう、精霊バリアを展開していたコマさんが答える。

樹「…確かにクラスターには取り込まれてましたけど…でもアレは動きを止めるだけの…」

コマ『ああ、アイツの音波はトリオン兵となった今でもトリオンのバランスを僅かに乱すに留まっていた…だが、合体でその力が強化されてしまった。』

ちひろ「…つまり?」

コマ『トリオンのバランスを乱せる幅が増加し、そこにあの高い知性が組み合わさり、トリオン同士の繋がりが弱いとこ…トリオンの漏出を抑えるべく塞がった傷跡を集中的に破壊し、更にその傷口からトリオンを過剰噴出させれるようになった、ということだろう。』

ちひろ「…あっ。」

確かに、今の音でこの場に集ったほとんどのボーダーはベイルアウトした。でもその中にはしてない人だっている。

レイジさん、出水さん、影浦さん、隠岐さんを除いた生駒隊のみなさん、当真さん、ユズル君。

その誰しもがまだ無傷の面々だった。

私と樹ちゃんは傷を負いながらも無事だが、それはおそらく精霊バリアのおかげだろう。

(通信が切れたって事は竜治君はやられた…私がやるしかない!!)

鉄塊を引きずりながらなお本部へと向かい続けるクラスターを撃破するため、覚悟を固める。

ちひろ「満開でクラスターの御魂を破壊します!!援…」

しかし。

ブオンブオンブオン

空に突如としてゲートが空き、そこから大量のトリオン兵が現れる。

出水「おいおいここに来て大量投入かよ!」

水上「是が非でも俺らに邪魔させたくないんやろな。」

レイジ「くっ…まずい!!」

トリオン兵に私たちが群がられている間に、クラスターはドンドン先へと進んでいく。

…そして、ついに。

本部の正面に到達した…して、しまった。

 

ーーー本部司令室、亜耶sideーーー

ボガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァン!!!!!!

グラグラグラ

亜耶「きゃっ!!」

ちーちゃん達の奮戦をも掻い潜り、ここまで来てしまったレオ・スタークラスター。

完全にこちらを標的に定め、火球による攻撃を開始します。

忍田「城戸司令、本部の職員の避難をお願いします。」

城戸「聞くまでもないが本部長は?」

忍田「合体トリオン兵を抑えます。まだ無事な部隊が集合するくらいの時間は稼げるでしょう。」

城戸「了承した。避難指示は私に任せろ。」

忍田「すいません鬼怒田さん、少し本部傷つけます。」

鬼怒田「構わん!全部壊されるよりはマシだ!」

そう、やり取りが交わされて。

忍田「トリガーオン!」

忍田さんがトリガーを起動した、その時でした。

ブオン

忍田「…ッ!?」

人1人が通れる程度の穴が空いて、その上にいた忍田さんが消えてしまったのです。

 

ーーー三門市南部、忍田sideーーー

忍田「くっ…!!」ドサッ

受身をとって落下の衝撃を和らげる。

してやられた、というべきだろう。

前回二宮隊、来馬隊と共に合体トリオン兵"ニンジャ"を撃破した時に目をつけられ、いざと言う時に隔離できるようにしていたのだろう。

(邪魔がなければ1分程度で戻れるが…)

当然、私を囲うように大量のトリオン兵が配置されている。

オマケにその多くがモールモッドやラービット、流石に時間がかかるだろう。

更に…

ブオン

遊真「うぶっ。」

新たなゲートから遊真くんが落下してくる。

遊真「いてて…あれ?シノダさん?」

忍田「時間がないから手短に状況を説明する。合体トリオン兵が本部に到達し、その邪魔になりそうな者はアフトクラトルのブラックトリガーによってここに飛ばされた。周囲にはモールモッド100体、バンダー100体、ラービット20体だ。」

遊真「なるほど、俺が"レプリカ"起動したから飛ばされたのね。じゃあ急ぐか。」

 

ーーー亜耶sideーーー

亜耶「避難通路はこちらでーす!!」

佳美「慌てず、だけど急いでお願いします!!」

そう大声で研究チームの方々やベイルアウトで戻ってきた隊員の皆さんを避難させる。

オペレーターは基本的に一応トリガーを使った状態で隊員の支援をするため、トリオン体が破壊されなければ安全です。

なので、とりあえずは後回し。いざと言う時すぐに避難できるように、非常口から100メートル以内で他の人の避難誘導をしています。

(多分この人で45人くらいでしょうか…?この付近の人は50人って言ってましたし、あと少し…!!)

避難が順調に進んでる事に安堵しつつ、残りの人も無事に終わらせようと意気込みます。

ですが…

カラカラーン…

ビギビキビキビキビキッ!!

亜耶「…え?」

ガラガラガラ…

それが果たされる前に、クラスターの音波によって本部の壁が崩壊しました。

 

ーーー冬島sideーーー

冬島「トリオンならどれでもぶっ壊せるのかよそれ、厄介だな…」

そう愚痴を零しながら作業を進める。

(ベイルアウトの帰還場所の変更はもう終えた。後は…)

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

冬島「ぐっ!」

遠征艇への障害物を排除しようと無差別に振りまかれる火球に身体の大部分を持ってかれる。

冬島「…ッづ…本部から1キロ以内にワープポイントを設置!具体的な場所までは指定できなかった!!色を他と変えてある!!誰か…頼んだ!!」

場所は分からない、だが1人だけはここに来れる。

そういうワープポイントを最後に設置し、ベイルアウトする。

 

ーーー亜耶sideーーー

グラグラグラ

亜耶「こっちでーす!!急いでくださーい!!」

そう叫びながら最後の人たちを誘導する。

(あともうちょっと…!!)

そうして、非常口が見えてくる…そんな時でした。

目に、入ったのです。

レオ・スタークラスターと…

それに相対する、千佳ちゃんが。

亜耶「…まさか、冬島さんのワープポイントを千佳ちゃんが…!?」

始まる、始まってしまう。

クラスターと千佳ちゃんの戦いが。

…戦いは更なる局面に突入しようとしていました。



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外伝
1. 神世紀280年 星魔殲滅作戦


これでpixiv在庫もラストとなります。
登場人物をここにのせます。
・上里月夜
神樹館中等部に通う15歳。
過去に例のないほどの巫女適正を持っており、好きな時に神樹と話せるというおっそろしい人。
後のちひろの母。

・天王寺和人
讃州中学に通う15歳。
全スポーツの全国大会で優勝するというとんでもない運動神経の持ち主。
後のちひろの父。

・雨宮焔
月夜の幼馴染かつ親友。
社交的で活発、みんなの人気者。
家は土居家の分家で、後の風、樹の母。

・犬吠埼海
月夜の幼馴染かつ親友。
物静かで三人の中の抑え役。
家は伊予島家の分家で、後の風、樹の父。

・ユウナ
いつ来るかもわからない月夜にしびれを切らした神樹の神々が、月夜の話し相手兼神託伝達係として用意した神(高嶋友奈)である。
月夜とは非常に仲がいい。

・天王寺十香
280年前、初代勇者。郡千景といとこ関係。


ーーー月夜sideーーー

月夜「焔〜!ハロハロー!!」

焔「お、月夜ー!ハロハロー!!」

(私は上里月夜!家が少々お金持ちの普通の人だ!!)

海「…お前らさぁ…」

月夜「ん?何よ海。何か言いたいことでも?」

焔「話に入ってけてないからって話切るのはどうかと思うゾ?」

海「…今授業中だ。」

月夜、焔「「あっ。」」

先生「…月夜さん、焔さん?」

月夜、焔「「ナナナナンノコトカナー?チョチョットナニイッテルカワカンナイ。」」

先生「…次はないですよ。ではここは…」

(…あっっっぶな…冷や汗かいたわ…てか暇。うん暇。)

月夜「…よし、行くか〜!」ボソッ

そして私の意識は移動する。

 

ーーー神の間ーーー

ユウナ「…お?月夜ちゃんおっはよー!」

月夜「ユウナさんおはよーです!」

ユウナ「今日も元気だね!」

月夜「そりゃ元気ですよ〜!」

ユウナ「今日はなんの話する?」

月夜「じゃあ昨日うちで起こった騒ぎのこと話しますか!」

ユウナ「おお!なんか面白そう!」

月夜「えーっとですね…」

(この人はユウナさん、神さまである。私はなんかいつでも神樹様と話せるんだよね〜一般人だけど。)

 

ーーー学校・昼休みーーー

焔、海「「いやそれを普通とは言わない。」」

月夜「な、なんですと…!?そんなバナナ!!」

焔「いや大赦の最高位家の娘のどこが普通!?!?」

海「おまけに神樹様と好きな時に対話可能とかいうチート仕様だしな。」

月夜「純度100%で普通じゃない!?」

焔、海「「普通じゃない(ねえ)!」」

月夜「そうだったの…」

焔「…ってこのやりとり何回めよ笑笑」

月夜「さあ?15回目じゃない?笑笑」

まあこんな感じで平和に過ごしてます。

…ただ、平穏は簡単に崩れるものだ。

 

 

 

 

 

ーーー10月14日ーーー

月夜「朝だー!!」ガバッ

(今日のご飯はなんじゃら…ってあれ?)

月夜「ここ…神の間…?」

目の前にあったのは見慣れた寝室ではなく、ユウナさんとの話し場所である神の間だった。

月夜「えーっと?ついに私は寝相で来るようなっちゃったのか?大問題じゃない?これ。」

ユウナ「違うよー!」

月夜「あ、ユウナさん!!」

声のした方を見るとユウナさんがいた。

月夜「違うってどういうことですか?まさか…」

ユウナ「…そのまさかだよ。月夜ちゃんに神託を伝えにきた。」

(…マジか…)

ユウナ「まず一つ目。

…来年の3月からバーテックスが侵攻してくる。」

(…は!?)

月夜「待ってくださいよ!今勇者適正あるのって…」

ユウナ「…うん、焔ちゃんだけだよ。」

月夜「無理ですよ!焔の適正だってギリギリじゃないですか!!その上一人なんて…」

ユウナ「それはこっちもわかってるよ。

…だから、もう一つある。これは月夜ちゃん自身にもすごい大事なこと。」

月夜「!?」

(私自身が…?過去にそんな事例なかったはずだけど…)

ユウナ「いい?月夜ちゃんの巫女としての実力は過去にいたどの巫女よりも強い…別次元とも言っていいくらいに。」

月夜「は、はい…」

ユウナ「…あなたが協力してくれるなら、バーテックスの侵攻時期を大きく遅らせることができるの。」

(…あー…そういうことか…)

月夜「奉火祭…ですか。覚悟は今できました。」

ユウナ「んん!?違うよ!?」

月夜「違うんかい!?」

ユウナ「私たちの案は…神樹の力を集めた巨大なエネルギー砲、通称『神樹砲』で、バーテックスやその元の星屑を大規模殲滅、それによってバーテックス再形成の時間を作るって作戦なの。」

月夜「…な、なんかすっごい壮大…」

(…ん?)

月夜「…それ、私いります?」

ユウナ「うん!えーっとね…神樹様が何百もの神様の集合体っていうのはわかるよね?」

月夜「ま、まあ…」

(だてに何年も話してないからね〜)

ユウナ「だからいつもはバラバラでとても殲滅出来るような力は出せないんだよ…そこで月夜ちゃん!月夜ちゃんの高い巫女適正で神樹の神々の力を一時的にまとめてもらいたいってこと!!」

(…え?そんな私すごかったん?)

さすがに盲点だった。自身がそこまですごいとか思ってなかったのである。

ユウナ「…でも、それは結界の外じゃないとできないから危険も伴う。私たちもバーテックスとかにダメージ与えれるように神力込めた武器は支給するけど…」

(…なるほどね…でもここで私がやらなきゃ、焔はひとりぼっちで戦わないといけなくなるんだ…)

月夜「…やりますよ、私。私しかできないんですもん。やるしかないですよ!」

ユウナ「ほんとにいいの…?」

月夜「もちのろんですって!任せてください!」

ユウナ「…うん。ありがとう!」

 

ーーー寝室ーーー

メイド「月夜様!起きてください!」

月夜「はい起きた!!」

メイド「起き…キャッ!?」

月夜「あ、ごめんなさい…それより大至急大赦に連絡をお願いします!!早く!」

メイド「え!?あ、はい!一体どうしたのですか…?」

月夜「…神託が降りた。緊急会議開かないと!」

 

 

 

 

 

ーーー10月21日、大赦大会議室ーーー

大神官「では、これより緊急会議を始める。まずは今回の神託の内容を、上里月夜様、お願いします。」

月夜「もちでーす!今回の神託の内容は主にふたつ。1つは、3月からバーテックスの侵攻が始まることです。」

神官A「なんだって!?」

神官B「今、まともに勇者できるほどの適正を持った人なんてほとんどいないのに…」

焔「…マジかぁ。さすがに1人ではこの焔様でもキツいってぇ…」

海「自分で様付けするなよ…だがどっちにしろまずいよな。」

大神官「静粛に!月夜様、続きを。」

月夜「はいはーい!んで、勇者適正値の高い者がほとんどいないこの状況を受けて、神樹様は別な手段を編み出した。これこそが今回の作戦、神樹砲によるバーテックス殲滅作戦になります。」

神官A「神樹砲!?聞いたことがないぞ!」

神官B「一体神樹様は何を考えて…」

焔「ちょいみなさん落ち着きましょーよ!月夜の話の途中ですって!」

月夜「サンキュ焔!神樹砲っていうのは、神樹様を形成してる何百もの神様の力を私の高い巫女適正で一時的にまとめ、それを放つことで一気に星屑ごとバーテックスを殲滅する、というものです。」

神官C「おお!」

神官D「なんとすばらしい!さすが神樹様…」

海「…あんたらは黙って最後まで聞くこともできんのかよ…」

月夜「海、気にしなくていいよー!で、これには弱点がありました。それは壁の外でしかすることができないこと。つまり私は装填中の無防備な間が大量にできてしまう。だから主にこの間の護衛についてです、今回は。」

大神官「補足をつけさせてもらいますと、今回の事態にあたり、神樹様が自らの力を宿された神器をいくつか提供してもらえることになっております。」

月夜「大神官さんナイスフォロー!」

ザワザワ、ザワザワ

(まあ前代未聞だしそりゃザワるだろうねぇ。大赦なんてマニュアル人間だらけだし。)

焔「まず大前提として私は行くっきゃないしょ!」

月夜「焔!いいの?」

焔「あったぼうよ!元からある程度は覚悟持ってたしね!神器とはいえ適正ある方が強くはなるしょ?」

大神官「はい。その通りでございます。」

焔「なら他の適正が高い方の子達も含めてやりましょうよ!運がいいのか悪いのか大赦関係の子ばっかだし。月夜にだけ背負わせるわけにはいかないってもんですよ!」

月夜「焔…感謝感激雨あられだよー!!」

焔「礼を言われるこたぁないさぁ!私とあんたは親友だし?」

月夜「そうだったね!」

海「…おーい、俺の立場がなくなるんだがー?」

焔「海のことだって忘れちゃいないって!」

月夜「海も親友に決まってる!」

海「わかりきってたことでもほっとしたわ…」

大神官「…話は終わりましたか?」

月夜、焔、海「「「あ、ハイ。」」」

大神官「では勇者候補の方々にはしばらく弓や銃の訓練に励んでもらいます。」

焔「了解でーす!」

(ん?でもそしたら…)

月夜「さすがに全員後衛って無理があるんじゃ…?」

大神官「はい。よく考えてみてください。3月に襲撃してくる以上、多少の誤差も含めて決行日は2月中盤になります。それまでに全く訓練をしてなかった者達を鍛え、前衛としての戦力にするのは無理がある。だからこそです。これとは別に前衛としてすでにやっていけそうな者を見つける必要があります。」

(なーるほどね…いやでも一般人にそんな人いるとは思えないんだけど…)

海「…俺、1人心当たりありますよ。大神官さん。」

焔「え?海ま?」

海「おう。って言っても知り合いとかそーゆーわけじゃねえけどな。ほらいるだろ、ほとんどのスポーツで他を寄せつけずの一人勝ち優勝し続けてる最強人類、天王寺和人。」

 

 

 

 

ーーー11月3日、讃州中学ーーー

ーーー海sideーーー

(俺と焔、そして月夜は今讃州中学を訪れてる。無論理由は和人のスカウト。大神官さん曰くあれほどの強さなら未完成星座級にも対応できるのではないか、とのことだし絶対協力してもらわねえと。)

月夜「てか今更私たち来たとこで意見変わるもんじゃなくない?」

焔「いや〜、意外と私たちバケモノかなんかと思われてるかもしれないし、戦うのが自身となんも変わりのない人達だって知ったら協力してくれるかも!」

海「そうだな…てかそれにかけるしかねえんだが。」

天王寺和斗のスカウト。実はすでに3度ほど大赦の神官さんが行ってたものの、事情も全て聞いた上で却下されていた。とりつくさまもなかったとか。

(…さて、ここが待ち合わせの部屋だな。)

海「入りますよー?」コンコンッ

和斗「どうぞ。」

月夜、焔「「失礼しまーす!」」

海「失礼します。初めまして、ですね。天王寺和斗さん。」

和斗「別に同学年なんだろ?なら敬語じゃなくてもいいぞ。」

焔「海は堅苦しすぎんのよー!」

月夜「そうそう!もうちょいリラックスして…」

海「だからといって最初からタメ口もどうかと思うがな…」

月夜、焔「「ゑゑゑ!?」」

海「そりゃそうだろ…二人とも自己紹介。」

月夜「改めてこんにちわ!大赦の巫女の上里月夜だぜぃ!!」

焔「後方部隊隊長の雨宮焔だぜぃ!!」

(真面目にやれよ…まあこいつらだから仕方ないけどさぁ。)

海「俺は犬吠埼海。よろしくな。」

和斗「ん、知ってるだろうけど俺は天王寺和斗。よろしくな。…で、要件は?」

(…やっぱ要件は聞くだけ聞いてくれんのな…)

海「ああ、説明するぜ。」

 

ーーー説明後ーーー

海「…ってことだ…世界の、いや焔のためにも力を貸してほしい。」

焔「海カッコイイこと言ってくれるじゃん〜。…私からもお願い。」

月夜「お願いします。守りたいんです。何もかも。」

和斗「ふーん…

無理だ。」

(なっ…)

海「どうして…だよ…?」

和斗「逆にだがなんで今日初対面のやつのために命の危険まで顧みずに力を貸さなきゃいけえ?そんな作戦、バーテックス?だかが知れば全勢力を持って止めに来るだろ。そしたら1番あぶねえのは俺じゃねえかよ。」

焔「っ…でも侵攻が始まったら私一人じゃキツくて…」

和斗「たとえそれで終わっても協力するよりは長い間日常を過ごせるだろ。協力するとなりゃ訓練は必須。まともに日常なんて過ごせやしねえ。成功するかもわかんねえ作戦に日常ほとんど奪われるなら限りある日常を謳歌することを選ぶぜ、俺は。」

月夜「…」

海「あんたの判断でこの世界の全ての人々が救われるかどうかが決まるんd「いいよ海!!」焔…」

焔「帰ろ。あっちが正論。前衛も他に探せばいる。神器だってまだあるんだから複数人にすればなんとかなるよ。最悪失敗しても私一人でどうにかすればいい話。」

海「だがな…」

焔「つべこべ言わない!貴重な時間奪ってごめんね、もう来ないように大赦の方々にも言っとくから。」

 

ーーー帰り道ーーー

ーーー月夜sideーーー

(…)

焔「まーさか断られるとは想定外だったよー…」

海「…あんな人でなしとは思ってなかったぜ…」

焔「いやそりゃ誰でもあんな反応するでしょ。むしろあれが普通。私たちがお人好しすぎただけ!」

海「でもなぁ!世界すら守ること放棄ってふざけてんだろ!?」

焔「いやそもそもあいつがいなかったら作戦絶対成功しないとか、作戦成功しなくて私一人の迎撃なっても負けるとか誰も決めてないでしょ。むしろそれ遠回しに私もディスってるよ?」

海「うっ…そういうつもりじゃなかったんだけどさぁ…」

焔「だろうね!」

(…私は前代未聞なほどに高い適性を持った巫女として小さい頃から多くの人と触れ合ってきた。だからこそなんとなくわかる…)

焔「…月夜珍しく静かだよね。どした?そんなショックだった?」

月夜「ん!?いや全然!大丈夫!」

海「お、ならよかったよかった。」

(…あれは、本心じゃない。)

 

 

 

 

ーーー11月4日、神樹館中等部ーーー

ーーー焔sideーーー

焔「おっはよー!」

海「焔おはよ。…あれ、月夜は?お前と来るって聞いてたけど。」

焔「え?私は海と来るって聞いたわよ?」

先生「みなさんおはようございます。」

焔「あ、先生。月夜からなんか連絡来てます?」

先生「え?私は「今日から何週間か休みまーす!詳しくは海か焔に聞いてください!」と…」

焔「…まさか、ねぇ?」

海「…ああ、さすがにあいつでもそれはないだろ。」

焔「そうよね。そんなことないはず、うん。」

海「ああ、ないない…」

焔「…」

海・焔「「絶対あいつ讃州市行ったよね!?」」

 

ーーー放課後、讃州中学ーーー

ーーー和斗sideーーー

(んーと、今日は…)

和斗「空手だな。さっさと行くとするか。」

トントン

和斗「ん?誰d「どーもどーも!!」うおっ!?」

振り向いたそこには昨日の巫女がいた。

和斗「なんでお前がいんだよ!?来ないんじゃなかったのか!?」

月夜「焔が言ってたのは神官でしょ?私巫女だし対象外だねっ!!」

和斗「いやそうだがなぁ!?てか来たところで俺は協力しねえぞ?」

月夜「なん…だって…」

和斗「逆にしてもらえると思ってたのかよ!?」

月夜「YES!I AM!!まあそれよりどこ行くのー?」

和斗「はあ!?お前に言う必要なくね!?」

月夜「だって人類最強って言われてんでしょ?なにやってんのか見てみたくない?」

和斗「…まあいいけどよぉ…」

月夜「マジで!?やったー!!そうと決まれば全速前進!!」

和斗「お、おう…」

(いや調子狂うな…何が目的なんだ…)

 

ーーー11月10日、ホームルームーーー

(はあー…これで五日連続…別に協力を求めてくるわけでもない…わけがわからねえぞ…)

あれから月夜は毎日のように現れていた。

先生「そうそう、今日は転校生がいます。」

(ん?転校生??んな唐突に?)

先生「どうぞー。」

月夜「はいどーも!上里月夜です!みんな、よろしく!!」

和斗「…はあああああああああ!?!?」

先生「あ、隣は和斗君、お願いします。」

和斗「はああああああ!?!?!?!?」

月夜「よろしくね、和斗♪」

 

ーーー休み時間ーーー

和斗「…で、何が目的だお前。」

月夜「え?私の勝手じゃない?」

和斗「そうだけどなぁ!?普通転校してこねえよ!?友達はどうすんだよ!?」

月夜「大丈夫大丈夫。1月にはこっちも準備しないといけないから戻らないといけないし。」

和斗「えぇ…」

(マジでわけがわからねえ…なんなんだこいつは…)

月夜「ってことで転校祝いで美味しいうどん屋連れてってね!無論そっちの奢りで!」

和斗「いやなんでそうなる!?そっちが勝手に来ただけだろ!?」

月夜「色々あげたんだけどなー。」

和斗「それはお前が無理やり押し付けてきただけで…」

月夜「でも受け取ったのは事実じゃん?」

和斗「うっ…」

月夜「ってことで、よろしくぅ!!」

 

ーーー12月31日21時、天王寺家ーーー

月夜「いやぁ、ついに夜があけるねぇ〜!」

和斗「そうだな…」

あれから約2ヶ月近く、すっかり俺と月夜はお互いの家に遊びに行く仲になっていた。

(自分でもビックリだぜ…いや、こいつのコミュ力が高すぎるんだろうが…)

月夜「…ねえ和斗。」

和斗「ん?なんだ?」

月夜「…協力拒む理由って?」

和斗「あ?前も言っただろ。そもs…」

月夜「だってあれ、嘘でしょ?この2ヶ月接してきたらわかるよ。あんたは自分よりも他人を優先する人だって。」

和斗「たかが2ヶ月だぞ?」

月夜「こう見えても巫女適性の高さは前代未聞でねー、小さい頃からいろんな人と触れ合ってるからなんとなくわかった。」

(…なんとなくでバレてちゃあざまあねえぜ…)

和斗「…先祖様からの言い伝えだ。」

月夜「…先祖様?」

和斗「ああ。天王寺十香。旧世紀の時代の人…いや、初代勇者だ_______。」

 

 

 

 

 

===旧世紀===

天王寺十香。

彼女は初代勇者であったそうだ。

武器は布都御魂剣と呼ばれる薙刀。

そこそこ大きな家系であったらしいが、両親はバーテックスの襲来で他界していたそうだ。

13歳にして家を引っ張っていくとともに御役目につくことになった十香さん。その唯一の気晴らしが…

十香『今日こそ勝たせてもらうわよ、C.シャドウ!!』

千景『それはこちらのセリフよ…T.シャイン。』

郡千景、十香さんのいとこだった。

千景さんも家庭や学校の環境が悪く、十香さんとのゲームが唯一のストレス発散だったらしい。

彼女もまた勇者に選ばれ、訓練などであまり遊ぶ暇はなくなったそうだが。

十香『ふぃー…勇者って大変ねぇ。千景。』

千景『そうね…でも、悪くはないわ。』

十香『あんたなら言うと思った。』

 

ーーー十香sideーーー

みんなでバーテックスを退けていた私達。

そこに立ち塞がったのは後に蠍座と命名される、大型バーテックスであった。

球子『生まれ変わったら…また…』

杏『今度はきっと…本当の姉妹に…』

そして…その蠍座によって、杏と球子が死亡。

友奈が酒呑童子の力をもって撃退するも、その反動で入院を余儀なくされた。

そして私もその次の、双子座の2体の融合体との戦いで…

十香『あんたらは…球子と杏を殺して…友奈を…若葉を…千景を…!!傷つけた!!絶対に…許してたまるもんかァァァァァァァァァァァァ!!!私に力を貸しなさい!!九千坊!!』

高位精霊の九千坊を身に宿し、戦い後に意識不明になってしまった。

…そして、意識を取り戻した頃には、時すでに遅しだった。

十香『…何、言ってるの若葉…そんなこと…』

若葉『嘘じゃない…千景は、私を庇って…死んだ。すまない…ッ!』

最初はとても理解できなかった。

多分理解したくなかった、と言った方がいいだろう。

私が意識不明になったあと、敵は数でゴリ押しする戦法に切り替えたらしい。

それにより若葉も千景も精霊の使用回数が増加、結果として千景が暴走し、神樹様に力を奪われた、とのことだった。

何よりも…許せなかったのが…

十香『別に若葉は悪くない…誰も悪くなんかない…それよりも、千景が勇者から除名って…!』

ひなた『…すいません。私達も反対したのですが…』

一般人への暴行未遂、精霊の悪用、若葉への攻撃。数々の原因が重なり、すでに千景は勇者から除名、遺体は彼女の実家へと引き渡されていた。

そんな遺体も、父親の失踪のせいで行方がわからなく。

勇者としての役目に人生を散々振り回されて、本人の意思とはいえその役目によって命を散らした彼女は、よりにもよってその役目に人生を否定された…

十香『…おのれ大社ぁぁぁ!』

若葉『動くんじゃない!!そんなボロボロの身体で何をするつもりだ!?』

十香『決まってるでしょ!?大社に殴り込みに行くのよ!!なんで…なんで勇者だった千景が勇者としての…この2年間を否定されなきゃいけないのよ!!』

ひなた『気持ちはわかります!でも冷静になってください!!そんなことをして千景さんんが喜ぶと!?』

十香『…そう、だけどさぁ…』

若葉『…みんな同じ気持ちだ。…ほんとうに、すまなかった…ッ!』

そして、最後の戦い。友奈は神樹様と同化、超大型バーテックスによって外の世界は火の海と化し、人類は奉火祭によって、天の神から壁の中の平穏を得た。

かりそめの平和。一般人は何も知ることはない。卑怯かもしれないけど、千景のような犠牲者が出るよりはマシだと思った。

…そして、私は決断を下すことにしたのだ。

若葉『…お前の勇者としての記録を消してほしいだと…?』

十香『そう。私が勇者じゃなかったことにするの。』

ひなた『なぜそんなことを…』

十香『…若葉もひなたも大社…今は大赦か。の改革よくやってくれてると思う。でも、それでも完全には変わらないと思う。むしろ私たちが死んだあと、さらに規模を拡大する気がする。

だから…天王寺家が大きいのは知ってるよね?そして私は当主。それを利用して四国に散らばる大家をまとめる。いずれかは吸収されるだろうけど…時間かせぎにはなるはず。』

若葉『なるほど…だが、それだけなら何も記録を消す必要は…』

十香『それはもう1つの理由。…ひなた、千景の大葉刈、持ってるよね?』

ひなた『…はい。千景さんの唯一と言える勇者であった証拠ですので。』

十香『大赦に残しておけば処分される危険があると思う…まとめあげたあと、私が死んだ時には権力は配下に分配するつもりなの。ただの一般民が…そんな大切なもの、持ってるとは思わないしょ?勇者の家系なら別として。』

若葉『…たしかにな。…頼んだ。』

十香『言われなくても。ちょくちょく同窓会しようね!』

ひなた『はい!もちろんです!』

そして、私は言った通り四国中の大家をまとめ、大赦に吸収されないよう色々と仕組んだ。

精霊の穢れの影響も多少あるんだろう。だけど、私は許せなかった。千景…彼女にした仕打ちを。だから…

 

ーーー今ーーー

ーーー月夜sideーーー

和斗「『大赦に協力するな。たとえ何があろうと。』俺もしぶしぶってわけじゃねえ。言われても仕方ないくらいのことだと思ってるし、現に俺に協力を求めてきた時もお前ら3人以外はとてもこっちのこと考えてるようなやつらじゃなかった。とまあこんな感じだ。助けてやりたい気持ちもあるが、御先祖様の…何より千景さんのこと考えるとな…」

(…郡千景…!?)

月夜「まさか、ねぇ…??」

和斗「ん?なんか心当たりあるのか?根本から消されてるって聞いてるが…」

月夜「いや、記録はないんだろうけど…ユウナさんの話によく出てくる人に似てるなって…」

和斗「…は?」

 

月夜『あ、そーだ!ユウナさんって友達いないんですか!?私にとっての焔や海みたいな!!』

ユウナ『え!?んーとね…あっちが思ってるかはわかんないけど…』

 

月夜「ってな感じでね…」

和斗「…そうだったのか…じゃあお前の目的って…」

月夜「イエース!気になったことはとことん追求する系女子だから!」

(…あ、そうだ!!)

月夜「…千景さんの大葉刈、あるんだよね?」

和斗「ん?ああ。勇者服と一緒にな。」

月夜「うちに勇者関係の博物館あるんだけど、1度入れたら取り出せないシステムなのよ。そこに入れれば…!」

和斗「んなとこが!?…いやでもそっちの願い断ってんのにそれは…」

月夜「え?そんなこと気にしてるの?別にいいよ?私自身がそう思うし何より…「友達」の願いでしょ?聞かないわけないじゃん!」

和斗「…する。」

月夜「え?」

和斗「協力するよ。殲滅作戦。」

(嘘…)

月夜「なんで…!?十香さんの言い伝え…」

和斗「速攻で受け売りしてあれだけどまあ…御先祖様より友達の願い、だろ?それに千景さんのが展示されれば少しは報われるだろーし。」

月夜「やったぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

ーーー1月4日、訓練場ーーー

ーーー焔sideーーー

焔「1!2!3!4!」

候補生『5!6!7!8!』

焔「ふぅ…さ、一旦休憩としましょ!」

候補生『はーい!』

月夜が転校してから2ヶ月…彼女は未だに帰ってきていなかった。

(何考えてんのかねぇ…まあ絶対考えあってなんだろうけど。)

焔「もうそろそろ姿見せてくれないと、さすがの私でもつらいよ?」

月夜「え?なにそれ嬉しい!」

焔「当たり前でしょ〜親友なんだs…って月夜!?」

月夜「たっだいま!!」

焔「あんたねぇ!!大晦日も正月も帰ってこないてどういう考えよ!?」

月夜「めんごめんご〜。そのかわり、きちっと仕事は果たしたぜ?」

和斗「そういうこった。」

(なっ!?)

焔「和斗!?どうしてここに!?」

和斗「そりゃ作戦加わるからな。俺の神器どれだ?」

(嘘…あんな反対してたのに…)

月夜「まあ詳しい説明は訓練後にでも、ね?とりあえずレッツ特訓!」

焔「…はいはい。」

(ほんと…いつも月夜はすごいことやってのけるわね…)

そして…

 

ーーー2月24日ーーー

大神官「これより、星魔殲滅作戦を、開始します。」

決戦が、始まる。

 

 

 

 

 

ーーー月夜sideーーー

大神官「では、月夜様。」

月夜「様付けいらない!って言っても無駄かぁ。ま、行くか!」

神樹様の結界を、超える。

その瞬間に景色は塗り変わる。

何気ないキレイな景色から、地獄絵図を具現化したかのような炎の海へ。

(これが…世界の真の姿…聞いてはいたけど相当ひどいねこりゃ…)

焔「あれが星屑?めっちゃいるじゃん!?」

和斗「で、あのでかそうなのが星座級ね。だいぶでけえな。」

海『油断するなよ。気づき次第襲いかかってくるからな。』

焔は銃撃隊の隊長、和斗は刀と篭手、盾で前衛、海は指揮系統担当。

私が神樹様の力を束ねる間、バーテックスたちを引き受けてくれる。

(…さて。)

月夜「私はそろそろチャージ始める。みんな、しっかり守ってよ!!」

焔「任せろっての!!」

和斗「もちろんだ!!」

 

ーーー神の間ーーー

月夜「…なにこれぇ?」

神樹様の力を束ねるための神の間。

そこには何百もの糸が複雑に絡み合っていたのだ。

ユウナ「それが神様の力だよ!!」

月夜「あ、ユウナさん!」

ユウナ「って言ってもすぐいなくなるけどね…

月夜ちゃんにやってほしいことはその絡まった糸をほどいて、まとめてひとつの太い手綱にしてほしいの!そしてそれを引くことで神樹砲は発動できる!!」

月夜「あ、そんな感じなんですね…」

(ひたすらなにか念じるのかと思ってた…よっしゃ!)

月夜「…了解です!やってやろうじゃないのぉ!!」

 

ーーー和斗sideーーー

(言われてないけどなんとなくわかるな…月夜の周りに神聖な感じが出てる。)

焔「お、月夜入ったね。」

和斗「やっぱか。俺のとこ来てる時はそんな潜ってなかったみたいだからあんまわかんなかったぜ。」

銃撃隊A「あの白いヤツ、来ますよー!!」

(予想以上に気づくのが早かったな…)

和斗「さぁて、異形ども!!俺が相手だ!!」

焔「私達も行くよ!!銃撃開始!!」

銃撃隊『はい!!!』

 

 

 

 

 

和斗「オラあぁああああ!!!!」ズバババ

焔「右と左から来るよー!狙い撃て!!」ドパンドパン

今のところ、俺達は優勢だった。

やはり訓練がよかったのだろう、焔たちの射撃がかなり正確で助かる。

和斗「このまま行くz…なんじゃありゃ!?」

遠くから星屑よりもはるかに大きいバーテックスが迫ってきていたのだ。

海『あれが星座級だ!確認できるのは三体!左から水瓶座、射手座、魚座!!』

(あれがか!!大きさが桁違いだな…)

先手は、あちらからだった。

シュババババババババババババババ

和斗「うおっ!?」ガキキキキキキ

突如として射手座から発射された大量の針を盾で防ぎきる。

(この距離からでもやってこれんのかよ!?)

和斗「…焔!大丈夫か!?」

焔「あんたねぇ!!はじく方向考えなさいっての!危うく当たるとこだったじゃない!!」

和斗「はあ?こっちだって急だったんだからそこまで求めんなよ!!」

焔「なんですってー!?いいから早く倒しなさいよ!!」

和斗「いや届かねえっての!遠距離はお前らの仕事だろーが!任すぞ!!」

焔「随分と上からね!任されたわ!!」

(なんだかんだ言って二言でOKしてくれんのがお前のいいとこだよ!!じゃあ俺は残り2匹やらねえとな!!)

ブポポポポポ

和斗「オラよ!!」

水瓶座の水球を盾で防ぎ、そのまま接近する。

グゴゴゴゴゴゴ

(…下か!)

和斗「フンッ!!」シュバッ

下から現れた魚座を間一髪かわす。

そしてそのまま魚座を足場にして飛躍し…

和斗「大人しくあの世に行けっての!!」ズバババババババ

水瓶座に斬撃を食らわせ、撃墜する。

ブオオオオオオオ

和斗「ブオオオってお前はクジラかよっての!!」ボゴォォォォォォオンズガァァァァァァァン

さらに魚座に篭手でダメージを与えた上、刀で一刀両断にする。

和斗「さて、2丁上がりっと!海、敵は?」

海『ちょうどお前に向かってさらに三体行ってんぞー。さそり座にてんびん座にかに座!』

和斗「りょーかいっと。何体来ようとぶっ倒してやんよ!!」

 

ーーー焔sideーーー

焔「第三部隊、撃て!!」

第三部隊「はい!!」ドガガガガガガガ

焔「…ダメかぁ。」

現れた星座級、射手座。

同じ遠距離として私たちが対処していたが、どれも浅めの傷にしかならず、すぐ回復されるのであった。

焔「うーん…海!どうしたらいい!?」

海『俺に頼んのかよ!!』

焔「当たり前でしょ!!なんのためにあんたいると思ってんの!」

海『あのなぁ…まあいいか。別に効いてないわけじゃないだろ。傷が浅いだけで。ならやるべきことはひとつしかねえよな?』

焔「…ハッキリ言え!!」

海『はあ!?こちとら和斗のサポートもしなきゃなんねえんだよ!!十分なヒントは出したわ!!』

(ケチりよって…浅いだけで効いてないわけじゃない、か…)

焔「あーわかった!!全部隊、一斉に連射よ!!」

銃撃隊「ええ!?」

焔「塵も積もれば山となる!たとえ一つ一つじゃ浅い傷でもそこに何度も何十回も攻撃を当てれば!!」

銃撃隊「な、なるほど…!!」

焔「わかってくれた!?じゃあ行くわよー!!撃て!!」

ドガガガガガガガズガガガガガガガキキキキキズシュシュシュシュシュシュ

ギイヤアアアア

(おっしゃきたァ!!)

焔「やったわね、みんな!!」

ワーワー

海『やんじゃねえか。てっきり分かってねえもんだと。』

焔「はあ!?じゃあなんでもっと言わなかったのよ!?これでやられてたらどうしてくれてんですかー!!」

海『うっさいなぁ。最終的に倒せたんだから結果オーライだ。』

(仕方なくそうしておいてやりますか…さて星屑を…)

その時だった。

グラララララララララララ

焔「うわっ!?何これ!?」

海『大丈夫か!?』

焔「大丈夫!!なにこれ地震!?そっちは!?」

海『こっちもめっちゃ揺れてる!!何が起こってんだ!?』

銃撃隊B「…何、あれ…」

(…ん?あれって一体…ってえ?)

海『おいおい…あんなのデータにねえぞ!?』

炎の海から、顔らしきものと4つの腕を持った超大型バーテックスが迫ってきていた。

 

 

 

 

 

ーーー和斗sideーーー

(おいおい…明らかにでかさが違くねえか!?)

和斗「海!あれが獅子座か!?」

海『いや、あんなのデータにはなかった!!獅子座っぽい部分はあるけどな…』

(…まさかじゃないよな?)

和斗「…合体したってのは?」

海『はあ!?んなわけ…って言いてえとこだがバーテックスは侵攻の度に力を増してるらしいからな…ありえる!!』

(マジ勘弁だなおい…)

キュイイイイイイイイイイン

和斗「焔!来るぞ!!」

焔「わかってらぁ!!」

そしてそれは撃たれる。

1つは何もまとわずに

1つは炎をまとい

1つは雷をまとい

1つは何もまとわないが尖って

和斗「ぐおっ!?」ガキキキキキ

そしてそれらをかわし、時には盾で防ぐ。

ボガァァァァン

(何もまとわないやつは爆発すんのかよ!?全部やべえじゃねえか!?)

焔「キャッ!!」

海『焔!?』

焔「あっぶな…何人か負傷したからそっち行かせるよ!!」

海『分かった!!無理すんなよ!?』

焔「無理しなきゃ世界終わるでしょーが!!」

(あっちは平常運転…とりあえずこれすぐ倒さねえとヤバすぎる!!…たしかバーテックスは強さに比例して硬さも変わるはず…)

和斗「焔!左上の腕を銃撃してくれ!!そこに少しでも傷つくりたい!!」

焔「ええ!?わかった!当たらないことを最優先にして左上の腕撃ってって!!」

銃撃隊「はい!!」

ガキキキキキキキ

銃撃隊の攻撃が左上の付け根にヒットし、鈍い音を立てる。一見無傷にも見えるが…

和斗「…微妙に残ってんな!!オォォォラよ!!」

ズガァァァァァァァン

わずかに見えた傷に渾身の斬撃が直撃。切断に成功する。

(よっしゃ!!)

だが…

和斗「この調子d…は?」

…壁に着地した時にはすでに腕は再生していた。

…それも、数を2つに増やして。

(切ったら増殖って…)

和斗「ヒドラかよ!?」

海『和斗!!』

和斗「なんだ!?今それどころじゃねえんだが!?」

海『今のでわかった!!おそらく敵は獅子座、牡羊座、乙女座、山羊座の融合体だ!!』

和斗「うわぁ…えっぐいチームだな!?」

近遠こなす万能の乙女座、地震などの範囲攻撃を得意とする山羊座、分裂し、雷を操る牡羊座、そして最強であり、世界をこんなにした元凶と言われてる獅子座。

和斗「やるっきゃねえか…援護頼むぞ!!焔、海!!」

焔「言われなくても!!」

海『微力だが任せろ!!』

まさにその時だった。

ビュウウウウン

超大型の腕があらぬ方向へと向かったのである。

和斗「一体どこ見てやが…」

(…待て、あの方向は!?)

 

ーーー月夜sideーーー

…ジュッ

(!?!?)

月夜「アッツ!?…何これ…急に熱くなった…?周りの温度が上がってるとか?…やり直しじゃんかー…」

神の力を束ねる作業、それはちょうど折り返し地点を迎えていた。

ぐっちゃぐちゃにからまってた糸をほどくことはできた、しかし目的はそこで終わりじゃなくそのバラバラにした糸を束ねてひとつの大きな糸にすることなのである。

それを始めたさなか、突如糸が熱を持ったのだ。

(外の影響?ほんとに何が…)

ボオオオオオオオオオオ

そして今度は凄まじい熱風が。

月夜「ッ!?今度はなn…え?」

気づくと神の間から引き戻されていた。

そして…巨大な腕が私に突き刺さらんと迫ってきていたのだ。

(嘘…死ぬの?私。…短い人生だったな…ごめん焔…1人で戦わせることになっちゃう…)

死を悟った。そして目を閉じた。痛みに歪んだ顔で死にたくなかったから。

グジュザザッ

…ただ、鋭い痛みが来ることはなかった。

来たとしたら軽く擦ったような痛み。

(…え?)

和斗「っっっっっあっぶねえ!!!大丈夫か!?」

月夜「和斗!?」

和斗「間一髪だ!!もうちょい下がってろ!!今海に戦車やら飛行機やら戦闘機やらともかく遮蔽物になりそうなの用意させてる!!いっ…」

月夜「う、うん!…って腕…」

…和斗の左腕は、根元から消え去っていた。

月夜「もしかして…私のせいd「ちげえわ!!」」

和斗「俺がミスっただけ!!この程度大した問題じゃねえよ!それよりも早く避難して神樹砲に集中しろ!!」

月夜「わ、わかったけど…!?」

 

ーーー和斗sideーーー

(とりあえず止血しねえと…敵が炎使いで助かったわ。)

ジュウウウウウウウウウウ

超大型の炎弾の残骸を腕の断面に押し付ける。

和斗「ッ…とりあえずこれでしばらくはよしだな…」

焔「ど!?こ!?が!?あんたほんとに大丈夫!?重症どころじゃないでしょそれ!?」

和斗「こいつほっといたら世界が重症じゃおさまらなくなるだろーが。やるっきゃねえんだよ!!」

海『…凶報だ。』

和斗「…どうした。」

海『…こいつの力が強すぎる。このままだと神樹砲を放っても死なずに残る可能性が高い。』

焔「…えーっと、つまり?」

海『世界滅亡待ったナシ。』

焔「デデドン!!」

(いよいよ引けなくなったな…)

和斗「とりあえず腕全部切って回復までの一瞬を穿ってもらうか…」

焔「なんで淡々と作戦考えてんのよ…もういいわ、本人のあんたがそこまで言うならサポートする。ただヤバいって思ったら即引っ込めさせるからね!?」

和斗「それでいいぞ。まあやれるならだけど」

焔「ムッキー!!銃撃隊メンツ総動員してすれるわ!!」

 

ーーー神の間、月夜sideーーー

…焦りが出ていた。

(違う、こうじゃない…急がないと和斗や焔が…!!あーもうこうでもない!)

圧倒的力を持った超大型、そしてなくなった和斗の左腕。

その2つの事実がひたすらに私から冷静さを奪っていく。

「…なんで…こんな時に限って上手くいかないのよ…!!なんで…!!」

(このままじゃ…このままじゃ…!!)

月夜「…一体…どうしたらいいのよ…」

心が折れかけた。その時だった。

???「…どうすればいいか?答えは1つしかないわ。信じることよ。」

月夜「…へ?」

目の前に、黒髪の女性がいた。

 

 

 

 

 

月夜「だ、誰ですか…?」

???「名前は…そうね。C.シャドウとでも名乗っときましょうか。…それであなたはどうすればいいかって言ったわよね。その答えは1つしかない。ずばり信じることよ。」

月夜「…ど、どういうことです…?というか今それどころじゃ…!!」

ハッと神樹砲のことを思い出し、作業に戻ろうとする。

C.シャドウ「…そんな錯乱状態じゃできることもできないわ。よく聞きなさい。…あなたは、とてつもなく大きなものを背負ってるのよ。」

(とてつもなく大きなもの…?)

月夜「そりゃ世界の命運握ってm「それだけじゃないわ。」え?」

C.シャドウ「…もちろんそれもある、でもあなたが背負ってるものは他にもあるわ。それは「歴代巫女の無念」よ。」

月夜「歴代巫女の…無念…?」

C.シャドウ「ええ。巫女はいつの時代も神託を受け取り、勇者のサポートに回っていた。

…神託を伝えたあとは、ひたすら無事に帰ってくることを願うことしかできなかったのよ。

自分が戦えれば救えた勇者が…友達がいたかもしれない。それはいつの時代の巫女も、感じてきたことよ。

でも、あなたは違う。今あなたは神樹砲によって友達を助けることができる。たとえ戦い方が違えども、今あなたは勇者たちとともに戦えてるのよ。…たしかに敵は強大よ。でも、あなたの友達なら、絶対に耐え忍んでくれる。

だから信じなさい。己の力を、そして友達の力を!」

(…友達の…力…)

 

月夜『私はそろそろチャージ始める。みんな、しっかり守ってよ!!』

焔『任せろっての!!』

和斗『もちろんだ!!』

 

(焔…海…和斗…待ってて。すぐ完成させてみせるから。)

…シュバババババババババババババババ

ジュウウウウウウウウウウ

熱くても関係ない、ものすごいスピードで糸を束ねていく。

C.シャドウ「…ゾーンに入ったわね。…フッ、あの時、友達を信じきれなかった私が信じることの大切さを説くなんて…奇妙なこともあるもんね。」

 

ーーー和斗sideーーー

和斗「くっ!!」ズバッ

ドゴゴゴゴゴォォォォオォォン

神樹砲ですら余波では倒しきれないという超大型。

必死に倒そうとはしてるものの、圧倒的に数が足りないのである。

いくら腕を切ってもすぐに再生される。

すでにやつの腕は12本、徐々に負傷で減っていってる銃撃隊では同時に傷をつけるなど不可能に近かった。

焔「どうするのよ和斗!!これ同時破壊なんてやれる!?」

和斗「ぶっちゃけキツイ!!でもやるしかねえだろ!?」

海『それくらいしか弱点がねえ…どうすりゃいいんだこれは…』

その時だった。

ギュウウウウウウウウウウウウウウウウ

焔「んん!?何この音!?もしかしてもっとヤバいの来る!?」

海『…いや、違う!!神樹砲の装填の速度が跳ね上がった!!この調子なら5分で貯まるぞ!?』

焔「それヤバくない!?本来ならめっちゃ嬉しいことだけどさ!?」

(…急に?…あいつ、あの調子なら絶対俺の事引きずってた…それが急に早くなったってことは…)

和斗「…海!ともかく人を集めてくれ!!焔!人が集まったらある遠距離系の神器でまとめて左側の腕を撃て!!」

海『はあ!?』

焔「わかったけどなんで左側だけ!?」

和斗「…よく考えてみろ。あいつがガードするタイミングを。

…連続攻撃だ。片方の腕を増やしたあとにその方をさらに攻撃しようとするとあいつは反対の腕でガードしてくる。…バランスを取ってんだよ!!

一斉の攻撃で左の6つの腕全てに傷をつけ、そこを俺がぶった斬る!!そうすりゃあ左は12、右は6!確実にバランスを崩す!…それも神樹砲の発射口になぁ!!」

海『神樹砲を直接ぶつけるつもりか!?直接ならやれるなんて保証は…ねえがやるか!!』

焔「なーる!!全隊!銃撃用意!!!!」

(月夜…お前が俺たちを信じてくれてるなら…俺達はそれに応えるのが仕事だもんな!!)

和斗「うぉぉおおおおお!!!!」

超大型へと攻撃をかわしながら突っ込む。

和斗「どらぁ!!」

そして飛んできた右腕の攻撃を盾を使って弾き飛ばす。

焔「今よ!!全員一斉射撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

そうして剥き出しになった左腕の各所に射撃が的中。

(ここを逃せば…次はない!!)

和斗「俺の人生で積み上げた剣術の数々…受けてみやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ズババババババババババババババババババババババババババズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン

左の全ての腕を切り落とす。

そうして生えてきた腕は無論2倍。

超大型は大きくバランスを崩す。

(…ギリ足りねえか!!)

しかし、神樹砲が直接ぶつけられる位置のギリギリで止まる。

(なら…もう一押しをしてやんよ!!)

壁から大幅に跳躍をするため、超大型から離れようとする。

…しかし

ザシュッ

和斗「っっっっ!?!?」

(足が…!?しまった!?)

抗おうととんできた右腕の1つに、右足の膝より下が持っていかれる。

(…これじゃ跳躍力が足りねえ…!!)

和斗「…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!」

 

ーーー焔sideーーー

ザシュッ

(あいつ…足が!?)

和斗の足が超大型に切り落とされる。

(超大型も沈みきってない…もう1回?いやあそこまで下がってたら和斗でも無理…ならどうすりゃ…)

和斗「…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!」

(和斗…何か作戦があるってことなのね。…何だ…急がないと…!!)

 

ーー1回思考をリセットして別ゲーで考えタマえ。そうだ!サッカーだとしよう!!ボールはゴール目前、そしてキーパーが取ろうとしてたらどうする!?ーー

 

(…そういうことか!!)

 

ーーお、わかったようだな!!じゃあ行きタマえ!!ーー

 

ーーー海sideーーー

(ヤバいな…)

和斗渾身の作戦はたしかに成功した。しかし超大型は神樹砲の発射口目前で傾きを止め、これ以上傾けれない状況に。

加えて神樹砲装填まであと30秒しかない。

(ここまで来て手詰まりだっていうのかよ…?)

和斗『…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!』

…そう、聞こえた。確かに聞こえた。

(…あいつは諦めてなんかいねえんだ…なら俺はどうすりゃいい!?あいつは俺が何をすることを信じてる!?)

 

ーー阿修羅極道 って小説、読んだことありますよね。最後の勝てない強敵相手に、主人公は何をしましたっけ?ーー

 

(…あいつの身体能力なら、これをやる!いや、これしかないはず!!なら俺は!!)

 

ーーほんとに優秀ですね。最後まで頑張ってください。ーー

 

ーーー和斗sideーーー

そう、言い放ち超大型から跳躍。

宙を舞う。

(…信じてるぜ。お前らなら…)

海、焔「うぉぉおおおおお!!!!」ドドド

和斗「必ず来てくれるってな!!」

2人が両手を伸ばし、そこに着地する。

膝の曲げ方が、2人の手の動かし方が、スピードを落とさないための動きと完璧にマッチする。

そして…

焔、海「行っけええぇぇええええ!!!!」

跳躍する。

高く、超大型よりも高く。

刀をぶん投げ、超大型に刺す。

さらに盾に持ち替え、落下中に今までの人生で積み上げた全ての経験を活かし、速度を上げる。

和斗「バーテックス…たしかにお前らは強いよ。人間が勝てることなんてほとんどねえだろうな。

…だが、それでも一つだけ勝っていると断言できる。

それは!仲間を…友達を!!信じることだ!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン

盾を初めとしての俺の体が超大型に刺さった刀にぶつかる。

凝縮された衝撃は刀を介し、超大型へと流れる。

…大型が沈む。神樹砲の発射口へと。

…そして。

 

ーーー月夜sideーーー

…糸を、神樹砲の発射糸を完成させる。

月夜「これでぇぇぇ!!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

どんなに熱くても。痛くても。これで終わり。

私はその糸を、引いた。

 

そして、世界は

光に包まれた。

 

 

 

 

 

ーーー和斗sideーーー

和斗「…あ、やべえ。」

神樹砲が輝く。

和斗「帰りのこと全く考えてなかった。こりゃ死んだな…

…悔いは、一つだけあるか。」

(…焔、海…そして月夜。)

その光が、世界へと…

(…お前らと、もっと過ごしたかった。)

放たれる

ーーやることはやってるし若葉とかならこれで許すんだろうけどね。あいにく私は1人だけ復讐に走った外道だから。…自分たちが掴み取った幸せ、謳歌しやがりなさいーー

(…?)

そう、聞こえた。

…そして、誰かに吹き飛ばされた。

 

ーーー??月??日ーーー

(…う、うん…?ここは…?)

光に目が慣れない。

(ベッド…点滴…病院か?たしか…)

意識が少しずつ覚醒し、状況を整理しようとするまさにその時。

月夜「…和斗!!」ガバッ

和斗「うお!?月夜!?」

月夜「よかった…もう目覚めないのかと…!!」

和斗「んな大袈裟な…もしかして俺そんな寝てたか?」

月夜「バッチシ。」

和斗「マジかよ…心配かけたな…」

手を動かそうとして、左腕がないことを思い出す。

(そういやなくなってたな…こりゃもう大会は無理だな。)

焔「あ、和斗!!起きたの!?」

海「全然元気そうだなおい…かなりの重症だったんだぞ?」

和斗「二人とも来てくれてたのか。見ての通りだ。…ところでほんとに俺どんくらい寝てた?月夜が過去例に見ないほど泣いてるから聞き出せなくてな。」

焔「今日は3月31日。この意味、わかるかしら?」

(…えーっと?たしか作戦が2月24日だから…)

和斗「…1ヶ月以上寝てたのかよ俺。」

海「そうだ。ほんとに心配したんだからな?

左腕と右足欠損にそこの傷による出血多量、おまけに神樹砲の余波で四肢…っていっても右腕と左足しかないがの骨折、あっちこっちの筋肉の損傷、体中の打撲。ぶっちゃけ生きてるのが奇跡レベルだ。

…まあもう結構治ってはいるだろうがな。」

(想像を遥かに超える重症だわ我ながら…

…あの時の誰かがいなきゃ死んでたな…誰だったんだあれ…)

月夜「ともかくほんとに…ほんとによかったよぉぉぉぉ!!うぅ…グス…」

焔「月夜一日と欠かさずに看病してたのよ?」

和斗「は!?お前学校どうしたんだよ!?てかなんで!?」

月夜「だって私のせいじゃんその重症は…私がもっとしっかりしてればぁぁぁぁぁ…」

海「あ、また泣かせたな?」

和斗「ええ!?今のはノーカンだろ!?てか月夜も泣くなって…ちょいと不便なっただけだしケガだって俺のミスだわ…」

月夜「うぅ…うああああん…」

焔「もう…月夜もいい加減泣きやも?みんなでパーリーしないと!」

和斗「え?もしかしなくてもここでか?」

海「あたり前田のクラッカー。」

和斗「えぇ…」

月夜「パーリー…する…グスッ」

 

ーーー287年3月12日、焔sideーーー

…和斗から連絡があった。月夜が手術だと。

2歳になった風に樹を任せ、海と急いで来た。

(ほんとはどっちか残るべきだったんだろうけど…)

 

風『わたしちゃんとできるよ!!だからおかーたんとおとーたんはいってきて!!でもすぐかえてきてね!!』

樹『あーうー』

風『なにー?おしめとりかえてほしいのかなー?まかせんしゃい!!』

 

病室にたどり着いて扉を開ける。

焔「はあ…はあ…和斗…」

海「…月夜は…?」

和斗「…うう…」

(まさか…嘘よね?)

月夜は…眠っていた。安らかに。

海「…嘘、だろ…?」

焔「嘘って言ってよ…月夜…!!」

現実を受け止めれず、月夜の身体を揺らそうとする。

まさにその時。

月夜「あーよくねt」ゴンッ

月夜、焔「いったぁ!?!?」

海「月夜!?!?」

(…って!?)

焔「…何も生き返らなくても…」

月夜「え、何言ってるの。最初から死んでないけど。」

和斗「…成功、したよ…うう…」

(…かーずーとー…)

焔、海「紛らわしいわ!!!!!!!!心配して損したじゃんか(だろうが)!?!?」

月夜「あーね…和斗君に言いなさいよー。いい加減泣きやもってばー。」

焔「てかなんであんたはそんな平気でいられんのよ!?手術終わって間もないよね!?」

月夜「寝たら治った。」

焔「うそぉ!?」

海「…まあ月夜のやべえのは置いといて…成功したってことは…だよな?」

和斗「ああ。…ほれ。」

和斗の腕の中には…生まれたての命がいた。

(わぁお!?)

焔「可愛いーー!!樹と風の次に!!」

月夜「はあ!?たしかに風ちゃんも樹ちゃんも可愛かったけどこの子の方が上だし!?」

焔「はあ!?うちの子二人にまさるものはないわよ!?」

海「変な張り合いすんなし。名前とかってもう決まってたりすんのか?」

和斗「それに関しては月夜が案あるって。」

海「てかお前いつのまに泣き止んでたんだよ…」

和斗「月夜、頼む。」

月夜「オウイエ!!ズバリこれよ!!」

「千広」と書かれた紙を取り出し、バンバンと叩く。

3人「…」

月夜「…ん?変だった?」

3人「…変だ!!」

月夜「ええ!?」

和斗「ま、まあ意味聞くか…」

月夜「うーんとね…輪を広めてほしいのよ。友達との…絆の輪を。千人もの大人数へ、友情の輪を広めてほしいという願いを込めて「千広」どう?あ、フリガナはちひろね。」

焔「うーん…意味はいいと思うけど…」

海「さすがにそれはなんか違うと思うぞ…」

月夜「マジ?じゃあ別案考えるしかないかねぇ…」

和斗「…いっそひらがなにするのは?たしか先祖もひなたってひらがなだったはずだが。」

焔「お、それならいいんじゃない?」

海「たしかに違和感ねえな。月夜はどうしたいんだ?」

月夜「…いいねぇ!!正直私だけので決まっちゃっていいのかなって思ってたし。「ちひろ」で決まり!!」

焔「おめでたいね!しっかし可愛い…」

ちひろ『きゃっきゃ!!』

海「お、笑った。」

和斗「…俺この笑顔だけで死にそうなんだけど。」

月夜「親バカになる予感ー。」

焔「あんたが言えることじゃないと思うけどね。」

海「たしかに。むしろお前の方が可能性高ぇよ。」

月夜「なんだって!?こうなりゃ維持でも可愛がらん!!…ごめん無理!!」

海「秒殺だな。」

焔「秒殺ねぇ。」

和斗「ちひろ、これからよろしくな。」

月夜「…ようこそ、上里家へ。」

 

〜外伝1 星魔殲滅作戦 fin

 



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2. 神世紀298年 大橋の幻の勇者

おまたせしました!!外伝2が完成いたしましたのでこちらでも投稿します!!

登場人物紹介
・犬吠埼焔
風、樹の母。
家事万能、女性らしさ満点のお母さん。
大赦務めでそこそこ地位は高い。
元土居家の分家。

・犬吠埼海
風、樹の父。
そこまで喋る方ではないが根は優しい。
大赦務めでそこそこ地位は高い。
伊予島家の分家。

・上里月夜
ちひろの母。
今は大赦関係にあまり関わらずにちひろ、和斗との暮らしを優先中。

・上里和斗
ちひろの父。
元々あまり大赦とは関わらず、今は春信の指導を担当。

・犬吠埼風
犬吠埼家の長女。
姉御肌で、女子力好き。

・犬吠埼樹
犬吠埼家の次女。
控えめで、お姉ちゃんっ子。

・乃木園子
現勇者の1人。


ーーー神世紀298年、10月9日ーーー

ーーー焔sideーーー

焔「たっだいまー!!樹、風!ちゃんと帰ってきてるかい?」

樹「うん!私もお姉t…」

風「いーませーん!!」

(…ほほう?)

焔「となるとこの机から出てるお尻は何かな?」

風「ギクゥ!?」

焔「ほれほれ」ツンツン

風「くっ…アハハハハハハ!!!嘘ですごめんなさーい!!だからツンツンするのやめてー!!」

焔「だが断る!嘘ついてたお仕置きだぁ!!」

風「アハハハハ!!ちょー!くすぐったいってー!!」

樹「あわわわ…お母さんもお姉ちゃんも落ち着いてよぉ…私もうお腹ぺこぺこなのにぃ…」

海「…焔、風?」

焔、風「イッ!?」

海「帰っきてそうそう戯れるのはいいが、先にご飯作ってからな?風も樹に勉強教える約束どうしたんだ。」

焔「へーい…」

風「あ、そうだった!!ごめんね樹…」

樹「いいよ別に…でここなんだけど…」

私は犬吠埼焔、大赦務めのサラリーウーマン!

夫は同じく大赦務めの犬吠埼海、さっきのを見ればわかるけどめっちゃしっかりしてる。

娘は二人いて、風は私似で活発的かつ姉御肌。

樹は少し引っ込み思案なとこがあるけど優しくていい子。

これが犬吠埼家。私の何よりも大事な幸せ。

 

ーーー夕食中ーーー

風「…ってことなよ!食べることは女子力繋がるわよね!?お母さん!」

焔「あったりまえよ!食量は女子力に直結ス。たらふく食べるのだァ!!」

風「はーい!!」

樹「あーさらに盛り付けないでー!私もうおなかいっぱいなるのに…」

海「2人は食いすぎだし別に気にすることはないけどさすがにもうちょい食った方がいいと思うぞ?樹。」

樹「お父さんが言うなら…」

風「ちょ、樹!?何気に傷つくわよ!?」

焔「おのれ…海許すまじ。」

海「事実を言ったまでだ。」

焔「それを言っちゃあおしまいなんですけど!?」

(…あ、そういや。)

焔「風、樹、明日は留守にするからね。」

樹「え?なんで?1日中?」

焔「そうそう。ちょっと重大行事の担当に当てはまってね…」

海「大橋市まで行かなきゃ行けねえんだよな。明後日には帰ってくるさ。だから風、家事頼めるか?」

風「お母さんの女子力を受け継ぎし私に任せなさい!」

焔「お、いいね〜その意気よ!!」

風「で行事かぁ…母さんと父さんってことは大赦絡みでしょ?明日なんかあったっけ?」

樹「…あ!祝樹祭!!」

海「お!?樹知ってたのか?」

樹「偶然テレビで見たから…」

風「さっすが樹!!」

焔「二人とも将来が有望ですなぁ!」

 

 

 

 

 

ーーー10月11日、大橋ーーー

ーーー海sideーーー

祝樹祭、それは1年で唯一、大橋に人が踏み込む日。

殺人ウイルスの溢れる(建前)大地から安全な四国へと生き延びさせてくれた神樹様へ、その架け橋となった大橋で感謝をする儀式。

今はもう夕方。

一通りのことは終わり、人々は神樹様に感謝しながら数少ない西暦からの遺産である大橋を堪能している。

海「…見方変わるよな。真実知ってると。」

焔「…そうねぇ。ここで勇者達は戦い…命を落としてきたもんね…最近だと銀ちゃん…」

海「…つらいだろうな。4人とも仲良さそうだったし…」

焔「ちひろちゃん…前話した時あんな楽しそうに話してたもんね…」

海「…勇者システム改良されたんだっけか?死なないように。」

焔「そうらしいね。私も担当外だから詳しくは知らないけどさ。」

海「…これ以上、命を失う勇者が現れないことを祈る。怪我も込で。」

焔「…和人でもあれだしね。…なんかしんみりしすぎ!!せっかく選ばれたんだし少しは見てこ!?」

海「お前なぁ…いいけどよ。」

焔「やったね!さあ奥へGOG…」

カチッ

 

カチッ

ギギギギギギ

(ん?何だこの音…)

焔「なんか変な音しない?」

グジュグジュグジュ

海「俺もだ。一体なんだ…!?」

ジジジジジジ

焔「…とりあえず連絡しないと。念を入れて一般人避難させn…」

ジジ…ボガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!

次の瞬間、あらゆる方向から凄まじい熱と風が襲った。

 

ーーー焔sideーーー

焔「…は?」

何が起こったかがわからなかった。突如の爆音、続いて熱風。

それらが晴れる頃には…大橋はあちこちが燃え、崩れていっていた。

海「…なんだよ、これ…一体何が…」

月夜『焔!?焔!?返事して!?』

(あ、連絡してたんだった!?)

焔「もしもし!?突然大橋のあっちこっちで爆発が!!」

月夜『えっ!?…ついさっき大規模な襲来が確認されたの…まさか…』

(…そういうことか!!)

焔「海!!」

海「言いてえことはわかる!!フィードバックだろ!?やべえな…」

月夜『ほんとなら2人にすぐに避難してって言いたいんだけど…』

焔「ん?何かやってほしいことが?」

月夜『…神樹様が力を消費しすぎたせいで、勇者の2人が大橋に取り残されてる。』

海「…嘘だろ?」

焔「そんな…時間が惜しいわね。月夜!?切るよ!?」

月夜『うん!!お願い…!!私も和人もすぐ向かうから…!』

焔「任せなさいって!!私を誰だっと思ってんの!」ブチッ

海「状況が一変したな…一般人避難させながら行くぞ。」

焔「言われなくてもわかってらぁ!行くよ!!」

 

ーーー大橋最奥ーーー

焔「おーい!!園子ちゃーん!」

海「鷲尾さーん!どこだー!!いたら返事しろー!!」

一般人を避難させつつ奥へと進み、いよいよ海が見えてきていた。

(途中からもう落ちてる…まさか巻き込まれていないよね…!?)

海「…おい!あそこ!!」

焔「…ほんとだ!!」

橋の端っこ、ギリギリの部分で横たわる3人を救出する。

(…3人?勇者は銀ちゃんがいない以上2人のはずだけど…しかもこんな子供…)

海「一般人か…?親がいないとなると…」

焔「…そういうことね…とりあえず3人とも大丈夫!?意識あるなら返事して!?」

園子「…ん、んん…」

焔「園子ちゃん!!私だよ!?分かる!?前チラッとあった焔!!」

園子「…焔…さん…?私…やったよ…守ったよ…世界のこと…わっしーのこと…もう…いつも通りは暮らせないけど…」

焔「え?それってどういう…」

海「…止まってる。心臓が止まってる。」

(…え?)

焔「心臓が…!?そしたらなんで生きて…」

その時、はっと気づく。

そう、勇者システムのアップデート。

こんなにもの大規模なフィードバックが出る戦闘だ。

凄まじい数の敵が来たに違いない。

ならなぜ世界は無事だったのだろうか。

…もし、アプデによって代償ありの強化が加えられてたとしたら?

焔「…海。」

海「…その顔、似たようなこと考えてそうだな…」

焔「…真偽はあとからよね。今は崩れる前に避難しないと。園子ちゃん、ありがとう。あとは休んで。」

園子「…はい…」

海「…俺が他の2人を持つ。お前は園子ちゃんを頼んだ。」

焔「OK。じゃあ急g…」

園子ちゃんを背負って立ち上がる。

…その時、遠くから白い物体が向かってきているのが見えた。

白くて、丸っこくて、口だけしかない異形。

海「…冗談キツすぎだろ…

…逃げるぞ!!」

焔「ええ!!」

 

月夜『…神樹様が力を消費しすぎたせいで…』

 

これは、複数に影響を与えていたんだ。

結界が緩んで、バーテックスが300年ぶりに現実世界に顕現した瞬間であった。

 

 

 

 

 

焔「うおおお!?!?」

星屑「ギイヤアアアア!!!!」ドガン

海「殺る気満々!さすが世界の人口を1割以下にしただけあるな!?」

焔「そういうお世辞言ってる場合じゃなくない!?」

海「お世辞ではないだろ!?」

ドカンドカンドガガガガガガガン

迫り来る大量の星屑。

ただの知能のない雑魚と見れば和人に特訓つけられてた私達からは楽勝である。

しかし、これは神の使い。

神器がなければダメージなど入りはしない。

もし入れば人類はこんな狭い大地に逃げ込まざるを得なくはなってないだろう。

焔「どうする!?増えるばかりよこれ!?」

海「どうも何もねえよ!!ただ逃げるくらいしかできることはない!!遮蔽物もねえしな!!」

焔「だよねー!!でも3分の1は進んだよね!?」

海「多分な!!あとこれの2倍分!!」

焔「なんか行ける気がしてきたわ!!」

その時だった。

ボゴッ

焔「…へ?」

前からの衝撃、続いて鈍い痛み。

後ろに吹き飛ばされる。

海「焔…ガハッ!?」ボゴッ

(な…にが…)

前を見るとそこには星屑が。

(…はは…そっか…そういや別に後ろからだけなんて限らないわよね…盲点だったわ…)

挟み撃ち。今の体当たりだけでもすでに体は動かなく、溢れんばかりといる星屑から逃れるのは不可能に近い。

…さらに、遠くに乙女座が見えた。

(…ごめんね園子ちゃん…逃がしてあげれなかった…風…樹…これからはご飯作ってあげれないわ…)

 

ーーー海sideーーー

海「か…は…」

(…ここで…朽ちるのか…思えば全然、ダメな人生だったな…殲滅作戦の時も1人だけ安全なところからサポートしかできず、今も戦い疲れた勇者たちすら逃がしてやれねえ…風や樹だって2人だけにしちまう…ほんとにダメだな、俺…)

 

ーーー焔・海sideーーー

諦め、目を閉じる。

焔(…これって…)

その時、映像が見えた。

海(風と…樹…だよな?)

少し成長した風と樹が。

焔(…勇者服…ってことは?)

大剣と糸を武器に。

海(…星座級があんなにいるのに…次々と…)

バーテックスと戦う姿が。

焔(…そっか…勇者に選ばれるんだ…)

海(…怖いはずだ…絶対…でも…)

焔(諦めてない…仲間と立派に戦ってる…)

海「…なら…」

焔「親である私たちが…」

海「こんなところで…」

焔「諦めるわけには…!!」

海「行かねえだろ…!!」

焔「たとえこの身が!!」

海「なくなろうと!!」

焔「この子達だけは…」

海「未来を生きる勇者たちだけは…」

焔・海「守る!!!!!」

力が溢れる。

自分のものではない…過去と、未来の力。

 

ーーその意気、たしかにタマが受け取った!!ーー

 

ーーたとえ選ばれてなくても、あなた達は今、誰よりも勇者です。なら…ーー

 

ーーお母さんとお父さんへの感謝を込めてーー

 

ーー私たちの力を!頑張って、母さん!父さん!!ーー

 

焔「…おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ズバァァァァァァァン

襲いくる星屑を切り裂く。その手には盾と大剣。

ギイヤアアアア!!!!

そして後ろから迫り来る敵を…

海「はあ!!」ズババババ

海がボーガンと、糸で切り裂く。

焔(…ご先祖さま。そして。)

海(風、樹。ありがとうな。)

焔・海「…命ある限り諦めない。私(俺)たちは!勇者になる!!!!」

 

 

 

 

 

 

ーーー焔sideーーー

焔「そぉぉぉぉぉい!!!」ズバァァァァァァァン

海「そこだッ!!」ズガガガガガ

ご先祖さま、そして未来の娘達から借り受けた勇者の力。

それにより星屑相手に善戦することができていた。

焔(とはいってもよくないけどね…)

海「どうする!!ここら辺でもすでに崩壊始まってんぞ!!」

焔「うーん…海!あんた糸で上手く3人運べるよね!?」

海「んあ!?たしかにできなくもないが…お前はどうするんだよ!?」

焔「ここで止める!!あれを見なさい!」

そうして私が指さした先にはさっき見た乙女座。無論近づいてきている。

焔「あれを町まで持ってくつもり?」

海「…無理してもいいから悔いは残すなよ。」

焔「あら?無理はするながテンプレじゃない?」

海「この展開がすでにテンプレじゃねえからな!」

焔「たしかに!ピンチに覚醒するならあるけど力借りるなんてテンプレじゃないわ!!」

海「…任すぞ!!」タタタッ

焔「おうとも!!さぁて…」

星屑を、乙女座を見据える。

焔「私は勇者、犬吠埼焔!!たった一夜の大活躍、その身で受けられることを感謝しなさい!!そして!お代はその命じゃああ!!」

 

ーーー海sideーーー

海「オラオラオラァ!!」ズガガガガガ

追ってくる星屑をボーガンで撃ち落とす。

(明らかにすくねえ…焔が抑えてくれてんのか?急がねえとな…)

そうして走っているうちに目的の…橋の入口が見えてくる。

(よし!!あと少しか!!)

だいぶボロボロではあるが、まだ人が通ってもなんとかもちそうであった。

月夜「ッ!?海!!」

和人「ほんとだ!?海!!こっちだ!!」

海「二人とも!!」

脱出も目前、いざ越えようとする…その時だった。

ビジジジジジ

バチッ

海「ガっ!?」

何かに弾きとばされる。

和人「はあ!?なんだ今の…」

月夜「…え?…嘘…でしょ…?嘘だよね…」

続いて月夜の錯乱。

海「月夜!?落ち着いて何が起こったか話せ!!俺は大丈夫だから!」

月夜「…星屑が…四国に入るのを…防ぐために…結界貼ってる…って…力が…足りないから…完璧なのは作れないからって…」

和人「まさか人も弾くってのか…!?」

(マジかよ…!?俺はまだいいが子供3人は…!!)

さらに…

ビキビキッ

和人「ッ!!海、退け!!」

海「んあ!?」バッ

咄嗟に後ろへと跳躍する。

次の瞬間…

バリバリバリッ

ギイヤアアアア!!!!

ガラガラガラガラ…

下から星屑が。

(下通って来てやがったのか!?いやそれより…)

海「おいおいマジかよ…」

そして、それにより元々ボロボロだった入口付近の橋は完全に崩壊。

…どうやっても届かない溝ができてしまったのである。

(糸で橋…いやこんなボロボロな状態で人を運べるような数の糸をかけれはしねえ…)

ギイヤアアアア!!!!

オマケに後ろからも星屑。無論橋の下から。

海「…かんっぜんに孤立したな!?」

海の上の崩れゆく橋。

逃げ場はなし、オマケに星屑からの挟み撃ち。

月夜「ごめん…ごめん海…私じゃ…私じゃ親友も救えない…」

和人「ちくしょうが!!待ってろ!!今行く!!」

(不幸のバーゲンセールじゃねえか…あそこは使えそうだな。ならこうすれば…3人は逃がせる!!)

…しかし、諦めはしなかった。

海「…月夜!!!和人!!!勝手に諦めてんじゃねえぞ!!受け取り準備、万全にしときやがれ!!」

 

ーーー焔sideーーー

焔「はああああああ!!!」ズババババ

迫り来る爆弾を切り裂き、

ヒュウウウウウウ

焔「ふんっ!!」ガキィィィィィィィィ

横からとんでくる布攻撃を盾で防ぐ…が。

ギギギギギギ

威力を防ぎきれず、足が地面と擦れる。

焔「いっっっっっったいのよ!!」ズガァァァァァン

(いやぁ参った参った…あっちのは防御しても防ぎきれないのにあっちはろくに入ってない。入ってもすぐ回復と来た…やはりテンプレじゃないわこれ、テンプレだったら圧勝だもんこれ。)

焔「どうしたものか…風に女子力を伝道してる身として女子力対決じゃ負けれないんだけど…」

…その時、ふといつぞやかに思った疑問が浮かび上がる。

(…だとしたら、あれでやれるわね…でも外れてたら…)

焔「…当たって砕けろ!!物は試し!ダメだったらその時!!勇者犬吠埼焔の大活躍もいよいよ大詰め!フィニッシュ、行くわよーー!!!!」

そういい、大きく跳躍した。

 

ーーー海sideーーー

海「…よし!できた!!」

星屑を壊滅させ、そう言って見据える先には巨大なパチンコのような物が。

結界からはみ出していた柱に糸を巻き付け、それらをこっちの中心にギリギリまで引っ張って人3人分を載せれるようにする。

そしてあの3人を糸で作ったシェルターで覆う。

最後にこれを乗せれば…

海「巨大な人輸送パチンコの完成ってわけだ。」

すぐに離れないように糸と矢の二重で橋と拘束している。

(よし、離すz)

ガブッ

海「…かは…!?」

確認すると疎かになっていた左腕に星屑が噛み付いていた。

(もうこんなに沸いてたのかよ…でも…)

後ろには15体ほどの星屑。

しかし…それ以外の星屑が一切確認できなかった。

(結界が修復されたか…?ならこいつらさえ倒せりゃ…!!)

海「…やってやろうじゃねえか!!」

両手から凄まじい数の糸を展開する。

海「おらァァァァァァァァ!!!」

それを大きく星屑全体に。

まるで、網のように。

ギイヤアアアア!?!?

切り刻むほどの力はない。でも、それだけで十分だ。

パチンコを離す。

このままじゃ離れても結界に弾かれて海に落ちる。

だから糸の結び方を工夫し、複数回の反復には耐えられるようにした。

…だから、その複数回のうちにケリを付ける。

(ご先祖さま…もう一度、力を…)

ーーそれであなたの思いが達成できるなら、喜んでーー

一回目の反復。

その時に叫ぶ。

海「…全てを凍てつかせろ!!雪女郎!!」

それによりパチンコと矢を繋げていた糸が凍り、反復時の勢いもあって矢はその勢いを増して向かう。

…橋の支柱へと。

ガギッ

支柱が凍る。

…もし、右に1、左に1.5あるバランスの悪い天秤に、16人分の重さが加わったならば?

そしてそれを支える柱が脆くなってたならば?

(西暦の時代、星屑に押しつぶされて死ぬ人も多かったと聞いた。つまり…)

ビキビキビキビキッ

海「星屑には!重量がある!!…仲良く落ちようぜ!!!」

答えはただ一つ。

ドガァァァァァァァァン

支柱は、橋は崩れる。

月夜「…海ィィィィィ!!」

(…星屑は消えた。乙女座は…あいつが確実にやってくれる。つまり…結界は意味がなくなり!)

パチンコから3人が入ったシェルターが離れ、空を舞う。

そしてそれは…あったはずの結界を超え、和人の腕へと。

和人「…たしかに…たしかに受け取ったぞ!!海!!」

(焔…やったんだな…そして和人…それでいい…)

海「和人!!間違いなく月夜は病む!お前が支えろよ!!わかったな!!」

和人「…おう!!任せ…ろ…」

海「そして月夜!!!!…たとえどうなろうと、俺達は親友だ。絶対に、何があろうと。」

月夜「…ヴン…!私だぢは…ずっど親友だがら…!!」

(…それでいいんだ…)

海「…幸せにな。」

ドボンッ!!

そうして俺は…星屑とともに海へと落ちた。

 

ーーー焔sideーーー

跳躍する。乙女座よりも高く。

そして叫ぶ。

(…借りるわよ。あんたの女子力。)

ーーええ!存分にやっちゃって!!ーー

焔「犬神ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

盾と大剣が巨大化する。

焔「焔犬一閃(仮)!!」

巨大化した大剣で、橋ごと支柱をぶった斬る。

そして

焔「仲良くシーダイブじゃあああああ!!」

盾を構え、乙女座に突撃する。

 

焔『ねえ月夜。思ったんだけどなんでバーテックスって大橋からしか来ないの?』

月夜『え?どういうこと?』

海『べつにどこ行っても変わらねえんじゃ…』

焔『だってさ。勇者って飛行手段ないのよ?なら大橋から離れた海から攻めればなすすべないじゃん。』

月夜『…たしかに!!どうしてだろう?フェア好き?』

海『それはないだろ…第一うお座は何回か海からの奇襲報告されてんぞ。』

焔『エッ…残念無念。せっかく何か法則あると思ったのに…』

 

(…あれは、法則がないわけじゃない。うお座がイレギュラーだったんだ。)

焔「よく考えたらあんたら炎の海出身だもんね…そりゃ火が消える「水」は!こわいわよねぇぇぇぇぇ!!!」

乙女座が反撃してくる。

だが。

焔「今の私は!!あんたなんかに負けない!!」

ものともせず、海へ…

(…風、樹。この世の何よりも最っ高に…

愛してる。)

落ちた。

 

ーーー月夜sideーーー

橋が…大橋が、崩れていく。

そして…完全に崩壊した。

しかし…私の2人の親友は、帰ってくることはなく。

月夜「…海…焔ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

私の声は、すっかり暗くなった空に、虚しく響くだけだった。

 

 

 

 

 

ーーー???ーーー

焔「…ん、あ…?」

気づくと陸地に打ち上げられていた。

(身体は…手先くらいしか動かない、か…こりゃ死期が伸びただけだね…)

見える空は黒でも青でもなく、金。

(…もしかして、神樹様の根元とか…?)

焔「ハハッ…すごいとこに打ち上げられちゃったかも…」

…ふと横を見ると、そこには海がいた。

焔「…海…海!!!!」

海「…んお…?焔…?」

焔「そそ。あんたの妻の焔さんよ…身体動く?なら背負って運んでほしいんだけど。」

海「…いや、無理だわ。身体中痛いし。」

焔「二人揃ってダメと。これは死んだわね。」

海「そうだな…娘2人置いて逝くとか子不孝すぎるな俺ら…」

焔「あーたしかに。二人とも大丈夫かしら…風に女子力は伝道しておいたけどさ…

…伝道といえばだけど園子ちゃんたちは…?」

海「バッチシ。結界に阻まれたりしたが3人とも和人に渡せたよ。」

焔「やるぅ…月夜泣きまくってそうね。」

海「めっちゃ泣いてた。申し訳ないぜ…」

焔「なんだかんだ言って泣き虫だからなぁ…大人になったんだから少しくらいは変われっての…」

海「そうだな…」

焔「…ねえ、海。」

海「ん?なんだ…?」

焔「…私たちのやったこと、意味あるよね…?」

海「…さあな。未来のことなんて分かったら苦労しねぇわ…」

ジジッ

…まるで、神樹様がそれに答えたかのようだった。

…頭の中に、映像が見えた。

焔「…ねえ海、私今すっごい現実離れしたこと起こってんだけど。」

海「奇遇だな。俺もだ。頭の中に見たこともない映像ってどんなミステリーだよ。」

焔「うわぁドンピシャ。私もなんだけど。…ただ内容、これ風たちだよね?」

海「そうだな…須美ちゃんやあの助けた子もいないか?」

焔「ほんとだ…園子ちゃんもいるね。全身に機械付けてるけど。」

海「やっぱアプデで代償かなんか付けられたんだろうな…めっちゃ笑顔だけど。」

焔「…樹が歌手だって。信じられる?」

海「…いや、信じらんねえ。だってあんなに引っ込み思案だったんだぞ?歌も俺達以外には緊張して空回りしてたし。」

焔「よねぇ…でもあの笑顔、作り物で再現できる?」

ほんとは、分かっていた。

海「いや無理だな。」

この映像は、可能性に過ぎないって。

焔「即答じゃない…あ、あの子が樹と話してる…二人ともすっごい楽しそう。」

神樹様が、頑張った私たちにくれたせめてものご褒美だって。

海「あの時助けたあの子がいずれ樹の親友になるのか…」

でも、十分だった。

焔「…勇者に選ばれたことは確かよね。」

2人が幸せに笑えて。

海「…となると、退けたんだな…」

来る災厄を退けれて。

焔「私でも一体よ?さすが我が娘達。」

親友を見つけられる未来があるってだけで。

海「そうだな…」

私たちの戦いで。

焔「…もう1回聞くけどさ、意味、あったと思う?」

娘達の未来の親友を救えたのだから。

海「…あっただろうな…風も樹も、他のみんなも、幸せそうだ。」

そこに、意味はあったのだから。

焔「…あー、意識朦朧としてきた。もう旅立ち時ですわ。」

海「どこまでも被るのかよ。パクるな?」

焔「それはこっちのセリフ!」

海「…焔。」

焔「…何?」

海「俺は、犬吠埼海は。お前とあえて、結婚できて幸せだった。」

焔「私も、犬吠埼焔も、あんたとあえて、結婚できて幸せだった。」

海「…I Love You、だ。」

焔「Me Too、よ。」

 

ーーーーーーー10月10日ーーーーーーー

バーテックスとの超大規模戦闘発生。

フィードバック、神樹様の力が一時的に弱体したことにより星屑、乙女座が約300年振りに現実世界へと顕現。

大橋を崩壊へと持ち込むが、突如現れた2つの勇者システムの反応とともに海に消える。

一般の軽傷20名、重症8名、死者5名、行方不明者13名。

そして、大赦神官の犬吠埼焔、犬吠埼海もまた、行方不明。

 

ーーーーーーー10月11日ーーーーーーー

大赦本社、祈祷室にて行方不明だった犬吠埼焔、犬吠埼海の両者の遺体が発見される。

なぜ海に消えたはずの2人の遺体がここにあったのか、そして傷だらけであったはずの2人がなぜ一切の傷が確認できない状態で見つかったかは不明。

さらに2人の遺体から勇者システムの残留因子が確認される。

これにより昨日の勇者は犬吠埼焔、犬吠埼海であると断定。

後に、大橋の幻の勇者として伝説となる。

 

あの時、焔と海が見たのは神樹様が数ある可能性の中でも1番幸せであったものである。

しかし彼女たちはその可能性すら超えーーー

 

 

 

 

 

ーーー神世紀301年ーーー

ーーー風sideーーー

風「ふぃー。パーティー最高だったわねー!」

樹「お姉ちゃんもみんなも喜びすぎなんだよ…まだ決定しただけでこれからなのに…」

風「それでも十分すごいのよ!数にもの言わせて絶対売れさせて見せるわ!」

樹「いいよ〜そんなことしなくても〜。」

ついに決まった樹の歌手デビュー。私達はさっきまでその記念パーティーを勇者部全体で大々的に行っていた。

風「みんなめっちゃ祝ってくれてたじゃない。あんたの人望がある証拠ヨ!」

樹「高校の人達はお姉ちゃんの方ー!人望は部長だしなきゃダメだもん…」

風「たしかにそれもそうね。何か食べる?作るけど。」

樹「もうおなかいっぱい。明日にして!」

風「えー?なら私は唐揚げでも食べよっ!!」

樹「あんだけ食べてたのにまだ食べれるんだ…」

風「食べることは女子力に直結する!まだまだ食えるわよー!」

樹「…ねえお姉ちゃん。」

風「んー?どうした樹。」

樹「お母さんとお父さん、見てくれてるかな。」

風「…当たり前でしょ!あんな優しい母さんと父さんよ?死んでも幽体なって見てくれてるわよ、樹の晴れ姿。」

樹「天国から見てるんじゃなくて幽体はダメだと思うんだけど…あとまだ晴れ姿じゃないよ!」

風「あーそうだったわね。ついつい待ちきれなくて。」

樹「もう…でもちょっと嬉しい。ありがとう。」

風「いえいえ。」

…ふと視線を感じて窓の方を見る。

火と水の精が、仲良く見守ってくれてる気がした。

(そうよね…私たちのかけがえのない母さんと父さんだもの。…見守ってくれてるわよね。あの時みたいに。)

 

〜外伝2 大橋の幻の勇者 fin.




どうもここなです。ここまで見ていただきありがとうございました。
今回は何個かお知らせや補足があるので。
まず補足です。これは焔と海が見た未来の映像について。
彼女たちが見たのは当時の神樹が考えうる限りの最高のパターンです。
ちひろが7体同時襲来の時に真実を伝えられ、その情報を元にそれぞれのバーテックスに的確に相性がいい人を当てられたことにより、一気に攻勢に転じられたものです。
牡牛座には影響を受けずに遠距離から攻撃ができる東郷。
うお座には動きを止められる樹。
てんびん座には強力な攻撃をぶつけられる風。
双子座にはかつて戦ったことのあるちひろ。
水瓶座には手数と距離を取って戦える夏凛。
牡羊座には分裂させることのない打撃の友奈。
6人が各自これを撃破し、最後にしし座を全員で叩く。
これにより満開を誰一人行わず次の世代へとバトンを繋げたルートが未来映像ルートです。
満開の代償を無理に返すことがなくなったことにより、神樹様の寿命も伸び、あと数十年は持つようになってます。
園子はあのままになりますが、そこはちひろと東郷が無理やり動けるような機械を制作させ、それによる登校を可能に。
無論かなり不便なことに変わりはありませんが、園子はみんなと勇者部をやれるだけで満足なので全く気にしてません。
さすがに神樹様も東郷の謀反(壁破壊)やそれによる天の神の顕現までは想定できるはずないと思うので。
次は日常編10話の予定です。次の章である「防衛の章」それへの繋ぎの話になるかと。
それでは、これからも「上里ちひろは勇者である」を、よろしくお願いします


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