僕のクラスメイトの一人がクソホモで困っています。 (桃次郎)
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僕のクラスメイトの一人がクソホモで困っています。
拝啓
父さん母さん、そして兄さん。僕がIS搭乗適正がある”5人目”の男性である事が発覚し、IS学園へ半ば押し込まれる形で入学してから早2ヶ月の月日が経とうとしていますね。
IS学園といえば、全国屈指のエリート校でもあり、世界で唯一のIS搭乗者養成校としても有名な学校です。世界中から集った『天才』『神童』『エリート』と呼ばれる方達がそれは物凄い倍率の受験戦争を勝ち抜きようやく入学を許される学校です。
ISに乗れる男というたったそれだけの理由で、夏休み明けの二学期という何とも中途半端な時期に入学する事となった僕が、学園の勉強についていけるのかと最初は不安で仕方ありませんでした。しかし、教鞭をとってくださる先生方はとても親切な方達ばかりで、授業でわからない箇所は質問をすればとても丁寧に解説して下さるので何とか勉強に遅れること無くついていけています。
クラスメイトの人達も、入学当初は世間に蔓延る『女尊男卑主義』に染まった、男を人とも思わぬ恐ろしい人達だと思っていましたが、それも杞憂でした。
実際に出会って見れば、とても快活で優しい人達ばかりで、こんな僕に対しても仲良くしてくださるフレンドリーな方達でした。
このような善意ある方達の人となりを会う前から勝手に決めつけていた自分が恥ずかしいくらいです。
ただ…一つだけ、僕の学園生活で困った事があるのです。それは…
文章はここで途切れている。
「キミさぁ…何か勘違いしてない?」
「………」
僕、花本夕陽(はなもとゆうひ)は同級生でフランスの代表候補生でもあるシャルルくんから今日で3度目となる校舎裏への呼び出しを受けていた。
シャルルくんは僕を壁際まで追いやり、恐ろしい表情で僕を睨みつける。
シャルルくんは僕より一回り背が低いがその迫力は凄まじく、僕は情けなくもその身を震わせた。
「ボクさ、何回も言ったよね?一夏に”色目”を使うなって」
「ちょっと、言ってる事が…良く、わからない…です」
「は?」
僕の精一杯のしどろもどろの反論も、シャルルくんの剣幕の前では塵と消える。所謂壁ドンの状態で僕とシャルルくんの顔は目と鼻の先にまで近付いた。
「一夏は優しいからキミみたいな鈍臭い子にも構ってあげてるけどさ、自分でもわからない?自分と一夏が釣り合ってないって事くらいさ」
シャルルくんは女の子顔負けの美貌をもつ美少年だ、僕も初対面のときは性別を間違えた程だ。
そんな美少年が顔を歪ませ、僕へ恨み節をぶつけてくる。一体僕が何をしたっていうんだ、何で僕がこんな目に会わなくちゃいけないんだ…
「一夏はボクのものだ…」
「………」
「お前なんかには渡さない…!」
「あ、あの…」
「お前みたいなぽっと出の泥棒猫なんかにっ!一夏を渡すもんかァ!!」
そう叫んでシャルルくんは僕を置いて校舎裏を後にした、「泥棒猫」などと昼ドラでしか聞いた事のないような台詞を吐かれた僕はただ呆然とその場に立ち尽くすだけだった。
「夕陽!」
「織斑くん…」
重い足取りで自室のある学生寮の前まで足を運ぶと、織斑くんが満面の笑みで僕を出迎えた。織斑くんは僕へ駆け寄ると肩を抱き、にこやかに笑った。
「遅かったなぁ!心配したぜ」
「ご…ごめん、ちょっと先生に授業でわからない所を聞きに行ってて…」
「夕陽は真面目だなぁ、俺なんかさぁ…」
その場でぱっと思いついた言い訳を口にし、織斑くんを騙した罪悪感に見舞われる僕。しょうがないじゃないか、あんなやりとり織斑くんに話せる訳が無い。
その場の流れで寮の玄関先で雑談をする二人、途中何人か寮へ帰ってきた生徒と挨拶を交わしながらも一夏は相変わらず夕陽の肩を抱いたままだった。
そして迫る、殺気。
(!?)
突如襲ってきた悪寒に震える夕陽、誰かに見られているような気がして、ふと後ろを向くと…
「ひっ…」
「お、シャルル!お前も帰ってきたのか」
「うん!ただいま一夏!」
頬を染め、微笑むシャルルくんがそこには居た。校舎裏で僕に見せたあの鬼の形相とは全く異なる、まるで恋する乙女のような艶のある笑顔だった。
「夕陽くんと何を話してたの?一夏」
「おう!それがさー…」
シャルルくんは織斑くんの声に耳を傾けながら、その顔を僕へと向けた。じっと視線を逸らさず、瞬きもせず真っ直ぐに夕陽を見つめるシャルルくん。
つい先程見せた微笑はなく、そこにあったのは嫉妬の炎を燃やす男の顔だった、織斑くんは話に夢中で僕達の水面下のやりとりに気づかない。
(一夏に肩なんか抱かれやがって…!)
(これは織斑くんからしてきた事で…)
(ふざけるな…どうせお前がまた一夏を誘惑したんだろ!?)
駄目だ、会話にならない。
夕陽は今日何度目になるかわからぬ溜息を零しながら、またシャルルくんに呼び出されるんだろうなぁと頭を抱えた。
追記
父さん母さん、そして兄さん。僕のクラスメイトの一人がクソホモで困っています。
息抜きにひとつ書いてみました。
クソホモシャルルくんとオリ主と一夏の三角関係の行く末は如何に…!
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僕のクラスメイトの1人が僕のパパを名乗って困っています。
ラウラくん…簪くん…頭に色々な娘が浮かぶけど登場させるのは難しいかな
簪くんは家のしきたりで女装している的な設定が浮かぶけどラウラくんはなー
そもそも「ラウラ」って女性名詞だから名前変えなきゃいけないし…
ボクと一夏の出会いはよく晴れた日の朝だった。あの時ボクを初めて見た時の一夏の顔はよく覚えている、日本では鳩が豆鉄砲を食らったと呼ぶのだったかな。
それからボク達は挨拶を交わし、言葉を交わし、お互いの時間を共有し。そしていつしか友達と呼べるような関係になっていった。
ボクの大切な思い出、ボクの大切な人。ボクだけの一夏、ボクだけの…だったのに…
「花本夕陽と申します、ISを操縦出来るとわかって急遽二学期からこの学園に通うことになりました」
花本夕陽…あいつが現れてから一夏はボクだけのものじゃ無くなってしまった。一夏の興味と関心は全てボクからあいつへと移ってしまった…
「夕陽!飯行こうぜ。シャルルも来るよな?」
「いいよ!」
「う、うん…」
何をするにも、一夏はあいつを呼び、あいつを連れ、それを当たり前のようにへらへらと能天気に笑いながら享受するあいつ…
ふざけるな……… 一夏は渡さない…!一夏はボクだけのものなんだ!
ボクは決心した、あいつにだけは負けない、あいつにだけは一夏を渡さない。そうじゃないと…そうじゃないとボクは…ボクは…!
「で?何か言い訳とかある?あっても聞かないけどさ」
僕達が寮に帰ってくるとシャルルくんは僕の腕を掴んで人気のない場所へと引っ張って来た。今日で4回目となる呼び出しだ。可憐な美貌を嫉妬に歪ませ夕陽に迫るシャルル、整った容姿がそうさせるのか、まるでドラマのワンシーンのような光景だと夕陽は当事者ながら何処か他人事のような感想を抱いていた。
「さっきのアレは…」
「言い訳は聞かないって言ったろ?毎度一夏を誘惑して何のつもり?」
「誘惑って…」
誘惑、男の僕が同性である織斑くんを誘惑していると、シャルルくんは仰る。一体シャルルくんの思考回路はどんな作りをしているのか。僕は意を決してシャルルくんに質問を投げかけることにした。
「シャルルくんは…」
「ん?何?また言い訳するんだ?」
「織斑くんの事が………好きなの?」
夕陽のその言葉を耳にした途端、シャルルはその表情を変えた。何か恥ずかしい事を言い当てられたような、そんな顔に。
「………は………はー?そんな訳ないんですけどー?」
「…」
目は口ほどに物を言うとは良く言うけどあれは事実のようだった、今現にシャルルくんは目を泳がせこの場を取り繕う様に必死だ。
「い、意味わかんないんですけどー?一夏の事なんて全然好きなんかじゃないんですけどー???」
「…シャルルくん、僕は…」
「な、何ー?ま、また言い訳する気ー???」
眼を水族館のショーをするイルカの様にギュルンギュルンと泳がせるシャルルくん、口調もしどろもどろだ。たかが僕の一言でこんなにも動揺するなんてシャルルくんは大丈夫なんだろうか。
「い、い、意味わかんないなー?わけわかんねーなー?」
結局シャルルくんはそのまま覚束無い足取りで後ろで束長髪を揺らしながら僕の前から立ち去っていった。連れてこられて放置される僕って…
シャルルくんの背を目で追う僕、そのままシャルルくんの姿が見えなくなると今度はシャルルくんが去っていった方向とは真逆の方から一際小さな背の生徒が僕の元にやって来た。
「大丈夫か?夕陽」
「ラウラくん…」
ラウラ・ボーデヴィッヒくん、世界で3番目に発見されたISを操縦出来る男子で、僕のクラスメイトの1人だ。そして…
「…夕陽、そんな他人行儀な呼び方をするな、私たちは親子ではないか」
ちょっとおかしい人でもある。
「何時になったら私をパパと呼んでくれるんだ?夕陽…」
潤んだ瞳で僕を見上げるラウラくん、ごめんなさい、僕の両親は健在だしちゃんと父さんも居ます。
「良いか?夕陽、私の嫁は誰だ?」
「い、一夏くんです」
別に肯定したくは無いのだが夕陽は首を縦に振る以外無かった、目だ、ラウラの目が有無を言わさない。
「そう、私と嫁は夫婦、そして…!お前は私たちの息子!違うか!?」
「違います」
「何故だァ!!」
「ひいっ」
夕陽の両肩を握りしめて揺さぶるラウラ、シャルルよりも小さな体格の何処にそんな力があるのか、夕陽はブルンブルンと揺さぶられた。
「パパの言う事を聞け夕陽ィ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
この不毛なやり取りは夕陽がラウラを自身の父親だと認めるまで続いた。
「さぁ夕陽、パパの手を握るんだ、迷子になってしまうぞ」
「う、うん…」
大人しくラウラの手を握り、先程シャルルに連れてこられた道を再び戻る夕陽。途中何人かの生徒が夕陽達を見ると微笑ましい目で見られた。
「見て!ラウラくんが夕陽くんと手を繋いでる!」
「親子愛よ親子愛!」
「ラウ夕よ!ラウ夕!」
何やらおぞましい言葉が聞こえてきたが恐らく気の所為だろう、気の所為だと信じたい。
「おぉ夕陽どこいってたんだ?寮に入るなりシャルルがお前を引っ張って行ったけど…ていうかラウラと一緒だったのか、シャルルはどこ行ったんだよ?」
部屋に戻ると僕とパ………ラウラくんの二人を織斑くんが出迎えてくれた、困惑した表情から察するに未だ状況が分かっていないようだ、僕だって分からない。
「おお嫁、私たち親子を出迎えてくれるか」
「お、親子…?」
「ラウラくんお願いだから少し黙ってて話がややこしくなるから…」
「??????」
こうして親子(?)が誕生したのだった…
ラウラくん爆誕、前回投稿した話の感想からインスピレーションを受けて誕生したラウラくん!
あ、ラウラくん登場と共に主人公の設定を「5番目に見つかった男子」に変更しました。
これでこの作品に登場する男子は一夏くん、シャルルくん、ラウラくん、???くん、主人公くんの5人です。
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PSYCHO PAPA
………シ〇ジくん可愛いよね。
「あぁ…疲れた」
僕はラウラくんの手を離すとそのままベッドの上へとダイブした、純白のシーツが僕を暖かく包み込む。
今日一日は色んなことがあったな、シャルルくんに人気のない所に呼び出されたり、シャルルくんに空き教室に呼び出されたり、シャルルくんに校舎裏に呼び出されたり。呼び出されてばっかりだな僕。
このまま何もかも忘れて寝ていたかったがラウラくんの声が僕を現実へと帰還させる。
「情けないぞ夕陽、私の息子ともあろう者がこんな事で音を上げていては」
こんな事だから音を上げているんだよと僕がラウラくんに異を唱える事はなかった。もう声を上げる気力すら今の僕にはない。すると僕を案じてか、織斑くんが僕の側まで近寄ってきた。
「大丈夫かー?夕陽ー?」
「お、織斑くん…?」
織斑くんは僕の背中に腕を回すとゆっくりと僕の上体を起こした、そして何を思ったか。おもむろに僕の額と自分の額を合わせたのだ。
「ちょっ…ちょっと織斑くん、何を…!」
「いやぁ熱ないかなぁと思ってさ」
あっけからんとした表情で僕にした行為を話す織斑くん、僕その姿をどこか「危うい」と思った。
前々からそうだ、織斑くんはどうも僕との距離感が近い気がする。シャルルくんという些か過剰な例が存在するからか余り気にしていなかったが、織斑くんは、その、近いのだ。
「ホントに大丈夫か?夕陽」
心配そうに僕を見る織斑くんと、別の意味で織斑くんが心配になってきた僕。なんとも言えないその間にラウラくんが割って入った。
「体調管理は兵士の基本だぞ、夕陽」
「僕は兵士じゃないし…」
「パパの言う事が聞けないのか夕陽!ママも心配しているぞ!!」
ダメだ、このサイコパパには言葉が通じない。ドイツの科学技術の粋を結集して造られたホモ強化人間には道理は通用しないというのか。
今もラウラくんは目を爛々と輝かせ、息子(?)である僕に家族ロールプレイを強要する。織斑くんは目の前のホモ強化人間が何を言っているかが全く理解出来ていないのか困惑している。大丈夫だ織斑くん、僕だって理解出来ない。
「あの、だから僕はラウラくんの息子じゃ…」
「………反抗期か…なんて事だ、私の愛情が足りなかったせいだ…」
顔を伏せてさめざめと己の不甲斐なさを泣くラウラくん、すっかり父親(自称)気分だ。暫くそうしていると意を決したかのように顔を上げた。
「…愛だ」
「へ?」
「お前には私の愛が足りなかった!お前とはもっと語り合うべきだったんだ!!」
語り合うもなにもこれまで全ての僕の異論を眼力でねじ伏せてきたじゃないかラウラくんは。
ラウラくんはベットに腰を深く落とし、座ると自分の太ももをポンポンと軽く叩いた。
「さあ、パパの膝の上で寝なさい」
「…」
僕は絶句した、このサイコパパはとうとう気が狂ってしまったのだろうか?いや、元から狂っていたのか?
「パパがうんと甘やかしてあげるからな…」
慈愛に満ちた瞳で僕を見上げるサイコパパ。どうしていいか分からず沈黙し、ただこの異常空間に佇む織斑くん。
「さあ夕陽!パパの膝でおやすみ!!」
「…あの」
「夕陽!!!」
ラウラくんから発せられる父性という名の「圧」が僕を襲う。僕はまるでその場に縛り付けられたかのように、身動きが取れない。
「お前はこれを受けるのは初めてだったな…どうだ?私の専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』の単一仕様能力、慣性停止結界(パパのいうことを聞きなさい)の味は…!」
なんて馬鹿な名前なんだと思った。ていうかラウラくんISの無断使用は禁止なんじゃ…
「さあ夕陽………愛してやるからな…!!」
「うわぁぁぁぁぁ助けて織斑くぅぅぅぅん!!」
「………ハッ!?」
僕の叫びが届いたのか、その場でしばらく無言で突っ立ってた織斑くんが正気に戻った。
「ラ、ラウラ!?何してんだ!!?」
「おぉ…嫁…お前も愛して貰いたのか…いじらしいなぁ」
恍惚とした表情で織斑くんを見るサイコパパ、両手を広げ、まるで織斑くんを迎え入れるかのような仕草をした。
「さあ来い嫁!夕陽共々愛してやる!」
「意味わかんねえ事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」
織斑くんの拳がラウラくんの脳天に振り下ろされた、が。その拳がラウラくんに届くことはなかった。
織斑くんの拳が、ラウラくんの頭上あと数センチの所で停止していた。
「お前は学習しないなぁ嫁ぇ」
「しまった…!」
ラウラくんの専用機の単一仕様(パパのいうことを聞きなさい)に拘束される織斑くん。学習しようよ…ていうか何で素手で向かった。あ、無断使用になるから駄目なのか。
「ふふっ…親子水入らず…父と母と子…なんて素晴らしいんだ」
「な、何言ってんださっきから…!?」
「織斑くんダメだ、パ…ラウラくんは既に正気じゃない」
この部屋の支配者と化したラウラくん、僕たち二人をねっとりと視姦しながらゆっくりとベッドから立ち上がる。
「さぁ…二人同時に愛してやるぞぉぉぉぉぉぉ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「静かにしろ馬鹿共ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
騒ぎを聞きつけて僕たちの部屋に突入して来た織斑先生、その手に握られた出席簿が僕たちの頭に叩きつけられるまであと2秒。
オレ疲れてるのかな…
あ、次回辺りに簪くんを登場させようと思います(唐突)
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ゼロカロリーなんて
あ、話変わるけどゼロカロリーって糞だと思わない?(唐突)
「酷い目にあった…」
結局僕たちはあの後、織斑先生からの説教と折檻を受けた。主犯であるパ…ラウラくんはそのまま首根っこを掴まれ生徒指導室まで連れていかれてしまった。
僕もとばっちりで頭に1発出席簿の表紙のところでパンとやられた、何で僕まで…
あぁ、織斑くんは出席簿の角のところでやられたせいか気絶してしまった。大丈夫なんだろうか?
「とりあえず織斑くんをベットに寝かせて…うーん、なんか喉乾いたな…」
疲れているのかな、何か飲み物が欲しい。僕は室内に備え付けられている冷蔵庫の扉を開け、中を見渡す。
「あー…切らしてたか」
寮の1階エントランスにある自販機まで行って何か飲み物を買ってこようかな、コーラが良いな、うん。あ、でもゼロカロリーのヤツは駄目だ、あれはコーラの皮を被った偽物だ。ペプシも駄目だ、あれは天下のコ〇・コーラに弓引くサ〇トリーの回し者だ。
「コーラコーラ…」
ついでに何か織斑くんにも何か買ってこよう、僕はコーラを買うために部屋を出た。
「コーラ、コーラ…」
途中、クラスの子達に話しかけられて適当に受け答えをしながら僕はエントランスまで降りて来た。僕の目線の先には例のあの赤い色をした自販機がそびえ立つ、テンション上がるなぁ。青いヤツだとこうはいかない、サ〇トリーは駄目だ。面白味も何もない。
「コーラ!コーラ!」
僕は勢いよく自販機の前に立つと小銭を投入口に流し込み目線を上に上げた。さあコーラは目の前だ!
「コーラ!コーラ!コ………」
僕の視界に飛び込んできたのは、黒いラベルのコーラだった。ラベルの下側、白い文字で「ゼロカロリー」の文字が無機質に主張していた。
「な………なんでぇ」
僕は項垂れた、ゼロカロリーだと?ふざけるなよ、コーラなんていくらゼロカロリーなどと主張しても中身は炭酸と甘味料と香料とその他添加物の混ぜ物じゃないか!!中途半端に健康志向を志すな!!
「うぅ…」
そうか、ココはIS学園。たった5人の男子生徒を除けば全員女性しか居ない異常な場所だ。カロリーマシマシのコーラなんて誰も飲まないんだ…需要が全く無いのか…!
「コーラぁ」
世の無常を嘆く僕、そこへ1人の子が僕に話しかけてきた。誰だろうこんな時に?
「あ、夕陽くんどうしたの?」
「コー…ん…?あれ、簪くん?」
更識簪くん、僕と同じISを使える男子生徒だ。けど制服は女子と同じものを着ている、なんでも家のしきたりらしく、成人するまで女性の格好しかしてはいけないらしい。何だか大変だなぁ。
「簪くんも飲み物買うの?」
「いや、なんか夕陽くんが落ち込んでる様だったから話しかけたんだけど…」
どうも僕を心配して声をかけてくれたらしい、優しい子だなと思う。
「見て!かん夕よ!かん夕!」
「カン・ユー!」
「人間のクズめ!」
何やらまたラウラくんと手を繋いで歩いてた時と同じく女の子達が離れたところで何やら騒いでいる、僕は人間のクズでも最低野郎でもない。
「コーラがね…」
「コーラ…?」
僕は簪くんにコーラの素晴らしさとゼロカロリーへの意を唱えた。
「…って事なんだよ」
「そ、そう…」
ちょっと困ったような顔で僕の話を最後まで聞いてくれた簪くん、良い子だとつくづく思う。
「何かごめんね、こんな話に付き合わせて」
「良いよ良いよ、私も夕陽くんとお話出来て楽しかったよ」
にこりと笑う簪くん、端整な顔立ちと白い肌、綺麗な髪と相まって本当に女の子にしか見えない。
「更識くんとお話してる花本くん可愛い!」
「更識くんも可愛い!」
「すっごい可愛い」
他の子達がまだ何か言っている気がするけど気の所為だろう、気の所為だよね?
「この泥棒猫…!!」
今のだけはハッキリと聞こえた、泥棒猫って。シャルルくんも言ってたな、流行ってるのかな。
「花本くゥん…?”ウチ”のかんちゃんと何を話してたのかなァ…?」
「うわっ!?」
「お、お姉ちゃん…」
ドス黒いオーラをその身に纏わせて音もなく僕たちの側まで忍び寄ってきたのはこのIS学園の生徒会長で、簪くんのお姉さん『更識楯無』会長だった。
「か、かんちャァん?その泥棒猫から離れなさァい…」
「お姉ちゃん!夕陽くんに酷いこと言わないで!!」
「かんちャァん…!?私はかんちゃんの事を想って…!」
更識会長は重度のブラコンとして学園でも有名だ、この間だって簪くんに話しかけた子を…いや、これ以上言及するのはやめておこう、それよりも目の前の驚異に対応するべきだ。
「あ、あの…僕は別に簪くんに何かしようとした訳では…」
「アナタは黙っていなさァい…?」
「ア、ハイ」
ビキビキと額に漫画みたいな青筋をたてまくる更識会長。怖い、人間ってあんなに血管浮き出るものなの?
「お姉ちゃん!私が誰と話をしようと勝手でしょ!?」
「かんちャァん…大変…!かんちャんが不良になっちゃった…!!!」
人と話しただけで不良ってどういう事なんだ、不良のハードル低すぎでしょ…
「もう良い!お姉ちゃんなんか嫌い!!」
「か、かんちャァんんんんんんんッッッッ!!!」
まるでムンクの叫びのような顔で絶叫する更識会長、怖い。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
会長はこの世の終わりのような叫びを上げながらそのまま何処かへ走り去って行ってしまった。出来れば二度と会わない事を祈る。
「ごめんね…お姉ちゃんが”また”おかしな事言って」
「い、いや…良いよ気にして無いし」
「お姉ちゃん頭おかしい人だから…」
簪くんの実の姉へのあんまりな評価に僕は力なく愛想笑いをした。
楯無さんファンの皆さんごめんなさい、何か楯無さんが頭おかしい人になってしまって…けど書きやすいねんこの人、ネタにもシリアスにも振れるしISの二次創作だと束さんに次ぐ便利キャラだと思う。
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ISの二次創作をやるならオリ主の専用機の解説は必須だと思うんですよ
「専用機…ですか?」
「そうだ」
寮での騒動から一夜明け、夕陽はいつもの様に自身の教室に足を運んでいると、担任の千冬から呼び止められた。何でも世界的に見ても貴重な存在である夕陽に対し、自衛と稼働データの取得を名目に専用機を譲渡するとの事だった。
「倉持技研は知っているな?」
「あ、確か一夏くんと簪くんの専用機を作った所ですよね?」
「そうだ、お前の専用機もそこから支給される事になる」
何でもそのISは簪の専用機である『打鉄弐式』と同時進行で制作されていたが、一夏の登場で急遽制作の一時中止を余儀なくされ、暫くの間倉庫で埃を被っていたものだという。
そこに更に夕陽がISに搭乗出来る男子だと発覚し、大慌てで制作を再開して完成にまで漕ぎ着けたという。
「突貫工事で完成させた代物だが品質には問題はないそうだ」
「だ、大丈夫なんでしょうか…?」
夕陽は少し不安だった。専用機が渡されるのは確かに嬉しい、だが制作の経緯を説明されると手放しで喜ぶことが出来ないのが実情だ。
「安心しろ、何かあったら私がすぐに倉持に乗り込んでやる」
冗談っぽく言う千冬、それに夕陽は愛想笑いで応じた。
(…先生は冗談は言わない人だからなぁ)
この人がいう言葉は大体は『マジ』なんだと夕陽は短い付き合いながらも理解していた。こうして夕陽は地上最強のクレーマーをバックに付ける事に成功した。
「専用機は夕方までには届くそうだ、まあ楽しみにしておけ」
「はいっ!」
千冬は夕陽の元気の良い返事を聞くと、口角を僅かに上げた。こういう屈託のない反応は見ていて気持ちの良いものだ。
「私はまだ準備があるから先に教室に行け、何か聞きたいことがあったら暇をみて声をかけてくれ」
「ありがとうございます!」
話を切り上げると二人は別れた、千冬は振り向くと夕陽の背を見た。僅かに除く顔には笑みがあった事を確認すると千冬は彼の学園生活が健やかなものとなっている事を確信し、少し安堵した。
「夕陽!専用機が届くんだってな!」
夕陽が教室に着くと、一夏が笑顔で出迎えた。その後ろには当然の如くシャルルがまるで新妻の如く控えている。
「あれ、何で知ってるの?」
「もうクラス全員知ってるぜ」
どこから情報が漏れたのかは定かではないが、既にクラス全員が夕陽が専用機を渡される事を知っていた。この学校のセキュリティ大丈夫かなと夕陽は思っていると一夏は夕陽に抱きついてきた。
「わっ!織斑くんっ」
「でもよかったな!これで男子全員専用機持ちだぜ!」
「う、うん!」
一夏は良くも悪くも、パーソナルスペースが狭いというか、人との距離感が割と近い方の人間だ。スキンシップはボディタッチも良くする。
人と遊ぼうとじゃれてくる大型犬みたいだな夕陽は思った、そして同時に悪寒を覚えた。もはや見覚えすら感じるシャルルの絶対零度の眼差しだった。
「い、一夏ー…?夕陽も困ってるからそろそろ離したら?」
それとなく夕陽と一夏を引き離そうと誘導するシャルル、しかし一夏はシャルルの思惑通りには動いてくれなかった。
「何言ってんだよシャルル!お前も嬉しくねーのかよ!」
「わっ…!」
一夏はあろう事かシャルルの肩を抱き寄せたのだ。両腕に男子二人を抱えて笑う一夏。これが普通の男がやるならかなりむさ苦しい光景になっただろうが、ジャ〇ーズ顔負けのイケメンと、女と見間違える程の美貌の少年と、可愛らしい顔立ちの少年がそれをやるのだ。周りの女子生徒はもう堪らない。
「これで全員一緒だなっ!」
「う、うん!」
「…まぁ良いか…」
女子生徒達は千冬が来るまでの間、この光景を目に焼き付けようとガン見していた。
「…尊い」
あるものはそれを青春の1ページと感じて。
「ハァハァ…!」
あるものはそれを邪なものに脳内変換して。
時間が経つのは早いもので、あっという間に終業時間を迎え、遂に夕陽は自身の専用機を受け取る事となった。
千冬から伝えられた場所は『アリーナ』だった。ただでさえ広い学園でも特に広大な面積を誇る空間であり、学園の生徒達は主にここでISを使用した訓練や模擬戦などを行う。
「あ、花本くんだ」
「こんにちはー」
「元気ー?」
「お疲れ様です」
アリーナに入場すると夕陽を出迎えたのは見慣れぬ生徒達だった、どうも上級生の先輩らしく。夕陽は礼儀正しく挨拶をした。
「聞いたよー?専用機貰うんだって?」
「いいなー」
「ウチも欲しー」
学校という閉鎖空間は良くも悪くも情報の伝達は早い。本来夕陽と接点のない彼女たちですら夕陽が専用機を貰う事を知っているという事は、もう学園の生徒のほぼ全員がこの情報を知っているのだろうなと、夕陽は苦笑いをした。
「さっき見慣れないISが運ばていったから多分アレが花本くんの専用機だったんじゃないかな」
「うんうん、綺麗な紫色してた」
「えー?青色だったよー?」
「そうだったっけ?」
夕陽は先輩たちとの世間話ついでに自身の専用機のカラーリングが『紫』か『青』である事を知った。改めてこの学園のセキュリティ大丈夫かなと感じたが夕陽は敢えてそれを口に出す事はなかった。
「ついでに織斑先生も見かけたよ」
「確か第3デッキの方に向かってたよ」
「第3デッキ、ですか」
「あ、行き方はね…」
夕陽は先輩たちに第3デッキの行き方を教えてもらうと彼女たちと別れ、その場所へと向かった。
「来たか」
「お、夕陽早いな!」
「花本くん来たよー」
「あれ…みんな?」
夕陽の専用機を一目見ようと大勢の野次馬が第3デッキには溢れていた、クラスメイトやその他のクラス、上級生まで。夕陽は人混みをかき分けるとようやく専用機の所まで辿り着くことが出来た。
「これが…」
花本夕陽の専用機、世界にただ一つだけ、彼だけの為に用意されたIS。夕陽がそれを見た初めての感想は『綺麗』だった。
まるで磨かれたような光沢をもった機体装甲はマジョーラで塗装され、見るものの角度からその色を変える。先程先輩たちがこの機体を見たときの色の感想が違ったのはこれだったかと夕陽は合点がいった。
「綺麗な機体だろう、私も最初見た時は驚いた」
「はい…」
目の前機体の色彩に圧倒される夕陽、千冬の説明を聴きながら夕陽は機体に見とれる。
腰から下にかけて地に広がるようなスカートアーマーと、IS特有の肘から先を覆う手甲と胸部を守る装甲がそれに威容を付け加えている。
機体の両脇には流線型の非固定浮遊部位(アンロックユニット)とおぼしきものが浮いており、この機体が尋常ではないものだという事を夕陽に対し視覚的にそれを示していた。
「打鉄をベースとしたカスタム機だそうだ」
「え!?これ元は打鉄なんですか?」
打鉄とは日本の量産型ISであり、このIS学園でも訓練に使用される機体だ。夕陽自身、何度も搭乗した馴染み深い機体だ。だがこの目の前の機体はその色をとっても形状を見ても、あの打鉄とは結びつける事は夕陽には出来なかった。
「機体の各所を見直し、装甲、武装、システム、その他パーツ単位まで調整を行ったそうだ」
もはや別機と断言して良いだろうと千冬は説明を続けた。何やらとんでもない事になっていたようだと夕陽は青ざめる、大事である。
「第2.5世代型IS『菫(すみれ)』、お前機体だ、大事に使え」
すみれ、その名前を小さく呟いて、夕陽は何度も何度も反芻した。
機体解説
『菫』
元々は政府及び、IS委員会からの要請で篠ノ之箒の為に倉持技研が制作していた機体であり、制作は順調に進んでいた。当初の予定では箒がIS学園に入学する直後の段階で箒に渡される筈だった。
制作を指示した者達は専用機を箒に渡すことにより恩を売って、あわよくば箒の姉であるISの生みの親たる篠ノ之束へのコネクションを作ろうとしていたようだが。一夏や簪、さらにラウラやシャルルといったISを操縦出来る男子が国内外から次々と発見され、政府とIS委員会はその対応に追われる形となり、倉持技研は彼らの専用機の制作を最優先させよとの指示を受け。本機は1度制作中止を言い渡された。
その後騒動も収束してゆき、倉持技研も制作再開をする頃には他ならぬ箒本人が姉の束から専用機を渡され、本機の存在理由が失われてしまう形となってしまった。
本来の主を失った本機はその後解体され、元の打鉄に戻される予定だったが、状況は更に一変する事になる。
なんと新たにISを操縦出来る男子『花本夕陽』が日本国内から発見され、政府と委員会は再び倉持技研に彼の専用機の制作を依頼する事になり、技研は本機に白羽の矢を立てた。
政府、委員会も『せっかく現れた貴重な存在に渡す機体なのだから、性能及び装備を吟味したものを譲渡すべし』とし、本機は更なる性能の向上を言い渡された。
技研のスタッフたちも解体予定だった機体を完成させられるとそのモチベーションを上げ、本機の制作に不眠不休で没頭する事となる。
その甲斐あってか、本機は当初予定されていたカタログスペックを大幅に更新し、もはやただの既存の量産機のカスタム機とは一線を画す性能を得ることに成功する。
制作スタッフからも『これはもう第2世代機の範疇ではない』との意気込みから。予定されていた名称である『打鉄・菫』から打鉄の文字か外され、『菫』とその名を変える事となる。
ちなみに箒自身は自分に専用機が渡される事は知らなかった。政府も委員会も、どうもサプライズ的に渡す事により、より一層深い恩を感じさせようとしていたようだ、その目論見は完全に裏目に出てしまったが。
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