闇の王子の幻想入り (タルタルト)
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人物紹介&用語紹介

新キャラ、新用語が出る度に更新していきます。用語紹介は次回の更新から。


テル

 

性別 男

 

種族 魔に近い人間

 

武器 真・ロウブレイク

 

かつて闇の王の後継者だった黒の少年。対立関係にあった白の王国と黒の王国にて幾度となく起きる争いに疑問を抱いていた。幻想入りを果たす前に始祖のルーンの光に当てられた為、全盛期より力が落ちている。又、幻想郷に入る際に████を宿されており、単独で████の力を操ることができる。何者かの影響によってか黒の王国にいた頃よりも████が多くなっている。

 

 

博麗霊夢

 

性別 女

 

種族 人間

 

武器 お祓い棒&御札

 

 

妖怪退治屋として人里からの依頼で調子に乗っている妖怪を退治したり、寺子屋の警護を行ったりしている。神社にまで影響が及ぶような大きな異変に対しては自ら打って出る。

また、特に理由がなくても通り道に妖怪がいれば叩きのめす。特に、妖怪に近付く人間や危険な場所に対しては消極的ながら監視を行っており、里の人間が妖怪になることがあれば成敗している。 お金にがめつい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧雨魔理沙

 

性別 女

 

種族 人間

 

武器 ミニ八卦炉&その他

 

魔法の森にある霧雨魔法店にて暮らしている少女。基本的に頭は切れるが、それを自分の生活に生かしていない力に執着し、力を誇示する自信家だが、その力は誰にも見せない「努力」を積み重ねて得たものである。かなり好戦的であり、曰く「派手でなければ魔法じゃない。弾幕は火力だぜ」「あー?弾幕に頭脳?馬鹿じゃないのか?弾幕はパワーだよ」らしい。

 

 

 

 

 

 

レミリア・スカーレット

 

性別 女

 

種族 吸血鬼

 

武器 グングニル・矢・蝙蝠

 

紅魔館の主で、約500年以上の歳月を生きてきた吸血鬼の少女。

フランドール・スカーレットという5歳下の妹がいる。容姿に反してかなり強く、眼にも止まらぬスピード、岩をも砕くパワー、思い通り悪魔を操る魔法力と言った反則的な身体能力を持ち、小手先のテクニックを無視する。紅霧異変の後はフランドールとも良い関係を築けている様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

フランドール・スカーレット

 

性別 女

 

種族 吸血鬼

 

武器 レーヴァテイン

 

性格的には少々気がふれている上に本人も引きこもり気味だった事から外には出してもらえず、その大半を紅魔館の地下室で過ごしてきたというまさに箱入り娘。テルが居候してからは定期的に地下室から出て遊んでいる様子。

 

 

 

 

十六夜咲夜

 

性別 女

 

種族 人間

 

武器 投げナイフ

 

紅魔館の主であるレミリア・スカーレットに仕えるメイド長。「完全で瀟洒」の二つ名どおりメイドとしての仕事は完璧かつ気品に満ち、従者として非の打ちどころがない。食客では申し訳ない、と思っているテルに家事を叩き込んでいる。

 

 

 

 

 

 

紅 美鈴

 

性別 女

 

種族 妖怪

 

武器 無し(素手)

 

紅魔館の門番を務める中国風の妖怪。性格は穏和で、紅魔館へ不法侵入を試みたり喧嘩を売ったりしなければ襲ってくることはまずない。武道の達人という一面から武術家に試合を申し込まれることも多く、レミリアも試合の観戦を楽しんでいるらしい。 テルに模擬戦を申し込むも、全てのらりくらりと躱されている。まだ本編には出ていない。

 

 

 

 

パチュリー・ノーレッジ

 

性別 女

 

種族 魔女

 

武器 魔導書

 

見た目は少女だが齢100を越える魔女。

普段は紅魔館の図書館に引き籠っている。その理由は本と髪が日光で痛むから。本人いわく「本のそばにいるものこそ自分」と考えている。体が病弱で持病の喘息を持ち、魔力は膨大だが詠唱し切れないなど、身体能力は人間にも劣る。テルに魔理沙対策の見張りを頼んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

こあ(小悪魔)

 

性別 女

 

種族 悪魔

 

武器 魔法

 

紅魔館大図書館の司書。本来、悪魔は幻想郷内では吸血鬼と同等の力を持つ強大な種族なのだが、その中では力の弱い方なので小悪魔と呼ばれるとのこと。最初は、パチュリーを倒したテルに敵意をいだいていたものの、何故か気が合い、あっさりと心を開く。

 



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紅霧異変の章
第1話 周期点


ハーメルン始めての投稿です。
よろしくお願いします。


ーーさようなら、アイリスーー

闇の王と、その後継者はもつれ合う様にして一つの島に落ちる。

そして、魂尽きた様に掻き消えた。

 

 

 

これは、あるはずのない「もしも」のお話。

 

 

 

 

「…………う……ん…………」

俺は、もう少し深い眠りの余韻を感じていたいと言う欲に抗って、目を開けた。

「何処だ……? 此処は……」

そう零しながら立ち上がった俺……闇の王子 テルは、全く見覚えがない場所にいた。

さっきからずっと頭が痛い。始祖のルーンの光を浴びすぎただろうか。ふと手に妙な感覚がすることに気づく。

「これは……? 手紙か……?」

『これを読んでいると言う事は、テル様はもう黒の王国には居ないのでしょう。

テル様と陛下が始祖のルーンによって消息不明になってから、必死に捜索させ、発見した所で兵が誤って転移の秘術を使ってしまい、今テル様がいる場所に転移されたと言う事です。テル様の居場所を特定する事は、最低でも一月以上はかかる様です。

足りない事は、随時報告致します。

ヴァルアス』

と言う手紙に、俺は、思わず肩の力を抜いてしまう。どうやら、まだ俺が闇の王を斬った事はヴァルアス達には知られていない様だ。

いくら闇の王を斬ったとは言え、師匠の一人に恨まれたくはない。まあ報告出来ると言うなら、助けて貰いたい所だが……。まあ、この際そこは置いておいてだ。ヴァルアスがまだ自分の事を仲間だと認識している事を確認し、俺は辺りを見回した。今自分が居る場所は、霧が濃い湖のほとりらしい。 緑が豊富なので、ヴァルアスが言っていた通り黒の国ではまずないだろう。かと言って白の国にも見えない。頭を捻らせていると、俺の頭上に空飛ぶ箒(の様な物)にまたがり、白黒の服を纏った少女が駆けた。

「なんだ⁉︎」

思わず狼狽える。すると、彼女が飛んで行った先に赤い大きな館が姿を現した。 霧が濃くて、気づいていなかったのだ。

本能が「危険」と言っているが、他に行く宛がない為、彼女を追い、その館に向かう。

例の館にはすんなりと入れた。窓が相当大きかったため、翼を生やした状態でも容易に潜入できた。だが、彼女を見失ってしまったらしい。

まあ、それはいいとしてだ。思わぬ問題は、この館の広さにあった。

「迷った……」

まさかこんな所で迷うとは思わなかった。さっき入ってきた窓まで分からなくなる始末だ。

途方も無く長い廊下を歩き終えると、目の前に大きな扉が見えた。どこかに繋がっているだろう。そんな希望を持ちながら扉を開けると、

まず目に入ったのは赤い色の壁と、鎖と大量の人形だった。

赤い部屋と鎖に思わず目を見開く。呆然としていると後ろから声が掛けられた。

「あなたはだれ……?」

振り向くと、色とりどりの結晶がついた翼と、赤い服を身につけている少女が俺の方を向いて首を傾げていた。

to be continue……

 

 




多くの人が見てくれるといいなぁ


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第2話御伽と今

ちょっと遅くなりました。
すいません。


あなたはだれ……?」

 

振り向くと、色とりどりの結晶がついた翼と、赤い服を身につけている少女が俺の方を向いて首を傾げていた。

思わず身構える。だが聞いたのが少女だと確認すると、緊張を解きながら答える。

「俺はテル。剣士だ」

 

「ふーん」

 

自分で聞いたにも関わらず、少女は興味無さげに言う。

 

「わたしはフランドール。ここにずっと閉じ込められてるの」

 

閉じ込められてる?言葉の真意が読めない。これだけ広い館なのだから、監禁するような部屋しかないというのは考え辛いだろう

だとしたら……意図的に隔離されてる?……

俺が思考を広げていると、フランドールはいきなり光の弾の様な物を飛ばしてきた。

 

「なっ!」

 

思わず声を上げる。光の弾を弾き、避ける。

 

「へぇ、いきなりの弾幕を避けるんだ。変なニンゲン」

 

「流石にいきなりはやめてほしいな。後少し気付くのが遅かったら、身体に当たってたぞ……」

 

事実だ。しかもあの弾幕と言う物が身体に直したらタダじゃすまない事も分かっている。

 

「わたしずっと閉じ込められてるから遊んでくれる人がいなくて……だからテルで遊ぶわ!」

 

「分かったよ。相手になってやる」

 

すると、フランドールは高らかに笑い始めた。

 

「あははっあははっアハハハハッ」

 

フランドールは笑うと、身体を分離させた。いや、増殖させた、と言った方が良いか。

 

「分身魔法か!」

 

「さあ、コワレチャエ!」

 

前に攻撃された時より多くの弾幕が姿をあらわす。

その勢いは凄まじく、ジリジリと下がって行くしかない。

後退していくと図書室に飛び込んだ。

 

「アハハッ 逃げてばっかじゃつまらないわよテル!」

 

「クッ」

 

思わず毒を吐く。すると次の瞬間、天井の窓から顔を覗かせていた空が紅く染まった。

 

「なんだ⁉︎あれもお前達の仕業かフランドール⁉︎」

 

空を覆っている霧の様な物は明らかにこの館から出ていた。

だが、返ってきた答えは予想外の物だった。

 

「何あれ……わたし、あんなの知らない」

 

「でもあの紅い霧、明らかに此処から出てるぞ!」

 

「知らない……だって、だってお姉様は何時もわたしだけ仲間外れにするんだもん!」

 

「……お、ねえさま?」

 

続く言葉に呆然とした。姉がいたのか。だとしたらその姉がこの城の亭主だろう。

そんな事を考え、フランドールから一瞬目を背ける。そして再び目を向けた瞬間だった。

水の檻がフランドールを包み込んだのは。

 

「じっとしてなさいフラン。その方に失礼にあってはならないわ」

 

「パチェ!」

 

フランドールを閉じ込めたであろう魔法使いに目を向けると、紫髪に大きな帽子を被った女性だった。

さらに赤髪の悪魔が魔法使いの後ろから悲鳴を上げながら飛んできたと思うと、早口で言葉をまくし立てた。

 

「元素魔法『ベリーインレイク』! 流水を越えられないと言う吸血鬼の弱点をついて、フラン様を隔離するとは!流石大魔法使いパチュリー様!」

 

「それに今はみんな忙しいの。そこで大人しくしてなさい」

 

俺はいまいち状況が飲み込めず、目を見開いて立っていたが、すぐに我に返り、紫髪の魔法使いに声をかける。

 

「おい!魔法使いのアンタ!この館はなんなんだ?後あの霧はなんなんだ?」

 

パチュリーという魔法使いは、丁寧な口調でこう言った。

 

「お初お目にかかります。黒の王国、次期統治者。テル様」

 

「テル……様?俺はアンタに様付けされて呼ばれる義理も理由も無い筈だろ?」

 

「貴方様はご存知にならない筈ですが、大昔の白の王国と黒の王国。その二つの国の対立から生まれた秘術は一万年後の現代まで語り継がれております」

 

「い、一万年⁉︎」

 

元いた世界から膨大な年月が経っている事に知った俺は、声を上げてしまう。

 

「はい。この世界はあの御伽から一万年経った世界です」

 

今考えてみると、この館が有る場所に見当が付かなかったのも、フランドールの種族に見覚えが無かったのも辻褄が合う。

でも一万年という膨大な年月に思考が追いついてこない。理解しようとしても出来ないのだ。すると、パチュリーは真剣な表情をして俺に声を掛けた。

 

「テル様、傲慢なのは分かっていますが、この異変だけは手を出さないで下さい」

 

異変と言う言葉に違和感を覚えつつも、俺は否定の意を示した。

「悪いけどそれは出来ない。フランドールの事やこの紅い霧の事を知りたいからな」

 

パチュリーは俺の言葉を聞くと、一瞬目を伏せてから俺の方を向いた。

 

「そうですか……。ならば仕方ないですね。いくらテル様といえど今レミィの計画を邪魔される訳にはいきません」

 

パチュリーの雰囲気が変わった。恐らく闘気を放っているのだろう。

 

「望む所だ」

 

おれはそう言うと、大剣の柄に手を掛けた。パチュリーも、浮いてる本を構えた。

空気が驚く程ピリピリと震えている。俺は、余計な音を意識から消し、戦いに集中する。

俺とパチュリーは同時に、滑らかな床を動き始めた。

戦いが、始まった。

 

to be continue……

 




今後はネタ切れ防止&スランプ防止のために不定期投稿になってしまいます。
本当にごめんなさい。でも第3話を楽しみにしてて下さいませ。(こんな駄作楽しみにしてくれる程読んでくれてる人居ないと思うけど)


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第3話 伝えられる今を

やっとできました。第三話です
駄作だなぁ……


テルside

 

「……はあッ!」

 

飛んできた無数の弾幕を大剣で的確に弾く。戦いが始まってから数分が経った。その数分だけでパチュリーの攻撃方法が分かった(奥の手は残してあるだろうが)そして、パチュリーが相当な手練れだという事も。

フランドールの戦闘力とは桁が違った。弾幕の数、一つ一つの弾幕の攻撃力、状況判断力が先の戦闘よりも大きく上昇していた。

そのため、俺はパチュリーが撃って来る弾幕を避けるか、弾くしかできない。

 

「マズイな……」

 

俺は胸中でそう呟いた。このまま弾幕を避け、防ぎ続けても、ジリ貧でこちらが負ける。それまでに逆転しなければならない。

そこまで考えた所でふと思う。何か違和感がある。何処かに誘導されている様な……

 

「っ!まさか!」

 

今となってやっと気付いた。これはパチュリーの罠だ。感じた違和感はそれだったのだ。

周りには巨大な魔法陣が出現している。避ける隙も無い。ならば最後の手段だ。これは賭けだ。成功する確率も低い。だがそれに賭けるしか無い。そう考えた俺は魔法陣から発射された光線によって巻き上げられた砂埃の中を駆け始めた。

 

フランside

 

「いつもそうだ。いつもフランだけ仲間はずれ」

 

流水で作られた膜に隔離されたフランは、そう零した。フランの目の前ではパチュリーとテルの激闘が繰り広げられている。

フランの脳裏にある昔の光景が浮かび上がる。沢山のぬいぐるみで包まれているフランの部屋。そこに一人佇んでいるフラン。

フランの部屋には姉であるレミリアやメイドである咲夜。パチュリー達がやって来る。だが、誰一人として

フランと関わらない。関わらずに去っていく。フランの心を孤独が侵食していく。孤独に身を委ねるがままにぬいぐるみを抱き潰す。

そんな光景が何度繰り返された事か。

何度フランが孤独と言う絶望を味わった事か。今だって、フランと遊んでくれたテルをパチュリーは仕留めようとする。

誰もフランの気持ちなんて解ってはくれない。誰もフランの心に触れようともしない。

そんな事を考えていたフランは視界を覆い尽くしていた黒煙が晴れた事に気が付かなかった。

そして、その黒煙が晴れた先に、黒衣の剣士が佇んでいたことにも。フランがそれに気付いたのは、自分にかけられた流水の元素魔法が解かれた後だった。

 

テルside

晴れる黒煙。俺は戦いの緊張を息と共に吐き出した。目の前に紫髮の魔法使いパチュリーは居ない。彼女は、俺との戦いに敗れて本の中に埋もれている。ギリギリの戦いだった俺が勝てたのは間違いなく運だ。次やったら恐らく俺は負ける。それほど彼女の実力は凄まじい物だった。俺が勝った事に気付いたフランドールは驚きをあらわにしている。

 

「テル、パチェに勝ったの⁉︎」

 

フランドールは聞いてくる。俺は手を上げて

 

「ああ!」

 

と答えた。そして問う。

 

「フランドール。お前はこれからどうするんだ?」

 

「どうする……って?」

 

「フランドールがさっき言っていた事だ。お前のお姉さまとやらに文句を言うか言わないかって事だよ」

 

「私は……」

 

フランドールは姉に文句程度だろうと反抗することに躊躇っている様だ。

まあ、それはそうか。多分フランドールは誰にも心の内をさらけ出せて無いのだろう。

俺はフランドールに声を掛けた。

 

「決まってないなら今決めなくてもいい。俺はこのまま館の探検を続けるしな」

 

でも、と俺は続きの言葉を紡ぐ。

 

「伝えたい事があるなら、伝えられる今のうちに伝えた方がいい。いつ、伝えられなくなるか分からないからな」

 

その言葉はフランドールだけではなく、過去の自分にもあてた言葉だった。

あの始祖のルーンの間でアイリスの手を離してしまった時から、何時も心の中で後悔している。早く話せばよかった、と。

自分があの少女に抱いてていた想いを。

 

「じゃあな」

 

そう言い残し、俺は部屋を出ていく。部屋には、虹色の羽を持った少女の俯きと静寂だけが残った。

 

 

to be continue……

 

 




こんな駄作。
見ていただけるだけで本当にありがたい事です。
本当にありがとうございます!
やっぱ駄作だなぁ…


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第4話 首謀者

遂にできました!
つか、疲れた…
えっ。もう2019年じゃないすか!


テルside

「こっちも違うのか……」

フランドールと別れてから、二十分余が経過した。俺は今、三つ目のドアを開けたところだ。

フランドールとパチュリーの話に出てきた同一人物『レミィ』、『お姉様』。

この紅い霧の事件の首謀者であろうその彼女を探しているのだ。もしかしたら、何故俺がこの場所に飛ばされたのかと言う理由も知っているかもしれないと言う希望を抱いて。

 

「はぁ……」

 

溜息を吐きながらも、次のドアに向かう。

その時だ。後ろに視線を感じたのは。それと同時に、殺気……のようなものも感じた。

俺は咄嗟に剣を抜き、空気を切り裂いてこちらに向かってきたナイフを弾き落とした。

 

「誰だ!」

 

すると、銀髪の女性が何もないところからいきなり現れた。

 

「不意打ちからのナイフを弾くとは……さすがにパチュリー様を倒した事だけはあるようですね」

 

「アンタは誰だ。どうして俺を攻撃した」

 

「申し遅れました。私はこの館の主人、レミリア・スカーレット様にお仕えしているメイド。十六夜咲夜でございます。あなたを攻撃した理由は、レミリア様からあなたを見定める様命じられましたので」

 

「見定める……って、避けられなかったら死んでたぞ……」

 

思い出すとあのナイフは心臓をピッタリ狙っていた。

 

「あの程度の攻撃を避けられなかったのならその程度の者として片付けるつもりでしたわ」

 

「はぁ……」

 

俺は何度目かの溜息を吐いた。

 

「で?見事不意打ちのナイフを避けた俺はどうなるんだ?」

 

と言うとその女性は作り物めいた笑いを浮かべ、

 

「あなたにはレミリア様のところにいらっしゃって頂きます」

 

と答えた。

 

「拒否権は……ないんだろうな」

 

「ええ」

 

女性は短く答えると、懐中時計を取り出した。

次の瞬間、俺が立っている床は、滑らかな黒石から真紅のカーペットに変わっていた。

正面からものすごい威圧感が俺を襲う。闇の王程ではないが、ヴァルアスと同等かそれ以上のものだ。決して、侮って良い敵ではない。

 

「アンタが、この霧の事件の首謀者か?」

 

前を向きながら聞く。威圧感の原因は、まだ幼そうなーーフランドールと同じ様な程ーー少女だった。

だが、その身に纏っている雰囲気がフランドールとは違った。『恐怖』だ。少女が纏っている雰囲気は。

幸い、恐怖の類いは王国でたっぷりと味わせられたため、既に慣れている。

 

「そう。私がこの霧を出す様にさせた犯人。レミリア・スカーレットよ。それに貴方こそ、パチェを倒したって言う人間ね?」

 

「あいにく、俺が人間か、って言うとちょっと違うけどな。魔の中でも人間よりってだけだ」

 

「へぇ、だから強い訳ね」

 

「残念ながら、俺はそこまで強くはないし魔の力があるって訳でもないけどな」

 

「あら、それは謙遜なんじゃない?一万年前の王子、テルさん?」

 

「……知っていたのか……」

 

「敵の情報は多ければ多い程良いでしょう?咲夜に見てもらって貴方の戦い方はある程度把握したわ。まあ、奥の手はあるでしょうけど」

 

少し会話をしただけでも分かる。この少女はかなりの曲者だ。観察眼、聡明さ、そして恐らくは戦闘スキルもトップクラスだろう。

しかも奥の手の存在まで見破ってきた。まぁ有るには有るが、反動がデカすぎるので容易には使えない。

 

「アンタも中々の曲者みたいだな。しかも自分達のためにわざわざ霧なんて出すんだからな」

 

「あら、魔である貴方には分かるんじゃないの?手に入れたいと言う征服欲が」

 

「確かにあるかもな。俺にも。でもアンタのものとは違いそうだがな」

 

「当たり前じゃない。貴方はただの魔。一方私は吸血鬼なのだから」

 

吸血鬼……俺の時代の数百年前の話だと言う伝説か。大厄災で滅んだと言われていたが、まさか実在していた上に生き残りがいたのか……。

 

「貴方も知っているでしょう。吸血鬼は水と太陽に弱い。そのために例え征服しても出歩けないのよ。だから霧で覆ったの。

この支配した幻想郷を自分で見て回るために」

幻想郷、それがこの世界の名前か。

 

「アンタはもうこの世界が自分の物になってる様な言い方をしてるが、まだアンタの物にはなっていない。油断は禁物だぜ?吸血鬼さん」

 

すると、吸血鬼の雰囲気が変わった。

 

「何?まさか貴方がそれを止めようとするの?」

 

どうやら、上手く乗せられたみたいだ。俺はあえて少女を挑発させる様な言葉を選んだ。戦いに持ち込むためだ。今はあの少女と一戦交え、少しでも手の内を明かさせなければならない。

 

「ああ。この霧があると、この世界の景色が綺麗に見えないんでな」

 

「いいわよ。貴方を打ち負かして、この世界の住人に見せしめにするわ」

 

「あいにく、俺はそこまでまで見せしめにはならないと思うけどな」

 

俺と少女の間の空気が、徐々に張り詰めて行くのが分かる。俺は大剣を構えて、少女の初手に反応できる様に全神経を集中させていた。少女がなんらかのの非実態で出来た槍を構え、打ち込もうとしてきた、その時だった。

ガヂャッとドアが開かれ、招かれざる客が来た。俺は驚いて、ドアから入って来た乱入者を見つめた。横を見ると、咲夜と言う従者も、吸血鬼の少女も驚いていた。それもそのはず、入って来たのは、息を切らしたフランドールだったのだから。

 

 

 

 

 

to be continue……

 

 

 




なんか年明けてますね!
明けましておめでとうございます!
元旦に出そうと思ったけど間に合わなかった…
多分次はもっと遅くなると思いますが今年も闇幻、よろしくお願いします!


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第五話〜邂逅に次ぐ邂逅

どうも、タルトです!
10ヶ月もお待たせいたしました!


テルside

 

「やめて!」

 

部屋全体に、フランドールの叫びが響き渡った。フランドールは、息を切らしながらも言葉を続けた。

 

「テルをいじめようとしないで!」

 

「虐める?そんな人聞きの悪いことを言わないでもらえるかしら。私はただ勝手に館に侵入してきた不審者を殲滅しようとしただけよ?それに、……何故貴女はここにいるの?フラン。部屋にいなさいと言ったわよね」

 

殲滅、と言う言葉からも俺を生きて帰らせる気は毛頭無かった様だな。……まぁ自分であそこまで挑発したから自業自得なのかもしれないが。

 

「お姉様!もう私は散々なの!お姉様の言う事をいつもいつも聞いて、部屋で一人でいるのも、目の前でテルが壊されちゃうのも!」

 

「生憎と、今は貴女の戯言を聞いている暇は無いの。部屋に戻りなさい」

 

そう言うとレミリアは『威圧』を発する。量は多くは無いが、なんと言っても質が凄い。闇の王に迫るかもしれない程だ。

だが、フランドールはそれに屈さずにレミリアに牙を剥く。

 

「私は本気よ!お姉様!私はもう、いい子でいるのをやめる!」

 

フランドールは言葉を発した後に、手から炎を生み出して剣を作り出した。炎の温度が異常な程高いのは見ているだけでもわかる。

恐らく、アデルの持っていた黒の王国の宝物庫の中でも強力だと言われていた宝剣なら容易く真っ二つにできる程に。

レミリアに対して敵意を剥き出しにしているフランドールを見て、レミリアは俺達を一瞥した後に狂った様な笑みを浮かべた。

 

「フラン。……今貴女は自分が何をしているか分かっているの?……そこの侵入者に何か吹き込まれただけなら捨て置こうと思っていたけれど……スカーレット家の吸血鬼がたかが魔なんかに唆されるなんて、恥を知りなさい」

その言葉を受けて、フランドールは悔しそうに歯噛みをした。あくまでも臨戦態勢を維持し続けながら。

その姿を見て、レミリアも本格的にフランドールと戦う姿勢をとった。

レミリアとフランドールの双方が、武器を構え、互いを睨んでいる。

二人の間に緊張が高まってゆく。緊張に耐えかねたのか、空中に火花が散った。

その時、フランドールはレミリアに向かって途轍も無い速さで宙を駆けてゆき、攻撃を仕掛ける……が、レミリアは非実態の槍でフランドールの攻撃を軽く捌き、逆にフランドールを吹き飛ばした。

壁に激突するかに思えたフランドールは、すんでの所で体勢を立て直し、再びレミリアに向かってゆく

ぶつかり合う膨大なエネルギーの余波が館にヒビを入れてゆく。

 

「これは不味いかもな……」

 

呟いた途端、ビビが入っていた館の屋根が崩落し始めた。

瓦礫に巻き込まれない様に飛びながら、戦闘中の二人に目をやる。剣や槍を使った近接戦闘から、弾幕を使った中距離戦闘になるがそれでもフランドールが少し押されている。

そして、二人の戦いに気を取られていた俺は気づかなかった。

お祓い棒を俺に振り落とそうとしていた紅白の服を着た女が背後にいた事を。

 

「ぐっ!?」

 

もろに攻撃を受けなかったのは幸運だっただけだろう。辛うじて妙な棒による攻撃を腕で受けた俺は、魔力の気配を感じて即座に後ろに飛び退った。

案の定、数瞬前まで自分がいた場所に魔法光線が通り過ぎていった。

 

「いきなり何するんだ!?」

 

俺は大声でそう訴えるが、直接攻撃を仕掛けてきた女と、魔法を打ってきた女は答えずに臨戦態勢を取る。

 

「何で毎回出会った先から戦闘になるんだか……」

 

そう呟きながらも、俺は背中の鞘から大剣を抜く。

 

「悪いが、戦う前に名前だけ教えてもらってもいいか。じゃないと勝った後に自慢できないからな」

 

こう軽く煽る事で、彼女達の名前を知れるようにする。もしフランドールが負けてしまった場合に、共闘出来る可能性を残しておく為だ。……まぁ、煽っている時点で彼女達にとっての俺の印象は急下降しているだろうが。

彼女達は露骨にこちらに怒りを向けてから、大声でこう答えた。

 

「これから私に退治されるんだから別に名前を知っても意味無いと思うけど……まぁ良いわ。私は博麗霊夢。妖怪退治が仕事の巫女よ」

 

「んで、私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ」

 

紅い霧と、紅い館を背景として、もう一つの戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

to be continue……

 

 

 




改めてまして、タルトです
私の私生活が急に慌ただしくなり、その上執筆に使用していたiPadがぶっ壊れ、修理に出していたりがあった為、こんなに遅くなってしまいました。本当に申し訳ございませんでした!
連続投稿するので許してください!


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第六話〜共闘と決戦〜

第五話に続いて連続投稿です。少し地の文多目で読みにくいかもしれません。ご了承ください。


テルside

 

 

「はぁっ!」

紅白女が気合を迸らせながら、妙な棒で打撃攻撃を仕掛けてくる。その攻撃のキレはかなりの物で、避けるだけでもかなりの集中力を要する。この戦い、明らかに分が悪いのはこちらだった。紅白女を相手取るだけでもかなり厄介なのに、絶妙なタイミングで魔法使いの女が魔法光線を挟んでくるので俺の体には確実にダメージが蓄積されてゆく。そして、蓄積されたダメージは必ず体の何処かに表れてしまう。

 

「しまったっ!」

 

魔法光線を避けるタイミングがズレてしまった。ズレたのは一瞬だが、致命的なミス。

 

「がはあっ!」

 

紅白女の打撃を受け身すら取れずにマトモに受けてしまう。辛くも地面に激突は避けられたが、飛行が少し覚束なくなる程のダメージを受けてしまった。このままでは絶対負けてしまうだろう。だがそれではダメだ。フランドールに戦うように言ったのは俺だ。なら、それを最後まで見届ける責任があるだろう。……本当は使いたい無いが、アレを使うしか無いようだ。

 

「これは結構体に負担がかかるんだけどな……まぁ、仕方ないか」

 

そう零し、俺は体に力を込める。宙に漂っている魔力を自分と言う箱の中に押し込めるイメージ。

この世界の戦闘(と言ってもまだ3回目だが)で俺は初めて《闇の王子》としての力を体に出した。……だが、始祖のルーンの光を浴びすぎたからかもしれない。明らかに力が落ちている。いくらまだ上があるからと言って、ここまで弱くなっているとは思わなかった。

まぁ、今それを気にしてても仕方ないか、と気持ちを切り替えて、正面の二人を見据える

 

「……行くぞ!!」

 

 

霊夢side

 

一体なんなの!?この男は!?

私はそう考えずにはいられなかった。博麗神社から遠くに新しく発見されたと言う紅い館から何やら紅い霧が出て空を覆い隠してしまったから、また新しい異変かと辟易しながら館に向かえば、館は半壊してたし首謀者であろう吸血鬼姉妹は戦っていたしで、何がなんだか分からないうちに魔理沙と合流した。

 

二人で少し吸血鬼姉妹の戦いを見ていると、自分達以外にもあの戦いを見ていた男がいた事に気づいた。とにかく話を聞こう……と思ったのだが、男に近づいた時に、纏っている魔力の異質さに驚いた。「闇」としか形容できないその魔力は、感じるだけで心臓をがっちり掴まれたような恐怖を感じた。その魔力に怖気ついてしまった私達はその男を危険人物として攻撃をした……のだけれど、案外大したことはなかったのだ。

 

そう、つい十数秒前までは。男は、何かを呟いた後に周辺の魔力を集め始めた。男の元に集められた魔力は全てあの異質な魔力に変換されてゆく。この周辺の魔力を粗方集め終わって途端、男の姿が変わった。服に鎧が付き、髪が少しだけ伸びたのだ。それだけでも随分と私達を驚かせたのだけれど、それ以上に私達に衝撃を与えたのはその魔力の量と身体能力の向上だった。さっきまでは、あの異質な魔力は感知しようと思わなければ全く感じられなかったのだが、今は違った。感知しなくてもあの恐ろしい魔力がしっかりと感じられているのだ。それ程魔力量が上がっている。その上、身体能力など最早化け物の域にまで達している。今の男の強さは通常の私を超えている。

 

「不味いわね……」

 

口内に焦りが広がる。私一人であれば一時撤退はできるが、ここには魔理沙がいる。魔理沙は決して弱くは無いが、それでもあの男より遥かに弱い。今の私も。なので、彼女に気を回しながらだと最悪の場合、二人とも殺されてしまう可能性がある。それだけは避けなければならない。この場合、優先されるのは……間違いなく魔理沙だ。彼女は私よりも明らかに伸び幅がある。ならば、将来有望な方を残すのは当然だろう。

 

「魔理沙、私がアイツの目を引くから、その隙にアンタは逃げなさい」

 

「はぁ!?何言ってんだ!当然私も戦うぜ!」

 

「お願い、今は素直に言う事を聞いて」

 

私の滅多にない真剣な声も表情に、魔理沙は意表を突かれたようだった。納得はしてないながらも、「おう」と答えた。

 

「五秒後に合図するわよ。五…四…三……え?」

 

私が「え?」と声を出してしまったのは、男が攻撃を止めたからだ。攻撃を止めた男は、そのまま眉をひそめ、もう一つの戦いに目を向けた。その時、私はようやく気づいた。あの男と戦う前はうるさい程に鳴り響いていたもう一つの戦いでの戦闘音が、今はぴったり鳴り止んでいる事に。

 

 

テルside

 

フランドールとレミリアの戦いの音が全く聞こえない事に気付いたのは、《闇の王子》の力を出してから十数秒後の事だった。

二人の方に目を向けると、レミリアがフランドールを抱きしめているのが見えた。所々漏れ出してくる二人の会話から推測すると、レミリアがフランドールを説得している……と言う事になるのだろうか。その後の様子から見るに、レミリアの説得が成功したようだ。

 

「改めてご挨拶するわ。私はこの紅魔館の主にして誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットよ。そして妹の…」

 

「フランドール・スカーレットよ」

 

「そこの「魔」はともかく、他の人間の事は知らないから自己紹介を願うわ」

 

と、レミリアが言うと博麗霊夢はさっきの真剣な表情と打って変わって面倒くさそうに答えた。

 

「博麗霊夢、知ってるみたいだけど博麗の巫女で、妖怪退治が仕事。言わなくても分かると思うけど、あんたらの出してるあの霧、迷惑だからやめてちょうだい。今すぐに!」

 

「私は霧雨魔理沙。探検家で普通の魔法使いだぜ!」

 

「待たせたわね、博麗の巫女!幻想郷を賭けて、決戦といきましょう!」

 

「今からやっつけてやるー!」

 

レミリアとフランドールの戦線布告を聞いて、博麗霊夢は覚悟を決めたように俺に話しかけた。

 

「ねえ、私達は一回あんたに休戦を申し込むけどそれで良いわね?」

 

その問いに俺は頷きながら肯定を示す。

 

「なら、あんたには魔理沙と一緒にあの金髪の方をお願いするわ!少ししたら紫の髪の方に誘導して!」

 

「ちょ、私かよ!?」

 

と言う霧雨魔理沙の叫び声が聞こえるが、博麗霊夢はそれを綺麗に無視した。

それで良いのか、と俺は呆れながらも

 

「分かった!」

 

と言葉を返した。

 

今ここで、この異変最後の戦いが始まった。

 

レミリアとフランドールは本気で俺達を抹殺しようとしているようだ。今までとは尋常じゃない程の数の弾幕が俺達を襲う。だが、それらは威力と数に力を向けているのか、速度は決して遅くは無いがそこまで速くもないので、確実に避け、フランドールを視界に捉えると、フランドールは巨大な炎の大剣をこちらに向かって振りかぶって来た為、自分の剣が燃えないように軽く闇を纏わせ、フランドールの斬撃を正面から受けた。

 

炎と闇の激突によって起きた爆発にフランドールが気を取られている隙に、俺は彼女に急接近する。

俺が超至近距離にいる事に気づいたフランドールは、少し驚きを見せたものの、すぐに無邪気さと狂気さが合わさった笑顔を浮かべ、その体を五つに分身させた。分身したフランドールに囲まれた俺は、強く翼を打ち鳴らして猛スピードで上空に飛び去った。フランドールは俺を追ってくる。このままでは俺は五人のフランドールに細切れにされるだろう。だが、その心配はいらない。何故なら霧雨魔理沙が俺をこのまま放っておくことはないからだ。……案の定、フランドールの分身に霧雨魔理沙が放った弾幕が炸裂した。その弾幕は威力が高いらしく、フランドールの分身を一撃で消し去った。分身が消えてもなお、フランドールは俺の事を追ってくる。

だが、彼女は気付かない。俺の事を追い続ける事に夢中で、レミリアの真上にいた事を。

 

「あとは任せたぞ!」

 

そう言って俺は後退する。

 

「ええ!」

 

と博麗霊夢は答え、続いて、

 

「霊符〈夢想封印〉!」

 

と言葉を発した。すると、彼女の周りに巨大な黒白の玉が現れる。その玉の威力は凄まじいもので、スカーレット姉妹をまとめて戦闘不能にまでさせてしまった。

 

「要注意……だな」

 

俺は博麗霊夢の事をそう分析する。一度共闘したからと言って、警戒が薄れるわけではない。あの「夢想封印」とやらの威力には目を見張るものがあった。アレを使われれば今の俺では勝てないだろう。取り敢えずあの博麗の巫女を「今は大丈夫だがいつ敵対するか分からない」としておく。そうする事で、博麗霊夢との接し方も変わってくる為、結構重要だ。

 

戦闘に敗れたスカーレット姉妹は力尽きた様に座り込んでいるが、その顔には微笑みを浮かべていて、どこか幸せそうだった。

そう。まるで俺に生き方を叩き込んでくれたスキアーズの最期の様に……

 

俺は、先の戦闘疲れた体を引きずって、なにやら色々聞き込みをされているらしい博麗霊夢達の元へ足を踏み出した。

 

 

 

 

 

to be continue……

 

 

 




珍しく連続投稿でございます。遅れたせめてものお詫びに頑張りました!(10ヶ月あったら頑張りにもなってない)
霊夢さんは案外友達思いなのです。


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紅霧異変幕問〜宴会〜

約1年ぶりの投稿……ヤヴァイッスね……


テルside

 

 

「……と、これがあの事件の全貌ってわけだな」

 

レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットが起こした異変ーー《紅霧異変》とでも称しておこうーーから数ヶ月後、俺は宴会の真っ只中にいた。なんでも幻想郷では宴会が流行っているらしく、異変解決後は皆で集まってどんちゃん騒ぎ、というのが通常になっていると言う。今回も旧地獄と呼ばれる場所にある地霊殿の面々が起こした異変ーー安直だろうが、《地霊異変》と称しておくーーを解決したと言うことで開かれた宴会らしい。

元々俺は参加する気は無かったのだが、宴会によってか幾らか上機嫌になっていた霊夢と魔理沙に、居候先の紅魔館から半強制的に連れてこられた。粗方俺の酔った姿が見たい、などと言った思惑によってだろうが、彼女達に弱味を握られる訳には行かないので酔い止めの秘術をかけて置いた。もっとも、その霊夢はベロベロに酔っているし、魔理沙は《紅霧異変》の事を酔いながら上機嫌で語っていたのだが。

 

「にしても、俺がレミリアの所へ居る間に霊夢と咲夜が戦ってたとはな……」

 

と、俺が零すと、

 

「ええ、残念ながら負けてしまったけど」

 

と咲夜が返した。

咲夜より強いであろうスカーレット姉妹を秒殺できる技を持っている霊夢が相手なのだから仕方ないとは思うが……。

 

ふと魔理沙たちの方を見ると、こあーーパチュリーと戦った際にいた赤髪の悪魔ーーが魔理沙に詰め寄っていた。魔理沙が借りて行った大図書館の本を返して欲しいのだと言う。以前パチュリーに頼まれ、大図書館の見張りをした事があるのだが、その時に本を借りに来た魔理沙の勢いはとてつもないものだった。

地下にあるはずの大図書館に箒に乗ったまま突入し、借りたい本をゴッソリと持って行って猛スピードで飛び去るのである。見張りの役目を果たさずに箒の勢いによって舞い上がった埃の中で呆然としていた事も流石に許して貰えた。その後に魔理沙を

 

「流石にあれはやり過ぎだ」

 

と窘めたのだが、幾らか勢いが抑えられただけらしく、大図書館から定期的には弾幕の発出音と箒の飛翔音が聞こえて来る為余り効果は無かったらしい。

オマケに本人も

 

「あんだけの本、パチュリー1人でしか読まないなんて正に死蔵だぜ」

 

と開き直る始末である。

 

「フフ、パチェにも友達が増えて良かったわね。私の運命は幻想郷と共にある。咲夜もこっちに来て良かったでしょう?」

 

「ええ、本当に。お嬢様も妹様と随分仲良くなられましたね」

 

「あら、私とフランは元々仲が良いわよ?」

 

と言うレミリアと咲夜の会話に、

(このままだと喧嘩に発展しそうな魔理沙達の会話を上手く丸めてその上別の話題にすり替えるとは……流石紅魔館の主)

と言った感想を抱いていたのだが……

 

「お姉様!……はあっ、はあっ、はあっ」

 

と息を切らしながら乱入して来たフランの次の一言によって、俺は先程レミリアに抱いた感想を撤回せざるを得なくなった。

 

「お姉様、私のプリン食べたでしょ!!」

 

と言うなんとも姿相応そうな言葉に一瞬、(フランも漸く普通の子供みたいな感情を持つことが出来たんだなぁ……)と言った現実逃避的な思考に陥ってしまったのだが、プリンと言う単語が脳内に引っかかった。プリンがフランの大好物だと知っていながら勝手に食べたのか……。これは流石にレミリアも謝るべきなんじゃ……。まぁフランは優しいし、レミリアが謝れば許すだろう……等と思っていたのだが、

 

「ああ、全然起きてこないからもういらないのかと思ったわ」

 

と言うあっけらかんとした言葉には、思わず頭を抱えた。又その言葉でフランの怒りも有頂天を超えたらしく、非実態の炎の剣ーーレーヴァテインと言うらしいーーを構えた。それをみたレミリアも、紅い非実態の槍ーーグングニルと言うらしいーーを構える。

 

ーー直後、今回の宴会の会場となっていた守矢神社から紅と橙の閃光が迸った。

 

「お姉様のバカーーー!」

 

「姉に向かってバカって言うなんて、お仕置きが必要な様ね!」

 

守矢神社の天井に大きな穴を開け、上空で武器を交えながら大喧嘩をしているスカーレット姉妹に霊夢達が呆れの目を向ける。

 

「止めてくださいぃぃぃぃ!怒られちゃいますうぅぅぅぅ!」

 

と涙目で叫んでいる守矢神社の巫女、東風谷早苗に向かって、俺は心の中で精一杯の激励を送るのだった……。

 

 

 

 

 

……さて、時は混沌に満ちたあの宴会の終了から数時間後。とうに日を跨いでしまっているため、早く休まなければいけないのだが、それよりも前に考慮しなければ行けないことがあった。

それは、宴会の終盤で霊夢に絡んでいたスキマ妖怪、と言う存在である。名前は紫、と言うらしいが、それ以外は何も分からない。だが、その異質さだけは分かった。紫と言うスキマ妖怪が持っている魔力の量と質が、圧倒的に飛び抜けていたからだ。生物は誰でも魔力を身体に秘めており、パチュリーや今回の宴会に参加していたアリスと言う女性は、常人よりも身体に秘めた魔力の量が大きく、それを利用する事ができる為《魔法使い》と呼ばれる。

魔力には例外もあり、例えば霊夢が身体に秘めているのは魔力ではなく霊力と呼ばれる物らしい……。

が、スキマ妖怪からは感じた魔力の量と質は霊夢を軽々と超える程だった。……つまり、あのスキマ妖怪は霊夢よりも強い。今の俺では霊夢一人を相手にするのですら勝てるか怪しいのに、あのスキマ妖怪を相手取る事態になった場合、まず勝ち目が無いだろう。唯負けるだけならまだ良いが、異質者である自分は必然性に猜疑心を持たれやすい為、最悪死を覚悟しなければならないかもしれない。しかもあのスキマ妖怪は宴会中にチラチラこちらを見ていた為、もう目をつけられていると思って間違いは無いだろう。

 

「全く……。何時になったら気を抜く事が出来るんだ……」

 

と呟いた俺の言葉は、誰にも聞かれる事はなく部屋の空気に溶けて行った。

 

……俺の呟きを聞き、口元に笑みを作った存在に、気付くことなく。

 

 

 

to be continue……

 




またもや約1年かかってしまい、本当に申し訳ございません……。こんなご時世ですが、そんな時こそ色々な小説を見て楽しみましょう!……と言う訳で幕問、楽しんでいただければ幸いです。


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幕間〜黒キ夢

ハッピーハロウィン直前にこんな話をぶっこむなんて……疲れてんのかな……。


……熱さ、痛み、苦しさ。全てに体がのたうち回りそうになる。

だが、のたうち回ることは出来ない。何か重いものに体が押しつぶされている様だ。周りは沢山の炎で囲まれている。自分の他に生きている者はもう居ないだろう。

 

…………そう。もう自分以外誰も残っていない。

自分以外は皆死んだ。自分だけを皆置いていった。自分だけを残して皆消えてしまった。

 

 

……何故?どうして?誰のせいで家族は死んだ?誰のせいで自分はこんなに苦しまなくては行けない?

 

……そうダ。あいツのせいだ。アイツが自分達を見捨テたかラ……████が自分達を見捨てたからシンダ。

 

………………憎い、憎い、にくい、ニクイ。痛い、いたい、イタイ。

辛い、つらい?ツライ?

 

何故?なぜ?ナゼあいツが王二なンてなった?

オれならもっと上手くヤレたノニ。

おレなら、僕なら、ワたシなら。

こんなに人をタクさん死なセルようなコトも、いタズラに始祖のルーンをこワスこトもなかったノニ。

 

そう……ソウ。ゼンブアイツが悪イ。

アイツが無能だかラ!アイツが臆病ダかラ!アイツが弱い

カラ!アイツが黒の王国なんかを残してオクかラ!

 

アイツがバカだから!ガンがえなしだかラ!生きる価値もないから!死んだ方がまシだから!ノロマだかラ!屑だカラ!死んだ方がマシダカラ!

 

ああ……アイツなんか……イナケレバヨカッタノニ……

 

「安心するがいい。その負の感情、我が上手く使ってやろう」

 

彼/彼女達が最期に見たのは、紛れもなく「闇」だった。

 

 

 

 

……モウ……ヤダ………………

 

 

 

「っはぁっ!……はあっ!……はあっ」

 

何かおぞましいモノを見ていた感覚がして飛び起きる。服は自分の汗でぐっしょりと濡れていた。

 

「なんだったんだ……?今のは……」

 

どこを見ても惨状。生還が許されず、死ぬ事しか選ぶことができず、そして誰にも等しく与えられた地獄が、そこにはあった。

 

「……何か。何かマズイ気がする」

 

自分でも何故そう思ったのか分からない、根拠のない焦燥。

 

「白の王国……だよな、きっと」

 

焦りを覚えたのは見知った風景だったからか。それとも彼女を恨み、妬み、殺したいと願っている者がとてつもない程に大勢いたからか。

 

「……でも……」

 

一つだけ彼は気づいていないことがある。

 

「最後に聞こえたあの声は……」

 

それは、始祖のルーンが彼に残した呪いであり、願い。

 

「あの、息が詰まるほどの闇は……」

 

それは、彼が彼でないことの証明

 

「一体、誰のものだった……?」

 

彼はまだ、自分が何者か、理解出来ていない。

 

 

 

 

 

 




正義は必ずしもひとつでは無い。正義はそれを信じる人の数だけある。
正義は必ずしも正しくはない。幸せには対価が必要なように、正義にも犠牲が必要だ。
せいぎ せいぎ せいぎ
ぎせい ぎせい ぎせい

せいぎ、言う文字を繰り返すと、ぎせい、と言う文字が出てくるように。

正義がひとつでは無いのなら、████が正義のために行った事は、他の犠牲になった誰かにとっては悪である。

……せいぎは、ただしくはない。


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