Blazing Soul 二次創作集 (キュルビス)
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『石動流 夜の錬成試合』

文章が変だったり、キャラの口調がおかしかったり、もう色々と崩壊していますが生暖かい目で見てやってください。



 

 

 

四月二十日。もう少しで日付も変わろうというところで、ミナト・ハルカは自身の住居に到着した。部屋の明かりを点けたところで大きく息を吐き、近くの椅子に凭れ掛かる。つい先程まで自らが所属する部隊「妣國」の面々と打ち上げをしていたのだ。自分やトシキくんの歓迎会を兼ねてとのことであり、それは当然嬉しく、楽しくもあったのだが・・・

 

「良い雰囲気だったのにな・・・」

 

―――時は少し遡り桜花祭の終盤、皇の演説が終わった直後に幼馴染から「見渡しの丘」で締めの花火を一緒に見ようと誘われた。間違っても皆の前で認めることなど出来ないが彼、ツクバ・トシキと仲が良いというのは純然たる事実だ。臆面もなく自分に向けられる好意が恥ずかしく、いつもは辛辣な言葉で返すことしかできなかった。そんな自分にしては珍しく、本当に珍しく今回は彼のお誘いを素直に受け止めることができたのだ。きっと彼も私も初めての桜花祭の熱に浮かされたのだろう。丘に向かっている時から顔が赤くなりっぱなしだった。自分達の唯奏を使わずとも互いの動きが分かるようで、感覚どころか感情まで共有できているようで。だからこそ気づけなかったのだ。自分達に忍び寄る形ある悪意に。

 

「綺麗だね・・・」

 

「・・・・・・うん」

 

 丘に着いた頃には既に花火が始まっていた。大小、模様も違えば色も様々な火薬の花が次々と打ち上げられ、それらを眺める人々を明るく照らしていく。それに一瞬気を取られていると突然手を握られていた。

 

―――ドクンッ

 

 心臓がかつてない程に大きな音を鳴らす。言うまでもなく自分の手を握ったのは彼で、花火の光で鮮明に見える顔は火よりも赤くなっているようで、季節はずれではあるが紅葉の連想させた。

 彼は恥ずかしさを隠すように顔を背けると私の手を引っ張っていく。強引なようでいて優しい力加減。それに導かれるままに私は彼について行った。

 

「此処が穴場だって隊の人に聞いたんだ」

 

「そうだね。普段だったら暗いだけだろうけど、今は花火の光が良く見える」

 

 そうして着いたのは人ごみから離れ照明の明かりすらあまり届かない場所だ。彼の手に入れた情報は正しかったようで、周辺に人はおらず、今この場には自分達しかいない。花火が消えた瞬間など、それこそ真実二人だけしか世界に存在しないようだった。

 

「・・・・・・ハルカ」

 

「なに?トシキくん」

 

「俺の気持ちに対する返事はいつでも待ってるって言ってたけどさ、やっぱり今聞きたい」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 正直なところ、この言葉は予想通りだ。普段は周囲の目も気にすることなく好意を向けてくるくせに、いざ場を整えようとすると彼はそこで調子を崩してしまう。実際、花火に誘われた時から喋り方が変だった。今でもそう。いつものお調子者みたいな感じが消えて、顔を赤くしながらも真剣な表情でこっちを見ている。

 

「何で今なの?」

 

 ふと目を逸らし花火を見ながら私は問い掛ける。そう、なぜ今なのか。それこそ機会はいくらでもあるだろう。告白やそれに近い言葉ならほぼ毎日受け取っている。つまり返事の機会もほぼ同等にあるわけだ。やはり祭というのが大きな理由だろうか。しかしそれでも疑問が残る。桜花祭は来年もあるのだ。一年に一度の特別な日であるのは確かだが、それでも普段の自分達のやり取りを考慮すると理由としては弱いだろう。

 

「変わらないとダメだって思ってさ」

 

「・・・え?」

 

 間を置かずに出た答えに思わず振り向いてしまう。それが理由?変わらない日常。幼い頃から変化のないこの関係。彼はそれを良しとしていた筈で、自分もそうだったから。だからこそ分からない。なぜ変わりたいと望んだのか。

 

「”石狩”からこっちに引き抜かれてさ、一気に色んなことが変わったじゃん。住む場所は新しくなったし、家族や知り合いもこっちにはいないし。それで他のことも当然変わってく。だからさ、俺も止まったままじゃなくて先に進みたいって思ったんだよ」

 

――――ああ、理解できた。彼は今までの関係を良しとしていたわけではなかったのだ。ちゃんと返事を聞くのはきっと怖いのだろう。だからいつもふざけた調子で変わらない関係を続けていた。だからこそ切っ掛けが欲しいと彼は願ったのだ。そしてそれは訪れた。「妣國」への編入、そして勇気を出すための最後の一押し、それがこの桜花祭。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 落ち着いて冷めていた頬が再び熱くなる。これはダメだ。この気持ちは止められそうにない。だって嬉しいから。自分のことを偽りなく大切に想ってくれている。いつもの言葉からでもそれは感じることができたが今回は特別強く感じるのだ。今のままで終わらず先のことを真剣に考えてくれている。それが分かってしまったからどこからか零れる雫が止められない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 彼が手持ちのハンカチで雫を拭ってくれている。今の私はきっとひどい顔をしている筈なのにそれをいつもみたいに茶化さない。先程から普段なら日常では見ることができない真剣な顔をしたままだ。

 

「ハルカ」

 

 彼はハンカチをポケットに仕舞うと私の名前を呼び両手を握って真っ直ぐにこちらを見つめている。一分?十分?それとももっと経っただろうか。実際は十秒ほどの短い時間、互いの目が合ったまま変化のないこの状況を打ち破ったのはやはり変わりたいと宣言した彼自身で。

 短く目を瞑り息を吸う。そして瞼を開いた時に彼は覚悟を決めたようで、それと同時に私も今日こそは返事をするのだと心に決めていた。

 

「昔も今もこれからも、ずっとハルカのことが好きです。今の関係で終わりたくない。だから俺と付き合っ

 

カキン!

 

 ハルカとトシキは突然の謎の音に緊張の糸を切られ同時にその方向を見てしまう。捻りなく、順当に、いまここに形ある悪意は顕現した。

 音の正体は瓶だ。正確には誰かが捨てていったラムネの瓶が近くの石に当たった音。遠ければ花火の音で聞こえなかったかもしれないが、肉眼でハッキリと見える距離ならば常人の耳でも拾いはする。ここで疑問が出てくる。今は風は強くない。ならば瓶が倒れたり転がったりすることはない筈で、つまり誰かが瓶を動かしたことになる。ならばそれは誰なのかと、二人して少し奥に目を向ければそこには三つの影があった。

 

やってしまった、といわんばかりの顔をしてその中性的な面持ちを歪めたまま固まっているのは同じ部隊に所属しているクナカミ・サクヤ

 

なにやってんだお前!とサクヤを非難するように彼女の頭を押さえつけているのがこれまた同じ部隊に所属しているイトウ・ハヤテ

 

なぜそこで告白を止める?とまるで今の状況に自分達は一切の非がなく、理由さえも分かっていないといった表情で腕を組んだまま首を傾げているのもまたまた同じ部隊に所属しているカミナギ・ヤマト

 

 そう、これが形ある悪意の正体。サクヤの姉であるユキノをして悪魔かと言わしめる行為を平然とやってのける先輩トリオである。

 

「な、な、なななな・・・・・・」

 

 瞬間、事態を理解したハルカは今までとは違う意味で顔を赤くさせている。それはそうだろう。なにせ今の瞬間はこのシーンの最高潮、クライマックスともいうべき場面だったのだ。互いの想いを伝え終わった後ならば問題はなかった。瓶が転がってこようが、先輩三人が突撃してこようとも自信を持って自らの気持ちを表明することが出来たはずなのだ。しかしそれは叶わなかった。想いを伝える前に止められたのだ。完全に台無しである。そしてそんな緊張の糸が切られたからこそ、こんな場面を見られていたというのが堪らなく恥ずかしい。

 不意にハルカの手が軽くなる。そちらに目を向けるとトシキが魂が抜け切ったように真っ白な状態で膝から崩れ落ちていた。無理もないだろう。このような状況では告白など夢のまた夢、立ち直るのにも暫しの時を要するかもしれない。

 

「えへ、えへへへへ・・・・・・」

 

「す、すまん」

 

「・・・・・・・・・・・?」

 

 そんな二人を見ながら先輩トリオのアクションは様々で、苦笑いで誤魔化そうとする者、素直に謝罪する者、未だに状況を理解できていない者。

 どのような反応をされても我慢の限界だったのだろう。恥ずかしさで目一杯に溜まった涙を振り落としハルカは天を仰ぎ叫んだ。

 

「先輩達のバカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 過去最大の大きさで放たれた怨嗟の呪詛は締めの大花火によって無常にも掻き消されたのだった。

 

・・・

 

 そして今は最初の通り。先輩達三人にありったけの毒をぶつけた後は、気分を変えるという意味を多分に含めて自分達の歓迎会兼桜花祭終了の打ち上げに参加してそれも終わり、こうして自宅に帰ってきたのだ。

 暫くは椅子に凭れ掛かっていたままだったがいつまでもウジウジしてはいられない。そう思い立った私は気分転換のために作業机に向かう。そう、先輩達も悪気があったわけではないのだ。悪意は確実にあっただろうが、告白を邪魔するつもりはなかった筈だ。だから許すことは出来ないが今はこの気持ちは抑えておこう。

 

「さて、と」

 

 私は机の引き出しから一冊のノートを取り出す。これは士官学校の時から続いている趣味であり、それからずっと書き続けているものだ。これでもう何冊目になるだろうか。内容は何かと聞かれれば言ってしまえばオリジナルの衆道本。所謂ボーイズラブとジャンル分けされているものだ。といっても正確にはちゃんと文章として纏めているわけではないのでネタ帳といった方が正しいだろうか。

 ページを一枚一枚捲りながら妄想を膨らませていくと一つのアイディアが思い浮かぶ。これで先輩達に復讐するというのはどうだろうか。いや、そんな復讐なんていう大それたことではない。別に彼らに直接被害が及ぶわけではないのだ。このノートの中と私の脳内で彼らがあられもない姿を晒すだけ。サクヤさんには一切被害がないが、なにも、そう、なにも問題はないのだ。私が満足できればそれでいい。

 

「けど今日は時間がないから台詞だけかな。ふ、ふふ、ふふふふふふ・・・・・・」

 

 目に狂気が宿る。口角が上がっていく。本能という獣が理性という縛鎖を千切り、暴れまわるのを私は止めることができなくなっていたし、止める気もない。そして私はノートにペンを走らせた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヤマト「別に声を我慢をする必要はないぞ?もう時間も遅いし内側から鍵は閉めているんだ。人の目を気にする必要はどこにもない」

 

ハヤテ「そういう問題じゃねえよ!これはどういうことだよ!?」

 

ヤマト「言っている意味が分からんぞ。どういうこと、というのはお前が縛られていることについてか?それとも道着を脱がされていることについてか?」

 

ハヤテ「両方に決まってんだろーが!」

 

ヤマト「おかしなことを言う奴だな。誘ってきたのはお前だろう?」

 

ハヤテ「なっ・・・・・・」

 

ヤマト「気づいてないとでも思ったのか?実際、最初の頃は分からなかったがあれだけちょっかいを掛けられて、あれだけ熱い視線を向け続けられれば鈍い俺でも気づくさ」

 

ハヤテ「~~~~ッ!ああ、そうだよ!士官学校の頃からずっとお前のことが好きだった!けどお前はそんな俺の気持ちに気づいてくれなく、だからていつも突っかかっちまった。俺の気持ちに向き合ってくれてる今の状況はたしかに嬉しいけどよ、こんな縛って無理矢理なんて・・・」

 

ヤマト「無理矢理がお前の望みだろう?縛られる時も碌に抵抗しなかったのが良い証拠だ。現奏を使えば身体能力は圧倒的にお前が上なんだ。だというのにこうも簡単に俺に組み伏せられている。無理矢理が嫌なら縄を外してみろよ。お前なら容易に千切れる筈だ」

 

ハヤテ「それは・・・・・・・・・」

 

ヤマト「なぁ、素直になれよ。そうすればちゃんと可愛がってやる。さっきみたいに少しその口を開けば済むことだ。・・・ふむ、では答えやすいように俺が質問してやろう。ハヤテ、お前のご主人様は誰だ?」

 

ハヤテ「ヤ、、が、、、、、様、す」

 

ヤマト「ん?声が小さいな。ちゃんと俺に聞こえるように言えよ」

 

ハヤテ「分かったよ!認めるよ!ヤマトが俺の飼い主だって!」

 

ヤマト「はっはっは。よく言えたじゃないか。では頑張ったペットにはご褒美やらなくてはな。ほら、力を抜けハヤテ」

 

ハヤテ「ぁ・・・ぁぁ、ヤマト・・・・・・」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「・・・・・・・・・・・・ぢゅるり」

 

 垂れそうになっていた涎に気づき私は急いで啜ると意識を現実へと引き戻した。

 これはいい。正直なところ予想以上だ。あの二人ならば容姿や性格も素材としては申し分なく、今とは逆の組み合わせでもまた違った魅力を放ってくれることだろう。

 さて、次はどうしよう。先の通り逆にしてみてもいいだろうがそれだと少々味気ない。せっかく「妣國」という新しい環境に身を置いているのだ。色々と試してみてもいいだろう。

 それではどういった組み合わせにしてみよう。まだ私は帝都に来て日が浅い。同じ部隊の人達ともまだそこまで親しくなっていない。だからキャラクターとして立たせることができないのだ。・・・・・・そうだ、彼がいた。彼ならば他の人よりは親しいしどういう人かも知っている。よし、これでいこう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヤマト「約束通り来ました。だから早くハヤテを解放してください。・・・・・・・・・クジョウ大尉」

 

タケル「おいおい連れないことを言うなよヤマト。そんなに彼のことが大事なのかい?嫉妬するね」

 

ハヤテ「俺のことはいい。お前は逃げろヤマト!」

 

ヤマト「そんなことができるわけないだろう!」

 

タケル「見てるこっちが火照るぐらいに熱いね二人は。うーん、そうだね。僕も鬼じゃない。だから一つ提案があるんだ」

 

ヤマト「提案?」

 

タケル「なに、簡単な賭け事だよ。今から三時間だけ私の命令に従ってほしい。それで君が耐え切ったら二人とも解放してあげるよ」

 

ヤマト「・・・・・・分かりました、その提案に乗りましょう。ですがその前に一つ聞きたいことがあります」

 

タケル「なんだい?私が答えられることなら何でも答えるさ」

 

ヤマト「なぜこんな回りくどい方法を取ったのですか?貴方は自分達の上官だ。その権力を使えばどうとでもできたでしょう」

 

タケル「はっはっは。そんなことかい。単純な理由だよ。力づくで手に入れてもつまらないじゃないか。私は君が屈服して跪くのが見たいんだからね」

 

ヤマト「そうですか。ですが俺は貴方には絶対に負けない」

 

ハヤテ「ヤマトそれは無茶だ!頼むからお前だけでも逃げてくれ!」

 

ヤマト「なぁハヤテ。お前はたしか賭博が好きだったよな」

 

ハヤテ「お、おう」

 

ヤマト「俺が知っている限りではそんなに強くはないらしいが。良かったな、今回の賭けは勝てるぞ?」

 

ハヤテ「・・・っはは、そうだよな。俺の知ってるお前はクジョウ大尉なんかにゃ負けねぇ。分かった。お前に賭けるぜ」

 

ヤマト「大船に乗ったつもりでいろ」

 

タケル「二人の時間は終わったかい?じゃあこっちにおいでヤマト」

 

ヤマト「・・・・・・・・・・・・はい」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うへ、うへへへへへへへへへへへ」 

 

 思わず変な笑い声が出てしまう。新しい扉が開ける。そう確信を得ることができるほどにこの三人の組み合わせは素晴らしい。これは台詞だけではなくざっくりとした概要だけでも記しておかなければ。

 

コンコン

 

 急なノックに思わずノートを閉じてしまう。ノートを引き出しに仕舞った直後に入ってきたのは私が最もよく知る顔で。

 

「ハルカ、今日のことなんだけどさ―――ッ!」

 

 彼は入ってくるなり私を見て顔を強張らせていた。と思えば今度は苦笑いして後ずさりなんかしている。一体どうしたというのだろう?

 ああ、そうか。彼は私のたった今までしていたことを表情だけで見抜いたのだ。それで巻き込まれることを恐れたのだろう。けどそれは無用な心配だ。だってこれは―――

 

「私達の中だけで成立する復讐なんだから。だからトシキくんも一緒にしよう?」

 

「先輩達助けてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」

 

 深夜の一室で男の悲痛な叫びが木霊する。果たしてその願いは届くのか。

 

 

―――同時刻、帝都内一般道。

 

「どわぁぁぁ!!おい、いまなんか不味いもん感じなかったか?」

 

「お前もか。な、なんだこの悪寒はッ!!」

 

 ハヤテとヤマトは同時に同じ方向を向く。それはハルカやトシキの住居がある場所である。あの方向には何かがある。絶対に関わってはいけない何かが。

 そう悟ると両者は顔を見合わせると一目散に向いた方向とは正反対に走り出した。ただひたすらに得体の知れない恐怖から逃げるために。

 

 

 

 

 




後半部分のネタは分かる方には分かると思います。本当にすいませんでした。


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